○松岡
参考人
日本消費者協会の松岡でございます。
初めに、私がここで
意見を述べさせていただきます背景について少し触れさせていただきたいと思います。
私
ども、
日本消費者協会では創立以来、
消費生活コンサルタントという人たちを二十二年間にわたり約一千名以上養成してまいりました。この方々は各地の
消費者センター、各地の
消費者行政の
消費者相談の窓口、
企業の
消費者相談の窓口等に相談員として大半の人が活動していらっしゃいます。その人たちが日常受けております相談の中に、先ほど清水
参考人が述べられましたように、この数年来、急激に
契約に関する
消費者苦情が増大しております。その現場にいる相談員の方々の切実な悲鳴のようなものが私
どもに上がってまいります。どうしても何らかの法的な
施策を講じてもらわなければ、これらの
消費者の被害を救済することはできないということを、私
ども、数々の事例をもって訴える次第でございます。
また、私
どもの仲間といたしまして各地に
消費者協会がございますが、そのメンバーで全国
消費者協会連合会というものを組織しております。この全国
消費者協会連合会の方にもいろいろな苦情が参っておりまして、昨年十一月にすべての
信用供与に関する
契約について法の目をかけてほしいということと、それから個品割賦
購入あっせんを法の
規制のもとに置いてほしいということの要望を出しております。また、先ほど申しました
消費生活コンサルタントのメンバーの組織しております日本
消費生活コンサルタント協会と私
ども日本消費者協会と連名で、昨年九月とことしの一月の二回にわたりまして、
割賦販売法の
改正に当たりまして要望を、具体的な事例、約百五十例を添えまして通産大臣にお出ししております。
そのような背景をもとにしまして、私
ども、この
割賦販売法の
改正を非常に興味を持ってというか、切実な目で眺めてまいりました。今回
政府原案として提出されました中身を
検討させていただきますと、かなり私
どもの要望を入れていただいた点と、それから期待していたのが入らなかった点と両面ございます。
まず、適用の
対象の範囲でございますけれ
ども、要望といたしましては、すべての
信用供与
契約をこの
対象に入れてほしいというのが私
ども全員の一致した要望でございました。といいますのは、いろいろな
取引形態があらわれてきまして、それを指定
商品、指定品目という形で取り上げていきますと、必ず網の目からこぼれていくものが出てまいります。新たな法
改正をお願いしますと、それに非常に時間がかかっています。現に個品割賦
購入あっせんにこれだけ
消費者トラブルがふえてまいりましたのは、これが
割賦販売法の中に入っていなかったためと私たちは見ております。そのようなことからも、できるだけ包括
規制をしていただきたかったということが一番残念な点でございます。
しかし先ほど申しましたように、現在、苦情相談の中に大きな場を占めて、件数を多くしております
トラブルは個品割賦
購入あっせんでございまして、これが今回、
対象の中に入るということは、随分実際の
消費者被害を救済する面では前進することになると思います。
それから、リボルビング方式というのは新しい形態の
クレジットでございますけれ
ども、やはり私
ども、これが行く先非常に
消費者被害を生むのではないかという懸念を持って幾つかの事例を見てまいりました。今回、これも
対象の中に入るということで非常に喜んでおります。
また、耐久性を有しない
商品というものが今回、改めて入るということで、先ほど清水
参考人が述べられましたように、化粧品や衛生
商品に関しまして、今までは
対象外になっておりましたのも、これで入れていただくことができ、随分現実の問題としては違ってくると思います。
ただし、先ほど清水
参考人が述べられましたように一括払いのマンスリークリアの形態のもの、これはまだ事例が多くはないといいましても、やはりぼつぼつ事例が出てまいっております。また、
役務関係の
取引につきましては、
消費者トラブルというのがどんどんふえてきております。これはぜひ入れていただきたいという強い要望を私
どもも出してまいりましたけれ
ども、今回産構審の
答申に入っていて、これで適用範囲の中に入れていただけるのかと期待しておりましたが、今回の
政府原案には盛り込まれておらず、非常に残念に思います。この
役務関連取引につきましては、今後も何とか早急にこの
対象の中に入れていただく
努力を続けていただきたいと思います。
それから、今回の法案の中で私
ども一番喜んでおりますのは、
抗弁の
接続の点でございます。それから、その
抗弁の
接続の方法につきまして、
事由に制限がないということは、現実の
消費者の
トラブルに接してみますと、非常に大きな違いでございます。この
抗弁の
事由に制限がある、例えば産構審の
答申に盛られましたように、
書面の
記載事項というようなことで制限がありますと、現実、私
どもが今相談を受けています大半の
トラブルはこれに該当しないようになってしまいます。と申しますのは、ほとんどセールストークによって起こってくる問題が多いからでございます。こういうことで、
書面に
記載されたことだけ、
契約事項だけということになりますと、
抗弁の
意味が現実的にはなくなるということで、私
どもも非常に心配しておりましたが、この
政府原案によりまして、
事由に制限がないということは、現実的な
消費者被害を大幅に救済することになると思います。
それからまた、
手続が
書面にこだわられていないという点についても、非常に大衆的な
消費者の被害を救済するようになると思います。先ほど木島
参考人が、
書面でないために起こってくる非常に
問題点があるというふうにおっしゃいましたけれ
ども、実際に何も音さたなく突然支払いをしなくなるということは、これはまた
抗弁と別のものでございます。
抗弁としてあらわれできますのは、事前に
販売業者や信販
業者に対する何らかのコンタクトが当然あるわけです。
抗弁というのは、
消費者にとって最後の手段でございますので、これが何かわからないうちに
抗弁の
接続をされていたということはほとんどあり得ないことではないかと思います。また、そういうことをやはり
消費者へ向けて知らせる
努力が必要なのではないでしょうか。
以上のようなことから、
抗弁の
事由に対する制限、それから
手続に対する制限というのが余りつけられますと、実際の
消費者が何をしていいかわからなくなるわけで、その戸惑っている間に時間がたっていくということ、そのために救済できる被害も救済できなくなってしまうということが往々にしてございます。
現行法の中での
クーリングオフの
手続が
書面をもってというふうになっておりますが、一番出てきますのは、電話で連絡をしたら、セールスマンがいないからもう少し後に連絡するようにとか、言い逃れをされながら日数を経ていくケースが多くあります。それから、現実に正常な経営をしておりますところでは、制限があって
書面をもってとしているときに電話で連絡があっても、それで十分対応しておりますし、それで問題が起こるということもほとんどなく正常な活動を続けていらっしゃいます。
書面とか、例えば
クーリングオフの場合、内容証明でというような言い方を厳しくする
業者ほど、何らかの別の
意味を持っていまして、販売方法に無理があったということを営業上認めた上でやっているようなところに限って
書面を強調するような感じがいたします。そういう現在の
クーリングオフの
運用を見てまいりましても、
抗弁の
手続の仕方が必ずしも
書面でなくてもそごを起こすようなことはないと存じます。
それから
抗弁の問題の中で二つ適用除外の条件が出ております。
政令で定められた金額に満たない支払い総額ということになっておりますが、これはできるだけ金額的には低い額にして適用範囲を広げていただきたいと思います。また、
購入者にとっての商行為となる指定
商品ということが適用除外になっておりますが、これもできるだけ商行為の判断を素人の
消費者が適用されないように制限していただきたいと思います。と申しますのは、現在、例えば美しくなるからとか英語がしゃべれるようになるからというのと同じように、もうかるからというのは非常に素朴な
消費者の魅力でございまして、もうかるからという言葉につられて
商品を
購入する場合が多くあります。そのもうかるということが商行為につながるかどうかということは非常に難しい問題でございまして、あくまでも素人が手を出してしまったもうかる話というのは商行為とは言えないんではないかと思います。こういうことで現在自動販売機が商行為として認められるのには最初の一台は除外されておりますけれ
ども、そういった方便で何らかの緩和をしていただきたいと思います。
それから
クーリングオフにつきましては四日間という現行どおりになっておりますが、私
どもも要望七日間で出しておりますけれ
ども、例えば日曜祭日を四日間の外に出して、カウントしないようにしていただくだけでも随分違います。現実に四日間では困るというのは、例えば現在日曜日はポストの集配がされません。そういうようなことで
書面をもってという
手続をするためには、四日間というのが日曜日があれば実質三日間にしかならないということが一番ネックになっております。そういうことで、今後、七日間ということが無理ならば、政省令の中でもこの四日間の計算の仕方を考えていただいて、少しでも
消費者を救済できる道を開いていただきたいと思います。
私
ども要望してまいりました点はかなり入ってきたわけですが、例えばローン提携
取引に対しまして
抗弁がかからなくなっております。これは苦情事例が少ないということが一つの理由に挙げられております。確かに私
どもからも苦情事例をたくさんお出しすることはできませんでしたが、ただ先ほど申しましたように
規制のない方へ
業者の
取引は流れていきます。特に悪質な
業者ほどそういう方向に流れてまいりまして、マンスリークリアとかローン提携、
役務関連取引というような
規制の甘い方へ向かって今度は新たなる
契約トラブルが起こってくるのではないかということを非常に心配しております。そういうことからも、できるだけ早く包括した法案を考えていただきたいと思います。
ただ現在、先ほど申しましたように非常にたくさんの
契約トラブルが参っております。これを一日も早く救済するということが大事なことでございまして、私
ども完全に満足しているわけではございませんけれ
ども、個品割賦
購入あっせんとか
抗弁の
接続という非常に大きな部分で救済される道が開かれておりますこの
改正案をぜひ早急に通過させていただきたいと思いますし、一日も早い施行をお願いしたいと思います。
また今回、法案の中に過剰な販売
信用の供与の
防止についても触れられておりますが、訓示条項とせずに何らかの具体的な方策を示していただきたいと思います。
また、
信用情報の問題に関しましては、
個人の
信用につきましては公開していただいて、訂正することができるような道をやはり開いていただきたいと思います。
さらに、
クレジット関係につきましては、
消費者にとってまだまだなじみの薄いものでございます。ぜひ
消費者教育というのを行
政府も徹底することを考えていただきたいと思います。
以上、私
どもの
意見でございます。