○
黒田政府委員 今後の日本の
繊維産業が
発展していく
過程で、高付加価値品につきまして輸出が期待できるということは既にその萌芽も出ておりますし、今後まさに期待し得る点であるという点につきましては、
先生の御
指摘のとおりだというふうに私
どもも考えている点でございます。
それから、輸入面の問題でございます。輸入につきましてはいろいろな角度から従来も
議論されてきたところでございまして、
業界からは特に何とかこれに秩序ある形を導入してほしいという要請があることは十分私
どもも承知しておるわけでございます。そして、世界の多くの国がといいますか、ほとんど例外なしに、
繊維産業につきましては国境で何らかの規制措置を講じているということもこれまた事実でございます。しかしながら、私
どもといたしましては、できるだけ今後の
繊維産業の
発展を開放体制のもとで進めていきたい。輸入に関する輸入制限的な国境措置、保護的措置というものがどうしても
産業の活力を弱めることになるのではないだろうかというような立場から、可能な限り開放体制のもとで、
先進国型と呼んでおりますように、先進社会の持っているポテンシャルを生かした新しい
繊維産業へと生まれ変わっていくということを強く期待しているというのが原則的な立場でございます。
しかしながら、そうは申しましても、輸入が急激に増加をいたしまして、無秩序な形で国内に混乱を生ずるというようなことが好ましくないことは当然でございまして、何とか秩序ある輸入を確保していきたいということで、従来から
関係の
方々にもいろいろ御
意見を伺いながら輸入に対しての
施策というものを考えてきているわけでございます。その基本は、やはり輸入動向というものを十分監視をいたしまして、どちらかといえばソフトな
関係者との協議あるいは相手輸出国に対しての事情の説明あるいは我々として開放体制を維持するためには輸出国側の協力も要るということを説得いたしまして、輸出国側における自粛と申しますか、自制的な態度を期待するということで今日まで来ているわけでございます。確かにMFAというガットの特則を活用した二国間取り決めを締結すべしという御
意見はございますけれ
ども、私
ども現在までのところ、直ちにそこへ行くほどの
状況に達しているというふうには必ずしも考えておらないわけでありますが、将来そういった枠組みの活用という必要まで否定しているわけでないことは当然でございます。
それから、関税率についてお尋ねがございました。確かに平均関税率というようなものにおきましても、それから個々の品目を見ましても、日本の繊維製品の関税率がヨーロッパあるいは特にアメリカと比べて低い、逆に言えばアメリカの関税率が非常に高いという
状況があることは御
指摘のとおりだと思います。この関税率というものは非常に歴史的な、戦後の長い歴史の中でいろいろ国際的な交渉等によって今日の姿があるわけでございますので、比較的戦後の早い時期において競争力の強かった
産業というものはどうしても関税率が低いところに設定されている。低いところからスタートして逐次引き下げの
努力がとられてきた。それから、比較的弱かった
部分については高く設定されております。これはその当時に高かったからでございまして、例えば日本の自動車とアメリカの自動車の関税というようなものを比較してみますと、そういうことが顕著に見得るわけでございます。
繊維の場合にもやや似たような
状況がございまして、そのスタートの差というものが今日の大きな格差の一つの原因になっているということでございまして、従来のあらゆる関税交渉等の場を通じまして、先方の関税の引き下げということには私
どもも
努力をしてまいりました。東京ラウンド等の交渉においても、それぞれ十分ではないまでも、一定範囲内においてアメリカあるいはヨーロッパの繊維に対する関税の引き下げということに成功をしているわけでございます。しかしながら、現在それで十分だというふうに考えているわけではございませんで、今後新しい交渉の
機会等をとらえまして、先方の関税を引き下げさせるということには
努力をしたいと思っております。
不均衡是正の方法には、こちらが上げればいいではないかという御
意見もあるいはあり得るかと思いますが、これは非常に長い交渉の結果、相手国との約束がございまして、これを勝手に上げるわけにはいかないというような厄介な事情もあるということを御了承いただきたいと思います。