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1984-03-30 第101回国会 衆議院 商工委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年三月三十日(金曜日)     午後三時十一分開議 出席委員   委員長 梶山 静六君    理事 浦野 烋興君 理事 田原  隆君    理事 森   清君 理事 渡辺 秀央君    理事 城地 豊司君 理事 水田  稔君    理事 長田 武士君       甘利  明君    尾身 幸次君       大島 理森君    奥田 幹生君       加藤 卓二君    高村 正彦君       野上  徹君    深谷 隆司君       綿貫 民輔君    奥野 一雄君       後藤  茂君    浜西 鉄雄君       横江 金夫君    渡辺 嘉藏君       木内 良明君    中川 嘉美君       日笠 勝之君    横手 文雄君       野間 友一君  出席国務大臣         通商産業大臣 小此木彦三郎君  出席政府委員         公正取引委員会         事務局取引部長 奥村 栄一君         通商産業大臣官         房審議官    棚橋 祐治君         通商産業省生活         産業局長    黒田  真君         工業技術院長  川田 裕郎君         中小企業庁長官 中澤 忠義君  委員外出席者         国税庁直税部所         得税課長    岡本 吉司君         商工委員会調査         室長      朴木  正君     ――――――――――――― 委員の異動 三月二十九日  辞任         補欠選任   甘利  明君     山口 敏夫君   加藤 卓二君     海部 俊樹君   高村 正彦君     橋本龍太郎君   仲村 正治君     砂田 重民君   野上  徹君     原田  憲君 同日  辞任         補欠選任   海部 俊樹君     加藤 卓二君   砂田 重民君     仲村 正治君   橋本龍太郎君     高村 正彦君   原田  憲君     野上  徹君   山口 敏夫君     甘利  明君 同月三十日  辞任         補欠選任   辻  英雄君     大島 理森君 同日  辞任         補欠選任   大島 理森君     辻  英雄君     ――――――――――――― 三月二十九日  割賦販売法の一部を改正する法律案長田武士  君外四名提出衆法第四号) 同日  企業管理士法の制定に関する請願(宮崎角治君  紹介)(第一七二八号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  繊維工業構造改善臨時措置法の一部を改正する  法律案内閣提出第三〇号)      ――――◇―――――
  2. 梶山静六

    梶山委員長 これより会議を開きます。  内閣提出繊維工業構造改善臨時措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。森清君。
  3. 森清

    ○森(清)委員 繊維工業構造改善臨時措置法の一部改正法案につきまして、通産大臣に御質問を申し上げます。  我が国繊維産業現状考えますと、やはり相当困難な状況にあるのではないかと考える次第でございます。繊維産業そのものが、最初は先端的な産業として興り、そしてそれが徐々に、最近の言葉で言ういわゆる発展途上国に移っていく、こういう宿命にあった産業であることは申すまでもありません。我が国においてもその轍を踏んでおるかに見えるわけであります。しかし昨年のこの審議会答申の中にも書いてありますし、また大臣のこの法案提案理由にも申されておりますが、その中にあっていわゆる先進国型産業としての萌芽もあるし、またそう育てなければならない、このようなお考えでございます。そういう考えのもとにこの法律の一部を改正して、期間を五年間延長するとともに、この協会に新しい任務も負わせよう、こういうことでございます。  ただ、現状を認識する限り、この不況の結果、需要そのものもそう伸びない、あるいは特に我が国の近辺にある発展途上国の追い上げというものが非常に急でありまして、我が国繊維産業考えていくときに、そのような希望を持てるのではないかということを思いながらも、相当厳しいものがあると思うのでございます。  そういう中にあって、今後我が国繊維産業をどのような方向へ導いていくか、そしてまた、それをやっていくについて政府としてどのような施策があるか。この提案理由にも御説明がありましたし、また、ただいま参議院で審議中でありますが、五十九年度の予算措置においても相当な配慮が加えられておりますし、また金融面においても配慮が加えられておりますが、そういうことを総合いたしまして、政府としてどのような繊維政策をお持ちになっているか、基本的なお考え方をお聞きしたいと思うわけであります。
  4. 小此木彦三郎

    小此木国務大臣 我が国繊維産業内外ともに非常に厳しい状態にあるわけでございますが、そういう状態にありながらも、自主的な構造改善努力によりましてその困難を克服し、技術力創造性を生かした先進国型産業へと転換していくことが可能であると思われるのでございます。そこで、通産省といたしましても、これを側面から大いに支援してまいる所存でございます。
  5. 森清

    ○森(清)委員 大臣からは、先進国型産業として側面からということでありますし、また昨年の答申を拝見いたしましても、事業者並びに業界の自主的な努力、これはもう事業でありますから当然なことでありますが、先ほど申しましたように非常に厳しい環境下にある。しかもこの繊維産業は、例えば雇用労働力でいつでも二百五十万人、そしてまた、この繊維産業の特質からいいますと、非常に産地的な傾向の強い産業でございまして、その地域における影響力というものも非常に強い、こういうことでございますし、また、繊維産業そのもの我が国としても伸ばしていかなければならない、こういうことで、いわゆる構造改善事業を積極的にこの法律のもとにやってまいりました。  知識集約化を目指しまして、また業種間の連携を軸とした商品開発力あるいは技術開発力強化というようなことをやってまいっております。しかし、その努力にもかかわらず、まだ構造改善というものが十二分に目的も達しておらないし、また今後これを発展させていくためには、さらに一層の構造改善をやっていかなければならない、このように考えるのであります。この法律も、そういう意味適用期限が二回目の延長になるわけですが、この構造改善に取り組む政府の基本的な姿勢について、大臣から御説明を願いたいと思います。
  6. 小此木彦三郎

    小此木国務大臣 御指摘の点につきましては、我が国繊維産業がこれまで二度にわたるオイルショックなどによりまして深刻な不況に見舞われたわけでございます。そうして多くの繊維事業者が前向きの構造改善に取り組む余力をも失ってしまった、そういう深刻な事態に直面したことが最大の理由であるわけでございます。しかし、最近は不況もようやく底を脱しまして、回復の兆しが見えてきておりまして、業界も前向きの構造改善に積極的に取り組もうという機運が見えるわけでございます。我が国繊維産業が自主的な構造改善努力によりまして、五年間で先進国型産業へと転換していくことも十分可能であると判断いたすわけでございます。政府といたしましても、今後五年間に構造改善の実効が上がるように積極的に支援してまいる所存でございます。
  7. 森清

    ○森(清)委員 抽象的にといいますか、五年間で構造改善を行って先進国型産業になるであろう、こういうお見通しのもとに、またそうしなければならないということでございますが、現実にこの構造改善事業に取り組み、また実施に当たりましては、先ほど申し上げましたとおり、産地性の非常に強いものでありますから、地域実態、そしてそれぞれの業種業態実情というふうなものが非常に複雑に絡み合っておるわけでございますが、こういう構造改善事業というものは、一律といいますか、統一的な考え方ではなくして、やはりその地域業種業態実態に即して弾力的にやっていかなければ構造改善の実は上がらないのではないか、私はこのように考えるわけであります。実際に構造改善事業を進めていくについての通産省考え方、具体にそれぞれの業態業種地域に応じた考え方でなければならないと思うのでありますが、その辺の考え方について御説明を願いたいと思います。
  8. 黒田真

    黒田政府委員 お答えいたします。  繊維事業者構造改善事業を実施しようとする際に、それぞれの事業者が置かれております状況というのは、地域によりまして、あるいは業種業態によって非常に違っているという点は御指摘のとおりだと思います。今お願いしております延長法は、こういったそれぞれの条件の違いがございましても、垂直連携構造改善を行うという、法律上定められました要件さえ満たせば、ひとしく構造改善という呼び名で呼んでおりますが、事業を行うことが可能だというふうに、一つの器をつくっている法律だというふうに考えられます。  そして、それぞれの構造改善事業がそれぞれの実情にマッチしたものであるということを確保いたしますために、この事業指導及び推進を図ります国の立場から通産局、あるいは県の立場構造改善指導援助委員会というようなものを地方につくりまして、そのもとに置かれるワーキンググループが、具体的に構造改善事業を進める人たちに対して当該計画に関する指導及び助言等を行うということでございまして、個別ケースごと実情については十分配慮をするということで従来も対応してまいりましたし、今後ともそういった地域業種業態実情に応じた構造改善の進捗が図れますよう、さらに努力をしていきたいと思っております。
  9. 森清

    ○森(清)委員 構造改善を進めていくにつきましても、この繊維工業全体を見ましても、これからの新しい技術が肝要なものでありまして、この技術開発力について、今回の措置法改正によって、繊維工業構造改善事業協会についてもさらに一層技術の普及といいますか、その点についての配慮がなされるわけでございますが、やはり繊維工業全体を見れば中小企業が圧倒的に多い分野でありますので、中小企業が新技術開発するということはなかなか困難なことであります。  そういう観点から、政府としては特に中小企業が圧倒的に多い繊維工業ということを考えられて、技術指導開発援助ということが最も肝要ではないかと思うのでありますが、その点について通産省のお取り組みの仕方、考え方をお伺いしたいと思います。
  10. 黒田真

    黒田政府委員 今後の厳しい内外環境のもとで繊維産業先進国型に転換していくという際には、高付加価値化あるいは多品種少量短サイクル化というものに対応する、いわゆる先進国型に脱皮していく必要があると私ども考えておりますが、その際、技術というものが一番大きなかぎになるという点については御指摘のとおりだと思っております。  特に中小企業技術力向上というために、従来それぞれの企業が自主的に各般の努力を進めておられるところでございますが、私どもといたしましても、そういった自主努力側面から支援するということで、従来、構造改善計画に乗ったものに対します低利融資を実施してまいりましたし、また、産地組合中小企業者に対しまして行います技術指導事業というようなものに対する助成金の交付ということを行ってまいりました。これらにつきましては今後も引き続き行うことといたしておりますが、特に昭和五十九年度におきましては、この予算が成立いたしましたならば、新たな事業として次のようなことを考えている次第でございます。  第一は、この法律改正案の中でもお願いしておりますが、中小企業者が高度な技術を導入しようとする場合に、適切な技術指導が行えるような人材を繊維工業構造改善事業協会において養成をすると申しますか、育成をするという新たな事業考えております。  第二は、中小企業者が行います多品種少量短サイクル化などに対応するための技術開発促進策といたしまして、従来からございます技術改善費補助金の中に特別の枠を設けまして、これを産業活性化枠というふうに呼んでおりますが、こういうものを新たにつくるという形で、中小企業者の行う技術開発努力支援をするということを考えている次第でございます。
  11. 森清

    ○森(清)委員 技術開発につきまして非常に積極的な対応をしていただいていることについては私も全く同感であり、またそのようにやっていただきたいと思うのでありますが、構造改善事業に関連いたしまして、今回の予算措置あるいは財政金融措置は、苦しい中にあってそれ相応のことがなされております。特に業界要望の非常に強い設備リース枠の拡大というもの、参考人意見もあったわけでありますが、これについてはどのようになっておりましょうか。
  12. 黒田真

    黒田政府委員 構造改善事業制度につきましては、異業種にまたがる企業連携による商品企画開発力というソフト部門強化と高付加価値化の追求ということに重点を置くという従来の枠組みを維持しております。しかし、そのもとにおきまして、従来から設備リース事業というものに対するウエートを高めていきたいという意味で各産地からの要望があることは、せんだっての参考人の御意見にもあったところでございます。したがいまして、私どもといたしましては、五十九年度からは、基本的な枠組みは従来のものをそのまま維持するということではございますが、特に多品種少量短サイクル化という新しい供給体制をつくっていく必要もあるわけでございますので、特に中小企業事業団の行います高度化融資対象となる設備リース事業というもの、これは私ども言葉リースカウントなどと呼んでおりますが、従来は商品開発センター設備等の価額の二倍を限度としておりましたものを三倍まで拡充するという形で、資金の利用可能性を高めるということを考えておる次第でございます。
  13. 森清

    ○森(清)委員 それではちょっと観点を変えまして、我が国繊維産業先進国型繊維産業に脱皮をするといいますか、それに向かっていくということであります。欧米先進国においてもそのような状況でありましょうが、特にヨーロッパあたりではいわゆる保護的な考え方が非常に強い。そういう中にあって我が国は、市場開放型でやりながら、しかも構造改善を進めつつ先進国型産業に向かっていこうという、ある意味では非常に勇気ある態度をとっておるわけであります。  しかしながら、そういう状況であります中で我が国繊維貿易というものを見ますと、輸出輸入、これはどうとるかによって多少考え方も違いましょうが、そういう開放的な体制の中にありましても、先ほどから言われておりますとおり、本質的にまだ強くなった産業ではないわけであります。そういう中にあって、特定のものについて、例えば綿製品等特定のものが非常に輸入が急増するということも起こり得るわけでありますが、そういうものについても我が国産業全体としては市場開放型で私はいくべきだと思います。そういう特殊な業態に対してはやはりそれ相応の手当てといいますか措置も許される範囲でしていかなければならないのじゃないか、このように考えますが、その点について通産省当局はどのようにお考えでいらっしゃいますか。
  14. 黒田真

    黒田政府委員 御指摘のように、私どもこの繊維産業構造改善を進める中で発展をしていくという基礎条件は、やはり開放経済体制のもとで行うというふうに進めていきたいと考えているわけでございます。保護的な政策がとかく産業創造性活力を減退させるということは過去のいろいろな事例、歴史的な事実の教えるところでございます。したがって、私どもといたしましては、そういった開放体制をできるだけ維持しながら、その中で活力のある繊維産業発展していってほしいというのが基本的な体制でございます。  しかしながら、ただいま御指摘もございましたように、諸外国では多国間繊維取り決め発動をしているケースも多いために、産業界の方からは、特に輸入の急増しております品目に対して何らかの水際の措置を講じてほしいという要求があることは十分承知をしているところであります。しかしながら、こういったものの発動に対しましては私どもも十分慎重でなければいけないということで、むしろ輸出側に節度のある、秩序のある輸出を期待するというような努力を従来から行っておるところでもございますし、また国内需給動向輸入動向というものを的確に把握をいたしまして、必要な指導等を行い、対応するということで来ているのが現状でございます。
  15. 森清

    ○森(清)委員 そのような構造改善を進めながら、そしてまた内外の非常に厳しい環境対応していかなければならないわけでありますが、そういう中でやはり不可欠に起こる問題は、この繊維産業について転廃業が行われるという懸念が大きいのであります。また、昨年の審議会答申など見ましても、やはりそのおそれが強いから、転廃業対策について十二分な対策を講じておかなければならない、このような趣旨のことがあるわけであります。  繊維産業が、いわゆる経営資源といいますか、それが非常に汎用性に乏しいし、そういうことから転用困難な経営資源でありますし、またその企業形態はいわゆる下請的になっておりまして、しかもその工程が分断的である。そういう業態であり、しかも産地性が非常に強くて、特定業態一定地域に集積している、こういう非常に特殊な産業形態でございます。そういう中で、ある業態業種あるいはある地域というものが相当大きな転廃業が行われる。個々の事業者にとっても大変なことでございますが、それに対する対応、しかもそういうものが大幅に行われてくるとなりますと、その地域経済そのものが相当大きな混乱を起こすわけでございます。  そういう中にあって、これからやむを得ず起こる、そういう転廃業に対する対策、特にまたそれが地域に及ぼす影響というふうなものについてどのようにお考えになり、またそれにどのように対処していかなければならないか、こういうことについてお考えをお聞きしたいと思います。
  16. 黒田真

    黒田政府委員 せんだってのビジョンにおきましても、繊維産業先進国型として発展をする可能性があるということを一方で申しつつ、他方、現在繊維産業に従事している事業者がそのままで全員生き残れるわけではない、厳しい対応が迫られる、厳しい選択が迫られるということは、実はこの審議に参加をいたしました繊維業界関係者を含む一致した意見であったわけでございます。  ということは、そこで転廃業のようなものが発生し得るということを実は申しておるわけでございますが、事業者が自主的な判断でこれを行うということが基本的な建前にはなりますけれども、御指摘のような中小企業の置かれた立場から、これに対する国の補完措置というものを行って、産地経済にかかる地域混乱というようなものをできるだけ防止していくということが必要だと思っておるわけでございます。現在、転廃業に関しましては中小企業事業転換対策臨時措置法というような法律もございますし、その他いろいろな形での支援措置が講じられておるわけでございまして、繊維産業につきましても、こういった一般的な制度というものが活用し得るということは申すまでもないわけでございます。  しかしながら、冒頭申し上げましたような繊維産業の置かれている現在の状況というものを勘案いたしまして、私ども五十九年度から、実は、特に今御指摘のございましたように、ある産地で非常に大きな形でそういう転廃業が起こり得るという可能性もあるのではないだろうかということで、産地に密着した形での事業転換に関するきめ細かな相談指導体制というものをつくり上げていこうということで、そのような相談指導事業を行う産地組合に対して助成を行おうということを考えておるわけでございます。また、従来から行われております設備共同廃棄事業に対する融資制度というようなものが、いろいろ御批判もあるわけでございますが、これは転廃業により撤退をする事業者対象にしてこの制度の活用を図っていったらどうだろうかというふうに考えておるところでございます。
  17. 森清

    ○森(清)委員 繊維産業先進国型産業として発展する可能性があるし、またそうならなければ我が国繊維産業の将来がないわけであります。先進国型産業になり、もちろん国内需要面の開拓も大事でありますが、むしろ我が国先進国型産業としていくためには、我が国繊維製品そのものが国際的に通用する、こういうことにならなければならないと思うわけであります。  私は、素材の面については、我が国のそういう意味技術というのは大変なものでございますから、恐らく素材面だけを限定して考えれば相当その可能性があると思いますが、いわゆるファッション性ということについてはまだまだ劣るのではないか。また、特に我が国民自身が、まだまだ我が国の独自のファッションというものについての評価を十分しておらない、こういう状態であります。まして、いわんや諸外国が、我が国のそのようなファッションを評価するはずがないわけであります。  そういう意味において、素材面のみならず、いわゆるファッション性というものについて、例えば業界ではワールドファッションフェアをやろうとか、あるいはファッションコミュニティーセンターをつくろう、この審議会答申にもそのようなことも出ておるわけでありますが、先進国型産業としての繊維最終段階としては、やはりそういうファッション性、これは繊維産業として最も大事な面ではないか。特に先進国型産業になるという意気込みのもとにやるわけでありますから、そういう意味での国際化時代というものに備えて、どういう方向に持っていこうとされているか。また、それについて政府はどのような施策を講じようとしているか、お聞かせ願いたいと思います。
  18. 黒田真

    黒田政府委員 御指摘のように、素材面につきましては我が国は国際的に通用するといいますか、国際的に極めて優位に立つ繊維素材を提供するという立場を確立していると思います。それに比較いたしまして川下段階と申しますか、衣服の段階においてはやや立ちおくれているのではないかというふうに従来言われてまいりました。しかし、ここ十年ほどのアパレル産業発展というものはなかなか目覚ましいものもございますし、また最近、海外における日本人デザイナーというものに対する目も非常に高まってきておるという、大変力強い情報も聞かれるわけでございます。  役所が先頭に立ってファッションビジネスというようなものを振興するということはなかなか難しいわけでございますけれども、まさに繊維産業先進国型になるということは、世界に通用する繊維産業になるということでございまして、私どもの昨年のビジョンづくり段階でも、国際的地位をさらに確立していくために国際感覚の醸成、国際交流促進、日本の独創性開発というようなことにみんなで努めていこう、そのための一つの契機としてワールドファッションフェアとかファッションコミュニティーセンター構想というものが打ち出されているわけでございます。  したがいまして、私どもといたしましては、そういった国際化へ向けてのいろいろな問題点を洗い出してみようということで、実は今お願いしております昭和五十九年度の予算の中で、繊維産業国際化対策調査委託費というようなものをお願いをいたしております。予算が成立いたしましたならば、その予算を使いまして一つの、業界としての討議の場、コンセンサスづくり、今後の方向というものを打ち出していく、そういう議論を深めてもらいたい、かような準備を進めておるところでございます。
  19. 森清

    ○森(清)委員 この法案とは直接は関係ないわけでありますが、繊維産業としては大変重要な問題、いわゆる中小企業団体法に基づく設備登録制の問題でございますが、昨年のビジョンにおいても、結論を先へ延ばしたという形になっておるわけでございます。  結論を延ばしながら、その内容としては、十二分にそれぞれの業界において、一定の施策、目的を持って、それに耐え得るようなことにするという目標を掲げて、この目標に向かって進むということ、それはそのとおりでいいわけでありますが、現実問題としては、この登録制を改変するときには、それぞれの業界において十二分に登録制の変化に対応できる体質ができておらなければ相当大きな混乱が生ずるし、また、それによってむしろ繊維産業そのものの基盤が崩れていくのではないか。  特に中小企業関係する問題でございますので、そういう点について十二分な配慮がなされた上で、もちろん審議会でまた審議を進められるのでありましょうが、その審議会審議はもとより、通産省としてもこういう問題については慎重に配慮をしながらやっていっていただきたい、こう思うわけでありますが、その点の方針についてお伺いをしたいと思います。
  20. 黒田真

    黒田政府委員 設備の登録制という問題は、昨年出されました繊維ビジョンの検討の際の重要項目として審議がなされました。審議の際には、既に昭和五十一年の提言において登録制を早急に停止すべしということが提言されておりますことを踏まえまして、しからば早期にその登録制の延長を停止するためには、具体的にどのような段取りを踏んだらいいか、どのような体制をつくり上げたらいいだろうかという点を中心に議論されたわけでございます。しかしながら、登録制を実施しております業界の側での議論というものも十二分には尽くされていないということもございましたので、審議会としての結論は出さずに、引き続き審議を重ねて、速やかに結論を出すという取りまとめになったわけでございます。  したがいまして、私どもといたしましては、今後審議会における審議の結論が出されたところで適切に対応するというふうに今申し上げる以外ないわけでございますけれども、その審議に当たりましては、十分業界における議論の浸透、進展の状況を踏まえて審議をお願いするということになるのは当然だと考えておるわけでございます。
  21. 森清

    ○森(清)委員 時間もございませんので、最後になりましたが、繊維工業は、先ほどから御議論のあったとおり、非常に産地性の強い産業でございまして、これは例を出すとあれでございますが、例えば愛媛県今治地区はタオルが本当の主産地といいますか、そういうことになっております。これについて、そのような非常な環境変化が起こるわけでありますが、その環境変化に対応していかなければなりません。もちろんこれはその努力によって対応していくわけでありますが、やはりこれはその地域全体の問題として、中小企業全体の対策の中の一環としてやらなければ、あの地域繊維業界だけで解決はできない問題であります。  そういう意味で、そのような繊維産業を抱え、そしてその地域について非常に大きな環境変化が起こるであろう、こう予想されるところについては、いわゆる総合的な中小企業振興対策あるいは地域づくりというものがなされなければならない、こう思うわけであります。その点について中小企業庁長官にお伺いいたしますが、その辺について何らかの施策があるか、あるいはそれについてどうしても施策をしていただかなければならぬわけでありますが、それについてどのようなお考えを持っているか、お伺いしたいと思います。
  22. 中澤忠義

    ○中澤政府委員 お答え申し上げます。  地場産業の振興、この問題は中小企業政策としても非常に重要でございます。中小企業庁といたしましても、昭和五十六年度から地場産業振興対策を総合的に展開しておるわけでございますが、その中で、地場産業振興センターの建設、総合振興事業等に対する補助金の交付ということをいたしております。  今例示されました今治地区におきましても、五十八年度におきまして地場産業振興センターを建設いたしまして、五十九年度にはこれを完成する予定にしております。今後、このセンターを中核といたしまして、新商品の開発、人材の育成、あるいは需要開拓等を実施いたしまして、総合的な中小企業地域対策を推進する予定でございます。  また、産地としてのタオル織物業でございますけれども、これにつきましては、いわゆる産地法に基づきまして、昭和五十四年に産地指定をいたしまして、補助金、低利融資あるいは税制の特例、このような形で総合的な施策を展開しております。  また、構造不況業種としての問題につきましても、いわゆる企業城下町法に基づきまして、今治市を五十三年に特定不況地域として指定しておりますけれども、五十八年六月の本法の一部改正によりまして、新たに振興対策を加えまして、施策の内容を一層充実しておるわけでございます。  以上のような施策を総合的に実施いたしまして、地域中小企業の振興を図ってまいりたいと思っております。
  23. 森清

    ○森(清)委員 以上で終わります。ありがとうございました。
  24. 梶山静六

    梶山委員長 水田稔君。
  25. 水田稔

    ○水田委員 繊維工業構造改善については、織工審なり産構審の答申、まさにいわゆる大量生産で生きていくんじゃなくて、全体的に知識集約型にしていこう、こういうことです。見てみますと、これはもともとは特定繊維工業構造改善臨時措置法というので取り組まれた。その当時は、いわゆる一つ業種構造改善というのが主たるものだったと思うのです。しかし、それ以来ずっと続いて今日の法律まで臨時措置法ということで十六年間の年月が経過しておるわけですね。前回の五十四年の法改正のときにも、臨時措置ですから、これで終わりだ、こういうことで提案があり、そして五年間延長をされてきたわけです。  どう考えても、臨時措置でそれがずっと恒久的に続くというのは一体どこに問題があるんだろうか。その理由が私はなかなか理解しにくいわけです。それは、法律の中でやるべき事業の内容が適切に、繊維産業をこういう方向で再活性化していこうという手立てに問題があったのか、あるいは、この間参考人も言われておりましたが、若干業界の取り組みの姿勢にも問題があったと思うのですが、そういう点についてどのように通産省としてはお考えになっておるか。  そして、ここでさらに五年間、修正の部分というのはごく一部ですから、全体を見れば同じパターンで構造改善をやろうとしておるわけですが、これで五年間の臨時措置をやれば、まさに産構審なり織工審の答申にあるような、繊維産業が国際社会で、国際環境の中で先進工業国並みの形で生きていけるという見通しは持っておられるのかどうか。これは基本的なことですから、できれば大臣にお答えいただきたいと思うのですが……。
  26. 黒田真

    黒田政府委員 過去の経緯でございますので、若干私の方から御説明をさせていただきますと、確かに昭和四十二年から今日まで十六年間臨時措置法をお願いをしてきたわけでございますし、また、さらに現在延長をお願いをしてきているところであります。  昭和四十二年の時代の特定繊維工業構造改善臨時措置法と申しますのは、特定業種につきまして設備の近代化という点に力を入れまして、その限りではかなりの成果があった、当時の時代的な要請にはこたえたというふうに考えるわけでございます。  しかしながら、その後、内外環境というものは大きく変化をいたしておるわけでございまして、単なる設備の近代化とかスケールメリットの追求ということだけに重点を置いた構造改善では、高度化をいたします国民のニーズにはこたえられない、あるいは発展途上国の追い上げにも対処できないというような考え方のもとに、この法律の見直しを行いまして、昭和四十九年以降現在のような形でございますが、繊維工業知識集約化を目的とした垂直連携を通じて、商品企画力、技術力といったソフトの面の強化に重点を置いた構造改善施策というものを推進することにしたわけでございます。  現在の構造改善事業というものは、非常に高度化いたします消費者ニーズにこたえられる高付加価値製品というものが既に相当開発できるという力もついてまいりました。成果は徐々にあらわれているように思います。そのような点から繊維法の構造改善の理念あるいは基本的な枠組みとしての制度はこれでよかったんじゃないかというふうに考えているわけでございます。  しかしながら、繊維工業全体を見たときに、構造改善の進捗状況が果たして十分であったかということになりますと、必ずしもそうとも言えない面が残っている。それはなぜであるかということで、ただいま先生の御質問は、それが制度の方の手だてに問題があったのか、あるいは業界の取り組みの方に問題があったのか、どう見るか、こういう御指摘でございます。  この点につきましては、制度面につきましての問題点は、実は五年前、五十四年度の改正のときに相当手直しをしていただきました。私どもはこのときの手直しで制度面での問題点は一応解消されたというふうに考えるわけでございまして、むしろ業界の取り組みの姿勢と申しますか、あるいは業界を取り巻く客観条件というものが、石油ショックによる厳しい不況というような状況下で、事業者が当面の問題に目を奪われるといいますか、その対策に忙しくて、中長期的な前向きの構造改善に取り組むだけの余力が必ずしも十分ではなかったということが最大の原因のようには思われます。昨年の審議会審議の過程では、取り組み、その辺に状況判断の甘さがあったんじゃないだろうかというような御批判も寄せられているわけでございます。  しからば今後五年間で大丈夫かということでございますが、最近情勢の若干の好転というようなこともございますし、特に昨年のビジョン審議の過程で、そういう新しい状況対応する構造改善なくしては生き残り得ない、そのことによってのみ自分たちが生き残れるんだということが非常に強く認識をされているわけでございます。今後五年間に構造改善ができるかどうかということよりも、五年間には構造改善を完了しなければならないという非常に強い意識で取り組んでいるというふうに私は考えるわけでございまして、今後五年間というものが繊維産業にとって非常に重要な正念場に差しかかっている、かように考える次第でございます。
  27. 水田稔

    ○水田委員 例えば、私の地元には光輝縁、畳の縁を全国の七割生産しておる小さな産地があるわけです。ここでは、細幅ですが、糸のつや出しというものはもともと特殊な技術だったわけです。高速織機を入れるから生産力が物すごく上がるわけです。それから、素材が変わりますから今までインベルをつくっておったところも先輝縁に変えることができる。そして、これは輸出輸入は全く関係のない産業ですね。大変な過剰生産で、それ以来十年ぐらいもうずっとどうにもならぬというような状態が続いておるのです。これは近代化を進めた結果なんですね。五十四年に法改正をやって手だてとしては十分だ、こう言われるのですが、例えば、新しい情報を産地でとろうと思えば、大都市部にいわゆるモデルショップをつくって情報をとりたい。しかし、これまでの法律ではそれは認められないというような問題があるのです。  ですから私は、これまでの手だてと取り組みの中にそういう問題認識があったんじゃないか。それは五十四年でほとんど解消したということにはならない。そういう点については実態を御存じだと思うのです。この五年間で、垂直連携ということは使わないそうですが、異業種間の連携というのを進めてきたところですね。例えば、参考人は八カ所だけある程度進み出した、こう言うのですが、五年間のある程度の新しい時代の対応というのは、業界も今まではオイルショックによって取り組みがやりにくかった、私もわかります。当面をどうしのぐかということだったと思うのですが、そういう点ではある程度の見通しも立つと思うのです。いわゆる異業種間の連携がどういうぐあいに成功し、そして五年間の見通しを立てれば一それは全部ができるということにはならぬでしょう、相当程度はいくかどうかというような見通しを持って、五年間の延長で一部改正という形の提案になるべきじゃないかと思うのですが、いかがなものですか。
  28. 黒田真

    黒田政府委員 繊維産業というのは非常に多種多様なすそ野を持っておりますし、また川上、川中、川下、それぞれ事情も違います。また地域によって歴史あるいは産業の組織というものが非常に違っているということがあるわけでございまして、それらの方々が自主的な努力で新しい繊維産業というものを構築すべく、それぞれ努力をしてきておられると思います。  過去五年間あるいは十年間の成果でございますけれども、工程が非常に分断をされてばらばらで、自分がつくっているものが何に使われるか必ずしも十分にわからないというようなことすらあったのが実情であった繊維産業というものの構造が、この十年間知識集約化、縦型の連携といいますか、異業種間の結合といいますか、あるいは実需により直結したというふうに言うべきかもしれませんが、そういった意識が非常に高まってきつつあるという意味において、相当な成果はあったんじゃないだろうか、十分かと言われればもちろん必ずしも十分ではないかもしれないけれども方向としては成果を上げてきている。そして法律自身が、いわば計画をつくればそれを応援しましょうという法律体系でございますから、それ自身としては一つの器としての機能を果たしているわけでございまして、その中に何を盛り込んでいくかということは、それぞれの産地、それぞれの業種のところでお考えをいただくということになろうかと思います。  そのような関連で、実は私どももこの五年間の延長を国会にお願いしておりますが、他方、業界に対しましては、特に産地を構成しておりますような業種、グループにつきましては、それぞれの産地が今後五年間取り組むべき課題、そしてその中には自分たちの活動の幅を前後左右に広げていくという要素を含んでおるわけでございますが、現在、そういう産地ビジョンと呼んでいいかと思いますが、そういうものを至急つくり上げて、それぞれがねらいとするところを明らかにして、その上で、この新しい法律が成立いたしました際には、そのもとでそれぞれの努力をしていただく、そしてできる範囲でまた政府支援をしていく、こういう体制で進めていきたい、かように考えております。
  29. 水田稔

    ○水田委員 産地でもいろいろあると思うのです。第一、繊維産業というくくりで言えば、繊維を扱っているということであっては繊維産業と言えるのですが、例えば紡績と糸よりと織物と染色と縫製というのを見ると、布を扱うということでは同じだけれども、全然業態が違う。そして大中小がまた大変な違いがある。  私の地元というのは、光輝縁は七割ですが、黒の学生服というのは全国の六割を生産してきた産地なんですね。ここを見ますと、これは産地として今、通産省が進めようとするいわゆる異業種間の連携というものがかつて完全にあったところなんです。例えば日本で三番目にできた紡績があって、紡績が二つあり、より機の工場がある。より機の機械を生産するのでは日本で最高の品質のものをつくる工場がある。そして糸染めもやれば染色もある。織物屋もある。そして縫製ができる。それを例えば学生服なら金ボタンでボタンをつくるプレスの工場がある。そういうぐあいに全部が連携してやってきた。今どうなっておるかといいますと、これは布については大手のメーカーあるいは商社から、何という品種はもうこのルートしか入らぬ。製造元から卸を通じて、そして工場にしか入らぬ。あるいは染色へも、前は地域のものが織った布をここで染めでくれと染色へ持っていって、そして製品にする。そして自分が販売する。今は染色も、商社からこういう色を染めてくれ。ここへはおりないわけです。全部違った形で行くわけです。  まさにこれは、今進めようとするいわゆる異業種間の連携というのが産地としてはばらばらに断ち切られてきておる。そういう状態の中で、実は大手がダミーの会社をつくって参入してくるというようなこと――むしろ、産地形成というのは所によって違います。例えば織物と染色だけの、そういう形での産地もあります。私の地元は糸から全部あったところです。そういう形になってきて大手のダミーが参入してくる。そのために、その地域で細々とあるいわゆる異業種連携も、一つがつぶれればどこかほかへ出さぬと仕事ができぬわけですから、そういう形に変わってきておる。  これはずっと法律を運用しながら進まなかったという中に、そういうものは一体お調べになっておるのかどうか。ですから、やられる以上はそういう点も十分わきまえた上で、実態に合った法律の運用なり行政指導がなされるべきだと思うのです。私は地元に住んでおるものですから参考に申し上げたのですが、ほかではまた違った形のそういう産地形成がされておるところがあると思うのですが、その点はいかがですか。
  30. 黒田真

    黒田政府委員 私も個々の産地状況についてすべて十分承知しているわけではございませんが、私ども実はこの法律で期待しておりますのは、今先生御指摘のような意味で、異業種間の連携が川上から川下までシステム的に成り立っているという形を期待しているわけでございます。必ずしもそれらの川上から川下までのものが一貫して同じ場所になければならないかどうかという点については、いろいろな他の状況影響してくるかと思うわけでございますけれども産地産地として今日まで発展してきているということにつきましては、産地としての一つの集積の利益というものがあるはずでございますし、また、そういう集積のメリットが生かせた産地が栄える、そしてややそれを生かし切れなかったところは、残念ながら他の産地におくれをとっていくというようなことがあろうかと思っております。  私ども、この法律といたしましては、構造改善計画の中で中小企業者というものが集まって、一つの異業種連携というものを強化していくという形の中で力をつけていくということに政府として応援をさせていただくということでございまして、それぞれの産地状況というものは十分に踏まえながら、特殊性を生かす形での発展というものを期待しているところでございます。
  31. 水田稔

    ○水田委員 言われるとおり、川上から川中、川下まで全部そろったそういう産地ばかりじゃないと私も思うのです。それらの今持っておる特殊性を生かしながら、これは二地域連携、あるいは三角関係の、いわゆる三極を結んでの連携とか、そういうやり方はあると思うのです。だけれども、今申し上げました、例えば大手の系列下になってせっかくの産地がつぶれてしまう、そういうことはこれからの再活性化を図るためには考えていかなければならぬことだと思うのです。それは後でまた申し上げますが、このことは進めていく上で異業種連携で小さな問題ですが、こういうこともあるのです。  例えば、織物と染色とやっていく。今染色で何が一番問題かというと、排水規制で水のトン数を規制される、排水処理は非常に厳しいあれがある。これは公害の点からいって当然すべきなのです。ところが、織物を織るときには、織りやすいようにのりづけして織るわけです。のりに何を使ったかは企業秘密だから言わないわけです、デキストリンを使っておるのか、あるいはポバールを使っておるのか、あるいはそれ以外のものを、混合のものを使っておるのか。受ける側の染色には中小零細が多いわけです。そこで染める前には水洗いをやるわけです。その水の量というのは大変な量になる。これは排水の規制のふるいにかかってくるわけですね。せめて情報だけでいいのです、よそへ漏らさないという。そういう形から金もかからぬことでの異業種連携というものはできぬことはないわけですね。そういうことさえ今できないのです。  ですから、やろうと思えばそういうこともできるし、先ほどちょっと申し上げましたが、例えばアパレルで情報を収集して、今度の修正案の中には調査等が入っておるのですが、そういうものさえやってもらえば若干違ってくるのですね。そういう二点について、今の法律あるいはやり方によったらできることさえ、金がそれほどかかるものじゃないのができてないということについてはどういうぐあいにお考えなのか。私は、異業種連携のそういう細かい点に対する配慮というものも必要ではないのか、そういうぐあいに思うのですが、いかがですか。
  32. 黒田真

    黒田政府委員 ただいま御指摘になりました、機屋が使っているのりがよくわからないために染色の方が非常にお困りになるというような問題は、まさに日本の繊維産業の工程が分断をされていて、その間に連絡がないと申しますか、自分のつくっているものがどういうふうに使われていくのか、どこへ流れていくかということに対して、従来知らないままに進められてきたという一つ産業組織上の特質の一番悪い面があらわれた点を今先生御指摘になられたと思います。  私どもといたしまして、今度の繊維ビジョンでも、繊維産業のあるべき将来像としては、産業全体の総合性が発揮できる、そういうシステム型の産業を構築しろということをうたいあげているわけでございまして、こうした工程分断的な従来の構造の弱点をどうにか克服する、その手段として異業種間の連携というようなことをうたいとげているわけでございます。その場合には、異業種が結合して何かをつくるというような、あるいはグループを形成するというような、ある意味できっちりした結合もあろうかと思いますが、今先生御指摘のように、上が、川中段階が利用しているのりの成分等の情報が、今度はそれを洗い流す人のところに的確に届くというようなことは、これは広い意味での異業種間の連携一つの極めて適切な例のように私は思います。  今日までそれが見落とされていたじゃないかという点につきましては、私どもも確かにうっかりしていた点もあるかもしれませんが、これはできることであれば、そういった染色業者の方々がそういう問題を提起されて、そして例えば機屋さんの団体あるいは整経サイジングの方々とのお話し合いによってそういう情報がうまくつながるように、そういうようなことは当然考えていいことだろうと思いますし、私、先生のお話を伺いながら、私どもできることはお話し合いのあっせん程度に限られますけれども、ぜひそういうことについてはやってみたいものだというふうに考えております。  また、もう少し広い意味での情報一般につきましては、いろいろな意味で末端の情報、消費者のニーズというものを中心とするいろいろな情報というものが的確に商品を生産していく各段階に供給されるということが非常に重要なことでございまして、この点必ずしも十分に従来行われていたとは言いがたい点もございますけれども、今後の先進国型産業と申します繊維産業発展のためには、技術の問題と並んで欠くことのできない重要な要素である、かように考えております。
  33. 水田稔

    ○水田委員 今申し上げましたように、私は、従来の形の産地がそのまま生き残れるとは思えない。しかし、新しい形での産地形成というのはこの構造改善の中でも当然やってもらわなければならぬ。それは今の繊維産地というのは、いわゆる中小零細によって支えられておるのですね。これは雇用の面から考えても、先端産業が張りついたところでは若年の労働者の雇用というのがぐっと起こってくるのですね。ところが、そういう繊維などの産地の雇用というのは、もちろん若年労働者の働く場所もできる、婦人の働く場所もできる、中高年齢層の働く場所もできるのです。そういうメリットを持っているわけです。ですから、そういう点ではぜひ中小企業庁もそういう立場で、繊維の問題は繊維業界の問題だけじゃなくて、そういう中小企業の問題としてのとらまえ方をして考えていただきたい。  その中で異業種間の連携というのは、さっきもちょっと申し上げました、あるいは二地域の形でのものもあるし、三角形のような形になる、そういう形で再活性化できる。ですから、それは一つ業種だけのいわゆる産地形成ということでは成り立たないだろうと思うのです。ですから、それももちろんやらなければならぬ。それをやると同時に、異業種間の連携が、ある程度の距離を置いても、二つ、三つが連携して産地形成ができる、そのことがいわゆる零細業者あるいは中小業者が生き残っていく道になるし、雇用問題でも大変その地域の雇用確保なり活性化につながっていくのじゃないか、そういうぐあいに思うわけです。  それからもう一つは、先ほどもちょっと申し上げましたが、いわゆる大手の製造元が系列化していく、それ以外はもう入れないというような形になれば、産地としては崩れてくるわけですね。ですから、場合によってはダミーが入ってきておる。そういう問題については、この構造改善を進める中で、産地だけにこだわることも、産地も大事にしてもらいたい、同時に、異業種間の連携が大手によって全部いらわれて――一番心配しておるのはみんなそのことなんですね。構造改善そのもの、あるいは登録制の問題でもそういう心配をされている。この法律に基づく構造改善にしてもそういう点が、現実にこれまでの産地が衰微していっているのは、大手の参入によってこれまで保たれてきた産地のメリットというのが崩れてくる、断ち切られてくる、そういうところに問題がある。この二点についてぜひ御配慮いただきたい。やる以上はそういう考え方を持って進めてもらいたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  34. 黒田真

    黒田政府委員 産地というものが雇用吸収の見地から非常な役に立っているということは御指摘のとおりだと思います。しかし他方、後継者を見つけることが難しくなっているという問題も抱えているように聞いております。  その見地から申しますと、産地が活性化をし、活性化の方法にはおっしゃるようにいろいろな方法がある、いろいろな結びつきのやり方もあると思いますが、そういう結びつきを通じて産地が活性化をする、産地の将来に対してある明るい希望が持てるということがまた後継者等の入りやすい環境をつくり出していくというふうに、現在どちらかというと悪循環になっているかもしれない状況を何とかいい循環に変えていくことが必要だと思っております。  ビジョンづくりというようなものも、そういう意味では、大きなビジョンというものが繊維産業の未来に明るい展望を示すということは、繊維産業全体のために非常に役に立っているという評価もいただくわけでございますが、同時に、各産地が各産地としての将来展望、ビジョンというものを打ち出されることによって、若い人たち、人材を引き寄せていくということが考えられるのではないかと考えます。  それから、確かに大企業中小企業関係というものは、いろいろなところで、いろいろな接点で問題を生じ得る可能性はあろうかと思っております。ただ、私どもは必ずしも常にそれを対立的なものというふうにだけ見るのではなくて、むしろ協力関係と申しますか、大企業が得意な分野と、むしろ中小企業が得意な分野というものがあるわけでございまして、立派なといいましょうか、非常に対応力のある中小企業と大企業はむしろ協力関係に入ることを望んでいるという状況もあるわけで、これは必ずしもそこで関係ができ上がったから直ちに系列化され支配下に置かれたというわけではなくて、比較的安定した長期的な取引関係を、力のある、対応力のある中小企業者にとっては、むしろ大企業の方が望むという形にもなるケースがあるようにも聞いております。  したがいまして、この法律で応援をいたしております知識集約化のための構造改善というものは、中小企業者が大企業とむしろ伍して、大企業と対等な立場で交渉をし、取引をし得るような、そういった力をつけていくために応援をするということでございまして、中小企業事業団の長期低利融資あるいは特定組合及びその構成員に対します課税の特例といったような点につきましては、中小企業者に対してのみ特段の配慮を行うという形ででき上がっているわけでございます。
  35. 水田稔

    ○水田委員 後継者の問題を言われましたけれども業種によっては確かに言われたとおりですが、業種によっては、やはり若い後継者が一生懸命やろうとしているのがあるわけです。それらが意欲を持ってやれるような条件を整えるということがこの法律の精神じゃないかと思うのです。  それからもう一つは、大企業中小企業、零細業者の関係ですが、やはり実際には力関係が違いますよ。だから、分野法に言うような、この中である程度分野調整をするということも、組合なりあるいは産地で話をする場合、そういう意向も十分酌んだ形でないとうまくいかないのじゃないか。お答えなかったけれども、五年間で完全に終わるとは言われぬわけですが、それはいつまでたっても続くと思うのです。だから、大事なことは、いわゆる大手の川上の一番上のところが技術力もあれば資本力もあるわけですから、そういう中で今、生き残っていく努力をされておるわけです。その川中、川下のところに一番問題があるということですから、分野法の考え方を進めていく中で、一つはそういう考え方もぜひ導入して進めるようにしてもらいたいと思います。  それから、これはちょっと話が違いますが、通産省も聞いておっていただきたい。  大蔵省おいでになっていますか。――現実には繊維というのはこういう形なんです。これは通産省も御存じだと思うのですが、内職、いわゆる家内労働の調査を労働省の労働基準局がやっておるのです。全体の内職のうち、繊維工業が二〇・六%で、衣服その他の繊維製品が三〇%ですから、現在、日本の内職の五〇%はいわゆる繊維がやっている、そういうことなんです。  そこで、これは税金の問題になるわけですが、今税法が審議されておるわけです。これまでパートが七十九万円で、今度は八十八万円。これは与野党の話し合いで、九十万円になるような話が今進んでおるわけです。ところが内職は二十九万円で、今度三十三万ということですね。  実は私の地元では毎年中学卒業生が、人口八万ぐらいのところで三千人よそから来ております。今は来ないです。もう百人も来ないです。ですからそこで育った人たちが、お嫁に行って、とにかくパートに行くか、家で縫うか、子供の関係で全部が全部パートに行けない。ですから、中小零細業者はつくるのに、これは内職でやってもらえぬか、こういう形で出すわけです。これはもう全く労務提供の形なんです。これはつい最近、何人もの中小業者から頼んだけれども、二十九万円で税金がかるからやらぬ、こう言うのです。だから、実際には仕事ができぬわけです。     〔委員長退席、田原委員長代理着席〕  そこで、昨年の三月七日の予算委員会の分科会で、竹下大蔵大臣が、「内職収入では給与の源泉徴収票か支払い明細書の提出があれば給与所得扱いとするこういう答弁をされて、実際にはそういうぐあいに出先が指導されておるはずなんですが、私のところでは十分それは浸透しておらないわけです。ですから、再確認のためにお伺いするのですが、その方針は変わりはないかどうか。それから、出先に対してそういう点の通達等は、十分浸透するような措置がとられておるのかどうか、大蔵省の方からお答えいただきたい。  通産省の方は、実際の繊維産業というのはそういうものだということを十分頭に置いた上で、構造改善と言うのも、あるいは世界の中で生きていくという大きいことを言うのも大事だけれども、現実に国民の衣料を支えておるところはそういうところにあるということを、これは労働省の数字ですから、ちゃんととってよく見ていただきたいと思うのです。
  36. 岡本吉司

    ○岡本説明員 いわゆる内職者につきましては、今先生からお話がございましたように、いろいろな形態があるわけでございますけれども、課税上の取り扱いといたしましては、その内職というものが会社との関係でいわゆる雇用契約に基づくものであるときは給与所得、それから、それ以外のものにつきましては雑所得あるいは事業所得、こういう取り扱いをいたしております。その区分に当たりましては、個々の内職者の実態に即しまして判断させていただいているわけでございますけれども、例えば源泉徴収票とかあるいは給与の支払い明細書といったものがある場合には雇用契約に基づく給与、こういうようなことで考えられますので、我々といたしましては給与所得として扱っているところでございます。  この取り扱いにつきましては、我々会議等で十分指示徹底を図っているところでございまして、御案内のとおり、そのほかに国税庁といたしましては、常に多数の納税者と接触する機会が多いわけでございます。したがいまして、そういった納税者、業種団体あるいは労働組合等々といろいろ質疑応答、あるいは個別の納税相談がございますので、そういったところを通じまして周知徹底を図っているところでございます。  なお御参考までに、労働省の方におきましても、その家内労働に関します施策を推進する中で、必要に応じまして我々国税当局の考え方につきまして御説明していただいているというふうに伺っております。このようなことから、我々国税当局の考え方が納税者の方々にかなり周知、御理解いただいているのではないかというふうに考えているわけでございます。  ただ、いずれにいたしましても、我々の考え方を納税者に御理解いただくということは、税務行政を円滑に進めていく上で重要なことでございますので、今後ともこの周知方につきましては必要に応じまして適切に対処してまいりたい、こう考えております。
  37. 水田稔

    ○水田委員 次は、この法律ではなくてむしろ団体法に関係があるわけですが、先日の参考人意見の中でも大変心配しておる登録制の問題であります。  これは、構造改善をやる中で全体的に、先ほども申し上げましたように、大手の資本の参入ということを一番心配しておるわけです。産構審なり織工審の答申というのはまさに、国際環境の中で日本の繊維産業が生き残っていくその処方せんだ、これでついてこれない者は転廃業しろ、こういう流れの考え方なんです。それは現実にはそういう不安を持っておるし、もう一つはそれに関連して、構造改善を進めるテンポより速いテンポでいわゆる集中豪雨的な繊維製品の輸入急増ということがかかってきておる。そういう点で言えば、輸入の問題について規制することは日本の状態では大変難しいとは思うけれども、片一方では、構造改善を進めていきなさい。一生懸命やっているが、それ以上のテンポで輸入が入ってくるということでは、やったところでそっちがとまらなかったら、構造改善が済まぬうちにつぶれてしまって何もできぬじゃないか、そういう不安が非常に強いのがこの間の参考人業界の代表なり労働者の代表の御意見だったと思うのですね。  ですからそういう点については、輸入問題について、通産省としては一体どういう構造改善を進めていくか、これは、やれば生き残れますよ、こういうことを言えるのか、あるいは一方では、輸入規制については我が国は貿易収支が大黒字だからとてもできませんと言うのでは、片一方で構造改善をやれと言ったって、そんなことをやる前に登録制を温存してもらった方が細々でも生きていけるじゃないか、こういう感覚になると思うのですね。その業者の不安に対して、あるいは輸入規制の問題について、どういうぐあいに通産省としてはお考えになっているか、二点についてお伺いしたいと思います。
  38. 黒田真

    黒田政府委員 まず、設備の登録制という問題でございます。  これは、御指摘のように中小企業団体法の規定に基づきまして、既に三十年ぐらいにわたって繊維の川中段階を中心にいたしまして実施されている制度でございます。私ども関係の方々とビジョンづくりをいたします過程で、特にこの問題が一つの大きなテーマになったことは事実でございます。そこでの結論は御案内のように先送りにいたしまして継続審議、早急に結論をまとめようということで昨年の十月の段階では実は御答申をいただいているわけでございます。八年ほど前、五十一年に、この問題が議論されました際に、既に廃止の方向というものが実は打ち出されておるわけでございまして、それをいかに実施に移すかという形で問題を私どもいただいているわけでございます。  したがいまして、今回の討議におきましても、長期にわたったことに伴っていろいろ問題もあるのだから、これを段階的に、混乱を起こさないような形でどういうふうに解消していくか、その段取りを議論したらいいじゃないか、こういう形で議論したわけでありますが、いろいろ御議論もございまして、継続審議にしたということでございます。  これはいろいろな意見がございまして、例えば、現在団体法の法律上の要件から見て、果たして継続するだけの理由があるかというような議論も一方にはあるわけでございます。他方には、この際繊維産業というのは非常に大きな転機にあるのだぞ。先進国型と言われる新しい産業を目指して構造改善に取り組んでいかなければならないという非常に大きな転換期にあるこの時期に、登録制という非常に長く続いた制度が、その登録制のもとにある業界を守ってくれているかもしれないというような何か安易な気持ちを、事によると繊維業者に与えているとすると、それは、非常に厳しい対応を必要としているときに、業界が何とかその厳しい状況対応していきたいという決意を表明しておることとやや相入れないのではないだろうか。むしろこの際、非常に新しい決意で臨む以上は、過去から長く続いているある種の保護の手段というものを含めて見直してみるべきではないか、こういう形で問題が提起されてきているわけでございます。  したがいまして、そういう意識上の問題ということがその根源にあるわけでございますから、私どもといたしましても、突然にその制度をあしたからやめてしまうというようなことを考えているわけではもちろんないわけでございまして、どのような段取りで軟着陸ができるだろうか、そしてその前提として、非常に厳しい状況に立ち向かうだけの決意というものが業界にしみ通っていく、でき上がっていくということを同時に期待する必要があるだろう、こういうようなプロセスを考えているわけでございますので、今後とも各業種、各産地と議論を進めまして、それらの御理解を深めながら、その進展状況に応じて、審議会の結論をいただいた上で、私どもはそれを守っていくということでございますので、非常な不安なり混乱にすぐに陥るということは考えられないわけでございます。  それから輸入問題でございますが、これも非常に難しい問題でございます。  輸入の急増によって構造改善努力というものが無効になってしまうではないかということは、確かに一部の業界から非常に強く懸念される点でございます。しかしながら、私どもも、繊維産業発展の基本は、あくまでも開放体制のもとで頑張っていくんだということを基本にしているわけでございますので、これは一たん制限が始まりますとなかなかやめられない、あるいは非常に広範に波及していくというようなことも考えますと、容易には輸入制限を実施するということも難しいのではないかということが皆さんの御意見でございます。  しかしながら、しからば輸入の急増を放置していいかということはないわけでございまして、できるだけ秩序のある輸入というものを確保する必要があるということが要請されるわけでございまして、ビジョンづくり観点でもいろいろな手段を討議して具体的に考え出されております。  それは非常に思惑的な形で押し込み輸出というようなものが起こって混乱するということは避けなければならないということで、実需と結びついた形での輸入ということになりますれば、おのずからそこに一つの秩序も出てくると思いますし、また自分だけがやっているのかもしれないということで、抜け駆け的に輸入をしようという人たちが、結果を見てみると全員がそういうふうに走っていたということも過去にはあったわけでございますので、できるだけそういった情報というものを事前に把握をいたしまして適切にその情報を供給するというような形、あるいは輸出国に対しましても輸入制限を回避するためには輸出国側の協力というものが基本的には必要なんだということを民間ベースあるいは政府ベースで機会あるごとに話をするというような、現在までのところはそういったソフトな対応によって何とか秩序ある輸入を確保いたしまして、そのもとでの構造改善の進展というものに不安なきを期したい、かように考えている次第でございます。
  39. 水田稔

    ○水田委員 歯切れが非常に悪いのですが、そういう点は例えばこの法律の目的の達成を五年以内にやろうと思えば、めどを立てて、二割とか三割輸入がふえるという問題じゃないので、それは当然自由貿易体制の中でやるべきですが、一年間に三倍にも五倍にもなるという集中豪雨的なことをすると、片一方で構造改善を進めてもそれに対応できない。だから、そういう点では混乱なく業界もそういう努力をするという条件をつくるために、構造改善を生かしていくということを考える。しかし、片一方ではこういう輸入がふえてくる。しかし、これは自由貿易体制の中で、業界としてもそういうことをちゃんと踏まえた上で構造改善への対応をやっていってくれ、こういうことにならなければいかぬ。しかし、今のお答えだったらそれは余り言えない。  しかし、一方では構造改善というのでは業界混乱なくというようなことにはならないと思うのですね。ですから、そういう点では、この法律の目的が十分達成されるためには、通産省が秩序ある輸入という問題と、本当に国際環境対応できる繊維工業のあり方を求めるならば、そういう点ではもう少し両方の点で決意を持って取り組んでいただきたい。これは答弁は結構です。時間がありませんので、そのことだけ要望しておきます。     〔田原委員長代理退席、委員長着席〕  次は、自動縫製システムについて、これはもう時間がありませんからまとめてお伺いしますが、今この研究開発がどういうぐあいに進展しておるのか。  それから、中小零細のところで心配しておるのは、大手の企業はもちろん研究機関に参加しておるわけでしょうが、そういう中でこの情報というのは地方の中小零細のところへはなかなか来ないのじゃないか。実際にやる場合には大都市の大手のところでやられて、これまた中小零細は自動縫製システムの点でもおくれをとって、さらに衰微するのではないかという心配を持っておるわけですね。  ですから、今どういう研究が進んでおるのか、いつぐらいにはそういうものができ上がるのか、そして、それらは実際にやろうという意欲のある繊維工業の地場産業が心配なく使えるのかどうか、その点をお伺いしておきたいと思います。
  40. 川田裕郎

    ○川田政府委員 ただいま御質問の自動縫製システムの研究開発につきましては私どもで担当いたしておりますので、その概要を御説明申し上げます。  これはただいま御指摘のように、自動縫製につきまして総合的な技術面についての技術開発を行うということで進めておりまして、五十七年度から八年間の計画でスタートしたものでございます。五十七年度はまず基礎的な概念をまとめまして、五十八年度にそれぞれの基本設計を行っております。来年度から、それぞれ要素技術につきまして検討しました結果から、試作、実験を開始する予定にいたしております。それで、一応現在の目標といたしましては、六十四年度に全体の研究をまとめまして終了する予定にいたしております。  それから、ただいま御指摘の成果の件でございますが、これは実際にただいま御指摘のとおり中小企業も非常に多うございますので、我々関係の部局と連絡をとりながら、そういう面にも十分配慮をいたしまして、また技術開発の面でも中小企業をなるべく入れ、あるいは中小企業からのいろいろなニーズを私ども吸収をいたしまして、その要望にこたえるような技術開発を進めていくように進めております。
  41. 水田稔

    ○水田委員 この研究開発が終わって利用する場合、私が申し上げた地場の中小零細が意欲を持っておれば心配なく使えるようなことになるのかどうか、その点もう一遍お答えいただきたいと思います。
  42. 黒田真

    黒田政府委員 これは国の委託による研究でございまして、その成果につきましては若干の対価はいただくようでございますが、すべてオープンになっているということでございますので、あらゆる人がこれを利用できると思っております。特に現在縫製業というものが中小企業を主体に構成されているわけでございますので、その方々への影響というものが当然あるわけでございます。その中小企業者というものも実はこの研究組合に一部入っておりますが、むしろそれら全体を取りまとめるといいましょうか、代表という意味繊維工業構造改善事業協会というものを研究組合に参加をさせまして、その協会がセミナーを随時主催をいたしまして、ニーズを一方で把握するとともに、進捗状況等の情報を公開をするということでございます。  この自動縫製システムというものは、システムと呼んでおりますので、全体が完成の時期に使われるということでございますが、同時に各要素の中には当然中小の縫製事業者の方々が活用できるようなものがあるはずだ、あり得るということで、そういった面でお役に立つ知識、情報というものを適時適切に流しながら、関係産地のむしろ活性化に役立つようにしていただきたい、かように考えております。
  43. 水田稔

    ○水田委員 今回の法改正の二点の中の一つ協会の業務の追加があるわけですね。技術指導を行う者の養成業務が新しく入るわけですが、これはどういう者を養成するようにお考えになっておるのか。
  44. 黒田真

    黒田政府委員 従来から、繊維構造改善事業協会を通じまして、産地技術指導ということに対しまして私ども支援を行ってきたわけでございますが、これはどちらかといいますと非常に基礎的、基本的な技術について零細企業指導するということでございました。しかしながら、最近になりまして、多品種少量短サイクル化対応せよというふうな新しいニーズが生まれております。他方、メカトロニクスと申しましょうか、コンピューター利用型の新しい技術がどんどん生まれてきております。ビジョンの討議の過程でも指摘されたわけでありますが、そういった新技術の導入という見地から見ると、どうも繊維産業は他の産業に比べてあるいはおくれているかもしれないという問題点指摘されたわけでございますので、私どもといたしましては、最新の技術情報あるいは生産工程の管理技術というような、新しい、やや高度のところを繊維産業にアプライするための、そういった技術指導員というような方々をこの際養成しようということで、実は新しい予算をお願いをしているところでございます。
  45. 水田稔

    ○水田委員 答申によりますと、国際社会の中で、いわゆるアパレル産業で伸びていこう、こういうことになれば、当然そういう人材の養成ということが必要なわけですね。ですから、今言われたように、技術的なというのは、物をつくる上での技術というものよりは、大事なのは国際的に通用する感覚、創造性というものが日本の全体の土壌の中に育ってくる、あるいは繊維産業の中に育ってくる、そういうものが本来必要なのじゃないですか。答申が求めておるのは恐らくそういうことだと私は思う。  そういう点では、それをやるとするなら、日本の今の偏差値教育なり学歴偏重社会というものをとにかく変えない限り、そういう発想にはなってこない。そういう大変なものを持っておるわけですね。本来答申はそういうものを求めておる。しかし、今言われたのは単なる技術を習得した人ということになるわけで、これ以上今申し上げてもすぐ変わるわけじゃありませんが、少なくとも方向としてはそういうものを求めていく。養成というのは、もちろん各種学校でやっていますが、そこでは創造性というのはそう簡単にできてくるものじゃない、もう小学校からの教育の中でやらなければできてくるものじゃないということだけ申し上げて、まだまだこの点では、法律対応としては答申に比べて不十分ではないかということだけ申し上げておきたいと思うのです。  それから、時間がありませんから、あと二つまとめて申し上げますが、こういう構造改善対応できないところは転業して生きていきなさいと、こういうのですね。長年の経験のある繊維産業から離れて何で生きていこうか、できるなら繊維産業で、やはりなじんできた仕事でやりたいとだれもが思うのです。それは甘いのじゃないですかね、そう簡単に。だから、それはどういうような面倒を見て心配なく転業できるようにするのかということが一つ。  それから、先日の参考人の労働組合側の御意見も私聞いてみましたが、構造改善をやるときに、どうしてもこれは雇用の問題が起きてくる。その中で、企業だけが生き残ればいいという考え方の方がどうしても優先しているように思う。ですから、その場合に、雇用の問題というのを頭に置きながら、労働組合のあるところは聞いてもらっておるようですが、そうでないところも中小零細では多いわけですね。そういう中では、そこに働いておる人は構造改善をやるのだから仕方がないという形で職場を追い出されるということは、全くこれは我々としては耐えられぬことですから、少なくとも構造改善を進める上では、そういう点の、これは全部は守り切れぬにしても、最善の努力をする、そういう配慮は当然必要ではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  46. 黒田真

    黒田政府委員 確かに、今度のビジョンの中では、全員生き残れないということで転廃業というものの発生を想定をしているわけでございますが、それらの方々が、長年繊維産業に従事してこられた方が他の業種転廃業するということは、決して容易なことだとは考えません。そして、そこの産地には繊維産業があるわけでありますから、何とかそれとの関連の中で新しい仕事を見つけていこうという努力をされるだろうということも、そのとおりのように思います。したがいまして、私どもといたしましては、産地実情に一番明るい、いわば産地組合というようなものにひとつそういった転廃業のための相談指導体制というものをつくってもらったらどうだろうか、そしてそのために政府としても一定の助成を行うというようなことで御相談に応じていきたいというふうに考えるわけでございます。  それから、構造改善が雇用に影響があり得るだろうという点については、確かにそういう問題もあろうかと思っておりまして、私どもも、その構造改善計画を審査する過程では、労務問題という点も審査の項目に加えておりますし、また、いろいろな地方に置かれております構造改善のための指導委員会の中には、労働界の代表の方も入っていただくというようなことも考えたりいたしまして、各般の雇用対策施策というものを利用させていただくということを考えております。
  47. 水田稔

    ○水田委員 時間が参りましたが、簡単に大臣からひとつ、今ずっと聞いていただきましたが、法律を立法の場では頭の中で考えるわけですね。しかし、実際には産業というものは生きた人間が毎日の生活を抱えながらやっておるわけです。そういう中で、例えば今度の二つの点の改正をやっても、なおかつ弾力的な運用をしてほしいという要望があるというのは、本当に意欲があればやれるのだという自信が持てるような形をぜひ、構造改善を進めるのであればつくってあげてもらいたい。  それから、私が幾つか申し上げましたように、現実の問題としてはわずかなところですが、そのために大変苦労しておるという実態があるわけです。そういう点では、この法律は五年間の延長ですが、本当に生きた形でこれが産業のために、あるいは地域の再活性化のために役立つように、そういう運用についてぜひ十分な手当てをお願いしたい。大臣のそれについての所見をお伺いしまして、質問を終わりたいと思います。
  48. 小此木彦三郎

    小此木国務大臣 一口に先進国型産業へ脱皮するということを簡単に言うわけでございますが、委員の御議論を聞いておりまして、産地における雇用の問題あるいは中小企業対策の問題、さらには技術者をどういうふうに養成していくかというような問題、それぞれ考えてみますと、非常に困難な問題が内蔵されているわけでございます。そういうことを見守りながら、やはり我々はその指導に温かい配慮をしていかなければならないということを痛感いたした次第でございます。今後とも十分勉強の余地あることとしてこのやり方を進めてまいりたいと思います。
  49. 水田稔

    ○水田委員 終わります。
  50. 梶山静六

  51. 渡辺嘉藏

    渡辺(嘉)委員 繊維工業構造改善臨時措置法の五年延長の問題と内容の改正案が出たわけですが、これについて大臣以下に御質問申し上げたいと思います。  まず第一に、この五十年から五十八年の間に、この構造改善事業のために政府はいろいろな施策を講じてきた、こういうことでございますが、その中身の説明を受けますと、この九年間で百三件、七百二十二億、こういう構造改善事業をやってきた、年に直しますと平均で十一件、八十億、こうきたわけです。この五年延長について、これは私も異存を申し上げるわけじゃないのです。しかし、せっかくこれを五年延長するならば、今度の中身を拝見いたしますと、協会に対する、この構造改善指導をする人を養成、研修するという中身程度であって、これはというような中身が余りないわけです。こういう中身の薄いものが延長されるのではなくて、私は、もっと中身の濃いものを延長されるべきじゃなかろうか、こう思うのですが、まずこの点について承りたいと思います。
  52. 黒田真

    黒田政府委員 繊維産業構造改善を進めますならば、先進国として持っているいろいろな潜在力、それは非常に深く、広い市場であり、また高い技術力、あるいは技術開発力でもございますし、創造的な文化の伝統というようないろいろなものが生かされるような、そういう国民のニーズに即応したものを、衣服を供給する繊維産業というものができるはずだということが昨年のビジョンでございます。  この法律は、実は構造改善計画というものを異業種間の連携のもとにつくりました場合には、これを政府支援をしようということでございますので、そういった理念を持った方々が集まられまして、構造改善計画というものを考えていただく、そしてその上で、それを政府支援をするという、いわば一種の器の形になっているということでございますので、中身を盛り込んでいただくのは、それぞれの事業者の方々の知恵と申しますか、発意でやっていただきたいということが、まず第一にございます。  それから事業協会の仕事というものにつきましても、これは従来構造改善計画のお手伝いをいろいろな形でしてまいりました。中身の御相談に応じるということもございましたし、また資金的な面での債務保証を行うというようなこともございましたし、各般の事業というものが既に行われているわけでございまして、今回の改正は若干技術のところを中心にお願いをしておりますが、これはどちらかといえば新しくつけ加わったところの事業だけが表に出てきているということで御理解をいただきたいと思うわけでございます。
  53. 渡辺嘉藏

    渡辺(嘉)委員 それでは、先ほども出ておりましたけれども繊維産業輸出輸入の問題について承りたいのですが、まず一つの例を毛織物業界にとりますと、昭和四十三年から四十五年当時は、これが輸出のピークで、北米を初め輸出しておったわけですね。その輸出額は生産額の約一三%ぐらい、毛織物の例をとりますと輸出をしておりました。約五千八百万平方メートル、これを輸出しておった。ところが、この日米の繊維協定ができましてから急速にこれは減少いたしまして、四十六年、このときには生産額の五%、二千三百万と、こう落ち込んだわけです。そして、これが実際に動き出した四十七年では千三百七十三万平米と落ち込んで、総生産額の二・八%に落ち込んだわけですね。これが四十八年、一・七%、こういうふうにずっと大変な落ち込みをいたしました。そしてやっと今、五十五年、五十六年、五十七年となって千二、三百万平方メートル、生産額の四%台に回復をしたのです。これが今の現状ですね。こういうことは、これは日米の繊維規制の影響が多大にあると思うのですが、この点はどうですか。
  54. 黒田真

    黒田政府委員 毛織物の輸出につきましては、確かに御指摘のように逐年減少をしてまいったことは事実でございます。最近若干持ち直しの兆候も見えますけれども、大勢といたしましては先生御指摘のような傾向をたどってきているわけでございまして、確かにその中の一つの要因として、日米間の繊維取り決めというものが制限的な役割を果たしたということはあるいは否定できないかもしれませんが、現状におきましては、規制枠に比べて輸出実績というものが相当下回っておりますので、今後の努力によってこれを増加していく可能性というものはある、かように考える次第でございます。
  55. 渡辺嘉藏

    渡辺(嘉)委員 この日米繊維交渉ですね、これは承りますと局長もその参加された一人だそうですが、この「日米繊維紛争」という本によりましても、あるいはまたいろんな資料を調べましても、これはもう完全に日本側の失敗だ、こう書いておるわけですね。当時の業界誌を見ましても、当時の大屋会長が「協定のあらましはきいたが、田中君」――これは原文どおり申し上げますから失礼かもしれませんが、当時の通産大臣田中角榮さんです。「田中君は何もしなかったにひとしい。その結果たるや業界に大混乱をきたすことは必至だ。心配していたことが事実になってまことに遺憾千万だ。」こう述べていらっしゃるわけですね。こういうふうに、この日米繊維協定は日本の繊維界に大変な苦汗労働と、そして厳しい環境をつくり出した、私はそう見ておるんですよ。また業界もそう見ておるんです。  この本には、ここで明らかに、これはもうフラニガン補佐官と牛場大使のこの交渉は完全に日本側の負けなんだとまで極論しているんですね。こういう取り決めによって今日の日本の繊維業界が苦しい環境に置かれておる、そしてこれから今輸出に乗り出していこうというわけですが、これの支障になっておるかどうかということをもう一遍伺います。
  56. 黒田真

    黒田政府委員 日本の繊維輸出というものは一時全般的に相当落ち込んでおりましたが、最近はいろいろまた関係者努力によりまして持ち直しつつあるわけでございます。そしてそういう際に、果たしてこの日米間の現在の取り決めが支障になるかどうかというお尋ねでございますが、実は従来は余り支障になっていなかったというふうに言えたと思います。しかしながら、昨年の暮れにアメリカ政府の中で、これはまあ非常に大統領府のイニシアチブと言われておりますが、厳しい繊維貿易政策というものを打ち出したことを一つのきっかけといたしまして、その後繊維取り決めの規定を援用する形で私どもにいろいろな要求をしてきております。現在交渉を進めているところでございますけれども、そういう要求が出ているということは、それが一つの対米輸出に対する制約要因になり得るということを示していると思います。
  57. 渡辺嘉藏

    渡辺(嘉)委員 関税を見ましても、ポンド当たり、日本がアメリカへ輸出いたしますときには三十五セントプラス三八%、約四〇%くらいの関税を取られるわけですよ。これは御承知ですね。これに対して日本は、毛織物を輸入いたしますときには一二%の関税をかけておるわけですね。輸出するときには四〇%取られて、輸入物には一二%しかかけておらない。これで日本のも織工業界は頑張っておるのです、この中で。特恵関税になりますと、御承知のとおりこれがこれの半分でございますから六%になるわけですね。そうすると特恵関税は六%で特恵国から入ってくる。日本がアメリカへ輸出するときには、日本は特恵国には輸出できませんから、中身が違いますから、四〇%の関税を取られ、入ってくるやつは六%で入ってくる、こういうのが今の実態なんですが、これについてどういうふうに今対応しておられますか。
  58. 黒田真

    黒田政府委員 関税は品目によりましていろいろ上下がございます。そして戦後のガットの歴史は、その関税というものを相互に引き下げ合うという形でいろいろな交渉が従来行われてきたわけでございます。そういう過程の中で、確かにアメリカの場合特にも織物というのは、率直に申し上げましてきわめつきの高関税と言えると思います。しかし同時に、なかなかも織物業界も頑張っておりまして、私どもこれを引き下げようと、また、ヨーロッパの連中も大変努力をいたしましたが、なかなか応じてきていない。したがって、もろもろの関税が相当引き下げられているという現状の中で、毛織物については特に高関税が残っているというのは御指摘のとおりだと思っております。  我が国の場合も、関税につきましていろいろな議論がございます。毛織物というのは繊維の中では比較的高い水準の方に属するかと思います。しかし、今申し上げましたように、関税のレベルというものは非常に長い歴史的な経過と交渉の積み重ねの結果によるという要素が多いわけでございますものですから、確かに現状でそれを見たときに、非常なアンバランスが目立つというようなことがございまして、特に繊維業界の方々から、関税率の不均衡問題という点は従来いろいろと御指摘があるわけでございまして、その是正方、私どもあらゆる機会をつかまえて努力をしておりますところでございますが、率直に申し上げて成果が上がったかということになりますと、なかなか敵の堅塁を破るには至っていないというところが率直なところだと思います。
  59. 渡辺嘉藏

    渡辺(嘉)委員 今お聞きのように、関税の問題あるいはまた日米繊維取り決め、失敗だと言われたこれですね、これについて当然こういう不平等な、不平等というか不公正な取り決めはこの際改正をしてもらうべきだ、そしてこういう関税のあり方も変えなければいけない、私はこう思うのですが、この点につきましては、この取り決めの中にも、日本政府は「この取極の適用の結果日本国がアメリカ合衆国への綿製品、毛製品」あと省略しますが、等が「第三国に比し不公平な立場に置かれ若しくは置かれるおそれがあると認める」ときには、日本国はアメリカ合衆国に対して協議を要請して、そして将来のことに向かって改善その他の道をあけておるわけですが、大臣、ひとつこういう点についてどういうふうにお考えでございますか。
  60. 黒田真

    黒田政府委員 若干技術的なことなので私から御答弁させていただきますと、幾つかの国とアメリカが繊維輸出規制の協定を持っているわけでございますが、一部に持っていない国もあるということで、その輸出規制をしている国相互間、あるいは輸出規制をしていない国との関係で、例えば日本の対米輸出の当該品目のシェアが急速に下がるというような事態がかつて起こったわけでございまして、そういうことを頭に置いて、もしそういう不公平が起こった場合には、その是正を要求できるというための根拠規定になっているものでございます。
  61. 渡辺嘉藏

    渡辺(嘉)委員 今お聞きのように、そういう中身なんです。経過もおわかりいただいたと思うのですが、こういう問題は、これは政治的な、また大臣クラスの問題だと思うのですがね。大臣はこれに対してどういうふうに対処されるおつもりですか。
  62. 小此木彦三郎

    小此木国務大臣 日米繊維交渉、その結果が成功であったか失敗であったか、それは議論の分かれるところであると思いますが、関税の上の不公平な問題があるとするならば、それは当然我が国の主張を入れるべき余地があるのではないか、そのようなことをよく検討して、公平な状態になるべく努力することに、私は研究してみたいと思います。
  63. 渡辺嘉藏

    渡辺(嘉)委員 ありがとうございました。そういう強い決意をいただいて私も敬意を表するわけですが、これらのも織物の座元は大部分が尾西地区、尾北地区、あるいはまた津島地区、そして岐阜地区、これが毛織物の一番大きな産地であることは、これは御案内のとおりだと思うのです。  だから私は、その中身で実態考えまして、そして、これが六十年の十二月にはまた切れるわけです。ですから、もう既に交渉が始まろうとするはずだと思うのです、次のことについて。ですから、今大臣がおっしゃったそういう気構えで、これの関税の問題と、これの数量規制の問題等についてひとつ対米交渉をやっていただきたいと思うわけです。  この点と、いま一つは、いろいろな日米摩擦が貿易で起きておるわけです。自動車の問題その他いろいろあるわけですが、そういうものとの振りかえをされてはかなわぬのです、毛織物が。前の、四十六年にこの日米取り決めが行われたときには、これは政府の提案された書類ですが、これによると、対米輸出規制に基づいて輸出規制を行った。だから日本政府業界に対して二千億をばらまいて、そして業界を慰めたというか、まあまあ、こうやったわけです。これが実態だと言われておるわけです。私どももそう思っておるわけです。ですから、そういうことが二度とあっては困りますから、今の日米貿易摩擦、いろいろありますので、こういう繊維取り決めがまたもやそういう中に取引の材料に使われることは断じて困るわけですが、こういう点について大臣の方から重ねてその所信を承りたい。
  64. 黒田真

    黒田政府委員 御指摘のように、現在ございます二国間取り決めというものは五十七年の一月一日から六十年の十二月三十一日までという期間を持った取り決めてございます。これは専ら対米の輸出数量について規制をすることを定めた協定でございます。  しからば六十一年以降どうなるかという点でございますが、実はこの日米の繊維取り決めの根拠となっております国際的な繊維取り決め、MFAというふうに呼んでおりますが、それ自体が六十一年七月というところまでの有効期限を持った多角的な取り決めてございまして、その枠組みのもとに日米間の二国間協定があるという状況でございますので、そもそもこの根っこになりますべき国際繊維取り決めの将来をいかにするかということからまず議論がされ、その上で日米間を律すべき協定が継続すべきか否か、あるいは打ち切るべきかどうか、あるいは改定すべきかどうかというようなことが今後検討されることになると思います。  それからなお関税の問題につきましては、これは先ほど来御指摘がございましたわけでございますが、これは、この協定等とは一応別のことになっておりまして、これらを引き下げるための努力というためにも、あるいはニューラウンドというようなものを進めていくということが一つのきっかけになろうかと思っております。  なお、現在の対米関係のいろいろな通商問題の中で、この繊維の問題がその一部を構成するというふうには私ども考えておりませんし、アメリカ側も特にそういうふうには言ってきておらないわけでございますので、その中での取引に用いられるということはないのではないだろうかというふうに考えます。
  65. 小此木彦三郎

    小此木国務大臣 今の繊維の問題をこれに絡ませるのか、あるいはワンパッケージにして日米の交渉を行うのかということでございますが、それはオレンジはオレンジの問題、自動車は自動車の問題、それぞれ個別に解決すべき問題だと私は思います。  と同時に、これは通産省だけの所管の問題ではございませんし、ほかの省庁が所管する問題等もございますので、そういう点から考えてもワンパッケージでこれを処理するということはあり得ない問題でございます。
  66. 渡辺嘉藏

    渡辺(嘉)委員 ありがとうございました。  それでは今の大臣の答弁、局長の答弁で、ある程度理解はいたしました。が、前のときは、五十四年から発効した三年間の繊維の取り決めですね、数量規制のあの取り決め、それよりも五十七年のときにまた二つ品目がふえておるわけですね。綿のニットシャツ男子用、それからものスーツ女子用、二品目またふえたんです。これは先ほどから申し上げたように、成功失敗は言いませんけれども、しかし屈辱的だ、こう大屋会長でさえ言っていました内容なんですから、これは減らしていくのが本当だと思うんですね。ところが、逆にふえたんですね。これはまた好ましくないんじゃないか。むしろ減らしていってもらいたい。ですから減らしてもらうために、そして将来は六十年の十二月で切れるならば、この際はこれはもうない方がいいのです。ない方がいいのですから、その点について大臣から強い所信があるならばぜひお聞かせをいただきたい。
  67. 黒田真

    黒田政府委員 日米繊維協定の規定の内容は、若干複雑でございますが、一応綿製品、毛製品、合成繊維製品というものの全部をカバーしてきているわけでございます。ただいま先生の御指摘の品目数というのは、その中で個別に枠を設けている品目でございまして、確かに、御指摘のように五十四年当時の協定に比べて五十七年当時の協定が品目数としてふえているということは事実でございます。しかし、これは昭和四十九年に最初に結ばれたときに比べますと、当時二十五品目あったわけでございまして、その当時に比すれば相当減少した姿になっているということが一つ言えるかと思います。  しかし、その後ふえているという点については確かに事実なんでありますが、私の申し上げたいのは、この品目で規制していない部分につきましても、実は包括的に協定がカバーしておるものでございますから、途中でアメリカが要求をしてまいりますと、ちょうどここで挙がっております特定品目と同じような扱いに品目がふえてくるという仕組みがございます。従来は、その仕組みは仕組みとしてだけ存在して、余り使われてきていなかった。それが使われた結果、一、二品目ふえたということであったわけでありますが、ここへ来て相当数のものについてその仕組みを利用しようとしてきているということがございますものですから、先ほど実はこの協定の働きが制約的になっているかという御質問に対しまして、そういう品目については確かに輸入を制約するような、私どもから申せば輸出を制限するような働きを持っているということで、現在鋭意交渉をしているということを申し上げたわけでございます。
  68. 渡辺嘉藏

    渡辺(嘉)委員 じゃ、この際ですから、アメリカからまた新しいといいますか、昨年暮れごろからまた要求が来ておるという話も出ておるわけですが、この際日本の繊維業界を守るために、失敗だったと言われないように、ぜひひとつ強く対応していただいて、そして、できるだけこの二国間協定を破棄できるなら破棄してもらう、できなければ順次縮小していく、こういうことでひとつ大臣以下御努力をいただきたい。  それから関税につきましても、今申し上げたように輸出は四〇パー、輸入は時には六パー、五パー、こういうものがありますので、これにつきましても今後の関税交渉で努力をいただくようにぜひお願いをいたします。  次に、今度はニットの関係について質問いたしますが、ニットの将来も、輸出にとりましては花形であると思われ、また婦人、子供、紳士等汎用性の広い生地であり、製品であることは間違いないわけですが、これに対する対策等について何か特段のことはありますか。
  69. 黒田真

    黒田政府委員 ニット製品というものが、非常に着やすさといいますか、編み物の持っております特性が生かされまして、全体的に需要が低迷しております中で健闘をしておるものというふうに理解をしております。ニットの各産地はそういうことでいろいろ努力をいたしまして、特に最近のメカトロニクスの関係を一番早く導入をする、ニットの柄を自動的にコンピューターと連動して読み取り、かつ編み出していくというような、まさに多品種少量短サイクル時代の模範的なといいますか、典型的な機械の導入というようなものもニットの業界では進められている。そういう努力もニット関連のところの隆盛の一つの原因であろうかと思っております。また最近は、ニットの素材につきまして、その国際的な参加を呼びかける形で素材の見本市というようなものも、展示会というようなものも行われて、非常に活況を呈しているというふうに聞いておるわけでございまして、私どもも、そういう催しに対しましては大いに後援をするというようなことで対処をしているわけでございます。
  70. 渡辺嘉藏

    渡辺(嘉)委員 政府としてはいろいろやっていらっしゃるという話ですが、私ども実態で見るときには隔靴掻痒の感で、文字どおり企業の労使の自主努力でやっておるのが実態だと私は思っておるのです。もちろん、甘やかしたり特別に助成をせよという意味じゃないのです。しかし、今のニットの抱えております業界問題点というのはこれまた大変あるわけですね。大きな設備をいたしましても、稼働率は大体三〇ないし四〇%しか稼働しない。それは小ロット、単品、多品種のためにそうなるのです。これは遊ばせなければならないのですよ、好きで遊ばしておるわけじゃないのですが。こういうものに対するもっと実態に合わせた、仮に近代化設備資金なんか貸す場合でも、そういうことを踏んまえて償還その他を考えないと実態に合わないのじゃないかと私は思っておるわけですが、これはまず要望といたしておきます。  このニットも、生産額の五二%が輸入になっておるのですね。これはメリヤスということで関税を掌握していらっしやるので、メリヤスの部類で申し上げるわけですが、生産額の五二%輸入しており、輸出は生産額の二・二%、これが今のニットの業界実態なんですね。この際、こういう輸入については文字どおりある程度の規制をしないと、ニット業界は、先ほどのも織と同じで実に労使の苦汗労働のたまもので持ちこたえておるにすぎないのであって、こういうことは長く続かせることは無理ではないか、私はこう思うわけなんですが、この輸入輸出のアンバラについてどのような対応考えられますか。
  71. 黒田真

    黒田政府委員 ニット製品につきましては、品目によりまして確かに非常に輸入比率が高いというようなものもございますし、また輸出も健闘はしておりますが、確かに輸入の超過があるということは事実かと思います。そして業界の方々から、例えばセーター等が非常に増加しているという意味で懸念の表明がございます。私どもいろいろ調査もいたしておりますが、輸入されますものの主体は、例えば手編みのセーターというふうに、実は日本の国内では非常につくりにくくなっている。それはコスト面で非常につくりにくくなっているというようなものについて主として輸入が行われているというふうにも聞いておりますし、確かにかつては相当むちゃなといいますか、思惑的な輸入も起こったようでございますが、最近はそれぞれ非常にブランド等の指定もある形で輸入が行われておるというふうにも聞いているわけでございますので、確かに当面高水準で警戒は要するわけでございますけれども、直ちにこれを規制しなければならないというほどの事態に立ち至っているというふうには、必ずしも考えないわけでございます。
  72. 渡辺嘉藏

    渡辺(嘉)委員 規制を今はまだ考えなくてもいい、こうおっしゃいますが、これは企業自主努力とともに、設備廃棄その他をやられたわけですね。  だから、ここで二つお聞きしたいわけですが、私は、今申し上げたように、五十数%も輸入しておるという実態から見て、これはもうこの際規制をすべきでないか、そういう時期がもう目の前に来るのではなかろうか、こう考えておるわけですが、それとともに、設備廃棄によって国内の業社を減らして、そして輸入に備えておるといいますか、こういうことも言えないことはないと思うのですね。しかし、設備廃棄、転廃業を余りやるということは、私は決していいことだと思っておらないのです。こういうような意味から、この際もう規制に入っていく時期に来ておりはしないか、こう思いますが、どうですか。    〔委員長退席、渡辺(秀)委員長代理着席〕
  73. 黒田真

    黒田政府委員 先ほども申し上げましたように、現在輸入されておりますニット製品のうちで、例えばセーターのごときものは、国内でなかなか人手がかかって高くつくというようなことで、海外、特に近隣の諸国に注文生産をしているというものでふえているというふうに聞いているわけでございます。  他方、国内の方は、先ほども申しましたように、非常に新しい技術を駆使いたしまして、コンピューターで管理をしながら自動的に柄を読み取り、それを打ち出していくといいますか、編み出していくというような形で、非常に先端的なものに特化するといいますか、そういう形でのある種の分業関係というものもあるようでございますので、直ちにその数字の大きさ、まあ、大きさ自身についても議論のあるところでございますけれども、大きさだけで判断をするというわけにもいかないのではないかというふうに考えます。
  74. 渡辺嘉藏

    渡辺(嘉)委員 余り感心した答弁だと思わないのですけれども、それはいろいろ立場があるので今すぐ言えぬかもしれぬけれども、御認識だけはしておいていただきたい。  それから、設備廃棄のことですが、これは、ニット関係は五十三年にやられたわけですが、昨年もやる計画をいたしたわけです。ところが、岐阜県も予算を用意するつもりだったわけですが、ことしできなかったわけです。これは二〇%ラインに達しないと設備廃棄の対象になってこない。ところが、今度の場合は一五%ぐらいだったから乗れなかった。僕は、こういう二〇%というような大がかりなことを考えなくて、せめて二〇%ぐらいずつで小刻みにやってやった方が業界に与える影響も少ないし、転廃業もショックは少ないし、これが労働市場に与える影響も少ないのですが、そういう二〇%ラインというのを、この際一〇%ぐらいまでに下げる方がいいのじゃないか、こう思うのですが、この点どうでしょうか。
  75. 黒田真

    黒田政府委員 設備共同廃棄事業につきましては、それが当該業種構造改善に大きく寄与するということがまず大前提となっているということでございまして、従来御指摘のように、相当大規模な処理が行われる場合についてのみこれを認めるというふうに運用をされてきておるわけでございます。このような設備廃棄事業につきましては、これが従来、繰り返し繊維業界について行われてきているということから、昨年のビジョン審議の中で批判的な声もいろいろ出てきたわけでございます。  しかしながら、私どもといたしましては、今後の繊維産業先進国型に対応していく過程で、転廃業者というようなものの発生も相当予定せざるを得ないというような状況のもとで、従来からございます転換対策に加えて、特に繊維産業の場合には、設備共同廃棄事業というものを転廃業対策として活用するという方向考えているわけでございまして、その際には、従来とは違って、一部廃棄というような形を認めないわけでございますから、そのときのレベルというものが二〇%ということで適当かどうかという点については、ある程度検討の余地はあり得るもの、かように考えております。
  76. 渡辺嘉藏

    渡辺(嘉)委員 次に染色部門のことについて聞きたいわけですが、川上、川中、川下と、こういうふうによく総称されるわけですが、その中で染色部門というのはかなめだ、川中島だ、よくこう言われるわけです。この面に対する指導強化は、いろいろなものを見ておりましても具体的なものは出てきておらないわけですが、何かこれについて具体的なものがありますか。
  77. 黒田真

    黒田政府委員 確かに染色というものが繊維産業にとって非常に重要である、特に先進国型にというようなことで申しました場合には、染色面というものが非常に大きな役割を果たすだろうというふうに考えております。これの端的な証拠といたしましては、近隣の国々、これは中国にしても韓国にしても台湾にしてもそれぞれ特有の、水が悪いとかいろいろな状況から、染色についてはなかなかキャッチアップができないということで悩んでいるようでございますが、それは裏返して言いますならば、日本の優位性がそこに非常に大きくある、あるいは今後も期待できる分野だと思います。  私ども染色業界に対しましては、例えば中小企業事業団の行っております技術開発関連のお金を少し使いまして、コスト引き下げに役立つということで、従来は何かどっぷりお湯の中につけたんだそうでありますが、それを泡を利用しながら染色をしていく方法によって省エネにも役立つというようなことを研究をいたしておりますし、非常にエネルギー多消費産業でございますので、比較的中低温の廃熱をうまく回収しながら、エネルギーコストを引き下げるというような研究に応援をさせていただいておるところでございます。
  78. 渡辺嘉藏

    渡辺(嘉)委員 エネルギーの多量消費産業であること、これは御案内のとおりです。今もいろいろな対応を聞きましたが、これも十分だとは私は思っておりません。  そこで、問題はもう一つあるのですが、この染色企業は重油をたくさん使いますもので、その重油を使ういわゆる量と質とに伴いまして、公害負担金を納めておるわけですね。そうすると、私の岐阜でもこの染色のある企業があるわけです。この染色企業が賦課金を払いました。これはこの賦課金によって、全国プールいたしまして公害患者の救済に充てるわけです。これは私は、考え方としてはいいと思うのです。ただし、その公害患者の指定地域に岐阜は入っておらないのです。岐阜は入っておりませんけれども、これらの企業からはこの公害負担金を取るのです。ですから、この企業は、参考までに申し上げると、千五百六十五万円、昨年払った。これが岐阜市に公害が起きてその患者の救済なら、当然私どもは当たり前だと思うのです。ところが岐阜市の企業が出しましても、これはどことは言いませんが、指定地域は御案内のとおりですから、指定地域の公害患者の方に行っちゃうのです。岐阜市では何にも公害を起こしておらないのですよ、設備その他から考えても。ところが、そういう負担金を一企業から千五百万円も取る、私はこれはおかしいと思うのですが、この点はどうお考えですか。
  79. 黒田真

    黒田政府委員 公害健康被害補償法に基づく賦課金及び給付のお話だと思います。担当でございませんので意見の表明は差し控えさせていただきたいと思います。
  80. 渡辺嘉藏

    渡辺(嘉)委員 これはもちろん関係局としてはおたくではない。しかし、そういうことが平然と行われておるというときに、通産は企業立場から考えれば当然そういうことに対して厚生省なり環境庁なり関係省庁に対してやはり主張すべきことは主張してもらわなければいけないのじゃないか。誤ったというか、不合理なんですから。  いま一つは、これの負担率が年々非常な勢いで上がっておるわけですね。単位当たりが、ちょっと難しい言葉ですから私も余り専門家じゃないのですが、一ノルマル立米当たり昭和四十九年は一円七十六銭、昭和五十三年は四十七円、昭和五十四年は七十一円、昭和五十七年は百九円、昭和五十九年は百七十九円と上がってきておるのですね。こういう上がり方に対して、通産はいろいろな立場から企業の動きを見ていらっしゃるのですから、この地域の問題といい、上げ方、上げ幅といい、ひど過ぎるじゃないかという主張を大臣立場からも関係省庁にぜひやってもらわなければいけないのじゃないか、こう思うのですが、どうでしょう。
  81. 小此木彦三郎

    小此木国務大臣 実態を調べてよく勉強いたしてみましょう。
  82. 渡辺嘉藏

    渡辺(嘉)委員 通産にも立地公害局もあるわけですが、その点は全然タッチしておらぬのですか、どうですか。
  83. 黒田真

    黒田政府委員 先ほど申しましたように、これは公害健康被害補償法という法律に基づいてでき上がっているシステムでございまして、おっしゃるように全国各地からの、重油を利用している人たちから賦課金を取っているということで、産業立場から見ますと、その負担金が毎年特にふえていることから重過ぎるということはございます。  しかしながら、全体的な仕組みになるわけでございますので、私ども繊維産業を所管する立場から、できれば繊維についての負担を軽減してほしいという考え方がないわけではございませんが、特定業種という立場よりも、硫黄を含有した重油を使っているものというとらえ方をされているものでございますから、なかなか業種に即した主張はしにくいわけでございますけれども、担当しております環境庁は、いろいろな業界意見というものも背景に、昨年以来中央公害対策審議会に、この関連で負担の関係を含めて御意見を伺っているというふうに私は聞いております。
  84. 渡辺嘉藏

    渡辺(嘉)委員 この制度そのものを否定しているわけではございません。ただ、この不合理について関係省庁とやってもらう必要があると思うのですが、大臣、どうでしょう。
  85. 小此木彦三郎

    小此木国務大臣 ですから実態を調べまして、関係省庁に言う必要があることが生じましたら、私としてはそれをよく勉強してみましょうと先ほど申し上げたとおりです。
  86. 渡辺嘉藏

    渡辺(嘉)委員 ありがとうございました。  次に、今度改正の中に織り込まれたわけですが、繊維工業構造改善事業協会に対する指導員の技術指導者の養成並びに研修に対してですが、これの事業内容をこの際御説明いただけますか。
  87. 黒田真

    黒田政府委員 今回追加をしていただいておりますのは、技術指導員の育成及びその人たちに対する研修事業ということで中ございます。このようなことが必要だと考えましたゆえんは、従来から技術指導員というものに対して助成をしておりますが、従来のものはどちらかといいますと、基礎的な織りの技術というようなものを零細企業に対して指導する、そういう地元の指導員に対する応援ということでございましたけれども、最近の非常な技術進歩を背景にいたしまして、新しい技術というものが繊維産業にも逐次導入されてきている。それは先ほどのニットの編み出し、柄出し機というようなものもございましょうし、染色における特別な技術というようなものもございます。センサーと絡んだコンピューター制御型の技術というものがもっともっと繊維産業に導入されるべきものである、そういう立場に立ちまして、新しい技術のニーズを発掘し、同時にその開発を助け、開発された技術の成果というものを普及する、そういう役割を担い得るような人材をこの際つくり出していこう、こういう計画のもとに繊維工業構造改善事業協会の新たな業務として法律改正をお願いいたしますとともに、そのため若干の予算ではございますが、五十九年度の予算要求の中で現在御審議をお願いしているということでございます。
  88. 渡辺嘉藏

    渡辺(嘉)委員 それでは、どの程度の規模でどういう人を対象におやりになりますか。
  89. 黒田真

    黒田政府委員 現在、予算要求は九百九十万一千円という予算規模を要求しておりまして、このお金で大体四百人ぐらいの人を育成できるのではないかという事業計画をつくっているところでございます。
  90. 渡辺嘉藏

    渡辺(嘉)委員 今承ると、四百人ぐらいを対象にしておる。約一千万円ばかりですね。一人当たり二万五千円。果たしてこれでそういう今の高邁な要求にこたえられるであろうか。ましてや、この対象者は各業界並びにそれらの関係会社等のOBを対象考えてみたい、こういうことですから、考えてみれば既製品で安上がりにやろう、こういうことですね。五十五、六になってもう定年だ、やめたそのOBを集めてきて訓練してばらまく、これでは今の新しいニーズにこたえた新技術は生まれてこないのじゃないか。その人々はどうしても古いから、古いというと失礼ですけれども、やはり中高年過ぎておりますから、こういうちゃちなやり方ではとてもじゃないが今度の法改正の中に織り込んだ目玉にはならぬのじゃないか、こう思ったから、この際こういうOBを集めてやるというような発想でなくて、また予算も一人当たり二万五千円なんというそんなことでなくて、これは今一番要求されておるわけですから、ぜひ思い切ったやり方をしてもらいたいと思うのですが、どうでしょう。
  91. 黒田真

    黒田政府委員 一人当たりの研修費というものが二万数千円ということで、どの程度のことができるかという点でございますが、これはもっぱら研修部分のみに充てるというふうに考えておりますので、旅費とか宿泊等を考えておるわけではありませんから、それなりの意味は持つのではないだろうかという計画でございます。  それから機械業界等を定年退職された、いわば中高年の方にお願いするということはどうかという御指摘がございました。確かにこれから新しい若い人たちを養成するということも一方必要だろうと思いますが、すぐの間に合うという意味からいいますと、やはり機械的な知識、そして当然機械メーカーで最近の技術等に関してある程度の勉強もしておられるような方々に、新たなニーズというものからもう一遍現状を見直していただきますならば、それは、やや他業界に比して立ちおくれていると言われております繊維業界にとりましては大変なといいましょうか、大きな戦力にはなってもらえるんじゃないだろうか、そういう期待を込めてこういう予算をお願いした次第でございます。
  92. 渡辺嘉藏

    渡辺(嘉)委員 今のお答えで、お答えとしての意味はわかるのです。ところがその実態を、これに現場へ植えつけようと思いますと、これはとてもじゃないがそんなことでは、今のこれだけ技術がどんどん進み、そして小ロット、多品種少量短サイクル、オーバーな言い方をすると命がけでそれぞれの業界がやっておるときだけに、功なり名遂げてまあまあのところで課長になった、部長になった、そういう人々を集めてきたって私はだめだと思うのですがね。ですから、やはり三十五、六、四十前後のぴちぴちしたところ、それにぴしっと仕込んでこれがばっと業界に四百人散れば、これは戦力になると思うのです。ひとつ歯切れのいい局長さんだそうですから、ぜひひとつ歯切れのいい政策を打ち出していただきたい、こう思うのですが……。
  93. 黒田真

    黒田政府委員 これから実施に移るわけでございますから、各産地ごとに組合等から御要請をよく承りまして、他方、人材を提供していただく側のこともあると思いますので、その辺をうまく見合うように、すぐに役に立つ新しい技術繊維産業に導入をされ得るような一番いい方法にできるだけ近づけていきたいと思っております。
  94. 渡辺嘉藏

    渡辺(嘉)委員 自動縫製システムについて次に聞きたいと思うのですが、先ほどからの御答弁を聞いておりましたので、自動縫製システムに対する政府考え方はある程度わかったわけなんですが、そうなりますと、五十七年、五十八年にかけて基礎を研究し、基本設計をしてきた、いよいよこれからだ、こういうことを承ったわけですが、めどは一応昭和六十四年をめどと考えておる。そうしますと、これの計画は大体百三十億と承っておるわけです。そうすると、ことしの予算化が十億以下の金なんですね。これで計算いたしますと、あと残った金は百十億ぐらいを投入しなければ、自動縫製システムは完成しないわけです。これから一年間に二十億から三十億要るわけですね。果たして六十四年に間に合うかどうかということと、いま一つは、それぞれの研究成果をまとめて出すのでなくて、その都度研究成果をそれぞれの業界に発表し、そして導入させるべきじゃなかろうか、私はこう考えるのですが、どうでしょうか。
  95. 黒田真

    黒田政府委員 当初百三十億というような構想でスタートをいたしまして、現在までのところ二十億を切る程度の予算の配賦を受けておるということから、今後計画としては非常に大きなものが残っておるという点につきましては御指摘のとおりでございます。     〔渡辺(秀)委員長代理退席、委員長着席〕 これは、当初の仕事が概念設計とか基本設計というような、余りお金がかからないといっては何でございますが、比較的頭で考える部分だったと思います。しかしながら、これから要素技術の研究ということになりますと、実際に機械をつくってみるというようなことで、まさにお金がかかる時期に入ってくるわけでございまして、そういう意味からいいますと、政府のやっております大型プロジェクトの計画というものは中が膨らむような形になるわけでございまして、大変財政の厳しい状況が続くようでございますので、私どもの期待どおり直ちにいただけるかどうかという点については難しい要件もあろうかと思いますが、全力を尽くして、私ども当初考えましたようなものを実現すべく、今後、明年度以降努力をさせていただきたいと思っております。今日までのところ、非常に予想よりも削減されているということでは必ずしもないと思っております。  それから、六十四年ですか、その最終年次まで手をこまねいて待っているのかという点につきましては、決してそうではございませんで、特に要素技術というものの研究に着手をして、最後にそれらをまとめて、いわば全システムとしての運転試験というようなことが出てくると思います。しかし、その過程におきます要素技術の中には、その素材の処理の問題あるいは縫製の自動化の問題等々につきましての要素の、各要素の技術というものは必ずや現在の縫製業に従事しておられる方にとって有益な技術開発があるはずでございます。  そういう点につきましては、この研究組合のメンバーの中に、先ほど来ございました繊維工業構造改善事業協会というものを組み入れておりまして、これが随時成果の発表、普及というような業務をすることによりまして、部分的ではございましょうが、できるだけお役に立つ形で利用していただけるようにしたい、かように考えております。
  96. 渡辺嘉藏

    渡辺(嘉)委員 これはそのうちにできればいいというものでないことはおわかりのとおりですね。六十四年と銘打たれたわけですが、日本だけが縫製をやっておるわけじゃないものですから、他国と競争場裏にあるわけですから、できたものを一日も早く工業化のレールに乗せてやる、こういうことが必要でございますので、今、局長も全力を挙げる、こうおっしゃったわけですから、何とかひとつ全力を挙げて予算を獲得していただいて、ぜひこれを実行あらしめていただきたい、これは大臣にもよろしくお願いをいたしておきます。  それから、これと関連するわけですが、何といってもファッションはデザインと縫製で成り立ってくるわけですが、いいデザインができてもこれの縫製ができなければもうどうしようもないわけですから、そういうような意味で、岐阜はその一つ産地でございますので、岐阜では今、ファッション工科大学を昭和五十四年から調査に入りまして、その対策費を毎年組んでやってきたわけですが、これはなかなか四年制大学ということも大変だということで、今二年制の短大方式に切りかえようというところへ来ておるわけですが、こういうものに対して通産省としては、こういうファッション大学のような構想、これに対してどういうような支援指導考えていらっしゃいますか。
  97. 黒田真

    黒田政府委員 御指摘ございましたように、アパレル産業の振興という意味で、そういったデザイン等の面での人材の養成ということが極めて重要な要素であるということは私どもも理解をしているところでございます。  そのような見地から、実は五十四年度、前回のこの法律延長審議をいただきましたときに、先ほど来たびたび出てまいります繊維工業構造改善事業協会というところにアパレル産業振興センターというようなものを設けまして、ここで各種の人材育成用の教材というようなものをつくり出すという形で、アパレル産業が行っております人材育成に協力をするというふうなことを従来行ってきたわけでございます。  これをいろいろな学校をつくったらどうだというようなことになりますと、なかなかこれは文部省等との関係もあるかと思うわけでございますが、何と申しましても、これは上からお上がつくり上げるというような官主導型でデザイナーを養成するというよりは、やはり民間の自発的なものからそういった創造力豊かな人材が育ってくるというような性格のものだと思うわけでございまして、ひとつ産地の方々の御努力でそういうようなものの芽が出ていけば、おのずからそれが育っていくというようなことがアメリカ等の場合の事例のようでもございます。したがいまして、とにかくそういうものを発足させていくというようなことが肝要なのではないだろうかというふうに考えているわけでございます。
  98. 渡辺嘉藏

    渡辺(嘉)委員 時間が余りありませんので飛ばしますけれども、もう一つ聞いておきたいわけですが、今も、上からそういうものをつくるのでなくて、下から産地企業努力そのものを含めてやってくる、僕はこれはもうみんなやっておると思うのです。またやっております、現実に。やっておらなんだら今ごろつぶれてしまっておるわけですね。やっておるわけです。ところが大企業になりますと、これはやはり研究施設も人も持っておりますし、資金力もあるのです。ところが中小企業は、そういう研究をやっておりますと研究のためにつぶれてしまうのです。これはおわかりいただけると思うのですね。  だから、どうしてもここで共同組織によるそういう研究を助長するということを考えてやらなければいけないんじゃないか。共同職訓がある程度成果を上げたように共同研究をさせる、こういうものに対して通産省が手を差し伸べてやる、こういうことが必要だと思うのですが、この点について、このファッション工科大学等をつくることにも支援をしてやっていただきたいとともに、そういう前提となる当面必要な、そういう共同研究システム等をつくらせて、ある程度これには半分くらい国、県、市で助成してやるというような仕方をしませんと、中小企業はとても今のような資金力あるいはまた知識、これではその研究のために経営そのものが悪化してしまう、こういう危険があるわけですが、この点について、アパレル縫製研究所等を産地で一体となってやらせるようなこと、これについてひとつ何か考え方がありますか。
  99. 黒田真

    黒田政府委員 産地構造改善計画を進められる過程で、一つの商品開発センターの一環として、今御指摘のような共同研究というものを行う場合には、これらに対して中小企業事業団の高度化融資の活用というものは行い得るわけでございます。  技術という点につきましては、先ほどの自動縫製システムというような意味合いで国も力を入れ、また中小企業関係技術開発のためには、産業活性化枠を設ける等の助成措置強化を今努力をしているところでございます。  他方、デザイナーというような、あるいは創造力の非常に要求されるような分野におきましては、必ずしも大企業の中で育った方々がすぐれたデザイナーになれるかどうか、これは非常に個性豊かな能力の要求される分野のようにも思われるわけでございまして、現在国際的に活躍しておられる方々の背景もそれぞれいろいろあろうかと思います。こういう方々を今後つくり出していくだけの能力が日本の社会にあるかという点は、先ほども指摘ありましたように、我々にとっても非常に大きな問題のように思いますが、少なくとも私どもといたしましては、基礎的な人材育成のために必要なカリキュラムにお役に立つような教材という程度のところまでは何とか取りそろえて応援をさせていただく、しかし、それ以後個々の方が伸びていかれるかどうかという点は、極めて自主性と申しましょうか、個性の生かされる分野の大きいというのがデザイナーの養成について言えば言えるのではないだろうか、かように考えるわけでございます。
  100. 渡辺嘉藏

    渡辺(嘉)委員 この点は突っ込んでおりますと時間がありませんので、これからもまた長いおつき合いをいただくわけですから、その間に逐次お願いしていくつもりです。  そこで、次に公取委員会にちょっとお伺いしたいわけですが、三越で押しつけ販売が問題になったわけですが、現在スーパー、商社等に対して衣料品、繊維等を納品しておる業者に対して、それらのスーパー、商社が持っておりますいろいろなものを押しつけ販売をいたしておる事実があるわけなんですが、そういう点、御調査されたことありますか。
  101. 奥村栄一

    ○奥村政府委員 百貨店とかスーパー等の大規模小売業者による押しつけ販売あるいは不当な買いただき等につきましては、先生ただいま御指摘のように三越百貨店の事件があったわけでございますが、それ以後につきましても、問題がある事案に接しましたときには個別的に是正をさせておりますし、それとともに社内的に自主規制基準といったものを作成させるなどいたしまして、再発防止のための措置をとらせているわけでございます。  また業界団体に対しましても、五十四年に押しつけ販売などにつきまして自主規制基準を設定いたしておったわけでございますが、それをさらに五十七年には強化改正をいたしまして、これに基づいて業界団体の方はそれぞれ会員の指導をいたしておるわけでございます。公正取引委員会といたしましても、この基準の的確な運用によりまして、不当な行為が排除されるよう指導に努めているわけでございます。  なお、先生おっしゃいますように、もし具体的な事実がございますれば、また私どもの方でも具体的な事実に接しました場合には、当委員会といたしまして、従来と同様是正を図っていくというふうに考えているわけでございます。
  102. 渡辺嘉藏

    渡辺(嘉)委員 これは岐阜で起きておるわけなんですが、スーパーのニチイだとか、あるいはまた商社のオンワード樫山とか、その他大体全部ですけれども、これらが下請業者に対してあるいはまた衣料品の納品業者に対しまして、自分のところの持っております宝石であるとかニシンあるいはまたあんま器、羽根布団、子供服等々を売りつけるわけです。下請業者はまたこれを下請の縫製業者に押しつける。こういう下へ下へといういわゆる浸透が押しつけて行われておるわけです。だから、このあんま器なんかを見てみますと、十五万円したというんです。ところが町の電気屋に聞いたら、大体十二万で私のところは入れます、こう言う。こういうことが今まだ平然と行われておるわけなんですが、こういうことに対して、これは明らかに不公正な取引だ、こう思うのですがどうです。
  103. 奥村栄一

    ○奥村政府委員 先ほど申し上げましたように、そういう具体的事実がございますれば、もし詳細にお漏らしいただければ十分検討さしていただきまして対処してまいりたいというふうに思います。今先生御指摘だけの事実でございますと、ここですぐにお答えすることはちょっと差し控えさしていただきたいと思いますが、事実ございますればお漏らしいただきたいというように考えております。
  104. 渡辺嘉藏

    渡辺(嘉)委員 今申し上げた事実があるわけなんですが、こういう事実が現在、今申し上げたような宝石だとか、ニシンだとか、あんま器を買わされておるわけです。これはもう当然そういうことは排除していただかないと、それでなくてもアパレル業界は非常に苦しい中で今やっておるのに、その上にまた押しつけ販売までされたのではかなわぬわけですね。だからこの際、公取として垂れ込むといいますか、持ち込まれるまで待っておるという姿勢は僕は公取の姿勢じゃないと思うのですね。そういう影があった、においがした、そういう話が来た。僕は積極的に公取はそこへ飛び込んでいって、そして是正してやらないと、業者は後の仕返しが怖いものですから、なかなか訴状としておたくへ持ってこない。だから、この点を御理解いただくと、公取の任務というものは、持ち込まれたらやるんだ、そういうものじゃないと思うのですね。この点、公取の断固とした決意と今後の行政の姿勢をひとつお示しいただきたいと思います。
  105. 奥村栄一

    ○奥村政府委員 先ほどは積極的に申し上げませんでしたが、実はいろいろな情報がございまして、いろいろな角度からただいま調査をいたしておるわけでございます。それで、直ちに事件としてなるかどうかは別といたしまして、とにかく各方面、下請の問題、その他の関係からも調査をいたしてございますので、その結果によりましては当然いろいろな措置ができるということになろうかと思います。
  106. 渡辺嘉藏

    渡辺(嘉)委員 じゃひとつ十分御調査いただきまして、そして公取としての行政の指導監督、これをひとつぜひお願いをいたしたい。  それから、これは直接公取の事件とか事犯とか、そういうことで申し上げるわけじゃないのですが、現在でもそうなんですが、縫製業界は十年来工賃が上がらずに非常に苦しい状態である。ですから、今でも千五百円ぐらいする工賃のブレザーが七百円ぐらいで押しつけられる。あるいはまた七百円ぐらいでアウトサイダーでやると、全部それにならされるわけですね。そういう非常に厳しい状態。そして付加価値だけは高く要求される。さっきの多品種小ロットそして短サイクル。これはどこが負担しておるかというと、アパレル業界の縫製加工業者が労使で負担しておるわけですね。ですから、彼らの中身というのは大変な苦汗労働に陥らざるを得ないわけですね。ですから、工賃が横ばいで付加価値だけ要求される、こういうことに対しても公取としても何らかの指導、行政があってしかるべきではなかろうか、こう思うわけですが、どんなものですか。
  107. 奥村栄一

    ○奥村政府委員 親企業と下請との関係での工賃の問題、価格自体につきましては、その価格がそれぞれ競争によって、あるいは取引条件によって決まるわけでございますので、その価格によって直ちにどうこうということは申し上げにくいわけでございますけれども、その価格がいわゆる買いただきなり、不公正な取引に当たるような非常に著しい低価格であるというふうなことでございますれば、これは私どもの方の規制の対象ということでございますので、先ほど申し上げましたように、いろいろな側面で今調査もいたしておりますので、その結果いろいろな事実がわかれば、是正に努めてまいりたいというふうに考えております。
  108. 渡辺嘉藏

    渡辺(嘉)委員 時間もありませんので、それぞれの御答弁が実行されることを期待いたしまして、終わります。
  109. 梶山静六

    梶山委員長 日笠勝之君。
  110. 日笠勝之

    ○日笠委員 昭和四十九年にいわゆる新繊維法が制定されて十年になろうとしております。この十年間、二度のオイルショックとか最近の輸入の増大等、繊維業界にとっては大変厳しい対応を迫られてきたわけでありますが、この新繊維法のもとでの構造改善の評価といいましょうか、成果といいましょうか、先ほども大臣お触れになりましたけれども、もう一度御所見をお伺いしたいと思います。
  111. 小此木彦三郎

    小此木国務大臣 お答えいたします。  繊維工業構造改善臨時措置法に基づく構造改善によりまして、徐々にではございますけれども、高度化する消費者ニーズに対応した製品を供給し得る体制が形成されつつあることば御存じのとおりでございます。第二次石油ショックに伴う不況に見舞われまして、多くの繊維事業者が前向きの構造改善に取り組む余力がなかったこともありまして、繊維工業全体としては構造改善が必ずしも十分に進捗していないのでありますけれども、異業種連携による知識集約化という現行改善の方向は正しいものといたしまして、私どもは評価いたしております。
  112. 日笠勝之

    ○日笠委員 具体的に数字の面から見てみたいと思うのですけれども、この十年間、知識集約化事業また施設の共同化事業による構造改善を推進してきたわけでございます。その進捗状況というものは、所要資金が総額七百二十二億円、うち中小企業事業団からは四百四十八億円融資されております。その融資でございますけれども昭和五十六年は八十億円の枠で貸し付け決定が三十六億円、五十七年は同じく八十億円に対しまして六十六億円弱。今年度はまだ統計がまとまっていないと思いますけれども、せっかくこういう融資枠をしっかりと確保してくださっておりましても、五十六年度では四五%、五十七年度では八二%という状態でございます。この点、どういうふうな原因でこうなったのでしょうか、お伺いをしたいと思います。
  113. 黒田真

    黒田政府委員 前回、五十四年にこの法律改正延長していただきまして、構造改善事業計画というようなものを作成する条件について緩和をしたわけでございます。しかしながら、今御指摘がございましたように、用意した枠に対して実績が若干すき間があるというのはそのとおりでございまして、これは五十四年の第二次石油ショック以後の非常に深刻な不況によりまして、繊維工業も非常な打撃を受けました。そのために、多くの繊維事業者が当面の問題に目を奪われ、あるいは長期的な構造改善の必要性は理解しつつも、それに取り組む余力が乏しかったというようなことを主として反映するものだと考えるわけでございます。  そのような見地から申しますと、最近若干明るい景況も見えてまいりましたし、また昨年のビジョンづくり等を通じて、繊維事業者の間にも構造改善に積極的に取り組むという機運が大変高まっておるというふうに考えますので、もう少し高水準で推移をするのではないだろうか。最終的なあれはございませんが、五十八年あたりは相当高水準の融資が行われる、かように考えております。
  114. 日笠勝之

    ○日笠委員 次に、構造改善事業の参加企業は一万六百四十九社、十五万繊維製造業者から見れば七・一%、従業員数が十万一千八百八十で、これも百四十万と言われる繊維製造業の従業員数から見れば七・二%。もっとも流通段階まで含めました事業総数は三十七万と言われ、従業員は二百五十二万と言われておりますので、これを見ますれば二・九%、また四%と非常に低率ではないかという声もあります。これにつきまして、当初の期待と比べましてこの実績、この構造改善の進捗状況というものについてどのようにお考えでございましょうか。
  115. 黒田真

    黒田政府委員 全体的に見まして、構造改善の進捗というものが当初の期待に比して必ずしも十分とは言えないというような評価は一応マクロではしているわけでございます。その際に、確かに、法律に基づきます構造改善事業計画というものが承認されて、それに基づいて各種の財政措置が講ぜられるという意味におきましては、今御指摘のような全体の中の数字としてはパーセンテージは非常に低いわけでございますが、私ども、全体的に構造改善事業計画に乗っただけの、非常に低い数字のところだけがこの法律に基づく構造改善推進の結果であったかというと、それは必ずしもそうではないのでありまして、やはりいろいろな意味での垂直異業種間の連携、実需により直結をし得るような知識集約化を進めるという機運は業界の中に非常に高まっておりまして、その結果、付加価値の高い商品というものが出回る、あるいは輸出においても意外にといいましょうか、予想外の健闘が行われておるというようなことでございますから、十分かと言われれば十分ではなかったかもしれないけれども、その比率は二%とか四%とか七%というような比率で示されるように低いものではないわけでありまして、そういう構造改善事業計画に乗られた方々は一つのモデルといいますか、典型例でございまして、そういう考え方業界に深く浸透したという意味においては、この法律の過去十年間に果たしましたある意味での誘導的な役割というものは極めて大きいものがあった、かように考える次第でございます。
  116. 日笠勝之

    ○日笠委員 この知識集約化事業を進める必要条件は、商品開発センターの設置、これは事業協会発行の手引にも載っておりますけれども、実際問題として、この商品開発センター通産省のお考えのように十分機能していない。中には二千万、三千万という年間の人件費も非常に大変である、こういうところもあるやに聞いておりますけれども、この辺の今後の対応といいましょうか、指導といいましょうか、どのようにお考えでしょうか。
  117. 黒田真

    黒田政府委員 今後の先進国型と言っております先進国の持つポテンシャルを生かした新しい繊維産業というものに対応いたしますためには、ハード面、いわば設備面でのある水準、技術というものが要求されますと同時に、やはりソフト面での、知識集約化という言葉で私ども言っておりますが、商品開発への対応というものを欠かすわけにはいかないわけでございまして、確かに従来の商品開発センターというものが十二分に所期の効果を上げていたかという点については、私も、いろいろな批判といいましょうか、反省の声を聞くわけでございます。そういうような過去の実例を踏まえながら、基本的に方向として間違っていないわけでありますから、そういう考え方が生かされるような、役に立つ商品開発センター事業というものが今後うまく機能し、発展していくというふうに指導したいと思っております。     〔委員長退席、渡辺(秀)委員長代理着席〕
  118. 日笠勝之

    ○日笠委員 さて、また今回この新繊維法の五年延長をするわけでありますけれども、この五年間の具体的なグルーピングのグループ数といいましょうか、また転廃業をどれぐらい見込んでおるとか、また共同廃棄はどれくらい計画しておるとか、こういうような目安というものはあるんですか。
  119. 黒田真

    黒田政府委員 具体的な数字で申し上げますような意味での目安というものを私どもは現在持ち合わせてはおりません。しかし現在、各産地ごとに、産地の今後の五年間の構造改善を含む産地全体のあり方というものを産地ビジョンと呼んでおりますが、こういうものの検討が進められておるわけでございまして、そういうものがある成熟度をもって提出されましたならば、その時点で将来をもう少し具体的に見通すことはあるいはできるかとは思いますが、現段階で特別の数字を持ち合わせておるわけではございません。
  120. 日笠勝之

    ○日笠委員 その産地ビジョンでありますけれども、後で触れますけれども、いわゆる設備登録制、こういうようなものが通産省のお考えがはっきりしなければ、産地ビジョンの作成もできないという声も先日こちらでの参考人の方からの御意見もありました。そういう意味で、産地も総合ビジョンをつくるのに非常に厳しい面がある。このような意見が先日もあったわけでありますけれども、この点はあくまでも自発的、自助努力ということで、いわゆる産地の自発性を待つ、通産省の方から何らかの目安といいましょうか、球を投げるというようなことはないんでしょうか。
  121. 黒田真

    黒田政府委員 現在日本の繊維産業全体が一つのチャレンジを受けている、そして、その中から生き抜こうとしておるわけでありますが、同時に私は、各産地それぞれに、同じ業種のもとでありましても異なった産地間で競争関係にある、そして、うまく対応しているところと対応に問題のあったところには格差が生ずるということが、もういや応なしの現実の課題となっているわけでありまして、私は、そういう意味で、それぞれの産地におかれましては、自主的な努力として、その産地の将来のあるべき方向というものをみんなで相談をしながら、それを実現していこうという気分は既に十分に盛り上がっているというふうに考えまして、さらにここで通産省が何か後押しをしたり、球を投げるというようなことを行うことなしに、自発的なビジョンづくりというものが進められていると私は理解しております。
  122. 日笠勝之

    ○日笠委員 もう少し具体的に聞きますと、いわゆる設備登録制というものを抜きにした、また産地業界団体の総合ビジョンをつくるべきだ、このようにお考えなんでしょうか。
  123. 黒田真

    黒田政府委員 昨年のビジョンづくりの過程で登録制をめぐる議論がいろいろございました。ただし、その取り上げ方が、登録制というものを切り離して、登録制それ自身をめぐるメリット、デメリットというような形で議論がややされ過ぎたというふうなことが、私は反省をしておるわけでありますが、どうもその延長線上のような議論が一部にございまして、そこがはっきりしないとビジョンもできないというような形で意見が一部述べられたことも事実でございますが、私は必ずしもそうは思わないのでありまして、やはり産地がどうあるかということは、その産地自身が考えるわけで、その産地ビジョンの中でそれぞれの組合の役割というものがおのずから決まってくるし、また産地の秩序というものも決まってくる、そして、その一つの要素として、登録制というようなものへの取り組みも、もう少しはっきりした形で浮かび上がってくるというような関係に立つものだ、かように考えております。
  124. 日笠勝之

    ○日笠委員 確かに昨年の織工審と産構審の答申が出ました後、各新聞社の社説は一様に、この登録制については批判的な記事が出ておったと覚えております。この登録制については、公取の方にも、恐らく不況カルテルということで大変な長年続いた制度ということで、近代化を損なう、こういうようなことで厳しい指摘もあることは伺っております。問題は、この登録制について業界へのリーダーシップをとるのはやはり通産省ではないかと思うのです。そういう意味では、五十一年提言にもありながら、今日まで約十年間というもの、現実にまだその結果というものが、廃止になるのか存続するのかということも含めまして、はっきりしていない。その責任の一端は通産省にもあるのではなかろうか、こう思うわけでございます。  そこで問題は、将来これを廃止した場合どういう混乱が起きるのか。御存じだと思いますが、昭和四十八年でございましたか、編みレース業界が登録制を外しまして大混乱をいたしました。五十六年に再登録を開始した、こういうふうなこともありまして、登録制というものを、業界の方は最大の関心を持って見守っておるわけであります。  中曽根総理がいつも言うところの戦後三十八年の総決算、そういう意味でのこの登録制というものは、通産省がリーダーシップを持ってやっていかなければいけないのではないか、こう思うのですが、当然これは業界とのいろいろな一致点を見出さなければいけないと思いますが、大臣、この登録制ということについてはどうでございますか。
  125. 黒田真

    黒田政府委員 確かに登録制が非常に長く続いてきておるわけでございまして、繊維審議会の御意見というものは、既に五十一年の段階から廃止の方向は打ち出されておるわけでございます。あとは廃止に向けての段取りが問題だというのが現状のように私は理解しております。その具体的な段取りをめぐる議論について、いろいろな御提案が昨年の秋にもあったわけでございますが、そういうことでは必ずしも混乱が免れられないという産地の御意見等もございまして、審議会としては、この点についての具体的な結論はひとつ先送りにしよう、こういうことになったかと思います。  編みレースのケースを御提示になりました。これはいろいろもう少し深く研究もし、御説明をする必要もあろうかと思いますが、これはむしろ、当時の業界状況が登録制というものを維持することを許さないほどの非常な変化の時期でございました。ポリエステルの繊維が新しくレース地に使われて、レースの需要が爆発的に増加をするというような事態に、従来からありました設備制限をきっちり行うという趣旨を盛った登録制が機能しなくなったために、これは登録制という制限を撤廃をした。しかしながら、その後過当競争が起こり混乱があるという不況要件がまた発生をいたしましたので、その時点で新たな設備制限ということで登録制が導入された、こういうことだと思います。したがいまして、登録制をめぐりましてはいろいろな御議論が、具体的な段取りをめぐっていろいろな御議論もあるところでございますけれども、これはひとつ十分に業界の方々の御理解をいただくということが必要だということで考えているわけでございます。
  126. 日笠勝之

    ○日笠委員 大臣どうでしょうか。新聞の社説にも、通産省にその責任の一端がある、リーダーシップをとるべきだ、こういうふうに昨年の答申の出た後の社説にも出ております。各紙一斉にそういうふうに出ていたと私、記憶しておりますけれども、その点のお考えはどうでしょうか。
  127. 小此木彦三郎

    小此木国務大臣 いろいろ御議論はございますけれども、この昨年十月の繊維ビジョン答申では、今も局長が申し上げましたとおり、答申の結論が出なかったわけでございます。いわば継続審議となったわけでございますが、今後も業界の中で熱意を持って御議論いただく、あるいは答申の結論が出たところで私たちはそれに適切に対処してまいりたいと思います。
  128. 日笠勝之

    ○日笠委員 観点はまたちょっと変わりますけれども、昨年の十月のこの答申でございますが、先進国型産業への脱皮、転換といいましょうか、強く訴えられておるわけでございます。  先日、参考人の方もここでおっしゃられましたけれども、欧米と異なる先進国型産業ということを強調されたと思います。通産省考え先進国型産業というイメージ、アウトライン、こういうものはどのようなものであるか。私が答申を見て、また、先ほどからの御論議をお聞きしておりますと、恐らくいまだかつて他国に類を見ないような先進国型産業という意味に取れるわけでございます。と申しますのも、アメリカ、西ドイツ、フランス、イギリスというのは、繊維輸入の方が多いわけでございます。ただ、最近はアメリカ、西ドイツというところが高級アパレル分野が大変活力を取り戻して健闘しております。しかし、日本の場合は今もって全製品の四・七%ですか、輸出製品の四・七%は繊維製品であるというふうに、非常に健闘しておるわけでございます。ということは、他国に類を見ないような先進国型産業、こういうふうに私は答申を見、また先ほどの御論議をお聞きしながら感ずるわけであります。  そうなりますと、この答申の中に「国際分業の中で発展しうる真の国際的産業を目指すべきである。」こういうふうにあります。この点がどうも、アパレル産業以外のいわゆる川中と称する業界の方々が心配をしておるのは、いわゆる安い素材外国から輸入をする、それをもって高付加価値なものとか、アパレル産業としてのいわゆる差別化商品等々をつくって輸出をしていく。そうなると、川中のいわゆる中小工業の十団体の皆さんなんかはもろにその影響が出てくる。また、輸入も御存じのように近年非常な勢いでふえてきている、こういうふうな心配をされておるわけでございますが、通産省として考えるところの先進国型産業というもの、これは一体そういう方々の不安をどう取り除くか。先ほどの構造改善事業の中で開発センターをつくり、また、それをもとに新しい商品を、また技術開発していこうということは当然わかるわけでありますけれども、この点、国際分業と先進国型産業という関連についてどうでございましょうか。
  129. 黒田真

    黒田政府委員 先進国型産業という呼び名につきましては、ただいま先生御指摘ございましたとおりでございまして、他の先進国に類を見ないといいますか、先進国型産業ということによりまして、既にどこかの先進国に存在しているものにこれから追いかけていってなるというようなイメージを与えたといたしますと、ちょっとネーミングが悪かったということになるのですが、心は、先生のおっしゃるとおり、まさに、まだいずれの先進国も達成はしていないけれども、実は先進国あるいは先進社会が持っているところのいろいろな要素、それは極めて高い技術力技術のさらに開発力であり、また創造性を持った人材、非常に長くはぐくまれた文化の伝統、そして非常に深い、そして広い、厚いマーケットがそこに存在しているというような、いわば先進社会だけが持っているような、そういう要素を生かす、そういうポテンシャルといいますか、潜在力を生かすような産業があるはずだ、こういうようなことでございまして、やや抽象的なことでございますけれども、どうも我々がこのごろ衣服をまとうというこの世の中の状況を見ますに、確かにそれは暑いから薄い物を着るんだし、寒いから厚い物を着るということではございますけれども、同時に文化を着る、伝統を着るというような要素が非常に強くなっておりまして、消費者は単に機能面だけではなくて、もちろん機能面についても厳しい要求をいたしますが、ファッション性というようなものに要求をしている、そういうものにこたえ得る産業、かように考えるわけでございます。  そして、しからば国際分業との関係はどうだという点につきましては、確かに現在でも我が国輸出は、生産の三割ほどを輸出しておりますが、他方、マーケットの二割ほどは、これは従量ベースで申し上げておりますが、輸入品によって賄われております。こういった形で輸出入が相互にある程度そのレベルを高めていくというようなことは、一つの国際分業を達成するわけでございまして、この法律の趣旨にございますような異業種間の連携、垂直的な結合が進んでいきますならば、当然川下の製品メーカーというものは川中、川上に対して必要とする素材に対する注文というものがついてくるはずでございますので、そういう形で消費者のニーズに対応できる素材提供者というものは日本においても十分に生き残り得るといいますか、発展をし得る可能性がある、むしろ場合によっては輸出可能性もあり得る、かように考える次第でございます。
  130. 日笠勝之

    ○日笠委員 それに伴いまして、共同廃棄ということがどうしてもこの答申を見ましても目につくわけであります。円滑なる転廃業を進めていくということ、また、業界の皆さんはこの五年間で、いわゆる生きるか死ぬかである、ここまで強く決意をされておられるわけであります。昭和五十二年から五十六年まで約千八百億円近い融資を受け、約二割の設備を廃棄した、こういうふうになっております。成果は順調に上がっているのかどうか。昭和四十五年には事業所数が十五万と言われておりましたけれども、五十六年も同じく十五万。ただ、従業員数は百七十五万から百四十万ですか、三十五万ほど減っておりますけれども、いわゆる共同廃棄による転廃業の成果というものは今順調に上がっているとお考えでしょうか。
  131. 黒田真

    黒田政府委員 過去何回かにわたりまして、多くの業種設備の共同廃棄ということが行われたわけでございます。これは、その都度、非常に過剰になっている設備を処分することによって需給関係を改善しようというねらいに出たものでございまして、その実施の都度、計画に対する達成率というのは極めて高いわけでございますから、その限りでは意図した成果を上げてきたということは言っても間違いはないと思います。  ただ、しかしながら、そういうふうに繰り返し設備処理を行ってきたということが、あるいはきたにもかかわらず、なお今日過剰の問題が議論されているのはどういうことだろうか。事によると、それは繰り返し設備処理が行われるという期待が過剰をもたらしたのではないだろうかという大変厳しい御意見もあるわけでございまして、特に繊維業界についてだけ繰り返し設備処理を行うということについては極めて批判的な御意見があったことはビジョンにも記されているところでございます。私どもといたしましては、しかしながら、特に転廃業の発生の予想される新しい状況のもとにおきましては、やはり何らかの補完、支援措置が必要だということで、この制度をその面で活用するという余地を残したいというふうに考えているわけでございます。
  132. 日笠勝之

    ○日笠委員 転廃業する場合に、共同廃棄の基準というものはいわゆる残存簿価の三倍が建前でございますが、弾力的運用ということで再調達価格の半分、こういうふうになっておりますけれども、いわゆる再調達価格というのは昭和五十二年のまま現行に至っている。この間、標準織機といたしまして再調達するとすれば、百二十万から五十万といういろいろな説がございますけれども、こういうふうに、いわゆる弾力的運営で転廃業が円滑に進むということは、今後どのようにとらえていかれますでしょうか。
  133. 黒田真

    黒田政府委員 ただいまの価格については非常に皆さんの関心の深いところでございまして、いろいろな御要望があることは十分承知しております。今後計画をそれぞれ具体的に実施していく段階で、具体的な問題を詰めて決めていきたい、かように考えております。
  134. 日笠勝之

    ○日笠委員 業界の方々の不安を払拭し、円滑なる転廃業が進んでいくように、これはやはり弾力的にも考えて差し上げなければいけないのではないか、こう思います。  それともう一点、転廃業についてでございますけれども、転業、廃業された方々の追跡調査というものは通産省はお持ちなのでしょうか。
  135. 黒田真

    黒田政府委員 従来そういうことをやったということはないわけでありますが、御指摘のように、今後の転廃業の円滑化という観点で、そういった調査の必要性というものは十分考えておりますので、今後何らかの方法でそういう転換事例の研究というようなものを促進し、関係者へ紹介するというような方向考えさせていただきたいと思っております。
  136. 日笠勝之

    ○日笠委員 やはりこれから五年間で転業、廃業しようかという方にとりましては、過去の事例というものが大きな励みになると思うのです。そういう意味で、この追跡調査をし、ある程度皆さんに情報を提供するということ、これは転廃業を進めていく上で大きな一つの仕事にもなると思いますので、この点、ひとつしっかりと今後とも検討いただきたい、このように思う次第でございます。  続きまして設備リースの件でございます。  昭和四十九年から設備リースというものが業界において大変取り入れられまして、革新織機というのですか、革新機械が今非常に普及をしておる段階でございます。業界の皆さんの要望は大変強いものがあるわけですけれども、御存じのように、この評価の仕方、これが、いわゆる既存の共同施設の時価評価額というものがカウントする基準の一つにあるわけです。これが実は、特に土地の評価でございます。愛知県の知多というところと大阪南部、えらく地価が違うわけです。これが一つの基準になりましてリースの枠が決まるわけであります。基準が、知多と大阪南部ではえらく違うわけでございます。こういうものについて、カウントする基準を見直すというふうなお考えはございますでしょうか。
  137. 黒田真

    黒田政府委員 確かに、基準となります評価というものが地域によって非常に違っているということは事実でございます。しかしながら、考えようによっては、商品開発センターというようなものを設置いたします場合に、土地の価額が非常に高いという地域ではそれだけ負担が大きいわけでございますし、地価が低いということは、組合としての負担も少ないというふうにも考えられるわけでございまして、この商品開発センターに対する評価とリース枠を結びつけたということは、もともと繊維構造改善を進めるに当たって、設備の近代化とソフト面での努力がバランスのとれた形で発展すべきである、こういう考え方に出るものでございますので、商品開発センター運営あるいはその評価というものの大小をリース枠にリンクせしめているという私ども考え方を修正をいたしまして、そこに土地等についての割り増し等を行うということは、あるいは別の意味での不平等扱いというふうになってしまうのではないかというような判断でございます。
  138. 日笠勝之

    ○日笠委員 時間もありませんので、事業協会の業務について、今回も法律改正の大きな目玉になっておりますので、何点がお聞きしたいと思います。  この答申を読みましても、また先ほどからの議論でもそうですが、要は人材育成というもの、これが今後の日本の繊維産業の大きな眼目になってくる、魂にもなってくる、こういうことでございます。昭和五十四年の当委員会におきます附帯決議の中でも、この点については触れておられるところでございます。よって、人材育成ということについて協会が大変に御尽力をされておられるということは御案内のとおりでございますが、お聞きしますと、大体三億円を基金とし、その運営益が二千万から二千五百万、人材育成という大変大切な事業の割には少々少ないような気も私はするのですけれども、局長どうでしょうか。
  139. 黒田真

    黒田政府委員 現在繊維工業構造改善事業協会におきまして人材育成ということをうたいとげているわけでございますが、そのやっております中身は、まさに人材自身を育成しているというよりは、その人材育成をされる方々のための教科、カリキュラムというようなものをつくりまして、教材を提供するというような若干間接的な関与の仕方でございます。  二千数百万円というオーダーが多いか少ないかということでございますが、やはりそういった立派な教科書をつくるにはある程度の時間も人手もかかりますので、そう一遍にそれを大量につくるわけにもいかないということで、既に五年間を経過いたしまして何冊かの蓄積もできておりまして、これが現在の事業の内容に比べまして非常に不足しているというふうには必ずしも考えてはおりません。
  140. 日笠勝之

    ○日笠委員 不足してないというふうな御意見でございましたけれども、やはり人材育成事業の実施というもの、いろいろと報告書をいただいておりますけれども、大変多岐にわたって仕事をしておられます。  そこで、民間出捐金というもの、一億五千万ほどで一応この人材育成基金が成り立っておるわけでございますけれども、どちらかというと川中の方の出捐金が多いようでございます。いわゆるアパレル産業といいましょうか、こういう方の出捐金がそんなにないんじゃないかというお話もお聞きしておりますけれども、この際充実ということで、アパレル産業業界の皆さんにも出捐金をお願いをして、この基金をさらに充実をしていく、それが先進国型産業を目指す日本の大きな役目にもなってくると考えるのですが、その点いかがですか。
  141. 黒田真

    黒田政府委員 アパレル関係の人材育成基金につきましては、国が一億五千万円を拠出しております。これに対して、民間の関係の出捐は合計一億五千三百万円という額になっております。このうちアパレルの関係の団体及び企業からの出捐分は七千九百万円ということでございますので、半分ちょっとということかと思います。これはアパレルの人材なんだからアパレル屋が出せばいいというような御議論もあるかと思いますが、同時に、それを通じて川中、川上、日本の繊維全体のレベルを引き上げていくという働きもあるわけでございまして、なかなか業界間の割り振りというのは微妙な問題もいろいろございまして、直ちに私ここで、アパレル屋さんの出し方が低過ぎるとか、十分だとかいう点については申し上げにくいような要素もございます。しかし、現在ございます資金を最大限に活用いたしまして、できるだけ質の高い教材というようなものをつくり出すべく現在努力しておるところでございます。
  142. 日笠勝之

    ○日笠委員 同じくこの報告書の中には、「構造改善事業促進」というところに、「二百十名の登録指導員を中心に広く構造改善に関する情報交換を行い、」云々とありますけれども、現実に何名かの登録指導員の方にお聞きしましたけれども、年一回書類配付を受けるだけだ、こういうふうな方が何名かいらっしゃいますけれども、実際に登録指導員という方はどのような活動、活躍をされておられるのでしょうか。
  143. 黒田真

    黒田政府委員 これは、十年前に法律ができましたときには、七十五名ほどの方に指導員ということでお願いをしておりました。五十四年の改正産地組合構造改善指導においていろいろ大きな役割をしていただこうということになりましたので、そのときに二百十名というふうになったわけでございますが、大体その産地組合理事者の方あるいは事務局の責任者というような方たちにそれぞれお願いをしておるわけであります。したがいまして、その産地について問題といいますか、そういう構造改善への要望が出てまいりますと、その方々が活躍の余地が出てくるという関係にあるわけでございまして、二百十人の方が常時一斉にフル稼働をしておるという性格ではもともとないと言わざるを得ないかと思っております。  しかしながら、実際にその構造改善を進めるという点につきましては、既に相当長い経験が積み重ねられておりまして、たとえば繊維工業構造改善事業協会の中には指導相談室というものがございまして、ここでは常時いろいろな御相談を承るということで繁盛をいたしておりますし、また、それぞれの繊維を持っておられます都道府県の段階でも、構造改善指導委員会等の従来の活動の経験を通じましていろいろなノーハウが蓄積をされております。そういった窓口でいろいろな御相談が行われているということが現状だと理解しております。
  144. 日笠勝之

    ○日笠委員 では、最後にちょっとまとめてお願いをしたいと思うのです。  いわゆるワールドファッションフェア研究懇談会というものができたと新聞で見ましたけれども、これは生活産業局長の私的諮問機関になるのでしょうか。これが一つ。  それと、現状はこのワールドファッションフェアファッションコミュニティーセンターの構想は現実にどこまで進んでいるのか、どこまで掌握されておりますか。  それから、特にファッションコミュニティーセンターの候補地は東京に限るというふうな感じもするのですけれども、それは別に東京でなくても、横浜とか千葉とか、こういうところであればいいのでしょうか。現実にそういう候補地が名のりを上げているかどうか、上げたとしてもそれは東京に限るというふうになるのでしょうか。  この三つ、ちょっと時間がありませんので、まとめてお願いします。
  145. 黒田真

    黒田政府委員 実は、五十九年度の予算要求の中で、国際化対策研究費というものをお願いしているわけでございます。これが成立いたしましたならば、この予算を利用いたしまして、私どもといたしましては、生活産業局長の私的諮問機関というようなものを設けましていろいろ研究活動をしていきたい、今先生御指摘の、機関と申しますか組織は、予算の成立を待って正式に私の私的諮問機関が発足するわけでございますけれども、それまでの時間を有効利用しようということで、とりあえず事業協会のベースで一つの組織をつくりまして事前勉強を始めたということでございます。  私どもといたしましては、この予算を有効に使って、五十九年度を通じて業界のコンセンサスをつくり上げていこうということでございます。どういうものをつくるかというあたりからいろいろ御意見があるわけでございまして、さらに、それをどこの場所につくるかということになりますと、各地から非常な御要望もございまして、既にある地区では誘致促進協議会をつくろうというようなことを言っておられるところもあるようでございますが、私どもといたしましては、まずどういう入れ物なんだろうかということを皆さんに十分御審議いただく、そして、それにふさわしい場所を次に考えていく、そして、ある種の議論の中から言いますと、それはもう唯一一つだけのものであるということになるのか、一つの中心と、またその衛星的組織というふうにだってなるのではないかというようなこともあるわけでございまして、この新しくできます、予算の成立の暁にいたしたいと思っております私的諮問機関で、そういう点も含めて御検討いただきたい、かように考えております。
  146. 日笠勝之

    ○日笠委員 では、終わります。
  147. 渡辺秀央

    渡辺(秀)委員長代理 次回は、来る四月三日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時五十一分散会