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1984-03-28 第101回国会 衆議院 商工委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年三月二十八日(水曜日)     午前十時開議 出席委員   委員長代理理事 渡辺 秀央君    理事 浦野 烋興君 理事 田原  隆君    理事 森   清君 理事 城地 豊司君    理事 水田  稔君 理事 長田 武士君    理事 宮田 早苗君       甘利  明君    尾身 幸次君       奥田 幹生君    加藤 卓二君       粕谷  茂君    木部 佳昭君       岸田 文武君    高村 正彦君       仲村 正治君    野上  徹君       原田昇左右君    古屋  亨君       奥野 一雄君    後藤  茂君       中村 重光君    浜西 鉄雄君       横江 金夫君    和田 貞夫君       渡辺 嘉藏君    木内 良明君       中川 嘉美君    日笠 勝之君       福岡 康夫君    青山  丘君       横手 文雄君    小沢 和秋君       野間 友一君  出席政府委員         通商産業省生活         産業局長    黒田  真君  委員外出席者         参  考  人         (名古屋大学経         済学部教授)  瀧澤菊太郎君         参  考  人         (日本綿スフ織         物工業連合会会         長       池治 一見君         参  考  人         (日本ニット工         業組合連合会理         事長)     伊藤 忠夫君         参  考  人         (ゼンセン同盟         常任中央執行委         員)      野口 敞也君         参  考  人         (日本繊維産業         労働組合連合会         中央執行委員         長)      池田 友次君         商工委員会調査         室長      朴木  正君     ――――――――――――― 委員の異動 三月二十八日  辞任         補欠選任   日笠 勝之君     坂井 弘一君 同日  辞任         補欠選任   坂井 弘一君     日笠 勝之君     ――――――――――――― 三月二十七日  電気災害防止に関する陳情書  (第一五二号) は本委員会参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  繊維工業構造改善臨時措置法の一部を改正する  法律案内閣提出第三〇号)      ――――◇―――――
  2. 渡辺秀央

    渡辺(秀)委員長代理 これより会議を開きます。  委員長所用のため、委員長の指定により理事の私が委員長の職務を行います。  内閣提出繊維工業構造改善臨時措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本日は、参考人として名古屋大学経済学部教授瀧澤菊太郎君、日本線スフ織物工業連合会会長池治一見君、日本ニット工業組合連合会理事長伊藤忠夫君、ゼンセン同盟常任中央執行委員野口敞也君及び日本繊維産業労働組合連合会中央執行委員長池田友次君、以上五名の方々の御出席を願っております。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。本委員会におきましては、目下繊維工業構造改善臨時措置法の一部を改正する法律案について審査を行っておりますが、参考人各位におかれましては、本案について、それぞれのお立場から隔意のない御意見をお述べいただき、今後の審査参考にいたしたいと存じております。  なお、議事の順序でございますが、最初に御意見をそれぞれ十分程度お述べいただき、次に委員の質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。  それでは、まず瀧澤参考人にお願いいたします。
  3. 瀧澤菊太郎

    瀧澤参考人 名古屋大学瀧澤でございます。私は、繊維工業審議会におきまして、今回の法律改正のベースとなりました答申の取りまとめに参加した者の一人として意見を申し述べさせていただきます。  まず、法律案のバックグラウンドとして、繊維産業の将来性をどう考えるかという基本的な認識について述べさせていただきます。  繊維産業につきましては、これまで先進工業国では斜陽産業であるとか衰退産業であるという悲観的な見方が一般になされておりました。確かに近代工業の歴史を世界的に振り返ってみましても、また、我が国繊維工業が近年になって発展途上国から激しい追い上げを受けているという状況を見ましても、我が国を初めとして先進工業国繊維産業が苦しい状況にあるということは事実であります。しかし、先進国繊維産業には本当に将来性がないと言えるのであろうか、これが今回の審議における最大のテーマだったのであります。  審議会におきまして我々が到達した結論は、我が国繊維産業は決してお先真っ暗な衰退産業ではなく、今後の努力次第では十分に発展可能性があるというものでありました。先進国には先進国のみが持つ潜在的な強みがございます。例えば高い工業技術力や、すぐれた文化的創造性、それらを担う質の高い人材の豊富さ、また質的に高度で巨大なマーケットの存在などがそうでございます。これまでの繊維産業は、どちらかといいますと、生活必需的なニーズを満たす労働集約的産業あるいは賃金の低さが強みとなる発展途上国型産業という性格が強かったと思います。しかし、今後の努力次第では、前に述べました先進国のみが持つ潜在力を生かした産業、つまり生活文化的なニーズを満たす情報技術集約型産業、いわば先進国型産業として発展する可能性があるということであります。  しかし、反面におきまして、需要の量的な伸び悩み発展途上国との競合の激化など、我が国繊維産業をめぐる内外環境は今後ますます厳しくなると予想されております。このため、ただいま申し上げましたような発展可能性があるにいたしましても、すべての繊維事業者現状のままで事業を継続することは極めて困難となりつつあると考えざるを得ません。  そして、生き残り得るかどうかということは、このような内外環境変化に積極的に取り組み、適切に対応し得るかどうかにかかっていると考えられます。したがいまして、これらの点で対応力の乏しい事業者は、企業規模の大小にかかわりなく転廃業を余儀なくされるであろうというのが繊維関係者の一致した見方となっているのであります。  次に、審議会では、以上のような基本的認識を踏まえまして、今後の構造改善をどう進めるかについて検討いたしました。  御承知のとおり、現行構造改善事業は単なる設備近代化スケールメリットの追求に重点を置いた従来の構造改善のやり方ではとても高度化する国民ニーズにもこたえられず、また発展途上国追い上げにも対処できないということで、昭和四十九年以降繊維工業知識集約化を目的として異業種間の垂直連携により商品企画力技術開発力などソフト面強化を図ることに重点を置きまして進められてきております。  この十年間を顧みますと、この繊維工業構造改善臨時措置法に基づき、あるいは事業者自主的努力によりまして、多様な垂直連携グループが形成されてきております。そして、このような連携のもとで開発された高付加価値品中心にいたしまして輸出が健闘し、また高度化する消費者ニーズにもこたえられるようになってきております。この意味で、これまでの構造改善の考え方や方向は正しいものであったというのが審議会の評価でございます。  しかし、この間の内外環境変化は予想を上回る厳しいものでございました。特に昭和五十四年には構造改善要件緩和を行いつつ、法律の五年間延長がなされたのでありますが、その直後に発生いたしました第二次石油ショックのため、多くの繊維事業者は目先の経営改善に追われて、前向きの構造改善に取り組む余力に欠けていたことも事実でございます。このため、先ほど申し上げましたような成果も、徐々には出てきてはおりますが、繊維工業全体として見ますと、構造改善進捗状況はなお不十分であるというのが現状でございます。  これらの、いわば残された課題に加えまして、最近では需要高度化に伴う多品種少量短サイクル化という事態に供給面でどう対処していくかという新しい課題も出てきております。これらの課題を克服いたしまして、先ほど述べましたような先進国型産業へと転換していくためには、異業種間の垂直連携によって知識集約化を図るという現行基本的枠組みのもとで構造改善を進めることが最も有効かつ適切であると考える次第でございます。  以上の点から審議会では、現行枠組みを維持しつつ、繊維工業構造改善臨時措置法をさらに五年間程度延長し、構造改善の円滑かつ急速な進捗を図るべきである旨政府答申した次第でございます。  なお、既に触れましたように、今後の繊維産業発展のかぎを握るものは技術であると考えております。したがいまして、この法律に基づく構造改善制度運用面についてはもちろんのこと、この制度以外の施策面につきましても、技術開発や導入にインセンティブを与えていくことが極めて重要だと考えております。  以上、構造改善事業制度につきまして意見を申し述べたのでございますが、次に、この制度とは一応別の二、三の問題につきまして一言申し述べさせていただきたいと思います。  一つは、転廃業問題でございます。今後の厳しい内外環境のもとでは転廃業を余儀なくされる事業者も相当ふえるのではないかと見られておりますが、繊維工業では産地性が強く、雇用者数も多いので、こうした転廃業増加に伴う混乱をいかに防止するかが重要な課題でございます。転廃業につきましては、中小企業転換臨時措置法を初め、いろいろな制度があると聞いておりますが、繊維産業特有の困難さや対策緊急性を考えますと、これらの既存制度の活用に加えまして、何らかの補完的措置が必要であると思われます。  もう一つは、中小企業団体法に基づく設備登録制の問題でございます。  この問題につきましては、量的成長時代には有効であったにしても、現在のような質的成長時代には有効性が失われているのではないかという問題点や、過去長期にわたって実施されてきたことに伴う弊害が出てきているのではないかという問題点が従来にも増して強く指摘されておりますが、他方で、この制度実施している業界では、業界産地組織混乱するので引き続き維持すべしという強い意見もございます。  この問題につきましては、昭和五十一年の繊維工業審議会のいわゆる提言で、「できるだけ早期に延長を停止すべきである。」との基本的方向が示されておりますが、今回の審議では、その基本的方向を踏まえた上で、混乱を回避しつつそれをどう具体的に進めるかが検討されたのであります。そして具体的な提案もなされたのでありますが、業界では、これについての具体的な議論の浸透や進展がまだ十分でないという事情のため、昨年十月の時点で結論を出すのは尚早であるとして、今回の答申では継続審議となった次第でございます。  具体的な結論はなお今後の審議にゆだねられているわけでございますが、これまでの審議を通して私が強く感じましたことは、登録制に対する批判繊維産業の将来を懸念する立場から強く出されているという点でございます。すなわち、需要構造変化技術革新が急速に進み、国際競争がますます激化するという時代対応できるような先進国型産業への転換が求められている、こういうときに、この登録制のような現状固定的な制度を長く続けることは、新たな発想に基づく新たな対応を困難にし、せっかくの新しい発展機会を逸することになるのではないか、こういう懸念の立場からの批判が強くなっているということでございます。  最後に、一言つけ加えさせていただきます。  今回の審議全般を通して私が最も強く感じましたことは、技術革新国際化という新しい時代の波が我が国経済社会全体に押し寄せている中で、繊維産業だけがひとり例外ではあり得ないという点でございます。これまで繊維産業につきましては、他の中小企業施策を上回る措置がとられてまいりました。しかし現在では、かつて高度成長を支えてまいりました他の多くの産業でも厳しい産業調整を余儀なくされております。  繊維産業関係者はこのことをよく認識をして、イバラの道を自分の手で切り開くという自助努力を、これまで以上に積み重ねてほしいと思っております。そのような真剣な自助努力の積み重ねなくしては、繊維産業に対する特別の対策を引き続いて講じていくことについての国民の理解と合意を得ることができないのではないかと思っている次第でございます。  以上で私の意見陳述を終わらしていただきます。ありがとうございました。
  4. 渡辺秀央

    渡辺(秀)委員長代理 ありがとうございました。  次に、池治参考人にお願いいたします。
  5. 池治一見

    池治参考人 私は、日本綿スフ織物工業組合連合会理事長池治一見でございます。  衆議院商工委員会の諸先生には、常日ごろ私ども業界の振興につき温かい御指導、御援助を賜っており、この機会に厚くお礼を申し上げます。  また、本日は、大変御多忙の折から、諸先生方に、私ども構造改善を初めとする諸問題に対しましての意見を聞いていただく機会をつくっていただき、まことにありがたく、厚く感謝申し上げます。  さて、本日は、繊維工業構造改善臨時措置法の一部を改正する法律案についての意見を述べよとのことでございますが、私ども業界現状を御報告申し上げて、業界の深刻な窮状打開に対し適切な御配慮をお願いいたしたいと存ずる次第でございます。  まず、構造改善臨時措置法の一部を改正する法律案でございますが、これはぜひとも、原案どおり一日も早く国会を通過させ、成立させてくださいますことをお願いいたします。  御高承のとおり、私ども綿スフ織物業界は四十二年より構造的不況体質改善を図り、加えて発展途上国との国際競争力に打ちかつため、産地組合主導型の構造改善実施し、設備近代化取引改善に予期以上の成果をおさめたのでございます。例えば織機の自動化率を見てみましても、倍近い増加を見ました。  同法は四十九年の法律改正で、異業種、異工程間の垂直連携を進め、知識集約化を図ることをもって一層構造改善を進めることにし、五十四年に再延長の上現在に至り、本年六月末をもって期限切れとなるのでございます。  しかしながら、この間二度にわたるオイルショックに端を発した内需景気の極端な低迷、急激な輸入増加による深刻な不況のため、自己の経営を維持するのが精いっぱいであったこと、加えて垂直型構造改善への取り組みにくさもあって、最近まで同法による利用例が少なかったのでございますが、五十四年に法律の一部改正運用弾力化が図られたため、産地一括型による知識集約化構造改善もようやく一部の産地実施したのでございます。当業界では六十二産地のうち八産地しか実施してないのでございます。  昨年十月の織工審答申に、今後の私ども繊維業界環境は、発展途上国追い上げ先進国保護貿易の拡大、また国内需要停滞等まことに厳しいものがあります。  私ども業界自身がこれらを克服するため、あらゆる面で構造改善をしなければ、永久に立ち直ることは不可能になると思われるのでございます。構造改善をするにも、私ども中小企業は大企業に比し資金調達力が乏しいこと、また調達ができましても金利等で大変不利であります。このため私どもは、今回の法律案に基づき早急に構造改善を推進しなければならないと考えております。本改正案を一日も早く成立させてくださいますことをお願い申し上げます。  なお、私ども中小零細企業でありますので、本改正法律実施の際には、だれにもなじみやすいものであり、また実施しやすいものにしていただきたく、今後の運用改善をお願い申し上げる次第でございます。  次に、このような厳しい状況の中で、私ども業界では事業を維持していくことが困難で、やむなく転廃業を考える企業が数多く見受けられます。したがいまして、これらの転廃業を円滑に推進するためには設備共同廃棄事業の早急な実施が必要であると思います。この際、転廃業対策でもありますので、中小企業事業団並びに都府県資金の確保及び買い上げ価格引き上げ等措置について格段の御配慮をお願い申し上げる次第でございます。  次に、設備登録制についてお願いでございますが、御承知のとおり、設備登録制は、中小零細企業である繊維業界が、その構造的不況を克服し、零細過多性による過当競争を排し、安定した経営を維持するため、工業組合組織し、団体法の定めるところにより適正に実施し、業界基盤となっておるものでございます。  しかるに、今回の織工審審議過程において、この制度は三十年の長期にわたっておること、また、現在の構造改善実施を阻害しておるとし、もはや存続必要性がないものとして一部廃止方向も出てきております。  これに対し、私どもは、登録制廃止中小繊維工業のせっかくの組織が崩壊するとして、特に登録制実施しております十工連が一致協力し、国会請願通産省等にその必要性を強力に訴え、その結果答申には盛り込まれないことになりました。しかし、この問題はまだまだ今後大いに尾を引くものと思っております。  私ども多数の中小繊維工業経営の安定を維持していくには、強い組織化を図り、産地組合中心として生産調整事業構造改善金融等安定事業を推進していく必要があり、この組織強化安定事業基盤となっているのが設備登録制なのでございます。今後ますますその必要性が増すと考えられ、その存続につきましては今後十工連が全力を傾注する覚悟でございます。よろしくこの点を十分御理解くだされ、何分の御支援を引き続きお願い申し上げます。  最後に、輸入問題についてお願い申し上げます。  最近、綿織物原料高製品安、内需不振と国内市況が低迷しておるのでございますが、綿織物輸入は本年に入っても一月は三千三百万平方メートル、二月は四千二百万平方メートルを記録し、二月の数量は一カ月当たりの輸入量としては史上最高であり、特に中国製品輸入量の八〇%以上を占め、また、綿糸、二次製品も同様で、綿製品輸入浸透率生産に対して約五〇%の高い水準になりました。これらの輸入は私ども業界の大部分を占める自生地主力商品と競合し、今後国内市況の低落を招くものと大変心配しておるところでございます。  このため、当業界は秩序ある輸入体制確立について政府に要望するとともに、輸入商社とも定期的に会合しております。また、過去五回訪中団を派遣いたしまして、業界自主的努力輸入の自粛を求めてまいりました。近く第六次の派遣など引き続き話し合いを続けるなどしておりますが、なかなか実効が上がらないのが実情でございます。  現在、世界経済における日本立場から輸入の禁止とか制限は困難であることは十分承知しておりますが、せめて秩序ある輸入対策をとられ、国内市況混乱を来さない措置をとっていただきたいと存じております。  中国は昨年来MFAに加盟いたしましたので、実効の上がらない場合には、早急にMFAに基づく二国間協定の締結が図られるようお願い申し上げます。また、織物輸入関税先進国との不均衡の是正についても特段の御配慮をよろしくお願い申し上げます。  以上、我々綿スフ織物業界を代表いたしまして私の意見並びに御要望を申し上げた次第でございますが、本日はこのような発言の機会を与えてくださいましたことに対して、重ねてお礼を申し上げます。ありがとうございました。
  6. 渡辺秀央

    渡辺(秀)委員長代理 ありがとうございました。  次に、伊藤参考人にお願いいたします。
  7. 伊藤忠夫

    伊藤参考人 日本ニット工業組合連合会理事長をやっております伊藤でございますが、私ども業界は、皆さんに御愛用していただいておりますところのニットスポーツシャツとかセーターとかいうようなものをつくっている部分と、それからシャツ等のための生地をつくっている部分製品もあれば生地もある。なお、セーターは糸から製品まで一貫してつくるわけでございますが、全部の繊維生産業界事業所数においても、あるいは出荷額付加価値雇用等においても一割余りを占めております。  では、本論の方に移らせていただきます。  日ごろ繊維業界のことに関しまして先生方からいろいろと御配慮をいただいておりまして本当にありがとうございます。厚く御礼申し上げます。  さて、昨年の十月に「新しい時代繊維産業のあり方について」と題する答申がなされました。その内容につきましては本参考人もこれを高く評価するものでございます。その副題は「先進国型産業をめざして」と極めて簡潔な表現になっておりますが、私はこれに若干の説明をつけて、「欧米先進国とは異なる日本独自の型の先進国産業を目指して」という表現にすれば、それがより我が国の実態に合った指針になるのではないかと存じております。  御承知のことと存じますけれども欧米の衣料とかニットとかの生産者は、原則として注文を受けまして商品を製造し、小売段階へ直接納入いたします。これは買い取り制でございます。  これに対しまして、日本ニット業界では製造業という我々の分野卸売業という分野が社会的な分業体制になっております。しかも、小売段階商慣習は必ずしも買い取りではございません。  したがって、欧米でもって二者で分けるところの付加価値日本では三者で分けることになるわけでございます。しかも、そこには力の原理が働きまして、弱者へのしわ寄せというものがなされがちでございます。  また、欧米繊維業界は御存じのようにMFA繊維国際貿易の取り決めによりまして輸入量を厳しく規制いたしまして、自国の市場におけるところの需給のバランスを図っております。  我が国MFA加盟国でございますけれども、それが発動されたことはございません。経済大国日本繊維市場はオープンマーケットでございまして、各国の集中攻撃の的になっております。今後とも我々業界はこの厳しい国際競争の中で生きていかなくちゃならないわけでございます。非常に厳しい嵐でございます。  このように、欧米繊維同業者と比べましてはるかに厳しい内外環境、すなわちこれが日本独自の条件でございますが、その中で我々は技術革新創造性というものを軸に知識を集約して、これは知恵を出せという表現の方があるいは適切かもしれませんが、先進国型産業生活文化産業を意欲的に築いていかなければならないと思っております。それしか生きる道はないと思います。  言うまでもありませんけれども、その基本自助努力のもと、構造改善を積極的に推進し、多様化多角化、多層化する消費者ニーズ対応し、国内市場において比較優位の立場を確保するとともに、海外市場において国際競争に打ちかっことが大事になります。  今やニット生産者には、経営資質も、技術も、設備も、資本も、そして技能も労働力も必要なのです。ハードの設備とともにソフト能力も芸術的なセンスも、そしてシステム化管理能力、こういうことも要求されます。言うなれば自主技術でございます。その確立でございます。  我が国ニット産地を見ますと、自助努力あるいは政府の御支援によりまして、中核となる企業を柱といたしましてそこに生産者グループが形成されております。この中核企業の役割が今後ますます大事になります。これらの産地の核となる企業は、同時に販売面におきましては川上や川下と垂直的連携間柄にあります。これは流通段階ナショナルブランド等取引をしているという意味でございますが、その垂直的連携間柄にある、そしてまたそれには相互依存関係というものになっております。これらの核になる生産者産地の活性化の推進力となって先進国型のニット産業を築き上げる機運を盛り上げたいと存じております。  構造改善は現下の急務でございます。自力によって行うことが当然でございますけれども、中小企業であるがために力の限界もあります。政府構造改善施策の支援を不可欠とするものでございます。  このような次第でもって、当業界構造改善を早急に実現するため繊維構造改善臨時措置法延長がぜひ必要でございます。六十四年の六月三十日まで五年間延長していただき、また繊維工業改善事業協会関連の必要規定の追加を許可されますようにお願いするものです。  なお、中小企業事業団の高度化資金融資制度に基づく構造改善事業に際しましては、この制度は御存じのように協同組合とか協業組合とか合併等のグルーピングによって構造改善を図るわけですけれども、その場合におきましても知恵のある、意欲のある、指導力のある、グループを引っ張っていけるようなリーダーの役割というものが発揮できるようにひとつ運営を弾力化していただきたいと存じております。  さて、今後のニット需要を考えますと、国内需要の量的な伸びは限られております。業者間の競争は一層激しくなります。また輸出の方は量的には微増の見通してございます。したがって、商品高度化により売り上げを伸ばすように努めなければなりません。  私どもは公正な競争、自由にして活力のある市場経済を支持するものです。しかし、市場経済においても活力と同時に秩序が大切だと考えております。秩序の最も重要な要素は需給のバランスでございます。  私どもニット生産業界は、基本方針として世界の中における日本立場を十分わきまえまして、大局的視野のもと、終始一貫して輸入規制を主張することなく、ただ秩序ある輸入の確保を関係先に訴えつつ今日に至っております。だが過去におけるニット製品輸入実績は急増、激増、そしてその反動として急落というような秩序ある輸入とはほど遠い動きを示してまいりました。最近セーター分野におきまして再び輸入激増の兆候が出てまいりました。  現在、消費者の価値観は多様化しまして、衣料の需要予測も大変難しくなっております。我々国内のセーター生産者は実需に即応するように多品種少量短サイクル生産に向けて懸命の努力を重ね、需給のバランスを図っておりますが、ただいま述べましたような輸入急増が再び起こりますと、先行き国内市場において需給の失調を招くことが必至であって、ニット業界に及ぼす影響も大きく、前途を強く懸念しております。私どもは、輸入関係者に無秩序な輸入増加を防ぐため努力するよう訴えております。同時に、通産当局も事態の推移に応じては適切な措置をされるよう希望するものです。  しかしながら、その半面この厳しい環境下に技術力、年齢、資質、後継者、生産品目その他の事情によりましてどうにも変化対応し得ず、転廃業の道を選択せざるを得ない事業所が出てまいります。これらの転廃者に対しましては、産業調整策として設備共同廃棄事業を認めていただくことをお願いする次第でございます。  また、登録制の問題でございますけれども、永久に存続すべしとは考えておりませんけれども、少なくとも現時点におきましては、構造改善が終了するまでは必要な措置として御配慮いただきたいと存じております。  次に、若干ほかのことに触れさせていただきますが、ニット生地業界では、短繊維と長繊維、両方ありますが、紡績、合繊メーカー、商社等の賃加工を行っているケースが逐次ふえてきておりますが、その賃加工が安過ぎるという苦情を聞きますので、これらの大企業の方々に適正工賃に対する理解と御協力を強く望むものでございます。  また、製品分野では多品種少量短サイクル発注に対応しているために、かえって生産性の低下を招いて、企業業績の悪化を起こしている生産者も出てきております。このような発注生産方式ですと、流通面の商品の消化率もよくなっているはずでございますので、我々生産者流通段階に対し適正な付加価値の配分を求めるものであります。  最後に、一言お礼を申し上げます。  今後業界が生き抜くためには、技術革新に基づく新鋭編み立て機、例えばコンピューターを組み込んだ横編みの機械だとか、またデザイン開発のためのコンピューターのシステムとか、さらに生産管理のためのシステム等と、膨大な投資やあるいはリースによる借り入れを必要といたします。今般先生方の御配慮によりまして、中小企業に対するメカトロニクス減税が実施される旨承っております。厚く御礼申し上げます。  なお、この実施に際しましては、これらに適用するニット関係の機器の適正な指定をよろしくお願いいたします。  以上、繊維工業構造改善臨時措置法の一部を改正する法律案についてニット業界を代表して意見を申し述べさせていただきました。よろしく御審議のほど願い上げます。ありがとうございました。
  8. 渡辺秀央

    渡辺(秀)委員長代理 ありがとうございました。  次に、野口参考人にお願いいたします。
  9. 野口敞也

    野口参考人 ゼンセン同盟野口でございます。きょうは本来会長の宇佐美が参って見解を述べるところでありますけれども、所用のため参れませんので、私がかわってゼンセン同盟の見解を述べさせていただきます。  初めに、本改正法案に関します基本的な見解を述べます。  我が国繊維産業は、第一次石油危機以降知識集約化を合い言葉に、消費者指向に基づく垂直的な構造改善と、それを通じての高付加価値商品あるいは差別化商品開発努力してまいりました。その結果、たんす在庫が家庭にあふれているというような状況でありますが、それにもかかわらず相当規模の最終消費を確保し、あるいは開拓し、また輸出面においてもそれなりの健闘をしてまいりました。これはまさに現行繊維法が目指した方向であります。繊維法の適用事例は決して多いとは申しませんが、その過程で同法が示しました誘導的な役割というのは小さくないと評価いたす次第であります。  しかしながら、知識集約化が進むにつれまして新たな問題が出てまいりました。これは既に触れられましたけれども、第一は消費者ニーズ多様化によりまして、生産及び流通が急速に多品種少ロット短サイクル化してまいりました。特に、中小企業におきましては、これに対応する体制が整っていないというのが実態であります。  第二番目に、多品種少ロット短サイクル化は当然生産及び流通のコストの上昇を招きましたけれども、最終消費の低迷によりまして小売価格に転嫁が図れません。したがって、多くの業種あるいは企業におきまして、適正な付加価値配分にあずかれないような状態であります。  第三番目に、高付加価値化、差別化といいましても限界があります。定番品とか最寄り品とか呼んでおりますけれども我が国繊維産業基盤をなしております大部分商品発展途上国からの輸入品と激しく競合しておりますし、また次第にそれに取ってかわられております。  このたび提出されました繊維法の改正案は、基本的には現行法の枠組みの中で消費者指向を明確にした垂直的連携を一段と促進するものでありますし、同時にまた、その中で新しい課題であります多品種小ロット短サイクル化というような問題に対応する体制を助長する意図を持っております。そのような意味で、私どもも本改正案に賛成の意を表する次第であります。  次に、制度運用面でございますけれども、今申し上げましたように、本改正案は古い皮袋に新しい課題という酒を取り込もうとしております。しかし、古い皮袋であります現行制度枠組みは、情報開発センターの設置義務あるいはその他助成対象とします構造改善事業に厳しい要件を課しております。このような要件には産業企業の実態になじまないものが多い。つまり、政府が要請しているところの制度要件と業界企業が実際に要求しているところにはずれがあるというように見ておりますし、特にこれからは多品種小ロット短サイクル化への対応が迫られますが、多分に設備面への投資が中心になってまいりますので、制度の弾力的な運用が望まれます。  また、昨年の繊維工業審議会あるいは産業構造審議会における新繊維ビジョンの審議過程の中で、設備登録制の存廃問題がいろいろと議論されました。これに絡みまして、同時に業界団体のあり方もまた議論されたところであります。そのような意味から、この改正法案に基づきます構造改善事業につきましては、業界団体や産地組合が主体的に取り組むことが必要であると思いますし、また、制度そのものにつきましても主体的に参加できるような配慮が必要と考えております。  次に、法律を離れまして、繊維産業環境問題について述べたいと思います。  繊維産業構造改善につきましては、新繊維ビジョンが指摘していますように、本繊維法によりますほか、技術開発あるいは国際化あるいは人材育成などの主要な柱がございます。これとともに、繊維産業基盤をなす環境の整備問題があります。この中で、労働組合の立場から流通、取引改善輸入への対応について意見を述べまして、政府対応を要請いたします。  まず、流通、取引改善であります。  ゼンセン同盟は昨年、組合員を対象に繊維流通の取引慣行に関する実態調査を行いました。その集約結果によりますと、不公正、不合理な取引慣行は一向に改善されておりません。むしろ深く静かに潜行して拡大していることが明らかになりました。また、その中で取引のゆがみが企業にではなく労働者個人にしわ寄せされている、こういうケースも増大してきております。  しかし、取引慣行に関します問題は、優越的地位の乱用というような一方的なとらえ方で解決できるものではない、すなわち、公取に任せばよいというような問題でないというふうに考えます。それはリスク負担のあり方の問題でありますし、あるいは付加価値の配分の問題でありますし、あるいは流通の効率化の問題でありますし、さらに商業倫理の問題でありますし、また従業員、労働者の管理の問題でもあるわけであります。多角的な観点からの検討を要します重大な問題であると考えます。業界自主的努力を前提としながらも、新繊維ビジョンにありますように取引準則の策定等政府の抜本的な取り組みを要請いたします。  次に、取引に関しましては繊維の上場制度というものがございますけれども、本法の志向いたします消費者ニーズに直結した知識集約化を阻害する制度であると考えます。関連業界も既に同制度を必要としない体制を確立していると考えますし、また、いずれも業界団体は廃止を要請しております。繊維上場制度廃止を要請いたします。  次に、輸入の問題であります。  既に業界の代表の方も述べられておりますが、繊維産業に携わる労使が国会及び政府にたびたび重ねて要望してきたことであります。先進工業国においては、我が国繊維産業のように素っ裸で海外からの侵食にさらされているケースは例を見ません。このため日本繊維産業はいわば常にぜんそくという持病を持っておりまして、輸入の風がちょっと激しく吹きますとすぐに発作を起こすような状態であります。欧米の諸国は、ガットのもとで承認されました国際繊維取り決め、いわゆるMFAに基づきまして多角的に輸出国と二国間協定を結びまして、自国の繊維産業と雇用を防衛しております。例えば最近では、周知のように米国では昨年十二月、ホワイトハウスが従来の繊維輸入規制基準を一層強めた形で決めました。これに基づきまして新たに日米繊維協定に二品目を追加するというような要請をしてまいっております。  しかし、私どもはそのような安易な保護貿易を求めているものではありません。短期間におきます輸入の激増ということにより再び大幅な雇用調整を招くことのないよう増加スピードを緩和する、しかも、それは特定分野に限定するということを要求しているのでございます。政府の責任ある、また毅然とした外交上の対応をこれらの通商問題について要請申し上げます。  次に、若干労働条件の問題につきまして述べます。  繊維産業の労働条件は、総体的には低位にあります。賃金水準はもちろん、職種あるいは年齢あるいは学歴、また企業の規模によって異なりますけれども、平均しまして世間水準より一〇%前後低いというように言えます。欧米ではまた週四十時間が一般化しておりますが、さらにまた、現在ではそれを短縮する努力が続けられておりますが、我が国繊維産業では、週四十時間制をとっている企業はごく限られております。ちなみに三十人以上の事業所を見ますと、昭和五十六年の製造業平均の年間所定内労働時間は千九百三十七時間であります。これに対して繊維工業は二千十八時間、衣服その他繊維製造業は二千四十二時間というような状況であります。  新繊維ビジョンは、副題は「先進国型産業をめざして」というようにつけ、技術革新文化的創造性を軸にしまして産業再活性化の道を指し示しております。しかし、技術創造性もそのかなめはそれを担う人材であると思います。時代の要請にこたえる人材を誘引し、あるいは育成、定着化させるためには魅力ある職場環境を確保することが重要であることはビジョンの指摘するとおりであります。先進国型を目指した産業構造改善には、また先進国並みへの労働条件の改善があわせて必要であります。このことをこの場をかりまして業界団体のリーダー、また繊維企業経営者に強く訴える次第であります。  さらに、本法にかかわります構造改善事業実施は、当該従業員の雇用と労働環境に少なからぬ影響をもたらします。そのような意味で、個々の構造改善事業への労働者の参加を制度上明確に位置づけるべきであるというふうに考えます。  最後に、個別の業種に関する問題でありますが、製糸、絹業問題について一言述べさせていただきたいと思います。  製糸業及び絹織物業は、ともにかつてない危機を迎えております。それは、繭糸価格安定法に基づく制度がもたらす構造的な危機であります。国際的な産業であります繊維産業にとって、極めて割高である原料を出発点にしなければならないということは致命的であるというふうに考えます。農業である養蚕業と製糸以降の工業とを切り離して対策を講じなければならないというように考えます。このまま放置いたしますと、製糸、絹業がともに日ならずして崩壊する可能性が極めて強い状況にあります。繭糸価格安定法は議員立法によってできた法律であると聞いております。抜本的対策による国会の責任ある対応を強く要請する次第でございます。  以上でもって陳述を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  10. 渡辺秀央

    渡辺(秀)委員長代理 ありがとうございました。  次に、池田参考人にお願いいたします。
  11. 池田友次

    池田参考人 私は、日本繊維産業労働組合連合会中央執行委員長をしております池田でございます。  私は、本年六月末に期限切れとなる現行繊維工業臨時措置法について、向こう五カ年間の期間を延長する問題に関し、昨年十月織工審並びに産構審の合同部会が提起をした「新しい時代繊維産業のあり方」の答申と、これに基づく通産省の法一部改正による臨時措置法の延期提案を原則的に支持するものでありますが、今後の具体的な政策の推進または行政措置の展開等について若干の意見を述べ、その実現を強く要請し期待するものであります。  時間の関係もありますので、以下四点について簡潔に申し上げます。  まず第一の点は、我が国繊維産業の今後の方向として、先進国型産業を目指した産業構造への転換を図ろうとすることに関連した問題でございます。  我が国繊維製造業は、約十四万七千という多数の事業所に百三十七万人の労働者が就業し、とりわけ川中から川下の各業種では、一事業所当たりの労働者数九人以下という、中小企業というより、むしろ零細企業が圧倒的多数を占めるという構造上の特性を持っております。それだけではなく、さらにその底辺には膨大な家内労働者が存在していることもまた周知のとおりでございます。そして、これらの労働者の賃金、労働時間等の労働条件は極めて劣悪である。最賃法違反の最も多いのが繊維産業であるとともに、大企業と中小企業の賃金格差は拡大の一途をたどっております。  私は、我が国繊維産業先進国型産業への転換を目指す以上、そこに働く労働者の賃金や労働時間、その他の労働条件についても先進国並みの社会的ミニマムが確立され、作業の環境条件も、人間が働くのにふさわしい条件が確保されることが必要であると考えます。そういう立場から、産業政策と同様、労働政策を表裏一体のものとして重視した政策と行政指導を強化する視点が極めて重要ではないでしょうか。そしてこのことは、前述した合同部会の答申が、先進国型の構造改善を進めるに当たって、それぞれの業種における個別企業転廃業は不可避であることを随所に強調しておるところであります。だとすれば、廃業はもちろん、事業転換等を含めて雇用問題の発生は必然的であり、最近における雇用情勢の悪化に加え、雇用保険法が今国会で改悪されようとしている情勢を踏まえ、これらの問題につきましては労使の事前協議による合意を前提とした政策を明確にすべきではないかと考えるところであります。  第二の点は、取引改善についてでございます。  繊維産業は、製造業から流通段階を含めた不公正な取引があたかも当然のことのような慣行となって横行しているのが実態でございます。すなわち優越的地位の乱用によって、製造業分野にその例を見ると、発注メーカーや商社の下請または委託加工賃の買いたたきや一方的な返品、クレーム、あるいは流通分野における百貨店、スーパーの不当返品や押しつけ販売、協賛金、分担金の強要がそれであります。  昨年十月繊維取引近代化推進協議会が売買契約に関する二十四業種の調査結果を発表しております。それによると、回答率五六%の中で、書面契約を取り交わしているのはわずか二〇・四%、伝票のみによって行っているのが実に七一・三%、伝票も書面契約もないものが八・三%となっております。恐らく未回答の大部分企業は三番目のパターンである伝票、契約書なしの口頭によるものと推定されるところであります。また、同協議会の繊維製造業の委託加工調査によれば、書面契約二九・四%、指図書五八%、取引伝票一一・二%、何もないが一・四%となっており、同時に問題は、書面契約がなされたから近代的かつ公正な取引ができたと手放しに即断するわけにはまいりません。  このため、答申に基づき例えば中小企業自助努力によって新鋭設備を導入しても、適正加工賃を確保することについての何らの保証もないことを強く懸念するものであります。したがって、私は、通産省に適正加工賃と公正な取引に関する特別な機関の設置と行政指導の強化をすることが先進国繊維産業の実現を図るために極めて重要な課題であると考えております。  第三点は、設備登録制についてであります。  答申は、設備登録制に関し、その延長をできるだけ早く停止すべきだという立場から、関連業界の理解が今日十分でないとしながらも、継続審議において速やかな結論を急いでいるようであります。  御案内のように、綿スフ、絹、人絹織物等の産地は、いずれも関連業種を含めた多数の中小零細企業によって成立し、設備登録制の存在が辛うじてこれらの産地企業と労働者の雇用を維持してきた歴史的事実は、今日なお重要であると判断されるところであります。もし登録制がこのような事実を配慮することなく一挙に廃止されるとするならば、現状でも加工賃をめぐってしのぎを削っているのに加え、新規企業の参入などにより一層過当競争は激化し、その結果地域経済や雇用に重大な影響をもたらすことになるでしょう。したがって、設備登録制問題については、予見されるかかる事態について関連業界産地の事前の対応を十分見きわめた上で慎重に対処すべきであると考えるところであります。  最後に、今日社会的問題になっております生糸並びに絹織物輸入規制に限定して申し上げたいと思います。  現在、蚕糸と絹業界は、需給の失調と国内需要を無視した生糸並びに絹織物輸入によって、大変困難な事態に立ち至っております。すなわち、製糸業界では昨年十一月から二五%の不況生産カルテルに加え、本年二月には二五%の設備廃棄あるいは全国の機業地における操短の繰り返し、さらに農水省は五十九生糸年度の産繭量について三〇%の減産を計画するなどの状況にあります。にもかかわらず、蚕糸砂糖類価格安定事業団の生糸在庫は十七万五千俵を突破し、うち輸入糸が六〇%を超えております。この在庫量は、昨年の我が国の生糸生産実績に比較してみますと実に十カ月分に相当いたします。  では、国内における需給関係の失調は決定的であり、産業として大幅に縮小しなければ成り立たないような環境にあるのかといえば、その答えはノーであります。ちなみに昭和五十六、五十七、五十八年の過去三年間における絹織物等の純国内消費量に見合う国内生糸生産量は、平均三分の二程度にすぎないからであります。要するに、不足分の三分の一程度を輸入すればよいものを、国内需要を無視した生糸、絹織物輸入がかかる事態を招来した最大の背景であることは歴然としております。したがって、このように我が国の蚕糸、絹業は生糸と絹織物輸入によって重大な被害を生じているわけでありますから、生糸在庫や糸価が適正水準に回復するまでの間、緊急避難措置としてMFAの適用を行い、生糸はもちろん絹織物の大幅な輸入規制を英断を持って速やかに断行することを国会並びに通産省に強く要請を申し上げ、私の意見を終わります。ありがとうございました。
  12. 渡辺秀央

    渡辺(秀)委員長代理 ありがとうございました。  以上で参考人意見の開陳は終わりました。     —————————————
  13. 渡辺秀央

    渡辺(秀)委員長代理 これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑者に申し上げます。  お答えをいただく参考人を御指名の上質疑をお願いいたします。  なお、念のため参考人に申し上げますが、発言の際は委員長の許可を得ることになっております。また、時間の制約がございますので、お答えはなるべく簡潔にお願い申し上げます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。森清君。
  14. 森清

    ○森(清)委員 本日は五人の参考人の方々、大変貴重な御意見をいただきまして、我々、この法案の審議に際しまして非常に参考になり、感謝を申し上げる次第でございます。我々はこの法案に取り組みまして、各党の御協力を得て、各参考人が言われましたとおり、早期に成立してほしい、こういうことでございますが、これに向けて努力をしたいと考えておることをまず最初に申し上げておきたいと思います。  そこで、まず瀧澤参考人にお伺いをいたしますが、瀧澤参考人は昨年十月の審議会答申をまとめる中心的な役割を果たされたと聞いておるわけでございます。  繊維産業というものは、従来の感覚によりますと、その構造的な特性そして歴史的な沿革を見ましても、やはり最初に発展をしながら、先進国になるにつれてそれが後進国に追い上げられるといいますか、そういうことで脱落をしていく運命にある産業、このように常識的には考えられていたわけでありますが、この答申の基礎を考えますと、そうではあるが、事態の変化に先進産業国が十二分に対応できるのだ、あるいはできなければならないのだ、このようなお考えのようであります。     〔渡辺(秀)委員長代理退席、田原委員長代理着席〕 例えば答申にも「先進国型産業として繊維産業の再生が可能であることを示唆するものである。」という表現にあらわれておりますとおり、先進国型産業として必ずやっていけるのだということでもない。その辺に私も非常な危惧を持っておるわけでありますが、瀧澤参考人がこの答申をまとめられるに当たっての、あるいはこういう答申を踏まえてのお考えを聞かせていただきたいのでございます。  特に、我が国において先進国型産業として発展することが可能である、このようにお考えになったのだと思いますが、そのようにお考えになった根拠あるいはそういう芽がすでにあらわれているかどうかということについて、先ほどもお伺いいたしましたが、補足して御意見を伺いたいと思います。
  15. 瀧澤菊太郎

    瀧澤参考人 お答えいたします。  一般には繊維産業というのは衰退産業である、斜陽産業であると考えられていたと思いますし、私もそのように考えたこともございました。ただ、よく考えてみますと、先進国には先進国特有の潜在力といいますか強み、そういうものがあると思います。先ほども申し上げましたが、質的に高度化多様化した広範な市場を持っている、それから工業技術文化的創造性のポテンシャルが高い、そしてこれらを担うヒューマンキャピタルも豊富である、こういう潜在的な強みを持っていると思います。ですから、これを生かすことができれば、その生かすためには何よりもまず繊維産業関係者の方々の自助努力努力次第ということになると思います。また、それを政府が側面からどのように支援していくかということにかかっていると思うのでありますけれども、そのような努力次第ではそういう可能性がある。ただ、これは可能性でございます。  日本現状を振り返ってみますと、幸いなことに日本につきましては質的に大変高度で巨大な国内市場があるとか、将来的にも発展性の高い技術環境を持っている、あるいは柔軟で、しかも適応力と活力に富んだ企業のバイタリティーがあるというような、ほかの国に見られない有利な条件もあると思いますので、そのような条件を生かして、先ほど申し上げましたように、業者の方々が一致して真剣な努力をしていただければ、その努力次第ではそういう可能性があると考えた次第でございます。
  16. 森清

    ○森(清)委員 さらに瀧澤参考人にお願いしたいのです。  言われることはよくわかるわけでありますが、特に我が国が持っている先進国としてのそういう可能性というものもわかりますし、また自助努力がなければならないし、自助努力もされることだと思います。ただ、繊維産業には中小零細企業が圧倒的に多い、こういう中にあって、そういう先進国型産業として改革していける分野と、中小零細企業というものはどうしてもそういう対応力が少ないのじゃないか、この辺のことについて、中小零細企業に限ってこの対応の仕方あるいは将来性についてどのようにお考えであり、またさらに突っ込んで、自助努力、自助勢力ということはよくわかるわけでありますが、瀧澤参考人中小零細企業に対してどのようなことを期待されているか、それをお伺いしたいと思います。
  17. 瀧澤菊太郎

    瀧澤参考人 お答え申し上げます。  御指摘のように、確かに今後の環境は大変厳しくなると思われます。したがいまして、これは中小企業だけではなくて、規模の大小にかかわらず対応力の乏しい事業者につきましては、先ほど申し上げましたように転廃業せざるを得ないのではないかという認識業界一致してなされておるわけでございます。ただ、そのように中小企業にとっていわば不利なことばかりかといいますと、他面ではそうでない面も出てきているのではないかというふうに思われます。といいますのは、先ほども申し上げました最近の多品種少量短サイクル化という傾向でございますが、これは考えようによりましては中小零細企業にとって有利な条件であるというふうにも考えられます。  このような条件のもとで中小零細企業技術力、商品企画力というようなものを強化していけば、もともと中小企業というのは機動性、柔軟性に大変富んでおります。その長所を生かしていくならば発展していく可能性があるのではないかというふうに思います。ただ、そのためにはもちろん業者自身の自助努力も必要でありますけれども、今度提出されましたような構造改善臨時措置法というようなことで、それを側面から支援していくことが大変重要であるというふうに考える次第でございます。
  18. 森清

    ○森(清)委員 池治参考人伊藤参考人にお伺いしたいと思います。  先ほど瀧澤参考人が言われましたとおり、自助努力が一番大事なことである、私もそう思いますが、現状を見ますと、数次にわたる構造改善に取り組んでこられておりますが、やはり環境変化に十二分に対応した構造改善が不十分であったということが現状不況一つの原因である、このようにも言える側面があろうと思います。また、この答申の中でも、事業者業界が改革に対して多少消極的であったというか、意欲が不十分であったということが見受けられるというような指摘もあるわけでございますが、先ほど非常に積極的に構造改善に取り組む御意見を拝聴して非常に心強く思ったわけであります。  私も、先進国型産業になり得る可能性があるということについては瀧澤参考人と全く同じ見解でありますが、それには相当の努力が要るんじゃないか、このように考えますので、お二人に再度ひとつ御決意のほどを伺いたいと思います。
  19. 池治一見

    池治参考人 ただいま我々業界に、今後どうして自助努力をもってやっていくかということでございます。今までの構造改善でございますが、垂直型の構造改善であったということは、先ほど皆さんも述べられておりますとおりに、欧米諸国は二国間協定を結んで前を閉めておる、日本はどうぞ入ってくださいという自由貿易主義でございます。そういうことで我々はどうしようかということで、今まではなじめなかったということ、それと垂直型の構造改善には組合としては難しかったということでございます。  それはなぜかといいますと、紡績は今、我々と一緒になってやろう、賃織りを出そうというような意欲はありません。自分でやって糸だけ売るということと、産元はいろいろ我々とグループを組まなくても当用買い、その日その日のものは買えるということで、我々とグループは組んでくれなかったということでございます。そういうことでございますので、今度の構造改善はぜひとも組合一括型の、組合主導型の構造改善にしていただきたい。今までは通産、府県の主導型であったものを我々組合、四十二年から始まったのはそういう形でございましたので相当やられたのですが、今度は私らが、さっき申しましたとおり六十二産地のうち八産地しか出ていないということでございます。  そういうことで、そういう弾力性を持っていただきまして、それから商品開発センターなんかのリース枠につきましても厳しい規制がございます。こういう規制をなくしていただきましたなれば、相当なものが構造改善をやらなければ、中国という大きな輸入国が隣国にあります。五十二年には四千三百万平方メートルの輸入が、五十七年は二億三千三百万平方メートル、五倍強になっているのです。ことしの二月は史上最高の四千三百万平方メートル入ってきた。そういうことと競合するものを織っていてはいかないということで、業界が一致団結して構造改善に取り組みたいということで意欲はなっておるのですが、その弾力性、やりよいような、取り組みやすいような法律にしていただきたいということをお願いしたい。
  20. 伊藤忠夫

    伊藤参考人 ただいまの森先生の御質問にお答えいたします。  ただいま池治参考人の方は織物でございます。私ども業界生地分野もございますけれども製品が大きな分野でございまして、現在アパレルという衣料の四〇%はニットでございます。  需要の方を見ますと、一言で言うならば、今は消費者の方は好きか嫌いかというのが物を買う基準でございます。かつて、この構造改善にいたしましても輸出を主体として量を追っている。ところが、時代は量から質に変わった。さらに質からテースト、好みとか味とかそういう時代に入ってきている。それで、今や速さという問題が非常に重要な問題になってきている。要するに短サイクル生産でございます。これはリードタイムの長い輸入に対抗するための一つの競争力と、もう一つは、この過飽和状態になっていて価値観が多様化しているところの消費者が何を買っていくかという予測が難しい、それに対応するためでございます。したがって、少量多品種短サイクルというものに取り組むことは私どもとして絶対必要である。  同時に、流通段階で私ども業界織物分野と違いますのは、私どもは川上の原料というものと、我々の業界でもつくっておりますニット生地あるいはセーターのように糸からつくるものもございますが、そういう素材段階と我々の業界は密着している。そうしてその商品を今度直接流通段階のナショナルブランドその他個性のあるデザイナー等のブランドのところに売っていく。先ほど申しました製販分離という形でございます。物をつくるということと売るということはかなり仕事の性質が違うと思うのでございまして、これが両方とも共存共栄していかなければならない。その中において我々は現実に相互依存、その相互依存の中にあっても主導性のある、主体性のある相互依存にいたしませんと、もうからないわけです。材価価値が高くとれませんといいペイも払えない。したがって有能な若い人たちも入れられない、ソフト能力も出ないというようなことになるわけでございます。  同時にまた機械が、例えば横編みのセーターのコンピューター組み込みの機械は一台一千万くらいするわけでございます。そうしてそれを何台か入れませんと一つのユニットにならない。それから、そういうものを入れましても、単に加工屋になってはだめであって、それをベースとしてソフト能力並びにアート的なセンスによって付加価値の高いものをつくる、こういう適性というものはやはり核になる親企業、これは規模の大小は問わないと思います、大きい方もそれなりのやり方、中小企業の中においても大きい方、小さい方それなりのやり方で行ける、その方たちが下の零細な方たちをよく面倒を見て、ここに柱があってその柱の先に枝があって、それで葉が茂る、こういうような形でやっていく。  このような考え方で、私どもは主体性のかぎはあくまで技術と創造力、こういうふうに考えております。現に、輸入というものに激増はありますけれども、ここまで我々が健闘している、健闘しているために輸入対策があるいはおざなりになった嫌いがあるかもしれませんけれども、これは我々自身が技術と機動性とを発揮してやっている。あえて私が自主技術という言葉を使ったのは小なりといえども自分の特徴のある、こういうようなことでございます。  このような決意でやっていこうと思っております。ありがとうございました。
  21. 森清

    ○森(清)委員 もう時間もございませんので、野口参考人池田参考人、お二人に一度にお伺いいたしますが、お二人とも労働組合として、繊維産業の再生のために大変前向きにというか、まじめに取り組んでおられる意見を拝聴いたしました。私も大変力強く感じた次第でございますが、いろいろ事業そのものについての御意見は今他のお二人の御参考人に聞きましたので、労働者側としての見解を聞きたいと思います。  先ほど特に野口参考人が言われましたように、時代の要請するような産業構造改善をしていくということのためにも、人材確保という面から、雇用条件、先進国並みの労働条件が必要である、私はその点については全く同感でございます。ただ、現在から未来に向けて大きく転換していこうという、こういう産業の中にあると、それを求められながら、やはりいわゆる雇用調整という問題に皆さん方も取り組んでいかなければならないと思うわけでありますが、その点についてちょっと言及が少なかったように思いますので、要するに雇用調整問題に組合としてはどのように対処していくのか、この点も時間がございませんので簡単でよろしゅうございますから、お二人から御意見を聞かせていただきたいと思います。
  22. 野口敞也

    野口参考人 お答えいたします。  雇用調整の問題につきましては、繊維産業におきましては第一次石油危機以降継続的にいろいろな問題が起きてきております。大きな山場は過ぎたというように私どもは考えておりますが、御案内のように、いろいろな業種において倒産あるいは事業所の縮小、閉鎖というのが日常的に起きております。これらの問題につきましては、基本的には今後もなくならないものである、つまり繊維産業の縮小というのはこれからも続いていくものであるというふうに考えております。  また、その対策につきましては、既に離職者法の改正をしていただいておりますし、あるいはまた、私どもの労働組合の努力によってそれなりに解決がしていけるものではないかというふうに思っております。  ただ、先ほども申し上げましたように、輸入の急激な増加というような事態がまた参りますと、企業も、また労働組合もそれに対応できないというような事態が発生するおそれがあるというふうに考えております。そういうような意味で、長期的になだらかに生き残れるところが残っていく、そういうことをできるような環境というものがこの繊維産業には必要であるというふうに考えております。以上でございます。
  23. 池田友次

    池田参考人 お答えをいたします。  ただいま野口参考人の方から、繊維産業に現在発生しつつあります合理化あるいは企業転換、閉鎖問題について日常的に起きているのだというお話がございましたが、私もそのとおりだというふうに考えております。  ただ、今回この新しい法が執行され、さらに新しい繊維産業の秩序ということで、先進国型産業へということになってまいりますと、先ほど私が申し上げましたように、相当大規模の閉鎖あるいは事業転換、こういうものが想定をされるところであります。  したがって、答申の中では現行の雇用対策に関連した法案を十分活用する、こういうふうに触れておるわけでございますけれども、私はそれ以外に何らかの補完措置が必要であるというふうに考えますし、さらに、我々プロパーの立場で申し上げますと、やはり企業転換なりあるいは閉鎖については、そこに労働組合がある場合にはもちろん労働組合との間に事前協議を行ってきちっと合意を形成するということ、それからさらに、労働組合のない場合でも、事前にそこの従業員の代表と十分論議をしながら雇用の安定を図る、こういう立場をやはり行政の指導の面でも、また我々の運動の面でも追求しなければならないだろうというふうに考えておるところであります。
  24. 森清

    ○森(清)委員 以上で終わります。
  25. 田原隆

    ○田原委員長代理 水田稔君。
  26. 水田稔

    ○水田委員 社会党の水田稔です。参考人の皆さん、大変御苦労さんでございます。また、貴重な御意見を聞かしていただきましてありがとうございました。限られた時間でございますので、幾つかの点について御質問を申し上げたいと思います。  まず瀧澤参考人にお伺いしたいのですが、織工審の中でも中心的に取り組んでいただいて、いろいろ貴重な御意見を聞かしていただいたわけですが、繊維産業というのは、考えてみるともうこの十数年間構造改善ということを言ってきたのです。これはもともとを言いますと、昭和四十二年に特定繊維工業構造改善臨時措置法、今と内容は違いますけれども、それからずっと引き続いてですから、きょうまで大体十六年間やってきておるわけです。  そういう中で、なおその間には二回にわたるオイルショックもあったし、最近のいわゆる開発途上国の力がついてきたというような違った条件もあるとは思うのですが、それでもなおかつ構造改善が思ったように進まなかったのは、一体、この法律が有効に機能しておれば相当程度の構造改善が進んでおったのではないかと思われるのですが、先生の方でごらんになって、これは法律のいわゆる事業内容というものが的確に今の国際環境変化対応できるだけのものがなかったのか、あるいは先生もちょっとおっしゃいましたけれども業界対応に不十分な点もあった、こういう御意見も聞かしていただいたわけですが、そういう点ほどのように考えたらいいものでしょうか、まずお伺いしたいと思います。
  27. 瀧澤菊太郎

    瀧澤参考人 お答えいたします。  確かに繊維産業についてはこれまで長い間いろいろの施策がなされてきておるというふうに思っておりますが、それは見方によりましては、それだけ繊維産業日本にとって大変重要な産業であるということのあらわれであろうかというふうに思います。  なおかつ、まだ現在でも構造改善を進めなければならない理由は何かということでございますが、前回、五十四年にこの法律ができました直後に、先ほど申し上げましたような第二次の石油ショックというものが起こりまして、これは私どもの予想を上回る非常に深刻な事態となりまして、そのため繊維業者の方々がいわば目先のことに追われてしまいまして、構造改善に本腰を入れて取り組む余力がなかったということが一つの理由として挙げられると思いますし、それからまた、先ほど申し上げましたように、そういうようなことと関連してでございますが、業者の方々の認識の甘さといいますか、意欲、努力の不足というようなものもそれに関連して出てきたということだというふうに思います。  しかし、部分的にではございますけれども、現在徐々にその構造改善の実績が上げられているということも事実でございます。したがいまして、またその業者の方々の構造改善に取り組む意欲といいますか機運といいますか、そういうものも次第に景気の回復とともに高まってきているということもございます。そこで、大変長く続くというふうな意見もございますかと思いますけれども、この際延長をいたしまして、このような構造改善をさらに一段と進めるということが、先ほど申し上げましたような日本繊維産業先進国型産業として転換させていく上で大変重要であるというふうに考えている次第でございます。
  28. 水田稔

    ○水田委員 今回の改正案でも二点追加されただけで、あとは従来の事業を継承していくということになるわけですね。先ほど業界の方の御意見、お二方ともいわゆる法律の弾力的な運用、こう言われるわけですね。その点はやはり今までの法律のたてりが、業界がそれならやれる、やろうということにならなかったという点を意味しておるのじゃないだろうかと思うのです。そういう点では、先生の方はどういうぐあいに、例えばもう少しこういう点をやれば法律がもっと有効に働くのではないか、そういう点についてどういうぐあいにお考えになっているか、お聞かせいただきたいと思います。
  29. 瀧澤菊太郎

    瀧澤参考人 お答えを申し上げます。  業界の方の御意見は御意見として、私どもよく承知しておりますけれども、私といたしましては、この現在の枠組み、考え方による構造改善がこの五年間で思うように進まなかったということは、制度自体、考え方自体、枠組み自体が間違っていたからではないのだというふうに考えております。  その理由といたしましては、先ほど申し上げましたように、二度にわたる石油危機というようなことによりまして、予想を上回る深刻な事態が出てきたということが原因であるというふうに思っております。これまでの繊維産業の推移ということから見ましても、現行構造改善枠組み、考え方というようなものは正しかったというふうに考えております。そして、五十四年の法律改正のときにこの要件は実はかなり緩和をしたわけでございます。それに加えて、さらに枠組み自体を変えるほどの緩和をする必要はないのではないかというふうに私は思っております。ただ、その後の環境変化に伴いまして、運用面で多少の配慮をする必要はあるのではないか。例えば設備リースの点などでございますけれども、多少の運用面での配慮は必要であろうかというふうに考えている次第でございます。
  30. 水田稔

    ○水田委員 今度の繊維法直接ではないのですが、団体法関係参考人の皆さんがみんな御意見をおっしゃいましたので、この点をお伺いしたいのですが、瀧澤参考人は、いわゆる固定的な考え方ではこれからの国際化時代環境対応できない、こういうお考えで、結局今度の答申では結論は出なかったということなのですが、業界なり労働組合の側も、永久的に登録制存続しろ、こう言うのではなくて、いわゆる集中豪雨的な輸入によってとにかく壊滅的な打撃を受ける、あるいは業界の言い分をそのまま言いますと、大手と中小零細の間でもう全然競争できなくなる、あるいは一つ産地形成をしているのがそれでもう崩れてしまうという心配をされておるわけです。ですからマクロで見れば確かにそうかもしれないけれども、ミクロで見た場合には大変な問題が起こる。その調整というのが一番大事なことだろうと思うんですね。  ですから、もしたてりが間違っていないとしても、実際にやった場合にはつぶれてしまうということではどうにもならないということですが、そういう点でいろいろな御論議をやられる中で、そういう混乱あるいは打撃、被害を最小限にとどめながら、国際環境対応するための何らかの手当てがなければ、これは反対だ、片一方はやるべきだということではどうにもならぬと思うんですね。  そういう点について、何か基本的にはそういうお考えが織工審の中で、あるいは産構審の中で論議されて答申が出ておるわけですが、もう一歩突き進んだ、現実の毎日の仕事をしておられる業界との間で理解ができるような混乱を回避する方法というのは、何かお考えがあれば聞かしておいていただきたいと思うのです。
  31. 瀧澤菊太郎

    瀧澤参考人 お答え申し上げます。  登録制につきましては、審議会の中でもいろいろ議論がございました。廃止の根拠につきましては、先ほど幾つか申し上げた次第でございます。また業界の側で、これが廃止されれば大変混乱が起こって困るということも専門委員会あるいは起草委員会の段階でヒアリングをさせていただきまして、業者の方々のお考えをいろいろお聞きしております。ですから、その点は十分承知をしておるつもりでございます。  そこで、この混乱を回避するためにどう考えるかという点でございますが、私個人の考えといたしましては、これまでの経過ないし現状から見まして、業界の御主張になるような大混乱にはならないのではないかというふうに考えております。ただ、それにいたしましても、業界の方でその点を大変心配なさっておられますので、この登録制を直ちに全面的に廃止をしてしまうということではなく、段階的に、その混乱をできるだけ回避しつつ、五十一年提言で業界の方々もお入りいただいて決めました、その基本的方向を実現する道を探りたいというふうに考えた次第でございます。  ちょっと時間をいただいて具体的に申し上げますと、第一に、登録制度の廃止につきましては、五年以内の猶予期間を設ける。そして廃止時においても、実態把握のため、団体法五十七条命令、これはアウトサイダーも対象になりますが、この五十七条命令に基づく届け出制に移行すること。それから第二に、産地組合におきましては、五年の猶予期間の間に登録制に依存することなく、存続可能な組合に脱皮するためのビジョンを作成していただく。第三に、段階的解消措置といたしまして、いわゆる村区分の廃止とか団体法五十八条命令の廃止を当面実施するとともに、それに伴う必要な混乱防止措置、これを講ずることなど、私どもといたしましては、業界の御心配になる混乱をできるだけ防ぐような調整案を考えた次第でございます。ただ、それについての理解が業界の側に十分浸透していなかったということで、残念ながら継続審議ということになった次第でございます。
  32. 水田稔

    ○水田委員 ありがとうございました。  それでは池治参考人伊藤参考人に、同じように言われたのですが、この法律運用について弾力的に、と。先ほど森委員の質問に対して、例えば通産主導型でなくて産地主導型というような具体的なことも言われたのですが、私も実は繊維産地に育って今も住んでいますために、まさに垂直型連携と言いながら、これは商社とか系列のあれで全部断ち切られてしまって、産地のメリットというのは全くない、そういう中でとにかく衰微していく、そういう状態を現実に目の当たりに見ていますし、いろいろ十六年間構造改善をやったけれども、最近になりますと、例えばいわゆるワーキングウェアももう輸入品でだめ、トレパンもだめ、学生服から大分品種をふやしたけれども、全部輸入品でだめになってくる、そういうのを現実に毎日見ているものですから、構造改善、今度の法案で本当に産地が再活性化できるのだろうかという不安を持っている一人なものですから、そういう点で弾力的な運用の具体的な、こうやればやれる、そういう点をお二人の参考人からひとつ聞かしていただきたい。  もう一つ、今の登録制の問題について、皆さんの出されたあれは読ませていただいたのですが、今の瀧澤参考人の御意見もありましたものですから、そういう点では、そこから突っ込んだ御意見がもしあるならば、登録制の問題についても御意見を聞かしていただきたい、こういうぐあいに思います。
  33. 池治一見

    池治参考人 ただいまのやりにくいことでございます。そういうことで、私はさきに申し上げましたように、今までの構造改善の垂直型ということは、いろいろ大企業ないしまた問屋さんがついてくれない。我々はいろいろ商社、紡績にお話にいったのですが、あなた方とは構造改善をやらないということでございます。そういうことで、五十四年にこの一部を改正していただきまして、組合主導型の構造改善としていただきましたので、一部産地、さっきも申しました八産地がやったのでございますが、その中で商品開発センター、技術開発のセンターでございます。機械を入れてでございます。そのリース枠が少ないために、先ほど申し上げましたとおりに、今後五年間延長されても私は二、三年でやれないのじゃないか。また、そのリース枠のある産地はいいですが、天竜市や何か田舎の産地へ行ったら、まあ田舎と言ったら怒られるのですが、価格も安いということで、取り組みにくいということで、いつも我々の産地が死んでもいいのかと私は言われております。そういうことで、その弾力性を持たしていただきたい。  今、評価額の見直しということもお願いしております。その評価額は、今までは二倍であったものが今度は三倍にしてやろうということですが、僕は三倍でも二、三年でなくなるのじゃないかと思っております。それはそれで決められれば仕方がないのですが、三年していかなかったなれば、またいろいろのことを弾力的に見直してくれるかということも一つの条件だと思います。そういうことで、取り組みにくかったということはそういう点にもあると思います。  それから、登録制でございます。これは先ほど皆さん方もお話がありましたとおり、我々は登録制は三十年も続いているんだ、そういうことでございます。登録制がなくなって今度は届け出にせよということでございます。今我々産地は、登録制によって、警察官をおやめになった人各二名雇って、回っております。そういうことでございまして、その責任は全部産地組合理事長登録制を監視すべきだということになっております。昔通産局にもお願いしたのですが、一、二回行っていただいたのですが、それはできなかったということで大変問題になったことがあります。それなのに今後五年間で廃止して届け出にせよということでございますが、届け出になれば、こんなの届けなくても何ぼでもやれるのですから、そういう企業がどんどん出てくると思います。それと、やはり大企業が入ってきます。僕が心配しておりますのは、零細企業である、家族企業である、それはもうつぶれてしまうと思います。それと、組合の組織がなくなるということは、皆賦課金をいただいて組合の組織でやっております。そのために安定事業がやれるし、輸入対策や金融面、特に金融面は大変なことになると思います。これは、登録制のついた織機は全部担保物件に入っております。今度構造改善をやっていただくのに、十二年間担保物件にその登録制がもう入っております。それがなくなれば、金融界が大きな混乱を起こすと思います。そういうことでございますので、どうぞよろしくお願いいたします。
  34. 伊藤忠夫

    伊藤参考人 お答えいたします。  ニットの方の生地関係につきましては、多分にただいまの池治参考人に似たところがございますが、先ほど申しましたように、私どもの方の製品段階、製造というものと販売というものとが社会的に分離している。同時に、前の答申におきましては、消費者指向、そうして垂直的連携によってやっていくべきだ。この垂直的連携ということが、実態的にはそれぞれの問屋さんとか製造卸、そういうところの流通段階の方と我々メーカーとが縦につながるわけでございます。言うなれば向こうは売る方の専門家、こっちはつくる方の専門家、その両方が共存共栄をしていくという形の中の構造改善でございますが、それを先ほどの第二次オイルショック、世界同時不況、いろいろなものの中で私ども自力でもってやれるところはやってきた。  それからもう一つ、今後の構造改善全般に影響するわけでございますけれども、消費者の需要のサイクルというものが非常に短くなっている。それから技術革新によりまして、革新機械によるための生産能力アップということで、あっと言う間に天井にぶつかってしまう、すぐ飽和になってしまう。かつて一番有望とみなされていたスポーツ分野というのも、五十七年を境として後は非常に苦しい状態になっている、一例でございます。  それから輸入の方の問題も出てきている。そのような中で、今後構造改善をやっていく段階において、政府の施策の段階のグルーピングにおいてはいろいろなケース、そのケースの根本は、やはりその大将になるところが、いろいろ物的ばかりじゃなくて知恵を出して、トータルとしての付加価値をつけるようなことをやっていただかなければならぬ、考えなければならぬ。そういう点においていろいろとケース・バイ・ケースで弾力的にやっていただきたい。  それから登録制の方のお話に移りますけれども池治参考人の申し上げたことのほかには、例えば瀧澤先生のいろいろおっしゃったような具体案につきまして、シミュレーションと申しますか、もしこういう状態になったら実態はどういうふうになるのだろうかという論議というのは、果たしてこの前の専門委員会の段階においても突っ込まれていたのかどうかというようなことを私ども感じるわけでございます。それから、登録制によって大企業が中小企業分野に進出してこない、中小企業の雇用の場が確保されるということが大事じゃないかと思うのです。  なるほど現行制度においても、大企業が登録の権利を買って進出してくることは可能でございますけれども登録制があることによって大企業が自粛せざるを得ない、こういうようなことが大きく我々の存立につながっているわけでございます。大企業は、従来は紡績さん、合繊メーカーのほかに、流通段階の方ももうかると思ったら入ってくるかもしれませんが、そういうような意味におけるところの一種の分野調整法が実効的に働いているという面もあるわけでございます。しかし、トータルとしての登録によるところの需給のバランスの問題は、輸入の動きというものが大きく全般に響くことは事実でございます。ありがとうございました。
  35. 水田稔

    ○水田委員 最後になりまして本当に申しわけないのですが、時間がないので、また労働組合の側にまとめてお伺いしたいのですが、繊維産業に働く人たちは、大変な時代、ずっと続けてきたと思うのです。私自身も不況業種の中の出身だったものですから人ごとではない、こういう気持ちでこれまでも見てまいったのですが、構造改善を進めるということは、一方で言えば、人の点で言えば人を減すということに必ずつながるわけですね。確かに、離職者法あり、あるいは産構法ありでいろいろあるわけですが、雇用関係でいいますと、特安法から産構法になるときに、何としてもそこに働く人たちの意見を十分聞くこと、そして雇用が確保できる、それを大きな柱としてやってほしい、それが一つの条件みたいで私どもはこの法案に取り組んだわけです。そういう点で運用、例えば産構法なり構造改善という中で、働く側として、実際問題として起こった事態は、そういう点が十分機能されるような、労働者の意見が聞かれるような運営がされてきたのかどうか。  それからもう一つは、離職者法も、それで職を離れていくという人については、私どもはまだまだ足りないのじゃないか。日本産業構造が大きく変わるという中で、再就職する場合、もとの職場で働いた同じ賃金が保障されるような、新しい技術を身につける、長い期間の訓練とか、そういうものが必要ではないかと思っておるわけです。そういう点では、今の離職者法等十分に機能しているのかどうかということについてお伺いしたい。  それからもう一つは、絹の問題について、まさに輸入で十七万俵も在庫があるということで大変だろうと思うのですが、そういう中で野口参考人の御意見の中に、議員立法で抜本的な対策を国会議員にというお考えもあるようですが、抜本的というのは具体的にどういうことをお考えになっておるのか、お伺いしたいと思うのです。  以上二点について、ひとつそれぞれお答えいただけたらありがたいと思います。
  36. 池田友次

    池田参考人 お答えをいたします。  私は、率直に申し上げて、現行の、例えば雇用問題に関係をする雇調だとかいろいろな問題について、特に中小企業経営はほとんどこれの活用をしていない、こういうことを日常的に実は感じておるところであります。そういう意味で、先ほど申し上げたことにも関連をいたしますが、私どもの傘下の中に、現在、企業閉鎖だとか事業転換だとかいう問題が幾つか起きておりますが、新しい事業転換をする場合に、職業教育訓練手当の利用をしなさいということで、経営側と話してみると、そういうものが本当にあったのか、実はこういうような実情でございます。したがって、その辺の問題についても、私ども、運動の中でももう一回検討をしてみなければいけないことだというふうに考えております。  それから、今度の構造改善を進めるに当たって、そのことが直ちに雇用を減らす、こういう道につながるのではないかという懸念につきましては、実は私もそのように考えております。したがって、それらの問題につきましては、先ほど申し上げましたような、労使の事前協議の場できちっと合意が得られるような、そういうことを前提として対処しなければならないだろうというふうに思います。  それから、絹の問題については、私に対する御質問ではないかと思いますが、私の組合としては、現在の繭糸価格中間安定制度、さらに蚕糖事業団法の存在、ないしは二国間協議による一元輸入の問題、このことについてはきちっと堅持をしていくべきだ、こういう考え方に立っております。
  37. 野口敞也

    野口参考人 雇用の問題でありますけれども、比較的大手なり中堅なり、あるいは労働組合がある企業につきましては、それなりに労働者側も対策があると思いますし、会社との協議を通じて解決策がある程度図れるわけでございます。  ただ、繊維法が対象としておりますのはいわゆる中小企業であるわけでございますが、この分野におきましては、残念ながら、私どもの経験においても、従業員あるいは勤労者の雇用がそれだけ尊重されているとは必ずしも言い切れない面が多くあるわけでございます。また、大変厳しい中で構造改善が進むわけでございますけれども、国の政策もそうでありますけれども企業が生き残ればいいという面が非常に強く出ていると思います。これまでの産構法もそうでありますし、繊維産業が意外に健闘しているじゃないかと一般に言います。それは企業の経理の表面がいいというものを見まして、これはやっておるじゃないか、こういうふうに判断して、その中の、従業員がどうであるか、またその処遇がどうであるかということは全く議論をされていないわけであります。  そういう意味では、それぞれの中小企業におきましても、あるいは産地全体にしましても、やはり勤労者、労働者ということを十分に考えた施策をしていただきたいと思います。特に産地では、これから企業間格差が非常に大きく広がってまいると思います。構造改善は、その結果として当然そういうものを生んでいくと思いますが、産地には同じような企業が集まっているわけでありますから、特に業界団体あるいは地方自治体における対策というのが非常に大事になってくると思います。  それから絹の問題でございますけれども、要すれば、絹の問題は消費が伸び悩んでいるということであると思います。その原因は、余りにも高過ぎるということでございます。高過ぎるということは、必ずしも繭から始まる原料が高いだけではないわけでありますけれども、それが大きな影響を与えていることは間違いないと思います。繊維産業は大変国際的なものでございますので、輸出もしなければいかぬ、あるいはまた輸入もしなければいかぬ。そうして、そういう中で国際的に競争をしながらやはり消費をつかんでいく、広げていくという役割を負っていると思います。したがって、産地、絹業も必ずしも国内でかたい保護のもとで枠を囲っていくのではなくて、やはり国際的な勝負の中で、同じ土俵の中で争ってたくましく伸びていく必要があると思います。  そういうような意味では、原料の出発点、つまり養蚕の保護の問題と、それからいわゆる工業の問題とやはり切り離さなければいかぬ、それが基本的に必要ではないかと思います。そういう意味で、今までは養蚕とそれから生糸というものを一緒に結びつけて制度として運営をしてまいったわけですけれども、それを一度切り離して、農家の保護は、それはまたそれなりに私どもは必要と考えておりますが、別な観点からの制度で考えるべきではないか。生糸以降についてはやはり国際的な競争の中で生きていくということを確保すべきではないか、こういうふうに考えます。
  38. 水田稔

    ○水田委員 参考人の皆さん、ありがとうございました。終わります。
  39. 田原隆

    ○田原委員長代理 日笠勝之君。
  40. 日笠勝之

    日笠委員 公明党の日笠勝之でございます。  参考人の皆様方におかれましては、本日、足元の悪い中、大変に御苦労さまでございます。  時間もございませんので、早速瀧澤参考人に一、二お聞き申し上げたいと思います。  その一点は、繊維工業構造改善臨時措置法にのっとりまして事業協会が設立をされたわけでございますが、今回の一部改正案の中にも、いわゆる技術指導を行う者の養成であるとか、研修の業務並びに新技術開発及び導入を促進するための調査研究及びその成果の普及の業務を追加することも改正案に織り込まれておるわけでございますが、業界の皆様方に若干聞き及びましたところによりますと、設立当初の意義、目的、そして現在の繊維工業界の実態に即して、今後の協会の課題といいましょうか、また現状といいましょうか、こういうものについて参考人はどのようにお考えか、御意見がございますればお聞きしたいと思うのですが。
  41. 瀧澤菊太郎

    瀧澤参考人 お答えいたします。  構造改善事業協会は、構造改善の推進のためにいろいろの仕事をしておるわけでございますが、いろいろまだ不十分な点もないわけではないと思いますけれども、私が考えますには、これまで繊維工業構造改善に貢献をして、いろいろのことをやってきているというふうに考えております。ただ、新しい事態に即しまして、仕事の内容というものも変わっていくべきであろうというふうに思いますので、今度のこの答申におきましては、技術ということを大変重視をしておるわけでございます。技術につきましては、中小零細企業の場合にはそういうことが大事だということはわかっておりましても、なかなか自分ではそれを行うだけの余力といいましょうか、力といいましょうか、そういうようなものが十分備わっているとは思われない。そこで構造改善事業協会におきまして、そのような技術指導のための人員、こういうようなものをあわせて仕事の中に加えていくようにしたらどうであろうかということを考えている次第でございます。
  42. 日笠勝之

    日笠委員 もう一点お聞きしたいのですけれども、先ほどのお話の中にも、現状のままでは事業継続が不可能である、対応力に乏しい企業の場合は転廃をせざるを得ない、こういうお話がございました。これはちょっと観点が違うかもしれませんけれども、問題は、その転廃業者が果たしてうまく成り立っているのかどうかというアフターフォローといいましょうか、追跡調査みたいなものはございますのでしょうか。また、なければ、先生のお考えの中でその後の転廃業者の実態というものを一体どういうふうに考えておられますでしょうか。
  43. 瀧澤菊太郎

    瀧澤参考人 お答えいたします。  私が直接に転廃業者の調査をしたということはございませんけれども、各業界、各産地でそれぞれ転廃業者の方がどのようなところに移っていったか、それから、どのようにその後やっておられるかということについていろいろ調査をなさったり、あるいは私も産地を御訪問しましたときに、そのような話を伺うこともございます。  転廃業というのは、どの業界もそうでございますけれども、大変難しいと思います。繊維でも大変難しいと思いますので、転廃業をなさった方が皆さん非常にうまくやっておられるということではないと思いますけれども、またそれだけに転廃業対策ということは大変重要であるということになるのだろうと思うのです。先ほど、規模の大小にかかわらず今後の厳しい状況のもとでは転廃業をせざるを得ないという厳しい見方をこの答申の中で示していると申し上げたわけでございますけれども、そのような状態のもとでは今後の転廃業対策というものも大変重要になってくるというふうに思っている次第でございます。
  44. 日笠勝之

    日笠委員 池治参考人にお伺いしたいと思います。  先ほどからもいろいろとお話が出ておりますが、いわゆる登録制のことでございます。登録制をしいているがゆえに設備近代化をおくらせているという意見もあるわけでございますけれども、もう一度この登録制についての会長さんの御意見をお伺いしたいと思います。
  45. 池治一見

    池治参考人 設備登録制があるから構造改善がおくれておるという意見もございました。また、設備登録制があるから過剰設備が多くなっているという意見も出ておりました。  過剰設備が出てきたのは、先ほど申しましたとおりに五倍強の中国からの輸入でございます。そういうことを踏んまえまして、私は、登録制があるから過剰設備が出てきたんじゃないということを強く訴えておるものでございます。  それと登録制があるからこういうような構造改善が遅くなったんだと言いますが、先ほど申しましたとおり、二回にわたるオイルショックがありました。そのときは自分の城を守るだけでいっぱいであったろうと思っております。それと、取り組みにくい垂直型であったということで構造改善は伸びなかったということでございます。先ほど何回も申しておりますとおりに、登録制につきましては、我々の業界を維持していくためにはぜひとも登録制が必要であるということでございます。そういうことでぜひともそれを存続きしていただきたいということでございます。
  46. 日笠勝之

    日笠委員 具体的にお聞きしたいと思うのですけれども、共同廃棄の織機の買い上げ価格でございます。再調達価格の半分ということでございますが、最近の値上がりということもありまして、果たして二分の一というものがいいのか。一応標準織機であれば九十万という再調達価格となっておりますが、その二分の一、四十五万、こういうもので現状に沿っておるのでしょうか。その点一つと、もう一つ、先ほどもお話ございました設備技術の融資枠でございますが、いわゆる共同施設のカウント評価が七〇%というふうになっておりますが、この点と二つあわせてお考えをお聞きしたいと思います。
  47. 池治一見

    池治参考人 お答えいたします。  今までの買い上げ価格は、今先生が申されました四十何万でありまして、手取りが十八万六千円です。その半分は引かれますし、また積み立てということで、保証金ということで一〇%になっております。今度の転廃業はぜひともやらなければいかないということで、さきの答申にも盛られておりますごとく、我々もぜひとも構造改善で伸びるものは構造改善をやりなさい、ここでやれないものは転廃業をやらなければいかないということで、この価格は百五十万くらいにしていただきたい。それでも四十何万しか手取りがありません。  ここでひとつ時間をかりましてお話ししたいのですが、戦後の混乱したときにこの日本を支えてきたのが我々繊維業だと思います。こういう言葉を使ったらいかないと思いますけれども工連にしても、そういうことくらいの価格は上げてやってもいいんじゃないかということで、価格を上げていただきたいということと、それからもう一つは市街化調整地区。繊維は七〇%以上は市街化調整地区でございます。その人が転廃業しようとしたかて、それをつぶしたならば農地です。絶対鉄工やったらいかぬ、アパートを建てたらいかぬ、マンション建てたらいかぬと厳しい規制があります。これは先生方にひとつこの際、転廃業でございますので、この市街化調整地区の線引きということを考えていただきたい。そうでなければ転廃業はできない。七、八〇%は市街化調整地域にありますので、ぜひとも市街化調整地区の線引きということを考えていただきたいと思っております。  それから、共同施設のカウント評価の七〇%でございますが、これはリースの七〇%と言っているのですが、私らは一〇〇%にしていただきたいと思うのです。先ほど申しました価格の見直し、これは五年前いろいろ決まったことでございまして、これは見直してくれておるのですが、これは三倍ということでございますが、ぜひともそれ以上にしていただきたいということと、やはり一〇〇%にしていただきたいということでございます。
  48. 日笠勝之

    日笠委員 伊藤参考人にお伺いしたいと思います。  去る三月に、輸入攻勢に対しまして黒田局長の方に陳情に行かれたとお聞きいたしております。今度六月にも韓国、台湾と業界会談で御足労されるとお聞きしておりますけれども、五十四年の繊維工業構造改善臨時措置法の一部を改正する法律案に対して当商工委員会ではこのように附帯決議をつけております。「構造改善の阻害要因となるような特定品目の集中的な輸入急増を回避するため、輸入動向等を的確かつ早期に把握するとともに、輸入急増があった場合には、それによる国内産業の被害を最小限に止めるための諸般の施策を強力に講ずること。」という附帯決議がついておるわけですが、現実、早期に把握するという点と、強力に講ずるという、この附帯決議と現状とはいかがなものでございましょうか。
  49. 伊藤忠夫

    伊藤参考人 残念ながら早期に輸入の急増を予知することは現在できておりません。私ども輸入が大幅にふえた、あるいは急にふえたということを知りますのは、毎月の大蔵省の通関統計を見まして、それで前月のものがわかるというような状態でございます。  それで、例えばセーターあるいはシャツ、下着等ございますが、セーター、シャツ類について、昭和五十一年からのデータしかないわけでございますが、その後におきまして輸入が急増する、そうして輸入関係者にお聞きしましても、その予測は極めてモデレートといいますか、内輪にしか私どもにお話しになりません。しかし、実態はふえてくる。例えばことしの輸入予測につきましても、セーター輸入は数量で五%ぐらいしか伸びないというふうに言っておりますけれども、昨年の十月からことしの二月に至るところのセーター輸入の伸びは約四〇%でございます。こういうことはなかなか予知できません。  私ども機会あるごとに関連国ともお話をしております。六月には韓、台を訪問しますが、つい二日ほど前に台湾の有力者が東京へ参りましたので、その人をつかまえまして、こんな状態ですよと言いましたら、向こうも知らない、そんなにふえてますかというような状態でございまして、この辺、MFAでもってクォータがもう売り切れ、満杯になっている香港、台湾、韓国等の状態とは全く違いまして、オープンマーケット。それで向こうの輸出業者、我々同様メーカーでございますから、生産者としての連帯感はございますけれども、とにかく日本から買いに来て信用状を開いたんじゃ、伊藤さん、断るわけにはいかぬだろう。これも確かに一理あるわけでございますけれども、実際輸入している方が実需につながっているかということについて非常に疑問に思うわけでございます。  たくさんの方が輸入しているということでございますので、なかなか実態をつかみにくい点はあるとは思いますけれども、今度の提言にも、無秩序な輸入を防ぐようというような言葉も出ております。日本の国際的な立場も十分わかりますけれども、これから構造改善を進めていく中における需給のバランスは非常に大事と考えておりますので、当局の適切な御措置とか、あるいは輸入関係者の節度というものをまちたいと思っております。
  50. 日笠勝之

    日笠委員 時間も来ました。最後にもう一度池治会長にお伺いしたいのですが、五十八年の織工審と産構審の答申によりますと、産地組合業界団体は総合的ビジョンを明らかにするということになっております。通産省のいわゆるマスタープランというものがなければ、産地ビジョンもできかねるという御意見もあるわけですが、その点、最後にお聞きして終わりたいと思います。いかがでございましょうか。
  51. 池治一見

    池治参考人 今後のビジョンづくりでございますが、私は登録制があってのビジョンづくりだと思っております。登録制がなかったらビジョンづくりもできません。そういうことで、これからいろいろ事業を始めるのですが、それを前提にしてビジョンづくりをしたいと思っております。
  52. 日笠勝之

    日笠委員 ありがとうございました。
  53. 田原隆

    ○田原委員長代理 横手文雄君。
  54. 横手文雄

    ○横手委員 民社党の横手でございます。きょうは参考人の皆さん方には、私どものこの法律に関するこれからのいろいろな指針のために、わざわざ御出席をいただきまして、本当にありがとうございます。  私には十分間しか時間が与えられておりませんので、まず私の方からそれぞれ御質問をさせていただきたいと存じます。多くのことをお伺いをしたいと思いましたけれども、そんなことでございますから、ひとつお許しをいただきたいと存じます。  まず、池治参考人に伺いますが、先ほど来出ておりますように、いわゆる設備登録の問題についてでございます。私も先般この商工委員会設備登録廃止の問題について大臣あるいは通産当局の皆さんといろいろと議論を交わした一人であります。織工審我が国繊維産業の隆盛と発展を願う、こういうことの前提のために、いろいろと討議がなされておる。しかし、その中の一つ登録制廃止の問題が出てきた。ところが現地から見ると、まさにこの登録制廃止の問題については、繁栄の道ではなくして混乱と衰退の道へ確実に歩んでいく、こういうような前提に立って議論をしたことでございますし、今もそのように言われておるわけでございます。ただ、この織工審の中で設備登録に対する廃止方向というのは大変強いということをお伺いいたしております。  そこで業界の皆さん方の御発言の中にも、例えば昭和五十一年の提言に基づいてというようなことでございますが、設備登録制廃止するためには、先ほど来述べておられますように、産地組合の機能がこの設備登録によって辛うじて保たれておる、こういう事実があるとするならば、ほかに産地組合の指導力、機能、こういったものを持つべきバックグラウンドができ上がったときに初めて設備登録制の問題について言及がなされるべきであろう、このように思うわけでございますが、今回のこの法律改正によって、これの遂行の中にそのようなバックグラウンドの整備という道がありましょうか。これをまずお伺いをいたしたいと存じます。  それから伊藤参考人にお伺いいたしますが、先ほど御意見を述べられた中で、弾力的な運用を望む、こんな発言がございました。その中に、構造改善を行おうとするグループの中で中核企業がこれを引っ張っていく、こういったような弾力的な運用をしてくれ、こういうことでございますが、それは中小企業等協同組合法あるいは団体法の中に明らかにされておりますように、例えば出資の割合を変えるとか、そのようなこれらの関連法案の改正まで含めての御意見であろうか、あるいは具体的に我が業界としてはかくのごとき構造改善のビジョンがあるけれども、これを弾力的に運用してもらわなければこれに乗ることができませんという、何か具体的なものがおありなのか、お伺いをいたしたいと思います。  さらに野口参考人にお伺いを申し上げます。ゼンセン同盟我が国繊維産業に働く労働者の団体として、常日ごろ大きな役割を果たしてもらっておるわけでございますが、きょういただきましたこの意見の中の四ページに「当該従業員の雇用と労働環境に少なからぬ影響をもたらす。」こういうことであろうと思いますが、「個々の構造改善事業への労働者の参加を制度上明確に位置づけるべきである。」このように述べておられます。私は、産業というものは政策があって、工場があって、働く者がおって、この三位一体によってその産業の隆盛が図られる、そしてその三者は常に意思統一のために多くの議論の場を持たなければならないと思っておりますけれども、これらの問題について、この法の運用の中で具体的な提言がございましたら、お聞かせをいただきたいと存じます。  以上、三人の方に御質問を申し上げます。
  55. 池治一見

    池治参考人 お答えいたします。  登録制がなくなればどういうふうなことでやっていくのかということでございますが、やはり今度の登録制が我々の本来来る道の、先ほどいろいろ言われておるとおりに伸びていくものか、もうやめていくものかという大きな境目になっております。そういうことで我々は一生懸命登録制に取り組んで指導していきたいと思っております。その成果を見て今後どうするかということを考えなければいけないと思っております。
  56. 伊藤忠夫

    伊藤参考人 核企業の問題と弾力的な運営の問題でございますが、これからは知恵のある、指導力のある人が核になって、リーダーになってやっていかなければならないということでございますので、構造改善におきましてもそのようなやり方を運営上はぜひやっていただきたい。それと関連いたしまして、協同組合法が改定されまして出資率等が変わってくるというふうに承っておりまして、大変結構なことだと存じております。  それから、今回の法律とは全く関係ございませんけれども産地法におきまして産地を振興するやり方がございますけれども、そういうような段階におきまして、産地の核になる企業、そのグループというものが発展する、またそれが一緒になって産地としての活力を大いに発揮できる、こういうような形における産地関係のいろいろな施策も整合性を持ってお考えになっていただきたいと考えております。ありがとうございました。
  57. 野口敞也

    野口参考人 労働者の参加の問題でございますけれども、今回の構造改善事業は、一つ企業間のグループ化というのを前提としております。このことは従業員の将来にとりまして非常に重要な影響を与えるものでございますし、また、構造改善事業に伴いまして設備近代化が当然図られていくと思いますし、これは雇用そのものへの影響あるいはまた労働内容、労働環境に大きな影響をもたらしているわけでございます。一般的には、このような問題につきましては労働組合と事前に協議をするというのが当然のことかと思います。しかしながら、中小企業分野におきましては労働組合を認めない、あるいはまたあっても十分に組合と話をしない、こういうようなところがかなり見受けられております。  したがいまして、この構造改善事業は国の支援を得て、そしてまた国の資金を使って行う事業であります。私ごとの事業ではないと考えます。そのような国の支援を得た事業を行うに当たりましては、企業もそれなりに社会的な責任を果たすことが必要であろうかと思います。具体的には、事前に労働組合と協議をする。離職者法におきましては、事前に労働組合または従業員の代表と話し合いをしまして、その合意を取りつけて、その結果を政府に証拠として差し出すような制度もあります。この構造改善事業がそこまで必要とするかどうかは別にいたしまして、少なくとも労働組合との事前協議を実施要綱その他で義務づけていただければ大変ありがたいことだと考えます。以上でございます。
  58. 横手文雄

    ○横手委員 伊藤参考人に重ねて同じような質問でございますけれども、今回新しく法律が延びる、これに従って、今おっしゃったような形でどこかが中核的なリーダーとなってそのグループを引っ張っていく、このようなことのためには弾力的な運用もぜひ必要なことだということで、そのことについては私も賛意を表するわけでございます。特にニット工連という形の中で、ニット工連は織布の産地とはちょっと産地構成が違う業種だと思っておりますので、あるいはこれになかなか乗りにくいのではないか、こんな感じもするわけでございますが、今具体的にこのようなことを考えておる、直接これの中ではなかなかやりにくいから弾力的に運用してもらいたいというような、何か具体的なそういったものは今のところございませんか。
  59. 伊藤忠夫

    伊藤参考人 原点のところに戻りますけれども需要構造が非常に多角化しまして、また情勢がどんどん変わってくる、そういう中において機を失せず対応できるというのは、企業形態が一番いいわけでございます。  しかしながら、この政府の施策の方はグルーピングでございますから、そのグルーピングの中でもってまた対応していかなければならない。そういう中におけるところの機動性みたいなときに、いろいろと指導者原理みたいなもの、あるいは牽引力というものがグルーピングといえども何かうまく発揮できるような方法がないかなと考えておりますが、私ども政府の施策でもって構造改善に乗った数は例が今まで割合少ないわけでございます。一方、一般の業者の中におきましては自然発生的、これは商売の必要性からそういう形ができておりますので、今後、この人たちが産地の推進力となっていくであろうと思っております。
  60. 横手文雄

    ○横手委員 時間が参りましたので、これで終わらせてもらいます。どうもありがとうございました。
  61. 田原隆

    ○田原委員長代理 野間友一君。
  62. 野間友一

    ○野間委員 参考人の皆さん、どうも御苦労さまです。  私、きょう最後の質問者になろうかと思いますが、時間がありませんので、重複を避けて幾つかお聞きしたいと思います。  まず、池治参考人にお伺いしたいと思います。  先ほどからもずっと論議がありましたけれども、要するに四十九年にできた新しい繊維法がずっと延長して今日に至るわけですけれども、このいわゆる垂直連携統合が実際に現行法のもとでうまいぐあいに乗っかれるであろうかということを、私、四十九年の繊維法の審議のときにも当委員会においてかなり懸念を表明したわけです。特に中小零細の中での零細が大変乗りにくいと私は思うのです。先ほどのお話でも、六十二産地のうちで実際にあったのが八産地ですか、ですから事業計画なり今の仕組みそのものが非常にシビアであってもっとこういう点は何とかならぬかということがあったら、ぜひ聞かしていただきたいと思います。
  63. 池治一見

    池治参考人 垂直型のものが難しいということは先ほどから何回も言っておるのですが、言われております技術開発センターのいろいろの取り組みが難しいということですね。私は泉州産地でございますが、そういうような土地もあり、建物があるところが取り組みやすいです。取り組めます。しかし、ないところは何もできないということでございます。それと、垂直型であるので垂直で我々の連合会でやったかというと一件もありません。組合主導型に五十四年にこの一部を改正していただきましたので構造改善に取り組めたということでございます。
  64. 野間友一

    ○野間委員 同じ参考人に、今までの経験からいいまして、確かに二回にわたる石油ショックとか予想を上回る繊維不況、消費不況、いろいろな障害があったと思いますが、それでも八産地は今おっしゃったような形でも何とかできておるわけでしょう。ところが実際の話、割合からすれば非常に少ないわけですね。だから、この八産地しかできなかったことについて、特に今の法の制度なり運用上の問題で何かシビア過ぎるというふうに私は思うのですけれども、その点と、それから、あなたの経験の中で実際に零細が乗っかれることができておるのかどうか、もしそうでないとするならば、どういう工夫なり改善が必要か、この点についても重ねてお伺いしたいと思います。
  65. 池治一見

    池治参考人 八産地しかできなかったということは、何回も言っておりますが、リース枠その他の面がございますので、私は、できれば組合主導型の構造改善をやれば、四十二年にやっていただいたようなことになれば、相当の産地ができるのじゃないかということでございます。何回も言っておりますとおり、我々は今後零細企業をどうしていくかということが一番心配でございます。我々の業界、十工連を申しますと十万企業あります。家族従業員をまぜて二百五十万従業員があります。そのうちの何社が構造改善に取り組んでいくかということでございます。そういう難しい問題がございますが、そういうことでございますので、技術開発センターその他の通産、都府県の主導型の構造改善ということは難しいということで今までは取り組めなかったのではないかと思っております。
  66. 野間友一

    ○野間委員 時間がありませんので、次の質問ですが、いわゆる設備登録の問題とか、あるいは設備の共同廃棄の事業を継続してほしい、これは業界から常に出されておるわけです。  それとの関係で、私はいろいろ新聞報道等も調べてみたのですが、例えば大手の系メーカー、日東紡とかあるいは東レ等々ですが、これらがかなり綿紡部門を合理化しながら、他方では織布設備の拡大とか、あるいは染色部門に今かなり出てきつつあると思うのですけれども、先ほどもお話しになりましたけれども、これが設備登録制度の廃止等々によってもっと急速に、こういう形のグルーピングではなくて、大手糸メーカーがぐっと系列化していくという勢いが非常につくのではないかという懸念もするのです。先ほども若干おっしゃったと思いますけれども池治参考人の方から重ねてその点についてお伺いしたいと思います。
  67. 池治一見

    池治参考人 登録制問題でございますが、日清紡その他の大きな紡績が織布部門に大きな進出をしております。それと、これがなくなれば大変だということが我々もよくわかっておりますので、この登録制についてはぜひとも必要だということ、それとともに、大企業が入ってくるということは間違いありませんので、登録制はやはりそのまま継続していただきたいということでございます。
  68. 野間友一

    ○野間委員 労働組合の方に若干お伺いしたいと思いますが、労働環境なり労働条件が非常に劣悪だ、これは産地性とかあるいは零細過多性繊維産業の中では特徴でありますから特に顕著だと思うのですが、私もある産地を調べますと、後継者がなくなるとか、あるいはそこに働く労働者が非常に高齢化して、五十歳から六十歳、あと若年労働者が全く枯渇しておるということが顕著な産地が随分あるわけです。  ビジョンの中でも人材の育成とか、あるいは環境条件の整備等々がうたわれておりますけれども、実際にはなかなか今の条件の中では困難じゃないか、こう思うのです。このことをこのまま放置しますと、産地そのものが解体するというところもかなり出てくるのではないかという懸念も実は私は持つわけでありますので、この点について労働者側からして、どういう方向で、具体的にどういう施策をとっていったらいいのか、その点についての提言があったらお聞かせいただきたいというのが一つです。  それから、時間がありませんのでもう一つ、工賃の問題です。これもべらぼうに下げられていますね。ある産地では書面の交付とか、先ほどのお話でも伝票だけとか、あるいは何もないところというのがありましたね。実際に書面の交付があっても、しかもその期間の中でもずばずばと切り捨てる。  あるジャカードを調べてみますと、大体七千五百円が急速に去年の暮れからことしにかけてダウンされて五千五百円から今では二千五百円、こういうところも出ておるわけです。これも本当にけしからぬ話で、採算分岐点を聞きましたら、五千五百円なかったらぐあいが悪い、こういうことを言っているわけです。だから、こういうことも相まっていろいろな形で、とにかく中小、特に零細の場合が大変劣悪で、非常に危機的な状況にあると思うのです。  加工賃の問題についても、池田さんでしたか、たしか意見陳述の中でもおっしゃったと思いますけれども、これらも踏まえながら、先ほど申し上げた幾つかの点について、両労働組合の代表の方から御意見を聞かせていただきたいと思います。
  69. 池田友次

    池田参考人 後者の方から申し上げますが、加工賃の実態というのは、私ども傘下の組合がほとんど中小企業ですから、言ってみれば加工賃の高さによって賃金から始まって退職金まで全部規制をされる、こういう要素を極めて強く持っております。それで、私どもは適正加工賃の確保ということで、通産省に対して時々申し入れなどをして、その善処方を要請してきておるところでございますが、実態は依然、非常に極端な表現で言いますと、生かさず、殺さず程度の加工賃しか得ることができない。言葉をかえて言いますと、中小企業と大企業との賃金格差その他の労働条件の格差というのも、言ってみればそこの点にあるのではなかろうか、こういうふうに思うわけであります。  私は先ほど意見の中で、新たに通産省に適正加工賃を確保するような、あるいは不公正な取引をやめさせるような特別な機関を設置をして対応すべきではないか、こういうふうに申し上げたところでございますが、現在、構造改善事業協会の中で繊維取引近代化推進協議会というのがございますが、そこでも加工賃の実態についてはある程度の調査をされているようでございます。それらの内容についてやはり公表するような措置もとりながら、関連する業界が発注メーカーあるいは商社に対して、まとまって物を言えるような、そういう体制をどうつくっていくのか、ここのところが非常に重要な問題だろうと思っております。  それから、御指摘のように中小零細企業において後継者がいないとか、あるいはますます高齢化する、こういうことは言われるとおりでございまして、やはり一番基本的な問題は、そこの産地なり企業について展望がないといいますか、未来がない、それが一番大きな要因になっているだろう、こういうふうに考えるわけです。  したがいまして、その辺の問題については、しからばどうするかということは非常に難しいわけでありますが、提言の中にございますように、言うならば繊維産業を新たに先進国型並みの産業にという方向が明確にされておりますので、これまた先ほど触れたことですけれども、労働条件についてもそういう先進国型の条件に引き上げる、こういうことが働く人の立場からいえば、そこの企業なり、あるいは産業に対して未来があり、魅力を持つということになろうかと考えるわけでありまして、そういう点で我々は引き続き努力をしてまいりたい、こういうふうに考えておるのでございます。
  70. 野口敞也

    野口参考人 御指摘のとおり、繊維産業の中には、労働条件が大変劣悪、特に中小零細分野でそうなんですが、実際にございます。これは、特に第一次石油危機以降、国際競争が非常に激化した中で、結局、近代化あるいは合理化というものをやる力がなかった、したがって、それらと競争していくためには労働条件を切り下げて闘うより仕方がなかった、こういうもののあらわれだろうと思います。  ただ、これからの展望でございますが、これまで議論されておりますように、多品種小ロットあるいは短サイクル化という動きがございます。その中で、やはりこれからはずうたいだけが大きいというのは取り柄でなくなってきた。むしろ小回りがきくといいますか、それなりの技術、特殊性を持ったところが強くなる、こういうところがございますので、小さくても本当に力を持ったところは、それだけの利益を上げてやっていける時代ではないかという面もあるというふうに考えます。  それから、加工賃なりあるいは最低賃金の問題、繊維関係では常に最低のところを動いているわけです。これについては私ども努力をしておりますし、非常に大きな問題だと思っております。そういう意味では、繊維産業は中高年でもあるいは御婦人でもやれる非常に大事な産業でありますけれども、それなりに支援策が必要だと思います。また逆に、思い切って加工賃、賃金を上げる中で、そういうような力を持たないところは、むしろほかの面で生きていかなければならない、そういうことも私ども考えております。つまり、先進国型の労働条件を出せないような企業は別の産業として転換を図るべきである、これは極端でありますが、一方ではやはりそういう考え方もする必要があるのではないかと思います。  いずれにしましても、小売業でも同じような状況にありますけれども、やはりボランタリーチェーンをつくって、みずからの力で小さいところも努力し合って、連帯を保って生き残ろうという、非常にバイタリティーに富んだ動きも一方ではあります。繊維中小零細企業もやはりそのような生き生きとした力を持ってこれから立ち向かわなければならないというふうに考えます。また、その力を出すのも一つの大きな政策でありますし、また、それぞれの関連する団体の活動である、こういうように考えます。
  71. 野間友一

    ○野間委員 時間が参りましたので、ほかの参考人にもたくさん聞きたいことがあるのですけれども、これで終わりたいと思います。どうもありがとうございました。
  72. 田原隆

    ○田原委員長代理 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位には、お忙しい中を御出席賜り、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。  次回は、来る三十日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時四十三分散会