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1984-03-27 第101回国会 衆議院 商工委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年三月二十七日(火曜日)     午前十時開議 出席委員   委員長 梶山 静六君    理事 浦野 烋興君 理事 田原  隆君    理事 森   清君 理事 渡辺 秀央君    理事 城地 豊司君 理事 水田  稔君    理事 長田 武士君 理事 宮田 早苗君       甘利  明君    尾身 幸次君       奥田 幹生君    加藤 卓二君       粕谷  茂君    木部 佳昭君       岸田 文武君    高村 正彦君       鈴木 宗男君    辻  英雄君       仲村 正治君    野上  徹君       野田  毅君    原田昇左右君       深谷 隆司君    古屋  亨君       綿貫 民輔君    奥野 一雄君       後藤  茂君    新村 源雄君       中村 重光君    浜西 鉄雄君       山中 末治君    横江 金夫君       和田 貞夫君    渡辺 嘉藏君       木内 良明君    中川 嘉美君       日笠 勝之君    福岡 康夫君       青山  丘君    横手 文雄君       小沢 和秋君    野間 友一君  出席国務大臣         通商産業大臣 小此木彦三郎君  出席政府委員         通商産業政務次         官       佐藤 信二君         通商産業大臣官         房長      福川 伸次君         通商産業大臣官         房審議官    棚橋 祐治君         通商産業大臣官         房審議官    前田 典彦君         通商産業大臣官         房審議官    山田 勝久君         通商産業省通商         政策局長    柴田 益男君         通商産業省貿易         局長      杉山  弘君         通商産業省生活         産業局長    黒田  真君         中小企業庁長官 中澤 忠義君  委員外出席者         商工委員会調査         室長      朴木  正君     ————————————— 委員の異動 三月二十七日  辞任         補欠選任   深谷 隆司君     鈴木 宗男君   中村 重光君     新村 源雄君   渡辺 嘉藏君     山中 末治君 同日  辞任         補欠選任   鈴木 宗男君     深谷 隆司君   新村 源雄君     中村 重光君   山中 末治君     渡辺 嘉藏君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  輸出保険法及び輸出保険特別会計法の一部を改  正する法律案内閣提出第二一号)  繊維工業構造改善臨時措置法の一部を改正する  法律案内閣提出第三〇号)      ————◇—————
  2. 渡辺秀央

    渡辺(秀)委員長代理 これより会議を開きます。  委員長が所用のため出席がおくれますので、委員長の指定により私が委員長の職務を行います。  内閣提出輸出保険法及び輸出保険特別会計法の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。田原隆君。
  3. 田原隆

    田原委員 今回の輸出保険法改正は、世界経済停滞等背景として、発展途上国等において増大している累積債務問題を中心としたカントリーリスクの高まりに輸出保険制度が適切に対応するための措置であると私は理解しております。  そこで、まず大臣にお伺いしたいのですが、改正案の具体的な問題に入る前に、その背景となる内外の経済情勢に対する政府の認識をお伺いしたいと思います。  そのまず第一点は、今回法改正を促すことになった最大の問題は、債務繰り延べ国の急増でありますが、こうした問題が急激に発生するに至った背景としての世界経済動向と今後の展望について、一般的な見解をお伺いしたいと思います。
  4. 小此木彦三郎

    小此木国務大臣 債務繰り延べ最大原因は、まず貿易収支悪化にあると思うのでございます。第二次石油ショック以降、非常に石油支払い代金が急増した。あるいは一次産品価格低迷によって、輸出の不振あるいは貿易収支悪化が非常に大きくなってしまった。さらに、先進国民間銀行発展途上国オイルマネー貸出先を求めるというようなこともありまして、その支払い利子も急増した。さまざまな原因財政収支悪化させたことであると思うのでございます。  しかし、世界経済米国中心として非常に回復の基調が起きてきた、あるいは一次産品価格も多少持ち直してきた、あるいは改善してきたということになりますれば、政府といたしましても、発展途上国貿易収支も好転していくのではないか、そのような状況のよくなることを我々も期待いたしておるというようなことでございます。
  5. 田原隆

    田原委員 発展途上国などの累積債務問題を展望する上で、今大臣もおっしゃいましたが、先進国経済動向が大きいかかわりを持っており、特に米国経済というのは大きい影響があると思いますが、今言われましたように、また最近の経済情勢を見ましても、米国経済は非常に急速なテンポで回復をしておると言われておりますけれども、しかし反面、これは本物ではないのではないかという危惧もあったりしておるわけであります。そのうちに、米国経済一つの弱点であります大幅な経常収支赤字とか財政赤字というのがあります。今ドルが大分下がっておりますが、それがさらに急落して、急激に冷え込むのではないかという見方が一方にあるのですが、その辺の見通しをちょっとお話し願いたいと思います。
  6. 柴田益男

    柴田政府委員 今先生の御質問の点でございますが、御案内のように、先進国経済は八〇年から、過去三年非常に停滞してまいりました。昨年来、アメリカ中心回復過程に入っているわけでございます。アメリカも来年の成長見通しは五%台というふうに見通されておりますし、ヨーロッパの方におきましても、イギリス、西ドイツを中心回復過程に入ってきているわけでございます。  それで、御質問のありました、アメリカ景気回復はずっと続いていくであろうかということでございますけれども、自動車の購入増大住宅投資という形で景気回復が参りまして、最近時点ではアメリカ投資が非常にふえてまいっております。そういう意味におきまして、現段階におきましては、ことしの後半も、設備投資に支えられましてOECD見通しの五%台の成長ということは一応期待できるのではないか、そういうふうに我々は見ているわけでございます。
  7. 田原隆

    田原委員 それでは、発展途上国における累積債務現状をお話し願いたいのです。それから、簡単な見通しと申しますか……。
  8. 杉山弘

    杉山政府委員 発展途上国債務累積現状でございますが、世銀の資料によりますと、昨年末では総計八千百億ドルと言われておりまして、その前年末、八二年末に比べまして約五百億ドルほど増加をいたしております。これは、先ほど大臣から御説明いたしましたような、第二次石油ショック以降の石油代金支払い増加でございますとか、先進国景気低迷に伴う一次産品価格低下、それから世界的な高金利というものが背景になっているわけでございます。  こういう状況に対しまして、国際機関及び各債権国間の協力が進められておりますし、それから最近では、世界経済にも明るい兆しが見えてきておりますので、一応当面のところは危機的な状況を脱したというふうに判断されているのではないかと考えております。
  9. 田原隆

    田原委員 今おっしゃったように、地域的に見ると非産油発展途上国が最も多いのですが、最近では産油国でもある程度、特に中進国累積債務問題がクローズアップされておりますが、それらの原因についてもう少しお話し願いたいと思います。
  10. 杉山弘

    杉山政府委員 特に発展途上国の中でも、今御指摘のございました産油国及び中進国と言われている国々債務累積問題というのが特にクローズアップされているわけでございますが、産油国につきましては、先ほど御答弁申し上げましたとおり、やはり石油価格低下というものが一番大きな原因であろうというふうに考えておりますし、中進国におきます債務累積問題と申しますのは、中進国の最近までにおける急速な経済近代化計画というものに基づきます輸入の増加、それに対応するための外国からの借り入れというものが原因になっているというふうに承知いたしております。
  11. 田原隆

    田原委員 ことしの二月に通産省が、輸出保険法及び輸出保険特別会計法の一部改正というプリントを出しましたけれども、それを読めばわかるのですが、本当の要点といいますか、改正要点を簡単にひとつ。
  12. 杉山弘

    杉山政府委員 今回お願いをいたしております保険法改正問題は、大きく分けますと二つございまして、一つは、ただいま御説明いたしましたような債務累積に伴うカントリーリスク増大によりまして、これがプラント輸出及び中小企業性製品発展途上国に対する輸出というものに影響を与えておりますので、こういった面でのカントリーリスク増大に対する輸出保険の機能の強化というものが第一点でございます。  それから第二点は、実際に債務累積のために支払い遅延が生じております国に対しましては、国際的に債務繰り延べを実施しているわけでございますが、債務繰り延べを実施いたしますと、輸出保険では保険契約者に対して保険事故として保険金のお支払いをしなければいけません。こういった保険金支払いがこのところ急激に増加をいたしております。こういった面におきまして輸出保険特別会計法改正をお願いいたしまして、保険特別会計資金繰り対策を講じさせていただきたい。この二点が今回の主要な改正点でございます。
  13. 田原隆

    田原委員 それでは、累積債務国に対する債権国政府、それから国際金融機関等はどのような対策をとっておるかということについて概略……。
  14. 柴田益男

    柴田政府委員 債務累積国に対しまして先進国側といたしましては、大ざっぱに申しまして三つのことを実行しているわけでございます。  第一点は、お話に出ておりました公的債務とそれから公的保証債務についても債務繰り延べを実施しているということでございます。  それから二番目には、いわゆる低所得発展途上国、LLDCに対しましては、五十三年の国連開発会議、UNCTADの決議に基づきまして、それ以前の公的債務救済措置を実施する。実費的には元本を無償援助に切りかえるということをやっております。  第三点は、IMFとかあるいは世銀等国際機関におきまして、債務国流動性不足に対しまして、国際収支改善のための融資を実行しているわけでございます。  以上でございます。
  15. 田原隆

    田原委員 債務繰り延べに応じている国はおよそ何カ国ありますか。
  16. 杉山弘

    杉山政府委員 現在、輸出保険におきまして債務繰り延べに対応しております国の数は十五カ国でございます。そのうち十カ国は昨年一年間に国際的な合意に基づいて債務繰り延べを実施したものでございます。このほかにもなお数カ国が、パリクラブと申しますか、国際的な債権国会議の開催の希望を持っているというふうに承知をいたしておりますので、なお数カ国増加する可能性があると存じます。
  17. 田原隆

    田原委員 ひっくるめて問題のある国を特定国として扱っておりますね。その特定国の定義を少し正確に言っていただきたい。どういうふうに扱っているか、あわせてお伺いしたい。
  18. 杉山弘

    杉山政府委員 保険法運用に当たりまして、私ども経済状態悪化をしておる国に対しましては、やはりリスクが大きくなっているというふうに考えまして、保険引き受けにつきまして、厳しい場合には引受停止、それから緩い場合でも通常引き受けに比べますと引き受け制限をするということをやっております。そういう対象になる国を私ども特定国と称しているわけでございますが、現在この特定国となっておりますのはおよそ六十カ国程度ございます。
  19. 田原隆

    田原委員 その特定国の中で、停止しているのは論外といたしまして、それ以外の国に対しては具体的にどういうふうに考えていますか。料率を変えるとか、いろいろ条件をつけますね。ちょっと言ってください。
  20. 杉山弘

    杉山政府委員 保険引受停止以外の制限といたしましては、いろいろな方法がございますが、一つは、危険度に応じまして料率通常料率より高くしてお引き受けをするという方法でございます。     〔渡辺(秀)委員長代理退席、森(清)委員     長代理着席〕それから、保険責任残高がかなりふえておる国に対しましては、むしろ新しく保険お引き受けをする額をトータルとしてある程度抑えるというようなこともやっております。
  21. 田原隆

    田原委員 まだそのほか条件があると思いますが、それでは一方的に債務返済を履行しない国がありますね、パリクラブ云々の手続もとらないとか。そういうものはやはりあるでしょう。そして、どういうふうにしておりますか。
  22. 杉山弘

    杉山政府委員 私ども基本的には、国際的な債権国合意に従いました債務繰り延べというのが基本だと存じますが、残念ながら国によりましてはそういった債権国との会議の招集を希望せずに、一方的に御指摘のように債務返済を滞らせているという国があるのは事実でございます。こういう国に対しましては、むしろ各債権国が個別に取り立ての実行を迫るということになりますと非常に混乱をいたしますし、また、その国の経済再建にとりましても決して好ましいことではないというふうに考えられますので、私ども、できるだけ外交ルートを通じまして、また、各債権国とも共同いたしまして、こういう国々に国際的な債権国との合意を経て秩序ある債務繰り延べを実施するように働きかけをしているところでございます。
  23. 田原隆

    田原委員 そういう国の名前をあえて挙げてくれとは申しませんが、世界先進国その他と話し合って国際的な一つのルールをやはりつくり上げるように十分対策を練っていただきたいと思います。  それから、もう大分時間がたちましたけれども、二月二十七日だったと思いますが、ある新聞トップ記事として、輸出保険引き受けについての政府の指針の内容らしきものが発表されており、また、その中で具体的な引受停止国というのが挙がっておりましたし、またA、B、Cというようなランクづけをして引受制限程度をあらわしたのもありましたし、それらの国の具体的な名前も入っておったのですが、これは通産省は何らかのかかわりを持ったのか、発表したのか、その点をお伺いしたいと思います。
  24. 杉山弘

    杉山政府委員 先生指摘のように、二月二十七日付で「輸出保険停止は二十五カ国」というような大きな見出しで日本経済新聞記事が出ております。先ほど御説明いたしましたように、私ども保険の業務を行います場合に、経済状態悪化し、リスクのふえた国に対しましては、保険引き受けについていろいろ制限ないし停止措置をとっているわけでございますが、ただ、これは相手国政府に対する外交上の配慮等もございますので、国名については一切公表しないということを原則にしております。したがいまして、この記事がどこから出たのかということにつきましては、私ども理解に苦しむわけでございますが、内容につきましてもかなり事実に反する向きもございますし、通産省自身がこういう記事を発表したということはございません。
  25. 田原隆

    田原委員 しかし、あれから多少影響があったのではないかとも思うし、あるいはなかったかとも思いますけれども、その後新聞にいろいろ書かれてもいないですから、無事済んだのかもしれませんが、余りいいことではないので今後十分注意していただきたいと思います。  それから、累積債務問題が顕在化してまいりまして、我が国の貿易、特にプラント輸出中小企業輸出には相当影響が出ていると思うのですが、それらについて数字を挙げて御説明いただきたいと思います。
  26. 杉山弘

    杉山政府委員 債務累積国増加に伴いますプラント輸出ないし中小企業性製品輸出に対する。影響でございますが、まずプラント輸出に対する影響を申し上げますと、五十年代に入りましてからプラント輸出の伸びは四十年代に比べましてかなり落ちてきておりますが、昭和五十六年度に百七十五億ドルという金額を記録をいたしましたが、これが現在までのプラント輸出のピークでございます。五十七年度におきましては、前年比で約二〇%強の減少で百三十五億ドルということになっております。五十八年度、本年度につきましては、まだ年度全体の数字はまとまっておりませんが、一月までの数字で見ますと、前年度の同じ期間に比べまして約四割弱の減少でございまして、このところ二年続きでプラント輸出減少が生じております。こういった現象は、先ほども御調則申し上げましたように、世界経済停滞でございますとか、発展途上国債務累積顕在化産油国開発計画繰り延べといったものを背景として生じたものというふうに理解をいたしております。  それから、中小企業性製品輸出でございますが、これは昭和五十七年以降やはり減少を見ております。昨年の後半からは、世界経済全般の明るさが見えてきたことを背景にいたしまして、若干回復を見せてきておりますけれども中小企業性製品は、大企業性製品に比べますと回復の足取りは遅うございます。例えば、五十八年下期を見てみますと、昭和五十六年下期を一〇〇といたしまして、大企業性製品は一一四・二というふうに、五十六年下期に比べますとその水準を一四%ほど超えておりますが、中小企業性製品は、五十八年下期は五十六年下期に比べまして一〇〇・六で、ようやく五十六年下期の水準に達したという状況になってきております。  特に、中小企業性製品輸出地域別に眺めてみますと、発展途上国向け輸出回復力が弱いのが非常に目立ってきておりまして、中小企業性製品先進国に対しましては九八%でございますけれども発展途上国向けに対しましてはまだ九二%程度ということになりまして、五十六年の水準回復するに至っていない、こういう状況にございます。
  27. 田原隆

    田原委員 話をちょっと変えまして、今度の改正で、てん補率輸出代金保険については九五%以内から九七・五%以内というふうにし、手形保険については八〇%から八二・五%以内というふうにしておりますが、何か大分ニュアンスが、数字のほかに以内というのがついたりして変わっておりますが、それらについてちょっと理由を説明いただきたいと思います。
  28. 杉山弘

    杉山政府委員 御審議をお願いしております改正におきまして、輸出代金保険につきましてのてん補率の引き上げは、現在九五%以内となっておりますのを九七・五%以内、二・五%上積みをお願いするものでございます。  輸出手形保険につきましては、現在八〇%となっておりますのを八二・五%以内というふうに、てん補率としましては二・五%ふやすわけでございますが、結果としまして代金保険の九七・五に対して手形保険が八二・五ということで、両方の間に差があるのではないかというお尋ねであろうかと存じますが、手形保険につきましては、政府保険てん補できない部分現行で申しますと八〇%のてん補率でございますから、二〇%は政府輸出保険てん補をいたしませんが、その部分につきましては地方公共団体におきまして損失補償措置がとられておりまして、これが一五%分をてん補をいたしております。  したがいまして、その地方公共団体損失補償一五%が上積みされるということを前提に考えますと、輸出手形保険につきましても輸出業者てん補されます割合は、今回の改正を含めまして九七・五%以内ということになりますので、輸出代金保険の場合と均衡がとれているというふうに考えておるわけでございます。
  29. 田原隆

    田原委員 従来は八〇%として固定してありましたね。ですから、変えられない。八二・五以内ということにしたのですから、いかにも数字が引き上げられて感じがいいのですけれども、以内という言葉が案外本心ではなかったかというふうな気がするのですがね。ですから、上限を引き上げても、運用上は以内をたくさん利用して、八〇よりも低いのがたくさん出るのじゃないか。そういうふうに厳しくなると、特に中小企業などは非常な痛手を受けると思うのですが、その辺の運用を誤ると、せっかく輸出保険法があってもその精神が生かされないということになるのですね。その点は注意していただきたいと思うのです。  それから、一五%地方自治体が持つと言っていますが、これは条例でしょうね。条例で決まっておるとしまして、政府はその八二・五%以内で引き上げたように見えながら、運用上下げることが可能である。そうすると、地方庁負担分については一五%で固定したままですが、これにも何か以内とかなんとかつくような改正の動きがあるのですか。  それともう一点は、もし政府が八二・五%以内という以内を利用して少し下げた場合、地方庁は一三%にするとか、そういうことも将来あり得るような行政指導指導をする予定ですかどうですか、お伺いしたいと思います。
  30. 杉山弘

    杉山政府委員 まず最初に、先ほどの私の答弁の中で、輸出手形保険につきまして、現行の八〇といってん補率を八二・五%以内ということに変える、以内をつけることにつきましての部分が欠落をしておりましたので、御説明をさせていただきますが、これは従来でございますと、いかなる場合でも八〇%てん補をしなければいけないということでございますので、経済状態が悪くなりリスクが多くなった国に対しましても、一たんお引き受けをした以上、八〇%のてん補率でお支払いをしなければいけないということになりますと、保険といたしましては、経済状態の悪くなった国に対する引き受けをどうしても警戒せざるを得ないということがございました。  こういう点につきまして、てん補率引き下げてでもむしろ保険引き受けを続けてもらえないか、こういうような御要望もございましたので、そういった弾力的な運用が可能になるようにという趣旨でございますので、むしろ従来やっておりました通常の場合の八〇%をさらに引き下げるという意味での以内をつけるということではございませんので、その点を申し上げさせていただきたいと思います。  それから今のお尋ねの件でございますけれども、この点につきましては、私どもといたしましては、地方公共団体がやっております損失補償制度、これは現在の輸出保険が八〇%ということで固定をされておりますので、そこでてん補されない二〇%分のうち、一五%をそのままてん補するということになっているわけでございます。  ただいま御説明しましたように、今回は八二・五%以内ということで、てん補率について弾力的な運用ができるようにいたしますが、この点につきましては、現在地方公共団体と連絡をとっているところでございますが、仮に政府保険の方がてん補率を、以内という条項を弾力的に運用しまして引き下げをしました場合には、地方公共団体において行われております損失補償の一五%のてん補部分につきましても、政府てん補率引き下げにスライドをして引き下げるという方向で、現在地方公共団体意見調整をしておりまして、大体そういう方向地方公共団体でも運用が行われることになるのではないかというふうに考えております。
  31. 田原隆

    田原委員 わかりました。  海外の制度上の上限てん補率は、非常危険については法的上限として一〇〇%の国が多いですね。例えば輸出代金保険を見ましても、米、英、西独、仏が一〇〇%、蘭九五、ベルギー九五、墺一〇〇、日本九五というふうになっていまして、一〇〇%の国が圧倒的に多いのですが、この前の改正のときも私伺ったのですけれども、もうついでに一〇〇%以内としたらいいような気がするのですけれども、残しておいたのは、この前の理由では、五%が利益だから利益の分まではいいじゃないかという御意見だったが、今度は九五になったので利益率が二・五に減ったのかなと思うのです。まさかそうではないと思うのですが、その辺はどうでしょうか。
  32. 杉山弘

    杉山政府委員 御指摘のとおり、諸外国では法的なてん補率上限といたしまして一〇〇%といってん補率を採用している国が多うございます。日本の輸出保険法上も法的に一〇〇%にすることが不可能ではないというふうに考えますが、私ども従来一〇〇%といたしておりませんでしたのは、やはり保険契約者輸出者の側に全くリスクがないということにするのはいかがであろうか、例えば輸出取引につきまして、相手方の信用調査というものにつきましても、やはり輸出者みずからの責任においてある程度やっていただくということも必要であろうかと思いますし、また不払い等が生じました場合に、できるだけ損失を軽減するという意味におきまして、いろいろな回収努力を輸出者にしていただくということも必要であろうかと思いますが、こういったようなことは、てん補率を一〇〇%にしておきますと輸出者の危険負担が全くないということになりますので、なかなか実施をしていただけない可能性もございます。  そういう意味におきまして、制度を動かす上での実効を考えますと、法的には一〇〇%とすることは不可能ではないかと思いますけれども、一〇〇%としないで、輸出者の危険負担をわずかではあっても残しておく方がいい、こういう判断に立って今回も九七・五%、手形保険の場合には八二・五%ということでお願いをしているわけでございます。
  33. 田原隆

    田原委員 こだわるようで悪いですが、前のときは五%は利益率であった、それから回収努力をしてもらわなければいかぬ。今度は九七・五ですからもう回収率だけであって利益率ということは考えてないということになるわけですね。
  34. 杉山弘

    杉山政府委員 利益率の点について全く考えていないということではございませんで、先ほど御説明申し上げましたようなプラント輸出等の状況になってまいりますと、輸出に伴う利益率というものも当時に比べますとかなり下がっているという実情を我々把握いたしております。そういうこともあわせ考えますが、仮に利益率が下がりましても、その利益の分を含めて一〇〇%保険に移行するということが法的には不可能ではないと存じますが、先ほど来御説明しましたような実際上の効果の点を考えますと、今のように輸出者の危険負担を少しでも残しておいた方がよかろう、こういう判断でございます。
  35. 田原隆

    田原委員 輸出保険の中に今まで九種類ありまして、委託販売輸出保険と海外広告保険というのがありましたが、今回の改正案ではこれが廃止されるようになっておりますね。ずっと過去のを見てみると、今まで輸出保険法というのはほかの法律と比べて非常に気楽に改正してきておりますね、十四回ぐらいやってきています。だから、これも気楽にやるつもりなのか、それともしんから必要なのか、その辺が一つと、改正に少しなれ過ぎて、もっと必要になれば入れればいいという気楽な気持ちでも、またそれは一つの考え方なんです。それから、前のときに私も要望してあったのですが、ちょうどそこに城地さんがおられるけれども城地さんも要望しておったのですが、統計の発表の仕方で「その他」でくくった部分がありましたね。今度これがもう要らないというので、数字が出たらゼロ、ゼロ、ゼロが何か二、三年続いている。これは初めてわかったんですよ。全部「その他」でくくっていたらわからないのです。ですから、統計の発表というのは、各項目があるのですから、それを出して発表してくれるようにこれからは励行していただきたいのですが、その辺ちょっと。
  36. 杉山弘

    杉山政府委員 今回委託販売輸出保険と海外広告保険につきましては廃止をさせていただきたいということで御提案をいたしているわけでございますが、委託販売輸出保険につきましては昭和五十四年度以降新規の引き受けが現在に至るまで行われておりませんし、海外広告保険につきましては五十五年度以降新規の申し込みがございません。日本の輸出の態様がこういった委託販売とか海外広告保険というものを必要としないような状況になってきたのであろうというふうに考えられますが、こういう状況のもとではむしろ債務繰り延べに伴います保険金支払い増大等の保険会計処理上の事務がふえておりますことを考えますと、こういう新規の申し込みのない保険につきましてはこの際廃止をさせていただいて、事務の合理化を図り、保険金支払い業務等の事務の処理に余力を向けさせていただきたいというのがその趣旨でございます。  それから統計の発表の仕方についてただいま御注意をいただきましたが、確かに、従来「その他の保険」ということで一括して処理をいたしておりましたために、個々の保険の契約状況がどうなっているかということにつきまして、外からはすぐにはわからないという状況にございました。こういう点につきましては、これからは発表の仕方を改めまして、各保険種別ごとにできるだけその状況を詳しく発表するようにいたしたいというふうに考えます。
  37. 田原隆

    田原委員 輸出保険カントリーリスク情報の収集、分析、評価の体制についてお伺いしたいのです。  バイヤー等に関しては非常に細かい調査がなされており、ランクづけなどをして発表されておりますが、先ほどちょっと二月二十七日の新聞の件で出ましたけれども、相手が国である場合にはそう簡単にランクづけして発表するわけにもいかぬでしょうが、通産省としては相当責任を持った調査をしてもらわなければいかぬわけですが、その体制について簡単に骨組みだけでもお答え願いたいと思います。
  38. 前田典彦

    ○前田(典)政府委員 ただいまの御質問でございますが、カントリーリスクの判断というのは保険引き受けの基本になりまして非常に重要な点でございます。それで、私どもは非常にいろいろな情報の入手経路がございまして、かなり相当な量の情報を有しておると思っておるわけでございます。  具体的に申し上げますと、一つは、私ども保険の日々の運営から情報が入ってくるわけでございます。第二は、私どもと同じような輸出保険機関というのが各国にございまして、そこと直接二国間あるいはそれの連合体としましてベルン・ユニオンというのがございます。そこで情報交換システムができておりますけれども、そこから情報が得られます。それから第三には、ジェトロあるいは在外公館、こういう政府の海外における出先機関といいますか、そういうところからの情報が入ってまいりますし、ただ、一方的に受け身で入ってくるだけでなしに、場合によってはこちらからお願いをして、必要な情報をもらうというようなことも可能でございます。それから、当然のことでございますが、内外の公表された資料、統計というようなものが得られるわけでございます。このほかに、さらに五十八年度からは大きな責任残高を有するような国につきましては特別の調査を行っております。  おっしゃるとおり、こういう調査結果というものを外に出しますと、相手国の信用に直接かかわりがあるものでございますから外には出せませんが、私どもの中では、この保険運営のために分析、評価というようなことを保険当局の中あるいは省内のほかの課を含めてカントリー評価のための会議を設けておりますし、必要に応じて外部とも情報交換ということを行っております。しかしながら、現在の海外情勢、非常に動きが早うございます。幾らやっても十分ということはございませんので、一層その努力を重ねてまいりたいと存じます。
  39. 田原隆

    田原委員 その辺は特に強調しておきたいと思います。  前回の改正のときも、準備率のときにちょっとお話ししましたが、そういうことはほとんど考えられないような御答弁をいただいておったにもかかわらず、二、三カ月後には今のような状況の芽生えがもう既に見えつつあったということであります。  輸出保険特別会計の件について少々お伺いしたいのですが、最近の特別会計の収支状況の概要についてお話しいただきたいと思います。
  40. 前田典彦

    ○前田(典)政府委員 最近の発展途上国累積債務増大等を背景として、輸出保険特別会計といたしましては保険金支払いが非常にふえておりまして、資金繰りの悪化も顕著になっております。すなわち、五十七年度におきましては単年度収支で六十億円の赤字であったわけでございますが、五十八年度、五十九年度におきましても大幅な赤字を計上せざるを得ないという見込みでございます。  ただ、債務繰り延べに伴います保険金支払いは将来回収をされるものでございまして、私どもは中長期的には収支のバランスはとれるというふうに考えております。
  41. 田原隆

    田原委員 リスケジュールに伴う保険金支払いの急増で、五十九年度の特別会計が資金不足となるということで、千百四十四億円の短期資金の借り入れを行うことにしておりますが、これによって支払い準備、支払い準備率、これらはどうなるのでしょうか。
  42. 前田典彦

    ○前田(典)政府委員 五十九年度末の支払い準備は約三百億円ほどになる見込みでございます。それに対しまして引受責任残高でございますが、ノミナルで申し上げて二十二兆七千億になります。したがいまして、これを割って計算をいたしますと、支払い準備率は約〇・一三%になる見込みでございます。
  43. 田原隆

    田原委員 五十七年の輸出保険審議会の意見具申でも指摘されておりますが、利用者の信頼を得る上からも、異常危険準備金は引受責任残高の約一%は欲しいということが書かれておりますけれども、前回の改正のときにもお聞きしましたが、そのときはたしかO・八七%ぐらいだったと思うのです、ちょっと記憶は定かではありませんが。イギリスは二・五%ということでありましたが、私もその点について触れたときに、余り心配ないのだというお話だったのですが、これは輸出保険の性質からいって、パンクしているというように私も解釈はしておりません。しかし、もうちょっと何か準備率が欲しいような気がするのです。  それともう一つは、不測の事態に備えて計画的に特別会計をもうちょっと強化するような方法が考えられないかという点についてお伺いしたいと思うのです。     〔森(清)委員長代理退席渡辺(秀)委員     長代理着席
  44. 杉山弘

    杉山政府委員 確かに先生指摘のように、五十七年の輸出保険審議会の意見具申の中でも、異常危険準備金の準備率を一%程度に高めることを長期的な目標とすべきだということがございましたし、前回の改正の際にもそういう御指摘をいただきまして、努力をするという御答弁を申し上げているわけでございます。前回の改正のときには、その数カ月先にはこういうような事態の芽生えがあったにもかかわらず、こういう御指摘でございました。しかし、五十六年に保険法審議をお願いしたのは年の当初に近い段階でございまして、むしろ年央以降こういった債務累積国支払い繰り延べという事態が多発をしてまいりました。そのために、今御指摘のように、五十九年度においては一千百億を超えるような借り入れをしないと保険金の円滑なお支払いができないというような状況になっているわけでございます。当面私ども、こういった債務繰り延べに伴う保険金支払いを円滑に行うということをまず基本的な目標として処理をしたいと考えておりますが、責任準備の増加等についての保険特別会計の基盤強化の問題については、こういった当面の課題についてある程度解決のめどを得た後の中長期的な目標としてぜひ考えさせていただきたいと考えております。
  45. 田原隆

    田原委員 強化のやり方として、地域差料率の機動的運用とか、回収を一層強化するとか、事務の合理化を図るとか、サービス向上によって利用者の拡大を一層図るとか、いろいろあると思うのですが、特に利用者の拡大策というのは私は大事だと思います。前回もお願いしてあったのですが、輸出保険法というのは読んでもよくわからぬですね。私どもも、わからぬやつが質問しているのかと言われては困るのですが、おかげで審議のあれが延びましたので、忘れた分は忘れましたが、勉強した分は勉強させてもらいました。しかし、結論として、もう少しわかりやすいPR誌をつくっていただきたい。  例えば、前のときはこれはなかったのです。これが一冊あるくらいでして、もうちょっと、何とかポンチ絵のまじったような、特に中小企業は件数で五十何%利用しているわけですから、中小企業の方々が読んでもすぐわかるようなPR誌をぜひつくっていただきたい。お願いします。その決断の意思をひとつ……。
  46. 杉山弘

    杉山政府委員 前回にも御指摘をいただきまして、私ども努力をするということを申し上げたわけでございますが、財団法人輸出保険協会というのがございまして、ここの活動を通じて、パンフレットとか解説書等を出したり講習会などをやって、できるだけ中小企業の方々を初め契約者の方々の利便に供するということをやっているわけでございますが、まだ手ぬるいという御批判でございますので、この点については私ども心してぜひやらせていただきたいと思っております。  ただ、今年度から輸出保険協会に電算機の端末を入れて、ここにお問い合わせをいただきましたら、私どもの持っておりますデータが直ちにそこに送られて契約者の方にお示しができるというようなサービスも開始をいたしておりますので、これからもますます力を入れて、この輸出保険のPR活動には万全を期したいと考えております。
  47. 田原隆

    田原委員 お願いいたします。  繰り延べられた債権の回収は長期にわたるのに、今回の措置として、「当分の間」として毎年度の特別会計の資金バランスを短期資金の借りかえで補っていくことにしている理由は何でございましょうか。
  48. 杉山弘

    杉山政府委員 ただいまのお尋ねの点でございますが、債務繰り延べに伴います債権の回収には通常七、八年はかかるわけでございますが、それにもかかわらず輸出保険特別会計法改正について「当分の間」ということにしているのはなぜかということであろうかと思います。  「当分の間」ということにいたしましたのは、先ほど来申し上げておりますような、債務繰り延べに対します保険金支払いの著増ということにつきましては、これはそう長い期間にわたってこれから続くものというふうには考えておりませんので、ある程度の期間がたちましたら解消するというふうに考えておるわけでございます。したがいまして、それまでの間の特別な措置といたしまして資金の借り入れをし、またそれが短期資金の場合には必要な期間その借りかえをしなければいけないという事態になるわけでございますが、これはあくまでも、いわば一種の異常な事態に対する臨時的な対応措置というふうに考えておりますので、将来保険会計が健全な状態に戻りました場合には必要のない規定でございますので、繰り返すようになりますが、債務累積国に対する債務繰り延べ保険金支払いの著増が生じている期間、また、それの回収が行われるまでの間ということで考えておりますので、恒久的な制度として考えるわけではなくて、臨時的当面の措置として考える、そういう趣旨で「当分の間」の措置として規定を入れさせていただくということにしているわけでございます。
  49. 田原隆

    田原委員 「当分の間」というのをもう少し詳しくお聞きしたいのですが、もう時間があれですから先へ進まさせていただきまして、借りかえの限度についてお伺いしたいのですけれども、将来回収可能な範囲というふうになっておりますね。債務繰り延べ措置の場合に、過去にいろいろ例もあるでしょうが、過去の例から見るとどの程度の回収が見込めると想像されておるか、お考えになっておるか、また金利はどの程度取れるのか、それらについてお伺いしたいと思います。
  50. 前田典彦

    ○前田(典)政府委員 この債務繰り延べ措置が行われる典型的なケースというのは、このパリクラブで多数国間で合意をいたしまして、その後債務国債権国との間で交換公文を結ぶわけでございます。そうしてそれによりまして一定のスケジュールで金利を乗せまして、そうして全額債務を返すという約束をし、それに基づいて代金の支払いが行われるわけでございます。それで従来の実績から見ましても八割以上が回収をされております。こういう国際協力によりまして債務国経済を再建しつつ返済の確実さを担保するというようなことでございますから、将来にわたりましても金利分を含めまして相当確実に、少なくとも八割以上は行われるというふうに考えております。  なお、金利は、過去の例でございますと大体八%台の中ごろというような、これはそのときのそれぞれの通貨の市中金利とも関係いたしますが、最近の例だと大体それぐらいで資金運用部からの借り入れ以上の金利が入ってくることになっております。
  51. 田原隆

    田原委員 先ほど一度お聞きしましたけれどもカントリーリスクの度合いに応じて地域差料率を機動的にやるというお話ですが、もしお話ししてよければアッパーリミットはどのくらいに考えておられて、ローアーリミットはどのくらいに考えておられるのか、お伺いしたいと思います。
  52. 前田典彦

    ○前田(典)政府委員 現在の地域差料率では一番安いところと、それから一番高いところを比較いたしますと、七・五倍、一対七・五の差がございます。ただ現実には、最近では非常にこのリスクの差が大きくなりましたので、むしろさらにこれを大きくしてはどうかというような意見も需要者側からも強うございまして、私どもも検討中でございます。
  53. 田原隆

    田原委員 これは国際的比較においてはどうなんですか。それと、五十八年四月に一回引き上げられておるというのは本当ですか。
  54. 前田典彦

    ○前田(典)政府委員 まず最初の点でございますが、国際的に各国がカントリーリスクにつきましてどれぐらいの幅をもってやっておるかというお尋ねかと存じますが、大体従来までは我が国とそれほど、我が国も各国もこれは密接に情報交換を行っておりますので、ちょっと具体的には申し上げられませんが、割合に同じような幅でやっておったのではなかろうかと思います。  先ほど私どもがもう少しその幅を広げたらどうかというようなことを検討しておるということで申し上げませんでしたが、各国にも同様の動きがございまして、そういうことを参考にしながらやっておるわけでございます。
  55. 田原隆

    田原委員 五十八年四月に一回引き上げしているという……
  56. 前田典彦

    ○前田(典)政府委員 失礼いたしました。それから保険料率の引き上げでございますが、引き上げに関しまして、地域差料率は従来は普通輸出保険代金保険にのみやっておりましたものを、手形保険と、それから海外投資保険にも導入をしたというのは、昨年の四月の保険料率の引き上げの際に同時に行っております。
  57. 田原隆

    田原委員 各国も最近の特会収支の悪化によって地域差料率の幅をいろいろ考えようとする動きがあるやに今承りましたが、もしそうなら、五十八年四月に改正してあっても、近い将来にもう一回改定して、むしろアッパーとローアーを縮めてならす方が効率的ではないかと思うのですが、その点どうですか。
  58. 前田典彦

    ○前田(典)政府委員 先生指摘のとおりだと思います。  なお、基本的な保険料率の変更と違いまして、カントリーリスクに伴います地域差料率の変更というのは私ども限りで比較的機動的、弾力的に行い得るわけでございまして、これは保険運営上必要なのでやらせていただきたいと考えております。
  59. 田原隆

    田原委員 今回借りかえの道を開く措置とは別に、特別会計の抜本的な基盤強化が必要であるということは先ほども申し上げましたが、資本金の増額についても長期的な課題としてお考えになっておるかどうか、その点についてお伺いしたいと思います。
  60. 杉山弘

    杉山政府委員 先ほどもお答え申し上げましたように、輸出保険特別会計の基盤強化という問題につきましては、当面の緊急事態について一応の見通しが得られた段階でぜひ考えさせていただきたいと思っておりますが、その基盤の強化の内容といたしましては、資本金の増加ということも一つの課題でございます。輸出保険制度が始まりましてから資本金の増額というのは昭和四十二年度でございますか、一度行われただけで、それ以来は行われておりませんで、輸出保険の規模が大きくなりましても、なおまた六十億円というような少額な資本金で運営をいたしておりますので、長期的な課題といたしましては、私どもとしても、ぜひこの資本金の増額の問題は検討させていただきたいと思っております。
  61. 田原隆

    田原委員 輸出保険の健全化の意味からも、先ほどPRでお願いしましたけれども、利用者の数を多くするということは大変有効であると思うのですが、そうすれば事務量が非常に大きくなるということで、事務体制の強化についてお願いしたいし、また、どういうふうに努めておるかをお伺いしたいのですが、通産省の発表されておる表を見ますと、ベルン・ユニオンに加盟しておる国の中でも非常に効率が高い、そして組織として一課でやっておるのは日本の通産省だけだというふうに、これはちょっと皮肉って言えば非常に自慢に聞こえるのですけれども、裏を返して言えばそんな程度でやれるのかなということもちょっと考えられるわけです。そこでやはり徹底的な強化をやっていただきたい。これは人をふやせという意味ではありませんし、もちろんコンピューターなども随分入れてやっておられると思いますが、手続の簡素化を含め、サービスの低下を来さないことを考えながら、事務体制の強化というものを、これは私どもも一生懸命応援したいと思いますので、ぜひ考えていただきたいと思うわけですが、それに関して所信をひとつ局長から。
  62. 杉山弘

    杉山政府委員 ただいま先生から御指摘のございましたように、現在私ども百七十六人で輸出保険年間十数兆円の引き受けの処理をいたしております。一人当たりの保険契約額から申しましても、ベルン・ユニオンの加盟国中では最高の能率を上げていると考えるわけでございますが、ただ、人数が少ない、一人当たりの保険金額が大きいというだけで、あるいは保険契約者の方々のニーズに十分こたえ切っているかどうかということになりますと、まだまだ改善をしなければならない点が多かろうと思っております。このためには、電算機の利用等を初めといたします事務の機械化、合理化、手続の簡素化、場合によっては若干の部分保険契約者の方々にも御協力を願ってできるだけ迅速に処理をすることが必要であろうと思っておりますので、この点につきましても、先ほどのPRの問題とあわせまして、私どものこれからの大きな保険会計運営上の一つの課題としてぜひ検討させ、実行させていただきたいと考えております。
  63. 田原隆

    田原委員 重ねて今の点をお願いいたしまして、時間も参ったようですから終了したいと思います。よろしくお願いします。
  64. 渡辺秀央

    渡辺(秀)委員長代理 城地豊司君。
  65. 城地豊司

    城地委員 輸出保険法審議に入る前段として、我が国の輸出動向について伺いたいと存じます。  日本全体の輸出は、経済誌の伝えるところによりますと、昭和五十六年に千五百二十億ドルと史上最高を記録し、五十七年は一転して九%減りました。五十八年は千四百五十億ドルと前年比六%回復した。そして本年は、秋以降に不透明な部分が残るにしても、年間で少なくとも一割は伸びると見られ、史上最高記録を更新するという総括的な判断があるわけでありますけれども、そういう総括的な判断ではなくて、我が国の輸出動向昭和五十年から五十八年の見込み、五十九年度の予想も含めて地域別に、例えば北米、西欧、東欧、中南米、アフリカ、中東、東南アジア等そういう地域別に調査の結果をお知らせしていただきたいと思います。
  66. 杉山弘

    杉山政府委員 まず全体としての輸出の動きでございますが、ただいま先生から御指摘のありましたようなことだと私どもも了解をいたしております。昭和五十六年度がこれまでのピークでございます。今年度、五十八年度はまだ三月の数字が出ておらないわけでございますが、五十六年度の千五百二十億ドルにほぼ近い線まで年度としての輸出の額はいくのではなかろうかと考えております。そういたしますと、伸び率といたしましては前年度比二%台ということになろうかと思います。  こういった輸出の中身を少し地域別に眺めてみますと、アメリカ、EC等の先進地域向けでございますが、これが、特に米国向けが昨年の四−六月期以降極めて顕著な回復を見せております。年度数字は申し上げられませんので恐縮でございますが、暦年で申し上げますと、米国向けの輸出は対前年比一七・九%と高い伸びを示しております。EC向けも相当高い伸びを示しまして、全体として先進国向け全部は前年比一二・六%の増加となっております。次に、発展途上国向けでございますが、これは東南アジア向けというのが八・四%伸びておりますが、それ以外の地域の落ち込みがございますので、五十八暦年では対前年比九八・四%、ほぼ前年並みの水準になってきておりますが、これも徐々に回復傾向にあります。  今後の輸出見通してございますが、これはなかなか断定的に申し上げるわけにはまいりません。特に、最近では若干円高ぎみになってきておりますので、こういった為替レートの動きというのがこれからどうなるか、それから世界経済全体の動きがどうなるかということに大きくかかっているというふうに思われますが、世界経済全体として回復基調でございますし、米国景気回復も極めて根強いものがございますので、来年度輸出につきましてはやはり増加基調で推移するのではないかと考えます。ちなみに五十九年度政府経済見通しては、これは通関のドルベースの数字というのが公表されているわけではございませんが、その作業の過程では輸出の伸びはほぼ七%程度というふうに見込んでいるということだけ申し添えておきたいと思います。
  67. 城地豊司

    城地委員 輸出動向についてはわかりましたが、輸出のうちで。一時は非常に期待もされ、そして今後の日本の輸出の中でも大きなウエートを占めるのじゃないかということであったプラント輸出が、最近非常に頭打ちになってきているという状況であると思いますが、それらの傾向について、五十六年を一〇〇として五十七年、五十八年、どういう傾向にあるのかということが一つと、もう一つは、中小企業輸出に占める割合、それらが最近非常に大きくなってきている傾向にあったわけでありますが、そういう中小企業の総輸出に占める割合はどういう推移をたどっているのか、伺いたいと存じます。
  68. 杉山弘

    杉山政府委員 それでは私からプラント輸出の最近の動きについてお答えを申し上げたいと存じます。  プラント輸出は五十六年度に百七十五億ドルという数字を記録いたしましたのが最近までのピークでございます。その後五十七年度、それから五十八年度はまだ終わっておりません、一月までの数字しか出ておりませんが、二年度にわたりまして減少を続けておりまして、昭和五十七年度は百三十五億ドルで前年比二二・八%の減でございます。五十八年度に入りましてからは四月−一月の実績で申しますと五十二億ドルということで前年度比三七・二%減というような数字になっておりまして、年度全体を通しましても前年度比で約四割ぐらいの減ということになるのではなかろうかと考えておりまして、総額では八十億ドル程度になりますので、五十六年度の百七十五億ドルに比べますと半減という状態にございます。
  69. 中澤忠義

    ○中澤政府委員 お答え申し上げます。  中小企業自体の輸出数字というのは、直接中小企業が主体者となって輸出する額という統計がございませんので、ストレートなお答えはできませんけれども、いわゆる中小企業性製品、これは中小企業の出荷におきます輸出のウエートが非常に高いものでございますが、中小企業性製品輸出動向という点につきましてお答え申し上げます。  最近の中小企業性製品輸出でございますけれども、五十六年の数字を一〇〇といたしまして、それ以降の傾向を見てまいりますと、やはり世界不況の影響を受けまして五十七年、五十八年と、五十六年に対しまして中小企業性製品輸出は落ち込んでおる状況でございます。数字的には八九%あるいは九四%という形で五十六年の実績を下回っております。ただ、五十八年後半、下期に入りましてから世界輸出環境の好転を反映いたしまして、最近では回復の兆しを見せておりまして、五十八年下期に入りまして一〇〇・六%という形になっております。  中小企業性製品輸出におきますシェアでございますけれども、これは産業関連表によります試算によりますと、中小企業による直接輸出が約三割というふうに試算されておりまして、中小企業によります製品が部品等の形で大企業性製品に組み込まれて輸出されるというものを含めてみますと四〇%、輸出全体の約四割が中小企業の手によってつくられたものであるというふうに試算されております。これは一つの推定数字でございます。  以上でございます。
  70. 城地豊司

    城地委員 今輸出動向について過去の五十六年、五十七年、五十八年の結果について述べられましたけれども、今後の五十九年度につきましては、先ほど、政府が今回の予算を審議をしたときに七%アップということで組まれたというふうに言われました。私自身考えるのですが、五十九年度はもっと輸出増加をするんじゃないかというように考えておりますが、それらについてはどのような判断をなされますか。
  71. 杉山弘

    杉山政府委員 先ほど、五十九年度見通しにつきましては、政府経済見通しをつくります過程におきまして、ドル表示の通関額の伸びは約七%程度ということを頭に置いたということを申し上げたわけでございますが、実際にどうなるかということにつきましては、最近の輸出信用状の統計等を見ますと、かなり伸び率が高くなることが予想されると思いますし、その上、先ほどもちょっと申し上げましたように、為替レートがこのところ円高になっておりますので、御案内のように、円高になりますといわゆるJカーブ効果というものが出てまいりまして、円建ての輸出金額は変わりませんでも、ドル表示に換算をいたしますとレートが円安の場合に比べて金額が大きくなるという問題もございますので、ドルの通関額というものにつきましては、まだ私ども確定的にどの程度になるという数字を持っているわけではありませんが、最近の情勢から考えますと、かなり大きくなる可能性があるというような感じを持っていることだけお答えさせていただきたいと思います。
  72. 城地豊司

    城地委員 では、具体的に輸出保険法内容について質問をいたしたいと思いますが、今、輸出動向について御説明がありました。そして具体的に各種の資料で輸出保険の運営実績等がはっきりしておりますけれども、全体的に見て総輸出額に占めるいわゆる輸出保険金額の割合、付保率というのですか、それの傾向はどういうふうになっているかお答えをいただきたいと思います。
  73. 杉山弘

    杉山政府委員 全体の輸出のうち輸出保険でカバーされている取引の数字につきましては、私どもの把握しておりますところでは約四割でございまして、全輸出の約四割が普通輸出保険輸出代金保険輸出手形保険等によってカバーされておるというふうに考えております。
  74. 城地豊司

    城地委員 次に、輸出保険の運営実績の関係について伺いたいのです。  三年前の昭和五十六年、先ほど同僚の田原委員も言われましたが、あの商工委員会の審議の中で私は次のような要望をしていたわけであります。すなわち、この輸出保険が九つの種類に分かれている。しかもそのうち四つだけ明記をして、その他の五つのものは「その他の保険」ということでくくっている、そういうことは非常におかしいのでぜひ直してほしいということで要望いたしておきました。ところが、三年たって今回出されている中でも、また「その他の保険」ということでくくってあるわけであります。  私は民間の会社の出身でありますから、どうもそういう頭でいくんですが、今度のこの輸出保険の運営実績という表を見てみますと、どうもお役所的な発想のような感じがするのです。何となれば、例えば民間で九つの種類の商売をやっている、そのうち四つだけ金額が多いからとか件数が多いからといって四つはちゃんと明記する、あとの五つは「その他」でくくるなんということは常識で絶対考えられないことだと思うのです。  ですから私は、そういう意味合いで三年前の当委員会の審議のときにも要望したわけでありますが、その要望が入れられない、今回もまた「その他の保険」ということで出されている。この関係は厳密に言いますと、担当の貿易局長がかわられているわけでありますから、今の局長を責めても仕方がないのかもしれませんが、民間の会社だと大体引き継ぎということで、前にやり残したこと、議会で要望のあったことは、しかも、そういうことはすぐにできることでありますから、ちゃんと引き継がれているんじゃないかというふうに考えるのですが、なぜ今回も同じように「その他の保険」ということでくくられたのか、そのいきさつをはっきりさしていただきたいと思います。
  75. 杉山弘

    杉山政府委員 前回御指摘を受けておりながら、九つの保険を四つと、「その他」というふうに一つにまとめてしまった点についてはおわびを申し上げるわけでございますが、若干言いわけをさしていただきますと、ほかにつくってあります資料の中では、全く同じ形式ではございませんが、残りの五つの保険につきましてもその概況がわかるような状況数字はまとめて公表はいたしております。ただ、その四つの保険と全く同じような状況では数字の公表はいたしておりませんでした。先ほども御注意をいただきましたので、これからは九種類全部、今回二つの保険は廃止させていただきますので七種類になるわけでございますが、それにつきましては全部各種別ごとの数字をまとめて発表さしていただきたいと思いますので、御了解をいただきたいと思います。
  76. 城地豊司

    城地委員 そういう御答弁をいただきましたので、今後はその件については全部を網羅していただきたいと思います。  特に今回はそのうちの二つの保険を廃止する。保険の廃止というようなことは重要な問題なんですね。ただ、五十四年度以降、利用実績がないからということだけで廃止するんじゃなくて、本来であればそれらの内容を取捨選択して、本当に廃止すべきものであるかどうかというところまで突っ込んで廃止ということを決めるべきであります。しかも「その他」に始まって「その他」に終わるというので日の目を見ないでいる運営実績の中で廃止をされるということは非常におかしいのではないかと思うのです。しかも、私が言いたいのは、現実仕事をやっていらっしゃるわけですから、九つの種類に分けてやっている、表につくるのになぜできないのかということは全然あり得ないと思うのであります。そういう意味で今後ぜひともそういうふうにしていただきたいと思います。  特に、ほかのことで失礼ですが、かつて倒産の問題で本委員会で質問をいたしました。大口倒産だけが表面に出る、いわゆる小口倒産が出ない、何とか善処できないかということで、善処を要望したら、一年たっていわゆる小口倒産についてももっと範囲を拡大してやっていただきました。そういう意味では、通産省というのはある意味では打ては響く、そういうお役所がなというふうに考えていたのですが、今度のようなことは何も手を加えなくても簡単にできることでございます。そういう意味では今後はぜひともそういう立場で善処を願いたいというふうに思いますし、「その他」の関係でも、これに出たついでだから申し上げますが、どうもこの輸出保険法の関連の、いわゆる各種の資料が非常に不足している。  後で全体的なことで申し上げて、いろいろ私自身の考え方を申し上げる中でも、それらについて指摘をしたいと思いますけれども、例えばことし、大変な事態になっている。債務繰り延べの関係で国の財政から千百四十四億も借りてやるというに至っている。しかし、それらの資料は我々に何ら明記をされていない。どういうような傾向になっているのか。債務繰り延べている国はどういうような形で債務繰り延べをやっているのか。しかも、そういう具体的な資料なしにかかわらず、千百四十四億も金を借りるということをこの国会に提起をしているというようなことですね。そういう意味で、後ほどこの問題については提起をいたしますが、一応そういう範囲ではでき得る限り、資料というのはもう要らないよと言われるくらいまで出していくのが一つの事業の性格ではないかと思うのです。  政府の直営事業である輸出保険というようなものを政府でやっていらっしゃるのですけれども、民間の各会社でも、どういうところでもそうですが、この程度の資料で、金をこんなに借りて運用しますなんということをやって、どこも通るわけはない、私はそう理解するわけです。その問題については後ほど申し上げますけれども、後でこれは大臣にも御見解を総括的に最後にお伺いをしたいと思います。  そういう中で、きょうは前半と後半と分かれるわけでありますので、若干区切りをつけながら質問をしていきたいと思います。  これも先ほど田原委員質問をしたのでありますけれどもてん補率の問題について先に御質問を申し上げますが、私は前回の三年前のときにも質問をいたしました。あのときは九〇%から九五%ということで五%アップをするという提案でございましたが、私自身は、九〇から九五にするのじゃなくて、少し無理があっても、この輸出保険は我が国が生きていくための輸出に与える影響が非常に大きいわけだし、そういう意味では大変に政策的な内容を含んでいるから、他の諸外国がやっているように九〇を一〇〇にしたらどうなんだろうか、はっきりと申し上げませんでしたが、そういう意味合いのことで質問をいたしました。  それに対して、一〇〇にしたのではその中に利益も含まれるから一〇〇というのはまずいのだというような意味の答弁、正確には議事録に出ておりますけれども、そういう意味の答弁をされました。しかし、その考え方はおかしい、そう私は思っていたのですが、今回提案を見てまたびっくりしたのでございます。九五を九七・五にするということでございます。理屈はいろいろあるでしょう。ですから、これから理屈も伺いたいのですけれども、常識的には九五から一〇〇にいくのが普通であって、九五から九七・五にいくなんというのは一般的な常識では普通考えられない。一〇飛びであるとか、五飛びであるとかいうことであって、それを九七・五にするなんというのはいかにも小刻み過ぎる嫌いがするのでありますが、九七・五にした根拠をはっきりとお答えをいただきたいと思います。
  77. 杉山弘

    杉山政府委員 今回のてん補率の引き上げが余りに小細工に過ぎるのではないか、むしろ思い切って一〇〇%にするという考え方はないか、こういう趣旨のお尋ねであろうかと存じますが、海外の各国のやっております輸出保険におきましても、今回御提案申し上げておりますような債務繰り延べ等に伴いますような非常危険の場合には一〇〇%のてん補率を持っている国が多うございますし、我が国の法制上も一〇〇%のてん補率をするということについては、法的には不可能ではないと存じます。     〔渡辺(秀)委員長代理退席田原委員長代理着席〕  ただ、従来九五にしており、今回も九七・五にいたしました一つ理由は、やはり輸出者の方にも何がしかのリスクが残るということにしておいた方が、バイヤーの信用調査につきましての輸出者の努力でございますとか、遅滞が生じました場合に回収に向けて輸出者が努力をするきっかけにもなるであろうということからでございます。  前回の改正の際の御答弁のときに、五%分は利益相当なんで、そこまでてん補しなくてもというような趣旨の御答弁も申し上げているようでございますが、こういった利益てん補しないということももちろん一つの考え方になっているわけでございます。  利益といいますのは、いわばその輸出者が輸出が行われた場合に生じる所得でございますが、そこまでてん補しないでも、仮に支払い遅延等が起こった場合でも、事故が起こった場合でも、実際に生じた損害、いわば実損だけをてん補するという考え方も当然あるわけでございますが、今回は先ほど御説明しましたように、プラント輸出なり中小企業性製品輸出も、カントリーリスク増大に伴いまして落ちてきております、かなり影響を受けております。そういう意味におきまして、私ども調査しましたところでは、実際上の企業の輸出に伴います利益というものも前回に比べますと相当圧縮されているように思いますので、九七・五にいたしました場合、利益部分はカバーをしないという前回御答弁申し上げましたことにもまた矛盾をすることなしに、実際の保険運用がよりスムーズに行われるためにも九七・五という数字をとらしていただいたというのがその経過でございます。
  78. 城地豊司

    城地委員 説明はわかりません。といいますのは、九五を九七・五にした、利益の幅が少なくなったとかなんとか言っても、そういうことではないと私は思うのですね。九七・五は、端的に言うと九五と一〇〇を足して二で割ると九七・五、九五と一〇〇のちょうど中間が九七・五であるということで、したのではないか、率直にそう思うのです。  しかし、そういうふうに理由づけをされますから私ももう少し科学的に質問するのですが、一般にいろいろなものを考えるときに、五飛びとか一〇飛びというのは、これは日本の社会の常識なんですね。九〇から九五にする、私は一〇飛びで一〇〇にしろと言ったこともありますけれども、であるのに、今回に限って九七・五とか八二・五とか、そういう半端をつけるような考え方は一般の社会では割合あらわれてこないというのが通例なんです。ですからそういう意味で、小刻みに、しかも二・五に対して苦しい答弁をして、利益がこうだからああだからと言っても、そうじゃなくて、むしろ保険という立場に立ては一〇〇なら一〇〇にしたって何ら差し支えないのじゃないかと思うのです。  むしろ、別に財政的な意味で当面九七・五にするが、段階的に二年後、三年後に一〇〇にするという過渡的な措置であれば、九七・五という数字もあるのです。しかし、今言われたような理由で九七・五という説明をされても私は納得ができませんので、再度その点について伺いたいと思います。
  79. 杉山弘

    杉山政府委員 ただいまお答えしましたことの繰り返しになることは避けさせていただきますが、基本的には先ほど御答弁をしたような趣旨でございます。  あとその背景といたしましては、これから多分先生の御質問の中にも出てまいると思いますが、輸出保険特別会計保険金支払いが急増をしている、そういう苦しい事態のもとで、一方カントリーリスク増大に伴います輸出者の危険負担を少しでも保険でカバーをしたい、こういう我々の希望がどこまで実現をできるかという実際的な問題になってまいりますと、極めて中途半端だというおしかりを受けるわけでございますが、今回の二・五%の引き上げということでとどめざるを得なかったというわけでございます。利益分を含めてでございますが、一〇〇%にすること自身については法的には不可能なことではないと思いますけれども、現実の輸出保険特別会計の極めて苦しい状況等を考えますと、今御提案をしているようなラインがとり得る最も妥当なラインということで御提案を申し上げているわけでございます。
  80. 城地豊司

    城地委員 このことに余りこだわっていても時間をとるばかりでありますが、今言われたような理屈だとすれば、一般的に経営財政上の問題からいえば九五に据え置くとか、むしろ九〇に下げるということになるのが事業としては当然だと思うのです。そうなってもやむを得ないわけです。しかし、少なくとも一〇〇に近づけようという努力の跡が九七・五になったのだ、私はそう理解をしたいわけだし、しかも、日本の置かれている輸出を奨励しなければならないという立場からすれば、とにかく安心してどんどん輸出しなさい、担保はちゃんと輸出保険でやっていますよということで一生懸命苦労した結果が九七・五だと思うのです。  そういう意味合いでいきますと、将来の課題で、今回提案されたもめを一〇〇に修正しろという要求をしてもなかなか難しい問題もありますし、一応出された原案でありますから、この問題については一応これで終わりますけれども、そういう意味で、あくまでも保険という性格と、それからさらに、これからもどんどん輸出保険の活用の幅を広める、それによって日本の輸出をもっともっと奨励するという立場からすれば、やはりどうしても一〇〇にする、九七・五は中途半端である。よく理解はできませんが財政上の問題もこれあり、一歩前進をさせたのが九七・五であるという理解で一応この問題は終わりたいと思います。     〔田原委員長代理退席渡辺(秀)委員長     代理着席〕  時間が第一ラウンドと第二ラウンドに分かれておりますので、本格的なものは第二ラウンドに譲るとして、次の質問を続けたいと思います。  「輸出保険種類別引受限度額」という表がございます。この限度額の表で見ますと、例えば五十八年度普通輸出保険九兆七千億、以下九つのものが載っておりまして、今回廃止をされます委託販売輸出保険と海外広告保険は載っておりませんが、各金額が載っている。例えば輸出保証保険、これは「その他の保険」の五つの中に入っているのですが、保険の引受限度額一兆円と出ています。替為変動保険、これも「その他」にくくられている方ですが、引受限度額五千億というように出ております。これらの限度額の算出根拠、物の考え方について説明をしていただきたいと思います。
  81. 杉山弘

    杉山政府委員 先生指摘輸出保険の種別の引受限度はどうやって決めるのかということでございますが、私どもは、この引受限度を予算上決めます際には、各保険種別ごとの過去の保険引受金額の実績等を参考にいたしまして、若干の変動がございましても、この限度の中で処理し切れるようにということで、ある程度の余裕を持ってこの限度を決めているわけでございます。  ただ、今例に出されました輸出保証保険につきましては、五十二年度に四千億円といたしておりましたのを、五十三年度以降一兆円に引き上げまして、それ以来五十九年度まで据え置きで来ておりますけれども、この程度の限度額があれば、ある程度の事態の変化がありましても十分余裕を持ってお引き受けには応じられる、こういうことで横ばいのまま決めているわけでございます。
  82. 城地豊司

    城地委員 この限度額というのは今の説明でもよくわからないのですが、ここまで引き受けても、いわゆる事業上大丈夫だという数字なのか、ここまでは引き受けますよという一応目安として決めるものなのか、どういう意味なのですか。
  83. 杉山弘

    杉山政府委員 限度額の性格といたしましては、先生ただいま御指摘のありました後者でございまして、各保険種別ごとにお申し込みがありました場合、政府としてはここまではお引き受けに応ずることができます、そういう意味の限度でございます。
  84. 城地豊司

    城地委員 ちょうど中間の一番大事なところの質問をした後、それらに関連して質問をする予定でありましたが、先ほど申し上げましたように、前段五十分後段七十分ということであと十分程度しかありませんので、若干後先になりますけれども、その他の関係について質問をしたいと思います。  輸出保険協会等が中心になって輸出保険制度改善基礎調査研究会というようなところが出している資料等にもあるのですが、この保険の中でいわゆる両当事者間だけのものではなくて三カ国の間で行われるような貿易、それからそういう意味で仲介貿易というようなことについて、この保険を適用してほしい、またそういうことも十分検討すべきであるというようなことが調査研究会の報告として昨年の三月に出されておるのですが、これらの問題についてはどのように検討しておられるかということが一つ。  それからこの保険は、先ほどの田原委員質問にもありましたが、ほかの先進国ではほとんどなく、日本の国の場合には通産省でやっておられる。私は、通産省でやってまずいということではなくて、今、日本の国の政府がやっているということによる、そういう意味での信用という、非常に大きな点は十分わかっているつもりでございますが、これらの保険アメリカその他先進諸国のように、いわゆる民営移管というようなことについてどういうふうに検討しておられるか。また何かそれについてのお考えがあるかということ。  さらに三番目としては、いわゆる普通火災保険とかそういう災害の保険の関係は、世界全体として再保険というようなことでやっておりますが、そういう点についてはどのように考えておられるのか。この三点を含めて御質問したいと思います。
  85. 杉山弘

    杉山政府委員 先生からただいま三点の御質問がございました。  一つは、日本がいわゆる三国間の仲介貿易をやっている場合に、その仲介貿易について保険をつくれないか、つくったらいかがか、こういう御質問であろうかと思います。  まずこの点について申し上げますが、こういう仲介貿易保険というものを創設できないだろうかという要望があることは私ども十分承知をいたしておりまして、こういう点について保険制度上創設が可能かどうかということもかなり突っ込んで勉強をしてみたわけでございます。  ただ、その際問題となってまいりますのは、仲介貿易の場合には、通常輸出取引の場合でございますと日本と仕向け国の二カ国の間の問題、特に問題となっております相手国の状況だけを常に注目しておればよろしいわけでございますが、仲介貿易になりますと、日本以外の二つの国の間の取引ということになりますので、もう一つ検討をしなければならない国がふえてまいりまして、こういう国の間では商習慣も違いますでしょうし、いろいろ取引上厄介な問題が出てくる可能性がございますので、日本の輸出保険制度上こういったものを今の段階で自信を持ってつくれるかということになりますと、なおもっと検討を重ねなければならない点が多いのではないかということで、当面はまだ創設に踏み切れないでいる状態でございますが、なおこういう問題については、これからもいろいろ勉強してまいりたいと思います。  それから第二番目に御質問のありましたのは、輸出保険業務というのを民間に移管をするということについて検討をしたことはないか、また、そういうことについてどう考えるか、こういう御質問であろうかと思いますけれども、先ほどの御答弁の中でも申し上げましたが、輸出保険業務につきましては現在百七十六人の人員をもちまして運営をいたしておりますし、一人当たりの保険引受金額という点から申しましても、ベルン・ユニオン加盟国中最高額でございまして、そういう指標で見る限りにおきましては、私どもかなり少ない人数で膨大な輸出保険の引受業務を処理さしていただいているというふうに考えているわけでございます。  それからもう一つ、仮に民間でこういう保険をやっていくといった場合には、いろいろな点でかえって不都合が生ずるのではないかということがあるわけでございます。先ほど来の御質問の中にも出てまいりましたように、輸出保険保険契約ではございますが、かなりその運用につきましては政策的な判断を必要とする面が多うございます。こういった問題につきましては、通産省初め関係省庁の意見を聞きながら、政府部内で処理をする方が、民間で処理をするよりはむしろベターではないかと思いますし、またカントリーリスクの問題等の情報収集につきましても、在外公館なりジェトロなりの政府の外郭団体等を通ずる情報の収集というのも一つの大きな情報ソースになっておりますので、こういう点、民間に業務を任せました場合には、民間がまた独自にこういったカントリーリスクの調査もしなければならない、そういう意味におきましては、今の体制でやる方がより効率的であろう、こういう判断に立っておりますので、民間移管ということについては、私どもはむしろ現状の方がいいのではないかというふうに考えておるわけでございます。  それから三番目の御質問は、この輸出保険について再保険に掛けるということはどうであろうか、こういう御質問であろうかと思いますが、輸出保険の場合には、最近のカントリーリスク増大に伴います保険金支払いの急増ということからも御理解いただけますように、通常民間がやっておりますような損害保険等とは違いまして、事故が生じました場合にはかなり多額の支払いをしなければならないという特殊性がございます。そういう意味におきまして、各国とも大体政府が最終的な責任を持つという格好でこの保険業務をやっているわけでございます。もちろん、再保険に掛ける先が出てまいりますれば別でございますが、今までのところ、政府がやっております輸出保険全体につきまして、この再保険引き受けるというような再保険先というものも、先ほど申し上げましたような事情から出てきてはいないと考えられますので、輸出保険を再保険に掛けるということにつきましては、現実の問題としてはなかなか難しいのではないか、かように考えております。
  86. 城地豊司

    城地委員 午前中もう時間がありませんので、午前中最後の質問として、今回委託販売輸出保険及び海外広告保険、これを廃止するということでの提起がなされております。しかし、委託販売輸出保険昭和二十九年から五十二年までの実績を見てみましても、保険金が二十五億八千百万、そして各年度別に見ましても、昭和四十六年には三億二千九百万の保険金支払いがあり、海外広告保険では昭和二十七年から五十四年まで合計十二億八千五百万の支払いがあり、最高は昭和五十年に一年間で二億一千五百万という実績が出ているわけてあります。  そういう実績があることと、それからもう一つは、新聞その他の報道ですから当てにならないかもしれませんが、主として財政上の理由で今回この二つを廃止するというような一部報道記事があります。そういうような実績から見て、昭和五十四年度以降は利用されていないという現実もありますけれども、この種のものは一遍廃止してまた復活するということは難しい。廃止するのは簡単には簡単なんですが、復活するのは容易じゃないと思いますので、このごろゼロだからもう用は済んでいる。だから廃止だということは私は了解しがたいのですが、この両保険を廃止する原因、それについて御質問いたしたいと思います。
  87. 杉山弘

    杉山政府委員 委託販売輸出保険、海外広告保険を廃止する理由でございますが、その一つには、先生お挙げになりましたように、最近数年間にわたりまして、例えば委託販売輸出保険でございますと昭和五十四年度以降、海外広告保険につきましては昭和五十五年以降、新しい付保の申し込みがないという保険運用の実績というのがございますが、それとともに、この委託販売とか、それから海外輸出市場開拓のための広告宣伝費の支出といったような態様での輸出促進の必要性といいますのは、日本の戦後の輸出が再開されました当初の期間は非常に大きなものがあったかと思われます。それが先ほど先生がお挙げになりました過去の累積の引受金額というものにもあらわれているわけでございますが、最近のような状況になってまいりますと、委託販売によって日本の商品を輸出するとか、また海外市場の開拓のために広告費を出して、そうした場合に思いどおりの売り上げが上げられないというような、いわば企業の見込み違いと申しますか、そういう企業家の判断の違いに基づくリスクというものを政府保険引き受けていくという、政策的な意義という点につきましても、ほかの種類の保険とは性格を異にするような状況になってきたのではないかということ、繰り返すようでありますが、過去の引き受けの実績が数年間にわたって皆無であるということ、これを政府保険において奨励をしていくことの政策的な意義が少なくなってきている、この二つの点。それにさらにつけ加えさせていただきますと、輸出保険の業務の一層の合理化のため。こういう三つの観点から、今回、この二つの保険制度の廃止を提案させていただいているわけでございます。
  88. 城地豊司

    城地委員 十二時から衆議院本会議がありますので、午後、再開後続行します。
  89. 渡辺秀央

    渡辺(秀)委員長代理 この際、暫時休憩いたします。     午前十一時五十分休憩      ————◇—————     午後一時九分開議
  90. 渡辺秀央

    渡辺(秀)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。城地豊司君。
  91. 城地豊司

    城地委員 輸出保険の運営実績と輸出保険特別会計の双方に関連して伺いたいと存じます。  輸出保険の運営実績は昭和五十七年度までしか出ておりません。五十八年度はまだ終わっていないわけであって、五十八年度並びに五十九年度はそういう意味では見込み、もしくは予算ということになるわけでございますが、この輸出保険の運営実績を見ますと、輸出保険そのものが、何といいますか商売繁盛というか非常に大きく実績が伸びてきているわけでございます。特にこの輸出代金保険等につきましては、昭和五十一年度支払い保険金十九億二千四百万円であるのに、昭和五十七年度を見ますと四百四十億というように非常に大幅に、伸びているわけでございます。五十八年度、五十九年度の実績はわかりませんけれども、五十八年度、五十九年度さらに伸びるのじゃないかというふうに予測をするわけでありますが、このように輸出代金保険がこの数年間急激な伸びを示した理由について、まず最初に伺いたいと思います。
  92. 前田典彦

    ○前田(典)政府委員 お答え申し上げます。  午前中から申し上げておりますような、国としての債務繰り延べ措置をする場合、いわゆるリスケでございますが、そういうものの対象といたしましては中長期の商業債務、いわゆるプラント類の延べ払い等に関連する債権がその代表的なものでございますが、そういうものが中心を占めるわけでございます。したがいまして、保険種別からまいりますと、輸出代金保険でカバーをしておるというのがその大部分でございます。それが輸出代金保険が特に伸びた理由でございます。
  93. 城地豊司

    城地委員 では、輸出代金保険並びに普通輸出保険、この二つだけで結構ですから、見込みの金額、支払い予定保険金でもいいですが、保険金の金額だけで結構ですから、五十八年度、五十九年度、お示しをいただきたいと思います。
  94. 前田典彦

    ○前田(典)政府委員 普通保険につきましては、これはそれぞれ見通してございますが、五十八年度が十三億円、五十九年度が十二億円ということを見込んでおります。それから代金保険でございますが、これは五十八年度が約七百億円、五十九年度が約二千五百億円を見込んでおります。
  95. 城地豊司

    城地委員 この輸出保険の実績それから特別会計の内容を見ましても、今答弁がありましたように、非常に輸出代金保険支払いが多くなっている。それはリスケジュール、債務繰り延べという関係で多くなってきているわけであります。そういう点からいいますと、この債務繰り延べの関係がいつごろから具体的に始まっているのか。例えばこの債務繰り延べは具体的に一九七一年から始まっておりますが、そのころは債務繰り延べの国の数が一つとか二つとか非常に少なかったわけでありますが、一九八〇年、昭和五十五年からは六カ国、五十六年が十四カ国、五十七年が二十カ国というように非常に多くなってきているという関係から、債務繰り延べが具体的に非常に大きな金額として輸出保険の中に占める割合が多くなってきたのだろうと思うのですが、具体的に昭和五十五年以降この債務繰り延べによる保険料の金額について明示をしていただきたいと思います。
  96. 前田典彦

    ○前田(典)政府委員 ただいまの債務繰り延べ分に関する支払いでございますが、五十五年度から申し上げますと、五十五年度がおおむね八十億円、五十六年度が二百五十億円、五十七年度が四百三十億円、それからことしの見込みが大体七百億円という感じでございます。
  97. 城地豊司

    城地委員 輸出保険の中で、この債務繰り延べがこんなに多くなっているということは、裏返して見ると、輸出保険の大部分債務繰り延べ、いわゆる国と国との間のそういう支払いというようなことで占められている。とすれば今回、この特別会計で千百四十四億短期で借りて運営をするということでありますが、この先、この債務繰り延べの国が多くなっていく傾向にある、それから金額的にもそれらが多くなるという傾向にあるわけであって、今後のこの輸出保険そのもののあり方、輸出保険の言うなれば経営といいますか、そういうことから申しますと非常な危機的な状況にあると思うのですが、それらに対する認識はどのように考えておられますか。
  98. 杉山弘

    杉山政府委員 今年度までの債務繰り延べに伴います保険金支払い額についてはただいま御答弁したとおりでございますが、五十九年度以降どうなっていくかということでございます。  ここについては、現段階で確定的なことを申し上げるのは極めて難しいと存じますが、債務繰り延べの対象になります国の数も、仰せのように今までに比べてある程度ふえていくということも想定をされます。私ども極めて大胆な前提を置いて試算をいたしておりますが、それでまいりますと、昭和六十年度についても五十九年度とほぼ同じ程度の借入金をしませんと円滑な保険金支払いができないという状態でございます。  ただ、これも五十九年度、六十年度が峠かと思いまして、六十一年度になりますと借入金の額はかなり減少すると思います。自後は、この保険金支払いをいたしました国からの繰り延べに従った債務返済が行われてまいりますので、こういったものが保険会計には回収金として収入に計上をされることになりますので、こういうことを考えてまいりますと、ここ数年間が大幅な借入金をしなければならない山場というふうに考えられます。これを越えますと、後は単年度収支はかなり早い機会に改善に向かい、保険特別会計全体としての収支も、中長期的に見ますとバランスがとれるようになるのではないかと考えております。
  99. 城地豊司

    城地委員 今答弁の中の大胆な前提というのは、例えばこれからは余り債務繰り延べがなくなるということとか、さらには、私は一般論としていろいろな関係者とも話をしたのですが、債務繰り延べというのは、五年間据え置きで六年目から返却するというときには、それを借りた側が早く返却するということはないであろう、むしろいわゆるその国の実情が悪い方向に行って、またさらに再繰り延べというようなことがあったにしても、早まることはないだろうという認識を私は持っておるのですが、関係者の間では、いやそうじゃない、今までの実績の中で、五年間ということであっても四年目から返却をするというような事例もあるという話も聞きました。そういう意味で、今言われた大胆な前提というのはどういうことなのかということをひとつ伺いたいと思いますし、私自身、この債務繰り延べ現状からして来年は千百四十四億では足りないのではないかというふうに考えるわけであります。  現にいろいろな報道機関の、新聞等の報道によりますと、今年度の場合にも昨年十二月、ことしの一月あたりは約千五百億の借り入れをするんじゃないかということが報じられました。しかし、実際に出てきた内容を見たら千百四十四億になっているのです。これについて、この経過、当初千五百億と考えたのかどうかという点も含めて御答弁を願いたいと思います。
  100. 杉山弘

    杉山政府委員 今後の見通しにつきまして、私大胆な前提、仮定ということを申し上げたわけでございますが、かなりいろいろな方面にわたっておりますので、詳細については省略させていただきますが、例えば債務繰り延べの対象国につきましては、先ほど来お答えをいたしております既に決定しております十五カ国、それからそのほかにバリ・クラブの開催を希望しております三カ国あるいはこのほかに数カ国程度さらに増加する可能性があるのではないか。それから、例えばそういう国々について今後どの程度の期間にわたって債務繰り延べをしなければならないかというようなこと、それから、債務繰り延べをしましたものが当初の約束どおり果たしてどの程度返ってくるのか、こういうことにつきましては、制度開始以来の過去の実績というものも持っておりますので、そういう実績をもとに推定をいたしておりますが、そういうことを前提にして考えますと、先ほど申し上げましたように五十九年度、六十年度あたりが山場、こういうふうに考えられるわけでございます。  それから二番目のお尋ねといたしまして、五十九年度では千百四十四億の借り入れを予定しているけれども、もっとふえるのではないか、事実夏あたりには千五百億、こういう数字もあったように聞いておるけれども、こういうお尋ねでございますが、確かに夏の予算要求の時期におきましては、私ども千五百億というような数字を頭に置いて大蔵省等と話をいたしたわけでございますが、その後債務繰り延べをやっております国からの債務の履行といいますのが、むしろ予想以上に好調に推移をしたために保険金支払いが減ったというような問題もございますし、時間の経過に従いまして、対象になっております債務繰り延べ対象国の債権額の確定等詰めてやってみますと、ただいま御説明いたしておりますような、五十九年度については千百四十四億円程度の資金借り入れをいたしますと、このほかに支払い準備といたしまして別に年度末で約三百億円程度のお金をもって五十九年度は越せるのではないかというふうに考えておる次第でございます。
  101. 城地豊司

    城地委員 この債務繰り延べの関係では私余りたくさんの資料がありませんが、通商産業省の昭和五十六年度の年報、その中に例えば「ポーランドに対する債務救済について」という一文がありますが、一九八一年ポーランド政府との間に二国間の取り決めを締結した。これで見ますと、例えば繰り延べ対象額は約二百二十億円、返済期間は一九八六年から一九八九年ということになって、この通産省の年報に具体的な内容が記載されています。そしてさらに、その中にはトルコの第三次債務救済ということで一九八二年三月の内容が書かれている。  これは予想ですから、ある意味では大胆な前提の方が正確になるかもしれませんけれども、私は、そういう意味では、状況がよくなってきているといっても、ことしまた新たに債務繰り延べを申請している国なんかの状況と、我が国との貿易の関係等々を考えていきますと、どうもことしと来年がピークであるという見解には立てないのであります。でありますから、そういう意味で言われましたら、来年の債務繰り延べは千百四十四億借りれば足りるというのではなくて、来年はどれくらいこの債務繰り延べ支払い額が出るのか、同じような二千五百億よりはふえるのではないかと考えるのですが、その辺はどうですか。
  102. 杉山弘

    杉山政府委員 私どもが先ほど申し上げましたような前提を置きまして試算をいたしておりますところでは、五十九年度債務繰り延べに伴う保険金支払いといたしましては二千四百五十億円程度ということになると考えております。
  103. 城地豊司

    城地委員 では、六十一年度、六十二年度はどういうように考えていらっしゃいますか。
  104. 杉山弘

    杉山政府委員 六十年度につきましては、必ずしも確信のある数字ではございませんけれども、二千億円弱というふうに見ておりますし、六十一年につきましては千三百億円前後ではなかろうかというふうに推算をいたしております。
  105. 城地豊司

    城地委員 では、今きょう現在で結構ですから、債務繰り延べで総金額は幾らというふうになっているのですか。
  106. 杉山弘

    杉山政府委員 ただいま手元に数字がございませんので、至急に調べまして御返事をいたします。
  107. 城地豊司

    城地委員 今この輸出保険全体がそういう債務繰り延べ影響を受けて非常に大変な事態になっている、しかも、その事態を乗り切るために資金運用部から借入金千百四十四億を当面借りる、来年度の問題についてはその範囲でいいという見解でありますが、私はそれでは足りないんじゃないかと思います。それは来年度になってみればわかることですが、そう思います。  こういうような実態を見てみますと、今の輸出保険そのものが非常にピンチに立っているのではないかと思うのです。といいますのは、借り入れはできるだけ少なくしたい、それは当事者としては当然です。借り入れる金を多くしていくことよりは、借りる金は少なくしたいということではいいのですけれども、先ほどの田原議員の質問にもありましたが、例えば支払い準備率の問題で考えていきますと、私は従来、この十年間あたりの経過を見ても、支払い準備金はある程度のものを持っている、少しくらいのものがあっても動揺しない、安心して運営ができるという状況であったと思いますし、しかも支払い準備率そのものは、基準がないから何とも言えませんけれども、国会でのいろいろな答弁等を考えてみますと、おおむね支払い準備率は一%程度が望ましいと思う、だれが考えてもまあ十兆円であれば一千億、一%ぐらいが望ましい、保険運用をしていくときに、それくらいの支払い準備率を持っていた方がいいのだということで、そういう見解が出たと思うのです。  イギリスなんかは、そういう点では二・五%を目標にしてやろうという国もありますが、ほかの国のことは別にしても、やはり支払い準備というものがなければ安心して保険を掛けられない状況だと思います。ことしの場合千百四十四億しか借りませんけれども支払い準備金は昭和五十九年度予算で二百九十六億二千三百万、三百億円足らずになってしまっているわけであるし、準備率〇・一三ということで過去に類例のない少ない率であります。こういう率でちょっと何かがあったらどういうことになるのかということで非常な心配をするわけであります。  先ほどポーランドの例を言いましたが、一つの国との間でちょっと決まって二百二十億円出すようなことになれば、それでたちまち大変なことになるわけであります。そういう状況がないというお見通しなのかもしれませんけれども、そういう意味でいきますと、ここ数年来大体一千億以上抱えてきたこの支払い準備がここへ来て、今年三百億である。しかも、いろいろな対外的な世界の各国のそういう債務繰り延べ状況が多くなっている。しかも、いろいろな点で大型化している。そういう中で考えていきますと、私は、この支払い準備が三百億に満たない、〇・一三%しかない準備率に非常な不安を覚えるわけでありますが、当局としては不安を感じられないのでしょうか、御質問いたします。
  108. 杉山弘

    杉山政府委員 ただいまの御質問にお答えいたします前に、先ほど御質問のございました、現在時点で債務繰り延べに応じている債務総額は幾らあるか、こういうお尋ねに対しましてお答え申し上げますが、この債務の額につきましては、円建てになっておりますものと外貨建てになっておりますもの、いろいろございます。したがいまして、この換算レートをどうするかについてはいろいろ問題もございますが、仮に一ドル二百三十円という最近時点での為替相場を前提にして換算をいたしてみますと、現在までパリクラブで対象になっておる十五カ国のうち、二国間で政府の交換公文を交わしまして債務繰り延べ額を確定した十カ国の債務総額はおよそ千三百億円という額になっております。  それから、ただいまのお尋ねで、五十九年度には支払い準備はわずか三百億円程度で準備率にいたしまして〇・一%台、非常に低い水準であるけれども保険会計を預かる者として不安を感じないかということでございます。  私ども、かねがね保険準備率につきましては一%程度を保有することを長期的な目標として努力をいたしてまいりましたが、先ほど来御答弁申し上げておりますように、ここ数年間、さらに今後数年にわたってかなり債務繰り延べに応ずるための保険金支払いがふえます。そのために、明年度で千百四十四億円もの借り入れをいたすわけでございますが、この際に一つの考え方といたしましては、借入金をさらにふやした上で支払い準備は大きな額を持っているという考え方もあるわけでございますが、そういたしますと、やはり借り入れについて金利の支払いもしなければいけないという問題になりますので、このあたりの兼ね合いの問題を考慮いたしまして、非常に少ない額ではございますが三百億円程度持っておりましたら若干の変動には対処し得る、こういうことで今申し上げたような借入金の額とし、その他の部分については支払い準備を取り崩して支払いに充てるということを予定いたしておるわけでございます。  こういった事態につきましては、これからずっと続くということではなくて、私どもといたしましては、債務繰り延べにつきましては国と国との約束事でございますし、世界経済全体も次第に明るさを取り戻してきておりますので、ここ数年間が一つの山で、それ以降は収支も改善に向かうということを考えておりますので、当面の山場を切り抜けました以後の話といたしましては、できるだけこの支払い準備の増加に努力をしてまいりたいと思いますし、また、できますれば資本金の増額といった問題についても、長期的な検討課題として考えていきたいというふうに考えておる次第でございます。
  109. 城地豊司

    城地委員 今御答弁の中にもありましたけれども、私自身は今非常に大変な時期に来ている、これの解消はなかなか難しい。御答弁ではここ数年間がピークで、それ以降は正常になるというような御見解でありますが、先ほどのポーランドと我が国の一つの契約といいますか、二国間取り決めの問題でも、一九八六年ですか再来年がち三年間で払うということでありますし、ことし今まだパリクラブで決定していない、決定しそうだというような内容なんかも仄聞すると、なかなか大きな金額である等々考えますと、この二年や三年ではそういう状態にはならないと思うわけであります。しかし、事態は何といいましても、こういう保険関係は早急に対策を立てて健全に運営していく。仮に借入金なら借入金でもいいですが、何事が起こってもそれに対応できるというようなことにしていかないと、幾ら通産省の中でやっているのだから、国が保証するのだから安心しろということだけではいかないと思うのです、この事業として考えたときに。  そういう意味でまだまだ不安がありますけれども、そうだからといっても、さしあたっては借入金で賄っていくということが必要になってきますけれども、長い目で見ますとこういうリスケジュールの問題は恐らく恒常化していくのじゃないか。日本の国が輸出で食べていく、しかも先進国、開発途上国の問題にしても、世界全体の金融とか経済状態がそうよくなるばかりではない、よくなってもまた悪くなる。さらに、戦争もできるだけなくしたいと思って我々は平和のために努力をするわけですが、戦争もあちらこちらで小さい紛争が起こる等々考えていきますと、我が国のそういう産業を守るという立場でいきますと、どうしても輸出保険法の基盤をしっかりしたものにしていく必要があると考えるわけであります。  そういうことでいきますと、今の御答弁で、ある意味では非常に安心しているようなニュアンスを受けるわけでありますが、私はそういう意味で安心はできない、五、六年を考えて、こういう時期であってもしっかりしたものにしていく必要がある。とすれば、そういう意味での運営、経済基盤の強化、そういうことをしていくために何があるのだろうかということでいろいろ考えていきますと、一時的な一時しのぎとして借入金は借りる、しかし、そういう国の債務繰り延べの金が入ってくるからだんだん借金は減っていくだろう、そうすればチョンになる、後は借り入れなくても済むのだということのようでありますけれども、それだけではいかない、そういう内容も含まれているのじゃないかと思うのです。  そういう点で考えますと、答弁がありましたが、政府から出している資本金の六十億円という金が、今のようなこういう状態のときに資本金とは何なのだろうか。当初十億円、二十億円、三十億円ですか、それから六十億円とした経緯を考えても、かなり前の状況であって、そういう点も十分見直していかなければならない時期に来ているのじゃないかと思うのですが、その資本金の問題はどういうように性格づけるのでしょうか。それと、さらにそれらの資本金の増加といいますか積み増しといいますか、そういうことについてはどういうような御見解をお持ちなのか、伺いたいと思います。
  110. 杉山弘

    杉山政府委員 お答え申し上げます。  資本金につきましては、先生指摘のように、現在六十億円でございまして、年度間の保険引受額が十三兆円という段階になりまして、依然として六十億円にとどまっているということについてはかねがね各方面からいろいろ御批判をいただいているわけでございます。私どもといたしましては、やはり資本金は支払い準備の一環としてできるだけ多く持ちたいという気持ちはございますが、先生御案内のように、ここ数年は予算要求のシーリング等もございまして、従来昭和四十一年度以降資本金の増額をいたしたことがございませんものですから、実際の要求となりますと、現実の問題としてはなかなか簡単にまいらないという事態でございます。ただ、これは私どもあきらめているわけではございませんで、できるだけ早い機会に、事情が許すようになりましたらぜひともこの資本金の増額につきましては努力をしたいというふうに考えているところでございます。
  111. 城地豊司

    城地委員 ではこの問題、小此木通産大臣に伺いたいのですが、通産大臣になられる前に予算の原案ができたということでありまして、財政事情が苦しいということでありますが、このような実情と、それから輸出保険運用状況から見て、私が大臣だったらというのもおこがましい話ですが、大変なこういう状況である、とすれば、国全体の財政事情がどうあったにしても、例えばこの資本金の方に繰り入れをしてやるべきじゃないか。そして、長い意味で、輸出保険そのものがこの十年間に物すごく膨大に膨張してきているわけです。それだけ日本の国の輸出が伸びているという面もあるし、それから輸出保険がある意味ではどんどん浸透して、輸出の総額に対するいわゆる付保率といいますか、多くの人たちの関心が高まって保険に加入するということが多くなってきているわけでありますから、そういう意味での経営基盤を考える場合には、国の財政が確かに苦しい、いろんな問題があるにしても、そういう基本的に強くしておかなければならないところは、一遍に何百億も投入しろとは言いませんけれども、少しでもそういうもので補っておき、経営基盤はぴしっとしておくことが必要じゃないかというように思うのですが、大臣の御見解を伺いたいと思います。
  112. 小此木彦三郎

    小此木国務大臣 貿易の健全な発展あるいは興隆を期すためには、おっしゃるとおり、その根幹となる資本金というものを充実させなければならないことは言うまでもございません。今後かような努力を私どもはいたすべきだと考えますし、また、そうあらねばならぬものと私は考えます。
  113. 城地豊司

    城地委員 そういうお答えをいただきましたので、できるだけ輸出保険そのものの充実について力を注いていただきたいと存じます。  そういう意味で、この特別会計のあり方については、私自身先ほどの討議の行ったり来たりでまだ十分納得はしておりませんし、私自身は、この経営そのものがこの状態でいいのかどうかという点ではまだ不安もあります。不満もありますけれども、そういう状況でやれる、またやっていきたいということであるとすれば、そのことはそういうことにして、次へ進みたいと思います。  最近この輸出保険運用の関係で通産省輸出保険課といいますか、窓口が非常に規制が厳しいという話を聞くのです。これはどのあれでどうだということではありませんが、自分のお家の事情、中が大変でありますから規制を厳しくするんじゃないかと、私はその話を聞いたときにそう思ったのです。  逆に、例えばカントリーリスクがふえてこういう状況になればなるほど保険というのは必要性がふえるわけであって、先ほどの質問にもありましたように、特定国がある、であるからいわゆる保険を掛けるのを何とか制限するとか、それからそのてん補率をどうするとか、そんなことはむしろ逆であって、そういう状況になればこそ、そういう保険を掛けてやって心配しないでこっちはやってやるよ、何も全然取れる見込みのないところへ品物を売ったり、砂漠へ行って電気製品をばらまいてくるわけじゃないわけであって、しっかりとした商売をやる場合には、それなりに保証すべきだと思うのですが、最近の窓口業務というのは非常にそういう意味でシビアにやっているという話を聞くのですが、その辺の状況はそういう状況なんでしょうか。
  114. 杉山弘

    杉山政府委員 今先生指摘のように、最近の保険特会の収支の現状から見まして、経済状態悪化しつつある国に対します保険引き受け態度が、どうしても警戒的にならざるを得ないということにつきまして、保険契約者の側からは、この際より弾力的にすべきではないかという御批判をちょうだいしておりますし、私どもも重々承知はいたしております。  ただ、先生御案内のように、保険特別会計はやはり収支相償、収支相償うということが原則でございますし、通常の場合に比べてリスクが高くなっている国に対して従来どおりというようなわけにはなかなかまいりません。ただ、そういう点につきましても余りに画一的にというようなことではなくて、例えば危険度に応じてつけられております地域差料率をもう少し改善をして、料率は高くするけれども引き受ける。場合によってはてん補率引き下げてでも引き受けを続ける。そういうふうな弾力的な運営ができないかということにつきましても、いろいろと御批判をいただいておりますので、私ども、こういった問題につきましては、それぞれの国のカントリーリスクの機動的な把握と相まちまして、できるだけ弾力的な運営をしてまいりたいと思います。  ただ、依然として基本的な収支相償うという原則がある中ででございますので、弾力的な運営ということについてどこまで実効を上げられますか、これら具体的な問題につきまして、これからぜひ考えさしていただきたいというふうに思っております。
  115. 城地豊司

    城地委員 最近聞いた話でそういう状況なんですが、しからば実際に保険を申し込む、引き受けの際にてん補率を下げるというようなことの事例と、それから去年まではてん補率はこうであったが、ことしはトータルでてん補率をこのくらい下げたとか上げたとかいう資料はございますか。
  116. 杉山弘

    杉山政府委員 先生今御質問数字を直ちにお示しすることは難しゅうございますが、例えば代金保険につきましては、てん補率現行では九五%以内となっておりますが、国によりましては七〇%まで引き下げ引き受けを継続しているというようなケースもございますが、後ほど具体的な例に即しまして御報告をさせていただきたいと思います。      〔渡辺(秀)委員長代理退席田原委員     長代理着席
  117. 城地豊司

    城地委員 先ほど言いましたように、状況がこういうふうになればなるほど、てん補率はできるだけ下げない方がいい、そういう意味では引き受け制限しない方がいい、それが本来的な保険のあり方であるし、保険のあり方というよりはむしろ輸出奨励といいますか、貿易をもっと多くするということのために必要だ。もともと輸出保険法というのはそういう考え方で出されたし、そういう法律だと思うのですね。しかし、運用の実際は、ちまたの声で、全部がそうだとは言いませんが、非常に厳しくなってきたので引き受ける側も厳しくなっている。とすれば、これはまさに本末転倒ではないかと思うのです。何も緩めて緩めてやれということではございませんけれども、そういう輸出業者とか物をつくって売る、そういう人の立場に立ては、やはりそういう保険はちゃんとしたものにしてもらいたい。ほかの方で苦しいからどうだとか、さらにはリスケジュールでもってそういう国と国との間で相当大きく金を取られるからというようなことでやられたのではやはり困るのではないかという感じが率直にするわけであります。  今、局長の答弁がありましたが、私は、そういう立場で、運用の面でやっていかなければ、そういうことが障害になって輸出が渋るということになったのでは、国益全体から見ていい結果は出ないんじゃないかというように思います。  それともう一つ、細かく検討していきますと、例えば保険料と支払い保険金の関係ですね、これで見ますと、リスケジュールの問題は別にして考えていきますと、昨年四〇%ぐらい保険料率を上げた、保険料を上げた、そして、その支払い保険料と保険金の関係だけで見ていきますと、そういう意味では経営的にはそう大きく赤字になるとか危険だというようなことにならない状況であるように思えるのです。そういう意味からもこういう点の運用について、先ほど弾力的な運用と言われましたけれども、ぜひともそういう考え方で運用していただきたいということを要望しておきたいし、これは大臣から御答弁いただかなくてもいいのですが、本来輸出保険法のあるべき姿の中で、片方できついからといって引き受けをどんどん制限したり締めるというのは、本来の意味で日本の輸出のためにプラスにならないと思うので、ぜひともそのことについて御理解、御了解をいただきたいというふうに思います。     〔田原委員長代理退席委員長着席〕  なお続けて質問を申し上げますが、不服申し立ての関係について質問したいのですが、結局、この問題で何か不服がある、問題があるというときに、不服申し立てをするのがまた通産省であるということの関係で、通産省輸出保険を全部やっている、でありますから、不服申し立てをしてもそれは通産省が不服申し立てを受けるということで、不服申し立てが本来の意味での不服申し立てにならないのじゃないかということで、不服申し立てについては別途な機関を何かつくるとか、何かそういう委員会をつくるとかした方がいいのではないかという意見もちらほら聞いているのですが、その問題についてはどのようにお考えですか。
  118. 杉山弘

    杉山政府委員 たしか前回の保険法改正をお願いしました際にも、今御指摘のような御意見が出ておったように記憶いたしております。  輸出保険は、これは政府がやっておりますが、いわば民事上の契約と同じようなものであろうかと思います。したがいまして、これをどちらの言い分が正しいかというようなことを一方的に決めるというようなことではなしに、保険契約者引き受けをいたします政府保険当局との間で、具体的な事例に従いまして納得のいくような相互の話し合いを繰り返していくということで解決するのが一番よろしいのではないかと考えますし、従来までの経験から見ましても、大体それでほぼ解決をされているというふうに考えておるわけでございます。  なお、先生指摘のようなことの必要性の有無につきましては、これからも具体的な事例につきましては、御指摘を念頭に置きながら、いろいろと考えさせていただきたいと思っております。
  119. 城地豊司

    城地委員 それから、かなり実務的な関係で伺いますけれども、先ほど田原委員質問にもありましたが、この輸出保険を百七十六名の方々でやっておられる。非常に大変な事務量でありますし、そういう意味ではそれらをこなしていることに敬意を表しますが、しかし、これからますます増大するというこの輸出保険内容からいきますと、ただ単に普通の努力でしたのでは限界があると思うのです。  そういう意味では合理化とか簡素化とか、さらに機械化ということが必要なんですが、それらを具体的にどういうようなところに着眼をして、例えば一年間こういうことでこうしてきたとか、それから私が別の決算委員会の資料で見ましたら、何か四億円程度、電子計算機の費用として使っております。私は、むしろ金がかかっても電子計算機が活用できるなら自前の電子計算機を持っても、これだけの件数があって、これを処理するの。には適当なのではないかというふうに考えるわけです。そしてスピードアップしてやれる、それからどんどん合理化してやれるとすれば、仮にそういうものに幾ら金をかけても、それらが将来また生きてくるわけでありますから、そういう意味では十分ペイするのじゃないかと思いますが、それらの問題も含めて合理化、簡素化の計画、そして実態等についてお答えをいただきたいと思います。
  120. 前田典彦

    ○前田(典)政府委員 お答え申し上げます。  確かに引受額に比べましてその人数が非常に少のうございます。ただ、過去におきましても日本では、いろいろと輸出組合等がございまして、そういうところの協力を得る形で包括保険というのが私ども輸出保険の中で大きなウエートを占めておるわけでございます。この包括保険というのはリスクを広く薄くならすという役割が主眼でございますが、同時に、そういう組合である程度まとめてきていただけるというようなことも私どもの事務の効率化に役立っておるわけでございます。  もちろん私どもの中でも、鋭意電算機の導入というようなことで事務の合理化を進めておりますが、これはやはりコンピューターの世代ごとといいますか、システムごとに段落がございまして、それで、その次の第三期システムというところではさらに大幅な電算化を進めようというふうに考えているわけでございます。現在は二期システムでございまして、もちろんシステムの中でもそれぞれプログラムによりまして改善はできるわけでございますが、なお一層大幅な改善というのは次の段階で考えておるわけでございます。  それから、ただいまのコンピューター予算のお話、ちょっとよくわかりませんが、私どもキャパシティーといたしましては非常に大きな、十分なコンピューターを現在のところ入れておりまして、恐らくレンタル費用なので四億というのが少ないように見えたかと思うのでございますけれども、ちょっと私も余り詳しく記憶はしておりませんが、コンピューターの予算面で制約があるというようなことは私ども、担当からも聞いてないわけでございます。
  121. 城地豊司

    城地委員 この一年間の合理化等の実績、さらに着眼、努力目標というような、合理化、簡素化ですね、そういう点についてはどのような努力をし、どのふうな成果を上げておられるか。
  122. 杉山弘

    杉山政府委員 過去一年間ということで申しますと、まず手続の簡素化でございますが、輸出代金保険の場合には各船積みごとに、そこから保険の責任が発生するというシステムになっておるために、船積み通知というものを契約者からしていただかなければいけないわけでございますが、これが従来、極めて煩雑な手続でございましたが、昭和五十八年からこれの簡素化を図りまして保険契約者の便宜に資しております。  それから、今の電算機の利用の問題でございますが、申込書類を私どもの方で磁気テープ化するというようなこともやっておりまして、機械化、簡素化をやっております。  それからそのほかに、地方の通産局がございまして、その通産局に権限委譲、事務委譲をいたしまして、通産局の窓口でもある程度のものは直ちに保険の契約締結ができるというようなこともやってきておりますが、これからは従来に増して、こういった点での手続の合理化、事務の機械化といった問題について力を入れていきたいというふうに考えております。
  123. 城地豊司

    城地委員 先ほどの国庫からの借入金ですが、これの利子は幾らなんですか。
  124. 杉山弘

    杉山政府委員 資金運用部からお借りします場合の利子率は七・一%になる予定でございます。
  125. 城地豊司

    城地委員 この法律の施行期日及び経過措置というところでありますけれども、この法律は、公布の日から施行する。ただし、輸出代金云々ということでありますが、この施行期日及び経過措置はどういうことなんでしょうか。
  126. 杉山弘

    杉山政府委員 施行期日につきましては、原則として公布の日からということでお願いをいたしております。ただ一部のもの、例えばてん補率の引き上げの問題につきましては、これは約款の改正その他私ども部内におきます事務手続にある程度の時間が必要でございますので、これにつきましては施行を少し先に伸ばさせていただいておりますが、それ以外の部分につきましてはなるべく早く実施に移らせていただきたいと思っております。  それから経過措置でございますが、二つの保険種別を今回廃止いたすことになるわけでございますが、それぞれにつきまして責任が政府に残っている部分がございます。したがいまして、今後事故が発生をいたしました場合には、やはり政府として保険責任をとらざるを得ませんので、それにつきましては従前の例によるということで、事故が起こりましたときには従来と変わりなく保険金のお支払いをするために規定を置いたわけでございます。
  127. 城地豊司

    城地委員 中小企業のこの輸出保険の利用状況については、先ほど田原委員からも具体的な質問がありましたが、中小企業庁発行の五十八年度中小企業施策のあらまし」こういう冊子があるのですが、それらの中にも輸出保険法記事がないという意味では、こういういい法律なんだからとにかくどんどん広報活動を広めるという立場では、機会をとらえてどんな場合でもどんなチャンスでもそれを生かしていくという物の考え方が必要なのじゃないか。輸出保険で、来たらばやってやるよというのではなくて、むしろ日本の輸出を伸長するためにこういう制度があるんだということで、広報活動をしていく必要があるのではないかと思います。  それから、いわゆる輸出の付保率にしましても、先ほど約四〇%という御答弁をいただきました。伝えられる資料によると三二%とか三四%というようなのもありますし、四〇%となったのであればそれよりも前進しているんだからいいわけでありますけれども、大企業などはこの保険法に対する担当者を決めて十分やっておりますから、恐らくこれからこぼれは全然ないと思います。ただ、中小企業にすそ野をどんどん広げていく必要があると思うのです。そういう意味で、これらの広報活動については十分配慮していただきたいと思うのですが、御見解がありましたらお聞かせください。
  128. 杉山弘

    杉山政府委員 輸出保険の利用者、特に中小企業の利用者に対してもっと制度をPRすべきではないかという御指摘はまことにごもっともでございます。「中小企業施策のあらまし」の中でこの輸出保険の問題に触れておらないことにつきましては、私どもの手落ちでございますので、新しい版ができます際には、私どもの方から中小企業庁にもお願いをいたしまして、ぜひ掲載をいたしたいと思いますが、それ以外の部分につきましても、PRの問題については御指摘を願に置きまして、十分努力をしてまいりたいと思います。
  129. 中澤忠義

    ○中澤政府委員 中小企業にとりまして、国際化の問題あるいは輸出の問題は今後ともますます重要でございますし、そういう意味において、中小企業行政の中におきましても、この輸出保険の周知徹底を図ってまいりたいと思います。  特に、今回の改正の中で、中小企業がよく利用しております輸出手形保険てん補率の改善という問題も含まれておりますし、先生が御指摘になられましたように「中小企業施策のあらまし」の中で十分にこの制度の紹介をするという点も含めまして、私どもといたしましても中小企業者に対する周知徹底を今後とも努力してまいりたい、かように考えております。
  130. 城地豊司

    城地委員 最後に大臣にもぜひ聞いていただきたいと思いますし、この討議を通じての総括的な考え方について申し上げたいと思います。そして通産大臣の御見解も伺いたいと思います。  例えば保険の業務実績の関係で九つあるのに四つしかない、あとは「その他」でくくるという点は先ほど答弁がありまして解決をいたしましたが、あの例でおわかりのように、一つの事業をやる場合には非常にきめ細かく配慮をする必要がある。例え一件であってもどうであっても、それは事業として存在しているのですから、そういうようにしていただきたい。しかも今回千百四十四億も借り入れしてやるという異常事態であるし、そういうことによって、この輸出保険法全体がある意味で揺さぶられている現状であります。本来であれば、輸出保険を適用しなくとも、どこか別の方でこの問題の処理をして、輸出保険じゃないということでやるのも一つの考え方であろう、私もそう思うのですが、今回の場合には輸出に関することであるから輸出保険でやるという決断をされたので、そのことについてはいいのです。我々もこの制度をさらにどんどんよい制度にしていって、そして輸出をする輸出業者、それから物をつくる人たちが心配のないようにしていくということが必要だろうというふうに考えております。  それにしてもこれだけの大きな事件、経営でいうと大変なパニック状態になっているにもかかわらず、いわゆる我々に提示をされる資料が、質問の中で幾つか明らかになりましたが、例えばリスケジュールの問題にしても、これだけのものがこういうふうに累積をされている。普通の企業であれば、それを山積みしてなし崩しにしていくと昭和六十三年までにはこういうふうになるとか、実際にはこういう状況になるとか、返済計画はこうであるとか、さらに、それらの資金計画はこうであるとか、契約の問題にしても、申し込みはこれだけあったが、実際に成立したのはこういうものであるというように、資料としては幾らあってもこれで十分ということはないと私は思うのです。にもかかわらず、我々に示される通産省からの資料というのは本当に限られている。これだけの大事業をやってこれだけの金を動かしているのに、こんな程度の資料では本当に表面づら、ただ結果、一年間これだけでした、件数はこれです、これは何ですということだけでは、本来それを突っ込んで検討し、そして、いいところは伸ばしていく、改善するところは改善するという問題にしても、これでは手が打てない。  例えば先ほど質問しましたが、不服申し立ての問題にしても、実際には一年間にこういうわけで不服申し立ては百件ありました、それらについてはこう解決をしましたとか、さらには問題点がここにあります、地方の通産局にまでそういう事務を委託してやるとすれば、そういうところの報告にしても全部取りまとめるというように、粗くなく、もう少しきめ細かく配慮をして、わけても法律の改正でありますから、どっさり、どこから見ても、これだけの資料は我々やってきているのですからどうぞごらんください、縦から見ても横から見てもこうですというような資料を十分提供をする必要があるのじゃないかと思うのです。  通産省なんかその辺は本当にお家芸なんですから、資料をつくることはつくって、どうか我々にそういう面で提示をしていただきたいということと、さらには、こういう関係でありますから一年ごとの実績につきましても、こちらから質問するのじゃなくて、新聞なんかにすっぱ抜かれる前に、実際上これだけの問題が出ているということについては、むしろ報告書を作成していただくというようなことでやっていただかないと、ただ単に、輸出保険法という直営事業をやっているのだから、法律改正があるときには五、六枚資料を出しておけばそれで十分だというようなことではいかないのである、私はそういうふうに考えているわけです。  輸出が重要である、そして輸出保険も重要である、これから伸ばしていく、私どもはそういう意味でこの法律に賛成の立場で質疑をしておりますけれども、そういう点は今後十分配慮をしてやっていく必要があるのだろうというふうに考えますので、時間は若干ありますけれども大臣のお考えをいただいて終わりにしたいと思います。
  131. 小此木彦三郎

    小此木国務大臣 御論議を聞いておりまして、最近非常にカントリーリスク増大している。だからこそ私は、輸出保険の役割というものが重大だと思うわけでございます。そのために、健全な貿易を行い、これを発展させるためには、さらにこの充実を図っていかなければなりません。  いろいろお話を伺っておりますと、例えば引き受けの問題にいたしましても、いろいろ御意見がございましたけれども、しかし、この問題はやはり独立採算という原則もあることでしょうし、あるいは長期的観点に立って、やはりカントリーリスクの評価というものもまた政府側としてやっていかなければならない、それにはこれに弾力的あるいは機動的に対処しなければならないということも御理解願いたいと思うのでございます。  また、さらに中小企業に対する輸出保険の問題にいたしましても、えてしてこのようなものは、制度そのものがありながら、PRを行わないためにこの制度を利用してもらえないということもあるものですから、このようなことに対しましても、政府側として今後PRに努力するということをいたさねばならないかと存じます。
  132. 城地豊司

    城地委員 ありがとうございました。終わります。
  133. 梶山静六

    ○梶山委員長 中川嘉美君。
  134. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 輸出保険法及び輸出保険特別会計法の一部を改正する法律案について、基本的な問題を初めとして若干の質問を行いたいと思います。  支払い遅延の不安のない国、これはもう北米とか西欧あるいは大洋州、こういった先進国に限られているわけでございますが、これらの国以外への輸出及び投資というものは輸出保険の支えの上に行われているのが実情であります。発展途上国との貿易を拡大をし、その経済発展に協力するということは、経済大国と言われている我が国の責務、このように考えなければならないわけで、それを行う上で、信用供与とかあるいは投資というものが重要な手段となるわけでありますが、国際信用不安の高まっている現況下において、その活動は貿易の当事者すなわち輸出業者になりますけれども、この輸出業者としては萎縮せざるを得ない、こんな考え方が出てくるわけであります。  このような現況において、発展途上国に対して日本の貿易を拡大する上において輸出保険というのは重要なかぎであって、その機能強化ということが当然急がれなければならない。したがって、経済協力予算の拡大とともに、この輸出保険制度の強化とか、あるいは拡充を早急に実施しなければならないと思いますが、まずこの点について、冒頭でありますが、大臣のお考えを伺っておきたいと思います。  また、経済協力は供与する額だけの効果でありますけれども輸出保険は民間の支払う保険料というものを主財源として、その数十倍の信用供与輸出及び投資を引き出せる点では効果は大きいと考えますが、この点に関してもあわせてお答えをいただきたいと思います。
  135. 小此木彦三郎

    小此木国務大臣 世界経済停滞等背景にいたしまして、発展途上国等累積債務が急激に増加しているなど、カントリーリスクが著しくふえているわけでございます。特に輸出代金の回収に伴うリスクの高まりは、プラント輸出停滞、危険負担能力に乏しい中小企業輸出へ悪影響をもたらしていくわけでございます。  また、債務繰り延べに対応するための輸出保険特別会計におきましても、保険金支払いが急増いたしておることは言うまでもございません。このような状況の中で、対外取引を円滑に進める上で、リスク回避の主要な手段となっている輸出保険に対する利用者の期待もますます高揚いたしているわけでございます。政府といたしましては、今回の法律改正によりまして、輸出保険制度の機能の充実を図ってまいりまして、このような期待に積極的にこたえていく方針でございます。
  136. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 この累積債務国増大によって政府保険運営の安定性、これを確保する上から輸出保険引受停止、あるいは条件つき引き受けを行うなど、制限をする運用といったものを行っているわけでございますが、これらの特定国が年々増加してきている。現在における政府引受制限状況を見ますと、特定国は約六十五カ国にも及んでいる。これは世界の約四割にも達する状態になっているのですが、これらの措置保険業務運営上から当然のこととは思いますが、危険負担防止を重視する余り、政府は必要以上に厳格になり過ぎているんではないか、こんなふうに思うわけですが、この点はいかがですか。
  137. 杉山弘

    杉山政府委員 ただいま御指摘のように、保険引き受け制限ないし停止をしております国の数は六十五カ国程度になっております。そういう状況のもとで、保険契約者の側からは、先生指摘のように、保険当局は過度に神経質になり過ぎているのではないかという御批判があることも承知いたしております。ただ、通常の国に比べましてリスクの大きくなった国に対する保険引き受けにつきましては、ある程度ティミッドになるというのもやむを得ないかとも思いますが、過度に及びますと輸出に大きな支障を生ずるということになるわけでありまして、その辺の兼ね合いと申しますか、判断が非常に難しいわけでございます。  私どもといたしましては、できるだけ民間の輸出業者の方々にも、リスクのふえております国向けの輸出につきましてはリスクシェアをしているもの、具体的には通常料率よりも高い料率をちょうだいする。ないしはてん補率につきましても通常てん補率よりは少し低いてん補率を適用させていただいて、てん補されない部分は民間の方のオンリスクにゆだねるというようなことで、もう少し弾力的な引き受けができないものであろうか。それから例えば債務繰り延べをやりました国につきましては、保険は原則として停止せざるを得ないわけでございますけれども、一たん停止した後、その国のカントリーリスクの状態を機動的に把握いたしまして、できるだけ早く保険引き受けを再開するというようなことについても努力しなければならないのではないかというように考えております。  こういう点を踏まえた全体の保険の弾力的な引き受けという問題につきましては、保険の収支相償の原則の中でできるだけ実効が上がるような措置を考えたいというふうに思っております。
  138. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 ただいまの御答弁の中で、神経質になり過ぎているのではないかというあれがありました。むしろ厳格になり過ぎてはいないかということであって、若干のその辺のニュアンスが違うと思うのですけれども、いずれにしても、こういう厳しい制限というものが我が国の輸出貿易にとって重大な影響を及ぼしている。これは間違いないと思うわけですけれども、これらは危険だから保険を掛けるのだ。こういう保険制度本来の機能を維持していく観点からいっても、そういうことは決して望ましいことではないと思います。むしろ引き受け制限の緩和ということを行っていくべきではないか、こう思うわけですが、ただいま御答弁のあった、弾力的な引き受けというふうな御答弁になっておりますが、この引き受け制限の緩和ということについて、先ほどの御答弁そのものと解釈すべきかどうか、もう一度御答弁いただきたい。
  139. 杉山弘

    杉山政府委員 やはり保険と申しますのはリスクに対するものでございますので、リスクが大きくなっております場合には、一方契約者の側からしますと、保険の必要性は増しているわけでございますが、保険引き受ける側からいたしますと、リスクが増している中に通常条件と同じような引き受けをやるということはこれまた難しい、できないことでございますが、そういう中で余り厳し過ぎないように、例えば従来の手形保険でありますと、てん補率が八〇%と固定されているために、少し経済状態がおかしくなった国に対しましては、例えばLCがついたものでないと引き受けないというようなことをやるわけでございます。  そういたしますと、実際には引受額はがくんと落ちてしまうということになるわけでございますけれども、今回御提案申し上げております改正案によりますと、手形保険につきましても、てん補率をフィックスせずに八二・五%の範囲内で弾力的に運用をお任せいただくということになりますので、リスクのふえた国につきましては、てん補率を少し下げてでもLCつきでないものもお引き受けをするというようなことも考えてみたいと思っておりますし、繰り返すようでございますけれども保険の収支相償の原則の中でできるだけ弾力的な扱いを図ってまいりたいと考えております。
  140. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 現実に輸出業者の側の話を聞いてきたわけですけれども保険料は上げるなとは言っていないのだ、危険度に応じた保険料を取っても特定国への制限を緩和してほしいのだ、こういう声があるわけです。また、特定国の政治情勢とかあるいは経済状況、こういったものを注視しながら、好転の兆しが見えかけたなら、長期的な視点からリスクの再評価を適切に行ってはどうか、行うことが必要ではないかというふうにむしろ考えるわけですけれども、この点についてはいかがでしょうか。
  141. 杉山弘

    杉山政府委員 一たん保険引き受け停止しました国につきまして、その後のその国の経済状態を機動的に把握しまして、なるべく早く保険引き受けを再開するということにつきましては、先ほども御答弁申し上げましたように、私ども、これからぜひ努力をしてまいりたいと思います。  特に、輸出業者の方々からの御批判といたしますと、例えば債務繰り延べをいたしました国につきましては、我が国の保険引き受け停止になるわけでございますが、そういう国につきましても諸外国の保険機関は付保しておるぞというような御指摘もあるわけでございますが、こういったほかの国の保険機関の出方等も一つの考慮事項になるかと思いますけれども、そういう事情をいろいろ勘案をしまして、できるだけ引き受け停止した国につきましても再開を早くするということを、これから具体的なケースに応じまして考えてまいりたいと思います。
  142. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 こういったことに対応するためにも、私は、カントリーリスクの評価システムの確立、こういったことをむしろ図るべきではないかと思いますが、この点どうですか。この評価システムの確立という問題ですね。
  143. 前田典彦

    ○前田(典)政府委員 こういう難しいときに引き受けを弾力的、積極的にやるというためには、ただいま御指摘のとおり、カントリーリスクの評価システムの確立というのが非常に重要になるわけでございます。私ども輸出保険といたしましては、幸いにしまして政府の中にあるわけでございますから、ジェトロでございますとか在外公館でございますとか、いろいろなところからその情報を得ておりまして、私どもでいろいろ評価をやっております。  それから私ども、特に予算を計上いたしまして、大口な輸出保険引き受け国等につきまして特別な調査をいたしまして、カントリーリスクの評価をやっておるわけでございます。ただいまおっしゃいましたそのシステムというのがコンピューターシステムというような意味でございますれば、民間の一部で、国内でもあるいは海外でもそういういろいろ、当該債務国の中にあります経済情勢のみならず、政治、社会的なファクターをそれぞれ数字に換算しまして、コンピューターに入れて、カントリーリスク・レーティング・システムというようなものをつくって売っているところもございます。  私どもも十分勉強はしておりますが、そういうものが、参考にはなりますが、直ちに使えるというような状態にはまだなっていないのではなかろうかと思います。私どもも、そういうコンピューターをたたけば出てくるというような将来の理想的なシステムではございませんが、内部でいろいろ委員会を設けたり会合を設けたりしながら、そのシステムの確立に努めておるわけでございまして、これを一層充実させていきたいと考えております。
  144. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 確かに、特定国の指定の見直しとか、あるいは解除等については、どのような基準とか目安、こういったものを設けていくか、いろいろ問題があると思います。当然、カントリーリスクに関する情報というものを正確かつ敏速に収集をして分析をする、あるいは評価する、こういったことが重要なわけです。  こういったことに関連して伺っておきますが、バイヤーの情報等の収集、これについて、信用調査等委託費として五十九年度の特別会計では二倍五千四百万、こういった額が計上されていますけれども、同予算は五十六年度においては二億一千百万円であったわけです。それで、信用調査に関する事柄というのは細かい配慮が必要であるわけですけれども、この三年間で四千万円強しかふえていない、こういうことになるわけで、この程度の調査等委託費で、この四千万円で果たしてどういったことを行おうとするのか、行い得るのか、御答弁をいただきたいと思います。
  145. 前田典彦

    ○前田(典)政府委員 ただいまの御指摘数字は、個別バイヤーの信用調査と、それからカントリーリスクに関します調査との合計の額かと存じますが、バイヤー調査に関して申し上げますと、予算額は五十七年度が一億六千万、それから五十八年度も、若干ふえまして一億六千二百万というようなのがその額でございます。  ただ、これはかなり長く続けておりまして、ジェトロ、それから、内外の対象バイヤーの所在します地域地域で、最も信頼できる有名な調査機関というのを選択いたしまして、そういうところに委託して報告を徴収するというようなやり方でやっております。その信用調査の結果、例えば相手側バイヤーに赤字があるとか、あるいは資金繰りが悪化しておるというようなバイヤーを発見しますと、直ちに格付を変更というようなことがございます。  それから、これは委託費と直接関係ございませんが、私ども、こういう日常の業務をやっておるわけでございますから、私どもの内部から発生するといいますか、独自な情報がございます。具体的には、典型的な例では、手形の内容変更、期限延長、つまり当初の期日に払わないで若干繰り延べるというようなのは、非常に初期にこの信用状態の変化というようなものを探知する、早期対処の情報でございまして、そういうものも利用しておるわけでございます。
  146. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 こういった国際信用不安が非常に高まってきておる現況下において、私が今伺ったのは、三年間で四千万円強しかふえていない、この程度のことで果たしていいのかどうか、どういったことをこれで行い得るのか、この辺をもう少しお聞きしたかったわけで、お答えをいただきたいと思うのです。
  147. 前田典彦

    ○前田(典)政府委員 バイヤーの信用調査につきましては従来から、この程度の予算というお言葉ではございますが、大体この程度の予算で、先ほど申し上げました内部の情報、それからジェトロの情報等も含めまして、大体必要な情報は私どもは得られておる。必要なバイヤーにつきましては、これは、バイヤー登録は形式的には非常に多うございまして十万ほどあるわけでございますが、この中に休眠バイヤーというのもございます。それから、既にブラックリストに入っておるというようなバイヤーもございまして、そういうものは再度調査をする必要がないわけでございますから、実質的には大体取引のある重要なバイヤーにつきましては年に一回の調査ができるというようなことで、ほぼ問題はないと考えておるわけでございます。
  148. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 次へ進みますけれどもカントリーリスク増大によって競争が非常に激化しているために、大手商社などでは利益が一%あるいはそれ以下でも大変な費用をつぎ込んで情報収集に懸命になっているのが実情であるわけです。一方、中小企業はどうかと言えば、これまた情報収集にかける費用はむしろ微々たるものである。政府は五十九年度から輸出保険協会に委託して、中小企業向けに海外のバイヤー及びインポーターの信用調査データに関する情報提供等を行うこととして千四百三十万の予算を計上しているわけですけれども中小企業の安定した輸出取引とか、あるいは海外投資の推進からも、このカントリーリスクに関する情報について速やかに中小企業者に提供されるように、この席で特に要望をしておきたいと思うわけです。  そこで、通産省には海外情報班がありますけれども、どのような陣容で、具体的にどのようなことをしておられるのか、ここでちょっと伺っておきたいと思います。
  149. 前田典彦

    ○前田(典)政府委員 輸出保険課の中に海外情報班というのがございます。この海外情報班は、先ほど申し上げましたようなカントリーリスク中心として情報を集め、分析しておるわけでございまして、個別バイヤーの信用調査というのはまた別途信用調査班の方でやっておるわけでございます。それで、海外情報班は六名ございますけれども、具体的には在外公館、ジェトロ、公開情報、そういうようなものを集めまして分析をするほかに、私ども輸出保険機関が三十六でございますか、集まりましたベルン・ユニオンという、私どもの同業者といいますか、輸出保険機関の集まりがございまして、そこを通じます情報交換というので、これはテレックスで各国に対するお互いの引受態度あるいは海外の、これはパブリツクバイヤーが多いわけでございますが、つまり外国の公的機関がそれを払わなかった場合、これは若干カントリーリスクといわゆるバイヤーの信用情報との中間ぐらいになるかと思いますが、そういうところが払わなければ通知をしてくるというような、そういう通知、それから、ここが年に三回会合を持ちますけれども、そういう会合への出席というようなことをやっております。
  150. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 それでは次に、プラント輸出関係について若干伺いたいと思います。  輸出が順調に回復をしている中で、プラント輸出低迷ぶりというものは確かに目立っている。年々むしろ落ち込みがひどくなっているわけですけれども、五十六年度の百七十五億ドルをピークに、五十七年度は前年度比で二三%減の百三十五億ドル、そして五十八年度の上半期は四〇%減にまで落ち込んだと聞いているわけです。五十八年度数字はまだはっきりしたものは出ていないわけですけれども、どのような見通しになるのか、また五十九年度も果たしてそうした下降線が続くのかどうか、この辺の見通しということになると思いますが、お答えをいただきたいと思います。
  151. 杉山弘

    杉山政府委員 先生指摘のように、プラント輸出、五十六年度をピークに、その後減少いたしておりまして、五十八年度につきましては、四月から一月までの数字を私ども手にいたしておりますが、これでまいりますと、前年度の同じ期間に比べまして三七・二%の減でございます。あと二月、三月の数字をまだ手にしておりませんが、年度をならしてみますと、総額にいたしまして約八十億円、前年度に対しましては四〇%の減少ということになるのではなかろうかというふうに考えております。  それから、五十九年度見通しにつきましても、世界経済全体として明るさが見えてきてはおりますけれども、大体債務累積国なり石油価格低下に伴います産油国の石油収入の減少等の事情は依然として続くものと考えられますので、余り大きなものは期待をできないというふうに考えております。
  152. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 それでは、今回の輸出保険法改正によって輸出代金保険てん補率を引き上げる、プラント輸出にかかわる輸出業者リスク負担の軽減を図ることになるわけですけれども、これではプラント輸出低迷に対する根本的な対応策にはならないのではないか、こんなふうに考えるわけですが、この点はいかがですか。
  153. 杉山弘

    杉山政府委員 御指摘のように、プラント輸出停滞背景は、全体的な世界経済低迷発展途上国債務累債問題、さらには産油国の石油収入の減少に伴います開発計画繰り延べといったようなものがあるわけでございまして、したがいまして、輸出保険てん補率を上げたからといいましても、直ちにそれがプラント輸出増加になるということにはならないとは思いますが、ただ、何せ債務累積国がふえておりまして、カントリーリスクというものが非常に高まってきております。  したがって、そういうものの中でプラント輸出をたまたま手にしました案件について行うといいます場合にも、従来に比べれば輸出者のリスクが大きくなっているということも事実でございますので、こういった点について輸出保険法てん補率の引き上げによって対処をしたいということが私どもの考え方でございまして、基本的な問題につきましては、やはり世界的な規模での先進国の後進国に対する援助の増大でありますとか、債務繰り延べについての条件の緩和とかといったようなワールドワイドでの対応が必要かと思いますが、とりあえず日本から出てまいりますプラント輸出についてのリスク増大というものについて保険で対処をしたいというのが考え方でございます。
  154. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 我が国の国際競争力というものは、欧米に比べてコンサルティング機能というものが依然として弱い。さらに、価格競争力においても、労働コストが低いところの中進国に対しても厳しい立場に現実に置かれている。また、当然ながら先進国に対しても、最近の円高傾向を反映しているわけですけれども、特に西ドイツ、イギリスあるいはフランス、こういった国々が積極的に肩入れをしていて、経済協力に絡めて政府による低利融資を行ったりしてプラント輸出を行っているわけです。すなわち援助絡み、国家ぐるみといいますか、これで輸出攻勢をかけているわけであって、受注合戦で欧州などに我が国が敗退するケースがふえているわけです。これらは特に中南米とかあるいは中近東で非常に目立っているわけですが、我が国は従来から、こうした個別のプラント輸出の商談については経済協力と絡めて進めることは好ましくないんだ、こんな判断に立っておられるようですけれども、この援助絡みあるいは国家ぐるみ、こういった欧州に対して、今後我が国としてはどう対応していかれようとするのか、この辺を伺っておきたいと思います。
  155. 杉山弘

    杉山政府委員 世界的に少なくなっておりますプラントの発注に対しまして、先進各国がいわば受注競争しているというのは、先生指摘のとおりでございまして、そのために例えば混合借款という形で、通常輸出信用の中に援助の要素を入れまして、ソフトな条件を提供をして注文をとる、こういうようなケースも増加をしてきているようでございます。  ただ、この点につきましては、先生も御案内のことと存じますけれども、OECDの輸出信用がイドラインにおきまして、援助ファクターの輸出信用との併用の問題につきましては、一定の制約があるわけでございます。ただ、私どももこの点については、他の競争国が出しております条件とのいわゆるマッチングのために、必要な場合には混合借款というものも供与をする方向で考えております。  実際の手続面その他につきまして、なかなか機動的な運用ができないというような御批判があることも事実でございますが、こういう点を含めまして、少なくともマッチングベースでは、各国との間で日本が劣後的な地位にならないようにという面での配慮は忘れないようにいたしたいというふうに考えております。
  156. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 相手国が発展途上国ということで、摩擦なき輸出とまで言われるところのプラント輸出ですね。このプラント輸出を促進する上でも、競争相手国との対抗上、必要に応じて輸銀の融資に円借款を合わせた混合借款の活用というものは、これは当然考えるべきではないかと私は思っていたわけです。  これに関連して伺っておきたいと思いますけれども政府借款にならないとしても、相手国政府にとって国家的重要なプロジェクト、すなわち経済協力的色彩の強いもの、こういったものについては、イギリスのように政策的見地から弾力的に付保を検討すべきじゃないだろうか、このように考えますけれども、御見解を伺っておきたいと思います。
  157. 杉山弘

    杉山政府委員 冒頭の大臣に対するお尋ねの中にもございましたように、プラント輸出等に対する輸出保険といいますのは、経済協力的な色彩がかなり強いものもございます。ただ、やはり保険の基本原則は、何と申しましても相手国に対するリスク判断というのがポイントになるわけでございます。したがいまして、経済協力的な要素の強い案件であるからということで、リスクを無視してというわけにはなかなかまいりませんが、リスク判断と経済協力的な要素、政策要請というものを、具体的な案件につきましてどのように判断をしてやったらいいのかという問題につきましては、御指摘を踏まえまして、今後の問題として十分検討さしていただきたいと考えます。
  158. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 さらにプラント輸出について、もう一点お聞きしておきたいと思うのですが、ハードの分野だけでなくて、ソフトについても重要であると考えますけれども、ソフトを輸出した際のリスクてん補する技術提供等の保険、この利用状況について御説明いただきたい。  また、前回法改正時において検討課題となっていた、いわゆるソフトの船積み前のリスクですね、この点について保険でカバーすることが求められているわけですけれども改正する必要はないのかどうか、あわせて伺っておきたいと思います。
  159. 前田典彦

    ○前田(典)政府委員 プラント輸出でハードよりもソフト部分が大きいというような、あるいはエンジニアリングのような専らソフトでやる、あるいは海外建設工事というようなものにつきましては、私どもで技術提供等保険と呼んでおるものでカバーをしておるわけでございます。  最近の引き受け実績を申し上げますと、五十五年度が千五百十二億円、五十六年度が二千七十七億円、五十七年度が三千二十五億円とだんだんと増加をしておりまして、五十八年度は上半期のみで大体三千億円となっております。ちなみに残高は、昨年九月末現在で七千六百億円ほどございます。  この中でエンジニアリング、そういうソフト部分だけがどれくらいかというのは、ちょっとつかめませんが、かなり利用状況は高いんではなかろうかというふうに考えております。  それから質問の第二の点でございますけれども、これは非常に技術的な問題があるわけでございます。そういうソフトの船積み前リスクにつきましては、例えば設計にかかる調査費であるとか図面であるとか、あるいは資機材等のためのスペック作製費等の先行費用というようなものがいろいろございまして、その支出を確認するということが事前の段階では非常に難しい。  もう少し具体的に申し上げますと、一般管理費でカバーされるような範囲にあるのか、あるいは特定の取引のための特定な支出であるのかというような技術的な問題が非常にございまして、これは民間の有識者も集めて検討したわけでございますが、まだ改正の案といいますか、方向を出すに至らないわけでございまして、むしろ今後検討を続けてまいりたいと思っています。
  160. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 輸出代金保険プラント輸出と関連が深いわけですけれどもプラント輸出に占める中小企業の位置ですね、どの程度のところにあるのか、これを伺っておきたいと思います。
  161. 杉山弘

    杉山政府委員 プラント輸出に直接中小企業がどの程度関与をするのかということにつきましては、むしろ主として大企業によって製作されるというふうに申し上げた方がよろしいのではないかと思いますが、ただ、プラント輸出のプラント機器の製作から波及して起こってまいります効果まで含めますと、一のプラント輸出の受注がありました場合、そのものの製作及び波及効果を含めますと、全体で二・四の生産がふえるというふうに言われておるようでございますが、その波及効果まで含めましたうちの約四割が中小企業の分野に帰属をするというのが、産業関連分析の一つとして私ども承知しているところでございます。
  162. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 最後に、先ほどちょっと質疑が交わされておったようですけれども、三国間取引ですね、これが急増しているようですけれども、輸入国内取引の低迷とか、あるいは輸出の陰りを補う勢いで今後ふえ続けていくことが予想されるわけですが、最近では、輸出国、輸入国とも世界的な広がりを見せているようでして、この三国間取引の数字とか、さらには資料ですね、これは時間がありませんので、本来ここで御答弁いただこうと思ったのですが、ありましたならば、後で結構ですからお届けをいただきたい。  さらに、三国間取引は今後急増してくるものと当然考えられるわけですが、世界の景気高揚、これに貢献をし、ひいては我が国の国際的立場を強固にするためにも、むしろ外国間貿易保険の創設ということを検討すべきときが来ているんじゃないだろうか、こんなふうに考えるわけですけれども、最後にこの点についてお答えをいただきまして、終わりたいと思います。
  163. 杉山弘

    杉山政府委員 私どもが把握をいたしておりますいわゆる仲介貿易の件数は増加しており、昭和五十八年の支払い件数、受取件数はともに四万九千件程度となっております。こういった三国間の仲介貿易について、輸出保険の適用対象にしてはどうかというような御意見がかねてからございまして、私ども専門家の方々にお集まりをいただいて、かなり突っ込んだ検討をいたしたわけでございますが、残念ながら、通常輸出取引が日本と仕向け国という二カ国だけの間の問題であるのに対しまして、これは三国間貿易でございますので、もう一カ国対象国がふえてまいります。しかも、その第三国の間の取引ということになりますので、相互の間の商慣行その他の取引条件等がいろいろ相違をしたりいたしまして、輸出保険でやった場合に必ずしも現時点で十分対応できるかどうかにつきましては、今のところまだ十分な心証を得ておりませんので、これはさらに今後の課題として検討を続けさせていただきたいというふうに考えております。
  164. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 終わります。
  165. 梶山静六

    ○梶山委員長 宮田早苗君。
  166. 宮田早苗

    ○宮田委員 最初にお断りしておきますのは、前者の皆さん方の質問と重複する面があると思いますので、そのときには簡単で結構でございますから、よろしくお願いを申し上げたいということです。  まず、五十九年度の通商産業政策の基本的な考え方の一つとして、我が国が欧米と並んで世界経済のリーダーシップの一翼を担う今日、この我が国の一挙手一投足が世界の注目を集めておる。したがいまして、従来の世界経済追従型から世界経済先導型へとその姿勢を転換していかなければならぬ、こう考えられております。  当然なことと思いますが、そういうことを前提にいたしまして、まず最初にお聞きいたしたいのは、我が国の対外経済政策についてでございますが、その一つは現下の経済動向、とりわけアメリカを初めといたします先進国経済動向についてどう認識をなさっておるかということをお伺いいたします。     〔委員長退席、森(清)委員長代理着席〕
  167. 小此木彦三郎

    小此木国務大臣 先進国経済は、昨年から全体として回復基調にあるということは既に定説でございます。  具体的に申し上げますと、アメリカは着実に回復いたしておりまして、失業率も非常に低下いたしているわけでございます。しかしながらその反面、財政赤字貿易赤字の拡大というような非常に不安な材料もあるわけでございます。  ヨーロッパはどうであるかといいますれば、イギリス、西ドイツ、これは非常に緩やかなテンポではございますけれども回復基調にあるわけでございます。また一面、フランスやイタリアはどうかといえば、内需が低迷いたしておりまして景気の回復にも非常にばらつきが見えるというところでございましょう。そしてまた失業率は、ヨーロッパ全体としては非常に高い率になっているということがおおよその動向でございます。
  168. 宮田早苗

    ○宮田委員 次に、日本経済状況、特に五十九年度経済見通し輸出増加状況についてどうお考えになっておるかということもお聞きいたします。
  169. 杉山弘

    杉山政府委員 最近の経済回復、かなり輸出主導的な面があることは先生御案内のとおりでございます。  まだ年度としての輸出数字が出ておりませんので暦年で申し上げますと、昭和五十八年は千四百六十九億ドルでございまして、前年比で五・八%の増加になっているわけでございます。これは主として米国の景気の回復を初めといたします世界経済に明るさが出てきたということによるものでございますが、五十九年度政府見通しの際には、たしかドルベースでの通関輸出の額は、公表された数字ではございませんが、七%程度のものを頭に置いておるのではないかと思われますが、最近の円高によりますJカーブ効果等によりまして、ドル表示の輸出額というものはかなり高い伸びになる可能性もあると思いますが、この点はこれからの世界経済の動き、為替レートの動き等によって左右されます点が多うございますので、余り断定的に申し上げるのはいかがかと思いますけれども輸出の好調は今なお持続をしているというふうに考えております。
  170. 宮田早苗

    ○宮田委員 そこで関連をするわけでございますが、我が国の経常収支貿易黒字の見通し、この点についてでございます。特に貿易摩擦が予想される中で調和のあります対外経済関係を維持しなければならぬ、こう思っておりますが、その点はどういうお考えを持っておいでになりますか、お聞きします。
  171. 杉山弘

    杉山政府委員 五十九年度貿易収支並びに経常収支につきましては、政府の五十九年度経済見通しというのが公式の政府の判断を示しているわけでございますが、それによりますと、貿易収支は御案内のように三百四十億ドル程度経常収支は二百三十億ドル程度というふうに言われているわけでございますが、最近は、この政府見通しをつくりましたときに比べますと若干円高ぎみになってきておりますので、Jカーブ効果というものでドル表示の貿易収支経常収支の黒字幅というのはあるいは拡大をする方向になる可能性なきにしもあらずということでございますが、こういう状態のもとでは、我が国といたしましては海外諸国の日本の大幅な貿易収支経常収支の黒字幅の拡大を背景といたしました保護主義的な動きというものにつきましては、これをぜひロールバックしなければいけないと思います。  日本といたしましては、貿易の拡大均衡を目指しながら自由貿易体制を維持強化するということに向けて積極的な貢献をしていかなければいけないというふうに考えますが、そのためにも、国内におきましては内需振興、さらには一層の市場開放努力といった点についても、さらに努力を重ねていく必要があるというふうに考えます。
  172. 宮田早苗

    ○宮田委員 その次に、経済協力の推進についてお伺いするわけでございますが、経済協力についてはますます重要になっておるわけでございまして、最近の我が国の開発途上国向け経済援助の実績、これがどうなっておるかお聞きします。
  173. 柴田益男

    柴田政府委員 昭和五十七年の我が国経済協力の総額は八十七・七億ドルでございまして、このうち政府開発援助は三十・二億ドル、民間ベースの資金の流れは五十七・二億ドルでございました。
  174. 宮田早苗

    ○宮田委員 政府経済援助の中期目標を定めて既に三年になっておると思いますが、その達成状況と今後の見通しについてお聞かせ願いたいと思います。
  175. 柴田益男

    柴田政府委員 中期目標の達成状況でございますが、御案内のとおり、この中期目標は昭和五十六年から六十年の経済協力の目標を前五カ年、五十一年から五十五年の総額の倍以上にするということではございますけれども、五十六年、五十七年の実績につきましては残念ながら減少しております。これは国際金融機関に対する出資のおくれ等の原因がございまして、五十六年の場合四・〇%、五十七年が四・七%の減少をいたしているわけでございます。しかしながら、目標期間五年間でございまして、この最初の二年間の実績だけでは全体のことはまだ確たることが言えないわけでございます。政府といたしましても、少なくとも五十八年度の予算あるいは五十九年度の予算では増額をいたして努力しておるわけでございまして、今後この中期目標の達成については最大限の努力をいたしていきたいということでございます。
  176. 宮田早苗

    ○宮田委員 次にお聞きしますのは、我が国のODAの対GNP比率の現状と改善の見通し、もう一つは、我が国の経済協力の水準について開発途上国はどのような評価を下しているか、その判断を聞かしていただきたい、こう思います。
  177. 柴田益男

    柴田政府委員 我が国のODAの対GNP比率及び改善の見通しについてでございますけれども、五十七年の我が国のODAの対GNP比率は〇・二九%でございました。前年、五十六年の〇・二八%に比しまして若干の改善をしているわけでございます。ODAの対GNP比率の国際目標は御案内のとおり〇・七%でございますので、それに向けてさらに改善に努めることとして、当面の目標としましては、先進国水準でありますいわゆるDACの平均の数字が〇・三八%でございますので、それに近づけるようにいたしたいと考えております。  我が国の経済協力の水準についての評価でございますけれども、我が国の経済協力の水準についての直接的な評価を受けたということはまだございません。しかし、DAC加盟国全体に占める我が国の開発援助の比率が一〇%ということで、実質的には大きな比率を占めているわけでございまして、我々としては、開発途上国は我が国の経済協力を実質的には評価をしていると思っているわけでございます。  なお、先ほど申しましたように、ODAの対GNP比率についてはさらに向上していこうということで努力しているところでございます。  また、アジ研の調査によりますと、事例調査をやっておりますけれども、インドネシアなどにつきましては、経済インフラ建設あたりがインドネシアの経済に大きく貢献しているというような報告もございます。
  178. 宮田早苗

    ○宮田委員 次にお聞きいたしますのは、経済協力、援助の内容についてでございますが、当該国の必要性、例えば日本に有利になることばかりを援助しているじゃないかという意見も間々あるようでございますが、これらの考え方が十分に把握できておるのかどうかということ、また、それらの反映について、当該国はどう評価しているんだろうかということについて分析がございましたらおっしゃっていただきたい、こう思います。
  179. 柴田益男

    柴田政府委員 経済協力の実施に当たりましては、日本側の一方的な判断ということではございませんで、いわゆる要請主義をとっておりまして、相手国の要請に基づいて経済協力を行うという形をとっているわけでございますが、まず要請を前提として、相手国の経済社会開発、民生安定、福祉向上への寄与の観点から対象案件についてフィージビリティースタディーを行いまして慎重に選定しているわけでございます。フィージビリティースタディーに当たりましては、我が国から調査団を派遣する等行いまして、その実効を期しているわけでございます。その意味におきまして、我が国の行っている経済協力は相手国から高い評価を受けているものというふうに我々は自負しております。
  180. 宮田早苗

    ○宮田委員 もう一つは、今後の経済協力において、物の協力だけでなしに技術的な、中でも人づくりへの協力は特に相手側に対しての協力になると思うのですが、こういう問題についてどのような取り組みをされておるのか、その点もお聞かせ願いたいと思います。
  181. 柴田益男

    柴田政府委員 発展途上国に対します経済協力の中で、技術協力が極めて重要であるということは、従来から我々も認識しているところでございまして、最も力を入れているところでございます。  具体的には、技術協力という場合には、我々といたしまして発展途上国に対する民間技術者等の派遣あるいは先方からの民間技術者の受け入れ研修といったことをやっておりますし、あるいは発展途上国に技術研修センターをつくって、そこで相手国の技術者を養成するというようなことをやっているわけでございまして、例示を申しますと、五十七年度においての研修生の受け入れは、政府ベースで四千三百名、民間ベースでは二千三百名の研修生を受け入れている。あるいは、例えばセンター等については、ASEANプロジェクトの一環として五カ国に人づくりセンターというものを設置いたしているわけでございます。
  182. 宮田早苗

    ○宮田委員 この今後の経済協力推進に関しまして、基本的な認識をお聞かせ願いたいと思います。
  183. 柴田益男

    柴田政府委員 経済協力推進に関する基本的認識という御質問でございますが、我が国経済世界経済の中で既に一割を占めているわけでございまして、経済協力についてもそれ相応の負担をすべきだということが我々の国際的な責務である、こういうふうに感じているわけでございます。厳しい財政状況下ではございますけれども、先ほど申しましたような新中期目標の達成を初めとして、内容的にも発展途上国中小企業振興、エネルギー開発、製品輸出の拡大、人づくり協力あるいは投資を通ずる協力、貿易を通ずる協力、こういうことを行いまして、発展途上国の発展に寄与してまいりたいというふうに認識している次第でございます。
  184. 宮田早苗

    ○宮田委員 次にお聞きいたしますのは、カントリーリスクの問題についてです。  この問題は官民一体になって進める必要があると思います。そのため、まず第一にお聞きいたしますのは、現在世界的規模で生じておりますカントリーリスク問題についてはどのような認識を持っておいでになるか、その点を先に聞きます。
  185. 杉山弘

    杉山政府委員 発展途上国債務累積問題でございますが、その要因としては、第二次石油危機以来の石油支払い代金増加ということが非産油の発展途上国については言えるかと思いますし、また産油国については、その後の石油需給の緩和に伴う石油価格低下ということがあろうかと思います。  そのほかに、先進国経済低迷に伴う一次産品価格停滞でありますとか、世界的な高金利水準といったようなものが相まちまして、今日の低開発国の債務累積問題を引き起こしたと考えております。  世銀のレポートによりますと、昨年の末での発展途上国累積債務総計は八千百億ドルと言われておりまして、前年末に比べておよそ五百億ドルほどふえているわけでございます。ただ、最近に至りまして、こういった債務累積問題については、先進国中心とする関係国及び国際金融機関等の対応によりまして、一応危機的な状態からは脱し得たのではないかというふうに考えられます。その上、低迷いたしておりました世界経済につきましても最近では明るさが見え始めておりますし、一次産品市況につきましても若干の改善が見えるなど、こういった債務累積問題につきましての明るい要因がふえつつあるように思います。  ただ、依然といたしまして金利は高水準を続けておりますし、手放しの楽観は許されないと思いますが、債務国自身の経済運営につきましての自助努力に加えまして、債権国なり国際機関等が引き続き協調した対応をとることによりまして、問題への適切な対応が図られるものというふうに考えておる次第でございます。
  186. 宮田早苗

    ○宮田委員 カントリーリスク問題の根幹をなします発展途上国累積債務と今後の見通しについての基本的なお考えを聞かしていただきたいということと、もう一つは、債務国経済の円滑な再建を図るためには先進国、IMF等国際機関の支援が不可欠であります。我が国といたしましても国際協調の立場から応分の協力が必要と考えておりますが、その点についての政府の見解もあわせてお聞きいたします。
  187. 杉山弘

    杉山政府委員 御質問の前段の方につきましてお答えを申し上げたいと思います。先ほど御答弁の中で、昨年末の債務累積国債務総額八千百億ドル、七二年末に比べまして五百億ドルの増加ということを申し上げたわけでございますが、さらに、これからにつきましては、やはり依然として八千百億ドルの水準から増加の傾向にあろうかと思いますが、一方では世界経済全体の回復に伴いまして、一次産品中心といたします発展途上国輸出増加ということもありますので、当面債務累積問題というのが危機的な状況に発展するということはないのではないかというふうに考えておるわけでございます。  後段の問題につきましては、通商政策局長の方から御答弁申し上げます。
  188. 柴田益男

    柴田政府委員 債務国経済の円滑な再建を図るための先進国の努力でございますけれども、まず一つの前提といたしまして、国際機関を含め先進国発展途上国の中の債務累積国に対しまして貿易を拡大する、投資を行う、あるいは金融援助をする、そういう多方面の援助がまず必要だろうというふうに考えておるわけでございます。そういう多方面の援助を前提といたしまして、具体的には、累積債務については既に行っておりますように公的債務及び公的保証債務についてのリスケジュール、債務繰り延べを行うということが一つでございますし、LLDCに対しましてはかってUNCTADで決議いたしましたように一つ救済措置、これを無償援助に切りかえるというような措置も行ってきているところでございます。また、IMFとか世銀等国際機関におきましては、債務国流動性不足に対しまして緊急融資を行っているということでございまして、我が国といたしましても先進国と協調して、あるいは国際機関と協調して、こういう方向で努力してまいりたいと考えております。
  189. 宮田早苗

    ○宮田委員 次にお聞きしますのは、我が国が債務繰り延べに応じている国はどのくらいあるものかということ、また今後の見通しについてもう一つは、今後我が国はどのような方針のもとに債務繰り延べに応じていくつもりか。この二点をお聞きいたします。     〔森(清)委員長代理退席委員長着席〕
  190. 杉山弘

    杉山政府委員 まず最初に現在我が国が債務繰り延べに応じている国の数でございますが、これは国際的な債権国会議、通称パリクラブと申しておりますが、そこでの合意ができて債務繰り延べに応じております国は現在十五カ国に上っております。  なお、今後の見通してございますが、このパリクラブの開催を要望いたしておる国が三カ国ほどございます。当面三カ国でございますが、あるいはこれからの問題としてさらにふえてくる可能性なきにしもあらずということかと存じます。  それから我が国としては、こういう債務累積国債務繰り延べに対してどういう方針でこたえていくつもりかというお尋ねでございますが、やはり債務累積国支払いが困難になっております国の経済再建に協力をいたしますためには、国際的な合意に基づきます債務繰り延べに応ずるということが一番のポイントであろうかと思いますので、こういった問題につきましては、国際的な債権国会議におきましても、関係各国の意見を十分聞きまして、我が国といたしましてもできるだけ協力をいたしてまいりたいと思います。こういった国際的な合意に基づきます債務繰り延べができませんと、かえって各債権者、債権国がそれぞればらばらに債務の履行を迫るということになりますと、これは債務国にとりまして経済再建が困難になるだけではなく、また債権国なり債権者の債務回収自身もかえって難しくなるという問題もあろうかと思いますので、国際的な合意に従ってできるだけの協力をしていく方針でございます。
  191. 宮田早苗

    ○宮田委員 カントリーリスクについてリスクの評価、そうして予測のための調査が重要であります。的確な情報把握のための対応策についてお聞きするわけでありますが、単なる数字のみではその国の実態というのはなかなかつかみにくいんじゃないかと思いますが、ひとつ考え方がありましたらお聞かせ願いたいと思います。
  192. 前田典彦

    ○前田(典)政府委員 ただいま先生指摘のとおり、なかなか数字だけではカントリーリスクというのはつかみがたい、評価しがたいわけでございます。特にカントリーリスクが問題になりますような低開発国というのはその統計なども非常におくれておりまして、なかなか出てこない。甚だしきはその債務額が幾らあるか、なかなかわからないというようなこともあるわけでございます。  私どもはそういう点に関しまして、ジェトロでございますとか在外公館でございますとか、そういう国あるいは国に準ずる機関の出先がございまして、そういうところからこの数値情報のみならず、何といいますか、そういう経済情勢あるいは政治情勢というようなものも含んだ情報が入ってくるわけでございまして、これを第一に利用しておるわけでございます。それから、当然のことながらIMFでございますとか世銀でございますとか、あるいは民間の大手米銀とか、そういうようなところで出しておるような資料、統計というようなものも利用しております。それから、先ほどもちょっと申し上げましたが、私ども同様各国の輸出保険機関というところが持っております情報、これは大体コンフィデンシャルな情報でございますが、テレックスあるいは会合等を通じまして、そういうところからの情報を利用しております。それから、当然のことでございますが、私ども保険運営、被保険者、輸出者と接するというようなことから、例えば払いがおくれておるというような極めて基本的な情報というようなものは、私ども保険の営業からも入ってくるわけでございまして、こういう情報があるわけでございます。  ただ情報が入ってくるだけでは十分でございませんで、これを分析し評価するということが非常に重要になってくるわけでございますが、私どもはその保険部局のみならず、省内の通商政策局というような関係各課あるいは場合によりましては外部の有識者というような人と情報交換、共同作業というようなものをしておるわけでございます。情報収集というよりも、特にこういう分析評価という点につきまして今後も一層努力を重ねてまいりたいと思います。
  193. 宮田早苗

    ○宮田委員 カントリーリスクの対応のため海外投資等損失準備金制度が適用延長となっておりますが、今後この制度の充実強化について基本的な考え方をお聞かせ願いたいと思います。
  194. 杉山弘

    杉山政府委員 御質問のございました海外投資等損失準備金制度につきましては、我が国の企業が発展途上国において行います海外事業等に伴って発生いたします損失に備えるために租税特別措置法で認められた措置でございます。この制度につきましては今年度末で期限切れとなっておるわけでございますが、五十九年度の税制改正の作業におきまして六十年度末まで延長されることが決まっております。なおこの場合に、一般企業の特定の海外債権につきましても、既に現在の海外投資等損失準備金制度の対象となっておりますことを申し添えたいと思います。  なおこの制度につきましては、延長が認められました際、一般海外投資にかかる積立率につきましては、それまでの一二%の積立率が一〇%に縮減をされたことを申し添えたいと思います。
  195. 宮田早苗

    ○宮田委員 次にお聞きしますのは、プラント輸出についてでございます。  我が国の貿易収支が黒字基調で推移をして、その削減が問題視されております傾向の中で、一方プラント輸出に対する政府助成策の強化の要望が強く出ておるわけであります。我が国全体の視点では一見矛盾するように見える要望ともとれますが、プラント輸出通常輸出助成策とは異なる視点でとらえる必要があると考えられます。  そうした観点から幾つか質問をこれからいたしますが、まず第一にお聞きしますのは、最近の輸出動向の中で特にプラント輸出動向はどのようになっておるか、その辺をお聞かせ願いたいと思います。
  196. 杉山弘

    杉山政府委員 先生指摘のように、一般の輸出増加傾向にあります中で、プラント輸出につきましては残念ながらここ数年減少傾向をたどっております。五十六年度の百七十五億ドルといいますのがこれまでのピークでございまして、五十七年度は前年度比約二三%の減少でございます。今年度に入りましてから一月までの実績は五十二億ドルでございまして、前年度の同じ期間に比べますと約三七%の減でございまして、年度全体といたしましても約六十億ドル、前年度比四割減という水準にとどまるのではないかというふうに考えております。
  197. 宮田早苗

    ○宮田委員 ただいまおっしゃったことに対します停滞理由、これは何であるかということと、もう一つお聞きしますのは、我が国のプラント輸出の相手は主に開発途上国でございますが、これは途上国にとりまして、プラントに高度に集約された技術の移転、促進、産業構造の高度化と、それによります貿易構造の高度化等を通じて経済発展の寄与度が高く、いわゆる喜ばれる輸出でございまして、積極的な推進が望まれますが、政府の基本的な認識も一緒にお答え願いたいと思います。
  198. 杉山弘

    杉山政府委員 先ほどお答え申し上げましたように、プラント輸出が最近減少いたしております理由背景でございますが、これはやはり発展途上国債務累積問題、それから、その中で特に産油国につきましては、石油収入の減少に伴います開発計画繰り延べといったことがバックにあるものと考えられます。  こうした状況の中で、先生指摘のように、プラント輸出そのものが発展途上国に対します技術移転また発展途上国貿易構造の高度化に寄与する、いわゆる摩擦なき輸出、喜ばれる輸出になるわけでございますが、こういった点について、私どもといたしましては、発展途上国に対します経済協力的な観点からも効果が大きいものということを考えまして、積極的に推進をすべきものと考えておる次第でございます。  今回御提案申し上げております輸出保険法の中での輸出代金保険てん補率の引き上げといいますのは、債務累積問題の顕在化に伴いますプラント輸出に伴う輸出者のリスク増加という問題について、いささかなりとも保険の面でカバーをしたいという趣旨に出るものでございます。
  199. 宮田早苗

    ○宮田委員 対内的視点でとらえた場合、単品輸出とは異なった意味プラント輸出が日本経済に貢献できる利点がかなりあると思いますが、それら利点やその影響についてどうお考えになっているか、この点もお聞かせ願いたいと思います。
  200. 杉山弘

    杉山政府委員 プラント輸出そのものが発展途上国に対しても促進を必要とする輸出であるということはただいま御答弁申し上げたわけでございますが、プラント輸出自身我が国にとりましてもいろいろな面で好影響のあるものでございます。一つには、まずプラント輸出自身が非常に付加価値率の高い輸出であるということ、さらには技術集約度が高いという観点からも、我が国の産業構造、貿易構造の高度化という観点から見て大きな意義を持っている輸出であると考えるわけでございます。プラント輸出と申しますと大企業の輸出というふうに考えられがちでございますが、プラント輸出を行います場合に、その部品の供給、さらには波及効果ということを考えますと、一億円のプラントの受注というものは、日本国内におきましては約二・五億円のトータルとしての直接間接の生産増加をもたらしますが、そのうちの約四割が中小企業の分野での効果となって発生をしてまいりますので、中小企業にとりましても非常に好ましい輸出であると考えるわけでございます。
  201. 宮田早苗

    ○宮田委員 プラント輸出におきます我が国の国際競争力をどのように判断をされておるのか、お聞きします。
  202. 杉山弘

    杉山政府委員 日本のプラント輸出は、昭和二十年代の末にその萌芽が見られて以来、まだ三十年程度しか歴史を持っていないわけでございます。これに比べますと欧米先進国は非常に長いプラント輸出の歴史を持っておりまして、こういったハンディキャップを持っておりますけれども、最近における我が国からのプラント輸出は、その品質が極めて安定しておりますのと、それから納期が極めて確実であるというようなことから、諸外国からも高い評価を受けるようになってきておりまして、ようやく先進講国と何とか競争をしていけるような状態になってきております。OECDの統計によりますと、日本のプラント輸出輸出シェアの面について申しますと、米国、西独に次ぎまして第三位という国際市場におけるシェアを持ってきておるわけでございます。  ただ、こういった世界各国と比肩し得るような状態になりましたのもつい最近のことでございます。先ほど御答弁申し上げましたように、世界のプラント市場というものは最近非常に狭隘化をいたしてきておりまして、こういう中でいわばプラントの受注競争といったものが日増しに激しくなっている状況にありまして、この中で我が国のプラント輸出は諸外国のオファーに敗れるというケースもかなりこのところふえてきておりますが、その主たる原因は、やはり価格とか金融条件とかといったような面における競争力で欧米諸国のオファーに負けたためというふうに理解をいたしております。
  203. 宮田早苗

    ○宮田委員 プラント輸出の振興を図るためにコンサルティング機能の強化を図る必要があると思いますが、どのような対策が講じられておるか、その辺をお聞かせ願いたいと思います。
  204. 杉山弘

    杉山政府委員 先生指摘のように、プラント輸出の場合にはコンサルティングと申しますか、エンジニアリングと申しますか、ソフト部分というのが極めて重要なファクターになってまいりまして、従来我が国のプラント輸出が諸外国に劣ると言われましたのも、専らこのソフトの部分というものが大きなポイントになっておったものと承知をいたしております。  そういう面から、通産省におきましては、こういったコンサルティング能力、エンジニアリング能力の向上のために、これまでいろんな面から対策を講じてきておるわけでございますが、その一つといたしまして、重機械技術相談事業費補助金というものを交付いたしております。金額は五十八年度の予算におきまして三千万円強でございますが、これでやっておりますのは、海外におきます開発計画等につきましての技術相談に応じ、また予備調査とか設計見積もりとかを行いますために必要なコンサルタントを現地に派遣するための費用に充てるというようなこと、ないしは海外の先進諸国から著名なコンサルタントを招きまして、日本におきましてのコンサルティング能力の向上に資するといったような事業に使わしていただいておりますが、今後ともこういう面につきましては従来以上に力を入れていきたいと思っております。
  205. 宮田早苗

    ○宮田委員 現在のOECDガイドラインの取り決めにおいて、日本の輸銀貨出金利は諸外国の制度金融あるいは市中調達金利に比べても相対的に高く、国内でも市中調達金利より高い場合がございますが、プラント輸出の障害となっているとその辺を聞くわけでございますけれども、この点はどうですか。
  206. 杉山弘

    杉山政府委員 先生指摘の点は、OECDの輸出信用アレンジメントにおきまして、日本の場合は低金利国ということでオファーします金利が八・三%というふうに決められておりますために、実際の日本国内におきます長期プライムレートその他金利水準低下を考えますと、輸銀金利が高過ぎて使えないのではないかということの御指摘であろうかと思います。現状につきましては確かに先生指摘のとおりでございますが、私ども、OECDの輸出信用アレンジメントの改定の会合におきましては、こういった日本の特殊事情をるる説明をいたしまして、ガイドライン金利の引き下げを常に要求をしてきたわけでございますが、海外諸国からは、日本の金融事情につきまして必ずしも十分な理解を得られないために、御指摘のような状態になっているわけでございます。この点につきましては、従来以上に諸外国の理解が得られますように、OECDの会合におきまして我が国の特殊性を主張し、粘り強く交渉を行っていく必要があるのではなかろうかというふうに考えておる次第でございます。
  207. 宮田早苗

    ○宮田委員 プラント輸出の諸要件について、我が国は欧米諸国に比べてOECDなどのガイドラインを厳格に守り過ぎているんじゃないか、こう思うのです。マッチングなどをもっと機動的かつ弾力的に行ってはどうか、こう思うのです。またその対策のために例えばマッチングファンドの創設などは考えられないものかどうか。この辺はどういうふうにお考えでしょうか。
  208. 杉山弘

    杉山政府委員 先ほど御答弁いたしましたOECDの輸出信用ガイドラインにつきましては、我が国といたしましては、我が国がこのガイドラインを破るということは避けたいということで、今まで御相談がありました段階では指導をいたしてまいってきております。その意味で、若干正直過ぎるではないかというような御批判があることも承知をいたしておりますが、私どもといたしましても、機械的にこのガイドライン条件を守るというにとどまっているわけではございませんで、先生指摘のように、諸外国がこのラインを外れたような条件を出した場合に、それにマッチングするためには我が国も緩やかな条件をオファーするということについては少なくとも認めるべきだということで、マッチングにつきましては、できるだけ弾力的にやってきたつもりではおります。  ただ、手続その他の面でまだ若干御不満が残っているということも承知をいたしておりますので、こういう点につきましてはできるだけ輸出者の御要望に応じられるような方向で検討をいたしてまいりたいと思っております。  そのためにも、例えばマッチングファンドというものを特別につくって、金がないからマッチングできないということがないようにすべきではないかという御提案だと思いますが、まさに御指摘の点は一つのポイントであろうかと思いますので、私どもといたしましても、今省内でプラント輸出の振興についての方策を議論をしていただいておりまして、その際の意見の中にも、こういうようなアイデアが出てきておりますので、具体的にどういう形でこれが実現し得るかという点につきましては、なお検討を重ねてまいりたいというふうに考えております。
  209. 宮田早苗

    ○宮田委員 次に輸出保険についてお伺いをいたします。  その第一は、我が国の輸出貿易の中で輸出保険はどのような地位を占めておるかということと、もう一つは、日本の輸出保険は諸外国に比べてどのような特色があるか、また問題点は何かという二つをお聞きいたします。
  210. 杉山弘

    杉山政府委員 まず、我が国の輸出貿易の中で輸出保険がどういう地位を占めているかという点について私からお答えを申し上げます。  輸出保険は五十七年度の引受金額で十三兆円を超えておるわけでございます。この輸出保険の中には海外投資保険とか、直接輸出とは関連のないものも含まれておりますが、輸出に伴うリスクをカバーする輸出保険だけにつきまして、その引受総額と我が国からの輸出総額との比をとってみますと約四割、正確に申しますと三七%でございます。したがいまして、我が国の輸出のうち約四割が輸出保険に付保され、リスクがカバーされているというふうに御理解をいただいてよろしいかと存じます。
  211. 前田典彦

    ○前田(典)政府委員 日本の輸出保険は諸外国に比べてどういう特色があるかというような御質問につきまして、お答え申し上げます。  諸外国の主要な輸出保険機関として、現在二十八カ国で三十六の機関がございまして、これがベルン・ユニオンという国際機関をつくっておるわけでございます。その加盟メンバーだけで三十六機関あるわけでございますが、相互に常に情報交換をしておりますので、そういうところと比べて私ども輸出保険制度を見てみますと、やはり最大の特色といたしましては、我が国独特の制度として輸出組合単位の包括保険制度がある、これによりまして、リスクを広く薄く分散させる、したがいまして、料率も結果として低い料率で付保するというようなことが可能になっておるわけでございます。  第二点は、ただいま局長からお答え申し上げましたような、輸出全体をどの程度カバーしているかということも、今の包括と関連いたしまして、諸外国と比べまして非常に高いところにあるわけでございます。  それから、この包括制度の普及のほか、私ども早くから電子計算機を入れておるというようなこともございまして、事務処理の効率化に努力しておるわけでございますが、少ない職員数で割合に大きな額を引き受けておるというようなものも特徴の一つかと思います。  それから保険の種類でございます。今回二つ減らしたわけでございますが、大体各国と比べましてもそれほど遜色のない種類を持っておるのではなかろうかと思います。  それで、問題点でございますけれども、私ども、こういう債務繰り延べ等と関連いたしまして、保険金支払いに関連いたします事務量が非常にふえてまいりまして、これを電子計算機をさらに一層利用するというようなことで、事務の効率化を図らなければならないと考えておるのが、現在問題点と言えば問題点かと思います。ちなみに、これはよその経営のことでございますから、余り具体的には申し上げられませんが、支払いが多くなりまして資金繰り、収支が苦しくなっておるというのは、私どものみならず、主要な保険機関、全く共通の現象でございます。
  212. 宮田早苗

    ○宮田委員 カントリーリスク増大は我が国のプラント輸出等に大きな影響を及ぼしておりますが、その意味輸出保険制度の強化拡大を目標とした今回の改正は時宜を得たものとして評価するわけでございますが、さらにその趣旨に沿って機動的、弾力的引き受けに努めるなどの運営が必要であると思いますが、この点はどのようなお考えを持っておいでなのか、お聞きします。
  213. 杉山弘

    杉山政府委員 輸出保険につきまして、機動的、弾力的な引き受けをすべきではないかという御指摘でございますが、私どもも、できるだけそういうふうにしたいというふうに考えております。  ただ、どこまで可能かという問題について申し上げますと、やはり輸出保険保険料収入をもって保険金支払いをするということで、いわゆる収支相償という大きな原則がございます。したがいまして、リスクの大きくなっておる国につきましては、どうしてもそういう観点から申しますと、やはり通常の場合に比べますと引き受け条件が厳しくならざるを得ませんし、債務繰り延べ等をやっております国につきましては、引き受け停止せざるを得ないという事態になることもまた御理解いただけるかと存じます。  ただ、そうした中におきまして、例えば一たん引き受け停止しました場合でも、その国のカントリーリスクを機動的に評価をいたしまして、できるだけ早い機会に再開をするとか、経済状態悪化しました国につきましては、特別の料率を適用して、ないしはてん補率につきまして通常の場合よりは低いてん補率引き受けを継続するというようなことにつきましては、個別具体的なケースにつきまして収支相償の原則の範囲内で許される限りの弾力的な運用についてはぜひやってまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  214. 宮田早苗

    ○宮田委員 特にプラント輸出の場合は、発展途上国経済発展に不可欠な役割を果たしていると思います。その意味から国際協力の観点に立った弾力的で適切な保険運営を行うべきでないか、こう思うわけでございますが、この点はどうかということと、続けて質問いたしますと、債務繰り延べは一律に事故認定国扱いとなって保険引き受け停止されますが、運用に当たってはきめ細かい政策的配慮が必要じゃないか、こう思うのです。例えば、輸入国にとりまして重要なプロジェクトの場合等々、いろいろ協力しなければならぬという場合もあるわけでございますが、その辺、当局といたしましてはどのようなお考えで取り組んでいかれるか、その辺もお聞きしておきたいと思います。
  215. 杉山弘

    杉山政府委員 プラント輸出につきましては、先生先ほど来御指摘いただきましたように、発展途上国に対する経済協力的な観点からもぜひ推進をすべきものというふうには考えております。そういう観点から、保険の弾力的、機動的な運用を特にプラント輸出については考えるべきではないかという御指摘につきましても、基本的にはそのとおりというふうに考えるわけでございます。  ただ、プラント輸出の場合には何せ金額が大きくなりますので、一たん事故になりますと保険金支払いもまた多額に上らざるを得ないという面もあるわけでございまして、保険引き受け態度も一方では慎重にならざるを得ないという点がございます。ただ、こういった問題につきましては、ケース・バイ・ケースになるかと思いますけれども、今御指摘のような点も踏まえまして、できるだけプラント輸出の振興にお役に立てるような方向で考えてまいりたいというふうに考えます。
  216. 宮田早苗

    ○宮田委員 諸外国ではてん補率上限を一〇〇%としておるところが多いわけでございますが、我が国の場合は一〇〇%とすることは考えられなかったかどうかということ、もう一つは、中小企業の利用の多い手形保険については、今回の改正により、てん補率が以内という表現になっておるわけでございますが、その趣旨を生かした運営に努める必要があると思いますが、しかし一方、適用されるてん補率のいかんによっては現行水準悪化をもたらす危険がありはしないか、こう思うのです。  そこで、慎重な運営を要請はいたしますが、政府のお考え方がありましたらお聞かせ願いたいと思います。
  217. 杉山弘

    杉山政府委員 輸出保険てん補率につきましては一〇〇%にすべきではないかという御意見は、前回の法律改正の際にも御指摘があったわけでございますし、諸外国の立法例では法的なでん補率の上限を一〇〇%にしております国が非常に多うございます。我が国の輸出保険におきましても、制度的に一〇〇%にすることは法制的に不可能だということではございませんが、政府のこれまでの考え方は、若干であってもやはり輸出者の負担部分を残しておくことが輸出保険全体の効率的な運用のためにもなるのではないかというような判断がありまして、これまで一〇〇%にしなかったわけでございます。  今回も、代金保険につきましては現行九五%になっておりまして、これをどこまで引き上げるかという問題がありました際に、一〇〇%までの引き上げということも内部的に一応議論はしてみたわけでございますが、一方では、先ほど来申し上げておりますように、保険金支払いが非常にふえておりまして、保険会計としましては借入金もしなければならないような状態になっております。そういう中で輸出者のリスク保険でどこまでさらに追加的にカバーし得るかというようなことを総合的に判断いたしまして二・五%の引き上げにさせていただいたわけでございます。  それから手形保険につきましては、従来てん補率は八〇%ということで、これより低くすることは制度上認められておらなかったわけでございますが、今回手形保険につきましててん補率を引き上げますとともに、最高限度の範囲内で以内ということで弾力的な運用ができるようにさせていただきたいという御提案をいたしておりますのは、手形保険の場合は従来てん補率が八〇%で一定になっておりましたために、経済状態が悪くなりました国につきましては、手形保険引き受けをします場合に極めて厳格な制限をせざるを得なかったという事情がございますので、こういう点につきましては、中小企業を主体とします利用者の御要望にこたえまして、例えばてん補率引き下げてでも従来のような引き受けを継続する、そういう余地を残していただくためにお願いをしているわけでございますので、通常の場合に従来よりも低いてん補率お引き受けをする、そういうことを考えているわけではございません。先生方の御指摘を頭に置きまして運用をさせていただきたいと思っております。
  218. 宮田早苗

    ○宮田委員 最後でございますが、この輸出保険制度は国、とりわけ通産省が運営する事業でございますが、そのため利用者、特に中小企業にとっては要望、苦情の申し立てなどが気軽にできにくい部分もあると思うのです。したがいまして、利用者サービスの拡大、利便の増大が必要であると思いますが、その点どのような対策を講じておいでになるか、お聞かせを願いたいと思います。
  219. 杉山弘

    杉山政府委員 利用者の利便の向上のために気軽に相談に行けるようにならないか、こういう御指摘でございます。  私ども、従来窓口におきましては、できるだけ保険契約者の方々に気軽に御相談にお見えいただくようにお願いをしてきたつもりでございますが、まだ至らぬ点があるといたしますと、これは大いに反省をしなければならないものと思います。私ども、現在までのところ、利用者に対するPRの点を含めた利用者サービスの向上につきましては、財団法人の輸出保険協会というものをその監督下に持っておりまして、ここに今年度から電算機を入れまして、利用者の御相談に応じた場合に、輸出保険当局が持っておりますデータを御参考に供するというような制度も始めておりますし、そのほかパンフレットの配布でございますとか講習会の開催とか、できるだけきめ細かな利用者サービスの向上には努めているわけでございますけれども、今後とも、この点につきましては一層の配慮をいたしてまいりたい、かように考えております。
  220. 宮田早苗

    ○宮田委員 終わります。
  221. 梶山静六

    ○梶山委員長 木内良明君。
  222. 木内良明

    ○木内委員 まず初めに、通産大臣にお聞きさせていただきます。  世界経済は今総じて第二次石油危機を契機としまして長期的かつ同時的な不況から抜け出そうとしているわけであります。その景気回復の推進力としては、米国を初めとする先進諸国の景気好転が要因として挙げられるわけであります。しかしながら、依然として世界経済は総じて言えば非常に困難な問題が山積しているというのが実態であろうかと思います。  こうした中で、先日の当商工委員会における小此木通産大臣の基本施策の中でこういうところがございました。「我が国としては、世界の一割国家としての強い自覚を持って、欧米諸国とともに、自由貿易体制の維持強化のための新たなるルールづくり、世界経済の活性化に積極的かつ具体的な貢献を行わなければならない」こういうふうに述べておられるわけであります。  そこで大臣にお聞きするわけでありますが、大臣の言われる世界経済の定安的発展に貢献すべき我が国のいわゆる対外貿易経済政策のあり方についてどのように考えておられるのか。まず所信をお聞きしたい、こういうふうに思います。
  223. 小此木彦三郎

    小此木国務大臣 そのためには、何と申しましても自由貿易体制というものを維持していかなければならないと思うのです。と同時に、そのことによって世界経済の活性化ということを促していかなければならないと思います。したがって、私どもが常に唱えております内需の振興あるいは一層の市場開放ということも必要でございましょうし、欧米先進諸国の通商代表たる首脳たちと私自身が自由率直に語り合って、ともすれば起こりがちな保護主義の台頭というものを排除していかなければならない、と同時に、我が国としては、冒頭委員がおっしゃったような世界経済の一割を担っているという立場を強調して、開発途上国等への経済協力、これも推進していかなければならないことももちろんでございます○木内委員 今大臣何点かにわたって答弁なさったわけでありますけれども、特にこの発展途上国に対する具体的な取り組みというものが、我が国の通商産業政策を推進する上で大変重要なことである、このように私は思うわけでありまして、今大臣の御答弁の中にもいろいろございましたけれども、こうした諸施策の一環として必要な環境の整備ということから今回の輸出保険法改正というものが行われる。全体の中におけるこの輸出保険法の位置というものが非常に重要な意味を持ってくるというふうに思います。発展途上国との相互依存関係が今日深まる中で、我が国は国際的責務として、経済協力の積極的拡充を今後求めていかなくてはいけない、こういうふうに思います。「このため、新中期目標のもとで民間活力をも活用しつつ政府開発援助を拡充するとともに、貿易投資を通じた協力を積極的に推進」されるという先日来の大臣の御答弁でもあるわけでありまして、今回のこの輸出保険法改正案審議に当たって、民間活力の導入あるいは貿易投資を通じた協力を積極的に行っていくという考え方と輸出保険法との関連、この輸出保険法をいかに今後通商産業政策の拡大の中に生かしていくお考えなのか、まずこの点をお聞きします。
  224. 小此木彦三郎

    小此木国務大臣 経済協力というものは、まずその理念として開発途上国の中の福祉の向上あるいは民生の安定、そしてさらに経済社会の開発等に寄与しなければならないことは言うまでもございません。具体的には開発途上国における中小企業の振興あるいは人材の育成等も必要でございましょうし、エネルギーの開発等も必要でございましょう。開発途上国の中に非常に困難な条件を抱えている国々があるわけでございます。こういう中で、やはり輸出保険制度を活用することによって、健全な貿易というものを整えていかなければならない、かようなことでもって開発途上国に対する我々の気持ちと輸出保険制度の活用というものとのかかわり合いというものをよりよく私ども用いていかなければならないと考えておる次第でございます。
  225. 木内良明

    ○木内委員 特に私は、きょうは中小企業の今後の輸出動向あるいはこの輸出保険とのかかわり合いについてお聞きをしたいというふうに思っております。特に基本的な事項につきましては、きょうの午前中あるいは同僚議員の方からの質疑も今まであったわけでございますので、個別にお聞きしたいと思うわけでございます。  その前に、申し上げました中小企業輸出動向ということでお聞きします。実はこれを指数化して見てみますと、昭和五十六年を一〇〇として五十七年八九・三、五十八年九三・一、またプラント輸出動向指数は、昭和五十六年を一〇〇として五十七年七七・二、五十八年度は五二・四という数字になっているわけであります。今回問題になっております輸出保険等の関連で、これらの指数のこれまでの経緯、これとカントリーリスクとの関連をどのようにお考えになっておられるのか、この点をまずお聞きすると同時に、また今後考えられるべきカントリーリスク増大要因、どういったものが考えられるか、お聞きします。
  226. 杉山弘

    杉山政府委員 先生からただいま御指摘のございました中小企業性製品輸出及びプラント輸出の最近の動きでございますが、指数的には今お示しのとおりであろうかと思います。  この背景でございますが、まず中小企業性製品輸出の場合でございますが、五十七年以降減少を示してきておりますが、昨年の後半から回復基調にはなってまいっております。ただ、その回復のテンポといいますのは、大企業性製品輸出に比べるとおくれておりますし、特に仕向け国別に、見ましたときに、先進国はかなり回復をいたしてきておりますけれども発展途上国向け輸出というものが非常に回復力が弱いわけでございます。一方、プラント輸出につきましては、専ら発展途上国がその対象になっているわけでございますが、これにつきましても、先ほど御指摘のような状況でございます。こういった中小企業性製品輸出の動き、プラント輸出動向といったものの背景には、やはり私ども、基本的には債務累積国債務累積問題というのが大きな要因としてあるのではなかろうかというふうに考えておる次第でございます。  それから、こういったカントリーリスクについては、これからどういうことになっていくのかということでございますが、債務累積国債務残高は昨年末で八千百億ドルというふうに言われておりまして、このところ債務累積問題というのが急速にクローズアップされてまいりました。  その背景といたしましては、世界経済全体の低迷、一次産品価格低迷、さらには高金利水準石油価格低下といったような話があるわけでございますが、一時言われました債務累積国の危機的な状況というものは、この間におきます世界各国の協調的な対応、さらには国際機関の対処等によりまして回避をされたというふうに考えておりますし、全般的な世界経済低迷、一次産品価格の低落につきましても、最近は若干の明るい動きも出てきているところでございます。  そういう中で、これからの動向につきましては、軽々に予測することは許されないと思いますけれども、やはり世界各国が協調してこういった発展途上国債務累積問題の解決に当たり、また発展途上国自身は、その自助努力において、その経済運営をしっかりやっていただくということが両々相まって、問題への適切な対処になるのではなかろうかというふうに考えておる次第でございます。
  227. 木内良明

    ○木内委員 実際、カントリーリスクというのは、先ほど来の質疑にもありましたように、係数化したり、あるいは具体的な予測を立てることが困難な面があるわけであります。しかし、そうかといって正確な把握をする努力を怠るようなことがあれば、さらに輸出保険に限らず、貿易の面で大きな問題が出てくるわけでございまして、こうした見通しの研究というものがさらに必要であろうし、その点の努力もぜひ願いたいというふうに思います。今、カントリーリスク増大傾向ということについて聞いたわけでありますけれども、実は私のもとに、今回輸出保険法改正があるということで、何件かの具体的な相談事が参りました。こうした点も含めてお聞きしてみたいと思います。  中米のグアテマラのある業者と取引をしておりました我が国の業者からの訴えでございますけれども、この取引で代金の決済が百八十日の手形、非常に長い手形でございますけれども、行われた。ところが期日が来てもなかなか決済されない。その後テレックスによって再々先方に要求したにもかかわらず、現在でも決済されない状態が続いている。この取引の相手企業は、その国においては優良企業とされている企業であるそうであります。個別の企業名は申し上げるわけにいきませんけれども、結局調べてみると、その国自体の外貨準備がなくて、いわば政府から外貨の流出を禁止されていたため、相手企業である我が国のこの企業に対して、決済する意思があるにもかかわらず、未決済となったままであります。聞くところによりますと、このパリクラブの方にリスケジュールの申請を行うように、あるいは我が国の政府としても動かれたというふうに聞いておりますけれども、この辺はどうなっておりますでしょうか。
  228. 杉山弘

    杉山政府委員 今お示しの国につきましては、昨年の秋からことしの初めにかけまして、外交ルートを通じまして、先方が外貨での送金は認められないが、かわりに国債を日本の輸出者に交付するから、それでもって代金の決済にかえてほしいというような話があったりした点につきましては、こういうものではむしろ我が方としては受け入れないのであって、世界債権国との間で合意を得た債務繰り延べ措置をとるようにということを申し入れているというような事実はございます。
  229. 木内良明

    ○木内委員 今貿易局長から御説明がありましたけれども、外務省との連携の中で、相手当事国に対するパリクラブへの申請を行われるような動きを通産省としてはされていますか。
  230. 杉山弘

    杉山政府委員 外務省を通じた外交ルートによりまして、債権国との話し合いをするようにというレコメンデーションをやっております。
  231. 木内良明

    ○木内委員 それは事務的にどのくらい進んでいるのですか。
  232. 杉山弘

    杉山政府委員 具体的に申し上げますと、現地にございます日本の大使館が現地政府に対しまして、先ほど申し上げましたような事実を伝えておりますが、それに対する先方の反応は、まだ今のところあらわれておらない状況にございます。
  233. 木内良明

    ○木内委員 先方の反応が今ないということでありますけれども、今後この問題は放置されますか。恐らく通産省と外務省との、こうしたいわゆる連携プレーというものが、今後の開発途上国との通商の舞台であるいは頻発してくる問題かもしれないし、この後お聞きするリスケジュールの実施におけるパリクラブの動きにも実は関連をするわけでございまして、我が国の中小企業を守る立場の通産省が、外務省との綿密な連携によって進めていかなくてはならない問題である、このように思うわけでありまして、こうした債務繰り述べを本来すべきである国情に相手国があるにもかかわらず、これを放置しておくということは許されない。通産省として何らかの手を打つべきであると私は訴えたいわけであります。貿易局長
  234. 杉山弘

    杉山政府委員 ただいま御答弁申し上げましたように、我が国としまして外交ルートを通じて申し入れをしているにもかかわりませず、まだ具体的な先方の態度が表明されていないという遺憾な状態でございます。今後とも外務省と緊密に連絡をとりまして、遺憾のないように措置をしてまいりたいと思っております。
  235. 木内良明

    ○木内委員 こういうケースの場合は大臣、どうすればいいでしょうかね。いわば一生懸命こっちから相手国に対して交渉を行っておるわけでありますけれども、ありていに言えばナシのつぶてなんですよね。
  236. 杉山弘

    杉山政府委員 ただいま先生からは、外交ルートを通じてやっているかというお話がございましたので、その点お答え申し上げたわけでございますが、そういうルートを通じて申し入れをする一方、私ども、やはり債権国との間での連絡というのはいろいろな機会にあるわけでございますので、そういったルートを通じて、今度は債権国の側が一致して相手国に対して同様の要請をするというような方向も考えられると思います。できるだけの手は尽くしたいと思います。
  237. 木内良明

    ○木内委員 そうしますと、いわゆる相手国との直の交渉が一つと、それから、債権国のいわば横の連携でこれを進めていこうというアクションが一つ、こういうことですね。そうしますと、債権国同士の、我が国も含めての話し合いというものは、今後持たれますでしょうか。
  238. 杉山弘

    杉山政府委員 公式な話し合いにつきましても、これだけが議題というわけではございませんが、パリクラブ債権国が集まりまして他の問題を討議をした過程におきまして、こういった問題を持ち出している事実はございます。こういった公式の場での債権国同士の話し合いももちろんでございますが、また、非公式な場での債権国同士の相談というものもやりまして、できるだけいろいろな手を尽くして事態の解決を図ってまいりたいと思います。
  239. 木内良明

    ○木内委員 この問題については、今後の、今の局長の答弁を踏まえての御努力をひとつお願いしたいと思いますし、申し上げた今の国だけでなくて、今後、発展途上国、開発途上国におけるこうしたトラブルというものが出てくる要因というのは相当あるわけでありまして、ひとつ今後へのいわゆる基本型というものを、この質疑を通じて創出していただきたいというふうなことを思います。  今たまたま一国を例に挙げたわけでありますけれども、今後リスケジュールが実施される、あるいはされる見通しのある国、恐らくこういう場でございますから国名についてはおっしゃらないと思いますけれども、何カ国ぐらいと考えておられますか。
  240. 杉山弘

    杉山政府委員 当面私どもが承知しておりますところでは、債務国の方で、債権国の会合を持ってほしいという希望を表明しているところが三カ国あります。ただ、このほかにもさらにまだ数カ国同じような状態にある国が出てくる可能性があろうかと思っておりますが、現時点で私どもが確かに承知しておりますところは三カ国でございます。
  241. 木内良明

    ○木内委員 今後、いわゆる保険引き受け停止国として追加をされるところも幾つかあろうかと思います。いわば引受停止国あるいはリスケジュールに関係のない交渉相手国、あるいはその債務相手国政府に肩がわりされたり、国情の著しい変化等において、今後とも政府機関等を通じて債権回収の促進に努めることが大事だと思うのです。これは輸出保険審議と重大な関連があるわけでありますけれども、この点についてはいかがでしょうか。
  242. 杉山弘

    杉山政府委員 確かに先生のおっしゃいますように、政府レベルにおきます債権の回収努力の強化ということが必要でございますし、私ども保険会計の立場で申しましても、債権回収が進みますと、それだけ保険金支払いをした部分について回収額がふえてまいります。まあ収入がふえるわけでございますね。保険会計にとりましても好ましい状況になるわけでございますので、今後は、その面におきます努力を今まで以上に一段と強化をしてまいりたいというふうに考えます。
  243. 木内良明

    ○木内委員 特に中小企業に問題を絞って申し上げれば、債権回収が不可能になった場合の収拾策の問題、債権の回収を具体的にどういう手だてでやるかということが問題になってくるわけであります。  形としては、通産省にこの訴えが仮に国内の中小企業業者から出るとしますと、通産省は外務省を通じて、現地の外交官を通じ相手国の政府との話し合いに入っていく、そうして側面的にこれをフォローアップするということが実は望ましいわけでありますけれども、なかなか開発途上国等におきましてはそれほどのスタッフもおらない。特に、いわゆる商務官、商務担当外交官ですか、コマーシャルアタッシェと目される人がいる国と派遣されていない国とがあるわけであります。  しかし、一般的には派遣され得ないような国でこういうトラブルが実は起こるわけでございまして、後ほど触れるところでありますけれども、また、こういうリスクの多い国ほど中小企業にとっての事業面での収益率が高いわけでありまして、こういうトラブルケースというものがふえてくるわけです。そうした点から考えまして、我が国の通産省それから外務省、加えて現地の公館、さらにこの先の、今度は相手国の政府との交渉、こういう一つの水脈といいますか、話の筋道というのが確立されなくてはならない、こういうふうに思うのです。  そこでお聞きします。外務省と通産省との、債権回収を初めとするこうしたケースにおけるトラブルの収拾策を協議する場が正式にあるのかないのか、まずお聞きします。
  244. 前田典彦

    ○前田(典)政府委員 その不払いのケースは大きく分けて、先ほどお話のありましたような、相手国のバイヤーは非常にしっかりしているけれども国が払わない、こういう場合と、それから、相手国のバイヤーが払わないという場合があり、前者を非常危険、後者を信用危険と申しますが、前者の場合につきましては、パリクラブに日本政府代表を送ります場合に、外務省、大蔵省、通産省、三者が集まりまして、そして対処方針会議というのをつくるわけでございます。それは、確かにパリクラブごとに対処方針会議をやるわけでございますが、やるメンバーはいつも決まっておりまして、常時顔を合わせておる、あるいは電話ですぐ連絡をとる、こういうことでございますので、そういう意味では連絡体制があると申してもよろしいのではないかと思います。
  245. 木内良明

    ○木内委員 今それなりの御答弁はいただきましたけれども、いわゆるパリ会議へのプロセスの中で打ち合わせをされる、これは当然ですよ。私が申し上げているのは、開発途上国における相手企業とのトラブルがあった際に、駆け込み寺と言っては言葉が悪いですけれども、我が国の国内業者が通産省に訴えてくる。訴える機構があるかどうかはまた別問題としまして、苦情を申し入れた。そのときに外務省を通じて現地とのトラブルを解決するための基本的なパターンというのができているのかどうか、これをお聞きしているわけです。それは違うのです。
  246. 前田典彦

    ○前田(典)政府委員 どうも申しわけございません。初めの半分だけお答えしてあれでございましたけれども、そういう先ほどのお話と違って、相手国の政府でなしに相手側の企業が払ってこないというような点につきましては、やはりそういう問題が起きるというよりも、起きる前に未然に防止するというような観点で、ジェトロから中小企業に対しましては貿易実務相談事業あるいは貿易実務研修事業というようなことをやっております。それからまた、これは有料にはなりますが、中小企業者からの依頼によりまして外国業者の信用調査を実施しておる、こういうことでございます。  ただ、現実にそういうトラブルが発生した後、制度的に公館を通じてやる仕組みができているかどうかと申し上げますと、どうも仕組みとしてはできておりませんが、ジェトロが個別案件につきまして回答、督促というようなサービスをジェトロの在外施設を通じてできるだけやっておるということでございます。
  247. 木内良明

    ○木内委員 実態としてはそうした機構ができていないわけであります。確かに相談事業あるいはまた信用調査等の側面的なサポートはされるわけですけれども、今答弁があったように機構ができていない。ぜひともこれは今後の大きな課題として検討いただいて、人員、予算その他いろいろ隘路はあろうかと思いますけれども、そういう個別の相談に対する解決策あるいは具体的ないわゆるヘルプができるような状態にまで機構ができるように御検討願いたい、こういうふうに思います。大臣、一言だけおっしゃっていただけませんか、検討されるかどうか。私は一歩でも前進させたい。
  248. 小此木彦三郎

    小此木国務大臣 トラブルが起きることを未然に防ぐためにジェトロの活動が必要である。トラブルが起きてしばらくたってこれを何とか解決するためにパリ会議がある。委員がおっしゃるのは、トラブルが起きたら直ちに駆け込み寺のようなものが必要であるということだと思います。とすれば、やはりそれは現地の在外公館の中に何らかの処置するものがなければならない。それが機構が小さいためにできないと言われればそれまでのことでございますけれども、しかし、これは考える余地が大いにあると私は思います。
  249. 木内良明

    ○木内委員 今大臣から私は大変重要な御答弁をいただいたと内心大変満足しております。貿易局長大分首を横に振っておられますけれども、限られたスタッフと予算の中で在外公館にそうしたシステムがあるいはできていいのじゃないかという余地がある、検討の余地ありというふうに御答弁ありましたので、ぜひとも御検討願いたい。大臣の大変前向きな答弁に私は感謝いたします。  次に、与えられた時間が大分少ないもので積み残しが心配でありますが、時間の関係で二月二十七日の日本経済新聞の報道についてお聞きします。  これは聞くところによりますと、こうした細密な国名を挙げての資料発表は通産省当局はなさっておられなかったそうでございます。しかしながら、大手商社あるいは信用調査機関等のいわばデータの集積に基づいて、恐らくマスコミ関係の方がこの記事をつくられたというふうに判断するわけであります。  実はこういうケースがありました。「カントリーリスク政府指針」というサブタイトルがあって「輸出保険停止は二十五カ国」である。これが何グループかに分かれておりまして「引き受け停止国」、これが一つ。この中には「リスケジュール実施国」として列記されている国あるいは「リスケジュール申請国」、さらに「その他停止国」として明確に実は五カ国の名前が出ているわけでありまして、たまたま私のところに相談に見えた業者の方が、この「その他停止国」の国との取引をしたいわけだけれども停止になっている、保険が閉じられておる、ですからこれはやむなくリスクを覚悟の上で、相当の犠牲を覚悟の上で取引を開始したという例が実はあるのです。  ところが、私はこの新聞記事に基づいて、そういう特例がないものだろうかということで実は調べてみましたら、これは銀行名を申し上げませんけれども、ある銀行の部内秘の資料としてちょうだいした資料が当時出てきました。「手形支払人国または地域名SRベトナム」と書いてある。この資料は企業名でございますとか銀行名等については一応墨で消してあります。しかし、よくよく調べてみますと、LCつきの取引について承認申請書が出されれば、通産省の方では銀行と相手国バイヤー等の資格の条件、こうしたものを勘案してお出しになることもあるという事実があったわけでありまして、そんなことありませんよと私は相談に見えた業者の方に申し上げたのです。ところが、その相談に見えた方というのは大企業じゃありませんから、そういう事前の情報というものが入ってこない立場にあるわけであります。そうした方がたまたまこの記事を見て、これから取引をしようという相手国は保険が閉じている、できない、こういうような判断をされて、申し上げたような取引に入ってしまったというケースがあるわけです。  まず一つは、そういう内規、運営の基準あるいはこの停止国等を初めとする国別のリストアップ等を公表されていない面が一点ございますし、それから、同時に問題になりますのは、この保険引き受けをしてもらう手続をするまで、中小業者の方というのはこういう情報が入らないという事例があります。私は今回のこの輸出保険法審議するに当たって、大変お忙しいところ申しわけありませんでしたけれども通産省の五階でしょうか、輸出保険課の窓口へも行ってみました。そこで各課長の皆様にいろいろお知恵もいただいたり、保険法改正に対する資料等をいただきました。あのざわざわした窓口で大変活気がある、通産省の方一生懸命やっておられましたけれども、いろいろ調べてみますと、中小企業の業者の方々は、これから取引をしようというときに、あの窓口に行って、この国のこの業者とやりますけれども保険引き受けてくれますかと、そこで聞いて初めていいとか悪いとか言われる始末なんです。事前にそういうマニュアルといいますか、この国は大丈夫あるいはこの国は一般的にだめだけれども、この国のこの企業については大丈夫なんだ、あるいはLCをこの企業についてはこの銀行が出しているから大丈夫なんだという一定のガイドラインといいますか、そういうものがないために非常に危険な思いをして取引に入らざるを得ないという実態があるわけです。この点についてはどうでしょうか、大臣。まずわかりやすく申し上げました。     〔委員長退席、渡辺(秀)委員長代理着席〕
  250. 杉山弘

    杉山政府委員 確かに、私ども国別の保険引き受けにつきまして制限をしております場合に、その制限内容につきましては、その国の国際的な信用の問題もあるものでございますから公表をいたしておりません。これが従来の慣例でございます。ただ、そのために、今御指摘のように一般の方々は実際に窓口に行って具体的な話をしないとわからない。特に中小企業の方々にとってはそれは非常な御不便という先生の御指摘も十分わかります。この点はどこまでどういうふうにできるかということにつきましては、今直ちにこうするということを御答弁できませんけれども手形保険の場合でございますと、これは実際の引き受けが銀行になるものでございますから、銀行にはそういうことを通知をいたしておりますので、あるいは直接役所にまでおいでいただかなくても、銀行にお問い合わせをいただければ、その点は情報が得られるという点もございますけれども、もう少し何とかならないものか、これはぜひ勉強さしていただきたいと思います。
  251. 木内良明

    ○木内委員 事前の段階で、調査能力を持たない中小企業がいかに情報を事前に得るかということが実は問題なんでありまして、例えば大企業の場合でございますと、在外公館のコマーシャルアタッシェ等と頻繁な日常的な接触がありますから、恐らくは事前に正確な情報が得られるのです。例えば、開発途上国等におきまして、年次計画によって取引をする場合があるのです。例えば、通信施設を設置するというような取引の場合、初めの百キロを一年間でやる、この契約が切れるのです。ところが、次年度におきましてさらに新たな契約に基づいて、前年度からのいわゆる延長上の附帯設備の工事が始まるのです。こういう具体的な契約の新たな契約の段階で、こういう情報がないために非常に危険な状態に陥っていく企業もありますし、同時に、危険であることがわかっていても、これまでの経緯を勘案しますと、そこで契約を破棄するわけにいかない、破棄してしまうと、結局相手国あるいは企業との間の契約による違約金を払わされてしまう、こういう例もあるのです。ですから、情報というものは、もう正確な情報を取引を検討する段階から中小企業者に提供できるようなシステムを具体的に検討願いたい、こういうふうに思います。     〔渡辺(秀)委員長代理退席委員長着席〕  もう一度、その点何か具体的な方法があれば、それは銀行等に行って事前に聞けばなんてことじゃいかぬと思うのですよ。もうきょう時間がないから言えないから私申し上げませんけれども、そんな余裕がないのです。とにかく書類をつくるのに精いっぱい、窓口に行った、だめでした、じゃうちへ帰ってまたいろいろ社内で相談して、持っていってまただめ、何回も行っちゃだめになって、相当苦労されているのが中小企業の実態なんです。大手はいいですよ、この際、情報網があるのだから。どうですか。
  252. 杉山弘

    杉山政府委員 まことに申しわけございませんが、この場において具体的にどうするということを今直ちにお答えはできませんが、公表することによります相手国との問題を踏まえた上で、どこまでやれるかということにつきましては、ぜひ勉強さしていただきたいと思います。
  253. 木内良明

    ○木内委員 残念ながら時間が参りました。  それでは最後に、輸出保険法のいわゆるてん補率の問題でありますけれども、以内という問題、私はある面で申し上げれば、これまでのように、オール・オア・ナッシングという考え方であったものが、以内の範囲内でかなり弾力的に運用されてしかるべきであると思うのです。しかし、この以内というのも〇・一から上限まで相当幅があるわけであります。逆に言えば、これまでリスクが多いために保険引き受けてもらえなかった取引のケース、こういうケースの場合でも、このたびの弾力的な領域の拡大によって保険引き受けが可能になるというふうに私は考えるわけです。そのときに一定の基準というものがあってしかるべきじゃないか。例えば三〇%くらいのてん補があるのか、余り意味がないんじゃないか。七〇%、この程度ならいいんじゃないかとか、六〇%であるとか五〇%であるとか、一応のめどというものを立てられていると思うのです。  これは時間の関係で申し上げる部分は相当はしょっちゃいましたけれども、その基準が何%というものがあるならば、ぜひ御提示いただいて、質問を終わりたいと思います。提示していただきたい、私はよくそれは聞いておりますから。
  254. 杉山弘

    杉山政府委員 手形保険につきましては、今回の制度改正によりまして、てん補率引き下げを可能にしていただくようにお願いをしておるわけでございますが、従来の例で申しますと、代金保険につきましては、九五%といいますてん補率を七〇%まで引き下げて、保険の付保の申し込みに応じたケースがございます。手形保険につきましては、現在八〇%、今回の引き上げで八二・五%でございますが、代金保険の場合の九五が七〇になった。そういう比率で考えますと、八二・五%というのが六割くらいのてん補率までは、従来の代金保険とのアナロジーでいきますと、引き下げて弾力的運用が可能ではないかということを、今頭の中に置いておるわけでございます。
  255. 木内良明

    ○木内委員 質問を終わります。
  256. 梶山静六

    ○梶山委員長 小沢和秋君。
  257. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 まずお尋ねしたいのは、先ほどから中小企業輸出ということがいろいろ議論されております。私も中小企業輸出を大いに振興しなければならないと思いますけれども、実際には輸出の中で占める中小企業の割合というのは、かなり小さなものなんじゃないかというふうに思うのですよ。先ほどからいろいろ議論になっているその数字というのは、いわゆる中小企業基本法などで言われている中小企業、つまり資本金一億円以下というような概念とはちょっと違った中小企業という概念をつくって、それで議論をしているために、常識的に我々が考える中小企業輸出のウエートから見ると、大分違った話が議論されているような気がするのですが、その点はどうでしょうか。
  258. 中澤忠義

    ○中澤政府委員 輸出の統計上、中小企業中小企業以外のいわゆる大企業との輸出者別を分類いたしました統計というものは、遺憾ながら直接にはございません。それで、先ほど来私ども申し上げております統計の根拠は、先生が今御指摘になりました中小企業基本法によります中小企業の定義にかかわります。その出荷額、基本法によります厳密な中小企業の出荷額のウエートが七割以上を占めておるものをいわゆる中小企業性製品、これは繊維でございますとか雑貨でございますとか、恐らくそういうものでございますが、そういう中小企業性製品輸出額をとりましてはじいてみますと、金額で申しまして五兆二千億円、我が国輸出額の一五・二%になるわけでございます。  ただ、これ以外にも大企業性製品あるいは大企業と中小企業がともに大きな生産をしておりますいわゆる共存製品等々の中小企業輸出に占める金額を推定いたしまして、直接輸出及び間接輸出を総合いたしますと、四〇%程度輸出の中における中小企業によるものではないかというふうな数字になるわけでございます。したがいまして、一億円未満という意味におきましては、統計上別にそれを範囲を広げておるということではございません。
  259. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 今、金額としては示されましたけれども、我が国の輸出全体の中で、今あなたが言われた中小企業性製品で結構ですけれども、比重がどういうふうに変化してきたか、ここ十年くらいの間の数字を端的にどう変化したということでお示し願いたいと思います。
  260. 中澤忠義

    ○中澤政府委員 中小企業性製品のシェアと申しますかウエートの趨勢でございますが、最近の方から申しますと、五十七年が一五・三%、先ほどの数字でございますけれども、非常にフラクチュエートがございますけれども、例えば五十年でございますと一七・六、以下年を追いまして一七・三、一七・五、一七・〇、一六・六、一六・六、一五・六、これは五十年以降の年別のシェアでございますけれども、約一五から一七%というものが中小企業性製品のシェアであるということでございます。
  261. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 昭和四十五年に中小企業性製品が二六・七%を占めておったということから見れば、この五十七年の一五・三%というのは、この十年ぐらいの間に一〇%以上中小企業のウエートが輸出の面では下がってきているということじゃないかと思うのですね。だから、逆に言えば、これは大企業が輸出で占めるウエートがそれだけ高くなってきた、この輸出保険というものも、建前としてはそれは企業の規模の大きさなどとは関係のない制度だとは言うけれども、これはより大企業の方がそれだけ現実に恩恵を受ける制度に中身としてなってきつつあるということが、この数字からも言えるのじゃないかと私は思うのです。  実際、中小企業輸出保険利用率というのはどれぐらいのものか、それもお示しいただきたいと思います。
  262. 前田典彦

    ○前田(典)政府委員 統計の関係で、最初はこの基本法の中小企業ではございませんで、中小規模の業者、つまり製造業で申し上げますと資本金十億円以下、商業は三億円以下、そういう事業者の数でお答え申し上げますと、普通輸出保険につきましては、引受件数で全体のそういう中小規模の事業者の割合は約二二%、保険金額で七%でございます。同じように続きまして、輸出代金保険では、引受件数で四%、保険金額で五%、輸出手形保険につきましては、引受件数で約五五%、保険金額で三三%、それから海外投資保険につきましては、引受件数で約一八%、保険金額では二%ということになっております。これらを合わせまして、全体では、引受件数で約二八%、保険金額で七%ということになっております。  ただ、手形保険につきましては、特に資本金一億円未満、商業では三千万円未満というものが数字がとれますので、その事業者の利用状況というのを調査いたしましたところ、五十七年度は引受件数で約三四%、引受金額では約一九%となっております。これに当省で行っております貿易業態統計調査というもので、同じように我が国の貿易業者の輸出額合計に占めるこういう資本金一億円未満の貿易業者の輸出額の割合というようなものを計算いたしますと五%になるわけでございまして、そういう意味では、五%のところが件数で三四%、金額で一九%を使っておるということでございますので、そこら辺から、輸出保険の利用状況というのは、手形保険に見る限りでは相対的に言って中小企業のお役に立っているのではなかろうかと思います。
  263. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 中小企業の比重が小さくなってきたということと逆に、大企業の輸出の中で占めるウエートというのはますます大きくなり、そして大企業の輸出依存度も年ごとに大きくなっていると思います。  この点で端的なお尋ねですが、我が国の資本金十億円以上があなた方も大企業というふうに見ているわけですが、最近十年間にその輸出依存度がどう変わってきたか。一つの参考として輸出ランキングの上位三十社ぐらいで切った場合、我が国の輸出総額の何%ぐらいをこれらの大企業が占めるような状況になってきているか、これもわかればお答えをいただきたいと思います。
  264. 前田典彦

    ○前田(典)政府委員 その上位三十社というようなとり方をしておりませんので、日銀が行っております各業種につきまして、おおむね当該業種の動向を反映するに足りると認められる程度の社数を選定いたしまして、トータルといたしますと調査対象が五百社余りになるわけでございますが、ここで出た数字でお答えさせていただきますと、これはおおむね十億円以上になるわけでございますが、これで先ほど先生質問輸出依存度につきまして、十年間というお話でございますので四十八年から申し上げますと、確かに四十八年、四十九年と一五・二、一九・六と低いわけでございますが、五十年代に入りまして二〇・三、二〇・六、二一・六、二一・〇、一九・九、二一・五、五十六年が二三・八、五十七年が二四・二、五十八年が二三・九、こういう数字になっております。
  265. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 今挙げていただいても、だんだん年を追って高まる傾向があるということははっきり言えると思うのです。  私がさっき参考のため、我が国の輸出ランキング上位三十社でどれくらいになるかというお尋ねをしたのですが、私の方が資料として持っております月刊雑誌「プレジデント」が出した数字ですけれども、上位三十社で我が国の輸出総額の四八・五%というから、わずか三十社で日本の輸出全体の半分を占めているということになるわけです。そうすると、この輸出保険を利用しているその中でのウエートというのが、いかにごく一部の大企業に圧倒的にウエートがあるかということがはっきり言えるのではないかと思うのです。  私はさっきから、中小企業輸出は大いに振興してもらわなければならぬというふうに言っているわけですけれども、この輸出の振興のために輸出保険を改めるというと、中小企業に何か非常に大きなはね返りが出てくるような感じで議論がちょっと出ていたように思いますけれども、実際には今申し上げたように、これはますます大企業の問題になっておるということを私はまず指摘をしたいと思うのです。  次に、今回の法改正の具体的な中身について若干お尋ねをしたいと思いますけれども、私は今の輸出保険制度というのは、企業にとっては今の制度でも十分な制度ではないかと思うのです。いわばそれをさらに十二分にする、過保護にする制度ではないかと思うのです。三年前も法改正で付保率あるいはてん補率を九〇%から九五%に引き上げたばかりなのに、今回また九七・五%に、これは非常危険の場合に限定をしておるようでありますけれども、引き上げた。私は今言うように、これはちょっと過保護に過ぎる法改正ではないかというふうに考えるけれども、なぜこういう措置をとらなければならなかったのかということをお尋ねしたいと思います。
  266. 小此木彦三郎

    小此木国務大臣 何か小沢委員に褒められているような気がしないでもないのですが、我が国の輸出保険制度が、国際的に見まして、その事業の内容や効率的な運営の面におきましてかなり充実していることは事実でございます。しかしながら、今回の改正事項であるてん補率等については国際水準を下回っていることもまた事実でございます。カントリーリスク増大をしている状況下で、このてん補率を引き上げることなどによりまして、この制度の一層の充実を図っていくことが政府といたしまして非常に肝要なことであると考えます。
  267. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 今よその国、つまり重立った国々が一〇〇%補償、いわゆるてん補率になっておるという点から見て、むしろ我が国が劣っているというような話をされましたけれども、全体としてこれを評価しなければいけないと思うのですね。全体として見るならば、我が国の輸出保険というのはむしろ最高の内容を持っているのではないかと思うのです。まずひとつその証明のためにお尋ねをしたい数字は、輸出総額に占める保険分の割合ですね。これが我が国ではどうか、他国ではどうかということを挙げていただきたいと思うのです。
  268. 前田典彦

    ○前田(典)政府委員 輸出保険がかかっている輸出輸出総額の中でどれくらいあるかという、その数字につきましては、先ほど局長がお答えしたとおり四割近い数字が日本の数字でございます。ただこれは保険の種類がいろいろございまして、中にはダブってかかるというようなケースもございますので、それほど厳密な数字ではございません。そういう意味においては、国際的な比較というのもそんな厳密なものではないということで御理解いただきたいと思いますが、イギリスとフランスにつきましては、大体三割から四割の間を年々動いております。他方、アメリカとか西ドイツとかいう一けたの国もございます。  ただ、この数字は、例えば日本では輸出組合単位の包括保険制度というのがございまして、これはリスクの低いアメリカ向けの輸出とかというところを、組合単位で見ますとやや共済的な感覚を持ちまして、薄めて広く受けるということの結果この数字ができておるわけでございまして、この数字が大きいから、この比率が高いからということで必ずしも保険が手厚いかどうかという数字には直接にはならないかと思います。
  269. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 そういう弁明までつけてもらわぬでもいいですけれども、通産ジャーナル、これは通産省の本でしょう、一九八三年二月の中に載っている数字でいうと、日本が三九%、イギリス三二、フランス三一、西ドイツとアメリカが八%ずつ、こういうことになっているわけですね。日本が一番いいのです。  もう一つお尋ねしますが、この引受総額に対する保険料の割合、これもまた日本がずば抜けて低いように思いますけれども、その数字はどうなっておりましょうか。
  270. 前田典彦

    ○前田(典)政府委員 保険料率についてのお尋ねにお答えいたします。  保険料率が国際的に高いか低いかということは、これまた非常に比較が難しいわけでございまして、保険の種別あるいは先ほど申し上げました個別であるか包括であるか、あるいは取引の形態、相手先というようなことによっていろいろと異なってまいりますので、なかなか比較のための数字がございません。したがいまして、先生がごらんいただいたような全体として見る場合には、保険料収入を引受保険金額で割ってみる、こういう数字を出してみるというのが一つの比較の方法であるわけでございまして、これを五十七年度について計算をしてみますとO・二八%になります。これは国際的に見れば、先ほど申し上げましたような包括保険制度というのが日本に特異な制度である、広くしてお互いに薄めていこうということでございますので、日本が非常に低くなって出てくるわけでございます。  ただ、先生ごらんいただいた数字というのは、五十八年度の四月からの保険料収入を四〇%程度増収を見込んだ引き上げを行った以前の数字でございます。先ほど申し上げました〇・二八という数字も、この保険料引き上げの効果が一〇〇%はまだあらわれていない。というのは、経過措置等もございますので、まだあらわれていない数字でございまして、現実にはもう少し高くなろうかと思います。
  271. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 いろいろ言われるけれども、これはあなた方が輸出保険課桐山正敏という名前で書いてある中に載っている資料ですからね。  それで、輸出に占める保険分の割合が三九%で日本がトップ、そして引受保険総額に対する保険料のパーセントが〇・一九、その後四割ほど引き上げられたというから、これは〇・二八。それはそれでいいでしょう。それで、〇・二八といっても、日本に次いで低いのはイギリスですが、これは〇・八七ということになっているわけで、この二つの指標から見ても、日本が保険の面で最も充実をしておるということは否定できないのじゃないですか。  これは何も私が言っているのじゃないですよ。財界の方もそう言っておるのですよ。経団連月報という経団連の機関誌ですよ。八一年の一一月に、その中で松尾という丸紅の会長さんが、この輸出保険制度は十分な制度だと言っているのです。ちょっと読んでみますよ。「日本の通産省輸出保険制度は、制度的に十分であると考えられます。しかし、これの運用となると、いろいろ問題があり、あまりにも慎重すぎるという面があります。」なんて言っていますけれども制度としては十分だと言っているのです。  それどころか、日興リサーチセンター顧問の渡辺さんという方はこうまで言っているのですよ。「日本では、制度的によく整備されているが故に、それに頼りすぎて、カントリーリスクに対して各事業体自らが測定を行なうとか、自社の体質にフィットしたリスク評価方法を開発する意欲がそがれているとも言える。」余り過保護になっているから、自分の頭で一生懸命リスクやらを心配するような体質になっておらないと財界の人が機関誌の中で言っているのですよ。  あなた方さっきからいろいろ弁明してやっているけれども、財界の人がこう言っているのですよ。その上、今度は経団連週報というのを読んでみると、まだあなた方に対していろいろ注文しているのですね。ことしの三月一日に出された経団連週報には、輸出保険問題について経団連の経済協力委員会や海外大規模プロジェクト懇談会と杉山貿易局長とが懇談をしたという記事が載っております。ここにはいろいろ注文が出ておりますよね。例えばリスクの高い国に対して保険を適用してもらってこそ保険じゃないかというようなことを盛んに言って、弾力的な運用をせよというふうに言っている。局長は何と言っているかというと、「引受け制限の緩和については、不足資金の借入れとそれに必要な法改正の目途がついた段階で本格的に検討したい。」と言って、これだけ制度が充実している、大体過保護になっていると財界の方が自分の内部では言っておるものについて、まだこう言っているのだが、あなた方はそれについてもできるだけひとつこたえてやりたいという姿勢なんですね。これはもう十二分過ぎるんじゃないですか。局長、これはちょっといかぬのじゃないですか。
  272. 杉山弘

    杉山政府委員 まず、日本の輸出保険制度の評価についてでございますが、大臣からも申し上げましたように、全体として我が国の保険制度というのはかなり充実しているということは申し上げたわけでございます。  ただ、いろいろ具体的にお話がございました中で、例えばてん補率につきましては、これは先生も諸外国では一〇〇%見ているところがあるということはお認めをいただいているわけでございますし、保険料率が低いじゃないかということも御指摘がございましたが、これは何も政府が補助をしているわけではございませんで、この低い料率で収支相償の原則でこれまでのところずっと採算がとれてきているわけでございます。そういう意味で、非常に効率的な運用がされているというわけでございます。政府がもし補助でもして保険料率を下げているということになりますと問題でございますけれども、そうでないわけでございまして、今回の改正は主としててん補率の引き上げの点についてお願いをしているわけでございますので、この点につきましては、国際的な水準から見て我が国の保険制度が今回の改正でより過保護になるということは言えないのではなかろうかと思います。  さらに財界からは今後の保険の弾力的運用についていろいろ要望が出たというお話でございまして、私も現にその会議には出ておりましたので、むしろ非常に厳しい注文が出たわけでございます。この点につきましては別に大企業だけではございませんで、やはり中小企業の方でもカントリーリスクの点から、引受停止とか極めて厳しく制限するとかいうことについてはやはり何とかならないかという声があるのも事実でございます。私ども、やみくもに弾力的運用と申し上げているわけではございませんで、やはり保険の基本原則でございます収支相償の原則の許す範囲内において、できるだけ保険契約者の御要望には応じていきたいということを申し上げているわけでございまして、この点につきましては、先ほどお読み上げいただきましたところにもありますように、当面はまず今回の改正をお願いをし、保険金支払いが円滑にできるような措置をしました上で考えさせていただきたいということでございまして、これはこれから考えていく問題でございます。
  273. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 今いわゆる収支相償の原則ですか、言われました。私も保険というのは長期的に見てそういうバランスを保っていくべきものだろうと思うわけです。それで、そういう立場からも私は、むしろ今のこのいわゆる債務が国際的に非常に後進国の中で累積をしてきておるというような状況の危険性やらを考えたら、引き上げなければならない時期に来ておるのではないかと思うのですよ。  これは三月十七日の日経新聞記事なんですが、政府が特別会計をやっている保険制度というのが幾つかあるのですけれども、その中の自賠責の再保険特別会計などは五十九年度までは黒字が見込まれているけれども、六十年に赤字転落するであろうと言われている。そうしたらもう早速その六十年度には自賠責の保険料を二、三〇%引き上げる方向で検討しているというのです。それから農業共済再保険特別会計、これについても五十五年度以降の冷害の結果再保険金支払いが急増しているというので、これも赤字がらみになってきたというので、六十年度からは最近の実績を織り込んで再計算して保険料率を引き上げる。こっちの方はもうすぐぱっと引き上げるのですよ。そうしたらこの輸出保険についても長期的なバランスということも見通した場合もう上げざるを得ない状況に今現になってきておるんじゃないかと私は思うのですが、どうお考えですか。
  274. 杉山弘

    杉山政府委員 単年度輸出保険の収支で考えますと、既に数年前からマイナスになっております。ただ、この原因を眺めてみますと、先ほど来御説明いたしておりますように、債務累積国支払いが困難になった国に対します債務繰り延べに応じて保険金のお支払いをしている部分が大半でございます。通常の損害保険の場合でございますと、今、先生お挙げになりました自賠責とか農業の保険の場合には、損害が生じまして保険金をお支払いをしますと、後で保険としてはほぼもう回収の見込みがないわけでございますが、債務繰り延べによります保険金支払いの場合には、国と国との約束によりまして、一定の期間たちましたら、その債権は支払ってくるわけでございます。相手国が払ってまいりましたら、これは保険会計としましては回収金ということで回収が可能なものでございます。こういった点につきましては、例えば企業会計で考えてみますと、一方で借り入れをしなければなりませんが、他方ではそれに見合う債権を取得をしておる、こういう状態にあるわけでございまして、中長期的に見まして、今のところ輸出保険特別会計といたしましては、収支が相償わない状態になっているというふうには考えられないわけでございます。いわば当面の資金繰りとして借り入れはいたしますが、中長期的には収支採算は依然としてとれているというふうに私どもは判断いたしております。  ただ問題は、債務繰り延べの時期になって、そのとおりもし全額ないしは相当部分が入ってこないということになりますと、そのときには今私が御説明しましたような事態とは違ってまいりますので、その際には保険料の引き上げを含めた基本的な収支改善策というものを考えなければいけないと思いますが、繰り返すようでございますが、国と国との約束でございますし、過去の実績を踏まえてみましても、八割以上はちゃんとスケジュールどおりには返ってきておりますので、そういう意味から申しますと、当面保険料率の引き上げということにまでは至らなくてよろしいのではないかというふうに考えておる次第でございます。
  275. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 今、国と国との約束だからそれは果たされるだろう、確かに国である限り破産とかいうようなことは理屈の上ではないと思うのです。しかし、払わぬというふうに主権国家である相手が言い出したら、これもまた強制執行とかもできないということも事実なんだと思うのですよ。だから具体的な今後の見通しというのも、そういう点で立てていかなければならないと私は思うのですけれども、さしあたってはリスケをやる、そうするというと、こっちも納得ずくで延ばすということにはなるから、だから将来は取れるだろうという期待をしているということにはなると思うのですけれども、ここ数年の間にもそういうことでリスケジュールをこっちが認めて繰り延べていくということになると、どんどん借入金が積もってくるという形で悪化してくるということは、これはまず言えると思うのですね。  具体的にその辺をはっきりさせていただくために、我が国が既にリスケを十五カ国ほど認めているというふうにこれは伺っておりますけれども、さて全体としてどれくらいリスケをやる、それを大体何年がかりで毎年どれくらいずつ借り入れたりして操作をやらなければならないような金額になるか。それからまた今後、さらに今申請をしている国もあるでしょう、だから、そういうような国についても同じように見通しを立ててみた場合、それにまた上積みをしていかなければならない、中期的というんだから、あなた方もさっき七、八年は返ってこないことになるでしょうというお話だったけれども、そうすると、大抵ここのところではたばたっと発生しているから、現実に七、八年を単位にどういうふうな見通しをお持ちか、数字的にも今言ったような裏づけを含めてずばっと答えてみてください。
  276. 杉山弘

    杉山政府委員 この輸出保険の中長期的な収支採算を数字的に出しますのは、かなり多くの面におきまして仮定な力前提なりを置かないといけないわけでございます。現在まで我が国が債務繰り延べに応じている国は十五カ国あるわけでございますが、そのほかにも現在パリクラブの開催を要請している国が三カ国ございますし、さらにそのほかにもどのくらいの国が出てくるかという点での前提もまず置かなければいけません。それから、そういう国々が一回限りの債務繰り延べを希望するのか、さらに今後数年間にわたってデューの来る債務について繰り延べを要求するのか、その点についても仮定を置かなければいけません。  そういう幾つかの点について仮定を置いて計算をしなければならないわけでございますが、ここのところは現実にそうなるかという確信ではございませんが、例えば債務累積国につきましては、現在の十五カ国プラス三カ国、そのほかにまださらに数カ国出てくる。それから、そういう国々については一年ではなくて例えば今後三年間にわたってデューの来るものについて債務繰り延べを要請してくる可能性がある。それから、そういうものについては先ほど来お答えしておりますように、債務国から返済がありますのは七、八年先のことになる。こういうことについていろいろ前提を置いて考えてみますと、私どもの試算によりますと、五十九年度と六十年度が借入金がピークになる時期と考えておりまして、六十一年度になりますと、さらに借り入れをしなければなりませんが、その額はこの両年度に比べますとかなり低い額で済むのではなかろうかと思われます。  したがいまして、この三年度の間はまだ単年度保険収支ではマイナスを計上せざるを得ないわけでございますけれども、それ以降、六十二年度以降になりますと単年度保険収支は急速に改善に向かっていくという結果が得られておるわけでございます。したがいまして、先ほど来申し上げておりますように、中長期的に見ますと保険特別会計としては基本的な収支不均衡の状態に陥っているものではないということを申し上げたわけでございます。
  277. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 そんな抽象的な言い方では、これは私たちに説得的ではないと思うのですよ。もっと具体的な数字を示していただかなければ、ほかの方が聞かれてもあなた方の説明を一方的にうのみにする以外ないということになると思うのです。これについては、私の方はこの前から繰り返して具体的な数字を示してほしいと言っているのですよ。これは示せないのですか。
  278. 杉山弘

    杉山政府委員 この点につきましては先ほど御答弁しました中に申し上げておりますように、例えば今後どれだけの国が新たに債務繰り延べを申し出てくるか、それから何年間にわたって債務繰り延べを要求するかというあたりになりますと、私どもも確たる自信があるわけではございませんし、また、そういう国の数について例えばこういう国があるということを具体的に申し上げるというわけにもいきませんので、数字を提出することについては御容赦をいただきたいと思います。  ただ、繰り返すようでございますが、借入金はふえますが、それに応じたいわば債権を持つということになりますし、その債権については国と国との約束によって一定の期間経過後には必ず払ってくることになっておりますので、そういう意味におきまして、保険会計が今先生おっしゃるような意味での収支の著しい不均衡に陥っているということではないと理解しているわけでございます。
  279. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 しかし毎年相当額の保険料収入だけでは払うことができないような支払いが発生するわけでしょう。そうすると年ごとに借りかえていく、その分はどんどん積もっていくことになりましょう。そうしたら八四年度は二千七百七十五億程度ですけれども、これがそうやって累積していったら五千億、六千億というふうにどんどんなっていくわけじゃないのですか。そういうような膨大な何千億、我々は、今の程度でずっと支払いが進んでいくとなったら、ほんの数年で一兆というような単位になりかねないと思うのですけれども、そういうことになっていくような、そういう状態でも、いやそれはリスケでやがて返ってくるのだからということで、あなた方は全然危機とは見ないということなんでしょうか。
  280. 杉山弘

    杉山政府委員 先ほどお答えいたしましたように、五十九年度、六十年度に私どもが想定しておりますような事態がさらにその後もずっと引き続いて継続するということになりますと、先生指摘のようなことになりまして、借入金の額が際限なく増加をしていくことになるわけでございますが、私どもは、先ほど申し上げましたように、一定の極めて大胆な前提を置いての計算でございますけれども、借り入れにつきましては、六十一年度までの三年度で新規の借り入れをいたしましたら、六十二年度以降につきましては新規の借り入れをしなくても、借りかえだけしていけば済むというふうに考えておるわけでございますし、その間には、単に保険料の収入だけではございませんで、債務繰り延べをしましたものにつましても、一定の据置期間が過ぎましたら返済してくるわけでございますし、また頭金として入ってくる分もございますので、そういった回収金等も含めましたら、新規の借り入れをしなくても済ませることができると考えているわけでございます。
  281. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 もう一遍端的にお尋ねしますが、そうやって年ごとに足りない分をずっと積み重ねていって、やがてそれが返済できるようになっていくというあなたの方の見通しですね。そうすると、ピークのときの借金というのは大体どれぐらいになるという見通しなんですか、何千億ぐらい。
  282. 杉山弘

    杉山政府委員 何度も繰り返すようで恐縮でございますが、これは一定の前提を置いた上での計算になるわけでございますが、私どもが前提を置いた上で計算しておりますのをベースにして考えますと、六十一年度までの三年度間の借入金の合計額というのは三千億円まではならなくても済むのではないかと考えておるわけでございます。
  283. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 これは今後事態の推移を見守る以外にない話だと思いますけれども、ただ、先ほども言いましたように、国と国との約束であるから信用できるというふうな立場に立つ以外にないというお話ですけれども、いわゆる発展途上国累積債務が今後どうなっていくであろうかということについて、いろいろな予測がなされておりますけれども、ここ数年爆発的にふえてきたが、これからもさらにずっとふえていくという予測がなされているのじゃないですか。  私の手元に今ある資料ですが、「主要債務国十カ国の債務残高の将来予測」というのを見ましても、一九八三年が五千五百七十億ドル、これもフィリピンなんかを見ると二百二十五億ドルという予測になっているから、これも二百五十億近いということで、もう既に上回っているわけですが、これで見ても一九九〇年には八千二百二十億ドルというふうに相当にふえていくという予測なんですよ。だから、こういう予測が根拠のあるものだとすれば、リスケをまたやってくれというようなことになっていってしまいやせぬかということを私は大いに懸念するわけですけれども、その辺の見通しはどうお考えですか。
  284. 杉山弘

    杉山政府委員 私どもも、くまなく資料を調査しているわけではございませんが、先生おっしゃいますように発展途上国債務残高というのはこれからももちろん増加をするだろうとは思います。  ただ、一方におきましては、世界経済回復に伴いまして発展途上国からの輸出というものもふえていくわけでございまして、ある調査によりますと、むしろ発展途上国の今後の名目の輸出額の伸びは累積債務の伸び率を上回るというような調査もあるようでございまして、こういうことが事実ということになりますと、資金的なフローといたしましては、今よりは発展途上国にとって緩和をされるということになるかと思いますので、現時点のように資金フローの面で非常に苦労いたしまして債務支払い繰り延べ要請せざるを得ないという事態というのは、今後次第に緩和されていくということもあり得るのではないかというふうに考えられます。
  285. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 確かに、今そういう一部の債務国を見ると、貿易収支が黒字になっているというようなところもあるようです。しかし、それは国内を徹底的に締め上げて輸出をふやしていく、その中でむしろ国内で社会不安みたいな状態も起こっているような国も出ているわけではないですか。だから長期的に見て、今のような傾向がずっと続いていくであろうというような、あなた方の今のような見通しというのは、私は、今の現実の状況を見たとき、非常に楽観的に過ぎるのではないかと思うのです。その点について裏づける一つの材料じゃないかと私は思うのですが、これは貿易局長お尋ねした方がいいですかね、細見草さんというのはどういう方でしょう。
  286. 杉山弘

    杉山政府委員 かつて大蔵省に勤務をされていた方というふうに承知をいたしております。国際金融問題については非常に造詣の深い方と存じております。
  287. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 今何をやっているのですか。
  288. 杉山弘

    杉山政府委員 経済協力基金の総裁と存じます。
  289. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 まさにそのとおりで、恐らく日本でもこういう問題についての最高権威者の一人というふうに言っていい人でしょう。今あなたが言われたその経済協力基金が、自分自身もリスケの問題を抱えている組織ですからね。  そこで、この細見草さんという方がことしの年頭、一月四日の朝日新聞に登場をしてきているのです。「八四年経済を語る」という中で何と語っているか。「発展途上国累積債務問題はどうなりますか。」という質問に対して「これらの債務をまとめて返せるのは、戦争や石油危機でインフレが起き、世界経済が激変するときですよ。金利さえもらえれば、元本はどこまでも返済繰り延べていかざるをえないんではないですかねえ」細見さんはそう言っているのです。新聞記者に対してだから気楽な気持ちでしゃべられたのかもしれないけれども、ちゃんとそういう活字になっているのです。今のあなた方の見通しと細見さんの見通しは余りに違うのじゃないですか。細見さんの言っていることは間違っておりますか。あなた方のこの意見についての見解をずばっと言ってみてください。
  290. 杉山弘

    杉山政府委員 先ほども御答弁申し上げましたように、全体的には現在の危機的な状況というのは発展途上国にとりまして徐々に緩和されていくのではないかというふうに考えておりますが、その中で、それまでに累積しました債務の元本を非常に短い期間に返済をするということは、確かに困難なことであろうかと思われますけれども、先ほど来申し上げましたように、発展途上国にとりましての資金の流入というものは、今に比べればよりフェイバラブルな方向になっていくものと思いますので、債務累積問題について、払う外貨がないために債務繰り延べを要請するといった事態も、徐々にではありますけれども緩和をされていく、そういうふうに期待をしているわけでございます。
  291. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 あなたのその期待が満たされるか、それとも細見さんが言っておられるこっちの方が現実の見通しとして当たってくるか。それはこれからの事実によって証明していくことですけれども世界経済全体を眺めてみた場合には、やはり累積債務問題というのは発展途上国が簡単に乗り切れるような問題ではない。むしろさらに深刻化をしていく。したがって、リスケの続発はもちろん、再リスケといったようなことも起こってくると見なければならぬだろう。その点ではむしろ細見さんが言っておられることが現実的だというように私は考える。そのことを一言申し上げておきたい。  したがって、この特会を泥沼化させないためには、もともとが保険料は非常に安いわけですから、今の時期にこれを上げてでも長期的に安定をさせるような方向をとるということが賢明だということを私は申し上げておきたいと思うのです。それで、このリスケ程度のことで今の累積債務問題というのは私は解決はつかないと思うのです。やはりこれらの諸国の一次産品の不当な買いたたきをやめるとか、あるいはアメリカの高金利を大幅に引き下げるとか、さらにもっと大きくは、米ソが今やっている軍拡競争をやめて、そういうようなところにつき込んでいるような金を後進国の本格的な開発に使うとか、そういうような大きなスケールで考えていかなければ、私は根本的な解決はできないのではないかと思いますけれども、きょうはもう時間もありませんから、そういうような議論は控えておきたいと思うのです。  最後に、このリスケの問題に関連をして、フィリピンの政府借款の問題についてちょっと一、二点だけお尋ねをして終わりたいと思います。  このリスケを認めることとの裏腹の関係で、近く政府借款五百五十億円ほどというふうに言われておりますけれども、供与する意向というふうに言われております。そのうちで商品借款が三百五十億円もあるということは、私はこれは異常なことじゃないかと思うのです。発展途上国の中でも非常におくれた国々に対して商品借款というのは出されるというのが今までの常識だったと思いますし、フィリピンももう七八年でこれは打ち切りになっておったわけです。それを今度またこうやって再開する。しかも、それも三百五十億円というような大きな金額というのは、今まで例がないことじゃなかろうかと思うのです。そういう点一体どうなっているのか。この異常に大きな商品借款を供与する、その裏には、安倍外務大臣に言わせると、いや実務的に淡々と進めたらたまたまこういうことになってきたというお話だけれども、やはりマルコス政権に対するてこ入れを政治的にやろうということで非常に急いでおられる。しかも、それが商品借款という形でやられるということではないかというように私憂慮するわけですが、その点とういうお考えなのか、伺いたいと思います。
  292. 柴田益男

    柴田政府委員 現在のところ、フィリピンの援助を政府部内で検討しておりますが、これはただいま先生の御質問のような特定の政権を応援するというものではございません。友好国フィリピンの経済が困難に直面しておりまして、国民生活が危機に瀕しているという現状にかんがみまして、できるだけ早期に応分の協力を行うということで、関係政府部内で検討中であるわけでございます。
  293. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 しかし、このマルコス政権に対しては、あのアキノ氏の暗殺事件以来、これが権力犯罪ではないかというような重大な疑惑も今提起をされて、国内も非常に激動しているという状況でしょう。そういうような中で、マルコス政権に対して急いで今商品借款を供与するということは、私は、これはやはりマルコス政権をてこ入れすることにしか客観的にはならないのではないかと思うのです。大体、今までフィリピンに対しては相当膨大な有償、無償の援助などを行ってきたけれども、フィリピンの国内経済がああいうような状態で、我々が行った援助というのは、マルコス一族やら、あるいはそれを取り巻く新興財閥と言われるような連中にみんな吸収されてしまって、本当に国民に対して生きてきていないのではないかというような批判も非常に強いわけです。  だから私は、ただこの商品借款について慎重を期すべきだというだけでなく、この際、対外援助のあり方そのものについても根本的に考えてみなければならないということではないかと思うのですが、この点については大臣にひとつ所信を伺って、私の質問を終わりたいと思います。
  294. 小此木彦三郎

    小此木国務大臣 経済協力、経済援助に関しましては、フィリピンに対してのみならず開発途上国に対しまして、我が国の義務としてこれを行っているわけでございます。先ほども申し上げましたとおり、この考え方の基本は、開発途上国の経済開発あるいは民生の安定、福祉の向上等を通じて、経済社会の発展に寄与することでございまして、私どもは、この目的に即しまして一層の充実を図っていくという考え方でございます。
  295. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 終わります。
  296. 梶山静六

    ○梶山委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  297. 梶山静六

    ○梶山委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  輸出保険法及び輸出保険特別会計法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  298. 梶山静六

    ○梶山委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました本案の委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  299. 梶山静六

    ○梶山委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  300. 梶山静六

    ○梶山委員長 次に、内閣提出繊維工業構造改善臨時措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより趣旨の説明を聴取いたします。小此木通商産業大臣。     —————————————  繊維工業構造改善臨時措置法の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  301. 小此木彦三郎

    小此木国務大臣 繊維工業構造改善臨時措置法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。  繊維工業につきましては、現行繊維工業構造改善臨時措置法に基づきまして、昭和四十九年度から、その知識集約化を目指して、異業種間連携を軸とした商品開発力、技術開発力の強化等を内容とする構造改善事業を実施してまいりましたが、近年、消費者ニーズに対応した高付加価値品、差別化品を供給し得る体制が次第に形成されつつあるなど、我が国繊維工業にも新たな発展の可能性が芽生えてきております。  しかしながら、この間の我が国繊維工業をめぐる内外環境は、当初の予想を上回るまことに厳しいものとなっております。すなわち、昭和五十四年の本法律改正直後に発生した第二次石油危機に伴う景気の後退により、繊維工業は厳しい不況に見舞われ、多くの繊維事業者は、前向きの構造改善に取り組む余力を欠くという事態に立ち至りました。さらに、最近においては、発展途上国の追い上げが、これまでの価格競争力の面にとどまらず、我が国が優位を保っている非価格競争力の面でも強まってきております。また、国内においては、需要構造の高度化に伴い、供給面での多品種少量短サイクル化の急速な進展に対応していく必要が生じており、我が国の繊維工業は、新たな課題に対処しつつ、一層の構造改善を図っていくことが必要となっております。  これらの状況を踏まえ、繊維工業審議会及び産業構造審議会におきまして、今後の繊維工業及びその施策のあり方について慎重な審議が重ねられ、昨年十月、我が国の繊維工業は、今後とも非常に厳しい内外環境下に置かれることが予想されるが、繊維事業者が技術革新と創造性を軸に迅速かつ積極的な構造改善を進めることにより、先進国型産業として新たに発展していくことが十分可能であること、及び政府としても、構造改善の困難性、緊急性にかんがみ、繊維事業者の自主的努力を側面から支援するため、本法律を五年間延長し、その一層の促進を図るべきであることを主たる内容とする答申を得た次第であります。  政府といたしましては、この答申に沿って政策を進めるため、本法律案を提案することといたした次第であります。  次に、この法律案の要旨を御説明申し上げます。  第一は、この法律が廃止するものとされる期限につきまして、従来、本年六月三十日までとなっているものを、昭和六十四年六月三十日まで五年間延長することであります。  第二は、繊維工業の先進国型産業への転換のかぎを握る技術力の強化を図るため、繊維工業構造改善事業協会の業務につきまして、繊維事業者に対して技術指導を行う者の養成及び研修の業務並びに新技術の開発及び導入を促進するための調査研究及びその成果の普及の業務を追加することであります。  以上がこの法律案の提案理由及びその要旨であります。何とぞ慎重に御審議の上、御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  302. 梶山静六

    ○梶山委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。     —————————————
  303. 梶山静六

    ○梶山委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本案審査のため、明二十八日午前十時、参考人として名古屋大学経済学部教授瀧澤菊太郎君、日本綿スフ織物工業連合会会長池治一見君、日本ニット工業組合連合会理事長伊藤忠夫君、ゼンセン同盟常任中央執行委員野口敞也君及び日本繊維産業労働組合連合会中央執行委員長池田友次君の出席を求め、意見を聴取することといたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  304. 梶山静六

    ○梶山委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次回は、明二十八日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時三十七分散会      ————◇—————