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1984-10-31 第101回国会 衆議院 社会労働委員会 第33号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年十月三十一日(水曜日)     午前十時二分開議  出席委員   委員長 有馬 元治君    理事 愛知 和男君 理事 稲垣 実男君    理事 今井  勇君 理事 丹羽 雄哉君    理事 池端 清一君 理事 村山 富市君    理事 塩田  晋君       伊吹 文明君    古賀  誠君       自見庄三郎君    谷垣 禎一君       友納 武人君    中野 四郎君       長野 祐也君    野呂 昭彦君       浜田卓二郎君    藤本 孝雄君       箕輪  登君    網岡  雄君       河野  正君    多賀谷眞稔君       永井 孝信君    森井 忠良君       大橋 敏雄君    森本 晃司君       浦井  洋君    菅  直人君  出席国務大臣         労 働 大 臣 坂本三十次君  委員外出席者         総務庁人事局次         長       吉田 忠明君         大蔵省主計局給         与課長     竹島 一彦君         大蔵省主税局総         務課長     伊藤 博行君         労働大臣官房長 小粥 義朗君         労働大臣官房政         策調査部長   岡部 晃三君         労働省労政局長 谷口 隆志君         労働省労働基準         局長      寺園 成章君         労働省労働基準         局監督課長   菊地 好司君         労働省労働基準         局労災管理課長 新村浩一郎君         労働省職業安定         局長      加藤  孝君         日本国有鉄道総         裁       仁杉  巖君         日本国有鉄道常         務理事     坂田 浩一君         日本国有鉄道常         務理事     太田 知行君         日本国有鉄道職         員局長     長谷川 忍君         日本国有鉄道職         員局職員課長  葛西 敬之君         日本国有鉄道工         作局長     石井 幸孝君         社会労働委員会         調査室長    石黒 善一君     ————————————— 八月八日  一、医療法の一部を改正する法律案内閣提出   第六七号)  二、国民年金法等の一部を改正する法律案(内   閣提出第三六号)  三、児童扶養手当法の一部を改正する法律案   (内閣提出第四一号)  四、短時間労働者保護法案平石磨作太郎君外   四名提出衆法第五号)  五、短期労働者及び短時間労働者保護に関す   る法律案藤田高敏君外四名提出衆法第一   三号)  六、母子保健法の一部を改正する法律案平石   磨作太郎君外四名提出衆法第一六号)  七、児童福祉法の一部を改正する法律案平石   磨作太郎君外四名提出衆法第一七号)  八、国民年金法及び特別児童扶養手当等の支給   に関する法律の一部を改正する法律案(多賀   谷眞稔君外四名提出衆法第四四号)  九、厚生関係基本施策に関する件  一〇、労働関係基本施策に関する件  一一、社会保障制度医療公衆衛生社会福   祉及び人口問題に関する件  一二、労使関係労働基準及び雇用失業対策   に関する件 の閉会中審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  労働関係基本施策に関する件      ————◇—————
  2. 有馬元治

    有馬委員長 これより会議を開きます。  労働関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。永井孝信君。
  3. 永井孝信

    永井委員 まず労働大臣にお伺いいたしたいと思うのでありますが、最近新聞やテレビでも盛んに書かれておりますように、公務員に対する人勧の問題について大臣の考え方、所信を聞きたいと思うのであります。  既に御承知のように、ことしは仲裁裁定はもう実施をされることは決まっているわけですね。そしてことしの四月四日に、まだ仲裁裁定が出ていない段階で、昨年あるいは一昨年の例もありますので、政労交渉が行われておりますね。政府側からは坂本労働大臣、そして当時の中西総理府総務長官、さらには藤波官房長官、この三人の大臣労働団体によって仲裁裁定やあるいは人勧取り扱いについて四月四日に政労交渉がなされている。その政労交渉中身は三点明らかにされております。一つ目には「政府は、労働基本権制約代償措置である人事院勧告制度および仲裁裁定制度を維持尊重するとの基本姿勢を堅持する。」二つ目には「昭和五十九年度の人事院勧告および仲裁裁定が出された場合は、前項の基本姿勢に立って、完全実施に向け誠意をもって取り組む。」三つ目には「関係労働団体とは従来通り誠意をもって話し合う。」このことが労働団体との政労交渉の中で明らかにされているのであります。その後の経緯については、仲裁裁定は既に実施されることが決まり、今人勧をいよいよどう扱うかということが政府関係では最高の山場に来ていると承知しているのですが、政労交渉経過あるいは一昨年、昨年の経過から見て、労働大臣としてこの人勧をどのように扱われようとしているのか、労働行政を預かる立場から明確に所信をお聞きいたしたいと思います。
  4. 坂本三十次

    坂本国務大臣 今、ここへ駆けつけるまでそれを盛んにやっておったわけであります。けさも労働団体の方が来られまして、きょうの九時過ぎでしたか、最後話し合いを済ませてここへ駆けつけてきた、目下最後努力中、いよいよきょうで決着がつけられるかというタイミングでございます。  仲裁は、あなたのおっしゃるようにことしは昨年から比べれば時期も早まって一歩前進をいたしました。仲裁対象人勧対象とは、それは身分的には多少違っても似たようなものですね。仲裁もああいうふうにやれたのですから、人勧の方も、ことしは三年目、管理職などを入れると数年になるわけです。公務員も生身の人間ですから、三度目の正直だ、公務員だけ無理をして抑えるなどということは士気にももちろん影響するし、それから仲裁もああして調子よくやったのに公務員だけ抑える、これもまたバランスがとれないし、今度はどうしてもぜひ完全実施をしなさいといって、今まで給与関係閣僚会議も三度ほどありましたけれども、私が最強硬派で主張してきたことは御案内のとおりでございます。  しかし、財源問題その他でいまだに決着がつかず、きょうあたり何とかして内閣の最終の仕事として決着をつけたいというタイミングに来ておりますが、これは人勧制度そのものの存否が問われますから、労働基本権代償措置なんですから、私としては最後まで全力を挙げて完全実施に向けて努力をいたしたい、こう思っております。
  5. 永井孝信

    永井委員 大臣として、完全実施に向けて全力を尽くしたいという話を伺いました。これは今大臣が言われたように非常に重要な段階に来ております。いみじくも大臣が言われたように、人勧が三年連続完全に実施ができないということになってくると、人勧制度そのものの根底が揺らぐわけであります。もしそうなるとするなら、むしろ公務員労働者に、それでは自主的に解決する能力を与えるために労働基本権としてのスト権を与えるということがかわりに出てこないと、労働行政としてはどうにもならぬ、こういうことになってくると思うのですね。  とりわけ、ことしの三月二十一日付で、日本政府を相手とする公務員関係労働組合からのILO提訴がありました。これに対して政府は既に一応の態度表明をしているわけでありますが、それでいきますと、昨年の二・〇三%の引き上げについては財政事情からやむを得なかったということで、しかし政労交渉などを通して誠意を見せてきたという、その政府対応について正当化を主張するような立場になっているわけですね。したがって、今言われたことはそういう意味でも非常に重要な意味を持っておりますし、とりわけ、この十一月の一日、二日にかけてILOの結社の自由委員会理事会に対して政府は報告しなければいけないという時間的な問題もある。こう考えますと、今内閣改造の話も出ておりますけれども、とにかく労働大臣として、今まで頑張ってこられたそのことを基礎に置いて、不退転の決意最後段階に来た人勧問題を取り扱ってもらいたい、あくまでも完全実施以外にあり得ないという決意で当たってもらいたいと思うのですが、一言でその決意を言っていただけますか。
  6. 坂本三十次

    坂本国務大臣 御承知のとおり、ILO理事会が一日にですか開かれようとしております。そこで我が国が国際的な批判を受けるということは、それはとても残念なことになりますから、そういうことのないようにきょうあたり決着をすると思いますが、ぎりぎりのところまで全力を尽くして頑張っていきたい、こう思っております。労使関係というものは信頼関係がすべての基礎ですから、何事も、事業をやるにしてもそれが一番ベースになる大事なことだと思いますので、その意味でも全力を尽くして頑張っていきたいと思います。
  7. 永井孝信

    永井委員 総務庁は見えておりますね。——総務庁に対して同じ問題で一言お聞きいたしたいと思うのでありますが、この人勧の問題について、昨年の十一月二十七日に参議院の内閣委員会で当時の丹羽総務長官が、五十九年度の人勧取り扱いについては俸給表等勧告内容を尊重した完全実施に向けて最大限努力すると答弁をされているわけですね。この俸給表中身まで人勧を無視して勝手に政府の側が、行政の側がこれをつくりかえてしまって、去年で言えば二・〇三%に合致するような配分方法を決めてしまったということが非常に問題になりましたね。だから、去年の十一月二十七日の総務長官のこの答弁というものは当時は政府統一見解として受けとめているわけでありますが、そのことについて間違いございませんか。
  8. 吉田忠明

    吉田説明員 御答弁申し上げます。  先生が御指摘されました昨年十一月二十七日の丹羽総務長官答弁は、政府関係者一同相談した結果の意見表明でございまして、そういう意味では先生のおっしゃいます政府としての統一見解という性格を持っているものだ、こう思っております。
  9. 永井孝信

    永井委員 それでは、今の総務庁長官が、この人勧取り扱いをめぐって、今までの総務長官のように完全実施をすべきだという態度に立っているとは思えないのですよ、マスコミの報道などを受けとめる限り。したがって、昨年の十一月二十七日の総務長官答弁政府統一見解的なものであるとするなら、これを踏まえて、今労働大臣完全実施をすべきだという態度表明をされているわけでありますが、総務庁としてもあくまで完全実施という立場に立って問題の処理を図ってもらいたい、完全実施をしてもらいたいということを強く要望いたしますが、総務庁としてこの問題について今どう取り扱われておりますか。
  10. 吉田忠明

    吉田説明員 総務庁長官の現在までにおきます立場でございますが、今先生のおっしゃいました昨年の総理府長官意見も十分踏まえまして、あくまでも完全実施に向けまして誠意を持って取り組む、こういう基本的姿勢でやっております。しかし、最後に取りまとめをします立場としまして、最悪の場合には現実的対応ということで、その場合におきましても、公務員に将来の明るい展望が示せるような案で少なくとも決着をしなければいかぬのじゃないかという方向で、現在最後の詰めを大臣がやっているところでございます。
  11. 永井孝信

    永井委員 最後に要望しておきますが、労働大臣決意もありました。総務庁の方としても完全実施に向けての努力をする、こう言っているわけでありますが、これはあくまでも、わかり切ったことを繰り返して恐縮でありますけれども労働者基本権にかかわる代償措置として設けられたものでありますから、これが踏みにじられるということになりますと憲法にも違反をするということになってまいります。したがって、あくまでも完全実施をやり遂げるのだという決意最後まで対応してもらうように強く要望して、この問題は終わっておきたいど思います。  さて、次に国鉄問題について御質問を申し上げたいと思います。  御承知のように、国鉄財政赤字から再建に向かって歩むために必要な措置であるとして、現在余剰人員というものが存在していると言われているのでありますが、この余剰人員取り扱いをめぐって労使関係がいわゆる正常な状態になっていない、このことについて労働大臣承知をされていますね。
  12. 谷口隆志

    谷口説明員 国鉄が現在非常に大きな赤字を抱えて再建に当たらなければならぬという重大な時期でございます。同時にまた、経済とか社会事情が変わっておりますので、それに対応した形で再建を図っていかなければならぬというような重要な時期に当たっております。そういう観点から、まず、今御指摘ございました余剰人員対策というものを打ち出されて労使交渉を進め一部実施に入っておられる、その過程で、一部の組合と妥結をしない状態になっているということは私ども十分承知をいたしておるところでございます。
  13. 永井孝信

    永井委員 この大変な国鉄再建問題ということが大きな政治課題になってきているわけでありますが、国鉄再建のためには労使協力が不可欠だと思うのですが、大臣、どうですか。
  14. 坂本三十次

    坂本国務大臣 それはおっしゃるとおりだと思います。
  15. 永井孝信

    永井委員 労働大臣も、労使協力が不可欠だという基本認識を、当然だと思うのでありますが、お持ちになっていらっしゃる。ところが、今労政局長答弁されましたように、この国鉄における余剰人員対策ということについて先般から関係労働組合との間に交渉が進められてきたわけでありますが、幾つかある労働組合の中で、国鉄労働組合あるいは全動力車労働組合というのですか、全動労と言っているのですね、これらの組合については実は団体交渉が今存在をしていないわけであります。団体交渉存在をしていないという状況でこの余剰人員対策が進められていくとすれば、そこにいろんな意味であつれきが生じ、結果として国鉄再建の障害になると思うのですが、労働行政を預かる労働省立場としては、それについてどういう認識をお持ちになっていらっしゃいますか。
  16. 谷口隆志

    谷口説明員 先ほど申し上げましたように、余剰人員対策は、国民的課題ともなっております国鉄再建のために非常に重要な問題でございます。また、その過程職員の方々の生活とか労働条件にも深くかかわりのある問題でもございます。したがいまして、今回の経過に至るまでにはいろいろ事情もあったろうと思いますけれども、やはり基本的には、労使が今申し上げましたような基本認識を十分認識された上で、意思疎通を図りながら問題の円満な解決をされるような対応をしていただくことが重要であろう、私どもとしてはそういうことを望んでおるわけでございます。
  17. 永井孝信

    永井委員 今回の国鉄当局の進めようとしています余剰人員対策というのは三つありまして、一つ退職前提とした休職を求める人を募集するといいますか処理をする、二つ目には復職を前提とした休業者、そして三つ目には関連企業などへの派遣をするという、この三つ中身になっているわけです。  そうして、ここに国鉄当局広報として用いております「つばめ」という広報紙がありますが、この広報紙を見ますと、こういうふうに言っているわけです。国鉄再建のために合理化を進めてきた。六十年度首に三十二万人体制へ持っていくために合理化計画を修正して行ってきたら、その合理化計画退職人員とを比較した場合に、合理化数退職人員を上回る現象が出てきた、これが余剰人員の発生の基本的な背景だ、こう説明しているわけです。言いかえるなら、余剰人員が生まれてしまうような合理化を推進し過ぎたといえば語弊があるかもしれませんけれども合理化をどんどんやってきたために二万数千名の余剰人員が出ているわけですね。この余剰人員を、今申し上げましたように「退職制度の見直し、休職制度の改訂・拡充派遣制度拡充」、これらの制度を確立して対応していかないと国鉄再建に重大な影響が出てくる。また、このことをやり抜かないと社会的に到底許されない、そういう解説が実はついているわけであります。  そこで、この問題について、余剰人員、人が余っているということを言っているわけでありますから、この余剰人員処理に関して大臣にお聞きをいたしたいと思うわけであります。  大臣は、所信表明でも言われておりましたように、あるいは基本政策として明らかにされておりますように、労働行政の一番基本雇用の安定であり、雇用創出であり、安定した円満な労使関係経済発展のために不可欠だということも繰り返し言われてきているわけですね。そういうことから考えると、今回のこの余剰人員という問題が、国鉄職場に働く労働者にとって非常に大きな不安をもたらしていること、たとえそれが国鉄再建のために不可欠だとして合理化を進めてきたその結果が余剰人員になったとしても、そこで働く労働者は大変な不安感を持っている。私のところにも、おれは首になるのだろうかというような話がどんどん入ってくるというのはそういうことを物語っているわけですね。  そうして、国鉄余剰人員派遣するということになってまいりますと、関連企業も当然その渦中に入ってくる。関連企業労働者で、いわゆる派遣先になるであろうと想定される関連企業労働者は、これまた国鉄職場に働く者以上に今雇用不安を持っているわけです。もし国鉄から派遣されてきたらおれらが解雇になるのではないかという不安感を持っている。そういう実態を見ていくと、労働大臣の言ってきた雇用の安定、雇用創出、安定した円満な労使関係、それが経済発展に不可欠、こういう基本姿勢からいきますと、今のこの国鉄余剰人員の問題というのは労働行政としては放置できない問題だと思うのでありますが、これについて大臣はどのように考えていらっしゃいますか。
  18. 加藤孝

    加藤説明員 ちょっと、事前に一言説明させていただきたいと思います。  現在国鉄の経営が非常に危機的な状況にある、そういうことで、その再建を図ることが緊急の課題となっておる。そういう中から、五十九年度当初において約二万五千人の余剰人員というものが明らかにされてきておるというようなわけでございまして、この問題につきましては、国鉄再建のねらい、こういうものとの調和が許す限りにおきまして、各種の雇用調整の方策を講じながら、我々としては、できるだけ労働市場に直接離職者が出されてくる、こういうようなことは避けながら、こういう再建問題との絡みでそこに何らかの雇用調整的な措置を講じていくことは、やはり労働者雇用の安定の面から、余剰人員はあるけれどもそれを直接労働市場に排出することのないようにという努力がされることは、我々の労働行政観点からも必要なことではないか、こう考えておるわけでございます。  既に民間におきましては、そういうような形の雇用調整に対しましては、いろいろの調整給付金というようなものを支給しながら、とにかく直接労働市場離職者の形で出さないようにという努力民間においてはやっておるということとの関連におきまして、国鉄がとにかく余剰人員存在の中で、しかしながらそれを直接労働市場離職者として出さない、こういうことについての十分労使話し合いの中での雇用調整措置をとられていくということを期待いたしておるものでございます。
  19. 永井孝信

    永井委員 この労使関係で円満に話し合って雇用調整施策を進めてもらいたい、雇用不安を起こさないようにあるいは一般社会労働市場に悪影響を与えないように、そういうことを言っておられるわけです。ところが、今申し上げたように国鉄労使関係というのは非常に複雑でありまして、たくさんの労働組合存在しておる。その中で一番組織人員の多い国鉄労働組合という組合があるのですが、この国鉄労働組合との間には現在団交が打ち切られたままになっている。そのことについては後で申し上げますが、これが、今局長答弁されたような円満な話し合いのもとで、あるいは円満な交渉のもとで、円満な労使関係のもとでこの問題の処理を図るということに労働省立場から見て合致していますか。これはどうですか。
  20. 谷口隆志

    谷口説明員 先ほども申し上げましたように、民間企業におきましても、こういう企業再建とかそういう問題を進めるに当たりましては、使用者労働組合の間で十分意思疎通を図りながら、一定の解決点に到達をしながら事態を進めていくことが基本的に重要であるという認識はもう当然のことでございます。  今回の国鉄の問題につきましては、これも先生十分御存じのとおり、七月時点からこの問題が提起されて、その後の長い経過の中で、労使間で、しかも複数の組合がありまして、それぞれの組合との団交過程で、いろいろな事情があって今日に至っておることだろうと存じますし、そういう具体的な事情をどう理解するかというような問題にもかかってくると思いますが、私ども労働行政としては、先ほども申し上げましたように、こういう重要な問題につきましては労使十分意思疎通を図りながら事態を円満、円滑に進めていくというのが基本であろうと考えているわけでございます。
  21. 永井孝信

    永井委員 私の質問時間で大臣のいらっしゃる時間が短うございますから、ポイントだけを集中的にお聞きいたします。あとはまた午後の質問の中に送っていきたいと思うのでありますが、この今の国鉄再建という大変な課題を持っているときに、この余剰人員の問題をめぐって労使が円満な状態にないという認識をお持ちかどうか、それだけ一言で答えてください。
  22. 谷口隆志

    谷口説明員 一言で答えるのは非常に難しい問題でございますけれども基本的には団交とか話し合いとか折衝とかいろいろなやり方があると思いますけれども、そういう意思疎通を図られながら進めていくのが通常の形であろうと存じます。
  23. 永井孝信

    永井委員 恐縮ですけれども、そういう話し合いとか交渉とかいろいろなことが行われて円満にやっていかなければいけないということはわかっているのです。今現実労使関係は正常なのか不正常なのか、どういう認識をお持ちなのか、一言で答えてもらいたい。
  24. 谷口隆志

    谷口説明員 そこで、正常とか不正常の意味が非常に難しい問題だということだと思うのですけれども、いずれにしても、団体交渉が打ち切られておるということで意思疎通が十分図られてないということであるとすれば、その点は問題だと思います。
  25. 永井孝信

    永井委員 今局長答弁されましたけれども、七月ごろからずっといろいろな経過があるわけです。この当時は過員問題と言っておったのですが、七月六日に国鉄労働組合から公労委調停申請をしているのですよ。そして七月二十四日に、公労委は、過員の活用などについて労働条件に変更があった場合は、中央、地方の対応機関において具体的に問題点を提起して、その事案の早期解決団体交渉で図るよう努めなさいという趣旨調停案が出されて、これは労使双方受諾をしているわけです。労使双方受諾をしたということは、調停案趣旨というのは、当たり前のことでありますけれども団体交渉解決しろということを言っているわけですね。そして、それはいかなる困難な問題も、いかなる難しい問題も団交以外に最終的に労使処理するところはないということを、私はこのことを明確に示唆していると思うのです。  しかし、そういう労使双方がこれを受諾した後でも、幾つ幾つも例がありますけれども時間がありませんから一つだけ具体的な例を申し上げますと、例えば九州に行橋という機関区がありますが、この行橋という機関区の例で申し上げますと、乗務員検修要員が、機関庫をつぶしてそれを駐車場につくりかえるという作業に、業務命令で従事しているのです。これは乗務員検修要員が自動車の駐車場をつくる作業だから労働条件の変更ではないかということで問題になって、いや、これは労働条件の変更ではないということから対立したままになって、今地方調停委員会に係争中になっているわけですね。こんなような問題が公労法に定める労働条件の項目に本当に該当しないのだろうか。当局の言う百九十四号という総裁達があるのですが、その百九十四号の総裁達の問題について、私はことしの春に国鉄当局ともこの場所でかなりやりとりをやりました。その百九十四号の達で自由にそういうことが業務命令として行われるものなのか、あるいはこの調停委員会調停案で出しましたように、労働条件に変更ある場合は具体的に問題を提起し合って話をしろということを果たして踏まえたものなのかどうなのか、私は疑念を持たざるを得ない。  ついでに申し上げますが、続いて八月二十七日に、団交が十分その目的を果たさないままに七月十日に提案をしてきましたいわゆる「余剰人員の調整策について」、九月一日から募集を開始し、十月一日から実施を行うという強硬な当局の態度が出てきまして、当時労働組合はストライキを配置してでもということで、大変な問題になったことは御承知のとおりであります。そうして急遽公労委にあっせんを求めて、あっせん案が提示された。そのあっせん案の内容は、団交により早急に合意を得るよう労使双方誠意を持って努力すること、こうなっている。ところが、このあっせんを受けて団体交渉に入っていくわけでありますが、簡単に言うと、当局の提案を受けてから組合側が八月の初めに問題点について解明要求を出している。その解明要求に対する具体的な回答というのは、労働組合から聞いたところによると、三十三日間にわたってその回答が保留されてきている。これでは事実上団体交渉の体をなしていないと思うのですね。しかし、まあ、退職前提とする休職については九月の十九日に妥結をしているわけでありますが、それ以降、団体交渉が一方的に打ち切られるという十月十日までの間はわずかに二十日間程度しかない。これで、これだけの大問題が果たして本当に誠意を持って円満に話し合いができるのだろうかという疑問を我々は持たざるを得ない。調停、あっせんによって誠意を持って団交することについて労使双方受諾をしたということからすると、団交を一方的に打ち切るのではなくて、もっともっと話し合い団交の場を通して深めていくということがあっていいのではないか。こう考えていくと、労政局長はいろいろ言葉を濁していらっしゃいますけれども、それだけ調停やあっせんも出てきてなおかつ団交を打ち切られるということは、まさに異常な労使関係と言わざるを得ない、私はこう思うのですが、これについてどうですか。簡単に答えてください。
  26. 谷口隆志

    谷口説明員 ちょっと正確にお答えしたいと思いますが、一つは七月二十四日の調停案についてのお話がございました。これは余剰人員の活用の問題について話し合いがつかないで公労委へ持ってこられたという事例。それから八月二十九日に出されましたあっせんは、三本柱とは別に、五十九年度限りの退職前提とする本人の申し出による休職制度について話し合いがつかないで公労委に持ち込まれた事案でございまして、それぞれ団体交渉などにより事態早期解決に努めることとか、早急に合意を得るよう労使双方誠意を持って努力すること、ということが述べられておるのは事実でございます。個々の事案に基づく公労委の調停なりあっせんはそういうことでありますが、もちろん基本的には、先ほど来申し上げておりますように、やはり労使。で十分意思疎通を図り、一定の妥結点に達して、その上で実施されるのが普通の状態であり、基本的に大切なことだというふうに思うわけでございまして、今回の三本柱につきましては、今先生の指摘されましたような具体的な事情まで私ども存じてはおりませんけれども、しかし、三カ月の期間の中でかなり精力的に団体交渉も進められておるとか、またその間、三本柱のうちの一番基本の一番目の問題は六カ月ほどさらに協議をするとか、いろいろなことを進めながら来ておられるわけでございまして、その中で合理化を、国鉄再建のための余剰人員対策を進めなければならぬという緊急の命題もあるわけでございますが、それを両々見ながら進められた措置だろうかと思いますが、その辺の事情は、やはりさらに詳しく事情を聞いてみないとわからない問題でございます。  しかし、こういう事態はやはりできるだけ解決して、意思疎通を図りながら円満な対応を進めていただきたいというのが私ども基本的な考え方でございます。
  27. 永井孝信

    永井委員 時間があとありませんので、できるだけ答弁は簡単にしてもらいたいんですが、一番の問題点を申し上げてみたいと思います。  労組法の十七条では、労使間の協約、協定については、四分の三以上の労働者を代表する者との間に結ばれた協定が一般的に拘束力を持つことが明記されているわけですね。労組法の十七条ではそうなっているわけです。この十七条の精神というのは、多数の労働者意思を尊重するということを私はうたっていると思うのです。一つ企業においての多数の労働者意思を尊重するといういわゆる民主主義の原則に基づいて、そのことを基本に置いていると思うのです。  ところが、今回の一番大きな問題点で言いますと、国鉄には御承知のようにたくさん労働組合があります。ちょっと数字を申し上げますと、一番大きいのは国鉄労働組合、二十万八千三十六名、組織率は七一・三%であります。動力車労働組合は三万八千二百二十六名、これはいずれも八月一日現在でありますが、組織率は一二・一%。鉄道労働組合というのがありますが、これが三万四千三百十八名で組織率は一一・八%。全施労というのがありますが、二千二百二十五名で〇・八%。全動労が二千七百九十八名で一・〇%。こうなっているわけです。このうち、十月十日現在において労使間でこの余剰人員の問題について一応妥結をしているのは、動力車労働組合と鉄道労働組合と全施設労働組合三つなんですね。これは当然、それぞれ労働組合はその主体性を持っているわけでありますから、その労働組合と当局の間にどのように団交が煮詰まってどのように協定がされようと、それは当然のことだと思うのです。そのことはいささかも間違っていないし、当然なことだと思うのです。しかし、この労組法の十七条の精神からいくと、なるほど、一番大きい国鉄労働組合は七一・三%の組織率でありますから四分の三には到達しておりませんので、法的には国鉄労働組合との間に結んだ協定が一般的拘束力を持つことになっていない。法的にはなっていない。しかし、それを裏返して考えてみますと、七一・三%の組織率を持っている国鉄労働組合との間に団交が打ち切られて、そうして、他の二九%以下の労働組合との間に妥結された内容てい当局が全職員対象に直ちに作業に入るということで通達を出している。当局の広報紙に載っているのですよ。「十月十日団体交渉の打切りを通告し、同日以降、全職員対象とした調整策を実施に移すこととしたものです。」こううたっている。これはまさに不当労働行為に相当しないか、労組法の十七条の精神にまさに違反していないか、こう思うのでありますが、これは大臣、どのようにお考えになりますか。大切な問題でありますから、ひとつ大臣からお答えいただけますか。時間が余りありませんので、大臣のいらっしゃる間の質問はあと十三分しかないのですから。
  28. 谷口隆志

    谷口説明員 法律的に議論しますといろいろ問題はあろうかと思いますし、十七条の一般的拘束力もその労働協約適用の統一性とか普遍性を確保するための措置でございましょうが、労使関係というのはできるだけ複雑な形でなくて円満に解決されれば一番望ましいわけでございますが、こういう複数組合がある場合ですと、それはそれなりにそれぞれの組合の自主性等もございますから、そういうことに基づいて解決されるわけでございます。したがって、こういう今指摘されたような、国鉄労働組合交渉打ち切りということで妥結に達していないという事態は望ましい状態ではないわけでございますので、やはりそれはいろいろ事情があってこういう事態になっておるのだろうかと思いますけれども、今後に向けては、やはりいろんな形で意思疎通を図りながら円満な解決がなされていくことを私どもとしては望んでおるところでございます。
  29. 永井孝信

    永井委員 これは非常に大切なことでありまして、法的にはいろんな議論の余地はあるでしょう。しかし、その国鉄に働く労働者のうち、四分の三は超えていないが四分の三に近い労働者職員を組織している労働組合との間に団体交渉を打ち切られて、おまえのところは打ち切ったんだから今度他の組合とまとまったものはおまえのところにはとりあえず適用しないということなら、これは筋道が通っているわけです。しかし、他の労働組合と結んだ協定によってつくられた通達が全職員対象実施に移されるということは、少ない職員でつくっている労働組合との間に結んだ協定を他のところに全部強制をする、拘束をさせるということに結果としてなっているわけですよ。それが労働行政立場から、あるいは労組法の精神からいって問題ではないのか、そのことを聞いているのでありまして、今局長が言われたように、円満な状態に戻して早いことやってもらいたいということは、これはわかります。それなら、国鉄労働組合との間に団交がない以上は、国鉄労働組合に組織されている職員には適用を一たん凍結をして、改めて団体交渉でその問題の処理を図るというのが本来の常識的なあり方じゃないですか。労働大臣、どうですか。これは時間がありませんので、ここのところはひとつきちっと答えてください。
  30. 坂本三十次

    坂本国務大臣 今まで過去につくられた協定とか取り決めとかそういう問題の法的性格というようなことにつきましては、今局長が言いましたようなもので、法律的にいろいろ解釈すればそれはお互いに議論の余地はあるかもしれませんが、私が見ましたところ、全国民的な常識からすれば、もうこの際は労使とも、国民の目から見て、かつての公共性が高いから国鉄はまあまあといって許されておったような状態とは今は違うのではないか、もっともっと危機感を持つべき状態に来ておるのではなかろうか、私はこういうふうに思います。  ですから、その法律的解釈ということよりも、これはやはりもっと大局的な、全国民的な責任があるわけでありまするから、そういう大局に立たれて、そして今までの行きがかりを捨てられて、両者がその話し合いについてもらいたい。これは私はもう常識だと思います、国民的な観点からすれば。言いたいことはそれはお互いの立場から見て幾らでもあるでしょう。それを法律的にどうだこうだと言ったら、それはいつまでたっても解決はできません。ですから、ここはひとつ、どうぞ労使ともに大局に立たれて話し合いをされたい、切にそう私は感じております。
  31. 永井孝信

    永井委員 時間がありませんから、午後に中身については譲っていきたいと思うのでありますが、団体交渉が十月九日の夜中というのですか、午前零時過ぎだったと思うのでありますが、当局が一方的に団交を打ち切ってしまった、そうしてその翌日に、職員にとって最も重要な協約と言われておった雇用安定協約の破棄通告がされているわけですね。妥結した組合にはこの雇用安定協約は存続をさせる、妥結に至っていない労働組合には雇用安定協約を破棄する。しかも、この当局の広報紙にも明らかになっているわけでありますが、交渉過程で、当局の提案に基づいて、「妥結に至らない場合には、当局として『雇用の安定等に関する協約』について重大な決意をもって臨まざるを得ない」、この旨を申し添えて交渉をやりましたということが書いてあるわけです。ということは、雇用安定協約という協定がありながら、当局の余剰人員調整策について組合がオーケーを出さなかったら協約はもう破棄しますよということは一種の恫喝ではないか、そんな状態のままで円満な労使交渉ができるのか。  そうして、今繰り返して申し上げておりますように、団交を打ち切られて、言えば大変な労使状態になっている、そこの労働組合に所属する職員に一方的に通達を適用しようとしているわけでありますから、今一番必要なことは、一たん打ち切った団体交渉を再開をする。中身はどのようにまとまるか、これは労使の間のことですから私たちはどうこう言いません。労使間でまとめるために団体交渉を再開をする、そうしてそのときに、一方的に打ち切ってきた雇用安定協約はそのときの姿に戻してもう一回やり直しをする、そして早急に処理をするというのが一番常道ではないか、こう私は思うわけです。この点についてどうですか。
  32. 坂本三十次

    坂本国務大臣 それは、今までの行きがかりを捨てて、大局に立たれて、同じテーブルに着いて真剣に話し合いをされるということは、私は結構なことだと思います。
  33. 永井孝信

    永井委員 これについて八月六日に、我が党の社労部会が全員そろって労働大臣に御要請申し上げました。八月二十九日から三十一日にかけての段階では、労働省にも何回も我が党からお願いを申し上げました。十月十日に団交が一方的に打ち切られた直後、十月十六日には田邊書記長、我が党の二人の理事、そして私が大臣に会いまして、いろいろなお願いも申し上げました。そうして二十四日には、大臣はいらっしゃらなかったのでありますが、労政局長ともお話し合いをしてまいりました。  ずっと私どもは、労働省労働行政をいわば前進させるために、働く者の雇用の安定のために、あるいはいろいろな企業においてもそうでありますが、労使関係が異常な状態にならないようにということを常にお願いしてまいったわけですね。そしてそれなりに労働省はこの問題で対応してきてもらったと思うのでありますが、その対応されました内容は午後の冒頭にでもお聞きをいたしますが、いずれにいたしましても団体交渉を再開するということ、そして、いかなる場合があっても、この問題の処理を図る場所というのは最終的には団体交渉以外にない、団体交渉を再開しないことにはまとめることはできないわけでしょう。その辺のところを労働省として踏まえてもらって、国鉄当局に対しても労働省立場から強く御指導いただきたい、こう思うのですが、労働大臣、どうですか。
  34. 坂本三十次

    坂本国務大臣 私のところへ、ただいまおっしゃった田邊さんを初め皆さんでおいでになられて、切々としてお話しをされたことは非常に印象に残っております。早速、私は、やはり直接の責任を持っていただかなければならぬ運輸大臣には篤と申し上げました。労使関係は大事です、あなたがひとつ労使関係の中へ入ってしっかり話をさせてくださいよ、いや、そのとおりなんじゃ、わしも一生懸命今やりたいと言っておられましたし、その後、余り表面的に個別な事項にわたって私どもはとやかく言うわけにはいきませんけれども、しかし、労使関係の信頼をつながなければならぬという観点からは、労働省といたしまして、局長を初め全力を挙げて、労使ともにこれは一生懸命当たって何とかテーブルに着いてくださいとお願いをして、熱意を持って訴えてきたという経過でございますが、今後とも努力いたします。
  35. 永井孝信

    永井委員 時間が来たので終わりますが、あとは午後に回します。労働大臣、頑張ってください。  どうもありがとうございました。
  36. 有馬元治

    有馬委員長 大橋敏雄君。
  37. 大橋敏雄

    ○大橋委員 私も人勧の問題を最初にお尋ねしたいと思いますが、けさの新聞報道でございますが、「公務員ベア三・三五%前後 積み残し解消三−四年で きょう閣議決定」という見出しが出ておりました。私は、この記事を見るまでもなく、一体人事院勧告制度とは何だろうか、疑問に思えてなりません。というのは、労働基本権代償措置としまして、人事院の勧告による公務員の妥当な賃金が示されまして、それから決定されていくルールだ、私はこう考えているわけでございます。にもかかわらず、もう三年目になるわけですが、ここ三年にもわたりまして、人事院勧告が凍結をされたり、こうして抑制をされていく、これは非常に問題だと思うのであります。公務員の生活を圧迫するのみならず、最近は非常に公務員の士気が低下されてきたと言われております。また、公務員の志望者が減少している事実もあるようです。国家の将来を担っていく人材がどうなっていくんだろうかという、非常に心配でならない一つの事実でございます。  そこで、大臣にお尋ねするわけでございますが、昭和五十七年度の人勧は四・五八%であったわけでございますが、これは御承知のとおり凍結でございました。五十八年度も勧告が六・四七%だったのに対しまして二・〇三%、三分の一以下に抑制されてしまったわけですね。こうした凍結、抑制の措置というものは、国家財政が逼迫しているからだ、こういう理由で、すなわちお金がないからどうしようもないんだ、こういう現実からやむを得ぬ措置なんだ、こういうふうに私も理解できないわけじゃないのでございますが、それではお金があればこの人事院勧告が当然実施されるべき性格のものだと私は思うんです。逆に、お金があるのに人事院勧告を無視したりあるいは軽視したという事実になれば、これは私は憲法違反の疑いがある、むしろ憲法違反に等しい、このぐらいに考えているわけでございます。そういう私の基本的な考え方について大臣はどうお考えになるか、お尋ねしたいと思います。
  38. 坂本三十次

    坂本国務大臣 この問題は、人事院勧告制度はやはり労働基本権代償措置で設けられたということはおっしゃるとおりであります。ですからこそ、この人勧制度を守りたいという気持ちは私どももいっぱいであります。ただ、今おっしゃるとおりに過去二年間、正確に言えばもう管理職などはもっとその前、三年間もですか、ずっと抑制をされてまいりました。しかし、去年、おととしなどの国民世論とでも申しましょうか、行財政改革ということが非常に世論的な高まりを見せて、鈴木内閣のときに凍結をいたしました。去年も抑制をした。しかし、私は、それは本当の緊急避難的なもうやむを得ざる措置に限るのであって、そんなことをずっと続けられては困るわけであります。ことしになればもう三年目ですから、仏の顔も三度、まして生身の人間ですから、三度もその抑制をするということは、私はそんなことはしてもらっては困ります、ことしはひとつ何とかして完全実施をしてください、努力してください、経済は好転しておるし、財政状況だって、税収だってよくなってくるはずじゃないですかというようなことで、政府見通しも、政府で改めたわけじゃありませんが、経済企画庁単独という格好ではありまするが、四・一の成長率を五・三まで見通しを上げたわけでありまして、これはそれだけ余裕ができてきたと見るのが常識なんです。だから、ことしはひとつ完全実施をどうしてもしてもらいたい、今までそう申し上げてきたわけであります。  大蔵当局は、いや、景気がよくなっても税収はふえません、こう言っておりますよ。だけれどもそんなことを言ってもそれは困るよ、それは大体基本認識が、金があるからとかないとか——金か人かということになると私は人だ、こう言うのです。しかし本当にないそでなら、どうにもならなければそのときだけは緊急避難だけれども、こういうように情勢が好転してくれば、金か人かといえば人が大事に決まっているんで、苦しいところを金をひねり出せばいいんだ、こう言って今まで一生懸命やったわけでありまするが、いよいよきょうあたり大詰めですが、結論はどうなるか知りませんけれども最後まで努力をしてまいりたい、こう思っております。
  39. 大橋敏雄

    ○大橋委員 大臣は、昼から給与関係閣僚会議に出られまして最後の闘いを展開されるわけでございますが、それに臨むに当たりまして、私、老婆心ながら私なりのいろいろ考えていることを申し上げますので、それを踏まえてぜひとも頑張っていただきたいと思うのでございます。  と申しますのは、今もおっしゃいましたように、昭和五十七年度は、当初予算に比べましてこれはマイナス補正がなされるわけでございますが、結局決算をやってみましたら、当初予算に対しまして六兆一千四百六十億円の税収不足があったわけですね。これは確かに異常事態であったわけです。私はこの実態を見まして、なるほどこれはもうやむを得ないかな、四・五八%の人勧の凍結の理由になったのもこれかなと私なりに理解しないわけではございません。当時の鈴木総理は、今や未曾有の困難に逢着している、公務員がみずからの給与の凍結を甘受するよう求められたわけでございますが、それは今おっしゃいましたあくまでも緊急避難措置であって、例外中の例外なんです。こういうことでそれが凍結という方向になっていったわけですが、五十七年の財政事情から私はある程度やむを得ない措置かなと理解できるわけでございますが、しかし、鈴木総理もその後間もなく総理をやめられましたが、私は重大な責任を感じておやめになったんじゃないかなと私なりに思っているわけです。  五十七年度の凍結分は今後埋めていくとしましても、問題は五十八年度なんです。五十八年度もマイナス補正をしましたけれども、結果的には四千五百六十三億円、これは自然増収になったわけですね。お金が出てきたわけですよ。この五十八年の人勧は六・四七%だったのですけれども先ほど申しましたように二・〇三%の大幅抑制措置がとられたわけです。これ自身が私はもう、先ほど言いましたように人勧を軽視している、無視している。政府が根拠のない俸給表を勝手につくり上げて何のための人勧であるか、勧告であるかと私は言いたくなるところであります。こういう人事院勧告を無視したり軽視したり勝手な俸給表をつくるようなことがあってはならない、少なくとも勧告の俸給表そのものは絶対に変えるべきじゃない、私はこう思うわけであります。  時間がございませんので気持ちを聞くのは後回しにしまして、特に私が強調したいことは、五十八年度の補正後の予算に対しまして一般会計の税収実績というものは、先ほど申しました四千五百六十三億円の自然増収になったわけですね。結果論ではございますけれども、この四千五百六十三億円、これが出てきたということは、五十八年度の人勧六・四七%を完全実施できだということを物語っていると私は思うのであります。ここで私が四千五百六十三億円という数字を出したのが本当かうそか、きょう大蔵省の方にも来てもらっておりますので、五十八年度の一般会計の税収は補正後の予算額に対して結果はどうなったか、簡単に数字だけで結構ですから明確に答えてください。
  40. 伊藤博行

    ○伊藤説明員 お答え申し上げます。  五十八年度の税収、ただいま先生おっしゃいましたように当初予算を補正段階で減額しております。その減額後の補正後予算に対しましては、仰せのとおり四千五百六十三億円の増になっております。  ただ、税は歳入歳出いろいろな面の中のほんの一部でございまして、歳入項目だけで見ましても税以外のものがいろいろございます。そういったものを全部ひっくるめての決算額がどうかというのはまた別個の数字になります。その点の数字は、五十八年度純剰余金ベースで二千五百億円程度であるという点だけお話し申し上げておきます。
  41. 大橋敏雄

    ○大橋委員 今大蔵省の答えにありましたように、五十八年度の租税及び印紙収入決算額調、これは大蔵省の提出書類でございますが、四千五百六十三億二千八百万円ですね。そういうことで、五十八年度の自然増収の四千五百六十三億円というのは要するに国が保管しているわけであります。どうこれが活用されていくかは今後の補正予算の際にその処理が決めていかれると私は思うのでございますが、いずれにいたしましても、結果論ではありますけれども、五十八年度の人勧抑制というものは、結果的ですよ、結果的には公務員の賃金を不当に抑制したことになる。したがって、私は、今からでも五十八年度分の完全実施措置をとってもらいたいぐらいの実は思いでおります。なぜならば、お金はこうして出てきたわけですから、あるわけですから、ぜひとも五十八年度の分まで含めて完全実施を主張していただきたい、こう思うわけです。  それから、大蔵省にもう一度お尋ねしますが、五十九年度の人勧六・四四%を完全実施するための所要経費、一般会計及び特別会計の合計で幾らになるか、結論だけで結構です。五十九年度の人勧六・四四%の完全実施の所要経費、幾らになりますか。
  42. 竹島一彦

    ○竹島説明員 お答え申し上げます。  一般会計、特別会計の間に入りくりがございますので、その重複分を差し引いた純計で申し上げますと、御質問の所要額は四千九百七十億円と見込まれます。それに対しまして、当初予算の給与改善費一%分が計上されておりますので、それが七百六十億円でございますから、追加所要額といたしましては四千二百十億円でございます。
  43. 大橋敏雄

    ○大橋委員 大臣、今お聞きのとおり、五十九年度人勧六・四四%完全実施をした場合の所要経費は、いろいろなものを差し引いて四千二百十億円だということを大蔵省の方が示されました。この大蔵省の説明で明確になりましたように、五十九年度人勧完全実施の所要経費四千二百十億円と、今国が保管している、先ほど申しました五十八年度自然増収分四千五百六十三億円、これから見ますと十分お金はある。そういうことで、午後の関係閣僚会議ではこの実情をぜひとも強調、主張していただいて、五十九年度の人勧六・四四%の完全実施を何が何でもから取っていただきたいと私は思うのであります。  また、国が保管している四千五百六十三億円がどうしても期待できないということになれば、先ほど大臣自身がおっしゃいましたように、五十九年度における自然増収でも十分賄える財政状況に好転してきている、私はこう計算しております。もし私の計算が間違いでなければ、一兆円近い自然増収が出てくるのじゃないか。そうなれば五十九年度の人勧は完全に実施可能であると思うのでございますが、いかがでございましょうか。
  44. 坂本三十次

    坂本国務大臣 先ほども申し上げましたように、経済が好転しておるし、税収もふえるだろうという私どもの考えでございます。しかし、税収を責任を持って細かく計算する仕事は大蔵省でございまして、その辺の詰めで大分今までいろいろ折衝があって、やっと大詰めに来つつある、こういう感じでございまして、十二時から開く給与関係閣僚会議最後の詰めをいたすことになるわけでありまするが、あなたのおっしゃったような感触で私も努力をしたいと思っております。
  45. 大橋敏雄

    ○大橋委員 先ほど申しましたように、五十九年度の人勧完全実施が四千二百十億円、五十八年度自然増収分、今国が保管しているのが四千五百六十三億円、これだけでも十分賄えると私は思うのでございますが、百歩譲りまして、五十八年度の四千五百六十三億円についてはこれはそういう人勧等には期待できないということであれば、五十九年度の税収増といいますか、それで是が非でも行っていただきたい。  九月の十九日でしたか、経企庁が五十九年度経済見通しの見直しを公表いたしました。政府の当初見通しに対しまして、GNPが名目で〇・六%、実質で一・二%を上回ることを明確に示しておりますが、これはもう相当の自然増収が見込まれるという数字が出てきたわけでございます。私なりにこれを試算してみましたら、五十七年度は税収決算額が三十兆五千百十一億円、五十八年度の税収決算額は三十二兆三千五百八十三億円で、対前年比は六・一%増になっております。そこで、五十八年度のGNP増加率は名目で四・一%でございますので、したがいまして、五十八年度の税収のGNP弾性値というものは恐らく一・五%弱になるのではないかと私は思うのでございます。そこで、五十八年度の景気回復、五十九年度はさらにスピードアップされていると私は考えるわけでございます。したがいまして、税収の弾性値も五十八年度の一・五%弱よりも確実に上回っていくんだ、こう私は踏んでいるわけでございます。仮に五十九年度の弾性値を五十八年度並みで試算いたしましても、五十九年度名目GNP、これは経済企画庁の改定値は六・五%ですが、それに一・五%弱の五十八年度弾性値を乗ずれば、税収の伸び率は五十八年度に対しまして約九・七%程度の伸びになる、こう私は計算しました。したがいまして、五十九年度の税収額が三十五兆五千億円となり、また五十九年度予算が三十四兆五千九百六十億円、約九千億円の自然増収が見込まれるのだ。これはまた五十九年度の決算が終わった段階で大いに論議をしたいところでございますが、いずれにいたしましても、GNPが当初予想より伸びればそれだけ税収も伸びるわけでありますので、五十九年人勧総額四千二百十億円程度の勧告は必ず実現できる、完全実施ができる、私はこう踏むわけであります。  今、大臣は、私の考えと同じような思いで午後の関係閣僚会議に臨んで闘っていくというお気持ちを述べられましたけれども公務員の給料というものはその家庭の最大のよりどころですから、最高のものであるわけですから、これを後回しにするようであっては人事院勧告意味も何にもなくなるわけですから、お金があるのですから、出てくるのですから、これは断じて完全実施をしていただきたいということであります。これは私の思いでございますので、その気持ちを十分踏まえて午後の閣僚会議で頑張っていただきたいことを強く要望いたします。  もう時間がわずかでございますので、では最後一つ、変わったお話をいたしますが、最近グリコ、森永に関する青酸脅迫事件が大変問題になっているわけでございますが、私は極めて悪質な反社会的犯罪だと思います。グリコ事件につきましては、犯人の終結宣言によりまして一段落しているようなものの、森永事件につきましては、森永本社のみならず関連下請企業にも、減産やこれに伴うパートタイマーの継続雇用の停止など深刻な影響が出始めていると聞いておりますけれども労働省はその実態を把握しておられるかどうかというのが一つ。  それから、関連企業を含めまして、森永に働く人々が何の責任もないのに、社長ぐるみ街頭販売に立ったり、あるいは雇用機会を奪われたりしている状況というものはまことに気の毒でなりません。特に関連下請企業におきましては、経営基盤が往々にして弱いことから倒産、解雇といった事態が急展開されているわけであります。またそういうおそれが十分あります。農林水産省でも森永製品の購入につきまして異例の要望を出しました。労働省といたしましても、少なくとも関連下請企業において雇用不安が生じないよう何らかの救済措置を早急に講じなければならぬと私は考えるのですけれども、それはどうかということですね。また、労働省には雇用調整助成金というものもあるわけですから、こういうものを大いに活用して救済措置をとっていただきたいと思うのでございますが、いかがでございますか、大臣
  46. 加藤孝

    加藤説明員 森永のケースにつきましては、事例といたしましては前回のグリコのケースと全く同じような問題が生じておりますので、私どもとしても、直ちに、森永あるいは関連下請の雇用調整状況につきまして今調査をまとめつつございます。関連下請が約七十七社でございましたかございまして、そこでの雇用調整も既に始まっておりまして、そういう意味におきまして、御指摘ございましたように、グリコと同じように、そういう関連下請での雇用調整に対しまして雇用調整助成金制度を活用するということで、この一両日中にもその決定をして実施をしたい、こんな準備を進めておるところでございます。
  47. 大橋敏雄

    ○大橋委員 大臣一言お願いします。
  48. 坂本三十次

    坂本国務大臣 この間、中小企業者との懇談会で大阪へ参りましたら、これは地元ですからひしひしとやはり感じておられる、そういう下請のつらさもよくわかっておられる、そういうお話が出ました。私どもも、この間のグリコのときにも、下請で不安が起きたときは雇用調整助成金を出しましてこれに当たるという決定をいたしました。今度も同じように雇用調整助成金、必要ならばいつでも発動いたしまして、そしてこれらの救済に当たりたい、こういう腹であります。
  49. 大橋敏雄

    ○大橋委員 終わります。
  50. 有馬元治

    有馬委員長 塩田晋君。
  51. 塩田晋

    ○塩田委員 坂本労働大臣にお伺いいたします。  きょうの十二時から閣議があって人勧取り扱いをお決めになると言われておりますが、労働大臣のこれに対する決意をお聞かせ願いたいと思います。  我々は、人事院勧告制度公務員諸君のスト権代償措置である、したがってこれを完全に実施すべきである、こういう立場で再三にわたり要望してきたわけでございますが、労働大臣努力をしていただいていると思いますが、どういう決意で臨まれるか。きょうは大臣、辞表を出されて、取りまとめられて、いよいよ最後の頑張りでございます。ひとつどのような決意で臨まれるかお伺いいたします。
  52. 坂本三十次

    坂本国務大臣 私は前々からも申し上げておりまするように、この人勧制度を守っていく、そして完全実施をするということは、これは労働基本権制約代償措置なんですから、たとえそれは昨年、おととしと、財政的な未曾有の緊急避難的な措置をとったにしても、ことしはもうそれは通らないよということで、三度目の正直だと言って、今まで完全実施の最先頭で努力をいたしてまいったことは御承知のとおりだと思います。これから最後の詰めでございますが、その私の気持ちは変わっておりません。政府部内におきまして全力を挙げて頑張りたいと思っております。
  53. 塩田晋

    ○塩田委員 異例な措置として、凍結が過去に行われてきているということはまことに遺憾なことでございます。このようなことが絶対あってはならないという立場から、ぜひとも最後の御奮闘をお願い申し上げます。  このアップ率についての見通しが、新聞等には三・五%をめぐる攻防だと言われております。恐らくこれは防衛費のGNPに対する比率の一%という三木内閣当時につくった枠、これに縛られての議論が一番閣内ではあるだろうと思うのです。しかし、一%というのはこれは内閣がつくった、みずからを縛るためにつくった目標でございます。国民に対する約束でございまして、我々が要求したものではないわけです。当時の三木内閣は、一%まで何とかふやしたいということで一%を設定された。しかし、今やこれが束縛になっておるということでございまして、我々は、人事院勧告のこの制度制度として当然そういったものにかかわりなくやるべきだという考えてありますし、また、みずから政府がつくった一%、これが不都合ならば新たな目標、縛りをかけられるということはみずからやられたらいいのであって、またそれをどうしても守っていくというならば、公務員のこの人事院勧告完全実施して、そして一%以内におさめるという政府の方針をあくまでも守られるならば、これは他の防衛費の不急不要、あるいは一年でも二年でも延ばせるところは節約をするなり、あるいは他のものに変える、こういったことで一%以内におさめるということもできます。いずれにいたしましても、そういうことにかかわりなく人事院勧告は完全に実施するように、労働大臣としては、最も大きな責任のある地位にあられるわけでございますから、この問題については最大限努力をしていただきたいということを要望いたしておきます。  次に、今労働省で検討されております労働者派遣事業の法制化についてでございますが、これにつきましてどのような検討が進んでおり、法案提出等の日程はどのように考えておられるか。また、これが日本的雇用慣行、いわゆる終身雇用制度、こういったものに対する影響等についてはどのように考えておられるかをお伺いいたします。
  54. 加藤孝

    加藤説明員 労働者派遣事業問題につきましては、ことしの二月に、石川吉右衛門先生を会長といたしました労働者派遣事業問題調査会から報告書が出されたわけでございまして、それを踏まえまして、ことしの三月から中央職業安定審議会におきまして論議が始められまして、さらにこの審議会の中に労働者派遣事業等小委員会を公、労、使の各側委員で構成いたしまして、そこにおきまして論議が詰められております。ここにおきまして、労働者派遣事業の適正な運営と、派遣労働者の就業条件の整備のための具体的な規制措置のあり方という観点からの検討が鋭意進められておるということでございます。  この小委員会ではこれまで十五回にわたって論議が行われておりまして、去る十月十八日には、中央職業安定審議会に対しまして中間報告という形で労働者派遣事業の立法化の構想試案というものが提出をされ、審議会でも論議がありまして、さらにそれを受けて小委員会でなお論議が続けられておる、本日も開催しておるというような経過でございます。  私どもとしては、できれば十一月中にもこの小委員会での論議を一応終えまして、その後中央職業安定審議会でこれが論議に付され、その論議等を踏まえまして立法化作業を進め、次の通常国会には提出をしたい、こんなスタンスで臨んでおるところでございます。  御指摘のございましたこれが従来の日本の終身雇用制度というようなものに対しての影響ということは、この小委員会あるいは審議会等におきましても一つの大きな問題として論議をされておるところでございます。そういう意味におきまして、これまでとにかく学卒が常用雇用労働者として雇い入れられ、そして企業内で昇進昇格をしながら定年まで雇用される、こういうようなものに対しまして、派遣労働というものがそこへ入ることによって、こういう日本的雇用慣行が一つの日本の経済発展を支えてきたものでもあるわけでございまして、そういうものに対してこれが大きな阻害要因になるというようなことにならないように、この派遣事業をルール化するに当たって、対象業務のあり方あるいは規制の仕方といったものについていろいろ方法論を検討いたしておるわけでございます。御指摘の問題については、そういう意味で、日本的なこういう雇用慣行というものを、この派遣事業を認めることによってこれを壊していくというようなことのないような配慮というものをしながらルール化していこう、こんな基本的なスタンスで臨んでおるところでございます。
  55. 塩田晋

    ○塩田委員 今御説明ございました問題点、いろいろございます。また業種の選定等も非常に問題があろうかと思いますが、慎重に十分各方面と詰められまして、いい法案を、来年通常国会に出されるそうでございますから、我々手くすね引いて待っておりますので、ひとついいものを出していただきたいということを要望いたしておきます。  次に、単身赴任の問題でございますが、これは私たちは税制上いろいろ問題はあろうかと思いますけれども、この減税問題、減税をぜひとも実現してもらいたいということを要望いたしております。労働省もそういうお考えで進めておられると思いますが、大蔵省との折衝はどうなっているのか、また税制上問題点があるとすればどういう点なのか、御説明をいただきたいと思います。
  56. 岡部晃三

    ○岡部説明員 六十年度税制改正に関する要望を九月に大蔵に出しまして、単身赴任減税につきましてお願いをしているところでございます。  問題点と申しますと、総額課税の原則、つまり給与全体として課税するという原則との関係でどうか。それから公平性の原則と申しますか、つまりこの単身赴任者に対する手当、手当と申しますと帰宅手当あるいは単身赴任手当でございますが、それが出されている企業と出されていない企業がある、その間に不公平の問題が生じないかどうか。さらにまた単身赴任そもそもの位置づけ、つまり単身赴任という現象は企業の発令によって行われるものでございますので、企業の責任あるいは労働者が自分の選択で行くものであるから労働者の責任というふうに考えるべきか否か。こういうふうな三点の問題が大きくあろうかと思います。  これらにつきましては、労働省といたしましては、総額課税の原則につきましては、例えば非課税でございます通勤手当、また現在非課税でございます別居手当に関しまして、またその後の在外手当との対比というようなことを考えまして、これは原則にもとるものではないと考えているところでございます。また公平の原則につきましては、これは過去の経緯、さらにまた単身赴任の位置づけにつきましては、何と申しましても、これは、社会的な現在の状況がやむを得ずこの現象を発生させているということから、労働者個人に帰せしめることはできないというふうに考えている次第でございます。
  57. 塩田晋

    ○塩田委員 ぜひともこれを実現すべく努力をしていただきたい。  次に、国鉄問題についてお伺いいたします。  労働大臣先ほど委員会の委員の質問に対しましてのお答えの中でちょっと気になることがございますので、国鉄問題について一言質問いたしますのでお答えをいただきたいと思います。  この労使関係は、これは労使で自主的に問題解決のために努力される、その団体交渉を通じて話し合い解決していく、そしてよき労使慣行を確立していく、そして事業が円滑に発展するように、国民も国鉄については望んでいるわけです。ただ、何でもかんでもとにかく話をしたらいい、団体交渉に入れというものではありません。今の現実は、なるほど国労という最大の組合が妥結してない点が二点、三点あります。ところが、その二点につきましては、勤労、鉄労、特に勤労は国労と同じ総評傘下にある組合ですね、その片方が妥結をしているという現実。鉄労もかつては十万あったのです。今四万を切るに至った。これは過去に国鉄当局あるいは自民党にも責任があるのです。変な裏取引をしたりして国鉄が一生懸命頑張っているのを後ろから崩したという、その打撃によって鉄労が今三万何千人というようなところになっている。本当にこれは恨みに思っていますよ。国鉄を今日このような状況にしたのはだれかということは、本当に我々は怒りを持ってこの問題を見ているわけです。その点から、そういう現実を踏まえての話し合い、今回も自民党の大物実力者が中でいろいろやっているというような話まであるのです。第二のマル生にしては絶対なりませんよ。国鉄当局に変な妥協するような工作は絶対すべきじゃないです。私はこれを強く申し上げておきます。大臣、いかがですか。
  58. 坂本三十次

    坂本国務大臣 これは先ほども申し上げましたように、国鉄当局とそれから組合、いろいろな組合がありましょう、その話し合い基本である、信頼関係のもとに話し合いをしていくことが基本である、これは間違っていないと私は思います。ただ、今は労使ともかつての国鉄ではないという厳しい認識と、いかにして再建するかという、この国家的な見識というか国民的な願望を受けとめないとそれはいけません。そういうお気持ちの上で、今まで多少の行きがかりがあった、そんなものは棚上げしてでもしっかり話をしてくださいよ。私の言わんとするところはそういうことなんです。
  59. 塩田晋

    ○塩田委員 大臣はわかっていただいておると思います。これは政府・自民党の大変な責任があります。決して安易な妥協はされないように頑張っていただきたいと思います。  国鉄当局にお尋ねいたします。最近の国鉄は、今大臣も言われましたように、大変な国民の関心の中で、危機的な状況がある中で、必死に再建に取り組んでおられることに敬意を表します。かなり直ってきたところもあると思います。しかしながら、まだまだ職場規律の乱れ、特に最近姫路の機関区で起こりました問題、私の選挙区でございますが、西明石の駅で飲酒をして居眠りをして、二人乗っていてしかもあれだけの大きな事故を起こした。こんなたるみがまだあるではないですか。私は新幹線を毎回愛用させていただいていますが、国鉄の東京駅のあの職員態度ははっきり言って悪いです。お客さんは苦々しい気持ちで接しているのですよ。あの態度は何ですか。あれは直せないのですか。あのワッペンは何ですか。あれさえ取れと言えないのですか。取らすことはできないのですか。余剰人員があるならば、もっともっと新しい仕事も与え、意欲的に働くそういう場を見つけてやったらどうですか。外注にどんどん出して仕事を減らして、そして余剰人員を抱えているようなことでなしに、これはやはり具体的にどういうふうに活用するか、余剰と言われる人々については、人員についてはどう活用するかということについて労使でよく話し合うべきだと思います。これについていかがですか。
  60. 太田知行

    ○太田説明員 先般の西明石の事故につきましては、御指摘のとおり、管理体制あるいは職場規律の是正の面でまだまだ行き届かない面が露呈されているわけでございまして、大変お恥ずかしく、かつ、申しわけなく存じておる次第でございます。一層是正に努力いたしたいと思います。  それからまた、東京駅にかかわる問題あるいはリボン、ワッペンの問題につきましても不十分な面がたくさんございまして、是正に努力しているところでございますが、なかんずく東京駅におきましては、これは国鉄の看板でございますので、非常に力を注ぎまして是正に努めておりまして、中でも接客面で不適格と思われる職員約十名につきまして持ち場を変えるというような措置もごく最近講ずるなどいたしまして、具体的に是正努力に入っているところでございます。
  61. 塩田晋

    ○塩田委員 終わります。
  62. 有馬元治

    有馬委員長 浦井洋君。
  63. 浦井洋

    ○浦井委員 まず人勧問題について大臣にお尋ねをしたいのですが、十一月一日からILOの結社の自由委員会が開かれる。この委員会の報告では、団体交渉権またはストライキ権のような基本的権利が禁止され、または制限の対象となる場合には、労働者を十分保護するため適切な保障が与えられなければならない、こういうふうになっておる。日本政府のこの委員会提出した見解も、政府は、公務員労働基本権制約に対する代償措置一つである人事院勧告を尊重するという基本方針を堅持しており云々とある。だからこの立場からいけば、人勧の早期完全実施というのは当然だと私は思う。何か三・四%でというようなことが出ていますけれども、六・四四の半分にすぎないわけです。大臣はきょう最後の閣議に出られるわけでありますが、朝から大分同じ質問が出ておりますが、再度その閣議に臨まれる決意を、早期完全実施という決意をお聞きしたいと思います。
  64. 坂本三十次

    坂本国務大臣 八月に人事院勧告が出されまして以来、数回にわたりまして私ども給与担当の関係閣僚会議も開きました。しかし、閣内の意見をまとめるにはとても今までは至りませんでした。それは私がおりれば一遍にまとまるでしょう。だけれども、そうはいかないから今まで努力をしてきたというわけでございます。  あなたのおっしゃるように、争議権などの制約の代償措置として人勧制度があるわけでありまして、まあ済んだことは、一度や二度の緊急避難はお金がないからといって済ませても、そういうことは三回以上は通りませんよ。やはり人間を大切にするということが、資源のない日本で、なかんずくその信頼関係を大切にするということが大事なんだからということを今まで力説してきたわけでありまして、ひとつできる限り最後努力をしたいと思っております。
  65. 浦井洋

    ○浦井委員 ひとつ、きょうの閣僚会議に断固たる決意で臨んでいただきたいと強く要望しておきたいと思います。  それから国鉄の問題でありますが、少し経過を振り返ってみますと、この八月に国鉄再建監理委員会が第二次の緊急提言を発表して、その中で国鉄の解体、分割・民営化の方向を打ち出しているわけなんです。そういう中で緊急措置事項として、現在顕在化しておる二万四千五百人に数倍する膨大な余剰人員対策なるものが、さらに債務償還の財源としての換地の処理、あるいは七千キロメートルのローカル線の国鉄からの分離、こういうものを指示しておる。これに対して中曽根内閣が、八月の十四日、この提言を最大限尊重して実行するということを閣議決定をしておるわけなんです。  私ども、この見解にはもちろん反対であります。もしこういうことがやられるならば国民の広範囲にわたって大きな被害を受ける。特に国鉄労働者の場合、この分割・民営化の基盤づくりとして今回の提案が出てきておるわけでありますから、これはもう絶対に、むしろつくり出された余剰人員だと言っても差し支えないわけであります。だから、私は絶対に反対であります。  ところが、先ほどから問題になっておりますように、こういうような流れに基づいて、こういう方針に基づいて国鉄当局退職制度の見直しあるいは休職、それから労働者派遣、こういう三項目で、全体として見ればやはり大幅な労働条件の引き下げになる、こういう提案を労働組合に提示をして、そして今まで交渉を行ってきたところが、十月の九日に国労あるいは全勤労等の労働組合団体交渉を一方的に打ち切って、しかも雇用安定協約を破棄をするという格好で一方的に通告をしてきた。これが今までの経過である。  だから、私、国鉄当局とそれから労働大臣にお尋ねをしたいのですけれども国鉄労働者というのはスト権を奪われておる。ですから、団結権と団体交渉権しかないわけなんです。団体交渉でしか問題が解決できない。それを一方的に打ち切るというのは労働基本権を無視するものではないか、こういうふうに私は思うのですけれども労働大臣国鉄当局にお聞きしたいと思います。
  66. 谷口隆志

    谷口説明員 具体的な事情につきましては私どもも詳しく承知いたしておりませんので、その具体的な事情に即した問題の解決となりますと、先ほど来申し上げておりますように、国鉄再建という非常に重要な問題でございますので、そういう観点で、労使意思疎通を図りながら解決してもらわなければならぬということだろうと思います。その辺が一方的かどうかというような問題は事実関係との関係でございまして、制度的に申し上げますと、労使紛争があり、そこで解決しない場合は、民間の場合ですと争議権というようなものもございますが、公共部門では、もしそこでぎりぎり詰まれば公労委というあっせん、調停の機関もございますし、そういう場の活用ということもあろうかと思いますが、具体的な問題は具体的な実情に即して解決されるべきだというふうに存じます。
  67. 坂本三十次

    坂本国務大臣 今労政局長が申しましたようなことでありまするが、とにかく国民的、国家的な厳しい要請というものを危機感を持って、認識をして話し合いをしていっていただきたいと思っております。
  68. 浦井洋

    ○浦井委員 厳しいという表現の前段のところが、流れが間違っておるということを私たちは指摘しておるわけなんです。そこで、時間がないので国鉄当局の方に先にもう一つ質問しておきます。  一方的に破棄をした雇用安定協約の中には、機械化、近代化、合理化等の実施に伴い、本人の意に反する免職及び降職は行わないというようなことも定めておるわけですね。これを破棄通告してきたわけです。もし無協約の状態が続いていくと、国鉄当局として、日本国有鉄道法の第二十九条の四号に基づいて労働者の首が切れるわけなんです。これをやろうとされるわけなんですか。この二点をお尋ねしたい。
  69. 太田知行

    ○太田説明員 第一点でございますが、余剰人員の調整策につきましては、大変長い時間をかけて労使協議を続けてまいりました。詳細は省略しますが、六月五日に基本的な考え方を示し、七月十日に具体的な提案をいたしまして、十月九日に及んだのでございます。その間、回数ももちろんでございますけれども、内容的に大変密度の濃い熱心な交渉をやってまいりました。組合側の意見も十分に聞きまして、当方といたしましても最大限の譲歩もしてきたところであります。しかるに、期限に至っても妥結しない。事柄の緊急性も勘案し、総合的に判断した上で、交渉の打ち切り、制度実施に踏み切りまして、既に制度を通達いたしまして実務に人づているという状況でございます。  それから、第二点の雇用安定協約の問題につきましては、御指摘のとおりこれは三十七年にできた協約でございますが、二十二年前の当時の解説書等によれば、これは日鉄法二十九条四号に対する歯どめであるということをうたっておりまして、雇用安定協約と二十九条との関連が密接なものであるということは明らかでございます。したがって、この歯どめがなくなれば二十九条四号がそのままストレートに適用され得る状態であることは間違いないと存じます。ただ、現時点で私ども破棄通告いたしましたが、これは手続を開始したということでございますので、今後また労使の間でいろいろな話し合い、展開があろうかと存じます。一年後の状態を予測して申し上げることは適切でないと存じますので、その点については控えさせていただきたいと思います。
  70. 浦井洋

    ○浦井委員 これでもう終わりますけれども大臣に要望しておきたいと思うのです。  そういう形で一方的に団交を打ち切って、雇用安定協約を破棄するというようなことを許しておいたらいかぬと私は思う。だから、そういう点で先ほどからも強調されておるように、労働大臣として、労働行政を円滑に推進するという立場でさらに強力な指導をお願いをしておきたい、こういうことを強く要望して、私の質問を終わります。
  71. 有馬元治

    有馬委員長 菅直人君。
  72. 菅直人

    ○菅委員 今次内閣最後委員会ということで、労働大臣には最後質問になりますが、短時間ですので、ぜひ誠意ある御返答をいただきたいと思います。  最近、百貨店などの大型店舗の正月三日間の休業という習慣が非常に崩れつつある。例えば銀座戦争と言われるような多くの百貨店間の競争の中で、いわゆる場所取りといいましょうか、出店競争が非常に激しいわけですけれども、最近ではその出店競争がさらには営業時間の競争になって、どんどん営業時間を長くする、あるいは正月、これまでは四日からスタートするというのが一般的だったのが、三日からやるとかあるいは二日からやるというところも出てきそうなわけですね。大臣にこの点についてお尋ねしたいのです。  つまり、大型小売店がそういう形で正月に営業時間を引き上げてくると、それに伴って当然運輸業とか問屋とか関連したところが正月も仕事をしなければいけない。いわゆる「もう幾つ寝るとお正月」というのは、みんなが休めるからそういう家族の団らんということもありますし、例えばお節料理なども、正月というのはみんな休むということを前提にして暮れのうちにつくっておこうということだと思うのですけれども、そういうふうなものがどんどん崩れていくと、広い意味労働者にとって非常に厳しい状況になってくるのじゃないか。私、こんなことを心配しているわけです。そういう点で、この大型店の正月三日間の休業という慣習についてどのようにお考えか、大臣に御意見をお伺いしたいと思います。
  73. 寺園成章

    ○寺園説明員 百貨店など大規模小売店が正月の三日間営業を休むかどうかということは、基本的には各企業の営業政策の問題であろうかと存じます。したがいまして、労使が十分話し合っていただいた上で決定されるべき問題であろうかというふうに存じます。  ただ、百貨店等の大規模小売店が正月の初売り日を早めますことは、先生御指摘のように、そこで働く労働者はもちろんのこと、関係の納入業者、あるいは周辺の商店街の従業員などにも大きな影響を与えるところでございます。したがいまして、労働省といたしましては、百貨店等の業界に対しまして、この問題については慎重に対処し、できるだけ正月三が日は休業するように要請をしておるところでございます。また、この問題は消費者と申しますか顧客のサービスにも関連する問題でございますので、消費者団体に対しましても理解を求め、協力を要請しておるということでございます。
  74. 菅直人

    ○菅委員 今、労働時間の短縮とかゴールデンウイークの休みを法定化しようという動きがありますけれども、全国民が一斉に休む休暇としては年末年始というのが一番集中度が高いわけですね。みんなが休むということを前提にしてお正月というものが存在しておるわけで、これがばらばらに休むようなことになってくると、今の正月というものが実質的になくなってしまう。そういう点では、こういった問題もぜひ労働行政の中で十分尊重していただきたいと思うわけですが、最後一言大臣の御見解を伺って、質問を終わりにしたいと思います。
  75. 坂本三十次

    坂本国務大臣 おっしゃるとおり、日本人は随分働きバチだとよく諸外国からも言われます。勤勉の精神は非常に結構ですけれども、どうも休暇のとり方も日本の方が少ないということでございまして、休むのは、怠けるのじゃなしに、あす働く活力を蓄えるわけでもありますし、大事な人間の生活の中でもそういう余暇というものが非常に活用されてきつつあるわけでありまして、昼寝などをしているだけじゃないのであります。そういう意味で、全人間的な生活の中では、働くことはもちろん大事でありますけれども、それ以外の余暇ということも大事でして、あなたのおっしゃるように、みんな心をそろえて休むのは正月ぐらいが一番いいのじゃないかというのは私も本当に賛成でございます。しかし、御承知のとおり非常に商売熱心でございますから一生懸命競争をするのでございましょうけれども、できるだけ正月三が日はみんなで休むようにしたらどうか。私は別に国民的損失になるとは思いません。そういうふうにしたらどうか。ただ、法律で絶対やめろという強制をするのはいかがかと思いますけれども、そういうふうに正月三日間ぐらいは休めるようにしたらというようなことで、私ども業界の方とも話し合いをしていきたいと思っております。
  76. 菅直人

    ○菅委員 ありがとうございました。
  77. 有馬元治

    有馬委員長 網岡雄君。     〔委員長退席、今井委員長代理着席〕
  78. 網岡雄

    ○網岡委員 私、きょうは、ことしの七月三十一日に発生をいたしました国鉄鷹取工場での死亡事故に関連をいたしまして、現在の国鉄当局対応しています各職場における安全対策の非常にずさんな状況につきまして、質問をしてまいりたいというふうに思います。  まず最初にお尋ねをしたいのでございますが、この事件は、御案内のように七月三十一日、坂井亨一さん、二十六歳、経験は八年ということでございまして、電気工事の作業は一般的に見ればもう熟練の域に到達をしている、こういう職員であったわけでございますが、その方が不幸にして高圧活線作業の段階で感電死をした、こういう事件でございます。  そこで、まずお尋ねをいたしますが、職場における労働安全対策を進めていく一番大きな柱ともいうべき安全衛生委員会の開催状況というものが、当鷹取工場の段階では一体どういう状況になっていたかということを、これは簡単に御説明いただければ結構でございますから、よろしくお願いします。
  79. 坂田浩一

    ○坂田説明員 お答えいたします。  鷹取工場におきます職場における安全衛生委員会については、毎月一回定例的に行われているというふうに伺っております。
  80. 網岡雄

    ○網岡委員 職場のほかに本場といいますか、鷹取工場の本部といった方がいいのでしょうか、その方がわかりやすいと思うのですが、安全衛生委員会職場の安全衛生委員会と二つございまして、実はきのうその事務局の人に来ていただきまして、私は説明を受けたわけです。その際の説明がそれで間違いないかどうかということで答えていただけば結構です。  職場の方の委員会は毎月やった。ところが、本部における安全衛生委員会は五十八年六月から五十九年七月まで開かれていない。これは組合からの要請もあったけれども、こちらもやる意思があったんだけれども、開催時期について双方の意見が合わなかったというか、日取りがやりくりできなくて結局持てなかった、こういう説明でございましたが、それに間違いございませんか。
  81. 坂田浩一

    ○坂田説明員 それに間違いございません。
  82. 網岡雄

    ○網岡委員 今そういう御答弁がありましたが、当局側の答弁は全くうそですよ。事実と違っているんじゃないですか。  十月二十二日に神戸西労働基準監督署が立入調査をなさっておりますが、中身を詳しく言うと長くかかりますから、使用停止などに対する改善措置幾つ、それから是正勧告に対する措置幾つ、こういうことで基準局長の方から御答弁願いたいと思います。
  83. 寺園成章

    ○寺園説明員 鷹取工場につきましては、事故発生後十月二十二日に臨検監督をいたしておりまして、そこで指摘事項がございます。是正勧告事項といたしましては五項目ございます。それから使用停止等の命令につきましては三項目、指導票につきましては三項目等の指摘をいたしております。
  84. 網岡雄

    ○網岡委員 その是正勧告に対する措置の第一に、措置をとれということで指示をしております中に「輸送用機械器具類製造業」、これは恐らく鷹取工場のことを意味するのだと思うのでございますが、千数百名の従業員があるにもかかわらず、「昭和五十八年七月から昭和五十九年七月までの間、安全衛生委員会を開催せず、安全衛生に関する調査審議を行わず、実質的に安全衛生委員会を設けていなかったこと。」このように基準局は立入調査の結果、断定をいたしておりますね。これは安全衛生法十七条及び十八条、そして毎月一回開催をしなければならないと規定されております安全衛生規則第二十三条に違反をするということになると思うのでございますが、基準局側の見解はどういうことでしょうか。
  85. 寺園成章

    ○寺園説明員 先ほど申し上げました是正勧告の中の一つの項目といたしまして、安全衛生委員会の開催についての件がございます。月一回以上開催されていないということにつきまして是正勧告をいたしております。根拠といたしましては安全衛生法の十七条、十八条、それから安全衛生規則の二十三条でございます。  なお、先ほど申し上げましたことについて、この際訂正させていただきたいと思います。  是正勧告につきましては十九項目、使用停止等の命令につきましては六項目、指導票につきましては三十五項目でございます。
  86. 網岡雄

    ○網岡委員 もう一遍確認しますが、これは安全衛生法十七条、十八条、安全衛生規則二十三条違反の行為ということになるのですか、その辺はどうなんですか。
  87. 寺園成章

    ○寺園説明員 安全衛生法十七条、十八条、安全衛生規則二十三条の違反ということでございます。
  88. 網岡雄

    ○網岡委員 今、労働省答弁をお聞きになったとおりですよ。私、非常に憤慨をしているのですが、実はきのうおたくの事務局の方が見えて私に説明したのは、冒頭私が言ったような説明だったのです。私はそのときは知っていたのですけれども、「そうか」と言って帰ってもらったわけでございます。それは要するに、やろうという意思はあったけれども、日取りが決まらなかったので一年間やれなかった。しかもその人の説明は、今局長が御説明になったように、規則の二十三条は毎月一回やらなければいかぬということが明確に規定されているのですよ。  もう一つ言いますと、これは国鉄の「鷹取工場安全管理基準規程」です。あなたがつくったものですよ。そのつくった管理基準の十六条は、「総括安全衛生責任者は、傷害事故を防止するため安全衛生委員会を毎月開催し、安全実施計画の推進その他改善事項について職員意見を聴取し、安全衛生の確保に努めなければならない。」こう書いてあるのです。これは「安全衛生委員会」という規定だけであって、そのときの説明によれば、本部の安全衛生委員会は年一回、そして職場委員会だけは毎月開催をしなければいかぬことになっています、これが我が当局の決めなんです、と言って僕に説明したのです。この説明はそのとおりなんですか。改めて聞きます。どうなんですか。
  89. 長谷川忍

    ○長谷川説明員 労働安全衛生委員会関係につきましては、本社・本場間で協定を結んでおりまして、これは労働安全衛生委員会に関する協約というものでございます。その中で、第三条でございますか、工場及びその職場単位で労働安全衛生委員会を開くことにしてございまして、その場合に、本場単位も月一回、職場単位も月一回という。ことで原則は決めておるのでございます。この職場単位で月一回、これは必ずやっておりまして、私どもといたしましては法の趣旨を十分生かしている、かように考えておるわけでございます。
  90. 網岡雄

    ○網岡委員 そういう詭弁の答弁をしちゃいかぬですよ。僕が聞いているのは、本場の安全衛生委員会は年一回やればいいのか。労働基準局の前であなたたちは答えてくださいよ。職場安全委員会を毎月開いておれば本場の委員会は年一回やっておればいいということになるのかどうなのか。
  91. 石井幸孝

    ○石井説明員 工場におきます安全衛生委員会につきましては二段階になっておりまして、先生おっしゃるとおりでございます。いずれも月一回というそういう方向で開くようにやっております。職場におきましてはより細かい現場的な議論をしておりまして、これは鷹取工場におきましてもずっと開いております。  それから、工場の安全委員会につきましては、本来一カ月に一回にするべきでありますけれども先ほど先生もお話しございましたように、日取りの設定その他がございましてややこの間開かれなかったのが実態でございます、というふうに聞いております。この事故が起こりまして、八月の六日、九日に開いておるというように聞いております。
  92. 網岡雄

    ○網岡委員 そういうところに国鉄当局の姿勢が浮き彫りにされていますよ。  もう一つ具体的に僕が言いますならば、国鉄労働組合の鷹取工場支部は、五十九年四月十六日、五十九年五月二十二日、事故が起きる六日前の五十九年七月二十五日、三回にわたって、しかも文書で工場当局に申し入れをしているのですよ。それで私は組合の責任者に会って聞きましたけれども、工場当局の方から本場安全衛生委員会の開催について日の打ち合わせ、問い合わせは一切なし、申し入れはすれども問答無用、返事がなかったということが真相です。そう答えているのです。  さらに私、つけ加えますと、事故が起きた後で鷹取工場支部が、例の神戸西労働基準監督署に出向いて、これこれしかじかの開催の申し入れをしたにもかかわらず安全衛生委員会は開かれなかった。これは安全衛生法に照らしてみたときに一体どうなのか、こういうことを問い合わせた際に、神戸西監督署の責任者は、本来安全衛生委員会の開催の責任は工場における総括責任者の責任だ、それがやればいいんだ、日時を合わせてやることはないんだ。しかも、組合側が三回も要請しておるにもかかわらずやられておらない、これは明らかに、十月二十二日に査察が入った結果明記されているように、十七条、十八条、そして規則の二十二条の違反である、こういうことになったのではないですか。そのことについて国鉄当局はどういう責任を感じてみえますか。これは違法ですよ。あなたたちは法律違反をやったのですよ。
  93. 坂田浩一

    ○坂田説明員 ただいま職員局長並びに工作局長から御説明いたしましたが、おっしゃるように安全委員会の開催については月一回ということでありましたけれども、私どもとしましては、ただいま先生の御指摘の件については十分まだ調査いたしておりませんが、いずれにいたしましても、この十四カ月にわたって開催されてないことは事実でございます。私どもがいろいろ現地から聞いた話では、先ほど先生御指摘のような形で伺っておりますが、事安全に関する問題でございますので、今後は法の趣旨にのっとりましてやってまいりたい、やってまいるように指導してまいりたい、かように考えております。
  94. 網岡雄

    ○網岡委員 違法のあった事実はどう思うのですか。どう反省するのですか。
  95. 長谷川忍

    ○長谷川説明員 ただいまの御指摘なんでございますが、もちろん、私どもといたしましては、法律あるいは安全衛生委員会に関する協約に基づいて、その趣旨につきましては十分地方に徹底しておるつもりでございますが、何しろ数が、全国現場がたくさんございまして実態を全部把握しておりませんけれども、仮にもし月一回の原則が守られていないということならば、それは恐らく幹事間の打ち合わせによって見合わせることになったのか、あるいは幹事問の意見がまとまらずに行われなかったのかということであろうかと私どもは推定しておりまして、ただいま先生の御指摘ございました、三回にわたって文書によって申し入れたにもかかわらず行われていないという事実があるならば、それはもう一度私どもといたしまして調査をいたしたい、かように考えております。
  96. 網岡雄

    ○網岡委員 最前から私、お聞きしておりますけれども、これだけはっきりした違法事実があると言って労働省の基準局長から答弁が出て、それの正式な文書はこれはもらっているはずなんですよ。当然これは本部にも行っているんでしょう。行ってないんですか。まずそのことだけお聞きしよう。現地からこれだけの勧告措置をもらったということは、本部へ報告されているんですか。してなかったら問題だぞ、こんなものは。
  97. 石井幸孝

    ○石井説明員 ただいま、そういう連絡を受けて、詳細を今調べておるところでございます。
  98. 網岡雄

    ○網岡委員 調べておると言ったって、労働省からの措置でしょう。こんなことはとやかく言うことないじゃないですか。労働省措置が間違っていると思うんですか、国鉄は。正式にこの委員会答弁してください。労働省措置は行き過ぎであったと言うんですか。はっきり答えてください。
  99. 坂田浩一

    ○坂田説明員 労働省措置は極めてこの法の精神にのっとった勧告だと思っております。ただ、今の工作局長が申しましたのは、鷹取工場の長から本社の工作局長のところへどういう形で来ているかということについて答弁したというふうに御理解賜りたいと思います。(網岡委員「遺憾の意は言わないのですか」と呼ぶ)〇今井委員長代理 網岡君に申し上げます。発言を求めてください。
  100. 網岡雄

    ○網岡委員 はい。——極めて遺憾であるということは言えないのですか。あなたたちはこういうことをやっておきながら、処分だけはちゃんちゃんやるんですよ、戒告処分を。
  101. 石井幸孝

    ○石井説明員 ただいま、まだ公式の書面は私の手元へ来ておりませんけれども、話を聞いておりまして、早急に調べて対処してまいりたいと思っております。
  102. 長谷川忍

    ○長谷川説明員 先ほど申し上げましたように、先生御指摘の点につきましては十分調査させていただきますけれども、ただ、職場単位では月一回の労働安全衛生委員会は開催しておりますので、これは十分、全体としては法の趣旨を私どもといたしまして守っているというふうに思っております。
  103. 網岡雄

    ○網岡委員 それは本当ですか。これは重大発言ですよ。職場委員会が毎月持たれているならば安全衛生における業務は支障がなかった、こういうことなんですか。そうすると、神戸西の労働基準監督署が措置命令をした第一項は行き過ぎだということになるんですか。どうなんですか、これは。
  104. 長谷川忍

    ○長谷川説明員 ただいまの御指摘の点につきましては、実態並びに基準監督署からの御指導ももう一度よく調べまして御返事申し上げたい、かように思っております。
  105. 網岡雄

    ○網岡委員 ひどいよ、これは。  次に移りますよ、後でまた総括的に一遍締めますから。とにかく、理事がおっしゃったことは、労働省措置については法律にかなった措置であるということを御答弁になったのですが、そのことを確認しながら進んでいいですね。  では、次に移ります。その次には、私は、安全対策問題の中で二つ目の大きな問題点は、例の坂井さんが感電死をするに至った原因について、高圧近接作業を行ったということが原因だ、こういうことで当局側の説明もあるわけでございます。問題は、国鉄当局側の説明によれば、活線作業というものは一切禁止規則になっている。やらないことになっている。だから、やっちゃいけないことをやられたために起きた事故であるというようなことが現場の鷹取工場の中では言われているわけですが、きのうの私に対する説明も同じようなものでした。こういうことで国鉄当局はお考えになっているのですか。
  106. 坂田浩一

    ○坂田説明員 今回の事故に関しまして、亡くなられた坂井さんについては非常にお気の毒に思っておりますが、いずれにいたしましても、鷹取工場の取り決めによりますと、活線作業における作業は禁ずるということで、先ほど先生がおっしゃいました安全管理基準規程の安全作業心得というものにきちっと明記いたしております。  今回の事故の原因等につきまして、私どもも早速、鷹取工場からいろいろ原因について、あるいは今後いかにして再発を防止するか、これは非常に大事な問題でありますから、そういった面で原因の面について十分伺って、また本社からも担当の補佐を現地にやるなど、いろいろやりました。  その結果、鷹取工場において、今回の、特に特殊なライザーハンダ揚げ装置を修繕する機器ということで、逆に言いますと、高圧活線というのは、例えば変電所から四千ボルトで来るとか一万ボルトで来るというような活線作業というのがいわば通常的には行われているわけでありますが、この作業につきましては、二百ボルトの電源からさらに四千ボルトを発生させるということによってハンダを加熱して修理する、こういう機械になっております。これはある意味ではテレビにおいても、テレビの中でやはり高圧が発生しているということでありますから、そういう意味で高圧活線作業と性格的には若干違った性格ではないか、こういう点が第一点。  第二点は、これらの作業を、通常は修理のときだけ今回のように問題になるわけであります。修理するときには必ず電源を切って、それから点検をするというふうに決めておりまして、したがいまして、今回も真空管を取りかえたようでございます。したがって、取りかえて直るだろうという状況の中でもう一度電源を入れましたら、正常に動作がしなかった。それは何でわかるかといいますと、先生もごらんになったかもしれませんけれども、制御盤がございまして、そこに青いランプがつくようになっておりまして、ランプとそれからアンメーター、電流が流れているというようなことでそれで判断できるわけでありますけれども、そういったことで修復したけれども動作しなかったということ、これは故障だろうということで、本来であればもう一度電源を切るというところが、善意といいますか、そういうことで触れたのじゃないかというふうに現在考えておりますが……(網岡委員「その説明はもういいですよ、話の途中のことですから」と呼ぶ)ただ、今後このような事故を再び起こさないということにかんがみまして、従来、安全心得といわゆる作業の手順といいますかやり方の標準というのが工場の場合ありまして、そういったものが別々につくってでき上がってきたというようなこともございますので、そういった面についてもきちっと、安全心得は安全心得として教育の場に使う、指導する。もう一つは、作業標準の中にもそういった要注意点を織り込んで周知させるというふうに鷹取工場としては改める。なおかつ、冒頭に先生おっしゃいましたが、坂井さんは国鉄へ入って七年数カ月という勤務経歴で、しかも電気専門にやっておられるわけですね。一方、協会における低圧の電気の特別の受講をされているというようなことで、十分精通していたと思われますが、そういう意味で、そういった面での指導も……(網岡委員「質問に答えてくださいよ。僕が言っているのは、電気を通ずるか、通せずにやることになっているのかどうかということだけ答えてもらえればいいんですよ」と呼ぶ)それはやっております。そうなっております。
  107. 網岡雄

    ○網岡委員 そこで、今話がありました大阪鉄道管理局鷹取工場の「安全作業心得」というのを持ってきました。それを読みますと、まず、いろいろな職場ごとにかなり綿密に安全作業を行うための心得が書いてあります。それだけに次から言うことに重みがあると思いますけれども、よく聞いておってくださいよ。  工機職場、これは「機械検査」と「配管検査」と「電気関係検査」と三つある。その「電気関係検査」の中に十一規定がございまして、その(3)に「高電圧作業、高圧線近接作業、又は低電圧充電路で、やむを得ず活線、又は活線近接作業を行うときは、必ず検電器によって通電の有無を確認する。」(4)に「高電圧線に触れるおそれのあるところでは、感電防止の処置をする。」こう書いてあるのです。活線作業の禁止ということは一つも書いていないのですよ。むしろ、高圧作業あるいは高圧線近接作業を行う場合は、どうしてもやらなければならぬときがあった場合にはこれは検電器で通電の有無を確認してからやりなさい、こういうことを言っているわけです。つまり場合によれば近接作業をやってもいい、むしろこれは積極的にそのことを規定しているのですよ。今、国鉄当局としては車両なんかの場合は確かにそういうことがある。だから車両の下を絶縁状態にしておいてやる。ところが、きのうの説明では、機械器具やそういうときにはそういうことは一切ないのだという説明があったのですが、むしろこの「安全作業心得」によれば(3)、(4)においては活線作業も近接作業もやるということになっている。やることの道が開かれているのですよ。これは上司に連絡をして許可を得なければならぬということは一つも書いてない。「心得」の中にはきちっとあるのですよ、関係箇所に連絡をしなければならぬとか、いろいろなことが書いてある。ところが、これはそういうことを言っているだけなんです。これで一体活線作業の禁止をやったということになりますか。
  108. 石井幸孝

    ○石井説明員 ただいま御指摘の点でございますけれども、確かに鷹取工場の「安全作業心得」という中で、工機職場の電気設備、工場に大変たくさんの電気関係の機械設備がございますが、それに対して規定をしております。こういう機器につきましては、内部的には高電圧を発生するものというのはいっぱいあるわけでございます。これは家庭の電気機器でもございますけれども、したがいまして、まず大前提といたしまして、こういうようなものを点検したり修繕したりするときには、あくまでもスイッチを切って死んだ状態にして点検検査をするということをうたっておるわけでございます。工機職場では、工場で今担当しておる機器がいっぱいございますけれども、それらのものについてはすべてそういうようなことをしてやるというのが正しいやり方でございます。  例えば、電車の検査をするようなときの千五百ボルトの架線のところでの作業でありますとか、災害のときでありますとかいうやむを得ないようなとき、異常なときには活線作業ということはあるかと思いますけれども、そういうときにはこういうような十分なる高圧活線作業としての認識を持ってやる、こういうことでありまして、このような機器についてはあくまでもスイッチを切ってその点検作業をやる、こういうことが大前提ということで指導しております。
  109. 網岡雄

    ○網岡委員 一般的にはそういうことかもしれませんね。しかし、この「安全作業心得」に書いてある(3)、(4)の「やむを得ず活線、又は活線近接作業を行うときはこういうことで断ってその近接作業を行う道がここに開かれているわけですね。そうでしょう。これはそういうふうに読むのが至当じゃないですか。この「心得」の解釈はどうなのですか。
  110. 石井幸孝

    ○石井説明員 これはこの(1)にあるように、電気設備とか機器、こういうようなものが工場では普遍的にたくさんあるわけでございます。それに対しては、先ほども申し上げましたように、内部的には高圧が出るものは多々あるわけです。テレビ等でも御承知のとおりです。そういうものはスイッチを切ってやるということが(2)に書いてあるわけでございます。これが工機職場でやる大宗の仕事でございます。以下、この高圧作業とかこういうふうに書いてありますのは、しかる上であっても、例えば先ほど申し上げましたように非常に特異な場合にはそういうことはあるいはあるかもわかりませんけれども、普通の機器の修繕、点検というケースではちょっと考えられないことでございます。
  111. 網岡雄

    ○網岡委員 通常考えられないといっても、(3)、(4)できちっと規定してあるのですからやれるわけなのですよ。やれぬことはないわけです。禁則じゃない。やれるわけですよ。それがまず一つ。  それから、実際に現場でアンケートをとったものを私、今ここに持っておりますけれども、まずライザーハンダ場げ機械が高圧機器であったということを知っているかどうか。これは工機職場ですから、この電気関係をやった人が七名なのですよ。あと高砂工場から四人ほどお見えになって十一名になったそうですが、このときはまだ七名。この人たちが一番古いのです。この古い人たちがどういうことだったかというと、高圧機器であったということを知っている人は七名中四名、知らなかったというのが三名、そういう状況です。そして、どういう方法で知ったかというと、これは管理者から教えられたわけじゃない、全部先輩を通じて口伝えで聞いた、こういう状況です。そうすると、労働安全衛生法五十九条、六十条の安全作業に対する教育措置というものが極めて不十分であったということがここで浮き彫りになっていると思うのです。特に、おっしゃったように入り口は二百二十ボルトですが、ある部分へ来て四千五百ボルトにはっと上がるわけだ。そういう仕組みがわかっているかどうかということを聞いたら、七名中全部、どこが高圧部分になっているのかわからぬ、そういう答えです。こういう状況ですね。     〔今井委員長代理退席、委員長着席〕 ここに今度の事件が発生した大きな原因があると私は思う。  それから、工機職場での日常作業で——工機職場というのはどういう職場ですか、本部がどの程度御存じなのか、後で一遍答えてください。それで、工機職場の電気班が作業をやっていく場合に、通電作業をしてはならないよ、活線作業をしてはいかぬよ、ということを管理責任者から指導を受けたことがあるかというアンケートに対して、あったと答えた者が一人、そしてほとんどないと答えた者が二人、全然なかったというのが七名。これは高砂の人も含めてですが、十名中九名までは知らなかった、管理者から言われたことがない、こういう状況です。これもまた局長、そういう実態だということを聞いておいていただきたいのです。これが国鉄の工場における安全教育の実態ですよ。  それから、工場内の各種機器の点検修理作業をする場合に通電作業をやったことがあるか、こういう問いに対して、十名中全部が、通電作業をした、活線作業をやった、こう言っているのです。しかも、場合によれば活線作業をしなければ故障の箇所がわからない。特に事故があったライザーハンダ場げ機械は前日も修理をやって、原因がわからなくて二日続きでやったということのようですね。機械が古いのですよ。だからもうどこが故障かわからぬ。こういう状況からいって、通電作業というものはやむを得なかったというのがあの職場における一般的な解釈です。  それから、ライザーハンダ場げ機械の修理に行ったことがあるかという問いに対して、十名中七名までがハンダ場げ機械には行っている、こう答えておるわけですから、今言ったように通電作業を十人が十人ともやっている。  こういう状況から見まして、また、この「安全作業心得」から比較してみまして、この工機職場の中にある活線作業というものは、工機職場の作業上の一つの常識になっている状況であった。そのことについて管理者は何もこれをとめたり、適切な指示もしていないし、おまけにハンダ場げ機械がどういう機械的メカニズムになっているかということさえもつい最近まで知らなかったというのが実相なんですよ。こういう状況であるわけなんです。このことについて国鉄当局は、一体どの辺までそれを掌握されて、こういう実態が現場にあったことについて、この「安全心得」と比較してどう思われますか。
  112. 石井幸孝

    ○石井説明員 先生のお話、幾つかございましたので、まず第一点の工機職場という職場でございますけれども、工場の中に多種多様ございます機器でございますとか、あるいはまた設備関係の日ごろからのメンテナンスでありますとか、あるいはさらに故障した場合の修理でございますとか、そういうふうなことに主として携わっている職場でございます。したがいまして、扱う品目が非常に多様にわたっておるということが、やはり職員にとって注意をしなければいけない、あるいはまた管理者としても十分教育をしていかなければいけない性格を帯びているというふうに私どもも思っております。  先ほどお話のございました高圧活線作業がやれるという御指摘がございましたけれども、これは例えば機器で高圧作業をやってもいいんだという趣旨ではございませんで、機器はあくまでも切ってやるということを(1)と(2)で私どもはうたっておりますし、指導しております。しかしながら、特別なレアケースとしてどうしても活線状態でなければいけないとか、機械でございますから、災害の場合とかあるいはそれ以外でも、どうしても確認できないとかいうようなことがあるいはあろうかと思います。そういうレアケースの場合にはそういう保護具をちゃんと用意してございますから。それを使ってやる、こういうことを指導しているわけであります。したがいまして、(1)、(2)が大体のメーンの指導でございまして、(3)、(4)はしかしながらレアケースであってもこういうことをということで指導しておるわけでございます。  しからば、そういうような「安全心得」とか禁則とかいうものをよく指導してあるかどうかとか、あるいはまた、こういう機械設備がたくさんございますけれども、特にこういう機械設備についての構造等についても周知を図っているかどうかということでございますけれども、例えば今の「心得」等につきましても、当然国鉄の現場に配属になりますときには十分な、入念な教育をやりますし、またその後も職場の中におきまして、安全教育等でいろいろと繰り返しそういうことを周知を図っていくようにしております。  それからまた、今回につきましても、こういうような作業に当たっては十分な打ち合わせを上司とともにやって、この日も前日あるいは当日、作業前に打ち合わせもやって、それでかかっておるわけでございます。それから、こういうものの取扱説明書でございますとか、そういうようなものも当然職場に配付をしておる。それから、こういう工場の職員というのはいろいろ深みのある技能がございますから、作業をやりながら先輩に習うとか、そういうようなこともあろうかと思いますね。あるいはまた、大体電気作業は二名で組んでおりますので、お互いにそういうことを切磋琢磨して、教え合ってやるとかいうようなことも含めて作業をやっておるわけでございます。私どもとしては、そういうことで指導を十分しておるつもりでございます。
  113. 網岡雄

    ○網岡委員 少し話を進めますけれども、まずハンダ場げ機械の配線図。これは私、現場の実際にやっていた人からじかに報告を聞いているんですが、メーカーから来ておった説明書の中に配線図があるわけですが、それが事故発生当時は紛失していてなかった、こういうことを聞いておるのでございますが、これは事実ですか。
  114. 石井幸孝

    ○石井説明員 ただいまお話がございました当該機械の配線図を含んだ説明書というものは、職場にございました。たまたま、先生御指摘の件は、事故が発生したものですから、本場の設備課あたりに取り寄せてちょっと見たというようなことではなかろうかというふうに聞いておりますが……
  115. 網岡雄

    ○網岡委員 それは、きょうのところはきちっとしないかもわかりませんが、私ども再度調査いたしますけれども、これは国鉄当局も一遍調べていただいて、正確にひとつ答えていただきたい。これは現場にちゃんといるんですから、そのことをはっきりしてください。  それから、社会党の調査団が行きました際に、当局側の説明書の中で、当局もお認めになっているわけでございますけれども一つは禁則の指導、それから周知徹底などに不十分さがあった、こういうことを認められているわけであります。禁則に対しての周知徹底が不十分であったということは、具体的に一体どういう不十分さがあったのか。それを端的に、簡単に御説明いただきたい。  それから作業標準、機械の点検方法などの教育に不十分さがあった、こういうことが二つ目に当局側として反省の材料として出されておるわけでございますが、この作業標準というのは、恐らく作業をやっていく場合の安全性も含めた仕事の手順というようなものを、これはハンダ場げ機械の場合にはどうする、何々の機械の場合にはどうする、こういう個別なものが決められていかなければならないわけなんですね。そういう取り決めになっているはずなんです。それが十分になされていなかった。標準自身もなかった、それから教育も不十分であった、こういう状況だというふうに私ども承知をしておるんですが、ここに書いてあるものは、そういうふうに踏まえてよろしゅうございますか。
  116. 石井幸孝

    ○石井説明員 ただいまの「安全作業心得」でございますとか禁則の周知徹底方につきましては、先ほどもお答えいたしましたように、新人教育でありますとか、あるいはまたその後も、職場の日ごろの安全教育等で周知徹底を図っておるわけであります。しかしながら、今回そういうようなことが守られなくてこういう事故が起こったということから見れば、やはり周知徹底をもっとやるべきではなかったかということを反省して、さらにそういう周知徹底方を積極的にやろうというふうに工場当局も考えておるものと思います。  それから、作業標準云々のお話がございましたが、これにつきましては、作業標準というのはもともとが作業のやり方というものを明示しているというのが主体なんでございます。したがいまして、そういうものなんですけれども、今回のこの事故を契機にいたしましてさらに追加をいたしまして、いわゆる作業標準というものにプラスするような格好になるのかもわかりませんけれども、補足的にこういう保護具でありますとか電圧とかそういうようなことも明示をして遺憾なきを期すように、より改善をしていきたいというふうに取り組んでおるわけでございます。それから、点検方法の見直し等につきましても、さらにそういうようなことでよりベターな方向に、万々このような事故を起こすまいということで取り組んでおるところでございます。
  117. 網岡雄

    ○網岡委員 具体的に聞いていきますけれども、じゃ、このハンダ場げ機械の作業標準というものは定められていたんですか。
  118. 石井幸孝

    ○石井説明員 先ほど申し上げましたように、工場にはいろんな機械、設備というものがたくさんございます。これはもう恐らく物すごい数になると思います。それを構造の違うものを全部一つずつということには参らぬケースもあるわけですね。したがいまして、全体的な作業の標準というようなことを考えて、それから特殊な作業についてはその範疇に入りますから、いろいろな機器の取り扱いは一般的なそういう注意事項の中で作業をやる、こういうのが筋でございます。
  119. 網岡雄

    ○網岡委員 局長労働安全衛生規則の三十六条、これは特別教育の指定というものがされていると思うのでございますが、それは高圧の直流の場合は七百五十ボルトから七千でございましたか、そういう高圧電圧の場合は、これは特別に教育をして安全を期すということが定められていると思うのでございますが、その辺は三十六条の規定というものはどういうものなんでしょうか。
  120. 寺園成章

    ○寺園説明員 安全衛生法におきましては、事業者は、労働者を雇い入れましたとき、それから労働者の作業内容を変更したとき、労働者を一定の危険または有害な業務につかせるときには、安全または衛生のための教育を行わなければならないというふうに定められております。安全衛生教育が必要とされる一定の危険または有害な業務の具体的な範囲というものといたしまして安全衛生規則において定めておりますが、高圧活線作業につきましても安全衛生教育を実施しなければならない、そういう作業の対象にいたしておりますので、この教育の重要性ということは、安全衛生法上意義のあるものとして考えられておるというふうに考えております。
  121. 網岡雄

    ○網岡委員 そうしますと工作局長、ハンダ場げ機械を操作をする場合は、これは言うまでもなく通電されなければ機械は作動しないわけですから、通電状態になる。そうすると高圧部分では四千五百ボルトになっておる。したがって、これは機械を操作する人、それから工機職場の電気班という人たちも、仮に当局側の発言が禁則状況にあった、こういうことで見たにしても、これはやはりその機械が三十六条に適用する高圧になるわけですから、このことの機械のいわゆるメカニズムを熟知させるための特別教育というものがされていなければならぬと思うのでございますが、それはその職場ではやられておらないんじゃないですか。私、聞いたことないですよ。  それからもう一つ、そのハンダ場げ機械の工機作業の標準というものは定められておらないでしょう。それで鷹取工場の安全管理基準規程からいくと、十七条では「総括安全衛生責任者は、各作業について作業基準及び安全作業心得を作成しなければならない。」これは明確に決められているわけです。それは全体のものもそうでございますけれども、各個別にやらなければいかぬということになっているわけですよ。それが今までやられていないという国鉄当局の安全対策の怠慢、こういうものが事故を生んだ一つの大きな原因じゃないですか。そういうことになっているのじゃないですか。
  122. 石井幸孝

    ○石井説明員 機械個々の作業標準等につきましては、例えばクレーン等の法令機械とかこういうものは整備しておりますけれども、その他については一般的な取り扱いであるとかあるいはまた説明書であるとかこういうようなことでやっておるわけであります。したがいまして、特に工機職場につきましては、すべて跡修繕とかそういうような日常内作業といいますかにも、いろいろ変化のある作業でございますから、その都度十分な注意を与えて作業につかしめる、こういうようなことにしております。
  123. 網岡雄

    ○網岡委員 事故が起きた後、鷹取工場は、高圧部分の箇所を全部記入して、こういう機械は高圧が流れていますよということを三十七台にわたって明示しましたね。ところがそれまでは一つもやられてなかったわけですよ。さっきのアンケートにも出ていたように、高圧機械だなということはわかる、しかしどの箇所から高圧になるかということはわかってない、修理をする人が知らないのですよ。これで一体職場における安全というのは守れますか、どうですか。
  124. 石井幸孝

    ○石井説明員 要するに高圧活線作業というものを禁止しているんだ、要するにスイッチを十分切って作業をやるのが建前でして、機械の中には、先ほど申し上げましたように高圧を出す機械というのはテレビを初めとしてたくさんあるわけでございます。したがいまして、スイッチを切って修繕をして機能確認をする、こういうことをまずはしっかりと工機職場職員に周知を図るということは肝要かと存じます。  それから一方、その機械を修理をするわけでありますから、当然スイッチを切って修理をするわけですから、その構造がどういうふうになっているか、どの回路がどういうふうにつながっているかということを知らなければ修理ができない、これも当然でございまして、そういうことにつきましては、先ほど申し上げましたように説明書等で十分わかるようなことをやっておったわけでございます。
  125. 網岡雄

    ○網岡委員 おったとおっしゃいますが、そういうことまではされていなかったのじゃないですか。
  126. 石井幸孝

    ○石井説明員 この件につきましては工機職場にもこの取扱説明書が備えてございまして、それを十分見まして作業にかかるという指導をしてございます。
  127. 網岡雄

    ○網岡委員 そうすると、なぜ事故のあった後、私は電気のことは余り知りませんけれども、この書いてある内容というのは「電源AC一〇〇V高圧発生部六〇、〇〇〇V」とか、そういうことしか書いてないのですよ。これを改めて三十七台に対して出したのですよ。こんなことは本当を言うと常識の常識の問題なんですよ。このことが改めて出されるぐらい、これは実は作業標準なり機械のそういう仕組みについて周知徹底されていなかったということの端的なあらわれじゃないですか。
  128. 石井幸孝

    ○石井説明員 先ほどから何遍も申し上げておりますように、あくまでもこういう機器につきましてはスイッチを切ってやるということでございますから、死んだ機器の修理をする、こういうことを前提に十分注意を払っておるわけであります。しかしながら、今回の事故が残念ながら起こったわけでありますから、十二分に今後その対策に反映するために、今回そういう高圧を発生するような機器についてはもう一回そういうことを改めて明示をいたした、こういうことでございます。
  129. 網岡雄

    ○網岡委員 方向を変えますが、いずれにしてもやむを得ぬ場合は活線作業をやってもいいということになりますね。書いてある以上はやってもいいということになりますね。そうすると、保護器具というものが用意されていましたか。
  130. 石井幸孝

    ○石井説明員 先ほど申し上げましたように、ここに書いてあるのはやっていいという趣旨ではなくて、通常はやってはいけないということなんだけれども、万やむを得ざる場合にはそういうこともあり得るかもしれないからこういう注意が書いてあります。それで、それに対する保護具については、工機職場にありましてどうしてもそういうことをやらなければならない以外にもう万策尽きてやることができないとすれば、改めてそういう手配をしてやらなければいけない、こういうことでございます。
  131. 網岡雄

    ○網岡委員 それは全くうそですよ。器具はあるといっても、車両を修繕するときに使う、ゴムがここまできているグローブのような革手袋をはめてやるやつが一つあるということになっておるそうです。ところが、その工機現場の電気班はそれがどこに置いてあるか七人とも知らないのです。こういう状況なんですよ。それで、活線でないことを前提にすると言っておみえになりますけれども、ここにはちゃんと書いてあるわけですから、活線としてやっていくというんだったら大原則が書いてなければいけない。それがないということからいって、これは実態からいっても活線作業はずっと日常茶飯事に行われてきておるわけですから、この点については、一遍当局として、事故が再び起きないように、安全管理基準規程にも明記されているように、総括責任者のもとでちゃんと作業標準というものを個別的にやはり早急に定めるということをやってもらわなければいけないというふうに思いますけれども、その点について当局の今後の心構えというものをお聞きしたい。
  132. 石井幸孝

    ○石井説明員 高圧用の手袋は私ども聞いておるところではもう少しちゃんと整備されているように聞いておりますし、またそういうような作業をやるときには手順をもう一回変えなければいけませんから、十分そういう所定のものを使う手配をしてやるのが至当だと考えますが、そういうことでございまして、活線作業ということを前提にしない指導をしていたわけであります。  しかし、先生御指摘ございましたように、私どもといたしましては周知徹底を図っておったとは思っておりますけれども、残念ながらこういうことが起こったということは、やはり日ごろの指導とか、それから今後さらに、入念な機器のいろんな注意事項でございますとか、あるいはその作業の方法とかというようなことをもっと綿密に整備をするようにしてまいりたい、こういうふうに考えて取り組んでおります。
  133. 網岡雄

    ○網岡委員 最後に、この事故発生時間の食い違いですが、これはいずれも国鉄当局の公式文書ですけれども、最初は七月三十一日の十時四十分、それから二回目は、これまた当局側の公式文書ですが、十時二十分から二十五分、こういうことで事故発生時間が二つ発表されている。これなんかはまさに、一人の人間が死亡したという事故であるにもかかわらず、その事故の発生した時刻が二つも当局の公式文書で発表されるということは全くずさんきわまる。このことは国鉄の労務管理というものがいかに人命軽視になっているかということの端的なあらわれだと私は思います。  それからさらに、職場では笑いぐさになっているそうですけれども、例の故障が起きたハンダ場げ機械の下まわりに、下といいますか廊下のところに、こういうところにゴムを載せたそうですよ。これは絶縁という意味でしょうね。絶縁という意味でしょうが、ゴムを敷いた。ところが、工作現場の電気班が、一体これは絶縁状態になっているかどうか大丈夫かということで調べた。ところが、テスターで調べたら抵抗はゼロを示したそうです。これは、もしこれを信用してはだしで歩いたら死んでしまうのですよ、もし電気が通っておったら。電気を絶縁するために敷いたゴムが、電気を通すゴムを敷いておったということになってしまっておるのですよ。このこと一つを見ても、いかに国鉄当局の安全対策というものがずさんきわまるものであるかということが端的にあらわれていると私は思うのでございます。全くひどいですよ。そして、先行して行われていることはどういうことかというと点呼、それから先ほども触れましたリボンをやっておったらいかぬとか、工程第一主義、労務管理第一主義、そういうことによる指導ばかり先行しておるのですよ。  この工場に至っては、決算委員会質問があった一週間後にはもう本社から直行して、そして現場に配置をして、労務管理の規則について綿密に打ち合わせして、そして鷹取工場の管理者は労務管理をその指示のとおりにきちっとやったのですよ。そういうことはまず迅速に進んでいく。  しかし、安全対策理事、これはどうですか。あなた自身も答弁をしたのですけれども、この目の前で、権威ある社会労働委員会の席上で、基準局長は、安全衛生委員会が開かれていないことは十七条、十八条、二十三条違反だと言っておるにもかかわらず、三人も四人も入れかわり立ちかわり答弁した結果は、そのことの事実があるかどうかこれから調べましょうと、基準局からの答えが出てきてから調べるということは、あなた、おかしいじゃないですか。こういう姿勢が今の国鉄の安全対策に対する姿勢の根本をなしているのですよ。このことを改めてもらいたいということを質問して、おたくの方から総括的に一遍答えてもらって、私の質問を終わります。
  134. 坂田浩一

    ○坂田説明員 安全の管理あるいは人命の大事さということにつきまして今先生から御指摘ございましたけれども、私どもも、第一義に、まず職員の安全管理というものに十分に対処していくべく従来からも取り組んでまいりましたが、残念ながら今回鷹取工場で殉職者が出たことはまことに遺憾に思っております。  今後は、法に定める精神あるいはきめ細かい管理を通じまして職員の指導あるいはマニュアルの見直し、細かいところまで配慮してやる。再びこのような事故を起こさないように、本社を初め工場に対しても指導すると同時に、本社も一緒になってその再発防止に努力してまいりたい、かように考えております。
  135. 有馬元治

    有馬委員長 午後二時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時五十九分休憩      ————◇—————     午後二時三分開議
  136. 有馬元治

    有馬委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。永井孝信君。
  137. 永井孝信

    永井委員 午前中の私の質問の中で、労働省に対して、八月六日あるいは八月末、十月十六日、十月二十四日の四回にわたって、今問題になっている、午前中の質疑で問題になりました国鉄余剰人員処理に関する労使の紛争といいますか対立といいますか、円満な状態にないということについて、正常な労使関係を確立するために労働省に特段の御要請を申し上げてきたわけでありますが、午前中に申し上げましたように、その経過について労働省はどういう御努力をいただいたのか、初めに簡単にお答えをいただきたいと思います。
  138. 谷口隆志

    谷口説明員 今御指摘ございましたように、この三本柱の余剰人員対策につきましては、最近では十月十六日に社会党の先生方からのお申し越しがございまして、それをもとに、労働省といたしましては、まず事柄の性質上運輸省とも十分連絡をとりながら対処する必要があるということで、十月二十三日には労働大臣が運輸大臣に、この問題については特段の配慮をお願いしたいということで申し入れをされておりますし、当日私からも国鉄当局に対して、余剰人員対策国鉄再建にとって極めて重大な課題であり、広い立場から労使間の意思疎通を図りつつこの問題の解決に努められるよう要望をいたしたところでございます。また二十五日には、国労の組合にも来ていただきまして、意思疎通を図るような努力をしていただきたいという要請もいたしておりますけれども、現在のところ、この問題については当局、組合とも入り口のところでまだ話が進んでいっていないようなのが現状でございます。
  139. 永井孝信

    永井委員 きょうは国鉄総裁にお見えいただいておるわけでありますが、今労政局長が申し上げたように、私どもが、国鉄労使問題について円満に交渉が持てるように、そして円満な形でこの余剰人員対策なるものが処理できるようにということから、今申し上げたように労働省に特段の御指導をお願いしてきました。労政局長は、国鉄当局に対しても、もちろん労働組合に対してもそうでありますが、そういうことのいろいろな形の努力をしてきたということが今言われているわけでありますが、それを受けて総裁はどのようにお考えになっておりますか。
  140. 仁杉巖

    ○仁杉説明員 今先生御指摘のように、十月十日の日に労使交渉が打ち切られるというような事態になって、まことに残念でございます。これらにつきまして、労働省からも運輸省からもいろいろお話がございました。我々なりにできる限り円満な解決ができるような努力はいたしておりますが、今のところ双方、私の方も国労、全動労等もまだ話し合いの糸口がつかめないというのが現状でございます。
  141. 永井孝信

    永井委員 午前中の私の質問のときには総裁はお見えにならなかったので、私の質問の内容については直接聞いていただいていないのは残念でありますけれども、今総裁は、円満に話し合いができるように、交渉ができるようにということで努力しているが、糸口がつかめないと言われているわけですね。これは午前中に私、かなり突っ込んで申し上げたわけでありますが、十月九日の夜、あるいは十日にかけてといいましょうか、まさに真夜中でありますけれども、そのときに交渉の途中で当局側が黙って交渉の席を立ってしまって、それで交渉ができなくなってしまった。そうして、その十日の早朝に当局側から団体交渉の打ち切りという、当局側の提案に対する交渉をやっておって当局側から打ち切りですから、私は非常に異常だと思うのですが、そういうことがあって、今のような労使の抜き差しならぬ状況がつくり出されていると思うのですね。  その場合に、円満に物事の解決を図るための糸口というのは一体どういうことなのか。総裁として、その糸口とは何を指しておられるのか、明確にお答えいただけますか。
  142. 仁杉巖

    ○仁杉説明員 今の糸口というお話でございますが、この点については、私ども、今の提案についてもし説明が不足である、理解が不足であるというならお話はいたします、御説明はいたしますというふうには申し上げておりまして、その辺から何か糸口がつかめないかというふうに今考えている次第でございます。
  143. 永井孝信

    永井委員 その問題は関連があるから後でちょっと触れますけれども、ことしの四月三日にこの社会労働委員会において、国鉄の、当時過員と言っておりました、今みたいに余剰人員ではなくて過員と呼んでおったのですが、過員問題に関して私が質問をいたしました。そのときに、きょうお見えいただいている太田常務は、労使関係についてこのように答弁をされているわけです。  一つは、国鉄再建にとって労使協力が極めて重要であるという認識は変わっていない。もう一つは、いかなる困難な問題であっても、労使が必死に団体交渉に取り組んでいけば解決の道が開ける。このようにも言われておるわけであります。そして三つ目には、余剰人員の——このとき初めて余剰人員という言葉が出てきたのですが、余剰人員対応については、雇用安定協約とか配転協定などルールがあります。そのルールに基づいて対応しているところであります。こういう答弁が四月三日に、私の質問に対して行われておるわけです。  太田常務にお聞きいたしますけれども、今回の交渉で、太田常務が答弁をされたその答弁どおりのことがやられたと思いますか。
  144. 太田知行

    ○太田説明員 四月三日の時点では、余剰人員の規模がまだ明確でございませんでした。年度末を越したばかりでございますから特退人員も定かではございませんし、合理化の集計もまだ済んでいない状況のもとで申し上げたのでございますが、それ以後一カ月何がしかたちまして余剰人員の規模が確定して、約二万四千五百名というのが判明いたしました。その時点で、従来行っておりました活国策では不十分、それに加えて調整策が必要であるという判断に基づいて検討を行い、以後六月五日に基本的な考え方を示し、七月十日に具体的な条件を示して団体交渉に入ったということでございまして、まさに、四月三日の日に先生に御答弁申し上げましたような基本的なスタンスに立って、この余剰人員に対する諸施策を講じ、努力をしてまいったところでございます。
  145. 永井孝信

    永井委員 私があえてこの四月三日の太田常務の答弁を引用いたしましたのは、例えば第一項に言う労使協力は極めて重要であるということは、現在も変わっていないはずだと私は思っているのです。これから国鉄再建を進めていこうとする場合にそのことはより重要になってくる。そして、余剰人員対応については雇用安定協約とかいろいろなルールがある、そのルールに基づいて対応していくんだ、こう言われておるのでありますが、たとえ四月三日に把握できなかったような余剰人員の数が出てきたとしても、当局が十月十日にタイムリミットを求めて交渉する最終段階で、この当局の「つばめ」に書いてありますように、午前中も引用いたしましたけれども、十月十日までに「「不幸にして妥結に至らない場合には、当局として「雇用の安定等に関する協約」について重大な決意をもって臨まざるを得ない」旨を申し添え」云々ということは経過として書かれている。そうすると、そこには雇用安定協約とか配転協定などのルールがあって、そのルールに基づいてやっていくのだと言っておるのだけれども、当局は、そのときの問題点存在状況によっては、従来のどういう労使間のルールがあろうとも、そのルールは場合によっては無視をしていきますよ、それを破棄してでもやりますよという、いわば恫喝的な団体交渉になっておったと想定がされるわけであります。ここが一番問題なんですね。このことについて太田常務には、四月三日にこういう答弁をいただいて直接担当してきていただいているのでありますが、国鉄再建の大きな使命を担って総裁に就任されている総裁としては、この種の労使交渉における当局の提起の仕方、これは当局として当たり前だと思われますか、どうですか。
  146. 太田知行

    ○太田説明員 ちょっと前段にお答えをさせていただきますが、事実関係一言申し上げますと、余剰人員のいわゆる三本柱、退職制度の見直し、それから休職、そして派遣制度拡充、我々これを三本柱と呼ばせていただいておりますが、この三本柱はまさに従来にないルールをつくらんがための提案でございまして、こんな二万四千五百名という膨大な余剰人員を抱えるに至ったのも有史以来のことでございまして、従来のルールややり方では到底対応できないということで、新たなルールづくりを目指してまさにこの提案をしたということでございます。  それから、この十月九日の、当方から組合に対していろいろメモの形で物を申している経緯があるのでございますが、これは十月九日突如出てきたのではございませんで、先ほど申し上げましたように長い時間をかけてこの問題に取り組んできたわけでございますが、一番具体的な形で組合側に物を言いましたのが、六月五日の「余剰人員対策についての基本的な考え方」というメモでございます。この中にも、雇用安定協約というのは労使にとって一番大事な協約であるという認識のもとに、しかしながら、現在余剰人員を抱えているこの状況のもとで、全く何らの策も施さずして、無為にしてなおかつこの雇用安定協約を維持できる状況ではない、自助努力によってこれを維持しなければいけないという認識のもとに、私どもはこのいわゆる三本柱の制度の整備、有効な活用を前提にして雇用安定協約を存続せしめたいということを明確に述べまして、まさに労使協力して雇用安定協約の基盤を固めようではないかという前提のもとに具体的なルールづくりに入ったという経緯がありまして、以後相当な時間、四カ月にわたる時間をかけて協議をし、しかしながら、いよいよ期限に至って妥結に至らなかったということで制度実施に踏み切った。  非常にアウトラインでございますが、こういう経緯があるということを申し上げておきたいと思います。
  147. 仁杉巖

    ○仁杉説明員 今永井先生からお話がございましたが、私どもといたしまして、今の国鉄の置かれている立場が非常に厳しいということは御理解願えると思います。そうした中で、各方面から私鉄並みの効率というような要望もたくさん出ております。これらに対して今我々懸命に対応しているわけでございますが、いずれにいたしましても、現状を分析いたしてまいりますと、余剰人員ばかりではございません、累積債務とか年金の問題とかいろいろございますが、それらの中でも余剰人員問題というのは大変大きい問題だと私は認識しております。そういう問題を解決していくというふうに考えますと、やはり国民からいろいろな御援助、御協力を得なければならないと考えますが、そうした前提といたしまして、私ども国鉄といたしまして、できるだけの自分の努力を示すことが必要であるというふうに私は考えております。  そうした中におきまして、余剰人員問題につきましていろいろな対応がございますが、とりあえず先ほど先生が御指摘になりました三本柱というものは最低限必要であるということで、まずこの対策を打ち出したということでございます。これらにつきましてはでき得る限り組合協力も得てやりたい、本人の申し出ではあるけれども組合の御協力も得てやりたいというふうに考えておるわけでございまして、そういうために六月五日にあらかじめいろいろ考え方を示しまして、一月足らずでございますが、組合内でも御討論を願うということにいたしましたし、正式の提案は七月十日、それで十月十日ということでございまして、私どもといたしましては、この間に、まあ最低限この程度のことはぜひ御協力願いたいという気持ちでやってきたというのが基本的な考え方でございます。
  148. 永井孝信

    永井委員 言葉じりをとらえるようで大変恐縮でありますけれども、いろいろな労働条件の問題はあるのでしょうけれども国鉄職場で働いている職員雇用にかかわるものなんです、これは一番基本なんですよ。その雇用にかかわる一番基本になる重要な問題を労使話し合いをするときに、できる限り労働組合協力を得てという発想では私はだめだと思うのですね。何としても労働組合協力を得てという、そこの出発点から私はどうもちょっと歯車が狂っているような気がするのですよ。  そこで、その団体交渉の問題については最後のところで総裁にも申し上げます。時間が限られておりますから、その交渉過程で出てきました問題点について幾つ幾つも私が資料を見ましたらあるのですけれども、特徴的な問題についてまず申し上げてみたいと思うのです。それは当局の提案にもあるいは通達の中にも明らかにされていることでありますが、この余剰人員対策というのはあくまでも本人の希望であり、本人の申し出によるものだ、こういうふうにうたわれているわけですね。交渉経過でもそのように言われているわけです。ところが、当局のこの提案に至る決意というものは、二万四千五百名という過員が出てきているからこれを何とか調整処理をしていかないと国鉄再建はあり得ない、これはもう今不可欠の問題である、重大な問題である、こういうふうにいわば大上段に振りかぶられてこの対策が出てきた。そうすると、いろいろ各組合との交渉経過に出ておりますけれども、本人の希望による、あくまで強制、強要をしないということは、これは仮定の問題ですが、二万四千五百名という余剰人員の調整処理について当局の期待どおりの答えが出ない場合もあると思うのですが、そのときは一体どうなんですか、簡単に答えてくれますか。
  149. 太田知行

    ○太田説明員 まさに、先生が今おっしゃいましたようにこれは本人の希望を前提にしておりますので、にわかにこのぐらいであるという数字を想定することは必ずしも適切ではないと存じますが、私どもとしましては、少なくとも、既にこの九月に妥結しておりますところの五十六歳以上の本年度限りの特例の休職扱いの措置等でもって、できるならば一万名近い効果を出したいと思っておりますが、この依願休職とか出向等につきましては、受け皿の関係あるいは本人たちの利害の問題等々いろいろな要素がありますのでなかなか数字も確定できないのですが、できるだけたくさんの数の人が希望してくれるように望んでいる次第でございます。  なお、ちなみに派遣、いわゆる出向につきましては現時点で二千五百名分の受け皿が具体的に確促されております。そろそろその実務に入っております。なお、二千五百名でよしとするわけにまいりませんので、さらにこの数が拡大充実されるように、並行して関連のところに働きかけている次第でございます。
  150. 永井孝信

    永井委員 この問題も、後で関連しますから、これはこれでとりあえず置いておきます。  ただ、ここで確認をしておきたいのは、いろいろな目標数値はあるけれども、では、対象人員を含めて当局が募集の対象にする年代で希望をしなかった者については、一切不利益な扱いになることはないのでしょうね。これを一言だけ確認しておきたいと思いますが、どうですか。
  151. 太田知行

    ○太田説明員 効果の問題ですとかそれから指導、アドバイス、いろいろな問題をはらんだ御質問かと存じますけれども、効果の測定は、もちろん数字的にどのくらいの職員が希望してくれたかというのは大きな目安でございますけれども、決してそれだけではなくて、この指導、アドバイスに対する対応の仕方、いろいろな要素も総合的に勘案してみなければいけないなと存ずる次第でございます。  それから、あくまでも本人の同意でございますので、強制、強要はしないということは既に妥結した組合との間でもはっきりと約束をしておりますし、私どもの全職員対象にした通達でもそれはうたっております。しかしながら、やはり職員一人一人の者がどれだけこの制度を理解しているかという点については、単に通達を出しただけじゃ不十分でございますから、指導をやったりあるいはアドバイスをしたりというようなことはこれから積極的にやっていかなければならないと思います。やはりその努力の上で効果が実ってくるというふうに考えている次第でございます。
  152. 永井孝信

    永井委員 私が聞いているのは、当局がいろいろな指導をしたり説明したり、いわゆる募集行為の過程でいろいろなことがあるだろう、そのときに募集に応じてもらいたいと思っておっても本人の申し出、希望だからそういうことが当局の思惑どおりいかなかった、そのときに、希望してこなかった職員に対して不利益な扱いはしないでしょうねと聞いているわけです。一言で答えてくださ
  153. 太田知行

    ○太田説明員 強制、強要をしないということと裏腹でございまして、同意しないあるいは希望しないということがゆえに不利益があるということはございません。
  154. 永井孝信

    永井委員 問題はたくさんあるのですけれども、特徴的なものだけ挙げるのでありますが、その次に派遣の場合ですね。派遣の場合、当局の説明によると、総裁の命ずる業務の仕事に従事してもらう、こういうことになっておるわけです。派遣先において総裁の命ずる業務によって仕事をしてもらう。それでは向こうの受け入れる側の企業のいわゆる就業規則はどうなるのかと問えば、それは向こうの就業規則に従ってもらいます、こう言っています。何回か交渉をやっておるうちに、最後段階では、国鉄及び派遣先企業の双方の就業規則を適用する、こうなっております。  国鉄は御指摘のように公共企業体でありますし、職員は公務に従事するものとみなされておる。その公務に従事するとみなされておる者が、関連企業であっても民間企業に行って双方の就業規則に従うということは、労政局長、これはどのようにお考えですか。就業規則との関係
  155. 谷口隆志

    谷口説明員 まず労働関係法上、例えば公共企業体等労働関係法、公労法との関係で見ますと、公労法は公共企業体等の組合のあり方とか労使紛争の場合の手続等を規定しておる法律でございますから、特段問題はないと思います。関係のないことだと存じます。  あと、こういう形での派遣がどういう問題になるかということについては、私は直接担当じゃございませんけれども、職業安定法の労働者供給事業との関連等の問題もあろうかと存じますけれども、これはあくまでも事業として行われるものを禁止しておりますので、こういうケースは労働関係法上はさして問題がないのではなかろうかというふうに存じております。
  156. 永井孝信

    永井委員 僕が聞いているのは、労働関係法でいいますと、公労法を適用される職員労働組合法を適用される企業、その双方の者が一つ企業の中で働く、そしてそれが国鉄の就業規則を適用され、派遣先民間企業の就業規則も適用されるということは、私は理解が不十分かもしれませんが、どう考えても僕は納得できないのですよ。民間から民間へ行くのならまだわかるのですよ。公共企業体から民間企業でありますから、そこに、例えば現地でストライキが起きたらどうなるのかとか、いろいろな問題が出てくると思うのです。これは一体どのように理解をすればいいのか。中小零細企業の皆さんには悪いけれども、一般の町工場のことで労働関係法もそんなことは余り頭になかったとか、いろんなことが零細企業なんかに行くとありますよ。そういうところと違って、まさに国有事業である国鉄というところの当局が提案する中に、二つの就業規則を適用されるというようなことがあっていいのかどうなのかということを労働省に聞いているわけなんです。
  157. 谷口隆志

    谷口説明員 その辺の問題は、事実関係関係当局の方からお聞きしないと、私ども何とも判断できかねますので……。
  158. 太田知行

    ○太田説明員 それでは、この派遣のプロフィールを先に申し上げた方がいいかと存じます。  簡単に申し上げますと、国鉄職員としての身分を保有したまま関連企業等において業務に従事する、それで、そのすべての業務というわけでございませんので目的を限定しておりまして、関連企業の指導、育成強化でありますとか、人材の育成ですとか、国鉄の業務に関連する事項の調査研究でありますとか、締めくくりとしまして、国鉄法に定める国鉄の業務の円滑かつ効率的な遂行のために必要がある場合に行う、無制限な派遣を認めておるわけではございません。あくまでも国鉄関連する業務ということでございます。そういうことでありますから、派遣される職員国鉄職員の身分を保持したままで、身柄としてはその相手先に行って仕事に従事するというまさに二重性を持っておりますので、就業規則についても、先方の就業規則にも従うし当方の就業規則にも従う、こういうことに相なるわけでございますが、実際のやり方としましては、仕事の進め方や何かは、身柄が行っている先方の就業規則に従うことが多いかと存じます。ただ、双方の就業規則の間で明らかに差がある場合があろうかと存じます。そういう場合には、先方が有利であればそれはもちろんいいのですが、国鉄の方が有利であるならば国鉄の就業規則の定めに従うといった、そこは選択的に本人に有利なような扱いにさせていただいております。
  159. 永井孝信

    永井委員 国鉄の業務の関連することのうちで、指導とか人材の育成とかいろいろ言われたわけでありますけれども、当局の示した派遣のイメージという中には、専門技術的な作業の部門も入っているわけですよ。それらがすべて、国鉄の業務として国鉄職員派遣して遂行しなくてはならない、そういう業務の内容であるかどうかということは、私はどうも理解がしがたいのです。もし本当に国鉄の業務として、それを国鉄職員が行ってやらなくてはいけないということになると、そもそも民間企業でやっているのはおかしいということになるのであって、そこらは私はどうしてもつじつまが合うような納得の仕方ができな  これに時間をとるわけにいきませんので、次へ参ります。問題点だけ申し上げます。問題点については労働省の方で一回研究してください。これについては、そういう問題点は研究しておいてください。  次に、同じような問題で、問題点だけ申し上げますが、この派遣先で不幸にして労働災害に遭った場合は一体どうなるのかという問題提起に対しまして、労災補償は労災保険法の適用とする。国鉄職員は御承知のように国家公務員の災害補償を準用しておりまして、それを労使間で協定化しているわけでありますが、その協定化したものとの間にもしも差があるとするなら、国鉄の協定したものまで責任を持ちます、こういう形になっておるわけですね。ところが、この労災保険法あるいは労働保険の保険料の徴収等に関する法律によれば、国鉄職員は労災保険に加入することができないのですよ。労働保険の保険料の徴収等に関する法律によれば、この労災保険と雇用保険は、一元適用事業で分離できないことになっているわけです。これが当局の回答では、労災保険を適用して、なお国鉄の国家公務員に準用してつくっている協定に到達しない場合はその補償をするということは、一体法律上どのようにこれを理解したらいいのか。国鉄当局、答えてください。
  160. 太田知行

    ○太田説明員 労使間の団体交渉の中でいろいろ双方ディスカッションをしているわけでございますが、当事者でなければなかなかニュアンスがわかりませんので、今も先生御引用なさいましたが、大変失礼ですが、やや不正確な面があるように存じます。補足かたがた、当方の考え方をこれから申し述べたいと存じます。  先ほど言いましたように、派遣、いわゆる出向は、いわば二重国籍を持っているわけでございますので、いろいろなルールが二重適用ということになってくるわけでございますが、災害補償問題につきましても、その派遣された相手方の企業において業務に従事している実態でありますとか、あるいは相手方における危害防止のやり方と表裏一体にありますので、派遣先企業がまず第一義的にはその責務を負う、こういうことになろうかと思います。その場合の法的な災害補償制度というのは御指摘のとおりでありまして、労災法によるということになろうかと理解しております。一方、やはり国鉄職員としての身分は保持しておりますし、今御指摘になりましたように、国鉄の中には、やはり労災ですとか通勤災害に対する補償のルールが、協約がございます。そこで、それがまた適用に相なりますので、私どもとしましては、この両者を比較いたしまして、こちら側の方が有利な場合にはそちらを適用する、こういうことにいたしたいと存じます。  次に、徴収問題でございますけれども派遣職員雇用保険の方は、雇用保険法の適用除外というふうに理解しております。  そこで、その労災の適用を受ける、雇用保険の適用は受けない、こういうことになるのでございますが、今お話しありましたように、徴取手続の一本化、一元適用事業というカテゴリーがあると我々理解しておりますが、しかしながら、派遣された相手の会社が一元適用事業であっても、働いている労働者のその形態、どういうやり方、態様であるかということによって、労災保険だけを適用するということは可能であるというふうに我々は理解している次第でございます。
  161. 永井孝信

    永井委員 労働省に聞きますが、きょうは法制局は呼んでおりませんけれども、労災保険法によりますと、第三条で、「この法律においては、労働者を使用する事業を適用事業とする。」その二項で「前項の規定にかかわらず、国の直営事業、」国鉄ですね、これは労災保険の適用はしないということが書いてあるわけです。今、当局の答弁で言うと、雇用保険は適用除外だけれども、労災保険は適用できる、こう言うわけだ。それで、国鉄の監理委員会がこの間、中間報告的に提言をいたしましたけれども、そのときに大胆に、法律の弾力的運用を図る、こう言っているわけです。どのことを指しているのかわかりませんけれども、その監理委員会の言う法律の弾力的運用ということが、仮にこういう労災保険であるとか、あるいは例えば職安法であるとか、いろいろな問題がありますけれども、そういう法律まで勝手に弾力的に運用するところまで踏み込もうとしているのですか。労災保険の関係労政局長、答えてくれますか。労働省立場で、一体これはどういうことなのかということ。当局は、労災保険は適用できる、こう今はっきりと言っているわけだ。果たしてそれは法律的にできるのかどうなのか、そこを労働省立場から答えてください。
  162. 谷口隆志

    谷口説明員 労災保険の専門的な問題になりますと、私、担当の局長ではございませんので、ちょっと責任を持った答弁はいたしかねます。  先ほど派遣先の就業規則の適用等の問題等もございますが、これは担当のところにも十分言って、そういういろいろな問題と同時に、十分解明をいたしたいと存じます。
  163. 永井孝信

    永井委員 きのう質問をとりにきたときに、私は問題点だけは提起しておるわけですよ。それでこの労災保険の担当が来てないというのは、ちょっとこれは問題だと思うのだな。答弁ができないようなことだったら、質問できないじゃないか。(発言する者あり)委員長、ちょっと時間を中断してくださいよ。
  164. 寺園成章

    ○寺園説明員 労災保険の適用の関係でございますけれども、一般的には、派遣されました労働者が、派遣先事業の他の労働者と同様の立場で、その事業主の指揮命令を受け業務を行うという実態にあります場合において災害が生じましたときには、派遣先の事業主が災害補償責任を負うという考え方になっております。国鉄の場合におきましても、この趣旨に沿って実態的な判断をしてまいりたいというふうに考えております。
  165. 永井孝信

    永井委員 そこのところがわからぬわけですね。民間企業労働者が他の民間企業派遣された場合は問題ないと思うのですよ。ところが、今回の措置というのは国鉄職員としての身分を持ったまま派遣されるわけです。しかも、派遣されて業務につくのは、国鉄の説明によると、総裁の命ずる業務に従う、あくまで国鉄職員として業務を遂行するのだ、これはとりもなおさず公務に従事したものとみなす、こうなるわけです。そうすると、公共企業体の職員である者に民間企業に適用される労災保険を適用することが、労災保険法上問題がないのかと聞いているわけです。本当に問題ないのですか。
  166. 新村浩一郎

    ○新村説明員 労災保険の適用は、現実に業務につきましての指揮命令をしました事業主のもとで適用するということでございますので、今先生お話しの点につきましては特に問題ないと思います。
  167. 永井孝信

    永井委員 では、当局の提起してきた国鉄総裁の命によって業務につくということと、今あなたが言われた指揮命令権、労務指揮権というのですか、これとの関係はどちらが優先になるのですか。
  168. 新村浩一郎

    ○新村説明員 ですから、包括的な意味での労務に対しましての命令は国鉄の方でされるのかもしれませんが、現実の労務の提供につきましての指揮命令を行いますのが民間の事業主であれば、その民間の事業所に適用されておりますところの労災保険をあわせて適用するということになるわけでございます。
  169. 永井孝信

    永井委員 この問題でやればまた三時間も四時間もかかると思いますから、この質問は保留しておきます。労働省はもう一回きちっと研究して、後でもう一回、この問題の議論ができる場所をひとつ御配慮をいただいてやりたいと思いますから、この質問はこれでおきます。  次の問題点について申し上げます。たくさんあるのですけれども、今回の余剰人員の問題について、午前中に申し上げましたように、国鉄には幾つかの労働組合存在しておりますが、妥結をした労働組合との確認の中に、雇用安定協約を存続させる判断というのは、休職派遣の募集において、「定立された制度の実績測定を勘案し、本協定の締結組合である貴組合単位でその効果を測る。」ということがうたわれているわけです。これは裏返して言えば、有効性を発揮することによってのみ雇用安定協約を存続させるということになるというふうに、この当局の説明解釈では私は理解せざるを得ないわけです。そうなってまいりますと、協約存続のためには、組合が当局の想定する予定数に達せさせるための責任を持たないと効果を上げることは非常に難しくなってくる。しかしこれは本人のあくまで希望、申し出でありますから、そうなりますと、もし不幸にしてその予定数に到達できなかった場合は協約存続はあり得ないことになるのかどうなのか。  既に、この間参議院で我が党の目黒議員がこの問題について質問をしているわけでありますが、そのときに、来年の十一月三十日まで有効の協定について、それ以降は効果成熟を見て考えると答弁しているわけですね。これでは妥結しても妥結しなくても、結果的に当局の目的が達せられないと事実上その協約の存在というものはあり得なくなってしまう、こう思うのですが、これはどうですか。ひとつ簡単に答えてください。
  170. 太田知行

    ○太田説明員 労使間で時間をかけて本当に真剣な論議を重ねた末に、その協定とかそれに類する文言がつくられるのでございまして、その一断面だけを取り上げて御指摘いただきますと、非常に不正確になるわけでございます。短時間ではとてもその経緯を申し上げるわけにまいりませんけれども一言で申し上げますと、六月五日の日に、私どもは、全組合に対してひとしくこの余剰人員の問題に対する基本的な考え方を示しております。その中で、「この制度」、というのは三本柱でありますが、「この制度の早急な整備及び有効な活用が図られることを前提とし、当面においては、貴組合と結んでいる「雇用の安定等に関する協約」は存続することとしたい。」これが出発点でございます。そこで、妥結した組合との間では当然のことながら、締めくくるに当たりまして、出発点との関係はもう本当に真剣な論議の対象になったわけでございます。  結論的に申し上げますと、ここでは二つの条件、制度がつくられることと活用されるということがありまして、今日まとまったことによって制度の創設が行われる、あとはどう活用を図っていくかという問題が残るわけでございます。そこで、活用を測定するに当たりまして、組合単位に協定は結んでいるわけでございますから、その活用もやはり組合ごとに問題意識を持っていく、こういうことを確認しただけの当然のことだと我々は存じている次第でございます。
  171. 永井孝信

    永井委員 あえて申し上げますが、その協定の存続の問題ですが、この有効期間が来た時点で、それ以降はその時点における効果成熟を見て考えると、あなたは参議院で答弁しているわけです。そうすると、もしその時点で効果成熟が果たされてなかったら、その雇用安定協約の存続ということは、その存立の基盤が失われたとして、結果的に協約の継続はあり得なくなるという筋道にならないかと聞いているわけです。それはそうなるのかならぬのかだけ答えてもらえばいいです。
  172. 太田知行

    ○太田説明員 なかなか簡単にはお答えしにくいのでございまして、既に妥結した組合との間の雇用安定協約は期限の定めのある協約でございまして、来年までというもともと期限があるわけでございます。妥結していない組合というのは、これは本当にたまたまでございますけれども、期限の定めのない協約になっているということでございまして、したがって、その協約の有効性の問題であるとか存続の問題はやはり場合を分けて考えなければいけない、これはもうやむを得ないことでございます。  そこで、今お話しになりましたのは、先般参議院でお答えしましたのは妥結した組合との間の問題でございまして、つまりは期限の定めのある協約の問題でございます。そこで、まず三本柱のうちの二本柱の制度がつくられました、これから一生懸命活用を図ってまいります、来年期限が参ります、そのときにどうするかという御質問でございまして、それに対しては、これから一生懸命活用を図っていくわけでございますし、また協約を結んだ以上は活用を図ることについて組合側の協力も当然得られるものと確信している、基本的にはまず我々が、当局が責任を持って努力する事柄ではございますがという前提を持った上で、今この時点で活用が図られないとか図られるということを仮定して軽々に物を申し上げるのはやはり控えるべきだ、一生懸命努力するのが先決でございますから。しかしながら一般的に言えば、活用というのは双方の努力、なかんずく第一義的には当局の努力、そしてどれだけ運用が成熟するかにかかっているということを申し上げたのでございます。  それで、妥結していない組合については協約の性質が違うのでございますが、既に入り口のところにおいて協力が得られていない、制度ができていないわけでございますので、これは扱い方を変えざるを得ない、そこで破棄手続を開始せしめた。ただ、これは期限の定めのない協定等の取り扱いに関する協定、ちょっと長いのですが、というルールがあって、現時点はそこのスタートをしただけでございます。
  173. 永井孝信

    永井委員 時間がありませんので走って恐縮でありますが、この協定の扱い方というのは、私は今の答弁だけではどうしても納得ができないんですね。期限のある協定でも、それを継続するかどうかは労働組合協力のいかんによる、結果としてこういうことになってくる。協力するのは協定を結んだ以上は当たり前かもしれませんけれども、その協力をして、そういう雇用の安定にかかる重要な協定を存続させるためには、労働組合みずからが派遣の募集とか求職の募集などについて一生懸命努力をしなくてはいけないということがもし存在するとすると、本来労働組合の扱うべき事柄でないことまで請け負ってしまうことになる。それは本来の労使関係ではないと私は思うから申し上げているのです。これも、もう時間がありませんから、問題がきちっと整理できないままにおきます。  そこで、時間がありませんから最後になりますが、総裁にお聞きしたいのですけれども、午前中の私の質問で、いずれにしても団交が当局の方から打ち切り通告がされて、そうしてその打ち切り通告をされた労働組合は、十月十日以降三回にわたって団交の再開を申し入れている。しかし当局は団交に応じない。団交に応じようとしない理由は、既に他の組合と妥結したものをもとに当局は通達を出している。新たな制度が成立をした、その段階団体交渉に応ずるわけにいかないという趣旨のようであります。それでは、これから大変な国鉄再建を進めていこうというときに、労使が相協力しあっていくという場合に、そんな状態では再建ということはなかなか達成できない、だから団体交渉は速やかに再開すべきである、団体交渉が打ち切られたままで問題の処理は図れない。しかも、午前中問題にしたのでありますが、その妥結した組合はその主体性で妥結するのですからそれはそれでいいんですね、その労働組合のやったことは当たり前のことだ、そのことは正しいと思う。ただ、そこで問題になるのは、午前中のことをちょっと繰り返しますと、労組法の十七条では、四分の三以上の職員で構成する労働組合との間の協定は他を拘束することになっている。たまたま今団交が打ち切られている対応労働組合は七一・三%にしか達していない。しかし全体の中で七一・三%というのは圧倒的な多数なんですよ。それを裏返して言えば、当局の出した通達というのは、圧倒的な多数の職員に対して片方の妥結した内容で制度を成立させて通達をして、それに基づいて全部当局の施策として募集行為を行っていくということになれば、逆に少数で多数を拘束するということになってしまう。これは労組法の精神に反する、民主主義の基盤に反すると私は午前中質問をした。そうして、速やかに団体交渉を再開して、中身がどうなるかは労使関係でありますから我々は口を挟む筋合いではありませんけれども、速やかに団体交渉を再開することが、公労委に何回も続いて調停とかあっせんとかいろいろなことをやってきて、できるだけ円満に団体交渉でやりなさいということで、再三労使双方受諾して交渉してきた経緯からいくと、それが当面最も緊急な課題ではないのか。労働省はどう考えているかと私が問いただしたら、労働大臣もあるいは労政局長も、円満な労使関係というものが一日も早く回復するようにしてもらわなくては困る、速やかに労使話し合いのテーブルに着けるように、いわゆる団交の再開という言葉を使いませんでしたけれども中身としてはそういうことを望んでいきたい、このままの状態ではこれは問題があるという認識を示されておるわけです。そうすると、それを受けて国鉄総裁として、これから大変な国鉄再建を図ろうとするときに、団体交渉を速やかに再開する気持ちに立ってもらえるのかどうなのか、そこのところを総裁にお聞きしたいと思うのです。
  174. 太田知行

    ○太田説明員 前段のちょっと経過のところだけ、私から簡単に申し上げます。  団体交渉を打ち切った理由というのは、これは大事なポイントになるのでございますが、私ども団体交渉で言っていることが、正確に先生にどうも伝わってない感じがして非常に残念でございます。そこで、団体交渉をなぜ打ち切らざるを得なかったかというのを一言だけ申し上げますと、決してほかの組合と妥結したからという単純な理由ではなくて、長い時間をかけ密度の濃い交渉をやってまいりましたし、三本柱でスタートしたものが、最後は二本柱に至るように我々は事柄をまとめるための最大限の譲歩もやってまいりました。これ以上譲歩をすれば調整策が有効に機能しないというところに至るくらいの譲歩もやって、事の円満な解決を願ってきたのでありまして、しかも国鉄の置かれた状況は大変厳しい、これ以工事態の遷延は許されないという背景のもとに、総合的に勘案をいたしまして団体交渉を打ち切り、そして制度実施に踏み切らざるを得なかった。そこのところの事の評価はいろいろおありでございましょうが、事実としてひとつ御認識をいただきたいと心からお願いする次第でございます。  そういうことでございますから、我々は速やかに、同じ内容で妥結していない組合が妥結してくれることを望んでおりますし、団体交渉は打ち切りましたけれども、実質的な話し合い労使のやりとりの場というのはいろいろあるわけでございますし、ぜひそういう形で一刻も早く、同じ内容で妥結することを望んでいる次第でございます。
  175. 仁杉巖

    ○仁杉説明員 今御指摘がありましたが、私としましては強いて事を構えたいという感じを持っているわけではございません。これからいろいろ進めていく場合にはこういういろいろな問題点がございますので、労使協力が必要であるという認識はちっとも変わっておるわけではございません。ただ、先ほど申し上げましたが、余剰人員の問題は今後に大変尾を引くなかなか難しい問題でございます。私どもといたしましては、今太田常務も説明いたしましたが、いろいろな面からまあこの程度のことはというようなつもりで、しかも六月にあらかじめお話をし、七月十日に提案し十月という、三カ月という時間をとってきた、その間に、これが雇用安定協約の基盤になるんだというお話も繰り返し申し上げているという交渉経過がございます。そうした中でこういうことが起こったのはまことに不幸だと思っておりますが、現時点で、先ほど申し上げましたが、円満に進めてまいりたいという気持ちはございますが、それを今の段階交渉再開というような形に持っていくということは非常に問題があろうかと思いますが、今何かのきっかけをつかみたいということを私どもとしても考えておるところでございます。
  176. 永井孝信

    永井委員 七一・三%の職員で構成する労働組合との間に団交がなくて、そして当局の通達が出された、それによってその七一・三%の職員もその対象とするということは、当局の広報紙にはっきりと書かれているわけです。これがまず一つ異常なこと。  そして、太田常務がいろいろ言われましたけれども、私は、団交の席に立ち会ったわけではありませんから、団交がどんな経緯で打ち切られたかということを細かくここで論争するつもりはないのです。しかし、団交で三カ月間総裁は誠意を持ってやってきたと言われるけれども組合側の話を聞けば、八月上旬に出した解明要求は三十三日間も保留されているわけです、回答がないわけです。これでは団体交渉は進まないでしょう。そうして、総裁、聞いてくださいよ。もう一つは、誠意を持ってとことん努力をしたと言うんだけれども、その誠意を持って努力を相手がしてくれたかどうかは、相手側がその誠意を酌み取ることができて初めて誠意ある団体交渉になるのですよ。当局側が何ぼ一生懸命誠意を持ってやったとしても、それについて片方の当事者は全く誠意がないという見方では、本当の誠意ある団体交渉と言えないわけです。これは労働組合に対しても言えること、お互いに言えることだけれども、相手側がその誠意を認めるということがあって初めて本来の団体交渉になるわけです。そして労働大臣も言われているように、今のままの状態は問題がある、速やかに労使がこの問題について話ができるように、いわゆる団交が再開できるようにするのが一番望ましい、こういうことを言われているわけです。  国鉄労使関係というのは、中小零細企業にも与える影響が極めて大きい。そうすると、理由のいかんを問わず、当局側が団交の打ち切りを通告してきてこうなってしまっているわけだから、当局側が団交の再開に応じるというのが本来の円満な労使関係をつくる筋道ではないのですか。しかも、その団交が打ち切られたままで組合員がその適用を受けるということについては、あえて言うなら労働組合の否定につながる。否定につながるということになれば、これは明らかに不当労働行為に発展すると言わざるを得ない。だから団体交渉を速やかに再開すべきだし、今も答弁の中にありましたように、妥結を一日も早くしたい、こう言われるのだけれども団交を再開しないで話し合い、妥結、こんなことはできっこないわけです。妥結ということはあくまで団交の場を通して協定するわけだから。僕は中身がどうなっていくのかわかりません。わかりませんけれども、速やかに団交の再開の決断を総裁がすべきだと私は思うのですが、もう一回その決断を聞かしてください、どういう決断をお持ちになりますか。
  177. 仁杉巖

    ○仁杉説明員 先ほど先生からも御指摘がございましたように、お互いに双方誠意を持って話し合うということが必要である、これは私どもももちろん誠意を持って話し合うことは当然でございますが、労組の方でもいろんな事情を勘案していただきたいということを考えるわけでございます。  現時点におきましては、先ほどお答えいたしましたように、雇用安定の基盤というものをきちっとしていきたいということで、とりあえずここまでの三本柱の案については応じてほしいということを繰り返し言ったわけでございますが、ついに理解をすることはできなくてまことに残念でございます。  先ほども申しましたように、私どもといたしましては、何とかこれをうまくいくように、団体交渉の中でなくても話し合いの場はあるわけでございますから、そうした中でいろいろやってまいりたいというふうに思っております。
  178. 永井孝信

    永井委員 あえて恐縮でありますけれども、仲よしクラブじゃないのですから、話し合いで物事の処理ができるという組織にはなっていないのです。あくまで団体交渉を通して問題の処理を図ることは、労組法の建前からいっても公労法の建前からいってもはっきりしておるわけです。だから団体交渉事項まで定めてあるわけです。派遣をしたり休職にしたりすることが労働条件の変更でないとは言えないんだから。だから当局も提案をしてきた。そうすると、いずれにしても組合側が、よし、それなら団交やめた、こう言って、当局が打ち切るのならうちもやめた、こう言っているのならいいのだけれども組合側は直ちに団交を再開しようと、三回も書面で申し入れているわけです。団体交渉を申し入れるということは、この当局の提案を一〇〇%撤回するとかなんとかというところまでを求めているとは思えないのですよ。団体交渉によって初めて問題の処理を図ろうという熱意があるから、三回も書面で申し入れている。これが団体交渉として受け入れることができない、団体交渉を再開できないという理由は、私にはどう考えてもわからない。これでは円満な労使関係なんてあり得ないじゃないですか。口を開けば円満な労使関係、円満な労使関係、こう言ってきたのだから、そして円満な労使関係国鉄再建にとって不可欠である、こう言ってきている以上、団体交渉に応じるのが当然の務めではないのですか。  労働省はこの問題、労使関係をどうお考えになりますか。大臣答弁も踏まえて労政局長、もう一回総裁の前で答えてください。
  179. 谷口隆志

    谷口説明員 午前中大臣がお答えいたしましたとおりでございまして、国鉄余剰人員対策は、今後の国鉄再建に直接つながっていく非常に重要な問題、国民的課題あるいは国政上も非常に重要な課題でございますので、一般的に申し上げますと、そういう非常に重要であるということを労使がよく認識をされまして、その認識の上に立って意思疎通を図りながら解決をしていただきたいということが私ども基本的な考え方でございます。
  180. 永井孝信

    永井委員 労働省は今のような御見解をお持ちなんです。労働省国鉄に命令するとかなんとかという関係ではないかもしれませんけれども行政当局がそこまで踏み込んで、円満な労使関係の確立を求めて態度表明をされているわけでしょう。国鉄総裁、組合団体交渉に応じないというのなら別ですよ。組合団体交渉をやろうと三回も申し入れているんだから、団体交渉のテーブルにまず着いて、問題の処理、早急に解決を図るということをやるのが私は当たり前だと思う。もう一回、総裁答えてください。
  181. 仁杉巖

    ○仁杉説明員 今繰り返して御答弁しているとおりでございまして、私どもは、もう六月、七月という段階を踏みまして、いろいろ組合にも言い分はあるかと思いますが、我々としては誠意を尽くして交渉を進めてきた。そしてその中で、先ほどと同じことを繰り返しますが、将来の雇用問題にも絡む重要な問題なので、この辺のところはひとつのんでほしいということを随分お話ししたのでございますが、御理解を得られなくてこういう事態になっております。私どもも事を構える気はございませんが、労組の方でも十分お考え願って、我々も何とか手がかりをつかみたいとは思っておりますが、そういうふうな状況の中で努力をしてまいるつもりでございますので、よろしく御理解を願いたいと思うわけでございます。
  182. 永井孝信

    永井委員 これだけの重要な課題であるだけに、打ち切り通告を行った時点までの経過はさておいて、労働大臣も午前中の答弁で、過去のいきさつにこだわらずにと言われた。だから、それこそ過去のいきさつにこだわらずに、労働組合団体交渉をやろうといって申し入れてきているんだから、団体交渉のテーブルに着くということは、むしろ、じゃあやってみようということで、当局が本当に解決の糸口をつかみたいと思っていろんならやるべきじゃないのですか。私は至極社会的に常識的なことを言っているのです。戦後の労働運動も四十年間続いてきているわけだから、その中で積み重ねられてきた労使関係というものはおのずから日本には存在をする、経済発展がここまで来たのは円満な労使関係があるがゆえだということまでも言われている。そんな中で、国有の鉄道である国鉄が、頑として団体交渉に応じないということは本来あり得べきことではない、私はこう言っているのですよ。総裁、そこは決断できないですか。組合はやってほしい、やってくれといって申し入れているわけだから、それをあえてさらに無視をしていくんですか。ここのところは非常に重要なことだから、私は繰り返し言っているわけです。そのことについて団交再開とかなんとか答弁できないということなら、何のための国会審議がわからなくなってしまうと僕は思うのです。
  183. 仁杉巖

    ○仁杉説明員 今までの経過並びに今のお話を伺いましたが、現時点におきまして、私の判断といたしましては、もう少しこの状態を見守ってまいりたいというふうに考えております。
  184. 太田知行

    ○太田説明員 補足的に申し上げます。  労使話し合いというのは、もう永井先生よく御存じでいらっしゃるように、いろいろな場の設定がございます。それは例えば再建労使会議でありますとか、事前協議でありますとか、実質的な話し合いとか、いろいろな意思疎通の場を持ちながら、事柄によりましてはそれを組み合わせながら今日まで労使関係を展開してきているわけでございます。それはもう先生よく御存じのことでございます。今回もまさに労使の間の、これは一こま一こまの話でございまして、本来は労使にお任せいただくのが私は一番いいかと存じますが、しかしながら、現時点におきましては、先ほど来総裁がお答えし、私もお答え申し上げているように、団体交渉を尽くし、時間をかけ、そしてもう制度が定立、実務はスタートしておりますので、団体交渉を再開するというわけにはまいりません。  ただ、先ほど言いましたように、一刻も早く参加してもらいたい、同じ内容で妥結してもらいたいという気持ちは十二分にあるわけでございますから、そこをどうほぐしていくか、どう回していくかというためにまさに労使が専門家としての知恵を出すべきだ、それは今申しましたようにいろいろな歴史、経緯、方法があるわけでございますから、そこはお任せいただいて、相互に知恵を出して一刻も早くまとめるようにするというのが一番望ましいのではないか。現に私どもは、いろいろな意味話し合いをし、打開に努力をしておるわけでございますので、ここは労使努力を見守っていただくというのが一番ありがたいことだと存ずる次第でございます。
  185. 永井孝信

    永井委員 労働組合の側から聞きますと、そういうための話し合いが積極的に行われたというふうには私は聞いてないのです。事実は私はわかりませんが、そう聞いてない。今、制度がもう定立をして制定されたんだから、それに直ちに参加をしてもらうという前提と、こう言われるわけです。そうすると、当局の言い分を私なりに解釈すると、当局が既に通達を出したものを無条件に認めるということを言わない限り団体交渉のテーブルは開けない、こういうことになるのですね。これでは、私が言っているように労組法の十七条の精神に反するのではないのか。七一・三%の組織人員を持つ労働組合に既に決まったものを押しつけるということは、労組法の十七条に違反をするのではないのか。仮に団体交渉を開いて、当局の求めているように、当局の定立した制度そのものをそのまま認めることになることも、それは可能性の問題としてあるかもしらぬ。しかし、制度ができたからそれを認めるということになると、国鉄の持つ制度を改善するとか改定するとかいうことは当局側からの発動で提案することもあるだろうし、組合側がその制度の改変を求めて要求することもある。だから、制度ができたから団体交渉には応じられないということの理屈にはならぬと私は思うわけです。そこら辺のところを、結果としてはどうなるのか私はわかりません、労働組合の当事者じゃありませんから。しかし、少なくとも、今までの長年の国鉄労使関係におけるいろいろな積み重ねを大切にし、これから再建を目指していくという立場に立つならば、団体交渉を開くという決断をするのが総裁の任務じゃないんですか。そのことを僕は求めているのですよ。もうこれ以上言いません。どういうことになるのか、一回、関係理事もいるわけですから……。
  186. 仁杉巖

    ○仁杉説明員 先ほどから繰り返して申しておりますとおりでございまして、私といたしましては、現時点でいろいろな過去の経緯を踏まえまして決断をいたしたということでございますので、もう少し労使話し合いといいますか、そういうものを見守っていただきたいというふうに思うわけでございます。(発言する者あり)
  187. 有馬元治

    有馬委員長 永井君、どうですか。     〔発言する者あり〕
  188. 有馬元治

    有馬委員長 今、与野党の理事間でお話し合いを願いまして、この問題の扱いは、今までずっとやりとりをやってきた経過を踏まえながら、双方誠意を持って、協定ができるような話し合い誠意を持ってやる、こういうことでひとつこの事態はおさめていくべきじゃないかと思います。
  189. 永井孝信

    永井委員 ありがとうございました。  国鉄当局にも厳しいことを言いましたけれども国鉄を私自身も愛しています。国鉄再建を図るために、あえてこのような状態のままでいくと大変なことになるということから問題を取り上げておるのでありまして、委員長の権威を私ども守っていくという立場から、今の委員長の御発言によって、私の質問を終わらせていただきます。  どうもありがとうございました。(拍手)
  190. 有馬元治

    有馬委員長 浦井洋君。
  191. 浦井洋

    ○浦井委員 国鉄当局に私も冒頭から申し上げておきたいのですけれども、私も午前中この問題を取り上げました。早く団交を再開して、労働組合の方はやってほしいと言っておるわけでありますから、当局も誠意を持って当たるということを強く要望をしておきたいと思います。  そこで、午前中も取り上げられた問題でありますけれども、七月三十一日に国鉄鷹取工場の坂井亨一さんが感電死されたという労災事故の問題であります。まず最初に国鉄当局に聞きたいのですが、どういう状況で事故が発生したのか、原因は一体何なのか、ごく簡単にひとつ……。
  192. 石井幸孝

    ○石井説明員 お答えいたします。  今回の鷹取工場の死亡事故につきましては、大変本人並びに家族にお気の毒なことであり、私どもとしても大変残念なことでございますが、この原因につきましては、鷹取工場の電機職場に電車のモーターの修繕をいたしますいわゆるライザーハンダ揚げ装置というのがございまして、これの修理を本人、共同作業者と二人でやっておったのでございますけれども、数回電源を切り入れいたしまして作動を確認しておりました。その後、やはり作動いたしませんので、本来ならば電源を切って細部の点検なりをするべきところでございますけれども、たまたま通電状態で本人が高圧回路周辺の点検を行ったようでございまして、その際に、左の甲が高圧部に触れて感電したというふうに想定してございます。
  193. 浦井洋

    ○浦井委員 どうも、本人が通電状態のまま修理作業を継続したので本人の責任だというような言い方でありますけれども、私も現場を見に行ったわけでありますが、ライザーハンダ場げ装置というのはしばしば故障を起こしているわけですよ。一体これは何年製の機械なのか、また耐用年数はどれくらいなのか、聞きたいのです。
  194. 石井幸孝

    ○石井説明員 お答えいたします。  このライザーハンダ場げ装置を製造いたしましたのは四十五年でございます。したがいまして十四年ぐらいたっておるかと思われますが、この機械につきましては、償却上の年数とかいうものは十二年とかいうような勘定をいたしますけれども、実用上こういうものは十数年は十分使える機械というふうに考えております。
  195. 浦井洋

    ○浦井委員 昭和五十八年には五回故障を起こしており、ことし、五十九年にはもう既に三回故障を起こしておる、こういう報告をもらっておるわけでありまして、経済上の耐用年数は十二年であっても、作業能力といいますか、機械の形態からいってもこれはかなり古いものであるということは言えると思うわけです。  それからもう一つ、私、写真を持ってきたのですが、置かれておる場所が非常に狭いわけですね。何だったらこれを見てください。——少し肥満をした人であれば、取っ手をあけて中の配電盤をさわるというようなことは、もう狭くて狭くてかなわぬということを現場の人が言っておるわけなんです。これもお認めになりますね。  それからもう一つ、これは午前中も出たように思うのですけれども、作業指示の問題です。このライザーハンダ場げ機というのは高圧機器に入るわけですね。これはちょっと確認しておきたい。
  196. 石井幸孝

    ○石井説明員 まず狭いという件でございますけれども、この写真にございますように、電車のモーターの修繕でございますから、作業者がいる側ではなくて、こちら側の前面が作業をするときに常時使うところなんですね。それから、ここは観音開きの戸がございますけれども、これはこういう故障をしたようなときに専門家がたまたまあけるところでございますから、工場構内もそうスペースがあるわけでございませんので、通常使うところは十分な広さをとっておると考えております。  それから、高圧機器かどうかということでございますけれども、工場にはいろいろな機器がたくさんございます。車両の修繕をしている機器がたくさんございまして、中には内部に高圧の電圧が発生するような機器もあるわけでございますが、そういう意味の機械の一つだということをお答えさせていただきます。
  197. 浦井洋

    ○浦井委員 あれこれ言われるのですけれども、一々反論しておると切りがないのですが、観音開きのところをあけて修理をしておって感電死されておるわけでしょう。だからそこが狭いと私は言っているわけですよ。  それから機器も、基準局、監督署の方でも高圧機器だとはっきりと言われているわけですよ。それはごちゃごちゃ言わぬでもいいですよ。高圧機器だということになると、労安則三百四十二条以下に基づいて作業をしなければならぬ。作業の指示は一体どうなっておったのか、これはどうですか。
  198. 石井幸孝

    ○石井説明員 先ほどもお答えいたしましたように、こういう種類の機器は、中に内部に高圧を出す機器がたくさんあるわけでございます。家庭のテレビ等でもそういうものがございますが、したがいまして、こういうものの修繕、点検をやる場合には、あくまでもスイッチを切って死んだ状態にして点検、修理をするというのが通常の作業でございますし、そういう指導をしてございます。したがいまして、高圧を発生している状態で高圧活線作業をやるとか、そういうような作業形態にはならないと考えております。
  199. 浦井洋

    ○浦井委員 それはだめですよ。要するにこの機械は、るつぼのような格好で、その中で四千五百ボルトぐらいで溶かして、そしてモーターに連続的にハンダづけするという格好になるわけでしょう、簡単に言えば。だから、これは明らかに高圧機械であるし、当然ちゃんとした規則にのっとった作業指示がなければならぬわけなんですよ。ところが、前の日も簡単に修理に行けと本人さんは指示をされておるし、その日もまた故障したので行けというような格好で、これは明らかに規則に違反をした作業指示の仕方しかしておらぬということが言えると思うのです。  それから、これは午前中にも出ましたけれども、アンケートなどを見ますと、あなたはそう言われますけれども、工機職場の電気班十名の実態調査をすると、日常作業で管理者から通電作業をしてはならない、活線作業をしてはならないなどの指導を受けたことがありますかということに対して、あるというのは一人なんです。ほとんどないというのが二人、全くないというのが七人。その次に、過去にライザーハンダ場げ機の作業で通電状態で作業したことがありますかということに対して、あるという人が五人もおるわけなんです。  だから、こういうことだけ見ても、あなたが冒頭に言われたように、本人の不注意というようなことではなしに、作業をする上で活線近接作業になってしまうというような性質の作業であるわけなんです。こういう作業状態が一般的にあったというふうに、私は現場に行って確認をしてまいりました。こうした職場実態を果たして職場管理者は知らなかったのか。このときの同じアンケートで、知らなかったと思うと答えた人が四名で、六人の人は知っていたと思うと答えておるわけなんです。管理者が知らなかったということになればこれは管理者失格で、いずれにしても実態としては、ライザーハンダ場げ機の修理というのは、活線近接だけでなしに、もう一つ高圧がついて、高圧活線近接作業になる可能性が非常に強いわけなんです。その修理をする指示をするときには、あなたは家庭のテレビというようなことで何かいかにも大したことないようなことを言われるけれども、当然安全対策の指示がなければならぬ。それを欠いていたところに管理者側の管理体制の不十分さといいますか、責任があると私は断ぜざるを得ないのであります。どうですか。
  200. 石井幸孝

    ○石井説明員 先ほどから申し上げておりますように、工場の部品を修理する機器は、内部を見ますと、高圧を発生する機器というのが幾つかあるわけでございます。したがいまして、この種の電気機器はスイッチを切って点検整備、修理をするというのが当然のことでございまして、そういう指導をやることが非常に大事なことでございます。こういう指導は、例えばこの作業者等につきましても、安全の心得を十分周知徹底を図るとか、あるいは新人教育とか、あるいはまたその職場で日常の指導の中でやっております。それから、この作業にかかることに関しましても、前日あるいは当日に上司とその辺の打ち合わせも十分した上で、この作業にかかったわけであります。
  201. 浦井洋

    ○浦井委員 それはあなた、知らぬで言っているのか知っておって言っておるのか知らぬですけれども、そんな十分な打ち合わせをしてやったわけではないわけなんです。朝、作指と言われる方からきのうと同じように行ってくれというようなことで、はい、そうですかということで行って、軍手をはめてやっておるわけでしょう。全くそういう点での管理者としての責任というものは、私はそこで発生してくると思うのです。  そこで、その次の問題で、検電器とか絶縁保護具の問題ですけれども、この鷹取工場で出しておる「安全作業心得」によりますと、「高電圧作業でやむを得ず活線、又は活線近接作業を行うときは、必ず検電器によって通電の有無を確認する。」というふうになっておるわけです。だから、まず検電器を亡くなられた坂井さんに持たせておったのか。それからもう一つ、「高電圧作業には、所定の絶縁保護具を使用する。」というふうになっておる。その絶縁保護具は備えであったのか。この二点はどうですか。
  202. 石井幸孝

    ○石井説明員 先生お話のございました鷹取工場の「安全作業心得」でございますけれども、これは、この該当の職員のような、工場の設備を保守する作業の職場にかかわる電気の作業に関してでございまして、それでここにございますように、その(1)と(2)で、こういうような機器については必ずスイッチを切って、殺した状態でその点検なり修理をするということが大前提なんでございます。したがいまして、通常は、こういう修繕をやるときにはこういう高圧活線作業にはならないわけなんです。それで、ここで(3)の高圧活線作業がどうのこうのと書いてありますのは、そうは申しましても、例えば災害のときのどうしても高圧でやむを得ず何かやらなければいけないとか、そういうような、それ以外ではできないような作業のときには十分保護具とかそういうものを使うべきであるということを言っているので、通常の作業では、スイッチを切ってある限りにおいては高圧作業にはならないわけなんでございます。その場合には、職場にその必要なための保護具というものは常備されておるわけなんでございます。
  203. 浦井洋

    ○浦井委員 その根本のところを——それなら具体的に、坂井さんは検電器を持っておったのか。それから保護具をつけておったのか。どうですか、端的に。
  204. 石井幸孝

    ○石井説明員 したがいまして、この作業は高圧活線作業という概念ではなくしてスタートしておりますから、持っておりません。職場には備えつけがございます。
  205. 浦井洋

    ○浦井委員 いや、備えつけといっても、事故後ちょっとそれに類するようなものを備えただけで、これは鷹取工場の労働者が一般的にそこらの配線を常日ごろさわっていたということがアンケートの中で出ておるわけなんですからね。だからこれは、あなたはそう言われますけれども、あれから今月、十月二十五日、二十六日、労安則に基づいて電気機械器具に対していろいろなアースをつけるというようなことが鷹取工場内で行われておるらしいのです。ふだんは、幾ら要求しても、金がない、金がないというふうに言っておるくせに、こういうことになってくるともうどんどんつける、そして専門の労働者から見ると、こんなところにはアースが要らぬのにと思うような不必要なところにもつけておる。全くこれは、管理者というのは労安法なり労安規則というようなものを理解しておらぬ、少なくともこの事故が起こって問題になるまでは理解しておらなかったというふうに言われても仕方がないような状態が出てきておるわけですよ。  それからもう一つ、作業指揮の問題ですけれども、高圧活線作業であるとかあるいは近接作業を行うときには労安則の三百五十条、これはあなたは、違うんだ、こういう作業はあり得ないのだということですから話が皆すれ違うのですけれども、ここに電気工事の作業を行う場合の作業指揮の規定があるのです。これも当然のように守られておらぬわけでしょう。作業の指揮者は定められておりましたか。
  206. 石井幸孝

    ○石井説明員 先ほども申し上げましたように、高圧活線作業ではございませんが、この職場の電気関係の作業は二人組みになっておりまして、今回も、一人が班長格というようなことで、二人の作業でやっておりましたと聞いております。
  207. 浦井洋

    ○浦井委員 二人というのは亡くなられた坂井さんも入れて二人でしょう。それで坂井さんがいわゆる責任者といいますか房心ですよね。これは作業をさせられる方であって、決して作業を指揮する人ではないわけでしょう。労安則三百五十条というのは「労働者にあらかじめ作業の方法及び順序を周知させ、かつ、作業を直接指揮すること。」こういう格好になっていて、これは作業をしている人ではないわけです。坂井さんは当然この立場にはないわけなんですよ。指揮される方の労働者の二人のうちの一人である、こういうことでしょう。話が微妙に食い違ってはおりますけれども、そうでしょう。
  208. 石井幸孝

    ○石井説明員 私ども、鉄道工場の作業形態といたしまして、グループで作業をする、そのうちの例えば房心とか班長というのが、作業をもちろんやりますけれども、指導あるいはその作業のリーダー格として指揮をする、こういうふうに考えております。
  209. 浦井洋

    ○浦井委員 それはおかしいですよ。鷹取工場、国鉄の現場には労安則が適用されるわけでしょう。あなたは、ピュアーな高圧活線作業あるいは活線近接作業ではないので、もともと禁則になっておるから、スイッチを切って作業をすべきだという前提に立たれるから話がかみ合わぬようになるわけです。しかし、現実に四千五百ボルトの電圧の電流が流れるというような、後で基準局長に聞きますけれども、これはもうだれが見ても明らかに高圧機器なんですよ。だから当然、労安則を適用してそれをきちんと守らなければいかぬ。鷹取工場でつくっておられる「心得」もそれに基づいてつくらなければいかぬわけなんです。そしてそれを労働者に周知徹底させなければいかぬ。それをこんな状態が許されておる。たまたま感電死されたのは坂井さんではあるけれども、こういうような古い機械で狭いところで、しかも工場の中の一般的な認識でやったら、だれが感電して死亡しても不思議ではないというような条件がそろっておると私は言わざるを得ないのです。こんなことが許されるのですかね。
  210. 石井幸孝

    ○石井説明員 先ほども何遍もお答えしておるとおりでございますけれども、「安全作業心得」に最も大事な基本的なこととして、このような電気機器はスイッチを切って点検修理するというふうに明示をしておりまして、そのように指導しております。残念ながら今回はそのようなことが、結果としては死亡事故が発生したわけでございますから、周知徹底をもう少し十分やるべきではなかったかという反省はしておりますけれども、そこは一番基本的で大事なところだというふうに考えております。
  211. 浦井洋

    ○浦井委員 だめです。私は納得いたしません。坂井さんのお父さんも、高砂工場を昨年でしたか退職されたわけで、親子ともずっと国鉄労働者であるわけなんです。その方が書かれた手記といいますか、それを読ましていただいたんですけれども、それによりますと、「それでは亨一は勝手に死んだというのか。だれの責任かをはっきりさせるために、訴訟するより仕方がない」というようなことも書かれておるわけなんです。しかも、一たん遺族の方に工場葬にするというふうに言いながら、費用は全く出しておらぬ、負担しておらぬというようなことで、全く国鉄のやることは一つ一つ家族の方の不信感を強めておる。まず、やはり鷹取工場に、管理者の側に坂井さんを感電死に追い込んだ責任があるんだということをはっきりと認めて、そして遺族の方にも誠意のある態度を尽くすべきではないか、示すべきではないか、私はそう思うのですが、どうですか。
  212. 石井幸孝

    ○石井説明員 先ほど原因についてはるる御説明を申し上げたとおりでございます。  私どもといたしましても、冒頭に申し上げましたように、今回の事故は御本人並びに御遺族にとって大変悲しい出来事であり、工場、本社といたしましても大変残念に思っていることでございます。  今回、こういう殉職事故でございますので、国鉄の中の所定の手続によりまして、できるだけのことを誠意を持って御遺族に対してして差し上げておるように考えております。
  213. 浦井洋

    ○浦井委員 当然これは殉職になると思うのですけれども、その悲しいことであるとか残念なことであるとかというようなことでなしに、国鉄当局の安全衛生対策にもう決定的な欠陥があったということで、あなた方ははっきりと責任があるんだということを表明しなければいかぬと思うのです。  私は現場に行って、見て、調査して、これはちょっと常識では考えられぬ安全対策のずさんさがあるということでびっくりしたわけです。で、早速神戸西監督署に行ってみた。そこの井上署長、どう言っているかといいますと、まず法違反は間違いない、そして高圧活線作業、高圧近接作業について安全対策がなっていないということであるとか、きょうは取り上げなかったですけれども、安全衛生委員会が開かれていない点は問題だというふうに言い切っておるわけなんです。それで、さらに井上署長は、今工場内の安全対策上の改善命令を出すよりも、先に死亡災害について監督署と司法、警察ですね、そこで結論を出した方がいいという立場で進めている、ここまではっきり答えておられるわけなんです。  確かに勧告は出たようでありますけれども、この点基準局長、報告を受け、どういうように心得ておられますか。
  214. 寺園成章

    ○寺園説明員 本件の災害が発生いたしました七月三十一日、その当日でございますが、監督署におきまして災害調査実施いたしましたところ、電源部の活線作業を行わせるに際しまして、安全衛生法に定められました絶縁用保護具を着用させる等の措置を講じていなかったことが判明いたしましたので、安全衛生法違反容疑で捜査を行い、十月十九日、神戸地検の方に送検をいたしております。
  215. 浦井洋

    ○浦井委員 時間が来たようでありますけれども、ひとつ、とにかく国鉄当局としても、責任をはっきりと明確にしてこの事故に対してきちんと対処してほしいことと、それから安全対策を十分にこれから施して、この種の事故を二度と起こさないように措置をしていただくということを強く要求をして、私の質問を終わらしていただきたいと思います。
  216. 有馬元治

    有馬委員長 本日は、これにて散会いたします。     午後三時五十五分散会