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1984-08-01 第101回国会 衆議院 社会労働委員会 第30号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年八月一日(水曜日)     午前十時一分開議  出席委員   委員長 有馬 元治君   理事  愛知 和男君 理事 稲垣 実男君   理事  小沢 辰男君 理事 丹羽 雄哉君   理事  池端 清一君 理事 村山 富市君   理事 平石磨作太郎君 理事 塩田  晋君       伊吹 文明君    稲村 利幸君       今井  勇君    古賀  誠君       斉藤滋与史君    自見庄三郎君       谷垣 禎一君    友納 武人君       中野 四郎君    長野 祐也君       西山敬次郎君    野呂 昭彦君       浜田卓二郎君    箕輪  登君       森下 元晴君    網岡  雄君       上西 和郎君    河野  正君       多賀谷眞稔君    竹村 泰子君       永井 孝信君    森井 忠良君       大橋 敏雄君    沼川 洋一君       橋本 文彦君    福岡 康夫君       小渕 正義君    塚田 延充君       浦井  洋君    小沢 和秋君       田中美智子君    菅  直人君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 渡部 恒三君  出席政府委員         厚生大臣官房長 幸田 正孝君         厚生省保健医療         局長      大池 眞澄君         厚生省社会局長 持永 和見君         厚生省児童家庭         局長      小島 弘仲君         厚生省保険局長 吉村  仁君         厚生省年金局長 吉原 健二君         社会保険庁年金         保険部長    朝本 信明君  委員外出席者         大蔵省主計局共         済課長     坂本 導聰君         大蔵省理財局総         務課長     水谷 文彦君         厚生省年金局数         理課長     田村 正雄君         運輸省地域交通         局自動車保障課         長       福島 義章君         建設省住宅局住         宅総務課長   木内 啓介君         社会労働委員会         調査室長    石黒 善一君     ————————————— 委員の異動 八月一日  辞任         補欠選任   網岡  雄君     上西 和郎君   森本 晃司君     福岡 康夫君   田中美智子君     小沢 和秋君 同日  辞任         補欠選任   上西 和郎君     網岡  雄君   福岡 康夫君     森本 晃司君   小沢 和秋君     田中美智子君     ————————————— 七月二十七日  男女雇用機会均等法案撤回等に関する請願竹村泰子紹介)(第九〇一八号)  同(辻一彦紹介)(第九〇一九号)  同(土井たか子紹介)(第九〇二〇号)  同(竹村泰子紹介)(第九〇六三号)  同(辻一彦紹介)(第九〇六四号)  同(池端清一紹介)(第九一一二号)  同(角屋堅次郎紹介)(第九一一三号)  同(川俣健二郎紹介)(第九一一四号)  同(田中恒利紹介)(第九一一五号)  同外一件(土井たか子紹介)(第九一一六号)  同(水田稔紹介)(第九一一七号)  同(安井吉典紹介〉(第九一一八号)  同(武藤山治紹介)(第九一六一号)  食品添加物規制緩和反対食品衛生行政充実強化に関する請願池田克也紹介)(第九〇二一号)  療術の制度化促進に関する請願外四件(甘利明紹介)(第九〇二二号)  同外八件(大西正男紹介)(第九一〇二号)  労働基準法改悪反対男女雇用平等法制定促進に関する請願藤木洋子紹介)(第九〇二三号)  同外一件(簑輪幸代紹介)(第九一〇三号)  労働基準法改悪反対、実効ある男女雇用平等法制定に関する請願外二件(石橋政嗣君紹介)(第九〇二四号)  同(江田五月紹介)(第九〇二五号)  同外七件(角屋堅次郎紹介)(第九〇二六号)  同(菅直人紹介)(第九〇二七号)  同(経塚幸夫紹介)(第九〇二八号)  同(嶋崎譲紹介)(第九〇二九号)  同外二件(関山信之紹介)(第九〇三〇号)  同(多賀谷眞稔紹介)(第九〇三一号)  同外四件(永井孝信紹介)(第九〇三二号)  同外二件(馬場昇紹介)(第九〇三三号)  同外二件(日野市朗紹介)(第九〇三四号)  同外十二件(村山富市紹介)(第九〇三五号)  同(山口鶴男紹介)(第九〇三六号)  同外六件(渡辺三郎紹介)(第九〇三七号)  同(江田五月紹介)(第九〇五三号)  同(菅直人紹介)(第九〇五四号)  同(木間章紹介)(第九〇五五号)  同外七件(佐藤誼紹介)(第九〇五六号)  同外一件(竹内猛紹介)(第九〇五七号)  同(竹村泰子紹介)(第九〇五八号)  同外三件(元信堯君紹介)(第九〇五九号)  同(吉原米治紹介)(第九〇六〇号)  同(江田五月紹介)(第九一〇四号)  同(菅直人紹介)(第九一〇五号)  同(竹内猛紹介)(第九一〇六号)  同(中林佳子紹介)(第九一〇七号)  同外七件(村山富市紹介)(第九一〇八号)  てんかん総合対策に関する請願山本政弘君  紹介)(第九〇三八号)  同(橋本龍太郎紹介)(第九〇六二号)  同(江田五月紹介)(第九一五九号)  同(菅直人紹介)(第九一六〇号)  実効ある男女雇用平等法制定に関する請願外  十件(沼川洋一紹介)(第九〇三九号)  同(二見伸明紹介)(第九〇四〇号)  男女雇用機会均等法案反対、実効ある男女雇用平等法制定等に関する請願外二件(土井たか子紹介)(第九〇六一号)  同外一件(田中恒利紹介)(第九一〇九号)  同(土井たか子紹介)(第九一一〇号)  男女雇用平等法実現等に関する請願浅井美幸紹介)(第九〇七四号)  同(新井彬之君紹介)(第九〇七五号)  同(有島重武君紹介)(第九〇七六号)  同(池田克也紹介)(第九〇七七号)  同(石田幸四郎紹介)(第九〇七八号)  同(市川雄一紹介)(第九〇七九号)  同(遠藤和良紹介)(第九〇八〇号)  同(小川新一郎紹介)(第九〇八一号)  同(大久保直彦紹介)(第九〇八二号)  同(大野潔紹介)(第九〇八三号)  同(大橋敏雄紹介)(第九〇八四号)  同(近江巳記夫紹介)(第九〇八五号)  同(岡本富夫紹介)(第九〇八六号)  同(長田武士紹介)(第九〇八七号)  同(草川昭三紹介)(第九〇八八号)  同(中村巖紹介)(第九〇八九号)  同(沼川洋一紹介)(第九〇九〇号)  同(橋本文彦紹介)(第九〇九一号)  同(平石磨作太郎紹介)(第九〇九二号)  同(福岡康夫紹介)(第九〇九三号)  同(森本晃司紹介)(第九〇九四号)  同(矢追秀彦紹介)(第九〇九五号)  同(矢野絢也君紹介)(第九〇九六号)  同(薮仲義彦紹介)(第九〇九七号)  同(山田英介紹介)(第九〇九八号)  同(吉井光照紹介)(第九〇九九号)  同(吉浦忠治紹介)(第九一〇〇号)  同(渡部一郎紹介)(第九一〇一号)  同(江田五月紹介)(第九一六二号)  心臓病児者医療充実等に関する請願中林佳子紹介)(第九一一一号)  年金官民格差是正に関する請願河野洋平紹介)(第九一三一号)  重度障害者終身保養所設置に関する請願河野洋平紹介)(第九一三二号)  労災年金厚生年金等完全併給に関する請願河野洋平紹介)(第九一三三号)  国公立病院における脊髄損傷者治療に関する請願河野洋平紹介)(第九一三四号)  労災被災者脊髄神経治療に関する請願河野洋平紹介)(第九一三五号)  脊髄損傷治療技術研究開発に関する請願河野洋平紹介)(第九一三六号)  戦没者遺児等に対する施策充実に関する請願(林百郎君紹介)(第九一三九号)  同(小沢貞孝紹介)(第九一七二号)  男女雇用機会均等法に関する請願(林百郎君紹介)(第九一四〇号)  同(小沢貞孝紹介)(第九一七三号)  使用済み乾電池処理等に関する請願(林百郎君紹介)(第九一四二号)  同(小沢貞孝紹介)(第九一七四号)  食品添加物規制に関する請願(林百郎君紹介)(第九一四二号)  同(小沢貞孝紹介)(第九一七一号)  児童扶養手当制度改悪反対に関する請願金子みつ紹介)(第九一五〇号)  小規模障害者作業所の助成に関する請願竹村泰子紹介)(第九一五一号)  労働基準法改悪反対男女雇用平等法促進に関する請願河野正紹介)(第九一五二号)  肢体障害者生活保障に関する請願竹村泰子紹介)(第九一五三号)  男女雇用機会均等法案反対に関する請願河野正紹介)(第九一五四号)  労働基準法改悪反対、実効ある男女雇用平等法制定に関する請願外三件(網岡雄紹介)(第九一五五号)  同外五件(伊藤忠治紹介)(第九一五六号)  同(菅直人紹介)(第九一五七号)  労働基準法改悪反対、実効ある男女雇用平等法制定に関する請願菅直人紹介)(第九一五八号)  国民年金法改正促進に関する請願小沢貞孝紹介)(第九一七〇号) 同月三十日  労働基準法改悪反対男女雇用平等法に関する請願田中美智子紹介)(第九一九〇号)  同(田中美智子紹介)(第九二八四号)  男女雇用機会均等法案反対等に関する請願山花貞夫紹介)(第九一九一号)  小規模障害者作業所の助成に関する請願平石磨作太郎紹介)(第九一九二号)  労働基準法改悪反対男女雇用平等法制定促進に関する請願梅田勝紹介)(第九一九三号)  ベーチェット病調査研究班存続等に関する請願平石磨作太郎紹介)(第九一九四号)  保育予算大幅増額等に関する請願外一件(平石磨作太郎紹介)(第九一九五号)  同(池端清一紹介)(第九二八〇号)  同(田中美智子紹介)(第九二八一号)  同(馬場昇紹介)(第九二八二号)  同(藤木洋子紹介)(第九二八三号)  松江市水道事業に対する抜本的施策に関する請願平石磨作太郎紹介)(第九一九六号)  肢体障害者生活保障に関する請願平石磨作太郎紹介)(第九一九七号)  労働基準法改悪反対、実効ある男女雇用平等法制定に関する請願瀬崎博義紹介)(第九一九八号)  同外三件(竹内猛紹介)(第九一九九号)  同(中林佳子紹介)(第九二〇〇号)  同外六件(村山富市紹介)(第九二〇一号)  心臓病児者医療充実等に関する請願河野正紹介)(第九二〇二号)  同(平石磨作太郎紹介)(第九二〇三号)  同(塩田晋紹介)(第九二八八号)  てんかん総合対策に関する請願平石磨作太郎紹介)(第九二〇四号)  実効ある男女雇用平等法制定に関する請願外一件(春田重昭紹介)(第九二〇五号)  男女雇用機会均等法案撤回等に関する請願菅直人紹介)(第九二〇六号)  同(多賀谷眞稔紹介)(第九二〇七号)  同(竹村泰子紹介)(第九二〇八号)  国民年金法改正促進に関する請願串原義直紹介)(第九二二五号)  同(清水勇紹介)(第九二二六号)  同(中村茂紹介)(第九二二七号)  同(井出一太郎紹介)(第九二九六号)  同(唐沢俊二郎紹介)(第九二九七号)  同(塩島大君紹介)(第九二九八号)  同(田中秀征紹介)(第九二九九号)  同(中島衛紹介)(第九三〇〇号)  同(羽田孜紹介)(第九三〇一号)  同(宮下創平紹介)(第九三〇二号)  同(若林正俊紹介)(第九三〇三号)  食品添加物規制に関する請願串原義直紹介)(第九二二八号)  同(清水勇紹介)(第九二二九号)  同(中村茂紹介)(第九二三〇号)  戦没者遺児等に対する施策充実に関する請願串原義直紹介)(第九二三市号)  同(清水勇紹介)(第九二三二号)  同(中村茂紹介)(第九二三三号)  同(井出一太郎紹介)(第九三〇四号)  同(唐沢俊二郎紹介)(第九三〇五号)  同(塩島大君紹介)(第九三〇六号)  同(田中秀征紹介)(第九三〇七号)  同(中島衛紹介)(第九三〇八号)  同(羽田孜紹介)(第九三〇九号)  同(宮下創平紹介)(第九三一〇号)  同(若林正俊紹介)(第九三一一号)  男女雇用機会均等法に関する請願串原義直紹介)(第九二三四号)  同(清水勇紹介)(第九二三五号)  同(中村茂紹介)(第九二三六号)  使用済み乾電池処理等に関する請願串原義直紹介)(第九二三七号)  同(清水勇紹介)(第九二三八号)  同(中村茂紹介)(第九二三九号)  同(井出一太郎紹介)(第九三一二号)  同(唐沢俊二郎紹介)(第九三一二号)  同(塩島大君紹介)(第九三一四号)  同(田中秀征紹介)(第九三一五号)  同(中島衛紹介)(第九三一六号)  同(羽田孜紹介)(第九三一七号)  同(宮下創平紹介)(第九三一八号)  同(若林正俊紹介)(第九三一九号)  国立腎センター設立に関する請願塩川正十郎紹介)(第九二七五号)  重度戦傷病者と妻の援護に関する請願塩川正十郎紹介)(第九二七六号)  視覚障害者雇用促進に関する請願村上茂利紹介)(第九二七七号)  児童扶養手当制度改悪反対に関する請願外一件(池端清一紹介)(第九二七八号)  同(梅田勝紹介)(第九二七九号)  男女雇用機会均等法案反対に関する請願藤木洋子紹介)(第九二八五号)  労働基準法改悪反対男女雇用平等法制定に関する請願田中美智子紹介)(第九二八六号)  労働基準法改悪反対、実効ある男女雇用平等法制定に関する請願田中美智子紹介)(第九二八七号) 八月一日  障害者福祉法制定に関する請願金子みつ紹介)(第九三八八号)  同(浦井洋紹介)(第九四二〇号)  同(村山富市紹介)(第九四二一号)  同(大橋敏雄紹介)(第九四五四号)  同(沼川洋一紹介)(第九四五五号)  同(橋本文彦紹介)(第九四五六号)  同(森本晃司紹介)(第九四五七号)  児童扶養手当制度改悪反対に関する請願和田貞夫紹介)(第九三八九号)  同外一件(網岡雄紹介)(第九四三二号)  同外二件(竹村泰子紹介)(第九四二四号)  同(永井孝信紹介)(第九四二五号)  同(村山富市紹介)(第九四二六号)  肢体障害者生活保障に関する請願外一件(田中美智子紹介)(第九三九〇号)  国民年金厚生年金等制度改悪反対に関する請願金子みつ紹介)(第九三九一号)  てんかん総合対策に関する請願米沢隆紹介)(第九三九二号)  同(浦井洋紹介)(第九四三四号)  食品添加物規制緩和反対食品衛生行政充実強化に関する請願玉城栄一紹介)(第九四一八号)  同(市川雄一紹介)(第九四五二号)  同(草川昭三紹介)(第九四五三号)  国立病院療養所統合等反対医療従事職員の増員に関する請願宮崎角治紹介)(第九四一九号)  難病対策拡充等に関する請願浦井洋紹介)(第九四二二号)  視覚障害者雇用促進に関する請願外三件(村上茂利紹介)(第九四二七号)  保育予算大幅増額等に関する請願外二件(浦井洋紹介)(第九四二八号)  同(佐藤誼紹介)(第九四二九号)  国民年金改悪反対等に関する請願浦井洋紹介)(第九四三〇号)  心臓病児者医療充実等に関する請願網岡雄紹介)(第九四三一号)  同(浦井洋紹介)(第九四三二号)  同(村山富市紹介)(第九四三三号)  同(塚田延充紹介)(第九四六〇号)  同(永井孝信紹介)(第九四六一号)  同(沼川洋一紹介)(第九四六二号)  同(橋本文彦紹介)(第九四六三号)  同(森本晃司紹介)(第九四六四号)  職業安定法等の一部を改正する法律案反対に関する請願村山富市紹介)(第九四五一号)  療術の制度化促進に関する請願外三件(中野四郎紹介)(第九四五八号)  同外五件(森下元晴君紹介)(第九四五九号)  は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  身体障害者福祉法の一部を改正する法律案内閣提出第五八号)(参議院送付)  国民年金法等の一部を改正する法律案内閣提出第三六号)      ————◇—————
  2. 有馬元治

    有馬委員長 これより会議を開きます。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  内閣提出国民年金法等の一部を改正する法律案審査のため、明二日、参考人出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 有馬元治

    有馬委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、参考人人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 有馬元治

    有馬委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  5. 有馬元治

    有馬委員長 内閣提出身体障害者福祉法の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。竹村泰子君。
  6. 竹村泰子

    竹村委員 身体障害者福祉法の一部を改正するに当たりまして、提案理由の説明に、一九八一年の国際障害者年理念をこの福祉法に盛り込むと書いてございますね。その一九八一年長期行動計画というのが国際障害者年に当たって出されておりますね。我が国の今までの障害者運動との違いはどういうところでしょうか。
  7. 持永和見

    持永政府委員 障害者対策が、国際障害者年契機といたしまして、先生御案内のとおり「完全参加と平等」ということで、国際障害者年はそれをテーマにいたしております。  従来の障害者対策、どちらかと申し上げますと、いわゆる障害者人たちを、障害部位に着目して、その部位に対するいろいろな問題を扱っておったというのが従来の障害者対策であろうかと思いますが、障害者人たちが持てる能力をできるだけ生かして社会に参加させる、また社会自身障害者人たちがいる社会が当たり前の社会だというような、そういう障害者人たちの「完全参加と平等」、そういったテーマのもとに国際障害者年というのができまして、それを受けて、我が国障害者人たち長期行動計画をつくったわけでございます。そういった対策をこれから推進していかなければならないというふうに考えております。
  8. 竹村泰子

    竹村委員 それは、この福祉法改正のどこに盛り込まれておりますでしょうか。具体的にお答えいただけますか。
  9. 持永和見

    持永政府委員 今回の福祉法改正におきまして、法律理念に相当する規定をいろいろと掲げております。  まず第二条が、従来は「(更生への努力)」という表題で、「すべて身体障害者は、自ら進んでその障害を克服し、すみやかに社会経済活動に参与することができるように努めなければならない。」という規定でございましたものを、第二条をまず「(自立への努力及び機会の確保)」という表題にいたしまして、第一項といたしまして、「すべて身体障害者は、自ら進んでその障害を克服し、その有する能力を活用することにより、社会経済活動に参加することができるように努めなければならない。」ということと、新たに第二項を起こしまして、「すべて身体障害者は、社会を構成する一員として社会経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会を与えられるものとする。」という新しい社会参加規定を設けたわけでございます。  また第三条におきまして、従来は「(国、地方公共団体及び国民の責務)」ということで、「身体障害者に対する更生の援助と更生のために必要な保護の実施に努めなければならない。」という規定を、「前条第二項に規定する理念」、いわゆる今申し上げました身体障害者人たち社会参加、そういった社会参加の「理念が具現されるように配慮して」云々というふうにいたしました。  また、「国民は、社会連帯理念に基づき、身体障害者がその障害を克服し、社会経済活動に参加しようとする努力に対し、協力するように努めなければならない。」ということで、身体障害者福祉法の二条及び三条の規定につきまして、そういった国際障害者年理念を踏まえて改正を図ったものでございます。
  10. 竹村泰子

    竹村委員 すなわち「完全参加と平等」ということですね。  その長期行動計画の中で、障害者権利宣言はどういうふうにうたわれておりますでしょうか。長期行動計画というのが出されましたね、そちらにあると思いますけれども。その中で障害者権利宣言というのが出されていると思うのですけれども。
  11. 持永和見

    持永政府委員 障害者権利宣言といたしまして、国連総会決議がございます。これは非常に長いものでございますが、権利のところを申し上げますと、   障害者は、この宣言において掲げられるすべての権利を享受する。これらの権利は、いかなる例外もなく、かつ、人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治上若しくはその他の意見、国若しくは社会的身分、貧富、出生又は障害者自身若しくはその家族の置かれている状況に基づく区別又は差別もなく、すべての障害者に認められる。 というようなことでございまして、障害者権利宣言として、一九七五年十二月九日に、第三十回の国連総会決議決議されました権利宣言がございます。
  12. 竹村泰子

    竹村委員 私が申し上げましたのは、その長期行動計画というのを八一年の国際障害者年にお出しになりましたね。そのところで障害者権利宣言をうたったものがあるのですけれども、それをお読みいただきたいと思ったのですが、いいです。  今、この理想は「完全参加と平等」ということですけれども、その理想はどのくらい達成できているとお思いでしょうか、また目標はどうでしょうか、国際障害者年、十年続くわけですけれども。
  13. 持永和見

    持永政府委員 国際障害者年が始まりましたのが一九八一年でございますが、国際障害者年契機といたしまして、日本といたしましても、先生御指摘のように、障害者対策につきまして新しい理念に基づいていろいろ施策を講じていくということでございまして、日本政府といたしましては、昭和五十七年の三月に「障害者対策に関する長期計画」を策定いたしております。これは厚生省のみならず、各省庁に及ぶものでございますが、啓発広報活動あるいは保健医療の問題、心身障害発生予防とか早期発見とか国際医療協力まで含めました保健医療の問題、それから心身障害児に対する教育の問題、それから雇用・就業の問題、それから福祉生活環境といったような問題、そういった問題につきまして政策を総合的に推進していくということになっておりまして、このために、閣議決定によりまして、長期計画を推進するために、関係行政機関相互間の事務の緊密な連絡を確保するため、総理府障害者対策推進本部を置くことにいたしております。この本部長内閣総理大臣にいたしまして、副本部長厚生大臣総理府総務長官がなっておりますが、こういった形で、政府といたしましては総合的な形で、先ほど申し上げました障害者の「完全参加と平等」の理念が具現するような政策実現をするということで、今鋭意努力中でございます。
  14. 竹村泰子

    竹村委員 在宅福祉ケアつき住宅について、私はきょうちょっと質問させていただきたいと思います。  一九八二年に出されました身体障害者福祉審議会の答申、この法案資料の終わりに出ておりますけれども、この第四章三項にこういうところがあります。   日常生活活動にかなりの制限をもつ重度障害者であっても、家庭や地域で生活したいという強い願望がある。  通常の社会環境の中にその生活の場を置くごとが望ましい姿であるが、それを可能とするような条件が必ずしも満されているとはいえない現実がある。  特に脳性マヒ者等全身性障害者のような重度の障害をもつものにとっては、その自立生活の前提条件として、障害者本人の意思とともにその生活能力及びこれを支える所得、住宅、移動、介護等の整備が必要であるが、 というところがございます。この在宅福祉ということについて大臣、どう考えておられますか。また、具体的な対策があればお聞かせください。
  15. 渡部恒三

    渡部国務大臣 今先生からお話しがありましたように、私ども「完全参加と平等」ということを基本テーマにして今後の対策を進めていくのでございますが、その中では在宅福祉といいますか、やはり肉親に囲まれたりあるいは隣近所の人たちに囲まれて、いわゆる人間と人間との心の通う中で幸せというものはあるわけですから、これは可能な限り在宅福祉ということを進めてまいりたい。  ただ、これは、障害の程度によってどうしても施設でなければならないし、また施設の方が本人にとってよい条件という場合もありますけれども、在宅で可能なものはそういうふうに進めたいということ。そうなりますと、当然住宅の問題等も都市部では特にございますから、在宅福祉を進めるというのが私どもの考え方でありますから、そのためのいろいろな施策、住宅問題等も含めて今後努力してまいりたいと思います。
  16. 竹村泰子

    竹村委員 重い障害を持つ人は施設に入るべきだというお考えではないですね。もしその人が望むなら地域に住んでもいいということですね、大臣。もう一度お願いします。
  17. 渡部恒三

    渡部国務大臣 障害の程度によって、本人が望んでも重度の障害の場合、やはり施設でないとその人が立派に生きていけるような完全な条件というものが整えられてない場合はやむを得ませんけれども、本人が望み、また在宅でその障害に対応できる条件というものが整っておれば、これは在宅の方が、今、最初に私が申し上げたように、人間の暮らしというものはやはり人に囲まれてそこに幸せがあるのでありますから、可能な限り在宅福祉の方向に持っていきたいというのが私どもの考え方です。
  18. 竹村泰子

    竹村委員 スウェーデンなどでは、実際にもう今施設をどんどん壊して、そういう在宅に近い形の住まいを多くしているということでありますけれども、戦後、日本は、高度成長期までどちらかというと障害者はほうっておかれたといいますか、どうしようもなかった。昭和三十年代に入ってから収容施設が次々とできてきたわけですけれども、こういうあみ一人の障害者の言葉があります。   私たちはどういう意味で家を出たいかというと、親はいつまでも生きているわけではない。兄弟に押しつけようとするが、兄弟が面倒をみてくれても、面倒をみられる方がつらい。自分の考えを言っても、「自分で働けないくせに文句を言うな」と言われる。抑えつけられてしまって、自分で責任を持って生活することができない。その結果、親に甘えていることになってしまう。  現在ある施設に行けばいいと言われるかもしれないが、現在の施設は障害者に飯を喰わせて飼っておくだけである。冷暖房完備、リハビリテーション、医療付きでも、いろいろな規則で縛られ、監視されている。大規模施設では、人間をものとしてしか見なくなってしまう。  また、現在のように山奥の施設ではなく、市に住みたい。身体障害者でも知恵遅れでも、寝たきりの人でも、街の中に住むのが当たり前だ。なぜ障害者だけが集まって、健常者から離れた所で生きてゆかなければならないのか。ぼくたちも街に出たいし、親兄弟や友達や近所の人が会いに来るにも、近い所の方がいい。建物は充実していなくても、ぜいたくは言わない。ぼくらの住む場、そこから行きたい所に行けるような、"生きる場"がほしい。 こういう言葉があるわけです。  私の地元の北海道に、いちご会というグループがあります。このいちご会というのは、初めは栗沢というところに福祉村をつくろうという計画があって、そこでどういう福祉村がいいかということを障害者たちが集まって相談していたグループだったんです。福祉村懇話会というのがつくられておりましたが、この中は、委員が三十名中身障者はただ一人という状況でありましたけれども、このいちご会は、要望書をつくったり道民生部との話し合いをしたりしておりました。この要望書の中にこんなことが入っているんです。「十人ぐらいの小グループが家庭のように生活できるようにしてほしい。茶の間を中心として個室が配置されるようにしてほしい。」障害者は全部何人か固まって部屋に押し込まれてしまう、そういうのは非常にプライバシーがなくて困るということで、全体の規模は大きくてもいいんですけれども、小グループの家庭的な雰囲気のものが欲しい、こういう要求をしてきたんです。これは行政としてはどうでしょうか。今五十人以上でないと施設として認められていないわけですね。現実に施設ではこういうことは実行できないものなんでしょうか。
  19. 持永和見

    持永政府委員 先生御指摘のように、確かに、そういった障害者の方々ができるだけ住みなれた地域社会で必要な生活をするというのは、これは先ほど申し上げました最近の社会福祉理念がノーマライゼーションということを言っておりますが、隔離的に障害者人たちを処遇するのじゃなくて、ノーマライゼーションということで、やはりその人たちが住みなれた、なれ親しんだ地域、家庭でできるだけのことをしてあげるというのが社会福祉の最近の方向でございます。私どももそういった方向で努力をしていかなければならないと思っております。  今、先生具体的に御指摘の障害者人たちの住宅の問題でございますが、住宅自体は私どもの方の所管でございませんけれども、今回の法律改正で、実は身体障害者人たち福祉ホームというものを新しい福祉施設として設けることにいたしております。この福祉ホームは従来のような濃厚なケアをする施設ではございませんけれども、そういった身体に障害のある方々に、二十人以上ということになっておりますが、ある程度寄り集まって必要な設備をしてあげる、そういった形で、そこから就労するなりあるいは職業を見つけるなりということで、福祉ホームというのを新しい施設の種類として設けることになっております。そういった点で、先生のおっしゃったような方向は我々としても踏まえて、大いに行政的にも努力しなければいけないと思いますし、せっかく福祉ホームをつくることでございますから、そういった面での御利用もまたお願いをしていただいたらと思っております。
  20. 竹村泰子

    竹村委員 ある施設では、真ん中に管理棟を置きまして、放射線状に周りに、きちんと一つ一つ家庭のようにお台所をつけて、おふろをつけて、そういう建物を建ててしまった。それなのに、そういうものは公衆衛生上とかいろいろな観点から許されないということで、今お台所やおふろは全く使われないで、ただ休むだけのところになっている。そういう極端な例もあるのでして、私はその辺、なぜできないのかなと思うのです。十分に公衆衛生上も管理できるのではないかと思いますし、できればそういう方向を、今のお話しの福祉ホームですか、そういうものもあわせて御検討いただきたいと思うのですけれども。
  21. 持永和見

    持永政府委員 先ほど申し上げましたように、基本的に、身体障害者の方々ができるだけ地域社会の仲で生活をするという方向での施策を進めていかなければならないと私どもとしても思っております。そういう意味で、今のお話しを私どもとしても十分検討させていただきたいと思っております。
  22. 竹村泰子

    竹村委員 東京にもケアつき住宅の建設運動をしている人たちがおりますけれども、民生局と建設局の当局者、そして身障者が多数参加して、検討会がつくられているようですね。  スウェーデンにフォーカスアパートというのがあるのですけれども、そのことを紹介した、御自分も身障者で、イエテポリ大学のプラットゴード博士という方の大変いい論文があるのですけれども、こういうことを書いておられます。   「さて、障害者にとって何が必要とされるのでしょうか。あなた方が、もし、障害者は何を必要とし、何を望んでいるのかとおたずねになるならば、答えは簡単です。あなた方は何をなさりたいのですか。車の運転ですか。街を歩くことですか。ダンスですか。観劇ですか。友人を訪ねることですか。本を読むことですか。それがまさしく、障害者のしたがっていることなのです。私たち障害者はみな、あなた方と同じ感情をもち、望みをもち、性的な衝動をも経験しております。あなた方が信じようと信じまいと、私たちは決してディズニーランドからきた不思議な生きものではなく、すべての点でみなさんと同じなのです。  「私たちが討議しなければならない本当の問題は、身体障害者とそうでない者とが、社会の中でどのような生活をするかということです。私たちの行なう援助は、求められる最高レベルの生活に各人が達するための手段に過ぎないのです。 ということを言っておられます。特別の人に特別な扱いをするのではなくて、一人の人間としてごく当たり前のことを可能にする。恋もしたいでしょう。買い物もしたいでしょう。そういうことが私たち日本社会ではまだまだできない。障害者の方たちが町に出られると、珍しい動物を見るように非常に奇異な目で見られることが多い。自分たちと違う人に対しての非常に厳しい目がある。指導行政の直接の機関である厚生省は、この辺をどう考えておられますか、お考えを聞かせてください。
  23. 持永和見

    持永政府委員 先生のお話しのとおりでございます。先ほど来申し上げておりますように、身体障害者人たちに対する施策国際障害者年契機といたしまして、政府としても長期行動計画を策定いたしまして、それにのっとって各種の施策を総合的にやるということでございますが、その気持ちは、先ほど申し上げましたように、障害者人たちの「完全参加と平等」、障害者人たちがいる社会、そういった人たちを当然に包含する社会が通常の社会である、また、そういった対象者の人たちが住み、なれ親しんだ地域社会、家庭の中で日常的な生活が可能になるような施策を進めていくというのが、今後の障害者対策だと思っております。  こういった面で、日本においても、例えば先般お亡くなりになりましたけれども、大分県に太陽の家というのがございますが、そこの中村先生という先生が、「障害者人たちにとって大切なのは、どういうことが障害者人たちは失われたではなくて、どういう能力が残っているかだ」ということ、そういった理念で、障害者人たちについていろいろと福祉的な工場あるいは作業場をおつくりになって、障害者人たちを働かせておられます。そういった一つの町がございますが、その中では、障害者人たちがマーケットも自分で経営し、自分でやる、あるいは銀行もございます。そういった障害者人たちの太陽の家という町がございますが、そういったことが今後とも全国各地に普及されるように行政としてもできるだけのお手伝いをしていく、行政としての気持ちも、先ほど申し上げましたような気持ちで対策を進めていくということで今後臨んでいきたいと思っております
  24. 竹村泰子

    竹村委員 福祉法ができて三十五年たっているわけですね。社会は大きく変わってきたんですが、福祉理念では、相変わらず生かしておくの域を出ていないのではないかと思われるようなことも間々あります。  今回の身障者福祉法の一部改正は、この基本線を変え得る、特に在宅ケアの問題などで行き方を変え得るものなのかどうか、大臣、お答えください。
  25. 渡部恒三

    渡部国務大臣 戦後三十九年たってまいりましたが、まだまだ不十分、十分ではございませんけれども、十年前、二十年前、三十年前を振り返ってみますと、私は、我が国身体障害者福祉施策というものはかなり前進してきていると思います。  そこで、今我々が一番問題にしなければならないのは、お金や物、これも大事でありますけれども、人間の幸せに一番とうといものは人間の心、こういうことで、今先生から数々の感動的な身体障害者にかかわるお話を承りましたけれども、国民全体の意識が立派になって、本当に在宅福祉、またいわゆる「完全参加と平等」という理念、これは単に政府施策法律だけではなくて、国民全体の意識の向上というものも極めて大事だと思うのです。  今政府委員から大分県のお話がありましたが、身体障害者の皆さんが集まって、おれたちは税金をもらうのじゃなくて、税金を払っているんだと非常に誇りを持っていらっしゃる。私が知っているマッサージの方でも、五歳のとき目が見えなくなってしまったのですが、非常に明るく、誇りを持って二人の子供を立派に育てている。私は税務署に申告に行くんだと言って、私に自慢話を聞かせてくれる方がございますが、在宅福祉ということは、本人の意識の向上はもとより、国民全体が、身体障害者の方を特別に見るとかあるいは隔離して見るとか、そういう意識があってはならないのでありまして、私は、身体障害者の皆さん方が今強く、たくましく、明るく生きようとしておる姿を見るたびに、この姿が本当に社会の中に定着していくように、政府としてはできる限りのお手伝いをしなければなりません。  今、御承知のように厳しいゼロシーリングというような予算でありますけれども、五十九年度予算でも、私は、身体障害者施策に関する予算は一銭も切ってはならぬという決意で大蔵大臣との予算折衝に臨み、要求に近い線を取ってまいりました。私は六十年もそういう決意で今予算編成に臨んでおりますが、政府もできる限りのお手伝いをする。また本人も自立の意識を、誇りを強く持つ、社会全体もそういう新しい連帯の意識を持つということで、この在宅福祉という方向で、身体障害者の皆さん方が、変わりなく、明るく、人々の温かい気持ちに包まれて暮らせるような時代に一歩一歩前進していく、また私どもはそれを前進させなければならないと、将来に希望を持っております。
  26. 竹村泰子

    竹村委員 私は八一年に出されました長期行動計画の中から質問を幾つかしたいと思っておりますけれども、障害者の差別と偏見の除去について言っているところがあるのですけれども、どういうふうに書かれておりますでしょうか。
  27. 持永和見

    持永政府委員 先生御指摘の一九八一年の長期行動計画でございますが、これは国際障害者年日本推進協議会という民間団体から構成される協議会がおつくりになったものでございます。今御指摘のこの中で言われておることでありますが、「障害者に対する差別・偏見の除去」、「ある社会が、その構成員のいくらかの人々を閉め出すような場合、それはもろくよわい社会なのである。障害者は、その社会の他の異なったニーズを持つ特別の集団と考えられるべきではなく、その通常なニーズを満たすのに特別の困難を持つ普通の市民と考えるべきである」、こういうふうに書いてございます。
  28. 竹村泰子

    竹村委員 その中に「医療の問題」という項がございます。その中で一九七〇年に制定された身障者対策基本法というのがあるのですけれども、これで心身障害者とはどういう人だというふうに言っておりますでしょうか。
  29. 持永和見

    持永政府委員 心身障害者の定義でございますが、心身障害者対策基本法においては二条に定義がございまして、「この法律において「心身障害者」とは、肢体不自由視覚障害、聴覚障害、平衡機能障害、音声機能障害若しくは言語機能障害、心臓機能障害、呼吸器機能障害等の固定的臓器機能障害又は精神薄弱等の精神的欠陥があるため、長期にわたり日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける者をいう。」という定義になっております。
  30. 竹村泰子

    竹村委員 心身障害者とはそういう人を言うわけなんですけれども、我が国では問題なのは、その中にも書かれているんですけれども、従来から障害者の範囲をほかの国に比べて非常に狭く限定しているということがございます。この考えは変わらないのでしょうか。例えば精神障害の方も非常に狭く限定してしまうというようなことがあるわけなんですけれども、少なく狭く限定してしまっているというそのわけは何なのでしょうか。
  31. 持永和見

    持永政府委員 今先生のお話しになりました精神障害者の方々は、心身障害者対策基本法において、明らかに「心身障害者」という範疇の中に入っております。したがってこの法律でそういうことがございますので、我が国でもそういう対応をしているのは事実でございます。ただ、恐らく先生のお話は、身体障害者福祉法の中には精神障害者は実は入っておらないわけでございます。これは我が国我が国の沿革がございまして、身体障害者人たちは、身体障害者福祉法で従来からいろいろ福祉的な措置なりケアをやってまいりました。しかし、精神関係の方は精神薄弱者福祉法というのがございまして、これによっていろいろな福祉的な措置をやっております。また、精神障害者の方々につきましては精神衛生法という法律によってそれぞれ福祉的な措置をやっております。つまり心身障害者と言われる場合には、まさに心身障害者対策基本法が言っておりますように、それは身体障害者だけではなくて、精神薄弱者の方も精神的な欠陥のある方もすべて含んだ形で、我々政府としては対策を講じなければならないと思っておりますが、具体的なそれぞれの福祉措置なり何なりはそれぞれの法律によって講じているというのが現状でございまして、現在の身体障害者福祉法ではいわゆる身体の障害者人たちを対象にした法律となっている、こういうことでございます。
  32. 竹村泰子

    竹村委員 先日四月二十四日の参議院の社労委におきまして、本岡委員が大変詳しく質問をしておられますことですけれども、今回の法改正において政令で定める障害の中に人工肛門、人工膀胱のことが加えられ、厚生省の御努力と御理解が示されて大変大きな進歩であると評価するところですけれども、これにつけ加えて、脳性麻痺等全身性障害の方々に対しても今後検討すると持永さんは答えておられますね。これらCPの人たちは幼いときからハンディを背負ってきた方たちなんですけれども、医学的に重度と査定されないこともあり得る、しかし生活をする上では大変な困難を抱えておられる、立てる、歩けるということであっても、それが百メートル歩くのに何時間もかかってしまうということもあるわけです。そのほかの障害も抱えておられることが非常に多い。これに対して、一昨年四月に、各都道府県知事あてに社会局長の通達が出されております。  この通達によりますと、例えばダブって障害のある方、右手関節機能の著しい障害と体幹機能の著しい障害、これはともに五級ですけれども、これがダブっている場合には四級と一段上になる、また四級の方で、両下肢機能の著しい障害、言語機能の著しい障害と二つのことがダブっていると今度はそれが三級になるというふうに、障害が合併の場合には一段上にランクされますね。その通達をきちんと出されているんですけれども、これが地方に行きますとなかなか徹底してないんです。それで、現実の問題としては非常な格差がありまして、例えば東京では三級と認定される人が地方に行くと五級であったりとか、そういうことが現実として起きているわけです。地方では暮らせないから、しょうがないから東京に来て認定を受けてという、そういう方が現実にたくさんおられるんです。これはぜひ徹底させてほしいと思うんです。こういうことが地方ではだめで東京ではいけるということでは非常に困るわけで、また同時に、障害者自身にもこれは十分PRをして、目につきやすいところにぜひハンプなどを置いていただいて、自分の障害の等級をきちんとわかるようにしていただきたいと思いますけれども、いかがですか。
  33. 持永和見

    持永政府委員 私どもが出しました通知は、それは先生御指摘のように、全国どこの県でも同じような扱いをしてほしいという気持ちで通知を出しておるわけでございますから、都道府県によって扱いが違うというのは、お話しのように大変困るわけです。もしそういう事実がございますとするならば、これは大変遺憾なことでございまして、さらにこの通知の徹底を図っていかなければならないというように思っております。  また、障害者人たちに対するPRにつきましては、できるだけ私どもとしても啓蒙、啓発活動に努めてまいるつもりでございます。いろいろな機会を通じまして、そういったことで、わかりやすい形での啓蒙活動努力してまいりたいというふうに考えております。
  34. 竹村泰子

    竹村委員 身体障害者福祉法身体障害者福祉審議会というのがありますね。この身体障害者福祉審議会障害者の参加を拡大するという問題ですけれども、五十七年三月の答申では、その身体障害者については視覚障害、聴覚障害、音声二言語機能障害、肢体不自由、内臓機能障害、全身性障害の六つの分類がされているのですけれども、この審議会の中では、内臓機能障害と全身性障害の該当者が委員になっていないのですね。これを加えるべきではないでしょうかと思いますけれども、この点はどうお考えになりますでしょうか。
  35. 持永和見

    持永政府委員 身体障害者福祉審議会、これは先生も御案内のように法律に基づく審議会でございまして、一応の定員の枠があるわけでございますが、確かに御指摘のような事実が現在ございます。障害者の中で、内部機能障害の方々の委員はおられないという事実でございます。これは実は参議院でもそういう御指摘があったわけでございますが、私どもとしては、今後内部機能障害者、今回もオストメート、いわゆる人工膀胱、人工臓器の造設者を新しく加えるというようなことも法律改正としてお願いしておるところでございますから、これからそういった内部機能障害人たちに対する施策というのは、ますます福祉法の中でも重きを増してくることは事実でございます。そういった点を踏まえまして、これから関係者とも十分相談をしていきたいというふうに考えております。
  36. 竹村泰子

    竹村委員 先ほども申し上げましたけれども、今回の改正で、政令で定める障害を設けられた、そして人工肛門、人工膀胱を入れることとなさった。これにCPなどの全身性障害というのをつけ加えるべきではないかと思われるわけですけれども、その点についてはどうお考えですか。
  37. 持永和見

    持永政府委員 今、先生御指摘の脳性麻痺などの全身性障害の方々につきましては、実は五十七年三月の身体障害者福祉審議会の答申におきまして、先生も先ほどお話しございましたように、現在の障害等級表の身体機能の評価方法が、日常生活の活動能力に着目した評価という点に欠けている、こういう御指摘がございまして、そういった点で特に「全身性障害者の程度等級評価の合理化を図るため、障害程度等級表について、更に検討する必要がある。」ということで、全身性障害については「重複障害に伴う日常生活活動能力に着目した等級格付の見直し」ということが、身体障害者福祉審議会から答申されております。  なお、これを受けまして検討委員会をお願いしておったわけですが、これは五十八年の八月に報告がございまして、「全身性障害に関して日常生活能力を加味した方法を適用する」というようなことで、「また、二以上の身体の障害を持つ重複障害については、その評価方法を法施行規則別表の障害程度等級表のうえで明確にすべきである。」というような報告がなされています。  この二つの委員会の答申なり報告を受けまして、今現在、身体障害者福祉審議会の審査部会で専門的に検討中でございます。この検討によりまして、この等級表なり何なりにつきまして、全身性障害者の方々につきましての評価方法についての合理化を図っていきたい。先ほど申し上げました通知は、当面の措置としてそういうことをやっておるわけでございますが、こういった専門的な検討が出ましたら、それに応じて等級表についてそれなりの措置を講じていきたいというのが、私どもの方の今現在の作業の経過でございます。  今回、法律改正で政令ができるのであるからその政令に入れたらどうだ、こういう先生の御指摘でございますが、実は今回の政令は、心臓障害などということでいわゆる内部障害についての政令を定める、こういうようなことになっておりますので、その中での政令に入れるのは、いささかそぐわないのじゃないかというふうに考えております。ただ、いずれにいたしましても、先ほど申し上げましたように、こういった全身性障害者の方々につきましての等級表の評価につきましてはもっときちんとしたものにして、そういった方々の評価について適正を期していきたいということで、できるだけ明確化を図っていくように我々としては努力をしてまいるつもりでございます。
  38. 竹村泰子

    竹村委員 できるだけ速やかに、またそう決まったときには、抜本的に見直しをぜひしていただきたいと思います。  時間がありませんので、再び在宅福祉の問題に戻りますけれども、現在のところ在宅福祉対策が何もないのに、福祉福祉とかけ声だけという感がしないでもないのですけれども、ヘルパーの派遣などについても、例えば家族の精神的、肉体的な負担を考えますならば、家族と一緒に暮らしている場合にも週一回ぐらいの派遣が考えられないものでしょうか、どうでしょうか。
  39. 持永和見

    持永政府委員 在宅福祉につきましては、先ほど大臣からお話し申し上げましたとおり、私どもも今後重点的にこの施策充実していかなければいかぬということを考えております。  現在、先生御指摘の家庭奉仕員派遣事業というものがございますが、これにつきましては年々相当な充実をしてまいっておりまして、人員も相当ふやしております。現在、老人と合わせてでございますが、本年度、厳しい予算でございますが千六百人ふやしまして、約二万人近い家庭奉仕員の数を確保したところでございます。こういった人たちの派遣事業のあり方、こういったものにつきましてもできるだけ実態に即した形でやっていきたいというのが我々の気持ちでございます。先生のお話しも十分検討をさせていただきたいと思っております。
  40. 竹村泰子

    竹村委員 ケアつき住宅ですね。これは例えば公営住宅で、全入居者のうちの何%かを障害者住宅にする、そして独身の障害者にも開放する、今家族と一緒に住んでいる人とか夫婦の人は入っていらっしゃる場合がありますけれども、独身の人にも開放する。欧米にありますように、そして常駐のヘルパーさんのサービスセンターを置いて、必要なときにはベル一つですぐ飛んでいける、そういうふうなケアつきの住宅を考えることはできないものでしょうか。これは前に建設省の方から、危険であるという理由でストップがかかった経過があると聞いておりますが、建設省、どうでしょうか。
  41. 木内啓介

    ○木内説明員 公営住宅につきましては、一つは身体障害者向けの公営住宅を供給しておりまして、設備、設計の面で配慮を行うというのが一つございます。そのほか、昭和五十五年に公営住宅法の改正を行いまして、老人とか身体障害者の方であるならば、普通、公営住宅は家族同居の場合が原則でございますけれども、単身でもそういう方々は入居が認められるという制度に改正されておるわけでございます。  ただ、それには条件がございまして、やはり老人、身体障害者の皆様と申しましても、常時看護を必要とするような方は、ちょっとこれは公営住宅というふうなことで居住の安定を図るということではなくて、むしろ養護老人ホームとか救護施設とか、そういう社会福祉施設を提供する方が適切であるというふうな当時の判断に基づきまして、常時看護を必要とするという方にはやはり御遠慮願うという形になっているのが現行制度でございます。  ところで、その看護つきの公営住宅みたいなものを考えたらどうかという御指摘でございますけれども、確かに今後の問題として非常に重要な問題を含んでおるとは思いますけれども、住宅政策というふうな観点からのアプローチと申しますかには、かなり物の性質上限度があろうかと思うわけでございます。ただ、こういった問題は重要な問題だと思いますので、我々現在住宅五カ年計画の改定作業をしておりますので、そういった面でも重要な問題の一つとして取り上げて勉強してまいりたいと考えているわけでございます。
  42. 竹村泰子

    竹村委員 何もこれは、それほど奇想天外なことを申し上げているわけではなくて、既にスウェーデンやアメリカなどではごく普通にもう実現しているわけですね。そういうケアつきの公営の住宅というものを厚生省なども本気で研究しておられますでしょうか、どうでしょうか。
  43. 持永和見

    持永政府委員 今、建設省から御説明ありましたように、建設省の公営住宅は公営住宅なりの理由があるわけでございますが、こういったことで、私どもといたしましては、先ほどもちょっと御説明いたしましたけれども、身体障害者の方々の家庭や地域での生活をしていくその生活条件の整備の一つというようなこともございまして、一定の設備を有する居室あるいはケアを提供するような身体障害者福祉ホームというものを今回の法律改正でもお願いしているわけでございます。これによりまして、一般の住宅では自立生活が困難な障害者に対しまして自立生活を促進するということで、この福祉ホームにおきましては障害に配慮した居室、設備というものを設けますとともに、相談、案内をいたしまして日常生活の便宜を提供するというようなことで、これは公営住宅の設備と相まちまして、身体障害者人たちをできるだけ居宅においてそういった自立生活が可能なような条件整備をしていこうというようなことでございまして、そういうことで御提案申し上げている次第でございますので、ひとつよろしくお願い申し上げたいと思います。
  44. 竹村泰子

    竹村委員 さきに申し上げました北海道のいちご会などでは、もう十年近くもこの要求をして、実験的に自分たちが、障害者も町の中で何も危なくないんだ、なかなかわかってくださらないので、もう十年近く実験生活をしているわけです。何の事故も障害も起きておりません。そういうことがありますので、これはぜひ本気で検討をお願いしたいと思うわけでございます。  もう時間がなくなってしまいました。最後に一つだけ、きょうはこれは私は触れられないので触れないでおりましたけれども、最後に一つだけお聞きして終わりたいと思います。  改正案の第三条第二項には、「国民は、社会連帯理念に基づき、身体障害者がその障害を克服し、社会経済活動に参加しようとする努力に対し、協力するように努めなければならない。」とありますね。そこで、例えば普通学校で普通児とともに学ぼうとする努力をする障害児に対して、学校関係者が協力するように努めなければならないものと解してもよいでしょうか。その「国民は、社会連帯理念に基づき、」という「国民」というのは非常に広い意味があると思うんですけれども、障害児が普通学校で学びたい、親も学ばせたい、そういう場合になかなか難しい問題がたくさんありまして、これは文部省ともまたいつか御検討しなければならないことですけれども、この改正案第三条にあります「努めなければならない。」ということで、対する国民に対する厚生省の教宣というか希望というか、そういうことで御見解を大臣いかがです。
  45. 渡部恒三

    渡部国務大臣 先生御指摘のとおり、「国民」というのは、これは文部省も建設省もすべて入るのは当然でございますから、身体障害者の皆さん方の教育、これは文部省がそれにこたえていかなければならないのは当然だろうと私は考えております。  ただ、役所別々のことですから、文部省にも私どもそういうことでお願いしたいと思います。
  46. 竹村泰子

    竹村委員 文部省の方では大変かたい態度をとっておられるわけでして、障害児が普通に自分のすぐ近くの学校に行くというのは、今現実の問題として非常に難しいことになっております。その辺を厚生省もぜひ御一緒に努力をして、検討を重ねていただきたいと強く希望を申し上げて、終わらせていただきます。(拍手)
  47. 有馬元治

  48. 村山富市

    村山(富)委員 残ったわずかな時間に質問を申し上げますので、できるだけ簡潔にお尋ねしますので、簡潔な御答弁をお願い申し上げます。  これは参議院の段階でも、またきょう竹村さんからもいろいろお話がございましたが、今度の法律改正を見ますと、例えば「収容」を「入所」と変えるとか、それから「ほうき」やら「はたき」やら「ぞうきん」といったような言葉を削除して、何となくイメージを変えようとしておる。そういう配慮はわかるんですけれども、それはやはり単に言葉だけの問題でなくて、国際障害者年長期行動計画、あるいは中間年を迎えるといったような時期でもありますから、従来の身体障害者に対する福祉政策の考え方を基本的に変えていく、そして、これから望まれる方向に転換できるような政策をしっかり位置づけていくということが大事ではないかというふうに思うのですが、まずそういう点の考え方について若干お尋ねしてみたいと思います。
  49. 持永和見

    持永政府委員 身体障害者対策につきましての基本的な考え方は、先生のお話しのとおりだと思います。私どもといたしまして、今回の法律改正をお願いしておりますのは、国際障害者年を迎え、国際障害者年でうたわれました「完全参加と平等」というようなそういった理念法律の中でこの際はっきりする。  施策につきましては、先ほども御説明しましたとおり、政府全体として長期行動計画を打ち立てまして、国際障害者年理念に基づいた各般の施策を講じているところでございますが、そういった理念自体を身体障害者福祉法の中でもはっきりさせたいということで、今回の改正もお願いしておるわけでございます。  そういう意味合いから、今後とも我々としては、そういった基本理念を踏まえまして、身体障害者福祉対策を鋭意努力していきたいというふうに考えております。
  50. 村山富市

    村山(富)委員 そこで、具体的な中身について若干お尋ねしたいと思うのですが、この改正案の第二十五条で、先ほど申し上げましたように「身体障害者の製作したほうき、はたき、ぞうきんその他政令で定める物品」とこうあったものを、「ほうき、はたき、ぞうきん」というものを削除して、「身体障害者の製作した政令で定める物品」というふうに変えたわけですね。これは、これまでほうき、はたき、ぞうきん以外に政令で決めた物品があるのかないのか。それから、こう変えたのは、単なるイメージを変えただけであって、中身は別に変わりはないというふうに判断をしておるのか、そういうことについてちょっとお尋ねしたいと思うんです。
  51. 持永和見

    持永政府委員 まず第一点のほうき、はたき、ぞうきん以外の政令の規定でございますが、現在の施行令の七条でモップ、清掃用ブラシ及び封筒、これが購買物品として入っております。  それから今回の法律改正で、これは今申し上げました物品がございますが、身体障害者の方々が授産施設などでおつくりになる物品がいろいろ各種、多種多様になっておりますので、製作物品の例としてはいかがなものだろうかというようなことで、むしろ包括的に政令にゆだねた方がいいのじゃないかということで政令にゆだねるということにいたしたわけでございまして、趣旨自体が変わっているものではないというふうに御理解をいただきたいと思います。
  52. 村山富市

    村山(富)委員 私もまだ実態を正確につかんでおりませんけれども、この種の施設で製作されているもので、主としてどこの施設でも大体つくっておるといったようなものがあると思うのですが、そういうものにはどういうものがありますか。
  53. 持永和見

    持永政府委員 授産施設などにおきます主な製作品といたしましては、今申し上げ、ましたほうき、はたき、ぞうきんあるいは政令で決めておりますモップ、清掃用ブラシ、封筒、このほかに多いものは紳士・婦人・学生服あるいはおしめのようなもの、それから紙加工品といたしましての紙箱とか、袋器とか、あるいはおもちゃ、ちょうちん、人形、そういったものが多いかと思います。その他各般にわたりまして、繊維関係、木、竹工芸品、紙加工品関係、窯業、土石製品とかも皮製品、プラスチック製品、金属加工品、補装具その他、各般にわたった製品をつくっておられるのは事実でございます。
  54. 村山富市

    村山(富)委員 これはやはり、国または地方公共団体の行政機関に購買を求めることができる、言うならば販路を保証してあげましょうということになると思うのですけれども、中小企業者等々と競合する部面もあるのではないか。  そこで、実際問題としては大変難しい問題があると思いまするけれども、アメリカなんかの場合にはマグナー・オーディー法というのですか、法律があって、優先的に扱えるような仕組みになっておるのですね。これはそこで働いておる身障者の皆さんが対象であって、施設そのものが別に問題じゃないわけです。働いておる身障者の皆さんが自立できるとか、あるいは自活できるとか、そういう基盤をつくっていくというところにねらいがあるわけですから、製作した品物が社会的に役に立っておる、どんどん販路が拡大されていく、こういう希望があることがある意味では大事ではないか。  さっき局長から太陽の家の話もございましたけれども、まさに太陽の家はそういうものも含んで実現をさしていったといういい例だと思うのですけれども、そういうことを考えた場合に、今挙げたようなものだけではなくて、例えば役務に関するものやら、あるいは製作した物品やら等々は、やはり優先的に、幾らかそういうものも配慮した中で扱えるような仕組みというものを十分考えていく必要があるのではないか。そうでないと、ただこれだけ書いて、「ほうき」やら「はたき」やら等々除いただけで、政令事項としては余り変化がないというのでは意味がないのではないかと思いますから、もう少し積極的な姿勢が期待されるというふうに思うのですが、どうですか。
  55. 持永和見

    持永政府委員 お話しのとおり、今回せっかく包括的に政令でこう規定しよう、こういうことでございますので、従来の例にとらわれず、私どもとしては、今先生の御指摘なども踏まえまして、できるだけ身体障害者人たちがつくる物品がそういった公共の団体で購入できるように、積極的に政令の指定を検討していきたいというふうに思っております。
  56. 村山富市

    村山(富)委員 ちょっとついでにお尋ねしておきますけれども、こういう種の施設というのは、経営そのものが、施設費、措置費については国やら地方自治団体からの補助があると思うのですけれども、全体としての運営、経営というものは安定しているというふうにごらんになっておりますか。
  57. 持永和見

    持永政府委員 私どもが承知している限りは、現在のところ一応大体安定しているのじゃないかというふうに承知をいたしております。
  58. 村山富市

    村山(富)委員 そこで私は、これは要望しておきたいと思うのですけれども、なるほど人件費等の措置費は保障されておりますから、その部面については安定しておる。だけれども、先ほどもお話ししましたように、ここで働いておる、入所しておる、あるいは適所しておる身障者自体がどんな扱いを受けているかということが問題なんで、そういう方々が能力が十分に生かされるような訓練が現実にされておるか、あるいは生活の糧になるような収入というものもある程度保障されているかどうか、こういったようなことが安定するかどうかということの基準にならなければいかぬと思うのです。そういう点については現状はどうでしょうか。
  59. 持永和見

    持永政府委員 授産施設あるいは福祉工場というものがございますが、そういった点におきまして、先生御指摘のように、身体障害者人たちの持てる能力を最大限に活用して、働く場あるいは自立の機会というものを与えていくというのが本来の趣旨でございますから、そういった面でこういった施設経営、施設の運営というのはやらなければならないと思います。  私どもとしても、単に施設自体の、あるいは法人なり何なりの経営の安定ということだけを問題にするというのは、先生御指摘のとおり大変筋違いでございまして、問題は、身体障害者人たちの処遇あるいは能力の活用がいかに図られておるか、こういうことに着目していかなければいけないと思います。そういう意味で、今後ともそういった施設につきましては指導を強化していきたいというふうに考えております。
  60. 村山富市

    村山(富)委員 時間がありませんから深く突っ込んで議論することができないことを残念に思いますけれども、そういう点は、身障者が完全に参加と平等という機会を与えられるというような意味からも大事なことだと思いますから、そういう点でもっと配慮と工夫があっていいと思いますので、そういう御努力を心からお願い申し上げておきたいと思うのです。  それから、そういうものに関連をしまして、この種の施設については、社会福祉事業法に基づいて一定の基準があって認可をされるということになると思います。基準に合致していない無認可施設というものも相当数あるのではないかと思いますが、どの程度あるように考えておりますか。
  61. 持永和見

    持永政府委員 いわゆる基準に合致してない小規模施設でございますが、精神薄弱者関係あるいは身体障害者関係、いろいろございますが、精神薄弱者関係で、大体私どもの方で調べたところでは、一人から十人の施設が百五カ所ぐらい、身体障害者関係で十一人から十九人の施設が百十五カ所ぐらいございます。
  62. 村山富市

    村山(富)委員 これは正確にはなかなかつかみ得ないのではないかと思うのですけれども、私どもの承知しておる範囲ではもっと数が多いのではないかと思うのです。ただ、こういう施設について一定の基準を設けることはやむを得ないと思うのですが、基準に合致しない小規模のこうした施設ができるというのは社会的に必要性があってできるわけですよ。今、国は対象にしておりませんけれども、地方自治体がそれぞれ応分の助成をしておるという仕組みになっておると思うのです。この無認可施設が果たしている社会的役割というものは相当あると思うのです。  例えば、国が認可しておる施設に入れないほど重度障害だというような者も入っておる場合もありましょうし、社会的にニーズがあって、そのニーズにこたえる意味でつくられておるというふうにも思われるわけです。  この問題について多く議論しておる時間がありませんので、ただ一つだけお尋ねしておきたいと思うのですけれども、これは、これからの身障者の福祉政策に対する基本的な理念とも関連があると思いますけれども、最近、身障者と精神薄弱者とを混合してやっている施設ができておる。これはもちろん、身障者が二十名、それから精薄者が二十名というような基準に合致しないと認可されないという面もあって、無認可になっておるわけです。ところが、私はやはり理念として区別をすることがいいのかどうかという問題もあると思います。そういうものも含めて、お互いにそれぞれの分担を受け持ち合いながら、利用できる点は相互に利用し合いながらやれるという利便もあると思いますから、私は、この種の施設については、仮に身障者と精薄者を合わせて二十名になったという場合にはやはり認可の対象にするとかいうぐらいの配慮があっていいのではないかと思いますね。そういう点はやはりもっと検討を加えていく必要があるのではないかというふうに思うのですが、どうでしょうか。
  63. 持永和見

    持永政府委員 今、先生から御指摘のございました身体障害者の人と他の障害者との共同利用、こういったものについては、そういった者のために一定規模を確保するというようなことにつきましては、実は身体障害者福祉審議会からも、「一定規模を確保するためには、他の障害者等との共同利用についても検討されてよい。」という答申を得ておりますし、また、それを受けました、昨年出ました検討委員会の報告からも、「作業施設は、近年、小規模化の傾向にあり、将来の方向として対象者の障害の相違を踏まえた共同利用等について検討を進める必要がある。」というような委員会の報告をいただいております。実は、障害の態様が違いますと指導技術あるいは構造設備、そういった面での配慮も必要ではございますけれども、それぞれの福祉の観点から共同利用ということも、こういったせっかくの審議会あるいは検討委員会からの報告もいただいておりますので、私どもとしては検討課題だと思っております。ただ、これは関係者の方々とも十分話し合いながらやっていかなければならない問題だと思いますけれども、そういった意味で今後検討を重ねていきたいと思っております。
  64. 村山富市

    村山(富)委員 ひとつ十分検討を加えて、そうした社会的要請にこたえられるような措置をすることが大事だと思いますから、よろしくお願いしておきたいと思います。  それから、今度の改正案の中身の中に、新しく身体障害者福祉ホームというものをつくることになっていますね。これは相当関心も高いし、非常によい構想だというので、期待も大きく持たれているのではないかと思うのですが、これだけでは一体どんなものができるのかという構想がなかなかわかりにくいのですけれども、この身体障害者福祉ホームというのはどういう構想を描いておるのか、その構想について若干お聞かせいただきたいと思うのです。
  65. 持永和見

    持永政府委員 身体障害者福祉ホームでございますが、今回法案でお願いしております福祉ホームは、いわゆる一般の住宅では自立生活が困難な障害者人たちを対象にいたしまして、そういった障害者の方々が持っておられる障害に配慮した居室あるいは設備を設ける、それから各種相談など日常生活に必要な便宜を提供するということで、身体障害者の方々が地域社会において自立することができるようにするというようなことを目的とした施設でございます。これは小規模な生活施設ということを考えております。  また、施設の利用につきましては、いわゆる従来のような収容施設と異なりまして、いわゆる軽費老人ホーム、そういった形と同様に、障害者と施設経営者主体との契約によってやるということを考えております。この福祉ホームにつきましては、しかし全体としての、福祉ホームに入られました障害者人たちの健康の問題、安全の問題もございます。あるいは施設運営といったような問題もございますので、一定の規模というのを考えておりますけれども、一応定員を二十名以上という形で現在のところ考えておるところでございます。
  66. 村山富市

    村山(富)委員 二十名以上という基準は一応あるにしても、その地域、地域の特性に応じて、仮にそれは十五名とかいうようなことがあってもいいのではないかと思いますし、そういう意味では、できるだけその地域の状況に対応して弾力的に運用できるようなものにすることの方がより効果が上がるのではないかと思いますから、そういう点の配慮もしていただきたいと思うのです。  これはつくるのは、国や自治体というものはどういうことになりますか。
  67. 持永和見

    持永政府委員 これは従来の社会福祉施設と同様に、地方公共団体もおつくりいただいても結構です。それから社会福祉法人がおつくりいただいてももちろん結構でございます。地方公共団体社会福祉法人ということが運営の主体になろうかと思います。
  68. 村山富市

    村山(富)委員 そうすると、予算の関係はどうなりますか。
  69. 持永和見

    持永政府委員 これに対する国庫補助でございますが、整備費につきまして国が二分の一、それから市町村、法人立の場合には都道府県が四分の一、都道府県立の場合は残りが都道府県、したがいまして、市町村、法人立の場合には国が二分の一で県が四分の一、設置主体が四分の一、こういう予算のあれになっております。
  70. 村山富市

    村山(富)委員 もう時間がないので端的に聞きますけれども、その場合に、このホームには、やっぱりこれは身体障害者が入所するわけですから、ある意味では介護が必要かもしれませんし、ある意味では生活の相談、指導というようなものも必要かもしれませんし、そういうケアが担当できるような人を置く計画はありますか。
  71. 持永和見

    持永政府委員 御指摘のようなことが必要であろうかと思いますので、施設の管理とかあるいは利用者の相談、助言等に必要な職員を配置いたしたいと私どもは考えております。これは軽費老人ホームなどもそういたしておりますので、そういった例を参考にしながら配置を考えていきたいと思っております。
  72. 村山富市

    村山(富)委員 これはお願いだけ申しますけれども、できるだけ小規模で分散して、さっき申しましたように地域の実情に十分対応できるような施設にするということが一つと、それから介護ができるようなやはりケアを十分考える。さらに、これは年次を追ってやはり計画的につくっていくということも必要だと思いますね。予算面から見ますと余りそういう点が明確ではありませんから。もう申しませんけれども、できるだけそういう方向で、成果の上がるような形で推進をしていただきたい。これは期待も大きいというように思いますから、よろしくお願いしておきたいと思うのです。  それから、今度国会で健康保険法の、今参議院に移って審議されておりますけれども、その健康保険法の改正がもしなされますと、今まで十割給付を受けたものが一割負担しなければならぬとかあるいは二割負担をするということになるわけですね。特に人工透析なんかを受けておる皆さんの切実な声として、今、全国に人工透析を行っている医療機関が千五百ぐらいある。その千五百ぐらいある機関の中で更生医療の指定医療機関というものは、正確な数はわかりませんけれども、千二、三百ぐらいじゃないかというふうに言われていますね。これは大まかに全国を見ればそうだけれども、県、県で見ますと、非常に指定医療機関の多い県と少ない県とあるわけですね。そうすると、指定医療機関のあるところはそれでいいわけですけれども、ないところは五万一千円までは自分で負担しなければならぬ。これは国保に入っている皆さんはもとよりだけれども、これから健保が改正をされますと、今までしなくてよかった方がやはり負担しなければならぬことになる。そういう指定をされておらない医療機関で受けておる皆さんについては、地方自治体がそれぞれ工夫をして助成を行っている県もあり、市町村もあるというふうに聞いていますけれども、しかしそれは、各県がそれぞれ主体的に独自でやっていることであって、全国的に一律じゃない。まちまちですね。これは所得制限も違いますし、いろいろな条件が違うわけです。したがって、どういうふうに改革するかということについてはなかなか難しい問題があると思いますけれども、できるだけ各県、市町村など、仮にそういう自治体がやっておる助成というものをやはり平均化していく、余り不公平のないようにしていくということももちろん必要だと思います。住んでいる県によって条件が違うというのも、受ける側からすれば公平を欠く面があるわけですから。そういう点はやっぱり工夫をしてもらう必要があるのではないかということと、それからできるだけ更生医療指定医療機関をふやしていく、そしてあまねく救済されるような方向を考えていくということも必要ではないかというように思いますが、そういう点について考え方を承っておきたいと思うのです。
  73. 持永和見

    持永政府委員 今御指摘いただきました腎臓に関する更生指定医療機関につきましては、身体障害者福祉法に基づきまして、身体障害者福祉審議会意見を聞いて指定を行っているところでございまして、年々指定をふやしておりまして、現在は千二百五十八医療機関指定いたしております。  しかしながら、今お話しのような事実のあることも事実でございます。また、今回の健保法の改正で、こういった人たちについての医療機関の指定をふやしてほしいという声のあることも事実でございますので、私どもといたしましては、今後とも、こういった適切な医療機関について指定をふやしていきたいという気持ちを持っておりますし、また指定の際には、今先生御指摘のように各県のバランスも十分考えながら、この問題について対処をしていきたいというふうに思っております。
  74. 村山富市

    村山(富)委員 後でまた自民党の方からも質問があるのではないかというふうに聞いていますけれども、今度の改正の中で「そしゃく」というものが挿入をされたわけですね。加えられたわけですね。この「そしゃく」が加えられたということは、従来の医師の扱い方がやっぱり変わっていかなければならぬのではないか。これはいろいろな学者の論文やら、あるいは日本矯正歯科学会の方々のいろいろな意見やら等々を見てまいりましても、「そしゃく」に関する診断書等については当然歯科医師が担当すべきだというふうな意見も出ていますね。これは医師会と歯科医師会と話し合いをされたように聞いていますけれども、私は考え方としては、歯科医師会やら医師会という人たち意見ももちろんそれは大事にせねばいかぬ、しかし問題は、受ける患者の側の立場に立ってどうあるべきかという判断を大事にしなければいかぬと思うのですね。その場合に、これはやっぱり、当然この「そしゃく」の問題は歯科医師が担当すべき医療範囲だ、診療範囲だ、こういうふうになれば、当然歯科医師がそれに診断書または意見書を加えるということは必要だと思うのですがね。このそしゃく機能の障害について、歯科医師の意見書、診断書というものをつけなければならぬというふうに思いますけれども、そういう扱いについてはどういうふうに考えておられますか。
  75. 持永和見

    持永政府委員 今先生御指摘のそしゃく機能障害につきましては、いろいろと歯科医師会、それから医師会の間でお話し合いも行われたようでございまして、私どもといたしましては、この委員会での御意見を踏まえながら対処をしてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  76. 村山富市

    村山(富)委員 後でまた質問があるらしいから、答弁がしにくくて困っているんじゃないかと思うのですが、これはまあいいじゃないですか、それは後で同じ答弁をしたって構わぬわけだから。そういうことでなくて、本来ならば、私は条文を変えてしかるべきではないか。そして、ここらを明確にする必要がある。さっき言いましたように、これはあくまでも患者の立場に立ってどうすべきかという判断を基本にすべきであって、それを抜きにしてどうこうすべきであるという政治判断をすべきではないというふうに思いますから、そこを基本にして考えた場合には、当然必要なものであれば条文の改正もする必要があるし、今回は間に合わぬとすれば、何らかの局長通達か何かできちっと措置をしてやっておく必要があるというふうに思いますが、そういう点はぜひはっきりしてください。明確にしてくださいよ。(「ちゃんとしなければだめだよ」と呼ぶ者あり)
  77. 渡部恒三

    渡部国務大臣 これは先生御指摘のとおり、あくまでも患者の立場に立って、もちろん当該の団体の意見もよく聞いて、納得のいくような方向で善処してまいりたいと思います。
  78. 村山富市

    村山(富)委員 善処していきたいという意味は——経過は私もよく聞いているのですよ。医師会と歯科医師会がどんな話をして、どうなったという経過もちゃんと聞いていますからね。だから余りそう配慮はせずに、率直に答えなさいよ、もう。
  79. 渡部恒三

    渡部国務大臣 御指摘のように、今の問題については歯科医師の意見書を添えさせることが適当と考えますので、改正法の施行に当たってはこの旨を局長通知において示すことにしたい、こう思っております。
  80. 村山富市

    村山(富)委員 これはさっきもちょっと申し上げましたけれども、やっぱり将来は条文に加えていく必要があればそういう点も十分検討するというふうにしなければならぬことだと思いますので、そういう点についても意見を申し上げておきます。  時間がございませんから最後に申し上げますけれども、冒頭に申し上げましたように、国際障害者年の中間年を迎える時期でもありますし、今までの単に身体障害者を収容していくといったような考え方だけでなくて、やっぱり「完全参加と平等」が実現できるような基本的な理念を変えていくということが何よりも大事だ。そのためには「更生」なんという言葉をやっぱり改めてもらいたいという意見もあると思いますから、そういうものも含めて、十分身障者の福祉については今後も決意を新たに取り組んでいくという、大臣の最後の言葉を聞いて終わりたいと思うのです。
  81. 渡部恒三

    渡部国務大臣 今回の改正法を私どもお願いしておりますのは、「完全参加と平等」という理念を我々の身体障害者対策の基本として明確にし、またそのための具体的な諸施策を積極的に実行していくためでございます。したがって、国民すべての皆さん方の連帯の精神の意識を、まあ革命と言ってもいいかもしれませんが、身体障害者の皆さん方が明るく、たくましく、豊かに、それぞれの地域で、それぞれの職場で、国民の一人として生きていけるように、国民の皆様方全体の意識の改革をお願いするとともに、政府としてはそのためのできる限りのお手伝いをするように努めてまいりたいと思います。
  82. 村山富市

    村山(富)委員 終わります。
  83. 有馬元治

  84. 平石磨作太郎

    ○平石委員 私は、主に人工肛門、人工膀胱について御質問を申し上げたいと思うわけです。  けさほどからも身障につきましてはいろいろと御意見ございまして、私も、国際障害者年に当たって身体障害者福祉法を見直す必要があるのではないかと当時の園田大臣に御提言も申し上げ、質問をいたしたわけですが、その後、厚生省では、そういった形に沿った一つの見直し作業というものが行われつつあるわけでございまして、昨年の五月十九日、人工肛門、オストメートにつきまして林大臣に御質問を申し上げて、今回の法案の中にそのことが盛られてくるというように、まことにその対応には心から御礼を申し上げるわけでございます。  そこでお尋ねを申し上げたいわけですが、今後認定の問題として認定基準が大きく問題になるのではなかろうかというように感ずるわけでございまして、このことについてまずお伺いをしてみたいと思うわけです。  障害者の「内部障害」という障害者の範囲が法によって認められたのは非常におくれておるというようなことから、一般の身体障害者の処遇とそして内部障害者に対する処遇といったようなものが、いわば整合性と言っていいでしょうか、あるいは多少の不平等があるといったようなことは否めない事実でありますが、今回心臓、腎臓、そして呼吸器、それへもう一つ、内部障害として人工肛門、人工膀胱が入ることに相なったわけでございます。そういう中で、内部障害に対する障害の認定が、私、こういう考え方を持っておるわけでございますが、心臓の場合、腎臓の場合、あるいは呼吸器の場合、これは一〇〇の機能がある、その一〇〇の機能が落ちて、四〇とかあるいは三〇とかいったパーセントの機能しか果たせないといったように、いわゆる減点主義的な考え方に基づいて認定が行われておるのではないか。ところが一方、人工肛門の場合を考えてみますと、生理的な人間の機能、いわゆる排せつ機能というものが切除された。切除されますと機能はゼロになってくる。ここから出発をしなければ本当のものにはならない。したがって、その代替処置として人工的に人工肛門を造設する、装具をつけるということが行われるわけでありますが、そういった意味で機能はゼロであるということ。ひとつそういう考えですが、局長、機能はゼロとお思いいただけますか、どうでしょうか。
  85. 持永和見

    持永政府委員 先生御指摘の人工肛門、人工膀胱を装着された方々につきまして、確かに基本的には、原則的には先生御指摘のとおりだと思いますが、ただ、装着された方々におきましても、手術の態様なり手術後のあれによりましていろいろ各種各様のことがあるやにも聞いておりますが、しかし基本的には、そういうものを造設しなければならないということは、そういった機能がなくなっているから造設しなければならないというふうに私どもの方も理解しております。
  86. 平石磨作太郎

    ○平石委員 そういうことから、人工をつけた場合にどのくらいに回復をしておるかというのが、まさに障害等級の問題に入ってこようかと思うわけです。したがってゼロから出発をするということで、それぞれの各法、身体障害者福祉法、それから厚生省所管の国民年金法、それから厚生年金法、そのそれぞれ三法の中で取り扱いがなされておるわけでございます。  この「厚生年金保険及び船員保険における障害認定について」という昭和五十二年七月十三日付の社会保険庁長官の通達がございます。これを見てみますと、腹部臓器・骨盤臓器の術後後遺症、この認定基準といたしまして、身障者の厚生年金法別表第一によりますと、一級、二級、三級と分かれておるわけです。その一級・二級、三級の中で、一級は労働することが不能である、これが一級。それから二級が「労働が高度の制限を受けるか、又は労働に高度の制限を加えることを必要とする程度」、これが二級。それから三級が「労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度」、このように区分されております。それで、認定要領の中で「人工肛門、人工膀胱又は尿路変更術を施したものについては、原則として次により取り扱う。」「ア」といたしまして「人工肛門、人工膀胱又は尿路変更術を施したものは、三級と認定する。」こういうことに通達がなされておるのでございますが、これがまさに、今局長がおっしゃったいわゆる施術を行った者は機能がゼロである、生理的機能はゼロであるということで、ここには、この厚生年金保険で取り扱う施術した者は三級と認定する、こういうようになっておりますが、これは通達でございますから、今後もそのように、これからの身体障害者福祉法において認定作業をする際に、同じ厚生省所管の厚生年金でございますので、身障者福祉法による認定においてもこれを一つの大きな基礎として行ってほしいと思うわけですが、いかがなものでしょうか。
  87. 持永和見

    持永政府委員 年金関係の障害等級の扱いについては今先生お話しのとおりだと思いますが、私どもの方の身体障害者福祉法におきます人口肛門、人工膀胱の造設者の方々に対しまして障害認定をどういうふうにするか、またその等級表をどういうふうにするかというのは、現在、法案をお願いしているのと並行いたしまして、身体障害者福祉審議会の審査部会の方でいろいろと専門的な見地から検討をしていただいております。その検討をしていただく際には、もちろんこういった、年金でこういう仕組みをやっているということも十分参考にしながら御検討いただいているものと私ども思っておりますが、その検討の結果を踏まえて我々としては必要な措置を講じてまいりたいというふうに考えております。
  88. 平石磨作太郎

    ○平石委員 前向きの御答弁をいただいて、大変ありがたいのです。  そこで、五十七年の四月十六日、国際障害者年推進本部障害者生活保障問題検討委員会、この報告書の中に、これは三十八ページ、等級表のところですが、三十八ページでございます。「現在、障害者に対する年金、手当は、その障害者障害の程度により額に差が設けられている。この障害の程度は障害等級表という形で定められているが、等級表が、同じ年金制度でも厚生年金保険と国民年金とで異なっているなど制度ごとに大きな違いがあることが制度間格差として指摘されている。この差はある程度は制度の性格の違いから来るものとして説明はされるが、それだけで割り切れない点があるのも事実である。しかしながら、実際上の問題としては等級表の一元化は技術的にも非常にむずかしい事柄であり、専門的見地からの検討を要する問題である。」このように報告書の中に指摘があるわけです。したがって、厚生年金の取り扱い、国民年金の取り扱い、それぞれ立法の趣旨等から考えたときにはある程度の格差があることはやむを得まい、だが、それだけで割り切れるものでもない、こういうような指摘もございますので、今局長おっしゃったように、専門委員会等で十分検討をいただきながら、ひとつ御決定の参考にしていただきたい、こう思うわけでございます。  そして「今後における身体障害者福祉を進めるための総合的方策」、これが福祉審議会からやはり同じく出ております。これも内部機能障害、これは十七ページにございます。「心臓、腎臓、呼吸器及びその他の臓器の機能障害についての日常生活活動能力の評価等による等級格付の見直し」、これも福祉審議会から指摘が出ておるわけでございます。  そして、その次のページの十八ページのところに、「障害認定においては、日常生活活動の評価が重要であるが、これについては次のような問題があるので、医学的評価方法とともに生活関連動作の評価をも考慮した合理的な障害認定方法を作成するため、専門委員会を設け検討を続けること。」ここに指摘があるわけでございます。したがって、医師の診断のみで日常生活活動を評価するのは困難な面があるので、他専門職を含めたチームによる判定を行う必要がある。日常生活活動の要素には治療、訓練のほか生活環境も関係する、また身体機能のほか精神的なものの影響も大きい、こういう指摘、身体障害者福祉審議会から指摘を受けておるわけでございます。  したがいまして、私は、この認定に当たっては、少なくともお医者さんの御意見を伺うことは当然のことでありますけれども、やはりストーマのリハビリあるいはそういったことをやっていらっしゃる先生方、そういう先生方をも専門委員としてひとつ参加をさせていただく。そして、日常生活活動がどういう状況であるかといったようなことを十分反映させる必要があると思うのですが、いかがでしょうか。
  89. 持永和見

    持永政府委員 現在、私どもといたしましては、先ほども申し上げましたように、今度お願いしておりますオストメートの方々につきましての障害認定のために、いろいろと身体障害者福祉審議会の審査部会の方で専門的な御検討をお願いしておりますが、その審査部会に、新たにこういった趣旨も踏まえまして身体障害者等級問題小委員会というのを設けまして、そこで小委員会を開いていただいていろいろと専門的な検討をお願いしておるわけでございます。なお、この小委員会の中には、専門委員といたしまして膀胱の先生、直腸の先生もおられますし、また具体的には、こういった委員会の方々が、やはりストーマの方々の実際の体験なり実際の生活の不便さあるいは苦しさ、そういったものも直接お聞きいただかなければならぬというようなことで、去る六月にはそういった意見聴取も行ったところでございます。  おっしゃいましたように、単に医学的な面だけで障害等級の評価をするというようなものではございません。日常生活の問題あるいは精神的な問題、そういったものも含めて等級評価をしなければならないというふうに考えておりまして、そういった問題、先生の御指摘も踏まえて、なお、さらにこの小委員会の方で詰めを急いでいただきたいというふうに私ども考えております。
  90. 平石磨作太郎

    ○平石委員 重ねて申し上げておきたいわけですが、家庭内あるいは社会におけるそういった日常活動の制限ということにつきましては、このストーマの方々は非常に制約を受けるわけです。いわゆる装具が外れますとそのまま垂れ流しになる。だから仕事をしていらっしゃる方でも、あるいは家庭内におる方でも、もしそういうようなことにでもなれば大変なことになるわけでして、日常活動には非常な制約が伴ってくる。それから、旅行をするといったようなことも非常な制限を受けるわけであります。そういうことで、人には言えない、人には見えない、そういう制限がある。それで、そのことは当然精神的な苦痛となってくるわけです。そういう大きなハンディを持ちながら社会生活、家庭生活を行っておるわけでして、そういったことをひとつ十分お考えいただきたい。  それで、それについては経験値がございませんから、単なるお医者さんだけでは非常に難しい。いわゆる手術をしてこれで終わりですといったような、お医者さんだけでは難しい面があろうかと思います。そういう意味で、専門委員の中にはそういった術を受けた先生もいらっしゃいますし、あるいは専門にそういうケアをやっていらっしゃる先生方もおいでになるわけですから、それらをぜひ加えていただくように重ねてお願いをするわけですが、いかがでしょう。
  91. 持永和見

    持永政府委員 先ほど申し上げましたように、実際のこういった方々の御意見、あるいはこういった方々について専門的な御研究なり御所見をお持ちの先生意見を聞きながら作業を進めていかなければならないことは、先生御指摘のとおり当然でございます。そういった意味で、先ほど申し上げました小委員会におきましてもいろいろな方々から意見聴取をしておりますが、今おっしゃいましたように、そういったストーマの方、自分でこういった人工臓器をつけた方、先生方からも直接意見もお伺いいたしまして、そういった御意見を十分参考にしてこの小委員会の作業を進めていくということで、させていただきたいと思っております。
  92. 平石磨作太郎

    ○平石委員 次は、障害年金の問題についてお伺いをしたいと思います。  御案内のとおり、厚生年金では三級まで、国民年金では二級までが対象に入っておるようですが、このストーマの場合にこれはどういうことになりますか。やはりどう判定するかはわかりませんけれども、国民年金と厚生年金とは趣旨も違いますし性格も違う関係で、そのように二級と三級といった形になっておろうかと思うのですが、これが今審議されております新国民年金法へ移行をしたときに、やはり障害基礎年金、それから障害厚生年金、こう分かれると思うのですが、その場合に障害基礎年金はいわゆる二級まで、障害厚生年金は三級まで、こういったものがそのまま移行するという形になるものですか、どうでしょうか。
  93. 吉原健二

    吉原政府委員 現行年金制度について言われておりますいろいろな制度間の格差、あるいは制度内の格差の中で、障害年金の支給対象、支給要件に違いがあるというのも一つの問題でございまして、それを是正するということが今回の年金改革の一つの目的でもございます。  したがいまして、今お尋ねの障害年金につきましても、新たに各制度に共通する給付として基礎年金障害者に対しては障害基礎年金というものが導入をされるということになりますので、その基礎的な障害基礎年金につきましては、考え方としてできるだけ障害の範囲、程度、そういったものを合わせるということでなければならないというふうに思っているわけでございます。  それで、障害基礎年金の対象として私どもが考えておりますのは、現在の国民年金の一級、二級、そういったものを対象に基礎年金を支給する、そして厚生年金の一、二級と国民年金の一、二級というものを、できるだけ国民年金障害等級を基本にして整合性のあるものにしていくという考え方を持っておりまして、成立をしていただければ法律の実施が一応六十一年四月ということになっておりますので、その実施時期までに、専門家の御意見も聞きながら障害等級表を合わせていくというようなことを考えているわけでございます。
  94. 平石磨作太郎

    ○平石委員 基礎年金につきましてはやはり二級で合わせていく、今こういうお話してございましたが、この上積みになる二階の方の部分は、将来やはりこれも二級へ持っていくということに整合性を持っていく、こういう考え方があるわけですか。
  95. 吉原健二

    吉原政府委員 現在は厚生年金につきましては三級までが対象になっているわけでございますが、この三級の障害年金をどうするかというのが、この改革案をつくる際も一つの議論になったわけでございます。私ども、従来とも厚生年金におきましては三級までを対象にしておりましたので、この際その三級の障害年金をなくすということはどうだろうかということで、基礎年金は一、二級までを対象にいたしますが、従来どおりサラリーマンの方、被用者の方につきましては三級障害という障害年金を残すという考え方にしているわけでございます。それはあくまでもいわば二階建ての部分の年金として、三級障害年金というものを残しておきたいというふうに考えているわけでございます。
  96. 平石磨作太郎

    ○平石委員 大体わかりました。  そこで、次は、障害年金がいただけるぐらいの、いわゆる二級以上になるという場合はそこで処理されていくのでしょうが、そうでない、いわゆる認定は受けたけれども年金に該当しないといったような、いわばいつもここへストーマをつけておる人、装具をつけておる人、これは将来どういうことになるのか。現物給付になるのか、金銭給付になるのか、身体障害者として装具を交付するといったような形に相なるものなのか、そこらをひとつ明らかにしていただきたいと思うわけです。
  97. 持永和見

    持永政府委員 先ほど来申し上げておりますように、こういったストーマの方々につきまして、今専門委員会でどういった評価方法をするかというのを御検討いただいております。その結果を受けまして、いわゆる身体障害者福祉法によります「身体障害者」という認定が行われた方につきましては、先生も御承知と思いますけれども、こういった方々につきましては必要な補装具を支給する、こういうことになっておりまして、ストーマの方々の補装具といたしましては、収便袋と皮膚保護剤、あるいは収尿袋と皮膚保護剤、そういったものを補装具として支給することになるかと思います。  この支給の方法につきましては、現在、法律の成案を得次第、どういった形でやったらいいのか、利用者の方々の便宜という問題もございますので、そういったものも十分配慮しながら検討してまいりたいというふうに考えております。
  98. 平石磨作太郎

    ○平石委員 まだ法律ができていないやさきにこういう政令事項にかかわることを申し上げて恐縮なのですけれども、一応お考えいただく一つの基礎として申し上げておるわけでございまして、今までこれは法外援護という形で、東京都あたりあるいは全国的にも、それぞれ法外援護でいわゆる補装具に対しての助成がなされておったわけであります。そういった該当者も相当あったと思うし、それから、この法律が施行され、そして厚生省の方でそれぞれ調査あるいは申請、そういったことがなされると思うのですが、私は、今までのいろいろ各地でお話を聞いた中から判断をいたしますと、相当数の方が、いわば今までわからなかった方が表に出てくるのではないか、こういったことが予想されます。そういう意味から見ましても、相当数の者が予想されてくる、だから、今後のこの人たちの処遇というものにつきましては、少なくとも、先ほども認定の問題で触れさせてもらいましたが、そういった人は、厚生年金のあの通達にありますように、施術した者は三級とすという通達があるわけですから、そこらを一つの根拠にして、この補装具というものがいわばわかった人の全員にいけるように私はお願いをしたい、こう思うわけです。  したがって、この人たちは、それぞれの程度の差はあろうかとは思いますけれども、やはり毎日毎日のことでありまして、非常にこういったケアを受けてなれた人、あるいは術後のなれてない人、いろいろな人がいらっしゃると思うのですけれども、なれた人でありましても、これは相当ハンディを持った生活を余儀なくされておる関係がありますので、そういった意味で全員漏れなくそういった処遇がなされるように特にお願いをしたいわけですが、これは大臣、一言お願いしたいと思うのです。
  99. 渡部恒三

    渡部国務大臣 今、先生から万々の御意見をちょうだいいたしまして、オストメートの方々の手術の後遺症や日常生活におけるさまざまな御不便については、先生おっしゃるとおりでございます。  であるからこそ、私も大臣に就任いたしまして、五十九年度の予算編成に当たって、これこそはどんなに厳しい予算と言われても獲得しなければならないということで、大臣折衝に持ち込んで、大蔵大臣に無理に粘って今回この処置をすることになったわけでございますから、先生御心配しておられるような方向に持っていきたいのでございますが、ただ、すべてのオストメートの方々を身体障害者の範囲に含める、こういうことは他の障害との——役所の仕事はそういうことなんですね。私も最初、この施策を実行するときは先生と同じような考えを持ったのでございますけれども、行政でやるということになりますと、他の障害者との均等とかそういうことがありまして、今先生に歯切れのいいようなお答えができないのが大変恐縮なのでございますけれども、しかしこの範囲、また認定基準、こういうことは、先生御案内のように、現在、身体障害者福祉審議会審査部会において検討をいただいておるのでございますから、気持ちとしては先生と私は同じ考えでございますので、これらの審査部会の御検討等をちょうだいして、先生の趣旨が生かされる方向にできるだけ努力をしてまいりたいと思います。
  100. 平石磨作太郎

    ○平石委員 これは今大臣の心情をお聞かせいただきました。行政的な対応と個人的な考え方とには多少のずれはやむを得ないかもわかりませんが、切なるものがありますので、そういった面、患者さんの意向も十分それらの小委員会に反映ができますようにひとつ格段の努力をお願いしたい、こう思うわけです。  それから、時間もありませんので簡単にお願いをしておきますが、ETの問題でございます。これはちょうど担当局長がお見えになってないと思うのですが、これは要望をいたしておきます。  この問題につきましては、いろいろと新たに手術を受けた方に私も過日お会いをしました。「平石先生、昨年からこの問題には取り組んでおられるようですが、実は私この手術を受けて人工肛門をつけることになりました。もう目先が真っ暗です」と言う。どんなにしていいのかわかりませんということでお医者さんにお伺いをしても、十分な御指導をいただけない。わかっておるお医者さんはよく指導もいただけますけれども、手術だけするお医者さんは後のことについては余り御存じないというようなことで、非常に困りましたという連絡を受けまして、この互療会の資料をすぐ患者さんに私、お送りをして渡してあげたわけです。このように毎日毎日のことですから目先真っ暗になる、こうなりますとどこへ相談していいのか、どなたに聞いていいのかわからないわけです。そういうことに直面をしますので、ストーマの療士、アメリカあたりは相当養成もしておるようですし、海外等ではこのことについては相談等も受けておるようですが、日本でも過日、名古屋においていろいろ講習会もなされ、研究会もつくられたようでございます。そういったことで五十四年九月、大阪でET育成のためのカリキュラム作成小委員会が開かれた。それから人工肛門装具研究委員会で検討されて、だんだんと社会的にもそういった機運も出てきて、養成も研究講習も行われておるようですので、これらについても将来何か国として取り上げていただき、これらの養成に行政的に力を加えていくということも必要かと思いますので、これはひとつお願いをしておきたいと思うわけです。  以上で終わらせていただきますが、今回の身障法の改正、いろいろと問題点が、政令の中に今度は新たに拡大をされてくるように、非常に門戸が開かれ、そして新しい対応ができるように改正がなされつつあるわけですが、そういったことを踏まえ、今後の身体障害者福祉についてのお考えをひとつお聞かせいただきたい。  それから、私もちょっと忘れておりましたが、前回の御質問の中に出ておりました「そしゃく」の問題。これは先ほど御答弁いただきましたので大体わかりましたが、やはりこの口蓋裂等の問題につきましても、実際担当して診ていらっしゃる歯科医師さん等の意見が反映されるように、ひとつお願いを申し上げておきたいと思うわけです。それで大臣より二言、今の決意をお披瀝いただいて終わりたいと思います。
  101. 渡部恒三

    渡部国務大臣 今回、私どもがこの改正案を先生方にお願いしておるのは、まさにこれからの身体障害者施策のあるべき基本原点である「完全参加と平等」、これを国民すべての意識革命とし、また我々もこの原点に立って施策を行うという決意でお願いをいたしたわけでございます。したがって、国民の皆さん方の御理解と御協力をいただいて、この国に生きるすべての身体障害者の皆さん方が、どの地域でも、どの職場でも、またすべての家庭において、明るく、たくましく、豊かに、誇りを持って生きていけるような社会をつくりあげるために、今後全力を尽くして私ども努力をしてまいりたいと思います。  今、先生からも、そのための具体的な施策について大変貴重な御意見を承りましたので、法制定後、政令その他ございますから、先生の御意見も、貴重な私どもの今後の行政の指針とさせていただきます。  また、今「そしゃく」の問題がございました。先ほどもお答えいたしましたように、これは患者の立場に立って、しかも関係団体の皆さん方の御理解を十分ちょうだいして、歯科医師の方に処方せんをお願いするという方向で進めたいと思います。
  102. 平石磨作太郎

    ○平石委員 終わります。
  103. 有馬元治

  104. 塚田延充

    塚田委員 植物人間、大変痛ましい言葉でございますが、遷延性意識障害患者、この場合本人はわからないかもしれませんが、その御家族、関係者は精神的にも、肉体的にも、また金銭的にも大変な御苦労をされており、そのために家庭崩壊というような痛ましいことすら予想されておる状況でございます。この植物状態患者につきまして、その救済策全般、さらには、ただいま審議されております身障者福祉法適用との関連につきまして、お尋ねしたいと考えております。  まず、身体障害者福祉基本問題検討委員会が、昨年八月、その報告書の中でいろいろと報告を出されております。まずお尋ねいたしますけれども、遷延性意識障害患者の定義につきまして、昭和四十七年の日本脳神経外科学会は、自力摂取ができないなど六項目の状態が三カ月以上続く患者を指しているようですけれども、厚生省の見解はいかがなものか。
  105. 持永和見

    持永政府委員 遷延性意識障害者の定義でございますが、先生御指摘のように脳神経外科学会の定義がございます。自力移動不能その他、五項目のそういった具体的な状態が、おおむね三カ月以上継続している者を言うというような定義がございます。厚生省としても、この日本脳神経外科学会の定義に沿って考えていきたいと思っております。
  106. 塚田延充

    塚田委員 ただいま申し上げました報告書の件でございますけれども、その報告書の内容を厚生省としてはどのように受けとめて、それに基づいて遷延性意識障害患者についてどのような対策を講じようとされておるのか、その辺につきまして御説明賜りたいと存じます。
  107. 持永和見

    持永政府委員 先生お話しの基本問題検討委員会報告書、これにおきまして、昨年の八月でございますが、遷延性意識障害について、個々に身体の障害の状態に応じて法の対象にすることが適当であり、常時の医学的管理を要しない者については、療護施設に収容すること等が考えられるというような報告をいただいております。この報告の趣旨は、医学的管理を要しない、そういった遷延性意識障害者の方々については、身体障害者福祉の観点から身体障害者福祉法として対応すべきだ、こういうような御報告だというふうに受けとめておりますので、そういった面での対応を考えていきたいというふうに思っております。
  108. 塚田延充

    塚田委員 このような患者は、新聞によりますと全国で約二千五百人、これ以上いるんじゃないかと推定されているようでございますけれども、厚生省としては、その患者の実数についてどのように把握されておられるのか。また、交通事故など頭部外傷によるものとか、最近ではさらにいわゆる脳血管障害によってこのような患者がふえているんじゃないかと推定されているわけでございますが、原因別には大体どんなふうになっておると厚生省はキャッチされておるのか。さらに、新聞報道などによりますと、もうこれは九年前の委託調査結果のみであるというようなことでございますけれども、ほうっておける問題じゃございませんから、早急に実態調査をすべきじゃないかと考えております。その実態調査をいつ、どのような形で大々的におやりになるのか、その辺の今後の実態調査の方針について御答弁いただきたいと存じます。
  109. 大池眞澄

    ○大池政府委員 お答え申し上げます。  遷延性意識障害者の方々に関する調査研究につきましては、厚生省におきまして委託研究の形でお願いしているところでございますが、約十年ほど前の研究成果といたしまして、全国の推計をしたものがございます。それによりますと、先ほど先生お話しございました、全国で二千人から二千五百人と推計されているところでございます。そのときの調査の結果によりますと、六百四十六例中、頭部外傷が三百十二例、それから脳血管性障害が百六十六例、脳腫瘍によるものが八十六例というような状況でございました。  それで、御指摘のように、最近、高齢化の急速に進んでいることもございましょうが、脳血管障害によるものが著しく多くなっているというようなことも言われておりますが、そういう量的な形ではまだ調査が行われておらないところでございます。  次に、最近の実態について掌握する計画はあるかという御設問でございます。  この研究はずっと厚生省におきましても取り組んでおるところでございまして、その後十年近く経過しておるものでございますから、本年度の研究におきまして、全国の実態がどのように変化しているかということを調査研究いただくことにしております。そこにおきまして、全体の患者さんの数並びに年間どの程度新たにそういう状態になっているか、年間の発生数、また同時に性、年齢分布とかあるいはその原因ですとか、いろいろ調査研究いただくことに相なっておるわけでございます。
  110. 塚田延充

    塚田委員 植物状態患者につきましては、回復の見込みがほとんどないというような理由から、身障者としての適用、これがおくれておるんじゃなかろうかと心配されておるわけでございますけれども、いわゆるこの福祉法の適用ということになりますと、実際的には政令によって規定する形になるんじゃないか、このように考えられるわけでございますけれども、いわゆる線引きと申しましょうか、どういうような状態の患者を身障者福祉法の適用の範囲に加えていくのか。私としては、できるだけ多くの方々をこの福祉法の適用の患者にした場合に、救われる患者、そして患者以上に、患者ははっきり言って意識がないと言われておりますからわからぬと思いますけれども、家族の方が、関係者が救われていくと思うのですけれども、その対象の範囲につきましてどのようにお考えになっているのか。障害が固定し、更生の見込みがあるとかないとかというのはどのような状態を指しておられるのか。この辺につきましてちょっと具体的に御説明いただけたらと存じます。
  111. 持永和見

    持永政府委員 先ほども申し上げましたように、遷延性意識障害の方々の中で、医学的管理の必要な状態を脱してしまって、あるいは在宅の介護なりあるいは社会福祉施設におきます処遇で対処できるそういった状態になった方々は、これはいわゆる身体障害者福祉法の対象になるというふうに私どもは考えております。  こういった方々につきましては、今回の政令で決めるというよりも、そういった方々は大変な状態にある方々でございますので、医学的管理を必要とする人たちについてはあくまで医療的なケアを優先してもらうということになりますが、そういった医学的管理を必要としなくなった人々につきましては、先ほど御説明申し上げました基本問題検討委員会の報告書もございますし、そういった方々につきましては重度の肢体不自由が伴っているというふうに思われますので、重度の肢体不自由というような形で身障法の対象にして、それなりの福祉の措置を講じていく、こういうことになるかと思っております。
  112. 塚田延充

    塚田委員 身体障害者福祉法が適用となった場合、健康保険適用との関係がどうなるのか、御説明賜りたいと思います。
  113. 吉村仁

    ○吉村政府委員 身体障害者福祉法が適用になりますと、恐らく更生医療の対象ということになるのだろうと思いますが、その場合に、まず健康保険が優先して適用をされる、こういうことに相なります。したがって、医療が必要である限り、期間あるいはその医療内容についての制限なしに健康保険が適用をされる、こういうことに相なります。そして、自己負担の部分につきまして、身体障害者福祉法による更生医療によりまして公費負担が行われる、そういう関係に相なります。
  114. 塚田延充

    塚田委員 植物状態患者に関しましては、交通事故による頭部外傷が原因となっているケースが極めて多いことは既に御答弁いただいておりますけれども、それとの関連におきまして、運輸省におきましては、特殊法人といたしまして事故対策センターを千葉県に設けまして、このような交通事故による植物状態患者を対象として医療措置を講じておられる、または療護措置を講じておられるようでございますけれども、今の千葉市内に開設されております専門病院の規模とか内容とか、それから開設以来どのような実績を上げておられるのか、そして、このような必要性は全国各地に生じておるわけでございますけれども、このようなセンターをもう少し西日本の方にも、東北の方にも設けていくような計画がおありになるのかどうか、御説明いただきたいと思います。
  115. 福島義章

    ○福島説明員 お答えいたします。  先生御質問の、千葉市にございます自動車事故対策センターの千葉療護センターでございますけれども、このセンターは、自動車事故によります重度の意識障害になっておられる方を収容いたしまして、適切な治療と療護を行うというものでございます。  このセンターにつきましては、実は五十六年度から整備を進めてきたものでございますが、ことしの二月から開業するに至っております。  施設の規模といたしましては、約九千平米の敷地におきまして、一部二階の部分がございますけれども、鉄筋コンクリート平家建ての建物を擁しておりまして、最終的には病床数五十ベッドという体制を予定いたしております。ことしの二月の開業に当たりましては、当面二十ベッドということでスタートいたしまして、四月からベッド数三十ベッドという体制にいたしております。  なお、ここに現在入院しておられる方でございますけれども、現在のところ二十一名の方が入っておられます。  最後にお尋ねの、こういうセンターを全国的にというお話してございますけれども、このセンターにつきましては、何分にもことし二月に開業したばかりでございますし、今後どういう形でこのセンターを運営していくか、そのことで当面は頭がいっぱいでございますので、このセンターの今後の運営状況等を見ながら考えていきたいというふうに考えております。
  116. 塚田延充

    塚田委員 それでは厚生省にお尋ねいたしますが、厚生省関係の植物状態患者のための療護施設はどのような状況になっておるのか、また民間の病院などで専門的に扱っておる病院がどのような状況にあるのか、またそれに対して特別な指導であるとか援助であるとか特別な措置を請じておられるのかどうか、お尋ね申し上げます。
  117. 持永和見

    持永政府委員 こういった遷延性意識障害者の方々につきましては、在宅における介護あるいは施設への入所、こういうことがあるということを先ほど申し上げましたが、そういった場合に予想される施設といたしましては、身体障害者の療護施設でございます。  その身体障害者の療護施設は、現在全国で百四十二カ所、定員にいたしまして八千八百七十二人の定員がございます。こういった施設にそれぞれ必要な場合には御入所いただく、こういうことになろうかと思います。  なお、民間の病院でこういう専門的に扱っている病院はないのかというお尋ねでございますが、こういった御指摘のような専門的な病院は、民間のレベルではないというふうに私ども承っております。
  118. 塚田延充

    塚田委員 身障者全般の療護施設としてお答えいただいたと私は受けとめておるのですけれども、いわゆる遷延性意識障害の方のみを対象とするそういう療護施設があるのか、もしくは各国立病院であるとか、または、ずっと以前からあります結核療養施設などを、正式にこういう遷延性意識障害患者のためとして、特別な看護施設を設けて手を打っておるというようなことがあるのかどうか、その辺お伺いしたいと思います。
  119. 持永和見

    持永政府委員 まず、前段の身障者療護施設のお尋ねについてお答え申し上げますが、身障者療護施設については、遷延性意識障害者が入所しておられる事実はございます。こういったことで入所しておられる事実はございますが、それを専門に扱っておるという施設は今のところございません。
  120. 大池眞澄

    ○大池政府委員 国立医療施設におきましては、入院治療を行って治療効果が期待できるというように医学的に判断される患者さんに関しましては、それぞれの診療科の連携によって対処しているところでございますが、御指摘のような、遷延性の意識障害者の方のみを対象としての仕組みというものは特に考えてないわけでございます。なお、遷延性の意識障害というのは、先ほど先生の御指摘ございましたように、交通外傷でございますとか脳卒中、いわゆる脳出血、脳梗塞でございますとかあるいは脳腫瘍でございますとか、場合によっては中毒、一酸化炭素中毒等の中毒、いろいろな原因で起こってくるわけでございまして、やはりそのそれぞれの原因になる疾患との取り組みの結果として、そういうような意識障害の重度の方が生じてくるわけでございます。それとの一連の有機的な治療の一体性もございますので、それぞれの医療部門、それぞれの医療機関において、その病状に応じた適切な対応というのが最も有効な取り組みではなかろうか、かように考えているところでございます。
  121. 塚田延充

    塚田委員 この遷延性意識障害患者につきましては、確かに身障者として認定して、身障者として徹底的な療護を行うというような救済の方法、これをまずお願いしたいわけでございますけれども、やはりその患者の特殊性として、いわゆる肢体不自由児者とかいうようなものとは違った療護がどうしても必要になるんじゃなかろうか。そういう意味におきましては、先ほどお話ししました運輸省が行っておるような特別施設、これが大変有効に救済の任に当たれるんじゃないか、こういうような気がするわけでございます。そして、逆に考えますと、このような植物状態患者がいかに一般の療護施設としては取り扱いかねておるのかという例といたしまして、一般の民間病院におきましてもなかなか受け入れてもらえないとか、また入院してもいろいろな理由をつけられて退院を強いられているという事実をよく耳にするわけでございますので、この辺につきましては、あくまでも身体障害者全般云々ということ以外に、遷延性意識障害という冷厳な事実をもとに、国立の病院であるとか国立の療養所で積極的に受け入れる、このような体制を整えないと、やはりこういう特殊な患者さんを救うことができないんじゃなかろうか、このように考えられるわけでございますが、交通事故の方につきましては運輸省、今後とも力を入れていただけると存じます、信じていきますけれども。そうなりますと、脳血管障害の方から来られた植物状態患者の場合、これは宙に浮いてしまう危険性がありますので、国立病院、国立療養所をいかに活用するのかということにつきまして、厚生省のお考え方、方針をもう一度重ねてお伺いしたいと存じます。
  122. 大池眞澄

    ○大池政府委員 脳卒中あるいは交通外傷等もございますけれども、そのような遷延性の意識障害のもととなりかねないような重篤な疾病に対しましては、救命救急センターを初めとしまして、いろいろと国立病院等におきましても対応しておるところでございますし、また脳血管障害の結果、後遺症、重篤な意識障害等を残すというようなケースにつきましては、国立療養所におきましてもそういった方々に対する対応をいたしておるところでございます。結果として、非常に長期間に及び意識がなかなか回復しないという方々については、それぞれの原因から生じた結果に対して、それぞれの医療機関で取り組んでいくことは先ほども申し上げたとおりでございます。  ただ、やはり、国立の医療機関におきましては結核、精神を初めとしましていろいろな重要な疾病に取り組んでいるところでございまして、医学的に判断しまして、治療効果が期待できるという患者さんを主体に取り組んでいるところでございまして、遷延性の意識障害だけに着目した特定の部門を設けるということは、いろいろ現在の病床事情、定員の事情等から考えまして今のところ極めて困難だという現状にございます。
  123. 塚田延充

    塚田委員 最後に大臣の温かい見解をお伺いしたいと思いますが、この植物状態患者につきましては、何とか今審議しております身障者福祉法の枠の中にできるだけ多く入れて、その福祉法の名において救済してほしいという要望をするわけでございますが、と同時に、今直前に私が申し上げたように、単に身障者という見方だけではおさまりがつかない、もっと根深い問題がこれらの患者さんにはあるのじゃないか、その辺に着目してできるだけの措置をとれるように、厚生省としてさらに御検討賜りたいと思っておりますが、その辺につきまして大臣の御見解をお伺いして、私の質問を終わらしていただきます。
  124. 渡部恒三

    渡部国務大臣 先生からお話しがありました遷延性意識障害者の問題、私どもも幾たびかそういう方に遭遇しておりますが、難しい問題でもあり深刻な問題でもあります。先生から今数々のお話しがありましたが、極めて重要なお話しでございますので、今政府委員から答弁いたしましたように、常時医学的管理の必要な状態を脱し、在宅介護または社会福祉施設における処遇で対応できる状態に至った者で身体障害者の認定基準に該当する場合は、身体障害者福祉法を適用し、必要な援護措置を講ずるようその取扱い方針を明確にしてまいりますが、今御指摘のようなこれだけで割り切れない問題等幾つかございますので、これらの問題、総合的に今後検討して、御期待にこたえるように努めてまいりたいと思います。
  125. 塚田延充

    塚田委員 ありがとうございました。
  126. 有馬元治

  127. 田中美智子

    ○田中(美)委員 実はNHKのテレビを見まして、低肺機能の問題で私は非常に驚いたわけです。それは、私自身が結核療養所に三年入っておりまして、肺の手術をしておりますので、いずれはもう少し老化しますと私も低肺になっていくのではないか、私の夫もそうですので、二人ともそうなっていくのではないかという、身につまされて驚いたわけです。早速そういう低肺機能のグループの方たちにいろいろお話を伺うことによって、こういう治療法があるのかということを初めて知った、非常に遅かったように思うわけです。  ことしの最初の予算委員会のときに、共産党の工藤議員が質問をしたときに、この低肺機能に対するいろいろな調査だとか対策を前向きに検討するというお話がありましたので、私は非常に注意深くこの問題は聞いておりました。  いろいろありますけれども、きょうは時間が少ないので、その中で一つお伺いしたいのですが、在宅の酸素を健保に適用できないかということです。慢性の安定期に入った人たちが、在宅で酸素を吸えば入院する必要がない。入院すればどんなに安くでも二十万、三十万、四十万かかるわけで、そこではベッドも食事もみんな人の手を使うわけですけれども、結局は酸素を吸うためだけに入院するわけなんですね。ですから、そういう安定期に入った人は健保で、家庭で酸素をやっていかれれば、医療費も非常に節約になるのではないかと思います。そういう点で、大急ぎでこの点をやっていただきたいと思うのです。  というのは、私の友人で、私と同じ療養所におりました北浦しつ子さんという方が一昨年亡くなったわけです。もう完全に結核は治癒して私と同じような状態にあったわけですが、突然亡くなったというので、そのころの同じ療養所にいた者が、同窓会みたいな連絡を幾らかとっているわけですけれども、聞きましたら、どうしても何で死んだかわからないわけです。突然夜中に苦しんで、胸をかきむしった。どうも心不全ではなさそうだし、結核の再発でもないということで、胸をかきむしるようにして夜中に息苦しくなった。夫がそういうことを知らないものですから、夜が明けたらすぐ救急車を呼んでやるから待てよということで、まさか死ぬとは思わなかったところが、夜の明ける直前に、結局窒息死のような形で死んでしまったわけです。ですから、ころり病みたいなことで死んだんじゃないかというような感じを私たちは受けていたわけですが、これが低肺だったのだ。もしこのとききちっとした対策があれば、この私の友人は死なないで済んだと思います。彼女の場合は、きちっと検査をしてどれだけの酸素が要るんだということになれば、恐らく慢性安定期に入っていたと思いますので、在宅の酸素で十分に今も元気で生き延びられた。私より二つ、三つ若かったと思いますので、非常に残念に思うわけです。これはNHKで放映されたときに、そういうことで死んでしまった、本当に残念だという手紙とか、危機一髪のところで知ったためにすぐ病院に行って、これから安心できるというような物すごい反響があったと言われております。  これは予算委員会などで大臣も十分お聞きだと思いますので、まず在宅酸素を健保に適用していただきたい、これがどこまで進んでいるのか、具体的にぜひお答えいただきたいと思います。
  128. 吉村仁

    ○吉村政府委員 在宅酸素療法の健保適用につきまして、私どもは関係学会の意見をいろいろ徴しておるわけでございます。  と申しますのは、在宅酸素療法を採用いたしますためには、一つは、安全かつ有効なやり方をしなければなりませんので、その留意事項というものをきっちり決めなければならないという問題がございます。また、今先生が御指摘のような緊急時における医師との連絡、あるいは管理の体制をどうするのかという問題が一つございます。それからまた、患者さん側が高圧酸素ボンベというものを取り扱うことになるわけですので、患者さん側にもそういう知識が要るし、その供給体制も考えていかなければいかぬ、こういう問題がございます。  それを関係学会でいろいろ詰めてもらっておりまして、結論を得次第、私どもは保険の適用を考えていきたい、こう考えています。したがって、時期といたしましても、それほど遠い時期ではないのではないかと今予測しております。
  129. 田中美智子

    ○田中(美)委員 今のような抽象的なお返事ですと、前向きにやろうという姿勢はいいことだと思いますけれども、抽象的ですと、患者さんたちが非常に不安なわけですね。  それで、現在低肺グループで、これは名古屋の東名古屋病院に専門の先生がいられるということもありまして、名古屋の低肺グループが非常に盛んなんですけれども、在宅酸素の基金というのが、あちこちのカンパを集めまして、第一号の方にまず酸素を提供したというようなことが、名古屋の中日新聞に大きく報道されて、非常に感動を呼んでいるわけですね。現にもう自分で買って医者にあれしてやっている人があるわけです。東名古屋病院、国立病院ですから、そこの三輪先生などにもいろいろお話しを伺ったわけですけれども、全く危険性もないし、問題はないのだということを言っています。現にもうやっているわけですから、結論が出たらというのは一体いつ出るのか。何しろ国のやることというのはいつもゆっくりだという感じが国民の中にあります。さっき言った私の友人のように、何しろ本当に急にころっと死ぬわけです。病気というよりも、ちょっと対策をすれば、一般の人たちと同じようにずっと長生きできるわけですので、これは緊急を要することで、遅過ぎたと思うのですね。治療法がはっきりしなかったということもあるかもしれませんけれども、そういう意味で、その結論が出るのは一体いつなのか、はっきりさせてください。
  130. 吉村仁

    ○吉村政府委員 今先生御指摘のように、一部の医療施設でそういうことが行われていることは聞いております。私ども保険に適用するということになりますと、全般的に普及をするということを前提に物を考えなきゃならぬ、こういうことでございますので、そのために若干の時期を要しておるということで、関係学会の結論が近く出る、こういうことを聞いておりますので、その結論が出れば、私ども中医協にかけて保険適用の道を開きたい、こう考えております。時期はいつだということについてはまだ明確に申し上げるわけにいきませんが、速やかに考えていく、こういうことで御了承賜りたいと思います。
  131. 田中美智子

    ○田中(美)委員 来年あたりにはできますでしょうか。来年ぐらいにはやっていただかないと、この次の診療報酬の点数を改定しますね、そのときにはぜひ何としても出していただきたいと思うのですけれども、どうでしょうか。
  132. 吉村仁

    ○吉村政府委員 努力をいたします。
  133. 田中美智子

    ○田中(美)委員 今のような在宅酸素というのがいかに必要かということは、私が聞いた話ですけれども、家が病院から遠いという方が、病院の目の前に小さな部屋を一部屋借りて、そこへ退院していて、いろいろしていながら、おかしくなるとぱっと入院する、こういうことを繰り返しているのですね。これだったら、入院費が本当にもったいないわけですし、入院費がもったいないという考え方だけでなくて、一番大事なことは、在宅ならその人が家族と一緒に住めるということですね。それから体に合わせた仕事もできるが、入院していれば、ベッド一つ押さえて、医療費もそれだけ使われるわけです。その上に家族とも一緒に住めないし、仕事もできない。そういう観点から見れば、これは緊急にやっていただきたい。次の診療報酬の改定のときには必ずこれを入れていただきたいと思いますが、大臣、いかがでしょうか。
  134. 渡部恒三

    渡部国務大臣 大変建設的な提案でございまして、まことに望ましいことだと思います。実務についてはただいま政府委員から答弁したとおりでございます。
  135. 田中美智子

    ○田中(美)委員 ちょっと聞こえませんでした。
  136. 渡部恒三

    渡部国務大臣 ただいま政府委員から答弁したとおり、できるだけ急いでまいりたいと思います。
  137. 田中美智子

    ○田中(美)委員 それから、実態調査をやるという話もあったわけですが、まだ知らない人が非常に多いわけですので、ぜひこれを知らせるという意味でも、先ほど言いました急性増悪になった場合、このときの緊急体制、これは在宅の酸素を使っていてもそういうことというのはあり得るわけですから、今言われたように緊急時にどうするかということはどこまで進んでいるのか、そういうことの検討はどうなっているのでしょうか。
  138. 大池眞澄

    ○大池政府委員 お答えいたします。  国立病院、国立療養所の仕組みの中におきまして、特に国立療養所におきましては、御承知のとおり、従来から、結核を主体といたしまして、慢性呼吸器疾患に関する専門的治療に取り組んできているところでございます。当然ながら、その中では、呼吸器の呼吸管理問題というのは重要な要素になっているわけでございます。なかんずく、呼吸機能が著しく障害されているいわゆる低肺機能者の方々への診療機能を確保する、充実するということは非常に重要でございますので、計画的、段階的に整備を進めてまいりまして、現在、療養所におきましても十七カ所ほど集中呼吸監視装置を配置しまして、重篤な患者さんに即応できるような体制を整えているところでございます。また、そのほか、国立病院におきましては二十四カ所ほどの集中監視装置ということで、ほぼこれに準ずるような診療機能を具備しておるわけでございます。その中には救命救急センター等も含まれておるわけでございます。  このようなシステムを組んでおりまして、それぞれの地域におきまして、地域の医療機関その他、関係機関と連係をとりながら、そういった先生の御指摘のような患者さんに対する応急の体制という重要な役割を演じているところでございます。
  139. 田中美智子

    ○田中(美)委員 そのように言われますと、そのようにすべてのところができているような、いわゆる国会答弁というような感じが今したわけですけれども、やはりもっと細かく、現実に患者さんたちが困らないようにする。これは名古屋市では市民の訴えが市の方に非常に反映されておりまして、救急指定病院が六カ所ありますけれども、ここに救急車が連れできますと、そこで呼吸不全に対する応対をすぐに簡単にやる。しかし、これは人によって全部酸素の量が違うわけですから、ちょっとした応急対策をして、そしてすぐに、国立療養所東名古屋病院にIRCUがあるわけですから、ここへ送るというふうなことを市がきちっとした指導をしているわけです。  ですから、国はあちこちつくった、福島県には一つもないので、大臣はつくられるというふうなことを国会で言っていらっしゃるけれども、福島だけでなくて全国にそういうものができても、そこへ入れるということがわからなければだめですので、やはり市とか県とかの地方自治体のこういう救急体制と密接に手を組んで、そういう患者のときには大急ぎで応急対策はそこでできるようにする、そしてすぐにIRCUのあるところに送り込んでいく、こういう体制をきちっとしてほしい。ただあちこちにつくりましたということだけではちょっと不十分ではないかと思うのです。そういうことをぜひやっていただきたい。  そういう意味では、今新聞報道などでは低肺機能の人が十五万人いると言われていますけれども、あと私たちのような予備軍が次々老化していきますとこれは入っていくわけですので、まだまだ戦後処理として残っているわけですね、私たちがこの世を去るまでというのは。あの一億総結核化と言われた時代です。  それからもう一つは、結核の事後対策だけでなくて、肺がんの手術だとか、ベリリウムの公害患者だとか、心臓だとか、小児麻痺だとか、ぜんそくとかいうような呼吸関係、そういうものにすべて必要なわけですから、単なる結核の後遺症に対してだけの対策という形ではなくて、やはりきちっとやるべきだ、そのためにはまず国立療養所のあり方ですけれども、これはもともと結核を主とした療養所だったわけです。それがだんだんその役割を果たして次の方向に移行しているわけですが、まだ完全に最後の役割をきちっと果たしてない。国立療養所がきちっと最後の任務をしてほしいとまず思います。この点必ずやっていただきたい。そこには必ずベッドがあり、診療ができるように。こういうことは、今の答弁の中で、多少の努力というのはなされていると思うわけです。しかしこれだけでは、これからずっと出てきますほかのそういう呼吸器的な病気に対しても必要なわけですから、一地域には必ずそういうIRCUがきちっとあって、それに緊急体制をずっと続けてつながっていくんだという計画も、きちっとしていただきたいと思います。  慢性安定期の在宅酸素と急性増悪で入院する、こういうのはまさに車の両輪として、私は結核の最後処理、最後処理というのはおかしいんですけれども、やはり戦後処理だと思うんです。その人たちが、その人たちの与えられた人生を、みんなと同じように長生きができるような対策をやっていただきたいと思います。  それから、もう一つは人工肛門の問題ですけれども、内部疾患だけが四級までしかないということは私は非常に問題があると思います。今すぐそれを五級、六級までつくるということができないならば、私は、人工肛門である人ということ自体はどう考えたって身体障害者に入るということは当然のことですので、これをすべて、今四級しかないから四級には入れられないんだという考え方はやはり間違いだ。四級に入れられないなら五級をつくるべきなんだし、五級に入れられないなら六級をつくるべきなんだし、つくってない方が問題なわけです。人工肛門である人をおくればせながらもせっかく障害者にするということならば、どんなに上手に手術もいき、うまく機能していたとしてもそれは大変なことなんですから、みんな最低四級に入る、重い人は一級、二級に入っていくということは当然ですけれども、その点はぜひやっていただきたいと思うのですが、大臣、いかがでしょうか。
  140. 渡部恒三

    渡部国務大臣 お尋ねの第一点の問題は、まことにごもっともな提案でございますので、そのように努めてまいりたいと思います。  第二の問題は事務的、行政上の問題ですので、政府委員から答弁させます。
  141. 持永和見

    持永政府委員 人工肛門、人工膀胱を造設された方々に対しまして、身体障害者福祉法による身体障害者の範囲をどうするか、あるいは認定基準をどうするかということは、先ほど来お答え申し上げておりますように、現在身体障害者福祉審議会の審査部会で専門家にお集まりいただいて検討中でございます。したがいまして、その結論を待って対処することになろうかと思いますが、身体障害者の等級につきましては、それぞれの部位別によりまして、全体との均衡をとりながら、それぞれ等級づけがなされておるものでございます。この人工肛門、人工膀胱につきましても、そういった面も十分配慮しながら専門的な検討が行われるものと思われますので、その結果を待って対処していきたいと思っております。
  142. 田中美智子

    ○田中(美)委員 専門的な、専門的など言われますけれども、だれが考えても足が一本なければ障害者なんです。まともな本来の肛門がなければ障害者なんですから、それを四級しかないからということで四級には該当しないんだ、それを専門的と言うのであったら、私は誤りだと思います。四級にできないと言うんだったら五級をつくれ、どっちかだ。二者択一以外にはないんだ。障害者であることには間違いないと思いますので、この点は、せっかくつくったものをまたそういうふうに落としていくというふうなことがないように、ぜひやっていただきたいと思います。最後に、大臣のお答えを伺って質問を終わりたいと思います。
  143. 渡部恒三

    渡部国務大臣 これは先生御承知のように、五十九年度の予算、大変厳しい時期に、私は最後の大臣折衝で予算を確保し、その実現のために現在法改正をお願いしておるということでありますから、できるだけこれは皆さんに喜んでいただきたいのであります。そういう意味では、お気持ちはわかりますが、しかし行政ということになりますと、やはり他の障害者との横並びの問題とか均衡とか、そういうものを一切無視して、先生からあったからこれはいいなというわけにもまいらない面がありますから、私の考えとしては、せっかくつくった、しかも骨折ってつくった制度でありますから、できるだけ多くの人に喜んでいただくようにしたいと思いますが、事務的、こう先生おしかりになりますが、行政というものはやはり事務でございますから、その辺のところは今の政府委員の答弁を御了承いただきたいと思います。
  144. 田中美智子

    ○田中(美)委員 終わります。(拍手)
  145. 有馬元治

  146. 菅直人

    ○菅委員 身体障害者福祉法の一部を改正する法律案質疑が続いているわけですけれども、私は、短い質問時間ですので、問題を絞ってお尋ねをしたいと思います。  きょう朝来、多くの委員の方から、オストメートの皆さんを今回身体障害者の認定に加えるということについて、いろいろな形での質問がありました。私のところにも互療会の皆さんが来られて、そうした皆さんの実情というものを大変詳しく話をしてくださったり、あるいは資料をいただきました。大臣もこうした皆さんの話を聞かれたかと思いますけれども、日常的な生活の中で大変に苦労をされているいろんな面が、本当によく私にもわかったわけであります。  そういう点で、このオストメートの方を認定をするという方向そのものはもちろん私も大いにやるべきだと思うのですが、例えば人工透析とか心臓のペースメーカーをつけた人の場合には、その人工透析を始める前の状態といいましょうか、始めたということそれ自体で障害者の認定が受けられる、決まるわけですけれども、今回のオストメートの皆さんの場合には、その後に認定するかどうかを決めようというふうなことだと伺っておりますが、もしそうだとすれば、なぜそうした差ができるのか、人工透析やペースメーカーをつけた患者の方と同じような扱いがなぜできないのか、この点を伺いたいと思います。
  147. 持永和見

    持永政府委員 人工透析なり心臓障害の方々についての認定に当たりましては、先生今お話しのようなことでやっておるわけでございます。先ほど来申し上げておりますように、オストメートの方々につきましての障害者の範囲をどうするか、あるいは認定基準をどうするか、これにつきましては現在審査部会で専門的御検討をいただいております。ただ、この場合に、先ほどお話も出ましたけれども、現在、人工肛門、人工膀胱の造設者の方々に対しましては、年金の方では既に障害者の範囲が決められて障害者の対象となっておりまして、そういったことも横並びで見ながら専門的な検討をお願いしなければならないと思いますが、いずれにいたしましても、今御指摘のような意見も十分に私ども踏まえまして、さらに専門的な御検討をお願いするように、そういった専門家の方々にこういった御意見があるということも十分お伝えをしてまいりたいというふうに考えております。
  148. 菅直人

    ○菅委員 専門家の審議会での論議ということですから、それはそれで尊重しなければならないと思いますけれども、大臣に一つだけぜひ理解いただきたいのは、いわゆる自然な状態のといいましょうか、膀胱や肛門からそういうものが除去されるといいましょうか、直腸が除去される状況というのは、そういう手術をしたとなればこれは非常にはっきりわかるわけですよね。もちろんその同じオストメートの皆さんの中でもいろいろ障害の度が高い、低いがあり得るということはわかります。しかし、そのオストメートのいわゆる人工肛門、人工膀胱を造設された人というのは、これははっきりわかるわけですから、先ほど来の議論の中にもありましたように、少なくとも最低といいましょうか、造設者については何級以上の認定をするということは当然あるべき姿だと思いますし、また、こういう皆さんがせっかく相互に仲間を集められて、生活をしていく上でのいろいろな協力をされている、そういう中で何か、私は認定を受けたけれども、私は認定を受けられなかったというようなことになってくると、何となくそういう中での一つの判断にもいろいろな関係にもひび割れが生じかねない面もありますし、今申し上げましたように、その点ははっきりしているわけですから、ぜひ全員が認定を受けられるような方向で考えていただきたいと思いますが、大臣の見解を伺いたいと思います。
  149. 渡部恒三

    渡部国務大臣 お話しの意味はよくわかるのでありますけれども、身体障害者の範囲は、身体障害者福祉審議会答申でも、「日常生活活動に相当程度の制限を受ける者」に限ることとされております。オストメートのすべての方を対象とするということは、他の内部障害との均衡という面から、これは行政上、事務的には大変困難な面があるように事務局から説明をちょうだいしておるのでございます。しかし、この問題は非常に大事な問題で、私もそれで苦しんでおられる方をよく承知しております。私の県でも非常に重要な立場におられてこの病気になっておられる方がおられるのですが、外から見るとわからない、しかしこれは大変なものである、そういうことで、今回、五十九年度の予算でも最後の最後まで粘って、大蔵大臣との最後の折衝で予算を確保してきたわけでありますから、予算が足りないからそのために対象が制限されるというようなことはあってはならないし、私はそういうことはさせないつもりでありますが、やはり行政をやっておる者にとっては、横並びの問題とか他の内部障害者との均衡の問題とか、そういうものを考え、今慎重になっておる点は御理解いただきたいと思います。
  150. 菅直人

    ○菅委員 大臣が、この問題では大蔵省の折衝で大変頑張られたという話は私も聞いておりまして、その点は私からも大変に感謝を申し上げたいと思っております。しかし、今おっしゃった中で尽きるとは思いますけれども、今回一億八千万ですか予算をつけられて、一応六千三百人の分という形で予算化がされているわけですが、これは参議院の審議の中でも、あるいは本委員会の審議の中でも、また今の大臣の発言の中でも、限定ではないんだ、あくまで当面の予算としての見積もりといいましょうかそういうものだということですから、先ほど申し上げたことと重なりますが、こうした人工肛門や人工膀胱を造設された皆さんのいろいろな状況を大臣も聞かれたと思いますが、それを聞けば、「日常生活に著しく支障がある者」という基準をどう厳しく解釈しても、この基準には十分該当する状況だ、そういう感じが私も重々したわけです。  そういう点で、今後の一層のそういう全オストメートの皆さんの認定という方向を期待をいたしまして、短い質問時間ですので、私の質問を終わらせていただきます。
  151. 有馬元治

    有馬委員長 丹羽雄哉君。
  152. 丹羽雄哉

    ○丹羽(雄)委員 今回の改正で身障者の範囲の拡大、これは大変体の不自由な関係者にとって朗報なわけでございますけれども、その中で、そしゃく機能障害を新たに別表に規定したわけでございますけれども、その経過と趣意をまずお聞きしたいと思います。
  153. 持永和見

    持永政府委員 今回の身体障害者福祉法でお願いしております改正では、範囲の拡大を幾つかやっております。包括的に内部機能障害について政令で決めることができるようにしたということでございます。その仲で、いろいろと御議論がございましたオストメートの方々を身体障害者の範囲に含めるということのほか、聴覚障害者につきまして規定を改めております。また、今先生御指摘のそしゃく機能障害につきましても、新たに別表に規定をいたしました。  この唇顎口蓋裂に起因するそしゃく機能障害につきましては、従来は、音声機能または言語機能の障害として、運用によって法の対象としてきたところでございますけれども、身体障害者福祉審議会の答申に「唇顎口蓋裂後遺症等によるそしゃく機能障害を有する者については、言語機能障害者に対する取扱いとの均衡等を考慮し、検討」をしなさいということで、今度は「法の対象に含める方向で検討することが適当である。」という検討委員会の御報告をいただいております。そういった報告を踏まえまして、そしゃく機能障害者が法の対象になるということを明確にするために、別表に具体的に明確にするという意味から規定をしたものでございます。
  154. 丹羽雄哉

    ○丹羽(雄)委員 それに関連いたしまして、身障者福祉法の第十五条の中では、障害程度の認定のための診断書及び意見書の作成は医師が行うということになっておるわけでございますけれども、そしゃく機能の障害には歯科医業にも大変密接な関連を持っておるわけでございます。ところが、現在のこの法律では医師だけしかできない、こういうことになっておるわけでございますけれども、大変こういうことで関連が深いわけでございますので、医師ばかりではなくて歯科医師の意見を聞くということも必要ではないか、こういうふうに私は考えておるわけでございますけれども、御見解をお伺いしたいと思います。
  155. 渡部恒三

    渡部国務大臣 先生のお考えと全く同じ考えでございます。
  156. 丹羽雄哉

    ○丹羽(雄)委員 全く同じということは、何らかの形で厚生省が見解を明らかにする用意があるかどうかということですが、いかがですか。
  157. 渡部恒三

    渡部国務大臣 唇顎口蓋裂に起因する咬合異常の歯科矯正を必要とするそしゃく機能障害については、先生の御指摘、全く私もそのように考えておりますので、患者の立場に立ち、団体の意見等を聞き、御指摘のように歯科医師の意見書を添えさせることが適当であると考えますので、改正法の施行に当たっては、このことを局長通知において示すことにいたしたいと思います。
  158. 丹羽雄哉

    ○丹羽(雄)委員 大臣、今局長の通知、通達ということで、歯科医師にもこういうような道を開くということをおっしゃった。意見書を添付する、こういう形をとっていただくというのは大変結構なことだと思いますけれども、まず、その局長通達を出すに当たっては、関係者と十分に話し合いをした上で、局長の通達を出していただきたいという点をまず第一点として御要望申し上げておきます。これは間違いないですね。もう一回ひとつ。
  159. 渡部恒三

    渡部国務大臣 患者の立場に立ち、また関係団体との十分な調整を図り、歯科医師の意見書を添えさせることが適当であると考えますので、改正法の施行に当たっては、このことを局長通知において示すことといたしたいと思います。
  160. 丹羽雄哉

    ○丹羽(雄)委員 再度、御見解を明らかにしていただきましてありがとうございます。  それで、今回は参議院の方から送られてきたということでございますけれども、この問題は大変重要な問題でありまして、いわゆる局長通達という問題で済ますのではなくて、やはり本来はきちんと身障者福祉法の中に明らかにしておくことが私は将来必要ではないか。今度改正が行われる場合には、第十五条にきちんと明記する用意があるかどうか、お尋ねしたいと思います。
  161. 渡部恒三

    渡部国務大臣 丹羽先生の御指摘は大変大事な問題でございますので、これから関係団体の意見を聞きながら検討してまいりたいと思います。
  162. 丹羽雄哉

    ○丹羽(雄)委員 そうすると、将来はこの第十五条の中で明記するということについて十分前向きに検討していく、こういうふうに受けとめてよろしゅうございますか。
  163. 渡部恒三

    渡部国務大臣 その方向に向かって努力してまいるというふうに受け取っていただいて結構でございます。
  164. 丹羽雄哉

    ○丹羽(雄)委員 大変明快な答弁があったわけでございます。  まだ大分時間もあるようでございますけれども、明快な御答弁がありましたので、以上をもちまして私の質問を終わらせていただきます。  厚生大臣は奥さんも歯科医師でございますので、歯科医師の皆さん方の御意見も聞きまして、しっかりこの問題に取り組んでいただきたいと思います。
  165. 有馬元治

    有馬委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。     —————————————
  166. 有馬元治

    有馬委員長 これより討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  身体障害者福祉法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  167. 有馬元治

    有馬委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     —————————————
  168. 有馬元治

    有馬委員長 この際、稲垣実男君外五名から、自由民主党・新自由国民連合、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党・国民連合、日本共産党・革新共同及び社会民主連合六派共同提案に係る本案に附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者より趣旨の説明を求めます。池端清一君。
  169. 池端清一

    池端委員 私は、自由民主党・新自由国民連合、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党。国民連合、日本共産党・革新共同及び社会民主連合を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。  案文を朗読して説明にかえさせていただきます。     身体障害者福祉法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、次の事項につき、適切な措置を講ずるよう努力すべきである。  一 身体障害者福祉対策の実施に当たっては、各分野の施策の有機的連携を欠くことのないよう関係各省庁の連絡調整に特に留意の上、総合的かつ計画的な施策を講じるとともに、可能な限りの予算措置を講ずるよう努めること。  二 身体障害者が家庭や地域での自立した生活を可能とするため、在宅福祉対策充実をはじめ身体障害者の「完全参加と平等」が実現するための条件整備を図るとともに、ノーマライゼーションの理念に基づき、「更生」の規定について見直しを検討し、併せて身体障害者福祉法改正についても検討を進めること。  三 身体障害者更生援護施設に関する費用徴収の実施に当たっては、施設の性格や身体障害者の実情等を勘案の上、過大な負担とならないよう十分配慮すること。  四 身体障害者のリハビリテーション推進のため、医療から職業訓練、社会復帰まで一貫したリハビリテーション体制の整備を図ること。 以上であります。  何とぞ、委員各位の御賛同をお願いいたします。(拍手)
  170. 有馬元治

    有馬委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  稲垣実男君外五名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  171. 有馬元治

    有馬委員長 起立総員。よって、本動議のとおり本案に附帯決議を付することに決しました。  この際、厚生大臣から発言を求められておりますので、これを許します。渡部厚生大臣
  172. 渡部恒三

    渡部国務大臣 ただいま御決議になりました附帯決議につきましては、その御趣旨を十分尊重いたしまして努力いたす所存でございます。(拍手)     —————————————
  173. 有馬元治

    有馬委員長 お諮りいたします。  本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  174. 有馬元治

    有馬委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  175. 有馬元治

    有馬委員長 午後二時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後一時十二分休憩      ————◇—————     午後二時十七分開議
  176. 有馬元治

    有馬委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  内閣提出国民年金法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。上西和郎君。
  177. 上西和郎

    上西委員 私は、まず質問の冒頭に当たりまして、今次百一国会に向けて、厚生省が、大臣以下総力を挙げて、相次いで重要法案を提出された、ある意味では大変結構なことでしょう、しかしその及ぼす影響を考えるときに、私は、大変、その責任といいますか、事の重要性を痛感せざるを得ません。とりわけ、現在本委員会にかかっております年金に関する法律案、言うならば、今は亡き山口新一郎年金局長の命を奪った法案だと言っても過言ではないと思います。厚生省きっての年金通であり、私としましては、同県人であり、かつ、戦時中の学校の先輩でもあった山口前局長を失ったことは、痛恨のきわみであります。それほど心血を注いだ法案が、よくやく本委員会で審議の対象になりましたが、私は、そうした故人を初めとする厚生省挙げての御努力、とりわけ国家公務員として、日本のために、国民のために御努力をいただいたその労を多としながらも、あえて、ただいまから質問を行い、本法案にどうしても賛成できない立場を鮮明にしなければなりません。  それは何か。本統合法案を提案なさった皆さん方が、故意か偶然が、現実にある年金の不公平あるいは年金制度間の矛盾点、こうしたことを幾つか積み残しをされているではないか。私はこのことを鋭く指摘をし、大臣以下のそれぞれの御見解なり御所見を承る中から、文字どおり五千五百万人の加入者に大きな影響を及ぼす本法案についての質問を、ただいまから展開いたしたいと思います。  まず、厚生年金の収支の現状について、少なくとも本年三月宋における収支剰余積立金の現実の数字、あるいはこれがこれから先二十一世紀へ向けてどのような変遷をたどっていくのか、厚生年金の収支に関する現状と将来的展望、見通しを明らかにしていただきたいと思います。
  178. 吉原健二

    吉原政府委員 五十七年の決算の数字で申し上げますと、厚生年金の五十七年度の収支でございますが、収入が八兆九千八百九十七億円、支出が四兆七千五十一億円、収支残が四兆二千八百四十七億円、年度末積立金が三十六兆五千六百二十九億円でございますが、積立金の額について申し上げますと、本年度、五十九年度の推計が四十五兆円の見込みでございます。
  179. 上西和郎

    上西委員 現在四十五兆円と推定されますね。それが今後どのような推移をたどり、どういった数字となって二十一世紀へ向けて動いていくのか。計数的なことは、少なくとも皆さん方はそういったものをお持ちです。それがなければこの法案は出てこないはずでございますから、そのバックデータを明らかにしていただきたいと思います。
  180. 吉原健二

    吉原政府委員 現在提出をしております改正案の実施年度、六十一年四月を予定させていただいておりますけれども、そのときの収入は、現行制度のままでございますと収入が十四兆九千億円、支出が七兆八千億円、その年度の収支残が七兆一千億円、年度末積立金が六十三兆四千億円ということでございますが、約十年後の昭和七十年がどういうふうになるかといいますと、兆円以下のところは省略をさせていただきますと、収入が三十一兆円、支出が二十二兆円、収支残が八兆円、年度末積立金が百三十八兆円ということになります。さらに八十年度に至りますと、収入が六十三兆円、支出が同じく六十三兆円、収支残ゼロ、年度末積立金が百九十四兆円となります。昭和百年を申し上げますと、収入が二百六十兆円、支出が二百五十三兆円、収支残が七兆円、年度末積立金が二百十二兆円、こういうことになるわけでございます。大体そういうふうな傾向をたどるわけでございます。
  181. 上西和郎

    上西委員 局長、念を押しますが、この推定の数字、二百十二兆円たまる、これは現行の給付水準のままでございますか。保険料率等はどういう推移をたどるのか、その点も明らかにしていただきたいと思います。
  182. 吉原健二

    吉原政府委員 現行の給付の仕組み、要件をそのままにした場合にそういうふうな給付になるということでございまして、保険料の方は従来から五年ごとに一・八%ずつ引き上げをしておりますけれども、そういう計画で今後ともやっていくという前提で申し上げますと、男子の場合昭和六十一年度は二一・四%、千分の百二十四でございますが、昭和七十年には千分の百四十二、昭和八十年には千分の百八十、昭和百年には千分の三百五十九、こういうことになるわけでございます。それを前提にした収支を申し上げたわけでございます。
  183. 上西和郎

    上西委員 私は年金数理に余り詳しくございませんが、素人的発想でいきますと、あれだけ世間を騒がした国鉄共済年金の赤字、まあ俗っぽい表現で言うならば、まさにリンゲルを打ち、御親族お集まりください、瀕死の状態というところまで、極端に言うと政府はそこまで放置をしながら、土壇場で国家公務員共済との統合、公企体との統合によって急場をしのぐ、こういう措置をとったと私たちは理解をしております。にもかかわらず、少なくとも昭和百年度には、現行の給付水準を守りながら、もちろん保険料率の若干の推移はございますが、二百兆円を超える累積剰余積立金を抱えていくということが明らかにもかかわらず、なぜ六十一年四月からこの年金の統合をお急ぎになるのか。極めて素朴な疑問がございますので、その辺について見解を承りたいと思います。
  184. 吉原健二

    吉原政府委員 今回の年金改革案のねらい、目的でございますけれども、第一に、今の年金制度に非常に給付の面、負担の面で大きな制度間の格差がある。その制度間格差に基づいて、国民の間に不公平感、不均衡感が非常に大きくなりつつある。合理的な格差もございますけれども、どちらかといえば不合理な格差が多い現行制度間の格差を是正して、公平な制度にするということが一つのねらいでございます。  御質問の年金の将来の収支といいますか、財政面から申し上げますと、現行の給付水準のままにいたしますと、加入年数等の伸びによりまして、厚生年金の場合で言いますと著しく給付水準が高くなる。特に年金の費用を負担する現役の働く勤労者の生活水準、あるいは賃金水準とのバランスを著しく失することになるということがございます。数字で申し上げますと、現行の働く賃金、標準報酬に対する年金の給付割合は六八%くらいでございますけれども、将来はこれが八三%になる。さらに、被用者の妻が国民年金に任意加入をして国民年金からの給付も受けるということになりますと一〇〇%を超えてしまう。非常に現役の勤労者の生活水準なり賃金とのバランスを失するということが一つございます。  もう一つは負担との関係でございまして、今のような給付水準を維持するためには、先ほどもちょっと申し上げましたように、保険料率を相当程度引き上げていかなければならない。いずれは千分の三百八十八という、給料に対して四〇%近い保険料を年金のためにだけ負担をしなければならなくなる。これが率直に言いまして、国民の負担能力というものの限界を超えることになるということがあるわけでございます。  それからもう一つは、婦人の年金にいたしましても、障害者に対する年金にいたしましても、今までいろいろ改善をしてきて努力をしてまいりましたけれども、やはりまだまだ不十分な不安定な点がある。  そういったいろいろな問題点というものを是正して、将来とも年金制度というものが二十一世紀の中で安定した健全な運営ができるように、公平な制度になるようにということで、今回の改革案を提案させていただいたわけでございます。
  185. 上西和郎

    上西委員 局長のお答えはそれなりにわかるのです。問題は、国鉄共済をあそこまで極端に言うと無責任に放置をしていた日本政府、中曽根内閣が、三十年、四十年先のことを非常に御心配なさって、今この時期に健康保険法案があった、年金統合法案がある。社労でこんなに重要法案をすし詰めのようにやったことはかつてないんじゃありませんか、大臣。あなたがどんなに優秀な大臣であろうとも、この社労でこれだけの重要法案を文字どおりメジロ押しにやっていることに、私たちは素朴な疑問があるのです。しかも四十兆円に近い累積剰余積立金がある。これが少なくとも二百兆円まで超えていく。こういった数字等は、故意か偶然かマスコミの紙面にはほとんど報道されない。マスコミ界でもその人ありと言われている朝日新聞の橋本司郎さんが「週刊朝日」の臨時特集号をお出しになったが、私の読んだところでは、そういった財政問題については余りお触れになっていない。ひたすら高齢化社会がやってくる、このことだけで、統合法案の提案といいますか政府の説明というかそういうことが行われているところに、いたずらに加入者、国民に不安を与え、ここで少々の改悪は目をつぶらなければならないのか、こういったふうに追い込んでいっているのじゃないかとまで、私は疑心暗鬼かもしれませんが、思わざるを得ない面があるのであります。  ですから、正直言って、今の局長のお答えはまだ説得力に著しく欠ける。したがって、私は、そういったお考えはそれなりに子としながらも、なおかつ、今あなたは不公平を是正しようとおっしゃる、格差をなくそうとおっしゃる。それならなぜこういうことを放置しているかということを順次お尋ねをし、見解を承りたい、このように考えます。  ここでまず、大蔵省から、お見えになっていると思いますから、現在の共済年金の退職年金の繰り上げ減額支給制度について、簡単に減額率を含めて御説明をいただきたいと思います。
  186. 坂本導聰

    ○坂本説明員 お答え申し上げます。  昭和五十五年の共済年金法の改正によりまして、減額率は、一年につき〇・〇八五、二年については〇・一六〇、三年については〇・二三、〇四年については〇・二九〇、五年については〇・三五〇となっております。ただし、この改正前の減額率が一年につき四%でございましたので、これを経過措置期間中は踏襲している。これは、かつて共済法が三十四年にできました当時の保険数理の見込みでやったものですが、現在では平均余命等みんな変わっておりますので、五十五年に改正したものでございます。
  187. 上西和郎

    上西委員 そうなりますと、私は、少なくとも厚生年金にも、この共済年金に準じた制度、せめて五年間で結構です、今は国民年金は五年しかありませんから。五年間でいいんですが、繰り上げ減額制度を設けるべきではないか。この統合法案を出す前に、現状の不公平を是正するためには、やはり繰り上げ制度を設けるのが至当ではないか。確かに労働省その他の指導により定年制の年齢が年々高齢化をしてきていることは事実です。しかし、現実に六十歳の厚年給付開始年齢と定年退職の年齢が合致している企業の率はまだまだ低いものがあります。五十六、五十七、五十八というのがある。そこで、定年退職というのは美名でありまして、文字どおり首になって追っぽり出されておる方々が、三百日の雇用保険が切れたら全く無職、無収入で放置をされている。この現実を思うときに、まず厚生年金にとって緊急に必要なことはこの繰り上げ減額制度の導入、設置ではないか、こう考えますが、この辺についてはどのようにお考えですか。
  188. 吉原健二

    吉原政府委員 厚生年金におきまして支給開始年齢を、現在六十歳でございますが、どういうふうに将来考えていったらいいのか。また、今お尋ねのそれとの関連になるわけでございますけれども、支給開始年齢前に減額した老齢年金を受けられる仕組みをつくる必要があるかどうかということでございますけれども、私ども、率直に言いまして、現在六十歳にしておりますけれども、将来これを六十五歳程度まで引き上げていくという問題は避けて通れない問題じゃないかと思っておるわけでございます。  現在の雇用の状況、定年制の状況から見て、今すぐ手をつけるのは時期尚早であるという審議会等の御意見もございまして、当分今までどおりということにしておりますけれども、そういった方向というものをにらんだときに、果たして現在の六十よりもさらに早く年金を受けるような仕組みをこの際つくる必要があるのかどうかということを考えますと、できるだけ早く六十歳前でももらいたい、また、おっしゃるとおり個人によっては出す必要性がある場合があるかもしれませんけれども、制度としては、減額老齢年金の制度を今の時点でまたさらにつくることについてはどうかというふうに思っておるわけでございます。
  189. 上西和郎

    上西委員 厚生省の立場でいきますと、それは必要性がどうかとお考えになるのがある意味ではもっともかもしれません。しかし、加入者、被保険者の立場でお考えいただけませんか。ざっくばらんに言って、共済年金国民年金にあって、なぜ厚生年金だけないのかという素朴な疑問があるのですよ。もちろん、つくったからといって全部がそれを希望しないでしょう。しかしながら、民間の労働者だって、定年が六十になるよりは、例えば私は電力の出身ですが、私のところでは、高圧電柱、鉄塔に登る大変きつい作業を六十まで続けるよりは、五十八なら五十八でやめて、そこで年金生活に入った方がかえっていい。あるいは、電車の運転とか坑内作業とかいろいろな作業がありますね。職種によっていろいろ差があります。ブルーカラー、ホワイトカラー、いろいろ出てくるわけですが、そうした職種上の問題をいろいろ考えますと、やはり加入者全体の立場からすれば、ないのは厚年だけなんですから、局長、やはりこのことについてはもっと真剣にお取り組みいただいて、厚年加入者が定年の六十までをとるかどうかを自由にさせる。ですから、僕は、少なくとも今の段階では六十五なんて言ってほしくないのです。というのは、今の公務員共済は六十になって何年ですか。公務員の皆さん方が完全に六十になるまで、あとまだ十何年かかるのでしょう。それにもかかわらず、この法案を提案した時点で、あなた方政府高官が、厚生省の責任者が厚年については六十五歳を考えているなんと言うことは、民間軽視ですよ。厚生年金の加入者をべっ視していると僕は思う。そういったことについては、細心の注意を払ってお言葉遣いをいただきたいと思います。今でさえ差別でしょう。不公平でしょう。あなた自身が不公平を是正するとおっしゃった。その舌の根も乾かないうちに、六十五歳を考えているなんと言うのは、取り消しなさい、そのことを。それは厳しくお願いしますよ。あなたが取り消さないなら、厚生省の管轄なのだから渡部大臣の判断で、厚生年金を六十五歳給付開始を明確に考えていると、それならそれで結構です、具体的におっしゃってください。今後の法案審議に大変な影響を及ぼしますので、明確にしていただきたいと思います。
  190. 吉原健二

    吉原政府委員 厚生年金の支給開始年齢、今度の改正の際にどういうふうに考えるか、あるいは将来それをどう考えるか、これは審議会等でも大変御議論があった点でございまして、審議会の結論は、将来避けて通れない問題である、しかし、先ほども申し上げましたように今の時点ですぐこれに着手するのは時期尚早である、こういう御意見であったわけでございます。今後の検討課題になっているわけでございます。  そういった審議会での御意見を踏まえまして、私ども厚生省としても、将来は避けて通れない問題かもしれない、しかし、今の時点では時期尚早であるということで、現在の改革案を出しているわけでございます。
  191. 上西和郎

    上西委員 それはそれでいいのですよ。ただ、私は重ねてお願いしておきますよ。繰り上げ減額制度がないのは厚年だけですよ。このことを肝に銘じて、加入者の立場でやってください。法律がどうとか、雇用がどうとか、そのこと以前に、現実に働いて日本の戦後の繁栄をもたらした人たち、これは公務員の皆さんもそうだ。しかし、民間労働者が果たした役割も大変大きいものがあります。そうしたことを考えるならば、日本国がつくった社会保障制度なんですから、その中で二千六百万人を超える加入者がいる厚年だけに繰り上げ減額制度がない、この現実を私は重ねて厳しく指摘をしておきたいと思います。  次に、ちょっと大蔵省にお尋ねをいたしますが、共済年金には、障害年金と遺族年金に公務災害に関して優遇措置がございますね。もちろんこれは公務員災害補償法の給付とは無関係に、若干の併給調整があるかもしれませんけれども、厳としてございますね。その辺、ちょっと明確にしていただきたいと思います。
  192. 坂本導聰

    ○坂本説明員 御指摘のように、国家公務員共済組合については遺族及び障害について公務上の年金がございます。これは国家公務員法第百七条がまず根底にございます。「職員が、相当年限忠実に勤務して退職した場合、公務に基く負傷若しくは疾病に基き退職した場合又は公務に基き死亡した場合におけるその者又はその遺族に支給する年金に関する制度が、樹立し実施せられなければならない。」という規定がございまして、これを受けまして、国家公務員共済組合法で公務上の年金をつくっているわけでございます。  なお、今御指摘のございましたように、公災法から給付がございますと、その部分につきまして上積み部分を調整して支給停止をするという措置になってございます。
  193. 上西和郎

    上西委員 もう一遍重ねてお尋ねしますが、若干の支給停止、調整措置をやっても、しかし、少なくとも私傷病による障害、私傷病による死亡よりは年金がずっと高額になるでしょう。
  194. 坂本導聰

    ○坂本説明員 原則的には、公災法から給付が出ますと、その公務上災害給付を私傷病災害給付に合わせるということになっておりまして、出っ張り部分を削り取る、支給停止するという形になっております。したがって、公務上であっても、公災から出れば公務外と同じ扱いになるということでございます。
  195. 上西和郎

    上西委員 わかりました。それはそれとして、問題は、厚生年金には業務上の傷病による障害あるいは業務上による死亡について優遇措置が何もないのであります。簡単に申し上げますと、遺族年金だけに絞って申し上げますと、共済年金の遺族年金は、八十八条第一号で、公務に基づく死亡もしくは公務に基づく傷病が主たる事由で死亡したときの遺族年金の額は、本人が受給すべき退職年金と一〇〇%同額とする、第二号で、その他の事由による死亡の場合には五〇%とする、こう明記してあるわけですね。確かに今おっしゃったように、公災法に基づくものが出ればその出っ張りは削られるでしょう。しかし、少なくとも厚生年金の遺族年金には、明らかに業務上、業務外の区別なく、あくまでも本人が受給すべき老齢年金の二分の一、この原則がまかり通っているわけですね。この辺について、厚生年金に、障害年金、遺族年金を含めて、業務上災害の優遇措置を設けられるお考えありや否や、見解を求めたいと思います。
  196. 吉原健二

    吉原政府委員 厚生年金障害、遺族の場合に、業務上であると業務外であるとを問わず一定の所得保障、年金給付をしているわけでございます。業務上の場合には、民間の勤労者の方の場合におきましては別な労働者災害補償保険制度、これはもう先生よく御存じだと思いますけれども、そちらの方から業務上の障害補償年金、遺族補償年金が支給される、業務上の場合にはそれをあわせて受けられる、そういうことになっているわけでございまして、厚生年金の一般の民間の勤労者の方々を対象にした制度で、さらにこれ以上業務上の場合に特別な給付を設ける必要があるかどうかにつきましては、将来の年金のあり方、保険料の負担、そういったものを考えました場合に、私どもとしては方向としてはなかなか考えにくいのじゃないかと思っているわけでございます。
  197. 上西和郎

    上西委員 厚生省としての見解はそうなるだろうと私も予測はしておりましたけれども、私はなぜこういうことを言うかといいますと、あなたはまず不公平を是正したいとおっしゃっているから、これも不公平の一つですよということで問題提起している。  もう一つは、私は野にあって長いこといろいろなことをやってきましたが、相談も受けました。その中で痛切に感ずるのは、労働者災害補償保険の存在すら知らずに働いている、言うならば小企業の方々がたくさんいらっしゃるわけですね。わかりやすく言うと、権利も何もわからないままに。そういった方々がちょっとしたことでけがをする、あるいは不幸にして事故で死亡すると、親方から、まあまあこれで「緑十字」がなくなるぞなんてことになりますと、ああ、そうですかと言って、年金も変わらぬぞ、こうやられるわけです。結果として、民間労働者の一番底辺にある方々が、この厚生年金に業務上のそうした優遇措置がないために、業務上の負傷、業務上の死亡等を泣き寝入りしている事実が、日本全体を見ますと決して少なくないと私は思うのです。だから、業務上の若干の優遇措置を設けることによって、遺族が気がつきますから、あれはうちの父ちゃん、会社の仕事で死んだんじゃ、会社の仕事でけがしたんじゃ、ここから正しい意味での安全意識が目覚め、そして労働者のそうした命が大事にされていくんじゃないでしょうか。そういう副次的な効果をもたらすことを含めて、やはり将来的にぜひ御検討いただきたい。こういう観点からも、ぜひ局長以下皆さん方でも、今後、ただ単に、いや労災なんてとかいうことでなくて、そういったことを含めての幅広い民間労働者の社会的地位の向上、この観点からの優遇措置の導入ということについては基本的に改めて御検討いただきたい、このようにお願いしておきたいと思います。  さて、問題は、遺族年金の中で、先ほど局長がおっしゃった大変大きな不公平があるわけです。それは、ただいま申し上げたように、公務災害の優遇措置じゃなくて、妻と子が受給権者の場合は、遺族年金即時支給でございますね。例えば新婚三カ月の花嫁であろうと、被保険者、加入者が死亡した時点で、胎児であった子供が生まれてこようと、即時支給です。ところが、受給権者が夫、両親、祖父母の場合は、これはまず大蔵省にお聞きしますが、共済の場合は、年齢は法律的な表現は別として支給開始年齢が現実まだ五十五歳ですよね。そしてそれを下回っている場合、夫、両親、祖父母が年齢未達の場合、一定の年齢に到達するまで支給を停止し、そして年齢に到達したら支給開始でございましょう。そのことをちょっと。
  198. 坂本導聰

    ○坂本説明員 今の御指摘の中で、五十五歳というのはもう五十六歳になっております。  それから、次のお尋ねでございますけれども、これは御指摘のように、夫、父母、祖父母に対しましては一定年齢に達するまで、言うなれば六十歳に達するまで支給を停止する、六十歳になって支給を開始する。これは歴史的沿革で恩給制度等を踏襲しているものですから、そういう形になってございます。
  199. 上西和郎

    上西委員 問題は、だからそこなんです。厚生年金保険法の遺族年金給付の条件は、受給権者が夫、父母、祖父母の場合、被保険者、加入者が死亡した時点で満六十歳未満であれば、未来永劫に遺族年金を支給しない、こうなっているんではありませんか。明確にお答えいただきたいと思います。
  200. 吉原健二

    吉原政府委員 そのとおりでございます。
  201. 上西和郎

    上西委員 だから、不公平を是正してほしいと私は言いたいのです。なぜ待ってあげられないのですか。  大臣、私は思うのです。あなた方は中曽根内閣を代表して、男女雇用平等法とかいろいろなことを言われる。憲法では明らかに男女同権だ。ところが、御主人が亡くなったら奥さんには即時支給だ、奥さんが亡くなったら夫は六十歳未満なら一円も遺族年金をやらない、こういうことが制度上今明確になっているわけでしょう。なぜそれを放置されるのですか。  私は、先般、五日の日に大臣に健康保険法で申し上げましたけれども、私はあなたと全く同世代、一つ違いだ。昭和の一けたというのは難儀苦労させられました。そのかわり、他人に温かい思いやりを寄せることにおいては人後に落ちない世代だと自負をしておりますが、その中でもとりわけ傑出されているのが厚生大臣渡部恒三さんだと私はかたく信じております。そうした方が、なぜ六十歳未満であれば遺族年金一円もやらないということを放置されたまま統合をお急ぎになるのか、このことについて大臣の見解をきちっとこの場で承りたいのであります。
  202. 渡部恒三

    渡部国務大臣 年金というのはいろいろありますが、老後の生活に不安なからしめる、また汗を流して働ける時代にまじめに掛金を納めておれば老後の生活の心配はなくなる、こういうのが年金の、極めて当たり前のことのようですが、しかしまた当たり前のことが大事なことで、これが我々年金政策をやる場合の基本でないかと私は思います。そういう基本的な考え方の中で今のような措置が生まれたのだろうと想像しております。
  203. 上西和郎

    上西委員 大臣、これについてはもうちょっと具体的なお答えをいただきたいのです。  それではお尋ねしますよ。同じ世代の両親同士、子供が片や公務員、片や民間だった。たまたま一緒に仕事をしていた。かつてありましたね。科学技術庁の実験途中で大変な犠牲者を出しました。国家公務員も亡くなった、マスコミの皆さん方も巻き込まれて犠牲になった。近くは、陸上自衛隊創設以来最大の不祥事、山口駐屯地における兼信何がしの小銃乱射事件。前を向いて撃てばいいのに横を向いて撃ったから死んだ。あの隊員は未成年者でした。あの御両親は五十五歳未満でした。防衛庁は、国家公務員共済だから、御両親が、今のでいくと五十六ですね、その年代に到達するまでは遺族年金の支給を待って、そして改めて支給する。ところが、仮に同じ事件に巻き込まれて民間の厚年加入者が死亡したら、同じ世代で御両親が六十歳未満だったら一円も遺族年金をやらない。子供を失った悲しみがその子供さんの職業によって両親に差が出てくるのですか、大臣。ですから、これこそあなたの英断でできることなんですよ。支給停止措置を設ける。少なくとも妻を、子を、孫を失った受給権者の悲しみは、夫を失った妻の悲しみ、親を失った子の悲しみと何も変わりないのだ。それが民主主義でありヒューマニズムじゃないでしょうか。私は、社会保障制度とか厚生年金保険とかいうのは、そうした温かい心が底辺に流れていて、初めて花開く制度だと確信をしておりますが、その点について大臣、もう一辺御所見を承りたいと思います。
  204. 渡部恒三

    渡部国務大臣 私も上西先生の今のお話しと考え方は全く同じでございます。ただ、制度というものはそれなりの長い歴史あるいは沿革がございまして、公務員の共済制度というものは、その前にさかのぼっていくと恩給制度、そこから来ているわけですから、戦後、私どものつくった年金、老後の生活を保障するということを目的とする年金と恩給は若干性格が違う面がございます。したがって、これからあるべき方向としては、もう公務員も農家の人も一般労働者もサラリーマンも、みんなが年金とか保険とか同じような条件で給付を受けるべきだ、これは国民的な合意になっておると思います。だからこそ、私ども、今回、百年に一遍と言われる大きな改革案を先生方に御審議いただいておるわけでございます。  ただ、これを進めていくに当たって、これは革命ではないわけですから、やはり既存のいろいろの制度の中で受けておる受給権、やはりそういうものは保護し、また恩給、年金、共済、いずれにしても一つの期待権があるわけですから、その期待権もできる限り尊重するということから、今先生から数々の御指摘があったような官民格差というものをなくしていく、国民ひとしく受けられる年金ということを大きな目標、旗印にしてこの改革案の審議をお願いしているのですが、その改革案の中身には今御指摘のような物足りない点、矛盾する点が幾つかあるわけでございます。これは先生御指摘のとおりでございます。しかし、御理解をいただかなければならないのは、もちろん国民は、すべて同じような条件で給付と負担を平等に年金制度の恩典にあずかるべきであるという考えですけれども、また同時に、この制度改革に当たっては、やはり過去の権利というものを保護する、特に年金の場合は期待権もやはり尊重していかなければならないということで、出発点からいろいろばらばらな点があるわけでございますが、であるからこそ、これを二十年後に立派なものに育て上げていくためには、この制度改革が一日も早く急がれる理由なのでございます。
  205. 上西和郎

    上西委員 大臣、私は言葉じりをとらえるようなことは余り好きじゃありませんけれども、あなたは今既得権とかなんとかちょっとおっしゃいましたね。極端に言うと、恩給制度も既得権だ、共済年金の遺族年金の支給停止措置もそうだ。私はそういうふうに受け取れるのですが、それなら、私はきょうは年金統合法案の中に余り入ろうとは思っていないのですけれども、統合法案の中では、厚生年金の計算は大改悪されるでしょう。厚生年金の今持っている不公平さが残されているものさえ、さらに改悪しようとしている。それが矛盾していると私は言いたいのです。しかし、それについてお答えいただこうと思いません。  ただ、大臣、あなたの所管されている国民年金の寡婦年金は、事実上支給停止をするわけでしょう。局長、そうでしょう。御主人が老齢年金の加入資格期間をぴしゃり満たしていて一円も年金もらわぬであの世に行かれたら、残された未亡人は六十歳から五年間二分の一をもらえる、これが寡婦年金でしょう。渡部大臣、あなたががっちり押さえている国民年金の方は、寡婦年金は事実上支給停止、六十まで待ってくれるのですよ。私はこれは何十件も世話してきた。ところが、あなたが片っ方の手できちっと握っている厚生年金は絶対に待たない。どうしても納得いかない。あなたはすばらしい大臣だと私は本当に思っていますから、心から信頼申し上げておるんで、このくらいのこととあえて言いましょう、これくらいのことは、厚生年金加入者の立場になって、やはり渡部大臣だ、あの方がこういうことをぴしっとやってくれるなら、年金統合法案も信頼していいのじゃないかとなっていくけれど、こんなことをぼろぼろ積み残していれば、これはまゆつばものだと、大臣はひょっとしたら、厚生省の高官にだまされている、と言えばなんですけれども、乗せられているのじゃないかとさえ思っている方が出てくるんじゃないか、こう思うのですが、もう一遍、くどいようですが、寡婦年金に比べて、今の夫、父母、祖父母の支給停止措置についてはどうしてもだめですか。
  206. 吉原健二

    吉原政府委員 私ども、今回の改正案の基本的な考え方として、遺族年金というのはできるだけ遺族の状態に着目をして、本当に年金給付の必要な人に手厚くする。具体的には子供さんのある奥様、寡婦の方に対する給付というものをうんと手厚くするという措置をとったわけでございます。そういうふうにめり張りをつけて、厚くすべきところは厚くし、今までもらえた人についても若干御遠慮いただく。率直に言いまして、そういうところが随所にあるわけでございます。  今の共済と厚生年金の違いの問題でございますけれども、私はそういう差が今後ともあっていいとは思いません。むしろやはり方向としては合わせていくべきものだと思います。思いますが、ただ共済の方に合わせるのがいいのか、あるいは逆に厚年の方に共済を合わせてもらう方がいいのか。もちろん受ける方の立場から言いますと、それは早くもらえた方がいい、広くもらえた方がいいという考え方はわからないではありませんけれども、やはり将来の給付と負担との関係、全体のバランスを考えた場合に、一体どっちの方向でそろえていったらいいのかということはよほど考える必要がある。その点につきましてはまだ結論を出しておりませんで、今厚年に合わせて共済をどうするかということが、共済の関係者の間で、各省庁の間でいろいろ検討されていると思います。恐らく今御指摘の点も検討課題の一つになっていると思いますので、その辺の議論も十分見きわめながらこれからそろえる方向で対処をしていきたいというふうに思います。
  207. 上西和郎

    上西委員 局長、私は本当に言葉じりをとらえるのは好きではありませんけれども、あなたは冒頭、本法案の提案の趣旨の中で、不公平の是正とおっしゃったわけでしょう。不公平の是正というのは、常識的に悪いのをよくするということじゃありませんか。そうじゃないのですか。悪い方に合わせるのが不公平の是正でございますか。今これだけ高齢化社会がやってくる、年金に極めて高い関心が寄せられている、そういうときに、少なくともあなた方は年齢で切っている、共済年金は所得で切っています、正直言って。国家公務員だって公立学校だって所得によって若干のばらつきをやっているけれども、厚生年金は年齢ではっさり切っている。  去年二十四歳のまだ若い労働者が急死した。私は頼まれて走っていったら、七十過ぎたおばあちゃんが、私が引き取って育てていた、娘が産んだ子だ、ところが娘夫婦もいろいろ事情があって早く亡くなっておる。本当に孫一人でした。私がお世話して、遺族年金もらえますよと言ったら泣かれましたけれども、このおばあちゃんが五十九歳だったら絶対もらえぬわけだ。私は悪いけど、本当に六十超えていてよかったなと思ってお世話しましたよ。それなのにあなたは、実に淡々として、共済年金を厚生年金に合わせてもらおうなんということは、絶対に慎んでいただきたい。不公平の是正とおっしゃった。そのことは、私たちはやはりよくする方向にだと思う。悪くする方向に行くなら、そんなのはやってほしくないですよ。そうした意味合いで、この支給停止措置は、大臣も本当におわかりいただいていると思いますが、よろしくお願いいたします。  今度の国会で、この法案がどうなるか私はよくわかりませんけれども、少なくともこの法案の審議の過程で、こうした積み残しが、うん、やはり渡部恒三よくぞ厚生大臣していた、これも解決したか、これもよくなったかということを、国民に知らせる立場を堅持されながら、年金統合なら統合、国家百年の計に向かって進んでいただきたい。このことを強く要望しておきたいと思います。  引き続きまして、今度は、国民年金について少しく具体的な問題を例示しながら質問をしていきたいのでありますが、まず第一点、国民年金の付加保険料がありますね、月額四百円。このうち二百円が年金に回る。わかりやすく申し上げますと、定額部分は六千二百二十円のうち、千六百八十円が年金に回る。ところがこの千六百八十円には、大臣以下御承知と思いますが、スライド率が掛かります、現在ですと一・一二二。なぜ付加保険料四百円のうち年金に回る二百円はスライド率をおつけにならないのか、この理由をわかりやすく、かつ、科学的に解説をしていただきたいと思います。
  208. 吉原健二

    吉原政府委員 付加年金制度というのは、国民年金の中で、いわば任意加入の制度として、所得の高い方には少しでも余計に年金を支給する仕組みをつくろうということでつくられた制度でございますが、任意加入であるために、率直に言いまして、好きなときに入れる、好きなときに脱退ができる、こういう仕組みであるわけでございます。したがいまして、それを将来、約束した給付を十年後、二十年後、さらに四十年後、五十年後までやっていきますためには、どうしても財政方式として積立方式、しかも完全な積立方式でやっていかざるを得ないわけでございます。したがいまして、スライドをするということになりますと、実は社会保障の年金でスライドといいますか、物価の変動に対応した給付水準の引き上げというのは、大変大切で欠くことができない措置でございますけれども、そういった任意加入の付加制度にスライド措置をつくることは実際問題としてなかなかできない。給付は上げたわ、じゃそのスライド財源はどうするんだ、こういうことになりますと、やはり後代の付加年金加入者の負担になって、だんだん後代の付加年金の加入者の保険料負担が高くなる、とても今の保険料ではやっていけないということが明らかなわけでございます。  強制加入の場合、つまり国民年金の今の本体部分についてはスライドをし、またスライドをしなければ社会保障として意味はありませんから、残りの分は、その必要な財源は後代負担であり、また国もそれなりの負担を一律にしているわけでございますが、国の負担を任意加入の制度に入れるわけにもまいりませんし、後代の加入者にそれほどスライド財源を負担させていくわけにもまいりませんので、付加年金にスライド措置をとることは実際問題としてなかなかできないということで入ってないわけでございます。
  209. 上西和郎

    上西委員 それでは、ちょっと今の質問に関連してお尋ねしますが、先ほどの厚生年金と同じように、国民年金の収支の現状並びに若干の見通しについて、数字を明らかにしていただきたいと思います。
  210. 吉原健二

    吉原政府委員 国民年金の収支の状況を五十七年度の決算の数字で申し上げますと、収入二兆三千億円、支出二兆一千億円、収支残が約三千億円、年度末積立金が約三兆円ということでございます。  将来これがどういうふうに推移をしていくかということでございますが、現行制度で、制度改革発足時の六十一年は収入が三兆二千億円、支出が同じく三兆二千億円、収支残ゼロ、年度末積立金三兆五千億円ということでございますが、十年後には収入八兆二千億円、支出七兆円、収支残一兆二千億円、年度末積立金九兆六千億円。それから昭和八十年度には収入十七兆三千億円、支出十五兆五千億円、収支残一兆八千億円、年度末積立金二十四兆円。昭和百年で申し上げますと、収入四十九兆五千億円、支出四十五兆四千億円、収支残凶兆一千億円、年度末積立金六十二兆七千億円。こういうことでございますが、今申し上げました数字は、国民年金の現在の保険料を六十一年度六千八百円から段階的に上げていきまして、昭和七十年度には一万三千二百五十円、昭和八十年には一万六千七百五十円、昭和百年には一万九千五百円まで上げるという前提で、そういった収支の見通しになるわけでございます。
  211. 上西和郎

    上西委員 ただいま局長から、二百円についてはどうあってもスライド率を掛けないという理由が述べられました。しかし、これは加入者にとっては耐えがたいことなんです。ゆとりがあれば四百円余計お払いなさい、それが将来あなたの年金受給に有利ですよ、こういうことでみんな掛けているわけですね。窓口で、悪いけれども、あなたの年金は将来こうなるなんて説明はなかなかしませんし、加入者の方々もお聞きになりませんよ。ところがいよいよになってみると、何か知らぬが本体とおっしゃったけれども、要するに定額部分、基本、これについてはちゃんと他の年金並みにスライドがある。ところが、せっかく余計、ある意味では無理して納めたら、そっちの方は現ナマをぽっくり持っていって、インフレがあろうと何があろうとスライドも何にもつかない。これはやはり日本政府が、加入者である国民大衆に、国民年金の加入者に対する、ざっくばらんに言うと不公平な取り扱いではありませんか。スライド率が掛けられないということは納得できませんよ。どうしても不可能ですか。
  212. 吉原健二

    吉原政府委員 実は、社会保障、社会保険としての年金に、任意加入の付加的な制度をつくることがいいのかどうか。仮につくったとしても、そういうふうにスライドができないような制度を置いておくのがいいのかどうか。これは基本的な大変大きな問題であるわけでございます。この付加年金制度をつくるときにも、そういう制度は必要がないという意見もございました。しかしながら、やはり定額制というのは年金制度として魅力に乏しいという御意見もございましたし、もう少し保険料の負担能力のある人にはもう少し高い給付、魅力のある給付をという考え方でこの付加年金制度をつくったわけでございますが、やはり先ほど申し上げましたように任意加入の制度、これは強制なら別でございますが、任意加入の制度といたしますと、どうしても普通の本体並みのスライドということができない。それに対する負担というものがどうしても、国も負担できないし、後代の被保険者に負担させることも不適当だということになりまして、現在のまま来ているわけですけれども、やはり付加年金制度の意味といいますか存在意義といいますか、そういったものを根本から議論をし直す必要がある。  当面は、今の改革案におきましても、付加年金制度を残すということにしておりますけれども、もしどうしてもスライドをということであれば、この制度を残しておくことはなかなか難しいかなという感じもするわけでございまして、御指摘の点につきましては、やはり付加年金制度そのもののあり方の問題としてひとつ検討をしていきたいと思います。
  213. 上西和郎

    上西委員 私が冒頭申し上げた積み残されている問題の一つは、これなんです。やはり加入をしている者にとっては、神経を逆なでさせるものなんです。そうでしょう。あなた、これで納められるなら、だけどスライド率はつきませんよと、どこの市町村の窓口で説明していますか。いや、四百円納めた方が得ですよということでやっているのだから、余計納めれば余計もらえると思うのは人情の常でしょう。ところがスライド率がないということは、これはまさに「羊頭を掲げて狗肉を売る」と言いたい気持ちなんです。  ですから、今申し上げたようなことで、今局長も検討したいとおっしゃっているから、あなた方の良識ある検討結果を期待をして、次の問題に移らせていただきます。  ところで局長国民年金に特例中の特例で設けられた五年年金がありますね。十年年金はよろしい。しかし、十年年金でさえ契約不足その他で、五年でよろしいという特例中の特例で、今五年年金ができている。ところが、わずか五年でも年金保険料を納めたことは厳たる事実。ところが、きちっとしたPRが届いて十年納めて十年年金をもらっている方々は、この十年年金を基礎に、他の公的年金制度の加入期間を通算年金通則法の適用によって通算を受けている。ところが五年年金は特例中の特例である、これは厚生省は認知できない、よって、他の年金の加入期間については通算をしていない、できない、こういう現実がありますが、間違いありませんね。
  214. 吉原健二

    吉原政府委員 そういう扱いになっております。
  215. 上西和郎

    上西委員 だから、そこが積み残しの一つの問題だと申し上げたいのです。私は、この五年年金の加入者の方々が、もっと前に、十年納めれば年金ですよと言われていたら、全部大正五年四月一日以前生まれの方ですから、このときであっても、既に現役から勇退された方も多かったでしょう、そうした方々が、市町村の広報を含めてこの窓口は全国数多くございますから、一生懸命やったところ、いろいろ事情があって少し手抜きになったところ、社会保険事務所だってベテランがずらっと配置されたところ、いろいろあったと思いますが、そうした中では、都道府県、市町村を含めていろいろばらつきがあったでしょうが、結果として、わかっておれば十年に入ったのにという方々を、あなた方は五年年金で救済したわけだ。そうでございますね。ところが、その五年年金の方々の通算を認めないというのは、何といっても画竜点睛を欠くといいましょうか、冷酷非情なやり方じゃないでしょうか。これは財政上国民年金に響かないのだから。五年年金を軸に、厚年その他の年金加入期間の通算を認める、これくらいのことはこの法案を提案するときに片づけて出していただきたかった。こういうことがあるのでありますが、どうしても不可能だということを、本当に五年年金加入の方々にわかりやすく、かつ、説得力を持つ御説明をいただきたいと思います。
  216. 吉原健二

    吉原政府委員 五年年金をつくりました理由といいますかいきさつは、先生今御指摘されたとおりでございますけれども、本来、私ども、拠出制年金としては十年年金以上のことを考えておったわけでございます。本来拠出制年金というのは原則二十五年でございますけれども、十年までは拠出制年金として六十五歳から受けられるようにしよう、こういうことで制度を発足したわけでございまして、いろいろな理由で十年年金には加入しなかった、その方は老齢福祉年金ということになるわけでございますけれども、老齢福祉年金で七十まで待っていただくのはどうかということもございまして、五年年金というのは、今おっしゃいましたように本当に特例中の特例として認められたわけでございます。通算というのはあくまでも、各制度を通じて一定の期間二十年なり二十五年以上の人に出すということと、いわばそれ自体一人前といいますとちょっと語弊がございますけれども、本来の老齢年金の支給期間を満たした人がまたほかの制度にいった場合に通算分を出すという基本的な考え方に立っておりまして、国民年金の場合の本来の年金というのは、私ども十年年金以上のことを制度発足時から考えていたわけでございます。老齢福祉年金というのは経過的に全額国庫負担で年金の支給の道を開くということでできた制度でございまして、五年年金の受給者は本来的には老齢福祉年金の受給者に当たる人でございまして、そういったことから年金としても大変不十分ですが、短い期間の年金ということで経過的に出しておりますので、通算の対象にも今の制度ではしておらない、こういうことでございます。御納得していただけるかどうかわかりませんが、そういうことでございます。
  217. 上西和郎

    上西委員 重ねて申し上げますけれども、先ほど大臣は、百年に一回の大改定だとおっしゃったのです。それなら少なくとも、現状だれが見ても一〇〇%理解ができない、納得しがたいことがあるならば、認めていいじゃありませんかというのが僕の質問の大前提なのですよ。五年年金は私たちが恩恵的につくってやったのだからそんなに甘えるな、通算は認めてやらぬぞと言わんばかりの今のお答えは、だれも納得できないのです。  本来、日本政府は、十年以上加入してないのは単独年金じゃない、こういうことでやってきたけれども、どうしても落ちこぼれがあったから万策尽きて五年で救済したのだ、だからその人たちが、ほかの年金制度に入っているから通算を認めてくれというのは虫がよ過ぎると言わんばかりの御説明としか、僕には受け取れないのです。認めたっていいじゃないですか。  では大臣、突っ込んでお尋ねしますよ。十年年金の制度を結果的に知らないままに、そんな制度があったのか、何とかしてくれという声が出てきたから五年年金制度をつくったわけでしょう。あなた方も考案をされた。国会、地方議会も含めて要望も強かった。だからやった。今、数はそう多くないと思いますよ。その方々が何年か他の職場で働いてきて年金に入っている、あるいはその後入っている、そうしたものをばっさり切り捨てていて、それじゃ、百年に一回の大改定をやる勇気ある渡部厚生大臣と私は言いにくくなりますので、百年に一同のことをおやりになるなら、こうした些少なことはこの際大英断で処理をする、五年年金も通算の基本年金に置く、そして通算を認めていく、そのことで救済される方が何万人も出てくると僕は思うのです。そこに社会保障制度の真の意義があると思いますので、大臣、いかがでしょうか。
  218. 渡部恒三

    渡部国務大臣 今回の年金の改革案はまことに膨大なものでございまして、個々の面を一つ一つ取り上げてみますと、今先生御指摘のような問題、これは亡くなった山口局長が心血を注いでつくったものでありますが、しかしその中でも、私どもでも、一つの問題だけ取り上げてみますと、なるほどこれでいいのかなというような問題が出てまいります。しかし、これは全体のバランスの中でできておる問題ですから、今一つの問題を先生から取り上げられて、まことにごもっともです、すぐこれは直しましょうということになっていくと、全体が成り立たなくなってまいります。  しかし、私ども、まさに百年に一遍ともいうべき大改革の御審議を先生方にお願いしているわけですから、ここで御審議をいただいていかれる中でいろいろの問題が出てまいります。この法案を先生方に御審議をいただいて成立させていただく時点でいろいろな問題が出てくると思いますが、今度はそれを、全体のバランス、整合性の中で考えることができるわけですから、その際は、この法案の審議の中で、国会の先生からいただいておる御意見等には私は謙虚に耳を傾けて、取り入れられるものは取り入れられるように努力しなければならないと思っております。
  219. 上西和郎

    上西委員 今、大臣から非常に含蓄のあるお答えをいただきましたから、そのことを私は子としながらも、重ねて申し上げておきたいのは、五年年金制度ができたから、待ってましたで入ったのじゃなくて、十年年金の制度が徹底して周知され、PRされていたら当然十年年金制度に入ったであろう方々が、知らないままに放置されていて、辛うじて五年年金で救済されたという現実の加入者の実態を見るときに、十年は通算対象にする、五年はだめだというのは、私は情においても理においても通らないと判断いたしますので、積み残しのことを私がきょう幾つか取り上げますが、それ以外にも、数多い社労委メンバーの諸先生方からもいろいろ出てくると思います。それらを今大臣おっしゃったようなことで大局的かつ総合的に御検討いただく中で、ぜひこの問題も解決をしていただきたい、このことを重ねて要望をしておきたいと思います。  次は母子年金についてお尋ねしたいのでありますが、その前に大蔵省の課長さん、共済年金の遺族年金には、厚生年金の寡婦加算、加給年金ですね、こうした制度がありますか、どうですか。
  220. 坂本導聰

    ○坂本説明員 御指摘のうち寡婦加算制度はございますが、共済年金につきましては歴史的沿革もございまして、完全なる社会保障という側面だけではなくて、社会保障と公務の円滑なる推進という両面がございますので、一般的な加算制度というようなものはございません。
  221. 上西和郎

    上西委員 それでは母子年金について私、申し上げたいのです。前回の改定で寡婦加算一万五千円を新設しましたね。これはあの改悪の中ではささやかによくなったことだと評価をしております。ただ、問題なのは、他の公的年金制度から遺族年金を受給できる場合は寡婦加算額を消す、これは今あったように寡婦加算があるわけだから、重複ということで消えるのもやむを得ぬでしょう。ところが、寡婦加算をつけて何かあめを持たせながら、片一方では寡婦加算を消し、かつ、残りの母子年金総額のうち、従来三分の一カットだったのをさらに強化をして五分の二カットをしている、これはどうしても納得できないのです。障害者に、お年寄りに、母子家庭に温かい光を当てましょうと、あなたは所信表明その他で随分とおっしゃっている。もちろん、そのころはあなたは厚生大臣になっておられませんでしたが、少なくとも母子年金のカット類は私はゼロにしてほしいと思いますけれども、せめて改悪前の三分の一まで改善、緩和できないのか。この辺についてはいかなる御検討があり、見解がまとまっているのか。局長、お答えいただきたいと思います。
  222. 吉原健二

    吉原政府委員 年金制度がいろいろ分立しておりますと、いろいろなところからいろいろな給付がいわば重なって出るということがあるわけでございます。今お尋ねのようなケースですと、サラリーマンの家庭の場合に、仮に御主人が亡くなった場合に厚生年金からの遺族年金が出るし、奥様が国民年金に入っておられた場合には国民年金の方からの母子年金が出る。つまり一方から遺族年金、一方から母子年金、こう出る、こういうふうな仕組みになっているわけでございます。従来は、両方から出るのはどうだろうか、やはり年金給付としては、それぞれ国庫負担も入っているわけですから、少し調整をする必要があるということで、遺族年金はそのまま出しますが、国民年金の方の母子年金は御質問にございましたようにいわば三分の一側遠慮いただく、支給停止をするという措置になっていたわけです。  五十五年の改正のときに、五十五年の厚生年金改正というのは遺族年金の給付水準を大幅に上げるということが改善の一つの大きな柱でございまして、そのような考え方で寡婦加算なんかも大きく上げたわけでございます。そういたしますと、一方で厚生年金の遺族年金をうんと上げる、母子年金も三分の一支給停止で三分の二もらえるままにしておきますと、かなり高い水準の年金がその人に両方から出る。確かに両方入っていたわけですから、年金をもらう立場の人から言うと高ければ高いにこしたことはないのですが、やはり余り高過ぎるということは将来の負担を考えた場合にどうだろうかということで、国民年金については支給停止の率を従来の三分の一から五分の二にふやしたわけでございます。そうして、一部遺族年金が上がるかわりに母子年金の方は少し減る、しかし全体としては従来よりさらに二〇%以上上がる、それでひとつ御満足いただきたいということで、そういうお願いをしたわけでございます。
  223. 上西和郎

    上西委員 局長のお答えを聞いておりますと、悪いけれども、数字その他がわからないと、何かべらぼうな遺族年金をもらって、だから母子年金を削るのは当たり前だと聞こえてくるわけです。厚生年金の遺族年金の最低保障額——私はごく最近白血病で亡くなった三十五歳にならない若い男性のお世話をしたのでありますが、この方が最低保障でしたよ。御承知のとおり遺族年金四万六千九百円ですよ。それに子供が二人いたから、寡婦加算が一万七千五百円ですよ。あと子供が五千円ずつつくだけだ、合わせたって八万円にならぬでしょう。それなのに、何か聞いていると、遺族年金をぐんと上げましたから十五万も二十万ももらうような感じで、しかも母子年金は四万六千九百円ですよ。厚生年金の遺族年金の最低保障と母子年金の額は一緒なのですよ。それに子供が一人、二人いると寡婦加算が違うだけであって、一万五千円が消えていけば、何のことはない厚生年金の遺族年金は年間百万にならないのですよ。年が若ければ、子供がいても一人、二人だったら。それにもかかわらず寡婦加算を切って、年間五十七万足らずの四〇%を切っていくなんということを平気でおやりになっていて、ここで黙って聞いていると、いや、両方もらうともらい過ぎますからというようなお答えですと、加入して大黒柱を失った奥さんや未亡人は、今本当に大変な生活苦ですよ。幼い子を抱えていますといい職につけませんよ。保育園に入れてもやはり子供は夕方引き取らなければいかぬから、超過勤務があったりいろいろあるとなかなかできない。結局パートになってしまう。こういう本当に日本の将来を担う幼い子供たちを必死で守り支えているお母さん方に、余りにもつれない仕打ちではないか。くどいようですが、百年に一回の大改定をされようとするならば、この際、ああ、あれは改悪のし過ぎであった、五分の二は三分の一にせめてもとに戻しておこうというくらいの、温情あふるる処置が年金局でとられて至当ではないか、こう思うのでありますが、重ねてお答えをいただきたいと思います。
  224. 吉原健二

    吉原政府委員 確かに遺族年金障害年金、これは遺族の方、障害の方にとっては、それが本当に、老齢以上に生活の大きな柱になると思います。そういった意味におきましても、今度の改革案、実は全体としましては老齢はできるだけ抑制しながらも、障害と遺族の年金は上げる、そういう基本的な考え方でできているわけでございます。ただ、個々のケースについて、御指摘のように制度をまたいで両方から年金をもらえる場合の受給の調整というのは、考え方としてはできるだけ重複給付の調整といいますか、年金水準が全体としては少し高すぎるなという——もちろん高ければ高いほどいいわけでございますけれども、世帯としてはほかとバランスを失するというような観点から、最小限の調整はさせていただくということできているわけでございます。  全体としては、遺族年金は、私どもできるだけ内容を充実するという方向で考えることを御理解いただきたいと思います。
  225. 上西和郎

    上西委員 私は、人の命は地球より重いということを戦後厳しく教えられた世代の一人であります。そうしますと、ここで比較検討することが果たして妥当かどうかは別として、かつて赤紙一枚で引っ張り出されて日本のため、日本国民のために一命をささげた方々の公務扶助料はささやかに上がりまして、年額百三十四万六千円になりましたね。そうすると、少なくとも月に十一万以上になる。     〔委員長退席、愛知委員長代理着席〕 いや、戦死した方々にはそれくらいしてもいいと言う。私は、それが悪いと言うわけじゃありません。しかし、それに比べて遺族の年金の最低保障は四万六千九百円なのですよ。それに寡婦加算がついても、子供一人だったら一万五千円でしょう。せいぜい二人目の子供で五千円だ。だから合わせて六万六千九百円。そうしますと、せっかく国民年金に入っていて母子年金四万六千九百円もらえるかと思ったら、何のことはない、五分の二カットされている現実がある。だから、あなた方も横断的に、同じ夫、父親を亡くしている家庭だということで見ていただきたい。私は戦死した方々の命の重さを云々するわけじゃありませんが、現実の姿として、公務扶助料なり援護法で出ている遺族年金、これも厚生省所管でしょう、大臣。そうすると、厚生省所管の中で、援護法に基づく遺族年金は公務扶助料と同額が出ている、片や、こちらの方はちょっとよくしたからといって三分の一を五分の二にしたことを平然としてといいましょうか、そのまま持続していこうとする。確かに年金統合法は仮に議論がまとまっていけば六十一年四月施行になりますね。その間の犠牲者はどうするのですか。その間の夫を失い、歯を食いしばって暮らしていく母親はどうなるのですか。このことを私は訴えたいのであります。そうした観点で母子年金のカット率についても再考を促したい。先ほどの大臣が総体的に検討する中で、ぜひこれも一項目入れていただきたいと強くお願いをしておきたいと思います。よろしゅうございますか。——うなずかれましたので、では次に移らせていただきます。  次に、これは国民年金が持っているある意味では一つの制度的な欠陥でもあると私は思うのでありますが、遺児年金と寡婦年金がございますね。そうすると、遺児年金と寡婦年金をもらえる権利のある方が、死亡した方の死亡一時金をもらってしまうと、自動的に遺児年金も寡婦年金も受給権が消滅する。法律的には遺児年金、寡婦年金は死亡一時金との選択制になっている、これが国民年金法に明記してあるわけでありますが、私たちがしばしば体験するのは、田舎で、これは都会でもあることでしょうけれども、例えば一家の大黒柱が亡くなった。そうすると、付近の方、御親戚の方、地域の有力者、民生委員、そういった方々が、ああ、大変だとお葬式に駆けつけてきて、お金が要るねと言って、ちょっと印鑑を貸しなさい、お父さんの国民年金の死亡一時金と国民健康保険の本人埋葬料をあわせてもらってきて、あしたのお坊さんのお布施の足しにと、こうやってしまう。全く善意です。ところが、大黒柱を失って、極端に言ってみなしごになった子供さん、あるいは御主人を失って本当によよと泣き伏している未亡人の方々は、そんなことはさっぱりわからぬ。ありがとう、ありがとうで受け取ってしまう。そして、しばらくたって、あなたは遺児年金をもらえるんだと言われたら、みなしごになった小学生、中学生あるいは高校生もいますね、あるいは六十歳未満の未亡人の方々が、権利があると思って気がついて窓口へ行くと、いや、あなたはもう死亡一時金を受給されているから権利放棄です、となっている現実があるのです。つい最近も、ある場所で私がこの話をしたら、私の目の前で泣き出された未亡人になっている奥さんがおられました。  今、私の体験では、寡婦年金が去年で年間大体二十万程度になっていると思います。遺児年金は、子供一人で月額四万六千九百円ですから年間で五十七万足らずですね。小学生でお父さん、お母さんも亡くなって十八歳までもらえば何百万でしょう。それを今の極めて少額な死亡一時金でちゃらにしてしまっている。この現実があることを私は鋭く指摘をしながら、局長、私がここで質問をしたいのは、逆選択制を設けるお考えはないかということであります。平たく言いますと、民法の時効二年間に限り、寡婦年金、遺児年金の受給権があると判明した場合、死亡一時金を全額戻入することによって改めて遺児年金、寡婦年金の請求権、受給権を与える、こういうことがやはり社会保障の一番大事なところじゃないでしょうか。そのことについての御見解といいますか、検討なされているならば結果をお答えいただきたいと思うのです。
  226. 吉原健二

    吉原政府委員 寡婦年金と死亡一時金、なぜそういう関係にしているか、これはそもそものお話をちょっと申し上げないとなかなか御理解いただきにくいと思うのですが、国民年金の本来の遺族に対する給付としては母子年金、準母子年金ということを考えていたわけでございます。ただ、保険料を納めていながらその方が亡くなったという場合に、いわば残された遺族、その遺族にはいろいろな方がおられるわけです。子供がある場合には母子年金が出ますけれども、母子年金等が出ない場合に、何にも給付が出ないというのは全く掛け捨てになってしまうではないか。社会保障とか社会保険の年金ですと、ある程度必要なときに必要な給付、必要な人に必要な給付をするということですから、やはりそういう要件に該当しない場合にはその保険料はほかの人の給付に回る、これは基本的にそういう仕組みをとっているわけですが、死亡一時金というのはある程度、そうは言っても、残された遺族の人、寡婦がいれば寡婦、遺児がいれば遺児に何がしかでもお返しをするというような仕組みを入れた方が、国民感情からいっても、この制度を大きく育てていくためには必要なんじゃないか、こういうことで設けられたのです。そのときにやはり最初から死亡一時金をとるか、つまり亡くなったときに一時金として返してもらう方がいいか、それから、寡婦は六十歳以上でないともらえませんが、しばらく今はもらわないで、将来寡婦年金として五年間受ける方がいいか、それは最初から、実は選択制でこの制度ができたわけでございます。したがいまして、確かに制度が選択制であることを知らないで一時金をもらった人はおられるかもしれませんが、ただそうかといいまして、これからの制度のあるべき姿として、死亡一時金を返せばまた寡婦年金がもらえるような仕組みにするということは、年金制度、社会保険の制度におきまして、いわば逆選択ですね、逆選択というのは一番、これは私保険でも同じですけれども、それはむしろできるだけ避けねばならないということがございますので、死亡一時金をもらいながら、後からそれを返すから今度は寡婦年金というのは、率直に言ってなかなか難しい、こういうふうに思っております。
  227. 上西和郎

    上西委員 私、今のようなお答えがあると、率直にこういう質問をぶっつけたいんですよ。私はいろいろやってきましたけれども、共済年金の相談は一番少のうございます。なぜか、事実上退職と同時にもらえるから、勤務先でほとんど全部してくれるわけです。亡くなったときは、寄ってたかってみんな面倒を見てくれますよ。厚生年金の相談は老齢年金が一番多い。なぜか、退職して何年もたって六十になってもらうから、職場に行ったって、転勤その他で知っている先輩も仲間もいない。社会保険事務所は数が少のうございますから、勢い僕らのところに来る。障害年金の場合は在職中だからみんなが面倒を見てくれる。国民年金はどこへ行ってだれに相談していいのか。一番弱いのが寡婦であり、遺児じゃありませんか。小学校や中学校へ行っている孤児になった子供たちに、だれに年金を相談させるのですか。そのことを抜きにして、死亡一時金をもらってしまった者には遺児年金をやりませんと。あなた、今寡婦年金ばかりおっしゃるけれども、小学生、中学生は遺児年金をもらえるわけでしょう。母子家庭か父子家庭で、お父さんかお母さんが国民年金に直近の基準月の一カ年以上前から保険料を完納していれば、亡くなった翌月から四万六千九百円もらえるわけだ。そのお金をもらえる権利を、なぜ子供たちがわかりますか。そうして亡くなってしまえば、隣近所の方、御親族の方はそこまで気が及ばぬから、つい死亡一時金をもらってこいということになっちゃう。  これは卑近な例ですけれども、私のところに来た人がいる。弟が亡くなった。父子家庭だった。子供は四年生だ。おじだから僕が引き取らなければいかぬ。何の相談がと言ったら、弟が電話を持っているから、電話は二台要らぬので電話を世話してくれというので、私は電電公社あるいはそこの組合と相談してそれを処理した後、弟さんの仕事は何だったかと聞いたら、大工さんだと言う。それじゃ国民年金がと言ったら、そうだ。それじゃ絶対死亡一時金をもらうなと言ったら、幸いもらっていませんでした。すぐ遺児年金をもらうようにしたら、いやあ上西さん、あの子供が年金をもらえるとは全然知らなかったと。今中学三年生です。それはささやかに父親が残した遺産ですよ。安心して高校までやれるとお兄さんはおっしゃった。そういった遺児年金制度をつくったのはあなた方じゃないですか。それを何にも知らないために、全く善意で、わずか二万三千円か七千円程度の死亡一時金をもらってしまったら、いやいや、遺児年金はあげませんよ。寡婦年金はだめですよ。これじゃ、冷酷非情な厚生省と言われても返す言葉がないんじゃありませんか。局長、あなたみたいにばさっとおっしゃらないで、大臣がああおっしゃったのだから、そのことについても検討するとか、少なくとも死亡一時金の支給については急ぐなどか、もうちょっときめ細かな業務指導をするとか、簡単に出すなとか、いろいろなことが出てくると思うのです。そういったことなしで、それはもうこうですよと、なたでぶった切るようなことをされたら、年金統合法案なんてだれも賛成しませんよ、積み残しなんだから。もう一遍お答えください。
  228. 朝本信明

    ○朝本政府委員 実施面を担当いたしております年金保険部長から、お答えさせていただきます。  ただいま先生の指摘されましたような事例、確かにあり得ることではないかというふうに存じます。特に先生おっしゃいましたように、善意の近隣の方が集まられて、何かもらえるはずだという形で受領をされるというのは、制度本来の趣旨、これは遺児年金あるいは寡婦年金、いずれも年齢制限がある。それから、例えば寡婦年金の場合には、十年以上の婚姻とかあるいは六十五歳までというような条件があって選択をされる場合があるのではないかということから設けられているわけでございますけれども、これまた先生おっしゃいましたように、国民年金について、現役の職場で働いていらっしゃらない方が亡くなった場合というのは大変難しゅうございまして、私生活に立ち入ってこうしろ、ああしろというふうに公務員が申し上げるわけにはなかなかいかないにしても、正しい知識を持って御決定をいただく。お子様の場合には、面倒を見る親がわりの方がいらっしゃるわけでございますから、そういう方にまた正しい知識を持っていただく、こういうつもりで仕事を進め、こういう制度の運営に当たっているわけでございます。  しかし、何と申しましても大変広い、多くの機関でやっておりますので、行き届かない面があるのではないか、こういう点、さらに十分な指導、それから徹底を図ってまいりたい、こういうふうに考えております。
  229. 上西和郎

    上西委員 部長のお答えはそれなりにわかりますので、私もこれ以上申し上げようとは思いません。ただ、現実にそういう事実があることは御理解いただいて、少なくとも、指導面でもやられると同時に、善意で権利放棄になっている方々をどうしたら救済できるか、このことについても格段の御配慮をいただきたいということを重ねてお願いをしておきたいと思います。  次は死亡一時金について、これが今、国民年金加入を大きく阻害している原因でもあるわけでありますが、今度の法案ではささやかに、大幅増額といいますか、そういうことがちょっと入っているようですけれども、将来的な展望を含めて、死亡一時金に対する見解といいますか、そういうことについてちょっと御説明をいただいておきたいと思うのです。
  230. 吉原健二

    吉原政府委員 死亡一時金の考え方でございますが、これは営々として保険料を納めておられる方が、給付を受けずして亡くなった場合に、一体それが全部、社会保険ですからほかの人の必要な給付の財源になるわけですけれども、やはり国民感情からいいまして、それが掛け捨てになってしまうではないかというお気持ちが、国民年金をつくったときから実は非常に強かったわけでございます。もちろん、亡くなったときに、その亡くなった方の生計で生活をしておられた方には、母子年金なり遺児年金として、遺族に対する給付として出るのでございますけれども、それはそれとして、一つの、一定の子供がいるとかあるいは子供が十八歳までという要件がございますので、どうしてもそういった母子年金や準母子年金、遺児年金がもらえないケースが出てくる。それはやはり、それ以外の遺族がおられる場合に少しでも返してもらいたい、掛け捨てじゃないかというお声が実は大変強かったのです。そういったことで、本来の社会保障の年金給付としてはいかがかという考え方もあったのですけれども、そういった率直な国民の気持ちもございますので、こういう制度を国民年金創設時からつくったわけでございますが、今回、一体この制度をどうするかというのも実はいろいろ議論がございました。もうなくすべきであるという議論もございましたし、今までのとおりでいいという議論もございましたし、それからもう一つ、今までではやはり不十分である、もうちょっと一時金の給付を上げてほしい、そうでないと国民年金の将来の発展がどうも心配だというような御意見もあったわけでございます。いろいろ内部でも検討し、審議会でも御議論いただきましたけれども、考え方としては最後に申し上げた考え方をとりまして、制度としては維持し、さらに給付を上げていくということで、従来よりも相当大幅な一時金の改善をやったわけでございます。
  231. 上西和郎

    上西委員 わかりました。ただ、私は、国民年金の内容にはいろいろ批判もありますけれども、加入を極力推進している側の一人として、やはりこれが一つネックになります。特に田舎で言われるのは、生活保護世帯のその中の基準である葬祭料がありますね。現実の死亡一時金はこれをはるかに下回っているわけです。こうしたことの比較はよく出ます。だが、せめて生活保護費の葬祭料は大きく上回るような死亡一時金であってほしい、これは僕は科学的な主張だと思います。そうしたことなども一つの意見として取り入れられて、将来的な死亡一時金の問題についてはぜひ御検討いただきたい、このように考えます。  今度は、少し角度を変えましてお尋ねしたいのでありますが、住宅資金の貸付制度がありますね。いわゆる住宅金融公庫を利用して、厚年でも国年でも加入されている方々がそれを借りて、住宅の新築、増築、改築、購入等をされるときに、その借り主、あるいは国民年金ですと家族構成の中で加入されている方がおると借りられる。これの中身はとやかく申し上げようとは思いません。ただ、今一番話題になっているのは、抽せん制に対する批判が強いのです。この現実の厚年、国年の抽せん制の当せん率といいますか、希望と当せんの比率、あるいは厚年、国年の住宅資金に出されている資金量、こうしたことについて御説明いただきたいと思います。
  232. 吉原健二

    吉原政府委員 まず、資金量で申し上げますと、還元融資による住宅貸し付け三つ方法がございます。公庫の分だけでよろしゅうございますか、それとも全体……(上西委員「せっかくですから、全体を」と呼ぶ)全体でございますか。  まず公庫の分を先に申し上げますと、公庫に委託して行っている分、厚生年金分が五十九年度で千五百二十八億、国民年金分が八百四億でございます。それから事業主貸し付け、それから民法法人を通じての貸し付け、その額が、これは厚生年金の被保険者が対象でございますけれども八千二百三十五億円でございまして、五十九年度は合わせまして一兆五百六十八億円というのが全体の資金量でございます。  それから、抽せん制をとっておりますのが、公庫に委託して行っている分が抽せん制でやっているわけでございまして、その抽せんの当せん率は、厚生年金が五十八年度で二八%、それから国民年金が六五%ということでございます。
  233. 上西和郎

    上西委員 公的年金制度間の不公平、矛盾が言われるときに、一番言われるのはもちろん給付の内容ですが、その次に言われるのは、せっかく長年にわたって納めてきた保険料の加入期間中の利用率が非常に低い。まあ大蔵省もおいでですが、共済ですと、いろいろローンとかなんとかが借りられる、一定限度がありますけれども。ところが厚年や国年は、極端に言うと、住宅金融公庫に申し込んで利用しない限り、利用はほぼ絶望に近い。こういうことで、この関心が非常に高まっているわけです。  御承知のように、住宅金融公庫は少なくとも四半世紀以前は抽せん制でしたね。今はもう申し込んでいって満タンになったらそこで打ち切り。それがなぜこの厚年、国年にもできないのか。しかも、先ほど私がお尋ねして明らかになったように、相当多額の金が積み立てられている。しかもそれは圧倒的に財投に回されている。民間労働者と国民年金加入者の力によって今の日本の財政は支えられているのじゃないか、こういう素朴な意見があるわけですね。  では、これは悪いけれども、まあ目くそ鼻くそのたぐいとは言いませんが、こんなわずかな額じゃなくて、もっとばんと、渡部大臣の力で——私、この前テレビで拝見しておって、厚生省社会保障費は断じて削減を許さぬ、こういう渡部大臣の意気盛んなるものを見ましてはっと一安心したのですが、その勢いで、この住宅資金についてももっと枠をとって、加入者、被保険者にやはり事実上の還元を与え、この年金制度が活用されるような方向への御努力はとっていただけませんか。そのことについて大臣、一言。
  234. 渡部恒三

    渡部国務大臣 まことにごもっともなお話しでございますので、できる限り努力をしたいと思います。(「聞こえない」と呼ぶ者あり)
  235. 上西和郎

    上西委員 大臣、あなたは正直なんですかね。声が小さくなったり大きくなったりする。大きいお声でお答えになったことは実行されて、小さいお声でお答えになったのは何か後でちょぼちょぼになるのじゃないかと、ちょっと懸念を持ちます。あなた、本当に正直な方だと思いますので、どうかもっとはっきりと言ってください。今のはちょっと聞こえなかったとあります。私だけちょっとわかったようでありますが、もう一遍、早稲田大学雄弁会の雄であったあなたのお声でやってください。
  236. 渡部恒三

    渡部国務大臣 大変ごもっともなお話しでございますので、できる限り努力をしたいと思います。(拍手)
  237. 上西和郎

    上西委員 次は、これは私、従来からの持論でありますが、兵役期間の問題についてであります。百年に一回の大改定をされるという割には、余り御検討なさっていないのじゃなかろうかと思うのであります。私、少しく意見を申し上げますと、かつて、今は亡き佐藤英作元総理が、沖縄の復帰なくして日本の戦後は終わらないとおっしゃって、長期安定政権をお築きになりました。私は、兵役期間の処理なくして年金制度の統合一元化はあり得ない、これをなし得るのは渡部厚生大臣以外にない、こう心から御期待を申し上げているのであります。  というのは、帝国陸海軍の兵籍を持つ者、この兵役期間に関しては、昭和二十年八月十五日大日本帝国崩壊と同時にしばし空白になりました。しかし、二十八年十月、軍人恩給の復活と同時に、国家公務員、地方公務員、当時の公企体の職員、この三つの年金に関しては通算を認めるということで、軍恩の復活が行われた。ただし、私学共済、農林、まあ農林はそのときまだできておりませんでしたけれども、農林年金共済を含めて、民間は絶対つながないということで、現実に今そのことがずっと通っております。これがどれだけ日本国民の多数にダメージを与えていますか。中曽根さんが防衛費の突出にあれだけ御熱心になる、それはあの方のそれこそ勝手でしょうと言ってもいいのですけれども、それならなぜあの苦しかった戦時中、終戦後の捕虜収容所抑留期間のことを含めて、大変御苦労いただいた方々の兵役期間を、民間の年金につなぐことをおやりにならないのでしょうか。私は、少なくとも厚年、国年を含む民間の年金に兵役期間はつなぐ、そしてつないだ部分の兵隊期間の原資については軍人恩給の方から支出すべし、こういう持論があるのでありますが、この辺については御検討あったのかどうか、まず見解を承りたいと思います。
  238. 吉原健二

    吉原政府委員 過去の軍歴を厚生年金等に通算できないかというお話は、今おっしゃいましたように本当にかねてからあったお話でございますが、率直に言って非常に難しいのでございます。  理屈を言うようでございますが、軍歴の期間はいわば国と特別な身分関係にあった期間、民間の期間ではございません、国と特別にあったいわば公の期間でございますので、それについて、共済とか恩給というのはもちろん公務員を対象にした制度でございますから、すんなりとつなげるということができたわけでございます。だれも異存はなかったわけでございますが、そういう公、特に軍の期間を民間の厚生年金の期間につなぐということについては、公平の観点からいいましてもどうだろうか、民間のサイドからいいますと、そういう議論が実はいまだに強いわけでございます。  それから、厚生年金というのが社会保険の仕組みをとっておりますために、いわば保険料納付の実績がない、つまり財源の積み立てがないのに期間だけつないでも、一体給付はどうすればいいのか。では、給付は、今の被保険者の負担でいいのかどうかという財源措置の問題が一つございます。  それから、やはりこういった措置を仮に認めるといたしますと、軍歴以外にも、軍ではないけれども、戦地に行っていたとか外地にいた期間はどうするかとか、あるいは過去に民間に勤めていたけれども、年金に結びつかなくて外れてしまった人も、当然救済してもいいじゃないかといういろいろなバランスの問題が出てまいりまして、私どもとしては素直に、素直といいますか、民間に、わかりましたというふうに、なかなか簡単に通算ができないという理由があるわけでございます。  この問題につきましては、実は総理府の中で幾つかの戦後処理の問題がございますが、その問題の一環として、これまで総理府総務長官の委嘱機関において検討がされてまいっておりますし、現在も戦後処理問題懇談会というのがございまして、これは五十七年六月に総理府総務長官の私的諮問機関としてつくられたわけでございますが、その懇談会におきまして、特別戦後未処遇者の問題、戦後強制抑留者の問題、在外財産の補償問題、そういった問題等をあわせて今検討も進められておりますので、その検討の結果、結論も見て、どう対応をするかということは検討させていただきたいと思います。
  239. 上西和郎

    上西委員 局長、私が申し上げたことと今のお答えはちょっと違うのです。私は、兵役期間については軍人恩給の方から原資を出せと言っているのです。何も保険料とかなんとか言っているのじゃないのです。ざっくばらんに言って、忠勇無双の我が兵はと歌われても、現実にその方々は毎年数が減っていっているわけです。軍人恩給の新規受給者は法的に言えば新しく出てこないわけです。軍人恩給の受給者も公務扶助料受給者も年々減少していく。その過程の中で、そうした減少分が浮いてくるでしょう。そういったことがいましばらく続いていくと思いますから、そういった方向から、例えば三年、五年の短期に兵役で大変御苦労いただいた方々は、戦後の職業が公務員であろうと民間であろうと自営業であろうと何も変わらぬわけでしょう、それを一顧だにしない百年に一回の改定だから、大臣、私は質問しているわけです。  だから、私はもっと言いますと、参議院選挙のたびに、三年に一回ですが、私のところの電話は頻々と鳴るのです。千五百円納めた方がいいか、三千円納めよと来るかどうかとか。短期の方々の軍恩不適格者を救済するという組織が全国的にできては千五百円、三千円と取っていく。私は納めるなど言う。日本政府が法を改定したときは、会員であろうとなかろうと平等に恩恵を受けるのだから、むだな金を納めるなど言うけれども、わらをもつかむ思いの方々は、お金を納めてひたすらそうした運動の成果を、政府の善意を期待しているのですよ。だから在外資産とかなんとかと言わずに、だれも理解できる共通の問題なんですから、兵役期間を民間の厚生年金国民年金、もちろん農林年金、私学共済を含めて通算をし、その通算した部分については、だれが何と言っても十二年以下なんですから、それ以上はみな単独恩給なんだから、せいぜい三年か五年の短期ですから、そういった方々について、何らか軍恩の予算の中でやりくりしてでも見ていくということをやることが、大きな意味で日本の戦争処理の一つの終結につながっていくのじゃないでしょうか。私は極端に言うと、防衛費の突出なんかにお金を回すよりか、こうした方々にきちっとした処理をやることが、大きな意味で愛国心を高めていくのじゃないかとまで思っています。  ですから、そうした意味合いで、このことについては、今局長が、大変恐縮ですがまだおなりになったばかりで一生懸命お答えになりましたが、私はお答えと違うのです。私は明らかに、厚年とは切り離して軍恩から出しなさいと、そういう大胆な提言、それができるのは、百年に一回の大改定を決断をされた渡部大臣、あなたですよ。健康保険しかりだ。これだけの大改定、本当は改悪と言っていいのですけど、まあ大改定を相次いで連発をされた勇気ある渡部恒三大臣しかこれはできないと思います。そうした意味合いで、この問題について大臣からも一言見解を承りたいと思います。
  240. 渡部恒三

    渡部国務大臣 実は、今上西先生がおっしゃっていたと同じような演説を、私も厚生大臣になる前にやっておったのでございます。考え方は極めて共通すると思います。あるいは官民格差という問題、お役人をしている人は短期軍役でもこれが加算される、ところが民間の方はこれがないというのは、やはりこれは素朴な疑問でありますし、また、軍人恩給の方は戦後皆さん方のおかげでかなり強化されてきておりますが、そうすると紙一重で、おれとあれとは一日しか違わないのに隣のおじさんは恩給をもらっている、おれは全然もらわない。しかし、これは幾ら支給範囲を広げても必ず境界線というものは出て、全国の、かつてまさに赤紙一枚で、国のために家族を捨て、職場を捨てて、たとえ一年であろうと二年であろうと戦った、こういった人たちに大きな不満を残しております。やはりその不満に真正面から取り組むのが政治でございますから、私も国会議員の一人として、今先生が声を張り上げておっしゃったようなお話をやってきた、これは率直に認めざるを得ません。したがって、厚生大臣に就任してからも、この問題、何かいい解決の方法がないかなと今日まで苦労をしてきたわけでありますが、ただ、今政府委員から答弁のように、やるということになれば、これは全体のバランス、他の方々に対する負担ということで、これはまた一つの矛盾をもたらします。ですから、私も、これを実現するとすれば、これに必要なお金は国庫から支出するとか、何か他の保険者に迷惑のかからない政治的な決断が必要だと思っておりましたが、先生の今の御意見は、軍人恩給の受給者がだんだん減っていくんだから、それで余剰になる金を財源としてそういう方法を考えたらどうか、これも大変な見識だろうと思います。しかし、今の今ということになりますと、私もきのう、おととい、大蔵大臣と六十年度の予算折衝をしまして、ゼロシーリングという厳しい予算の中、マイナスシーリングという厳しい中、国の政策費の二八%を占める厚生省の予算を抱えて、来年、この健保法の改革のようなことをお願いしないで、しかも社会保障の水準を下げないで、予算を獲得するために四苦八苦したわけでございますが、現在の厳しい条件の中で、現在の社会保障水準を落とさないで、なお、この軍恩欠格者、短期軍役者の皆さん方を年金に加算算入して、その財源を厚生省で国からプラスしてもらうということはまず不可能に近いのでありまして、これを無理にやるということになれば、今大きな予算でフレームをつけられておるわけですから、社会保障その他の関係の皆さんに御迷惑をおかけすることになりかねません。  したがって、この問題は、やはり厚生省の枠をもっと超えた、いわばこれからの新国民年金という窓口を借りて戦後処理を行うというような問題ですから、制度的にはこの年金に加算するというと厚生省の問題になりますが、しかし、その財源を出すということになれば、厚生省をはるかに超えた大きな政治問題になってくると思います。  したがって、今自由民主党、与党の方では、私の最も尊敬する小沢辰男先生がその方のお世話をなさっているので、いずれ将来、そういう党の力で財源を確保してそういうことを考えたらという時期が来なければならないし、私も、厚生大臣を仮にやめましても、その後は、今度、小沢辰男会長のもとに幹事長か何かになって、そういう方向で努力はしたいと思っておるところでございます。
  241. 上西和郎

    上西委員 せっかく今渡部大臣、仕事に脂が乗りつつあるところでおやめになるのは早過ぎるのです。まだまだ未解決の問題がたくさんあるから、一切合財片をつけて、今指摘されたこともできるだけ善処して、将来に名が残る名厚生大臣渡部恒三、厚生省に銅像を建てるぐらいの意気込みでやっていただきたいと思います。  ただ、一つだけここで申し上げておきたいのは、ここに軍人恩給の関係の方もお見えでしょうが、公務扶助料受給中のお父さん、お母さんがお亡くなりになって、戦傷病死された方の配偶者、奥さんが残っておれば、同額の遺族年金が援護法で出るでしょう。それは厚生省の予算でございましょう。そうでしょう。だから、今いろいろとおっしゃったけれども、厚生省は軍人恩給の後始末をしているわけでしょう。戦死した人は全然変わってない。受給権者が両親だったら軍恩、公務扶助料。その方が亡くなって奥さんがもらえば、援護法に基づく遺族年金になって同額でしょう。年額百三十四万六千円だ。そういうことをあなたはおやりになっているのですよ。だから、ゼロシーリングなんて言われたときはこれだけ軍患部分を持っているんだから、まずこれ返上よ、竹下さんと。同じ何とかなんだから、ばんとぶつけて、これくらい返す、そのかわり社会保障を守るぞ、そういうこともぜひおやりをいただきたい。勇気ある渡部大臣にお願いしておきたいと思います。  引き続きまして、今度はまた角度を変えまして、スライドの問題があるわけです。もう既に共済年金はスライドは全部済みましたね。そして、農林年金はちょっとおくれたけれども、あとは全部支給も済んでいる。ところが、一番受給権者の多い厚生年金国民年金のスライドだけはお先真っ暗なんですね。賢明といいましょうか、悪いけれども、ある意味ではこうかつといいましょうか、年金統合法案の中の一部にスライドを入れられておるのは、どうしても納得がいかぬのですよ。こんな重要法案をだんとぶつけてきて、社労にしわ寄せ、しわ寄せ。それは大臣も大変だったと思います。ある意味では御同情申し上げますが、一日千秋の思いで待っている受給権者の方々に、せめてスライドだけは切り離してやりますよと。あとの統合法案は六十一年四月一日なんですから。ここら辺、どうしてこれだけ知恵者の多い、すぐれた頭脳をお持ちの厚生省の高官の皆さん方がスライドを包含してお出しになったのか、ちょっとその辺のことを、本当に受給権者の方々にぴたりとわかるお答えをいただきたいと思います。(「法案を上げてもらうことだな」と呼ぶ者あり)
  242. 吉原健二

    吉原政府委員 事務当局としての考え方を申し上げますと、この年金改革、六十一年四月実施を予定させていただいておりますけれども、率直に申し上げまして、何としても今の国会で私どもとしては成立させていただきたい。そうでないと間に合わない。間に合わないということになりますと、公的年金の、ただいま来いろいろ御指摘のございました官民格差の問題、制度間格差の問題、いろいろスケジュールを決めて閣議決定をして六十一年四月から出発するという全体のスケジュールが非常に狂ってきてめどが立たなくなるということがございまして、何としてもこの制度改革も今の国会でやっていただきたい。それから同時にスライドも、昨年はスライドが見送られました。ことしは二%ということで予算が決まりまして、これも共済、恩給並びでぜひとも今の国会でお願いをしたい。いずれも同じ年金受給者のための制度改革でございますし、同時に五十九年度の予算関連法案として今お願いしなければならない、こういう性質のものでございますので、何も分けなくても一つの法律で、同時に全体のバランスも考えながら御審議をいただきたい。そのことの方がより望ましいのではないかということで、同時に一本の法律として提出をさせていただき、御審議を願っておるわけでございます。
  243. 上西和郎

    上西委員 与党の皆さん方からは法案審議の促進の意見が出ましたけれども、きょう、私が今まで幾つか指摘をした問題は、五千五百万人を超える厚年、国民年金の加入者が相当程度問題にしていることなんですよ。局長は冒頭、不公平の是正がこの法案のねらいだとおっしゃっているから、それにしては積み残しがこんなにあるじゃありませんか。こういう重要な問題が未処理、未解決のままで統合法をお急ぎになり、かつ、その中に、悪いけれども、何か人質みたいにスライド部分をお入れになっていることは、五千五百万人の加入者はもちろんのこと、数百万人の受給権者もやっぱり何か疑問を持たざるを得ないことではないでしょうか。私は何もこの法案に反対とかなんとかじゃなくて、正しく議論しようと思えばこそ、このスライド部分を包含なさったことは間違っていたのではないでしょうかと、こういう気持ちで申し上げておりますから、その辺は篤とお受けとめいただいて、受給権者に対し一日も早く安心感をお与えになることを、大臣以下厚生省の首脳部の皆さんも本当に具体的にお考えいただきたい、このことをお願いいたしておきたいと思います。(発言する者あり)応援団も見えておりますし、こちらからも意見がありますが、この程度でやめておきまして、あと具体的な問題を二、三お尋ねしたいと思います。  第一点は、三月十二日の予算の分科会で私が大臣にお尋ねをして、明確に、実施をすると確約をいただきましたが、きょうおいでの皆さん方に改めて申し上げますが、厚生年金の場合は、人工肛門、人工膀胱を造設したら即障害年金給付になる、国民年金の場合は一年六カ月待たなければいかぬのはけしからぬと言いましたら、さすがは理解の早い大臣、やりますとおっしゃったのですが、いつからおやりになるお考えなのか、ちょっとお答えいただきたいと思います。
  244. 吉原健二

    吉原政府委員 全体の制度改革の実施を予定しております六十一年四月にやらしていただきたいということで考えております。
  245. 上西和郎

    上西委員 そうなると、私はちょっと疑問があるのです。本委員会で本日身障者福祉法が通ったわけですね。身障者福祉法は、人工肛門、人工膀胱造設者を改めて身体障害者の等級基準の中に入れる、手帳交付対象にする、このことを厚生省が決断されたわけだ。私は従来この意見を持っておりました。厚年、国年の障害年金受給者のうち、精神障害の方を除きますと、まずはほぼ身体障害者の手帳もしくは精神薄弱、知恵おくれの療育手帳の交付対象である。ところが、障害年金受給を認められているにもかかわらず、人工肛門と人工膀胱の造設者は身障者に入っていなかった。これはおかしいじゃないかということを私たち前から言っていた。これをすっと受けて法案を出していただいたことについては、私たちは感謝をしているのでありますが、せっかく大臣が三月十二日にやるとおっしゃっているのに、それから二年たたないと実現しないというのは、きょうの身障者福祉法で、十月一日から手帳をもらえるぞと大変喜んでいる人工肛門、人工膀胱造設者の方々にやはり寂しい思いをさせるんじゃないでしょうか。身障者福祉法の施行と同時に、少なくともこれは、ある意味では、私に言わせると、簡単なことじゃないか。認定基準の変更じゃないか。これは大臣がお約束なさったことだから本年十月一日から実施に移す、こういったことは何とかできないのでしょうか。
  246. 吉原健二

    吉原政府委員 この問題は、本質的に年金制度の中の障害年金についてのいわば格差の是正の問題でございまして、厚生年金国民年金との間に障害年金の対象になる、何と言いますか、障害等級表、障害の認定の仕方、また運用の仕方、これにいろいろ違いがある、それを合わせていこう、少なくとも基礎年金部分についてはできるだけ合わせて国民年金の考え方に沿ったものにしていこう、こういうことがあるわけでございます。あくまでも基礎年金の導入に伴う障害の認定の仕方の統一という問題でございますので、これはやはり、何と言いましても、全体の制度改革の実施時期である、基礎年金の導入の時期である六十一年四月をめどにやらしていただきたいと思います。
  247. 上西和郎

    上西委員 私、念を押しますよ。三月十二日に大臣に私は申し上げたのですけれども、人工透析は現在同一でしょう。施療後三カ月たったら、厚生年金国民年金障害年金を支給するわけだ。そのことを片一方でやりながら、人工肛門は制度化云々ということで、再来年の四月まで待つというのはどうしても私は納得がいきません。そして人工肛門をつけている、人工膀胱をつけている方々は大変な苦しみを持っているわけだ。その方々の障害年金の給付基準、これは運用ですから、運用の改定くらいは局長の決断でできるはずだ。いわんや大臣が約束しているのですから、過ちを改むるにはばかるなかれ、一刻も早い実施を希望いたします。
  248. 渡部恒三

    渡部国務大臣 これは私の国会での答弁、これは今度年金の改革もこの国会に出しておるわけでありますから、当然基礎年金の導入の際に、今の先生の御指摘のような問題は私は大臣として改革をするように努力をしてまいります、こういうふうに申し上げております。したがって、先生の本当に障害者の皆さん方を心配しておるこの熱意を一日も早く実現するためには、まず今回の改革法を通していただくことが前提になるわけでございますが、これは国会のことですから私から押しつけがましいことは申し上げられませんが、この法案を成立してこれが実現するようになりますれば、行政として可能な範囲で急がせるように努力したいと思います。
  249. 上西和郎

    上西委員 わかりました。大臣のお答えを私、心から実現を御期待申し上げて、ではあと二つだけ簡単にお尋ねしたいのです。  当日、同じその分科会で私がお尋ねをして、現在、厚生年金はすべて、国民年金は老齢年金と通算老齢年金、これがあらゆる金融機関で受給が可能だ、ところが遺児年金、寡婦年金、母子年金等は特定金融機関でないと受給できないという現実がある、このことについて改善をしていただきたいと言ったら、同じようにお答えになりましたね。これはいつから実現をなさる予定なのですか。
  250. 朝本信明

    ○朝本政府委員 三月十二日の分科会で先生からお尋ねがございまして、御指摘のようにごく一部の年金につきまして、ほとんどの金融機関等で支払いができるにもかかわらず、労働金庫等で短期の年金が支給されていないというお話でございましたが、国庫金の取り扱いという性格上いろいろ問題はあるにしても、その範囲内でできるだけ各金融機関で払えるように努力をしてまいりたい、こういうふうにお答えをいたしたはずでございます。  その後、このことを実現する方向で関係機関と調整をいたしておりますが、相手のあることでございますから、これはいつまでに必ずちゃんとしますというお約束はなかなかできませんけれども、忘れないで誠意を持って、現にやっておりますので、今後とも続けてまいりたいと思います。
  251. 上西和郎

    上西委員 ちょっとお答えにひっかかるところがありますがそれは別として、私が申し上げたいのは、遺児年金は少なくとも高校三年以下しかもらえないわけですね。高校、義務制を問わず在学中の子供、あるいは未就学の児童が遺児年金の受給対象でございましょう。寡婦年金は明らかに未亡人しかもらえないわけだ。母子年金は十八歳未満の子供を抱えているお母さんしかもらえない。こういった方々を特定の金融機関一カ所に絞ってそこでしか渡さない。ほかにたくさんあるんだ。農協、漁協、労金を含め、信用組合、信用金庫、銀行、相互銀行、いっぱいありますよ。そのすべてがだめだということをあなた方はやっているわけだ。私たちは年金の給付だけでいいというんじゃ困るわけです。受給権者の幸せを守るのは、年金の支払いを円滑にすると同時に、その受給を受けやすくしてあげるのも厚生省の果たすべき役割じゃないでしょうか。たとえ大蔵省が何と言おうと、大蔵省が間違っていると言ったって、やっていいじゃありませんか。何カ月たちますか。私はきょう、少なくとも十月一日からやりますぐらいのお答えは出ると思っていたのです。このことについては大臣、明確に督促をし、一刻も早い実現を重ねてお願いをしておきます。  最後にお尋ねします。  年金は、支払い請求権といいましょうか、請求権があって、おくれて支払いの請求をしても最高五年間は遡及しますね。ところが、満二十未満の子供あるいは十八歳未満の子供等がもらえる手当が幾つかある。あるいは大人でももらえるものがありますね。羅列しますと、児童手当があります。母子家庭が主としてもらえる児童扶養手当がある。あるいは障害児が満二十までもらえる特別児童扶養手当がある。特別児童扶養手当等の支給に関する法律の一部である福祉手当がある。これらについては、気がついて請求したら、五年前に片手首を切断していようと三年前に母子家庭になっていようと、請求をした日の属する月の翌月からしか出さない、これが法の厳たる事実ですね。なぜそんなことをするのか。二十未満の子供がもらえるものは請求しないと出しません、年金は大人だからさかのぼります、これはやはり社会保障制度の不公平だ。その所管に当たる厚生省の見解を承っておきたいと思います。
  252. 小島弘仲

    ○小島政府委員 先生御指摘のとおり、年金社会福祉の措置としての扶養手当等については、今お話しのような差がございます。これは一つは、年金と申しますのは特定の資格のある者を被保険者といたしまして、集団を組みまして保険料を納めていただく、それで事故が発生しましたときに、その事故による稼得能力の喪失を補てんしようとする趣旨で出す制度でございます。一方、児童扶養手当を初め福祉の措置としての支給金につきましては、これによりまして、一般的な家計の補助と申しますか稼得能力の補てんではなくて、児童の健全育成とか、そういうような幸せのためにとかいう特別の目的のために、またその必要額を出すという制度でございます。福祉の措置でございますので、拠出金もございません。これらにつきましては、申請を待ちまして、申請があればそこで事実関係を認定し、以後の児童の健全育成に資しようという趣旨でございます。その違いが出てまいっております。  例えば生活保護などにつきましても、申請を時期によってさかのぼって出すという性質のものではありません。これは具体的に使途が特定されているという趣旨でもございますし、また拠出もないという性格もあって、このような差が一般的な福祉の措置としての支給金には設けられております。
  253. 上西和郎

    上西委員 もう時間が参っておりますからお答えは結構です。私が申し上げたいのは、無拠出の老齢福祉年金障害福祉年金も、五年間は最高さかのぼって精算でしょう。公務扶助料が出ているから、陸軍伍長の息子が戦死しているのに何も知らずに老齢福祉年金を請求しなかった、こういう方たちを何人もお世話しました。そうしたらば、無拠出であるにもかかわらず、五年間は最高さかのぼって出る。ところが、手当と名のつくものは、いまおっしゃったように、私は理屈でと言いましょう、法理論と言っていいでしょう、そういうことで、待ったなしに、請求した日の属する翌月からしか支給しない。これはやはり不公平ではありませんか。年金局長年金統合法案は不公平の是正だとおっしゃるなら、ある意味では子供たちにとっての年金と言ってよい特別児童扶養手当などについては、とりわけ遡及精算ということを考えていいじゃありませんか。  大臣が所信表明演説で、不幸せな方、障害を持っている方、お年寄りの方々に温かい光を与えるのが政治であり、社会保障制度であるとおっしゃった。この言葉を未来永劫に信じながら、きょう申し上げたことの幾つかをぜひ善処なさいますことを心からお願いをし、質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  254. 愛知和男

    ○愛知委員長代理 沼川洋一君。
  255. 沼川洋一

    沼川委員 二十一世紀のいわば超高齢化社会を、生きがいとバイタリティーのある福祉社会に発展させていくためには、やはりこれからの年金制度の行方がそのかぎを握っておるとも言えます。これは非常に重大であると言い切っても過言ではないと私は実は思っております。  特に、今回のこの政府年金改革案でございますけれども、これは私ども公明党が、五十一年の十月に、福祉社会トータルプランというのを発表いたしております。この中で、一つこれからの年金の基本的方向として国民基本年金構想、こういうのを提言しましたが、その骨子となるのが、いわば基礎年金を導入してまず年金の一元化を図る、そして従来の年金等についてはいわば二階建て方式にする、こういう考え方を述べておることはもう大臣よく御存知のとおりだと思います。言ってみれば、今回のこの政府案にはこの考え方が盛り込まれておりますし、大筋においては私どもは非常に評価したい、このように思っております。ただ、内容的に幾多の疑問点なり問題点等がございますので、そういう問題について、一応評価しながらも御質問いたしたいと思います。  そこで、まず、今回の基礎年金を新たにつくるという考え方ですけれども、年金制度の再編、これはあくまでも一元化へのステップであって、決してあらゆる問題を解決する切り札ではないということは大臣も御承知だと思います。したがいまして、一元化する意味、目的というものをしっかり見詰めて構想を推し進めていかなければならない、このように考えておるわけでございます。  そこで、まず大臣にお伺いしたいと思いますが、公的年金制度は何といっても公平、公正が原則でなければならぬ。それだけに、厚生年金よりも年金支給開始年齢が早くて複数の年金の併給も許されるところの公務員の共済年金と、一般のサラリーマンの厚生年金とのいわば官民格差ですね、こういった不合理をやはり速やかに是正しなければ公的年金全体としての国民から見た信頼を失う、このように思うわけです。特に、基礎年金はあくまでも格差打開のきっかけでございまして、いわばその出発点でもあるわけです。そういう意味から、出発に当たって共済年金との一元化がタイムスケジュールの中におさめられていながらも、その具体的構想といいますか手順といいますかが、本会議の答弁でも、この委員会の答弁でも非常に漠然としていまして、どうもはっきりしない。したがいまして、この改革案の審議を進めるに当たっては、やはりこれが一つの前提条件としてもっと具体的なものが示されなければならない、私はこう考えておるわけでございますけれども、この点についての大臣の御所見を伺いたいと思います。
  256. 渡部恒三

    渡部国務大臣 今回の改革案をお願いし、その基盤が、先生御指摘の国民すべてに共通する基礎年金だということは——御案内のように今六・二人の人たちが一人の先輩を支えておりますが、人生五十年社会から八十年社会が待ったなしにやってまいりますから、いずれは三人の人が掛金を納めて一人の先輩を支えるというようなことになってまいります。そのときに、これは制度がばらばらでは大変なことになるので、国民全体が共通した制度で、そのときの高齢化社会に備えて、先輩の年金をしっかり、二十一世紀になっても何の不安もないものにしておかなければなりません。そういうことをまじめに考えますと、結局は考え方というものは同じになっていくので、私ども政府が出した改革案と、また沼川先生の党でいろいろ工夫なされた改革案が極めて共通するということは、私は非常に自信を持つというか、本気になって二十一世紀の高齢化社会年金を考えれば、落ちつくところはやはり共通するものだなという考えを持つことができました。  そこで、先生から今御指摘の共済年金のあり方については、昭和六十年に基礎年金の導入等の制度改正を行うと閣議で決定いたしました。この趣旨に沿って、現在所管各省で具体的な検討を進めておるところでございます。  昭和六十年以降の改革の手順については、共済年金も含めた基礎年金の導入が実現した段階において、その時点における制度全体の具体的な姿を見きわめた上で検討をさらにしなければなりません。  先生から言うと、何か手順をもっと具体的に詰めて明確にしておくべきでないかということでございますが、今まで長い歴史があり、またいろいろの利害も異なり、そういう制度があるわけですから、その中で私どもはできるだけ既得権というものを守ってあげなければならないし、期待権も尊重しなければならない。そういう考えに、これは共通しておるわけでございますから、今まで内容の違ったものを一つにしていくということは大変困難なのでありますが、幸いに老齢化社会、高齢化社会にしっかりした年金をつくらなければならないという幅広い国民的な合意、支持、支援の中で、とにかくそれらのものが一つになるということが決まったわけでありますから、これはやはり評価していただきたいと思います。その後の手順については、また今後詰めてまいりたいと思います。
  257. 沼川洋一

    沼川委員 今まで本会議、この委員会で聞いた答弁から一歩も前進していないわけでございますけれども、これをこれ以上論議してもしようがありません。ただ、あえて申し上げておきたいのは、全制度に共通の基礎年金をつくるということは、やはり制度間格差の解消の第一歩でございますから、その出発に当たって、民間側から見て最も不満の多いいわば官民格差という問題、また共済の対応が全然ないということは、どうなるんだろうかという不安があることは事実でございます。したがいまして、これはお答えいただこうとは思いませんが、その中で特にいつも問題になる、例えば高級官僚が天下りする、そして高い給料を取りながら高い年金をもらっておる、こういう問題をどうするのか。あるいは併給ができるという問題があります。こういった問題点だけでも、こういう問題についてはこういうふうに考えていますと、もっと具体的な問題として提起したっていいのじゃないか、こう思いますが、今ここで論議しようとは思いません。ほかにもたくさんありますが、やはり年金制度というのは公正、公平でなければなりませんし、もう一つ言えば国民から見て信頼できるものでなければならぬ。そういう観点に立つと、出発点で共済側の対応がない、そろわない、これはやはり不安な材料の一つじゃないかと思うがゆえにあえてお尋ねしたわけでございます。  それから、今の御答弁で、六十年には基礎年金を導入する、これは極めてはっきりしています。ただ、この前から答弁されておる中で、そして七十年を目途に公的年金制度全体の一本化を完了させる、そういうことですけれども、私に言わせれば、そんな緩慢な日程でいいんだろうかという感じを持つわけです。さっきから何回も言いますように、出発に当たってそろわない、しかもそろうのは七十年、この辺についてもひとつぜひ御一考いただきたい。これは御答弁は結構でございます。時間の都合で、次に進ませていただきたいと思います。  そこで、今回の一番骨子となっております基礎年金についてお伺いしたいと思いますけれども、この基礎年金の性格といいますか位置づけといいますか、これをどうとらえるかでいろいろな問題が全部違ってくると思うのです。  私ども公明党としては、憲法第二十五条で言うところの、すべての国民が老後において健康で文化的な最低生活を営む権利を保障するための、いわゆるナショナルミニマム的な位置づけをしておるわけです。言ってみれば、この基礎年金というのは最低生活の保障年金である、こう理解していますけれども、そのように受けとめていいでしょうか。この基礎年金の性格についてぜひお伺いしたいと思います。
  258. 吉原健二

    吉原政府委員 基礎年金の性格でございますけれども、私ども、各制度に共通した給付として基礎年金を設ける、その基礎年金の基本的な考え方は、やはり老後の生活の基礎的部分を保障するものでなければならない、そういうものでありたいという考え方に立っておりまして、具体的には現実の老齢者の方々の生活実態、生活費、そういったものを総合的に勘案をして、改革案で言う一人五万円という金額を考えたわけでございます。
  259. 沼川洋一

    沼川委員  何でもないようなことですけれども、ちょっとはっきり言っていただきたいと思うのです。今の御答弁では、何か老後の生活の基礎的部分をカバーするみたいな、そんな難しく考えないで、今私が聞きましたのは、これは全国民を対象とするわけでしょう。当然ナショナルミニマム的な、先ほどから憲法で言いましたような最低水準を維持する、そういうものかどうかと聞いているのですから、その辺についてはどうですか。
  260. 吉原健二

    吉原政府委員 そのナショナルミニマムという言葉が実はなかなかはっきりしませんで、あるいは人によって、考えておられる水準というものが具体的に違う場合があるわけでございます。  では、私ども、端的に言いまして、老後生活の基礎的部分を一体どういうことで五万円と考えたのか、もう少し具体的に申し上げますと、昭和五十四年の全国消費実態調査というのがございまして、そこでの六十五歳以上の単身者の消費支出を調べまして、その中から、教養娯楽費だとか交通費、保健衛生費といった雑費を除いた、いわば飲食といったものを中心にした消費支出がどのくらいあるかというのを当たってみますと、その昭和五十四年当時では四万六百八十五円であったわけでございます。それに五十五年以降の物価上昇なんかを掛け合わせますと大体四万七千六百円程度になる、そういったのを一つのめどにいたしまして、六十五歳の老人の方の雑費を除いた基礎的な生活費というのは現実に大体五万円ぐらいになっている、それをもとにしてこの基礎年金の額五万円というものを決めたわけでございます。  今おっしゃいましたナショナルミニマムかあるいは最低生活保障がということとの関連でございますが、端的に言いまして、最低生活を保障する水準として、生活保護の基準というものも当然頭に置いて御質問されていることと思いますけれども、生活保護基準と比べてどうかということでございますけれども、確かに年金の水準というものを生活保護との関連でどう考えるべきかというのは、実はいろいろ議論がございます。各国においてもばらばらなんでございますが……
  261. 沼川洋一

    沼川委員 その問題はまた聞きますから結構です。  基本的な考え方がもうちょっと私もすっきりせぬわけでございますが、今局長の方から、基礎年金の水準について、五十四年の全国消費実態調査から割り出して大体四万六千円あるいは四万七千六百円ですか、こういう線を基準として考えた、これが五万円年金の根拠ということでお答えいただいたと思います。  そこで、それに関連してちょっとお尋ねしたいと思うのです。現在、確かに老人の生計費あるいは生活保護費といったいろいろな問題等を体して御検討をされたと思いますが、例えば老人の生計費の場合、厚生省が毎年実施しておられる厚生行政基礎調査、私がデータを持っているのは五十七年五月のものですが、これによりますと、老人世帯ひとり者の生計費というのは大体八万円、老人世帯夫六十五歳妻六十歳以上の夫婦の場合の生計費が十四万八千円、こういうデータがございます。  それからさらに、経済企画庁が行った昭和五十四年の総理府の全国消費実態調査、これは御承知のように五年置きに行うわけですから、本年がちょうど調査年になっているはずです。今統計をやっていらっしゃるということで、五十四年のデータが一番新しいのでこれをあえて引かせていただきますが、これを基礎として、その後の消費者物価の上昇を考慮して、五十六年の就業者のいない老夫婦世帯、夫六十五歳以上、妻六十歳以上の夫婦のみの世帯の消費支出額を推計していらっしゃるわけですが、これが月額十五万円。いずれを見ましても、この基礎年金の五万円はこれらを下回っていますね。  それからさらに、今度は生活保護世帯との比較でございます。今、昭和五十八年度の老人二人、男七十二歳、女六十五歳の世帯の生活保護費と比較してみますと、一級地で十一万二千七百七十二円、二級地で十万四千七百五十八円、三級地で九万二千七百十八円となっております。昭和五十九年度時点では基礎年金はほぼ生活保護以下だ、こう言ったっていいのじゃないかと思います。特に生活保護の場合はこれは無拠出の公的扶助ですが、この基礎年金というのは厚生省の案では原則として二十五年以上の保険料納付を伴わなければならない、こういうものですから、これは生活保護と同様の水準あるいはそれ以下であるというのは極めてこの水準自体が低いのじゃないか、こういう感じを持つわけですが、いかがでしょう。
  262. 吉原健二

    吉原政府委員 最初に、厚生行政基礎調査を初め、いろいろな調査の数字等を比較をされたわけでございますが、私ども先ほど申し上げましたように、この基礎年金でもって老後の生活費が大体全部が賄えるようにするのは無理であるし、あるいは考え方としても実は最初からそういう考え方をとっておりませんで、あくまでも老後の生活の基礎的な部分。ですから、八万とか十五万とかお話しがございましたけれども、それは全生活費でございますね。教養娯楽費とか、いろいろな雑費を含めた全支出額がそうなのでございますが、あくまでも食費だとか被服費だとか、いわば食費を中心にした基礎的な部分をこの基礎年金で保障するという考え方に立っているわけでございまして、そういったことから、いろいろな調査をもとにして雑費等を差し引きますと、大体五万円程度の水準になるというのが一つのめどでございます。  それから、もう一つは生活保護との関連でございますが、確かに生活保護基準、これも級地によってかなり違いがございますし、夫婦の年齢構成等によって違いますし、住宅事情その他の扶助もつけ加えるかどうかによって違うわけでございますが、二級地の老人夫婦、これも六十五歳か七十歳かで少し生活保護基準自体が違いがあるわけでございますけれども、大体六十五歳以上の方の夫婦世帯の半額というものを見てみますと、四万円ないし五万円をちょっと出る程度という基準になっているわけでございます。すべての場合に生活保護よりも必ずしも低いとは限らない、大体五万円前後で、生活扶助基準もそういうふうになっているというふうに思うわけでございます。  それから、もともと考え方といたしまして、生活保護というのは、あらゆる財産も全部活用する、財産もゼロ、資産もゼロ、貯蓄もゼロという場合に一体どのくらい最低生活費として、生活保護として給付をするか、そういう水準でございまして、年金というのはそうじゃなしに、やはり老後の生活のために、個人としてある程度の貯蓄なり資産というものは通常の場合持っておられますから、全然生活保護の場合の基準とストレートに比較して、それより年金の場合、もちろん高ければ望ましいということは言えますけれども、それより高くないと年金としては意味がないのだというふうには考えておりませんで、諸外国でも、大体そういったものをにらみ合いながら、生活保護あるいはそれより低い年金の水準もあるわけでございます。  それから、サラリーマンの場合には基礎年金だけじゃございませんで、上の報酬比例部分も合わせた総体の金額として考えるべきだということで、基礎年金としては五万円でどうだろうか、適切なのじゃないかという判断になったわけでございます。
  263. 沼川洋一

    沼川委員 確かにこの基礎年金を論議する場合に、今度の改革案の趣旨でございます、将来にわたっていわば年金給付を抑える、切り下げる、また今度は負担の面においてもいろいろと配慮されておりますが、そういう財政上の配慮も大事ですけれども、この論議とまた別に、この水準でいいのかということについては、ちょっと今局長から答弁いただきましたけれども、私、いささかどうもひっかかるわけですね。だから、冒頭に余りちょっと褒め過ぎたかなと思って今反省しておるわけですが、基礎年金の導入については我が党の政策に合致するものであり、大筋において云々と言ったのは、ちょっと評価し過ぎたのじゃないかなと思う。どうも、その辺の基礎年金そのものに対するとらえ方というのに、何かもう一歩はっきりしないものを感ずるわけです。確かに一方の生活保護費は全額国庫、片一方は拠出する、そしてもらうという年金にしては、それ以下あるいはそれと同じぐらいの水準というのは、どうしてもちょっとひっかかるわけですが、要するに五万円あげます、あとは貯蓄したり何かほかのことで頑張ってくださいという年金であって、最低保障が約束される年金じゃないようなお話を聞いていますと、一番最初の私の発言は、もうちょっと考えようかなと実は心配するわけです。  あえて今御答弁いただきましたが、今度はこういう場合があるのですね。個人で五万円、夫婦で十万円、これは非常にわかりやすいですけれども、例えば生活保護なんか見ましても、その考え方ですが、単身老人の生活保護費七十歳男の場合、五十八年度と比較しますと、一級地が八万一千百十四円、二級地が七万五千九百四十一円、三級地が六万六千七百六十二円に対して、基礎年金ははるかに及ばないわけですが、実際に夫婦の場合と単身者の場合は、生活保護においても単身の場合が手厚くなっていますね。その比率を見ますと、単身と夫婦の場合は二対三なんです。その辺に配慮がございます。そういう点から考えますと、この基礎年金一人で五万円、夫婦で十万円は非常にわかりやすいですけれども、ほかのそういう生活保護あるいは生計費あたりの考え方から割り出していきますと、負担については、要するに加入は個人単位であっても、その給付についてはその辺の配慮がもうちょっとあったっていいような気がしますけれども、こういう考え方はいかがでしょう。
  264. 吉原健二

    吉原政府委員 確かに一つの考え方といいますか、御意見であったわけでございます。年金というものを、保険料にしても給付にしても全く純粋に個人単位で考えるか、あるいは世帯単位、特に老後の生活というのは夫婦二人で原則として営まれる、二人世帯になるわけですから、二人世帯という世帯単位で考えるかというのは、今度の改革案をつくるときにも一番最初の大きな検討課題であったわけでございますが、結論として、単純に、純粋に個人単位に徹するということで、単身五万、夫婦で十万ということに割り切ったわけでございます。  これは実は両方の意見がございまして、単身で割り切る方がいいという意見と、おっしゃったように若干、世帯で見た方がいいという意見と両方があるわけでございますが、一つは国民年金をつくるときにその問題があったわけでございますが、年金の考え方としては、基本的に個人単位でいくべきだ、所得のない女性の方にも年金をということになりますと、個人単位でいくべきだというところから出発をいたしまして、現在の国民年金が全く個人単位に、二人の場合には倍の給付という形になっておりますので、いわばそれを最終的に踏襲をしたわけでございます。  実際問題として、単身と夫婦の場合に単純な二倍じゃなしに、五割増しにするとか六割増しにするという案も考えないわけではなかったのですが、ある意味で、そういったことにすることの問題点というのが逆に出てくる面もないわけじゃないのでございます。そういったことで、最後は割り切りでございますけれども、全く純粋の個人単位で基礎年金は考えたということでございます。
  265. 沼川洋一

    沼川委員 時間がございませんので次に進みたいと思いますが、保険料負担の増大と、無年金者の救済ということでちょっとお尋ねしたいと思うのです。  私たちは、保険料は負担可能な水準でなければならぬ、このように考えておるわけですが、特にその中でも心配をされるのが国民年金でございます。現在五十九年度で月額六千二百二十円の定額負担、改正案では六十一年度から六千八百円になって、それが将来にわたって大体一万九千五百円までいくわけですが、それは抑えて一万三千円、こういうことになっておるわけです。  現在、保険料の免除制度というのがございますけれども、いろいろと動向を調べてみますと、昭和五十年度末には八%であったのが五十七年度末で一五%。大体八%、百五十万人だったと記憶しておりますが、それが五十七年度には一五%の二百八十四万人、言ってみれば七年間で倍くらいこの免除制度を受けている方がふえているわけですね。ですから、幾らか抑えたというものの、やはり年々その負担は上がっていくわけですから、そういう流れの中で考えますと、今後もこの無年金者というのは、またこういった免除を受ける人たちというのはどんどんふえ続けるんじゃないか、こういう面で心配がございます。せっかく国民全部につくった基礎年金が、その保険料負担のためにそういう方が出てくるということだと、これは非常に問題だと思いますが、年間ベースで五十万、六十万人もふえているということでありますし、大体数字を見ていきますと、今まで以上にふえ続けるんじゃないか、こういう面でちょっと心配がございます。  そこで、一つはこの免除制度の問題です。法定免除と申請免除があるわけですけれども、法定免除の場合には、その条件に該当したときから免除されるわけですから、手続がおくれてもさかのぼって免除措置がとられる。申請の場合にはそうじゃなくて、市町村役場に免除の申請をしたときから適用されるわけでして、原則としてこれは各年度ごとに申請しなければならぬ。ちょっとこういった手続ができなくて無年金になっている人が相当多いのではないかと思いますが、その辺いかがでしょうか。
  266. 朝本信明

    ○朝本政府委員 免除者数の数字はおおむね先生のおっしゃったとおりでございまして、最新の数字では二百八十四万人、一五%。それで、市町村で免除手続が複雑なためにというか、(沼川委員「毎年申請するわけでしょう」と呼ぶ)毎年申請をするわけですけれども、免除そのものが被保険者の利益になるとは必ずしも限りませんので、その点はよく内容を御説明申し上げて、できるだけ免除を受けないように、それから免除を受けた場合でも、十年間の追納制度もございますので、それを活用していただくようにいたしておるところでございます。
  267. 沼川洋一

    沼川委員 お答えがちょっとはっきりしませんけれども、こういった申請制度によっても無年金者を出す。要するに、せっかく基礎年金をつくるんだからそういう人がいなくなるというのが方向でなければならぬと思うわけですが、そういう面についてもぜひ今後ともチェックしていっていただきたいと思うのです。  さらに、現行法では、その免除制度を受けておる方の場合は、今おっしゃった保険料の追納ができるわけですね。しかも、その当時の保険料で十年間だけはさかのぼって追納ができる、こうなっていました。ところが、今回の改正案ではその辺がちょっと変わっていまして、追納する額が「政令で定める額」とする、こう変わっておるわけですが、この「政令で定める額」というのはどういう額でしょうか。
  268. 吉原健二

    吉原政府委員 保険料を免除された期間から追納されるまでの、大体利子相当額程度を限度に考えております。
  269. 沼川洋一

    沼川委員 利子相当額ですか。ということは、そんなに高いあれじゃないというふうに考えていいのでしょうか。
  270. 吉原健二

    吉原政府委員 そう無理がない、また御納得のいただける金額ではないかと思います。ちなみに保険料そのもので言いますと、現在六千二百二十円でございますが、五年前は三千七百七十円、四十九年ごろは九百円というような実態でございますので、例えば十年後に追納していただく場合には、今の保険料というのはもうそれは少し無理だと思いますが、せめて当時の保険料に利子相当分くらいを加えた程度をお払いいただく、これは御理解いただけるのではないかという考え方を持っております。
  271. 沼川洋一

    沼川委員 その程度ならやむを得ぬのじゃないかという感じが私もいたします。ただ、保険料の免除制度というのは、無年金者にならないための安全弁として今後とも大いにこれは活用していかなければなりませんし、やはり資格期間を取るために非常に必要だと思います。だから、私がちょっと心配したのは、政令で定めるというから、現時点の物価とかそういうもので相当高くなるんじゃないか、そういうふうになるんだったらかえって無年金者はなくならない、そういう面でちょっと心配があったものですからお尋ねしたわけですが、まあ利息程度なら一応納得がいきます。  さらに御質問したいと思いますが、要するに免除期間は資格期間になるわけですが、免除を受けた期間の年金額というのは、改正された後も保険料納入期間のいわば三分の一に減額されるわけですね。ですから、例えば四十年間免除を受けていたとしますと、この方の金額というのは五万円から減額されて大体一万七千円ぐらいになると思いますけれども、せっかくこういった免除制度を設けてありながら、三分の一に減額というのはちょっと厳しいような気がします。少なくとも二分の一ぐらいが妥当じゃないかと思うのですが、いかがでしょう。
  272. 吉原健二

    吉原政府委員 免除されますと、いわば国庫負担当分の給付を出すということで実は三分の一の年金額にしているわけでございますけれども、確かに全期間四十年ずっと免除ですと五万円の三分の一、一万七千円程度になるわけでございますから、理論的にはおっしゃるとおりでございますけれども、実際問題として四十年間ずっと生活保護で免除ということは考えられませんし、実際に私どもが免除されている人の免除の期間というのを調べてみましても、そんなに長いことはないわけでございます。五年も十年もずっと免除ということは実際ありませんし、いわんや二十歳から六十歳まで四十年間も免除ということはないということで、現実に五万円が一万七千円になってしまう、そういう受給者が出てくるということはまず考えられない。大体一五%が免除の割合でございますけれども、実際に年金を受ける方の免除された人の率といいますか、それはほんの一、二%といいますか数%の中にとどまっているという実績がございます。
  273. 沼川洋一

    沼川委員 いずれにしましても、無年金者を切り捨てたままで基礎年金の実施をするということは、ちょっとどうかと私も思いますし、特に国民年金法の第一条の趣旨からしましても、全国民を対象とした基礎年金をつくるんだったら、無年金者がなくなるという方向は目指さなければならぬと思いましたので、あえてお尋ねしたわけです。  次に、基礎年金の財源の調達についてお尋ねしたいと思います。  先ほどから言いますように、基礎年金は全国民を対象としておるわけですから、普通の社会保障とはちょっと違うんじゃないか、そういう感じを持ちます。先ほどちょっと論議がかみ合わなかったのですが、私に言わせればミニマムを保障するものなので、社会保険方式をとっていらっしゃいますけれども、もともとこれになじまない性格のものじゃないか、どっちかというとむしろ目的税的な考え方の方がぴったりのものじゃないか、こういうふうに実は思うわけです。要するに定額拠出、定額給付の社会保険方式によるということ、いわばこういった財源調達方法というのは、貧困者の拠出能力によって基礎年金の水準が制約されるために、老後の最低保障という目的を有効に達することができない、そういう一つの欠陥があるのじゃないかと思うのです。ですからこういう定額拠出、定額給付という形、要するに社会保険方式をとること自体の根底には、どうも受益者負担的な考え方があるんじゃないか。そういう考え方があるとすれば、やはりこの基礎年金の今後の負担等においてもいろいろと問題が出てくるのは当然である。ですから、無年金者というのは私はなくならないんじゃないか、そういう考え方を持ちますが、いかがでしょう。
  274. 吉原健二

    吉原政府委員 基礎年金部分を社会保険方式で考えるか、あるいはおっしゃいましたような税方式で考えるか、これも大変大きな問題でございますけれども、審議会等の結論もそうだったわけでございますが、やはり我が国年金制度、従来から社会保険方式で発足をし、もう既に数十年という歴史をそれぞれ持っておりますので、これをもうやめてしまって、基礎的な部分だけにせよ全額税方式にして入れることがいいのかどうか、またその部分を全額税方式にした場合に、五兆円あるいは六兆円という基礎年金の給付費を一体どういう税で賄ったらいいのかということがございますし、今までの制度で保険料を営々として十年、二十年、三十年と払ってきた方と、それから全く払ってこなかった方を同じ扱いにしていいかどうか、現行制度からの接続の問題、そういった公平感、不公平の問題、そういったものをいろいろ考えますと、やはりこれからも年金制度のあり方としては、基本は社会保険方式によるべきである。それから現行制度からのつながり、それから現行制度で保険料を納めた人の権利といいますか、期待権といいますか、そういうものは十分尊重しなくてはいかぬ、そういったいろいろなことを考えまして、受益者負担というよりか、むしろそういう観点から保険料の負担と給付と両方にかかわりを持つ社会保険の仕方、方式がやはり今後とも望ましいのではないか、こういうことで今回のような方式にさしていただいたわけでございます。
  275. 沼川洋一

    沼川委員 どうも、こういう論議をすると、さっきから問題になっています基礎年金のとらえ方がしっかりしてないと、考え方が全然違ってきますし、どうもその辺が、私は、基礎年金というのは最低生活保障型としてとらえるならば、やはりその費用負担に当たっては支払い能力というのが当然重視されなければならぬ。そういう観点に立ちますと、これは今まで確かに社会保険方式をずっととってきた、それを継続した方がいいという考え方はそれなりにわかります。しかし、支払い能力というのをやはりどうしても考慮に入れるということを前提にしますと、社会保険方式はなじまないと思うのです。どうしたって定額保険料というのは、これはやはり明らかに望ましくないと思うわけです。  そこで、先般、我が党の大橋議員が、いわば定額負担分と所得比例分の折衷案、これを提言しましたけれども、確かに審議会等でもこの問題については随分いろんな御議論があったことも承知しております。例えば所得比例型の保険料だけでいこうという考え方、あるいは税移転方式、言ってみれば税移転方式というのが一番何か説得力があるような気もしますけれども、これもまた、今局長がおっしゃった今までの経緯から見ても、いろんな面で大変だろうと思います。三番目に、今申し上げたいわば定額と所得比例の折衷型、こういうふうに並べていきますと、基礎年金をつくったそういう考え方からいきますと、折衷型というのをやはり本気になって検討する。これは今後の負担能力というのを維持させていくためにも、こういう型の財源の調達方法、こういう考え方というものはやはりぜひひとつ検討していただきたいと思うわけです。  そこで、今言いました折衷型ですけれども、これになりますと、定額部分に所得比例、これは今までそういう前例がなかったか考えてみますと、前例は幾らでもあるのですよ。例えば地方住民税を見ていきますと、均等割と所得割がちゃんとあるわけですよ。そういう形で非常に矛盾のない、合理的な徴収がなされております。ですから、今私が言いたい折衷型というのは、何もいわば革命的な財源調達の方法じゃなくて、そういう例えば地方住民税あたりを参考にして、それをそのまま持ってくればこれは一番納得のいくやり方じゃないか、そういう感じを持つわけでございます。  特に、この先生はたしか審議会のメンバーだと思いましたけれども、大阪大学経済学部の藤田晴教授、この先生もおっしゃっておったことですけれども、一つには、国民年金を基礎年金に変身させようとする場合に、非常にこのやり方は適合している、こうおっしゃっております。また、国民年金の保険料引き上げがこれから次第に難しくなりつつある中で、その解決策と言える、こうもおっしゃっております。そういった中から見ますと、厚生省年金改革案で提示されています保険料方式よりも、折衷方式の方が一層大きな魅力を持つやり方ではないか、こういうふうな御指摘があるわけです。  私は今三つ例を引きましたけれども、その中で、今後のことを考えていく場合に、やはり折衷方式というやり方、先ほどから具体的な一つの事例として地方住民税の例を引いて申し上げました。均等割と所得割、立派に成り立っています。そういう前例があるわけですから、ぜひひとつこの考え方に立って御検討をいただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  276. 吉原健二

    吉原政府委員 基礎年金の負担、それから給付に所得比例の考え方を入れる、これは私、これから本当に真剣に検討すべき課題の一つだと思うのですが、ただ、所得比例を入れるにしましても、二つ考え方があるわけでございまして、基礎年金部分は定額負担、定額給付にしたままで、二階建ての部分として所得比例の負担と給付を入れるやり方と、それから、恐らく今先生が御質問されておりますのは、定額給付のままで、何か定額保険料じゃなしに、所得に応じて保険料を段階をつけたらどうだ、所得割の高い方からは所得の高い保険料を取ればいいではないか、そういう御質問だと思うのですが、二つ考え方があるのです。ただ、給付は定額で、保険料だけを所得比例にするというのは、なかなか考え方としては一つの立派な考え方だと私は思います。所得の再配分という効果も出てくるだろうと思いますし、考え方としてはいいのですが、果たして国民的な国民年金に対する支持が得られるか。あの五万円の給付で、例えば所得のある人から物すごく取って、一方、免除の人にも相当手厚い給付をするというのが、国民的なコンセンスといいますか、国民年金、それではそういうことでわかったということに果たしてなるかどうかといいますと、やはり一抹の不安が率直に言ってございます。  それから、もう一つは地方税、税金ですね。税金をもとにして、何か所得に応じた保険料を取ったらどうだというお考えでございますが……(沼川委員「いやいや、それは違うのです。そういうやり方を、現にあるじゃないかと言うのです」と呼ぶ)はい、わかりました。国民年金、あるいは年金制度独自で所得の把握というのはなかなか難しいだろう。そうしますと、どうしても税にある程度乗っかるということを、もし強いて今入れるとすれば考えざるを得ないと思いますが、その税というのが地方税なら、この地方というのは、同じ均等割、資産割、所得割といいましても、かなり実はまちまちでございます。大きなところと小さな山村、全くまちまちでございますので、それに乗っかるわけにいかない。所得税すら地方によっていろいろなアンバランスがある、所得の把握にもあるということになりますと、今すぐそういった税金と同じようなやり方はなかなか難しい。クロヨンの問題もございますし、この問題は、税の把握の方法、それから所得の把握の方法が的確にできる段階でひとつ検討させていただきたい、そういうふうに思っております。
  277. 沼川洋一

    沼川委員  確かに税の把握が難しいという問題はあるでしょう。ところが、現にトーゴーサンとかクロヨンとか言いながら、ちゃんと課税して税金を取っているでしょう。その辺の考え方に立てば、やる気があればこれはできることなんですよ。決して難しいことではありません。しかも私が言っているのは、先ほど地方住民税の例を引きましたのは、なるべく定額部分については低く抑える、そしてそれに所得比例というのを考える。ですから、地方住民税の場合の例を引きますと、均等割というのが定額部分に当たるわけでしょう。所得割というのは所得比例に当たるわけですが、こういう一つの見本があるわけですから、やはりぜひこういう考え方に立って考える必要があるんじゃないか。これはぜひ検討するだけの価値がある問題じゃないかと思いますよ。ですから、簡単にトーゴーサンとかクロヨンとか、あれで所得の把握ができないと言われるのは、脱税とかなんとかそういう問題は別にしても、それと全然違った考え方で現に税金を取っていらっしゃるわけですから、それを理由にしてできないというのは私はおかしいんじゃないかと思います。  それと、どうしてもこういう論議をしていく中にやはりひっかかってくるのが基礎年金のとらえ方の違いですね。どうしてもやはりずれがございます。私に言わせれば、基礎年金政策でいろいろと決めるよりか、むしろ法律でうたうべき問題ではないかと思うのです。例えば、憲法二十五条の精神にのっとって、国民は最低生活水準である基礎年金を受ける権利を有し、国はその義務を負う、むしろそういう位置づけをすべき性質のものじゃないかと私は思うのです。これが我が公明党で言うところの国民基本年金の考え方なんですよ。ですから、さっきから言いますように、しょっぱなに大臣をちょっと褒め過ぎて私もがっかりしておるわけですが、何か表の格好だけは似ているけれども、中身をこうして論議していきますとどうもその辺が何かはっきりしていない。その辺の考え方によって、きょう論議する問題すべて考え方が違ってくると思いますよ。時間がございませんので、ぜひひとつその問題は検討していただきたいと思います。  あえて言いますと、例えば義務教育費、それに当たるものじゃないかと私は思うのです。義務教育をだれが受益者負担という論議をしますか。当然義務教育を受ける権利を有し、その義務を負う、こうなっています。ですから、そういうような考えで基礎年金については取り組んでもらいたい、考えてもらいたい、こう思うわけでございます。時間がございませんので、ちょっと先に進ませていただきます。  そこで、これもこの前我が党の大橋議員が問題にしたのでございますけれども、老齢福祉年金の引き上げ、ここで論議いたしました。そのときに、局長の答弁が非常に冷たかったんでよく覚えているわけですが、結局障害福祉年金とか母子福祉年金が引き上げられた中で、老齢福祉年金だけが全然手がつけられていない、どうするのかという大橋議員の質問に対して、局長が、要するにこの老齢福祉年金というのは、拠出してもらうというそういう考え方に立ては無理じゃないか、拠出してもらうという、そういう考え方をあえて反論に使われました。  もう一つは、最近三百万近くなっている、これは全額国庫負担である、財政上の理由で無理だ、そういう御答弁でした。ところが、実際を御存じかと思いますが、三百万近くとおっしゃいましたけれども、局長、五十九年度で二百二十二万人ですよ。しっかり数字を把握して認識しておってください。これは三百万というそういう御答弁でしたけれども、五十八年度の場合が二百四十二万、これはもう実施されておるあれですけれども、五十九年度は予算の上の数字です。二百二十三万人です。しかもずっとこの推移を見ていきますと、毎年平均して二十万から二十五万人ずつ減少しています。特に五十三年度からずっと見ますと、この六年間で百三十六万人減少しているんです。この流れでいきますと、八十五年には恐らくゼロになるんじゃないか、こういうふうに言われております。こういう人たちがどういう人たちであるかということは大臣もよく御承知と思いますが、決してサボって拠出をしなかった人たちじゃないんです。あの当時高齢で資格がなかった、いわば例外として考えなければならぬ方々です。しかもこういう方々は、いろいろな意味で、戦前から戦後にかけて日本におけるいわば功労者です。戦後は耐乏生活に耐えてこの日本の再建に努力してこられた方々だし、あるいは戦争で苦労なさった方々だし。ですから、そういう方々の年金を上げない理由に、拠出をしてないとかそういう理由はちょっと成り立たぬのじゃないかと思いますよ。いかがでしょう。
  278. 吉原健二

    吉原政府委員 失礼をいたしました。  福祉年金の受給者全体と間違えまして、前回の場合に数を間違えましたが、五十八年度は二百四十二万、五十九年度は二百二十三万という数字でございます。おわびをして訂正をさしていただきます。  老齢福祉年金につきましても、従来とも物価スライドはやってきておりますし、これからも基礎年金、これもスライドをして改善をしていくことにしておりますけれども、この老齢福祉年金につきましても、やはり考え方としてはできるだけ今後とも改善を図っていきたいという気持ちは持っております。ただ、実際問題としてなかなか難しいかなという感じは率直に言って持っているわけでございます。
  279. 沼川洋一

    沼川委員 配慮はしなければならぬという気持ちはあるようですけれども、これも参考までに、やはり制度審議会にいらっしゃった先生の御意見として藤田先生の御意見ですが、結局「年金制度における異なるコーホート」、いわば人口集団ですね、言ってみれば今私が言います。そういう方に当たると思うのです。この「取扱いが公平かどうかを判断しようとする場合には、保険料拠出額と年金受給額との関係だけに注意を奪われてはならない。現在の老齢年金受給者たちは、活動年齢時に父母の私的扶養のため重い費用を負担している。また、彼らは戦後日本の再建のためきびしい耐乏生活を強いられており、今日の日本の繁栄は彼らの寄与に負うところが大きい。これらの点を無視して、年金制度への拠出がとぼしいから低額年金に」甘んじろとか増額できないとか、そういう論議は成り立たない、こういう指摘があります。したがいまして、ほかの母子福祉年金とかは人数が非常に少ないです。恐らく少ないのだけを対象にして、どうも財政面だけ計算して、こういう一番大事なこの問題が論議されないということは、これは年金問題の柱です、この老齢福祉年金というのは。かつての年金の引き上げの際もいつもこれが中心になって論議されて、今日の年金の改善がなされてきました。これに全然手を触れないということは、これは言ってみれば柱がないようなものですよ。     〔愛知委員長代理退席、委員長着席〕  これは大臣、一言お聞きしておきたいと思いますが、大臣はよく戦前戦後についておわかりと思います。また、こういった方々がいかに苦労されたかよく御承知と思います。一方では軍恩あるいは援護、そういう面で国の義務として当然だという論議がございます。この人たちもそれに該当する人なんです。ですから、改革に当たってこれに手を触れられないということは片手落ちだし、この前大臣は勉強したいとおっしゃいましたけれども、これはもう勉強する必要はありません。どういう内容が、はっきりしています。これは決断の問題なんです。一言大臣の御見解を伺いたいと思います。
  280. 渡部恒三

    渡部国務大臣 まさに先生おっしゃるように、今福祉年金を受けておられる方、この国の一番苦しい時代に汗を流した先輩の方であり、またこの年金を一番喜んで純粋に受け取ってくださって、有効に使ってくださっている方もこの方でございます。私も、これは先生と同じような気持ちで、上げられるものなら上げたいと思っておるのでございますが、いかんせん現在の財政事情、先生も御案内のように、現在の福祉水準を維持することに精いっぱいの予算の確保を今お願いしているような状態で、財政上そこまでまだ手が回らない状態にあるということも御理解賜りたいと思います。
  281. 沼川洋一

    沼川委員 これは決して一気に上げるとは言いませんし、基礎年金と同じ額にせよと言っておるわけでもないわけです。これは一つの私どもの試案として、二十一世紀まで、昭和七十五年、二〇〇〇年を一つの目標として、あと十六年あるわけですから、年に千円として計算しますと、現時点の五十九年の額が二万五千六百円でございますので、十六掛ける千プラスの二万五千六百円、大体四万一千六百円程度になるわけです。年に千円ですよ。大臣、少なくともそれぐらいの夢を与えてあげたっていいのじゃないですか。いかがでしょうか。
  282. 渡部恒三

    渡部国務大臣 気持ちの上では、本当に先生と同じ、同じよりも私の方が上げたいと思う気持ちなのでございます。ここで、そういうふうに持っていきたいと、のどまで出かかっておるのでございますが、現在の厳しい予算、財政の状態で、先生から、渡部厚生大臣立派だとお褒めをいただくような歯切れのいい御返事がここでできない、今日の厳しい財政状態を大変残念に思うのでありますが、そういう厳しい状態の中で、現在の社会保障の水準を落とさないで、これを引き上げていくところまで財政が回っていくかどうか、私はできる限り努力をしてまいりたいと思います。
  283. 沼川洋一

    沼川委員 これ以上論議しても、時間がございませんので、一言だけ。  ひとつ大臣、参考までに聞いてください。恐らくもう御存じだと思いますが、かつてのイギリスの宰相ロイド・ジョージという人が、世界に先駆けて養老年金制度をつくったわけです。その財源を得るために国会で演説した内容が、非常に有名な内容ですが、どういう演説をしているかといいますと、長い間働いてきた老人こそ国家にとっての功労者である、貧しい老人に年金を与えることは国家の義務である、ここから始まっておる演説です。ですから、この問題は、財政面だけとか、あるいは拠出している、していないとか、そういう問題と全然違った時点でとらえるべき問題であって、本気になって何とかしなければならぬ、当然これは国の義務である、そういうとらえ方に立つならば、できぬことはないと思うのです。しかも、先ほど提案しましたように、年間千円ずつ上げていくわけでしょう。そして、七十五年を目途に五万円の基礎年金よりかやや低い程度ぐらいはいかがでしょうかという提案ですから、大臣よくおわかりになっておりますし、もう半分以上はやりたいと御答弁になりたいような気持ちじゃないかと思いますよ。その辺の気持ちはわかりますけれども、ぜひひとつ答えを出していただきたい、ぜひ御検討いただきたいと思います。せっかくの改正案が、これが生きてこなければ意味がないという意味でお尋ねしたわけです。  時間がなくなりましたので、最後に一つだけ。今回の改正案で婦人の年金権を確立したということが非常に評価されていますし、私も評価したいと思います。その中で、問題はサラリーマンの奥さん、任意だった方が今度は強制になるわけです。そうなった場合に保険料は御主人が払う。ですから、相変わらず御主人の傘の中に入っておるということになるわけですね。せっかく婦人の個人の年金権が確立されたというけれども、実際は夫の傘の中にいる。そういう面で、特に御婦人の団体から、これじゃ本当の婦人の年金権の確立にはならない、こういう指摘がございます。  それからもう一つ、こういうケースがあります。やはりサラリーマンの奥さんの場合で、健康保険の場合もそうですが、パートで九十万以上の収入があると、健保扶養家族にならぬわけですね。それと同じ考え方が年金の場合も適用されております。九十万以上の収入があると個人で入らなきゃならぬ。現在、国民年金の妻の場合はもちろん個人で入っています。それから、今のパートの場合とサラリーマンの奥さんの場合は御主人が払う。非常にばらばらです。そういう問題もありますが、最後に一つ、その問題について伺います。
  284. 吉原健二

    吉原政府委員 サラリーマンの奥様も含めまして、御婦人の方を今度は強制加入といいますか、全員適用ということにしているわけでございますが、そのときの保険料の納め方といいますか}払い方をどうするか。確かに今までは、奥様が任意加入された場合に、自分が自分の収入から保険料を払っていただいているわけですが、今度任意加入じゃなしに全員に当然入っていただくという制度にした場合には、そういうやり方がいいのか、それも検討いたしましたけれども、やはり家庭にいる奥さんについては、自分自身の収入というのは持っておられないわけですから、御主人の給与の中からいわば自動的に保険料が払われているという仕組みの方が、将来払い忘れたということもございませんし、保険料を納めていただく現実的な方法としては望ましいのじゃないかということで、お考えはよくわかりますけれども、無業のサラリーマンの家庭の妻についてはそういう仕組みにさせていただいたわけでございます。  それから、実際に女の方自身が働いておられるときには自分の給与から取られる。それから、パートで一定の収入がある方については従来どおり自分の収入から払っていただく、こういうことにしたわけでございます。一番現実的なやり方じゃないかというのが私どものいわば結論的な考え方でございます。
  285. 沼川洋一

    沼川委員 時間が参りましたので、以上で終わります。
  286. 有馬元治

  287. 塩田晋

    塩田委員 国民年金法等の一部を改正する法律案につきまして、渡部厚生大臣吉原年金局長、関係の課長、また大蔵省の関係の課長に質問いたします。  この世に生をうけて生きております人間というものは、時日の経過とともに、好むと好まざるとにかかわらず、必然的によわいをとるわけでございます。人生航路の途中で不幸にして亡くなられる方を除きまして、必ず人間は老齢化いたします。近年における寿命の急速な延びによって、高齢者がふえ、老後の生活についての人々の期待と、また片や大きな不安が高まってくるとともに、年金制度に対する国民の関心は極めて大きいものがございます。  年金は、国民が安心して老後生活を営んでいく上で最も重要な柱でありますので、厚生大臣よく言われますように、二十一世紀におきましても、健全で安定した揺るぎない制度にすることが必要であると思います。国民に対しまして、今回提出されております法の改正がそれにこたえるものであるということがよく理解できるように、御説明をいただきたいのでございます。  いただいております提案されましたこの法案、法律の文章だけで実に四百ページある、こういう大部なものでございます。大臣、この大部な法案のうち、国民の皆さんに最もお訴えをしたいと思われます今回の改正の大きな柱三本につきまして、国民の皆さんにわかりやすく御説明をいただくつもりで御答弁をお願いいたします。
  288. 渡部恒三

    渡部国務大臣 先生御案内のように、今戦後四十年になろうとしておりますけれども、我が国の平均寿命は五十歳から八十歳へとまさに三十年平均寿命が延びようとしております。一方、私が先般人口白書を発表させていただきましたが、日本人の出生率は一・七七というふうに残念ながら減っております。こういうことになってまいりますから、今六・二人の人たちが一人の先輩を支えておりますが、いずれ二十一世紀になってまいりますと、将来三人の人が一人の先輩を支える。もっと端的に申し上げれば、現在六人の人が掛金を納めて一人の先輩を支えておるわけですが、いずれは三人の人が掛金を納めて一人の方が年金をもらう。しかもこれから十年間我が国の医療政策は急速に進んでまいりますから、平均寿命は八十五歳ぐらいになっていくということになりますと、年金を受給する人がふえ、掛金を納める人が少なくなり、またその受給する期間は長くなってまいるのでございます。したがって、年金制度を今の制度のままにしておくならば、将来、残念ながら制度はあってもその機能を発揮することができないようになってしまいます。  今先生御指摘のように、まさに年金こそ国民生活のよりどころでございます。国民生活の安定のために何よりも重要な問題でございます。そこで、私どもは、今回、今までいろいろの制度がございますけれども、五つも六つもに分かれているよりは、やはり国民全体が先輩を支えるということでなければ、将来のそういう時代では年金制度が有機的に機能を発揮することができませんので、先輩を国民全体の力で支えていくという考え方に立って、基礎年金制度を採用いたしまして、さらに、現在大きな国民的な課題である官民格差を解消する方向に向かい、また、婦人の権利の確立というのが民主主義社会の大きなテーマになっておりますけれども、婦人の年金権を確立して、二十一世紀の将来、どのような高齢化社会が訪れてきても我が国年金制度は揺るぎないものである。しかも、やはり我々の社会経済によって豊かな生活が保障されるのでありますから、経済が常に活力のあるもの、働く人たちが常に汗を流していくことに生きがいを感ずるもの、何か働かない方がおれはかえって得なんだというようなことに福祉制度がなったのでは、社会保障制度の本来の意味を失することになりますから、二十一世紀の高齢化社会になっても、若い人たちが働くことに生きがいを失わないような活力を持続しながら、また国民の皆さん方の負担が余りにも過大にならないようにして、しかも年金制度というものを国民全体が支えていく、こういう考え方に立って、私は、この年金の改革案を先生方に御審議賜っておるのでございます。
  289. 塩田晋

    塩田委員 ただいま渡部大臣から、極めて簡潔にわかりやすく御説明をいただいたわけでございます。やはり第一は、制度、体系の再編成ということであって、国民共通の基礎年金給付を導入するということが柱であり、また第二点といたしましては、給付水準を適正化して、そのためには、現在問題になっておる年金についての官民格差を縮小し、なくしていくという方向、そして第三点は、婦人の年金権の確立という点であり、また、将来の社会がいわゆる停滞した福祉社会でなくして活力ある福祉社会になるように、経済活動も活性化している中でこれらが福祉を支えていくというものでなければならぬ、こういうお考えにつきましては全く賛成でございます。  そこでお伺いしたいと思いますのは、このような年金制度をつくり上げていくにつきまして、提案理由の説明の中にもございますように、長期的な展望に立って制度全般を見直していくということ、また、最近における社会経済情勢の変化によりまして、制度のよって立つ基盤そのものに重大な変化を来しておる、こういう御説明もございます。人口あるいは就業構造、産業構造、その面で重大な変化があるというのは、具体的にどのようなことでございますか。
  290. 吉原健二

    吉原政府委員 まず、制度の基盤の変化の一つといたしまして、将来人口推計がございます。昭和五十一年に人口問題研究所が出しました旧推計、五十五年の年金制度の再計算、大改正まではそれをもとにして私ども財政再計算をやっていたわけでございますけれども、五十六年十一月に人口問題研究所が出しました新しい将来人口推計によりますと、大変大きく違っております。平均寿命にいたしましても当時より男女とも二歳程度延びておりますし、将来の総人口のピークにいたしましても、旧推計では昭和百二十五年一億四千万ということでございましたけれども、新推計では昭和八十三年に一億三千万人という推計になっております。それから、六十五歳以上の老年人口のピークも、旧推計では昭和九十五年二千六百万人でございましたが、新推計では昭和九十三年に二千八百万人になっている。老年人口の数がふえておりますし、したがいまして老年人口の比率も、旧推計は昭和九十五年に一八・八%というのがピークでございましたが、新推計では昭和九十五年二一・八%、さらに昭和百十八年には二二・二%、つまり、私どもが従来考えていた以上に老齢化のスピードが速いということと、老齢化の程度が高い、旧推計で想像していた以上に、新推計では高齢化のスピードと程度が高いということがございます。  それから、もう一つが産業構造、就業構造の変化でございますけれども、国民年金ができました昭和三十年代というのが、御案内のとおりでございますけれども、一次産業の就業者の比率と、二次、三次産業の就業者の比率が大体四対六。一次が四で、二次と三次が六ぐらいの割合だったと思いますけれども、現在ではもう第一次産業は就業者の大体一割、九割ぐらいが二次及び三次産業ということになっておりまして、就業構造が非常に大きく変化をしてきているわけでございます。第一次産業の対象者は主として国民年金、二次、三次が厚生年金ということになっておりますので、いわば各制度の基盤が大きく変わってきているということがございます。  それから、もう一つが女子の就業状態といいますか、職場進出が非常に進んできたということがございまして、従来女性の方は農業その他自営業に従事しておられる、あるいは家族従業者でいらっしゃる方が多かったわけでございますが、昭和三十五年から現在までに、女子で雇用者として働いておられる方が、昭和三十五年は八・八%でございましたけれども、現在は二六・九%と、人数にいたしまして、当時の約百七十万人が現在では八百万人と、一千万人近くにふえているわけでございます。そういったことが年金制度の基盤を大きく揺るがしている、大きな影響を与えているということだろうと思います。
  291. 塩田晋

    塩田委員 今御説明ございました年金の給付水準あるいは負担、保険料を考える際にも、まずすべての出発点になりますのは、人口がどのように変化していくか、総数のみならず、老齢化の状況、年齢別の人口あるいは年齢別の死亡率、逆に言いますと年齢別の平均寿命、こういったものの変化が基礎になって将来展望が行われるものと思います。  今もお話しございましたように、昭和五十一年推計と五十六年推計、権威ある厚生省の人口問題研究所が推計されたものが五年にしてかなり変わってきている、総数のみならず、年齢別にもあるいは平均寿命、また特殊出生率、リプレース率といったもの、これが変わってきているということですね。現在の年金制度というものが社会保険方式をとる限り、やはり保険ですから保険数理の上に立って負担と給付を考えなければならない。ところが、その基礎になる人口推計そのものが五年にしてこのように変化をするということは、今見通しておられる最も確かなものとして皆さん方が根拠にしておられる五十六年推計というものも、あと一、二年、六十一年になりますとそれから五年になるわけですね、また変化するんではなかろうかと思うのですが、その点はいかがでございますか。
  292. 吉原健二

    吉原政府委員 将来の人口がどういうふうに変化をしていくかというのは、私はそれが専門ではございませんが、大変難しい問題だというふうに聞いておりますし、現在の時点では、やはり何といいましても人口問題研究所の推計というものが一番正確といいますか、信頼し得るものというふうに考えております。  そこで、人口問題研究所の推計も、将来これが、例えば特殊出生率がどうなるかということにつきましては、実は中位推計、上位推計、下位推計という三つの推計をやっているぐらいでございまして、必ずしもこれだというふうに断定的を言い方をしておりません。やはり私ども、将来の年金の財政収支がどうなるか、給付と負担の関係がどうなるかということを考える場合には、一番大きな要素が何といっても将来の人口構成、平均寿命、出生率、死亡率の動向でございますが、現在最も権威がある、また信頼できると言われております人口問題研究所の、しかもその中の中位推計をもとにして財政再計算をさせていただいているわけでございます。将来、この将来人口推計が変わってまいりました場合には、当然それに基づいて年金の財政再計算も五年ごとに制度的に見直すということになっておりますので、見直しをしていく必要があるというふうに思っております。
  293. 塩田晋

    塩田委員 人口推計というものはなかなか難しいということはよくわかるのでございますが、わずかな一%あるいは〇・何%の違いによっても、これは財政的には大きなものになっていくわけですね。その違いが大きくなっていくわけです。非常に難しいと思いますけれども、そういった事態が起こり得ないとも言えない状況だと思います。  例えば今言われましたグロスの特殊出生率にいたしましても、世界的には、二・一あれば大体リプレースができて人口も定常化すると言われる数字ですね。これが我が国の場合は現在一・七になってしまっているということは、後継ぎが現在の人口を維持するだけ生まれてきていない、日本の人口は衰亡していくということです。  そこで、大臣が今言われましたように、今は六・何人で一人の高齢者を養う状況だけれども、いずれは三人で一人を養わなければならない、こういう事態になるという話ですが、これは端的に言いますと、今の一・七というグロス特殊出生率の低下、これが反映していることだと思うのですね。ところが、最近また、状況を子細に見ますと、一・七が一・八になりつつあるというような状況もあるようであります。また世界的に見ましても、一度ずっと落ちていったフランスの人口も、最近は上昇してきているというような状況の中で、非常に難しいことですけれども、この一・七か一・八かというのは、これは単なる〇・一じゃないのですね。財政的には何千億の響きになるかもわからない、将来は何兆になるかもわからない、こういう大きな数字だということですね。保険数理の上に立って、その基礎資料としてこういったものを子細に見ていきますと、非常に問題があるのではなかろうかというふうに思うわけです。  具体的な数字、ここにあります五十一年推計と五十六年推計とを見てみまして、例えば昭和七十五年、今から十五、六年先を見ましても、総人口だけ見ても、五十一年推計は一億三千三百六十七万六千人という推定をしており、五十六年推計では一億二千八百十一万九千人、こういう数字になっていますね。総数でもそうである、これだけの差があるわけですね。そして、二十歳から五十九歳までが五十一年推計では七千百五十一万七千人、それに対して六十五歳以上が一千九百万余り。ところが五十六年推計におきましては、二十歳から五十九歳が七千九十二万四千人、六十五歳以上が一千九百九十四万三千人、このように違ってきているわけですね。しかしこれは、大臣がよく言われます何人でもって何人の高齢者を支えるかという関係におきましては、扶養率という関係におきましては、両推計とも大体七十五年程度まではそんなに変わってない、関係は変わってないんですね。ところが、八十年から五年刻みでずっと百二十五年まで、五十一年推計も五十六年推計も出しておりますけれども、こうなりますと、片や五十一年推計は総人口が一億四千万を超えておりますね、五十六年推計では一億二千万をちょっと超えておる。一億四千万と一億二千万、二千万の差が総人口であるんですね。人口構成の二十歳から五十九歳までは五十一年推計では七千百万、六十五歳以上は二千五百三十四万五千という数字ですね。ところが五十六年推計におきましては、二十歳から五十九歳までは五千九百六十二万八千。片や七千百万ですね、片や五千九百万。そして六十五歳以上人口につきましてはほとんど変わらない。五十一年推計は二千五百三十四万五千、五十六年推計は二千五百五十万六千、ほとんど変わらない。こういう状況ですね。これと同じようなことが、今度は五年後の六十一年推計でまた起こるんじゃなかろうか。  二十一世紀を目指して安定的な年金財政を確立する、これはもう本当に結構なことであり、またそうであらなければならないわけですが、そのよって立つ基礎になる数字が、このように大きく変化するということについては問題が相当あるんじゃなかろうかと思うのでございますが、これらの研究についてはどのように進めておられますか、お伺いいたします。
  294. 田村正雄

    ○田村説明員 御説明さしていただきます。  私ども、五年ごとに財政再計算をやっておりますけれども、今先生御指摘のように、基本になります人口推計が大変大きく変わっております。五年先はどうかというお話しだったと思いますけれども、五十一年と五十六年では大変変わっておりますが、今のところ、私どものいろいろ検討してみている結果によりますと、五十六年以降の推計のベースになっております例えば出生率につきましては、五十六年の前提と現在時点までに得られておる実績ではそう違いはないということでございますので、五十六年推計とこれから先五年後に出ます推計では、恐らくこの五十一年推計と五十六年推計ほどの差はないんじゃないかというふうに思っております。
  295. 塩田晋

    塩田委員 官僚答弁としてはまことに立派な御答弁でございます。  まあ、だれもわからないことですから仕方がないと言えば仕方がないんですけれども、年齢別に見ますと、二千万も人口が大きく違ってくるということは、財政面、これは金がついていくわけですから大きな影響がありますね。だから、今は答弁でそれ以上うまく言えないと思います。私が答弁したって同じだと思うのです。しかし、本当によく考えてやっていかないと、保険数理に立っているわけですから、それこそ大臣の言われます揺るぎないものを、やはりちゃんと見通してやっていくという上に立ってひとつこの保険財政を考えていただきたい。これはもう相当な英知を集め、コンピューターを駆使し、衆知を集めて、金をかけてもこの問題に本当に取り組まないと、将来大変なそごを来すことになりかねない、せっかく大改正をそのつもりでやったけれどもそうならなかった、大変だということになりかねないので、大臣、ひとつこれは十分に気を使って、用心の上にも用心をしてこの問題に取り組んでいただきたいということをお願いいたします。
  296. 渡部恒三

    渡部国務大臣 仰せのとおり、これは極めて重要な基盤でございますので、慎重の上にも慎重、念には念を入れて、過ちなきよう期してまいりたいと思います。
  297. 塩田晋

    塩田委員 それでは、もう少し細かく推計の基礎をお聞かせいただきたいと思います。  この人口推計から被保険者数をまず出されると思います。これは基本になるでしょう、被保険者がやがて老齢化して年金を受けるわけですから。そしてまた、その被保険者が保険料を掛けるわけですから。その頭数、まずこれが出発ですね。人口から被保険者数を出されるのはどういう方法で出されますか。
  298. 田村正雄

    ○田村説明員 まず、私ども、被保険者数の出し方はこういうことをやっております。  人口推計は、発表を見ますと五歳階級ごとに人口が全部出ております。その五歳階級ごとの人口を分母といたしまして、実際に厚生年金、それから国民年金、それぞれの年金制度の被保険者が何人ぐらいいるだろうかということですね、私どもそれを被保険者率と申しましょうか、そういうようなことを言っておりますけれども、その比率がどれくらいあるかということをまず実績で検討してみているわけでございます。それをベースにいたしまして、その実績が今後どういうふうに変わっていくかということを推計しているわけです。  厚生年金の場合ですと、今まで雇用者比率が少しずつ高まっておりますので、今申し上げました被保険者比率はやや上向きに予想するというようなことで推計をやっております。そういうふうに推計した厚生年金の被保険者と、それから片方でもう一つ共済組合の組合員がおるのでございますけれども、そういうものも推計いたしまして、その引きました残りが国民年金、こういうような形で推計を行っている、こういうことでございます。
  299. 塩田晋

    塩田委員 次に、人口、被保険者数を基礎にして老齢年金の受給者数を推計しておられると思うのですが、それはどのようにして出されましたでしょうか。
  300. 田村正雄

    ○田村説明員 今申し上げましたように、被保険者の数をまず年次別にどれだけになるかということを推計いたしますけれども、実際に老齢年金の受給者はすぐにはそのままでは計算できないわけでございまして、私どもの計算は毎年毎年の被保険者の年齢別、期間別の分布というものを計算機で計算しております。と申しますとちょっとわかりにくいのでございますけれども、ちょっと表を頭に思い浮かべていただきますと、縦側に年齢をとって横倒に加入期間をとる、こういうことで、二次元の被保険者の分布をつくるわけでございます。そうすると、それから一年たちますと一年間被保険者期間がふえます、年齢も同時に一歳ふえる、こういうことになりますね。その一年間たつ間に、ある人はその制度から脱退する、ある人は年金の支給開始年齢に達する、こういうことになるわけでございますね。そういう作業をやりまして、たまたまそういう計算を一年ずらしたときに支給開始年齢に達する者がいますと、そういう人数を集めたものが受給者になる、こういう計算をやっているわけでございます。ちょっとわかりにくい説明だったと思いますけれども、計算機の中でやっているような作業でございますから。
  301. 塩田晋

    塩田委員 大体わかるのです。せり上がってくるのと死んでいくのと、上へ卒業していくのと、それを五歳階級なり各歳ごとにやっているのか、年齢階級ごとに積み上げていくわけですね。そういうことでかなり大変な作業だと思います。  それから、そういった被保険者、老齢年金受給者数の推計をして、今度は保険料なりあるいは給付額という、金銭のついた経済的な面はどういうふうにして推計しておられますか。かなり前提をいろいろ置いておられるでしょうが、置かれた前提、そして、こういう方法でこうしましたということを説明してください。
  302. 田村正雄

    ○田村説明員 だんだん難しくなってまいりますけれども、今申し上げましたのは被保険者という人数だけでございますけれども、実をいいますと、人数にはいろいろなものがくっついておりまして、例えば今先生お話しのように、年金額を計算するためには、厚生年金の場合ですと、過去にどういう標準報酬を持っていたかということ、それからこれから先どういう標準報酬になるかということが必要なわけでございまして、そういう情報も、今申し上げました年齢別、あるいは年齢別と期間別の升目の中に同時に置いておきまして、それをベースにいたしまして、例えば老齢年金の発生する時期になったときに年金額を制度の中身に従って計算する、そういうことをやっておるわけであります。  大体そういうことでございます。
  303. 塩田晋

    塩田委員 大体やっておられることは想像もつくし、わかるのですが、本当に具体的に、こういうケースについてはこういう数字でという、数字で聞かないと、大体こういうふうにやっているという程度ならこれはもうわかっていることなんですけれどもね。もう少し数理的に説明してもらえませんか。
  304. 田村正雄

    ○田村説明員 言葉だけでは説明するのはなかなか難しいのですけれども、先ほど来お話し申し上げておりますように、最終的に必要になりますのは、制度として給付費がどれだけ必要かということでございます。その中を分解してまいりますと、先生今お話しのように、受給者数がどれだけになるかということと、それから一人当たり平均で年金額がどれだけになるか、その二つの要素に分解できるということだと思います。  受給者数については先ほど来御説明したとおりでございます。問題は、一人当たりの平均の年金額がどれぐらいになるかということがイメージとしてなかなかつかみ切れないということではないかと思うのでございますけれども、今申し上げましたように各年齢別、期間別の中の平均的な姿でございますね、平均標準報酬がどれだけあるか、加入年数がどれだけあるかというような情報をそこに持ってまいりまして、そういうグループが受給者になった時点で、その升目の中に入っております平均的な年金額を計算する、そういうことをやっておるわけです。その平均的な年金額に人数を掛けると給付費が出てくる、こういうことでございます。  ちょっとなかなか口では説明しにくいのですけれども、おわかりいただけるのではないかと思うのですけれども。
  305. 塩田晋

    塩田委員 大体わかるのですけれども、その標準報酬は現在までの分はわかりますが、これからの見通し額の推計額を出しておられると思うのですね。それにはいろいろな前提を置いておられると思うのです。例えば、過去の平均標準報酬月額のアップ率を伸ばすとかあるいはちょっと低目に見るとか、あるいは国民総生産の伸びとの相関関係を見てその関数でもって将来推計するとか、いろいろなやり方があるでしょう。そういうことをどういうふうにしてどういう前提を置いてやられたかということ。標準報酬もそういう問題がありますね。そして、保険料につきましては保険料率という問題があるでしょう。これは改正の場合と改正しない場合といろいろ想定しておられると思うのですね。  そこで、今回のこの改定で目指したのはどういうものか。将来、昭和百二十五年まで計算しておられますね。どういう前提を置いて推計されたかということを御説明いただきたいと思います。
  306. 田村正雄

    ○田村説明員 話をちょっとはしょってしまいましたので申しわけございませんでした。  年金額の計算では、私ども賃金の上昇率として三通りの場合を想定してございます。四%、五%、六%、三通りの数字を想定してございます。どうしてそんなことをするかと申しますと、経済的なファクターというのは大変変動が激しいわけでございます。私ども予定しましたように四%、五%、六%でございますけれども、その根拠は過去五年ほどの間の実績値でございます。それと、「一九八〇年代経済社会の展望と指針」、こういうのが五十八年八月に閣議決定されておりますけれども、その中で用いられております経済成長率、名目六から七%というのがございますけれども、そういうものなどを参考といたしまして、やや幅を持たせた形で設定しております。  それから、今のは年金額の計算でございますけれども、同時に、賃金上昇率といいますのは、保険料の計算のベースになります標準報酬でございますね、そちらの方にも当然かかってくるわけで、同じ率が用いられております。ただ、私ども、おもてに発表しております数字は、いつも四、五、六という三つの数字の中のちょうど真ん中に当たります五%の数字を申し上げております。  それからもう一つ、経済的な要素といたしましては、積立金の運用利回りというのが大変大きな作用をするわけでございまして、これは実際に積立金を運用しております実績値でございます七%というもの、現在七・一%でございますが、それを中心といたしまして六・五、それから七・〇、七・五と三通りの場合を計算してございます。この場合につきましても、標準的な場合ということで七%の場合を計算したものを皆様にお示ししている、こういうことになっております。
  307. 塩田晋

    塩田委員 もう一つ抜けているのは、保険料率の将来……
  308. 田村正雄

    ○田村説明員 申しわけございませんでした。  保険料率はこういう計算になっております。今までの保険料の引き上げの傾向は、見ておりますと、これは厚生年金の場合でございますけれども、大体五年に一・八%くらいのペースで引き上げております。そういうことでございますので、昭和六十一年の時点で一二・四%、現在の一〇・六%から一・八%引き上げました一二・四%にいたしまして、それ以後五年ごとに一・八%ずつ上げていったらばどういうことになるだろうか、こういうことでございます。ただ、そのときに、将来の財政状態をどういう形でとらえるかということによって出てきます保険料の形が大変変わってまいります。  そこで、今回の計算ではどういうことになっているかと申しますと、単年度の収支が赤字にならないようにということをまず一つの目標といたしました。それから二番目の目標といたしましては、積立金が相対的にはだんだん下がってまいります。相対的な大きさと申しますか、何に対する相対的な大きさかといいますと、給付費、あるいは支出額と申してもいいかもしれませんけれども、そういうものに対する相対的な大きさというものはだんだん下がってまいりますけれども、ほぼ支出額の一年分ぐらいの積立金は保有できるように、こういう目標を立ててございます。そういう形で保険料がどういう形になるかというのをはじいてみたわけでございます。  それから、先ほど来出ていると思いますけれども、現行制度のままですと三八・八%、改正案でございますと二八・九%ぐらいになる、こういうことでございます。
  309. 塩田晋

    塩田委員 そこで、積立金の話が出ましたのでお伺いいたします。  年金に関しまして、厚生年金国民年金合わせまして、積立金は現在どのような状況になっておりますか。また、過去ここ数年の状況、推移ですね、これをお伺いいたします。
  310. 吉原健二

    吉原政府委員 年金積立金の累積額でございますが、厚生年金国民年金を合わせまして五十八年度末で約四十四兆円でございます。五十九年度末で約四十八兆円と見込まれております。  これを過去の推移で見てみますと、累積額で申し上げますと、五十五年度三十兆六千億円、五十六年度三十五兆八百八十九億円、五十七年度三十九兆六千億円、五十八年度四十二兆八千億円、五十九年度四十七兆八千億円、こういう推移でございまして、大体毎年四兆円程度ずつ増加をしている。これは厚生年金国民年金合わせたものでございますが、増加は主として厚生年金の増加額でございます。
  311. 塩田晋

    塩田委員 この四十八兆は今年度末に積み立てられる額ですね。これには運用の利子がついているわけですね。さっき七・一%という話もありましたが、七%といたしましても、三兆円を超える一年間の利子運用収入があるわけですね。これはどうしておられますか。
  312. 吉原健二

    吉原政府委員 現在の資金運用部の預託金利は七・一%でございますが、運用利回りは、厚生年金につきましては、五十七年度について申し上げますと実績で七・二二%、国民年金は六・七三%となっているわけでございます。  この年金積立金の利子というものは、将来の年金の給付のための原資に充てる、こういうことになっているわけでございます。保険料、国庫負担及び年金積立金の利子は、将来の制度の給付の原資に充てるということでございます。
  313. 塩田晋

    塩田委員 給付は、年金給付そのもののほかに支出されるものとしては、厚生年金保険におきまして福祉施設費というのがありますね。それからまた、そのほかにも事業団に出ている出資金。国民年金にも同じく福祉施設費というのがあって、またそのほかに出資金というのがありますね。これはどういう考え方で出ているものですか。
  314. 朝本信明

    ○朝本政府委員 厚生年金保険及び国民年金福祉施設は、被保険者、受給者とその家族の福祉の増進を目的といたしまして、それぞれの法律に基づきまして実施をされているわけでございます。  基本的な考え方といたしましては、年金制度は長期間にわたって保険料の納付をしていただくという制度でございますので、制度に対する理解を深めていただきまして、年金制度の円滑な運営を期す、こういうことが基本的な考え方でございます。
  315. 塩田晋

    塩田委員 大規模年金保養基地というのがございますね。これはどういう性格のものでございますか。予算上の支出項目としてはどのような性格のものですか。
  316. 吉原健二

    吉原政府委員 大規模年金保養基地でございますが、現在、全国で十一カ所で基地の計画を持っておりますし、既に三木等の基地におきましては事業を開始をしているわけでございますけれども、これは年金の還元融資、年金資金は資金運用部資金に全額預託をされるわけでございますが、その一部、原則として三分の一程度が還元融資として被保険者の直接福祉に役立つ、福祉向上に役立つ分野に還元融資をするという制度があるわけでございますが、そういった制度の事業の一環として、基地というものの整備が進められているわけでございます。  考え方といたしましては、年金福祉事業団が年金の保養基地を整備をする、建設をするということでございまして、運営は、三木について申し上げますと、年金保養協会という財団法人に委託をしておりますが、その償還につきましては、元本及び利子相当分を出資金なり交付金で福祉施設費の中から支出をしている、こういうものでございます。
  317. 塩田晋

    塩田委員 大蔵省から来ていただいていますか。この年金につきましては、自主あるいは有利の運用を望む声が各方面からあるのですが、これについて大蔵省では、今までどのように検討してこられましたか。またその結果、今の段階ではどのようにお考えでございますか。
  318. 水谷文彦

    ○水谷説明員 ただいま資金運用部の運用方針についての御質問でございましたが、御案内のように、年金資金でございますとかあるいはその他郵便貯金等各種の資金がございます。それはいずれも、国の制度なり信用なりを背景として集まってくるお金でございます。そういった公的な資金につきましては、私どもの方に全部預託をいただきまして一元的に管理運用をさせていただくというわけでございます。それに対しまして、今お示しのように、一部には分離運用ができないか、あるいは有利運用ができないかというお話があっているわけであります。  そうした中で、分離運用問題と有利運用問題とを分けてお答えいたしますと、分離運用につきましては、私ども先ほど申しましたように、一元的な管理運用ということが最も合理的な運用の仕組みであると考えております。その理由は、一つには、全部預託をしていただいて、それを政策的な各種の要請に対しまして、政策的な重要性に即してバランスよく配分をしていく、そのためには全部預託していただくことが最もいい。と同時に、これはまた国の予算なり金融政策と関連をいたしますので、大蔵省で所掌いたしております予算、つまり財政政策あるいは金融政策等を整合的に運用していきたいというような意味では、運用部の方に全部預託をしていただくのが最も適切な方法であるというふうに考えております。したがいまして、私どもは、分離運用につきましてはお認めできない。逆に言えば、現在の統合運用の仕組みを堅持させていただくという基本方針でございます。この考え方は、臨調答申におきましても同様な提言がなされておりまして、統合運用の現状についてはこれを堅持させていただきたいと考えております。  そうした統合運用の仕組みの中で、できるだけ有利な運用ができないかというお話がございます。それはもっともな御要請だと私ども思います。各種の年金等の預託者あるいは拠出者の方からしますと、できるだけ有利な運用をすることによって保険料負担を軽減するというような効果もあるわけでございますから、もっともな御要請であると考えております。ただ、何分にも公的な資金でございますので、やはり公共的な運用をしなければいけない、有利運用のみを追求できないというような制約もございまして、しょせんは公的資金であるということに伴う公共性の要請とそれから有利性の要請と、それをどのようにバランスをとっていくかということであろうと思います。  厚生省の方からもできるだけ有利運用というような御要請が大変強うございますので、今後とも、公共性のバランスをとりながらできるだけ私どもも有利運用を図っていきたいというように考えております。
  319. 塩田晋

    塩田委員 時間が参りましたけれども、もう一つだけお願いします。  今大蔵省からもお話しございましたが、これはぜひとも前向きな善処方を強く望んでおきます。詳しいことは、また改めて別の場で質問をしたいと思います。  大臣、ここで明らかになりましたのは、四十八兆という積立金があって、今のところは積み立てされて黒になっておるわけですね。これが、いずれは積立金を全部食いつぶして、保険料を入れた分で給付を単年度で全部賄っていかれる、もう積立金はゼロという状態がずっと続いていくことが推計の中に想定をされておりますね。しかも現在ある四十八兆円、毎年三兆なり四兆あるいは五兆、上積みされていっていますが、この中から来る、四十八兆なり五十兆から来る利子の額というものも極めて大きいものになっている。三兆五千とか、三兆円を上回っておりますね。これはますます三兆から四兆になっていくでしょう。これは保険の給付費の中に、特別会計の中に入れられておるわけですね。今の御説明では入れられておりますね。その上に立ちまして、先ほどございました大規模年金保養基地、これは十二カ所で十一基地、これは打ちどめという話を聞いております。これは、利子運用がそれだけあるということを考え、これからもまだ当面の間はふえてくるということ、その上に立って、このような基地は非常に喜ばれ、利用率が高いというものであれば、これは何も打ちどめすることはないじゃないか。これは基地としては、陸の上に何もつくる必要はないのです。空間がありますね。二十一世紀を目指してやるんですから、基地はスペースだったって、宇宙だったっていいじゃないですか。あるいは海に浮かぶ宮殿のようなものがあってもいいじゃないですか。発想を転換されまして、基地は何も陸地でないといかぬというのでなしに、海もある、空もあるというくらいの考えで、将来とも、もう少し運用利子も念頭に置いてやっていただきたい。しかも、これは一言だけ最後にお答えいただいたらいいんですが、年金保養基地は、年金福祉事業団が資金運用部資金から資金を借りて、融資を受けて、そして建設をする。そして、それの利子につきましては交付金で補給されておるということ、それから元金につきましては二十五年の均等償還をしておる。均等償還をしておりますけれども、その償還分は、厚生年金国民年金の特別会計から福祉施設費として支出されているということ、これをイエスかノーかだけお答えいただきまして、終わりたいと思います。
  320. 吉原健二

    吉原政府委員 そういうことでございます。
  321. 塩田晋

    塩田委員 終わります。(拍手)
  322. 有馬元治

  323. 小沢和秋

    小沢(和)委員 初めに、大臣にお尋ねをしたいと思うんです。  今回の年金制度改革の目的は、本格的な高齢化社会の到来に備え、公的年金制度を長期にわたり、健全かつ安定的に運営していくための基盤を確保することにあるというふうにされております。しかし、そのために具体的にどういうことをやられるのかということを見てみますと、結局のところ、国民年金もあるいは厚生年金もともに物すごい保険料の引き上げであり、あるいは給付水準の切り下げということになっておるわけですね。これは健康保険や雇用保険などの改悪とあわせて、国民には到底耐えがたい生活への直撃ということになるのではないかと思うんです。  私は、その中でも一番ひどい打撃を受けるのが共働きの婦人じゃないかと思うんですよ。保険料は男子と同じにするため、毎年〇・二%ずつ引き上げる。支給開始は男子と同じということで六十歳からに延ばす。六十五歳になっても基礎年金一人分、これは丸々じゃないけれども、一人分カットされたままということになるわけでしょう。私が、ごく平均的な婦人で生涯に受ける婦人の年金額がどれくらい減るだろうかということをざっと試算してみたら、約五百万円くらいマイナスという数字が出てきております。  そこで大臣にお尋ねしたいと思うんですけれども、こういうような年金の改革が果たして本当に国民の支持を受けられるか。特にこの婦人の年金権の確立というのは、あなた方の一番の目玉の一つであるわけですけれども、その中身というのが、今も申し上げたように、負担ばかり重くして、お金が五百万も生涯の間にカットをされる。これが男女の平等のためだというようなことでは私は説明つかないと思うんですね。このような点についてどうお考えでしょうか。
  324. 渡部恒三

    渡部国務大臣 これは非常に難しい問題で、先生方からおっしゃれば、これは給付条件が少しでも悪くなれば改悪、あるいは掛金が高くなれば改悪。したがって、掛金を安くして、給付条件をよくすれば、これ改正と言っていただけるのでございます。また、これは一番わかりやすい。受ける側から言えばそのとおりだと思いますが、先ほど私、申し上げましたように、我が国の人口構造が急速に変化してまいりまして、戦後まで我が国は人生五十年社会だったのでありますが、今や八十年社会、さらには八十五年社会と、こういうことになってまいります。したがって、現在六・二人の方が掛金を納めて一人の方が給付を受ける。これが将来、三人の方が掛金を払って給付を受ける。こういうことになれば、これはだれが、どのような人が、どういうふうに工夫をしても、今のままの状態にしておけば、制度はあってもその機能を発揮することができないという状態になってしまうことは、これは明らかでございます。したがって、被保険者以外のところから金がどんどん入ってくるというような条件でもあれば別でございますが、そういうことが可能でないということになれば、これは二十一世紀にもそう余り大きな負担にならないで、しかも給付条件もそう下がらないというための年金制度というものを確立していくためには、これはある程度掛金もふえざるを得ませんし、給付条件等もいろいろこれは手直しをしていかなければならないということになりますが、これが急激に行われるようなことになって、ある日突然に給付が、いただける年金が半分になってしまうとか、あるいはある日突然に掛金が倍になってしまうというようなことになれば、とても国民生活は耐えられるものでございませんから、したがって、それを徐々に、高齢化社会がやってきても、そこで急激な変化が起こらないように給付と負担の公平を図っていこう、そしてどんな高齢化社会がやってきても耐えられる年金制度というものをつくっていこうということでありますから、個々の問題一つ一つ取り上げられると、先生御指摘のようないろんな問題が起こってまいります。     〔委員長退席、稲垣委員長代理着席〕
  325. 小沢和秋

    小沢(和)委員 財政危機論のことについては引き続いて私も質問をしたいと思いますが、そちらに移る前にもう一つお尋ねをしたいと思いますのは、現行のままでは年金の水準が高くなり過ぎるということは、しばしば言われるわけであります。しかし、例えば基礎年金について申しますならば、今大体二十五年で五万円というラインに到達した。これでもう頭打ちさせて、今後は四十年支払い続けないとこの五万円もらえないように今度変えてしまうわけでしょう。しかし、よくここでも話が出ておりますように、生活保護の水準、二級地などで、老人夫婦の場合十万七千円という程度のことを考えてみましても、長年一生懸命に年金の保険を掛け続けてきて、最後はもらえるものが生活保護以下ということでは、これは私は高過ぎるなどということは到底説得力を持ち得ないのじゃないかと思いますけれども、この点いかがでしょう。
  326. 吉原健二

    吉原政府委員 基礎年金の額でございますけれども、これは先ほど来申し上げておりますように各制度に共通した給付として基礎年金を設ける。この基礎年金の考え方は老後の生活の基礎的な部分を保障するという考え方に立っているわけでございまして、老後の生活全部じゃない、基礎的な部分を保障するということで、全国の消費者の実態調査、老人一人世帯の実態調査をもとにしまして、大体その全生活費、全消費支出の額から雑費等を除きました金額、それが大体四万七千円程度でございますので、それを一つのよりどころにいたしまして、大体五万円で老後生活の基礎的な部分が賄えるのじゃないかという考え方に立っているわけでございます。  もう一つは、やはり将来の給付と負担とのバランスを考えた場合に、給付としては高ければ高いほどいいという御意見もあるわけでございますけれども、負担との関係を考えました場合には、基年金の給付としては一人五万円、サラリーマンについては、さらにその上に報酬比例部分七万円程度が乗りますので、夫婦で十七万円程度、年金としてはそれなりの給付水準になるのではないかというふうに思っております。
  327. 小沢和秋

    小沢(和)委員 いや、私が聞いているのは、生活保護との見合いで、長年ずっと一生懸命に掛けてきてようやく五万にしかならない、生活保護以下だということでは説得力を持たないんじゃないかということを私は言っているわけです。  時間もありませんからもう一つ、生活保護との関連でもお尋ねしておきたいのですが、厚生年金の方は高いというふうに言われるわけですが、これは前回、山口年金局長だった時代に私が質問したわけですが、その当時は、まだぎりぎりですけれども、厚生年金の現実的な平均受給額は生活保護にちょっと達してなかったのですよ。だから私は、そういう意味で低いじゃないかということを指摘しておったわけですが、今回十一万三千円ということで、今申し上げた十万七千円程度と比べればようやくプラスアルファというところまでは来たけれども、しかし厚生年金にしてみたところで、高いと言われているけれどもこういう程度のものじゃないですか。しかも将来は、現役労働者とのバランスで見ると八三%にまでなってしまう。高過ぎるということがよく言われるわけでありますけれども、これも現行法で私たちが試算をしてみますと、昭和八十年の段階で——もうちょっと先までまだ上がりますから、百年で言ってみますと、昭和百年という段階でも十四万六千九百円程度なんですよ。今から四十年も先でも現行法でもこの程度なんです。これをあなた方、高いということで抑えていこうということでしょう。これはどうして高いのですか。
  328. 渡部恒三

    渡部国務大臣 これは高いということはないと思います。高い方がいいに決まっておるので、この基礎年金も現在ではじける数字がここなので、五万円よりは六万円支給できればいいに決まっておるわけであります。ただ、現在の厚生年金をこのままの制度にしておきますと、将来ある時点で、高い、安いの問題でないけれども、掛金を納め、家族を抱えて生活する現役の方よりも、ある場合において年金を受ける方の方が、現役の方は税金を納め、掛金を納めますから、受給する方の方は掛金を納めないわけですから、その方の収入の方が余計になるようなことが出てきた場合は、やはり二十一世紀に至っても働く人たちが汗を流して働くことに生きがいを感ずるような社会でなければならないので、現役で働き、家族を抱え、掛金を納める人よりも、年金受給者の実収入が上回るというようなことになるのは一つの矛盾ではないか、そういう意味でございまして、どちらが高くなるというようなことは私ども考えておりません。
  329. 小沢和秋

    小沢(和)委員 いわゆるモデルケースということで八三%とかいって、実質的には現役の労働者よりも高くなるのだというような話がよく出ますけれども、それはあくまでそういう想定をすればそうなるということで、今言いましたように昭和百年でもまだ平均じゃ十四万円台にしかならないのですよ。だから圧倒的な部分はそういうことなんだということを私はもう一遍申し上げておきたいと思います。まあしかし、高いとは思わないけれども、要するに支払えないというお話ですから、それはそれでわかりました。  ここで、引き続いて私、財政の問題に入っていきたいと思うのですが、私は、何といっても我が国が世界有数の経済力を持った国だということをお互いに前提にして議論をしなければいけないと思うのですよ。その我が国年金など福祉を後退させなければやっていけないということは、私はごく常識的に考えてもないのじゃないかと思うのです。早い話が三人で一人を将来支えるようになるというけれども、一方ではロボット化とかというような形で、一人の人が働いた場合につくり出すことができる富の量などというのは物すごい勢いで伸びていっているわけですよ。最近十年間だけでも、労働生産性というのは三倍ぐらいにこの低成長の中でもなっているのですから、だから働く人が一人当たりどれだけの人を支えられるかという点で考えたら、私は、日本にはそういうことをちょっと考えただけでも十分に基礎はあるということだと思うのです。問題は、そういうような状態をどうやって現実に年金制度の中にうまく取り込んでいくかということじゃないかと思うのですよ。  その点で私、昨年の十月、今は亡き山口年金局長と、昭和五十七年版の厚生省の発行いたしました「年金制度のあらまし」というパンフを取り上げまして、対GNP比が一六・一%、将来は四倍にも膨張するという大変な数字が出ていることを取り上げて、その計算の根拠になっているのは、日本経済が人口増加率と同じテンポ、つまり〇・八%から〇・五%ぐらいでしか伸びない、だから一人当たりの生産額では全くふえないという前提を置いているために、そういうとんでもない数字が出てきているんだということを私が指摘いたしまして、その点では局長も全面的に認めて、翌年からこれがバンフからなくなっていることは、もう私がここで改めて言うまでもないと思うのです。  これから先質問ですけれども、ところが、そういう考え方というのが、今度の年金再計算を見てみますとやはり貫かれているんじゃないかということなんです。日本経済がここ十年ぐらい、石油ショック以後低成長になったといっても、実績でほぼ四%ぐらいずつは成長してきた。そして「一九八〇年代経済社会の展望と指針」、政府のこの経済運営の指針でも、今後も八〇年代を通じて四%の成長を維持するということになっておる。ところが、こういうような経済が今後伸びていくということについては、私は、今度の年金再計算の中でもそういうようなことを考えに入れて計算をしておらないと思うのです。今までと全く同じ手法だと思うのです。この点私は、その点で非常に過大にいわゆる危機的な状態を描き出す結果にしかならないのじゃないか、こういうことをちゃんと入れた再計算をもう一度すべきじゃないかと考えるのですが、どうでしょうか。
  330. 吉原健二

    吉原政府委員 そうではございませんで、私どものこの新しい年金改革案の考え方は、今後とも経済も伸びる、同時に賃金も伸びる、賃金の伸びに従って給付の改定もしていくという考え方に立っているわけでございます。その前提に立って、国民所得に対する年金給付費の割合ということで考えますと、現在は五%程度でございますが、それが将来は一五、六%になる可能性がある。それでは国民の負担の限界を超える心配があるということで、将来とも年金としては比率はふえてまいりますけれども全体として一一、二%の割合にとどめたい、こういうことになっているわけでございます。  先ほど、前の山口局長の「年金制度のあらまし」を訂正したというお話がございましたけれども、これは誤解を生みやすいので、そのときも前局長からはっきりお答えをしたと思いますけれども、静態計算での数字をお示ししたために先生のような誤解が生じたわけでございます。あくまでも国民経済も伸びる、年金額も賃金に従って上げていくという前提での考え方をしたわけでございまして、それは何も削除したとか訂正をしたということではございません。従来からもそういう考え方でございますし、今度の年金改革案も、経済も伸びる、賃金も伸びる、給付も改定をしていくという考え方に立っておるわけでございます。
  331. 小沢和秋

    小沢(和)委員 だから、その経済の伸びというのは賃金の伸びという形で織り込んでいるように私は理解をしておるのですけれども、実際に賃金の伸びというのは、経済の伸びに比べると大きな乖離をここ数年示しているでしょう。経済の方がうんと大きく伸びている。さっきも言いましたが、実質四%であるのに対して、賃金の方は実質一・五%なのですよ。だから、私に言わせれば、こういうふうな乖離を生んでおるということ、私は、これはいいことじゃない、賃金ももっと上げるべきだというふうに思いますけれども、これは全体として見れば、日本経済はそれだけの賃金や年金などの負担に耐えられるような余裕を持つような状態になっておるということじゃないのですか。だから、そういうことがこの数字には反映しておらないということを私は言っているわけです。  時間もありませんから、もう一つこの機会に質問をしますけれども、私は、この年金再計算の基礎になっている数字自体についても、いろいろほかにも疑問に感ずる点があるのです。それは、厚生年金の被保険者、それから自営業者、それから厚生年金の被保険者の奥さんですね、この三つがそれぞれ今後どう動いていくかということについて数字が示されておりますけれども、これなどは、今の現実の動きというのを正しく反映していないのじゃないかという感じがするのですが。
  332. 田村正雄

    ○田村説明員 技術的なことになりますので、お答えさせていただきます。  私どもの被保険者数の推計は、先ほど御説明いたしましたけれども、人口推計をベースにいたしまして、その中に占める被保険者数の比率というものを使っております。例えばその比率をちょっと申し上げますと、男子の場合ですと、年齢別になっておりますけれども、一番多いところで二十五歳から二十九歳ぐらいのところを見てみますと、大体五四%ぐらいになっております。それが将来に向かっては、厚生年金の場合は昭和百年ぐらいまで五八%ぐらいにまで伸びるだろう、こういう見込みをいたしております。同じように女子のところを見てみますと、女子の二十五歳から二十九歳では、約二一%の方が被用者になっております。それを二五%ぐらいまでふえていくだろう、こういう見込みをいたしております。その結果が、あるいはお手元にあるかもしれませんけれども、被保険者数の推計ということで出ているわけでございます。  一見いたしますと、見たところ減っておるということで、先生のような御意見だと思うのでございますけれども、これはベースになります人口推計の人口そのものが減っているということで、比率がふえましても実数では減っている、それでちょっと奇異な感じを受けられたのではないか、こういうように推察いたします。
  333. 小沢和秋

    小沢(和)委員 今御存じのように自営業者などがどんどん労働者になってくる、あるいは家庭の奥さんが子供を育てる方の手間も余りかからなくなったからということで働きに出るというような現象が、社会現象として問題になるぐらいなんですね。ところがこの数字を見てみますと、自営業者は確かにある程度将来に向かってそのウエートが減るようにはなっているけれども、この家庭の主婦の比率などを見てみますと、昭和六十一年でも厚生年金保険の被保険者を一〇〇とすると四二・一、それが、十年置きに拾ってみましても四一・五、四二・四、昭和九十年でも四二・〇ということで、家庭の主婦がそういう形でどんどんパートやらに働きに出ていったりというようなことが、こういう年金保険の被保険者本人との関係で見るとほとんど数字として動いてこないという点では、私は、そういうパートやらにどんどん出ていく傾向というものはこの中に何も織り込まれてないのじゃないかと思うのですが、この点だけでもいいからもう一遍答えてみてください。
  334. 田村正雄

    ○田村説明員 先ほど御説明申しました男子及び女子の被保険者比率と申しますのは、被用者になる方ということでございましたので、しかも若いところと申し上げましたので、先生の御指摘のように実は配偶者の場合ではございませんのでそういうふうなことになったと思います。  先生御指摘のように、配偶者につきましては実績で得られた数字そのものを将来に向かって使っておりますので、先生御指摘のように比率一定というのはまさしくそのとおりでございまして、将来に向かって被扶養配偶者が減るということは、実は私どもの推計では見込んでおりません。それは、この次に再計算を行います時点で、実績が判明した時点でまたそれを取り込んでいこう、こういうことにしております。  どうしてそんなことを申し上げるかといいますと、被保険者比率の方は実績がかなりありまして見込みが立てやすいのでございますけれども、被扶養者が減っていく率というのは実は実績がまだわからないのでございます。そういうことで、次回以降の再計算に取り込ましていただく、こういうことにさしていただきたいと思います。
  335. 小沢和秋

    小沢(和)委員 私がどうしてそんなことにこだわるかというと、ここにことしの「週刊社会保障」の正月号があるのです。ここに、あした参考人として出てこられる中央大学教授の丸尾さんやら山口年金局長、こういうような方々が出て座談をされておるのですが、この中に、丸尾教授は、五十五年の再計算というのはいわば厳しい状態を浮き彫りにするための戦術であったかもしれないがということで、将来自営業者がすごく減ってくるとか、あるいは婦人の就業率が非常に高まってくるとか、そういうようなことが計算に入っていない、つまりそれを入れると余り危機が劇的に描けないからということでじゃないかと考えるのですが、「それが計算に入ってないのです。」ということを言ったら、山口局長は「五十五年改正のときの数字も、別に戦術的に出したのではないと思うのです。ナマの数理計算がそのまま出過ぎたと思うのです。」というような弁解をしておりますけれども、だから私、数字というのは客観的です、うそをつきませんというけれども、やはりこういうようにちょっとした数字をいじることによって将来うんと大きく違いが出てくるというような点で、今度もそういうような点では私は納得できない、この辺と関係がありはせぬかということをやはり感ぜざるを得ないから、そういうことを言っておるわけであります。  時間もないからその先の質問も申し上げたいと思うのですけれども、年金財源を確保していく上では、私は、国庫負担を減らさないということ、今後確保していくということは大事なことじゃないかと思うのですが、今度のこの改正によって国庫支出が減っていくことになりはしませんか。
  336. 吉原健二

    吉原政府委員 今度の改正の改革案における国庫負担の基本的な考え方は、現行の国庫負担の水準を今後とも維持をしていくという考え方に立っているわけでございます。割合は、国庫負担の仕方でございますが、改革案におきましては、国庫負担を基礎年金に集中するということにしておりまして、基礎年金の給付費の三分の一を国庫負担ということにしておりますが、これは従来の厚生年金及び国民年金に対する給付割合と実質的に同じような水準になっているわけでございます。  国民年金についても、従来、国民年金の給付費の三分の一国庫負担でございましたので同じでございますし、厚生年金は給付の体系が違いますが、原則二〇%、実質的には、在職老齢年金の分は含まれておりませんので一六%を全体の給付費に対して負担をしておったわけでございますが、報酬比例部分と定額部分との関係から考えてみまして、大体基礎年金の三分の一というのが、やはり厚生年金につきましても従来の国庫負担の水準に当たるわけでございます。細かい点、いろいろ出入りはございますけれども、基本的には同じ水準を維持していくという考え方に立っております。
  337. 小沢和秋

    小沢(和)委員 私は、その説明はちょっと納得いかないんですね。例えば国民年金にしても、今大体五万円くらいの線に到達してきた。だから、現行法をそのまま維持していけば、これは将来は七万とかそういうような線になってくるわけでしょう。そうすると、その三分の一を負担したというふうに考えたら、もうそれだけでも差が出てくるわけでしょう。だから、私どもは、そういうような差をちょっと計算してみただけでも、切りかわった直後というのはいろいろすっきり出てこないから、昭和八十年ぐらいになると大体そういう経過的な要因もなくなるだろうというので試算してみるというと、二兆六千億くらいはこの現行法が続くのに比べると国庫負担が減りはせぬかというふうに私の計算ではなるんですがね。どうですか。
  338. 吉原健二

    吉原政府委員 具体的な金額につきましては、すぐどうこうとお答えできないわけでございますけれども、考え方といたしましては、今度の改革案の考え方が将来に向けて給付水準を適正化していく、将来に向けてその給付費の総体の増加というものをできるだけ抑制をしていくという考え方をとっていることは確かでございますので、総体の年金給付費が二十年後、三十年後、現行制度のままに比べますと確かに小さくなることは事実でございます。したがいまして、同じ国庫負担割合をとった場合におきましても、国庫負担の額そのものは現行制度のままよりも低くなる。それは国庫負担だけじゃございませんで、保険料負担も低くなる、国庫負担も低くなるということになっておるわけでございます。
  339. 小沢和秋

    小沢(和)委員 もう一つ、年金財源を確保していく上で、企業との関係を考えなければいけないと私は思うのですよ。前にも私は、大企業ほど厚生年金保険のいわゆる保険料が売り上げの中で占める比重というのが下がる傾向がある、つまりそれだけ相対的に負担が軽くなる傾向があるということを申し上げておったわけです。そして、だからこの資本力というか、あるいは特にロボットなどを大量に導入をしたりして人をごそっと減らしたようなところはこれは保険料がうんと軽くなりますから、そういうのに対する修正保険料というか、そういうような社会的に大きな役割を果たしている企業の力を保険の負担にもっと積極的に活用するということを考えてはどうかということを提案して、これについては、時の林厚生大臣も、ルールとして少し検討に値する。少しというのは気に食わないのですけれども、とにかく検討に値する提言ではないかと思いますから検討しますということを言っているんですよ。これは林厚生大臣が答弁したのですが、どうですか、大臣。
  340. 渡部恒三

    渡部国務大臣 税金の場合ですと、これは収益が上がれば収益の高いところから取っていく、これは当然のことになっていくでしょうけれども、今先生御指摘の問題はそうでありませんね。生産性向上をしたところから保険の掛金を企業に余計負担させろというお話しですね。だから今の制度、今日の考え方の中でそこまでなじめるかどうか、これは今後の将来の検討課題であると思います。
  341. 小沢和秋

    小沢(和)委員 将来の検討課題だというふうにおっしゃったから、私は今の段階ではそれで了解をしますけれども、実は前回議論をしたときに、私が、フィンランドでは、そういうようなことを考え方の中に入れて保険料を支払わせるような制度をつくっているんじゃないかということを申し上げておったら、きのうになりまして、厚生省の方からその資料をいただきました。  これを見てわかったんですが、フィンランドの国民年金制度における費用負担というのは、使用者は支払い賃金の四・六%ないし五・六%を支払うということで、この幅というのは資本金額に応じて累進的に負担をするようになっておるわけですね。だから、私は、既にこういうふうにこれを実施している国があるということは、これで改めて確認できたと思うのです。OECDなどでもこれを大変注目しているというし、フランスあたりでも取り入れられないかと言って検討しているということも聞いておりますし、ぜひ我が国としても積極的にこれを検討していただきたいと思うのです。  それで、最後に大臣に一つお尋ねをしたいと思うのだけれども、今、私は、日本経済の力というのを活用すれば、国民の負担を今よりも大きくふやすとかあるいは給付を大きく削減するとか、そういうようなことなしで今の状態を打開できるはずだということをいろいろ申し上げておるわけです。こういう私どもの提言も生かして、ぜひ国民にそういう打撃にならないようにもっとこれは工夫をしていただくということで、私は根本的に、ちょうど会期末でもあるし、ちょっとこれはとても成立をせぬというのはあなた方も今の状態では覚悟されているんじゃないかと思うので、一発言する者あり)ひとつ撤回をして検討し直すという意思がないかどうかということをお尋ねをして、終わります。
  342. 渡部恒三

    渡部国務大臣 将来やってくる高齢化社会に備えて、できるだけ国民の皆さん方の負担が多くならないように、できるだけいい給付条件を保てるように、私ども、与えられた厳しい条件の中で、工夫に工夫を重ねて今回の改革案を出しておるわけでございます。  先生御承知のように、年金制度というものは国民の生活の基盤でありますから、この年金に対して将来に不安を持つということは、国民の皆さんに対して一番これは申しわけないことでございますので、どうぞ一日でも、一分でも早く御審議を賜って、今回の案を成立させて、二十一世紀の年金制度を揺るぎないようにするように御協力を賜りたいと思います。
  343. 小沢和秋

    小沢(和)委員 終わります。
  344. 稲垣実男

    ○稲垣委員長代理 次回は、明二日木曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時五十九分散会