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1984-07-25 第101回国会 衆議院 社会労働委員会 第28号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年七月二十五日(水曜日)     午前十時十八分開議  出席委員   委員長 有馬 元治君   理事  愛知 和男君 理事 稲垣 実男君   理事  小沢 辰男君 理事 丹羽 雄哉君   理事  池端 清一君 理事 村山 富市君   理事 平石磨作太郎君 理事 塩田  晋君       伊吹 文則君    稲村 利幸君       今井  勇君    古賀  誠君       斉藤滋与史君    自見庄三郎君       谷垣 禎一君    中野 四郎君       中村正三郎君    長野 祐也君       西山敬次郎君    野呂 昭彦君       浜田卓二郎君    藤本 孝雄君       箕輪  登君    森下 元晴君       網岡  雄君    河野  正君       多賀谷眞稔君    竹村 泰子君       永井 孝信君    森井 忠良君       大橋 敏雄君    沼川 洋一君       橋本 文彦君    森本 晃司君       永江 一仁君    藤原哲太郎君       浦井  洋君    田中美智子君       菅  直人君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 渡部 恒三君  出席政府委員         厚生大臣官房長 幸田 正孝君         厚生省健康政策         局長      吉崎 正義君         厚生省保健医療         局長      大池 眞澄君         厚生省生活衛生         局長      竹中 浩治君         厚生省年金局長 吉原 健二君         厚生省援護局長 入江  慧君 委員外出席者         内閣総理大臣官         房参事官    萩原  昇君         外務省アジア局         北東アジア課長 高島 有終君         自治省財政局財         政課長     小林  実君         社会労働委員会         調査室長    石黒 善一君     ――――――――――――― 委員の異動 七月二十五日  辞任         補欠選任   稲村 利幸君     中村正三郎君   小渕 正義君     永江 一仁君   塚田 延充君     藤原哲太郎君 同日  辞任         補欠選任   中村正三郎君     稲村 利幸君   永江 一仁君     小渕 正義君   藤原哲太郎君     塚田 延充君     ――――――――――――― 七月二十五日  市町村が行う寒冷地世帯暖房費援助事業に係る国の補助に関する法律案対馬孝且君外三名提出参法第一八号)(予) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案内閣提出第六三号)  保健所法の一部を改正する法律案内閣提出第四〇号)  社会福祉・医療事業団法案内閣提出第四二号)      ――――◇―――――
  2. 有馬元治

    有馬委員長 これより会議を開きます。  内閣提出戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。森井忠良君。
  3. 森井忠良

    森井委員 戦傷病者戦没者遺族等援護法審議をしますたびに、戦争のつめ跡を思い出すわけでありますが、この法律適用される皆さんは、それなり国家補償精神に基づいて救済措置がとられているわけであります。しかし、まだちまたにはなお戦争犠牲者救済についていろいろな意見が出ております。要望が出ておるわけでありますが、そういった方々に対しましては、戦後処理問題懇談会ですか、そういうものがあるわけですね。  まずお伺いをいたしたいわけでありますが、この戦後処理懇審議状況はどういうふうになっておるのか、主なテーマは何か、そういったことについてお伺いをしたいと存じます。
  4. 萩原昇

    萩原説明員 お答え申し上げます。  戦後処理問題懇談会につきましては、戦後処理問題についてどのように考えるかということで、五十七年六月に七名の有識者にお集まり願いまして発足したものでございます。  懇談会は現在まで二十八回開催されておりますが、テーマは、いわゆる恩給欠格者問題、シベリア抑留者問題、在外財産補償問題、その三つの問題を中心議論をしております。  今までの審議状況は、昨年までは、この三つの問題について、政府がこれまで講じてきた施策等についてヒアリングを行い、さらに関係団体からのヒアリングも行った。五十九年に入りましてからは委員の間における自由討議を行っております。現在まで二十八回で、フリートーキングはだんだん煮詰まってきたという状況でございます。
  5. 森井忠良

    森井委員 二年たっているわけですね。それで、二十八回の議論を積み重ねていただいたということでありますが、これは答申はいつごろ出るんですか。
  6. 萩原昇

    萩原説明員 戦後処理問題というのは非常に難しい問題でもございますので、委員会論議は多岐にわたっております。したがいまして、十分に論議を尽くしていただくためには、なお若干の時間を要するのではないかというふうに考えております。
  7. 森井忠良

    森井委員 新聞によると、もうほとんど議論が終わった、ただし、国会の開会中だからやはりそれを避けた方がいいだろうという報道が一部になされています。確かに、二十八回も議論を重ねられますと、大筋の考え方というのはまとまっておるのではないかと思います。なお若干と言いますけれども、もし差し支えなかったら、あとどんな問題が残っておるのか、お伺いしたい。
  8. 萩原昇

    萩原説明員 三つ問題自体につきまして議論のおおむねの煮詰まりには来ているわけでございますが、いわば胸突き八丁最後議論のところをやっておるところでございまして、あとどういう問題かということでございますが、やはり三つの問題を中心議論を続けておるということでございます。
  9. 森井忠良

    森井委員 念を押しておきますが、国会が終わったらすぐ答申が出る、そういう性質のものじゃありませんね。
  10. 萩原昇

    萩原説明員 懇談会議論最後胸突き八丁というところへきておるわけでございまして、国会の会期中との関係というようなことは懇談会での議論にはなっておりません。あくまで懇談会としての議論を進めておるということでございます。
  11. 森井忠良

    森井委員 時間の関係もありますからこの問題ばかりやりとりをするわけにいきませんが、例えば恩給欠格者連盟皆さんですね、あそこの会に入っておれば、何とかやがて、例えば軍人時代軍歴について、恐らく恩給に対して何らかのいい影響があるだろう、入っていなければ損だというふうな風潮がかなり会員の中にございます。確かに、事情を聞いてみますと、恩給欠格者連盟皆さんの言い分も当然わかるわけでございます。あるいはシベリアヘ抑留をされてあたら青春を無にしたという、これも非常に沈痛な叫びでありまして、無理のない要求だと思います。しかし、そういったことが戦後問題処理懇の中で取り上げられて、そして、関係皆さん方期待がそのままかなえられるような答申が出るという保証はないわけですね。  今まで議論されたことで、中間報告等をお出しになったことがございますか。
  12. 萩原昇

    萩原説明員 中間報告ということはございませんでした。
  13. 森井忠良

    森井委員 そこで、確認をいたしておきますけれども、一刻も早く、そしてできることなら関係者皆さん期待がかなえられるように努力をしていただきたい。  もともとこの処理懇ができましたのも、いろいろな国民の声を反映をして、一たん在外資産でもうこれで戦後問題は終わりという結論を出した上で、さらに議論を積み重ねておられるわけでありますから、その点についてはひとつ十分な配慮をしていただきたい。冒頭にこのことをお願い申し上げておきます。  そこで、先ほど処理懇の模様を聞きましたけれども、大体三点にわたって議論をしておられる。その中の一つ恩給問題が取り上げられておるわけでございます。  今度も、戦傷病者戦没者遺族等援護法、いろいろな給付引き上げ内容としておりまして、引き上げ金額が少ないということが玉にきず、それが一番欠陥でありますが、趣旨としては私は結構な法律だと思うわけでございまして、結論的には賛成の立場でございますけれども内容を吟味してみますと、私はやはりことしもどうしても言わざるを得ないという問題が二つあるわけでございます。  一つ国籍要件です。戦傷病者戦没者遺族等援護法国家補償法でありますけれども日本人に限るという形になっておるわけであります。ところが、例えば朝鮮半島出身者方々、これは日本軍国主義によって大変御迷惑をかけたわけであります。これは日韓併合から始まりまして、国家総動員法あるいはまた徴用令などなどで、戦争中にはそういった朝鮮半島出身者皆さんに大変な御迷惑をかけてきておるわけでございます。ところが、この人たち対象になっていない。軍人恩給法でありますが、軍人あるいは軍属、準軍属などなどおられたわけでありますけれども対象者になっていない。これは十分検討してくださいということで、私は毎年この問題を取り上げておるわけであります。  昨年の審議から一年以上たっておりますけれども、そういった方々国籍要件の問題についてはどういうふうに検討していただいたのか、お伺いしたいと思います。
  14. 入江慧

    入江政府委員 お答えいたします。  昨年、御指摘のありました国籍要件の問題でございますが、昨年、大臣が、基本的な問題であるので基本的問題らしく検討したいということを申し上げておるわけでございます。したがいまして、私ども、この制度の運用をする立場からいろいろ検討さしていただいたわけでございますが、今もお話しのありましたように、援護法が沿革的に、国籍要件としております恩給法を下敷きにしてと申しますか、要するに補完する制度として国家補償精神に基づいて制定されたという関係上、やはり恩給と同様に外国人適用することが非常に難しいという点が一つございます。  もう一つ外国籍の旧軍人軍属に対する適用ということになりますと、やはり我が国と相手国との補償問題、請求権問題というものの処理と密接な関係が出てくるということでございまして、まずこれらの問題の解決ということが図られることが必要だというふうに考えるわけでございますが、請求権問題について申し上げますと、御存じのように韓国につきましては既に請求権問題が処理済みである反面、国交の回復していない国もあるということも考慮いたさなければならないわけでございまして、昨年大臣が御答弁申し上げましたとおり、この基本的な部分について非常に困難があるということでございまして、援護法独自の問題としてこの問題を解決するということは困難であるというのが、この一年間勉強いたしました結論でございます。
  15. 森井忠良

    森井委員 それは、はい、そうですかと言うわけにはいきませんよ。私はもう援護法審議にほとんど毎年参画をさせていただいておりますけれども、今までもこういった押し問答といいますかやりとりを続けてまいりました。私の声が特に大きくなったのは、難民条約批准なんです。今までは、厚生省行政でいえば、在日の外国人国民年金に加入できなかった。そういった方々もすべて今度は国民年金に加入できるということになりまして、残ったのが今局長答弁のとおり恩給法とそしてこの援護法なんです。あとはもう全部適用になった、そういうことなんですね。機が熟したじゃございませんかということで、先ほど言いましたように難民条約批准以降国内法の整備がございまして、それ以降これは何とかしなければおかしいんじゃないか。毎年同じ議論で大変恐縮なんですけれども、いいですか、こういった例えば半島出身方々日本人だったわけですね。少なくとも戦争中は日本人だった。ちゃんと名前まで日本名にさせられまして、先ほど言いました総動員法あるいは徴用令などなどで、軍需充足工場あるいは戦地へまで行かされたわけです。まさにそのときは日本人。  ところが、援護法要件が二つあるのです。事故の当時日本人であったということと、それから今度は申請時といいますか、要するにそのときに同じく日本人でなければならぬ。これは大臣にお聞きをいただきたいわけでありますが、そういう状況になっていまして、事故が起きたときは当然戦争中ですから日本人なんです。これは援護法上全く問題がない。ところが、その後サンフランシスコ条約締結をされまして以降、朝鮮半島出身者はそれぞれ韓国籍があるいは朝鮮民主主義人民共和国、いわゆる北朝鮮に属するか、いずれにいたしましても日本人ではなくなったのですね。これは本人の意思とは全く別なんです。早く制度ができていれば別ですが、御案内のとおりこの援護法は二十七年にできているわけです。サンフランシスコ条約と軌を一にするわけでありますけれども、あのサンフランシスコ条約以前でしたら、何もなかったわけですからこれは日本人だったのです。それを契機に、あなたは日本人じゃない、したがって援護法適用されない、こういう理不尽なことになったわけですね。だから、国籍要件にこだわるなら事故発生の当時だけでもいいわけです。二重の縛りがかかっている。ここが問題なんです。これは胸の痛む話じゃないですか。  具体的に申し上げますと、例えば軍需充足会社というのがございましたけれども、そこで働いている日本人半島出身者の人、同じように事故が起きて、片方は今援護法適用になっている、そして半島出身者の方は援護法適用になっていない。それが今朝鮮半島に在住をしていらっしゃる人ならまだともかくとして、同じように日本に居住しておられる方がたくさんあるわけですね。そういった方からは血のにじむような陳情が出てきておる、何とか適用してください。これは大臣、ひどいですよ。  例えば、敗戦後間もなく役場から一通の通知が来た。戦死公報ですよ。それには、あなたの弟さんは亡くなられました、よってお知らせいたしますと、役場から通知が来た。戦後です。そして、慰霊の行事も役場主催で行われた。その後、先ほど言いましたように、二十七年に援護法ができて、あなたは日本人じゃありません、したがって適用されません、こういう理不尽な態度なんです。  もう一回申し上げますけれども大臣、やはりここまで来ますと、だれが考えたっておかしい。しかも、予算の関係云々ということがありますけれども、全般的にいいますと、戦傷病者戦没者遺族等援護法対象になられる方々は減りつつある。これはもう当然のことであります、もう戦争が終わってからでも四十年近くになるわけですから。対象者は減る。もちろん、遺族年金にいたしましてもそのほかの特別給付金等にいたしましても、物価にあるいは賃金にスライドしておりますからそれなり金額は上がっておりますけれども対象人員は減っておるわけでございます。遅まきではありますけれども、やはり国籍要件というものはなくさなければならぬ、そういう時期に来ているのではないか、こう思うわけであります。  去年、私は、一年待ってあげますという表現をしております。大臣が毎年おかわりになるわけでありますけれども、去年の林大臣、その前のたしか森下大臣、きょうおられますか。――いませんね。それぞれ私のこういった発言に対して、確かに胸が痛む、そういうことで、やはり国籍要件というものはこの際考えなければならぬのじゃないかという感じがするわけでございます。大臣のお考えを承りたいと存じます。
  16. 入江慧

    入江政府委員 大臣から御答弁いたします前に、今のお話の中で、法制定経過について若干私の方から説明させていただきますと、援護法が施行されましたのは二十七年の四月三十日でございまして、それで、さかのぼって四月一日から適用するということになっておりました。サンフランシスコ平和条約の発効によりまして朝鮮人台湾人日本国籍を失ったのがその二日前の四月二十八日ということになっておるわけでございますが、今申し上げましたように、援護法がそれのちょっと前の四月一日から適用されたわけでございますけれども、その際、附則で、戸籍法適用を受けない者については当分の間援護法適用しないという規定がございまして、朝鮮人台湾人については援護法制定当初から除外されているという経過がございます。  もう一つ難民条約批准してから、国民年金法は、五十七年でございますが、国籍要件を撤廃して、残るのは恩給法援護法だけではないかという御指摘でございます。それはおっしゃるとおりでございますが、私どもが理解しておりますのは、難民条約において難局に自国民待遇を行うよう求められております。難民条約の中の規定、例えば「公的扶助及び援助」というような表現、あるいは「社会保障」ということを規定しているわけでございまして、この「公的扶助」ないし「社会保障」というものの中には、国家補償の観点から援護を行っております援護法は含まれないということでございまして、必ずしも難民条約援護法国籍要件とは直接にリンクしないというのが私どもの理解でございます。  事務的な問題をお答えいたしました。
  17. 渡部恒三

    渡部国務大臣 今先生お話をお聞きしておりまして、私は、心情的には先生お話を十分に理解できるのでございます。また、私もそれに共鳴すると申し上げても言い過ぎでないかもしれません。それから、現実に行政を担当しておる立場から申し上げますと、今政府委員からお話しいたしましたように、これは非常にデリケートな外交上の問題を避けて通れませんし、また、恩給法等との横並びの法理論上の問題等があり、今政府委員から極めて消極的な答弁をせざるを得なかったのでありますが、しかし、これはまた一面、人道的な立場から考えると看過できない問題でもございますので、ひとつ今の先生の人道的な心情というものを酌み取った中で、どこまで外交上の制約あるいは法理論上の制約を突破できるか、今後慎重に検討してまいりたいと思います。
  18. 森井忠良

    森井委員 大臣政治家としての御答弁をいただきましたからこれ以上は申し上げませんけれども、これは言わなければならぬものです。私も背景は局長、よく知っているわけですよ。きょう外務省に来てもらっていますけれども日韓条約締結をされまして、そして請求権に関する協定もちゃんと私も承知をしているのです。しかし、日韓関係というのは必ずしも今もって波静かじゃないわけですね。国民感情もいろいろある。例えば指紋の問題一つとってみましても、これは韓国宗教団体からは、国内署名運動をしようかというふうな反日感情がまだ依然としてあるわけです。そしてこの問題にしても、あるいはまた台湾の方もそうですね、元日本兵の問題もありますけれども、何とか日本政府でできることは、先ほど申し上げましたようにまだぎすぎすした国民感情というのは韓国の中に残っているわけですから、やはり政府としてその点に着目すべきである。局長の言われるように、難民条約と直接の関係はありませんよ。しかし、いろんなことを考えますと、残っておるのが恩給援護法だけということになれば、これは政治的にもやはり考えなければならぬ問題です。  聞くところに上りますと、小沢辰男先生は今度何か軍人恩給欠格者連盟の会長さんになられたようでありますが、ここらでも十分議論をしていただくにしても、ぜひひとつ、先ほどの大臣の御答弁を踏まえて局長、前向きに御検討願いたいと思うのです。どうですか。一言でよろしい。
  19. 入江慧

    入江政府委員 大臣から、慎重に検討したいということでございますので、そういうふうにいたしたいと思います。
  20. 森井忠良

    森井委員 これ以上言いません。  もう一つ問題があるのは、陸海軍雇傭人皆さんの例を挙げてみますと、奇妙なことに、陸海軍雇傭人であられた方はそれぞれ共済組合に入っておられました。そして戦争が終わりまして、それぞれ新たな分野に就職をなさったという経過があるわけでございますが、公務員関係の仕事におつきになった人は、そのまま陸海軍雇傭人期間通算をしていただいて共済年金等に継続をされている。ところが、民間の会社に入られた方は、これは厚生年金ですから、厚生年金陸海軍雇傭人期間通算をしない、共済組合員期間通算をしないという形になっておるわけでございます。これは年金に関する問題ですから、援護局長に聞くのはちょっと問題があるような気がいたしますが、援護法を所管をする局としては何をしておったのかと言いたいわけでありまして、同じように軍属、準軍属であった皆さんに対して私は片手落ちじゃないか、こういう感じがするわけでございます。  年金に関しては私も知らぬわけじゃありません。それから共済組合の掛金を掛けた人と掛けない人というような問題があるでしょうけれども掛けた人というサイドでいけば、これは法律制定の仕方によっては厚生年金にも継続できたという問題があるわけでございます。  大ざっぱに申し上げまして、戦後処理を一手に引き受けておるとは申し上げませんけれども、かなりな部分を担っておる厚生省援護局としては、やはりその点についても着目をしなければならぬ。これは去年もおととしもだめですという返事が返ってきております。しかし、この際でありますから、この問題についても、やはり本委員会発言をせざるを得ないというやむにやまれない気持ちを私は持っております。これは答弁は要りません。答弁は要りませんが、先ほどの国籍要件とあわせてこの問題があるということについても、この際、明確に問題提起だけはしておきたいというふうに思うわけでございます。  さて、次の質問でありますが、これもここ二、三年、私が取り上げております旧三菱徴用工の問題でございます。  若干の概要を御説明しておかなければならぬわけでありますが、先ほど申し上げましたような日本軍国主義政策の一環といたしまして、戦争中、なかんずく戦争末期になりまして、朝鮮半島から徴用工を随分日本国内に送り込んできたわけでございます。これは私といたしましても本当に胸の痛む話でありますけれども。大体二十二、三歳、一家の支柱で働き盛りというころに一通の徴用令書を出しまして、そして日本の内地に送り込んできた。広島には三菱重工という会社がございまして、これは軍需充足会社でありますが、約三千人ぐらいの方々徴用工として働いておられた。八月六日になりまして原爆が投下されました。そのほとんどの方々被爆者になられたわけであります。  戦争が終わりましたから、当然のことでありますが、日本政府マッカーサー司令部とも相談をした上で、これは丁重に朝鮮半島にお帰りをいただかなければならぬ、こういうことになりまして、それぞれ責任者をつけて釜山までお送りするということになっておりました。送還は順調にいったのでありますが、最後の一便が今もって着いていない。これは昭和二十年、一九四五年の一応九月十五日広島を出発したとなっておるわけでありますが、記録その他正確な出発をされたという日にちについては、残念ながらそれを証明するものはございません。  私の手元に持っております資料でも一つあるわけでございますけれども、これは「三菱重工業株式会社広島機械製作所」という用せんを使って韓国の人に返事を出された文書がございます。  というのは、うちの肉親が帰ってきていない。多分息子だと思うのですが、息子が帰っていない、どうなっているのでしょうかということで、今申し上げましたこの会社問い合わせをした。問い合わせをいたしましたところ、問い合わせ返事を出しておるわけでありますが、昭和二十二年四月十七日、二十年が終戦でありますから、二年ばかりたっておるわけでありますが、まだ帰っていないということで問い合わせをいたしております。それに対する三菱重工側の回答の文書であります。たまたま私が手に入れました。     〔委員長退席愛知委員長代理着席〕  それによりますと、趣旨は、あなたの問い合わせに対して御回答申し上げますという形になっておるわけでありますが、徴用解除が昭和二十年の八月三十一日、それから帰還の日が九月二十五日広島発、こうなっております。  当時の記憶ですからはっきりしない。もう二年ほどたっていますから定かでない点もあるかもしれませんけれども、いずれにしても家族が帰っていないということについては、三菱重工からのこの文書によります返事でも明らかになっておるわけでございます。胸の痛む話でありまして、結局、広島を立ったけれども釜山まで着いていない。これはその後一人じゃありませんで、相当数の人が帰っていないということが明らかになりました。  韓国では、今そういった遺族の方々五十名弱でありますが、遺族会をつくっていらっしゃいます。伝え聞きますと、年とった老母が村外れにまで、きょうは息子が帰ってくるんじゃないかと言って出迎えに出る。まだ帰っていない。しょぼしょぼとまた自分のうちに帰る。その繰り返しがあるというふうにすら私は聞いておりまして、本当に胸の痛む話でございます。  事実として明らかになってまいりましたのが、約二百四十名、これは広島を立って、そしてどういうわけかわからないんでありますが、戸畑港からその当時の木船をチャーターしてそして出帆をした。運悪くその後で枕崎台風あるいは阿久根台風というものが襲っておるわけでございます。先ほど言いましたように、いずれにしても帰っていないということだけがはっきりしておるものですから、特にその当時、そういった朝鮮人徴用工皆さんを、指導員といっていろいろ指導しておられた方が、実際は過酷な労働を強いたということもあったんでしょう、反省の念に駆られまして、その有志がいろいろ捜索をされた。その結果、壱岐か対馬が、とにかくあの辺の島々で遭難をされたに違いない、そういうことで自費で調査をされました。もちろん韓国関係団体の御協力もいただきました、御理解もいただきまして捜査をいたしました結果、壱岐の島に相当数の遺体が埋葬されておるということが明らかになって、発掘が始まったわけでございます。  そういう経過でありまして、いずれにいたしましても、問題なのは、どういう経過かわかりませんけれども、正規のルートであります送還の方法がとられていない。例えば責任者が釜山まで行ってちゃんと送り届けるというようなこともしていないわけでありまして、その意味では手続上相当欠陥があったことはもう間違いがないわけでございます。第一、戸畑港というのもこれも送還のための指定をされた港じゃなかったというふうなこともあるわけでございます。  そういうことで、私も本委員会問題提起をいたしまして、去年大変御苦労なことでございましたけれども厚生省は遺骨の調査団を出していただきました。そして去年に続きまして、ことしもまた六月に入りまして現地に出向いていただきました。簡潔でよろしゅうございますから、時間の関係もございますから、状況についてお聞かせをいただきたいと思うんです。
  21. 入江慧

    入江政府委員 元朝鮮半島出身の徴用工の御遺骨の問題でございますが、今お話しのありましたとおり、厚生省外務省と一緒になりまして、人道的な見地から昨年五月調査をいたしまして、その結果に基づきまして、ことしの六月十一日から二十二日にかけまして、引き続き再調査及び遺骨収集を行ったわけでございます。その結果、対馬につきましては、昨年確認いたしました箇所から四十五柱の遺骨が収集されました。なお、壱岐につきましては、昨年確認できなかった地域についてさらに発掘再調査いたしましたが、遺骨は発見できなかったという報告を受けております。  なお、収集いたしました遺骨は火葬に付しまして、壱岐、芦辺町の納骨堂に安置、供養いたしております。  この二回の調査を通じまして、かつて壱岐におきまして民間団体が収集いたしました遺骨等と対馬で収容いたしました遺骨の双方とも、朝鮮半島出身者の遺骨であるということは推定できるわけでございますが、今お話しのありました広島三菱重工徴用工の遺骨であるかどうかということは、残念ながら確認できなかったわけでございます。しかし、反面、発掘した遺骨の中にその徴用工のものが全く含まれていないと断定することもできないということでございました。  今後、これらの地域から、当時遭難されました朝鮮半島出身者方々の遺骨が発見される可能性というのは、この二回の調査によって、今後はないのではないかというふうに考えております。
  22. 森井忠良

    森井委員 去年の五月、ことしの六月、二回にわたって暑い中を調査をしていただきました。本当に、皆さんの御労苦には頭が下がる思いでございます。その結果、大臣、今お聞きのように、目的は旧三菱重工廣島機械製作所朝鮮半島出身徴用工の埋葬遺骨の調査ということで行っていただいたわけでございますけれども、三菱の者かどうかという確認はできなかった、そういうことでございます。  ただ、厳然として残るのは、先ほど私が事実として申し上げました、広島を立って二百四十名ばかりの人が今もってまだ韓国に着いていない。このことはもう明確なんです。そして枕崎台風と阿久根台風という二つの大きな台風がある。その後一カ月以内に二回も大台風が起きて、そして多数の遺体が埋葬された、この事実だけはもうはっきりしております。  私も、ここは神聖な委員会でありますから、やはり予断は申し上げません。三菱の者とはわかっていないわけでありまして、これはせっかくの皆さんの御苦労にもかかわらず、しかも目的をはっきりして行きながら、その部分については定かにできなかったという極めて残念な結果になっておるわけでございます。  ただ、局長さん、朝鮮半島方々の遺骨であるということについてはどうですか。
  23. 入江慧

    入江政府委員 ただいま申し上げましたように、朝鮮半島出身者の遺骨であるということは推定できるわけでございますが、その三菱重工徴用工の方の遺骨であるかどうかということは推定できないということでございます。
  24. 森井忠良

    森井委員 これは大事な部分ですから、やはり正確に答えていただきたいと思うんですよ。  これはことしの六月二十六日の厚生省の発表、これで見ますと、推定とは書いてないのだな。「昨年の調査結果どおり、対馬については枕崎台風(昭和二十年九月十七日)、壱岐については阿久根台風(昭和二十年十月十日)の際に遭難した朝鮮半島出身者であると、極めて高い確度で推定し得るものである。」こうなっているのです。どうですか。
  25. 入江慧

    入江政府委員 はしょって表現いたしまして、大変失礼いたしました。  ことしの六月二十六日に援護局が発表いたしました文書によりますと、今お読みになりましたとおり、「対馬については枕崎台風(昭和二十年九月十七日)、壱岐については阿久根台風(昭和二十年十月十日)の際に遭難した朝鮮半島出身者であると、極めて高い確度で推定し得るものである。しかし、上記の収集した遺骨が、旧三菱重工広島機械製作所の徴用工のものであることを裏付ける資料は発見されていない。また、一方、これらの遺骨の中に当該徴用工のものが、全く含まれていないと断定するに十分な資料も発見されていない。」  以上でございます。
  26. 森井忠良

    森井委員 そのとおりですね。ですから三菱のものかどうかはわからないけれども朝鮮半島出身者のものであるというのは極めて高い確度で推定できるということですね。だからといって、私は無理をして結びつけようとは思わないのです。ただ、事実として日本を立った方々が今もって韓国に着いていない、このことは明確ですね。そして、その上に立ってたまたま、ほぼその時期に朝鮮半島出身者方々の多数の遺体が打ち上げられて、それが現地の方々によって一たん埋葬された、こういうことだけは事実ですね。これは事韓国皆さん方に関する問題ですから、非常に重要ですので一生懸命捜査されたのだと思う。去年どことしについて調査をされましたけれども、まあ厚生省としては、これは外務省も一緒に行っていただいたわけでありますが、両省としてはもう可能な限りの調査は済んだ、そういうことになるのですか。今後の調査の見通しについて、一言でいいですから答えてください。
  27. 入江慧

    入江政府委員 昨年に引き続きましてことし参りましたときも、当時おられた方等を通じまして聞き込み調査等も行っておりますが、昨年収集いたしました資料以上の新しい資料は今回得られませんでしたので、これ以上の調査は行っても新しい資料は得られないというふうに私どもは考えております。
  28. 森井忠良

    森井委員 肉親のお骨は何としても欲しいという韓国の遺族の方々のお気持ちからすれば、もう日本政府としては去年どことし二回にわたって全力を尽くして捜した、しかしもうこれが限界でしょうということでありますから、私も御労苦を歩といたしましてやむを得ないことだと思っております。  そこで問題は、遺骨の扱いですね。壱岐、対馬で皆さんが調査をされたもの以外に、広島のお寺に八十数体、これは冒頭に申し上げましたけれども関係団体が、現地の役場関係の在日韓国人の皆さん団体などの御協力をいただきながら、別に安置をしてあるものとあわせての話でありますけれども、遺骨はちゃんと芦辺町に仮埋葬してあるわけですけれども、扱いとしてはどうなりましょうか。これはこっちから韓国に持っていくのですか、あるいは向こうから取りに来ていただくのですか。
  29. 入江慧

    入江政府委員 今回調査いたしましたことにつきましては、外務省を通じまして韓国の方に説明してあるということでございまして、韓国政府から本件遺骨の引き取りの申し出がありますれば、その申し出の内容外務省と協議いたしました上、人道的見地から韓国側の要望について前向きに対処していきたいというふうに考えております。
  30. 森井忠良

    森井委員 外務省にお伺いをするわけでありますが、去年一回目の調査がありましたね、そしてことしと二度おやりになったわけでありますけれども、事韓国人の方々の遺骨収集調査の問題ですから、やはり外交的に全然接触なしに行かれるということは万々考えられない。したがいまして、昨年とことし、恐らく正式の外交ルートとは言えないにしても、何らかの接触をお持ちになった上で現地調査をなさったものと思うわけでございますが、大使館側の感触はどうですか。外交の問題ですから、差しさわりのない範囲で結構でございます。
  31. 高島有終

    ○高島説明員 御説明いたします。  昨年の調査及びことし六月の再調査、発掘につきましては、それぞれ事前に外交ルートを通じまして韓国政府に説明いたしましたし、またその結果につきましても説明をいたしております。ただ、先方は我が方の説明を聞いたということでございまして、引き取りの問題についての意思表示は今のところございません。
  32. 森井忠良

    森井委員 私も韓国皆さんの中で知り合いがございまして、例えば韓国原爆被害者協会、これは社団法人でございますし、厚生省は、韓国被爆者皆さんの渡日治療等についてこの団体と今までも接触をしておられるわけでありますが、そういった方々、あるいは先ほど申し上げました旧三菱徴用工の遺族会の方々、それぞれお話を聞いておるわけでありますが、今度日本政府が調査をしてくれたことについては非常に喜んでおられます。それでできることなら早く遺骨を引き取りたい。宗教上の観点からいけば、これが本当に自分の息子の遺骨だということはわからないわけでございます、しかしそれは、これが我々肉親の遺骨として何とかこの際引き取って、丁重に慰霊碑等もつくってそこへ葬りたい、こういう意思を私は聞いておるわけでございます。  しかし、今外務省のお答えだと、まだ大使館側から何らの意思表示もないということでありますが、その点について、今申し上げましたように関係団体皆さんの意向と若干食い違うわけですね。大使館側の方は意思表示がないということでありますが、ソウルにも日本の大使館があるわけですね。どういうわけで韓国側からの返事がないのか。非常にデリケートな問題だと思いますので答弁がしにくければ申し上げませんけれども、今申し上げましたように、日本の大使館からも現地の団体皆さんの話を聞くことぐらいはできるのじゃないか。もちろん内政の問題でありますからデリケートな問題はありますけれども、大使館の仕事の一つとしては私はできなくはないのじゃないかという感じもいたしますが、いずれにいたしましても、もう去年調査に行ってまだ全くその返事がこないというのも妙な話でありまして、その点について外務省としてこれから何か方法はないのか、このまま韓国返事をお待ちになるのか、そこらについてはどうでしょう。
  33. 高島有終

    ○高島説明員 御指摘のとおり、この発掘いたしました御遺骨につきましては、韓国方々のものであることは極めて高い確度で推定されるわけでございますので、最終的に韓国において安置されることが望ましいというふうに私どもも考えております。したがいまして、本日の委員会での先生お話しも踏まえまして、私どもとしてはもう一度韓国政府に打診してみたいと存じます。
  34. 森井忠良

    森井委員 厚生省にお伺いするわけですけれども、たしか五月二十九日と聞いておりますが、遺族会の盧長寿さんという方がいらっしゃいますね。この人は今広島のある病院に入院をしておられまして、この人自身も被爆者なものですから今治療を受けておられるわけでありますけれども、この人とお会いになりましたね。どなたか係官を派遣されまして御意向を聞いたというふうに聞いておりますが、その模様について、差し支えなければこれもお知らせ願いたい。
  35. 入江慧

    入江政府委員 広島の病院に入院をしておられました盧長寿さんには、ことしの四月下旬だったと思いますが、外務省厚生省の担当官がお伺いしまして、昨年の壱岐、対馬におきます調査結果を御説明しますとともに、ことし引き続き再調査、遺骨収集を行いたいということを申し上げまして、何か御希望がございますかということを申し上げたわけですが、日本政府が昨年に引き続いて今回そういう努力をしてもらうことは非常に感謝しているというお話がございまして、ことしの調査にはぜひ現地に行きたいということでございましたが、現にことし六月の調査には、この盧長寿さんと五十一年に八十余柱の遺骨を収集されました深川宗俊さん、御一緒に壱岐、対馬両方においでになりまして、現地で作業を目前でごらんになって、同胞の遺骨収集についてこれだけ努力してもらって、同胞として感謝にたえないということを団長にお話しされたという報告を受けております。
  36. 森井忠良

    森井委員 私も実は会ったのですけれども、私には、今あなたが言われたようなことに加えまして、遺族会としては、三菱の徴用工の遺骨として受け取りたいというところまで話しておられました。そこで問題は、どうも三菱、三菱と言って大変恐縮なのですけれども、先ほど言いましたように因果関係はまだこの遺骨については明らかにされておりませんが、いずれにいたしましても、広島の法務局には、大方二千名近い方々の未払い賃金が、三菱によって供託をされているという事実があるわけでございます。あれやこれや結びつけますと、やはり三菱と言わざるを得ないという感じがするわけです。  そこで外務省にお伺いしたいわけでありますが、もともとこの調査も、三菱の徴用工の遺骨じゃないかということで調査をしていただいたわけでございますが、因果関係を明らかにされなかったわけでありますけれども、どうでしょうか、突っ込んで三菱と話をする必要があるのではないか。理由は、もう既に外務省は一度、遠藤北東アジア課長の時代でしたけれども、三菱の方を役所へ呼ばれて意見も聞いておられる。そのときの話を私も間接的でありますけれども聞きましたけれども、そうかたくなな態度じゃない。それから遺族の方々も、最初は相当多額な補償要求というのを出しておられましたけれども、先ほど申し上げました盧長寿さん、あるいは韓国原爆被害者協会の会長さんなどの話を総合いたしますと、戦後ここまでたったし、この際目に角を立てて補償、補償と言わなくても、話がつくものなら折り合いたいと。実はお金も若干要るわけでございます。例えば遺骨を韓国にお届けをいたしましても、せめて慰霊碑ぐらいはつくりたい。それから、お骨を持っていけばせめて遺族の方々等にお線香代ぐらいは出したい。これは国の予算では出せないと思うわけでございます。そういたしますと、やはりこの際、すべての問題の解決ということで、補償とか何とかぎすぎすした話をいたしますと難しくなりますけれども、三菱さんもやはり韓国で品物をたくさん売っておられるわけですし、今申し上げましたように既成事実としてまだ帰っていないという徴用工の方があることも事実でありますし、そして法務局には、未払い賃金がその当時のお金にして十八万円弱、今の日本円に直すと恐らく三億を超すでしょう。それはまだ厳然として残っているわけでございます。ですから、そういったことを考えると、先ほど言いましたように、いろいろ議論はありましょうけれども、せっかく韓国側の諸団体も、もう一括解決をしていただけるならば金額の多寡はともかくとして解決をしたい、裁判だ何だということをしないと言っておるわけでありまして、先ほど言いましたように、直接ではありませんが、日本側の三菱重工側もそうかたくなな態度じゃないという形になれば、この際外務省どうでしょうか、今申し上げましたような事情を勘案をしていただいて、もう一回三菱重工側の意向等をくみ上げていただく、そして韓国関係団体とも、これは私どももお手伝いはいたしますけれども、何らかの形で接触を持っていただく。今まで外務省関係者方々と持っていただいておるわけですから、この際そういうふうな努力をする必要があると思うのですけれども、いかがでしょう。
  37. 高島有終

    ○高島説明員 御指摘のとおり、昨年及びことし調査、発掘いたしました御遺体と三菱重工との因果関係というものは明確にはなっていないわけでございますけれども、しかし、二百数十名の三菱重工徴用工方々が、帰国に際して遭難された可能性は、当時の状況から極めて強いということも御指摘のとおりでございます。そういう事情から、今先生が御指摘になられました例えば慰霊碑の建立費あるいはお線香代、こういったものにつきまして、外務省立場といたしまして、三菱重工がそういう費用の負担を負うべきであるということを判断する立場には必ずしもないことはこれは申し上げざるを得ないわけでございますけれども、しかし、遺族の方々三菱重工側と話し合って最終的にこの問題に決着をつけたいというお気持ちは、今の先生お話しでもよくわかりましたので、本日のお話を踏まえまして、私どもも、外務省のという役所の立場を離れまして、三菱重工側に、どういうことができるのか、これは聞いてみたいと思います。
  38. 森井忠良

    森井委員 その場合、厚生大臣も、今お聞きのような事情でございますから、側面から、あるいは場合によっては政治家渡部先生としてアドバイス等をいただけるかどうか、これはぜひ私もお願いしたいと思っておりますし、その点についての大臣のお気持ちを承りたいと存じます。
  39. 渡部恒三

    渡部国務大臣 今外務省の担当者からもそのような話がありましたので、外務省でいろいろのことをやってくれると思いますが、もし私で役に立つことがあれば、必要に応じてお役に立ちたいと思います。
  40. 森井忠良

    森井委員 終わります。(拍手)
  41. 愛知和男

    愛知委員長代理 大橋敏雄君。
  42. 大橋敏雄

    ○大橋委員 私は、軍人として第一線で戦争を体験した一人でございます。少年にしまして海軍を志願し、やがては特攻の華と散っていく運命にあったわけでございますが、終戦のおかげでこうして生き延びてまいりました。しかし私は、戦争ほど恐ろしいものはない、戦争ほど悲惨なものはない、こういうふうに思います。戦争は二度と起こしてはならぬし、繰り返してはならぬ。私は絶対的な平和主義者でございます。終戦以来はや満三十九年が経過するわけでございますが、戦後処理の一環としてのこの援護行政の事業というものは非常に重大なものでございますが、この援護行政を取り巻く状況を見る限りは、私はまだ戦後は終わっていない、大臣も先般そのようなお気持ちを述べておいででございましたが、援護行政の役割は依然として大きいと思います。しかも、新たな局面が次から次へと出てくるわけでございますが、こういう事態に対しましても十分対応して、各般の施策を促進をしていただきたいと思うのでございます。  そこで、今もお話があっておりましたように、戦没者の遺骨収集の問題でございますが、夫あるいは父あるいは兄弟を亡くした、戦没されたその遺族の方々は、せめて遺骨あるいは遺品を待ちわびていると言っても過言ではございません。遺族の関心あるいは期待というものは筆舌に尽くせないものがあるわけでございます。そういうことで、厚生省として、この遺骨収集に対する基本的な考え、あるいは今後の方針等を具体的にお示し願いたいと思います。
  43. 入江慧

    入江政府委員 海外の戦没者でございますが、沖縄、硫黄島を含めまして概数二百四十万人というふうに私ども承知しておりますが、そのうち、これまで送還のありました御遺骨が約百二十万柱、したがいましてまだ百二十万柱が残っておるというわけでございますが、この中には海没の御遺骨が約三十万柱、そのほかソ連本土とか中国、インドネシア等、現在の段階では遺骨収集が困難な地域にある御遺骨、そういうものを除きまして、現在のところ実施可能な地域にあります残存遺骨概数というものは五十万柱というふうに私ども考えております。  それで、この遺骨の収集につきましては、二十七年から一次計画、二次計画ということで計画的にやってまいりまして、五十一年度から現在まで引き続きまして鋭意実施しているわけでございますが、この政府派遣の遺骨収集団によって収集されました収号数はこれまでに約二十七万七百五十柱ということになっておりまして、現在でもなお遺骨があるというような情報がございますので、そういうふうに情報がありまして、現に遺骨が発見される以上、引き続き遺骨収集を続けていきたいというふうに考えております。
  44. 大橋敏雄

    ○大橋委員 今も申しましたように、遺族の方々の遺骨あるいは遺品等に対する厚生省に対する期待といいますか、その収集に対する期待ですね、これは想像に絶するものがあるわけでございまして、今のような厚生省の基本的な計画について私はもっと大々的に取り組んでいただきたい。と思うのは、いよいよ来年で終戦満四十周年になるわけですね。こういう区切りを迎えるときでございまして、私は、この遺骨の収集の問題につきましても大々的な対策を立てて促進をしていただきたい。この点について大臣のお気持ちを聞かしていただきたいと思うのですが。
  45. 渡部恒三

    渡部国務大臣 先生のお考えと全く同感でございます。
  46. 大橋敏雄

    ○大橋委員 実はこれは個々の問題になりますけれども、私の友人に、友人と言うよりも知人と言った方がいいでしょうか、パラオ共和国と深いつながりを持った人がおります。これは福岡の人でございますけれども、この方が、民間人という立場からではございますが、親善友好あるいは文化交流というような立場で、非常に熱心にパラオと往来を重ねているわけですが、つい最近パラオの方から手紙が参ったわけでございますけれども、遺骨収集とかあるいは慰霊碑建設の問題にまで触れまして、大変な関心を寄せ真剣に考えている人がいるわけでありますけれども厚生省として、このパラオ諸島方面のそうした遺骨収集等を含めた対策を具体的にお聞かせ願いたいと思います。
  47. 入江慧

    入江政府委員 パラオ諸島におきます遺骨収集でございますが、パラオ諸島で戦没された方、大体概数一万六千二百人ということになっておりますけれども、これまでパラオ諸島につきましては十回にわたりまして遺骨収集を行いまして、そのうち約八千二百柱について収集を終わっておりますが、まだ現地で収集が終わってない地域もありますので、今後も相手国政府の協力を得ながら引き続き実施していきたいというふうに考えておるわけでございます。  それともう一つ、慰霊碑のお話でございますが、従来から旧主要戦域に戦没者の慰霊碑を建立してまいりまして、沖縄、硫黄島を含めまして、これまで五カ所建立してまいったわけでございますが、五十九年度は西太平洋戦域のパラオ諸島のペリリュー島に建設するということで、現在計画を進めております。
  48. 大橋敏雄

    ○大橋委員 これは五十九年度予算で実施されるということでしょうか、慰霊碑の方は。
  49. 入江慧

    入江政府委員 そのとおりでございます。
  50. 大橋敏雄

    ○大橋委員 パラオ共和国の幹部の皆さんも、この慰霊碑の問題についても非常に期待を寄せておられるようでございまして、恥ずかしくないものをぜひとも建立していただきたい。強く要望します。  次に話は変わりますが、中国の残留孤児の肉親捜しを急いでくださいという問題でございます。肉親の関係者もかなり高齢化なさっているわけでございまして、私が申すまでもなく、厚生省もそのつもりで一生懸命対策を進めておられると思いますが、この身元調査を早期に完了していただきたいし、最大限の努力を払っていただきたい、こう思うわけでございます。浅田孤児問題全国協議会というのができているようでございますけれども、そういう団体皆さんの声は、六十年度までにはぜひとも完了していただきたい、切望するということが言われているわけでございますが、果たしてこういう皆さんの希望がかなえられていくものかどうか、厚生省の今後の計画も含めてお答え願いたいと思います。
  51. 入江慧

    入江政府委員 中国残留孤児で肉親を捜してほしいという申し出がございますのはこれまで千五百四十六名ございまして、そのうちこれまでに七百四十二名が判明いたしております。したがいまして、未刊山孤児八百四名ということになるわけでございますが、この中には大ざっぱに申しまして約百名、もう既に訪日して親が見つからないで帰った者も含まれるわけでございますから、実質的に訪日しておられない方は七百名前後ということになるわけでございますけれども、今のお話しのように六十年度までに――要するに関係者方々が老齢化してまいっておられますし、孤児の方々が長年、昔から早く日本の土を踏みたいという念願が強いわけでございますから、私どもとしましてもできるだけ早くそれを実現して差し上げたいというふうに考えておりますが、現在七、八百名の方がまだおられるということになりますと、五十九年度百八十名の訪日調査を予定しておりますが、あと残りの方を六十年度一年でということになりますと、訪日調査の効果ということを考えても、一度に六、七百名の方をお呼びするということは困難ではないかと思いますし、中国側の事情もあろうかと思いますので、前向きにやっていきたいというふうに考えておりますが、六十年度までにということについてはちょっとお約束することはできないという状況でございます。
  52. 大橋敏雄

    ○大橋委員 これは中国政府とも綿密な相談をした上でないとまたできないことでもありましょうが、いずれにしましても、費用もかかることだし、あるいは複雑な問題もいろいろと出てくるわけでございまして、先ほど申しましたように、中国政府の御協力を得ながら特段の配慮が私は必要ではなかろうか。この点につきましても、大臣のお気持ちを聞かせておいてください。
  53. 渡部恒三

    渡部国務大臣 中国残留孤児の問題、大橋先生からいつも御心配を賜って大変ありがたいことでございます。お気持ちは私も同感なのでございますが、実は私も、厚生省をお預かりしてこの問題をお聞きしましたときに、この予算ぐらいは幾ら行革で厳しいといっても何とかならないものか、これは今先生お話しのとおり時間というものが極めて重要なわけですから、一日も早く解決するようにということでいろいろ当たってみたのでありますが、現実問題としては、この肉親捜しの問題は、予算の制約を受けるというようなこと以前のいろいろ難しい問題がありまして、一つは、先生御案内のように、この肉親捜しを徹底するに当たっては、政府の予算がどうこうというよりは、報道関係皆さん方、また幅広く国民皆さん方の御協力を得なければなりません。そうしますと、これはテレビにずっと出して国民皆さんに徹底していかなければならないわけですから、おのずから人数に限界がありまして、この前やったのは一番余計やったわけですが半分しか見つからなかったというのも、これは人数が多過ぎたのでないかというような批判等もありまして、またこの前から、それなら現地に行ってビデオを撮って先に事前調査を徹底させるというような意見もありますが、これも相手の国の国情というのは日本と異なりますので、我々が日本国内で考えておったアイデアというものが必ずしも向こうに行ってうまくいかないとかいろいろな出題がありまして、五十九年度は百八十人、これは精いっぱいの物理的に現実的に可能な範囲でということで今度やるわけでありますが、この成果がまたどうなるかということで、今度六十年度にも出てまいりますが、そういうことで、私どもは、この問題は決して行革云々での予算の制約を受けるというようなつもりはありませんけれども、現実的に物理的、技術的に限界というものがございますので、これは先生指摘のように、もう戦後四十年たったのでありますから、一年も早く解決するように努力いたしますが、六十年度に解決するというお約束はこの場でできないことをお許しいただきたいと思います。
  54. 大橋敏雄

    ○大橋委員 先ほどから戦没者の遺骨の問題等々も極めて重要な問題だと申してきたわけですが、中国の残留孤児の方々はいわゆる生きていらっしゃる人の問題でありまして、ましてやその肉親の方々の思いは、また本人の気持ちは察するに余りあるものがあるわけです。確かに物理的に考えてある程度の状況しか醸し出されないと思いますけれども、回数をふやすとか、また方法に工夫を凝らせばもっともっと成果が上がっていくのではないかと思うわけであります。  時間の関係もございますので次に移りますが、今度は中国の養父母の問題なんでございますが、こうして孤児の皆さんが来日なさいます。そして肉親とめぐり会って大変な感激をされているわけでございますが、その結果、日本に帰国して永住していこう、こういう非常に好ましい事柄だと私は思うわけでございますが、その反面と申しますか、中国にはまた高齢化しました養父母の方々が残されているわけでございまして、この問題が非常に大きな問題になってきているようでございます。とにかく養父母の生活の問題ですね。また、一たんこうして日本に来られた孤児の方々が、そのまま中国に戻らずに日本に永住してしまうというケースもあるようでございまして、現地の養父母の皆さん等から言わせれば、また新たな悲劇になっているようでございます。そういう方々のいわゆる養父母の扶養の問題というのは、これはやはり人道的見地からもまさに適切な措置を早急にとるべきではないか、私はこう思うわけでございますが、厚生省立場として、中国の養父母に対する考え方はどうか、お聞かせ願いたいと思います。
  55. 入江慧

    入江政府委員 肉親が判別いたしまして、孤児が日本に永住したいという希望を持った場合に、今お話しのありました養父母との関係を円満に解決するということ等が先決問題でございまして、この点は中国側からも強い要望がございまして、両国間で養父母の扶養の問題をどうするかということを長らく話し合ってまいったわけでございますが、ことしの三月の十七日に両国間で取り交わしました口上書の中で、この扶養費の問題につきまして、日本国に永住した孤児が中国に残る養父母に対し負担すべき扶養費の二分の一は日本政府援助する、扶養費の額、支払い方法については日中双方が別途協議するということが規定されたわけでございまして、現在、その扶養される養父母の範囲をどうするかというような問題、あるいは扶養費の額の問題、支払い方法をどうするかというような事務的な問題を詰めておるわけでございます。  なお、この口上書で触れられておりません残りの二分の一につきましては、民間の善意の寄附金から孤児に対して寄附するという考え方をとっておりまして、昨年の四月に設立されました財団法人中国残留孤児援護基金が募金を行っておるというのが現状でございます。
  56. 大橋敏雄

    ○大橋委員 生みの親の恩もさることながら、育ての親といいますか、その方の恩ははるかにさらに重いのじゃないか、私はいつもそう思うわけであります。そういうことで、この養父母の方々に対する対策は真剣に取り組まねばならぬ。  今もお話しがありましたように、日中政府間協議会においていろいろと合意がなされたようでございますが、この養父母問題につきましては、今の説明では、一応養父母の生活費を日本政府が半分見るという話でございますけれども、あとの半分はいわゆる日本の民間で何とか工夫をしなさいということでしょうか、ちょっと確認したいのですが。
  57. 入江慧

    入江政府委員 二分の一は政府が負担して、あと二分の一は民間の善意の寄附金によって賄うという考え方をとっております。
  58. 大橋敏雄

    ○大橋委員 合意事項の中で、一応永住帰国した孤児が負担を建前とするけれども、事実上負担能力は孤児にはない、そういうことで日本政府と民間で賄ってほしい、こういうことで合意がなされたようでございます。この孤児のいわゆる援護基金といいますか、これが設置されて具体的に今動いているわけでございますけれども、日中国交回復後に永住帰国した孤児は総数で一体何名になっているのでしょうか、その点をちょっとお尋ねします。
  59. 入江慧

    入江政府委員 百八十七名でございます。
  60. 大橋敏雄

    ○大橋委員 先ほどのお話しの中で、養父母の生活費に対する政府の考え方、養父母の生活費というものはこの程度で援助していこうという額についてはどうなったでしょうか。
  61. 入江慧

    入江政府委員 要するに、現在その実施方法の詰めを行っていると申し上げた中の一つの項目は、その額をどうするかという問題でございまして、考え方としましては、あちらの平均的な都市の一人当たり生活費を基準としまして、大都市あるいは農村というふうに格差を設けて額を決めていきたいということで、その額をどうするかということは、中国側の判断を現在求めているという段階でございます。
  62. 大橋敏雄

    ○大橋委員 これは新聞報道でございますけれども、養父母の生活費に対しては一世帯当たり五十万程度と見て、これは一括支払いをするのだというような記事が出ていたわけでございますが、これは単なる推測記事でしょうか。
  63. 入江慧

    入江政府委員 一応、昨年この口上書をつくるに際しまして、向こうの事務担当者がこちらに参りまして、そのときに、まだ口上書は結ばれてなかったわけですが、大体どうするかということを事務レベルで話し合ったことはあるわけでございます。そのときに、向こうの中都市といいますか、中くらいの地域における一人の生活費というのは大体二十五元ぐらいだという話がございまして、それを仮に想定して試算して、しかもその支払い方法としましては、日中両国の間でやるわけですから毎月とかそういうことにもいきませんので、一括してお払いしたらどうかというような話が出ておったというのは事実でございますが、そういうことで最終的に決まるかどうかというのは、現在のところペンディングだということでございます。
  64. 大橋敏雄

    ○大橋委員 そうしますと、そういう話が出ただけで、具体的にお金の授受、そういうことはまだなされてないわけですね。
  65. 入江慧

    入江政府委員 授受の方法も、実はどこからどこへ送るかというのも今度の協議の対象になっております。したがいまして、今のところ養父母の扶養をするということだけ決まっておりまして、額、支払い方法、送金の方法等すべてこれから決まるという段階でございます。
  66. 大橋敏雄

    ○大橋委員 先ほどいわゆる日本に永住した方々の員数が述べられたわけでございますが、そういう養父母の皆さん、もう全部いらっしゃるかどうかわかりませんけれども、かなりの数になると思うのですが、厚生省として、五十九年度のこういういわゆる養父母に対する生活費を見る予算額というものは幾ら計上してあるのですか。
  67. 入江慧

    入江政府委員 二千五百万でございます。
  68. 大橋敏雄

    ○大橋委員 一日も早くそういう具体的な内容が取り決められまして、養父母の生活費に渡るように強く要望しておきます。  それから、これから申しますのは孤児問題の協議会とかいろいろな団体方々がよくおっしゃっていることでございますけれども、私はこれは非常に重要な要請と思いますので、大臣もしっかり聞いておっていただきたいのですが、こうして来日しまして肉親捜しで一生懸命頑張るわけでございますけれども、その肉親と会えなくとも、一たび日本という祖国の土を踏めば皆さんの気持ちが非常に落ちつくという状況がある、したがいまして今後としどしと日本の土を踏ませるような対策をとっていただきたいということが一つですね。  それから、中国に残る孤児に毎年日本政府から幾らかの慰問金を送ってはどうか。要するに、もう日本には永住しない、こうして帰ってきていろいろの状況がわかった上で中国に残る孤児、こういう方々に対しても長い間の苦労に対して慰問金等を送ったらどうだろうかという問題。  それから、今後そういう一世孤児につきましては五回程度の日本への里帰り費用を公費で負担してもらえないだろうか、ぜひこういうのを実現してほしいという要請があるわけでございますが、いかがでございましょう。
  69. 入江慧

    入江政府委員 最初に慰問金の話でございますが、中国残留孤児と申しましても、御承知のように既に四十歳を超えた方々でございまして、それぞれ中国の地域社会で立派に自立して生活しておられる方でございますので、国としてこれらの方々に慰問金をお送りするということは考えておらないわけでございますけれども、訪日調査のために来られた際には、一般から寄せられました寄附金をもとにいたしまして一人十万円のお土産代をお渡しするというふうにしておるわけでございます。  それから、里帰りを五回にしたらどうかという要望でございます。今一時帰国、里帰りはお一人一回ということで限っておるわけでございますが、実情をお聞きしますと、先ほどの養父母の問題にもありましたように、こちらへ永住するということが必ずしも両方の家族との関係を円満に解決することにはならないわけでございまして、むしろ永住帰国するよりはやはり一時帰国の回数をふやしてほしいという御要望は非常によくわかるわけでございますけれども、まだ一時帰国されておられない方もございますので、その辺は私どもとしても非常にわかるわけでございますので、全体を見ながら検討させていただきたいというふうに考えます。
  70. 大橋敏雄

    ○大橋委員 先ほどの民間の援護基金が設立されたのですけれども、これは寄附を対象にしまして対策を練っていくということですが、その寄附の方は大体予想どおりに集まっているのでしょうか。
  71. 入江慧

    入江政府委員 これは昨年の四月に設立されまして、十億円の指定寄附を集めるということで発足いたしまして、六月三十日現在で約七億二千万円集まっております。
  72. 大橋敏雄

    ○大橋委員 じゃ、時間もたちますので、次に移らせていただきます。  こうして日中の政府間協議の結果、孤児の肉親が判明しなくとも日本に帰国永住することができることとなったと聞いているわけでございますが、こういう状況になりまして、今後永住帰国を希望する孤児はかなり増加してくることと推測されるわけでございます。そこで、私は、日本に永住する孤児の今後の生活の問題につながることとして、年金加入の問題について若干お尋ねしたいと思うのです。  現在政府提出いたしております国民年金法の改革案は、年金制度の根本的な見直しであり、抜本的な改革であるわけでございますが、この新国年法に基づいて、帰国永住する孤児たちの加入要件等についてどうなるのか、まずお尋ねしたいと思います。     〔愛知委員長代理退席、委員長着席〕
  73. 吉原健二

    ○吉原政府委員 今国会提出をしております年金法の改正案におきまして、海外に居住をしておられる日本人について新しく任意加入を認めることにしておりますし、それから、これまで海外に居住していたために加入できなかった期間を新しい老齢基礎年金の資格期間に算入するという措置を新たに講じているわけでございます。したがいまして、今お尋ねの中国から帰国をされました残留孤児の方々につきましても、これまで中国に居住していた期間昭和三十六年四月一日以後の国民年金が発足後の期間でございますが、その期間は資格期間として扱われることになりますので、当然国民年金あるいはお勤めの場合には厚生年金にお入りいただくことになるわけですけれども、そういった老齢基礎年金が帰国後の加入期間に基づいて支給をされるということになるわけでございます。
  74. 大橋敏雄

    ○大橋委員 今回の改正の内容によれば、日本人であればどこの国にいようとも任意加入できるのだ、こうなるわけですね。一たん日本国内に入りますと、今度は、日本に永住する人々は任意加入でなくて強制加入ということになりますね。  そうしますと、例えば具体的な例を申し上げるのですけれども、わかりやすく説明していただきたいのですが、実は数日前、七月十九日のことでございますけれども、中国の残留日本人孤児のある御婦人の方が、四十歳になる方でございますけれども、中国人の夫と二人の子供と一緒に日本に帰ってまいりまして、永住することが決まったわけです。その御婦人の方は、先ほど言いましたように現在四十歳。直ちに加入いたしましても、いわゆる老齢年金の受給要件というのは二十五年、こうなっているわけでございますが、その要件を満たそうとするならば、今さっき言ったように六十歳から六十五歳の任意加入の五年を入れてやっと二十五年になる。しかし、今のお話では、中国にいた昭和三十六年以降はみなし期間として空期間と同様な取り扱いをするというお話があったわけでございますが、とにかく三十六年四月以降の期間については二十五年の計算の中に入れるというふうに理解してよろしいですか。
  75. 吉原健二

    ○吉原政府委員 おっしゃるとおりでございまして、詳しく申し上げますと、今お尋ねの四十歳の女性の方は、昭和三十九年七月に二十歳になられたということでございますので、先ほどの昭和三十六年以降の二十歳以後の期間ということになりますと、三十九年から現在の五十九年までの過去二十年間が国民年金の資格期間の中に算定をされるわけでございます。そういうことで、これからどうなるかといいますと、これからは当然その女性の方は六十歳まで国民年金に入っていただく、当然加入ということになるわけでございますし、また、六十歳を過ぎましても、六十五歳までは国民年金に任意加入できる道も開かれておりますので、そういったことによりまして、今お尋ねの女性は、当然老齢基礎年金の資格を受けられるということになるわけでございます。
  76. 大橋敏雄

    ○大橋委員 これは孤児には関係ないわけでございますが、六十一年に新国民年金法が発足いたしますときに、三十歳以上の方々に対しては二十五年かけなくとも特例措置ができるのだ、経過措置がつくられるのだと聞いておりますが、その点はどうでしょうか。
  77. 吉原健二

    ○吉原政府委員 今お尋ねのような措置は講じておりませんが、ただ、先ほどから申し上げておりますように、過去の中国におられた期間あるいは海外におられた期間というものを当然新しい老齢基礎年金の資格期間である二十五年の中に算入をいたしておりますので、一定の年齢以上につきましてはそういった措置によって十分救済をされる、資格期間がつく、資格を満たすということになりますので、それ以上の措置は今回の改正案においては講じておりません。
  78. 大橋敏雄

    ○大橋委員 今私が申しました、六十一年発足当時に、三十歳以上には経過措置が設けられるのだというのはないと理解していいのですね。
  79. 吉原健二

    ○吉原政府委員 そういうことでございます。
  80. 大橋敏雄

    ○大橋委員 それでは、その御主人は中国の国籍なのですね。お年は幾つか知りませんが、新聞報道では奥様よりも二つほど若いというふうに見受けられたのですが、中国国籍で永住した場合は年金加入はどうなるのでしょうか。
  81. 吉原健二

    ○吉原政府委員 その中国人の御主人の場合でございますが、その方は中国人のままでございましても、これからは国民年金に当然加入をしていただく、原則としてはそういうことになるわけでございます。したがいまして、年金の資格期間との関係ではどういうことになるかといいますと、お尋ねの御主人の場合、三十八歳ぐらいのお年の方だというふうに聞いておりますけれども、六十歳になるまでは二十年間以上ございますし、また、先ほど申し上げましたように六十五になるまでは任意加入の道も開かれておりますので、今から約二十七年間、三十八歳から数えますと六十五まで二十七年間は国民年金に加入できる、当然二十五年という資格期間を満たすということになりますので、老齢基礎年金が受けられるようになるはずでございます。  それから、仮にその中国人の御主人の方が日本に永住する、あるいは帰化をされる、あるいは永住許可を受けられた場合には、その御主人の過去の期間も、先ほどの孤児の方である奥様の場合と同じようにその資格期間に算入をされますので、当然老齢基礎年金の資格を満たされる、こういうことになるわけでございます。
  82. 大橋敏雄

    ○大橋委員 今の点はよくわかりましたが、もしこの御主人が奥様より若くなくもっと年がいっていれば、その二十五年が満たされなくなりますね。要するに国籍日本国籍になればまた今のような経過措置といいますか特例措置が適用されて受給権ができますけれども、そうでない中国の国籍のままだとすれば、年齢次第ではやはり受給権は発生しないということになりますから、六十一年発足当時に何としても経過措置を考えてもらいたいと強く私は希望しておきます。これはいよいよ年金法案の審議の過程で、もっと掘り下げて質問していきたいと思っております。もう時間が減ってきましたので、年金の問題はそれで終わりたいと思います。  最後に一問お尋ねして終わりたいと思うのですが、近年、新たな大きな話題といいましょうか事柄といいましょうか、シベリア抑留者の補償問題に関する運動が活発に展開されてきていると思います。戦後処理の問題の一環としまして極めて重要な問題と考えるわけでございますが、厚生省として、この問題につきましてどのように把握をし、また対処しようとなされているのか、お尋ねしたいと思います。
  83. 入江慧

    入江政府委員 さきの大戦の終結の際にシベリアにおられた方々の数、私ども把握しておりますのは五十七万五千人の方々がソ連地域に抑留されていたというふうに承知しておりますが、その地で約五万五千人の方が亡くなられたというふうになっておりまして、大変お気の毒なことだというふうに考えておるわけでございます。  厚生省といたしましては、これら亡くなられた方の御遺族の方々に対しましては、遺族年金等支給しますほか、障害を持っておられる方には障害年金を支給しているわけでございますが、シベリア抑留者の方々の全体の問題につきましては、現在総理府に設置されております戦後処理問題懇談会で検討が行われておりますので、厚生省としてもその動きを見守っていきたいというふうに考えております。
  84. 大橋敏雄

    ○大橋委員 簡単に言えば、シベリア抑留中の食糧は自弁か国の負担かの補償問題のようでございまして、これは条約等も絡んで複雑な問題だろうと思いますが、そういう関係機関で真剣に取り組んで、一日も早くこの問題が解決できますように強く要望いたしまして、質問を終わります。
  85. 有馬元治

    有馬委員長 橋本文彦君。
  86. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 残留孤児あるいは未帰還者の問題といいますと、どうしても中国、ソ連の方が大きくクローズアップされるわけでございますけれども、それは抑留された方の絶対数からいってもやむを得ないと思うのですが、ここ数年、フィリピンの方でいわゆる肉親捜しが新聞等で報道されております。特にフィリピンのミンダナオ島のダバオというところでは相当数の日本人がおりまして、それが戦争末期、米軍の反攻が厳しくなってきたときに、現地の日本人と日系人の男子は日本軍に根こそぎ召集、徴用された、その結果現地の妻あるいは二世が大変な苦しみを受けた、終戦後その日本人はことごとく強制送還されてしまっている、こういう事実がありますね。その中で、強制送還されてしまったために父親に会いたいというような声が上がっておりますけれども、こういうフィリピン、あるいはビルマ、スマトラという、いわゆる南方地域にはどの程度の未帰還者がおられるのか、まずお聞きしたいと思います。
  87. 入江慧

    入江政府委員 南方地域の未帰還者でございますが、私どもの方に終戦前後の古い資料しかございませんで、その後調査、究明を行っているのでございますけれども、なかなか新しい資料が得られないということで、確かな数字は申し上げかねますが、少なくとも私どもが掌握しておりますのでは、五十九年七月一日現在で、南方地域の未帰還者総計三十一名ということでございまして、地域別に申し上げますと、フィリピンが十五名、ビルマ一名、タイ二名、仏印七名、スマトラ二名、中部太平洋四名ということになっております。
  88. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 この三十一名の方々は、その生存等はどうなっておるのでしょうか。
  89. 入江慧

    入江政府委員 先ほど申し上げましたような事情でございまして、これらの方々の生存ということになりますと、大部分の方は期待が持てないんではないかということでございまして、留守家族の御了解が得られれば、未帰還者に関する特別措置法による戦時死亡宣告の申し立てというのも考えていきたいというふうに考えております。
  90. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 先ほど話しました現地の二世の肉親捜し、こういう方についてはこの援護法では適用外となっておるのですが、厚生省としては、今後肉親捜しにどのような援助を与えるのか、あるいは力添えをすることができるのか、簡単で結構ですので、厚生省のまず見解をお聞きしたいと思います。
  91. 入江慧

    入江政府委員 南方地域に限らず、私ども、未帰還者につきましては随時新しい情報を得まして資料を、未帰還者がいたという情報があれば未帰還者の数をふやしますし、その方が死亡されたあるいは帰国の御意思がないということであればそれから落とすということで、出し入れの整理をしておるわけでございまして、これは常時の仕事としまして今後とも引き続き続けていきたいというふうに考えております。
  92. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 ちょっと質問がまずかったかもしれませんけれども、いわゆる南方地域における肉親捜し、これに対して厚生省はどのような援助あるいは助力はできるかということをお聞きしたかったのですが……。
  93. 入江慧

    入江政府委員 具体的に、南方地域に未帰還者を置いてきているという方々から肉親を捜してほしいというような御要望があれば、個々に対応していきたいというふうに考えております。
  94. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 話は変わりますが、日中国交が回復いたしまして、一時いわゆる残留婦人という方が日本に帰りましたですね。  まず、この残留婦人というのはどの程度おられたのか。そのうち、日本に一時帰国した方はどの程度なのか。そしてまた、そのまま中国にまた帰ってしまった婦人は何人ぐらいおられるのか。どの程度の数を把握しておりますでしょうか。
  95. 入江慧

    入江政府委員 現在中国に残留している、いわゆる残留婦人、元日本婦人は約三千五百名というふうに推定しております。  これらの方々は、御承知のようにほとんど中国人の方と結婚しておられるわけでございますので、大部分の者が永住を余儀なくされておられるわけでございますが、ただ、その中でも、両親に再会したいとかあるいは墓参をしたいというような御要望は非常に強いわけでございまして、国交回復直後の四十八年から一時帰国という制度を設けまして旅費の負担をしておるわけでございますが、五十九年六月末現在で、中国からこちらに一時帰国した、総数で申しますと三千四百九十四世帯、六千五名でございますが、そのうち残留日本婦人は二千五百七十一名という数字になっております。
  96. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 三千五百名の残留婦人が現在おられる。で、一時帰国しまして、日本に定住して、そのまま日本に住んでしまったという婦人もおりますか。おられましたら、その数を……。
  97. 入江慧

    入江政府委員 先ほどの一時帰国者と同じ五十九年六月末現在で、永住帰国された残留元日本婦人は八百五十七名ということになっております。
  98. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 六百五十七名ですか。
  99. 入江慧

    入江政府委員 八百五十七名でございます。
  100. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 この日本に永住しました八百五十七名の婦人に関しましては、どういうような補助というか援助があるのでしょうか。
  101. 入江慧

    入江政府委員 こういう方々が永住帰国する場合は通常の引き揚げ援護の措置をとるわけでございまして、こちらに帰ってこられるときの旅費の負担、あるいは帰国したときの帰還手当等の給付をするということでございます。
  102. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 そうしますと、長い間向こうにおられまして、我が国に帰ってきても大変生活環境も違う、また仕事等も困難だろうと思われるわけですが、そういったような生きるための扶助というものはない。としますと、あくまでもその残留婦人を受け入れる個々の家庭がしっかりしていなければ帰れない、こういう実情でございますか、現状は。
  103. 入江慧

    入江政府委員 中国残留孤児と若干違います点は、残留婦人は戦前に向こうへある程度の年齢になってから行かれたという点で、日本語を大体話せるということが非常に違う点じゃないかと思いますが、それにしましても、四十年間全然違うところで生活されたわけですから、帰国されてすぐ就職するということは非常に困難ではないかと思います。こういう方々に対する定着援護は、先ほど申し上げました金銭的な面のほかに、公営住宅のあっせんでありますとかあるいはその他、生活が当面困難であれば一般福祉施策で対応する。具体的に申し上げますと、生活保護でありますとかそういうことで対応しておるわけでございます。
  104. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 まず実情を本当はお聞きしたかったのですけれども、八百五十七名の方の実情というのは、厚生省は把握しておりますか。まだそこまではわかりませんか。
  105. 入江慧

    入江政府委員 特に実態調査はこれまで行っておりません。
  106. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 ところで、三千五百名が判明しておりまして、約八百五十名、まだ二千七百名がここにおられるわけですね。この中国に残留しておられる御婦人方のいわゆる平均年齢、これはどの程度になりますか。
  107. 入江慧

    入江政府委員 その前にちょっと数字のことを申し上げますと、三千五百名の中には永住帰国された八百五十七名を除いてございまして、現在中国に残留している元日本婦人が約三千五百名というふうに推定しております。  平均年齢については調査いたしておりませんが、戦後二十前後で向こうへ渡航されたということになりますと、まあ六、七十代ということになるのではないかと思います。
  108. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 三千五百名の方が中国におられるわけですけれども、これに対しては何の補償もないわけですか。
  109. 入江慧

    入江政府委員 今の「補償」というお話してございますが、中国におられる残留婦人に対する補償でございますか。(橋本(文)委員「はい」と呼ぶ)この方々はあちらで恐らく中国の方と結婚されて、あちらで社会人として自立されておられるわけでございまして、日本政府として補償するというようなことは考えておりません。
  110. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 平均年齢が推定で六十歳から七十歳だろうと思われますが、一時帰国して日本の土を踏み、家族にも会っているわけでございますけれども、人生の終末をだんだん迎えつつある、やはり何回でも日本に帰りたい、望郷の念はあると思うのです。あるいは肉親に会いたい、あるいは墓参もしたいだろう、こう思われるわけですが、先ほど大橋委員の質問に答えまして、一人一回だけの帰国を認めるというお話がございましたけれども、こういう高齢になっている方のことを考えて、人道上もう一度我が国に帰国を認めるような、旅費、滞在費を国の方で何とか面倒を見ようというお考えはございませんか。
  111. 入江慧

    入江政府委員 先ほど申し上げた数字から申し上げましても、まだ残留婦人の中で一時帰国したことがない婦人も残っておられますので、私どもとしては、そういう方を優先的に扱わなければならないと考えております。今お話しのありましたように、老境に達してもう一度というお気持ちも非常によくわかるわけでございまして、その辺、中国孤児等の問題もありますので、援護施策全体の中で検討させていただきたいと考えます。
  112. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 私が勘違いしているのかもしれませんが、一時帰国なされた方は、この三千五百名じゃなくて、日本に定住されている方が八百五十七名おるわけですが、この八百五十七名を除きまして我が国に一時帰国で来た人は何名ぐらいおるのですか。
  113. 入江慧

    入江政府委員 説明が不十分だったかもしれませんが、永住帰国された方の八百五十七名を除いて、現在中国におられる御婦人が約三千五百名です。そのうち一時帰国された方は二千五百七十一名でございますから、引き算をいたしますと、九百名ぐらいの方が帰ってきておられないという計算になるわけでございます。
  114. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 そうすると、九百何名の方については無条件で一時帰国は認めましょう、しかし一回帰ってきた二千五百七十一名については全体的なバランスの中で見直したい、こう伺ってよろしいですか。全体的な中でもう一度考えたいと。
  115. 入江慧

    入江政府委員 そういうことでございます。
  116. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 人道上からもなるべく回数を多くしていただきたい、このようにお願いいたします。  先ほど大橋委員からもありましたけれども、来年はいよいよ終戦四十年を迎えます。大きな戦争がありますと、その終戦処理には百年かかる、こう言われております。約半分になるわけでございますけれども、遺族の方もどんどん高齢になって、また遺骨の収集も困難をきわめている実情。しかし、こういう厚生省、特に援護局の仕事は地味でございます。決して派手さはないのですけれども、遺児との面会あるいは遺骨の収集によって改めて戦争の悲惨さ、愚かさを世間に訴えることができますし、戦争してはいけないんだなという感じを受けるわけでございます。そういう意味で、平和を求めるという見地からも大変な仕事をしている、私どもはこう思っております。  そこで、いよいよ四十周年を迎えてしまうわけですけれども、遺族捜しあるいは遺骨収集、いわゆる戦後処理のビジョンというものをどこに掲げておられるのか、それを大臣からお聞きしたいと思います。
  117. 入江慧

    入江政府委員 明年四十周年を迎えるわけでございますが、お話しのとおり、遺骨収集にいたしましてもまだ約半数の御遺骨が残っているということでございますし、中国残留孤児の問題というような最近新たに生じた問題もございます。  私どもいろいろな問題を抱えておるわけでございますが、すべて御遺族あるいは関係者がおられて解決を望んでおられるわけでございますので、できる範囲で前向きに施策を充実させていきたいというふうに考えます。
  118. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 厚生省としては、現段階では何年度には何をするかというような具体的な方針はまだないわけですね。
  119. 入江慧

    入江政府委員 例を遺骨収集にとりましても、ここに遺骨があるという情報は随時寄せられるわけでございまして、御遺骨についてそういう情報がある限り、遺骨収集は続けていきたいと考えておりますし、あるいは慰霊巡拝等も御遺族の要望にこたえて引き続き行っていきたいと考えておるわけでございます。
  120. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 遺骨のある場所が判明した、あるいは遺族からの要望によって行動を開始するのではなくて、厚生省としてこういうことをするのだ、こういう計画があるんだということを国民にPRする計画がおありかと今伺ったのです。それによって戦争の愚かさ、悲惨さというものを常に世間にアピールできるのではないか、こういうことを思って質問したわけでございます。要するに要望があったから行くというのじゃなくて、もっと前向きな姿勢で援護行政に取り組むことができないのでしょうか、こういう質問でございます。
  121. 入江慧

    入江政府委員 私の表現が悪かったかと思いますが、私どもは戦後処理を担当しているわけでございまして、ほかの行政とちょっと違いまして、何年までにどうこうするというような計画にはなじまないのではないかと私は考えますけれども、従来から行っております慰霊事業、具体的に言いますと、遺骨収集なり慰霊巡拝あるいは慰霊碑の建立、こういうものについても計画的に行ってきておるわけでございまして、それを引き続き行っていきたいと考えているわけでございます。
  122. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 大変御苦労なことでございますけれども、ひとつよろしくお願い申し上げます。  終わります。
  123. 有馬元治

    有馬委員長 塩田晋君。
  124. 塩田晋

    ○塩田委員 戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案につきまして、渡部厚生大臣関係局長に御質問を申し上げます。  戦傷病者、戦没者、遺族、これを見るごとに心が痛んでやまないところでございます。このような事態が起こったことにつきまして、これは戦争の惨禍がもたらしたものだと思います。しかも戦争中のみならず、戦後四十年過ぎまして、なお心痛める問題が全国各地、また世界各地に今なお残っておることは、まことに遺憾至極でございます。  戦争があってはならない、起こしてはならない。すべては戦争から来る結果のもたらすものでございます。第二次世界大戦と言われる戦争がどのような原因で起こり、どのような形で戦われたにいたしましても、各国それぞれに大義名分があり、また祖国のだめにそれぞれの国が全力を挙げて戦ったものであろうと思います。そこから出てきた戦死者、戦傷者、大義名分がいかがであろうと、その悲惨さは国民の上にかかってきた悲惨な事態でございます。これに対しまして、国として十分な援護の措置をしなければならない、こういうことは当然のことだと思います。  その忌むべき戦争が、第二次世界大戦後なお現在までに七十件もあった。数えようによりましては百五十件という戦争が、局地戦争中心といたしまして戦後なおあったということ、現在もなお、この地球の上で悲惨な戦争が戦われているのが九件あると言われておるわけでございます。その戦争から来る悲惨な状況というものは現になお起こっていること、人類の一人として本当に心を痛めるものでございます。戦争がなくなるように、何としても、人類の悲願として全力を挙げて取り組まなければならないことだと思うのです。こういったことにつきまして、厚生大臣はいかがお考えになりますか、お伺いいたします。
  125. 渡部恒三

    渡部国務大臣 戦争があってはならないことは当然のことでございますが、私、厚生行政をお預かりしまして、戦後四十年がたとうとしておるのにかかわらず、いまだ戦争の傷跡が生々しく、多くの問題を残しておることを痛感するたびに、今先生からお話しがありましたように、我が国の歴史はもとよりのこと、人類の歴史の中に二度と戦争はあってはならないし、我々は、戦争というむごたらしい惨劇がこの日本の歴史にも、人類の歴史にも起こらないように、全力を尽くすべきであるという決意を今新たにしておるところでございます。
  126. 塩田晋

    ○塩田委員 戦争がもたらす悲惨さというもの、これは十分に御認識をいただいておるわけでございます。  日本におきまして戦死者が二百五十六万、アメリカにおきまして五十四万、中国百五十万、ソ連六百十一万という、防衛庁監修の資料によりますとそういう数字が出ております。厚生省で把握しておられます戦死者あるいは戦傷者、その数は日本についてはどれくらいと把握しておられますか。
  127. 入江慧

    入江政府委員 第二次大戦における戦没者でございますが、軍人軍属などが外地二百十万、内地及び周辺が二十万人ということでございます。あと邦人が外地戦災死没者を含めまして八十万人で、計三百十万人というふうに考えております。(塩田委員「二百万じゃないですか」と呼ぶ)通常二百五十万と言われておりますのは戦没者でございまして、今申し上げました三百十万の中には戦災死没者が入っております。(塩田委員「今三百万と言われましたね」と呼ぶ)はい、三百十万です。(塩田委員「足したらそうならないじゃないですか、三百十万にならないでしょう。内訳を言われたのを足したら……」と呼ぶ)もう一度申し上げますが、軍人軍属などが二百二十万でございます。外地二百十万、内地及び周辺が二十万人です。邦人が外地戦没者三十万人で、戦災死没者が五十万人ということでございます。
  128. 塩田晋

    ○塩田委員 わかりました。そのほかにも戦傷者の関係は。
  129. 入江慧

    入江政府委員 約十五万人というふうに承知しております。
  130. 塩田晋

    ○塩田委員 十五万人というのは、現在戦傷者手帳を持っている人が十五万人で、戦争中から数えますともっと多いんじゃないですか。
  131. 入江慧

    入江政府委員 厚生省が担当しております戦傷病者特別援護法に基づきます手帳を持っておられる方が約十五万人……(塩田委員「現在数でしょう」と呼ぶ)いいえ、出した数でございます。――現在数です。
  132. 塩田晋

    ○塩田委員 今言われましたのは現在手帳を持っている人ですから、間もなく戦後四十年たちますから、その間亡くなられた方もあるし、戦時中の人もあるでしょう。ですからそんなに少ない数じゃないんじゃないですか。例えばソ連の場合は戦死者六百十一万、戦傷者千四百万、合わせて二千万という被害が一般的な数字として公表されておりますね。米国の場合は戦死者が五十四万人に対して戦傷者が六十七万という数字があるのです。
  133. 入江慧

    入江政府委員 私ども、今の十五万人以外の数字を把握しておりませんので、ソ連の数字等がどういうものか、調べられるかどうか検討してみたいと思います。(塩田委員「いや、それはいいですけれども日本の場合」と呼ぶ)日本の場合は、今私ども把握しております数字は約十五万人ということでございます。
  134. 塩田晋

    ○塩田委員 それは現在数でしょう、十五万人というのは。だから、私が聞いておるのは、第二次大戦の被害としての戦傷者の数を聞いておるわけです。
  135. 入江慧

    入江政府委員 累積はどれくらいかという御質問かと思いますが、その数字は把握しておりません。
  136. 塩田晋

    ○塩田委員 把握することができないのであれば仕方がないわけでございますが、戦争の被害というものにつきまして、政府として、どれぐらいのものであったかということぐらいは、現在の手帳を持っている人だけじゃなしに、やはり把握をしておかれる方がいいんじゃないかと思いますね。  非帯に悲しいことでございますけれども、やはり国民の受けた大変な惨害でございます。まことに心が痛むわけでございます。戦争がどのような原因で起こるか、これについてもやはり十分に検討し、あらゆる手段を尽くして戦争の防止に努めなければならないと思います。大臣がそのような意向を示されたとおりでございます。  現在行われている戦争、これがレバノンであり、あるいはまたイラク・イラン戦争であり、あるいはまたカンボジアにおけるベトナムの侵略であり、グァテマラの内戦であり、各地で行われておる。アフリカにもあるわけでございますが、また、そこから来るところの避難民、アフガニスタンにおきましても既に四百万人が国外に避難民として出ておる。あるいはベトナム、カンボジアにおきましても、よく言われました例のボートピープル、今なお船に乗って海外に避難をしようとして命がけで出かけておる、こういう状況もございます。  いずれにいたしましても、戦争というものを何とかこの地上からなくするということは人類の悲願だと思います。あらゆる努力をして、戦争のないように、そして我が国がそのような戦争の被害をこうむることのないように、十分の国の政策を確立して備えていただきたい、このことを念願申し上げる次第でございます。  そこで、具体的にこの戦争によって生じました、今なお心を痛めます中国に残されております日本人残留孤児の問題でございます。この中国における戦争で、これは暴虐なるソ連の条約破棄による突然の侵略侵入によってもたらされた悲惨な事態という見方もございますし、また日本軍国主義のもたらした結果だと言う人もありましょう。それぞれ国の言い分があろうと思うのですが、しかしいずれにいたしましても、当時生まれたばかりの明らかな日本人、その孤児がそこに残され、たくさんの人が亡くなっていった中で、幸いにも中国人の好意を得て戦後四十年間生き延びてきたというこの厳然たる事実、日本人の血が確かに日本人としてそこにある。しかし、養父母等の温かい庇護のもとに今日まで生命を長らえた、こういう事実、この上に立ちまして、やはり日本の国といたしまして、何としても早くこの問題を解決しなければまだ戦後処理は終わっていないと言わなければならないと思います。  そこで、中国在住の日本人孤児につきましてお伺いいたしますが、たびたびここでも御質問申し上げましたので、当面今一番問題になっていること、このことにつきまして御質問いたします。  この毎年参っております肉親捜し、親捜しにつきましては、今後どのような計画を持って進めていこうとしておられるか、お尋ねいたします。
  137. 入江慧

    入江政府委員 肉親捜しにつきましては、これまで肉親を捜してほしいという要望がありました数が千五百四十六名でございまして、このうち判明したのは七百四十二名、したがって未判明が八百四名ということになるわけでございますが、できるだけ早くこれらの方々の訪日調査を実現したいということで、五十九年度は百八十名の訪日調査を行いたいということで、現在中国側を打診しておるところでございます。  しかしながら、さら僅かなり多数の方が残られるわけでございまして、関係者の老齢化ということを考えれば、これらの方々の訪日調査というのをできるだけ早く実現したいわけでございますが、調査方法等あるいは中国側の事情から一挙にというわけにもいきませんので、できるだけ前向きに訪日調査を実現しますとともに、これまで、肉親捜しにつきましては、訪日調査だけでございませんで、いろいろ私どもの持っております手持ちの資料による調査でございますとか、報道機関を通じての調査、あるいは市町村、都道府県に、肉親を捜している孤児の方々の写真なりあるいは手がかりになるような事項を記載した冊子を配布しておりますので、こういう今まで行ってまいりました手法を総合的に活用しますとともに、中国側の協力も得ながら、さらに新しい方法はないかというふうなことを探っていきたいと考えております。
  138. 塩田晋

    ○塩田委員 今言われました八百四名につきましては、大体中国政府が出した孤児証明書を持っておる者が大部分と考えてよろしゅうございますか。
  139. 入江慧

    入江政府委員 ちょっとそれは私どもではわかりません。
  140. 塩田晋

    ○塩田委員 大部分そうだと考えていいのじゃないですか。
  141. 入江慧

    入江政府委員 孤児証明を持っているかどうかは厚生省としてはわかりません。聞くところによりますと、あちらでも、東北三省でも、ある省といいますかある地方団体では持っている人は多いけれども、ある地域では全然持っていないというような話も聞きますし、実態は私ども承知しておりません。
  142. 塩田晋

    ○塩田委員 前に聞いたのとちょっと様子が違うのですが、大部分持っているというふうに考えておったのですが、そうじゃないのですかな。
  143. 入江慧

    入江政府委員 その千五百四十六名の中には、こちらの肉親から捜してほしいという要望のある者もおりますし、中国におる孤児の側から日本大使館等に捜してほしいというふうに希望を申し述べている者もいるわけでございますけれども、中国側から希望が出ておられます方々で、この数に含まれる方々は、日本人孤児であるということは向こうでわかっておると思いますけれども、今お話しの孤児証明という公的な証明の文書を持っておられるかどうかというのは、ちょっと私ども承知しておりません。
  144. 塩田晋

    ○塩田委員 日本人であるということを、文書であるかないかは別にいたしましても、千五百名というのは、中国側が日本人孤児であると認めておる者ですね。
  145. 入江慧

    入江政府委員 大部分はそうでございます。
  146. 塩田晋

    ○塩田委員 孤児証書を持っているか持っていないかぐらいは中国政府に聞けばわかることで、それぐらいのことは調べておいてもらいたいと思います。  それから、今言っておりますのは、まず最初に、当面早急に対策をしなければならぬという対象者が千五百名であり、今残っている未判明者が八百四名だというふうに、対象者をまず把握する必要があるから申し上げておるのですね。はっきりした者から先に早急に手を打つ必要があると思います。  今、毎年肉親捜しに見えておるのは、予算上と実際はどれぐらいの人数になっていますか。
  147. 入江慧

    入江政府委員 五十九年度は今申し上げましたように百八十名、昨年も百八十名でございましたけれども、実行は百十名ということでございました。
  148. 塩田晋

    ○塩田委員 百十名の実績で、この調子で毎年やっていきましても八年かかるわけですね。
  149. 入江慧

    入江政府委員 したがいまして、これまで五回訪日調査を行ったわけでございますが、御存じのように、第二回の訪日調査を終わった段階で、養父母の問題その他の問題が中国側から提起をされまして、一時暗礁に乗り上げておった。それで、この養父母の問題等を円満に解決するのにはどうすればいいかということを、両政府の事務レベルで協議しておったわけですが、それと並行して、第三回、第四回、第五回というのは、その都度こちら側の申し出に向こうが応ずるという形で訪日調査が行われたわけでございます。したがいまして、こちらが計画していた数が必ずしも年度内に消化されなかったという事情があるわけでございますが、第六回以降につきましては、今年三月十七日に口上書の締結ができまして、訪日調査については、中国政府も人道上の立場から協力するということを明言しておるわけでございますので、今年度の百八十名というのは、私どもとしましては実施できるんではないかというふうに現在のところ考えております。
  150. 塩田晋

    ○塩田委員 大臣、今聞かれましたとおりでございまして、実際百八十名の予算化をしておられましても、実行されたのは百十名、はっきりと今、日中間におきまして把握されている人数が八百とまだ残っているわけですね。これを百人で八年かかるということになりますから、そういうことでなしに、もう八百人は一挙に船でも持っていって全部来ていただくということをやるぐらいなことは、もうまず八百では私は済まないということを前提にして言っているんです。まず明らかになっている八百人を一挙にもう一、二年で解決してしまうというぐらいのことは、ぜひとも考えていただきたいと思うんですが、大臣、いかがでございますか。
  151. 渡部恒三

    渡部国務大臣 私も、厚生省でお世話になって、残留中国孤児の問題を担当いたしましたとき、これは先生と全く同じような考えを持ったのでありますが、ところが現実には、この作業というものがいろいろ物理的、技術的な制約がありまして、それが決して、厳しい財政事情で予算がないとかそういうことでありませんで、仮にそれらの予算を十分確保することができたとしても、一挙に八百人をやってしまうというのにはいろんな制約がございます。これは何しろ四十年たってしまっておるわけですから、四十年の時間というものは非常に大きいことをこの作業をするたびに痛感するのでありますけれども、これはお帰りいただいても、肉親とお目にかかるというところまでまいるためには、報道関係皆さん方の全面的な協力も得なければなりませんし、しかしテレビで放送するといいましてもおのずから人員的な制約は免れませんし、そういうことでいろいろ私も工夫してみたのでありますが、現在のところこの八百人を一年間で一挙にやってしまうというようなことが可能でないために、百八十人ということをまた予定させていただいたわけであります。  考え方としては、これはもう年も毎年とっていくことでありますし、これは戦後四十年たつのでありますから、そこで思い切って一挙に解決しなければならないという気持ちにおいては先生と同感なのでありますが、実際上、行政責任者としてこれを取り扱っていくということになりますと、いろいろの困難な問題等がありますので、できるだけこれらの困難な問題を克服して、先生のお考えと私の考えは気持ちの上では同じなのでありますから、早くこれを完了させるように努めて努力してまいりたいと思います。
  152. 塩田晋

    ○塩田委員 大臣のお考えをお聞きいたしました。いろいろ事務的に難しい問題があるということは、私もわかっております。しかし、それを克服する道もまたあると思うんです。恐らく今百八十人がいっぱいであってそれ以上は受け入れ態勢が難しい、あるいはやってきてもらったときに通訳あるいはお世話をしていろいろ事情を聞くその態勢ができないということだ、それがネックだということを言われると思うんです。しかし、それは役所だけで今やっておられますが、民間のボランティア、また既に帰ってきて日本の社会に定着していっている人もあるわけです。そういった方々も御協力願い、役所だけでなしに、オリンピックセンターを今まで使っておるけれども、そこの場所がないんです、こんな話も前にありました。それは余りにも枝葉末端の話でございまして、解決をしようという気があれば、そんなことはいつでも解決できる問題ですね。通訳の問題にしたって、民間の方々を活用すればもっともっと一挙に何百人とできることは可能だと思うんです。それから、あれは年に三回か四回分けてやっていますけれども、それももっと回数を多くするとか、もっともっと知恵を出せばこれは解決する道はございます。  そして、もう肉親といっても、孤児が四十歳でしょう、あるいは四十歳を越えていますね。その親は六十、七十でしょう。だんだん毎年亡くなっていきますね。それを思えば、これは本当に知恵を出して、早期にまず八百人を解決してもらいたい。  私が申し上げておりますのは、今わかっている者、日中政府が認めているのが八百人であって、そのほかにまだたくさんおられます。私も現地へ行きまして、そしていろいろな人に会いました。孤児にも会い、いろいろな話を聞きました。公式でない、本当に腹を割っての、言えない話も聞いてきました。そして、いかにも恥ずかしながらということを言って出てこられた六十、七十の御婦人も、老婦人もおられました。そういう方、まだたくさんおられるんです。その人たちまでも今すぐと言っておるわけじゃないんです。まず、今はっきり孤児としてわかっている、両国政府が認めている日本人、これはやはり早期にぜひとも解決をしていただきたいのでございます。そのほかにも潜在的にたくさんおられる。言ってこられないだけ、自分で身元を隠したままで、中国社会に溶け込んでおられる方がたくさんおられるんです。そういった方も含めて、その後の問題も考えていただきたい。  身元の未判明の日本人孤児の永住帰国の道があるはずですね。親がわかって帰ってくる人、親がわからないで今中国に再び帰っておる人、また、まだ親捜しに来てないけれども日本人であるということで、日本に、祖国へ帰国したい人。本当に大臣、瀋陽に私も行きました。それから遼寧省各地へ行きましたが、孤児は祖国日本に帰るということ、日本のことを一生懸命朝から晩まで考えていると言っていいんです。ラジオも日本のラジオが聞けますしね。その中で、その思いを本当に四十年続けてきているわけでしょう。これからも続けていくということですね。私は、「祖国」という言葉をこれほど重く聞いたことはないんです。日本国内では「祖国」という言葉は余り聞かれなくなっておりますけれども、本当にその人たちは心の底から日本を祖国と思い、祖国の空をにらんで毎日暮らしておるんです。ひとつこの心情を察していただきたい。我々行きますと、あちこち通るであろうという道路に立って待っていますね。そして宿舎へ行きますと、中へ入れないものですから、玄関で何人か集まっています。そして、そういった情報は日本人孤児の間にすぐ伝わって、どこへ行くはずだということを聞いて、そこに立って待っている、こういう状態なんです。これをひとつぜひとも察していただきたいんです。身元未判明で永住帰国できる道があるわけですから、それをひとつ促進をしていただいて、民間のボランティアで身元引受人があれば帰れる道があるわけですね。その関係の旅費あるいは身元引受人の手当等の予算化がどのように行われているか、またそれの執行状況はどうなっているか、お伺いいたします。
  153. 入江慧

    入江政府委員 肉親が見つからなかった孤児の訪日につきましては、ことしの三月に交換されました口上書で、日本政府は受け入れるということになっておりまして、現在、どういう手続で訪日調査を認めるかということの日本側の案を中国側に対して投げかけておりまして、中国政府は現在それについて検討しておるという段階でございますので、できるだけ早く結論を出してもらうように中国側に働きかけていきたいと思います。  そういうような事情でございますので、現在のところ、まだ予算執行という段階に入っておりませんが、御質問がございましたので、五十九年度予算で計上しております身元未判明孤児に関する予算を申し上げますと、約三千三百七十万ということになっております。それの主な内訳は、帰国に要する旅費、それから帰った当座差し上げる帰還手当、要するに立ち上がり資金でございますね。そのほかに、今お話しのございました引き受けてくださる方に対する引受手当等でございます。それで、この三千三百万の想定しております対象数は三十二世帯、百四名ということになっております。
  154. 塩田晋

    ○塩田委員 この予算は五十八年度も計上されておりましたですね。
  155. 入江慧

    入江政府委員 されておりました。
  156. 塩田晋

    ○塩田委員 五十八年度も五十九年度も計上されておるけれども、いまだ一銭も使われてない、こう考えていいですね。
  157. 入江慧

    入江政府委員 そのとおりでございます。
  158. 塩田晋

    ○塩田委員 大臣、このとおりでございます。口上書がことしの三月十七日に日中両国間で正式に交換されながら、どうしてそれが実行に移せないのか。どこにネックがあるのか。私は、実はことしの三月、口上書が交換されるのを一日千秋の思いで去年一年間待ったのです。今にもあるように、去年一年間と言われたものだから、待っておった。口上書が交換できれば直ちにこれは動かせるのだ、執行できるのだ、実現するのだということで待っておった。そして一年かかって口上書が交換されたのに、いまだにこれが実行されないというのはどういうことなんですか。何がネックですか。
  159. 入江慧

    入江政府委員 三月十七日に口上書が交換されまして、それを具体的に実施する方法につきまして、五月上旬でございますか、こちらの担当者が中国へ行きまして、大使館の担当者と打ち合わせをしまして、その案は直ちに中国側に提示されておるわけでございまして、その中国側が、五月上旬にこちらが提示した案を現在検討しておるということで、それについての検討結果を示していただいてないということで、したがいまして、向こうから問題があれば問題があるということを言ってくるのだろうと思いますけれども、そういうようなのが現状でございます。  したがいまして、在北京の日本大使館を通じまして中国側の返事結論をプッシュいたしまして、できるだけ早くこの未判明孤児の訪日ということを実現したい、そういうふうに努力していきたいというふうに考えております。
  160. 塩田晋

    ○塩田委員 大臣、このことをよくお考えいただきたいと思うのです。私も実は、これは具体的に名前を出せば、閻喜鳳という人とは、前々から、このようになるからもうちょっと待ってくれと言って話をして、ずっと手紙をやりとりして一年以上たっておるわけです。これに乗れるから、予算化もしてあるからということで話してある。本人はそのつもりで待っておるけれども、いまだに実現しない、どうしてですかという問い合わせなんです。何回も来ています。日中関係は今友好関係で最もいい状況だと思うのです。これは大臣、何とか外交ルートも通じ、この問題を早期にひとつ解決していただきますようにお願いをいたします。  このほかに別のルートで、中国にいながら日本人孤児証明書を持っておって日本国籍を取得して、既に何人か帰ってきている人があると思うのです。そういうルートもあるのですね。これはどういう状況になっていますか。
  161. 入江慧

    入江政府委員 ことしの春ごろから、御本人は中国にいるまま、こちらで代理人を立てまして、今お話しのありました孤児証明書等を資料にしまして、日本人であることを家庭裁判所に申し立てて就籍した方が七月現在で四名おりますが、そのうち二名の方は日本に帰国しております。こういう代理人による就籍という方法がことしの春にとられる以前に、身元のわからない孤児が親を捜すために自費でこっちへ来まして、それで就籍手続をとった者は十一名という現状になっております。
  162. 塩田晋

    ○塩田委員 大臣、このようにいろいろなルートがあり、予算化もされながら、本当に一人、二人とか、まだ全然予算化されても動いてない、こういう状況でございます。ボランティアの人たちは、身元引受人になろう、また帰ってきてからも言葉の問題から習慣の問題から就職の問題まで世話をしようという人たちはたくさんおられるのです。しかし、両国間の口上書があり、そして手続、方法がちゃんと決まるまで待ってくれ、こう言ってあるのですが、いつまで待たされるんだということなんです。私は、責めるわけじゃございません、ぜひともこれを円滑に実行して実効を上げていただきたいということをお願いをするために申し上げておるわけでございます。  それから、養父母の扶養費の問題、これもまだやっぱりひっかかっておるのじゃないでしょうかね。基本的には話がついても、額その他で。これはどうなっていますか。
  163. 入江慧

    入江政府委員 養父母の扶養の方法、額、支払いの方法等についても、先ほど申し上げました未判明孤児の訪日手続等を向こうへ提示した際に向こうにお示ししているわけでございまして、それについての返事も現在のところ来てないということでございます。
  164. 塩田晋

    ○塩田委員 最後に、帰国後の中国残留日本人孤児の定着対策、それから実態調査ですね、その後のアフターケアといいますかフォローをどうしておられるのか、そういった問題。また、中国へ日本側が行って現地調査をして、面接もして、またテレビ、写真等を撮って日本へ持って帰って、それをまた肉親捜しの材料にする、こういった計画もあったと思いますが、そういった問題がどうなっているのか、どういうお考えかをお伺いいたしまして、終わります。
  165. 入江慧

    入江政府委員 こちらへ帰ってまいりました孤児の生活実態でございますが、一昨年五十七年の六月に、五十年以降に帰国しました六十八人の孤児について実態調査を行っておりますが、それの概要を申し上げますと、帰国当時はほとんどの世帯が生活保護を受けておりますが、二、三年を経過しますと日本の社会生活にもなれてきまして、日本語の会話も基本的な部分はかなりマスターして、就労などしておるわけでございまして、また三、四年たちますと、三分の二の世帯が生活保護から脱却して自立していっております。  このほか、使用している住宅の状況なんかを見ますと、七〇%ぐらいの者が公営住宅に入っておりますし、就労している者は、孤児の男性で見ますと七割程度の者が就労しておりますが、現在就労している仕事にまあまあ満足しているというのが八割程度というのが現状になっております。  なお、孤児の生活実態については、本年度、改めまして、帰国しております百八十七世帯全世帯について調査を行う予定にしておりまして、現在、その項目を検討中ということでございます。  それと、あと帰国後の定着対策でございますが、これにつきましては、先生が昨年も御指摘になっておられますように、四十歳以上になりますと、思想も生活慣習も全く中国人になり切っているという御指摘もございましたように、非常に難しい問題でございますが、幸いことし二月に所沢に帰国者の定着センターができまして、そこで四カ月間、日本語と生活慣習をミックスした集中研修をやっておりまして、これまでに卒業生がかなり出ておるわけでございますが、これまでに入所したのは二十一世帯、百八名ということでございまして、あした退所する人間を含めまして八十六名が退所するということになっておりますが、この人力は、すべて私も会っておりますけれども、やはり一日六時間、少人数編成でかなり集中的にやっておりますので、効果は上がっているのではないかというふうに考えております。  それで、これで四カ月の研修を終わりますと、いよいよ肉親の地元に帰るわけでございますけれども、そこでは生活指導員というのが一年間づきまして、週に一回ずつ生活相談に応じるということをやっておりますほか、あと公営住宅のあっせんなり職業訓練あるいは職業あっせんは都道府県を通じてやってもらっているというのが現状でございます。
  166. 塩田晋

    ○塩田委員 ありがとうございました。よろしくお願いします。
  167. 有馬元治

    有馬委員長 午後一時三十分から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後一時二分休憩      ――――◇―――――     午後一時三十四分閉講
  168. 有馬元治

    有馬委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  内閣提出保健所法の一部な改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。池端清一君。
  169. 池端清一

    ○池端委員 保健所は、今日まで我が国の公衆衛生行政のセンターとして、保健予防なり、公衆衛生の向上に大きな役割を果たしてこられましたことを高く評価するものでございます。しかしまた、大変な課題も山積いたしております。老人保健の問題なり母子保健の問題、保健所がやらなければならない課題も大変多うございます。  大臣は、去る七月十二日のこの社労委員会において、我が党の村山議員の質問に答えて、今後とも保健所行政を強化していきたい、こういう趣旨発言をされましたし、健康保険法改正案の附帯決議にもそのことがうたわれているわけでございます。そのことと今回の法律改正とがどのように結びつくのであろうか、その辺に私は若干の疑問を感ずるわけでございます。  今回の改正案は、臨調答申に基づく補助金削減の一環として出されてきたものであり、むしろ保健所の活動強化ということには逆行する内容になっているのではないか、こういう懸念と危惧を持つのでありますが、その点についての御見解を承りたいと思います。
  170. 渡部恒三

    渡部国務大臣 池端先生から御指摘ございました、保健所に対する今後の地域社会における健康センターとしての要望、これはますます強まるばかりだと思います。先般も申し上げましたように、今後、厚生省は健康増進運動、国民皆さんのよりすばらしい健康を生涯守り抜いていくという大きな責任に立っておりますから、その仕事を地域社会における最前線でやらなければならないのが保健所でございます。したがって、地域社会、地方公共団体の実情に応じた自主的な運営というもの、地方に力の入れがいのある弾力的な運営というものが期待されるわけでございます。  そういう意味では、今回、私どもが、定額で必要なる費用を出して地方自治体の皆さん方の活動というものをやりやすい条件をつくるということは、必ず今後お役に立っていくと思います。  ただ、先生、予算が減らされるのではないかという御心配でございますけれども、御承知のように五十九年度予算はゼロシーリングという大変厳しい情勢でございましたが、三十五億円の増額をして、今後の老人ヘルス事業等を積極的に進めてもらいたいということで、この姿勢は私ども今後変わりなく続けていくものと思います。
  171. 池端清一

    ○池端委員 ただいま大臣も言われましたが、今回の改正の趣旨というものが、地方公共団体の実情に応じて保健所の自主的、弾力的な運営を促進する、そして地域における保健事業の充実強化を図るんだ、こういうことがうたわれ、今大臣もそういう趣旨の御答弁をされたわけです。  そこで、今度の補助金制度が交付金制度に改変されるということが、なぜ保健所の自主的、弾力的運営を促進することになるのか、あるいはまた地域における保健事業の充実強化になるのか、その辺をより具体的に御説明を願いたいと思うのであります。
  172. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 実は私も、ある県で厚生部長としてお世話になったことがあるのでございますけれども、そのときの経験も踏まえまして、ただいまの点にお答えしたいと存じます。  例えば、従来の方式でございますと給与費、旅費等の、そういう間の流用というのが制限がある。それからまた、人につきましても職種別の定数がございまして職員の配置が固定化しがちである、こういうことがございました。また、こういうことをやりたいなと思いましても、事実問題といたしましては、補助制度がないということで困難なこともございました。そこで、交付金ということになりますと、保健所の運営につきましては地方公共団体の判断に基づいて充当することになりますので、職種別の職員配置でございますとかそういうことが地域の実情に応じて行える。それからまた、健康需要は地域によってかなり差がございますので、そういう需要に的確にこたえていくことができる。このように、今回の措置によりまして自主的、弾力的な保健所の運営が可能になり、保健サービスの充実強化が図られるようになると考えておるものでございます。
  173. 池端清一

    ○池端委員 確かにメリットの点もあると思うのでありますけれども、しかし、例えばこういう制度になりますと、従来きちっと定数を確保しておったものがパートでやるというような、人の採用の問題についても安上がりと言ってはちょっと語弊がありますけれども、そういうような傾向に流れていく危険性もあるんじゃないか。そういうデメリットといいますか、そういう危険性があるというふうに私は考えますが、その点はいかがでしょうか。
  174. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 冒頭に先生からもお話しがございましたけれども、高齢化社会の到来は必至でございまするし、一般的に健康に対する需要というものが今後ますます大きくなってくる、これまた必至であると思うのでございます。そのときに、お話しにございましたように健康対策が低下をするようなことがあっては、これはもうまことにもっていかぬわけでございます。私どもといたしましては、お話しのございましたようなことがないように、十分都道府県を指導してまいりたいと考えておるところでございます。
  175. 池端清一

    ○池端委員 次に、今回改正されます保健所運営費交付金の性格について、確認の意味も含めまして何点かお尋ねをしたいと思います。  まず一つは、保健所運営費交付金の性格は、厚生省が所管する交付金であり、交付事務についても厚生省が担当する、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  176. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 お話しのございましたように、一般財源ではございませんで、厚生省が所管する交付金でございますから、交付事務を厚生省が行うことになります。
  177. 池端清一

    ○池端委員 次に、この交付金は、補助金のように保健所運営費以外には流用できない、流用禁止である、こういうふうに考えてよろしゅうございますか。
  178. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 今回の改正はいわば補助方式の改正でございまして、保健所運営費交付金は、通常の補助金と同様に地方公共団体に交付される国庫支出金でございまして、地方公共団体が行う特定の事業の経費に対する国の財政援助の方法でございます。したがいまして、この交付金は、一般財源とは異なりまして経費の支出の使途が特定されております。保健所費以外には支出することはできないものでございます。
  179. 池端清一

    ○池端委員 東京などは地方交付税不交付団体、こういうふうになっておりますが、こういう不交付団体に対しましてもこの交付金は現行補助金と同様に交付されるもの、このように解してよろしゅうございますか。
  180. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 先ほども申し上げましたように、通常の補助金と同様に地方公共団体に交付される国庫支出金でございますから、地方公共団体が行う特定事業の経費に対する国の財政援助でございます。そこで、地方交付税不交付団体に対しましても交付されるものでございます。     〔委員長退席、丹羽(雄)委員長代理着席〕
  181. 池端清一

    ○池端委員 次に、この交付金は、人口及び面積と地理的事情、保健所運営に関する特別の事情を考慮して政令で定める基準によって交付する、このように規定をされておりますけれども、どのような基準をお考えになっておられるのか。政令の中身についても明らかにしていただきたいと思いますし、現行の補助金実績を下回らないものである、こういうふうに確認してよろしゅうございますか。その点をお伺いしたいと思います。
  182. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 交付金の総額の約七割につきましては、保健所活動の必要性を反映いたしますところの人口と面積、お話にもございましたけれども、それに基づく案分によりまして交付額を決定する考えでございます。残りの約三割につきましては、人口と面積では捕捉し切れない地方公共団体の特定の事情がございます。例えば離島、僻地に対する特別のサービスでございますとかそういうものがございますので、そういうものを勘案をいたしまして調整額として交付をいたしたい、このように考えておるのでございますが、そこで従来の補助金の交付額との間に激変があってはいけない、そうして保健所の運営に混乱を来してはいけない、そういう配慮をしなければいけないと考えておるわけでございます。  先ほど大臣からもお答え申し上げましたが、約三十五億円の増額をいたしておりますので、まずは前年度以下になるところはないのではないかと考えております。
  183. 池端清一

    ○池端委員 従来までの保健所運営費補助金制度というものは、保健所の基本財源として大変重要な役割を果たしてきたと思うのであります。ところが、今回のように交付金制度ということになりますと、知事や市長や区長さんといったようないわゆる首長の裁量権が働く余地が出てくる。それだけに、首長さん方の保健所行政に対する姿勢によってはむしろ後退するおそれなきにしもあらず、こういうふうに私は思うわけですね。この点について厚生省、どう考えていますか。こういうような後退を招かないための地方公共団体に対する適切な指導というものがより重要になってきているのではないか、このように私は考えるわけでありますが、この点いかがでしょうか。
  184. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 先ほども申し上げましたように、県民、市民の健康サービスに対する需要、これは今後ますます増大すると思われますので、お話しになりましたように、よもやサービスが低下をするというふうなことはないと考えておりますけれどもお話はまことにごもっともだと存じます。今回の改正によりましてサービスが低下するようなことがありませんように、諸般の機会をとらえまして十分指導をしてまいりたいと考えておるところでございます。
  185. 池端清一

    ○池端委員 最近の地方における行政改革の問題として、実は保健所の統廃合ということが一つの大きな目玉になっている、重点になっているというふうに思われるような節がございます。  例えば静岡県の例でございますが、ことしの四月一日から三つの保健所が支所化をされました。例えば下田というところは日本でも大変有数の観光地でございまして、保健所の活動というのはより強化されなければならないというところが支所化をされる。あるいは長崎県においても、これはまだ最終決定ではございませんけれども、知事の諮問機関である委員会三つの保健所の統廃合を打ち出して、これまた統廃合への動きが今徐々に起こってきている。こういうふうに、保健所の統廃合ということが最近全国各地で起こっておるようでございます。これは、先ほど大臣が言われた保健活動を強化し、保健所の充実強化を図るということには逆行する、むしろ後退する傾向にあるのではないか、こういうふうに思うわけであります。  今回の措置がこういった公衆衛生行政の低下につながるものではないと局長、明確に断言できますか。私は、最近の各地における状況を見ると非常に危惧の念を禁じ得ないのでありますが、この点はいかがでしょうか。
  186. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 保健所の今後の運営についてちょっと申し上げておきたいと思うのでありますけれどもお話しのございましたように公衆衛生行政中心機関でございます。一方、各地域の健康に対する需要がいろいろ多様化してきておりまして、包括的な健康サービスを今後考えていく必要があると思っておるのでございます。そのときにいろいろな意味で保健所の再編成ということも考えていく必要があるのではないかと実は思っておるのでございますけれども、そのときに健康に対するサービスの水準が低下するということは万々あってはならないことでありまして、県民、市民の期待にこたえますためにも、あるいは私ども国民期待もそうであると思っておるのでございますけれども、向上を図るためでなければならないと思っておるのでございます。  確かに静岡県でそういうことがございましたことは承知をいたしておりますけれども、そのときにも保健水準が低下することは万々ないだろうということで指導をいたしておるところでありますが、今後とも保健サービスの向上が図れますように。十分指導してまいる所存でございます。
  187. 池端清一

    ○池端委員 抽象的な答弁それなりにわかりますけれども、これは具体的な御指導というものがよう必要だと思うのであります。今局長が再三言われておりますように、いやしくも公衆衛生行政の低下、後退につながるような措置は断じて行わないということを明確にしておいていただきたい、このことを強く要望しておくものでございます。  さらにお尋ねをいたしますが、今回の交付金化、交付金制度ということによりまして、従来固定的でございましたものがいわばつかみ金的なものになってまいる。そうすると、今全国の保健所行政にはいろいろな格差があるわけでありますが、こういう措置になればより一段と格差が広まってくるのじゃないか、むしろ厚生省が考えている方向とは逆の方向へ行くのじゃないか、そんな懸念もあるわけです。より先進的なところはぐんぐん伸びていきますけれども、さっぱりやらないところはますます後退をする、こういう格差が出たのでは大変なことになるわけでありますから、そういう格差を生じさせないためにどういう方策を厚生省としてはお考えになっておられるのか、その具体策をお示しいただきたい、こう思うのです。
  188. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 お話しのございました点はまことに重大な点であると思っております。今回の改正のねらいの大きな点が、各地域の実情に応じた自主的、弾力的な運営を促進するということにあるのでございますけれども、そのときに、全体として保健サービスの水準が下がったのでは何にもならないということでございます。  そこで、具体的ということでございましたけれども、大体三つの点で考えておるわけでございます。一つは、老人保健事業を初めといたしまして市町村事業に対する指導と協力を十分にやるように、それからまた、今後精神衛生、難病対策など高度の技術を要する保健サービスも重要になってまいりますが、これはみずから十分にやるように、それから、先ほども申し上げましたけれども、保健と医療、福祉、そういう間の連係につきまして今後一層強化をしていく必要があると思っておるのでございます。そういうふうに個別に、重点的に事業を推進するように指導してまいる所存でございます。  なお、具体的には、調整交付金の制度がございますので、地域の実情に応じて十分な活動ができるように配慮してまいる所存でございます。
  189. 池端清一

    ○池端委員 新しい制度に変わるわけでありますので、危惧の念、不安の点は少しでも除去、解消しておかなければならないということで、今少し根掘り葉掘り聞いておくわけでございますが、現行の補助金制度では、補助金に地方公共団体が上積みをして保健所の運営をしておるわけでございます。今回のように交付金制度に変わった場合、果たして地方公共団体が従来どおり予算措置を講じて活動をするであろうかどうか、その点も問題があるような気がするわけでございます。仮に予算措置を講じたとしても、逐次それが縮小されていく危険性はないのだろうか、こんな点で私の脳裏に心配の念がよぎるわけでございますが、こういう点について厚生省としてはどういう措置なり御指導をなさろうとお考えになっているのか、その点も改めてお聞きしたいと思うのです。
  190. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 ただいまの点でございますけれども、補助方式は変更いたしましたが、事業は従来どおりやるわけでございますし、たびたび繰り返しますけれども、ますますこの仕事は重要になってくるわけでございますので万々後退ということはないと思っておりますが、なお今回の措置といたしましては補助金の増額も図っておるところでございます。それからまた、先ほどの調整交付金の制度もございますので、そういうところを通じましてサービス水準の向上を図ってまいりたいと考えております。
  191. 池端清一

    ○池端委員 今回の改正案によりますと、附則の第五条で、地方財政法の第十条を改正されることになっておるわけでございます。裏負担とも言われます地方交付税の措置の根拠というものが、地方財政法第十一条の二による義務的措置から実は外れることになるわけでございますね。これについては私どもとしてはぜひ従来どおりの算定とすべきだ、こういうふうに考えておるわけでございますが、この点についてはいかがでしょうか。これは厚生省、さらにきょう自治省もおいでと思いますが、自治省からも御見解を承りたいと思います。
  192. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 ただいまの点は地方財政法上は御指摘のようなことになるわけでございますけれども、保健所の運営は地方公共団体におきます保健衛生行政中心的な事務でございますし、かつまた、全都道府県でひとしく行われているものでございますので、この事務に要する経費につきましては、地方公共団体の標準的な行政に係る財政需要として、地方交付税の基準財政需要額に算入されることが必要である、このように考えております。この点につきましては、地方交付税法を所管しておられる自治省とも意見が一致しておると承知をいたしております。
  193. 小林実

    ○小林説明員 従来、保健所の運営費につきましては交付税で措置してまいりまして、細かく言いますと単位費用のところで需要の方を見まして、歳入の方で補助金を引くという形にいたしております。一部今度交付金化いたしましたが、算定方法は従来と変わりません。今後とも必要な経費につきましては交付税措置をとっていく考えでございます。
  194. 池端清一

    ○池端委員 この点について重ねてお尋ねいたしますけれども、地方財政法第十六条は任意の奨励的な補助金、こういうふうに言われておるわけでありますが、都道府県など地方公共団体が措置した部分に対して地方交付税の基準財政需要額に算定をする、都道府県など地方公共団体の保健所運営に支障を来さないように措置する、こういうふうに確認してよろしゅうございますか。
  195. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 そのように私ども考えております。
  196. 小林実

    ○小林説明員 必要な経費につきましては交付税措置をとってまいりたいと思っております。
  197. 池端清一

    ○池端委員 次に職員の問題でございますが、従来の保健所運営補助金による国の予算定数は約二万人、こういうふうに聞いております。これは保健所補助対象職員約二万五千人の八〇%に相当するわけでございますね。ところが、今度交付金制度になりますとこれが廃止ということになるわけです。これが廃止されますと八〇%の職員定数の基礎がなくなってしまう。私は、これによって大変な問題が出てくるのではないかとこれまた危惧するわけでありますが、これによりまして保健所行政の推進に問題点を惹起しないか、この点についてはどのような対応を考えられておるのか、お伺いをしたいと思います。
  198. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 確かに今回の改正によりまして、保健所職員について定数という考え方がなくなるのは御指摘のとおりでございますけれども、一方、初めの方でちょっと申し上げましたが、職員の職種の固定化等にとらわれることなく、実情に応じて保健所の自主的、弾力的な運営が行えるようになるということを目指しておるわけでございます。また、そのために、実態との乖離の解消を心がけまして予算の増額も図ったところでございます。それからまた、今日大きな需要がございます老人の保健事業の増進につきましては計画的にその充実を図っておるわけでございますが、これにつきましては別枠といたしまして、特別交付金という考え方で、その事業の進展に合わせまして増額を図ることにいたしておるところでございます。そういう考えで、地域の事情に合った保健所行政が一層推進されるように指導してまいりたいと考えておるわけでございます。
  199. 池端清一

    ○池端委員 今局長から答弁がありました老人の保健事業、老人保健法施行に伴うものでありますが、医療以外の保健事業五カ年計画によりまして保健所の保健婦、精神衛生相談員、理学療法士、作業療法士などの増員、こういうことが考えられているわけであります。これについては五十九年度はどういう状況か、今後の見通し、展望、これらを明らかにしていただきたいと思うのです。
  200. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 老人保健事業の推進につきましては、お話しのございましたように計画的に、予算上も特別の交付金として別枠で増額を図ることにしておるところでございますが、五十九年度につきましては保健婦百四十七人、PT,OT六人、精神衛生相談員二十九人、合計百八十二人の増となっております。今後とも、この特別枠によりまして計画的に増員を図ってまいる所存でございます。
  201. 池端清一

    ○池端委員 定数の問題については、今後ともその増員を図っていくというお話してございましたし、マイナスシーリングという中で前年度比三十五億円の増額を実現をした、先ほどこういうお話しもございました。確かに一一%ですかの伸びでございまして、これは大変画期的なことだと思うのでございますが、こういう状況は今後ともぜひ堅持をしていく、こういう方針であるかどうか、改めてお聞きをしたい。
  202. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 保健所行政は大変大事な行政でございますので、一般交付金につきましては毎年増額するという性格のものではございませんけれども、計画的に推進をしております老人保健事業につきましては、お話しのような精神は、私どもも全く同じでございまして、増額を図ってまいりたい。  なお、一般の交付金につきましても、事業量あるいは経済変動、そういうものによりまして保健所の運営に支障を来すようなことがありませんように、そういう場合にはまた見直しをいたしまして財源の確保に努めてまいりたいと考えておるところでございます。
  203. 池端清一

    ○池端委員 現在、保健所の数は全国的にどういう状況になっておりますか。その実態を明らかにしてください。     〔丹羽(雄)委員長代理退席 稲垣委員長     代理着席〕
  204. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 現在八百五十五カ所でございます。
  205. 池端清一

    ○池端委員 保健所の設置については設置基準というものがあると思うのでありますが、その設置基準はどういうふうになっておりますか。
  206. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 まず、人口おおむね十万を基準として設置をするのでございますけれども、一方、今日、人口のみではなくて交通事情あるいは保健医療施設の状況、それからまた人口の分布状態、そういう地域の特殊事情を考慮して設置をする、こうなっております。
  207. 池端清一

    ○池端委員 今言われたのは保健所法施行令の第二条のところでございますね。「保健所は、人口おおむね十万を基準として設置するものとする。但し、交通事情、他の官公署との関係、公衆衛生状態、人口の分布状態等を考慮し、特別の事情があるときは、この限りでない。」こういうことですね。この設置基準に照らしてみて、現在、全国八百五十五カ所ですかの保健所の設置状況というものはどういうふうなものだ、これで十分なものだとか設置基準に照らしてみて不十分であるとか、要するにこの設置基準を満たしているとお考えかどうか、この点を承りたいと思うのです。
  208. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 保健所の管内の人口あるいは管轄しておる面積その他いろいろなものがございますけれども、まずはおおむね適正に配置をされておると考えております。
  209. 池端清一

    ○池端委員 おおむね適正に配置されている、こういう漠然たる御答弁ですが、一つ実例を挙げます。  例えば千葉市ですね。私が聞いたところでは人口は七十万。この七十万の千葉市に中央保健所というのがたった一カ所、一つしか設置されていない。こういう状況はどうですか。
  210. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 確かにいろいろございまして、お話しのございました千葉中央保健所はことしの四月一日現在で七十四万七千人、一番多いのでございます。島根県の黒木保健所は一万人、これが一番少ないのでありますけれども、いろいろな事情がございまして、千葉市におきましては五十八年度末に四カ所の市町村保健センターを設置いたしまして、そして、この保健所活動と相まって市民への保健サービスを行っておるところでございます。そのようにいろいろな事情がございますので、もちろん一〇〇%満点だとは考えておらないので、おおむね適正、こう申し上げたのでございます。
  211. 池端清一

    ○池端委員 いろいろな事情があるというふうに言われればそれまででございますけれども、明確に設置基準もあるわけですよ。局長は、一万人のところでもあるというようなことを言われました。それは結構なことだと思うのですよ。しかし、今私は千葉の例を申し上げましたけれども、そのほかにも、人口五十万人のところでも二カ所、あるいは、具体的な地名は申し上げませんが、四十万人のところでも保健所が一つしかないというように、全国見ますると大変アンバランスといいますか設置基準の要件に合致していない。必ずしも交通事情云々だけの問題ではなしに、その自治体における保健行政の姿勢がそこにあらわれているのじゃないかというふうに見受けられるところが多くあるわけであります。こういう状況では、先ほど大臣が言われたり局長が言われておったようないわゆる公衆衛生行政の推進、真に住民に密着した保健所行政というものが推進できるかどうか、大変疑わしいと私は思うのでありますけれども、その点はいかがですか。
  212. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 全体で見ますとたしか今日十二万人程度に一カ所であったと思いますけれどもお話しのございましたような不均衡が確かにございます。特に大きなところにつきましては、都道府県と市、そういうところとの関係もございまして、お話しのございましたような住民に密着をいたしました、地域の実情に応じた保健サービスのあり方についていろいろと協議が行われております。私どもといたしましては、そういう協議の状況を見まして適切に対応してまいる所存でございます。
  213. 池端清一

    ○池端委員 実態はいろいろなばらつきがございます。施行令が単なる絵にかいたもちに終わっているのではないかというように思われるところもございますので、これについてはやはり十分適切な指導というものをお願いをしたい。  そこで、今後の保健所の活動強化の具体的な対策といいますか、いろいろうたわれておりますけれども、集約して、今後の保健所行政の強化の青写真をひとつここで示していただきたい、こう思うのです。
  214. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 まず目的は、何よりも地域地域の健康需要に適切に対応していくことだと存じます。そのためには、やはりこれは一つの事業でございますから、人材の確保が一番大切であると思います。保健所協議会におきましてもみずから研究会等を開催いたしておりますが、私どもといたしましても、いろいろな方途を通じまして保健所の能力の向上を図ってまいりたいと考えております。  それからもう一つは、地域地域の実情に応じた健康行政の包括化を図っていく必要があろうと思っております。健康の増進から医学的リハビリテーションまでのいわば広い意味での医療に関する包括化と同時に、今後の社会の特徴が高齢化社会でございますので、社会福祉との連係を強化する必要がある、医療機関との連係のほかにもそういう方面とも連係をして、包括的な住民サービスができるようにやっていく、これがビジョンでございます。
  215. 池端清一

    ○池端委員 ビジョンというのには極めてあいまいな、と言ったら失礼かもしれませんが、どうも抽象的な御答弁のように受けとめました。しかし、先ほども言われましたように、保健所の活動というのは、本当に地域の中核的なセンターでございます。より充実強化をしてもらいたい、強く求めておきたいと思うのであります。  制度が変わって交付金制度となった場合、地方公共団体が判断すれば保健所を増設できるものだ、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  216. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 まず、保健所の新設につきましては、先ほど先生お話しになりましたような基準があるわけでございます。交通事情の改善、施設やマンパワー、いろいろなことがございます。そこで余り分散をするということも、マンパワーもまた分散をいたしますので、適切なサービスが提供できるかどうか、その辺を十分勘案する必要があろうと思っております。ですけれども、一方、先ほど来のお話にもございましたけれども、人口規模の非常に大きいところもございますので、そういう万般の条件を総合的に検討いたしまして、再編成を行うに際しまして新設についても検討してまいりたい考えでございます。
  217. 池端清一

    ○池端委員 現行の補助金制度というのは、たしか昭和三十九年の、保健所において施行される事業等に伴う経理事務の合理化に関する特別措置法、これによって保健所の運営費補助金制度というものができたのではないか、私はこう理解しておるわけであります。これは従来から知事会なんかからも強い要望がございまして、地方交付税回しとすべきだというような意見もあったように聞いておるわけです。しかしそういうことでなしに、保健所をきちっと充実強化するためには補助金制度というものが最も適切なんだということで、我々も厚生省にも今日まで強く要求してきておったわけであります。ところが、残念ながら臨調答申によってこういうような制度に変えられた。私は冒頭にも言いましたように、これは臨調答申に基づく補助金削減の一環であって保健所運営の合理化をねらうものではないか、そのことを一番危惧するわけであります。職員なんかについても、従来固定的であったものが今度はそうではなくなる、安上がりの安易な運営に堕していくのではないか、そのことを私どもは非常に心配しておるわけであります。しつこいようでありますけれども、そういうような事態は絶対招かないという決意のほどを、重ねて大臣からお答えを願いたい、こう思うのです。
  218. 渡部恒三

    渡部国務大臣 先ほどから申し上げておりますように、厚生省は、国民健康づくり対策の推進ということで、ライフサイクルに応じた地域、職域を通ずる健康増進、疾病予防等総合的な健康づくりの対策の推進、これは二十一世紀に向かっての私どもの大きなビジョンであります。これをいわば最前線で頑張ってくれるのが保健所でございまして、その保健所の活動が後退するようなことはあってはならないことでございますから、先生の今までの御指摘、事細かにちょうだいいたしましたが、これを十二分に私ども肝に銘じて、そういう心配のないように努めてまいります。
  219. 池端清一

    ○池端委員 厳しい財政状況下にあって、昭和五十九年度は三十五億三千万円の増額、さらに老人分に関する増員として、合計百八十人の増員を実現することができた。それは私はそれなりに評価をいたします。五十九年度に限らず、今後ともこういう方向に向けて厚生省が全力をぜひ傾注していただきたい、そのことを強く強く要望しまして、私の質問を終わります。(拍手)
  220. 稲垣実男

    ○稲垣委員長代理 河野正君。
  221. 河野正

    ○河野(正)委員 きょうの法案の改正の趣旨が、御案内のように今までの補助金制度が交付金制度に変わる、それが大きな柱ですが、そのことが今後の保健所の運営にどういった影響を及ぼしていくのか。  御案内のように、今日の保健所は、かつてなかったようないろいろな面で大きな役割を果たさなければならない。成人病対策あるいは精神衛生対策もそうでございますが、非常に多極化した食品衛生対策あるいは新しいところでは公害問題、それからさらには老人保健、保健所が昭和十二年に発足をしたわけですけれども、こういうようにかつてないように保健所の役割、使命というものが非常に拡大をされてきておる。また重要性を帯びてきた。ですから、そういうような保健所の使命、役割というものに対して、今度の補助金制度というものが交付金制度に変わって、そしていささかでも使命、役割を果たすためにマイナスになる、先ほど前委員からもいろいろ話がございましたが、交付金制度になったために弾力的運営ができるという主張もございましょうけれども、そのことが結果的には業務に枠をはめていくというようなことになるかもわからないということです保から、この法案が本当に、さらに役割、使命を大きく持ちつつある保健所運営に対して、これは政府が提案されたわけですから、それはメリットがありますよ、こうおっしゃるわけでしょうけれども、一応その辺からお尋ねしてまいりたい、こういうふうに思います。     〔稲垣委員長代理退席、丹羽(雄)委員長     代理着席〕
  222. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 お話しのございましたこと、まことにごもっともだと存じます。保健所の役割が今後ますます重要になってまいりますことはもう御指摘のとおりでございますし、補助金から交付金に変わったというお話してございますが、補助の仕方が変わったわけでございまして、依然として補助金の交付をいたしまして、従来のように定率ではございませんけれども補助金の交付をいたしまして、一層充実強化を図るためにこういうふうな改変を行ったわけでございますので、御指摘もございましたように一層充実強化に努力をする所存でございます。
  223. 河野正

    ○河野(正)委員 充実強化に一層努力するということでございましたが、それなら具体的にどういう努力が行われるのか。ただ、ここで、努力をいたしますだけでは話にならぬ。私どもはやはり、後ほどいろいろ論及してまいりますけれども、まだ今の保健所の運営についてはいろいろ問題がある。局長はさあっと偉くなられたから余り御存じなかろうけれども、私どもは田舎で開業してずっとやってきておるから、そういう意味では、実情については少なくとも局長よりも私の方が詳しいと思うんですね。そういう点についていろいろ触れたいと思うが、そういう意味で、今の保健所運営についてはいろいろ欠陥がある。私どもは、やはりこの欠陥というものは除去してもらって、そうして保健所運営というものを今日のいわゆるニーズに合うように完璧なものにしていただきたいという立場があるものですから、そういった意味で、具体的に今度の制度が改革されることによってどういうふうに充実されるのか、その辺をひとつお聞かせいただきたい。
  224. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 私も、実は先ほども申し上げましたけれども、四年ほど、ある県のお世話になっておりまして、保健所の運営にはかなり苦労をした経験もないことはございません。それで、今回の措置によりまして、非常に具体的には、例えば従来の定率でございますと職種をきちんと決めてやりますものですから、何か新しいことをやるためにこういうふうな人員構成にしたいと考えましても、これはなかなか難しかったわけでございます。それからまた、実施いたします事業につきましても、これは補助の対象になっておらないとかそういういろいろな議論がございまして、予算化には随分苦労した経験がございます。  このたびの変更によりまして、地方公共団体の自主的な運営、弾力的な運営ができることになりましたので、地域、地域によって特徴がございますところの需要に的確にこたえられるようになる、これが一番大きな点ではないかと考えておるところでございます。
  225. 河野正

    ○河野(正)委員 先ほど池端委員とのやりとりの中で、私どもはそばで聞いておって、いささかどんなものだろうかと思ったのですが、例えば設置基準についてもこれは施行令で定められているところですね。ところが、昭和二十二年、この保健所法が抜本的に改正されましたね。そうして、雨後のタケノコと言ったら悪いですけれども、非常にたくさんの保健所が設立された。そうして、今の社会というものは非常な変革に重ねて変革が行われたということで、この設置基準とは全く関係なく、まだ依然として保健所がそこにある。行政区も違うんですよ。そういうところにぽつんと保健所が今なお残されておる。この設置基準はなるほどもっともですけれども、ところが、今申し上げますように行政区も違うところにぽつんと保健所が残されている。こういうところがあるんですよ。だから、もし設置基準がそうであるならば、設置基準に合うように速やかにそれを移転させるとか何とかの勧告、助言というものが行われなければならないのじゃないか。
  226. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 ただいまの問題でございますけれども、先ほど池端先生にお答えいたしまして、おおむね適切と考えておると申し上げたのでございますが、確かに御指摘のございましたように、再編成する部面もございます。今後、保健所活動に応じて再編成が進む過程で、設置の基準に適合するように指導してまいる考えでございます。
  227. 河野正

    ○河野(正)委員 先ほど御答弁があったときに私は非常に気に入らなかったわけですよ。というのは、設置基準に基づいておおむね適切に配置されておると言うが、ところが全くこの基準と相反するような形でぽつんと残されておる。それが依然として今日まで放置されておる。一つ行政サービスですからそこで一番困るのは住民なんですよ。これでは困ると住民が言っておるわけですけれども、依然としてぽつんと違う行政区に残されておる。  昭和二十二年ごろから保健所が設立されたわけですから、当時はそのとおりだったでしょうけれども、もう三十年あるいはそれ以上たちますと立地条件が全然違ってくるわけですね。そういう点が全然改善されないということですから、実は私ども大分改善してもらいたいと陳情しておるわけです。しかし依然としてナシのつぶてですね。ですから私が言ったように、局長はさあっと偉くなられたからそういう下々の実情には疎い。行政というのは血の通ったものですから、そういう意味でもう少し、おおむね適当に配置されておるというような、おおむねなどという言葉でごまかさないで、そういうことがあるなら直ちに改善するよという答弁を、大臣はなかなか温情ある答弁があるから私ども期待するけれども、まずあなたの御意見を聞いて、最後にひとつ大臣の温情ある答弁を聞きたいと思うのです。
  228. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 確かにお話しのございましたように、設置をされましてから相当の時間がたっておりますから、交通事情の変化あるいは市町村の行政区画の変更というものに追いつかないものがある、これは御指摘のとおりでございます。それからまた、新しい保健所行政の展開ということもございますので、適正な配置につきまして県に検討していただく、こう思っております。
  229. 河野正

    ○河野(正)委員 再三再四要望しながら県は検討していないわけです。それだから厚生省がもう少し強力な指導を果たすべきじゃないか、そういう意味でお尋ねしておるわけです。  住民も困るが、職員も現地に通勤をしておるわけですから、そういう職員の諸君にも、おまえ移っても文句があるかということでいろいろ相談をして、やはり適切なところに設置がえをしてもらって住民のニーズに応ずべきだ、そういうことですね。ですから、今の局長の話では、二階から目薬を差すような話だったから、やはりそういうケースがあるなら速やかにそうしなさいという指導監督というものを直ちに行うべきではないか。この点どうですか。
  230. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 どういうケースかちょっと私、存じませんが、例えば福岡県でございますが、木造の保健所が四つあるわけでございます。粕屋保健所もそうでございますが、それの整備計画を現に県は考えておるようでございます。そのときに、総合庁舎として検討しておると承知をいたしておりますが、その配置につきましてもあわせて検討しておるところでございます。
  231. 河野正

    ○河野(正)委員 老朽だけを言っておるわけではないのですよ。先ほどから前委員の方から適正な配置を基準どおりに行われたらどうか、こういう話がありましたから、そういう立場から私は申し上げているのであって、老朽化しておることもそのとおりですよ。もう進駐軍当時に建てられた木造の、たくさんのお客さんが上がれば天井が落ちるという状況ですから、そのことも大切ですけれども、私が申し上げたのは設置基準について適当ではないのではないか、そういう意味で申し上げたのですから、ある意味では両方ともあるわけです。  そこで、与えられた時間でございますから簡単に申し上げたいと思いますが、何といっても、保健所業務を今のニーズに合った円満な、円滑な推進を図っていくためには、仏つくって魂入れずではないけれども、やはり内容が非常に問題になると思うのですよ。それでなければ実際には幾ら名文句を並べ立てても効果がないと思うわけです。  そこで、これは厚生省の資料ですけれども、私もこの資料を見ましていかがなものだろうかと思うような点が何点かございます。こういう問題が解決しないと、私は保健所の真の使命、役割というものを果たすことはできぬと思うのですよ。  そこで、法律にありますように保健所長は医者ですね。これが御承知のように五十八年千百五十九人、五十七年は千百六十一人で減っているのですよ。こういう状態で果たして保健所業務というものが立派に推進されるのか、こういう点はどうでしょうか。
  232. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 まことに保健所におきますところの医師の不足、これが悩みの最大なるものでございます。御指摘のように内容がよくなければ適切なる保健所行政ができない、お説のとおりでございます。  そこで、従来からあらゆる機会をとらえましてその充足の努力をしておるところでございますが、例えば修学金貸与制度、大学の医学部と保健所が共同で行う調査研究の実施、衛生学・公衆衛生学教育協議会を通じての大学との連係の強化等々を行っておるところでございます。  そこで、五十八年度が減っておるではないか、こういうお話してございましたけれども、私どもはこれが恐らく底ではないか。医師の数もおいおいふえてまいっております。私どもの厚生行政に従事しようという医師もおいおいふえてきておりますので、これからは保健所の医師の充足が図られてまいるものと考えております。
  233. 河野正

    ○河野(正)委員 これからならわかりますよ。ところがこれまでに減っておるわけでしょう。おいおいふえてきておるとは何ですか。これからふえていきますというなら私は納得しますよ。今日減っているわけでしょう。それが、おいおいふえてきておるとは何ですか。ふえていない、減っているでしょうが。五十七年と五十八年を比べると減っているのですよ。
  234. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 五十八年度が恐らく底ではなかろうか、これからおいおいふえてくる、こう申し上げたんであります。  一つの事情は、高齢者で退職される方がふえてくる、一方若い人が入ってくる。五十八年度がそこのちょうど境目ではないか。これからはおいおいふえてくる、こう申し上げたんで、今までふえてきたと申し上げたつもりではないんでございますが、言葉足らずで失礼をいたしました。
  235. 河野正

    ○河野(正)委員 これは算術計算しまして、一保健所当たり一・三人ですよ。そういう事情ですから、医師の充足率が悪いということははっきりしている。現在、保健所であって、所長は医師ですから、医師である所長がいないところがあるでしょう。これはどうします。
  236. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 昨年の十一月現在で約一割、八十七カ所の所長が兼任となっております。これも一般の医師と同様の事情で、今後は大いに充足が図られると期待しているのでございますが、特にこの所長の場合には、先ほどもちょっと申し上げました高齢の退職者がございまして、若い方の充足がそれに追いついていかない、こういう事情に今日ございます。充足につきまして、最大の努力を払ってまいる所存でございます。
  237. 河野正

    ○河野(正)委員 努力するもせぬも、保健所の所長の医者がおらぬ。所長がいない。そして二つも兼務しているというのです。これで果たして保健業務というものが円滑に運営できるのかどうか。保健所は、例えば病院のいろいろ立入検査その他がありますよね。それで非常に厳しくおっしゃっている。それはそのとおりだと思います、やはり医者の足らぬところは医者をふやせと言うのは。しかしそういう保健所に医者がおらぬというのはどういうことですか。それは現実に形はおるかわかりませんよ。ところが隣の保健所と兼務ですよ。そういうところがあるから、いわゆる一保健所当たり算術計算で一・三、二名もいないわけです。というのは、御案内のように法律に書いてありますね、性病とか結核とか等については治療することができるということが書いてありますね。だから、そういうところに診療しておる予防課長ですか、そういう人もいらっしゃるわけですね。それはありがたいです。ところが所長がおらぬのですからね。そしてやたらと人に対して、私どもは悪いものは悪いものとして監督強化しなければならぬわけですけれども、例えば医療法の改正、今度は通りませんけれども、これは病院に対する監督強化ということがうたわれてあるが、自分のところは当然配置しなければならぬ医者を配置しないでおいて、そういうことはできますか。大きなこと言えますか。
  238. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 先ほどもお答えいたしましたけれどもお話しにございましたような、所長を初めといたしまして医師の充足が不十分である、これが最大の悩みでございます。これまた、先ほど来るるお話しがございましたけれども、重要なる保健所の業務を遂行するに当たりまして、これはまことに遺憾なことであると考えております。幸い、やや事情が好転してきておる向きはございますので、さらに一層の努力を傾注いたしまして、その充足に努めてまいりたいと考えております。
  239. 河野正

    ○河野(正)委員 もう現実にはいないわけですからね。それだからここでいろいろ言いましても、それこそ老いた者を採るわけにいかぬことは明らかですから、それは局長政府が鋭意その努力をしてもらう以外にはないと思うのです。  そこで、先ほど申し上げましたように、医師もそうですが、保健所の主な職員の現員について資料がありますけれども、単に医者だけじゃないですね。エックス線技師も五十七年から比べて五十八年は減っておりますね。それから、栄養士も助産婦も医療社会事業員もカード管理者も減っている。こういうように五十七年度に比べて軒並み減っておる。これが固定しますと大変なことになる。でございますから、先ほど質問がありましたけれども、結局、だんだん保健所職員が減員になるんじゃないか、そういう心配もあるわけです。ですから、私は、今保健所というものが地域における公衆衛生その他において非常に大きな役割を果たしつつあるわけですから、そのためにそれに対応する職員がおらなければならぬ、それが減っておる。医師も先ほど申し上げたように減っておる。こういう状態で果たして保健所業務というものがうまくいくのかどうか、私どもは非常に危惧をするわけでございます。この点いかがでございましょうか。
  240. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 確かに御指摘のございましたように、地域地域の事情に合った、それに対応した職員の確保、これは非常に大事なことだと思います。  職種間の不均衡はございますけれども、また医師のように絶対的に不足して困っておるものもございますが、全体で見ますと五十七年度三万五千百四十九人、五十八年度三万五千三百二十二人でございまして、また従来の補助対象で言いますと、二万五千二百八十四人に対しまして二万五千四百九十人でございまして、今日のところ大体横ばい、少しふえておる、こういうことでございますが、御指摘にもございましたように、それぞれの事情に合った適切なる職種が確保されることは非常に大事なことであると考えております。
  241. 河野正

    ○河野(正)委員 そこで、特に、私が今申し上げた要員というのは、大体保健所において欠くことのできない、エックス線技師、放射線技師もそうですね。それから保健婦もそうですね。これは今の保健所運営においては欠くことのできない職種なんですね。全体的に数字がこうだからというわけにいかぬですね。ところが、全体的にはほかの職員は充実しておっても、医者がおらなければ何にもならぬでしょう。ですから総体的にというわけにはいかぬですね。それぞれが重要な職場において、重要な職種において充実をしてもらわなければいかぬと思うのです。  そこで、資料によりますと、金額的にはわかりませんけれども、「経費の概要」の中で「医師充足対策費 医師又は歯科医師の充足に資するための経費」、これは何ですか。
  242. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 先ほど医師の不足が最大の悩みである、できるだけの努力をして充足に努めておるところであると申し上げたところでございますけれども、この医師充足対策費もその一環でございまして、一つは保健所活動調査費でございます。これは医学生に公衆衛生の重要性の認識を高めるために、大学医学部と保健所が共同で調査研究の実施を推進するための経費でございます。もう一つは、やはり魅力の一つとして海外視察がございますが、医師の海外旅費がございます。これは保健所に勤務する医師を対象に、広く海外の公衆衛生事情を視察して、今後の我が国における保健所業務の向上に資するための経費でございます。
  243. 河野正

    ○河野(正)委員 少なくとも、概要資料から見ますとこれは医師充足対策費ですから、医者を足どめするために外遊させるとかなんとかおっしゃっているわけでしょう。要するに私どもが言っているのは、医師を充足させるわけですから、どこからか連れてくる、その対策費として、金額は挙げておりませんけれども、それ相応の金額が確保されているわけでしょう。ですから、今局長がおっしゃったことは、医師の構成であるとか医師の研究であるとか、そういうものに対する経費の定義ならわかりますよ。ところが、少なくともこの文章で見る限りは、医師充足対策費であるから、医師を保健所に連れてくるそういうための対策費としか解釈できぬでしょう。どうでしょうか。
  244. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 医師を充足いたしますためには、やはりその職場が魅力ある職場である、そういう理解を得ることが必要であると思うのでございます。それで、医師にとりましては、いろいろな調査研究を通じましてその職場が魅力ある職場である、このことを学生によく認識させれば、なるほどそういう職場だったら行こうか、こういうことになるのではないか、そういう意味で医師充足対策費として、先ほど申し上げました内容のものを計上しておるわけでございます。
  245. 河野正

    ○河野(正)委員 金額でどうなっておりましょうか。
  246. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 これはどうもいささか少のうございまして四百七十七万一千円、先ほど申し上げました二番目のものが五十五万六千円でございます。
  247. 河野正

    ○河野(正)委員 医師過剰時代が来たと言いながら、現実にはまだ都市集中型ですから、なかなか保健所まで手が回らぬかもわかりませんが、全国で四百七十七万でしょう。一年に何人外遊に行くのですか。
  248. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 これは部分的に補助をするわけでございますので、およそ十人ぐらいを派遣しております。
  249. 河野正

    ○河野(正)委員 四百七十七万ですね。それで十名というと、算術計算して四十七万です。これは外遊だけじゃないでしょう、医師充足対策費といいうのは。
  250. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 先ほど医師充足対策費につきまして二点申し上げました。一つは保健所活動調査費、これは保健所の業務をよく医学生に知らせる、その魅力あること、仕事の重要性を知らせる、これが四百七十七万一千円でございまして、医師海外旅費は五十五万六千円でございます。
  251. 河野正

    ○河野(正)委員 五十五万六千円で一年間に医師が外遊するといったら、一人かそんなものでしょう。ただ物見遊山、何とかツアーか何かで行ってさっと回ってくるわけじゃないでしょう。勉強してくるわけでしょう。かなりの日数がかかるでしょう。そうすると一人分じゃないですか。一人分に当たらぬですね。
  252. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 医師海外旅費というのは五十五万六千円でまことに少のうございますけれども、やはり魅力のある事業の一つとしてその予算を確保しておるところでありますが、そのほかにも、保健所の運営費の中で工面をいたしまして、補助金としてそういう事業をやっておるところでございます。そこでいろいろな方面から総括いたしまして大体一年間に十人ぐらい、こういうことを申し上げたのでございます。
  253. 河野正

    ○河野(正)委員 これは海外に研修に出かけるわけで、別にぶらっとヨーロッパの銀座通りを回ってくるわけではないでしょう。研究するなりあるいはまた大学なりそれ相応のところへ行って勉強なさるということでしょうから。五十五万六千円が十人分ということですか。
  254. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 そうではないのでございまして、そのほかにも、保健所運営費の中で流用いたしましたり、その他いろいろなことで、保健所に勤務する医師が一年間に外国視察に行くのが大体十人ぐらい、こう申し上げたわけでございます。
  255. 河野正

    ○河野(正)委員 そうすると、五十五万六千円が外遊費の基本になる。それで十人行くと五万五千円。ですから、外遊すれば少なくともそれは百万近くはかかるでしょう。そうすると、その残った大部分の金を捻出してこなければいかぬでしょう。予算を流用していかなければいかぬでしょう。そういうことが許されますか。
  256. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 これは地方団体も負担するわけでございまして、本人が負担するのではございません。
  257. 河野正

    ○河野(正)委員 そうすると、昨年実績はどういうふうになっていますか。
  258. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 ただいま正確な昨年の実績を持ち合わせておりませんけれども、保健所の医師は毎年およそ十人程度視察に出かけております。
  259. 河野正

    ○河野(正)委員 恐らく、今おっしゃるように、一人が外国に研修に行くには幾らかかるかわかりませんが、そういう五十五万六千円で十人ということですと、基本になる金というのはほんのわずかですから、大部分の金はどこからか捻出してこなければならぬ。そういうふうな、地方公共団体でも結構ですが、財源を捻出するような方法があるのでしょうか。
  260. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 これは都道府県が海外視察旅費として予算化をするわけでございます。それに対して若干ではありますけれども補助をしておる、こういうことであります。
  261. 河野正

    ○河野(正)委員 それでは地方公共団体が予算化する、それで厚生省としては五万五千円、それこそおせんべつを包みます、そういうことですね。
  262. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 ほかの保健所運営費を流用いたしまして、海外旅費の補助金とする部分もあろうかと思います。ですから、およそ十人といたしまして一件当たり五万五千円ということにはならないかと存じますが、いずれにせよ、部分的に補助をいたしまして、そして呼び水としてそういうことを実施をしておる、こういうことでございます。
  263. 河野正

    ○河野(正)委員 こういうことに時間を余り費やしたくないわけですけれども、やはり疑惑は解いてもらわなければ困るので、とにかく局長がおっしゃったのは五十五万六千円ですから、それに十人ですから五万五千六百円でしょう。そのことは変わらぬわけでしょう。だから、あと幾ら要るかは、それは県がやりますとか、どこからかひねり出しできますね。下手すれば、いろいろな業者団体に対して奉加帳を回すというようなことも出てきましょう。ですから、私どもは、そういうことがあるから、やはりこの際出すべきものは出して、しっかり勉強してください、そういう態度を具体的には示さなければいかぬと思うのですよ。  先ほどから、保健所というところは非常に魅力ある職場だからとおっしゃったけれども、そのかわりあなた方が外遊するときには五万五千六百円差し上げますというようなことが魅力になりますか。
  264. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 これはどうもまことに少額でございますけれども、都道府県はきちんと旅費規程に基づきまして、海外旅費として予算化をいたしまして支出をしておるわけでございます。
  265. 河野正

    ○河野(正)委員 それだから余り最初から大きなことは言わぬで、とにかく保健所の魅力を十分知ってもらうために外遊させるのです。外遊させるんだったら外遊させるだけの予算を出さなきゃ、人のふんどしで相撲とるように、外遊はさせますが金は別なところからいただいておいでなさい、せんじ詰めればそういう議論ですよ。  いささかわき道にそれ過ぎて時間をとり過ぎました。ですから次に移ります。  もう一例、これはぜひ聞いておきたいと思ったわけですが、「老人保健事業を実施するため、年次計画的に必要なマンパワーの確保及び施設等の整備。」その中のPT、〇Tの問題ですよ。これは、五十八年が八人、五十九年が十四人、そして六十一年は何と六十五人になっているのですね。こういう数字は確保できますか。
  266. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 老人保健医療の推進に当たりましては、お話しがございましたように年次計画をもって進めておるところでございますが、実際上は、理学療法士及び作業療法士につきましては五十八年度に八人、五十九年度に六人について予算措置したところでございます。  そこで、この理学療法士と作業療法士の確保の問題でございますけれども、実は私が第一号の学校の設立のときにその事務を担当しておりました。これが蘭学事始のようなことで非常に大変な事業でございまして、外国人の教師を採用いたしましたり、各方面の御協力をいただきまして第一号の学校をやったのでございます。そのときに、この理学療法士、作業療法士の将来の養成がどう進むのか、非常に心配であったのでありますけれども、今日、かなりの数の学校ができまして、現在なお不十分ではございますけれども、このまま推移いたしますと、たしか六十年の中ほどであったかと思いますが、およそ需要と供給が均衡するという見通しがついてまいりました。  そこで、今日なお不足ではございますけれども、非常にこれは大事な職種でございますので、都道府県におかれましては、その採用に当たって大いなる努力をしていただきたいと考えておるところでございます。     〔丹羽(雄)委員長代理退席、委員長瀞席〕
  267. 河野正

    ○河野(正)委員 例えば医師の充足数についても、とにかく人口十万に対して百五十、それが既に達成されたということですが、なかなか現状は算術計算どおりにいかぬ。PT、OTの職場というのは局長が考えられるようにそんなに簡単なことじゃないです。これはここに小沢先生がおられるが、一緒に私どもが立案したのでございますが、今絶対数が足りぬということで、とにかくあの手この手で大変な状況です。ですから、今六十年半ばには大体余るようなお話ですけれども、今はそういう状況でないですよ。リハビリは、一般の市町村もそうですけれども、特に開業医の場合もPTが非常に必要だ、あるいは〇Tが必要だということで、この〇T、PTを確保するためにはいろいろな職場で非常に努力が払われていますね。ですから簡単に六十五名とおっしゃっても、特に先ほど説明の中で五十九年は六名予算化したと言うけれども、この資料では十四名になっていますよ。そういうことですから、これは尋常一様では目標を達成することは非常に難しいと思いますね。しかし、これは達成していただけぱ結構なことですから、高い目標を掲げて御努力いただくことは結構なことですから、それは大変難しいと私は思うけれども努力してほしいと思います。  そこで、与えられた時間が余りありませんのであとはさっといきますが、これから先は一般の問題についてちょっと触れてみたいと思うのです。  保健所の事業は十一項目挙げてありますね。その一項目の中に性病、結核、伝染病という問題が挙げられておりますね。十一項目の事業例について一々お尋ねすることはできませんから、その部分だけ一つお尋ねして、今後保健所業務はますます重要な役割を持つしそのための体制づくりを果たしていただかなければならぬ、そういう意味でその項目だけきょうはお尋ねをしてまいりたい、こういうように思います。  そこで、今は夏ですから、梅雨は越しましたけれども、いわゆる食中毒その他が非常に多くなる。この前の熊本の例のからしレンコンは死亡者が十一名と私ども聞いておりますけれども、八名という厚生省の資料が出ています。いずれにいたしましてもきのう、からしレンコンの調査検討委員会が発足した、こういうように報道されているわけですよ。まあ大体からしレンコンのボツリヌス菌中毒の状況も終息を見つつあるというように私は思っているわけですが、きのうテレビを見ておったら七人委員会が発足いたしました。どうも対応がいささか遅いのじゃないかという気がするのです。でございますから、その現況と、どういうふうに対応したか、それについてひとつお答えをいただきたい。
  268. 竹中浩治

    ○竹中政府委員 からしレンコンによります食中毒でございますが、六月の下旬に宮崎県、長崎県等で患者が発見されまして、それ以降、きのう現在でございますが、十一名の死者を含めまして三十八名の患者の届け出が報告されております。  被害は、九州各地を初めといたしまして全国十六都県市にわたっておるわけでございます。  熊本県を中心にいたしまして現在原因の究明を急いでおるところでございますが、株式会社三香というところ、これは熊本市に本社がございますが、そこが製造いたしました真空包装のからしレンコンが原因で、菌はボツリヌス菌A型であるということでございます。  六月二十八日に、熊本県におきましてボツリヌス菌食中毒原因究明特別班というものを設置いたしまして、各種の調査あるいは原因施設に対します立入調査、営業禁止命令等いろいろの措置を講じておるわけでございます。  その後、私ども厚生省といたしましては、熊本県及び患者発生のございました各都県市といろいろと連絡をとりまして、七月七日に私どもの担当官を現地に派遣をいたしております。それから、七月十四日に、先ほど申しました患者の発生した各都県市の連絡会議を開催いたしまして、熊本県と患者の出た各県の連絡、それから、原因究明のために熊本県が実施するいろいろな調査の内容の打ち合わせ等々行ったわけでございます。  ちょっと逆戻りで恐縮ではございますが、七月十二日に、今先生お話しのボツリヌス菌食中毒調査検討委員会を設置をいたして、その第一回の会合が昨日二十四日にあったというのがこれまでの経過でございます。  先ほど申しましたように、原因物質、原因の菌は既に明らかになっておるわけでございますが、ボツリヌスA型菌はめったに出ないものでございますので、一体原料から入ったのか、あるいはその製造の工程で入ったのか、あるいは製造者の取り扱いの問題であったのか、そういった点が今後の発生防止のために非常に重要な点でございますので、今申しましたような詳細な原因究明につきまして、県が第一線としてやるわけでございますが、それに対する助言、指導あるいは調査が上がってまいりました場合の評価、それからまた、同種の事故の再発防止のため今後どういう調査が必要でおるかというようなことを詰めていただきますために、今回検討委員会を発足させたわけでございます。
  269. 河野正

    ○河野(正)委員 検討委員会が発足することは結構なことですけれども、しかし、大体もうからしレンコンの事件は終息を見たと言っても言い過ぎじゃないと思うのです。そういう時期に、さらに今後こういう不祥事が再び起こらぬようにということ等もあることはわかりますが、いささか月おくれの感がなきにしもあらずですね。ですから、この事件が起こって、現地に係員を派遣してやって、その辺から積極的に調査検討をなさればいいのであって、改めてきのうあたりぽつんとこういう委員会ができてやるということになると、真相がわからぬ人は、何だ、今ごろという感を持たざるを得ないと思うのです。ですから、そういう点をもう少し行政というのは先取りする、後追いじゃなくて、そういう方向で努力をしてもらうべきであろうと思います。  そこで、もう時間がないわけですが、コレラ菌が今度横浜港で検出をされた、こういう問題がございます。これも転ばぬ先のつえじゃないけれども、これが水際作戦で成功したんだろうと思いますけれども、これが一体どういう状況であるのか、ひとつ報告いただきたい。
  270. 大池眞澄

    ○大池政府委員 コレラについての最近の状況について御説明申し上げます。  五十八年度におきまして二十六件発生しまして、保菌者、疑似までも含めますと四十三名というような発生状況でございます。もうほとんどが輸入例と申しましょうか、外から入ってきたということが明らかになっておるケースでございまして、それ以外のものについても、国内に常在していないと考えられるものでございますから、何らかの形で外から入ってきているものと考えております。この点は、最近の国際交通の高速化、大型化というようなこと、旅行の多様化等に伴いまして、いろいろと入ってくるリスクが高くなっておるわけでございますが、これに対応いたしまして、各検疫所におきますところの検疫対策、これらにつきましても引き続き熱心に緊張して取り組んでいるところでございますし、また、コレラの潜伐期間等の特徴から、国内に万が一入っても、国内防疫体制と直ちに連携して、迅速な対応ができるような体制を組んで、万全を期すという努力を行っておるところでございます。
  271. 河野正

    ○河野(正)委員 横浜の検疫所で発見された、これはインドから来た冷凍エビだそうですが、一つは、そういうことが予見されておったのかどうか。いま一つは、今後はもう全部水際作戦で一歩も入れぬ。これは患者じゃございませんから、要するに冷凍エビから検出されたということでございますから、そういう意味では不幸中の幸いだと思うのです。でございますから、今五十八年度についての御報告がございましたが、今後そういう傾向はないのかどうかということと、水際作戦で完璧を期していますということであるのかどうか、その辺だけ聞いておきたい。
  272. 大池眞澄

    ○大池政府委員 御指摘のとおり、今回は検疫所におきます食品に付着したコレラ菌ということで発見したわけでございますが、やはりこういった生鮮食品の輸入に関しまして、コレラの汚染地域から来る生鮮食品につきましては厳重にそういう検査を、現在も行っておりますし、今後とも行っていくという方針でございます。
  273. 河野正

    ○河野(正)委員 現在、予防注射は依然としてコレラはやりますかね。
  274. 大池眞澄

    ○大池政府委員 日本に訪れる外国人に関しましては予防接種を強制しておりませんが、外国の一部の国ではまだそういった従来の予防接種を強制するという国が残っておるわけでございまして、そういったところへ渡航する者については予防接種を実施しております。
  275. 河野正

    ○河野(正)委員 私もある程度はわかっておるわけですが、大体今残っておるのはどこですか。まあフィリピンとかインドとかあったんでしょうが。従来渡航する場合にはほとんどやっておりましたけれども、今特定地域だけしか注射せぬと思うのですが。
  276. 大池眞澄

    ○大池政府委員 主として量的に問題になりますのは、東南アジア諸国におきますコレラの流行地あるいは汚染地域ということでございます。
  277. 河野正

    ○河野(正)委員 簡単に東南アジアと言われるけれども、フィリピンとか、何かそういう特定地域でしょう。従来は渡航の場合はほとんどやっていたと思うのですよ。最近は一部は解除されたと思いますね。これは参考のために聞くわけですから、わかりましたらひとつ……。
  278. 大池眞澄

    ○大池政府委員 流行地、汚染地はわかるのでございますが、それを要求しているかどうかということまではちょっと今わかりかねます。後ほどまた調べて御報告いたします。
  279. 河野正

    ○河野(正)委員 そこで、もう時間がだんだん迫ってまいりましたので、さきの事業項目の中の伝染病、結核、性病ですが、結核はもう御承知のような状況ですから具体的にきょうお尋ねする必要はないと思いますけれども、残りましたのが性病です。最近、アメリカでも言われておるそうですが、新型の性病の流行の兆しが非常に強まった。我が国においてもそうです。これは厚生省でも実態調査をなさっておるということですから十分御存じだと思いますが、そういうことでこの新しい型の性病が流行の兆しを見せてきた。それは主としてセックス産業が非常に盛んになった。トルコぶろとかそういうこともいろいろ言われておるようですが、そういうことから我が国もこの問題については注意を喚起しなければならぬ、早急に対策を講ずる必要がある、こういうふうに学界でも言われておるわけです。特に今の新しいクラミジア感染症、これは自覚症状というものが非常に少ないということでつい見逃す、そういう間にだんだん感染が広がる。それからもう一つ大事なことは、新種ですから診断法、治療法がまだよくわからぬというようなことからこの流行が非常に広まってきているのじゃないだろうか、こういうふうに学界でも言われておりますね。この点ひとつどういうふうな御見解を持っていらっしゃるのか、お尋ねをいたしておきたいと思います。
  280. 大池眞澄

    ○大池政府委員 現在、性病予防対策につきましては、医療機関からの届け出に基づきまして健康診断を実施し、あるいは治療を展開するというのが性病予防法上の仕組みになっておるわけでございますが、またそのほか婚姻時、あるいは婚前の健康診断というものを普及させるように国、公共団体で努力をしておるわけでございますが、その一環としまして梅毒は届け出数で見る限りは相当減ってきている傾向が見られます。ただ、淋病の方が、減ってきたのが、最近はむしろ増加傾向が見られるというような状況にございます。  先生の御指摘の新しい型のというのは、性病予防法で言う性病ではございませんけれども、性行為に関連する感染症一連のものを指しての御設問かと思います。その中で、特に御指摘のクラミジアでございますが、この点につきましては学界その他でもいろいろと話題になっておることでございまして、私どもも強い関心を持って、これに対する行政の対応の基礎資料とするべく、研究班を設置いたしまして、現在その実情あるいは医学的な問題点等について御検討いただいている最中でございます。
  281. 河野正

    ○河野(正)委員 私が特に取り上げましたのは、保健所が行う事業の十一項目の中の一項目、それが伝染病であり、結核であり、性病であるということで取り上げたわけでございまして、したがって、こういう新しい型の感染病が次々に出てくるという状況ですから、そういう意味で保健所のそういう方面における活動といいますか、これは非常に重要な役割を持つと思うのです。そういう意味からも、やはり新進気鋭のスタッフが保健所にいなければ、先ほどちょっと局長が言われた、だんだん年寄りがやめていって今新しい人と交代中だ、そういうところに問題があるわけなんですよね。でございますから、ひとつ外遊させるのが五万五千六百円でなくて、もっと大幅に増額をして、それだけが魅力じゃないと思いますよ、やはり研究ができるということ、今からの若い人は特にそうですね。そういう意味で、保健所の近代化というものが急速に進められなければならぬのじゃなかろうかと私は思います。ですから、一つは処遇が、今開業医はいろいろ御承知のとおりですし、勤務医だって、一般の公的医療機関は別ですけれども、その他ではかなりの月給をもらっていますから、もうそういう状況の中で、本当に保健所に飛び込んでいこうということになれば、研究ができるか、勉強ができるかということが一番若い人には魅力だと私は思うのです。それがなければ若い人は行きませんよ。今までそうでなかったから、今老齢化して、新しい人と交代をするという時期が来ておるというようなお答えもあったわけでしょうから、そういった意味で、今度の補助金制度が交付金制度に肩がわりしたということも、それは一利一害あるかわかりませんが、むしろその部分を除いてでも、今の保健所の近代化、若い人に魅力があるものに、例えばその地域における医療行政その他についても御指導いただくわけですから、やはりその地域の人あるいは開業医が保健所長に対して尊敬をする、尊敬に値する、そういう人材というものが就任していただく。保健所にそういう立派な人が就任するためには魅力ある職場にならなければならぬ。そういうことを私はかねがね考えてきましたので、ひとつぜひその点は、最後に厚生大臣の名答弁期待しておきたいと思います。
  282. 渡部恒三

    渡部国務大臣 今先生から専門的な立場で、また地域住民の立場で、今後の保健所運営に当たっての大変示唆に富む参考になる御意見を賜りまして、拝聴をしておりました。たまたま私は、きょう先生方への答弁打ち合わせのとき、政府委員方々と、やはりこれからの保健所は魅力のあるものにしなければならない、保健所の所長、また保健所で働く人たちが自分の職場に誇りを持って、また自分の将来に夢と希望を持って働けるような職場にしていかないと、これから二十一世紀の新しい国民のニーズに応じた、いわば地域住民に密着した健康センターとしての役割が果たせなくなるのではないかということで、そういう知恵はないかといろいろ話をしておったのでありますが、たまたまきょう先生からも、私が心配しておったと同じ御指摘を賜って私は非常に教訓になりましたので、今回の改革をきっかけにして、これから育ってくる若い医師たちが、よし保健所の所長になって健康センターの第一線に立って働いていこうというような魅力のある職場、誇りの持てる職場、そして働く人たちが将来に希望と夢を持てる職場、そういうものにするための具体的な努力を全力を尽くしてこれからやってまいりたいと思います。
  283. 河野正

    ○河野(正)委員 どうもありがとうございました。  終わります。
  284. 有馬元治

  285. 平石磨作太郎

    ○平石委員 多少重複するところがあるかもわかりませんけれども、ひとつ答弁をよろしくお願いしたいと思います。  今回の改正案でございますが、保健所は、御案内のとおり保健衛生行政の大きな拠点として、今日まで保健予防について大変中心的な施設としてその機能を発揮してきたわけですが、考えてみますと、高齢化を控えて、さらにさらにこの保健所というものは強化をしていかなければならない、そういう時代的要請、時代的な背景も私はあると思うのです。そういう中で、保健所運営補助金として保健所の機能強化に国の方の財政的な補助があったわけですが、今回これが交付金に変更された、こういうことでございます。  この交付金をいろいろと強勉してみましたが、十分にわかりません。一体交付金というのはどういうものなのか、そしてその変更した理由をあわせてお答えをいただきたいと思います。
  286. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 まず交付金についてでございますけれども、これは一定の事業に対しますところの国の地方公共団体に対する補助の一つの形でございます。そこで、普通の補助金でございますと、ある事業に細かい決めをいたしまして定率で行うのが普通でございますが、交付金は定額の補助金でございます。  そこで、こういうふうに変更いたしました理由でございますけれども、一番は、ただいまお話しがございましたように、保健所の事業を一層強化する必要がある。それと同時に、健康に関します需要が地域によっていろいろな特徴がございますので、地域の実情に応じた自主的な弾力的な運営ができるようにする必要がある。これが一番でございます。それからまた、事務の簡素化を図る、こういうこともございます。そういう趣旨でございますので、この改正によりまして、地域の実情に応じて職員を配置し、事業の充実を図ってまいるよう都道府県を十分指導したいと考えております。
  287. 平石磨作太郎

    ○平石委員 これが交付金に変更されたということは、臨調の第三次答申におきまして、従来人件費を中心としての国庫補助であったものが、それを含めましてのいわゆる定額交付金、こういう形に変更されたわけでございますが、これはやはり臨調の考えておる人件費、人減らし、そのことだけで保健所全体の機能が落ち込んでいくというようなことになりますと、これは先ほど申し上げましたように、機能はさらに強化しなければならない、こういう要請、背景があり、かつまた、この理由の中にも、自主的、弾力的な運営がなされながらより効果あらしめるというような理由が書いてございますが、果たしてそのようにいくであろうかどうであろうか、こういうように私は考えるわけです。  そこで、この交付金なるものをこの資料によって見てみますと、これは定額の交付金、そして全体では人件費を含めて絞りがかかっている。これから二、三年してみますと、人件費はアップしていく、物価も上がっていきます。そういう中で、これは定額でございますから、国の関与のお金はだんだんだんだんと少なくなっていく。そういう中で仕事がふえてくる。これは将来にわたって考えてみた場合はむしろ大変なことになるのではなかろうか。そして、少なくなったそういう中で自主的、弾力的に、今まで局長答弁にありましたように、最低基準、設置基準に基づいて医師何名、何を何名ここには置かなければならないといったようなことが取っ払われますから、自主的にはできるのでありますけれども、少額の小さなものとしての機能しか発揮できなくなるのではなかろうか、こういう気がするわけです。  そこで、私は、この資料から見まして、交付金は「人口、面積等の標準指標を基本とし、」として書いてございますが、これで見ますと、地方交付税的なものが加味されておるのではなかろうか。したがって、基準財政需要額に算定、積算をしていくようなことがこの中に含まれておるのではないか。そして、これは地方交付税でありますと一般会計のいわゆる一般財源になるので、これを厚生省は非常に嫌ったわけですが、そのために、保健所にまで国のお金が届くように特定の財源として交付金が出てきた。これは一つの特定財源的なものになるわけですが、いわゆる人口、面積、こういったことを考えながら、これによりがたいときは特別の事情を考慮し、こういったようなものがありますから、やはり定額とはいえ、そういったものの変更があった場合は額はふえていくのかどうなのか、固定的なものなのかどうなのか、お答えをいただきたい。
  288. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 まず、今度の改正によりまして、保健所に対する財政援助が大きく分けますと二本になるわけでございます。  その一つは交付金でございますが、これが、今先生お話しのございました人口、面積等の指標によりまして約七割を配分し、そして約三割を地域の実情に応じた調整部分としておく、そういう一般交付金と、それから特に計画的に事業を推進する必要がございますところの老人保健事業につきましては特別交付金、こういうふうに分けております。  そこで、この特別交付金につきましては、これは計画的に年次的に増額を図ってまいりたい、こう考えておるところでございます。それから一般交付金、確かに御指摘のございましたように、このまま長い年月推移いたしますと、事業量あるいは物価の変動等によりまして、発足当初には三十五億円の増額をしておりましても、やはりこの保健所活動に支障を来すということが起こってくるのではないか。そういう場合にはこれを見直しまして、必要な財源の確保を図ってまいりたいと考えております。  それから結核予防法、伝染病予防法等に基づきますところの特定の事業につきましては、従来の補助金制度を残しておるわけでございまして、特定の場合にはこういう制度を活用いたしまして、必要な事業を推進してまいりたいと考えておるところでございます。
  289. 平石磨作太郎

    ○平石委員 この保健所運営費交付金を見てみますと、今答弁にありましたが、一号の人件費、旅費等は一般交付金、それから五号の経費については老人分として特別交付金、こういう形であります。今答弁にありましたように、特別交付金につきましては積算をしてまいります、こういうお話してございましたが、これも老人保健法創設のときに、大体五カ年計画でもって保健所の機能充実を図っていく、マンパワーにしていく、保健婦の増員とかあるいはそういった従事者の方々、特に技術系の方々をふやしていく、こういうことになっておりましたが、この五年計画に基づいているものなのか、五年計画が終わればこれで終わるものなのか、これも御答弁いただきたいと思います。
  290. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 そこのところでございますけれども、老人保健事業は非常に大事な事業である。これを五カ年計画でもって何とか達成いたしたい。当面はこの達成に全力を尽くすわけでございますが、五カ年計画が終了いたしました時点では、そのときのいろいろな情勢、特に老人の保健事業に対する要請等をよく勘案をいたしまして、その時点で検討さしていただきたいと考えるものでございます。
  291. 平石磨作太郎

    ○平石委員 局長答弁を聞きますと、どうも余り自信がないようです。五年間はお約束でございますから、これは積算をしてふやしていきますということ、これは胸張って言っておるわけですが、それが終了してから以降さらに高齢化が高まってくる、こうなってきますと、保健所が実態に合わなくなってくるのではないか、私はここを心配するわけですね。したがって、この一般交付金において、人件費についてもこれはアップがありましても定額でございますと言ってここに絞りがかかってくる。それから事業面について、特に老人だけのものにつきましても、これは積算をいたしますが、五年を終了いたしますとこれも自信がない。こうなってきますと、ますます要請が高まってくる保健衛生の仕事について本当に国、県のいわゆる保健衛生行政の拠点として機能が果たせるのかどうか、そこを心配するわけですが、この説明によりますと、より充実をし機能を発揮をするのだ、こういうことがうたわれておるわけですけれども、現実にはなかなかそのようにはならないのではないかという心配がありますが、行政水準、サービス水準を落とすことがないのかどうなのか。そして将来実態がふえてきた場合、例えて申し上げますと、保健婦さんが七十人の老人を抱えておる、七十人の老人でよかったものが、だんだん高齢化が高まってきまして百人を見ていかなければならない、あるいは百二十人の老人を一人の保健婦さんが見ていかなければならないといったように実態が動いてきますと、これはふえれるのかふえれないのか、将来の展望をひとつ考えながら御答弁をいただきたいと思います。
  292. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 自信がないのではないかとおしかりをこうむったわけでございますけれどもお話しのございましたように私どもとしては考えております。高齢化社会は必ず到来いたしますし、そうして健康に対する需要というのは一層高まってまいりますので、政府としてもそれに的確にこたえていく必要があると思っております。そこで、具体的にお尋ねになりました五カ年計画が終了した時点ではどうするのか、こういうことでございましたのでその時点でと申し上げたのでございますが、これは確かに、ちょっと今私も責任を持って申し上げられませんけれども、そういう天下の情勢から判断いたしまするに、当然それは必要な需要にこたえていくことになるだろう、我が優秀なる後輩が立派にこたえてくれるだろうと思っておるのでございます。
  293. 平石磨作太郎

    ○平石委員 局長も地方におられて保健衛生に携わったということをさっきお聞きしたのですが、そこで、この保健所というものと市町村の保健行政、いわば県が二階から、かゆいところまで手が届くというのは届きにくい場合があるわけですね。そうすると、市町村がやる保健事業、これは一階からさわるわけですから、一階から診断するわけですから、より適切に、より細かくできるわけです。保健所というのは各市町村にはございません。そうすると、必然的に市町村行政の、市町村の保健事業のいわば一つの指導機関的なものになりがちになってきます。そこらあたりで、今のような情勢でお金が国からの定額といったようなことになりますと、私は、ますます保健所機能というものにマイナスの拍車がかかって、むしろ保健衛生については地位が低下してくる、こういったことを危惧するわけです。そういう意味から考えたときに、局長、五年が過ぎましても、もっとひとつ胸を張って、人件費につきましても、さらに事業費についても積算をして、定額の額をふやしていくように御努力をいただきたいことを強く要請をするわけです。  それからもう一つ、時間がございませんのであわてて失礼でございますが、保健所に働いておられる職員の方々、これの中で、従来補助対象の職員として、交付対象二万人でしたか、それで予算定員が二万五千、こういうことで今日まで来たようですが、そこで、二千十九人という人員につきましては、今回の交付金の対象に入る職員として、厚生省がそのものを一応交付対象のものとした。そういたしますと、従来対象職員と予算定員との間に五千人の乖離があったわけですが、この五千人の中で二千人は引き取った、あと三千人残っておるわけです。この三千人残っておるものについてはどういうような処置をせられるのか。これは都道府県知事がそれぞれ辞令を出して雇っておるものでございますから、私は少なくとも厚生省の今回の努力は多とするわけですが、必要な職員でございますから、ひとつさらにさらにもっと努力をしてほしいという気持ちがあるわけです。だが、今年すぐできないというならば、やはりこれについては、都道府県の職員さんでありますから、地方交付税の中に積算をしてほしいと思うのですが、現状積算されておるのか、あるいはおらなければ積算をしていく用意があるのかどうなのか、自治省からお答えをいただきたいと思います。
  294. 小林実

    ○小林説明員 地方公務員のそれに対する財政措置につきましては、地方財政計画で措置をしてまいっております。御承知のように地方公務員につましては数がふえてきておりますので、いろいろ御指摘がございまして、現状を率直に申し上げますと、現実におる地方公務員とそれから財政計画で措置しておる職員数との間には差がありまして、現実におる方の方が多いわけです。従来ですと、五年ごとに実態調査をいたしまして、ある程度理由のつくものは規模是正という形で変えてきております。今後そういうことが来年ちょうどその時期に当たりますので、どう対応するかというのが問題になるわけでございますが、御承知のような状況でございまして、現実に置かれているからそれについて財政計画で認めるというわけにはまいらないというのが実情でございます。
  295. 平石磨作太郎

    ○平石委員 大体どの行政でもということは申し上げかねますけれども、比較的そういう乖離が現実にはあるわけです。そういうような形の中で、都道府県の方は財政的にはいわば超過負担といったような形で処置をしていかざるを得ないというのが現状ではないかと思うわけです。これは都道府県に必要な職員として雇っておるものでございますし、さらに国の方からいわばその職員については認証がない、こういうものでございますから、厚生省としてもそういったはっきり定数として出ておるものについては処置の要求もやれるわけですが、そういったものについてはちょっとやりにくい面もあるのだろうとは思うのですが、都道府県の方の超過負担といった形でいついつまでもこういうこともできがたいことではないかというような気もしますので、少なくとも、これからの保健所の運営については、人を含め、財政的ないわゆる財源処置といったようなことはしていただかなければならないと思うわけです。  そういうことで、今回定額交付金化されたことでもございますので、特にこの面が浮き彫りになるわけですが、ひとつ財源処置を考えていただきたい。これは厚生省と自治省に同時にお願いをしたいわけですが、もう一回御答弁をいただきたいと思うわけです。
  296. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 ただいまの点でございますけれども、今回の改正を行うに当たりまして、御指摘もございましたが、職員定数の現員と予算定数との乖離につきまして是正をいたしましたと同時に、五十八年度に行いました給与の実態調査の結果に基づきまして格付の改善も同時に行ったわけでございます。  そこで、御指摘のございました約三千人でございますが、これが実は、保健所の従来の補助対象事業の職員であるか、それとも環境衛生指導員等の交付税対象の事務であるか、そこが明らかでなく、ちょっと判断ができなかった、こういう事情があるのでございます。ですけれども、ただいま先生お話しのございましたことはまことによくわかります。私どもといたしましては、保健所事業が一層充実され、事務に支障を来すことがないように、適切なる財源措置を図ってまいる必要があると考えておるところでございます。
  297. 平石磨作太郎

    ○平石委員 今の局長さんの御答弁でちょっと気がつきましたが、現実には、今のお話しにございましたように、環境衛生をするといったような職員さんが、これは都道府県の職員であって、勤務場所が保健所だといったものが含まれておるかもわかりません。そうなりますとこれはもう県の職員であって、しかも勤務場所を保健所にしてある。これであれば当然基準財政需要額の中の積算に入るべきであるというように私は考えるわけでございまして、自治省の方もそれは当然入っておると思うわけです。  それから、もう一つここでお聞きしておきたいのですが、この全体の、今申し上げた職員を含めてだろうとは思うのですが、保健所に勤務しておられる職員さんが三万五千人くらいいる。今二万五千人の話をしたわけですが、この差の一万人というのが今申し上げたものに入るのかどうなのかこれもわかりませんが、やはりそういった都道府県の職員さんが勤務場所を保健所にしておるという場合は積算に入っておるということなのかどうなのか、自治省にお答えをいただきたい。
  298. 小林実

    ○小林説明員 先ほど申し上げました地方財政計画上の扱いは、規模是正の場合には保健所の職員何名とか、そういうことはいたしませんで、全体の中で差が出ておるので直す、こういうことで実は参っておるわけです。  それから、保健所に関連しての御質問でございますが、今回の交付金化の際には、実態調査をいたしまして一部是正をしていただきました。また、保健所の職員ということではありませんが、老人保健事業の実施に伴いまして、厚生省の方から御要請がございまして、財政計画上若干ではありますが人員をふやしてきてはおるわけでございます。しかしながら、全体といたしましては、地方団体の公務員が多過ぎるという御指摘も非常に強いわけでございますので、私どもといたしましては、本当に必要なところに重点を絞って、また一方、不必要なところは削減をしていただくというような方向で対応してまいりたい、こう思っております。
  299. 平石磨作太郎

    ○平石委員 そこで、大臣最後に決意をお願いしたいわけですが、今の御答弁その他、私の質問からも判断されると思うのですが、これからは健康づくりといったことが非常に要請される一方、したがって、厚生省それなりに老人保健法以来対応を進めて予算もむしろふやしておるわけでして、これはその努力を多とするわけですが、それが済んでから先が果たしてどうなのかといったようなことでちょっと心配な点があるわけです。これからの情勢としましては、どうしても機能を高めていかなければならぬ要請があるわけですから、どのようにこれから対応されるのか、さらに強化を図っていかれるのか、ひとつここでその御決意を披瀝いただいて、私の質問を終わりたいと思います。
  300. 渡部恒三

    渡部国務大臣 厚生省は、今回、先生のたびたびの御指導をちょうだいしながら、二十一世紀に向けての国民の健康を守るためのビジョンを発表いたしました。その中でも、生涯を通じての健康増進運動というものを大きく取り上げておるわけでございますが、これを第一線で、地域住民と一番密接した中でやってくれるのが保健所だろうと私は思います。そういう意味では、今回お願いしておる保健所法の改革というのは、一つの時代の求められておるものと思います。  ただ、どのような制度でも制度には一長一短がありますから、先生御心配のような、この改革がマイナスにならないように、これは時代の新しいニーズに応じてプラスの面で働くようにするためには、私どもの運用、行政の責任にかかっていると思います。  予算等についての御心配もまことにごもっともであり、幸いに五十九年度は、老人保健事業を中心とする今後の高齢化社会に備えての健康づくりというものが認められて、予算を三十五億円増額することができたのでありますが、こういう力をこれ一遍で終わらせないで、今後に継続してもっていくということが何よりも肝要だと考えますので、私どもは、この保健所法の改革に当たって、二十一世紀に向かっての保健所の国民に果たさなければならない新たなる役割とい白ものを痛感し、保健所で働く人たちが誇りと責任と生きがいと希望を持って国民皆さんの健康を守る仕事に励むことができるように、行政として万全を期すように努力をしてまいりたいと思います。
  301. 平石磨作太郎

    ○平石委員 終わります。
  302. 有馬元治

    有馬委員長 塩田晋君。
  303. 塩田晋

    ○塩田委員 保健所法の一部を改正する法律案につきまして厚生省にお尋ねをいたします。五、六間、短時間に申し上げますので、簡潔に要領よくお答えをいただきたいと思います。  地域における公衆衛生の向上及び増進を図るために設置され、全国八百五十五カ所にあるようでございますが、三万五千三百二十二人の職員をもって運営されている保健所につきまして、今回、従来の保健所運営費補助金が定率補助方式から標準定額を基本とした交付金方式に改められることは、地域の実情に応じた自主的、弾力的な運営が促進され、事務の簡素化が図られるなどメリットがあるものといたしまして、行革推進の立場にあります民社党といたしまして一応評価できるものでございます。  しかし、保健所運営費補助金のうち交付金化の対象となるものは人件費、旅費及び老人保健関連経費でありまして、これは増額されております。その他予算関係経費、例えば伝染病予防関係費とかあるいは母子保健関係経費といったようなものは交付金化されずに、保健所業務費補助金として残っておりますけれども、これはなぜ交付金化しなかったのか、その根拠をまず明確にしていただきたいと思います。
  304. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 お話しにございましたとおり、伝染病予防法、母子保健法、結核予防法に基づく事業等に係りましては従来どおりの方法でやっておるわけでございますけれども、これは当該経費によりまして特定の事業の遂行を図るという趣旨によるものでありまして、それぞれの行政目的を達成するためには、引き続き事業の実績に応じた負担または補助を行う必要があるというのが理由でございまして、従来どおりの補助金としているところでございます。
  305. 塩田晋

    ○塩田委員 今回の交付金化は一般財源化ではなく、その意味では臨調答申に沿ったものでないのではないか。将来全面的に一般財源化する方針であるのか否か、方針を承りたいと思います。
  306. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 御指摘のとおり、臨時行政調査会は、地方公務員に対する人件費の補助は一般財源化すべきであると答申をしておるところでございますけれども、保健所は健康対策の中核的な機関でございまして、地域の保健水準を確保いたしますためには、保健所の運営が十分に実施されるための財源が確保される必要があると考えたのでございます。そこで、自主性を尊重し、弾力的に運営を図ることは必要ではありますけれども、一般財源措置は適当ではない、やはり厚生省の所管をいたします交付金にするのが適当であると考えたところでございます。  厚生省といたしましては、今回の交付金化によりまして、保健所において一層の円滑な事業の運営が確保されるものと考えておりまして、今後とも、この交付金制度によって地域における保健所行政の推進を図ってまいりたい考えでございます。
  307. 塩田晋

    ○塩田委員 保健所運営費交付金の大部分を占めておりますのは、言うまでもなく人件費でございますが、これにつきましては従来から、地方公共団体から地方交付税等による一般財源化という強い要望があるはずでございますが、その考えをとり得なかったのはどのような理由でございますか。
  308. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 確かに、お話しのございましたような要望がございましたことは承知いたしております。  地方交付税による一般財源措置にいたさないで特定財源としての交付金といたしましたのは、先ほど申し上げましたような理由で、保健所活動を行うために十分な財源を保証する必要があると考えたところでございますが、この移行に伴いましては、従来存在しておりました実数と補助対象者との乖離の是正を図るなどの措置を講じ、増額も図っておるところでございまして、関係者の理解は得られておると考えております。
  309. 塩田晋

    ○塩田委員 交付金の配分につきまして、保健所を設置する地方団体ごとに、人口だとか面積等の指標を基本としておるようでございますが、地方団体によりましては、こういった基本的な指標だけでもってこの額を算定するのは無理があるのじゃないか、あるいは実情に沿わないのじゃないか。特別の事情があるところについては別途配慮をする必要があるのではないかと思います。配分方式の変更によりまして、従来の補助金交付額が十分に確保されなくなる地方団体が生ずるといったおそれもあろうかと思います。交付金の配分基準、これはどのようなものを考えておられるかお伺いいたしますとともに、今申し上げました特別の事情のあるところにつきましては特別交付金的な考え方、これをとられる御意思があるかどうか、お伺いいたします。
  310. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 お話しの点はまことにごもっともだと思います。そこで、交付金の配分に当たりましては、これまたお話しのございました人口と面積等の指標を基本といたしますものは約七割といたしまして、残りの約三割につきましては、そういう人口とか面積によっては捕捉し得ない地方の特別な事情、例えば僻地、離島等に対する特別な活動、そのようなものでございますけれども、そういう特別な事情に応じた調整分を設けておるわけでございます。それからまた、老人保健事業につきましては特別交付金としております。  それから、従来のものよりか減るものが出るのではないかというお話もあったように存じますけれども、それに関しましては約三十二億円の増額を図っておりますので、従来の交付額を下回ることはまずないのではなかろうかと考えております。
  311. 塩田晋

    ○塩田委員 交付金の配賦基準についてお伺いしたい。
  312. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 配賦基準でございますけれども、約七割を人口と面積によりまして案分をいたす考えでございます。これは定型的といいますか自動的に出てまいります。残りの約三割につきましては、地方団体の特別な事情、僻地、離島等に特別の活動をやっておる、あるいは市町村の老人保健事業の進展の状況に応じまして特別の援助を行っておる、そういう事情を考慮いたしまして配分をする、そういう考えております。
  313. 塩田晋

    ○塩田委員 今回は、予算的には今御説明ございましたように三十二億円の増額ということになっておりますが、今後の問題といたしまして、保健所運営費交付金の総額、これは今後の事業量あるいは経済情勢の変化、例えば物価とか賃金等々といった要素を勘案して、それに即して疾病の予防、健康保持のための事業の円滑な推進に支障が生ずることのないよう十分確保できるものかどうか、この点についてしかとお聞かせいただきたいと思います。
  314. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 今回の改正が、お話しにもございましたように、地域の実情に合った保健所活動の充実強化を図るためでございますから、このことが保健事業の円滑な実施に支障を来すというようなことがあっては万々ならないと考えておるのでございます。  そこで、お話しにもございましたように、将来、小業量の変化あるいは経済情勢の変動等がありました場合には見直しまして、必要な財源の確保に努める考えでございます。
  315. 塩田晋

    ○塩田委員 吉崎局長は地方の行政の御経験がおありですか。
  316. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 駆け出しに、ある県の母子衛生係におりました。やや長じまして、ある県の厚生部長と衛生環境部長を務めさせていただきました。
  317. 塩田晋

    ○塩田委員 その御経験からお話しをしていただきたいと思います。率直にお願いいたします。  まず、三万五千人の八百五十五カ所でございますから、平均いたしますと大体一カ所四十人ぐらいになるのでしょうか、四、五十人の典型的な保健所を御説明いただきたいのですが、まず全国の八百五十五の保健所の所長さんは全部お医者さんですか。三万五千のうち、お医者さんとか歯科医師さん、あるいは獣医師さん、皆さんいらっしゃるわけですね、どういう数字になっていますか。
  318. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 保健所長は医師でなければならないわけでございます。医療行為も行いますので、医療機関にもなっておりますし、保健所の業務の全部が健康に関するものでありますので、医師でなければならない。  これがまた、非常に残念で、悩みの最大のものはその医師が不足をしておることでございますが、お尋ねのございました所長につきましても、約一割が兼務となっております。
  319. 塩田晋

    ○塩田委員 三万五千何がしの職員のうち、医師とかあるいは歯科医師さん、獣医師さんとかありますね、そういう方の主なところを人員構成をお聞きします。
  320. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 昭和五十八年度でございますが、医師千百五十九人、歯科医師七十人でございます。(塩田委員「獣医師は……」と呼ぶ)獣医師は、ちょっとこの表では薬剤師、獣医師が一緒になっておりますが、千三百三十二人でございます。  主なところをちょっと申し上げますと、今の俸給哀別に医療の(―)の医師や歯科医師でありますが、これが千二百二十九人、それから医療の(二)の薬剤師、診療エックス線技師その他でございますが、これが六千四十三、それから医療の(三)の保健婦、助産婦、看護婦でございますが、七千九百四十五、それから行政の(一)の精神衛生相談員でございますとか衛生工学指導員、いろいろございますが、これが一万二百七十三、合計で二万五千四百九十でございます。そのほかに運転手、食品衛生監視員等、これは従来の補助金方式と地方交付税方式で分けておりますが、地方交付税対象小計が八千七百八、特定財源のと畜検査員等でありますが、千百二十四、合計三万五千三百二十二となっております。
  321. 塩田晋

    ○塩田委員 典型的な四十ないし五十ぐらいの中規模の保健所の組織ですね、何課とか何係とか、そういった主なところのどこに業務上重点が置かれているのか、どういう体制になっておるか、そのことについてお伺いいたします。
  322. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 お話しのありましたような規模の保健所におきましては、まず所長がおりまして、一般的に次長がおります。それから総務課、保健予防課、環境衛生課、保健婦課、このような組織が一般的でございます。
  323. 塩田晋

    ○塩田委員 そういたしますと、業務の重点は大体どこに置かれているかということです。保健所法の業務としては、法律の第二条に十一項目上がっておりますね。このうち、組織の面から見ても人員の面から見ても、重点を置いて現在行われているのはどことどこですか。
  324. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 お話しにもございましたけれども、保健所は衛生行政の第一線の中核機関でございまして、ほとんどすべての第一線活動がここに集中しておるわけでございます。そこで、どれが重点かということはなかなか難しゅうございます。みんな大事だと思いますが、それはやはり地域によりまして重点の置き場所が違うのではないか。例えば保健婦活動に非常に力を入れておるところでは保健婦課に重点を置いておりましょうし、なかなか一概にどれが重点かとはちょっと申し上げにくい状況だと存じます。
  325. 塩田晋

    ○塩田委員 私は、保健所というものが戦前戦後、そして今日、かなり行政自体の重点が変遷をしてきていると思う。今おっしゃいましたように地域的な差もあるでしょうけれども、時代的に任務というものもかなり変わってきたのではなかろうか。特に行政改革推進の立場からいいますと、許認可の事務が戦後から今日まで見ますとふえてきているのではなかろうか。戦争直後は薬剤散布だとかあるいは上下水道、環境衛生、公衆衛生関係ですね、いわゆるサービス部門が相当あったと思われるのですけれども、これがだんだん役所的というか、許認可事務の役所になってきているという批判がかなり強いのです。  そこで申し上げているのですが、許認可事務について思い切った整理をするということは、お考え、また御検討しておられるかどうか、お伺いいたします。
  326. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 確かにおっしゃいますように、歴史的に見ますと変遷があろうかと存じます。改めて申し上げるまでもありませんけれども、これは結核には物すごい力を発揮いたしました。一般の医療機関にまだレントゲンなどがないときに保健所でやっておったというようなことがございまして、それが今日まで若干尾を引いておることはございます。これからの慢性病に対する保健予防、そういう面にちょっとまだ移行が十分ではないと思いますが、これから新しい展開を図っていく必要があると思っておるのでございます。  そこで、具体的にお話しのございました許認可でございますが、これは各専業法ごとに決まっておるわけでございまして、そこで検討が行われておりますが、ちょっと保健所からはこれは嫌だというわけには実はまいらないわけでありまして、各事業法ごとの検討で必要とされておりますものにつきましては、保健所といたしては全力を挙げて実施をする、こういう関係になっております。
  327. 塩田晋

    ○塩田委員 最後に、今の点に関しまして、やはり保健所というものは住民に対する健康の保持、あるいは疾病の予防、栄養の改善、あるいは歯科の衛生、母性、乳幼児、あるいは老人の衛生、それから精神衛生、こういったサービスの面、これにもっともっと力を入れてサービスに徹するようにやっていくべきであって、許認可の事務の権限を抱えて役所として行動することが前面に出ないように十分にひとつ御配慮をいただいて、サービス部門を充実し、許認可事務を思い切って簡素化されるように強く要望いたします。  また保険医の取り消し、許可、これも都道府県から移っていった場合にはあるいは保健所になるのではなかろうかということが危惧されておりますけれども、そういうことはございませんか。
  328. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 医療監視につきましては、都道府県本庁とそれから保健所でやっております。保健所が中心のところもございますが、健康保険に関しましては保健所はやっておりません。
  329. 塩田晋

    ○塩田委員 それでは、今申し上げましたように、サービス業務を充実して許認可業務はできるだけ整理する方向で御検討をして、保健所機能の充実に全力を挙げて取り組んでいただきますよう要望いたしまして、質問を終わります。
  330. 有馬元治

    有馬委員長 浦井洋君。
  331. 浦井洋

    ○浦井委員 今度の改正案で交付金方式に変わる、しかし特定財源だということで、補助金という形で比べてみますと国からのお金が削減される都道府県はないわけですね。それはありますか。
  332. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 補助の方式を変更いたすことの御審議をお願いいたしておるわけでありますけれどもお話しのございましたようなことのないように、前年度予算額に対しまして当該部分で三十二億円、全体では三十五億円でございますが増額を図っておるところでございますので、そのようなことはないと考えます。
  333. 浦井洋

    ○浦井委員 ないと考えますと言っても、実際にはあったら困るのですよ。だから、ないようにいたします、こうならなければいけない。
  334. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 下回ることがないようにいたしたいと存じます。
  335. 浦井洋

    ○浦井委員 それはやはり絶対にあったらいかぬのですよ。  それから、もう一つの問題は、それに関連して、去年農水関係の予算で協同農業普及事業負担金が交付金となった。ところが、ことし五十九年度の予算額は去年と同額で据え置かれておる。だから、ことしはふえたふえたと言われているけれども、来年以降ふえるという保証はないわけです。これはどうですか。
  336. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 保健所は一層充実していく必要がある機関でございます。そこで、この交付金の中で、一般交付金につきましてはこれはやはり毎年改定をするという性格ではないと思いますが、特に計画的に推進する必要がありますもの、具体的には老人保健事業の計画的な推進でございますが、これは特別交付金としておるわけでございまして、これにつきましては着実に増額を図ってまいる所存でございます。
  337. 浦井洋

    ○浦井委員 着実に図っていくつもりであります、こうなるわけで、出てみなければわからぬ、こういうことですから、吉崎さんがいつまでおられるかわからぬし、大臣もいつまでおられるかわからぬですからね。  そこで、もう各委員がやられたわけでありますが、要するに調整配分部分ですね。やはり不公平のないようにしなければならぬ。やはり不公平、不平等が出てくるということはぐあいが悪いので、これは質問ということでなしに要望しておきたいと思います。  それから、ここが一番大事な点ですが、やはり保健所で働いておられる方々の中には毎年、毎年というか、過去何回も交付税交付金になるのではないかということが現実に出ましたし、そういう中で、特定財源にはなったけれども、今回の措置というのは一般財源になるステップではないか、第一歩ではないかという受け取り方がどうしても消えぬわけですよ。いろいろ事前に古市さんにお聞きしたところでも、どうももう一つはっきりせぬ。ここで厚生省が、踏ん張りました、だからこれでやりますというようなことを言われても、将来のことはだれもわからぬ、と言うたらそれでしまいですけれども、一般財源になってしまうということは保健所の存亡にかかわるわけでありますから、これはどうですか。
  338. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 先生もよく御案内のとおり、過去にいろいろかなり時間的な経過もございまして、そこで厚生省といたしましては、保健所事業の重要性にかんがみまして、これは一般財源にするのは不適当であるということで、このような格好にして保健所事業を充実してその安定を図るわけで、先生お話しございましたように、一般財源にするというふうな議論をやっておりますと、やはり保健所に働いておる職員もなかなか落ちつかないという面もあろうかと存じます。そこでこういう改正の措置を講ずることにしたわけでございます。この制度によりまして、地域の自主性も尊重されますし、また保健所事業の安定も図られる、こう考えておるわけでございまして、この制度の推進によって、国民期待にこたえられるような保健所の運営をやってまいりたいと思います。
  339. 浦井洋

    ○浦井委員 この点大臣、どうですか。この前、健康保険法改正法案の審議のときに、自民党政府の続く限りはそんなことはいたしませんというようなことを言われたのですけれども、自民党政府の続く限りは一般財源化しませんか。
  340. 渡部恒三

    渡部国務大臣 今、政府委員からも御答弁ありましたが、この制度改革が問題になった五十九年度予算編成の際、保健所で働く皆さん方、また保健婦の皆さん方とかが非常に御心配になられました。私はこの姿を見て、国民の健康センターである、地域住民にとって一番大事な健康の相談所である保健所で働く皆さんが、自分たちの職場の将来に不安を持つというようなことはあってはならないということで、特定財源で頑張ったわけでございますから、この考え方というものは決して私個人の考え方でない、いわゆる自由民主党政府の考えでございますから、共産党政権になったときはわかりませんが、私どもが政権を担当している限り、保健所が国民、地域住民に密接した健康センターである、そこで働く人たちが誇りと生きがいを持って頑張っていただけるような制度を持続してまいりたいと思います。
  341. 浦井洋

    ○浦井委員 私どもが政権を握っても、そういう心配は全く杞憂にすぎないということを申し上げておきたいと思います。  だから、ここが一番のポイントなんですが、それが本当は一般財源化してしまう第一歩にならぬかというのが、心ある保健所関係者あるいは公衆衛生関係者の一番の心剤点です。これはそうしてしまうと保健所が本当になくなってしまうのですよね。ですから、そこのところをしかとお約束しておいていただきたい。一言でいいですからもう一遍。
  342. 渡部恒三

    渡部国務大臣 私は、率直に、保健所は、二十一世紀に向かって、地域住民に密接した健康センターとして今後ますます重要性を加えていく、その重要な保健所で働く人たちが不安のないような制度というものは持続していきたいということを申し上げたはずでございます。
  343. 浦井洋

    ○浦井委員 そこで、今も出ましたけれども、保健所の医者の問題です。これはまずちょっと逆説的にお尋ねしますが、保健所の所長は、医者の来手がないので獣医師でもよかろうではないか、あるいは事務職でもよかろうではないか、これはかなり機構の改編、性格の改変をやらなければならないのですけれども、こういうことは絶対ないですね。そういう声が部分的には出ているようですが、そういうことは絶対ないですね。
  344. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 先ほどもお答えいたしましたけれども、保健所の事業の重要性にかんがみまして、私どもはそのようなことは毛頭考えておりません。
  345. 浦井洋

    ○浦井委員 私も、その点は、やはり医師でなければならぬだろうというふうに確信をいたしておりますので、そんなことにならぬように、これは本当にこいねがわなければならぬわけであります。ところが現実には、これは数字は言っていただいてもいいのですけれども、例えばいただいた資料の五十四年以降の医師数の定数、現員、平均年齢。一応言っていただきましょうか。
  346. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 まず現員でございますが、五十五年度千二百三人、五十六年度千二百三人、同じでございます。五十七年度千百六十一人、五十八年度千百五十九人でございます。平均年齢は五十六年度から書いてありますが、五十二・八歳、五十七年度五十二・二歳、五十八年度五十二・二歳でございます。これは医師だけでございます。
  347. 浦井洋

    ○浦井委員 充足率が六八・六%みたいな数字が出ておるのですね。大体七割。年齢も五十二歳代とかなり高齢と言えば高齢であるわけであります。だから、今も言われたように兼務所長が一割。兼務所長はどこが多いか、大臣は御存じですか。福島県なんです。それから、ここに今おられないんですけれども小沢さんのところの新潟県。こういうことを具体的に解決していかなければいかぬですよ。何で保健所に医者が来ないのですか。
  348. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 これはいろんな理由があろうかと思います。保健所もそうでございますし、私どもの畑もそうでございます。矯正医官も少ないと聞いております。これはいろんな事情があろうかと思いますけれども、先ほど来の議論にもございますが、これが最大の悩みなんでございます。  そこで、大いなる期待は、改善の兆しがあらわれておることであると思います。世代交代も起こりつつありまして、医師もふえてきておりますので、厚生省へ入りたいという者もふえてきております。また保健所へ行きたいという若い人がふえてきておりますので、大切な仕事であるということを大学等ともさらに一層よく連絡をいたしまして、充実に努めてまいる所存でございます。
  349. 浦井洋

    ○浦井委員 大臣、申し上げておきますけれども、私、保健所長をやっている同級生が兵庫県内に二人おるのですよ。聞いてみますと、端的に言えば経済的に不利なんだ、それから皆、医者は病気を治すのが仕事だと思い込んでおるんですね。二十かそこらくらいから今の日本の医学教育を受けてきていますからね。だから、保健所というのは医者が行くところと違うみたいな気があるわけですね。それともう一つは、表現しにくいのですが、かなり成果を上げている人もあるのです。個々を見ますと、長年月にわたって疫学的なこととかいろんなことで地道に仕事をやって、地域全体の保健のレベルを上げていっておる。ところが、それが世間とかあるいは医学界とかそういうところで認められない。その三つぐらいではないか、こういうふうに言うわけですよ。だからこの辺のネックを、それなり皆さん方も努力をされてきておるのでしょうけれども、やはり全体としては魅力がない。  変な話を申し上げますけれども、その二人の保健所長というのは兵庫県下の県立の保健所におるのですよ。学校の成績は私なんかよりも物すごく優秀であったわけです。一人は、ある健康保険組合の診療所の所長を五十四、五までやって、第一の定年を迎えて県立の保健所の所長。もう一人は、小さな市の市立病院の院長を二十年ぐらいやっていて、第一線を引退して保健所の所長。これは本人さんを責めるわけではないのですよ、しかしそうなるんですよね。  それで笑い話ですけれども、数日前にちょっと電話をして、あんた、学生のときに一生懸命公衆衛生の講義聞いて勉強したんかいな、公衆衛生の教室に入ったんかいなと聞いたら、もちろん入ってないわけです。どっちも内科と小児科なんです。ところが、保健所の所長に再就職するということで県へ行ったら、成績証明書を持ってこいと言う。これは別にいいのか悪いのか知りませんけれども、三十何年ぶりに母校へ行って成績証明書をもらったらしいのです。たまたま開封されていたものですから、わし見たことないけれども、どれくらいの成績やろと思って見たというのです。なかなか優秀な人ですよ。私は余り勉強せぬので、六十点ぐらいですれすれで国家試験を通ったみたいな格好ですけれども、その人なんかは優秀なんです。それで、見たら、その人の成績の中で公衆衛生が一番悪い。それでも保健所の所長で再就職という格好ですよ、第一の定年を終わって。これが現実の姿なんです。  吉崎さんやら古市さんはこれからよくなりますと言われるかもわからぬですけれども、私が同じ医者の立場として見ていて、そう簡単にはいかぬ、よほどてこ入れをしなければいかぬ。この辺大臣、よく考えていただきたいと思うのですよ。魅力――魅力という言葉で片づけられないかもわかりませんが、さっき言いました三つのことを解決するというか、よほど保健所の例あるいは公衆衛生行政の側に吸引力がなければ、一たん青春の情熱を燃やしてそっちへ入ろうと思っても、途中で必ず転身しますよ。だから、今局長が言われたように、医師不足というのは保健所行政の最大のネックでしょう。一保健所に最低二人は要りますわね。今は何人ぐらいですか、一カ所一・四三ぐらいですか、数字をぱちぱちっとはじいてみますと、保健所一カ所について一・五人以下なんですよね。これを埋めるのは並み大抵ではなかろう。だからあらゆる手段を尽くしながら、本当に全知全能を傾けてそういう熱意と専門的知識を持っている医者を育ててそれを定着させるということをやらぬと、保健所というのは廃れる一方だ、私らが今までずっと見ておりましてそういうふうに感じるわけで、ぜひともこの点は――今の厚生省でうまいこといきますかね。私は余りうまいこといきそうにないように思えてしょうがないのですけれども、一遍努力してみてください。大臣どうですか、二日。
  350. 渡部恒三

    渡部国務大臣 非常に貴重な御意見を賜りました。ただいまの保健所の所長を確保しなければならない、また今まで医師が保健所に余りならなかったということについては、先生と私は全く同じ考えです。ただ、先生より優秀な成績の方がおられたなどということは信じられませんけれども。  今までの社労の審議でも何遍も申し上げましたように、これからはヘルス事業が非常に重要である。予防にまさる治療なしとさえ言われておるのでありますから、そのヘルス事業の地域住民に密接した中心センター、これが保健所であって、その保健所の所長が、お医者さんが充当されていないというようなことはゆゆしき大事だと思います。  今、福島県と新潟県のことまで御心配を賜りましたが、これも私、国へ帰ってよく勉強してみたいと思います。日本じゅうの保健所でお医者さんがいない保健所があるということがないように、ひとつこの改革をきっかけにして、あらゆる知恵を絞って、これから新しく医大を出られお医者さんになる方が誇りを持って、希望を持って保健所の所長になれるような環境づくりというものに、経済的な面を含めて努力してまいりたいと思います。
  351. 浦井洋

    ○浦井委員 一遍やってみてください。  それで、その次の問題ですけれども、五十八年度予算で保健所設備備品として眼底カメラが百十八台ですか、それから血液自動分析装置が二十一台、ずっとこう購入されているのですね、全体として。ところがある保健所の話によりますと、眼底カメラを使える人がおらぬ、器械はあるのだけれども。それからお医者さんがさっき言ったような話、内科、小児科と言いましたけれども、産婦人科出身のお医者さんで心電図が読めない。それでその器械がせっかくあるのに余り使われておらない。お金出して、国の予算を割いて、貧血な国民の税金でもって、器械を買うことはよいと思うのですよ、しかしそれが活用されておらぬという話をあちこちから聞くわけですよね。だから、その実態をつかんでおられるのか。その点どうですか。
  352. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 確かに、保健所の業務といたしまして、結核等の伝染病からいろいろな慢性病に重点が移っている、そういうことで、機能強化を図る観点から、お話しのございましたような機器の整備を図っておるところでございます。確かに場所によってはその活用が十分でないということもあろうかと存じますけれども、老人保健事業に対応する必要も非常に大きいわけでございまして、五十七年度からでございますが、保健所の医師に対しまして研修会を実施をしておるのでございます。そういうもろもろの努力を通じ、またこういう機器の整備も、先ほどお話しのございました魅力を持たせることの一つの意味もございますので、その活用に努めてまいりたいと考える次第でございます。
  353. 浦井洋

    ○浦井委員 実態をつかんできちんと手を打たなければいかぬですよ。実態はわかりますか。何か数字がありますか。
  354. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 十分活用されておると考えておるのでございますが、御指摘がございましたので調べてみまして、使われないことのないように十分指導してまいりたいと思います。
  355. 浦井洋

    ○浦井委員 ヒントだけ与えておきますけれども、私が言っているのは主に保健所の政令市、特にいわゆる政令指定都市です、大都会です、神戸ではないですけれども。だからよく調べて、やはりせっかく購入した機械が住民の健康を守るために活用されなければいかぬですから、そういうことを要望しておきたいと思います。  そこで、一つの問題は、確かにその場合でも人がおらぬ、マンパワーがないということなんですよ。ところが、いまの医療というのはどんどん進歩し、技術革新していっているでしょう。国の予算やらあるいは県の予算、あるいは政令市の場合には市の予算を使う。とっても保健所でその新しい器械設備を次々入れていくというのは何といっても無理な面があります。しかしやはり保健所としては最新のものを常に入れておかなければならぬ。そこで、これは私の個人的な考えですが、地域で例えば機械器具を共同利用するようなシステムづくりをやるセンターに保健所がなって、それが円滑に回るような触媒の役割、横文字で言いますとカタライザーというんですかね、別に学はないのですけれども、そういう役割を果たさぬと、保健所なんかはどんどん新しい機械器具を要求して、今は老人保健法でヘルス事業をやらなければいかぬからというので、厚生省も比較的財布のひもが緩いですけれども、お金、予算を取って器械を貰えばよいんだというような形だけでもいかぬ、リアルに見れば。だから、その辺もよく注意していただきたいと思うわけであります。  それから、いろいろなことを要望したいのでありますけれども、まず、保健所の数というのはもうふやさぬ方針ですか、八百五十五というのは。大体もうその前後に来ておるでしょう。
  356. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 保健所は、いろいろな意味でこれから新しい需要にこたえて新しい展開をしていく必要があると考えております。八百五十五は、全国平均で見ますとたしか十四万人に一カ所だったと思いますけれども、おおむね適当な数であろうと思っておりますが、絶対これに固執する、ふやしたり減らしたりはしないというものではないと思います。それはやはり地域の事情に応じて、これからの事業の展開によって考えなければいかぬと思います。
  357. 浦井洋

    ○浦井委員 おおむね適当でしょうかね。政令で十万人に一カ所ということになりますと、千百八十六カ所なかったらいかぬわけです、機械的に割れば。それで今は八百五十五でしょう。  それで、ひどい例が、これは「公衆衛生と保健所」という小粟史朗さんのパンフレット、皆さん御存じだろうと思うのですけれども、ここに書いてあるのでは、人口七十四万の千葉市は県立中央保健所一カ所だけだ。しかも、こういう事実があるんですかね。地方自治法上の指定都市、政令指定都市でしょうね、政令指定都市となる際には、保健所は一カ所に置いておいて「各行政区に保健センターを設置するという構想を、具体化する予定です。」、保健所をつくらずにいわゆる健康センター、保健センターみたいなもの、区制がしかれた場合にそんなものを置こうという構想を持っておられるというようなことが書いてあるのです。  これではぐあいが悪いので、やはり今の規格に合った保健所を、人口七十四万ですから七カ所、六カ所ぐらいはあってもいいわけですから、こういうふやすところはきちんとふやす、そして整備をするという方向で努力をせぬといかぬじゃないですかね。  千葉市の例を挙げましたけれども、兵庫県なんかだったら、西宮市が四十一万六千で保健所が一カ所、明石市が二十六万三千で一カ所ということですから、もちろんその人口だけでいかぬ面もあるということはわかりますよ。しかし、人口が稠密に張りついているところなんかは必要なんですから、思い切ってふやすという措置をとらなければいかぬのと違いますか。
  358. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 全体で見ますと、一カ所当たりの人口が約十四万人、大体いいところへいっておるのでございます。ところが一方、御指摘にございましたように、今七十万を管轄するところもございます。ということは、逆に言いますと、地域の事情によっては一万人しか管轄しておらないところもあるわけでございます。そこで、交通事情でございますとか、いろいろな関連施設の配置状況、医療機関の多い、少ないとか、サービスの提供の仕組みがどうなっておるか、いろいろな事情を勘案しなければいかぬと思います。  八百五十五が絶対的な数ではないと申し上げましたのはそういう意味でございまして、やはり新しい需要に応じて再編成が必要だと思いますが、ただ、一つの方向だけ、人口の多いところだけをふやしていくというのは必ずしも適当ではないのではないか、全体を考えて再編成の必要はあろうと思います。
  359. 浦井洋

    ○浦井委員 何かふやさぬというような気配があって、事実ふやしていないのです。何か吉崎さんの話を聞いていたら、人口十万と政令で決まっておるのに、十四万で当たり前みたいな感じなんですよ。十四万人だと基準が四万ふえてしまうのですよ。やはり十万という原則を守っていかなければいかぬと思うのですよ。そして、ふやすべきところはふやすということをやらぬといかぬだろう、それが一つの要望です。  それともう一つは、私の個人的な意見で、兵庫県の三田市が三万八千人、高砂市が九万人というようなところ、たまたまここは一行政区一保健所なんですが、そういうところでは、逆に言えば、保健所の公衆衛生行政と市の衛生行政とがダブってしまうのですよ。だから、下手に合理化して首切れというようなことは私は絶対に言いませんよ、しかしむだが多いことは確かなんです。政令指定都市を含めまして、今政令市が三十一あるそうですが、そういう場合はこういう小さな市もむしろ政令市にして、こういうところ、例えば高砂なら高砂でもむしろ市立の保健所にしてしまう、そして国なり県なりが財政的にもきちんと世話をしてやるというような方向の方がいい。一番住民に近いところの自治体が保健所の運営については責任を持つべきだ。県がやったらどうしても中二階的になりますから。私はそういう意見を持っておるのですけれども、そういう方向なんかは考慮する余地はないでしょうか。現場ではかなりそういう意見は強いのですよ。
  360. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 今生国で一市一保健所というのが六十七ございます。そのうちに大阪府下が十一ございまして、大阪は比較的多いなと思っておりますが、確かにお話しの点は理解できる面がございます。保健所と市町村が一体となって事業を実施する、いい面もございますけれども、一方、保健所はそういう面だけではございませんで、環境、医務、業務、そういう万般の衛生行政の中核の機関でございますので、総合的な能力が当該市にないとやはり無理ではなかろうか。  そこで、この三十一をふやさないというのではないのでございますけれども、先ほどもちょっとお話しがございましたし、財政的な余裕もなくて、保健所の整備もできないというふうなことにもなりがちでございます。そこで一定の条件というのはやはり必要であろうかと思います。それで、そういう条件にある市が政令市に移行することにつきましては、その市と都道府県との協議が調う、そういう場合には、その意向を十分尊重いたしまして対応してまいりたい考えでございます。
  361. 浦井洋

    ○浦井委員 今ちょっとややこしくて聞き取りにくかったのですけれども、そうしますと、そういう小さな市でも、県と相談をすれば政令市にして、国にしても県にしてもそれなりの手当てをしてやることはできるというふうに受け取ってもいいのですか。
  362. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 市であればどこでもというのはこれは不適切だと思います。やはり一定規模の人口があり、一定の財政が必要だと思います。それは先ほども申し上げましたので繰り返しになりますけれども、老人保健事業のような、市町村が行うべき中業のほかに、環境とか医務とか業務とかそういう総合的な行政機関でございますので、一定の条件はやはり必要であると思うものであります。
  363. 浦井洋

    ○浦井委員 そのことと関係があるのですが、老人保健事業、老人保健法が施行されて、ヘルスの事業の実施主体は市町村ということになりますね。それで保健センター、健康センターなどを活用しながらということで、どこまで進んでいるのかいなと聞いても、一つもデータを出してくれぬわけです。実際は余り進んでいないのです。しかし、進んでない中でももう矛盾は出てきているわけですよ。県立の保健所が援助し指導するということになっておりますけれども、県立の保健所と実施主体である市町村とがちぐはぐになって、特に人口十万以上ぐらいの市であればそこそこ財政能力もあって何とかそれなりにやっていけるが、町になるとほったらかしになるというような、さまざまな絡み合った複雑な矛盾が出てきておるわけなんで、これは本当に抽象的な言い方でありますけれども、かゆいところに手の届くような援助を国なり県なりがしてやらなければいかぬと思うのですね。これは答えていただきましょうか。
  364. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 お話しのございましたように、市町村が行います老人保健事業など、市町村の健康需要を行います。そういう事業につきまして保健所が適切な指導を行う、これは一つの大きな保健所の専務でございますので、私どもといたしましても適切な指導を行ってまいりたいと思います。
  365. 浦井洋

    ○浦井委員 時間が参りましたからやめますが、最後に私が言いたいのは、確かに、結核予防法であるとかつベルクリン、BCGというような方法とか法律が、化学療法の進歩もあって結核をなくした、なくなってしまったとは言いませんが、その中における保健所の果たした役割は大きかったと思う。ところが、さあ、今度は成人病だ、高齢者対策だ、それについて政府は自信を持って老人保健法をつくりました、我々は反対しましたけれども。これはヘルス事業がうたい文句であった。これが結核における結核予防法ほど役割を果たすだろうか。結核の専門家の砂原さんがこの中に書いておるのですね。 「私は、結核は片づいたという言葉に反発を感じます。むしろこれだけ力を入れてきたのだから結核ぐらいちゃんと始末したらどうだといいたいのです。ひとつぐらいの病気についてまともに起承転結をつけてみたらどうか。そうすれば他の疾患についても同じ方式でやれるわけですから」と、こういうふうに言われておるわけです。だからやってやれぬことはないと思う。しかし、さあ、今のいろいろな矛盾を持った皆さん方のシステムの中でやれますかどうか。我々としては政権をとってないわけですから、それはもう住民の健康と命を守るために頑張って、行政立場はおたくらが頑張ってもらわなければしょうがないと思うのですが、最後にその辺の決意を、聞いたらまた大臣、演説されましょうが、簡単にひとつ……。
  366. 渡部恒三

    渡部国務大臣 御指摘の点、貴重な御意見として参考にさせていただいて、保健所が地域住民の健康を守り、また地域住民の皆さん方の衛生、保健の期待にこたえるように今後対処してまいりたいと思います。
  367. 浦井洋

    ○浦井委員 終わります。      ――――◇―――――
  368. 有馬元治

    有馬委員長 内閣提出社会福祉・医療事業団法案を議題といたします。  本案に対する質疑は終局いたしました。     ―――――――――――――
  369. 有馬元治

    有馬委員長 これより討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  社会福祉・医療事業団法案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  370. 有馬元治

    有馬委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     ―――――――――――――
  371. 有馬元治

    有馬委員長 この際、稲垣実男君外五名から、自由民主党・新自由国民連合、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党・国民連合、日本共産党・革新共同及び社会民主連合六派共同提案に係る本案に附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者より趣旨の説明を求めます。村山富市君。
  372. 村山富市

    ○村山(富)委員 私は、自由民主党・新自由国民連合、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党・国民連合、日本共産党・革新共同及び社会民主連合を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。  案文を朗読して説明にかえさせていただきます。      社会福祉・医療事業団法案に対する附帯決議(案)   政府は、次の事項について、格段の努力を払うべきである。  一 社会福祉・医療事業団の設立に当たっては、効率的な運営に努め、統合によるメリットを生かして社会福祉の増進並びに医療の普及及び向上が図られるよう特段の配慮をすること。  二 社会福祉事業振興会と医療金融公庫との統合に際しては、従前の労働慣行を尊重し、関係職員の処遇について十分配慮した措置を講ずること。 以上であります。  何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。(拍手)
  373. 有馬元治

    有馬委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  稲垣実男君外五名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  374. 有馬元治

    有馬委員長 起立総員。よって、本動議のとおり本案に附帯決議を付することに決しました。  この際、厚生大臣から発言を求められておりますので、これを許します。渡部厚生大臣
  375. 渡部恒三

    渡部国務大臣 ただいま御決議になりました附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重いたしまして努力いたす所存でございます。(拍手)      ――――◇―――――
  376. 有馬元治

    有馬委員長 次に、内閣提出戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案に対する質疑は終局いたしました。     ―――――――――――――
  377. 有馬元治

    有馬委員長 これより討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  378. 有馬元治

    有馬委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     ―――――――――――――
  379. 有馬元治

    有馬委員長 この際、稲垣実男君外五名から、自由民主党・新自由国民連合、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党・国民連合、日本共産党・革新共同及び社会民主連合六派共同提案に係る本案に附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者より趣旨の説明を求めます。村山富市君。
  380. 村山富市

    ○村山(富)委員 私は、自由民主党・新自由国民連合、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党・国民連合、日本共産党・革新共同及び社会民主連合を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。  案文を朗読して説明にかえさせていただきます。      戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、次の事項につき、格段の努力を払うべきである。  一 国民の生活水準の向上等に見合って、今後とも援護の水準を引き上げ、公平な援護措置が行われるよう努めること。    なお、戦没者遺族等の老齢化の現状及び生活の実態にかんがみ、一層の優遇措置を講ずるとともに、援護の水準の引上げに伴って被用者医療保険における被扶養者の取り扱いが不利にならないよう配慮すること。  二 第二次大戦末期における閣議決定に基づく国民義勇隊及び国民義勇戦闘隊の組織及び活動状況等について明確にするとともに、公平適切な措置をとり得るよう検討すること。  三 満洲開拓青年義勇隊開拓団については、国境及び満鉄警備等に関する事実を調査するため、関係者と連絡を密にし、一層資料の収集に努め、問題解決のため努力すること。  四 戦没者遺族等の高齢化が進んでいる現状にかんがみ、これら遺族の心情に十分に配慮し、海外旧戦域における遺骨収集、慰霊巡拝等については、更に積極的に推進すること。  五 生存未帰還者の調査については、引き続き関係方面との連絡を密にし、調査及び帰還の促進に万全を期すること。  六 中国残留日本人孤児の肉親調査を今後とも積極的に推進するとともに、帰国を希望する孤児の受入れについて、関係各省及び地方自治体が一体となって必要な措置を講ずること。    また、中国からの引揚者が一日も早く日本社会に復帰できるよう、中国帰国孤児定着促進センターの運営の充実強化を図る等その対策に遺憾なきを期すること。  七 かつて日本国籍を有していた旧軍人軍属等及び旧国家総動員法による被徴用者等に係る戦後処理のなお未解決な諸問題については、人道的な見地に立ち、早急に、関係各省が一体となって必要な措置を講ずるよう検討すること。  八 原子爆弾による放射能、爆風、熱線等の傷害作用に起因する傷害、疾病を有する者に対する障害年金の支給及び死亡者の遺族に対する弔慰金、遺族年金等の支給に当たっては、現行援護法適用につき遺憾なきを期すること。  九 ガス障害者に対する救済措置は、公平に行うとともにその改善に努めること。  十 法律内容について必要な広報等に努める等更にその周知徹底を図るとともに、相談体制の強化、裁定等の事務の迅速化に更に努めること。 以上であります。  何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。(拍手)
  381. 有馬元治

    有馬委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  稲垣実男君外五名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  382. 有馬元治

    有馬委員長 起立総員よって、本動議のとおり本案に附帯決議を付することに決しました。  この際、厚生大臣から発言を求められておりますので、これを許します。渡部厚生大臣
  383. 渡部恒三

    渡部国務大臣 ただいま御決議になりました附帯決議につきましては、その御趣旨を十分尊重いたしまして努力いたす所存でございます。(拍手)      ――――◇―――――
  384. 有馬元治

    有馬委員長 保健所法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案に対する質疑は終局いたしました。     ―――――――――――――
  385. 有馬元治

    有馬委員長 この際、丹羽雄哉君から、本案に対する修正案が提出されております。  提出者より趣旨の説明を求めます。丹羽雄哉君。     ―――――――――――――  保健所法の一部を改正する法律案に対する修正   案     〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――
  386. 丹羽雄哉

    ○丹羽(雄)委員 ただいま議題となりました保健所法の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、自由民主党・新自由国民連合を代表いたしまして、その趣旨を御説明申し上げます。  修正の要旨は、原案において「昭和五十九年四月一日」となっている施行期日を、「公布の日」に改め、昭和五十九年四月一日から適用することであります。  何とぞ、委員各位の御賛同をお願いいたします。
  387. 有馬元治

    有馬委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。     ―――――――――――――
  388. 有馬元治

    有馬委員長 これより原案及び修正案を一括して討論に付するのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  保健所法の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。  まず、丹羽雄哉君提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  389. 有馬元治

    有馬委員長 起立多数。よって、本修正案は可決いたしました。  次に、ただいま可決いたしました修正案の修正部分を除いて、原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  390. 有馬元治

    有馬委員長 起立歩数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。     ―――――――――――――
  391. 有馬元治

    有馬委員長 この際、稲垣実男君外五名から、自由民主党・新自由国民連合、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党・国民連合、日本共産党・革新共同及び社会民主連合六派共同提案に係る本案に附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者より趣旨の説明を求めます。池端清一君。
  392. 池端清一

    ○池端委員 私は、自由民主党・新自由国民連合、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党・国民連合、日本共産党・革新共同及び社会民主連合を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。  案文を朗読して説明にかえさせていただきます。      保健所法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   保健所は、公衆衛生行政のセンターとして我が国の保健予防、公衆衛生の向上に大きな役割を果たしてきた。   今日、高齢化社会をむかえ、また、社会の進展による疾病構造の変化等に対応して、保健所の果たす役割は、ますます重要なものとなっている。   よって、政府は、本法の施行に当たり保健所が本来の使命を達成できるよう次の事項について実現を図り、保健所行政の推進に適切な措置を講ずるよう努力すべきである。  一 保健所事業に係る助成が定額交付金方式に改正されることに伴い、物価、賃金等の変動によって保健所事業の推進に支障を生ずることのないよう、事業水準、予算の確保に努めること。  二 定額交付金方式への移行により、地方公共団体間の事業水準等に不均衡が生じないよう制度の運用に万全を期すること。  三 保健所職員に対する国の予算定数が廃止されることに伴い、地方公共団体における保健所事業の推進に支障を生ずることのないよう、適正な保健所職員数の確保に努めること。  四 保健所事業、公衆衛生行政に対する要請が多様化、高度化している現状にかんがみ、それに対応する施策の確立と、それを実施する保健所、市町村等の強化を図るよう努めること。  五 保健所が地域における公衆衛生行政中心的な機関としての役割を果たすよう、その内客の充実と強化に努めること。 以上であります。  何とぞ、委員各位の御賛同をお願いいたします。(拍手)
  393. 有馬元治

    有馬委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  稲垣実男君外五名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  394. 有馬元治

    有馬委員長 起立総員。よって、本動議のとおり本案に附帯決議を付することに決しました。  この際、厚生大臣から発言を求められておりますので、これを許します。渡部厚生大臣
  395. 渡部恒三

    渡部国務大臣 ただいま御決議になりました附帯決議につきましては、その御趣旨を十分尊重いたしまして努力いたす所存でございます。     ―――――――――――――
  396. 有馬元治

    有馬委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました各案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  397. 有馬元治

    有馬委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――     〔報告書は附録に掲載〕     ―――――――――――――
  398. 有馬元治

    有馬委員長 次回は、明二十六日木曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後五時十五分散会      ――――◇―――――