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1984-07-24 第101回国会 衆議院 社会労働委員会 第27号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年七月二十四日(火曜日)     午前十一時十五分開議  出席委員   委員長 有馬 元治君   理事  愛知 和男君 理事 稲垣 実男君   理事  小沢 辰男君 理事 丹羽 雄哉君   理事  池端 清一君 理事 村山 富市君   理事 平石磨作太郎君 理事 塩田  晋君       伊吹 文明君    稲村 利幸君       今井  勇君    金子原二郎君       古賀  誠君    斉藤滋与史君       自見庄三郎君    谷垣 禎一君       友納 武人君    中村正三郎君       長野 祐也君    西山敬次郎君       野呂 昭彦君    浜田卓二郎君       藤本 孝雄君    箕輪  登君       森下 元晴君    網岡  雄君       河野  正君    多賀谷真稔君       竹村 泰子君    土井たか子君       永井 孝信君    森井 忠良君       大橋 敏雄君    草川 昭三君       沼川 洋一君    橋本 文彦君       森本 晃司君    岡田 正勝君       小渕 正義君    塚田 延充君       浦井  洋君    田中美智子君       江田 五月君    菅  直人君  出席国務大臣         労 働 大 臣 坂本三十次君  出席政府委員         労働大臣官房長 小粥 義朗君         労働大臣官房審          議官      白井晋太郎君         労働省労働基準          局長      望月 三郎君         労働省婦人局長 赤松 良子君         労働省職業安定          局長      加藤  孝君  委員外出席者         公正取引委員会         事務局取引部取         引課長     地頭所五男君         外務大臣官房審         議官      斉藤 邦彦君         外務大臣官房審         議官      遠藤 哲也君         運輸大臣官房国         有鉄道部日本鉄         道建設公団・本         州四国連絡橋公         団監理官    梅崎  壽君         労働省労働基準         局監督課長   野崎 和昭君         労働省婦人局婦         人政策課長   松原 亘子君         日本国有鉄道建         設局線増課長  北井 良吉君         日本国有鉄道施         設局管理課長  草木 陽一君         社会労働委員会         調査室長    石黒 善一君     ――――――――――――― 委員の異動 七月二十四日  辞任         補欠選任   古賀  誠君     金子原二郎君   中野 四郎君     中村正三郎君   網岡  雄君     土井たか子君   沼川 洋一君     草川 昭三君   塚田 延充君     岡田 正勝君   菅  直人君     江田 五月君 同日  辞任         補欠選任   金子原二郎君     古賀  誠君   中村正三郎君     中野 四郎君   土井たか子君     網岡  雄君   草川 昭三君     沼川 洋一君   岡田 正勝君     塚田 延充君   江田 五月君     菅  直人君     ――――――――――――― 七月二十三日  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基づき、国会議決を求めるの件(国鉄労働組合関係)(内閣提出議決第一号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基づき、国会議決を求めるの件(国鉄動力車労働組合関係)(内閣提出議決第二号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基づき、国会議決を求めるの件(全国鉄施設労働組合関係)(内閣提出議決第三号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基づき、国会議決を求めるの件(鉄道労働組合関係)(内閣提出議決第四号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基づき、国会議決を求めるの件(全国鉄動力車労働組合連合会関係)(内閣提出議決第五号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基づき、国会議決を求めるの件(国鉄千葉動力車労働組合関係)(内閣提出議決第六号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基づき、国会議決を求めるの件(全国電気通信労働組合関係)(内閣提出議決第七号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基づき、国会議決を求めるの件(日本電信電話労働組合関係)(内閣提出議決第八号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基づき、国会議決を求めるの件(全専売労働組合関係)(内閣提出議決第九号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基づき、国会議決を求めるの件(全逓信労働組合関係)(内閣提出議決第一〇号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基づき、国会議決を求めるの件(全日本郵政労働組合関係)(内閣提出議決第一一号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基づき、国会議決を求めるの件(全林野労働組合関係定員内職員及び常勤作業員常勤作業員の処遇を受ける常用作業員を含む。)」)(内閣提出議決第一号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基づき、国会議決を求めるの件(全林野労働組合関係基幹作業職員常用作業員常勤作業員の処遇を受ける者を除く。)及び定期作業員」)(内閣提出議決第一三号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基づき、国会議決を求めるの件(日本林業労働組合関係定員内職員及び常勤作業員常勤作業員の処遇を受ける常用作業員を含む。)」)(内閣提出議決第一四号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基づき、国会議決を求めるの件(日本林業労働組合関係基幹作業職員常用作業員常勤作業員の処遇を受ける者を除く。)及び定期作業員」)(内閣提出議決第一五号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基づき、国会議決を求めるの件(全印刷局労働組合関係)(内閣提出議決第一六号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基づき、国会議決を求めるの件(全造幣労働組合関係)(内閣提出議決第一七号) 同月二十日  食品添加物規制緩和反対食品衛生行政充実強化に関する請願水谷弘紹介)(第八三一〇号)  同(森田景一君紹介)(第八三一一号)  同(戸田菊雄紹介)(第八三八八号)  医療保険改悪反対等に関する請願遠藤和良紹介)(第八三一二号)  同(中西績介紹介)(第八三一三号)  同(永井孝信紹介)(第八三一四号)  同(馬場昇紹介)(第八三一五号)  同外五件(浜西鉄雄紹介)(第八三一六号)  同(森中守義紹介)(第八三一七号)  同(山本政弘紹介)(第八三一八号)  同外一件(横江金夫紹介)(第八三一九号)  同外一件(戸田菊雄紹介)(第八三八九号)  医療保険制度改善に関する請願上田哲紹介)(第八三二〇号)  同外一件(加藤万吉紹介)(第八三二一号)  同(田並胤明君紹介)(第八三二二号)  同外一件(高沢寅男紹介)(第八三二三号)  同(永井孝信紹介)(第八三二四号)  同(森田景一君紹介)(第八三二五号)  同外二件(八木昇紹介)(第八三二六号)  同(山本政弘紹介)(第八三二七号)  同外一件(上田卓三紹介)(第八三九二号)  同(戸田菊雄紹介)(第八三九三号)  医療保険制度抜本改悪反対に関する請願永井孝信紹介)(第八三二八号)  年金医療改悪反対充実改善に関する請願外一件(角屋堅次郎紹介)(第八三二九号)  原子爆弾被爆者等援護法制定に関する請願五十嵐広三紹介)(第八三三〇号)  医療保険年金制度雇用保険改悪反対に関する請願田中恒利紹介)(第八三三一号)  児童扶養手当法の一部を改正する法律案の撤回に関する請願土井たか子紹介)(第八三三二号)  健康保険本人の十割給付堅持予防等給付改善に関する請願永井孝信紹介)(第八三三三号)  健康保険本人の十割給付継続に関する請願田並胤明君紹介)(第八三三四号)  男女雇用機会均等法案反対に関する請願河野正紹介)(第八三三五号)  労働基準法改悪反対、実効ある男女雇用平等法制定に関する請願岡田利春紹介)(第八三三六号)  同(渡辺嘉藏紹介)(第八三三七号)  男女雇用機会均等法案反対、実効ある男女雇用平等法制定等に関する請願田中恒利紹介)(第八三八五号)  同外一件(土井たか子紹介)(第八三八六号)  政府管掌健康保険等被用者保険本人十割給付引き下げ反対等に関する請願外一件(戸田菊雄紹介)(第八三八七号)  医療保険抜本改悪反対に関する請願戸田菊雄紹介)(第八三九〇号)  医療保険制度改悪反対に関する請願外一件(上田卓三紹介)(第八三九一号)  被保険者本人の十割給付引き下げ反対等に関する請願戸田菊雄紹介)(第八三九四号)  医療保険制度抜本改悪反対国民医療改善に関する請願戸田菊雄紹介)(第八三九五号) 同月二十三日  心臓病児者医療充実等に関する請願池端清一紹介)(第八四六三号)  同(大橋敏雄紹介)(第八四六四号)  同(菅直人紹介)(第八四六五号)  同(田中美智子紹介)(第八四六六号)  同(吉原米治紹介)(第八四六七号)  食品添加物規制緩和反対食品衛生行政充実強化に関する請願石田幸四郎紹介)(第八四六八号)  同(小川新一郎紹介)(第八四六九号)  同(大橋敏雄紹介)(第八四七〇号)  同外一件(小谷輝二君紹介)(第八四七一号)  同(権藤恒夫紹介)(第八四七二号)  同(坂口力紹介)(第八四七三号)  同(武田一夫紹介)(第八四七四号)  同(中村巖紹介)(第八四七五号)  同(春田重昭紹介)(第八四七六号)  同(日笠勝之紹介)(第八四七七号)  同(福岡康夫紹介)(第八四七八号)  同(伏屋修治紹介)(第八四七九号)  同(正木良明紹介)(第八四八〇号)  同(宮崎角治紹介)(第八四八一号)  同(薮仲義彦紹介)(第八四八二号)  同(吉浦忠治紹介)(第八四八三号)  同(渡部一郎紹介)(第八四八四号)  国民に対する医療改善に関する請願戸田菊雄紹介)(第八四八五号)  医療保険医療供給体制改悪反対等に関する請願梅田勝紹介)(第八四八六号)  国立病院療養所統合等反対医療従事職員の増員に関する請願沼川洋一紹介)(第八四八七号)  国民医療改善に関する請願田並胤明君紹介)(第八四八八号)  医療保険改悪反対等に関する請願小川新一郎紹介)(第八四八九号)  同(角屋堅次郎紹介)(第八四九〇号)  同(坂井弘一紹介)(第八四九一号)  同(坂口力紹介)(第八四九二号)  同(沢田広紹介)(第八四九三号)  同(嶋崎譲紹介)(第八四九四号)  同(鳥居一雄紹介)(第八四九五号)  同(春田重昭紹介)(第八四九六号)  同(伏屋修治紹介)(第八四九七号)  同(簑輪幸代紹介)(第八四九八号)  同(森井忠良紹介)(第八四九九号)  同(山田英介紹介)(第八五〇〇号)  同(山原健二郎紹介)(第八五〇一号)  同外二件(吉井光照紹介)(第八五〇二号)  医療保険改悪反対充実に関する請願池田克也紹介)(第八五〇三号)  同(大橋敏雄紹介)(第八五〇四号)  同(工藤晃紹介)(第八五〇五号)  同(中島武敏紹介)(第八五〇六号)  同(不破哲三紹介)(第八五〇七号)  同(松本善明紹介)(第八五〇八号)  同(山田英介紹介)(第八五〇九号)  医療年金雇用保険制度改悪反対等に関する請願工藤晃紹介)(第八五一〇号)  医療保険制度改悪反対充実改善に関する請願梅田勝紹介)(第八五一一号)  同(沼川洋一紹介)(第八五一二号)  医療保険抜本改悪反対に関する請願大橋敏雄紹介)(第八五一三号)  同(工藤晃紹介)(第八五一四号)  同外一件(佐藤徳雄紹介)(第八五一五号)  同(坂口力紹介)(第八五一六号)  同(沢田広紹介)(第八五一七号)  同(柴田睦夫紹介)(第八五一八号)  同(津川武一紹介)(第八五一九号)  同(中川利三郎紹介)(第八五二〇号)  同(渡部行雄紹介)(第八五二一号)  医療保険制度改悪反対に関する請願上田卓三紹介)(第八五二二号)  医療保険制度改善に関する請願外一件(有島重武君紹介)(第八五二三号)  同(池田克也紹介)(第八五二四号)  同(梅田勝紹介)(第八五二五号)  同(小川国彦紹介)(第八五二六号)  同外八件(小川新一郎紹介)(第八五二七号)  同(大橋敏雄紹介)(第八五二八号)  同(岡崎万寿秀紹介)(第八五二九号)  同外一件(工藤晃紹介)(第八五三〇号)  同(佐藤徳雄紹介)(第八五三一号)  同(斎藤実紹介)(第八五三二号)  同(沢田広紹介)(第八五三三号)  同(柴田弘紹介)(第八五三四号)  同(新村勝雄紹介)(第八五三五号)  同外五件(中川利三郎紹介)(第八五三六号)  同(中村巖紹介)(第八五三七号)  同(沼川洋一紹介)(第八五三八号)  同(野間友一紹介)(第八五三九号)  同(東中光雄紹介)(第八五四〇号)  同(伏屋修治紹介)(第八五四一号)  同(藤田スミ紹介)(第八五四二号)  同外一件(松本善明紹介)(第八五四三号)  同(簑輪幸代紹介)(第八五四四号)  同(宮地正介紹介)(第八五四五号)  同(薮仲義彦紹介)(第八五四六号)  同(山田英介紹介)(第八五四七号)  同(吉井光照紹介)(第八五四八号)  同(吉浦忠治紹介)(第八五四九号)  同(渡部一郎紹介)(第八五五〇号)  医療保険制度抜本改悪反対に関する請願野間友一紹介)(第八五五一号)  同(東中光雄紹介)(第八五五二号)  年金医療雇用保険改悪反対充実改善に関する請願中西績介紹介)(第八五五三号)  年金医療改悪反対充実改善に関する請願外八件(角屋堅次郎紹介)(第八五五四号)  医療保険年金制度改悪反対に関する請願中林佳子紹介)(第八五五五号)  原子爆弾被爆者等援護法制定に関する請願大原亨紹介)(第八五五六号)  同(安田修三紹介)(第八五五七号)  医療年金抜本改悪反対に関する請願工藤晃紹介)(第八五五八号)  医療保険制度改悪反対国民医療改善等に関する請願春田重昭紹介)(第八五五九号)  同(東中光雄紹介)(第八五六〇号)  同(藤田スミ紹介)(第八五六一号)  児童扶養手当法の一部を改正する法律案の撤回に関する請願橋本文彦紹介)(第八五六二号)  健康保険本人の十割給付継続に関する請願外二件(小川新一郎紹介)(第八五六三号)  同(宮地正介紹介)(第八五六四号)  政府管掌健康保険等改悪反対に関する請願経塚幸夫紹介)(第八五六五号)  同(東中光雄紹介)(第八五六六号)  同(正木良明紹介)(第八五六七号)  保険給付等充実改善に関する請願小川新一郎紹介)(第八五六八号)  政府管掌健康保険等本人十割給付引き下げ反対等に関する請願池田克也紹介)(第八五六九号)  同(岡崎万寿秀紹介)(第八五七〇号)  医療生活保護年金改悪反対等に関する請願岡崎万寿秀紹介)(第八五七一号)  はり、きゆう治療の患者救済に関する請願池端清一紹介)(第八五七二号)  同(稲葉誠一紹介)(第八五七三号)  同(村山富市紹介)(第八五七四号)  医療保険制度抜本改悪反対国民医療改善に関する請願小川国彦紹介)(第八五七五号)  同(武田一夫紹介)(第八五七六号)  労働基準法改悪反対男女雇用平等法制定促進に関する請願柴田睦夫紹介)(第八五七七号)  同(瀬崎博義紹介)(第八五七八号)  同(中川利三郎紹介)(第八五七九号)  同(中林佳子紹介)(第八五八〇号)  同(東中光雄紹介)(第八五八一号)  同(藤田スミ紹介)(第八五八二号)  男女雇用平等法制定等に関する請願井上一成紹介)(第八五八三号)  同(小谷輝二君紹介)(第八五八四号)  同(春田重昭紹介)(第八五八五号)  同(東中光雄紹介)(第八五八六号)  同(正木良明紹介)(第八五八七号)  同(正森成二君紹介)(第八五八八号)  同(矢追秀彦紹介)(第八五八九号)  同(矢野絢也君紹介)(第八五九〇号)  児童扶養手当制度改悪反対等に関する請願沼川洋一紹介)(第八五九一号)  健康保険国民健康保険等医療保険制度改悪反対に関する請願工藤晃紹介)(第八五九二号)  同(不破哲三紹介)(第八五九三号)  国民年金改悪反対等に関する請願外一件(大橋敏雄紹介)(第八五九四号)  松江市水道事業に対する抜本的施策に関する請願吉原米治紹介)(第八五九五号)  医療保険制度改悪反対健康保険本人十割給付堅持等に関する請願外一件(大橋敏雄紹介)(第八五九六号)  同(辻第一君紹介)(第八五九七号)  男女雇用機会均等法案反対に関する請願中林佳子紹介)(第八五九八号)  同(藤木洋子紹介)(第八五九九号)  同(簑輪幸代紹介)(第八六〇〇号)  労働基準法改悪反対、実効ある男女雇用平等法制定に関する請願池田克也紹介)(第八六〇一号)  同(大橋敏雄紹介)(第八六〇二号)  国民年金厚生年金等制度改悪反対に関する請願大橋敏雄紹介)(第八六〇三号)  同(沼川洋一紹介)(第八六〇四号) 同月二十四日  民間保育事業振興に関する請願鈴切康雄紹介)(第八六六三号)  国民医療改善に関する請願(松前仰君紹介)(第八六六四号)  医療保険改悪反対等に関する請願外一件(佐藤誼紹介)(第八六六五号)  同(村山富市紹介)(第八六六六号)  同(森井忠良紹介)(第八六六七号)  同(網岡雄紹介)(第八七五三号)  同外一一件(田中美智子紹介)(第八七五四号)  医療保険改悪反対充実に関する請願(辻第一君紹介)(第八六六八号)  同(山花貞夫紹介)(第八六六九号)  同外二件(高沢寅男紹介)(第八七五五号)  医療保険抜本改悪反対に関する請願小澤克介紹介)(第八六七〇号)  同(大橋敏雄紹介)(第八六七一号)  医療保険制度改善に関する請願江田五月紹介)(第八六七二号)  同外一件(沢田広紹介)(第八六七三号)  同(日笠勝之紹介)(第八六七四号)  同外二件(水田稔紹介)(第八六七五号)  同外一件(村山富市紹介)(第八六七六号)  同外一件(山花貞夫紹介)(第八六七七号)  同(江田五月紹介)(第八七五九号)  同(長田武士紹介)(第八七六〇号)  同(柴田睦夫紹介)(第八七六一号)  同(田中美智子紹介)(第八七六二号)  同(竹村泰子紹介)(第八七六三号)  同(藤田高敏紹介)(第八七六四号)  同外一件(山本政弘紹介)(第八七六五号)  社会福祉充実等に関する請願梅田勝紹介)(第八六七八号)  視覚障害者雇用促進に関する請願村山富市紹介)(第八六七九号)  はり、きゆう治療の患者救済に関する請願山花貞夫紹介)(第八六八〇号)  医療保険制度抜本改悪反対国民医療改善に関する請願柴田睦夫紹介)(第八六八一号)  労働基準法改悪反対男女雇用平等法制定促進に関する請願村山富市紹介)(第八六八二号)  同(田中美智子紹介)(第八七七二号)  同(藤木洋子紹介)(第八七七三号)  男女雇用平等法制定等に関する請願上田卓三紹介)(第八六八三号)  同(左近正男紹介)(第八六八四号)  同(和田貞夫紹介)(第八六八五号)  同(中村正男紹介)(第八七七四号)  同(藤田スミ紹介)(第八七七五号)  労働基準法改悪反対、実効ある男女雇用平等法制定に関する請願井上一成紹介)(第八六八六号)  同(上田卓三紹介)(第八六八七号)  同(村山富市紹介)(第八六八八号)  同(和田貞夫紹介)(第八六八九号)  同(左近正男紹介)(第八七八二号)  同(中村正男紹介)(第八七八三号)  政府管掌健康保険等被用者保険本人十割給付  引き下げ反対等に関する請願(林百郎君紹介)(第八六九〇号)  心臓病児者医療充実等に関する請願多賀谷眞稔紹介)(第八六九一号)  同(小渕正義紹介)(第八七八六号)  同(竹村泰子紹介)(第八七八七号)  同(林百郎君紹介)(第八七八八号)  年金官民格差是正に関する請願春田重昭紹介)(第八七一一号)  障害福祉年金受給者所得制限廃止に関する請願春田重昭紹介)(第八七一二号)  在宅重度障害者暖房費支給に関する請願春田重昭紹介)(第八七一三号)  在宅重度障害者介護料支給に関する請願春田重昭紹介)(第八七一四号)  重度障害者終身保養所設置に関する請願春田重昭紹介)(第八七一五号)  労災年金厚生年金等完全併給に関する請願春田重昭紹介)(第八七一六号)  重度身体障害者雇用に関する請願春田重昭紹介)(第八七一七号)  重度障害者の無年金者救済に関する請願春田重昭紹介)(第八七一八号)  労災年金給付改善に関する請願春田重昭紹介)(第八七一九号)  身体障害者家庭奉仕員の採用に関する請願春田重昭紹介)(第八七二〇号)  国公立病院における脊髄損傷者の治療に関する請願春田重昭紹介)(第八七二一号)  労災被災者脊髄神経治療に関する請願春田重昭紹介)(第八七二二号)  労災被災者介護料に関する請願春田重昭紹介)(第八七二三号)  健康保険国民健康保険による付添介護人派遣に関する請願春田重昭紹介)(第八七二四号)  労災年金のスライドに関する請願春田重昭紹介)(第八七二五号)  身体障害者福祉行政改善に関する請願春田重昭紹介)(第八七二六号)  脊髄損傷治療技術研究開発に関する請願春田重昭紹介)(第八七二七号)  労災年金最低給付基礎日額引き上げに関する請願春田重昭紹介)(第八七二八号)  旧々労災被災者労働者災害補償保険法適用に関する請願春田重昭紹介)(第八七二九号)  重度障害者福祉手当増額に関する請願春田重昭紹介)(第八七三〇号)  労災重度被災者終身保養所設置に関する請願春田重昭紹介)(第八七三一号)  労災脊髄損傷者の遺族に年金支給に関する請願春田重昭紹介)(第八七三二号)  労災重度被災者暖房費支給に関する請願春田重昭紹介)(第八七三三号)  労働者災害補償保険法改善に関する請願春田重昭紹介)(第八七三四号)  実効ある男女雇用平等法制定に関する請願草野威紹介)(第八七四八号)  同(田中美智子紹介)(第八七四九号)  男女雇用機会均等法案反対、実効ある男女雇用平等法制定に関する請願田中美智子紹介)(第八七五〇号)  食品添加物規制緩和反対食品衛生行政充実強化に関する請願草野威紹介)(第八七五一号)  医療保険制度改悪反対国民医療改善に関する請願正森成二君紹介)(第八七五二号)  医療保険制度改悪反対等に関する請願田中美智子紹介)(第八七五六号)  児童扶養手当制度改悪反対に関する請願竹村泰子紹介)(第八七五七号)  医療保険制度改悪反対に関する請願上田卓三紹介)(第八七五八号)  医療保険制度抜本改悪反対に関する請願外七件(中村正男紹介)(第八七六六号)  医療保険年金制度改悪反対に関する請願田中美智子紹介)(第八七六七号)  同(林百郎君紹介)(第八七六八号)  政府管掌健康保険等改悪反対に関する請願(辻第一君紹介)(第八七六九号)  政府管掌健康保険等改悪反対、老人医療の無料制度復活に関する請願網岡雄紹介)(第八七七〇号)  同(田中美智子紹介)(第八七七一号)  国民年金改悪反対等に関する請願外二件(田中美智子紹介)(第八七七六号)  医療保険制度改悪反対健康保険本人十割給付堅持等に関する請願竹村泰子紹介)(第八七七七号)  同(三浦久君紹介)(第八七七八号)  健康保険制度改悪反対、老人医療の無料制度復活に関する請願左近正男紹介)(第八七七九号)  男女雇用機会均等法案反対に関する請願田中美智子紹介)(第八七八〇号)  同(藤田スミ紹介)(第八七八一号)  労働基準法改悪反対、実効ある男女雇用平等法の制定に関する請願外一件(田中美智子紹介)(第八七八四号)  同(不破哲三紹介)(第八七八五号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保を促進するための労働省関係法律の整備等に関する法律案内閣提出第八三号)  男女雇用平等法案(多賀谷眞稔君外七名提出、衆法第四〇号)      ――――◇―――――
  2. 有馬元治

    ○有馬委員長 これより会議を開きます。  内閣提出雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保を促進するための労働省関係法律の整備等に関する法律案及び多賀谷眞稔君外七名提出、男女雇用平等法案の両案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。土井たか子君。
  3. 土井たか子

    ○土井委員 今審議を進めております当法案の政府案は、初めから終わりまで、これは見れば見るほど問題だらけでありまして、これに対しての審議をやり始めたら、とどまるところを知らずという格好に恐らくなるだろうと思うのです。先日来の御答弁を承っておりますと、それぞれの分野における考え方はある程度言われるのですけれども、法律の規定する定義自体については、限定的に考えていなければならないはずのところがどうも一向にはっきりおっしゃらない。したがって、本日は、私は前回予告をいたしましたとおり、この深夜業について取り扱っております第六十四条の三のところの部分に対して、逐条的にお尋ねをいたしますから、定義自体について具体的にひとつお答えをいただくように、まず申し上げておきます。  さて、この六十四条の三の二に言うところの「女子の健康及び福祉に有害でない業務で命令で定めるものに従事する者」、こうなっておりますが、命令で定められる中身になる「女子の健康及び福祉に有害でない業務」というのは、具体的に言うとどういう業務を指してこのような規定になっておりますか。いかがです。
  4. 赤松良子

    ○赤松政府委員 お答えいたします。  改正法案の第六十四条の三、「深夜業」の一項二号についての御質問と存じますが、「女子の健康及び福祉に有害でない業務で命令で定めるもの」という表現は、現行の労働基準法の六十二条第四項に規定がございまして、それを受けて女子年少者労働基準規則に内容を定めている規定がございます。この現行の規定と同様というように解釈をいたしているわけでございまして、したがいまして、現行の女子年少者労働基準規則には第六条に、「法第六十二条第四項に規定する女子の健康及び福祉に有害でない業務は、左の各号に掲げるものとする。」とございまして、一号から五号までございます。一号「航空機に乗り組むスチュアーデスの業務」、二号「女子を収容する寄宿者の管理人の業務」、三号「映画の製作の事業における演技者、スクリプター及び結髪の業務(セットによる撮映の場合における業務を除く。)」、四号「放送法第二条に規定する放送の事業におけるプロジューサー及びアナウンサーの業務」、五号    「かに又はいわしの缶詰の事業における第一次加工の業務」、この現行法の規定を受け継ぐということになると存じますが、必要に応じた整理は行うということになろうかと存じます。
  5. 土井たか子

    ○土井委員 深夜業というのは、本来男女ともに人間の生理に反して有害なものであるということはもう言うまでもございません。これは、先日来大臣も、昼間働いて、夜就寝するというのが大体人間の健康的な生活のサイクルであるということも、御答弁の中でおっしゃっているわけでございます。  我が国では、男性の深夜業というのに対しては、いろいろと男性の間でも健康破壊というのが進んでいるということが、具体的ないろんな実態調査の中でもどんどん出てきているわけでありますけれども、これを実際、今おっしゃった現行法にございます。そのとおりを、今回はこの二のところに持ってきて当てはめて考えるという御趣旨の御答弁でありますが、実態調査をやられていますか。果たしてそういうここに言うところの「業務」というのに当てはまる部署それぞれは、健康的で、そして健康及び福祉に対して有害でない業務であるかどうかという調査をおやりになっていらっしゃいますか。これをはっきり知った上でないとこういうことにはならないと思うのです。調査はどうです、進んでいますか、進んでいませんか。やっていらっしゃいますか、やっていらっしゃいませんか。もしやっていらして具体的な調査データがあるならば、それも提示をお願いしたいと思うのですが、いかがです。
  6. 松原亘子

    ○松原説明員 お答えいたします。  現行の女年則に基づきまして、「女子の健康及び福祉に有害でない業務」として今局長が御説明いたしましたものが、どの程度健康及び福祉に有害でないかどうかという、今先生の御指摘ございましたような調査に基づいてやったということはございません。
  7. 土井たか子

    ○土井委員 語尾がはっきりしないのです。ございませんと言われたのですか。
  8. 松原亘子

    ○松原説明員 ございません。
  9. 土井たか子

    ○土井委員 全く、調査とか実態の事情に対して調べることなしに、こういう条文をここにぽんと入れられたという経過になるわけですね。  現行法での取り扱い、したがって今の二にある「女子の健康及び福祉に有害でない業務」として、先ほど局長から御答弁のございましたスチュワーデス並びにこの航空機に乗務をいたしますアシスタントパーサー等々の実情についてそれじゃ申し上げましょう、調査いたしておりませんということですから。それを申し上げることは非常に私は大事であると思います。  今具体的に申し上げますけれども、日航の方の客室乗務員組合が、育児時間闘争を展開中であることは労働省も御承知だと思うのです。五十五年三月以降は、出産後乗務に道が開かれておりまして、大体、今ママさん乗務員というのは急ピッチにふえてまいっております。ことし一月現在で、四千三百九十九人の日航女性乗務員のうち妊娠中及び出産者の数が二百九十二人、そのうちの七十五人が空に復帰しているということが新聞紙上でも先日これは報じられたところなんです。  ところが、その勤務体系というのを見でまいりますと、これが乳児を抱えて、一歳未満の子供を抱えて、こういう乗務のあり方が果たしてここに言う「健康及び福祉に有害でない」と言えるのかどうかというのは、ひとつしっかりお聞き取りをいただきたいと思うのですが、国内線では、二泊三日や一泊二日の泊まり便が月に三回から六回くらいもあるのが普通なんです。スケジュールどおりに飛びますと、子供に母乳をやることもできない。せめて子供が一歳になるまでは育児時間のとれる日帰り便をということを強く要求として出されているようですが、日帰り便ということになりましても、これは御本人の健康からすると、決して思わしいスケジュール体制になるとは思えません。  今申し上げました二泊三日や一泊二日の泊まり便が月に三回から六回もあるというのがおおよそでありますけれども、ある一人の乳幼児を抱えているアシスタントパーサーのAさんについて、そのいろいろなスケジュールの中身を見でまいりますと、スケジュール表によって言えば、ことし一月のスケジュールでは、二泊三日で飛んでおられるのが何と一カ月の一月中に四回あるわけです。一泊二日が一回。そうして、この二泊三日のスケジュールというのを見ますと、午前七時二十分にはもう出ていなければならない、勤務についていなければならない。そして東京から札幌、札幌から東京、一泊。また東京から札幌、札幌から東京、一泊。そうして今度は東京から沖縄、沖縄から東京というのが二泊三日の中身なのであります。これが一カ月の間に、このアシスタントパーサーのAさんの場合には、先ほど申し上げましたとおりに引き続き三回あるという格好であります。  こうなってくると、子供に授乳ということは実際問題として物理的に不可能になりまして、会社側が、そのことをいろいろ申し入れますと、月に三日、無給の育児日を前月申請を指示して設けようという格好になっているのですが、これはお考えになったらすぐにもおわかりになるように、まとめて授乳や育児ができるはずがございません。したがって、こういうふうなスケジュールをこのままに据え置いた形で、先ほどから言われた「女子の健康及び福祉に有害でない業務」。というふうに認定をし続けることができるのですか、どうなんでしょう。いかがでございますか、実態はこういうことですよ。これはほんの一例を私は申し上げたのです。
  10. 赤松良子

    ○赤松政府委員 先ほど申し上げました深夜業の現在ある除外規定につきましては、この規定が設けられましてから二十数年経過いたしておりますので、これを、現行規定をそのまま次の改正法の中で受け継ぐという予定で考えておりますが、ただいま先生の御指摘の点につきましては、具体的には乳児を抱えている、産後まだ一年たっていないというような状況でございますならば、これは新しい改正法案の六十六条の「妊産婦が請求した場合においては、第三十三条第一項及び第三項並びに第三十六条の規定にかかわらず、時間外労働をさせてはならず、又は休日に労働させてはならない。」、第二項に「妊産婦が請求した場合においては、第六十四条の三第一項ただし書の規定にかかわらず、深夜業をさせてはならない。」と、この妊産婦の定義に該当するものと存じますので、その方について申し上げれば、請求があれば深夜業あるいは時間外労働をさせてはならない、このようになると存じます。
  11. 土井たか子

    ○土井委員 ちょっとお尋ねしますが、この妊産婦とおっしゃるのは、一年未満の乳幼児を抱えている母親についてもこれは該当するのですか。
  12. 赤松良子

    ○赤松政府委員 産婦の定義は出産後一年というふうに考えられますので、先ほどの授乳ということを前提にいたしますと、妊産婦の定義の中に含まれると存じます。
  13. 土井たか子

    ○土井委員 その一年未満ということは法的にちゃんと法定されているんですかね。根拠がありますか。
  14. 松原亘子

    ○松原説明員 改正労働基準法の法案の第六十四条の五に「妊産婦等に係る危険有害業務の就業制限」という形で、今度新たに危険有害業務の就業制限を整理いたしておりますが、その第一項で「使用者は、妊娠中の女子及び産後一年を経過しない女子」といたしまして、括弧書きに「(以下「妊産婦」という。)」ということで、この「以下」は、当然今御説明申し上げました第六十六条についても、「産後一年を経過しない女子」は含まれるということで定義づけがなされているわけでございます。
  15. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、この六十四条の五に言うところの危険有害業務について取り扱う条文は、その部分において「産後一年を経過しない女子」と言っているにとどまらず、以後妊産婦ということに対しての概念は、「産後一年を経過しない女子」すべてに対して言うというふうに理解していいんですね。つまりこの法律で言うところの「妊産婦」は、「産後一年を経過しない女子」すべてについて「妊産婦」という概念の中に入れて考える、そう定義してよろしいですね。
  16. 赤松良子

    ○赤松政府委員 おっしゃるとおりでございます。
  17. 土井たか子

    ○土井委員 これは実態の上で、日航等々が具体的な育児時間というものに対して闘争を展開をされて今日に至っているわけですが、きょう私がここで取り上げて先ほど申し上げたスケジュールは、国内便のほんの一例なんです。国際線に乗りまして南米ルート等々に参りますと、二十日ぐらいは帰ってくることができないということがざらにあるのです。そういう実態も踏まえて、そういうふうなことを条文化される以前に、実際問題行政指導等々の中で、何らか行政指導の措置を講じられたといういきさつがありますか、どうですか、実態に触れて。
  18. 赤松良子

    ○赤松政府委員 この法律案の成立に先立ちまして、勤労婦人福祉法の中では、やはり妊産婦につきまして、妊娠中及び出産後の勤労婦人の健康管理上の必要な措置として指導基準を定めております。この「出産後」という定義の中には、先ほど申し上げました「一年後」という同じ定義でこの指導基準をつくっているわけでございます。出産後の女子労働者、この言葉で言えば勤労婦人でございますが、同じでございますので、勤労婦人の健康管理上の必要な措置については、専門家の御意見も伺いながら指導基準をつくり、その方たちの健康、福祉に害のないような状態を一般的に行政指導をしているわけでございますが、先生御指摘の日航について特にしたかという御質問でございますならば、それはいたしておりません。
  19. 土井たか子

    ○土井委員 非常にこれは端的な例を私は言って、見れば見るほどこれは深刻なんですね。深刻な例についてもそういう具体的な指導なんということには十分な措置が講じられていないということになってまいりますと、いよいよこれは、これから先考えれば考えるほど心もとない気になるんですが、この二で言うところの、先ほどおっしゃった業務については、具体的に現行法と変わりがないというので具体例を挙げられました。それ以上に、「命令で定める」範囲というものを拡大されるということはよもやそれは考えられないと思いますけれども、この点どうです。それ以外に、さらにこの「女子の健康及び福祉に有害でない業務」ということを、あれもそうだ、これもそうだというふうに範囲を拡大するようなことはよもや考えられないと思いますけれども、それは労働省のことですからだめ押しをしておかなければこれはどうにもならない。いかがです。
  20. 赤松良子

    ○赤松政府委員 六十四条の三の一項二号につきましては、先ほど申し上げましたように現行の規則をそのまま受け継いでいくという予定でございますので、まだ具体的にそれ以外のものをふやす、あるいは現在のものをなくすというようなことについて検討をいたしておりません。
  21. 土井たか子

    ○土井委員 検討をいたしておりますと言われたのですか、まだいませんですか。(赤松政府委員「いません」と呼ぶ)いません。法律の規定する定義自身というのがもう限定的なものでなければならぬというのが大原則ですから、そういうことからすれば、ひとつそこのところの中身というのが非常に大事な問題になってまいります。  そこで、三のいわゆる専門職、管理職と言われる中の管理職というのは、具体的に言うとどういうものを指しておっしゃっているのですか。業務遂行上の最小の組織単位の長までこれは含められるのですか、どうなんですか。係長、班長、グループ長、いろいろあると思いますけれども、どうなんです。
  22. 赤松良子

    ○赤松政府委員 お答えいたします。  管理職の定義でございますが、定義というより考え方と申し上げた方がよろしいかと存じますが、これは個々の名前というよりは、業務遂行上の単位組織の長として、そこに属する労働者に対して仕事の割り当て、仕事のやり方の指示など、具体的な業務の遂行について指揮命令をする、またその組織全体の業務の遂行について責任を持つという職務上の地位にある者を考えているわけでございますが、具体的には関係審議会にお諮りした上で決定をする予定になっております。
  23. 土井たか子

    ○土井委員 こんなわけのわからぬ話はないんじゃないですか。法律の中身で具体的に範囲をどのように考えておられるかがはっきりしないで、どうしてこんな審議ができます。問題は、どういう範囲を考えていらっしゃるかというのは法定されるべき中身ですよ。管理職というのをどう考えるか。大体深夜業というものをしなければならなくなるんでしょう、深夜業の規制を外すんですからね。本来深夜業に対しては原則禁止ですよ。その禁止条項を外してやるというのは百八十度ひっくり返る問題じゃないですか。その範囲に対して、これから審議会にいろいろお諮りをして考えていただきますというような程度でこの法律案に対して審議をしてくださいというのは、ちょっとこれはいただけない話過ぎますよ。どうですか大臣、どういうふうにお思いになりますか。大臣、いかがです。
  24. 赤松良子

    ○赤松政府委員 ただいまお答え申し上げました内容で、ある程度具体的に中身はわかるというふうに考えている次第でございます。これは婦人少年問題審議会婦人労働部会で大変時間をかけて討議をした一つのものでございますが、「管理職、一定の専門職、腐敗しやすいものの製造加工等業務の性質上深夜業が必要な短時間の業務に従事する労働者その他女子の健康及び福祉に有害でない業務に従事する労働者についての規制の解除は、それらの範囲を別途具体的に検討した上行うこと。」という建議をちょうだいいたしておりますので、それに従って行っていきたいというふうに考えております。
  25. 土井たか子

    ○土井委員 ちょっと待ってくださいよ。今の局長の御答弁は四についておっしゃっているわけで、私は三のところを言っているんですね。どうして管理職について四の問題が出てくるのですか。管理職のところは三ですよ。三の中身について先ほどのような御答弁でははっきりしない。そこで、どうなるのですと聞いたら、審議会に諮ってこれから考えます、こうなんです。そんな程度でこの法案をお出しになるというのは、ひっくり返った、逆立ちしたようなありさまじゃないかと私は申し上げている。管理職の範囲というのは、具体的に言ったらどういうところまで考えていらっしゃるのですか。
  26. 赤松良子

    ○赤松政府委員 審議会の建議をお読みいたしましたのは、深夜業のところについて、「管理職、一定の専門職、」その他云々というふうに、管理職がまず出てくるわけでございまして、管理職を含めてその「規制の解除は、それらの範囲を別途具体的に検討した上」というのは、これは審議会でという意味でございますので、審議会で検討した上で行う。こういうふうに、管理職を含めて検討した上で行うという建議をちょうだいしているということを文言に即して申し上げたまででございまして、管理職が含まれているわけでございます。  先ほど申し上げた管理職の範囲と申しますのは、時間もございませんので繰り返しませんが、管理職とはということで申し上げた中身で、相当程度具体的になっているというふうに私どもは考えるわけでございます。これを例えば課長とか係長とか班長、そういうふうに申しますと、それはその企業の中で、例えば組織が小さいようなところでも課長と呼んでいるところもあれば、非常に大きな課で課長と呼んでいるところもある。そういう名詞だけで言うことはかえってその内容を明確にしない、このような側面がございますので、あえて係長とか班長とか課長とかそういう言葉を避けて、内容的な説明で申し上げているつもりでございます。
  27. 土井たか子

    ○土井委員 大体労働基準法では、法律で定義自身がきちっと具体的に規定されるということが私は本則だと思うのですよ。そういうことからいたしますと、先ほどからの御答弁で、どこに審議会に諮りということが書いてありますか。審議会に諮ってこの中身については検討するということが書いてありますか。そういうことは法文上どこにもないじゃないですか。審議会に全部預けて、審議会で考えていただいた結果をここの中身としたい、具体的に言ったら問題が多いので、それぞれの会社によって違いがあるだろうから、あいまいもことしているけれども、一応の考え方を言うにとどまるというふうな御説明では、これは引き下がれないですよ。管理職というのはやはり大きいです、持っている意味は。深夜業の規制から全部これが外される対象になるのですからね。最小の組織の単位の長についてまでも管理職と呼ぶのかということになってくると、これは深刻な問題になりますよ。
  28. 野崎和昭

    ○野崎説明員 労働基準法に基づきます労働省令につきましては、労働基準法の中央労働基準審議会に関する規定の中で、この法律の施行に関する事項は審議会に語るという規定がございまして、その規定に従いましてすべて審議会にお諮りしているわけでございます。  なお、あわせて公聴会も開くという規定も労働基準法にございます。
  29. 土井たか子

    ○土井委員 それは別途、中央の方の労働基準審議会にゆだねるというふうに法律によって考えられているのでしょうけれども、ここで問題になっているのは労働基準法そのものなんですよね。労働基準法そのものについての定め方がどういうことになっておるかということからいたしますと、この中身についての定義というのは、ここでお尋ねしたときにお答えとしてあらまし出てくるのが法案に対する審議のあり方だと私は思います。したがって、今審議しているのは、労働基準法に関する改正案についての審議なんですからね。この改正案についての審議をするときには、その中身に対して、具体的にこうでございますという定義を披瀝されて当たり前じゃないですか。その辺をこれから考えることに全部ゆだねて、はい、この法案結構でございますとは、国会としてとても言えないですよ、国会が立法機関なんですから。忘れられては困るのです。ここで法律をつくるかつくらないかを決める場所なんですから。法律の中身がはっきりしないようなことをどうして我々は決められますか。  お役所の方の物の考え方というのはちょっと横におきましょう。大事な問題だから労働大臣にお尋ねします。どうお考えになりますか、こういう決め方を。
  30. 赤松良子

    ○赤松政府委員 命令で定める内容につきましては、裸で委任するということはするべきでないと思うわけでございます。先生の御指摘のように、労働基準法の中で、どの範囲まで命令に委任できるかということは、すべて明らかにしておかなければならないと思う次第でございます。  そこで、ただいまの点について申し上げれば、先ほど来申し上げておりますように、深夜業についての規定は、その前の六十四条の二の第四項の「労働者の業務の遂行を指揮命令する職務上の地位にある者又は専門的な知識若しくは技術を必要とする業務に従事する者で、命令で定めるものに該当する者については、適用しない。」、この条文を準用するわけでございますから、この表現は命令に委任をするという限度で適当な表現ではないか。そしてまた、その中身については、この委員会で内容について先ほど来御説明をしておりますので、法律上問題はないのではないかと思うわけでございます。
  31. 土井たか子

    ○土井委員 これは繰り返しになりますけれども、その御答弁ではどうも納得しかねるのです。この点はどういうふうにお考えになりますか。これは詰めておきますよ。業務遂行上最小の組織単位の長までも含めて管理職と考えるかどうかという点は、どうですか。
  32. 赤松良子

    ○赤松政府委員 ただいま御指摘の点がこの法律上の表現の中に当てはまるかどうかは、まさに審議会にお願いする予定になっているわけでございます。
  33. 土井たか子

    ○土井委員 それならば、結局管理職については何にもわからないということになるじゃないですか。問題のポイントはそこでしょう。大きな部課長、局長――労働省のお役所で言うと、さしずめ局長なんというのは明らかに管理職だということがはっきりしている。どこまで管理職を広げて考えているかというところがポイントになるのですよ。それは全部深夜業の規制を外すのですからね。問題は大きいのです。そこのところがまさに論議の対象ですから、論議をさらにしていただくでは合点できないです。こんなことで、さあ、それじゃ先に行きましょうというわけにいかないですよ。その辺すらはっきりできませんか、今申し上げたようなことすら。これははっきり言っておいていただかないと困ります。
  34. 野崎和昭

    ○野崎説明員 ただいまのお尋ねの点でございますが、繰り返し御答弁申し上げておりますように、最終的には審議会の御意見を聞いて決めることになるわけでございますけれども、婦人少年問題審議会での御議論の過程では、一つの考えとして、労働基準法の四十一条にございます管理、監督者の範囲にするというような御意見、あるいは国家公務員の場合には係長以上が深夜業が認められておりますので、その範囲とすべきであるというような意見、その他種々ございまして、そういった点を勘案しながら、最終的にどの辺のところで線を引くか、これは審議会の御意見を聞いた上で決める必要がある事柄だと思っております。
  35. 土井たか子

    ○土井委員 審議会の意見を聞いた上ではっきりこの条文に対して認識を改めて持つということだったら、そのとき改めて法案を出し直してください。そういうことだったら、今法案を審議する時期じゃないですよ。これは非常に大事なポイントなんです。何でもかんでも法案をまず出しておいて、先日もそうです、時間外労働の実態について、労基研の報告に従って実態調査をやっていて、それに対してのいろいろなデータというのはもう集約が済んでいると言われるけれども、集約について出すこともしないで法案審議をまずやる。集約をやって分析をやって現状がどうかを考えた上で、今度は女子についてどうかというのが順序じゃないですか。それから法案を考えるのが順序じゃないですか。これは全部逆立ちしたありさまなんです。  労働大臣、これはどうお考えになりますか。非常に大事な問題だから、ひとつ労働大臣にこのあたりで一言言っておいていただきます。どうですか。
  36. 坂本三十次

    ○坂本国務大臣 私も一言しか言えないわけでありまして、今政府委員が申し上げたようなそういう仕事の内容の範囲内において、あとは審議会のお知恵を拝借したい、そこで命令でしっかり確定をしたい、こう申し上げておるわけでございますが、いろいろ考えておるようなところもございましょうけれども、審議会の意見を聞いてということでございますので、それは労働省だけの心づもりもあると思います。だけれども、それよりも三人寄れば文殊の知恵ですから、それを聞いた上で決めるのもこれまた慎重な方法の一つではないかな、こう思っております。
  37. 土井たか子

    ○土井委員 労働大臣、命令で決めるだろうと思いますとおっしゃいますが、命令というのは法律に縛られているのですよ。法律を超えて命令がひとり歩きすることを法律自身は許さないのです。それが法治主義の大原則であることは大臣もよく御承知のとおりなんですよ。それからすると、今ここで中身について定義がはっきりされないままで命令に全部お預けして、どうぞよろしくと言って、国会よりも審議会の審議を大事に考えて、審議会でどうなるかがこれから先はよくわからないままで、どうして国会の法律に対しての審議ができていると言えるんですか。憲法四十一条をよく読んでみてください。唯一の立法機関はここなんですよ。国権の最高機関はここなんですよ。その中にいらっしゃる議員であり、しかも大臣である大臣じゃないですか。そういう立場をしっかりお考えになるならば、こういうやり方を許していったらどうなるかということをひとつ深刻に受けとめていただかなければならぬと思う。これは大事な労働基準法の改正なんですよ。一たんこれで発車してしまったら後で取り返しがつかないんです。こういうことをひとつこの問題に対しては申し上げて、さらにもっと深刻なのは五なんです。  四のことについては、申し上げたいと思いますが、後でたっぷり先輩の多賀谷眞稔議員から御質問がありますから、五についてお尋ねを進めておきますけれども、「深夜業に従事することを使用者に申し出た者」、これはそもそも労働基準法の基本に触れる問題だと思います。たとえ労働者本人が希望したとしても、許してはならない最低の労働条件を定めるのが労働基準法なんです。労使当事者の合意によっても労働基準法の中身を変更することはできないという、最低の基準を定めるのがそもそも労働基準法であるということからいたしますと、使用者に申し出れば深夜業ができるというこの決め方は一体いかがであるか、大変ここで問題になってまいります。どういうものをここで考えていらっしゃるのですか。「深夜業に従事することを使用者に申し出た者であって、当該申出に基づき、命令で定めるところにより、」ですから、命令で定める際にどういうものを認識していらっしゃるのですか。いかがでございますか。労働基準法の原則まで破ってどういうものを考えていらっしゃいますか。
  38. 望月三郎

    ○望月(三)政府委員 タクシー運転手を対象としております。
  39. 土井たか子

    ○土井委員 タクシーの運転手だけですか。もう一回答えてください。
  40. 望月三郎

    ○望月(三)政府委員 それだけを考えております。
  41. 土井たか子

    ○土井委員 タクシーの運転手だけを考えておられる、その中の女子タクシー運転手さんの中に、今回のような深夜業ということを申し出さえすれば認められるようなあり方は好ましくありません。深夜業の規制を外すことはしていただきたくない。こういう声を出しておられる方がございますが、労働省の方にも行かれたはずでありますが、御承知でしょうね。いかがですか。
  42. 望月三郎

    ○望月(三)政府委員 私は、ぜひ女子にも深夜業を認めてくれというタクシー運転手の強烈な声は聞いておりますが、直接反対だという声は私は聞いておりません。
  43. 土井たか子

    ○土井委員 赤松局長はいかがですか。これは反対だとおっしゃっている方がいらしたと思いますよ。
  44. 赤松良子

    ○赤松政府委員 陳情の中に、面接タクシーの運転手さんではございませんでしたが、その方のお知り合いの地方のタクシーの運転手さんで、自分はしたくないと言っている方がおられるというふうな陳情があったことは私は承知しております。
  45. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、一般的にそれを命令で定めることはいかがかということになりますね。申し出さえすれば深夜業ができるということになると、そういう場で申し出をしない人と申し出をした人との間に差をつけることになってきはしませんか。そして、深夜業をしないと女性のタクシー運転手さんとしては一人前に取り扱うことができないという格好になりはしませんか。子供を持ち、家庭を持っているタクシーの女性の運転手さんにはそれはできることじゃないですよ。そういう取り扱いはどうなりますか。そういう不利益な差別を受けた者についての救済の道というのはどういうふうに用意されているんですか。いかがです。
  46. 望月三郎

    ○望月(三)政府委員 タクシー業者の中には女子に深夜業をさせたくないという業者もございますし、また、タクシーの運転者の賃金体系というのは先生も御承知のように特殊な体系を持っております。したがいまして、やらないからといって不利益をこうむるというケースはまずまずないのではないかと、私どもは賃金体系等から見て考えておるわけでございます。
  47. 土井たか子

    ○土井委員 ないのではないかという程度の御発言というのは慎んでいただきたいので、これは出てくるかもしれませんよ。全くないとは言えない問題なんです。そういうことに対して救済の道を全く考えないで、ないのではないかで済ましていくわけにはいかない。その辺はどういうふうに考えられているかというのがさっぱりわからないですね。今回の法案の中ではそういう用意がございません。  そこで、使用者に深夜業に従事することを申し出た女性タクシー運転手さんの場合はよろしいということになるけれども、それをしない女性タクシー運転手さんの場合には、逆に門戸が閉ざされる可能性が出てきはしないかという問題も実はあるんです。深夜業は私はしたくないという運転手さんは要りません、深夜業の申し出をやるということを強制して、そしてタクシー運転手として採用するというふうなことも出てくることは想像にかたくない。使用者に、本人が申し出たかどうか、強制的にそういうことを申し出させたかどうか、本人の自主的な申し出であるかどうか、一体どうして調べるんですか。どこで、だれが、どういう方法で。いかがですか。
  48. 望月三郎

    ○望月(三)政府委員 本人の真意であるかどうかというのは、労働基準監督署の承認という形でチェックをいたします。
  49. 土井たか子

    ○土井委員 ちょっと今よくわかりませんでした。もう一度お答えください。
  50. 望月三郎

    ○望月(三)政府委員 深夜業をやりたいという労働者の申し出について、労働基準監督署へ申し出をいただくわけですが、そこでそれが本人の真意であるかどうかということをチェックをいたしまして、本人の意思であれば承認する、意思でなければ承認しない、こういう明らかな行為を経て決めるわけでございます。
  51. 土井たか子

    ○土井委員 どういうチェックの方法をおとりになるのですか。  それで、今おっしゃったように、基準監督署というのは地方のでしょう。そうなると、地方の基準監督署で一々そのことに対して適正に運用がされているかどうかというのは、どこでどういうふうに取り締まっていくのです。どこでどういうふうにそれに対して認識をするのですか。
  52. 野崎和昭

    ○野崎説明員 監督署で承認をいたします場合にどういう方法をとるかは、今後検討いたしたいと思いますが、本人の申し出書のほかに、必要があれば御本人に直接、真意がどうかをお尋ねするというような方法も考慮したいと思っております。
  53. 土井たか子

    ○土井委員 大事な部分は何もかもこれから考えていきたいとか、これから審議会に諮りたいとかいうことばかりじゃないですか。まだ法案として固まってないのですよ。この段階で深夜業に対しても規制を外すというのは、むしろ世界の趨勢からしたら逆を向いて歩くような方向なんですけれども、男性についても、深夜業については、深刻ないろいろな健康破壊の問題であるとか、家庭生活と両立させ得ないという問題であるとかが出てきているわけなんです。それに歩調を合わせて、今度は女性も深夜に働け、こうなっていくわけですから、まことにこの中身は二重にも三重にも間違った行き方を、今労働省は我々国会に対して提示をされているとしか言いようがないのです。  ここの五で言うところの「行政官庁」というのは何ですか。もう一度、繰り返しになるかもしれませんが、はっきりしておいていただきましょう。
  54. 野崎和昭

    ○野崎説明員 労働基準監督署の意味でございます。
  55. 土井たか子

    ○土井委員 これは地方の労働基準監督署ですね。地方ですけれども、地方ということにもいろいろ段階がございますので、ひとつそこを具体的に言っておいていただきます。
  56. 野崎和昭

    ○野崎説明員 労働基準行政の組織としては、本省のほかに各都道府県に労働基準局がございます。その下に労働基準監督署がございます。その第一線の労働基準監督署のことでございます。
  57. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、これは具体的に言えば、こういうことを認めないというこのタクシーの立場があるならば、五がどれほどこういう規制の仕方をやっておりましても、相変らず深夜業に対しては一切これはしないという姿勢のままでいくということも現実の問題として考えられますね。いかがですか。
  58. 望月三郎

    ○望月(三)政府委員 ちょっと御質問の趣旨がわからなかったのでございますが、要するに、その地域で女子のタクシー運転手が深夜業をやりたいという人が一人もいなければ、その地域では一人もいないということでございます。
  59. 土井たか子

    ○土井委員 当然そうなるだろうと思うのです。今、女性の運転手さんはふえてきておりますけれども、現在の労基法を当然と考えていらっしゃる方がほとんどであって、その範囲内で割り切って働いておられるという実態もございますからね。そういうことからすると、わざわざ御丁寧に深夜業に対して働きなさいというふうな道を開かれることが、現状に即応して考えた場合に、働いていらっしゃる方々の立場を考えているかどうかという問題も出てくるのですよ。  そこで、再度言いますけれども、先ほど来、これはタクシー運転手さん以外には考えないと言われましたけれども、これははっきりしておりますね。それははっきり言っておいてください。いかがですか。これに対しては、断じてほかに援用したり広げたりするようなことはしない、これだけははっきりしておいていただきます。
  60. 望月三郎

    ○望月(三)政府委員 現在はタクシー業しか考えておりません。
  61. 土井たか子

    ○土井委員 「現在」とか「当面の間」とかいうふうな表現をよくお使いになるのですが、現在とか等々というのは要らないことであって、この法案についてどうお考えになっていらっしゃるかということをおっしゃってくださればいいのです。どうですか。そういう修飾語は要りませんよ。これははっきりしておいてください。
  62. 望月三郎

    ○望月(三)政府委員 現在はタクシー業以外は考えておりません。
  63. 土井たか子

    ○土井委員 事情変更の原則なんというのは断じて認めません。そういうことをひとつはっきり申し上げます。  さて、外務省御出席ですから、最後に、私は、いろいろこれは見始めますと、幾らだって言わなきゃならないことだらけなんですけれども、今この深夜業の問題について二、三取り上げて問題にいたしましたが、ILOの八十九号条約というのがありますね。これは大変古い条約でございますけれども、工業に使用される婦人の夜業に関する条約なんですが、これが最近見直されるというふうなことが問題になっておりますけれども、現状は一体どういうことになっているかというのをあらましちょっとおっしゃってくださいませんか。
  64. 遠藤哲也

    遠藤説明員 今先生御指摘の条約は、確かに昭和二十六年でございますかにできた条約でございまして古い条約でございますが、一九七八年にILOにおきまして、深夜業に関する労、使、公構成の諮問会議が開催されまして、男女も含めた深夜業の規制について検討を行ったわけでございますが、この検討の結果は結論を得るに至っておりません。
  65. 土井たか子

    ○土井委員 結論を得るに至っていないけれども、そういう動きに対しては日本としては賛意を表されているのですか、表されていないのですか。どういう認識を持って見ていらっしゃるのですか。いかがですか。
  66. 遠藤哲也

    遠藤説明員 先生御指摘のこの条約ができましたときには、まだ日本はILOに未加盟の状況でございまして、この条約に対しては日本は態度を明らかにする機会がなかったのでございますけれども、極めて一般的に申し上げますと、深夜の長時間の労働は一般的には好ましくないと考えますけれども、ただ、深夜業の規制のあり方につきましては、日本の経済状況とかあるいは社会状況等を勘案しながら総合的に検討していくべきである、こういうふうに考えております。
  67. 土井たか子

    ○土井委員 ちょっと待ってくださいよ、遠藤さん。そのILOの趨勢というのは、男女ともに深夜業に対しては規制をする、本来深夜業というのは好ましくないという方向でやっぱり考え方が進んでいっている、このように理解してよろしいね。いかがですか。これはそうだと思いますよ。
  68. 遠藤哲也

    遠藤説明員 先ほどお答え申し上げましたように、一九七八年のその三者構成の会議では、男女も含めて深夜業をどうするかということを議論したわけでございますけれども、その議論の結果、結論というのが出ていないわけでございまして、今先生のおっしゃったような傾向がILOでもってはっきり出ているかという点につきましては、まだそういう状況には至っていないというふうに見ております。
  69. 土井たか子

    ○土井委員 しかし、物の考え方とすれば、時間外労働を禁止するとか労働時間を短縮させるとかいうふうな方向で事が進んでいることに並行して、深夜業に対しても、本来人間が正常な生活を営むということからすれば、深夜働くということはおかしい状況なんですから、深夜業に対しての規制の方向を強めていっているということは至極当然であり、そういう方向にILOは動いている、このように考えていいと思うのです。そうでしょう。
  70. 遠藤哲也

    遠藤説明員 先生おっしゃいましたように、確かに一般論といたしましては深夜の長時間労働が好ましくないというふうな考え方はあると思います。
  71. 土井たか子

    ○土井委員 そうなんですね。そうして、しかも今回のこの女子差別撤廃条約の十一条の一項の(f)のところでは、はっきり明記の規定がある。「作業条件に係る健康の保護及び安全についての権利」というのは「すべての適当な措置をとる。」ということを義務づけられているわけですね。こういうことからいたしまして、遠藤さん、さっきから聞いていらっしゃったと思うのですけれども、どうお思いになりますか。審議会に後で、命令をつくるに際しては、例えば管理職の範囲というのはこれから考えてもらうことであるとか、それから、さっきお尋ねをしました深夜業の規制を外していくことのための使用者に申し出るということに対しても、どういう取り扱いを行政官庁の現場でやるかということは、これから命令をつくるに際して考えていくべきことであるとか、これは本来、深夜業の規制ということを強めていくのが先ほどからのILOの趨勢であろうと私は思うのです。しかし、今回労基法に対して政府がお出しになっていらっしゃる法案の中身は、むしろ今まで規制してきたことを外すわけです。外すということを言う以上は特定的でなきゃならない。特定的でなきゃならないところがぽやけてしまって、聞いたら、それはこれからでございます、これから審議にかけます、こういう調子の法案を法案と称して国会に提出をされているんです。  どうですか、こんなままで条約の十一条にかなうんですかね。こういうままでILOの立脚しているそういう趨勢にかなうんですか。どのようにお思いになりますか、率直に言ってください。労働省に遠慮なさらないで言っていただきたいと思います。
  72. 遠藤哲也

    遠藤説明員 先ほど私が申し上げましたのは、極めて一般的な流れといいますか方向であって、労働基準法の改正に伴いますいわゆる法技術的な点につきましては労働省の御担当でございますし、私からはコメントを差し控えさせていただきたい、こういうふうに思っております。
  73. 土井たか子

    ○土井委員 労働省で決められたこと、それが法案になって出てきて、今、国会で審議をして、国会で法律はつくるんです。その国会の中の一員として、この法案のようなあり方でよろしいですかということを聞く相手としては、条約に対して国の窓口であり、これを締結する締結権者というのは一体だれなんですか。国会は承認権者ですよ、締結権者は外務省でしょうが。そういうことからすると、今のように、これは労働省の問題だからお答えは控えさせていただきますと言うのは、ちょっと私は許せない気がします。遠藤さん、どうです。
  74. 遠藤哲也

    遠藤説明員 条約締結につきまして責任を負っております外務省としましては、この婦人差別撤廃条約の観点からは、男女の差をなくすということが主眼でございます。したがいまして、具体的にそれじゃどういう水準ということは、私どもの方からはちょっと申し上げることができない状況にございます。
  75. 土井たか子

    ○土井委員 それじゃ問い方を変えましょう。  男女同一水準とおっしゃるけれども、十一条の1の(f)では「作業条件に係る健康の保護及び安全についての権利」ということが明記されているのです。よろしゅうございますか。そういうことからすると、法律で定める場合には、今まで規制をしてきた規制を外すんですかう、労働条件は女子に対してはがらりと重労働の方向に傾くわけですよ。この規制を外す中身に対しては法律で具体的に定めるということが大事であるというふうに考えられますね。これはそうでしょうが。これは外務省、遠藤さん、どうですか。
  76. 遠藤哲也

    遠藤説明員 先ほどからも御答弁申し上げましたように、労働条件の水準というものが高くなることが望ましいのはもう当然だろうと思います。しかしながら、条約の直接的な要請としましては、労働条件の水準を具体的にどういうふうにすべしということは期待していないわけでございまして、ちょっと繰り返しになって申しわけございませんけれども、具体的に深夜業につきましてどういうふうにするかということにつきましては、一般論としては私が申し上げたとおりでございますけれども、具体論としましては、外務省としましてはお答えできないし、やはり本件は労働省の御主管だろうと思います。
  77. 土井たか子

    ○土井委員 それじゃ、外務委員会のときにはそうスムーズに審議が動くとは思えなくなりますよ、遠藤さん。今が大事なときなんです。国内法をきちっとつくって、条約について批准するかしないかを国会に承認を求めるわけでしょう。目安になるのは国内法がどういうものかということなんです。抽象論じゃないですよ。具体的に国内法がどういうものであるかということによって、条約を批准することが日本としては整備されているかどうかということを考えていかなければならないのでしょうが。そういうことからしますとこれはどうなんですかね。労働水準などというふうなことをいま先ほどからおっしゃっているけれども、遠藤さん御存じのとおりに、今まで深夜は労働をしてはならないと決めていた規制を外して深夜業をしなさいと言うのは、これはよほど労働条件に係る健康の保護、安全に対して具体的に、特定的にしなければならないということは考えられるのじゃないですか、条約の要件からすれば。それはそうでしょう。ちょっと遠藤さん、どうですか。それはそうだと思う。
  78. 斉藤邦彦

    ○斉藤説明員 一部条約の解釈に関連する御質問と思いますので、条約局の方からお答えさせていただきます。  一般論といたしまして、労働条件がなるべく高いところで定められていくべきだというのが大きな流れだというのは、先ほどから御答弁しているとおりでございます。しかしながら、今回、来年中に批准しようと政府が希望しております婦人差別撤廃条約が目的とするところは、男女の間の差別を撤廃することでございます。したがいまして、時間をかけて労働条件を、現実の問題に即して申しますれば、女子が保護を受けている点につきましては男子の方をそちらに合わせた上でこの条約を批准するということも一つのやり方でございまして、あるいは長期的にはこの方が望ましいという意見もあるかと思います。しかしながら、来年度じゅうにこの条約を批准したいという国内的及び国際的な要請がございますので、これを背景として考え、それからかつ、数年間にわたりまして審議会等で国内的に御審議していただいた結果、一部の女子保護規定は不必要であるので見直すべきだという意見が大体認められているというふうに承知しておりますので、このような背景で考えますと、一部の女子保護規定は見直すべきだというのが今回の法案の考えの背後にあるわけでございまして、これは条約上も問題がない点であろうと思います。  ただいま土井委員御質問の、その保護の一部を外すに関してはその範囲は具体的であるべきだという御意見でございますけれども、その点になりますとこれは立法技術の問題ということになると思いますので、どのような具体的な方法でこの条約の要請を満たすべきかという、立法技術の点に関してまでこの条約が具体的な方法を要請しているというふうには我々は考えていない次第でございます。したがいまして、現在政府が提案しております法案のやり方でも、この条約の要請を満たすものだというふうに考えております。
  79. 土井たか子

    ○土井委員 どうも歯切れが悪く、何だか持って回った言い方を外務省としてはされているわけでありますけれども、最後に労働大臣にお尋ねをいたします。  今、外務省は、男性の労働条件に合わせて女性を考えるということも一つの考え方だと思うと。まさしく今の労働基準法に対してのいらい方というのは、深夜業についてもそうです、時間外の問題についてもそうです、既に男性に対してあるところのその問題を女性に当てはめて、今度は深夜業の規制を外すという格好になってきているわけですが、しかし、それならそうで、男性の深夜業の実態調査というのはどういうことになっているかということは既におやりになっていて、それの集約もされていて、しかしそれはここでは明らかになさらない、そしてどうなさるのですかと言ったら、実態調査の結果は、六十体をめどに研究会の報告が出るときに、その実態調査の結果も含めて同じ時期に出ることになるのではないかというお答えなのですよ。これじゃ、この法律について中身を同一にするという、同一にそろえることについての条件すら整っていない段階で、労働省としては今度の法案づくりに急がれたということしか言いようがないのです。この点は本当にはっきりしない。我々はその辺を国会で聞かせていただかない間に、よろしゅうございます、それは審議会や、あるいはこれから労働省自身が命令でお考えになることに全部譲りますから、どうぞそうやってくださいとはとてもよう言えません。  きょうは逐条についてお尋ねをしましたけれども、部分的にはやはりあいまいもことしてさっぱりわからない。具体的には管理職の中身についてもわからぬままであります。労働大臣、こういうことでは、法案を提出するというお立場からしたら、どうも片腹痛いような気がなさるのではないかという気がいたしますけれども、どうなんでございますか。後ろめたい気持ちもおありになるだろうと思いますが、そこのところを率直に聞かしていただきたいと思います。
  80. 坂本三十次

    ○坂本国務大臣 先ほどから外務省も申しております、女子に対する特別の保護規定というものは婦人差別撤廃条約上母性保護を除いて究極的には廃止さるべきものであるという基本方針は、私はそのとおりだと思っております。ただ、一遍にそういう急激な保護を外すということになると、現実に男性主導社会において女性が家庭責任を負っておるという現状は、これは急激な改革はできませんので、現状に照らして徐々にやっていくべきものだろう、こう思っておりますが、ただそれは、男性の、現に戦後の廃城の中からここまでやってきたんですが、それはやはり男性主導でやってきたことも事実であります。しかしもうそろそろ、女性の能力も出てきたし意欲も出てきたし、ひとつ男女ともにしっかり働いていただければ、こんなに社会に貢献することもありませんですから、この女性の保護ということがかえって職業生活の足を引っ張る、女性の希望するところ、女性の能力発揮に足を引っ張るということになっておるものですから、できるだけ条件を男の方に、現実はですよ、将来はそれはどうかは知りませんが、それに合わせるということは私はまあ常識であろうと思っております。  ただ、現実に、そういう女性の職業の機会均等、それから待遇の平等を男のところに近づけようといたしましても、これはやはりなかなか現実は難しいけれども、近づけていこうという意欲は、条約・精神上も私は非常に大事なことでもあると思っておりまして、そういう意味で、現在の状態では原則は男性に近づけていくという方が現実的であり、実効が上がるのではないかと私は思っております。ただ、それは原則であります。法律上もその原則である。ただ現実の問題として、女性の保護を条約の要請によって廃止したり緩和したりいたしまするけれども、現実は、そういう原則を変えるということによりまして、そういうことを口実にして、企業がもしも不合理な女子の労働条件を悪化させるなどということは私は認められないし、そういうことは、もしあるといたしましても、行政指導の面でできるだけのチェックをしてそういうことのないようにいたさなければならぬ、こう思っておるわけであります。  それはいろいろな段階もございますが、例えば時間外労働にしても、これは労使の協定があって初めて生きることでありまして、労働基準法の範囲内であったことはもちろんでございますけれども、この男性と女性のハンディキャップを縮めていく、そういう原則というものは条約上の要請でありますけれども、しかしそれを近づけていったからといって、現実に今働いておられる女性が企業から不合理な労働条件の悪化を要請される、要求される、そしてまたそれが通るなどというようなことは私には考えられない、こう思っております。
  81. 土井たか子

    ○土井委員 一言申し上げて私は終わりにいたしますけれども、女性も働く気持ちをだんだん持ってきたのでと労働大臣はおっしゃる。それは、とんでもない、実際に対しておくれた見方しかなさっていないなと思うのです。どれほど苦労して、大変な思いで働いておるかという実態をもっと直視していただきたい。それは、ふえてきたのでどころの騒ぎではありません。実際問題、働くことの必要性、働くことの意義、それをみずから自分の生活の中で、これが自分の生き方だということを培ってきている女性というのがこのところ普通なんです。そうして働こうとすると、今回の法案では、むしろ入り口のところからして働くことを拒否するような方向に手をかされていることが、私たちとしたらこれは間違っていますよと、現実に合わない、むしろ現実にさお差して、後ろ向いて歩くようなものだということを申し上げているのです。だから、大臣は、もっと働きやすいようにというふうな意味を込めて御答弁なすっていると私は思いたいのですけれども、少なくとももっと働きやすいということをお考えになるのだったら、それに対していささかでも阻害するような要件は取り払うことに力をかしていただきたい。むしろ今の法案は働くことに対して阻害する要件を持ち込んでこられている中身になっているということを、あえて申し上げます。  それと、男性と同じように働けとおっしゃる。今、男性は、家庭を顧みず時間外や深夜業の仕事ができているのです。おわかりですね。家庭を顧みず初めて今のように、働きバチのように働くことが事実上現実の問題としてあるのですよ。女性をそれに合わせると言われたら、どうして家庭と職業、仕事が両立できますか。これはやはり家庭をほうらなければならないですよ、仕事をするならば。このことをあたかも強要されるような法案であるということを申し上げて、終わりにします。  ありがとうございました。(拍手)
  82. 有馬元治

    ○有馬委員長 多賀谷眞稔君。
  83. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私は、本法律案の質問に当たりまして、女性差別撤廃条約の批准並びに男女雇用平等法の制定に向かって努力をされた関係者の皆さんに、非常な敬意を表する次第です。婦人局長の赤松局長も大変努力をされました。またOBの皆さん、また局員の皆さんも努力をされました。また民間の婦人団体、また弁護士会等の熱心な運動が展開をされました。我が党においても、田中寿美子前参議院議員が各国を回って、そして男女雇用平等法を立案し、六回にわたって参議院に提出をしております。こういう中で、ついに政府は、条約批准を公約し、本法案提出の運びになったと思います。しかし、率直にいいますと、私は、その努力にもかかわらず、ここに出されております法案は、その条約の趣旨あるいは期待に反するだけでなくて、実効について大変危惧をするわけでございます。  以下、これらの問題について質疑を行いたいと思います。  第一に、女性差別撤廃条約は、その前文において「婦人に対する差別は、権利の平等の原則及び人間の尊厳の尊重の原則に違反するものであり、」という認識に立っておる。第二は、子供の養育には男女間及び社会全体の分担が必要であるという認識に立ち、「社会及び家庭における男子の伝統的役割及び婦人の役割の変更が、男女間の完全な平等の達成に必要であることを認識」をする、こう明定をしている。私は、この二点を中心に質問をしていきたい、かように思います。  第一点は、この条約は、婦人の差別というのは基本的人権の侵害だ、こううたっておる。ところが、今度出されました本法律案は、勤労婦人福祉法の改正として出され、まさに最初から、基本的人権の侵害である、だから差別をなくさなければならぬという認識に欠けておる、そういう熱意が法案の中には見られない、こういうように思いますが、どういうようにお考えであるか、お聞かせ願いたい。
  84. 赤松良子

    ○赤松政府委員 お答えいたします。  先生の御指摘の条約の前文等については、繰り返し熟読をいたしているところでございます。しかしながら、このただいま提案中の法案が、条約の中の精神を受け継いでいないということにはならないというふうに思うわけでございます。勤労婦人福祉法はその名前も変わり、「目的」、「基本理念」も修正をされ、条約の批准にふさわしいものになるように改正をされたところはいろいろとあるわけでございまして、それにつきましては、御提案した対照などをごらんいただければ御理解がいただけるのではないかというふうに思うわけでございます。  また、本委員会でたびたびお答えをいたしているわけでございますが、「福祉」という言葉が決して「平等」と相反するものでも何でもなくて、福祉の中に機会の均等、待遇の平等ということが含まれる概念であるというふうに私どもは考えているわけでございます。  福祉の意味は、いろいろと使われ方によっては広い意味もあれば狭い意味もございましょうが、労働省の法案としては、労働省の設置法にもあるように、「勤労者の福祉」ということは大変広い概念に既に使われる用例もあるわけでございまして、また勤労婦人福祉法におきましても、既に「母性を尊重されつつしかも性別により差別されることなく」という言葉が入っておりますのにも見られますように、既に同じ「基本理念」の中にそういう方向が読み取られるわけでございます。  今度の改正におきましては、さらにはっきりと、明確に機会の均等、待遇の平等を確保するための具体的な措置を講じた次第でございまして、それらのことを総合してお考えいただきまして、このたびの法案の提出が条約の精神と根本的には同じところを目指しているというふうに御理解をいただきたい、かように存ずる次第でございます。
  85. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 これだけの大きな条約に基づく法案としては、極めて意欲を欠いていますね。出だしからこういう状態では思いやられる。  時間がありませんから、以下具体的にお尋ねしましょう。  条約は、募集、採用、すなわち職業を自由に選択する権利、いわば採用、募集、それから昇進、雇用の保障、これは賃金その他全部包括するわけですが、さらに解雇、退職も含むわけです。そういういわば全ステージにわたって禁止をするということを要求しているわけであります。それについて、募集、採用、それから昇進、配転について、この法律では退職とかあるいは定年問題とか、そういうのになぜ区別をされましたか。要するに努力義務と禁止義務をなぜ区別されましたか。
  86. 赤松良子

    ○赤松政府委員 お答えいたします。  この法律案では、すべてのステージにおいて規制をするということについては規定を設けたわけでございますが、その規制の強さにつきましては、先生ただいま御指摘のとおり強弱がつけてあるわけでございます。  募集、採用、配置、昇進というところではいわば弱い規制の仕方、すなわち努力義務とし、教育訓練、福利厚生につきましては一部強行規定とし、解雇、定年、退職という最後のステージにつきましては全面的に強行規定とするという強い規制の仕方を設けたところでございます。  なぜそのように振り分けたか、規制の強弱をつけたかという御質問かと存じますが、それにつきましては、最初の段階が女子の雇用の管理において重要でない、より少なく重要だ、そういうふうな認識からしたわけではございません。最初のステージというのは大変重要なステージであるということは、これまでもお答え申し上げたと存じますが、大変重要だと思っているわけでございます。にもかかわらず規制の仕方が弱いということにつきましては、それなりの理由があるからでございます。  その理由と申しますのは、女子の雇用についていろいろ男子と異なった取り扱いが見られるわけでございますが、その異なった取り扱いをするについては、企業は企業なりの理由があってしているわけでございます。その一番はっきり主張されている理由というのは、これまで男女平等問題専門家会議の中で二年半にわたって討議をされた問題といたしまして、勤続年数の差ということが挙げられているわけでございます。男女平等問題専門家会議は、先生も御承知と存じますが、三者構成、労使・公益と申しますか、学識経験者・労・使で構成されておりましたので、それぞれ大変熱心な討議がございましたが、なかなか意見の違いを埋めることができませんで、その調整には随分時間がかかったわけでございますが、あらましはコンセンサスを得てその結論をいただいたわけでございますが、この勤続年数についてどう評価をするかということについてだけはどうしても最後まで一致した御見解をいただくことができませんでした。つまり、やはり勤続年数の評価ということは日本の雇用管理の上では非常に問題であるということについて、どうしても否定し去ることができなかったわけでございます。そこで、それは雇用が終身雇用を前提としているということから勤続年数の長い者を重要視する、そして勤続年数が長いということを前提にした男性の雇用管理、平均的にはどうしても短いということを前提にした女子の雇用管理ということは、実態とやはりかけ離れたものではないということが言われたわけでございます。  そこで、雇用の全ステージにわたって勤続年数ということが同じように意味を持つかどうかということになりますと、これは必ずしもそうではないと言えると思うわけでございます。具体的に申し上げますと、退職についてもし男女の差別的な取り扱いをしたといたしますと、これは勤続年数を持ち出しても、なおジャスティファイすることのできない差別なのではないかというふうに考えられるわけでございます。しかるに、最初の採用あるいは配置、そういうような段階におきましては、最後のやめるときの、あるいはやめさせるときの場合と違いまして、どの程度の長さを働くことを予定できるか、あるいは期待できるかということは、採用に関しまして、あるいは配置に関しましては非常に大きな意味を持つということでございます。そこで、それぞれのステージの段階が違うことにおきましてその持つ意味の大きさというものが違う、このように考えられましたので、それぞれのステージにおいて、そのことの持つ意味を勘案いたしまして規制の強さを変えだということが、なぜ振り分けたかということのお答えでございます。
  87. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 最近、日本経済はアメリカに次ぐ経済大国である、こういうことでいろいろ問題が起こっておるんですが、サミットに出席をされている国の男女雇用平等法、いろいろ名前は違いますけれども、関係の国は一体どういう段階まで禁止をしておるのか、これをお聞かせ願いたい。言うならば採用、募集、昇進、これについては各国はどういう対応をしておるのか、これをお聞かせ願いたい。
  88. 赤松良子

    ○赤松政府委員 お答えいたします。  サミットに出席している国はアメリカ、イギリス、西ドイツ、フランス、カナダ、イタリア等でございますが、日本を含めているわけでございますが、そのそれぞれの国について男女雇用機会均等法というような、名前はそれぞれ違いますが、規制をする法律を持っているわけでございます。その規制の仕方、具体的に各ステージについてお答え申す必要があれば、説明員にいたさせます。
  89. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 時間がありませんから、私が調べたところだけ申し上げます。  要するに全ステージ、すなわち募集から採用、これは西ドイツが、私の資料によりますと、募集についてはこれは触れておりません。しかし、雇用契約の締結というそういう形になっておりますが、その他は全部あるのです。日本を除いたら、他の国は募集、採用、昇進は全部入っている。なぜ日本だけ区別をしなければならぬ理由があるのですか。これをお聞かせ願いたい。
  90. 赤松良子

    ○赤松政府委員 先生の御指摘のように、西ドイツは募集について努力義務であるというふうに私ども承知しておりますが、他の国におきましては、すべてのステージでおっしゃったとおりの規制をいたしていると存じます。  そこで、なぜ日本だけがという御質問でございますが、先ほど申し上げましたような雇用慣行、つまり終身雇用というような雇用慣行があるのは、すべての国について調べたわけでも必ずしもございませんが、大体多くの国については日本のような雇用慣行ではないというふうに承知をいたしておりまして、したがいまして、勤続年数が非常に大きな意味を持つということは、やはり日本だけの大きな特殊性なのではないかというふうに考える次第でございます。
  91. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私は、この委員会で雇用保険法を審議した場合、さらに十年前の雇用保険法を審議した場合、私は労働省に言いました。権利関係の問題は平均値ではいけないのだ、平均政策ではいけないのだ、個人の権利の侵害であるということを何度童言ったわけです。そうして四十九年の改正のときには、女子の場合、ことに栄養士なんか、これは早くから短大を出て栄養士の仕事をしておる。そして十年も勤めておった。解雇をされた。しかし、三十歳未満は就職が十分できるからというので、十年間も加入しておったその失業保険の保険給付をわずかに六十日で打ち切る。そこで私は、一般に若い人は就職状況がいいというけれども、本人自身は栄養士の資格を持ち、今まで栄養士をやっていた。ところが会社が倒産をして職がなくなって、栄養士の職場を見つけようとしておるが、なかなか困難だ。だから、今まで、すなわち四十九年以前までは約二百七十日あった、その日数を六十日に打ち切るとは何事かという質問をしたのです。ですから、平均政策ではいけない。個人の問題は、やはり権利関係は個人の権利を尊重しなければいかないじゃないかという質問をしたのですが、まさに今度の、今局長の長々とした答弁でもそれがあらわれている。平均像ではだめなんですよ。これは非常に難しいところなんです。権利関係の侵害の政策をやる場合、平均像で議論をしたのじゃだめなんです。個人の差別を是正するためには、平均像で議論をしたらだめだ。これが今度の場合には重大な問題点だ。本人はこの会社に入って、そうして生涯勤めようという意欲を持って入るでしょう。ところがその窓口から、平均勤続が二年から三年であるからというので、募集、採用の窓口でもう遮断されている。  ですから、今四年制の大学生の多くの部分が、だんだん卒業近くになるとがっかりするんですよ。第一、会社に入れないんですから。自分が今まで努力をしてきたそういう能力も発揮する場所がだんだん少なくなっていくわけですからね。問題はこれを問うているわけですよ、今問われておる問題は。ですから私は、その問題は全体像としては平均像というのは公正でも、個人からいうと非常に不公正になる、一体どういうようにお考えですか。
  92. 赤松良子

    ○赤松政府委員 平均的な差で個別の労働者の取り扱いを考えてはいけないという先生の御指摘については、そのことがまさに当てはまるようなことはたくさんあると思うわけでございます。例えば、女性は平均的に男性よりも力が弱いとか、あるいは背が低いとか、いろいろあると思いますが、平均値だけを持ち出して男女違う取り扱いをするということはよくないということが多いわけでございます。そのことは男女平等問題専門家会議の中でも、平均値だけで異なる取り扱いをすることは不合理であるということをいろいろ述べられているわけでございまして、ただその例外として、平均的な勤続年数ということだけは必ずしも排除できないという主張が非常に強かったわけでございまして、ほかの点につきましてはまさに先生のおっしゃるとおりの御議論がなされたわけでございますが、勤続年数が終身雇用に及ぼす影響ということに関しましては、平均的な考え方ということがあながち排除し得ないという議論がなされ、しかもそれに対して、どうしてもそれを克服することができなかったという経緯があるというふうに承知をいたしております。
  93. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 排除することができなかったというのは、局長が排除できなかったという意味ですか。労働大臣、どうですか、あなたが政治力を発揮してやればいいじゃないですか。やはり募集の段階というのは非常に重要な段階ですね。要するに窓口で閉ざすわけですから。これが私は非常に重要な問題だと思うのです。  それで、先般、日本経済新聞にアメリカのワシントン大学の大学院、これは慶応大学に研究生として見えておられるようですけれども、メリー・プリントンさんというのが投稿されていました。これも同じことを指摘しておる、まあ平均像という言葉はありませんでしたけれども。問題は、日本の雇用制度の特質を考えると、性差別を廃棄すべき最も重要な突破口は採用の段階である、こういうように言われておるのです。ですから、この男女雇用平等法を審議するに当たってはまずそのことが重要なのですよ。もう最初からすぐ結婚をして、そして主婦専業。主婦専業というものは私は誇りある職業だと思いますよ。何も主婦専業ということは卑屈な問題ではない、やはり私の生き方はこれですという女性もおってしかるべきです。しかし、私は生涯職業につきたい、そして自分が今まで磨いた、あるいは研さんした仕事をやりたいというその門を閉ざすということは、一番私は平等法の精神から反すると思うのです。ですから、やはり窓口から入れなければいかぬ。いろいろ言われているけれども、現実の今の女性の職場を見てごらんなさい、七十数%は男性しか雇わない、そういう状態でしょう、あなた方の調査でも。非常に少ない、狭い門になっているのですよ。ですから、いわば差別をなくするまず最初は、窓口をあけるということです。これは大臣、どういうふうに思われていますか。平均値政策ではできないのですよ、権利関係は。大臣の御答弁をお願いしたい。
  94. 坂本三十次

    ○坂本国務大臣 あなたのおっしゃるように、一番入り口が大切であるということは私も一般的には同感であります。  しかし、先ほども局長から申し上げましたように、今まで日本はずっと終身雇用制で、男性主導でやってきまして、女だからということよりも、例えば今は第三次産業の方が大きゅうでざいますけれども、今までの日本の主流は第二次産業でやってきたわけでありますから、第二次産業となりますると、やれ電機だ、化学だ、建築だ、電子工学だということになりますると、男と女の差というよりも、そういう勉強をしてきたのが男の方に多かった、その方が強いと私は思います。  そこで、個別的に考えるということは一審大事なことでありますけれども、しかし、一つのそういうパターンでやってきたことも事実でありますから、それを平均値をとりますと、男平均、女平均ということで大きな差があるということもまた事実でございます。ですから、個別的に一人一人のきめの細かい配慮というものは、当然企業にとってもうまくいく方が得なんでありますけれども、しかし、今までの戦後の流れを平均的にとるといいましょうか、男の平均、女の平均というふうにとりますると、残念ながらまだまだ差別があるということもまた実態でございまして、企業の方も、今まで勤続年数が短かった、これからは意欲が出ているから延びるだろうと思っても、最初から入口のところでもって、今までの女性は短かったろうけれども、これからの女性は皆長いと判断し切れるというところまでいってないのではないか、ちゅうちょがあるのではないか、こう思いまして努力義務。しかし、これはおっしゃるとおり一番大切な入口のところでありますから、行政指導の面では重点を置いてやっていきたい、私はそう思っております。
  95. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 諸外国ができてどうして日本ができないか、その意味が私はわからないのです。局長の答弁の中に、勤続年数の短いというその議論について私は排除できなかった、まさに率直に私はそういう政治力がありませんでした、局長がそういう答弁をしたから、大臣に聞いたのです。ですから、大臣は政治力を発揮して、そういうのを抑えて、今あなたの答弁からいうとまさに入口が大事だというのだから、入口から禁止条項にすべきですよ。  この前、アメリカのクォータ制、すなわち女子に割り当てをする、こういうお話しがありました。これはひとつ考えられるべき問題ではないか。これは言うならば逆差別だと言われても、この条約の中にそれを認めておるわけですね。すなわち四条だったと思いますが、四条の中で、そういう男女差別をなくするというような問題について、特別な措置を暫定的にするしとはよろしいということも言っておるわけでありますけれども、今我々はクォータ制、割り当て制ということをすぐ要求しようとは思いません。思いませんけれども、禁止規定の中に入れるべきですよ。同じように扱うべきですよ。一番肝心かなめなところを抜きにして。  後から私は申し上げますが、あなた方が禁止条項と言っているのは、もう裁判で確定しているのですよ。この法律ができて、新しく禁止になるのじゃないのですよ、これは。労働省がサボっている間に、一生懸命女性が努力をして、民事裁判に訴えて、そうして民法の九十条の適用をさしてもらって、そうして獲得した権利ですよ。それをあなた方は書いておるだけでしょう。それが禁止条項になっておるだけですよ。何も新しいことをこの法律で盛ったわけじゃない。でありますから、なぜ募集、採用それから昇進、配転というのを入れなかったか。これは大きな問題でありますから、もう一回、大臣から御答弁を願いたい。
  96. 坂本三十次

    ○坂本国務大臣 私の聞くところによりますると、野党の皆さんはすべてそうおっしゃいます。それからまた、与党の中でも、少数でありまするがそう言う人もありました。確かに傾聴すべき点はあろうと思っております。しかし、私どもといたしましては、長い間ずっと審議会で積み重ねて、知恵を絞ってこられたのでありまするが、しかし、全部意見が一緒になるということはまだまだ当分難しい。ということになれば、それはやはり多少不満は残っても、これが国民的コンセンサスだというようなレベルからまずスタートさせて、それで、そのうちに逐次改善をやっていく方が現実的であり、ベターだ、私はそう思ったから、そういうふうにいたしました。
  97. 有馬元治

    ○有馬委員長 午後一時四十五分から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後一時一分休憩      ――――◇―――――     午後一時五十四分開議
  98. 有馬元治

    ○有馬委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。多賀谷眞稔君。
  99. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 募集、採用については各国とも皆募集の段階から禁止規定にしておるのですが、私は日本だけ特別の理由を見出し得ないのです。そして、勤続年数の短いということはむしろ今後この法律によって長くなると思いますけれども、問題は、平均値政策では権利関係は律することができない、むしろ平均像、平均値では公正であると思われても個人からいうと非常に不公正である、私はこういうことを申し上げたわけであります。  時間の関係で次に行きますが、配置、昇進については、公益委員の方は禁止規定にいわば答申がされておるのですが、この点もなぜ欠落をして努力義務になったのか、これをお聞かせ願いたい。
  100. 赤松良子

    ○赤松政府委員 御指摘のように、審議会の討論の中では、公益委員の御見解は中間的にたたき台として発表されましたが、その中で、企業の中に入ってからと入るまでとは違うのではないかという御見解のもとに、入ってからはすべて強行規定とするのが妥当だろう、こういう御見解をちょうだいいたしました。しかしながら、先ほど御説明申し上げておりました終身雇用制のもとにおける平均勤続年数の重さというものは、採用、募集のときに限らず、まず配置をするとき、あるいはその中で昇進をさせたりあるいはさせなかったりという判断をするときにも極めて重要なファクターになるということでございますので、私どもといたしまして、公益委員の御見解にもかかわらず、それをもまた努力義務とした次第でございます。
  101. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私は、一度企業の中に入ってきた場合に、その昇進と配置について差別をするというのが全然解せないのですね。日本の経営者というのはそんなに管理能力のない人じゃないでしょう。要するに平等の機会を与えるということが最大の法律の目的でしょう。ですから、機会を与えるということが重要なのに、配置とかそういうものについて機会を与えないままにいわば補助的な仕事をやらす、これは重要な問題じゃないですか。この女性が将来勤めるという意欲を持っておるかどうかというのは判断がつくでしょう。そういうものまで女性であるという理由で排除していくという、これはやはり局長、あなたは頑張り方が足りなかったですよ。さっきはもう頑張れなかったという意味をおっしゃったけれども、これは公益委員からたたき台としても出ておるのですから。これは先進諸国では例を見ない。やはりドイツだって契約から昇進とか配置というのは全部同じように扱っているのですよ。これは一体どういうことですか。
  102. 赤松良子

    ○赤松政府委員 先ほど私が頑張り切れなかったという言い方をしたという先生のお言葉が今ございましたが、ということでは必ずしもございませんで、男女平等問題専門家会議は、勤続年数ということは、一般的に日本の雇用管理の中では、どこのステージということでなく、非常にウエートを持った大きなファクターになり得るということを議論されたわけでございまして、ステージ別の御議論であったわけではございません。  また、私自身が頑張れなかったということでもございませんで、実は私はその専門家会議のときはまだアメリカにおりまして、その御議論があったことを帰ってまいりましてから報告書の中で読み、そしてまたそれに携わった人たちから、どういう議論があったか、なぜここのところが一方にまとめ切れなかったかということを後で聞いたわけでございまして、その勤続年数が大変影響のあることもやむを得ないということについての御議論は、専門家会議の結論として克服できなかったということを申し上げたつもりでございます。  それから、公益試案の中でそういう意見が出ていたのに、それが揺れなかったという点についてでございますが、それは公益試案、たたき台と呼んでおりますが、その中の前文といいますか主な場所に書かれている表現をかりれば、目指すべき方向と現実との間に立って、どちらかと一言えば現実の上に余りに引っ張られるよりは、目指すべき方向をとにかく公益委員としては打ち出すというところに主眼を置いたといいますか、そこに重点を置いた御見解であった、いわば政府の案の方はもう少し現実の上に足を置くという方に重点を置いた、このような違いから出てきているというふうに御理解をいただきたいと存じます。
  103. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 極めて丁寧に説明願っておるようですけれども、全く肝心なところがはっきりしないですね。法律をつくるときの話をしているのです。公益委員の答申といいますか報告といいますか、そのときにはアメリカにおられたかもしれません。法律をつくるときは恐らく局長であったのではないかと思うので、私はお尋ねをしたのですけれども。  そこで、私は、そういう点がどうも欠けておる、非常に残念である。窓口で機会を失わし、さらに配置で機会を失わし、それで平等ができるわけないでしょう。ですから賃金格差はますますついていく。日本だけですよ、賃金格差がついたというのは。  こういう中で、ごく二、三日前に、私のところに「商社の女性は今」というパンフレットが来ました。これを読みまして、やはり現実はそうかなという感じもいたしましたけれども、最近やはり意識が変わりつつある。それは、定年までおりたいという人がかなり出てきたということを述べております。これはその中で、結婚までとかあるいは子供ができるまでというのもありますが、それ以上に定年までおりたいという人は、数値からいいますとパーセンテージも非常に高いわけです。そうして、男性の仕事をあなたでもやれますかと言ったら、不可能な仕事はないと思うという答弁が非常に多く出ておる。それから、私は二十年も勤めていて、社内規則も何も私が一番よく承知をしている、それなのに私は非常に賃金が低い、こういうことも実例を挙げて出ておるわけであります。それから、私どももこれは男性としては考えなければならぬと自分で感じたわけでありますが、いつ、どんなときに男女の差別を感じますかと言ったら、まず給料をもらったとき、それから課内の会議に出席ができない、重要な会議にほとんどできない、自分だけ取り残されておる、そうして一方的に決められておる。それから電話がかかったとき、だれかいないか、そうして相手方から男の人にかわってもらいたい、これも頭にくるというのですね。それから、年下の男性からコピーと命ぜられたこと、それか石、我々も心しなければならぬが、電話で「うちの女の子が」とこう言われた。それから、女性よりも業務知識のない男性でもどんどん給料やボーナスが上がる、こういうことが書いてあるわけですね。そうして若い人、ここでは二十八歳が平均年齢と言っていますから、平均年齢以下の人は私用や雑用に使われるときに怒りを覚える、それから二十八歳以上の人は業務の補助的な役割の域を出ないときにジレンマを感じる、こういうことも言っておるわけですね。  私は、これは女性だけの問題ではなく、我々男性も考えなければならない問題だと思いますけれども、こういう点が提起をされて、そうして、さっき言いましたように二十年も勤めて、どんなことでも社内のことはすぐ返答ができるのに、君は課長代理のつもりでやってくれという、つもりというだけで、課長代理にもしないし課長にもしない。これは有能な社員だと思いますが、それで年収は四百万円も違う。これは商社の方々ですね。そういうことが日常にあるわけです。どういうようにお考えですか。大臣から御答弁を願いたい。
  104. 坂本三十次

    ○坂本国務大臣 先ほども申しましたように、日本の過去の企業の年功序列・終身雇用、それが男性中心というずっとそういう伝統の結果、女性の側にそういう不利益な差別が出てきた。それも能力において落ちるとかなんとかいうのなら当たり前でありますが、同じような能力があって、同じようなたまたま女性には珍しいような勤続年数であっても落ちるというのが、これは過去のそういう差別があったということは現実でございましょう。  ですから、差別撤廃の条約を批准する契機に、私どもは何とかしてその差別を撤廃をしていこうということで、しかし現実でありますから、女性保護規定の緩和とか撤廃ということともにらみ合わして、企業におきましてもやはり差別撤廃をしてもらわなければならぬというようなことで現実的に私どもは考えてきた、こういうことでございます。
  105. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 住友商事がアメリカの会社で起こした事件、これはアメリカにおられたのなら局長も御存じでしょうが、アメリカの住友商事が連邦最高裁において、性別による差別をしておる、企業側は敗訴になった、こういう事件を御存じですか。
  106. 赤松良子

    ○赤松政府委員 最高裁の判例は承知いたしておりますが、この最高裁での争点は、専ら日米通商航海条約が適用になるかどうかという点については判断が下されましたが、性別による差別に当たるかどうかという判断は原審に差し戻されたというふうに承知しております。
  107. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 それは日本でも原審に差し戻しますね、最高裁は。それで、アメリカの住友商事は、アメリカ合衆国の適用を受けるアメリカ企業であり、公民権を遵守しなければならないということで、差し戻しになったのですよ。ですから差別としては要するに原告側である女性がいわば勝訴した、こういう事件でしょう。でありますから、差別問題でこれはいわばアメリカ女性が勝訴した事件でしょう。国外において日本の男女差別の問題が問われるということは私はゆゆしき問題だと思いますよ、大臣。ですから、日本の慣行とか状態がこうだというのは、今日本の貿易は御存じのように海外にどんどん出ておるのですよ、ですからみずから本国でそういうことを正しておかなければ、そういう外国において同じ慣行を強いようとすると間々こういうことが起こるわけです。まさにこれは国際的な恥辱問題になりかねない。  ですから、私が今申しましたように、サミットの加盟国はドイツの募集条項を除きましては皆全ステージにおいて禁止しているわけです。ですからやはり今度のこの法律は全ステージにおいて即座に禁止条項とすべきである、そうしてそういう中に一つずつ指針を設け、判断基準を設けて、そしてまず啓蒙から行うべきである、私はこういうように思うのですが、いかがですか。
  108. 赤松良子

    ○赤松政府委員 住友商事の事件は、日本人であることと男性であることと二つの要件があったように存じます。日本人であることということはあるいは合理性のある理由かもしれませんが、男性であることという方が原審で承認をされるということはほぼ考えられないのではないかというふうに思いますが、いずれにいたしましてもアメリカの裁判のことでございますので、どうなるということは断定はいたしかねるわけでございますが、私の印象としては、幹部になる職員が日本人であるということはともかくとして、男性であるという方は、公民権法の七項からいいまして恐らく認められないのではなかろうかという印象を持っております。  そこで、国際的に進出しております多国籍企業あるいは日本からの進出企業が、その所在地の国の法律に違反をして問題にされるということは、あくまで避けられれば避けたい問題であると思いますので、そういう知識がないということは大変困るわけでございます。そういう観点から、昨年の秋にはアメリカから講師をお招きをして、そういうことが余り起こらないように、アメリカではどういう法律がどのように行われているかというようなことを日本の企業の方に知っていただくというような企画もあったわけでございます。これは日本労働協会でございます。そういうことが起こらないように、ましてやはり、根本的には、日本の企業の中でいろいろな男女の違う取り扱いがまかり通っていて、それがアメリカあるいはその他の国ではもはや今日では通用しなくなっているということを知っていただくということは大切なことであろうというふうに思います。
  109. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 時間がございませんから。僕は率直に言いますと、募集、採用、配置、昇進というのはまさに努力義務でございますので、そうするとこの法律は一体何を新しく禁止をしたのか、これが聞きたいのです。というのは、禁止をした条項の中には教育の一部、それから福利厚生、福利厚生というのは、率直に言いますと、同一労働、同一賃金の日本の基準法四条にも該当するのじゃないか。これでできる。それから定年、退職、解雇というのは、先ほど申しましたように裁判所が決定しています。何も新しいものでも何でもないでしょう。この法律によって新しい権利義務を生んだというのは全然ないでしょう。しかも是正命令というのがあるわけですけれども、その是正命令も、それを聞かなかった場合はどうするかということもない。確かに雇用機会均等法ですかそういう名前にしてあるけれども、現行法からほとんど出ていない。あとは行政指導だけでしょう。法律体系として、いかに漸進的とは言いながら余りにも法規制がない、こういうように思うのですが、十一条の定年、退職、解雇にしても、これは聞かなかった場合に何とも仕方がないのでしょう、この法律では。こういう自明の理が通らなかった場合には方法がないのでしょう。今までどおり裁判に持っていかなければならないのでしょう。どうですか。
  110. 赤松良子

    ○赤松政府委員 現行の法律と何ら異なることがないという……(多賀谷委員「法律じゃないですよ、条文そのものじゃないですよ」と呼ぶ)現行の規制法でございましょうか、変わりがないということでございますが、私どもとしては大変変わるのではないかというふうに思っております。  一つは、努力義務は効果がないというふうにこれまでも何度か指摘されましたけれども、努力義務というものは、単に努力をするというようにこの法律の条文では簡単に書かれておりますが、その努力して目指すべき内容は、十二条に書かれておりますように「指針」をつくって努力目標は明らかにするということになっておるわけでございまして、これまではいろいろな差別が、先ほどまかり通っているというふうな表現をいたしましたけれども、結局は、それほど疑いの目を持って企業の側では見ていなかったということでございます。それはなくすべきことであるということを明らかにしたという点では、大きな進歩ではないかと思うわけでございます。  また、最後の定年、退職及び解雇については、既に裁判で確定していることだということ、これは何年かの長い一審、二審とございまして、最高裁まで行った判決もございますので、裁判で判例の積み上げがあるということはおっしゃるとおりでございますけれども、裁判はあくまで個別のケースの救済にすぎないわけでございまして、法律の中で「取扱いをしてはならない。」あるいは「定めをしてはならない。」というように決められたということは、一々個別のケースとして争う必要がないわけでございまして、これによって婦人少年室長は立派に行政指導をこれを根拠にすることができるわけでございますので、裁判に判例と、して確立しているから何の変化もないというふうには言えないのではないかと思います。
  111. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 判例によって確立しているからむだだとは私は言いませんけれども、是正命令を出しても制裁措置がないのでしょう。結局、個別に起こった事件というのは裁判に行かなければならぬです。同じことじゃないですか。是正命令に対してそれを聞かなかった場合には、あなたの方で何か裁判措置があるというならともかくとして、それがないというのですから、結局裁判所で最後は争う以外にないでしょう、経営者が復職なんかさせないと頑張れば。結局それしか方法はないでしょう、こう言っているのです。  それから、丁寧に答弁をしていただいておるので恐縮ですけれども、時間もありませんから簡単にお願いしたいのですが、この物の考え方が僕とは非常に違うと思うのは、調停という物の考え方です。というのは、労使の紛争のような物の考え方を法律は一貫してとっていると思うのです。それは私は間違っていると思うのですよ。権利関係の問題は賃金の交渉じゃないのですから。権利関係の問題は労使の紛争だとかいう問題じゃないのです。これは客観的に判断すべき問題ですよ。それを、両当事者の意見を聞くことはいいのですけれども、両方からの申し立てがなければ調停できないというのは、調停というものはもともとそういう性格のものではないのですから、私は、この問題の処理には調停委員会というのはおかしい、こう言っているのです。これらの問題は調停にはふさわしくないのです。権利関係の違反であるとか禁止であるとかという条項に、調停なんという問題が本来出てくるはずがないのです。ですから、我々の共同案も、婦人少年室長が是正命令を出して、違反した場合にはそれは制裁措置をする、それからまた不服のものは不服審査会にかける、しかし、それは労使・公益三者で構成をするけれども、その不服審査の判断は公益委員の合議体にする、こういう物の考え方をしておるのですよ。ところが、この法律は一賛して労使の紛争だという考え方をしているでしょう。それは私は有効な救済措置にはならない、こういうように思うのですが、いかがですか。
  112. 赤松良子

    ○赤松政府委員 お答えいたします。  労使の間の紛争として物事が起こるということは十分予定されるといいますか、起こるだろうと思うわけでございます。また諸外国におきましても、そういう場合に調停という方法で解決に当たるという前例はたくさんあるわけでございまして、そのこと自体がそれほど間違っているというふうには思えないわけでございます。また、三十三条の「報告の徴収並びに助言、指導及び勧告」という規定がございますが、この規定は、そういう個別の紛争に関してのみならず発動できる規定だというふうに御理解いただきたいと思うわけでございまして、野党共同提案の内容につきましては、せんだって先生から御説明がありまして以来研究させていただいておりますが、個別の紛争につきまして室長がといいますか、行政機関が直接に差しとめ命令を出すということは、その事の性格から言って余り適当ではないのではないかというふうに私どもには思えましたので、政府案のようなふうにいたした次第でございます。
  113. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 考え方の違いですからこれ以上申し上げませんが、労使紛争といいましても、不当労働行為というのは御存じでしょう。これは地労委でも公益委員が判断するのです。不当労働行為であるかどうかというのは賃金の紛争とは違うのですから。これは男女の差別問題というのはそれと類似しているのですよ。でありますから、私は、調停といっても、それは労使両方が申し出なければならないというような機構では本来は救済措置にならぬじゃないか、こういうことを言っている。  そこで、一体これだけの膨大な内容のものを、実効ある措置としては、婦人局はどのくらいの人員でやられるのですか。私はそういう点は不思議なんですよ。啓発からやって是正命令までいくのにどのぐらいのなにでやられるのか。陣容はどのぐらいなんですか。
  114. 赤松良子

    ○赤松政府委員 婦人少年室の陣容についてのお尋ねだと存じますが、これは、現在は各県単位に婦人少年室がございまして、その人数は大変十分とは申せないと存じますが、平均四人程度のものでございます。それが当たるということになりまして、御指摘のとおり大変、まあ十分でないという点は、私どもも今後の大きな課題として、婦人少年室の充実強化ということには大いに最大限努力をいたしたいと思っております。
  115. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 具体的に予算要求はどうするのですか。これはもう後からでいいですから御答弁願いたい。  そこで、私はもう一つ、第二の点、すなわち本条約では、子供の養育は男女間及び社会全体の責任の分担が必要である、そして、要するに職業生活と家庭生活の調和だということを言う。これが果たしてできるだろうかと思うのですよ。一体男子には家庭責任の一端を負わすような法律体系になっているのですか。それを聞きたいですね。これは大臣ですよ。
  116. 坂本三十次

    ○坂本国務大臣 男子に子供を育てる責任を法律で負わしておるかということでございますが、そういうものはないと思いますね。しかし、女子にだけ負わすという法律もないと思いますね。これはその民族の長い間の慣行とでも言うべきものでございまして、しかし、まあまあこれからはひとつ家庭の中でも協力して、また社会もやはりそういう関心を持って援助するようにという気持ちを盛り立てていくために今度の法律もできた、こういうことであります。まあしかし、あなたにおっしゃられれば、男は子供を育てなければならぬ責任があるという法律もないと思いますが、そこまで意識がいくのは大変だろうと、それは私も思います。
  117. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そこで、労働省の管轄ですけれども、女子の労働時間の延長あるいは深夜業の緩和だけやっても、男子の側をやらなければだめなんです。男子の側の時間的余裕を与えなければだめなんですよ、法律は。そこが問題なんです。  そこで、一体、一九一九年の労働時間一日八時間かつ一週四十八時間の制限の条約、これがなぜ批准できないのですか。一体労基法はどこが違反しているのですか。一号条約がいまだに批准できないというのはどういうことですか。これをお聞かせ願いたい。
  118. 遠藤哲也

    遠藤説明員 お答え申し上げます。  第一号条約を批准できない理由といたしましては、第一号条約は、労働時間は原則として一日八時間、週四十八時間を超えてはならないとし、この原則の例外は極めて限定された場合に限られております。ところが、我が国の労働基準法におきましては、一口八時間、週四十八時間を原則としながらも、事業場労働者の過半数で組織される労働組合との書面による協定を条件として、労働時間の延長を認めている。こういうようなことがございまして、この条約と国内法との差があるために批准できない状況にございます。
  119. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 第一号条約の採択の過程を見てごらんなさい。インドと日本が大変不名誉な特殊国扱いになっているんですよ。こんな不名誉なことはないんですよ。当時の言葉で言えば英領インド、それと日本とを特殊国として扱う、こういう条文なんです。日本としては大変不名誉な条文なんです。そういうような状態の中にもかかわらず、依然としてこの一号条約を批准しようとする努力がない。要するに日本は三十六条協定を結べば無制限にできるんですよ。そういうところに問題があるんです。そうして、この三十二条のさらに変則的な労働時間の規定を設けておる。日本は二重になっているんです。ですから、今総理大臣がよくサミットに行ってそうして日本経済を誇る、こういう気持ちになるというのがおかしいだろうと僕は思う。もうどこの国も労働時間は四十時間です。今度西ドイツは三十八・五時間ですよ。今度フランスは八二年には三十九時間でしょう。こういう中で日本は無制限にできるような規定になっているんです。そういうような男性の労働時間をそのままにしておいて、働きバチだ、こう言っておだてて、家庭を見ろと言ったって、見られないでしょう。そういう中で、女性だけが深夜業も時間外作業も男子に近づけようとするこの考え方が根本に間違っておると思うのですね。ですから差別撤廃条約の本質をゆがめておるのです。外務省は形式的な話だけをしたけれども、第一号条約の趣旨に沿わないような状態にして、そうしてそれを女子が男子に近づけばいいんだという解釈、これは外務省としてはあるまじき解釈だと思う。どうですか。
  120. 斉藤邦彦

    ○斉藤説明員 婦人差別撤廃条約の趣旨につきましてはたびたびお答えしたとおりでございますけれども、この条約の趣旨は、男子と女子との間の差別を撤廃するということを目的としております。私どもの了解するところでは、現在政府が提案しております雇用均等法は、この条約を批准するための国内法制を整えることを主たる目的としていると我々考えている次第でございます。したがいまして、労働政策上の問題は別といたしまして、この条約を批准するための要件といたしましては、従来国内で数年間にわたって審議をしてきたところと承知しておりますけれども、不要と考えられる女子保護の規定は見直すべきだという考え方に立っている次第でございます。  他方、ILO条約第一号になぜ入らないかということでございますけれども、これは理由は先ほど遠藤議官の方から御説明したとおりでございますが、これに入るか入らないかということは、これまた我が国の労働政策ないしそれの基礎となっております国内法制、これと合致するかどうかという観点から考えまして、現在のところまだ入る状態になっていないという事情にあるわけでございます。
  121. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 既に四十時間を割っておるような国でも、今度の条約批准に当たっては次のような宣言をしておる国もある。フランスは「フランス共和国政府は、本条約の如何なる規定も男子に比し女子を優遇しているフランス法令の諸規定に優先するものと解されるべきではない旨宣言する。」要するに現行の男子よりも女子を優遇しておるという条約、これはそのままにしても、この条約は批准できるんだという考え方ですね。誇り高いフランスがこういうことを言っているんですよ。ましてや先進国で一番労働時間の長い、しかも第一号条約も批准できないような国、無制限な時間外労働ができる仕組みになっている国で、それを女子を男子に近づけるなんという考え方は、本来主客転倒しておるんじゃないですか。オーストリアもそうですね。オーストリアも「第十一条について女子の夜業及び女子労働者に対する特別保護に関し、国内法令の範囲内で同規定を適用する権利を留保する。」こういうように言っている。  ですから、現在労働時間の見直しがされておるときに、男子の労働時間の見直し、この状態を見て女子の深夜業あるいは時間外規制の問題は検討するという態度を日本の政府が宣明をしても、これは一つもおかしくないのです。そうでしょう。大臣、どうですか。私は例を挙げたのです。こういう状態ですよ。先進国で一番労働時間の長い国、それが今の女子のささやかな保護規定をなくしようという考え方が間違っておるんじゃないですか。
  122. 望月三郎

    ○望月(三)政府委員 今回の雇用均等法を提案するに当たりまして、もちろんその前提として、先生おっしゃるように男子の労働時間の短縮を強力に推進しなければならぬという点において、私どもも全く同感でございまして、今労働時間短縮の問題を、週休二日制の推進とかあるいは過長労働時間の改善あるいは年次有給休暇の消化という点を柱にしまして、一生懸命やっているところでございます。したがいまして、男子の悪いところに合わせるということではなくて、男子の方も含めて労働時間の短縮を進めますので、それとある程度歩み寄るという形において制度的に緩和したということでございまして、男子の長いのに合わせるという気持ちはさらさら持っておらないわけでございます。その点を御理解願いたいと思います。
  123. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 望月さんは基準局長でしょう。これは基準法の改正ですよ、私が今質問しておるのは。あなたの所管の範囲で質問しておるのです。ですから、私は、男子の労働時間の短縮とかあるいは深夜業の規制を厳しくする、こういう態度をとって初めて男女を平等にするという話ができるのです。それが逆じゃないですか。ですから、私が最初に申し上げましたように、この法律は本当に男女平等になるのか、むしろ女性差別を助長するのかという判断に迷うと言ったのはそれなんです。  私は、参考人を呼んで、本委員会においてもまた地方においてもいろいろ聞きました。そのときに、本委員会においては中島さん、それから福岡においては永延さんから言われた。現実に子供を養育しているのはまだ母親だ、ところがその女子が時間外や深夜業が規制が緩和される、結局現労働時間の中で自分たちは職を求めておる、ですから退職をしてパートにならざるを得ないのだ、こう言っておる。そうすると、せっかくの法律が、逆に女性の差別を助長して、不安定雇用に追いやるという危険性があるのですよ。局長が生涯をかけて努力をされたその法律が、実際は水泡に帰すどころか逆の作用をする、そういう危険性すら私どもは感ずるわけですね。  大臣 すべからく基準法の改正は後にして、そうして分離をして審議したらどうですか。これは重大なところですよ。といいますのは、施行はいつですか、六十一年の四月でしょう。そうすると、あなたの方は「指針」をつくり、まず啓発、啓蒙からやるわけでしょう。ゆっくりおやりになる。ところが基準法の方は翌日から実施されるのです。翌日というのは六十一年度の四月。翌日から経営者は実施しますよ。そうすると、基準法の方がどんどん実施されて、均等法の方はゆっくり構えている、この危険性があるのじゃありませんか。大臣、これは非常に重要なところなんですよ。どういうお考えですか。
  124. 坂本三十次

    ○坂本国務大臣 それは、均等法を実施する時期と基準法が改正されて新しい基準法でスタートする時期とは一緒にしなければ話になりませんね。一緒にしますよ。それは私は間違いなく車の両輪と思う。一緒にいたしたいと思う。  それから、先ほど男に近づけるのはおかしいとおっしゃいましたが、今の日本の実情では、女性の方が男に負けないでやるという原則といいましょうか建前といいましょうか、そういう姿勢は私は大事じゃないかと思っております。しかし、基準法が緩和されても、現実の作業時間がふえるということは私にはちょっと考えられないのです。現実の雇用の中において、基準法を変えたから直ちに作業時間、労働条件が変わっていくということは考えられない。それは法律は多少変わるでありましょうけれども、現実に時間外労働なんというのは労使協定もございますから、そう簡単に変わっていくものだとは思いません。逆に、男女の話を別にしておいて、男も女も企業の中では苦楽をともにするわけでありますから、今までもよく働いてきたには違いないですけれども、男も女も込みで労働条件を改善していこう、特に時間を短縮していこうという努力は、これは差を縮めるという話とまた別の次元で、私どもはまさるとも劣らぬ大きな仕事だと思って、それはそれで努力をしたい、こう思っております。
  125. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 大臣、現実の姿を我々が想像すると、基準法の方は経営者が申し込めばすぐなんですよ。時間外もできますし、深夜業もできるのです。均等法はゆっくり構えられておるわけでしょう。ですから、非常な努力をされてつくられたけれども、均等法は動かない、基準法の我々から言えば改悪部分だけが動いていく。これはそういう現実になりますよ。子供は一体だれが見るのか。大臣のような話をすれば、今男の労働時間は長い、働きバチであるという中で、女性の方も、じゃ私も働きますと言ったら、だれが子供を見るのですか。これは社会全部で見てくれるのですか。そういう仕組みになってないでしょう。二人が子供をほうり出せば別ですよ。同じようにやりますよ。そういう中で、今働かれておる女性は非常に苦労されておるのですよ。それよりもなお、おまえら苦労せよ、こういうことでしょう。私はそういう現実の姿を見て、この法律の条項がいつごろまでに動いていくかということを考えれば、残念ながら基準法はどんどん動く、均等法はゆっくり構える、そしてまた「指針」ができない、こういうことの中で結局やめざるを得ない女性が出てくるのですよ。差別を助長することになるのじゃないですか。  局長、これは重要な問題ですよ。あなた方が一生懸命努力をされた、それが現実には水泡に帰す、こういう状態になろうとしておる。大体、基準局長がしっかりしないからいかぬ。労働基準局がどんどん時間短縮で立法をすれば、こういう問題は起こらない。日本があの敗戦の直後に立ち上がったときに、戦前は別としても、労働時間を八時間とか四十八時間にすればとても再建はできないだろうというので、二十二年に基準法ができたのですよ。それから日本経済が今日まで伸びておるのに、これを扱おうとしないところに問題があるのでしょう。大臣、どういうふうにお考えですか。時間がありませんから、最後に御答弁願いたい。基準局長はもういい。
  126. 望月三郎

    ○望月(三)政府委員 総実労働時間についてちょっと昭和四十年の数字を見てみますと、男は二千三百七十四時間、女は二千百七十七時間でございます。それから十五年たった昭和五十五年、男は二千百七十四時間になっております。これは四十年のときの女性の労働時間よりは短いわけでございます。したがいまして、私どもは非常に長いこと努力をしてまいりまして、戦後の日本のもともと長い労働時間がどんどん締まっておるわけでございますので、こういった過去の経験に徴して、労働時間については男も女も込みで今後とも短縮の努力をしていきたい、私どもはこう思っておるわけでございまして、これは私どもの意思と申しますか善意をひとつ信じていただきたい、こう思うわけでございます。
  127. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 いろいろ弁解がありましたけれども、数字が示しているのですよ。日本のような労働基準法と労働時間は、外国に行ってその話をするのはもう恥ずかしいですよ。大臣、非常に危険性のある均等法になってきた。基準法を外して別としなければ、私は非常に問題だと思う。これを女性は皆心配をしておるということだけを十分腹に置いてもらいたい。  以上です。
  128. 有馬元治

    ○有馬委員長 草川昭三君。     〔委員長退席、愛知委員。長代理着席〕
  129. 草川昭三

    草川委員 公明党・国民会議の草川昭三でございます。  私どもの先輩の各委員が既に一通りいろいろと質問をいたしておりますので、私はきょうは少し観点を変えまして、具体的な問題を中心にお聞きをしたい、こう思います。  まず、大臣にちょっと感想を頭でお伺いをしたいわけでございますが、今回の法案の提出から審議の内容を見ておりますと、労働省という役所の中では非常に珍しく、地方へ出かけていき参考人の方々の意見を聞く機会を持つとか、あるいはまた各種それぞれの団体の方々からのいろいろな要請等もあるわけでございまして、従来の労働省提出の法律とは違った意味で、それなりの構えがあると思うわけです。既に地方における参考人等の要望あるいは各委員の質疑の大体集約できるのは、一つは実効性が非常に欠けておる法律ではないだろうか、期待に反するのではないかというようなスタンスの意見が多いわけでございます。各地方で参考人等のさまざまな御意向があったわけでございますが、大臣としては従来どおりの見解でこれを通していくという姿勢に変わりはないかどうか、まず基本的な考え方をお伺いしたいと思います。
  130. 坂本三十次

    ○坂本国務大臣 何度も申し上げておりまするが、この法案を作成するに至りました過程におきましては長い年月がかかっておりまして、それぞれの立場で、非常に見識の高い経験の豊富な方々が、公労使三者の立場で十分練り上げてきたものでございます。しかし、御承知のとおり、個別の問題につきましては意見の対立が残ったままであることはもう申すまでもございません。ただ、現在ある差別を何とでもして、来年の批准に間に合わすように法律をひとつつくってもらいたいという意見だけは、これはもう公労使三者いずれも熱望しておられることでありまして、私はやはりこういう法案というものは、それは外圧によってできるのはけしからぬと言う人もあります。しかし、外圧だっていいことはいいのであります。それからまた、日本の経済社会の成熟度もここまで来ておるわけでありますから、私は内外の潮どきに来たと判断をいたしまして、そして具体的な道は、富士山に登りたいということはみんな願望しておる、吉田口からか御殿場口からかという差があるだけでありまして、それならばということで、この辺が一番、ふもとで低いけれども、しかしこのふもとから登るベースキャンプとすれば、これが国民的コンセンサスのひな形であるかなというところを私どもの責任で判断をして決定をいたしまして、とにかくスタートをいたしましょう。その間、これは一朝一夕にできるものではもちろんないのでありまするから、あとはひとつスロー・バット・ステディーでいったらいかがでございましょうかという私どもの心からのお願いでございます。
  131. 草川昭三

    草川委員 さる新聞には、今度の法案については労働省としては難易度は超Aクラスだという新聞報道もあるわけでございますが、特に婦人局等におきましてもこれは積年の問題でもあるわけでございます。私は、今大臣が御答弁なされましたように非常にもつれておることは事実だと思うのです。ところが、たまたま今外圧というようなお話がございましたけれども、外圧という言葉は適当ではないと思うのですけれども、国際的なレベルと日本の国内の現状との飛離が余りにもひど過ぎる、だから、それを根本的に解決しないままこの法律が上程をされているところに私どもも本来ならばもっと素直な形で条約の批准を進めていき、国内法の改正もしてもらいたいという素直な気持ちがあるわけです。しかし、今日まで関係者は一体どのようにその乖離のひどさを解消するための努力をしたかという不満が私はあるわけです。ここを根本的に解決をしない限りは、下手をすれば、きょう採決になるわけでございますし、参議院にこれが送られていくわけでございますけれども、今大臣がおっしゃったような本当の意味での国民のコンセンサスというものが確立されるかされないのか、されないままこれが通った後の現場での混乱を実は私はおそれるわけであります。  特に私は、個人的に申し上げて恐縮でございますが、長い間造船所の労働組合の現場の委員長をやっておりました。委員長をやっておりましたから、現場でいろいろと、現在の基準法のもとにおけるさまざまな具体的な条件について、女子組合員の方々からも、例えば産前産後の休暇の問題あるいは子供さんの育児休暇の問題、時短の問題、いろいろな問題について本当に苦労をしてきた経験がございます。もちろん経営者側の考え方、あるいはまた基準局の考え方、そうではなくて現場での女子組合員の方々の悩み、考え方、今の法律の中でも問題があったわけでございますが、私はこれがもしこのまま法律が通ったとすると、その後の混乱をおそれるという立場から、きょうの議論展開をしてみたいと思うわけであります。  そこで、まず外務省にお伺いをいたしますけれども、そもそもこの問題が発生いたしましたのは、婦人差別撤廃条約というのは昭和四十二年でございますか、国連総会における婦人に対する差別撤廃宣言に端を発し、五十年の六月のメキシコ国連国際婦人作世界会議、あとその後、国連総会での採択ということで続くわけでございますが、その流れの中でどういう経過で国際的な問題が議論をなされたか、少し問題点を整理して、まず御報告願いたいと思います。
  132. 遠藤哲也

    遠藤説明員 御説明申し上げます。  戦後国際連合ができまして、いわゆる国際連合憲章、それに続きまして一九四八年の世界人権宣言、そういったようなものの中には人間の尊厳の尊重云々ということが入っておりますし、その中に男女の平等、両世の尊厳ということが入っておる、こういうふうな国際的な流れが次第に結実してまいりまして、具体的には例えば国際人権規約ができました。来年お願いします婦人差別撤廃条約につきましては、こういったような人間の尊厳と男女、性別に関係なしに両性の尊厳というような思想を背景にしまして、先生今御指摘のとおり、一九六七年に婦人差別撤廃宣言が採択されたわけでございますけれども、しかしながら、その後も婦人に対する兼別というのがなかなか解消しない、こういうようなことが背景になりまして、法的拘束力のある条約をつくる必要があるのではないか、こういうような必要性が認識されてきたわけでございます。  こういったようなことを背景にしまして、一九七四年でございますが、国連のECOSOC、経済社会理事会の下部機構でございます婦人の地位に関する委員会が、条約をつくろうじゃないかという決議を行ったわけでございます。この決議に基づきまして、ちょうど今から十年前、一九七四年でございますけれども、七四年から七六年にかけて、婦人の地位委員会で条約の起草作業がずっと進んできまして、その結果七九年の十二月十八日に、国連総会で、賛成百三十カ国という圧倒的な多数で、この条約が採択されたわけでございます。  経緯的には以上でございます。
  133. 草川昭三

    草川委員 さまざまな経過の中で、法的に拘束力のある条約をつくらなければいけないというのが今御報告がございましたが、全くそのとおりだと思うんです。非常に現状というのは対応におくれている。本当の差別というのが撤廃をされないというところに問題があるわけでございますが、この条約の議論の中でも非常に重要な問題提起があるわけでございます。  例えば条約の第二条の(f)項に、「婦人に対する差別となる」云々というのがございまして、「慣習及び慣行を修正し又は廃止するためのすべての適当な措置(立法を含む。)」というような文言もあるわけでございますし、第五条の同項の中には「偏見及び慣習その他のあらゆる慣行の撤廃を実現するため、男女の社会的及び文化的な行動様式を修正する」という、非常に言葉としてはきつい言葉になっているわけですよね。それぞれの国の歴史があるわけでございますけれども、その行動様式を修正しろとまで明確に言っておるのでございますけれども、それに比べてみると、この法案の内容というのはかなり次元が低いというと言葉が悪いわけでございますけれども、本当にそれにこたえるような形の精神的なものが入っておるのかどうか、私は疑問に思うわけです。その点について、これは赤松局長から、今本当にそれぞれの国の社会的、文化的な行動様式を修正するんだよと条約が言っておるものにこたえられる総括的な内容になっておるのかどうか、原局として自信を持って答えられるのかどうか、お答えを願いたいと思う。
  134. 赤松良子

    ○赤松政府委員 お答えいたします。  ただいま条約の中の数カ所にわたりまして先生の御指摘がございましたが、この条約は確かにあらゆる形態の婦人に対する差別を撤廃するという非常に広範な目的を有しているわけでございますので、「あらゆる慣行の撤廃を実現するため、男女の社会的及び文化的な行動様式を修正する」とまで書いていることは御指摘のとおりでございます。その目的に向かって前進をするということが私どもの提案をいたしました法律の目指すところであるということは、私どもだれも疑っていないわけでございまして、具体的には雇用の場における男女の平等というものを実現するために、その手段はいろいろあろうかと存じますけれども、目指すところがこの条約の目指すところと同じだという点については私どもは確信を持っております。
  135. 草川昭三

    草川委員 将来はお互いにそういう方向に向かって進んでいくわけでございますが、それはそれでいいんですけれども、私は現実の問題を提起をしておるわけでございますが、それはまた後ほど少し議論をさせていただくということにして、問題は、ちょうど昭和五十五年の七月に、コペンハーゲンで「国連婦人の十年」の世界会議で同条約の署名となったわけですが、これは署名をする手続というのはいわゆる閣議で了解というのですか、決定をすることになると思うのです。この批准の二日前でございますか、七月十五日だと思いますけれども、伊東正義当時の外務大臣だと思いますが、首相代理の閣議で署名決定をしたと言われております。ところが、このときの閣議の決定の議論というのはかなり賛否両論があった、賛成が非常に少なかったというような話があるわけでございますが、閣議でございますから、最終的には満場一致で確認をされたと聞いておるわけでございますけれども、そのときの審議にかなり無理があったと私ども聞いておるのですが、その点はどのようになっておるのか、お伺いしたいと思います。
  136. 遠藤哲也

    遠藤説明員 この条約の署名に先立ちまして、ただいま委員御指摘のとおり、内閣総理大臣を長とします関係省庁の事務次官から構成されます、婦人問題対策本部でもって申し合わせを行ったわけでございますが、その閣議に先立ちまして、この条約につきまして関係省庁、非常に多くの省庁を含んでおるわけでございますけれども、関係省庁との間では数次にわたりまして意見交換、検討を重ねまして、その結果この条約を閣議に上げよう、こういうふうな決定をしたわけでございます。したがいまして、閣議に先立ちましては事務レベルでもって十分な検討を重ねた次第でございます。
  137. 草川昭三

    草川委員 外務省としては、この署名に当たって、今お話しがありましたように各省庁に根回しをした、こういうことですね。ところが、私は今から質問をしたいのは、日経連という団体がございます。日本経営者団体連盟、略称日経連、これがことしの三月二日に政府に対して公開質問状というものを出しておるわけです。これは外務省と労働省と、それからどこですかね、もう一つ出していますね。外務大臣、労働大臣、内閣総理大臣ですね、肝心の総理大臣を忘れましたけれども、この三万に日経連が出しておるわけでございますが、これは承知していますか。それぞれ三省――三省といっても総理はお見えになりませんから、労働省、外務省にお伺いします。
  138. 赤松良子

    ○赤松政府委員 その文書は、労働大臣のところへ日経連から専務理事がお持ちになりまして、労働大臣みずからお受け取りになり、私もその場に居合わせました。
  139. 草川昭三

    草川委員 外務省にも行っておると思いますからあれですが、ここの第一にこういう質問があるのですね。「「婦人に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」は、昭和五十五年七月十七日、鈴木内閣発足の当日署名されたのでありますが、署名することを決定した閣議は、その前々日七月十五日伊東首相臨時代理の内閣においてなされており、このような企業経営に重大な影響をもたらす条約の署名について事前に我が方になんの御連絡もなかったように記憶するのであります。政府としては、たいした影響をもたらさないという御考えであったのでしょうか。」という非常に皮肉っぽい質問があるわけです。もちろん外務省が日経連だとかという団体にわざわざ根回しをする必要はない、私はそう思いますけれども、とりあえず、とにかく経営者団体を説得なり理解をさせないまま事を急ぐということが今日の経営者側からの非常に根強い反発になっているわけです。私が言いたいのは、そこら辺は全くしなかったのか、しておったのか。今外務省は、関係団体に十数回いろいろと根回しをしたと言われるような趣旨の御発言があったわけですが、その点はどのようにお考えになっておられますか。
  140. 遠藤哲也

    遠藤説明員 この条約の署名に際しましては、事前に労使双方の意見を聞くということは行っておりません。しかしながら、先ほど申しましたように関係省庁との数次にわたる協議を踏まえまして、この条約は署名すべき条約である、こういうふうな判断に立って署名した次第でございます。
  141. 草川昭三

    草川委員 そこが私がきょう、原点に戻って反省をしてもらわないと、この法律が幾らできても、後で同じような苦情、トラブルが出て根本的な解決にならないということを言いたいために、この問題を提起しておるわけです。だから、外務省としては、確かに労使にこういうことになっておるよということを了解を求めるという必要はないにしても、少なくとも何らかの形でこういう条約が今国際的に問題になっていますよ、少なくとも労働者諸君の皆さん方よ、あるいは経営側も、こういう状況になっておるんだからPRをしなさい、あるいはそういう情勢について構えておかないと、いずれこの条約の批准が来ますよという、そういう努力をすべきではなかったのか、私はこういうことを言いたいのですが、その点はどうですか。
  142. 遠藤哲也

    遠藤説明員 これは通常の例でございますけれども、条約署名に際しましては関係省庁での検討会を開くわけでございますが、外務省が直接にいわゆる関係団体に対しまして説明をするということは通常行っていないわけでございまして、本件につきましても、ちょっと繰り返しになりますけれども、関係省庁を通じての協議、こういうことで対処したわけでございます。
  143. 草川昭三

    草川委員 それはそれでいいと思います。じゃ、今度は関係省庁にお伺いします。  きょうここにお見えになるのは労働省ですから、労働省はそういう情勢にあったということは当然承知をしておみえになるわけです。特に最初の宣言が出たのは四十二年ですから十七年前、メキシコ会議からでも九年前ということになります。その間に一体労働省はどういうようなPRなり、関係団体に行動をしたのかということをお伺いをしたいわけでございますが、たまたま日経連が公開質問状というのを出したわけでございます。それに対して政府が口頭で、文書ではなくて口頭で説明をしておるわけですね。口頭で説明をしたのは、今も局長が立ち会ったということをおっしゃっておられますから、回答のときにも立ち会われたと思うのですが、それは昭和五十九年、ことしの三月二十七日にあったんでしょう。「さきに日経連から総理、外務、労働三大臣あてに出した、婦人差別撤廃条約の署名当時の事情および批准の最低要件に関する質問状に対し、」「労働省において対談し、口頭で大要次のような回答をよせ、かつ、「これは政府全体を代表する意見である」」と労働省は答えたわけですね。これは間違っておるなら後で答弁していただいて結構です。そういうことがあったのかなかったのか、まず最初にお伺いします。
  144. 赤松良子

    ○赤松政府委員 先ほど日経連から文書が渡されたときは大臣と私で受け取りましたが、この回答のときはちょうど二十七日でございますか、二十七日は国会の審議がございました。たしか予算委員会があったと思いますが、私はその予算委員会の方に出席をいたしておりました。大臣も同じでございます。  そこで、日経連タイムスに書かれておりましたのは正確でございまして、労働省へ日経連の方から出向かれて、私ども留守をしておりましたが、次官と白井審議官は労働省におりましたので、そこでお返事を口頭でしたというふうに承知いたしております。
  145. 草川昭三

    草川委員 そこで、その三月二十七日でございますが、回答として「昭和五十五年六月になって婦人団体を中心に本条約に署名せよとの意見が高まったのであるが、労働省はもちろん、各省とも条約のもつ重大性については重々認識しており、署名については、事前に検討すべき種々の問題点があるという態度であった。しかしこの頃は、五月十九日大平内閣による衆議院の解散、六月二十二日の衆参同時選挙、しかも六月十二日大平首相の急死という政局混迷のさ中にあり、」ここから、本当は私が言いたいのは、「政府としても本条約署名について時間をかけて討議する雰囲気にはなかった。労働省事務当局としても、本条約に署名することが簡単に決定されることはあるまいとの観測が強く、したがって事前に日経連はもちろん、労使双方に連絡はしなかった。」こう答弁しておるわけですね。問題は「労働省事務当局としても、本条約に署名することが簡単に決定されることはあるまいとの観測が強く、」こういうことを言っておるわけですね。これが私、最初にボタンのかけ間違いではないかという主張をしたいわけです。外務省はさっき、関係省庁にきちっと手続をしておりますよ、こう言っているわけですね。だから批准の署名もしましたよ、何回かやっておりますよ、こう外務省は言っているわけです。受け手の側の労働省としては「本条約に署名することが簡単に決定されることはあるまい」、こう言っておるわけですから、時間的なずれがあるわけです。そしてさっき労働大臣、外圧というような話が出ましたが、だから外圧というような言葉が出てくるわけです。外圧で、この種の根本的な、労使関係ばかりではなくて男女の差別の問題、まさしく条約で言う、そこの国の文化的な流れだとか歴史も一回ひっくり返すような大変根本的な哲学の問題であるということを言っておると私は思うのです。だからこれは、あいまいな形でこの条約を批准をし、そして関係法規をまあまあという妥協で持っていくような本来の筋じゃないのですね。日本の国民全体が過去の男女差別というような考え方、哲学というものを一回きちっとクリアをするような重要な時期ではないだろうか。そしてこの法律というのが出てくる。そしてできるものとできないものを明確にし、長期計画によって、これはこれと、段階的にやらなければいかぬこともあるだろうし、経営側の教育もあるだろうし、あるいは日本の雇用体系全体を、アルバイトのようなもの、パートのようなもの、そういうものをすべて一回整理をしていきながら、本来はこの法律というのをつくっていかなければならぬ問題ではないだろうか。  だから、我々野党の四党提案についても、とりあえずは努力規定だけで、いいくらかげんとは言いませんけれども、それだけではだめですよ、最低限これとこれとをやっていただかなければいけない、ジャッジについてもきちっとジャッジをつくっておかないと後で困るよというのが、私どもの本当の言いたい趣旨ではないだろうか、こう思うのです。この点について局長はどういうような御答弁をなさいますか。
  146. 赤松良子

    ○赤松政府委員 先ほどお答え申し上げましたように、この回答は口頭でなされたわけでございますけれども、口頭でいたしますについても、やはり外務省とのお打ち合わせも当然しなければなりませんし、労働省内におきましても、どういう返答をすべきかということは当然打ち合わせをしたわけでございます。その内容につきましては、ある程度私どもとしては承知をしていたわけでございますが、その後、日経連の日経連タイムスを先生お読みになったのかと存じますが、その中に書かれているのは、私ども正式に打ち合わせをいたしまして、この内容でお答えするべきだという申し合わせをしておりましたことよりも、かなりいろいろ別の表現もつけ加わっているように思うわけでございます。それは当然口頭でのお話でございますから、いろいろ御説明もあったり、あるいは公式のお話でなくてもいろいろなやりとりがあっても不思議はないかと存じます。そこで私は、その細かいことまでは、その場にもおりませんので存じませんが、公式に申し合わせをした内容だけでございますれば私はよく承知しております。  それは、この条約が、規定ぶりから判断して、雇用の分野においては漸進的な実施が認められているということが強調されております。そこで、一気にこの条約を実現しようとすれば非常に社会的な影響が大きいということは認識していた。しかしこれは漸進的な解決といいますか、漸進的にやるということで、ある程度現状を踏まえながら、条約の要請を満たす法的な整備を行うことによって条約の批准ということは可能になるというふうに考えられたので、そういう条約批准のための整備は、我が国の社会に及ぼす影響を十分配慮しながら行っていこうというふうに考えているというように正式にはお答えしているわけでございます。  その後、最低限どういうことをすれば批准ができるのかというような御質問が続いておりますから、それについては具体的な御返事をしておりますけれども、まずその前段のところはそういうふうな御答弁をしているわけでございます。  それからまた、その後この条約全体についてどういう方法で周知を図ったかというようなことは、私ども、まず前段に行動計画、メキシコで採択されました世界行動計画あるいはそれを国内に取り入れますための国内行動計画等、いろいろ多くのチャンスを利用して周知を図ってきたつもりでございます。そして、この条約を署名した後は、政府は、この条約を「国連婦人の十年」の終わるまでに批准しようという申し合わせをしたわけでございますので、そういう申し合わせがあるということ、そしてまた、批准すべき条約の内容はこうこうこういうものであるというようなことは、日経連その他経済団体、あるいは労働団体が参加をしておられましたところの男女平等問題専門家会議あるいは審議会その他、そういうチャンスをとらえて行動計画を初め条約の内容等については何度がお話しをしております。その後既に四年たっているわけでございまして、きのうやきょうのこと」ではございませんので、何回か条約についてお話しをするチャンスがあり、そしてまた、条約を批准することの効果ということにつきましてもお考えをいただいたというふうに考えております。
  147. 草川昭三

    草川委員 この問題についてはこれで終わりますが、局長がそういうようなことをおっしゃるなら、日経連タイムスに、質問書に対する政府回答でいろいろと出ておることについてはやはり抗議しておくべき必要があるでしょうね。抗議というのですか、こういう書き方等については誤解を招くことが多いと思うのです。だから、私はそういう点を、きのうやきょうではない、以前からお話しをしておるということを今局長おっしゃってますけれども、新聞等なり日経連の資料等を見ると、必ずしもそうは受け取っていない、誤解をして問題提起をしておるやに私は見るわけですから、そういう点はきちっとしておいた方が後日のためにはいいのではないか、こう思います。  そこで、余りこの問題で時間をとっておってもあれでございますから、実は雇用におけるこの法律等が通っていった後の具体的なことにもなるわけでございますけれども、法律をつくることそのものはそんなに大して困難ではないわけでございますが、法律が目指す新しい現実の社会というものを実現するには大変なエネルギーが要るわけであります。そのためにも世論の合意というもの、コンセンサスというものをつくらなければいけないわけでございますけれども、それを保障するためのガイドラインや政令、省令、今回先送りになっておるわけでございますが、政府としてはどの程度の腹づもりを持っておみえになるのか、それを少し聞きたいわけであります。  具体的なガイドラインについては、これは現実的な処理としては審議会等をつくってその審議会で関係者の方々に御説明になるということになると思うのでございますけれども、それでも例えば募集、採用、配転、昇進、こんなことが問題になるのかならぬのかということを少し私が具体的に聞きますから、この点どうなのか、あるいはそういうことは関係ないのか、あるいはそういうことは審議会で議論するのだから全くここではお答えできないのか、非常にこれは関心があるところでございますから、具体的に聞いてみたいと思うのです。  例えば募集ですね。募集条項というのは、今でも新聞だとか職業安定所、いろいろとやられているわけでございますが、例えば現在では「男子正社員募集」というのが一般論で出ております。これはもう当然「男子正社員募集」というのはだめなんでしょうね、今度のこれが通れば。と思いますが、ちょっとこれは後で聞かしていただきたい。  もう少し分けて、「募集職種、男子営業若干名、例えば男子十五名、女子秘書、一般事務四名」とかというような募集は今後これに反することになるのかどうか、お伺いします。
  148. 松原亘子

    ○松原説明員 お答えいたします。  ただいま先生がお出しになりました例は、例えば秘書については解釈いたしますれば女子のみ、男子は募集しない、営業職については男子のみで女子は募集しないということになろうかと思います。そうした場合、これは募集においての男女異なる取り扱いというふうに思われるわけでございますが、こういうふうに行われております背景にはいろいろな理由がございまして、こういうふうな表示があるからといって、それで直ちにこれはいけないことだというふうに決めつけてしまうことはできないんじゃないかと思います。  しかしながら、いずれにいたしましても、こういう男女異なる取り扱いにつきましては、私ども「指針」を策定する際に当然検討させていただきまして、そういうもののうち、努力義務規定に基づいて企業に努力していただく目標として定めるものとして、法律施行の時点でそういうものを盛り込むかどうかは、もちろん私どもは、労働省内で今後十分検討し、その検討した結果を審議会にお諮りした上、決めることといたしたいと思います。
  149. 草川昭三

    草川委員 まだたくさん聞きますので、全体的なものはまた後で一括して言っていただいて結構ですが、「ウエートレス」というのがありますね、それから「ウエーター」というのがあるわけですけれども、一般的には「ウエートレス」というのが、これは固有の名前になりますから何かいろいろと議論の中で認められるやに聞いておりますけれども、それはまた答弁をしていただきたいのですが、例えば営業マンというのがありますね。「営業マン若干名」というのは、これは営業マンですから営業するのは男に限るということになりますね。そういうような言葉はもう今後なくなるのかどうか。  それから、「真性職業資格」とかなんとかいうのがあるのだそうですね、非常に難しい言葉ですけれども。「容姿端麗・ファッションモデル」というのは、これはあっていいわけでしょう。真性職業資格、そういうものですから、ファッションモデルなら容姿端麗ということが前提になりますね。「アートネイチャー」なんかはそのファッションモデルとはまた別だと思いますけれども、「アデランス」とか商品名を挙げて悪いのですが、ああいうものはどうなのかわかりませんが、例えば「容姿端麗・ファッションモデル」は認められたとしても、「女子は未婚に限る」、「未婚に限る容姿端麗・ファッションモデル」というのは違法になるのかどうか、ここら辺はどうでしょう。非常に微妙なところになると思うのですが、非常に関心のあるところですから、お伺いをしたいと思います。  それから、初任給について、例えば「男子十七万円」あるいは「女子十一万円」なんていう募集は、これは私は完全に抵触すると思うのです。今普通は男子十七万とか女子十何万、金額は別としてそのような初任給制度を条件に募集しておる例は多いと思うのですが、そこら辺はどうお考えになられますか、お伺いします。
  150. 松原亘子

    ○松原説明員 お答え申し上げます。  御質問がたくさんございましたが、まず、その「ウエートレス」、「ウェーター」というような言葉の使い方はどうかということでございますが、「ウエートレス」、「ウエーター」ということが、それぞれ本来の意味では一方が女性、一方が男性ということを意味するわけで、それが我が国におきましても一般的に解されておると思われますので、「ウエートレス」というふうに募集すればそれは一般に女子のみを募集しているというふうに思われがちでございます。実際にもそうであるということであればこれはまた男女別扱い。一方「ウエーター男子何名」というような形であってウエートレスは募集していないということであれば、また、このウエートレス、ウエーターの行う業務が同一であるという前提が必要でございますけれども、そういう場合にあっては、一方の者だけを募集しているということは一方の性に門戸を閉ざしているということにもなるわけでございまして、男女異なる取り扱いというふうに外見上は見られるわけでございます。  それから、営業マンにつきましては、営業マンというふうな言葉が実際に男だけを募集するという意図で営業マンと使われているかどうか、今までの通念もございまして、「営業マン若干名」というふうに募集しても、これは必ずしも女子を排除しているかどうかは定かでないところもあるのじゃないかと思います。その辺は、社会意識なり国民の意識との関連もございますので、今一概にこういう言葉はいけないというふうに言い切ってしまうまでには至っていないのじゃないかと思っておりますけれども、これも今後検討していかなければいけない一つの問題であるとは思います。  それから真性職業資格でございますが、これは男女平等問題専門家会議におきまして、モデルですとか刑務所の看守とかそういうものについては、一方の性であることが業務の円滑な遂行上どうしても必要だというふうに考えられるものもあるわけでございますので、そういうものについては、一方の性のみ募集してもこれは妥当だという結論が出ております。  ただ、これは諸外国でも真性職業資格として一方の性のみ募集することは認められているものでございますが、我が国におきまして、真性職業資格を一体どの範囲まで認めるかということは一つの問題としてあろうかと思いますし、これはやはり労使も入っていただいた審議会で十分検討していただく必要があろうかと思います。  それから、ファッションモデル、容姿端麗、これは男女ともに容姿端麗である方が多分望ましいのじゃないかと思いますが、女子についてのみ未婚、つまり男子は既婚、未婚問わずで、女子のみ未婚というような場合には、それが果たして業務遂行上必要な要件がどうかということは十分勘案しなければいけませんが、表面上は必ずしも男子が既婚なのに女子が未婚でなければいけないということがあるかどうか、そこら辺のところは問題になる可能性はあろうかと思います。  それから最後に、初任給の御質問でございますが、初任給の額が違って募集をされているというような例は見られるわけでございますが、その場合に、多くは大体、従事する業務ですとか職種とか、また採用される資格とかが違うことが一般でありまして、現在、我が国では労働基準法四条におきまして、賃金における差別的取り扱い、同一労働、同一賃金の原則というのが確立しているわけでございますので、初任給において、今先生おっしゃいましたように男子十七万、女子十一万というようなことはほとんどの場合が職種や業務が違う、または資格が違うということからきていることだと思います。  ただ、もし全く同一の資格、同一の業務、そして実際にやっている仕事も同じ、にもかかわらずこういう差のある賃金が支払われるということがございましたら、それは労働基準法四条に抵触するということになろうかと思います。ただ、これは募集の問題というよりもむしろ基準法上の問題ではないかと思います。
  151. 草川昭三

    草川委員 じゃ、今度はちょっと採用のところへいきますけれども、採用で、例えば現実にはよくあるわけでございますけれども、選考基準が男女によって差別がある場合、あるいは学歴によって差別がある場合、非常にさまざまなことがございますけれども、例えば男子は本社採用にする、これはいわゆる幹部職員として、俗にキャリアと言われる場合でございます。ところが、女子も同じように四大なら四大の卒業生、これも幹部職員として採用するんだけれども、女子は地方の支店で採用する、よく例があります。こういう場合は、いわゆる面接の窓口も、女子の高校生を採用する場合は事務員係として採用するとか、男子の場合はそれぞれ今お話しのように職務、職能、職種によって違いがあると言えばあるのですけれども、概括的に「要男性人事課員」あるいは「妻女性人事係員」、今申し上げたように「本社採用」、「支店採用」というようなことは一体抵触するのかどうか、ここも、これは関係はないようですが、非常に関係があることだと私は思うので、特にお伺いをしておきたいわけでございますが、採用についての男女差をどう見るか。これが一つです。  それから、何回かあれでは恐縮でございますから、続いて配置の問題についてお伺いをします。例えば受付要員に女子が大体どこの会社でも多いですね。それは受付票貝として女子というような職務、職種というのですか、職能ということが明確にその会社の就業規則等にあれば問題ないのか。あるいは受付要員として女性を採用するというようなことが募集できるのかできないのか。ここをお伺いをしておきたい。  それから、これは非常に将来問題になることですが、配置転換の場合は、通常今の企業の場合は非常に遠隔地、海外、いろいろと配置転換が比較的自由にやられます。もちろん、労働組合がある場合にはその労働組合の同意なり、労働協約があればその協約の適用を受けてやられておると思いますが、組合のない場合は一方的にやられておる。その場合に女子についてどういうような取り扱いになるのか。  例えば将来、女性は育児だとか家庭的な条件から配置転換というのを拒否できるのかどうか。あるいは配置転換を拒否することによって例えば会社側がそのことを理由に契約を解除するというようなこと、解雇ということができるのかどうか。これは基準法に関係するのか。あるいは今回の男女差別の平等法の建前から言ってどういうようなことになるのか。あるいは配転先を限定するということが、例えば男性は海外に出向することがあるかもわからないよという条件で採用する、ところが、女性は無理だろうからせいぜい近県の配置転換だけは我慢をしろというような条件になるのか。あるいは女性が就職の際に会社に聞く、配置転換は海外まで行われるのですかないのですかというようなことを聞いたときに、男と同じ扱いですよという答弁をするのか。女性だけは別ですよという答弁をしたらそれはかかるのか。こういうことも、問題が少し細か過ぎるかむわかりませんけれども、一応の見解というものを述べておいていただきたい。  昇進等については、もう既に裁判等で出ておりますからこれは問題ないと思います。  ただ、その次に教育訓練、男女で差をつけるような教育訓練は果たしてこの法律の延長線上なじむものかどうか。これは差をつけなくてどういうような教育訓練でも平等に取り扱うのか。具体的な例によっては異なると思いますけれども、お聞きしたいと思います。  余り長くなってもいけませんから、あとは福利厚生と若干の問題で終わりますから、今までのことについて御答弁願いたいと思います。
  152. 松原亘子

    ○松原説明員 お答え申し上げます。  まず選考基準といいますか、男子は本社採用、女子は支社採用といいますか、そういう形で、例えば四年制大卒についても採用するというようなことはどうかというお尋ねでございますが、これにつきましては、本社採用、支社採用ということが一つの資格といいますか、そういうものと結びついているということが実態上ある場合には、それはいわば本社採用扱いの者が男子だけであって、女子にはそういう門戸が開かれてないという意味において、男女異なる取り扱いというふうに考えられる場合もあろうかと思いますが、それはやはりあくまでも実態に応じて判断をせざるを得ないかもしれません。ただ、男女異なる取り扱いであるとしても、採用についてはやはり「指針」を設けて、企業に努力を促すということになるわけでございますので、そういうものとしてこれを定めるかどうかは十分検討した上、審議会にお諮りしたいというふうに思っております。  それから配置で、受付は女子というふうに決めている場合はどうかということでございますが、これも男子は一切受付につけない、受付は女子だけということであれば、そっちの面から見れば女子が非常に差別されているかに見えるわけでございますが、逆に見れば、男子の方は受付につく機会がないというふうにも見れるわけでございまして、こういう両面からの問題があるわけでございますので、それらも踏まえて、そういうことについての社会的意識なりを踏まえながら「指針」を検討するに当たって検討したいというふうに思っているわけでございます。  それから配置転換につきましては、審議会の議論の過程でも、たしか家庭責任を持っている女子というのを全く男子と同じように配置転換するということは、女性の家庭責任と職業責任との両立の上からいろいろ問題があるんではないかという議論も出ましたし、審議会のいろいろな議論の過程でやったヒアリングですとか実地視察等の折に聞いた女子労働者の歯も、全く男子と同じように、先ほど例として挙げられましたように、海外にもやります、全国異動ですというような形ではなかなか難しいという声も聞いているわけでございます。したがいまして、そういうものをこの配置転換について全く男子と同じようにやるかどうかというようなこと、それを企業に努力目標として定めて努力してもらうことにするかどうかということについては、この配転問題、女性の家庭責任ともかなり絡む問題でもあろうかと思いますので、「指針」を定めるに当たりましては、そういう女子の就業実態等も踏まえて検討いたしたいと思っているわけでございます。  それから教育訓練につきましては、これは努力義務ではございませんで、「事業主は、労働者の業務の遂行に必要な基礎的な能力を付与するためのものとして労働省令で定める教育訓練について、」「差別的取扱いをしてはならない。」ということに今なっているわけでございまして、この教育訓練につきましては、今まで御説明いたしたかと思いますけれども、同種の業務に従事する労働者、または同一の資格のものとして採用された労働者についての新入社員研修ですとか、また入社後何年かたってからの中堅社員としての基礎的な訓練ですとか、管理職になった者を対象とした管理職としての基礎的な訓練といった、それぞれのステージごとの基礎的な訓練を対象としておりますけれども、そのうち具体的にどの範囲を禁止規定とするかは省令で定めることにいたしておりまして、先生の御指摘のございましたような意味での教育訓練、つまり全く男女同じにすべてしなければいけないのかどうか、その範囲は一体どこまでにするのかということについては、今後審議会の意見を聞いた上、定めることにいたしたいと思っております。
  153. 草川昭三

    草川委員 じゃ、このことで今のように非常に細かく聞いていきますと、かなり問題は先送りになりますね。問題は先送りになりますけれども、実は非常に重要な問題があるわけです。これはぜひ審議会の中での議論、あるいは労働省としての見解、あるいはその範囲をどの程度まで置くかということは、これは本来は法案審議と並行した議論で示していただきたいわけです。しかし、これは現状ではそうはいきませんからあれでございますが、じゃこの件についての最後になりますが、福利厚生でちょっとお伺いしておきます。  いわゆる社宅だとか独身寮だとかいろんなものがありますね、各企業には。それも男女の差というのはどの程度まで最終的にはこれをするのか。あるいは住宅購入等に当たって、これはもう男女の差は一切ないとしても、ただ、住宅資金を会社側が貸与する場合のことを言っておるわけですが、これは現状はかなり男女差というのはあるわけですよね。今回のこういう法律の延長線上では、当然のことながら住宅購入資金等の男子、女子の差はもう認められない方向になるのかどうか。  それから、これはちょっと法律議論ではございませんけれども、例えば女子だけで事務所なんかの清掃業務をするとか、細かい話ですけれども、灰皿の後始末をするとかというのが慣行的に行われているような場合がありますね。ところがこういう法律ができた以上は、男女は平等ではないだろうかというような議論が例えば出てきます。出てきたときに、これは法律上の問題なのか、それは全くその職場の中の自主的な問題なのか、これは少しぴしっと一回見解を聞いておきたい、こう思いますので。  以上の二点について、細かい点ではございますが、お聞きをしたいと思います。
  154. 松原亘子

    ○松原説明員 お答えいたします。  まず福利厚生でございますが、福利厚生につきましては、法律上、住宅資金の貸与ということを例示として挙げておりますが、それ以外にも、御指摘のように社宅ですとか独身寮の貸与というようなことも福利厚生の措置としてはあるわけでございます。これにつきましては、福利厚生というのは非常にさまざまなものがあって、法律の規制になじまないものまであるということから、どの範囲を法律の規制の対象とするかは、これも省令にゆだねております。その場合の考え方といたしましては、一応住宅資金の貸し付けを例示しているということは、労働者にとって経済的価値の相当高いものということを私どもは立案の過程で考えましたので、そういう観点から、種々ございます福利厚生の措置のうちどの範囲を禁止規定にするかは、そういう観点から検討いたしたいと思います。  それから次の、女子についてのみ職場において慣行上清掃ですとかその他のことがやられていることはどうかというお尋ねでございますが、この今回の均等法はあくまでも事業主の業務命令といいますか、業務を遂行するに当たっての雇用管理上の問題をとらえているわけでございまして、今おっしゃられた清掃等がいわば職場の慣行で女子が自主的にそういうことを行っているということであれば、それはこの法律の範囲外のことというふうに考えております。
  155. 草川昭三

    草川委員 細かいことを少し聞き過ぎたようではございますけれども、その審議会での議論の中には、今私どももさらっと答弁を聞き流した点もございますが、本来これは職場でいろいろな問題があるときには、かなり重要な議論の展開にもなる要素があるわけであります。ひとつぜひ関係の方々の御意見を聞きながら、トラブルのない形で審議会の答申なりガイドラインというのが出るようにしていただきたい。強く要望しておきたいと思います。  そこでこの話は終わりますが、今度は基準局の方に、例の女子の早朝勤務のことについて、深夜業のことになりますけれども、深夜業をどのような形で今回考えておられるのかをお聞きをしたいのでございます。  たまたま具体的な職種として新聞配達をやっておられます女子の方々というのは、全国的に統計が出ておりませんけれども、数万以上お見えになると言われておるわけであります。それで、新聞配達というのは日本独特のシステムだと私は思いますけれども、例えば東京近郊等におきましては、企業に九時あるいは企業に八時ということになりますと、自宅からとなりますと通勤時間は一時間半とか二時間かかる。それで、朝起きてくるときに朝刊を読みたいというニーズ等もございます。ということになりますと、少なくとも六時ぐらいとか七時ぐらいまでには各戸に新聞が配達をされる、こういう希望で新聞を購読するような地域のニーズというのもあるわけであります。ところが、この新聞配達というのは、今全国的にそういう労働力というのは非常に不足をいたしておりまして、専業の新聞配達というのは非常に少なくなってまいりました。これはなぜかというと、労働条件が非常に悪いからであります。労働条件が悪いために、結局昔から新聞配達少年というのがございます。――外務省の方、もう結構ですから、これはいいですから、帰ってください。  この新聞配達少年というのは、育英資金というようなことで、企業が新聞配達少年というのを確保いたしましてずっと来たわけですが、これも集金の業務が課せられる、あるいは拡販といいまして新聞の拡張業務をしなければいけないというので、せっかくの奨学資金をもらいながらも、夜学等に行けないという実情が出てきておるわけであります。私は、この新聞配達の現状につきまして、過去、関係の当社会労働委員会ばかりではなくて、他の委員会でもこの問題を何回か取り上げてきておるわけでございますが、今多くの新聞配達の店では女子の婦人労働、パートで新聞配達の代行というのですか、業務をお願いをしておるというのが多いわけであります。このアルバイト婦人というのはお母さんであります。お母さんは、現在は深夜業務というのが労働基準法で決められておりますので、五時以降でないと働けないということになっております。ところが、五時から新聞店をスタートいたしますと、先ほど申し上げましたように、六時とか七時までに新聞配達ができないということで、かなり基準法違反的な要素があるわけでございますが、それで四時半とか暗黙の状況で従事をなすっている方が残念ながら現状にはあるわけです。  そこで、各新聞配達の店はどういうことをやったかといいますと、ぜひ労働基準法の適用除外に新聞配達のお母さん方をやってもらいたいという全国的な署名運動が始まったわけであります。そこで私は、実は過日の社会労働委員会ですか、衆議院の予算委員会で、この問題に対して反対の意思表示をいたしました。それはなぜかというと、お母さん方の適用除外がもし認められるとすると、今の新聞販売店の労働条件というのは非常に悪いので、それがそのまま認知をされるのではないだろうか、かえって足を引っ張ることになるのではないかという問題提起をしました。ところが、その後、その私の質問を聞いたたくさんのお母さん方が、草川さん、それはだめだ、私どもはできたら四時から働かせてもらいたいんだ。そして早く一回りして自分の業務を終わって、お父さんなり子供さんの弁当をつくって朝送り出したいのだ、こういう切々な訴えがございまして、私自身も非常にこの問題については悩んでおる一人であります。悩んでおりますので、きょうは、今回の基準法の改正で、第六十四条の三「深夜業」について、新聞配達の婦人労働というものを一体どのように労働省としてお考えになっておられるのか、まずここを御説明願いたい、こう思います。
  156. 望月三郎

    ○望月(三)政府委員 改正法案の六十四条の三第四号に該当いたします業務につきましては、婦人少年問題審議会の審議の過程におきまして、新聞配達の業務を検討の対象として取り上げられた経緯がございます。したがいまして、法案成立後は、同号の労働省令を制定するに当たりましては、新聞配達の業務を当然検討の対象に入れるという考え方でございます。
  157. 草川昭三

    草川委員 今四号でというのは、「品質が急速に変化しやすい食料品の製造又は加工の業務その他の当該業務の性質上深夜業が必要とされるものとして命令で定める業務に従事する者(一日の労働時間が、常時、通常の労働者の労働時間に比し相当程度短いものとして命令で定める時間以内であるものに限る。)」というのが今度新しく入ったわけですね。入ったこの中で、今の新聞販売店の早朝勤務という条件になるのか、どういう取り扱いになるのかわかりませんけれども、一応考えてみたいというのは、今答弁の中で示唆されたわけですね。  実は、きょうは社会労働委員会ではございますけれども、今全国的に新聞関係の紛争というのはたくさんございます。何回か問題提起してございますが、日本の新聞ほど非常に立派な高度な新聞はないわけでございますけれども、事販売業務ということになりますと、切った、張ったの世界であります。これはもう常識外のことでございまして、何回か私は、公正取引委員会あるいは通産省のABC調査レポート、この問題を取り上げて、新聞の拡販競争をやめるべきだ、そして公正な状況で日本の高度なマスメディアであるところの新聞は販売をされるべきだということを主張してきておるわけでございますが、新聞関係の事件処理というのが相変わらず紛争の絶え間がないようであります。  きょうは公正取引委員会にここに来ていただいておると思いますので、公正取引委員会にお伺いをいたしますけれども、一体新聞関係の紛争というのですか、誇大広告だとか景品表示の問題だとかいろいろなことがあると思うのでございますが、その後どうなっておるのか、現状をお伺いしたいと思います。
  158. 地頭所五男

    ○地頭所説明員 新聞業界における拡材等の提供行為につきましては、かねてから新聞公正取引協議委員会に対しまして自主規制強化の要請を行うとともに、この自主規制とタイアップした形で、公正取引委員会におきましても、違反行為の端緒に接した場合、これを調査し、排除命令、警告等の措置を講じてきておるところでございます。  これまでの実績について申しますと、本年一月に不当景品類及び不当表示防止法違反ということで三件の排除命令を行いましたほか、昭和五十八年度中に四百八十一件、五十九年度四月から六月の三カ月間に百八件の警告を行っております。また、発行本社による押し紙等につきまして、これは販売店の注文部数を超えて発行本社が販売店に新聞を配送することでございますけれども、押し紙等につきましても随時調査を行いまして是正を図っているところでございます。
  159. 草川昭三

    草川委員 今もお話がございましたように、文書警告あるいは口頭警告で四百八十一件。これは五十八年度の実績だそうでございますね。  それで、私ども地元の名古屋で、一体どの程度の文書警告なり口頭警告がやられておるのか、これは公取委で後で確認だけしておいていただきたいのですが、名古屋で昭和五十八年度で文書警告が三十件、口頭警告が二百八十六件、計三百十六件の警告が出ておるわけですね。三百十六件というと、大体毎日、休みをあければ公正取引委員会は毎日警告をしていただいておるわけですよ。それほどまで過当な競争というのが今行われておるわけです。  今お話しがございましたように、新聞販売店で今一番困っておるのは押し紙であります。この押し紙は何回か私ども各委員会で取り上げ、是正をするような御指導を願っておりますけれども、依然として後を絶っていないという悩みもあるようでございます。そういうことのしわが過当な競争になってくる。過当な競争の担い手がアルバイトのお母さん方であったりアルバイトの学生になってくるわけです。だからここを考えていただきたいわけです。だから法律というのは非常に難しいのです。私どもにも、お母さん方は、悪いけれども草川さん、とにかく朝アルバイトをさしてもらいたい、早くお父さん、子供を朝送りたい、だから四時から働かさしてくれ、こう言うわけです。確かにその声に私もこたえたい。ところが一面、それを利用して発行本社があぐらをかいてしまって、販売店に悪い労働条件を起こすことになるのではないか。  これが、今私が長々と、前段に差別撤廃条約の問題からいろいろな提案についてけちをつけたような質問をいたしておりますけれども、一つの事例としてはこういう悩みというのが出てくるわけです。このことによって労働基準法を緩和すると一面的にはそういう要素がある。確かにキャリアウーマンはどんどん伸びてもらいたいから、下手な規制がない方が市場性というのですか、労働市場というのは広がるじゃないかという一面もあるわけです。私も認めるわけだ。ところがそのことによって、今それをいいことにして最も近代的な産業の新聞が販売店いじめをやるというようなことがあっても困るし、新聞社間で過当な競争が相変わらず続いていく、こんな恥ずかしいことは世界じゅう探したって日本だけの話ですから。これは労働大臣にお願いすべきことじゃないのですけれども、私はそこの店で働く子供たち、お母さん方の立場に立つとするならば、ひとつ慎重な運営と、できたら条件をつけてもらいたい。四時からやるというならひとつきちっと賃金についてのフォローアップはするぞ、あるいはそこのお母さん方の面接なりいろいろな懇談会も義務づけさせるとか、あるいは過当な競争のしわを寄せないようにしろとか、それから、でたらめな景品をつけて暴力的な拡販をやっておるような新聞社があるとするならばそれは排除しようじゃないか。公正取引委員会の問題ではない。基準局としてもフォローアップをするような形でぜひこの第四号の処理に当たっていただきたい、こう思うのですが、その点どうでしょう。これは基準局長に答えていただいて、それから、私が今言った名古屋の数字がどうかということは公正取引委員会で答えてください。
  160. 望月三郎

    ○望月(三)政府委員 先生御指摘の御心配は確かに私も同感でございますので、これを対象にするかどうかの審議に当たりましては、十分慎重に取り扱って、これによって労働条件が低下しないように十分気をつけてやりたい、こう思っております。
  161. 地頭所五男

    ○地頭所説明員 先ほど御指摘のございました名古屋地区における文書並びに口頭による警告の件数はおっしゃったとおりでございます。
  162. 草川昭三

    草川委員 労働条件だけの問題ではなくて、その周辺の問題が非常に重要でございますので、処理をぜひお願いしたいと思います。  最後の方になりましたが、時間があと八分しかございませんので、少し国鉄職員の例の余剰人員対策について、お伺いをしたいと思うのです。  私は、主として施設の労働者の方々の声というものを中心に、今回の基準法上の問題なりあるいはその他のことについてお伺いをしたいと思うのでございます。もうこれはすでに他の委員会でも出ておるわけでありますが、国鉄が、五十五歳以上の職員には昇給ストップ、そして退職を促す、あるいはもろもろの提案があるわけでございますね。賃金の六割を支給した上、他企業でのアルバイトを認める等いろいろな問題がございます。  そこで、少し施設の関係のところをお伺いをしたいわけでございますが、国鉄の施設の職員にも同様な申し入れをしておるやに聞いております。ところが施設は、余剰人員があるかないかは別でございますが、退職を勧告をしたりあるいは他企業への出向ということを認めるわけでございますから、当然のことながら線路の保守、メンテナンスをしなければいけないわけですから、外注工事はふやしていかなければいけないことになります。外注工事をふやすということになりますと、施設関係の工事費は当然のことながらふえていくということになるわけでございますが、一体下請業者の労働力というものをどのように考えておられるのか。アバウトな話で結構でございますから、お伺いをしたい、こう思います。
  163. 草木陽一

    ○草木説明員 お答え申し上げます。  私どもの国鉄で線路の保守をいたしております関係についてのお尋ねでございますが、私どもの保線関係の仕事は、かなり以前から直営、直轄の体制をとってきておったわけでございますが、部外能力の活用が得策であるというような部門につきましては、逐次合理化施策として外注化を進めてきたわけでございます。  こういった中で、私ども請負業者と申しておりますが、請負業者の労働力は十分なのかというお尋ねでございますが、私どもは、こういった請負業者を選定いたしますときには、請負業者の資本とか職員数、営業年数その他技術力等を勘案いたしまして、一定の資格を持った者に工事を発注するようにいたしておりますし、また、工事を発注する都度、そういったものが十分かというふうなことをチェックをいたしておりまして、現状十分に能力があるというふうに考えております。
  164. 草川昭三

    草川委員 確かに、線路の保守、メンテナンスをやっていただくわけですから、国鉄の安全性には欠くことのできない業務ですね。それを下請にする。下請について、そういう一定の資格要件を持った労働力が十分あるという御答弁でございます。ところが私どもが、全施労というのですけれども、国鉄の施設の労働組合の方々とお話をしますと、あれはなかなか簡単なものじゃないのですよ、タイタンパーというのですか、振動で砂利をうまく入れかえをするような業務は、とてもじゃないけれどもかなりの高度な熟練が必要なんだというわけで、そう簡単に下請化が進められては安全上困るじゃないかという議論があるわけです。私が言いたいのはそういうことなんです。だから本来ならば、合理化もいいけれども、わざわざ下請をしなくても、そこの当該の労働者で仕事をさせれば、トータルとしては国鉄はかえって合理化になるのではないか、こういう議論を私は今したいわけです。  それが証拠に、実は国鉄の職員が過日、ことしの七月の話でございますが、京都の私鉄の軌道工事に集団で参加をしておったという事実があるわけであります。結局それは、私鉄の軌道工事も国鉄の職員のアルバイトでやってもらわないとやれないようなそういう仕事ではなかったのかということが私は言いたいわけですが、そういう事実があったのかないのか、これをまずお伺いをして、私の質問に答えてください。
  165. 草木陽一

    ○草木説明員 甚だ遺憾でございましたが、そのような事実はございました。私鉄の、軌道工事ではございませんが、それに関連する工事をアルバイトしておったという事実がございました。
  166. 草川昭三

    草川委員 だから、そういうことをやるには、実はこれも労働基準局にもちょっとお伺いをしたいわけですが、そう簡単にだれもはできませんから、実は国鉄は大手の七十五社ですか、私鉄大手五社と言われておりますが、七十幾つの会社に対して下請契約を結ぶわけです。その大手の下請会社というのは、実際はほとんど国鉄のOBの方々の企業で、ほとんどこれは実際の作業員は持っていない。そこからまた孫下請というのですか、何段階かの組を通じて末端で労働者が線路の保守、メンテナンス作業をする。ところが現実には、その仕事は素人じゃできませんから、国鉄の職員の休暇をねらうわけです。例えば週休二日制の場合の休みだとか、休暇をうまく組み合わせて一つのラインをつくる手配師というのがいるわけですよ。その手配師でなければ現場の労働者の顔を知りませんから、そういう人たちが実際は私鉄のいろいろな工事をやったりするという例がこの京都の例なんですよ。だから、今度のアルバイトを認めるという国鉄の余剰人員対策も、下手をすると、アルバイトをやりなさいと言ったアルバイト先が、国鉄の現場の作業に関連企業という形で戻ってくる可能性があるわけです。また多分そうなるだろうと、こういうわけですよ。これだと一体何のための国鉄の合理化なのか、そんなお金があるならば、正規で雇って契約をしておる常用労働者を使って十分作業ができるのではないかと、こう私は言いたいわけですが、その点についてはどのような考え方を持っておられますか。
  167. 草木陽一

    ○草木説明員 先生のお話でございますが、私ども、アルバイトの件につきましても、希有のことであろうというふうに理解をいたしております。  一般的に申しまして、保線作業というのはかなり難しい仕事であるということは先生御指摘のとおりでございますし、私どもの職員も日ごろ目いっぱい線路の上で働いておりますので、そのようなアルバイトのようなことをやるというようなことは、非常に不心得な者の一部の事柄であろうというふうに理解をいたしております。  なお、私ども現在外注化施策も進めておりますし、それ以外の効率化施策で要員の縮減を図っておりますけれども、そういった中で、余剰というふうに今言われております要員につきましては、これは実施可能な限り我々の直営の保線作業をやらせるというふうな体制をとって効率的な運用をいたしておりますので、御理解賜りたいと思います。
  168. 草川昭三

    草川委員 本来は手配師の問題を少しやりたかったのですが、時間がございませんので、終わります。  最後に一括して質問をしますが、これはもう本当に関連でお許し願いたいと思うのでございますが、実は、国鉄の岡多線というのと瀬戸線の新豊田-高蔵寺間の業務について、鉄建公団を監理する運輸省と国鉄の態度についてお伺いをしておきたいと思うのですが、実は新線ができまして、来年ぐらいに供用開始というところまできたのでございますけれども、赤字になるということで、国鉄当局がそれを引き受けないということを決めたようでございます。それで、地元の各地方自治体に対して第三セクター方式でその新線を運営してもらいたいと言った。ところが地元の方は、県を初め各市は、寝耳に水のことでございまして、それは困るというような話になっておるわけでございます。そんなような関係から、実は高蔵寺の駅のところで鉄建公団の最終的な工事があるわけでございますが、これは国鉄の岐阜工事局が委託を受けて工事をしておるわけでございますが、施工主体が命までは公団だったわけでございますが、これが今度国鉄が引き受けるのか第三セクターが引き受けるのかわからぬわけでございますから、とりあえず相談相手がいないというようなことになって、全く……(田中(美)委員「きょうの委員会は雇用平等法ですよ」と呼ぶ)ちょっと待ってください、最後にこれだけ聞くのですから。地元の話ですからついでに聞くのですから……。
  169. 愛知和男

    ○愛知委員長代理 御静粛に願います。
  170. 草川昭三

    草川委員 ですから、このことについてぜひ国鉄の当局と運輸省のお話を聞いて、私の質問を終わりたい、こう思います。
  171. 北井良吉

    ○北井説明員 お答えを申し上げます。     〔愛知委員長代理退席、委員長着席〕  今御質問の岡多・瀬戸線の第三セクター化に対する国鉄の考え方でございますが、御指摘のとおり、岡多線及び瀬戸線、瀬戸線は岡崎-高蔵寺の間でございますが、これは昭和四十年に鉄道建設公団によって工事が進められてきております。そのうちの岡崎-北野桝塚、これが四十五年に貨物営業を開始したのに続きまして、五十一年には新豊田まで旅客営業を開始いたしております。その後、新豊田-高蔵寺につきましては、工事が継続して進められておりまして、現在、先生御指摘のとおりほぼ完成に近づきつつございます。  一方、五十四年の十二月に開業についての設備工事の運輸大臣の認可をいただいたわけでございますが、その段階では、高蔵寺まで開通することによりましてかなりの輸送量があるというふうに私ども見ておったわけでございますが、現段階で輸送量について見直してまいりますと、輸送量の当初の予想をかなり大幅に下回るのではないかというふうに予想をいたしております。  国鉄といたしましては、特定地方交通線の廃止とかあるいは転換、そういったことを進めておるわけでございますけれども、そういった方向で地方交通線の分離ということをやっておるわけでございますが、その一方で、新たな地方交通線と思われるものについての開業をするということは非常に難しい状況にございますことから、第三セクターによる運営をお願いしたいということで、愛知県なり関係の自治体に要請した次第でございます。
  172. 梅崎壽

    ○梅崎説明員 お答えいたします。  先生お尋ねの岡多線、瀬戸線の新磯田-高蔵寺間の工事の問題でございますが、国鉄の第三セクター化ということでの地元の意向打診ということで、国鉄サイドで意向を打診しているところでございますけれども、この問題に関連しまして、工事につきましては大部分、先生御承知のとおりでき上がっておりますけれども、一部でき上がっていない区間がございまして、その点につきまして、地元といろいろな約束に基づくもの等もございますので、これが手戻りになるかならないかということも含めまして、現在のところ、建設主体でございます日本鉄道建設公団、それから国鉄とも調整しながら検討しているところでございます。
  173. 草川昭三

    草川委員 じゃ、時間が来ましたのでこれで終わります。  私は、きょう労働大臣、いろいろな問題提起を多岐にわたって行いました。しかし、私どもは、それぞれ今日の我々を取り巻く一貫した流れの中で問題を提起したつもりでございますし、今の細かい細部にわたる議論をいたしましたが、これも後ほど審議会等で議論になるかもわかりませんけれども、実は根本的な問題が多いと思うのです。本来ならば、長い時間をかけた歴史があるわけですから、並行して細部にわたる問題提起をしながら国民のコンセンサスというのを打ち立てていく、そうでないと、私は、法律だけが幾ら先行してもかえって現場では混乱を起こすだけだ。だから使用者側にもそれなりの納得をしていただく。あるいは合理化問題というようなことがいろいろと出てまいりますし、これはどうしたって女性にしわが寄るわけであります。だから、その女性にしわが寄るという問題提起をしながら、一体その根本的な今の仕組みというものを少しでも解消しない限り、これは絵にかいたぼたもちになってしまいますし、私どもが何回か問題提起をするように、現場に混乱を起こすことになる。そういうことのないように、ひとつ労働省としても、主たるやっぱり責任の省庁でありますから処置をしていただきたいということを申し上げて、私の質問を終わりたい、こう思います。  どうもありがとうございました。
  174. 有馬元治

    ○有馬委員長 塩田晋君。(発言する者あり)
  175. 塩田晋

    ○塩田委員 ただいま議題となっております政府提案の男女雇用機会均等法並びに四野党共同提案の男女雇用平等法案に関しまして、労働大臣、赤松婦人局長、そして外務省の関係の方にお伺いいたします。  まず、我が国が昭和五十五年に署名をいたしましたいわゆる差別撤廃条約が、国連の総会におきまして採択をされるまでの経緯、それと、その過程で各国から出されました主なる意見、主なる論議について御説明いただきます。
  176. 遠藤哲也

    遠藤説明員 では、まず最初に、委員の御質問の、成立に至るまでの経緯について御説明申し上げます。  婦人差別撤廃条約のそもそものといいましょうか、その契機になりましたのは、一九六七年の婦人差別撤廃宣言でございます。しかしながら、この撤廃宣言が採択されました後も婦人差別というのはやはり依然として解消されない、こういうようなことがございまして、もうちょっとしっかりした法的な拘束力のある条約をつくる必要があるのではないか、こういうふうな所が強くなってきたわけでございます。  それで、そういうふうな条約をつくるべしという沖を背景にしまして、これは一九七四年でございましたが、国連の婦人の地位委員会というのがございますが、そこで、条約をつくるべしという決議が成立したわけでございます。そこで、この決議に基づきまして、この婦人の地位委員会でもって条約案起草に約二年ぐらいかかりまして、その結果一九七九年十二月十八日の国連総会で、賛成百三十カ国という、これは日本も入っておりますけれども、多数の支持を得まして条約が採択されたわけでございます。  それから二番目に、この条約成立の過程におきましてどういうふうな議論があったかという点でございますけれども、まず女子に対する差別を撤廃しなくちゃいかぬ、こういう共通の認識があるものでございますから、総論につきましては意見の分かれることはほとんど見られなかったわけでございます。しかしながら、各論につきましてはかなりの議論がございまして、主な点だけを御説明申し上げますと、まず二つあったかと思われます。  まず一つは、この婦人差別撤廃条約、何分にも国連の加盟国全体を対象にしたものでございますから、経済体制とかあるいは社会体制等々非常に大きく体制が異なっておるわけでございまして、したがいまして、男女平等の実現という目的そのものについては意見が一致するものの、それでは具体的にどういうふうな規定を置くべきか。例えば保育施設をどうするかとかあるいは母性休暇の導入を具体的にどうするかといったような、そういいましたような各論につきましては、かなりの議論があったわけでございます。  それから、もう一つありました議論としましては、この差別撤廃の例外として何を認めるか、つまり、母性保護だけに限るのかあるいはもうちょっと広く女子保護を含めるべきか、こういったような点も議論になったわけでございます。  しかしながら、先ほど申しましたように、各論につきましては意見が違ったものの、総論につきましては意見が一致しておるものでございますから、一九七九年に先ほど申しましたように百三十カ国の賛成ということで成立したわけでございます。
  177. 塩田晋

    ○塩田委員 この条約の提案国は、ソ連とフィリピンであるというふうに聞いてわります。  世界、この地球上には四十五億の人々が住んでおるわけでございます。そして百七十の国ができて、そこに世界社会を形成しているわけでございます。それぞれの国、またそれぞれの民族におきまして、いわゆる文化の生態的システムと言われるそれぞれ違った生活様式、思想、信条を持って、また宗教を持ってきておるのが現実でございます。そういった中におきまして、差別撤廃条約に対して、世界の各国が、その国情に合わせて国内法の整備等を含めてどのように対応しておるか、園内法のあるところでの実態はどのようになっているか、このことについてお伺いいたします。
  178. 遠藤哲也

    遠藤説明員 まず第一点の御質問でございますけれども、先生御指摘のとおり、世界じゅうには自由主義圏もあれば社会主義圏もあり、イスラム圏等々、多岐多様の国々があるわけでございますけれども、まず、先ほど申しましたように百三十カ国の賛成を得た、圧倒的な多数の賛成を得たわけでございまして、趣旨そのものにつきましては各国とも賛同ということでございますが、それでは、この条約の批准等に当たりましてそれぞれの国々がどういうふうな態度をとったかということを簡単に御説明申し上げますと、  まず、自由主義圏、社会主義圏ともに、この条約の批准につきましては、いずれも多くの国が前向きの態度をとって批准を行っております。しかしながら、その対応の仕方には若干の違いがございます。  社会主義圏の諸国につきましては、ほとんど多くの国がもう既に男女平等は確立されておる、達成されておるということで、特段の国内措置をとったとは承知しておりません。したがいまして、そういうふうな特段の国内措置をとらずにやったものでございますから、条約批准も比較的早期に社会主義圏については行っております。  それから次に、自由主義圏の主な国でございますけれども、現在までに自由主義圏でこの条約を批准いたしました国は、若干の国を申し上げますと、スウェーデンとかノルウェー、デンマーク、それからフランス、オーストリア、スペイン、カナダ、オーストラリア、こういった国がございますが、このうち例えばスウェーデンでは、この条約の批准に際しまして、雇用の面では雇用平等法案を成立させておりますし、さらに平等委員会が、いわゆる広告における差別を禁止する法案も目下考えておる、検討中であるというふうに承知しております。それからフランスにつきましては、これは実はECが全体となって男女差別の撤廃について指令を発しておるわけでございますが、このEC指令を受けまして、従来からフランスでは男女平等を進めてきたわけでございますけれども、いわゆる雇用平等法の制定、それから女子保護法制の見直し、公務員におきます差別禁止の法の制定等々の検討も行われておると承知しております。それからイギリス、西ドイツはまだ批准を行っておりませんけれども、先ほど申したEC指令を受けまして、男女平等の施策を推進してきておるわけでございますが、これらにつきましても、男女平等法の制定、女子保護法制の見直し、国籍法の改正等が行われていると承知しております。  そこで、最後に先生御質問のイスラム文化圏でございますけれども、イスラム文化圏で今のところこの条約を批准しましたのは、いまだエジプト一カ国だけであるわけでございます。かつ、エジプトは、これは私はちょっと浅学にして余りよく承知しないのですが、イスラムシャリーア法という規定の運用上、留保しております。  以上が、大ざっぱに分けました社会主義圏、自由主義圏、それからイスラム圏の本条約の批准に対する対応ぶりでございます。
  179. 塩田晋

    ○塩田委員 欧米自由主義国の国内法、またその法がどのように適用され実態がどのようであるかということにつきましては、各国別にかなり調査が進んでおると思われるのでございますが、共産圏諸国、またイスラム回教国諸国につきましてはほとんど知られていない、このような現状のようでございます。四十五億の人口のうち半数以上がわからないのではなかろうかと思われるわけでございます。少なくともソ連を初めとする共産圏はILOに加盟をしているはずでございます。特に男女の雇用における平等問題等につきましても法制等があり、またその実態がソ連圏は特にわからないと言われますけれども、ILOに加盟している国といたしまして、調査ができないはずはない、資料も取り寄せることもできるだろうし、質問もILO総会、委員会等でできるはずでございますが、その辺は労働省はどのように把握をしておられますか、お伺いいたします。
  180. 赤松良子

    ○赤松政府委員 お答え申し上げます。  ソ連圏、イスラム圏につきましては、ただいま外務省の方からもお答えがございましたが、従来から、どちらかといえば我が国の経済、国情に近い国に重点を置いて研究などしてまいりました関係で、余りよく把握ができていないといううらみがございます。しかし、先生おっしゃいましたように、ほかにいろいろ方法はあるわけでございましょうから、今後できるだけ、今まで手薄といいますか行き届いていない国々につきましても、その実情についてあるいは法制度について把握に努めてまいりたいと存じます。
  181. 塩田晋

    ○塩田委員 大臣にお伺いいたします。  共産圏諸国につきましては、他の労働関係分野におきましても余り実態が把握されていないうらみがございます。また文献その他いろいろな公表された数字、統計あるいは情報等でかなりのものが調査できるはずでございます。小説の中に出てくるいろいろな状況を分析するだけでもかなりのものが出てくるわけでございますが、労働省におきましても、そういったソ連を初めとする東欧諸国の実情、これを把握する分野、組織がないように思うのでございます。その点が非常に弱いのではないかと思われますが、こういった問題を考える際には、やはり提唱国であるソ連も含めまして、もっともっと情報の収集、分析、把握を常時しておかなければならないと思うのでございますが、その点がなり不十分じゃないでしょうか、いかがでございますか。
  182. 遠藤哲也

    遠藤説明員 一言、私の方から先にお答え申し上げます。  確かにソ連圏あるいは東欧圏と申しますか、あるいはイスラム圏につきましての情報が不足なのは、もう先生御指摘のとおりでございます。ただ同時に、調査がなかなか難しいということも事実でございますけれども、確かにソ連圏あるいはイスラム圏につきまして、もうちょっと調査をしなくちゃいかぬということは御指摘のとおりなんで、できる限り努力を今後いたしたいと思っております。
  183. 坂本三十次

    ○坂本国務大臣 おっしゃるように共産圏とかイスラム圏とか、非常に世界の中の日本でございまして、これからの関係というものはいろいろな面でやはり緊密にならざるを得ない。そういうような面で、今後ともいろいろな機関を通じて共産圏、イスラム圏も勉強をいたしたいと思っております。今まではどっちかというと欧米先進国に追いつけ追い越せでありますから、我が国は自由とか民主主義社会でありますから、そちらの方の法制を勉強するということが先に立ったということは事実でありまして、これは決して無意味ではなかったわけでございます。しかし、労働省といたしましても、できれば近いうちに、ソ連よりは先に中国、アジアの中の隣の国でありますから中国などにアタッシェも置きたいな、こういうふうに思っております。  それから、やはり何と申しましてもアジア、東南アジア、そういう国との関係はこれから最も密になってまいらなければなりませんので、共産圏、イスラム圏の勉強も大事ですけれども、私に言わせれば一番身近なアジア諸国との連携も深めて、特に海外技術協力、特に職業を通じての援助は日本が一番適役であろうか、そして一番効果的ではないか、私はこういうふうに思っておりますので、そういう面も力を入れていきたいと思っております。
  184. 塩田晋

    ○塩田委員 大臣、この問題につきまして前向きに取り組む姿勢を示していただいたと思います。ぜひともそのようにお願いしたいと思います。  我が国におきましては、ソ連の研究というのは、公的機関としては北海道大学にスラブ研究所がある程度でございまして、アメリカ等には各種の研究機関がありまして、非常に緻密にデータを集め、分析をしておるという実情でございます。また、今大臣が言われましたように、東南アジア、そしてまたアジア・アフリカ、こういったところに対する技術援助その他、これからの日本との交流、関係が深まる中におきまして、御承知のとおりその地域にはイスラム教、回教が非常に多いわけでございます。東南アジアにおきましても、我が国よりも人口の多いインドネシアが回教国でございますし、またパキスタン、アフガニスタン、イラン、イラク、サウジアラビア、エジプト、モロッコと、アジアの地域、アフリカの北部地域にわたりましてずっと回教圏が広がっておるわけでございます。恐らく人口が九億になるんじゃなかろうかと思います。ソ連の一部にも回教圏もあるわけでございます。こういったところの宗教を主体にした生活というものは非常に違っております。生活感覚、あらゆる物の考え方が違うわけでございます。今言われましたように、日本がどんどん出ていってこれと交流を深める、最も適していると言われるならばなおさらのこと、イスラム圏については調べなければならない、情報を持っていなければ的確に対処できないと思います。  男女の雇用の問題についても同じでございます。これはコーランの文章でございますけれども、二千年ほど前につくられたその一文でございますが、アラーはもともと男と女の間に優劣をおつけになったのだ、生活に必要な金は男が出すのだから、この点で男の方が女の上に立つべきもの云々というのがコーランにあるわけです。これはコーランという二千年前の古典でとどまっておるならば問題はない。我々の近代的な感覚から、あるいは西欧的な文化の感覚からいいますと、このような観点を支持する人はいないと思うのですが、このコーランの教えが今なお生きておるという、現に多くの民族の生活を支配しているということは冷厳なる事実でございます。大臣もお聞きになったと思いますが、イランのいわゆるパーレビ体制が崩壊をして、そして今ホメイニ体制になっております。このコーランに返れという一種の革命が起こっておるわけです。したがって、いわゆる男女の隔離ということが現実に進められておる。パーレビ体制で近代化を進めていった。これはパーレビ自体が、自分は間違っておったかなという言葉を残して死んでいった。その後ホメイニ体制で、昔のようにチャドールをつけなければならない、そしてタクシーも男女は一緒に乗ってはいけない、バスも席は別にする、あるいは海水浴は午前中は女性で午後は男性、ここまで非常に女性隔離ということが進んでおる。こういう状況が世界、この地球上に現にあるということです。現にそういう方向になお進んでおるというものもあるということでございます。  しかし、この問題につきましては、最近私の読んだ本の中で、現代のイランの女性雑誌編集長の談話として、パーレビ国王時代、近代化を推進してきたわけでございますが、その時代は女性はほとんど性の対象としてしか見られなかったが、革命後は女性がチャドールをつけるようになったのも、女性をそうした男の目から遠ざけるためで、女性はこれにより一個の人格として解放されたのであります、こういうことを女性の編集長が語っておる。こういう考え方がある、現にそのような国が存在しておるということ、そのような宗教に支配されている民族が多数この地球上に存在しているということも、冷厳なる事実として否定することができないわけでございます。  それで、近代的なと言われる西欧の文化、その感覚から来る男女の平等というものでもって、我々の男女雇用平等法案も先進国に近いものにつくられておりますし、また不十分ではございますが、政府案も、労使が非常に厳しい、激しい対立、論戦の中で、政府が思い切ってその中間案といいますか、両方から猛反対を受けるような中で案を出されました。その御努力に対しましては敬意を表するものでございますが、ぜひともこの我々の四党案、野党案を支持していただきたい、また御理解をいただきたいということで今まで進めてきたわけでございます。  私は、この男女雇用に関する分野における平等の推進、このためにはこれが廃案になって何もなくなってしまった方がいいんだというようなことではなくして、やはり一歩でも二歩でも大きく前進をしていくということがこの際必要であると思うわけでございます。  かつて最低賃金法、労働省の所管でございましたが、昭和三十四年に成立をいたしました。これはその前十年間、労使間で大変な論争をしながら、最低賃金全国一律方式を主張する者と、その当時の日本の経済の状況、中小企業の多い中において、一律の最低賃金額は決められないという大きな対立の中で、最低賃金法が最初にできましたのは、労使の反対の中で、業者間協定方式による、世界にもない、また本当にこれは最低賃金と言われるのか、世界的には恥ずかしいじゃないかと言われるような内容でございましたけれども、ともかく最低賃金法というものがそのような形で発足をした。そしてその後、五年たち十年を経た中で、これが実用に合うように改正をされ、そしてなじんでいく中でこれが定着をしてきているのが現代の最低賃金法、今や業者間協定というものはすっかりなくなっております。こういった前例もあるわけでございますので、そういった観点からこの問題も我々は考えていかなければならないと思うわけでございます。  そこで、政府提案の男女雇用機会均等法と、四党共同提案の男女雇用平等法の我が国における社会的、経済的影響について政府のお考えをお伺いしたいと思います。  この論議につきましては、婦人少年問題審議会におきまして六年にわたりまして種々論議をされてまいりまして、問題も出尽くしておるというような状況で、しかも三論併記で最終的に答申が行われたといういわくつきのものでございます。  いろいろ論議の中には、政治評論家の屋山太郎氏だとか長谷川三千子助教授等を初めといたしまして、男女雇用機会均等法は女子の社会進出を促し、いろいろな家庭等のトラブルを生じさせ、ひいては我が国の文化の生態系を破壊する。特に差別撤廃条約第二条(f)項の、既存の法律、規則、慣習、慣行を修正し、または廃止する立法措置、こういったことは外圧による文化の破壊だ、あるいは黒船だ、内政干渉だ等々の議論もあります。  しかしながら、我が党はそう考えておりません。雇用の分野における男女平等は、国際人権規約、ILO第百十一号条約、婦人差別撤廃条約等の国際条約でも、また憲法第十四条でもうたわれている婦人の基本的権利であります。  男女雇用平等法案はもちろん、政府提案の機会均等法案も、女子が職業につかなければならないと言っておるものではございません。女子が家庭を選択するか職業を選択するかという問題は、個々人の選択にゆだねるべき問題であり、これらの法案は、女子が職業を選択する場合に、雇用の分野で女子であることのみを理由とした差別が行われることのないよう、それを撤廃することを第一の目的とするものであります。このことについてどのようにお考えでございますか、政府の御見解を承りたいと思います。
  185. 赤松良子

    ○赤松政府委員 ただいま先生のお話しを伺っておりまして、大変いろいろ感銘の深い点がございました。一つは、婦人差別撤廃条約が採択されましたとき、大変いろいろ反対といいますか、議事の引き延ばしなどもございまして、そのときに一番活躍した国の代表というのはモロッコの代表でございました。モロッコの代表の演説は、午前中ほとんどいっぱいかかるような大演説でございましたが、いかにこの条約がイスラムの教義と関係が相反することを言っているかというようなことの長々とした演説がございまして、大変そのために一時はこの条約の採択が危ぶまれたというような瞬間もあったわけでございました。そういうことからいたしましても、最もこの条約にいろいろ抵抗を感じていたのがイスラム圏であったというふうな認識を私は持っていた次第でございます。しかし、イスラムの中でもやはりいろいろ条約については賛成の国もございまして、先ほど外務省の方からエジプトの名前が出ておりましたが、エジプトはいち早くこの条約に賛意を表しましたときに、しかし離婚の自由というような民法上の妻の権利は、イスラムのアラーの教えからいって、到底男女平等に認めることはできないというような留保条件をつけたりしたのも覚えているわけでございます。  いずれにいたしましても、それぞれの国の文化というものが重んじられるべきだということは、そのときの討議の中でも言われたわけで、私もそのように思っているわけでございます。  また、先生の二番目に御指摘になりました最低賃金法の問題につきましても、私はこの法案と取り組むようになりましてから、しばしば最低賃金法の制定のときのことが思い起こされたわけでございまして、理想的なものをつくるためには非常に時間がかかる。しかし、まず第一歩を踏み出すという場合にはいろいろな批判があり、そういうものでは物足りないと思う方からは大変攻撃も受けるということが、よく今までの歴史にもあったわけでございます。先ほど最低賃金制のことにつきまして先生がおっしゃいましたように、あれはやはりいろいろな批判がありながらも、最低賃金制度といういうものに向かって踏み出した一歩では確かにあったというふうに思うわけでございまして、そのようなことをいろいろと思い出しながら、この法案作業をしたことをきのうのように思い出すわけでございます。  最後に、先生の女性が働くということについての問題についての私の見解でございますが、私どもこの法案をつくるのに当たりまして、女性が働かなければならないというようなことをただの一度も文言にしようとしたようなことはございませんでした。あくまで女性が働くかあるいは別の、働くというのはこの場合雇用労働の意味で使っているわけでございまして、長谷川先生の論文の中で、さる労働省のお役人が「働く」ということを、あたかも主婦は働いていないかのような、コンテクストで使ったというふうな指摘がされておりますが、私はそれは自分が座談会で発言した言葉だったというふうに思いますが、決してそういうふうに使ったわけではなくて、雇用労働の話をしていて「働く」といった場合は、やはりそういう意味で使うのが普通のことではないかと思います。主婦もいろいろな形で働く社会に十分寄与をしておられるとは思いますけれども、それと違う意味の賃金を得て働くという働き方がある。しかし、それを特に勧めるとか、あるいはそれの方が価値が高いとかというふうに押しつけるという気持ち、あるいはそういう法制のつくり方というものをするつもりもございませんし、したというふうにも思っていないわけでございます。あくまで自主的な判断でそれぞれの生き方が選べるということが、我が国のような民主的な国のよいところではないかというふうに思っている次第でございます。
  186. 塩田晋

    ○塩田委員 赤松局長が国連におられ、また公使として活躍されましたその体験を通じてのお話しを伺いまして、非常に重みのある御答弁だったと思います。  そこで、先般の本委員会におきます参考人の意見聴取の中で、経営者の方が、雇用の分野における男女の平等は、我が国企業にとってはいまだ経験したことのないものであり、差別はあってはならないと思うが、その内容がよくわからない、したがってどう対応していいかわからないので、法律で強制されては困るという御意見を述べられたのでございますが、このような企業の側の立場と、女性の基本的人権の確保のための措置との均衡を政府としてどのように考えておられるか、御見解をお伺いいたしたいと思います。
  187. 坂本三十次

    ○坂本国務大臣 その問題につきまして、審議会でも随分長年にわたって勉強をせられたことと私は敬意を表しておるわけでございます。もちろん企業の方にいたしましても、今までやったことのないことをやるんだというところでは大変な戸惑いもあろうかと思っております。しかし、今までの長い審議の間に、個別的には三論併記であっても、みんなの意見としては、あるべき姿は、職業選択の自由によって女子が自覚に基づいて雇用の場で働きたいというのならば、これはやはり女性の能力を伸ばす方が本人のためでもあり、また大きな国家、社会のためでもある、全体としては雇用平等法、均等法というものはつくった方がいいということだけは間違いなく合意をいたした、こういうことでございます。しかし、個別的、具体的な面につきましてはいろいろな論があったと思いまするが、その点につきましては、やはりあるべき姿に向かって前進をするということで、私どもが決断をいたしまして法案として提出をいたした次第でございまして、私どもといたしましては、ここでスタートした方がいいという気持ちは感ずる次第でございます。  それは生態系破壊などというような、非常に日本独特の男女間に基づくものでありまして、イスラムほどではありませんけれども、非常に根強いものがあるということはこれもまた事実でありまして、しかし、そこをしばらくの時間はかけてもあるべき姿の方に徐々にでも持っていく方がいいのではなかろうか、ちょうど今がタイミングがいいのではないか、潮どきではないかな、私どもはこう考えてこの法案を出したわけでございます。  例としては不適当かもしれませんけれども、環境アセスメント法案なんというものは、私はそんなに問題があろうとは思いませんけれども、ちょいとしたけつまずきで、潮ときを外したばかりにいまだに日の目を見ない。これは引き合いに出して例がいいか悪いかは別問題でありますが、潮どきということを申し上げた。男女の問題だって、今やる方がベターだ、私はそう思ってならぬ、だからぜひお願いをしたい、こう思っております。
  188. 塩田晋

    ○塩田委員 今、第二のアセスメント法案にならないようにというお考えを述べられたわけでございますが、アセスメント法案につきましてもいろいろいきさつがあって、やっとでき上がった法案がたなざらしになって、ついに廃案になって、いまだに今国会に出されていないという現実がございます。このようなことにならないように、大臣は、男女雇用の平等を推し進めるということに不退転の決意で当たっていただきたいと思います。  そこで大臣、ひとつお伺いしたいと思いますのは、例えば国家公務員の採用試験、人事院試験がございます。その中で、順位からいいますと上位、十位あるいは二十位、五十位、百位という上の方で女性の方が相当おられると思うのです。受験数の割には成績がいいのではないかと思うのです。ところが実際各省庁に採用されている女性の方々は極めて少ないのじゃないか、このように思うわけです。  といいますのは、ここで見ておりましても、きょうの社会労働委員会におきましては婦人局長、我が国ただ一人の女性の局長が見えておりますし、また各課長も女性の方が並んで待機をしておられる、一番多いわけでございます。ところが、ほかの省庁の方が答弁に見えるときには女性の方はほとんどおられない。それだけに、まだまだ女性の職場進出は、公務員、特に中央官庁におきましては少ないのではないか。受験をし、合格したその割合に対しまして非常に少ないのじゃないか。それだけ女性の職場進出が阻まれておるのじゃなかろうか、このように思うわけでございます。これについてどのようにお考えになっておるか、御答弁をいただきたいのでございます。  昨今の新聞、テレビ等で非常に世界的な話題を呼んでおりますアメリカ民主党の副大統領候補にフェラーロさんが決定をいたしました。また英国におきましてはサッチャー首相、インドにおきましてもガンジー首相、女性でございます。またかつてはアルゼンチンはペロン、あるいはスリランカはバンダラナイケ首相、これは女性でございました。そういった点から見ますと、我が国におきまして、例えば閣僚につきましても初代が中山厚生大臣だったかと思いますが、女性の初めての大臣ができました。その後も近藤さんと続きましたけれども、もう最近では大臣が全然いない。女性の大臣がどうしてできないのか。国連の方には公使として行っておられる方もあるようですが、大使も高橋さんがデンマーク大使として最近までおられましたが、今はいないと思います。我が国の場合を考えてみますと、まだまだ女性の進出が少ないのじゃないか、このように思いますが、大臣はこのような状況についていかがお考えでございますか。
  189. 坂本三十次

    ○坂本国務大臣 私もあなたと同じ、遠い将来かあるいはもっと近い将来かは知らぬが、女性の中でも優秀な人はどんどん進出してきてもらう方がお国のためだ、社会の活力になる、女性御本人も生きがいを持たれる、いいことだと思っておるわけでございます。しかし大臣はおりません。これは、今ちょうど政権は自民党がとっておりまして、参議院にはおりますが、衆議院に一人も女性がおらぬのです。参議院はまあまあおりますから、決して女性大臣が出ないということはなかろうと思っております。まあまあ時間の問題であろうと思っております。特に公務員は憲法で、国との関係で性によって差別してはいかぬということになっておりますから、公務員は採っておる。しかし、その採り方が足らぬということでございましょう。それも、先ほど生態系のお話を出されるくらい、我が国におきましては総じて男性主導型で来たことは事実でございまして、それはそれなりに立派に機能した点もありまするが、まだまだもっと女性の能力活用をやる余地は十分にある、こういう気持ちがいたしましてこの法律を出したようなわけでありまして、この法律は民間の雇用の分野ではありまするが、今あなたがおっしゃったような女性の能力活用という点におきましては、大きな波紋を日本の全体に及ぼすことができるのではなかろうかというような、私はそういう期待を持っておるということでございます。
  190. 塩田晋

    ○塩田委員 次に、男女雇用機会均等法案の中身についてお伺いいたします。  特に雇用の入り口における募集、採用についての差別は基本的な問題でございます。西ドイツでは募集は努力義務となっておるようでございますが、これに基づいてどのような行政指導が行われているのでございましょうか。そしてどのような効果があったと考えられますか。  「まず隗より始めよ」という言葉もあります。国や地方公共団体の積極的な指導が必要であると考えられます。公共職業安定所におきましてはどのような対応をされるおつもりでございますか、お伺いいたします。
  191. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 まず、西ドイツについての、この募集の努力規定になっておりますそれの運用の実情でございますが、詳しい実態調査的なものを十分やったわけではございませんが、昭和五十八年の二月に、婦人少年問題審議会の婦人労働部会の代表委員が、西ドイツの雇用庁及び安定所の視察をいたしまして、その辺につきましての運用上の状況を聴取してきておるわけでございます。  それによりますと、求人は男女ともに行うことが望ましいが、職場の実態などにかんがみまして努力義務となっていることは現状ではやむを得ない、こういうような認識でございます。そしてまた、この安定所におきましては、使用者に対しまして労働市場における性別の不均衡の現状というものの周知に努め、これを是正するために男女ともに求人をするような指導ということに力を入れておるということでございます。こういう中で全般的には事態は改善の方向に向かっておりまして、使用者の方も機会均等を進めていくということについての考え方は徐々に浸透をしてきておりまして、数字的にもそういった面の是正は出てきておるわけでございます。現に、安定所におきまして、特に性を特定しない形での求人が一九七六年には三・三%しかなかったわけでございますが、六年後にはそれが二〇%に増加をしてきておる。さらにまた、職業紹介という形で行いましたものでは、その紹介の全体の約六割が性による特定をしていないという形のものに努力規定の中で行われてきておるわけでございます。しかし、現実にはやはりいろいろ問題等もございまして、いろんな要因が影響してくるということで、ドイツの場合には、使用者がそれぞれ企業で十分検討した上で、やはりこれは男でなければしょうがないとか、これは女でなければどうも困る、こういうような形で男女別の求人をしてきたときに、これを安定所におきまして指導という形で一方的に変えさせるというようなことについては問題がある、こういうようなことで、徐々にそういう周知をしていくという形の中での努力が徐々に実りつつある、こんなような現状でございます。  で、今後、この均等法案が成立、施行されます段階で、公共職業安定所におきましては、これはしばしばここで議論にもなっておりますように、募集、採用等につきましても具体的な「指針」というものが出されるわけでございます。したがいまして、その「指針」に基づきまして、安定所におきましては、いろいろ求人者に接するチャンス、これは求人受理の際は一番多いわけでございますが、それ以外にも、いろいろ集団的な形でのこういう事業主指導というのをいたしておりますので、そういうようなあらゆる機会をつかまえまして、こういう募集、採用についての「指針」というものについての具体的な周知徹底を図っていく、そしてまた、求人受理の際には、「指針」に反するようなものについてはぜひひとつ「指針」の方向での求人に変えてほしい、こういうような形での指導を進めていく、こんなような形になろうかと考えております。
  192. 塩田晋

    ○塩田委員 募集、採用につきましては、法第十三条の苦情の自主的解決でも適用除外されております。また、機会均等調停委員会の調停の対象からも外されておるということでございますが、これはいかなる理由によるものでございますか。  なお、募集、採用をめぐるトラブルがあった場合に、直接の女子自身のみではなく、その女子が属する労働組合等の第三者が、婦人少年室長の援助を求める等のことができるかどうか、お伺いいたします。
  193. 松原亘子

    ○松原説明員 お答え申し上げます。  募集、採用が第十三条の苦情の自主的解決及び機会均等調停委員会の調停の対象となっていない理由は何かというお尋ねでございますが、この法案におきましては、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保の促進を事業主の責務として位置づけておりまして、さらにその責務とされました範囲内において労使間で紛争が起こった場合には、その自主的な解決を事業主の努力義務というふうにいたしております。  その解決の方法といたしましては、既存の労使間の紛争の解決のための措置を活用することが適当だと考えまして、企業内の苦情処理機関等にゆだねるということを例示として法律明記いたしておりますけれども、この募集、採用といいますのは、企業と企業外の女子との間の問題であるということで、そのような企業内での労使の話し合いにはちょっとなじまないのではないかということから、募集、採用は自主的解決の対象ということにはいたさなかったわけでございます。  また、この募集、採用を調停の対象としませんでしたのは、募集については不特定多数の者を対象として行われるわけでございまして、個々の労働者と事業主との間のいわば私法上の紛争というようなものが起こるということは考えられないわけでございます。また採用につきましては、一たん既に企業が採用行為を終えてしまった後に問題が起こるわけでございますが、そういう場合に調停に付しましても、なかなかその女子労働者が納得するような解決の道を見出すことが難しいということから、対象にいたしませんでした。  また、そもそも募集、採用というのは労働契約締結以前の問題でもございますので、事業主と応募者というのは全く単なる私人ということで特別の関係はないわけでございますので、この制度によります調停にはなじまないというふうに考えたわけでございます。  ただ、募集、採用について、第十四条の室長の紛争の解決の援助というのは、労働省令で定める事項について行うわけでございますが、その募集、採用が労働省令で定められる範囲内におきましては、婦人少年室長の紛争の解決の援助の対象というふうにいたしておりますので、それによりまして効果を上げるように努力いたしたいと思っているところでございます。  それから、女子本人ではなくて、例えば労働組合等の第三者が援助を求めることができるかどうかということございますが、その十四条の趣旨は、私法上の紛争の解決を、両当事者の申し出に基づきまして、その間の両当事者間の円満な話し合いを進める、行政機関が側面からそれを援助するということで解決を図ろうとしているものでございますので、当事者でない労働組合等が援助の申し出を行うという場合には、この援助の対象とすることは考えていないところでございます。
  194. 塩田晋

    ○塩田委員 次に、育児休業について政府の見解を求めたいと思います。  政府案では、産前産後休業等母性保護措置の拡充はされておりますけれども、やはり女子が乳幼児を抱えながら就業を継続するのは容易なことではございません。また、せっかく雇用の分野において男女平等の確保のための枠組みを設けましても、現実には出産、育児等のために退職せざるを得ないという女子も相当にあるはずでございます。そこで、育児休業の一層の普及促進を図ることが必要であると考えますが、まず今回の法案で育児休業請求権を法制化しなかったのはどのような理由でございますか。
  195. 赤松良子

    ○赤松政府委員 お答えいたします。  育児休業を請求権として全女子労働者あるいは女子労働者のみならずすべての労働者に与えるということについては、私どもといたしましては重大な問題と考えまして、婦人少年問題審議会の婦人労働部会の中でも重要なテーマの一つとして御審議をいただいたところでございます。  先生御指摘のように、育児休業が小さい子供を持って働く女子労働者にとって大変有効な望ましい制度であるということについては、勤労婦人福祉法の中に育児休業を事業主の努力義務として制定した当時から十分に認識をしているわけでございまして、この法律の努力義務を根拠として私どもは普及に努めてきたところでございますが、何分まだ育児休業を制度として有している企業は一割を超えたという程度のことでございまして、審議会の中でも、多数意見としては、ただいまの時点で直ちに請求権を法制化するというにはやや時期が早過ぎるのではないか。また、企業の中におきましては育児休業を直ちに取り入れるためにはまだ準備も整っていない。例えば代替要員の問題あるいは労働者が復帰したときのその方たちの処遇の問題、いろいろございまして、十分な受け入れ態勢もまだ整っているとは言えないというような問題もございます。そこで、審議会の多数意見も、まだ当分の間はこの育児休業制度の普及ということが先決であって、直ちに請求権にするということは、多くの賛成を得られなかったわけでございます。  しかし、この問題が重要である、育児休業が望ましい制度であるということについてはだれも異論を差し挟むわけではございませんので、法制化ということ以外の方法で、あるいはこれまでよりも充実した形で普及に努めていきたい、このように考えております。
  196. 塩田晋

    ○塩田委員 政府も育児休業の普及促進のための対策を講じてきたと思いますけれども、普及率は今言われましたように一四%程度でございます。今回の改正案で、新たに育児休業について第二十八条第二項の援助規定を新設されておりますけれども、具体的にこれに基づくどのような援助を考えておられるか。この委員会でももう出ましたが、現在の援助では有効でないと思われます。新たなものを検討されてしかるべきではないかと思います。また、将来の方向として、先ほど申し上げました育児休業の請求権を法制化することをぜひとも検討していただきたいと思います。  育児休業は、女性自身のためばかりでなく、次代を担う国民が健全に育成されるためにもぜひとも必要なものでございます。労働大臣に対しまして、その普及促進についての決意を最後にお伺いしたいと思います。  このことにつきましては、私がなぜ強調するかといいますと、大臣とも同じ派におられました故早川崇元労働大臣が、――ここに持ってきておりますけれども、私はこれをほとんど形見としていただいておるわけでございます。各国を友納議員とともに回られまして、立派な「育児休業制度調査報告―東西ヨーロッパ諸国の現状―」と題する書類をいただいております。私は早川さんに呼ばれまして、そして、ぜひともひとつこれを提案をして、皆さんの力で我が国においても実現していただきたいということを、本当にもう精魂込めて私に言われました。これはほとんど遺言だと私は思っております。そういった中でこのことを申し上げているわけでございます。  また、私自身のことにわたって恐縮でございますけれども、私の母も大正時代のいわゆる自由な空気を吸いまして、現職の教師をしておりまして私が生まれたわけでございます。同僚の教師とかあるいは用務員、その家族等の御好意を得まして、私も当時の小使室でいろいろと世話をされて乳幼児期を過ごした、こういう経験があります。当時はごくわずかなそういったいわゆる職業婦人だったと思うのですけれども、今や女性の多くの者が、そして働く者の四〇%の者が職場に進出をしている。そういう中におきましてこの育児休業、これは非常に重大な問題でございます。  諸外国におきましては、一年の休暇を与えるところもあれば、男女に休業を与えるところもありますし、また休業手当を支給するといったところも見受けられるわけでございます。そういったところに一挙にいかないといたしましても、そのような方向に向かって大きく前進をしていただく、少なくとも援護措置につきまして、また請求権法制化につきまして早急に検討いただきまして、実現方を要請いたしまして、質問を終わります。
  197. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 育児休業につきましての普及援助につきまして、現在雇用保険の四事業におきまして検討いたしておりますので、私の方からちょっと答えさせていただきますが、それにつきましては、現在のように制度発足に対してだけ奨励するという形では不十分であろうというようなことで、この制度適用者についても何らかの援助措置を講じていくという方向で、現在検討を進めておるという段階でございます。
  198. 坂本三十次

    ○坂本国務大臣 この育児休業制度につきましては、今回の法改正によりまして、企業の努力義務だけではなしに国の援助義務もつけ加えた、一歩前進というところでございますが、考えてみれば、確かに今あなたのおっしゃる御趣旨はまことにもっともな点があると私は思います。早川先生のことも私はよく承っております。こういう育児休業制度が法制化されて、請求権もあればどれだけ助かるかということも私にはよくわかるわけでございます。しかし、今直ちにといっても、何さま審議会が、大勢としてもうちょっと待とうというところでございますので、今行政指導、予算措置その他によって着実に努力をしながら、ひとつ我が国の生産性の向上の配分も、この育児休業制度にその一部を回してもいいのではないかという時代が近づきつつありますから、そういう時期をとらえて、ひとつ前向きに、常に忘れず検討していきたいと思っております。
  199. 塩田晋

    ○塩田委員 ありがとうございました。
  200. 有馬元治

    ○有馬委員長 田中美智子君。
  201. 田中美智子

    ○田中(美)委員 五月九日に答申が出されまして、今度の法案が国会に提出されたのが五月十四日でした。きょうの質問は、もう一度原点に戻りまして、この法案の位置づけられた点を質問したいと思います。  五月二十三日が会期末だったわけですから、ちょうど五月十四日、提出された時点から九日しかないというところにこの法案が出てきたわけです。その時点まで、国民の多くは平等法が出てくると思っていたわけです。ですから大変びっくりいたしまして、一体どうして均等法になったのだろうということで、それを九日間で審議して国会を通そうという気ではないかということに対する怒りにも似たような気持ちが起きたわけですが、なぜこんなにおくれたのでしょうか。おくれるということではなく、なぜこのような時点にこの法案を出してきたのか、簡単にお答えください。
  202. 坂本三十次

    ○坂本国務大臣 確かに審議会の経過を見ても時間がかかりました。しかし、私どもとすれば、これでもその審議会の建議を受けてできるだけ早くまとめたつもりであります。ただ、国会の会期末などで十分な時間がなかったということは残念なことでありますが、しかし、まだ相当な時間が残っておるのに、出さないというよりは出した方がいい。あるいはまた、審議の時間が今後ずっと続くかもしれませんしね、やはり審議した方が審議しないよりはいいに決まっておるということで出したわけでございまして、問題は内容でございましょうから、そこの点をひとつ政府案もよく吟味して、評価すべき点は評価していただきたいと思っています。
  203. 田中美智子

    ○田中(美)委員 会期末まで九日しかないというところに出してきたということは、小さな法案ならばそういうこともあり得ますけれども、婦人の参政権にも匹敵すると言われるほど大きな問題を出してきていながら九日間で審議する、延長されるからそこでやろうということを考えているならば、これも非常におかしいというふうに私は思うのですね。それは国会軽視ではないかと思います。  もう一つの問題は、均等法になったということで、男性の関心はまだ十分ではありませんけれども、特に婦人は非常に驚いたわけですね。平等法というふうに思っていたわけです。  ことしの二月六日に衆議院の本会議で、中曽根内閣総理大臣の施政方針演説がありました。これに対して各党の代表者の質問があったわけです。それに答えて、二月九日、公明党の竹入議員に対しては、中曽根さんは、男女雇用平等法はできるだけ早い時期に国会に提出する予定だというふうに、「平等法」という言葉も使っているわけです。それから、同じ日の二月九日、共産党の瀬長亀次郎議員の質問に対しても、男女雇用平等法について、「審議会の議を経まして、早期に法案提出を目指して努力しておるところでございます。」と答えているわけです。当然その時点でも国民も平等法と思っていたわけです。この中身の問題についての考え方というものがそちらと差があるのかもわかりませんけれども、国民の思っていたものとは違っていた。  もう一つ、その前に、大臣も御存じだと思いますけれども、一九八二年七月に労働省の中に男女平等法制化準備室というのがありまして、こういう看板もかかっておりました。この準備室は三局合同の本格的な立法作業であると新聞にも報道されておりましたので、当然男女雇用平等法が出てくるのだと思ったわけですが、突然国会の終末の九日前に均等法などというものが出てきたということはなぜなのかということを、簡単にお答え願いたいと思います。
  204. 赤松良子

    ○赤松政府委員 現在使っております雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保を促進するための労働省関係法律の整備等に関する法律案という正式の名前が発表されたのは、四月十九日の審議会であったと記憶いたしております。それまでは、正式の名前としては事務局といたしましては一度も使ったことはございませんで、いつも男女の雇用の機会の均等と待遇の平等を進めるための法的な整備というような形で呼んでおりまして、新聞等では男女雇用平等法(仮称)というふうにいつも書かれていたように記憶をいたしております。
  205. 田中美智子

    ○田中(美)委員 それは弁解であって、繰り返しませんけれども、中曽根さんの施政方針演説に対する質問に対してはちゃんと男女雇用平等法、仮称とは言っていません、こういうふうに言っています。あなた方の中の審議ではそうであったかもしれませんけれども、看板も男女雇用平等法と掲げていたということは、国民をだまかしていたのではないかという疑いを持たれても仕方がないと思うのですね。これは本当のところはわかりませんので……。  それで次の質問にまいりますが、労働基準法研究会、これは大臣御存じのように、大臣の私的な諮問機関だと思います。ここが長い時間をかけまして、労基研報告というものを一九七八年十一月に出されています。この中を見ますと、大きな特徴が三つあると私は思ったわけです。  一つは、これは解釈の相違もあると思いますけれども、まず男女雇用平等法を新たな立法としてつくれと言わんばかりのことが書かれております。その中をちょっと読んでみますと、募集、採用、定年、解雇に至るまで全ステージについて、「男女平等を実現するには、その前提となる雇入れにおいて男女平等が確保され、就業分野の拡大が図られることが重要であるので、労働関係存続中の待遇だけでなく、募集、採用についても規制することが必要である。雇用機会の男女平等が確保されなければ、労働関係に入る前に女子が排除されるおそれがある。」と、非常にきちっとここで審議された。特に私が力を入れたところがきちっとあなたの諮問機関でうたわれています。  それから、それを保障するために「行政機関の是正命令などの措置が設けられているものであること。」、それから「弾力的方法により差別が解消されない場合には、最終的に行政機関が命令を出すなどにより、是正を担保することが必要である。」ということで、新たな立法をせよ、そして性差別を禁止することが必要だということ、非常に積極的な意見がここに取り入れられているわけです。それが一つの特徴です。  もう一つの特徴は、今まで労働基準法の中にありました、私たちの言っている母性保護規定というものが二つに分けられて、いわゆる妊産婦保護規定と女子保護規定、この二つができたことに特徴があると私は思うわけです。そのときに、女子保護規定というものは、男女が同一の基盤で働くために、緩和するなり廃止するなりというようなことが書かれていた。これは非常に大きな反響を呼びまして、母性保護の後退ではないかということで、婦人たちが労働省に押しかけることもあったというようなことはよく御存じだと思うのです。大臣は御存じかどうかわかりませんが、局長はその経過はよく御存じだと思うのです。そうしますと、こういうふうに労基研の報告のいい部分というものは抹殺されまして、我々から見れば非常に大変なところだけが今度の法案の中に入れられているというふうに私は思うわけです。  それで、この平等法、我々は平等法と思っていたわけですが、あなた方が進めていた均等法がどんなふうに進められてきたかということをちょっとおさらいしてみたいわけです。  この報告書が出ましてから、婦人少年審議会の婦人労働部会にこれが報告されて、そこで自由な討議がなされた。しかしそのときにやはりどうすべきか、この我々の言う母体保護の後退、いや、それは女子保護規定だからこれは取っ払う方が男女平等になっていくんだというような意見だとか、いろいろなことで結論が出ないままに、男女平等専門家会議が七九年に発足しております。この報告書は、いわゆる男女差別のガイドラインという形で、何が差別かということが出されたわけですけれども、一番問題になっている、母性保護なのか女子保護というふうに言うべきなのかというような重点的な問題というものは、ここでは先送りということで十分な討議がなされないままに、ただ強調されたことは、女子の勤続年数が非常に少ないというようなことがあったというふうに私は思います。こういう報告書が出されました。  それから同じ年ですが、すぐに婦少審の婦人労働部会で、いわゆるこの均等法の実質審議が開始された。そして二年後に、ついこの間の四月十九日に建議という形で提出され、その建議は三論併記という形で出されたことは大臣もこの時点からはよく御存じだと思います。そして五月九日には要綱を受けて答申というものが出まして、これは両論併記というふうになったわけです。両論併記ということになっておりますけれども、基本的な考えとして一致している点というのは、この均等法にはなお多くの部分で不十分な点があるということが労使の意見が一致をしたところということと、もう一つは、これはできるだけ早く見直しをすべきではないかということがこの答申の中で基本的に一致したところだったというふうに思います。あと一致しないところが両論併記という形で答申が出されたわけです。大体こんな経過で進められたと思いますけれども、評価の点は別としてこれに誤りないでしょうか。
  206. 赤松良子

    ○赤松政府委員 先生のただいまの御説明は、私ども伺っている限り正しいと思います。
  207. 田中美智子

    ○田中(美)委員 そうしますと、こうした政府の機関といいますか、研究会や審議会や専門家会議というところで、結局は婦少審でも一致を見ないままに踏み切ったというところにこの法案の大きな特徴がある、出してからも見直さなければならないというようなものが初めから出てきているのではないかというところに問題があると思うのです。私は、だからこそ国会提出が非常におくれたのであるし、それも五日前に出すというふうな非常に不手際な、結果的には不謹慎な結果になったのではないかと思います。  これに対する私の評価ですけれども、財界は初めかもねらっていたのではないか、労基研が始まったのは六九年ですからこれは国際婦人年の前からですね。財界は何とかしてこの女子保護規定というものを取っ払いたい、残業は女にもさせたい、深夜も女にさせたいというふうな意向があったのではないか。これは私の推測です。そういうことで、ちょうどこの女子保護規定というふうに労基研で言われたので、これはチャンスとばかりに、こういう均等法をつくるときにこれに乗ったのではないかというふうに思うわけです。  私は非常に善意に解釈いたしまして、婦少局は、今度の均等法や今までのあり方というものに必ずしも全面的に賛成ではなかったというふうに思います。今まで婦人局長の答弁や大臣の答弁を聞きましても、いろいろすれ違いがあったかもわかりませんが、あなた方には、胸を張ってこの均等法を誇りにしているのだ、これができれば必ず二年、三年後を見てくれ、そのときには婦人が大変いい状態になるのだというお言葉は一度も聞いていないわけですので、私は非常に善意に解釈いたしまして、ただただ逃げの一手で応対をしてきたというふうに感ずるわけです、そういうことは必ずしもこの法案に全面的に賛同はしていないのだ、しかし財界からの大きな圧力があった、この法案は決して完璧ではないし自信も十分ではない、しかし財界に抗し切れないという形でこういう形になったのではないかというふうに私は推察するわけです。しかし、財界に屈したということは口が裂けても言えないことですから、私はこれをそうであったろうというふうな質問はいたしません。  それで、イギリスのガーディアン紙というのが、この日本の法案が出たときにこういうことを言っています。ちょっと大急ぎで読んでみますので、大臣よく聞いていてください。  「英紙ガーディアン二十一日付の東京特派員電は、日本でいま雇用平等法制定が日程にのぼりつつあるが、その原案は骨抜きにされ、「男性社員にお茶を入れたあと、おじぎを忘れるな」と教える本がベストセラーになるなど、日本で職場の女性差別が生き続けていることを伝えています。同紙は、日本では女性が労働力の三五パーセントを占めるにもかかわらず、昇進の機会はほとんどなく、賃金も同資格の男性の五~六割という事例が多いと指摘。」というような形で、まだこう書いております。最後に「「日本は国連婦人差別撤廃条約を来年までに批准すると誓約しており、いま問題になっている雇用平等法は、日本が同権を与えたことを世界に印象づけようとするもの」だが、「中曽根氏の与党に資金を提供している財界によって、原案は骨抜きにされている」とのべています。」、こういう外電が日本に来ているわけです。これは一ガーディアン紙の評論ですけれども、外国の新聞からこのような批判を受けているという乙とは大臣は御存じでしょうか。
  208. 坂本三十次

    ○坂本国務大臣 ガーディアン紙のことは私、直接読んでおりません。けれども、内外からそういう意見もありましょう。しかし、もっと評価されるような意見も余計聞いております。必ずしも今のガーデアン紙の意見が私は大勢であるなどとは思っておりません。財界の圧力に屈したなどということはない、こちらの圧力に財界がたじたじとした、こういうことであります。(傍聴席にて発言する者あり)
  209. 田中美智子

    ○田中(美)委員 よくもしゃあしゃあとそんなふうにおっしゃれると、本当におかしくなってしまいますけれども……
  210. 有馬元治

    ○有馬委員長 田中君、ちょっと待ってください。  傍聴人の皆さん方に御注意申し上げます。  ここは国会の議場でございますので、審議中は一切の私語が禁じられており、笑い、どよめきも慎しんでください。これを守らない人は退場してもらいますことがございますので、御注意申し上げます。
  211. 田中美智子

    ○田中(美)委員 今の委員長の発言、私は不穏当だと思います。私は、特別に奇声を出すとか、特別に大きな声を出すとかということは禁じられているかもしれませんが、人間ですから、余りおかしなことがあれば思わずぱっと出るというのは、同時に出ることでありますから、それほど議場を混乱することでなければ、そのような御注意は不穏当だというふうに思います。(「議場の整理は理事に任せよ」と呼ぶ者あり)  ですから、結果的には委員長にお任せしますが、私の意見を申し述べたわけです。  さて、来年はケニアのナイロビで世界婦人会議が開かれるわけですが、このままの法案が国会を通れば、ガーディアン紙だけでなく、世界の先進国の中で笑い物になるのではないかということを私は非常に心配するわけです。日本の政府は外国に向かっては私の政府でもあるわけですから、日本が世界で恥をかくというのは耐えられない気持ちがいたします。先ほどいろいろコーランの話など出ましたけれども、日本は経済大国第二位と言われている国で、少なくとも先進資本主義国の中でこれが笑い物になるということは、本当に残念なことだと私は思いますので、もう一度これに対して、あなた方の出した法案に対して十分な検討をし、世界に恥ずかしくないものにして、もう一度出し直すということを私はしばしば要求しているわけです。  先ほど大臣は、財界からの圧力はなかったというふうに言われておりますが、外国の新聞でもありますし、日本の新聞でもありますし、また、うわさやいろいろな形で財界の圧力があったということは、これは相当広がっていることです。これは事実かどうかというのはわかりません。しかし、この法案をよく見ますと、私自身の分析でも財界に屈した点が幾つかある。基本的な問題というのは省きます。第一、こういうふうになったこと自体が、もう全面的に圧力に屈したとも言えますけれども、この法案の中身を素直に見る中で、疑問点が非常にたくさんあるように私は思うのです。  人のつくった法案にけちをつけるということはたやすいことです。ですから、私たちは自分でも法案をちゃんとつくってみました。このようにしたらどうかということをつくってみました。  この法案ですが、今までは、こんな大変な均等法が通ってはならないというので、十分な審議をする必要がある、早目にこれを出しますと、審議促進になるのではないかということで、これを出す時期をねらっておりました。ところが、きょうは採決するそうで、私たち共産党・革新共同はきょうの採決というものは断固反対です。しかし、残念ながら、自民党も、共産党を除く他の野党も採決には賛成ということで、きょう採決になってしまったわけですので、急遽、きょう私たちの法案を提出いたしましたので、これが政府案とどこが違っているか、こういうことを、十分に謙虚にもう一度我々の法案を見て、そして御検討願いたい、そういうふうに思います。  それで、次の質問に移りますが、財界に屈しているのではないか、これはうわさでなく、私自身が法案を見てそう感ずる箇所を幾つかお聞きしたいと思うわけです。  まず、この労基研報告でも言っていますように、新しい立法をせよというふうに言っているのです。これは答申を見ますと、労働者側は単独立法を要求しています。しかし、財界はこれに対しては無言でいるわけですね。何も言っていない。ということは、これが勤労婦人福祉法の改正案で出てきたというところに私は非常に疑問を感ずるわけです。私は、労働省としても新法をつくろうといろいろ研究した節を知っていますので、これがどこかで財界から指摘されたのではないかというふうに思うわけです。これは質問いたしましても、大臣は屈していないと言わざるを得ないと思いますので、この点が一つあります。  その次です。二番目には、労働側は罰則をつけろと言っているのに対して、財界側は罰則なし、しかし、強行規定になった場合には範囲を限定せよということを、この答申を見ますと言っています。教育訓練及び福利厚生について強行規定にする場合は、なるたけしたくないけれども、する場合にはその範囲を限定せよ、こう言っているわけですね。この限定せよということがどういうことかということは、あなた方の出された均等法を見てみますと、特に教育訓練、福利厚生、定年、退職、ここの強行規定になっているところの文章を見てみますと、「女子であることを理由に」というふうに書いてあります。これは九条、十条、十一条ですね。七条と八条は、「女子に対して男子と均等に」と書いてあります。努力義務のところは、「女子に対して男子と均等に」、男子と女子を均等にしなさいとはっきり言っているわけです。努力義務のところは屁でもないから、きちっとした言葉を使っている。しかし、九条、十条、十一条は禁止規定になっているわけですから、質的に違います。ここには、「女子であることを理由に」というふうに範囲が定められているわけです。  しばしばここでも質問いたしましたが、女子が残業を今より多くし、また深夜勤までしなければならないということになると、現実にはなかなかできない。残業もしたくない、深夜勤もしたくないという姿勢を示せば、女子であることでない、女ではない、残業をしたがらない、深夜働かないということで、これは逃げ道がちゃんとつくられているのではないか、こういうふうに思うのですが^一体、ここのところはなぜ、七条と八条の中身と、九条と十条と十一条のこの言葉遣いが変わったのか。これがまさにその範囲を限定せよと財界側が言ったことを入れたのではないかと思うのですが、この点をお知らせください。
  212. 赤松良子

    ○赤松政府委員 先生のただいまの御議論の主たるメーンテーマと申しますか、それは財界の圧力に屈したということを具体的に御指摘になったところだろうと思うわけでございますが、まず一つは、法形式の問題については、財界と申しますか、そういうところからは何ら、これは全く事実でございますが、何らの発言もと申しますか要望というようなものは、あった事実はございません。  それから、法形式は全く私ども事務局が考えたことでございます。  それから次に、建議の中身についていろいろ御指摘がございますが、婦人少年問題審議会は、たびたび申し上げたかと存じますが、労使・公益の三者構成でございます。この中で使用者側の御見解も、労働者側の御見解も長い時間をかけて伺ったわけでございますから、使用者側の御見解も当然取り入れ、労働者側の御見解も当然取り入れているわけでございます。一方だけを取り入れるというようなことではないわけでございまして、それは公益の試案あるいはその後の建議、また法案の要綱、そして現在提案中の法律案などをつぶさに御検討いただければ、その両者あるいは公益の意見をどのように取り入れてきたか、そして、私がその間の新聞発表などで尋ねられて答えた言葉で申し上げますと、その答えが余りよくなかったかもしれませんけれども、微妙なバランスをとったつもりであるというふうに答えている時期もございましたが、そのように使用者側、労働者側、公益側それぞれの御見解を十分に伺ったつもりでございまして、一方的に「財界の圧力」とおっしゃることは当たらないのではないかと思う次第でございます。
  213. 田中美智子

    ○田中(美)委員 そのようにお答えになる以外にはお答えのしょうがないというふうに思います。  私は、この客車をずっと表にして比べて見ているわけです。ところが、労働者側の意見がどこに取り入れられているか、こう思うから言っているわけですね。使用者側の意見というものがずっと取り入れられているから言っているのであって、気持ちとしてはそのつもりがないというふうに言わざるを得ないのだと思いますが、ある大手の広告会社の人事部長が、まさに「有益無害」ということを言っているわけです。こういう日本語があるかどうかわかりませんが、この法案は大手の企業にとっては有益であって何の害もない、ですから、女であることということで差別さえしなければ、結果的には男女が平等にならなくても、女が全部補助的なところになり、みんなパートになってしまっても、女であるから差別をしたのではないということにすればこんなものは屁でもないということで、「有益無害」ということをちゃんと一般の新聞に堂々とうたっているわけです。しかし、労働者の方からは、これをもろ手を挙げて賛成などという人は私はまだ一度も聞いておりませんし、新聞でもそういうのは一度も見ていないということを見ましても、この法案が財界主導型で、どういう主導かわかりませんが、そういう形で出されていったということを強く感ずるわけです。  その次に、もう一つは生理休暇の問題ですけれども、法案を見ますと、私も初めはだまされそうになりました。余り現行法と変わってないじゃないか、生理休暇は残ったのかというような感じが最初したわけですが、どこが違うか文章をよく比べてみますと、「生理休暇」という言葉と「生理日」という言葉が違っているわけですね。これはどこにあれがあるのかということは、幾ら労働省にレクを受けても今なおはっきりしないわけです。ですから、今なおよくわからないわけです。  しかし、五月の末に人事院の研究会の報告が出されました。それに対しては、「疾病の場合と同様に考えて対応することが適当と考える。」というのを書いてありました。はあ、こういう裏があるのかというふうに改めて思ったわけです。そしてもう一度答申をよく見てみますと、私は表をつくって比較しているわけですが、労働者側は廃止は絶対反対、こう言っているわけですが、使用者側の方は疾病による就業不能と同様にする、こう言っているわけですので、まさにこれは、法案だけを見ていますとふとだまされそうですけれども、こうなるのではないかという心配をするのですが、この点はどうなのでしょうか、はっきりお答え願いたいと思います。
  214. 赤松良子

    ○赤松政府委員 先ほど来、使用者側の意見のみ取り入れられて労働者側の意見が取り入れられていないというふうにおっしゃいますが、例えば使用者の方は、女子保護の規定については全廃という御意見でございます。労働者側の御意見の方にずっと寄っているというふうに私は考えております。その点につきまして使用者側は大変不満が残っている、今なお不満が残っているというふうに考えるわけでございます。  朝日新聞だろうと思いますが、その先ほど御指摘になりました使用者側といいますか、企業の一人の方の感想でございましょうが、それはかなり古い時点での感想だったというふうに私は記憶をいたしております。その後、いろいろと労働者側の御意見も取り入れて内容は変わっているということは、労働時間のところ、あるいは深夜業のところを考えていただいても明らかでございます。  それから、主な御質問は生理休暇のところでございましょうが、生理休暇につきましては、建議の段階で、「生理休暇は、医学的にも、また婦人差別撤廃条約上も母性保護措置とはいえず、廃止すべきであるが、生理日の就業が著しく困難な女子がいることは医学的にも明らかであり、それらの者については何らかの形での配慮が必要であること。」という、これが多数意見でございます。  もちろん、「本項については、母性保護措置ではないので生理休暇制度を存続する必要はないという意見と、母性保護のため必要であるので現行通りとすべきであるという意見がある。」と……。  多数意見と申し上げましたのを訂正させていただきます。ここは三論併記の部分でございますから、多数意見ではなくて、最初に読みましたのは公益側の見解でございました。そのように三論併記でございます。  そこで、使用者側の見解は、「生理休暇制度を存続する必要はない」という意見でございます。これを取り入れたわけではございませんで、公益の意見でございます。生理日の就業が著しく困難な女子がいるということに着目をいたしまして、それらの方が生理日に休暇をとれるようにしたのが現在の規定でございます。
  215. 田中美智子

    ○田中(美)委員 長々と、私が聞かないことに答えないでいただきたいと思うのですが、結局今のことは何を言っているかわかりません。簡単に言えば、今まで全く物がないところで、使用者と労働者側が話をしてこうやったのならいいですよ。今まであるものを全部後退させておいて、そして、使用者側の意見も入れたんだ、労働者側の意見も入れたんだ、そんなことは論理が基本的に狂っていると言わざるを得ません。  時間がありませんので次に伺いますが、これは四月十七日に法案要綱が出て、それを新聞記者にレクをしています。そのときの要綱には、教育訓練のところで「習得」させるという言葉が使ってあったのですが、十九日がいわゆる新聞記者にとっても解禁という形で、この諮問を十九日にするということで公表された。そのわずか二日の間に「付与」という言葉に変わっているわけです。このなぞの二日間に一体何があったのか、そう思うのですね。  これは私、新村出編という広辞苑で「習得」と「付与」というのを調べてみましたが、「習得」というのは習って会得すること、習って覚えてしまうことですね。「付与」というのはただ与えただけであって、習得したかしないか、身についたかつかないかということは関係ないのですね。ということは、非常に後退しておりますし、これは法律家の意見を聞きましても、「習得」ということは権利的表現であり、「付与」というのは恩恵的な考え方だということです。わずかこのなぞの二日間に、労働省が公表したものが、二日間の後にはこれが「付与」になっている、後退しているということは、だれが考えたって、そこで労働省がみずからの判断でもってそのように訂正したとは思えないわけです。これだけちまたに財界が新聞の表に出てきているだけに、だれもそのようには思えないわけです。時間がありませんので、そのお答えはもう聞きません。  それから、答申が九日に出ても、これが法案として出された五月十四日までに、ほかの法案ですと十日間も印刷に時間がかかるとかなんとかと言っているのに、九日に答申が出たにもかかわらず、五月十一日にはもう法律になって印刷がされて閣議決定されている。それも、普通ならば自民党内で政務調査会で了承をとる、それはそちらの勝手ですけれども、そうする。それをぱっと飛び越してぱっと閣議決定している。こういうところを見ましても、これは大変におかしなものだというふうに思わざるを得ません。  時間がありませんので、共産党・革新共同は修正案を出そうということで検討したのですけれども、修正するところがない。全文削除ということにならざるを得ないのですね。それで、全文削除という形で我が法案を入れました。ただ一つの改善であった妊産婦保護のところ、これは武士の情けということでこの法案の中に残しました。しかし、これに対しては大変不満です。産後わずか二週間延びただけで、これは労基研でやはり妊産婦保護は積極的にもっと改善せよと言っているのからすればほど遠い。実際に日教組の調査でも、学校の先生たちの八〇%は産前産後八週間というものをとっているわけですし、いろいろな企業でも約二、三〇%の企業が八週間、もはや自分の力でとっているわけですね。それよりもおくれたものを出してきているということは、ここのただ一つの改善案に対しても私は大変不満ですけれども、私たちの修正案の中にはここだけを残しました。そうして、形としては修正案を出しましたので、これに対してはぜひ十分な検討をしていただきたい。そして、今国会では、これはきょうの採決もぜひ取りやめなければいけないのではないか、もっと慎重に審議しなければならないのだというふうに思いますが、大臣の御答弁をお願いします。
  216. 坂本三十次

    ○坂本国務大臣 採決するとかしないとか、時間をどれぐらい与えるというのは、これは委員会の独自の判断でございます。  私どもは、今あなたがおっしゃるように、国会、前の会期ですけれども、それにも出したということは、それはそれなりの非常に覚悟がある。延長の見通しをしたというのは賢明であって、決して悪いことではない。  それからまた、自由民主党の中で政調会を吹っ飛ばしたというのは、それは共産党の中ではそうすると問題が起こるかもしれませんが、自民党がいかに熱意があるかということをこれで示しておるのだ、こう思っております。
  217. 田中美智子

    ○田中(美)委員 ほかの法案はそういうことをしないのに、この法案に限ってそういうことをしたというところにも不思議なところがありますしね。それが私は異常だということを言っている。(小沢(辰)委員「自民党は全部済んでいますよ」と呼ぶ)あなたには物を言っていません。――これは非常に異常だということを言っているわけです。ですから、こういう問題については十分に共産党・革新共同の案を参考にしまして、もう一度この法案はおろして出し直しなさいということを言っているわけです。出し直すということを言っていただきたいと思いますが、まあ、言わないでしょうね。
  218. 坂本三十次

    ○坂本国務大臣 合うっかりあなたのお話に乗せられて、自民党は政審もやらないで総務会で閣議決定した、こう私もちょっと勘違いしました。今聞きましたら、ちゃんとみんな手続を踏んでおるようであります。非常に熱意があるわけであります。よって、私どもも政府としても自信がございますし、私どもの法案は撤回はいたしません。
  219. 田中美智子

    ○田中(美)委員 撤回はしないでしょうけれども、これに対しては、婦人からの大きな怒りが自民党にいくということだけははっきり申し上げて、私の質問を終わります。
  220. 有馬元治

    ○有馬委員長 江田五月君。
  221. 江田五月

    江田委員 歴史的な法案の本院における最後の質疑者という光栄をお与えいただきまして、答弁の方も最後の答弁になりますので、大変でしょうが、どうぞひとつ謹聴して答弁していただきたいと思います。  この募集、採用、配置、昇進、第七条と八条ですが、これが努力義務にとどまっておる。しかし、努力義務にとどまっていても心配ないのだ、世界に冠たる日本の行政指導で大いに頑張ってやっていくのだというお答えですが、さあ、それではその行政指導の基になる「指針」が十二条にあるわけですが、一体どのような指針をおつくりになろうとしているのかということについて伺います。  まず、この「指針」は恐らく二つほどの種類のものがあるだろう。将来の目標設定、つまり、例えばこれこれこういう職種では女子労働者をこのくらい雇わなければならぬとか、そういう目標設定としての「指針」、それからもう一つは、目標設定ではなくてどういうケースは差別があると考えるのか、どういうケースは努力がまだ足りないと考えるのか、そういう法律解釈における「指針」、そういうものもあるかと思いますが、どういう「指針」をお出しになろうとしているのですか。
  222. 赤松良子

    ○赤松政府委員 法案第十二条の「指針」の性格でございますが、数値を挙げて示すというような性質のものではないというふうに考えております。募集、採用、配置及び昇進について、すなわち努力義務になっている項目につきまして、現在見られます男女異なる取り扱いはいろいろあるわけでございますが、その是正のための努力を事業主に求めるものについてその目標として定めるものでございまして、具体的にどのような方法ということになりますと、これは先ほど来何度か申し上げておりますが、審議会にお諮りして決めるということにいたしております。
  223. 江田五月

    江田委員 努力を求めるのだ、それはそうでしょう。努力義務での「指針」ですから、努力を求めるに決まっているわけですが、具体的内容は審議会にお任せをしておるといって、それでどうして一体この「指針」があるから行政指導で大丈夫、やっていけるのだということが言えるのですか。
  224. 赤松良子

    ○赤松政府委員 内容につきましては、最終的なことは審議会にお諮りするわけでございますから、ここで私が申し上げるわけにまいらないわけでございますが、大体どういうような内容が考えられるかということにつきましては、これまで何度か話の出ております男女平等問題専門家会議の報告におきまして、男女異なる取り扱いがいろいろと見られる、例えばこのようなことは問題になるであろうということが書かれております。それなどは非常に大きなといいますか、有力な参考になるのではないかと思いますので申し上げてみますと、例えば募集、採用につきましては、男子のみあるいは女子のみの募集あるいは採用をしたり、男女別に募集、採用人数の枠を設ける。それから、男女異なる年齢、女子についてだけは非常に年齢が若いというような場合があるかと思います。それから学歴を違える、男子大学卒、女子高校卒というようなやり方があろうかと思います。あるいは逆があるかもしれません、それは余りないのではないかと思いますが……。それから、資格を男女別に条件をつけて募集や採用をする、あるいは女子についてだけ婚姻をしているかどうか、主として結婚をしているということを条件に、あるいはネガティブな条件にする。子供の有無、自宅通勤かどうか。先ほど容姿端麗という言葉も出ましたが、容姿について女子についてだけ条件をつける、そうしてそれを募集、採用の条件にする、あるいは男女異なる雇用形態、つまり常用か臨時か、男子が常用で女子が臨時というような場合がこれに当たると思います。あるいは就業形態、これはフルタイマーとパートタイマーの別のようなものでございますが、それについて募集、採用を異なってするというようなことが、募集、採用についての検討の内容になろうかと思います。
  225. 江田五月

    江田委員 今いろいろおっしゃったのはもちろんそうだと思いますが、そういう例えば男子のみ、女子のみはもちろんですね、男女別の枠を設けるとか、これは、女子に対して男子と均等な機会を与えるとは一体どういうことであるかという内容ですね。努力についての「指針」はどうなんですか、こういう例えば男子のみ、女子のみというような募集の形があったら、これはもうそれだけで努力をしていないというふうに判断をする、こう考えてよろしいんですか、そういう「指針」とするということでよろしいんですか。
  226. 松原亘子

    ○松原説明員 ただいま局長が申し上げましたような例が仮に「指針」の内容といいますか、事業主が努力すべき目標として定められることになりましても、そしてそれを達成していない状況がたとえあったとしても、それをもって直ちに努力をしていないということにはならないのではないかと思います。それへ向けてすべての企業が努力していただくように行政指導をやっていくということでございます。
  227. 江田五月

    江田委員 ですから、女子と男子の均等な機会とは何であるかという「指針」はそれは出せます。だけれども、努力をするというそれを「指針」を出して行政指導するんだから大丈夫だとおっしゃる、努力の中身は全然「指針」がないじゃないですか。
  228. 松原亘子

    ○松原説明員 機会均等法の十一一条は、「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇が確保されることを促進するため必要があると認めるときは、」努力義務とされた事項につきまして、「事業主が講ずるように努めるべき措置についての指針を定める」ということになっておりまして、先ほど例として、例えば女子のみとか男子のみという例がございましたけれども、そういうものを「指針」の中に定めることとし、それに向けて各企業が自分の雇用管理を見直し、できるだけその「指針」を遵守できるようにしてもらうというものでございまして、どのように努力するかというものの「指針」ではないわけでございます。
  229. 江田五月

    江田委員 均等な機会の「指針」はあっても、努力については何の「指針」もない、しかし法律は七条にしても八条にしても努力をしか求めていない、これでは「指針」があっても募集、採用、配置、昇進、いずれも男女の機会の均等ということは実現できない、こうならざるを得ないと思いますが、これは余り議論をしていてももう時間がありません。  次に十三条ですが、苦情の自主的解決ということになっておって、「苦情処理機関に対し当該苦情の処理をゆだねる等その自主的な解決を図るように努めなければならない。」というわけですが、こうなっておりますと、これはいろいろ男女の不平等がある、差別があるときに、これをまず例えば調停に持っていくとか、そういう公の機関に解決をゆだねるより先に自主的に解決しなさいよ、こういうことで自主的解決が前置になる、自主的解決をまずやらなければならぬということになって、結局この自主的解決のための苦情処理機関はこれは事業所の中に設けられるわけですから、泣き寝入りを強いられることになる。この自主的解決の条項があるために、逆に文句をどこにも言ってはいけないようなことになってしまう。そういう機能を果たすのじゃありませんか。
  230. 松原亘子

    ○松原説明員 お答えいたします。  この十三条を設けました趣旨は、この男女の機会均等をめぐります労使の問題といいますのは、企業の中でまず労使が自主的に話し合って解決していただくことが最も望ましい、そうすることによって、単にその当該女子のみならず、企業全体の雇用管理のあり方が見画される契機にもなるわけでございますので、こういうことは非常に望ましいやり方だということで設けたわけでございます。  ただ、今先生御指摘ございましたように、この十三条があるばかりに、それを通さないで調停とか紛争の解決の援助を求めるということができなくなって、かえって救済がおくれるのではないか、また泣き寝入りになるのではないかという御指摘がございましたけれども、それは必ずしも、この十三条は十四条ないし十五条の前置という形にしているわけでございませんので、もしどうしても企業内でそういうことを解決することが難しいということであれば、必ずしも企業の中でそういうことをやらなくとも、室長の援助を求めたり調停を申請するということは可能になっているわけでございます。
  231. 江田五月

    江田委員 十四条の勧告ですが、募集、採用、配置、昇進についての勧告、努力義務についての勧告というのは、どうもこれまたぴんとこない概念なんですが、一体どういう段階で、どういう場合に、どういう内容の勧告をするのかということについて、ある程度具体的にこういうことを今考えていますよというようなことがお示し願えますか。
  232. 松原亘子

    ○松原説明員 十四条は、この条文の書き方は「均等な機会及び待遇に関する事業主の措置で労働省令で定めるものについての女子労働者と事業主との間の紛争に関し、」と書いてございまして、つまり七条、八条、九条、十条、十一条に規定されております事業主が講ずる措置すべてを紛争の解決の援助の対象とするという書き方にはいたしておりません。これは今先生の御指摘があった点とも関連するのでございますけれども、事業主の措置のうち、まず禁止規定、すなわち九条、十条、十一条、これについては当然紛争の解決の援助を行政機関としてやることになろうかと思いますけれども、努力義務規定とされた事項につきましては、先ほど「指針」のお話しがございましたけれども、「指針」を定めそれに向けての企業の努力を促すということにしておりますので、そういう「指針」を定める趣旨も考慮いたしまして、努力義務のうちどの範囲をこの解決の援助の対象にするかは、今後検討いたしたいと思っているわけでございます。
  233. 江田五月

    江田委員 じゃ、ちょっと「指針」に戻りますが、先ほど募集についてはある程度具体的な中身をおっしゃいましたけれども、採用及び配置、昇進、これの「指針」というのは具体的にどういうことか、明らかに願えますか。
  234. 松原亘子

    ○松原説明員 採用、配置等につきましても、結局男女で異なる取り扱いがいろいろあるわけで、そういうものをなくすものとして「指針」の内容として定めるかどうかという検討をするわけでございます。先ほどの募集とあわせまして採用については、例えば男子のみしか採用しないとか、女子のみしか採用しない、またいずれも採用する場合であっても、女子についてだけいろいろな制限をつけるというような、募集と採用と裏腹でございますので、ほとんど同じような内容かと思います。  また配置につきましては、例えば女子というものを一定の仕事にしか配置しないというような方針をつくっているとか、それから配置転換のルールを決めるような場合に、女子は例えば事業所間の配転はしない、つまり事業所内だけの配転で転居を伴うような事業所間の配転はしないとか、一方、男性の方はそういうことに構わず転居を伴う配転はどんどんするといったような、そういう配転のルールが違うというようなことも対象になろうかと思います。  また昇進につきましては、企業によりましては昇進試験、試験制度を設けまして、その試験にパスした人を管理職にするというような制度を設けているところもございますが、そういう場合に、女子にはそういう昇進試験の受検資格がないというようなこともあるやに聞いておりますが、そういうものはこの「指針」の作成に当たっての検討の対象になろうと考えているところでございます。
  235. 江田五月

    江田委員 紛争解決の援助、それから調停の委任、まず紛争解決の援助の点ですが、「関係当事者の双方又は一方からその解決につき援助を求められた場合」、「援助を求められた場合」というのはこれはどういう場合ですか。援助を求められた場合ですが、書面で求めなければならぬとか、あるいは口頭でもよろしいとか、あるいは電話でもよろしいとか、あるいは匿名でもよろしいとか、あるいはまた本人が求めてこなくても第三者でもよろしいとか、あるいはそこまではっきりしなくてもそういう援助を求めているようなケースがあるよということを探知したというようなケースでも活動することができることになるのか、その辺のことはどうですか。これは案外重要でして、実際にいろいろな差別を受けている労働者の側というのは、うっかり申し立てて、申し立てたことによって不利益をこうむってはならぬわけですけれども、しかし、現実問題、うっかり申し立ててそれで何か仕事を失うようなことになったら、これは生活にかかわるというような心配は、当然今までのケースからも起こってくるわけですから、この解決の援助を求めるということは、一体どういう場合なら援助を求めたと言えるのか。つまりどういうケースなら今の助言、指導、勧告などができるかということは重要だと思うのです。そこを明らかにしてください。
  236. 松原亘子

    ○松原説明員 十四条の趣旨は、いわば労使間の私法上の紛争が起こった場合に、その特定の紛争を具体的に解決するために行政機関が援助をするというものでございますので、その対象となるものは特定される必要があるわけでございます。  それから、助言、指導、勧告するに当たりましても、その女子労働者からの訴えだけではなくて、一方の当事者たる企業にもその事情等は聞くことが必要になってくるわけでございます。ただ、具体的手続といたしましては、必ず書面でやらなければいけないかというと必ずしもそうではないと思います。それは婦人少年室の方に来ていただいて事情を十分話していただく、そういう口頭で申請するということでもそれはもちろん構わないわけでございます。ただ、電話等で申請があるというようなことについては、その後のいろいろな手続を進める上でいろいろ問題があるのではないかと思っておりますし、また匿名で、婦人少年室にいらっしゃる場合にはもちろん御本人には名のっていただかなくては、どういう問題があるかということの解決のしようもないわけでございますので、そういうことははっきりさせていただくにしても、匿名にしてほしいという御希望があることはわかるわけでございます。ただ、事実上特定の紛争の解決の援助でございますので、結果的に最後まで匿名で通すということはなかなか難しいのじゃないか。例えば最終的に助言、指導、勧告をやる場合にも、このケースについてということを特定して言わざるを得ないということがございますので、匿名ということを最後まで通すのは非常に難しいのじゃないかと思っております。  それから、これは最初に申し上げましたように、特定の個人と使用者との間の私法上の紛争の解決を側面から援助するという性格のものでございますので、例えばその女子労働者が所属しておる労働組合等の第三者が援助を求めるというのはちょっと想定していないことでございます。
  237. 江田五月

    江田委員 実際にこういう紛争が特定するというところまでいけばこれはもうかなりのものでして、実はそうではなくて、あの手この手でわからぬようにというのがいっぱいあるわけですね。そういうときに一体どうするかということになっていないとやはりこれは力にならない。  最後になりますか、調停の関係です。調停というのは、もちろん言うまでもなく、最後の調停案を受け入れるかどうかというのは当事者双方の自由に任されているわけですが、最後に調停を受け入れる、つまり調停から解決へ出る出口のところではそれは自由ですが、十五条は入り口のところも当事者の同意を必要としているということなんですか。それならば一体なぜ入り口のところまで同意が必要なのか。さらにまた同意を一々確かめるのですか。それとも、別に同意を確かめるということなく、調停手続に入って、嫌々でも渋々でも、とにかく相手が出てきて調停の中に乗っかればそれでいいのか。あるいは入り口のときに、あなたは調停に同意されますかどうですかということをあらかじめ念を押して、嫌ならやめてもいいんですよということまでちゃんと教えてあげて確認するのか。そういう扱いはどうなんでしょう。
  238. 松原亘子

    ○松原説明員 調停の開始要件としまして、一方の当事者のみならず他方の当事者の同意を必要としておりますのは、調停というのはそもそも双方の互譲の精神にのっとって円満に事態を解決するという性格のものでございますので、そもそもそういうものを欠いている場合に、果たして円満な解決というのが期待できるかというと決してそうではないということから、最初から当事者が調停によってこの事態を解決させようという意思がある場合に、有効にそれが発揮できると考えましてそういうことにいたしたわけでございます。  それから、その同意でございますが、女子労働者が調停を申請した場合に使用者はこれに同意するかどうかにつきましては、当然室長の方にその申請が来るわけでございますので、その同意を得るに当たりましては、婦人少年室長が適切にアドバイスをし、円滑に施行できるように努力をいたしたいと思っておるところでございます。
  239. 江田五月

    江田委員 今の調停にしても、これは調停という正式の手続ですから、双方または一方から、これはそれこそ正式な調停の申請がなければだめだということになるんだと思います。そうすると、今の十四条にしても十五条にしても、いざいざと立ち上がって申し立てていくというそこまで事態が進まなければ、あるいはそういう勇気ある人がいなければどうしようもない。現実にはあそこの企業は大変なことをやっているんだとかいろいろありながら、そして、婦人少年室にしてもその他の機関にしてもそういうことを察知し得た場合であっても、結局これは何もできないんじゃないか。現実にあそこの事業所ではこうこうこういうようなうわさがいっぱいあって、しかもかなりの証拠もあって女子労働者が差別をされている実態がある、そういうようなことを察知できた場合に、これは婦人少年室というのが一体どうするのですか。何か手があるのですか。
  240. 松原亘子

    ○松原説明員 今まで御質問のございました十三条、十四条、十五条は個別の紛争でございますので、今のようなことになるわけでございますが、ただいま御質問のございました点につきましては、第三十三条におきまして「労働大臣は、この法律の施行に関し必要があると認めるときは、事業主に対して、報告を求め、又は助言、指導若しくは勧告をすることができる。」、この権限の「一部を都道府県婦人少年室長に委任することができる。」というふうに二項に書いてございまして、ただいま御質問ございましたように十三条、十四条、十五条、これらによって室の方に女子労働者がおいでになった場合に、それを端緒としてこの三十三条に基づいて、室がその個別の女子労働者の問題としてではなく、企業内の雇用管理の問題として、いわば職権といいますか、その端緒は女子労働者からの訴えなりその他の第三者からの訴えがあるかもしれませんが、それを端緒といたしまして、改善のための指導を三十二条を根拠としてやることができることになっているわけでございます。
  241. 江田五月

    江田委員 では、三十三条の助言とか指導とか勧告とかをしてもらいたいとうずうずしている人がいて、そして、自分は法律の執行に関し必要があると思うので何とかしてくれないかと、労働大臣あるいはその権限の委譲を受けた婦人少年室長に何かの形で申し出る、そういう人がいた場合に、そういう個人に対しあるいは団体に対し、婦人少年室長の方は、こういう考え方です、こういう手だてをとりました、こういう結果でしたということを報告したりはするのですか、しないのですか。
  242. 松原亘子

    ○松原説明員 三十三条に基づきましてどのような措置をとったかということは、必要に応じてそれを申し出たといいますか、訴えた女子労働者等に報告することはあるかと思います。
  243. 江田五月

    江田委員 この「指針」についてもうちょっと伺いますが、六条の方の「基本方針」は「指針」のさらに基になるような「方針」というような関係にはあるのですか、それとも全く関係ないのですか。
  244. 松原亘子

    ○松原説明員 この「女子労働者福祉対策基本方針」というのは、「指針」が極めて具体的な機会均等の実現の努力目標を示すのに対しまして、むしろそれを定着させていきまして、機会均等部分に関して言えば、そういう「指針」で定めた事項をどういう形で世の中に定着させていくか等の、女子労働者にとっての均等な機会及び待遇を実現するための施策の基本となるべき事項を定めるわけでございまして、ちょっと「指針」とはその性格を異にしているものでございます。
  245. 江田五月

    江田委員 もちろん「指針」と性格を異にしているのはわかっているのです。その「指針」の基本になるような、「指針」のもとになるような基本方針というふうなお答えだと今伺ったのですが、それならば、「女子労働者の福祉に関する施策の基本」こういうことになるのですが、なぜ男女の雇用の機会均等、差別をなくしていくということが「福祉に関する施策の基本」ということになるのか。こう見てみますと、一条から六条まではずっと「福祉」で統一されておって、やっと七条になってから「機会の均等」という言葉が出てくるわけで、六条の一項も「福祉に関する」でしょう。二項は、今度は「基本方針に定める事項」というのは「職業生活及び家庭生活の動向に関する事項」、「福祉の増進について講じようとする施策の基本となるべき事項」というわけで、三項、四項、五項、六項とずっと見てまいりましても、この「基本方針」は今の十二条の「指針」とは、これはレベルが違うということはありますが、まるきり性格も全然違っているように読めるのですが、どうなんですか。
  246. 松原亘子

    ○松原説明員 この第六条に言います「福祉の増進」といいますのは、狭い意味での福祉ということではございませんで、今回の均等法の名称からもわかりますように、すなわち「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等女子労働者の福祉の増進に関する法律」というふうに改めているわけでございまして、「福祉の増進」の中には、男女の均等な機会及び待遇の確保も含まれているわけでございまして、「福祉の増進」というふうにはくくってはおりますけれども、均等な機会及び待遇の確保のために講じようとする施策と、それにあわせまして女子労働者の職業生活と家庭生活との両立のための施策等も含まれることから、それらをひっくるめて「福祉の増進」というふうにいたしたものでございます。
  247. 江田五月

    江田委員 十六条、機会均簿調停委員会ですか、これは婦人少年室に置くわけですが、どういう構成にされますか。やはり調停委員会ですからね、何人かの構成になるのでしょうが、少なくとも半数は女性でなければならぬと思うのですね。  大臣、今の公のさまざまな審議会、委員会その他で、女子が一体どのくらい委員の割合を占めているか御存じですか。これは大臣に伺ってみたいのです。大臣がどの程度の認識をお持ちかということを伺ってみたいのです。
  248. 坂本三十次

    ○坂本国務大臣 各種審議会に女性は割と少ないように聞いております。今聞きましたら五%程度だということです。
  249. 江田五月

    江田委員 横からすっとお教えくださると、それはもう答弁は完璧になるのでしょうが、大臣の認識という点を聞いておきたいのです。五%弱ですね、四・六%ぐらいですか。  「国連婦人の十年」の国内行動計画では一体どのくらいの数字を目標としているか、大臣に伺いたいのですが。一いや、わかってもわからなくてもいいのです、そのこと自体は。ただ、今の日本の政府の閣僚の皆さんがどの程度の認識かということだけ伺っておけばいいわけですから。
  250. 坂本三十次

    ○坂本国務大臣 所得倍増ということがありますから、倍増という方がいいんじゃないかと思います。
  251. 江田五月

    江田委員 大変いいお答えで、一割なんですね。ですから、現実は五%以下で、行動計画でせめて一割にしてくれ、これが女性の皆さんの願いなんですね。まことにささやかな、まことにかわいそうな願いじゃないでしょうか、大臣。せめて機会均等調停委員会ぐらいは、これは女性の差別の問題を扱うのですから、少なくとも男女同じ数、女性が半分は入るべきだと思いますが、そういうことをお考えになりませんか、大臣。
  252. 坂本三十次

    ○坂本国務大臣 女性の中の学識経験者で立派な方がおられると思いますので、この際はやはり女性が多い方がいいと思いますね。大体、審議会でも、藤田会長を初め渡辺さんは小委員長ですか、そういう方々が活躍されました。ですから、今度の調停委員会でもそういう方々がこぞって応援していただけることは非常にありがたい、なるべく多い方がいい、こう思っております。
  253. 江田五月

    江田委員 私はついせんだっての文教委員会で例の家庭科の男女の共修、これは婦人差別撤廃条約を批准するために、同一の教育課程で男女が勉強しなければならぬ。そこで今の中学校、高等学校における家庭科というものが、中学ではほんの一部、一緒に勉強するところがありますが、大部分が男子は技術領域、女子は家庭領域に偏っておる。高等学校では家庭一般は女子が必修、男子は選択だけれども、実際の学校のカリキュラムでは男子は選択さえできない。その間は柔道か剣道がやっていなさい、こういうことになっているので、これでは婦人差別撤廃条約を批准できない。そこで、これをどうするのだ、文部省で検討会議をつくって、こういうケースですから少なくとも女性の委員の方を半分は入れてはどうですか、こういうことをお願いをして、半分までいきませんでしたが、十六人のうち女性の委員を七人入れていただいたわけです。  これは男女の雇用の関係ですから、もうもろに男女平等のことですから、まだ文部省の方はいろいろとあれこれ言いわけができるかもしれませんけれども、ここはもうできないわけですから、ひとつきちんと通達でも用意をされて、この機会均等調停委員会は、この男女の配分について……(「時間超過だ」と呼び、その他発言する者多し)配慮をするようにということを約束してもらえませんか、どうですか。(発言する者多し)
  254. 有馬元治

    ○有馬委員長 答弁、答弁をしてください。――赤松婦人局長
  255. 赤松良子

    ○赤松政府委員 先生の、男女雇用問題についての調停委員会であるから、女性をできるだけ多く入れるようにという御指摘はまことにごもっともと存じますので、具体的な方法を講じて……(発言する者多し)
  256. 有馬元治

    ○有馬委員長 御静粛に願います。
  257. 赤松良子

    ○赤松政府委員 数をふやすようにいたしたいと思います。
  258. 江田五月

    江田委員 終わります。(発言する者多し)
  259. 有馬元治

    ○有馬委員長 御静粛に願います。     ―――――――――――――
  260. 有馬元治

    ○有馬委員長 この際、村山富市君から発言を求められておりますので、これを許します。村山富市君。
  261. 村山富市

    村山(富)委員 議事進行に関する動議を提出いたします。  先般来、内閣提出、男女雇用機会均等法案及び野党四党提出に係る男女雇用平等法案の審査を行ってきたところでありますが、両案の議事を進めるに当たり、内閣提出案に先立ち、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党・国民連合及び社会民主連合の四党共同提案に係る男女雇用平等法案を議題として、その審査を進められんことを望みます。  この四党案は、これまでの審査の中で明らかにされましたように、近年女子雇用者の数がますます増加の一途をたどり、全雇用者の三分の一を占め、日本経済にとって欠くことのできない労働力となっていること、しかし、就業の機会や賃金、昇進、その他の労働条件については極めて多くの差別の実態が存在していることも明らかにされました。それだけではありません。政府提出の均等法案の成立を先取りして、基準法が改正されるものとして、公然と婦人労働者に時間外・深夜労働を押しつけている企業さえあらわれていると聞いています。まさに、政府案は逆に差別を拡大し、女性をパート労働に追い込む役割を果たすことになりかねないものと言わなければなりません。  野党四党により提出された男女雇用平等法案は、こうした現状を正しく認識した上で、女性差別撤廃条約の趣旨を踏まえ、雇用における男女の機会均等と待遇の平等の確保を図るために、使用者による性別を理由とする差別を禁止するとともに、その差別を迅速かつ適正な手続により是正するための有効な措置がとられて、真に実効の伴うものとしたものであります。  この四党案は、その性別による差別の排除を闘い続けてきたこれまでの運動と闘いの実績を踏まえ、労働団体にあっては、総評を初め労働四団体及び全民労協、婦人の各層を代表して、四十八の団体が手を結んでつくられている国際婦人年日本大会の決議を実現するための連合会、さらに法律家の立場を代表して日弁連の皆さんの意見を考慮して、翼に男女雇用平等の実現を願ってつくられた法案であります。  何とぞ、慎重な審査を進められんことを心からお願い申し上げる次第であります。  以上です。(拍手)
  262. 有馬元治

    ○有馬委員長 村山富市君提出の動議を採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  263. 有馬元治

    ○有馬委員長 起立少数。よって、本動議は否決いたしました。     ―――――――――――――
  264. 有馬元治

    ○有馬委員長 内閣提出雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保を促進するための労働省関係法律の整備等に関する法律案について審査を進めます。  これにて本案に対する質疑は終局いたしました     ―――――――――――――
  265. 有馬元治

    ○有馬委員長 愛知和男君から、自由民主党・新自由国民連合提案に係る修正案が、また浦井洋君外一名から、日本共産党・革新共同提案に係る修正案が、それぞれ委員長の手元に提出されております。  両修正案の提出者より順次趣旨の説明を求めます。愛知和男君。     ―――――――――――――  雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保を促進するための労働省関係法律の整備等に関する法律案に対する修正案(愛知和男君提出)     〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――
  266. 愛知和男

    ○愛知委員 ただいま議題となりました雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保を促進するための労働省関係法律の整備等に関する法律案に対する修正案につきまして、自由民主党・新自由国民連合を代表いたしまして、その趣旨を御説明申し上げます。  修正の要旨は、原案において「昭和五十九年七月一日」とされていた部分の施行期日を「公布の日」に改めることであります。  何とぞ、委員各位の御賛同をお願いいたします。
  267. 有馬元治

    ○有馬委員長 浦井洋君。     ―――――――――――――  雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保を促進するための労働省関係法律の整備等に関する法律案に対する修正案(浦井洋君外一名提出)     〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――
  268. 浦井洋

    ○浦井委員 日本共産党・革新共同を代表して、政府の男女雇用機会均等法案に対する修正案の提案理由及び内容の概要を説明いたします。  本来、雇用における男女の平等とは、国の民主主義の問題として、母性の保護を当然の前提とし、雇用機会、賃金、昇進昇格等職業生活のすべての面で男子と同等の機会、権利を保障するものでなければなりません。  それは、婦人労働者の人格的尊厳の確立に資するとともに、社会的生産活動において、女子の能力の全面的な開花、発揮を保障し、民主主義の発展と社会進歩に貢献するものであります。  ところが、今国会に提出され、審議されている政府の男女雇用機会均等法案は、長年の婦人労働者の願いと期待に背き、極めて実効性の薄い機会均等法と抱き合わせに、女子労働者の労働条件を大幅に悪化させる労働基準法の改悪が一体のものとされています。  国会の審議などを通じて政府案の内容が明らかになるにつれて、全国で労働基準法改悪反対、実効ある雇用平等法の制定という多くの婦人労働者の声が沸き起こっているのは当然のことであります。  日本共産党・革新共同は、この婦人・国民の声と要求にこたえ、真の男女雇用平等法を制定するために、本修正案を提出することといたしました。  その内容については、お手元に配付をしたとおりであります。  何とぞ、委員各位の御賛同をよろしくお願いをいたします。  以上であります。(拍手)
  269. 有馬元治

    ○有馬委員長 以上で両修正案についての趣旨の説明は終わりました。  この際、浦井洋君外一名提出の修正案について、国会法第五十七条の三の規定により、内閣の意見を聴取いたします。坂本労働大臣。
  270. 坂本三十次

    ○坂本国務大臣 ただいまの日本共産党・革新共同の修正案につきましては、政府としては反対であります。     ―――――――――――――
  271. 有馬元治

    ○有馬委員長 これより原案及びこれに対する両修正案を一括して討論に付します。  討論の申し出がありますので、順次これを許します。浜田卓二郎君。
  272. 浜田卓二郎

    ○浜田(卓)委員 私は、自由民主党・新自由国民連合を代表して、内閣提出雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保を促進するための労働省関係法律の整備等に関する法律案について、自由民主党・新自由国民連合提出の修正案及びその修正部分を除く原案に賛成するとともに、日本共産党・革新共同提出の内閣提出法案に対する修正案に反対の意を表するものであります。・御承知のとおり、近年の我が国における女子労働者の増加は目覚ましく、全雇用労働者に占める割合は三分の一を超えるに至っております。今や、女子労働者はすべての産業、職業に進出し我が国の経済社会において重要な役割を担っており、今後ともその活躍が期待されるところであります。  一方、女子自身についても、近年、高学歴化、平均寿命の伸長等ライフサイクルが大きく変化するとともに、女子自身の職業に対する意識も向上しています。  国際的にも雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保は世界的な潮流となっており、また我が国も、昭和五十五年に署名した婦人に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約につきましては、昭和六十年までに関係国内法を整備し、その批准に備えることが要請されております。  これらの情勢を考慮に入れますと、我が国においても、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇を確保するための立法措置を講ずることが必要であると考えます。  今回の政府案の主要な柱である雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保の促進のための措置については、募集等に関しては努力規定にし、定年、退職、解雇等に関しては禁止規定とするとともに、その実効を図るため、事業主による自主的解決の促進、都道府県婦人少年室長の助言、指導または勧告、都道府県ごとの機会均等調停委員会の調停を措置しております。  これらは、婦人少年問題審議会の法律の制定、改廃を行う場合には、その内容は将来を見通しつつも現状から遊離したものであってはならず、女子労働者の就業実態・職業意識、我が国の雇用慣行、女子就業に関する社会的意識等の我が国の社会、経済の現状を踏まえたものとすることが必要であるとの建議を踏まえて措置されたものであり、我が国の現状に照らし適切なものと考えます。  また、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇を実質的に確保するために、出産や育児等で一時期家庭に入り、子育てが一段落してから再び働くという女子が多くいることを踏まえて、政府案では、再雇用特別措置の普及等を図るとともに、生児を有する女子の就業の継続が可能となるような育児休業の一層の普及促進のための援助措置を新設することとしているのは、まことに時宜を得たものであります。  労働基準法の女子保護規定につきましては、今回の政府案は、妊娠及び出産に係る母性保護措置を拡充し、それ以外の女子保護規定については廃止または緩和しております。  女子に対する特別の保護措置は、女子の能力発揮や職業選択の幅を狭める結果をもたらす場合があり、母性保護措置は別として、男女の均等取り扱いとは相入れないものであり、婦人の差別撤廃条約の趣旨に照らせば本来廃止すべきものと考えますが、政府案においては、婦人少年問題審議会の建議を踏まえて女子保護規定の部分的改廃を行ったものであり、適切な保措置がとられたと考えます。  一方、日本共産党・革新共同提出の修正案については、現実的でなく賛成しかねるものであります。  なお、修正案の形をとりながら実質的な新法律の提出を行っていることにつきましては、予算を伴う内容でもあり、国会法上手続的な疑義があるということもあえて申し添えさせていただきます。  以上の理由により、私は、自由民主党・新自由国民連合の修正部分を除く政府案に賛成するとともに、日本共産党・革新共同提出の修正案に反対するものであります。  なお、政府案に対する自由民主党・新自由国民連合の修正案は、労働基準法第百条の二に規定する権限の主体の名称を「婦人少年主管局長」から「婦人主管局長」に改正する部分の施行期日について、当初昭和五十九年七月一日とされていたところ、同日までに法案が成立しなかったので「公布の日」と改めるものであり、妥当であると考えます。  最後に、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保を促進するための施策を今後とも講じられていくに当たって、ぜひとも配慮すべき点を要望したいと存じます。  雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保は、雇用の分野のみならず、広範に社会、家庭のあり方、ひいては国のあり方にも深く関連する問題であるということは事実であります。この問題に関するスウェーデンを初めとする北欧諸国、アメリカ等における実験はまことに貴重なものであり、これを他山の石とすべきであります。  最近、アメリカでは、機械的に男女を同一にするのではなく、それぞれのよさを再認識しつつ、実質的に男女の均等な取り扱いを推進するというセカンドステージに入ったと言われております。男女の均等な取り扱いは我が国の憲法第十四条でも明定され、また国際人権規約、婦人差別撤廃条約等の国際条約にも明言されている基本的人権でありますが、同時に、それぞれの国において長い歴史的背景を持つ社会的、文化的事情とも密接不可分に絡み合っております。  したがって、西欧文化の直訳という形でこれを推進するのではなく、我が国の歴史、文化、社会意識等の国情を十分踏まえた日本的な味つけを行うことが何より肝要かと存じます。この点を踏まえて男女の均等な取り扱いを推進するよう強く要望して、私の討論を終わります。(拍手)
  273. 有馬元治

    ○有馬委員長 村山富市君。
  274. 村山富市

    村山(富)委員 政府が提案されました雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保を促進するための労働省関係法律の整備等に関する法律案の採決に当たりまして、私は、日本社会党・護憲共同を代表して、政府原案並びに同修正案に反対の討論をいたすものであります。  私は、まず第一に、その立法形式、立法方法の問題点を指摘したいと存じます。  今、雇用における男女の機会均等及び待遇の平等の実現、確保が課題となっているわけでありますが、政府案は、この課題に直接こたえる新たな単独立法を行おうというのではなく、現行の勤労婦人福祉法に新たな規定を盛り込むことによって、処理しようとしております。  勤労婦人福祉法は、一九六五年に採択されたILOの家庭責任をもつ婦人の雇用に関する勧告に対応する形で立法されたものであります。今直接の問題となっております雇用の分野における男女平等の実現のための法律というのは、雇用の分野におけるすべての女性差別を禁止し、母性保護を前提とする男女の平等を基礎として、女性にも男性と同様に働く権利を、つまり女性差別撤廃条約に規定されているように「すべての人間の奪い得ない権利としての労働の権利」を保障するものでなければなりません。  このように、立法目的が違うものを政府案はいわば同居させようとし、しかも一方は、それ自体改廃されなければならない法律であるにもかかわらず、強引にもそこに新たな理念に基づく立法内容を押し込もうというのは、極めて不当であります。また、新たな立法内容自体も、後で指摘するように極めて不十分であるため、両部分合体してできる法律も、結局は女子労働者福祉法となってしまっていると断ぜざるを得ません。  次に、雇用平等に関する具体的な立法措置についで申し上げますが、政府案では、まず、すべての女性差別を禁止するものとなっておらず、募集、採用、配置、昇進については企業の努力義務、教育訓練については「労働者の業務の遂行に必要な基礎的な能力を付与するためのもの」に限って禁止することになっております。これでは、女子労働者は、肝心の雇用の入り口において差別され続け、昇進の機会も与えられない結果になってしまいます。  また、苦情処理は労使の自主的解決にゆだねられておりますが、このような方法で解決するならば、女性差別問題がこれほど大きな問題にはならず、法律も要らないわけであります。  そこで行政機関の関与がどうしても必要なのでありますが、政府案では、都道府県婦人少年室長は、単に「助言、指導又は勧告」ができるだけであって、是正命令の権限が与えられておりません。  また、調停機関として、機会均等調停委員会が設置されることになっておりますが、この委員会の調停には企業側の同意が必要であるとされており、委員会の調停案の受諾勧告が出されても、企業側がこれを拒否した場合には全く無力であります。  差別された女子労働者は、結局、現在一と同様に、大きな犠牲を払って民事裁判に訴えなければならないわけでありますが、この場合でも、先ほど指摘した努力義務規定の部分などについては、救済が保障されていないわけであります。  しかも、女子労働者が苦情を企業や行政機関に申し立てる場合に心配される、そのことを理由とする不利益取り扱いについて、企業に対してこれを禁止する規定もありません。  以上、概略指摘してまいりましたように、政府案は、女性差別撤廃条約が要請しているような、すべての差別を禁止し、その実効性を確保するものとはとても言えません。  さらに第三に、労働基準法の改悪がセットされているわけであります。政府案は、特に女子労働者の時間外労働について、いわゆる工業的職種については、現行の一日二時間・一週六時間の規制を改めて、二週間について十二時間とし、その他の職種については、四週間を規制枠とし、過当なり六時間以上十二時間以内で命令で定める範囲に、大幅に緩和することとしております。また、深夜業についても、腐敗しやすい食料品関係の業務等に従事する短時間労働者を規制から外すなど、大幅に緩和することといたしております。  これでは、女子労働者が常用労働者として働き続けることは一層困難になり、むしろ不安定なパートタイム労働者が増大する結果となるのは必至であります。  労働基準法を改正するならば、男女ともに人間的な生活を送れるように、また男女ともに家庭責任を果たせるように、男女ともに労働時間を短縮し、時間外労働を大幅に規制し、深夜業についても、どうしても社会的に必要とされるもの以外は原則として禁止すべきものであります。また、そうすることによって、急増しているパートタイム労働者にも常用労働者となる道を開くべきなのであります。それが国際的な流れであり、我が国の責務でもあります。  とりわけ現在、日本の長時間労働が国際的に非難され、貿易摩擦の要因ともなっているわけでありますから、その観点からもその改善が求められておりますのに、むしろこれに逆行し、かえって国際的批判を一層強める結果となるような政府案は、断じて容認できません。  以上、反対の理由を申し述べましたが、一時代を画する歴史的所産であるべきこの法案が、主要な部分は政令にゆだねられ、その要項案すら示されていないことは、法案としての要件を整えていないものであると断ぜざるを得ません。  したがって、我が党は、政府は、この法案は速やかに撤回し、改めて女性差別撤廃条約やその他の国際条約の精神、諸規定に沿った、新たな単独立法を早急に提案すべきであるとの意見を申し添えます。この法案には断固反対するものであります。  以上、反対討論を終わります。(拍手)
  275. 有馬元治

    ○有馬委員長 森本晃司君。
  276. 森本晃司

    ○森本委員 私は、公明党・国民会議を代表して、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保を促進するための労働省関係法律の整備等に関する法律案に対し、反対の立場から討論を行うものであります。  およそ、人間の尊厳と基本的人権、男女平等は、人類普遍の原理であり、これらを求める運動は、戦後世界の一大潮流を形成してきた感があります。そして現在、その精神を基盤に雇用における男女平等の法制化は、欧米先進国はもとより、もはや国際的見地から見て、時代の趨勢であります。  我が国においても、国連で採択された婦人差別撤廃条約を批准するための条件整備を図る一環として、この法案が今国会に提出されるに至ったのであります。  しかるに、政府案は、条約の趣旨に反し、大幅に後退したものであり、雇用における男女平等を真に実現するには余りにもほど遠いものであると断ぜざるを得ないのであります。ゆえに、ここに重大なる欠陥を指摘し、政府案の撤回を強く迫るものであります。  まず、最初に指摘したいのは、政府案が勤労婦人福祉法の改正と労働基準法の一部改正を中心としており、これでは到底雇用における男女の実質的平等を確保することはできないということであります。  雇用平等法の制定は、単に女子労働者の福祉の増進にあるのではなく、その根幹をなすものは働く女性の権利保護と職業における性差別の撤廃にあり、これらは、単独立法でなければその目的を果たすことができないことは、欧米の先例が如実に物語るところであります。  しかも、欧米に比べ我が国における雇用の現場は、依然として女性の能力、適性に対する偏見や、固定的な男女の役割分担の見地から、さまざまな面で差別が存在していることも事実であります。したがって、雇用の平等実現のためには、我が党がかねてから主張しているように「男女雇用平等法」とし、「目的」及び「基本理念」に「使用者等の性別を理由とする差別を禁止し、雇用における男女の平等の確保」をうたい、女性の労働権が基本的人権であることを明示した実効性のある単独立法こそ望まれるのであります。  反対する第二の理由は、最も基本的な募集、採用、配置、昇進が努力義務規定であるということであります。単に事業主の努力義務では、差別を是正する現状打開の力にはなり得ず、かえって努力義務規定を盾に女性の差別を容認し、差別状態を固定化する危険すらはらんでいるのであります。ゆえに、募集、採用から定年、退職まで雇用の全ステージについて禁止規定にすることこそが、憲法並びに婦人差別撤廃条約の趣旨に合致し、差別解消のかなめであると断ずるものであります。  第三に、働く女性が不当な差別を受けた際の救済措置が、政府案では十分に確立されていない点であります。苦情処理は「労使の自主的解決」を主眼とし、紛争解決は、婦人少年室長の助言、指導、勧告では極めて実効性に乏しいものと言わざるを得ないのであります。  我が国の女子労働者の現実に照らせば、自主的解決の前提となる対等性が確保されておらず、自主的に解決されることは事実が示すとおり希有であります。  かかる状況下における救済機関は、自主的解決ができない場合の救済手段を持つものでなければならず、調査権、命令権を付与した機関であって初めて解決が可能となるのであります。また、これらの求めに応じなかった場合の制裁措置も規定すべきことは当然であります。  第四に、女性の時間外労働、休日労働、深夜業の制限を大幅緩和ないし廃止する労働基準法の改悪であります。今、就労構造の変化の中で求められているのは、母性保護規定の拡充、週四十時間労働の実現、深夜・長時間労働の制限、有給休暇の増加など、労働条件を改善することであります。しかるに、今回の労基法の女子保護規定の見直しは、女性労働者を男性労働者同様の劣悪な条件に追い込み、むしろ女性の労働条件を悪化させ、女性の健康と母性破壊を促進するおそれがあることを危惧するものであります。  本来、労基法は、最低の労働条件を定めることにより、労働者全体の人たるに値する生活を保障するものであり、女性の労働条件を切り下げ、労働強化につながる今回の労基法の改正は、断じて認めることができないのであります。  以上申し述べたとおり、今回の政府案は、憲法及び差別撤廃条約の精神にも反するものであり、我が国の特殊な雇用形態の中でかえって差別を温存、増長させる効果しかなく、断じて賛成できるものではありません。  したがって、政府案に強い反対を表明し、私の討論を終わります。
  277. 有馬元治

    ○有馬委員長 小渕正義君。
  278. 小渕正義

    小渕(正)委員 私は、民社党・国民連合を代表して、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党・国民連合、社会民主連合提出の男女雇用平等法案に賛成、政府提出の雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保を促進するための労働省関係法律の整備等に関する法律案及び自由民主党・新自由国民連合提出の修正案並びに日本共産党・革新共同提出の修正案に反対の立場から、討論を行うものであります。  民社党は、立党以来の理念として、「一切の抑圧と搾取とから社会の全員を解放して、個人の尊厳が重んぜられ、人格の自由な発展ができるような社会の建設」を綱領に掲げ、その実現を目指してまいりました。  今、国連において採択された婦人差別撤廃条約の批准期限を来年に控え、日本が世界に冠たる憲法を持つ民主主義国家として、どの諸国にも退けをとらない男女平等の制度を確立し、条約批准の条件を整えることが、何よりの急務となっているのであります。  我が国の憲法第十四条は男女平等の原則を規定しており、これを受けて、労働基準法第四条は男女の賃金差別を禁じております。しかし、残念ながら、今日の雇用における女子を取り巻く状況は、憲法上の要請からはほど遠いところにあると言わざるを得ません。  募集、採用においては、広範な男女の差別的取り扱いが行われており、また、採用の資格、技能についても同様となっております。採用に際しては、女子を特有の職種、職場、職務に配置し、初任給に格差がつけられ、教育訓練についても女子には訓練の機会が与えられず、または男女で内容が異なる訓練が行われております。配置転換についても、男子に対しては計面的に行われているのに対し、女子に対してはほとんど行われていないのが現状であります。この結果、女子の賃金は男子の約半分にすぎず、昇進昇格の機会も少ないという状況にあります。  このような男女差別の雇用管理が行われている我が国の社会環境の中で、五年有余の歳月を経ながらも、審議会の一本化答申ができ得なかった状況の中での法案提出には、それなりの評価はされるものとはいいながらも、現実を考えるとき、募集、採用について男女差別を禁止し、女子に男子と均等の機会を保障するとともに、労働条件、雇用、教育訓練等について男女差別を禁止し、法に違反する男女差別を敏速に是正するための措置を講ずるため、三党と共同して、男女雇用平等法を提案したのであります。  政府案並びに自民党提出の修正案は、四党共同案に比べ、禁止される差別に罰則がないこと、募集、採用、配置、昇進について事業主の努力義務とし禁止規定でないこと、救済機関の権限が弱いこと等の問題があり、まことに遺憾であると言わざるを得ません。また、女子保護規定についても、政府案のような見直しを行うための国民合意が得られているとは考えられないのであります。  我が党は、政府案が、四党提案の趣旨に沿って、何らの修正も加えられることなく採決されることはまことに遺憾であり、これに反対の態度を表明するものであります。  また、共産党提出の修正案については、四党共同提案をしている現実から、反対することを申し上げ、討論といたします。(拍手)
  279. 有馬元治

    ○有馬委員長 浦井洋君。
  280. 浦井洋

    ○浦井委員 私は、日本共産党・革新共同を代表しまして、政府提出の雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保を促進するための労働省関係法律の整備等に関する法律案、いわゆる男女雇用機会均等法案に対し、反対討論を行います。  本法案は、国連の婦人に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約を批准するための国内法として提出されたものであります。  婦人差別撤廃条約は、その前文において、「婦人に対する差別は、権利の平等の原則及び人間の尊厳の尊重の原則に違反するもの」であると述べ、婦人に対するすべての差別を撤廃するよう高らかに宣言をし、立法や制裁を含む必要な措置をとることを各国政府に求めました。  先進資本主義国の中でも、とりわけ厳しい男女差別に苦しむ我が国の婦人労働者は、この条約の採択を心から歓迎するとともに、実効性のある男女雇用平等法制定の運動に立ち上がりました。  ところが、政府から出された法案は、広範な婦人労働者の熱い期待に全く反するものであり、婦人差別撤廃条約の目的や理念にほど遠いものだったのであります。それは、この法案が提出されてくるまでのすべての経過で明らかなように、財界と一体となった骨抜き平等法だったからであります。  日本共産党・革新共同が本法案に反対する第一の理由は、労働基準法の改悪が均等法とセットにされていることであります。  雇用における男女の平等とは、母性の保護を当然の前提とするものであります。ところが政府案は、現行労働基準法上の女子の時間外・休日労働の制限、深夜業の禁止、危険有害業務の就労制限、坑内労働の禁止、生理休暇などの母性保護規定を、これは母性保護ではなく女子保護規定であるとして、大幅に緩和し後退させたものとなっております。  このような改悪を許すならば、婦人労働者に今まで以上に長時間労働が押しつけられることになります。それはとりもなおさず、パートでしか女性が働けない状態を拡大をし、婦人の働き続ける権利を大きく脅かすばかりか、母性と健康を損ない、家庭生活破壊の危険を増大させることとなります。  婦人労働者へのこのような攻撃は、男子を含めた労働者全体の賃金や労働条件を一層劣悪化させるものであり、到底認めるわけにはいかないものであります。この労働基準法の改悪は、今、労働省で進められておる労基法の昭和六十一年全面見直しへの突破口となるものとして、私は警鐘を乱打せざるを得ません。  反対理由の第二は、いわゆる均等法が極めて実効性がないことであります。  男女の平等が、雇用の入り口である募集、採用はおろか、雇用関係成立後の配置や昇進までが事業主の努力義務とされ、また、教育訓練、福利厚生、定年、解雇、退職も禁止規定とはいえ、「女子であること」のみを理由とした差別しか規制できず、実際の職場の差別の規制には非常に狭いものであります。  そして最大の問題は、差別禁止の担保として必要な制裁や罰則が何一つなく、すべて調停にゆだねることとされています。これでは迅速、確実に男女差別を撤廃していく法制度とは言えないものであります。  日本共産党・革新共同は、以上の理由から本法案に反対をし、その撤回を強く要求するとともに、労働基準法改悪反対、実効ある男女雇用平等法の制定のため、ただいま御提案をいたしました抜本的な修正案を採択されますよう、私は、委員各位の心からなる賛同を訴えまして、討論を終わるものであります。  以上であります。(拍手)
  281. 有馬元治

    ○有馬委員長 江田五月君。
  282. 江田五月

    江田委員 私は、社会民主連合を代表し、内閣提出雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保を促進するための労働省関係法律の整備等に関する法律案に対し、反対の意見を申し上げます。  十人十色という言葉があります。腕力の強い者弱い者、学校の成績のよい者悪い者、色の白い者黒い者、頑健な者病弱な者、そして男性と女性、若人と老人。人は千差万別で、このような個人をそのまま優勝劣敗の生存競争の中に裸で放置すれば、人間の社会は飢えたけだものの集合にすぎなくなります。  しかし、私たちは、そのような集合に堕するのでなく、人間としての共同社会をつくろうと努力してきました。すべての個人が人として生まれた以上、人としてとうとばれ、すべての個人が人種、信条、性別などによって政治的、経済的、社会的関係において差別されない。世界じゅうで歩みは違っていても、すべての国で、このように個人の尊厳と平等を人の価値についての命題として高く掲げ、けだものから人間への脱皮に営々たる努力を傾けてきました。これが人類の歴史であり、これは闘いの歴史だったのです。  とりわけ男女の平等は、生殖の役割において本来的区別があるために、困難な課題でした。また、長い間人類は物質的生産の量を拡大することにきゅうきゅうとし、そのためだけに限定すれば男子の方が使い便利がよいという事情もあったのです。しかし今、単に物質的生産の拡大だけが人間の生活を高めていく方法ではなくなりました。雇用の場でも家庭でも、伝統的に固定化された男女の役割が見直されなければならなくなりました。男女の性の違いをどうするかという点でも、人類はけだものから人間への脱皮をしようとしているのです。  来年、「国連婦人の十年」の最終年を迎えて、我が国も婦人差別撤廃条約を批准しようとしています。世界の国々が国連という場で相集い、このような共通の努力をしていることは何を意味しているのでしょう。それはまさに、人類の歴史の大きな転換点に私たちが立っているということにほかなりません。  このようなとき、我が国でも多くの人々が、私たちの国内でもすばらしい男女雇用平等法をつくろうと角を上げてまいりました。これは当然の声であり、人類の進歩への要求なのです。歴史の転換にふさわしい法律、男社会から男女平等の社会への真の脱皮にふさわしい法律をつくらなければなりません。  この法律は、したがって、我が国の現在の実情をそのまま反映する法律であってはなりません。人間の社会が進歩していく方向を見定めた方向性を持った啓発的法律でなければなりません。もちろん謙虚に社会の現実から学ぶ姿勢は、政治に携わる者に常に要求されることですが、男女の平等については、現実に安住することは許されないのです。  ところが、本法案は、このような観点から見るとまことに不徹底、不満足。読みようによっては、男女の差別をさらに固定化して、温存しようとするものとも読めるのであって、到底賛成し得ないものです。  反対の点は幾つかありますが、既に他の討論者の御主張も開陳されていますので、簡単に申し上げます。  まず法案のタイトル。「機会の均等」は価値の命題を示す言葉ではありません。「平等」という価値命題を実現するための手法が機会均等です。ただいまから将来にわたって、私たちの社会が、その存立の基礎として確立する価値の規範を、なぜ「平等」と高く掲げることができないのでしょうか。「男女雇用平等法」とすべきです。  次に基本的理念です。二条と三条をあわせ読むと、この法案が、女子労働者をどのように見ているかが浮かび上がってきます。あくまで女子労働者を男子労働者に劣後するものと見て、それでも世間や世界がうるさいから、男性と同じように特に取り扱ってあげるよ、これが「配慮」という言葉だと言うと言い過ぎでしょうか。さらに加えて、配慮されているということを自覚して、大いに働きなさいとお説教まで加わると、これはもう男女平等とは無縁です。これが募集、採用、配置、昇進の場における努力義務という、不徹底きわまりない規制方法で出てきているのではありませんか。  個人の尊厳、男女の本質的平等という憲法十四条の不可侵の人権を、雇用の場で実現するということを「基本的理念」にしなければなりません。  三番目は救済機関。この法律の規定する「機関」は救済機関としては働かないでしょう。悪くすれば、女子労働者に泣き寝入りを強いるかもしれません。もっと権威と権限を持った確固とした救済制度をつくるべきです。  四番目は労基法関係。女子労働者が妊娠、出産、授乳以外の点で保護されていると、男子に比べて余計な束縛がある、つまり労働力として劣る、つまり使用者が使いにくい、それでは女子労働者を職場で男子と同じに扱うわけにいかない、したがってこの保護を外せというわけです。確かに世の中、男と女しかいないから、規制が男性になくて女性にあると、それは女性に対する束縛だというのも一つの理屈です。しかし、何ゆえこれが、労働者が人間として生きていく上に必要な規制であって、これが今はまだ女性にしか確立されておらず、将来は男性にも確立されるべきものだと考えられないのでしょうか。使う者の権利から言うと、労働者は幾らでも酷使できる方がいいでしょう。しかし使われる者はもとより、社会全体から見ても、単に使う者の便利だけがまかり通ると、人間の社会ではなくなってしまいます。使う者、使われる者と言いましたが、いずれもしょせんは、すばらしい社会をつくるための協力者としての立場なのであって、すばらしい社会とは、やはり人間が人間らしく生きられるということでなければなりません。  さらにまた、これからは男女がともに家庭責任を果たしていかなければならない時代です。男性に家庭責任を果たさせるためにも、男性の労働条件を引き上げることが必要であり、それこそが婦人差別撤廃条約が要求している方向ではありませんか。  私は、男女差別撤廃の闘いの歴史の中に倒れた多くのすぐれた先達の努力を思い返してみると、今このような大転換のときに、このような不徹底な内容の法案を私たちが採決しようとしていることに、まことに情けない思いを抱かざるを得ません。  今、私たちに必要とされているのは、男女の平等の理想の実現のために、未来への洞察力を持ち、もっと英知を出し合って、すばらしい法案をつくることだと思います。  政府案の提出にまでこぎつけられた労働省の関係の皆さんの御苦労を多としながらも、なお一層の努力が私たちみんなに必要だということを強調して、私の反対討論を終わります。(拍手)
  283. 有馬元治

    ○有馬委員長 以上で討論は終局いたしました。     ―――――――――――――
  284. 有馬元治

    ○有馬委員長 これより採決に入ります。  内閣提出雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保を促進するための労働省関係法律の整備等に関する法律案及びこれに対する両修正案について採決いたします。  まず、浦井洋君外一名提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  285. 有馬元治

    ○有馬委員長 起立少数。よって、浦井洋君外一名提出の修正案は否決いたしました。  次に、愛知和男君提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  286. 有馬元治

    ○有馬委員長 起立多数。よって、愛知和男君提出の修正案は可決いたしました。  次に、ただいま可決いたしました修正案の修正部分を除いて、原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  287. 有馬元治

    ○有馬委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  288. 有馬元治

    ○有馬委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――     〔報告書は附録に掲載〕     ―――――――――――――
  289. 有馬元治

    ○有馬委員長 次回は、明二十五日水曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時三十分散会      ――――◇―――――