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角田参考人 ただいま御
紹介いただきました
台糖ファイザーの
角田でございます。
本日は、こういう席に、呼ばれまして
意見を述べよということでございますけれ
ども、私
自身は
法律的なことを専門に勉強しているわけではもちろんございませんし、この
法律につきまして専門的な
立場からいろいろ検討をしているというような
立場でもございませんので、きょうは、二十数年間ずっと
企業の中で
仕事を続けてきました一人の
女性として、その
仕事をしながらいろいろと感じ、体験しましたことを通して考えることを述べさせていただくというふうにさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
簡単に私
自身のことをちょっと
紹介させていただきますと、私は
昭和三十五年に
学校を卒業いたしました。三十五年当時といいますのは、現在
女性のために
就職の
門戸が開かれていないということが非常に問題になっているわけでございますけれ
ども、三十五年当時は今よりかももっともっとこの
状態がひどいものでございまして、全く
就職公募というようなことがございませんで、コネのある人だけは受けさせる、受けさせた結果、最終的には一人も採らなかったというようなことが平気で行われているような時代でした。そういう中で、私
自身は、
学校で
運動部に入って四年間楽しく暮らしてしまったものですから、
就職のための
準備等もしておりませんでしたし、いざ
就職するという段になりまして
余りの厳しさに茫然としたようなわけですけれ
ども、いずれにしましても、
仕事自体はどういうような道をだどってもずっとやっていきたいという気持ちだけは、漠然とございました。今思えば非常に恥ずかしいのですけれ
ども、どういう
仕事をどういうふうにやっていこうというふうなはっきりした意識なんというのは全くなくて、ただ少なくとも、私は女のきょうだいはかりでございまして、親があり余っているお金があったわけでもないにもかかわらず、
本人の希望によって勉強だけはさしてやろうということを許してくれた親に対する恩返しといいますか、ある種の
義務感でもって、卒業すればずっと
仕事をしようというふうには思っておりました。でも、何せ
就職の場がないということで、卒業と同時に、
運動部の先輩の世話によりまして小さな
会社にとりあえず入れてもらいました。とりあえず入れてはもらいましたけれ
ども、当然そこでやるような
仕事というのは何もないというような
状態が続いておりました。そして、その後転職を三回いたしまして、
昭和三十九年一月に、現在勤務しております
台糖ファイザーという
会社に縁があって入ることになりました。ですから、
台糖ファイザーではもうことしでちょうど一十年になります。ですから、四回目の
会社に、なるわけなのですけれ
ども、それまで前の三回の
会社は長くて大体一年半ぐらい、短いときは半年ぐらいで転々と職を変わったことになります。そういったことを振り返ってみますと、今少なくとも、
職場において
男性と同じように
機会を均等に与えようというような
意味での
法律がつくられようとしていることは、非常に
自分が
就職で調っていた時期、そして心ならずも
余り仕事もないところに無理に入って苦労していたことを思い返しますと、非常に
世の中が変わったということを感じる、まあ感無量というところでございます。そもそも、この二十数年間を通して私が
実感として感じますのは、
世の中は非常に変わってきかどいうことでございまして、私が最後、四回目の公社として今のところに入りましたのが
昭和三十九年で、その時は私
自身はもう年齢的にも二十代も終わりに近いというような時でございまして、そんな年をして今さら新しい
仕事につくということについては随分周りの人からも反対されましたし、珍しがられました。大体
独身で二十八とか二十九とかになって
仕事をしているということ
自体が、当時はまだ相当珍しい部類だったと思います。そういう面から見ましても非常に変わった、というのは、現在はそんなことは全くございますんで、三十代で
独身で
仕事をしている人なんというのはざらにいるわけです。私
どもの
職場にももう十年以上勤めている人というのはたくさんおれます。また、結婚してもなお勤め続けている人というのも随分ふえていると思います。そういう
意味で、
世の中はどんどん変わっているなということは
実感として感じてまいりました。ただ
一般論的に言いますと、やはり依然として
女性にとっては
職場の
門戸は非常に狭いというのは事実だと思います、特に、
大卒の
女性にとっては。
大卒の
女性というのは
企業では
余り歓迎されていないというのが、私は
企業の側におりましていろいろな
企業の人と話をする中で感じ取っていることです。もちろん職種によっても違うわけですし、それから
個人差というものも大きくありますから、もちろん一概には言えないのですけれ
ども、あくまでも
一般論として考えた場合にはそういうことが言えると思います。
その大きな
理由というのは何かと言えば、やはり
女性自身が
職業を持つということに対する
認識の甘さに原因があるのではないかと思うのです。今
企業の中で、
大卒の
女子は困るというような形で言われていることの一番大きな
理由は、
勤続年数が非常に短いということなのですけれ
ども、その
勤続年数が短いということも、やはり
女性自身の
職業というものについての
認識の甘さから来ていることではないかと思います。当然、
企業といいますのは原則として
終身雇用が定着しているわけですし、長期的な
展望の中で、転勤もあれば配置がえもするというようなことが当たり前に行われているわけですね。そういう場合に、
女子に対しては、少なくともこれまでは
長期的展望に立って
女子の
仕事の場を考えることができなかったという事実が、やはり
男性に対するのとは違った
対応を
企業にさせていた大きな
理由ではないかと思います。このことは私
自身も
実感としてずっと感じております。私
自身が感じております体験をちょっと言わせていただきますと、私
自身は
四つ目の今の
会社に入るときには、
男性と同じ
条件で雇うということ、そして、そのかわり
女性という甘えは絶対許さない、
男性と同じように厳しく取り扱うからそれに
対応すること、こういう
条件で入れてもらいました。ですから、もう入った早々から
仕事は物すごくありましたし、そのときはたまたま
宣伝課というところに入ったものですから、
仕事の
特殊性もありまして非常に時間が一定しない、休日でも出なければならない。それは外の人、例えばデザイナーであったり
印刷屋さんであったり、そういう人との接触する部分がすごく多いというようなこともございまして、非常に時間が一定しないし、休日
出勤もあったというような実情がございました。
そういうふうな形で、
直属の
上司に言われるままにやっていたわけですけれ
ども、それに対しては当然
組合からはうるさく言われました。私も
組合員でしたから、
残業をやり過ぎるのではないかとか、そういうことは非常にうるさく直接も言われましたし、
課長の方にも何度も言われていたようでした。でも、これがいいことか悪いことかは別にしまして、当時の
直属の
課長は、そういうことにはお構いなしに、
仕事があるんだからやれという形で
仕事を命じました。率直に言って、そのときは、私は
直属の
上司の信頼を得るということがまずなければこれから先の
自分の
職場における
立場というものはないというふうに信じておりましたから、
組合に何と言われようと、
上司の言うことは聞くというような形をとり続けてまいりました。そのときにもし
組合に怒られるからということで例えば
残業を拒否したり休日
出勤を拒否したりしていれば、私がやってきた
仕事は恐らくほかの
男性に振りかえられていたのではないかと思います。
現在
管理職という
立場になりまして、
部下を持つ身になってみましても、
部下は男子も
女子もいるわけですけれ
ども、
女子社員についてやはりとても使いにくいというのを感じますのは、一つには、
残業時間の
規制があるということと、それから
勤続年数が短い。短ければ短いなりの
対応はできるのですけれ
ども、短いだけでなくて全く当てにならない、いつ突然やめるかわからないということがありまして、そういう
意味で非常に使いにくいというふうに感じたことは事実でございます。
例えば、一度はある一流と言われている
女子大の
英文科を出て、私
どもの
入社試験にトップで入ってきた女の子が私の
部下に来まして、彼女に
仕事をどう思っているのか、どのぐらいやるつもりかということを真っ先に聞きましたら、たまたま
キャリアウーマンという言葉がはやり出した時期だったということもありまして、とにかく
キャリアウーマンになりたいので、当分の間は
仕事一本やりでやりますとはっきり約束したわけです。それがちょうど一年立ちまして、ある日突然結婚することになりましたと言ってさっさとやめていってしまったのですね。私
どもの社内の規約によりまして、
結婚退職のことは二週間前に申請すればいいことになっておりますから、本当に二週間前に申請してさっさとやめていってしまったという例もあります。
また、その後ですけれ
ども、ある
地方の
国立大学を優秀な
成績で出てきて、ちょっと東京で二、三年遊びたいからというようなことが目的だったらしいのですけれ
ども、ともかく私
どもの
会社に入ってきました。
成績も非常にいいし、物すごく頭もいいし、活発だし、明るいし、非常に
仕事の覚え方も早いということで、私は大変彼女に期待しまして一生懸命教えていたわけですね。こっちが一生懸命入れ込んでいる割には、向こうがちょっと白けているところがあったわけです。それで何度か彼女と話し合いをしたのですけれ
ども、最初のうちははっきり、私は二、三年東京で暮らしてみたいから入っただけだ、そして、入るときに
会社の方の人事担当者も、入ってもそれほど女の人にはろくな
仕事はないよと言っていたということを申しまして、だからもう少したったらやめるつもりですと最初のうちは言っていたのです。でも、実際に
仕事そのものは非常によくできるわけですね。ですから、私は、こっちもちょっと意地になりまして、何が何でも
仕事がおもしろいと言わせてやろうというような気になりまして、一生懸命仕込んでいたわけですね。過酷なぐらいばんばん言いつけてやらせていたわけです。でも、それにもどんどん軽くこたえてしまって、今どきの若い人のそういった能力のすごさというものに私もびっくりしたのですけれ
ども、ともかくどんどん覚えていく。そして二年近くたちました時点では、本当にほとんど彼女にある部分は任せても大丈夫なのではないかというぐらいまで行ったのです。ところがあるとき、突然彼女のお母さんから手紙が来まして、まことに申しわけないけれ
どもやめさせてうちへ帰してほしいということだったのですね。それで私もびっくりしまして、
本人に聞いてみましたら、
本人は、実は前々から母親に言われている、私
自身はだんだん
仕事がおもしろくなってきたし、これだけの
仕事をやらせてもらえるとは思っていなかったので、やめようと思っていたけれ
どもこれだけ
仕事が楽しいし
自分にも合っていると思うのでぜひ続けたい、だから頑張ってみますとは言っていたのですね。でも、郷の意向には逆らえないで、一人娘だったということもありまして、結局帰るということでやめることになったのです。私は前の例で懲りていましたから、やめても構わないけれ
ども絶対六カ月前には言ってちょうだいということは言ってありましたので、彼女は私にやはりやめざるを得ないということを告げて六カ月たってやめていきました。そういうような例も実際にございます。
短期的に見ますと、
仕事の場において
女性の能力というのは非常にすぐれている人もいっぱいいるわけで、
男性に決して劣らないし、場合によっては
男性よりもはるかにすぐれた力を持っている人だっているわけなんですね。ですけれ
ども、結果的にはよくて三年、例えば一年くらいでやめていかれてしまいますと、幾ら短期的に能力がありましても、
企業にとってみれば、本当に中途半端に終わってしまって、
仕事という面で何にも貢献してもらえなかったということになってしまうわけですね。男子とか
女子とかにかかわらず、入札して一、二年というのはどちらかと言えば教育訓練の時期でして、
仕事を教えている時期だと思うのです。ですから、そろそろ教えた
仕事が実際の成果としてはね返ってくるかなというようなときにやめられてしまうのは非常に困るというのは、
企業の中の方ならだれでも感じていることではないかと思います。
それと、もう一つ困りますのは、そうはいいましても全部が全部そうではないわけで、
女性でもずっと
仕事を続けていきたいと思っている人だってたくさんいるわけです。たまたま私のところにそういう人が配属されなかったというだけのことだと思うのですけれ
ども、実際には
仕事をずっとやりたいし、力があっても、
会社の側が、女の子はだからというような形で、今までの経験に照らして、それこそ十把一からげでもって処理してしまう傾向が非常に強いわけです。ですから、そういうふうなことになりますと、せっかくやる気が十分あってもそういう人の芽をつぶしてしまう、そういう形が今まで随分繰り返されてきたのではないかと思うのです。
自分は違うよと口で幾ら言っても信用してもらえない、違うなら違うということを態度で示しなさい、実績で示しなさい、それはうちの人事担当者も言っているのですけれ
ども、そういうふうに言われるわけです。確かに態度で示すよりほかないと思うのです。今までは、そういうことを態度で示そうにもそういう場すら与えられなかったというのが現状だと思います。でも、今度議論されております
法律ができましたらば、少なくともやる気のある人には
機会を与えようということになるわけですから、その
意味で、やる気のある
女性、
自分の人生設計の中で
仕事というものを非常に長期的にとらえている
女性というのがこれからどんどんふえていく中で、こういった形でもって
法律ができるということはいいことなのではないかと私は思っております。
ただ、やる気のある人は挑戦しなさいと言って
機会を
男性と同じように与える、その与えられた
機会にチャレンジしてそれを続けていくというのは、
女性自身の問題だと思うのです。ですから、その
機会にチャレンジしたくない
女性もいっぱいいるということは現実の姿です。それは別にチャレンジして長期的にやることばかりがいいわけではなくて、人にはそれぞれの生き方がありますから、その人の人生観の問題であり価値観の問題だと思います。ですから、その
機会にチャレンジしたくない人はしなくてもいい、それは当然のことだと思います。少なくともそういう
機会にチャレンジしようという意思を持っている
女性であれば、そんなに簡単にやめたりとか、くじけたりとかいうことはしないのではなかろうかというのが、私がそういう人たちに期待しているところなんです。
そういうふうにして、
企業の中に入って
自分から実力も発揮し、やる気も見せる、そうすればそれが評価されて、昇進とか昇格とかそういう面でも、
男性と同等の基盤で評価されるようになるのではないかというふうに思っています。ただし、そういうふうになるには二年や三年ではとてもだめでして、これは
女性に限らず
男性でも同じだと思います。やはり何年間か実際の場で態度で示していくという期間がなければ、同じように評価されるという段階にまでは至らないでのはないかというふうに思っています。今さら申し上げるまでもないのですけれ
ども、
企業の側にとってみますと、
世の中全体が非常に変化しているわけでして、例えば具体的には高齢化社会であるとか、それに。伴って
女性のライフサイクルが変わっているとか、産業構造の変化によって具体的には例えば第三次産業のあれが非常に拡大しているとか、いろいろな状況がありまして、客観的に見ても
世の中が非常に変わっていると思うのですね。したがいまして、そういった変わっていく
世の中で、その全体の要請としまして、
企業側も
女性の労働力を非常に重要視せざるを得ない状況になっているということも一面ではあると思います。現実に
女性のそういった力を非常に高く評価して採用している
企業もたくさんあるわけです。それは
企業によって業種によって違うわけですけれ
ども、現実にそういう
企業はたくさんあるということも事実だと思います。
そういうふうに
世の中全体が変わっていく、
世の中の仕組み
自体が変わっていくということに対して、
女性の側も変わっているとはいいましても、それは形の上で、つまり
仕事をする
女性が昔に比べて非常にふえているとか、その
勤続年数も平均的に非常に延びているとか、そういうふうなことでは非常に。変わっているわけなんですけれ
ども、
仕事をする
女性がふえているけれ
ども、その
女性自身の意識はどうであるかという観点で見ますと、量的に非常にふえているというほど、中身といいますか意識というものは顕著には変わっていないというのも実情だと思います。例えばいろいろなアンケート調査なんかで出ておりますけれ
ども、一生働きたいというふうに答えている
女性というのは、どんなアンケートをしても三割に満たないわけですね。そういうような現状があると思います。それから、いい悪いは別としまして、
女性の七〇%以上が、最終的には家庭に入って家庭を守るのが
女性の役割であるというふうに考えているという事実があります。こうしたことが現実の状況ですから、こういう中では、その
法律がつくられるということはいいことではありますけれ
ども、
余りドラスチックな変革を行ってしまいますと、今度はかえって、
女性を
企業から遠避けていくということにもなりかねないのではないかということを感じております。
また、こうして
機会を均等に与えられて、その与えられた
機会を生かすも殺すも
女性自身の生き方であるということが前提としてあるわけですけれ
ども、一方、平等にするという考え方があれば、その考え方とは分けて考えることができないのが、
労働基準法の
女性保護の問題だと思います。
女性保護の問題でもいろいろな面がございまして、今現在は、生理休暇の問題とかそれから時間外の
規制とか深夜就業の禁止とか、そういうふうなことが特に問題になっているわけです。
生理休暇の問題につきましては、実際にとっている人というのは全国的な調査でも一三%から一四%ということで、圧倒的多数がとっていないわけですから、実際の
仕事の面で、
企業の側から見ましても、
女性が生理休暇をとるということはそんなに大した問題ではないのではないかと思います。でも、これは実際に
仕事面で非常に困るよということではないけれ
ども、困るよという口実にしているという
意味では非常に問題が多いのではないかと思います。
残念ながら、
女性自身の意識も
余り変わってないと同じように、それ以上かもしれませんが、
企業の内部の
男性の意識というものはまだまだ変わっていない方の方が多いわけですね。ですから、そういうわけで、例えば
女性が
余り進出してくると
男性の
職場が侵されるのではないかとかいろいろな心配もありまして、何とか口実をつけて
女性を少しでも締め出したいと思っている人もたくさんいるかもしれないと思うのですね。そういう場合に、
女性は生理休暇という特別な保護があるではないか、何でこれで
男性と平等なのかというような口実に使われる、現に使われているケースというのはたくさんあるわけですね。ですから、そういった
意味で、少なくとも
機会を均等にして、
男性と同じような形で働きたい人は働けるというふうにしてほしいというのである以上は、こういった生理休暇というものは返上しましょうというくらいの気持ちがあっていいのではないかと思います。
それから、もう一つは時間外の
規制なのですけれ
ども、これは前にもちょっと申し上げましたけれ
ども、実際
仕事をする上で、現実的に非常にネックになっていることは事実でございます。
女性自身がみずからの職域をこれからどんどん広げていこうと思っているときでございますから……。