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1984-07-17 第101回国会 衆議院 社会労働委員会 第25号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年七月十七日(火曜日)     午前九時三十六分開議  出席委員   委員長 有馬 元治君   理事  愛知 和男君 理事 稲垣 実男君   理事  小沢 辰男君 理事 丹羽 雄哉君   理事  池端 清一君 理事 村山 富市君   理事 平石磨作太郎君 理事 塩田  晋君       伊吹 文明君    稲村 利幸君       今井  勇君    古賀  誠君       自見庄三郎君    谷垣 禎一君       友納 武人君    中野 四郎君       長野 祐也君    西山敬次郎君       野呂 昭彦君    浜田卓二郎君       箕輪  登君    網岡  雄君       河野  正君    多賀谷真稔君       竹村 泰子君    土井たか子君       永井 孝信君    森井 忠良君       大橋 敏雄君    沼川 洋一君       橋本 文彦君    森本 晃司君       小渕 正義君    塚田 延充君       浦井  洋君    田中美智子君       江田 五月君    菅  直人君  出席国務大臣        労 働 大 臣 坂本 三十次君  出席政府委員         労働大臣官房長 小粥 義朗君         労働大臣官房審         議官      白井晋太郎君         労働省労働基準         局長      望月 三郎君         労働省婦人局長 赤松 良子君         労働省職業安定         局長      加藤  孝君  委員外出席者         議     員 多賀谷眞稔君         議     員 大橋 敏雄君         議     員 小渕 正義君         議     員 江田 五月君         外務大臣官房審         議官      斉藤 邦彦君         外務大臣官房審         議官      遠藤 哲也君         労働省労働基準         局監督課長   野崎 和昭君         労働省婦人局婦         人政策課長   松原 亘子君         参  考  人         (台糖ファイザ         ー広報部次長) 角田 拓子君         参  考  人         (日本経営者団         体連盟労務管理         部長)     喜多村 浩君         参  考  人         (明治大学教授田辺 照子君         参  考  人         (全日本労働総         同盟国民運動局         青年婦人対策部         長)      高島 順子君         参  考  人         (日本弁護士連         合会女性権利         に関する委員会         副委員長)   中島 通子君         社会労働委員会         調査室長    石黒 善一君     ————————————— 委員の異動 七月十三日  辞任         補欠選任   森本 晃司君     坂井 弘一君 同日  辞任         補欠選任   坂井 弘一君     森本 晃司君 同月十七日  辞任         補欠選任   中川 昭一君     谷垣 禎一君   渡辺 秀央君     橋本龍太郎君   永井 孝信君     土井たか子君   菅  直人君     江田 五月君 同日  辞任         補欠選任   橋本龍太郎君     渡辺 秀央君   土井たか子君     永井 孝信君   江田 五月君     菅  直人君     ————————————— 七月十三日  男女雇用機会均等法案に関する請願北口博紹介)(第七七五四号)  使用済み乾電池等回収処理に関する請願福島譲二紹介)(第七七五五号)  男女雇用機会均等法制定に関する請願藤木洋子紹介)(第七七五六号)  医療保険改悪反対に関する請願藤木洋子紹介)(第七七五七号)  医療保険制度改悪反対国民医療改善に関する請願東中光雄紹介)(第七七五八号)  医療保険改悪反対充実改善に関する請願小川国彦紹介)(第七七五九号)  同(清水勇紹介)(第七八四〇号)医療保険医療供給体制改悪反対等に関する請願中林佳子紹介)(第七七六〇号)  国立病院療養所統合等反対医療従事職員の増員に関する請願佐藤祐弘紹介)(第七七六一号)  医療保険改悪反対等に関する請願外二件(伊藤昌弘紹介)(第七七六二号)  同(稲富稜人君紹介)(第七七六三号)  同(工藤晃紹介)(第七七六四号)  同外一件(城地豊司紹介)(第七七六五号)  同外一件(武部文紹介)(第七七六七号)  同(津川武一紹介)(第七七六七号)  同(藤田スミ紹介)(第七七六八号)  同(三浦久紹介)(第七七六九号)  同(山下八洲夫君紹介)(第七七七〇号)  同(金子みつ紹介)(第七八四一号)  同外三件(田中美智子紹介)(第七八四二号)  同(中村正男紹介)(第七八四三号)  医療保険改悪反対充実に関する請願城地豊司紹介)(第七七七一号)  同(津川武一紹介)(第七七七二号)  同(中島武敏紹介)(第七七七三号)  医療保険制度改悪反対充実改善に関する請願外三件(梅田勝紹介)(第七七七四号)  同(柴田睦夫紹介)(第七七七五号)  医療保険抜本改悪反対に関する請願岡崎万寿秀紹介)(第七七七六号)  同(津川武一紹介)(第七七七七号)  同(中川利三郎紹介)(第七七七八号)  同(中林佳子紹介)(第七七七九号)  医療保険制度改善に関する請願岩垂寿喜男紹介)(第七七八〇号)  同(上野建一紹介)(第七七八一号)  同外一件(柴田睦夫紹介)(第七七八二号)  同(田並胤明君紹介)(第七七八三号)  同(辻第一君紹介)(第七七八四号)  同(不破哲三紹介)(第七七八五号)  同(瀬崎博義紹介)(第七八四六号)  同(田中美智子紹介)(第七八四七号)  同(田並胤明君紹介)(第七八四八号)  同外二件(馬場昇紹介)(第七八四九号)  医療保険制度抜本改悪反対に関する請願外一件(経塚幸夫紹介)(第七七八六号)  同(東中光雄紹介)(第七七八七号)  同(藤田スミ紹介)(第七七八八号)  同(正森成二君紹介)(第七七八九号)  年金医療雇用保険改悪反対充実改善に関する請願瀬崎博義紹介)(第七七九〇号)  健康保険本人給付引き下げ反対等に関する請願経塚幸夫紹介)(第七七九一号)  医療保険年金制度改悪反対に関する請願清水勇紹介)(第七七九二号)  同(津川武一紹介)(第七七九三号)  同(中川利三郎紹介)(第七七九四号)  同(田中美智子紹介)(第七八五一号)  国立病院療養所の廃止及び地方移管反対等に関する請願工藤晃紹介)(第七七九五号)  健康保険本人の十割給付堅持予防等給付改善に関する請願藤木洋子紹介)(第七七九六号)  健康保険本人の十割給付継続に関する請願藤木洋子紹介)(第七七九七号)  政府管掌健康保険等改悪反対に関する請願経塚幸夫紹介)(第七七九八号)  同(東中光雄紹介)(第七七九九号)  同(藤田スミ紹介)(第七八〇〇号)  同(田中美智子紹介)(第七八五三号)  政府管掌健康保険等改悪反対充実改善に関する請願柴田睦夫紹介)(第七八〇一号)  同(津川武一紹介)(第七八〇二号)  政府管掌健康保険等本人十割給付引き下げ反対等に関する請願不破哲三紹介)(第七八〇三号)  医療保険改悪反対医療保健制度の拡充に関する請願外一件(網岡雄紹介)(第七八〇四号)  同(網岡雄紹介)(第七八五四号)  健康保険国民健康保険等医療保険制度改悪反対に関する請願佐藤祐弘紹介)(第七八〇五号)  同(田中美智子紹介)(第七八〇六号)  国民年金改悪反対等に関する請願網岡雄紹介)(第七八〇七号)  同(経塚幸夫紹介)(第七八〇八号)  同(林百郎君紹介)(第七八〇九号)  同(東中光雄紹介)(第七八一〇号)  松江市水道事業に対する抜本的施策に関する請願田中美智子紹介)(第七八一一号)  同(中林佳子紹介)(第七八一二号)  医療保険制度改悪反対健康保険本人十割給付堅持等に関する請願経塚幸夫紹介)(第七八一三号)  同(東中光雄紹介)(第七八一四号)  健康保険制度改悪反対老人医療無料制度復活に関する請願野間友一紹介)(第七八一五号)  同(東中光雄紹介)(第七八一六号)  同(東中光雄紹介)(第七八五九号)  医療保険制度改悪反対等に関する請願田中美智子紹介)(第七八四四号)  児童扶養手当制度改悪反対に関する請願田中美智子紹介)(第七八四五号)  健康保険年金制度改悪反対に関する請願田中美智子紹介)(第七八五〇号)  児童扶養手当法の一部を改正する法律案撤回に関する請願江田五月紹介)(第七八五二号)  健康保険改悪反対等に関する請願稲葉誠一紹介)(第七八五五号)  年金制度充実改善に関する請願田中美智子紹介)(第七八五六号)  日雇健康保険制度改善に関する請願木島喜兵衞紹介)(第七八五七号)  健康保険本人十割給付堅持年金制度改悪反対等に関する請願外一件(田中美智子紹介)  (第七八五八号)  保育行政充実に関する請願中村正男紹介)(第七八六〇号) 同月十七日  男女雇用機会均等法案反対に関する請願伊藤茂紹介)(第七九二一号)  同(岩垂寿喜男紹介)(第七九二二号)  同(金子みつ紹介)(第七九二三号)  同(河野正紹介)(第七九二四号)  同(土井たか子紹介)(第七九二五号)  同(松沢俊昭紹介)(第七九二六号)  労働基準法改悪反対、実効ある男女雇用平等法制定に関する請願岡田利春紹介)(第七九二七号)  労働基準法改悪反対、実効ある男女雇用平等法制定等に関する請願田中美智子紹介)(第七九二八号)  労働基準法改悪反対男女雇用平等法制定に関する請願田中美智子紹介)(第七九二九号)  労働基準法改悪反対、実効ある男女雇用平等法制定に関する請願田中美智子紹介)(第七九三〇号)  食品添加物規制緩和反対食品衛生行政充実強化に関する請願大久保直彦紹介)(第七九三一号)  同(柴田弘紹介)(第七九三二号)  同(二見伸明紹介)(第七九三三号)  同(古川雅司紹介)(第七九三四号)  医療保険改悪反対等に関する請願天野等紹介)(第七九三五号)  同(菅直人紹介)(第七九三六号)  同(二見伸明紹介)(第七九三七号)  医療保険抜本改悪反対に関する請願松浦利尚君紹介)(第七九三八号)  医療保険制度改悪反対に関する請願上田卓三紹介)(第七九三九号)  医療保険制度改善に関する請願井上一成紹介)(第七九四〇号)  同(上田哲紹介)(第七九四一号)  同(近江巳記夫紹介)(第七九四二号)  同(金子みつ紹介)(第七九四三号)  同(河野正紹介)(第七九四四号)  同(菅直人紹介)(第七九四五号)  同外一件(小谷輝二君紹介)(第七九四六号)  同(柴田弘紹介)(第七九四七号)  同外一件(正木良明紹介)(第七九四八号)  同(村山喜一紹介)(第七九四九号)  同(矢野絢也君紹介)(第七九五〇号)  健康保険法改悪反対等に関する請願田中美智子紹介)(第七九五一号)  年金医療雇用保険改悪反対充実改善に関する請願菅直人紹介)(第七九五二号)  社会保障制度改悪反対に関する請願菅直人紹介)(第七九五三号)  重度戦傷病者と妻の援護に関する請願外一件(加藤紘一紹介)(第七九五四号)  社会福祉充実等に関する請願田中美智子紹介)(第七九五五号)  健康保険法等の一部を改正する法律案撤回等に関する請願菅直人紹介)(第七九五六号)  労働基準法改悪反対男女雇用平等法制定促進に関する請願近江巳記夫紹介)(第七九五七号)  同(田中美智子紹介)(第七九五八号)  健康保険本人十割給付堅持医療保険給付改善等に関する請願田中美智子紹介)(第七九五九号)  同外一件(横山利秋紹介)(第七九六〇号)  保育行政充実に関する請願上田卓三紹介)(第七九六一号)  同(左近正男紹介)(第七九六二号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  雇用分野における男女の均等な機会及び待遇の確保を促進するための労働省関係法律整備 等に関する法律案内閣提出第八三号)  男女雇用平等法案多賀谷眞稔君外七名提出衆法第四〇号)派遣委員からの報告聴取      ————◇—————
  2. 有馬元治

    有馬委員長 これより会議を開きます。  内閣提出雇用分野における男女の均等な機会及び持逃確保を促進するための労働省関係法律整備等に関する法律案及び多賀谷眞稔君外七名提出男女雇用平等法案の両案を議題といたします。両案審査のため、参考人各位から御意見を聴取いたします。御出席いただいております参考人は、台糖ファイザー広報部次長角田拓子君、日本経営者団体連盟労務管理部長喜多村浩君、明治大学教授田辺照十君、全日本労働同盟国民運動局青年婦人対策部長高島順子君、日本弁護士連合会女性権利に関する委員会委員長中島通子君であります。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  参考人各位には、御多用中のところ、御出席をいただき、まことにありがとうございます。何とぞ忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。  なお、議事の順序でございますが、初めに、参考人の方々から十五分程度御意見をお述べいただき、次に、委員諸君からの質疑に対し御答弁をお願いいたしたいと存じます。  それでは、まず角田参考人にお願いいたします。
  3. 角田拓子

    角田参考人 ただいま御紹介いただきました台糖ファイザー角田でございます。  本日は、こういう席に、呼ばれまして意見を述べよということでございますけれども、私自身法律的なことを専門に勉強しているわけではもちろんございませんし、この法律につきまして専門的な立場からいろいろ検討をしているというような立場でもございませんので、きょうは、二十数年間ずっと企業の中で仕事を続けてきました一人の女性として、その仕事をしながらいろいろと感じ、体験しましたことを通して考えることを述べさせていただくというふうにさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。  簡単に私自身のことをちょっと紹介させていただきますと、私は昭和三十五年に学校を卒業いたしました。三十五年当時といいますのは、現在女性のために就職門戸が開かれていないということが非常に問題になっているわけでございますけれども、三十五年当時は今よりかももっともっとこの状態がひどいものでございまして、全く就職公募というようなことがございませんで、コネのある人だけは受けさせる、受けさせた結果、最終的には一人も採らなかったというようなことが平気で行われているような時代でした。そういう中で、私自身は、学校運動部に入って四年間楽しく暮らしてしまったものですから、就職のための準備等もしておりませんでしたし、いざ就職するという段になりまして余りの厳しさに茫然としたようなわけですけれども、いずれにしましても、仕事自体はどういうような道をだどってもずっとやっていきたいという気持ちだけは、漠然とございました。今思えば非常に恥ずかしいのですけれども、どういう仕事をどういうふうにやっていこうというふうなはっきりした意識なんというのは全くなくて、ただ少なくとも、私は女のきょうだいはかりでございまして、親があり余っているお金があったわけでもないにもかかわらず、本人の希望によって勉強だけはさしてやろうということを許してくれた親に対する恩返しといいますか、ある種の義務感でもって、卒業すればずっと仕事をしようというふうには思っておりました。でも、何せ就職の場がないということで、卒業と同時に、運動部の先輩の世話によりまして小さな会社にとりあえず入れてもらいました。とりあえず入れてはもらいましたけれども、当然そこでやるような仕事というのは何もないというような状態が続いておりました。そして、その後転職を三回いたしまして、昭和三十九年一月に、現在勤務しております台糖ファイザーという会社に縁があって入ることになりました。ですから、台糖ファイザーではもうことしでちょうど一十年になります。ですから、四回目の会社に、なるわけなのですけれども、それまで前の三回の会社は長くて大体一年半ぐらい、短いときは半年ぐらいで転々と職を変わったことになります。そういったことを振り返ってみますと、今少なくとも、職場において男性と同じように機会を均等に与えようというような意味での法律がつくられようとしていることは、非常に自分就職で調っていた時期、そして心ならずも余り仕事もないところに無理に入って苦労していたことを思い返しますと、非常に世の中が変わったということを感じる、まあ感無量というところでございます。そもそも、この二十数年間を通して私が実感として感じますのは、世の中は非常に変わってきかどいうことでございまして、私が最後、四回目の公社として今のところに入りましたのが昭和三十九年で、その時は私自身はもう年齢的にも二十代も終わりに近いというような時でございまして、そんな年をして今さら新しい仕事につくということについては随分周りの人からも反対されましたし、珍しがられました。大体独身で二十八とか二十九とかになって仕事をしているということ自体が、当時はまだ相当珍しい部類だったと思います。そういう面から見ましても非常に変わった、というのは、現在はそんなことは全くございますんで、三十代で独身仕事をしている人なんというのはざらにいるわけです。私ども職場にももう十年以上勤めている人というのはたくさんおれます。また、結婚してもなお勤め続けている人というのも随分ふえていると思います。そういう意味で、世の中はどんどん変わっているなということは実感として感じてまいりました。ただ一般論的に言いますと、やはり依然として女性にとっては職場門戸は非常に狭いというのは事実だと思います、特に、大卒女性にとっては。大卒女性というのは企業では余り歓迎されていないというのが、私は企業の側におりましていろいろな企業の人と話をする中で感じ取っていることです。もちろん職種によっても違うわけですし、それから個人差というものも大きくありますから、もちろん一概には言えないのですけれども、あくまでも一般論として考えた場合にはそういうことが言えると思います。  その大きな理由というのは何かと言えば、やはり女性自身職業を持つということに対する認識の甘さに原因があるのではないかと思うのです。今企業の中で、大卒女子は困るというような形で言われていることの一番大きな理由は、勤続年数が非常に短いということなのですけれども、その勤続年数が短いということも、やはり女性自身職業というものについての認識の甘さから来ていることではないかと思います。当然、企業といいますのは原則として終身雇用が定着しているわけですし、長期的な展望の中で、転勤もあれば配置がえもするというようなことが当たり前に行われているわけですね。そういう場合に、女子に対しては、少なくともこれまでは長期的展望に立って女子仕事の場を考えることができなかったという事実が、やはり男性に対するのとは違った対応企業にさせていた大きな理由ではないかと思います。このことは私自身実感としてずっと感じております。私自身が感じております体験をちょっと言わせていただきますと、私自身四つ目の今の会社に入るときには、男性と同じ条件で雇うということ、そして、そのかわり女性という甘えは絶対許さない、男性と同じように厳しく取り扱うからそれに対応すること、こういう条件で入れてもらいました。ですから、もう入った早々から仕事は物すごくありましたし、そのときはたまたま宣伝課というところに入ったものですから、仕事特殊性もありまして非常に時間が一定しない、休日でも出なければならない。それは外の人、例えばデザイナーであったり印刷屋さんであったり、そういう人との接触する部分がすごく多いというようなこともございまして、非常に時間が一定しないし、休日出勤もあったというような実情がございました。  そういうふうな形で、直属上司に言われるままにやっていたわけですけれども、それに対しては当然組合からはうるさく言われました。私も組合員でしたから、残業をやり過ぎるのではないかとか、そういうことは非常にうるさく直接も言われましたし、課長の方にも何度も言われていたようでした。でも、これがいいことか悪いことかは別にしまして、当時の直属課長は、そういうことにはお構いなしに、仕事があるんだからやれという形で仕事を命じました。率直に言って、そのときは、私は直属上司の信頼を得るということがまずなければこれから先の自分職場における立場というものはないというふうに信じておりましたから、組合に何と言われようと、上司の言うことは聞くというような形をとり続けてまいりました。そのときにもし組合に怒られるからということで例えば残業を拒否したり休日出勤を拒否したりしていれば、私がやってきた仕事は恐らくほかの男性に振りかえられていたのではないかと思います。  現在管理職という立場になりまして、部下を持つ身になってみましても、部下は男子も女子もいるわけですけれども女子社員についてやはりとても使いにくいというのを感じますのは、一つには、残業時間の規制があるということと、それから勤続年数が短い。短ければ短いなりの対応はできるのですけれども、短いだけでなくて全く当てにならない、いつ突然やめるかわからないということがありまして、そういう意味で非常に使いにくいというふうに感じたことは事実でございます。  例えば、一度はある一流と言われている女子大の英文科を出て、私ども入社試験にトップで入ってきた女の子が私の部下に来まして、彼女に仕事をどう思っているのか、どのぐらいやるつもりかということを真っ先に聞きましたら、たまたまキャリアウーマンという言葉がはやり出した時期だったということもありまして、とにかくキャリアウーマンになりたいので、当分の間は仕事一本やりでやりますとはっきり約束したわけです。それがちょうど一年立ちまして、ある日突然結婚することになりましたと言ってさっさとやめていってしまったのですね。私どもの社内の規約によりまして、結婚退職のことは二週間前に申請すればいいことになっておりますから、本当に二週間前に申請してさっさとやめていってしまったという例もあります。  また、その後ですけれども、ある地方国立大学を優秀な成績で出てきて、ちょっと東京で二、三年遊びたいからというようなことが目的だったらしいのですけれども、ともかく私ども会社に入ってきました。成績も非常にいいし、物すごく頭もいいし、活発だし、明るいし、非常に仕事の覚え方も早いということで、私は大変彼女に期待しまして一生懸命教えていたわけですね。こっちが一生懸命入れ込んでいる割には、向こうがちょっと白けているところがあったわけです。それで何度か彼女と話し合いをしたのですけれども、最初のうちははっきり、私は二、三年東京で暮らしてみたいから入っただけだ、そして、入るときに会社の方の人事担当者も、入ってもそれほど女の人にはろくな仕事はないよと言っていたということを申しまして、だからもう少したったらやめるつもりですと最初のうちは言っていたのです。でも、実際に仕事そのものは非常によくできるわけですね。ですから、私は、こっちもちょっと意地になりまして、何が何でも仕事がおもしろいと言わせてやろうというような気になりまして、一生懸命仕込んでいたわけですね。過酷なぐらいばんばん言いつけてやらせていたわけです。でも、それにもどんどん軽くこたえてしまって、今どきの若い人のそういった能力のすごさというものに私もびっくりしたのですけれども、ともかくどんどん覚えていく。そして二年近くたちました時点では、本当にほとんど彼女にある部分は任せても大丈夫なのではないかというぐらいまで行ったのです。ところがあるとき、突然彼女のお母さんから手紙が来まして、まことに申しわけないけれどもやめさせてうちへ帰してほしいということだったのですね。それで私もびっくりしまして、本人に聞いてみましたら、本人は、実は前々から母親に言われている、私自身はだんだん仕事がおもしろくなってきたし、これだけの仕事をやらせてもらえるとは思っていなかったので、やめようと思っていたけれどもこれだけ仕事が楽しいし自分にも合っていると思うのでぜひ続けたい、だから頑張ってみますとは言っていたのですね。でも、郷の意向には逆らえないで、一人娘だったということもありまして、結局帰るということでやめることになったのです。私は前の例で懲りていましたから、やめても構わないけれども絶対六カ月前には言ってちょうだいということは言ってありましたので、彼女は私にやはりやめざるを得ないということを告げて六カ月たってやめていきました。そういうような例も実際にございます。  短期的に見ますと、仕事の場において女性の能力というのは非常にすぐれている人もいっぱいいるわけで、男性に決して劣らないし、場合によっては男性よりもはるかにすぐれた力を持っている人だっているわけなんですね。ですけれども、結果的にはよくて三年、例えば一年くらいでやめていかれてしまいますと、幾ら短期的に能力がありましても、企業にとってみれば、本当に中途半端に終わってしまって、仕事という面で何にも貢献してもらえなかったということになってしまうわけですね。男子とか女子とかにかかわらず、入札して一、二年というのはどちらかと言えば教育訓練の時期でして、仕事を教えている時期だと思うのです。ですから、そろそろ教えた仕事が実際の成果としてはね返ってくるかなというようなときにやめられてしまうのは非常に困るというのは、企業の中の方ならだれでも感じていることではないかと思います。  それと、もう一つ困りますのは、そうはいいましても全部が全部そうではないわけで、女性でもずっと仕事を続けていきたいと思っている人だってたくさんいるわけです。たまたま私のところにそういう人が配属されなかったというだけのことだと思うのですけれども、実際には仕事をずっとやりたいし、力があっても、会社の側が、女の子はだからというような形で、今までの経験に照らして、それこそ十把一からげでもって処理してしまう傾向が非常に強いわけです。ですから、そういうふうなことになりますと、せっかくやる気が十分あってもそういう人の芽をつぶしてしまう、そういう形が今まで随分繰り返されてきたのではないかと思うのです。  自分は違うよと口で幾ら言っても信用してもらえない、違うなら違うということを態度で示しなさい、実績で示しなさい、それはうちの人事担当者も言っているのですけれども、そういうふうに言われるわけです。確かに態度で示すよりほかないと思うのです。今までは、そういうことを態度で示そうにもそういう場すら与えられなかったというのが現状だと思います。でも、今度議論されております法律ができましたらば、少なくともやる気のある人には機会を与えようということになるわけですから、その意味で、やる気のある女性自分の人生設計の中で仕事というものを非常に長期的にとらえている女性というのがこれからどんどんふえていく中で、こういった形でもって法律ができるということはいいことなのではないかと私は思っております。  ただ、やる気のある人は挑戦しなさいと言って機会男性と同じように与える、その与えられた機会にチャレンジしてそれを続けていくというのは、女性自身の問題だと思うのです。ですから、その機会にチャレンジしたくない女性もいっぱいいるということは現実の姿です。それは別にチャレンジして長期的にやることばかりがいいわけではなくて、人にはそれぞれの生き方がありますから、その人の人生観の問題であり価値観の問題だと思います。ですから、その機会にチャレンジしたくない人はしなくてもいい、それは当然のことだと思います。少なくともそういう機会にチャレンジしようという意思を持っている女性であれば、そんなに簡単にやめたりとか、くじけたりとかいうことはしないのではなかろうかというのが、私がそういう人たちに期待しているところなんです。  そういうふうにして、企業の中に入って自分から実力も発揮し、やる気も見せる、そうすればそれが評価されて、昇進とか昇格とかそういう面でも、男性と同等の基盤で評価されるようになるのではないかというふうに思っています。ただし、そういうふうになるには二年や三年ではとてもだめでして、これは女性に限らず男性でも同じだと思います。やはり何年間か実際の場で態度で示していくという期間がなければ、同じように評価されるという段階にまでは至らないでのはないかというふうに思っています。今さら申し上げるまでもないのですけれども企業の側にとってみますと、世の中全体が非常に変化しているわけでして、例えば具体的には高齢化社会であるとか、それに。伴って女性のライフサイクルが変わっているとか、産業構造の変化によって具体的には例えば第三次産業のあれが非常に拡大しているとか、いろいろな状況がありまして、客観的に見ても世の中が非常に変わっていると思うのですね。したがいまして、そういった変わっていく世の中で、その全体の要請としまして、企業側も女性の労働力を非常に重要視せざるを得ない状況になっているということも一面ではあると思います。現実に女性のそういった力を非常に高く評価して採用している企業もたくさんあるわけです。それは企業によって業種によって違うわけですけれども、現実にそういう企業はたくさんあるということも事実だと思います。  そういうふうに世の中全体が変わっていく、世の中の仕組み自体が変わっていくということに対して、女性の側も変わっているとはいいましても、それは形の上で、つまり仕事をする女性が昔に比べて非常にふえているとか、その勤続年数も平均的に非常に延びているとか、そういうふうなことでは非常に。変わっているわけなんですけれども仕事をする女性がふえているけれども、その女性自身の意識はどうであるかという観点で見ますと、量的に非常にふえているというほど、中身といいますか意識というものは顕著には変わっていないというのも実情だと思います。例えばいろいろなアンケート調査なんかで出ておりますけれども、一生働きたいというふうに答えている女性というのは、どんなアンケートをしても三割に満たないわけですね。そういうような現状があると思います。それから、いい悪いは別としまして、女性の七〇%以上が、最終的には家庭に入って家庭を守るのが女性の役割であるというふうに考えているという事実があります。こうしたことが現実の状況ですから、こういう中では、その法律がつくられるということはいいことではありますけれども余りドラスチックな変革を行ってしまいますと、今度はかえって、女性企業から遠避けていくということにもなりかねないのではないかということを感じております。  また、こうして機会を均等に与えられて、その与えられた機会を生かすも殺すも女性自身の生き方であるということが前提としてあるわけですけれども、一方、平等にするという考え方があれば、その考え方とは分けて考えることができないのが、労働基準法女性保護の問題だと思います。女性保護の問題でもいろいろな面がございまして、今現在は、生理休暇の問題とかそれから時間外の規制とか深夜就業の禁止とか、そういうふうなことが特に問題になっているわけです。  生理休暇の問題につきましては、実際にとっている人というのは全国的な調査でも一三%から一四%ということで、圧倒的多数がとっていないわけですから、実際の仕事の面で、企業の側から見ましても、女性が生理休暇をとるということはそんなに大した問題ではないのではないかと思います。でも、これは実際に仕事面で非常に困るよということではないけれども、困るよという口実にしているという意味では非常に問題が多いのではないかと思います。  残念ながら、女性自身の意識も余り変わってないと同じように、それ以上かもしれませんが、企業の内部の男性の意識というものはまだまだ変わっていない方の方が多いわけですね。ですから、そういうわけで、例えば女性余り進出してくると男性職場が侵されるのではないかとかいろいろな心配もありまして、何とか口実をつけて女性を少しでも締め出したいと思っている人もたくさんいるかもしれないと思うのですね。そういう場合に、女性は生理休暇という特別な保護があるではないか、何でこれで男性と平等なのかというような口実に使われる、現に使われているケースというのはたくさんあるわけですね。ですから、そういった意味で、少なくとも機会を均等にして、男性と同じような形で働きたい人は働けるというふうにしてほしいというのである以上は、こういった生理休暇というものは返上しましょうというくらいの気持ちがあっていいのではないかと思います。  それから、もう一つは時間外の規制なのですけれども、これは前にもちょっと申し上げましたけれども、実際仕事をする上で、現実的に非常にネックになっていることは事実でございます。女性自身がみずからの職域をこれからどんどん広げていこうと思っているときでございますから……。
  4. 有馬元治

    有馬委員長 参考人に申し上げますが、時間の関係がございますので結論をお急ぎ願いたいと思います。
  5. 角田拓子

    角田参考人 わかりました。  そういう意味で、時間外の規制とそれから生理休暇という女性の保護は、私は過保護なのではないかと思います。ですから、実際に機会を均等にしたいというのであればこれは返上すべきであると思います。しかし、現実には、今度の法律でも全面廃止というふうにはなっていないわけでして、適用除外をふやすということになっているわけですし、生理休暇も必要な人にはとらせようという形で残っているわけですから、その意味で言いまして、今までと余りにも急激に変えるのではなくて徐々に変えていこう、段階を追って変えていこうといった意味では、全般的に見まして一応すぐに実現性のある、実効性のある法律案なのではないかというふうに感じて感じております。  時間が超過しまして済みませんでした。以上でございます。(拍手)
  6. 有馬元治

    有馬委員長 次に、喜多村参考人にお願いいたします。
  7. 喜多村浩

    喜多村参考人 日本経営者団体連盟労務管理部長喜多村でございます。  本問題につきまして労働省の婦人少年問題審議会婦人労働部会で、公労使で大部もんでこのような法案になったわけでございますが、これから政府案並びに野党四党御提案の法案につきまして意見を述べさせていただきます。  最初に結論だけ申し上げておきますけれども、政府の御提案につきましては正直のところいろいろ不満がございます。不満がございますけれども、ただいま申し上げましたように、審議会の場で大分ぎりぎりまでもんだ結果、それが解決しましてこういう案になってきたわけでございますので、これ以上の修正はひとつ絶対にやらないようにお願いいたしまして、それを条件にして賛成いたしたいと思います。  それから野党御提案の案でございますが、これは現状では、私どもの目から見ますると非常に理想に走り過ぎておるのではないかというふうに感ぜられるものでございまして、特に労働基準法に定められております女子の保護規定の改正、廃止につきましては何ら触れられておりません。私ども立場から見ましては、非常にバランスを欠いた法案と言わざるを得ません。このままでありますと、企業の活力を著しく減殺するおそれがあるという感じがいたしまして、絶対に反対せざるを得ません。  以下、私どもの考え方につきまして若干申し上げたいと思います。  男女差別という問題については、当然私どもは反対でございます。男女平等に扱わなければならないということに対して、反対する者は多分いないだろうと思います。  ただ、男女平等というのは、我々の長い間、一種のスローガン的に言われてきたわけでありまして、差別そのものの解消に反対するものではありませんけれども、具体的に見て、男女の別扱いのうち何が差別と言われるものであるかということについては、実ははっきりわかっておりません。現在でもはっきりとはわかっておりません。かつ、少なくとも私どもの産業介の長い間の経験で見ますると、現在のこの条約あるいは法律、もう少し詳しく申し上げますと審議会の過程で問題になりました男女平等専門家会議の中で言われましたようなことですが、こういう考え方に基づくところの差別というものは、実ははっきりわかっていなかったというのが実情であります。これは実は産業界だけのことではございませんので、一般社会、マスコミを初め、さらには労働組合も含めて全社会が、恐らくはこのような差別観というものは理解していなかったのじゃなかろうかと私どもは考えております。  企業の経営といいますのは、これは言うまでもないことでございますけれども世の中の動き、あるいはこの問題に関して言いますならば女子自身職業意識、あるいは就業形態というものと一応整合性を持って進んでこざるを得ないわけであります。もちろん、その途中では人手不足という現象もございました。男子が足らないからそのかわりに女子を使うということもございましたし、さらには女子の活力を積極的に活用するという面もございました。  過去二十年、三十年の各過程を振り返るならば、今日までの間に、男女間の企業の扱い方は相当大きく変わってきているはずでございます。この間の実情につきましてはただいま角田さんからいろいろ御説明もございましたけれども、少なくとも現在、大手の企業の中で課長部長、さらには重役にまで女子が進出しておられる。こういうことは、かつて二十年前、三十年前では普通の会社ではちょっと考えられなかった事態でございます。過去から現在において世の中が変わってくるにつれて企業の方も変わってきておるわけでございます。したがいまして、そういう意味におきましては、社会の一般的コンセンサスあるいは女子自身の就業形態等々と比べまして、企業経営も合理性を持って行われてきたというふうに私どもは考えております。もちろんこれについては非常な御反論があろうかとは思いますけれども企業の側としましては、少なくとも今日まで、そういう意味におきまして、女性を差別してきた、不当な差別であるというふうな意識は、はっきり申し上げまして持っておりません。ただ、それが、今日提出されておりますこのような法案ないしはそこに含まれております物の考え方から見ますると、現在まで行われている、差別ではないと考えた普通のやり方が、これは差別なんだということになる可能性が非常に多いわけでございます。  そこまで考えてまいりますと、今日まで来た状態、これはこのまま、恐らくは法律がなくてももっと変わっていくだろうと思うのですけれども、この法律をもって急速に現在の情勢を一挙に変える、施行後直ちに実効が上がる、来年から直ちにこのようなことにしなければならないというようなそういう強い法案をつくられましても、産業界としては大部分が、全部が全部とは必ずしも申し上げませんが、恐らくは直ちには対応し切れないものであろうと私どもは考えております。もちろん業種、業態がいろいろございますし、第二次産業から第三次産業に至るまでの間に、同じ製造業の中におきましても鉄鋼と弱電部門とは非常に違います。そういうようにいろいろ違いますから、女性の多い少ない、あるいは年齢構成が高い低い等々ございます。それから業務の性質にしましても、いわゆるソフト経済化が進んでおりますが、サービス経済なんかの部分と製造業あるいは銀行といったようなものとの違いがございます。その違いによって対応の難易というものはいろいろ違うと思いますから、一概には、一律には申し上げられませんけれども、大体においてそう簡単には対応できないのが大部分ではなかろうかと考えるわけでございます。  したがいまして、観念としましては男女差別解消に反対はしない、もし差別というものがあるならばそれは解消しようという姿勢は否定いたしませんし、皆さんもそのように積極的な前向きの姿勢で取り組むだろうと思いますけれども、そうすぐには変われないというのが実情でございます。  その事情はいろいろございますが、最大の問題はやはり終身雇用体制というもの、体制といいましてもこれは慣行でございますけれども、これを背景としましたところの勤続年数の問題でございます。  現在まで女子勤続年数、だんだん延びております。かつ意識の面でも、長く勤めたいというのが、この間の総理府の調査では一七%ぐらいある。やめないで長く続けたいというのが一七%ぐらいあるという話でございます。あるいは勤続十年ぐらいが二割ぐらいになったという調査もございます。しかし、私どもから言わせれば、やはりまだ二割程度であり、かつ、一七%にすぎないという感じでありまして、少なくとも、男子がほとんど九割以上、九九%ぐらいは定年まで行くということを大前提として入ってくるのに対しまして、女子の方は全然正反対である、多少ふえてはきているけれども、まだ男子と同じような勤続年数の就業形態をとるというふうには考えられないわけでございます。  この終身雇用体制といいますのは、程度の差は多少あるかもしれませんけれども、おおむね集団主義にならざるを得ないものでございます。その集団の中での個々の人の評価を長期の勤続の中で決めていくという体制でございますから、勤続年数が短い、あるいはいつやめるかわからないという女性は、少なくとも今日まではこの長期勤続体制になじまなかったということが言えるかと思います。これもよく専門家会議なんかで否定されております大数観察に基づくものでございますので、要求されておりますところは、個々人の意欲と能力に応じて平等に扱え、あるいは機会を均等に与えよということでございますから、その点では確かに否定されるかもしれませんけれども、長期勤続体制のもとに集団主義というものをとる以上は、個々人一人一人を完全に入り口のところから区分するということは難しいわけでございます。この法案が通りますと、恐らくは従来に比べるならば何らかの形でそういうような方向に対応せざるを得ないのではなかろうかと思いますが、すぐには企業というものは変わることはできないわけであります。  それから、社会一般のコンセンサスにつきましても、例えばこれは一例でございますが配置転換の問題がございます。男性は辞令一本で世界じゅうどこへでも飛んでいきますが、それと同じようなことを女性にもできるかというと、これはできないと言うのです。これはある企業の担当者の話であります。平等なのだからやったらいいじゃないかと言うのですけれども、そんなことをやったらあの企業は何というひどい会社だと言われかねない。これは世の中からそういうふうな指弾を受けると言うのです。  したがいまして、この問題についての世の中の一般の物の考え方が、マスコミ等の議論を通じまして漸進的に変わっていく、女子自身の意識の持ち方も変わっていく、就業形態も変わっていくということの中で、企業の方もいろいろ工夫、研究を重ねまして漸進的に変わっていかざるを得ないということでございます。それを無視していきなり企業だけが突出して変わらなければけしからぬ話だと言われましても、私どもの方はいささか納得できないわけであります。そのためにはいろいろ研究が必要でございます。試行錯誤もあろうかと思います。こうやれば平等になるだろうと思ってやったのが、それはだめだということになればまたやり方を変えなければならぬ。前向きに取り組むことは取り組みますけれども、かといって、例えば来年から直ちに変えると言われてもこれは無理な話でありまして、そういう意味におきまして、企業としての創意工夫、試行錯誤を重ねる、事実を一つ一つ積み重ねていく、漸進的にこれを解消していく、そういうことのために時間が欲しいということでございまして、私どもは、そのために、直ちに強制されるような強行規定には絶対反対であるということを最初から申し上げてまいりました。  その意味におきましては、政府案も、教育訓練等福利厚生の一部を省令で定めるところということになっておりますが、一部強行規定になっております。罰則はついておりませんけれども、強行規定になっております点につきましては、私どもは非常に問題があろうかと考えております。ただ、これは労使間の話し合いの結果こういうふうになったわけでございますので、何とかこれに対応するようにしたいと思います。ただ、省令につきましてはできる限りこれを広げないように、狭く、なるべく重点的に解釈して考えていただきたいということをお願いする次第でございます。均等、平等の面における一番大きな問題はそういうことでございます。  したがいまして、救済機関につきましても、本来ならばこれは屋上屋だから要らないというのが圧倒的な意見でございます。そうはいっても裁判所だけではだめだということでこうなったわけでございますが、この際ちょっと申し上げておきますと、多くの特に地方の人たちの意見としましては、公益委員の人選が難しい、企業の中のこと、産業界の実情をよく知っておられる方が非常に少ないということで、言葉は余りよくないのですけれども、かなりの不信感があるやに私どもにはうかがえるわけでございます。その点は今後の問題としてお願いしたいと思います。  それから、基準法の方の女子保護規定の問題でございますけれども、これは私どもは、平等を進めるならば、母性保護は重要でありますから残さざるを得ませんけれども、それは別としまして、あとは全部撤廃すべきであるということを基本的に主張してまいりました。しかしながら、政府案等におきましても、業種によって非常に区分をされておる。平等の方は一律でございます。保護を外す方は業種によって区分されておるというところは、いささか納得できないわけでございます。現在、工業的業種といいましても、ME、マイクロエレクトロニクスの進展等によりまして、極めて急速にサービス経済化といいますか、ソフト経済化が進んでおりまして、業界の意見では、第三次と第二次を区別する必要はないという声も圧倒的でございます。そういう意味におきましても、時間外労働、深夜業等におきまして、こういうものは残しておかないで、全部撤廃するということを主張してまいりました。これも非常に不満でございますけれども、先ほど申し上げましたような過程を経まして、一応現状のままで賛成させていただきたいと思います。  なお、附帯的に申し上げますと、当面、この問題について必要なのは、来年を目途にしております条約の批准という問題がございます。私どもは、条約の精神にのっとって、これはもう将来、理想に向かってどんどん進むのは当然であろうかと思いますけれども、当面はまず現実からなるべく足を離さないようにして、最小限条約の批准の最低要件を満たすというところから出発しようではないか、それでいいではないかというのが基本的な姿勢でございます。  本年三月二日付で、日経連の大槻会長名で政府の方に質問を申し上げました。三月二十七日に労働省の関次官並びに白井審議官から口頭で御返事をいただいたのでございますけれども、これによりますれば、条約批准のために何らかの法的措置、法律をつくることは必要であると理解されるけれども、しかしながら、その法律の内容、つくられ方としましては「妊娠又は母性休暇を理由とする解雇及び婚姻をしているか否かに基づく差別的解雇」、これについては制裁が必要だ。しかし、それ以外については特別に強行規定でなくてもいい、批准可能であるという御返事を承っております。逆に保護規定の方につきましては、母性保護以外はやはり全面的に見直すことが必要なんだが、漸進的にやってもいいということでありまして、基本的に言えば、生理休暇はもちろんのこと、産前産後休業の拡大につきましても必要ない、救済機関についても裁判所があるから必要ないというような御返事をいただいております。  そういうことでございますので、現状から余り離れた、例えば野党四党御提案のような、これは直罰ではございませんが、是正命令に従わなければ罰則ということになっておりますので、そういうきついものではなくて、かつ、女子保護規定との関連でバランスを欠いたようなものではなくは、政府案でひとつ出発させていただきたい、これが私ども産業界としての希望でございます。いずれにいたしましても、時間をかけて漸新的に進むようにお願いしたいと思います。  以上で、私の意見陳述を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
  8. 有馬元治

    有馬委員長 次に、田辺参考人にお願いいたします。
  9. 田辺照子

    田辺参考人 明治大学の田辺でございます。  私は教師をしていますので、同じゼミナールで、男子と女子就職で、いつでも男子は完全一〇〇%就職するわけですけれども女子の場合には、同じ能力を持っていながら、女子であるがゆえに既に募集、採用からシャットアウトされているということは、人間の尊厳と基本的人権を損なうものだと常々考えておりました。そして、もうじき差別撤廃条約を批准するから、あなたたちの悩みもやがて解消するというようなことも言っていたわけですけれども、この法案を見て愕然としたわけです。私は、三者が意見を異にしていても、労働省でまとめる場合には、少なくとも日本代表として、国連の場において、世界の趨勢を見て、そして署名なさったわけですから、こんなばかなことはないのではないかというふうに思っていた次第です。  まず、募集と採用について、採ってくれないということでは雇用契約を結ぶことができないわけですから、これでは後の平等には全く関係がないというふうな問題が出てまいります。  次に、昇進、配置の問題ですけれども、私の学校の職員を見ましても、同じ大学で同じ学部で一緒の仕事をしているのに、五十歳ぐらいになりますと職格で二つ、賃金にして九万円の差が開いているわけです。会うたびにその問題が女同士で話されるのですけれども、強い組合でさえなかなか取り上げてもらえないというのが、やはり日本の婦人の実態ではないかと私は思っております。  この法案を見て驚いたことは、この募集から昇進、配置については努力義務であるというふうになっておりますけれども、各国の法案を見たときに、この募集、採用というところが婦人労働者の一番悩みのところでありまして、ここが強行法規になってない国はないというふうに私は見ております。差別撤廃条約の十一条を見ましても、募集、採用から解雇に至るまですべて権利というふうに規定していますし、それを奪うことのできない労働の権利というふうに規定しているのに、どうしてこういうものが批准できるのだろうかと私は疑問に思っております。ましてこれを救済する機関というのは単なる調停だけであって、しかもその調停に持ち込んでも相手の人がいやだと言えばそれで調停は始まらない、また調停に乗っても使用者が受諾しなければそれでおしまいというのでは、基本的人権も人間の尊厳も守られないということでして、これは平等法なんというものからはおよそ縁の遠いものではないかと思っています。  そういう基本的人権を守るということから見ればどうすればいいかと言えば、まず平等委員会というものをつくって、そして何が平等が、これは何に該当するかということをまず判定する、それから差別に対して監督をする、そういう措置をまずつくるべきではなかろうかと思うのですが、これにはそういうものもないし罰則もないということであっては、これはもう全くなきに等しいような平等法で、こういうものが通って、しかもそれと引きかえに労働基準法を改正するということは、確実に労側条件が悪化し、婦人労働者がそれによって働かなければならないのですから、労働条件が悪化するということは、究極的には婦人の地位の低下につながるのではないかと思っています。  なぜならば、今、日本の労働基準法昭和二十二年につくられたものでありまして、もう既に三十数年を経ているわけです。その間ILOの条約というのも年々次第に高められておりまして、外国の労働条件と比較したときに雲泥の差があるわけです。  御存じのように、日本は今労働時間が二千数十時間になっておりますが、四年前ですか、労働省は国際貿易の摩擦を防ぐためにということで、こういう文書を出しています。  「「貿易に依存する度合いの強い日本経済の発展のためには、自由貿易体制の堅持が何よりも必要であるが、そのためには適切な対外経済政策とともに、先進工業国間における公正な労働基準の確保が重要である。こうした観点から賃金と並んで最も基本的な労働条件である労働時間についても、欧米主要国に比べ遜色のないものに改善を進める必要がある」そのため「先進国としてふさわしい地位を占める」ために、昭和六十年までに年間総労働時間を二千時間を割るよう、行政指導をしているがことしておるわけですが、来年で二千時間の達成はとても無理のようです。  といいますのは、先進工業国の十九カ国の労働時間が、これは一九八〇年ですが千七百六十時間になっているわけです。ところが日本は肉体労働者で二千百四十時間です。一九七五年から八二年までの五人以上の事業所を見てみますと、一年間に大体二・五時間しか減っていないわけです。このことから言いますと、ヨーロッパ並みになるのには約百年かかる計算になります。こういう視点から見ましても、もう労働時間そのものを抜本的に変えなければならない段階に来ているのではないかというふうに思います。  労働時間と賃金というのは労働条件の基本的な問題でして、特に労働時間というのは、婦人労働者、男子労働者にとっても重大な健康の問題とつながっているわけです。  先ほど、時間外労働を外せ、また深夜を外せということを言いましたけれども、今、日本の貿易摩擦の一つは労働時間でありまして、これをもし二千時間にしたと仮定しても、そのモデル計算をすれば一日八時間、五日としまして週四十時間、一年間五十二週ですから二千八十時間になるわけです。労働省の人の計算によりますと、年次有給休暇を十三日、祭日を入れて二十五日としても、八時間をかけて二百時間なんです。それを二千八十時間から引きますと千八百八十時間になります。ですから二千時間にするというのは、男女ともに時間外労働を百二十時間にするということでありまして、婦人労働者の労働条件が非常に過保護のように言われていますけれども、二千時間にしても時間外労働は百二十時間なんです。ヨーロッパの場合には千七百六十時間前後ということは、向こうの男性の方が日本の婦人労働者よりもよほど働いていないということになると思います。  こういうことを考えましたらば、私は、まず日本の労働時間を改正することが先決ではないかというふうに思っています。  ILOの条約を批准するのはもちろんのことですが、それにはまず時間外の規制を--ILOの一号条約でもまた三十号条約でも、それを守るためには繁忙期に一時間から二時間の時間外労働をするというふうに認めているわけです。  ところが最近の話は、男子に合わせて無制限に働けということです。これでは女子労働者はとてもついていけない。現実に家事も育児も背負っているわけです。これがもっと残業がふえるといったら、育児施設も一体どうなるかという問題があるし、夫も妻も帰ってこないといったら、一体子供はどういうふうになるだろうということも考えなければなりません。  この間、NHKのテレビで、一人で食事をする子供というのは世界で日本ぐらい多いところはないというふうに放映されていましたが、およそヨーロッパの家族でもって子供が一人で食事をしているなんというのはないと思います。こういうふうな児童の人権ということも考えないで、企業中心の労働時間というものを進めていけば、やがて家庭崩壊にまでつながるのではないかというふうに思っています。  私は、この批准をするために労働基準法の改正は必要ないというふうに思っています。この条文を見ますと、婦人の地位の向上という目的語にすべてつながっているわけでして、そのために今の労働条件を引き下げるということは、結局常用労働者がパートに落ちざるを得ないわけです。多くの人がパートに落ちるでしょう。そういうような結果になれば、一部のエリート女性は別として、全体の婦人の地位というものは低下してしまうわけです。ですから、むしろ、労働条件を引き上げることによって共通の基盤というものをつくるのが基本ではないかというふうに思っています。  日本の労働基準法が低いということは、海外からもうさんざん指摘されているところです。また、行政指導がいかに頼りないかというのもこの労働時間を見ても端的に示されているわけでして、来年も行政指導によっても二千時間が達成しない、また、労働基準法研究会が時間外について研究会を再開しているというふうに聞いておりますが、こういうふうな条件を考えてみますと、やはり今これをセットにして批准することは、この条約には関係ないことだというふうに思います。  この差別撤廃条約も、目的に合致したものであれば留保ができるというふうになっています。ですから、私は、四党共同提案の平等法に賛成しますから、これで批准して、そして労働基準法については留保するということでもって、国連でもこのことは十分通ると思います。なぜならば外国から非難されるほど低いのである。だから、将来、日本がILOの水準を超え、先進工業国の水準まで労働時間が短縮されたときにはこれを撤回するというふうにすれば、非常に納得のいく論理ではないかというふうに思っております。  現に外国でも、批准の中で、例えばオーストリアでも深夜業は留保するとか、そのほかの国でも留保ということが考えられているようです。イギリスでも立派な性差別禁止法が出て、そして同一労働同一賃金が施行されておりますけれども、労働組合が深夜業を反対しています。そして、来年どうするかと言えば、オーストリアがもう留保をしましたので、多分留保になるのではないかというふうに思います。日本だけが全体の労働条件を引き下げて批准するということになれば、むしろ国際的非難を呼び起こすものではないかというふうに思っております。  生理休暇についても、よく日本だけだと言うけれども、日本の労働時間の長さというものが大きな問題であるというふうに私は思っています。  例えば西ドイツにおきましては、かつて家事労働日というのがありましたけれども、週四十時間が達成されたときに、もはや家事労働日ではなくて、チャンスの平等を求めるということで、労働者自身がその規定を利用しなくなったという経過がございます。日本もそういうふうに、時間外労働がもっとヨーロッパ並みになり、残業が年間百時間を割るというふうになり、大幅な週休二日制というものが実現してくれば、それと生理日が重なるというようなことから、次第にとらなくてもいいようになってくるのではないかというふうに思います。  問題は、婦人労働者の場合はやはり労働時間にあります。もちろん男性の場合もそうですけれども、労働時間の長さというものが決定的な役割を果たしていると私は思います。こういうふうな観点から、労働基準法は留保し、そして平等法で批准をしてほしいというふうに私は考えています。  また、平等法に罰則規定があるのは反対だということをおっしゃいますけれども、どこの国でも平等法ができたときは資本家は反対もするし、少しは動揺をするわけですけれども、やがてそれになれていくという過程を経ています。日本でもかつて工場法が成立するときに企業がつぶれるというふうに大騒ぎをしましたけれども、つぶれた企業はなかったわけでして、平等法のために日本の企業がつぶれるというようなことはないと思います。ただ、対応の仕方として、どうしてもそれが緊急に対応できないというならば、強行法規にしてしかも罰則をつけても、私の考えから言えば、三年から五年ぐらいはその運用について罰則をつけないような行政指導でもって乗り切ることはできるのではないか。将来みんなが守れるようになったら、そのときにはもうそういう法律は要らないわけでして、今のように基本的人権が侵されているときに、みんなが挙げて反対するからこそ、この平等法というものは必要であり、資本の立場の言うことから考えれば、数年間は運用でもって行政指導し、あとはきちっとその条文に戻るというふうなことが考えられていいのではないかというふうに私は思っています。  一応、時間が来たようなので、これで終わります。(拍手)
  10. 有馬元治

    有馬委員長 次に、高島参考人にお願いいたします。
  11. 高島順子

    高島参考人 きょうは、国会の先生に申し上げることですし、もう既に皆さんのお手元に私の肩書が出ておりますので、私は労働組合立場から、しかも、ほかの先生方は学者だとか法律家だとか専門の先生がいらっしゃいますから、私はもっと私自身の一身上のことを申し上げたいというふうに思います。そういうつもりでお聞きいただければ大変ありがたいと思います。  こういうことを申し上げるのは大変恥ずかしいことですけれども、私は高等学校を卒業した後、六年半職場で事務員として働いてきました。そのとき、同じ職場に入ったのに、初任給も違う、仕事の割り当ても違う。それで組合仕事をやってみました。しかし、企業の中で活動して男女差別をなくすということがどんなにむずかしいかということを痛感いたしました。それで、たまたま機会がありまして同盟本部の書記局に入ることになりました。現在まで十七年間、婦人関係の仕事を担当して、婦人労働者が安心して働き続けられる職場、働きがいのある職場をつくるためにどうしたらいいかをずっと考え続けてきました。そして、そのことをできるだけ活動の中に微力ながら入れる努力をしてきたつもりです。  私自身の生活からいえば、四年生と六年生の子供が二人おります。残念ながら、厚生省は、産休明けから子供を預かってくれていません。現在では大分よくなりましたけれども、私が子供を産んだころは八カ月以降しか預かってくれませんでした。仕方がありませんから、二人ともゼロ歳児から共同保育所に入れました。一年たってようやく公立の保育園に入れて、毎日朝九時、もちろん八時半という時間もありましたけれども、八時半ないし九時にしか預かってくれませんから、毎日事務所へ遅刻をし、夕方は六時にとりにこないとすごく怒られますから、やむを得ず仕事があっても、六時に飛んで帰って子供をうちに連れて帰りました。  共同保育の時代には、私も共同保育の運営委員会の事務局長仕事をし、保母さんの賃金なんかを決める仕事もやってきました。公立保育園に入ったときには、父母会を自分でつくって父母会の会長の仕事もやりました。そういうことがどんなに大変なのかということを自分自身で体験をしてきています。  労働組合仕事をしながら、身をもって自分自身の問題として、妊娠中に体のぐあいが悪いときには休暇が欲しい、産休がもっと欲しい、せめて一年間くらい育児休業のために休みたいとどんなに思ったかしれません。労働組合仕事ですから、休日の出張や夜遅くまで会議があったりお客さんと会わなければならないこともたくさんあります。  子供が生まれたらどなたもがおめでとうと言ってくれます。結婚をしたらみんなおめでとうと言ってくれます。それなのに、どうして女子労働者は子供が生まれたら会社をやめなければならないのでしょうか。私もある職場から来た人が、新婚旅行から帰って職場に出てみたら、机の上に辞表が置いてあったという話を何件も聞いています。あるいは、出産をしたら自動的に事務職の人が現場に回されるというふうなことを、涙ながらに訴えられる話を何回も聞いています。こういう事例を出せば切りがないほどたくさんの話があります。そして、自分の非力さを感じながら、何とかしてそういう状況を直したい。なぜ日本の社会は、男性女性仕事と家庭の両方を大切にしながら幸せに生きたいという、人間としての最低限の欲求が生かされないのかと思うと実に残念でたまりません。  どなたか、ゆうべ一生懸命思い出そうとしたのですけれども、どうしても思い出せないのですが、こういうことを書いている人がいます。日本の社会にはヨーロッパみたいにいわゆる階級はないけれども、限界差別の法則が働いているのだというふうに書いていらっしゃる人がいて、なるほどな、そうかなと思いました。それはどういうことかというと、例えば高卒の人は私は中卒じゃないよ、大卒の人は私は高卒じゃないよ、そして同じ大卒でも、名前を挙げていいかどうかわかりませんが、私は早稲田じゃなくて東大出だよ、公務員の人たちからいえは、私はノンキャリアじゃなくてキャリアだよ、常にどこかで線引きをする、それが日本の階級なのだということを言っている。私はそれを読みながら、その最大のものが私は女じゃなくて男なんだ、どの分野でも共通してそういうものが日本の社会にあるような気がしてしようがありません。・  この線引きは、例えば今ベトナムの人たちは、今からがら小さな船に乗って、日本は豊かな国だからきっといいことがあるに違いないと思って、日本に希望を求めて逃げてきた人たちがたくさんいます。今、日本は定住枠を五千人ぐらいにしました。しかし、日本政府がとっている措置はどういうことでしょうか。品川の国際救援センターという金網の鉄条網の中に、完全隔離施設への収容という措置を日本政府はとっているのです。このことは現在出ております「文塾春秋」八月号に、犬養道子先生が、「世界の孤児になるのか、日本」という題で、切々と訴えられております。どうぞ、国会議員の先生はこの原稿をぜひ読んでほしいと思う。これと同じことが私は婦人の問題だと思います。ベトナムから逃げてきた人たちに対して日本人がやっている措置は、現在NHKテレビで「二つの祖国」というドラマがありますけれども、あそこに出てくるマンザナール収容所における日本人の扱いと同じことを日本人がやっているのじゃないでしょうか。  さらに、幾つか事例を挙げさしていただきますと、サンケイ新聞七月十四日号で、慶応の宮沢先生が、「国際少年非行会議出席して」の記事の中で、「「日本の企業は金になることにしか投資しない」という偏見が、日本の輸出・貿易の在り方への非難を増幅している。」と訴えられて、国際少年非行会議が来年日本で開かれるけれども、どうぞこれに温かい援助をしてほしいということを切切と訴えられています。私はこれも同じ問題だと思います。  さらに、一月一日の日経新聞で、一橋大学の阿部謹也先生は、「「生活の中心」失った現代」という記事の中で、今教育臨調の問題が大きな問題になっておりますけれども、「為政者は教育制度をいじくりまわす前に日本の労働者の超過勤務の全面廃止に向けて努力すべきではないだろうか。」ということを訴えられています。  こういう私たちにとって都合のいい事例ばかりいっぱい挙げましたから、今度は「中央公論」に出された埼玉大学の長谷川先生とかいう人が書いた「男女雇用平等法」は日本の文化体系をつぶす」という記事があることも私は読んでいます。この論点に対して大変高名な、私も尊敬していた先生が同感の意を新聞で公表されているのを見て、私は大変驚きました。こんな大先生でも差別の問題がわかっていただけないのだろうかということを思ったのです。  よく日本の男性は、私たちが男女平等を言いますと、家では母ちゃんが財布の実権を握っているよとおっしゃいます。このことも私は一生懸命考えてみました。これは一体どういうことなんだろうか。よくよく考えてみて、この私の考えが間違っているかもしれませんけれども、例えば高群逸枝先生はすごい長い間、三十五年近くだったと思いますけれども、日本の女性史を研究なさいました。日本の昔は母系制社会だったということをあの先生は身をもって調査研究されたわけです。例えば家の中心たるところを母屋というように「母」という言葉が出てくる、また「嫁入り」という言葉は鎌倉時代以降しかなかったのだ、その前はそういう言葉はなかったのだ。「源氏物語」を思い出してください、そういうことを高群逸枝先生は書いていらっしゃいます。しかし、その後江戸時代になり、武家社会になり、朱子学というのでしょうか、儒教というのでしょうか、そういう思想が日本の社会の基本になりました。そして、三百年間も鎖国が続きました。ですから、家庭の中には日本古来の母系制のものが残り続けてきたのじゃないでしょうか。しかし、公の場には儒教的なものや武家社会の仕組みが公然と残っている、特に日本の企業の中には武家社会的な思想がどうしようもないほど強く残っているのじゃないか、そのことが「うちの母ちゃんは」ということにつながっているのじゃないかという感じがしてしようがありません。  今、日本は急激な勢いで高齢化社会に向かいつつあります。MEだとかOAだとかバイオテクノロジーだとか、いろいろな先端技術が進みつつあります。子供は二人程度という家庭生活が普通になりつつあります。産業界では第二次産業からサービス産業へというふうに、世の中はすごい勢いで変化をしております。  また、違う面から言いますと、例えば日本の労使間、日本の産業が非常にうまくいっているものですから、東南アジアの人もルック・イーストと言って、日本の労使関係を一生懸命学びに来ています。先進周の人も、例えば現在では同盟にひっきりなしに、外国の労働組合のお客さんだとか経済界のお客さんがいらしております。そのときに必ず女性の問題について質問されます。このことはまた後ほど触れますけれども。  今、日本の国家財政は大変な赤字です。赤字を縮めるために、福祉予算の削減が「日本型福祉」という名前で静かに進行しつつあるように思います。その「日本型福祉」という中身は、女性が子供や老人の世話を見て、すべてそういうお金のかかることはうちの中でやってくれというふうな動きじゃないかと思います。これは世の中が今動いている方向とは逆なのじゃないか。しかも、産業界が今変わりつつある動きと反対なのじゃないかという気がしてならないのです。  何でこんなことになってしまうのでしょうか。日本の企業や社会が、すべての人々に、日本人だけではなくて世界の人々に、男性とか女性とか学歴とか国籍とかそんなことにかかわらず、あるいは企業の内側とか外側とか言わないで、公平な社会、人が人として尊重される社会をつくる努力こそ、今日本人が世外のためにしなければならない一番大事なことではないかと私は思います。  先ほど喜多村さんがおっしゃっていましたように、日本は貿易で成り立っている国です。そのために経団連の人たちは、閉鎖的な貿易ではなくて、世界貿易の自由化のために非常に努力をなさっております。また、日本の政権を握っておられる自由民主党というのは、党名が示すように最も自由を尊重し、最も民主的な党だということを選挙のたびに誇りにしておられます。今ここで私たちが問題にしておる雇用における男女の平等は、人間の自由度の拡大であり、民主主義の実践の問題ではないでしょうか。私は日本が世界から尊敬される国になってほしい。私もそのために努力をしたいと思います。  私自身、労働組合会議で、外国に行ったりあるいは外国のお客さんと話をしたりします。そして先進国の人、開発途上国の人を問わず、日本の女性の地位は低いですねと同情されて、そのとき私は本当に情けない思いをします。  特に、ここの自民党の国会議員の先生にお願いします。自民党政権が日本の成長をこれまで導いてきたと常々主張しておられるということを私は認めて、先生方が、雇用分野における男女平等についても、世界に誇れる法律にするために全力を尽くしてくださるという、そういうことを心からお願いしたいと思います。  そして、法案について言わなければいけませんからあえて言えば、私も男女平等問題専門家会議委員をしましたし、その後も、直接審議会の委員はやりませんけれども、同盟の側の実務の責任者をやってきました。政府提案の法律が、せめて社・公・民・社民連の四党共同提案程度のものであってもらえたらなというのが私の本心です。せめてその程度のものであれば、翻訳をして私が労働組合の国際会議に行ったときに、日本で私たちが一生懸命つくった法律というのはこんなものなんだよということを、よその国の人に示せます。しかし、現在政府が出されている程度のものであったら、私は、よその国の労働組合の人にあんな恥ずかしい法律を出すのをちゅうちょしたいという気持ちがあります。国会議員の先生は、男性女性も一票ずつ票を取って、日本の社会を最もよく知っていらっしゃるはずです。そういう立場から、男女の平等というのは自由度の拡大の問題なのだ、歴史の流れというのは自由度の拡大で進んでいるのだ、そういうことを私が申し上げるのは大変僭越ですけれども、そのことを考えて、よりいい法律をつくってくださるように心からお願いして、私の発言を終わらせていただきたいと思います。  どうもありがとうございました。(拍手)
  12. 有馬元治

    有馬委員長 次に、中島参考人にお願いいたします。
  13. 中島通子

    中島参考人 私は、十年来、男女雇用平等法制定を切に願って、いろいろな行動をしてまいりました。それは、弁護士という職業柄でもありますし、あるいは人権擁護を使命とする日弁連の一員として、あるいは日弁連の女性権利に関する委員会のメンバーとして、さらに平等に働きたい、差別をなくしてもらいたいと思う多くの女性たちのグループとともに、さまざまな形で、本当に心から、男女雇用平等法制定していただきたい、早く本当に有効なものを制定していただきたいということを願って、この十年来活動してまいりました。  私がそのようなことを考えるようになったのは、私の日常の仕事の中で、多くの女性たちから相談を受けていることからです。多くの方々が、弁護士としての私のところに相談にいらっしゃいます。それは、結婚したらやめさせられようとしているとか、子供が生まれたらもうやめろと言われたとか、二十年も勤めているのにいまだに同じ仕事、コピーとりだとか、男の人のアシスタントであごで使われて、賃金も男の人の半分だとか、昇進はしない、何かあると嫌がらせでもうやめさせられようとしている、四十過ぎたらいろいろな嫌がらせて職場を追われようとしている、そういう本当に切実な女性の訴えを私どもは聞いてまいりました。  このような訴えを聞いて、私ども弁護士として一体何ができるのか、本当に一生懸命考えました。それで、できることはいろいろいたしました。しかし、現在の日本の法律では、そのような差別を受けている女性を救済する、その差別をなくすための手だてというものがほとんどないのが現状なのです。  御承知のとおり、法律上は憲法がございますけれども、憲法は直接適用されないというような解釈になっておりまして、唯一の法律労働基準法の四条でございます。賃金差別を禁止しております。しかし、この賃金差別も、同一労働であるのに、あるいは同じ資格であり、同じ雇用形態であり、同じ学歴であるにもかかわらず、女であるということだけで賃金を差別することを禁止しているだけなのですね。ということになりますと、そのほかのさまざまな差別というものは、この労基法四条では救うことができません。しかし、そのほかのさまざまな差別がある限り、幾ら労基法の四条で性別による差別の禁止、賃金についての禁止がありましても、これはほとんど役に立たない状態になっているわけです。一時は、一九七五年をピークにしまして賃金差別が是正されたことが、二、三年ぐらいでしょうかございました。しかし、それもその後ほとんどとまってしまいました。労基署が動いてくれません。それは、仕事が違うから、学歴が違うから、雇用形態が違うからというようなことで取り上げてくれないわけなのです。労基署に行っても取り上げてくれません。それから、労働省の婦人少年室にもみんな行きました。しかし、これも直接の法律がないということで取り上げてくれません。あるいは地方自治体に労政事務所などのような機関がございます。しかし、ここも強制力がございませんので、相談はしてくれますけれども、実際に差別を是正する力を持たないわけです。それでも、平等に働きたいと思う女性はどうしたかといいますと、結局これは裁判に頼らざるを得なかったわけです。裁判所に訴えたわけなのです。  何を根拠にしてこの裁判をしてきたかといいますと、直接の法律がないために、直接の根拠になるのが御承知の民法九十条の公序良俗条項なのですね。結婚退職制、結婚したら女はやめなければならないという制度は、公序良俗に反するかどうかという判断で裁判が行われてきたのです。十数年前から、たくさんの女性たちがそれでも勇気を持って裁判所に訴えました。その中から、この公序良俗の中身を憲法十四条で解釈しました。つまり、憲法十四条は私人間の契約に直接適用されるものではないけれども、憲法が男女平等をうたった以降は、この男女平等の理念は雇用分野においても公序をなすに至ったのだという解釈で、これまで裁判で勝訴することができました。それは結婚退職制、出産退職制あるいは若年定年制、それからもっと差の縮まった男女差別定年制、あるいは人員整理のときに結婚している女から一律に首を切る、そういう定年、退職、解雇に関する限りは、憲法で解釈した公序良俗違反ということで、裁判で勝訴することができたわけなのです。  しかし、そのほかのさまざまな差別がさらに広がっております。これらについては今現に裁判も行われておりますけれども、憲法十四条を間接に適用した公序良俗、これは大変重要なことなんですけれども、公序良俗の中身を憲法十四条で解釈させるということが、定年、退職、解雇以上の差別について、これだけではなかなか困難な裁判になっているのが現状です。なぜなら、公序良俗を直接の根拠にする裁判というものは、公序良俗とは何か、つまり女性に関する問題ですから女性に関する公序良俗、女性というものはいかに生きるべきであるかという論争になるわけなのです。  このような裁判において、解雇なり差別扱いをした企業側が主張するのはどういうことであるかというと、常に、男性は外で働くものである、それに対して女性は、若いときの一時期があるいは夫の給料が安くてそれでは生活できない場合の家計補助として働くものである、それが日本における社会通念である、女性の生き方である、したがって女性を差別してもそれは公序良俗に違反しないのだという御主張をなさいます。したがって、今までの裁判は、女性はこの世の中でいかにあるべきか、女性が働くということはどういうことなのかという論争になるのであります。  そのような裁判をやってきた者として、私たちは、もう十年も前から本当に心から願っておりましたそれは、女性にとっても働く権利というのは基本的人権なのである、人間として奪うことができない権利なのであるということを明確にうたう法律をつくってほしい、これが第一の願いです。  第二に、裁判をやる場合に、これは裁判をやらない場合にも当然及ぶことでございますが、裁判をやる場合に、公序良俗を直接の根拠とするのではなくて、直接女性差別をしてはいけないのだということ、その法律によって裁判ができる、そういう法律をつくってほしい。差別禁止、これは当然ながら入り口から出口までの差別禁止ということでございますが、すべての雇用上の差別を禁止する法律をつくってほしい、これが第二の目的でございます。  それからもう一つ、第三の目的がございます。それは、今申しましたように勇気ある女性たちは裁判所に訴えて差別と闘ってまいりました。しかし、日本では特に裁判というのは大変なことなのです。現在の法律の制度のもとで裁判をやるということの大変さは今申し上げたことでございますが、仮に直接の差別を禁止する法律ができたとしても、裁判をやるということは普通の女性にとって並み大抵のことではございません。特に日本の場合には十年あるいは二十年裁判も珍しくないという現状です。さらに、十年、二十年の裁判をやってようやく勝訴判決をかち取ることができたとしても、その効力が直接及ぶのは裁判を起こした人だけです。同じ差別がほかにあっても、それらに裁判の効力を直接及ぼすことはできません。もちろん間接的な影響は大変大きいわけですけれども、法的な効力としては他には及ぶことができません。  そのような意味から、裁判まで起こさなくても、この差別を迅速に、適正に、有効に、しかも簡易に救済してもらえるような制度が早く欲しい。つまり司法救済に対して行政救済の制度が欲しい、これが第三の目的です。  もう数十年前から差別と闘ってきた女性たち、女性であっても差別されずに、働き続けたいと願ってきた女性たちの切実な願いが、この三つの目的が達成されるような内容を含んだ男女雇用平等法制定でございました。  ところが、このたび政府から提案されました雇用機会均等法と略称されている法律案、これは、大変残念ながらそのようなものには到底なっておりません。  それからもう一つ、今私どもが申しました私たちの願いというものは、単に私たちだけの願いではなくて、実は世界じゅうの女性たちの願いでもあるということを、私たちは一九七五年の国際婦人年に知ることができました。  一九七五年にメキシコで国際婦人年世界会議が開かれました。そこで多くの国々の女性たちと知り合いました。そこで、ほかの女性たちがどんなことをしているかということを私たちは知りました。そこで、私たちが今願っていた男女雇用平等法というものは、何も私たちだけのものではない、もう既にほかの欧米諸国ではつくられている、あるいはそういう法律をつくろうということで世界各国の女性たちが一生懸命努力している、政府もそのために具体的に取り組んでいるということを私たちは知ることができました。しかも、やがて、それが現在問題とされております、批准が目前に迫っております、婦人に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約が採択されまして、これを見ました私たちは、私たちが願ったことがここにみんな書いてあるということを見て、大変うれしく思ったわけです。  つまり、条約の二条の(b)というところで、「すべての差別を禁止する立法及びその他の措置をとらなければいけない」ということを締約国に義務づけております。さらに、条約の同じく二条の(c)のところでは「婦人の権利の法的な保護を男子との平等を基礎として確立し、かつ、権限のある国内裁判所」、ここも原文がアンドになっておりますので、先ほどのと同じように「及びその他の公的機関を通じていかなる差別行為からも婦人を効果的に保護することを確保すること。」これを締約国に義務づけております。さらに十一条におきまして、特に一項の(a)におきましては、「すべての人間の奪い得ない権利としての労働の権利」を、男女平等に確保するためのすべての措置をとらなければならないということが明記してあります。  さらにそれ以降、(b)から(f)にかけて、今問題になっております入り口の募集、採用のところから昇進を含めて定年、退職まで、あらゆる雇用上の差別について、それを撤廃するために必要なすべての措置をとらなければならないということが明記されております。私どもはこの条約を見たとき、私たちが願ってきたことは本当にこの条約の中に書かれているのだ、だから、日本政府はこの条約を批准すると言っているけれども、それではこの条約を批准する日本でも私たちが願ってきた男女雇用平等法制定されるに違いないということで、私たちは本当にうれしく思ったものです。  しかし、それはただ政府に任せておくのではなくて、私たち女性の手でそれを実現させなければいけないということで、さまざまやってまいりました。  ところが、先ほどもちょっと申しましたけれども、現在御審議いただいています政府案というものは、私たちの願いも、それから差別撤廃条約に明記されていることとも余りにもかけ離れておりまして、この条約の趣旨に沿っているものとは到底言えないというのが、これが実際でございます。  このことについて、自民党の先生方も含めて、本当によくよくごらんいただきたいのです。条約には何と書いてあるのか。ここで言われているのではどういうことなのか。この世界の動きの中で、今世界各国がどういうことをやっているのかということをぜひぜひ、直接よくよくごらんいただきたいと思います。  さて、時間がございませんので、ではどういう点において今度の政府案というものがこの条約に沿っていないか、むしろ反しているのかということを、四点にわたって簡単に申し上げさせていただきます。  第一が、「目的」及び「基本的理念」が書かれている総則部分でございます。これは、勤労婦人福祉法の改正という形をとった立法形式という問題が非常に大きな問題としてあります。しかし、立法形式がどうであろうと、それが根本的に改正されて全く中身が変わるというものであるならば、立法形式にあえて私は物を申しません。しかし、この総則規定をごらんいただければ、勤労婦人福祉法と今度の均等法と、総則規定に関する限りほとんど変わっていないのです。若干の言葉がつけ加えられました。あるいは言葉が言いかえられました。しかし、基本的には変っておりません。特に、直接の目的は、女子労働者の「福祉の増進と地位の向上を図る」ということになっております。しかも、この「地位の向上」というのは事業主あるいは国の責務ともされておりませんで、女子自身のみずからの自覚によって向上すべきという基本理念の三条に掲げられているだけでございます。それで、基本理念の重要な部分である第二条のところでは、女子労働者が差別されずに働くということについては「配慮されるものとする。」となっているにすぎないわけです。  つまり、この均等法というのは、あくまでも女子労働者に対して国と事業主が配慮してあげる、だから女子労働者は自覚を持って向上せよという性格のものです。これが差別撤廃条約の言っている、女性の労働権を基本的人権として、あるいは差別というものが基本的人権、人間の尊厳に対する侵害であるということをうたったこの差別撤廃条約に合致するというふうにお思いになれますか。条約に関して言えば、これが同じものだというふうにお考えになれますか。これは、私はどうしても同じものだというふうに思うことができないのです。したがって男女雇用平等法、野党の対案の中に書かれているような「目的」及び「基本理念」が少なくともここに盛り込まれなければならないというふうに考えます。  第二点目としまして、禁止規定と努力規定の関係でございますが、既に御指摘がありましたように、募集、採用、配置、昇進については、事業主の努力義務というにとどまっております。その他については差別が禁止規定になっているものの、限定された一部の禁止規定にとどまっております。  これらについても、後の御質問の時間で補足させていただきたいと思うのですけれども、先ほど申しましたように、私たちというか多くの女性たち、先輩たちの裁判によって、少なくともその女性差別というものが、憲法でうたっている、女性差別というものは雇用分野においてもこれは違法なのだ、男女権別してはならないのだ、つまり男女差別は禁止されるものだということが今までの裁判の中で確定してきたのでございます。それにもかかわらず、なぜ今度の均等法では、同じ一つの法律の中で、一部については禁止するけれども一部については努力すればいい、努力すべきだということで結構ですが、一部については禁止、一部については努力というような規定になったのでしょうか。これは憲法で、差別してはいけないということが、しかもそれが民間企業の場合でも違法であるということが確定されているのです。それにもかかわらず、なぜ一部は禁止で一部は努力になったのでしょうか。このような規定が行われたことによって、一部の裁判官あるいは一部の使用者が、禁止されている部分はしてはいけないけれども、努力義務のところは必ずしも禁止されているわけではないのだから、まあ努力すればいいので違法ではないのだ、差別してもいいのだというような誤解、これは誤解であってほしいと思うのですが、誤解をする事業主や裁判官があらわれないかということを私は大変心配しております。そのようなことになれば、今まで私ども多くの女性たちが裁判によって築き上げてきた努力がむしろ突き崩されることになるのです。後退することになるのです。  そのような法律は、私はつくっていただきたくない。少なくともすべてについて差別を禁止するということ、これは今までも当たり前のことです。憲法で明確にうたわれて、それが民法上の効力にもなるということが今まで積み重ねられてきた。そのことをこの法律でただ具体的に規定するだけのことなんですよ。どうしてそんなことができないのでしょうか。それはもう何としてもやっていただきたいと思います。  それからもう一つ、特にこの禁止規定ではなくて努力規定になっている部分が、重要な入り口の部分なのです。募集、採用です。入り口の差別が禁止されなければ、その後の差別がみんな決まってしまうのです。後で争ってもどうしようもない部分というのがいっぱい出てきます。これは既に出ていましたので割愛いたします。  配置、昇進でもそうです。配置、昇進の差別がなくならなければ、賃金差別というものはこれはちっともなくならないのです。それだけ重要なものなのです。そういう最も重要な点が努力規定になっていることは、これは私どもどうしても納得できません。すべてを禁止規定にしていただきたい、これが切実なお願いでございます。  それから、三点目として救済機関ですけれども、自主的解決が望ましいということはこれは言うまでもございません。私どもはそれが本来の姿だと思います。労使の交渉によって女性差別がなくなるということを私ども本当に願っております。しかし、それができないから現実に差別があり、多くの女性たちが苦しんでいるわけなのです。そのために、自主的解決ができないものについての有効な救済措置がどうしても必要なのです。ところが、これは何らの強制権がないどころか、調査権さえないんですね。差別であるかどうかということを調査する権限も全くない。任意に応じなければ何らの権限もないという、そういう行政指導にしろ調停にしろ、調査権限が全くないというものでございます。しかも、一定の結論が出ましても、それに従うか従わないかはこれは事業主の意思次第ということで、もちろん従っていただきたいと思いますけれども、従わない場合の強制力がまた全くない、あるいは何らの制裁もないということでございます。このようなことで、どうして差別がなくなるでしょうか。  これはもう最低限、対案にあるように差別の是正命令を出せるような行政機関をつくっていただきたい。それで、行政命令に違反した者については罰則を設けていただきたい。これは、罰則を設けていなくともと言いますけれども、その是正命令を出すまでにはいろいろな調査が行われます。それでその差別、男女異なる取り扱いもやむを得ないという事情があれば、これはその是正命令の段階で争われればいいわけです。その調査の結果、これはやはりどうしても見過ごすことのできない差別であるというふうに判断されたものについて是正命令を出すわけですから、その命令に従わない者に対して制裁措置をとるのは、これは当たり前じゃないですか。命令に従わなくても一切構わない、それは放置されるというのが、法治国家である日本の姿としてこれでよろしいのでしょうか、よくお考えいただきたいと思います。  時間がなくなりました。最後に第四点目、労基法の問題を申し上げます。  この労基法の問題も大変重要な問題です。この労基法が今のような形で改定されましたらどういうことになるか。これは先ほど田辺先生の方からお話がありましたので省略いたしますけれども、一言で言いますと、一般の女性たちはこれはもう健康を壊してしまいます。母性も破壊されます。しかしそれよりも、働き続けることができません。働き続けられなくて、パートにでもなるしかないというのが多くの人たちの現状だと思います。もちろん一部の女性たちが頑張って、男性並みに認められていくということがあると思います。それも私は否定いたしません。しかし、この法案によってどういう結果が生まれるかというと、女性が二つに分かれるわけです。分断されるわけです。  一つのグループは、家庭も子供もあるいは自分のそのほかのことも全部犠牲にして、全部とは言いませんが、多くの部分を犠牲にして仕事だけに生きるか、あるいはこれは私自身のことも一言だけ申し上げたいと思いますが、私は二人の子供がおりますが、夫の母に主婦としての仕事をかなり分担してもらって、それで今まで仕事を続けてまいりました。しかしこれが本当に母のためによかったのか、やはり母を非常に犠牲にしてきたということを私は痛感して、本当に申しわけなく思っているわけなんです。そういう形で仕事をこれから続けるとすれば、すべてを犠牲にするかあるいは近親者を犠牲にするかしなければ平等になれません。そういうグループか、あとは大半は、とにかく家庭を第一にしながらあるいはせいぜいパートで働く、仕事もあきらめてあるいは平等もあきらめて働くというような、こういう二つのグループに分けられてしまうわけです。大多数の女性は後者になるわけです。  しかし、こんなことを今条約が言っているのではありません。差別撤廃条約が言っているのは決してそういうことではなく、男性女性も、仕事も家庭も両方助け合って、それで健康で差別されずに働けるような、そういう家庭と職場と社会をつくろう。そのために、女性に対する差別を禁止すると同時に、男性の労働時間を短縮して、男女ともに家庭と仕事を担えるような、あるいは社会的な条件整備するような方向を目指そう、それが女性にとっても必要だし、それから男性にとっても、さらに子供にとっても、あるいは社会にとっても必要なことだ。それをすべての国が目指そうというのが差別撤廃条約の精神です。  今度の法案は、これに明らかに反していると言わざるを得ませんので、この法案についてはぜひとも慎重審議をして、条約の趣旨に沿うような法案、少なくとも最低限野党提案の共同提案を御採択いただきたいと心からお願いして、私の意見を終わらせていただきます。(拍手)
  14. 有馬元治

    有馬委員長 以上で参考人の御意見の開陳は終わりました。     —————————————
  15. 有馬元治

    有馬委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許しますが、持ち時間を譲り合っていただいて、本会議にひとつ間に合うようによろしくお願いを申し上げます。愛知和男君。
  16. 愛知和男

    ○愛知委員 参考人の皆様方には、お忙しい中を御出席いただき、また、それぞれのお立場から貴重な御意見を聞かせていただぎまして、まことにありがとうございました。それぞれの御意見、大変参考になる点、いっぱいございました。私にいただきました時間が十分でありまして、また今委員長から多少協力せよ、こういうことになりますと、ほとんど質疑らしい質疑はできなくなってしまうわけでございますが、幾つかの点について簡単にお伺いをしてみたいと思います。  初めに、田辺参考人にお伺いをしたいと思いますが、田辺参考人は、男性女性を比較して、女性男性に比べて肉体的に大変弱い存在だとお思いでしょうか。
  17. 田辺照子

    田辺参考人 弱いという意味がわからないのですけれども、病気をするとか、そういうようなことでしょうか。
  18. 愛知和男

    ○愛知委員 私は、男性女性を比較していろいろ論ずる場合に、女性というのは男性に比べて大変弱い存在、弱いので保護をしなければならないということで、そういうことをもとにして、例えば時間外の労働とか深夜業の労働というようなものが禁止されているという面が非常に強くあるんではないかと思うのです。ところが男性女性を比較いたしますと、大体平均年齢を比べてみたって女性の方が大変長生きをされる。これは、そういう点からいいますと、男性女性を比較する場合、いろんな比較の仕方があると思いますね。例えば筋力だとか瞬発力とか、そういうのは男の方が強いでしょうが、例えば抵抗力とか耐久力とかいうようなことになりますとやはり女性の方が強いという面もあるし、そして、そういうものを総合した形が平均年齢、平均寿命という形になるわけですので、私はそういう点で女性は弱いんだから保護しなければならないという発想に立ちますと、その議論というものがいささかバランスを欠くんではないかという気がしてならないわけであります。そういう点から、時間外労働、深夜業を禁止している今の基準法は、その平等という面から撤廃、廃止に促すべきだという議論に対して、そうではないという御議論をされましたけれども、今の私の男性女性の比較からいいましてどのようにお考えか。もう一度お願い申し上げます。
  19. 田辺照子

    田辺参考人 今、日本の女性男性より五歳長いと言われていますけれども、今までの女性というのは家庭に入っている女性が多かったということもあるんで、女が常に寿命が長いとは限らないようです。東南アジアの女性の場合には女の方が寿命が短いというふうに言われていますし、それからイギリスの研究によりますと、職業を持っている女性というのは、やはり二重労働もあるだろうし、職業病もあるだろうし、そういうことから寿命がだんだん男性と同じになっているという報告がございます。
  20. 愛知和男

    ○愛知委員 中島参考人もお触れになりましたが、この時間外の労働、深夜業の規制を撤廃すると、その影響が子供の教育なりあるいは家庭といったようなところにあらわれて、多くのものが犠牲になるというお話がございました。私は、確かに女性がお働きになるとその分だけ子供の教育の時間がなくなる。先ほど子供が一人で食事をするのが日本は非常に多いというお話が出ましたが、それこそまさに男女平等の話なんで、お母さんが働いているんだったらお父さんがその役割をすればいいわけですから、したがいまして、そういうふうに議論がいかなければ、僕は議論としては正しい議論ではない、こんなふうに思うわけでございます。どうぞひとつ、そんなことを頭にお置きをいただいてこれからの御議論を進めていただきたい、こんなふうに思います。  それから、高島参考人にちょっとお伺いをいたします。高島参考人がいろいろとケースをお述べになりました。確かに私もそのとおりだと思うことがいっぱいございました。最後に法案のことについてちょっとだけお触れになりましたのですが、今の政府案などというのは恥ずかしくてとても外国に言えないということで、一口で片づけられてしまったわけでおりますが、私は確かに理想を掲げるということは非常に大事ではございますが、しかし余り理想を追い過ぎてしまって元も子もなくなってしまうということもあるわけです。いろいろ現在の政府案についても問題はあろうかとは思いますが、しかし現状よりは大きな進歩だ、こういうふうに思いますが、果たして高島参考人は、今の政府案が通るのと全く何も通らないで現状のままと、どっちがいいとお考えになっていらっしゃいますか。
  21. 高島順子

    高島参考人 私の一身上のことを申し上げましたので、その心情をお酌み取りいただいて大変ありがとうございます。私が労働組合立場から外国の会議に行っていろいろ言われている、その経験上から申し上げたことです。  ところで、先生が質問されました理想よりはまず一歩踏み出すことだ、労働大臣もしばしばおっしゃっていますけれども男女の平等というのは原則の問題じゃないのでしょうか。私はそのことを言いたいのです。その原則をどういうふうに実現をするのか、そのことを考えてくださるのが国会議員の役割ではないのかと私は思います。
  22. 愛知和男

    ○愛知委員 原則とおっしゃいましても、現実離れしていると余り意味がないわけで、我々の政治家の仕事は、理想を追うと同時に現実を踏まえて改革をしていくということが大変大事な点でございますので、そういう点でお伺いをしたわけであります。  時間がほとんどなくなりました。最後に喜多村参考人にお伺いいたしたいと思いますが、議論になっております募集、採用の点で、入り口のところで努力義務というのはおかしい、その中で特に募集については禁止でもいいんではないか、採用というのは会社仕事の内容その他ございますからこれを禁止するのは行き過ぎだけれども、募集については機会を与えるということなのだからいいではないかという議論がございますが、いかがお考えでしょうか。
  23. 喜多村浩

    喜多村参考人 ただいまの御質問でございますけれども企業の募集の問題といいますのは、まず初めに、内部にある部署、ある職種につきまして、ある条件を持った、例えば学歴その他の条件を持った男女がそれぞれ何名ぐらい必要であるといういわば配置計画がありまして、それに基づいて採用計画が決められ、それに基づいて募集計画が決まってくるわけでございます。大体、この三者は一体であるというふうに私どもは考えておるわけです。その中で、例えば採用は完全に企業の自由裁量でやってもいいんだ、例えば今年度は女子は一人も要らないから採用しない、そういうことが完全に実行できればやってもいいんだということになれば、募集の方はどうでもいいかもしれません。強行規定でも構わないかもしれませんけれども、そういうことはあり得ないわけであります。もし募集で門戸を開いて女性が来た場合に、今要らないからといって一人も採らなかった場合にどういう問題が起こるか、恐らくは企業としては糾弾されるのではなかろうかと思います。そういうことを考えますならば、募集の段階において既にそれから後のことを、採用から配置までのことを念頭に置いて、さらにはまた、先ほども申し上げましたけれども勤続年数の問題もございますので、そういう点を考慮に入れた上で募集計画というものを定めなければなりません。そういたしますと、その方法が定着してしまえば構いませんけれども、これからやることでありますので、いきなりここで強行規定ということにされますと、企業としては相当の混乱が予想されることになろうかと思います。入り口の点でございますので、確かに社会問題としては重大な点はわかりますけれども、以上申し上げましたようなことでひとつ御了解いただきたいと思います。
  24. 愛知和男

    ○愛知委員 どうもありがとうございました。
  25. 有馬元治

    有馬委員長 村山富市君。
  26. 村山富市

    村山(富)委員 きょうは、それぞれの分野から貴重な御意見をお聞かせいただきまして、ありがとうございました。時間の制約もございますが、若干の問題についてお尋ねを申し上げたいと思います。  今度の男女雇用均等に関する問題につきましては、いろんな分野でいろんな意見がありますけれども、基本的には二つの大きな問題点があるかと思うのです。  その一つは、募集から採用あるいは定年、退職に至るまですべての分野について禁止規定を設け、それが実行できない場合にはそれなりの手続を経て罰則規定も設ける、そうでなければ実効できない、こういう御意見と、そうではなくて、日本の社会というのはそれぞれ歴史的な慣行があるわけですし、今の雇用慣行や就業実態等から見て、性急に強行規定を設けてやることについては逆に実効を上げられないものにする、妨げになる、そうでなくてお互いに理解と協力をし合いながら時間をかけてやるべきものだ、こういう二つの意見があると思うのですね。  今もそれぞれの方からそうした意味における発言もあったように思うのですけれども、まず第一点として中島先生にお尋ねしたいと思うのですが、努力規定でなくてやはり禁止規定にしなければ実際に差別是正はできない、こういう御意見があったようにお聞きしたのですけれども、今申し上げましたような二つの考え方があると思うのですが、そういう考え方に照らして、なぜ禁止規定が必要であり、同時に罰則を設けることが必要であるかということについて、もう少しお話しをお聞かせいただければと思うのです。
  27. 中島通子

    中島参考人 お答えいたします。  まず、なぜ禁止でなければならないのかということですが、第一に、これは裁判の場合ですけれども、裁判はやればいいというものではもちろんない、裁判以前に解決することがもちろん望ましいわけですけれども、最終的に裁判にならなければならないときに、直接の根拠規定になるためには禁止規定でなければならないわけです。努力規定で、それを直接の根拠にして裁判所に訴えることはできません。先ほど申しましたように、裁判の中で直接これで裁判できる法律が欲しいということから、禁止規定を望んでいるのです。これが第一です。  それから第二点として、行政指導をおやりになるということでございます。これはもちろん結構なことでぜひやっていただきたいのですけれども、裁判までやる必要がないように、行政指導で是正していただきたいと思うのでございますが、しかし、禁止規定でなくて努力規定でどれだけの行政指導ができるでしょうか。これはこれまでの委員会での審議を伺っておりましても、禁止規定でないこのような法律の性格上、強制的な権限もないし、申告をした者に対して不利益扱いを禁止する規定も設けることは均衡を失するというような政府の答弁がございましたとおり、単なる努力規定であれば行政指導にも大変限界があると言わざるを得ません。この二点から、ぜひ禁止規定にしていただきたいということでございます。  今の二つの考え方、性急に差別をなくそうとしても、強行法規で禁止しようとしても無理じゃないかというお話でございますけれども、しかし、そのように御心配なさる方々には申し上げたいと思います。どうぞ御安心ください。差別禁止の法律ができても、今の日本の世の中がひっくり返るようなことはありません。残念ながらございません。日本の経済が大混乱になるようなことも残念ながらございません。これは、労働基準法がもう終戦直後につくられて、罰則つきの強行規定で賃金の男女差別を禁止しているのですけれども、それが実際に動き始めたのは、三十年もたった一九七五年四月十日の秋田相互銀行の判決が初めてなんです。それまでは労基署でもほとんど動かなかったのです。これが現状でございまして、残念ながら、法律ができても、それを使って差別をなくそうという人たちがだんだんあらわれてこなければ、差別はなくなりません。しかも差別をなくそうという女性たちがあらわれても、それこそ企業の中のいろいろな事情で、どうしてもまだ我が社では同じようには扱えないのだということを御主張なさる機会は十分あるのですね。御主張なさって立証なさって、ああ、なるほど今はこの会社ではどうも女性差別をやめるのは無理のようだ、これはちょっと誤解がありますねと、男女同じように扱うのは無理なようだというふうに裁判官なら裁判官に説得なされば、これはそういう判決が出ないわけなんですね、残念なことでございますが。ということで、禁止規定ができたからといって、そんなにすぐにそれが強力な武器になって、日本経済、各企業をなぎ倒すようなそういうことにはなりませんので、まずとにかく法律をつくる以上は、これは最低の条件として憲法にあるように差別してはいけないのだということをはっきり書いて、それを今度運用してどうするかはこれからの問題です。  よく今までの御答弁で、特に労働大臣がスロー・アンド・ステディとおっしゃっていますけれども、それは法律ができた後で、運用の段階でこそ本当に慎重に運用していただけば結構なんだし、そうならざるを得ないのですから、そうならざるを得ない以上、法律そのものは最低限禁止規定にするのは当然のことでございます。  以上です。
  28. 村山富市

    村山(富)委員 今度の政府案を見ますと、定年、退職、解雇については、罰則はありませんけれども禁止規定になっているわけです。その他の条項はすべて努力義務規定になっているわけです。そうしますと、これは法律の専門家である中島先生にお尋ねしたいのですが、仮に禁止規定でない努力義務規定に該当する問題について民事訴訟を起こした場合、これは努力義務規定であるから、使用者が努力をしたかどうかということが問われるわけであって、実際に男女が平等に扱われているかどうかということについては余り争いにならない。ですから逆に言うと、かえってこれは後退をもたらすような結果になるのではないかというようなことが心配されるのではないかと思うのですけれども、定年、退職、解雇だけは禁止規定になっておって、その他の条項が努力義務規定になっていることについては、裁判で争う場合にどういう影響があるようにお考えになりますか。
  29. 中島通子

    中島参考人 その点、特に一つの法律の中で、一部は禁止、一部は努力となっていることによって、先ほども申しましたように、禁止になっている部分はいけないけれども、努力のところは緩く解釈するという裁判官があらわれないかということを私は大変心配しております。しかし、この点については、これまでの政府の答弁で、そのようなことはないというふうに御答弁になっていらっしゃいますので、その政府の御答弁をこれからも守っていただく、裁判所を含めてあらゆるところにおいて守っていただくようにこちらからお願いしたいと私は思っております。しかし、その危険は完全にぬぐうことができないのではないか、だからこそすべて禁止規定にぜひということを強く望んでおります。  ただし、今の御質問の中で、差別かどうかということは判断しないで、努力しているかどうかだけが判断されるということはあり得ないことだと思います。差別であるかどうかということを判断した上で、差別ではあるけれどもそれなりに努力しているから、公序良俗違反とまで言えないのではないかという裁判官があらわれてこないかということを私は心配しているわけです。しかし、そういうことはないという御答弁のようでございましたので、それは裁判官やこの法律を運用するすべての人たちには、そういう形に徹底していただかなければいけないと思っております。  以上です。
  30. 村山富市

    村山(富)委員 ちょっと言葉足らずで恐縮でしたけれども、差別を是正するために努力したかどうかということは問われるということになりますね。  そこで、これからこの法案の審議をするに当たりまして、いろいろな意味で参考になると思いますのでお尋ねしたいと思うのですが、男女雇用平等法制定している国は西欧の先進国では十八カ国あるというふうに承っておりますけれども、そうした国々が、差別を是正するために、どのような方法と制度が設けられ、男女雇用平等法がつくられているのかということについて、もしおわかりであれば御意見を承りたいと思うのです。
  31. 中島通子

    中島参考人 私が直接確認しているのは十八カ国でございますが、そのほかにあるかもしれません。  これらの国々の男女雇用平等法、あるいは女性だけではなくその他の差別を含むものもたくさんございますが、これらの法律の中では、西ドイツが民法改正によって行われているために、募集の段階の差別禁止が明記されていないということでございますけれども、そのほかの国は全部募集の段階から、それから西ドイツも採用の段階から昇進昇格を含む全ステージにおける差別を禁止しております。まずこれは大前提です。  男女雇用平等法は何のためにつくられたのかというと、まず入り口の差別を禁止するためにつくられた法律なのですから、入り口の差別を禁止しない法律はもう雇用平等法の名に値しないと言ってもいいというふうに私は考えているのでございますけれども、その上で、諸外国の立法の中では、差別を禁止するだけではとどまっておりません。禁止しただけでは差別はなくならないのです。どうやってこれの実効性を確保するかということについてさまざまな努力をしております。  時間の関係で少しだけ例を挙げさせていただきますと、例えば立証責任の転換ということをしております。つまり、女性の側が採用されなかったり昇進されなかったというふうにただ訴えればいい、自分女性であるから採用されなかったのだというふうに訴えればよくて、それに対して使用者の側で、いや、それは女性差別ではないのだということを立証しなければならない。これは立証責任の転換と言って大変重要なことなんですけれども、実際の裁判ではこの立証が難しいのです。この立証責任を転換している国はアメリカ、イギリス、イタリア、あるいは西ドイツについては立証責任の軽減ですけれども、こういうようなことをやっております。  さらに、実効性確保のための救済制度や方法としては、委員会が設けられているところがたくさんあります。それで、その委員会による是正命令を出せるということが幾つもの国で行われております。  例えば、アメリカの場合にはEEOCという委員会があるわけです。この委員会自体は是正命令を出せませんが、そのかわりにもちろん調査権限、強制的な調整権限はありますけれども、差別があるというふうに判断してその差別を是正するように調整しても改まらない場合には、委員会自体が提訴権を持っておりまして、差別された人、差別された女性のためにかわって裁判を起こしてくれます。これと同じ制度は、スウェーデンのオンブズマンがかわって裁判を起こしてくれるという、これは私どもから言うと本当に夢のように望ましいことなんですけれども、そういうことも行われております。それからイタリアは、簡易裁判所で非常に迅速な、数日で即時執行命令というものが出せるようになっております。あるいは採用については公的職業機関を通さなければいけないということで、職業機関を通さない募集は認められない、そうしますと、職業紹介機関が名簿の中に女性を半分入れていけば、必ずその女性を採用しなければならないという制度になっております。それからフランスは、フランスとイタリアは罰則なんですけれども、フランスの場合には、裁判をやって有罪判決を出す前に実際に差別をやめれば、有罪判決を出さないという宣告猶予の制度がございまして、これも大変強力な制度でございます。要するにそのために人を罰すること、企業を罰することが目的ではありませんから、原状が回復されることが第一なので、そういう制度も大変有効なのではないかと思います。  さらに積極的な措置、アファーマティブアクションなどと言われておりますけれども、これらの方法をとっている国もたくさんあります。  アメリカのアファーマティブアクションは、大統領命令によって、一定の割合の女性を採用あるいは昇進させなければ取引を停止するという大変強力な方法でございますけれども、これと同じようなものはスウェーデンでもとっておる。法律の中にそういう割り当て制のようなものが入っております。それから、イギリスでも一定の積極措置をとっております。フランスでもアファーマティブアクションを、企業に報告書の提出を義務づけるなどの方法で行っております。  というようなことで、論外国は禁止しているだけではなくて、その上に、いかにこの法律の実効性を確保するかということでこれだけのことをやっている。私は、何も外国のまねをすればいいというふうに言っているわけではありませんけれども、それらに比べて日本の場合には禁止さえもしない、しかも調停という、効力のないものを設けることは余りにもかけ離れていないでしょうかということをお考えいただきたいと思います。
  32. 村山富市

    村山(富)委員 中島先生だけに質問が集中して恐縮に思うのですけれども、もう一点お尋ねしたいと思うのです。  昨日、福岡県の博多でいろいろな方々の意見も承りました。きょうまた参考人の方々からそれぞれ意見を承ったわけですけれども意見が際立って違っている点はもう一つあるのです。それは労働基準法の扱いについてですね。  一方では、今の女性に対する保護規定があるから、それが逆に女性の社会的地位の向上や雇用の平等を阻害している原因になっている。だから、この際、平等を本当に実現するためにはこの基準法の保護規定はなくすべきだ、こういう意見ですね。もう一つの意見は、同じ意味で、今の女性の置かれている社会的立場あるいは機能を分担させる役割等々の現状から考えた場合に、この労働基準法の保護規定をなくしていくことは、逆に女性労働者をパートに追い込み、差別を拡大する要因になっていく。むしろ、極端に言えば女性職場から追放されていくということにつながっていくのではないか。だから、この保護規定をなくすことには反対だ。こういう意見の対立がありますね。  実際に、この差別撤廃条約は、母性を保護するという意味を除いて、労働条件としての女性の保護規定はなくすべきではないか。女性の中にも、平等を主張するならば当然その緩和規定はなくした方がいい、こういう考え方を持っておる方もおられるのではないかと思うのです。こういう点について先生はどのようにお考えになっておりますか。意見をお聞かせいただきたいと思うのです。
  33. 中島通子

    中島参考人 簡単にお答えいたします。  今おっしゃいましたように、差別撤廃条約は、女子だけの保護は妊娠、出産、授乳にかかわる母性保護に限定すべきであるという考えをとっていることは事実でございます。では、それ以外の女子保護規定、いわゆる残業制限、休日労働の制限、深夜業、危険有害業務その他でございますが、これらについてはもうやめてしまえ、廃止せよと言っているのかというと、決してそうではありません、条約が言っているのは。  二点だけ、大急ぎで説明させていただきます。  第一に、なぜ女性の保護は狭い意味での母性保護に限るべきだと言っているかといいますと、これは女が子供を産むということから出発して、子供を産む女は育児をするのも当然であり、家族の世話をするのも当然であり、病人の世話をするのも家事をするのも、全部家庭責任と言われておりますが、家庭責任は全部女だけのものであるということにされて、それが差別の原因になってきたのだ。だから、この中で女性だけの保護は、つまり女性にしかできないのは妊娠、出産、授乳だけですから、これは当然保護していく。保護だけではなく尊重して、しかしそのほかの保護については、これは何も女性だけにしかできないものではない。男性もできるものであるし、あるいは社会が補うことができるものである。つまり、家庭責任というものは男女とそれから社会が共同で責任を負っていくということがこれからの社会のあり方ではないか、それが人間の幸せではないかというのが条約の前文の趣旨でございます。  そういう趣旨で、その他の女子保護は廃止するのではなくて、男性もできるように男性の労働時間を短縮して、女性と同じように残業制限などをしていこう、こういう労働時間の短縮ですね、労働時間の短縮その他、具体的な措置はILOの百五十六号条約、百六十五号勧告に規定されているとおりでございます。これが第一点です。つまり廃止せよと言っているのではなくて、男性にも拡大せよと言っていることは明らかでございます。  それから第二点は、基本的人権という立場から考えて、女性に対する保護というのは、一つは、家庭責任を担うための保護ということがございましたけれども、もう一つは、健康で安全に働くために必要なものが保護でございます。このことは、何も女性だけが保護されればいいのではなくて、男性だって、健康で安全に働ける権利というものが基本的人権として保護されなければならないのは当然なわけでございます。それで、その趣旨で条約の十一条の一項の(f)というものが、男女ともに、「作業条件に係る健康の保護及び安全(生殖機能の保護を含む。)についての権利」を確保するための必要な措置をとらなければいけないというふうに書いてありますが、これはその趣旨でございまして、女性だけの保護、それが女性に対する差別の理由とされないためにも、男性に適用を拡大して、男女ともに。、健康で安全に働けるような労働条件確保すべきであるというのが条約の明確な趣旨でございます。  その点から言いますと、平等というからには保護を廃止せよという今度の法案、まあ緩和ということになっておりますが、これは条約の趣旨には反するのではないかというふうに考えます。  その上で、一言だけつけ加えさせていただきたいと思いますけれども女性の中にも、ともかく保護があるために仕事ができないという方がいらっしゃるのは事実でございます。しかし、この点についても、本当に今現実に−若い二、三年の間だったら、夜中まで月百五十時間の残業もしたりできるかもしれないけれども、しかし、それがあると違法だということで賃金が払われないとかそういう不合理があるために、何とかこれを外してもらいたいという気持ちはわかりますけれども、しかしそれをずっと続けていったらどうなるかということをちょっと考えていただきたい。今とにかく現にそういう長時間労働が必要なんだから外してほしいということは、いわば麻薬のようなものといいますか、一時の矛盾を、一時のつらさをごまかしてしまう、そういう薬にはなるかもしれないけれども、その人が長く働き続けよう、結婚しても子供が生まれても働き続けようとしたら、それは到底できない。自分の首を締めるような結果になってしまうのだということをやはりぜひお考えいただきたい。  ただ、その上で、なおかつ私は、特定職種、特定の専門職と管理職についての残業、深夜業の一部見直しということについて、あくまでも反対するものではありません。それらについては、そこで働く女性の総意に基づいて、しかも健康や安全あるいは家庭生活への犠牲を及ぼさないような方法を十分に考えた上で見直しをしていくべきだというふうに考えております。
  34. 村山富市

    村山(富)委員 最後に、田辺先生にちょっとお尋ねしたいと思うのですけれども、労働時間の問題について大分詳しいお話がございました。今の日本の労働者の実態というのは、これはすべてではありませんけれども、平均的に申し上げますと、賃金が非常に安いために、むしろ労働者みずからが時間外労働を希望して、そして家計の助けにしておる。それでもなお足りませんから、奥さんがあるいはパートなんかに出てそして家計の補助をするとか、あるいは子供の教育費を稼ぐとか、ローンの返済に充てるとか、こういうことでパートで働いておる。これが今の実態ではないかと思うのですよ。そういう実態を考えた場合に、労働時間の問題は単に女性だけの問題ではなく、社会的機能をむしろ女性に一方的に背負わされている重荷を取り除いていくためにも、共通して時間問題というものは検討さるべき問題であるというふうに思うのです。少なくとも西欧並みに達するには百年ぐらいかかるというお話もございましたけれども、そこらの点についてもうちょっと御意見を承りたいと思うのです。
  35. 田辺照子

    田辺参考人 労働省の調査によりますと、週所定労働時間の短縮というのが、一九七五年から八二年まで二十一分でございます。ですから、一年で週当たり三分しか短縮していないんですね。ヨ一ロッパの場合というのは残業をしないということが前提だろうと思います。ですから、残業をするというのは本当にやむを得ないときというふうに解していいと思います。  まず、年休というのが御存じのようにほとんど連続して三週間から四週間ございます。法律の中にも、そういうふうに連続してというふうに書いてありますし、日本のように平均十三日とるべきところを八・何日しかとっていないという国はないと思います。私の計算でも、今の二千百時間前後からヨーロッパ並みにするとしたならば、もし年休がなければ百年かかりますけれども、もし年休をとるとすればどのぐらいのものになるかというと、大体三十日の年休で、そして週四十時間、残業が大体百時間から百二十時間ということになれば、大体ヨーロッパ並みの生活が実現するのではないかと思っています。向こうでは、日本のように残業というようなことをして生活の苦しさを補うという考え方はございません。私も大分ヨーロッパから方々回りましたけれども、どこの国でも資本主義社会の労働者は、私から見ればかなり生活水準が高いなと思っても、生活は苦しい、苦しいと、言って、楽だなんと言うのを聞いたことはございません。ただ、だから苦しいから残業して稼ごうという姿勢というのはないわけでして、やはり私生活というものを非常に大事にします。また、大事にしなければ離婚の原因にもなると思います。日本でも離婚がふえているというのは、やはり男の人が企業中心に動いているということも間接的には影響をもたらしているのではないかと私は思っております。
  36. 村山富市

    村山(富)委員 もう時間が参りました。貴重な御意見、ありがとうございました。これからの審議の参考にしながら、十分反映していきたいというふうに思います。  きょうは、どうもありがとうございました。(拍手)
  37. 有馬元治

  38. 森本晃司

    森本委員 きょうは、参考人の先生方が大変お忙しい中、こうしてお見えいただきまして、先ほど来貴重な御意見を数多く聞かせていただきまして、大変感謝しておる次第でございます。  我が公明党の方も、何とか実効のある法律にしていきたい、このように考えておるわけでございますが、本日、先生方に数点お尋ね申し上げさせていただきたい、このように思う次第でございます。  今回の政府案を見てまいりますと、勤労婦人福祉法の全面改正と労基法の一部改正という二本立ての法案となっております。先ほど中島先生のお話の中にございましたが、女性の働く権利は基本的人権なんだというふうに先生は第一番目にこのことを挙げていらっしゃいますが、私はそういう立場から見ますと、今度の二本立てではなくして、この法律はむしろ単独立法である方が実効性があるのではないか、このように思う次第でございます。単独立法の方がいいのじゃないかという私の思いでございますが、このことに対して中島先生と田辺先生に御意見を伺いたいと思います。
  39. 中島通子

    中島参考人 立法形式については、先ほども申しましたように、抜本的な改正であれば、例えば勤労婦人福祉法でもよろしいわけですけれども、しかし中身がほとんど変わっていないということから、やはり勤労婦人福祉法の改正では無理であろうということでございます。  これまでも長い間審議会その他で審議されてきましたとき、常に単独立法、男女展用平等法ということで審議され、報道され、私たちもそれを話し合ってまいりましたので、これはやはり単独立法であるべきだということでございます。  それから、労基法がセットになっているということでございますけれども、先ほど申し上げましたとおり、労基法の女子の保護を外すという問題は条約の趣旨ではありませんし、この点につきましては、三日の委員会の審議の中でも、外務省の方及び婦人局長の方からも、必ずしも女子の保護を廃止するということだけが条約の求めているものではなくて、高い水準において男女が同一になることを目指しているのだという御答弁をいただきまして、私は、それだったらこのような法律は何とかしていただけるのじゃないかというふうに思いました。つまり、男性の労働条件を引き上げることによってもっと高い水準で男女を同一にしていくことを目指す、そのためにはともかく男性の労働条件を引き上げていただかなければならないわけですから、そういう労働基準法の改正をぜひやっていただきたい。しかし、それが今すぐできないならば、均等法と労基法の問題は切り離して別々にやっていただくしかないのではないかというふうに思っております。
  40. 田辺照子

    田辺参考人 平等法というのは、条約の十一条にありますように、募集から解雇に至るまで全ステージを対象とするものでありますし、福祉法とは性格的に違うものだというふうに私は思っております。  それから、先ほど中島さんもおっしゃいましたように、労働基準法と平等法というものはセットにするものではないし、労働条件を引き上げる、婦人の地位を引き上げるということが法の目的であるし、それが条約にかなっているわけです。日本の労働条件というのが御存じのように低いのですから、それが引き上げられるまではやはり引き離しておいて、そして労働基準法は将来引き上げられるまで留保するというのが一番いい方法ではないかというふうに私は思っております。
  41. 森本晃司

    森本委員 それでは、田辺先生にさらにお伺い申し上げたいわけでございますが、先生の先ほどの御意見の中に、労基法の改正は必要ないという御意見がございました。労働条件を引き上げることにより、共通の基盤をつくっていくんだということでございます。また、そのとき同時に、撤廃条約に関して、目的に合致したものは保留できるという御意見を先生の方からお伺いいたしました。この労基法の改正、これは男性の劣悪な条件女性を引き込んでいこうというふうな、むしろ改悪に近い状況だと私は思うわけでございますが、この労基法の改正なくして、それを保留したままで条約の批准はできるものかどうか、もう一度先生の御意見をお伺いしたいと思います。
  42. 田辺照子

    田辺参考人 できると思います。そして、批准した国の中にも、オーストラリアでは母性保護の社会保障関係を留保していますし、先ほども申し上げましたようにオーストリアでは深夜業について留保しております。  大体、ヨーロッパの労働条件を見てみますと、まだ女性の深夜が残されているところがあります。そういうところは、これから来年の夏までどういうふうに動くかわからないと思います。恐らく、深夜業は急速全部取り払うということはないと私は思います。したがいまして、何も日本がこの国会でもって急いでセットにしてそして批准をするなんということはしないで、ゆっくりと、じっくりこれを検討して、外国がどういう批准の方法をとるかを見ていれば、必ず留保をしてそして批准をするという国がふえてくるのではないかというふうに思っております。特に日本の場合には、なぜ留保するかというときに、非常に国際的に共感を呼ぶ留保ではないかと私は思っております。
  43. 森本晃司

    森本委員 次に、中島先生にお伺いしたいわけでございますが、先ほど、強行規定を設けても日本の経済が混乱することは全くないと、強い確信を持って先生が述べられました。これは、一番最初に参考人で御意見をいただきました喜多村さんは、恐らく崩壊するんだというふうな御意見でございまして、真っ向から対立するものでございますが、そういう強行規定を設けると経済が混乱するかどうかという問題は、常に意見が分かれてくると思います。しかし、先ほど高島さんの話の中で、日本の文化を破壊するという意見があるというふうにある著書をもって述べて、非常に残念に思うというふうにおっしゃっておられましたが、この男女平等法が制定されますと、日本の文化が破壊されたり、あるいは特に家庭が崩壊されるようなことになっていくのでしょうか、どうでしょうか。私はむしろ労基法の改悪の方が、残業時間が非常に大きく延びてしまって家庭が崩壊していくことになっていくのではないだろうかというふうに思いますが、中島先生それから高島さん、ちょっと御意見を伺いたい思います。
  44. 中島通子

    中島参考人 最後の、家庭が崩壊されるのは今の労基法改悪によってではないかという御意見は、全く同感でございます。  それで、経済が直ちに混乱するものではないということは先ほど申し上げました。  もう一つ、文化の問題に関して、この条約によって日本文化が否定されて、日本社会の生態系がつぶされるとか破壊されるとかいうふうな御主張もあるようなので、それについて申し上げたいと思います。  特に、先ほど私が条約の趣旨について、男女ともに仕事と家庭と両方一緒にやっていこうというのがこの条約の趣旨なのですということを申し上げましたら、自民党の先生方でしょうか、失礼かもしれませんけれども、どうも顔を見合わせて、そんなの困るというようなお顔をなさっていらっしゃいました。しかし、それは男女差別をするということが日本文化であるとまではおっしゃらないと思うのです。いかがでしょうか。これは先ほど喜多村参考人の方からも、男女差別はいけないのだ、差別をやめるということは当然なのだというふうにおっしゃっておりましたので、財界の方々も、男女差別はやめようと言うと、日本文化が崩壊するなんということはお考えになっていないと思います。自民党の先生方もやはり男女差別の日本文化である、それはあくまでも守ろうということではないと思います。  今御心配なさるとしたら、男は外で働いて女は家庭を守るという男女の役割分担というのが日本の文化であって、それを変えようとするのはけしからぬというお考えを持っていらっしゃる方はいるかと思うのでございます。しかし、この点について一言申し上げたいと思うのですけれども、今までの日本の歴史を見ていただけはわかるのですけれども、女は働かない、これは外でとは言いません、生産活動に従事しないで、家事、育児だけをやっていたでしょうか。男の人だけが生産労働をして、女は全部家事と育児だけをやっていたという時代が日本にあるでしょうか。これはつい最近の、しかもそれでもまだ一部の、一部というか半分ぐらいになっていますか、それもだんだん減りつつありますが、そのように働くのは男であって、女は家事、育児だけをしているというような社会というのは、どこの社会にも長い人間の歴史の中でないのですね。そういうことがむしろ社会の生態系を崩すということになっておりまして、時間の関係で余り申し上げませんが、子供の非行の問題、それから妻の思秋期などという言葉が大分はやっておりますけれども、あるいは男性の自殺の問題とかいろいろありますけれども、これらは、男はともかく外で働いて女は家庭にいて家事、育児だけやっていればいいのだというようなことから来た新しい現象なのです。そういうようなことを強制することによって日本の社会の健全な生態系がむしろ崩れつつあるのだ、そのことについてもっと真剣にお考えいただきたいというふうに、これは財界の方々もあるいは政府にも、あるいは自民党の先生方にもぜひお考えいただきたいと思います。  それからもう一つ、ほかの国々とも比較しましても、実は男は仕事、女は家庭というような役割分担の考え方というものは、男は外、女は内というものは昔から人間の歴史の中にあったわけですけれども、男は外で働いて女は家事、育児だけをやっていればいいのだという考え方は、日本だけではなくて、近代社会あるいは現代社会になってほかの国々でもむしろ一般化していたのですね。日本だけのものではありません。それがいろいろな矛盾にぶつかって、それではだめなのだ、やはりもう少し男性も家庭に参加した方が人間らしい生活ができるではないか、あるいは女性ももっと生産労働に従事し、あるいは社会参加していくことによってもっと社会も健全になるのではないかということで、この男女の役割分担を見直そうという動きが世界的になってきたわけです。ところが日本がその点で変化がおくれているわけなんですけれども、それをあくまでも日本だけの文化であって、これはあくまでも守るべきであるというふうにおっしゃることは、どうも歴史的事実ともあるいは世界各国の状態とも違うのではないか、むしろこのあたりを見直すことこそ、これからの日本の健全な発展に必要なことではないかというふうに思います。
  45. 高島順子

    高島参考人 ただいま中島さんから説明がされました部分に重複しないように、私の考えを申し上げさせていただきたいと思います。  長谷川さんという埼玉大学の先生がおっしゃられている原稿を、私も何回も何回も読んでみました。この人は一体何が言いたいのかということを何回も読んでみました。それから「諸君!」で森山議員と対談をされている原稿も何回も読んでみました。本当は私はよくわからないのです。ですけれども、その「諸君!」を本日ここに持ってきておりますけれども、一番最後に長谷川さんはこういうことを言っているわけですね。「そもそも男というのは、会社で働くとか発明をするとかいう程度のことしか出来ないように神様がお造りになっていると思うんです。だから女の人たちは男を押しのけたりしないで、やりたいようにやらせてあげる−そんな温かあいシステムが、どの文化にもあるということなんです。」ということを長谷川さんが最後に言っているのですね。今私たちが議論をしていることはそういうことなんでしょうか。そしてさらに、「世の中には男がいて女がいて、それぞれ役割を持って暮らしていることが、その社会全体をうまく機能させている。その場合、女性は家庭を守るという形で大きく社会に役立っているんじゃないか。企業で働くとか研究者として働くとかいうのは、社会全体のシステムを考えた場合、一人の女性のほんの一側面でしかないと思うんです。」、このほんの一側面をやっている人というのは、定型からはみ出す人間だった。「〃はみだし者〃をいかに受容し、いかにうまく活力にしてゆくかが、その文化がシステムとしてどの程度優秀かを計る目安だと思うんです。」と長谷川さんはおっしゃっているのですね。  私は、女性が働くということは〃はみ出し者〃だなんということは到底受容できないし、例えば今人生八十年になってきています。例えばゼロ歳から二十歳までは国の税金によって、あるいは親の働きによって養ってもらっているわけですよ。そして、定年が六十歳ですよ。そうすると、六十歳から八十歳までというのはやはりだれかに養ってもらっているのですね。そうすると、人間というものは四十年間働いて四十年間だれかの世話になっているわけです。そうすると、男の人たちは、自分の家族を四十年間扶養してくれる、そして私たち女の人たちまで全部面倒を見てくれるのでしょうか。私はそういうことが言いたいと思います。
  46. 森本晃司

    森本委員 ありがとうございました。時間が参りましたので質問を終えさせていただきます。また今後の参考にさせていただきます。  大変ありがとうございました。(拍手)
  47. 有馬元治

    有馬委員長 塚田延充君。
  48. 塚田延充

    ○塚田委員 本日は、参考人の皆様方におかれましては、陳述及びそれぞれの委員の御質問に答えましての御答弁に、熱弁と申しましょうか、また大変中身の濃い内容につきましてお教えいただくことが多くて、私としても大変感謝いたしております。  まず、角田参考人にお尋ねしたいと思います。今までの議論の中で、諸外国においては男女平等についてはかなり先進国であり。我が国においてはまだまだであるというようなことがきょうのやりとりでも大変はっきりしたと思うのですが、角田さんの会社は、名前を見ますとファイザーという名前も入っていますから、これは外資系の会社ではないかと思うのです。そういう面で、一般的な会社勤務から比べますと、この面では先進的なところに御勤務なさっておられるという有利な面があったのではないかと思います。  また、田辺参考人及び高島参考人の場合は、いろいろと同僚とかの比較において差別みたいなものがあって苦しんだというような、差別を体験されているわけであります。  そこで、角田参考人にずばりお伺いしますが、あなたが学校を卒業されて就職される際、この台糖ファイザーだけを受けたのか、ほかの会社も受験されたのかわかりませんけれども就職の際の差別と申しましょうか、御苦労されたとかいうような御経験がおありになるかどうか。またお友達、同窓の方でそういうようなことで苦労された例など知っておられるかどうか。虚心坦懐に事情を御説明いただきたいと思います。
  49. 角田拓子

    角田参考人 私、一番最初にお話しさせていただきまして、多分そのとき先生おいでにならなかったのじゃないかと思いますけれども、私が三十五年に学校を卒業しまして、そのときの就職門戸の狭さといったら今の比ではないということを最初に申し上げたのです。それはもう全くと言っていいくらいございませんでした。私の場合は、運動部の先輩のつてで、小さな会社にとりあえず無理やり入れてもらいました。そこで六カ月ほどおりましたけれども、やはり人手の必要のない会社に、とりあえずコネで、しようがなくて押し込まれたというのが実情だったものですから、格別仕事もなくてというような形でまずスタートしました。そして、その後転職を三回重ねまして、今入っております台糖ファイザーという会社は四回目の会社になっております。  四回目の会社でもう二十年たったわけなのですけれども、この会社は御指摘のとおりアメリカのファイザーという会社が親会社でございまして、合弁会社として始まったのですが、今現在は一〇〇%ファイザーの資本の会社になっております。  この四回目の会社に入るときに、私がなぜもういい年をしてみんなから反対されながら入ったかといいますと、男性と同じ待遇で同じ仕事をさせる、そのかわり女性という甘えは一切捨てて男性と同じように働くということを条件にされましたので、思い切って転職したわけです。したがいまして、今の会社では最初から仕事男性と同じように与えられていたと思います。それは一つ一つ言いますと切りがないのですけれども、やはり相当に厳しいものではございました。男性と同じように働いて男性と同じに信頼されるためには、例えば労働基準法で決められているとおりの働き方をしていたのではだめであるとか、周りの同性、女性のお友達からは、例えば映画に行く約束をしていても、きょうこれをどうしても仕上げろと言われたときに、そちらを断って仕事の方をとったことが非常に非難されたとかいうふうなこともあります。今の会社に入る前の三つの会社では、もうほとんど男性女性が、例えば男性であるということだけで、私より後輩である人に、そのころ私も若くて生意気でしたから、仕事も私よりできないと思うようなその男性の方に、より重要な仕事をさせるというような実情に遭いまして、我慢できなくなって転職を重ねたというのが実情でございます。ですから、そういった意味では、現在はといいますか、これからこういった機会が少なくとも均等に与えられるという形になるということは、非常にいいことではないかというふうに思っております。  外資系だからどうこうというふうなことにつきましては、私の会社は外資系でありながら非常に、日本的な経営をするということを一つの特徴として、PRの観点からもそれを特徴としまして今までやってきた企業でございまして、社内のいろいろな体制はすべて、もちろん年功序列という意味では、給与体系等もここのところどんどん変えておりますので、実力のある人をどんどん採用していくという形にはなっておりますけれども、基本的にはやはり終身雇用という形をとっております。そのほか、社員の福祉等につきましても、日本のどこの企業にも負けないような形で福祉等のことは考えられております。
  50. 塚田延充

    ○塚田委員 よく日本人は、海外から見ますと働き中毒であると言われておるわけでございますけれども、こういうことが一つの大きな原因となりまして経済摩擦を欧米とも引き起こしているわけでございまして、その後すぐ簡単に指摘されることは、今までですと低賃金ということが指摘されたわけでございますが、最近では、円が三百六十円の時代から比べると、レートの換算の関係も含めてかなり日本の時間当たりの賃金は引き上げられてきておる。そういうことから、低賃金ということはなしにして、いわゆる働き中毒の大きな要素としては、労働時間をポイントとして日本を攻撃してきている例が非常に多いのじゃないかと思います。  特に財界の立場から見て、このような件はいろいろと話題になる、また御検討されている例が多いと思うのですけれども、この労働時間の問題につきまして、経済摩擦との関連において、喜多村参考人におかれましては、国際的な関連からどのようにこれを受けとめておられるのか。そうした場合、労働時間がさらに、今度の労働基準法のどちらかというと女子に対しても野方図にする方向の改正、一部の人に言わせると改悪によってさらに海外から指をさされる、そのような危険性を増していると思いますけれども、それについて御答弁いただきたいと思います。
  51. 喜多村浩

    喜多村参考人 労働時間の問題でございますけれども、海外との関係でまいりますと、確かに御指摘のように、最初はチープレーバーという非難から始まって、だんだん賃金が上がってまいりますと、今度はウサギ小屋に住む働き中毒だという非難が出てくるわけでございます。  こういう問題につきましては、正直のところ、確かに国際問題でありますから私どもこれは解消しなければいけませんけれども、一面では日本をスケープゴートにしようという気があるのじゃないかという感じもいたしまして、確かにそれ自体対応しなければなりませんけれども、こちらにはこちらの事情がございますので、そうそう国際的にすぐに合わせるというわけにはいかないというふうに考えております。  それで、労働時間の問題でございますが、少なくとも所定内労働時間につきましては、日本は大体平均週四十一時間ぐらいに現在なっているかと思います。大体アメリカと比べて一時間ぐらいの差ですか、ヨーロッパは今三十八時間ぐらいになっているかもしれませんけれども、それほど大きな差はないというふうに考えます。ただ、年間実総労働時間になりますと確かに大きな差が出てまいります。したがいまして、問題は残業時間だというふうに考えます。  この残業時間でございますけれども、日本の企業の場合は、これもよく言われていることなんですが、終身雇用体制のもとにおきまして、特に先行きが不安定のようなこういう時期になりますと、不況になった場合にできる限り過剰労働力を抱えておきたくない、その危険があるものですからなるべく人を採用しない、かつての高度成長のときはどんどん採用しましたけれども。そういう気分が企業の中にだんだん強くなってまいります。そういたしますと、景気がよくなったからといってすぐに人の採用をふやすという態度になかなか出られませんので、必然的に残業を延長することによってそれに対応するということになるわけです。つまり不況になったからといって解雇できませんから、人の頭で、つまり雇用によって景気変動に調整をするということよりも、労働時間によって景気変動に対応しよう、時間調整をやるという体制にならざるを得ないということがございます。長期的に見ますと労働時間もだんだん短くはなっておりますけれども、この残業の問題につきましては、そういう体制が背後にあった上に、労働者の方々からもこれは残業料を稼ぐというようなこともございまして、そう早急に時間外労働が減るという状況になかなかならないわけでございます。  この問題は、男女問題にもちろん関連はいたしますけれども、いずれ生産性の配分の問題でございます賃上げか、時間短縮が、雇用の拡大がという問題でございますので、これはひとつ漸進的に、今後の情勢を考えながら、経済も全体として成熟経済に入ってまいりますから今までのようなことはないかもしれませんけれども、今後の推移を見ながら考えていかなければならないのじゃないかと思いますけれども、時間を短縮することに絶対反対ということではございません。
  52. 塚田延充

    ○塚田委員 喜多村参考人に最後に二つほどお尋ねしておきたい、お尋ねというかお願いしておきたいと思っております。  先ほどの陳述の中で、条約を批准するための国内法の改正だったならば、最低限度ちょろちょろと格好だけ合わせればいいのじゃないか、そういうような財界の意向があるのだ、こういうことをおっしゃられたわけでございますが、それならば、先ほど私が申し上げたように、海外から指弾されるようないわゆる働きバチ中毒と言われるようなことを通じて、経済摩擦の原因になるような労働基準法の改悪に近いこと、これは政府・自民党に対しておやめなさい、これが批准するためにぎりぎりでちょうどいいあんばいじゃないかというようなことを、あなた方経団連の場合は大変影響力があるわけでございますから、提言されるおつもりはないかどうか。いわゆる最低の手直しかなんかでもって批准を済ませるならば、男女雇用機会均等法そのものだけでいいのじゃないかという提言をされ、同時に、労働基準法を今政府が考えているような悪い方向に引っ張るのは、財界としては対外経済政策上まずいということを提言される意思があるかどうか、お願いしたいことが第一点。  それから第二に、中島参考人の方からは、いわゆる男女雇用機会均等法のいろいろな規定をすべて禁止するというところからスタートして、そこからスロー・アンド・ステディーでやっていけばいいのじゃないか、混乱が起きることはないよという御指摘があったわけでございますけれども、逆に喜多村参考人の場合は混乱が起きると主張されておるわけでございますが、混乱が起きること、特に採用の面について具体的にこうこうこういうわけでこういうことが起きるということとが、もしくは、他国において禁止規定を設けたために企業にとってはこういう困った例があるので、同じようなことが起きないように防止するために、経団連としてはあくまでも政府・自民党の方に努力規定でとどまるように主張しておるとか、その辺のところを御意見をお聞かせいただきたいと思います。
  53. 喜多村浩

    喜多村参考人 基準法の改悪の問題を提言する意思があるかというお話でございますけれども、提言をする意思はございません。  批准の問題につきましては、私どもとしましては、先ほども申しましたけれども、政府の方に最低限どれだけの法整備をすれば批准できるのかという御質問を申し上げました。その場合に、平等あるいは均等の面につきましては、妊娠または母性休暇を理由とする解雇、あるいは婚姻しているか否かに基づく差別性解雇については何らかの制裁を伴う禁止規定が必要だけれども、それ以外については努力規定でもいいのだ、強行規定でなくても批准可能なんだという御回答をいただきました。  それから、保護の方につきましては、基本的には見直すことが必要である、けれども漸進的にやればいいのであって、批准時点において何も全部見直さなくてもいいというふうなことを伺っております。必ずしも、その条約批准のために例えば生理休暇が必要であるとか、あるいは救済機関が、裁判所がございますけれども、それ以外に救済機関が必要であるとかいうふうには考えられていないわけであります。それにのっとりまして私どもは考えてきたわけでございます。  したがいまして、労働基準法を母性保護を除いては撤廃するという考え方はあくまでもバランスの上に立った考え方でございまして、つまり私どもの気持ちを正直に申し上げますと、平等を進める、均等を進めるという以上は男女全く同じ条件で、同じ土俵の上に立って扱っていただかなければ困る。一面においてこれは雇用の問題でありますから、労使関係の問題には違いないのですけれども、事の本質は男対女であります。女性の地位が向上する、あるいは量が拡大してくれば、その分だけ男性は割を食わざるを得ない。ゼロサム社会じゃありませんから、多少なりとも拡大していますのでそうはならないかもしれませんけれども、必然的にそうなります。例えば、企業の中に一つのポストしかない。そこで男一人、女一人が争うというふうになった場合に、女が出れば男は割を食うわけでありますから、当然そういうことにならざるを得ない。その場合に、保護規定で武装されていてはこちらとしてはちょっと聞えないのであります。そういう意味から、基本的に、原則としてその保護規定は撤廃すべきであるというふうに考えたわけでございます。もちろん個々のケースについてはいろいろございます。その場合は労使でお話し合いになって、それぞれの会社の中でもって別途の規定を設けられたらいいのじゃないかと思います。それを一概に、例えば財界の名において基準法をこうじる、ああしろというようなことを今の労働時間の問題について提言するつもりはございません。  それから、禁止規定にすると混乱するとかしないとかいう問題でございますけれども、先ほど中島さんが、大丈夫だ、混乱しない、混乱なんか到底しない、残念ながら混乱しないというふうに言われたのでありますが、何か混乱することが望ましいみたいなことを言っておられるような感じですけれども、私どもの感じとしましては、とにかくいまだかつて経験したことのない未曽有の事態が来るわけです。(笑声)これは笑い事じゃなくて本当なんです。我々は、産業界の中で、実態はともかくとして、法律によってこういう規制を受けるということはいまだかつて経験したことはございません。したがって何が起こるかわからない。何が起こるかわからないということも一律に言えないのでございまして、例えば製造業と第三次産業では違うでしょうし、第三次産業の中でもあるいは第二次産業の中でもいろいろ違いますでしょう。企業の規模の違いがある、女性の多い、少ないの違いがございます。そういう違いがあった上で、例えば我が社ならばこうするということは、ある段階まで来ればわかると思いますけれども、全産業でありますから、とても我々としてはこうでいいということはなかなか言えないわけです。恐らくは、この法律ができて施行されて、そして省令なり指針なりのガイドラインができて、それを目安にして各企業がそれに対応するだけの措置をとられるように進行するはずであります。出発されるはずであります。その過程においていろいろな問題がわかってくる、あるいは試行錯誤が行われる。現在の段階ではどういう事態が起こるか、どんなようになるかわからない、具体的に何が差別であるかということも本当を言うとわからないわけですから。ですから、この場合、先行きわからない全く不透明の状況に対して、混乱が起きないと責任を持って断定するわけには私はまいりません。中島先生はいかなる根拠をもってそう断定されたのか私にはわかりませんが、私どもとしましては、幾ら心配し過ぎてもし過ぎることはないと考えております。  それで、先ほど中島さんは、労働基準法のときも、三十年ほどたった一九七五年の秋田銀行の例で初めて出てきたのだとおっしゃいました。法律というものは、できた後、野放しになって何も手をつけないでいいというものではないはずでありまして、基準法はたまたまそうであったかもしれませんけれども、この法律についてはそうなるという保証もございません。もちろん我々は今後の運用についていろいろ主張もいたします、お願いもいたします。けれども、それによって対応できるかどうかという点については非常に問題がありますので、そのための時間を、簡単に言えば時間稼ぎですな、時間稼ぎのために努力義務規定にしておいていただきたいということを前々からお願い申し上げてきたわけでありまして、混乱が起きないなどということは絶対に私どもの方としては言明できませんです。
  54. 塚田延充

    ○塚田委員 どうもありがとうございました。これで私の質問を終わります。
  55. 有馬元治

    有馬委員長 浦井洋君。
  56. 浦井洋

    ○浦井委員 田辺先生と中島先生にお伺いをしたいのでありますが、私はやはり、今度の政府の出してまいりました法案というのは、実効性のない男女雇用平等といいますか、機会均等法という名前になっておるが、しかも女子保護規定の撤廃というような労働基準法の改悪が密接不可分でひっついておる、こういうところに最大の問題があるだろうと考えておるわけであります。だから、大阪市大の本多先生なんかが、この法律案がもし成立をすると、まさに男女雇用平等法でもなし、機会均等法でもなしに、パート労働者の大量創出法になるだろうし、男女差別促進法になるだろう、こう言われておる。私もほぼ同感でありますけれども、そういう点で、今の貴重な御陳述に二、三追加をしていただきたいと思うわけであります。  まず中島先生には、四つほど理由を挙げられたわけでありますが、労働基準法の改悪の問題で、労働時間とか休日労働とか深夜業の問題について、先生がいろいろな裁判などで御経験をされた中で、規制を撤廃するといかに女性の健康が損なわれるか、あるいは母体が破壊をされるか、その辺のところをもう少しリアルに教えていただきたいというふうに私はひとつお願いをしたいと思います。  それから、個別には、「坑内労働の禁止」の中に例外規定を設ける、こういうことになっておりますが、これについての中島参考人の御意見をお伺いしたいと思います。  それから田辺先生には、もう既に陳述をされましたけれども、この労基法改悪ということがもしも実行されるなれば、やはり婦人労働者は退職をせざるを得ないし、女性の働く権利が侵害をされるし、必然的に低賃金のパート労働者がふえる、そういう中で男性労働者も職場から追い立てられる、あるいは悪い労働条件で長時間働かなければならぬという公算が非常に大きくなると私も思うわけで、その辺のところをもう少し補充的にお教え願えればありがたいと考えております。
  57. 中島通子

    中島参考人 裁判の中でという限定ですと、そういう形ではなかなか裁判になりにくい。ただ、なるのは労災、職業病の問題で幾つか私は扱っております。これは実際にきつい労働の中で病気になってやめざるを得ない、しかし、なかなか職業病の認定が受けられないということで苦労していらっしゃる方がたくさんいます。裁判ということで言えばそういうことです。それがますますふえるのではないかと思います。  特に今度の労基法改正部分について言いますと、ひどいのは残業制限の問題です。工業的業種についても一日二時間の枠が外されますね。もしそうなると、一週間六時間ですから一日六時間の残業もできるわけです。そうしますと、製造業において一日十四時間労働が可能になります。今、本当にきつい物すごいスピードの作業、ベルトコンベヤーのスピードが速い中で、秒単位の作業が組み込まれた労働密度の非常に濃い作業に従事している人たちが、八時間の労働でもきついのに、これがそれ以上延びて、極端な場合ということではありますけれども、忙しいからということで十四時間も仕事しなければならないことになったらどうなるのか。私が今何件かやっている職業病で苦しむ女性がふえるのではないか、とても心配でございます。それから、工業的業種以外についても、この残業制限を非常に−一応枠があるようですけれども、これ自体大変幅が広いもので、大変極端だと思います。それから専門職、管理職、これも非常に幅が広くなりますが、それに至っては深夜業も残業も一切制限がなくなるわけです。全廃されるということになりますので、専門職は限定すると言いますけれども、例えばコンピューター関係で私もいろいろ実態を知っておりますが、もう月に百五十時間残業だとか、先月は百七十時間も残業したなんという人もおります。そういうことは今違法なわけですけれども、それが合法化されてしまったらどうなるか、とても心配です。  それから、時間の関係で余り申し上げられませんが、坑内労働について言いますと、これがちょっとわかりにくい規定で、説明によりますと、災害時に看護婦さんなんかが入れるようにということが前に議論があったように聞いておりますけれども、災害時に訓練を受けてない看護婦さんが中に入るというのはとても危険なんです。余計災害をふやしてしまうことになりますので、坑内における災害のときには一刻も早く中に入っている労働者を外に運び出すことが先決であって、それは看護婦さんのできることではありませんから、そういうことがこれによってできるようになれば非常に困るということでございます。  そのほか、きょうは時間の関係で余り労基法の問題ができませんでしたが、これを一つ一つ検討していきますと実にいっぱい問題があります。特に今までの審議の中での御説明で、例えば深夜業の制限が廃止されるものが幾つか挙げられておりまして、それについての説明は、例えばお弁当屋さんだとか新聞配達だけだとか、あるいはタクシー運転手だけだとかという御説明ですが、条文上はそういうふうに読めないのです。条文上はそんな限定が全然ありません。いわゆるパートではないという御説明ですが、これは、パートでなくて仕事そのものが短時間であるなんという規定にはとても読めません。  それから、危険有害業務についても全然議論がされておりませんね。今までの委員会での二回にわたる御審議について、議事録を読ませていただいたりあるいは一部傍聴させていただいたりしましたけれども、これら重要な問題が、法律的、専門的な議論はほとんど行われておりません。理念についてはある程度すれ違いの審議が行われましたけれども、法的な専門的な審議はほとんど行われていないと思います。  それからさらに、育児休業と再雇用制度の問題についても、余り行われてないように思います。こういう問題がまだたくさん積み残されております。  これらの重要な問題が、最高の立法府であるこの国会において専門的、法律的に議論がされないままに採決されるようなことがあれば、私はそれこそ大混乱が生じるのではないかと思います。その意味でぜひぜひ、今私が本当に二、三挙げただけなんですけれども、これらのすべての点について十分に慎重な審議を尽くしていただきたいということを心からお願いいたします。
  58. 田辺照子

    田辺参考人 もし労働時間が長くなったらということで、かつて労働省の労働基準法研究会が、労働から見た女子の肉体的生理的特徴ですか、そういう調査報告書を出しています。それを見ましても、例えば二時間の残業で、これは何か通勤時間が五十分というところの実態調査でございますけれども、大都市では通勤時間五十分なんというのは余りありません。二時間を超えているわけですが、それが五十分で、夫が残業した場合には、帰ってきて大体一時間の余裕と言うのですか、余暇と言ってもいいでしょう、そしておふろへきちっと入って八時間睡眠をとっておるわけです。ところが妻が二時間の残業をした場合には、ふだんだって家へ帰れば家事をやらなくちゃならないわけですから、妻の過半数が睡眠時間七時間を割るというのは、労働力の再生産の視点から極めて重大な問題であるという指摘が報告されていたはずでございます。  実際、家事労働の時間を見ましても、ヨーロッパの男性と日本の男性では雲泥の差でして、ヨーロッパだったらお勝手を一時間幾ら手伝っているようですけれども、日本では三分とか五分という状態であるわけです。これは総理府の調査でそういうふうになっております。  また、もし残業が延びたときに、これからはこれが原則になるわけですから残業せざるを得ないわけです。職場にもきょうは残業できませんと言う場合には、職制に対する気兼ねだけでなくて同僚にも気兼ねをしなければならない。残業ができないような労働者だったらば常用としての資格がないというふうになると思います。また、残業があったとしても、自動的に子供を預かる保育所や学童保育が延長されるという保証はないわけです。結局、子供の問題もあるでしょうし、また疲労の増大ということもあれば、だれかが犠牲になると言えば、もちろん夫の賃金が高いでしょうからおれがやめるというわけにいかない、妻の方がやめざるを得ないということになるでしょう。妻がやめれば生計が苦しいということになりますから、やはりパートでということにならざるを得ないというふうに私は思っております。
  59. 浦井洋

    ○浦井委員 これで終わりますが、確かに御指摘のように、お話を聞けば聞くほど、法的にも専門的にももっともっと掘り下げて慎重に審議をしなければならぬということを痛感いたしましたので、これからも努力をしていきたいと思っております。  どうもありがとうございました。
  60. 有馬元治

  61. 江田五月

    江田委員 参考人の皆さん方、きょうは本当にありがとうございます。お聞きのとおり今ベルが鳴りました。あれは本会議が始まるベルでございまして、もうほとんど時間がありませんので端的に伺いたいと思うのです。  男女の差別をなくしていこうという大目標、特に雇用の場において男女の差別をなくしていこうという目標自体について、きょうの参考人の皆さん方から反対の意見はなかったので本当にうれしいことだと思うのですね。私も生態系に反するとかいうお話を読んでみましたが、ああいう日本の純風美俗を害するんだという意見も一部にあるけれども、国会という場で国民の皆さんの意見を伺ってみようというときに、そういう意見が出てくるところまで国会のバラエティーが広いというわけではない。そういう意味ではある程度コンセンサスがあるわけで、これはよかったと思うのです。  田辺先生、高鳥さん、それから中島先生のお話はそれぞれよくわかりますし、角田さんの御意見も、一人の女性の生活からの意見としては十分わかるわけですが、喜多村さんの意見は大分違っておったので、喜多村さんに伺いたいと思うのです。  喜多村さんの意見は、私が誤解をしておったら恐縮ですが、世の中の変化に応じて企業というものは合理的に対応してきた、現に存在している世の中の秩序というのはそれなりに合理的なんであって、その世の中の秩序とか企業が大きく変わるわけにいかないんで、男女の差別というものも今の企業はそれほど差別があるとも思っていないわけだから、この程度のところで少しずつゆっくりとやらせてくれ、そういう意見だと理解をしたのです。そして同時に、余り大きく変化をすると伺ったのです。だけれども、今婦人差別撤廃条約を批准しなければならぬという、ある意味で言えば圧力かもしれませんが、大きな国際的世論の中に日本もいるわけですね。そういう婦人差別撤廃条約というものについて喜多村さんはどういうふうにお考えなのか。  これは、経済の活力というのもいろいろなとらえ方があるわけで、経営者的な経済の見方もあるでしょうが、同時に労働者側の経済の見方というものもある、あるいは社会一般には経済がどんどん大きくなって活性化していくのがいいという見方もあるけれども、必ずしもそればかりではない。公害のない世の中、みんながそう仕事仕事で追い回されずに、もうちょっとのんびりやっていきたいなという社会の要請もあるわけです。私はどうも、喜多村さんの御意見を聞いておったら、経営者の一つの意見、人を使う側の意見ということで、その意味で言えば、この婦人差別撤廃条約を批准しようという大きな世界の流れの中で考えるときに、余り客観性のある意見じゃないんじゃないだろうかという気がするのです。使われる側の立場というものもあるのですし。  それから、喜多村さんにぜひ経営者という立場をちょっと離れてみて、一人の社会人として、あるいはこれまでいろいろな社会的経験を積んでこられた人生の光雄として、男女の間のことというのは、特に雇用の面においてこのままでいいのか、それとも婦人差別撤廃条約が言っているような方向もまた一つのあり方で、その方向で頑張らなきゃならぬというお気持ちなのか、この点だけを伺って、私の質問にかえさせてもらいます。
  62. 喜多村浩

    喜多村参考人 いろいろな問題が含まれた御質問でございますので、ちょっと長くかかるかと思いますけれども、まず、差別があるとは思っていないというのは現状の話でありまして、この条約なりこの法律なりがねらっているところに照らすならば、明らかに今まで差別でないと思っていたことが差別ということになるわけです。ですから、そのためには、これから対応しなければならないというふうに私どもは考えております。  大きく変化すると混乱するというふうにおっしゃいましたけれども、実は私ども大きく変化すると混乱するとは考えておりませんで、急激に変化すると混乱する可能性があるということを申し上げているのです。そのために時間をかしてほしいということを再々申し上げているわけでありまして、恐らくは日本の社会は大きく変化していかなければならぬだろうと私なんかは考えております。一言で言いますと、縦社会が横社会になる可能性があるということですね。  それが、日本経済の活力とか成長率ということに対してどういう影響を与えるかということは今後の問題でありますので、今軽々にこれを簡単に申し上げるわけにいきませんけれども、とにかく、この条約を批准するということに対しては、私どもはやらなければならぬというふうに考えております。かつ、先ほども申し上げましたけれども、批准のために最低要件どういうことをしなければならぬかということは政府の御回答にございますので、現在御提案の政府案で十分に批准はできるというふうに私どもは考えております。それを飛び越えて、はるかに高い理想的な状況を当面すぐに求めなければならないというふうには私どもは考えておりません。  それから、活力という問題でございますけれども、産業界は、男であれ女であれ、それぞれの労働力を、それぞれの立場で、それぞれの特性に応じて生かしたい、活性化させたいということはもう従来から考えておるわけでありまして、そのために、もしこの法案ができなくても、やはり女性の地位の向上というものはぼつぼつ出てくるだろうと思うのです。ただ、社会的コンセンサスなりあるいは女子自身の就業形態、職業意識というものがやはり変わっていただかないと、総理府の調査でありますけれども、現在、一度勤めて家庭に入った方がいいというのが五五%ぐらいある、長く勤めたいというのが一七%ぐらいしかまだございませんので、そういう状況下において、企業側だけが急激に変われと言われてもちょっと困る、非常に混乱を起こすということになるわけであります。ただ、今の一七%とか五五%という数字は、事の本質から見ますと本当は余り意味はないと思うのです。といいますのは、個々人を見て扱えということでありますので、日本の企業は、女子が十人おれは九人か八人の状態でもって判断して全体を律してきたわけです。残る一人二人は割りを食っておったわけですね。それを生かせということになるわけでありますが、これをどういうふうにやって企業の中で管理していくか、これは今後いろいろな面で工夫を必要とすることではなかろうかと思います。  以上です。
  63. 江田五月

    江田委員 どうもありがとうございました。
  64. 有馬元治

    有馬委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位には、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。  午後二時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時五十九分休憩      ————◇—————     午後二時四分開議
  65. 有馬元治

    有馬委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  このたび、両案審査のため、福岡県及び北海道に委員を派遣いたしました。  この際、派遣委係員からそれぞれ報告を聴取いたします。第一班、村山富市君。
  66. 村山富市

    村山(富)委員 昨日行われました現地調査第一班について、御報告を申し上げます。  第一班は、七月十五日及び十六日の両日、福岡県に派遣され、現在、当委員会において審査中の内閣提出雇用分野における男女の均等な機会及び待遇の確保を促進するための労働省関係法律整備等に関する法律案及び多賀谷眞稔君外七名提出男女雇用平等法案に関連して、現地において各界の代表者から意見を聴取する等、実情を調査してまいりましたので、私からその概要を御報告申し上げます。  第一班の派遣委員は、有馬元治君を団長として、浜田卓二郎君、沼川洋一君、小渕正義君、菅直人君、それに私を加えた六名であり、古賀誠君、多賀谷員稔君、大橋敏雄君、小沢和秋君が現地参加をされました。  現地における会議は、昨日、午前十時より午後一時まで、福岡サンバレス会議室において開催し、意見陳述者として、鹿児島女子短期大学教授今村節子君、福岡県労働組合評議会婦人協議会事務局長永延桂子君、福岡県中小企業団体中央会専務理事加来俊則君、弁護士古賀義人君、福岡県経営者協会専務理事松田正巳君、寿屋労連中央執行委員若杉八千子君の六名の方々から、参考意見を聴取いたしました。  まず、今村君からは、内閣提出法案は、我が国の現時点では妥当であり、四党提出法案は、国民的コンセンサスを得がたい。加来君、松田君からは、内閣提出法案は、不満ではあるが許容できる限界のもので、修正が行われないことを前提に賛成であり、四党提出法案は、我が国の雇用慣行、就業実態から賛成できない。また、永延君、古賀君からは、内閣提出法案には反対であり、四党提出法案に賛成。若杉君からは、内閣提出法案には問題があるので、働く女性の実態に合った法律をつくってほしい旨の意見が述べられました。  内閣提出法案に賛成の今村君、加来君、松田君の三君からは、近年、女子労働者は着実に増加するとともに、あらゆる産業や職業に進出し、特に中小企業において女子労働者の役割は非常に大きなものとなっているが、勤続年数が短いため、終身雇用管理制度をとっている企業にとって、男女一律の扱いを強制されることは問題であること、我が国では、家事、育児などの家庭責任が女子の役割となっていること等の現状を踏まえ、かつ、国民各層の意見のバランスをとりながら着実に推進すべきものであり、性急な変革を行うことは、かえって実効の妨げとなるのではないかとする意見がありました。また、産業界においても、婦人の能力を有効に活用するため、雇用における不合理な差別の解消に反対するものではないが、その対応には、相当な時間を要するものと考えられることから、漸進的に推進すべきであるとの意見もありました。  なお、労働基準法の改正については、母性保護規定は別として、女子保護規定は、女子の能力発揮、就業分野の拡大を妨げていると考えられることから、見直す必要があるとする意見がありました。  内閣提出法案に反対の永延君、古賀君、若杉君の三君は、婦人差別撤廃条約を批准するには、可能な限りその趣旨に沿った法律をつくることが必要であり、これを実効あるものとするため、募集、採用から定年、退職までの雇用の全ステージで差別を禁止すべきであるとしています。また、内閣提出法案では、勤労婦人福祉法の改正の形をとっており、その「目的」、「基本的理念」は現行法を承継しているが、男女平等を基本的人権の一つとしてとらえるべきで、福祉とは異質のものであるとする旨の意見もありました。  さらに、改正法の実効を期するには、行政指導及び調停では不十分であり、救済制度を確立することが必要である旨の意見もありました。  なお、労働基準法女子保護規定の改正については、女子が家庭責任を負っているので、改正により女子の時間外及び休日労働や深夜業が広がり、家庭生活との両立が難しくなり、ひいては職場を去ることが懸念されることから、反対であるとの意見もありました。  以上のような意見が述べられた後、各委員との懇談に入り、労働基準法女子保護規定の見直し、女子労働者の職業生活と家庭生活の両立、伝統的な男女の役割分担と婦人差別撤廃条約の批准、労働基準法の改正と女子の就業、紛争処理機関の実効性の確保、努力義務規定と訴訟の関係、賃金格差と男女同一賃金の原則、男子労働者の労働条件の引き上げによる差別の解消、本人の申し出に基づく深夜業の解禁、自主的解決の実効性等の問題について意見交換が行われ、会議を終わりました。  なお、午後二時からは、同会議室で、野口福岡労働基準監督署長及び井本禍岡公共職業安定所長から、それぞれ業務概況等の説明を聴取いたしました後、同監督署及び同安定所に赴き、業務を視察いたしました。  以上をもって、第一班の調査報告を終わりますが、終わりに、今回の調査に御協力を賜わりました関係者各位に対しまして、衷心より感謝の意を表明する次第であります。  以上、御報告申し上げます。
  67. 有馬元治

    有馬委員長 第二班、愛知和男君。
  68. 愛知和男

    ○愛知委員 第二班は、第一班と同じ目的、日程で、北海道札幌市に行き、現地において各界の代表から参考意見を聴取してまいりました。私からその概要を御報告申し上げます。  第二班の派遣委員は、団長を務めました私のほか、中川昭一君、池端清一君、橋本文彦君、塩田晋君、田中実智子君の一行六名であります。それに箕輪登君、竹村泰子君、鈴木宗男君が現地参加されました。  現地における会議は、昨日午前十時より午後零時三十分まで、札幌第二合同庁舎の会議室において開催し、北海道経営者協会専務理事上野博君、北海道教育大学教授小川環君、北海道中小企業団体中央会常務理事鈴木利夫君、弁護士八幡敬一君、北海道婦人団体連絡協議会会長・旭川市婦人団体連絡協議会会長中橋三重子君、北海道地方同盟婦人委員会委員長清野一都美君の六氏から、参考意見を聴取いたしました。  陳述者の意見は、上野君、鈴木君、中橋君からは、内閣提出法案に賛成で、野党四党共同提出法案に反対、小川君、八幡君からは、野党四党共同提出法案に賛成で、内閣提出法案に反対の意見が述べられました。また、清野君からは、主として職場での働く女性の実態について詳細に説明がありました。  内閣提出法案に賛成の三君からは、最近における我が国の女子労働者は全労働者の三分の一を超え、あらゆる産業分野に進出し、女子労働者の役割は非常に重要となっている。また、生涯における職業生活の比重も増大していること及び昭和五十五年に指名したいわゆる婦人差別撤廃条約批准のための条件整備として、このたび国内関係法を整備することは時宜を得たものであり、大筋において賛成であるとの意見が述べられました。  その内容については、経済界、特に中小企業においては、男女の役割への分担が長い歴史の中で培われており、雇用管理が行われているという実態もあり、内閣提出法案は許容の限界であると考えられる。  また、新しい方法で雇用管理を進めるためには時間が必要であり、性急な変革を行うことはかえって実効性が薄れるのではないかとの意見もありました。  さらに、男女平等問題は、歴史的風土と強くかかわっており、法律制定だけではなく、国民各層の意見のバランスをとりながら、たゆまざる努力が必要ではないかとの意見もありました。  なお、労働基準法女子保護規定の改正については、平等のためには全廃すべきではないか。家事、育児は家族の問題であり、法律により規制することはいかがなものかとの意見もありました。  さらに、賃金体系については、年功序列、終身雇用の慣行の中では、職能別賃金導入が考慮されるべきであるとも述べられました。  野党四党共同提出法案に対し賛成の諸君からは、この法案が提出された契機は、婦人差別撤廃条約の批准が大前提であり、まず、条約の精神を踏まえて基本的理念、人間の尊厳、男女同権を考えるべきであり、その趣旨に沿った法律制定が必要であり、この権利の確立のためには募集、昇進、雇用安定、給付を含む雇用の全ステージで差別を全面禁止すべきである。したがって、内閣提出法案では不十分であり、野党四党共同提出法案に賛成である。  また、内閣提出法案は、勤労婦人福祉法と労働基準法の改正により、努力義務規定を定める一方、女性保護を大幅に緩和しようとするものであり、保護規制の緩和は女性が働き続けることを一層困難にするものであり、男性女性が人間らしい同じ労働条件のもとで働けるような実効性のある法律制定が望ましい。したがって、条約批准のための条件整備の法改正であれば、求められているのは男女差別の撤廃であって、平等を名目とした保護を撤廃するべきものではない。そのことについては条約において、女性保護は差別とみなされてはならないとしていることからも明らかであるとの意見も述べられました。  なお、最近における労働時間数の増加により、男性の間でも健康破壊が問題となっているにもかかわらず、労働基準法の改正により、時間外労働、休日労働、深夜労働を拡大することは、職場と家庭生活との両立が困難となり、それがひいては職場を去ることになるとの懸念があり、内閣提出法案には反対であるとの意見もありました。  以上のような意見が述べられた後、各委員から、職場での配置の平等と転勤の問題、労働基準法の改正とパートタイマーとの関係、内閣提出法案と野党四党共同提出法案との相違点、政府のILO条約の未批准の問題及び地元北海道での離婚率と生活保障等について熱心な質疑が行われた次第であります。  以上をもって報告を終わりたいと思いますが、この会議の開催につきましては、関係者多数の御協力により、極めて円滑に行うことができた次第であります。  なお、会議終了後、札幌労働基準監督署及び札幌公共職業安定所を視察いたしましたことを申し添えます。  以上でございます。
  69. 有馬元治

    有馬委員長 以上で派遣委員からの報告は終わりました。     —————————————
  70. 有馬元治

    有馬委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。網岡雄君。
  71. 網岡雄

    網岡委員 質問をさせていただきます前に、約一時間という時間でございますから、できるだけ簡潔に御答弁をいただきまして、質問をできるだけ多くできるように御配慮をいただきたいということをまずもってお願いを申し上げたいと思います。  私は、まず第一に、午前中の参考人の方々からもお話がございまして、特に中島通子弁護士から、今提出をされております機会均等法案について三つほど述べられましたけれども、その中の一つの重要な部分であります、女性雇用における差別の中で一番入り口の段階に当たります採用、募集のところが義務規定に終わってしまっている点につきまして、若干御質問を申し上げてまいりたいというふうに思う次第でございます。  中島さんからもお話がございましたように、今までいろいろな差別があったものが、解雇の問題、若年定年の問題、結婚による退職の問題などは、積み重なる裁判の結果によって一つ一つ実績を上げてきているわけでございますが、しかし、婦人における雇用の全ステージにわたって影響を及ぼします採用と募集の段階については、まだまだ今日の段階では手がついていないという状況にございます。したがって、本法案が提出されるに当たりまして一番望んでいる点は、ここの入り口の部分について強行規定という規定によって、その法的な担保というものが全婦人の中で注視の的であったわけでございますが、それがされていないというところが非常に残念なわけでございます。  私は、まず質問をする前に、今入り口であります募集、採用の実態がどういうふうに行われているかということを大臣、婦人局長の赤松さんにもぜひ知っていただきたいと思うのでございます。  先ほど私、新聞を御両氏にお渡しをしておきましたけれども、後で質問をしてまいりたいと思いますが、まず実態から入っていきたいと思います。  これは早稲田大学のある女子学生の告白でございますけれども、早稲田大学の就職問題調査会というのが編集いたしました「私たちの就職手帖」という雑誌がございますが、この編集責任をやっている女子学生に聞いたことを私、少しお話しを申し上げたいというふうに思うのでございます。  彼女の説明によりますと、早稲田大学と言えば日本における有名校の一つでございますが、この大学の就職あっせんの紙ビラが張られたわけですが、その就職あっせん、紹介の壁新聞の告示は、まず男子、女子男女と三つの段階に分けられておりまして、そして、大企業に対する男子のあっせん口というものは全大企業の募集の約八割を占め、そして女性のみ、あるいは男女募集というところで女性が募集されているのは残りのわずか二〇%しかない。しかも募集されている会社というのはサラ金、ホテル、コンピューター、デパートといったところに限定され、しかも大企業の場合は、女子の場合は事務職とちゃんと明記されているということになっておりまして、女性がいかに終身雇用を目指して来たるべき職場の中で一生懸命働こうと思っても、そういう窓口の狭さというものを感ずるということを言われているわけであります。  そして女性の募集の欄を見ますと、まず条件として自宅通勤というのが一つの条件。それから二つ目は生年月日、何年何月以降の人に限るとなっておりまして、結局その生年月日を見ますと、浪人をした女子学生は就職に行くことができない。こういうぐあいに、年齢差別がもう募集の段階で定められているということでございます。  そして、ようやく学校のあっせんによって就職試験についたとしましても、例えば、この雑誌にもありますから企業の名前を言ってもいいと思うのでありますが、朝日通信社という会社がございます。この朝日通信社は、就職に行った女子学生の前で、当社は女子職員を採用する際は女の子は事務の仕事だけである、そして、もし入った場合は社内結婚をしたらやめてもらう、あるいは結婚をして子供を生んだ場合はやめてもらうということを、説明会の段階で人事部の責任者がはっきり言っておる。これは入り口の段階ではございますけれども、明らかに結婚による問題を提起しながら職を離れよということを言うわけでございますから、これは雇用における差別の最たるものだと思うのでございますが、そういうことをはっきり言っている。あるいは森ビルという会社がありますが、ここもやはり、うちは女性職員を採用する際は、女性はアシスタントですよということをはっきり言っているということでございます。そして、三井物産の場合はやや知能的、知能犯でございまして、うちの会社は最低三年は勤めてもらわなければならない、こういうふうに言っているそうでございます。ということは、逆に裏を返せば三年たったら結婚してやめてくれ、こういうことだそうでございまして、その女性の語るところによりますと、就職あっせんのビラが張られてくるころになると、各会社へ行って、早稲田の先輩がいればその先輩にその会社の状況を聞こうと思って訪ねてまいりますと、五年以上勤めている人はほとんどいない。大体三年から四年でやめてしまっているということが、この説明会における人事部長の発言と符合しているわけでございまして、私は、これは募集における会社対応というものが極めて問題の大きいものだということが端的に言えると思うのでございます。  そして、帝国ホテルの場合なんかは非常に涙ぐましいといいますか、ここまで女性が、就職というものを考えたときに、思い詰めてテストに臨んでおるのかということを思い知らされたわけでございますが、帝国ホテルの試験の際は面接は大体男の場合一対一で三十分くらいかけるのですが、女性の場合はどういうわけか受けた女性全部を並べて集団面接を行い、そして全体で大体三十分ぐらいで終わってしまうというのが通例だと言われております。そして、帝国ホテルの場合の例を引きますと、最後に人事部長が質問をして、あなたが帝国ホテルに入りたいと思ったことを言葉なり態度で一遍示してもらいたい、こういうふうに最後に言ったそうでございます。そのときに、テストに残った五人の女性のうち三人は、一人は「帝国ホテル万歳」と言ったそうです。そしてもう一人は「どうしても入りたい」と言って涙ぐんだ。もう一人は盛装の姿で土下座をして「どうかひとつ私を入れてください、一生懸命やります」、こう言って答えたと言われています。この編集責任者の言によりますと、いずれもこの三人は、これほどの努力をいたしましたけれども落とされているということから見まして、今日の女性に対する大卒就職状況というものは、いかに過酷なものであるかということを私は端的にあらわしているものじゃないかというふうに思います。  そして、幸いバスをいたしましたときに受ける研修というものはどうなるかというと、男子は大体三カ月くらいの研修を受けて、それぞれ専門の教育を受けるわけでございますが、女子は大体一カ月、それも大企業だから一カ月やっているわけでございますが、電話のかけ方だとか接遇の研修ということが主であって、ほとんど技術的といったような内容のものの研修は受けていないということでございます。  局長、これが大企業における大卒女性の場合の研修まで含んだ実態なんでございまして、私は、この早稲田大学の女子学生の話を聞いておりまして本当に感じましたことは、私は男に生まれてよかったな、そう思ったくらいでございます。これほど、今の女性の差別というものは非常に過酷なものだということを状況として御報告を申し上げておきたいと思います。  それから、大臣にさっきお渡ししました新聞です。これにひとつ目を通されてどういう御感想を持たれたかということを、後でお聞きしたいと思うのでございます。たくさんありますけれども、最も端的なものを私は申し上げていきたいと思います。  右の欄の真ん中辺に、兼松電子部品株式会社というのがございます。これは兼松江商の傍系会社でございますが、そこの募集広告の中には、男子の場合は「大卒理工系及び文科系年28歳迄ここうなっています。ところが、女性の場合は「女子高卒上年23歳位迄」こういうふうになっておりまして、この広告の問題点は、一つは、男子は大学卒、女性は高卒ということで、学歴の差の募集をやっているということが、募集における差別を端的にあらわしているのじゃないかというふうに私は思います。それからもう一つは、男子は二十八歳までいいけれども女性は二十三歳でいけないのだ、こういう年齢差別をしているというのは、やはり募集における差別の実態を最も端的にあらわしているものだというふうに私は思います。  この広告欄で見ますと、男子だけで書いてあるものが大体二十六です、一つか二つ狂っているかもわかりませんが二十六。女子のみの募集の広告が二つ、男子と女性との間に年齢格差がつくられているというものが五つ、それから職種が違っている広告がなされているものが四つ、そして男女の募集はしておりますけれども学歴が違えていっているものが二つ、こういうことで、全体四十七件のうちで、実に三十数件にわたって違反の広告が行われているという実態でございます。でありますから、広告欄のすべてを見ると、女性雇用における差別の問題で眺めた場合には、ほとんどが問題の広告が出ているという状況でございます。  こういう状況であるわけでございますが、そこで大臣にお尋ねをいたしますけれども、この広告と、先ほど早稲田大学の学生のいわゆる大企業における就職の実態というものを言ったわけでございますが、それをお聞きになって一体どういう御感想を持たれたか、そして、均等法案を出された御本人でございますから、責任者でありますから、大臣がこういう状況を踏まえながら、今後、今出されている法案の中で一体どう対処していったらいいのかというような点について、まず大臣の所信をお伺いしたいと思います。
  72. 坂本三十次

    ○坂本国務大臣 ただいまあなたのおっしゃるような、新聞にも出ておりますような男女の差別というものが現実にあるということは、今あなたが実証されたとおりだろうと思います。しかし、それがずっと長い伝統でここまで続いてきたこともこれまた事実であります。そこで、これはよくないのではないか、これは直さなければいかぬ、こう思いましたから、それはやはり女性の人権にもかかわることでありましょうけれども、これからは職業を通して生きたいという女性の自覚が出てきておりますから、女性の幸せのためにもそのままほうっておけない、それだけではなしに、社会全体の発展のためにも、そういういわれのない差別はこれ以上続けさしていってはおかしいのではないか、そういうようなことで私どもこの男女均等法というものをつくったわけです。    しかし、中の規制の仕方は努力義務だとか強制規定だとかありますけれども、つまり、男性女性も意欲と能力のある者はチャンスを同じようにできるだけ与えて、そして、努力と実績を積んだ人は待遇の平等ということは当然ですよということを、差別をなくするように国民の名において法律を決めよう。法律ということは国民の名においてやろうということであります。ですから今までのような、この差別を公序良俗に照らして裁判所に持っていったのでは、それはおっしゃるとおりなかなか簡単なわけにはいきませんですね、入り口から出口まであるのですから。出口の方は勝負あった感じです。だけれども、全ステージにわたって社会的評価を定着させるというのはなかなか大変です。だから、裁判所の一々の判決によらずに、国民の名においてそういう男女のいわれなき差別はいけません、直していきましょうというのが今国会に私ども提案した理由であります。
  73. 網岡雄

    網岡委員 後でまた順々に御質問させていただきたいと思いますけれども、次に局長にお尋ねいたします。  女性の募集、採用の場合にいつも言われますことは、日本における雇用の形態は終身雇用の慣例がある、ですが、女性というものはそういう社会慣行に就職をしていく年限というものがそぐわない、こういう点で、女性職場に進出する面において非常に問題があると言われております。しかし、先ほど実例を申し上げましたが、彼女たちは、これは初めから、長く一生の仕事としてそこへ入ろうということを決意をしながら入っていこうとしているわけでございます。しかし、募集と就職の入り口の段階で、今お聞きをいただきましたような差別が現にとられているということになったときに、定年退職までいく全ステージにわたって雇用の差別というものを考えたときに、入り口における問題というものが非常に重要な問題を含んでいるということがはっきりしていると思うのでございますが、この点が努力義務になっていることによって、今言ったようなさまざまな矛盾というものを一体どのようにしてなくすような処置を労働省としてはおやりになろうとしているのかという点について、これは簡単にひとつお答えいただきたいと思います。
  74. 赤松良子

    ○赤松政府委員 最初のステージでいろいろな差別があるということは全く御指摘のとおりでございまして、私どもがそれに対して、そういう御指摘が事実に反するとかあるいは誇張であるとかいうふうに思っているわけでは決してございません。そういう男女の、異なった条件をつけるというようなことは世の中に横行しているわけでございます。これはよくないことだと思うわけでございます。大臣も、先ほど申し上げましたように、今まではそれがごく当たり前のこととして許されてきたこと、そういうことはよくないからやめてほしい、こう言おうとしているわけでございます。
  75. 網岡雄

    網岡委員 それじゃ、今までの質疑の中で、局長も御答弁になっておりますが、この採用と募集の点については行政指導で対処していきたいということをお答えに、なっているわけでございます。そして、十二条の大臣による「指針」の中で、七条、八条の点については努力義務規定になっておりますけれども、具体的な七条、八条に対する雇用における問題を「指針」の中で示して、そのガイドラインによって行政指導をされるということを御答弁になっているわけでございますが、それでは一体その行政指導の物差しになる「指針」というものはどういう中身を持っているのかということを、この際明らかにしていただきたいと思います。
  76. 赤松良子

    ○赤松政府委員 先生御指摘のように、七条、八条は強行規定ではございませんので、その努力目標を具体的に示すものとして「指針」をつくろうということになっているわけでございます。その「指針」に基づいて、この法案の施行機関たる婦人少年室長が行政指導を行うということになり、個々の具体的な事例だけではなくて、大きく全国的に網をかぶせた行政指導ができるわけでございます。  その指針の具体的な内容についてのお尋ねかと存じますが、これは具体的には募集におけるもの、採用におけるもの、配置におけるもの、昇進昇格におけるものというふうな、それぞれのステージにわたって具体的な目標が示されるべきものだろうというふうに考えております。  そして、内容につきましては、これまでの審議会の検討の中で御参考になるかと思われます点を申し上げますと、この審議会の建議をいただく前に、御承知のように、男女平等問題専門家会議という専門家の御意見を二年半にわたって伺ってきたわけでございます。その中で、なくすべき男女差別というものはどういうものであろうかということをいろいろと御議論をいただいたわけでございまして、この専門家会議は専門家というお立場で、公式の三者構成ではございませんけれども、労使、学識経験者それぞれの御見解をちょうだいするというような仕組みになっておりました。そこで大変活発な御意見が出たというふうに、私は後で帰ってまいりましてから、その場には居合わせませんでしたが、そういうふうに聞いているわけでございます。  そこで「指針」をつくるといたしまして、どのようなことが今後検討の課題になるかということを申し上げてみますと、男女平等問題専門家会議の報告の中で指摘されている点が御参考になろうかと思うわけでございますが、この中で、今後検討の課題となる男女異なる取り扱いとは次のようなものがあるというふうに言われているわけでございます。その中で、募集、採用、配置、配置転換、昇進昇格、それ以降のステージについてもずっと述べられておりますが、一応その辺までで、先生の御質問は募集、採用のところかと思いますので、その点について申し上げますと、募集、採用については、一つは、男子のみあるいは女子のみの募集、単に性別だけを掲げている募集でございますが、その募集をしたり採用をしたりする、あるいは男女別に募集、採用の枠を設ける、それから男女異なる年齢、学歴あるいは資格等を条件に募集、採用をすることにする、それから女子についてだけは婚姻の有無、子供の有無、あるいは自宅通勤あるいは容姿等の条件をつけてする、あるいは男女異なる雇用形態、すなわち片方は常用、片方は臨時、あるいは就業形態が異なる、つまり片方はフルタイマー、片方は無条件にパートタイマー、そういう形でする募集や採用というものは検討の対象にしなければならないだろうというふうに思っております。  先ほど先生がお見せくださいました新聞の募集欄には、ただいま申し上げましたようなことに該当するものが多々見られるように。存じます。
  77. 網岡雄

    網岡委員 もう一度確認させていただきます。今局長が御答弁になった部分、これは専門家会議で出されたものだという形で御答弁になりましたが、最後のところで、これは労働省としても考えているんだ、こういう形の御答弁をなさりましたが、来るべき「指針」を検討する場合の審議会の検討を仰ぐ場合は、今御答弁になった各部分、雇用、採用の差別等列記をされました部分については、労働省案として審議会に御提案になるものだということで確認をしてよろしゅうございますか。
  78. 赤松良子

    ○赤松政府委員 審議会とこの専門家会議との関係は、審議会の中での検討を進めるために審議会自体が必要と考えてお願いをした専門家会議でございます。したがいまして、この専門家会議の報告は審議会に御報告をし、十分にその後の審議の検討材料にされたものでございます。したがいまして、この法律案が成立いたしまして再び審議会に場所を移して「指針」の検討になるという場合に、この専門家会議の報告が当然大きな場所を占めるということになろうかと思います。これは二年半かかってやったけれども、それから大分たっている、こんなことはまた別だというようなことは考えられないわけでございます。
  79. 網岡雄

    網岡委員 非常に微妙な答弁になっていますので重ねて私は確認をいたしますが、二回目の御答弁の中では、局長は、専門家会議の報告として審議会に提案ではなくて御報告になる、こういうことでございますが、これでは労働省として主体性がないんじゃないですか。これは、局長自身も御答弁になったように、何年かの経緯を経て三論併記のような形で答申を受けて、そして今審議しております法案を出されたわけでございますね。その法案の十二条なら十二条を受けて「指針」を決めていく場合に、審議会の答申を受けるということになった場合は、法案そのものをつくる場合はさっき言いましたように専門家会議の報告ということでいいわけですが、しかし一たん均等法がスタートを切った段階における政令や省令を定める部分の審議というものは、やはり労働省がはっきり責任を持った形で審議会に提案するということでなければ、これは政府としての責任回避じゃないですか、どうですか。
  80. 赤松良子

    ○赤松政府委員 労働省といたしましては、これまでの審議の過程、審議会及び専門家会議の御報告、あるいはそのいろいろな段階の過程をよく考えまして原案を作成するというようなことになるのではないかと思います。
  81. 網岡雄

    網岡委員 その答弁で確認をしますけれども、ぜひひとつ労働省としては、専門家会議の報告を受けて労働省が提案をする、こういうことに踏まえていいですね。くどいようですが、もう一度確認をします。
  82. 赤松良子

    ○赤松政府委員 ただいま申し上げましたように、原案を作成して審議をお願いするということになろうかと存じます。
  83. 網岡雄

    網岡委員 済みません。ちょっと答弁を聞き損ないましたから、申しわけありません。
  84. 赤松良子

    ○赤松政府委員 再度申し上げますと、原案を事務当局として作成いたしまして、審議会に審議をお願いすることになろうかと存じます。
  85. 網岡雄

    網岡委員 そして、中身は先ほど言われましたように、女子のみ、男子のみ、それから男女の職種別あるいは年齢格差、学歴格差、それから自宅、常用、パートの雇用形態の格差、こういうことが内容として提案されるということで確認してよろしゅうございますか。
  86. 赤松良子

    ○赤松政府委員 先ほど申し上げましたようなことが検討の対象になると存じます。
  87. 網岡雄

    網岡委員 同じことを何遍かやらなければならぬのですから、それで時間が来てしまうわけですが、検討の対象になるというのは、労働省はそういう形で原案を示し、そして審議会の検討の対象になる、そういうことですね。いいですか。
  88. 赤松良子

    ○赤松政府委員 労働省の原案の作成ということの検討の対象になると存じます。
  89. 網岡雄

    網岡委員 わからないですね。ここまで、今までの三日間の審議を通じて、きょう局長が初めて、いわゆる募集、採用におけるガイドラインのベールを少し脱いだわけですよ。せっかくそこまでの答弁をなさるならば、これはもう労働省として案を示すんだということを言外に局長は言ってみえると思うのでございますが、それを最後のところでどうも踏ん切り悪くおっしゃっておるのは、まあ使用者側の圧力とか反発とかいうようなことをお考えになっていると思いますが、これは午前中の参考人の陳述といいますか意見ではありませんが、とにかく婦人におけるすべての差別を撤廃するという条約を批准するに当たって、女性における労働問題の日本の国としては非常に重大な歴史の曲がり角に立つという内容を持った法案をつくるのですよ。そういう時期に、単なる省令、政令で定める内容が、責任者である局長として明言ができないなんてことで、一体この法案を審議することができるのですか。
  90. 赤松良子

    ○赤松政府委員 ただいま御説明申し上げましたように、「指針」が努力義務規定を実効あらしめるための方法として、努力の目標を具体的に明らかにするということでございますので、審議会の中で労使のお話し合いを経て、その「指針」が明らかにされるということになると存じます。
  91. 網岡雄

    網岡委員 今の答弁はまた後退ですよ。全然問題にならないですよ。こういうことでいけば私は審議ができません。しかも時間は一時間でしょう。それこそ入り口の議論をやっていてこんなにかかるのではもう審議できないですよ。だから、これは時間の中へ入りませんよ。
  92. 赤松良子

    ○赤松政府委員 労働省の立場といたしましては、審議会にお諮りをして「指針」を決めるということでございまして、「指針」の原案は労働省が作成する義務があると存じます。その労働省の原案を作成するに当たりましては、先ほど報告書の中で申し上げましたような男女異なる取り扱いというものは検討の対象になるわけでございますが、それの中で「指針」の具体的な中身になりますのは、それが合理的な理由があるかどうか、あるいはどの程度の時期に「指針」を定めるのが適当かというようなことを勘案いたしまして、審議会に提案をいたしたいと思います。
  93. 網岡雄

    網岡委員 もうこの問題だけで四十分近くやっているわけでございますが、局長、これは後で私、時間があったらもう一遍戻ります。もう一遍また詰まるかわかりませんけれども、審議に協力して先へ行きましょう。  そこで、もう一つ私はこの問題でお聞きしますけれども、これは行政指導で一体どれだけの実効を上げることができるでしょうか。  例えば、行政管理庁が五十七年に調査したパートタイマーの就労実態が出ているわけでございます。それによりますと、企業のうちの八三・八%、大体八四%までの企業は、次に挙げますけれども、全部これは労働基準法違反をしているわけでございます。つまり強行規定でしかも罰則がある、これほど厳しい規定がある内容のものでさえ全企業のうちの八四%は違反をしているということを、政府の機関である行政管理庁が、調査の結果明らかにしているのでございます。  内容を言いますと、労働条件の明示は五五・九%、労働基準法十五条違反、それから就業規則、労働基準法八十九条違反、そして有給休暇、これは同じく労基法三十九条違反、まだたくさんございますけれども、これだけの違反をやっているのです。罰則まであってそうなんです。  だといたしますならば、新聞の広告二面にわたってほとんどが違反行為です。そして、局長自身がおっしゃったように、その専門家会議でガイドラインとして出された、局長の答弁によればこれを審議会にかけるという原案、これに全部違反をしているこのさっきの広告の実態、それから早稲田の学生が言った実態というものがもう実際にあるときに、単なる義務規定で行政指導をやって一体どれだけの行政効果を上げることができるのでしょうか。簡単に一言、言ってください。
  94. 赤松良子

    ○赤松政府委員 基準法の違反の状態につきましては、基準局の方から必要があれば御答弁申し上げますが、私に対する御質問、努力義務に基づく行政指導が効果が上がるかということでございますが、これまでの経験では、差別と考えられる結婚退職あるいは若年定年というようなものに対して、婦人少年室は五カ年計画で、行政指導でそういうものをなくすようにという指導をしてまいりました。これによりまして、そのマジョリティーが、そういう差別をしている就業規則を改めあるいは契約を改めて、男女平等を物にしたという経験がございます。まして、その場合は法律の根拠がなかったわけでございますが、たとえ努力義務にせよ今度は法律の根拠ができるわけで、婦人少年室は根拠に基づいた行政指導ができるわけでございます。
  95. 網岡雄

    網岡委員 基準局長もお見えになりますけれども、どうですか、今の赤松局長の言によれば、努力義務というような私どもに言わせればざるのような規定であっても、決して心配は要らないという御答弁がございましたが、そうすると、労基法関係の局としては職員が取り締まりを怠慢したのですか、これはそういうことになるのですか。
  96. 野崎和昭

    ○野崎説明員 パートタイマーの関係の御指摘のような事項については、確かに現実に法違反が多いというふうに承知しております。ただ、御承知のとおりパートタイマーは大多数が小零細企業に勤めております。  それから、お話のございました年次有給休暇の点につきましては、その当時はまだ労働基準法の解釈が必ずしも十分明らかではなかったというようなことがございまして、御指摘のような点もあったかと思いますけれども、この点については、御承知のとおり、その後労働条件の明示につきましては雇入通知書の普及というような形で、行政指導による改善に努めているわけでございます。さらに今年度におきましては、総合的なパートタイム労働対策要綱をつくって、さらに強力に行政指導に努めてまいりたいと思っております。
  97. 網岡雄

    網岡委員 対策要綱をつくってやっていかれるということは結構でございますが、赤松局長、今御答弁があったとおりで、強行規定で罰則があっても今言ったような状況ですよ。例えば解釈が違って云々ということがあるのです。明確に強行規定で、しかも罰則まで決まった条文の解釈をめぐって、監督をする方と受ける方とでは解釈の違いがあってなかなか進まない、こういう実態なんです。それが募集と採用の部分で義務規定ということになっておれば、これはもう私が多く申し上げる必要はないんじゃないですか。とてもこれは行政指導でやっていけるような代物ではない。先ほどの午前中における話ではございませんが、もし本当に差別をなくするということであるとするならば、はっきりここについては強行規定で決めて、そしてその規定による担保によって、もし守らぬ者があるとするならば、もちろん労働省の行政指導を待つわけでございますが、それでもやられぬ場合は、裁判所に行った場合にそれが有利に働いて一つ一つの実績を残していくことができる、こういうことになると思うのでありますけれども、この点について一体局長はどう思われますか。
  98. 赤松良子

    ○赤松政府委員 行政指導が効果が上がらないのではないだろうかということにつきましては、私どもは、行政指導はそれなりの効果が上がるというふうに存じているわけでございます。
  99. 網岡雄

    網岡委員 その局長の答弁も、一年ぐらいたったら無残に化けの皮がはがれるときが来ると思うのでございますが、次がありますから、次の質問に移っていきたいと思います。  十三条は、これは時間がございませんから外します。  次に、十四条の問題に移りたいと思います。  十四条の規定によりますと、労働省令で定める事業主の措置について、女子労働者と事業主との間の紛争について、関係当事者から解決の援助を求められたときには、都道府県婦人少年室長は必要な助言、指導、勧告を行うことができる、こういうことになっております。  そこで御質問を申し上げたいのでございますが、私はこの次の調停機関についても後で御質問をしていきます場合に明らかにしていきたいと思いますが、この法案でいった場合に、十四条の都道府県におきます婦人少年室の行政指導というものは、非常に重要な役割を果たすものだというふうに思います。なぜならば、後で申し上げますけれども、調停委員会は、一方の例えば、恐らく使用者側になると思いますけれども、使用者側が拒否をすれば調停は開始できないということでございまして、これはスタート点でもう開店休業になってしまうわけでございますから、したがって、その前段の行政行為として行われる各都道府県の婦人少年室の行政指導というものは非常に重要な意義を持っていると思うのでございます。そこで、実効性のある行政指導をしようとするならば、そのことを行うための前提条件でありますすべてのステージにわたる内容をつぶさに調査する、いわゆる苦情を訴えた、調停を申し込んだ申し入れ人の内容を婦人少年室が調査をして、そして対応していかなければならぬと思うのでございますが、それをやるためには婦人少年室として十分な調査をしていくだけの権限を持たなければいけないと私は思うのでございますが、行政指導を実効あるものにしていくための調査というのは、法律的に一体どういう根拠に基づいて、根拠といいますか調査の権限というものは一体どこに求めてやろうとされるのか、その中身について御質問したいと思います。
  100. 赤松良子

    ○赤松政府委員 御質問の御趣旨が婦人少年室が調査ができるかということでございますならば、婦人少年室は調査ができるわけでございます。また、その行政指導の前提となるという意味での調査も同様でございます。
  101. 網岡雄

    網岡委員 それは、この法律によると何条の項目によってやられることになりますか。何条の規定によって調査をされるということになりますか。まずその点だけ聞きましょう。
  102. 赤松良子

    ○赤松政府委員 ただいまの調査の問題が、もし一般的な行政指導の根拠としてお尋ねでございますならば、三十三条がそれに当たるように私どもは理解しております。  三十三条をごらんいただきますと、「労働大臣は、この法律の施行に関し必要があると認めるときは、事業主に対して、報告を求め、又は助言、指導若しくは勧告をすることができる。」とございまして、二項に「前項に定める労働大臣の権限は、労働省令で定めるところにより、その一部を都道府県婦人少年室長に委任することができる。」というふうに規定がございます。
  103. 網岡雄

    網岡委員 三十三条に根拠を持ちながら調査をする、こういうお答えでございますが、これは職権による調査、つまり一般的な労働行政全般としての調査ということがこの三十三条の調査の趣旨だと思うのでございます。  婦人少年室が調停の前段の行為としてやられる調査というものは事実調査でありますし、したがって個別の調査ということになるわけでございますね。そうなりますと、三十三条の調査ということが即婦人少年室の調査に有効に、働くものであるかどうか、私はちょっと疑問を持つわけでございますが、その効果についてはどうでしょうか。
  104. 赤松良子

    ○赤松政府委員 三十三条の規定は、ただいま申し上げましたように、行政指導一般の根拠になる規定として引用したわけでございまして、先生のただいま最後の御質問の、個別の問題についての根拠規定ではございません。
  105. 網岡雄

    網岡委員 そうなりますと、調停の前段行為としての婦人少年室の調査というものは、個別の部分でございますから、例えば使用者側の配置、退職、いろいろな部門の差別行為があったものを実証していくための調査をするといたしますと、これはかなり綿密な調査というものが必要だと思うのでございますが、そういう場合に、婦人少年室は一体法律的にどこに根拠を持ちながら、どの程度の調査をされようとしていますか。
  106. 赤松良子

    ○赤松政府委員 調査についての具体的な根拠法令はございませんが、十四条で、その解決につき援助を求められた場合に、必要な助言、指導、勧告をすることができるということの論理的な前提として、調査はできるというふうに思っております。
  107. 網岡雄

    網岡委員 赤松局長、一つお尋ねをいたしますが、七月三日のときの塚田委員の御質問に答えられまして、労働省婦人少年室としての調査の権限というものは、立入調査から始まって、帳簿その他の提出を求めるぐらいの強い権限を持たないと、こういう事実にわたる個別の調査には耐えられないのではないか、こういう趣旨の御質問がありました際に、局長の御答弁は、その行う任務が行政指導ということでございまして、その根拠もこの法律にあるような程度のものでございます、立入調査権その他非常に強い権限、例えば労働基準監督官が持っているような権限を与えることは、あるいは事柄の性質から均衡をやや損なうものではないでしょうかという御答弁をなさっておりますが、この答弁の趣旨に今も変わりございませんか。
  108. 赤松良子

    ○赤松政府委員 七月三日の塚田先生の御質問に対して、そのようにお答えしたというふうに記憶いたしております。
  109. 網岡雄

    網岡委員 そこで、私は一つお尋ねをいたしますけれども、問題は、結論的に言うと、労働省がやる気があるかないかということにかかっていると思います。そして、雇用における差別というものが女性の労働における基本的人権だ、こういう視点でとらえているかどうかということの労働省の姿勢にかかってくると思うのでございますが、もしやろうとするならば、例えば現行法規でも私は十分参考になる事例というものはあると思うのです。同じ日に局長は、後で御質問しますけれども、調停を持ち込んだ女性労働者が使用者側から不利益な処分を受けたときの救済措置をする必要があるのではないか、こういう問いに対して局長は、罰則を伴うようなそういう規定でないと、こういう不利益処分の救済をするような措置は、他の法令から見ましても難しいのだ、こういう趣旨の御答弁をなさっておりますね。私はこの考え方は、さっきの点とも一致していると思いますからひとつ申し上げたいと思いますが、不利益処分の問題については罰則規定がなくたってちゃんとやれるじゃないですか。例えば労働省の範疇にある労働組合法の規定によりますと、これは直罰規定は一つもない。そういう状況の中で、不利益処分について不当労働行為の一つだとして、使用者側にやってはいけないという規定になっているわけでございます。だとするならば、同じ婦人の雇用における機会均等を図っていく法律案でございますから、それを訴えたことによって女性の労働者が使用者側から不利益を受けるというならば−強制規定は幾つかあるのですよ、あるとするならば、そういう規定に基づいて申告なり申し立てをしたその女性労働者が、職場において不利益を受けるという場合における救済措置というものは、法律を作成していく場合のこれは最低条件です。これすらも行政指導でやっていくというのは、もうまさにこの法律はざるもざる、大ざるだ、こういうことが端的に言えると私は思うのでございます。同じ論法で、さっきの婦人少年室の訴えに対する調査についても、立入調査や関係書類を提出させるという義務を負わせるような規定にするということは、例えば労働組合法の中でもちゃんと二十二条に「強制権限」の中で示されています。また、公害法の中でいきますと公害処理調停委員会というものがある。紛争法の中に調停委員会の設立の問題がございますけれども、これでも、同じ単なる義務規定ですよ、最初の出発点は。そういうものであっても、それを受けて、公害の必要性というものを考えた政府がどういうことをやっているかというと、三十三条で調停委員会は立入調査権から関係文書の提出というものまで義務づけているわけですよ、そういう規定になっているわけです。局長は、私が知る限りにおいての法文を見ますとそういうものはないと言いますけれども、私どもが調べていくとちゃんと載っているのです。やれるはずなんです。別に清水寺の舞台から飛びおりるような気持ちにならなくても、現行法規を横にながめながら、やろうと思えばやれる、そういう代物だということなんですよ。どうですか。
  110. 赤松良子

    ○赤松政府委員 ただいま不当労働行為の条文の関係でやれるのではないかということですが、私か七月三日に御答弁したこと、他の法令の中ではもう少し強い規定になっているというふうに申し上げたこととの関連かと存じますが、ただいま御指摘の労働組合法七条の規定は、一号で規定してあることは労働委員会、つまり三条機関が出す命令でございまして、それを担保するためにつくってある取り締まり規定だというふうに考えられますので、必ずしもこの機会均等法と同じ程度のものだというふうには理解いたしておりません。
  111. 網岡雄

    網岡委員 そういうことをおっしゃると思っていました。しかし、局長、三条機関といえども立派な行政機関ですよ。そして婦人少年室も行政機関なのですよ。質や内容や行政の機構からいけは、全く同じ法律的根拠のあるもの、三条機関であるという違いはあるかもしれませんが、同じ行政機関の行政行為なのですよ。片一方はそういうふうにやっているという点から見れば、これは局長、これだけの法律を出すとするならば、先ほど言いましたように、婦人少年室の事前調査といいますか行政指導の根拠とするための調査というものは、非常に重要な中身を持っているのです。であったとするならば、先ほど言いましたように立入調査権あるいは書類の提出といったような強制権を持たなければやれないじゃないですか。これは局長、あなたは勧告するわけでしょう。勧告をやろうと思ったときにどう書くのですか。これはひっくり返されますよ、あやふやな内容だったら。だって、労基法のように罰則の規定があるのに、さっき局長が言ったように、それでも解釈の違いがあって企業は「うん」と言わないのでしょう。だとするならば、こんなお粗末な調査の内容をもって、だれが見ても明らかな差別が出たということがあった場合に、それを勧告をしたとするならば、裁判に持っていったときにその勧告はひっくり返されますよ。出すとするならば、どこへ行っても通るような内容のものを出さなければならない。そうだとするならば、その前提となる調査というものはちゃんと権限を持ってやるというくらいのことをやらなければだめですよ。これは婦人少年室あるいは調停機関のどっちかになければならない。どっちかというより両方ともなければならないですよ。
  112. 赤松良子

    ○赤松政府委員 裁判へ行ってどのくらい強いかということになりますと、いろいろ例があるかと思いますが、例えば労働委員会の命令でも、裁判に行って覆されるということは幾らもあるように私は承知いたしております。そのことと、迅速な救済あるいは効果的な勧告、あるいは助言、指導というものとはある場合には相矛盾するのではないかと思います。大変証拠能力の強いものをつくろうと思えば時間がかかりますし、迅速にしようと思えば証拠能力という点では多少弱い、そのような矛盾はいつの場合にもあるのではないかと思います。
  113. 網岡雄

    網岡委員 ちょっと御答弁が私、理解ができないわけでございますが、おっしゃったように矛盾を持った調査ということで勧告をやったとするならば、それは勧告自体がこたえられるような勧告にはならないのじゃないですか。だから、何遍も申し上げますけれども、その勧告をする場合に必要な調査というのは、やはり労働基準法の定めにもありますような、関係の部分でいけば、百条の二の中では少年あるいは婦人についてはちゃんと調査する権限をお持ちになっていますけれども、こういうような内容のものにするということはそんなに問題のあることではない。現に例があるわけでございますからやれるはずだと思いますが、なぜそれをやらないのでしょうか、その理由をお聞かせください。
  114. 野崎和昭

    ○野崎説明員 労働基準法の関係の面について御説明申し上げたいと思います。御承知のとおり、労働基準法は違反に対しては刑事罰を科せられることになっておりまして、当然刑事訴訟になるわけでございます。そういうものでございますので、労働基準法違反につきましては、御指摘のとおり非常に強い調査権が与えられております。今回の均等法の関係につきましては、先生御指摘のとおり、行政庁の行う行為は指導、勧告でございます。したがいまして、指導、勧告それ自体が裁判で争われるということは通常ないわけでございますし、またそういうものに伴う調査権でございますので、労働基準法の調査権とはおのずから程度が違うということは当然あり得ることであると思っております。
  115. 網岡雄

    網岡委員 それはあなたは、実際を知りながら答弁をなさっておりますよ。これは大体、婦人少年室が勧告をしても、聞く企業というのはそんなにあるものじゃないと私は思うのですよ。それを、使用者側が拒否をしたら次の調停機関に移る、そして次の調停委係員会に移ったときに、申立人と使用者側と会ったときに、申立人は異議がありますから行くでしょう、しかし、使用者側はやる気がなければ、私は御免だ、パスだ、こう言ったら、調停委員会は成立しないわけです。開店休業ですよ。冬眠しちゃうのですよ。そうなったならば、申立人は権利の行使として何をやるのですか。裁判ですよ。裁判になったときに何の担保もない。こういう均等法をつくるならつくらない方がいいですよ。こんな大騒ぎをして、何のために均等法をつくるのですか。  江田委員の質問に答えて、赤松さん、あなたが婦人差別撤廃の条約に政府の代表として署名されにときのあの感動をと御答弁になったのを、この同じ議事録で読ませていただきました。この答弁は赤松局長の本音が出ている部分だなと思って、私もある意味では一種の感動を覚えながら見たのでございますが、それほどのことを感じながらおつくりになった法律にしては、これは余りにもお粗末であり、余りにも効力がありませんよ。
  116. 赤松良子

    ○赤松政府委員 午前中に中島参考人からのお話にもございましたように、裁判というものは個別のケースについて争われるわけでございましょう。行政指導はもっと広く一般にされるものでございます。したがいまして、裁判でどの程度の効力があるかということにつきましては、先ほどの監督課長の御答弁のように、勧告は裁判上の効力という点ではあるいは非常に弱いかもしれません。裁判のことだけを考えてこの法律をつくっているわけではございません。
  117. 網岡雄

    網岡委員 それでは調停委員会の問題に移りましょう。また少年室に戻るかもわかりませんが。それでは、調停委員会まで行くならば、これは行政の立場からいけば最後の段階になるわけですよ。そのときに、ここの委員会もまた調査の権限は一つもないのです。そうでしょう。私、法令を見ましたけれども、調停委員会なり労働委員会なり何々委員会という紛争解決のための委員会を持つということにした場合の法律は、労働大臣、通常は立入調査から始まって、関係書類の提出を求めるという規定があるのが普通なんですよ。ところが、不思議にこの調停委員会だけは何にも持っていないのです。前段の婦人少年室の調査も三十三条だけなんです。三十三条だけがとりでです。ないよりはいいのですが、それがとりでだ。これでは今議論やったとおりで効果がない。そして調停委員会へ来た。来たところで、調停委員会は訴える内容を聞いて、一つの受諾調停案を出すに当たっての根拠となるべき調停案をつくるための調査内容、調査事実、こういうものを踏まえる権限がこの委員会にもないのですよ。だとするならば、中立人に対する基本的な労働権を保障するという立場に立つ調停委員会、あるいは婦人少年室の行政指導というものは一体どんなものなんですか。
  118. 赤松良子

    ○赤松政府委員 調停委員会の権限についてでございますが、調停委員会はその性質上、当事者の合意、当事者の互いの譲り合いというようなものに基づいて紛争の解決をしようと図るものでございますので、ただいま先生が御指摘のような、強い権限を持っている同種の委員会があるのではないかという御示唆がございましたが、他の委員会は、名前が委員会という名前ではございますが、その内容をもう少しつぶさに検討いたしますと別の権限を持っているわけでございまして、この調停委員会と直ちに比較するということは困難かと思います。
  119. 網岡雄

    網岡委員 どうも私の質問には答えていないように思いますけれども、例えば公害紛争処理法の第三十二条、文書の提出、これはまさに公害紛争調停委員会です。大臣、これは今局長が御答弁になったとおりですよ、調停ですから。お互いに「うん」と言わなければいかぬよという委員会なんです。その委員会であるにもかかわらず、この公害処理法の調停委員会では、ちゃんと文書の提出から全部義務づけているのです。後で三十三条を読んでください。であるにもかかわらず、婦人の雇用におけるいろいろなステージというものは、これは何遍もくどいように言いますが、人間の尊厳から始まって婦人労働者の基本的な人権を守るためのとりでとしての調停委員会としては、余りにもお粗末じゃないですか。どうですか。
  120. 赤松良子

    ○赤松政府委員 重ねて申し上げて恐縮でございますが、ただいまの公害調停委員会は三条機関でございまして、調停以外に仲裁あるいは裁定という調停以外の強い権限を持った委員会でございますので、「調停」という名前だけで均等法の調停委員会と同列に並べるというのもあるいは適当ではないのではないかと存じます。
  121. 網岡雄

    網岡委員 それじゃ局長がおっしゃるように、三条機関の委員会というものをつくったらいいじゃないですか。そういう法律に直したらいいじゃないですか。なぜこんな不十分な、今議論をやってきてもう明らかになったことですが、採用と募集は義務規定だ、裁判をやったら強行規定の場合は何らかの担保になりますが、義務規定の場合には、ゼロとは言いませんけれども、ほとんど担保にならないということで、これはまず一つマイナスを負うわけですよ、女性労働者は。そして次に、今度は婦人少年室へ行って訴える。ところが、ここでも調査の権限は少なくて、十分にこたえることができない。それでも曲がりなりにも調停案をつくってもらったけれども、使用者は拒否をした。だとすると、今度はどこへ行くかといったら、今度は調停委員会。調停委員会へ行っても満足な調査はできない。結局満足な処置が一つも、入り口から始まってしまいまで全部できないじゃないですか。これで婦人の差別を撤廃する条約の批准にこたえる国内法と言えるでしょうか。
  122. 赤松良子

    ○赤松政府委員 この法律の募集、採用、配置、昇進というようなところにつきましての解決の方法は、非常に強い権限で強制的に迫るということではなくて、自主的な解決、行政指導あるいは調停といういわばソフトな形での解決を図ろうとしているところに特徴があるわけでございまして、三条機関をつくってやるという方法は、先生の御指摘のように選択肢としてはあり得ると存じますが、あえてそのような方法をとらないという選択をしたわけでございます。
  123. 網岡雄

    網岡委員 もう時間も来ましたから、私は最後に一言申し上げて質問を終わりたいと思いますが、問題があるとはいえ、私は婦人少年室の業務というものは非常に重要だと思います。この間の審議の中でも明らかでございますが、全国で百六十八名、各県に直して四名ということでございまして、これでは私は、ただでさえ問題のある内容を持った権限しか持っていないところで、実際はその婦人少年室の職員というのは非常に苦労なさると思うのでございます。したがって、十分な行政効果を上げるようにするためには、婦人少年室の拡充強化というものが必要であると思うのでございますが、この点について労働大臣の所見を賜りたいと思いますし、最後にもう一つ労働大臣にお尋ねをいたしたいのでございますが、お聞きをいただいたように、この法律の内容は非常にソフトな問題でございます。ソフトということが即、婦人の基本的な人権、労働権というものを守るにふさわしい法律になっているかどうかということは疑わしいわけでございます。  そこで大臣にお尋ねしますけれども、一つ、この法案を撤回するお気持ちはないか。二つ目は、この際大幅な修正を行うことによって、例えば私どもは四党提案をいたしておりますが、そういうものを十分踏まえながら修正をされるという用意があるか。あるいは第三点に、この法案で今後やっていく場合に、不十分だということはほぼお認めになっていると思うのでございますが、それらの点について、労働大臣として今後一体どういう腹づもり、所信でやっていかれるかという点について御答弁をいただきたいと思います。
  124. 坂本三十次

    ○坂本国務大臣 この法律ができますれば、この婦人少年室の仕事というものは、あなたのおっしゃるとおり大変な責務を負うことになります。労働省としては、この婦人少年室が質的にもあるいはまた量的にも充実をして、期待にこたえていくように努力をいたしたいと思っております。  この法律撤回しろとか大幅修正しろとかおっしゃいますが、私どもは、現段階で、この法律がベター中のベストであると思って出したわけであります。ですから、今出したところを撤回をするというつもりはございません。  とにかく、私がいつも申し上げておりまするように、法律というものは、やはり長い間の慣行というか日本の雇用の現実というか、そういうものも踏まえて、足が地についてスタートをしなければならぬものだと思います。ただし、将来の目標、あるべき姿というものは、もちろん差別の撤廃という大きな目標があります、そこへ至る道は決して短いものではない、一直線な簡単なものではない、私はこう思っておりますので、私どもの今のこの案が一番いいとは思います。しかし、これを全力を挙げて実行することによって、そのうちに、人間のやることであります、そしてまた企業の考え方も変わってくるでしょう、あるいはまた女性自身の意欲も、自覚も、能力も高まってくるかも…(「くるかもわからぬじゃないか」と呼ぶ者あり)くるとも思います。いや、くるという期待をしておるわけだ。そういうことになれば、法案自体についても、また法案を離れましても、これからの運営次第によりましてまたいろいろな知恵が出てくるかもしれないと思います。それは努力をいたさなければならぬが、今はとにかく、我々の理想の山が見えるのだからそこヘスタートを切らせてもらいたい、着実に一歩一歩、スロー・パット・ステディーでお願いをしたい、私どもはこれが現在のとり得るところで一番いいのではないかと思っております。
  125. 有馬元治

  126. 土井たか子

    ○土井委員 私は、質問に入ります前に、一つはっきり確認をしておきたいと思うので、まず外務省の方にお尋ねしたいと思います。  女子差別撤廃条約は来年批准をするということを、国会で幾たびか答弁をされ、閣議決定があるというのは日本の国内の問題なんです。さて、国際会議がたくさんある中に、ことしの二月ですが、国連婦人の地位委員会がございました席に、縫田さんが日本の政府代表という立場でお出になったのですが、この女子差別撤廃条約、これは外務省は正式に女子差別撤廃条約というふうに訳をしておられると私は思いますが、この条約の批准方に対してどのような意思表明をされたのか、お聞かせいただきたいと思います。
  127. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 お答え申し上げます。  先生がおっしゃった、ことしの二月にウィーンで開かれました国連の婦人の地位委員会で、日本の代表の縫田さんが、昭和六十年までにこの条約を批准したい、こういうことを代表演説で述べております。
  128. 土井たか子

    ○土井委員 そういう国際会議の場で、代表演説で日本の政府の意思として表明すれば、これは国際的な宣言ということになりはしませんか。いかがです。
  129. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 日本の政府の意思というものを述べたわけでございます。
  130. 土井たか子

    ○土井委員 つまり、日本の意思をそういう国際機関の会議において述べだということは、国際的に宣言したことでしょう。そうですね。もう一度言ってください。
  131. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 そのとおりでございます。
  132. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、日本としてはこの条約を宣言したとおりに行わなかった場合にはどういうふうになりますか。
  133. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 条約の批准にはもちろん先生御承知のとおり国会の承認が要るわけでございまして、日本の政府の代表としてこの条約を批准したいと申したわけでございますから、万が一そういうことになれば国際的には非常に困ることになるので、この条約を国会に御提出します際にはぜひよろしくお願いしたい、こう思っております。
  134. 土井たか子

    ○土井委員 ここは外務委員会の陳情を受ける場所でもあるまいと私は思うのですが、しかし、そういう条約を国会に提出されるのには国内的措置の手順が要るんでしょう。国内的措置が条約にかなう状況になっていなければ、幾らじだんだ踏んだって、国会承認を得るの件といって提出することはできないはずじゃないですか。国内措置としていかがなんですか。  これを考えていくのは、まず条約に対しての解釈というのを正確にする、これは非常に大事な問題。と同時に、国際的に考えられている水準、国際的に考えられている慣行、国際的に問題になっているこれに関連する条約、そういうものを度外視して国内措置というのをとることはできなかろうと私は思うのですが、いかがですか、外務省。
  135. 斉藤邦彦

    ○斉藤説明員 一般論として申し上げますけれども、ある条約を批准したいというときには、日本政府の今までのやり方というのは、加入した以上は、その条約を一〇〇%誠実に実行できるような国内体制を整えてから批准するという方針で処理してきております。
  136. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、もう私は繰り返しの質問をいたしませんけれども、国際的な水準とか国際的ないろいろな流れ、慣行、これに関係する条約、そういうもの等も、今おっしゃったように、加盟した以上は日本としては内容を十分に恥ずかしくないことにしていくためには、決してそういう国際的な諸条件は度外視はできない、それははっきり言えることだと思いますが、遠藤さんどうですか。下を向いておられるけれども、あなたの方からこれについてはっきり言ってみてください。
  137. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 お答え申し上げます。  度外視することはもちろんできないわけでございますし、しかしながら、やはりこの条約自身について考えることがまず第一義ではないか、こう思っております。
  138. 土井たか子

    ○土井委員 条約について考えることがまず第一で、それは条約についての正しい解釈ということをどうするかというのは一にも二にも大変大切であることは言うまでもありませんが、しかし、そのことを日本の国内措置として認めていく場合には、今申し上げた国際水準がどうなっているか、国際的な平均値がどうなっているか等そういう問題について、国際的な慣行がどのようになっているか、他の条約がどのようになっているか、これも非常に大事な問題だと思うのです。そういうことを度外視するわけにはいかない、まずそういうふうに思います。ふん、ふんて首ばっかり振らないで、一回「はい」と言ってください。それから先へ行きましょう。
  139. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 先ほど申しましたように、確かにそれは一つの参考になるわけでございますし、決して度外視するわけにはいかないと思っております。
  140. 土井たか子

    ○土井委員 さて、これもまた外務省にお尋ねを進めますけれども、ILOの一九八三年労働統計年鑑によるところの「男女のちん金格差」に対しての報告が先日出ております。この中で、八二年に至るまでの十年間で、男女の賃金格差がずっと縮まってきたという国はどこどこでございますか、ちょっと教えていただきたい。
  141. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 今先生がおっしゃったのは、ことしの四月に出たものだと思いますけれども、ILOのパンフレットでございます。これは十カ国ないし物によっては十数カ国調査したわけでございますけれども、大抵の国が賃金格差が縮まっておりますが、むしろ広がった国として幾つかの国が挙がっております。
  142. 土井たか子

    ○土井委員 どこどこということが全く聞こえてこないのです。遠藤さん、それじゃそれを見てもう一度言ってみてください。大抵の国は賃金格差が縮まったとおっしゃったのだけれども、それは確かにそうなんです。
  143. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 これは非農業分野でございますけれども、縮まった国は、オーストラリア、ベルギー、チェコスロバキア、デンマーク、フランス、西ドイツ、オランダ、スイス、イギリスでございます。
  144. 土井たか子

    ○土井委員 それでは、この中で、賃金格差が広がった国はどこなんですか。
  145. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 非農業分野でございますけれども、七三年から八二年までに縮まった国は日本だけでございます。
  146. 土井たか子

    ○土井委員 今の答弁は間違いです。
  147. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 間違えました。広がりました国は日本だけでございます。
  148. 土井たか子

    ○土井委員 広がった国は唯一日本だけとこれに書いてありますね。これは非常に恥ずかしい話です。これに対しては、日本というのは、経済大国にあるまじき粗末な認識であるとか、改善の要があるというふうな指摘さえされています。  これは労働省に聞きますけれども、なぜこういうことが広がってきたのですか。理由はいろいろ言われると思うのですけれども男女の賃金格差が広がったということの最も大きな理由を一つだけ言ってください。
  149. 赤松良子

    ○赤松政府委員 いろいろ申し上げると時間がかかると存じますので、たくさんございますが一つ申し上げますと、パートタイマーがふえているということを申し上げられるのではないかと思います。
  150. 土井たか子

    ○土井委員 パートタイマーがふえている、そういう表現もあろうかと思いますが、なぜ格差が広がったかという理由について、労働省自身がお出しになっている資料にちゃんと書いてあるのですから、それに従ってもう一度お答え願います。もう待ってはおられない。  「労働経済の分析」、「婦人労働の実情」、この二つの労働省がお出しになっているものを見ますと、男女間で賃金の格差があることに対する理由の最たるものとして、「配置職種が異なっていたり、女子には昇進機会が与えられないなど、雇用管理に男女間で差がある」からこうなるということがちゃんと出ているのです。そして、その中に両方ともグラフが出ているわけですけれども、どういうぐあいになっているかというと、昭和五十六年の指数しか出ておりませんが、「女子を全く配置していない仕事がある」という企業が何と一〇〇のうちの八三・回もあるのですね。そうして教育訓練については、「女子にも受けさせるが教育訓練の内容は男子と異なる」というのが三九・三となっているのです。「女子には受けさせない」、これが二〇・七もあるのですね。  なぜこういうことになるかというのをほかの表で見てまいりますと、「女子の補助的業務の性格から無理」である、こう言っているのです。これが賃金差の最たるものだというのは、グラフの上でも断トツで出ているのですよ。女性は補助的業務である、こう表の上では出ているのですが、こういう表をお出しになっている労働省、このとおりなんですね。どうですか。
  151. 赤松良子

    ○赤松政府委員 御指摘の点は、私どもの分析でもございますので、そういう面があるということはおっしゃるとおりだと思います。
  152. 土井たか子

    ○土井委員 ここでついでながら申し上げておきますけれども、昇進機会については「女子には法制上の制約があるので無理」であるという指数は最も低いですよ。だから、母性保護があるから女性には昇進の機会がないんだとか、昇格の機会がないんだとかいうのは理由にならない、これはまず申し上げておきましょう。  それで遠藤さん、そうなってまいりますと、こういう恥ずかしい状況は許せないと思うのです。何らかの具体的な努力を日本としてはしなければならない。外務省は国際機関に対しては日本の窓口ですから、ILOに対してもどういうふうにしていかなければならないかという御認識をお持ちだろうと思うのです。どうお思いになりますか。
  153. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 ILOにおきましては、ILO第百号条約、同一報酬に関する条約というのがございますけれども、これは日本は既に批准登録をしております。これの第二条には、同一価値労働に対する同一報酬云々ということが書いてございますけれども、そういうことを踏まえまして、なぜ賃金格差があり、それが開いていっているかという事情は、先ほどの労働省の御説明のとおりだと思いますけれども、私どもとしましては、今申し上げた第百号条約の趣旨に沿って物事が処理されることを希望いたしております。
  154. 土井たか子

    ○土井委員 希望いたしておりますと答弁だけで言ったって、外務省としては、希望するということを政府内でもきちっとしかるべき担当省に言って、その努力方を迫らないとだめなんです。希望ばかりしていてはだめなんです。やはり努力しないとだめだろうと思います。  それで、雇用の上からいうと、女性に対しては昇格昇進ということがなかなかない。なぜかといったら補助的労働であるから。したがって賃金の格差というのが日本ではある。このことは労働省が出していらっしゃる資料を見たら一目瞭然、グラフにまでなって出ている。これは指数を挙げればもっともっと言えますけれども、はしょります。だけれども、そういうことが出ているので、教育訓練のことについてまずお尋ねしたいのです。  教育訓練というのは、先ほど網岡議員が、募集、採用の問題について非常にきめ細かに突っ込んだ質問をしてくださいました。入社前の研修なんかを見てみますと、募集、採用ということにも関係するのですけれども、同じように大学卒を事務職として採用していて、男性には技術研修を一カ月、女性に対してはお茶くみ、電話、歩き方についてだけ一週間、こういう入社前の研修がある会社がございます。そこでもう既に差別が始まってしまっている。事務職として同じように採用しておいて、そういう研修について男女差がちゃんとそこに初めにあるのです。初めは男女ともに研修をしたといたしましても、その後に差がどんどんいろいろなところで出てくるのです。そういう実態について労働省としては調べた上でないと、今度このような法案はつくれないと思うのですけれども、十分お調べでしょうね、いかがですか。
  155. 赤松良子

    ○赤松政府委員 お答えいたします。  訓練について調査があるかという御質問でございますが、「女子労働者の雇用管理に関する調査」という調査を婦人少年局はいたしております。その調査は、本年だけではなくて、雇用管理のいろいろなステージについての男女異なる取り扱いということで調査をしているわけでございますが、その中に教育訓練についての項目がございまして、採用時にどういう訓練をするか、あるいは入った段階でどういう訓練をするかというようないろいろな項目について、男女、別な取り扱いが訓練の場合においても行われているということを把握いたしております。
  156. 土井たか子

    ○土井委員 はしなくも御答弁してくださいましたから、そうすると、今の御答弁からすると、端的に言えることは、配置、昇進については努力義務で、そうして各ステージの教育訓練については禁止規定を幾ら法律で設けても意味がないということになるのですね。そういうことに相なると思いますが、いかがですか。
  157. 赤松良子

    ○赤松政府委員 今の答弁は、昇進昇格においての差別がどのような分布であるかということも調べておりますし、また教育訓練についても差別というか、男女違った教育訓練の仕方をしているということがある、そういう調査をし、そのような項目が調査報告書には書かれているということを申し上げただけでございます。
  158. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると局長、募集、採用、配置、昇進というのが単なる努力義務であって、今の教育訓練の機会だけを差別を禁止するという禁止規定にしているというのは、どういう意味がありますか。これは幾ら教育訓練の差別を禁止するという禁止規定にいたしましても、肝心かなめの募集、採用、配置、昇進のところがすっぽ抜けていたのじゃどうにもならない問題です、そこで問題が決まってしまうのですから。それに見合う教育訓練をすればよい、こうなってしまうでしょう。
  159. 赤松良子

    ○赤松政府委員 審議会におきましても、いろいろな御討議の中で、雇用の全ステージについて法律の対象とするべきであるということについて御見解があったわけでございますが、そのステージのそれぞれについて、どういう強さの規制の仕方をするかということについて、労使大変大きな対立がございました。そして、もちろん使用者側からは、すべてのステージについて強行規定は反対である、このような御見解があったわけでございます。また労働者側からは、すべてのステージについて強行規定にすべきであるという御見解でございました。そこで、強行規定にでるきところはどこであろうかということをいろいろ考えたわけでございますが、また強行規定にすることの効果という意味合いというものもいろいろと考えた次第でございますが、教育訓練につきましては、女子労働者の能力を高めるという点について非常に大きな意味があり、そのことが結果として職場における男女の差別を少なくしていくということについて大きな効果があるというふうに考えましたので、このようにしたわけでございます。
  160. 土井たか子

    ○土井委員 いろいろ御説明を承っていたら何だか筋道が外れるような御答弁になってくるので、それじゃ具体的に聞きますが、教育訓練を行う主体が、今回の法案を見ますと事業主となっているのです。労基法では使用者ということになっているのですが、使用者と事用主は違うのですか、同じように考えていいのですか。いかがですか。
  161. 赤松良子

    ○赤松政府委員 労働基準法上「使用者」という言葉を使っているのは先生御指摘のとおりでございます。法律によって「事業主」という言葉を使っているものもいろいろとございまして、ただいま御審議中のもの、この前身といいますか、改正をいたしましたが、勤労婦人福祉法も前から「事業主」という言葉を使っていたわけでございますが、班業主の方がやや狭い概念で、使用者の方は事業主プラスアルファということでございます。  基準法の中でどうして「使用者」という言葉を使ったかと申しますと、基準法が罰則規定がついており、しかも両罰規定ということになっておりまして、事業主とその意を体して実際に行為をした者両方を罰する必要上「使用者」という言葉を使ったというふうに理解しております。
  162. 土井たか子

    ○土井委員 今の労基法については罪刑法定主義の立場でそういう説明をされるのでしょうが、今御答弁のとおりだとすると、今回「使用者」に比べて概念の狭い「事業主」と本法案ではしているという意味は、罪刑法定主義を理由にして云々するのはちょっと的外れだと思うのです。これは全然違う範疇の問題だと私は考えております。  それで、そういうこともおっしゃるであろうと思いますから、私は具体的に申し上げましょう。  銀行の例を挙げます。入ったときには同じ研修を受ける、ところがその後、男性の方は、独身寮に入っている人たちをある課長、係長が主宰をして勉強会、研修会を行う、それは自主的ではなく、むしろ会社のためを考えての研修、学習であるということは言うまでもないのですが、いろいろ当たってみますと、女性の場合はそういう機会に恵まれないのが非常に出てきているのです。そうすると、この「事業主」の範囲をどう考えるか。会社の行為として行う部課長クラスの事業行為も含まれるのかどうか。そういうことは「事業主」ということを考える場合に非常に大きなウエートを持ってくるのです。大抵、会社の社長が出てきて研修会をやりますということにはならないのです。係長がやるとか課長がやるとかというふうな仕組みが世の中の大半であります。そういうことからすると「事業主」の範囲を「使用者」よりも狭く考えることによって、先ほどからおっしゃっている、各ステージの教育訓練の差別禁止規定というものについて考えていくことの意味がすっぽ抜けるのじゃないですか。いかがです。
  163. 野崎和昭

    ○野崎説明員 労働基準法の関係がございますので、若干概念を明らかにさしていただきたいと思いますが、労働基準法の「使用者」の定義の中にも、先生御承知のとおり「事業主」及び「事業主のために行為をするすべての者」を「使用者」と概念づけているわけでございます。そこで言う「事業主」というのは、法人でございましたら法人そのものでございますし、個人経営でございましたら個人の経営者のことでございます。そして、労働基準法の場合には、先生御指摘のとおり刑罰の対象になりますので、これは原則として個人罰でございます。したがって、行為者を処罰するということを罪刑法定主義の関係で明確にするために、事業主と事業主のために行為する者両方を「使用者」としてとらえているわけでございます。  今回の均等法の関係の「事業主」というのは、基準法の「事業主」と同じでございますけれども、ある従業員が均等法で禁止されている行為を行った場合に、それが事業主の行為と見られるかどうかは、それが経営組織の中で、経営管理活動の一環として行われれば、それは同じく事業主の行為であるということになると思います。
  164. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、その範囲というのは別に「事業主」ということと「使用者」ということと変わらないじゃないですか、今の御答弁どおりに考えれば。範囲としたら非常に広いものを意識して、その上で考えないと今のような御答弁は出てきませんよ、「事業主」に対して。いかがです。何でわざわざ狭い、狭いと「事業主」に対して言う必要があるのですか。狭いというのは作為的だとしか言いようがない。今の御答弁に対してはそうとしか思いようがないですよ。今の御答弁を聞いていると、労基法に言うところの「使用者」に対する概念は十条でちゃんと書いてあります、それと今度の「事業主」というのは余り変わらないなという認識を今持ちました。そう考えていいですね。
  165. 野崎和昭

    ○野崎説明員 「事業主」という言葉自体は非常に限られた概念でございます。それは先ほど申し上げたとおりでございます。しかし、事業主は何々してはならないと均等法にある場合に、例えば人事部の業務の一環として人事部の担当者がある研修を行った、それは「事業主」の行為になるということでございます。
  166. 土井たか子

    ○土井委員 どうもわかりにくいことをくどくとおっしゃるが、結局結論とすれば、事業主の行為になるという範囲はしたがって広いですよ、そういうことをおっしゃれば。だから、「事業主」と今の労基法に言うところの「使用者」とはむしろ変わらない。取り扱い方からすればこれはそうなってしまいますがね。いずれにしろこの「事業主」という範囲は非常に広い範囲である。むしろ「使用者」よりも、労基法十条に言うあの概念よりも広く考えるということすら考えられるような向きの今の御答弁ですから、そのとおりに受けとめておきますが、よろしいですね。(「労働安全衛生規則では事業者だ」と呼ぶ者あり)
  167. 野崎和昭

    ○野崎説明員 法律の性質が違いますので、労働基準法の「使用者」の行為と、それから均等法で言う「事業主」の行為と全く同じ範囲になるとは言い切れないと思いますけれども、それほど大きく違うとは思っておりません。
  168. 土井たか子

    ○土井委員 大体、今の御答弁は、いろいろとためになすっているような雰囲気が非常に出てきているのですが、いずれにしろ「事業主」というのは広く考えないとこの趣旨に合わないということだけははっきり言えると思うのですが、これはそのとおりに考えてよろしいね。首ばかり振らないで、「はい、そのとおり」とおっしゃってください。
  169. 野崎和昭

    ○野崎説明員 おおよそそのとおりに考えて差し支えないと思います。
  170. 土井たか子

    ○土井委員 おおよそというのは気に入らないですね。どうしてきっぱりできないのかしら。そういう修飾語は不要ですよ。やはり端的に答えていただかないと混乱のもと。そういうことをおやりになるからいたずらに時間を費やすばかりで、内容に対しては不信の念が募る一方に、なってしまう。これはっきりしてください。  なぜかというと、いろいろな実態を調べていくと、昇進するために必要な教育訓練というのは、ある一定の人数があったら大体は男性から始まっていって、余ったら女性にと考えるというようなところが、それでもせいぜい一番進歩しているところですわ。大体は、エリート訓練といいますか、昇進のために必要な教育訓練というので男性のみに限るという会社が多い、企業が多い、事業者が多いということをひとつ念頭に置いておいてください。そういう中での「教育訓練」ですから、「事業主」という範囲を非常に広く考えていただかないと。これは非常に大事なところだと思いますよ。
  171. 野崎和昭

    ○野崎説明員 決してためにするために言葉をいろいろ使い分けているわけではございませんで、労働基準法と申しますのは、御承知のとおり処罰の対象になるわけでございます。そこで言う「事業主のために行為をする者」というのは、例えば第三者等が事業主のために行為をするような場合も対象になるとか、こちらの方はそういったいろいろと難しい問題があるわけでございます。  それから、ただいま安全衛生法は「事業者」だというお話がございましたけれども、安全衛生法は御指摘のとおり「事業者」でございますが、これは「事業主」と同じ意味でございます。ただし、それでは行為者が処罰されないではないかということになるのでございますけれども、最後のところに両罰規定がございまして、その規定で逆に今度は行為者が処罰されるという形になっております。  そういうことでございまして、大筋、範囲は異ならないということは申し上げられると思いますけれども、全く同じかと問われますと、必ずしも全く同じとは言えないということだと思います。
  172. 土井たか子

    ○土井委員 両罰規定であるとか罪刑法定主義という立場からすれば、本法案については範疇が違うということになるかもしれませんが、ここは差別禁止を具体的に決めている規定なんです。だから、そういうことからすれば、女性に対して差別的取り扱いを現実に行っている場合は、これに対して違法であるということが端的に認識されなければならない事項なんですから、この範囲というのは広く考えていただかないと実情に合わない、実効性がないということがまず言えます。  これは、今の御答弁で、「事業主」に対しては広く考えるということを言われておりますから、できる限り広くというのは、最大限に広く考えていいと思う。どんな小さな、班長に至るまで、係長に至るまで、企業のため、事業主のために行う教育訓練ということについては、これは全部この法の対象になるというふうに考えられなければならぬ。先ほどの御答弁はそのとおりですから、そのように理解をいたします。  ほかにもこの問題についてありますけれども、きょう大事な労働時間についてちょっと聞きたいので、このことをあとの余り時間で精いっぱいやります。  また外務省。外務省、ILOで労働時間について、深夜業の禁止について、労働時間の短縮について取り決めている条約、勧告がたくさんあるはずでありますけれども、どれくらいの数ございますか、言ってみてください。
  173. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 今先生御質問の労働時間とそれから深夜業に関します条約及び勧告でございますけれども、まず労働時間に関します条約につきましては約十個でございます。それから勧告が二個。それから深夜業につきましては条約が四つでございます。
  174. 土井たか子

    ○土井委員 いずれも、世界の趨勢は労働時間を短縮させる方向に向かっていっているというふうに言ってよろしいね。いかがでございます。
  175. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 今申し上げましたILO条約等に関して見ます限りは、一般論としてはそのとおりだと思います。
  176. 土井たか子

    ○土井委員 このうち日本は幾つ批准しているのですか。
  177. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 日本が批准しておるのはございません。
  178. 土井たか子

    ○土井委員 これだけたくさんILO条約というのがあって、しかもILO一号条約というのが「工業的企業に於ける労働時間を一日八時間且一週四十八時間に制限する条約」、大変有名な一九一九年の条約ですが、それからずっと始まって、日本はただの一つもILOのこれを取り決めている条約は批准していない、こういうことですね。いつごろ批准できそうですか。見通しはどうですか。外務省に聞きます。
  179. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 まず、労働時間に関します条約につきましては、この条約とそれから日本の国内法体制との問題もあり、今私の口からいつということを申し上げることはできないわけでございます。
  180. 土井たか子

    ○土井委員 いつということはなかなか難しいかもしれませんが、なぜ今までできなかったのですか。そうすると、主なる理由は何ですか。いや、労働省はいいですよ。まず、外務省に私は聞きます。外務省が批准についてやる担当省ですから、外務省に聞きます。なぜできなかったか。
  181. 野崎和昭

    ○野崎説明員 条約を批准するための国内法を整備するのは労働省でございますので、お答え申し上げたいと思います。(土井委員「まず外務省から答えてください」と呼ぶ)それでは外務省にお答えいただいた後、お答え申し上げたいと思います。
  182. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 今申し上げましたように、労働時間条約につきましては、この条約の決めております内容と、それから日本の国内法体系との隔たりでございます。
  183. 土井たか子

    ○土井委員 国内法体系との隔たり。国内法体系と言われるとこれは実に巧妙な日本語でして、これに対しての解釈がいろいろできますから幾らだって逃げられるわけですけれども、要は、日本の時間外労働を取り決めている中身がILO条約を批准する資格にまだなっていないということなんでしょう、その資格を持ち得ていないということなんでしょう。どうなんですか。遠藤さん、そうでしょう。労働省としょっちゅう御連絡なすっていると思うから、いかがですか。
  184. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 ILO第一号条約につきましてはその点も一つでございます。
  185. 土井たか子

    ○土井委員 ILOの第一号についてすらそういうことだということを外務省は言われる。  そこで、私は、間違いのないようにと思って、当委員会のこの条約に対してまず皮切りの質問の日であった七月三日の議事録を持ってきたのですが、この議事録の中で、江田五月委員が質問をされまして、外務省に対して「男子についても労働時間の問題、あるいは深夜業の問題その他について、今の女子保護規定と同様の規制を設けるということはいけないのですか。」というふうに聞かれたら、答弁としては「この条約が問題にしておりますのは、男子と女子の間の差別の出題でございます。したがいまして、その差別がなくなるという限度におきましてそれをどの水準でなくするかということは、条約のあずかり知らぬところであります。」こう答えられているわけです。そこでまた江田五月委員が「ちょっとよくわからないのですが、とにかく男子の労働条件についても、今の労働基準法にある女子に対するさまざまな規制と同様のものをつくれば、これは婦人差別撤廃条約の要請に合致することになる、これはいいですか。」と聞かれたら、答えて「そのとおりでございます。」こう言われているわけです。そこで、江田五月委員がそれについてずっと問いを続けられているわけです。  ここで労働省にお尋ねをしたいのですが、労働省は今の時間短縮の問題に対して努力をされていると思うんだけれども、何か労働省が持っていらっしゃる指針がありますね、時間を短縮させていくための。どういうことを決められているか、端的に聞かせてください。
  186. 望月三郎

    ○望月(三)政府委員 私どもは、男女を問わず、日本の労働時間の短縮につきまして、昭和六十年を目標に、年間二千時間を目標に推進計画を実行しているわけでございます。その柱といたしましては、一つは週休二日制の推進、二つ目は年次有給休暇が今六割程度しか消化されておりませんが、これを計画的にかつ実効的に完全消化するということ、それからもう一つは恒常的な長時間労側、オーバータイム、これをできるだけ短縮していくということの三点を大きな柱にして、今行政指導を強化しているところでございます。
  187. 土井たか子

    ○土井委員 いろいろ労働省の文書を見ますと、昭和六十年までには西欧並みにというふうな、労働時間に対しての指針に対するいろいろな物の言い方が響いてあるのですが、今言われたとおり二千時間というのが目標なんですが、そっちの方向に今進んでいますか。  私もいろいろ見てみました。そうしたら、月間実労働時間数というのが、労働省が出していらっしゃる「婦人労働の実情」という中の、事業所規模三十人以上の指数を見ました限りでも、所定外労働時間というのが五十年以後どんどんふえているのです。これは、六十年に二千時間になるどころか、逆の方を向いて走っているのです。もっと細かくと思って、私は「毎月勤労統計調査報告」というのを見てみましたよ。そうしたら、この二月から三月にかけて、所定外の実労働時間数というのはどんとふえているのですがね。これはいかがでございますか。労働省としたら、女性の所定外というのがどんどんふえているというのが実情なんですよ。
  188. 望月三郎

    ○望月(三)政府委員 労働時間の長短につきまして一つ考えておかなければならぬのは、労働慣行の国による違いというのがございます。  私どもの日本におきましては、景気の好況、不況についてオーバータイムで調整するという機能があるわけでございます。例えば終身雇用制をほとんどの企業が採用しておりますので、景気が悪くなると外国の場合はレイオフで直ちに解雇をするということになりますが、日本の企業終身雇用制なものですからできるだけ解雇しないように努力をする、政府も、そういう姿勢に対して給付金等を出して、できるだけ解雇がないようにするという努力をしておるわけでございます。それでも解雇、整理される場合ももちろんございます。しかし、できるだけそういう形で抱え込んでいく、雇用を優先させるということを、政策としてもまた実態としてもそういう形できておりますが、その無気不況が終わった段階で、今度はだんだん景気回復期に幾らか忙しくなってくる場合に、企業の考え方としては、忙しくなってくるからといって直ちに新規雇用の労働者を採用するという態度をとらずに、ずっと景気の動静を見守っていく、そしてある程度めどがついて、これは大丈夫だという段階になって初めて新規雇用をするということでございますので、そういう景気回復の過程では、その間の忙しくなった時間というのはオーバータイムで食いつなぐということを、今までの経験から私どもは見ておるわけでございます。  そういう雇用慣行の違いがございますので、その辺の要素もやはり見ていかなければならぬということでございまして、それは一時的な現象ではないかと考えております。
  189. 土井たか子

    ○土井委員 私は、きょうは通産省の局長をお呼びした覚えがなかったのです。あなたは労働省の局長だと私は認識しているのです。いろいろ景気の変動によって労働省が決めている指針が左右されるということを、労働省は黙っていられるのですか。労働省としたら、一たん指針を出されたことに対して責任を持ってやるという所管庁でなければ困りますよ。そうでしょう。今の景気の変動により云々というのは通産省の言うことですよ。あなた、いつ通産省におかわりになったのですか。  私は、何をおっしゃっているのかなと思いながら先ほどから聞いているわけでありますけれども終身雇用制結構でしょう。それじゃ今から、今回の法案で、女性に対してもそういうことについてちゃんとした保障になるのかどうかということをお尋ねしてみましょう。遠藤さんも聞いておいてくださいよ。  ILOの労働時間短縮の方向からすると日本の現状というのはどんどん逆行しているわけですからね。逆行していることの現実を今申し上げておいた上で、それに対して今度の取り扱い、労働基準法を変えるという中身がどうなるかということを今から言いますから、遠藤さんも聞いておいてください。ILOに対して責任がありますよ。  まずお尋ねをしますけれども、六十四条の二の一項を見ておりますと、一日二時間の枠を外して八時間プラス六時間、一日十四時間の労働時間が法文上は可能になりますね、いかがですか。可能かどうかだけ言ってくださいよ。ぐちゃぐちゃ説明は要らない。法文上は可能になりますね。
  190. 野崎和昭

    ○野崎説明員 そのとおりでございます。
  191. 土井たか子

    ○土井委員 一日十四時間の労働時間が可能になる。したがって、一日十四時間まで労働時間を認めると言ったって、これは違法ではない。現実は一日十四時間ぐらい働いている例がないことはないのです。これもいろいろな例を当たってみましたよ。ある電子機器を製造する部門なんというのは、これは本当に夜遅くまで働いて働いて働いて、夜十一時にシャッターがおりるのです。男性はそれでもまだやるのだけれども女性については、これ以上ということになると問題になるからといって、そっと裏口から帰す。そういうことを当たり前のようにやって、そしてとうとう、結婚をしている人は家庭と両立しないで、その次どうなるかといったら、家庭の中へ今度は仕事を持ち帰って、夜、子供が寝てからその仕事をするという大変な無理をしているという例すらあります。一さて、その次、六十四条の二の一項、毎日二時間ということは、午前八時から午後五時までの勤務時間、これが午後七時まで、これを一週間続けても、この法に照らし合わせて考えた場合に違法ではない、これはまず言えますね。いかがでございますか。
  192. 野崎和昭

    ○野崎説明員 ただいま先生が御指摘になりました六十四条の二は、一項と二項とございまして、どちらのことをおっしゃったのか正確には理解いたしかねましたけれども、ここにございますような範囲内で、労働省令で具体的に決めるということになるわけでございます。
  193. 土井たか子

    ○土井委員 あなた、答えてくださいよ。違法になりませんねと言っていることについてもうちょっとしっかり初めから聞いておいてください。これは、ちゃんとここに書いてあるとおり読めば、六十四条の二の一項について、毎日二時間ということ、午前八時から五時までの勤務時間について、それを七時までやるということを一週間続けても違法にならないとなりますよ、これを見てみると。
  194. 野崎和昭

    ○野崎説明員 八時から五時までというのが仮に八時間の労働時間だといたしますと、八時間を超えて二時間、それを毎日一週間やりますと一週十二時間になりますので、一項には抵触することになります。
  195. 土井たか子

    ○土井委員 何ですか、法に抵触しますか。そうじゃないでしょう。これは違法にならないですよ。「一週間について十二時間を超えない範囲内で時間外労働をさせることができる。」、その前には「一週間について六時間の制限にかかわらずことなっているんですよ。よく読んでください。
  196. 野崎和昭

    ○野崎説明員 私が申し上げましたのは本則の方、でございまして、御承知のとおり、一週六時間という制限がございますので違法になると申し上げたわけでございますが、条文としてはならない…。
  197. 土井たか子

    ○土井委員 違法にならないんですね。  さて、そうすると、次に六十四条の二の二項、これは四週間の間の一週間について四十八時間の残業が可能になるという格好になってまいります、条文を見れば。一日八時間の残業ですよ。例えば、これは当てはめて考えますと、午前五時から午後十時まで、これは計算してみたら通算十七時間になりますから、休憩時間を一時間どって実労十六時間、そういうことが考えられる。一週間について四十八時間の残業、一日に割って八時間の残業が可能である、こうなりますが、これをやっても違法じゃないんですね。いかがですか。
  198. 野崎和昭

    ○野崎説明員 先生のお挙げになりましたのは非常に極端な例でございまして、そういうことが仮にやられる場合は、まず前提が幾つかあるわけでございます。この二項の労働省令で定める範囲がこの上限でございます四週四十八時間の範囲になり、かつ、三六協定がしかもその上限ぎりぎりに決められた場合にはそういうことも観念的には起こり得ますけれども、私どもの経験からいって、そういう事態は非常に少ないと思っております。
  199. 土井たか子

    ○土井委員 そういう事態が少ないか多いかを聞いているのじゃないのです。この法文というのは、御承知のとおりに労働条件の最低限度を定める統一基準ですよ、労働基準法というのは。そうすると、この法の定めていることに照らし合わせて違法か合法がということが問題になった場合、今申し上げたのは、あなたは極端な例だとおっしゃるけれども、そんな極端な例をやったってこれは違法じゃないということなんじゃないですか。どうですか。そうでしょう。
  200. 野崎和昭

    ○野崎説明員 二項の趣旨は、三次産業につきましては今後女子が活躍できる場である、したがって、労働条件の土俵と申しますか枠をなるべく男子に近づけたいということで、四週四十八時間という上限をつくっているわけでございます。しかしながら、先ほどから申し上げましたように、省令では、事業の種類に応じて具体的に定めることになっております。その場合に、全く観念的に考えまして、一時期、非常に繁忙期が集中するというような場合に週四十八時間ということが必要だということになりまして、そういう省令ができ、そういう三六協定ができるということは全くないわけじゃございませんけれども、ないと思いますけれども、その場合は、他の三週は時間外労働は一切できないわけでございまして、そういうような極端な繁忙というのは、私どもは通常は想定できないということでございます。
  201. 土井たか子

    ○土井委員 想定できるかできないか、そういうことを聞いているのじゃありません。よろしゅうございますか。これは法定ということがどういうことになっているかということをやはり考えていった場合に、そこまでの枠をこの法は予定しているという格好なんですよ。したがって、そこまでやったって違法でないということになるわけです。これが問題なんですよ。そういうことは間々起こり得ないとだれが保障しますか。行政指導に任せてくださいと言われるかもしれない、世界に冠たると大臣はおっしゃるかもしれないけれども、行政指導をやられて、今までに企業の方がそれを聞いた例は余りないというのは、私もよく知っていますよ。それも出そうと思ってきょうは資料を持ってきていますけれども、時間の関係があるから私はこれは言いません。言いませんが、行政指導をやったって企業者が聞かないところが、今回の法律をいかにして制定するかというところの一番のけじめだったのじゃないかと私は思っています。  そういうことからすると、労働大臣、いかがですか。先日、我が党の竹村議員の質問にお答えになりまして、あなたの女性観というのは、よき妻であり、よき母であるということに対して、もう一つこれにつけ加えるべきでありますということを言われて、女性自身の努力によってよき社会人になるべきだと思う、と家庭と職業の両立ということを言われるのだけれども、これはこんなに時間外の問題を、今でもいろいろ労基法からするとどうも困る時間外だと言われながら、細々と、しかも潜りのような格好でやっているのが、今度は大見えを切ってできるようになりますよ。どうも家庭と両立しないです。特に結婚してから働き続けるということは、恐らく難しくなる。どうなるかといったら、パートタイマーになっていくという傾向が非常に出てくるのじゃないか。大臣、どういうふうにお思いになりますか。まずそれを聞いておいて、最後に一問して私は終わりますから、それを聞かしてください。
  202. 坂本三十次

    ○坂本国務大臣 余り細かいことは存じませんけれども…(土井委員「これは細かくないですよ」と呼ぶ)しかし、この法律の目的は、時間短縮ということでは直接的にはないんですよ。時間短縮の問題は、男も女もないので、国を挙げて、そして社会的にも、会社を挙げてでも一生懸命やっていくということで、これはこれで非常に大きな問題です。今のこの法律の直接目的としているところは、男にできるだけ近づいてでも私は働きましょうというその意欲と能力を期待をする、こういうことでその枠を広げたのだと思います。本当を言ったら、男まで広げたらこれは大変なことになってしまうから、そこまではできないでしょうということで多少広げた。男なら深夜であろうと休日の時間外であろうと、やろうと思えば無制限、そんなことを女の人に一緒にというわけにはいきませんから、ある程度男に近づくという姿勢をひとつ期待をしたということで、現実にそれが行われるような労働行政は私どもは決して望んではおらぬし、それから、いろいろ審議会やあるいはまた行政指導においても、そういうことのないようにいたしたいと思っております。
  203. 土井たか子

    ○土井委員 労働大臣、男性女性が近づいてほしいと言われますけれども、では男性が子供を出産なさるのかどうか。それから、今の家庭のいろんな家事労働というのは一体どっちの手にかかっていますか。いかに家庭と職業を両立させようといったって、現実の問題がどういうことになっているかということを考えたら、この取り扱いというのは、女性はもはや仕事なら家庭を放棄しなさい、家庭に入るんだったら仕事をやめなさい、こうなっちゃいますよ。それで、よき妻でありよき母であるということよりももっと言うことがあったとおっしゃって、この前は女性の努力をしきりに言われるんだけれども、人間やはり生身の体でございます。人間らしく働くということが保障されないでおいてどうして努力ということを強制することができるのでしょう。そういうことからいうと、この点は、今の大臣の御答弁というのは実にこれはいただけないと私はまず思うのです。  そうして、ちょっと最後に聞きたいのは、この六十四条の二の四のところを見ますと、「労働者の業務の遂行を指揮命令する職務上の地位にある者又は専門的な知識若しくは技術を必要とする業務に従事する者」、これはもう青空大井なんです。時間外勤務に対しての規制はございません。制約がない。規制の対象外なんですね。  そこでお尋ねしますが、この労働者の業務の遂行指揮命令というのはどういう人たちを指しているのです。係長、班長、そういうところまで指揮命令系統の中に入ると思うのですが。それからさらに、最近はいろんな職場がコンピューター化されております。コンピューターシステムの中で動いていっているということが、これからももっともっと強くなるでしょう。女性の大体四〇%は事務職だと言われている。最近電機労連の調査が新聞に載っているのを見て、私はなるほどと思ったのですけれども、それを見てみますと、独自に女子労働者を対象に設けている残業規制の月間二十時間を超えた人が三二%もあるというのです。  そこで、ちょっとお伺いをしたいのは、ここの指揮命令する職務というのは一体どんなものを指して認識をなすっていらっしゃるのかということと、それから専門的な知識というのは、これは最近はME化の中でどんどんシステムエンジニア、コンピュータープログラマー、専修学校を出たという人たちというのが幅広くいろいろ入りますよ、全部。そして見てまいりますと、いろいろな工業部門についてもそういう事務工業化してきているということが言われるわけでありますから、その判別がだんだん難しくなってきている。ある場合には、ここに全部放り込んで考えることもできるようなシステムだと申し上げても過言じゃないと私は思います。どう考えていいのですか、その人たちは時間規制が何もないのですよ。働けと言われて、今でもいろいろ健康上障害が出ているということ、そして認定を既に受けているある特定の企業、それは労働者を見たら女性ばかりなんですが、企業はそれを申請することを拒んで、我我企業に対して企業をつぶす気かと言って嫌がらせもやったという例もあります。そういうことも考えますと私は大変なことだと思うのですが、この辺どうですか。
  204. 野崎和昭

    ○野崎説明員 まず管理職とは、業務遂行上の単位組織の長として、そこに属する労働者に対して仕事の割り当て、仕事のやり方など具体的な業務の遂行について指揮、命令をする者であるというふうに考えております。専門職と申しますのは、言葉のとおり高度の専門的な知識または技術を要する業務に従事する者と考えております。  これらの範囲につきましては、審議会の建議にもございますように、今後審議会の御意見をお聞きして具体的に定めることになるわけでございますけれども、なぜこの規定が入ったかという点につきましてでございますが、まず、こういう他人に対していろいろ業務上の指揮をするという方が女子で、時間外労働が二時間しかできない、あるいは一週六時間しかできないというようなことではこういう職務は勤まらないわけでございまして、しかしながら、そういうことでこういう地位につけませんとさらにその上の地位にもつけない、実際上昇進の道が閉ざされてしまうことになるのではないかということでございます。なお、専門職につきましては、今後女子が男子と対等の立場で活躍していくということが最も期待される分野でございますので、こういった分野につきましては、男子と同じような時間規制とするということが適当であるという、これは審議会の建議に基づいてそういたしているわけでございます。
  205. 土井たか子

    ○土井委員 現実の問題は、男子と同じような取り扱いになっていない。むしろ大変な重労働というのが女性の肩にかかってきている分野もあれば、片や二交代制、三交代制を実施して寮制、寮に泊まることを強制をして労働をいろいろ強化させていっているというふうなデータもあります。  そうして、しかも、今いろいろおっしゃいますけれども、既に法定労働時間を超えて延長することができる時間、いわゆる目安時間について労働省はこの通達の中で出しておられますが、私が今いろいろ言った、どこの職場にも全部入っていっている最近のそういう電子機器等々について関係するコンピュータープログラマー等々は、この目安から外されて、目安時間が適用されない事業になっているということもひとつあわせて私は申し上げておきたいと思う。これはもう申し上げるまでもない、皆さんの方がそれをやった方ですから。だからそういう姿勢で臨まれるということになってくると、非常に先の見通しは暗いです。  私は、まだいろいろ問題があるのに時間の方が来てしまいましたから、質問は次回に続行いたします。深夜業の問題もこれはまだやっていない。それから行政通達の問題、行政指導という問題もやってないのです。これは非常に大事な一つ一つのポイントですから、次回にこれを譲りたいと思います。  最後に遠藤さん、どうですか、聞いておられて。ILOというのは時間短縮の方向に向かっているのに、日本はそうでない方向に向かうばかりか、女性に対して今度はそっちの方向へ持っていって、時間外ということを、実は大変人間としては考えられないようなものを考える。これは健康に対してまず考えなければいけないですよ。家庭と職業というのが両立するように考えなければいけないですよ。これは条約を批准することのためには必要最小限度考えておかなければならない基本線でございます。そういうことからすると、今の時間外労働に対しての取り扱い、これはおかしいというふうにお考えになりませんか。どうもこのままではちょっと困ったなというふうなお気持ちがなさいませんか。いろいろ連絡をされつつ、今まで矛盾を矛盾として感じ取ってこられた遠藤さんであるだろうと思うのだけれども、これは何とかしなければならないという気持ちを持ちつつきょうは来られたんじゃないかと思いますが、どうですか、遠藤さん。
  206. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 一般論といたしましては国際的な労働時間短縮の動きがあることは事実でございますが、他方、具体的にそれを国内でどういうふうにやっていくかということにつきましては、私の口から言うのもあれだと思いますけれども、やはりその国の置かれた経済状況とかあるいは社会状況等々というものを勘案しなくちゃいけない。そういうことを総合いたしまして、なるべく私としましては、国際的な方向に向かって一歩ずつ進めていくのが一番現実的な方向ではないか、こういうふうに思っております。     〔委員長退席、丹羽(雄)委員長代理着席〕
  207. 土井たか子

    ○土井委員 終わります。 (田中(美)委員「自民党は二十一人いるはずでしょう。四人しかいない。電話をかけて呼びなさい」と呼び、その他発言する者あり)
  208. 丹羽雄哉

    ○丹羽(雄)委員長代理 御静粛に願います。  森本晃司君。
  209. 森本晃司

    森本委員 まず最初に、労働大臣にお伺いしたいと思います。  きょうもいろいろとこの場で参考人質疑が行われまして、私もそれに出席させていただいて、大変いろいろな角度からの勉強をさせていただいた次第であります。それと同時に、今回の法案については、もっともっとより真剣に審議をしていかなければならない、大変多くの課題が残されているというふうに感じたわけでございます。  まず最初に伺いたいわけでございますが、先般の七月三日に、我が公明党を初めとし野党四党で対案を提出いたしました。お読みいただいたと我我は思っておりますし、また、それなりの所感も感じていただいておると思いますが、まず、我々四党が出しました対案に対する大臣の感想をお伺いしたいし、また決意のほどを伺ってみたいと思います。  同時に、今日まで大変長い間この問題が審議されてまいりまして、労働省の皆さんにも大変御苦労いただいて、三論併記というふうな問題にまで及んだ状況下で、政府が今回の法案を提出してこられたわけでございます。  今回の政府案、勤労婦人福祉法の全面改正と労基法の一部改正の二本立ての法案となっておりますけれども雇用における性差別をなくすことは女性の基本的な問題であります。きょうの参考人の弁護士の中島さんという方も、女性立場からまた弁護士という立場から、女性の働く権利は基本的人権の問題であるがゆえに、この法案については福祉促進を目的とする福祉法の改正の部分の中に入れるべき性質のものではない、基本的に性格の違うものの中に入れていったならば平等法というのは成り立たない、単独立法ですべきであるというふうな御意見をけさほどから伺ったわけでございます。私も全くそのとおりだと思います。  そこで、最初に申し上げました我が党を初めとする野党四党で出しました対案、これは単独立法でございますので、そういった所見も踏まえて、今の状況下における大臣の考え方をお伺いしたいと思います。
  210. 坂本三十次

    ○坂本国務大臣 三党案につきまして、皆様方のお考えにつきましては私どもも御趣旨をよく勉強したつもりであります。ただ、いろいろ考えてみますると、審議会の審議の経過を経て、私どもが現在出した雇用均等法と皆様方の案とを比べてみますと、皆様方の案は、平等法を単独でとおっしゃるように、企業に対して男女の差別をなくすることにウエートを置いておられる。私どもは、企業に対して差別をなくするという努力を求めて禁止をする。同時に、女性側におきましても婦人差別撤廃条約の望んでおるところをひとつよく理解をしていただいて、そして、待遇の平等を得るときにはその前に機会の均等がなければならぬ。その機会の均等という観点からすれば、女性男性に負けないような勤務条件でやるということでないと所期の理想を達成することは難しい。そういうような趣旨におきまして、三論併記になったようなものでありますから妥協の産物と言われれば確かに妥協の産物の点もありますが、私どもの案の方がより現実的にスタートを切り得るのではないか。その間に着実に一歩一歩あるべき姿に持っていくということが、特に我が国の特殊な雇用慣行などもございまするし、そして、先ほどからの新聞の広告を見ても男女差別がはんらんをしておるという現実を克服するためにも、国民の名において差別はいけませんという法律をつくって、今の一歩は確かに低いふもとからでありましょうけれども、一歩一歩踏みしめていくことの方がより確かな道であろうか、私はこういうふうに思っておるわけでございます。
  211. 森本晃司

    森本委員 今大臣のお考えを伺いましたけれども、まだまだ釈然としないものが数多くございます。  それから大臣、三党とおっしゃいましたが、四党の共同提案でございます。どこの党が漏れても大変でございますので、その点ひとつ。
  212. 坂本三十次

    ○坂本国務大臣 失礼しました。四党案でございます。
  213. 森本晃司

    森本委員 それで、いろいろなことが機会均等でなければならないという立場か」ら、今回の政府案がなされているというふうに先ほどの大臣の発言でお伺いしたように思うわけでございますが、ならば、なぜ採用の時点、募集の時点の男女機会が均等でなければならないというふうにはなっていかないのでしょうか。今の政府案はそのようになっておりません。全ステージが差別がないというふうに禁止規定にはなっておりませんが、その点どうですか。大臣は、今さっき、機会均等でなければならないとおっしゃったように私は伺いました。そこからスタートしたんだというふうにおっしゃいますが、最初の入り口のところが今まだ努力義務になっておりまして、先ほど土井先生からも随分いろいろとお話があったところでございますし、また今日までの論議の中でこれが最大の焦点になって論議されてきた問題でございますが、機会均等でなければならないという考え方から出たならば、なぜ努力義務でとどまったのでしょう。
  214. 坂本三十次

    ○坂本国務大臣 機会均等というスタート台につくときには、男女とも労働条件も大体似たようにしてあげなければいかぬということで、先ほども申し上げましたように、平等法一本というのではなしに、基準法の女子保護規定も母性保護を除いたところはできるだけ男に近づけていこう、こういう歯車が両々相まっていかないと現実的に所期の目的は達成しにくい、こういうことを申し上げたわけでございます。  そこで、入り口の募集、採用などが努力義務ではいけないのではないかとおっしゃいますが、そこが先ほど申し上げましたような、女性の保護を男並みに、すぱっとアメリカ並みに外すというのは、これはちょっと急に過ぎますし、それもできなかったという点もありましょう。それからまた、企業の方も終身雇用などで日本はやってまいりましたから、男性企業に入れば、論外国に見ないような忠誠をそこに尽くすようなスタイルでありまして、終身雇用制度で勤続年数も当然一生働くというのが建前であります。女性の場合は今まではそうでございませんでした。それは過去のことでありまするが、これからはそうではないぞという気持ちもいたしまするけれども、今までは確かに男から見れば女性の方ははるかに勤続年限も少なかった、そういう感じですが、経営第一にしかやらない企業に、一度に企業にだけ機会均等、差別なしを求めるということも、これはちと急激に過ぎるのではないかということで、あちらもこちらも考えて、そしてひとつバランスをとってやった方がより現実的だ、こう思ったわけでございます。
  215. 森本晃司

    森本委員 今の大臣のお答えの中にも、日本的な考え方、あるいはまた今の法案が現実的である、社会に沿っている、また、急激な変化があると企業は大変なことになるというお話がございましたけれども、きのう行われました札幌、福岡、またきょうの東京での経営者側から出てまいりました御意見、急激な変化は困るという御意見でございまして、終始一貫その答えばかりが出ておりまして、何も急激な変化ではないのじゃないだろうかというふうに私は思われるわけです。  そして、一貫しておっしゃっていたことは、急激な変化をやれば経済的に大変混乱するというふうにきょうもおっしゃっておりました。この中で、具体的に何が混乱するかという質問が行われたときに、混乱すると予想されるというふうに変わってきました。何か目に見えないものに大変おびえながら、あるいはそういうものを仮定、仮想しながら、何とかそういうことはできるだけ避けていきたい、こういうような考え方になっているのではないだろうかと思われます。  きょうの参考人の弁護士の先生は、そんな急激な変化、経済恐慌が起こるようなことはありませんよ、断じてありませんと大変確信を持っておられまして、きょうは非常に対照的な御意見が出ました。  その先生がおっしゃいますのは、まず禁止規定を設けて、その法の適用、運用の面で十分考えていってはどうだろうかというふうにおっしゃっていました。その例を挙げて、労働基準法第四条の賃金の問題、これは罰則つきでございますが、それが施行されるまでには約三十年ほどかかったのだ、いますぐに募集あるいは採用の点で禁止規定を設けても、それが実行されるまでにいろいろと時間もかかることであろうし、そんなことで日本の経済がひっくり返るようなことはあり得ないというふうにおっしゃっていたわけでございまして、私もまた同感の思いをしたわけでございます。  大臣がよくスロー・アンド・ステディでこの法案をやっていくのだというふうにおっしゃっていますが、採用、募集についてまず禁止規定を設けてから、その上でスロー・アンド・ステディにされてはいかがかと思うわけでございますが、いかがですか。
  216. 赤松良子

    ○赤松政府委員 午前中、中島参考人のお話を聞きながら、大変よくお勉強も御研究も行き届いていると思った一方、多少疑問に思った点もございましたが、今先生がおっしゃったところがまさにその一つだったわけでございます。  労働基準法四条が施行されたのは三十年前のことでございまして、決してこの規定の施行が先に延ばされていたわけではございません。ただ、秋田相互銀行の訴訟が提起されたのが随分長い間だって後のことだったということでございます。そこで、それでは仮に現在提案中の法案が罰則つき強行規定になったとして、そのようにずっと先にしか具体的な問題が起こってこないだろうかということは、これは仮定の問題でございますから何とも言いにくいわけでございますが、私の考えでは、そのころの女性の意識と現在の女性の意識とは全く違っているのではないかと思うわけでございます。基準法の四条について争いが起こったのがずっと後のことだったということで、今準備中の法案についても同じようなことが起こるというのはいかがか、そのような推論はやや的を外れているのではないかというふうに、私は午前中の議論を聞きながら思った次第でございます。  また、工場法のことについても言及がございましたが、工場法につきましては、法律が書かれましてから実際に施行になりますまでに、非常な長い年月を経ているわけでございます。これは工場法の施行にとって必須な条件でございます施行規則そのものがつくられなかったというような事情もございまして、法案については何とか通ったものの、その後の施行規則がつくられなかったことによって施行できなかったという事情がある場合もございます。  法案の実効性というのは、その時代、その社会の実態とその法案とがどのようにマッチしているかということによっていろいろ違ってくるわけでございまして、私どもといたしましては、現在御審議を願っております法案のつくり方というものは、現在の日本の社会にマッチするように非常に苦心をしてつくり上げたものだというふうに確信をいたしております。
  217. 森本晃司

    森本委員 きょうのはそれぞれ両極端の意見があったわけでございますが、そういうものもあわせて十分に考え、審議していく必要があるのではないだろうかと思われます。今度の問題が三十年かかるとは限らない、それは確かにそのように私も思うわけでございますが、私はそれは急激な変化にはならないと考えておるわけでございます。  あと、大臣がおっしゃいました、機会均等のために、女性男性に近づくために労働基準法を改正したのだという問題がありますが、むしろ改悪と言ってもいいくらいでございますけれども、この労働基準法の改正の問題については、後半の方でまた御意見を申し上げさせていただきたいと思います。  いずれにいたしましても、先ほど赤松局長もおっしゃいましたけれども、三十年ほど前の女性立場と今と女性の感覚が随分違うと局長みずからおっしゃっていただきまして、私も今そのことを実感しております。今日まで確かに、日本の社会の中で日本的なよさでそういうぐあいになってきたかもわかりませんけれども、今の女性立場というものは働くことに対して非常に高い意識と関心を持っております。せんだっても、私は私の地元へ帰りまして街頭演説に立たせていただきましたけれども、また何人かの女性と懇談いたしましたけれども、私は、男性が想像している以上に今回の法案に女性が高い関心を示しているなど実感したことが数多くございます。それだけにこの問題に真剣に、取り組んでいっていただきたい。  イギリスも、平等法が制定されるまで国内での大変な論議があったと、イギリスにおった人に私は伺ったわけでございます。工場もある程度この問題でストが起きた。この問題でストが起きたのですよ。禁止規定を設けたから経済界が混乱に陥ったのではなしに、男女雇用を平等にしみということで、そのことに対するストで混乱が起きて、イギリス経済が八〇%ほどダウンしたというふうな事例がございます。世界各国どこでも、この男女雇用平等法は素直にすんなりと決まってはいないと思います。そのとき、イギリスの労働大臣が、そういう混乱の中でも、またそういう中にあって大変な抵抗のある中で決断を下して、雇用平等法が制定されていったという歴史があるのだというふうに伺いました。大臣、どうかひとつ、時の労働大臣として賢明なる判断をしていただきまして、そして本当に歴史に残る、よかったと言われる、実効性のある均等法をつくっていただきたいということを最初にお願いする次第でございます。  そこで、今回の経過をもう一度振り返ってみたいと思いますが、これは大臣にお答え願いたいのです。  婦少審が「婦人差別撤廃条約の目指す方向に照らせば、なお多くの部分において不十分な点があることは否定しがたい。」と述べた上で、「必要がある場合には法改正を含む所要の措置を講ずべきであると考える。」と法の見直しを答申しているわけでございます。不十分な点があるにもかかわらず答申が行われたこと自体が問題でありますが、同時にその中で、「今日の段階においては、やむを得ない」としているところもございますが、答申にそういった不十分であるという指摘がある以上、不十分な点をこの国会の中で十分に論議して明らかにして、そしてまた憲法、条約の趣旨に適合するように努力する義務が立法府にはあるのではないかと私は考えておりますが、いかがでございますか。
  218. 坂本三十次

    ○坂本国務大臣 確かにあなたのおっしゃるように、この男女雇用における均等法というものの影響というものは、私は非常に大きなものがあるだろうと思っております。  この間、竹村健一さんが私のところへやってきて、賛成の立場がどうかはそうでもなさそうだったけれども、こんなことをやったら日本の男性はかわいい女房、子供のために今まで命がけでやってきたという意欲がなくなるのではないか、生態系が破壊されるというような感じのことも言われておりまして、この問題は君、一番大きな問題だよ、あと三十年、五十年たって大失敗したといったら労働大臣、一体どうしてくれるのだ、そういう意見もありましたよ。成功したらどうしてくれるということは言わなかったけれども。確かに大きな問題であるということだけは私も重々覚悟をいたしております。  しかし、この長い審議期間の間にも、あれだけの英知を集めたにもかかわらず、各界の代表の方方が参加されたにもかかわらず最後は三論併記、そして来年は批准年を迎えておるというような段階になりましたので、私どもは私どもの責任においてこの法律案をまとめたというわけでありまするから、それは確かに三論併記ということでありまするから、各界において、あるいはごらんになる側面において不十分な点があるということはもちろん私も承知をいたしております。しかし、先ほども申し上げましたように、アメリカはこの道、日本よりは数十年先を歩いているのかもしれませんけれども、アメリカ並みに今まであった婦人の保護を撤廃するというようなことも、そして機会均等、待遇の平等を直ちにというわけにも現状ではいかないと思いまするし、あるいはまた、そういう側面がある以上は、日本の終身雇用制のもとで今日ここまでとにかくうまくやってきたと私は思っておりまするが、その雇用管理の体側につきましても、急激な変化があってもこれまた困るというような配慮もありまして、今のような案をつくったわけでございますので、今つくったならばあすすぐよくなるという、そういう特効薬ではありません。これは相当長い間かけないと効果が出ない漢方薬みたいなものだろうと思っております。だから、その点はもうちょっとロングレンジに見ていただきまして、そして途中で多少ジグザグしても、軌道修正をしながらあるべき姿に持っていきたい。小さく生んで大きく育てる、こういうことでよろしくお願いしたい。
  219. 森本晃司

    森本委員 大臣のお話を伺いまして、竹村さんの話は、大臣の御意見でないからどうこうというわけではございませんけれども、生態系が破壊されるかどうかという問題でございますが、決してそんな大層な話ではないのじゃないだろうか。募集、採用で禁止規定を設けたぐらいで生態系が破壊されるのでは、逆に男として情けないなと私自身も思うわけでございまして、そういった問題よりもむしろ、竹村さんは、日本の男性の体系が壊れるというふうにおっしゃるかもわかりませんけれども、従来は家事に従事する女性が非常に多かった。戦争もあって、主人が戦場に行った後は銃後の婦人として守ったという一つの流れの中にもありましたけれども、今は日本の女性の寿命が非常に大きく伸びていまして、八十歳ぐらいまでいくわけでございますね。これは大臣、二十歳の人が結婚いたしまして、あと六十年間家庭にこもっているということはほとんどあり得ないのではないですか。それこそかえっておかしな状況に陥ってくるのではないかと思う。従来は、家にはおばあちゃんもおじいちゃんもおって大家族でございましたので、主婦が家にいてやる仕事もたくさんあった。しかしそれはだんだん電気製品にも奪われていったし、おじいちゃん、おばあちゃんとまた別世帯で核家族になってきた。一体、主婦は、本当にこれから伸びた寿命の分をどうして過ごすのかというふうに考えたときに、日本の賢明な女性は能力を持っておりますので、働くということにより目覚めていくのではないか。それが生態系の崩壊には決してなっていかないというふうに私は思う次第でございます。  そこで大臣、山道を移りながら途中で修正していけばいいとおっしゃいましたけれども、登山口を間違ったら全然違う出ロへ出てしまう場合もあるのです。一番最初のときに、スタートのときにどこの山に登るかということをきちっと見定めておかないと、あれほど完全武装した植村さんだって亡くなったのですから、登山口を間違って、最初に十分な審議もできずに、考えずに登山口を登っていく、そんなことで日本の国民が、全女性がついていくわけにはなかなかいかないと私は思うのですが、大臣は、この法律制定されるについては、見直しという点については規定化し明文化されていくのでしょうか、そうでないのでしょうか。いかがでしょうか。
  220. 坂本三十次

    ○坂本国務大臣 今のスタートしようというベースキャンプにはそう大きな間違いはない、私はそう思っておりますが、あなたのおっしゃるように、歩きながら考えておったらもうちょっといい道があったという小規模修正は、これはあり得ることだろうと思いますよ、余りやったことのないことを日本で初めてやるわけですから。それは時代の変化もありましょうしね、皆さんのいろいろな御意見もだんだん生まれてくるだろうと私は思います。特に女性の方から生まれてくるんじゃないかな、積極的な意見が出てくるだろう、それほどの意欲も期待をいたしておるわけでございますが、しかし何さま、それも五年も十年も歩いてみての話ならわかりますが、今のところ、何年歩いたところでどんな修正があるかというようなことは、ちと予見が早過ぎるのではないか。しかし、そういう事態になれば謙虚に皆さんの御意見を聞いて、そして軌道修正することもやびさかではないと思いますが、今スタートする、まだしていないわけですけれども、するかしないかで、何年先のこういう事態に対してこういうこともあり得るからひとつ軌道修正をするということで、今直ちにこの法案の中に見直し規定を入れるということはちと早いのではないかな、こう思っております。
  221. 森本晃司

    森本委員 そのとおりだと私も思います。それだけに、見直しということではなくして、十分に論議を尽くしていただきたいと思います。仮に見直し規定がこの中に入れられるといたしましても、公職選挙法で五年に一回国勢調査をやって見直しをやるんだというふうにこれも明文化されていますが、全くその実効性が今日までないわけでございまして、途中で見直す、徐々に軌道修正するという考え方もあるかと思いますけれども、どうかそれ以前に十分にここで、この場で論議をお願いしたい、このように思うわけでございます。  時間がございませんので、次に組織改革についてお尋ね申し上げたいと思います。  都道府県の職業安定課、それから雇用保険課、都道府県の労働基準局と婦人少年室、これらが今度統合して、そして都道府県労働局が新たに設置されることになりますが、先ほど大臣もおっしゃいましたように、今日本の大きな、かつてなかった歴史にぶち当たるわけでございまして、そのときに婦人少年室が外される、統合されていくことは私はいかがかなと思うわけでございまして、むしろ、女性の労働者の労働問題についての専門的機関として、独立した機能を持たせた方がはるかにいいのではないだろうか。こういうときでございますし、非常に歴史的な一つの流れに入っていくわけでございますので、婦人少年室の扱いについて私はそのように思いますが、いかがでございますか。     〔丹羽(雄)委員長代理退席、委員長着席〕
  222. 赤松良子

    ○赤松政府委員 都道府県労働局の設置は、臨時行政調査会の最終答申に基づきまして、これまで地方で労働行政を担当してまいりました労働基準局、婦人少年室、そして都道府県にございました職業安定行政を統合して、都道府県労働局にするわけでございますが、この中に婦人少年室が入りますことは、決して婦人少年室の機能が縮小するわけでも、ましてやなくなってしまうわけでもございません。都道府県労働局の中におきましては、基準行政、職業安定行政と従来よりもより密接な連携を保つことができるわけでございまして、そういう中で婦人少年行政が展開されるということは、今までよりもより強力になるというふうに私どもは考えております。
  223. 森本晃司

    森本委員 今回こういった雇用均等法という新たな法を制定し、特に女性の差別をなくす期待にこたえる意味からも、私は独立した方がいいのではないかなというふうに思っておる次第でございます。  さらに、労基法の第百条の二でございますが、ここに勧告とか文書閲覧とか調査が規定されておりますが、これらの機能は、仮に統合されたとして、私は統合されない方がいいと思いますが、これらの権限や機能はどうなりますか。
  224. 赤松良子

    ○赤松政府委員 御指摘の労働基準法百条の二につきましては、これは従来は婦人少年局長が持っていた権限でございますが、組織改正に伴いまして婦人局長のものとなり、御存じのように七月一日から私の職名は婦人局長でございますが、婦人少年問題を担当する局長のものになったわけでございますが、これが地方労働局ができた場合にも、婦人労働者に特殊な問題についての勧告権は維持されるものと存じますので、御心配のような点はないと思います。
  225. 森本晃司

    森本委員 権限が弱まったりしますと、こういうときでございますので大変でございますので、ぜひ権限が弱まらないように、ここは婦人局長の赤松局長にもさらに頑張っていただかなければならないと思う次第でございます。  それからさらに、もう一つ行革に絡んでの問題でございますが、地方労働基準審議会と地方職業安定審議会が統合されることになっておりますけれども、これを存続させて、婦人問題の専門家を委員に加えて、運営を強化充実することによって、平等法、均等法の制定の期待にこたえることができるのではないかと思いますが、その点についてもいかがですか。
  226. 赤松良子

    ○赤松政府委員 御指摘のように、地方労働基準審議会と地方職業安定審議会は、現在二つの個別の機関としてございますが、地方労働基準局ができればこれを統合するということになっておりますが、これにつきましては、現在御審議中の法案の中の婦人少年室におきます調停委員会が、地方労働局ができましたならば地方労働局の附属の調停委員会になる、こういう予定でございます。したがいまして、一つの局の附属機関でございますので、効率化の見地から、既にあります二つの審議会は統合し、新たに調停委員会を設ける、このような予定にしているわけでございます。
  227. 森本晃司

    森本委員 次に、女子労働者の就業に関する援助という点についてお尋ね申し上げたいわけでございますが、第二十五条「再雇用特別措置の普及等」というのを掲げまして、再雇用措置について今回挙げられております。また、第二十八条「育児休業の普及等」という項目で育児休業制度が挙げられておりますが、私は、妊娠して出産して子供を育てていくという女子労働者が働き続けるためには、母体の保護が非常に大事であり、また、その回復と保育のための十分な産前産後の休暇が保障されなければならない。それが保障されていくことによって、安心して女性も赤ちゃんを生むこともできるし、また仕事にも力を入れることができると私は思うのですが、今回のこの法案を見ておりますと、これは考え方によると言われるかもわかりませんけれども、私はどうも並列的にこの両制度が取り上げられているように思われるわけでございます。  私はまず、「育児休業の普及等」というこの二十八条こそ第一義であって、そして、再雇用制度というものはそれがどうしても達せられなかった場合の補完的な制度としてあるべきではないだろうか。これによって女性の労働条件が随分変わってきます。再雇用が優先されるならば、おなかが大きくなってやめてしまう、そして再雇用で新たに職場につきますが、そのときの労働条件は以前勤めておったときと比べて随分低下していくと思われるわけでございます。したがって、この育児休暇というのを第一義主義できちっともう一度、あなたが産前六週間、産後八週間、このきちっとした時期をやってくるならば、もう一度私の企業で子供を生む前と同じ条件で雇いますよ、また雇わなければならないというふうになっていくべきだと思うわけでございます。それが事業主の恣意のままにされておりますと、やめる、また再雇用、安い賃金からスタートしなければならないという状況になるかと思いますが、いかがでございますか。
  228. 赤松良子

    ○赤松政府委員 産前産後の休業につきましては、今回の改正におきまして、産後の休業を六週間から八週間に延ばし、かつ、妊娠、出産を理由とする解雇などを禁止するという新たな条文を設けたところでございまして、母性保護の観点からの保護は、今回の改正によって相当充実したものというふうに考えられると存じます。  それから、育児休業と再雇用制度との関係につきましては、育児休業制度が働きながら子供を育てるという方にとって非常によい制度であるということを私どもつとに考えてきたところでございまして、昭和四十七年の勤労婦人福祉法の中で初めて育児休業を規定して以来、引き続きその普及に努めてきているわけでございます。  今回、再雇用制度につきまして規定いたしましたのは、このようないろいろな制度に並んで、再就職をしたいという方に対する援助というものは、やはり現在の社会の状況の中では一つの有効な措置ではないかというふうに考えたからでございます。育児休業をやめて再雇用あるいは再就職を保障するというようなことを考えているわけではございませんで、いわば女性の働き方の選択の幅を広げようという趣旨にほかならないわけでございます。  御存じのとおり、女性が子供を育てる期間しばらく仕事から離れるという実態は今もなお変わらずあるわけでございまして、この方たちが再就職をしたいと思ったときに大変不利な条件になるというのは、先生のただいま御指摘のとおりでございますので、その不利な点を少しでもカバーできるように、技術が衰えていればそれをリフレッシュするとかいろいろな方法で、再び職場に復帰するときの条件が今までよりもより有利になるようにということを考えた制度でございます。いわば育児休業を進める場合と基本的には同じような考えに立っているわけでございまして、どちらかをより重くするというわけでもございません。選択の幅を広げるというふうに御理解をいただきたいと存じます。
  229. 森本晃司

    森本委員 次に、第三十三条の問題についてお尋ね申し上げたいわけでございます。  「労働大臣は、この法律の施行に関し必要があると認めるときは、事業主に対して、報告を求め、又は助言、指導若しくは勧告をすることができる。」という第三十三条がございますが、これは職権で行う非常に積極的な行政指導でございますし、運用の仕方いかんによっては非常に重要な役割を期待することができるわけであります。しかしながら、行政指導の前提たる事実調査に関する権限がこの法文を見ますと極めて不十分ではないだろうかと思われます。ゆえに、この行政指導を行う際の立入検査あるいは書類の提出あるいは関係者に対する尋問を行う権限等を与えてはいかがか、また理由なくそれを断る場合には何らかの制裁措置を加えてはどうかというふうに考えるわけでございます。せっかくのこういった重要な役割、また職権で運用できる法文ができ上がっているわけですが、いまひとつ詰めていただきたいと思うわけでございますが、いかがでございますか。
  230. 赤松良子

    ○赤松政府委員 御指摘の均等法三十三条でございますが、これはこの法律の施行に関して包括的に定めた規定でございまして、この活用によって婦人少年室長はいろいろな仕事ができるのではないかというふうに考えている次第でございます。しかし、その仕事の内容はあくまで助言、指導、勧告、そして調停委員会の事務局の役割を果たすというような、婦人少年室長の業務を遂行するといういうことでございます。法律の目的から申しましても、これらの機能を果たすためには、余りに強力な手段、例えば強制的な立入検査だとか強制的な尋問だとかそういうことをつけるというようなことは、目的と手段との相当性ということからいかがなものかと存じまして、今のような程度の権限の付与にしたものでございます。
  231. 森本晃司

    森本委員 ちょっと時間がなくなってまいりましたが、私、次に申し上げたいことは、今回の改正法案で男女均等の機会を与えると先ほど大臣からお答えいただきました、労働基準法の改正の問題でございます。この点について少しいろいろと御意見を伺っておきたいと思うわけでございます。  この労働基準法の改正、これは一部の人からよく、これこそ改悪だ、さらに女性の労働条件を悪くしていくんだというふうに言われるわけでございまして、私もこの労働基準法の改正の中をよく読めば読むほど、これは確かに労働条件が非常に悪くなっていくなというふうに実感せざるを得ないわけでございます。これは、非常に劣悪な男性の労働条件の中に、先ほどからも問題になっておりました、世界でも冠たる二千数百時間の労働時間を有する我が日本男性群でございますけれども、その条件女性の労働条件も巻き込んでいくことはやり方によっては十分にできるというふうに考えられるわけでございます。特に労働時間の問題、それから休日、深夜業、それから坑内作業等の点々にそのことが見られるわけでございますが、これは今の婦人差別撤廃条約の精神に逆行していっているんではないだろうかというふうに私は思うわけでございます。  そこで、けさほど参考人の方に、私が、労働基準法を改正しなくて留保したままで条約を批准することができるのかどうかというふうに伺いましたら、田辺参考人でございましたが、労働基準法を改正せずしても批准はできるというふうに答えていただきましたし、外国にもそういった例があるんだ、オーストリアかオーストラリアかちょっと聞き取りにくかったのですが、その例を引いて答えてくださいました。  私は、この労働基準法を改正することはむしろ改悪なんで、それは留保したままで、むしろ雇用均等の部分だけで今回のものを進めていって、そして条約を批准すべきではないかと考えたわけでございますが、いかがでございますか。
  232. 赤松良子

    ○赤松政府委員 田辺参考人はオーストリアが深夜業に関して留保をつけて批准をしているというふうにおっしゃったと思いますが、それは私どもも承知しているところでございます。  一般論といたしまして、条約はある部分について留保をつけて批准するということは不可能なことではないと存じますが、日本政府は、これまでこの条約に関して、批准する場合にはできる限り留保なく批准をするということを何回か申してきたところでございますし、また、民間団体等からも完全批准という要望が強く出ているということも承知しているわけでございまして、できる限り留保することなく批准を行いたいというのが私どもの念願でございます。
  233. 森本晃司

    森本委員 それでは、その中の問題点を数点挙げさせていただきます。  労働基準法の中で私は非常に厳しいなと思ったのは、労働時間及び休日、第六十四条の二の件でございます。これは先ほど土井先生の方からも御意見が出ておりまして、相当論議になった点でございますが、私もお尋ね申し上げたいと思います。  従来の基準法の第六十一条では一日について二時間という範囲がございましたが、これがなくなったわけでございます。そうすると、そういう例があるとかないとかの問題ではなしに、逆に考えて、一週間に一日で最高何時間働くことができるんでしょうか。  それから、ここに「六時間以上十二時間以下の範囲内で命令で定める時間」とありますが、これは午前九時から午後十時までだと思いますが、四週間に一体何日、その目いっぱいの労働時間を働くことができるのでしょう。  さらに、そういう考え方に立っていきますと、二時間が外れた労働条件の中で一年間に一体目いっぱい何日働けるようになるのでしょうか。ちょっとお答えいただきたいと思います。
  234. 野崎和昭

    ○野崎説明員 まず工業的業種の件でございますけれども、一日二時間が外れまして一週六時間の制限が残りますので、それを一日に集中してやりますと八時間プラス六時間で、一日十四時間できることに。なります。ただし、その週のほかの日は時間外労働ができないということになります。  それから、二項の非工業的業種の場合は、具体的範囲はこれから省令で決めるわけでございますけれども、仮定の問題としまして、ある事業について最高限の四週四十八時間という省令が決まりました場合に、その事業につきましては、それを全部一週間に集中してやれば一週四十八時間ということも観念的にはあり得ると思います。しかし、他の週は一時間も時間外労働ができないということになるわけでございます。  一年につきましては、工業的業種については年間百五十時間という制限がございまして、これは一週六時間掛ける五十二倍よりは相当短くなっております。したがいまして、何日何時間できるかというのはちょっと計算が難しゅうございますけれども、百五十時間の制限があるということでございます。
  235. 森本晃司

    森本委員 一日で十四時間、ほかの日は働けないとしても、一週間の間に一日十四時間女性が働けるようになりますと、それを強要する企業あるいはそういう条件が起き得ると私は思いますね。また四週間で四十八時間、年間百五十時間とおっしゃいますけれども、それでいきますと、一日三時間の残業をしたとしたら何日間いけるのですか。
  236. 野崎和昭

    ○野崎説明員 年間につきましては、ちょっと違った見地から時間外労働時間の総数が抑えられているわけでございます。それが百五十時間でございます。一週六時間の制限がございますので、年間五十二週としまして、それを毎週毎週限度いっぱい六時間ずつやったとしますと、年間で三百時間できることになります。しかしそれを、そういう状態よりはさらに厳しく、年間を通して見ればその半分程度の、百五十時間以内に抑える、そういう規定になっておるわけでございます。
  237. 森本晃司

    森本委員 百五十時間で抑えるということは、非常に悪用して、一日三時間とかあるいは二時間を平気でずっと延ばしていきますと、七十五日くらいは残業できるのじゃないですか。
  238. 野崎和昭

    ○野崎説明員 私の説明が不十分だったと思いますが、一週六時間の制限と一年百五十時間の制限は両方かぶるわけでございます。したがいまして、どちらかの限度にかかりますと、そこで時間外労働はできなくなるという関係でございまして、先生御指摘のようなことはないと思います。
  239. 森本晃司

    森本委員 最大限のところでやっていきますと一体何日まで残業することが可能かということを、一度計算して教えていただきたいと思います。これをやりますと、私は家庭は崩壊に近づいていくと思いますね。一年間のうちの相当な日数残業することができる。できるということは、非常にいい言い方をすれば、労働者から見ると、残業することができて残業手当が入るから収入がふえるように見えますけれども企業側に残業しろと言われるとこれは残らなければならない。一日二時間の法律が外れたのだから、あなたはどれほど残ってもやってもらわなければならない、法律に違反ではないのだということになっていきますと、まさに家庭に崩壊が起きてくるのじゃないだろうか。ましていわんや、零歳児の保育施設等々が全く十分でないようなところにおいては、ますますその状態が厳しくなってくるのじゃないかと思います。なぜ一日二時間を外したのか。これは大変な大きな問題でございますので、その点よく御検討いただきたいと思います。  時間が参りましたので、ちょっと急ぎます。  その第四、項のところで「労働者の業務の遂行合指揮命令する職務上の地位にある者又は専門的な知識若しくは技術を必要とする業務」というふうにございますが、「労働者の業務の遂行を指揮命令する」というのは管理的業務者の意味でございますね。それから、専門的な知識、技術を要する人たちというのは専門職だと私は理解しておるわけでございますが、この人たちの残業はどうなっていくのですか。
  240. 野崎和昭

    ○野崎説明員 こういう管理職的な方、それから専門職的な方につきましては、女子に関する時間外労働の制限が適用されなくなりまして、男子と同じ基盤で働くという状態になるわけでございます。
  241. 森本晃司

    森本委員 第三次産業の人たちが非常に多くなりますね。女性は第三次産業につく人が圧倒的に多い。七〇%ぐらいは第三次産業ではないかと思うのですが、第三次産業の管理職あるいは専門の人たちは無制限になるわけですね。そういうことになりますね。ソフトウエアの仕事の関係の人は、この中の専門職に当てはまるかどうかということをお聞きします。
  242. 野崎和昭

    ○野崎説明員 コンピューターシステムの設計に当たる方はシステムエンジニアとかプログラマーとかいろいろな方がいらっしゃると思いますが、審議会におきましては、システムエンジニアについてはここで言う専門職の対象として検討をするという論議が行われていると承知しております。
  243. 森本晃司

    森本委員 プログラマーも同様ですか。
  244. 野崎和昭

    ○野崎説明員 プログラマーとシステムエンジニアとの境界というのは一義的になかなか決められないようでございますが、そういった点も含めまして審議会で検討されるものと承知しております。
  245. 森本晃司

    森本委員 今回の労基法の労働時間の問題で、専門職、管理職の人が無制限になっていくということは、非常に厳しい労働条件に追いやられると私は思うのですよ。  今、なぜこういうソフトウエアの人たちのことを伺ったかと申し上げますと、「労働の科学」という雑誌の四月号にソフトウェア労働者の派遣の実態が書かれているのです。これを見ますと、これは男女合わせてでございますけれども、派遣者で、一年間に月平均五十時間以上の残業をする人は二一%、六十時間以上の人は五二%、九十時間以上残業する人が二九%あるというのです。それから徹夜作業に従事する人は、派遣者で、月平均五回以上の徹夜作業を行う人が五・六%、十回以上の徹夜作業をやる人が三・七%でございます。また、健康であるかどうかという意識調査についての回答は、健康であると感じている人は、派遣者は七・二%。これは組織されているところでございまして、未組織のプログラマーで健康であると感じている人はわずか三・六%、視力が落ちたという人は六二・一%というデータがございます。  本当は、この問題も時間があればやりたいわけでございます。それは審議会で検討されると言われますけれども、専門職、管理職ということで同じだけの労働条件になっていってしまったときに、本当に私はこれは改悪の部類の中に入っていかざるを得ない、そのように思うわけでございます。どうか、この労基法の改悪については十分に検討いただいて、一たんこれは切り捨てていただくというくらいにまでしていただきたい。  あと、坑内労働者の中における看護婦さんが危険な作業の中に入っていく問題は、これは看護婦、医者は入るのかどうかという問題もございますけれども、そういった点等々、この労基法の改正については相当数多くの問題がございます。歴史的な日本の流れの中でございます。どうか、今後十分慎重審議をいただきますことをお願いいたしまして、時間が参りましたので質問を終えさせていただきます。  以上でございます。
  246. 有馬元治

  247. 小渕正義

    小渕(正)委員 現在審議されているこの雇用均等法案でありますが、それぞれの立場から、非常に不満で不十分な点が論議の中でいろいろ出されております。しかしながら、過去五年有余それぞれの審議会の中で議論されてきた、そういう経過だけはそれなりに尊重されなければならないとは思います。そういう点で、具体的にこの問題についていろいろと入り口的な論争が行われているわけでありますが、今回の法案は、中身はいろいろありますが、結果として我が国の社会的な意識革命に大きな影響を持つ法案だと私は思います。そういう点で、男女差別の制度的なものについては、それが禁止規定であろうと努力規定であろうとも、かなり改善されるのではないかという期待を私なりには持つわけであります。  そういう中で、このたびのこの法律案を見て、一つのポイントは、そういう制度的なものについては、例えば女子結婚退職なんかは差別だし、妊娠による退職は明らかに差別であるし、そういった制度的な面についての問題は、第三者的にも客観的にも立証できるわけでありますので、割合処理は可能かと思います。問題は、今回のこの規定の中でも特に雇用管理の中における昇進、配置または教育訓練といったところが、いかに実を持ったものになるかどうかということが一つのポイントではないか、私はかように思うわけであります。そういう意味で、この法案の中ではこれらのものがすべてガイドライン、指針によって任されるということになりますので、それらの指針がどういう形でつくられていくかが非常に大事な点だと私は思います。この指針次第ではまさにこれがしり抜け的なものとなり、すべて中身は空っぽということになりかねないわけでありまして、そういう点で、具体的な問題として労働省としてどのような見解をお持ちかお尋ねいたしますが、実は昇進、配置の問題についてちょっと取り上げてみたいと思います。  この昇進という問題は、配置と無関係ではあり得ないと思います。やはり配置においてある程度の差別が行われておれば、それが当然昇進にまた影響してくるわけであります。そのように考えますならば、配置をどのようにするかということは極めて大事な問題でありますが、この配置を例えば男女差別で行われておるかどうかということについて、これまた極めでいろいろな見方があるわけであります。  端的にお尋ねいたしますが、配置の中で、婦人の方は主婦という立場からいろいろ家庭的要因をお持ちでございますので、そういう特殊的な性格というか、その人が持たれている主婦的なもの、男性が持ち得ないそういったものを、配置の中でも当然それは特殊なものとして考慮されていいものかどうか、考慮すべきかどうか。その点はひとつ具体的なものとして、現在の労働省のこれに対する御見解をお示しいただきたいと思います。
  248. 赤松良子

    ○赤松政府委員 これまでの雇用管理におきましては、女性が結婚をしているあるいは子供を持っているというような場合には、それを考慮して余り激甚な仕事にはつけないとか、あるいはなるべく早く帰れるようなところへ配置するとか、そういうような考慮は一般的に行われている場合が多いのではないかというふうに思います。それはそれで決して悪いというわけではございませんが、しかし、それが余りにそういうことをしなければならないということになりますと、これは均等な機会という面からは矛盾を起こすのではないかというふうにも思いまして、それを考慮すべしということを「指針」の中で書くということは若干問題なのではないかというふうに思います。
  249. 小渕正義

    小渕(正)委員 そういう家庭的ないろいろな、主婦という一つの仕事をお持ちでありますから、今までのお互いの今日までの配慮からいけば、特別といいますかそういう配慮をしながら、どうしても女性は配置の中においてそういう考慮がされてきた。しかしながら、営業とか企画とかいろいろたくさんな仕事がありますが、そういう中でそういった考慮をして配置するがために、昇進のときに、今度は、そういった職務についているがために他の男性と比較すると昇進の道がどうしても差がついてくる、こういう状態にまたならざるを得ないことにもなろうかと思うのです。そうなった場合に、女性ということよりも、家庭的な、主婦的な要因を持っておられるがゆえに配慮した、配置の中でそういう配慮をしたがゆえに、今度は、いろいろな職務をやられたほかの男性との比較においては、どうしても昇進という場合において一つの差が出てくる、こういう問題になっていくのは私は必然だと思うのです。  そういう点からいきますならば、この昇進と配置というのは非常に大事な問題でありますし、それだけに、そういった女性的な、特殊じゃない、当たり前でしょうけれども女性男性と違ったそういういろいろなものを持っておられるがゆえの配慮をすべきじゃない、こういうふうになりますと、今度は、女性のそういう家庭的ないろいろお持ちの方については、男性と同じような職務にはなかなかつきがたいという面も出てくるのじゃないかと思うのです。ここらあたりの両立という意味で、これは非常に大事な問題でありますし、こういった点が指針の中でどのように生かされていくのか、どのような判断を示すのか、この均等法の努力規定の中において本当にこれが生かされたようなものに運用されるのかどうか、私はこれは非常に大事な点だと思うのです。そういう意味で、そういう昇進との関係についてはどのように御見解をお持ちですか、お尋ねいたします。
  250. 赤松良子

    ○赤松政府委員 先ほど配置のところで申し上げましたように、女性が家庭、家族を持っている、とりわけ小さい子供を持っておるということが配置の際に余りに配慮されますと、そのことがかえって機会の均等の妨げになる、こういうことは昇進の場合にも言えると思います。昇進をするということはやはり責任が重くなるということでございますから、それが管理職になるという場合ではなおさらのことでございます。管理職になれば、先ほど来話に出ておりますような労働時間についても、いろいろと従来とは変わった取り扱いを受けるということにもなるわけでございまして、その場合に、家庭責任があるからそういうことはさせない方がいい、そういう職務につけない方がいいということになると、これは差別につながるということにもなりまして、非常に難しいわけでございます。そういう従来から配慮されてきたことを直ちに配慮の外に置く、しかもそれを強行法規でもって急激にさせるということによる摩擦というものも考えられるわけでございまして、その二つの要因をどのように調整をして考えるかということは非常に難しい問題だと思います。
  251. 小渕正義

    小渕(正)委員 非常に難しい問題ですが、この難しい問題を今度法律できちっとしていこうとしているわけですから、そこらあたりを、観念的な議論じゃなしに、もっとしっかりと労働省としても考えていかなければいかぬのじゃないかと思います。  私が男だから言うのじゃございませんが、男性の場合には非常に無理がききます。営業その他の職務次第では夜遅くまで残らなければいかぬような事態が発生したときでも、そういう関係の中でのいろいろな仕事をやる場合に、どうしても女性と比較いたしますと無理がきく、時間外の規制余りないという形で、どうしてもそういった職務については男性中心にならざるを得ないということにもなりかねないと思います。だから、そういった男性中心の職務もありますが、同じ職場内で見たら、昇進の場合にこれがまた一つの大きなファクターになるということで、今難しい問題だとおっしゃられましたが、これはもう今すぐ起こり得る問題でありますので、今まではそれで済まされたかもしれませんが、今からはここらあたりに対しても何らかのきちっとしたものを持っておらないと済まされなくなるという意味で、これは「指針」の中で十分議論されるでしょうけれども、労働省としてもこの点はしかと見きわめていただきたいと思います。  それで、あと一つお尋ねいたします。  男性の中には、皆さんいろいろと職務によって違いますが、単身赴任という問題がございます。いろいろな職務について、大体それぞれの会社の中において、現在は家庭で子供さんの進学その他のこともございまして、泣く泣くといいますか、単身赴任されていくという状況が、今日のサラリーマン社会の中では普通の状態としていろいろと発生しておるわけであります。同じ職務の中で女性の場合に、しからば転勤を命ぜられたときに、家庭のそういったいろいろな、主婦だというような事情もありますから、家庭まで壊すことになりますから、転勤を拒否した場合に、正当な理由として転勤を拒否したかどうかは会社の就業規則にもよりますが、常識的な今の会社の状況の中では、少なくとも社会的な公正としての理由がない限りにおいては、そういった転勤をいろいろな家庭その他の事情の中で拒否した場合には、会社をやめざるを得ないような状況が発生しておるのが普通の状況だと思います。そういう意味では、社会的な公正を得られるかどうかということになりますが、または余人にかえがたいものかどうかということにもなりましょうけれども、そういう男子と同等な職務の中で転勤を命じられる、転勤を命じられた場合に、家庭的な事情を背景としてそれを拒否する、そうした場合に解雇される、そういうことについて、それは家庭的な事情として、理由として許される、認められるべきものに入るかどうか、そこらあたりについての御見解はいかがですか。
  252. 赤松良子

    ○赤松政府委員 お答え申し上げます。  転勤につきましても、先ほど来申し上げているのと類似の問題が起こってくるように思うわけでございます。女性だから、あるいは家族があるから一概に転勤をさせないというようなことがいいといたしますと、これは機会の均等に明らかに反するような状況が起こってまいると思います。一方、先生が先ほどおっしゃいましたような、勤められなくなるようなことをねらって転勤をさせるというようなことは、極端な場合には権利乱用というような問題も生ずるのではないかと思いますので、一概に今ここで申し上げることはちょっと差し控えさせていただきたいと思います。  いずれにいたしましても、女性は転勤をさせないというようなことはおかしいのではないかと思いますが、それを逆手にとってそういう権利乱用にわたるようなことは、これまたそういうことが裁判で争われれば、権利乱用あるいは公序違反というようなことも起こるかと思うわけでございます。
  253. 小渕正義

    小渕(正)委員 今いみじくも局長がおっしゃられましたけれども、今度のこれの運用の仕方によっては、私はこれはもろ刃の剣だと思うのです。男子と同等の職務につき、昇進もある程度なされ、そして転勤も、それぞれほかの男性の社員が転勤をするように、当然のこととして命じられる。そうすると、家庭的なそういった状況に置かれている方は、単身赴任というわけにはちょっと普通いかないわけでしょうから、そういう意味でやむなく退職せざるを得なくなる。そういう形の中でそれを意図的に、と言ってはおかしいですが、ある程度巧妙に、意図的に運用されて、ある程度年配のベテランの女性の人たちを排除していくといいますか、そういったことが行われる。これは、裁判までなって争えばその立証段階でかなり何年もかかりますから、そういう点いろいろ難しい問題がありますが、とにかく、この運用の仕方次第ではこれは本当にもろ刃の剣的な危険性を持っているものではないかという感じがいたします。したがいまして、今の局長の答弁ではこれ以上期待することができませんが、これも一面において非常に危険性がある、そういうことで、運用次第ではそういう危険性もあるということを頭に置かれて、このガイドライン作成の中で「指針」を検討されるときには、そういうもろもろのケースをある程度例示されながら、ひとつでき得る限り、これが曲解されたような形、変に悪用されぬような形で運用されなければいかぬと思いますので、そういう点でひとつよろしく問題は、「指針」がこの法律の柱だと私は思いますので、これについてはひとつしかと取り組んでいただきたいということをお願い申し上げます。  あと一つお尋ねいたしますが、先ほども配置の問題で申し上げましたが、やはり女性という立場から、どうしてもそういう家庭的ないろいろな要因を持っているから、ある一定以上の職務についてはちょっと無理だということで、会社も配慮する、女性側ももうそれくらいで自分たちはいいんだということで、みずからもそういう判断をされて、大体そこで理解、納得をされておる。そういうのが職場の一つの慣行的なものとして、お互いにそういうものが全部でき上がったような状況の中で、もしも、もしもという言葉は悪いですが、そういう中で実際に運用されて、結果的には集団として見た場合には、男性の職務はここらあたりまである、女性の職務はここらあたりまでだ、客観的に言えばそういう形ができ上がるとした場合、しかし、そこの職場の中では、それぞれの持っているそういうある程度のものをお互い考慮しながら、一応そういう状況の中でお互いがつくり上げてきた一つのものだ、こういうような形の職場というものはかなり今後も考えられると私は思います、現在もありますけれども。そういう場合においてはそれは差別の対象になりますか、どうですか。
  254. 赤松良子

    ○赤松政府委員 女性みずからが、機会の均等を求めて男性と同じような待遇を期待するということでなくて、つくり上げられている職場というのは確かにいろいろあると思いますが、そのような場合には、これはもともとそういうことが望まれていないわけでございますから、均等な機会というものも与えられないというのはやむを得ないのではないかと思います。
  255. 小渕正義

    小渕(正)委員 わかりました。では、あと一つお尋ねいたします。  女性に対する教育訓練の差別ということは、確かに現在の企業の中では、それぞれ職務に応じたという形で一定の職務にはめ込んでしまって、そのために必要な教育訓練が、男女必ずしも統一的に合理的にやられていないという面は現実にたくさんあると私は思います。したがって、今度教育訓練の中で、そういった点についてもかなり規制として出されていることは非常に前進だと思いますが、これもぜひ考えていただきたいのは、先ほどもちょっと触れられたような感じがいたしますが、職場で自発的な発意によって研修会をやろう、研究会をやろう、これはあくまでも企業の事業主が命じるのではない、使用者がやるのじゃない、しかしそのグループの中には中間管理職も入っていく。そういう中で特定の人たちが男子だけ集めてより必要なお互いの自己研さんといいますか、そういう名目の中で研修会等をどんどんやっていく。そういう意味において、職務の中身における教育の分野においてどうしても結果的に差が発生する、こういうことは今の産業社会の中では頭の中に十分置いておかなければいかぬと私は思います。現実に今でもこれに類するようなことがいろいろな形で行われております。  したがって、これはどこまでをそういった自主的なものとして認定していくか、これは非常に難しいわけでありますが、この点についてもきちっとしたものをお持ちでないと、こういった形の中で教育訓練が、社員としての資質の向上の分野において差をどんどんつくり出していくことになるのではないか、実はそういう懸念をするわけでありますので、この点に対してのきちっとしたものを労働省としてはお持ちなのかどうか、その点お尋ねいたします。
  256. 赤松良子

    ○赤松政府委員 教育訓練に関してのお尋ねかと存じますが、第九条で教育訓練につきましては「事業主は、労働者の業務の遂行に必要な基礎的な能力を付与するためのものとして労働省令で定める教育訓練について、労働者が女子であることを理由として、男子と差別的取扱いをしてはならない。」というふうに規定しているわけでございます。  そこで、お尋ねの自主的な参加というような形をとって勉強をするというようなことが、ただいまの九条の規定からいたしまして当てはまるとはどうも思えないわけでございます。したがいまして、この規定で禁止をしている差別だというふうには、今の御説明では、私どもとしてはこの規定の対象にはならないのではないかと思うわけでございます。
  257. 小渕正義

    小渕(正)委員 非常に難しい問題ですが、その点を野放しにすると、せっかくの法律が生かされない形になる可能性が非常にありますので、何らかの形のものが必要でありますから、ぜひこれは研究していただきたいということを特にお願いしておきます。  次に、話を変えます。今度の法案の中で、育児休業制度については余りというか、触れられてありませんね。もちろん審議会の中でいろいろ議論されているわけでありますが、今回、この育児休業に対する請求権を何らかの形で法案の中に盛り込んでもらえないかという大きな期待があったわけであります。これが全然盛り込まれてないわけでありますが、この点はいかなる理由によるものかどうか、その点をお尋ねいたします。
  258. 赤松良子

    ○赤松政府委員 婦人少年問題審議会の婦人労働部会におきましては、育児休業について法制化するべきかどうかということについては検討をいたしました。そうして、訴求権を法律の中で書くべきだという御意見と、それはまだ時期尚早であるという御意見とがございまして、多数意見といたしましては、まだ時期尚早ということで、建議にそのように書かれた経緯がございます。  なぜ時期尚早かということでございますが、育児休業につきましては、まだ現実にそれほど多くの普及がされているわけではございませんで、一割強という実態でございます。また、育児休業を実際に企業がやっていくには、なおいろいろ解決すべき問題もあるように考えられますので、当面はまだしばらく行政指導等によりましてその普及を進めていくという段階ではなかろうかということが審議会の多数の意見でございましたので、討議はいたしましたが、今回措置をした点といたしましては、事業主の努力義務に加えて国の援助という点にとどめたわけでございます。
  259. 小渕正義

    小渕(正)委員 時期尚早だ、普及率がまだ一割にも満たない程度だということでまだ盛り込まなかったということでございますが、ではしからば、政府は、この育児休業制度の普及のために具体的にどのような施策を講じられておられるのか、どういう取り組みをなさってこの普及の促進を努力なさっているのか、そこらあたりの状況をお聞きいたしたいと思います。
  260. 赤松良子

    ○赤松政府委員 お答え申し上げます。  育児休業の普及促進を図るための施策といたしましては、一つには、昭和五十年度から、雇用保険法に基づきまして雇用改善事業の一環として、一定の条件を備えた育児休業制度を実施することになった事業主に対して、奨励金の支給を行っております。奨励金の内容は、中小企業と大企業とで金額が違いますが、中小企業の方が多くて三十八万円、大企業が三十三万円となっております。  二番目に、業務教育詩学校等の女子教育職員及び医療施設、社会福祉施設等の看護婦、保母等の育児休業に関する法律の施行に関連いたしまして、これはいわゆる三職種といわれる特定職種の育児休業法でございますが、この法律が施行されましたときに、看護婦等の特定職種の勤労婦人に対しまして、育児休業の利用を容易にするための措置として、民間の事業主、つまり看護婦さんを使用しておられる民間の事業主に対して、昭和五十三年から特定職種育児休業利用助成給付金というものを支給いたしているところでございます。  また、昭和五十五年度からは、育児休業制度に関しまして相談、指導を行うために、都道府県婦人少年室に育児休業制度普及指導員というものを配置して、その普及に専念をしていただくことにいたしおります。  また、一般的な普及、啓発と申しますかそういうもののために、五十七年度、比較的新しい発足でございますが、育児休業制度普及促進旬間、これは毎年六月一日から十日までの十日間、育児休業の制度を広く知っていただく、そういう制度があって、それをできるだけ取り入れてもらいたいということの普及活動をしているわけでございます。ことしの旬間のポスター、あるいはお目にとまったかと思いますが、比較的好評のポスターでございました。
  261. 小渕正義

    小渕(正)委員 雇用保険事業の中で今申された二つの給付金制度があることは承知いたしておりますが、具体的に今これの適用対象事業になっている事業総数といいますか件数、そして総額的にどの程度そのためにお金が予算化されて使われているのか、その中身についてお知らせいただきたいと思います。
  262. 松原亘子

    ○松原説明員 育児休業奨励金につきましては、昭和五十八年度は予算額が七千六百五万円でございまして、これに対しての支出額が七千三百四十五万円となっております。その支出しました対象は、中小企業に対して百七十六件、大企業に対しては二十二件でございまして、それぞれ単価は、先ほど局長が申し上げましたように中小企業に対しては一件あたり三十八万円、大企業に対しては一件当たり三十三万円ということになっております。
  263. 小渕正義

    小渕(正)委員 これが一番最近の数字ですか。
  264. 松原亘子

    ○松原説明員 支出額は五十八年度までしか出ておりませんので、これが最新の数字でございます。
  265. 小渕正義

    小渕(正)委員 これを見ますと、中小企業の肩がわりはまだ率的にはわずかでありますが、大企業に比べると非常に中小企業中心に行われているわけでありますが、こういうせっかくの制度があるということで、それぞれの企業にこういった制度の活用ということではどういう努力をなさっておられるのか、そのための何かそういう活動費も使いながら取り組んでおられるのか、その現状を要約して御説明ください。
  266. 松原亘子

    ○松原説明員 育児休業奨励金を含みます育児休業普及のための指導といたしましては、先ほど局長が御説明いたしましたように、毎年六月一日から十日までを育児休業普及促進旬間といたしまして鋭意そこでPR等をやっておりますし、また育児休業相談員がございますので、その相談員等を通じましてこの制度の周知を図っているところでございます。
  267. 小渕正義

    小渕(正)委員 働く婦人にとりましては、この育児休業制度の普及ということは非常に大事な問題でありますので、これについてひとつもっと強力な取り組みができないものか。特に育児休業法というような一つの法律でも制定して、もっと制度として確立すべきではないか。このような働く婦人の団体の人たちの強い要望もあるわけでありますが、これに対して労働省としてはどのような見解をお持ちか、お尋ねいたします。
  268. 赤松良子

    ○赤松政府委員 労働省といたしましては、育児休業制度が働く女性にとって大変望ましい制度だというふうに認識をいたしておりまして、そのために先ほど来申し上げているような方法で普及を図ってきたところでございますが、今回の法律案の中では二十八条の中に、二十八条の一項は、従来からの勤労婦人福祉法の十一条の規定をそのまま受け継いておりますが、それにプラスをいたしまして二項を設けたところでございます。  二項の中身は、二十五条の二項の規定を準用いたしておりますので、その内容といたしましては、国は事業主に対して育児休業の普及を促進するため「必要な助言、指導その他の援助を行うように努めるものとする。」という規定でございます。この規定は初めて設けられたわけでございまして、これまで法律の根拠なしに国はいろいろとやってきたわけではございますが、今度の法改正によりましてこの点について確たる根拠ができたわけでございますので、これに基づいてさらに普及に努めたいと思っております。
  269. 小渕正義

    小渕(正)委員 この均等法案との兼ね合いで、もうこういったのはいいじゃないかという、そういった逆行的な雰囲気も発生するおそれなしとしませんが、こういった点については当然均等法との関係からいきましても充実強化する方向であらなければならないと思いますので、特にその点を強く申し上げておきたいと思います。  それから、前回の質問の中でちょっと時間足らずでお聞きし得なかった点でお尋ねいたしますが、パート労働について、労働省としてはパート労働要綱というかそういうものを現在検討中で、近いうちにまとめ上げて指導強化を行う、こういうお話しでありました。労働省としては、パート労働についてどの程度実態を握把されているのか、実はそこらあたりの状況を少しつかみたいと思います。  現在、パート労働者が超過労働をする場合に割り増し賃金等が確実に支払われておるのかどうか。それから、年次有給休暇がどの程度企業の中できちっと制度化されながらそれの消化がやられているのか。それから、パート労働者の労働保険その他への加入は実態としてどのようになっているか。その三点について、ひとつ労働省としてパート労働の現状について把握した状況を御説明いただきたいと思います。
  270. 野崎和昭

    ○野崎説明員 お尋ねのうち、まず超過労働の点でございますけれども、パートタイム労働者でございましても、法定労働時間を超えましたら割り増し賃金を払うべきことは当然でございますが、実態といたしましては、パートタイム労働者で時間外労働を行っている者は非常に少のうございまして、二割程度でございます。そして、その時間数も週で五時間程度でございまして、割り増し賃金を払わなければならない程度の時間外労働というのはほとんどないと思っております。  私どもといたしましては、パートタイム労働者というのは限られた時間働く方でございますので、法定労働時間を超えるような時間外労働をさせることは原則として好ましくないという考え方で指導をいたしているところでございます。  それから、年次有給休暇でございますが、年次有給休暇につきましては、従来解釈上与えるべきかどうかという点がございまして、制度的には普及がおくれておりまして、年次有給休暇制度があるのは大体三割くらいの企業であると承知しております。しかしながら、年次有給休暇制度のあるところにおきましては大体法定どおりの年次有給休暇が与えられていると承知しております。  なお、労働保険の関係でございますが、労災保険は当然全面適用になっております。雇用保険の問題につきましては私どもの所管ではございませんが、先生御承知のとおり一定の基準を設けまして、その基準に合った者について雇用保険の加入の促進に努めているところでございます。
  271. 小渕正義

    小渕(正)委員 時間も参りましたので、大臣に一言だけお尋ねいたします。  先ほどの前任者の御質問の中でも触れられておりましたが、あと会期末まで考えますと余り審議の時間がございません。もうきょうで三巡した質疑を今行っているわけであります。問題は洗えば洗うほどいろいろありますが、ともかく我々四党も、ある程度のものに絞ってああいうまとめた対案として出したわけです。だから、そういった一つの流れといいますか動きといいますか、そういうものもひとつぜひ考慮していただいて、何としてでもそういったものも十分考慮されながら、このあと残された期間の審議を本当に実のあるものにしながらこれを充実させなければいかぬ、かようにも思っている次第であります。  ただ、確かに長い御苦労の結果取りまとめられた案でありますから、それなりの御苦労は多とするわけでありますが、ひとつ大臣、あと一歩突っ込んで、私どもが申し上げている点をぜひ考慮の中に入れて取り組んでいただきたいと思うわけでありますが、その点いかがでしょう。
  272. 坂本三十次

    ○坂本国務大臣 四党案の考えの中にも、機会均等を熱望しておられることはよくわかります。ただ、政府案の方は、今までの出てきた意見を総合的に勘案して、そして機会均等、待遇の平等を実現するときには、ひとつ女性男性並みに働く意欲を労働条件、時間の点にも持ってもらわなければいかぬという点を考えておるというところでございます。  とにかく、歴史的な法案であって、何とかしてひとつ成立をさせていきたいという気持ちはもう皆さんと私も一緒でありますので、その点はまたいろいろとお話をぜひ聞かせていただきたいと思っております。
  273. 小渕正義

    小渕(正)委員 それでは、終わります。
  274. 有馬元治

  275. 田中美智子

    ○田中(美)委員 質問いたします。  まず、労働大臣官房政策課からパート問題のプロジェクトチームの検討結果について、昨年七月四日に報告書が出ています。これには「労働省の公式見解でない」というふうには言っていますが、中での方々の研究成果を公表したものだというふうに書かれています。この中にこういうことが書いてあります。「一般労働者として雇用されることを希望しているにもかかわらず、雇用機会の不足や採用条件面の制約等から短時間就労せざるをえないいわゆる非自発的なパートタイム労働者については、一般労働者としての雇用が可能になるように条件整備を図る必要がある。」と書いてあるわけです。つまり、今パートだけれども本採用になりたい人というものには、そうなるように条件整備を図る必要があるということが書かれているわけです。これには私も賛成です。  今、総理府の労働力調査によりますと、婦人労働者というのは数も中身も非常に変わってきております。これは総理府の労働力調査の数字ですが、昭和四十九年には千百七十二万人、そのうちパートが百八十四万人、昭和五十八年には婦人労働者は千四百八十六万人、そのうちパートは三百六万人、つまりこれで計算してみますと、婦人労働者の数はこの十年間に二七%ふえているわけです。しかしパートは六六%もふえているわけです。この数字は間違いありませんでしょうか。
  276. 松原亘子

    ○松原説明員 間違いございません。
  277. 田中美智子

    ○田中(美)委員 この数字を見ますと、パートの伸びが急激であるということを示しているのです。このプロジェクトチームの報告書を見ましても、企業のパート採用の意欲というのは非常に強く、パートはさらに増大するというふうに述べています。  これを実例で見ますと、これはハムの会社ですけれども、パートの率が非常にふえているわけです。テレビのコマーシャルでいろいろ出ております丸大ハム、丸大食品ですね。ここは全労働者の中でパートが七〇・八%と、正社員の方がずっと少なくなっています。それから日本ハムは五六・七%、伊藤ハムは三九・二%、プリマハムは二九・〇%というのが全労働者の中のパートの占める率なわけです。こういうものを参考にしまして、日本ハムは、五六・七%という半分以上のパートがいるにもかかわらず、丸大ハムに続けというかけ声で、つまり七〇・八%までもパートをふやせ、本採用を減らしていけ、こういうかけ声で躍起になっているということか言われているわけです。ですから、これは一つの企業の事例ですけれども、あらゆるところでパート化が進んでいるということは非常にはっきりしていると思います。  日本ハムの例を申し上げますと、この数字は、日本ハムの労働組合会社側に問いただして、会社側が示した数字に基づいているわけです。これは、本採用が総数で三千百一人、パートは千七百五十九人、五六・七%と先ほど言ったわけですけれども、その数字です。これを男女別に見ますと、男性の本採用は二千四百六十二人、男性のパートは百二十二人で五%です。ところが女子の本採用は六百一一十九人で、パートは千六百三十七人、実に二五六%、つまり二・五六倍も本採用よりもパートが多いということです。  労働省の出したプロジェクトチームの報告によってもパートの八〇%が婦人であると言っているわけですから、この二・五六倍のパートのうちの八〇%は女性だと見れば、パートは圧倒的に女性が多いんだというふうに言えると思います。企業の細かい動きなどを見ますと、パートが出勤しなければ仕事が始まらないというほどパートが重要な役割をしている。これは時間がありませんので略していきます。  それでは、このパートがどれだけ働いているかを計算してみますと、平均で六時間二十分です。特に残業の多いところ、食肉のところでは七時間三十分で、本採用の正規の従業員とほとんど同じように働いているわけです。  そういう中で賃金がどうなっているかというと、男子の正社員の平均賃金は年収四百四十五万円です。女子の正社員は二百八十七万円です。パートはどうかといいますと、労働時間はほんのちょっと短いかもしれませんが、年収百三十三万円です。パーセンテージでいきますと、パートの賃金は正社員の女子の四六%なんです。男性とパートを比べてみますと、実に二九%です。男性の正社員の二九%で働いているパートが半数以上になっている。それも七〇%、八〇%にふやそうとしている。こういう実態があるのです。  こういう実態を大臣はどのようにお考えになるでしょうか、簡単にお答え願いたい。
  278. 赤松良子

    ○赤松政府委員 ただいまの御質問は、パートタイマーの賃金と男子の賃金あるいは正社員の賃金との格差が大きいということでございますが、パートタイマーを希望してなられる方は、パートタイマーの持っている利点というものに着目して希望されるという場合も多いわけでございまして、パートタイマーの賃金が不当に低く抑えられているということであれば問題であると思います。
  279. 田中美智子

    ○田中(美)委員 確かにパートの方がいいという労働者もいることは事実です。しかし、ことしの一月に発行された「パートタイマー白書」の統計資料の中に、一般社員になりたい者を組合で調べたものがあります。これが電機労連では五九・八%、六〇%が本採用になりたいと言っているのですね。ですから、赤松婦人局長がそういうことがあるなら問題であると言うならば、この六〇%の人たちは問題な存在なわけです。なりたいのになれない。商業労連が二三・四%、チェーン労協が三五・八%、こういう数が出ております。  また、労働省のやった第三次産業雇用実態調査でも、これは五十四年と少し古いですけれども、それ以後やってないのじゃないかと思うのですが、正社員になりたいという女性が一七・四%も放置されて、まさに男の二九%、三〇%という低賃金でほとんど正社員並みに働かされているわけです。この中で、なぜ本採用になりたいかというのは、まず賃金があります。その次に、彼女らの言うことを聞いてみますと、日本ハムでは年休が本採用は八日、パートは七日しかない。生理休暇は本採用は一日有給、パートは無給。結婚休暇は本採用は五日有給、パートは三日有給。それから忌引は本採用は七日有給、パートは二日しか有給はありません。  それ以外にもいろいろな面があるわけですけれども、こういうことがあるからこそ、パートで何年も働いているという人たちは一日も早く本採用になりたい、こう言っている。パートでいる限りは正社員の女子の四六%ですし、男の二九%というところに甘んじているわけです。  昨年九月に、日本ハムの労組が労働省交渉をしたそうです。これは聞いた話ですが、そのとき野崎和昭労働基準局監督課長が、本工への登用は最優先にすべく指導している、このように答えております。どのように指導しているでしょうか。
  280. 野崎和昭

    ○野崎説明員 大変申しわけございませんが、そのようなことをお答えしたことは私、記憶がございません。実際問題といたしましても、その問題につきましては、プロジェクトチームの報告を受けまして、今後どのような方針で指導するかということを現在検討中でございまして、そのようなことを答えることはないというふうに思っております。
  281. 田中美智子

    ○田中(美)委員 これは聞いた話ですから私には真偽のほどはわかりませんが、今検討していると言うならば、本採用になりたいという人がどれだけいるかという調査を今やっていますか。第三次産業だけではないですよ、製造業も含めてその調査はやっていますか。簡単にお答えください。
  282. 松原亘子

    ○松原説明員 お答えいたします。  これは総理府の調査でございますが、昭和五十六年三月の、企業の中でパートタイマーと呼ばれている方を対象とした調査によりますと、いわゆる女子パートタイム労働者を一〇〇といたしますと、特に仕事を変わりたくないという方が六八・六%、変わりたいという方が三一・四%おられます。そのうち正規従業員に変わりたいという方は、そのもとの女子パート全体を一〇〇といたしまして一五・九%でございます。
  283. 田中美智子

    ○田中(美)委員 この検討は、どのように検討し、いつごろからそれを始めるということですか。
  284. 野崎和昭

    ○野崎説明員 労働省といたしましては、今年度に総合的なパートタイム労働対策要綱を策定するということで、現在関係の局で事務的な案を作成しているところでございます。これに基づきまして審議会の御意見をお伺いした上、できるだけ早く策定したいというふうに思っております。
  285. 田中美智子

    ○田中(美)委員 できるだけ早くというのは、いつでしょうか。八月というようなことを聞いておりますが、それは正しいのでしょうか。
  286. 野崎和昭

    ○野崎説明員 早ければ八月から秋口にかけても策定したいというふうに思っております。
  287. 田中美智子

    ○田中(美)委員 一日も早く検討して、本採用になりたいパートの人たちを本採用にするように、ぜひしていただきたいわけです。  今言いましたように、労働組合の交渉のときには優先的に指導していると言いながら、実際にはそんなことを言った覚えはないと。これは本当かどうかわかりません、過ぎ去ったことですから、証拠はありませんけれども。何かといえば労働省は、いつも行政指導をやっていますと言われる。そうした指導要綱をつくっても、つくっただけで何もやらないということでは、今までしばしばそういうことがあるわけですから、やる以上は徹底的にやってほしいのです。  例えば婦人週間にしても、婦人の地位の向上と言えば婦人週間、こうやりますでしょう。そうだとすれば、昨年、私は選挙のときに婦人労働者に訴えたのですけれども、例えばパート特別旬間みたいなものを十日間つくるとかそういうものをつくって、地方自治体や公共団体の協力を得て、国が積極的に集中的に企業に対したり、また、労働者に対してそういう道があるんだぞということを集中的にやるというふうな、こういう検討をしていただきたいと思うのです。いかがでしょうか。
  288. 赤松良子

    ○赤松政府委員 パート旬間をつくってやれというお話してございますが、そういうことも含めまして近い将来考えさせていただきたいと思います。
  289. 田中美智子

    ○田中(美)委員 ぜひ検討してそのようにしていただきたいと思います。  次の質問に移ります。  労基法のいわゆる政府の言う女子保護規定、私はそこも母性保護規定と思っておりますが、一応政府の言葉で言う女子保護規定、これをある程度取っ払ってしまうということになると雇用が拡大するというふうに言われておりますが、拡大するでしょうか。大臣、お答えください。−大臣、お答えください。そんなことさえ大臣はわからないのですか。拡大するかどうかということもわからないのですか。
  290. 赤松良子

    ○赤松政府委員 保護をある程度というふうにおっしゃいましたが、先生はいつも非常に徹底的に保護をなくすというふうにおっしゃっておられたかと記憶いたしましたが、きょうはある程度とおっしゃられたので少し安心いたしましたが、保護がなくなるということと就業機会がふえるということとは、それほど直接的な関係はないのではないかというふうに思っているわけでございます。  これに関しましてはいろいろな研究が従来からございまして、昔イギリスで工場法ができましたときに、そんな法律ができたならば女子の就業機会は非常に狭くなって、女子職場から追い出されるだろうという予言をした方もおりましたが、その後そのことに焦点を当ててした研究がございます。先生は詳しい方でございますから多分お読みかと存じますが、その研究の中でも、工場法と女子の就業機会とは直接関係なく、工場法ができても就業機会は狭くならずに、女子労働者はかえってふえているというその当時の研究がございます。  日本におきましてはそれに直接焦点を当てた研究は寡聞にしてまだ存じませんが、雇用機会と保護規定とが直接そのように関係があるというふうには私どもは理解しておりません。
  291. 田中美智子

    ○田中(美)委員 局長の言葉は非常にけしからぬと思うのです。私は、徹底的にあなた方の言う女性保護規定が全部なくなるなどということは一度も言っていません。あなたはいつも自分勝手なことを言っている。私の聞いていることに対して、例えばこの間のときでも、マージャン狂いがいるなどというような勝手なことを言う。たまたま自分の側近にマージャン狂いがいたからといって、そういうことをこの国会の場で言うなどということは実に不謹慎きわまりない。そういう局長の態度というのは、三日の私と十日の簑輪さんに対する態度にしても、私はもっとまじめに討議をすべきだというふうに思います。これは抗議として申し上げたのであって、すぐ質問に入っていきますが。  今、雇用の拡大があるかというのに対しては非常にあいまいですけれども、結局は雇用が拡大するだろう、こういう言い方だったというふうに思います。私もそのように思うのです。確かに雇用は拡大すると私は思っています。問題は、どのように拡大するかということです。  あなた方の言う女子保護規定というものが緩和されれば、残業がふえる、深夜勤もしなければならないという人たちが出てくる。そうなってきますと本採用ではなかなか働けない。これはこの間も言ったわけですが、働けない人が出てくるということを正確に言いましょう。出てくると思います。そうしますとパートにならざるを得ない。ですから、夜も昼もパートで働きたいという人たちはふえてくると思うのですね。昼間働けない、といって家庭に入ってしまうわけにはいかない、だからパートで働く。ということになりますと、先ほど申し上げましたように、パートは低賃金であり、各種の条件が悪いし、いろいろな権利がない。その上に不安定就労者です。こういう状態というのは特に企業にとっては大変好都合なわけです。安い労働力が幾らでも出てくるのではないか、女歓迎ということになるのではないか。私は、女の雇用が拡大する、絶対的に拡大していく、どんどん拡大していくというふうに思うのです、こんな法案が通ったら。ただし、それは不安定就労、低賃金だということです。もっとはっきり言えば、大きな企業ほど、雇用は女でなければならない、女こそ一番いいということになるのです。「悪貨が良貨を追放する」という言葉がありますけれども、まさにこういう形で、雇う方からすれば、男の二九%というような安いパートをどんどん働かせたい。今のように機械が発達して、いわゆる男の強い筋肉を使わなければならない労働状態というのはどんどん減っているわけですから、女でもいいんだ、いや、むしろ女の方がいいんだ、男の二九%で雇えるんだからということになれば、本採用の女性はどんどんパートにかえられていく。それだけではありません。男のパートがふえるでしょう。そうしていけば男の本採用も減らされていく、こういう方向を向くのではないかと私は心配するのですが、これに対して大臣はどうお考えになるでしょうか。
  292. 赤松良子

    ○赤松政府委員 先ほどの私の答弁は、保護法の改正と女子労働者の就業機会との関係は必ずしも明らかでないと、ふえるともふえないとも申し上げたつもりはないわけでございます。しかし先生は、私がふえるというふうに答えたというふうにおっしゃっているわけでございますが、そういうふうにお答えしたつもりはないわけでございます。私の理解がいつも悪いのか、その道なのかは議事録などで明らかになるかと存じますが、先々週の七月三日の議事録でも、つぶさに見させていただきましたが、私が必ずしも申し上げてないことをこうですねというふうに御確認になっておられるというところが一再ならず拝見されたわけでございました。きょうもその一つだろうというふうに思うわけでございます。  先ほどの私の答弁を繰り返しますと、保護法の改正ということと就業機会とはそれほどすぐに因果関係があるというふうには私には考えられないということを申し上げたつもりでございました。  それから、パートを希望するようになるという御指摘でございますが、パートの希望者がふえるということは、これは今までもふえておりますし、これからもあるいはふえるのではないかと思います。しかし、パートタイマーという労働の形態が、これまで労働市場を離れていて家庭にいた方が、新たに労働市場に復帰する場合には大変つきやすい仕事の形態だからではないか、そういう一面が非常にあるというふうに思うわけでございます。また、雇う側からも、パートタイマーとして雇用した方がいろいろな景気の変動にも対応しやすいという需要側の要請にもこたえ得る形態であるというふうに思われるからでございまして、労働基準法の保護規定との関係がそれほど強いというふうには私どもには思えないわけでございます。
  293. 田中美智子

    ○田中(美)委員 私の聞いていることに答えない。大臣、要らないじゃないですか、何も答えないでたばこだけ吸っているのでは。そうでしょう。婦人局長こそ私の質問に対してぴっちり答えたことがありますか。議事録をちゃんと見てごらんなさいよ。自分の昔のことを言ってみたり、マージャン狂いのことを言ってみたり、ふざけています。もう婦人局長、結構です。  私が言いたいのは、こういうことをしていれば全労働者の賃金がぐっと下がるということなのです。全労働者の待遇がぐっと悪くなることを言っているのです。ですから、こういう労働基準法の改悪をする前にまず雇用の拡大をしなければいけない、それには時間短縮をしなければいけない。例えば西独は千七百時間ですね。これ並みに日本でもし計算しますと、九百八十四万人も日本は雇用がふえるのです。これは本採用ですよ。フランス並にいきますと六百九十六万人ふえる。アメリカ並にしても四百三十八万人の正社員の雇用がふえるのです。こういう道をとらないで、今のような均等法を同会で通してしまえば、どんどんすべてがパート化していくのじゃないかと言っているわけです。極端に言えば、わずかな男子の管理者と、大量の女子パートによって日本の産業が動かされてしまうということは、男の正社員も駆逐されてしまうわけです。  それで、私は大臣にお話ししたいのですけれども、今男子の長時間労働がいかに健康破壊につながっているかということを、事例をもって少しお話ししたいと思います。  これはことしの二月二十一日、新幹線の上野の地下駅の設計担当技師がうつ病で鉄道自殺未遂をし、障害を受けた、これを労働省は業務上の災害として労災と認めた。これは非常に画期的なものだということで、新聞、テレビなどで非常に大きく反響があったわけです。この人がなぜうつ病になったのかということは、過酷な労働条件であったということを労働省が認めたわけですね。これは非常に当然のことだと思いますが、この過酷な労働条件を直さない限り、男たちがどんどんうつ病やいろいろな神経的な病気になっていく。  ことしの厚生省の調査でも、男性の平均寿命がほんのちょっとですが下がっています。寿命の数がずっとふえていたのにちょっと下がっている。これはなぜか。四十歳、五十歳の自殺が圧倒的に多いということで、厚生省が異常だと言っているわけです。ある損害保険の会社の労働者ですけれども、この方は三十二歳で自殺しました。この人の労働条件、時間だけ見ますと、六月が百二時間を超えています。七月が百五十六時間を超えています。八月二十五日に死ぬその直前までで、百四時間も超えています。そして、この方はうつ病で、鉄道自殺で死んでしまったわけです。  今コンピューター関係の職場はどんどん広がっていますが、一カ月二百時間の残業はさらに出てきているわけです。こういう中で、女子労働者も入っていますけれども、花形の先端を行く男たちが非常に気の毒な状態になり、精神的な病気や健康破壊が進んでいます。もし百五十時間残業をするとしますと、大卒の男子が定年五十五歳まで働いたとしますと、まさに三十九歳で五十五歳までに働く総労働時間を全部働き尽くしてしまうのです。まるで早送りのビデオのように、本来ならば三十三年じっくりかかって使う労働時間を二倍のスピードで使ってしまうということで、持続する緊張感と蓄積されたストレスで身も心もだめになってしまうという状態が出ているわけです。労働省は三六協定で五十時間ということをやっていますが、この五十時間でいつでも四十八歳までの間に全部使い切ってしまう。  これはある金融会社の統計ですけれども、これを見ますと、四十五歳までしか働けないと男の人たちが言っているわけです。これは実感と実際の労働時間が偶然のようにぴたっと一致しているということは、いかに過酷な長時間労働が男性を惨めな状態に追い込んでいるか、これに女性までくっつけていこうというわけですからとんでもないことです。  私は、きょうはちょっと観点を変えて申し上げたいと思うのですけれども、こういう男性が、せっかく花形産業にいながらもう働き続けられないということで、四十五歳ぐらいでやめてしまう、自殺をしなければやめざるを得ないということになっていく。そうすると、男が四十五、五十で再就職はもはや、まして本採用は大変だということで、せめてパートにでもしてほしい、今度は男性の側から、自分の健康状態に合わせてパートになりたいと言ったときに、パートの市場はすべて女が占めているのです、低賃金ですから。そうすると、男はパートにさえ拝んでも雇ってもらえないという状態になるのですよ。男はそういうところに追い込められていくのですね。まさに全労働者の生活が低賃金、不安定就労者の方に行くということです。やむなくやめてしまった男たちはパートにさえなれない。じゃどうするのか。六十五歳まで何とか働きたいと思っても働けない、こうした男性たちは泣く泣く家庭を守り、家事、育児に専念する以外にはなくなるじゃないですか。そういう方向に向くのです、この均等法をこのまま通したら。結局父ちゃんは失業、母ちゃんは昼夜パート、こういう状態になっていくことは明らかに見えているじゃありませんか。もし労働者が徹底的にこうした法案に抵抗する力が弱かったとすれば、こういう状態になると私は思うのです。大臣、お答え願いたいと思います。
  294. 坂本三十次

    ○坂本国務大臣 それはあなたの見方でしょう。しかし、雇用均等法が通ればそういう悲惨な状態になるということは私は言えないと思います。  ただ、あなたのおっしゃる中に、日本の男性は非常に働き過ぎだ、確かに最近の特に先端企業などについている技術者関係は、とにもかくにもドイツを追い越そう、そしてアメリカも追い越そう、そういう意識もあるせいでしょうか、お互いの競争も激しいでしょうが企業の競争も激しい、相当過酷な長時間労働をやっておるという話は聞いております。その点は労働省も、生産性向上の成果を、賃上げだけではなしに時間の短縮の方にも向けたいということで再三努力をしておる旨は申し上げましたが、とにかく日本人には勤勉の精神がどうも外回よりはあるようであります。それが行き過ぎますとそういう悲劇を起こしますけれども、この勤勉の精神を忘れるわけにはまいりませんが、そこは日本の労使関係というものは私は信頼すべきものがあると思っておりますので、そこへ行政指導も加えまして、適切な成長の上に適当な余暇もやはり必要ではないかなと思っておるわけであります。
  295. 田中美智子

    ○田中(美)委員 労働大臣の指導力が、本気でやろうとしていないということが、ますます男の平均寿命を下げるぐらい男の自殺、うつ病がふえているのじゃないですか。それを直さないでおいて、それをそのまま放置しておいて、そしてこんなおかしな均等法をつくっていくということは許せないというふうに思うのです。私のところにはこんなものは要らないという声がどんどんふえてきています。これは女だけの問題ではありません。男の問題をまず解決しない限りは、こんなものは絶対通してはならないと思うのです。今の大臣の御決意というものは全くないというふうに思いますが、何としても男の健康を守る、男の労働時間を短くするという御決意がありますか、お答えください。
  296. 坂本三十次

    ○坂本国務大臣 労働時間問題は男と女の区別はありません。これは男も女もそうであります。しかし、この男女の均等法というのは、女性機会均等と待遇の平等を獲得するためには、女性も、男性と同じ意欲のある方、能力のある方は、やはり労働条件も同じスタートで頑張っていただくということが原則であるということだけは間違いのないことでありまして、私は、今のパートのお話も、そういう現状がありましょう、その中にもやはりいろいろな矛盾もあると思いますよ。だけれども、それはやはり日本の労使がここでしっかりやって、労働省だって一生懸命やりますよ。一生懸命指導をしていきたいと思いますが、私はこの均等法によって時間短縮の問題は別ですよ、これはまさるとも劣らぬ大事な問題ですが、この均等法によって、これからどれだけ自覚した、しかも勉強を積んだ女性がふえてきて、女性の地位の向上と社会の発展のためになるかわからないという、それぐらいのロマン感を私は持っているわけであります。
  297. 田中美智子

    ○田中(美)委員 男と女の労働時間が一緒だということは、これは今労基法がある限り違っているじゃないですか。これだけはっきり言いまして、ちょうど時間になりましたので、残念ですが、これで質問を終わります。
  298. 有馬元治

  299. 菅直人

    ○菅委員 この間から、男女雇用均等法並びに野党提出雇用平等法の審議が進んできているわけですけれども、大臣に一つだけ、この間の審議を通して私が感じている問題で、ぜひお尋ねをしたいと思うわけです。  といいますのは、今回のこの法案の審議をしていて、無用にという言い方は変かもしれませんが、議論が非常に複雑になってしまう。なぜかと言えば、いわゆる政府案でいいますと、均等法に労基法改正を絡ませたことがこの問題を非常に複雑化している最大の原因ではないかと思うわけですね。つまり均等法ないし平等法と労基法という問題は、本来の性格からいえば別問題じゃないか。つまり平等法については、差別撤廃条約の精神を日本国内で実現するための雇用機会を平等化するという趣旨であって、労基法というのはまさに労働の最低基準といいましょうか、その中においての女子保護規定があるわけですけれども、その二つの性格の違うものを絡ませたところに、この法案の審議が大変に複雑化していることになっているのじゃないかと思うわけです。  もう少し話しますと、昨日、私は福岡に委員派遣で行ってまいりました。そのときにも、使用者側を代表する二人の公述人が出ておられて、私からも質問してみたわけです。つまり、現在の労基法の女子保護規定というのが使用者の立場で、企業経営の立場で何か非常に困ったことになっているのか、何か今早急に変えないとやりにくい問題があるのかという言い方で聞いてみましたけれども、必ずしもそれに対応するような話は出てこなかった。つまり条約の精神とか云々という話は出てきますけれども、直接、今の企業経営の状態の中で女子保護規定をどうこうしなければ困るという事例を言った方はいなかったわけですね。  それから、大臣は聞かれてないかもしれませんけれども、きょう朝の参考人との質疑の中で、台糖ファイザーの広報部次長の角田さんという、いわゆるキャリアウーマンの方の話の中でも、いろいろな女子保護規定が女性職場進出を阻止する口実に使われている、だから、あるいはこういうものはなくした方がいいのじゃないかということを角田さん御自身は言われていました。この方も今管理職だそうですけれども、少なくともこの規定があることで企業対応できないということはない、ただ、男性女性の進出を阻むときの一つの口実に使っている面があるということを参考人との質疑の中でされていました。  つまり口実としての労基法の出題はあるかもしれないけれども、それはそれで別に対応すればいいことであって、その口実に使うことによる差別を別の意味でとめればいいわけであって、女子保護規定があることが今の企業経営にとって、あるいは女性職場の実際上の行動について特に大きな問題があるというのは、昨日あるいはきょうの参考人の方の意見の中にも特に出てきた要素はないわけです。  そういう面からして、私は、今回の政府提案の均等法部分と労基法部分を基本的に分けて考えて、今回は、均等法部分といいましょうか、野党で言う平等法部分一本に絞ったらどうか。つまり、労基法については労基法としてほかの問題も含めて大いに議論すればいいわけですけれども、少なくとも今回のこの条約問題を含めた中での提案されている法案としては、均等法部分一本に絞ってしまわれて、労基法改正についてはあるいは別の機会という形に分けたらどうかと思うわけですけれども、これはぜひ大臣に所見を伺いたいと思います。
  300. 坂本三十次

    ○坂本国務大臣 今あなたのおっしゃったその均等法一本に絞れというところと私ども政府の案との差が、それがやはり一番の大きな差になっておるわけであります。  それで、あなたの御質問をなさったその経営者がどれほどのことを言われたか詳しいことはわかりませんが、今お話を聞いておる限りでは、女子保護規定があったって企業経営は別にそう痛痒を感じてないとおっしゃったが、それはそうでしょう。ということは、つまり男性主体の今までの終身雇用例度で私どもはそれでもいいんだというつもりがあるのでしょう。だけれども、私どもから見れば、もうこれから優秀な女性がたくさん出てくるだろうし、現実に女子差別というものは、先ほどの新聞広告欄のように歴然とある。これはほっておくわけにいかないということで、やはり待遇の平等を確保するときは機会均等を確保する方が先だ。その機会均等を言うときには、男性よりは労働条件が全然違う女性、その男性女性企業の中で一緒に扱えと言っても、これは雇用の場ではなかなか厳しゅうございますので、それはなかなか通らない。私どもは、そういう意味で、企業に対しても均等な、差別のない扱いを要望すると同時に、女性の側についても、待遇の平等を目指すならば、男性と同じぐらいの労働条件でも、私の選んだ職業についてはそれぐらいはやりますということでないと、これはバランスはとれない。そこが四党案と私どもの案の根本的な差だ、こう思っております。  私どもとすれば、それは一つの建て前として持ってもらわなければいかぬのですが、現実の労働時間ということになりますと、これは労使関係の協定、協約がございまして、女性の労働が一遍にふえるなんというむちゃくちゃなことは、現実の日本の雇用関係においてはあらわれると考える方が不自然だな、こう思っております。
  301. 菅直人

    ○菅委員 今大臣の言われたことは、若干二つの問題のすりかえのようなところがあった。私が言ったのは、午前中の参考人の方、これは女性の方なんですけれども女性の方御本人が、今は管理職にあって、政府案に基本的には賛成の立場で話をされたわけですが、その中で、今の保護規定で女性が実質的に阻止されているとは思わない、ただ口実に使われているということを言われた。そういう点で、この平等法と労基法とを絡ませたところに、大変問題を複雑にしたばかりではなくて、平等法の精神が非常に大きくゆがめられてしまっている原因があると私は思うわけです。  そこで、短い質問時間ですので話を一応次に進めたいと思います。  今、大臣は、女性が平等を目指すならば、職場においても男性と同じような条件でやるだけの覚悟を持てという趣旨のことを言われました。しかしこの問題も、この間の審議をずっと聞いていて、二つの問題が非常に複雑に絡まっている。つまりその二つの問題というもう一つは、いわゆる家事、育児の家庭責任をどのように考えるか。実際に共稼ぎをされている女性で家事、育児を実質上大部分かぶっている人の実情を見ていますと、それは我々男性が思う以上に大変にハードなスケジュールをこなしている。私も、友人の家庭なんかを見ていて大変にハードな行動をされている人を二、三知っていますけれども、そういうことがあるわけです。そうすると、今言われた、一方では男性と同じだけの働きがいを持てと言いながら、一方では家庭責任についての実情を考えるということを言われると、何かその部分部分では筋が通っているようですけれども、全体で見ると必ずしも筋が通っていないと思うわけです。  そこで申し上げたいのですけれども、今回労基法での女子保護規定を緩和をしたときに、こういう女性の二重労働、特に共稼ぎで子供を抱えている女性の二重労働の負担が一層大きくなるというふうに心配するわけですけれども、その点についてはそういうふうに労働省としては見ているのか。いや、そんなことにはならないという確信がもしあるならば、その理由を聞かしていただきたいと思います。
  302. 赤松良子

    ○赤松政府委員 保護と平等のお話をする前に、ちょっと午前中の角田参考人の御意見につきまして、若干私どもの理解と食い違っているように思いますので申し上げますと、角田さんは、労基法の改正は避けることのできない問題としてとらえておられたように思います。彼女が今日のように管理職におつきになれたのは、労基法をある程度は、違反と言われたかどうか忘れましたが、多少労基法の規定をはみ出たような仕事をしてきたからだということも言われたような気がいたします。それから、口実に使われると彼女が確かにおっしゃった言葉がございますが、それは生理休暇についての御説明のところであったように記憶をいたしております。  それはまあともかくといたしまして、雇用機会均等法と労働基準法の改正というのは、私どもの考えでは、これは切っても切り離せない種類のことではなかろうかと思っているわけでございます。  一つは、これが条約の批准ということで、そこがつながっているということは御存じのとおりでございますが、先進国におきまして、男女雇用機会均等法というのがいろいろな形でできているのは先生も御承知のとおりでございます。この雇用機会均等法がアメリカ、イギリスその他ヨーロッパ諸国でできるのにつきましては、大変な女性の側からの運動があったわけで、その運動の中には、保護規定は自分たちの男女平等に対する運動の足かせになる、これははっきりそう言って、保護規定をやめることを女性の中から要求をしたという歴史が事実としてあるわけでございます。  その一環といたしましては、非常に具体的には、例えばオランダやニュージーランドなどでは、既に批准をしておりましたILOの八十九号条約、これは工業的業種に関する夜間の作業の禁止でございますが、この既に批准をしていた条約を廃棄した。これは要するに、保護が自分たちの平等のための足かせであるという認識に基づいてされたというふうに理解をしているわけでございます。  日本ではその点はやや事情を異にしておりまして、大ぜいの方たちが必ずしもそういう運動をされているというふうには私も認識をしておりませんが、やはり問題の本質はそういうところにあるということは決して否定はできないのではないか。この問題が全く別のことであるというふうにはとても思えないわけでございまして、全く同じ時期にするかあるいは多少ずらしてするか、それはその国々によって若干の違いはあると思いますけれども、その問題は決して避けては通れないことであろうというふうに思うわけでございます。
  303. 菅直人

    ○菅委員 局長に申し上げたいのですけれども、いろいろ言われるのは構いませんけれども、私が聞いたのは、女子保護規定を緩和した場合に二重労働が一層負担となると思うけれども、そうではないですかとお聞きしたわけです。それについては結局答えられなくて、とうとうとほかのことを言われるのですけれども、今局長か言われたことも、それは一つの考え方としてはわからないわけではないのです。  大臣、もう一つだけ。きょう朝の参考人の話の中で私が非常に気になったというか、逆に言うと非常に率直な意見だなと思ったのは、日経連の方が話をされたことなんですね。つまり、日本では労働時間が非常に長い、なぜなんだというふうな議論の中で、日本は終身雇用制なので、特に最近の企業は、不況時のことを考えると余り余剰人員を持ちたくない、スリムにしてぎりぎりの人間でやっておきたい、そうすると多少景気がよくなってきたときにも新規の人は入れたくない。そこで景気の不況、好況時の労働時間というか仕事の量の変動を、結局は時間外労働で賄うものだからこういうことが起きているのだということをある意味では率直に言われたわけですね。終身雇用制という制度は確かに利点も多いわけですけれども、大体、この法案を通しての議論は、終身雇用制というものをある程度是認する方向での議論をしているわけですけれども、それを是認すればするほど、今のような問題で、時間外労働が景気がよくなればどんどんふえてくるという企業の性格があるということを、日経連の人自身が言われているわけですよ。そういう中で女子に対する保護規定が緩和されれば、当然の成り行きとして、少なくとも現状よりは残業時間が長引く傾向に働くというのは目に見えているわけであって、それが目いっぱいいくのか半分程度でとまるのかわかりませんけれども、少なくともそういう方向に行くことは逆行するという要素にはなると思うわけであって、そうなると、先ほど申し上げたようにいわゆる家事、育児の問題というのをどう考えるかというのは私にも大変難しい問題ですけれども、少なくとも現状において家事、育児の大半を女性がかぶっている状況の中で非常にきつい状況をそういう人たちにかぶせることになる、そういうことは推測というか十分に予測できることじゃないか、そういう点でほかの道があるのではないか。これはさきの質問の中でも、江田五月委員が、逆に男子の労働時間を短縮することを通して男女条件の平等化を図ったらどうかということを提案し、そういう方向もあるということを労働省なりあるいは条約の関係では外務省も認められていたわけですけれども、そう考えると、もう一回話を戻しますと、いわゆる雇用均等法と労基法の出題を考えるときに、労基法の改正については、今問題になっている女子保護規定の問題と同時に、男子の長時間労側の是正ということをあわせて議論する。そういう中で、あるいは家庭責任の問題も一部は男子の労働者がかわり得るような時間があるならば、すぐそうなるかどうかは法律一本でなかなか変わる問題ではないにしても、新しい平等への道あるいは新しい意味での男女における家事責任の分担ということも可能性が出てくるのではないか。そういう点で、私は全く関係がないとは言いませんけれども、関係があるにしても、労基法の問題は、今私が申し上げたように、女子保護規定だけの見直しという形で取り組むのはおかしいのじゃないか、もし取り組むとすれば男子を含めた長時間労働の是正ということとあわせて取り組むべきではないかと考えるわけですが、大臣の見解を伺いたいと思います。
  304. 坂本三十次

    ○坂本国務大臣 たくさんの問題が入っておりますが、先ほど私が申し上げましたように、今度の男女雇用均等法の直接の目的は、今日、日本経済はこれほどまでにやってきたけれども、よくよく見れば、先ほどの新聞広告でごらんのように、歴然たる差別は日常茶飯事にあるわけなのですね。それは、女性も幸福追求の権利を持っておるし、女性のためにもあるいは社会のためにも、長い目で見て、ここらで変えた方がいいのではないかということから、先ほどのようにやはり男と同じようにやるんだよというくらいの覚悟を持ってやらないと、例えば今までの学校の先生だとか看護婦さんだとか、ここに労働省の女性の職員もおりますが、男と一緒にやっておりますね。それくらいの気持ちを持ってもらわないと、企業の方でも均等な機会と待遇の平等はなかなか難しいということを申し上げたわけでございます。  しかし、日本の今日ここまで来た大きな功績の一半は、勤労者の質が高いということと同時に、労使関係がうまくいっている、その労使関係の基本というのは終身雇用だ、年功序列だ、企業組合だ、こう言われております。そして、オイルショックは世界じゅうでありますけれども、日本の完全失業率というものは二%台、ヨーロッパの方はもう一〇%、その調節をしておる功績も終身雇用制の中にあるのだ。しかし、いよいよ不況を脱してやるときには、今まで無理して抱えておった、失業を出さないでおった人たちに今度は残業でやっていく、やはり生き残っていくためにはそれくらいのことはやらなければいかぬ。特に、これはいいことか悪いことかは個人の判断でしょうけれども、日本の企業なり先端技術者などはドイツを追い越せ、アメリカを追い越せ、これくらいでやっておるわけですから、非常にハードになり過ぎるという反省はあるかもしれませんけれども男女の問題は、同じ企業の中なら男女が同じく苦労をともにするという覚悟がなければいかぬ。  もう一つまた別の問題で、時間外労働での時間の問題は、これは男女を問わず、均等法の直接の目的ではありませんけれども、これはまたこれで、大きな世界の潮流の中で日本の労働政策が取り組まなければならぬ、これは次元の違う問題だ。あなたの方がちょっと絡ませ過ぎておるのじゃないか、私はそう思います。
  305. 菅直人

    ○菅委員 どちらが違うか、これは国民の皆さんに判断してもらうしかないわけですけれども、今の大臣の御発言は、労基法を監督されている役所の責任者としてははなはだ問題ではないか。つまり、男の人が大変忙しかったら大いにそれを見習って働けというふうなことなわけですけれども、それは人間関係の中でそういう言い方があることはわかりますけれども、労基法という形で一つのルールづくりをやるわけですから、そのルールづくりの中で言えば、できるだけ残業が少ない方がいいというのが基本的な考え方ですし、そういう意味では、そういう方向の努力をすることと男女条件をそろえることというのをまさに一緒に考えられたらどうですか。男子を含む労働時間の短縮問題は別個で、そしてこちらは一緒ですというふうに、大臣の方は何かそこだけ別個にされて次元が違うなんて言われますけれども、全く次元は同じ問題じゃないですか。労働時間がなかなか二千時間にならない。ヨーロッパのいろいろな国では、西ドイツではまさに千七百時間前後だ。西ドイツに追いつけ追い越せと言っても、労働時間では圧倒的におくれているわけですよ。そういう面もあわせて考えて、先ほど申し上げたように雇用均等法と労基法を分けて、労基法についてはその問題とあわせて議論されたらどうですかということを提案しているわけです。  時間がありませんから、外務省にこの関係で一つだけ確認をしておきたいのですけれども、今回差別撤廃条約の批准ということが一つはこの法案との深い関連になっているわけです。そういう中で国内法の整備を、国籍法とか家庭科教習問題などでやってきているわけですけれども、今私が申し上げたように、労基法部分について女子の保護規定の検討と同時に、男子の長時間労働の是正というものもあわせて議論するということを一つの前提として審議会なりに任せる、そういうことを含めて雇用均等法部分あるいは野党の平等法部分の改正を行う、あるいは立法を行うことによってこの条約の批准の条件が整うという道があるのではないかと思うわけですけれども、この点についての外務省の見解を伺いたいと思います。
  306. 斉藤邦彦

    ○斉藤説明員 この条約が目的としておりますところは男女の差別の撤廃でございます。労働の条件に関しまして、それをどういう手段で確保するかということは、各国の労働政策の問題になるかと存じます。  ただいま御質問の後段の方の野党四党が出されました法案、これで批准ができるかどうかという御質問でございますけれども、この条約は、いわゆる女子保護規定が女子の採用とか昇進を阻害するという認識のもとに、女子保護規定の究極的な撤廃ということをねらっているわけでございます。  我が国の置かれました現状その他を考えますと、現存の女子保護措置に全く手をつけないでこの条約を批准しようということには問題があると我々は考えております。
  307. 菅直人

    ○菅委員 今の外務省の見解、さきの審議のときと若干違うと思うのです。つまり、この条約は女子保護規定の撤廃を目的としているという認識云云とその前段で言われたが、どういう手段であってもいいから男子と女子条件を一致しようという議論はそれとは違うはずですよ。ですから、私が申し上げているのは、男子と女子条件を一緒にするとすれば、男子の長時間労働の是正ということをあわせて考えるという、例えば審議会などでそういう答申を求めるという努力を一方でする。これは家庭科教習の場合も、必ずしも家庭科教習の実行が現段階で進んでいるわけではないわけですが、検討委員会の結論を待って実行に移すことになっているわけですけれども、それと同じように、今の段階では平等法一本に絞って、女子保護規定を含めた男女の労働時間の問題は別個に審議会等で扱う、そういうやり方があるのではないかということを申し上げているのです。  それから重ねて言っておきますけれども、撤廃を目的としているという判断と、先ほど前段で言われた男子と女子条件をどういう手段でもいいから一致させることが目的だということは明らかに矛盾していますから、その点についてもちゃんと区分けをして見解を述べていただきたいと思います。
  308. 斉藤邦彦

    ○斉藤説明員 簡単に申し上げ過ぎましたのでちょっと失礼いたしましたけれども、私が申し上げたかったのは、女子保護規定というのは、私、いわゆると申し上げましたけれども、現在女子が男子と違う扱いを受けております法律その他の体制、これを女子保護規定と言ったわけでございます。したがいまして、女子が保護されているということ自体を問題にしたのではなくて、男子との間に差別があるという点を問題にして申し上げたわけでございます。  それから、差別をなくす方法、どの水準で合わせてもいいではないか、これは条約上全くそのとおりでございます。そこは労働政策上の問題になるわけでございますけれども、私の了解しておりますところでは、我が国として具体的にどういう方法をとるべきかということに関しましては、数年間にわたり審議会その他で検討してきた結果、一部の女子保護については機会均等の観点から特に改廃が必要であるという判断に立つに至ったというふうに承知しております。したがって、そのような現状を背景として考えれば、現存の女子保護規定、男子と差別を設けております規定に手をつけないままで批准することは問題があるのではないかと考えている次第でございます。  したがいまして、最後の御質問が、将来の問題としてこれは別個に切り離して考えていいではないか、これは理論的にはそのとおりかと存じますけれども、来年じゅうにこの婦人差別撤廃条約を批准したいという国際的、国内的な要請がございますので、それを満たすためには将来の問題としてではなく、現段階である程度の女子保護規定の見直しが必要であると考えているわけでございます。
  309. 菅直人

    ○菅委員 時間がもうなくなったので、本来なら雇用均等法自体の実効性について幾つかお尋ねをしたかったのですが、そこまでいく前に話が十分かみ合わなくて時間になってしまいました。  最後に大臣に申し上げたいのですけれども、確かにいろいろな条約上の日限の問題もあるかと思います。しかし、この間、私も参考人なり陳述をされた方のいろいろな話を聞いてみて、最初に申し上げたように、何か平等法に労基法を絡ませたということは必然的であると言われますけれども、必然的であるとすれば、今の条約の議論じゃないですけれども労基法の問題だってやり方はいろいろあったわけです。必ずしも女子保護規定を緩和するという方向じゃなくても、男子保護規定を強化してもいいわけです。そういう意味で、何かこのあめが欲しかったらこのむちもある程度は受け入れなさいみたいな形で持ち込まれたということは、大変大きな問題を残すのではないか。来年条約を批准をしたいと言われる「国連婦人の十年」の最終年度、まだ一年あるわけですし、また、本質的に、この婦人の十年というものの趣旨が男子の悪い条件に合わせることが目的だなんということになったら、何のための婦人の十年であったのかわからないことになるわけですから、その基本精神に立ち戻ってもう一回、労基法の問題についてはその手段を含めて根本的に考え直していただきたい、このことを申し上げて、私の質問を終わらせてもらいます。
  310. 有馬元治

  311. 浜田卓二郎

    ○浜田(卓)委員 それでは、きょうの質問の最後を承りまして、きょうは四党提案の法案に関して御質問を申し上げたいと思います。  ただ、その前提として、外務省及び労働省に若干お伺いをしたいと思います。  私の持ち時間は二時間ということでありますけれども、これから二時間やりますと皆さん大変くたびれるでありましょうから、三十分ないし四十分で終わりたいと思います。  私、今回この法案の審議に当たりまして、婦人差別撤廃条約というものをいろいろな角度から学んでみたわけでありますけれども、ある意味では大変徹底した、しかも一貫した考え方に基づいていると思うわけであります。そこで、私のこの婦人差別撤廃条約に関する解釈をまとめて申し上げてみたいと思いますので、外務省の方でそれが正しいかどうか、ちょっとお答えをいただきたいと思うのです。     〔委員長退席、稲垣委員長代理着席〕  この撤廃条約の第一部第一条では、婦人に対する差別とはということで、非常に広範な言い方をしているわけであります。性に基づく区別、これが政治的、経済的、社会的、文化的、市民的、その他いかなる分野においてもあってはならないということも含まれているわけでありまして、これはある意味では男女を全く違いのない同等なものとして位置づけているところに私は重要な出発があると思います。しかし、第四条におきましては母性についての特別な規定を置いているわけでありますから、男女の違いというのは、この条約の考え方では母性に基づくものに限定をしていると理解をされるわけであります。そういたしますと、母性を除いて男女が全く同等である、そういう前提をずっと推し進めてまいりますと、当然のことながら、雇用の面では、入り口は一緒にしろ、募集、採用、これは当然同等にしろということになるわけでありますし、それから出口も一緒にする、これも当然のことだと思うのです。それにとどまらず、中身も一緒にするというのが実はこの条約の重要なポイントであるというふうに私は読み取るわけでございます。  この考え方をさらに推し進めていきますと、家事とか育児という問題、これがはみ出てくるわけでありまして、男と女が全く同等で労働に参加をしていかなければならないとすれば、それでは家事と育事はだれがやるか、そういう問題であるわけでありますが、この条約ではきちんとそこには答えが出ているわけでありまして、第五条、それから第十条にも同様な記述があります。「男女の定型化された役割に、基づく偏見及び慣習上その他のあらゆる慣行の撤廃を実現するため、男女の社会的及び文化的な行動様式を修正すること。」と書いてあります。さらに、これが十条のC項にいきますと、教育においても「男女の役割についての定型化された概念の撤廃」を図れというふうになっているわけでございます。つまり平たく言えば、結婚生活において男が働き、女が家庭を守るというのは、一つの定型化された文化であり慣行であり伝統である、これは撤廃しろということでありますから、女が働く場合には男は家事、育児をやれということにも当然なるわけでありまして、これは論理的な帰結としてこの条約は一貫していると私は考えるわけでございます。そういうふうに、この条約は差別撤廃というものを徹底した、しかも一貫したものであるというふうに理解するのは正しいかどうか、外務省の見解を承りたいと思います。
  312. 斉藤邦彦

    ○斉藤説明員 ただいまの条約の趣旨に関します浜田委員の御見解というのは、全くそのとおりであろうと我々も考えております。
  313. 浜田卓二郎

    ○浜田(卓)委員 余り簡単な答えですと時間がもたないわけでありますけれども、それはそれで結構でございます。  そこで、さっき菅さんも議論しておられた女子保護規定でありますけれども、今申し上げた条約の解釈からすれば、当然条約の解釈としてはこれは撤廃すべきであるということにつながると思いますけれども、この点についての御見解を伺いたいと思います。
  314. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 また答えが簡単で申しわけございませんけれども、そのとおりでございます。
  315. 浜田卓二郎

    ○浜田(卓)委員 外務省の分も私がしゃべっているわけでありまして、答えはそれで結構でありますが、そうしますと、私は幾つかの点にどうしても言及していかなければならないわけでございます。  一つは、先ほど多くの参考人の方々から貴重なる陳述を伺ったわけでありますが、その中の、女性は家事がある、家庭がある、だから労働条件が家事、家庭を犠牲にするものであってはならないんだという言い方であります。そうしますと家事、育児をどこに持っていこうか。これは社会が見るんだというのも一つの言い方でありましょうけれども、しかし、私どもは、限られた財源の中で社会保障制度なり各種の制度を準備しているわけでありまして、そこではみ出る分は一体どこにいくのかという点が看過されている。  さらにもう一つ、子供が生まれても厚生省が面倒を見ないという言い方も参考人の中にございましたけれども、これは、本来厚生省が面倒を見るのは、社会的ないろいろな弱者とかあるいは社会的な必要性があって見るわけでありまして、一般的に、労働をするから厚生省が子供の面倒を見るという認識は、これはいささかこの条約の徹底した論理一貫性とは無縁のものであるというふうに感ずるわけであります。  さらに、私がここで申し上げておきたいことは、この条約の想定していること、私もこれは一つの理想状態だと思います。私も決して男女が同等であってはならないと思わないわけでありまして、むしろ男女ができるだけ同等であるような条件整備されていくことは歓迎すべきだと思うわけでありますが、しかし、差別撤廃条約を国内の制度に忠実に移しかえている諸国において現在どういう問題が起きているかという点も、私どもは正確に認識をしておかなければならないと思うわけであります。  実は先日、六月四日の日経新聞の夕刊に、ワシントン大学博士課程在学中のメリー・プリントンさんというアメリカ人の女性のインタビュー記事が載っておりました。これは日経でありますから、政府の御用新聞ではございません。その中に、アメリカは社会変革を急ぎ過ぎたということを言っておられます。その一例が、従業員の一定数は女性を雇わなければならないクォータ制度であるという指摘をしている。そして日本の男女雇用均等法に触れて、日本は日本のいい伝統を生かした日本型の男女平等社会をつくるであろうということまで推察をしてくれているわけであります。  実は、私も数年前に、社会労働委員会の派遣で北欧諸国をいろいろ見聞させていただいたことがございました。そのときに大変印象に残っておりますのは、ノルウェーで中年の女性が私の通訳を引き受けてくれたわけでありますけれども男女平等法に触れまして、これは抽象的な言い方でお許しをいただきたいわけでありますけれども、ここまで極端になると、男も女も非常にハッピーでないということを言っていたのが私は強烈に印象に残っているわけであります。ですから、私は決して婦人差別撤廃条約の批准を今さら云々するわけではありませんけれども、その条約を国内制度に忠実に取り入れていった諸国がいろいろな面で一つの反省期に差しかかっている、一種のフラッシュバックといいますか、大きな反動が静かに起こりつつあるという事実も学んでいかなければならないわけだと私は思うのです。ですから、先ほど来世界の潮流だという言い方がありました。しかし、その潮流が一体どこに向って流れているのか、あるいはもう流れ過ぎて逆の流れも起きつつある、男女の社会的な位置づけ、男女関係というものの見直しというものが、そういうところでも行われ始めているという事実も無視することができないと私は思うわけであります。これは前置きでありまして、そこで一つ二つ御質問を申し上げたいと思います。  まず、四党提案の提案者に、お伺いをしたいわけでございますが、第一点は、四党提案の法案の中には女子保護規定に何ら言及がされておりません。これは、私が今申し上げました私の論理を正しいと理解していただくならば、この条約批准の前提条件整備にはつながらないと思うわけであります。  先ほど菅委員の方から、男のレベルを上げたらいいというお話がありましたけれども、これは重要なことを見逃しているわけでありまして、やはり経済社会でありますから、男性の労働条件というものが、身体的、生理的に異なる女子労働時間に合わせて設定された場合の企業活動というものを、私どもは見逃すわけにいかないわけでありまして、最も悪い労働条件は失業であるという事実も私どもは見逃すわけにいかないわけでございます。そういう前提をとりつつ、なぜ女子保護規定の改廃にはお触れになっておられないのか、ひとつ御説明を承りたいと思います。
  316. 多賀谷真稔

    ○多賀谷議員 御存じのように婦人に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約、これは差別というのは基本的人権の侵害であるというのが大前提です。でありますから、私どもは、言うならば基本的人権を侵害する、だから権利の回復が必要であるという物の考え方。そこで、御指摘のようにこれは男女の役割分担というのを否認している、これが非常な特徴であります。そういう点においてこの条約がつくられておるのですけれども、家庭の責任をだれが持つか、家庭の責任は今後はやはり男と女がともに持つべきであるという精神が流れておる。ところが、私どもが政府案を見ましても、問題は、男女がともに家庭の責任を持つには相当時間的余裕が要るわけですね。ところが、今、日本に要請されておるのは時間短縮です。ですから、時間短縮に触れないで、そうして男子の今のいわば長時間労働に合わすというのは本来間違いではないか。極めて形式的ではないか。でありますから、大体週四十時間の条約ができまして、もう五十年もたっているんですね。一九一九年の労働時間の条約も批准していない。一九三五年の一週四十時間の条約もまだ批准していない。ですから、我々は、男性が家庭を見られるくらいの余裕の労働時間にして、そうしてそれに女性を合わせていく、こういうことが至当ではないかと思うのです。  そこで、言うならば、例えば帰郷旅費は女性だけにつけておく、こんなものは外してもいいですね。問題は、深夜業であるとかそれから労働時間の延長の問題であるとか、これは労働時間の根幹にかかわる問題でしょう。ですから、これに手をつけて、そうして形式的に平等にする方向に行くのだというのはそもそも間違いである。ですから私どもは、労働時間週四十時間、週休二日制というのを別に用意しているのです。もう何回か出しているのです。ですからこれとタイアップして出すならば、私は、この条約というのは今我々が出した法律で十分じゃないか、こう考えております。
  317. 浜田卓二郎

    ○浜田(卓)委員 先ほど菅委員の言われた御説明と大同小異だと思うわけでありますが、私も、この男子の労働条件というのをこれ以上改善する必要がないとは考えておりません。それはその企業の労働生産性なりというものを十分踏まえながら合理的な改善は進めていく必要がありますでしょう。しかし、そういう前提をとったとしても、女子の方の保護規定の水準に男子の労働条件を一方的に近づけていくというのは暴論だと思うわけであります。深夜業はないにはこしたことはない。しかし、これだけ発達した経済社会で、深夜業を扱いて、一体我々の快適な生活というのは成り立たない。それだけの社会に我々は到達をしているわけでありますから、一方的に男子の労働条件女性に合わせろというのはいささか片手落ちだ。少なくとも両方からの歩み寄りという発想をとらなければこれは成り立たないと思うわけでありますが、この点はそこだけにしておきます。  それでは、政府提案の法案につきまして外務省に伺いたいと思いますが、この政府提案の考え方では、女子保護規定についてもある程度の修正緩和をして、そしていわば少し近づけていくということであります。さらに、時間外労働の問題についても若干の規制緩和をやっているわけでありますが、こういう内容でこの批准の前提たり得るのか。その点はひとつ重ねて、これはもう何度も質問が出ているわけでありますが、確認の意味で伺わせていただきたいと思います。
  318. 斉藤邦彦

    ○斉藤説明員 この条約は、男女間の差別の撤廃を目的としておりますが、具体的にどのような措置をとってそれを実現するかということにつきましては、各国それぞれの実情に応じまして自主的に判断をして、適当と考える措置をとればいいというのが条約の趣旨であると考えております。  その観点からいたしますと、現在政府が提案しております法案は、この条約批准のための条件を満たしているものと考えております。
  319. 浜田卓二郎

    ○浜田(卓)委員 それは当面満たしていると。つまり、批准をするに従って、一定の留保なりあるいは猶予なりということが当然あり得るでしょうから、そういう前提で満たしているというのか、あるいはそうでなくて、こういう努力義務規定で徐々に労働条件改善を続けていけば、それでこの条約の想定している状況と合致するとお考えになっているのか、重ねて伺わせていただきたいと思います。
  320. 斉藤邦彦

    ○斉藤説明員 この法案は、条約を批准するに際しての条件を満たしていると考えているわけでございまして、この法律が成立すれば、未来永劫このままでいいということではなくて、将来の問題としては、なおいろいろ改善すべき点というのはまだ残るというふうに考えます。
  321. 浜田卓二郎

    ○浜田(卓)委員 それでは、労働省にお願いみたいなもので、別にもしお答えがなければ結構でございますが、私、先ほど、この差別撤廃条約の想定している状態というものを簡単に御説明申し上げたつもりなのですが、例えば男は家事、育児をやる、女は働く、それは決していけない姿ではないと私は思うのです。そういうふうに向いている夫婦も現におられますよね。おられるわけでございまして、それはそれでいいと私は思う。私のところなんかの家内も、なかなか家庭の中ではおさまらない女性でありまして、大分てこずっているわけでありますけれども、それはそれでいいと思うのです。ただ、我が国の、男は外で働き、女性が家庭を守る、そして育児の終わった人あるいは育児、家事に余裕のある人は、その条件に合った職業を選択していける、そういう状態というのが悪しき状態であって必ず是正されなければならないものであるとは、私は必ずしも思わないわけであります。それは日本の長い伝統に培われてきた男と女が幸せになる一つの形であると私は思うわけでありまして、そうでない場合もあるわけでしょうが、しかし、この条約を急激に国内法制化していった場合に、この条約の究極理想みたいなものを端的に国内制度化していった場合には、いろいろな面でひずみが起こるということも私は認識をしていかなければならない。  そこで、労働省にひとつお願いを申し上げますけれども、要するにこの日本的な味つけといいますか、世界の潮流がこうだといっても、何も私どもはこの世界の潮流に従う必要はないわけでありまして、一番いいものを模索していけばよろしい、それが今の日本の状態であります。追いつけ追い越せの時代は終わったと言われますけれども、私どもは別に、終わったか終わらないかということよりも、西欧先進諸国が歩んでいった道というもの、歴史というものを十分に学んで、私ども独自の道を選択していけばいいと思うわけでありまして、そういう観点からこの条約を批准したとしても、その後の国内体制のあり方というものには十分慎重な、そして将来を洞察した行き方というものをおとりいただきたいと思うわけでございますが、労働大臣にひとつ…。
  322. 坂本三十次

    ○坂本国務大臣 やはり長い歴史と伝統の中で民族の営みがあるわけでありまして、雇用の問題においてもなおさらしかりであります。ですから、やはり足を地につけて、そして理想を求めていく。日本人は、追いつき追い越せが歴史的に見ても非常にうまい方でありまして、ペリーが来て、黒船が来て、文明開化をやって近代化をやったときも、これは直訳でやったわけではない。日本は日本なりにやはり立派な道をたどる。戦争に負けたのはこれはまことに大失敗でありましたけれども、しかしその後だって、やはり日本的な民主主義、自由主義というものを日本的な風土に昇華さして、そして立派に世界第二のここまでやってきた。これは事実でありますから、何としたって、やはり自分たちの伝統を離れて理想はない、私はそう思いますね。(発言する者あり)
  323. 浜田卓二郎

    ○浜田(卓)委員 傍聴席に一言申し上げたいと思いますけれども、この委員会の審議は、笑ったりやゆしたりしていいものではありません。大臣の答弁はそれなりの答弁でありますから、よろしくお願いいたします。(「余りおかしいことを言うから、ワーッと出るんじゃないですか」と呼び、その他発言する者あり)
  324. 稲垣実男

    ○稲垣委員長代理 静粛に願います。
  325. 浜田卓二郎

    ○浜田(卓)委員 続けます。  それでは、平等法の提案者に二点お伺いをしたいと思います。  第一点は、罰則を伴う規制を提案しておられます。これは一つの考え方であろうと思いますけれども、具体的にどういう方法を想定しておられるのか、伺ってみたいと思うのです。  例えば都道府県婦人少年室長、これは行政官であります。この行政官に是正命令、その前に勧告命令ですか、この是正命令に従わない場合には罰則適用ということを行なっているわけであります。これは普通は準司法手続ですよね。行政官庁にこういう形で生で権限を付与するのはいささかどうかというふうに思いますけれども、その点はどのようにお考えになったのかをお聞かせいただきたいと思います。
  326. 多賀谷真稔

    ○多賀谷議員 生で罰則をかけたのではありません。今、日本の基準法では直罰主義でありますから、我々はそれを避けたわけであります。あるいは公務員は、国家公務員法も地方公務員法でも性別による差別は直罰主義をとっておる。しかし、現実に我々が運営をする上においてはまず啓蒙から始めなければならない。啓蒙、指導、苦情処理、そういう中で雇用平等監督官を配置をして、その仕事をしながらさらに是正の勧告をする。その次には是正命令を出す。そして、それを聞かなかった場合に初めて罰則が発動するわけで、しかもこの罰則につきましてはさらに審査会に提訴ができる。審査会も一審、二審とできるわけです。そこで確定をして、それでも従わなかった場合にまた罰則が発動されるということでありますから、最終的には、中央平等審査会で是正命令が決定をされても、さらに従わなかった者が罰則適用になるということでありまして、これは極めて慎重に行ったということでございまして御理解を願いたい。  それから、各国いろいろありますけれども、フランスやイタリアのように直罰主義をとっているところもありますが、イギリスとか西ドイツ、スウェーデンあるいはアメリカ、アメリカはちょっと違うのでありまして行政委員会が原告になるわけであります。しかし多くの国は、是正命令が出た場合に従わなかったときに初めて罰則ということであります。我々の場合は行政機関とさらに不服審査、こういう二重をとったというところに特徴がある、かように思います。
  327. 浜田卓二郎

    ○浜田(卓)委員 その御説明は承りまして、次の質問に入ります。  それでは、例えばある企業が採用試験をやった、十人の女性が受けに来られた、そして仮にそのうちの三名なら三名が採用された、あとの七名は採用を拒絶されるわけであります。その場合に、採用を拒絶された女性からこれは差別であるという申し立てがこの法律に基づいて行われる、そうすると、差別であるかどうかの判断というのは非常に難しいと私は思うのです。例えば、本人は差別をされたと思っても、客観的条件はどうであったか、企業の経営状況はどうであったか、ほかの女性の能力の関係はどうであったか、一緒に受けに来た男性との関係はどうであったか。結局、罰則適用の前の是正命令というものは、個々の事実認定、個々の判断に基づいてしか行われ得ないと思うわけであります。これはまことに大変なことでありまして、全国二百万法人があります。あるいはそれ以上の活動体があるわけでありまして、そういうところの個々の差別ケースを一体どうやって判断をして罰則を適用していくのか、私はこのところは非常に重要な問題だと思うわけであります。  さらに、採用だけでなくて昇進も入っている。私は昇進がおくれた、そのおくれたのが客観的に差別であるかどうか、この判断もしなければならないというのは、私は大変なことだと思うのですね。  そこで、これは私はまだ十分勉強しておりません。推察で申し上げるわけでありますが、アメリカがなぜクォーター制をとったか。それは結局個々の判断には限界があるということではないかと思うわけであります。したがって一定の割合を採用しなければ差別である、そういう認定に持っていったんじゃないか、これは推察でありますけれども。ですから私は、罰則規定、それの前提の勧告、命令、是正命令、これが果たして実効的であるかどうか、この点が第一であります。  それから第二の点は、是正命令というのは一体何を意味するのか。例えば採用されなかったことに伴う民事上の賠償責任だけで済むのか、あるいは企業に直接採用せよという命令をするのか、そのあたりは私は非常に重要な問題であり、企業経営の根幹にかかわる問題だと思うわけであります。この点について御説明を承りたいと思います。
  328. 多賀谷真稔

    ○多賀谷議員 いろいろなケースを想定しまして、準則といいますか規則をつくるわけですね。これはどこもつくらなければならぬわけで、先ほど局長は募集についてちょっとお述べになりました。私どもは募集から採用、職務配置、それからさらに昇進、昇格、一応基準をつくっております。  今、採用のお話しがありましたからちょっと申し上げますが、女子であることを理由として正規の採用を拒否すること、男女別の職種の雇用形態を設けること、年齢を理由として女子の採用を拒否すること、これは女性の場合は年齢で男性よりも差をつけるという場合があります。それから容姿等を条件として女子の採用を拒否すること、あるいは自宅通勤を条件として女子の採用を拒否すること、婚姻関係、子供の有無を理由として女子の採用を差別する、短期間雇用条件として女子の採用を拒否する、結婚退職、出産退職を女子の採用の条件とする。最後のところは既に裁判で確定をしておりますけれども、こういう基準を設ける。しかしこの基準は、簡単に役所で、頭の中でつくられても困るわけてあります。そこで、中央平等審査会で、労使も入っているのです、公益も入っている、そこで論議をして準則をつくるわけです。その準則に基づいて、大体これはわかりますからそれに当てはめていくわけです。しかし個別的には別の理由もあるでしょう。それらを考慮して、まず室長が是正命令を出す、それで審査会にかかる、こういう順序であります。  それから、是正命令は具体的に採用の場合等はどうするのかという点は非常に難しい。各国まちまちであります。ドイツのような場合は費用の要った分だけは返してやるという国もありますし、さっきクォータ制の話がありました。枠です。枠の問題は、形式論からいいますとこれは男女平等に反するのです。平等にしなければならないのに女性だけ枠がある。女性の枠が少ない場合がある。しかし、事実上枠を設けないと女性雇用確保につながらないというから枠を設けたのです。単にこれは基準を明確にするという意味だけではないだろう、私も推測ですけれども。恐らくその程度は確保してもらいたいということであろうと思うのでありまして、これについては、今後実際問題としては、率直に言いますと、試行錯誤もあるでしょうけれども、英知を絞ってやらなければならぬ。短期間に、これがすぐできると我々は思っておりません。しかし、経営者及び国が十分な責任を自覚してこれに当たらなければならない。労働者の方も、何も女子労働者だけではないのです、男子労働者も権利実現のためには不断の努力が必要である、こういうこともあえて提案理由につけ加えさせていただいた、かような次第です。     〔稲垣委員長代理退席、委員長着席〕
  329. 浜田卓二郎

    ○浜田(卓)委員 大変苦しい御答弁なわけですけれども、今採用の場合を言われた。その採用の場合に、こういう条件で雇わないのはいけませんというのは比較的簡単なんですね。これを理由にしてはいけないと列記はできます。しかし、仮にそれに当てはまっても、本当に差別かどうかという問題というのはもっと奥深い問題であろうと思うのです。さらに、今度は昇進という問題になりますと、事はそう簡単ではありません。ですから、私は、定年とか退職、結婚をしたらやめなさいというのは、これは到底許せない差別だと思うわけであります。ですから、結婚しても働く、働ける条件、能力があれば、勤続させるのは、勤続の意思があれば当然であります。ですから、そういうものについては、政府提案のように、かなり民事上の責任とかあるいは禁止規定みたいなものはなじむと思うのです。しかし現実の問題として、今御説明が苦しかったように、この採用あるいは昇進という問題を一定の基準で、しかも婦人少年室長に是正命令を出させてそして罰則、後の手続というのは不服があった場合に始まるわけでありますから、一回目は行政官が出る、そこで多くの場合には決着をさせられてしまうのかもしれない。そういうことを考えますと、私は何か罰則によって実効を担保をしたような錯覚になりますけれども、現実にはそう事は簡単でないんだということを申し上げたいわけでございます。  それからもう一つ、企業の側でいいますと、企業経営といいますか、雇用管理の法的安定性というものが損なわれるということは非常に問題があるわけですね。その両面から、私は問題点だけ指摘させていただくわけであります。  それから、時間が最初にお約束した時間を過ぎていますから、最後にもう一問だけにいたします。  多賀谷先生も昨日、私も御一緒に福岡で意見聴取をさせていただきました。この際に、こういうことが出てきておりましたね。学校の先生の御意見だったと思いますが、産後、女性は非常につらい。乳が張って、陰で乳を絞りながら職務に従事している、この苦しみを理解しないのはというような御意見でありました。私はそれは心情的にそのとおりだと思うわけであります。しかし問題は正確に理解をしなければならないわけでありまして、この問題は実は母性保護の問題だと思うのですね。決してその他の勤労条件という問題より、母性保護の問題だと思うわけであります。ですから、政府提出法案ではこの点について、十分だとは皆さんおっしゃらないかもしれないが、六週間から八週間ないし十週間という延長に言及をしておられる。ところが、この野党四党提案の法律案は、この点については言及しておられませんね。このお考えを承りたいと思います。
  330. 多賀谷真稔

    ○多賀谷議員 まず産前産後その他母性保護の問題、二つあります。一つは、母性保護とは言えませんけれども、育児休業の問題。それからもう一つは今の母性保護の問題です。  これは各党とも毎年基準法改正で出しているんですよ。そして産前産後八週間ずつという、それから二人以上の子供さんを懐妊しておる場合には十週間、これは既に、法律を何度も八十四国会以来出しているのです。ただ今度の場合は混乱するでしょう。でありますから今度の場合は差し控えたのでありまして、我々は決してこれを軽視してはおりません。非常に、重要な問題としている。  それから育児休業法も、政府のように言葉だけ変えて改正したというのではなくて、これも御存じのように、ILOで既に今度の百六十五号に勧告で出ております。でありますから、我々はその点は有給の育児休業法を出しておる。それから、民社党の方も母性保障法という法律が出ておる。このことを申し上げておきます。
  331. 浜田卓二郎

    ○浜田(卓)委員 面倒くさくても、政府提案の方にはこの点にも言及されていることはひとつ評価をしていただきたいと思うわけでございます。  最後に、これもお答えは要りません。申し上げますが、昭和五十九年五月十四日付の読売新聞に世論調査が公表されているわけであります。これは男女雇用の平等に関する法制の整備が必要かどうかという問いに対して、七六%は必要だと答えている。私もそのとおりだと思います。しかし、その中の実に六六・三%は、慎重に検討してほしいということを言っているわけでありまして、性急に罰則をもって導入するような考え方というのは必ずしも世論の支持を得ていない…(発言する者あり)安心してください、次の項目がありますから。次の項目は、法制定を仮にするとしても、平等のための規制を努力義務とすべきかあるいは罰則適用とすべきかあるいはこの折衷案とすべきかということ、折衷案というのは一部分は禁止規定、一部分は努力義務。この三つの質問に対して、すべてを禁止規定とすべきであるとするのは一三%にしかすぎないわけであります。これも読売新聞でありますから客観性はあろうかと思います。  それからもう一つ、日本リクルートセンターが就業女性を対象として行った調査。これは現実に職場にいる女性からのアンケート調査でありますけれども、募集、採用、配置、昇進についての男女差をなくす方策は、企業の努力に任せるのがよいと答えているのが六三%から八一%、これは年齢によっての違いでありますけれども、そういう実態であります。これはひとつ、法制定の場合に考えるべき世論の背景として私は申し上げたわけでございまして、以上をもちまして、私の質問は打ち切らせていただきます。  ありがとうございました。
  332. 有馬元治

    有馬委員長 この際、お知らせいたします。  逓信委員会、大蔵委員会社会労働委員会連合審査会は、明十八日水曜日午前九時三十分から開会することになりましたので、御了承を願います。  次回は、明後十九日木曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後八時二十七分散会