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1984-07-12 第101回国会 衆議院 社会労働委員会 第24号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年七月十二日(木曜日)     午前十時三十四分開議  出席委係員   委員長 有馬 元治君   理事  愛知 和男君 理事 稲垣 実男君   理事  小沢 辰男君 理事 丹羽 雄哉君   理事  池端 清一君 理事 村山 富市君   理事 平石磨作太郎君 理事 塩田  晋君       伊吹 文明君    石原健太郎君       稲村 利幸君    今井  勇君       小杉  隆君    古賀  誠君       斉藤滋与史君    自見庄三郎君       友納 武人君    中野 四郎君       長野 祐也君    西山敬次郎君       野呂 昭彦君    橋本龍太郎君       浜田卓二郎君    藤本 孝雄君       森下 元晴君    山口 敏夫君       渡辺 秀央君    網岡  雄君       河野  正君    多賀谷眞稔君       竹村 泰子君    永井 孝信君       森井 忠良君    大橋 敏雄君       沼川 洋一君    橋本 文彦君       森本 晃司君    小渕 正義君       塚田 延充君    浦井  洋君       田中美智子君    菅  直人君  出席国務大臣         内閣総理大臣  中曽根康弘君         厚 生 大 臣 渡部 恒三君  出席政府委員         大蔵省主計局次         長       保田  博君         厚生政務次官  湯川  宏君         厚生大臣官房長 幸田 正孝君         厚生大臣官房総         務審議官    小林 功典君         厚生大臣官房審         議官      新田 進治君         厚生大臣官房会         計課長     黒木 武弘君         厚生省健康政策         局長      吉崎 正義君         厚生省保険医療         局長      大地 眞澄君         厚生省保険医療         局老人保健部長 水田  努君         厚生省薬務局長 正木  馨君         厚生布保険局長 吉村  仁君         社会保険庁医療         保健部長    坂本 龍彦君  委員外出席者         大蔵省主計局主         計官      小村  武君         自治省財政局調         整室長     前川 尚美君         社会労働委員会         調査室長    石黒 善一君     ――――――――――――― 委員の異動 七月十二日  辞任         補欠選任   今井  勇君     森下 元晴君   中川 昭一君     橋本龍太郎君   箕輪  登君     石原健太郎君 同日  辞任         補欠選任   石原健太郎君     小杉  隆君   橋本龍太郎君     中川 昭一君   森下 元晴君     今井  勇君 同日  辞任         補欠選任   小杉  隆君     山口 敏夫君 同日  辞任         補欠選任   山口 敏夫君     箕輪  登君     ――――――――――――― 七月十一日  健康保険制度改悪反対老人医療無料制度復活に関する請願左近正男紹介)(第七六二五号)  同(中村正雄紹介)(第七六二六号)  医療保険改悪反対充実改善に関する請願小林恒人紹介)(第七六二七号)  同(小川国彦科紹介)(第七六九四号)  医療保険改悪反対等に関する請願外二件(網岡雄紹介)(第七六二八号)  同(伊藤茂紹介)(第七六二九号)  同(河野正紹介)(第七六三〇号)  同(嶋崎譲紹介)(第七六三一号)  同(多賀谷眞稔紹介)(第七六三二号)  同(竹内猛紹介)(第七六三三号)  同(野口幸一紹介)(第七六三四号)  同(細谷治嘉紹介)(第七六三五号)  同(堀昌雄紹介)(第七六三六号)  同(坂井弘一紹介)(第七六九五号)  医療保険改悪反対充実に関する請願外一件(田並胤明君紹介)(第七六三七号)  同(田並胤明君紹介)(第七六九六号)  医療年金雇用保険制度改悪反対等に関する請願永井孝信紹介)(第七六三八号)  医療保険抜本改悪反対に関する請願永井孝信紹介)(第七六三九号)  同(松沢俊昭紹介)(第七六四〇号)  医療保険制度改善に関する請願木島喜兵衞紹介)(第七六四一号)  同(佐藤誼紹介)(第七六四二号)  同外九件(嶋崎譲紹介)(第七六四三号)  同外六件(新村勝雄紹介)(第七六四四号)  同外一件(田並胤明君紹介)(第七六四五号)  同(細谷治嘉紹介)(第七六四六号)  同(堀昌雄紹介)(第七六四七号)  同(松沢俊昭紹介)(第七六四八号)  同(武藤山治紹介)(第七六四九号)  同(伊藤忠治紹介)(第七六九八号)  同(後藤茂紹介)(第七六九九号)  同(沢田広紹介)(第七七〇〇号)  同(田並胤明君紹介)(第七七〇一号)  同(武部文紹介)(第七七〇二号)  同(土井たか子紹介)(第七七〇三号)  同外二件(日笠勝之紹介)(第七七〇四号)  同(古川雅司紹介)(第七七〇五号)  同(森中守義紹介)(第七七〇六号)  同(山本政弘紹介)(第七七〇七号)  医療保険制度抜本改悪反対に関する請願伊藤茂紹介)(第七六五〇号)  同外四件(矢追秀彦紹介)(第七六五一号)  年金医療雇用保険改悪反対充実改善に関する請願市川雄一紹介)(第七六五二号)  同(上原康助紹介)(第七七〇八号)  同外二件(後藤茂紹介)(第七七〇九号)  原子爆弾被爆者等援護法制定に関する請願永井孝信紹介)(第七六五三号)  医療保険年金制度雇用保険改悪反対に関する請願網岡雄紹介)(第七六五四号)   小規模障害者作業所の助成に関する請願多賀谷眞稔紹介)(第七六五五号)  同(永井孝信紹介)(第七六五六号)  健康保険改悪反対等に関する請願広瀬秀吉紹介)(第七六五七号)  同(武藤山治紹介)(第七六五八号)  労働基準法改悪反対男女雇用平等法制定促進に関する請願野口幸一紹介)(第七六五九号)  同(矢追秀彦紹介)(第七六六〇号)  国民年金改悪反対等に関する請願永井孝信紹介)(第七六六一号)  医療保険制度改悪反対健康保険本人十割給付堅持等に関する請願永井孝信紹介)(第七六六二号)  保育行政充実に関する請願井上一成紹介)(第七六九二号)  同(和田貞夫紹介)(第七六九三号)  児童扶養手当制度改悪反対に関する請願渡辺三郎紹介)(第七六九七号)  医療保険年金制度改悪反対に関する請願横山利秋紹介)(第七七一〇号)  医療保険改悪阻止等に関する請願森中守義紹介)(第七七一一号)  重度戦傷病者と妻の援護に関する請願田邊國男紹介)(第七七一二号)  政府管掌健康保険等本人十割給付引き下げ反対等に関する請願外二件(山本政弘紹介)(第七七一三号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  健康保険法等の一部を改正する法体案内閣提出第二二号)  戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案内閣提出第六三号)  身体障害者福祉法の一部を改正する法律案内閣提出第五八号)(参議院送付)  社会福祉・医療事業団法案内閣提出第四二号)  国民年金法等の一部を改正する法律案内閣提出第三六号)      ――――◇―――――
  2. 有馬元治

    有馬委員長 これより会議を開きます。  内閣提出健康保険法等の一部を改正する法律案を議題といたします。質疑の申し出がありますので、順次これを許します。森井忠良君。
  3. 森井忠良

    森井委員 二月二十五日に本法案提出をされまして、四カ月を経過したわけでございます。国会で相当熱心な議論が行われました。しかし、今度の健康保険法改正案は、国会での審議も行われましたが、国会職員でないものが院の外で事実上の修正談議をするという、まことにふらちな状態が起きてまいりました。詳しい追及につきましては、後刻中曽根総理に対します質問のときに我か党から考え方を明らかにいたしますが、ともかく今度の場合、自民党から第一次修正案、第二次修正案そして第三次修正案と出されましたけれども、三次の修正案に関する限り、これは水面下から表に出てまいりまして、そして関係団体自民党とで修正の詰めをする、その後で野党各党に対しまして自民党修正案と称して私どもに提示があったわけで、少なくとも一次以外の二次、三次の修正案につきましてはそのにおいがまことに顕著でありまして、率直なところ憤慨にたえません。憤慨にたえないわけでございます。  結局、第三次まで修正案が出されましたけれども、これは議院内閣制としておかしいわけですね。本来、党内手続を経て、本則で本人二割、当面、今明年につきましては一割の本人負担という、それを骨子とする原案をお出しになりました。これは厚生省が単独で出したのじゃない、ちゃんと与党党内手続も終えられまして出されたわけであります。にもかかわらず、事もあろうに、議院内閣制のもとで、政権党から修正をしてくる、しかもそれは院の外の関係団体と話し合いを進めた上で自民党修正案として提示してくる、これは極めて不可解であります。しかも内容につきましては、後で申し上げますけれども、肝心の厚生省の基本的な考え方に逆行するような中身も明らかに入っておると思うわけであります。まず大臣、その点について、つまり自民党修正案というものに対して、あなたは一体どのようなお感じを持っていらっしゃるのか。法案提出された立場で明らかにしていただきたいと思います。(「まだ出しておらぬぞ」と呼ぶ者あり)今、不規則発言がありまして、まだ出してないということでありますが、きょうは必ず出されると私どもは聞いておるわけでございまして、衆議院法制局では既に作業を終わっております。そういった事実に即して、この際あなたの所感を明らかにしてもらいたいと存じます。
  4. 渡部恒三

    渡部国務大臣 私は、この委員会でも幾たびか申し上げておりますように、私が今国会提出をさせていただきました政府原案をもって最善のものと考えております。ただ、議会民主政治でございますから、政府は提案いたしますけれども、これは議会皆さん方の御承認を得なければ政策となり得ないわけでございますから、国会先生方のお取り決めになったことには従わざるを得ませんが、私自身の考えでは、私が出した今回の政府原案をもって最善のものと考えております。
  5. 森井忠良

    森井委員 政治家としての大臣所感は今お聞きをいたしましたが、一生懸命に苦労してまいりました事務当局としては、自民党案に対してどのように考えておるのか。
  6. 吉村仁

    吉村政府委員 事務当局意見ということでございますが、事務当局としては、私ども政府案をつくるに当たって最善の努力をし、最善の知恵を使ったものでございます。したがって、修正案ということでございますが、私ども、今の時点で意見を言うことは、事務当局としては差し控えさせていただきたいと思います。
  7. 森井忠良

    森井委員 気持ちはわかります。わかりますが、既に理事会におきましても自民党修正案をお出しになりました。これはある党は除いてあるかもしれませんが、少なくとも理事出しておる各党の言うなれば正式な理事会と申しますか、あとはオブザーバーの方がいらっしゃいますけれども、少なくとも理事出している各党の前で自民党修正案をお出しになりました。そして既に、本日の議事日程の中で修正案が出される運びになっております。これはもう既に理事会で決定をいたしておるわけでありまして、自民党修正案がないわけじゃありません。さぞかしお困りになったと思うわけでありまして、私は保険局長にはこれ以上お伺いをいたしませんけれども、しかし、自民党案を知らぬ存ぜぬではこれからの議論は進みません。そのことだけは御注意を申し上げておきたいと思います。  そこで、まずお伺いしたいのでありますが、自民党案は相当な項目になっておるわけでございます。第一項から始まりまして第八項の施行期日の問題に至るまで、八項目にわたって出されておるわけてあります。一体これは予算的には変更があるのかないのか、あるとすればどの程度の影響か、まず明らかにしていただきたいと思います。
  8. 吉村仁

    吉村政府委員 今自民党でおつくりになっておられました修正案、それから政府案との比較をいたしますと、医療保険国庫負担増が満年度で約四十七億円ふえるというように私どもは見込んでおります。
  9. 森井忠良

    森井委員 四十七億円ですか。例えば一番最後に施行期日項目がございますね。これは原案にはないのでありまして、「昭和五十九年七月一日から施行するとされていた部分の施行期日については、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日からとすること。」、こうなっておるわけでありますが、既にきょうは十月十二日でございます。七月実施はできるはずがない。じゃ八月か。まともにいきましても、まかり間違って会期内に議了したとしてもこれは八月八日ですから、それもまず考えられない。率直なところ、少なくとも八月以前に施行というのはないわけでございます。そうしますと、今局長の言われましたように数十億の増どころではないはずでございます。仮に今私が申し上げましたようなスケジュールで成立をするとしたら、一体いつが施行日になるのでしょうか。
  10. 吉村仁

    吉村政府委員 改正案実施時期につきましては、今先生指摘のように法案成立の時期、これが一番影響を持ちます。また、成立をいたしてもいろいろ実施体制の整備をしなければならないというような事情があるわけでございますが、できるだけ早い時期に施行をいたしたい、こう考えております。  それから、おくれたことによる予算的な影響でございますが、先ほどの数字は、施行期日関係なしに満年度で計算をしたものでございます。それで、実施が一月おくれれば五百億円余の追加財政需要が必要だ、私どもはこういうように見込んでおります。
  11. 森井忠良

    森井委員 大事な点が抜けておりますよ。いつから実施をいたしますか。少なくとも政権党が、公布の日から三月を超えない以内と言っておるわけであります。しかも物理的に八月八日以前はない。この案がまかり間違って成立をした場合のことを私は聞いておるわけでございます。
  12. 吉村仁

    吉村政府委員 会期内成立前提といたしますならば、九月一日、十月一日、それから十一月一日ということが考えられるわけでありますが、九月一日からの実施というのはなかなか難しいのではないか、こういうように私ども考えております。特に退職者医療制度実施には準備期間が一カ月は十分必要であるというように考えておりますので、もしこのまま会期内に成立するといたしますならば、一番速やかな実施ということになりますと、十月一日を私ども予定をしながら準備を進めていくつもりでございます。
  13. 森井忠良

    森井委員 事務当局としてはやむを得ないでしょうね。  大蔵省にお伺いをいたしますけれども、私が大蔵省に、きょう質問があるから委員会出席をしてくれと言いましたら、私どもお答えすることはほとんどありません、こう言っておるわけでございます。どなたが出てきておられるか知りませんが、来ていなければ呼んでいただかなければなりませんが、来ていると思います。  仮に十月実施といたしますと、七月、八月、九月、三カ月間は財政上穴があく勘定になります。厚生省だと思うのでありますが、主として与党議員に、もし健保成立をしなかったらこうなりますという文書が流れておりまして、月に大体五百億の歳入欠陥になります、こういうことでございます。そういたしますと、先ほどの保険局長の御答弁によりましても、当面合わせて大体千五百億前後の穴があくはずであります。どういたしますか。
  14. 小村武

    小村説明員 ただいま保険局長からお答えのありましたように、仮に一カ月おくれますと約五百億円余りの国庫負担の増額となるわけでございますが、先生御案内のように、予備費は三千五百億円しかございません。これは他の財政需要にも対応していかなければいけないということもございまして、まことに容易ならざる事態でございますが、今後の諸情勢を見きわめて検討してまいりたいと考えております。
  15. 森井忠良

    森井委員 僕はこの際申し上げておきたいと思うのですけれども、いつの間にか、健保成立をしなかったら、中曽根総理か総裁か知りませんが、再選はないと言われてまいりました。これはどこか論理のすりかえなんですね。健保も大法案ではありますけれども内閣命運を左右するというようなものじゃない。それがいつの間にかそう言われてまいりまして、内閣命運を左右する。健保成立しなかった場合の予算上の欠陥というのは大体四千二百億と言われておりました。四千二百億で一体内閣命運が決まるのか。私は本当におかしいと思っておりました。去年に比べてことしは景気がいい、したがって、四千億や五千億は自然増収で当然出てくるであろう、私はこう予測をしておりました。そういたしましたら、案の定そうでありまして、大蔵省が今月の六日に五十八年度税収決算額の概数を発表しておりますね。それによりますと、補正後、予算額を四千五百三十九億円上回っております。この理由は、電力会社を初めとする産業界景気回復基調になっております。したがって単年度じゃない。当面、大蔵省は、五十八年度余剰金については二、千四百九十億円、国債償還に充てるために全額か国債整理基金に入れる方針だ、こう聞いておるわけであります。これは五十八年度の先ほど言いましたような状況であります。しかも、根底には電力会社を初めとする産業界景気上向きというのが中に入っております。大蔵省、今私が申し上げたことには間違いありませんか。
  16. 小村武

    小村説明員 私は主計局主計官でございまして税収のことについては定かにいたしませんが、私の存じておる限りでは、先生おっしゃったとおりだと存じております。
  17. 森井忠良

    森井委員 冒頭に申し上げましたように、私は、大蔵省にぜひ出ておいてもらいたい、健保審議をいたしますと言いました。小村主計官は私も非常に有能な官僚だと思っておりまして、あなたが将来次官におなりになることを楽しみにしておりますけれども、しかし、先ほど申し上げましたように、内閣命運を決めるかもわからぬとだれかがささやいて、それがある程度本物になりつつあるというときに、その答弁者主計官では、私はそういう意味で極めて不満であります。まだ後で大蔵省お答えをいただきますけれども、あなたでいいのだったらそのままおっていただいて結構でありますが、そうでないなら今のうちにかわりの方を呼んでおいてください。  そこで、もし同じだとすれば、今年度税収見通しについてもほぼ明らかになってくる。端的に申し上げましたように、とりあえず十月の施行期日だけでも千五百億の歳入欠陥が出てくるとすれば、しかも予備費がないとすれば一体どうされるのか。もう一遍お答えをいただきたいと思うのです。
  18. 小村武

    小村説明員 予備費は三千五百億しかございませんということは先ほど御説明申し上げましたが、予備費のほかに補正予算の問題ということがございます。その際におきましても、税の自然増収を五十九年度は目いっぱい見込んでいるということもあって多くを期待できない。まして特例公債の増発ということを今考えることは不適切であるというふうに私ども考えておりまして、いずれにしてもその対処に私どもとしては苦慮せざるを得ないというのが現状でございます。
  19. 森井忠良

    森井委員 いずれにいたしましても健保健保で来ましたけれども、これは三千三百万の被用者本人の暮らしがかかっているのですね。しかも、今年度経済見通しあるいは税収見通しからいけば、私はもっと国民的な立場に立って譲るべきものは譲る、自民党修正案なんて言わないで、野党も一緒にやって納得のいくような修正をしようではないか、これがあってもいいと思うわけでございます。  いずれにいたしましても、今年度景気上向き状態については、あるいは税収が五十八年度基調に照らしてあるい方向にあるということについても大蔵省も認めましたから、これ以上追及をいたしませんけれども、間もなく六十年度概算要求の時期が来るわけでございます。これは自民党社会部会皆さんも、今のような福祉の切り捨てでは困ると言っておるわけでございます。ちょっとついでで悪うございますが、厚生大臣、そういったことを背景にして、新年度概算要求については、あるいは昭和六十年度予算編成に当たっては福祉後退をしない、そういう前提のもとに御努力いただけますか。
  20. 渡部恒三

    渡部国務大臣 先生指摘のように、社会福祉のお金というのは、毎日毎日の国民の生活に係っておるものでございますから、予算幾ら厳しくても、今年休んで来年に回すというようなことにならない性質の予算が非常に多いのでありますから、私どもは、福祉後退と言われるようなことのない予算を確保するために全力を尽くして努力したいと考えております。
  21. 森井忠良

    森井委員 保険局長にお伺いするわけでありますが、与党自民党修正案ということになるわけでありますが、その第一項目で、三段階制の一部負担といいますか、そういうものが行われるように修正をされていますね。私は、中身のいい悪いは今申し上げませんけれども、かねがね渡部厚生大臣やあなたがいろいろ国会で御説明をなさいましたように、一割の負担というのはコスト意識が出てくる、自分の医療費幾らだということがわかる。ところが三段階制の一部負担ではこれはそういう意味では残念ながら厚生省の意思にもとるものである、こう私は今までの国会審議から見て感じるわけでありますが、いかがですか。
  22. 吉村仁

    吉村政府委員 私ども、今回の法案定率主義を提唱いたしましたのは、今先生指摘のようにかかった医療費がすぐわかる、そういうようなことからコスト意識を明確に持ち得る、そしてまた乱診乱療というようなことを抑制する効果があるというようなことから提案をしたわけでありますが、今回の自民党の三段階定額制は、私ども医療機関事務負担を軽減する見地から、一部少額の医療費につきまして定額の一部負担にされたというように聞いております。確かに事務負担というようなことからいいますとそれはそれなりの理由があると思います。  ただ、先ほど申しましたように、定率負担の趣旨というようなものを若干ゆがめるというようなことがあるかもしれません。しかし、三段階医療費を区分いたしまして、その三段階に応じて一割相当額定額を課するということは、やはり私は定率意味というものをそこにある程度反映をしておるというように思います。少なくとも一部負担を百円取られるならばきょうの医療費は千五百円以下であったんだなということはわかります。それから、二百円を取られれば千五百円から二千五百円の間の医療費であるということはわかるわけでありまして、定率ほど的確にわからないにしても、そういう幅の中で医療費を理解し得るということではないかと考えております。
  23. 森井忠良

    森井委員 それは理屈になりません。理屈になりませんが、保険局長という事務当局立場もわかりますから、これ以上は触れませんが、これはマージャンで言うところの「プラマイゼロ」の話なんですね。要するに、例えば医療費千五百円以下は百円というのは、まともに行けば一割負担だから百五十円払う人もいる、しかしそれは百円でおさめましょうという点でちょっと得したように見えますが、逆に今度は七十円の人は百円出さなければならない。損をする人と得をする人はいるが、結局プラスマイナスはゼロということですね。  そこで、今度の場合も、三千五百円以下が三百円ということで、そういう意味で丸めになっておるわけでありますが、これでどれくらいの患者が該当するんですか。新聞には載っておりましたが、はっきりしていただきたいと思うのです。
  24. 吉村仁

    吉村政府委員 私ども政管健保の数字で推計しておりますが、入院外だけで計算をいたしますと、患者のうちの六一・三%がこれに該当すると推計をしております。
  25. 森井忠良

    森井委員 これは私は率直に申し上げますけれども、結局外来の三千五百円以下なんですよ。これは主としてどこが対象になるのか。今入院外の場合をおっしゃいましたけれども、病院の場合でも外来はございますけれども、ほとんどの部分はやはり診療所、開業医が対象になっています。極めて私は問題があると思うのです、なぜなら肝心の入院の場合にはそういったことはない。完全に一割を取ろう、こういう形になっておりまして、私は極めて片手落ちだと思うわけでございます。むしろ入院の方が大変ですから入院の方に措置を広げるべきであるということならわかるけれども、言うなれば三千五百円以下の医療費というのはどちらかというと、言葉は悪うございますが軽い病気であります。本来国民が一番心配しているのは入院を含む重症の患者、これを何とかしなければならない、こういう形になるわけでありまして、その意味では全く逆行しておると思いますが、これは大臣、いかがですか。
  26. 渡部恒三

    渡部国務大臣 これは先ほども申し上げましたように、私ども政府原案をもって最高のものと考えておりますけれども、同時に、社会労働委員会審議の中で、各党先生方国会先生方の御意見は謙虚に耳を傾け、これを尊重していくのも当然のことでございます。今御指摘の問題、先生の御説も一つの考え方だと思って拝聴いたしておりますが、また一方、これは四捨五入というような、やはりこの問題で、一割負担に対するいろいろの抵抗の中では、事務的に窓口事務が非常に煩雑になって困るということが非常に多かったので、そういう意味の効率化というものを図りますとそういう意見も出てまいると思います。また、先生御心配の重い病気にかかられた方に対する配慮、これは高額療養費の問題で一つの歯どめというものを私どもかけておるわけでございますが、これについても、与党もまた野党皆さん方もそれぞれ、今後一割負担実施によって患者の皆さんが困らないようなことをお考えいただいておるようでありますから、その面で先生方の御意見を尊重いたしまして、そういう重い病気の方に対する配慮もなされるのではないかと考えております。
  27. 森井忠良

    森井委員 余り議論がかたくなってもよくありませんから、私は自分の家のことでちょっと申し上げたいのですが、今度の場合被保険者本人原則医療費無料を一割負担にする。これは給付の公平というのが入っているわけですね。家族は外来七割、入院八割、お父さんは十割は不公平じゃないか、こういう説明もございました。本当でしょうか。私は、それこそささやかな我が家の事情でありますけれども、なるほど家内や子供たちもたまには医者に行くことがあります。しかしお父さんの医者代がただだって怒りはしませんよ。どちらかというと、私たちはいいから、親からすれば、それこそ子供に対しては着る物も着ないでせっせと子供に対していろいろなことをするわけでありますけれども、しかし家族全般から見るお父さんのウエートは非常に高い。大臣も恐らく御家庭で大切にされておられるのじゃないかと思いますが、お父さんが病気をされたら大変だといって、例えば生命保険等に入る、あるいは交通災害等の保険に入るということはありますけれども、なかなか手が回らないものでありますから、例えば家内や子供たちにまではなかなか入りにくい、子供たちにはあるいは入るかもしれませんが、いざというときにはやはりお父さん、こうなっているわけですね。大臣の御家庭、どうですか。
  28. 渡部恒三

    渡部国務大臣 私の場合は私の家内が一家の経済を支えておる担い手でございますので、一般的な議論にはちょっと適切でございませんが、ただ、先生のおっしゃる意味もわかりますが、被用者保険そのもののでき上がった淵源というのも、一家の支え手である大事な方、また産業にとってはその産業の支え手である勤労者が病気になった場合、けがをした場合、これは健康を守っていかなければならないということでできたのでありまして、これは一家の支え手が、また汗を流して働く産業の支え手が大事な大事な方であることは当然でございます。しかし、それならば一家の支え手でない方が大事でないかというと、ここが難しいところでございますが、かつてはそういう一家の支え手は十割給付、しかし家族は保険もないというような時代があったわけですが、しかし今日の福祉社会、近代化の方向というものは、やはり事が今、健康に関しては、もう総理大臣であろうとだれであろうと、家族であろうと本人であろうと、農家の方であろうと中小企業の方であろうとお役人さんであろうと、すべての人が、その命を守っていくためにこれは大事なことであるということは、また共通して今日の方向になっている。これは生活保護世帯の方はもとより十割給付いたしますし、また老人医療の方ももとより十割給付いたしますし、これは当然のことだ、社会的な合意になっておるので。今日では、医療保険というものは、一家の支え手であるお父ちゃんも、子供も奥さんもおばあちゃんも、あるいはあらゆる職業の方、全部同じような給付になることが望ましいという方向に福祉のあるべき姿がなっておるということも、私は国民的な合意になっておると考えております。
  29. 森井忠良

    森井委員 人の健康とか命は同じですから、それはわかるのです。しかし、今男女、雇用機会均等法あるいは男女雇用平等法が問題になっていますけれども、それは女性の方も確かに働かれますが、統計上からいけば一家の大黒柱というのは今のところお父さんという形になりますね。ここのところが今度ねらわれたと申しますか一割負担が入ったわけでありますから、もう時間がありませんから深くは触れませんけれども、一家の働き手が相当ウエートが高いということはこれはお認めになりますね。
  30. 渡部恒三

    渡部国務大臣 これは先生おっしゃるとおりで、心情的には私も今先生のお話に全く同感であります。かっては、一家族で生活しているところにアユを一匹もらえば、これはお父ちゃんのおぜんにつくのが当然だったので、私はそういう時代が懐かしいのでありますが、最近は五人家族で五匹のアユをもらわないとお父ちゃんのところへいかないという風潮もございます。しかし、心情的には私は全く先生の言うように、一家の支え手、これはお父ちゃんが毎日満員電車で行って働いて、そして持って来る月給で家族が皆団らんできるのですから、お父ちゃんをみんなで大事にしなければならない、これは全く同感でございます。
  31. 森井忠良

    森井委員 時間がないんだから、余り余談の答弁はしないで、イエスかノーかを言ってくれればいいんですよ。  そこで、私も調べてみました。調べてみましたら、適当な資料というのを厚生省がつくっております。「負担額階級別件数分布」、これは政管、本人の場合でつくっておりますね。これはたまたま調べた月は昭和五十七年四月の診療分の点数分布でありますけれども、これによりますと、仮に一割負担された場合に、入院をして二万円以上負担になるという人は四割近いのですね。三六・九%、約三七%の人が二万円以上払わなければならない。三万円以上をとってみますと、三万円以上でも二一・一%払う人が出てくる。三万円以上ですよ。これはそうは言うものの百人のうち二十人ですね。これは大変なことなんです。ちなみに五万円以上をとってみましても八・四%の方が該当する。つまりそれだけお父さんの負担が出てくる。これは今までの原則無料ということからいけば、今度五万一千円、五万四千円というのは消えたようでありますが、高額療養費の限度額を入れても問題である。参議院の皆さん審議に当然またなければなりませんけれども、原則無料の本人からすれば、何らかの措置というのは高額療養費等含めて必要じゃないか。いかがでしょう。
  32. 渡部恒三

    渡部国務大臣 御指摘の点は私もそのように心配をしておりますが、国会でもたびたび先生方から御心配をいただきましたので、今回、被用者保険の十割給付の皆さん方に一割の御負担をお願いする、これは保険制度を将来にわたって揺るぎなきものにするためにお願いをしなければならないけれども、そのために健全なサラリーマン家庭が病人続出によって破壊されてしまうというようなことがあっては大変申しわけないということで苦慮いたしておりますので、これは先生方の御意見に十分謙虚に耳を傾けて、この法案成立させていただくまでの間には、何とか、一割負担が実現しても被用者保険加入の皆さん方が御安心をできるような、行政によって可能なことはできる限り努力をしてまいりたいと思います。
  33. 森井忠良

    森井委員 時間がございませんので、もう一つだけ自民党修正案による影響についてお伺いをしておきたいと思うのですが、政府原案では今年度と明年度が一割、六十一年度からは二割負担になるのですね。それを財源に、財源といいますか、そうなりますと保険財政が楽になりますので、それを拠出金に充てるという形になっておるわけでございます。ところが、自民党修正案によりますと、六十一年から二割じゃないですね、国会で議決をするまでということでありまして、常識的に考えてみましても、これは六十一年以降も、いつまで続くかわかりませんが、国会で議決をするまでは一割負担が続くと思うわけでございます。そうしますと、厚生省の方が今まで言っておられました拠出金は、六十一年度以降は二割負担という前提で拠出金、保険料を計算してこられたわけでございます。六十一年度以降も当分の間一割負担ということになれば、当然各保険制度は財政的には苦しくなりますから、これは保険料も引き上げなければならぬという事態も当然起きてまいります、計画が狂ったんですから。この点はどうですか。
  34. 吉村仁

    吉村政府委員 確かに先生おっしゃるように、私ども六十一年度以降は二割の負担ということで財政の計算をしておりました。それが六十一年度以降も九割だということになりますと、医療費の伸び、それから負担状態、そういうようなものに変化が生じてくることは事実であろう、こう思います。したがって、医療費の動向あるいは賃金の伸び等いろいろ勘案しなければならない要素はあるにいたしましても、保険料率を上げざるを得ない場合もある、こういうように考えております。  ただ、私どもいろいろな形で医療費の適正化対策というものを実施することによりまして、極力保険料率の引き上げが必要でないように措置をしてまいりたい、そういう形で努力をしてまいりたい、こういうように覚悟をしておる次第でございます。
  35. 森井忠良

    森井委員 これは、五十九年度は退職者医療に係るところだけで千分の五・七四上がるようになっていますね。それで、これは二十年後、三十年後、四十年後、ここまで資料が出ていますが、当然今局長お答えのようにこれは予定が狂ってまいります。六十一年度からすぐ変えるかどうかは別にいたしまして、今あなたが言われたようないろいろな経営努力もなさるでしょうけれども、それにしてもこれは拠出金が上がることは目に見えている。したがって今びっくりしたわけでありますが、そうなりますと、政府原案の変更によって拠出金の額が変わってくる、保険料の値上がりにつながるということになるわけですね。  大蔵省、これは一体どうするのですか。保険料値上げをさせるのですか、それとも国庫負担を入れますか。本来退職者医療国庫負担がつかないなんというのはおかしい、政策を初めて行う場合は誘導的に出すべきだと私は思うのです。残念ながら制度創設の今年度からは出せないのでしょうけれども、今言いましたように政権党である与党によって、これは実際は私ども野党も相当抵抗いたしましたから、六十一年度以降二割というのは一割になったんだと思いますけれども、しかしそれにいたしましても、そうなってまいりますと今度は六十一年度以降は直接保険料に響いてくる、先ほど保険局長がお認めになったとおりであります。こういうときにこそ私は国庫負担を導入して、しかも財政的には先ほど申し上げましたような背景がございます。一体保険料値上げをさせるのか、ここはひとつ考えさせてくれと言われるのか、これは主計官の裁量じゃありませんよ、大蔵大臣を代弁して答えていただきたいと思うのです。
  36. 小村武

    小村説明員 まず第一点の、退職者医療制度になぜ国庫負担を導入しないかという点でございますが、私ども医療保険制度に対する国庫負担についての考え方は、やはり各保険者ごとに財政力が違うという点に着目いたしまして、その間の財政の調整をするという考えで現在国庫補助を行っているわけでございます。  今回発足する退職者医療制度につきましては、被用者保険制度サイドの問題として、現役がOBの医療費について拠出金をもって賄うという、原則的なそういう考え方が適当であるということと、それから、拠出金につきましては各保険者ごとの財政力に応じて拠出をされるという点から、国庫負担の導入ということを行わなかったわけでございます。  それから、将来どうなるかということでございますが、これは各保険者の財政の問題でございまして、先ほど保険局長お答えになりましたように、いろいろな医療費の適正化対策等を講じられ、各保険の財政状況等を見て、その保険体系の中で解決をしていただく問題ではなかろうかと存じております。
  37. 森井忠良

    森井委員 これは重大問題ですよ、いいですか。単にある日突然この数字が出たわけじゃない。退職者医療制度ができますと拠出金の額はこれぐらいになると明確に出してきて、しかも四十年後まである程度の目安を明らかにしておられるわけですね。私は場当たりで言ったのではない。政管は政府がやっているのですからともかくとして、しかし、健保組合とか共済の短期給付とかいろいろありますね。いろいろあるものについてつまりみんなが金を出すわけですから。これは労使折半で保険料も払っています。だから、そういう意味では、経団連にも影響してくるし、当然労働組合にも影響してくる。退職者医療ができましたらごっそり。取られるのではないかということで心配した、ちょうど老人保健法のときの拠出金と同じであります。しかし、まあここまでです、例えば三十年後で最高いきましても千分の十をちょっと切るぐらいでございますと、こういう説明か得て、それぞれ関係労使が納得した経過がある。今あなたの説明だと、足りなければ保険料で払ってもらいなさい、これでは明らかな背信行為になる。再度これは検討して、国庫負担を導入するとかねがね言われておるわけですから、退職者医療国庫負担がないのはおかしいと言われておるわけでありますから、ここ一、二年は仮に譲るにしても、今言いました一割負担が継続することによって受ける被害について、今まで拠出金を幾ら出すということについては示しておるわけでありますから、それを上回るものについてはせめて国庫負担で補うべきではないか。再度答弁してください。
  38. 吉村仁

    吉村政府委員 私ども、退職者医療についての拠出金と九割給付を実施する場合の保険料とは分けて考えておるわけでございまして、退職者医療に対する拠出金というのは、先ほど先生も御指摘になられましたように、五十九年度で千分の五・七四、それから三十年後で九・八パーミル、こういうことで計算をしております。したがって、ここのところは今回の修正案が出たにいたしましても変わらない数字だろうと私どもは思うのです。ただ、自分たちの医療費を賄う場合に、九割でやっていけば五十九年度、六十年度は保険料率を上げなくても済む、しかし六十年度以降については八割給付にする方が保険料率を上げなくても済むというような計算をしておりました。しかし、六十一年度以降やはり九割が続くということになれば、状況のいかんによっては自分たちの医療費を賄う保険料率は上げざるを得ないことになるのではないか、こう私は申し上げたわけでございまして、その自分たちの医療費を賄う部分につきましては、私ども医療費の適正化等を通じて極力保険料率の引き上げを回避するような努力をいたしたいと思いますし、退職者医療の方は数値の変動はないわけでありまして、五十九年度において退職者医療制度に対しては国庫負担を入れる必要はない、私どもこういうような判断をしておるわけでございまして、これが六十一年度になりましてもやはり国庫負担を入れなければならないという事態は生じないのではないか、こういうように考えておる次第でございます。
  39. 森井忠良

    森井委員 まことに不穏当な発言かもしれませんが、一種のペテンだと私は思うのですよ。拠出金を出さずに当たっては、被保険者本人から一割の負担をさせます、そうするとあなたの保険制度は楽におなりでしょう、健保組合なら健保組合がそこで楽になったんだから拠出金を出しなさい。何のことはない、患者が結局負担することになるわけであります。そういう仕組みなんですね。それは前提は、ことしと来年については一割負担だからそれだけ楽になったでしょう、六十一年以降は本人から二割も負担させるのですから、さらにあなたの保険制度、健保組合なら健保組合は楽になったでしょう、そういう前提で将来にわたって拠出金のめどをつけていらっしゃる。渋々応じたという格好になっているわけですね。ですから、二割が一割に変われば、保険制度は皆さんが説得されたように楽になるのじゃなくて、一割負担のままでいくわけですから、それだけ保険財政は苦しくなる。そうしますと、局長が言われますように当然保険料の値上げにはね返ってくる。もうイエスかノーでいいですから、ここまでお認めになりますか。
  40. 吉村仁

    吉村政府委員 それはそのとおりだと思います。
  41. 森井忠良

    森井委員 整理ができました。そうなりますと、あらかじめ拠出金の将来推計といいますか、一番多くなるときでも三十年後ぐらいでありまして、そのときは千分の九・何%、千分の一〇%を割るくらいで済みます。四十年になりますとまたやや下がってまいります。いずれにいたしましても、そういうガイドラインを示して関係労使を説得してこられたという形になっているわけで、ここの国庫負担を考えるのは当然じゃありませんか。大蔵省、どうですか。
  42. 小村武

    小村説明員 私どもとしましては、医療費の増加、これまでGNPの二倍以上のスピードで三十六年以来伸びてきた、その増加につきまして、パイの量を適正にしていただくということがまず第一だと考えておりまして、保険料も国庫負担も上げるということは望ましい事態でないということは基本的に考えております。退職者医療制度につきまして国庫負担を将来入れるという御指摘でございますが、退職者医療制度に対する拠出金は、各保険者の財政力に応じて強いところはたくさん出していただくというシステムになっているという点から見て、まず保険者の拠出金をもってこれを賄っていただくということが適当ではないかと考えている次第でございます。
  43. 森井忠良

    森井委員 それは断じて認めるわけにいきません。この際だからもう一回、別な問題で、これは大蔵省の考えている性根を推しはかる意味でお伺いするわけでありますが、昔三Kと言われて、残念ながら健保もそのKの一つでありました。しかし、財政状況は御案内のとおり相当好転をしてまいりましたね。そして、四十九年度以降の赤字については計画よりもはるかに早く払ったわけです。逆に言えば保険料を取り過ぎた。弾力条項があるのでありますから、保険料率、何も上げるばかりが弾力条項じゃない、要らなくなれば下げる。早く払ったものだから、結果としてこの三月から千分の一お下げになりました。しかし、それにいたしましても、前回の五十五年の改正のと妻も私はいろいろ議論をいたしたわけですけれども、何年で返すかというのが大変な問題だった。私ども野党としては、たしか千三百億弱の金額でしたけれども、十年で返せと言ったが、結局六年で手を打ったわけでありますが、そんなにかからなかった。計画よりもはるかに早く返した。保険科に直接響いてくるものですから、何年で返すかというのは大変な話であります。とにかく早く祝して、今のところなおゆとりがあるわけでありますが、四十九年以降の赤字については解消して帰りますが、四十八年以前の赤字は、四十八年当時一体幾らあったのか、それから利子がどんどんかさんでいますから今幾らになっているのか、そしてその処理はどうするのか、時間がありませんからこの点についてお伺いしておきたいと思います。
  44. 坂本龍彦

    ○坂本政府委員 政管健保の累積赤字の件でございますが、一つは、昭和四十九年度以降の累積赤字の処理について先生から…(森井委員「それはいいですよ、もうわかっている」と呼ぶ)はい。四十八年以前の累積赤字について申し上げます。ちょうど昭和四十八年に法律改正がございました当時の累積赤字は三千三十三億円でございました。これにつきましては、その後利息が重なってまいりましたのでだんだんふえてまいっております。実はこの累積赤字、大きく分けますと二つの部分になるわけでございまして、一つはいわゆる損失見合いと称しておりますが、本当の健康保険の会計としての損失分、それからもう一つは資産見合い分と称しておりますけれども、一応政管健保にも何らかの資産がございまして、その資産の形で残っているという意味での資産見合い分というのがございます。それぞれ金額がふえてきておりますれけども、現在までの段階で、一応決算のはっきりしております昭和五十七年度末の段階では、当初の三千三十三億円が五千七百二十二億円という数字になってきております。これは毎年の利子を積み重ねた結果がこうなっております。ただ、資産見合い分につきましては一部、五十七年反決算におきまして、先ほど御指摘のあった四十九年度以降の赤字を消した後に若干剰余が出ましたので、七十四億円程度を償還いたしましてこの数字になっているというのが実情でございます。なお、今後の問題でございますけれども、私どもとしては、こういった赤字というのはできれば早く解消いたしたいという気持ちがございます。ただ、一つには、四十八年の法律改正当時に、いわゆる損失見合い分についてはこれは一般会計負担で返す、それから資産見合いについては保険料で返すという区分がなされたわけでございまして、そういった点からいたしますと、これを返したいという気持ちはやまやまでございますが、今日の国家財政の状況からしてなかなか思うようにいかない面もあるということで、その方途についてもいろいろと頭をひねっておりますけれども、明確な方向をまだ見出すに至っておりません。今後とも、この問題の処理については十分検討を重ねてまいりたいと思っておる次第でございます。
  45. 森井忠良

    森井委員 これは重大な問題ですね。前回の法改正のときに、四十九年以降の赤字についてはこれは保険料で払うということで私どもも最終的に渋々了承いたしました。四十八年以前のものについては棚上げをするということだったのですね。今聞いてみますと、七十億ばかり四十九年以前の赤字についても返したのですか。これは重大な背信だと私は思っている。その点もう一遍答弁してください。
  46. 坂本龍彦

    ○坂本政府委員 四十八年以前の赤字のうち、損失見合いの額についてはこれは保険料をもって返すということは申し上げておりませんけれども、いわゆる資産見合いとして、政管健保に資産として残っておる金額に見合う資産分については保険料で償還するということは、当時はっきりと区分をいたしまして、それで法律改正が成立したということでございます。ただ、資産見合いについてもいつまでに返すということは決まっておりませんけれども、五十七年度決算において若干の余裕か出ましたので、その償還をさせていただいているわけでございます。したがって、先生今御指摘になりましたように、保険料で返すと言ってなかったものを返したということではございませんので、御了解いただきたいと存じております。
  47. 森井忠良

    森井委員 これは残念ながら納得するわけにいきません。資産見合い、それはわかりますよ。わかりますけれども、今回の改正もそうだけれども、前回の改正も相当緊迫をした状況でした。第一これは三年越しにようやく成立したわけですから、そして結末をつけるときにそれぞれ議論をして、四十九年以前のものについて棚上げということになっているわけですから、勝手に解釈されては困ります。いずれにしても、当初三千億ちょっとだった赤字が今五千七百億に膨れ上がった。大臣、これは何も措置をしていないものですから、したがって雪だるまのように大きくなる。これは資金運用部資金でしょうから帳消しというわけにいかないのですね。そうしますとこれはまだどんどんふえますよ、利子がついていくのだから。今医療保険部長が答弁したぐらいのことでは追いつかない。一体これはどうするのですか。まさか保険料で払えと言うのじゃないでしょうね。これは厚生省よりもむしろ大蔵省に御答弁いただきたい。
  48. 小村武

    小村説明員 ただいま医療保険部長から御答弁のありましたように、政管健保の累積赤字、四十八年末の累積債務につきましては、資産見合いについては保険で、損失見合いに関する借入金についてはその利子を含めて一般会計から補てんし得るという道が開かれたわけでございますが、残念ながら国の財政事情が極めて厳しいということ、それから他の社会保障施策の推進に要する財源事情等から繰り入れが今日までなされていない状況でございます。今後とも国の財政事情を考慮いたしまして、厚生省とよく相談してまいりたいと思っております。
  49. 森井忠良

    森井委員 残念ながら納得できないのですよ。いいですか、四十九年以降の健保の累積赤字については、五十五年改正のときに、保険料で払いましょう、それ以前のものについてはこれは棚上げをしましょう、棚上げというのは具体的にはどういうことか知りませんけれども、結局借りかえですね。そして、利子も払っていないのですから利子だけはどんどんふえていく、利子も払っていない、どんどんこれはふえてくる。今申し上げましたようにもう借金は倍になっておる。このまま放置をすればすぐ三倍になりますよ、どんどんふえていくわけでしょう。この際、健保の大改正の時期でありますから、大蔵省、もう一度この措置を、今ぐじゃぐじゃと処理について答弁がありましたけれども、あんな答弁じゃいけません。私は処理をきちっとこうしろとは言いませんが、せめて一つだけは条件がある、二度と再び保険料からは取りません、これだけを約束しなさい。
  50. 小村武

    小村説明員 四十八年改正の際には、先ほど申し上げましたように、損失見合い分については国庫からこれを繰り入れる方途を講じられたということで、その分について国の財政事情が許せばこれの繰り入れを行うということをお約束しております。その点についてはいささかも変わりはございませんが、昨今の財政事情等によりますとその実行がまだなされ得る環境にないということでございます。
  51. 森井忠良

    森井委員 これは、悪いですけれども小村さん、あなたでは答えにくいと思います。ここに大先輩もおられますけれども。納得のいく答弁をしてくれないと審議できませんよ。
  52. 小村武

    小村説明員 損失見合い分について国の一般会計からそれを繰り入れるという方途を講じられたということは、四十八年改正で法律にも明記されております。問題は、その累積債務について一般会計から繰り入れることが、現実問題として今日まで困難な財政事情であったということを御理解願いたいと思います。
  53. 森井忠良

    森井委員 それは保険料からは充当しませんと一僕は、処理はあなた方に任せていいと思うのですよ。しかし本人から一割も取ろうという今日、しかもほうっておいたら、与野党合意をして棚上げした過去の債務までまだ保険料で入れられるかもという危惧がある。だから、保険料からは取りません、これだけを約束しなさい。
  54. 小村武

    小村説明員 医療保険制度というのは短期保険でございますので、過去の債務について現在の保険者が負担すべきでないという点も私ども理解はできますが、ただ、この問題につきまして、そういった観点から一般会計から繰り入れる方途が講じられたということでございまして、それがまた実行されていないという現状だということでございます。
  55. 森井忠良

    森井委員 これはまだ納得できませんが、参考までに聞いておきます。今度は日雇健保と政管が一緒になるわけですね。勘定が一つになる。時間がもうありませんから多くは申し上げませんが、これも七千億ばかりの赤字を持ってきているわけですね。これはどこで払うのですか。
  56. 小村武

    小村説明員 日雇健保につきましても、先生指摘のような膨大な赤字を抱えていたわけでございますが、これにつきましては、債権債務が今度政府管掌健康保険の方に引き継がれます。その間、これまでの累積債務につきましては、政管健保と同様に一般会計から繰り入れることができるという方途を講じまして、これにつきましては発生する利息の二分の一を今回予算で措置をしたというところでございます。
  57. 森井忠良

    森井委員 これもまたおかしくなるのですね。これでは質問できませんよ、本当に。いいですか、今は日雇健保について約七千億の累積債務がある、元金はそのままずっと置いておく、これをどうするか先が見えておりません、わかりません、こう言っている。こんな無責任なことがありますか。ましてや、それでは大変だから利子だけは半分見ましょうと。だから残りの半分プラス元金の七千億というのはそのまま残るわけでしょう。日雇健保と政管とくっつけるという提案をさせておいて、これが一体これからどうなるのか。先ほどの四十九年以前の債務と同じようにずっと置いておくとすると、これはあなた、一兆何千億の話ですよ。両方とも合わせて保険料からはいただきませんと言えませんか。四十九年以前のものについてはそれなりの理由がある。それから日雇健保の赤字についても、これは政策的にやってきてできた赤字なんだから、これを政管も含めてまた保険料で持てなんてことになりかねぬじゃないですか。これははっきりしてください。納得のいく答弁ができない限り質問を続行できません。
  58. 小村武

    小村説明員 日雇健保の累積債務につきまして、政管健保に今度引き継がれるわけでございますが、この累積債務について、政管健保の加入者の方々の保険料をもってそれを解消するということは考えておりません。
  59. 森井忠良

    森井委員 そうすると、その後どうするのですか。ずっとそのまま残すのですか。方法は余りないですね。一般会計から見るしかないじゃないですか。そういうふうに理解してよろしいですか。ついでに、四十九年以前の赤字についてもやはり同じ答弁でいいんじゃないですか。そうしなさいよ。
  60. 小村武

    小村説明員 日雇健保の問題につきましては、新しく別のグループと一緒になってその中で財政が営まれるわけでございますが、その累積債務について、吸収する政管健保の被保険者の方々の保険料をもってそれを解消するということは考えていないということでございまして、この件につきましては一般会計から繰り入れる方途を講じたということでございます。ただ、膨大な赤字でございますので、一般会計におきましてこれを一挙に解決することは無理だということで、発生する利息分の二分の一を今回予算措置をしたということでございます。
  61. 森井忠良

    森井委員 最後は一般会計で見るというわけですか。
  62. 小村武

    小村説明員 一般会計の財政状況がこれだけの財政負担にたえるという状況でございますれば、これを一般会計から繰り入れるということができるということでございます。日雇いにつきましては、いずれにしましても、将来国の財政状況を見ながら厚生省とよく相談をしてまいりたいと考えております。
  63. 森井忠良

    森井委員 先ほどの二割が一割で当分続く六十一年以降の退職者医療の扱い、これは保険料の問題が絡んでおりますけれども、それと先ほどの四十九年以前の財政赤字の処理、それから日履健保の今まで累積しておる赤字約七千億の扱いについてはっきりしなければ、私はこれ以上質問はできません。
  64. 小村武

    小村説明員 私ども先ほどるる御説明申し上げましたように、政管健保については資産見合いと損失見合いということに当時分類いたしまして、それで、資産見合いについては保険料から払っていただく、損失見合いにつきましては一般会計からの繰り入れの方途を講じたということでございます。その一般会計から繰り入れる方途を講じましたが、国の財政が非常に厳しい事情にございまして、今日までそれが実行できないということでございます。  今後これをどうするかというのは、私ども、これからの国の財政事情も考慮いたしまして、厚生省とよく相談してまいりたいということでございます。
  65. 森井忠良

    森井委員 日雇いは…。
  66. 小村武

    小村説明員 一般会計からの繰り入れの方途が決められておるわけでございます。したがいまして、いつ、どういう時点で、どういう形で、これを一般会計から繰り入れるかということにつきましては、国の財政事情等もございまして、それも十分よく考えて今後厚生省と相談いたしたいという趣旨でございます。
  67. 森井忠良

    森井委員 やっぱり納得できません。
  68. 小村武

    小村説明員 私は片面から申し上げているわけでございまして、国の財政立場から、損失見合いについては一般会計から繰り入れることができるという規定がございます。したがいまして、国の財政事情に応じて繰り入れることが一番望ましいわけでございますが、現状においてはそれがまだ実行されてないということでございまして、資産見合いは保険料で見ていただくということを申し上げておりまして、これは当時仕切りをつけられたとおり、私どもも実行するということを申し上げているわけでございます。したがって、損失見合いについて保険料を引き上げてそれを補てんしていただくとかということは申し上げていないつもりでございます。
  69. 森井忠良

    森井委員 はっきり言ってほしいのは、要するに日雇健保の赤字についても、それから四十九年以前の累積赤字についても、四十九年以前の分については損失見合いと言っておりますけれども、では資産見合いは勝手にどんどん払っていいという性質のものではない。凍結というのははっきりしているのだから。勝手にというのは語弊があるかもしれませんが、今聞いてみて初めてわかったのだ、七十数億を返しているというのは。少なくとも五十五年改正であれだけの約束をちゃんとしたんだから、仮に資産見合いにしても、返すについては当然のことでありますが、少なくとも凍結解除がなければおかしいと思うのです。それが一つ。  それから、日雇健保の赤と四十九年以前の損失見合い等については保険料から取りません、これだけ一言言いなさい。(小沢(辰)委員「それだけ言えばいいんだよ」と呼ぶ)小沢筆頭理事が言っているじゃないですか。そのまま言えばいいんだよ。
  70. 小村武

    小村説明員 私は、財政当局の立場から、国庫負担のサイドでそういうふうに申し上げておりまして、保険料の問題につきましては、医療保険部長からお答えするのが適当かと存じます。
  71. 坂本龍彦

    ○坂本政府委員 一般会計からの繰り入れの道へ開かれております政管健保と日雇健保の累積赤字に対しましては、保険料で償還することは考えておりません。
  72. 森井忠良

    森井委員 いい結論が出ましたからこれで私は引き下がりますけれども、何でこんなに時間をかけるのかね。質問がほとんど残ってしまったわけであります。  そこで、もう質問ができなくなってしまいましたが、最後に一、二点お聞きをしたいと思うのであります。  一つは、健保の傷病手当金と厚生年金の障害年金、または障害手当金との併給調整についてお伺いをしておきたいと思うのです。  大臣は、去る五日、我が党の上西委員質問に対しまして、併給調整を行うとの確約を行っておられます。私も聞いておったわけでありますが、具体的に実施の目途はいつになるのか、どこに置くのか、この際確認をしておきたいと思うのです。
  73. 吉村仁

    吉村政府委員 この間の社労委員会で、大臣がそういう御答弁をされました。それから私ども早急に検討を加えておりまして、できるだけ早く結論を得たい、こういうことでいま検討をしておる過程でございます。
  74. 森井忠良

    森井委員 もう一点は、健保の任意継続加入の問題であります。この点について、月払いというのは非常にきついではないか、したがってもっと工夫しろということで前納制を導入したらどうか、こういうふうに同じく上西委員から指摘をいたしております。私ども、もっともだと思うわけでございまして、この点についても前向きの御答弁をしておられますけれども、再度私からお伺いしておきたいと思うのでございます。
  75. 吉村仁

    吉村政府委員 この点につきましても、同じように、私ども大臣の命令に従いまして検討を加えております。近々結論が出るんではないか、こういうように思っております。
  76. 森井忠良

    森井委員 両方とも近々ですね。
  77. 吉村仁

    吉村政府委員 そういう目途で努力をしております。
  78. 森井忠良

    森井委員 そういう目途で努力をしておりますということでありますから、近々だというふうに理解をいたしておきます。  極めて変則な質問になりましたが、最後にもう一問、中医協の問題です。大体あなた方は、健保の大改正等がありますといろいろ手形を出して、我々がここを直せと言ったら、はい、直しますと言っておるわけでありますが、審議が終わりますとまたきれいに忘れて、そのまま約束を守らないということがしばしばございます。その中の一つに、中医協の改組といいますか、不合理を直しなさいということをしばしば指摘をしておるわけでございます。何と、驚きましたね。中医協は三者構成でありますが、そのうち診療側の委員は合計八人、これは支払い側も八人ですけれどもね。公益委員側が四人とこうなっておりますけれども、何と、これは全部三師会の推薦ですね。驚いたことに、今日本医師会から八人のうち五人出していらっしゃいますね。病院の代表は一人もいない。私どもは、病院代表を出しなさいとしばしば指摘をしてまいりました。しかもこれは、日医の執行部がかわりますとがらっと中医協の委員がかわるのです。私は制度審の方の委員をしておりますが、制度審もおかわりになりました。継続性が一つもない。これは御存じのとおり、会議はそれぞれ構成する各側の三分の一以上出なければだめなんです。会議を欠席されますと開けない。診療報酬その他、中医協はたくさん問題を抱えていらっしゃいますけれども、やはり特定団体からだけの推薦というのは困る。なかんずく、日医推薦の五人というのは、逆に言えばそれ以外は一つもないわけであります。公私病院連盟、自治体病院などたくさんあります。どうしてこれを変えないのですか。全部日医の推薦というのはおかしいじゃないですか。これはかねがね言っておるわけでありまして、ここのところを直す意思が本当におありなのかどうなのか、もうこの時期でありますから明確にしていただきたい。場合によってはやはり法律を変えるべきだ。例えば老人保健の発足に伴いまして、本来は老人保健審議会で診療報酬等は審議をすることになっておりましたのを、自民党を中心とする修正に遭いまして中医協でこれも審議することになった。ところが調べてみますと専門委員がお二人ほど出ておられる。学識経験者が一人と、それから自治体の長が一人出ておられる。これはしかし、老人保健法の診療報酬を審議するという重要な立場にありながら、委員じゃないのですね。専門委員、ということで便宜上認めているわけです。もうこの辺で、古い法律ですから、やはり社会保険医療議会法そのものを見直す時期に来ておる。ですから、人選の問題とあわせて、今申し上げました老人保健法との絡みもありますから、この際定数をふやすなりいろいろして、ニーズにこたえるべきではないか。前向きな御答弁をいただきたいと思うのでございます。
  79. 吉村仁

    吉村政府委員 現在の法律は、医師を代表する委員、こういうことになっております。そして、医師を代表する関係団体というのはやはり日本医師会ということで考えておるわけでございまして、現在五人の委員がお出になっておりますが、そのうちの一人は病院代表ということで、医師会の推薦を受けておるわけでございます。  私ども、確かに先生おっしゃるように病院医療のウエートが高まってきておることから、病院代表を加えるべきだ、これはそのとおりだと思います。現在の構成というのは、長年の経緯を通じて現在のような形になっておるわけでありまして、しかも現在円滑に審議が行われております。したがって、私どもとしてはしばらく現在のままでやっていきたい。ただ、日本医師会に対して、病院代表をさらに加えるべきではないか、こういうようなことについてはその意思を伝えてまいりたい、こういうように考えます。
  80. 森井忠良

    森井委員 もう少し考えてくださいよ。いいですか。例えば医療費で見てごらんなさい。医療費で見ると病院は五三%、診療所は三四%なんです。あとは歯科が一一%、薬局が二%、こうなっておるわけですね。この側面から見ても、それから入院、外来の比率から見ても、もう申し上げるまでもありませんけれども、一人では本当はおかしいのです。医療費を使っている皆さん、当然これは対象とした患者がおるわけでありますから、病院には病院の悩みがある、御案内のとおりであります。診療報酬の問題一つとってもこれは利害が対立する。そういうときに、ほとんどが診療所の代表じゃありませんか、日医の推薦。医師の代表は日医だ、これも少しおこがましいと思うけれどもね。これはおこがましいですよ。しかしそれにしても、今申し上げましたようなことからすれば、なぜ診療所、開業医の代表だけが出てこなければならないのか。私は別に日医に対してどうも思っておりません。それはいいお医者さんもたくさんおられますから、そのことは何とも思いませんけれども、今これだけの医療保険の改正をする、むだな省き方も十分じゃない。今度の法案で見てごらんなさい。薬づけ、検査づけ医療が減るという保証はほとんどない、私に言わせたら。であれば、せめて中医協ぐらいは変えなさいと私は言っておるのです。
  81. 吉村仁

    吉村政府委員 そういう御意見は、重々よくわかるわけでありますが、私ども、現在の三者構成というのを変えるのも適当でないと思いますし、また医師代表の五人という構成も、まあ長年の沿革でそういうように決まってきたわけでありまして、日本医師会とやはり相談をして、その内部の推薦される方の人選においてそういうことを考えざるを得ないのではないか、そういうことから日本医師会と十分話をいたしたい、こういうように思います。
  82. 森井忠良

    森井委員 大臣、この問題はやはり事務当局では無理だと思うのですね。ですから、大臣としても、これはもう積年の弊害だと私は思うので、ひとつ政治的な御遠慮をいただきたい。  なお、委員長にお願いをしておきますが、私の質問はこれで終わりますけれども、中医協の問題については、理事会等におきましてもこれから議論していただきますように御要望申し上げておきます。
  83. 有馬元治

  84. 河野正

    河野(正)委員 私は、四月の委員会で御質問申し上げた経過もございますから、その後委員会審議の状況を見てまいりまして痛切に感じますのは、仄聞するところによれば、大臣は既に大学時代から政治の道を探求しながら、そして政界に雄飛された、そういうことを承っております。そういう意味でぜひひとつ、お追従を申し上げるわけではないが、そういった大臣の今後の大きな飛躍を私ども期待をいたしておるわけです。  ただ、今度の健保審議を振り返ってみまして、大臣の主体性というものが非常に薄らいでいるのではないかという感じがいたします。この点非常に残念です。せっかく大臣がそういう大望を抱きながら政界に雄飛されたという経過もあるわけですから、大臣厚生大臣としての主体性をもっと発揮していただきたかったと思います。  そこで、最終段階で、国会をめぐりいろいろな動きがございました。これは先ほど森井委員からも指摘されたとおりです。そういうような問題について、後ほど我が党の代表からいろいろまた質疑があるそうですから、その点は遠慮いたしますが、私の四月の質疑と関連する問題がございますから、一言だけその点について触れておきたいと思うわけです。  と申しますのは、私があの質問の冒頭に、この健保の抜本改正、これは行き当たりばったりではいかぬ、健保の抜本改正というものは長中期のビジョンがあって、その一里塚としての改正でなければならぬ、こういうことを指摘したわけですね。長中期のビジョンというものが示されなければ今回の健保改正の審議には入りにくい、こういうふうに指摘をしたわけですが、委員長その他とりなしがございまして、抽象的なビジョンの発表がございました。ところが御存じのように、今回、各種健保の統合案、これは私ども期待をいたしておるわけですけれども、この問題についてこの国会終了直後に発表したい、こういうことですね。統合問題について作業に時間がかかる、だから発表できませんというなら話はわかるけれども国会終了職後に発表するとなりますと、国会審議が全くおろそかにされているというような印象を持ちます。これは後ほど我が党からもいろいろあると思いますけれども、一応私が四月の審議段階指摘した一言でございますので、こういうあり方はやはり問題があるんじゃなかろうか。作業のために時間がかかる、それはもうそれでいいですね。ところが国会終了直後に発表する、こういう申し合わせが日医との間で行われたということでございます。要するに厚生省の主体性の欠如といいますか、これについて私どももどうも納得がいかぬわけですから、一応その点について大臣の御見解と決意を承っておきたいと思います。
  85. 渡部恒三

    渡部国務大臣 御指摘の点でございますが、私は自由民主党の党員ではございますが、御推薦をいただいて今政府の一員として働かせていただいておりまして、党の政策形成の面にはかかわっていないわけでございますので、これは私からとやかく申し上げる立場にないと存じます。
  86. 河野正

    河野(正)委員 大臣として、この健康保険法改正案を最もいいものとして提出されたわけですね。ですから、そういう立場から、この法案審議はやはり国会中心で遂行していくことが当然貫かれなければならぬ。ただ、今党でどうだこうだ、自分は党員であるけれども、その作業にタッチしておるわけではないのでというような釈明がございました。そこで私は、大臣の主体性というものが若干欠如しているのではないかというふうに申し上げたわけです。こういう大きな法案が出てくるというのはそうしょっちゅうあるわけじゃないでしょうから、今後の厚生行政を推進する立場から、そういった気持ちといいますか、所信といいますか、決意といいますか、そこはひとつ十分対処していただきたいと思います。  そこで、与えられた時間が少ないものですからあれもこれもというわけにはまいりませんから、四月の、質疑で積み残しました分についてこの際最終段階ですから若干御見解を承っておきたいと思います。  この法案そのものについては、若干触れておりますから、ここで申し上げるだけの時間がございませんが、ただ、大臣が記者会見あるいは話会合でいろいろ所見を述べられておりますね。大臣にしっかり主体性を持ってやってもらいたいということは、そういった所見を述べられ、あるいはまた見解を述べられる、そういう言ったことはぜひひとつ実行してほしいと思うわけです。  そこで、今度の健康保険法の改正のねらいの一つに、「保険医療機関等の不正、不当を排除するため」云々と、提案理由の第一の項目で述べられておるわけです。そういう意味でいろいろ監督するあるいは規制するというようなことも、そういう不正あるいは不当性を排除するということでは当然考えなきゃならぬ。ところがそれは一方交通であって、一方ではやはり医療機関の育成が当然考えられなきゃならぬ。私は、健全な医療というものは健全な医業経営の上に初めて成り立つ、こう思っているわけです。きのうあたりのテレビでもいろいろ医道審議会の経過が発表されております。そういう不当な医療機関のあることは私どもも大いに反省しなきゃならないと思います。そういう不当な医療機関があることも事実ですが、しかし非常にまじめに、医療業務を遂行しておる医療機関があることも、これは大臣も御承知のとおりだ。大臣のところは奥さんが一生懸命まじめにやっていらっしゃるから、そのとおりだと思うのです。  そこで、今の医療というものを正しく運営していく、そのためには不当あるいは不正を排除していくというのが一つですけれども、一方では正しいものは育成してやる。特に最近、各社の評論によりましても、病院の倒産時代来るかとか、私も病院の倒産時代が来る、その倒産するのが、すべて健全な運営をやって倒産しておるかどうかということでは疑問があると思うのです。いろいろなところに手を出して倒産しておるところもある。しかし、現実に、まじめに病院経営をしてそしてどうにもならぬという声も数多く聞いております。もう決算ができぬとかあるいは銀行管理になったとか、そういうような意味においては、やはり今後の病院経営については新しい展望は余りないと思うのです。でございますから、大臣も、今度の健保の改正が行われれば病院もよくなるのです、こういうような発言も私も見聞いたしております。そこで、そういう意図もあって大臣がいろいろなところで見解を述べられたと思うけれども、今度の健康保険法成立したならば診療報酬値上げも検討しなければならぬ、健保成立の条件つきだ、こういうふうに報道しておる新聞もございます。そこで、私ども、何も点数を上げろ上げろじゃなくて、今の不当、不正を排除する、そういうことで監督を強化されることは結構だと思いますが、しかし、まじめに医業経営をやっておる機関については育成をしてやるということも当然必要だと思うのです。今大臣が言われておりますように、医療費の適正化そのものはそうじゃないですけれども、それに絡んで医療費の引き上げというようなことも当然考えられると思うわけですが、その際これは歯科も含めてということを言われておりますが、歯科も含めて技術評価が非常に低い。したがって、健保改正が成立したならば早い時期に医療費の引き上げを図りたい、こういうような見解が述べられておると報道されておる向きもございます。  そこで、ただ上げてほしい、上げてほしいじゃなくて、それこそ今の不当なあるいは不正な医療機関に対しては徹底的に信賞必罰で対応しなければならぬが、まじめに経営をするという部分についてはぜひ御配慮を願わなければならぬのではないか。健全な医療というものは健全な医業経営のもとで成立するわけですから、倒産しかかっていていい医療をやろうといったってやれはしませんね、そういうことになれば、結果的には制限医療ということになるわけですから、これらについてひとつ見解を承っておきたいと思います。
  87. 渡部恒三

    渡部国務大臣 先生から今多面的な御質問がございました。私は、自由診療出来高払い、この制度を将来にわたって維持していくのには医師の皆さん方の良識に期待する、これが厚生大臣としての一番大きな願いでございますし、また私は、同氏の健康を守る厚生大臣として、その第一線に立って頑張っておる医師の皆さんを信頼したいと思います。同様にまた、これは行政の責任者として、これはどのような場面であっても、たとえ千に一、万に一でも不正がまかり通るというようなことは許されないのでありますから、審査体制の強化にますます力を入れていかなければならないのは言うまでもありません。  そこで、今診療報酬費の問題でいろいろ議論されておりますのをお聞きしますと、ある場合は濃厚診療というようなもの、これが議論される場合に必ず出てくる言葉は、現在の技術料の評価というものが、一つ一つ取り上げていくと、先生指摘がありましたように、非常に安い面もあれば不合理ではないかというような面も現実にございますし、そういう御指摘をこの委員会でも幾たびかちょうだいをしておるのであります。それから、また一方、毎年の所得状況などを見ると、いまだに医師の所得がかなり高い水準にあることも事実でございます。こういう中で、診療報酬というものを、高度医療がどんどんどんどん進んでいく中で、やはり技術尊重に見直すべきではないかというような意見は、非常に貴重な、尊重しなければならない意見であると私は考えておりましたので、これは今中医協で大変真剣に専門的な立場で御審議を賜っておりますが、その審議の中で、やはり高度医療がどんどん進んでおるのでありますから、そういう新しい時代のニーズの中で合理的な技術尊重の診療費が定められていくように、そういう審議を急いでいただきたい、そういう願いを私はいつも持っておりまして、そういう考え方を幾たびかいろいろな場で申し上げておるのでございますが、この法案成立したらそういうことをするとかいうことは全く誤解でございまして、ただ、やはり今回の法案を通していただくことによって、保険財政というものにある程度余裕ができたり、あるいは今過剰診療であるとか濃厚診療であるとかいろいろ言われておるわけでありますが、こういうものが是正されて、医療費の適正化あるいは節減、そういうものが進んでいけば、今先生指摘の技術尊重の医療費の合理化あるいは見直しというようなものを進めやすい条件になることは間違いないと思います。
  88. 河野正

    河野(正)委員 私が取り上げましたのは、率直に言って、別に上げろ、上げろじゃなくて、やはり今の正しい健全な医業経営というものは育成してもらわなければならぬ。そのためには、単に一方で不当がある、不正があるというようなことで抑えつけるだけじゃなくて、育成するという立場も当然とっていただかなければならぬ。そういう意味では、健保成立するのが条件じゃないという話でしたけれども議論の分かれ目ですけれども、今度の健康保険法の改正が行われれば受診率が落ちるだろうとか、あるいは長期入院がだんだん難しくなるとか、医業経営を圧迫するであろう、どういう意見があることは御存じのとおりですね。そういう意味で、不当不正を排除すると同時に、一方においては、健全な医業経営については速やかにその経営が円滑に進んでいくような処置を講ぜられる、そのことは具体的に申し上げれば、医療費の適正化もさることでございますけれども、やはり点数、技術料というものを評価するということが一つの大きな使命にならなければならぬと思うわけですから、そういう意味で、ぜひそういう私ども意見を尊重する形で、これは医業経営ということじゃなくて、正しい国民医療を守っていくという立場から申し上げているわけですから、謙虚に受けとめて善処をしてほしい、こういうふうに思います。
  89. 渡部恒三

    渡部国務大臣 ただいまの先生の御指摘、私も同感でございます。この前も先生からこの委員会で御指摘をいただきまして、私どもは、この健保法の改正と両々相まって、二十一世紀を目指しての我々の医療行政のあるべき基本的な考え方をお示ししたわけでございますが、その中でも、私は、特別に項を立てて「医療機関の安定した経営基盤の確立」ということをうたっておるのでございます。これは、もちろん我々は患者優先の医療行政でありますが、しかし、患者の皆さんがいつでも、安心して、すばらしい、すぐれた医療を受けられるためには、医業経営というものがしっかりと経営基盤が安定したものでなければなりませんし、また診療報酬費というのもやはりしっかりした、だれもが納得できるものでなければなりませんから、そういう意味で、患者の皆さん方の健康を守るために、患者の皆さん方に安心して、いつでも、気軽に、すぐれた医療を受けていただけるために、これからも先生指摘のような医業経営の基盤の安定というもののために一生懸命頑張ってまいりたいと思います。
  90. 河野正

    河野(正)委員 そこで、実はきのう、きょうのテレビ、新聞報道でも、医道審議会の処分の決定か発表されておるわけです。そこで、私どもかねかね心配いたしておりましたのは、本法の改正のねらいというものが、保険医療機関の不正不当方排除する。不正はわかりますよね、悪いことをしているわけだから。不当というのは見解の相違がありますね。そこで一体不当とは何ぞやということをある程度きちっとしておかなければ、いろいろな紛争の種になるのじゃなかろうかというふうに思います。そこで、先般行われた大阪の中野診療所が、不当診療ということで処分を受けた最初のケースだ、こう言われておる。私は真相は知りませんけれども、新聞がそういうように書いておる。そこで、やはりこの際、不正は当然のことですから、その処分の重い、軽いは別としても、信賞必罰でやっていただかなければならぬ。しかし、不当についてはある程度の基準というもの、目安というものがないと、一体どの辺が不当であるのか、これはいろいろ議論が出てくるところであろうと思うのです。ですから、この際、だんだん医療機関の経営は厳しくなりますから、やはり不当とは何ぞやという点についてもぜひひとつ見解を承らせていただきたい、こう思います。
  91. 吉村仁

    吉村政府委員 なかなか一概に決めかねる問題だと私ども思っております。一般的な基準で申しますならば、少なくとも現在の医学常識に反すると申しますか、著しく逸脱すると申しますか、そういうような診療は不当だと思っております。また、患者の個々の病状と申しますか病態、そういうものとかかわりなしに行われるような診療というものは不当なものだ、こういうように思っております。  中野診療所の場合は、先生も御承知のとおり、普通の場合の十倍、二十倍、こういうようなケースであったわけでございまして、それぞれの分野の専門家と討議をしていただきまして、不当な診療というように判定をしたわけであります。したがって、私ども、今後もただ保険課の医療監査官だけの判断でそういうことをやっていこうというようには考えておりません。やはりこれは山門のお医者さんの御意見を十分聞くと同時に、その時点における当、不当というものを決めていかざるを得ない、こういうように考えております。
  92. 河野正

    河野(正)委員 常識的な医療といいましても、どこが常識的な医療であるのか、これまたなかなか判断のしにくいところでございます。そこで、いろいろ巷間伝わるところでは、平均の何割とか何倍とか、そういう議論のあるところもございますね。それから医道審議会の発表した基準、新聞で見たのですけれども、それによりますと、何か一定の基準が決められておったらしくて、脱税の処分対象は一億円以上、それから診療報酬の不正請求は一千万円以上、これが基準とされてきた、これはそのとおりですか。
  93. 吉村仁

    吉村政府委員 担当局長でないので定かでございませんが、大体そのような基準で運営をされておるというように考えます。
  94. 河野正

    河野(正)委員 それでもなかなかうまくいかぬということで、審議会は今後脱税とか不正診療、そういうものも一緒にしてやる場合等もあるわけで、脱税が一億、不正診療が一千万、これが二つダブるものもあるわけですね。だからそういう基準だけではいかぬ。脱税もした、不正診療もしたということになれば、一千万でいくのか、一億でいくのか、その辺の区別もなかなかつきにくいということで、改めるというような意見もあるようでございます。しかし、やはり慎重にやってもらわぬと。  私ども大学へ行きましても聞くのですよ。答えていただかなくてもいいけれども、答えていただくなら参考のために聞かせてくれ、レセプト一枚で一番高いのは幾らぐらいのものが出ますかと。そうすると、かなり高いものがありますね。ですから、なかなか基準どおりにもいかぬだろう。  そこで、不当とは何ぞやという一つの判断をする基準を決めるにいたしましても、ケース・バイ・ケースでかなり事情が違う。それから、微妙な出題等があるから、判断するためには特殊事情というものがあると思いますね。ですから巷間では平均の何倍、それが常識的な医療だというようなうわさも、恐らくこれは行政が示したわけではないでしょうから、支払基金あたりで審査委員がそういうことを言ったのだと思います。ですけれども、一応目安というものは検討する必要があるのじゃなかろうかと思いますね。それは悪用してもらうとまた困るので、このくらいなら不当にならぬからここまで、こうことになると困るのですが、それから先は医者のモラルといいますか常識にまたざるを得ないわけですけれども、一応そういった判断のための基準というものは、ある程度コンクリートじゃなくても必要じゃなかろうかと思うわけです。いかがですか。
  95. 吉村仁

    吉村政府委員 非常に難しい御質問で答えにくいのでございます。私ども、やはり平均の何倍だというようなことで判断すべきではない。それは一般的に平均よりもかなり高い診療報酬については注意をして見るということはあるかもしれませんが、その何倍を基準にするかというようなものは持ち合わせておりませんし、審査委員会等では長い間審査をされておるわけでございますので、大体その辺の審査委員の常識としては頭の中にあるのかもしれませんが、恐らくそれは具体的な数値でもって言えるようなものではない、こういうように思います。  ようわからぬ答弁でまことに申しわけありませんが、具体的な数字あるいは具体的な基準はここでお示しできないのを残念に思います。
  96. 河野正

    河野(正)委員 もう時間がありませんので、余りこれでやりとりするわけにはまいりません。  そこで最後に、今度の健保法改正の中で精神衛生法と関連する部分があるわけです。これは今まで全然論議されておりませんので、これだけはひとつ取り上げておきたいと思います。  精神衛生法では第一条に、「この法律は、精神障害者等の医療及び保護を行い、」と書いてありますね。これはずっと精神鑑定のところでも出てくるわけですよ。ですから、精神障害者の場合は精神衛生法で、医療だけじゃありません、保護もあるのですよ、こういうふうに定めてあるわけですね。ところが、医療費の算定その他については一般の医療と同じであって、保護という部分が全然欠落しておるわけであります。その証拠には、例えば高額差額ベッドの問題等がございますね。これは厚生省の昨年七月の資料によりましても、五千円以上の高額ベッドはむしろふえておる。三人部屋以上は四十九年の保険局長通知で禁じられているにもかかわらず、いまだに一%前後残っておる。そういうような状況です。精神衛生法に基づいては、医療と保護、両面をやらなければならぬ。医療の問題は一般の保険並みですからそれで片づいている。ところが保護の部分は全然考慮されていない。ですから、その証拠を挙げると、例えば今一般の病院では差額ベッド料が許されているわけですね。ところが、局長大臣も余り御存じなかろうけれども、精神病院には保護室というのがある。これは一人部屋なんです。そして手がかかるものですから、今はテレビを各部展ごとに設置をして、常に看視をする。ところがこれは別に差額ベッド料をいただくわけでも何でもない。これは保護の部分ですね。非常に手間がかかるし、金もかかる。だからなかなか保護室をつくらぬ。一番困っているのは行政なんですよ。とにかくどうにも手がつかぬ。警察がとにかく収容してもらいたいと言ってきても、収容する部屋がありません。保健所がそうですね。福祉事務所がそうです。町村役場がそうですね。行政が一番困っているのですよ。だから、精神衛生法に基づく保護の部分は当然御検討をいただかなければならぬのじゃなかろうかと思うのです。そして困っておるのは行政ですからね。家族も困りますよ。暴れてしょうがない、ところが収容するところがない。たらい回しですよ。それが、今申し上げますように、精神衛生法の精神というものか今までの保険医療の中で考慮されなかったということで、これはほとんど今まで論議されていませんから、この点だけはぜひこの際はっきり御見解を聞いて、善処していただきたい、こういうように思いますので、一言お願いいたします。
  97. 渡部恒三

    渡部国務大臣 先生の御意見、大変貴重なものとお聞かせいただきましたので、今の先生の御意見等、今後の行政の中に十分反映するように努めてまいりたいと思います。
  98. 河野正

    河野(正)委員 大臣から今的確にお答えいただきましたから、保険局長から改めて聞く必要はないけれども、やはり作業するのはおたくですから、ひとつ局長も、今の精神衛生法に基づく保護の部分については当然考慮しなければならぬということを一言御確認願いたいと思います。
  99. 吉村仁

    吉村政府委員 先生の御指摘、まことにごもっともだと思います。それで、保護室に関する限りは基準看護の点数で対処する方法、それから今先生から差額徴収ということも御指摘がありましたか、差額徴収というのは患者の希望によってやる分野でございますので、保護室について差額徴収をするというのは余り適当でない、したがって保険の診療報酬の方で物事を考えていくべきではないか、こういうように考えて、そういう線に沿ってひとつ検討をさせていただきます。
  100. 河野正

    河野(正)委員 これで最後です。第一番目の基準看護云々は、ほとんどは基準看護ですよ。ですからその部分はここで論及する必要はないです。あとの部分で、患者が保護室に入りたいと言うわけがないのですから、それは当然医療費の中で面倒を見ていただくということで私ども理解いたしますが、よろしゅうございますね。ちょっと一言。
  101. 吉村仁

    吉村政府委員 そのとおりでございます。
  102. 河野正

    河野(正)委員 終わります。
  103. 有馬元治

    有馬委員長 午後二時から再開することとし、この際、暫時休憩いたします。    午後零時四十三分休憩      ――――◇―――――    午後二時四分開議
  104. 有馬元治

    有馬委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。質疑を続行いたします。沼川洋一君。
  105. 沼川洋一

    ○沼川委員 まず大臣に、お伺いしたいと思いますが、御案内のように、ことしも昭和六十年度概算要求のための編成作業が今始まっておるわけでございます。例年と違って国会が開会中でございますので、この作業も大変じゃないかと思うわけでございますが、五十七年度予算でゼロシーリングを決めて、五十八年度予算ではマイナス五%シーリング、そして五十九年度予算ではついにマイナス一〇%シーリングの原則を貫いたわけでございますが、そのために、社会保障関係予算について、年金の当然増経費など約二千四百億円は例外として、一律一〇%削減の予算を組まざるを得なくなった、こういう事情は大臣御承知のとおりでございます。年金増経費が大体二千四百億円、これを差し引いても六千六百億円を削減しなければならない、いわば窮余の一策として医療保険制度の改正によって処理することになったわけでございますが、その金額が六千二百億円、これははっきり言って相当荒療治と言える削減策だと思うわけでございます。  もちろん、今回のこの委員会の質疑を通しまして、一貫して大臣がおっしゃっておることは、私ども財政対策じゃないか、こういう指摘に対して大臣がおっしゃっておったのは、もちろん財政対策もあるけれども、それだけじゃなくて、いわば二十一世紀の老齢化社会に向かって長期的に安定した制度を確立するための改革だと、盛んに力説をなさりました。  問題は、ことしはこういったこととして、次年度もこういう形になりはしないかという危惧の念があることも大臣よく御承知のとおりだと思いますが、固くところによりますと、自民党さんの社会部会で、何か社会保障予算の中で、年金医療の当然増経費を全額確保するというような決議もなされた、こういうようにも聞いておりますが、反面、実際これがどうなるか、極めてこれは心配な問題点でもございます。  そこで、改めてちょっと大臣にお伺いしておきたいと思いますが、もし今回のこの法案成立したとするならば、国庫補助の伸びを抑えることができるとしきりにおっしゃっておりましたが、再びマイナスシーリングの対象にすることは絶対ないとこの席で大臣、お約束できますか、その点をちょっとお尋ねしてみたいと思います。
  106. 渡部恒三

    渡部国務大臣 私、たびたび申し上げておりますのは、社会保障関係予算、これは生活そのものの予算でございますから、金がないから切ってしまうとか、あるいは翌年度に持ち越すとかいうことの極めて困難な予算でございます。また御指摘医療に関する予算も、これは国民の健康を守る予算でありますから、こういうやはり必要な予算は、どのような財政的に苦しい条件の中でも確保するように全力を尽くして努めてまいりたいと思います。
  107. 沼川洋一

    ○沼川委員 はっきりしたお答えがないのが残念ですが、大臣のいろいろな御説明を伺っている限りは、もしか本当に成立するのだったらそれくらいの明快なお約束があったっていいように思いますけれども、どうでしょうか、肝心かなめなことだけおっしゃってください。
  108. 渡部恒三

    渡部国務大臣 確保するように全力を尽くして努力したいと思います。
  109. 沼川洋一

    ○沼川委員 これ以上はお聞きしません。  次に、現在八種類に保険が分離しておるわけでございます。これは大臣も御承知のとおりでございますけれども、この保険制度の統合化、一元化について、この委員会でもいろいろな形で論議がございました。厚生省試案であるこの中長期ビジョンの中には、はっきりと「全制度を通じる給付と負担の公平化措置」、つまり一元化、これについては最初六十年代の後半、このように明記してございました。その後いろいろと修正案が出てまいりまして、第二段階修正案ではこれが六十五年以降できるだけ早い時期に、こう変わりました。そして、つい先日の自民党さんと医師会との話し合いの中では、これが今国会終了後に実施時期を示すと、ビジョンの段階からしますと、相当早期にこの具体案が出るような感じを受けたわけでございますけれども、この国会終了後となりますと、果たして八日に終わるかどうかわかりませんけれども、八日以降終われば何か具体案が出る、こういうふうにも思いますが、そこでこの問題を改めてお尋ねしてみたいと思います。  私、本会議の代表質問をいたしました折に、最初大臣答弁なさっておりましたのは、医療保険の統合については、制度の沿革、歴史もあるでしょうし、現実に果たしている役割等を勘案すると、直ちに統合一本化を行うことは極めて困難である、最初はこういう御答弁をいただきました。それから委員会がございまして、この中長期ビジョンが出てまいりましたら、抽象的ではありますけれども統合というのが出てまいりました。それが、今申し上げたように国会が終われば何か示されるというようなそういう言葉だけが出てきていますけれども、では具体的にどういう形でその統合一本化をするのかという話は一回も伺っておりません。国会が終わってからすぐ示すというのであれば具体策としての方途が何かお聞きできるんじゃないかと思いますが、この点いかがでしょうか。
  110. 渡部恒三

    渡部国務大臣 いろいろの考え方がございますが、まず取りかからなければならないのは、やはり給付と負担の公平ということであると思います。現在の国保給付率七割、これはできるだけ早く八割に上げる、あるいは被用者保険の給付率と変わらないようにしていく方向、この点は先生からもたびたび強いお話しがあり、これはこの社会労働委員会における考え方も大方合意を得ているような感じを私は持っておりますので、これを六十年代後半のできるだけ早い時期に、国民の健康を守る医療保険というものを、皆さん方すべて同じような条件で給付を受けられるように持っていきたいということでございます。
  111. 沼川洋一

    ○沼川委員 大臣答弁、随分後退しておると思いますけれども、今申し上げたように、今国会終了直後というところまで話が来ておるわけですね。もちろん、これは自民党さんの修正案の中に出てくるわけですから、まさか問いていらっしゃらないわけはないと思いますし、当然これは御相談があっているはずです。ですから、ここまで来れば時期のもうちょっとはっきりしたお答えが出るんじゃなかろうか、そういう気がしますので、この点時期がいつなのか、ここでもう一遍明確に言っていただきたいということが一つでございます。  それから、一元化、一本化といいますけれども、ちょっとどうも私、解せないのは、例えば職域保険と地域保険というふうに、大きく分けますとそういう問題がございます。御承知かと思いますが、健保連あたりでは一本化に反対、こういった声明も出していらっしゃいます。声明を見ますと、「「職或保険と地域保険では就業や所得の態様がまったく異なり、財調・統合論はこれを無視した単なる観念論にすぎず、かえって負担の公平に反する結果となる」とし、聞こえのよい〝公平〟の旗印の下に、制度存立の条件を故意に隠蔽し、財政調整の道を走ろうとする姿勢を厳しく批判したうえで、医療保険制度は職域と地域の二本建てとし、それぞれにおいて整理・合理化を図るべきだ」、こういう強烈な意見がございます。  ですから、ここでこの点についてもう一遍はっきりお聞きしたいのは、統合一本化というのは、職域も地域も一本化してのことをあのビジョンの中ではおっしゃっているのか、それとも、早い時期に示すとおっしゃっているのは、職域は職域として、地域は地域として、そういう形の統合をおっしゃっているのか、この点明快にお答えいただきたいと思います。     〔委員長退席、愛知委員長代理着席〕
  112. 吉村仁

    吉村政府委員 まず時期の問題でございますが、私どもは六十年代後半をめどとして努力をしたい、こういうことで言っておりまして、現在も変わっておりません。私ども、医師会との話し合いの中身については詳しいところはよく存じ上げておりません。  それから、第二番目の統合一本化の内容の問題でございますが、これはいろいろな解釈があるのではないか。例えば統合一本化を言われております日本医師会におきましても、産業保険と地域保険と老人保険というような形で持ち出されておりますし、また公明党さんのビジョンを見ましても、地域保険は地域保険、職域保険は職域保険というような形でお考えになっておられます。それから、自民党が前にお出しになりました国民医療対策大綱でも、勤労者保険と地域保険と老人保険というようなことで制度の仕組みを考えておられるように承知しております。  したがって、統合一本化といっても、その内容についてはさまざまな考えが盛り込まれておって、統一的な考えは現在のところないのではないか、こういうように思います。  もちろん私どももいろいろ統合問題については検討をいたしておりますが、私どもが今考えておりますのは、やはり一元化というものを考えておりまして、その一元化というのは給付と負担の公平を図ることを目標にいたしまして、その方法といたしましては、一つは統合というのもあるだろう、一つは財政調整というようなやり方もあるだろう、その辺を全体的に今後検討をして一元化の目的を達成したい、こういうように考えておるわけでございます。
  113. 沼川洋一

    ○沼川委員 いずれにしてもビジョンに漠然としたままで出ておりますし、もうちょっと具体的な方向としてのものをぜひ早期に示されるよう、これはぜひお願いしたいと思います。それから、これは大臣に聞くのはどうかと思いますけれども、ただ、今回の健保改正の修正案をめぐって、本当ならば、議会制民主主義のもとにおきましては、この院内において与野党の中でそういった論議が行われるのが当然だと思いますけれども、院外交渉が堂々と行われて、健康保険制度が医師会だけのものじゃないかと錯覚を起こすぐらい、その辺との交渉が公然と出ているということに対して、国民から非常に強い批判がございます。  そこで大臣にお尋ねしたいのですが、大臣であるとともに自民党の幹部でもいらっしゃるわけですから、これだけ重大な問題がそういう形で外で行われるということに対して、大臣はどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。
  114. 渡部恒三

    渡部国務大臣 私のお聞きしておるところによれば、また新聞等でも拝見しておりますが、与党のそれぞれの責任者の方、野党先生方とも、この問題についての取り扱いでいろいろ御想談をしておるようなことを聞いております。また院外の者というお話してございますけれども、これも直接医療を担当する方でありますから、その人たちに今回の法案が全く関係なしとはしないと思いますが、私どもは、たびたびここで申し上げておりますように、今御審議をお願いしておる政府原案が最もベストのものであるというふうに考えて、その原案を御審議賜り、成立させていただくことが最も願わしいことと考えておりますので、それ以上のことについての論評は差し控えさせていただきたいと思います。
  115. 沼川洋一

    ○沼川委員 私もこの問題について余り多く言おうとは思いませんけれども、言ってみれば、こういう問題が我々の知らぬところで新聞に載って、こっちがそれを読んでわかるというような形の話し合いというのは、はっきり言ってこれは議会軽視です。大体だれのための健康保険なのか。確かに当事者ではあります医師会と相談することも大事でしょうけれども、本当を言えば国民ともっと相談してもらいたい。そのためには院内で、もっと与野党折衝の中でこういった問題は詰めるべき筋合いのものじゃないかと思いますので、あえてちょっと問題提起をしたわけでございます。時間がございませんので、次に、恐らくきょう修正案が出てくるだろうと思います。医療費本人負担をめぐって定率定額がという論議がございました。そのいろいろな話し合いの中で出てきたいわば変則定額定率と言っていいかどうかわかりませんが、サラリーマンの自己負担分の支払い額が千五百円以下の場合が百円、千五百一円から二千五百円は二百円、二千五百一円から三千五百円は三百円、三千五百一円以上は一割、どうもこういう案がきょう出てくるようであります。そこでお尋ねしたいのですが、大臣も随分何回も力説されておりました、一割負担の導入というのは、財政的な問題、もちろんこれもありますけれども、これだけじゃありません、一割を導入することによってコスト意識を向上させる、この波及効果というのが大きいのです。むしろ声を大にして随分言われましたね。ところがこういう変則的なものが出てきますと、下手すると金額面においても枠の対象がますます広がる心配もありますし、また将来どうなるかわかりませんが、せっかく一割という線を堅持されておりながら、これがいかにいいかというあれだけの大見えを切って御説明になっておきながら、こういうのがすぽっと入ってくるということは、何かなし崩しみたいな感じで、また将来統合していく上においても何か非常にまずいものになるような感じを持っておるのですが、いかがでしょうか。
  116. 渡部恒三

    渡部国務大臣 御指摘のように、私は国会で幾たびか先生方に、今回の改革案の一つの大きな柱が、定率一割御負担をいただくことによって医療費を患者の皆さん方にもいつでも明快にわかっていただくということを申し上げておりまして、この考えは今日も私は全く変わっておりません。したがって、この原案どおり成立をさせていただければ最も願わしいのでございますけれども、しかし、これも私は幾たびも申し上げておるように、これは議会民主政治でございますから、政府がどのような案を国会に諮りましても、それが成立させていただかなければこれは絵にかいたもちになってしまうのでありまして、国会先生方の合意による意思というもの、あるいは国会で取り決めいただいたこと、これは尊重しなければならないのは当然のことでございます。  今御指摘の問題等も、窓口事務が非常に煩雑になる心配があるので、この窓口事務をできるだけ簡素化する方法はないかということはここでも幾たびか御意見があり、私どももそういう方法があればこれは望ましいということは考えておったところであり、今回のお話は、定率の基本的な考え方を崩すものではなく、四捨五入といいますか、ある程度の端数切り捨てによって窓口事務の簡素化を図るものだというふうに承知しております。
  117. 沼川洋一

    ○沼川委員 今窓口事務の簡素化ということが出ましたので、これもあえてはっきりひとつお尋ねしておきたいと思いますが、何か修正案には出てないみたいですけれども、生きていると聞いて私も心配しておるのですが、代理受領制度という問題がまだ消えてないんじゃないか。これは医師会あたりから相当強く要請されておるやに聞いております。  これも一つの窓口事務の簡素化だろうと思いますが、ここで大臣とも論議しましたように、出来高払い制度、このよさというものは私も認めております。確かに今日の医療を向上させ、また質の高い医療国民に与えてきた、ところが欠点もありますよということで、いろいろ論議した中で、一番の欠点というのは金銭の授受が医者と患者の間に全然行われない、全く違ったところで金銭の授受が行われておる、こういうところに医療費に対する考え方、よく大臣がおっしゃるコスト意識といいますか、こういうのが全く生かされていないという欠陥も一つの欠陥でございます。     〔愛知委員長代理退席、委員長着席〕 しかし、もしこういう代理受領制度あたりが導入されますと、せっかく一割負担コスト意識を説かれても、波及効果という面で、今まで厚生省が考えてこられたこととこれは全く違ったような形になって、幾ら簡素化と言ったってこういう問題をすんなり受け入れることはどうかと思いますけれども、この問題について、厚生省としてこういう問題は認めるのか認めないのか、できればこの辺はっきりした御答弁をいただきたいと思います。
  118. 吉村仁

    吉村政府委員 代理受領を全面的に認めますならば、今先生がおっしゃったようなことになるのは決まっております。  そこで、私どもは、今回の定率負担の趣旨を没却するようなことであってはいけないという考え方のもとに、代理請求の問題は考えてまいりたいと思っております。  いずれにいたしましても、代理請求ということになりますと、医療機関と保険者、それから患者との契約と申しますか合意というものに基づいてやらざるを得ないことでございますので、その辺のやり方については今後十分検討したいと思いますが、一部負担の趣旨、特に定率一部負担の趣旨を没却することのないように運用を考えてまいりたいと考えております。
  119. 沼川洋一

    ○沼川委員 次に参りたいと思いますが、薬価基準の引き下げ問題、私もこの委員会で随分やりました。ここで一つお尋ねしておきたいことは、三月一日から新薬価基準が発足しました。実際を言いますと、これは五十八年度分を一年ずれてやっておるわけですね。そこでお聞きしておきたいのは、五十九年度の薬価基準の引き下げについて、これは大体いつごろおやりになる予定か、お聞かせいただきたいと思います。
  120. 吉村仁

    吉村政府委員 私ども三月一日に薬価基準の全面改正をいたしましたし、六月二日に後発品の薬価収載をいたしました。したがって、それが定着するためには三カ月か四カ月ぐらいの余裕が要ると思います。そうしてその期間を経て薬価調査をやりたい、こういうように考えております。そこで、その調査に基づいて次回の薬価改定をするわけでございますが、現在のところ、改定の時期そのものについての見通しを申し上げるのは困難でございます。
  121. 沼川洋一

    ○沼川委員 そこで、この問題も私も随分指摘申し上げた問題でございますが、今回の健康保険改正をめぐって各党で問題になりましたのが、やはり薬づけ医療をどうするか、これが一つの大きな問題点でもございました。確かに薬価切り下げ、これも一つの方法でございますけれども、今みたいな形で薬価を幾ら引き下げても引き下げても、また次の実勢価格が出てくるというイタチごっこを繰り返す限りは、ここらでこの薬づけ医療をどういう形で、もっと哲学のあるやり方で解消するというようなことを、そろそろ本気になって考える時期が来ているんじゃないかと本当に思うわけでございます。例えば一つの例として申し上げますが、銘柄、ソロ、いろいろありますけれども、最近ちょっと余り乖離が大きいものですから私も覚えておった楽ですが、製品名ですがボルタレン錠、これはチバガイギーが出しているあれですが、二十五ミリ一錠で旧薬価が五十円、新薬価が四十四円となっています。同じ性質の今度はソロ製品です。ジクロフェナクナトリウム錠というのがあります。これは大蔵製薬が出しています。二十五ミリの一錠で旧薬価が四十円、新薬価が三十円ですが、この三十円の三月一日から新薬価になりました薬が今幾らで入っているか。大臣恐らく御存じないと思いますので、参考までに申し上げたいと思いますが、三十円の薬が二円八十銭ですよ。一錠三十円が二円八十銭、現在こういう価格で入っています。百円のが五十円とか四十円なんていうのはかわいい方です。薬価を一生懸命下げて三十円にしたらちゃんと二円八十銭で入っている。私も薬に関係ある一人ですけれども、大体薬の値段が幾らなのか、はっきり言って本当にわからなくなります。  それからコバマイド錠、これはビタミンB12の製剤ですけれども、これは協和醗酵から出している〇・二五ミリグラム一錠で旧薬価が二十八円九十銭、新薬価が二十四円六十銭となっていますが、同じ性質の例えばソロですね、コバマミド錠というのがあります。鶴原製薬から出している〇・二五ミリグラム一錠で旧薬価が二十二円、新薬価が十五円四十銭ですが、この十五円四十銭の薬が現在薬価改定後幾らで入っているかというと、二円五十銭。それからパントシン五倍散、これは第一製薬から出していますが、二〇%一グラムが旧薬価四十三円二十銭、新薬価で三十七円となっています。今度は同じ性質のソロを一つの例として出してみますと、レッテン五倍散というのが東亜薬品から出ております。二〇%一グラムで旧薬価三十円、今度の新薬価で二十五円になりました。これが現在八円で入っております。  例えばこういうように、幾ら薬価調査をやったって次の実勢価格が出てくるし、もうこのイタチごっこはいつまでいったって、私はこれで本当に薬づけ医療が解決するだろうか、こう思います。したがいまして、やはり今後の問題として、ぜひこの薬づけ医療を解消するという意味でも、医薬分業というこの方向を何か本気になってもうちょっと検討をする時期が来ているんじゃないかと思いますが、その点大臣、いかがでしょうか。
  122. 渡部恒三

    渡部国務大臣 全く同感でございます。
  123. 沼川洋一

    ○沼川委員 これはもう時間がありませんので聞きませんが、厚生省を代表する立場大臣は、全く同感だと言う。ただ問題は、厚生省の中にもいろいろ各局がございまして、私の知っている範囲では業務局あたりは非常に推進派だと聞いていますが、そこに吉村さんがいらっしゃって申しわけありませんが、保険局とか医務局あたりはちょっとどうかな、そういう話もときどき伺うわけでございます。まあ大臣は同感とおっしゃるけれども厚生省の中で果たして全部の部局がそういう流れかどうか、極めて心配でございますが、大臣よく御認識いただいていると思いますので、この問題は新しい視点に立っての問題点として、もっと具体的な取り組みをひとつぜひやっていただきたい、このようにお願いしたいと思います。特に分業の波及効果というのは非常に大きいと私は思います。例えば医薬分業になるとどうなるか。お医者さんが処方せんを書く場合に、まずソロは書かなくなると思います。銘柄のいい、そういう薬がどんどん記載されてくると思います。また今度は、薬剤師とお医者さんの関係、そういった中においても、薬剤師には薬の決定権がありませんからそういう面で薬が値切れなくなる、そういう問題も出てくるでしょうし、薬品の管理あるいはチェック、薬害、そういう面でこれは非常にメリットがありますし、抜本的には、本当に薬つげ医療を変えようと思うんだったら、やはり私はこれしかないんじゃないか、そのように思うわけでございます。そういうことで、これはちょっとまた業務局にお尋ねしてみたいと思いますが、この前もちょっと時間がなくて十分詰めることができませんでしたもので、あえてお尋ねしたいと思います。今このビジョンを見ましても、医薬分業の推進はちゃんと入っております。もう一つ見ると「基盤づくりの促進」、この「基盤づくりの促進」という言葉はもう随分毎回聞いております。何か基盤だけつくっておけばいいというのは、変な意味でとりますと、何もせぬでいいというようなことにも通するような表現に家は肥えてしょうがないわけです。したがいまして、この点についてもうちょっと具体的に、例えば年次計画を立てて推進を図るとか、何かもうちょっと具体策があったっていいような感じを持つわけでございますが、こういう点についてはいかがでしょうか。
  124. 正木馨

    ○正木政府委員 医薬分業の推進につきましては、先生が今おっしゃいましたように、「今後の医療政策の基本的方向」についてもうたっておるわけでございますが、この前も申し上げたかと思いますが、医薬分業の推進を図っていくためにはやはり関係者の理解と協力が必要である。それから国民に対するPRの徹底、それから受け入れ態勢の整備あるいは調剤センターの整備とか検査センターの整備、そういったようなことが必要であると思います。それから、もちろん薬剤師さん御自身の資質の向上といいますか、受け入れ態勢というものも必要だと思います。そこで、ここでは「基盤づくり」と言っておりますが、基盤をつくればいいということではなくて、やはり医薬分業を真に実現していくための努力を重ねていかなければならないということであります。そこで、先生も御案内のように、医薬分業推進懇談会というものが設置されまして、三師会の代表、学識者がひざを交えまして、率直な意見交換を行うという場もできたわけでございます。そこで、私ども、この医薬分業の推進は極めて古くから言われておるわけですが、理念はわかっても、さらに具体的にどういった点を工夫を重ねていくか、こういう時期に来ておると思います。そこで、先生大変お詳しいわけでございますか、全国を見まして非常に格差がある。今医薬分業の実施率自体が全国的に見て低いのですが、その中でも非常に成績のいいところ悪いところがある。例えて申しますと、長野県の上田地区とか広島県の因島地区、こういったところは非常に成績がいい。そういったところでの経験、実はどういったところに隘路があったのか、どういったところに苦労があったのかということを率直に受けとめて、おくれているといっては何ですが、そういった地域の促進を図っていくということも必要ではないか。  そこで、毎年実施をしております医薬分業指導者協議会、これは厚生省と日薬とが共同で実施をしておるわけですが、こういった協議会等々の場を通じまして、そういった具体的な、一体どこに隘路があるのか、どういった点に知恵を絞るのかといった問題をこれから腰を据えてやっていかなければならないというふうに考えておるわけでございます。
  125. 沼川洋一

    ○沼川委員 今御答弁いただきましたけれども、ちょっと重ねてお尋ねしてみたいと思いますが、確かに医薬分業推進懇談会、これが設けられております。この前も指摘しましたように、一言で言うならばこれは休眠状態なんです。本当に何をやっているのかわからぬような、名前だけあっても実質はない。ひざを交えてとおっしゃいますが、そういうのをしょっちゅうやっていたらこれは非常にありがたいわけですけれども、名称だけあっても全く休眠状態です。  そこで、改めてお尋ねしたいわけですが、こういう医薬分業推進懇談会をつくられた目的は一体何なのか、その辺いかがでしょうか。
  126. 正木馨

    ○正木政府委員 医薬分業を推進するためには、何と申しましても、先ほど申しましたように関係者の理解と協力が必要であるということで、それぞれのお立場の御意見があると思います。それを率直に意見交換をする場を設けるということがまず第一の出発点であるということで、この推進懇談会が設けられたわけでございます。  そこで、お言葉を返すようでございますが、休眠状態と言われましたが、休眠しているわけではございませんで、これも御案内かと思いますが、実際に医薬分業を実施しておる調剤薬局について、一体どういったふうに行われてきたのかといったアンケート調査を実施しまして、それを今集計の段階に入っております。そういったもののデータもそろえて、この懇談会でさらに議論を深めてまいりたい。私ども考えますに、この懇談会は普通の審議会等と違いまして、意見をもらうということも大事でございますが、医薬分業の推進母体といいますかその推進力としての役割を果たしてもらいたいということで、私ども大いに期待しておるわけであります。
  127. 沼川洋一

    ○沼川委員 御答弁をいただいて、どう言っていいのですか、何か今までより少しは前進するような感じはやや持ったわけでございますが、要するに先ほどの御答弁の中にもありましたように、非常に分薬が進んでいる県と進んでない地域、そういうのがございます。ですから、そういう実態を厚生省の方でしっかり把握していただいて、そのデータに基づいて具体的にどういう形で推進していくか、こういう問題に対する取り組みもぜひひとつしっかりやっていただきたいと思うわけでございます。  そこで、改めてちょっとお尋ねしますが、先ほど厚生大臣の御答弁は、分業に非常に理解のある推進するという御答弁でございました。業務局長段階も非常に医薬分業推進でございます。一言で結構ですが、保険局、医務局あたりはどのようにお考えになっているか、ちょっとお尋ねしたいと思います。
  128. 吉村仁

    吉村政府委員 私は、薬づけ医療を解消するための一つの方法として、医薬分業の必要は十分認めております。したがって、今後、診療報酬の改正あるいは薬価基準の改正等の場合には、そのことを十分念頭に置きながら作業を進めてまいりたい、かように考えます。
  129. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 大臣と業務局長と全く同じでございます。私の方でも、できるだけ機会をつかまえまして推進に努力してまいりたい考えでございます。
  130. 沼川洋一

    ○沼川委員 もう時間もございませんので、最後にちょっと国民健康保険に関して自治省の方にお尋ねしてみたいと思います。今回の改正案で、一つは退職者医療制度ができる、国民健康保険の中に入ってくるわけでございます。また、その退職者医療制度を創設したということで、従来の医療費の総額に対する四五%の国庫補助が三八・五に削減されるわけでございますが、実質予算面の六千二百億という中の大半である四千二十億が国民健康保険に集中されておる、そういった事情がありまして、今後の対応の面で非常にいろいろと心配する声を地方自治体サードから聞くわけでございます。老人保健ができましたときに相当戸惑いがございました。今度はそれほどまでの声は聞きませんけれども、例えば各地方自治体で、七十歳未満の老人あるいは障害者、乳児、母子などの世帯に対して、六十五歳以上の無料化の公費負担とか、いりいろ独自に行っていらっしゃいます。こういう問題にも今度の健保改正がいろいろな形で影響を与えると思いますが、自治省としてこういう問題に対してどのようにとらえていらっしゃるのか。さらに、今後、現場のこれらの交付金の交付手続などにおいて、老人医療ほどないのではないかと申し上げましたけれども、やはりいろいろなトラブルが予想されるわけでございます。また診療報酬の請求、交付金の交付と拠出金の徴収のそれぞれのタイムラグから、当初予想した以上に過不足か生じるような場合もあるのではないか、こういつ問題もあるかと思いますが、こういう問題に対して自治省としてどういうふうにとらえ、どういう対応をされていくのか、これが一つです。もう一つは、今回退職者医療制度の方々が大体四百六万人と聞いております。ところが都市に非常に集中していまして、田舎の方に行けば郵便局長さんだけとか、極端に言えばそういうことがあるみたいです。ところが、実際にそれをつくったらということで事実国庫負担が四五%から三八・五%に削減されている。そういう面で、案外と地方によりましては財政負担という面でいろいろな心配があるやに承っておりますが、この点どうされるのか、最後にひとつお聞かせください。
  131. 前川尚美

    ○前川説明員 お答えを申し上げます。若干順不同になるかもしれませんが、お許しを賜ります。今回の医療保険制度の改革の中で、国保に関連しますと御指摘のとおり退職者医療制度の創設、あるいはこれとの関連において国庫補助負担割合の見直しということが一つの柱になっているわけでございますが、私ども、所管省である厚生省かり受けております御説明では、今回の退職者医療制度の創設及び国庫補助負担割合の見直しによって、マクロ三千三百余の市町村のトータルで検討いたしますと、保険料負担の増減は生じない見通しであるということでございます。ただ、御指摘にございましたように個々の市町村保険者ごとに見ますと、退職者の加入割合が違うということもございます。したがって、その意味では個別の影響は避けられないと考えております。この点について厚生省の方では、財政調整の枠を広げまして、改正による直接の影響が市町村の国保負担に及ばないように的確な配慮をされるということでございます。私ども、今回の改正に伴う影響としてはそのように御説明を受けているわけでございますし、今後、実施の動向を慎重に見守ってまいりたいと考えております。それから、退職者医療制度の創設によりましていわゆる交付金のタイムラグの問題がございました。老人保健につきましては、御指摘のとおり制度がそういう意味では発足直後であったこともございまして、若干市町村に過不足が生じたところかあったようでございます。この点厚生省の方とも十分協議をさせていただきまして、最終的にはほぼ調整がとれるような姿で五十八年度は結ぶことができたのではないかと考えておりますが、しかし、なお基本的に、その配分のルールをどうするかということ、特に、市町村の資金の問題もございますので、私どもそこは的確なルールを定めて、市町村に過分の資金負担あるいは運用面での支障を生じさせることがないように、的確に対処していただきたいということを重ね重ね要請しているわけでございます。  その他、老人保険制度施行の際に見られました単独事業等々の問題もございます。私ども、今回の制度改正に伴いまして、市町村の事務に変動が生ずるわけでございますので、改正の趣旨の徹底なり施行に当たっての事前の準備等について万全を期していただくように、これも所管省に要請をしているところでございますし、厚生省におかれてもその点十分御理解をいただきまして、手配をこれから検討されると考えております。そういった点も含めて、私ども十分にその方途を見守ってまいりたいと考えております。
  132. 沼川洋一

    ○沼川委員 時間が参りましたので、以上で終わります。
  133. 有馬元治

    有馬委員長 塚田延充君。
  134. 塚田延充

    ○塚田委員 このたびの健康保険法改正問題につきましては、言うならば、国民絵巻き込みの議論を呼び起こしたわけでございまして、医療の供給側、そしてそれを受ける側、どちらかと言うとすべてが、今度の改正案は余りにも唐突過ぎたのではなかろうか、もしくはその改正の動機が財政上の理由からというようないわば泥縄式であったのではなかろうか、その辺に大きな疑念を持ったからこそ、反対の声がちまたを網羅したのではないかと思います。  本来、このような国民的な課題につきましては、思い切り論議を尽くした上で、それに立脚した改正案というものが政府から用意されれば、祝福を受けて、厚生大臣がよく言いますように、二十一世紀に向けて医療制度が揺るぎなきものになる、その第一歩だ、二歩だというふうに祝福されることになるんじゃなかっただろうかと、ちょっと今回の厚生省の処置につきまして残念に思うところでございます。  いろいろな問題点が指摘され尽くされているような気がいたしますが、そしてその間において、厚生省からも中長期ビジョン的なもので、その羅列された項目を見ると、これをきちんとやってもらえれば確かに揺るぎなき医療体制ができるんじゃないか。そういう意味では評価をされるかもしれませんが、実際それをどのようなプロセスで、本当に絵にかいたもちじゃなくて国民の側に示し実行することができるか、これが厚生省の今後の課題であるんじゃないか、このように考えます。  さて、政府は今回の改正案がベストだということですが、全然ベストじゃないということは、私も前の質問においてはっきりと申し上げたわけでございまして、とにかく顔を洗って出直していただきたい、これが私の立場でございます。  しかしながら、現在私の知りおく範囲内で、報道機関などを通じて知っております自民党側の修正案なるものが伝えられておりますが、それによりますと、政府管掌健康保険において、被保険者本人の一部負担金につきまして、その附加給付を行うために、事業主とその被保険者が構成する団体等において社会保険庁長官の承認を与える、こういうことが示されているわけでございますけれども、この場合の社会保険庁長官が承認を与える承認基準としてどういうものを考えておられるのか、お尋ねしておきたいと思うわけでございます。  例えば、その構成被保険者数の規模について何らかの基準を設けるのか。さらには、これに地域別であるとかまたは業種別というようなことで何らかの基準を設けるおつもりなのか。さらに、事業主及び被保険者などが自発的な意思によって結成されるのを待っているのか、それとも待っていたんじゃなかなかそういうような団体ができないであろうから、厚生省として積極的に行政指導なさるおつもりなのか。御答弁をお願いしたいと思います。
  135. 坂本龍彦

    ○坂本政府委員 ただいま御質問をいただきました点につきましては、私どももそういう制度を設けるという御提案があるやに承っておるところでございますけれども、何分にも、現時点におきましてはまだ十分にその実施の方法等について検討する時間がございませんので、具体的にまた確定的なお答えをするという段階にはございません。  しかしながら、こういった制度を実施するとした場合には行政庁としてどういう考え方実施すべきか、こういう点について基本的な考え方を一応ここで述べさせていただきます。もちろん、これはさらに十分検討する必要がございますけれども、とりあえずのお答えでございます。  例えば、被保険者数の規模についてお尋ねございましたが、これにつきましては、やはり一応一種の保険集団といったようなものを構成するのではないだろうかと理論的には考えられるわけでございますから、ある程度の規模というものは当然必要ではなかろうか。余り小さいと運営上いろいろ支障も出かねないという点も考えられるわけでございます。しかしながら、例えば健康保険組合のような法定給付も含めて、あるいは保健施設、福祉施設も含めて実施するというような内容でもございませんので、健康保険組合ほどの規模という必要はなかろうかと考えられるわけでございます。どの程度かという具体的な数字につきましては、今後さらにいろいろなデータ等も勘案しながら検討しなければいけない問題であろうと考えます。  次に、例えば地域別か業種別かというような基準のお尋ねでございますが、こういった事業を実施する場合には、そういった地域別とか業種別とかいう限定は必ずしも必要はないのではないかというように考えられるわけでございます。  それから三番目に、実際にこれを具体的に実施する場合には行政庁の方で積極的に指導するのかあるいは自主的な結成を待つのかという点につきましては、実際に事業主、被保険者の方のいろいろな実情、考え方、これがさまざまでもございましょうし、そういった点から見て、やはり自主的、自発的なお考えを尊重すべきであろうと私どもは一応考えるわけでございます。しかしながら、こういう制度ができました場合には、その制度内容については行政庁の側からも十分周知徹底を図る必要があろうかと考えております。
  136. 塚田延充

    ○塚田委員 先ほど沼川委員の御質問にもございましたが、一部負担金につきまして代理請求、代理受領方式というものについてやる意思があるのかないのかという、それにつきましての保険局長の御答弁としては、本旨を踏み外さない範囲内であり得るんじゃなかろうかというようなニュアンスの御答弁をなさったと私は受けとめておるわけでございますが、そのような一部負担金の代理受領方式につきまして、健保組合の被保険者につきましては、やろうと思えば事務的にもやり方がかなり容易ではなかろうか、このように考えられるわけでございます。しかし政府管掌健保の場合は、直ちに実施するにつきましては事務的な問題その他、いろいろ付随する難しい問題があるのじゃないか、このように考えられるわけでございますけれども、これにつきまして直ちに実施できるのかどうか、その際の問題点がどうなのか、この辺御答弁願います。
  137. 吉村仁

    吉村政府委員 健保組合の附加給付について、私どももいろいろ検討をしております。そこで、同じようなことを同じような方式で、政府管掌の各事業所等について応用できるであろう、こういうことで現在のところは考えております。ただ、まだ修正案が提示されたばかりでございまして、深く十分に検討はいたしておりません。ただ、いずれにいたしましても、医療機関、それから保険者、政府管掌の場合には事業主、こういうことになると思いますが、それと患者、この三者の一つの合意に基づいて実施をする、こういうことになるのは確かでございまして、その合意の内容をどういうような形で指導していくかというのはこれから十分検討さしてもらいたい、こう考えております。
  138. 塚田延充

    ○塚田委員 政府管掌健保の附加給付については、中身を自発的であれまた行政指導であれそれぞれ設けていくことになると思うのですが、その場合、この代理請求とか代理受領の手続はかえって複雑になってしまうんじゃなかろうか、このような懸念があるわけでございますけれども、この請求あるいは受領のための事務的な流れは一体どうなると考えられるのか、現時点で厚生省が考え得る範囲内についてお答えいただきたいと思います。
  139. 吉村仁

    吉村政府委員 私ども、附加給付の中身は、各保険者なりあるいは事業所あるいは事業者団体で決めていかなきゃならぬ問題、そしてその附加給付の中身については自主的に決める問題だろう、これはそう考えております。したがって、恐らく各組合ごとあるいは事業主ごとに中身はいろいろ異なってくるということが十分考えられるわけでございまして、その辺を統一をしていく必要があるかどうかということをまず検討をしております。そして恐らく、それについてはやはり各組合なり事業所がそれぞれ自主的にやるのですから、それほど行政指導をきつく及ぼしてはいけないのではないかというような考え方も持っております。そういうふうに個々ばらばらな附加給付をやりますと、今度は医療機関と保険者ないし事業主固体との関係が非常に複雑になるわけでございまして、一律にやればかなりスムーズに受けられるけれども、ばらばらにすればなかなかやり方が難しいというようなことになると思います。  そこで、代理請求のやり方、支払基金を通じてやれるかどうかというのは、そのやり方いかんによるわけでございまして、個々ばらばらにやらせるのだったら支払基金を通じさせるわけにいかぬ。したがって、先ほど申し上げましたように、医療機関と保険者ないし事業主と患者との合意というようなものがどうしても必要になってくるであろう。その合意の中身につきまして私どもも一つの基準というようなものを考えて、事業所なりあるいは健保組合等に指導をしていかなきゃならぬのだろう、こういうことでその基準を、先ほどから申し上げておりますようなことで今検討をしておる、こういう段階でございます。
  140. 塚田延充

    ○塚田委員 続きまして、調剤薬局における一部負担の取り扱いについてお尋ねいたします。  老人保健法におきましては、保険医療機関、これは病院であるとか診療所等でございますけれども、そこで一部負担金を徴収した場合、その医療機関が発行した処方せんによって調剤薬局で調剤を受けるときは、重ねて一部負担金を支払う必要がないということになっておりますが、そのとおりでございますね。  それで、今回のいわゆる修正案に示されておることとの関連でございますが、本人一部負担金についても、保険医療機関でいわば三段階定額一部負担金制度というような形になっておりますが、そこで患者がその定額の一部負担金を支払った場合、調剤薬局での一部負担金は支払いを要しない、このような取り扱いをすべきじゃないかと私は考えるわけでございます。すなわち、老人保健法と同じようなやり方でなければ整合性がなくなるんじゃないか、このように考えるのでございますが、この点いかがでございましょう。
  141. 吉村仁

    吉村政府委員 老人保健法におきましては、先生指摘のように、月一回の一部負担を月の一番初めに受けた医療機関で支払う、こういうことになっております。したがって、処方せんをもらって調剤薬局で調剤をした場合には、一部負担を取らないということになっておりますのも先生指摘のとおりであります。  それはなぜかと申しますと、やはり医薬分業をしておる医療機関にかかった場合とかからなかった場合、また月一回、しかも月初めに一回しか一部負担を取らないという老人保健法の仕組みからそういうことになっておる、こういうことでござただ、今回の健康保健の場合には、医療機関にかかるたびに一割の一部負担を取る、こういうことになっておるわけでございまして、この点につきましては、どの医療機関にかかろうと、そしてまた月の半ばにかかろうと、月に何回かかろうと一割の負担をする、こういうことになっておるわけでございまして、そこで処方せんを切った場合、調剤薬局では一部負担を払うことを要しないということはやはり均衡を失するのではないか。調剤薬局で薬をもらおうと保険医療機関で診療か受けようと、その都度一割を徴収するというのが公平という点から言って適切なのではないか、こういうことで現在のような措置にしたわけでございまして、老人保健法の方がむしろ特殊なんではないかと私どもは考えておる次第でございます。
  142. 塚田延充

    ○塚田委員 このたび提示されております自民党修正案によって、三千五百円以下のいわば少額医療費でございますか、これを言うならば三段階定額方式にする、こういうことでございますか、このような定額方式を導入することによって、当初厚生省では、すべてについて一割の負担ということを原案では提案しておったわけでございますが、それと比べまして、国庫及び保険財政に対します影響がどのようになるのか、試算をなさっておられるかどうか。簡単な計算でもいいですから、もしそれがございましたら、責任ある与党与党イコール政府ということも言えるわけでございますので、それを全国民の前に示す必要があるんじゃないかと思います。その影響の度合いについてプラス、マイナスをお示しいただきたいと思います。
  143. 吉村仁

    吉村政府委員 今回の三段階の変形的な定額制あるいは変形的な定率制と言ってもいいのかもわかりませんが、これの財政影響につきましては、私ども今回の自民党修正案で、千五百円以下は百円、こういうことで定額になっておりますが、千五百円以下の平均医療費は千十円でございまして、その一割というと百一円になるわけでございます。それで百円に丸まっておる。そして、千五百一円から二千五百円までの平均医療費は二千十円でございます。したがって、一割というと二百一円になって、それを丸めて二百円。それから、二千五百一円から三千五百円までの平均は二百九十五円でございます。したがってこれをまた丸めまして三百円。こういうようなことで百円、二万円、三百円という三段階定額が決まった、こういうことでございますので、変則的な定率制あるいは変則的な定額制に変わったからといって財政的な影響は変わらない、こういうように計算をしております。  ただ、けさほどの御質問にもございましたように、定額制にすることによって若干本当の定率制とは違った効果が出る、つまり甘くなるということを意味するわけでございますが、そこまでは計算をしておりません。
  144. 塚田延充

    ○塚田委員 大変巧妙なシステムの切りかえ、プログラムの切りかえで、答えは全然変わっておらないと、感心していいのやらだまされたのやらというような気がするんですが、国民立場から見た場合、特に小さな事業所の方々が多く参画されております政府管掌健保関連の方々でございますけれども、今お聞きした定率から定額に三千五点円以下の分を切りかえることによって、やはり何らかの影響を受けてしまうんじゃなかろうかと危惧している向きも大分あるわけでございます。結局政府管掌健保、やっと最近では健全財政の方になってきたわけでございますけれども、今度の修正案によってその財政内容が悪化することによって、またまた保険料率の引き上げ、このようなことにつながっては困るというような心配を非常に大きく持っているわけでございまして、今度の山民党修正案が出された途端に私の方にもその面での問い合わせが相次いでいるわけでございますが、ひとつ局長、この政府管掌健保に、限って、ずばり、保険料率の引き上げが今回の修正案によって引き起こされるようなことはないんだというようなことを御説明いただけたら、それなりに国民は安心すると思うのですが、いかがでございましょう。
  145. 吉村仁

    吉村政府委員 今回の修正によって保険料率に変動を来すことはないと私どもは考えております。
  146. 塚田延充

    ○塚田委員 私の個別的な質問はこれで終わらしていただきます。  最後でございますが、厚生大臣にお願いしておきます。  今回のこれだけの大変な議論というものを土台といたしまして、ぜひとも、大臣が常々言われるような、本当に二十一世紀に向けて揺るぎなき医療制度、そしてそれに相通ずる保健制度をできるだけ早い期間に、長期ビジョンに沿って具体的に国民に提案され、そして医療の供給側も、また医療を受ける国民も、ひとしく安心して生活できるようにぜひお願いしたいと思います。  終わります。
  147. 有馬元治

    有馬委員長 浦井洋君。
  148. 浦井洋

    ○浦井委員 自民党の方から、第三次の修正案なるものが我が党にも提示をされております。保険局長にお尋ねしますが、厚生省で十分検討されたと思いますが、これによって国庫の支出の増減は一体どうなりますか。少額医療費だけでなしに全体。
  149. 吉村仁

    吉村政府委員 国庫負担の増が約四十七億円、満年度ベースで計算いたしまして四十七億円と計算をしております。
  150. 浦井洋

    ○浦井委員 言えばごくわずかであって、私どもは既にこういうものは検討に値しないということで突き返しておるわけでありますけれども、まさに、今度の健康保険のいわゆる改正案というものが、国庫の支出を減らすという点では、今度の第三次修正案というものはその根幹を揺るがすというか、大骨を抜くというようなものではないということをこの数字は示しておると思うわけであります。  それから、先ほどもお話がありましたように少額医療費の一部負担ですか、何かややっこしい数字が出ておりますけれども、これも実質的にはほぼ被保険者本人一割負担になりますね。どうですか。
  151. 吉村仁

    吉村政府委員 先ほど塚田先生お答えいたしましたように、一割相当額定額にしておるわけでございまして、財政的に変わりはございません。
  152. 浦井洋

    ○浦井委員 その次の問題として、退職者医療制度国庫負担が入っておらぬのはけしからぬと、我が党のこの間の質問で簑輪議員が指摘をいたしました。しかも、そのときに申し上げたように、政府管掌健康保険の拠出金の中の当然入るべき一六・四%の国庫負担までも、老人医療の方では入れておるのにこれは抜けておる。しかも概算要求のときには入っておったのに、幾らでしたか、二百二十七億円ですか今度は抜けておるというようなことで、なぜこういうことまでやらなければならぬのですか。政府管掌分の拠出金の中の一六・四%の国庫負担分まで抜けておるというのは何でですか。
  153. 吉村仁

    吉村政府委員 退職者医療制度への拠出金というものの算定方式は、退職者医療に要する費用を全被用者保険、つまり健康保険組合は健康保険組合、政府管掌は政府管掌でございますが、そのおのおのの標準報酬総額、それで割って料率を出すわけでございます。その結果千分の五・七四の料率が必要だ、こういうことになるわけでございまして、その五・七四パーミルの料率をおのおのの標準報酬総額に掛けていくわけでございます。したがって、そのおのおのの保険の財政力というものは標準報酬総額に当然反映をされておるわけでございますから、おのおのの保険の財政力を勘案した上、国庫負担は不要だ、こういう考え方に基づきまして一六・四%の国庫補助金は政府管掌にこの部分については入れない、こういうように判断をしたわけでございます。
  154. 浦井洋

    ○浦井委員 それはいろいろな解説書に書いてあるわけなんですが、要するにこのことが意味する本質というのは国保の国庫補助率を引き下げる、そのために退職者医療国庫負担なしで無理やりにつくるということを端的にやはり示しておると私は思うわけでありまして、全くけしからぬ話だと思うわけであります。  そこで、私が五月十日に特定療養費の問題についてお尋ねをしたわけでありますけれども、もう少しこれを詰めてお尋ねをしたいのでありますが、非常に複雑な仕組みになっておるようでありまして、特定療養費について、一般の保険医療機関に対しまして今度は差額徴収が結果として公認をされることになるわけであります。  そこで、この間の私の質問に対して保険局長は、その特定療養費に指定するのは、一般保険医療機関の場合にはさしあたって部屋代差額と歯科材料費と、それから何か特別の新しい器具ぐらいだというふうに言われておるわけでありますけれども、私が尋ねたいのは、そういうことを確認すると同時に、この特定療養費というような仕掛けかでき上がってまいりますと、大臣が諮問をして中医協で結論を出して答申をするということになると、例えば給食料というようなものも特定療養費に指定し得るのではないか、こういうふうに私は思うのですが、どうですか。
  155. 吉村仁

    吉村政府委員 差額徴収の対象にするものといたしましては、部屋代と歯科の貴金属あるいは新しい特定の治療材料みたいなものがあれば、例えば人口歯根というような特定の治療材料が新しくできておるようでございますが、そういうようなものを考えておる。これは前に御答弁を申し上げたとおりでございます。それから給食料について、それは将来差額徴収の対象になるのかということでございますが、これは中医協で議論をしてもらわなければならない問題でございます。そこで、理論的になるか、こういうことならば、理論的にはなり得るというように現在の段階では答えるほかにございません。ただ、私どもは、給食というのは医療について非常に基本的なものだと考えておりますので、そういうものを差額徴収にするのは適当かどうかと開かれるならば、現段階では適当ではない、こういうように考えておるわけであります。
  156. 浦井洋

    ○浦井委員 理論的にはなり得るということであります。  それで、もう一つお尋ねしますが、五月十日に私が質問をいたしまして、保険局長はこういうように言われている。「現物給付方式の場合には医療というものを現物で給付するというのが現物給付ということでございます。したがって、医療というものを給付するわけですから、その医療についてここからここは給付外だというわけにはまいりません、医療の現物ですから。したがって、現物給付方式をとろうとすれば必ずオール・オア・ナッシングになってしまうというのが現物給付の特徴でございます。ところが差額徴収というのは料金の問題で、ここまでは保険で見るけれどもここから先は保険で見ないという料金の問題になるわけでございまして、例えば入院料でも、」云々と言われている。ここで医療というものは現物給付なのでオール・オア・ナッシングだ、ところが差額徴収というのは料金の問題でということで、医療と料金というような何かわかったようなわからないような言葉が出てくるわけであります。そうしますと、端的にお尋ねをいたしますけれども、この料金というのは一体どの範囲を言うわけですか。
  157. 吉村仁

    吉村政府委員 現物給付というのは医療の現物を給付する、こういうことでございますので、その医療を給付するかしないか、医療というのは一体的な給付なのでございますが、それを給付するかしないかという問題になるわけでございます。療養費というような場合には、その医療にかかった費用が問題になって、その費用のうちのどの部分を支払うかというのが療養費払いになるはずであります。したがって、今回の特定療養費というのは、我が国で行われております。そういう医療の料金を対象にして、その中の保険給付として適当なもの、それだけの値段を支払う、こういう意味で、結果的に差額徴収分というのは保険給付の対象にならない、こういうことになるわけであります。そういう仕掛けになっておるわけでございまして、したがって差額徴収の問題は料金の問題である、こういうように答えたわけでございます。
  158. 浦井洋

    ○浦井委員 なかなか難しいんですけれども、もう一つ端的にお尋ねしますが、今療養費の支給ということを言われたのですけれども、現行の健康保険法四十三条に「療養の給付」というのがありますね。これはもう昔からずっと続いておるわけです。これが現物給付ということの範囲で、今度のいわゆる改正案の中には、表現は違いますけれども、括弧つきで特定療養費に相当する分は「除ク」とこうなっておるわけですね。そうでしょう。それならその四十三条で、一号から六号までありますね。「一 診察 二 薬剤又ハ治療材料ノ支給 三 処置、手術其ノ他ノ治療 四 病院又ハ診療所ヘノ収容 五 看護 六 移送」、この六項目のうちで、どれもこれも今の説明によりますと医療であり、またこれが全部特定療養費という形になったとすれば、これが全部料金の中へ入るわけですか、それとも何かこの一項目から六項目の間で区分けができますか。
  159. 吉村仁

    吉村政府委員 四十三条で一号から六号までの療養が掲げてございます。そこで特別室だとか歯科の貴金属というものについてもこの中に一応入っておる。例えば特別室への入院にいたしましても、病院への収容というのが四号にございますが、病院への収容というのは、特別室であろうが普通室であろうが、これは「収容」の概念の中に入るわけでございます。そこで、そこの特別室の部分については、差額徴収を認めようとすれば厚生大臣が定めるものを除かない限り差額徴収の対象にならない。そこで今回新しい改正で、括弧書きをつけまして「除ク」、それで特別室だとか歯の貴金属だとかいうものは除く、こう書いたわけでございます。
  160. 浦井洋

    ○浦井委員 ちょっとわかりにくいんですが、そうするとまた考え方を変えまして、物と技術の分離というようなことがよく昔から言われていますね。その特定療養費に指定し得るというのは、物の部分に相当するものは、今はやらないけれども、この法改正が行われて特定療養費という仕組みができ上がると、中医協の答申によっていつでも特定療養費に指定することができるというふうに理解して、それでいいですか。
  161. 吉村仁

    吉村政府委員 形式的にはそういうように読めますが、私どもはそういうふうにするつもりはない、読めるけれども、必要にして適切な医療については、これは保険給付の対象にいたしますということをたびたび答弁しているところでございます。
  162. 浦井洋

    ○浦井委員 そうすると、技術と物と分けて、物については理論的には特定療養費の対象になり得る。言いかえれば理論的には療養費の支給に移し得る。だから、今度は技術の部分については、この前の私の質問に対する答弁では、議論が相半ばしておりましてなかなか決めかねております、こういうことであったわけですけれども、そういうことですか。
  163. 吉村仁

    吉村政府委員 私は、物だけを除く、こういうように読めると言ったわけではございませんで、技術と物、両方とも読もうと思えば読める、こういうことでございます。物と技術の分離というのは、診療報酬におきまして、物の部分の値段と技術の部分の値段を分離していく方が診療報酬の適正化の方法としてよろしいのではないか。物と技術の分離といいます場合は、これは診療報酬上の扱いで、物といえば例えば薬剤、それから技術、これは診察料というようなことでございますが、そういうものを分離して技術料を高く評価しよう、物の部分については物の値段だけをば給付するといいますか支払う、そういうようなことで物と技術の分離という言葉は使われておるのだろうと思うのです。そして、この四十三条に関する限り、物と技術について取り扱いが別だというように法文上はなってないわけでございます。
  164. 浦井洋

    ○浦井委員 大分特定療養費の概念がはっきりしてきたというふうに私は思うのですが、これは前の繰り返しになりますけれども、今度は特定療養費が、その申請に基づいて知事の許可を得た特定承認保険医療機関、大学病院を例示されているわけですけれども、そこでの健康保険法四十三条のすべての行為は初めからもうすべて療養費が支給になる、こういうように理解していいわけですね。
  165. 吉村仁

    吉村政府委員 特定承認保険医療機関、例えば大学病院でございますと、今先生おっしゃったように、そこにおける診療というのは一応全部療養費の対象になりまして、その中で、保険診療として支給をするものとそうでないものがございますので、保険診療として支給をする分だけを支給いたします、そうするとそれ以外の部分は結果的に自己負担になる、こういうことになるわけでございます。
  166. 浦井洋

    ○浦井委員 特定療養費というものが、ここでそういう仕掛けがつくり上げられてしまうと、渡部厚生大臣吉村保険局長がいつまでもおられるわけでもないし、先ほどから、前から私が申し上げておるように、いつでもこの自由診療といいますか、自費診療の拡大の方途にこれが使い得るということがはっきりしたというように私は思うわけでありまして、こういうような改悪案というのは政府は潔く撤回をすべきだ、このことを強く主張をいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。(拍手)
  167. 有馬元治

    有馬委員長 菅直人君。
  168. 菅直人

    ○菅委員 短い時間ですので、早速本論に入っていきたいと思います。  標準報酬月額の上限を今回の改正に伴って引き上げるということが提案をされているわけですけれども、現在四十七万円の標準報酬月額を七十一万円にするということが提案されているわけです。この場合、この標準報酬月額上限の引き上げによって影響を受ける対象者、またそれによって保険料がかなり増収になるわけですけれども、その金額、これがどの程度のものか、まずお答えをいただきたいと思います。
  169. 吉村仁

    吉村政府委員 まず対象者でございますが、政府管掌健康保険で五十八万一千人、組合健保で六十七万三千人、合わせて百二十五万四千人でございます。  それから、第二点の保険料の収入増でございますが、これは五十九年十月に改定をする、こういうことにしておりますので、五カ月分だけで計算をいたしますと、政府管掌健康保険で三百五十三、億、それから組合健保で三百五億、合わせて六百五十八億円でございます。
  170. 菅直人

    ○菅委員 平年度ベースだとどうなりますか。
  171. 吉村仁

    吉村政府委員 計算をしておりませんが、五カ月分でございますので、これの二・四倍…(菅委員「五分の十二倍」と呼ぶ)はい。
  172. 菅直人

    ○菅委員 つまり、六百五十八億の倍よりもちょっと多いわけですから、約千四百億程度になるわけですね。  大臣もよくお聞きいただきたいのですけれども、今回の改正は保険料のいわゆる料率改正は行わない。確かに料率改正にはなっていないわけです。しかし、実質的には相当の負担をある所得分野の人にはかけることになっているわけです。例えば標準報酬が七十一万円の人、普通の給料でいえばかなりの人ですが、給料が七十一万円程度以上の人、この場合のときに現行の負担が月幾らで、改正後の負担が月幾らで、増額が幾らで、増加率が幾らか、簡単にお答えいただきたいのです。
  173. 吉村仁

    吉村政府委員 標準報酬上限該当片の改定前、改定後の保険料額を申し上げます。  政管健保におきましては、改定前が一万九千七百四十円のものが改定後では二万九千八百二十円になります。それから組合健保で、これは全組合の平均でございますが、改定前が一万六千二百九十円のものが改定によりまして二万四千六百十円になります。
  174. 菅直人

    ○菅委員 その数字をそのまま計算をしてみますと、例えば組合健保の場合で約一万六千円だった人が八千円余り保険料が上がるのですね、大臣。これは一遍にですよ。つまり五〇%を超える保険料の引き上げがこの所得範囲の人には一遍に先月から今月ぽんと上がるわけです。これは総理も来られて、後ほど私も若干の機会があるかと思いますが、昨年来減税で五十八年度、五十九年度で一兆三千億前後の減税が行われた。しかし、この百二十五万人の人にとっては、正確な数ではありませんが、ほぼ減税額に見合う、あるいはそれを超す保険料の引き上げになるとこの数字が出ているわけですね。確かに保険制度ですから、ある程度所得の高い人が負担をすることそれ自体は私も仕方がないことだと思います。しかしこのような急激な変化をもたらすということが、必ずしもそうした対象者の人たちに理解をされているんだろうか。私は、これがもし実施された場合に、いや少し税金が安くなったと思ったら、それに見合うかあるいはそれ以上のものが減っていたとしたら、一体何だ、減税だ減税だと大騒ぎをして、一体何だったんだろうかという不信感をこうした人たちに持たせることになるんではないか。この点について大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  175. 渡部恒三

    渡部国務大臣 今回の改正によって御負担が多くなる方には大変恐縮でございますが、ただいまも先生指摘になりましたように、これはやはり所得再配分と相互連帯と、この二つが基盤になって社会保険あるいは社会保障というものができるわけでありますから、所得の高い方に御負担をお願いするということをぜひ御理解を賜りたいと思います。
  176. 菅直人

    ○菅委員 あわせて、事実関係だけはっきりするために、国保の保険税の上限についてお尋ねをしておきたいんですが、国保の保険税がどの程度引き上げられ、そしてどの程度の影響が及ぶか、その点について厚生省からはっきりした答えをいただきたいと思います。
  177. 吉村仁

    吉村政府委員 国保の限度額の引き上げは、今回三十五万円を限度額にしております。そして、対象世帯数は約百九万世帯でございます。そして、最高三十五万に該当する世帯は約六十七万世帯でございます。それから、全市町村が限度額の引き上げをいたしましたとして、財政効果を計算いたしますと約六百億円が見込まれます。
  178. 菅直人

    ○菅委員 今の数字も大臣もぜひ頭に入れていただきたいんですが、少なくとも六十七万人の人は、二十八万円の保険税なり保険料がほぼ三十五万円になる。一遍に上がるんですから相当の引き上げ額であり、それによって約六百億程度の財政効果が見込まれる。つまり組合健保、政管を合わせて約千四百億、国保で合わせて約六百億。つまり、税金を上げないといっても、国民の配当部分の人たちに対して二千億の社会保険にかかる徴用の引き上げがかぶっていく。このことが一方にあって、さらにこういう法案中身になっているということに私は必ずしも納得できないところがあるわけです。この点については、この事実関係を明確にして、さらに二院制のもとで審議が行われるわけですから、他の機会にこの議論を譲りたいと思います。  最後にもう一点。今、附加給付の問題についていろいろと報道などがなされたり、あるいはこの中でも議論がなされておりますけれども、組合健保、政管健保あるいは国保組合などにおいて、附加給付を、ぜひ続けたいという希望が非常に強いわけですね。それに対して認めていこうという方向が打ち出されているようですが、再度確認をしておきたいんですが、附加給付についてはそれを認めていくおつもりか、また認めた場合に何らかの不利な扱いをされることがないかどうか、その点について確認をしておきたいと思います。
  179. 吉村仁

    吉村政府委員 私ども、附加給付については理論的に公平の見地からはよくない、こう思っておりますが、現状のやっておる現実から申しまして、これは認める方針でございます。  それから、附加給付をやったからといって特段不利にする、こういうようなことは考えておりません。
  180. 菅直人

    ○菅委員 じゃ、時間ですので、これで終わります。(拍手)
  181. 有馬元治

    有馬委員長 これより内閣総理大臣に対する質疑を行います。  村山富市君。
  182. 村山富市

    ○村山(富)委員 健康保険改正案は、二月の二十五日に国会提出をされましてから、今日まで真剣な審議を続けてまいりましたが、ようやく山場を迎えようといたしております。随分長い期間、この法案審議するに当たりまして、新聞やその他いろいろなところから、この健康保険改正案は中曽根内閣命運にかかわる最重要法案だというふうに言われてまいりましたし、十一月の総裁選挙にも影響がある、こういうふうにも言われてきたわけでありますが、総理は、そういう声に対してどのような見解で受けとめられてまいりましたか、お尋ねします。
  183. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 今回の社会保険制度の改革は、画期的な改革であると思っております。そういう意味におきまして、内閣といたしましては、最重要法案の一つとして全力を傾けてきたところでございます。  国会におかれましても、長い間、与野党を通じて審議を尽くされましたし、また関係方面の御意見等々も聴取していただきまして、この精力的な御審議に対しては、心から感謝と敬意を表するものでございます。
  184. 村山富市

    ○村山(富)委員 今総理も申されましたように、事柄が重要であるだけに、与野党それぞれ真剣な議論もしてきたわけでありますけれども、ただ、この法案審議するに当たっての基本的な姿勢について、若干お尋ねしてみたいと思うのです。  去る十日に、自民党の副総裁と党四役、医療三団体の会長との会談が行われました。その際に、現在八種類に分立している健保制度の統合一元化について、国会終了直後に実施時期を示す、こういうふうに言明をされたということが報道されていますが、これは総理は御存じですか。
  185. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 その点につきましてはいろいろ誤解もあり、御迷惑をおかけいたしまして、恐縮に存ずる次第でございます。  言わんとしている趣旨は、ともかくこの国会が大幅に延長されるなら別として、今の状態で八日までに法案を議了しよう、そういうようなことを考えておりますと、それまでにめどをつけるということはちょっと難しい。そういう意味で、今すぐやることは難しい、国会中にそういう点を全部明らかにするには時間が足りない、そういう意味の趣旨のことを言ったと聞いております。
  186. 村山富市

    ○村山(富)委員 この新聞報道を読みますと、国会終了直後に実施時期を示す、こうあるわけですね。実施時期を示すということは、内容についてはある程度の合意を得ておって、そして実施時期だけは国会終了直後に示す、こういう意味ではないのですか。
  187. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 私が聞きましたところによりますれば、実施時期というものはなかなか複雑な条件がありまして、いろいろな関係機関の意見も聞かなければなりませんし、難しいということはよく承知しておられるようでございます。ともかく今の国会におきまして、日が短いことでもあるしその間はとても難しい、そういう意味の趣旨のことを、言ったというふうに聞いております。
  188. 村山富市

    ○村山(富)委員 私が冒頭に、この健康保険改正案は、この国会内閣提出した法案の中では最重要法案だというふうに言われて、慎重な審議が行われてきたわけですね。統合一元化について実施をする時期を示す、明示するということは、ある程度内容の合意を得ておって、そして、その実施時期については今はなかなか難しいから国会直後に明示する、こういうふうに言われたものではないかと解釈するのですが、少なくとも統合一元化なんという問題は保険制度の根幹に触れる問題ですよ。それがどういうふうになっていくのかということもわからぬままで、この健康保険改正案審議はできませんよ。だからそこらの点を明確にしてもらいたい。
  189. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 この点につきましては、厚生省の展望でございますか、将来の統合という問題に関する見解というのもあったと思います。いろいろ手続も必要でもございますし、いろいろな諸般の情勢もよく勘案して考えなければならぬ息があると思うのでございます。そういう意味において、ともかくこの議会中に示すという拙速なことはできない、そういう趣旨が中心である、そういうふうに聞いておるのでございます。実施時期を示すという、積極的にいつ、どうするかというようなことまでは深く立ち入ってはいない、そのように聞いております。
  190. 村山富市

    ○村山(富)委員 それじゃ総理にお尋ねしますが、総理は、統合一元化という問題についてどういうふうにお考えになっていますか。
  191. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 私は、全国民全体を考えてみた場合に、負担と給付の公平というようなものを考えますと、これは統合一元化されるのが正しい方向であろうと思いますし、厚生省の方においてもそういう考えを示していると思います。一般論でございます。  ただ、それを実行するにつきましては、先ほど申し上げましたように、社会保険関係審議会もございますし、いろいろまたどういうふうにやるのかという問題点でも甲論乙駁があると思うので、そういう点をよく踏まえて考えなければならぬのでありまして、しかし方向としては私はあり得べき姿である、そう考えております。
  192. 村山富市

    ○村山(富)委員 負担と給付の公平を期していくために、統合一元化することは基本的には賛成だ、かいつまんで言えばこういうことですね。  しかし、今八つのそれぞれ保険団体がありますね。この中には被用者保険もあれば地域保険もあるわけです。いろいろな保険がある。老人保健もありますね。そういう保険制度合体を一つにするという意味の一元化なのか。  かつて、昭和四十三年に当時の医師会の会長をしておられました武見さんが打ち出した案がありますけれども、それを見ますと、地域医療は地域医療として被用者保険も地域保険として一本にする、そうして老齢健保と労災と三本立てにして保険制度を統合化していく、こういう案が出たことがありますね。それから自民党は、財政調整を中心にして保険制度をできるだけ一元化していきたい、こういう考えを出したこともありますね。したがって、漠然と言われても困るので、これは重要な問題ですよ。そういう内閣考え方が明確にならぬと、これだけ新聞にも報道されているわけですから、健康保険改正案審議はできませんよ。そういう意味で、具体的にどういうふうな統合一元化の見解を持っておるのか、もっとはっきり答えてください。
  193. 渡部恒三

    渡部国務大臣 これは私ども先生方のお求めも強く、また当然であるということで、二十一世紀に向かってのビジョンを発表したわけでありますが、この考え方の中で、六十年代後半のできるだけ早い時期に一元化の方向を図りたい。この一元化については、今先生からお話しがありましたように、これは組織を一つにするということも、あるいは負担と給付を内容を一つにするということも、またこれを財政調整によって図るとか、いろいろの考え方があるわけでありますが、いずれにしても国民全体が同じような条件で給付を受けられることが最も望ましいということについては、総理からただいま御答弁がありましたように、これはほぼ国民的合意ができておるわけでありますから、そういう方向に向かって、いろいろこれから与党の御意見も聞かなければなりませんし、また野党皆さん方の御意見もいろいろ出てまいると思いますが、そういうそれぞれの御意見も尊重しながら、また、被用者保険には先生御承知のように長い歴史と沿革がそれぞれございますから、そういう中で負担と給付の公平という一元化の方向に向かって、できるだけ早く実現するように努力をしてまいりたいということでございます。
  194. 村山富市

    ○村山(富)委員 できるだけ早い時期に実現すると言ったって、中身がはっきりわからぬものは実現しょうがないじゃないですか。確認しますけれども、ここに言われております「統合一元化を国会終了直後できるだけ早い時期に実施時期を明示する」、示すというふうに言われたことの統合一元化という中身については何もないというふうに確認していいですか。
  195. 渡部恒三

    渡部国務大臣 一つは、この委員会でもたびたび先生方からお話しがございましたように、現在被用者保険は十割、今度一割負担ということで九割になりますが、国保は御承知のように七割給付ということで非常な開きがあります。これがたびたび御指摘をいただいておりますから、これからまず私どもは、国保の給付七割を八割に引き上げるような具体的な努力をしていかなければならないと思います。
  196. 村山富市

    ○村山(富)委員 これは、統合一元化について国会終了直後に実施時期を示す、こう言っているわけですから、したがって統合一元化というのは一体どういう中身なのか。これは健康保険法改正案と重要な関連がある、そこらが明示されないと審議ができない、こう言って質問しているわけですけれども、今までの答弁を聞いていますと、中身は、ああいう意見もある、こういう意見もある、こういう考え方もあるというだけの話であって、具体体的なものは何もないわけですね。少なくとも三師会という三団体の会長さんと党の副総裁と党の役員が列席して決められたことですから、したがって、これは、総体としてそういう中身についてはまだ定かなものはありませんというなら、それはそれではっきりすればいいじゃないですか。
  197. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 先ほど申し上げましたように、給付と負担の全国民的見地に立った公平化という考えから、できるだけ早い機会にこれを統合するという大方針をまず確立して、それに向かっていろいろ努力してその統合に向かって今後努力していく、そういうことは非常に大事なことではないかと思うのであります。そういう意味におきまして、じゃどういうふうに統合していくかという問題は、今申し上げましたように、地域保険の問題もあればあるいは職域の問題もあれば、さまざまな複雑な問題があります。その統合という場合に、じゃ一つの単一国家みたいにエンパイアみたいなものをつくるのか、あるいは連合国家、ユナイテッドステーツみたいにするのか、その間の財政調整をどういうふうにするのか、いろいろな問題がまだあるわけでございます。しかし、そういう問題は、これから今後、いろいろ実施の経過等も見つつ、詰めていかなければならぬ。しかし、統合ということは、これは社会正義的に見ても、公平感の上からもやるべき方向であるという大筋ははっきりめどをつけまして、これから努力していく、そういう意味で申し上げておるのでございます。
  198. 村山富市

    ○村山(富)委員 ますますわからぬことになるのだけれども、今八つある制度を一本にするという考え方もあるし、それからまた、被用者保険と地域保険と二本立てにするという考え方もあったし、そうじゃなくて、制度は分離しているけれども財政調整だけを行いながらできるだけ公平な給付をしていくようなものにしていきたいという考え方もあるので、あなたは統合という言葉を盛んに使われるのですよ。その統合というのは何を意味するのですか。
  199. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 先ほど来申し上げましたように、負担と給付の全国民的見地に立った公平、それを実現しよう、そういうことであります。じゃそれを具体的にどうするのかというと、いろいろ技術的な問題もございまして、これは今後努力して諦めていく。しかし、大方針はそういう方向に向かって決めて、これから努力していく、そういう意味なのでございます。
  200. 村山富市

    ○村山(富)委員 いずれにしても、そうしますと負担と給付を公平化する、そのために、よくわからぬのだけれども、統合させるという目標を定めて、いろいろな意見を聞きながら努力していきます、こういうことですね。そうすると、何かわからぬ目標を掲げておるけれども、今はまだ何にもありません、ここで言われる統合一元化という問題については、今あなたの答弁を聞く限りにおいては、中身は何も決まったものはありません、ということで確認していいですか。
  201. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 大方針をはっきり決めまして、そっちの方へ行くんだという方向を明示しまして、それで、じゃそっちへ行く方法について、厚生省を中心にしていろいろ調整をして、その大方針に向かって進む方向にこれを調整してもらう、そういう意味でございます。
  202. 村山富市

    ○村山(富)委員 もうこれに余り時間をとりたくないのだけれども、大方針を掲げて、こっちに行くという方向を決めて、そして厚生省で鋭意やってもらう。大方針を決めて二つちに行くというのはどっちの方向ですか。
  203. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 全国民的見地に立った負担と給付の公平、そういう方向に向かっていくということであります。
  204. 村山富市

    ○村山(富)委員 ひっきょうするに、中身は別に決まったものは何もありません、ただそういう漠然とした抽象的な目標を掲げているだけです、それまでの過程はいろいろありますから、その過程における中身はまだ何も決まったものはありませんということですね。それ以外にないじゃないですか。(発言する者あり)
  205. 渡部恒三

    渡部国務大臣 今総理から、一つの方向を定めて、その方向に向かって厚生省で努力しろということで、私どもいろいろ努力目標というものを立てておるものですから、お許しをいただければお答えさせていただきます。
  206. 村山富市

    ○村山(富)委員 いや、そういう答弁をここで言えばますますわからなくなる。これはやっぱり、さっきから幾ら聞いてみても、今は統合一元化するという決まった中身はありません、ただこういう目標だけは漠然と持っています、その持っている目標に向かってこれから何かまとめていきたいんです、そうするならば、今は統合一元化の中身の決まったものは何もありませんというふうに確認をしてもいいですか、こう言っているのですから、正直に言ったらいいじゃないですか。何遍言うたって同じことだ。
  207. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 自民党が考えておりまするのは、現在までのところ、国民健康保険もあるいは健康保険も大体八割に給付を統一しよう、そういう方向に向かってこれからいろいろ調整をしていく、そういうことで、まあ統合という中身の一端になりますけれども、その水準はそういう水準を目指していく、そういうことを意味しているのでございます。
  208. 村山富市

    ○村山(富)委員 それは、厚生省が将来給付水準を八割に統一していきたいという方向を示しただけですよ。ここで言うのは統合一元化ですよ。統合一元化というのは、やっぱり今ある保険制度を何らかの形で統合したい、統合して一元化したいという意味に解釈されるわけですね。そうでしょう。そういう中身についてはあるのですかないのですか、こう聞いているわけです。なければもらないでいいんですよ。あるとすれば、それはやっぱりはっきりしてもらわないとこの健保審議はできませんよ、こう言っているわけだから。どっちですか。中曽根内閣総理大臣 その点は、今申し上げましたように、八つもいろいろな保険制度があるわけでございますから、それをユナイテッドステーツみたいに、おのおの独立して州権を持っており仏がらしかも連邦政府みたいに調整するのか、あるいは一つのエンパイアみたいにするのか、まあこれは例え話でありますけれども、しかしこれは、今後社会党の皆さんやあるいは医師会やそのほかの皆さんの御意見もよく承って、非常に大事な問題でございますからじっくり案を練らしていただこう、こういう考えなのでございます。(「もう答弁したんだから…」と呼び、その他発言する者あり)
  209. 村山富市

    ○村山(富)委員 いやいや、その統合一元化という中身は、さっきから言っていますように、この法案とは重要な関連がありますからね。この健康保険がこういうふうに改正されたら将来統合一元化とどうつながっていくのか、一体保険制度はどうなっていくのかということがやっぱり重要な問題ですからね。だから私はだめ押しして聞いているのですよ。だから本来ならば、それはなければないと、これから研究していくのですと言うならそれでいいんですよ。だけれども、そう言えば、いかにも何かあるような、ないような答弁をするものですからね。そんならもっとはっきりしてもらわないと審議はできませんよ、こう言っているわけですけれども、これはもう同じ答えばかりですから、私は自分なりに、今の答弁を聞いてみて、中身は何もないんだなというふうに解釈をしておきます。そこで、時間が限られているものですから次へ移らしてもらいたいと思うのですが、第一次中曽根内閣が発足した当時、あなたは、この内閣は「仕事師内閣」だというふうに盛んに宣伝をされました。だれのために仕事をする内閣なのか、今もそのお考えは変わりはないかどうか、お尋ねいたします。
  210. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 同氏のために平和と繁栄のために一生懸命努力しよう、こういうわけでございます。
  211. 村山富市

    ○村山(富)委員 私は、今度の改正案を見る限りにおいては、一体、「仕事師内閣」というのは聞きようによっては「仕事をしない内閣」だというふうに聞こえぬでもないのですけれどもね。そういう内閣になってしまったのではないかという気がするわけですね。  と申しますのは、これからちょっとお尋ねしますけれども、今度の改正案を見る限りは、言うならば政府説明を聞いておりますと、医療費が膨らんでまいりますと、その膨らんだ医療費に対応して国の支出額がふえていく、負担がふえていく。したがって国の負担を減らすためにはやはり医療費全体を圧縮する必要がある、抑制する必要がある。これが一つですね。  もう一つは、医療費全体の伸びが国民所得の伸びを上回るような、傾向が続くと、将来、負担にたえ得なくなって保険制度そのものが崩壊する、こういうことを理由に挙げて、その医療費を抑制するために、医療費が膨らんでいく一つの大きな要因として十割給付がある、こういう説明をしているわけですよ。だから、十割給付に対して原則二割負担というものを導入することによって医療費の抑制を期待する、これが本音ですね。総理、どうですか。
  212. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 やはり考えておりますことは、医療制度の重点化、効率化、そういう点があると思います。それから、国民の皆様方からよく指摘されるいわゆる乱診乱療というものをできるだけ少なくしていこう。そういうことによって充実した医療制度をつくっていこう。そこで、国民健康保険と一般の健康保険との間の落差というものをできるだけ早く埋めたい。国民の一般の皆さんは三割自己負担している、片方は今一銭も負担していない、原則的に。そういうような点をできるだけ早目に、八割という点で将来は統一してやっていきたい。そういう目標をつくりまして、一歩一歩やっていこうというその一つの過程で成ると思うのであります。そういう意味におきましては、重点化、効率化、そういう目標に向かってやっていると御理解いただきたいと思います。
  213. 村山富市

    ○村山(富)委員 いやいや、私がお尋ねしたのは、そういう背景と理由で、被用者保険の十割給付に対して八割給付にしたいという考えに、変わりありませんかと聞いているわけです。
  214. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 今申し上げましたように、重点化と効率化という考えに立ってやっておるのであります。効率化という中にはむだな医療費の排除、こういう点もあります。それは乱診乱療問題、今申し上げました。
  215. 村山富市

    ○村山(富)委員 十割給付をしていることが過剰診療や薬づけ、検査づけの要因になっておる、こういう説明もあるわけですけれども、私は公聴会のときにも申し上げたのですが、患者の側からすれば、私のこの疾病に対して、病状に対して、どの程度の治療を受ければいいのか、どの程度の薬を服用すればいいのか、どの程度の検査が必要なのか、これは患者にはわからぬわけですよ。これは診療する側の診察と判断によって行われるわけですね。ですから、過剰診療が行われておるのか、薬づけなのか、検査づけなのかということが患者自体には何もわからぬわけですよ。その何もわからない患者に負担を押しつけることによって医療費の抑制を図っていこうというのは、主客転倒じゃないですか。どうですか。
  216. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 確かに医療給付の内容あるいは大きさというようなものはお医者さんが専門的にお考えになることであると思います。しかし、また一面において、患者さんの方では、自分はどういう病気なんだろうか、一体幾らかかったんだろうか、そういう知る権利もあると思うのです。そういう点の調和点がこういうところに出てきているのではないかと思います。
  217. 村山富市

    ○村山(富)委員 患者の方にも、かかった病気の内容やら、あるいはどの程度の医療費がかかったのかというコスト等について知る権利もあるし、知ってもらう必要があると言うんですね。それなら何も二割負担をかけなくたって、極端に言えば一%でもいいじゃないですか。わかりますよ、一%でも。同時に、医療機関が領収書の発行をするなりそういう意味説明をすればわかることですよ。そのために二割も負担を取るなんということはおかしいじゃないですか。どうですか。
  218. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 これは負担の公平とさっきは申し上げまして、全国民的見地においてそれをやっていこう、それから制度を永続的に安定的に維持していかなければいけない、我々のときだけではなくて次の世代に至るまでも永続的に維持していかなければならない、そういうような考えにも立ちまして、申し上げた制度を行っているわけであります。
  219. 村山富市

    ○村山(富)委員 私は、やはり医療制度というものに対する、あるいは保険制度というものに対する考え方の認識が大分違うと思うのですね。かつて厚生大臣はこう言ったんですよ、比較的恵まれているサラリーマンにこの際我慢をしていただきたいと。サラリーマンと一口に言ったって、いろいろな階層があるわけでしょう。総理は、自分の健康は自分で守る必要がある、そのためには水泳が一番いいとか言って、何か水泳をされているそうだけれども、ところが、水泳やらテニスやらあるいはゴルフやら、そういう自分の体は自分で守るということがやれるというのは、やはり精神的にも物質的にもゆとりと余裕がなければできないんですよ。ところが、大部分のサラリーマンというのはそんな余裕はないんですよ。そういう人たちの立場というものを考えて社会保障というものを考える必要があるし、医療保険というものを考える必要がある。  この間、ここで公聴会をやりましたけれども、難病の患者を抱えている家族の方が、難病患者を抱えてどこの病院へ行っても断われて、ようやく公的医療機関に収容してもらった。ここは基準看護病院だから付き添いは要らないはずなんですよ。だけれども、やはり人手が足りないから相当な金を払って付き添いをしている。私は弁護士をしているから、収入があるからこれでいいのですけれども、そうでなくて困っている患者さんがたくさんおります、今の医療はそうした国民に対してどうこたえてくれるのですかと。ここが医療保険を考えていく原点ではないかというふうに私は思うのですよ。  そういう現状を考えた場合に、まあ比較的恵まれているから、サラリーマンに我慢してもらえばいいとかいうような考え方ではなくて、やはり国民の命と健康については国が責任を持ってやりますというような意味では、せっかく今まで守り続けてきたわけですから、むしろ低いところを上げてそして負担の公平を図っていく、こういう考え方に立って努力をすることが、同氏のために「仕事師内閣」が仕事をすることではないですか。どうですか。
  220. 渡部恒三

    渡部国務大臣 今お話しのありました恵まれたサラリーマンという話は、サラリーマンの方が全体の階川の中で恵まれているという意味ではございません。今の健康保険制度の中で給付条件がサラリーマン保険、被用者保険が一番恵まれているという意味で、今先生お話しのように、十制給付の被用者保険、一番低い七割給付の国保というものがあるわけですから、そこで国民的にはなるべくは将来国民皆さんが同じような給付条件を受けることが望ましいということでは一致しているわけでありますから、それを今回恵まれた条件の十割給付の方が一割負担になって九割に、また将来、先生方の強い御要望のありましたように、国保の一番恵まれていないと割の方をさらに八割に引き上げていこうということで、私どもは、戦後三十九年の間、国民の健康を守り、またこれから二十一世紀に向かって国民の健康を守っていかなければならないこの保険制度をよりしっかりしたものにするために、一番恵まれた条件のサラリーマン保険の皆さん方に一割の御負担をお願いしたい、将来は二割の御負担をお願いしたいということでございます。
  221. 村山富市

    ○村山(富)委員 健康保険の十割給付を議論するときに、ことさら国民健康保険の七割給付を出して、そしていかにも十割給付が恵まれているというような印象を与えるような発言をされることは、私は間違いだと思いますよ。なるほど国民健康保険は僕らに訴えていますよ、私どもは七割給付です、家の働き手が倒れたら所得もなくなります、しかも出費もかさんできます、どうしてくれるんですかという意見もありますよ。そういう人たちにこたえるためには、積極的に七割給付を上げていくという努力をすべきじゃないですか。それをいかにも、国民健康保険はこうです、だからこっちの層は恵まれているんだからまあ我慢して下げてもいいじゃないですかというような印象を与えるような説明というのは、私は間違っていると思いますよ。そのことは指摘しておきます。そこで、なるほど医療費が無制限に膨らんでいくということは決していいことではありませんから、やはり抑制しなければならぬと思うのですよ。これは同じです。ただ、抑制する方法が、さっきから言っていますように、何の責任もない患者に負担を押しつけて、そして医療費を抑制するという考え方は間違いではないか。そうではなくて、本気になって皆さんが考えるならもっと医療費を抑制する方法はあると思う。第一、よく言われますように、今の疾病構造というのは、老齢化社会を迎えて大分疾病構造が変わっていますね。慢性病がふえています。老人病かふえています。そういう症状に対しては、何よりも大事なのは、平素の健康管理と健康指導、健康相談ですよ。そういう仕事は今どこがしているのですか。
  222. 渡部恒三

    渡部国務大臣 今度、先生御承知のように、厚生省も医務局を健康政策局と改めて、国民の健康を守るために大いに頑張ろうという意欲を持って、今度の五十九年度予算も、大変厳しいときでありましたけれども、健康を守るためには大蔵省にも頑張ってもらいたいということで、老人保健事業、四十歳の方から、これからもできるだけ長生きして元気に頑張っていただくように、これから国民すべての皆さんに健康診断をしていただくとか、こういう事業を下部組織では、保健所等を通じてこれからも積極的に進めてまいりたいということでございます。
  223. 村山富市

    ○村山(富)委員 今申し上げましたような活動を地域でやるのは、やはり保健所やらあるいは市町村の健康保健センターとか、そういうところがやると思うのです。ところが、現実の状況を見ていますと、もう保健所なんかはほとんど形骸化してしまって、往年の活動をするようなものになっていませんよ。それはかつて結核撲滅運動を保健所が中心になってやってきましたよ。大きな成果を上げていますよ。そういう保健所の活動を期待する、あるいはあなたが今言われましたように老人保健制度をつくって四十歳以上の方々の保健活動を実施する。しかし現実に保健活動をやる主体は市町村でしょう。その市町村がその活動にどの程度の人員と金を使っていますか。現にまだ町村では保健婦さえいない町村があるじゃないですか。それでもってそれをやっていると言えるのですか。どうですか。
  224. 渡部恒三

    渡部国務大臣 確かに御指摘のように、保健所がかつては伝染病退治あるいは結核の撲滅に非常に大きな積極的な役割を果たしておったのでありますが、伝染病の撲滅あるいは結核の撲滅、非常に進んでまいりまして、一時停滞した嫌いがなかったとは言えませんけれども、今先生御心配の、今度はいわゆる国民の健康を守る老人保健事業、これを大きな保健所の任務ということで、今張り切ってその方に頑張ろうということになっておりますし、また市町村もこれと並行して、今先生御心配のようにまだ残念ながら保健婦の配置されてない町村というのもないわけではありませんが、そういうものを解消するための事業、こういうものは来年度も、総理の御理解を得、大蔵省の理解を得て積極的に進めてまいりたいと思っております。
  225. 村山富市

    ○村山(富)委員 総体的に言えば、一番大事なことは、やはり予防やら何かを充実さして病人をつくらないということが、医療費抑制の一番大きな前提じゃないですか。それをやはり真剣にやるということが一つですよ。もう一つは、今の診療報酬の支払い方式というのは点数出来高払いですから、医療効果がどうあったかということよりも量の方が問われるわけですよ。だから、疾病構造がこんなに変わっていろいろ国民生活の様態も変わってきているわけですから、そういう変わったものに対応して十分医療効果が発揮されるような診療報酬というものをやはり考えてもいいのではないか。だから、やはり一つは、診療報酬の仕組みを変えていかなければいかぬ。今の診療報酬の仕組みでは、まあ平たく言えば、悪貨が良貨を駆逐するような仕組みになっておると言われてもやむを得ないという面がある。そういう点をやはり是正する考えがあるかどうか。どうですか。
  226. 渡部恒三

    渡部国務大臣 御指摘のように、立派なお医者さん、まじめなお医者さん、これが報いられて積極的に仕事ができるような、そういう医療体制をつくるために、私どもは二十一世紀を目指すビジョンを発表しておりますが、そういうふうに努めてまいりたいと思います。
  227. 村山富市

    ○村山(富)委員 きょうはせっかく総理が見えているから、総理が答えなければいかぬ。それで三番目は、やはり検査づけ、薬づけと言われる、例えば富士見病院の例があります。それは今日本でCTというのですか、こういう器械なんかが購入されている数というのは、もうアメリカを抜いて世界で一番だと言われていますね。ですから、必要以上にそういう高額医療機器というものが病院で使われておる。やはりそれが必然的に過剰な検査づけの原因をつくっているということにもなりかねない。富士見病院なんかが端的な例だと思いますけれども。ですから、薬づけとか検査づけというようなものをなくしていくためには、患者に定率負担をさせることによってなくしていくというのではなくて、むしろ薬の使われ方、検査医療器械の使われ方等をもっと公的にコントロールして効率的に使えるような、言うならば医療費のむだをなくしていく、そういう努力をすることも大事ではないかというように思いますが、どうですか、総理。
  228. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 その点は同感でございます。特にまた医学は日進月歩でございまして、非常にハイテクを使った検査機器等も生まれてきておるし、また病気の種類や性格も、医学の発達によってだんだん究明されて、非常に多様化しまた深度を増してきておる、こういう状況でございますから、それに適合したような医療体系に漸進していく必要がある。特に医師の技術性とかあるいは専門性というものについてよく認識を深めた医療体系というものが好ましいと考えております。
  229. 村山富市

    ○村山(富)委員 いろいろ挙げればたくさんあると思いますけれども、少なくとも、今私が申し上げましたような点にもっと重点的に、真剣に取り組んで、本気になってやれば、やはり相当の医療費の抑制になるのではないか。それはもう沢内村なんかいい例です。そういうものを真剣に取り組んでやって、なおかつ医療費国民所得を上回って伸びていく、こういう状況であるならば、それは皆さん考えるでしょう。しかし、そういう努力は余りやらずに、そして患者だけに、あるいは被保険者だけに負担を強要していくという考え方は、どう考えてみても主客転倒で間違いではないかと思いますが、その点総理にもう一回お尋ねします。
  230. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 今回の法案提出の趣旨は、さっき申し上げましたような全国民的な給付並びに負担の公平化ということを考え、かつ、医療の重点化、効率化というものを考えておるわけです。それに、退職者医療制度というものを創設してサラリーマンの退職後の面倒を見さしていただく、それらの財源をどうして得るかというような面も考えた改正なのでございまして、一番の中心点は、やはり将来を目指して全国民的な医療負担及び給付の公平化、そして先ほど申し上げましたような統合と申しますか公平化と申しますか、端的に申し上げれば、例えば国民健康保険と今の健康保険との落差を是正する、そういうようなものも考えて、将来をにらみつつやっておるということを申し上げる次第であります。
  231. 村山富市

    ○村山(富)委員 これはもうかみ合わぬからだめですけれども、私が言っているのは、今度の改正案の背景というものがこういうものであるとするならば、その医療費を抑制するためには、何も患者に負担を強要して押しつけて、そしてどうこうするという考えじゃなくて、それ以前にやはり行政としてすべきことがあるではないか、それを真剣にやれば、そんなことをしなくたって医療費の抑制はできる、こう私は言っているわけですから、それはこれから真剣に、考えてもらいたいと思うのです。  私が今言っていること、わかりますか。それでは、そういう周辺部の条件整備をしていく、そういうものにひとつ本気になって、来年度予算も組んで充実するということを答弁しなさいよ、やる意思があるかどうか。
  232. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 来年度予算の問題はまだ着手しておりませんので、御意見はよく頭に入れて考えてみたいと思います。
  233. 村山富市

    ○村山(富)委員 少なくとも、今私が言った意見にあなたは同意をされたわけですから、力を入れてやる決意だと、それはいいですか。
  234. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 大いに参考として検討してみたいと思います。
  235. 村山富市

    ○村山(富)委員 もう時間が余りありませんから次に移りますけれども、総理の言葉から退職者医療制度が出ましたね。今度の退職者医療制度というのはだれの金でつくるのですか。
  236. 渡部恒三

    渡部国務大臣 幾たびか申し上げましたように、世代間の公平というのも今回の一つの大きな改革案でありまして、これは被用者保険の加入の皆さん方が、現役のときは十割給付でありましたりれども、会社をやめたり役所をやめたりしますと国保に入って、会社をやめて暮らしが容易でなくなって病院通いの多くなるときに急に七割給付に落ちてしまう、これは大変矛盾だということで、今回は後輩の皆さん方の支えによって、先輩を支えるための退職者、OBの医療をつくったわけでありますから、これは後輩の被用者保険加入者の皆さん方に支えていただく、こういうことでございます。
  237. 村山富市

    ○村山(富)委員 ちょっと総理にお尋ねしますけれども、保険主義というのは、保険料を負担する人と給付を受ける人が同じですね。そしてお互いに保険料を納め合って、みんなで相互扶助で給付を受け合うというのが保険主強ですね。退職者医療制度というのは、給付を受ける人と保険料を負担する人が違うのですよ。これは保険主義の観点に立ってどういうふうに思いますか。
  238. 渡部恒三

    渡部国務大臣 保険制度はいろいろあると思いますが、これは連帯、お互いに助け合うということでもありますし、また、先ほど申し上げましたように所得再配分的な意味もありますし、今回の退職者医療のように、現役の皆さん方が今まで長い間働いてきた先輩の皆さん方を支えてあげる、これも大きな福祉の理想の一つであろうと私は考えております。
  239. 村山富市

    ○村山(富)委員 後輩が先輩のために協力する、そうすると、老人保健制度というのはやはり国民全体の先輩を国民全体で支えていこうという仕組みでしょう、同じでしょう。そうすると、その保険制度の中では、老人保健制度も退職者医療保険制度も同じような考え方でつくられていますね。どうですか。
  240. 渡部恒三

    渡部国務大臣 広い意味ではそういう御意見もあるかもしれませんが、今回の場合は被用者保険という中で、これは今までも先生方から御指摘を賜っておりましたように、会社を退職して、役所を退職して国保に入って給付率が非常に低くなるということで、その先輩の皆さん方を、国民全体の視野ではなくて、被用者保険の中で後輩の皆さん方に支えていただこう。幸い、現在の被用者保険の財政状態は、皆さん方の御努力の結果、退職者医療を支えていただける財政力があるということで、今回こういうものをつくったわけでございます。
  241. 村山富市

    ○村山(富)委員 財政力があるとかないとかいうことではなくて、私がさっき言ったのは、保険主義というのはそういうものじゃないですかと。そうすると、退職者医療保険制度というのは保険料を負担する人と給付を受ける人が違うのです。これは後輩が先輩の面倒を見ましょうというのでつくったんだと。そうすれば、もっと広い意味で、老人保健制度も保険料を負担する人と給付を受ける人が違うのですよ。だけれども、これは国民全体がお年寄りの面倒を見ましょうということでつくっている制度ですから、考え方としては同じですねとこう聞いているわけですよ。同じようなものだと思うのです。  ところが、老人保健制度は三割は公費負担です。二割が国庫、一割が県や市町村。ところがこの退職者医療保険制度は何もないのです。全部現役の組合員、それから使用者の負担によって賄うのです。国は金を一銭も出しませんよ。これでは退職者医療保険制度のつくられた建前からしておかしいのではないか。むしろ公的な保険ですから国も応分の負担をする。少なくとも事務費ぐらいは面倒を見て、そして公的に責任を持つという制度にすべきではないかと私は思うのですが、この点総理、どうですか。
  242. 渡部恒三

    渡部国務大臣 退職者医療先生御承知のように国保の窓口をお借りしますけれども、これは被用者保険の体系の中に入るわけですから。被用者保険の財政は幸いにしてこの退職者医療を支えていただくことができる。私は、社会保険というものは本来はやはり加入者の負担によって全部賄えれば最も望ましい姿である。しかし、現実には、国保というようなものは、社会的な変化が一次産業から二次産業にどんどん移って、非常に所得が低い人が余計になってこれは貯えないために、国が財政を投入しておりますし、またかつては政府管掌保険等にも財政を投入したわけであります。政府管掌保険も幸いにして今では政府から財政投入をしないでもおかげさまでできるようになりました。これは、政府から財政負担をする必要のないところには、しないで済むならそれは最も望ましいので、政府のお金でも国民の税金なんでありますから、どうしてもそれを投入しなければ保険制度を維持できないものにはやはり国民医療等を守る政府の責任でやらなければなりませんけれども、やらないで済むものは出さないということは御了承いただきたいと思います。
  243. 村山富市

    ○村山(富)委員 いや、出さなくて済むのはというのではないのですよ。それは、そういう制度をつくればいや応なしに金を取られるわけですから。だから、私はもう時間がありませんからこれ以上言いませんけれども、老人保健制度あるいは退職者医療保険制度というものが同じような理念でもってつくられたものであるとするならば、これにも国庫の若干の負担ぐらいは、応分の負担ぐらいは当然すべきだ、そして公に責任を持つという姿勢を示すべきだというように思いますから、この点は強く指摘をしておきます。  それから、もう時間がありませんから最後にお尋ねしたいと思うのですが、最近、来年度予算の編成をめぐってシーリングの議論が活発になされております。自民党の中にも「金丸総務会長、藤尾政調会長がシーリング緩和の方針を打ち出し、田中幹事長はゼロ・シーリング堅持、中曽根竹相はマイナス・シーリング継続の意向を明らかにするなど考え方はマチマチである。」、こういろいろいろなことが、言われているわけですが、ここで言われていますように、中曽根総理はマイナスシーリングという立場を堅持する方針ですか。どういう考えなんですか、お聞きしたいと思います。
  244. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 来年度予算の編成については、まだ全然着手しておりませんので、今何とも言える状態ではないのでございますが、今まで政府がやってきた基本線は堅持していきたいと思います。  すなわち、臨時行政調査会の方針を尊重してこれを行う、それから「増税なき財政再建」の理念を守っていく、それから昭和六十五年までに赤字公債依存体質から脱却する、こういう三つの軌道を自分で設定しておりますが、この軌道の上に立った予算編成を効率的に行っていきたい、そう考えております。
  245. 村山富市

    ○村山(富)委員 もう時間がありませんから端的にお尋ねしますが、五十九年度予算では、医療・保健も含めて社会福祉等々が六千九百億円ほど国庫支出が削減されておるわけですね。これは年金にしても医療にしても老人はふえていくし、社会保障、福祉関係なんというものは当然増、自然増がいや応なしにふえていくのですね。したがって、それを計算した場合に、これ以上そういうものの予算を切り込んできて削減されることについては、水準の大きな後退を招く。ですから、仮に来年度予算の編成について、マイナスシーリングで編成されようとゼロシーリングで編成されようと、社会保障費や社会福祉医療・保健費等々についてはこれ以上の切り込みはしませんと言えますか。
  246. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 社会福祉というものは、我々も非常に大事であると思っております。問題は、いかに効率的に、重点的にやるかというやり方の見解の差であると私は思っております。  来年度予算編成に当たりましては、そのような見地に立って、やはり社会福祉というものを大事にして、できるだけ努力してまいりたいと思っております。
  247. 村山富市

    ○村山(富)委員 先ほど退職者医療保険制度の例を申しましたけれども、そういう新しい制度をこしらえても、国は金を一銭も出さずに、それぞれの関係者の負担でもって賄っていく。これは端的は例ですよ。端的な例だけれども、今後もだんだんこういう保険制度に対して国の負担が減らされていって、将来は保険主強に徹底して、お互いの力でやりなさいということになっていくのではないかという不安を持っていますよ、皆さんは。これは退職者医療保険制度に端的にあらわれているわけです。ですから、将来に向かっても社会保険や社会福祉費やそういうものについては今の水準は落とさないように、国も責任を持って負担をしていきます、面倒を見ていきますという考えがあるかどうか。将来に向けてですよ、その点をはっきりしてください。
  248. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 将来に向けての問題では、ただいまおっしゃいましたように二割負担、八割給付というものを頭に置いて一生懸命努力していきたいと思っております。  一般的に申し上げ得ますことは、やはり効率化、重点化ということがあり得ると思うのであります。それから、医療の機器あるいは診療精度の発展に応じた対応力もまた持っていなければならないし、患者さんの多様なニーズに合うような医療体系というものを考えていかなければならぬだろう、そう思いまして、日進月歩の医療に即応できるような医療制度というものを考える必要があると考えております。
  249. 村山富市

    ○村山(富)委員 時間が参りましたから、最後に要望だけしておきます。今、三十歳以上ぐらいの人は、自分の将来の単活設計に非常に不安を持っていますよ。一体年金はどうなっていくのか、国民年金なんかは将来掛金だけ高くなって、もらえなくなるのではないかという不安を持っていますよ。さっきも指摘がありましたけれども医療保険はだんだん自由診療の分野が拡大されて、公的に保障される保険分野が狭められていくのではないかと不安を持っていますよ。だから、将来の不安に備えて、生活を犠牲にして貯蓄する。日本は貯蓄は非常に盛んな国になっている。私は、やはり政府が、もっとそういう人たちに、将来の年金はこうなります、将来の医療はこうします、社会福祉はこうなりますという目標を示して、少なくとも将来に向けて不安のないような生活設計ができるようなものをしっかり示すということが必要ではないかと思いますので、そういう方向を打ち出してもらうように強く要請をして、私の質問を終わります。
  250. 有馬元治

  251. 平石磨作太郎

    ○平石委員 時間が大変少のうございまして、総理のお答えは、大体簡潔でありますが、さらに簡潔にお答えをいただきたいと思います。  そこで、お尋ねをいたしますが、先ほどからも大変論議になっておりましたが、今回の医療保険の改正に当たりましては、私は前々から申し上げておるのでありますけれども、大きな骨が三つあった。それは、国庫負担の削減ということ、もう一つは自己負担の増大ということ、もう一つは給付の引き下げということです。したがって、この三つの柱によって今回の改正案が出てきておる。これは、私は少なくとも、先ほどの御答弁をお伺いをいたしておりますと、給付と負担の公平、こういうことで国民が等しくその受給にあずかるといったようなお話がございました。  そこで、この医療保険の改正に当たっては、まず五十九年度予算の編成のシーリングにおいて六千二百七十六億という自主シーリング、それが医療保険にそのままかかってきた。そして、医療保険にかかってきた国庫負担の減額は市町村の行う国民健康保険にほとんどそのままかかってくる、こういうことでございます。御案内のとおり、国民健康保険の方々は無職の人が一四%おります。そして、高齢になって退職をされた方がいらっしゃいます。そして自営業者の方々、さらには農民の方、漁民の方々、こういったいわば非常に低階層の方々です。そういう方々の中から四千二十三億円という予算減額を行ったということは、少なくとも公平な負担、公平な給付を行おうとする政府の施策に逆行することではなかろうかと私は思います。簡単にお答えをいただきたいと思います。
  252. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 今回の制度改正は、先ほど来申し上げましたように、全国民的見地に立った負担と給付の公平化あるいは効率化、重点化ということを目指しまして、制度の改正を心がけでおるものであります。特に、できるだけ近い将来に保険関係を八割給付に統合したい、そういう目標の第一歩としてこのような制度に一歩踏み出したということで、将来における国民的な公平を実現するその八割というものを目標にして、それは大体国民健康保険が頭にあるわけですから、今の七割給付を八割まで持っていきたい。そういうことを念頭に置いて、今のような調整措置を講じているというふうにお考え願えれば幸いでございます。
  253. 平石磨作太郎

    ○平石委員 納得はいきませんが、時間がございませんので次に参ります。  そこで私は、ちょっと総理にお伺いをいたしますが、来年度、それから将来を含めてお考えをお聞きしておきたいと思います。  お医者さんが治療行為を行う、投薬をする、注射をする、これは一方では経済行為であると思うのですが、どうでしょうか。
  254. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 医療行為という中には経済性も含まれると思います。
  255. 平石磨作太郎

    ○平石委員 そこで、この経済性の問題でございますが、これからのシーリングを考えたときに、お金が足らなくなってきたということは現実の事案です。そうなりますと、限られたお金をどのように配分をし、そしてどのように国民福祉を守っていくかというのが政治、行政のこれからの大きな重要な課題だと私は思うわけです。そういう立場から考えてみたときに、総理の最前のお答えの中に、今後は一応の基本線として行革に対する臨調の答申、こういったものを踏まえながら六十年度予算編成もやっていく、こういうお答えがございました。  そこでお尋ねをするわけでございますが、私はこれからの日本の社会を考えたときに、少なくともこの予算配分においてあるいは予算編成の上において最も私たちが頭を痛めて慎んでいかねばならないことは、世の中にはいろいろな人がいらっしゃいます。だが、そこで、よく総理は日本的福祉社会とかいうことをおっしゃいます。日本的福祉社会というのは一体何なのですか、このことをひとつお聞きしておきたいと思います。
  256. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 一言でその特色を言えといえば、やはり連帯感というものを中心にして、在宅福祉というものを相当重要視した福祉政策というものを考えるわけでございます。
  257. 平石磨作太郎

    ○平石委員 そこで、私はちょっと申し上げておきたいのですが、日本的福祉とか「活力ある福祉社会」、こういうことをよく総理もおっしゃいます。そこで、「活力ある福祉社会」ということについて経過を勉強させてもらいますと、昭和四十八年当時、佐藤総理は、福祉なくして成長なし、こうおっしゃった。したがって、成長をするためには福祉がなければ成長できない。このように「福祉元年」と言われたときに経済社会基本計画が出されておりますが、このときの「活力ある福祉社会」というのは、国民福祉を指向し、教育、社会保障を充実し、国民の生活に安定とゆとりを約束する社会だ、こう規定づけられておるわけです。ところが、五十六年の臨調の第一次答申、これで見てみますと、同じ「活力ある福祉社会」というものが非常に意味が変わってきた。日本的福祉とかいったようなことで、このときの考え方を見てみますと、意味内容が非常に違って、「活力ある福祉社会」の建設のため必要とされた社会保障や教育は、財政赤字拡大の要因であるというように非常に性格が変わってきました。私はここに問題点がある。第三次答申を見てみましてもそのことがうかがえるわけです。  ここにこう書いてあります。「我が国経済は、昭和四十年代半ば」、中略いたしまして「その低下はとりわけ急激となった。しかも、公共事業費の増加や社会保障制度の充実が同じ時期に急速に試みられたために、財政赤字が構造化し、財政再建のための早急な対応を迫られている。」したがって財政再建の大きな阻害要因になった、このように非常に逆な感じになっておるわけです。この点はいかがでしょうか。
  258. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 その点は、時代の流れの差という時代の位置づけの差があると思うのです。佐藤さんのときは、確かに福祉なくして成長なしという考えで、高度成長をずっと続けたときでございますから、かなり無限の希望性を持っておられた時代であったと思います。しかし、その後二度の石油危機を経まして、各国とも財政が非常に苦しくなり、特にヨーロッパにおきましては英国病であるとかドイツ病であるとか、そういうことが指摘されまして、乱診乱療的な福祉というようなものは非常に警戒され始めてきた。臨調ができましたときは、まさにそういう二度の石油危機を経て非常に苦しくなってきた時代に、ヨーロッパのドイツ病とか英国病というものを見ながら、その轍を踏むまいぞという意識があったと私は思います。そういう意味において、今御指摘の点はそういう性格であると私も認めざるを得ないと思います。  ただ政府当局といたしましては、やはり福祉というものは、国民皆さんが生活をしていく上に、安心あるいは安定の源泉になると私は思っておるのであります。そういう意味において福祉というものはやはり非常に大事な政治の原点の一つだ、そう考えておりまして、その点おろそかにしようとは思いません。
  259. 平石磨作太郎

    ○平石委員 そこで、今の御答弁を聞きましても、充実すべきものから抑制すべきものに変わってきた、こういったように受け取れるわけでありますが、先ほど私が申し上げました福祉の原資というもの、これはお医者さんが治療行為を行うことは一方で経済行為なんです。したがって、医療産業と言われる中には十四兆から十五兆円といういわば大きな金が動いておるわけです。しかもこれは経済を動かす大きな原資になっておるはずですよ。したがって私は、福祉充実というものが財政再建、経済再建の活力を阻害するものである、こう一概に規定することには賛成しかねる。したがって、同じく公共事業費として投資するように、医療におきましても十何兆円、年金におきましても十何兆日、合わせて二十七、八兆、三十兆円というお金です。これは日本の総生産の一割以上、このお金がやはり経済を動かす大きな原資となって動いておるはずである。こう考えたときに、今総理のおっしゃること、しかも日本の活力を阻害してはなりません、これは私も同感です。だが、これは活力をむしろつけていく大きな必要な財源です。そしてこれには、やはりあの財投のお金にしましても、全国の零細な方々が集めたお金が大きく財投資金として活用されておる、四十兆円。私はこの姿を見たときに、厚生省予算を、社会保障をそういう形に追い込んで、決して社会の安定も出てこない。活力というのは一概に経済活力のみではありません。お考えをいただきたい。
  260. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 福祉というものは生活の安心あるいは安定の原点であり、活力の源泉であると申し上げました点は、私はこれを確信しておる次第でございます。しかし、そういう活力を国民の各層にわたって普遍的に及ぼしていくという面から見ますと、やはり国民健康保険の七割給付と普通の今の健康保険の十割給付というものの差があるのを、国民健康保険国民一般の皆さんに活力を与えるというためにこれを八割まで上げる。これはやはり活力の源泉である。あるいは退職者にいたしましても、退職したらがくっと三割自己負担しなければならない。そういうような活力を阻害する要因をできるだけ防いであげるような制度にする。そういうような面において、国民全体が負担と給付の公平感を得るような方向に持っていくということが、ある意味においては活力を維持していく大事な要素に今日の時点においてなってきている、そう思っておるわけであります。
  261. 平石磨作太郎

    ○平石委員 その点は私も総理と同感です。昔の考え方というのはやはり自立自助、戦前に回帰するような形で自立自助のみを求めていく形では、社会保障はだんだんと低下していきます。だが、今の時代というのは、昔のいわゆる農業化社会と言われておったような当時は、非常に農村の懐が大きかった。だから、逆境に陥ったときも貧困に陥ったときも、これを吸収するだけのものが私はあったと思う。ところが、今のような雇用者社会といいますか工業化社会といいますか、そういう時代になりますと、社会保障というものがそこにないと活力が出てこないわけです。だから、昔は自立ができなかった人を連帯で救おう、こういう思想が私はあったと思います。今は連帯の中で自立をしていくということを基本にお考えいただきたい。そうしないと、予算編成に当たって、予算トータルの中で約二割近いこの予算というものにどうしても総理の目は行くわけであります。ここを減殺することが少なくとも財政百姓の大きな柱だ、こういう考え方大蔵省もすべてがその面に目を向けますと、社会保障はだんだんと落ち込んでいく。この点を私は総理がしかと胸におさめていただきたいと思う。  そして、この間ちょっと新聞で見ましたが、行革審小委員会予算編成に当たって、来年度予算シーリングに当たって、社会保障関係では臨調答申の自助努力路線を推進する、こんなふうに言われておる。そしてさらに、生活保護の不正受給防止徹底や、これはいいでしょう。児童手当制度の抜本見直し、こういったさらにさらに福祉に対する制度切り込み、そして福祉の低下。私は、厚生省予算というのは国民の生活費であり、生活関連費だと思うのです。その生活費であり生活関連費を、こういった自助努力、ただこの二つの文字で抑え込んでしまうことが財政再建の至上課題であるというような認識は改めてほしい。  そういう意味で、今後来年度予算編成に当たってのシーリングにはどのように対応せられるか、基本線だけは守りますというこの基本線を私は指摘しておるわけであります。
  262. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 臨調答申を最大限に尊重するというのは、政府及び自民党が一致して今実行し、国民に公約している線でございまして、あくまでそれは守っていかなければならぬと思っております。  しかし、来年度予算の編成に関しましては、まだ全く着手しておらないのでございまして、行革審がどういう我々に対する意見を持ってくるか、それは注目しておるところです。いただきましたならばよく検討いたしまして、適当に我々が処理していく、そういう立場であるのでございます。
  263. 平石磨作太郎

    ○平石委員 そこで厚生大臣厚生大臣は、今の総理のお話を聞いて、来年度予算編成に当たって大変厳しさがまだまだあるのだろう、こうお感じになったと思うのです。五十九年度予算編成では、六千二百七十六億というマイナスシーリングにいわば押し切られて、苦肉の策としての考え方から医療保険制度に対するこういう制度の切り込み、そして給付の引き下げ、そして自己負担の増大、これをやらざるを得なかったというように感ずるわけですよ。間違いありませんか。
  264. 渡部恒三

    渡部国務大臣 これは何度か申し上げておりますように、今回の患者一部負担というものを柱にした健保法の改正は、患者の皆さん方に一割御負担をいただくことによって、健康に対する自己管理努力を一生懸命していただくとか、あるいは医療費の節減化、適正化を図っていくとか、いろいろの願いを込めておるものでございます。その中に、もちろん今日の厳しい財政の中で、今後毎年毎年増大する医療費に対して、今までのように国庫からお金を出していくような状態にないということも理由にございますけれども、それだけでもございませんで、幾つかの大きな課題、我々は願いを込めて今回の改革をお願いしておるのでございます。
  265. 平石磨作太郎

    ○平石委員 苦しい答弁ですが、そこで私は、厚生大臣と総理にお願いをし、これは全体として、私どもこういう仕事に携わっておる政治家として、一概に金をたくさん出したからいいんだというような短絡的な考え方はもう通用しない。したがって、今大臣のお言葉の中にありました効率化する、これはもちろんのこと、適正化していく。医療費の増大というものは大変な増大の仕方ですよ。だから、制度の切り込みをしてこれの抑え込みをするということよりも、まず適正化をする。これについては相当な努力がなされたということは政管健保等の数字の上にもあらわれておりますから、引き続き相当な決意でもってやってほしいと思うのです。  それから、将来のことを考えたときに、大蔵省財政再建、こういったことでただ防戦一方、何とか維持しよう、こういう形のその日暮らしの社会保障のあり方、考え方ではとても乗り切れないと私は思う。したがって、これからは少なくとも、社会保障というものは、今まではそれぞれの時のニーズに従って、要求に従って、そしていわば整合性のない、そう言ったら大変失礼でございますけれども、トータルとしての総論でない各論から出発をしてきた。この各論から出てきた社会保障というものを少なくとも総論をつくっていく、そしてその総論の中で、社会保障をめぐっておる厳しい情勢の中で将来の構図を書かなければならぬ。それは先ほど質問がございました。私もこれに触れたいのですけれども、もう時間がありませんから譲りますけれども、そういう一つの構図を書いて、必要なもののところへはぽんと金を出す。そして、これはもう行政目的、政治目的を達成したと思われるものについては、国民負担がかからないような形のものについては減額をしていく。やはりそこにこういう一つの将来の構図を描いて、そして財政審だ、やれこれだといったものと十分話し合いができるだけのものを厚生大臣は整えなければならぬ。だから防戦防戦という形でやると結局説得力のないものになる。説得力のあるものをつくるためには、そういったものを充実して財政当局にも当たってほしいと私は思うのです。いかがですか。
  266. 渡部恒三

    渡部国務大臣 今回五十九年度予算先生御承知のように九兆二千四百億、これは我が国の政策費の二八%前後であります。その中で医療費は三兆九千億、これはかなりの数字でございます。そこで、これ以上医療費の増大をさせるということには、今日の厳しい経済の状態財政状態の中で歯どめをかける必要があろうということで、改革案をお願いしておりますが、私がお預かりしておる厚生省予算全体で言いますと、社会保障、これは年金の問題にいたしましても、生活扶助の問題にしましても、あるいは身体障害者の問題にしましても、高齢化社会に伴い年々増大してまいりますし、まさしくこれは生活の予算でありますから、お金がないからことしは休んで来年というようなわけにまいらない、何が何でもお願いをしなければならない予算もございます。  そこで私どもは、国全体が「増税なき財政再建」という国民的な合意の方向の中で進路を決め、しかもかつての高度成長の時代、税収がどんどん上がるというような時代も当分ない、そういう条件の中で、やはりみずからの努力で、削れるものは思い切って削っていかなければならない、しかし必要なものは、国民生活の中で極めて大事な社会保障を預かる担当大臣として何としてもとらなければならない、こういうことで、今回三千数百万のサラリーマン保険加入の皆さん方に、今まで十割給付であったものを一割御負担をお願いすることによって、現在の加入者の皆さんの保険料率も上げないで、二十一世紀の医療制度を揺るぎないものにできるんだということでお願いしたわけでございますから、今回の改革案を成立させていただきましたならば、これは総理もちゃんと私どもの努力を知ってくれておると思いますので、来年度、社会保障の中で、国民生活を守るためにどうしても必要な予算は、総理にお願いしてつけていただかなければならないと思っております。
  267. 平石磨作太郎

    ○平石委員 そこで、総理に最後にお伺いをいたします。  今私が厚生大臣に申し上げた事柄、マイナスシーリングを一律に行うのも一つの手法でしょう。だが、一律に行うということは、今大変な時間とエネルギーをかけて審議をしてきたこの健康保険法、こんな結果になるわけですよ。継ぎはぎで来た社会保障というものを、整合性のあるものとして調整していかなければいかぬということはよくわかっております。そして、それには長期の展望に立った中で、一朝一夕にできることではありませんから、構図をつくりなさい、こう言っておる。その場合に、一律にやるんだということになると、こんなに大変な時間をかけて審議をしていかねばならない。こんなことでは国民の反対を私たちは説得できません。そういうことから考えたときに、一律にマイナスシーリングを行うのかどうなのか、この点を最後にお伺いをして終わります。
  268. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 今回の制度改正につきましては、厚生省皆さんも非常に御苦心なすって、退職者医療制度を創設する等々の配慮も、考えてみますと、涙を振るってやったんだ、よくやったと私は思います。そういう意味で努力を多といたしますが、福祉というものは、先ほど来申し上げますように国民生活にとっては活力の源泉であると私は考えておりまして、今平石先生おっしゃいました重点的な大事なものは出しなさい、もう要らなくなった不要なものはやめなさい、そういう取捨選択、選考性を持った重点的、効率的なやり方をやれというお考えには、私も全く同感であります。  しかし、基本的には、やはり福祉というものをあくまで尊重していくという基本線に立って、そして弾力性のある政策をやっていきたい、そのように考えております。
  269. 平石磨作太郎

    ○平石委員 以上で終わります。
  270. 有馬元治

    有馬委員長 小渕正義君。
  271. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 まず初めに、中曽根総理にお尋ねいたします。  このたびの健康保険法改正は、今日的には一番大きな国民の関心を呼んだ社会的問題になっていることは御承知のとおりでございます。国会の中でも四月初めから今日まで慎重審議議論をしているわけでありますが、まだ合意を見るに至らないというような、非常に各方面それぞれの立場からの意見がたくさんある、内容のある問題であるわけであります。そもそもこの問題がこのように発生した要因を考えますならば、総理は、昨年の暮れの衆議院の総選挙の中で、特に当時概算要求で、厚生省が五十九年度予算編成に際しまして、医療費の中で被用者本人二割負担という大筋を出して、非常に大きな問題を提起しておった状況の中にあったわけでありますが、そういう中で総理は、広く国民意見を聞きながら見直すということを実は当時公約されたわけでありましたけれども、残念ながらそれがそのまま実行されないままに予算編成、そういう形の中で二割負担、とりあえずの一割負担という今回の改正法案になって実は出てきておるわけであります。そういう点からいきますならば、広く国民意見を聞くという立場でもう少し物事を考えていただくならば、ようやく最近になりまして、自民党の中では、医師会とか歯科医師会とがそれぞれの関係者の意見を広く聞きながら、やっと合意を見るような状況、現象も一部出ておりますが、そういった手落ちがあったがために、今日これだけの大きな問題として実は紛糾をしているのではないか、私はかように考える次第であります。  したがいまして、総理としてはこの問題をどのようにお考えなのか。少なくとも私は、十二月に総理が、広く国民意見を聞きながら見直しますとお約束されたことに、国民は大きな期待を持っておったと思います。それが結果的にはそういった形がなされない中で、このような状態になったという意味での責任を総理としてはどうお感じになっておられるのかどうか、まずその点についての総理の御見解をお伺いいたします。
  272. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 昨年報道されましたいわゆる厚生省の試案というものに対しまして、自民党は選挙を通じてこれを見直すということを申し上げ、私も申し上げまして、いよいよ予算編成というときに至りまして、今回定案したような考え方自民党がまとまりました。かなり大きな変化があったと思うのであります。しかし、その後も、各党の御意見をよく承って、各党間の折衝も行い、あるいは公聴会とかあるいは関係団体の御意見も累次にわたってお聞きをし、特に野党皆さんのお考えもよく消化いたしまして、そして修正案を提示した次第なのでございまして、私はこれはやはり民主的手続として正しい道をたどっていると思います。  これだけの大問題でございますから、自民党一党だけでこれを押し切ってやるというようなことは必ずしも適当でない、よく話し合いながらかみ砕いていくべき性格のものである、時間がかかるのは当然である、そういうように考えてきたところでございますが、今回幸いに、野党の皆様方が必ずしも賛成はしないけれども、理解していただいたかどうか、我々といたしましては、この段階までこぎつけることができましたことを感謝している次第でございます。
  273. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 総理としては、広くそういったものを配慮しながら今日の段階にきたということを言われておりますが、当時の状況から考えますならば、確かに、当時の厚生省が考えておった内容の中で一部、周辺的なものについての見直し的なものはあったと思いますが、特にこのたびの健康保険法改正の大きな問題は、要するに我が国の健康保険制度が昭和の初め発足以来、少なくとも勤労者、働く人にとって、元気なときに、保険料を納めておれば病気にかかった場合には医療についてだけは保険から面倒見るという、これがもうすべての基礎になって今日まで営々と続いておるわけでありますから、その問題は根底を変えるような大きな改革でありますから、それだけにこの問題が大きな波紋を呼び、これだけ大きな影響を与えておるわけでありますので、そういう点でいきますならば、特にこの医療問題につきましては、過去におけるこういった健康保険法改正等のいろいろな経緯を見ますならば、かなり慎重に時日をかけて、そうして初めてこういったものについての合意が得られる中で成立してきたという経過等を考えますならば、やはり今回、予算編成という条件はあったかもしれませんが、もっと広く、最近行われているようなことをもっと事前に、前広にそういう手順を踏んでおるならばこんな状態に至らなかったのではないか、そういう意味で私は、総理の一半の責任に対する見解をお尋ねしたわけであります。  したがいまして、確かに最近の傾向として一部修正等のいろいろの動きがございまして、若干の合意を見られるような面も一部あるようであります。それも一つの民主主義だと言われればそれまででありますが、やはり総理は、これからの政治を行うに当たりましては、ぜひここらあたりの問題についてはひとつ十分これからの政治の中で反省点として残していただけばと、かように期待、要望するわけでありますが、その点に対する御見解をお伺いいたします。
  274. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 小渕さんのお言葉は、将来に対する戒めのお言葉として、心に深くとめておきたいと思います。
  275. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 次に、この委員会の中でいつも議論され、しかも厚生省も、将来ビジョンとして八割給付という一つのめどを持ちながら統一するということ等を言われておるわけでありますが、少なくとも現在の状況が、平均的に見ますならば給付率については八〇・三%でありますね。それを八割にするということは、平均的に見ますならば現在よりも、若干でありますが下回るということになります。中曽根総理は、先ほどからの委員質問に対しましても、国民保険の給付率七割を八割に上げるんだからということを非常に強調されておりますが、やはり政治というものは、そういっただ単なる平準化だけが活力ある政治になるとは私は思えません。少なくとも平準化、そうして現状より少しでも、一歩でも向上する、前進する、そういうことの中にあって初めて私は生きた政治になるのではないかという気がするわけであります。  そういう意味で、ただ国民保険の給付率を七割を八割に上げるから、すべてこれによってやっていくんだということでは、私は国民皆さん方の理解を得られないのではないか、かように思うわけでありますが、なぜに今回このような状態に案を出してきたのかということについて、しかもなぜ八割で統一しようとしているのか、その点についての明確なるものを、もっと詳しいものを国民の前に明らかに示さないことには、私は、国民の各層の皆さん方の理解を得られないのではないか、かように思うわけであります。その点について総理としての御見解があればお聞きしたいと思います。
  276. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 もちろん負担率が違いますから給付が違うのは当たり前のことでございますが、しかし、国民健康保険皆さんと今の健康保険皆さんと、これを見ますと七割、十割、そういう落差がございまして、そういう面も考えて、やはり全国民的見地に立った給付と負担の公平化というような面を考えてみますと、これをやはり平準化していく、可能な限りそういう努力をしていくということは正しいやり方であるだろうと思うのです。  そういう意味で、健康保険関係を将来に向かってできるだけ平準化していく、そういう努力の一環として今回こういう措置を行い、またその中に退職者医療という新しい制度も入れまして、これまた一種の平準化作用を行っておるわけでございます。  そういう意味において、公平性ということを時間をかけて実現していく一環として、ぜひ御理解をいただきたいと思う次第でございます。
  277. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 負担の公平と給付の平準化といいますか統一といいますか、これはそれなりに一つの大きな意義があることだと思います。その点では理解いたしますが、ただ下方に修正して平準化するということではこれは政治じゃないと私は思います。やはり現状よりも一歩でも水準が向上する、こういう方向を持ちながら、そういう中において負担の公平と給付の平準、統一化ということが行われるべきであります。ただ問題は、負担の公平と給付の統一のためにはともかく平準化さえすればいいのだということでは、余りにも後ろ向きな政治のあり方ではないか、かように私は思うわけであります。  そういう意味で、このたびのことを考えますならば、被用者は今回とりあえず一割負担をすることとなります。その代償としてと言ってはおかしいわけでありますが、それに見返るべき何らかの形で現状よりも前向きなものがあれば、またそれなりの理解をするわけでありますが、そういうものが見当たらない、ここに一つ残念な点がございます。政府に言わせれば、いや、退職者医療制度の中で現状より前進するじゃないか、水準が向上するじゃないかとおっしゃられると思いますけれども、この退職者医療制度政府は何ら関知しない、関知しないと言うと悪いですが、政府はお金を一銭も出さない、被用者の一割を削ったそういう犠牲の上に立って、その財源を求めて退職者医療制度をやるわけでありますから、それをそのままこういうことだからということでは、それは対償にならぬと私は思うのです。そこで、先ほどからの質問の中でも、退職者医療制度については現状よりも給付率の水準が上がることなのでと言われておりますが、それを政府が言うからには、当然政府は何らかの形での、国としての一半の責任を持った中でやられるならば、それは当然だと言われでもいいと私は思いますが、実は残念ながら政府は一歩引いてしまって、要するに被用者関係だけのそういった一つの一割負担という上に立って成り立つようにしている仕組みですから、そういう点で、政府がこのことを言うのはちょっと筋違いじゃないかという感じがするわけであります。したがいまして、先ほどからも申し上げておりますように、こういった負担の公平と水準の統一化ということは、少なくとも現状よりも少しでも全体的に水準が向上していく、そういうことを目標に置きながらやるべきじゃないかと私は思います。  そういう意味で、当面九割程度を一つの大きな目標に置きながら、どのような形でそれを実現していくかということについて逐次お互いが努力し、知恵を絞っていく、こういうことでなければならないと思うわけでありますが、その点に対する総理の御見解をお伺いいたします。
  278. 渡部恒三

    渡部国務大臣 給付率が高くて負担率ができるだけ低い、これは大変望ましいことでありますが、その原資になるのは加入者の皆さんの保険料でありますから、私どもは、今回の改革案をお願いして、幾たびか申し上げておるように、二十一世紀の将来にわたって、少なくとも医療保険の保険料率は当分の間上げないで済むようにしたい、この後お願いする年金の場合の負担は高齢化社会ということである程度ふえてまいりますから、二十一世紀が活力ある社会であるためには、今の社会保障負担というものを将来の高齢化社会でも余り伸ばしたくない、そのためには保険料率を現行程度にとどめておきたい、そうしますと、現実に我々が可能な給付条件というものは八割程度ということでお願いしているわけでございます。  ただ、今回の定率負担というのは、単に財政的な面だけでありません。幾たびか申し上げておりますように、医療費の節減を図る、適正化を図る意味もありますし、また健康の自己管理に非常に努力をしていただいて、みずから健康を支えていただく問題もありますし、また病気をしない、お医者さんに全然かからない加入者の皆さんとの負担の公平というものもありますし、いろいろなねらいを込めておるのであります。しかしそのバックグラウンドになっておるのは、今日の経済成長がかつての高度成長というような時代は望めない、したがって財政収入も限界がある、その中で国は借金を返して財政再建をしていかなければならないのでありますから、必要な金は出さなければなりませんが、医療費の場合、現在の社会保障の予算の中で三兆九千億というものはこの辺が限度、それ以上はなかなか出しにくい。したがって、今回の退職者医療の場合は、幸いにして後輩の皆さん方に御理解をいただいて支えていただくならば、国の金を出さないでもどうやらやっていけるので、国費を投入しないというふうに御理解をいただきたいと思います。
  279. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 時間がもう余りないので、このことは一応置いておきます。それから、今回自民党の筋から出された附帯決議案なるものの中にありました制度の一元化、統一化のめど、六十五年度あたりを一つの目途にしながら取り組んでいきたい、そういうようなことであったようでありましたが、今お話を聞きますと、何かそれが附帯決議の中から消されてしまうような動きもあるようでありまして非常に残念でありますが、ぜひひとつ六十五年度あたりを一つり目途にして、それまで、その制度の中においてでもいいからやはりできるものは、家族の給付率についてでもいいですから、若干でもそういうもりに可能性があるならば逐次それに近づけていく、こういう努力をひとつ期待したいわけでありますが、その点いかがでしょうか。
  280. 渡部恒三

    渡部国務大臣 私どもは、六十年代後半のできるだけ早い時期に、現在の低い給付率の皆さん方を八割程度に持っていくように努力をしてまいりたい。また今後、各党皆さん方のこれに対する御意見があれば、その意見を尊重して、その方向でできるだけ努力をしてまいりたいと考えております。
  281. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 最後に、先ほどから、六十年度予算編成に際してのゼロシーリングかマイナス一〇%シーリングかということでいろいろ話が出まして、総理としては、来年度予算編成についてはこれからの仕事であって、まだ考え方としてははっきり、今のところ具体的なものは何も示されなかったわけでありますが、少なくともこのたびのこういった改正案を出さざるを得なかったのは、マイナスシーリングの結果でございまして、厚生省の現在までの状況を見ますと、五十七年度は、国庫会計の会計年度を変更することによって何とか少しずつ切り抜けたし、五十八年度は、実質的な赤字国債的な性格を持った国民年金の平準化措置によって何とかこういったゼロシーリング、マイナスシーリングを切り抜けた。そして今回は、またマイナスシーリングで、今回被用者負担一割、原則二割負担、こういう大きな改正を考えてこの問題が出てきたわけでありますが、次の六十年度がまた一律マイナスシーリングであるならば、何らかのそういう形のものがまた出てこざるを得ない状況になるのは必至じゃないかと思うわけであります。きょうの新聞を見ますと、一部報道されているところでは、厚生省は、六十一年度国民年金その他において制度改正を考えているようなので、その分を見込めば、六十年度は、約七千億程度の当然増については例外的なものとして何とか措置していくように、大蔵省に働きかけていくというような考え方も示されておりましたけれども、その点で厚生省は、来年度予算編成についてはそれを一つの基本方針としてきちっとされておるのかどうか。あわせて、総理としては、それに対してぜひそういった形での御理解を示していただきたいと思いますが、その点に対する総理の御見解をお伺いいたしまして、私の質問を終わります。
  282. 渡部恒三

    渡部国務大臣 まだ来年度予算の方針というものは定まっておるわけではございませんが、六十年度予算のことを考えると私も非常に厳しい事態を感ぜざるを得ません。大変厳しい財政の中で私ども内閣の一つの枠の中でやっていかなければならないのでありますが、しかし、幾たびかここで御指摘をいただいておりますように、社会保障の予算は簡単に削ったりあるいは一年延ばしたりできない、生活そのものがかかっておる予算がありますから、これらの必要な予算は何としても確保しなければなりません。したがって、今回出した私どもの、大蔵大臣がよく言っておる内なる改革の努力を、これは先生方の御協力によってぜひこれを成立させていただいて、私どももこれだげ頑張った、しかし来年度は必要な社会保障の予算は何としても確保し、これから総理にお願いしなければならないと思っておりますが、どうぞ先生も、早くこの健保法案成立させていただいて、来年度のお願いをしていただきたいと思います。
  283. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 小渕さんがおっしゃいましたことの趣旨はよく理解できます。おっしゃいましたことをよく頭にとめまして、できる限り努力したいと思います。
  284. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 では終わります。
  285. 有馬元治

    有馬委員長 浦井洋君。
  286. 浦井洋

    ○浦井委員 四月二十五日に、自民党の田中幹事長と財界四団体首脳とが懇談をされた。そのときに、財界の側からは、今総理質問が進行いたしております健康保険法改正案についてこう言っておる。同法案は行革と財政百姓の接点であり、財政再建への一里塚だ、五十九年度予算そのものと言ってもいいほど重要な法案なので成立しなくては困る、こういう特別な位置づけのようであります。これはまさに臨調行革の柱だというふうに財界側は言っておるわけでありますが、総理のこの法案に対する考え方も同じでありますか。
  287. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 私はその会へ出ておらなかったからどういうことを言ったかよく知りませんが、私は、本日この席で申し上げましたように、将来を見据えまして、国民の給付と負担の公平化というものを全国民的見地から見まして制度の改正を図ろうと、かつ、重点的、効率的に社会保険制度を運用していこう、そういう考えに立って実行しておるものでございます。
  288. 浦井洋

    ○浦井委員 臨調行革の柱だという直接的な表現は上手に避けられたわけでありますけれども、どうも財界の言われる意見と総理の言われる意見とが極めて共通性があるように私は認識をするわけであります。  そこで総理、実際のところ、本当に今度の健保改正案なるものはひどいのですよ。いろいろな言い方がありますけれども、一番典型的に言えば、一割・二割、被保険者・健保本人の自己負担というのは、定率でカットするというのは、まさに健保法始まって以来の大改悪だと言ってもいいと思うのです。本人は十割給付だというのはもう日本の国民の中に定着しておる。その一家の大黒柱であるお父ちゃんが一割・二割自己負担だということになると大変なことなんです。ここのとこを総理は十分に、もう心臓にこたえるほどよく認識をしていただきたい、このことを私は強く要求をしたいわけであります。戦争中、例えば例の東条内閣が発足して二年たってやったのが、戦費の調達のための二割相当分の定額負担であるわけなんです。総理はかねがね、日本は世界第二の経済大国である、しかも日本の国は確かに戦争をしておりません。そういう中で、なおかつ健保本人の二割・一割自己負担を強行されるというのは全く私は理解に苦しむわけであります。だから今、総理も恐らく御承知だと思うのですけれども、都道府県議会四十七のうちの三十九の議会が、これは人口では八六%になるわけです。あるいは市町村議会三千三百二十五のうちの千六百七十、これは議会の数で五〇・二%、こういうところで反対決議や意見書を出して、何とかこの健保の改悪をやめてほしい、こういうふうに要望しておるわけなんです。私は、今度の健保の改正に反対するのはまさに民の声、国民の声だと思うわけであります。それでも、これをきょう採決されてとにもかくにも成立をさせようということで総理は意気込んでおられるわけで、私は全くけしからぬと思うわけなんです。その成り行きを心配して、傍聴の方もたくさん来ておられる。その中で、私は総理に、この場合もう実際に本当にこれは撤回しなさい、政府の責任において撤回しなさい、各党合意の上で、この発言を私は聞きたいと思うのですが、どうですか。
  289. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 国民皆さんの給付と負担の公平を考え、かつ、将来における医療保険制度のより好ましき姿、特に国民健康保険皆さん立場をさらによくするという大きな目的に向かってのこれは第一歩でございますから、これは撤回する考えはございません。
  290. 浦井洋

    ○浦井委員 私は、やはり第一歩は第一歩でも、社会福祉や社会保障制度というものを改善をしていく第一歩に中曽根内閣が位置すべきだとは思いますけれども、撤回する気はないというのはけしからぬと思うのであります。  そこで、今健保一割・二割の自己負担が大変なことだということを私、申し上げたのですが、これは大手の健保本人の給付をカットする、今度はからめ手からがある。先ほど吉村保険局長と問答を交わしましたけれども、特定療養費、これは恐らく総理は御存じないと思うのですけれども、これが今すぐにはできないかもわからぬけれども、この法改正案がもしも成立をしたならばその基礎ができる、変な表現ですけれども礎ができるわけなんです。  そういう中で、これは総理もこの点は御存じだろうと思うのですけれども、一般の病院では差額徴収が合法化される、あるいは大学病院などのところでは高度先端医療が自己負担になる、こういう格好で、せっかく健康保険本人の資格、総理も恐らく国保か健保本人の資格をお持ちだろうと思うのですけれども、そういうものを持っておっても、実際に急病になったときにお金をごっそりと用意しなければならぬ、こういう状態ができ上がるわけなんですよ。そうしますと、これはもう必然的にローンで借金をする人がふえたりする、この間も指摘されたように。それよりも私は恐ろしいのは、既に生命保険資本が、健保のいわゆる改正案なるものの成立を願って、いろいろ新しい商品を売り出そうということで虎視たんたんとねらっておるわけなんです。そこで、がん保険を初めとして、既にかなり広がっておるものがもう一つ広がってくる。そうしますと一体どうなりますか。  総理は、アメリカのことはよく御承知だろうと思うのですけれども、御承知のようにアメリカというのは、生活保護を受けざるを得ないような低所得の人、障害者あるいはお年寄り、こういう人を除いては、何も社会保険あるいは社会保障というものがないわけです。そこでは生命保険がだあっとはびこるといいますか、ばっこをいたしまして、いろいろな種類の民間の健康保険ができておる。  こんなことがある。実際にある話なんですが、私は医者ですから病気の話をしますけれども、総理もかかられたら困るだろうと思うのですが、例えば脳卒中とか心筋梗塞で救急車を呼びますね。そうすると、ふだんから保険料を高く払っているようなそういう給付のよい民間保険を持っておる人は、日本と同じように救急車がノンストップでたあっとよい病院に運んでくれる。ところが、保険料を余り払わぬので給付の悪い民間保険を持っている人は、日本と違って赤信号になれば必ずとまってくれる、そしてほどほどの病院に運んでくれる。まさに所得あるいは支払い能力によって受ける医療に差が出てくる、こういう萌芽が今度の健康保険の改悪であります。と同時に、もう一つ申し上げましょうか。例えば虫垂炎というのがありますね。高い、よい保険を持っておれば三人の医者が皆メスを握って、切る役、あるいは糸を結ぶ役、麻酔する役。ところが安い、給付の悪い保険を持っている人は一人のお医者さんがやる、こういうことがアメリカでは現実に行われておるわけなんです。こういうことか果たして許されていいものかどうか、私は今度の健保の改悪案というのを非常に危惧するわけであります。  だから、今度の改悪案がもしも成立しますと、これはそのことが一つの礎になってどんどんとそういう格好に運んでしまう。そうすると、社会保険制度というものを悪用して、日本の医療制度そのものががらっと変わってしまうわけですよ。これはまさに憲法二十五条の社会保障の根本理念の空洞化、形骸化ではないかと私は思う。  私は、こういうことは絶対に許してはならぬ、断固として撤回を要求したいと思うのですが、総理、どうですか。
  291. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 今回の法改正と、それからアメリカにあるような民間保険という問題が必ずしも直接結びつくものであるとは思いません。やはり今回の改正にはそれだけの意義があるのでありまして、特に、国民健康保険の皆様方の待遇をさらに将来に向かってよくしよう、そういう大きな公平感に基づく措置という面もあり、あるいは退職者に対する特別の考え方も今度制度的に実行しておるわけでございます。そういう積極的な面もぜひごらんになっていただきたいと思うのであります。  ただ、民間保険の問題については、これはこれから新しい試みでございますから、それがどういうふうに公的保険制度に影響を及ぼしてくるか、そういう点はよく検討してみる必要があると思います。
  292. 浦井洋

    ○浦井委員 我が党の佐藤議員が、年金のときに質問をいたしました。そのときに総理は、今と同じようなことを答えられた。年金医療も同じように考えておられるわけです。民間保険というものを重視をしていく。私は、今度の改悪が直接民間保険に結びつくなんて言ってない。間接的にそうなるだろう、そうしたら大変なことになるのだということで警鐘を乱打し、ぜひともこれは撤回すべきだということを強く主張いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。  以上であります。
  293. 有馬元治

    有馬委員長 菅直人君。
  294. 菅直人

    ○菅委員 それでは、総理に質問を申し上げます。  今回のこの健康保険法改正案は、政府としては行革関連ということに。位置づけて提出をされているわけです。私たちは、行政のむだを省くという意味での行政改革は大いに進めるべきだ、そのように考えています。しかし、今回の健康保険法改正案中身を見ておりますと、内容がそうなっているかといえば、そうはなっていないのではないか。つまり何度も言われてきたことですが、結局のところは国の負担を個人の負担に振りかえるという形になっている。これは行政改革というよりは、例えば公立学校を私立学校に振りかえるのと同じでして、一つの小さな政府論のような考え方に立って、国はやらないからあとは個人でどうぞという形になっているのではないかと思うわけです。そういう点で、総理に、今行政改革に関連をして小さな政府論ということも議論をされておりますけれども、この考え方について総理はどのような見解を持っておられるか、まずお尋ねしにいと思います。
  295. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 臨時行政調査会の答申は、それなりに我々は尊重して、これを実行していくように努力しておるところでございます。今回の医療保険制度の改正につきましては、先ほど来申し上げましたような長所もありまして、そういう改革をねらって一生懸命努力してつくり上げた案でありまして、そういう積極的なところもぜひお考え願いたいと思う次第です。
  296. 菅直人

    ○菅委員 お答えがちょっとあれが違うのです。つまり総理としては、これからの国政運営の中で、いわゆる小さな政府論、国の役割を相対的にどんどん小さくしていって、民間にどんどん任せればいいのだという考え方をとるおつもりかどうかということをお尋ねしたいのですが。
  297. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 行政改革という観点から見ますと、やはり冗費あるいは冗費を省いてスリムにして、国民負担をできるだけ軽くしていく、そういう考えに立って今後も努力、実行してまいりたいと思っております。今回の医療保険制度の改革というものは、一両において効率化、重点化という面はございますが、しかしそれ以上に、国民健康保険の給付率か上げていくとかあるいは退職者医療制度を設けるとか、そういう今までなかった新しい場面にも挑戦しているという点を申し上げておる次第なのであります。
  298. 菅直人

    ○菅委員 総理はそういうふうに、おっしゃいますが、しかし、この中身は、給付の切り下げが現実には行われるということが出ているだけで、給付の切り上げ等については、形容詞として、将来行うとかなんとかいろいろと自民党修正案の中に入っているようですが、今回行われること自体は基本的には給付の切り下げ部分だけであるということ、それから財政構造から見ても、国の負担を最終的には個人の負担に振りかえているだけだ。ですから、それにいろいろと形容詞をつけられても、中身そのものは、この法案の中でいえば、今私が申し上げたことと特に違うものが入っているわけではない、そのように思うわけです。  そこで、もう一点関連をしてお尋ねをしたいのですが、これは先ほど来ほかの委員の方からも議論がありましたけれども、例えば来年度予算の中で、もし今回と同じようなマイナスシーリングの予算案を厚生省についても当てはめようとすれば、年金において自然増的なものが相当額予定されるわけですから、そうするとまたさらに医療関係を切っていくのか、こういう心配があるわけです。そこで、今回の改正というものを一つの入り口にして、いろいろな社会福祉の水準をどんどん切り下げていくのではないかと多くの国民が心配をしているわけですが、そういうこともあり得るということなのか、いや、そういうことは絶対にさせないのだということなのか、総理にその見解を伺いたいと思います。
  299. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 社会福祉と申しますと、年金医療も全部入ってまいると思いますが、全般的な効率化、重点化ということは将来的にはもちろんあり得ると思いますし、また、制度間の調整措置というものもあり得るであろう。これは統合ということを考えればそういうものは必然的に出てこざるを得ないと思うのであります。  しかし、本当に困っている方々、社会福祉を必要としている方々、弱者あるいは老人、そういうような方々に対する手当であるいは難病者に対する手当て、そういうような問題につきましては、政府としては重点的に、かつ、誠心誠意努力してまいる、福祉というものはあくまて尊重してしく考えに立ってやっていきたいと思っております。
  300. 菅直人

    ○菅委員 今の総理の御返事は、部分的には評価のできるところがあるわけです。しかし、この数年間の総理の国政、国内の運営を見ておりますと、何か例えば軍事的な面などについては大変大きな政府を追求している、しかし、こうした福祉の面、あるいは今自民党内でも議論になりつつある社会資本の充実などという面では必ずしも十分なる重点を置こうとしていない。部分的には大きな政府を、しかし国民生活に関係の深いところでは小さな政府を、そういうふうに持っていこうというふうに我々には映るわけです。そういう点で、そういうことがないようにそのことを特に強く申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。
  301. 有馬元治

    有馬委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。     ―――――――――――――
  302. 有馬元治

    有馬委員長 この際、橋本龍太郎君外四名から、本案に対する修正案提出されております。  提出者より趣旨の説明を求めます。橋本龍太郎君。     ―――――――――――――  健康保険法等の一部を改正する法律案に対する   修正案     〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――
  303. 橋本龍太郎

    橋本(龍)委員 ただいま議題となりました健康保険法等の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、自由民主党・新自由国民連合を代表いたしまして、その趣旨を御説明申し上げます。  修正の要旨は、第一に、被用者保険本人の一部負担金については、昭和六十一年四月一日以後においても、国会で承認を受ける日までの間は、なお引き続き一割とすること。この場合の一部負担金の額は、都道府県知事に届け出た保険医療機関等における医療費の額が千五百円以下のときは百円、千五百一円以上二千五百円以下のときは二百円、二千五百一円以上三千五百円以下のときは三百円とすること。  第二に、保険医療機関等における一部負担金の支払いについて十円未満の端数金額が出るときは、その額は四捨五入し、十円単位とすること。  第三に、任意継続被保険者制度の特例を設け、五十五歳以上で被用者保険の資格を喪失した者については、六十歳に達するまでの間またはそれ以前で国民健康保険の退職被保険者となるまでの間、二年を超える場合でも資格を有することができるものとすること。第四に、健康保険組合等がみずから当該組合の被保険者であった退職者について医療の給付を実施できることとし、当該組合の退職者医療制度に対して拠出すべき療養給付費拠出金について所要の調整を行うものとすること。  第五に、政府管掌健康保険等の事業主及びその被保険者により構成する法人等で社会保険庁長官の承認を得たものは、その被保険者本人の一部負担金について附加的な給付を行うことができるものとすること。  第六に、日雇特例被保険者については、療養の給付期間は、日雇特例被保険者手帳を一年以上所持していれば五年とするとともに、傷病手当金難の支給日額は、前二カ月または六カ月のうち最も賃金総額の多かった月の賃金総額を基礎として算出するものとすること。  第七に、政府は、新健保法の施行後の医療費の動向、国民負担の推移、財政事情等各般の状況か勘案し、健康保険制度の全般に関する検討を行い、その結果に基づいて社会保険各法の被扶養者及び国民健康保険の被保険者の給付割合を八割とするよう必要な措置を講ずるものとすること。  第八に、昭和五十九年七月一日から施行するとされていた部分の施行期日については、公布の日から起算して三カ月を超えない範囲内において政令で定める日からとすること等であります。  何とぞ、委員各位の御賛同をお願いいたします。
  304. 有馬元治

    有馬委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  この際、国会法第五十七条の三の規定により、内閣意見を聴取いたします。渡部厚生大臣
  305. 渡部恒三

    渡部国務大臣 健康保険法等の一部を改正する法律案に対する修正案については、政府としてはやむを得ないものと認めます。     ―――――――――――――
  306. 有馬元治

    有馬委員長 これより本案及び修正案を一括して討論に付します。  討論の申し出がありますので、順次これを許します。野呂昭彦君。
  307. 野呂昭彦

    ○野呂委員 私は、自由民主党保新自由国民連合を代表して、ただいま議題となっております健康保険法等の一部を改正する法律案及びこれに対して自由民主党・新自由国民連合が提出した修正案につきまして、修正案及び修正案を除く原案に賛成の意を表するものであります。  我が国の平均寿命は、男七十四・二〇歳、女七十九・七八歳となっており、国民の健康水準は世界でも遜色のない水準に達しております。これは、医療保険制度改善充実が大きく寄与してきたものであります。しかし、近年の医療費の伸びを見ますと、国民所得の伸びを上回って増加しており、このまま推移すれば、将来、国民負担能力の限界を超えるおそれもあります。また、現行の医療保険制度には、給付の面で制度間、本人・家族間に格差があるなど、人生八十年時代にふさわしい公平な制度とする必要に迫られております。  したがって、二十一世紀の本格的な高齢化社会に備え、このような課題を早急に克服することを目指し、医療保険制度の確固たる基盤づくりを進めることが急務となっております。  政府原案は、このような要請にこたえて、医療費の適正化を図るとともに、制度間、本人・家族間、さらに世代間における給付と負担の公平化を目指すものであり、その趣旨については評価できるものの、主として次のような諸点について所要の修正を行うことにより、一幅の内容の改善が図られるものと考えます。  第一に、被用者保険本人の一部負担金について、昭和六十一年四月一日以後も国会で承認を受ける日までの間は、なお引き続き一割とすることであります。これは、激変緩和の観点から、本人負担を軽減するとともに、医療費の動向等を見きわめた上で、八割給付とする時期を慎重に検討しようというものであります。なお、医療費が三千五百円以下であるときは、段階を設けて一部負担金を定額とすることとしております。  第二に、任意継続被保険者制度に特例を設け、五十五歳以上で被用者保険の資格を喪失した者については、退職被保険者となるまでの間は、二年を超える場合でも引き続き資格を有することができるものとし、退職したサラリーマン等が安心して医療が受けられるようにすることであります。  第三に、政府は、今後の医療費の動向、国民負担の推移、財政事情等各般の状況を勘案し、健康保険制度の全般に関する検討に基づいて、被扶養者及び国民健康保険の被保険者の給付割合を八割とするよう必要な措置を講ずるものとすることであります。  このほか、健康保険組合等がみずから退職者医療実施できることとすること、政府管掌健康保険等においても本人の一部負担金について附加的給付を行う道を開くこと、日雇特例被保険者に係る療養の給付期間等に関して必要な修正を行うこと等であります。  以上の修正は、本委員会審議を通じ、最善の努力を尽した上での結果であり、特に本人一割負担については、医療機関における事務量増への対応の必要性など諸般の事情を勘案し、医療費が三千五百円以下であるときには定額負担の形式をとっておりますが、その一部負担金の額は、各段階ごとの平均医療費の一割となっており、定率一割負担の大原則は貫かれているのであります。以上の修正によって、さらに本法案の目的の達成と円滑な実施に資するものと考えるものであります。  このように、健康保険法等の一部を改正する法律案並びに自由民主党・新自由国民連合提出修正案は、二十一世紀に備え、医療保険制度の確固たる基盤づくりを図るものであり、私どもといたしましては、この修正案及び修正部分を除く原案に賛意を表するものであります。  これをもちまして、私の討論を終わります。(拍手)
  308. 有馬元治

    有馬委員長 池端清一君。
  309. 池端清一

    ○池端委員 私は、政府提案の健康保険法等の一部を改正する法律案及び自由民主党・新自由国民連合提案の同法案に対する修正案のいずれにも反対する立場から、日本社会党・護憲共同を代表して、集約的に反対の意見を申し上げたいと思います。  政府案は、到底承服しがたい幾つかの問題点を持っているのでありますが、とりわけ最大の問題点は、昭和二年以来今日まで五十七年間一貫して守り続けてきた本人十割給付という大原則を、マイナスシーリングのつじつま合わせによって崩そうという点であります。まさに、健康保険制度の根幹にかかわる大改悪と言わなければなりません。  そもそも、国民皆保険下における医療保障の目標は、給付水準を引き上げるとともに、医療の質を高めるということにあるのではないでしょうか。しかるに、本改正案は、その目標に全く逆行するものであると断ぜざるを得ないのであります。  この結果、長期療養を要する患者さんほど負担がいよいよ重くなり、また附加給付もなく、労働条件も悪いといった恵まれない職場の人たちほど、改悪の影響をもろに受けることになるのであります。これではもはや社会保障の破壊案と言わなければなりません。その上、定率負担を導入したからといって、不適切な医療が少なくなるという保障は何もないのであります。宇都宮病院における患者殺害事件も、富士見産婦人科病院における臓器の乱摘出事件も、被害者の中に十割給付の健保本人はほとんどいなかったことが、そのことを雄弁に物語っているのであります。政府は、国民医療費の伸びを国民所得の伸び以下に、そしてまた国庫負担も大幅に抑制したいとしています。しかし、医療保障を前進させつつ財政抑制の効果を上げる知恵を出すことこそ、政府の、そして厚生省の任務でなければなりません。点数出来高払い方式の改革、薬剤や高度医療機器の公的コントロール、医療内容のチェックシステムなど、工夫の要る方法については手を抜いて、最も安易な手段に訴えた政府案は、ただひたすら社会的弱者切り捨ての政策であって、到底国民の納得を得られるものではありません。自民党提案の修正案にしても、このような本質は何ら変わっていません。例えば医療費が三千五百円以下のときの患者負担定額制にした点についてでありますが、これは、どうしたら患者の負担を少しでも軽くできるかという発想からではなく、医療機関の徴収事務を簡素化するためのものにすぎず、かつまた、自民党修正案は、部分的には政府原案の一割負担よりさらに重い負担を患者に求めることになり、かえって改悪されていることは極めて重大であります。また、修正案には、今後の医療鈍の動向や財政状況等を見て、健保の被扶養者及び国保の給付率を現行の七割から八割に引き上げることとしております。この程度のことは今直ちに実行すべきであります。もしそれがどうしても現段階で困難であるというならば、その実施時期を具体的に明示すべではありませんか。一体何年先のことになるのか、漠として不透明な事柄が、どうして修正案と称してまかり通るのか、全く理解に苦しむところであります。  以上、私は、給付水準を引き上げつつ医療効果を高めるという医療保障の基本的な観点に立って、原案並びに修正案に反対する理由を申し上げました。  どうか、政府・自由民主党におかれては、今国会も余すところ二十七日となりましたが、いま一度深く反省して、我々とともに本法案を廃案とする歴史的決断をするよう強く求めて、私の反対討論を終わる次第であります。(拍手)
  310. 有馬元治

    有馬委員長 橋本文彦君
  311. 橋本文彦

    橋本(文)委員 私は、公明党・国民会議を代表して、健康保険法等の一部を改正する法律案並びに修正案に対しまして、反対の立場から討論を行うものであります。  今日、健康保険制度を取り巻く現況は極めて厳しいものがあり、現行制度のままで今後永続的に対応できるとは考えられません。しかし、今回の改革案は、予算のマイナスシーリングに押し切られた形で、医療関係予算をどう削減するかという視点から提案された歳出削減策である。  ところが、近年、国民医療費の伸び率は鈍化傾向にあり、現在、政管健保財政は黒字基調となっております。したがって、今回の改正は、国民の生活と健康を確保することを考慮することなく、あくまで財政的見地からのみの対策であったと言わざるを得ないのであります。  また、改革案が、国民医療費コスト意識を持たせることを意図しているのであれば、一律一割負担という乱暴な手法によらず、かねてから我が党が主張しているように、医療費通知制度、医療費の領収書発行などの徹底で、その目的は十分に達成できるはずであります。よって、国民に不安と混乱をもたらすような制度改革は何ら必要なく、性急に自己負担導入を図る根拠は極めて薄いのであります。  第三に、現行制度の制度間における給付格差であります。仮に被保険者本人の十割給付を見直すとするならば、少なくとも家族の九割給付こそが大前提でなければなりません。健保本人と家族の給付に格差をつけねばならない理由はなく、これらの矛盾解決のめどのない改革案は到底認めることができないのであります。  第四に、診療報酬支払いについて指摘するならば、出来高払い方式は、医療供給や医学の進歩発展に寄与する反面、薬づけ、検査づけ等の過剰濃厚診療、また乱診乱療あるいは不正請求を生ずる欠陥があることも事実であります。この出来高払い制を今後とも維持する以上、薬づけ、検査づけ等に徹底したメスを入れ、国民医療に対する信頼を回復しなければならない。しかし、政府案医療費適正化はかけ声だけで、何らの実効性のないのは問題であります。  第五に、本法案に対する修正案についても、大幅負担を招く二割負担導入の構想が撤回されていない、また健保制度の統合一元化の時期についても明示されていない、このような内容では認めるわけにはいかないのであります。  第六に、高額療養費の問題であります。従来から改善が要求され、国民の最大関心事であったいわゆる暦月一人一レセプト方式の改革が全く見送られているのであります。低所得者や重症・長期入院患者ほど負担が重く、高額療養費限度額の据え置きだけでは極めて不十分と言わざるを得ません。  第七に、退職者医療制度についてであります。制度創設自体は我が党も一貫して早期実現を要求してきたもので異論はありませんが、財政調整の名をかり、取りやすいところから取るという財源対策に問題があります。制度創設の責任の上からも、応分の国庫負担が当然であると考えるものであります。  さらに、退職者医療創設に名をかり、国民健康保険被保険者及び家族の七割給付を据え置いたまま、国保に対する国庫補助、退職者医療を含め四千二十三億円も大幅減額することは到底認めることはできません。被保険者のうち、退職者に対する八割給付の引き上げは一応了とするも、国保内に格差を新たにつくることは、これまた遺憾と言わなければなりません。格差解消を強く要求するものであります。  以上、今回の健保改正案は、国民福祉向上あるいは国民の健康と生命を守るに値しない法案であり、断じて賛成できるものではありません。  したがって、政府原案、同修正案に対し、いずれも反対することを表明し、反対討論を終わります。(拍手)
  312. 有馬元治

    有馬委員長 塩田晋君。
  313. 塩田晋

    ○塩田委員 私は、民社党・国民連合を代表し、ただいま議題となっております健康保険法等の一部を改正する法律案について、修正案並びに修正部分を除く原案に対し、反対の討論を行うものであります。  私が反対する第一の理由は、今回の改正案が、財政調整のつじつま合わせのため、一番弱い立場に、ある患者に大幅な負担の強化を求めていることであります。  なぜ六千二百億円余の国庫負担を削減せねばならないのか。それは、マイナス一〇%シーリング設定のもとに、厚生省予算の無理な編成をしようとしたためであり、国民の命と健康を守る国民医療と、健保財政自体の要請から出たものでは決してないと言えるのであります。  政管健保も、昭和五十六年度以降は黒字に転じ、昭和四十六年度以降の累積赤字一千二百九十億円も解消され、ことしに入り保険料の引き下げさえ行えるほど、健全化の方向に向かっています。したがって、昭和二年の制度発足以来今日まで維持されてきた、本人給付率原則十割を削減する必然性は全くありません。  政府は、ことし四月末、我が党の強い要求によって、医療保障改革の中長期ビジョンを示しましたが、それは医療問題の課題を羅列し、具体的改革ビジョンを示さず、福祉向上という国民の切実な要求を無視しているものであります。自民党修正案はこの延長線上のものであり、それは到底容認できないものであります。  第二は、本人給付率を九割ないし八割に引き下げることは、重症患者ほど重い負担を求めることとなり、医療保険の原則に逆行するものであります。一家の働き手であるサラリーマン、勤労者本人が重症で長期間入院した場合は、家計が大きく破綻することが危惧されます。しかも、現行償還払い制度のもとでは、月に数百万、数十万といった多額の治療費を一たん支払わなければならないケースも出て、その資金の捻出に家族が途方に暮れる社会問題を引き起こすことは必至であります。  第三の反対理由は、高額療養費制度の抜本改正を怠ったことであります。現行制度は、同一医療機関ごと、同一月ごと、受診者ごとになっているため、異なった医療機関で五万円ずつ計十万円の負担をしても、同制度の対象とならないこと、また家族二人が各五万円の負担で計十万円を負担しても、制度の対象外になることなど極めて不合理な制度となっております。我が党は、個人単位を家族単位に、暦月単位を三十日単位に改めること、また無利子の融資制度の導入等を強く要求してきたのでございますが、政府がこの要求にこたえないことに強い不満を抱くものであります。  さらに、血友病等長期高額医療費を要する難病についての患者負担の軽減に努めていただきたいのであります。  第四は、退職者医療制度の創設に当たって、国庫負担の導入を見送ったことであります。我が党は、本制度を提唱してまいりましたので、その創設について評価するものの、国庫負担なしの制度は認めるわけにはいかないのであります。  私は、最後に、医療保険制度の一元化を図るため、昭和六十五年度をめどに、給付水準の統一と負担の公平化の措置を計画的に実施することを強く要請いたします。  また、予防からリハビリテーションに至る一貫した包括医療制度の確立、従来から指摘している差額ベッド料や付添看護料といった不当な保険外負担の解消とともに、僻地医療の解消、救急医療の改革を図るべきであります。  医師、歯科医師、薬剤師を初め、柔道整復士、歯科技工士、レントゲン技師等の適正水準を、今後の医療需要の動向を踏まえて確保するようその養成対策を見直すとともに、看護婦、保健婦その他、医療関係従事者の計画的な養成確保を図られたいのであります。  さらに、家庭医の制度化等プライマリーケアの充実を図り、病院経営の安定、ナーシングホームなど中間施設の整備、医療機関福祉施設との有機的連係など、いつでも、どこでも、だれもが最良の医療を受けられる体制の確立とあわせて、医薬分業の推進、技術重視の診療報酬体系の確立、不正請求や過剰請求の解消及びレセプト審査の充実など医療費のむだをなくするため、政府が全力を尽くして取り組んでいただきたいことを強調し、私の討論を終わります。(拍手)
  314. 有馬元治

  315. 田中美智子

    ○田中(美)委員 私は、日本共産党・革新共同を代表して、健康保険法等の一部を改正する法律案に反対の討論を行います。  私は、まず、本法案に対する採決が今行われようとしていることに強く抗議いたします。本法律案は、制度発足以来五十数年にわたって堅持されてきた、本人十割給付の大原則を崩すなど、国民生活にとってゆゆしき重大問題を含んだ法案です。それゆえに、本委員会での審議は、慎重の上にも慎重を期して行われなければならないものです。ところが、連合審査の与党単独議決、議事進行動議の提出など、異常事態の繰り返しによって、十分な審議も尽くされないまま採決しようとしているからです。  次に、本法案に反対する理由です。  本法案の本質は、軍備拡張、大企業奉仕の臨調路線の具体化であり、本年度六千二百億円余りの国庫負担の削減を図り、これを患者と国民負担増として押しつけるところにあります。これが反対理由の第一です。  反対理由の第二は、健康保険本人の十割給付の原則を崩したことです。この結果、一家の働き手である健保本人に多額の自己負担が強いられ、直接国民の家計に打撃を与えるばかりでなく、健保本人の受診抑制をもたらし、疾病の重症化を来す危険すらはらんでいます。さらに、家族や国保を十割給付に近づける道が閉ざされることはもちろん、全体の給付率が引き下げられることにもなります。  第三に、退職者医療制度の創設を理由に、国保に対する国庫補助を大幅に削減したことです。今でさえ赤字の市町村国保の財政は一層厳しくなり、必ずや保険料の引き上げにつながらざるを得ない状態をつくり出すことになります。さらに、市町村国保や国保組合が実施している上積み給付に対してペナルティを課すことは、地方自治の権限を侵すことにもなります。  退職者医療制度について、共産党・革新共同は、かねてから本制度の創設を要求してきました。しかし、本法律案で創設される退職者医療制度は、国保に対する国庫補助削減が目的であり、その結果、費用はすべて現役労働者に課せられています。政府は、本制度を被用者保険制度として整理したと述べていますが、被用者保険制度の大原則は、国と事業主と労働者の三者によって費用を賄うこととなっています。ところが、本制度には国庫補助は一円も支出されず、制度発足によって事業主の新たな負担はゼロで、負担は専ら給付の切り下げによる患者の負担増で賄われるものです。社会保険原理からも逸脱する重大な内容となっていると言わざるを得ません。  第四に、特定療養費制度が導入されることです。これは、近い将来必ず自由診療を拡大させる道を開き、公的医療保険制度の地位を下落させ、患者の支払い能力によって医療に質的な差が出てくるという、医療制度の大改悪をもたらしかねません。これは憲法第二十五条にうたわれている社会保障理念の根本を否認するものです。  第五に、保険医療機関に対する監査、再指定の条件の強化は、萎縮診療、医療内容の規制につながり、医療の質の低下や無気力診療を生み出すことになります。これはとりもなおさず、ほとんどの国民にとって十分な医療が受けられなくなることを意味するものです。  最後に、日雇健保の赤字をそっくり政管健保にかぶせるものになっていることです。  以上が反対の主な理由であります。  なお、修正案は、これまで述べた本法律案の基本的な問題には何ら触れられておらず、検討に値するものではありません。当然反対です。政府は、請願や地方議会決議に示された国民の反対の声に真摯に耳を傾け、本法案を撤回するよう要求して、私の反対討論を終わります。(拍手)
  316. 有馬元治

    有馬委員長 菅直人君。
  317. 菅直人

    ○菅委員 私は、社会民主連合を代表して、政府提案の健康保険法等の一部を改正する法律案並びに自由民主党・新自由国民連合提出修正案について、反対の立場から討論を行います。今回の健保法の改正案は、そもそも、厚生省予算をマイナスシーリングで組むため、財政上のつじつま合わせをするために考え出されて提案をされたものであり、真に医療保険制度の将来のあり方を考えて提案されたものではありません。私は、富士見産婦人科病院や宇都宮病院に見られるような乱診乱療によるむだを省くなど、医療資源を効率的に利用することはぜひ必要だと考えています。また、こうした努力によって医療費の伸びをGNPの伸びの範囲程度に抑え、国民負担を過大にしないようにするという考え方は理解できるところであります。しかし、GNPの伸び以下に抑えるという目標については、今回の改正の有無にかかわらず、来年度はほぼ達成が予定されております。今回の改正の内容は、むだな医療費を抑えるというよりは、国保への国庫支出をカットして、その分を個人負担に振りかえるというものであって、その意味では、行革の名にも値しないものであるということを言わざるを得ません。厚生省は、法案提出後いわゆる中長期ビジョンなるものを発表し、今回の改正を給付の公平化の一環と位置づけてきました。確かに給付と負担の公平化は社会保障の考え方から十分理解できるものであります。しかし、公平化と言う以上は、それはでこぼこをならすということであるはずであるのに対して、今回の改正案は、サラリーマン本人に一割の自己負担を導入するという給付の切り下げのみを実施し、国保やサラリーマン家族の給付の引き上げは行われないことになっています。  自民党提出修正案では、六十一年度以降の二割自己負担導入は国会承認が必要とされたものの、根本的には撤回をされておらず、国保やサラリーマン家族の給付の引き上げは将来のこととされ、時期は相変わらず不明確のままであります。  今回の改正の大きな柱の一つである退職者医療制度については、退職者を被用者保険で面倒を見るという方向には理解できる点もあります。しかし、今回の改正案で提案された退職者医療制度は、国保への補助金カットと被用者保険に導入した本人自己負担との間の橋渡し役とするため、無理な形で導入したものであって、そのため財政的には被用者保険が受け持ち、実施は地域保険である国保となっており、被保険者の予防や効率的運営を実現する上での責任が不明確であり、余りにも矛盾が多いと言わざるを得ません。さらに、今日、医療費関係の国庫補助の大半が投じられている国保については、昨年創設の老人保健制度や退職者医療制度によって、被用者保険へ負担を肩がわりさせることを進めることとしていますが、国保それ自体の努力を促進するような万策は何も示されず、国保の将来像も明確にされていません。  このように、今回の健保改正案、そして自民党提出修正案は、社会保障水準を切り下げるものであり、これを突破口にさらなる切り下げも心配され、医療保険制度の将来に大きな不安を覚えるものであり、断じて認めることはできません。  以上のような理由から、政府原案にはもちろん、自民党・新自由国民連合提出修正案にも強く反対であることを重ねて申し上げ、私の討論を終わります。(拍手)
  318. 有馬元治

    有馬委員長 これにて討論は終局いたしました。     ―――――――――――――
  319. 有馬元治

    有馬委員長 これより健康保険法等の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。  まず、橋本龍太郎外四名提出修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  320. 有馬元治

    有馬委員長 起立多数。よって、本修正案は可決いたしました。  次に、ただいま可決いたしました修正案修正部分を除いた原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  321. 有馬元治

    有馬委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。     ―――――――――――――
  322. 有馬元治

    有馬委員長 この際、稲垣実男君外四名から、自由民主党・新自由国民連合、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党・国民連合及び社会民主連合五派共同提案に係る、本案に附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者より趣旨の説明を求めます。村山富市君。
  323. 村山富市

    ○村山(富)委員 私は、自由民主党・新自由国民連合、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党・国民連合及び社会民主連合を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。  案文を朗読して説明にかえさせていただきます。     健康保険法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)  政府は、次の事項につき、適切な措置を講ずるよう努力すべきである。  一 高額療養費支給制度については、高額な医療費負担による家計への影響を緩和するため、家計の負担能力に適切に対応した仕組みとなるよう所要の改善を図るとともに、血友病等長期高額医療費の疾病については、患者負担の軽減等に努めること。また、融資制度の導入・活用等、現行給付方式の改善を図るよう配慮すること。  二 国民健康保険の運営については、退職者医療制度の創設に伴う国庫補助の引下げ及び国庫補助基準の変更により安定的な事業運営が損なわれることのないよう配慮すること。  三 退職者医療制度の運営に当たっては、被用者保険の負担が過重とならないよう適切な配慮を行うとともに、市町村においては国民健康保険事業の運営について一層の経営努力を行うこと。  四 日雇労働者の健康保険については、政府管掌健康保険の健全な運営に支障をきたすことのないよう適切な配慮をするとともに、日雇労働者の就労の特性に配慮しつつ、一般の被保険者との均衡に欠けることのないよう留意すること。  五 特定療養費制度の運用に当たっては、自由診療の大幅な拡大や保険診療の後退をもたらすことのないよう細心の配慮をもって運用し、高度医療についても、適正な保険医療の確保を図ること。    また、従来から指摘している差額ベッド等に見られる不当な保険外負担について、一層の適正化を図ること。特に、私立医科大学における問題の解決を図ること。  六 診療報酬については、技術重視の診療報酬体系を確立し、その合理化を図ること。また、家庭医の特性に応じた診療報酬について検討すること。  七 薬価基準の適正化、医療機関に対する指導監査の徹底、医療費通知の充実等の医療費適正化対策を積極的に推進することにより、不適切な医療を排除し、医療費及び医療内容の適正化を図ること。  八 診療報酬支払基金等におけるレセプト審査のコンピューター化の推進等、支払審査事務全般にわたる合理化を推進すること。  九 医薬分業については、その基盤づくりに努めるとともに、分業実現に向けて具体的計画の策定に努めること。  十 成人病の予防その他国民のライフサイクルに応じた健康づくり対策の積極的推進を図るため、保健所及び市町村の保健活動の強化に努めること。  十一 地域医療の確保のため、へき地等における関係従事者及び関係施設の確保に努めるとともに、家庭医の標ぼうを認める等プライマリ・ケアについてはその制度化を含めた充実を図り、地域の実情に即した医療供給体制の体系的整備を推進すること。  十二 医師、歯科医師、薬剤師及びその他の医療従事者については、今後の医療需要の動向等を踏まえて、養成確保対策を見直すこととし、適正な水準を確保すること。  十三 医療機関における健全かつ安定的な経営の確保のため、経営基盤及びその環境の条件整備に努めることとし、医業経営が薬価差益に依存することのないよう関連制度の改善に努めること。  十四 保険財政の状況等を勘案し分娩費等現金給付の改善を図るとともに、傷病手当金と障害年金等との併給調整について検討すること。  十五 退職者の任意継続加入者の保険料納入方法に関し、前納制の導入について検討すること。 以上であります。  何とぞ、委員各位の御賛同をお願いいたします。
  324. 有馬元治

    有馬委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  稲垣実男君外四名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  325. 有馬元治

    有馬委員長 起立多数。よって、本動議のとおり本案に附帯決議を付することに決しました。  この際、厚生大臣から発言を求められておりますので、これを許します。渡部厚生大臣
  326. 渡部恒三

    渡部国務大臣 ただいま御決議になられました附帯決議につきましては、その御趣旨を十分尊重いたしまして、努力いたす所存でございます。      ――――◇―――――
  327. 有馬元治

    有馬委員長 お諮りいたします。  本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  328. 有馬元治

    有馬委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――     〔報告書は附録に掲載〕      ――――◇―――――
  329. 有馬元治

    有馬委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  内閣提出、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保を促進するための労働省関係法律の整備等に関する法律案及び多賀谷眞稔君外七名提出、男女雇用平等法案の両案審査のため、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その日時、人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  330. 有馬元治

    有馬委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ――――◇―――――
  331. 有馬元治

    有馬委員長 次に、内閣提出戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案身体障害者福祉法の一部を改正する法律案社会福祉・医療事業団法案及び国民年金法等の一部を改正する法律案の各案を議題とし、順次趣旨の説明を聴取いたします。渡部厚生大臣。     ―――――――――――――  戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案  身体障害者福祉法の一部を改正する法律案  社会福祉・医療事業団法案  国民年金法等の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――
  332. 渡部恒三

    渡部国務大臣 ただいま議題となりました戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。  戦傷病者、戦没者遺族等に対しましては、その置かれた状況にかんがみ、年金の支給を初め各種の援護措置を講じ、福祉の増進に努めてきたところでありますが、今回、年金等の支給額を引き上げるほか、国債の最終償還を終えた戦傷病者等の妻に対して引き続き特別給付金を支給することとし、関係の法律を改正しようとするものであります。  以下、この法律案の概要について御説明申し上げます。  第一は、戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部改正であります。これは、障害年金、遺族年金等の額を恩給法の改正に準じて引き上げるとともに、併発死に係る遺族年金等について遺族加算を行うものであります。  第二は、未帰還者留守家族等援護法の一部改正であります。これは、未帰還者の留守家族に支給される留守家族手当の月額を遺族年金に準じて引き上げるものであります。  第三は、戦傷病者等の妻に対する特別給付金支給法の一部改正であります。これは、昭和五十四年に特別給付金として交付された国債の最終償還を終えた戦傷病者等の妻に対し、引き続き特別給付金として、二万円、二年償還の無利子の国債か支給するものであります。以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要であります。  何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願いいたします。  次に、ただいま議題となりました身体障害者福祉法の一部を改正する法律案について、その提案の理由及び内容の概要を御説明申し上げます。  昭和五十六年の国際障害者年を契機として、国民各層において障害者問題に対する関心と理解が深まり、身体障害者福祉の理念が広く定着してまいりました。このような状況を踏まえ、身体障害者福祉対策の一層の推進を図るため、身体障害者の範囲を拡大するとともに、身体障害者更生援護施設に関する規定の整備等の所要の改正を行うこととし、この法律案を提案した次第であります。  以下、この法律案の内容の概略について御説明申し上げます。  第一は、身体障害者福祉の理念に関する規定の整備であります。近年高まりつつある「完全参加と平等」という国際障害者年の理念を身体障害者福祉法に盛り込むことといたしました。すなわち、すべての身体障害者はあらゆる分野の活動に参加する機会を与えられるものであることを法律上明らかにすることといたしております。  第二は、身体障害者の範囲の拡大であります。すなわち、障害の多様化、複雑化等に的確に対処するため、身体障害者の範囲を従来法で定めているもののほか、新たに政令で定めることができるようにすることとしております。政令においては、人工肛門、人工膀胱の造設者等の排せつ機能障害を有する者で、日常生活に著しい制限を受けるものを定める予定にしております。  第三は、身体障害者更生援護施設に関する規定の整備であります。まず、現在障害別に規定されている肢体不自由者更生施設、失明者更生施設、聾唖者更生施設、内部障害者更生施設を身体障害者更生施設として統合し、身体障害者のニーズに即応できるよう施設運営の弾力化を図ることとしております。  次に、身体障害者が、地域社会で自立した生活を営むことができるよう居室その他の設備に配慮するとともに、日常生活に必要な便宜を供与する小規模な生活施設として、新たに、身体障害者福祉ホームを設けることとしております。  また、身体障害者の地域福祉対策の中核である身体障害者福祉センターを新たに法に規定することとしております。  第四は、身体障害者更生相談所の機能の充実であります。身体障害者更生相談所は、地域リハビリーテーションの中枢機関として、その機能の強化と活性化が望まれているところであり、このため、専門的な相談に応ずること等をその業務に加えることとしております。  第五は、身体障害者更生援護施設における費用徴収に関する規定の整備であります。すなわち、障害者の所得保障の充実等を踏まえ、施設利用に関する費用徴収規定を設け、費用負担の合理化か図ることとしております。  なお、この法律の施行は、本年十月からとしておりますが、施設の利用に対する費用徴収に関する改正については、障害者の所得保障制度の確立する昭和六十一年四月からとしております。  以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要であります。何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。  次に、ただいま議題となりました社会福祉・医療事業団法案について、その提案の理由及び内容の概要を御説明申し上げます。  政府といたしましては、社会福祉の増進並びに医療の普及及び向上を図るため、昭和二十九年に社会福祉事業振興会を、また、昭和三十五年に医療金融公庫を設立し、融資等の業務を行っているところであります。  両法人の果たしてきた役割は大変大きなものがありますが、近年、社会経済の状況は大幅に変化してきており、とりわけ社会福祉医療を取り巻く環境の変化は極めて著しく、高齢化社会の到来を間近に控えて時代の変化に対応した新しい観点から社会福祉の増進並びに医療の普及及び向上を図っていくことが大きな課題となっております。  政府といたしましては、昨年三月の臨時行政調査会の最終答申を踏まえ、特殊法人の整理合理化を図るとともに、このような要請に適切に対応するため、社会福祉事業振興会と医療金融公庫を統合し、社会福祉医療事業団とする必要があると考え、この法律案を提案することとした次第であります。  以下、この法律案の内容について、その概要を御説明申し上げます。  第一に、社会福祉医療事業団は、社会福祉事業施設及び病院、診療所等の設置等に必要な資金の融通等を行い、もって社会福祉の増進並びに医療の普及及び向上を図ることを目的とするものであります。  第二に、社会福祉医療事業団は、法人といたしますとともに、役員として、理事長一人、副理事長一人理事四人以内及び監事二人以内並びに非常勤の理事二人以内を置くものとしております。なお、役員数につきましては、行政改革の趣旨に沿って統合前より縮減しております。  また、法人運営の適正を期するため、理事長の諮問機関として評議員会を置くこととし、業務の運営に関する重要事項を調査審議するほか、理事長に意見を述べることができるものとしております。  第三に社会福祉医療事業団の業務につきましては、従前から、社会福祉事業振興会が行っておりました社会福祉事業施設の設置等に必要な資金の融通その他社会福祉事業に関する必要な助成、社会福祉施設職員退職手当共済制度の運営、心身障害者扶養保険事業の実施に関する業務を行うほか、病院、診療所等の設置等に必要な資金の融通、社会福祉事業施設及び病院、診療所等に関する経営指導等の業務を行うこととしております。  そのほか、社会福祉医療事業団の財務、会計、厚生大臣の監督等につきまして、所要の規定を設けることといたしております。  以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要であります。  何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。  次に、ただいま議題になりました国民年金法等の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び内容の概要を御説明いたします。  我が国の公的年金制度は、国民皆年全体制のもとで着実な発展を遂げ、社会保障の中心的な制度として国民生活において重要な役割を占めるに至っております。しかしながら、近時、我が国の社会経済は、人口構造の高齢化の進行、産業構造就業構造の変化等により大きく変動しつつあります。これに伴い、年金制度のよって立つ基盤そのものにも重大な変化が生じております。  年金制度は、国民が安心して老後生活を営んでいく上で最も重要な柱であり、このような社会経済情勢の変化に的確に、対応しつつ、長期的に安定した制度運営が維持されなければなりません。とりわけ、我が国社会が高齢化のピークを迎える二十一世紀前半においても、健全で安定した年金制度の運営が図られるよう長期的展望に立った制度全般にわたる見直しが迫られております。  今回提出いたしました改正案は、このような趣旨にかんがみ、年金制度改革に関する各方面の御意見をも踏まえつつ取りまとめたものであります。その主眼は、本格的な高齢化社会の到来に備え、公的年金制度の長期的な安定と整合性ある発展を図るため、国民共通の基礎年金を導入するとともに、給付と負担の均衡を長期的に確保するための措置を計画的に講ずることであります。  こうした見地に立って、今回の改正案においては、まずその第一段階として、国民年金、厚生年金保険及び船員保険の再編成を図る等所要の改正を行うこととしております。  また、基礎年金の導入に伴い、障害者の所得保障の大幅な改善を図ることとしております。具体的には、二十歳前に生じた障害につきましても基礎年金を支給することとするとともに、成人障害者が自立生活を営む基盤を形成する観点から、特別児童扶養手当等の支給に関する法律を改正し、二十歳以上の在宅の重度障害者に対し、新たに特別障害者手当を支給することといたしております。  さらに、昨今の社会経済情勢にかんがみ、昭和五十九年度において年金額等の改定を実施することとし、そのための規定の整備を行うこととしております。  以上が改正案の主な内容でございますが、以下、改正案の具体的内容につきまして、順次御説明申し上げます。  まず、基礎年金の導入等年金制度の基本的な改正の内容について申し上げます。  第一点は、制度体系の再編成であります。基本的には社会保険方式を維持し、現行制度の独自性を尊重しながら、一方で国民共通の基礎年金給付を導入することにより、公的年金制度全体の整合性を確保することを目標としております。このために、国民年金制度を基礎年金を支給する制度として位置づけ国民年金の適用を厚生年金保険の被保険者及びその配偶者にも拡大することとしております。基礎年金の給付は、老齢基礎年金、障害基礎年金及び遺族基礎年金の三種類としております。  一方、厚生年金保険制度は、原則として基礎年金に上乗せする報酬比例の給付としての老齢厚生年金、障害厚生年金及び遺族厚生年金を支給する制度に改めることとしており、この結果、いわゆる二階建ての年金体系となるわけであります。また、厚生年金保険においては、被用者独自に必要な給付として、三級障害についての障害厚生年金及び子のない寡婦等、従来の遺族年金の支給対象とされていた遺族に対する遺族厚生年金を支給するほか、当分の間、六十歳から六十四歳までの老齢厚生年金を支給することとし、全体として従来の給付要件は維持することとしております。  なお、外国在住の日本人にも新たに任意加入の道を開くとともに、任意加入しなかった場合でも、いわゆる資格期間には算入することとし、無年金者の発生を防止することとしております。  第二点は、将来に向けての給付水準の適正化であります。現行制度のままといたしますと、受給者の平均加入年数の伸びに応じて給付水準が上昇し続け、将来の保険料負担が過大となり、世代間の公平が失われ、制度の円滑な運営が損なわれることが確実に予測されます。そこで、本格的な高齢化社会を迎える二十一世紀に向けて、今後発生する年金給付については所要の見直しを行い、給付と負担の均衡を図ることとしております。  すなわち、年金水準につきましては、将来に向けて現在の水準を維持していくことといたしました。具体的には、今後生じる基礎年金の水準を、昭和五十九年度価格で月額五万円の定額としております。また、厚生年金保険の報酬比例の年金の乗率につきましては、施行日における年齢別に、二十年の経過期間中段階的に逓減することとしております。この結果、被用者につきましては、夫の報酬比例の年金と夫婦の老齢基礎年金とを合わせた年金額は、ほぼ現行の厚生年金保険のモデル年金の水準を維持することになります。なお、施行日において既に六十歳。に達している者及び既発生の給付については、原則として従来どおりといたしております。  第三点は、婦人の年金権の確立であります。被用者の妻につきましても国民年金を適用することといたしますので、改正後は、夫、妻それぞれに基礎年金が支給されることとなります。これにより、従来からの課題であった単身世帯と夫婦世帯の給付水準の分化と妻の年金権の確立を図ることができることとなるわけであります。なお、当面は、被用者の妻にあっては、国民年金への加入期間が十分でないことを考慮し、経過的に加算を行い、一定の水準を確保することとしております。  第四点は、給付の改善に関する事項であります。  物価スライド制につきましては、実施時期を四月に繰り上げるほか、新たに、障害基礎年金や遺族基礎年金の加算及び厚生年金保険の加給年金もその対象とすることとしております。  障害者の所得保障については、大幅な改善を図ることとしております。一つは、二十歳前の障害につきましても障害基礎年金を支給することとし、拠出者の場合との給付水準の格差を解消することであります。その二は、資格期間でありますが、初診日前の被保険者期間中に三分の一以上の滞納がない限り年金を支給することとしております。その三は、障害基礎年金の受給権者に子がある場合に相当の額の加算を新たに行うこととしたことであります。その四は、厚生年金保険の事後重症の制限期間を撤廃することとしたことであります。  遺族年金につきましては、子のある妻、高齢の妻に手厚い給付となるよう重点化を図ることとしております。  なお、厚生年金保険の各種の特例措置については今回見直すこととしております。第四種被保険者制度、いわゆる中高齢十五年加入の特例、第三種被保険者の期間計算の特例及び脱退手当金は、将来に向かって廃止するほか、女子の支給開始年齢につきましては、男子と同じ六十歳に引き上げることとしております。これらについては、例えば女子の支給開始年齢の引き上げについて、十五年かけて段階的に行うなど、それぞれ所要の経過措置を講ずることとしております。  第五点は、費用負担についてであります。  基礎年金の給付に要する費用は、国民年金の保険料、厚生年金保険の拠出金及び国庫負担で賄うこととしております。  すなわち、自営業者世帯等については、国民年金の保険料及び国庫負担がその財源になりますが、被用者世帯につきましては、被用者及びその被扶養配偶者に関して厚生年金保険が拠出金としてまとめて負担するという考え方であります。したがって、厚生年金保険の被保険者及びその被扶養配偶者は、国民年金の保険料を負担する必要はないという扱いになります。この拠出金の金額は、厚生年金保険の被保険者数と被扶養配偶者数の合計数の国民年金の総被保険者数に占める割合に応じて政令で定めるところにより計算することといたしており、いわば被保険者数の頭割りで両制度が公平に負担するということになるわけであります。  国庫負担は、基礎年金に要する費用に一元化するという考え方であり、負担率は三分の一であります。厚生年金保険では、拠出金額の三分の一ということになります。なお、これとは別に、経過的な国庫負担等が行われることとなっております。  保険料は、自営業者等については、これまでどおり定額としておりますが、昭和六十一年四月から昭和五十九年度価格で月額六千八百円とし、その後も毎年度段階的に引き上げることといたしております。被用者については、昭和六十年十月から保険料率を千分の十八引き上げることといたしておりますが、女子については、男子との格差を解消するため、引き上げ幅を千分の二十とし、その後も毎年千分の二ずつ引き上げることとしております。  第六点は、その他の事項についてであります。  まず、今回基礎年金が導入されることに伴い、通算年金通則法は廃止することとしております。  次に、厚生年金保険については、常時従業員を使用する法人の事業所または事務所について、段階的にその適用事業所とすることとしております。さらに、標準報酬については、六万八千円から四十七万円までの三十一等級に改めることとしております。  また、厚生年金基金については、年金数理に係る業務等の受託機関の範囲を拡大する等の改正を行うこととしております。  第七点は、船員保険についてであります。  船員保険の職務外年金部門については、年金一元化の趣旨等にかんがみ、制度的に同一の内容を有する厚生年金保険に統合することとしております。すなわち、船員は、厚生年金保険の第三種被保険者として適用することとし、過去の被保険者期間についても第三種被保険者並みに扱うこととするほか、職務上の年金について所要の改正をすることとしております。  以上の年金制度の基本的な改正の施行期日につきましては、業務処理面なども考慮し、昭和六十一年四月一日としております。  ただし、障害年金の事後重症制度の改善につきましては、昭和五十九年八月一日から実施することとし、厚生年金保険の標準報酬の上下限及び保険料率の改定については、前回改定時から五年目の昭和六十年十月一日からとしております。  続きまして、第二の大項目であります特別障害者手当の創設について申し上げます。  二十歳以上であって、精神または身体の重度の障害により日常生活において、常時特別の介護を必要とする状態にある在宅の重度障害者に対し、月額二万円の特別障害者手当を支給することとしております。  また、特別障害者手当の支給は、重度障害者の住所を所管する福祉事務所を管理する都道府県知事及び市町村長が行うこととし、特別障害者手当の支給に要する費用は、国がその十分の八を、都道府県または市町村がその十分の二を負担することとしております。  その他、二十歳未満の重度障害児については、従来どおり福祉手当を支給することとしております。また、二十歳以上の従来の福祉手当受給資格者については、所要の経過措置を講ずることとしております。  以上の改正については、昭和六十一年四月一日から実施することといたしております。  最後に、昭和五十九年度におきます年金額等の改定について申し上げます。  まず、拠出制年金につきましては、公務員給与の改定及びこれに連動した共済年金の額の改定等を考慮し、昭和五十九年度において、特例スライドを実施することとしております。改定率は、共済年金と同じく二%であり、また、実施時期は、厚生年金保険、船員保険については四月、国民年金については五月としております。なお、昭和五十七、五十八両年度の物価上昇率のうち、今回実施の二%分を控除した部分については、次回スライドの際、あわせて引き上げる扱いとしております。  福祉年金につきましては、拠出制年金改善にあわせて年金額の改定をすることとしており、老齢福祉年金で申し上げますと、月額二万五千百円を月額二万五千六百円に引き上げることとしております。実施時期については、本年六月といたしております。  また、特別児童扶養手当の額につきましては、福祉年金に準じて、本年六月から改定を行うこととしており、福祉手当の額につきましても、本年六月より所要の改定を行うこととしております。  以上が、この法律案の提案理由及びその概要であります。何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
  333. 有馬元治

    有馬委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  各案に対する質疑は後日に譲ります。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時散会      ――――◇―――――