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1984-07-10 第101回国会 衆議院 社会労働委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年七月十日(火曜日)     午前十時九分開議  出席委員   委員長 有馬 元治君   理事  愛知 和男君 理事 稲垣 実男君   理事  小沢 辰男君 理事 丹羽 雄哉君   理事  池端 清一君 理事 村山 富市君   理事 平石磨作太郎君 理事 塩田  晋君       伊吹 文明君    稲村 利幸君       古賀  誠君    斉藤滋与史君       自見庄三郎君    友納 武人君       中野 四郎君    長野 祐也君       西山敬次郎君    野呂 昭彦君       浜田卓二郎君    藤本 孝雄君       渡辺 秀央君    網岡  雄君       河野  正君    多賀谷眞稔君       竹村 泰子君    永井 孝信君       森井 忠良君    大橋 敏雄君       沼川 洋一君    橋本 文彦君       森本 晃司君    小渕 正義君       塚田 延充君    浦井  洋君       田中美智子君    箕輪 幸代君       江田 五月君    菅  直人君  出席国務大臣         労 働 大 臣 坂本三十次君  出席政府委員         労働大臣官房長 小粥 義朗君         労働大臣官房審         議官      白井晋太郎君         労働大臣官房審         議官      野見山眞之君         労働省労働基準         局長      望月 三郎君         労働省婦人局長 赤松 良子君         労働省職業安定         局長      加藤  孝君  委員外出席者         議     員 多賀谷真稔君         外務大臣官房審         議官      斉藤 邦彦君         外務省国際連合         局婦人差別撤廃         条約批准準備室         長       高木南海雄君         外務省国際連合         局社会協力課長 中村 実宏君         労働大臣官房国         際労働課長   佐藤ギン子君         労働省労働基準         局監督課長   野崎 和昭君         労働省婦人局婦         人政策課長   松原 亘子君         社会労働委員会         調査室長    石黒 善一君     ――――――――――――― 委員の異動 七月十日  辞任         補欠選任   今井  勇君     森下 元晴君   谷垣 禎一君     中川 昭一君   田中美智子君     簑輪 幸代君   菅  直人君     江田 五月君 同日  辞任         補欠選任   森下 元晴君     今井  勇君   簑輪 幸代君     田中美智子君   江田 五月君     菅  直人君     ――――――――――――― 七月十日  医療保険改悪反対等に関する請願外一件(薮仲義彦紹介)(第七三八六号)  医療保険改悪反対充実に関する請願田並胤明君紹介)(第七三八七号)  同(田並胤明君紹介)(第七五六三号)  同(辻第一君紹介)(第七五六四号)  医療保険抜本改悪反対に関する請願大原亨紹介)(第七三八八号)  同(新井彬之君紹介)(第七四五八号)  同外一件(岩垂寿喜男紹介)(第七四五九号)  同(中川嘉美紹介)(第七四六〇号)  同(永江一仁紹介)(第七四六一号)  同外三件(薮仲義彦紹介)(第七五六八号)  同(山原健二郎紹介)(第七五六九号)  医療保険制度改善に関する請願阿部昭吾紹介)(第七三八九号)  同(小澤克介紹介)(第七三九〇号)  同(大久保直彦紹介)(第七三九一号)  同(田並胤明君紹介)(第七三九二号)  同(富塚三夫紹介)(第七三九三号)  同外一件(岩垂寿喜男紹介)(第七四六二号)  同(木内良明紹介)(第七四六三号)  同外二件(新村勝雄紹介)(第七四六四号)  同(田並胤明君紹介)(第七四六五号)  同(中川嘉美紹介)(第七四六六号)  同(稲葉誠一紹介)(第七五七〇号)  同(柴田睦夫紹介)(第七五七一号)  同(辻第一君紹介)(第七五七二号)  同(林百郎君紹介)(第七五七三号)  同(不破哲三紹介)(第七五七四号)  同(村山富市紹介)(第七五七五号)  同外一件(森井忠良紹介)(第七五七六号)  原子爆弾被爆者等援護法制定に関する請願池端清一紹介)(第七三九四号)  同(小林恒人紹介)(第七五七九号)  はり、きゆう治療の患者救済に関する請願薮仲義彦紹介)(第七三九五号)  日雇健康保険制度改善に関する請願富塚三夫紹介)(第七三九六号)  同(山下八洲夫君紹介)(第七四七七号)  医療保険改悪反対充実改善に関する請願加藤万吉紹介)(第七四五六号)  同(中村重光紹介)(第七五六二号)  児童扶養手当制度改悪反対に関する請願外一件(竹村泰子紹介)(第七四五七号)  同(小渕正義紹介)(第七五六六号)  同(森井忠良紹介)(第七五六七号)  医療保険制度抜本改悪反対に関する請願矢野絢也君紹介)(第七四六七号)  年金医療雇用保険改悪反対充実改善に関する請願前川旦紹介)(第七四六八号)  社会保障制度改悪反対に関する請願竹村泰子紹介)(第七四六九号)  原子爆弾被爆者等援護法制定に関する請願金子みつ紹介)(第七四七〇号)  児童扶養手当制度改正反対等に関する請願矢野絢也君紹介)(第七四七一号)  児童扶養手当法の一部を改正する法律案の撤回に関する請願矢野絢也君紹介)(第七四七二号)  医療年金雇用保険抜本改悪反対等に関する請願外一件(中村茂紹介)(第七四七三号)  小規模障害者作業所の助成に関する請願金子みつ紹介)(第七四七四号)  同(谷垣禎一紹介)(第七四七五号)  同(村山富市紹介)(第七五八一号)  児童扶養手当削減反対に関する請願塚田延充紹介)(第七四七六号)  療術の制度化阻止に関する請願吹田愰君紹介)(第七四七八号)  医療保険改悪反対に関する請願藤木洋子紹介)(第七五五九号)  食品添加物規制緩和反対食品衛生行政充実強化に関する請願外二件(佐藤誼紹介)(第七五六〇号)  同(山原健二郎紹介)(第七五六一号)  医療保険制度改悪反対充実改善に関する請願(辻第一君紹介)(第七五六五号)  医療保険年金制度改悪反対に関する請願(辻第一君紹介)(第七五五七号)  同(藤木洋子紹介)(第七五七八号)  健康保険本人の十割給付堅持予防等給付改善に関する請願藤木洋子紹介)(第七五八〇号)  医療保険改悪反対医療保健制度の拡充に関する請願外二件(網岡雄紹介)(第七五八二号)  健康保険本人医療費二割負担反対等に関する請願山原健二郎紹介)(第七五八三号)  労働基準法改悪反対男女雇用平等法制定進に関する請願瀬崎博義紹介)(第七五八四号)  肢体障害者生活保障に関する請願小渕正義紹介)(第七五八五号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  連合審査会開会申入れに関する件  委員派遣承認申請に関する件  男女雇用平等法案多賀谷眞稔君外七名提出衆法第四〇号)  雇用分野における男女の均等な機会及び待遇確保を促進するための労働省関係法律整備等に関する法律案内閣提出第八三号)      ――――◇―――――
  2. 有馬元治

    有馬委員長 これより会議を開きます。  多賀谷眞稔君外七名提出男女雇用平等法案議題とし、趣旨説明を聴取いたします。多賀谷眞稔君。     ―――――――――――――  男女雇用平等法案     〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――
  3. 多賀谷真稔

    ○多賀谷議員 私は、日本社会党護憲共同、公明党・国民会議、民社党・国民連合社会民主連合を代表し、ただいま議題となりました男女雇用平等法案につきまして、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  個人尊厳男女の平等は、国連憲章世界人権宣言にうたわれております人類普遍の原理であります。我が国憲法におきましても、すべて国民個人として尊重され、法のもとに平等であって、性別によって政治的、経済的または社会的関係において差別されることがない旨を明定しておるのであります。また、一九七九年六月に我が国批准いたしました国際人権規約におきましても、あらゆる面で男女平等の権利保障すべきである旨を規定しております。さらにまた、一九七九年十二月の国連総会におきまして女性に対するあらゆる形態の差別撤廃に関する条約が採択され、翌年には我が国も署名しております。  この条約は、「女性に対する差別は、権利の平等の原則及び人間尊厳尊重原則に違反する」ものであることを想起し、「社会及び家庭における男子伝統的役割及び女性役割の変更が、男女間の完全な平等の達成に必要である」という認識に立つことを、その前文において明らかにしております。その上で、第十一条において、「締約国は、男女の平等を基礎として、同一権利、特に次の権利確保するため、雇用分野における女性に対する差別撤廃するためのすべての適当な措置をとる」とし、「労働権利同一雇用機会についての権利職業を自由に選択する権利昇進雇用保障、役務に係る給付及び条件についての権利職業訓練及び再訓練を受ける権利同一価値の労働についての同一報酬及び同一待遇についての権利」等を掲げているのであります。  ところで、我が国の現状を見ますると、近年、女子雇用者の数が、ますます増加の一途をたどり、全雇用者の三分の一を占め、日本経済にとって欠くことのできない労働力となりつつありますが、就業機会や、賃金昇進その他の労働条件については、なお多くの差別の実態が存在しております。一九七五年の国際婦人年世界会議を契機に、欧米各国においては、男女平等政策意欲的に進められ、「雇用機会」から「職場における待遇」に至るまで平等を保障する制度が確立されつつあります。女性差別撤廃条約批准や加入を行った国は既に五十五カ国に達しているのであります。我が国も一九八五年に開催が予定されている「国連婦人の十年」の最終年世界会議までには、この条約批准することを公約しており、そのための国内法整備を急いで行わなければならない義務があります。以上の内外情勢にかんがみ、我々四党は、女性差別撤廃条約趣旨を踏まえて、雇用における男女機会均等待遇の平等の確保を図るため、使用者等による、性別理由とする差別を禁止するとともに、その差別を迅速かつ適正な手続により定正するための有効な措置を講ずる必要があると考え、ここに、共同男女雇用平等法案提出する次第であります。次に、この法律案内容について、その概要を御説明申し上げます。  まず第一に、募集、採用、賃金、配置、昇進、定年、退職その他の労働条件職業紹介職業訓練等について、性別理由とする差別を禁止することとしております。  第二に、性別理由とする差別に対する監督機関として婦人少年室雇用平等監督官を置くこととしておりますが、雇用平等監督官は、啓蒙宣伝苦情相談などの活動も行うことを規定しております。なお、雇用平等監督官は、その職務の遂行のため事業場公共職業安定所その他の施設に対して立入検査をする権限を有することとしております。  第三に、婦人少年室長は、差別禁止違反差別がある旨の労働者からの申告または職権に基づき調査をし、必要と認めるときは、使用者等に対して、その是正のための勧告、命令等を行うことができ、また、差別について適当な措置をとるべき旨の労働者からの申請があったときは、速やかに適当な措置をとるか、とらない旨の決定をしなければならないこととしております。  第四に、婦人少年室長処分に対する不服申し立て審査機関として、中央に、中央雇用平等審査会を、都道府県に、地方雇用平等審査会を置き、それぞれの雇用平等審査会は、労働者委員使用者委員及び公益委員の三者構成とし、それぞれ男女同数としております。  第五に、婦人少年室長処分に不服がある使用者及び労働者は、まず、地方雇用平等審査会に対し審査請求をすることができることとしております用地方雇用平等審査会においては、原則として公開の審理を行い、行政不服審査法第四十条に定める審査請求の棄却、処分取り消し等裁決をするわけでありますが、裁決公益委員で構成する合議体で行うこととしております。次に、この地方雇用平等審査会裁決に不服がある者は、中央雇用平等審査会に対し再審査請求をすることができることとしております。なお、処分または裁決取り消しの訴えは、中央雇用平等審査会裁決を経た後でなければ提起することができないこととしております。  第六に、労働大臣は、具体的にどういう行為が差別的取り扱いであるか判断していく上に必要な基準について、中央雇用平等審査会に諮って定めることとしております。  第七に、この法律の実効を確保するため所要の罰則を設けておりますが、直罰主義をとらず、婦人少年室長処分または雇用平等審査会裁決に従わない場合について、罰則を設けることとしております。なお、労働者申告申請または不服申し立てをしたことを理由不利益取り扱いをすることを禁止し、これに違反した場合についても罰則を設けることとしております。  以上が、この法律案提案理由及び内容概要であります。最後に、この法律を実効あらしめるためには、国及び使用者はその責務を自覚し、労働者においてもその権利を実現するための不断の努力が肝要であることを申し添え、提案理由説明といたします。なにとぞ、慎重審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。(拍手)
  4. 有馬元治

    有馬委員長 これにて趣旨説明は終わりました。      ――――◇―――――
  5. 有馬元治

    有馬委員長 次に、委員派遣承認申請に関する件についてお諮りいたします。  ただいま当委員会において審査中の内閣提出雇用分野における男女の均等な機会及び待遇確保を促進するための労働省関係法律整備等に関する法律案及び多賀谷眞稔君外七名提出男女雇用平等法案の両案について、委員派遣し、審査の参考にいたしたいと存じます。  つきましては、議長に対し、委員派遣承認申請をいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 有馬元治

    有馬委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、派遣地派遣の日時、派遣委員人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 有馬元治

    有馬委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ――――◇―――――
  8. 有馬元治

    有馬委員長 内閣提出雇用分野における男女の均等な機会及び待遇確保を促進するための労働省関係法律整備等に関する法律案及び多賀谷眞稔君外七名提出男女雇用平等法案の両案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。竹村泰子君。
  9. 竹村泰子

    竹村委員 六月二十六日、本会議におきまして土井先生代表質問、七月三日、社労委員会におきまして金子先生質問がそれぞれありましたけれども、そこで問題となりました女性差別撤廃条約機会均等法案の関連について詰めてみたいと思います。  人類の歴史は、近世から近代へ移りますとき、封建的な支配と抑圧から人間の解放を目指して市民革命が行われました。すべての人間が法の前に十等であることを確認し、すべての人間基本的人権保障することでありました。一七七六年のアメリカの独立宣言は、すべての人は平等につくられていると述べ、一七八九年のフランス革命人権宣言は、人は自由かつ権利において平等な者として出生しかつ生存するとうたっております。これは、我が国の新憲法にもこの精神が生かされております。  しかし、女性はわずか三十数年前まで世界的にも家庭の中に閉じ込められ、全く無権利状態に置かれ、参政権もなく、自分の財産も夫に管理され、相続の権利もなく、これが妻の位置でありました。産業革命によって工業化が行われ、男は社会に、女は家庭にという役割分担がされ、結果、女性男性に依存するものという寄生的な存在でしかなかったわけです。  一九一九年ILOが創設されて初めて男女同一賃金、出産前後の就業禁止、深夜業禁止などが打ち出されたわけです。この辺の経過はもう大臣局長もよく御存じのとおりと思いますが、それから七十年、日本女性の地位は向上していると思われますか、労働の現場であるいは家庭の中で。どう思われますか、大臣
  10. 坂本三十次

    坂本国務大臣 歴史的な経過というものは、今竹村さんのおっしゃったような経過をたどって今日に参っておりましょう。しかし、最近の女性の自覚といいましょうか、それから社会的にも責任を持って進出したいというその意欲、能力というものがついてきております。これは先進国、世界的に共通の現象でございましょうけれども、特に我が国を考えてみますると、やはりあなたのおっしゃったように、長い間の男性主導社会であったことも事実でありまするが、最近また、今申しましたように、女性社会に対する進出、また男と同じように働きたいという意欲、そういうものが非常に高まってきておることも事実でございます。この機会をとらえて男女機会均等そして待遇の平等を果たしたいという、今がチャンスである、一つの潮どきである、この機会にひとつ今までの女性に対する差別というものを取り返していくように、今から歴史的な一歩を踏み込みたいというのが私どもの考えてあります。
  11. 竹村泰子

    竹村委員 婦人局長にお伺いいたします。  あなたは、女であるがゆえに差別されているとお感じになったことがおありですか。
  12. 赤松良子

    赤松政府委員 私三十一年公務員として働いております。公務員は、先生御承知のように、憲法保障されております男女の平等というものが直接的に作用する政府の中で働いているわけでございますので、あからさまな差別を受けるということはないわけでございます。
  13. 竹村泰子

    竹村委員 あなたは余り差別をお感じになったことがない方ではないかと私は思うのですけれども、もう一つ婦人局長にお伺いいたします。  女性に対するあらゆる差別撤廃条約女性生き方をどう変えるとお思いになりますか。
  14. 赤松良子

    赤松政府委員 差別撤廃条約は非常に総合的な条約だというふうに理解をいたしております。この中でいろいろな差別についての規定が設けられているわけでございますので、多くの国に対して非常に大きなインパクトを与えるのではないかと思っておりますが、我が国におきましては、先ほど先生も御指摘になりましたように、戦後の大きな改革の中で、法制上は、憲法を初めといたしまして民法、刑法、その他あらゆる分野におきまして、法制度の上での差別というものはおおむね解消されたわけでございます。したがいまして、易くの点で差別撤廃条約規定に明らかに抵触するような法律あるいは政省令というようなものはそう多くはないと思うわけでございますが、若干問題の残っている場所もあると考えられますので、その点につきましては、政府全体といたしましてあるいは婦人問題企画推進本部の中におきまして決められました国内行動計画等で、どういうものがこの条約に抵触するかということはつぶさに検討をし、これを改めるという方針でおるわけでございます。ただいま政府提案雇用における男女の均等な機会待遇確保を促進するための法律もその一環として提出をさせていただいているわけでございます。
  15. 竹村泰子

    竹村委員 私は、女性生き方をどう変え得るかとお尋ねいたしましたので、どうぞ、たくさんお聞きをしたいことがありますので、簡潔にお答え願いたいと思います。  条約理念欧米諸国の対応についてお尋ねいたします。  女性差別撤廃宣言というのがありましたのは一九六七年、その後女性差別撤廃条約が一九七九年に採択されたわけですけれども、十二年間内容宣言から条約までどんな変化があったのでしょうか。外務省お願いいたします。
  16. 高木南海雄

    高木説明員 お答えいたします。  欧州におきましては、婦人差別撤廃宣言以降、EC指令というものがありまして、それに基づいて男女平等の措置がとられております。
  17. 竹村泰子

    竹村委員 私がお聞きしましたのは、差別撤廃宣言及びその条約内容についてどんな変化がその間にありましたかとお聞きしたのです。
  18. 高木南海雄

    高木説明員 細かい点を除きましては、基本的には婦人差別撤廃条約というものは婦人差別撤廃宣言を踏襲してつくられております。
  19. 竹村泰子

    竹村委員 もう少し詳しく説明していただきたいのですが…。
  20. 斉藤邦彦

    斉藤説明員 ただいま御指摘宣言とそれから婦人差別撤廃条約、これは基本理念は変わっておりませんが、婦人差別撤廃に関する条約、これは形式が宣言と異なりまして、法的文書であります条約であるという性質に伴いまして、規定がより詳細なものになっております。一部の項目につきましては、宣言になかったもので条約に含まれているもの、こういうのもございますけれども、いずれも長文のものでございますので、一々比較して、この点が変わったというのをここでお答えするのもちょっと時間がかかるかと思いますので、御質問があれば、具体的な御質問に沿ってお答えしたいと思います。
  21. 竹村泰子

    竹村委員 女性に関する分野で大変大きな特徴があるのですけれども、宣言はこう、条約はこうという違いがあるはずですけれども、おわかりではないでしょうか。
  22. 斉藤邦彦

    斉藤説明員 申しわけございませんが、幾つかの相違点がございますので、今竹村委員の御指摘の大きな相違点というのがどのことを言っていらっしゃるのかちょっとわかりかねます。
  23. 竹村泰子

    竹村委員 それでは、時間がもったいないのでお教えいたします。宣言家事育児女性役割であることを前提にして、この役割に留意して男女平等を実現することにしておりましたけれども、条約では家事育児を両親の役割とした上で、母性尊重男女役割分担を変更することが平等実現に不可欠だったとしたわけです。よく覚えておいてください。  なるほど、この点につきましては、一九八〇年の国連婦人の十年世界会議における差別撤廃条約署名式の演説で、日本政府高橋展子首席代表も強調しておられますね。それによりますと、「しかし、こうした状況は、決して、婦人の完全な社会参加が実現したことを意味するものではありません。たしかに、法制上その他多くの分野において少なからぬ進歩が達成されましたが、現実にはなお、伝統的男女役割分担意識社会に根強く残っており、これに基づく社会慣行があります。この意識及び慣行の改変という困難な問題にどのように対処していくかが今後のわが国の主要な課題です。」とはっきり言っておられます。高橋展子日本政府首席代表のお言葉です。  女性差別撤廃条約はその前文で、この条約が必要になった理由を挙げています。どんな文章になっていますか。
  24. 斉藤邦彦

    斉藤説明員 この条約前文は、条約趣旨、目的を鮮明にしているものでございますけれども、女子に対する差別人間尊厳尊重に違反すること、したがって、あらゆる分野女子男子と同等の条件で最大限に参加することを必要としていること、それから家族の福祉及び社会の発展に対する女子の大きな貢献、母性社会的重要性に留意して、社会及び家庭における男女間の完全な平等が必要であること等をうたっております。
  25. 竹村泰子

    竹村委員 まとめてしまわれますと、大事なところが抜けてしまっているのですけれども、その中で一カ所申し上げますと、「国際連合及びその専門機関の主催の下に締結された男女権利の平等を促進する国際条約を考慮し、国際連合及びその専門機関により採択された男女権利の平等を促進する決議、宣言及び勧告にも留意し、しかしながら、これらの種々の文書にもかかわらず婦人に対する広範な差別が依然として、存在していることを憂慮し、」という一文がございます。こういうところは、これだけ世論的にも騒がれ、機会均等法案提出され、そして雇用平等法ということで、もう何年来問題になっていることですから、外務省はきちんと押さえていただかないと困ります。  その条約基本理念なんですけれども、女性に対するあらゆる形態の差別撤廃に関する条約は、初めに前文がありますね、その四つの理念を示しております。女性に対する差別は、権利の平等の原則及び人間尊厳尊重原則に違反し、女性基本的人権を侵害する。次に、平和、軍備縮小が前提条件である。民族や国家間の差別や侵略のあるところでは人権も平等もあり得ない。女性の全面的社会参加、政治、経済、社会、文化あらゆる分野女性が参加することが必要である。母性社会尊重家事男女分担、男女役割の変更が完全な平等の達成に必要である。  これに反しまして、今回提出されました政府案には基本的理念が、一応「基本的理念」と書いてありますけれども、何もない。理念ではない。これは考え方でありまして、二条の「理念」ではない。「理念」とは一体何なんでしょうか、お答えください。
  26. 赤松良子

    赤松政府委員 御質問趣旨がよくのみ込めませんので、あるいは見当外れになるかと恐れるものでございますが、第二条の「基本的理念」というのは、このただいま提案中の法律の基本的な考え方を述べたものでございまして、条約の基本的理念と必ずしも同じということはございません。この法律の基本的な考え方を述べたものでございます。
  27. 竹村泰子

    竹村委員 私は「理念」とは何とお思いになりますかとお聞きいたしました。大臣どうですか。「理念」とは何ですか。
  28. 坂本三十次

    坂本国務大臣 法律的な細部の解釈は余り詳しく存じませんが、理念といえば、やはりあるべき姿、私はそう思っております。
  29. 竹村泰子

    竹村委員 現実的なわけですね、あるべき姿。「理念」というのは、私もちょっと辞書を引っ張りましたけれども、「理性によって到達する最高の概念」ということです。  この第二条に示されております「基本的理念」は理想の目標ですか。労働省の理性によって到達する最高の概念なんですか。大臣どうですか。
  30. 赤松良子

    赤松政府委員 お答えいたします。最高のものというのが当たるか当たらないかはちょっとあれでございますが、あるべき姿というのは、必ずしも現実にある形ではなくて、目指すべき姿であるというふうに思います。
  31. 竹村泰子

    竹村委員 女性に対する差別撤廃条約は、この点について差別をどのようなものと規定しているでしょうか。
  32. 斉藤邦彦

    斉藤説明員 この条約では、第一条で差別の定義を行っております。それによれば、女性に対す男女間の完全な平等の達成に必要であることを認識しことありますね。  外務省にお尋ねいたしますが、男女雇用平等に関して、EC、ヨーロッパ共同体、先ほど少し出ておりましたけれども、加盟各国に対して指令を出していますね。差別撤廃条約趣旨を実現するためのものと思いますけれども、その指令で指示されている原則はどうなっていますか。
  33. 高木南海雄

    高木説明員 ECにおきましては、男女平等の問題に関し、これまで幾つかの指令を決定しておりますけれども、一九七六年、雇用平等について規定した男女均等待遇についての理事会指令を発しております。  この指令は、雇用職業訓練及び昇進機会並びに労働条件に関して男女均等の原則の履行を課すものでございまして、加盟国は、均等待遇原則に反する法令の廃止、労働協約、労働契約等に係る規定に含まれる均等原則に反する条項の無効、廃止、改正の宣言、最初にそれらを規定した保護との関係がもはや根拠を失い均等待遇原則に反する規定の見直し、雇用職業訓練及び昇進機会並びに労働条件に関する均等待遇原則が自分に適用されていないと考えるすべての者が法的保護を受けられるようにする等の措置をとらなければならない、と規定しております。  この指令に基づきまして、EC諸国では法制整備が進められております。     〔委員長退席、愛知委員長代理着席〕
  34. 竹村泰子

    竹村委員 どうも先ほどから大事なことを飛ばされるので困るのですけれども、第二条「性別、特に婚姻上若しくは家族上の地位に関連した理由に基づくいかなる差別も存在してはならないことを意味するものである。」また、その3及び4に「本指令は、女子保護に関する規定、特に妊娠・出産に関連した規定を妨げるものではない。」「本指令は、男女機会均等を推進する措置、特に第一条第一項に規定する範囲で、女子機会に影響を与える不平等の存在を除去することによるものを妨げるものではない。」というところがありますね。  このEC指令を出されて、そして差別撤廃条約へと来るわけですが、この差別撤廃条約批准あるいは加入国は何カ国ですか。
  35. 斉藤邦彦

    斉藤説明員 ことしの五月三十日現在で本条約批准した国が五十一カ国、それから加入した国が六カ国、合計いたしまして締約国数は現在五十七カ国でございます。
  36. 竹村泰子

    竹村委員 欧米諸国、特にEC加盟諸国については、国名も明らかにしてください。
  37. 斉藤邦彦

    斉藤説明員 本条約批准しました欧米主要国といたしましては、スウェーデン、ポルトガル、ノルウェー、オーストリア、デンマーク、ギリシャ、フランス、スペイン等でございます。このうちECに入っておりますのは、フランス、デンマークそれからギリシャでございます。ECの加盟国といたしましては以上の諸国であると存じます。
  38. 竹村泰子

    竹村委員 ありがとうございました。  イギリスの法律で、一九七五年の性差別禁止法というのがございますね。その目的、理念原則、それからついでに、フランス、西ドイツ、イタリア、スウェーデン、アメリカなど、理念、目的、原則についてどう書かれているか、教えてください。
  39. 松原亘子

    ○松原説明員 お答えいたします。  今、スウェーデン、イギリス、ドイツ、イタリア等について御指摘がございましたけれども、目的規定があるのはスウェーデンだけでございます。スウェーデンのいわゆる男女雇用平等法におきましては、「この法律は、労働労働条件労働における発展の可能性に関し男女同権を促進することをその目的とする。」といたしておりますが、スウェーデン以外の国におきましては、目的規定は特にございません。  それから基本的理念でございますが、基本的理念として一条を設け規定している国はないと承知いたしております。
  40. 竹村泰子

    竹村委員 イギリス、フランス、西ドイツ、イタリア、スウェーデン、アメリカとお聞きしたのですが、それで全部ですか。
  41. 松原亘子

    ○松原説明員 お答えいたします。  先生の御指摘になりました国で目的規定がありますのは、今申し上げたとおりスウェーデンだけでございます。私どもの把握している限りにおいてはスウェーデンだけでございます。
  42. 竹村泰子

    竹村委員 目的、理念というのはそうかもしれませんけれども、各国とも人間尊厳男女の平等、女子労働権は基本的人権であると考え、また宣言していると思いますが、違いますか。そして、雇用の入り口である募集、採用、配置から賃金昇進訓練、退職、解雇に至るまで、つまり雇用のあらゆる段階で女子労働者差別的取り扱いを禁止しているわけです。また、国連やILOにおいてもその他の国においても、それまで人権宣言憲法男女の平等が掲げられてはいても、実際にはなかなか男女の平等は実現しない。そのため条約や各国の雇用平等法が必要となり、差別禁止を具体的に立法化するに至ったわけです。そして、家事育児男女及び社会の責任であり、伝統的な役割分業は変更されなければならなくなった、私はこう見るのですけれども、どうですか。
  43. 赤松良子

    赤松政府委員 先生の御指摘の点につきましては、いろいろたくさんな法律がございまして、それぞれのつくり方でつくっておりますので、一々検討いたしましてそうだとかそうでないとかいうふうに申し上げるべきかもしれませんが、手元にある資料によりますと、いろいろな形での法形式がございます。  例えば、西ドイツでは民法の改正という形、フランスでは刑法の改正という形、アメリカでは公民権法の第七編という形、イギリスでは先ほどおっしゃいました性差別禁止法という独立の法律、カナダでは人権法、ベルギーでは経済改革法の第五編、デンマークでは雇用等に関する男女平等待遇法でございます。オランダでは男女均等待遇法というふうにいろいろな国によってさまざまな規定の仕方でございますので、それについて細かくとこかどういうふうだということではお答えしにくいわけでございますが、おおむね先生のおっしゃったようなことが言えるのかと存じますが、細かいことにつきましては、あるいは違っている点もあろうかと存じます。
  44. 竹村泰子

    竹村委員 ありがとうございました。  大体共通して言えることは、雇用のあらゆる段階で女子労働者差別的取り扱いを禁止している、そして男女平等はなかなか実現しにくい、家事育児男女及び社会の責任であり役割分担は変更されなければならないというような、基礎的な幾つかの点は共通してとれると思いますが、いかがですか。
  45. 赤松良子

    赤松政府委員 先ほど申し上げましたようにいろいろな種類の法律がございますので、その中で役割分担の変更ということを明文で述べているというところがすべてに共通するというふうな認識は、私どもとしてはいたしておりません。
  46. 竹村泰子

    竹村委員 そうですか。では、ILOについてお伺いします。  外務省、ILOに対する十年、五年前からの日本の拠出金は第何番目ですか。それと金額も教えてください。
  47. 中村実宏

    中村説明員 お答えいたします。  ILOに対する我が国の分担金は、ただいま加盟国のうちの第三位となっております。金額は、一九八四年におきまして三十二億円強となっております。
  48. 竹村泰子

    竹村委員 ありがとうございました。  ILO百十一号条約についてお伺いいたします。  昨年のILO総会で、チェコスロバキアがILO百十一号条約に違反しているとして条約勧告適用委員会で問題になりましたね。私はここにそのILOの総会に実際に参加された中山和久さんという早稲田大学教授がある雑誌に発表された論文を持っております。短い文章ですが、ちょっとその一部を読んでみようと思います。  「八三年のILO総会でチェコにおける思想差別をこの条約違反だとする条約・勧告適用委員会の議論がもめた時に、日本政府代表はチェコ政府を非難する結論を支持した。思想差別も、性差別も人道上許せない。だがその日本は、国内で三菱樹脂事件判決によって合憲とされた雇入れにあたっての思想差別を公然と行い、いま、男女平等法の立案にあたっても、性による雇入れ、昇進・昇格差別罰則によって排除しようとしない国である。チェコを批判するなら、自らの衿を正すべきである。反共十字軍に組みした日本政府代表のウシロメタさを、私はその光景を見ながらつくづく考えていた。」こういう文章があります。  日本政府はチェコを非難する結論を支持したのです。どうですか。
  49. 中村実宏

    中村説明員 昨年のILO総会におきましてチェコ案件が審議されました。  先ほど先生がおっしゃいましたように、百十一号条約に関する案件ということで、御存じのとおり、百十一号条約雇用及び職業についての差別待遇に関する条約でございます。この審議におきましては、社会主義諸国側からはチェコを守ろうという動き、それから、西側からはそれに対していろいろな意見が出たわけですが、討論の結果、大体次のような報告書ができました。その骨子は、「政治的考慮による解雇が少なくなってきたが、委員会はまだ問題が残っていると考える。本委員会は話合いの継続を期待するとともに、次回は第百十一号条約が真に適用されていることを示す詳細な報告を出すことを期待する。」こういう報告書が本会議において採択に付されまして、日本政府代表団は、この条約批准した国は当該条約を遵守すべきであるという基本的立場に立ちまして、このレポートに賛成した次第でございます。
  50. 竹村泰子

    竹村委員 そこで、その条約についてお尋ねいたします。  これはどんな趣旨条約なんですか。説明してください。
  51. 佐藤ギン子

    ○佐藤説明員 ILO百十一号条約は、職業訓練を受けること、雇用されること、個々の職業に従事すること及び雇用条件につきまして、人種、皮膚の色、性、宗教、政治的見解、国民的出身または社会的出身を理由とする差別、除外または優先的待遇を除去するために国家のとるべき方針について明らかにいたしまして、こうした方針の遵守などを確保するための法令の制定、また当該方針と両立しない法令や慣行の廃止などについて規定したものでございます。
  52. 竹村泰子

    竹村委員 ありがとうございました。  人種、皮膚の色、性、宗教、政治的見解、国民的出身、社会的出身に基づくすべての差別を禁止しておりますね。これは一九五八年、二十六年も前に採択されておりますが、日本政府はどういう態度をとりましたでしょうか。
  53. 佐藤ギン子

    ○佐藤説明員 おっしゃるとおり、一九五七年と一九五八年のILO総会におきまして百十一号条約の採択のための討議が行われたわけでございます。  日本政府といたしましては、この問題の重要性は十分認識いたしまして、討議に参加いたしました。最終。的には、妥当な趣旨条約案が起草されましたので、この条約案の採択には賛成票を投じております。
  54. 竹村泰子

    竹村委員 結構です。  このILO百十一号条約よりはるかに進んだ内容を持つ差別撤廃条約批准するのですから、このILO条約も当然批准していいのではないですか。いかがですか。なぜ二十六年も批准しないのですか。
  55. 佐藤ギン子

    ○佐藤説明員 我が国では、ILO条約につきましては、国内法制との整合性を十分検討いたしまして、それを確保いたしました上で批准することにいたしております。  この百十一号条約は、先生も御存じのとおり、大変広範な差別を対象といたしておりまして、また、差別撤廃のための法令の制定等についても規定しております。この条約に関しましては、国内法制の整備につきまして綿密な検討が必要でございまして、現在検討中でございますので、今後とも鋭意検討してまいりたいと思っております。
  56. 竹村泰子

    竹村委員 現在とおっしゃいますけれども、二十六年間です。なぜこれは二十六年も批准できないのでしょうね。日本にチェコを非難する資格がありますか。どうですか。
  57. 佐藤ギン子

    ○佐藤説明員 先生おっしゃいましたように、検討に時間がかかっているではないかということでございますが、先ほども申し上げましたとおり、かなり広範な差別を禁止しておりまして、これにつきまして法令その他で差別の禁止を確保するようにということでございますので、先ほども申し上げましたように、条約国内法の整合性についてはかなり細かなところまで検討しなければならないということで、時間がかかっているわけでございます。
  58. 竹村泰子

    竹村委員 二十六年も国内法整備できない。どこがひっかかっているのですか。
  59. 佐藤ギン子

    ○佐藤説明員 時間がかかっているのに最終結論が出なくて何事かということかもしれませんが、まだ全部の結論が出ているわけではございませんが、性による差別の禁止についてもそうでございますし、そのほか皮膚の色についての差別その他、広範なものでございますから、もう少し検討が必要かと存じます。
  60. 竹村泰子

    竹村委員 どこが抵触しているかお聞きしたいところですけれども、今現在すぐに言えないでしょうね。外務省はどうですか。
  61. 佐藤ギン子

    ○佐藤説明員 これまで検討してまいりました結果、かなりの部分については可能な分もございます。ただ、性差別の禁止につきましても、先生方御存じのとおり、まだ十分な対応ができていないのではないかということもございますし、そのほかにも、さっき申し上げましたように、広範のものでございますので、もう少し検討の時間をかしていただきたいと存じます。
  62. 竹村泰子

    竹村委員 わかりました。今のお答えで、性差別禁止のところが大きくひっかかっているということがよくわかりました。  賛成しているのに批准の努力をするのは当然の責務であると私は思うわけですけれども、批准するのですか、しないのですか、あるいは検討するのですか、そのめどはいつごろですか。
  63. 佐藤ギン子

    ○佐藤説明員 仮に、現在御審議いただいております関係法案が成立いたしますれば、女子についての部分はほぼ解決するというふうに考えますので、私どもとしても、さらにどこのところが条約と抵触するかということについて鋭意検討いたしまして、できる限り早く批准できるようにいたしたいと考えております。
  64. 竹村泰子

    竹村委員 めどはお聞きしても出てこないようですけれども、少なくとも検討していただくことをお約束していただけますか。
  65. 中村実宏

    中村説明員 私どもといたしましても、引き続き関係省庁にお願いいたしまして、批准のできるような環境整備を促進するようお願いしてまいりたいと思っております。
  66. 竹村泰子

    竹村委員 大臣、どうですか。
  67. 坂本三十次

    坂本国務大臣 私も詳しいことは余り存じません。今の外務省の言うようなもので、やはり努めるべきところは努めて、そして批准をできるだけ早く努力することは政府としても当然だろうと思っております。
  68. 竹村泰子

    竹村委員 お約束いただいていいのですね。  私がなぜこうしつこく言っているかといいますと、この百十一号条約から、募集、採用から退職まで雇用のすべての段階で差別は禁止しなければならないということになるからでございます。ILOの総会で百十一号条約を根拠にチェコを非難された日本政府ですから、当然、我が国みずから百十一号条約尊重するという態度を貫くのが筋であると考えますが、いかがですか。
  69. 佐藤ギン子

    ○佐藤説明員 ILO条約を審議いたしましてこれを採択する場合の態度でございますが、政府といたしましては、こういう国際的な基準が設定されるということにつきまして、趣旨としていいことではないかということには賛成の票を投ずることにいたしておりますが、批准するかどうかということにつきましては、先ほども申し上げましたように、国内法制との整合性を十分に確保してからということになるわけでございまして、例えばアメリカの場合ですと、多くの条約につきまして賛成票を投じておりますが、実際に批准しているものは七というようなことでございます。
  70. 竹村泰子

    竹村委員 納得できませんね。おかしいですね。よその国に対しては百十一号条約尊重を迫りながら自国では尊重しない、随分身勝手な話じゃないでしょうか。どうですか、日本の態度としてそういうことでいいのでしょうか。
  71. 斉藤邦彦

    斉藤説明員 この条約批准すべきかどうかという問題に対する日本政府の態度は、今労働省からお答えしたとおりでございます。  他方、この条約の加盟国、締結国でございますチェコスロバキアがこの条約を完全に実施していないという事実に対して、他の諸国がこれをどうとらえるかという話は、また別の次元の問題だろうと考えますので、私の了解するところでは、ILOで行われましたことは、チェコがこの百十一号条約批准しておきながらこれを十分実施していないことに対する批判、これに日本が賛成の態度を表明したということであろうと考えます。
  72. 竹村泰子

    竹村委員 同じことじゃないですか。非難しておきながら日本批准しない。同罪じゃないですか。先ほどお聞きしましたけれども、拠出金は世界で第三位、金額も三十二億円、大きなお金ですね。この態度は立派だと思います。しかし、お金は出すけれども批准はしない。これは何でしょうかね。まさにエコノミックアニマルと言われても仕方のないような、お金は出しましょう、しかし批准はできません。この関係はどうなっているのですか。外務省、これでいいのですか。
  73. 斉藤邦彦

    斉藤説明員 繰り返しになって恐縮でございますけれども、条約に加盟しました以上、その条約を誠実に実施する義務がございます。したがいまして、この点におきましてチェコスロバキアの行動に問題があったというのが、昨年度ILO総会で行われた行動の基礎であったと存じます。  他方、我が国がこのILO条約のどれを批准していくべきかという話は、これは我が国労働政策上の問題でございます。我が国の慣習といたしまして、国内法制を十分整備してから、条約に一たん加盟しました以上、これを一〇〇%完全に実施できるという体制を国内的に整えましてから加入するという慣習を一貫してとっておりますので、先ほど来労働省から御説明がありましたとおり、国内法制上の準備がまだ必ずしも整っていないということのために批准に至っていないということだと存じますので、そのILO全体に対する日本の積極的な態度と、この個別の条約をまだ批准していないということの間には、必ずしも矛盾している関係があるというふうには考えない次第でございます。
  74. 竹村泰子

    竹村委員 どうもよくわかりませんね。お金は出すけれども、後々影響を及ぼしそうな批准についてはまあやめておこう、これは外務省は労働省に対して、困るじゃないかと苦情を言ってもいいんじゃないですか。どうですか。
  75. 中村実宏

    中村説明員 私どもといたしましても、機会をとらえまして関係各省庁に、この条約のみならず未批准条約につきまして、批准できる環境整備につきましてお話ししております。
  76. 竹村泰子

    竹村委員 女性差別撤廃条約に署名したあのときの毅然とした態度で臨んでほしいと思います。  ここで一つ確認しておきたいことがあります。  屋山太郎という政治評論家がいますね。この人が雑誌「諸君」の五月号に、男女雇用平等法について論文を書いておりますね。この方は政府の審議会の委員をやっておられる方だと聞いておりますが、どうですか、大臣は御存じですか、お読みになりましたか。局長はどうですか。
  77. 赤松良子

    赤松政府委員 ただいま御指摘の「諸君」に掲載されました屋山太郎氏の論文は、よく熟読をいたしました。  この方が審議会の委員がどうかは、審議会もたくさんございますので存じませんが、少なくとも労働省の審議会の委員ではないというふうに記憶をいたしております。
  78. 竹村泰子

    竹村委員 この論文は極めて重要な問題を提起していると思うのです。論文全体について私は全然価値を認めませんけれども、ここで事実問題としては一つ確認しておきたいことがございます。  この方は、差別撤廃条約の第二条について、政府の国連局の仮釈によりますと、「男女平等の原則の実際的な実現を法律その他の適当な手段により確保すること」という個所がありますね、これが、英語の正文では「法律」の後に「and」が入っているから、正確に訳すならば「法律およびその他の適当な手段…」とするべきだと言っています。そして、フランス語の正文では英語の「and」に当たる部分が「ou」、つまり英語の「or」に当たる言葉だとなっている。だから、フランス語の正文ではこの個所は「法律あるいはその他の…」となっていて、立法義務は必要条件ではなくなっていると言っているわけです。そこで外務省は大変お困りになって、「法律その他の適当な手段」とあいまいな表現で、つまりどちらも省いて「立法その他の措置」と仮釈されたと推論しているのです。  そこで、お伺いいたします。フランス語正文はどうなっているのでしょうか。また、その意味は英語の「and」なのか「or」なのか。さらに、外務省は、英仏どちらの言葉をとったらよいか困ったために、仮訳のようなどちらも省いてこの表現をお選びになったのか。お答えください。
  79. 斉藤邦彦

    斉藤説明員 ただいま御質問にありましたこの二条でございますけれども、この仮釈におきましては、御指摘のとおり「法律その他の適当な手段」という形になっております。 私どもといたしましては、ここの規定趣旨は、これは法律による措置とその他の措置の両方をとることを求めているものではなく、いずれか一方、いずれにいたしましても、婦人に対する差別撤廃につながる措置、実効性のある措置をとることを要求されている趣旨だろうと考えております。  この点、英語及び、フランス語の「and」とか「or」という使い方、これはかなりあいまいと申しますか、区別のはっきりしない点がございます。英語で「and」と書く場合、これはフランス語にする場合は「or」が一番適当な場合もございます。この規定は、御指摘のとおり、英語では「and」になって、フランス語では「or」に当たります「ou」という言葉が使われてございますが、この趣旨は、英語のテキストとフランス語のテキストの間にそごがあるということではなくて、先ほど私が申し上げましたとおり、立法上の措置あるいはそれ以外の措置、いずれにしても適当な措置をとれという趣旨をそれぞれの言葉におきましてよりよく表現したものであろうと考えております。
  80. 竹村泰子

    竹村委員 フランス語では「ou」になっているわけですか。英語では「and」になっているわけですね。やはり「立法そしてその他の適当な手段」という方が正しいのではないかと思いますけれども、まあフランス語のことはよくわかりませんが…。  そこで、お願いをしますが、屋山さんのような方でさえ政府の仮訳について、意味がはっきりしない、いやむしろ、これを素直に読むと、法律でもよいしその他の適当な手段でもよいと受け取れると。ここはこういう重大な部分なんですね。ですから、そう言われるわけですから、今後この翻訳は、これは仮訳ですから、誤解のないように、「法律及びその他の」と明快にしていただけますか。どうですか、外務省。
  81. 斉藤邦彦

    斉藤説明員 訳文に関しましては、この条約を国会に御提出する時点までの間に法制局等の間で十分協議をして最終的な形にしたいと存じますけれども、私の承知しておりますところでは、我が国法律上「及びその他の」というふうに重ねて使うということは余りないように了解しております。その「及び」がなくて「法律その他の」と書きましても、これは「及び」の意味がないということでは必ずしもないというふうに了解しておりますので、この場で私が必ず「及びその他」という訳文にいたしますというお約束をするわけにはまいりませんけれども、いずれにいたしましても、原文の趣旨を忠実に反映するような日本語を見つけて、そのテキストをもって国会に提出したいと考えております。
  82. 竹村泰子

    竹村委員 お約束くださってありがとうございます。大臣、あなたにも一般的にお願いしておきたいのですけれども、今後は国際的な文書の翻訳に当たっては、今指摘したことのないように、日本語は難しいですから十分配慮していただけますか。どうですか。お約束ください。
  83. 坂本三十次

    坂本国務大臣 十分配慮をさせるように申しておきます。
  84. 竹村泰子

    竹村委員 外務省は、今の労働大臣の発言もあり、今後翻訳については十分よくわかる日本語で訳していただけますか。よろしいですか。
  85. 斉藤邦彦

    斉藤説明員 御要望に沿えるように努力いたします。
  86. 竹村泰子

    竹村委員 ありがとうございました。  少し話題を変えます。雇用平等法と勤労婦人福祉法の改正についてお尋ねしたいと思います。  さて、先ほどの質疑で、差別撤廃条約趣旨欧米諸国のその具体化についての考え方、取り組みがはっきりしたわけですけれども、国内法をどう考えるべきかについて質問を続けたいと思います。  男女雇用平等問題については、一九七八年十一月二十日に労働基準法研究会の報告が出されていますね。この報告は男女差別を禁止する範囲についてどのように指摘しておりますか。
  87. 松原亘子

    ○松原説明員 お答えいたします。  募集、採用から定年、退職、解雇までの雇用管理の全ステージにおける差別を禁止する立法を制定すべきであるという提言をいたしております。
  88. 竹村泰子

    竹村委員 その後、一九七九年十二月には男女平等問題専門家会議が発足しています。八二年五月に出されたこの専門家会議の報告書「雇用における男女平等の判断基準の考え方について」は、「雇用における男女平等」あるいは「機会の均等及び待遇の平等」という言葉を使っていますね。どうですか。
  89. 松原亘子

    ○松原説明員 お答えいたします。この「雇用における男女平等の判断基準の考え方について」と題しまして報告されました男女平等問題専門家会議の報告におきましては、「雇用における男女平等を実現するということは、雇用における各種の機会男女を問わず等しく確保される状況、すなわち、機会の均等を確保し、個々人の意欲と能力に応じた平等待遇を実現すること」であるというふうに指摘しております。
  90. 竹村泰子

    竹村委員 立法化の準備に当たった婦人少年問題審議会でも「男女雇用平等法」あるいは「機会の均等及び待遇の平等」という言葉が使われていますね。どうですか。
  91. 赤松良子

    赤松政府委員 「機会の均等」「待遇の平等」という言葉が使われております。
  92. 竹村泰子

    竹村委員 ところが、今度政府から御提案されたこの法律では「平等」という言葉は一つもないのです。「均等な機会及び待遇」となっていますね。どうしてですか。
  93. 赤松良子

    赤松政府委員 ただいま申し上げましたように、これまで「機会の均等」「待遇の平等」という言葉をペアのようにして使ってまいりました。ところが、法案を具体的につくるという作業になりますと、一つ法律の中で同じ意味であれば同じ言葉を使うということが原則だというふうに聞いております。そこで「均等」と「平等」とが同じ意味か違う意味がということが一つ問題になると思います。そして次に、違うとすれば別の言葉を使えるわけでございますが、同じであればどちらか一つにするという選択が出てくるわけでございます。  そこで、同じか違うかという問題でございます。「均等」と「平等」という言葉は、いろいろ清書など、辞書もたくさん調べたわけでございますが、明らかに違う意味であるというふうにはどの辞書を調べましても書いてなかったというふうに記憶をいたしております。したがいまして、一つ法律の中で「機会の均等」と「待遇の平等」というふうに使い分けるということは難しいということでございます。これが法律でなければそういう言葉を使うことは一向に差し支えないわけでございますから、私も時々、ずっと習慣にして使っておりました。「機会の均等」と「待遇の平等」を確保するという言葉は、お話をするときには今でも使うことがよくございます。これは、別にだれからもとがめられることはないのではないかというふうに思っております。しかし、法律用語としては、一つ一つ法律の中では同じ意味であれば一つの言葉を使えということになるということは認めなければならない。  そこで、では「均等」という言葉ではなくて「平等」を使うという方法もあったのではないかということになろうかと思いますが、先生も御存じのように、憲法では「平等」という言葉を使われております。しかしながら、労働関係の法律ではおおむね「均等」という言葉が使われているわけでございまして、基準法の三条のタイトルは「均等待遇」というタイトルでございますし、また、そのほかの労働関係の法律では「均等」という言葉が使われているのを常といたしているわけでございます。そこで、今度の御提案中の法律労働関係の法律でございますので、その例に倣いまして「均等」としたわけでございます。
  94. 竹村泰子

    竹村委員 言葉は厳密でなければならない。一つ法律の中に同じ内容の言葉を二つ使うのはぐあいが悪いということですね。  労働婦人少年局編「男女平等への道」という本がございますね。七九年三月に出されておりますけれども、この中の前書きで森山眞弓前労働婦人少年局長がこういうことを言っていらっしゃいます。「今こそ働く意欲のある女子労働者男子と平等の就業機会待遇を得て有意義な職業年活を送ることができるような制度保障を必要としているということが言えましょう。」今赤松局長も言われましたけれども、「平等」という言葉をどうしても使ってはいけないというわけではないですね。どちらかでよいわけですね。「均等」と「平等」の二つは使えないから「均等」に統一した、労働用語であるということですね。雇用平等法ですから、労働省の管轄であり、労働用語が出てくるのでしょうけれども、これは女子基本的人権にも絡む問題であり、決して労働分野だけでおさまる問題ではないわけです。すると、逆に「平等」という言葉に統一しても別に構わないのではないですか。「男女平等」という言葉こそ国民にもなじみやすく、しかもこれまで一般に私たちも使ってきたし、マスコミでもそういう呼び名でならわされていた。女性のための運動をしてきた多くの人々もみんなそう呼んできたわけです。それが突如として機会均等法というふうになったわけですけれども、これは「平等」という言葉を使ってはいけないのですか。
  95. 赤松良子

    赤松政府委員 「均等」と「平等」とどちらを使うべきかということは、先ほど御説明をいたしたとおりでございますが、「平等」という言葉がよく使われるということはおっしゃるとおりでございまして、私もよく使っているつもりでございます。法律用語として「平等」は使えないかといえば、それは使えないことはございません。しかし、「均等待遇」という言葉も労働基準法の中にあるくらいでございます。また、ほかの法律にもいろいろ使われているわけでございます。また、外国の法律を訳した言葉もイコール・エンプロイメント・オポチュニティーというような場合、あるいはコミッションの名前、EOCとかいろいろございますが、そういうのをほとんど機会均等法とか機会均等委員会とかそういうふうに使っておりまして、決して「均等」という言葉が全く耳なれない言葉だというふうにも思わないわけでございます。したがいまして、労働分野であるという点にかんがみて「均等」を選んだわけでございます、  それから、先生の御指摘の中で、この法律はいろいろな、労働だけの問題ではないというふうにおっしゃいましたが、それにつきましてねこれはあくまで雇用分野におけるというふうに分野を限った法律でございまして、労働から外へはみ出るという趣旨法律ではないように理解をしているわけでございます。条約になりますと、これは条約は大変広く総合的な広範なことを規定しておりますから、決して雇用に関するとばかりではございませんが、この法律は、条約の中の雇用分野において均等な機会あるいは待遇の平等、そういうものを確保するために提案いたしているわけでございまして、これが雇用分野以外のものにあるいは及ぶという間接的な効果があるという意味でお使いになったのであれば、あるいはそう言えるかもしれませんが、直接的にはこの法律の及ぶ分野雇用であるというふうに思っているわけでございます。
  96. 竹村泰子

    竹村委員 同じだとせんだってから繰り返し言われるわけですけれども、「均等」な待遇と「平等」というのは、外国語は同じかもしれませんが、日本語の意味としてはニュアンスが大分私は違うように思います。これはまた後で取り上げることにいたしまして、次に移ります。  そこで、政府案は、現行の勤労婦人福祉法の改正によって、名前も変え、新たな規定も盛り込んで、条文の配置も目まぐるしいほどに置きかえ入れかえて、いわゆる機会均等法をおつくりになろうということですが、まず、現行の勤労婦人福祉法の目的、基本理念はどうなっておりますでしょうか。
  97. 赤松良子

    赤松政府委員 現行の勤労婦人福祉法の目的は、第一条にございますが、「この法律は、勤労婦人の福祉に関する原理を明らかにするとともに、勤労婦人について、職業指導の充実職業訓練の奨励、職業生活と育児家事その他の家庭生活との調和の促進、福祉施設の設置等の措置を推進し、もって勤労婦人の福祉の増進と地位の向上を図ることを目的とする。」と書いてございます。  基本理念もお尋ねだったかと存じますから読み上げますと、第二条に、基本理念といたしまして、「勤労婦人は、次代をになう者の生育について重大な役割を有するとともに、経済及び社会の発展に寄与する者であることにかんがみ、勤労婦人職業生活と家庭生活との調和を図り、及び母性尊重されつつしかも性別により差別されることなくその能力を有効に発揮して充実した職業生活を富むことができるように配慮されるものとする。」第三条も基本的理念でございまして、「勤労婦人は、勤労に従事する者としての自覚をもち、みずからすすんで、その能力を開発し、これを職業生活において発揮するように努めなければならない。」というふうに規定されております。
  98. 竹村泰子

    竹村委員 ありがとうございました。  この勤労婦人福祉法を制定するきっかけというと何なんでしょうか。
  99. 赤松良子

    赤松政府委員 勤労婦人福祉法制定のきっかけについてのお尋ねでございますが、これは御承知のように昭和四十七年に制定されたわけでございます。この当時、日本は非常な経済成長の真っただ中におりました。そして経済発展、それに伴う労働力需要が増大いたしまして、婦人の職場進出は著しかったわけでございます。また同時に、婦人社会参加意欲も大変高まっておりました。  しかし、当時の婦人雇用労働者がどのくらいであったかと申しますと、約千百万でございましたが、これは年々増加して千百万になったわけでございました。で、中でも育児家事とのいわゆる家庭責任を有する既婚婦人が過半数を占めるに至っておりました。  これは御承知のように、日本婦人労働者は、もっと以前では既婚者は非常に少なかったわけでございます。年齢も非常に若うございまして、大体が未婚の女性が多かったわけでございます。それが、そういう急激な婦人雇用労働者の増大ということは、若い人たちはもう既にほとんど働きに出ていたわけでございますから、ふえた方たちというのは、家庭責任を持った中高年、既婚というような状態の方たちが多かったわけでございます。  そこで、そういう労働力の構成あるいは婦人労働者の性格といいますか、そういうものが大きく変化を続けていた時代でございました。そこで、それらの方たちが能力を有効に発揮できるように、あるいは職業家庭生活との調和が男性に比べてより困難な状態が現実にあるということに着目いたしまして、そこで、これらの方々が性別によって差別されることなく能力を有効に発揮することができるように、家庭生活と職業生活との調和を図ることができるようにするための環境の整備ということが、当時としては労働行政の非常に重要な新たな課題だったというふうに記憶をいたしております。  そこで、そういう施策をそれまでも個別的には講じておったわけでございますが、総合的に一つ法律として基本的な方針もつくり、いろいろな措置法律の中で位置づけ、あるいは働く婦人の家などの根拠規定も設けというようなことをするということが適当な時期に来たというふうに判断をしたわけでございまして、また、労働省のほかの法律労働基準法あるいは雇用対策法、職業安定法、職業訓練法等いろいろございますが、それぞれの中で取り上げられているものも多いわけでございますが、それらをこの法律の中で総合的に位置づけるというようなことも、一本の法律をつくるということによって可能になるというようなことも考慮いたしまして、勤労婦人福祉法を提案し、国会で、これはたしか反対はございませんでした、棄権があったと思いますが、成立を見たわけでございます。
  100. 竹村泰子

    竹村委員 私はそのきっかけをお聞きいたしましたので、大変御丁寧な説明をいただきまして…。  その家庭責任を持つ婦人労働者雇用に関するILOの勧告がございますね。それをちょっとお聞かせください。
  101. 中村実宏

    中村説明員 ILOの勧告につきましては、一九八一年の家族的責任を有する労働者条約、百五十六号条約が採択されております。また、男女労働者特に家族的責任を有する労働者機会均等及び均等待遇に関する勧告が採択されております。
  102. 竹村泰子

    竹村委員 私の言い方が悪かったのでしょうか。ILO百二十三号勧告というのがありますね、それの目的とねらいをちょっとお聞きしたかったのですが、勧告が出たことはわかっております。
  103. 佐藤ギン子

    ○佐藤説明員 百二十三号勧告は一九六五年に採択されたものでございますが、その後一九八〇年、八一年に新しい家庭責任に関係ございます条約と勧告が採択されましたときにこれに取ってかわられているものでございます。
  104. 竹村泰子

    竹村委員 今私がお聞きしたのは、百二十三号の勧告の目的をお聞きしたのです。
  105. 佐藤ギン子

    ○佐藤説明員 その勧告が採択されました当時におきまして既に働く婦人が増加しておりまして、そうした婦人たちが家庭の責任を果たしながら職場での仕事を続けていくという中で、婦人差別されることなく雇用の場でも能力を発揮できるようにという考え方からつくられたものだと理解いたしております。
  106. 竹村泰子

    竹村委員 女子労働者に向けて、家庭責任があり、働くこと、家庭責任を果たすことを両立させる必要があるからその条件づくりを進めよう、こういうことだと思いますけれども、その後その勧告については、先ほどおっしゃいましたように一九七五年に決議を行っておりますね。それはどんな決議なんでしょうか。
  107. 中村実宏

    中村説明員 この決議は、雇用及び職業における婦人及び男子の地位及び機会の均等に関する決議という名前でございまして、国際婦人年終了後においても、雇用及び職業における婦人及び男子の地位及び機会の均等と、婦人及び男子の双方にとってのよりよい労働環境に向けての進歩を達成するためにILOが活動を続ける必要があることを考慮いたしまして、幾つかの要請を事務総長及びILO理事会に対して行っております。例えば、加盟国から提出されます家庭責任を持つ婦人雇用に関する勧告に関する報告に基づき新しい文書を採択することを目的として、家庭責任を持つ労働者の問題を、ILO総会のなるべく早い会期の議題にすることというのがございまして、これに基づきまして八〇年、八一年に議題として審議されまして、それが先ほど申し上げましたILOの勧告と条約に結びついていったわけでございます。
  108. 竹村泰子

    竹村委員 この決議に対して日本の各代表はどのような態度で臨んだのでしょうか。
  109. 中村実宏

    中村説明員 日本政府代表団はこの決議の採択に当たりまして賛成しております。
  110. 竹村泰子

    竹村委員 そして、その後ILOは、おっしゃったように新しい条約と勧告を採択しておりますね。これはどんな勧告ですか。
  111. 中村実宏

    中村説明員 この勧告は、一九八一年の家族的責任を有する労働者条約、百五十六号条約でございますが、これを補足するために採択されたものでございまして、この条約規定する事項に関連する細目的な事項、例えば「国の政策」とか「訓練及び雇用」、それから「保育及び家族に係るサービス及び施設」、このような細目的な事項について規定したものでございます。     〔愛知委員長代理退席、委員長着席〕
  112. 竹村泰子

    竹村委員 この百五十六号条約及び百六十五号勧告、それぞれ主な目的、どんな目的を持っておりますか。そして、この条約及び勧告を採択するについて日本の各代表はどういう態度をとりましたか。
  113. 佐藤ギン子

    ○佐藤説明員 百五十六号条約とこれに関連します勧告でございますが、基本的な考え方は、家庭責任が男女両方にあるということを前提にいたしまして、家庭責任を持っている労働者雇用の場で十分機会均等確保できるようにという考え方でできているものでございます。条約は基本的な規定が定めてあるだけでございますけれども、勧告につきましては、職業訓練ですとか労働条件社会的サービスその他につきまして細かく規定を持っております。
  114. 竹村泰子

    竹村委員 わかりました。  そうすると、百二十三号勧告は実質上廃棄されて、男女ともに家庭責任があり、労働者男性女性も、いいですか、男性女性もですよ、家庭責任を果たすことと働くことと両立させなければならない、そのための条件づくりを国は積極的に講じなければならないということになったわけですね。間違いないですね。  日本政府は積極的に御賛成になったわけですから、まさに積極的にそのための措置を講ずる責務があるわけですね。どうですか。
  115. 佐藤ギン子

    ○佐藤説明員 先ほども申し上げましたが、条約の採択に当たって賛成するかどうかということにつきましては、この条約趣旨が国際基準として妥当であるかどうかという観点から考えまして、妥当なものであれば賛成投票するわけでございますが、もう一つ条約批准するかどうかということにつきましては、国内事情その他も十分勘案し、国内法制との整合性を確保いたしました上で批准することになりますので、現在その観点からの検討を行っているところでございます。
  116. 竹村泰子

    竹村委員 またしても賛成はするが批准はしない、そればかりなんですね。  この百五十六号条約批准した国は現在何カ国ぐらいあるのでしょうか。北欧、EC諸国、アメリカなどで批准している国があったら、その名前をお教えください。
  117. 中村実宏

    中村説明員 百五十六号条約につきましては、ノルウェー、スウェーデン、フィンランドの三カ国が批准をしてございます。  百六十五号勧告につきましては、これは勧告でございますので批准という問題は生じません。
  118. 竹村泰子

    竹村委員 私は、何カ国か、批准した国をちょっと教えてくださいと申し上げたのですけれども、今おっしゃいましたか、私聞こえなかった、おっしゃいましたか、三カ国。いいです、わかりました。  ところで、ILOにおいて今はっきりしたように労働者家庭責任問題についての考え方にも変化があったと対応して、国際連合においても同様の変化がございましたね。一九六七年の女性差別撤廃宣言はこの点についてどううたっておりますか、教えてください。
  119. 高木南海雄

    高木説明員 宣言におきましては、「社会的・政治的・経済的・文化的生活に対しなされた婦人の偉大な貢献、及び家族、とくに子の養育における婦人役割に留意し、」というふうに書いてございます。
  120. 竹村泰子

    竹村委員 それは女性差別撤廃宣言ですか。今のは前文ですか、大事なところ…。
  121. 高木南海雄

    高木説明員 今申し上げましたのは、婦人に対する差別撤廃宣言前文にございます。
  122. 竹村泰子

    竹村委員 その点について、一九七九年の女性差別撤廃条約は、先ほど確かめましたように、両親の役割を改めて、家庭責任を男女社会共同責任とし、社会家庭における男女役割分担を変更することが必要だと強調しているわけですね。  また、国連は、人権規約を定めていたわけですけれども、それだけでは不十分だから、さらに女性に対するあらゆる形態の差別撤廃するための条約を採択したわけです。今問題になっております雇用における男女平等問題について考える場合、女子労働者にとってはこうした家庭責任問題は極めて重大な問題なのです。私たち女性にとっては、働きながら家庭を持っているということは大変重大な問題です。社会家庭における性別役割分業の変更は、雇用平等を実現するための欠かせない条件であることが明らかにされているわけですね、これまでるる申し上げてまいりました。私も全く同感です。そしてそのためには、条約もいうように、伝統的な考え方を改めなければならないと思うのです。しかも、この伝統的な考え方というのは、伝統的であるだけに非常に強力で根強いものなのです。  そこで、坂本労働大臣にお伺いいたします。六月二十六日の本会議社会党の土井たか子副委員長が、政府趣旨説明に対して代表質問を行いましたが、その際、総理大臣に対して女性観をただしました、中曽根総理は、女性は天の半分を支えているとしつつも、よき妻でありよき母であってほしいと答弁なさいましたね。この答弁は質問趣旨からは外れたもので、よき社会人であってほしいと考えていないのか、あるいは総理の本音が図らずも出てしまったのか、これは女性社会参加を全く認めず、よき妻でよき母でなければよき女性ではない、こういう発言にとれます。私は大変憤りを感じました。いずれにしても、国連婦人の十年に関する企画推進本部長である総理の御答弁としては不見識きわまりないと私は考えます。  この問題については、いずれ土井副委員長が改めて取り上げるかと存じますので、私としては同類の質問労働大臣に対して行いたいと存じます。今審議中の雇用における男女平等問題はあなたの所管事項なわけですから、あなたには理解の深いかつ明快な御答弁をいただきたいと思うのですが、大臣女性観、今後の過去じゃありません、伝統的なものではなく、今後期待される新しい女性生き方についてお聞かせいただきたいと思います。
  123. 坂本三十次

    坂本国務大臣 中曽根総理大臣が、女性はよき妻であってほしい、よき母であってほしい、それは私も同感でございます。もう一つつけ加えなければならぬところがあったということは、女性もその自覚と努力においてよき社会人になり得る、またそういう方向に誘導しなければならぬ、こういうことであると思います。
  124. 竹村泰子

    竹村委員 何かはっきりよくわかりませんけれども、大臣、あなたは先週、愛知委員質問の中で次のようなことを言われましたね。昔と違ってよく女子も勉強するようになり、この女性の能力を活用することによって人的な社会財産とする、これまで男性主導社会であったが、女性をうまく誘導することによって力を発揮していただくというような意味のことをおっしゃいましたね。私ちょっとメモをとっておりましたけれども、このお考えはこのとおりですか。
  125. 坂本三十次

    坂本国務大臣 今までは、確かに明治以来日本社会というのは男性主導型であったことは事実であります。その点では、男性の能力の開発、社会的な活力というものを誘導したことは、私は日本は非常に成功しておる国の方だと思っております。しかし、その一面、昔からの伝統的な男女役割ということが非常に厳しく行われて、そして職場における女性差別ということもやはりあったことは事実であります。ですから、今度はひとつ、その女性が今やる気を出しておるわけですから、どんどんふえてきておるわけですから、こんな結構なことはないのでありまして、勉強もしてきておりますよ、昔から見れば。いろいろな実社会に出ても太刀打ちできるような勉強をしておる、またその意欲もあるという人がだんだん出てきておることは、私は非常に結構なことだと思います。ですから、考えてみれば、男性社会開発、社会能力というものは今まで育ってきたけれども、これから女性の方に重点を入れることによって、女性自身の社会的な、特に雇用などにおける能力を伸ばして、そして女性のために役立つということはもちろんでありまするが、我が国社会におきましても、女性の力が入ってくるということは、今後、将来において私は大変な活力になり得るものだ、そういう趣旨のことを申し上げたわけであります。
  126. 竹村泰子

    竹村委員 その後半の部分は結構なんですけれども、女性がこれまで能力を十分に発揮できない歴史的なことがあったことは認めます。しかし、それはだれがその能力を抑えつけ、教育をせず、女性をそういう位置に追い込んできたのかそういうことは全く大臣の頭の中にはないのではないでしょうか。この考え方は、女性を一段低く見て、劣った性、第二の性と見て、男性が誘導していかなければ能力を引き出せないという男性の優位がありありと見えるのですね。この今回の問題では、女性労働権は基本的人権なのであって、能力を引き出される、しかも男性によって誘導して引き出される問題ではありません。何の抵抗もかくそう思っていらっしゃるんじゃないかなということが言葉の裏に見えましたのでお聞きしたわけですけれども、差別をしている人にはわからないことがよくあるのですね。私たちだって全く気づかずに差別をしていることもあります。しかし、劣っている女性を援助してやろうというそういう福祉の考え方が、今回の政府案の勤労婦人福祉法を変えるというその問題では中心になっているような気が私はしてならないのです。本来は同じ価値を持ち、同じ能力を持っているはずの同じ人間でございます。そこのところ、労働大臣赤松婦人局長の答弁の中にそれがぼつぼつとあらわれてくるわけなので大変残念に思うわけですけれども、まあ質問を続けます。  ILO百五十六号条約及び百六十五号勧告によって、政府は百二十三号勧告に基づく現行の勤労婦人福祉法を改廃し、百五十六号条約批准するための国内法整備を行う義務を負っているわけですね。どんな国内法整備が必要だとお考えですか。また、そのためどんな努力をなさっておられますか。
  127. 赤松良子

    赤松政府委員 ただいま御指摘の百五十六号条約あるいは百六十五号勧告でございますが、これにつきましては、日本政府といたしましてはまだ批准するというような申し合わせもございませんし、何分この条約、勧告は大変新しいものでございますから、内容の詳しい点につきましては、先ほど百十一号が大変古くて二十六年もたっているという御指摘がございましたが、これはまだそれに比べればできたてと言ってもいいような条約でございますので、したがいまして、内容についてどういうことをすれば批准ができるかというような検討もまだ緒についたと言える程度のものでございまして、これをどうすれば批准できるかということについても現在の段階ではお答えできるような結論は得られておりません。
  128. 竹村泰子

    竹村委員 国内法整備、どんなふうな具体的な整備が必要であるかとか、それからどんな努力をしなければならないかとか、そういう具体的な案は何もお持ちし年ないわけですか。
  129. 佐藤ギン子

    ○佐藤説明員 先ほど基本的な考えは局長の方から申し上げまして、私どもで今、先ほど申し上げましたように、国内法制との整合性を確保するという観点からいろいろ検討しているわけでございますが、現在幾つか問題があるわけでございまして、例えば「家族的責任のみをもって雇用の終了の妥当な理由としてはならない。」ということにしておりまして、これは男女ともにということでございます。このほか幾つか国内法との関連で検討しなければ問題になると考えられるところがございますので、現在そういう点について検討しているところでございます。
  130. 竹村泰子

    竹村委員 なるほど検討し努力を少しはしていらっしゃるかもしれませんね。しかし、余り具体的なはっきりとした方向が私は見えないのですけれども、また、その事態が余り進展していないその理由、原因についてはどうお考えになりますか、また、今後どう対処されるおつもりですか。
  131. 佐藤ギン子

    ○佐藤説明員 先ほど申し上げましたようなILO条約批准のための準備といたしましては、国内法制との整合性という観点でございます。したがいまして、現在国内法との関係でどういうところが抵触するかという検討をしているということでございますので、それが済みまして必要な措置がとれればということになりますが、先ほども申し上げましたように、これはかなり基本的なところでいろいろ難しい問題もあり、さらに検討していきたいというふうに考えております。
  132. 竹村泰子

    竹村委員 大臣、どう思われますか。行政的か指導もしていくようになさいますか。
  133. 坂本三十次

    坂本国務大臣 ただいま政府委員の申し上げたように、いろいろ検討し努力をするということであります。
  134. 竹村泰子

    竹村委員 余りILOの条約批准しようという誠意が全く感じられないですね。やる気があるのでしょうかね。  政府大臣は行政的な指導も強めなければならないとお思いだと思いますけれども、日本は行政指導の国ということで諸外国にも有名ですね、特に通産省などは財界と一緒になって我が国の通商産業問題に取り組んでおられる。むしろ財界を強力に御指導なさっておられる。その点についても諸外国から非難や批判がありますね。  ところで、労働省はどうでしょうか。労働省はこれまでのような目標を設定され、その実現のために努力をされてきた。その結果目標どおり実現した政策課題がありますか。もしあったらひとつお聞かせください。
  135. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 例えば、労働省の場合、現在高齢化社会に向けまして、六十歳定年の一般化という目標を掲げまして行政指導を懸命に展開をいたしておるわけでございます。そういう中で、六十歳定年制もいまや過半数を超えるというような状態になってきておるわけでございまして、行政指導で政策目標達成のために努力している一例としてそういうものもございます。
  136. 竹村泰子

    竹村委員 労働省は六十歳定年制を掲げておられますけれども、この目標はいつ設定されたもので、それが実現するのは一体いつなんですか、もうかなり前から六十歳定年のことを言われておりますけれども。
  137. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 昭和五十四年の第四次雇用対策基本計画においてその目標設定をいたしまして、昭和六十年に六十歳定年の一般化、こういうことで進めておるわけでございます。その間におきまして、従来五十五歳定年の方が多かった日本の現状の中におきまして、今や六十歳定年制が過半数を超え、五十五歳定年制が三割以下になってきておる、こんな形になってきておりまして、私どもとしては、昭和六十年には六十歳定年というものの一般化というものをかなりのところで実現できるだろう、こう考えておるところでございます。
  138. 有馬元治

    有馬委員長 午後一時から再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後零時九分休憩      ――――◇―――――     午後一時十二分開議
  139. 有馬元治

    有馬委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。竹村泰子君。
  140. 竹村泰子

    竹村委員 先ほど政策課題をお聞きいたしました。その中で六十歳定年制のことを挙げられたわけですけれども、加藤職安局長、六十歳定年のことを六十年ごろにはかなり一般化できるとおっしゃいましたが、目途というか、どのくらい一般化できるとお思いですか。
  141. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 実は、この一般化の意味につきましては審議会でもいろいろ議論がございまして、使用者側の委員は五〇%を超えれば一般化であるという方もございました。それから労働側の委員は九〇%を超えていなければ一般化でない、こういうようないろいろな御議論の中で、とにかく日本は一般的に定年制六十歳になっておるという状態を実現しよう、こういうことでコンセンサスができておりまして、それは何%が一般化かということにつきましては、そういう具体的な数字的な言い方はしないということで、とにかく日本の定年制は六十歳というのが一般的だということでいこう、こういうことでやっておるわけでございます。
  142. 竹村泰子

    竹村委員 例えば労働時間などにつきましても、労働省は年間労働時間を二千時間以内にするという目標を立てられましたね。これはいつ設定されたもので、それが実現するのは何年ということになっておりますか。また目標設定時と現在の労働時間を教えてください。
  143. 望月三郎

    ○望月(三)政府委員 労働時間の短縮につきましても行政指導ということで五十五年からスタートしまして、昭和六十年におおむね二千時間ということを目標にやっておるわけでございます。  非常に厳しい経済社会状況でございますので、二千時間達成ということは非常に難しい状況でございます。それでも私どもは、例えば週休二日制の問題も、これは労働時間短縮の行政指導の一つの手法でございますが、既に何らかの形で週休二日制の恩典に浴している労働者の数が七五%に達している状況でございます。四人に三人は何らかの形の週休二日制の恩典に浴しているということでございまして、この点については、労働時間短縮の幾つかの方法の中で特に効果が上がっておる面ではないかというように考えております。
  144. 竹村泰子

    竹村委員 欧米諸国では年間総労働時間千六百時間ないし千八百時間になっているわけですから、日本の年間二千時間というのは、それに比べて実にささやかな目標であると思います。日本は経済大国を自負しているのですから、この点はぜひ御努力いただきたいと思うわけです。そこで次に、私は育児休業制度についてお伺いしたいと思います。育児休業制度については、どういう努力目標を設定して取り組んでこられましたか。
  145. 松原亘子

    ○松原説明員 お答え申し上げます。育児休業につきましては、昭和四十七年に制定されました勤労婦人福祉法におきまして、その実施についての事業主の努力義務が規定されまして、それ以降、私ども積極的な普及対策を講じており、企業に対しまして、この制度が導入されるように指導いたしてきておるわけでございますが、今、労働時間等につきまして具体的な目標が挙げられているように、例えば何年度までに何%の普及をするといったような具体的な目標を掲げているわけではございませんで、早期にこの制度がすべての企業に普及するように積極的な行政指導等を進めているところでございます。
  146. 竹村泰子

    竹村委員 現在、育児休業制度を実施している企業はどのくらいありますか。十年前の数字とあわせて教えてください。
  147. 松原亘子

    ○松原説明員 お答えいたします。私どもが実施しております女子保護実施状況調査というのがございますが、これによりますと昭和四十六年には二・三%の普及率でございました。それが年々普及率が向上してきておりまして、四十九年には五・七%、五十三年に六・六%、そして五十六年、これが最新の数値でございますが一四・三%になっております。これは三十人以上の常用労働者雇用する事業所を対象とした調査でございます。
  148. 竹村泰子

    竹村委員 育児休業制度、これは女性にとっては大変大切な制度なんですけれども、この育児休業制度のもとで働いている労働者はどのくらいおりますか。これも十年前の数字と一緒にお示しください。
  149. 松原亘子

    ○松原説明員 今申し上げましたのは事業所の普及状況でございまして、ちょっと何%の労働者がこのカバーをされているかということについて私ども具体的な統計調査をやっておりません。ちょっと推計をしなければなりませんが、手元に必要な資料がありませんので、また別途、御連絡申し上げたいと思います。
  150. 竹村泰子

    竹村委員 今のところわからないということですね。  現行の勤労婦人福祉法は、育児休業について国や事業主の責務を定めております。どのような条文になっておりますか。
  151. 赤松良子

    赤松政府委員 お答え申し上げます。  現行の勤労婦人福祉法には十一条に「育児に関する便宜の供与」として「事業主は、その雇用する勤労婦人について、必要に応じ、育児休業の実施その他の育児に関する便宜の供与を行なうように努めなければならない。」として、育児休業の定義を、この言葉が、この法律で初めて使われましたことにもかんがみまして、括弧づきでいたしております。括弧の中が「(事業主が、乳児又は幼児を有する勤労婦人の申出により、その勤労婦人育児のため一定期間休業することを認める措置をいう。)」としております。その努力義務の主体は事業主でございます。
  152. 竹村泰子

    竹村委員 事業主は「育児休業の実施その他の育児に関する便宜の供与を行なうように努めなければならない。」とあるわけですね。そして、法律でそのように国や事業主の責務を定めたにもかかわらず、また、国は努力されたにもかかわらず、育児休業制度はなかなか普及しておりませんね。なぜなんでしょうか。事業主の努力義務と政府の行政指導だけではなかなか実現しない、あるいは政府は努力を怠っていたのですか、どうですか。
  153. 赤松良子

    赤松政府委員 育児休業につきましては、この制度が発足いたしましてすぐに、どのような制度として普及すべきかというようなことにつきまして、研究会を二次にわたっていたしたところでございます。そしてまた、実態調査などもたびたびしておりますが、その育児休業制度実態調査によっても、育児休業制度の導入に当たって問題点としてどのようなことが考えられているかという点につきましての調査がございますので申し上げますと、問題点としては、休業中の代替要員の確保を挙げる企業が六割で、これが最も多くなっております。特に、教育、医療業のように専門的、技術的な労働力を必要とする業種においては、その割合が高くなっております。次に、休業中の社会保険料の負担あるいは休業者が復職した場合の代替要員の処遇などを挙げる企業が、それぞれ二、三割と、これまた多いわけでございます。  こういう調査の結果から見ますと、休業中の代替要員の確保が難しい、あるいはせっかく得た代替要員が、休業していた方が復職した場合に、そのかわりに働いていた方を今度はどう処遇したらよいか多少問題になる。大きな企業でございますと、それもある程度容易にできるわけでございますが、小さな企業といいますか、女手労働者の少ないようなところでは、この問題はなかなか解決が難しいというようなこともございまして、育児休業制度の普及の阻害要因となっていると考えられるわけでございます。
  154. 竹村泰子

    竹村委員 事情は種々あるでしょうけれども、事業主の努力義務、政府の行政指導だけではなかなか実現しない。努力義務ではだめなんですね。  今回の政府案も努力義務が非常に多いわけですけれども、それはなかなか実現しない、八年たっているわけですから。所期の目標なり目的なりを実現するためには、やはり国や政府はもっともっと積極的に、制度法律上確立する必要があると思うのですけれども、どうですか。それが自然じゃありませんか。大臣、いかがですか。
  155. 坂本三十次

    坂本国務大臣 育児休業制度が一般化するのがスピードが遅いという御指摘はなるほどと思います。これについてはもっと努力をいたさなければならぬとも思っております。  ただいま局長が言いました、いろいろな問題があるでありましょうけれども、我が国におきまししは、二度にわたるオイルショックなどで、そういう面にやはり手が回りにくかったという点もあるかもしれませんが、これからまた行政指導を強めていって、そして所期の目的を達成しなければならない、これからの方が成果が上がり得る、私どもはそう思っております。
  156. 竹村泰子

    竹村委員 子供を育てながら仕事をする、働くということがどんなに大変なことか、大臣には余りおわかりにならないかもしれませんけれども、この育児休業法を制定するために、ぜひ法実現の努力をお願いしたいと思います。お約束いただけますか。
  157. 赤松良子

    赤松政府委員 育児休業の法制化につきましては、男女機会均等待遇の平等の確保のために婦人少年問題審議会で長い間、御討議をいただいておりましたが、その間に、この問題も一つの大きな課題として審議をお願いしていたわけでございます。私どもとしては、この問題を決して等閑に付していたわけではなくて、一方では行政指導で普及に努めるとともに、審議会では、どういうあり方に今後すべきかということについては時間をかけて御討議をいただいたわけでございます。しかし、その結論といたしましては、先ほど申し上げましたように、まだこの普及が今、一四・何%というような程度の普及率であること、それから全企業にこれを請求権として法制化するということは、時期がなお早過ぎるのではないかという御意見が多数意見でございました。そこで、今回、あわせて請求権化するということを検討してまいったわけでございますが、その考えをしばらく先へ延ばしまして、当分はこれまでの行政指導その他による育児休業の普及ということを、さらに強力に努めるということにいたしたわけでございます。また、法律の中身といたしましては、これまでは現行の法律の中では、先ほど読み上げましたように、事業主の努力義務にとどめているわけでございますが、国がそれに対して必要な指導、援助を行うこととするというふうに、国の側にも、これは事業主としての国ではございませんで、行政主体としての国の努力義務を新たに法律案の中に書いた次第でございます。
  158. 竹村泰子

    竹村委員 鋭意努力をということですね。引き続き、これまでのようではなく、もっと一心に、この育児休業法を制定するために努力をお願いしたいと思います。育児休業などの問題につきましては、また別の機会に御質問させていただくことにします。  それから、先ほどからのILO条約批准につきまして、私はこれからもまた機会を見て質問をさせていただきたいと思いますが、百五十六号条約批准するに当たりまして、かなり国内法整備するのに抵触すると思われると、先ほどお答えがありましたけれども、どこが抵触するのですか、教えてください。
  159. 松原亘子

    ○松原説明員 ILO百五十六号条約につきましては、まだ種々検討しなければいけない点がございますが、今まで検討いたしました結果では、例えば次のような点が問題になるというふうに考えております。  その第一点は、条約では、労働条件等におきまして、男女を問わず家族的責任を有する労働者のニーズを考慮した措置をとることを要請しているわけでございます。そしてこのような措置は、その具体的内容をどうするかということは加盟国にゆだねられておりますけれども、一たんその措置をとるというふうに決めましたからには、その措置男女を問わずすべての労働者に適用することが求められております。我が国の、今御質問ございました育児休業に関する法制につきましては、現行の勤労婦人福祉法もそうですし、いわゆる育児休業法、公務員の看護婦さん、保母さん、学校の先生等に適用されますいわゆる育児休業法でございますが、これもその対象を女子ということに限定しておりまして、これがこの条約の要請との関連で、どう考えられるかというのが第一点でございます。  それから二点目は、この条約は第八条で「家族的責任のみをもって雇用の終了の妥当な理由としてはならない。」というふうに規定しておりますが、我が国法制におきましてこれを満たしているかどうかについて、なお検討を要するということでございます。
  160. 竹村泰子

    竹村委員 先ほども指摘しましたように、女子労働者労働権を確立するためには欠かせない条件なんですね。よくおわかりだと思います。雇用における男女平等の実現のための、あえて言えば絶対的な条件です。そのために、この百五十六号条約批准できるように国内法整備その他、絶対に早急にやっていただきたい、そういう御要望を申し上げます。どうですか。
  161. 赤松良子

    赤松政府委員 百五十六号条約につきましては、午前中にも申し上げましたように何分まだ採択されたばかりの条約でございますので、検討もそれほど進んでいない状況でございますが、この趣旨日本政府は賛成票を投じたということは先ほど御指摘もあったとおりでございます。何分、現在は国連婦人差別撤廃条約批准に全力を挙げているわけでございますので、百五十六号条約につきましては今後検討いたしたいというふうに思います。
  162. 竹村泰子

    竹村委員 百五十六号条約についてですね、今おっしゃったのは。百六十五と聞こえたのですが…。
  163. 赤松良子

    赤松政府委員 百五十六号条約のつもりでございます。百六十五号は勧告でございますので、批准という手続はないというふうに承知いたしております。
  164. 竹村泰子

    竹村委員 政府提案機会均等法に戻りたいと思います。  現行の勤労婦人福祉法に規定されている目的は、政府案によればどう改められるのでしょうか。
  165. 赤松良子

    赤松政府委員 先ほど、現行の勤労婦人福祉法の目的を読み上げたわけでございますが、これがただいま提案中の政府案によりますと、「この法律は、雇用分野における男女の均等な機会及び待遇確保されることを促進するとともに、女子労働者について、職業能力の開発及び向上、再就職の援助並びに職業生活と家庭生活との調和を図る等の措置を推進し、もって女子労働者の福祉の増進と地位の向上を図ることを目的とする。」というふうに変更になる予定でございます。
  166. 竹村泰子

    竹村委員 そうしますと、結局、女子労働者の福祉の増進及び地位の向上を図るということが目的であるということは変わらないわけですね。これはおかしいですね。現行の勤労婦人福祉法の基本理念はどう改められるのですか。
  167. 赤松良子

    赤松政府委員 最終の「もって」以下のところは「勤労婦人の」という言葉が「女子労働者」に改まるだけでございますので、御指摘のように「福祉の増進と地位の向上を図ることを目的とする。」というところは同じでございます。  基本的理念は第二条に掲げてございますが、次のように変わるわけでございます。「女子労働者は、経済及び社会の発展に寄与する者であり、かつ、家庭の一員として次代を担う者の生育について重要な役割を有する者であることにかんがみ、女子労働者母性尊重されつつしかも性別により差別されることなくその能力を有効に発揮して充実した職業生活を営み、及び職業生活と家庭生活との調和を図ることができるように配慮されるものとする。」というふうに変わる予定でございます。
  168. 竹村泰子

    竹村委員 「重大」が「重要」に改められるのですね。字句上の修正や入れかえはあっても、この基本理念については変わらないわけです。  今まで議論してきた観点から考えました場合、現行法の基本理念の柱の一つは、女子労働者は次代を担う者の生育について重要な役割を有するということですね。このため、女子労働者職業生活と家庭生活との調和を図ることができるようにするということですね。この点が、先ほども確認していただきましたように、女子についてのみ家庭責任を規定するものであり、これは男女平等に反するということで、女性差別撤廃条約やILO百五十六号条約などで否定されてきたわけです。目的も基本理念も基本的には変わらない、これが差別撤廃条約批准のために政府が御提案になっている新しい法律なんです。基本的な点では少しも変わっていないのじゃないですか、おかしいですね。どうですか。
  169. 赤松良子

    赤松政府委員 基本的理念について、現行法と提案中の法案とを比較していただきますと、まず現行法の方は、最初に「次代をになう者の生育について重大な役割を有するとともに、経済及び社会の発展に寄与する者であることにかんがみ、」そういうふうに書かれているわけでございますが、改正第二条によりますと、まず、「次代を担う者の生育」というのよりも、「経済及び社会の発展に寄与する者であり、かつ、家庭の一員として次代を担う者の生育について重要な役割」ということで、「家庭の一員として次代を担う者の生育について」とわざわざ書きましたのは、次代を担う者の生育については、母親だけでなくて父親、女子労働者だけでなくて男子労働者も、ともにその責任を担う者であるということを明らかにしたいという意思を持って、そのように改正を提案しているわけでございます。「重大な」という言葉を「重要な」というふうに書きかえましたのも、多少そのニュアンスの違いを出したいというふうに考えたわけでございます。  それから、勤労婦人社会生活と家庭生活との調和を図るというのを福祉法の場合はまず掲げておりますが、それは順番を変えることによって、女子のみが職業生活と家庭生活の調和を図るということの強さを和らげるという目的で、そのように修文をしているわけてございます、  このように基本的理念は、順番を変える、あるいは文言を修正するということによりまして、女子労働者のみが家庭責任を背負っているというような印象を与えない。この法律がそういうふうに思っているのではないということができるだけ表に出るように、明らかになるようにという配慮のもとに、このような修文をしたわけでございます。
  170. 竹村泰子

    竹村委員 順序を入れかえられたのはよくわかるのですけれども、しかし、今お答えにありました父親もというのは、どこで判断できるのですか。
  171. 赤松良子

    赤松政府委員 「次代を担う者の生育について重大な役割を有する」という表現と「家庭の一員として次代を担う者の生育について重要な役割を有する者である」という表現の違いは明らかにあるというふうに思っております。
  172. 竹村泰子

    竹村委員 難しい読みをしなければならないのですね。「次代を担う者の生育について重要な役割を有する」ということで、父親も母親もともに家庭の仕事を分業するということを読み取らなければならないのですか。
  173. 赤松良子

    赤松政府委員 「家庭の一員として」という表現は、一員であるということは、そのほかにも家庭の責任を担う者がいるというふうにお読みいただきたいと思います。
  174. 竹村泰子

    竹村委員 何か国語の時間みたいになりますけれども「家庭の一員として次代を担う者の生育について重要な役割を有する」というのは、これは女子労働者のことでしょう。女性のことを言っているわけですね、どこに父親ということが出てくるのでしょうか。
  175. 赤松良子

    赤松政府委員 「女子労働者は、」という主語がそこにかかることは当然でございますが、「家庭の一員として」というのは、家庭が一人だけではなくて複数いるということを前提として、その中の一人である、ワン・オブ・ゼムだという趣旨でございます。
  176. 竹村泰子

    竹村委員 大変難しい読みをしなければならない法律であるということなんですね。  もう少し、この目的や基本理念について質問してみたいと思いますが、勤労婦人福祉法は、女子労働者が「経済及び社会の発展に寄与する者である」ということを法律制定理由にしていますね。そして、このことは新しい機会均等法にも受け継がれております。これも少しも新しくはありません。さらに、女子労働者充実した職業生活を営むこと、しかも職業生活と家庭生活との調和を図ることができること、そのために「配慮されるものとする」と規定されているわけですね。これも新しい法律案にそのまま移されるわけで、少しも新しくありませんね、どうですか。
  177. 赤松良子

    赤松政府委員 先ほどの御質問で、男子労働者の父親というような表現がないということでございましたが、この法律はもともと女子労働者についての法律でございますから、女子労働者が主語である。そして「家庭の一員として」というところで、「次代をになう者の生育について重大な役割を有する」という言葉とは相当隔たりのある表現だというふうに存じます。  それから、言葉の使い方は御指摘のとおりでございますが、順序を入れかえるというようなことによって重要性のウエートが違うというふうに考えております。  それから「経済及び社会の発展に寄与する者である」ということは、八年前の福祉法の当時と今と変わるわけではございませんので、その表現はそのままに承継しております。また、それ以外の「母性尊重されつつしかも性別により差別されることなく」という現行法の基本理念も、現在にもそのまま生きることのできる基本理念だというふうに考えている次第でございます。
  178. 竹村泰子

    竹村委員 その「家庭の一員として」という言葉で、父親の存在をそこでほうふつと想像しなければならないわけですね。そういうことですか、「一員として」と入っているということで。ちょっとよくわからないのですけれども。
  179. 赤松良子

    赤松政府委員 「一員として」ということで、ほうふつとするという御質問でございますが、ほうふつよりはもう少しはっきりと浮かび出るのではないかと思います。
  180. 竹村泰子

    竹村委員 これは法律なんですよ。法律でいいかげんな、あいまいなことをもし父親の姿をここではっきりと想像しなければならないのであれば、なぜ父親もとお書きにならないのですか。法律をおつくりになるのに、しかも男女雇用平等に関する法律をつくるときに、そのようないいかげんな表現では困りますね、どうですか。
  181. 赤松良子

    赤松政府委員 先ほど申し上げましたが、これは勤労婦人福祉法であり、今度は女子労働者について男子労働者との均等な機会をというふうに、女子労働者の側に立った表現をすべてにおいてしているわけでございます。したがいまして、女子労働者は「家庭の一員として」と言えば、家族のほかの構成員とともにという意味であることは明らかだと思うのです。
  182. 竹村泰子

    竹村委員 家族の一員、ほかの構成員ということをおっしゃいますけれども、父親のいない家庭もございますね。そういうこともあるわけです。まあ余りこれを深追いしていると時間がもったいないですからやめますけれども、男女が協力をして家庭の仕事を分担するとお思いになるなら、なぜそうお書きにならないのかと大変不思議に思うわけです。  しかも「目的」のところで「福祉の増進と地位の向上を図ること」とし、「基本的理念」のところでは「配慮されるものとする。」ということになっております。だれが図り、だれが配慮するのですか、ここでは明らかにされておりません。主語がないのです。この点も現行法と新しくつくろうという法律案とでは全く同じですね。それは、第四条の「関係者の責務」というところに主語が出てくるわけですね。  そこでお伺いしますけれども、関係者の責務は現行法ではどうなっておりますか。また新しくつくられようとしている均等法ではどういうふうになりますか。
  183. 赤松良子

    赤松政府委員 先ほどの「配慮されるものとする。」と受け身で書いてあるということについての御指摘はそのとおりでございまして、これは、配慮する主体は四条の事業主、国及び地方公共団体でございますので、それを一々羅列する煩を避けて受動態で書いたものでございます。  それから「関係者の責務」の現行法は、第四条として「事業主は、その雇用する勤労婦人の福祉を増進するように努めなければならない。」というのが第一項、第二項が「国及び地方公共団体は、勤労婦人の福祉を増進するように努めなければならない。」第三項が「事業主がその雇用する勤労婦人の福祉の増進のための措置を講じ、又は国若しくは地方公共団体が勤労婦人の福祉の増進のための施策を講ずるにあたっては、事業主又は国若しくは地方公共団体は、その措置又は施策を通じて、前二条に規定する基本的理念が具現されるように配慮しなければならない。」となっております。これに対しまして、提案中の法案は「関係者の責務」は、やはり四条でございますが「事業主並びに国及び地方公共団体は、前二条に規定する基本的理念が具現されるように配慮して、女子労働者の福祉を増進するように努めなければならない。」というふうになる予定でございます。
  184. 竹村泰子

    竹村委員 なるほどそうすると事業主や国、地方公共団体は、配慮したり、努めたりする点では全く同じですね。これも少しも新しくなっておりませんね、どうですか。
  185. 赤松良子

    赤松政府委員 ただいま御指摘のように、ここは整理をしたわけでございますが、基本的な考え方は、実質的に変更しているものではございません。
  186. 竹村泰子

    竹村委員 ところで現行の勤労婦人福祉法も、新しくつくろうとされている均等法も、女子労働者に対して義務を課しておりますね。それぞれどういう規定になっておりますか。
  187. 赤松良子

    赤松政府委員 第三条で「女子労働者は、労働に従事する者としての自覚の下に、自ら進んで、その能力の開発及び向上を図り、これを職業生活において発揮するように努めなければならない。」という努力義務を書いております。これに対して古い方は「勤労婦人は、勤労に従事する者としての自覚をもち、みずからすすんで、その能力を開発し、これを職業生活において発揮するように努めなければならない。」となっております。
  188. 竹村泰子

    竹村委員 なぜ女子だけが努力し、自覚しなければならないか、その辺も大変問題なんですけれども、それはちょっと後に回します。  この今の点でも全く同じわけです。この法律の最も基本的な点で、最も大事な柱で何の変化もないわけなんですね。これはどうしたことなんでしょうか、一体どういうことなのでしょうか。  先ほど差別撤廃条約やILO条約などについて基本的なことを確認いたしました。私は朝からしつこくやっておりますけれども、そこでは、男女はともに人間尊厳について尊重されなければならず、労働権利についても基本的人権一つとして保障されなければならない。あるいは家庭責任は男女及び社会共同責任である。伝統的な役割分業ははっきり変更されなければならないことが明らかにされてきました。また、国際人権規約世界人権宣言などでも、人間尊厳基本的人権尊重されねばならないこと、男女差別は否定されねばならないことなどがうたわれているにもかかわらず、例えば雇用における男女の平等や女子労働権などが実現されず、男女差別が根強く残っているため、これをなくするための特別の立法及びその他の処置が必要だと女性差別撤廃条約ではうたっているのではありませんか、どうですか。
  189. 赤松良子

    赤松政府委員 「自覚をもち」を「自覚の下に」と改めたのは、ただいまお読みいたしたとおりでございますが、「自覚をもち」と古い法律で書いておりました理由は、同福祉法の制定当時は、勤労婦人の一部に職業人としての自覚の不足を指摘する議論が大変多うございました。そのことによって「自覚をもち」というふうに表現されておりましたが、その後、制定後十年以上たちましたので、その間に女子就業に対する意識は大変向上したというふうに考えられるわけでございます。したがって「自覚をもち」という表現よりも「自覚の下に」という表現の方が実態に合っているというふうに判断したわけでございまして、それぞれ社会変化に対応した文言の修正をしているわけでございます。  それから女子についてのみ自覚を求めるというのはおかしいのではないかという御指摘かと存じますが、先ほどから申し上げておりますように、これは女子についての法律でございますので、女子について必要な規定を設けるということは、全くこれと並んで男子についての自覚を書くということは必要がないわけでございまして、このような規定ぶりにしているわけでございます。  それから世の中が変わったとは申しましても、やはり女子労働者が自覚を持ってみずから職業能力を開発するということの必要性は、審議会におきましても、だれ一人御反対はなかったというふうに記憶しておりますし、この点について女子がみずから開発をするということの職業意識の向上ということは不可欠の前提条件だというふうに一致した御見解であったというふうに考えております。  もう一点ございましたが…
  190. 竹村泰子

    竹村委員 最後の点です。こういう平等や女子労働権がなかなか実現されないから、根強く残っているから、特別の立法や処置が必要だと女性差別撤廃条約がうたっているのではありませんかとお聞きしたのですが。
  191. 赤松良子

    赤松政府委員 失礼いたしました。  その点につきましては、第二章といたしまして、事業主のとるべき措置として全く新たな条文を起こして、そのために所要な条文をそれぞれ新たに書きおろしたわけでございます。これは全く従来の法律にはなかった規定でございまして、この部分が男女の均等の機会待遇を進めるための最も重要な部分であろうというふうに思っております、
  192. 竹村泰子

    竹村委員 大臣、今の最後の点、どうお思いになりますか、御感想。
  193. 坂本三十次

    坂本国務大臣 やはり女子の自覚とそして能力の開発が進んできて、そして現に社会的にも随分活躍をするようになってきた。非常にまことに結構なことでありますが、しかし考えてみれば、まだまだ長い間の慣習があって差別が残っておる。そこで、その女子の皆さんにしっかり頑張っていただくと同時に、今までの障害を取り除いてあげよう、これが国民の名においてですよ、私が、男が、女性に対して恩恵を施すためにやるのじゃないです。女性権利のためにも、それから地位の向上のためにも、社会的な発展のためにも、国民の名において、ひとつ大いに女性の地位を向上させたい、差別を取り除いてあげたい、これは国民の名においてそういう期待を申し上げておる、それだから法律をつくりたい、こういうことです。
  194. 竹村泰子

    竹村委員 大変大臣はやさしく親切なお方であるからだろうと思いますけれども、そういう差別を取り除いてあげたいとか向上をしていただきたいとか、やはりそれは男性優位の考え方なんですね。これは国や社会がしなければならないことなのです。そこのところをよくわかっていただきたいと思います。やさしく親切に持ち上げていただくことではないのでございます。  そこで、改めてお伺いいたしますけれども、女性差別撤廃条約第二条、特に(b)項及び(c)項はどうなっておりますでしょうか。
  195. 斉藤邦彦

    斉藤説明員 第二条は、前書きに「締約国は、婦人に対するあらゆる形態の差別を非難し、すべての適当な方法により、かつ、遅滞なく婦人に対する差別撤廃する政策を追求することに合意し及びこのため次のことを約束する。」となっております。(b)項及び(c)項におきましては、それぞれ「婦人に対するすべての差別を禁止する適当な立法その他の措置(適当な場合には制裁を含む。)をとること」及び「婦人権利の法的な保護を男子との平等を基礎として確立し、かつ、権限のある国内裁判所その他の公的機関を通じいかなる差別行為からも婦人を効果的に保護することを確保すること」という規定になっております。
  196. 竹村泰子

    竹村委員 そうしますと、条約の要請にこたえて雇用における男女の平等の確保を図るべき法律は、その目的や理念において男女の平等を確認し、あらゆる男女差別の禁止を訴える、その実効性を確保するために求められる公的な機関を設けることを明らかにするということが筋なのではありませんか。大臣、どうですか。
  197. 斉藤邦彦

    斉藤説明員 この条約は、種々の分野におきまして女子に対する差別撤廃を目的として規定しておりますけれども、そのような目的の実現のための具体的措置につきましては、各国がその自主的判断に基づきまして、具体的状況の中で適当と考えられる実効的な措置をとることにゆだねていると考えられます。したがいまして、この条約女子差別撤廃という目的に向けまして、どのような具体的な措置をとるかということは、我が国労働政策上の問題になると存じますので、ただいま御指摘のような具体的な点まで、この条約が求めているとは我々は考えていない次第でございます。
  198. 竹村泰子

    竹村委員 労働大臣もそうお考えになりますか、今の考え方。
  199. 赤松良子

    赤松政府委員 外務省のお考えと全く同じでございます。
  200. 竹村泰子

    竹村委員 この目的や理念が確立していないから、よくわかっていないから、あるいはあいまいであったり筋違いであったりするから、それに基づく、この後の具体的な規定条約趣旨に沿わなくなってしまうのだと私は考えるのです。具体的な諸規定については後日また私なり同僚の議員なりが改めていろいろ御質問をすると思いますけれども、この目的や理念の問題について、これは大事な点ですから、ぜひはっきりさせてほしいと思うわけです。  私たちは、既に四会派共同男女雇用平等法を提出しておりまして、先ほど同僚の多賀谷議員がその提案理由説明を行いました、この対案では、名称は男女雇用平等法となっております。その第一章「(目的)第一条この法律は、労働者の募集及び採用、賃金、配置、昇進、定年、退職、解雇その他の労働条件職業紹介職業訓練等について、使用者等労働者に対して性別理由とする差別をすることを禁止するとともに、その差別を迅速かつ適正な手続により是正するため必要な措置を講ずることにより、雇用における男女の平等取扱いの確保を図ることを目的とする。」、第二条は基本理念ですけれども、「第二条 およそ性別理由とする差別は、人間尊厳基本的人権を侵すものであり、かつ、経済及び社会の発展を阻害するものであることにかんがみ、すべて女子は、雇用における機会及び待遇について、性別理由とする差別を受けることがあってはならない。」、きちんとうたっております。  そこで、私は質問をそろそろ終わらせていただきますけれども、女性が第二の性、劣った性、弱き性として、女性であるための差別、人権の抑圧を受け続けてきたという歴史的な事実を考えるなら、国連が、男女が平等であることを人間尊厳として宣言し、男女平等のためにたゆまぬ努力を重ねていることは画期的なことであると思います。男女平等とは何か、それを達成するための戦略は何か、それについては女性の間でさえ意見が異なるかもしれません。しかし、平等を望まない女性はいない。したがって、国や社会男性男女平等達成のために何をしなければならないかということが今問われているわけでございます。そこで私たちはこの共同対案を出しましたけれども、どうぞこの対案を十分御熟読くださり、大臣、読まれましたか。(坂本国務大臣「今、聞きました」と呼ぶ)今お読みしたのは一部分です。十分御熟読くださり、御検討の上、ぜひとも御賛同いただけるように希望を切に申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。(拍手)
  201. 有馬元治

    有馬委員長 橋本文彦君。
  202. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 今回、冒頭から、いわゆるこの法律案要綱につきまして見直し論が出ております。  当初、婦人少年問題審議会からも答申に当たりまして、婦人差別撤廃条約の精神から見れば極めて不十分だ、そういう点から近い将来改正をしなければならないだろう、こういう答申を受けて労働省はこの案をつくったわけでございますけれども、大臣のその後の言動を見てみますと、三Sとかという表現で見直しを図っていこう、とにかく今つくれば、いい、後はじっくり状況を見て、いいものをつくっていけばいいというような発言を再三再四しております。しかし、考えてみますと、ただ単に差別撤廃条約批准するために形だけ整えればいいんだという考え方がそもそも問題だ、こう思いますし、何よりも婦人少年問題審議会が不十分だけれどもという形で答申したこと自体が非常にナンセンスである、こう思います。しかも法案として出した以上は、どうしたら国際的な批判にも耐え得るような、あるいは国内においてもいい法律だと言われるような法律整備するだけの時間をかけないのか。不備な点は残しておいて後からまた考えていこうじゃないか、こういう考え方では、到底この法律案要綱については反対せざるを得ない、こう思っております。私は、どこまでも憲法あるいは条約の精神に適合しなければならないと思っておりますが、大臣の見解はいかがでしょうか。
  203. 赤松良子

    赤松政府委員 審議会の御答申について御指摘のことは、そのように書かれているわけでございますが、これは非常に長い間の審議の過程で、どうしても公労使それぞれが一致した見解に到達することができなかったという過程を踏まえての表現で、しかし法制化することは必要だということが最大公約数、要するに法制化をすべきであるという御見解でございますので、そのような表現になったものだと思います。したがいまして、それを法制化することが審議会の建議の趣旨を体したものになるというふうに思うわけでございます。  今、提案中の法案は、現状を踏まえて、しかも長期的な展望を失わずという非常に難しい要請をそれなりに十分に考えて行ったものでございまして、当面の措置としては最も適当な、現実を踏まえた案であるというふうに考えておりまして、今の段階でつくるものとしては、私どもとしてはこれが最も適当というふうに考えて提案しているわけでございます。
  204. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 現時点においては最も適当、妥当であるという答弁なんですけれども、この内容を見ますと、全くのざる法、これ以外の表現がないのですが、これでも現段階において適当と言えるのかどうか。大臣、御見解を伺います。
  205. 坂本三十次

    坂本国務大臣 審議会における論議は、あなたもよく御承知のとおりでございましょう。いろいろな意見がたくさんありました。三論併記といいましても、男女間でも労使間でも女性の間でも本当にいろいろなお話がありましたから、三論以上のものがあったかもしれません。しかし、私にとりましては、この男女差別撤廃しようということは、女性の自覚も盛り上がってきたことだし、国内世論もそれを期待をいたしておりまするし、国際的な日本の義務というものも勘案をいたしまして、この際やる方がベストであるという考え方に立ったわけでありまして、あるべき姿ははっきりしておるわけです。山の姿ははっきりしておるわけです。ただし、そこへ行く道が、コンパスでずっと線を引くというわけにはいかぬものでありまするから、現在の案は、我々とすればこの案よりほかにない、このベースキャンプから登っていきたい、そして一歩ずつ道をつけていきたい、こういう考え方でございまして、ざる法ところか一番現実的な、しかも理想をにらんだ案だ、そう私は思っております。
  206. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 婦人に対する差別撤廃するんだ、そのために、この法律でも実効があるんだというような発言に聞こえたわけですけれども、私の見解では、まず実効性はない、形だけだという認識に立っているものですから…。まあ議論を進めます。  労働省の婦人少年局がつくりました昭和五十七年版の「婦人労働の実情」、これを拝見しますと、女性雇用分野における現状は、募集、採用から定年、退職に至るまで本当にあらゆる形でもって差別が存在しているというような書き方で、女性賃金男性の五三%にしかなっていない、半分にしかなっていない。それから昇進については、女子には昇進機会がない、与えない、こういう企業が何と四五%強もある。それから企業の中の教育訓練についても、女子には受けさせない、あるいは受けさせても、その種類が男子とは異なる、こういう企業が六〇%にも上っておる、このような形でもって女性労働者差別を受けておる。また定年制につきましても、男女別に定めているという企業が約二〇%。一番問題になります採用について見ますと、高校卒業の場合には、男女ともに採用した企業は五四%、男子のみ二四・五%、女子のみ二一・五%という数字なんですけれども、これが四年制の大学になりますと、男女とも採用した企業は二四%、約四分の一、それから男子のみを採用したという企業は七〇・九%、ほとんどでございます。女子のみ採用した企業は五・〇%、こういう数字が出ておりまして、四年制大学を卒業した女性に対する差別は本当に著しい、こういうことが出ておりました。  これを見て私もびっくりしたわけでありますけれども、今回我が党では神奈川県におきましてアンケートをとりました。その結果どういう反響があったかといいますと、何と男性の方から、ぜひとも男女雇用平等を図ってもらいたい、こういう声が強いわけなんです。なぜかといいますと、大臣にはお子さんが何人おられるかわかりませんが、女子を持っている男性、お父さんは、娘がかわいそうだという形でもって、この問題を、この法案を、男女雇用平等法という法律を早期に制定してもらいたい、募集、採用の段階から差別をなくしてもらいたい、こういう要望がございました。これは世論でございますけれども、このような婦人労働の実情について、労働省の婦人少年局長あるいは大臣はどのようにお考えになっておりますか、率直な御意見をお聞かせ願います。
  207. 赤松良子

    赤松政府委員 ただいま御指摘の「婦人労働の実情」の中の説明は私どもが書いたものでございますので、いろいろな調査その他客観的な事実から、そのように分析をしているわけでございます。そうして、そのような差別があるいは広範に存在するということについて大変憂慮をするわけでございまして、それを改善をしたい、差別をなくしたいと思うからこそ今日の法案を提出しているつもりでございます。
  208. 坂本三十次

    坂本国務大臣 あなたが、何と男性の方から女子労働者の男との差別をなくしろという意見があった、私もよく聞きますよ。それは自分の娘が工学部を出た、そうして工学部向きの会社に入った。だけれどもやはり今までの惰性があって、どうも表向きは一人前だけれども本当に一人前に扱うて同等にやってくれないのではないかという心配をしておりました。それは確かにそうです、あなたのおっしゃるように、これからずっとそういう女性がたくさん出てくるわけですからね。現在の働いている女性の皆さんにももちろん配慮しなければなりませんけれども、今あなたのおっしゃるように、これからずっとそういう女性が出てきます。それで特に、今までの女子大卒といったって、うちは工学部が欲しいとか電子工学が欲しいというのに、文学部だけではちょっと採りにくかったかもしれませんけれども、そういう女性が今度新しい分野でどんどん男に負けないで勉強してきておる人が出てきておるのですから、もうそういう時代です。ですから、それをひとつぜひ差別のないようにしていきたいというのは、これは全く私はあなたに同感だ。そういう意味でも、この法案を通してもらいたい、こう思っております。
  209. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 差別の実情を知りながら、大臣にもそういう女子のお子さんがおられるということで、しかし今回の法案を見まして、今この「婦人労働の実情」で示されたデータが、果たして解消されるのだろうかという点を問題にするわけでございます。今、局長の方では、この法案ができればそういう問題も解消するんだというような見解を述べられましたけれども、果たしてそうでございましょうか。  今回の法案は、一本化した、いわゆる野党が出しておるような男女雇用平等法というような問題じゃありません。私、幾つ法律が関係するのかなと数えてみましたら十三ありました。十三もの法律を改正あるいは整備して一つ法律案要綱をつくり上げた。皮肉なことでございますけれども、十三というのは余り縁起がいい数字ではない、こう言われておる。それを言っていましたら別の人が、この数字は「通さぬ」とも読めるよ、こういうような話がありまして、うまくいかないよというようなことを述べておりました。  この法律案要綱を見ますと、婦人差別撤廃条約に絡んでの法律でございますので、どこまで差別をしてはいけない、どこまで差別を禁止するのかということで読んでおりますけれども、余りないと思うのです。一番婦人労働者が困るのは、今私が最初に申し上げましたように募集、採用の段階で、ここで差別があったら何にもならない。そこで、どういうふうにこの採用問題が書いてあるのか、こう思いましたら、第七条に「事業主は、労働者の募集及び採用について、女子に対して男子と均等な機会を与えるように努めなければならない。」というだけでして、いわゆる努力義務規定。ほかどこにもない。均等な機会を与えなかった場合どうなるのか載ってないわけですね。これではどんなに女子労働者の地位の向上を図ると言っても募集、採用の段階の入り口から、スタートから既に締め出されてしまっている、こういう感じがするわけです。この点はいかがでしょうか。
  210. 赤松良子

    赤松政府委員 十三の縁起が悪いというお話してございますが、何か数えて十四にできないものかというふうに今数えてみましたらやはり十三でございました。しかし、第七条はラッキーセブンでございまして、募集及び採用は第七条でございます。第七条だけ先生はおっしゃるわけでございますが、第七条の後に十二条というのもあるわけでございます。十二条は「第七条及び第八条に定める事項に関し、」ということになっておりますので、七条は当然十二条と関連があるわけでございますが、十二条で「労働大臣は、雇用分野における男女の均等な機会及び待遇確保されることを促進するため必要があると認めるときは、第七条及び第八条に定める事項に関し、事業主が講ずるように努めるべき措置についての指針を定めることができる。」ということになっておりまして、具体的ななくすべき差別と申しますか、前に向かうべき目標を具体的に指針の中で明らかにすることによって、より事業主の努力義務は明らかになる、より具体的になる、このように考えておるわけでございます。  また、その解決の方法につきましては、自主的な解決への努力あるいは婦人少年室長の関与というものがあるわけでございまして、婦人少年室長は、このような募集や採用においての差別につきましても、それは調査をし、行政指導をすることができるわけでございます。それも一々条文を挙げる煩を避けますが、この法律の中には明文化しているわけでございまして、七条だけ書いて、あとは何も手当てがしてないというわけではございません。
  211. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 確かに十二条に「指針」という項目がありまして、今、局長がおっしゃったことが出ておりますけれども、努力義務規定しかないから、確かに、関係者はどういう努力をするかわからない、何を努力すればいいのかわからない。そこで行政庁として一定の指針を与えていくわけだと思うのです。  ところが、この指針に関する関係では第六条の三項にこうあります。「女子労働者福祉対策基本方針は、女子労働者労働条件意識及び就業の実態等を考慮して定められなければならない。」これがまた十二条で準用されてくるわけですけれども、労働条件あるいは女子労働者意識あるいは実態を考慮して定めなければならないというのは、これは実は反対じゃないかと思うのです。恐らく現状を固定化するような方向に進む危険性があるんじゃないかと実は憂慮するのです、いかがでしょうか。
  212. 赤松良子

    赤松政府委員 ただいまの先生の御指摘は、第六条、女子労働者福祉対策基本方針を定めるときの考慮すべき事項でございまして、指針を定めるときにもそれを援用するということでございますので、御指摘のとおりでございます。  ただ、労働条件意識及び就業の実態をまるっきり考慮をしないで指針を定めるということはやはりおかしいわけでございまして、どういうふうに考慮をするかということは、その考慮の仕方はいろいろでございます。そういう実態を変えようということの考慮も考慮でございまして、実態をそのまま追認をするというふうには私どもは考えていないわけでございます。
  213. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 なお指針につきましては、十二条を見ますと、男女の均等な機会及び待遇確保されることを促進するために、労働大臣は、必要があると認めるときは指針を定めることができる、こういう裁量権になっておるわけなんです。全く大臣のお考え一つで決まってくる、こういう危険性があるように思うのですが、これはいかがでしょうか。むしろ努力義務規定に対する指針である以上は、行政庁として必要な指針を定めなければならないというふうに義務規定にすべきではないか、こう思うのです。この点はいかがでしょうか。必要があると認めるときは指針を定めることができるというのではなくて、むしろ「必要があると認めるときは」を削りまして「指針を定めなければならない」、こういう形でいかなければ、努力義務規定に対するいわゆる指針にはなり得ないのではないか、こう思いますので、御見解をお伺いいたします。
  214. 赤松良子

    赤松政府委員 指針についてでございますが、事業主の努力目標を具体的に定めるという場合に、先ほど申しましたように女子労働者労働条件就業の実態、意識などを勘案して、社会経済の現状を踏まえて策定されることになっているわけでございます。現状を漸進的に改革をしていこうということでございますので、そのときどきの社会実態を踏まえて設定される、つまり必要に応じて設定される、あるいはまた一度つくったものが変更される、こういう性格のものだろうと思います。そこで「必要があるとき」というふうにしたわけでございまして、最初この法律が成立いたしましたら、その後、指針を策定するという場合に全く必要がないというふうには当然考えられないわけでございます。そこで「必要があるとき」というふうにいたしましたので、その規定ぶりは、こういう種類の法令の例に倣いますと、定めなければならないといった労働大臣の義務規定ではなくて、むしろ定めることができるという権限付与の形をとるのが適切であるというふうに判断したわけでございます。
  215. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 本当にこの法律が前向きな姿勢で進むような指針をぜひとも出していただきたい、こう思っております。  午前中から竹村委員質問しておりまして、私も簡単にいたしますけれども、今回の十三の法律の改正、整備でもって、いわゆる法律案要綱ができておるわけでございます。この中に一貫して流れているものは、女性労働権をどのようにとらえているのか、これをいわゆる基本的人権としてとらえていないのではないか、こういう感じがするわけでございます。  その一つが勤労婦人福祉法の大幅な改正で、この中で「目的」を見ましても、婦人労働権というものが基本的人権である、こういう言葉はどこにも見られない。逆に、福祉の増進を図る、地位の向上を図るという表現で連ねられております。つまり福祉と人権という、これは言葉の問題かもしれませんけれども、福祉というものは与えられるものという感じがする。人権というものの感覚は違う。福祉は何か恩恵的な色彩が強い。こういうことをこの法律案要綱を見ていますと感ずるわけでございます。この辺、労働省としては、今回のこの法案の基本理念を、女子労働者労働権というものはいわゆる基本的人権である、差別撤廃条約が主張しております基本的人権としてとらえた上での法案なのかどうか、御意見を伺います。
  216. 赤松良子

    赤松政府委員 まず福祉の概念が、普通は社会福祉というふうに狭い概念として考えられますと、他から恩恵的に与えられるというふうに解せられることもあり得ると思いますが、この法律案で使われております福祉の概念は決してそのような狭い概念ではございませんで、もっと広く、労働者の幸せというような広い意味で使われている概念であるというふうに御理解いただきたいと思います。  それからまた男女の平等ということは、むしろ平等権というものの具体的な具現として、この法律がいろいろな保障を第二章においてしているわけでございまして、これは憲法の基本的な人権を具体化するという目的を持ってされたものでございますので、基本的人権をとこか忘れてしまったということでは決してなく、憲法基本的人権を具体的にこの法律の中で実現しようとしているものであるというふうに御理解いただきたいと存じます。
  217. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 基本的人権という趣旨で書かれている法案にしては、余りにも差別撤廃あるいは平等の実現は図れないなという感じを持っております。  それはさておきまして、この勤労婦人福祉法の改正によりまして、ここに出てくる関係当事者には事業主という言葉が出てまいります、事業主。労働基準法では使用者という言葉になっておりますが、労働基準法の第十条を見ますと「この法律使用者とは、事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者をいう。」こういう概念でして、いわゆる取締役であるとか支店長とか支配人とか工場長、こういう者もその使用者に入るということになっております。ところが、この法律案要綱によりますと使用者という表現はどこにもなくて、事業主という言葉で一貫しております。そこで、この事業主という言葉は、いわゆる労働基準法で言う使用者と同じ意味なのか、あるいは純然たる経営者という意味での事業主なのか、その辺をお伺いいたします。
  218. 赤松良子

    赤松政府委員 お答えいたします。  御指摘のように基準法の中には使用者という言葉が用いられているところがございますが、基準法が刑罰をかけるという法律でございますので、直接の行為者である使用者、そして事業主という両方に対して両罰規定を科すということによって実効を担保しようとする性格の法律でございますために、使用者という言葉を基準法の中では使っておりますが、この現在提案中の法案におきましては、基準法の改正部分でない部分でございますが、第一条の方におきましては、そのような両罰規定を科すというような趣旨ではございませんので、使用者という言葉を使う必要がないと思うわけでございます。  また、雇用管理は個別の行為者、今の言葉で言えば使用者でございますが、行為者で行われるというよりも、むしろ企業の全体的な方針の中でその一環として行われるものでございましょうから、均等法の実効担保の手段でございます婦人少年室の室長の助言や指導あるいは勧告といったもの、あるいは機会均等調停委員会の調停に対しましては、企業の全体としての対応が必要とされるというふうに考えられます。そこで男女の均等な取り扱いの義務者としては事業の経営の主体、すなわち事業主を対象として規定する方が適切であると考えたわけでございます。
  219. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 ちょっとわかりにくいのですけれども、では具体的に聞きます。  いわゆる企業の役員とか工場長、こういう方が、その事業主の命令を受けて差別した場合には、これは問題ないのですけれども、いわゆる支店長あるいは工場長、そういう人が自己の裁量権でもって女性に対して差別をしてきた、こういう場合が、普通現実に起こるその差別の実態だと思うのです。いわゆる事業主という表現でもって、こういう場合に救済されるのでしょうか、どうなんでしょうか。
  220. 野崎和昭

    ○野崎説明員 ただいま先生お話しございましたように、労働基準法十条では、事業主のほかに、事業主のために行為する者も同じく労働基準法上の義務主体である使用者に含めております。ここで言う事業主というのは、言うまでもなく労働契約の当事者そのものでございまして、法人でございましたら法人そのもの、それから個人企業でございましたら個人の事業主でございます。そして、労働基準法におきましては、ただいま婦人局長申し上げましたように刑罰が科せられますので、罪刑法定主義の関係から、事業主のほかに事業主のために行為した者も処罰の対象になるということを明記しているわけでございます。  参考までに申し上げますと、労働安全衛生法では逆に事業者というのを義務主体にしておりまして、両罰規定で事業主のために行為する者も処罰の対象にしております。  今お尋ねのこの法案の場合でございますけれども、事業主がみずから行った場合にこの法案に違反することは、禁止規定でございましたら違反になることはもちろんでございますけれども、従業者が事業主のために行為した場合には同じく違反になるのは当然であると思っております。
  221. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 質問したのは、事業主のためにしたのではなくて、そういう工場長とか支配人という方が自己の裁量権でもって差別をしてきた、こういう場合なんです。こういう場合どうするのでしょうか、重ねて聞きます。
  222. 野崎和昭

    ○野崎説明員 自己の裁量権という点が問題かと思いますが、そういう権限を事業主から与えられている者が、その権限の範囲内で自己の裁量で行えば、やはり事業主のために行為したものと見られると思います。
  223. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 さらに具体的に詰めますが、その人が感情でもって差別をしてきた、これが現実的にはあると思うのです。こういう場合どうしますか、適用外ですか。
  224. 野崎和昭

    ○野崎説明員 お尋ねのような場合につきましては、やはり具体的な状況を判断する必要があろうかと思いますが、全く自己の権限外で個人的に行ったものであるということでございましたならば、事業主のために行為したものとは言えない場合があろうと思います。
  225. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 差別をされた場合のいわゆる救済と申しますか、それについてお尋ねいたします。  今回の法案では第十三条、第十四条、第十五条に、それぞれ苦情の自主的解決それから都道府県婦人少年室長の解決の援助「助言、指導又は勧告」それから機会均等調停委員会の調停、この三つがあります。その順番を追いますと、最初に自主的解決がある、その次に婦人少年室長の助言、指導、勧告がある、それから調停がある、こうなっておるわけでございますが、この三カ条の配列からして、この手順を踏まなければ調停にいかないのか、あるいは初めから調停にいってもいいのか。この三カ条の問題につきましてどういう関係になっていますか。     〔委員長退席、愛知委員長代理着席〕
  226. 赤松良子

    赤松政府委員 確かに、その三つは並べて前後順番があるように、あるいは読まれるかもしれませんが、前置主義というものをとっておるわけではございませんので、直ちに調停にいくという道も開かれているわけでございます。
  227. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 わかりました。この三カ条の中で募集、採用については除かれているわけですが、これは会社の従業員ではないんだからということで、けってあるわけですか。まずその点についてお伺いします。
  228. 赤松良子

    赤松政府委員 調停につきましては、募集、採用については外れることになっておりますが、それ以外については、募集、採用といえども婦人少年室長の助言その他あるわけでございます。
  229. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 先ほどから言っておりますけれども、とにかく雇用分野において一番大事なのは、まず募集、採用だと私たちは認識しております。その募集、採用について一切苦情も言わなければ、勧告もできないし、ましてや調停もできないという実態で、現実的には募集、採用については全く拒否だ、こうとれるのですが、そのように理解してよろしいですか。
  230. 赤松良子

    赤松政府委員 募集、採用につきましては、都道府県婦人少年室長が行う援助その他につきましては、必要な助言、指導等はできるわけでございまして、一切外れているということではございません。ただ、調停あるいは苦情の自主的解決というようなところが外れているのは、募集、採用というのは、まだ企業の中に入っていない段階での話でございますので、自主的といっても相手が決まってないというわけでございますし、また調停にも、そういうわけで当事者と言えないというようなことから、十四条の紛争の解決の援助についてのみ適用をするというふうに整理をしたわけでございます。
  231. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 その辺につきましてはわかりました。ただ、十四条はあくまでも助言、指導、勧告だけで、一切強制力がないという弱点はございますね。  ところで、機会均等調停委員会の調停なんですけれども、これを見ますと、差別を受けた当事者が調停に出したい。ところが、一方の当事者の同意がなければ調停にならない、これで果たして調停と言えるのかどうか。普通、民事調停というのがありますけれども、これは一方の当事者が裁判所に申し立てる、相手の同意はもちろん聞かない。そこで、その調停を申し立てられた相手方は裁判所から呼び出しを受けるわけです。そこで、お互いに互譲の精神にのっとって話し合いをするわけですが、その間に裁判所等の説得によりまして調停ができ上がっていくという、こういうものがありますけれども、この機会均等調停委員会の調停というのは、相手が調停なんか嫌だよと言えば、そのレールに乗っていけない、こういう難点があろうかと思います。これで果たして救済制度と言えるのかどうか、この点、御意見をお聞かせいただきたい。
  232. 赤松良子

    赤松政府委員 お尋ねの調停の件でございますが、調停というのは、もともと関係当事者がお互いに話をし合って譲り合おうという気持ちがある場合に初めて調停が成り立つわけでございますから、片一方の当事者が全く応じるつもりがないという場合には、そもそも調停が成功する余地がないものであろうというふうに思うわけでございます。  お尋ねの、調停の場に呼び出しをかけるという場合も、相手がそれに応じないということはできるわけでございまして、調停に絶対に応じなければならないというふうな制度にはなっていないように存じます。
  233. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 問題は、相手の同意があろうがなかろうが、調停の申し立てをすることができるという文面に改めるべきではないでしょうか。なぜ、わざわざ相手方の同意が必要だと書かなければいけないのでしょうか、その理由をお聞かせ願います。
  234. 赤松良子

    赤松政府委員 先ほどお答え申し上げましたように、調停の本質から申しまして、やはり片一方の当事者だけでは成り立ち得ないものだというふうに考えるわけでございます。両方の合意があって初めて調停というものが機能するのではないかというふうに考えるわけでございまして、そのことを書いたにすぎないというふうに御理解いただきたいと存じます。
  235. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 この法案には救済制度が極めて不備であります。その不備な法案に対しまして、相手方の同意がなければ調停ができないんだというふうに書くことは、いたずらに門戸を閉めてしまうとしかとれないのです。その調停を申し立ててみる、相手が出るか出ないかは別問題、そういう表現でよろしいのじゃないでしょうか、いかがでしょうか。
  236. 赤松良子

    赤松政府委員 調停に関しましては、婦人少年室長が調停委員会の事務局を務めることになっております。したがいまして、調停の申請が一方の当事者からございましたときに、婦人少年室長は事務局の担当者として、調停に応じるようにお話しをするということは十分にいたしたいというふうに思います。
  237. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 条文を読みますと「当該紛争の解決のために必要があると認めるとき(関係当事者の一方から調停の申請があった場合にあっては、他の関係当事者が調停を行うことを同意したときに限る。)」こういう括弧があるわけですね。そうすると今のお話ですと、例えば女性側から調停の申請があった。そうしますと、それは一応婦人少年室長が受理をした上で、企業側に対して、調停に応ずるか応じないかを聞く。その結果、調停なんかに応じないと返事が来れば、そのまま申請却下、こういう手順になるわけですか、具体的に聞きますが。
  238. 赤松良子

    赤松政府委員 この制度では、婦人少年室長が、調停に応じないという相手方に対して強制することはできないと存じます。
  239. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 さらに、この法案には調停に関しまして、調停が相当長期にわたって解決していかない、その間に、本来ならば裁判所に訴えることができた場合にも、いわゆる時効にかかる場合もあり得る、そういう場合に、この調停そのものが時効中断になり得るのかどうか、それは一切明記してないわけですが、いかがでしょうか。
  240. 赤松良子

    赤松政府委員 裁判にいくかどうかということは全く当事者の自由な判断にゆだねられることでございまして、調停をしなければ裁判に訴えることができないということでもございません。  お尋ねの時効の点につきましては、その時効中断の旨が法文にございませんので、時効を中断するというふうには考えておりません。
  241. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 そうすると調停中でも、時効にかかる危険性があれば裁判を行いなさい、こうするしかないわけですね。  それから、よくあるのですけれども、こういう不利益な差別を受けまして、それで十三条、十四条、十五条、この三カ条にわたるようなことを本人が申し立てた、そのために企業側から不利益な処分を受ける。その場合に、かかる苦情処理申し立て、あるいは紛争解決の援助、あるいは調停をしたために不利益な扱いをしてはいけないという条文はないのですが、これはどうしても認めるべきじゃないでしょうか。
  242. 赤松良子

    赤松政府委員 御指摘の点は、調停の申し立てを理由として事業主が不利益な取り扱いをするということは厳に戒むべきことでございますので、労働省としても、そのようなことがないように適切な指導をいたしたいと思いますが、法文上不利益取り扱いの禁止を規定するということは、そのような禁止条文がある他の法律に照らして考えまして、それらの規定の仕方が、この当該法案の規定の仕方とは相当異なっておりまして、これを同じような不利益禁止の条文を書くということは均衡を失するのではないかというふうに思うわけでございます。
  243. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 持ち時間が来まして、労働基準法の今回の改正、時間外労働とかあるいは深夜業の問題について質問したかったのですけれども、残念ながら次回にまたやらしてもらいます。終わります。
  244. 愛知和男

    ○愛知委員長代理 大橋敏雄君。
  245. 大橋敏雄

    ○大橋委員 先週から法案の実質審議が始まったわけでございますが、いろいろな論議が繰り返されているわけでございますけれども、きょう社会党の先生質問のときに外務省の答弁者の態度を見ておりましたときに、何という熱意のない役人だろうか、この男女差別撤廃をやろうという大きな問題にもかかわらず、ああいう態度では本当にけしからぬな、と同時に、労働省の役人さんの答弁も非常に納得がいかないといいますか、不勉強といいますか、気の毒に思うほどそれを感じました。  そこで、私は率直に申し上げますけれども、今回の政府案でございますけれども、男女雇用差別の解消に対しましては極めて実効性が乏しい、これまでの論議を積み重ねるまてもないのですけれども、それを率直に実感として受けます。また婦人差別撤廃条約の本来の趣旨とも大きく異なっている、開いている、そういう状況にございまして、どこからどう見ましても中途半端な法案である。大臣は、現状においてはやむを得ない、精いっぱいの法案だ、こういうことでございましたけれども、そうではない、もっと手を入れるべきである、このままの姿で国際舞台に出たならば、言葉は適切かどうか知りませんが、諸外国の袋たたきに遭うような恥ずかしい法案ではないかな、私はこう思うのでございますが、まず最初に大臣のお考え、お気持ちを聞いておきたいと思います。
  246. 坂本三十次

    坂本国務大臣 実効性の問題でございますけれども、先ほども答弁をいたしておりまするように、そこに描かれた理想の姿ははっきり見えるけれども、現実の日本慣行といいましょうか、長い間にはやはり男女差別というギャップが厳然として存在してきた、これは事実であります。つまり現実とあるべき姿との間には相当大きなギャップがある。それは審議会で六年もかけて何とかして差別撤廃をやりたいというその気持ちはみんな一緒なんです。公労使とも一緒だったのです。そういう総論的には何とかして批准をしたい、そのためには雇用平等法案、均等法案をつくりたいという熱意にもかかわらず、もう六年間も討議をしてなかなか一本の道筋がまとまらない。そのあるべき理想の姿と現実との間のかけ橋というか、道づけというか、進路の設定というものがなかなか一本にまとまらない。つまり相当大きな隔たりがあるということでございましょう。  しかし、山が高かろうと道のりが遠かろうと、そこにあるべき姿を見た以上は、やはりこの来年の批准というチャンスをつかまえて一歩一歩前進していくことが正しいのではなかろうか。ということになれば、審議会のあの答申をよくよく見ますれば、なるほど二論併記、三論併記もありましょうけれども、やはりこのままほっておいたのでは困りますから、私ども労働省の判断で、まずこの道のりを歩んでいった方がよかろう、こういう趣旨でつくったわけでありまして、現実と理想との一つのかけ橋というものについて真剣に模索したことは事実であり、それがこの法案の形にあらわれたというわけであります。  その理想の姿から逆に道をつけてくるというわけにはいきませんから、我々の審議会でもみにもまれたようなその現実、その現実の中から道をたどっていけば大体こういう論ではなかろうか。理論的には実効はないとおっしゃるかもしれませんが、現実の日本社会において、そしてしかも来年のこの潮どきをつかまえて批准をしたいというときには、かえって私の言う、まずスタートをしてあとはスロー・バット・ステディーでやった方がいいのではないか、私はこういう気持ちでおります。
  247. 大橋敏雄

    ○大橋委員 婦人の勤労権を基本的人権としてとらえて、そして差別をなくしていこう、こういうわけなんでございますが、まずこの民主主義の根本、基本というものは何といいましても男女平等ということであります。この男女平等のバロメーターというのは、雇用の場における差別的な取り扱いがどうなんだ、その有無あるいは強弱、これにあらわれてくるわけでありまして、この雇用の場における男女差別の実態が男女平等のあり方を決定していくわけです。そういう立場から我が国の実態を見たときに、そういう意味ではまさに後進国であります。なぜ私はこのようなことを申し上げるかといえば憲法第十三条個人尊厳、十四条には法のもとの平等、二十二条には職業選択の自由、二十七条には勤労の権利あるいは勤労条件基準というものが基本的な立場からは大きな網がかぶせられているわけであります。憲法そのものには男女平等にあるべきなんですよという網がかぶさっているわけです。しかしながら、雇用の場における男女差別の実態、現象というものは余りにも多いというわけであります。  このたび婦人差別撤廃条約批准しようということで、それが来年に迫ったわけでございますが、国内法整備のための立法が始まったわけでございます。このような婦人差別撤廃条約という国際的なライトに今照らし出されまして、我が国の問題点というものが明確にさらけ出されてきたものと私は思うのでございます。つまり、法制度の不備、問題点というものが明確に浮き彫りになってきたわけです。そういうことから労働省も各審議会を設け、あるいは研究会等を設置しまして、五年も六年もかかってこの問題と取り組んでこられたわけです。そして恐らく改善整備された姿で男女雇用における平等が実現できるだろう、こういう法案が政府の手によってつくり上げられ出てくるのではないかと我々は考えておりました。また全国の国民、特に御婦人の皆様の関心、そして期待というものは余りにも大きかったと言っても過言ではございません。そしてこの差別撤廃の運動というものは今や大きな波となって国際的にうねり始めまして、我が国にもついにやってきたわけであります。その波の中で我が国婦人の皆様の闘いというものは真剣なものでございます。  そういう状況の中で提案されてきた政府案、結果的には勤労婦人福祉法の改正あるいはまた基準法の一部改正というのが主な内容として出てきたわけでございます。問題は、男女雇用平等という問題を性格の異なる勤労婦人福祉法といういわゆる福祉法の中に詰め込んでしまった、これがそもそもの間違いであったということでございます。したがいまして、国民や御婦人の皆さんの失望というものもはかり知れないものがございます。大臣はこの辺の実情をどの程度認識なさっているのだろうか、大臣のその所感を聞いておきたいと思います。
  248. 坂本三十次

    坂本国務大臣 差別撤廃条約におきましては、男女差別撤廃するときには、やはり男女雇用関係における条件というものを母性保護を除いてできるだけ平等にしなさい、機会を均等にしなさい、そしてその上で意欲と能力のある女性は平等の待遇をしなさい、こういうことでございまして、そういう意味で今度の法案を、勤労婦人福祉法を改廃をいたしまして、そして女性保護と平等の追求、この二つを一つにした方がタイムリーであり、車の両輪として作用するのではないか、こういうふうな考え方から提出をしたわけであります。
  249. 大橋敏雄

    ○大橋委員 私どもは、今回の法案はいわゆる条約批准のための前提法案でございますね、そういうことで、婦人の勤労権を、先ほど申しましたように基本的人権としてとらえた立場から、雇用機会待遇につきまして、事業主等が女性差別的に取り扱うことをまず禁止すべきである、かつ、差別的な取り扱いがあった場合は、女性を迅速かつ適正な手続によって救済をしていく実効性ある措置が講じられる、すなわち総合的な単独の立法がなされるべきである、こう考えてまいりました。少なくとも女性差別撤廃の精神がとことん貫かれた、いやしくも平等の名のもとに女性保護が削り取られていくような今回の法案のような内容であってはならない、我々はこう思うわけでございまして、不十分ながら、今、条約批准のために出したのだから何とかというお話しでありましたけれども、やはりこれは根本的な見直しが必要だ、私はこういう考えにいるわけでございますが、いかがですか。
  250. 赤松良子

    赤松政府委員 条約批准のためには、先ほど大臣も申し上げましたように、男女が同じ基盤に立って働くということが基本的に要請されていると思います。それができないということであれば、これは、基本的に条約趣旨と相反するものではないかと思うわけでございます。しかしながら、条約の中には、漸進的にやる、実現するということも認められておりますので、基準法の改正につきましては、現実を踏まえた緩和にとどめたわけでございまして、基本的に男女が同じ基盤で働くことを条約が要請をしているという点につきましては、私どもは確信を持っている次第でございます。  また、雇用機会の均等、待遇の平等を図るための法律が単独の立法でなければならないというような要請は、条約のどこからも出てくるわけではございません。条約は、機会の均等、待遇の平等が確保されればよろしいわけでございまして、その法制整備に関しては、主権国たる政府の判断に全くゆだねられているところでございまして、その点でも、条約の精神とこのたびの法案とが、趣旨において相反するものだというふうには考えていないわけでございます。
  251. 大橋敏雄

    ○大橋委員 ただ条約批准のための法案ならば、今の局長さんの答弁でいいわけでございますが、我々は、実際問題として、男女差別撤廃される実効性のある法案だということで考えてきたわけですね。そういう立場から、私たち公明党は、数年前から、男女雇用平等法という独自の法案をつくりまして国会にも提案してまいりました。これは募集、採用から定年、退職、解雇、全ステージにわたって禁止をかけ、しかも直罰方式という一番厳しい内容の法案であったわけでございますが、我々は、ここまでいくべきだという考えから、まさに理想的な法案を出していたつもりです。  しかし今回、労働四団体あるいは全民労協の代表の方々から、いろいろな要請を受けたわけでございます。雇用において女性差別されない、真の男女雇用平等の名にふさわしい、実効性のある実質的な法案としまして、そして批准に間に合うように早期に成立をお願いしたい、このような実は要請を受けたわけです。確かに、我が公明党の案のように理想そのものだったら、やはり実現はなかなか難しいだろう、我々もこう考えておりましたので、野党の皆さんと相談し合いました。私どもは国民的立場に立ちまして真剣に調整作業に努力したわけでございますが、その結果、極めて実行可能な共同案ができ上がったわけであります。  きょう冒頭に、社会党の多賀谷先生が代表して提案理由説明をしたのがそれでございます。政府は、今、極めて評判の悪い現在の均等法を取り下げて、きょう四党が共同して提案しましたこの案は、まことに実質的な実効可能性のある法案でございますので、この野党共同提案に賛同して政府案を取り下げれば、これはもう問題なく、国民あるいは婦人の皆さんの期待にもこたえられた、見事なものだと思うわけでございますが、大臣の英断といいますか、決断を仰ぎたいところです、いかがですか。
  252. 坂本三十次

    坂本国務大臣 今、大橋委員のおっしゃったようなお話は、それは皆さんの中からお考えになれば、それが一番適当だろうとお考えだろうと思いますよ。しかし、例えば長い間審議会の中で、今、野党共同提案というようなものが出たとしても、これは私は、なかなかまとまりにくかったろうと思います。それは公益委員もなかなか賛成はされなかったろう、まして使用者側も、これ、なかなか難しかったろうと察するに私は余りあると思っております。そういうようなお互いの考え方を積み重ね、積み重ねして、そしてやっとあの審議会で二論、三論というような結果を経てここまで来たわけでございまして、せっかくのお話してございますけれども、私どもはその皆様方のような案も、それはよく審議会の過程の論の中でよく承知をした上で、最後はやはり私どもの案ということで提出をしたわけでございますので、せっかくでございますが政府案を取り下げるつもりはございません。
  253. 大橋敏雄

    ○大橋委員 各審議会やあるいは研究会等の努力はわかりますし、また、その中で出てきた最終的な考え方が三論併記というような異例な答申であったわけでございますが、要するに利害が相反するわけでございまして、今の問題になっております健康保険法だって同じですね、保険者と被保険者と医師との利害が真っ向から対立するという立場から非常にまとまりができないわけですね。それとよく似たものだろうと思いますが、審議会はあくまでも審議会であって、国会あるいは政府に対して物申すものであって、最終的に物を決めるのは国会ですよね。しかも今は伯仲国会ですよ。まさに与党も野党もほぼ同じ数ですよ。そういう野党が真剣に研究し、また検討し、つくり上げた案でございまして、これは真剣に中をのぞいていただきたいと思います。時間の関係もありますので、次に移ります。法案の第二条の中に「職業生活と家庭生活との調和を図る」云々という言葉が出てくるわけです。その冒頭に「女子労働者は、」と入っております。先ほども、この点がいわゆる性別役割分担の問題で大変論議になっていたところでございますか、私もこれは重要なところじゃないだろうかなと思います。ということは、従来から問題になってきております男性女性役割分担の問題ですが、これがこの文言のままにいきますと固定化していく危険がある、同時に、女性のみに押しつける文言になっているところからこれは重大な条約違反になるのではないか、このように私は感ずるわけです。同時に、同じような文言が第一条の目的あるいは第二十九条等にも繰り返して規定されております。法案の最大の理念とも受けとめられるような表現になってきているわけでございますが、これは先ほど言ったように、重大な条約違反にも通ずる大問題だと私は思うわけであります。先ほどからも論議されておりましたILO百五十六号条約、百六十五号勧告あるいは婦人差別撤廃条約にも、明確に家庭責任は男、女、そして社会共同責任であることを強調しているわけでございます。答弁の中に、我が国社会的あるいは歴史的、因襲的な制約のもとで女性の実態がこうだ、ああだとかいうような答弁がございましたけれども、今回の差別撤廃条約を受けた雇用平等法案を作成する一番肝心なところになるのかもしれないと思うわけでございますので、この点、私も確と聞いておきたいと思います。
  254. 赤松良子

    赤松政府委員 お答えいたします。  ただいま提案中の法律につきまして「職業生活と家庭生活との調和を図ることができるように」女子労働者が「配慮される」という文言があることから、家庭責任を女子のみが負うべきだというふうに読まれる、そして、そういうことであれば差別撤廃条約は言うまでもなく百五十六号条約等にも抵触するというふうな御指摘でございますが、女子労働者のみ家庭責任を負うべきものだというふうには全く考えていないわけでございます。職業生活と家庭生活の調和を図ることは男子労働者にとっても重要なことでございますが、女子労働者が今日まで、より多くの家事負担、育児負担を背負ってきたという現実があるわけでございまして、家庭生活と職業生活との調和を図ることは、男子に比べてはより困難な状態があるわけでございます。そのより困難な状態を少しでも解消して調和を図ることが、今よりも容易にできるようにするということは、決して現状を追認することではなくて、現状を改革することだというふうに考えるわけでございます。基本的理念の中で、家庭責任が女性にのみ負われるべきものだというふうな誤解を与える文言が現在の勤労婦人福祉法の中にはややあるというふうに考えられましたので、その部分は修文いたしまして、そのような事態が起こらないような文言に修文したところでございます。
  255. 大橋敏雄

    ○大橋委員 勤労婦人福祉法の改正という状況の中だから、こういう誤解されるような文言が自然のうちに出てきたと私は考えるわけでありまして、そういう意味からも根本的な単独的な法案にすべきだということを主張したいのです。また、男は仕事で女は家庭である、男は主で女は従であるとかいうような、旧来の陋習じゃございませんが、まさにこれを打破していく、革命していく法案ではないか、また法律にしなければならないと思うわけであります。  時間に限りがありますので、聞きたいことがたくさんございますので、次に移らしていただきます。  先ほどもお話しになっておりました募集、採用の段階にこそ機会均等の道を大きく開くべきである、つまり差別的取り扱いは当然この段階で禁止とすべきである、初めよければすべてよしということわざがございますが、最初が肝心だと私は思うのでございます。私どもの同僚議員が先ほど質問しておりましたように、この入り口に大変な差別の実態があるわけです。要するに入り口で差別的な扱いが行われますと、採用されてもそのままの状態が後に続くわけでございまして、差別的な状態の固定化となるわけでもございます。そこで、この募集、採用の段階を努力義務にしたということは、極めてやわらかな内容でありまして、条約の指針を大きくかけ離れるものでございます。募集、採用の段階における差別的な取り扱いについては、先ほど言いました憲法第十三乗、第十四条、第二十二条、第二十七条等の趣旨に反することにもなりますし、違法的な人権侵害にも通ずると思うわけでございます。婦人差別撤廃条約の中にも、そのことが明確に示されております、差別的扱いというものは女子に対する人権侵害だと。また諸外国の立法の中にも、明確に募集、採用の段階は禁止だとなっております。この点も見直しをすべきではないかと私は思うわけでございますが、いかがですか。
  256. 赤松良子

    赤松政府委員 先生の御指摘のように、募集、採用が雇用のあらゆるステージの中での最初でございまして非常に重要なものであるということは、私どもは認識いたしているわけでございます。募集、採用が重要でないから努力義務にしたということでは決してないわけでございます。重要だとういうことは認識しながら、なお努力義務にすることが適切と考えたからでございます。なぜ努力義務が適切と思ったからということは、従来から何回か申し上げたかと存じますが、繰り返しになって恐縮でございますが、我が国雇用慣行の中で特に終身雇用制というものはよかれあしかれ現実でございます。その終身雇用制の中で女子労働者が置かれているといいますか、女子労働者就業実態あるいは職業意識というようなものを考え、あるいは端的に申しますと勤続年数は、長くなってきているとはいえ男子労働者よりもはるかに短い。そういたしますと、長く働くことを期待していろいろな労務管理を行うという企業にとりまして、全く男女同じに取り扱えと言うことは、それを目指すという方向においては正しくても、強行規定あるいは罰則をつけてそれを独制するということには無理があるというふうな判断をしたわけでございます。これは我が国雇用慣行の現状ということから出てきたものでございまして、募集や採用が重大でない、あるいは重要でないという判断からそのようにしたわけではないわけでございます。
  257. 大橋敏雄

    ○大橋委員 要するに、採用後におきまして配置、昇進あるいは昇格において、女子に対して均等に取り扱われていくという保障はないわけですね。今もお話しがありましたように、確かに女子が、これまでの労働慣行といいますか、結婚するまでの一時的な短期的な就労といいましょうか、あるいは女性職員に対して補助的な労働力である、こういう見方が一般的に強いわけですね。そのために能力は認めながらも主要ポストから外してしまう。最近は職務給といいますか職能給、こういうものを採用している企業が多くなってきておりますので、そういう立場からも賃金面から差別が反映する。女子労働意欲もそういうことから減退してくるという結果になっております。要するに私が言いたいことは、配置も昇進もともに禁止規定ということで進むべきである。なぜならば、これも憲法の十三、十四、二十七条、ILO百十一号条約あるいは婦人差別撤廃条約等の趣旨に反するのみならず、これは労働基準法第四条にも反することであるということを、私は声を大にして叫んでおきます。  それから、この配置、昇進段階も禁止規定にしてぜひ運用していっていただきたい。というのは、例えば使用者が、生理休暇あるいは出産、育児休業等を、企業への貢献度といいますか出勤率等にそれをとらえてマイナス面とみなして、配置、昇進において男子と異なる扱いをしていく、このような問題が予測されるわけでございます。これは間接的な差別ということでございましょうが、こういうものも禁止しますよということを明確にうたいながら、先ほどの配置、昇進もいずれは禁止規定にすべきである、こういうことでございますが、いかがですか。
  258. 赤松良子

    赤松政府委員 配置、昇進等につきましても努力義務規定にした理由は、先ほど募集、採用について申し上げた理由とほぼ同じ理由でございます。  また、今、新たに御指摘のございました出産その他の取得等を理由とした差別的な取り扱いを明文で禁止する必要があるのではないかという御指摘でございましたが、均等法の第十一条では、婦人差別撤廃条約の十一条二項(a)号の要請に沿いまして、女子労働者の妊娠、出産または労働基準法上の休業、産前産後等の休業の取得を理由とした解雇は明文で禁止しているところでございますが、その他の不利益取り扱いにつきましては、この問題を長年検討してこられました婦人少年問題審議会の婦人労働部会におきましても、その雇用管理上の位置づけについては結論が出なかったわけでございます。それは事ほどさように、その問題を法律で一律に規定をするということが難しいからだったというふうに私は理解をしていたわけでございます。保護の規定の適用を受けた者と受けない者との間で、いろいろな昇進、昇格に当たって取り扱いに差が出るというようなことは、したがいまして、当面は法律によって一律規制の対象とはしないということで公労使三者ともに合意をされたものでございまして、そのことから、それらの保護を受けた者と受けない者との評価をどのように変えるか、あるいは変えてはならないとするかということについては、当分、労使間の決定にゆだねることとし、法律には規定をしないというふうなことといたしたわけでございます。
  259. 大橋敏雄

    ○大橋委員 この募集、採用、配置、昇進、この段階でこそ禁止規定規定として男女雇用平等を促進していかねばならぬということは、ここで差別が行われていると、この後に続く教育訓練でそれに見合った教育訓練しか受けられないということになりますから、教育訓練の問題については政府もせっかく禁止規定にしているわけでございますので、これが有名無実にならないように強く要望をいたしておきます。  時間の関係もありますので次に移りますが、福利厚生の問題ですね。十条ですか、この福利厚生の問題でありますが、これも差別的取り扱いを禁止しているということには私も評価をするわけでございますが、肝心の措置内容が省令に委任されております。例えば住宅資金の貸付あるいは社宅、寮の入居あるいは保養施設の利用等における条件につきまして、果たしてどうなるんだろうかという疑問が残るわけでございますが、その条件の中に世帯主でなければならないというようなことが入るのか入らないのか、あるいは勤続年数、賃金、報酬等のレベルがどの程度なければならぬということになるのか、そういう点もお尋ねしたいと思います。これが余り妙な立場で決められますと、つまり省令で決められていきますと、その中における差別が生ずるのではないかという心配があるから、お尋ねするわけであります。
  260. 赤松良子

    赤松政府委員 福利厚生の措置の一部のみを禁止規定にし、その内容を省令にゆだねたということについては御指摘のとおりでございますが、これは福利厚生の措置というのは非常に範囲も広うございます。内容も各種でございまして、その一々を法律に書くということは大変困難でございます。しかも、そのすべてを強行規定の対象とするには余りにも種類がまちまち、しかも経済的な価値の大きいものから小さいもの、任意に企業があるいは使用者が与えても不思議ではないような種類のもの等あるわけでございます。したがって、すべてを強行規定の対象とするというようなことは余りふさわしくないのではないか。しかも法律ですべてを書くということは困難でございますので、省令にゆだねて、省令の中でそれを明らかにする。しかし、代表的なといいますか典型的なものを一つ挙げることによって、どういう種類のものかということは法律の条文からある程度はわかるというふうにしたわけでございます。  先ほど先生が個別にお挙げになりました福利厚生の措置につきましては、その性質が、経済的か価値が大きく、かつ、内容がはっきりするというような種類のものにつきましては、省令の検討の際に強行規定の対象になる可能性が非常に大きい。省令は審議会を経過してつくられますので、ここで、私が、なるとはっきり申し上げることはあるいは僭越かと存じますが、その強行規定の対象になる種類のものが多く含まれていたように偏っておりました。
  261. 大橋敏雄

    ○大橋委員 省令は後日決められる内容だから、ここで具体的な問題を申し上げるわけにいかぬということで具体的な問題を言われませんでしたけれども、先ほど私が申し上げた内容は非常に重要な問題点ですので、省令で決めるときにはその辺を配慮した上で、考慮した上で決めていただきたい。  次に、基準法に関して申し上げたいと思いますが、労働基準法の女子保護規定大幅緩和ないしは廃止することは、女性労働者を、低劣な条件下にある男性労働者同様の条件に追い込むのだという非常に厳しい批判が今ちまたにあっております。雇用平等実現とは、機会の均等及び待遇の平等を目指す際にも、男女の本来的な差異を考慮に入れた実質的平等を目指すことであると男女平等問題専門家会議の報告の中でも明示されていたように伺っております。我が国労働基準法はILO条約や諸外国の水準に比べてかなり下回っている、こういうわけでございますが、男女差別撤廃もさることながら、男子の現在における過酷な労働条件改善するためには、今の基準法を大幅に改善をする必要がある、私はこう思うわけでございますが、いかがですか。
  262. 望月三郎

    ○望月(三)政府委員 労働基準法が確かに年を経ましてやや現実の実態に合わなくなってきているということは私どもも痛感しているところでございまして、今、労働基準法研究会の場で鋭意検討をしておるわけでございます。昭和六十年を目標に一つの報告を出したいということで努力をしておるわけでございます。  それから、実質的な平等を達成するために労働基準法の保護規定というものを今回緩和しているではないか、こういう御指摘かと存じますが、差別撤廃条約男女平等の状態を目指す条約でございまして、例えば、女子家庭責任を負っているからというような理由による女子保護規定は、母性保護規定を除きまして、基本的には同条約に抵触するわけでございまして、究極的にはこれを改廃することが求められているというように私どもは解釈しているわけでございます。しかし、同条約は、この改廃をそれぞれの国の実態に応じて漸進的に行うことを認めておりますので、今回の改正におきましては、我が国の経済社会の現状だとか、あるいは特に女性家庭責任をより重く負っている状況等にかんがみまして、現段階において男女の均等な機会待遇確保していく上で特に必要なものについて女子保護規定の緩和を図ることとしたわけでございます。御理解をいただきわいと思います。
  263. 大橋敏雄

    ○大橋委員 今の御答弁の中で、研究会においで今基準のあり方を研究させているんだ、六十年に答えをもらう予定だということだったのですが、その答申の内容次第では大幅な改正もあり得ると理解してよろしいですか。
  264. 望月三郎

    ○望月(三)政府委員 今の基準法は、主として第二次産業を頭に入れて、工場法の伝統をくみまして構成されておりますが、第三次産業の広がりというのが労働者の数でももう五〇%を上回って最大の規模になっている、しかも、その中身が三次産業というのは非常に多様化しておりまして、いろいろな労働実態になっているということでございますので、それらを実態的にどうつかまえるかというような問題、それから例えば年金の問題等も出てきておりまして、労働基準法は全く一時金の支払いということで保護規定を置いておるわけですが、年金化された場合にどうなるのかというような問題がございまして、運用の問題、制度の問題を含めて報告書として出したいということでございますので、かなり大幅な問題提起ということが行われるのではなかろうか、こう思っております。
  265. 大橋敏雄

    ○大橋委員 問題が提起されたならば、その趣旨に沿って当然基準法の改正をやるべきだと思います。  そこで、今回の基準法の改正の中で労働時間の改正はまさに改悪だと私は思います。なぜならば、劣悪な労働条件の代表というのが長時間低賃金労働であるということですよ、我が国の現状が。その長時間労働をさらに延長しようという内容だから、まさに改悪だということを私は声を大にして言うわけであります。  今、国際的水準というのは週四十時間制に移行しておりますね。また、時間外労働も一定の限度枠が設定をされておりまして、それに比べますと日本はまだ週四十八時間制です。男性の時間外労働は法的には無制限、諸外国には例を見ない長時間労働となっております。このために男性の健康破壊が非常に問題化されているわけでございまして、こういう立場からも現在の労基法の大改善指摘されているところでもございます。改悪の顕著な例を申し上げますと、今度の時間の改正に上りまして一日に十四時間労働が許されるという状態が出てくるということです。あるいは特定の週は一週間に三十時間ないしは最悪四十数時間という残業をさせられる事態も考えられるというわけであります。労働による身体の負担の程度あるいは事業活動の状況等を考慮して、かつ、女子の健康及び福祉に支障のない範囲において労働省令で定めるということになっておりますけれども、こういう状況の中に果たして女子は守られていくのだろうかという心配がありますので、この点、お尋ねいたします。
  266. 望月三郎

    ○望月(三)政府委員 御指摘の点につきましては、まず工業的業種の事業について法案では一日二時間の制限を廃止することとしておりますが、男子も含めた一日の時間外労働時間数は三時間までというのか、統計によりますと九二%を占めております。これは女子について一日二時間の規制を廃止しても、直ちに御指摘のような長時間労働に結びつく可能性というのはそう多くはないのではないか。仮に例外的にそのような事態が生じましても、一週六時間の規制がございますので、恒常的な長時間労働はあり得ないというように思っております。  次に、非工業的業種の事業につきましては、女子の進出及びその能力の発揮が期待される分野でございまして、時間外・休日労働の規制につきましては、できるだけ男子に近づけることが適当であると考えられるので、私どもは労働省令で定めることができる時間外労働の上限を一応四十八時間としておりますが、これはあくまでも省令で定める時間数の上限でございますので、そのままそれが労働省令ということではなくて、その節風で決めるということでございます。また、実際に時間外労働をさせる場合には、省令で定められた範囲内で事業所ごとに三十六条の協定を労使で締結する必要があるわけでございまして、このように何重にもチェックがございますので、今回の改正によって極端な時間外労働が発生するというようには私ども考えておらないわけでございます。
  267. 大橋敏雄

    ○大橋委員 上限が四十八時間なんとおっしゃいますけれども、スウェーデン、ベルギー、イギリス、フランス、アメリカ、もうすべて四十時間あるいは三十九時間というふうに非常に短縮されてきているわけですね。そういうことから考えてまいりますと、今回の時間の延長というものは非常に問題だ。現在の週四十八時間制の短縮等の改善を図らないままに現行労働基準法を緩和することは、女子の健康及び福祉に支障を来すものである。さらに問題は、命令を定める際にも事業活動の状況を考慮するなどは、労基法の立法理念もゆがめていくのではないか、こういうおそれを感じます。  私も、この後、深夜業あるいは育児問題をお尋ねしたかったのですが、時間が来たようでございますのでもう少しありますね、もう一つ深夜業についてお尋ねいたします。  深夜業というのは人間の生理に反し有害であることは、だれが何といっても明白なことでありまして、したがいまして、深夜業はやらない、深夜業は必要やむを得ない業種のみに限定するというのが基本にあるべきだと私は思うのです。しかし、我が国男性は無制限です。健康破壊が進展しております。既に認められております女性に対しまして何らの法規制もございません。看護婦さんなどは過重労働のために種々の現象が多発して、悩みの種になっております。  そこで今回の改正の中で、本人の申し出を深夜業の解禁の要件としているところがございますけれども、労働基準法の根幹に触れる重大な問題だと私は思うわけであります。というのは、労基法の基本精神は、個人の都合ではなくて全体的な立場からぎりぎりの最低の労働条件を定めているわけでありまして、特定の個人の希望云々を許すということになれば大変な問題だ。もし特定の個人の申し出を要件に深夜業を許すようなことになるならば、その業務に関しては自然に深夜業をやってもらえる人のみを採用するような格好になっていくのではないか、また昇進や昇給になりましたときにもそういう仕事ができる人のみを厚遇していく、こういう大きな格差が生じるのではないかという心配が出てきました。この点はいかがでございましょうか。
  268. 野崎和昭

    ○野崎説明員 お尋ねの本法案の六十四条の三、第五号の「命令で定める事業」につきましては、先般もお答え申し上げましたとおりタクシー事業を予定しているわけでございます。  今回の改正につきましては先ほども局長が申し上げましたとおり、労働基準法の女子保護規定は、婦人差別撤廃条約に照らしまして究極的には廃止されるべきものであるというふうに理解しておりますが、女子が現実により多く家庭責任を負担しているという状況を考慮いたしまして、深夜業の禁止につきましてはごく一部の緩和にとどめたわけでございます。そういう状態の中で、労働者本人が非常に強く希望しておられる、しかも御承知のとおりタクシーの場合には、勤務時間帯が深夜にかかります場合と昼間の場合とでは収入が非常に違ってくるわけでございます。そういうことで、そういった現実的な強い理由から、御本人が強く希望しておられるのに、なおかつ、あくまでも禁止を貫くということはかえって実情に沿わないというふうに考えまして、ただ、それではすべてのタクシー事業について深夜業を認めるということもまた現実的には問題があるということで、そういう本人の申し出がある場合に限って認めることにすることが適当であるということで、この法案のような規定にしているわけでございます。  なお、タクシー事業というのは、御承知のとおり非常に特殊な事業でございまして、この申し出をした、しないによって差別的な取り扱い等が生ずるというような実態は、事業の中身から考えまして通常はないというふうに考えております。
  269. 大橋敏雄

    ○大橋委員 個人の申し入れを許容するような内容は、基準法の基本に触れる重大な問題だということを指摘しておきます。  最後にもう一問。「品質が急速に変化しやすい食料品の製造又は加工の業務」という定義では、かなり拡大解釈されるおそれがあると思いますが、これはどうかということ。また「その他の当該業務の性質上深夜業が必要とされるもの」という部分につきましては、広範な業務が含まれてしまう危険性があるのではないかと思うこと。それから定義について限定的なものとしなければ、その問題性、危険性はさらに拡大されていくのではないか、将来広範な業務について深夜業が解禁される道を開いていく危険性があるのではないか、こういうことになれば、いよいよ労働者の健康は破壊されていくという心配が残るが、この点についてお答えをいただいて、終わりたいと思います。
  270. 望月三郎

    ○望月(三)政府委員 法案の六十四条の三第一項第四号に該当するものといたしまして、「品質が急速に変化しやすい食料品の製造又は加工の業務」といたしましては、具体的には仕出し弁当の事業、それから生めん等の製造の業務が想定されております。それから「その他の当該業務の性質上深夜業が必要とされる」業務といたしましては、新聞配達の業務と、それから卸売市場における生鮮食料品の卸売業務等が考えられておりまして、これらは審議会でこういう具体的な議論がなされまして、決して無限に広がるというものではございませんで、それらが今議題として審議会の場で、これを入れるかどうかという議論がなされることになるかと思います。いずれにしろ三者構成の審議会で、その辺は具体的に決めていきたい、こう思っておりますので、そう無限に広がるというものではございません。
  271. 大橋敏雄

    ○大橋委員 時間が参りましたので終わります。(拍手)
  272. 愛知和男

    ○愛知委員長代理 小渕正義君。
  273. 小渕正義

    小渕(正)委員 まず初めに、この法案の周辺といいますか環境といいますか、そういうものについてお尋ねいたします。  婦人労働者の現在の就業者数については、全体の労働者の中で三四・六%程度占めているというようなお話で、データも出ておるようでありますが、女子就業者の総数の具体的な数字について一番新しいものをひとつお示しいただきたい、かように思います。
  274. 松原亘子

    ○松原説明員 お答え申し上げます。  就業者についての御質問でございましたが、就業者総数は昭和五十年で五千二百二十三万人。最新の数字といたしますと昭和五十八年のがございますが、これによりますと五千七百三十三万人でございます。このうち女子就業者数は五十年で千九百五十三万人、最新の五十八年で二千二百六十三万人となっており、この間で三百十万人増加いたしておるところでございます。女子の増加数が非常に多いわけでございまして、五十年から五十八年の間におきまして、就業者総数に占めます女子の割合は、五十年が三七・四%でございましたが、五十八年には三九・五%になっております。  なお、この就業者総数は専ら雇用者の増加によってもたらされておりまして、雇用者総数で見てまいりますと昭和五十年が三千六百四十六万人、昭和五十八年が四千二百八万人でございます。このうち女子雇用者数は五十年が千百六十七万人、五十八年が千四百八十六万人でございまして、三百十九万人増加しておりまして、雇用者総数の増加の五六・八%を占めております。この結果、雇用者総数に占めます女子の割合が昭和五十年の三二・〇%から五十八年には三五・三%へと高まっているところでございます。
  275. 小渕正義

    小渕(正)委員 これは政府委員室から出た資料で「社会労働委員会付託法律案参考資料(その七)」ですが、五十七年度までの数字が出されておりますけれども、今のお話からいきますと若干食い違ったようであります。これは統計のとり方に違いがあったのかどうかわかりませんし、そのこと自身を余り大きな問題にすることはありませんが、ちょっと政府関係資料として出されたにしては食い違いがあるので、その点はどういういきさつなのか、お伺いいたします。
  276. 松原亘子

    ○松原説明員 お答えいたします。  ただいま私が申し上げました数字は昭和五十八年の数字でございます。先生指摘になられましたのは社労調査室の方がつくられました資料かと思いますが、これは昭和五十七年の数字でございまして、私が申し上げた数字の方が一年間新しいものでございます。その数字の食い違いだと存じます。
  277. 小渕正義

    小渕(正)委員 それはわかっていますけれども、あなたが言われた五十七年度の数字がかなりこれと違ったものですから、その点は十分勘案しながらお聞きしたわけです。その点は余りあれじゃないですから…。  次に、この総数の中にはパートタイムの婦人労働者の数が入っているのかどうか、その点いかがですか。
  278. 松原亘子

    ○松原説明員 ただいま申し上げました数字の中には、いわゆるパートタイム労働者も入っております。
  279. 小渕正義

    小渕(正)委員 次に、これらの女子就業労働者就業状態といいますか、年齢階層別な状態をどの程度、労働省としては把握されておるのか。もし把握されておれば、そういった女子就業労働者の年齢階層別または就業形態別な状況について、ポイントだけをとって結構ですから、お示しいただきたいと思います。  あわせて、今後の女子就業者数はどのように推移していくというふうに労働省当局はお考えなのか、見込んでおられるのか。現在の経済、社会の状況の中で、増加するとした場合でも、どのようなピッチで増加していくか、いろいろな推移が考えられるわけでありますが、そこらあたりの見込みといいますか、お考え等についてお聞きをいたしたいと思います。
  280. 松原亘子

    ○松原説明員 女子雇用者につきまして年齢階層別にどのような構成になっているかをポイントだけ申し上げますと、女子雇用者中に占めます三十五歳以上の層の割合が年々上昇いたしておりまして、昭和五十年は三十五歳以上の層が五百四十四万人、四七・六%を占めておりましたが、五十八年には七百七十六万人で五五・八%となっております。  それから就業形態別に見てまいりますとパートタイム労働者が増加いたしておりまして、週の就業時間が三十五時間未満である労働者、いわゆる短時間雇用労働者でございますが、これをパートタイム労働者にかわる指標として見てまいりますと、昭和五十年には百九十八万人でございましたが、五十八年には三百六万人にふえておりまして、雇用者中に占めます。その割合も、五十年の一七・四%から五十八年には二一・一%へと高まっているところでございます。  それからまた、今後の女子労働力の見込みでございますが、具体的な数字を挙げて、どの程度ふえるというふうに申し上げるのは非常に難しいわけでございますが、女子比率が非常に高いサービス業、卸・小売業等の三次産業での就業機会が非常にふえておりますし、また、パートタイム労働といったような、主婦にとって非常に働きやすい就業形態の増加が見込まれております。また、女子自身にとって家事育児の負担が軽くなっているということもございまして、社会への参加意識というのは非常に高まっているわけでございまして、そういうことを総合的に考えますと、結婚後も引き続いて働くとか、また子育てが一段落してから、また労働市場に入ってくるというような女子労働者がふえると見込まれますことから、女子労働力率全体としては今後とも高まるのではないかというふうに見込まれるところでございます。
  281. 小渕正義

    小渕(正)委員 女子労働力が今後とも高まっていくという見通しのようでありますが、ここ一、二年の現象から見ますならば、オフィスオートメーション化になりまして、どちらかというと女子労働者雇用機会が非常に減少しつつある傾向が出ておるわけであります。そういったことなどを考えますならば、もちろんパートタイム的な、そういった関係の労働を希望する人たちの層は増大する可能性はあるかと思いますが、全体的にいかがなんでしょうかね。そこらあたりについては、ここ一、二年のそういった現象についてどのようにお考えですか。
  282. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 先生指摘ございましたように、オフィスオートメーションとかそういうような関係で、ある局面では新規採用が減るというような場面もございますが、また他の分野でふえるというような形もございまして、総量としては女子雇用はふえておるというようなことでございます。今後の数字の見通し、なかなか難しゅうございますが、一応私ども第五次雇用対策基本計画策定の際にいろいろのデータを使いまして試算をいたしておりますが、それによりますと、五十七年から六十五年にかけまして女子労働力率は、これは労働力人口が年率一・一%の上昇をするであろう。この間、男子の場合は年率〇・八%の上昇。そういう年率一・一%の上昇で五十七年から六十五年にかけまして約二百十万人程度ふえていくのではないか、こんなような見通しをいたしております。ちなみに、この間におきまして男子の場合は〇・八%の年率で二百四十五万人程度の上昇になるであろう、こんな見通しをいたしております。
  283. 小渕正義

    小渕(正)委員 次にお尋ねいたしますが、これだけたくさんの勤労女子就業者がおられるわけでありますが、この女子労働者の給与における実態について少しお尋ねいたします。  ここにいただいている資料から見ましても、明らかに男女賃金の格差が歴然と数字的に出ているわけであります。これらの格差の状況を、ここにいただいているこの資料どおり労働省としては受けとめておられると思うわけでありますが、これに対して労働省としては一体どういうふうにお思いになっておられるのか、その点どうですか。
  284. 赤松良子

    赤松政府委員 統計で見ますと男子の平均と女子の平均では非常に大きな格差が出ているというのは御指摘のとおりでございますが、これはあくまでも全男子労働者、全女子労働者の平均でございますので、条件が非常に違うものの平均でございます。そういうわけで格差が大きいというふうになるわけでございますが、例えば、どういう条件が違うかと申しますと、女子の方は平均年齢が低く、また勤続年数も男子に比してかなりな程度短いわけでございます。そして日本賃金の決め方は、勤続年数に応じた決め方をするということが全く適法にされるわけでございますので、勤続年数が短い方が賃金が安いということになるわけでございます。  また学歴から申しましても、日本では学歴を賃金の決定に加味して決定をするということがかなり広範に行われておりますが、男子労働者と比べて女子労働者はやや高学歴者の比率が低いという事実もございます。  また、小規模の分野への就業の比率が女子の方が高うございます。日本では大企業と小企業とでは賃金格差はかなり事実上ございますので、小企業の方に分布が多くなっている女子の方は、平均いたしますと賃金が低い者が多い、こういうことになるわけでございます。  そのほか、給与の中には各種の手当が含まれることが比較的日本では多いわけでございますが、その手当も家族手当あるいは住居手当などは世帯主という資格の者に支払われるということがかなり見られるわけでございます。そこでこれは男子の方が多く女子が少ないということも事実でございます。  このようなことを総合いたしますと、かなりな格差は全く違法性がなくて出てくるということはあるわけでございます。それ以外に差別的な要素というものも賃金の格差を生んでいる要因になっているかと存じます。
  285. 小渕正義

    小渕(正)委員 男女賃金格差がどうしてこういうようにあるかという、その理由づけの要素をたくさん並べられまして、違法性がないんだということのようでありますが、それぞれ賃金というものは非常に複雑でありますから同一比較することは難しい問題だと思います。今のお話を承っておりますと、これだけの男女賃金格差を一概に比較するわけにはいきませんけれども、全体として我が国の今日の賃金事情の中では男女格差に対する違法性はない、こういうように労働省としては受けとめておられるわけですね、その点いかがですか。労働基準法の第四条に「男女同一賃金原則」ということがきちっとうたわれているわけでありますが、そういう基準法に照らし合わせてみましても、こういうような男女賃金の格差の発生したのはそういう違法性のものではない、置かれているいろいろな条件の違いだから数字的にはこういうふうになっているだけなのだ、こういうふうにはっきり言明なさるのかどうか、その点いかがですか。
  286. 赤松良子

    赤松政府委員 統計上の賃金格差というものを考えます場合には、ただいま申し上げましたような要因というのは非常に広く広がっている要因でございますので、賃金格差全部の平均で比べましたような場合には、そういう要因が非常に大きく作用しているのではないかと思います。労働基準法四条の違反につきましては、監督の内容として是正が図られていると存ずる次第でございます。
  287. 小渕正義

    小渕(正)委員 どうも最後の言葉がはっきり聞こえなかったのです。どのように言われたのかちょっとわからぬわけでありますが、結果的にはどのようにおっしゃられたのですか。
  288. 野崎和昭

    ○野崎説明員 労働基準法四条では、御承知のとおり男女賃金差別を禁止しているわけでございます。私ども監督、指導の結果、違反件数として指摘されますのは年間大体四、五十件でございます。
  289. 小渕正義

    小渕(正)委員 年間四、五十件は監督署としては掌握しているようでありますが、今の一般的な常識論として、我が国賃金制度の中では男女の賞金格差が歴然としてある。これはそれぞれの条件の中で比較した場合においての関係でありますが、特に初任給に関して、高卒の学歴を持ちながらも男子女子はもう明らかに違うとか、もちろん違う理由づけは、職務の内容が違うとか、やれいろいろなものが違うとかいうようなことはありますけれども、常識的に見て、一部の公務員関係を除けば我が国男女賃金格差は歴然として現在はあるというふうに受けとめるのが順当ではないかと私ども思っているのですが、その点はいかがですか。
  290. 野崎和昭

    ○野崎説明員 私どもの方で違反として指摘されるケースというのは、典型的なものは男子女子賃金表を異にしているというような場合あるいは女子のみ特別の手当を出さないというような場合でございます。これらは、女子であることを理由とする賃金差別であることが明白でございますので、違反として処理しているわけでございます。  非常に難しいのは、労働の対価として賃金があるのでございますけれども、問題は、労働内容が違っているということの結果、賃金に差が生じているという場合がもう最近ではほとんどでございまして、こういうものにつきましては女子であることを理由としておる賃金差別であるのか、労働内容が違っていることによる賃金の差なのかという点の判断が非常に困難でございます。そういう意味では、最近の基準法の違反件数は非常に少ないのでございますけれども、それ以外のものについて男女間で賃金の差がある場合に、これを四条違反として見るか、あるいはそうではなくて労働内容が違うという点で見るのかという点が問題であろうかと思います。
  291. 小渕正義

    小渕(正)委員 今の問題は、今おっしゃられたように非常に立証が難しい点が多々あるものですから、結果的には現状このような形で追認せざるを得ないような状況になっていると思います。この点はまた後で議論することといたしまして、次に移ります。     〔愛知委員長代理退席、稲垣委員長代理    着席〕  今回の勤労婦人福祉法の改正ということで、この均等法案が出たわけであります。この中で、皆さん方から言われているように、男女差別の禁止を明確にして、そういうことの中ですべて行うべきであるということが強く言われているわけでありますが、その点については、特に法の目的の中で、はっきり男女差別の禁止ということを明確に出して、そうしてこれらの問題の解決には労使間における自主的な解決を促進する、そういうことも一つの大きな柱にしながら、まず法の名分といいますか目的の中に、はっきりこういったものを明示していくことが必要ではないのか、かように考えるわけでありますが、その点に対する御見解をお尋ねいたします。
  292. 赤松良子

    赤松政府委員 法の目的の中に、雇用における男女差別の禁止を明確に書け、こういう御趣旨かと存じますが、均等法の第一条の「目的」では「雇用分野における男女の均等な機会及び待遇確保されることを促進する」と規定しているわけでございます。これは婦人差別撤廃条約の第二条の中の規定、すなわち婦人に対するすべての差別の禁止と同様の趣旨規定しているものと考えている次第でございます。さようでございますので、この「目的」の規定ぶりは条約趣旨にも合致し、決して不十分なものではないのではないかと考えております。
  293. 小渕正義

    小渕(正)委員 我が国労働行政の中で、特にこういった問題の中で、やはり基本は労働者使用者それぞれが自主的に、みずからお互いの力によって解決していくんだぞという一つの責任感的なものをもっと法律の中に明文化していって、もつ何か紛争があれば第三者機関だ、やれどこか行政機関だということで、ただすぐ持ち込むということではなしに、もっとお互いが自主的にそういった問題についての努力をまずすることが先決だ。そういう中から、また次の紛争の処理機関の中にゆだねていくというような一つの気風といいますか、そういうものが今の我が国労働行政の中で必要ではないかという気が私はするわけです。そういう意味では、先ほど申しますように、もう少しここの中に、お互いがそういうものを助長していくような、そういう形が必要ではないかということで、男女差別の問題も、これはやはり使用者が悪い、どうだこうだということでありますが、当然そこに働いておる労働者の人たちの大きな問題でありますから、そういう労使間の自主的解決をまず促進しながら、そうしていろいろとこれらを解決していくんだという意味で、ひとつここらあたりを大きな法律の目的の中に一つの枠として入れる必要があるのではないか、こういう意味でお尋ねをしたわけでありますが、この点、大臣としての御見解を承りたいと思います。     〔稲垣委員長代理退席、委員長着席〕
  294. 赤松良子

    赤松政府委員 ただいまの、自主的な解決の促進ということが大切だという御指摘につきましては、全くそのとおりだと存じます。  そこで、ただいま御審議中の法案では、「目的」の中に自主的解決というふうには書いてございませんけれども、十三条の規定で、具体的に自主的な解決の促進ということを言っているわけでございまして、この規定の方法は適切ではないかと思います。
  295. 小渕正義

    小渕(正)委員 限られた時間ですから、ひとつ問題をポイントだけでいきたいと思います。  今回の法案の中で、募集、採用といった問題が努力義務になっているということで皆さん非常に不満があるわけでありますが、そういう不満は一応抜きにいたしまして、今回のこの法案の中で、募集、採用に当たって男子と均等な機会を持つように努めなければならないということは、具体的にこういった企業が行う採用活動の中ではどのようなことをしなさいということなんですか。抽象的な言葉ではなしに、企業が行う採用活動の中で、こういうことをしてはいけませんよというような、どういうことをしなければならぬということを言っているのか。いま少し、そこらあたりを具体的な中身として、はっきりひとつお示しいただきたいと思います。
  296. 赤松良子

    赤松政府委員 お答え申し上げます。  ただいまの点につきましては、均等法の第十二条に「指針」という項目がございまして、「労働大臣は、雇用分野における男女の均等な機会及び待遇確保されることを促進するため必要があると認めるときは、第七条及び第八条に定める事項に関し、事業主が講ずるように努めるべき措置についての指針を定めることができる。」と規定しているところでございます。第七条が募集及び採用、第八条が配置及び昇進でございますから、この指針は、この法律案で努力義務となっている項目については指針を定めて、その努力義務の目標を明らかにするという構成をとっているわけでございます。この指針をつくるに当たりましては、三者構成の審議会にお諮りをして指針の内容を具体的に決めて、事業主がなくしていくべき差別あるいは目指すべき均等待遇の方向を明らかに具体的に書く予定でございます。
  297. 小渕正義

    小渕(正)委員 そうしますと、今のお話からいきますと、指針ができるまでは具体的なことは何も答弁できないということなんですか。私が聞いているのは、そういうことじゃなしに、均等な機会を持たなければならないということは一体具体的にどういうことを指しているのかということです。  例を出しましょうか。例えば衆議院に衛視さんがおられますね。衛視という作業からいけば女性もできぬことはないですけれども、いろいろ職務を分析するとやはり男子が好ましいということになると思うのですけれども、したがって衛視を採用するとき、男子に限りという採用条件で採用の募集をしたときには、この法律で言う均等な機会を与えないということに抵触するのかどうか、この点はどうなんですか。具体的にそういった意味でお尋ねしているわけです。これは一つの例です。
  298. 赤松良子

    赤松政府委員 ただいま御指摘になりました例でございますと、衛視さんというのはたしか深夜業が仕事の内容としてあるというふうに考えられます。女性の深夜業につきましては今回非常に限られた範囲での緩和にとどまっておりまして、一般的には従来どおりの深夜業の制限がございますので、衛視さんのような職業で深夜業を女性がするということは不可能なのではないかと思います。そういたしますと、その仕事に法令で禁止されている内容を含むような業務であるということになりますと、これは男子のみとしても、それには合理的な理由がございますので、御指摘のような場合には、なくすべき差別とは言えないのではないかと思います。
  299. 小渕正義

    小渕(正)委員 たまたま衛視という例を出して、それに深夜業があるからそういうことになるでしょうけれども、法的にそういうものに該当しないでも、いろいろ現在の中にはあるわけですが、そういう場合において、特定の職種についてはそういった法律と関係なしに採用条件に「男子に限って」そういうものを付していくということは、今後のこの法案の関係からいうならば、そういうことは一切原則としてはできないことになるのかどうか、その点はいかがですか。
  300. 赤松良子

    赤松政府委員 ただいまお答え申し上げましたように、法令でどうしても女性ができないというような内容の仕事でございましたならば、これは今後指針がつくられる場合にも、そのようなものを均等待遇の対象とするということにはならないと思いますが、一般的には全く合理的な理由もなく違う基準を設けているというような場合には該当するというふうになろうかと思いますが、いずれにいたしましても指針のつくり方というものによって内容は決まってくるというふうに御理解いただきとう存じます。
  301. 小渕正義

    小渕(正)委員 すべて指針で逃げられているわけでありますが、そんな頼りないことで、この法案を審議するわけにはいかぬわけですけれども、一般的に企業が採用活動を行っている場合には、例えば高卒の男子五十名なら五十名、高卒の女子十名なら十名、そういう一定の枠を設けて企業としての採用活動等を行う、また募集等を行っているのが普通の状態です。そういうふうに男子何名とか女子何名とかということを一つの採用活動の中で行うことは、具体的にこの法律の関係ではどのようにお考えなのですか。これは一般的に行われているのでありますが、もちろん女子を採用しようとする職務の内容男子を採用しようとする職務の内容一つ一ついろいろと詳細に分析して、そうして女子就業不可能なのかどうかということでないと答弁できないということかもしれませんが、そういうことではなしに、一般的に今行われている採用活動の中で、男子の場合は何名とか女子の場合は何名とか、こういう形での採用活動が今後どうなるのか。皆さんが一番知りたいのはそういうことでありますが、そこらあたりはどのようにお考えですか。
  302. 赤松良子

    赤松政府委員 指針の具体的な内容につきましては、この法案では、女子労働者の福祉対策基本方針を定めるに当たっての勘案事項というもの事そのまま用いるというふうな仕組みになっておりますので「女子労働者労働条件意識及び就業の実態等を考慮して定められなければならない。」ということでございます。また三者構成の審議会にお諮りするということでございます。  なお、具体的なお話ということでございますので、私どもが男女の平等とはというテーマで二年半の時間を費やしまして婦人少年問題審議会の婦人労働部会がお願いをいたしまして御意見をちょうだいいたしました「雇用における男女平等の判断基準の考え方について」という男女平等問題専門家会議の御報告がございます。この中に「雇用における男女異なる取扱いの現状」ということで、どのような異なる取り扱いが現在企業の中で行われているかということについて検討した場所がございます。例えば「我が国の企業においては、募集、採用から定年・退職に至るまで男女別に雇用管理が行われている事例がみられる。その背景には様々な理由があり、実態だけから妥当性の有無を判断することはできないが、その具体的事例を幾つかあげると、次のとおりである。」ということで「募集、採用については、「男子のみ」又は「女子のみ」の募集、採用をしたり、男女別に募集・採用人数の枠を設ける、男女異なる年齢、学歴、資格等を条件に募集、採用する、女子だけに婚姻の有無、子供の有無、自宅通勤、容姿等の条件を付けて募集、採用する、」あるいは「男女異なる雇用形態」例えば男子は常用、女子は臨時というような決め方、あるいは「就業形態」フルタイマーとパートタイマーを性別によって分ける、そういう「募集、採用する、など。」という例が挙げられているわけでございます。このようなことは当然この次のステップとしては検討段階に入るわけでございまして、その中で、すべて廃止すべき差別になるということは今の段階では申し上げられませんが、そのようなことが検討されたことについて御報告をするということで、お答えの一部とさせていただきたいと思います。
  303. 小渕正義

    小渕(正)委員 今の討議された中身の中での意見として一部出た点については理解する面もありますが、要するに今の日本の経済、社会の中では、職務の内容男子の特性を多とするような職務とか、女子の持っておられる特性を中心にしてやらなければならぬような職務とか、そういうのがいろいろたくさんあるわけです。だから、そういうものに限っては今私が特定して申し上げましたような方向の採用活動ができるのかどうかということが一つのポイントだと思います。しかし、今の御答弁の全体的に流れる感じからいけば、そういうことはすべて指針の中で議論していただきますということになってしまうような感じがするわけでありますが、この法案の当事者である皆さん方としては、そこらあたりもう少し明確なところをお持ちの中で答弁していただかぬことには、難しい問題全部指針でございますということで、肝心なところの議論になるとこれ以上進めないような形ではちょっと困るわけです。だから、労働省としてこれだけのものを提案するわけですから、そこらあたりもう少し詰めたものを出していただきたい、かように思うわけですが、その点大臣にお尋ねしておきますが、どうでしょうか。
  304. 坂本三十次

    坂本国務大臣 これはあなたのおっしゃるように具体的にきちっと細かく詰めがしっかり勉強がまだできてないと思います。具体的に個別的に詰めはまだできていない、私はそう思っておりますが、一つには局長も非常に良心的でありまして、自分の判断というか役所の判断だけではなしに、審議会の各界の御意見もお知恵もかりたいという気持ちもあるのではなかろうか、そういう意味で慎重な点が見られるのではないかと思います。ひとつおっしゃるように、みんながいろいろ注目しておるわけでありますから、その点は詰めて勉強するようにいたします。
  305. 小渕正義

    小渕(正)委員 もう少し具体的な事例の中で皆さんが理解できるような、そういったものを全然言えないということはないと思いますので、確かに今度のこの種の問題は難しい問題をたくさんはらんでいるわけでありますから、それだけにいろいろと想定もできるわけであります。そういう点でお互い正しい判断をするためにも、すべて指針で逃げてしまうことのないように、これから残された期間の努力をぜひお願いしておきたいと思います。  それで、次に移りますけれども、先ほどの質問の中でも議論されておりましたが、このたびの法律の中心は、すべて事業主ということを対象にして貫かれているわけですね。対象の表現として法律ではすべて「事業主は」ということになっています。事業主というものを対象としているという点では、具体的な運用の中ではいろいろな問題提起もちょっとあったようでありますが、それらの事業主にかわるべき職業紹介やあっせんをするような第三者的な機関、これは事業主じゃないのですが、ある程度そこらあたりのこういった仕事がこれからふえると私は思いますけれども、こういう第三者が例えばある会社に紹介するに際して、その紹介するところからの人だったらかなり優秀だということで、その企業は割合たくさん採用するような事例があるとしますと、そういう第三者的なところで事前の第一段階における予備審査といいますか、予備的な作業を行って、そうしてその中からある程度の人たちだけを事業主に紹介していく、推薦していくこういう意味での私的なあっせん機関的な職業紹介の問題があると私は思います。こういう第三者的な機関で、こういう男女差別の、法に触れるようないろいろな関係での募集、採用活動等を行った場合には、これは対象になりますかどうか、その点いかがですか。
  306. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 先生は私的なあっせん機関という形でおっしゃいましたが、例えば公共職業安定所などは、職業安定法によりまして性による差別的扱いというのはしてはならぬことになっておるわけでございます。あと、また民営職業紹介事業というのがございますが、これもやはり安定法の規定趣旨に沿って運営することになっておるわけでございます。そういう意味で、このあっせんという形に絡んで少なくともそういう差別禁止の趣旨というものは今後とも貫かれていくということだと思いますが、ただ、もともと無料職業紹介事業は国がやっております。これもやはり同じような安定法の規定を受けていきますので、その辺で差別的あっせんというような形のものは今後ともなくなる、あるいはなくさなければならぬという基本的なスタンスで対応していくことになろうと思います。
  307. 小渕正義

    小渕(正)委員 私、この問題は、あっせん作業そのものがどういうものか、それがまた一つの論議の対象になると思いますけれども、対象をどこに置くかによっては、例えば十時間なら十時間ぐらい講習を行って、そうしてそういう人たちをある企業なら企業に推薦していく、こういう業務をそういう私的機関でやろうとするのが、これから出てくるのではないか、今は余り日本にありませんけれども。だから、そういう点で十分そこらあたりもいろいろ考えながら、この点の法律については検討しなければいかぬと思うのです。そういう意味では、安定法に基づくような業務であれば、それは当然対象になるけれども、それ以外のものについては今のところ、はっきり言えないということになりますね。
  308. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 先生が想定しておられますあっせんの形態のものがどういうものか、私ちょっとよくつかみ切れないのですが、私的なものであろうと、とにかく職業紹介事業というのが労働大臣の許可を受けるという形でしかやれないわけでございます。また、許可を受けないでやれば、そのこと自身が違法でございます。許可をしてやらせるという場合におきましては、安定法の精神、趣旨でやっていく、こういう仕組みになりますので、仮に私的に何かそういうあっせん的なことをやれば、まずそのこと自身が安定法上は違法という形の中で大部分問題になるのではないかと思います。
  309. 小渕正義

    小渕(正)委員 安定法の網の中でかかるような内容であれば問題はないわけでありますが、みんなそれぞれお互い知恵者が多いわけですから、場合によってはそういった点も十分頭に入れておく必要があるのではないかという意味でお聞きしたわけてあります。その点は今の御答弁で一応終わります。  次に、女子差別禁止の中で「住宅資金の貸付けその他これに準ずる福利厚生の措置」について特に触れられているわけでありますが、法文の中に「住宅資金の貸付け」とあえて出てきたのは一体どういう理由なのか、ここらあたりをお尋ねいたします。
  310. 赤松良子

    赤松政府委員 福利厚生の措置の例として、強行規定の対象となる例として「住宅資金の貸付けその他これに準ずる」というふうな表現をしているわけでございますが、福利厚生の措置の範囲が非常に広く、多種多様のものがあるということは御存じのとおりでございます。各種の施設の利用だとか、労働災害時の付加給付だとか、住宅の貸与だとか、いろいろなものが考えられるわけでございますが、強行規定の対象になるというものにつきましては、余りに任意性の強いものだとか経済的価値のほとんどないものだとかいうようなものまでを強行規定の対象にする必要はないのではないかという考えでございまして、その具体的な範囲は、またもや省令で恐縮でございますが、具体的な範囲までは法律ではなかなか書き切れないということで省令で定める、ただし、その省令で定める範囲がどういう種類のものであるかということは、最低限度法律に書いておく必要があるのではないかということで、このような例を挙げて条文に例示したわけでございます。これは、給与の条件がかなりはっきりしており、また経済的価値も相当高いという判断で、そういうものの典型的な例として、この例示をしたものでございます。
  311. 小渕正義

    小渕(正)委員 こういった福利厚生関係については、これから省令の中で明らかにしていくということであります。それはそれで結構でありますが、企業の中においては、そういった貸与規定とか運用規定とかいうものは、それぞれ労使が話し合ってでき上がっていくものなんですね。中小企業に一部組合のないところがあって、一方的にやられるところがあるかどうか知りませんが、大体こういった関係のものは全部、企業内においては労使が十分話し合った中で、そういった規定といいますか、そういうものができ上がるわけでありますから、この法律がもし成立したとすれば、当然その趣旨によって見直されるべきところがあると思いますけれども、しかし、それぞれ労使でお互いにそういう福利厚生のいろいろな問題について取り決めたことについては、やはり尊重されていくべきであると思います。その点は省令の中でも配慮することが必要だと思いますが、いかがですか。
  312. 赤松良子

    赤松政府委員 先生の御指摘のようなことにつきましては配慮されてしかるべきことだと思います。
  313. 小渕正義

    小渕(正)委員 次に、今度の法案の中で特徴的なのは、紛争救済の機関を婦人少年室において行おうとされているわけですね。それで、これはそれなりに当然、担当職務の行政機関としてはわかりますが、企業の中におけるいろいろな問題の取り締まり、監督、助言その他そういう点では、労働基準法または労働安全衛生法、こういったものを現在の一つのよりどころとして、全国的に三百四十八カ所に設置されて、こういったものについての日常業務が行われているわけでありますから、ここらあたりについても、ある程度の問題は労働基準監督署の中でも取り扱われることで、よりきめ細かい対応ができるのではないか、私はかように考えるわけであります。婦人少年室は各県に一つしかないこと等を考えますならば、現在あるそういう労働基準監督署の機能の中に、こういうものも入れて、もっときめ細かい、網の目を小さくした、そういった対策をしていくことが必要ではないか、かように思うわけでありますが、その点に対する御見解をお聞きいたします。
  314. 望月三郎

    ○望月(三)政府委員 男女雇用機会均等の問題につきましては、従来から婦人局及び婦人少年室で取り扱ってきた問題でございまして、事柄の性格からいいましても、今後とも婦人少年室の体制の充実強化を図りながら婦人局及び婦人少年室で担当することが適当ではないかと私ども考えておるわけでございます。  労働基準監督署は、御指摘のとおり全国に設置されておりまして、そこでは必要な権限を与えられた労働基準監督官が配置されておりますが、その基本的任務は労働災害の防止その他の労働基準法等に定める最低労働条件確保ということがメーンでございまして、それについての監督指導ということで鋭意やっておるわけでございますが、今回の法律の施行は、その業務の性質から見てやはり婦人局及び婦人少年室女性の立場として所掌するということが一番合っているのではないかと思うわけでございます。
  315. 小渕正義

    小渕(正)委員 業務の内容からいけば婦人少年室関係の業務になるわけでありますが、これが縦割り行政の一つの弊害かとも思いますが、助言、指導、せめてこれくらいのことは基準監督署の中でも、その分野を取り入れてやっても何ら差し支えないと私は思います。その方が、これだけ全国にたくさん設置されているわけでありますから、よりきめ細かい行政としての対応ができるのではないかと思います。そういった意味でお尋ねしたわけでありますが、今の御答弁では単なる労働行政の縦割りの面だけの答弁で、非常に残念であります。そこらあたりもぜひ御検討をお願いしておきたいと思います。  次に、時間も余りありませんので、これは五十二年の労働省令ですか、婦人雇用コンサルタントを置くということで労働省としては指導なさって、各県にそれぞれ一名ずつ婦人雇用コンサルタントが置かれているのではないかと思いますが、その中で婦人雇用コンサルタントの設置目的は、まさに今の均等法案に盛られている、そういうものにふさわしいようなものも、当時五十二年のときに明文化されて各県に設置されるようになっていると思いますが、この婦人コンサルタントの活用ということが、今回の均等法案との関係でどのように位置づけされておるのか、その点をお尋ねいたします。
  316. 赤松良子

    赤松政府委員 婦人雇用コンサルタントが昭和五十二年五月以降婦人少年室に設けられ、雇用管理の改善というような点について、いろいろな役割を果たしていることは御指摘のとおりでございます。  しかしながら、この審議中の法案におきましては、雇用コンサルタントが果たし得ないような役割についても果たすべきことが期待されているようなものもあるわけでございまして、従来からのコンサルタント以外に調停機関というようなものを設けて解決を図る必要性というようなものを考えまして、行政上の一種のサービスとして、これを新たに設置しようということを考えているわけでございます。この法律の実効を確保するための一つの大きな新たな方策としての調停委員会というものにつきましての御理解もいただきたいと思います。
  317. 小渕正義

    小渕(正)委員 はっきりしなかったのですが、この婦人雇用コンサルタントの人たちも、この法案が成立、施行されたならば、婦人少年室の中でこういった仕事まで取り込んで一緒になってやる、こういうことですか、どうなのですか。それは別だというような、何か調停の権限を持つような新しい仕事なので、これとはまた別だということのようにも受け取れたのですが、要するにこれはこれ、新しくスタートしていくのは新しいものとして、あくまでもそれは、活用という言葉は悪いですが、お互い一緒になって、こういった仕事をやっていこうというところの中に位置づけしてない、こういうことなのかどうか、その点はっきりしてください。
  318. 赤松良子

    赤松政府委員 婦人少年室の任務は今後大変大きくなるわけでございますので、コンサルタントを初めとして非常勤職員の活用等も当然必要になろうかと思います。婦人少年室の体制の充実強化ということに、今後この法律の成立の暁には最も大きな重点を置いて努力してまいりたいと思っております。
  319. 小渕正義

    小渕(正)委員 次に、現在特に婦人の人たちがほとんどと言っていいほど、大多数は婦人で占められているパート労働についてお尋ねいたしますが、このパート婦人労働者に対する対策として、労働省としては一つ雇用対策として単に今のパートという特殊な立場の人を守っていく、こういうことだけではなしに、現実の日本社会の中でパート労働ということは、その規模、労働時間その他、中身は別といたしまして、欠くことのできない一つの大きな雇用形態になっているわけでありますから、パート労働対策についても、雇用契約、そういったいろいろな状況等についてもきちっと整備をしていく、そういう意味で労働省としてもっと思い切って中に入って、そういった問題にも取り組んでいくという姿勢が必要ではないかと思うわけでありますが、この点に対してどのようなお考えをお持ちですか。
  320. 赤松良子

    赤松政府委員 パート対策は、先生ただいま御指摘にございましたように、家庭の主婦層を中心にパートタイムが非常な勢いで増加をしているということに注意を向ける必要があるわけでございます。パートタイマーは、第三次産業の分野が拡大をするといった需要側の側面、また婦人のライフサイクルの変化という供給側の側面とが、これまでマッチしてきたわけでございますが、よくマッチをいたしまして今後もなお増加をするということは十分予測されるところでございます。したがいまして、これらの方々への対策ということは、労働省の今後の政策として非常に重要な位置づけを持つものと考えている次第でございます。  パートタイム対策につきましては、例えば安定局におきますパートバンク、あるいは基準局におきまして雇入通知書その他の労働条件の明確化と、いろいろ局にまたがって対策が講じられてきているわけでございますが、このたび婦人局の発足に伴いましてパート対策を総合的にきめ細かく考えるということで、その各局にまたがっております対策を取りまとめるという任務も新たに婦人局に加えられたところでございます。現在、パートタイマーのための総合的な施策としてバート対策要綱の作成を準備いたして、もはや最終的な段階にもなりつつあるわけでございまして、このような対策要綱をもとに新たなパート対策という方向へのステップを進めるということになろうと存じます。
  321. 小渕正義

    小渕(正)委員 今、パート対策要綱を現在作成中ということでありましたが、現在労働省としては、こういったパート就労の実態というものをどの程度把握なさっておるのか。例えば雇用契約をきちっとされておるのかどうか、解雇予告がきちっとされておるのかどうか、また超過労働に対する割り増し率がきちっと決まっておるのかどうか、その他年次有給休暇の問題とかいろいろありますが、そこらあたり現在のパート労働の実態を労働省としては大体つかんでおられるのでしょうか、その点はどうなのか。それから、先ほどお話がありましたパート対策要綱を現在作成中だということでございますが、それらのめど、いつごろそれができ上がって具体的にそういった指導に乗り出すことになるのか、その点あわせてお願いいたします。
  322. 望月三郎

    ○望月(三)政府委員 ただいま婦人局長から申し上げましたパートタイムの労働対策要綱につきましては、現在中央労働基準審議会の小委員会におきまして検討中でございまして、来月をめどに結論を出すということでやっております。  なお、パートの実態につきましては、恐縮ですが監督課長から答弁させます。
  323. 野崎和昭

    ○野崎説明員 お尋ねのございました、まず雇い入れの際の労働条件の明確化の関係でございますけれども、統計によりますと、口頭で労働条件を明示しているというのが約七割、それから、口頭で明示するほかに書面を交付しているというのが約四割でございまして、労働条件の明示につきましては、小規模の企業については問題がございますけれども、私どもの行っております雇入通知書の普及というのは少しずつ進んでいるというふうに承知しております。それから年次有給休暇の関係でございますけれども、現在おおむね三割程度の企業が必要な年次有給休暇制度を設けているというふうに統計上はなっております。この点につきましても私どもの力で年休付与の基準を明確にいたしまして、鋭意行政指導に努めているところでございます。
  324. 小渕正義

    小渕(正)委員 時間が参りましたので、まだたくさん個々の問題あるわけでありますが、また別の機会に譲ることにいたしまして、最後に大事な問題点として、大臣にその所見をお尋ねいたします。今回のこの法律案は、もう各方面からいろいろな問題が論議を呼んでいるところであります。もちろん、それぞれの側から見れば極めて異論のいろいろあるところでありますが、しかし曲がりなりにも労働省としてはそういった意見を調整されて今回出されたわけです。しかも我が国の長い間の社会慣習の中で、こういった法律案ができるということは極めて画期的なことだと私は思います。  しかしながら、これが現実にいよいよ発効した場合に、果たして具体的にどのような状況になっていくであろうかということについても、これはそれぞれの見方、見方がありまして必ずしもはっきりしない。しかし、いずれにいたしましても、いろいろな不備はあるにいたしましても、これでスタートすると労働省の大臣は盛んに言われているわけであります。初めから完全なものを求めないでも、ともかくスタートしていって、そういう中から将来的にいい方向へつくり出していかなくちゃいかぬのだ、こういう趣旨のことを言われているわけでありますが、そういう点からいきますならば、少なくともこの法案が施行されてから三年ないし五年ぐらいのところでもう一度これを見直してみる、実際に法律が施行されて運用の中で、やはりここらあたりは現状にそぐわなかった、ここらあたりはもう少し補完すべきだったという意味でもう一度見直してみる、そういう機会が必要じゃないか、そういうふうに思われてなりません、したがいまして、見直し規定法律の最終のところにでも入れて、五年後にはもう一度これを見直してみょうとか、そういった考えが、大臣が言われている今回の法律制定される趣旨からいっても当然のことではないか、私はかように思うわけでありますが、この点に対する大臣の御見解を承りたいと思います。
  325. 坂本三十次

    坂本国務大臣 この法案というものは非常に大きな文明論も根底にありますし、今まで大きな男女の格差があったとされておる我が国にとりましては、この登山はなかなか道長く険しいということもよく存じております。そこで審議会でも、今のコースというものは、将来やってみてもっといい案があったら、そこで手直しをしてもいいのではないかという御意見もあります。率直に申して私もその方が謙虚な姿勢だろうと思っております。  ただしかし、この場で例えば五年後とか十年後とか言うのはちょっとアバウト過ぎますし、それから五年後、十年後にどんなところにひずみが出て調整をし直すかということも、今まだちょっと把握しにくいような状況でもあります。もちろん、やってみて何が何でもこのままでやるんだというような、そんな不遜な気持ちはありませんけれども、しかしここで、さて何年後に直せばいいのか、どんな問題が出るだろうかということを予見するのもちょっと難しい問題でして、心構えとしてはあなたとよく似ておりますけれども、今直ちにここで、こんな場合が起きたら直すとか、何年後がずばりいいだろうということはちょっと私も言いにくい。今このままスタートさせて、そしてそのうちに問題が起きたら調整をしていく、そういう気持ちでおりますが、ここで今直ちにどういうふうな見直し規定を入れるかを言うのは難しい、そういう気持ちでございます。
  326. 小渕正義

    小渕(正)委員 だれでも、これが三年先どうなるか五年先どういう形になるか予見することはなかなかできないと思います。だからこそ一応スタートしてもう一回振り返ってみる、そういうものがこの法案の中では必要なのではないか、かように思っているわけでありまして、そういう点では大臣の気持ちと一致するような感じもいたしますので、ではこれを具体的にどういうふうにするかはまた別途お互いに十分頭を絞って知恵を出し合わなければいかぬと思いますが、こういった新しいものは、結果として見ると現状にそぐわなかったとか、ここらに落ち度があったとか、いろいろありますので、ぜひそういう機会が必要だ、そういう意味でひとつ御理解だけはしておいていただいて、何らかの形でそれが生かされるように努力しなければいかぬと思いますので、その点よろしくお願い申し上げておきます。
  327. 有馬元治

  328. 簑輪幸代

    簑輪委員 今回の法案は問題点が非常に多過ぎて、とても四十七分で質問し切れるものではございませんけれども、幾つかぜひお尋ねをしたいと思います。  既に御存じのように、きょうもたくさんの婦人の皆さんがこの法案の審議を真剣に見詰めておられます。大臣初め皆さん方お疲れでしょうけれども、ぜひとも最後まで真剣に御答弁いただきますよう、まず最初にお願いしておきたいと思います。中にはお疲れのようで後ろで座り込んでしまわれて、それでもこの審議の行方をしっかり見守りたいという婦人の気持ちを酌んでいただくことをお願い申し上げます。  最初に、労働基準法が今回改正されるということで法案が出されている部分がございますけれども、労働基準法というのは御存じのように、第一条できちっと定めておりますように「労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない。」、労基法に定める基準というのはまさに最低のものであって、労働関係者は「この基準理由として労働条件を低下させてはならないことはもとより、その向上を図るように努めなければならない。」ということがはっきり明記されております。まず今回の法案の中で、私は時間外労働、休日労働、深夜業の緩和に関する問題点についてお伺いしたいこ思います。労基法の第八条一号から五号までに該当するいわゆる工業的業種というのは一体何業種ぐらいあって、これに携わる男女別の労働者数は現在いかなる数字になっているのか、どのように把握されておるのか。それから、一号から五号に該当しないいわゆる非工業的業種に働く男女別の労働者の数はどのようになっているのか、まず最初にお答えをいただきたいと思います。
  329. 野崎和昭

    ○野崎説明員 今回の法案におきましては、工業的業種と非工業的業種に分けまして時間外労働の取り扱いを区別しておりますが、ここで言う工業的業種と申しますのは労働基準法の八条の第一号から第五号までの業種でございます。具体的には製造業、鉱業、建設業それから運送業関係でございます。お尋ねの労働者数でございますが、工業的業種につきましては、男子は約千四百六十万人、女子については約五百万人でございます。それからそれ以外の非工業的業種につきましては、男子千二百六十万人、女子約一千万人でございます。
  330. 簑輪幸代

    簑輪委員 そうすると、いわゆる工業的業種等に属するおよそ五百万人の婦人が、二週間について十二時間までの時間外労働が可能となり、最長の場合一日十四時間の勤務も可能だという仕組みになるようです。非工業的業種等に属するおよそ一千万人の婦人が四週間で四十八時間の残業が可能となり、特定の一週に四十八時間働かせることも可能である。つまり、状況によっては一週間毎日十六時間働かせるなどということもあり得るということになるわけで、これは事実上の深夜業を強制するに等しい労働ではないかというふうに思うわけです。休日についても、四週間について命令で定める日数とは三日以上とすることも可能であり、最低の労働基準に値しない定めというふうに言わなければならないと思います。  一番肝心な、原則的な定めそのものが実は法律にきちんと明記されないで、これが命令、省令にゆだねられるということは極めて危険なことだというふうに思います。人たるに値する労働条件、最低条件を定める労働基準法に、しっかりとこの基準を明らかにしていくことが肝心だというふうに言わなければならないと思います。こういうふうな定めをしたことによって、果たして女子の募集、採用、昇進、配置など機会均等にこれが有効に機能すると判断できるものでしょうか、その点についてお考えをお尋ねいたします。
  331. 赤松良子

    赤松政府委員 時間外労働につきましての先生の御指摘は、実は今度の新しい法案についての非常に極端な解釈をしておられるのではないかというふうに考えられるわけでございます。今度の改正は、一週間について六時間は別といたしまして、非工業的な分野での改正は法律では書かない。しかし命令で定めるというふうにしたわけでございますが、その命令の範囲、命令で定められる範囲を書いたわけでございます。命令に委任するときに裸で命令に委任するということは大変危険でございまして、そういう委任の仕方は許されないのではないか。そこで命令に委任する場合の最低限度、最高限度というものをはっきりしておく、その間で命令を決めるということを言っているにすぎないわけでございまして、あたかも一年について三百時間とか、あるいは四週で四十八時間というような命令が決められたかのような錯覚を私までが抱いてしまうような御質問であったように受け取れたわけでございます。現在の改正の内容はそういうものでないということは、偏見なくお読みいただければおわかりいただけるものと思うわけでございます。
  332. 簑輪幸代

    簑輪委員 私が申し上げましたのは極端な解釈だと思いますけれども、違法な解釈でしょうか。決してそうではないと思うのです。そして、この危険があるということを私は指摘しているので、もしそれよりもよりよい労働条件を命令でお定めになるおつもりであったらば、最初からその限度を法律の中で明らかにされればよろしいじゃありませんか。ですから、こういうふうなことを極端な解釈として非難されることは間違っておりまして、むしろ労働省が本当にここら辺で決めたいという水準があるならば、その水準をきちんと法律で定めるよう私は強く要求をしたいと思うのです。私は、この解釈が違法だということならばおっしゃっていただきたいと思います。
  333. 赤松良子

    赤松政府委員 違法と言ったつもりは全くございませんで、極端な解釈で、あたかもそのような命令がまるでもうつくられてしまったかのような錯覚を多くの人に与えるということは大変危険だと思います。
  334. 簑輪幸代

    簑輪委員 そうであるなら、私が今申し上げましたように、そのような危険がないという定めを法律でぜひやっていただきたいというふうに申し上げているので、私の考え方が危険だとおっしゃるのは絶対に納得できません。こういう危険を、この法律の中でぜひなくすようにお願いしたいと再三申し上げているわけですから、ぜひ誤解のかいようにお願いしたいと思います。  先進諸国が週四十時間、週休二日制というの弟確固とした労働条件にしているときに、週四十八時間制を短縮するというのではなくて、逆にそれを広げていく方向、最低基準を緩和するというようなことがどうして改善というふうに言えるでしょうか。残業時間や、それから休日出勤の緩和を命令で定めるときに「事業活動の状況等を考慮し」とかいうことがあります。事業活動を考慮するということになれば一体どういうことになるのか。雇用の現場においては経済性とか効率性とかそういうことが優先されて、利潤追求のためにこういう「事業活動の考慮」というのが労働者に不和に働くのではないかという心配があります。合令の内容が一体どういうものになるのかということが大変心配になるわけです。そして週四十八時間労働原則というものが崩されてしまうという危険を感じる中で、事業活動を考慮したという内容は一体どういうものなのか。あるいは「女子の健康及び福祉に支障のない範囲内」という基準というのは一体どのように定められるのか、お聞かせいただきたいと思います。
  335. 野崎和昭

    ○野崎説明員 御承知のとおり非工業的事業につきましては、一般に工業的な業種の事業と異なりまして肉体的な負担が少ない、あるいは同じ意味かもしれませんが、労働時間の途中に手持ち時間が多いというようなことがあり、また他面、事業の内容が製造業と違いましてストックのきかないサービスの提供でございますので、労働時間について弾力的な取り扱いをする必要がある。あるいは特に女子の進出が先ほど申しましたように大きい分野でございまして、そういう中で女子雇用機会あるいは能力を伸ばす機会を広げるためには、第三次産業と申しますか非工業的業種につきましては、労働条件基準はなるべく男子に近づけることが望ましいというのが婦人少年問題審議会の公益委員の意見でございます。その御意見を参考にいたしまして現在のような法案にいたしているわけでございまして、そういう中で今言ったような事業の特殊性を考慮することは、女子雇用機会あるいは能力発揮の機会を伸ばす上で必要なことであると考えております。
  336. 簑輪幸代

    簑輪委員 考え方をお示しになっただけで、基準そのものが少しも明らかにならないのですね。再三議論されております中で、全部これから検討するというようなことが今までも言われておりますけれども、その内容がどういうものであるかによっては大変な労働条件の悪化を招くという心配があるわけでお尋ねしているのです。  今おっしゃった中で、例えば非工業の場合は労働内容についてそれほど大したことがないかのようなおっしゃりようでしたけれども、一概に非工業と申しましても、労働の密度が近代工業の中で大変過密になって負担が広がっているということは先刻御承知のことではないでしょうか。労働は、たまたま労働基準法で八条の一号から五号までと、その他の部分と分けてはおりますけれども、それは必ずしも労働密度が前の方が重くて後の方が軽いという意味ではないはずだと思うのですね。そういう点からいいましても、おっしゃったことは到底労働の実態に合ってないのではないか、そういう意味で大変危険を感じますので、ぜひ命令を定める際においては、そういう労働者の不安のないように適切なものにしていただかなければならないというふうに思います。  次に、深夜業について伺います。  まず、最初に大臣、深夜業、深夜働くということについて、これは人間にとって好ましいというふうにお考えですか、お聞かせいただきたいと思います。
  337. 坂本三十次

    坂本国務大臣 それはなるべく夜は眠って昼は働く方がベターだ、そう思います。しかし、いろいろな業種にもよりまして、どうしても夜を交代制にでもして働かなければならぬという業種もあるだろうと思いますが、その場合にも健康の面に配慮をするということは当然のことです。
  338. 簑輪幸代

    簑輪委員 おっしゃるとおりだと思うのですね。人間は昼間働いて夜眠る、この当たり前のことができるだけ阻害されないように、深夜業については万やむを得ない、例えば公共のサービスのために必要やむを得ない限度で、深夜労働をよりよい労働条件確保しつつ進めていくということならばともかく、なかなか現実はそうでないところに問題があると思うのです。現に深夜労働に従事しておられる看護婦さんなどから、私どものところにもたくさんの訴えが来ております。生理の異常や妊娠、分娩の異常、本当に職務に精を出せば出すほど、自分の体を切り刻むようなそういう労働の実態。労働省ではその深夜労働の実態というものを当然御承知のことだと思います。検討を加えられたことだと思います。この労働の形態を広げていくことは避けなければならないというふうになっているだろうと思います。一体、どういうふうな調査、検討が加えられたのか。  それから、また同時に、深夜業が無制限になされている男性にとっても決して好ましいことではありません。この現に深夜業に従事する男性労働実態調査をおやりになったのでしょうか。そして、その結果はどうだったのでしょうか、お聞かせいただきたいと思います。
  339. 野崎和昭

    ○野崎説明員 深夜労働の問題につきましては、労働省もかねてから内外の資料を集めまして検討を加えているところでございまして、先ほど基準局長が申し上げました労働基準法研究会において、その検討課題の一つとして現在検討を行っているところでございます。
  340. 簑輪幸代

    簑輪委員 男性の深夜業の実態調査はおやりになっていないのですか。
  341. 野崎和昭

    ○野崎説明員 労働基準法研究会の調査研究の一環としまして、調査等も行っております。
  342. 簑輪幸代

    簑輪委員 結果は出たのですか。
  343. 野崎和昭

    ○野崎説明員 一応、調査票の集計と申しますか、調査票は集まっておりますけれども、現在内容を分析しているところでございます。
  344. 簑輪幸代

    簑輪委員 それは、この法案が出される前に十分調査、検討をして一定の分析を加えて、その検討の結果この法案の中に反映されるべきことであって、先に法案を出してしまって、その後で男性の深夜労働の実態を今分析しておりますというのは、順序が逆ではないでしょうか。私は、この深夜業の問題を考えるに当たって、労働者の健康、肉体にどのような影響を与えるのか、労働省が本当に真剣にお考えになるのなら、そのようになされるべきだったというふうに思います。  いずれにしても今結果をお聞かせいただけないわけですが、必ず近々お聞かせいただけるでしょうね。
  345. 野崎和昭

    ○野崎説明員 研究会の報告は、先ほども申し上げましたように六十年をめどにまとめることにいたしております。
  346. 簑輪幸代

    簑輪委員 実態調査の結果は教えてくださいますかとお尋ねしているのですが、お答えいただけますか。
  347. 野崎和昭

    ○野崎説明員 内容を分析し、その上に立って研究会の報告ができますので、実態調査の結果も、その研究会の報告と同じ時期に出ることになるのではないかと思っております。
  348. 簑輪幸代

    簑輪委員 分析はともかくとして、実態調査そのもの、全体をやはりすべて明らかにした上で審議に参考にするという姿勢がなければならないと思いますが、先になってから、法案が通っちゃってからそういうものができる、後の祭りみたいにならないようにしていただきたいと思うのですね。その態度、姿勢が非常に問題であることを私は重ねて指摘しておきたいと思います。  それから、男女ともに深夜業が人間の体によくないことは、調査をしなくてもまあ明らかなことなんですけれども、こういう中で、たくさんの婦人労働者あるいは国民の皆さん方がこの深夜業の規制緩和に反対をしておられるということを私は強く申し上げたいと思います。それには、何としても調査をはっきりさせて、特に婦人の深夜労働婦人の健康に与える影響というようなものをもっともっと科学的に明らかにすべきではないかというふうに思います。私は、深夜業問題を考えるに当たって、特に、まだ深夜業ではないけれども、現在の法律のもとで既に二交代という形で事実上朝早くから、あるいは夜遅くまで働く二交代制の労働者の実態をぜひ皆様にお聞きいただき、御理解を得たいと思います。  日本専売公社の関西工場では二交代制の勤務がしかれております。その婦人から切実な訴えをいただいておりますので読ませていただきます。  早番は六時二十五分から二時十分まで、遅番は一時五十五分から九時四十分までです、早番固定の人、遅番固定の人もいますが、ほとんどの人は一週間交代で早番、遅番を繰り返しています。  早番の日は朝四時に起きて子ども、夫の弁当つくり、自分の朝食はそこそこに五時過ぎには家を出ます。通勤バスまで自転車で行く人、徒歩の人、国鉄やもよりの電車を利用する人様々ですが、早朝の一人歩きの心細さは、物騒な今の世ですから身にしみます。早番に浮浪者風の男につけられた人もいます。年老いた母が心配してついてくると言うとなげいていました。この頃の神足周辺は殺人事件なども起り、二交替の人も何人か職務じん問を受けたとのことです。  六時三十分から機械が動き出しますが、体はぽうっとして半分ねむっています。やっと慣れると九時の休憩、その時に食事をする人も多いです。昼食は十一時三十分から十二時まで、遠い機械のはしから二階の食堂まで、一階や三階の人は往復だけで十分近くかかり、正味食事時間は二十分、この昼食時間は日勤者もいっしょです。二十分で食事をするなんて人間らしくありません。食べるだけ!この不満は大きいです。二時十分仕事が遅番の人とかわりやれやれと思った時は何をする気力もありません。夏は一番熱い時間帯にクーラーもついていない通勤バスに乗って家路を急ぎます。かえってゆっくりねられないのが主婦のつらさです。夕食の用意をして、テレビでもゆっくり見るなんて疲れて出きません。中高生をもつ人はせめて子どもの話し相手にもなってやりたいと思っても、明日の早番を思うと寝なければ体がもたないので、塾にいっている子どもを待たずにねてしまう。子どもはそんな母親を起すまいとして言いたいこともがまんして、手紙で枕元に置いて訴えるなんてみんなやっています。親としてとてもつらいと訴えています。  遅番でも主婦は早起きです。子どものため、夫のために寝てはいられません。夕食の用意をして、昼食もそこそこに家を出ます。くたびれて会社へ。六時三十分から七時までの夕食が終って仕事。そのころ窓を見ると町の明りが点々と見え、今頃一家団らんの時だなあと思うと、なんでこんな時間にタバコを作らねばならないのかと怒りとむなしさがこみ上げます。夫も遅い時は、子どもたちだけで食事をしている姿を想うとやり切れません。体はだるくぼうっとして何を考えることも出来ず、ほんとうにくたくたです。九時四十分に仕事を終え、家に帰りつく頃は十一時前後、通勤電車が遅延していたら、タクシーに走ったり他の電車にのりかえに走ったり、ほんとうにみじめです。夫に駅まで迎えにきてもらっている人もいます。ねるのは十二時過ぎになってしまいます。  二交替の人は睡眠不足がひどいです。全身けん怠感、思考力の低下、根気の低下を訴えています。  現在二交替者に妊婦が三人います。この人たちは機械従事者です。何とか日勤にできないかと思います。不規則な生活と過労な労働は母体によくありません。健康な赤ちゃんを産んでほしい!二交替のために流産した人もいました。 ということで  二交替は、家族の健康や生活もおびやかしています。二交替者の健康も限界にきています。心身症、ノイローゼ、更年期障害と合ぺいして色々な症状もあらわれてきています。そのことは家族の健康までおびやかしていますし、夫や子どもとの対話不足は、ストレスの上に心配を助長させています。 もう一つの手紙では  毎日の睡眠五時間、六時間の人が婦人労働者の六〇%を越えています。視力が衰え(監視業務)思考力も低下し、胃腸をこわし、頚腕、腰痛、ノイローゼ、指を切断したり、足のお皿を割ったり、数知れない病人、けが人が後をたたない毎日です。 というようなことで、現在の労基法のもとで許されている二交代制の労働に従事している婦人が、このような労働実態の中で、生活のリズム、人間の生体のリズムが狂って大変な健康被害も生まれており、家庭での困難も生まれているという実態があるわけです。この上深夜業が許されるということになっていったのならば、一体どういうことになるだろうかということは改めて申し上げるまでもありません。深夜業の問題で適用除外というのが定められておりますけれども、そのことについてはまた後ほどお尋ねしますが、時間外あるいは深夜業ともに規制が緩和される対象になっている部分について、まず最初にお尋ねをしておきたいと思います。  時間外・休日労働及び深夜業の規制が全面的に適用除外になるケースとして「労働者の業務の遂行を指揮命令する職務上の地位にある者又は専門的な知識若しくは技術を必要とする業務に従事する者」というふうに定められておりますが、一体これはどのような労働者をいうのでしょうか。最小の単位のグループの長とか、いわゆる管理職の対象について、一体労基法上の管理、監督の地位にある者と解釈すべきなのか、あるいはまた既に婦少審の中で論議されたようですけれども、業務遂行の最小単位の長として、その属する労働者に対して業務遂行上の指揮命令権限を有する者、係長などをいうものとするというようなことをお考えなのでしょうか。また「専門的な知識若しくは技術を必要とする」という業務は一体どのような職種であるのか、お考えをお聞かせいただきたいと思います。そして、それぞれに該当する男女労働者数というのは一体どの程度のものになっているのか、労働省はどの程度と見積もっているのかお聞かせをいただきたいと思います。
  349. 赤松良子

    赤松政府委員 大変長い御質問でございましたから、どこからお答えしていいのかと思いますが、多分管理職、専門職の範囲をお答えすればよろしいのではないかと思って、そのようにいたします。  まず管理職の範囲でございますが「労働者の業務の遂行を指揮命令する職務上の地位にある者」というのは、業務遂行上の単位組織の長として、それに属する労働者に対して仕事の割り当て、仕事のやり方の指示など具体的な業務の遂行についての指揮命令をし、その組織全体の業務の遂行について責任を持つという職務上の地位にある者というふうに御理解いただいてよろしいのではないかと思います。これは具体的にはなお審議会の審議を経なければなりませんので、そういう前提つきで御理解いただきたいと思います。  また「専門的な知識若しくは技術を必要とする業務に従事する者」とは、一般の労働者では代替できない専門的な業務に従事する者を意味しており、婦人少年問題審議会においては次のようなものが検討の対象とされたところでございます。すなわち医師、歯科医師、薬剤師、新聞記者、報道記者、弁護士、公認会計士、弁理士、税理士、建築士、デザイナー、システムエンジニア、研究員等がそれでございます。つまり、これらについては今後審議会において審議をお願いして具体的に範囲を決めたいと考えております。  それぞれにどのくらいの人数が働いているかという御質問が次にございましたが、説明員の方からいたさせます。
  350. 松原亘子

    ○松原説明員 この法案におきます管理職、専門職の範囲は今局長が御説明したとおりでございますが、統計数字でこれとぴたり合うものを把握することは不可能でございますので、今、仮に総理府の労働力調査によりまして、管理職につきましては管理的職業従事者がこれにほぼ近いとみなしましてとらえますと、この数字は男子が二百万人、女人が十二万人、昭和五十八年の数値でございます。それから専門職につきまして、同じくこの労働力調査によりまして専門的・技術的職業従事者が比較的近いものと考えられますので、それとみなしましてその数字を挙げますと、男子は二百十四万人、女子は二百一万人となっております。
  351. 簑輪幸代

    簑輪委員 このように深夜業、時間外労働の規制が全面的に適用除外になる婦人労働者は、管理職、専門職合わせて実に二百十三万人を予定しているということでございます。時間外労働で考えましても、深夜業で考えましても、実にたくさんの婦人労働者がこのように規制の対象外になって、厳しい労働条件になるということは大変な問題だというふうに言わざるを得ません。  さらに。深夜業の問題について、いろいろと規制適用除外がございますけれども、労働者本人の申し出によって深夜業を許可するというケースについて、かねてからタクシーの運転手の方々のお話がされておりますけれども、タクシーの運転手さんは別に夜中に働きたいから働くわけではなくて、日勤だけでは生活を賄うことはできない、したがって深夜で、よりよい収入を得たいために、やむなくこういうふうな要求をしているという、その真意をねじ曲げていくものであっては到底理解できないところだと私は思います。  この規定の仕方、労働者本人の申し出に係らしめるというやり方は、労働基準法のあり方そのものに根本から抵触する大変重大な問題をはらんでいると私は思うわけです。労働基準法は、だれが何と言おうとも、本人が望んでも、そのような労働条件をさせてはならないという最低基準を定めるものでございますので、そういう点からいいますならば、本人の申し出に係らしめるという考え方は、この労働基準法そのもののあり方に抵触するのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  352. 野崎和昭

    ○野崎説明員 本人の申し出あるいは請求によりまして労働基準法の基準を緩和するということは、確かに労働基準法上は例外でございますけれども、先生御承知のとおり、例えば産後休業の場合に既にその例があるわけでございます。特に、今回タクシー運転手についてそういうことが必要だと考えました理由は、先ほど申し上げましたように、もともと深夜業というのは婦人差別撤廃条約上は将来的に廃止されるべきものでございます。女子雇用あるいは能力発揮の機会を狭める効果を持っておりまして、特にタクシー運転手の場合には、今お話しがございましたように、そのことが非常に顕著にあらわれているわけでございます。そういう性格の規定につきまして、本人の申し出という方法をとることは決して労働基準法の性格を弱めるものではないと思っております。
  353. 簑輪幸代

    簑輪委員 おっしゃることは到底納得できません。けれども私、ちょっと時間がなくなりましたので、続いて次の質問をしたいと思います。  深夜業の規制を緩和するということでたくさんの例示があるのと同時に「その他業務の性質上深夜業が必要とされる」業務に従事する短時間労働者という定めがございます。これによりますと一体どういうところまでこの範囲が広がるのだろうかということがまことに不安でたまりません。したがって「業務の性質上深夜業が必要とされるもの」というのはどういうものであるのか、そして短時間労働者というのはどういうものであるのか、端的にお答えいただきたいと思います。
  354. 野崎和昭

    ○野崎説明員 まず「品質が急速に変化しやすい食料品の製造又は加工の業務」につきましては、先ほど申し上げましたように仕出し弁当、生めんの製造等の業務がこれに該当すると考えております。また「その他の当該業務の性質上深夜業が必要とされるもの」につきましては、新聞配達の業務あるいは卸売市場における生鮮食料品の卸売業務がこれに該当すると考えております。
  355. 簑輪幸代

    簑輪委員 それに限定されることになるのでしょうか、あるいはそれ以外のものも考えられるということになるのでしょうか。心配されるのは、例えば二十四時間営業のスーパーなどにおきまして短時間で雇用することもあり得るやに心配するわけで、そういうケースはここに該当しないことになるのかどうか、その点を明快にお答えいただきたいと思います。
  356. 野崎和昭

    ○野崎説明員 業務の性質上客観的に深夜業が必要とされる業務ということが法律規定でございますので、先ほど申し上げましたのは例示でございます。  先生が今お尋ねの二十四時間営業のスーパーでございますが、スーパーストアにおける小売業務は現在の社会経済情勢から見ますと「業務の性質上深夜業が必要とされるもの」には当たらないというふうに考えられます。
  357. 簑輪幸代

    簑輪委員 たくさんの婦人がパート労働で深夜働かされるのではないかという心配もありますので、その点は厳しくチェックしていただきたいと思います。  問題点は多々ありますが、次に、均等法の問題についてお尋ねしたいと思います。  実効ある男女雇用平等法をというたくさんの婦人労働者の強い要望にもかかわらず、今回の均等法はその期待に全くこたえていないと言わざるを得ません。差別の実態はまことに広範にありましし、皆さん方も既に御承知だと思います。雇用における男女差別のケースは、ここに新日本婦人の会が発行しております「職場から五千人の差別証言」というパンフレットがございますが、本当に驚くような差別が列挙されております。親元通勤が条件だとか、同一の試験では女子の成績がよく女子を採用せざるを得ないために採用に当たり男子はある程度成績が悪くても優先的に採用されることがあるとか、女子は補助的な仕事にしかつけない、事務職しかやらせてもらえない、入社してから定年まで仕事の内容は同じで、責任ある仕事につかしてもらえない、あるいは上司のコーヒーやミルクの出前を頼まれる、掃除やコピー、買い物などの雑用が多く、男性に比べて仕事に打ち込む時間を少なくさせられているとか、お茶くみや掃除は女子の仕事ということで女性は名刺ももらえないとか、管理職になれないとか、もう本賞に驚くべき男女差別がいっぱい書かれているわけです。  こういう現在の実態を何としても解消して、雇用における男女差別をあらゆる段階でなくしてほしいという願いがあるわけですけれども、今度の法案の中では問題が大変多いわけです。募集、採用はもちろんのこと、配置、昇進まで努力義務規定にされているということは到底納得できないところです。特に配置、昇進の問題については、婦人少年問題審議会の公益委員のたたき台の中では努力義務規定ではなくて禁止規定にすべきだと言われているところから見ても、これは何としても禁止規定にしていただかなければならないと私は思います。男女が配置や昇進差別をされることによって、賃金の面でも実に著しい差別になってあらわれてきております。私の地元の繊維会社で働くある御夫婦は、奥さんが一年先に入社し、だんな様が一年後で入社されたわけですけれども、二十五年と二十六年働いて、夫の方は年の総所得が二百七十七万九千五十二円、妻の方は百五十三万四千二百円と半分ぐらいにしかならないわけです。こういうふうな著しい差別が現にまかり通っているということは、結局配置、昇進等における差別等か給料面にも反映してきているということが言えるわけです。  住宅手当や扶養手当における差別あるいはまた賃金の頭打ち制度をつくったり、男性は本社採用、女性はすべて事業所採用、女性の場合は何十年勤務しても昇進することはない不合理な差別が職場ではまかり通っているということが、現実の姿として婦人の中から何とかしてほしいと強い要求となっております。そういうことから考えますと、今回のこの努力義務規定では果たして十分にこの労働者の要望にこたえるものになるのであろうかというふうに思いますが、どのような実効性があるのでしょうか、お尋ねいたします。
  358. 赤松良子

    赤松政府委員 努力義務の実効性につきましては、たびたびこの委員会でも申し上げているわけで、また繰り返すようで恐縮でございますが、努力義務を設けた問題につきましては、指針を作成し、調停委員会を設け、婦人少年室の指導、援助寺で実効を確保いたしたいと存じております。  また、公益委員のたたき台と現行法案との差異についての御指摘がございましたが、公益委員のたたき台は、どちらかといえば現実の状況よりもあるべき姿の方により重いウエートを置いて考えられた案であったと理解しております。そこで、我が国雇用の現状を考えますと、その中には当然女子の保護規定についての現状も入っているわけでございます。女子の保護規定の見直しにつきましては、公益委員の試案におきましては手工業的な部分につきましてはすべて廃止するという案であったことは御記憶におありなのではないかと思うわけでございます。そのような公益の試案におきましてトラスティックに女子の保護規定を廃止するということが、現状においてどうかというような観点からも、その公益委員の試案を手直しをして法案をつくったというような点につきましても、余り一方的でなくごらんをいただきたいと思う次第でございます。
  359. 簑輪幸代

    簑輪委員 配置、昇進の問題について努力義務になっているという点は、将来これを禁止規定にしていくということを当然考えていただかなければならないというふうに思います。それで私は、一体どのような条件が整ったときにそのようなことになるのかと伺いたいわけですけれども、これまでいろいろお話がありました中で、婦人は勤続年数が短いということであるというふうに言われたりもしてきました。しかし、それは決して婦人の責任にのみ帰せられるものではございませんで、企業によって、あるいはまたおくれた社会認識のもとで、そのように追い込まれているという現状もあったわけで、それを変革していかなければならないというふうに思うのです。固定的ではなく前進する立場に立つべきであるというのが、今回の差別撤廃条約批准との関係で、あるべき法制の姿ではないかというふうに思います。その点をぜひ考慮の上で、この活用の点でも何としても実効性あるように婦人局あるいは婦少室の御努力をいただきたいと思います。  そこで、調停の問題ですけれども、実は差別を受けたときに有効な救済が図られるかどうかということが婦人にとっては重大な関心です。その際、調停という場合には相手方の同意が必要であるということについては到底納得できないところです。これまで紛争があったときに民事調停や家事調停などは、ともかくも調停を開始して、そして解決のために重大な役割を果たしてきたわけですから、相手方の同意が条件となるというのはまことに納得できないところだと思います。まず調停を開始し、相手が応じないときには説得し、調停が有効に機能するように努力する必要があると思いますが、この同意を外していただくというふうにお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
  360. 赤松良子

    赤松政府委員 その点も何度がお答えしたように思いますが、調停につきましては、調停という制度の本質上、相手方がそれに応ずる気持ちがない場合は幾ら調停をしてもそれは調停たり得ないというふうに考えるわけでございます。  最後の御指摘の点につきましては、調停に応ずるようにという努力は婦人少年室は調停委員会の事務局として大いに努力をいたしたい、こういうふうに存じております。
  361. 簑輪幸代

    簑輪委員 真に実効性ある雇用平等法をと願っている、その実現をすべく努力していただかなければならない労働省が、一つはこの婦少局あるいは婦少室の陣容が非常に弱体であるということを私はまことに残念に思っております。  そこで、大臣にお願いをしたいわけですけれども、ぜひこの陣容を大幅増員していただきまして、実効ある雇用平等法のその役割を果たせるように御検討いただけないかというふうに思います。  それからもう一つ、再三御論議がありましたけれども、この法案についてはたくさんの問題点があり、必ずしも百点満点でないことは大臣自身もお認めになっておられますし、このままスタートするということになりますと、私はもうこのまま何としても放置しておくことはできないと思います。労働省としてはその実態をできるだけ早期に把握して、三年ぐらいのめどで見直しを行うというような姿勢を明確にしていただきたいと思います。あわせて御答弁をお願いしたいと思います。
  362. 坂本三十次

    坂本国務大臣 婦人少年室の仕事は非常に大切になりますので、まあこれは労働省の最重点の政策にもなりますので、できるだけの充実をしたいと思っております。それで、今度機構改正によりまして、安定とか基準とか婦人少年室とか、これが全部一体に労働局ということになりますので、そうすればその労働局長の努力次第で婦人室のサポートも今まで以上に円滑にできるのではないかな、こういう気持ちもいたします。できるだけ人員も充実をして一生懸命やっていきたいと思っております。  それから、見直しのことは先ほどもお答えをいたしましたように、現実のスタートは、あの審議会の中でも意見がたくさん出たのを、どうしてもあるべき姿が見えるのにスタートをしないというわけにはいかないという判断のもとにスタートを踏ん切りたいというのが私どもの意見でありますが、しかし、非常に山は高く道は曲折しておるでしょう。しかし、それはやってみまして、そしてもっとベターな道があれば決して私どもは意地を張るという気持はありませんので、そのときに至って、なるほどこうした方がいいということになれば、謙虚に調整をしていくという気持ちは持っております。  ただ、今ここで三年、五年、十年と言っても、ちょっと大ざっぱ過ぎるような気持ちもいたしますしね。さて三年後にはどう、五年後にはどう、十年後にはどうというような調整をしなければならぬということも、まだ今推測するのにはちょっと早いわけですから、気持ちとすれば、何とでもして、その目的に到達するために知恵を絞り努力を重ねていかなければならぬ。そういう意味では、見直しというようなことはその必要が起これば十分考えられることでありますが、今直ちにここで何年と言うのがいいかどうかというのは、ちょっとまだそこまで私ども踏み切るつもりはございませんので、直ちに今ここで見直し規定を入れるというのはちょっと早かろう、こう思っておりますが、しかし何とでもしてベターな道を探って、何とでもして差別をなくしていきたいなという気持ちだけは、これは間違いはありません。
  363. 簑輪幸代

    簑輪委員 最後に、保護か平等かというような形で婦人の幸せが切り捨てられることのないように、真の母性保護を確保しつつ男女平等を確立し、男性労働条件もよりよいものにするために最大限の努力を図られるよう、労働省に強く要望をしておきたいと思います。男性女性もあわせて、その役割を、固定的なものではなくて、従来の伝統的なものではなくて、新しい時代を目指したそれぞれの人間能力を最大限に発揮できる、そういう条件を確立するために御努力をいただきたいと思いますし、婦人労働者はその面で労働省の動きをしっかり見詰め、要求していくことをあわせて申し上げまして、質問を終わりたいと思います。(拍手)      ――――◇―――――
  364. 有馬元治

    有馬委員長 この際、連合審査会開会申し入れの件についてお諮りいたします。  逓信委員会において審査中の内閣提出日本電信電話株式会社法案、電気通信事業法案及び日本電信電話株式会社法及び電気通信事業法の施行に伴う関係法律整備等に関する法律案の各案について、同委員会に対し連合審査会開会の申し入れを行いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  365. 有馬元治

    有馬委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、連合審査会の開会日時等につきましては、逓信委員長と協議の上、追って公報をもってお知らせすることといたします。  次回は、明後十二日木曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時三分散会      ――――◇―――――