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1984-07-05 第101回国会 衆議院 社会労働委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年七月五日(木曜日)     午前十時一分開議  出席委員    委員長 有馬 元治君    理事 愛知 和男君 理事 稲垣 実男君    理事 小沢 辰男君 理事 丹羽 雄哉君    理事 池端 清一君 理事 村山 富市君   理事 平石磨作太郎君 理事 塩田  晋君       伊吹 文明君    稲村 利幸君       古賀  誠君    斉藤滋与史君       自見庄三郎君    田中 秀征君       中野 四郎君    長野 祐也君       西山敬次郎君    野呂 昭彦君       浜田卓二郎君    藤本 孝雄君       箕輪  登君    森下 元晴君       渡辺 秀央君    網岡  雄君       上西 和郎君    河野  正君       多賀谷眞稔君    竹村 泰子君       永井 孝信君    森井 忠良君       大橋 敏雄君    沼川 洋一君       橋本 文彦君    森本 晃司君       小渕 正義君    塚田 延充君       浦井  洋君    田中美智子君       菅  直人君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 渡部 恒三君  出席政府委員         厚生政務次官  湯川  宏君         厚生大臣官房長 幸田 正孝君         厚生大臣官房総         務審議官    小林 功典君         厚生大臣官房審         議官      新田 進治君         厚生大臣官房会         計課長     黒木 武弘君         厚生省健康政策         局長      吉崎 正義君         厚生省保健医療         局老人保健部長 水田  努君         厚生省薬務局長 正木  馨君         厚生省保険局長 吉村  仁君         厚生省年金局長 吉原 健二君         社会保険庁医療         保険部長    坂本 龍彦君         社会保険庁年金         保険部長    朝本 信明君  委員外出席者         社会労働委員会         調査室長    石黒 善一君     ――――――――――――― 委員の異動 七月五日  辞任         補欠選任   今井  勇君     森下 元晴君   谷垣 禎一君     田中 秀征君   河野  正君     上西 和郎君 同日  辞任         補欠選任   田中 秀征君     谷垣 禎一君   森下 元晴君     今井  勇君   上西 和郎君     河野  正君     ――――――――――――― 七月三日  男女雇用平等法案中野鉄造君外一名提出参法第四号)(予) は撤回された。     ――――――――――――― 七月三日  重度戦傷病者と妻の援護に関する陳情書外一件(第三四二号)  国民健康保険制度充実改善に関する陳情書外二件(第三四三号)  医療保険制度等福祉関係施策改革に関する陳情書外十七件(第三四四号)  健康保険制度改正反対に関する陳情書外百十七件(第三四五号)  社会保障制度改悪反対に関する陳情書外四件(第三四六号)  国立病院療養所の存続に関する陳情書外八件(第三四七号)  年金医療雇用保険改悪反対等に関する陳情書外二件(第三四八号)  食品添加物の規制に関する陳情書外三件(第三四九号)  使用済み乾電池処理対策に関する陳情書外四件(第三五〇号)  廃棄物収集輸送施設補助制度確立に関する陳情書(第三五一号)  国民年金法等改正に関する陳情書(第三五二号)  国民健康保険税収確保対策に関する陳情書(第三五三号)  国民年金事務費委託金等交付基準額適正化に関する陳情書(第三五四号)  老人保健法による医療費交付金制度改善に関する陳情書(第三五五号)  老人保健法による拠出金算定適正化に関する陳情書(第三五六号)  痴呆性老人福祉対策に関する陳情書(第三五七号)  老人保健法に基づく機能回復訓練中の事故補償制度確立に関する陳情書(第三五八号)  はり、きゆう治療費助成制度化に関する陳情書(第三五九号)  児童扶養手当制度に関する陳情書外三件(第三六〇号)  三歳未満児保育所保母配置基準改正に関する陳情書(第三六一号)  原爆被爆者援護法制定促進に関する陳情書(第三六二号)  男女雇用平等法制定に関する陳情書外十三件(第三六三号)  林業労働法立法制定に関する陳情書外一件(第三六四号)  労働者雇用安定に関する陳情書(第三六五号) は本委員会参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  健康保険法等の一部を改正する法律案内閣提出第二二号)  派遣委員からの報告聴取      ――――◇―――――
  2. 有馬元治

    有馬委員長 これより会議を開きます。  内閣提出健康保険法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  この際、本案審査のため大阪府に派遣いたしました委員からの報告を求めます。愛知和男君。
  3. 愛知和男

    愛知委員 私どもは、健康保険法等の一部を改正する法律案審査に資するため、大阪府に行き、現地において各界の代表者から意見を聴取いたしてまいりましたので、この際、便宜私から御報告申し上げます。  派遣委員は、団長を務めました私のほか、自見庄三郎君、長野祐也君、永井孝信君、森本晃司君、小渕正義君の一行六名であります。  なお、浦井洋君が現地参加をされました。  現地における会議は、昨日午前十時より午後一時二十五分まで、日本生命御堂筋八幡ビル会議室において開催し、まず私から、派遣委員及び意見陳述者の紹介並びに議事運営順序等を含めてあいさつを行った後、住江織物株式会社代表取締役会長秋山良三君、大阪生活協同組合連合会会長北大阪医療生活協同組合理事長大津静夫君、大阪大学社会経済研究所教授筑井甚吉君仏教大学社会学部教授高屋定国君、香川県善通寺市長平尾勘市君、全日本労働同盟大阪地方同盟書記長本田精一君の六名の方から、参考意見を聴取いたしました。  陳述者意見は、秋山君、筑井君、平尾君よりは賛成大津君、高屋君、本田君よりは反対意見が述べられました。  改正案に対する賛成の三君よりは、本格的な高齢化社会を迎え、国民租税負担社会保険負担を合わせた公的負担現状程度に維持し、活力ある福祉社会を維持するため、医療費の増加を抑える必要があり、改正案は大筋において賛成である。  改正案内容については、まず、濃厚過剰診療の排除や薬価見直しなどの医療費適正化対策を強力に推進していく必要がある。また、本人給付見直しは、給付負担の公平だけでなく、医療効率性確保からもぜひ必要であり、健康の自己管理促進医療費適正化効果期待される。定率負担方式でも、高額療養費支給制度適用があるので家計崩壊のおそれはない。さらに、退職者医療制度の創設は、長年の懸案が解決し、実現を見たもので、賛成である旨の意見がありました。  なお、将来の医療保険制度一元化については、医療保険制度の統合一本化ではなく、組合健保のような小集団方式基本として考えていくべきである旨の意見がありました。  このほか、国民健康保険制度の適切な運営退職者医療の将来における財政負担についての歯どめ措置の検討、特定療養費制度の適切、慎重な運用を図るべきである旨の意見がありました。  改正案に対する反対の三君よりは、今回の改正案は、財政的見地からの改正案であり、また、さき老人保健法による老人の別枠、分断、格差状況に乗る改正案であって、反対は当然である。  特に、本人定率負担導入は、受診を抑制し、重症患者には大きな影響を与えるものである。高額療養費適用があるとしても、その仕組みが個人単位レセプト方式のため、決して軽い負担とは言えない。本人給付見直し給付負担公平化の観点から実施されるものならば、同時に、健保家族国保給付を引き上げる必要がある。  また、特定療養費制度については、現在の差額徴収の放任になり、反対である。退職者医療制度国庫負担がないのは問題である旨の意見がありました。  このほか、本人給付見直しの前に、薬価基準出来高払い制診療報酬見直し、物と技術を分離した適正な診療報酬体系確立すべきである。さらに、地域住民に密着した将来の医療保険制度あり方制度改革中長期ビジョンを示すべきである旨の意見がありました。  以上のような意見が述べられた後、各委員から、現行医療保険制度の評価、医療費負担あり方医療保険制度一元化保健事業推進本人一割負担導入受診率及び事務量への影響国保保険料格差レセプト審査国保を含む全国一本化、地方自治体の反対意見医療政策中長期ビジョン等の問題について、質疑が行われた次第であります。  以上をもって報告を終わりたいと思いますが、この会議の開催につきましては、関係者多数の御協力により、極めて円滑に行うことができた次第であります。  なお、会議内容を速記により記録いたしましたので、詳細は会議録によって御承知願いたいと思いますので、会議記録ができましたならば、本委員会議録参考として掲載されますようお取り計らいをお願いいたします。  以上でございます。(拍手)
  4. 有馬元治

    有馬委員長 これにて派遣委員からの報告は終わりました。  お諮りいたします。  ただいま御報告のありました現地における会議記録が後ほどでき次第、本日の会議録に参照掲載することに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 有馬元治

    有馬委員長 御異議なしと認めます。  よってさよう決しました。     —————————————     〔会議記録は本号(その二)に掲載〕     —————————————
  6. 有馬元治

    有馬委員長 健康保険法等の一部を改正する法律案につきまして質疑の申し出がありますので、順次これを許します。池端清一君。
  7. 池端清一

    池端委員 私は、まず最初に渡部厚生大臣に対して、来年度の概算要求の時期が迫っておりますので、いわゆる概算要求枠シーリングの問題についてお尋ねをしたいと思うのです。  このシーリングの問題については現在いろいろな議論がなされております。与党内でもいろいろな意見があって、まさに百家争鳴、こういう状況でございますが、政府はこれまでも二年連続してマイナスシーリングという方式をとり続けてまいりました。この結果、社会保障費は集中的な打撃を受けた、集中砲火を浴びてきた、こう言っても言い過ぎではないと思うのです。この健康保険改正案がまさにその典型だと私は思うのであります。  我が党は、去る六月二十日に来年度予算要求に向けての基本方針を決定いたしました。そこでは、内需拡大を中心にした経済政策をとるべきである、一律マイナスシーリング方式はやめるべきである等、八つの原則を打ち出したわけでありますが、来年度の概算要求枠シーリングの問題について厚生大臣はどのような見解をお持ちになっているか、それをまずお聞きしたいと思います。
  8. 渡部恒三

    渡部国務大臣 池端先生から、社会保障予算確保のために御心配をちょうだいいたし、大変ありがたいことだと思っております。  ただ、御承知のように国全体が「増税なき財政再建」という基本的方針国民的な合意のもとに今進められている中でありますから、これらの厳しい財政条件というものを無視するわけにはまいりませんけれども、しかし、そういう中で、私どもの抱えておる社会保障予算はいわば国民生活基本に関するものであって、金がないからことしはできないから来年に待てというようなわけにいかないものが非常に多いのでありますから、私どもは、来年度も必要なる社会保障のための予算確保しなければならないという強い決意で臨んでまいりたいと思います。
  9. 池端清一

    池端委員 ということは、いわゆる一律マイナスシーリング方式というものについては、そのようなことを考えておらない、そういう方式については大臣としては反対である、こういう立場であると理解してよろしゅうございますか。
  10. 渡部恒三

    渡部国務大臣 さきに申し上げましたように、国全体の進むべき方向というのは、やはり「増税なき財政再建」という基本的な路線をこの内閣はとっておるのであります。これは国民的期待でもあると私は思います。そういう厳しい財政状態にあるということを無視するわけにはまいりません。  しかし、そういう厳しい条件の中で、やはり社会保障予算というものが、先生御心配いただいておりますように、国民生活にぎりぎりかかわりのある問題でありますから、必要な予算確保しなければならないという決意で臨んでまいりたい、こういうことでございます。
  11. 池端清一

    池端委員 重ねてお尋ねしますけれども社会保障費は人口の急速な高齢化生活水準向上等に伴い、毎年必然的に巨額の当然増が生じるという他の施策とは異なった特殊性を持っており、これに対しゼロないしマイナスシーリングを実施することは不可能であり、あえてこれを強行すれば社会不安や政治不信を招来することは必至である、こういう御意見がありますが、これについては大臣はどのようにお考えですか。
  12. 渡部恒三

    渡部国務大臣 御指摘のとおり、社会保障予算、いろいろございますが、これは身体障害者皆さん方予算にいたしましても、あるいは医療費予算にいたしましても、あるいは年金予算にいたしましても、あるいは生活保護世帯予算にいたしましても、これは国民生活を守るために深いかかわりのある予算であります。したがって、私どもは、社会保障のそういう国民生活を守るためにぎりぎり必要な予算は何としても確保しなければなりません。幸いに、与党の自民党の社会部会でも私どもに対する非常な御理解をちょうだいいたしておりますので、今国会で与野党皆さんの御協力によってこの提出しておる健康保険法改革案を一日も早く成立させていただきまして、それから私どもは、与野党社会保障に深い御理解をいただく先生方の御後援を得て、来年度も社会保障予算確保するために全力を尽くして努力したいと思っております。(私語する者あり)
  13. 池端清一

    池端委員 ちょっと場内が騒々しいから、委員長、整理してください。
  14. 有馬元治

    有馬委員長 御静粛にお願いします。
  15. 池端清一

    池端委員 私の手元に「臨時行政改革推進審議会ニュース」という、これは槇枝文委員の事務所で発行しておるニュースがございます。ここで、今日までの臨時行政改革推進審議会でのいろんな審議の模様が書かれているわけでありますが、その中で、私は大変問題な発言が随所に出ているというふうに思うわけであります。  例えば、「切れるものは殆んど切った。これ以上単に抽象的に歳出削減を云ってみてもたいしたものはない。ここからは例えば教科書無償を止めるとか、給食費補助を止めるとか、児童扶養手当を止めるとか、そうした三桁単位の億の金を制度を変えてしぼりだす以外にない、」こういったような発言があったり、「現状三五%の国民負担率の内訳は租税二五%、社会保障負担一〇%だ。今後上げる場合は受益者負担原則に立って社会保障の方を重点に上げるべきだと考えている。」というような発言等もあるわけであります。このままの状況で推移するならば、またもや六十年度、福祉年金医療、徹底的な集中砲火を浴びて大変なことになるのではないか。今この健保改正案審議しているけれども、また来年も同じような健保改正案審議しなければならないといったような状況が生まれてくるんではないか。ここはまさに不退転決意大臣、頑張ってもらわなければならない正念場に立たされている、私はそう思うのですが、改めて決意のほどを聞きたいと思うのです。
  16. 渡部恒三

    渡部国務大臣 御理解を大変ちょうだいしてありがたいことだと思っております。  社会保障予算、これは国民生活のぎりぎりに関するものでありますから、これは削るといっても限度がありますし、我々は必要なる予算、これは守っていかなければならない。もちろんこの行政改革推進にのっとってむだな予算は節約していかなければなりませんが、国民生活を守るために不可避な予算は何としても確保していかなければなりません。したがって、今度の健保法改革案を私ども出した意味も、そういうことで必要なる社会保障予算は今後確保していかなければならない。また、二十一世紀に向かって国民の健康を守るこの医療制度というものも揺るぎないものに逐次改革して守っていかなければならない。そういう意味でこの改革案をお願いしておるのでありまして、この改革案を成立させていただきましたならば、私は、来年度の予算に当たっては、与野党のこの社会保障を御心配いただく先生方の熱意をしっかりと胸に抱いて、全力投球で来年度の社会福祉予算確保のために、御期待にこたえるように頑張ってまいりたいと思います。
  17. 池端清一

    池端委員 健康保険法改正が成立したならばという前提があることはいただけませんけれども、その後段の決意はよしとします。ひとつ大いに頑張っていただきたい。特に厚生省関係予算は、先ほど来からいろいろありますようにまさに国民生活に直結した予算であります。国民の命と健康、暮らし、福祉年金、こういう極めて国民生活に重大な影響を持った内容でございます。臨調行革路線のもとで、これ以上切られるのではないかという国民の不安というものが非常に高まっている、まさに渦巻いている、こういう状況でありますから、ひとつ重ねて申し上げるようでありますが、不退転決意でこの問題に取り組んでいただきたいことを強く要求をしておくわけであります。  そこで、本論の健康保険法改正の問題に入りたいと思います。  今度の健康保険法改正の大きな柱として、実は日雇労働者健康保険制度の問題があるわけであります。この問題はともすれば、八割給付であるとか九割給付であるとかという問題の陰に隠れて余り表に出ておりませんが、この改革自体は大変大きな内容を持っていると私は思うのであります。  今日まで、日雇い労働者とその家族生活の安定に寄与するということを目的として日雇健保制定をされて、三十年の歴史を持っているわけであります。これが今回いわゆる一般健保に組み入れられる、こういうことになっておるわけであります。  そこで、私も財政状況その他、いろいろわからないでもありません。昭和五十七年度末までで、累積収支不足額が六千五百三十七億円に達した、大変な状況だということで、今回の改正案が出されたと思うのでありますが、どうしても合点がいかないのは、今まで無関係であった健保組合からも拠出を求める、こういうことに象徴されておるように、安易な財政調整ではないか、こういう疑問を私は率直に持つわけでありますが、この点はいかがでしょうか、明らかにしていただきたいと思うのであります。
  18. 坂本龍彦

    坂本政府委員 日雇健康保険改革の問題は従来から大きな問題でございましたが、このたびようやくその成案を得るに至りまして、健康保険体系の中に日雇い労働者も含めるということで改革を目指しておるわけでございます。  その際に、やはり日雇い労働者という方の就労の実態を見ますと、毎日異なった事業所勤務をするというのがかなりの場合じゃなかろうか。そういたしますと、健康保険事業所と申しましても、政府管掌健康保険適用事業所、それから健康保険組合が設立されている事業所、大きく分けますとこの二つになろうかと存じます。  私ども基本的な考え方は、いずれにいたしましても、日雇いの方の医療保険でございますから、事業主と被保険者保険料、それから国庫負担、こういった財源構成でやっていくわけでございますが、その際に、考え方といたしましては、健康保険組合の設立されている事業所に勤めた場合に、その日数に応じて給付健康保険組合から給付するという考え方もございますが、実際上、幾つかの事業所勤務をする方の給付、例えば医療給付などを幾つかのまた組合なり政管なりで分担してそれぞれ給付するというのはなかなか事務的にも難しい面がございますので、給付保険料徴収は一括して政府管掌健康保険で実施をいたしまして、そのかわり健康保険組合を設立した事業所就労した日数に応じて分担金をいただこう、こういうことにいたしております。これは保険料事業主、さらに国庫負担をもってしてもなお収支が不足する部分がございますので、それはいわば健康保険保険者としての実質的な御負担をお願いしたい、こういう考えでございます。  その際に、この拠出金を計算する基礎は、日雇い労働者の方の就労日数割合で計算することにいたしておりますので、例えば財政調整というようなことになりますと、就労状況とは別に、むしろ保険者財政力の違い、こういったものに着目して、全部の保険者から財政力に応じた拠出をいただくということになろうかと存じますが、今御説明しましたように、就労日数という点だけに着目いたしておりますので、財政調整というものとは異なるものであると私ども考えております。
  19. 池端清一

    池端委員 今度の改正案を見ますると、確かに家族の入院が七割から八割に引き上げられている、あるいは分娩費埋葬料の引き上げといったようなものもありまして、一定の前進面があることは評価するにやぶさかではありません。しかし、問題なのは、療養給付期間が大幅にカットされている、あるいは傷病手当金制度が大変な切り下げだ、こういう大きな問題があるわけですね。  この療養給付期間の問題でありますが、現行では給付開始の日から五年となっておりますね。これが今度の改定案では、受給資格が一年以上継続しなければ一年で打ち切り、こういうふうになっているわけであります。これは私は、日雇い労働者皆さん方就労特殊性、これを全く考慮しないやり方ではないか、こういうふうに思うわけであります。なぜこのような過酷とも思われるような措置を今回出してこられたのか、この点をお伺いしたいと思います。
  20. 坂本龍彦

    坂本政府委員 先ほども申し上げましたとおり、今回の日雇労働者健康保険改革基本的考え方は、従来の単独の制度を廃止いたしまして、健康保険体系日雇い労働者の方を加入させていくということでございます。したがいまして、一般の常勤の方の健康保険の被保険者との実質的な均衡というものを前提として、給付あるいは負担というものを考えることにいたしたわけでございます。  療養給付の問題でございますが、現在、健康保険におきましては、通常それまで勤務をしておりました事業所退職いたしました場合には、その場で療養給付が切れるという原則でございますけれども、ただ退職前一年間継続して加入しておった場合には、退職をいたしましても療養給付開始後五年までは給付をする、こういう制度がございます。日雇健康保険の場合には就労形態が違いますので全く同じではございませんけれども、こういった健康保険給付均衡をとった考え方ということになりますと、一応受給資格を満たしたときというものを健康保険の被保険者資格と大体同じようなものと考えまして、それが一年間継続しておれば、発病して診療開始後五年までは給付をしようということで、一般の被保険者の方との均衡をとろうということを考えたのが今回の考え方でございます。
  21. 池端清一

    池端委員 一般健保の被保険者との均衡、バランスを考えた、こういう御説明でございますが、私は、これは先ほども申し上げましたように、日雇い労働者皆さん方就労特殊性といいますか雇用特殊形態と申しますか、これを全く無視したやり方ではないかと思うのですよ。  例えば私の出身であります北海道では、三十二万人の季節労働者の方々がおられます。主に建設業あるいは林業、さらには水産加工業、そしてゴルフのキャディーさん、こういう方たちは、冬場は全く仕事はありません。年に八カ月ないし九カ月就労できればよしとしなければならない。十カ月雇用なんというのはほとんどありません。こういうような人たちがたくさんいるわけであります。また、炭鉱閉山によりますところの失業対策としてつくられました炭鉱離職者緊急就労対策事業、産炭地開発就労事業や特定地域開発就労事業、一般に緊就、開就、特就と呼ばれているものですね。これも通年雇用はできない。年二カ月程度の不就労の月が出てくる。この人たちは、もういや応なく一年で打ち切り、こういうことになるわけですね。今までは就労特殊性を考慮して五年認められておったものが、今回一挙に一年になります。切り下げられる。これは私は大変なことであると思うのですね。しかも日雇い労働をこれまで五年、十年、十五年、二十年とずっと続けてこられた。ところがたまたま一月ぐあいが悪くて就労できなかったら、もうそこでこの受給要件を欠くとこういう人たちは一年で打ち切り、こういう措置になるわけであります。あえて残酷な措置だと言わなければなりません。  こういうようなことについて、これは一体本当に日雇い労働者の健康を守る道だというふうにお考えになっておられるのかどうか、その点改めてお尋ねをしたいと思います。
  22. 坂本龍彦

    坂本政府委員 政府案の考え方は、先ほど申し上げましたように、健康保険体系の中に日雇い労働者健康保険を取り入れるということで、一般の被保険者の方との均衡というものを、これはかなり基本的なものとして案を組み立てておるわけでございますが、確かに今先生が御指摘のような実態というものはあるということにつきまして、またそういったことを十分配慮すべきではないかという御意見があることは、私どもも十分承知をしておるところでございまして、その点について、例えば何らかの形でいろいろそういった不利な状況にならないような指導方法、そういうものなどあればこちらとしても考慮していきたいという気持ちは持っておるわけでございますが、政府案の考え方は一応先ほど申し上げたとおりでございます。
  23. 池端清一

    池端委員 政府案の考え方も今出されましたが、大臣、私の言っていることも御理解いただけたと思うのであります。  療養給付期間には歴史的な変遷がございまして、日雇健保三十年の歴史の中で、当初は三カ月だったのですね。それが六カ月に延長され、一年になり、そして二年になり、三年六カ月になり、現在では五年というふうに推移をしてきているわけであります。ところが、今度はこれを昭和三十年当時に逆戻りさせる、二十九年前に逆行させる、こういうことであります。これは日雇い労働者皆さん方が中高年齢層の多い年齢構成だということや、成人病にかかる方が非常に多い、これは一年で完治するということは非常に難しいということは今さら申し上げるまでもないと私は思うのであります。そういうような状況を勘案すれば、この措置はまことに過酷な措置であり、渡部厚生大臣のときになって二十九年前に逆戻りすること、これは大臣もよしとしないと思うのでありますが、この点についての御見解はどうですか。
  24. 渡部恒三

    渡部国務大臣 今回の改革は、今政府委員から説明いたしましたように、日雇い労働者健康保険体系に取り入れ、その給付負担については、日雇い労働者就労特殊性を考慮して一般の被保険者と実質的に均衡がとれるようにする、こういうねらいでございます。このために、給付水準についても引き上げるべきものは引き上げたところでありますけれども、一方、給付水準が今先生御指摘のように下がるものも出てまいりまして、今御指摘をちょうだいいたしております。  私は、今聞いておりますと、これは政府委員の答弁も当然のことながら筋の通った話なのですけれども、しかしまた、日雇い労働者皆さん方を御心配する池端先生の御心配もまた、なるほどなと私は今考えておるところでございます。  いずれにしても、日雇い労働者は低所得者が多いこと、就労が不安定である、これは先生御心配のとおりで、またその方々にできるだけ御安心をちょうだいしたいという気持ちも、先生と私と全く一緒でございますので、先生の今のようなお話を私は十分肝に銘じて、この運営に当たっては日雇い労働者の実情に配慮し、適切な対処をしてまいりたいと存じております。
  25. 池端清一

    池端委員 今御答弁がありましたので、これ以上私は申し上げることはないと思うのであります。私が十分な問題提起をいたしましたことを深く深く肝に銘じて、対処せられんことを強く要求しておきます。  次に、傷病手当金の給付の問題でありますが、これも改革案では大幅な切り下げでありまして、納得できません。  今回の計算式によりますと、平均で現行の約三分の二程度、七十歳以上の失対事業就労者の場合はことしから月の就労日数が十五日に削減をされた。これによりまして、七十歳以上のこれらの方々は給付は半分になってしまう。傷病手当金というのは、今さら申し上げるまでもなく、労働者が傷病によって労働することができなくなったときの唯一の生活の糧であります。これでは、もともと生活不安定の日雇い労働者の暮らしを守るなどということは到底できない、重大な危機に直面すると思うのであります。  現行は、就労日数かかわりなく、賃金日額の六〇%を保障するという方式を採用しております。これは日雇労働者健康保険法第一条に言うところの、その生活の安定に寄与するために設けられた、いわば日雇い労働者皆さん方のこれまた就労特殊性を考慮したものでございまして、これを今回このように三分の二程度、あるいは七十歳以上の方については半分も減額をするというような措置をとった理由、これをお尋ねをしたいと思うのであります。
  26. 坂本龍彦

    坂本政府委員 政府案の考え方についてまず御説明を申し上げます。  これも先ほど療養給付と同様、健康保険体系日雇い労働者健康保険を取り入れるに際して、一般の被保険者との実質的な均衡という見地から考えたものでございます。  どういうところが実質的均衡かと申しますと、一般健康保険の被保険者の方の傷病手当金は標準報酬月額、通常平均的な賃金の月額でございますけれども、それの三十分の一を標準賃金日額と見まして、それの六〇%を支給するものでございます。それに対しまして現行日雇労働者健康保険の傷病手当金は、賃金の支給があった日のその賃金日額の六〇%を、傷病が続けばその三十日分で六カ月まで支給するということでございます。その場合に、もともと日雇い労働者の場合には一月のうち全部が就労になるケースはまれでございまして、月のうち何日かは就労しない日がある。そうしますと、本来就労していないような日でも就労した日の賃金日額六〇%が傷病手当金として支給されるということになると、これは独立の制度としてならともかく、健康保険の中では一般の被保険者との均衡上問題があろうか、こういうことを考えまして、一月間の賃金日額の合計を三十で割ってその六〇%を一日当たりの支給額とする、こういうことで一般の被保険者との均衡をとるという考え方で案を立案したものでございます。
  27. 池端清一

    池端委員 この問題についても、一般健保の被保険者との均衡を考慮した、こう言うのでありますが、それじゃ傷病手当金の支給期間はどうですか。日雇いの場合は六カ月、一般健保の場合は一年六カ月ですよ。これだけの格差は依然として放置してある。あるときは均衡論を言い、あるときはこういう格差を放置しておる。こんな矛盾がありますか。均衡均衡と言うならば、すべてを一緒にするなら話はわかりますよ、筋道としては。ところが、片っ方はそのまま格差を放置しておき、片っ方は均衡論で合わせようという、こんな矛盾というのは私はない。日雇い健保を読めば読むほどそういう矛盾点が出てくることに、私は大変な憤りみたいなものを実は覚えているのであります。この矛盾をどういうふうに御説明されますか。
  28. 坂本龍彦

    坂本政府委員 確かにいろいろ、均衡というものを考える場合にどういう均衡考えるかという点については、考え方としては幾通りかあるということは私どもも承知しております。私どもとしては、そういった立案をする段階において、いろいろ関係方面の方の御意見も伺いながらそういった考え方の中の一つを選択したということでございまして、均衡あり方、こういったものについていろいろな御意見があるということは私どもも承知をしておるところでございます。
  29. 池端清一

    池端委員 全く説得力のない答弁ですね。  ひとつ実態を明らかにしていただきたいと思います。日雇い労働者皆さん方の平均賃金日額はどのようになっていますか。平均月間就労日数はどのようになっていますか。数字を挙げていただきたいと思います。
  30. 坂本龍彦

    坂本政府委員 日雇労働者健康保険の被保険者の実態の数字でございます。  最初に平均賃金日額でございますが、これは昭和五十七年の五月時点で調査をいたしたものでございますが、男子が七千五百四十三円、女子が四千四百五十七円、全体の平均で六千三十六円でございます。  それから、次に平均の月間就労日数でございますが、これは五十六年の四月から五十七年の三月までの調査の数字でございます。男子が月に十七・〇日、女子が十七・二日、全体の平均が十七・一日となっております。
  31. 池端清一

    池端委員 ただいまの説明によれば、日雇い労働者就労日数は月平均十七・一日、賃金日額は平均六千三十六円、こういうことですね。この数字を現行の算式で当てはめてまいりますと、現行の平均傷病手当金は十万八千六百三十円、こういう数字が出ます。ところが、改正案ではどうなるかというと六万一千九百二十円です。実に四万七千円もの減額ですね。四三%の切り下げです。こういうふうに私どもは押さえておりますけれども、この数字に間違いございませんか。
  32. 坂本龍彦

    坂本政府委員 今お尋ねをいただきまして、ちょっとここで厳密な計算までには至りませんけれども基本的な考え方は、従来であれば一日の賃金の六〇%が、例えば一月傷病が続けば三十日分、その金額が十万八千六百三十円ということになろうかと思います。それで、今回の改正案でまいりますと、平均賃金日額の平均就労日数を掛けた総額を三十で割りまして、それの六〇%を三十日分支給するということになるわけで、したがって、大体三十分の十七という比率で考えれば間違いはないというように考えておりますので、大体こういった金額になるのではないかというふうに考えます。
  33. 池端清一

    池端委員 大臣、この傷病手当金の問題についても、この改正案でいきますと平均四三%のダウンですよ。約五割近いですね。しかも病気になって、この中から高額療養費の自己負担限度額五万四千円、これを差っ引きますと、手元に残るのはわずかに七千九百二十円ですよ、大臣。これでどうやって生活していくことができるでしょうか。まことに惨たんたる状況というものが目の前に浮かぶようでありますね。少なくとも傷病手当金の計算式、こういうような改悪をすべきではない、こう思います。  日雇い労働者皆さん方先ほど大臣も言われたように、そもそも賃金が非常に低い、不安定な雇用、そういうような状況にあって、そこで病気になった場合はこうだ、手元に残るのはわずかに七千九百二十円、これは血も涙もないやり方ではないか、こう私は思うのですが、どうですか。
  34. 渡部恒三

    渡部国務大臣 今回の日雇健保改革、全体としては御理解を賜っておると私は思っておりますし、いろいろ今までもお話しをお聞きしまして、この改革をやるべきかやるべきでないかということになると、やはりこの改革というものを評価していただいておるのであります。ところが、今先生御指摘のように、これは一つの均衡というものから制度が出発しておるために、上がっておるのもあるのですけれども、これは余り御指摘していただけないのですが、下がっておるのが出ておるのも現実でございます。  今先生御指摘の問題等をお聞きしますと、これは私もこの法の提案者でございますが、しかしまた、先生のお話も心情的には共感するところがございます。したがって、先生のきょうの質問の御意思、これを十分に私は体得いたしまして、先生のこの御心配というもの、これは日雇い労働者皆さん方は、非常に賃金が低くて、生活が不安定で、いろいろ御心配をなさっておるのでありますから、そういう日雇い労働者皆さん方に対する先生の今の御心配、これをできるだけ少なくしていくように今後適切に対処してまいるつもりでございます。
  35. 池端清一

    池端委員 この傷病手当計算式の変更に伴う財政効果額というものを厚生省ではじいておりますが、これによりましてもわずかに総額で十四億円程度なんですね。しかし、個人の労働者から見ると約半分のものがカットされる、こういう状況なんです。今大臣は「十分に体得して」と、体得という言葉を使われましたので、私はこれ以上申し上げませんが、これについても、このような過酷な措置は絶対やめるべきであるということを強く申し上げておきたい、こう思います。  次に、日雇い労働者皆さん方健保受給資格を失った場合の措置についてであります。  療養給付期間を過ぎてもうっかりして医療給付を受けて、後で本人に返還請求が来る例があるというふうに聞いておるわけであります。昭和二十八年に厚生省は通達を出しまして、こういうことがないように十分行政指導を行うべきであるというふうな指導をされておりますけれども、必ずしも十分には徹底しておらない、こういうふうに承知をいたしております。受給資格がなくなったときは、その時期がはっきりわかるように、しかも敏速に国保に切りかえられる、こういうような適切な指導を強化すべきだ、これは行政指導の分野でございますが、そういう指導をさらに強化すべきである、こう思いますが、これについてはどのようなお考えでございましょうか。
  36. 坂本龍彦

    坂本政府委員 日雇労働者健康保険法にも明示してございますが、日雇い労働者の方が日雇い労働者として就労する見込みがなくなった場合、あるいは受給資格を満たすということが非常に困難になった場合、その他日雇い労働者として引き続いてその保険に加入するということが適当でないという事情が発生いたします場合には、日雇労働者健康保険の資格喪失の手続をとりまして、国民健康保険に加入するということが認められておるわけでございます。したがいまして、そういった方が国民健康保険の方に移行いたしまして、そこに給付の受給のそごがないようにするということは、これは当然のことでございますので、私ども行政担当者の側からいたしましても、そういった制度の趣旨について十分な御説明その他、徹底を図るべく今後適切に対処してまいりたいと考えております。
  37. 池端清一

    池端委員 この日雇健保に対する国庫負担の問題でございますが、従来三五%でございましたね。今度は政管並みというか政管と同じの法律上は一六・四%、この一六・四%にした理由を実は承りたいと思うのです。再三申し上げておりますように、日雇い労働者は財政的な負担能力が小さい。また、高齢化しているということから、保険給付費は相対的に多くなります。したがって、高率の国庫負担が当然要請をされるということで、従来も三五%の国庫負担であったわけであります。ところが、今度こういう健保体系に取り入れられたといっても、この構造的な要因というのは変わらないと私は思うのです。したがって、今後とも従来どおりの三五%、さらにはそれ以上の高率負担措置すべきではないか、こう思うのでありますが、これについてはいかがでしょうか。
  38. 坂本龍彦

    坂本政府委員 日雇労働者健康保険国庫負担は、三五%という他の制度と比較してもかなり高い率の国庫補助が行われておりますが、これは日雇労働者健康保険という独立の制度運営というものを前提にして、その財政力を勘案してこれだけの国庫補助を行ってきたわけでございます。  今回の制度改革におきましては、日雇労働者健康保険という独立の制度は廃止されるわけでございまして、健康保険体系の中に吸収されるわけでございます。この国庫負担につきましても、一般の被保険者国庫負担と実質的な均衡を図るという考え方をとって、この補助率は、政管健保事業所に勤める方の健康保険の一六・四%の国庫補助を行うことにしたわけでございます。  しかしながら、政管健保における国庫補助率一六・四%と全く同率の国庫補助のみでは、吸収されたとはいえ、日雇い労働者の方に関連する収支を計算してみますと、まだまだ支出が収入を超過しておる。実質的には赤字を抱え込んだ状態になるということでございますので、さらにこの一六・四%の国庫補助のほかに定額の国庫補助を行うことにいたしまして、一六・四%の国庫補助と合わせて、結果的に現行水準と同様の国庫補助となるようにいたしたものでございます。したがいまして、形式は多少従来と異なっておりますが、実質的にはこれまでの国庫補助と同様の水準を確保したと考えておるところでございます。
  39. 池端清一

    池端委員 実質的には従来の水準を維持した、こういうことでございます。政管並みの一六・四%の国庫負担に加えて定額の補助ということで、三五%相当のものを補助するということでございますね。これは今後ともこの状況を維持していくお考えなのか、五十九年度限りの措置であるのか、今後の方針について承りたいと思います。
  40. 坂本龍彦

    坂本政府委員 この一六・四%の国庫補助のほかの定額の国庫補助予算措置ということになっておりますので、六十年度以降についてここで決定的なことは申し上げられる状況にはございませんけれども、私ども考え方としては、五十九年度限りの措置というものではないという考え方で、この国庫補助についてもできるだけ確保していく所存でございます。
  41. 池端清一

    池端委員 それでは次に、五人未満事業所等の健康保険への適用の拡大の問題でございます。  これはもうかねてから懸案の事項でございまして、我々もこれまでの委員会でも再三にわたってこの問題について政府の方針をただしてきたところでございます。二月に出されました社会保険審議会の答申あるいは社会保障制度審議会の答申におきましてもこの問題が触れられておりまして、健康保険への適用の拡大を図るべきだ、あるいは強制加入を急ぐべきである、こういうような答申がなされているわけであります。ところが、今度の政正案のどこを見ましてもその問題は出ておらぬ。法案にも出ておらぬし、提案理由の説明にも何にもない。これは一体どういうことなんですか。
  42. 坂本龍彦

    坂本政府委員 これは一つは立法形式の問題でございますけれども、結論を申し上げますと、別途御提案申し上げております国民年金法等の一部を改正する法律案改正条文が入っておるものでございます。なぜそのような改正の形をとったのかという問題でございますが、五人未満事業所は、健康保険の問題でもあると同時に厚生年金保険の問題でもあるわけでございまして、これは健康保険、厚生年金保険、両者一体のものとして取り扱うことが適当と考えられておるわけでございます。したがいまして、今回健康保険改正、さらに厚生年金改正、どちらも国会に法案を提出しておりますので、どちらでやるといたしましても法律上の改正効果は同じでございますが、特に今回五人未満の適用ということに踏み切った背景には、年金制度の大改正において基礎年金導入ということがございまして、これとの関連において、どうしても五人未満の事業所に対する社会保険制度適用推進が必要になってまいりましたので、そういう点から年金制度の大改正と時期を合わせて六十一年四月から実施することといたしておるわけでございます。こういったような考え方から国民年金法等の一部改正法に盛り込みまして、法律的には健康保険法も厚生年金保険法も一体として改正をするという形にしたものでございます。
  43. 池端清一

    池端委員 立法技術の問題と言いますけれども、私はまことに不親切なやり方ではないかと思うのです。これは国民に対して「知らしむべからず、よらしむべし」というような思想があるんじゃないかというような気もする。今度の改正案、どこを見てもありませんね。一言半句触れられておらない。その点おかしいなと思って、きょうは私も持ってきました。今部長が言われました「国民年金法等の一部を改正する法律案参考資料」、この分厚いやつですよ。これを私は全部読みました。そうしたら、確かに部長の言われるとおりあったのです。しかも健康保険法の一部改正というふうに出ているのですよ。年金法の改正になし、健康保険法の一部改正第百十三条、それは年金とも連動しますよ。大きな問題だし、年金の問題が先行しておったという経過もわかりますよ。しかし、この問題は国民年金法等で入っているからいいんだというのは、非常に関心の深い問題だけに国民に親切なやり方ではないんじゃないか。立法技術の問題だと言われればそれで終わりですよ。終わりですけれども、どうも適切な措置ではないのではないかと思うのですが、どうですか。
  44. 坂本龍彦

    坂本政府委員 わかりやすくするという点においては、健康保険法改正に盛り込むことは確かに一つの方法であろうかと存じます。しかし、繰り返しになりますけれども、法律改正の効果といたしましては全く変わるものでございませんし、今回特に先ほど申し上げましたような事情があったことによりまして、私どもとしても種々検討はいたしましたけれども、その結果、改正法案の形としては年金の方に盛り込むという結論を出してこのような形にいたしたということでございますので、御了解をいただきたいと存じます。
  45. 池端清一

    池端委員 法律効果は同じでありますから、あえてこの問題もさらに深追いすることはやめますけれども、しかし問題は、これは法人に限定されているわけですね。そこにやっぱり大きな問題点もあると私は思う。そこで、具体的にはどのような方法でこの政管健保に今後移管していくのか、具体的なプログラムをひとつ御明示いただきたいと思う。
  46. 坂本龍彦

    坂本政府委員 五人未満事業所適用拡大のための改正法の施行は、昭和六十一年四月一日からを予定しておるわけでございます。この日以降、五人未満事業所について段階的に適用を拡大していくということになっておるわけでございますが、まず最初に、現在、健康保険法あるいは厚生年金保険法が適用されていない事業所のうちで一定の業種に属する事業所がございます。例えば飲食業でございますとかサービス業といったような業種の場合には、従業員の数にかかわらず適用が強制適用になっておりません。まずこういったいわゆる非適用業種につきまして、その中でも常時五人以上の従業員を使用する、しかも法人によって設立されている事業所というものをまず最初に取り上げる予定でございます。  これは一応適用業種にはなっておりませんけれども、従業員が五人以上ということで未適用事業所の中では比較的大きな部類に属するということ、それから事業所が法人によって運営されているということで、やはり事務的にもかなり処理能力があるであろうということから、まずこの事業所についての適用を始めてまいる考え方でございます。  その次に、昭和六十四年三月三十一日までの間、改正法の施行日から三年間でございますけれども、その間に、政令で定めるところによりまして、先ほど申し上げました事業所以外の常時五人未満の従業員を使用する法人の事業所、これを適用していく考え方でございますが、この常時五人未満の従業員を使用する法人の事業所につきましても、一挙にということはなかなか実際上困難でございますので、段階的に適用していきたいと考えております。  その考え方といたしましては、これを例えば従業員の数を五人、四人、三人という数に応じて区分をしていくか、あるいはその中でも業種によって区分をしていくか、いろいろ考え方があろうかと思います。この点につきましては、そういった実態を考え、できるだけ年次的に、適用人員なども余り偏りがないように、こういったことも考慮し、あわせて実際上の事務処理体制についても十分な体制を整えながらやっていきたいと考えておるわけでございまして、そういった方法につきましては、今後検討の上、政令で定めることにいたしております。
  47. 池端清一

    池端委員 日雇健保に関連して、最後に一つだけお尋ねをいたします。  現行日雇労働者健康保険法の被保険者は、すべて改正案で言うところの日雇特例被保険者適用を引き続き受けるものであるというふうに理解してよろしいかどうか、お答えをいただきたい。
  48. 坂本龍彦

    坂本政府委員 そのとおりでございます。
  49. 池端清一

    池端委員 きょうは、吉村局長には質問する時間がございませんでした。あなたも手持ちぶさただったと思うのであります。まあ、私はあなたとも大分論戦を交わしたい、こういうふうに思っておりましたが、時間の関係できょうはできませんので、また別の機会にさせていただきます。  ただ、あなたはかつてある雑誌に、日本の公共的医療経済というものを守っていくためには鬼になろうと思っている、こういうふうに言われましたね。(「蛇になろうというのも入っておる」と呼ぶ者あり)蛇になろうとも言われました。私は、たまには鬼にもなってもらいたい、いつも仏ばかりではだめですね。鬼になるときはどういうときか。それは先ほど来から言われているように、社会保障費にメスを入れよう、福祉年金医療を切り捨てよう、こういう理不尽な攻撃に対しては、あなたは敢然と鬼になり蛇になって、立ちはだかって頑張ってもらう、私はそういう意味ではあなたに鬼になってもらいたい。強く強くこれは要望しておきます。質問ができなかったので、そのことだけ要望しておきます。  それで大臣、最後に、中央公論の七月号に「二十一世紀をめざして健保法改正案は今国会で必ず成立させる」、こういう論稿を出されておりますね。最後にこういうふうに言われている。「ともかく、過去の経緯を振返ってみれば、死屍累々とでも形容したくなる健保法改正の道のりであるが、ようやく国民的コンセンサスを見出しつつある今日、自分がやらなければ誰がやるの意気込みと勇気をもって、新たな国民医療保険制度を実現させるべく、使命感に燃えている。」、まさに早稲田大学雄弁会をほうふつさせるようなこれは文章です。しかし、ここで間違いが何ぼかあると私は思うのです。「国民的コンセンサスを見出しつつある今日、」こう言われているのは、それは大臣の独断と偏見ではないか。実は私は、大臣に比べますと国会議員の経験はわずかでございます。あなたの半分にも満たない。しかし国民のこの問題に対する期待というか関心というのは非常に高まっている。もう皆さん方の部屋もそうでしょうけれども、議員宿舎といわず、議員会館といわず、私の地元の自宅といわず、連日のように電報、そしてはがき、封書あるいは電話まで来ている。ひとつ何とかして頑張ってくれ、国民の暮らし、福祉、健康を守るためには何としてでも阻止してほしい、そういう要請の言葉というものが相次いでいるのであります。決して国民的コンセンサスを得ている問題ではない。これは大臣の独断と偏見である。  しかも、私はきょう一通のはがきを持ってまいりました。福島県いわき市の御婦人の方です。いわき市ですから大臣の選挙区ではないかもしれないけれども、福島県ですね。ここでこう書いてあるのですね。  「渡部厚生大臣の地元である福島県でも全自治体の八割にあたる七二市町村が「改悪反対」の意見書を採択しています。」(「印刷だ」と呼ぶ者あり)確かにこれは印刷ですよ。「貴職のお力でなにとぞこの改悪阻止のため御奮闘いただくよう、よろしくお願いいたします。」大臣の地元でも、この時点で全自治体の八割に当たる七十二市町村が意見書を採択している。そして、私にくれた陳情のはがきの最後に、「全国民渡部厚生大臣期待しております。健康保険法改正にぜひ反対をお願い致します。」こう書いてある。やはり郷土が生んだおらが大臣、この実力派渡部恒三厚生大臣期待するもの大変だ、それが県民のこの気持ちになってあらわれている。  大臣、どうですか。この渡部恒三厚生大臣に寄せる県民の期待にこたえて、この際、勇気と決断をもってこの法案を撤回される、そういうことをひとつ要請をしたいと思いますが、どうでしょう。県民の声にこたえてください。
  50. 渡部恒三

    渡部国務大臣 今、先生からいろいろ御指摘をちょうだいしましたが、これは理由のいずれにしても、被用者保険本人皆さん方に一割の御負担を願うのでありますから、大変な法案であると思います。しかし、国民の多くの皆さん方が、もう高度成長の時代のように、足りない金は国民の税金からじゃぶじゃぶ出せるような時代ではなくなったということを御理解いただきまして、私どもが今回出しました改革案、これも二十一世紀の将来にわたってこの医療保険制度というものを揺るぎないものにするためにはやむを得ぬものであるということの大方の御理解をいただいておる、いただきつつある、こういう審議を通じても、私は今身にひしひしと感じております。先生は私の大先輩でございますから、先生のお言葉に逆らうのは大変恐縮なのでございますけれども、私に対する国民皆さん期待がもしありとせば、それは厳しいこの状態の中で、何とか健康保険法改正案を今国会で成立させていただくように頑張れという期待であろうと私は今思っております。  私の早稲田大学の「都の西北」の精神は、池端先生と全く同じでございますので、ひとつ二十一世紀の社会保障制度を揺るぎなきものにするために、先生の御支援をちょうだいしたいと思います。  ありがとうございます。
  51. 池端清一

    池端委員 不肖の先輩ではありますけれども、この際大臣に一言御助言を申し上げておきたい。  ここであなたが勇気を持ってこの法案を撤回されることは、ますます渡部恒三の声価を天下に響かせることになるわけです。したがって、本当に不肖の先輩ではありますけれども、そのことを強く申し上げて、改めて法案の撤回を要求しておきます。  以上です。(拍手)
  52. 有馬元治

    有馬委員長 関連質疑の申し出がありますので、これを許します。上西和郎君。
  53. 上西和郎

    上西委員 私は、まず質問の冒頭に、渡部大臣以下厚生省皆さん方が、大変な熱意と決意を持って、今次国会に健保法改定を含む数々の重要法案をお出しになっている、その発想と基本的な考え方に対しては我々意見がありますが、少なくともあなた方の精神の底辺には、日本国のために、国民のためにという揺るぎないものがあっての御提案、こういうふうに思いますが、私は野にあって長い間いろいろやってきました間に気づきました健康保険法案をめぐる幾つかの問題点、矛盾点が故意か偶然か積み残しをされ、放置をされている、このことを是正、改善なくして何で健康保険法の改定か、私はこういう観点から、幾つか順次質問したいのであります。  まず大臣、あなたは所信表明演説の中でこうおっしゃっている。「第二に、障害者、寝たきり老人など恵まれない立場にある人々に対しては、温かい配慮を忘れてはなりません。」この言葉にうそ偽りがないか、改めて大臣の見解をお聞きしたいと思います。
  54. 渡部恒三

    渡部国務大臣 うそ偽りがあるかないかは、その人間の態度で示すしかありませんが、私はこういう考えのもとに、今回の五十九年度予算編成に当たりましても、最後の大臣折衝項目は、その大部分が身体障害者の問題でございましたが、大変厳しい財政の中では、精いっぱい身体障害者皆さん方のための予算確保に努め、それは今回の五十九年度予算の中の数字にもあらわれております。  また、身体障害者皆さん方の「完全参加と平等」というものを求めて、今国会に法案の提出をいたしておりますが、これからも、先生から、おまえのこの社会労働委員会で申した所信表明は全くうそ偽りがなかったと言って、褒めていただけるような政策を実行するために努力してまいりたいと思います。
  55. 上西和郎

    上西委員 ただいまの大臣のお答えを私は額面どおり受け取り、高く評価をしたいと思うのでありますが、その舌の根も乾かないところで、次のようなことが現実に行われていることについて、その見解をそれぞれ問いただしたいと思うのであります。  その一つは、傷病手当金と厚生年金保険の障害年金の併給の問題であります。  傷病手当金は健保法の第四十五条に定めてあります。この傷病手当金は、同一の傷病に関して一年六カ月間の給付が認められています。ただし、その給付期間中に厚生年金保険の障害年金もしくは障害手当金が支給されるときは支給を中止する、こうなっているのであります。このことを運用上改善される意思ありや否や、まずそれからお尋ねしたいと思います。
  56. 吉村仁

    ○吉村政府委員 傷病手当金と障害年金とはそれぞれ性格の異なるものでございます。これは先生御承知のとおりでございまして、その調整を図っておるわけでございます。その障害年金が支給されることになれば傷病手当金を打ち切るという現行制度につきましては、変更するというのには非常に消極的な気持ちでおります。
  57. 上西和郎

    上西委員 では、大臣以下に具体的事実を挙げてさらに重ねての見解を求めたいと思うのであります。  具体的に申し上げましょう。人工透析を受ける患者になった方は身体障害者等級基準で一級になります。当然厚生年金にしろ国民年金にしろ障害年金受給対象になります。ある中小企業で働いていた方が腎不全からとうとう人工透析になった。中小企業ですから、やむを得ぬ、退職をして、一年六カ月の傷病手当金を受給中に、大体切れかかるというので障害年金の請求もした。そうしたら社会保険庁から、あなたは障害年金適用である、しかし人工透析は施療後三カ月で障害年金であるから、あなたが既に受給している傷病手当金のうち六十四万円は戻入、これが現に私の選挙区で起きた冷酷非情な現実であります。こういうことを放置して、大臣が幾ら障害者の皆さん方に温かい配慮をと言っても、それは私は信用できないから、この事実を挙げて、せめて局長、あなたが、法は改正できない、しかしながら傷病手当金と障害年金の両方をもらえる方には高い方で調整をする、差額は併給する、そういったことがない限り、健康保険法の改定などには断じて同意できないのであります。このことについて重ねて御見解をいただきたいと思います。
  58. 吉村仁

    ○吉村政府委員 確かに御指摘のように、人工透析のような場合にはまず傷病手当金が出されまして、あと障害年金の支給というのは、三カ月後に障害年金が支給をされることになる、そういうことで両者の調整上種々の問題が起こる、これは御指摘のとおりでございます。  いろいろな事務上の問題もあるのでございますが、私どもひとつそこのところは前向きに検討してみたいと思います。
  59. 上西和郎

    上西委員 前向きに検討とおっしゃるが、では大臣、ずばり、予算の分科会でも、私が人工肛門一つやったらツルの一声であなたはお決めいただいたでしょう、その決断がなければ福祉は進まない、私はあえてこう申し上げたいのであります。一級の重度障害者になっている方から、なぜあなたの厚生省が出した傷病手当金を六十四万円も戻入を命ずるのですか。労働不能で退職をしている。年金は通院すると三級ですよ。三級というのは月額わずか最低保障四万六千九百円なんだ。この年金をやるから、もらっている傷病手当金六十四万円を返せ。これがあなたの所管している社会保険庁長官名で現に行われている。こうした事実を、やはり若さを誇るあなたが、これだけのことを所信表明でおっしゃっているのなら、ここでずばり、よろしい、わかった、おれの所管事項であるから、高い方の傷病手当金の年金との差額はこれからその期間中は併給する、そのことぐらいなぜできないのですか。  これは私が既に二月、三月にかけて、厚生省や社会保険庁と何回もやった結果返ってきた言葉は、大変お気の毒な現実であります、しかし現行法の運用上いかんともしがたい、まことにお気の毒ですという回答が全部返ってきている。当然省内や庁内で御検討があったことと思いますので大臣、あなた即答してくださいよ。その一つが解決できずして、なぜ健康保険法の改定が進みますか。
  60. 渡部恒三

    渡部国務大臣 先生の御指摘、大変大事な問題でありまして、確かに私どもは法のもとに行政をやっておりますから、やはり法を無視したり一つの規則を無視したりできないために、今のような矛盾した問題が起こってしまって、御心配をちょうだいいたしております。  しかし、やはり法律を動かすのもつくるのも政治なのでありますから、今のような御心配、これは大変大事な問題だと思いますので、私どもの枠の中でどこまで先生の御期待にこたえられるか、これからできるだけ勉強して、御期待にこたえる方向でこれから役所の政府委員の者を督励してまいりたいと思います。
  61. 上西和郎

    上西委員 大臣は、先ほどの答弁の声音からすると、何かこういうことになりますと心なしか声が小さくなるようなので、やはり男、渡部恒三ここにありで、明確に自信を持っておっしゃっていただきたいのです。(発言する者あり)だから、私は申し上げたいのです。今の傷病手当金はほかの省から出るのじゃないのですよ。厚生省の社会保険庁から出るのでしょう。障害年金もそうでしょう。あなたの足元から出ているのですよ。そうして、何度も念を押すようでありますが、人工透析という重度障害一級の方が生活に苦しんでいるときに、「ああ、ありがたかった、傷病手当金、これだけもらえて助かった、ああ、今度は年金に切りかわるか」と思っていたら、見るも無残にある日、日本国政府から六十四万戻入ときたら、一体どうなるのです。まさに自殺をしなさいと言わんばかりの冷酷非情な仕打ちをあなたが現にやっているのですよ。それがあなたの所管なんだから、ここで、わかった、そういう矛盾は解消します、そこに明確にお答えがあったときに、あなたは後世の竹帛に名を残す名大臣となるのではないでしょうか。私はそのことを重ねて尋ね、明確なお答えをいただきたいと思います。
  62. 渡部恒三

    渡部国務大臣 先生から激励を賜りましたが、先生の御心配は、私も今までこの国会でいろいろ健保法審議の中でも申し上げておりますけれども、ああいう重度の障害者、あるいは難病、やはり重い医療費のかかる方、そういう方に対するできる限りの配慮を我々はしなければならない。ゆえにこそ、今回の健保法を通していただかなければならないのでありますから、先生の今御指摘の問題、大臣、よくやったと褒めていただけるように、これから前進するように努力してまいりたいと思います。
  63. 上西和郎

    上西委員 では、大臣の今の大変誠意のこもったお答えをかたく信じまして、一日も早く実現されることを強くお願いをし、次の問題について質問させていただきたいと思います。  大臣の三月二十九日の委員会の答弁の中でこういう表現があるので、これをちょっと念を押しておきたいのですが、「低所得者のための公務扶助料であるとか、」という表現があるのでございますが、低所得者のための公務扶助料というものがどういうものなのか。ひょっとしたら軍人恩給制度の戦死者、戦傷病者の公務扶助料のことではないかと思うのでありますが、ちょっと念のため、議事録に載っておりましたので、お尋ねをした上で質問したいと思います。
  64. 渡部恒三

    渡部国務大臣 それはたしか私、その前後をよく見せていただきませんと……(発言する者あり)この委員会で答弁したとするならば、私は、医療費に関する問題で、低所得者の皆さん方が今回の健保法改正等でお困りになることのないように、低所得者の皆さん方に対する心遣い、そういうものをしなければならないし、またこれは医療費の公費負担という意味で私は申し上げたものと思いますので、さっきもやじがありましたが、私の発音が明確でないために速記で誤解を受けたとしたらば、そういうふうにお考えいただきたいと思います。
  65. 上西和郎

    上西委員 やはり大臣社会保障福祉とかこういう問題は、発音ではなく心でございますから、私、渡部大臣の優しい心を信じて、質問を続行させていただきたいと思います。  公務扶助料、これは戦死者、戦傷病者に出される軍人恩給制度の公務扶助料であると思うのでありますが、私よく思うのです。ずばりお聞きします。公務扶助料受給者は、政管健保組合管掌健保、共済組合の被扶養者には入れないでしょう。
  66. 吉村仁

    ○吉村政府委員 現在、私ども、被扶養者認定は、その被保険者の収入によりまして生計を維持している者を被扶養者と認定をしておりまして、一般には九十万円未満の収入の方、それから老齢者等につきましては百四十万円未満の人を被扶養者として認定をしております。したがって、公務扶助料をもらっておられるからといって、その金額によって被扶養者になったりならなかったりすることがあると思います。
  67. 上西和郎

    上西委員 そこが問題なんです。あなた、前々任者かどうかわかりませんが、これは局長通達ですよ。被扶養者の認定基準に関する五十二年四月に出されたこの悪名高き保険局長通達によって、全国津々浦々で幾十幾百万人が国保に追い出されたのです、この当時になぜか。この通達の中は、現ナマで入るものは全部収入と認定する、ずばり、こうなっているのです。だから遺族年金であろうと障害年金であろうと、とうとい命を日本国のために、国民のために捧げた公務扶助料受給者であっても、全部おっぽり出されたんです。この通達、消えてませんね。生きているでしょう、被扶養者認定基準は。そんなことをやっているんだ、現に厚生省は。そんなばかなことないでしょう。日本で最強と言われる大蔵省は非所得、非課税扱いでこれは無収入にしている、障害年金、遺族年金、公務扶助料を。にもかかわらず、厚生省が、口に福祉を唱えながら、被扶養者認定基準で最もか弱い方々を被扶養者から外し、国民健康保険加入の道を選ばざるを得なくしている。  私は、中曽根総理が靖国神社にしきりとお参りに行き、なし崩しに公式参拝を実現しよう、その気持ちはわからぬでもないんです、あの方はあの方であるんだから。しかしながら、それで英霊の方々は喜ぶのでしょうか。中曽根さん、ここにお参りに来てポケットマネーで金を出されても、総理大臣と記帳されても、そんなことはうれしくも何ともない。それよりも、おれの母ちゃん、なぜ被扶養者に入れてくれないんだ。僕は靖国神社の裏に住んでいるから時々その声が聞こえてくるのであります。皆さん、私のうちは二人戦死している。家内の兄も戦死している。ところが、その遺族は扶助料をもらっている限り絶対に入れない。そうした認定基準をなぜ改定をしないんですか。こんなものを放置したままで、健康保険法の改定なんか言語道断だ、私はこう断ぜざるを得ないのです。  委員長、あなたも戦時中は海軍軍人として、身をそれこそ鴻毛の軽きに置いてあなたは戦った。部下や仲間が随分戦死しているはずです。その方々の遺族を本当に思うならば、まずこの通達を撤廃するか大きく改善するか、そのことについての見解を承りたい。
  68. 吉村仁

    ○吉村政府委員 生計維持関係というのは、収入があって、その収入をとらえまして、本当に被保険者がその収入でもって被扶養者の生計を維持しているという、その事実を私どもは重視しておるわけでありまして、その被扶養者の方にどういう収入があるか、この収入の基準でもって生計維持関係を判定するのが正しいのだろうと思うのです。その収入が非課税所得であるか課税所得であるか、これは私どもは、収入という観点からするならば、あるいは生計維持関係というものに着目するならばそれは関係のないことではないか。生計維持という観点から考えますと、私は、収入というものを基準にして被扶養者の認定をするのが正しいのだろうというように思います。税金は税金の見地から、課税をするかしないかということを決めるのはそれは税金の立場で考えるべきことではないか、こういうように考えております。
  69. 上西和郎

    上西委員 そうした法的な、技術的なことを私はお尋ねしているのじゃないのです。国家のために、国民のために一命をささげた方の遺族の方が、公務扶助料は今度また上がりまして百四十万近くになりますけれども先ほどおっしゃったように、年齢によって九十万以上といったらだめなんでしょう。そういうことが現にまかり通っているが、それを改善されるお考えはないのですか。  何も私は戦死者だけとは言いません。一人息子を、あるいは一家の大黒柱を失って遺族年金で辛うじて食べている方々が、九十万以上あったら直ちに国民健康保険に加入しなければ、長男が死んだ、次男に面倒を見てもらおうと思ったら、九十万以上あったら被扶養者に入っていけないでしょう。そんなことが現にあるのです。大臣、あなたも非常に熱心にこの問題にお取り組みだから、そのくらいのことは百も承知と思う。あなたのやさしい心根で、被扶養者の認定基準は、大蔵省が非課税所得と扱っているものは一切収入に認定しない、そうして被扶養者認定基準の枠を広げて救済していこう、そうした障害年金や遺族年金で辛うじて生活をしている方々を被扶養者でどんどん認めていこう、こういうことがなぜできないのですか。大臣、そのことについてずばりお答えをいただきたいと思います。
  70. 吉村仁

    ○吉村政府委員 確かに先生のおっしゃるようなお気持ちは十分わかるわけでありますが、私どもは、生計維持をするという観点から申しますならば、やはり収入に固執をせざるを得ない、こういうことでございます。確かに、公務扶助料をもらっておられて被扶養者にならないから本人になっちゃう、そしてそのために国民健康保険に入る、こういうことになる場合もあると思いますが、私ども国民健康保険に入ることと被扶養者になることと、それほど変わりがあるわけではないというように思います。収入の観点を変えて、非課税所得を基準にしまして被扶養者認定をするという考えは、どうしても、そういうように考える方向には消極的に考えざるを得ないことを御了承賜りたいと思います。
  71. 上西和郎

    上西委員 だから、そこがおかしいんですよね。今の局長の答弁なんというのは、僕に言わせるとナンセンスですよ。国保に追いやられたら三割自己負担でしょう。国民健康保険税は上がる一方でしょう。ことしは国保税は最高三十五万でしょう。ぐんぐん上がっていますよ。物価スライドだのというそんな率じゃない。べらぼうに上がっている。去年は最高は二十六万だった。国保税の高さに泣いているのが庶民大衆ですよ。そうして給付の問題を考えてください。組合管掌健保あるいは共済組合の附加給付があるところの子供たちの被扶養者に入ったら、極端に言うと、保険税は一円も払わずに、そして附加給付を含めたら大変な恩典に浴するわけです。にもかかわらず、しゃにむにこれは収入だ、収入だと認定して追いやっているのは厚生省、これじゃ鬼と言われたって返す言葉がないです。先ほど池端委員は立ち向かう鬼と言ったが、私はむしり取る鬼としか言いようがない。そういったことで、今少なくとも局長は、それこそ二階から目薬を落とすみたいに、まるで関係ないんだ、ほとんど支障がないというお答え、その感覚だったら健康保険はよくならぬです。少なくとも福祉を口にする厚生省の幹部の御発言と受けとめがたいものがあります。大臣、明確にお答えください。
  72. 渡部恒三

    渡部国務大臣 戦争で肉親を失って公務扶助料でお暮らしになっておる遺族の皆さん方に対する上西先生のお気持ちは、大変とうといものだと思います。今私に即答しろと言われましても、残念ながら、これは心情的には上西先生のお気持ちに共鳴をするのでありますけれども、行政というのは、これはいかに大臣といえどもその枠を超えてやるわけにはいかない、日本は法治国家でございますので。その実態をよく調査して、そして勉強さしていただきたいと思います。
  73. 上西和郎

    上西委員 重ねて申し上げておきますが、この保険局長通達を出したのは五十二年四月、あなたの前任者なんですよ。厚生省が出したのです。それまでは認めていたんですよ。それをしゃにむに被扶養者から追い出して国保に追いやったのは、時の厚生大臣であり、保険局長だ。それを放置したままで、その上健康保険の改悪、屋上屋を重ねるやり方をやるから、まずせめて罪滅ぼしに、この通達の撤廃くらいは大臣、あなたでできることなんだ。私は何も無理言っているんじゃないですよ。大蔵省が非課税扱いしているものは厚生省だって同じ扱いをしていいじゃないか。なぜそれを収入に認定をするのか。私は極めて素朴な疑問を提起をし、すぐあなたの一存で、決意でできることを言っているんですから、先ほどの問題と同じように、この問題についても、さすがはそれこそ活力ある渡部恒三大臣であったと言われるような処理を、迅速果敢にしていただくことを重ねてお願いを申し上げておきたいと思います。  三番目の質問に移ります。  局長が、これは四月十二日の社労でこうおっしゃっていますね。「私どもとしては、任意継続被保険者制度というのがございまして、二年間はこれでつなげる、現役時代と同じような給付を受けられる、こういう制度があるわけでございます」からと、そして「任意継続被保険者制度というものを活用すればそのつなぎができるんではないか」「つなぎの助けにはなる」、このような御答弁をなさっていますよ。  それで私は素朴にお尋ねしたいのですが、そういうことを理解をし、そういう考え方で任意継続加入を認められている。では、なぜ保険料の払い込みを毎月ぎちっとされているのですか。月払いだ、毎月十日まで。一日おくれたら即資格喪失でしょう。同じ厚生省がおやりになっている厚生年金の継続加入制度は、残期間の一括納入だって年払いだって、みんな認めているじゃありませんか。大臣、あなたの所轄ですよ、これは全部。あなたの名のもとで運用されている。その中で、同じ任意継続の加入制度が、片一方は前納を認め、片一方は絶対に毎月払いだ、こういうことやって、そうして片一方、答弁では、いい制度ですからこれで助かっております、こう言われちゃ、二枚舌ではないのですかとこう言いたくなるのです。これを改善されるお気持ちありや否や、見解を問いたいと思います。
  74. 吉村仁

    ○吉村政府委員 私ども、任意継続被保険者が二年という期間を設けておるわけでありますが、これは一応、被保険者資格を失いましてその後また新しい被保険者資格を獲得する場合に、再就職をして新しく被保険者になるというような場合もございますし、また被扶養者になるというような場合もございますし、また途中から国保にかわる、こういうようないろいろな形態があるというように承知しております。したがって、前納制そのものを否定するつもりはございません。ございませんが、そういういろいろな形態に即して、保険料の前納を認めて一応前納していただいた保険料を後で返す、途中でそういう事態が起こりました場合には返さなければならぬ、そういうような事務的な観点から、毎月徴収をする、こういう制度の建前をとっておるわけでございます。  しかし、先生御指摘のように、任意継続被保険者の中にもいろいろなものがあると思います。前納を認めても余り支障がないというような方々もあるのではないかというように思います。そういうものに前納制を認めるということについては、私ども今後よく検討をして実現できるような形で物事を考えていきたい、こう思います。
  75. 上西和郎

    上西委員 やや前向きのお答えですが、念を押しておきます。今の局長のお答えでいきますと、じゃ厚生年金の被保険者は、前納している期間中に再就職し改めて被保険者になることは絶対にないのですか。そういう保険料の精算ということは絶対に起こり得ないのか。現に社会保険庁の中では精算業務が行われていると思うのですが、その辺はどうなんですか。
  76. 朝本信明

    ○朝本政府委員 厚生年金保険につきましては長期の保険である、それから今しばらくで受給資格期間を満たし得る方について、これを退職なさったからということで被保険者資格を失わせるということが妥当であろうかということから任継制度を設けている、それで保険料についても前納を認めている、この辺は先生よく御承知のとおりでございます。  それで、実際に再就職というようなことが起きて調整をするかどうかというお尋ねでございますが、これは当然させていただいておるというわけでございます。
  77. 上西和郎

    上西委員 今お答えがありましたように大臣、厚生年金の任意継続加入者、任意継続の被保険者も同じようなんです。片一方は前納を認めている。  私、具体例を挙げましょう。私がお世話をした方、定年退職されるから二年間は任継がいいよと言ってやった。そうしたら、大阪に嫁いでいる娘さんが産後の肥立ちが悪くて非常にぐあいが悪い。夫婦であわてて見舞い看病がてら行って、帰ってきたら一週間くらい日にちがずれておった。社会保険事務所に持っていったら、今の法上はやむを得ぬでしょう、わずか六カ月足らずでばっさり切られて夫婦で泣いた。そういうことが現に起きている。だから、厚生年金の方でできて政管健保でできない、こんなばかなことはないでしょう。  私は、日本のお役人という方々は極めて優秀な頭脳と熱心な執務態度、ひたすら国民を愛しているということについてはつゆいささかも疑っておりません。したがいまして、厚生年金でできていることが政管健保でできる、これは簡単でしょう。それくらい大臣、びしっと答えていただけませんか、やろうと。
  78. 渡部恒三

    渡部国務大臣 上西先生、大変詳細な点、御心配をいただいて、私どもに御指摘をいただいて、いやこれは本当にありがたいことだと思います。私ども先に気がついてやらなければならないようなことを、先生方から御指摘をちょうだいし、そしてそれが正しいものであれば私どもこれをできるだけ誠実に実現するように努力していく、これが議会民主政治だと思いますので、先生のただいま御指摘の問題、実現する方向で努力してまいりたいと思います。
  79. 上西和郎

    上西委員 本当に大臣の真情こもったお答えで、私は国民のために詳細な心配、具体的な心配をしておりますので、やはりそれを省を挙げてお受けとめいただきたいと思うのです。  次の質問は、レセプトの発行基準についてちょっとお尋ねしておきたいのです。  今の高額療養費を含め診療費請求明細、レセプトはすべて月初めの初日から末日で切りますね。私も田舎におりまして、長く住んでおりますから、いろいろと相談があります。おやじがこういう病気になった、おふくろがこういう病気だ、どのお医者さんがいいか。医学博士は共通でもやはり得手、不得手があります。盲腸ならどのお医者とかありますので、私も時々お勧めする。そうすると、退院後何カ月かたってから、とってもいいお医者さんだった、親切だった、看護婦さんも優しかった、おかげで早く治りました。ただし、あんなけちな病院だとは知らなかった。よく聞いてみたら、実二カ月間入院しておって、今のお金で言うと十万二千円取られると思っていたら、十五万三千円になるのですね。二十五日に入って丸々二カ月入ってやると、レセプトが三枚になっちゃうでしょう。だからその患者の方本人は、レセプトの発行の仕組みがわからぬから、二カ月だから高額療養費二カ月だと頭の中で思っていたら、違うので、これで随分と困っているのです。国保本人家族の方が予定が狂うわけです。一回に五万という金は、やはり今の世の中では大きいです。だから、これだけコンピューターその他が発達をしている時期に、せめてレセプトの発行を実日数でいけないのか、高額療養の積算の基礎を実日数でやれないのか。このことは技術的に絶対不可能なのか。これはやれば大変な福音なんです。ぜひこれを実現していただきたいという願望を込めて、御見解を承りたいと思います。
  80. 吉村仁

    ○吉村政府委員 確かに、レセプトの処理を暦月でやるか実日数でやるかというのは昔からある問題でございます。ただ、私ども、現在年間八億四千万程度のレセプトを処理しておるわけでございますが、やはり実日数ということを仮に採用するとすれば、非常に厳密に言いますと毎日毎日医療費を計算をしていかなければならぬ、こういうことになるはずでございます。今は暦月単位ですから、月初めに前月分を全部処理する、こういうことでやれるわけでありますし、また、そういうシステムを通じて支払基金の事務もいろいろ一括処理ができるようなシステムになっておることは御承知のとおりだと思うのです。  そこで、今大英断をもって実日数にするか、こういうことでありますが、やはり私は、現在まだコンピューターそのものがそれほど発達して導入されておるわけでもございません時期ですから、まだ時期尚早ではないかというような感じがいたします。  そして、先生御指摘の高額療養費の問題、これはいろいろな御指摘もございますので、これはその高額療養費の問題として私どもは別途検討をしたい、こういうように考えております。
  81. 上西和郎

    上西委員 この問題については既にほかの委員の方々からも相当出ておりますから、そういったことを総体的に包含されて、少なくとも高額療養費のために著しい家計への圧迫がないよう、高額療養費を出すということは大変な病気にかかっているということでございますから、目に見えない出費がある。逆に収入がうんと減っている、こうなることは火を見るより明らかでございますから、総体的な判断で事実上、実質的に高額療養費負担が軽減される、こういう方向に前向きにお取り組みくださることをお願いをし、次の質問に移りたいと思います。  日雇健康保険であります。先ほど我が党の池端委員から相当詳細な質問がありましたが、私も一つだけお尋ねしたいのです。  組合管掌健保政管健保からだけ徴収というふうになっておりますが、日雇健康保険の方々には現に労働省所管の失業対策事業の方々も相当入っておるのじゃないですか。そうしますと、私の郷里鹿児島県あたりでは県、市町村での雇用が圧倒的なんですね、日雇健保の加入者の方々は。この方々の負担組合管掌健保政府管掌健保だけに限定をし、なぜ共済組合が入ってこないのか。極めて素朴な疑問でありますので、この点についてお答えいただきたいと思います。
  82. 坂本龍彦

    坂本政府委員 今回の日雇健保改革基本的な考え方は、単独の制度を廃止して健康保険体系に取り入れるということは御存じのとおりでございますが、その際に、健康保険と申しますとこれは民間の被用者の方を対象にした事業でございまして、公務員等の共済組合は別になるわけでございます。  そこで、健康保険組合の場合を考えてみますと、これは基本的には、健康保険組合の被保険者に一日だけでもなったものとみなして健康保険適用する、こういう形にしておりまして、適用の技術上、給付なり保険料徴収政管で一括してやりますけれども考え方健康保険組合の被保険者にその就労日はなる、こういうことでございます。そういたしますと、今度は共済組合にそういう場合をあてはめてみますと、そもそも日雇い労働者の場合は共済組合には加入できないという建前になっておりまして、今御指摘がありましたような市町村で働いたということになりますと、市町村が政府管掌健康保険適用事業所、こういう立場になることはございますけれども日雇い労働者に関して共済組合という保険者の構成要素とはなり得ない、こういうことになっておる。したがって共済組合から直接拠出金というものは取れませんが、その市町村が政管健保適用事業所として保険料事業主負担分を払うという仕組みにはなっておりますので、そういう意味で特に問題はないという考え方でございます。
  83. 上西和郎

    上西委員 委員長の出身地も失業対策事業がありまして、しかもあなたは、労働事務次官という官僚として最高峰をきわめた方ですから十分御承知と思うのですが、私の居住している鹿屋市なんかも何百名ですよ、失業対策事業就労者は。それも全部学校の屋内清掃だ、体育館の清掃だ、あるいは墓地、公園などの清掃だということで、それこそ一年じゅう自治体が雇用しているわけです。ですから、今のお答えのように政管健保云々となっても、受ける感じが違うのですよ。よく官民格差という言葉を大変お好きな方が与党の中にもおられるようでありますが、私は不公平とか矛盾とかという表現で通しているのですが、そうしたときに市役所に働いている、町役場が使っている人も、何か政管健保だ、民間いじめだという、とかく行政改革というようなことが大好きな方がいましていろいろやってきますので、そうした声が不必要に起きてこないように、自治体は自治体でやるならば共済組合の方の拠出金で片づける、こういったことはできないのか。しかも厚生省は、基礎年金導入に当たって、共済組合からも加入をさせて基礎年金部分は納入させようという姿勢を持っていらっしゃるのでしょう、同じ厚生省の中で。日雇健保だけどうしてこうされるのか、もう少し得心のいくお答えをいただきたいと思います。
  84. 坂本龍彦

    坂本政府委員 共済組合の問題は直接私どもがお答えするのもいかがかと存じますが、ここで御質問でございますので、基本だけ私の理解で申し上げますと、共済組合の場合には、例えば地方公務員共済組合を例にとりますと、地方公共団体の職員をもって組織する、こうなっております。この職員が常時勤務を要する公務員という一定の身分関係と申しますか、そういう関係にある人だけを構成員として共済組合を構成する、こういう共済組合法上の基本要件になっておりますので、したがって法律上、日雇い労働者の方はどうしても共済組合組合員にはなり得ない、ここに実は問題があるわけでございます。  そういった意味におきまして、この問題は、実は直接共済組合あり方と申しますか構成員をどうするかという問題にかかわっておりますので、日雇労働者健康保険改正の問題としては、直接にこちらから処理するのはなかなか難しいという状況がございます。
  85. 上西和郎

    上西委員 そういったお答えできょうは一応質問をとどめておきますけれども、やはりそこまでいけば、じゃ組合管掌健保はいいのかと、本当を言って僕はそう言いたくなるのです。補助金の額は言いませんけれども、あなた方は大変たくさんの助成金を組合管掌健保に出している。大変な額ですよ。あえて皮肉を言っているわけですが、それでいて、あなた方は議事録の果てまで介入してくる。各都道府県庁の保険課の検査というものは大変厳しいものがありますよ、組合管掌健保に対する。内政干渉に近いやり方でやっている。その組合管掌健保に対しては日雇い労働者の加入を認めるようなことをさせている。そして共済組合、あれはあずかり知りませんからという形では、片一方で、渡部大臣が先頭に立って年金統合法に関しては共済からも拠出金を取りますよ、こうやっていることとは何か一致しないものですから、僕は素朴な疑問を提起しているわけで、この辺についてはもうちょっと将来でも御検討いただきたい、こういうふうにお願いしたいのです。すべては厚生大臣の所管下にある仕事だ、このことを大臣に強く申し上げておきたいと思います。  最後に私は、僻地の医療の問題について大臣以下に少しく見解を承りたいと思っております。  例えば、厚生省の職員の方の卑近な例を出しましょう。鹿児島県の奄美大島にハンセン氏病の療養所がございます、和光園。ここに御勤務の方もおたくの職員の方だ。そうしますと、賃金、給与に違いがなければ、本省にお勤めであろうとはるか南海の地、奄美大島にお勤めであろうと、共済組合保険料は変わりませんね。ということは、いわゆる健康保険に関しては極めて平等なんです。日本の社会にはこれくらい平等はないと言っていいでしょう、保険料徴収に関しては。ところが、何かあった、病気をした、けがをしたときに医療の恩恵を受ける機会というのは、これほどアンバランスなものはない。  例えば私の選挙区であります鹿児島県第三区に、種子島、屋久島という島があります。種子島では複雑骨折したらすぐ飛行機なんです。鹿児島空港に救急車が待っているわけです。複雑骨折すら島内では処理し得ないというのが現状です。それだけではないのです。大隅半島に眼科のお医者さんが何軒あるか御存じですか。小学生や中学生は、中学校区に歯医者のいない校区が結構あるのですよ。眼科に至っては、幾つか複数の市町村を合わせても一人もいないという地域が結構あるんです。委員長、あなたのところだってそう大差ないと思いますよ。まさに医療ほど不公平なものはないと言っていいでしょう。このことに関して何かA、B、C、Dの四ブロックがあるとかなんとかということはしばしばお聞きしておりますけれども厚生省として勇断を持って、すべて一億一千万国民医療の平等な恩恵を与える、こうしたことについて遺憾ながら、今次健康保険法の改定にあたって具体的なことが出ていないようなので、ここでこの際、大臣からまず基本的な見解を承りたい、こう思うのであります。
  86. 渡部恒三

    渡部国務大臣 これは上西先生の御見解と私、全く同感でございます。  医療費等勉強してみましたら、地域によって非常に違います。例えば大阪は高いとかあるいは沖縄が非常に低いとか、先生御指摘のとおり制度は全く平等なのでありますから、にもかかわらず大変違うというのは、まさにこういう保険制度があっても立派な医療を受けられない地域があるということであります。これはやはり、国民の健康を守らなければならない厚生省が大きな関心を持って取り上げなければならない問題だと思います。  先生は九州鹿児島でございますが、私も雪の深い東北のやはり僻地の多いところでございます。私は、そういうことから、今度のこの社労の委員会皆さん方の御要望でつくらせていただいた二十一世紀の私ども医療ビジョン、これにも僻地医療対策、これを大きく取り上げなければならないという考えを持ったわけでありますが、幸いなことに今医師の養成がどんどん進んでおりますから、ある地域においてはこれは医師が過剰でないかと言われるようなところが出てきましたので、これから地域計画を立てさせるとか、まさに今先生のお求めのようなあるいは離島あるいは豪雪僻地、こういうところの医療を充実させる、そういうことができるような条件に今なりつつあると思いますので、この問題は厚生省全力を尽くして、御期待にこたえるように頑張ってまいりたいと思います。
  87. 上西和郎

    上西委員 言葉じりをとらえるようで大変恐縮でありますが、なりつつあるということじゃいけないと私は思うのです。厚生省がそうさせます、そうやりますと言ってほしいのです。  具体的な例を挙げますと、私の先輩が、これは種子島出身の方でした。鹿屋市で産婦人科を開業されていた。お兄さんもお医者さんだった。種子島の西之表市で開業されておった。そのお兄さんが急死なさって、やむを得ぬ、御両親が、帰ってきて種子島の病院をやってくれということで帰っていった。私、種子島に行ったときに、先輩ですから一晩飲んだ。先生どうですか。いやいや君、鹿屋にいるときは産科、婦人科、せいぜい内科をちょっと見ればよくて、割にゆっくりしていた。こちらに帰ってきたら、もう産科、婦人科、内科どころではない。耳が痛いと言って来る、マムシにかまれたと言っては来る。患者を放っておけない、医者の義務だ。おれは一生懸命やる。しかし、こういう状況が続けば、今は息子さんは医大に行っていらっしゃるのだが、息子をここで跡を継がせるという気には到底なれない。なぜか。学会に行く暇が出てこぬ、そうして勉強しようと思うゆとりがない。しかも地域の方々だから夜の夜中でもたたき起こされたら診に行く、これが言うならば医者の義務だ。こういうことで大変な御苦労を離島、僻地ではなさっている。そうした方々の言うならば善意と好意に甘えて放置していて、片方では、六十有余年も続いてきた日本の社会保障制度の根幹を揺すぶることについては大英断をされているから、僕は非常に不信を覚えるのであります。  大臣先ほど池端委員が大英断をもって健保法を撤回せよと迫った。私も同じであります。健保法の改定をしゃにむに実現されようとするならば、まだ半年そこそこの新人でございますけれども、私が取り上げただけでも幾つかの矛盾点が出てくる。現実に医療保険制度の問題点が歴然と浮かび上がってくる。これらのことを解消するために、私は、大臣以下厚生省皆さん方が全知全能を傾けていただきたい。そのことが成って初めて、健康保険制度の改定なり統合なりということが政治的日程に上がってきてもいいのではないか。与党の方々、いろいろ御意見があるようでありますが、一億一千万すべての国民の健康を考え、二十一世紀に向けての社会保障を唱えるならば、私がささやかに取り上げた問題点の幾つかを善処をし、解決をされることが当面の急務ではないか。このことを重ねて私、強くお願いを申し上げ、いろいろと申し上げましたが、質問を終わらしていただきたいと思います。  大変ありがとうございました。
  88. 有馬元治

    有馬委員長 午後一時から再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後零時五分休憩      ————◇—————     午後三時十四分開議
  89. 有馬元治

    有馬委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。多賀谷眞稔君。(拍手)
  90. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 患者もまた医者も疑義を持っておる点について、質問いたしたいと思います。  この診療支払基金から審査会を経て減点をされた金額ですけれども……(私語する者あり)
  91. 有馬元治

    有馬委員長 御静粛にお願いします。
  92. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 ……何年度でもいいですけれども、ひとつ数字をお示し願いたい。
  93. 吉村仁

    ○吉村政府委員 ちょっと聞こえにくかったのでありますが、今の御質問は、あれなんでしょうか、支払基金で減点をされた金額は幾らか、こういうことでございましょうか。——実は私ども、五十七年度の資料で計算をいたしますと、国保と支払基金とを加えまして、査定額は千三百九十三億円でございまして、そのうち一部負担に相当する額が五十七億、こういうように計算をしております。
  94. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 これは不正請求あるいはまた過剰診療ともいいますか、これを含めての数字ですか。
  95. 吉村仁

    ○吉村政府委員 そのとおりでございます。
  96. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そのうち、いわば虚偽の請求あるいはいわゆる診療をしていないのに水増しをした請求、不正診療を除いた分は幾らですか。
  97. 吉村仁

    ○吉村政府委員 不正診療は支払基金の段階ではわからないわけでございまして、今申し上げました数字は過剰診療に属するものの数字でございます。
  98. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 過剰診療のうち、被保険者に返還された金額は幾らですか。
  99. 吉村仁

    ○吉村政府委員 一部負担金の額を患者が医療機関に払うわけでございますが、その払う関係は医療機関と患者との関係でございます。また、その一部負担を返還するのも患者と医療機関との関係でございまして、私どもは、医療機関が実際に患者にどれだけのものを返還したかは把握しておりません。
  100. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 医療機関は患者にその減額の額を通知しましたか。
  101. 吉村仁

    ○吉村政府委員 通知をしていないと思います。
  102. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 では、患者は知らないわけですから、請求のしようがないでしょう。なぜそういう状態になっておるのですか。
  103. 吉村仁

    ○吉村政府委員 医療機関が支払基金に請求をして、支払基金でレセプトを審査いたしまして、その段階で査定をするわけであります。そして、その査定された金額を支払基金は医療機関に払うと同時に、また保険者の方に通知をするわけでございますが、その間三カ月ぐらいの時間がかかるわけであります。そして、その減額された金額というのは、医療機関と保険者は知っておりますが、患者にいずれからも通知をしていないがために患者はわからない、こういうことになると思います。
  104. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 なぜしないのですか。どういう行政指導をしているのですか。
  105. 吉村仁

    ○吉村政府委員 私ども保険者から患者に通知をするように行政指導はいたしておりますが、なかなか事務的に煩雑、また細かい金額のものも数多くございますので、コストもかかるというようなことで、保険者から患者へ通知することを怠っておる、こういうことであろうかと思います。
  106. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 単に怠っているだけでなくて、医療機関は本来、注射も打ち投薬もしたわけですから払う必要はないのだ、これは自分が判断をして医療行為を行ったのですから払う必要がないと、こう思っているのじゃないですか。
  107. 吉村仁

    ○吉村政府委員 医療機関はそう思っておるかもしれませんが、その部分は不当利得になるということで法制局の見解が示されておるところでございます。
  108. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 しかし、患者はどこからか通知を受けなければこれはわかりません。それを放置しておったというところに問題があるし、また医療機関自身は大部分、いや払う必要はないのだ、こういう認識を持っておるのですね。これは一体どこから来ておるのでしょうかね。
  109. 吉村仁

    ○吉村政府委員 私ども、一部負担の授受につきましては医療機関と患者との相対の関係だと、これは法律上も明らかにそうなっておるわけでございます。そして、査定が行われるというのも法律上の規定に基づいて支払基金でもって査定をする、そして、査定をされた場合には一部負担の額に差が生ずる、こういうことになるわけでございまして、保険者として患者に通知をするか医療機関が患者に対して通知をするか、そうしない限りその査定額というのはわからないわけでございます。そこで私どもは、少なくともかなりの金額になるものにつきましては、保険者から患者に通知をすることによってその間の調整を図りたいと思っておるところでございます。
  110. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 医者の大部分は、三十二年の健康保険法改正によって従来とは変わったんだ、こういうように判断をしておるのじゃないか。すなわち従来は、これは当初健康保険法が実施されたときは、要するに保険医の団体といわば保険者との間における契約だというようなことから出発をしたわけですけれども、戦後になっても、請求すべき費用の額、これは「厚生大臣ノ定ムル所ニ依リ保険者之ヲ算定ス」とある。ですから三十二年までは保険者が算定をした。こういうことをいわば一貫してとってきたわけです。ところが三十二年になりまして、その「保険者之ヲ算定ス」という条文がなくなったばかりでなくて、これは日本医師会の雑誌ですが、このときに、三十二年改正に際して説明会があった。これに出席したのは当時の厚生省保険局健康保険課長小沢辰男、彼がこの説明をして、司会者は武見太郎。その中で、一般のこれは代議員というのですかお医者さんの方から、「今回ははっきり主治医が注射によらなければ治療の効果を期待することが困難であるということになり、完全に医師の主体性が確立された。」と、これは日本医師会の雑誌に書いてある、こういうように言っているのです。今までとは違うんだ、三十二年からは医者の治療における主体性が完全に確立されたんだ、医師会もそういう説明をしているのです。そのときにおったのは小沢さんですよ。そういう状態の中で、私は、今日、医者としては投薬もしたのだ、ですから過剰診療と言われても自分は施術しておるんだということで、やはりこれは返す必要がないと考えておる医者がかなりおるのではないか、こう思うのですが、どうですか。
  111. 吉村仁

    ○吉村政府委員 私も、当時、小沢健保課長のもとでその改正に携わった者の一人でございます。その点は、従来保険医ということで診療もやり請求もやっておった主体を、保険医療機関と保険医に分けたわけでございまして、保険医は診療に専念をする、保険医療機関は請求の主体になる、こういうようなことで、保険医療機関と保険医を明確に分けたわけでございます。そして保険医については、保険医が守るべき療養担当規則というものをつくり、また保険医療機関として守るべき療養担当規則というものを別につくる、こういうようなことで両者の調整を図ったわけでありまして、何も三十二年の改正から、保険医は診療だけをすればよろしいので、それが仮に保険診療の準則に外れておってもそれは差し支えないんだ、こういうことにはならないわけであります。  そのときの改正でありますが、保険者療養担当規則の定め、それから診療報酬点数表の「定ニ照シ之ヲ審査シタル上支払フモノトス」と、こういう改正をして、この規定は自後変更することなしに今日に至っておるわけでありまして、やはり保険医療機関が一部負担において過誤が起こるならば、それはやはり医療機関が返還をする義務を負うことは、法制局の見解のとおりであろうと思っております。
  112. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 ここに丸茂さん、この方は当時理事でしょう。その丸茂さんのそれに対する答弁は、「診療の効果を期待するのは、どういう関係者が何人集って参りましょうとも、主治医以外に絶対にない」、この表現はあなたの言うのとちょっと違います。治療については主治医が絶対権限を持っておるんだ、ですから自分が判断をして治療行為を行ったのをとやかく言う必要はないじゃないか、こういう物の考え方をしておるのです。それが今回の改正で変わったんだとこう書いてある。あなたのは、機関と担当医と区別したという。それは、あの三十二年のときは区別したのですけれども、そのことを聞いているんじゃないのです。私は、そういう観念がやはりあるのじゃないかと聞いている。  第一、現場も知らぬ者、本人も診ない者がなぜそうとやかく言うか、おれは正しいのだ、こういう観念があるんじゃないですか。そしてその前は、御存じのように戦前からいわゆる制限診療であったわけです。規格診療であったわけです。それがその後そうでなくなった。そういう変化の中に、医者の方としては依然として、自分で判断をすべきだ、それに何を文句を言うか。要するに医療行為の内容にタッチするものではないか、こういう考え方があるのではないでしょうか。
  113. 吉村仁

    ○吉村政府委員 現在のお医者さんにそういうような感覚をお持ちのお医者さんが多いことも事実でございますし、また、診療の中身は医師の自由裁量であることも間違いございません。ただ、保険医である以上は療養担当規則の診療準則に従って診療すべきである、これは健康保険法にも書いてございますし、また、それに逸脱するような行為をした事件で裁判になったものもございますが、裁判の見解も、やはり保険診療というのは全くの自由裁量で、医師がやったものは全部保険で払わなければならぬものだ、こういうような判断は下しておらないわけでございます。やはり療養担当規則、そういう診療の準則に従って行われた診療だけが支払いの対象になる、これは判例でも明らかなところでございます。
  114. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 それは保険の財政上から来たものですか、それとも医学上の判断から来たものですか、何を基準にして判断をするのですか、審査会は。
  115. 吉村仁

    ○吉村政府委員 支払基金の審査会は、療養担当規則並びに診療報酬点数表の規定に基づいて審査をするわけでありますが、療養担当規則の中身に入ってみますと、現在の医学常識の水準と相手の個々の患者の病状に従って最も適切な方法で行われた治療、こういうものについて支払いをする、こういうことになっております。
  116. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 なっておりますという、そのそういうようにしたというのは、やはり保険財政から来るものですか、医学の常識から来るものですか、そういう基準をつくったということは。それは戦前はまさに保険財政ですよ、ですから規格診療、制限診療ですよ。しかし戦後、殊に三十二年から後は、これは医者の自由裁量であると高らかに言った以上は、その点はどういうような関係になるのですか。
  117. 吉村仁

    ○吉村政府委員 一応、保険というのは、あれをやってはいかぬ、これをやってはいかぬというような制限診療ということを脱却して、医師の良心に基づいて、またその医学常識に基づいて診療をすべきである、これは三十二年からそうなったわけであります。ただ、それでは医師の自由裁量権で行った医療が全部保険の対象になるかというと、やはりそうではございませんで、判例等にもございますように、国民拠出した貴重な財源によって行われている以上、やはり療養担当規則に定める診療あるいは点数表というようなものによって制約が加えられた診療である、これは明らかでございますが、その制約の度合いというのがかなり緩くなっておることは事実だと思います。昔のように非常に窮屈だった制約が、自由診療に近いような形でだんだん緩和された、それが三十二年を契機にしてそうなってきておるのであるというように私どもは思っております。
  118. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 なるほど裁判もあります。最高裁の判決もございます。しかし、最高裁も実は窓口でけったのですね。すなわち、これは行政処分であると言って、支払基金を被上告人として訴える、ところが、いや、これは行政処分ではないのだ、要するに社会保険診療報酬支払基金というものは、単に公法上の契約ではあるけれども債務確定なんです、請求権はひとつあなたが民事で訴えればいいじゃないですかと、これは言うならば窓口でけったのです。最高裁判決があるのは、窓口でけった。ですから、これは行政処分ではないのです、こういうことを言っておるのですけれども厚生省は、この審査委員会の決定、すなわちそれは支払基金が審査の結果決定して保険者に渡すのですけれども、支払基金の性格というものは一体何であるのか、それから請求権に対して最終的な裁定を下すのは保険者であるのかだれであるのか、これをお聞かせ願いたい。
  119. 吉村仁

    ○吉村政府委員 支払基金は、保険者診療報酬の支払いをするために、みんなから委託を受けてその事務に当たる一つの法人でございます。  それから、保険者が支払うのは審査をした上で支払う、こういうことでございます。したがって、保険者審査をしてその上でさらにまた何か査定をするとか、そういうようなことではございませんで、支払基金に審査と支払いを委託しております関係上、支払基金が審査をしたものについては保険者はその額を医療機関に対して支払う、こういうことになるわけでございます。
  120. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そうしますと、医療機関の方はだれを相手にこの訴えをするのですか。
  121. 吉村仁

    ○吉村政府委員 支払基金を相手にして訴訟を起こしている場合が多いわけでございまして、一応保険者としてはその審査の権限を支払基金に委任をしておるわけでございますので、支払基金を相手取って訴訟が起こっております。ただ、支払基金を相手にしなければならないかどうか、保険者を直接に相手にしてはいけないかどうかということになると、保険者を相手にしてもいいのではないかと私は思います。ただ、事実問題として、支払基金に委託をしておりますので、支払基金がその相手方になるのが通例であるというように解釈をしております。
  122. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 この支払基金というのはどういう性格のものですか。支払基金というのは審査内容について言うことはできるであろうけれども、当事者は保険者で、やはりその保険者の代行をやっているんじゃないですか。そうすると、この不当だというのは、内容のことは別として一応保険者ではないのですか。保険者が相手方になるのじゃないですか。
  123. 吉村仁

    ○吉村政府委員 確かに今先生がおっしゃいましたように、審査と支払いを委託して保険者にかわって代行をする機関であることは間違いございません。したがって、支払基金を代行者として訴えることもできるでしょうし、その委託をした保険者についても訴えることはできる。その保険者が支払基金へ委託するかどうかというのは、保険者の自由でございます。現在の法制の建前では委託するかどうかは自由になっておりますので、もし委託しない保険者が、現実にはいないのですが、理論的に委託しないと保険者が直接に審査、支払いをする、こういうことになるわけでございます。
  124. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 今お話しがありましたように、多くの医者は、自分の裁量権であるから金を返さぬでもいいと思っておるのも事実である、こうおっしゃる。これが非常に問題である。法制局は不当利得である、こう言っておるわけですね。それから、支払基金を相手取って行政訴訟したら、裁判所の方は、窓口が違いますよ、これは行政処分ではありませんよ、こういうことになったら、結局司法に訴える以外にないでしょう。司法というか訴訟ですよ。そうすると、この行政機関内部で起こった問題がなぜ行政救済の道がないのか、これは非常に片手落ちの話です。これだけ大問題になっておるのに行政救済の道がない。これはどういうことですか。
  125. 吉村仁

    ○吉村政府委員 保険者にはいろいろございまして、健保組合等もたくさんあるわけであります。したがって、健保組合保険者として支払いをした以上は、健保組合というのはいかなる意味におきましても行政機関にはなり得ないわけでありますから、行政訴訟ということは健保組合の関係の医療費に関する限りはあり得ないと思います。  それから、政府管掌健康保険ももちろん支払基金に委託しておるわけでありますが、健保組合や共済組合政府管掌健康保険の委託であるいは代行機関としてつくられた支払基金ですから、やはりこれは行政機関ではない。  したがって、支払基金が行った査定についてそれを行政処分ということで訴えたならば、恐らく裁判所は、それは行政処分ではないんだからということで却下をするはずだと私は思います。
  126. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私はそれはわかっているのです。最高裁が行政処分でないと言ったというのですから。ところが救済の方法がないでしょう。あなたの方は法律四十三条の九の四項で「審査シタル上支払フモノトス」、それはすなわち社会保険診療報酬支払基金に委託をする、こうう書いておるわけです。ところが、委託をして審査された、そして審査委員会審査されたものに対して、この異議申請ができないのですよ。再審の方法がないでしょう。法律でそこまで書くなら、再審の方法を書いてやるべきです。どうですか。
  127. 吉村仁

    ○吉村政府委員 支払基金の内部に審査委員会というのがございまして、そこで審査をしておるわけでありますが、その審査に不服があった場合には再審の道は開かれております。
  128. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 再審の道というけれども、普通の例えば労働委員会のように、地方労働委員会に対して不服があれば中央労働委員会へさらに行くとか、あるいは行政処分による不服審査をやるのと全然違うのですよ。疑義解釈、どうもこれについて自分はおかしいから、苦情処理といいますか疑義解釈、この程度なんですよ。いわゆるそれの判定に対する正式な不服審査という形に出てないのです。行政機関ではないにしても、せっかく支払基金を置き、審査委員会を置いたというなら、その決定に対しては何らかの正式な再審査という制度確立すべきでしょう。そういうのは何もない。ただ、自分のところに再審査を言ってきたら、同じ審査委員会ですから、疑義解釈とか苦情処理について話をしましょうという程度ですね。それ以上はこれは何もそういう制度がないのですよ。
  129. 吉村仁

    ○吉村政府委員 確かに再審査といった場合に、処分庁といいますか処分をした者に対して再審査をする場合と、上級の機関に対して再審をする場合と二つございます。支払基金の場合には、その当初の審査について不満があった場合にはもう一度審査委員会で再審査をする道は開かれておるわけでありますが、その上ということになりますとこれは民事の裁判しかない、こういうことでございます。
  130. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 再審と言うけれども、社会保険診療報酬支払基金「20年の歩み」というのを出している。これは苦情処理、疑義解釈ですよ。それしか書いてないのです。こういう性格のものだと自分で書いておるのです。本来、再審というようなぴちっとした性格のものじゃないんです。どこがおかしいですかと言って問い合わせをしたり、疑義解釈を求めるようなものだ。これは将来大きな問題になるからあえてはっきりしていただきたい。ですから、患者の方からは必ず自己負担をした分について請求が起こるでしょう。そうすると、医療担当者の方はそれに防戦するでしょう。そういう場合に、一々裁判所に行かなければ決定ができない、こういうことでは解決しない。不当利得だ、こう法制局は言ったそうですが、お医者さんの方は不当利得だと思っていないのです。ですからこういう点ははっきりしておく必要がある、こういうように私は思うのですよ。
  131. 吉村仁

    ○吉村政府委員 確かに医療の中身に対する審査、こういうことになるわけですから、非常に専門的な見地からの検討が必要であるということは明らかなんでありまして、しかるがゆえに、支払基金法にもその業務として再審をすることを明記しておるわけでありまして、まずそこで片がつくものは片をつけてもらう、なおその上の不服がある場合についての法手続、あるいはそれを解決する組織というようなものについて検討を加えるべきではないか、こういう御意見につきましては私どもも検討をいたしたいと思います。
  132. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そうして、明確にそういう制度確立して、そうして患者の返還請求に対して応ずべき体制を整えるべきである、こういうように私は思うのですね。これは大体司法裁判所、すなわち民事訴訟に余り適合しないのですよ、極めて専門的ですから。普通の裁判官に任して鑑定を願うという性格のものでないのです。ですから、同じ機関で再審をやるのではなくて、別個の機関が再審を受けつけるという制度がやはり確立されるべきではないか。しかる上に立って、被保険者に対しては返還すべきものはちゃんと返還をする、このことが必要ではないか。  そこで第一に、この請求を行ってそれに対して、これは事実上は最初窓口で金を払うのですけれども、そしてそれが減点になったという場合、これは時効が何年だと思っているんですか。
  133. 吉村仁

    ○吉村政府委員 しばらく時間をかしていただきたいと思います。すぐ調べます。——三年でございます。時効は三年でございます。
  134. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 これはお医者さんが患者に対して請求するのが三年ですよ。ところが、患者の方がお医者さんに返してくれというのは、一般の消滅時効ですからこれは十年です。時効は十年ですよ。ですから、過去十年の人が殺到する可能性があるんですよ。
  135. 吉村仁

    ○吉村政府委員 確かに、患者さんが一部負担についてお医者さんに返還を請求をする権利の時効は十年でございます。したがって、もし十円、二十円の返還でも請求をするということになれば、それは殺到することは理論的にはあり得る、こう思います。
  136. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私は理論的な話をしておるんですけれども厚生省がこの問題について非常に軽視をしているからね、お医者さんは返還をしない人が多いなんて平気で言うから。ですから、権利関係というものははっきりしておかなければならぬ、厚生省はそれに対する苦情やその他がある場合にはそれに対応する処置が必要である、こういう意味で私はお尋ねをしたわけであります。でありますから、そういう処置をはっきりやはりとっていただきたい。大臣、どうですか。
  137. 渡部恒三

    渡部国務大臣 今、多賀谷先生から、患者の権利を守るという立場で大変大事な問題の御指摘をちょうだいいたしました。減点査定があった場合所要の額を患者に返還すべきであるということはこの委員会でもたびたび御指摘があり、法制局の見解等も出ておるところでございます。  ただ、今政府委員から御答弁申し上げましたように、現実的な問題になりますと、極めて少額な場合、十円とか二十円とかの場合、実際上はこれはそれを請求する手数とかいろいろなことを考えて、そこで、原則論から言えばこれは問題があったでしょうけれども、便宜的に放置されておった面、またこれは両者の利害の中で見逃されておった面、そういう点があると思いますが、査定額が非常に大きい場合は当然患者に所要額を返還することが適当でございますので、当面保険者から患者に通知させるように指導をしてまいりたいと思います。
  138. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 これに一枚高額療養費というのが入ってきますと、物がまた複雑になるのです。それは、ここにもう既にその問題については訴訟が提起されているのですが、御存じならここで発表してもらいたい。
  139. 吉村仁

    ○吉村政府委員 不敏にして承知しておりません。
  140. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 これは岐阜県の和田さんという人ですけれども、問題になりました十月分の医療費が、病院側は百八十万九千百九十円の算定をしました。そういたしましたところが、国民健康保険団体連合会の方はこれを百五十二万四千百九十円と査定をした。そこで本人は五十四万二千七百五十七円支払っておった。ところが返ってきた金は、三万九千円の高額療養費控除がありますから、四十五万七千二百五十七円のところから三万九千円の高額療養費を引いて、返ってきた金が四十一万八千二百五十七円、要するに本人は八万五千五百円損をした、こういう訴えです。これは御存じのように市町村を訴えた、保険者は市町村ですから。  そこで問題は、健康保険組合もそうですが、高額療養費負担というのが一つ入ってきますと、返し方が少ないのではないか、こういう問題になってきておるのです。これは行政処分になる可能性はあるのですよ、市町村を相手にやっておるんですから。
  141. 吉村仁

    ○吉村政府委員 今のケースで言いますと、当時は恐らく三万九千円が高額療養費の限度額だったわけでございましょう。したがって、三万九千円が自己負担の限度。したがって、百八十万円が百五十二万円に査定をされても、そのいずれの金額におきましてもその三割分が自己負担ということになり、その自己負担の最高限度というのは三万九千円ですから、いずれの場合も自己負担の最高限度というのは三万九千円であることは間違いないだろうと思います。ただ、百八十万円の場合に、一たん支払いました三割分の一部負担とそれから査定をされた後の百五十二万四千幾らというものの三割の額というものは違ってまいります。したがって、その点について、医療機関と患者との間にその八万幾らの差を返還するという問題は生じますが、高額療養費の支給に関しては、いずれにいたしましても三万九千円を切って払うということですから、その点は争いは生じないのではないか、こういうように思います。
  142. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私が聞いたのはそうではないのですよ。あなたのおっしゃるのもそのとおりですけれども、聞いたのは、要するに金の返り方が少ないではないかということで市長を相手に訴えている、こういうことを申し上げているわけです。時間がありませんからこれはこの程度にしておきますが、やはり一部負担をした場合必ず返すという体制が必要ではないか、こういうように思います。もちろん、支払基金の審査会の方で過剰診療だと言われたけれども本人が、いや、私はあの先生の投薬を余計受けたから直ったのだ、こう言えば本人は損失がないわけですから請求をしないでしょう。そういう場合にはしないでしょうけれども、請求する場合にはそういう体制が必要である、こういうように思うのです。  ですから、全部が不当利得になるのかどうかというのも、法制局おられますか、これは画一的に全部不当利得ですと言えるのかどうか、僕はこの点はいささか問題じゃないかと思うのですね。画一的に全部あれは不当利得ですと言えるのかどうか。
  143. 吉村仁

    ○吉村政府委員 法制局は参っておりませんが、私どもは法制局といろいろ検討をいたしました。  確かに私どもも、先生のおっしゃるように、本当に不当利得なのかという気持ちがしたものでありますから、法制局と検討をいたしましたところ、現在の健康保険法では現物給付ということになっておりますので、医療行為そのものを給付する、そしてその医療行為の値段は厚生大臣が定める、そして医療行為そのものを支払基金で審査して、その結果査定額が生ずる、こういうのが今の現物給付考え方でございます。したがって、一体である療養給付、その一部負担でございますので、療養給付のところを査定すれば当然一部負担のところも縮減をするというのが現在の法制の建前で、したがって、その査定された部分について支払った額は医療機関の不当利得になるというのが法制局の見解でございます。
  144. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そこで、後から富士見病院について我が党の竹村先生が質問をされますが、今までこれは医療行為の範疇に入るのだ、もちろん無資格者が診療しておったというのは別ですよ、水増しをしておったというのも別ですよ、それからうそを言ってこれは保険の該当ではありませんというのも別ですが、しかし、減点をすべき問題について、これは医療行為の範囲内です、自由裁量の範囲内ですという問題がまだ残っているのです。ですから、患者としてはこれは大変な問題ですね。その自由裁量と言っても限界があるのです、医学の常識の範囲内です、こうおっしゃるならば富士見病院という問題は今から質問の対象になる、あなたはそうおっしゃったのだから。これは後から竹村さんから質問を願いたい。現地に非常に詳しい方から質問を願いたい、こう思います。  そこで、いろいろ戦後の総決算と言われた中曽根総理のもとで、随分この国会だけでも、まさに我々から言うと大改悪が行われた。昭和二年以来六十年も続いた本人医療費が、全額十割現物給付であったのが今度は一割ないし二割削減される。それから雇用保険も、失業保険法ができた昭和二十二年からずっと続いた期末手当、ボーナスを含めるという問題について、今度ボーナスを含めないということになった。ですから、残念ながら失業保険は六〇%でなくて四五%になってしまった、こういう問題もこの国会で出ておる。それから、今から質疑がありますが、児童扶養手当もそうですね。これも未婚の女子は入れない。モラルの問題を法律の権利義務にしたというのは、あなた方は勇気があると思うのです。大変なことをやっておると思うのですよ、厚生省は。モラルとか道徳とかいう問題と法律の権利義務とを一緒にしてやったというのは、私は大変勇気があると思う。しかし、勇気があることはいいということではないのです。私はその点、最後に一問だけ質問しておきたいと思います。  これも勇気がある中の一つですけれども退職者の医療制度、これも私はなかなか勇断だと思うのです。従来私どもが、日本の医療保険は逆立ちしている、元気のいいとき、病気しないときは保険料を払う、病気しがちになると金を取られるような状態になる、こんなばかげたことはない、こういうことを言って、老人医療無料化ができた。そして今度は退職者医療制度ができるのですからいいんですが、一回切れている人、要するに現役と関係がなくなっている人に保険制度がつくれたというのは、私は大変勇気があると思う。しかも、現役の諸君が払う健康保険、共済、それから政府管掌を持ってきて財源に充てたというのは、勇断ですよ。勇断だけれども、それは公平負担の保険というものからはいささか飛躍しておる。税金ならいいんですよ。政府が一銭も出さないでやるというのは、まさに勇気とか勇断とか褒められないと私は思うのですね。これは政府がある程度調整金を出すべきですよ。そういう点が大変間違っておるんじゃないか。行き過ぎもいい、その勇気は私は褒めるのですよ。しかし、全然金を出さないでそれをやる。やると言うけれども、結局仕掛けは、国民健康保険が大変赤字が多くなって負担に耐えられない、それを解消するために、被用者健康保険のOBは被用者健康保険で持つべきだ、それでこれを除外する、そうしてつくる。それがただ赤字対策という発想から出たにしては残念だ。ですから、これはやはり調整金的なものを入れるべきですよ。今はつながりがなくなっているのですからね。ひとつ大臣から答弁を願いたい。
  145. 渡部恒三

    渡部国務大臣 退職者医療の創設について大先輩の多賀谷先生から何かおしかりを受けているような、また一部お褒めをちょうだいしておるようなあれですが、これは先生御指摘のように世代間の公平ということもございますし、また、社会保障本来の姿というものは、私はできるだけ多くの人たちが同じような条件給付を受けるべきだし、またそのためには、やはりお互いに強い人は弱い人を助ける、支える、後輩は先輩を支える、そういう連帯の精神がなければならないと思います。  今まで被用者保険の皆さん方は十割給付で元気で働いていただいて、それが会社や役所を退職されて、年齢的にもお疲れになって、病院に足しげく通わなければならないころ給付率が落ちるというのはどう考えても矛盾だということで、今度は退職者医療をつくって、お医者さんにかかりやすくなったOBの皆さん方給付条件をよくしたわけでございます。この点までは先生から私はお褒めをいただいたものと思いますが、なぜ国から金を入れないかということでございますが、これは今お話がありましたように、国のお金も国民の税金でございます。しかし、どうしても入れる必要のあるものには入れていかなければなりませんが、幸いに今、被用者保険の財政状態は国から財政負担をしなくても何とか皆さんにやっていただけるような状態でございます。言うまでもなく、退職者医療は、国保の窓口はお借りしますけれども、被用者保険の体系に入っておるものでありますから、今のところ国のお金を入れないで何とかやっていけるということで入れないわけで、やはり後輩の皆さん方はいずれは先輩になるのでありますから、後輩の皆さん方に先輩を支えてあげるという温かい気持ち、これがやはり社会保障の中になければならないと思いますので、先輩にも御了承を賜りたいと思います。
  146. 有馬元治

    有馬委員長 関連質疑を許します。竹村泰子君。
  147. 竹村泰子

    ○竹村委員 富士見産婦人科病院事件のことが出ましたので、短く関連質問をさせていただきます。  厚生省は、今回の健保法一部改正について医療費のむだを省くとしきりに強調していらっしゃいますけれども、全く患者の責任ではない医療費のむだを省くのに患者の負担増をもってするというのは、余りにも便宜主義であり、片手落ちではないでしょうか。長期ビジョン、二十一世紀の医療考えるという中でも、よい医療、安心して受けられる医療がこれまで以上に保障されて、初めて患者の負担増もやむを得ないかということになるのではないでしょうか。しかるに、医療被害の告発については、いつでも医師の裁量権を口実に突っ込んだ追及、監査をしていない。裁量権は治外法権ではないのです。いかがですか。  事件後の国会では、時の園田厚生大臣が再三再四指導監督上の責任を認め、遺憾の意をあらわし、この種事件の再発防止のための措置を実施すると約束しておられます。そして、そのための検討プロジェクトチームを部内に設置したりすることを明らかにしておられます。乱診乱療の極致とも言えるこの富士見病院プロジェクトチームは、四年間何をどう作業なさいましたか、お聞かせください。
  148. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 御指摘のございましたプロジェクトチームでございますけれども、五十五年の九月三十日に設置をいたしております。医療に関する国民の信頼を回復するための検討委員会、当時の医務局長委員長になりまして、次長が副委員長で、関係課長をもって組織をいたしております。  その検討の結果でございますけれども、端的にあらわれておりますのが今国会で御審議をお願いしております医療法の改正の必要性などについてでございまして、地域医療計画というものをきちんとつくっていくべきである、それからまた医療法人の適正なる指導監督を強化すべきである、この二本が柱になっておるところでございます。
  149. 竹村泰子

    ○竹村委員 プロジェクトチームは四年間作業をなさったわけですか。今のその二本の柱を出されたわけですか。
  150. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 五十五年の九月からでございますから、もう今は存在しておりませんけれども、検討をいたしまして、そうして医療法の改正の必要性などについて結論を得たところでございます。
  151. 竹村泰子

    ○竹村委員 結論を得られたわけですね。そして、プロジェクトチームはもう今は存在しないわけですね。そうすると、富士見病院事件については厚生省はもう終わったと思っておられるわけですか。
  152. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 富士見病院事件につきましては、医療法関係の処分は厳正に行ったと考えておりますが、なお国もまだ被告でございまして、終わったとは考えておりません。
  153. 竹村泰子

    ○竹村委員 終わらないのに、何の報告書も出されておらないのに、プロジェクトチームはもう解散されたわけですね。
  154. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 報告書は出しておりませんけれども、一定の結論を得まして、昭和二十三年以来の医療法の大幅なる改正の御審議をお願いする段取りになっておるわけでございます。そこで、そういう一応の結論を出しましたので、今は活躍をしておりません。
  155. 竹村泰子

    ○竹村委員 わかりました。  「現代」という雑誌があります。富士見病院の院長であった北野千賀子さんが、でっち上げ記事で富士見病院をつぶしたある新聞社を訴えるという手記を載せているのを御存じでしょうか。その中で北野さんは、厚生省の医務局指導助成課医療監視担当官の越智昌幸氏に同病院の再開について問い合わせたところ、越智さんは、「「あれだけ世間をさわがせたのだから」と答えた。」と書いております。そして北野さんは、世間を騒がせたとは何たることか、世間やマスコミが勝手に騒いだのではないかと言い、さらに、「乱診乱療どころか、誠心誠意、心をつくして、患者のために、臨床医として最善の努力を重ねてきた。」とまで言っております。これはつまり、厚生省の行政処分を真っ向から批判し、居直っているのではないでしょうか。これに対してどのように考えておられるのでしょうか。  これに関連してですが、事件の内容と経過、行政処分の理由などを明らかにした報告書を提出してくださるように私は再三再四求めました。が、持ってこられましたのは、今委員の皆様のお手元にお配りしました一片の、半ぺらの紙一枚でございます。これはどういう姿勢なんでしょうか。一方、最近要求しましたところの大阪中野診療所の監査結果については、このような資料が提出されております。もう一つの資料です。これだって決して立派な資料ではありませんし、十分とは言えませんけれども、一応概要と監査結果とをきちんと書かれております。どのように監査したか、レセプトあるいは監査結果の概要とかが出されております。なぜ富士見病院についてはこういうものが出されないのでしょうか。こんな紙切れ一枚、半ぺら一枚の、しかもこれは患者数、通院、入院の違い、疾病の種別、手術の有無、そういうことしか書かれておりません。この行政処分について、あれほど世間を騒がせて、かつまた病院側から反論されている行政処分について、もっと詳細な報告書を国会に提出すべきと考えますが、いかがでしょうか。
  156. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 行政処分の結果はもとより明らかでございまして、ちゃんと公表をいたしまして病院側も社会的な制裁を受けておると存じます。これは隠しておるとかそういうものではちっともございません。医業の停止、病院の停止その他、保険の停上等々厳正に対処しているところでございます。
  157. 竹村泰子

    ○竹村委員 きょうは時間が少ししかありませんので私は余り追及することができないのですけれども、資料を、総括した厚生省としての責任を、きちんとお出しくださいと再三再四請求しております。この前の社労委の中でも請求いたしましたけれども、資料はございませんというお返事をたびたび受けております。そして総括をしておられないのですねということについても、埼玉県衛生部では電話で聞き書きをしておりますけれども厚生省としてはそれ以上のことはしておりませんというお返事を受けております。  このような重大な乱診乱療のきちっとした行政側の総括もしないで、弱い立場の患者をさらにいじめるような負担増を一方的に要求するのはどう見ても片手落ち、行政の怠慢と考えますが、厚生省の責任はどうとられますか。
  158. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 本事件を大いなる参考といたしまして、先ほど申し上げましたようにプロジェクトチームを編成し、そうして医療法の大きな改正に着手したところでございます。  お話しのございました総括についてでございますが、医療関係法規に基づきますところの処分、これは厳正に行ったと考えております。なお、先ほども申し上げましたけれども、まだ幾つかの裁判が係争中でございまして、まだ総括できる段階ではないと考えておるのでございます。
  159. 村山富市

    ○村山(富)委員 関連して。今竹村委員から、富士見病院の事件に関連する経過並びに結果等に対するあなた方の把握している範囲のものを出しなさい、報告しなさい、こう言っておるわけでしょう。だからそれは報告ができるのかできないのか、報告書があるのかないのか、はっきりしなさい。
  160. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 報告書というようなものはございませんけれども、今お話しの点については報告できます。
  161. 村山富市

    ○村山(富)委員 それが、質問に対するものは、再三再四報告してください、こう言っておるのに、あなたの方は出さないし、(発言する者あり)いや、出しなさいと言ったら、これだけ出してきた。これはあなた、「富士見産婦人科病院受療者から所沢保健所への申し出状況」というだけの話じゃないですか。これが厚生省がタッチして国会に説明を求められて報告する資料ですか。これは不親切きわまりないですよ。きょうはもう時間がありませんからこれ以上申しません。ですから、この健保審議の終わるまでに報告書を出しなさい。報告書というか、あなた方が調査した限りにおいて報告できるものを出してください。いいですか。——いいですね。どっちだ。
  162. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 私どもがこれまで対応してまいりましたことにつきまして御報告いたします。
  163. 竹村泰子

    ○竹村委員 総括をしたものを、厚生省としてどうこの富士見病院事件をお考えになるか、きちんとした報告書をお願いいたします。  私の質問を終わります。(拍手)
  164. 有馬元治

    有馬委員長 沼川洋一君。
  165. 沼川洋一

    ○沼川委員 実は昨日、大阪と東京で公聴会が開かれたわけでございます。恐らく大臣、その御報告は聞かれていらっしゃると思いますけれども、その中で、これは公述人として出席されました明治大学の政治経済学部の教授吉田忠雄先生が指摘されておったことでございますが、今回の健康保険改正について、この先生の御意見ですと、一割負担は自分はあったっていいと冒頭におっしゃっておりました。ただし、今回の改正が、いろいろ内容を見ていくと、結論は反対だ、そういう御意見です。これは大臣もよく聞いていただきたい一つの御意見だと思いますが、その中にこういう言葉で表現されました。国民に祝福されるような健康保険改正であっていただきたい、要するにそうじゃないから私は反対だ、こういう一つの御意見でございました。  その中で特に指摘されておったのが、一つは明確な中長期ビジョン、これがどうしてもちょっと取ってつけたようなそういうものにしか感じられない、説得力がない、それが一つ。  それからもう一つは、大臣もこの委員会でいろいろな角度から御説明されましたけれども、やはりどんなに否定してもどうしても財政対策だ、国民医療というこの極めて重要な問題が、そういう角度からだけで改正されたんでは、後になってこれはまた改革をやらなければならぬというときに大変じゃないか、そういうようなことでおっしゃっておりました。  さらにもう一つは、やはり前提条件としてまだまだ今やらなければならぬ問題が当面の問題としてございます。もちろん今回の厚生省のいろんな予算の中にもいろいろとその対策については述べられておりますけれども、私も同感ですが、いま一歩国民の側から見ても何かすっきりしない。要するに医療費適正化対策です。そういった問題の前提条件がすっきりして、やはり国民のコンセンサスを得た上で医療改革というのはなさなければならぬ、そういう意味を「祝福される」という言葉でおっしゃったのだろうと思いますけれども大臣の率直な所感をお伺いしたいと思います。
  166. 渡部恒三

    渡部国務大臣 今回の改革案は、三千万人に近い被用者保険の本人皆さんが、長い間十割給付であったのを一割の御負担をお願いするということでありますから、その面だけを取り上げられますと、先生御指摘のようにこれは余り祝福されない改革案であろうと思います。この改革案のねらう全体を考えていただきますと、この改革案を実施することによって、被用者保険の皆さんが当分の間保険料率を上げないようにするというねらいを込めておるのであります。今、国保保険者皆さん方負担が多くなるということで大変いろいろの議論が出ておりますが、被用者保険加入の皆さん方でも、これは全く病院にもかからない、保険料だけ納めておるという方も随分と多いのでありますから、そうでなくてもいろいろ御負担を多く願わなければならない国民皆さんに、とにかく被用者保険の皆さんにはこれは当分この保険料率を上げないで済むということでは、非常に祝福していただける面もございます。  また、先生からいつも国保の問題を御配慮賜り私も同感なのでありますけれども、今回の場合は、社会保険の中で一番給付水準の高い方に御負担を願って、将来何とか給付水準の低い方を上げていきたいという願いも込めておるのでありますから、将来を展望していただきますとこれは祝福していただける面もございます。  また、この委員会でもたびたび指摘されておる乱診乱療とか医療費の節減、これ以上医療費がどんどんふえていったならば一体この国はどうなるんだというような御心配にこたえまして、医療費の節減という、国民の良識ある皆さんのほとんどの方が望んでおられる問題に対して政策的に対応するものでありますから、この面では評価される面もあろう。  しかし、私は、この法案の提案者として、長い間十割給付という中におられた被用者保険の皆さん方に一割の御負担をお願いするということは、これは大臣としても大変恐縮に思っておるものでありますけれども、残念ながら今日の日本の国の財政状態、国の経済状態というものは、この医療費に対しても、不足をしてきたならば不足分はどんどん国民皆さんの税金から出せるような状態にないということも、国民皆さん方には必ず理解していただけるものと私は考えておるのでございます。
  167. 沼川洋一

    ○沼川委員 大臣の御答弁は一貫して同じような基調でございます。  そこで、中長期ビジョンですけれども、この問題はいろいろな方々から指摘もございました。確かに全般的に、厚生省試案ということで大蔵の財政的な裏打ちがない、そういった面も指摘されましたけれども、全般にわたって今すぐ具体的な方途を出すという問題も難しいと思います。ただ一つだけ、今この健保論議の中でお出しになるのだったら、せめてこの辺だけは明確にしていただきたいと思ったところが一つだけあるわけですが、この点についてちょっとお尋ねしたいと思うのです。  結局、これを見ていきますとまず当面は一割負担でいく、そして六十一年からは二割負担、こちらの方は極めて明確に数字を挙げておっしゃっておるわけです。ところが片一方の、いわば一元化するという表現はありますけれども、この一元化をする方向については六十年代の後半、非常に不明確でございます。せめて、私がここで大臣にお願いしたいと思うのですけれども、なるほど一元化の方向に動いているのだという一つの具体的証拠として、例えば今国民健康保険本人家族も七割でございます、これをまず八割にする、この線がどうしても出てこないのが私に言わせればちょっと残念でございます。この面について、特に今回の削減の中の四千二百億の中の四千億近くが全部国民健康保険にしわ寄せがいっております。国保が財政的に一番切り込まれておるわけです。そしてまた、御存じのように国民健康保険の被保険者の方々というのは、農民の方あるいは中小零細事業の方あるいはまた特に御婦人が多いと聞いておりますけれども、人数にしても大体四千五百万人もいらっしゃる。ですから、一元化という方向は示しながら、片一方の方は実に明快です、一割を六十一年までいってそれからは二割。しかし、こちらの方には、確かに一元化していくのだという具体的なそういう線が出されてないのが一つは不満でございます。  それともう一つ、将来は八割に統一をする、この八割というのもちょっと早いのじゃないかと思うのです。きのうも参考人の陳述の中にその点の指摘がございました。こういった問題は、当面の動きをずっと見ながら、どうなっていくかわからぬ要素が多分にございますから、吉村保険局長もおっしゃるようにまた医療費がぐっと上がっていくのかもしれませんし、今度いろいろな対策をされたことによって案外伸びがとまってしまうかもしれません。これはこれから先の動向を見なければわからぬことであって、ところが一元化については頭から八割でございます、こういうふうにおっしゃっておるわけです。私に言わせれば、この流れの上から見ていきますともしかしたら九割五分で統一ができるかもしれませんし、もしかしたら九割の線で一元化ができるかもしれないのに、頭は八割で抑えて国保の方は上がるという具体的な数字が全然挙がっていない、どうもその辺が何かちょっと説得力に欠けているような気がいたしますけれども大臣、どうでしょうか。
  168. 渡部恒三

    渡部国務大臣 これは国保の七割を八割に引き上げる、そしてまた十割給付の被用者保険の皆さんに一割の御負担をいただく、そして将来給付条件国民すべからく一つになる方向に持っていきたいということで今回の案が提案されていれば、もっともっと国民皆さんにわかりやすく、また先生にももっともっと早く賛成していただいて、もう既に法案は通っておったと思うのであります。しかし、現在の厳しい財政状態、経済状態の中で、私どもは将来給付条件を一つにしなければならないという理想を持っておりますけれども、今残念ながら七割を八割に引き上げるための法案を出せるような現実にないことも、先生御案内のとおりでございます。  そこで、先生方の強いお求めに応じまして、私どもは、将来目標として六十年代後半のできるだけ早い時期に国保の七割を八割に上げるように努力したい、上げたいということを我々の長期ビジョンに書いたのでありますが、先生から言えばこれもなまぬるいということでありますが、政府側にしては、ここまで書くだけでも清水の舞台から飛びおりるような勇気が要ったこともお許しをいただきたいので、これは気持の上では先生のお考えも私の考えも同じだと思います。私も、どうせ厚生大臣にさせていただくなら十割を九割にするときの厚生大臣でなくて、七割を八割にするときの厚生大臣になった方が本当によかったと思うのでありますが、これはめぐり合わせというものでございまして、私は今度十割を九割にするような法案を出させていただいて、できるだけ早い時期に今度どなたかが七割を八割にするような法案が出せるように、それにはまずこの健保法案を通していただいて、医療費の節減、適正化を図って、そういう条件が一日も早くできるようにぜひお願いしたいと思います。
  169. 沼川洋一

    ○沼川委員 何か大臣のお話を聞いていますと、もう余り長くやらぬからというような、そういう前提のもとにおっしゃっていますけれども大臣、ぜひひとつ長くやってくださいよ。そして本当に最後まで見届けて、一番いいのは今やればこれは立派な功績です。そんな、すぐにでもおやめになるような寂しいことを言わぬでください。一番適任者だと思っておりますから、そういう意味でもぜひやっていただきたいと思います。  今の件ですが、吉村局長にちょっとお尋ねしたいのですが、あくまでも八割にこだわるというのは、前にちょっと御説明を受けたことがありますけれども、やはり一元化した場合に現時点では八〇・三という数字にこだわっていらっしゃるのですか。その辺はどうですか。
  170. 吉村仁

    ○吉村政府委員 私ども八割というものを目標にした理由でございますが、一つは、今先生御指摘のように現在の保険料水準というものを私どもは将来にわたって上げたくない、こういうふうに考えております。そして、現在の保険料負担水準というので試算をするならば大体八割くらいの給付は可能だ、こういうことで八割というものを考えたのが一つでございます。  それからまた、現在国保につきましては七割給付、こういうことでございます。それを九割に上げていくというのはなかなか難しい。やはり目標としては八割というようなものをひとつ目標にするのが実現可能性も高いのではないか、こういうように考えたのが第二。  それから第三は、保険の給付率というものは八割にいたしましても、これに公費負担医療を継ぎ足すとかあるいは高額療養費制度というものをプラスするとかによって、現在でも患者負担は大体一割くらいになっております。したがって、保険の給付水準というものは八割でも、他の公費負担医療等を組み合わせていけば国民負担というのは一割程度で済むという制度的な仕組みというものは可能ではないか、こういうような観点から八割というものを一つの目標として設定をしたわけでございます。
  171. 沼川洋一

    ○沼川委員 先ほどちょっと国民健康保険の話をしましたけれども、一割引き上げるとすると大体財源が二千億ちょっとくらいでできるというように聞いておりますけれども、その辺どうでしょうか。
  172. 吉村仁

    ○吉村政府委員 私どもの試算でありますと、大体六十一年度程度で考えていきますと、七割を八割にするために二千五百億から二千六百億くらいの給付費の増になります。したがって、半分を国庫負担ということになれば千三百億程度、あと半分を保険料ということになれば千三百億というようなことでございます。
  173. 沼川洋一

    ○沼川委員 まだ時間もございますので、今指摘しました点について、せっかく出された中長期ビジョンを少しでも前進させるような、そういう点の御検討はひとつぜひお願いしたいと思います。  さらに、この中長期ビジョンの中でもう一つお尋ねしてみたいと思うのです。大きな第二として「医師及び歯科医師の養成の見直し」、「将来の医療需要に即応した医師数及び歯科医師数の見直し」というのがございます。私がこれもちょっと片手落ちだなと思うのは、薬剤師が抜けています。これはどういうわけでしょうか。
  174. 正木馨

    ○正木政府委員 薬剤師数の見直しについては、長期ビジョンの第二項に「将来の医療需要に即応した医師数及び歯科医師数の見直し」というのが書いてございますが、薬剤師についてはここでは触れておりません。第二項の一番最後「その他の医療従事者の養成、資質の向上」という項にもちろん薬剤師も含めているわけでございます。
  175. 沼川洋一

    ○沼川委員 薬剤師が「その他」というのは、こういう抽象的な言葉でしか表現できぬのですか。三師会とか言うくせに、薬剤師は「その他」ですか。
  176. 渡部恒三

    渡部国務大臣 予算委員会等で、医師の過剰問題とか歯科医師の過剰問題とかが出ました。その際、医師と歯科医師の見直しというものを過剰であるか過剰でないかをも含めて検討することになったのでありますが、薬剤師の見直しというのが入らなかったのは、医師、歯科医師に対して薬剤師の方を軽視しているというようなことでは毛頭ございません。  先生御案内のように、医師の場合は六年かかります。薬剤師の場合は四年の大学でございます。それから、一般的に医師、歯科医師というような場合は他の職業につくというようなことがなかなかありませんので、これが過剰になった場合大変な問題になる。これに比べれば、薬剤師の方の方が比較的他の職業につかれるケースがあるとか、あるいは薬剤師の方が女子の方が多いとかいうことで、ここでも薬剤師の見直しというものは余り強い声として出ておらなかったために、医師、歯科医師の検討委員会というものを発足させたのでありますが、私がたびたび答弁しておるように、私はこの社会労働委員会での皆さん方の御意見に可能な限り耳を傾けて努力するということでありますので、薬剤師の過剰問題の見直しの必要性というものが強いような御意見になってくれば、またその点についても今後考えていきたいと思います。
  177. 沼川洋一

    ○沼川委員 大臣は非常に答弁がうまいんですが、思いつきの答弁はいけません。しっかり認識をした上で言ってほしいと思うのです。今の御答弁を聞いていても非常に苦しい。しかし答弁は非常にうまいです。しかし、責任を持って発言される以上は、現状がどうなのか、その現状認識だけはしっかりしていただきたいと思います。  そこで、改めて薬務局長にお尋ねしたいと思います。恐らく局長はいろいろ御存じだと思いますが、最近の医師とか歯科医師とかのそういった見直しの中で、この薬剤師がどういう状況なのか、状況把握されておりますか。
  178. 正木馨

    ○正木政府委員 ただいま大臣から御答弁があったとおりなんでございますが、薬剤師の届け出数というのは十二万強でございます。そのうちで、大体の数字で言いますと薬局開設者、薬局の従事者、この方々が約四万だと思います。それから病院、診療所に勤務されて実際の臨床部面にタッチされておる方々が約三万、それから企業関係に従事されておる方が約三万、こんな数字になっておると思います。ほかにその他の方がおられるわけでございます。  そこで、大臣もおっしゃいましたように、医師、歯科医師と違いまして非常に職域が広いということで、これまで過剰問題というものは出てこなかったのはこれは事実だと思います。しかし、今後の医療というものを考えた場合に、医療薬剤師といいますか、臨床面での知識豊富な薬剤師に対する需要というものがどんどんふえてまいると思います。それから一方におきまして、薬科大学の関係を見てみますと、特に私立薬科大学につきましてかなり定員がふえてきております。そういう中で、一方において資質、臨床面の知識豊富な薬剤師を養成していくという要請、一方におきましては過剰問題というものを、医師、歯科医師とは違いますけれども、資質の向上も含めまして早く手を打っておかなければならない。そういうことで、現在与党医療基本問題調査会の中におきましても、医師、歯科医師と並びまして、薬剤師の将来のあり方というものについて御検討をいただいておる、こういう状況でございます。
  179. 沼川洋一

    ○沼川委員 これは大臣もぜひひとつ聞いておっていただきたいと思いますが、今、開局薬剤師数を上からおっしゃったのですけれども、現在これは五十七年度で薬剤師の数が十九万おるわけです。これが昭和七十五年になりますと二十六万四千五百人、昭和八十五年には三十二万二千になるわけです。過剰問題は何も医師、歯科医師だけじゃありません。しかも、最近の国家試験の状況を見ていきますと、大体毎年八千人が合格しております。毎年八千人ずつふえておるわけでございます。こういった問題を見ますと、当然こういった中長期ビジョンの中に、しかも非常にこれは全部が抽象的ですから、この中に医師と歯科医師が大きな字で出ていて、「その他」に薬剤師を入れるという、こんな中長期ビジョンはありません。これは大臣のこの点についての決意をひとつお伺いしたいと思います。
  180. 渡部恒三

    渡部国務大臣 大変大事な問題を御指摘を賜りまして、ありがとうございました。  私ども考え方は、薬剤師の方を医師、歯科医師に比較して軽視するというようなことは全くございません。それが今のようなビジョンの書き方で誤解を受けては大変でありますので、これは早速改善するようにしたいと思います。
  181. 沼川洋一

    ○沼川委員 大臣の御答弁がありましたので、ぜひひとつ同じような形で見直しを進めていっていただきたい、このことをお願い申し上げておきます。  そこで、最近の新聞紙上で、健保改正をめぐるいろいろな修正案があちこちでにぎやかに論じられておりますが、その中でちょっと私の気になりますのは、定額負担の問題が出ているのですね。この定額について厚生省の方ではどういうふうにお考えになっておりますか。
  182. 吉村仁

    ○吉村政府委員 私ども今回の提案を申し上げました理由は、医療費がわかる、定率なら医療費がわかるという、そこが一番の重点でございます。いろいろな理由がございますが、それが重点でございます。定額では医療費の総額がわからない、したがっていろいろ乱診乱療に結びつく可能性あり、こういうことで医療費適正化の観点から定率負担の方がより好ましい、こういうことで御提案を申し上げたわけでございまして、そういうことから定額というのはやはり私どもはとり得ない、こういうような気持ちを持っております。
  183. 沼川洋一

    ○沼川委員 私もそれは全く同感です。一割負担にももちろん反対ですが、定額反対です。  それからもう一つ、こういう問題が出ているのでこれまた心配しておりますが、代理受領という問題がいろいろと新聞に出ておりますが、厚生省でもこういうお考え方があるのでしょうか。
  184. 吉村仁

    ○吉村政府委員 代理受領というのは、医療機関と患者とそれから保険者との合意がない限り成り立たない制度であります。例えば、現在柔道整復師等につきましてはまさに療養費払いなんでありますが、それは代理受領方式というものを認めております。それは柔道整復師会と保険者側とそれから患者側との合意が成り立っておるがゆえに代理受領が可能なわけでありまして、これはなかなか難しいとは思いますが、もし医療機関と保険者と患者の間に合意が成り立つならばそれは代理受領というものも成り立ち得る制度だ、こういうように思います。
  185. 沼川洋一

    ○沼川委員 要するにそういうことは考えてないということで了解してよろしゅうございますね。  むしろ、こういう話が出てくるのだったら、これはぜひひとつもっと強化してもらいたいのが医療領収書の義務づけですね。これはもちろん今まで厚生省でもいろいろと行政指導等もなさっておりますし、できるならそういう方向でということで、現在は大きい病院では発行しているところもありますが、小さい病院ではほとんど発行しておりません。実際に患者が医者に領収書を下さいと言ったってもらえなかったという例が、健保組合の調査によりますと、わずかですけれども四・六%、請求してもくれない。こういう問題はむしろきちっとしていただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。
  186. 吉村仁

    ○吉村政府委員 領収書に関しましては、払った金額について領収書を出すというのは民法上の関係ということで、これは医療機関は当然出すべきだと私は思います。  ただ、現在問題になっておりますのは、医療費の明細書というようなものについて患者がいただきたい、こういうような要望が非常に強いわけでございまして、それは医療機関の事務をかなり負担させることになります。患者というのは本人だけではございませんで、家族等もみんなあるわけでございますので、かなり事務的な負担になる、こういうことで、コンピューター等が整備されておるような医療機関から、そういうものの発行を進めていこうではないかという方針をとって進めておるわけでございます。ただ、今度定率一部負担になれば領収書の発行についての必要性というものも非常に少なくなってくるのではないか、必要度は少なくなってくるというように私は考えております。
  187. 沼川洋一

    ○沼川委員 次に進みたいと思いますが、これは私もこの委員会で何回か質問して、何かどうしてももう一歩すっきりせぬのがやはり薬価問題でございます。確かに一六・六%引き下げがあって、三年間にすれば四〇・一%引き下げが行われたわけでございますから、三月以降いろいろなところに確かに薬価引き下げの影響というのはあらわれておりますが、よく話をお聞きになっておりますのは、例えば、大阪の卸屋で去年の三月時点とことしと比べてみると薬品の売り上げが確実にちょうど二割減った、こういう話を聞きました。また、これは最近医療機関での一つの話ですけれども、公私立の病院で非常に収入が減少している、それも何かというと薬剤費の収入が約一五%減少している、こういう話を聞きました。確かに薬価引き下げのそれなりの効果、影響がいろいろなところに出ておるわけです。  ただ、ここで私が問題にしたいのは、公私立病院でこういうことを言っておるわけです。去年の三月時点に比べて要するに収入が減少した、大体ならば薬価差益というのが病院経営を支えてきた原資なんだ、これがこんなに減収したのじゃもう病院はやっていけない、少なくとも薬価差益というのを二〇%ないし三〇%いわば公然と認めてもらいたい、そういう病院側の発言があります。私もいつかこの委員会で指摘をしましたように、そんな二〇%も三〇%も薬価基準と実勢価格の中に大きな差があるのだったら、これは健康保険制度でございますから当然被保険者に返すべきものだ、私はそう思いますし、これは一般国民から見たって当然の主張じゃなかろうかと思います。ところが一方では、公然とそれが病院経営の原資だ、それが減って今収入が減って困っておる、二〇%ないし三〇%は認めろと言っておる。その辺の大きな食い違いがあるわけですが、厚生省としてもこの薬価差益という問題をどういうふうにとらえていくのか、この辺がまだ何かどうも漠然としておるように思えてなりませんけれども、どうでしょうか。
  188. 吉村仁

    ○吉村政府委員 私どもは、薬価差が非常に小幅な場合は別といたしまして、二〇%も三〇%も薬価差があるというのは正常な状態ではない、こういうように思っておりますし、またその薬価差を当てにしなければ病院経営ができない、こういうようなことではやはり正常ではないというように思います。したがって、薬価差というものは今後縮小をしていくべきだ、こういうように思いますし、また一方において、薬に依存しなくても経営の成り立つような診療報酬、経営が安定するような診療報酬というものを考えていかなければならないのではないか、こういうように考えております。
  189. 沼川洋一

    ○沼川委員 保険局長の御説明、よくわかります。確かにそういう考えでやっていただきたいと思いますけれども、現に公然として病院側が薬価差益によって支えられてきたんだ、これが減ったので困っておる、こう言わざるを得ぬ事情もまた本当に問題だと思いますけれども、そういうことを公然と言うということも非常におかしいと思います。二〇%も三〇%も薬価差益を認めろ、こんな論法がまかり通るようじゃちょっと困ると私は思います。  ですから、もうちょっと言葉をかえて言いますと、医療機関では公然と潜在技術料、いろいろ説明を聞きますと全くわからぬでもありませんけれども医療機関の言い分を聞きますと、在庫の管理費あるいは出納の事務費、消耗破損料、流通マージン、こういったことで間接経費としてそれくらいなければならぬ。向こうサイドでおっしゃる意味はわからぬでもないですけれども、私が言いたいのは、薬価基準を下げる理由はいろいろなところにあるけれども、一つは、何といったって、今当面する健康保険論議の中で一番大事な問題は医療費適正化、むだをいかにして省くかということで一生懸命薬価基準を下げていったって、そういう問題がまかり通るような状況の中ではやはりこれはちょっとおかしいのじゃないかと思います。     〔委員長退席、愛知委員長代理着席〕 そういう点で私は非常に疑問を持つわけですが、特にそういったことに関してちょっとお尋ねしたいと思います。  今保険局長もちょっとおっしゃったように、ここらで大事なことは、これは中長期ビジョンにもうたってございますけれども医療機関が薬価に依存しなくて成り立つような診療報酬、技術料のあり方、この問題についてはどうしてもひとつ本気で取り組んでいただかなければならぬと私は思うわけです。でなければ、薬価基準をどんなに下げていったってイタチごっこで、いつまでいったってこの問題の解消はできないと思います。そういう論法でこの問題をとらえるよりか、やはり技術と物を分離する、そのためには技術料をどう評価するか、これは非常に難しい問題です。  私はこういう話を聞いているのですけれども、どうでしょうか。日本の技術料というのは世界最低である、しかし収入は最高である、こういう言葉がありますが、保険局長、どう受けとめていらっしゃいますか。
  190. 吉村仁

    ○吉村政府委員 現象的に言いますならばそういうことではないかというように思います。  OECDの資料でございますが、主要国の医師の年間所得というものを比較いたしてみますと、これは一九八一年でございますが、日本が二千百九十八万円、それからアメリカが千四百四十二万円、イギリスが六百九十九万円、西ドイツが千二百八十三万円、フランスが七百六十七万円でございます。したがって、主要国の医師の所得というものを比較してみますと、日本の医師の年間所得というものはかなり高い水準にある、こういうように思います。  それから一方、技術料という形で例えば盲腸の手術というようなものを比べてみますと、日本は三万七千五百円でございますが、オーストラリア五万二千円ぐらい、それからベルギーは四万九千五百円、フランスは日本より少し低いようでございますが二万八千円というようなことで、個々の技術料、技術点数というものを比較してみますと、日本の技術料の評価というのは低いということが言えるのではないかと思います。  したがって、先生が今御指摘のように、個々の技術料というものは低いけれども、総体としての医師の収入、所得というものは高いのではないか、国際的に言ってそうなのではないかという御指摘は、私は大体正しいのではないかというように感じております。
  191. 沼川洋一

    ○沼川委員 ですから、今後どういう形で見直すかということになりますと、技術料というのは点数で見るしかないという感じを持つわけですが、この点数についての全面的な見直しというのをその辺からやるべきじゃないかと思いますが、その点はどうでしょうか。
  192. 吉村仁

    ○吉村政府委員 おっしゃるとおりでございまして、私ども、現在、中医協でそういう方向で診療報酬の合理化を図る、そして、その際技術料の重視をしていく方向で検討をしております。
  193. 沼川洋一

    ○沼川委員 そこで、これは中長期ビジョンの中にもございますけれども、やはりこれからの方向として、長年言われてきております医薬分業という問題について、今の技術料の評価とあわせてもう少し本気で検討していく段階が来ているのじゃないかと思うのです。特に中長期ビジョンでいきますと医薬分業について触れてございます。ところがこれを見ますと、「医薬分業の基盤づくりの促進」という大きい漠然とした表題しかございませんが、その内容を見ますと、この十年来同じようなことが言われてきているのじゃないか。推進します、推進します、何か十年前と現在と少しも変わらないような気がします。だから、せっかく中長期ビジョンでこの「推進」をうたわれるのでしたら、もう少し具体的な構想が出てきたっていいような気がしますけれども、いかがでしょうか。
  194. 正木馨

    ○正木政府委員 今後の医療政策基本的方向についての中で、特に項立てをしまして、「医薬分業の基盤づくりの促進」というのがうたわれておるわけでございますが、先生おっしゃいますように、これがかなり抽象的ではないかというような御指摘であろうと思います。しかし、過去十年を振り返ってみますと、四十九年を一つの転機といたしまして、当時と比較しますと、処方せん枚数は、発行枚数が約十二倍近くということになっております。しかし、それは基礎数字が非常に低いものですから、十二倍と申しましても、全国的に見ましてもまだ非常にアンバランスがありますし、全体として見ましてもかなり行き渡っていないということを率直に認めなければならないと思います。  そこで、この医薬分業を推進するに当たって一体どういうことを考えるかということでございますが、大きく分けて三つのことがあると思います。  一つは、この長い歴史の中で、やはり関係者理解協力を図っていくということでございます。これは先生御案内のように、医薬分業推進懇談会が昨年設置をされまして、いろいろ議論はございましたが、三師会の代表と学識経験者がひざを交えまして、今後の問題について議論していこうという基盤ができました。これを基礎にいたしまして、地方におきます関係者理解協力を得られる協議というものも逐次進んできておるわけでございます。  それから第二点は、やはり国民に対するPRだと思います。薬剤師さんというのは薬の専門家であるということを国民の方々にもよく知っていただく、そして医薬分業の趣旨を理解していただくということをこれからも進めていかなければならない。  それから第三番目は、医薬分業の受け入れ態勢という面で、これは先生御案内のように、調剤センターであるとか検査センターというものがかなり伸展をしてきております。  この三つを基本的に進めていかなければならない。同時に、薬剤師の方々の資質面での向上といいますか、医薬分業というものの基盤には、やはり国民医療の質の向上ということで、お医者さんと薬剤師の専門性をそれぞれ生かすということでございますので、先ほども申し上げましたが、臨床面における知識の向上とか、そういったような薬剤師さん自身の質の向上もあわせて図っていかなければならないということで、私ども全力を傾けていきたいと思っております。
  195. 沼川洋一

    ○沼川委員 その前に、ぜひはっきりしたけじめといいますか、すきっとした一つの方向を示していただきたいと思いますのが、いわゆる第二薬局ということがいろいろ問題になりました。これが何かすっきりした形で処理されておりません。医療法人等で薬局をということが言われておるようですが、それがあるからまた第二薬局が出てくる。少なくとも第二薬局の問題については、医薬分業の基礎固めをされるのだったら、これについてももうちょっと厚生省としてきちっとした処置といいますかをやっていただきたいと思いますが、いかがでしょう。
  196. 正木馨

    ○正木政府委員 確かに、第二薬局の問題は、健全と申しますか適切な形での医薬分業を進めていく上で、私ども非常に問題を持っておりますということで、この第二薬局につきましては、五十七年の五月に、薬務局長、保険局長の連名で、都道府県知事あてに通達をいたしまして、いわゆる第二薬局と見られるものについては強力な行政指導をする、それから、保険薬局の指定につきましてもこれを行わないというような形で、健全な医薬分業の推進の障になることを防ぐということに、私ども鋭意留意をしておるつもりでございます。
  197. 沼川洋一

    ○沼川委員 それから、さらに指摘しておきたいのですが、冒頭に挙げられた関係者同士の話し合い、確かに各県において医師会、薬剤師会等、また県の薬務課等を含めまして行われております。しかし実際には、現在実質的にはほとんど開かれていないというのが現状です。形だけつくればいいというものじゃないですよ。格好だけつくればそれで医薬分業の基盤づくりと思ったら、認識がちょっと違うのじゃないかと思うのですね。そういうのをせっかくつくったら、これが開かれて実質的に話し合いができるように、それを厚生省がぜひリードして、横からそういう土台をしっかり築いていく面でもひとつ御努力いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  198. 正木馨

    ○正木政府委員 確かに先生の御指摘のように、懇談会をつくった、それで事足れりというものではないわけでございます。改めて申し上げるまでもなく、この懇談会をつくりましたのは、今までの長い歴史、経緯がございますが、関係者理解協力を得ていくために、一体どういうところに隘路があるのかを率直に意見交換をして、その方向に持っていくということでございます。  そこで、この中央の懇談会が開かれたわけでございますが、まだ回数は重ねておりませんが、現在やっておりますことは、実際に分業を行っておる調剤薬局の実態調査といいますか、アンケート調査を行っております。一体どういう経緯を踏んだのか、そしてどういう受け入れ態勢なのか、どういった点に問題があるのかということを今調査結果を集めております。その結果に基づきまして、一体どういう点に問題があるのか、どういう点に知恵を絞れば少しでも前進が図られるのかということをまた懇談会でもお諮りをし、学識者の方々の御意見も聞きながら推進をしていきたい。先生がおっしゃいますように、懇談会というものの実が上がるようにということに、私ども行政としても最大限の努力をしたいというふうに思っております。
  199. 沼川洋一

    ○沼川委員 時間がありませんので余りこれ以上触れませんけれども、今指摘しましたような、そういう面ではぜひひとつもっと御努力をいただきたいと思います。残念ながら今まだ分業率が一〇%前後です。確かに相手があることですから、やはり医師会との話し合いは当然なことだと思いますし、そういう中で、ただ、あえてこの問題を出しましたのは、やはり医療費適正化という中で、特に薬価の問題をどう解決していくかという方途はやはりこれしかないと思います。幾ら薬価基準をいじったってこれは極めて問題が多いと思います。ですから、ぜひそういう方向を、せっかく中長期ビジョンにうたわれたわけでございますので、今まで以上、その推進方を大臣にもひとつお願いしておきたいと思います。  それから次に、高額療養費の問題についていろいろと委員会で指摘があったのですが、ちょっと大事な問題ですので、この問題でお尋ねしてみたいと思います。  今、一割負担になる、大変だ大変だという話ばかりあっています。ところが問題は、一割負担になるとどうなるか、例えば心筋梗塞で十日入院しますと、現行五千八百円が九倍の四万八千八百七十二円、こういう一つの計算が出て、一割負担になるといかに医療費が上がるか、これも確かに問題でございますが、私が言いたいのは、高額療養費というのが五万一千円という限度額がございます。ですから、問題はそちらの方の問題ですけれども、この五万一千円という高額療養費のこの基準がこれでいいのかどうかという論議が余りなかったような気がいたします。歯どめとして、特に保険の目的が低額所得者の方であっても、だれであっても、また重い病気になったときでも安心して医者にかかれると、このための健康保険ですから、この歯どめとなるようなこの問題については、もっと論議があったってよかったのじゃないかと実は思っておりますが、その中でも特に私が不満に思いますのが、低所得者に対する配慮がございません。入院が三万、外来で三万九千円、ところがこれは五十六年から五十八年の一月までは低所得者については一万五千円であったわけですね。この一万五千円が低所得者については倍になっているわけです。もちろん国民健康保険はずっと三万九千円です。これもひがんだ見方かもしれませんが、何で高い国保にこの一番大事な問題を、一万五千円であったのを三万九千円に合わせなければならぬのか。この辺にもうちょっと配慮があったっていいような気がします。この点大臣、いかがでしょうか。
  200. 吉村仁

    ○吉村政府委員 確かに御指摘のように、高額療養費の自己負担の限度額は制度ごとにアンバランスがある、これはやはり統一をすべきだ、こういうように私は思います。  したがって、今回御提案申し上げているような高額療養費の限度で全制度を統一しようということで、提案をしておるわけでございます。  日雇健康保険も現在三万九千円、それから国民健康保険においても三万九千円でございます。この辺は所得が低い階層だと一般的に言われておるところでございますが、この辺に合わせたからといって非常に問題があるということではないというように私どもは判断をいたしまして、三万九千円にしたわけであります。なお、三万九千円は外来で、入院の場合には費用も要ることだろうということを考慮いたしまして三万円にしております。そして三万円という金額は、高額療養費制度ができた当初の四十八年に三万円の負担をしたということでございますので、その後の所得あるいは物価の上昇の推移というようなものを勘案すれば決して不当なものではない、こういうことで今回の御提案を申し上げておる次第でございます。
  201. 沼川洋一

    ○沼川委員 ですから、改めて申し上げますけれども、低所得者あるいは重症で長く入院する人、そういう面から考えて一つの歯どめとなる線ですから、負担で幾ら幾らになるということも大事ですけれども、それよりか、健康保険の本質から考えてきちっとした論議をした上でこの線が出なければならぬのが、今回の修正がちまたでいろいろと耳に聞こえてまいりまして、高額療養費については五万四千円で提案されたのを五万一千円でとどめるというような話が出ますけれども、低所得者の方の三万あるいは三万九千円について現行の一万五千円に据え置く、この話は全然聞こえてこないわけです。大臣、これは非常に大事な問題だと思いますが、いかがでしょうか。
  202. 渡部恒三

    渡部国務大臣 御指摘のとおり、高額療養費の問題は極めて重要な問題で、特に今度一割負担改正案をお願いすればサラリーマンの皆さんの問題になってきますから、幾たびも申し上げているように、この一割負担改革案をお願いすることによって、サラリーマン家庭が重い病気にかかって生活が破壊するというようなことがあってはならないというのが私の基本的な考えでございます。その歯どめになるのがこの高額療養費でございます。これは、この法案を成立させていただいてこの法律が実施されるとき、政令として私にゆだねられている問題でありますから、先生の今の趣旨を十分に配慮してまいりたいと思います。
  203. 沼川洋一

    ○沼川委員 これも既に論議があったところですが、レセプトごとという問題が一つございます。本人じゃなくて今度は家族単位、あるいは月にまたがるという問題がございます。そういうものもあわせてぜひひとつ御検討いただきたいと思います。  もう一つ、保険外負担への対応が何かちょっと弱いような気がいたします。というのは、例えば差額ベッドの問題です。今度は高度先端医療に一部保険を適用したということで、これはある意味からいうと公然と保険負担と保険外負担を法律で認めたようなものですから、差額ベッドが公然と広がっていくんじゃないかという心配がございます。  この問題については、大臣に本会議でも御質問いたしました。ただ残念ながら、非常に抽象的な御答弁で終わっております。この委員会でもこの質問はあったと思いますが、余り明快なお答えを聞いておりません。厚生省の調査ですと、五十七年七月一日で全国に十五万一千床、こういうふうに聞いております。その差額料は一日当たり五百円から四千円が大勢だということも聞いておりますが、長期入院となりますと数十万というお金がかかる。これがいよいよ正式に認知されたとなりますと、私が心配しますのは、各種の診療機関がこぞっていわば増収につながる差額ベッドの方に走る、そういう傾向が出てきはしないか。それに対してもうちょっときちっとした法律で、何らかの形でしっかり歯どめをしておかないと、こういう保険外負担の問題で、お金がなければいいベッドに入れない、むしろ普通のベッドをどんどんふやしてもらいたいという要望があるのに、こういう形が野放しにされていますと、変な言い方ですが、もうかる方についついそろばんが動いてしまう。そういう面での歯どめといいますか、それがまだ今回はっきりした御答弁をいただいておりませんが、いかがでしょうか。
  204. 吉村仁

    ○吉村政府委員 差額ベッドの問題につきましては、従来から国会でもあるいは審議会でも指摘をされておるところでございまして、私どもも鋭意努力をして、三人室以上の差額病床の数は年々減ってまいっております。五十八年七月では一万一千九百五十ぐらいになっておりまして、全体に対する割合というのも一・一%ぐらいの水準になっております。  ただ、私ども今までは行政指導でもってそういうことをやってきたのですが、差額徴収の問題にしましても、歯科の差額徴収の問題にしましても乱に流れるおそれがある、それを行政指導でやるのは限界があるのではないかという観点から、今回法律に規定をいたしまして、法律上の規制を加えることによって適正な実施を図っていこう。私ども差額徴収ベッドの方へどんどん流れていくようなことをしようと思ってこの制度をつくったわけじゃございません。むしろ逆に抑制をしていく、そして、そのメルクマールをはっきりしていこう、こういう観点から今回の御提案を申し上げているわけでございます。
  205. 沼川洋一

    ○沼川委員 そろそろ時間が参りましたので、最後に一つお伺いしておきたいと思います。  現在の医療費高騰の要因として厚生省がお挙げになったのは、一つは人口構成の高齢化、もう一つには疾病構造の変化、さらに医学医術の進歩、それが確かに大きな要因になっていることは私も率直に認めるわけです。その中で高齢者がどんどんふえていく、しかも複数の病気になっていかれる。お医者さんにかかる率も非常に高い。他の方の四・一倍になっている。これは今後医療費高騰の要因になっていくことは間違いないと思います、いや応なしに高齢化社会になっていくわけですから。また疾病構造も、慢性疾患、いわば成人病、これが主流で、非常に治りにくい、時間もかかる。こういう問題の対策は、結論的にはやはり病気にかからぬようにする、これしかないわけですが、予防医療という面でもここにうたって非常に力を入れていらっしゃいます。ただ老人保健につきましては、四十歳以上からちゃんとした健康のチェックといいますか、それができるようになっております。ところが一般についてどうするかとなりますと、方途はいろいろ考えていらっしゃると思いますが、厚生省の方でいわば予防医療、健康管理の面で点数になるような方向を考えていらっしゃると聞いておりますけれども、何か具体的な試案がございますか。
  206. 吉村仁

    ○吉村政府委員 予防を重視し、予防を推進していくということはいろいろな角度からやらなければならない問題でございますが、今先生御指摘のように、診療報酬面で何か予防についての配慮をすることによって予防を進めていくことができるのではないか、それを推進することができるのではないか、こういう御指摘であろうと思います。  私どもは、今後、疾病予防の観点から、指導とか生活管理だとかプライマリーケアに関する診療行為、そういうものについて具体的に技術料を評価していくことによって、予防を含めてそういう医師の指導というようなものが盛んになり、その結果、国民皆さんが予防に重点を置かれていくような生活をされるというようなことで物事を考えております。診療報酬の面においては、プライマリーケアの推進だとか生活指導、生活管理の点数について重点を置いて技術料の評価をいたしたい、こう考えております。
  207. 沼川洋一

    ○沼川委員 今要因を三つ挙げましたけれども、あえてもう一つつけ加えさせていただくならば、さっきから指摘しました医療費適正化、特に検査づけ、薬づけという医療のむだを省くということですね。特に今回はいろいろな指導監視体制、あるいはレセプトの監査の強化、薬価基準の引き下げ等いろいろとうたっていらっしゃいます。  これは何回も大臣に申し上げたのでもう言いませんけれども、監査体制について、指導しかできない、監査ができないという体制ではやはりこの問題を進めることはできないと思います。ですから、ほかのことでよく医師会にいろいろ話に行かれますが、こういう問題では余り行っていらっしゃらぬような気がして、厚生省、弱いのかなと思ってちょっと心配するわけですが、やはり言うべきことは言っていただきたいと思います。やはり出来高払いは残す、そのかわりその欠陥についてはぴしっとした対処をする。ですから、私は冒頭に申し上げましたように、何かいま一つすっきりせぬというのは、そういう問題に対するけじめができないという、この辺が何か国民側から見てすっきりしないのじゃないかと思います。  最後にまた結論的に申し上げますけれども、私は、今回のこの健康保険法案は、どうしても、幾ら否定されても、財政対策という中の改革という面と、中長期ビジョンというのはもっとしっかりしたものに乗っけてやってもらいたいという面で不満であることと、前提条件である医療費適正化対策にどうもいま一つ歯切れが悪い。そういうことを並べていきますと、大臣意見が違いますが、この一割負担にちょっと賛成するわけにはいきません。まだ時間が十分ございますので、ぜひひとつ御検討いただいて、終わりたいと思います。
  208. 愛知和男

    愛知委員長代理 小渕正義君。
  209. 小渕正義

    小渕(正)委員 大臣は、きょうは午前中から、それぞれ質問者から大変な激励を受けて、ひとつ決断を持って対処せよということが言われているわけでありますが、問題を絞りまして、具体的なものについて御質問申し上げたいと思います。  まず冒頭、医療制度一元化ということでは、厚生省としては六十年代の後半の早い時期、これをめどにして何とか具体化していきたいというようなお話をされておるわけであります。ここ二、三日来修正その他新聞等でいろいろな問題が出ておりますが、いみじくも六十五年度という数字も出ておるようであります。この六十年代後半の早い年度ということは、大体六十五年度あたりが一つのめどだというふうに理解していいのかどうか。それとあわせて、そこらあたりを一つのめどにしたその根拠は一体どういうものが背景にあるのか、その点についての具体的なものをひとつお聞かせいただきたいと思います。
  210. 渡部恒三

    渡部国務大臣 幾たびかこの委員会で私も申し上げておるのでありますが、今回被用者保険の本人皆さんに一割御負担をお願いするということは、将来の社会保障のあるべき方向として、やはり国民はすべて給付水準が等しくなっていくのが望ましい、しかし残念ながら、今厳しい財政状態にもございますので、今回は、給付率の一番恵まれた条件にある十割給付の被用者保険の皆さん方に一割を御負担願う、したがって、できるだけ早い時期に国保の七割給付を八割に上げたい、また上げなければならないという考えを私どもは持っておるのでありますが、現在の厳しい財政状態の中でこれはなかなか容易なことでございません。そこで、今回一割負担の法案を成立させていただきまして、医療費適正化、節減に私ども一生懸命努力をいたしまして、何とか財政に余裕をつくって、できるだけ早い時期にこれを実現したい、こういうことから六十年代後半の早い時期ということを申し上げた次第でございまして、これは私どもの努力目標でございますので、それを何年というふうに具体的な数字を言うのはちょっとお許しをいただきたいと思います。六十年代後半のできるだけ早い時期にそういう条件をつくり上げるように努力してまいりたいということでお許しいただきたいと思います。
  211. 小渕正義

    小渕(正)委員 六十五年度という年度は、いみじくも財政再建の、赤字国債脱却の最終めどが大体そこに置かれているわけですね。したがいまして、そういう点から六十五年度あたりを一つのめどにしているのではないかというふうには考えるわけでありますが、先ほど大臣の御説明によりましたならば、財政事情さえ許されるならば、でき得る限り期待にこたえて早急にこういう問題に着手したいということでありますから、そういう立場から考えますならば、一つのまた違った年度というか目標を持たれてもいいのではないか。     〔愛知委員長代理退席、委員長着席〕 もちろん、今回の保険制度改正がどのような推移で、どういう状況の中で保険財政が変わっていくか、これはまだ推測の域を出ませんけれども、そういう意味で、財政再建とのかかわりなしに保険財政においてそういう見通しが早目に立てられるならば、早目にでもそういった方向に努力、着手していく、こういうことについてはどのように理解をされておりますか、その点をお伺いいたします。
  212. 渡部恒三

    渡部国務大臣 先生御案内のように、現在でも、厳しい財政の中から、医療費に対して国の一般会計から三兆九千億の金が出ておるわけでございます。したがって、先生が御判断なさいましたように、財政再建が実現された時期というのは一つの大きなめどになると思いますが、私どもは、この一割負担によって医療費の節減、適正化というものがどこまで進むかということは、これは残念ながら、ある程度の予測をしても確実な将来の計算はできないわけでございますから、今申し上げられることは、できるだけ早くということでお許しをいただきたいと思います。
  213. 小渕正義

    小渕(正)委員 将来の見通し等についてはなかなか難しい事情もございますので、その点についてとやかく言いませんけれども、ただ、現在赤字国債からの脱却のめどとして六十五年度というものが一つ挙がっておりますので、それが例えば六十六年、六十七年とおくれた場合に、結果的に今回の保険法改正その他がこれからどういうふうに推移するかわかりませんけれども、何とかいけそうだという場合には、そういう財政再建のめどとは切り離してでも着手する考えがあるかどうか、この点を再度しかとお聞きしているわけであります。  その点、先ほどから大臣は、これからもずっと長くやれというような激励もいただいておるようでありますから、こういった問題は国の財政事情とは切り離すことができないと言えばそれまででありますが、少なくともこういう大きな制度改革をやるような状況の中では、そこらあたりに対する国民の大きな期待に対しての厚生省当局としての決意のほどをお聞かせいただければと、かように思うわけですが、その点いかがでしょうか。
  214. 渡部恒三

    渡部国務大臣 財政問題と全く切り離すということは、先ほど申し上げましたように、医療保険の方に一般会計からの金が全然出ておらないと、医療保険の中で金の融通がきけばすぐやれるということでございますが、現在三兆九千億の一般会計からの金が出ておるわけでありますから、財政再建と無関係にこうと、ここで申し上げることは困難だと思います。  しかし、私どもは、今回の一割負担を実現させることによって、医療費適正化が私どもの願いどおりに進んでいけば保険財政にある程度の余裕ができてくる、そのときはまず最優先に、七割を八割に引き上げることを何よりも優先的にやらなければならないと考えております。
  215. 小渕正義

    小渕(正)委員 次に給付水準の一元化、統一化、将来目標もそこに置かれているわけでありますが、そういう形で制度的に給付水準の一元化をするような方向になりました場合、現在新たに退職者医療制度なるものをいよいよ創設されるように提案されているわけですが、それとの兼ね合いではどのようなお考えがあるのか。これも先のことだから全然考えておりませんということだけではちょっと済まされないのじゃないかという気もするわけでありますが、その点についてはいかがでしょう。
  216. 吉村仁

    ○吉村政府委員 一元化というのは、給付負担の公平を図る、全国民を通じてそういうことをやっていくのを一元化だと私ども考えておるわけでございまして、その一元化の暁におきまして退職者医療制度がその機能をなくする、こういうことにはならない、したがって退職者医療制度は今後もずっと続けていくべき制度だ、こういうように思っております。
  217. 小渕正義

    小渕(正)委員 制度はそのままそれぞれ分立させながら給付水準についてのみ一元化していく、こういう考え方であるということですね。その点間違いございませんね。
  218. 吉村仁

    ○吉村政府委員 そのとおりでございます。
  219. 小渕正義

    小渕(正)委員 これまた、制度間を一元化していくということ自体に論議がいろいろありましょうけれども、そういうふうに給付水準を統一的にしていく、一元化していく中でそれぞれいろいろな制度として分立させておくことが果たしていいのかどうか。この問題は、これはさっきの話になりますけれども、少なくとも厚生省がこれからの保険医療制度をどのように考えていくかという一つの手がかりとして、そこらあたりに対するお考えをお聞きしておきたいと思うわけです。そういう意味でお尋ねしておるわけですが、先ほど申しますように、一つの制度一元化していくということで給付水準も統一していくということになるならば、制度がそれぞれ分立していること自体もやはり考えるべきではないか、こういうような考えを持つわけでありますが、その点に対してもう少し具体的なものをお聞かせいただければと思います。
  220. 吉村仁

    ○吉村政府委員 現在の分立しております医療保険制度が、分立しておるがゆえに給付負担の公平を保つのがなかなか難しい、一元化できないという点があることは事実であります。だから、統合をすれば一挙に給付負担の公平を図る、こういうことになるわけでありますが、現在の制度というのはやはりそれぞれ歴史と沿革と実績を持っておるわけでございまして、分立を次第に解消していく方法をとるべきか、あるいは現在の分立をしたままの制度給付負担の公平を図っていく方向をとるべきか、これはなかなか難しい問題でございまして、それはしばらく時間がかかるのではないか、こういうように私ども考えておるわけでございまして、少なくとも給付負担の公平を図ることによって、そういうものも含めまして一元化前提条件というものを整えていくのが先決ではないか、こういうように考えておるわけでございます。
  221. 小渕正義

    小渕(正)委員 それではもう少し踏み込んで質問いたしますが、その場合、当然それぞれの制度間における財政調整、こういった問題にまで踏み込んでいこうというお考えなのかどうか。  それから、先ほどのお話では、給付水準が統一されたといたしましても退職者医療制度はそのまま残すというお考えのようでありますので、その場合は国庫負担ということを導入することも当然考えるべきであると思うわけでありますが、その点に対しては現在の段階ではまだ白紙なのかどうかわかりませんけれども、そこらあたりに対するもう少し踏み込んだ御見解をひとつお示しいただきたいと思います。
  222. 吉村仁

    ○吉村政府委員 私ども、具体的な案ができればお示しをするのにもちろんやぶさかではございません。ただ、今先生御指摘のような、財政調整を全医療保険についてするということ自体も非常に難しい問題を抱えておるわけでありまして、やはりもう少し推移を見て、財政調整の方に踏み切るのがいいのかあるいは国庫負担で処理するのがいいのか、その辺は現在まだ決めておりません。  しかし、全医療保険給付と公平を保っていくためには財政調整の道というものを少しずつ歩んでいかなければいけない、こういう気持ちは持っております。既に老人保健法も一種の財政調整だと思いますし、今回の退職者医療制度も一種の財政調整ではないか。したがって、筋が通るようなところについて財政調整を進めていくという方向はあるいは強まっていくのではないか。そういうことを通じて一元化措置というものを図るのは一つの方法として十分考えられますし、また、そういう方法で進むのも一つの方向であろうと私ども思っております。
  223. 小渕正義

    小渕(正)委員 財政調整の問題については非常に難しい問題をはらんでおりますが、しかし、それについて調整していくということについてあえて否定するものではありません。しかしながら、当然そういったことも考えるとするならば、国庫負担もまた当然のこと考えながらそういう面でひとつやっていかないことには、ただ財政調整だけで、国庫負担は一切現在のような提案の中身のようなことで国としては逃げてしまうということでは、私は好ましくないのではないかと思いますので、ぜひそこらあたりは十分この国庫負担ということも含めて、将来の問題ではございますけれども、ぜひそういったことを強く意見として申し上げておきたいと思います。  次に移りますけれども、今回の被用者本人に対する一割負担、六十一年度から二割負担ということでありますが、最近のいろいろな動向を見ますならば、二割負担という方向は何かしらやや遠のいたんじゃないかという感じがする。最近のマスコミその他からいろいろな修正の動きその他がうかがわれるわけでありますが、まず私は、もうここまで論議が煮詰まった以上、思い切って大胆に、本則における二割負担ということだけでもはっきり削除する、こういう決断が今の時期は一番問題を解決する一つのポイントではないか、こういう気もするわけであります。そこらあたりはいかがでしょう。もう大臣、ここらあたりで本則の中の二割負担ということだけは撤回する、まずここらあたりをこの問題解決の一つのポイントにすべきではないか、これは私見でありますけれども思うわけです。その点、いかがでしょうか。
  224. 渡部恒三

    渡部国務大臣 私は今度の改革案の提案者でございまして、今回御審議をお願いしておる政府原案が最善、最高のものと考ております。  ただ、これは議会政治、政党政治が我が国の民主主義でありますから、各党の皆さん方が話し合ってお決めになったことには従うしかないと思っています。
  225. 小渕正義

    小渕(正)委員 実質的には二割負担という方向はもう撤回されつつあるかのごとき状況にあるようでありますが、やはりきちっとけじめをつけてやるべきじゃないかということで申し上げたのです。  それから次に、余りこの問題で時間をとることは避けますが、今回被用者保険本人一割負担というのは、我が国の健康保険制度の根本を大きく揺さぶる改革であることはまず間違いございません。今まで働いている人たち当事者にとっては、元気なときに保険をずっと掛けておって、病気になったときだけはちゃんと保険で面倒を見てもらえるという安心感の上に立って、今日までのいろいろな社会ができ上がった基礎になっているわけであります。しかも、現在のこの被用者保険の中で、家族を含めると、組合健保関係、政管健保関係含めるとざっと約五千万人ですか、ちょっとおおらかな数字を申し上げますが、そういう関係にあるわけです。特に組合健保皆さん方にとりましては、自分たちの納めた保険料拠出金と使用者側が出す保険拠出金と、ここらあたりを中心にして運営をされているわけであります。もちろん事務的経費で国が若干の面倒を見ておられることは否定いたしませんけれども、主体はすべてみずから当事者によって運営されているわけです。もちろん一部のところの産業には政府の世話になっているところが若干ありますけれども、大体大勢としては組合健保の人たちはすべてお互いの自主的な運営の中でやっているわけですね。そういう中であえて政府が、あなたたちは今回一割負担しろというような形で出ているのが今度の法案である。そういう面から見ると今回の制度はそういう形になるわけですね。十二割給付にしようが十一割給付にしようが九割給付にしようが、財政上の問題でいろいろできるわけでありますけれども、そういう形の中で現在、一部は赤字もありますが、十分やれている中において、あえて本人負担、十割給付の分を一割本人負担にしろという形の中身が今回の提案の中身であります。そうしますならば、制度全般にわたっての一つの痛みを分かち合うという意味で、もし本人の一割負担もやむを得ないとしたといたしますならば、当然そういった人たちから見ましたならば、そういう痛みを分かちあうために、ではどこかの部分で現行よりもよくなっていく、こういう対象になる人たち、引き上げられる人たちがあってしかるべきだと思うわけです。そういう点で見ますならば、退職者医療制度がそうだと言えば言えないこともありませんが、私は少なくとも、制度の根本的な改革になるような本人の一割負担制度改正として出すならば、家族の外来、入院、そういった問題にでも若干手をつけて少しでも引き上げていく、そういう一つの何らかの見返り的なものが、痛みを分かち合うなら分かち合うなりに、それに見合うべき代償的なものが何らか考えられてよかったのではないか。私はこのようになると初めて皆さん方もある程度理解を得ていただくものと思うわけでありますが、こういった問題についてはなぜ考えなかったのかどうか。そこらあたりはいかがですか。
  226. 渡部恒三

    渡部国務大臣 先生御指摘のように、被用者保険の中で一番問題になっておりましたのは、現役で病気にかからない時期は十割の給付であり、ところが会社や役所をやめてしまいまして、しかも年齢が老齢化してきて病院通いが足しげくなるような時期に国保の方に入ってしまって、そのOBの方そのものも十割給付から七割給付に下がるし、しかも、そうでなくても社会構造の変化によって非常に財政が苦しくなっておる国保財政を、それで一層苦しめておる結果になっておる、これが大きな矛盾の一つでございましたので、今回の改正によりまして、被用者保険の現役の皆さん方には一割御負担を願いますが、そのことによって、いずれはその現役の方も先輩になるわけですから、その先輩の皆さん方を支えていただく、あるいはまた今の保険の中で、これは組合の責任というよりは、今日の経済が第一次産業から第二次産業、第三次産業に変化しまして、若い働き手が全部被用者保険の方に行って、老人が残って財政的に苦しくなっておる国保の会計もこれで楽にしていただく、そういういろんな願いを込めて今回の改革案が出ておるわけでありますが、先生御指摘の家族給付率をこの際上げるというようなことになればお褒めをいただいておったんでありましょうが、今回そこまではまいりませんでしたが、私のつたない知識で聞くところによれば、最初はこの保険制度家族はほとんど給付がなかったのが、先生方の御努力によって今日までの給付率に向上してきたものでございますから、今回は御辛抱を賜りたいということでございます。
  227. 小渕正義

    小渕(正)委員 退職者医療制度のそういう部分というか、そういう意味合いを持っている点は我々も十分理解しております。ただこの問題は、素直にいただけないのは、国がすべてそれで逃げてしまっているところに、責任を放棄しているところに問題があるわけでありますから、そういう点では退職者医療制度については理解をするわけでありますが、先輩の分を自分たちが一割カットということで痛みを分かち合うという意味で、少し自分の方へ痛みを分けてでもやろうということについて、それならそれなりになお少し広げて、何も家族の入院、外来すべてと言わないけれども、せめて外来だけでもいいから、何らかそういった配慮があってしかるべきでなかったのか。そうすることによって、この問題である程度皆さん方の大方の理解を得る努力はしやすくなる、かような感じから非常に残念に思っているわけでありますが、こういった点でここまで踏み込むのに何か障害があるのかどうか、そこらあたりはどうですか、保険局長。問題はそこまで踏み込むかどうかの決断だけじゃなかったのかという感じがするわけでありますが、その点どうですか。
  228. 吉村仁

    ○吉村政府委員 私ども先ほどから申し上げておりますように、全国民給付率を統一化し、一元化していこうという目標を持っておることは事実でございます。問題はその実施時期でございまして、私ども家族についてなぜやらなかったのかということにつきましては、別に積極的な理由があるわけではございません。問題は財政的に自信が持てるかどうかということでございまして、そしてまた、その時期は国保と切り離して物事を考える方がいいのか、家族給付率の引き上げと国保給付率の引き上げの時期は同じぐらいの時期の方がよろしいんではないか、こういういろいろなことを考えまして、家族給付率の引き上げは現在は後年度に延ばしておる、こういうことでございます。
  229. 小渕正義

    小渕(正)委員 いろいろなバランスをとるということも政治の必定でしょうけれども、少なくともこれだけ制度に大きく踏み込んでいくような改革ですから、そこに家族に対する若干の配慮をすることによって、それによって財政事情で若干国庫負担退職者医療制度の中に出てくるかどうか知りませんけれども、せめてそれくらいの配慮をすることが、またある別な角度からの政治じゃないかと私は思うわけです。そういう意味で非常に残念でなりません。したがって、この点についてはこれからもまたぜひ十分御再考していただけないか、かように思っている次第であります。  次に高額療養費の問題で、午前中にも質問の中で、暦月単位じゃなしに受診日数単位でできないかというような質問がありまして、できないことはないけれども、事務的な煩雑さが非常に出てくるということでちょっと難しいという御答弁があっておりましたが、高額療養費制度について今回引き上げるについては、またそのまま据え置くというような話もあっておりますが、高額療養費制度の運用の中では、私は本会議でも質問いたしましたけれども、これはやはり世帯単位で物事を考えていただきたい。それから日数単位で物を考えていくということを、この高額療養費制度についてはこういった改正を機会にぜひひとつ思い切って考えていただきたい、かよう思うわけでありますが、この点について再度世帯単位日数単位ということについての御見解をお聞きしたいと思います。
  230. 渡部恒三

    渡部国務大臣 高額療養費の問題で大変先生から御心配をちょうだいしております。  これはこの委員会でも私は何回か申し上げておりますように、今回被用者保険本人皆さん方に一割負担をお願いしても、そのことによってサラリーマンの方に病人が続出したり、あるいは大変重い病気にかかったりすることによって家計が破壊されるようなことのないようにということは、これは私の願いでもございますし、先生方から随分と御意見を賜っておるところでございますので、私の出しておる法案が成立することになればこれは大変心配な問題になってまいりますので、その際、各党の皆さんからこうせよ、ああせよという御意見を賜りますれば、これは私がやれる事項でもございますので、先生方の御意見には謙虚にこれを実施するように耳を傾けてまいりたいと思います。
  231. 小渕正義

    小渕(正)委員 今大臣から前向きの御答弁をいただいておりますので、ぜひそういう期待にこたえていただくように御努力をお願い申し上げておきます。  それから、先ほどの沼川議員の質問の中にも出ておりましたが、今回の取り扱いの中であと一つ配慮が欠けておる点として、低所得者層に対するものが、今回の政府案においては、現行政管健保は一万五千円、国保は三万九千円を統一して、外来と入院とでそれぞれ異なった統一案になっているわけでありますが、ここらあたりも、金額的なものから見ますならば、もう少し金額的な配慮があってよかったんじゃないかという気がするわけであります。特に例を申し上げますならば、少なくとも外来二万円、入院一万五千円程度の中で基準を設けて考えるべきじゃなかったかと。政管健保の方から見ますならば余りにも引き上げ幅が大き過ぎはしないか、こういうふうに思うわけであります。高額療養費の問題とあわせてこれについてもひとつぜひ、これは大臣の前向きな姿勢であれば解決する問題でありますので、その点に対する御配慮をお願いしたいと思うわけでありますが、その点いかがでしょうか。
  232. 渡部恒三

    渡部国務大臣 先ほど私が答弁いたしましたような基本的姿勢でございますので、先生御指摘の問題等も、この法案を成立させていただき、この法律が施行されます時点で、各党の皆さん方からこうせよ、ああせよという最大公約数の御意見を賜りますれば、それを誠実に実行するように努力してまいりたいと思います。
  233. 小渕正義

    小渕(正)委員 この点、特にお願い申し上げておきます。  それから、高額療養費の該当病名といいますか医療ということでお尋ねいたしますが、高額療養費を毎月五万一千円に据え置かれたとしても、五万一千円支払わなければならないそれに該当するような、これは短期間の二カ月、三カ月は抜きにして、少なくとも二年ないし三年にわたってでもずっと支払わなければならないような、そういう対象になる病気が何種類ぐらいあるのでしょうか。一つ私がお聞きしているのでは、血友病ですか、これはもう一生つきまとって、一生高額療養費の対象になって支払わなきゃならない形になるようなお話を聞いておるわけでありますが、この種の病気はそうたくさんないと思いますが、あるとすればどういうものがあるのか。また、これについて何らかの対策といいますか配慮がないのかどうか。その点いかがでしょうか。
  234. 吉村仁

    ○吉村政府委員 先生御指摘の疾病は、恐らく生涯治らないような病気としてどんなのがあるかというように考えますと、今先生御指摘の血友病は生涯、医療を要する病気であります。それから人工透析、これも一度始めたらやはり生涯続けなければならない病気であろう。金額が大きくて生涯続くというのは、こういうところは絶対それに該当する病気だというように私ども思っております。  なお、がん等につきましては、種類とか病態だとかあるいは治療法等が種々さまざまでありまして、高額な医療費が確実に死ぬまで続く、こういうことではないのではないかというような考えを持っております。
  235. 小渕正義

    小渕(正)委員 お話を承りますと、がん等の方たちは生涯といいますか、そういった関係からは外れて、この高額療養費の対象として支払わなくてはならないような対象から外れて、該当しないようなお話でありますが、血友病関係の人は、据え置かれたとしても、ずっと毎月五万一千円高額療養費の対象となって支払わなければならないような状況に置かれるというふうになると思うわけでありますが、その点はいかがでしょうか。
  236. 吉村仁

    ○吉村政府委員 御指摘のようなことになるというように思います。
  237. 小渕正義

    小渕(正)委員 今お話を承りますと、そうたくさんの病気もないようでありますから、いろいろ難病と言われる病気については、そういった福祉の障害関係の救済措置で救われる場合と、それから医療研究ですか、いろいろな医療の関係の中で、そういった対象に入れて、当人にとってそういった負担がかからない場合とあるようでありますが、この血友病については現在のところそのどちらにもならないというふうにお話を聞いているわけでありますが、その点は間違いございませんか。
  238. 吉村仁

    ○吉村政府委員 血友病に関しましては、二十歳までは小児慢性疾患に関する公費負担で対応しておりますが、二十歳以降になりますと難病の指定をしておりませんので自己負担になる、こういうことに相なります。
  239. 小渕正義

    小渕(正)委員 大臣、お聞きのようにそうたくさん対象者の方はおられぬと思いますが、こういうふうに本人が一割負担することによって、そうやってもうずっと生きている限りというか五万一千円という高額療養の毎月の負担を背負い込む、こういう現象が発生するわけであります。だから、こういったものについては少なくとも、短期的な人だったら別ですけれども、こういう性格のものについては何らかの救済措置を講じていただかないことには、せっかくの高額療養費制度そのものの趣旨にもある意味においては反するのではないかと私は思いますので、ぜひこの点については何らかの善後策といいますか、対策を御考慮いただきたいと思うわけでありますが、その点いかがでしょうか。
  240. 渡部恒三

    渡部国務大臣 先生御指摘の血友病の問題、これは先生今御心配のとおりでございます。やはり今回の一割負担が実施されることによって非常に御心配になっておる問題だろうと思いますので、この法案を成立させていただいて施行されるまでに、各党の皆さん方の一致した御意見でこれを救済するような措置を講じろという御命令があれば、私はそれに謙虚に耳を傾けてそういう心配のないように努めなければならないと、今勉強しておるところでございます。
  241. 小渕正義

    小渕(正)委員 ひとつ、その点はぜひよろしくお願い申し上げておきます。  それから、これに準じたといえばちょっとあれでございますが、今回被用者本人が一割負担することによって生じるいろいろなふぐあいな点がございますが、その中で、現行では初診料八百円と入院した場合に一月間に限り一万五千円の負担で、あとは二カ月目からは本人負担なしでずっと療養できるわけです。ところが今回のような制度改革になりますと、二カ月目からこの高額療養費の五万一千円限度までの分についてはそれを負担していかなければいかぬ、こういう現象が出てくるわけであります。もちろん、勤労者でありますからそう長期にわたるということはありませんけれども、少なくとも最低六カ月、長い人では二年ぐらい病気療養という方は間々おられます。そういう人について、もう二カ月目からいきなり五万一千円の負担がずっと続いていくということは、これは余りにも急激な変化ではないかという感じがいたします。  したがいまして、初めてこうやって一割負担制度導入されるというからには、経過措置というか何らかの激変緩和措置を講じながらなだらかにそういう方向に行くようなことも、医療という問題における一つの政治の温かみとして当然考慮されなければならないことではないかと思うわけでありますが、この点に対する御見解をお聞きしたいと思います。
  242. 吉村仁

    ○吉村政府委員 確かに今と比べると相当な変化になるわけでありますから、激変緩和ということもこれは十分考えられる方法であろうと思います。  ただ、私どもは、こういう国民皆さん負担を願うという場合にはやはり公平ということを考えていかなければならぬのではないか。したがって、今回本人の場合に家族国保と同じような措置をとっていくことが、こういう苦しい全体の医療保険の財政の中におきましてはやはり公平というものを追求するのが政策としていいのではないか、こういうように考えておるわけでございます。
  243. 小渕正義

    小渕(正)委員 公平という問題も、これは非常に配慮しなければいけない大きな要素であります。しかし、制度が急激に大きく変わるようなこういう段階では、ただそのことだけでなしに、なだらかにそういった方向に移行するためには、当分の間そこらあたりに対する経過措置というものがあっても、これは何も公平の原則に外れることではないのではないか。まあこれは議論になりますけれども、そう思うわけです。もちろんこれは病気しなければ済むことでありますが、もしもそういった働く人が病気になり入院し長期治療を要する、しかもそれが高額負担をせざるを得ないような病気にかかったというときには、少なくとも経過措置としての期間ぐらいは何か考えるべきではないか。制度改革を新しく思い切ってやられればやられるほど、そういうきめ細かな配慮があって、初めて皆さん理解が得られながら制度というものが改革されていくのではないかと思うわけであります。この点は先ほどの点と一緒でございますけれども、ぜひ何らかの御検討をお願いしたいと考えるわけでありますが、いかがでしょうか。
  244. 渡部恒三

    渡部国務大臣 ただいまの点も、私が毎回申し上げておる、この一割負担は二十一世紀の将来の医療充実のために何としても認めていただく、しかし、この一割負担が実現することによって、サラリーマン家庭の皆さんが長期に病を患ったり重い病にかかったりして家庭生活が破壊されてしまう、そういうようなことにならないような努力はしたいということに共通する考え方でございますので、この委員会を通じて、各党の皆さん方の一致した御意見によって御命令を賜れば、十分検討してまいりたいと思います。
  245. 小渕正義

    小渕(正)委員 ぜひそこらあたりは、政治の温かさという意味でも、ひとつ御配慮いただきたいと思います。  最後になりましたが、話をちょっと戻しますが、先ほどから、給付一元化ということで六十五年度あたりを一応のめどにしながら努力されるということでございましたが、その際に私からも触れましたが、退職者医療制度の創設についてはそれなりに大きな意味を持つことについては否定いたしませんし、勤労者の皆さん方も、先輩のOBの人たちに対してそれが一つの助けになるということがあれば、それなりに理解できるわけであります。しかしどうしても理解できないのは、それだからといって国が逃げてしまった、逃げてしまったという言葉は悪いのですが、結果的にはそういうことになっておるわけであります。それは、金額の多寡は別として、やはり国も何らかの形でこれについては一体になっていくということがないと、国はちょっと責任を放棄したような感じにならざるを得ません。したがって、これからすぐ国庫補助を復活しろとかどうとかということではありませんけれども、そういう給付の統一・一元化という方向の中では、ぜひひとつ退職者医療制度について、先ほどの御答弁では制度制度として残るであろうということでございましたから、そうであればあるほど、その後の運営をどうするかは別といたしましても、やはり国の一半の責任だけは国も果たすという構えだけは、ぜひはっきりさせておいていただかなければいかぬのじゃないかと思いますが、その点をひとつ要望申し上げて、最後に、大臣の御決意をお聞かせいただきたいと思います。
  246. 渡部恒三

    渡部国務大臣 社会保険制度、これはでき得れば関係者の掛金で賄えることが望ましいことでありますが、しかし、過去の経緯を見ても、政府管掌の保険で財政が苦しい時期に国が金を出しておりますし、現在国保にも出しておりますし、これは社会保障全体としての国の大きな責任がございます。ただ、幸いなことに、現在、退職者医療がその系統に属する被用者保険は、今国が財政負担しなくても運営できる状態にありますので国費を投入しておりませんが、これは国費の投入をぜひ必要とするというような時点が来れば、またそこで考えていかなければならない問題であろうと思います。
  247. 小渕正義

    小渕(正)委員 その点、当然国としても何らかの、一半のあれがあるべきが原則であって、今回スタートするのは、たまたま過渡的にそういう措置をとらなくてもいいということであれば理解できるわけでありますが、ただそこのところを間違えないように、その原則だけはきちっとしておいていただきたい、こういうことでございますので、よろしくお願いを申し上げます。  では、これで終わります。
  248. 有馬元治

    有馬委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後六時二十五分休憩      ————◇—————     午後七時一分開議
  249. 有馬元治

    有馬委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。田中美智子君。
  250. 田中美智子

    田中(美)委員 質問の時間が決められておりながら、私がこの発言席に座ったにもかかわらず突然休憩ということは、同僚議員に対して失礼なやり方だと私は思います。今後このようなことがないように、正々堂々と闘うことが国会を民主的にすることだということを一言申し上げまして、質問に入りたいと思います。  自民党の第二次修正案というのがこの間出されました。それによりますと、「国民健康保険の被保険者給付割合を八割とするよう必要な措置を講ずるものとする」と書いてあります。あらゆる必要な措置が講じられるならば結構だと思います。しかし、この点についていろいろな疑問がありますので、質問いたしたいと思うのです。  この国会で吉村保険局長が、国保八割給付の問題について、他の議員の質問に対して、「八割にするには保険料を上げるか、国庫負担率を上げるか、財政調整するか、この道しかない。このことについていろいろ言われましたけれども、この辺の決断がまだつきかねるというのが現在の事情でございます。」、このように言っていられます。これは議事録にある言葉です。今の時点でどのような決断をなされたのか。この三つの中でどれを取り上げようとするような決断をなさったのか、お答え願いたいと思います。
  251. 吉村仁

    ○吉村政府委員 確かに国保給付率を上げるためには、保険料の引き上げをするか、国庫負担の引き上げをするか、それから財政調整という手段をとるか、この三つしか方法はない、これは申し上げたとおりであります。ただ、私どもは、政府としてのビジョンを提出いたしまして、六十年代後半に給付率の引き上げをしたい、そしてその場合にはいろいろなことを考えねばいけません、こういうように思っております。  現在出ておりますのは自民党の案でございまして、私どもは、なお政府ビジョンに書いてございますように、六十年代後半でないとなかなか難しいのではないか、この情勢判断には今も変わりはございません。
  252. 田中美智子

    田中(美)委員 大臣もその点はまだ決断をしていないのでしょうか。
  253. 渡部恒三

    渡部国務大臣 ただいま政府委員の答弁したとおりでございます。
  254. 田中美智子

    田中(美)委員 まだ大臣厚生省自体も、国保を八割にするということは決断し得ていない、単なる自民党の修正案であるということだと思います。  この修正案についての質問をして中身をはっきりさせておきたいと思うのですが、きのう公聴会がありました。ここで広瀬健保連専務理事が公述なさったわけですが、その中で、最近の議論で統合一元化、つまり財政調整などが言われているが、職域保険と地域保険は成り立つ適用条件が根本的に異なっており、統合一元化は観念論にすぎず、健保組合などの経営努力の減退をもたらし、かえって医療費の増高につながりかねない、このように述べております。  それからまた、吉村局長もこの国会で、「国庫負担の率を上げることによって八割給付ができるように展望するのは少し甘い、こういうように考えております」、また「それでは、全体に財政調整をやっていくというのは容易な道ではない、それもなかなか困難な道でございます」、それから「国保保険料を上げるというのも非常に難しい問題を含んでおります」、このように言っていられるわけです。そうしますと、財政調整というのは非常に困難であるということはこれでもわかると思います。また四月十九日の吉村局長のお話にも、広瀬さんと同じように、財政調整というのは観念論的であるということも言っていられる。財政調整というのは観念論的であるという点でも意見が一致していると思うわけです。そうしますと、組織の一元化財政調整というのはかなり難しいのではないかと思いますけれども、どのようにお考えになりますか。
  255. 吉村仁

    ○吉村政府委員 私は、財政調整の方を観念論だと言ったかどうかちょっと定かでないのでありますが、全医療保険を統合するのは観念論ではないかと言ったような記憶があるのですが、私は、財政調整というのは観念論ではないというふうに思っておるのです。ただ、財政調整をやっていく場合に種々の困難があることは事実でございまして、広瀬健保連専務理事がおっしゃっておりますように、確かに地域と職域とではいろいろな条件が違っておるわけでございまして、それを財政調整をしていくということは、かなりの条件整備をしない限り実現は難しいだろう。しかし観念論だとは私は思いません。しかし、全保険を統合一本化をしろというのは観念論に近いのではないかというように思っております。
  256. 田中美智子

    田中(美)委員 財政調整というのは統合の方向を向いているわけですから、そういう意味では非常に困難だ、財政調整自体も非常に困難だということを言っていられるのだと思います。  そうしますと、この財政調整でもってやるということが大変困難であるならば、一体どういうふうにして八割にしていくのかということですね。国保給付率を七割から八割に引き上げる場合に、一体国庫負担がどれくらい要るのか、どこから金を持ってくるのかということの試算ですけれども、八割になった場合に、もし国庫負担で出すとすれば、五十九年度ベースで幾らになるでしょうか。
  257. 吉村仁

    ○吉村政府委員 国保につきまして給付率を七割から八割に引き上げました場合、五十九年度ベースで申し上げますと、医療給付費が二千六百七十億円ふえます。そしてこの保険給付費の半分が国庫負担、半分が保険料、こういうことになります。ただ、それは老人保健に対する拠出金を含めて計算をしておりません。老人保健に対する拠出金を含めて計算をいたしますと国庫負担が千八百八十二億になります。そして保険料は七百九十億、こういうことに相なります。
  258. 田中美智子

    田中(美)委員 保険料というのはちょっとおかしいのじゃないかと思いますけれども国庫負担が千八百八十二億円になるということは私の試算と同じだというふうに思います。  では、もしこの一、二年の間に八割にするというならば、これだけの国庫負担を準備することができるのか、この点大臣、いかがでしょうか。
  259. 吉村仁

    ○吉村政府委員 現在の国家財政の状況からいってこれができそうにもないということで、私どもは直ちに実施することはできないということを言っておるのでございまして、私どもは、国保の八割給付というのは直ちにはできにくい、こういう意見を持っておるわけであります。  繰り返すようでありますが、あれは自民党の方でおつくりになった案でございますので、私どもはそれに同意するのはなかなか難しいのではないかというように思っております。
  260. 田中美智子

    田中(美)委員 自民党の修正案の中に八割というのがあります。細かいことがわかりませんと、国民は今でも七割なんだからせめて八割にしてくれという希望は非常に多いわけですので、ただ八割というふうに言いますと、大変結構だというふうに誤解をしてしまうのではないかというので、私はきょうははっきりさせておきたいと思うわけです。  今困難だと言われましたので、では国庫負担を全然ふやさないで、今のままでやっていこうというふうにしたらこれはどうなるかということですが、これは保険料を上げていかなければならないというふうになるわけです。国民保険料の収納率というのは年々下がっております。これは今までどれぐらいまで収納率が下がっているでしょうか。
  261. 吉村仁

    ○吉村政府委員 五十七年度で九三・六%ぐらいの収納率になっております。
  262. 田中美智子

    田中(美)委員 私がそちらからお聞きしましたのでは、昭和四十八年では約九七%の収納率だったわけですけれども、これは年々下がっているわけです。保険料が上がるに連れて収納率は下がってきているわけです。五十八年も九二%台ではないか、こう言っているということは、今の保険料の高さでも払い切れない人がふえているということを非常にはっきりとあらわしていると思いますが、その点はいかがでしょうか。
  263. 吉村仁

    ○吉村政府委員 国保の収納率が年々下がっていることは御指摘のとおりでありますし、その下がっている理由の一つに、国保保険料が年々上がってなかなか負担しきれなくなっておるというのが一つの原因であることは問違いございません。
  264. 田中美智子

    田中(美)委員 そうしますと、今、国保を八割にいたしますと千八百八十二億円の国庫補助が要るんだ。これに対して一銭も国庫補助をふやさないということで計算しますと、一体どれぐらいの今度の計算になるでしょうか。
  265. 吉村仁

    ○吉村政府委員 先生の御質問の趣旨は、国庫負担を全然ふやさないで七割を八割にしたならば保険料はどれぐらい上げなければならないのか、こういうことでございますか。
  266. 田中美智子

    田中(美)委員 先ほどの計算というのは、今の国庫補助の率でいっているわけですね。ですから今度それを全然ゼロにするということになりますと、もっと要るわけでしょう、国庫補助を出さなければならないわけでしょう、計算すると。わかりますか。先ほどの千八百八十二億というのは、吉村さんわかるでしょう、千八百八十二億というのは今の補助率でいくわけでしょう。これに今度は全然出さない、これ以上一銭も上積みをしないということになりますと、もっと上がりますでしょう。
  267. 吉村仁

    ○吉村政府委員 先ほど申し上げましたように、国保給付率を七割から八割にいたしますと、二千六百七十三億の給付費がふえるわけであります。それをどう負担するかということになるわけでございまして、国庫負担を一文も入れないという前提に立つならば、二千六百七十三億を全部保険料でもたなければならない、こういうことになるわけでございます。
  268. 田中美智子

    田中(美)委員 そうすると、この二千六百七十三億全部もたなければならないだけでなくて、今度老人保健の方の拠出金がありますね。この率が下がったとして、三百十八億というふうに私は計算してみました。前のときには五百何億かになるのですけれども、今度は率が下がりますから三百十八億ぐらいですね。これを足しますと二千九百九十一億円というもの、この金がないと八割にはできない。この金をどこから持ってくるかということになるわけですよ、国庫補助が出せないということになると。約三千億円近い金ですね。この金がないと八割にはできないんじゃないですか。どこから持ってくるかは別として。
  269. 吉村仁

    ○吉村政府委員 老人保健の拠出金は三百十八億ということは大体そのとおりなんでありますが、先ほど申し上げました保険給付費の二千六百七十三億の中には、老人保健の方に国保の方から出す金も入っております。
  270. 田中美智子

    田中(美)委員 いや、この二千六百七十三億の中には入ってないですよ。これに三百十八億足さなければならないですよ。入ってないですよ、計算してごらんなさい。入っていませんよ。おたくの方の試算で見ているのですから、それを土台にして計算しているんですから。
  271. 吉村仁

    ○吉村政府委員 先生のおっしゃるとおりでございます。申しわけありません。
  272. 田中美智子

    田中(美)委員 しっかりしてくださいよ、私の方が知っているようでは、あなた勤まらぬですよ。これだけ各党の議員から質問を受けて、今まで答えてきているわけでしょう。それがあなたミスするということはないですよ。ですから、二千九百九十一億円というのは正確な数字ですね、多少アバウトですけれども。アバウトで三千億円という金がないと八割にはできないということですね、今八割にしようとすると。そうですね、大臣
  273. 吉村仁

    ○吉村政府委員 そのとおりでございます。
  274. 田中美智子

    田中(美)委員 そうしますと、大臣さきほど、国庫補助はこれ以上は出せないんだ、八割にするとはまだあなたは決断はしてないけれども、自民党はすると天下に公表しているわけですね。あなたも自民党員ですから。吉村さんは知りませんけれども。そうしますと、この約三千億円というのも、全部保険料にかぶさる以外に、どこから金を持ってくるのですか。どこかから、月の世界からでもそういう金が来るんならいいですけれども、これは全部保険料にかぶさってくるわけでしょう。そうしますと、国保の加入世帯というのはどれぐらいありますか。
  275. 吉村仁

    ○吉村政府委員 国保の世帯数でございますが、市町村が千五百十六万世帯でございます。
  276. 田中美智子

    田中(美)委員 約千六百万世帯ですね。収入によって掛金が違いますけれども、一応これで割ってみますと、一世帯当たり年間一万八千七百円となるのです。こういうふうに物すごく保険料が上がるわけですね。  大臣、今のままでも収納率はどんどん減ってきているわけでしょう。そうなったら一体どうなるかということです。保険には加入しているけれども保険料は払えない、そういう人がどんどんふえてくる。だけれども、八割給付しなければならないということになりますと、国保財政は大変なことになるわけです。保険料は払わないけれども、病気になったときに保険証を持って病院に行くわけでしょう。医者が手厚い治療をする。そうしたら今度は、医者に払えないということだって起きてくるじゃありませんか。ですから、八割にするときには国庫補助をきちっとつけてやらなければだめなんですよ。自民党は、八割だなんてだまかすような言い方を簡単にしてもらっては困る。八割にするためには約三千億円の金が要るんだ、この金をどこから持ってくるか、これは保険料皆さんから、国民から取るんですよ、それでもいいですか。こういうふうにもっとはっきりと国民に、少なくとも加入者には知らせた上で——だから、ここの審議を十分にやっていかないと、共産党に一番後から修正案が来るような形で、八割給付だというようなことを言って、それで国民におれがやってやったんだなんというような顔をして、とんでもないことだ。大臣、そういうことを自民党にさせてはだめですよ、あなたは専門家なんですから。国保財政がつぶれてしまうのです。戦後一時あったじゃないですか。吉村さん、知っていますか。戦後医者に払えないときがあったでしょう。そんなことになったら大変なことになるのです。ですから、そういうペテン的なことに厚生省が加担するようなことなく、八割は結構です、だからそれに対して三千億円の国庫補助をきちんとつけてちゃんと必要な政策をとる、こういうのだったら、それも一緒にやっていただきたいということを強く言っておきます。  あんなに軍事費にたくさん金を使っていて、三千億円くらい何でもないじゃないですか。三千億円くらいちょっとそこから持ってくればいいじゃないですか。すぐ八割ができるじゃないですか。そういうふうにして八割はやるべきです。(発言する者あり)小沢さんみたいなおかしなことを言う人がいるから……(発言する者あり)途中からそういうことを言うからですよ。(発言する者あり)そういう大人げないことを言わないでやりましょう。
  277. 有馬元治

    有馬委員長 御静粛に願います。
  278. 田中美智子

    田中(美)委員 今度は高額医療費の問題です。  これはさんざんやられていたわけですけれども、例えば心臓疾患の手術、これは数が非常に少ないのですが、一千万円の医療費がかかった場合には今家族は三百万かかっているわけですね。それから、五百万円の治療費がかかりますと百五十万円家族にかかってくるわけです。それから、例えばがんの手術をした場合には百万円ですね、これは三十万円かかってくるわけです。そういうときは、療養費払いになっていますから窓口で全部払わなければならないわけでしょう。そして、後から請求して、高額医療費を抜いた分だけが戻ってくる、こういう仕組みになっているわけですね。これは大変な負担になっているのですよ。  それで、市中銀行ではだめだから労金に借りに行くとか、下手すればサラ金に行くという形になるわけですので、こういうやり方をやめてほしいと思うのです。それは何とかやめられませんか。窓口で全部払わなくてもいいようにできませんか。代理請求してもらうようにできませんか。
  279. 吉村仁

    ○吉村政府委員 確かに先生御指摘のようなことになるわけでございますが、窓口でそれができるようにするためには一つ難点があるわけであります。と申しますのは、現在の診療報酬の請求が一月単位、そして一つの医療機関で一つのレセプト、そして同じ世帯におきましても一人一人で診療報酬請求明細書をつくる、こういうことになっております。したがって、その月の第一日からずっと計算をしておって、政府案によりますと、ある時期に五万四千円になった、そこからはただにする、こういうことにせざるを得ないわけであります。ですから、医療機関としては毎日毎日、いつ五万四千円に到達するかということを計算せねばいかぬ、そこが一つの難点なんでございます。
  280. 田中美智子

    田中(美)委員 そんなのは難点じゃないです。もうちょっと病人の立場に立って考えてほしいのですね。その金を借りる場合に利子が大変なんですよ。労金で借りたって大体一〇%ぐらいの利子ですね。これは三カ月しないと戻ってきませんでしょう、療養費払いだと。そうすると、たとえ一カ月の病気にかかったとしても、それを払った場合には三カ月たたないと戻ってこないわけですから、借金は返せませんでしょう。すると三カ月分の利子がつくわけですね。三百万円借りたときには約七万五千円という利子がかかるわけです。百五十万円借りたときには労金で三万七千五百円かかるのです。それから、わずかなようですけれども三十万の金を借りたとすると七千五百円かかるのです。五万四千円にするというのを五万一千円にするかということで今国会で問題になっているのですけれども、これは大変な利子がかかるわけです。この利子をなくすということを何とか考える必要があるわけです。  毎月計算しなければならないからと、何年もばかの一つ覚えみたいに、いろいろな議員から言われたときに、いつも吉村さんはそればかり言っているのです。この利子をどうやってなくしてあげるか、その方法を模索していかなければいかぬのですよ。私にも考えがありますから言いますけれども、どうしたらいいですか、大臣
  281. 渡部恒三

    渡部国務大臣 私、たびたびこの委員会で各党の先生方に答弁しておりますように、この一割負担改革が成立して実施されることによって、サラリーマン家庭の皆さん生活を破壊するようなことにならないようなできる限りの配慮は払いたいと思っておりますので、高額療養費の問題等につきましては、この法案を成立させていただく時点で、各党の先生方の御意見に謙虚に耳を傾けまして、御期待にこたえられる面についてはできる限りこたえるように努力してまいりたいと思います。
  282. 田中美智子

    田中(美)委員 大臣、自分が出した法案が本当にいいと思うなら、胸を張ってこれをどういうふうに直すかということを聞いているのですから、この法案が通ったらちゃんとこれが直るのか、そういうことを答えないで、あなたそんなおかしいことはないですよ。この利子をどうやってなくすかということを模索してくれって私は言っているわけなんです。高額医療費の問題を今どうせよと言っているのじゃないのですよ。これだけでは済まないから、サラ金に行ったら労金の約四倍です。それで本当に大変なことになっているわけです。今窓口で代理請求制度というのがあるわけでしょう。これをどうしてできないのですか。これは行革でしょう。あなたは行革行革と言うけれども、窓口払いの代理請求制度をやれば、そこでぽんと金を払えばいいのです。私は毎月毎月なんてことを言っていない。吉村さんも、私が何を言っているか、ちゃんと聞いて答えてくださいよ。前の議員の質問の答えをあなたはしておるのですよ。前の議員は一カ月一カ月になって、前の月が一週間だ、その次が半分だ、一カ月だと思ってたところが二カ月になっていた、それの答えをしているが、そうじゃない、私の言っているのは。特定疾患の場合は窓口払いでやっておるでしょう。療養費払いでやっているじゃないですか。ああいうふうに窓口で払いさえすればそれで行革になるじゃないですか。こういうやり方があるなら、そういうふうにしたらいいでしょう。それができないのかと言うのです。その方が安上がりじゃないですか。どうしてできないのです。大臣、それをやるようにしなさい。
  283. 吉村仁

    ○吉村政府委員 私どもは、高額療養費負担が難しい人が全部サラ金に行くとは考えておりません。例えば公費負担医療というのもございますし、あるいは世帯更生資金の貸付制度もございますし、また、市町村における医療費貸付制度等も普及しておるようでございますので、全部が全部先生御指摘のようにサラリーマン金融へ行ってサラ金地獄に陥るというようには思えないのでありますが、確かにサラ金へ行けば先生おっしゃるようなことになるかもしれません。ただ、私どもは、これは国民生活の統計でありますが、現在一世帯あたり平均六百万円くらいの貯蓄を持っているという統計も見ておるわけでありますが、いろいろな形で高額療養費の部分の負担をやっていけるのではないか、こういうふうに思っております。
  284. 田中美智子

    田中(美)委員 あなた、人の言うことをきちっと聞いてなさい。サラ金のことなんかは、サラ金に行ったらと言っているのです。私は労金のことを言っているのです。労金で労働者はやっているのです。しかし、中にはサラ金に行くからああいう悲劇がたまには起きていると言っているのです。本題はサラ金じゃないでしょう。  それから吉村さん、今あなたの言ったのは日銀の調査でしょう、六百万貯金があるというのは。いいところだけをとって言っちゃだめですよ。日銀の調査を全部調べてみなさい。いいところだけ見て六百万六百万。へえ、みんな六百万か。日銀の調査では平均四百五十万の借金があるのです。貯金は六百万あっても四百五十万円の借金があるのです。ちゃんとそこまで見なければいけません。本当にあの人、ばかの一つ覚えみたいに六百万六百万。四百五十万円の借金があるのです。その上に、年間平均して八十七万円の借金を家計から新しく出しておるのですね。これは全部吉村さんのおっしゃる日銀の調査です。いかに適当なところを抜き出して、庶民に金を払う能力があると言わんばかりのことを言っているのです。わずか三十万の金さえなくてやっている人たちが、労金でも三カ月で七千五百円の利子があるのだ。だから、これをなくすことに努力すべきだと私は言っているのです。大臣に聞けばすぐ哀願ばかりして、通してください、通してください。通したらこれが直りますとか、そういうふうな答えをしなければだめじゃないですか。何を聞いても通してください、哀願ばかり言っている。  もう一つ、高額医療費の問題で、例えばこういう審議をしたことがあるじゃないですか。一世帯のレセプトが別々になっていますでしょう。一人でも科目によって別々、へたすれば五万一千円どころか十万二千円になるとか、家族も別々、月になればたった一日でも一カ月に計算されるとかいうことがあるわけでしょう。ですから、どのくらいの数になるかわかりませんけれども、膨大な高額医療費を払う人が出てくるのと、もう一つはレセプトがばらばらになっていますので、一つが五万一千円に足らないと、全部払わなければならないわけでしょう。四万円というところになれば全部払わなければならない。わかりますか、大臣。払う立場に立ってみたらよくわかるはずなんですよ。そういう場合を、今吉村さんがおっしゃったようになかなか改善できないのだ。一日一日計算していかなければならない、面倒なんだからそれはできないのだ。そうならば何か手はないか。一年間の医療費の一世帯の負担が幾らになったら、それ以上は払い戻してやるという手だってあるじゃないですか。五万一千円じゃ済んでないわけですから、それ以上多く払った場合には、例えば年間二十万円以上の医療費を払った人がいたらその以上のものは払い戻してやるとか、こういうやり方だってできるじゃないですか。矛盾を直すことができますでしょう。大臣、どうですか。
  285. 吉村仁

    ○吉村政府委員 現在の高額療養費支給制度の基礎を、レセプトでなしに領収書でやるという方式に転換すればそれはできるわけですが、けさほどからいろいろ私もおしかりをこうむっておるのですが、査定をした場合に、その一部負担金と査定額との間の調整を図るべし、その差は不当利得になる、そこを調整する方法がないのです。本当に観念的には成り立つのですが、なかなか難しい。そこを踏み切ることができるなら、領収書方式も不可能ではないと私は思います。しかし、現在の法制のもとでは、レセプトを基礎にして物事を考えるというシステムを崩すのはなかなか難しいと私は思っております。したがって、先生のおっしゃるようなこと、理論的には私はなかなか卓見だと思いますし、私もできるならそれはやりたいと思います。しかし、今のレセプトを基礎にした方式ではそれは非常に難しいということを申し上げておるわけでございます。
  286. 田中美智子

    田中(美)委員 私はできないことはないと思うのです。わかっているわけなんですから、やろうと思えばできないことはない。何でも難しい、難しい。そして結局、高額医療費といってもわずか五万一千円だという頭があなた方にあるのです。わずかじゃないのです。それだけでもわずかじゃないのに、これに利子がつく。その上にレセプトが非常に複雑になっていますので、レセプト単位になっていますので、五万一千円以上の金はかからないということはないのです。このことについては十分に検討して、改善の方向をとっていただきたいということを強く要求いたします。大臣、お願いします。どうですか。
  287. 渡部恒三

    渡部国務大臣 高額療養費の問題につきましては、幾たびかこの委員会で申し上げておりますように、今回の被用者保険本人に一割の御負担、これは二十一世紀の我が国の医療保険をより揺るぎないものにするためにどうしてもやっていただかなければならない。しかし、そのために家計破壊が起こったり、本当に重い病気になってもお医者さんにかかれないということのないような配慮というものは、私もできるだけ勉強しますし、またこの法律を成立させていただく時点で、各党の皆さんから御意見がありますれば、謙虚にその御意見に耳を傾けて、そういう方々に御心配ないように努めてまいりたいと思います。
  288. 有馬元治

    有馬委員長 菅直人君。
  289. 菅直人

    ○菅委員 この健康保険法審議の中で、参考人からの話を聞き、また昨日は公聴会において、何人かの公述人から話を伺ったわけです。私は東京の公聴会に出席をして、午前中の各公述人に質問もさせていただきました。その中で、観念的にはわかっていたことですけれども、やはり聞いてみると大変だなと非常に強く思ったことが一つありますので、そのことからちょっと厚生省の見解をお聞きしたいと思います。  大体、保険の考え方というのは、とにかく病気になったときに健康な人からある意味では相対的には助けてもらう、あるいは特に重い病気になったときに健康な人によって支えられるということが基本的な考え方だと思います。そう思うのですけれども、昨日の公聴会で、たしか副島とおっしゃる弁護士の方が進行性の脊髄小脳変性症の妹さんを持っておられて、その方が寝返りも打てないような状態でこの十数年間病院を転々としている。話を聞きますと、付添婦の費用がある時期には月に五十万円ぐらいかかって、兄弟で出し合っても、兄弟全部が崩壊しそうになった。弁護士さんと言えば、社会的に言えば一般的にはかなり負担能力がある階層だと思いますけれども、そういうところでさえ家庭崩壊の危機にさらされたということをしんみりと話されておりました。  その中で矛盾点が指摘されたのは、基準看護病院であれば付添婦が要らないということになっているわけですけれども、実際上は、そういう患者さんの場合は大変病状が重いので、今の状況では看護婦さんだけに任せるのも、家族としてもなかなか厳しい状況がわかる。そういうことで、結果的には、合法的ではないと知りながらも、両方納得の上で付添婦をつけざるを得ないということがやはり現実に行われているわけです。  そういう意味から考えたわけですけれども、この付添婦というものをある病状以上の人には保険制度の中で認めて面倒を見る。単に病院そのものの基準看護であるとかないとかということだけではなくて、ある意味では病状によって保険で付添婦を見るような制度というものを考えていかないと、こういった事例に対してはなかなか対応できないのではないか、そういうことを考えたわけでありますけれども、それについての厚生省考え方を伺いたいと思います。
  290. 吉村仁

    ○吉村政府委員 確かに先生の御提案は貴重な御提案だと思います。確かに私ども医療についてどこをどうすればよろしいかというのはいろいろあるんだと思うのです。ただ、それをやる場合には、やはり端的に申しましてお金がかかる、そのお金を出すか出さぬかということでございますし、お金に一定の限度があるとすれば、どれを優先するかということなんだろうと思うのであります。今の御提案というものを実施するとすれば、どこかで何かの費用を支出するということになるわけでございまして、その辺も考え合わせて初めて実施できるかどうかということになるんだろうと思います。  御意見としては、私は十分わかるつもりでございます。
  291. 菅直人

    ○菅委員 この患者さんの場合には、特定疾患の難病指定を受けているということで、いわゆる医療費そのものはそういう制度によって個人的な負担がないので、その点は大変助かっているんだ。しかし、今申し上げたように、医療費にまさるとも劣らないほどの自己負担がどうしてもその患者さんを抱えていくためにはかかる。大臣も、きょう朝以来、もっと言えば大臣になられて以来、福祉の問題について発言としては大変前向きな発言を繰り返されているように思うわけですけれども、まさに今局長が言われたように、それは費用がかかることだと思うのです。費用がかかることですけれども、しかし、重い病気の人に、ごく一部の限られた人に負担が集中的にかかることを避けるのが保険制度基本的な考え方だとすれば、そういうことについては額もかなりに上るかもしれませんけれども、それにしても別に何千万人がそういう状況だというわけじゃないのですから、そういう道をぜひ開いていただきたいと思うわけですが、大臣の見解を伺いたいと思います。
  292. 渡部恒三

    渡部国務大臣 先生の御心配、考え方としては私も全く同様の考えを持っております。ただ、これを具体的に実行するということになりますと、かなりの予算が伴うものでありますから、これから検討してまいりたいと思います。
  293. 菅直人

    ○菅委員 ぜひ前向きな検討をお願いして、次の問題に移っていきたいと思います。  五月十日の質疑の中で私からもお聞きをし、またきょうの午後でしたかの質疑の中でも、多賀谷先生が質問されていた減額査定の返還の問題ですけれどもさきの質問から約二カ月が経過をしているわけですけれども、この間のことについてちょっとお聞きをしておきたいのです。  五月十日の私からの質問に対して吉村局長の方から、そういうことの患者さんへの通知を逐次実施に移していきたい、こういうふうな答弁をいただいているわけですが、まだ二カ月とも言えるし、もう二カ月間たったとも言えるわけですが、具体的な何らかの動きはありますか。
  294. 吉村仁

    ○吉村政府委員 あのときに私は金額が大きいものから始めていきたい、こういうように申し上げたわけでありますが、それはやはり具体的に実施の運びにするためにはいろいろな事務量なり費用なりを積算しなければならないわけでございまして、どの程度のものから始めるかということについて今、省内で検討を始めております。
  295. 菅直人

    ○菅委員 既に具体的に、東京の三多摩のある公立病院で、三月分で二万点程度の減点査定をされた。もちろんこれは各患者さんに振り分けるわけですから、どの程度の個人への返還金額になるかは詳細にはわかりません。そこで、その公立病院が関係している自治体の議会などでも問題になっているわけですけれども、病院自身がどういうようにしていいかよくわからない、東京都に何らかの指導を仰ごうにも、東京都の方からの指導もないという状態で、問題だけは社会的な問題になっているにもかかわらず、行政的な対応がまだ何もおりてこないので困っているという事例を具体的にも聞いているわけです。そういう点で、従来たしか昭和三十五年でしたか、この件についての通知を出されていると思いますけれども、こういう新しい状況に対応して、少なくともこの程度以上の金額を返還するのについては何らかの形で通知するようにといった新しい通知なり通達なりを出されることが必要だと思いますけれども、その時期的な可能性も含めてもう一度お尋ねしたいと思います。
  296. 吉村仁

    ○吉村政府委員 今先生御指摘のように、一定金額をどれくらいにするかということを今検討しておるわけでございまして、その辺が固まり次第私どもは新しく対応をするつもりでございます。
  297. 菅直人

    ○菅委員 この健康保険法審議の中で、自民党の方から逐次修正提案が各党に対してなされてきております。それから、その前に厚生省からもいわゆる中長期ビジョンというものが出されたわけですけれども、これらの考え方の中で、例えば負担なり給付公平化するという考え方、この水準をどこに置くかということでは、自民党や政府と我々の考え方にかなり差があるように私は思いますけれども、しかし、負担給付公平化するということそれ自体は、一つの考え方として、私たちも十分に検討に値するものだと考えております。しかし、今回の中身について、これはもう最初の審議のときから出ておりますけれども、結局のところは、給付率そのものが部分的じゃなくてトータルで見ても下がっている。つまり給付率を全体的に下げておいて、それによってむだを排除するんだという言い方は、どなたかもおっしゃっていましたけれども、余りにも芸がないんではないか。つまり中身を組みかえることによってむだなことをいろいろと排除する、あるいは通知運動などによってむだを排除するということで、トータルの医療費のむだな伸びを抑えるということは基本的に大いにやるべきだと考えておりますけれども、ただ自己負担をふやすことによってそういう効果を期待するというのは、余りにも芸がないというふうに思うわけです。  そこで、私の前の田中委員の方からも質問があったようですけれども、少し視点を変えてお尋ねをしてみたいと思うのです。  今年度の予算あるいは平年度ベースで、今回の法律改正によって国保への補助金のカットというのは幾らになるのか。そのことをまずお尋ねしたいと思います。
  298. 吉村仁

    ○吉村政府委員 退職者医療制度の創設に伴う分が約二千四百億円でございます。(菅委員「平年度は」と呼ぶ)これは七月実施としてでございます。  それから、国保に対する国庫補助率の引き下げに伴うものが約千四百億でございまして、合わせて三千九百億程度でございます。
  299. 菅直人

    ○菅委員 平年度のベースだと大体どのくらいになりますか。
  300. 吉村仁

    ○吉村政府委員 今の数字の五割増し程度だと……。
  301. 菅直人

    ○菅委員 五割増しというと約六千億ということですが、それで先ほどの質問にもありましたけれども国保給付率、現在の七割を八割に引き上げるのに必要な財源、これは別に国保とかなんとかに限らず、七割給付を八割に引き上げるのに必要な財源の額はすべてをトータルして幾らになりますか。
  302. 吉村仁

    ○吉村政府委員 今先生の御指摘は、国保を七割から八割にするだけではなしに……(菅委員国保」と呼ぶ)国保だけでございますか。——国保につきましては、先ほど田中先生の御質問にお答え申し上げましたように、七割から八割にすることによりまして保険給付費が二千六百七十三億、そして国庫負担は千八百八十二億、保険料は七百九十億ふえる、こういうことになります。
  303. 菅直人

    ○菅委員 ですから、私は別に国庫と保険料に分けてほしいとは言わなかったわけです。これを別に分けるか分けないかは、補助率の出し方の法律改正そのものを出しておられるわけですから、その率の問題で、一〇〇%国庫補助で賄うか、一〇〇%保険料で賄うか、それはいろいろなやり方があるわけでありまして、とにかく二千六百七十億、約三千億弱ですね。つまり今回の法案から言えば、国保で六千億の補助金をカットしようとするわけです、大臣。それでいながら、一方では、三千億そのものは大きいですけれども、六千億に比べれば半分足らずの費用で行える給付率の上昇については、いや、それもできないんだ、それもまだ先の話なんだ、六十五年度以降なんだというのが自民党の考え方のようです。つまり、一方的に切り下げの方だけを先行させて、引き上げる方についてはさらにさらに後回しということで納得をしろと言われても、これがいわゆる公平化のためにやられていると言われても、全部をだんだん下げていくための一里塚であるというふうに疑われても、あるいはそう見られても仕方がないのではないか。  従来から何度も大臣は言われておりましたけれども、今回切り下げの提案をする大臣をやった以上は、切り上げるときにもぜひ大臣をやりたいものだという答弁を何度か伺いましたが、どうでしょうか、ここでこの大臣の任期中のこの法案の中で、そういう形での切り上げも同時に実行する、そういうことを約束していただけませんか。
  304. 渡部恒三

    渡部国務大臣 先生も今、社会保障のあるべき姿としては給付が一つになることは望ましい、私どもと同じ考えであることをお示しいただいたのですが、今回は十割給付という今の保険の中で一番恵まれた条件にある方に一割の御負担をお願いするわけでありますが、しかし同時に退職者医療を創設して、現在国保に加入して七割給付の先輩の皆さん方は今度は八割に上がっていくわけでございます。ですから、これと一緒に国保の七割を八割に上げるということがこの改革案の中に提出しているようなら、私もこれほどいじめられていないわけでありましょうが、しかし残念ながら、考え方先生と私と同じでありますけれども、現在の保険財政、また国の財政状態が、今国保の七割を八割にするような状態にないので、私どもは将来目標としてそういう方向にできるだけ早い機会に持っていけるように努めてまいりたいと思います。
  305. 菅直人

    ○菅委員 今の大臣の話にもありましたけれども、何かサラリーマン本人が十割だと、一番恵まれているという言い方をしきりにされるのですね。しかし、考えようによれば、サラリーマンの人たちが健康保険組合をつくって、その費用の中で、政管の場合は一部の国の補助はありますけれども、多くの組合は別に国の大きな補助を受けてやっているわけではない、そういう制度の中でこの給付を行っている、そういうところでやっていることそれ自体が何か不公平だという言い方をされるのは、必ずしも当たってないのじゃないか。負担をサラリーマン本人はしているわけですから、その負担の仕方をもっていろいろな形で老人保健などにも拠出をしているわけですから、同じ税金でこっちの人はたくさんもらって、こっちの人は少ししかもらっていない、だからたくさんの人は少しの人に分けなさいという言い方で言われているとしたら、これはかなり認識が違っているのじゃないか。この点は今後の物の考え方にも関係するので、ぜひ指摘をしておきたいと思います。  時間もそろそろ終わりですので、最後に、医療保険制度一元化の問題、今の問題とも絡みますけれども、一言だけ厚生省考え方を聞いておきたいと思います。  一元化という方向も、私は負担給付についての公平という方向については、一つの十分検討に値する考え方だと思いますけれども、それが制度的な問題の一つの統合のような形になってくると、結果的にはより非効率な面が生まれてくるのでないかということを心配するわけです。これは厚生省の文章ではありませんが、自民党の方から出てきている文章にそういう言葉も使われておりますので、この点についての厚生省基本的な考え方をお聞きしたいと思います。
  306. 吉村仁

    ○吉村政府委員 医療保険制度一元化というのは、私どもは、給付負担の両面に見られる格差というものを是正して、すべての国民にとって公平な制度になるような措置一元化、こういうように考えておるわけでございまして、その一元化を図る手段として、全制度を統合して一本化する、こういう方法もございましょうし、また制度は現在のように分立したままで、例えば財政調整を図るというようなことによって給付負担の面での公平化を図っていく方途もあると思います。したがって一元化というのは、私どもは、そのやり方はいろいろな方法があるけれども、そういう全医療保険について給付負担の公平を図るような措置をとることを考えておるわけでございます。
  307. 菅直人

    ○菅委員 これで終わります。
  308. 稲垣実男

    ○稲垣委員 議事進行。——委員長、議事進行……(発言する者、離席する者多く、聴取不能)
  309. 有馬元治

    有馬委員長 暫時休憩して、直ちに理事会を開きます。     午後八時三分休憩      ————◇—————     〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕      ————◇—————   〔本号(その一)参照〕     —————————————    派遣委員大阪府における意見聴取に関する記録 一、期日    昭和五十九年七月四日(水) 二、場所    日本生命御堂筋八幡町ビル十二階会議室 三、意見を聴取した問題    健康保険法等の一部を改正する法律案について 四、出席者  (1) 派遣委員    座長 愛知 和男君       自見庄三郎君    長野 祐也君       永井 孝信君    森本 晃司君       小渕 正義君  (2) 現地参加委員       浦井  洋君  (3) 政府出席者         厚生省保険局国         民健康保険課国         民健康保険指導         室長      日高 邦博君         社会保険庁医療         保険部長    坂本 龍彦君  (4) 意見陳述者         住江織物株式会         社代表取締役会         長       秋山 良三君         大阪生活協同         組合連合会副会         長         北大阪医療生活         協同組合理事長 大津 静夫君         大阪大学社会経         済研究所教授  筑井 甚吉君         仏教大学社会学         部教授     高屋 定国君         香川県善通寺市         長       平尾 勘市君         全日本労働総同         盟大阪地方同盟         書記長     本田 精一君      ————◇—————     午前十時開議
  310. 愛知和男

    愛知座長 これより会議を開きます。  私は、衆議院社会労働委員会派遣委員団団長の自由民主党・新自由国民連合愛知和男でございます。  私がこの会議の座長を務めますので、よろしくお願いいたします。  それでは、派遣委員の御紹介をいたします。  自由民主党・新自由国民連合の長野祐也君、自見庄三郎君、日本社会党・護憲共同の永井孝信君、公明党・国民会議森本晃司君、民社党・国民連合の小渕正義君の六名であります。なお、現地参加委員として、浦井洋君が出席されております。  この際、派遣委員を代表いたしまして、ごあいさつを申し上げます。  皆様御承知のとおり、ただいま本委員会におきましては、健康保険法等の一部を改正する法律案について審査を行っているところであります。  当委員会といたしましては、本法案の審査に当たり、国民各界各層の皆様から御意見を聴取するため、御当地におきましてこの会議を催し、各界の代表の方々から忌憚のない御意見をお伺いしようとするものであります。  御意見をお述べいただく方々には、御多用中にかかわらず御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。  まず、この会議運営につきまして御説明申し上げます。  会議の議事は、すべて衆議院における委員会運営についての議事規則及び手続に準拠して行い、議事の整理、秩序の保持等は、座長であります私が行うことといたします。発言をなさる方々は、座長の許可を得て発言していただきたいと存じます。  なお、この会議におきましては、御意見をお述べいただく方々は、委員に対しての質疑はできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきをいただきたいと存じます。  次に、会議の順序につきまして申し上げます。  最初に意見陳述者皆さんから御意見をそれぞれ十五分程度順次お述べいただきました後、委員より質疑を行うことになっておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。  次に、各界を代表して御意見を述べていただく方々は、住江織物株式会社代表取締役会長秋山良三君、大阪生活協同組合連合会会長北大阪医療生活協同組合理事長大津静夫君、大阪大学社会経済研究所教授筑井甚吉君仏教大学社会学部教授高屋定国君、香川県善通寺市長平尾勘市君、全日本労働同盟大阪地方同盟書記長本田精一君、以上の方々であります。  それでは、秋山良三君から御意見をお述べいただきます。
  311. 秋山良三

    秋山良三君 それでは、私の意見を申し述べさせていただきます。  我が国の健康の水準は、戦後飛躍的に向上してまいりました。最近の平均の寿命は、昭和五十七年度で男子が七十四・二二歳、女子が七十九・六六歳でありまして、戦後の昭和二十二年当時、男子五十・〇六歳、女子五十三・九六歳と比べますと、二十五年程度平均的に寿命が延びてまいり、今や世界で有数の長寿国となり、人生五十年型から八十年型社会に移行しているのでございます。  このような保健水準の向上の背景には、所得水準の上昇等の要因もございますが、昭和三十六年に国民皆保険体制がとられて、医療保険制度が充実されてまいりましたことが大きな要因であろうかと存じております。医療保険制度のおかげで、国民医療機関を自由に選択し、最近の医療技術によって治療を受けることが可能となりました。  しかし、医療費の伸びを見ますと、皆保険の前年の昭和三十五年に国民医療費は四千億円でございましたが、昭和五十六年には十二兆九千億近くになりまして、この二十年ぐらいの間に三十一倍となりました。五十七年度は十三兆八千七百億円と言われております。一方国民所得は、昭和三十五年の十三兆二千億円から昭和五十六年の二百二兆四千億円と、十五倍しか伸びておりません。  このように経済成長率を上回って医療費が伸びている原因を考えてみますと、まず疾病構造の変化と人口の高齢化が挙げられるのではないかと思います。かつての亡国病と言われた結核などの伝染病系が減少して、脳や血管、心臓の疾患、いわゆる成人病が著しく増加して、これらの疾病は治療に長期間を要し全快しにくいものがありますので、どうしても医療費が増加してしまうことになりましょう。また、高齢者はこのような成人病が多く、さらにかかりやすく治りにくいということから、高齢化が進むことに従って医療費の増加は避けられないと存じます。六十五歳以上の人の医療費が他の人の四・一倍になっておる事実がこれを示しております。  このほかの要因としては、医療技術の高度化があります。電子工学等の科学技術の進歩は目覚ましく、CTスキャナーを初め診断治療技術が飛躍的に向上しておりますが、このような診断治療機械が極めて高価であるように伺っております。これが広範囲に普及すると、医療費に与える影響も大きいと言えそうでございます。  これらの要因を考えますと、今後急速に高齢化が進むために、医療費はさらに増加するものと思われます。しかし、これを賄う経済負担能力はと申しますと、御承知のとおり、二度にわたる石油ショックを経て減速経済時代となり、かつてのような高度成長は今のところ望めない状況にあります。高度成長期には医療が伸びても経済全体の伸びの中に吸収されたわけでございますが、今後の低成長経済の中では、医療費の伸びをなるべく経済の負担能力の範囲に抑えていくことが重要な課題となりましょう。我が国の経済は二度にわたる石油ショックを乗り越え、減量経営をなし遂げてまいりましたが、医療保険制度においてもこのような減量経営へのかじ取りの重要な時期に来ていると推察されます。  一九八一年において租税負担二四・二%と社会保障負担一〇・八%を合わせた公的負担率は、対国民所得比では三五%程度でありますが、年金が今後成熟化していきますと、その負担は増加せざるを得ません。また、全体の公的負担率は、やはり五〇%を超えてまいりますと社会全体の活力が失われていくというように言われております。先進西欧諸国にその例が見られるわけでございます。活力ある福祉社会を維持するためにも、医療費負担率はこれ以上なるべく増加しないようにすることが重要な課題だと存じております。  このような時期において今回の健康保険制度改正案が出されまして、その改正案内容を見ますと、一に医療費適正化、二に保険給付見直し、三に負担公平化、この三本を柱としてこの改正案が示されたと聞いておりますが、この案を拝見いたしまして、私は大筋において妥当だと存じております。  被用者本人については六十年度までは一割負担、それ以後は二割負担ということですが、家族が入院八割給付、外来七割給付国民健康保険が七割給付であり、公平という観点から見れば、医療保険全体の給付率はそろえてもよいのではないかと考えますので、私としては賛成申し上げます。  やはり十割給付でありますと、過剰な診療が行われやすいことは否めないことであって、被用者本人について検査や投薬が多いと言われていることも、十割給付が原因ではないかと思われる節がございます。  さて、健康管理に十分に気をつけることによって予防管理ができる時代になってきていると思いますし、国民全体が健康管理がいかに必要であるかということを意識されております。また、健康の保持と疾病の予防が国民一人一人の責任であることを明確にする必要があると思われます。定率負担によってかかった医療費がわかることによって、医療費の効率化が図られることになるでしょうし、このように自己責任を建前とすれば、健康管理に努めた人も努めてなかった人も同様に保険料負担を求めるという方式よりは、医療にかかった際に患者、つまり受益者でございますが、受益者として受益に応じていただくように適正な負担を求めてもよいのではないかと考えております。  したがって、定額でなく定率負担とすることがベターだと存じております。定率負担であれば、仮に一千万円の医療費の場合において、一割負担では百万円の負担となりますが、高額療養費支給制度によって月額五万四千円の頭打ちがありますので、定率負担導入によって家計が崩壊するようなことはないだろうと存じております。ただし、私は、この限度額については、経済社会情勢の変動に対応して適時適切な改定が行われるように必要なルール化を図っていただきたいと考えておるわけでございます。  私の会社のことを申し上げてどうかと存じますが、私の会社は、会社自体で運営しておる健康保険組合を持っておりまして、四年前から、毎月給料日に被保険者に対して保険医療費の明細とその項目別、件数別の内訳書を渡して、会社の組合ではこれだけの負担をしておるぞ、被保険者の皆様の家庭で支払った医療費はこれだけだという説明をしておりますが、この内容を説明した結果、我々の中の病気の発生率は、幾分認識度が高まったと同時に、金額負担のことの確認ということで、十分な健康管理に対して従業員が非常に認識度を高めてきた好影響が出ております。それで、この内容を従業員は一年間保存いたしまして、三月十五日の確定申告にこの明細書を税務署に出せば、そこで税法上ございます医療費所得控除の恩典に役立たしておるわけでございます。  この内容が簡単に整えられることは、組合保険であるからこういうことが簡単にできておるわけでございますが、この一割負担とか二割負担とかの率の問題とは別に、被保険者医療機関で支払ったときに、その際にその窓口でレシートを渡していただければ、政管の被保険者も年間の医療費の合計を知り、所得税法のこの恩典に浴せるのではないでしょうか。私は、こういうことをこの際に利用できるような方策を考えていただきたいと思うのでございます。  さて、医療費に対する国民の不信感もかなりあるように言われておりますので、不正な請求や濃厚過剰診療による医療費のむだや不合理な部分があるとすれば、これを排除するための医療適正化対策をさらに進めていただきたいと存じます。  政府は、医療費の伸びを中長期的に経済成長程度にしたいということでございましょうが、ぜひその目標を達成するような各般の適正化対策を積極的に推進するよう要望申し上げておきます。  また、給付負担公平化措置として、昭和六十年代後半に八割程度で給付の統一と財源の調整等による負担公平化を図ると言われております。これが厚生省の長期ビジョンのようでございます。この具体案は今後詰められると存じますが、一つの考え方として、全国一本の制度に統合するというものもあるようでございますが、医療保険制度において、健康管理を十分やって医療費を下げるような制度運営が重要であり、そのためには、現在のような健康保険組合制度のような小集団方式の方が運営がうまくいくかと存じております。確かに、制度ごとに高齢者の加入状況が異なることによって、医療費の不合理な格差があって、それが老人保健法によって解決が図られた例があったとは承っておりますが、制度間の不合理な格差、例えば今回提案されております退職者医療制度もそうでありますが、このような点について調整を図ることは一つの考え方と思われますが、小集団方式によるメリットをなくすような統合論は、かえって医療費の増加を招くのではないでございましょうか。私としては反対であることを申しておきたいのでございます。  退職者医療制度については、長年その実現を望んでおりましただけに、制度の創設が図られることは高く評価しておりますが、将来の財政負担がどうなるのか、負担について歯どめみたいなものが考えられないのかどうか、さらに御検討していただきたいと存じます。特に、退職者医療制度運営国民健康保険で行われるので、制度運営が適切に行われるよう、政府の指導を望みたいと存じます。  最後に、今回の改正案は、健康保険制度改正だけでありますが、今後の医療考えた場合、医療供給体制のあり方、健康づくりの進め方など、医療制度そのものの改革も図っていくことが重要であり、こちらの面の今後の具体的の改正案がないのが残念でございます。「予防にまさる治療なし」という言葉があるように、健康づくりを国民運動として推進することが一番大切でございまして、一部は厚生省の長期ビジョンの中でも触れてはおられますが、その具体的方策が早く示されることを希望いたしまして、私の意見を終わらせていただきます。
  312. 愛知和男

    愛知座長 ありがとうございました。  次に、大津静夫君にお願いいたします。
  313. 大津静夫

    大津静夫君 大津でございます。  社労委の先生方が、国民の健康を守るため健康保険法等改正案に慎重な審議をされていることに対し、まず敬意を表します。  私たちは、まず先生方にお願いしたいことは、本日の公聴会が終わったとして、明五日の社労委で採決を行われないことをお願いしたいのであります。公聴会の意見を十分法案審議に反映させていただきたいと存じます。  私は、社労委の先生方なりその他の御意見がほぼ出尽くしておるように考えますので、少し違った観点から反対意見を述べてみたいと存じます。  まず第一に、このほど厚生省のPR文書「健保法主要質疑応答」「(問二)政管健保黒字のときに、九割・八割に給付引下げの必要なし。」というのがありますが、その答えが振るっています。「1タダは、ムダを生み易い。」とあります。全く厚生省はあきれ返った御認識と言わざるを得ません。被保険者本人は、高額の健康保険料を毎月支払わされております。その上、病気になれば差額徴収、ベッド料、付添料、保険外負担等々の数々を負担せざるを得ません。これは、いかにPR文書といえども、取り消していただきたいと考えます。また、本人十割給付は、健保制度発足以来、各産業、職域の勤労者本人の健康権として、かつ、社会的にも位置づけ、効果を上げてきたものであります。  第二に、かつて三K赤字と言われた健保財政は、黒字に転化したのは御承知のとおりであります。政管健保昭和五十六年度から黒字続きであります。健保組合の資産は一兆円を超しています。国保は五十七年度一千八億の黒字であります。赤字市町村は二百八、赤字額は三百五十三億円でありますが、その五二%は、大阪市百二十一億円、札幌市六十三億円でありました。老人保健法施行その他で、大阪市は五十八年度国保は十一年ぶりの黒字約十億円に好転をいたしております。  三、国民医療費の増大は確かにあります。昭和五十八年度は十四兆五千三百億円と推定されます。しかし、医療費の国際比較、これを「厚生の指標」五十八年版で見ますと、一九八一年度の日本の国民医療費の対国民所得比は六・三六%、イギリスの六・五九%と比較してみても、やや低い水準です。西ドイツの九・五二、フランスの九・二七と比較すると三%以上も低いと述べています。そして、老人医療費圧力で上昇したのを加算したとしても七・五%と言っておりまして、最後に「国民医療費の対国民所得比が老齢化の成熟度を考慮しても欧米諸国よりなお低水準であるという事実は日本医療のすぐれたパフォーマンスを示すものであろう。」と述べています。これが厚生省の見解であります。日本の国民医療費は、GNP比で先進国中最低であります。  高齢化社会に向けて、健康つくり、健保制度の民主的改革は、当分の期間国民の中で具体的展望も含めて論議を尽くすことが可能であり、妥当であります。財政的見地からのみ早急に、しかも健保制度の根幹を崩しかねない今回の健康保険法等改正案に多くの反対が出るのは当然であり、最初から出直すべきであると考えます。  四、国民の生命と健康は、依然として高い有病率を示し、五十七年度有病率は一三八・二、これは千人に対する率です。国民七・二人に傷病一件の割合です。前年は七・七人でありました。受療状況は、五十六年七月十五日調査時点において、国民十三・八人に一人が何らかの受療をしております。人口の老齢化は、昭和五十七年十月一日現在、六十五歳以上が人口千百三十五万人、総人口に占める割合が九・七%、年々増加して、二十一世紀の老年人口一人当たり生産年齢人口(十五歳から六十四歳まで)四・三人となります。これは厚生白書であります。  この中で政府は、福祉切り捨て、軍事費突出予算を組み、高齢化社会に重要な保健医療福祉優先政策をおろそかにし、財界主導の臨調行革路線により財政対策偏重の医療費抑制政策を行い、国民の健康を軽視しています。  五、その観点から、私は老人差別法と言っている老人保健法施行より一年有余、七十歳以上の老人は別枠に入れられ、老人医療費有料化、外来月一診ごと四百円、入院一日三百円掛ける二カ月負担、そしてこれから先が問題でありますが、点数出来高払いを巧みに操作いたしまして、老人診療報酬点数表の適用区分、先生方はごらんになったらおわかりのことと思いますが、病院ランクをつける、入院料を逓減する、入院、外来の検査料、注射料区別等々、かくして老人医療の締めつけ、老人の病院締め出し、また差額負担、おしめ料とかお世話料、ベッド料を半ば公然と老人本人及び家族から徴収をし、不安と破綻が広がっています。受診の抑制は明らかであります、厚生省、行政は知らぬと言っております。これらについてどうか至急に実情調査をお願いいたします。  大阪府でも、老人ホームの建設申請が百三十件も殺到して、そして、いまだに保健婦が一人もいない町村が全国的にもあり、保健事業は遅々として進んでいません。この結果、老人医療費は毎年一〇%近く伸びてきたのでありますが、——ちなみに申し上げておきますと、老年人口の一割につきまして総医療費は約三割ということは先進諸国の常識であります。ここにおいて、この一〇%近い伸びが三から四%の伸びにとどまることが明らかになりました。これは先生方の論議の中で吉村保険局長が述べておるとおりであります。今回の健保法改正案も、まあ勘ぐりますと、厚生官僚がこの状況に悪乗りしての構想ではなかろうか。現実を直視し、老人保健法の根本的な改善こそ急務と言えましょう。先生方にお願いをしたいのであります。健保法改正案の社労委審議で大方の意見は出ておりますから、どうかそういう点で老人保健法についての至急な御調査と改善を望みたいのであります。  六、庶民の立場から申しますと、退職者医療制度は、退職者をまた別枠に入れまして、厚生省は金は出さぬが口は出す、まあそういうことであります。  それから、高額療養費について庶民の感情は、支払いは別々で財布は一つ、全くこれで高額療養費と申します。  次に、特定療養費でありますが、特定承認医療機関は差額徴収の公認に通じます。高度とか特定とか特別という差別、全く金の切れ目が命の切れ目でないでしょうか。  日雇い健保の廃止について申します。本人保険料は上がります。事業主負担はさらに高くなります。拠出金もかけられます。これで果たして雇用いたしますか。失業者がふえることを心配いたします。  国保であります。やや身軽になるからといって国庫補助を削ります。どこからそれを補いますか。  総じて今回の健保法改正案は、低所得者ほどもろに被害を受け、保険医療から遠ざけられ、負担給付公平化にはなりません。  本人一割負担、これは健保組合その他は附加給付で吸収してしまうでしょう。ますます分断、格差が広がります。国民の生命と健康を守るため、健保給付は十割給付を統一目標に定めて、国民とともに中長期の努力を続けるべきではないでしょうか。  七、薬づけ、検査づけ医療、保険あって医療なし、また一方において「病院倒産時代が来たのか」、毎日新聞の三月三十一日の社説です。まともな医療ができない状態にあります。そして国民医療に対する不信が広がっています。この不信感をなくすることが最も大切であります。我が国の医療は、よく言われるように、低医療費政策を下敷きに、国民皆保険制のもとで開業医制、私的医療機関が主軸で、診療報酬出来高払い制であります。これらの矛盾が絡み合います。予防、保健の軽視、治療の偏重、リハビリから社会復帰までの一貫性、総合性に欠けています。保健医療への住民の参加、協同の視点が希薄であります。医療費を増高させる要因でありまして、水面下では一部の営利医療、人権侵害を許すことになります。  私たちは生協法人で、一万四千世帯の組合員、二病院、一診療所、組合員協同による地域保健医療事業を運動と統一して行っています。そして差額徴収は一切なし、差別なしで、組合員に最大の奉仕を目的として、営利を目的としていません。生協法第九条のとおりであります。  したがって、私たちは、現在の診療報酬の点数出来高払い制による厚生省、中医協の薬価基準の決め方、実勢価格による薬価基準の決め方には問題があると思います。それは製薬大企業の利益を擁護し続けています。薬価差益等による薬づけ、検査づけ医療と呼ばれる制度あり方と私たちは一刻も早く決別することを強く望んでいます。そして、すべての医療従事者の権利と労働を正当に保障する新しいシステム、制度確立を強く求めています。物と技術を明確に区別した公正妥当な診療報酬を決めることであります。現状では、医療費抑制政策による長期の診療報酬の据え置き、引き下げ、薬価基準の連続大幅引き下げ等で、患者の立場に立つまともな医療機関ほど困難な局面にあります。  例を挙げます。薬価基準の決め方でありますが、例えば抗生物質のペニシリン系の内服薬、これの一般名はアモキシシリンと言われていますが、藤沢、明治、協和、万有等々であります。これらが五十年一月、二百五十ミリグラム二百六十八円にそろって出発をいたしました。五十六年の六月に、藤沢が百六十一円に下がっています。明治が百三十五円、協和が百六十一円、万有が九十円。五十八年が、藤沢が百十五円、明治が八十八円、協和が百四円、万有が六十四・五円。五十九年三月、藤沢が六十七円、明治が四十六・三円、協和が七十・三円、万有が四十一・五円等々であります。なぜこのような違いができてくるのか。ほか、いろいろ資料がございますが、例を申しました。  万有の例を一つ申します。不可解な薬価基準の決め方であります。我が国の医薬品生産会社は千三百六十六社と言われますが、その中の大手の万有製薬としにせの鳥居薬品が昨年の夏、アメリカのトップメーカー、メルクに相次いで買収されましたことは皆さん御承知のとおりであります。メルクは、この買収に総額一千億近い金を投入いたしましてメルク万有を建設し、そして総勢一千五百人の日本最大のプロパー軍団を擁することになりました。売り上げの拡大を図ることになっています。トップメーカーの武田薬品ですら千二百人程度のプロパーにすぎません。製薬大企業は依然として高成長を続けています。万有製薬の五十八年度決算の研究開発費二十八億四千八百万円。薬価基準が引き下げられれば、新薬開発で高度成長を続ける製薬大企業の姿がここに示されています。厚生省官僚のその会社等々への天下りもうわさされております。  薬価は、先進諸国のように原価に利益率を加算して設定すべきものであると考えます。薬剤原価を明らかにしつつ、例えば国公立病院がまず公開購入し、その価格によって民間医療機関に供給してはどうでしょうか。また、医薬剤の供給システムを公的責任で行ってはどうでしょうか。とにかく、薬剤の差益などは不要という制度をつくるべきであります。  そして一方において、医療従事者の賃金を労働に見合って正当に定めるべきであります。例を申します。例えば事務局員の賃金点数はどこにもありません。病院薬剤師の人員は八十剤に一人の薬剤師を必要とし、外来一人の患者につき内服四点、頓服一点、外用二点の調剤料点数にすぎません。いかに計算しても、この点数表からは薬剤師一人を養うことは困難であります。  また、医師の都市偏在を早急に改め、医科大学の恣意的なやり方や医師の医局追随志向を取り払い、僻地、無医村をなくし、医師を適正に配置し、救急医療の整備とともに、保険あって医療なしの状態をなくすべきであります。また、医師独断でなく、チーム医療が大切であります。とにかく病気の後追い健保ではなく、その名のとおり、地域住民とともに文化と生活に密着して、住民による保健構造を築くことでありましょう。  八、差額徴収、差別診療、保険外負担は一切やめるべきであります。  九、国民医療に対する不信を取り除くこと、住民の十分な参加を保障して地域保健医療の民主的改革に取り組むこと、健保法改正は決して財政対策を先行させるのではなく、国民の生命、健康を保障する立場から計画するよう慎重審議をお願いして、公述を終わります。  ありがとうございました。
  314. 愛知和男

    愛知座長 ありがとうございました。  次に、筑井甚吉君にお願いいたします。
  315. 筑井甚吉

    筑井甚吉君 私は、産業構造と経済発展の問題を理論、応用両面で研究している人間でございますが、日本経済の長期展望を試みますと、問題として浮かび上がってくるのは、非常に急速な高齢化、それに伴う医療費の増大の可能性の問題でございます。現在でも国民所得の六・数%というとかなりの規模の負担になっておるわけですが、将来これが、継続的に巨大化する診療技術、それからそれを平等に給付するという社会的要請がかみ合って、増大を続ける可能性があるわけです。  そこで医療問題に興味を持ちまして、ここ数年間、専門と並行して医療問題を勉強してきたわけでございますが、昨年当地で開かれました第二十一回日本医学会総会において、特別企画として未来学フォーラムというシンポジウムが設けられましたが、そこで招きを受けまして、将来の医療体制とそれを支える医療経済システムに関して研究の結果を報告し、医学者及び現場の医師の方々の御批判を受けるチャンスをいただいたわけです。そこの討論の結果、私が今まで考えていたものが、経済学者だけでなくて、医学者及び医師の批判に十分こたえ得るものであるというふうに考えましたので、今回は、改正案に直接関係ある医療経済システム、医療を支える医療経済システムに関して私がどういうことを考えたかというその骨子をお話しして、私の結論から見て今度の改正案をどう評価するかということを申し上げたいと思います。  皆様御承知のように、経済学では衣食住のように生存に最低に必要なものをサブシスタンスミニマムと呼んでおります。これはいわば生存に必要な財ですから、財と申しますのは、有形の生産物と無形のサービスを含めて経済学では財と呼んでおりますが、私は、生存に必要なサブシスタンスミニマムと呼ばれているものを生存財と呼んでいいと考えております。そう考えますと、医療も生存財であるわけです。近代社会のように健康な生存権というのが基本的な人権として認められてくるようになってきますと、この生存財、医療を含めた生存財は、ある意味基本的人権に関係する人権財とでも呼ぶべきものだということになると思います。私は人権財という呼び方をしているわけですが、この財は一般の財、消費財とか耐久消費財とは違った、基本的人権に関連した財でありますから、当然その需要供給システムに関しては特殊な配慮が必要になるわけでございます。  そこで、特殊な配慮は何かといいますと、これは負担の公平と給付の平等ということでございます。ただ、一般には負担の公平と給付の平等で終わってしまいますが、こういう財を供給するシステムを考える場合に忘れてならないのは、目的に合った効率性確保ということでございます。この点は往々にして忘れられている傾向があるし、また厚生省のいろいろな局長説明の中にも、効率性確保という点を十分意識しておられないのではないかと危惧するわけでございます。それはどういうことかと申しますと、負担が公平であって給付が平等に行われても、そのシステムを運用した結果、例えば医療システムにおいて経済的利益を追求する医師の所得の上昇に結果するのであれば、これは医療システムの目的を達成していることにならないわけです。したがって、合目的性、すなわち目的を最も有効に達成し得るかどうかということが、医療経済システムを考える上で基本的に重要なものになるわけでございます。  そこで、経済学的に医療の特徴をまず把握する必要がありますが、時間が限られておりますので骨子だけを申し述べます。  医療というのは、大体患者の発生、需要者の発生というのは確率的な発生であります。確率的な形で発生するわけです。決まって発生するわけではございません。したがって、生存財という観点からすると、医療供給体制というのは、発生し得る最大の規模のものに対応するような形でふだんから維持されなければならない。そういうことは、患者が来ようと来まいと、患者の発生が多いときに備えて、常に医療に必要な建物とか医療機械設備あるいは医師、パラメディカルスタッフを備えていなければならないわけです。そういうような固定的な費用を維持していなければならない。  さらに、患者が来るごとに、経済学では限界費用と申しておりますが、患者一人に直接かかる医薬品のコストあるいは光熱水料等の限界費用が必要になってくるわけです。  そういう特殊な供給構造を持っておりますから、その費用をどう合理的に負担したらいいかということになりますと、固定的な費用に関しては負担能力に応じて負担をする。現在でも基本としてはそういうふうに、例えば所得割の負担というような形がある程度導入されておりますから、保険ファンドに関してはいいわけですが、固定的な費用に対応しては負担能力に応じて負担をする、患者一人当たり直接必要な限界費用に関しては患者が負担するというシステムが、経済学的に申しまして最も合理的な形でございます。  これを現実に適用する場合にはどうしたらいいかといいますと、まず患者の負担能力に応じた一定の保険料を保険ファンドに支払う、実際に医療機関にかかった人間は総医療費の一定割合、一定率を負担する、そういうシステムが基本的な経済原理から導き出された現実的な有効なシステムということになるわけです。私は、これを部分的な市場メカニズムの導入による合理化システムであると呼んでいるわけです。市場競争メカニズム、マーケットメカニズムを部分的に導入して有効性を達成するということでございます。  それはどういうことかと申しますと、むだな検査を繰り返し、そしてむだな投薬を繰り返す医師に関しては、総額が増大します。常にその一定割合を本人負担しなければならないということになると、そういう乱診乱療を繰り返す医師の場合は、当然本人は、同じ目的を達成するために余計支払わなければならないわけです。ところが、まじめな有能な医師で、必要最小限度の検査と投薬で治癒する医師は、総額としては少ないわけですから、その一定割合として患者は少ない費用で治療効果を上げることができるわけです。これは負担の面ばかりを皆さん議論しておりますが、どういうことになるかといいますと、有能なまじめな医師は患者に評価され、患者が大勢集まってくるけれども、乱診乱療を繰り返す医師は患者から見捨てられて排除されるという部分的な市場メカニズムが、そこで質の高いものが需要され、質の悪いものが廃棄されるという選択作用が働くわけであります。今議論になっている無料とか定額打ち切りなんということでは、こういう基本的な重要なポイントが失われてしまうわけです。したがって、定率というのは、あるいは一定率、一部分市場メカニズムを導入するということは、制度効率性確保する上に非常に重要なことである、基本的に重要なことであるということをまず申し上げたいと思います。  次は、私が学会で報告いたしました第二のポイントは保険ファンドのあり方であります。これは現在は非常に奇妙な乱立した状態にあるわけですが、これは乏しい終戦後の財政事情で保険制度をステップ・バイ・ステップに築いていった歴史的な経過といいますか結果が残っておることで、一概に否定できる問題ではございませんが、制度間で負担の公平が実現していない。例えば国民健康保険一つをとってみても、あれは市町村単位運営するようになっておりますから、川を一つ渡って違う町に行くと負担率が違うというような状況になっております。これは少なくとも長期的な時間が必要と考えられますが、負担率の統一という方向に向かって長期ビジョンをひとつ確立していただきたい。そして、それが制度間の財政調整によってなされるのか、あるいは地域健康保険に一本化されるのか、これはいろいろメリット、デメリットがございますので、今後慎重な審議の上に、ともかく負担率の統一という負担の公平の実現を図っていただきたいということでございます。  第三点は、患者の自己負担に関してです。  徴収方法でございますが、これはいろいろ具体的な問題が絡んできますので、部分的には可能であるけれども、全体としては長期的な対応を必要とするかもしれませんが、私は、医師の窓口で支払うよりは、保険機関が自己負担分を徴収するというシステムを考慮する必要があるのではないかと考えるわけです。と申しますのは、医師によっては、私自身経験がございますが、自己負担分はただにしてくれるわけです。全体がただかと思うとそうじゃなくて、保険者に請求する部分はちゃんと請求して取っているわけです。我々患者が知らないうちにそういうことがされているわけです。現に起こり得る架空請求とか過誤請求も、本人負担分に目をつぶれば、本人が知らないうちに七割ないし場合によっては十割請求されているという可能性が起こり得るわけです。ところが、常に一定率を患者本人負担というふうにしておきますと、もし架空請求をするような例外的な医師があったとすれば、その請求に対して必ず保険機関から本人に対してその一定率を支払えというふうに来ますから、架空請求ができないような体制が確立するわけです。  そうすることによってどういうことがあるかというと、これは医療費の節約なんというけちなことを私は言おうと思っていないわけです。医師というものは架空請求とか過誤請求とか、そういうような批判されるべき行為ができないシステムにいるのであって、これは医師の信頼性を回復し、医師と患者の間の関係を人間的な信頼関係に置きかえるために非常に重要な問題である。これらの対応に関しては時間がかかると思いますが、ともかく実現される必要がある。この三つのポイントが私の医療システムのあり方に関する提言でございます。  さて、そういう観点から今度の改正を眺めてみますと、保険者本人の一〇〇%を九〇%給付にする、一〇%負担していただく、これは非常に重要な、絶対譲れない一歩であると考えられます。これを実現することによって医療システムは有効性を保て、そして先ほども指摘されましたように、緊急に医療費を必要としている寝たきり老人とかあるいは老人性精神障害者のような気の毒な人に重点的に医療費を回せる、そういうふうになり得ると思うわけです。ですから、これは定額とか無料ということではなくて、市場メカニズムの部分的導入医療制度の合理性、論理的な批判にたえ得るような医療制度にするという意味でぜひ実現していただきたいと考えるわけです。  さらに、退職者医療制度の創設に関しても、先ほど申しました給付の平等に向かっての一歩前進というふうに評価したいと存ずるわけでございます。  その他いろいろございますが、一つ問題になりますのは高度先端医療に関する給付の問題でございます。これはニーズの多様化に対応するということでございますが、私が申し上げましたように、医療を生存財あるいは基本的人権に関連する財であるというふうに把握した場合には、基本的な医療に関して差別があってはならないというふうに考えるわけです。ただ問題は、疾病の際に備えてふだんから貯蓄している人と、浪費を続けていて疾病したときには他人のファンドに頼ろうという人との間に差があるのも、これまた公平なことであるわけです。したがいまして、そこで多様なニーズにこたえるために多様化を導入することは結構ですが、それはあくまで基本医療を超えた部分に関してですね。例えば個室に入りたい、あるいは介助人が欲しいというようなパラメディカルな、基本的な医療の周辺の部分に関してだけ多様性の導入を慎重に図る。さらに、研究開発と直結したような先端医療にだけ限定し、新しい技術が定着したならば直ちに基本医療に繰り入れるというような慎重な対応が必要かと存じます。  以上、一分超過しましたが、終わりたいと思います。
  316. 愛知和男

    愛知座長 ありがとうございました。  次に、高屋定国君にお願いいたします。
  317. 高屋定国

    ○高屋定国君 私は、仏教大学の高屋でございます。  私は、ふだん政治学を研究している研究者の一人でございまして、直接この健康保険のことについて深く研究している立場ではございません。しかし、全般的にこの政治の流れの中で、あるいは健康保険と政治は非常に大きな関係がございますので、その観点から少し申し上げてみたいと思います。  まず、健康保険だけじゃございませんが、保険というものは大体において自分が負担能力のあるときに負担し、そして必要があったときにそれに依存するとか、そのお世話になるというものでございます。殊に健康保険の場合は、自分が若くて健康であり、そしてまた経済的な負担の能力があるときに負担し、そして自分がそれを必要とするような思いがけないような病気になったときにそれにお世話になる、大体そういうのが健康保険の根本的な精神だと思います。  そこから考えますと、現在の一番重要な問題は、だれも好きこのんで病気になるわけではございません。今度の改正案の場合に、負担が定率でございます。これが導入されますと、一番問題になるのは、やはり一番重病になった場合の負担率でございます。これは、健康なとき、負担能力のあるときに、せっせとそのために保険料を納めているわけなんです。それが、一たん病気になったら定率という形においてなされますと、これは一体どういうことなんだ、保険制度それ自身の根本精神にかかわると思います。  それからもう一つは、定率でございますと、小さな、ちょっとした病気なんか余り大したことはないのですけれども、結局重病、重症患者になった場合が一番問題でございます。その場合は、保険の医療費だけじゃございません。家庭を考えますと、本人は働くことはできないし、収入がない。それだけではなくして、その病人の看護のために家族全体が、家庭全体が相当な負担でございます。そういう全体の観点から見ますと、こういう制度はやはりよくないんじゃないか。  それからもう一つ、大きな問題なんでございますが、こういうふうに医療の根本にかかわるものを、本当に医療制度改善という形から出されたのであろうかどうかということにやはりかかわらざるを得ないと思います。そういうふうに考えますと、やはり私は違うんじゃないか。私も現在の医療制度について満足しているわけじゃございません。例えば、制度間の格差の問題あるいはまた本人家族負担率の問題、その他いろいろ問題はございます。それを前向きに、改善に一歩でも保険の精神に基づいて変えていくという形じゃなくして、やはり財政的対策という観点から今度負担の問題が出てきたというふうに私は受け取ります。その形において、そういうやり方健康保険制度をよくしようという精神から出た今度の改正案じゃないというふうに思わざるを得ないという形において、私は今回のやり方については反対でございます。  それで医療においては、ほかのことについてはいろいろな公的負担あるいは受益者負担というようなことがよくございますけれども医療についてはこの受益者負担という考え方は入れるべき問題ではございません。私はそう思います。やはり病気というものと、ほかの利益を得るものとちょっと違う、そういうものを導入すべきではないというふうに私は思います。  それから過剰医療の問題、財政上の問題、いろいろなことがございます。それはそれとして、特別に監査を厳しくするとか、あるいはそういう宣伝をするというようなことにおいて、またそれを防止する方法はあると思う。それを一部定率に負担するという形において抑えるというのは、私は邪道じゃないかというふうに思います。  私はこのことをなぜ強く申すかと申しますと、私は京都におるのですが、私の京都に住んでおるところに、名前は申しませんがある有名な先生がおられまして、ある私立大学の総長にまでなられた方ですが、今お年をとられて入院しておられる。そしてもう相当長く入院しておられるわけでございます。それで息子さんも、私と年齢はほぼ一緒で同じような大学の教師をしているのですけれども、一人の病人、お父さんを抱えている、その家庭は平均よりも所得は上だと思うのですが、それでも一人の患者を抱えているために、家の中は大変なんです。非常に大変なんですね。もちろん十分な経済活動も仕事もできないという形になる。やはりそれは看護の問題、いろいろな問題が具体的に出てまいります。ただ単なる医療費の問題だけじゃございません。そういうものは、現実において高齢化社会になればなるほど、負担のことはなるほど負担だからという形において話をされますけれども、むしろ被保険者の立場から見た場合どうなるのか。これは非常に大変な問題を抱え込むことになる。にもかかわらず、今度その上にまた一部負担しなければならないというような問題が出てくることは、非常に大きな問題を抱えるのじゃないか。  私は、もっと違った形に、医療制度それ自身の中に抜本的な改革をいわゆる高齢化社会に向かってやるべきである。こういう形において解決するということは、これはただ負担率の問題、財政的な観点しか見ていないと思わざるを得ないというふうに思います。  それから今度はもう一つ、財政的負担ということが盛んに言われるわけでございますけれども、なるほど過去数年、大分前には毎年の国民医療費の伸び率は高かった。殊に昭和の五十三年ごろは非常にきつく伸びたわけでございます。しかしながら、最近ここ一、二年、ここ一年ほどは非常に国民医療費の伸び率が下がっております。これは恐らくいわゆるよくない、不公正な、不適正な医療に対するいろいろのチェックの機能が働いたことであろうし、あるいはまた新聞やその他における余りよくない医療機関に対する宣伝が効いたのだろうと思うのです。最近ここ一年ほどの間はむしろずっと下がってきておりまして、そして国民所得の伸び率よりも下がっております。国民所得の伸び率の以内である。こういうような時代においては、負担の問題を考えるよりも、抜本的に医療制度改善の方向に踏み出すべきじゃないか。それにしては今度の改正案を見ますと、むしろ逆行じゃないか。むしろそういう精神が少しも出ていない。私も一番いいのは、全国で一律で公平な負担制度間の格差がない、これは一番いいんですよ。しかしながら、そんなことは今ここで急にできるわけじゃございませんから、私もそれは現実に合わせて妥協的な、一歩一歩漸進的な考えを持っております。しかしながら、その方向には少しも今度はいっていないというところが、今度の法案、改正案に私は賛成はできない理由でございます。  それで、私はまた少し考えてみたらどうかと思うのですよ。例えば年金の場合でも、基本年金と、もう一つ足すものとございまして、二段階、二階制になっておる。医療もそういうようなことも考えてはどうか。やはり何といいましても病気という場合、殊に重病の場合はだれも好んでなるわけじゃないのです。そのときの最低の、これだけはどうしても、どんな制度に入っても医療保険によってやってもらえるのだ、こういうようなものをまず考える。そこから少し制度によって格差があっても、これは今のところはやむを得ないと思うのです。そういうような考え方も、やはりいろいろ知恵を出し合って改善方法をお考えいただけぬでしょうか。  私は非常に大ざっぱな物の言い方をしましたけれども、大きな政治の流れとか保険の制度の流れというような観点から見まして、そういう方向に持っていっていただきたい。そういう意味において、短くはございましたけれども、時間もそろそろ参りましたのでこの辺で終わりますが、やはり反対せざるを得ない。根本問題は、何といっても定率による、いわゆるちょっとした風邪とか頭痛とかいうことについては余り大したことはないのですけれども、問題は、大きな病気にかかったときには一体これはどうなるのだ、こういうことが一番大事なので、その間においてある程度の定額とかいうふうなこともまたあっても仕方がないだろうと思うのですけれども、やはりそういうふうに医療制度というものは、本当に病気にかかったとき、大きな病気にかかったときにこそ保険にかかるということに重点を置いて発想の転換をお考えいただきたい。その過程で、いろいろな知恵を出す過程で、どんどんといろいろな問題で、財政の規模に応じたりいろいろな規模に応じて話し合い、相談、研究の過程はあると思う。ちょっと今度の出方は、余りにも急に財政負担政策のことばかりから出てきたというふうに感じざるを得ない。それについて、今度の改正案には私は反対でございます。  私の意見は、簡単でございますが、初めにそれだけ申し上げておきます。
  318. 愛知和男

    愛知座長 ありがとうございました。  次に、平尾勘市君にお願いいたします。
  319. 平尾勘市

    平尾勘市君 ただいま御紹介をいただきました善通寺市長の平尾でございます。  本日は、健康保険法等の一部を改正する法律案につき意見を申し述べる機会を与えていただき、まことにありがとうございました。  諸先生方には、我が国社会福祉進展のために大変な御苦労をいただいておりますことを、衷心より厚くお礼を申し上げます。  さて、私は、国会で今御審議をいただいております健康保険法の一部改正法律案につき、市町村国民健康保険者の立場から意見を申し述べさせていただきたいと存じます。  まず最初に、全体的な所感を申し上げますと、今回の医療保険制度改革案については、個別的にはいろいろ問題点もありますが、改正案を貫く基本姿勢は評価すべきものではないかと考えております。  まず第一に、今後我が国が急速な高齢化社会を迎え、長期的にかなりの程度の医療費の増加が予想される中で、負担の限界をも考慮しつつ、医療費の水準を適正な規模に抑えていく必要があること。第二に、国民にひとしく医療を保障すべきはずの医療保険制度が、実際は歴史的沿革等の理由から各種の医療制度に分立をしており、そのため給付及び負担の両面において医療保険制度間の矛盾、不均衡が拡大しており、これを早急に是正すべきであること。以上の二点が今回の改正案であると認識しておる次第であります。  そして、このような観点から、具体的な制度改正に当たっては、一、医療費適正化、二、保険給付見直し、三、制度間を通じる負担公平化が三本の柱として挙げられておりますが、これらは今後の長期的な医療保険制度あり方考えていく上で、極めて適切なものと思われます。  以下、改正案に盛り込まれておる個別的な事項につきまして意見を述べることにいたします。  その第一は、給付率の見直しであります。すなわち、健保本人の定率負担導入の問題についてであります。今回改正の論議の争点となっておる問題でありますが、医療保険制度全体の立場で申し上げれば、過去の老人医療無料化の経験からしても、また国保健保家族給付率との不均衡是正の観点からしましても、十割給付というものは早急に是正すべきではないかと考えております。  なお、これに関連をして、将来においては全保険制度を通じて給付率の統一を図るという中長期的な理念を明確にしていただくとともに、その時期においても具体的将来への展望が示されることを強く期待するものであります。  第二は、負担公平化についてであります。この点で最も注目されるのは、退職者医療制度の創設であります。現行保険制度の仕組みから、必然的に国保はその保険集団の中に多数の高齢者層と低所得者層を抱え込む宿命になっており、これに加えて被用者保険のOBも、企業退職後こぞって国保に加入するという極めて不合理な姿になっております。このような不合理を是正するため、我々が長年にわたり主張してまいりましたのが、被用者保険OBのための退職者医療制度の創設の問題であります。今回我々国保がその実務を担当し、対象者を被用者年金の老齢あるいは退職年金受給者とし、その医療費退職者とその家族国保保険料と現役の被用者及び事業主拠出金によって負担するという制度においてようやく日の目を見ようとしておるものであり、ぜひともこの機会に実現をさせていただきたいと思います。  第三は、国保に対する国庫補助制度見直しの問題についてであります。今回、退職者医療制度の創設との関連において国保に対する国庫補助制度が見直されることとされておりますが、この場合、保険料負担の大幅な増額を来さないことが基本であると考えております。つまり、今回の一連の制度改正は、長期的視点に立った医療保険制度改革の第一ステップであると考えております。現在の一世帯当たりの保険料を比較しますと、国保世帯は既に組合健保等の世帯を上回っておる状況にあります。我々は、今回の一連の制度改正によっては保険料負担の増はないとの当局の説明を受けておりますが、万一負担増を来すような事態に立ち至った場合には、政府において適時適切な財政措置が講ぜられますよう、この場をかりて強く要望しておきたいと思います。  以上三点について申し述べましたが、この際、私は、国保医療費と大きくかかわり合いを持つところのヘルス事業について一言申し添えたいと思います。  私は、住民の健康を守り、その増進を図ることは、市町村に課せられた重大な使命と考えております。したがいまして、保健施設活動として、事後的な治療よりも、事前の疾病予防、保健活動、健康づくりこそ緊要と思うのであります。  私どもの市においては、さきに施行されました老人保健法のヘルス事業を待つまでもなく、十年ほど前から一般市民に、四国八十八カ所めぐりになぞらえた、高僧空海上人の生誕地の総本山善通寺の山ろくに一周約一・六キロメートルのミニ八十八カ所めぐりを、また日曜ごとに市内に六コースを設定し、六キロ、四キロ、二キロの三種をポイント設定し、参加者各自のマイペースで走る日曜ミニマラソン、また市民ハイキング等を奨励しておりますが、多数の参加者があり、市民の健康意識の向上にも大きく役立っております。なお、参加者に対し、時期を決めて保健婦が出向き、血圧測定その他の検診を行うなど、きめ細かく効果のある健康づくりを心がけております。  一方、お年寄りには、心豊かな団らんの場、趣味の囲碁将棋、屋外軽運動としてのゲートボール等、幅広くレクリエーションの場を提供するなど、健康保持の施策を進めてまいりました。また、昨年度にヘルス・パイオニア・タウンの指定を受けましたのを契機に、保健補導員制度を創設、医師会、保健婦連携のもとに健康調査、各種研修会を開催、成人病検査等諸検診の受診率の向上に努めるなど、積極的な健康増進策を展開してまいりました。  ちなみに、私ども香川県にある五つの市のうちで、国保財政について他の四市の平均と比較してみますと、国保の被保険者一人当たり受診率医療費ともに九〇%の線で推移をいたしております。約一〇%少なくなっております。とりわけ老人医療におきましては、受診率において八七%でございます。医療費においても六七%と著しく低位にあります。このことは、前述いたしました一連のヘルス対策の効果によるものと思われます。  昭和三十六年国民皆保険によるところの現在の国保が開始されまして二十三年、増加の一途をたどる医療費と、一方負担の増大により、国保現状はまさに限界に達した感があります。今こそ被保険者すなわち住民の健康を守り、医療費の増高を防ぎ、健全な国保運営を目指すことも、私どもの責務であると確信いたしておるものであります。と同時に、政府におかれましても、これらヘルス事業に対するいま一段の拡充強化を心より期待し、お願いする次第であります。  終わりになりましたが、さまざまな論議を呼んでおります今回の改正案も、医療保険制度のあるべき姿への一歩前進と存じ、賛意を表しまして、私の陳述を終わらせていただきます。  どうもありがとうございました。
  320. 愛知和男

    愛知座長 ありがとうございました。  次に、本田精一君にお願いいたします。
  321. 本田精一

    本田精一君 大阪地方同盟書記長の本田でございます。私は、同盟の立場で今回の健康保険法改正に対する反対意見を陳述申し上げます。  私ども同盟は、既に昭和五十七年に、一九八〇年代の福祉ビジョンというものを発表いたしておりまして、このビジョンは既に衆議院の先生方のところにもお届けされておるものと思いますし、十分御承知をいただいておる内容と思います。また、それなりに高く評価を受けておると自負もいたしておりますが、このビジョンは、昭和四十七年に発表しましたものを、その後の社会経済情勢の変化を踏まえまして修正を施し、改めて提言したものでございます。このビジョンの中で、医療保険制度のあるべき姿について言及をいたしておりますので、私はこれを基調に意見の開陳を行います。  我が国は急速な高齢化時代に突入いたしておりまして、三十年後には欧米諸国の現在の高齢化比率を抜いて、人口高齢化の最たる国になると言われております。現に、過日の発表によりまして、世界一の長寿国と位置づけられたところでございます。  人口の高齢化によりまして高齢者が増大することになりますと、社会におきます扶養負担の点におきましていろいろな面で社会経済に影響を与えることになりますが、特にこの問題の社会保障の分野に与える影響は大きいと考えます。一定財源の中におきまして負担する側の者と受給する者が特定され、しかもそれぞれの制度の持つ特有の問題と相まちまして、早くから年金制度医療保険制度については具体的な対応が迫られていたところであります。  現行医療保険制度の問題点でございますが、公正と効率の両面に特に問題があると考えます。  まず、公正という観点からの問題でございますが、最も目につきますのが、制度分立によりまして負担給付にかなりな格差を生じているという事実でございます。  第一は、医療保険基本給付というべき医療給付でございますが、本人の場合でも、被用者保険の十割給付に対しまして、自営業者や年金生活者などが加入しております国民健康保険では七割給付という事実になっており、三割の自己負担が必要という大きな格差があります。家族の場合にも、健保組合や共済組合では附加給付がございまして、平均では七割を少し上回っているのでありますが、政管健保、特に中小企業勤労者の中では七割しか給付されませんし、国民健保においても同様である。このように、医療保険制度基本ともいうべき部分で本人家族給付率が異なるという制度になっているのは、欧米先進国にはその例がないのではないかと思います。  第二は現金給付の面でございますが、被用者保険と国民健康保険では法定と任意制度という差がありまして、五人未満の事業場で働いている労働者の中には、傷病手当や出産手当など、所得保障的な給付すら受けられない場合があります。もちろんこれは、五人未満の事業場における加入の問題などは、当然主張として強制加入の方針を望むところでございますけれども、そういう事実があります。  第三は負担の問題でございます。今さら言うまでもございませんが、かなりの差があります。これは構造上にも問題があると思います。すなわち、一つは、各制度が対象として抱えている高齢者比率の多少の問題があるということでございます。老人保健法が施行されまして、七十歳以上の高齢者の医療費につきましては、国民全体でプール負担という考え方に立ちまして、全制度で見ることになりましたが、六十歳から七十歳までの人たちにつきましては、依然としてそれぞれの制度で抱えている現状ではないかと思います。また、構造上の第二の点は、制度を構成する被保険者の間に所得水準の高低差があるということであります。そのことが制度の財政収入に当然に格差をもたらしてしまった、そういう結果になっておると思います。  続きまして、効率の問題点について申し上げておきたいと思います。  私は医療保険制度の効率化ということを次のように考えておるわけであります。医療の資源というものには限度がありますので、その有限な資源が効果的に使われるかどうかを見直すことが必要だと思います。もし医療保険制度の中で資源の効果的配分を誤っているとするならば、そこに医療費のむだが増大するだけでなくて、医療保険制度の機能そのものも損なうことになるのではないかと思うわけであります。  医療保険制度の役割は、健康を損ねたときに、その不確実な費用の保障を適切に行うところに本来の目的があるわけでして、医療についての必要性が強く、医療に要する費用が大きく、本人負担能力が弱い場合ほど医療保険の効果が高められていくべきであり、そうすることが資源配分の効果性ということであろうと考えます。  ところが、現実の医療保険制度における給付と患者負担の関係は、とても適切に組み合わされているとは言えない、そんな状態ではないかと思います。現在の給付制度では、初診あるいは入院の一部負担のほか、保険給付等の対象とならない差額ベッド料や付添看護料など、多額の出費を必要としています。したがって、入院が長くなれば本人負担能力をはるかに超えることになることがあり、この場合保険の効果が著しく弱められることになる。その点、改善の必要があるわけであります。  この傾向は、家族国民健康保険の対象者の場合には一層顕著に出るわけでありまして、高額療養費制度導入によってかなり緩和されたとはいえ、労働者、特に低所得者層にとってはかなりな負担になるということは否めないと思います。  さらに、効果面では、診療報酬の支払い方式に起因する諸現象があると思います。また、最近では、検査づけとか施設、医療機器の重複投資が問題となっていますが、これらのものが原因となって医療費に自然増といいますか、そういう部分が生じているのではないかと思います。  現行医療保険制度に対する、同盟ビジョンの立場に立ちました問題点の主なものは以上のとおりでありますが、このような認識の上に立ちまして、現在国会で審議されております改正案に対しまして、意見を具体的に申し上げたいと思います。  まず、今回の改正案は、何といいましても、財政対策から出てきたとしか言いようがないと私も思います。一部には従来から長年論議してきたという意見もあるようでありますが、それはむしろ専門家の間では通じるかもしれませんけれども、私たち国民には決してそのようには理解できないということを申し上げたい。  また、第二は、給付率の問題でありますが、今回の改正案では本人給付率を八割とするというのがベースになっています。修正案等が示されているようですが、給付率について、本人家族を問わず一律にすべきであると思いますが、家族については何ら触れていない点が大きな不満として残っています。  今回の改正では、保険料の引き上げは不可能だろうという前提で、この給付の率を引き下げるというような考えが示されておりますけれども負担給付の関係につきましては非常に裏腹の関係でございます。したがいまして、幾つかの研究がされておるように聞いておりますので、そういったものを国民の前に提示願いまして、もっと合意を求める論議の機会を深めるべきではないかと思います。  第三は、高額療養費制度の問題でありますが、これは非常にいい制度だと評価はされておりますものの、現行制度では個人単位でございまして、レセプト単位となっておりますが、今回の改正が、後で修正される話が出ておりますが、負担の増加という点につながるわけでありまして、特に家族単位、世帯単位といいますか、そういう点に修正をしてほしいと思います。あるいはまた、暦月問題などももう少し取り組んでもらいたいと思うところであります。  第四番目に、退職者医療制度の創設問題でありますが、さきにも申し上げましたように、給付率が異なる現状下で、退職者医療制度の必要性は高いと考えております。しかし、今回の改正案では、国庫の負担がゼロとなっております。これが理解できない点でございまして、私たち労働者組合員にいたしましても、現役の者が財政の一部を負担することはやむを得ないと考えますけれども、国家の制度でありながら国庫負担がゼロという点は、どうしても納得できないという考えを強く申し上げておきたいと思います。  さき厚生省医療保険制度の将来構想なるものを示されましたが、あの内容は、今回改正をするための裏づけをつくっておった、そういううがった見方さえ持たざるを得ないと思うわけですが、私たちの期待しておりますのは、少なくとも六十年の前半で実現できる制度の抜本改正の方向でございまして、そういう意味から、きのうも自民党から再々修正の動きが示されているようでございますけれども、目先のものにすぎないのではないだろうか。もっと国民理解協力、合意を得られるようなものでなければならぬと思います。抜本改正につながるような修正を強く要望したいわけであります。  最後になりましたけれども、報道等にも書かれておりましたが、中曽根内閣にとって最重要課題がこの健保問題のクリアだという説がどんどん出ておりますけれども内閣にとってというよりも、むしろ私は国民にとって最重要課題ではないかと思います。この最重要課題である健康保険問題、国民の命と健康を守るこの法律の問題を、社会保障制度審議会にいたしましても、社会保険審議会にいたしましても、短時間の間に論議を迫ったいきさつがあるようでありまして、こういった国民的最重要課題であれば、国会審議ももちろん選ばれた各先生方によって慎重に十分論議されておるとは思いますし、またその点に関しましては深い敬意も表する次第でありますし、本日など、こうしてお出かけいただくのも大変なことだと思いますけれども、何かもう少し論議の時間というものがあってしかるべきではないかと思っておるわけであります。  予算は既に決定、実施をされつつあり、そういった関連で、私たちの目から見ると、何だか形だけ公聴会を開いておるような感すらしないではありません。形式だけに終わるのではなしに、極端に申し上げましたら、もっと時間をかけてやり直してでも、四十七都道府県にでも公聴会が出かけていってほしい。そうして、いろいろな国民各層の声を聞き上げて、吸収していただいて、最大公約数の合意形成を図るように御努力を願いたいと思います。  以上で陳述を終わります。
  322. 愛知和男

    愛知座長 ありがとうございました。  以上で意見陳述者からの意見の開陳は終わりました。     —————————————
  323. 愛知和男

    愛知座長 これより委員からの質疑を行います。  質疑の割り当て時間は、理事会の申し合わせにより、自由民主党・新自由国民連合三十分、日本社会党・護憲共同三十分、公明党・国民会議十五分、民社党・国民連合十分となっておりますので、御了承願います。  また、質疑される委員は、答弁者を指定してなされるようお願いいたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。長野祐也君。
  324. 長野祐也

    長野委員 意見陳述者皆さん、本日は御苦労さまでございました。自由民主党の長野祐也でございます。自民党の持ち時間三十分をお隣の自見代議士と分担をさせていただきたいと思います。  まず第一に、全員の陳述者皆さんにお尋ねをいたしたいと思います。  昨日、二回目の修正案が自民党から出されましたことは御案内のとおりでございます。その内容は、改正健保の施行後に組合健保家族国保の被保険者の自己負担率を三割から二割に引き下げる、あるいは政管健保にも附加給付制を行う、そういうようなものが二次試案の柱になっております。一次試案を含めまして、この修正案についての御見解を全員の方に伺いたいと思いますが、冒頭申し上げたようなことで時間が非常に限られておりますので、大変恐縮ですが、一分ずつで、それぞれのお立場でポイントだけお聞かせいただきたいと思います。
  325. 秋山良三

    秋山良三君 私は、修正案に対する具体的なことは新聞に掲載された内容ぐらいしか読んでおりませんので、はっきりした答弁になるかどうか知りませんけれども、感じといたしましては、この修正案の根本にあるのは、政府のやはり期日というものに対する、議会の通過ですか、この時間に合わせたようなために、相当主張を曲げてまでこれを通されるという修正に応じているのじゃないかというようなことを感想として持っております。ですから、その修正案の可否ということについては、私はまだ検討しておりませんので答弁はできません。  以上でよろしゅうございますか。
  326. 長野祐也

    長野委員 はい、結構です。
  327. 大津静夫

    大津静夫君 修正案がいろいろ出されますけれども、まず第一に、やはり財政的見地、この辺で譲れないものは譲れないというその財政的見地からの修正案が出されているというふうに思うわけであります。私は、今も申しましたように、財政的見地を優先することなく、長期的にビジョンを出されたものに従ってやっていただきたいということで、基本的に反対であります。  それから、本人一割負担というのを前面に出されておるようでありますが、これは原則的に反対であります。それは、長い間制度の根幹をなしてきた本人に対する侮辱であるだろう、労働者本人に対する、そういう生産の現場での中心的なメンバーに対する軽視だというふうに考えております。  それから、格差、分断があることの方が今日重要でありますので、本人に手をつけることなく、格差、分断の方をどういうふうに進めるべきかというふうにお願いをしたいと思います。  以上でございます。
  328. 筑井甚吉

    筑井甚吉君 私は、先ほど述べました私の基礎理論からいたしまして、先ほど本人一割負担というのは一歩前進であるというふうに申しましたが、三割が二割になって、給付の平等に向かってこれは二歩前進であるというふうに評価したいと思います。
  329. 高屋定国

    ○高屋定国君 私は、先ほど申しました考えからいきまして、これは健康保険制度のいわゆる根本的な改善への第一歩には全然こたえていないと思います。そして、一番重要なところはそのまま残しておいてちょっと妥協した、こういうことでございますね。評価いたしません。
  330. 平尾勘市

    平尾勘市君 私は、修正案につきまして原則的に賛成と思います。とにかく、給付率を上げてくるということは非常に結構なことだと思いますが、財政的な点は修正案を出す限りお考えのあることだと思いますので、とにかくこれは原則的には賛成したいと思っております。
  331. 本田精一

    本田精一君 一面結構な案のように見られておるわけですけれども、私としては評価するわけにはまいりません。そんな修正案を出すのなら、国会の皆さん方あるいは政府皆さん方一丸となって、当初原案から腹を割った話をし合って出してくるべきだ、このように思います。  何か明日の強行採決、強行と言うのはどうかと思いますが、明日の採決を一つのタイムスケジュールにして、そしてそういうところへどんどん追い込んでいくような、まさに国民にとっての最重要課題を政争の一つの駆け引きのなににされているということで、大変腹が立ちます。
  332. 長野祐也

    長野委員 大津さんと高屋さんと本田さんに二点伺いたいと思いますが、いろいろ御意見がありましたけれども、日本の医療保険制度というのは、石原裕次郎さんが慶応病院に入院されたときの治療費が五百五十万円ぐらいで、一枚の健康保険証のありがたみといいますか重さで、彼自身が払ったお金は一万五千円ぐらいだったという例に見られますように、世界一のシステムではないかと私は思っております。  問題は、この制度をどうやって今後長続きをさせるかということが大変大事なところだと思うのですが、そこで第一にお尋ねをしたいことは、現行医療保険制度に全く手をつけずに今後も末永く対応できるというふうにお考えなんでしょうか。私は、この点についてはそれではできないと思っておるわけであります。なぜなら、先ほどからの御指摘にありますように、今から外国の二倍から四倍のスピードで高齢化社会がやってくる。あるいはかつての高度成長のときでしたらよかったわけでありますが、大変な低成長の中で、一時間に十億円も国債の利払いだけを払っておるというような財政事情の厳しさの中にある。あるいはまた、今後の医療費の動向についても、先ほどの御意見の中で医療費の伸びが低下をしてきているというような御指摘もあったのですが、これは一連の適正化対策あるいは薬価基準の切り下げ、そういうようなものによって一時的に鈍化はしているけれども、やはり中長期的に見ていけば、そういう高齢化等もあって、ほうっておくとGNPの伸びを上回って医療費が伸びていく、そういう傾向にあるのではないかと私自身は考えております。こういう福祉見直しということは、財政事情と絡んで今世界共通の悩みで、こういう対応を誤ったために政権が交代をしたような国も外国では例があるわけでありまして、負担給付適正化を進めるということは、大変私は今後大事なことだと思うのです。  そこで、第二点にお尋ねをしたいことは、この医療費負担をだれが分担をするかという問題で、患者負担国庫負担保険料負担をどのように組み合わせるべきだとお考えなのか。言いかえますと、十割給付というものを維持するなら、何でその財源を賄うべきであると考えておられるのか。  この二点をお三人の方々にお答えをいただきたいと思います。
  333. 大津静夫

    大津静夫君 第一点は、今の健康保険制度を根本的に改革しなければならないと思っています。と申しますのは、治療偏重です。病気の後追いです。これは健康保険ではなくて病気保険であります。したがって、逆にその構造を予防、保健という方向に重点的に移すべきであろうと思います。  第二点は、この際、投資をやったら効果が出るという感覚、すぐに効果を求める、そういう観点は捨ててもらいたいと思います。事は健康に関するものでありますから、例えば長い間保健、予防に一生懸命頑張ってきた市町村、そういうものがやはり長い間に健全な財政になっておるということについても、十分御認識をしていただきたいと思うわけです。したがって、これは短期の投資効果を求めるというのではなくて、やはり長期的な観点から進めていってもらいたいと思います。  それから、医療費負担でありますが、これはいろいろ論の出るところでございますから、どこからどっちへ回すとかなんとかいうようなことは言わなくてもいいと思いますが、要するに、高齢化社会において政策の中心を福祉優先、この方向に切りかえていくことというふうに思うわけであります。十割給付にそろえるという私の主張でありますが、それはやはりむだもいろいろあるでしょうけれども、そういうのを規定しながらでも、なお将来的に十割給付にそろえるべきである、しかもそれはできるだろうというふうに思います。  最後にもう一つ申し上げたいのは、甚だ遺憾なことは、財政的見地から今日やられている医療の抑制政策であります。これは余りにもドラスチックで、しかもその点では医師と医療機関あるいは住民を分裂させる、そういう感覚の中で非常にたくさんなエネルギーを使わせながら医療費の抑制政策をやっていますが、にもかかわらず、やはり製薬大企業の成長とか等々の点については一つも触れていない。例えば、諸外国で製薬企業に一時税金を課したところもありますけれども、一つもそういう点では配慮をしていない。それで専らこの点では、財政的見地を中心にした、私が主張申し上げますように、老人保健法によるあの現実、その上に財政的見地による医療費抑制がある、弱者にますます厳しい状況であるというふうに考えまして、やはり製薬独占とか等々に対する厳しいあれをしていただきたいと思います。
  334. 高屋定国

    ○高屋定国君 第一点でございますけれども、これはやはり現実に見ましたところ、医療制度は今のままでそのまま続くかと言えば、それは少しは問題はあるかもしれません。それについては、私も率直に見たところ、やはり同じ病気になってもこの病院とこの診療所によって出す薬が違ってみたり、いろいろございます。それについては、もう少し何といいますか、見るべきはあるだろうと思う。こういう点は改善すべきところはあるだろうと思います。私は、それはやられたらいいと思います。  それからもう一つは、それでもどうしてもいかないというならば、人間の命の最低限のことについては見る。その上のことについて、今おっしゃった石原裕次郎さんのように、それは少し負担のある、そしてまたかなりの医療をやってもらったと思う。そういう医療をしてもらった人についてはその上の負担をもらう、こういうことはあってもいいんじゃないか。健康保険においては最低だけ見るというやり方考えてもいいんじゃないか。二階建てみたいな形ですね。そういうことも、もし財政上の負担がどうしてもあかんというならば、将来考えてもいいんじゃないか。まだそこまで現在来ていない、こういうふうに私は思います。現在は、ここ一、二年、ことしの予算、それから去年のを見ますと、国民医療費国民所得の範囲内である。私は、いろいろな問題はあったのだと思う。努力はあったのだろうと思う。この努力はいいと思う。私はそういうふうに思っております。  それから、次に医療費負担については、基本的に考えますと、これは負担能力のある人が負担すべきだ。その負担能力の中に、個人でも、国民健康保険の中でも、お年寄りの中にも、能力のある人とない人がある。ある人はもっと負担してもらったらいいであろうと私は思う。外国で、私は一九六三年から六五年までヨーロッパのある国に留学しておりましたけれども、その国では、被雇用者については全額政府及び雇用主が払います。しかしながら、個人で営業している人は、個人の負担は相当高いです。これは年金と一緒になっております。私はそれはいいと思う、負担能力があるから。  それからもう一つは、公的な国庫負担の問題です。これもやはりある程度は続けるべきだと思う。しかし、これも率直に申し上げて限度がございます。何でもかんでも負担すべきじゃないと思う。本当を言えば、やはり最終的にそれも税金になるのですから、国民に来るのですから。やはり最終的には負担能力のある人が負担する、そして健康なときには負担する、そして病気になったらかかるという根本精神を貫けば、細かい点は相当話し合いの余地があるのじゃないか、私はそういうふうに思っております。
  335. 本田精一

    本田精一君 せっかくの立派な、世界に誇り得る制度を長もちさせる必要があるということは意見の一致するところでございます。そのために私たちも強くアピールをしておるわけであります。  負担の問題に手をつけずに対応をどこまでできるかという御質問の趣旨だと思いますが、私たち労働者としましては、とにかく体が資本であるということがまず前提にありまして、絶えず健康な体を保持していこうとしておるわけですし、またそういう中での保険制度というものに期待を大きくかけておるわけですが、それだけに、国の発展なり産業の発展なりに一生懸命頑張るという建前で、生産性向上運動を初め、まじめに働く労働者として立ち向かっておるということは理解してほしいと思います。  何で賄うかという具体的なお問いに対しましては、私は予防制度というものをもっと国を挙げて普及させる必要がある。先ほど、お隣の善通寺の市長さんがおっしゃいましたとおり、そういった実例というものが現にあるわけです。そういうものを国じゅうに広げて、あるいはまた無医村地区などもないようにしていくということに力を注いでいけば、当然むだも省かれてまいりますし、そういった面の成果、影響というものが出てくるのではないかと思います。  何もかも私たちが全部負担反対だということを言っているわけではございません。しかし、先ほども言いましたように、年金負担とかいろいろな負担考えまして、許容限度というものも実はあるわけであります。最近の賃金の闘争のときにも絶えず問題にしているところですが、十分成果も上がりませんし、また物価の引き上げなり、今度も新たにこの問題が採決されれば、いわば逆説的に言えば、これは明年の賃上げ闘争の一つの理論的根拠になるぐらいの医療費負担ということで、私たちの裏づけになるわけです。しかし、基本的に、何もかも負担することに反対しているわけではありません。先ほど言いましたように、退職者医療制度の問題につきましても、現役が一部負担することは当然であるとさえ考えておる次第でございますので、そういった話し合いというのですか、協議の場所に臨むに当たっては、抜本的な案さえ示してもらえれば、合意に努めていく努力は決して怠らないつもりでございます。
  336. 愛知和男

    愛知座長 自見庄三郎君。
  337. 自見庄三郎

    ○自見委員 どうも本当にいろいろな貴重な御意見を聞かせていただきましてありがとうございました。自由民主党の自見庄三郎でございます。  いろいろな御意見の中に、かなり共通した御意見として、いろいろ医療保険制度の間に格差があるという御指摘が多かったように思います。これは、現在の日本、御存じのように男が七十四歳、女が七十九歳の平均寿命でございます。昭和二十一年が約五十一歳でございまして、歴史上のいかなる時点でも、いかなる国でも、これだけ短期間の間に国民の平均寿命が延びた国というのは、百五十八ございます国の中で我が日本国だけでございます。そういった意味で、いろいろな問題点がございましたけれども、トータルとして、やはり今までの医療保険制度というのは大変世界に冠たるものだろうというふうに私も思うわけでございます。しかしまた、将来においてもこれが続くという保証はございませんし、そういった意味で、いろいろな御意見を聞かしていただいて、やはり国民の合意を得て、よりすばらしい医療保険をつくっていくというのが我々の責務だというふうに私感じるわけでございます。  そこで、いわゆる医療保険一元化の問題でございますけれども、そのことについての御意見をお聞かせいただきたい。  いろいろな問題があるようでございます。御意見の中には、財政調整か統合かとか、そういう御意見もございましたし、地域保険に統合すればいいかというふうな御意見もございました。いろいろな御意見がございましたけれども、まず筑井甚吉教授に、ちょっと先生お触れになられましたけれども財政調整、地域保険に一本化するにしても、お互いにメリットとデメリットがあるのだという御意見でございましたけれども、そこのことにつきまして先生の御意見を伺えればと思います。
  338. 筑井甚吉

    筑井甚吉君 高度成長期には、大きいことはいいことだ、そういう思想が支持を得ていたわけでございますが、果たしてそうかと申しますと、実は国鉄の分割、そういうような問題が今真剣に議論されている。そういう過程を経ますと、やはり組織が目が届く範囲というのがありまして、必ずしも全国一本に統一するのが、巨大組織がうまくいくかどうか、あるいはそれを分割した方がいいか、この辺のところは慎重に御研究願わないとならないと思うわけです。歴史的な経過もございますので、それを一挙に実現するということは非常に難しい。ベステッドインタレストに皆さんやはり固執されているわけですね。  私が一つ考えますのは、新しく社会に出てくる、新卒業者が主だと思いますが、新しく社会に出てきて生産に参加する人に対して新しい統一制度に加わるようにして、そして古い利益に固執している個々の制度は安楽死をさせればいい、これも一つの考え方である。そういうようないろいろなオルタナティブが考えられるわけです。多分その安楽死を実現するためには、十年、二十年のタイムスパンで考えなければならぬかもしれないけれども健康保険制度は二十一世紀に向かって長期的に考えなければならない問題でございます。したがって、先ほどからも御意見が出ておりますように、一年、二年というような性急な問題ではなくて、常に十年、二十年先を見ながら、我々が政治家の方に期待しているのは、短期的な、ミクロ的な視点じゃなくて、総合的な、長期的な視点でございます。長期的な視点に立ってぜひこれを検討していただきたい。  ただ、早急に実現しなければならない点は負担率の統一ですね。同一所得の人は同一負担額で済むように、当面は制度間の財政調整ということになると思いますが、そういうところから出発して、最終的には同じような公平な負担が実現するような制度をお考えいただきたい、こういうふうに考えます。
  339. 自見庄三郎

    ○自見委員 どうもありがとうございました。  秋山良三会長医療保険一元化の問題にお触れになりまして、そのことに少し御意見があったようでございますけれども、大きいものに一つにするよりも、組合健保といいますか、小さくて効率のいいものを残すべきだということを御意見の中で述べられたと思いますけれども、もし御意見ございましたら、そのことにつきましてもう少し具体的な御意見を……。
  340. 秋山良三

    秋山良三君 これは私ども組合運営の経験から私は発言したわけでございまして、もう少し申し上げますと、これは組合運営の歴史もありますし、またこれについて任せきりの一部の担当者でなく、経営者自体がもっと関心度を寄せることによって、内容とか合理化とかいろいろな面でいろいろな知恵が出てまいります。  私の方で今やっておりますのは、集団の検診でございます。これは全部組合費用でやっております。それからなお、その結果で特に人間ドックを希望される従業員に対しては、一泊の人間ドックの費用の二万円のものは組合負担補助しております。そういう予防体制において相当の従業員の福祉ということをやっております。これはなぜやっているかと言いますと、そのために会社から補助する金が出ても、現在のように休日が多くなって働く時間が少なくなっておりますと、そこで従業員にとっての命の大切さもさることながら、会社を運営する経営から見まして、本当に人一人の作業から達成されるところの生産ペースの予想というものが病人の発生によって非常に狂ってまいります。そういう意味で、経営者から見る従業員の健康の保持というものは、重大な関心を寄せざるを得ないのでございます。  ですから、私は申しております。できるだけこれは運営上赤字経営にならないように努力しておりますけれども、一番痛感しておりますのは、一年間運営した結果において著しく財政上の運営を予測できない費用で多額なものは、がんの診療費です。これについて何かもっと軽減策があったらということを端的に申し上げたいのです。がんの患者が一年間に発生した度数によって、組合運営の財政が大きく狂っておる事実でございます。ということは、もう少しがんの診療費というものが軽減できないか。医療機関の方は御損のいかぬように、しかし被保険者から見れば、全体的にがんの予防というものが完全に行い得ない時代においては、この治療には長期間で莫大な金を要する。これの診療費に対して、あるいは国家から特別な補助金とか何かの財政面の援助があってもしかるべきじゃないか。これはいろいろ財政の問題もございますけれども、がんの発生度によって組合保険の運営というものは非常に変わっておる事実でございます。これが少ないときは非常に黒字が多い。黒字というものは、私の方の運営では、労働組合と会社側の委員とイコールでいろいろ論議して、改良すべきことはどうだというような一つの労使交渉の場のような形でこの運営をやっておるわけでございます。  ですから、そういう意味で、従業員に対する福祉政策の一環として、少々負担が企業にかかってもこれが実行できるということは、我々の組合保険の規模の問題もございましょうけれども、まめに細かくやれる利点というものがたくさんございます。これがもし全部離れたときに果たしてそれだけのことがやっていただけるかどうかということに思いをはせますと、自分の会社本位だけで物を言うわけじゃございませんけれども皆さんのいろいろな組合保険の実態とかそういうことは、私は運営上の問題は存じませんけれども、そういう運営上については相当細かい問題でありまして、被保険者負担率だけの問題ではなく、そういう意味から、私は、制度上の問題では、これは今までのように残していただいたら結構だということでございます。
  341. 自見庄三郎

    ○自見委員 どうもありがとうございました。横道にそれますけれども、がんの問題でございますが、今、年間十七万人の方ががんで亡くなりまして、主要死因が五十六年から一位でございます。四十五歳以上の方は好き嫌いにかかわらず、約三人に一人はがんで亡くなるということでございまして、対がん十カ年総合戦略がことしから始まったばかりでございますけれども、大変貴重な御意見をありがとうございました。  時間がございませんが、最後に善通寺の平尾勘市市長さんが非常にユニークなと申しますか、ヘルス活動として、十年ほど、いわゆるミニ八十八カ所回りですか、ことしは空海なども大変ブームでもございますし、そういった意味で特に老人の健康につきましてうまく成功しているということでございましたけれども、その点につきまして、問題点といいますか、そういったものもやはり生じてくるのじゃないかと思うのです、各市町村等でやられる場合。そういった苦心談と申しますか問題点、それから国はこういったことにこうしていただきたいということ、ヘルス活動に力を入れてほしいという御意見でございましたけれども、その点がございましたら市長さんからお聞きいたしたいと思います。
  342. 平尾勘市

    平尾勘市君 私が今の老人を対象にしたヘルス事業をやったのは昭和五十年の末でございますけれども、それまでは国保財政が非常に赤字で経営が困難で、常に市議会の御理解を得て一般財源を持ち出したり、あるいは保険税の値上げに対する御承認を得たりしていたのですが、それが続くわけでございます。どこにこのような医療費の増高があるかということを調査いたしましたら、やはりお年寄の方が受診率が多い。これを解消するのはどうしたらいいかということで、お年寄りの医療費を低下さすことについての発想から、このミニ八十八カ所というのが生まれたわけでございます。  これは昭和五十年の十二月十五日から始めまして、幸いにして空海上人の誕生地ではございますし、本山の裏の百五十メーターくらいの標高の山でございますけれども、ちょうど現在だったら緑のトンネルを通っていくようなところに石仏が八十八あるわけでございます。それは本四国になぞらえて、一番は霊山寺だとか、あるいは結願寺の八十八番は大窪寺だとかいうぐあいになっておるわけです。それを老人に働きかけて、そして朝六時に集めて、私も一緒に歩くからというようなことで、私も当分の間毎日歩きました。  現在では毎日一回朱印簿に判を押すようになっておりますので、回る人に百日を押す朱印簿を渡しまして、それで一日一回回れば朱印簿に判を押すというようなことで奨励をいたしました。その奨励の仕方は、百回回ったら銅色のメダルを出すとか、二百回は銀色だとかいうようなことで、今百回、二百回、三百回、五百回、千回、千五百回、二千回、二千五百回、三千回、今現在三千回といいますか、三千日を回っておるわけです。このような人が十四、五人おるわけでございます。その人の名前を、どこのだれそれ兵衛という住所と姓名を書いた名板を大きな一覧表にして本山、一番の札所のところに掲げてあるわけです。どこそこのだれは千回回ったなということがよくわかるし、同じ時間にお参りをするとお友だちができるわけです。非常に熱心な老人は、朝の四時から弁当を持って五、六人わあわあ言いながらお参りをしている。現在では大体二千五百人ぐらいの方々が登録して、毎日三、四百人の人が何かお祭りのようなぐあいで回っているというようなことです。  春と秋には保健婦を六時に出して、回っている方々に問診をするわけです。お参りをして何回になりますか、寝つきはようなりましたか、食事はおいしくなりましたか、血圧は下がりましたか、そういうようなことで血圧の測定と尿の検査と体重の測定をやりまして、それでカードを渡して、あなたは血圧が高いからお医者さんに行きなさいよとか、尿が少し悪いですからお医者さんに行って治しなさいよとか、糖がおりるとか、たんぱくが多いとかいうようなことを、その現場で、回っている人に注意をして、それが非常に功を奏しまして、よく各地区の保険者が聞くのですけれども、一人当たりの老人医療費は大体今三十万ちょっとでございます。あるところでは七十歳以上一人当たり五十万から五十五万の医療費を出しているところもございますが、私のところは三十万から三十二、三万。こういうようなことがやはり老人保健の方にもぐっと出てきたわけです。  今現在では、三、四百人回っているのは老人ばかりではございません。一般の家庭の人も回っております。孫の手を引いて日曜日なんか回っている人もいます。こういうようなことが非常にお友だちづくりにもなるし、健康にもなるし、非常に功を奏したので、実はおこがましく本日の陳述に紹介したわけでございますが、これは私どもは非常に成功した、反面、医療費の削減の方法としての効果を申し上げたわけでございます。  ですから、ヘルス事業というものは、大きな都市でも各区に分離して小さく組織をつくって、その小さな組織体で、先ほど秋山先生がおっしゃったような小さい組織の中できめ細かな密着したヘルス事業をやることが本当に功を奏することではないか。そのためには国に予算をつけてもらわなくてはいけない。今老人保健法のことで、厚生省の方で昨年よりもことしは三七%保健事業に増加していただいておりますけれども、もとが小さいものですから、三七%の増加はいいのですけれども、もっともっともとを大きくしてもらって、そして全国の市町村にいろいろヘルス事業を奨励するということに予算づけをしていただくということを先生にお願いしたいと思います。
  343. 自見庄三郎

    ○自見委員 どうもありがとうございました。特に疾病の予防という観点から大変貴重な御意見をどうもありがとうございました。  時間でございますので、終わらせていただきます。
  344. 愛知和男

    愛知座長 永井孝信君。
  345. 永井孝信

    永井委員 きょう意見陳述をされました方々には、大変貴重な御意見を賜りまして、本当にありがとうございました。冒頭に厚く御礼を申し上げておきたいと思います。  私、社会党の永井孝信でございますが、まず、意見陳述をしていただきました方々に個々に御質問を申し上げてみたいと思うわけであります。  まず初めに秋山さんでありますが、世界一の高齢化社会を迎えて、これからもさらにその傾向が強まっていく、そのために医療費の増加は避けられない、したがってこの医療費を賄うためには、一応その負担にたえる財政状況の中にはまるようにしていかなくてはいけない、こういう前提意見を申し述べられたわけであります。  そうして、その中で十割負担というのが投薬や検査で非常に余分なお金が要っているのではないか、こういうことも御指摘をされました。それとの関連で、将来の健保一元化という問題については現在の小集団の方がよい、こういうことも言われているわけでありますが、この政府改正案というのは、政府が盛んにPRしておりますように、まず医療費のむだを省くこと。これは今の十割給付ではむだを生みやすいし、医師の方も患者の方も多額の薬を使ったり注射をしたり検査をしたりすることに抵抗感がない、だから大変なむだが今の保険制度の中には行われているという前提改正案というものを出してきているわけですね。そして、それの是正とあわせて将来の一元化ということを前提にして提案をしてきているのですが、今回の改正案賛成をされる立場で、しかも将来の一元化には反対であるというその真意はどこに置かれているのか、お聞かせいただきたいと思います。
  346. 秋山良三

    秋山良三君 お答えになるかどうか知りませんけれども、私は、現状において政府の抱えておる赤字の克服という大事業が行われておりますと、いろいろな分野で予算の立て方について厳しく臨まざるを得ないことは当然だと思います。これをカバーしようと思えば一番嫌な増税に反映するということで、これ以上不安があったら国民は大変でございます。増税がないということでいけば、厳しい中で切り盛りをされる。そうすると、やはり抜本的に福祉に対してどういう割合、もちろんこれは医療の問題もございますけれども、そうすると一つの前提としての大枠というものは政治の世界でなければ、政治というものは行われないと私は思うのです。  ただ、その枠で決まったときは、予定を超えたときの財源の補てんというものを許される範囲で補正予算に計上できるかどうかという政治の仕組みについては、私ははっきりした見解は言いにくいのでございますけれども、総枠の中で、福祉の方につきましても、国民は、欲望の中で、こういう時代だから厳しい中で少しは精神的には忍ばなくてはいかぬ、この気持ちをいただくことが国の将来の繁栄に対しての心構えだと私は存じます。  ですから、その枠取りということは、これは政治の問題でもあるかもしれませんけれども、そういう意味で現在の医療費の枠でおさめる、抑制するというようにお聞きになったやに存じますけれども、その抑制ということで、やり方によっては、私は今の医寮費がもっと縮まる中身を持っているという想像を持っております。患者が行けば、薬はたくさんもらったけれども飲んでない薬の方が多いという声まで聞いております。そういう意味で、やはり一割払うということは、現実に一割払う人がその場で金銭を払ったことによって医療費の意識感というものが非常に上がるわけです。ああ、このくらいの風邪を引いたらこれだけかかるのかということは恐らく知らないと私は思うのです。それを知ることによって、医療費というものが相当かかるということは家計の問題にもなりますから、自分自身がもっと管理をすれば風邪は引かなくて済むのじゃないかということが予防につながる問題になるのです。そういう意味での刺激剤にも、私はこの一割をその場で払うということは効果が上がると思うのです。どの程度上がるかは、これは実施した結果論であると思うのです。  我々が今言っているのは、こういうことを予想して物を言っているだけでございますので、その結果を踏まえて、ある程度これを実行されたときに、この法案の改正というものが永久でなく、その結果をもって時に合わせて変更ができ得るような立法であれば余計ありがたいと私は思っております。その一割の効果というものは皆様の感度で違いますけれども、患者の立場から見て、実際にこのくらいの病気をしたら幾らかかっているという、一番これに触れておられなかった人が今度触れるのだと思うのです。そういう意味からの効果ということは、私は一割ということで相当大きく出るように想像しております。予測しております。そういう意味で、私は一割ということに対して賛成申し上げたのです。  そして、それの全体の負担については、先ほども申し上げましたように、所得の控除というものをもっと認識さすことにおいて、年間の医療費というものがその家庭で幾らかかったと言えば幾ら税金が減るということは、非常にありがたい所得税法に対する運営ということができるようにしていただきたいのです。  我々の組合の方では、私どもやっておりますけれども、これは政府管掌の方であれば、レシートをいただいたら会社側が源泉徴収しているような事務のところでこれをまとめてやって、税務署の窓口へ行けばこれは通過するわけです。そういうことで個人の煩瑣は避けられます、そういうことを私は申し上げているのです。そういうところに実際の恩典があるのに、これを具体的にやることが煩瑣でできないのか、これは私はできると思うのです。そうしますと、全体の中における一年間の自分の家庭の医療費はこれだったということがはっきり出てくるわけです。これでは我々としては子供の予防の管理を怠っているのじゃないかということで効果が上がりますから、自然と医療費は下がると私は思うのです。  そういうことの予防から関連して、全体から見る医療費というものは、枠というものは現在以上にふやさない、むしろ減らせるという見地を私は持っております。それを枠内というお考えで質問されたのでございますので、私の感覚と御質問の方の感覚とは少し相違があったやに存じますけれども、こういうことで御返事になったかどうか存じませんけれども……。
  347. 永井孝信

    永井委員 大変申しわけないのですけれども、限られた時間でありますから、できるだけ簡単に、簡潔にお答えをいただきたいと思うのであります。  今陳述の中で、将来政府一元化を求めることには反対だ、こう言われているのですが、反対だということと政府が言っている公平な負担の持ち方ということと矛盾しないかどうか、一言で答えていただけますか。
  348. 秋山良三

    秋山良三君 大変難しい御質問でございますので、私の答弁が整うかどうか存じません、けれども、将来に対する時間が相当かかりますので、一元化というものは理想であっても到底今できないと思います。だから、現状でいいということに結論を持ったわけであります。
  349. 永井孝信

    永井委員 筑井さんにお伺いいたしますけれども筑井さんの方も、今の医療体制では非常にむだが多いということを前提に言われているわけですね。国会の審議の中でも明らかになってきているのですが、厚生省は薬のむだ遣いが千九百億円、そして診療の余分、過剰な診療が千四百億円、合わせて三千三百億円この昭和五十九年度で節減できる、こう言っているわけですね。  それを裏返して言うと、千九百億円と千四百億円の合わせて三千三百億円は、今のそれぞれの診療所や開業医、病院などで余分のことをやっているのだという前提に立っているわけですね。だから、医療費のむだを省くのです、十割給付はむだを生みやすい、こう言っているわけですよ。先生も同じようなことを言われているわけですね、金額は言われておりませんけれども。それを是正するのに、端的な言い方をすると、患者の負担導入すれば、そういう乱診乱療はなくなるのではないか、こう言われているのですね。私としては、この患者の負担前提に乱診乱療の是正を図るということは、本来の医療体制上からいって本末転倒ではないかと思うのですね。  例えば、今の乱診乱療がもしあったとすると、レセプトの審査の体制を強化するとか、保険医協会とか医師会の自浄作用にまつとか、いろいろな方法があると思うのですね。あるいは今秋山さんも言われましたけれども本人がどれだけ医療にかかっているかということを知ることによってもしも医療費の抑制ができるとするならば、本人負担導入しなくても、医療費を告知するという方法もありますね。いろいろな方法があると思うのですね。だから、先生の言われているこの患者の負担前提にした改善策というのは、本来のあり方として取り入れるべき問題ではないのではないか。いわゆる医療システム論を言われましたけれども、そのシステム論をそこに持っていくということは、若干問題があるような気がするのですが、簡単に一言お答えいただけませんか。
  350. 筑井甚吉

    筑井甚吉君 私が尊敬しております今は亡くなった東畑精一先生が、かつて社会に関して非常に本質的なことを言われたわけです。それはどういうことかと申しますと、東畑先生は非常に鋭い目を持っておられましたけれども、我々社会科学者に対して、すべてが善人であるという前提のもとに組み立てた社会科学というものは極めて低劣なものであって、これは実行するに及ばないということであります。すべてが善意の人間でなくとも妥当に動くような科学を考えるのが本当の社会科学であると考えるわけです。  そうしますと、どうも今のシステムというのは、すべてが善人である、医師は倫理観に満ちて、緒方洪庵の「扶氏遺訓」にあるようなそういう医師である、また患者は患者でそういう人たちであるというような前提のもとで組み立てられたシステムであるように感じるわけでございます。  そういうことをいろいろ反省しますと、一つには医療制度自身の中に、まじめな有能な医師が恵まれて、そうでない医師が排除されるような機能を部分的にも設定することはプラスであると考えるわけです。  今御指摘がありましたように、医療監査その他を強化すればいいじゃないかということでございますが、私は、公的な権力を持った監査にそういうものを依頼する、そういう監査機能なり権力機能を拡大するということには根本的に反対でございます。やはり自由社会はそれなりのメリットがあるということでして、監査機能あるいは取り締まりによってそういうものを規制するというのは必要最小限にとどめるべきであって、そしてシステムそれ自体で自浄作用が行われるようなことを考えるのが真に活力のある社会を考えるゆえんである、こういうふうに考えるわけでございます。  もう少し補足させていただきますと、医療にむだがあるということでございますが、実は、医療財政が一時的に好転しても、現在でも不十分なところは随分あるわけですね。多数決社会の一番の欠点は、少数者が犠牲にされるということです。ですから、議員の先生方は非常に不幸な少数者の立場を常に考慮して、初めて多数決というものが民主主義社会では容認されると思うわけです。皆さんいろいろ指摘されましたように、我々の最大の関心は、寝たきり老人になったときどういう待遇が受けられるのか、あるいは老人的な精神障害に陥ったときどういう措置が受けられるのか、それが私自身を含めても最大の関心であるわけです。現に私の友人が一昨年ですか、父親を亡くされましたけれども、そのとき、不幸にして精神障害が起こって、先ほどの石原裕次郎氏の話とは逆に、凶暴な患者ということで病院でなかなか引き受けてくれない。そして結局、自己負担が一千万円近く、サラリーマンですが、一千万近く自己負担しなければならなかった。もしその一千万を支出しなければ、自分の生活自体も職業自体も失うような状況になったということで、現在、確かに日本の医療制度は、総体的に見た場合には国際的に比較しても非常な成果は上げているというふうに評価しますが、その中でも少数な不幸者が本当に不幸な立場にある、まだやるべきことがあるのだ、財政に余裕があればそういう不幸な少数者に重点的に支出すべきであるというふうに私自身としては考えております。
  351. 永井孝信

    永井委員 同じことを全部の方々にお聞きしたいのですが、時間の関係でそうできませんので、問題点だけ端的にお聞きしていくわけでありますが、今の乱診乱療の問題との関連で、もしそういう前提に立つとするなら、医師と患者の信頼関係はどうなっていくのだろうかということが非常に私は心配なんです。  そこで、きょうお見えになっている方々の中には医師の方がいらっしゃいませんので非常に残念でありますけれども、直接医療に携わる組織の責任者をされている大津さんにその関係でお伺いしたいと思うのですが、大津さんはこの改正案反対の立場で意見の陳述をされました。その中でいろいろな問題に触れられているわけでありますが、特に老人保健の問題について触れられましたね。この老人保健は昨年の二月から施行されたのですけれども、この老人保健の施行によって、大津さんのお話を聞いてみると、著しく受診率は下がっている。そしてそのことが高齢化社会と言いながら、お年寄りの命を大切にすることと逆行しているのではないかという趣旨の御意見があったと思うのですが、医療に携わる機関を預かっていらっしゃる大津さんとして、老人保健の経験からいって、今度のこの一割負担導入という問題で、端的に言って受診率が下がると思われますか、どうですか。
  352. 大津静夫

    大津静夫君 まず第一に、一割負担でありますけれども、石原さんの一割とそれから庶民の老人の一割とはまるきり違うわけでありまして、その切実さというのは非常な差でありますから、この一割負担というものについては、今諸先生方も申されましたように、弱者、低所得者層こそ非常に重い負担を課せられるというふうに考えます。  それで、私は医療あり方を根本的に変えるには、支払いの、つまり出来高払いの点数方式、これをやはり基本的に変革をしていただかなければならぬというふうに思います。物と技術を明確に分けて、そしてそれに正しい評価をしていくということが必要だと思います。そうなれば、乱診乱療とか、あるいはかかったのに大変な金がかかるということは、それは合理的にわかってくる問題だというふうに思います。したがって、支払い制度改革がなければ、今先生方一部申されましたけれども、いい医者、悪い医者、つまりどちらがいいか悪いかということになるわけですけれども、まともに一生懸命地域住民と密着して予防とか保健事業とかをやるということになっても、今は医療行為をやらないと点数になりません。金になりません。ですから、その前提となるべき予防とか保健とかいうことをやって地域に展開する医師、医療機関、それから保健所機能、そういうものの拡充をきちっとやらないで、今のままいきましたら、私はこれは非常に問題があるというふうに考えております。  ですから、例えば、私の病院も経験がありますけれども、連れてこられて、もう既に息を引き取っているかどうか、その境目で、これは息を引き取っているというようなときにでも、それはやはり開業医とその他との違いということで、手厚くするかしないかで医療費がつくかつかないかということになるわけですから、例えばそういうこと。ですから、私はやはり今の薬の問題とかあるいは検査の問題というのは、そういうふうに物と技術を明確に分けてやっていただければ、乱診乱療というのはないと思います。  特に老人保健について一言申します。  老人保健法というのはやはり差別であります。これは明らかに点数表によって、厚生省並びにその関係者は今の支払い点数表によって、利益誘導をどこへ持っていったらいいかということができるようになっています。例えば入院の点数の逓減、入院料の逓減、ずっと一年たったらこれはどうにもならぬ、そういう低額であります。それから注射一つにしてみても、外来の点滴注射とそれから入院の点滴注射が点数が違うというようなことをやっている。これらはすべて点数による操作でありまして、そのために医療機関から一般老人を追い出せと言わなくても、それは追い出すことができるし、追い出さなければならない。それじゃ家庭に行ったらどうなりますか。家庭でそのことがみとれるかどうか。それはしようがないから一部負担、おむつ料とかお世話料、それが公然化しているという現実を、これはしかと確かめていただきたいというふうに思うわけであります。
  353. 永井孝信

    永井委員 一つの問題を深く掘り下げてお聞きする時間がありませんので恐縮ですが、その乱診乱療にかかわって、レセプト審査などを強化することについては、権力の拡大だという筑井先生のお話もございました。レセプト審査でいいますと、健康保険組合は、支払基金は全国一本の組織なんですね。国保の場合は、それぞれ分かれておりまして、一応団体連合になっておりますけれども、それぞれ審査は別々にやられる。そういうことが結果としてレセプト審査にいろいろな意味格差が出てくるのではないか、濃淡が出てくるのではないか、こう思いますが、できれば、それも全部一本にするということが私は好ましいと思うのです。それは権力ということになりますかどうですか、一言でお答えいただけますか、筑井先生
  354. 筑井甚吉

    筑井甚吉君 私はそうならないと思います。私も理想としては、例えば地域健康保険に最終的には統一する、そして審査基準その他も統一されるべきだというふうに考えます。そしてそれは、今情報化社会ということが非常に言われておりますが、各末端組織の間で情報ネットワークが確立してくれば、そういう形での公平さが実現してくる。ただ、これは情報化社会の進展とともに、長期的な視点で実現されるべき理想であって、現実はやはり前提的には制度間の財政調整ですね。それから、ただ負担率の統一化に向けての財政調整というようなことで、やはりこれは十年のタイムスパンで考えなければならぬ問題だというふうに考えます。
  355. 永井孝信

    永井委員 平尾さんにお聞きいたしますけれども国保を預かっていらっしゃる責任者として端的にお聞きいたしますが、四月の上旬段階で、全国の市町村のうち一千を超えるたくさんの市町村から、健保法改正反対意見書が国会に出されているわけですね。都道府県の中で、三十六の都道府県からこれまた反対意見陳述が出されているわけです。平尾さんの場合は賛成の立場でありますけれども、この国保財政状況を見ましても、それぞれ大変な格差があるわけですね。一番少ないところでは、和歌山の北山村というところでは、被保険者一人当たりが五千八百四十八円、一番高いところは兵庫県の氷上町で五万七千百五十三円、こんなに格差があるのですよ。それぞれその財政の状況の違いはありますけれども負担公平化という面からいくと、こういうものをむしろ是正をすることが先決ではないかと思うことが一つ。だから、各市町村でそれだけの反対意見が出るということに対して、端的にどうお考えになるかということが一つですね。  そしてもう一つは、老人保健制度導入されてよかったという立場で意見を述べられたわけでありますが、例えば在宅療養という問題が非常に重視されておりますけれども、善通寺市では、在宅療養に対する保健婦の確保なんかは完全になされているのかどうなのか、この二つを端的にお答えいただきます。
  356. 平尾勘市

    平尾勘市君 第二点目の保健婦の確保は、大体人口五千人に一人、こういうような考え方で、私どもでは八人の保健婦を採用しまして、そして在宅訪問をやらしている。そしてレセプト審査のときに、特に長い間、何カ月も医療費が高いとか、それから一カ月でございますけれどもうんと医療費がかかったとか、そういうレセプトを、もちろん香川県は、どこの県でも同じですが、健康保険連合会をつくって、連合会の方でお医者さんの審査をしてもらっておりますが、それ以外に地元で、善通寺市は善通寺市でレセプト審査のときに発見するわけですね、たくさんな医療費がかかったり、何カ月もするものを。そのときは保健婦を派遣してそして指導する。健康指導をやる。それをやっておるわけです。  現在、保健婦は五千人に一人、いわゆる学校区、小学校区が、私たちの人口が三万八千五百でございますので、大体五千人に一つぐらいの小学校がありまして、また学校区ごとに公設、いわゆる市の公民館がございますので、そういう公民館を中心にして、地域社会のいわゆる人間づくり、町づくりというものはやろう。それから保健婦は八つの公民館に保健婦を一人ずつ張りつけて、そしてその張りつけたところに責任を持たして、受診率の多くなる地域と受診率とか医療費が多くならぬ地域を選別しまして、保健婦同士で責任持たして健康保持をやらす、そういうようなことをやらしておるわけです。ですから、保健婦は私の方は五千人に一人を雇うし、それから寝たきり老人のホームヘルパーもございますけれども、一緒になって保健婦が家庭訪問をやる、それで健康指導をするというような建前で指導をやっております。
  357. 永井孝信

    永井委員 時間がありませんので十分にお答えをしていただくことはできませんけれども、最後に高屋さんにちょっとお伺いいたします。  高屋さんは、医療で不正ということがあるとするなれば、それは審査の強化でやれと言われました。本人負担で不正防止は邪道だと言われました。私は全くそのとおりだと思うのです。高齢化社会ということが非常に問題になって、二十一世紀のビジョンということも出てきているのですけれども、今世界一の高齢化社会になったというのは、すぐれた健康保険制度があって、十分な医療を安心して受けることができたということがこの高齢化社会を迎えていると私は思うのですけれども、ここに財政調整とか、財政の観点から本人負担導入されるとか、あるいは不正診療があるんだ、薬づけ、検査づけが横行しているんだという前提で問題の処理を図っていくということは、医療に対する国民の不信感を増幅することになって、いわば高齢化社会を目指すことと逆行していくのではないか。高齢化社会が悪いのではなくて、高齢化社会ができたことを誇りにしなければいかぬと思うのですけれども、その関係について高屋さんと本田さんから一言お答えいただいて、質問を終わりたいと思います。
  358. 高屋定国

    ○高屋定国君 今の御質問でございますが、初めからそういうふうに見るということは、やはり患者とそれから医者との信頼関係をなくするという面はあると思うのです。しかしながら、いろいろ新聞に出ておりますように、現実にあることも事実です。私自身も病気になって、同じ病気でも病院が違ったら薬をよく出すところと出さぬところがあります。そういうことがありますので、こういう病気だったらこういうふうにするのが常識だということは、ある程度これこそ医師会の中で常識としてやってほしいなというのがまず一番問題でございます。  しかしながら、そういうこともあるということは事実でございますから、それを余りやるということは確かによくないことでございますけれども、それも無視はできない、私はそういう感じでございます。
  359. 本田精一

    本田精一君 先生のおっしゃるようなところ、おおむね同意見でございますが、不正なりの問題のコントロール、レセプト審査、そういったもので乱診乱療はかなり規制できると思いますが、定率で患者負担による医師のコントロールということは、正直言うて、何がしかはできると思いますが、これは私は邪道だろうと思います。  とにかく日本の労働者生活は、戦後随分改善されたとは言いますけれども、まだ国際比較の点で、まず食料が高い、住宅取得なんかになったら手が届かぬ、さらに子供の教育に随分金がかかるということで、非常に条件が悪いと私たちは考えておるわけです。せめてこの世界に冠たる健康保険だけでも万が一のときにはかかれるぜという安心というものが一番国民の心理安定に役立っているだろうと思いますので、そういう意味からも、そういう負担の問題が生じたときには定額で頭打ちを、まあ高額医療の頭打ちもありますが、やはりかなり頭打ちを厳しく低位に抑えるべきであろうと思います。
  360. 愛知和男

    愛知座長 森本晃司君。
  361. 森本晃司

    森本委員 本日は大変お忙しい中、各先生方に御出席いただきまして、先ほど非常に貴重な御意見を数々聞かしていただいて、大変ありがたく思う次第でございます。公明党の森本晃司でございます。各先生方のいろいろな御意見陳述に対しましては、先ほど来各党からかなりの御質問等々いただきまして、また先生方に御回答いただいて意見を聞かしていただき、相当出てまいったような気がいたしますので、ここで多少角度を変えて御質問させていただきたいと思うのです。  先ほどお隣の永井先生から一部数字についてお述べいただきましたが、今日までこの健康保険法に関して各都道府県から相当な御意見をそれぞれ出していただいております。先ほど永井先生は四月の数字を挙げていただきましたが、せんだって私が国会で質問いたしましたときに、六月十九日現在の数を伺いました。それによりますと、都道府県では三十七、大半の県でございます。それから、市町村の数にいたしまして何と千七十二でございます。先ほど永井先生の数から、四月からまだふえているわけでございますが、こういった状況は、この健康保険法改正が突然国民の前に出てきたので、国民にとってはわかりにくいものだ、特にその後政府が示しました長期ビジョンなるものが余りにもわからないがゆえに、私は、こういったいろいろな反対意見書が提出されてきたのではないだろうか、こう思うわけでございます。また、ほかに数多くの署名運動も国会の方へ参っておりますけれども、こういった状況をきょう陳述にお見えいただきました各先生方どうとらえていらっしゃるのか、全陳述人の方にお伺いいたします。  それから、善通寺の市長さんのところでは議会はどうだったのかということをお伺いしたいと思います。
  362. 秋山良三

    秋山良三君 今森本先生の御質問の内容でございますけれども、今度庶民の立場で、住んでおる地域において、森本先生は奈良県のように伺っておりますが、私も今奈良県に住んでおる人間でございます。私の住んでおるところは、十一年前に大阪からかわったところでございます。私の方の地域はこの十一年に大変な人口のふえ方でございます。その人口のふえ方に相応した医療機関というものはございません。奈良県自体から見ましても、大きな立派な総合的な病院というものは昔のままであって、いわゆる新しく住宅に住んでいるところにはそれらしきものは少ない。そうすると、私らの住民の大半の方は、大阪まで高い電車賃で乗って行っておるわけです。その電車賃のかかる負担というものは忘れてしまっているのですね。  そういう意味で、やはり人口の推移、そういう関係で、つまり総合的な病院の機関というものが、自営でさすのかあるいは政府の指導型でやらせておられるのか。開業医の地域の配列と申しますと、医師会同士で、そんなに新しく来てもらっては困るという地域の医師会で反対がある。大蔵省の酒の販売というものは大変うまくやっておられるようです。二百メートルごとにしか小売販売店を置かないということで、小売店の酒屋はつぶれたことございません。ですから、競争によって患者の数がふえたり減るということで、新しく医療をされることが非常に抵抗を受けている地域があるようでございます。  やはり人口の推移というものは非常に変わってきております。特に奈良県においては人口がどんどんふえておる。私は生駒市なんです。生駒市はそのトップでございます。トップになりますと、地価は上がるとか、いろいろな環境が変わってまいります。もう電車はラッシュで乗れません。やはり環境の問題が背景になりまして、そこにおられる老人の問題、また老人医療から来る福祉ということでなくとも、地方において老人に対する福祉の差というものがある。私は生駒市におる。奈良市に入ったら、老人になったらふろ屋もただや、乗り物もただや、横におる生駒市は何にもしてくれぬ、こういうことで、地方のいわゆる福祉の市営の予算といいますか、どうも福祉ということに対する、そこの地域の市議会とかというところでかけている感度というものは相違があります。  実は奈良県は、前知事の奥田さんが、奈良県は日本の福祉王国だというような大きな宣言をされましたので、ある立候補された方は、市長時代に老人に対してそういうことを先にやられたから、これは選挙したら当然老人はその方に票を入れたという声まで出ているのです。ですから、金をかけた福祉より心の福祉ということが老人について相当大きな効果を上げると思うのです。いろいろな老人会というものがたくさんできましたけれども、この老人会のことがやはり福祉につながる指導型であるということですね。全然違うのですね。ですから、私は福祉というものは金だけで割り切れるものじゃないと思うのです。何か心の通ったもの、福祉という問題はこういうことに行政機関としては心していただきたいと思うのです。  医療機関の存在の問題ということと、お医者さんの月給の問題の差、私は知らないのですが、医者の世間相場といいますか、これがどうも聞くとおり相当まちまちでありますから、いい医者はいい病院へ行って月給がもらえる。そうすると腕前のいい方はどうしても我々の地域には少なくなってくる。割合に医者に対する評価というものは、その地域では相当評判というものは高いです。あの医者のところへ行ったら優しくて親切で、少々金がかかってもという、心の問題の通じ合いのお医者さんが一番とうとさを持っています。私は金銭だけで物事は評価できない時代が来ておると思います。お答えになったかどうか知りませんが……。
  363. 大津静夫

    大津静夫君 一言。先生が申されましたように、地方自治体が非常にたくさんの反対を上げておられる。これは逆に言えば、住民との密着といいますか、住民の健康に責任を持つというのが、地方自治体として非常に責任がある、住民との交流がやはり地方自治体が一番深い関係にあるということの証拠だと思います。したがって、そこから出ていくところの、ここ数年間、特に昨年の老人保健法その他等々による住民の不安、こういうものは高齢化社会になればなるほど伝わっていくわけでありますので、やはり不安がある。それに対して財政対策のみの早急なやり方における、プロパーでぶち込んできたような弾丸政策は、やはり非常な不安を感じると思います。この点で、反対意見が非常に最大公約数を得て上がってきているのではないかと思います。  一つは、ちょっと先に申しましたけれども、まさに医療費は上がりますよ。それはこのままの医療でいいというわけじゃなくって、高度医療になるとどんどん上がります。上がりますけれども、それぞれ、それじゃ上がるのをどう対処していくかというのは、低水準に抑えるのではなくて、高水準に給付を位置しながらそれをどう保障していくかという観点に立っていただきたいというふうに思いますから、そういう点、ぜひひとつお願いをしたいと思います。
  364. 森本晃司

    森本委員 済みません、私、十五分の持ち時間でございますので、端的にお願いしたいと思います。
  365. 筑井甚吉

    筑井甚吉君 御質問だけに明確に答えます。  私のところは特殊な社会に住んでおりまして、大学でございますので合理性をとうとぶ人たちが集まっておりますので、この改正に関しては説明がやや不足であったという御指摘のとおりでございますが、大学においては皆さん理解して、広い視野から賛成している方が圧倒的だと思います。ただ、私の家族になりますと、父に対しては私はこれは十数分説明しないと理解されなかったということは事実でございます。
  366. 高屋定国

    ○高屋定国君 市町村においてあるいは地方自治体において反対の声が出ているのは、一言で言えば不安だと思います。その不安は、先ほどもお話がありましたように、まず全体の社会福祉社会保障の一環として医療制度の問題をどういうふうに位置づけるかという形の中で今度の改正案がどうも不明確である、そのことが不安に連なっている、一言で言えばこの不安で反対がふえた、こういうことだと私は思います。
  367. 平尾勘市

    平尾勘市君 私は、三十六とか七の県の反対については、私の想像でございますけれども、恐らく各県が各県の国保団体連合会あるいはその加入者の、いわゆる組合員の方々に対する資金的な援助をしているのじゃないか。そういうことで、今回の改正法案の中に、国民健康保険の方の補助金を、財政調整金を入れて四五%を医療給付費の五〇%とする、いわゆる今までの四五%を三八・五%にする、六・五%減らす、えらいお金だ、このように国庫の補助金を減らされると、そうでなくてさえ国保財政の運営を心配しておる保険者が、恐らくまた我々がかぶらなくてはいけぬのかなという不安感からきた反対じゃないかな、これは想像でございます。私自身は国、政府が六・五%、いわゆる四五%から三八・五%に減らしてでも、決して保険税あるいは保険料にしわ寄せしない、国が面倒を見ますよ、こういうようなことを再三言われておりますので、政府の御意見を尊重して、あくまで我々は政府にお任せをして、非常に順調にこの保険法案が通った場合に我々が迷惑を受くることはないのじゃないか、こういうように解釈しておるわけでございます。  なお、善通寺市議会においては、この問題については私どもと同じ意見を持っていただいております。
  368. 本田精一

    本田精一君 各議会の動きは、やはり住民によって選ばれた各議員の多数合意で決めておるところでありまして、恐らくこれの根底には住民生活、住民の健康というものを基本にして反対決議をしていると思います。注目したいのは、多くの議会でそういうのが出ておりますが、自民党も含めて大勢の議員の皆さんが一致した意見として提出しているのだろう、こういうところに注目しております。
  369. 森本晃司

    森本委員 時間がございませんので、高屋先生にお尋ね申し上げます。  一元化というところで、先生は二階建て、基礎保険、基礎年金のようなものを導入して一元化をしていけばいいというふうに先ほど御陳述いただきまして、今までこういった視点からの一元化への方向は国会でも論議がなされていなくて、一つの新しい角度であると私は先ほどもお伺いしたわけでございますが、もう少し具体的に先生考え方をお述べいただけましたら……。
  370. 高屋定国

    ○高屋定国君 私は、医療問題については、根本は、先ほどからたくさん出ております予防の問題とか支払い制度の問題とか制度格差の是正とか負担の公正化、こういうことが言われております。それをずっと考えますと、一番の問題は負担の公正化の問題と制度間の格差ということ、これは非常に大きい問題だと思うのです。ただ制度が違うだけでこんなに給付が違うというのは、これは根本的におかしいと思う。  それからまた、負担も非常に不公正であります。こういうことは是正すべきだと思う。しかしながら、今急速に全部一遍に一元化は、いろいろな歴史もあったり、ちょっと無理だと私は思う。その過渡期として、基本的に健康保険がこれだけやる、この制度ではこれだけはプラスアルファで見るというような考えも——これは次善の策ですよ。一番いいのは全部一本で一元的に十割やればいいのですけれども、そうはできないと思いますから、今まで健康保険の場合、診療するのは全部一本だったのですが、過渡期としてそういうことを少し考えてもどうか、それを入れてでもいいから私は負担の公正と制度格差の是正ということの方を優先すべきではないか、そういうふうに考えます。そういうような点で過渡期の問題としてちょっと考えてみたまでで、数字的にはまだ押さえておりません。
  371. 森本晃司

    森本委員 ありがとうございました。  筑井先生にお尋ね申し上げます。  先生先ほどの御意見の中で、長期的ビジョンを出してこそ政治家であるというふうにお述べいただきまして、私も全くそのとおりだと思うわけでございます。今回の健康保険の問題、先ほどわかりにくいと言ったのは、その長期ビジョンがないからだと私は思うわけでございますが、その中で今度政府中長期ビジョンをやっと出してまいりました。実に中身のないものだと我々は感じておるわけでございますが、最後に、このたび厚生省が出しました中長期ビジョンに対する先生の御意見をお伺いして、質問を終わらせていただきたいと思います。
  372. 筑井甚吉

    筑井甚吉君 私は、この問題に関してはいろいろなところで政府に先立ってビジョンの討論をしているわけですね。例えば私、個人的に論争したことがある故武見太郎氏のところでも、将来の医療あり方に関して突っ込んだ学際的な議論がなされているわけです。そういう意味で、今度出しましたのはそういう作業のスタートであって、完成されたものではないと私自身は評価しております。  私がこの改正賛成しましたのは、出し方がどうのこうのであるから反対とかなんとかということではなくて、私は私なりに将来こうあるのが望ましいということで、現場の医師の方、実は武見太郎氏が主宰している研究会でかなりの長い期間論争して、四、五年かけて練り上げた案であるわけです。私自身はそういう案を持っているから、それに対して方向としては前進であるということで賛成意見を申し述べたわけでありますが、長期ビジョンの確立に関しては真剣に取り組んでいただきたい、そして第二ステップ、第三ステップというふうに皆様の合意が得られる形でこれをまとめ上げていただきたい。ですから、現在出されました作文は、そのスタートにしかすぎないというのが私の評価でございます。
  373. 森本晃司

    森本委員 時間が参りましたので終わります。  ありがとうございました。
  374. 愛知和男

    愛知座長 小渕正義君。
  375. 小渕正義

    小渕(正)委員 民社党の小渕ですが、私に与えられた時間は十分でございます。極めて簡潔に御質問いたしますので、よろしく御配慮をお願いしたいと思います。  まず、秋山陳述人にお尋ねいたしますが、医療費の伸びを抑制していかねばいかぬということで、しかも今回の一割負担導入は、それぞれの被保険者医療費に対する一つの意識づけを持つという意味で非常に意義がある、こういうことで一割負担賛成だということでございましたが、いろいろ先ほどの話もありましたが、一面においては医療費を本当に縮減していくための考え方としては、予防医学といいますか、そういうものにもっと力を入れていくことが結果的には医療費の抑制につながるのだという説もあり、実際にそういう事例がいろいろあるわけでありますが、もしこの一割負担導入されることによって早期受診、早期発見、こういうものが抑制されて、結果的にはかえって医療費の増大につながらないかという懸念もあるわけでありますが、そういう一割負担賛成された御理由はやはり受診抑制、こういうことに功を奏していくということで、これは好ましいことだということで御賛成なのかどうか、その点簡潔で結構ですから、よろしくお願いいたします。  それから、大津陳述人にお尋ねいたしますが、実は今回医療費の一割負担、将来二割負担でありますが、この導入によって事務的な事務量がかなり増大する、これもまた当事者にとってはかなり大きな経費増になっていくのではないか、こういう質問をいたしましたところ、厚生省は大した問題ではない、一日に何件かふえる程度だということで全然問題にしてないようなことを言っていたのですが、先ほどのお話を承っておりましても、もしこの制度がスタートしていくことによって、事務量の増大に伴って、それがまた結果的には医療費といいますか、それぞれの関係者の中での大きな一つの問題になってくるのではないか、かように思うのでありますが、そこらあたりに対する御見解をお尋ねいたします。  それから、筑井先生にお尋ねいたしますが、お話を承っておりまして、本人の一割負担は他に対する給付がそれによって生かされていくことになるので賛成だというお話でありましたが、今回の政府案によっては、どのようなところにそういうものが生かされているとお思いなのか。あわせて、非常にユニークなお話がありましたが、こういったお金を納入するといった被保険者の問題については、かかった医療機関に直接支払うのではなしに、保険機関がそれを代行すべきじゃないか、このことがよりベターだというお話がありましたが、これは今回の一割負担導入に当たって、これが一つの条件という意味でお考えをお持ちなのかどうか、そこらあたりについてとりあえず三人の方にお尋ねいたします。
  376. 秋山良三

    秋山良三君 この一割の問題でございますが、現実に一割の診療費を払う経験は初めてだと思うのです。今までは、何もなかったときには、これは単なる診察券だけの問題であった。そうすると、医者に行ったときにその治療費なるものは、自分は保険料を払っておるというと、ただでやってもらえるという意識感がある、今まではその場で財布をあけませんから。ですから、行かなくてもいい病気でも、すぐちょっと医者へ行ったらいいじゃないかという人もかなり見受けられます。そういうことで、やはり一割負担させることによって、逆算すれば、そのときの全体の治療費というものは幾らだということが今まで全然わかっていない。それを知らすことの効果は相当多く出るということで、私は一割の負担ということに賛成論を言ったわけでございます。  ですから、それと医者が減るとかいうことは別問題だと思うのです。そういうことでいきますと、同じ我々の会社から見ますと、僕はこういう病気をしたときにこれだけ取られたという声が、やはり社内のコミュニケーションで高まってきますと、そこであの医者は高いぞ、こっちは安いぞという声があるということは、私は医者選びにつながるといういい方法にもつながると思います。そういう効果も踏まえて私は一割に賛成しております。
  377. 大津静夫

    大津静夫君 端的にお答えいたします。  一割負担事務量の増大につながるかどうかということでありますが、先生の言われるように、一割負担になりまして、今医療の現場では点数計算だけでもすごく煩雑をきわめております。したがって、逆に言うならば、それが医療費を増高させるような、例えばコンピューターを入れまして、そうして一斉に検査をやる等々の問題が出てくれば、現在でも点数計算による複雑な事務というものは数限りなくあるわけでありますが、その上に一割負担事務量というのが加われば大変なことだと考えます。これは現場でなければわかりません。その点は十分にあるということを確信いたします。
  378. 筑井甚吉

    筑井甚吉君 私は、先ほど申しましたように、私の考え方を現場の医師の方に質問したことがあるわけです。そこでの唯一の反論というのは、医の目的というのは、だれでも、いつでも、どこでも、よりすぐれた医療をという根本の目標があるわけですね。ところが、幾らか払うことになると、これは手持ちの現金がないときに医師にかかれないということになるというのが、唯一の私のシステムに対する反論であったわけです。  そこで私が考えましたのは、これは何も本人が医師に直接払わなくても、保険料徴収に連動して保険機関が納付書を本人に配る、本人は郵便局なり銀行なりに払い込む、それでこれは済むのではないか、手持ち現金がなくてもいつでもかかれるのじゃないかというふうな反論をしましたら、そこで私のシステムに対する反論がなくなってしまったわけであります。そういう意味で、私は、批判にたえるということを申し上げたわけでございます。  もう一つのメリットは、私は時間が限られていて細かいことは申し上げられませんでしたけれども、それでは一割負担ないし定率負担ができない人間に対してどうするかということであります。私が考えますのは、医療経済システムというのはその目的のために最も有効なものを考えるべきであって、定率が負担できない人をどうするかということに関しては、これは広い社会保障制度で長期的には面倒を見るべきである。そういう場合、保険主体と社会保障主体が一体になっていれば、定率徴収のとき保険機関がその所得状況によってそれを猶予するなり何なり、そういう措置も連動してできるわけです。ですから、直ちに可能でなくても、先ほど森本先生から議論のございました長期的なビジョンの中には、私が申しました第三点、徴収方法に関しても御考慮を願いたいということでございます。
  379. 小渕正義

    小渕(正)委員 ありがとうございました。  もう持ち時間が二分になりましたので、高屋先生に端的にお尋ねいたしますが、抜本的な制度改正が必要だというお話でありまして、その底流としては、こういう医療制度の中には受益者負担という考え方導入すべきでない、これが一応根本理念だと思うのでありますが、先ほどからのお話をいろいろ承っておりまして、要するにそういった考え方でいくならば、将来的には抜本改正ということは、負担の平等化ということは当然でありますが、公平化も当然でありますが、やはり受益者負担という考え方をなくしていくということが、まず根本的な抜本的改正の道だということで理解をしたわけでありますが、その点でいいかどうか、端的にお尋ねいたします。
  380. 高屋定国

    ○高屋定国君 そのとおりです。
  381. 小渕正義

    小渕(正)委員 ありがとうございました。  それから、本田陳述人にお尋ねいたしますが、要するに被用者にとりましては、健康保険制度ということでは、元気なときには働きながら保険料を納める、そして病気にかかったときだけは安心して療養できるというところにこの健康保険制度基本があるわけでありますから、そういう意味で、長い間、大正の終わりにこの制度が発足して昭和二年から始まっているわけでありますが、抜本的なこういう制度の改変につながるような今回の被用者負担制度導入ですね、そういうことを考えますならば、それだけの大きな制度改正になるからには、ともにお互い痛みを分かち合うという意味ではある程度理解をしなければいけないかもしれませんが、それにかわるべき何らかのものがもっとないことには、私はこれは大変なことだと思うのです。  そこらあたりで、働く人たちの立場から見ますと、高額療養費制度があるからいいじゃないかとか、いろいろそういう点も言われておるわけでありますが、そういった点だけではどうにも解決できないのじゃないかと思うのでありますが、そこらあたりについてひとつ率直な御意見をお聞かせいただきたいと思います。  以上です。
  382. 本田精一

    本田精一君 今回の政府改正案というのは、そういう意味の抜本改正案というよりも、抜本改悪案だと思います。いろいろ基本的な私ども反対の立場をおいて、各論の論議の中では定率、定額問題などにも触れた意見も申し上げましたけれども、一例、仮に定率でいった場合に、医師に対する意識づけあるいは医師に対する選択という点では、労働者の意識づけもあるでしょうが、むしろ幾らかかるかわからぬという不安というものが先に立ちます。ちょっとした風邪がちょっとした風邪であるかどうか、ちょっとした風邪をこじらして死に至った場合も皆さんの周囲にもおありだろうと思うのですが、そのちょっとした風邪を判断するのはやはり医師であるはずなんですけれども、それがこの定率問題あるいは負担の問題で覆いかぶさってまいりますと、つい受診抑制、先ほども御指摘がありましたようなことになるわけでありますから、医者に行かなくなる。お父さん、お医者さんどうしましょうか。ちょっとなら、家計も苦しいからやめておこうか。こういう実態が必ずや来るだろうと想像します。決してまた、医師に対する意識づけといいますか、医師の選択の労働者の意識づけという点を否定するわけではございませんけれども労働者自身がやはりそういう点で家計上受診抑制に走るだろうと思います。  そういう意味でございますので、なかなか抜本改正案というのは、言うはやすく、各界各層の立場が違いますから、全体の合意は図りにくいだろうと思いますが、きょう出されました意見の中にもありましたように、またかねがね主張されております予防という問題をもっともっと徹底していく、あるいは通知書の拡大運動というものももっともっと広げていく、さらには領収証請求の問題につきましても何らかの合理的な検討を加えていくという手だてをした上で、それぞれの立場で大きな合意を図っていくような改正案を見出してほしい、こういうぐあいに希望いたします。
  383. 小渕正義

    小渕(正)委員 では、それぞれの陳述人の皆さん、ありがとうございました。これで終わります。
  384. 愛知和男

    愛知座長 これにて質疑は終了いたしました。  この際、一言ごあいさつ申し上げます。  意見陳述者の方々におかれましては、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。  拝聴いたしました御意見は、本法案の審査に資するところ極めて大なるものがあると信じます。厚く御礼を申し上げます。  また、この会議開催のため、格段の御協力をいただきました関係各位に対しまして、深甚の謝意を表する次第でございます。  それでは、これにて散会いたします。     午後一時二十四分散会