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1984-07-03 第101回国会 衆議院 社会労働委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年七月三日(火曜日)     午前十時四分開議  出席委員   委員長 有馬 元治君   理事  愛知 和男君 理事 稲垣 実男君   理事  小沢 辰男君 理事 丹羽 雄哉君   理事  池端 清一君 理事 村山 富市君   理事 平石磨作太郎君 理事 塩田  晋君       伊吹 文明君    稲村 利幸君       古賀  誠君    斉藤滋与史君       自見庄三郎君    谷垣 禎一君       中野 四郎君    長野 祐也君       西山敬次郎君    野呂 昭彦君       浜田卓二郎君    藤本 孝雄君       森下 元晴君    渡辺 秀央君       金子 みつ君    河野  正君       多賀谷眞稔君    竹村 泰子君       永井 孝信君    森井 忠良君       大橋 敏雄君    沼川 洋一君       橋本 文彦君    小渕 正義君       塚田 延充君    浦井  洋君       田中美智子君    江田 五月君       菅  直人君  出席国務大臣         労 働 大 臣 坂本三十次君  出席政府委員         労働大臣官房審         議官      白井晋太郎君         労働大臣官房審          議官      野見山眞之君         労働省労働基準         局長      望月 三郎君         労働省婦人局長 赤松 良子君         労働省職業安定         局長      加藤  孝君  委員外出席者         外務大臣官房審         議官      斉藤 邦彦君         外務大臣官房審          議官      遠藤 哲也君         文部省初等中等         教育局職業教育         課長      阿部 憲司君         労働省労働基準         局監督課長   野崎 和昭君         労働省婦人局婦         人政策課長   松原 亘子君         社会労働委員会         調査室長    石黒 善一君     ————————————— 委員の異動 七月三日  辞任         補欠選任   今井  勇君     森下 元晴君   網岡  雄君     金子 みつ君   菅  直人君     江田 五月君 同日  辞任         補欠選任   森下 元晴君     今井  勇君   金子 みつ君     網岡  雄君   江田 五月君     菅  直人君     ————————————— 七月二日  医療供給体制充実等に関する請願網岡雄君  紹介)(第七〇五六号)  医療保険制度改善に関する請願田並胤明君  紹介)(第七〇五七号)  同(金子みつ紹介)(第七〇八六号)  同(新村勝雄紹介)(第七〇八七号)  同外三件(有島重武君紹介)(第七一七六号)  同(伊藤茂紹介)(第七一七七号)  同(加藤万吉紹介)(第七一七八号)  同(経塚幸夫紹介)(第七一七九号)  同(工藤晃紹介)(第七一八〇号)  同(沢田広紹介)(第七一八一号)  同(柴田睦夫紹介)(第七一八二号)  同(田並胤明君紹介)(第七一八三号)  同(中林佳子紹介)(第七一八四号)  同(日笠勝之紹介)(第七一八五号)  同(不破哲三紹介)(第七一八六号)  同(正森成二君紹介)(第七一八七号)  同外一件(村山富市紹介)(第七一八八号)  同外一件(吉井光照紹介)(第七一八九号)  年金医療雇用保険改悪反対充実改善に  関する請願横江金夫紹介)(第七〇五八号  )  同(小澤克介紹介)(第七一九〇号)  同(河野正紹介)(第七一九一号)  原子爆弾被爆者等援護法制定に関する請願  (渡部行雄紹介)(第七〇五九号)  同(小澤克介紹介)(第七一九六号)  身体障害範囲拡大等に関する請願池端清一  君紹介)(第七〇六〇号)  二分脊椎症児者医療充実改善等に関する請願  (池端清一紹介)(第七〇六一号)  児童扶養手当制度改悪反対に関する請願金子  みつ紹介)(第七〇八五号)  同(梅田勝紹介)(第七一七二号)  医療保険制度抜本改悪反対充実改善に関す  る請願岡田利春紹介)(第七〇八八号)  健康保険本人の十割給付継続に関する請願(沢  田広紹介)(第七〇八九号)  同(柴田睦夫紹介)(第七二〇二号)  医療年金雇用保険抜本改悪反対等に関す  る請願外一件(清水勇紹介)(第七〇九〇号  )  診療報酬の適正に関する請願金子みつ君紹  介)(第七〇九一号)  同(山中末治紹介)(第七二一一号)  健康保険本人十割給付堅持年金制度改悪反  対等に関する請願外七件(網岡雄紹介)(第  七〇九二号)  保育予算大幅増額等に関する請願梅田勝君  紹介)(第七一三一号)  同(浦井洋紹介)(第七一三二号)  同(小沢和秋紹介)(第七一三三号)  同(岡崎万寿秀紹介)(第七一三四号)  同(経塚幸夫紹介)(第七一三五号)  同(工藤晃紹介)(第七一三六号)  同(佐藤祐弘紹介)(第七一三七号)  同(柴田睦夫紹介)(第七一三八号)  同(瀬崎博義紹介)(第七一三九号)  同(瀬長亀次郎紹介)(第七一四〇号)  同(田中美智子紹介)(第七一四一号)  同(津川武一紹介)(第七一四二号)  同(辻第一君紹介)(第七一四三号)  同(中川利三郎紹介)(第七一四四号)  同(中島武敏紹介)(第七一四五号)  同(中林佳子紹介)(第七一四六号)  同(野間友一紹介)(第七一四七号)  同(林百郎君紹介)(第七一四八号)  同(東中光雄紹介)(第七一四九号)  同(不破哲三紹介)(第七一五〇号)  同(藤木洋子紹介)(第七一五一号)  同(藤田スミ紹介)(第七一五二号)  同(正森成二君紹介)(第七一五三号)  同(松本善明紹介)(第七一五四号)  同(三浦久紹介)(第七一五五号)  同(簑輪幸代紹介)(第七一五六号)  同(山原健二郎紹介)(第七一五七号)  健康保険法改悪反対保健制度充実に関する  請願佐藤祐弘紹介)(第七一五八号)  国民年金改悪反対等に関する請願東中光雄  君紹介)(第七一五九号)  医療保険改悪反対に関する請願後藤茂君紹  介)(第七一六〇号)  同(土井たか子紹介)(第七一六一号)  食品添加物規制緩和反対食品衛生行政の充  実強化に関する請願伊藤忠治紹介)(第七  一六二号)  医療保険改悪反対充実改善に関する請願(工  藤晃紹介)(第七一六三号)  漢方薬の健康保険除外反対に関する請願梅田  勝君紹介)(第七一六四号)  医療保険改悪反対等に関する請願後藤茂君  紹介)(第七一六五号)  同(堀昌雄紹介)(第七一六六号)  医療保険改悪反対充実に関する請願有島  重武君紹介)(第七一六七号)  同(工藤晃紹介)(第七一六八号)  同(田並胤明君紹介)(第七一六九号)  医療保険制度改悪反対充実改善に関する請  願(浦井洋紹介)(第七一七〇号)  同(藤木洋子紹介)(第七一七一号)  医療保険抜本改悪反対に関する請願有島重  武君紹介)(第七一七三号)  同外二件(後藤茂紹介)(第七一七四号)  同(松沢俊昭紹介)(第七一七五号)  年金医療改悪反対充実改善に関する請願  (不破哲三紹介)(第七一九二号)  医療保険年金制度改悪反対に関する請願  (浦井洋紹介)(第七一九三号)  同(瀬長亀次郎紹介)(第七一九四号)  同(松本善明紹介)(第七一九五号)  原子爆弾被爆者等援護法制定に関する請願  (渡部行雄紹介)(第七一九七号)  医療年金抜本改悪反対に関する請願工藤  晃君紹介)(第七一九八号)  児童扶養手当法の一部を改正する法律案撤回  に関する請願経塚幸夫紹介)(第七一九九  号)  健康保険本人の十割給付堅持予防等給付の改  善に関する請願後藤茂紹介)(第七二〇〇  号)  同外二件(堀昌雄紹介)(第七二〇一号)  政府管掌健康保険等改悪反対に関する請願  (経塚幸夫紹介)(第七二〇三号)  同(瀬崎博義紹介)(第七二〇四号)  同(野間友一紹介)(第七二〇五号)  同(東中光雄紹介)(第七二〇六号)  同(藤田スミ紹介)(第七二〇七号)  同(正森成二君紹介)(第七二〇八号)  健康保険法等の一部を改正する法律案撤回等に  関する請願山原健二郎紹介)(第七二〇九  号)  政府管掌健康保険等本人十割給付引き下げ反  対等に関する請願井上一成紹介)(第七二  一〇号)  労働基準法改悪反対男女雇用平等法制定促進  に関する請願浦井洋紹介)(第七二一二号  )  同(辻第一君紹介)(第七二一三号)  健康保険国民健康保険等医療保険制度改悪  反対に関する請願工藤晃紹介)(第七二一  四号) は本委員会に付託された。      ————◇————— 本日の会議に付した案件  雇用分野における男女の均等な機会及び待遇  の確保を促進するための労働省関係法律整備  等に関する法律案内閣提出第八三号)      ————◇—————
  2. 有馬元治

    有馬委員長 これより会議を開きます。  内閣提出雇用分野における男女の均等な機会及び待遇確保を促進するための労働省関係法律整備等に関する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。愛知和男君。
  3. 愛知和男

    愛知委員 男女雇用機会均等法案大変話題になっております法案審議がいよいよ始まるわけでありますが、トップバッターを仰せつかりまして、政府に質問をさせていただきます。最初に、この法案につきましては関係審議会のるいは関係の諸方面で鋭い意見の対立があったわけでありますが、その中で、この法案を取りまとめて今回この国会提案をされました労働大臣、あるいは労働省その他関係者の御努力に対しまして、まず心から敬意を表したいと思います。大変な御苦労があったと思いますが、御苦労に対しまして敬意を表したいと思います。さて、この法案につきまして若干の質疑をさせていただきたいわけでありますが、まず最初に、内容に入ります前に、この法案提案責任者であります労働大臣に、大臣女性観といったようなものを伺ってみたいと思うわけであります。私は個人的には女性尊敬する一人でありまして、特に私ども、ここにいらっしゃる議員の先生方は大体ほとんど同じような経験を持っていらっしゃると思いますが、例えば選挙に当選をするとなりますと、奥さんの力はまことに大きいわけですし、また女性票も大事でございます。そういう点で、私も選挙をやるようになりましてから女性に対する尊敬の念を殊さら深めたわけでございます。  しかし、それだけではなくて、家庭における女性役割、これも極めて大きなものがあります。これは家庭の中の役割というだけではなくて、社会の中での女性役割というふうに言いかえてもいいわけで、私は、家庭の中での女性役割というものを非常に大きく考えております。  私、職業柄仕事柄、よく結婚式などに呼ばれるわけでありますが、そのときにお祝辞を申し上げる決まり文句一つあるのであります。それは「嫁しては夫に従え」などというのは大変古い。今やその逆であって「めとりては妻に従え」、こういうようなことをお祝いのごあいさつにしているくらいでありますが、家庭における御婦人役割等、さらに私は、昨年労働省に政務次官としてお世話になったわけでありますが、労働省には非常に御婦人の方が多い、お役所の中でも一番多いと伺っておりますが、労働省にお勤めの御婦人方々懇談会などをさせていただいて、本当に感心をいたしました。家庭を持ち、子供さんを育て、なおかつ大変立派な仕事をしていらっしゃる方が多くいらっしゃいまして、ますます女性に対する尊敬の念を深めたわけであります。私自身の体験などを若干申し上げたわけでありますが、まず大臣に対しまして、大臣女性観といったようなものをお聞かせをいただきたいと思います。
  4. 坂本三十次

    坂本国務大臣 なかなかいいお話を聞かしていただきまして、私も愛知さんと同感でございます。人間には男と女とありますが、この両性協力、この両性が一体化して初めて健全な家庭生活社会生活もできるだろう、私は基本的にそう思っております。  昔のお話でありまするが、昔の人間は、顔が二つあって手が四本あって足が四本あった。しかし、随分思い上がって、傲慢の罪で神様から二つにぱっと切られた。それで自分の半身を求めて、男性女性女性男性を求める、こういう話であります。まさに男女が相協力していくことによってこの世の中があるいは社会がうまくいくのだろう、こう思っておりまして、男女のお互いの協力、敬愛というものが基本であろう、私はこう思っております。
  5. 愛知和男

    愛知委員 今度の男女雇用機会均等法案、これからいろいろな議論があろうかと思いますが、また特に女性の立場からの議論なども出てくると思われますが、特に女性方々に、男性女性の対決、こういうことではなくて、女性を非常に尊敬をし、女性を尊重している男性がほとんどだということを、ひとつよく御認識をいただきたいということをぜひ申し上げておきたいと思う次第であります。  さて、このたびの男女雇用機会均等法政府提案をされたわけでありますが、この提案された理由につきまして、まずお伺いをいたしておきたいと思います。  この法案提案された理由は、男女差別撤廃条約というのが一九八〇年ですか署名をされましたが、それを批准するために、この男女雇用機会均等法といった国内法律整備が必要だということから提案したのか、それともこの条約関係なくと言うと言い過ぎかもしれませんが、そのためだけではなくて、我が国労働政策上あるいはその他のいろいろな事情からこのような法律を必要と考えたので提案をしたのか、この法案を今回提案した理由というものをまずお述べいただきたいと思います。
  6. 赤松良子

    赤松政府委員 お答えいたします。  今度の法案提案した理由についてのお尋ねでございますが、婦人差別撤廃条約批准するということが一つの大きな契機になっているということは否定するべくもないと思います。しかし日本が、日本婦人労働者の現状あるいはそれを取り巻く社会の実情がそのことと全く無関係であるかといえば、決してそうではございませんで、国内での状況というものがだんだんにそれに近づいて成熟をしていたこともまた、確かな事実だと思うわけでございます。  先生も御存じのように、婦人労働者の数は年々増加をし、全雇用労働者の三分の一を超え、その実数も千五百万という大変大きな数になっております。またその内容も、短期的なあるいは結婚前の一時的な労働ばかりではなくて、職場に長く腰を据えて働く、あるいは一度職場を去ってもまた子育てを終わった時期に働く、いろいろなパターン婦人労働者が出てきているわけでございまして、その方たちの就業意欲あるいは職業意識というものも年々高まってきているわけでございます。  ところが、それを受け入れる企業の側におきましては、必ずしもそういう変化に対応するだけの十分な変化があったとは言いにくい場合もございまして、それらの女性労働者に対して十分な均等な機会、あるいは待遇確保されていると言えないような場合もあったわけでございます。これに対しまして、女子労働者の側からは均等な機会、平等の待遇というものを求めての動きも逐年活発になってまいりました。  そういう動き、それからまた、条約のみではなくて、世界的な男女の平等への風潮というようなものも、我が国が国際的に果たしております役割あるいは国際的な地位から考えましても、当然目指すべき方向であっただろうと思うわけでございます。そのような国内的な事情がございますので、一方、婦人差別撤廃条約というようなものが採択され、また国内婦人問題企画推進本部においても、この批准を目指して国内法制整備するという申し合わせが行われたものと考えているわけでございます。  したがいまして、お答えといたしましては、国内的な事情も熟しており、かつ、条約批准という直接的な契機もこれに加わって、ただいま御提案申し上げている法案提出ということに結びついた、こういうふうに御理解をいただきたいと存じます。
  7. 愛知和男

    愛知委員 国連婦人差別撤廃条約、この条約が採択されたことが一つきっかけになった、こういうことでございますが、外務省にもおいでいただいておりますので、この条約政府署名をするに至った経過を簡単に御説明いただきたいと思います。
  8. 遠藤哲也

    遠藤説明員 お答え申し上げます。  男女の平等、男女同権ということは、古くは国際連合憲章あるいは国際人権規約あるいは世界人権宣言、そういったように世界の非常に大きな流れであろうかと思います。そういったような男女同権あるいは男女の平等というのをより具体化するために、この婦人差別撤廃条約というのができたわけでございますけれども、この条約によりまして政治的、経済的、社会的その他のあらゆる分野における女子に対する差別撤廃して、本当の意味での男女の平等というものを実現するためにできましたのがこの条約でございまして、これはある意味では非常に画期的な条約であろうかと思います。  日本としましては、この条約批准することによって、先ほど赤松局長からの御答弁のとおりに、まず内にあっては、日本国内男女の平等を促進するということと、外に対しては、この問題に対する日本政府の基本的な姿勢を示す、こういう内外双方の観点から、この条約批准することは政府としましても非常に意義深いものと考えまして、先生おっしゃいましたように、一九八〇年のコペンハーゲンにおきます世界会議におきまして、この条約日本署名した次第でございます。
  9. 愛知和男

    愛知委員 この条約批准するかどうかという条約そのもの審議は、またいずれ当国会外務委員会などを中心にして審議が行われるのだろうと思いますが、それはそれとして、その条約をざっと見てみますと、かなり問題点があるのではないかという気がいたします。  例えば、この条約の第二条の旧項に「婦人に対する差別となる既存の法律、規則、慣習及び慣行を修正し、または廃止するためのすべての適当な措置をとること。」、これは習慣とか慣行を修正したり廃止するための適当な措置をとるというようなことが述べられておりますし、また続く第三条には、「締約国は、男子との平等を基礎とする人権及び基本的自由の行使及び享受を婦人に保障することを目的として、婦人の十分な発展及び向上確保するためのすべての適当な措置をあらゆる分野、特に、政治的、社会的、経済的及び文化的分野においてとる。」、こういうことが書いてあります。特に、文化的分野において措置を講ずる必要があるというようなことが述べられている。また、第五条の同項におきましては、同じように「両性のいずれかの劣等性若しくは優越性の観念または男女の定型化された役割に基づく偏見及び慣習上その他のあらゆる慣行撤廃を実現するため、男女社会的及び文化的な行動様式を修正すること。」、こういうようなことが述べられているわけでございます。特に、この五条の「男女社会的及び文化的な行動様式を修正すること。」、こういうようなことが条約で掲げられ、その条約批准した国がそれを守らなければならないということになりますと、これは相当いろいろなところに問題点が及んでくるのではないかという気がするわけでございます。  そこで労働大臣にお伺いをしたいのですが、ただいま私が読みました条文にもありました、この条約の求める伝統の変更とか習慣撤廃だとか社会的及び文化的な行動様式の修正、こういったようなものについて大臣はどう思われるか、御見解をお伺いしたいと思います。
  10. 坂本三十次

    坂本国務大臣 民族の一般的な伝統というか慣習行動様式というものは、長い間の歴史の中ではぐくまれてき、積み上げられてきたものでございまして、私どもはそういう日本国有伝統とか慣習とかを排除するというつもりはございません。ただ、婦人の余り合理的でない差別が現実に存在をしておるということに対しましては、これはこの条約趣旨に照らしてここで改めることがよかろう、そういう趣旨でありまして、一般的な我が国伝統慣習を否定するものではございません。  今まで日本男性主導型社会でございましたが、意欲があり能力のある女性雇用の場において差別的な扱いをされるということは、やはり本人にとってもいいことではありませんし、国連人権宣言その他、この条約に照らしてもやはりこれは考え直さなければならぬ、こういうことでありまして、一概にすべての伝統慣習を否定するというものではございません。  そこで、婦人差別が現に職場にあるということについては、これを修正していくということがちょうどこの条約にも求められておるわけでありまして、ただいま局長答弁いたしましたように、この条約批准ということをきっかけにいたしまして、我が国における男女雇用差別撤廃ということに踏み切ることが、婦人地位向上のためにも、また我が国民族の活力を引き出すためにも非常に結構なことであろう、私はこう思ってこの法案をつくったような次第でございます。
  11. 愛知和男

    愛知委員 この場は条約そのもの議論する場ではございません。したがって、私は、この条約そのもの批准することがいいのかどうかということも、内容を見てみますとただいま指摘しましたような問題点があるような気がいたしますけれども、また場を改めて別の機会議論したいと思いますが、いずれにいたしましても、文化とか習慣とかというような問題を外の国から指摘されるというのはいかがなものか。  例えばこの間、こういう事例がございました。日本への輸出がなかなかふえないのに業を煮やしたある国の指導者の一人が、やはり日本が輸入をふやすためには日本文化そのものを変えるべきだ、というようなことをどこかで言いまして大変話題になったことがありますが、どうもこの条約が、日本文化というものに対してそれをどうしても変える必要があるというようなことをうたっているとすれば、かなり問題な条約だ、こんなふうに思いますので、条約審議はまた別なところにいたしますけれども、問題点の指摘だけはしておきたいと思います。  そこで、日本は、労働面伝統的な社会パターンというのがございます。男は外で働き女は家を守る、一口に言ってしまいますとこういうのが日本伝統的な社会パターンだと思いますが、大臣はこのパターンを変える必要があるとお考えになっておるのかどうか。相当基本的なことですが、まずお伺いをいたしたいと思います。
  12. 坂本三十次

    坂本国務大臣 今愛知さんのおっしゃるように、ずっと明治以来、我が国伝統というものは男は外で働く、そしてその御主人に対して奥さんは、家庭で、後顧の憂いのないように家庭を守り子供を育てていく、それが主流のパターンであったことだけは間違いはないと思っておりますが、それは今までの純風美俗的な要素もございました。しかし、先ほど局長から答弁がありましたように、最近は、特に戦後はもう新憲法でございますし、基本的な人権の面から見ましても男女差別をなくするという要請があるところでございますし、それから、戦後の教育の普及によって、今までと違いまして女子が非常に勉強するようにもなりまして、専門的分野の勉強もやりますし、社会的に雇用の面でも進出をしようという意欲も出てきておることはこれまた事実でございまして、雇用労働者の三分の一以上を超えるというこの現実はこれはもう無視するわけにはまいらぬ。また、無視するというよりもこれを活用いたしまして、そして家庭を守りながらあるいは子供教育もよく考えながら、女性の自覚と決断によって社会的な分野でも働くということは私は結構なことではなかろうか、こう思っておるわけでございます。  考えてみますと、日本の明治以来の男性の能力開発という点につきましては、私は世界的に非常にすぐれた成果を上げてきたと思います。その成果の陰で女性が支えてくれたということも否定できない潮流であったとも思いますけれども、しかしここで女性が自覚と責任を持って社会的にも働きたいということになれば、その女性の能力を開発することによって日本社会にもまた大変新しい大きな活力というものが生まれてくるのではなかろうか、私はこう思っております。日本の国には中東の大油田のような資源があるわけではありません、人的資源でありますから、女性の能力を正しく活用するということはお国のためにとっても大切なことであるし、それだけ自覚を持って社会的に出るということは女性自身の相当な向上にもつながるのではないか、私はこう思っております。  とにかく、山本五十六か何かが言っておりましたように、男は天下を動かしその男を女が動かす、これは昔の話でありましたが、今度はひとつ女性が天下を動かすこともあるいはあり得るだろう、サッチャーさんみたいなのも出てくるだろうしキュリー夫人みたいのもやがて出てくるかもしれませんし、社長さんも出てくるでありましょうし、そういう意味において、女性の能力開発ということに期待をかけるということはいいことじゃないか、私はこう思っております。
  13. 愛知和男

    愛知委員 最近、女性が働くという点についてよくある議論は、働く女性といわゆる専業主婦、これを対比させることによりまして、主婦という仕事をすることは働くことではないかのように論じてみたり、あるいは主婦の仕事に専念する人が肩身が狭い思いをしたりするというような風潮があるように感じてならないわけでありますが、この点につきまして大臣、どのようにお考えでしょうか。
  14. 坂本三十次

    坂本国務大臣 私は、主婦の仕事が、今、女性社会的進出を促そうとしておる法案提出に当たりまして、家庭におられる主婦の仕事は肩身が狭いなどと、そういうことは考えられないと思っております。かえって、女性家庭におけるありがたみといいましょうか、御主人さんにとってはありがたみがますます増してくるぐらいだと私は思っておるわけでございまして、要はこれは女性の自覚と責任におきまして、そして、私は御主人との調和も考えて家庭を守りましょう、私はひとつもっと社会的にも活躍をしたい、雇用の場でも働きたい、それで御主人とも当然お話し合いになることでございましょうし、要はそういう家庭の中の調和の中で女子自身の選択の自由、自由の裏には責任と自覚があるわけでありますから、その女性の選択の自由というものを尊重してしかるべき時代にやってきたのではないか、こう思っておりますので、家庭の主婦をおやりになる方はまことに結構な仕事である、決して肩身の狭い思いをなさらないで、自分の選んだ家庭づくりに自信を持っておやりになることはまことにありがたい、私はこう思っております。
  15. 愛知和男

    愛知委員 さて、最近の我が国における女性労働者の増加は甚だ著しいものがあるわけでありますが、この女性労働者増加の内容を、年齢、産業、職業別あるいはパート、フル別、こういったように分けて簡単に御説明をいただきたいと思います。
  16. 松原亘子

    ○松原説明員 お答え申し上げます。  昭和五十八年に女子雇用者数は千四百八十六万人となっておりまして、これは五十年に比べまして約三百万人ふえております。特に、結婚し出産してやめまして、それから子供の手が離れてから再就職する方がふえておりまして、平均年齢も高まっており、三十五歳以上の女子が占める割合が五十八年で五五%を超えております。  また、産業別に見ますと、サービス業ですとか卸売業でこの三百万人ふえました中の七割余りを占めておりますし、職業別に見ますと、事務従事者ですとか販売従事者、専門的、技術的職業従事者がやはり同じく三百万人のうちの七割以上を占めているわけでございます。  また、フル、パート別に見ますと、特に最近パート女子労働者が多くふえておりまして、パート労働者を三十五時間未満の労働者というふうにとりますと、五十年から華十八年の間に百八万人ふえております。これは非農林業における数字でございまして、ちょうどこの八年間におきます非農林業女子労働者の増加数の約三四%を占めているところでございます。
  17. 愛知和男

    愛知委員 女子労働力の中でも、特に、今も御説明がございましたが、パートへの大量進出というものが目立っているわけですが、このパートへの大量進出というのは、一方で言いますと、中高年齢の男性の常用労働者としての雇用機会を奪うことにつながる危険があるのではないか、この点につきまして労働政策としてどのように対処するのか、御説明をいただきたいと思います。
  18. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 近年におきます女子雇用者の大幅増加の進出分野について見てみますと、一つは、産業構造の変化などによりまして、女子の就業比率の高い産業あるいは職業などで大幅に増加をしている、あるいはまた、卸売、小売、サービス業などを中心に、いわゆるパートという就業形態での雇用増が大きい、こういうような特徴が顕著でございます。もちろん、その背景には、女子就業意欲や職業能力の向上ということもありますし、またそれによります女子の就業分野が拡大しつつある、もちろんこういう動きもあるわけでございます。しかし、全体の量的な観点から見ますと、これまでのところは、従来から女子の適職分野、こう見られていたような産業、職業、そういったものでの女子雇用者の増加が大きい、こういうことでございまして、男子の雇用労働者職場に取ってかわってきている、こういうような直接的な代替関係は、量的には余り見られないわけでございます。  ちなみに、パートの進出が盛んになりました昭和四十八年から昭和五十八年までの年率の伸び率を見てみますと、この十一年の間に、女子が年率二・三%の割合で増加をしてきております。一方、男子の方も増加をしておりまして、率は低うございますが、一・二%の年率で増加をいたしております。また、この間におきます女子のパートの年率増加率が六・一%でございます。一方、男子の例えば中高年というお話がございましたが、男子の高齢者をとってみますと、女子のパート六・一%の伸びに対して、男子高齢者二・七%ということで、男子高齢者もやはり伸びておる。特に、男子高齢者の雇用者の伸びは男子の高齢労働力人口の伸びを上回っておりますので、人口の伸び以上に就業者がふえておる、こんなような事情もあるわけでございます。  しかしながら、今後におきましては、今後一層女子の意識や能力の向上が進む、あるいはサービス経済化が進展していく、あるいはまた技術革新の進展によりまして就業構造が変化をしていく、それから労働力の需要のシフトが変化していく、さらには男女雇用均等法が実施をされる、こういうこと等によりまして、職種あるいは産業によりましては中高年男性女性に取ってかわられる、こういう場面もこれはもちろんあり得る事態になってこようと考えるわけでございます。そこはまさに男女雇用における機会の均等、こういうことでやむを得ないあるいは当然のことだ、こういうことであるわけでございます。  しかしながら、全体として雇用の場が確保されるかどうか、こういう観点から見てみますと、政府としましては、第五次雇用対策基本計画というものを、昭和六十五年度を目標に策定をいたしておるわけでございますが、これに沿って年率四%程度の経済成長というものが達成され、一方、年齢間あるいは産業間、職業間あるいは地域間の労働力の需要と供給のミスマッチ、こういうものの解消のための需給調整努力が展開をしていく、こういうようなことによりまして、昭和六十五年で完全失業率を二%程度、世帯主についてはさらにそれより低く抑える、こういうことへ持っていく、こういうことで現在鋭意努力をしておるわけでございまして、こういうことによりまして、女性職場進出によって男性の就業の場が取ってかわられ、そのために男性失業者がふえる、こういうような事態は全体としてはないだろう、こういうふうに見ておるわけでございます。
  19. 愛知和男

    愛知委員 時間が足りなくなってまいりましたが、法案の具体的な内容について、一、二ただしておきたいと思います。  この法案では教育訓練の一部が強行規定となっておりますが、政府は、企業内教育訓練は、いわゆる終身雇用というものを前提としている場合が一般的であります我が国雇用実態というものの変更をこのことによって求めようとしているのかどうか、御見解を伺いたいと思います。
  20. 赤松良子

    赤松政府委員 教育訓練につきましては、これが女子労働者機会の均等、待遇の平等を進める上からは非常に重要なものであろうと基本的に考えております。  しかしながら、一方では、教育訓練の効果というものが非常に長い時間をかけてしかあらわれないというような種類もございます。そこで、教育訓練の中身をよく検討いたしまして、これを一律に取り扱うということではなくて、基礎的な、基本的なものについては強行規定によって規制をするというふうにした方が、我が国の実態等も考えて適切に対処できるのではないかというふうに考えまして、ただいまのような法案の規定にいたしたわけでございます。
  21. 愛知和男

    愛知委員 もう一点。今回の改正で残されております女子に対する特別の保護措置について今後どうするお考えか、お聞かせいただきたいと思います。
  22. 赤松良子

    赤松政府委員 女子に対する特別な保護は、婦人差別撤廃条約趣旨にかんがみますと、究極的にはなくしていくべきものであると考えております。しかしながら、それを直ちに行うということにつきましては種々問題がございますので、今回の法案におきましてはごく一部の緩和にとどめたわけでございますが、今後いろいろな条件の変化、あるいは女子労働者の意識の変化その他、もろもろの状況を勘案いたしまして、究極的には条約の目指すべきところに近づけていきたい、このように考えております。
  23. 愛知和男

    愛知委員 もう一点。この法案にいわゆる見直し規定を設けるべきだという考え方があると聞いておりますが、この点につきましてはどう考えておられますか。
  24. 赤松良子

    赤松政府委員 条約が大変高い、遠い将来のことも考えてつくられた条約であるというふうに考えておりますので、ただいま提案中の法案がそれと比較して考えますと不十分な点があるということは、婦人少年問題審議会の長い審議の過程を通じでもたびたび言われたところでございますし、また、最終的にいただきました御答申の中にも書かれているわけでございます。したがいまして、将来いろいろな状況を考えて見直しを行っていくということにつきましては、審議会の御答申を尊重いたしたい、このように考えております。
  25. 愛知和男

    愛知委員 まだただしたい点が幾つかございますが、時間が参りましたので、最後に、この法案に対して若干の意見を申し上げて終わりにしたいと思います。  この法案の根底に横たわる思想というのは、女子労働者が動くことを奨励するものだと思います、一方、この女子労働者が働くということによって家庭崩壊につながるのではないかという議論とか、あるいは家庭における男女役割の変更、ひいては文化の生態系を破壊するなどというそういう議論もありますし、また欧米諸国においては、失業率が上がったり離婚率が高まったりしておるのが女子職場進出によってもたらされたのではないかというような見解もあるわけです。  男女の平等というのは憲法で保障された権利であり、それが雇用分野において実現されることが望ましいことは言うまでもございませんけれども、今申し上げましたような議論で指摘されているようなことが起きてはいけない、避けなければならないということは申し上げるまでもないわけであります。幸い我が国におきましては、今申し上げましたような問題については、これから取り組むという状況でございますので、いわゆる後発の利点を十分生かして、前車の轍を踏まないようにしていくということが非常に大事だと思います。  我が国の国民というのは、歴史的に、伝統的に家庭を大切にする良風美俗を有しておりますし、よき調和なくして真の平等はあり得ない、こういう思想が根底にございますし、そういう点からいいましても、現実を無視した理想論だけ掲げてもこれは仕方がないのではないか、こういうことを思います。着実な歩みをすることこそ求められるところであって、このような姿勢でこの問題に対処することが国家百年の計にとって何より肝要なことではないか、こんなふうに思うわけでございますが、最後に、私が今申し上げました点につきまして労働大臣の所見をお伺いいたしまして、質問を終えたいと思います。
  26. 坂本三十次

    坂本国務大臣 やはり日本の歴史的な事情も考え、現実も考え、そして現実から将来もいろいろ見通しまして、国際的な、世界の中の日本としての国際協調という面も考えてみたりして、しかし要は、我が国雇用の面におきましてもやはり男女の均等、平等というものが実現できるということは望ましいことである、そういう意味から私どもは、あるべき姿を見てそこに向かってまずスタートをしたい。しかし、あなたのおっしゃるようにその山は高くてなかなか一挙に駆け上るというわけにもまいらぬわけでありまして、ここは一歩一歩堅実に、着実に進歩をしていった方がよろしいのではないか。決して我が国のよき伝統慣習というものを否定するというものではなくて、その現実を踏まえながら一歩一歩歩みを進めていくということが日本の場合特に考えなければならぬ、私はこう思いまして、まずあるべき姿に向かってスタートをしましょう、そしてスローであってもステディーで歩きましょう、この三S主義を申し上げているようなわけでございまして、愛知さんの御意見には全く賛成でございます。
  27. 愛知和男

    愛知委員 ありがとうございました。
  28. 有馬元治

  29. 金子みつ

    金子(み)委員 私は、本日提案されております法案について、直接法案の中身に入ります前に、総論的と申しますか、この法案をつくられた趣旨だとかあるいは法案に盛られている問題であるとか考え方であるとか、そういうものについて初めに少しお考えを聞かせていただきたいと思う次第でございます。  御承知のように、先ほど愛知委員からもいろいろとお尋ねがありまして、大変に私は幸せだと思いますのは、愛知委員から本日の法案そのものよりもその周辺事項についていろいろとお尋ねがありましたので、周辺事項には私は余り触れなくても済みそうだという感じがいたしまして、大変ありがたいとお礼を申し上げたいと思います。  そういうわけでございますけれども、それはそれといたしまして、私どもが考えていることも申し上げたいと思います。  「天の半分を支えるのは女性の力、女性である」という言葉は御承知のように中国の言葉でございますけれども、今日では世界的に広がりまして認識されている言葉だというふうに思います。これは何も世界の人口が半数以上女性であるということを言っているのではもちろんないのでありまして、女性の立場、女性の貢献力、いろいろな形で女性というものが男性と全く同じ、あるいはそれ以上に力を出しているのじゃないかということを表明しているものだと私どもは考えております。そのこともございますので、一九七五年「国連婦人の一〇年」の発足いたしました年、世界婦人会議がメキシコで開かれましたが、あそこで、参加いたしました国々が、「国連婦人の一〇年」の間にどういうふうにこの婦人の問題に取り組んでいこうかということをお話し合いをいたしました結果、「行動計画」というものができたことは既に御承知でいらっしゃると思いますので、そのことを云々するわけではございませんけれども、その際「平等・発展・平和」というスローガンを目標に掲げて準備を進めるということを話し合ったわけでございます。「平等・発展・平和」、これは男女の平等が完全に全く行われることによって社会は発展をするし本当の平和をつくり出すことができる、こういう究極の目標をねらった言葉でございます。この考え方を私どもは軸にいたしまして、この十年の間に、行動計画に基づきながら婦人社会的な地位向上男女平等を取りつける活動に努力してきたわけでございます。  そこで、その問題を実現させる目的がありまして、中間年の一九八〇年に婦人に対するあらゆる形態の差別撤廃に関する条約というのが採択され、これに日本政府署名をする、あるいはその他の多くの国が署名をして、このことを目標に到達させるために努力をするということを誓い合ったわけでございます。  今日、男女平等の思想と申しますかその考え方、あるいは女性労働権の保障というものは国際的な潮流になってきております。基本的人権の擁護と恒久平和への希求をうたった国連憲章あるいは世界人権宣言、また国際人権規約やILOの憲章などにおいて、男女は平等にすべての権利の共有を確保し、性によるいかなる差別もなく行使されることが、締約国にそれぞれ義務づけられているわけでございます。我が国でも憲法によって、個人の尊厳と法のもとの平等は既に保障されております。婦人差別撤廃条約は、「男性と同等の権利を事実上否定または制限する婦人に対する差別は、基本的に不正であり、人間の尊厳に対する侵犯である」とする婦人差別撤廃宣言を実効あるものとするために、採択されたものでございますことは御承知のとおりです。「国連婦人の一〇年」運動の中で、各国が到達すべき目標となっているのもこの点でございます。先ほど申し上げましたように、一九八〇年の「国連婦人の一〇年」の中間世界会議日本政府署名をいたしました。したがいまして、それによって生ずる条約批准の義務というものを日本政府は遂行しなくてはならなくなったわけでございます。私どもはこの条約を保留することなく完全批准すべきだと考えているわけでございますが、この点について御意見を伺わせていただきたいと思うのでございます。  まず、日本では、婦人問題企画推進本部長というのを総理大臣が担当していらっしゃいます。総理大臣はきょうおいでになっておりませんけれども、それほどまでに重要視して組織立てをつくってあるということが言えると思うのでございますけれども、条約の直接の批准担当は外務省に一応窓口が任されておりますから、外務省の考えとして、この差別撤廃条約批准に対する署名を行って、先ほども質問が出ておりましたが、その署名をするということについてどういう義務が課せられるか、そしてその義務に対してどういうふうに受けとめ、それを実現しようとしているか、その姿勢と決意とを聞かせていただきたい。
  30. 遠藤哲也

    遠藤説明員 お答え申し上げます。  先生今御指摘のとおり、一九八〇年のデンマークにおきます「国連婦人の一〇年」の中間会議におきまして、日本はこの条約署名したわけでございます。それからさらに、この条約署名に先立ちまして、内閣総理大臣を長といたします婦人問題企画推進本部におきまして、次のような申し合わせがございます。「国内行動計画後半期における重点課題として、批准のため、国内法制等諸条件の整備に努めるものとする。」ということで、外務省といたしましては目下準備を鋭意行っておりまして、できる限り昭和六十年、来年ケニアで開かれます「国連婦人の一〇年」の最後の年に当たります世界婦人会議までにこの条約批准をいたしたい、こういうふうに思っております。
  31. 金子みつ

    金子(み)委員 条約批准の窓口は外務省でありますけれども、この条約はいろいろな内容、いろいろな問題が含まれておりますので、批准するためには、日本といたしましては、関連の国内法を改正したりあるいは新しくつくったりという作業をしなければならないわけでございますが、幾つかあります中でも一番基本的で中心的な課題は、女性雇用に関する問題でございます。  そこで、雇用分野を担当しておられる労働大臣は、この条約批准についてどのように受けとめられ、どのように実現させるための御努力をなさるのか、お聞かせいただきたい。
  32. 坂本三十次

    坂本国務大臣 昭和五十年、その当時の三木総理大臣が本部長になりまして、企画推進本部というのをスタートいたしました。そのときは皆さんも大変な御熱意を示された。そして、私の記憶では、市川房枝さんなどが、この機会に、この潮どきをつかまえてということで、非常に熱心に活動されたということを思い出します。  当然、労働大臣といたしましても、雇用分野においての男女の均等、平等というものを達成しなければならぬ、これは来年批准をしてもらいたい、こういう決心で、ただいまその準備のための国内法制整備のための男女雇用均等法というものを御提出した次第でありまして、来年の批准をぜひお願いしたい、こう思っております。
  33. 金子みつ

    金子(み)委員 法案に対する基本的な問題を少しお尋ねしたいと思います。  婦人少年問題審議会、ここの婦人労働部会におきまして、労働者側、使用者側あるいは公益側、この三者が合意した原則があるわけですね。この問題の雇用平等法を審議するについて、どういう原則を立てて審議を進めていこうかということで話し合ったものがある。これによりますと、その原則論というのは三項目あるのですが、そのうちの第一の項目が、男女平等を確保するための立法措置を講ずる、こういうのでございます。二、三は省きますが、そういうのでございました。それからまた、同審議会の建議の中に、これも御承知のことだと思いますが、建議の中で「我が国における女子労働の実態とこれをとりまく国際的諸情勢を考慮に入れると、政府署名した婦人差別撤廃条約批准するため、雇用分野においても条件整備を図ることが求められている。このため、雇用における男女機会の均等及び待遇の平等を確保するための立法措置を講ずるとともに、」云々、こういうふうになっているのは御承知のとおりでございます。  ところが、今回国会提案されてまいりました法案は、女性労働における平等の権利を定めることを目的とはしていないで、勤労婦人福祉法と労働基準法、その一部を改正してセットいたしまして、福祉の増進と地位向上を目的とする法律としてあるわけでございます。これによりまして、本来の目的であるはずの、婦人差別撤廃条約批准のため求められている雇用に関する基本的権利を保障する平等な労働権の確立ということは、非常に希薄になってほとんどなくなったような感じがいたします。その性格を全く欠いてしまっているわけです。  それについてお尋ねするわけでございますが、先般の本会議で総理大臣が質問に対する答弁としておっしゃったことが、女性雇用における機会均等待遇女性のための福祉と考えると答弁していらっしゃいます。したがって、勤労婦人福祉法の大改正をやって今回法案をつくったことは正しいというふうに答弁なさったわけでありますけれども、これは女性雇用において均等に取り扱われるということ自体を権利として保障するものにはなっていない、そのことはこの法案の第二条の中にも出てくるわけでございますが、第二条の「基本的理念」の中でも、「性別により差別されることなく」云々とございまして「配慮されるものとする」、これは法律を改めて出すまでもないと思いますけれども、第二条の「基本的理念」として「女子労働者は、経済及び社会の発展に寄与する者であり、かつ、家庭の一員として次代を担う者の生育について重要な役割を有する者であることにかんがみ、」云々とずっと書いてありまして、「その能力を有効に発揮して充実した職業生活を営み、及び職業生活と家庭生活との調和を図ることができるよう配慮されるものとする。」というふうになっております。  そこで、お尋ねは、ここでこの法律が取り上げております目的の一つになっております「福祉」、それから今読み上げました「配慮」、この意味がよくわかりません。勤労婦人福祉法の条文どおり持ってきているのか。同じように「配慮される」という言葉になっているわけでございますが、配慮するというのはどういうことなのか、この意味をわからせてほしいと思います。
  34. 赤松良子

    赤松政府委員 お答え申し上げます。  まず、審議会の建議等の中で「立法措置を講ずる」、あるいは「男女機会の均等及び待遇の平等を確保するための立法措置を講ずる」というような表現があったということは、全くそのとおりでございまして、このたびその建議等を踏まえて立法措置を講じたものというふうに言えると存ずる次第でございます。立法措置の中には、もちろん新しい立法をする場合もあれば、これまでの既存の法律を改正して新たな部分をつけ加えるということもあるわけでございまして、このたびの法案はその後の方の方法をとったということでございますが、これが立法措置であることは間違いのないところではないかと存ずる次第でございます。  それから福祉の概念についてでございますが、私ども福祉の概念というものは非常に広いものというふうに理解をいたしております。と申しますのは、労働省の設置法の中にも既に「労働者の福祉」という言葉が使われているわけでございまして、福祉という言葉は辞書などを見ましても大変いろいろなふうに使われているわけでございますが、労働分野労働者の福祉というふうに使う場合には非常に広いわけでございまして、福祉の中の一部の意味するところ、つまり恩恵的に物を施すというようなニュアンスがある場合もあるかと存じますが、決してそういう意味で使われているとは考えていないわけでございます。労働省の設置法の中の「労働者の福祉」という言葉は、まさにそういう意味で、決して他から恩恵的に与えられたものというような意味で使われているものとは思わないわけでございまして、勤労婦人福祉法の「福祉」も同様に、そのように広い意味で使われてきたというふうに理解をいたしております。  また、「配慮される」とはどういう意味がというお尋ねの点でございますが、第二条は、第四条によって事業主、国、地方公共団体が措置、施策を講じようとする場合において配慮すべき理念を定めたものでございまして、これによって事業主、国、地方公共団体は、女子労働者が母性を尊重されつつ、しかも性別によって差別されることなく、その能力を有効に発揮して充実した職業生活を営むとともに、職業生活と家庭生活との調和を図ることができるように、いろいろな措置や施策を講じるように努めなければならないということを言っているというふうに存じております。
  35. 金子みつ

    金子(み)委員 せっかく御答弁いただきましたが、私、やはり頭が悪いんだと思うのです、よくわからないのです。これにばかりかかってはいられませんけれども、重要な問題だと思いますので、福祉の問題もそうです。福祉というのは、いわゆる今おっしゃったのは社会福祉、いわゆる恩恵的な社会福祉ではないとおっしゃいましたけれども、労働における福祉という言葉がありました。これも難しいですね、労働における福祉というのはどういうことを指すのか。  では、こういうことは労働における福祉になるのでしょうか、一つ例を私の方から申し上げてみたいのです。夫婦共働きで仕事をしている家庭があります。夫は両親の扶養を担当し、妻は子供の扶養を担当するというふうに計画いたしましたところが、これはだめだ、夫婦共同扶養と申しますか、これは専門の言葉ですが、その場合に原則としてこれらの被扶養者は夫の被扶養者とする、ただし妻の収入が夫の収入を三割以上上回る場合は申請により妻の扶養家族としてもいいが、分離扶養は認めない。これでは何のことがわからない。こういうことでは労働の場における福祉という問題が解決できないのですが、こういう場合を労働の場における福祉というふうにお考えになるのでしょうか。それを伺いたいと思います。
  36. 赤松良子

    赤松政府委員 ただいま先生がお挙げになりました具体的な例でございますと、扶養手当というふうに理解いたしたわけでございますが、扶養手当でございますと、労働基準法の賃金に当たる場合が非常に多いのではないか。通常は賃金というふうに考えられますので、賃金でございますと、これはこの法案内容ではなくて、むしろ労働基準法の四条の問題なのではないかと思います。しかし、もう少し広くお尋ねの趣旨を理解いたしまして、福利厚生に関して、扶養者をその基準とする場合に、その認定に当たって女子については男子と異なった要件を課すというようなことが行われた場合には、本法案に反するのではないかというふうに思います。つまりこの法案では、福祉ということは女子であることを理由にして差別的取り扱いがされる、そういう状態をなくすことが本法案の中で言う「福祉」の概念の中に含まれると存じますので、女子についてだけ特別な制限を設けて福利厚生に関する諸手当等を支払わないというようなことであれば、本法案の中の「福祉」に反するものだ、こういうふうに御理解いただきたいと存じます。
  37. 金子みつ

    金子(み)委員 いずれにいたしましても、今の文なんかは明らかに労働における男女差別でございますね。労働の福祉におけるとでも言っていいのでしょうか、今のお話のとおりですと。しかし、福祉を受ける権利というのはもちろん人間の基本的権利ではあると思いますけれども、私たちがここで、この法律で言おうとするところはそうじゃなくて、労働の権利ということを言わなければいけないはずだと思いますが、そうなっていない、この辺が非常に問題だと思いますが、この問題はここまでにしておきます。いずれまた別の機会にやることといたしまして、今のこの問題は非常に不明確で、法案内容を意図することにはならないというふうに考えております。  そこで前に戻ります。今度の法案は、今まで申し上げましたように平等な労働権の確立ということについては大変にあいまいになってきている、希薄になっているということだけでなぐ大変にあいまいで、その性格が変わってきてしまっているということを申し上げたわけでありますが、それについてです。  昭和五十三年以来続けてこられた婦人少年問題審議会婦人労働部会の討議の中で、この間、政府自体そうだったと思うのですけれども、婦人差別撤廃条約批准のための我が国女性労働における平等の基本的権利を確立する制度、すなわち男女雇用平等法と言いあらわしながら、何年間か労働省の中と外とで進められてきたというふうに私は記憶いたしておりますが、これは間違いないと思うのです。ところが、法律案国会提出の直前に、突如として性格の全く異なったこのような法案を出してこられた、出してしまった、その理由は何なのかということを私は明確に答弁していただきたいと思うのです。差別撤廃条約批准に対して、雇用平等法の制定は時期尚早であるとか、あるいは条約署名の際に何のあいさつもなかったじゃないかとか、条約批准に当たっては最低限の国内法の整備をすればそれでいいんだとかいうような声や、この批准反対して法制定に不満を持つ経営者側の不当な要求や圧力に屈したんじゃないかというふうにすら思えますが、その辺は率直に御答弁をいただきたい。大臣、いかがでしょう。
  38. 坂本三十次

    坂本国務大臣 私どもは経営者側の不当な圧力に屈したとは思っておりません。私どもの正当な圧力に、経営者側が一応やむを得ぬという状況になったのだと思っております。  あなたも御承知のとおり、六年間ももんで、そして最終的には三論併記というところも大分ありまして、三論併記などというのは普通の役所の常識でいえばとても法案にはならぬということでございますけれども、来年の批准というものを私どもはもっと真剣に大事に考えなければならぬ、そうして、先ほどからも申し上げておりまするように、女性差別を解消して能力を発揮していくということは、女性自身にとっても大切であると同時に我が国民族の活力にもなる、そういう内外の判断からいたしまして私どもは決断をいたしたということでございまして、決して一方からの圧力に屈したということではないと思っております。  それは、御承知のとおり女性の中だけでもいろいろ意見がありますし、労使の中でも意見がありまずし、経営者の中でもいろいろ意見がございます。ですから、そこのところ、一本にすっとまとまって答申をいただければ私はまことに楽だったわけでありますけれども、そうではないのですから、ないからといってほっておくよりも、ここであるべき姿の方向に向かって、審議会の答申は、答申も苦労をされて「やむを得ない」という表現もございますけれども、とにかくひとつまとめて、そしてあるべき姿に向かって今スタートをする方が非常にベターだ、これからの将来も考えてみてタイミングとすればやはり今が一番いいと思いまして、あるべき方向を間違えなければ、後は着実に一歩一歩前進をしていく方が、現実から理想へのかけ橋としてかえってベターではなかろうかと思って決断をしたわけでございます。
  39. 金子みつ

    金子(み)委員 今の御答弁ですと、この法案の中にはあるべき方向が示されているというふうに理解できるわけでございますが、その点につきましては、逐次審議をしながら確かめて、確認していきたいと思うわけでございます。  そこで、御承知のように、今私たちが努力をしようと思っているのは、現実の職場における雇用にかかわる男女の実態に大きな格差ができているわけでございます。これはいろいろな理由があると思いますけれども、その格差を少しでも狭めていこうという努力をするわけでございます。  なぜそんなに格差があり、女性男性と比べて差別されているかという問題を認識していただきたいのですが、女性差別されているというのは、一方で保護規定があるからじゃない、女性だけに家庭責任があることを前提にして、男性と区別して、女性には補助的な業務だけしか与えないで、その補助的な業務に言葉をかえれば固定してきた企業の労務政策が原因なんじゃないですか。私はそのように考える。ですから、この点を改めるあるいは撤廃するということにならなくてはならないと思うのです。保護解消と引きかえに平等法を制定するということは、女性の平等に働く権利が基本的人権であることを否定することになる、重大な問題だと思います。  そもそも平等法というのは、労働基準法の女子保護規定をなくすための法律ではないはずなんでありまして、この二つのものを無理やり一つにまとめたところに問題があると考えますが、無理に一つ法律にまとめられた理由は何だったのでしょう。これは大臣にも聞かせていただきたいのですが、まず局長からどうぞ。どうしてこういうことをしたのですか。
  40. 赤松良子

    赤松政府委員 先生の御指摘のように、企業の経営者の中には、女性は非常に能力が低いとか家事責任を非常に重く負っているからという一般的な理由で、女性差別するというようなことが決してないとは申せないと私どもも考えております。そして、そういう経営者の方たちの態度というものを改めていただきたいということが、今度の機会均等法の骨子であるということも事実でございます。お尋ねの核心は、基準法の保護規定というものを撤廃するという必要がないのではないか、これを結びつけるのはおかしいというような御趣旨と任じます。しかし一方、差別撤廃条約というものをよく読んでみますと、この差別撤廃条約は、やはり女性に対する特別な措置というものは、母性保護を別といたしまして、母性保護だけは差別に当たらないというふうに明記いたしておりますからこれははっきりいたしておりますが、それ以外の保護の規定というものは究極的には廃止されるべきものだと考えているというふうに私どもは受けとっているわけでございます。条約のいろいろな条文あるいは前文その他、総合的に考えまして、条約の目指すところが、女子にだけ男子と違った労働条件、違った法律上の規定を置いておくということが、いつまでもそのような形であってよいというふうに条約が考えているとは私どもには思えないわけでございます。  そこで、そういう方向に沿って現在ある労働基準法その他の女子保護の規定を見直すということは、長い審議会婦人労働部会の過程において氏たびたび議論をされたわけでございまして、基本的には見直しは必要であるという点についてはコンセンサスが得られているものと考えるわけでございます。しかしながら、どの時点でどのように特別な保護をなくしていくかということついてはいろいろと議論の分かれたところでございますので、そういう議論をよく伺い日本の現状というようなものをよく考えまして、一挙に現在ある女子保護の規定をやめてしまうということではなくて、現状に合った緩和の仕方を図ったものでございます。
  41. 金子みつ

    金子(み)委員 保護か平等かという古い考え方が今でも残っているのですが、大臣、それをどうお考えになりますか。
  42. 坂本三十次

    坂本国務大臣 企業が差別しているというのは、それは今の現実の姿にありますわね。しかし、その原因は何から来たかというと、やはり日本の明治以来の男性主導社会、その結果として、男は妻子のために外へ出て働く、そしてその男のかい性でおれは妻子を養っているんだ、こう言って頑張ってきたことは明治以来事実なんです。それが労働慣行でも終身雇用制度だなんていって、これは外国にもありませんわね。日本は一度雇えは職業訓練を重ねながら会社でずっと終身働いてもらう。外国のように景気が悪くなればすぐ首を切るなんということはしない。そういうところから、おのずから家庭が主であるという女性男性は外が主であるというそういう社会慣行が明治以来続いてきたことは事実ですから、そこで差が出てきた、勤続年数、長さなどによって具体的に差が出てきた、だからひとつこれを今から徐々に直していきましょう、こういうことでございまして、企業が制限したから差別が出たというのはそれは表面の話でありまして、現時点の結果論でありまして、もともとはと言えば、やはり男性主導であって女性の進出を歓迎しなかった、それはいかぬ、ここで考え直そう、もっと社会にも意欲のある人は誘導しよう、これを改めたいというのが私どもの考え方でございます。  女性の保護を、ただいま局長が、母性保護を除いてできるだけ改廃をし、見直しをしていきたいということは、つまり平等を達するための、平等はただ一人で達成せられるわけではなくて、やはり社会の現実は非常に厳しいわけでありますから、その平等の成果の前に、まずスタート台が、スタートラインが男性と同じであるということが先に来ると私は思いますね。そういう意味で、やはり男性と同じ機会均等を与えて、そして意欲と能力のある方は結果として平等を与えなければならぬ、私はそういうふうに思っております。  現実に女性の中でも、やはりいろいろな女性保護というものについては、男性との間において同じようにスタートラインにつけてほしいというような、そういう方もたくさんおいでになります。保護はできるだけ見直してほしいという方も相当たくさんおられることも事実でございまして、保護せよという方もある、しかし保護の法がかえって女性職場進出を妨げるから、それは改廃した方がいいという方もあります。そこらは私ども、そうかといって現実を急に変えて混乱を起こしてもいけませんので、現実からスタートをして、そして将来だんだんと、自覚とそれから能力と実績によってこの目的である待遇の平等まで獲得をしていきたいな、こう思っておるわけでございまして、まあ歩きながら考えよう、こういうことでございます。(「定足数がない」と呼び、その他発言する者あり)
  43. 金子みつ

    金子(み)委員 議場の整理はよろしいのですか。質問してよろしいのですか。−大臣の今の御答弁を伺っておりますと、随分幾つも幾つも節々に問題点が発見されたんですけれども、それを一つ一つやっていると大変時間がかかりますからきょうはそれは省きますけれども、おっしゃろうとしているところは、スタート台を一つにしてということは同じにしてということですよね。男女雇用においては同じ条件に置いてそして進めるようにしよう、究極的な趣旨はそこだろうと思いました。今まで男性女性を引っ張ってきたから、指導してきたから今の女性の実態がこうなんだとか、それからこれからも誘導していこうとか、いつもいつも男性女性を誘導するような姿勢に立っていらっしゃるというのは問題だと思うのですけれども、そのことは今私は論じませんけれども、今の大臣の御答弁の最終的なところは、同じところに立たせてそして一緒に進めていこう、こういう御趣旨だというふうに理解いたしましたので、それなら、今度の法案は福祉法じゃなくて雇用の平等をつくり出すための法律なんですから、この法律の名前もやはりみんなにわかりやすいように、雇用分野における男女の平等取り扱いの促進に関する法律とか、あるいはもっと単純に男女雇用平等法とか、こういうものになさってはいかがですか。その方が非常に明確だし、わかりやすいし、そして適切だというふうに考えますが、そういうお考えはありませんか、大臣
  44. 赤松良子

    赤松政府委員 今度の法律は、一方では、男女機会の均等を確保するための部分をまず第一部として大きく、新しくつけ加えたわけでございます。しかし同時に、福祉法の時代から引き続いてございます女性の就業に対する特別な配慮というものを第二部として持っておるわけでございます。これがそれでは必要でなくなったかと言えば、私どもにはそういうふうには思えませんで、男女機会均等ということを実質的に進めるためには、現在の社会においてはまだ女性が家事、育児等の負担を男性よりも重く負っているという事実、また就業年限が男性よりも短く、育児のために中断しなければならないというような方たちが多く、その方たちが職場に再復帰をする場合には特別な配慮をする方がよいというような現実があるわけでございます。したがいまして、これはいわば新しい法律と言ってもいいくらいのものだろうと私どもは思っておりますけれども、二つの部分、つまり機会の均等の部分と特別な配慮というものをいわば車の両輪のようにして持っているわけでございまして、その両方の車がよく動いてこそ、実質的な男女機会の均等や平等の確保ということができるのではないかと私どもは考えた次第でございます。したがいまして、全く単独な法律をつくるよりも、今まで進めてまいりました女性に対する配慮というものを一方の車としながら機会の均等を実質的に進めていくということが、現在の日本社会の実情を考えますとより適当なのではないかと考えるわけでございます。
  45. 金子みつ

    金子(み)委員 今の御答弁によりますと、もっと目的をはっきりさせた法律の名称に切りかえることについては反対である、こういうふうに理解していいですか。
  46. 赤松良子

    赤松政府委員 この法律は、従来の勤労婦人福祉法のときと変わりまして、「雇用分野における男女の均等な機会及び待遇確保されることを促進するとともに、」という文言をまず第一に掲げているわけでございます。それから、その他の旧法と申しますか現行法の中の「勤労婦人の福祉に関する原理を明らかにする」という、一番先に掲げられておりました表現は削除いたしております。そのように、目的自体を現行法とは異なった書き方にしたということからも、今度の提案いたしております法案の性格は前の法案とは違ったものになっているというふうに御理解いただきたいと存じます。
  47. 金子みつ

    金子(み)委員 どうもおかしいと思うのですがね。それでは法案に入ります。  問題は一条です。この一条では、今局長の言われたように「雇用分野における男女の均等な機会及び待遇確保されることを促進するとともに、」と書いてありますが、この法律の目的は「もって女子労働者の福祉の増進と地位向上を図ることを目的とする」となっておりまして、女子労働者が男子と平等の労働権を確保するということを目的にはしていないというふうに私どもは読むわけでございます。この法律がそういうふうに読めるのです。そこで問題だと言って、先ほど来申し上げているわけでございますが、労働省としてはそういうふうにしか御答弁になりませんので、話は食い違ったままということになりますので、ここは食い違ったままのペンディングになるかと思います。  そこで、この問題について条約の十一条で「すべての人間の奪い得ない権利としての労働の権利」というのがうたわれております。それを確保するために「雇用分野における婦人に対する差別撤廃するためのすべての適当な措置をとる。」、これが条約締約国に義務づけられているわけでございます。サインをした国はこれを義務づけられているというふうに考えていいと思うのであります。  したがって、この目的は、今お話しのあるような福祉法では実現できない、私はそういうふうに思いますが、実現できるのでしょうか。雇用機会待遇について女性差別的に取り扱うことを禁止するということにでもしない限りこの福祉法では実現できないと思いますが、それはいかがでしょう。
  48. 赤松良子

    赤松政府委員 福祉法というのは、今度の法案では名称そのものも変更になったわけでございまして、今度の新しい法律はすっかり衣がえをいたしました。名称、目的その他、基本的なところを改正している点について御留意をいただきたいと任じます。それで、今の第一条と第十一条と第二条の関係等でございますが、先ほど来申し上げておりますように「女子労働者の福祉」ということの中身か、男女の均等な機会及び待遇確保されることを含んでいるわけでございますから、それを進めることが、機会の均等、待遇確保ということを包含したものとしてそれを促進いたしたいと考えているわけでございます。したがいまして、差別撤廃条約上こういう形をとったことが問題になるとは考えられないわけでございます。目的規定の中で「雇用分野における男女の均等な機会及び待遇確保されることを促進する」と規定してあることと、差別撤廃条約の二条の一項、(b)に規定してあります「婦人に対するすべての差別の禁止」とは同様の趣旨を規定しているものと考えている次第でございます。
  49. 金子みつ

    金子(み)委員 今の問題は十分納得できませんけれども、法律の目的が大変に食い違っているという点で、私どもは理解がしにくいと思います。  先に進みますが、婦人少年問題審議会の建議が、先ほど大臣もおっしゃいましたが、一致できないで、三論併記という異例な形で出てきたわけでございますね。三論併記なんという形で出てきたものは法律なんてつくれるものではないと先ほど大臣はおっしゃっていられました。だけれども、来年度中に撤廃条約批准してほしいと思っているから急ぐのだというふうに聞き取れるわけでございますし、そういうふうに先ほど大臣もおっしゃったわけでございますが、この三論併記についていろいろな批判が出ていることも御存じだろうと思います。例えば、十分煮詰めていないあるいは議論が未熟なんだということ、あるいはどこかが無理を主張しているのではないか、あるいは原則論が外れているとかいう批判が幾つかございます。これは条約批准を急ぐ余り重要課題を取り残してしまうのではないか、そういうおそれがあるのではないかと心配されるわけでございます。先ほど大臣も、来年批准をしてもらわなければならぬから、今回は、三論併記で形にはならぬけれども、とにかく法律をつくって、こういうふうにおっしゃったように聞こえるわけでございます。「それかあらぬか」という言葉がありますが、「そのため」でしょうか、法案について諮問を受けた審議会は答申を出しておりますが、その答申の中で、今回はやむを得ないがしょうがない、しかし法律が発足したらその後適当な時期に見直しをする必要がある、こういう答申を受けていらっしゃるのでございますが、これは大変な問題だと私は思うのです。大臣は、本会議答弁の場合も、またきょうも先ほどおっしゃいましたが、とにかく出発させる、スタートだ、そしてその後はスロー・アンド・ステディーだ、ゆっくりと確実に、三S主義でいくのだというふうにおっしゃっていらっしゃいます。私は、きちんとした正しい法律ができ上がった上で、それを実施の段階で三S主義でいくのなら私は反対しないのです。それでいくのならわかります。そういうやり方はあると思います。しかし、制定する内容が初めから不十分だと承知しながら出発させて、後で手直しをする、こんな不見識な話はあるでしょうか。法律というのはそうやってつくっていいものなんでしょうか。私は法律の細かい専門家じゃないからわかりませんが、これは私は国民をばかにしていると思うのです。とにかくつくっておけばいいよ、そうすればみんながそれで一応満足するだろう、落ちつくだろう、それでまた問題が出たら直していけばいいじゃないか、そういうふうに聞こえるのですけれども、私はそういうことを推察できますので大変に気になっております。ですから、そういう意味からも、この法案は初めから出直しをしてきちっとしたものにして、そして審議すべきじゃないかと思いますが、大臣、いかがですか。
  50. 坂本三十次

    坂本国務大臣 私も、初めからきちっとした、菅さんの賛成できる案が審議会でまとまるということを、非常に期待をしておりました。しかし、先ほども申し上げましたように、この問題は単なる雇用の問題だけではなしに、その背後には日本の長い間の歴史的な慣行というものもありまするし、あるいはまた、その底には日本人の間の男女観という文明論も存在をいたしておりまして、六年もかかって、あの審議会であんなに一生懸命やられたのになかなか煮詰まらない。それでは審議会が一本になるまで待っていようかというと、私はそれはどうも賛成できません。先ほど申し上げましたように、それは本当に皆さんが現実というものをよくごらんになっておるせいか、自分の足元というものを非常に大切にせられておるせいか、いろいろその立場立場によってお考えが違うのであります。同じ女性同士の中でも違うのであります。経営者同士の中でも違うのでございます。まして労使の中でも違うのでございます。しかし、何らかの法整備男女雇用機会均等及び待遇の平等を達成したい、そういう大枠においては、審議会におきましても、やはり法があった方がいい、総論賛成なんです。だけれども、各論に至ると、皆おのおののお立場があってすっきり一本にならなかった。一生懸命にやっていただいたけれども三論併記の部分もあった、しかし総論はやはりつくるべし、こういうところでございました。  それでは、まあひとつ皆さんの足並みがそろうまで待っていようかというのも、これは一つの行き方でもございましょうけれども、私はあえてそれをとらなかった。行くべき方向は決まっておる、あるべき姿はわかっているんだ、それは審議会の皆さんも賛成しておられるんだ。しかし、現実というものから理想を眺めて歩む歩み方のスピードの問題、あるいはまた、吉田口から登れという者もおれば御殿場口から行けという人もおるかもしれません。そこが差があったということでございまして、それほど、日本伝統というものとあるべき姿に持っていこうという中には、やはり山の登り方、コースのとり方についてはいろいろ論があるということであります。目標は決まっておるわけです。  ですから、スタートして、歩きながら考え、考えながら歩きしていっても、賢明な労使の皆さん、それから女性の自覚はこれからもどんどん伸びてくるでありましょうし、歩きながら考え、考えながら歩いてもいいのではないか。こういう問題はなかなか難しい問題でありまして、将来の先見性の問題もありましょうし、現実の問題もございましょうし、それを歩んでいくときは、昔から言われますが、やはり振り子みたいなものでして、あるいは弁証法的な発展というものがあってもやむを得ないんじゃないか、こう私は思って決断をしたということで、意のあるところをひとつ。女性の活力を引き出したいという気持ちは変わりはない、そういう意味で、来年の潮どきを逃さない方がいい、こういう決断をしたわけであります。
  51. 金子みつ

    金子(み)委員 やはり今のお話答弁を伺っておりますと、大臣のお気持ちがわからないわけではございませんけれども、今の時点であるべき姿を法の形であらわすことはできないというふうになっているわけですね。考え方としては、あるべき姿をみんなが頭の中に入れているけれども、そこへ真っすぐ持っていかれないから今こういう段階をとっているんだ、この段階でだんだんに進めていこうというふうにおっしゃっているように思うのですけれども、どこまで進めていっても、「女子労働者の福祉と地位向上を目的とする」とある以上は、労働の権利は権利として認めるんじゃなくて、福祉を受ける者として認めるといろことに変わりはないのです。どこまでどのように進んでいってもそうだと思います。ですから、この「目的」のところを改めるべきだと私は申し上げているわけです。さらに申しますならば、雇用における男女の条件が差別されて、女性に不利なことが起こった場合の解決の方法としての手段が後の方に出てまいります。調停の問題などが出てきます。こういうような問題も、条約によりますとそのこともきちっと決めるべきであるというふうに書かれておりますから、お決めになったんだと思いますけれども、それはそれでよろしいといたしましても、「目的」の中にそのこともきちっとうたっておくべきではないでしょうか。私は「目的」というのか非常に福祉一本に傾いているところに問題があると思いますが、そのことを「目的」の中にうたい込むべきだというふうに考えておりますけれども、それはいかがですか。
  52. 赤松良子

    赤松政府委員 先ほどお答え申し上げたこととあるいはまた同じことを申し上げるような結果になるかと存じますが、この「目的」の中に明らかに、機会の均等を促進するという表現を入れたことで、この法律の性格は非常にはっきりされたものであるというふうに私どもは思っているわけでございまして、この機会の均等ということと家庭生活と職業生活とを調和させるための諸種の施策とが相まって、婦人労働者の福祉と地位向上が実現するものだというふうに考える次第でございます。
  53. 金子みつ

    金子(み)委員 政府の御趣旨はわかりました。私どもとは違うということもはっきりわかりました。この問題はここでこれ以上論議をすることは避けたいと思います。次の機会へ残しておきたいというふうに思います。  私は、法律というものはその目的が非常に大事だと思います。何を目的にする法律なんだということはだれもが考えることです。素人でもそういうふうに考えます。その法律が何を目的にしているか、これは非常に重要な問題だと思います。その法律の性格をあらわすものだと思いますので、私は先ほど来からくどく申し上げているのでございまして、そのことが婦人の福祉の増進と地位向上になってしまっているというところに大変に問題を感じるわけです。今の問題はそこまでにいたしておきまして、先へ進みます。次の問題は、この「目的」の次に「基本的理念」、それから「関係者の責務」というふうに、一遇の問題が法案としてつくられていをわけでございまして、この中にも非常に問題があると私は思っております。例えば二条の中に、女子労働者が母性を尊重されつつ云々というのがございます。これも最後は「配慮される」ことになっているわけですけれども、この問題について条約の方を見ますと、条約では「母性の社会的重要性」をうたっておりますし、「出産における婦人役割差別の根拠となるべきではない」ということをはっきりと言っております。それで、母性の尊重を配慮の対象にした今度の法律の理念が条約の理念とは合致しない、適合しないと私は見るわけでございます。その点が一つ。  それから、続けてもう一つ、関連のものでございますので質問をさせていただきますが、それはここで、「職業生活と家庭生活との調和を図る」ことができるようというのがございます。ここで「職業生活と家庭生活との調和を図る」ということを女性についてだけ言っているということは、大変に問題だと思うのです。これは御承知と思いますが、ILOの百二十三号勧告、これは家族責任を有する労働者機会均等及び平等待遇に関する勧告でございますが、これは一九六五年に出されておりますが、その後その考え方は間違いだということで、家庭の責任を持つというのは女性だけでなく、男女労働者がともに担うものだというふうに考えを改めておりまして、百二十二号勧告は百五十六号条約に変えられ、さらに百六十五号勧告が採択されております。そういうことは御承知だと思いますが、ですから、それに続きましてそのことを受けとめまして、差別撤廃条約宣言が、「家族、特に子供の養育の面で婦人が果たす役割に留意し、」と今までありましたものを、条約は「両親の役割」と変更したわけでございます。ですから婦人だけではない、「両親の役割」というふうに考えていかなければならない。したがいまして、ここで家族の役割ということになるわけでありますから、「職業生活と家庭生活との調和」ということを言うなら、それは男女双方について触れなくてはならない、そのことをはっきりと明記すべきではないかというふうに思うわけでございます。そうでなければ、このままでいきますとあたかも百二十三号勧告がそのまま維持されているというふうに解釈できますし、そのことは単に立ちおくれているというだけではなくて、否定されるべきはずの役割分担をさらに固定化する危険性を持っているということで、条約の理念とは逆行するというふうに考えられますので、ここは改められるべきだと思いますが、いかがですか。
  54. 赤松良子

    赤松政府委員 お答え申し上げます。  第二条で「母性を尊重されつつ」と書いてあるのが、条約趣旨に反するのではないかということでございますが、婦人差別撤廃条約自体にも、その前文で「母性の社会的重要性に留意し」というふうに書かれているわけでございます。また、雇用分野に関しましては、第十一条一項において「男女の平等を基礎として、同一の権利を確保するため、適当な措置をとる。」としておりますが、そのことが直ちに、権利として保障されるというふうな規定の仕方ばかりを要求しているというふうにも読めないわけでございます。いずれにいたしましても、「母性を尊重されつつ」といたしましたのは、男女の均等な取り扱いを重視する場合におきましても、実質的な平等という観点からは母性を尊重するということが非常に重要でございまして、このことを明らかにするということは大切なことなのではないかというふうに考えたわけでございます。  また、百二十三号勧告の当時と同じ考えてこの「基本的理念」が書かれているのではないかという御指摘でございますが、現行の勤労婦人福祉法は、確かに、百二十三号勧告の採択されました比較的すぐ後につくられた法律でこざいまして、その当時考えておりました基本的理念が、百二十三号勧告の内容を受け継いでいるということは否定できないと存じます。しかしながら、今度の御審議いただいております法案は、現行の勤労婦人福祉法の基本的理念をも、その点を勘案して書きかえたものでございます。この両者を御参照していただきますと、勤労婦人福祉法の方は「勤労婦人は、次代をになう者の生育について重大な役割を有するとともに、経済及び社会の発展に寄与する者であることにかんがみ、」と、このように書かれております。これは先生御指摘の百二十三号勧告の趣旨と非常に合致するものではないか、そのような表現になっております。ところが改正の案文によりますと、「女子労働者は、経済及び社会の発展に寄与する者であり、かつ、家庭の一員として次代を担う者の生育について重要な役割を有するものであることにかんがみ、」というふうに、明らかに条文を修文したわけでございます。これは御指摘のような百二十三号勧告の考え方にとらわれるということでは時代の要請にそぐわないというふうに考えまして、新たな理念として書いたわけでございます。  また「職業生活と家庭生活との調和」ということは、これは女性にとってだけ必要なことであると考えているわけではございません。男子労働者にとっても職業と家庭生活とのよき調和ということは大変大切なことであろうと存じます。しかし、女性には家事、育児の負担が現実に非常に多いということもまた事実でございますので、これに対しての配慮ということがより大切、つまり「職業生活と家庭生活との調和」ということは、女性の場合には男性よりもより困難である、そのための配慮が必要であろう、このような考え方からこの「基本理念」を書いたわけでございまして、基本理念自体が百二十三号勧告時代とは異なった表現をとっているということについて御理解をいただきたいと存じます。
  55. 金子みつ

    金子(み)委員 順序からいきますればその次に入るべき課題はございますが、時間の関係がございますのでちょっと飛ばしまして、教育訓練の問題について質問させていただきます。  この教育訓練の問題でございますけれども、これは禁止規定になっているのですが、問題は「労働者の業務の遂行に必要な基礎的な能力を付与するためのものとして労働省令で定める」云々というふうになっているのですけれども、基礎的能力に限って、基礎的能力を付与するための教育訓練をするということでございますから、これは入社した人だれにでも、男性でも女性にでも行うことなのだろうと思いますが、いわゆるオリエンテーションというようなもの、あるいは非常に基本的な一般的な訓練にすぎないのではないかというふうに考えます。こういうことだといたしますと、女子には昇進昇格を考えない差別的な意図が見られるというふうに、この条文から読み取れるのです。大体どこの会社でも教育訓練というのはステージがあって、そして、それぞれ昇格していきますとその昇格する場合の訓練というのが行われているはずなんですが、これは基礎的な能力だけに限定しているというところに非常に問題があるというふうに考えます。  条約の方でも教育訓練について規定がうたわれておりますが、条約の方の規定でありますと、「職業訓練及び再訓練(実習、高等職業訓練及び定期的訓練を含む。)」というのがうたわれているわけでありまして、この場合は私はすべての教育訓練というふうに改めるべきだ、そうすれば女性差別していないのだ、男性と同じようにしているのだということがはっきりすると思いますが、省令で定めるものだけにしてみたりあるいは基礎的なものだけというふうにされておりますから、どうしてもこれは女性についてはこれだけでよろしい、基礎的でよろしい、昇進昇格のことは考えていないということがおのずからこれで読めると思いますが、その辺を御説明ください。
  56. 赤松良子

    赤松政府委員 教育訓練についてのお尋ねでございますが、この条文の内容は入社当時のオリエンテーションというようなものであろうという先生の御指摘でございますが、私どもそのようには考えていないわけでございます。教育訓練というのは非常にいろいろな段階があり、またいろいろな種類があると思います。先生のお言葉で言えは、それぞれのステージに応じた基礎的な教育訓練であれば、この条文の規制の対象になるわけでございます。すべての教育訓練という表現を使えばというお話してございますが、条約にもすべてのとは必ずしも書いてなくて、いろいろな例を挙げて例示しているわけでございます。というのは、教育訓練というものは非常に種類が多く、そのすべてを強行規定の対象にするということになれば、非常に難しい問題も生ずるのではないかというふうに考えられますので、省令でその内容を明らかにするというふうにしたわけでございまして、どういうものがこの規制の対象になる教育訓練であるかということは、省令の段階ではっきりさせたいというふうに思っているわけでございます。重ねて申しますが、入社時のみのオリエンテーションというふうには今私どもは考えていないわけでございます。
  57. 金子みつ

    金子(み)委員 省令に任せるというのはいろいろなところに出てきます。それでごまかされているような感じがしないでもないのですが、本来ならば、法案を出されるときに、法案を受けてこういう省令をつくろうと思っているというふうに、考え方はやはりお示しになるべきじゃないでしょうか。そうでないと本当のことはわからない。法案というのは大筋だけしか決めていきませんから、それを今度は細かく具体的にするときには、こういうことを考えています、こういうことを省令で決めようと思っていますというようなことが同時に示されるならば、決定はできないでしょうけれども、考え方としてはこんなことがあるのだということが示されれば、この法案審議するときにみんながわかりやすくなるのです。ところがそれがありませんから、今どういうふうにおっしゃっても、私たちはああそうかとうなずけないわけです。そこら辺はこれから、この法案の中に幾つも出てきますし、そういう問題は本文の形を非常に崩してしまうというようなおそれがありますので、そこら辺はこれから先のところは考慮して御説明いただきたいというふうに思っております。  時間になりましたので、委員長、ここで一応中断いたします。
  58. 有馬元治

    有馬委員長 午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三分休憩      ————◇—————     午後一時十一分開議
  59. 有馬元治

    有馬委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。質疑を続行いたします。金子みつ君。
  60. 金子みつ

    金子(み)委員 続きとして質問をさせていただきますが、私はこの法案の条文を逐条審議するつもりはないわけでございますけれども、大体順序といたしまして今までそのような形でやってまいりましたが、大変時間が切迫しておりまして思うように進みませんから、方針を少し変えたいと思っております。ポイントを取り上げてと思って考えておりますので、次にお尋ねをしたいと思います問題は七条、八条の問題でございます。  七条、八条、すなわち募集、採用、配置及び昇進、大変に重要な部分でございます。この法案では、募集、採用につきましては男女の均等な機会を与えるよう事業主に努力義務を課している。努力をしなさいという制度になっているわけでありますが、この募集、採用というのは雇用の段階で一番最初の部分でございまして、雇用の入り口とも言っていいかと思うような段階でございます。ここで使用者が、職種や職務内容なんかにおいて仮に差を設けたりあるいは女子だけにいろいろな条件をつけたりというようなことがあるとすれば、それ自体大変に不合理な差別になるということは申し上げるまでもございません。そのことはそれから後の、これは募集、採用でありますから、退職、定年という最後の段階に至るまでのステージの中で差別を固定化することになるおそれがありますから、この最初の段階である募集、採用というのは非常に重要だと思います。このことは日本の憲法の十三条の個人の尊重、あるいは十四条の法のもとの平等、あるいは二十二条の職業選択の自由、二十七条の労働権の保障、これらに反する人権侵害になると思いますから、この条文につきましてはぜひ、努力だけでなくて、そうしてはならないという禁止規定にするべきだと考えているわけでございます。  ILOの百十一号条約あるいは国際人権規約等におきましても、この問題は既にはっきりと明記されておりますし、それを受けて、婦人差別撤廃条約もまた二条の(b)で、「婦人に対するすべての差別を禁止する適当な立法」をというふうに規定しているわけでございます。それを受けまして「国連婦人の一〇年」、この間に努力を続けております各国でも、この問題につきましては禁止するという方向でいろいろな国の法律ができております。時間の関係でございますので、おわかりのことだと思いますから、どの国がどう、どの国がどうと一々申し上げませんけれども、禁止規定にはしております。  そこでお尋ねでございますけれども、この大事な、大変に重要な部分をなぜ禁止規定にしないで努力義務にしたのかということです。しかも、条約に違反してまでも努力義務にしておこうというふうに考えられたその理由を聞かせていただきたい。努力義務にしたことでもって有効に機能するかどうかということは非常に問題だと思います。私は、禁止規定にするべきだということと同時に、入り口だけでなくて、入り口から出口まで全ステージについて一貫して禁止制度とするべきであるし、その禁止制度が有効に働くためには何らかの制裁規定を設けるべきだというふうにこの部分では強く思っているのでありますが、その点についての御見解を聞かせていただきたいと思います。
  61. 赤松良子

    赤松政府委員 お答えいたします。  企業へ入る前の募集、採用というステージが、雇用における機会の均等と待遇の平等を確保する上に非常に重要なステージであるということにつきましては、私どももそのように考えております。決してここが重要でないというふうに考えているわけではございません。  しかしながら、同時に、この段階が日本の企業の雇用慣行、つまり終身雇用を前提といたしまして、長い間働いた人を優遇していくという基本的な雇用慣行が、非常に大きな意味を持ってくる場所であろうと思うわけでございます。つまり、女性の勤続年数が大変に長くなってきているといろことは私どもも統計等で承知しているわけでございまして、最初にも申し上げましたように、昔は短期間、腰かけ的な雇用というような女子労働者に対する観念はもはや当てはまらなくなってきつつある。十年選手と言われるような女子労働者がもう既に二割を超えてきているということは十分に承知いたしておりますが、なおかつ、それでは男性と全く同じような働き方をしているかといえば、それはそうではございませんで、勤続年数を男女比較いたしますと男性の方がずっと長いわけでございます。女性にはいろいろな理由があるわけでございますが、長く勤める方はまだ比較して少ないわけでございます。そういたしますと、終身雇用というものを前提にしてのこのことの差が非常に大きな意味を持つこともまた、否定できない事実でございます。そして、企業が採用する場合に、終身雇用を前提として人間の選別をし採用するという慣行も、あながちこれが全く不合理なものと言ってしまうわけにもいかない面があるというふうに考えるわけでございます。そのために、そのステージで強行規定にするあるいは罰則を付するというようなことは、日本のそのような実態から考えると必ずしも適切ではない、このように考えて努力規定にしたわけでございます。  しかしながら、これが婦人に対するあらゆる形態の差別撤廃に関する条約に違反するかという点になりますと、これは私どもはそのように考えていないわけでございます。この条約趣旨に照らして、ここの部分あるいはそのほかの部分を仮に努力規定にすることによりましても、条約批准ができないような規定であるというふうには考えられないわけでございます。その理由は、あるいはこれは条約の解釈ともなりますので外務省の方からお答えいただく方が適切なのかもしれませんが、一応私どもの考えを申し上げますと、この条約では二条に規定がございますが、二条の(b)に、「婦人に対するすべての差別を禁止する適当な立法その他の措置(適当な場合には制裁を含む。)」、このように書かれているわけでございまして、適当な場合に制裁を含むというふうに言われておりますことは、すべての場合に制裁を含まなければならないというふうには理解できないわけでございます。また、十一条の雇用分野における条約の規定ぶりを見ましても、この十一条の二項の同号に、「妊娠又は母性休暇を理由とする解雇及び婚姻をしているか否かに基づく差別的解雇を制裁を課して禁止すること。」というふうに明定いたしております。そのことを踏まえまして、私どもはこれに合致するような方法で規定をつくってあるわけでございまして、ここの部分は十分に満たしているというふうに考えるわけでございます。したがいまして、他の部分が一部努力規定になっているということから、条約批准できないのではないか、条約批准の条件として十分でないのではないかというふうには考えていないわけでございます。
  62. 金子みつ

    金子(み)委員 そこのところに考え方の相違があるわけです。今局長の御答弁は、差別撤廃条約の二条の(b)で、「差別を禁止する適当な立法その他の措置をとること。」として、「適当な場合には制裁を含む。」と書いてある、その御説明が今あったわけですけれども、局長の解釈はそういうふうだということは今わかりました。しかし私どもの考え方としては、「適当な場合」というのはすべての場合を指している、この雇用に関する場合はどのステージにおいても禁止するべきだということが適当なんである、こういうふうに理解をするわけでございますので、私はそのように質問をしたわけです。しかし今の御答弁で、政府の考えていらっしゃることはどういうことかということがこれでわかりました。ですから私どもとは考え方が違いますけれども、政府側はそういう考えなんだということでありますが、それは完全ではないですね。大変に部分的で、都合のいいところだけ適当な制裁をつけるというふうなことに解釈されないでもありませんから、非常に不十分だというふうに私は思います。やはり男女雇用に関する平等な権利を確立するためには、どのステージででも差別をしてはならない、こういう形で規定するべきであると私どもは強くそのことを考えますし、そのようにされなくてはならないというふうに考える次第でございます。しかし、これをもう一遍言いましてもまた同じ答弁が返ってくると思いますので、今の点は私どもはそういうふうに考えておりますということを明らかにしておきたいと思います。  それからその次ですけれども、問題は、私はポイントだけにすることにいたしましたが、次の「指針」というのがあるのですね。この「指針」というのをつくられた理由は、七条と八条が禁止規定でなくて努力義務として決められたために、指針をつくらなければならないということになったのだと思うのです。だからこれを禁止規定にすれば「指針」なんか要らないわけです。必要ありません。  そこで私がお尋ねしたいのは、禁止にしないで努力義務にいたしましたから、どうしても「指針」というものがぴたっと裏表の関係でついていかないと意味がない、法律の効果は上がらないというふうに考えます。それで、ここにございますように、「事業主が講ずるように努めるべき措置についての指針を定めることができる。」、こうなっています。だから、七条、八条を禁止規定にしないのだったら、当然「指針」は、きちっと法律と足並みをそろえて、裏表の関係でつくらなければならないというふうに思います。ところが、この法文では「定めることができる」と書いてある。定めないこともできるのです。そこで問題だと思うのです。つくらなくてもいいんだというふうにも解釈できますので、ここは「定めるものとする」というふうに、「定めなければならない」とかいうような文言に改めて、これはきちっと法律を生かすための「指針」としてつくるんだという意思表示をしておかれなければならないと思います。それができないのだったら、さっき申し上げるように、七条、八条は禁止規定とするべきだというふうに話は戻ってくるわけでありますが、そのことをぜひ意見としてお聞かせ願いたい。  そして、先ほども申しましたけれども、大事な指針ですから、私は大臣に御答弁いただきたいのですが、法律と同じです。だからこの「指針」をどういう形のものにするかということ、あるいはどんなことを「指針」として考えられるかということは、法律を考えるときに既に考えていられるはずです。これを禁止規定にするのだったら考えなかったかもしれないけれども、努力義務にするというふうに法律をおつくりになる以上は、ではどういうことを「指針」の中に入れなければいかぬかということは既にわかっていらっしゃると思うのです。それが正式に手続上決めることができないことはよくわかりますけれども、考え方としてはどんなものを「指針」として置くべきだというふうに考えていらっしゃるかも、あわせて御答弁いただきたいと思います。
  63. 赤松良子

    赤松政府委員 先生が御指摘のように、七条、八条を努力義務にいたしましたので、その努力目標をはっきりさせるという意味で「指針」が必要になるというふうに存じます。  そこで、必要なものについて労働大臣が定めるという考え方にいたしましたのは、努力目標を定める指針というものは、現在の女子労働者労働条件、就業の実態、あるいは女子労働者の意識というようなことを勘案することが非常に必要であろうと思うわけでございます。そういう社会経済の現状を踏まえて、指針を策定するということが必要なことであろうと存じます。言葉をかえて言いますと、現状の漸進的な改革とも言えるものでございますので、当然そのときどきの社会認識、社会実態を踏まえて、必要に応じて設定され、あるいはまた変更されるべきであろうというふうに考えまして、「必要があると認めるとき」というふうにしたわけでございます。  そういたしますと、必要に応じて指針を定めるものでございますので、その規定ぶりも、このような例がほかの法律にもあるわけでございますので、そういう例に倣いまして、「定めなければならない」ということではなくて、むしろ「定めることができる」という権限付与の形が適当であろうというふうに考えたわけでございます。  例としてはどういうものがあるかということを申し上げる時間があれば申し上げたいと思いますが、あるいは時間がないので、次の「指針」の具体的な内容というものについての御質問の方に移らせていただきます。  「指針」は募集、採用、配置及び昇進、つまり現在七条、八条に規定されているような事項に関しまして、現在存在しております企業内での男女の異なる取り扱いの中で、その異なる取り扱いはすべて是正の対象となるというわけでもないかと存じますが、その是正の対象になるもの、その努力を事業主に求めるべきものについて目標として定めるものでございます。具体的には、今後審議会にお諮りをして決めるということが、審議会のこれまでの話し合いの中でもそれが適切というふうに言われていたように記憶いたしておりますので、そのようにいたしたい、かように考えております。
  64. 金子みつ

    金子(み)委員 今の御答弁だと、「指針」の中身も具体的にはわからせていただくことができませんでした。だから、そういたしますと、この七条、八条の問題は努力義務だけれども、それが努力できなかったときのことなども何も措置がされていませんし、これは努力したんだというだけのことで、結果的にはできていなくても問題にはならないということであって、非常にあいまいなと申しますか、非常に弱い規定になってしまうんじゃないかと思います。仮に指針がきちっとつくられて、そしてこういう形で指針をつくりますから、法律は努力にいたしますけれどもというようなことが御説明いただければと思ったのですが、それがありませんけれども、今それを追及しても出てくる様子もございませんから、これは保留にいたしまして、また後に送らせていただくことにいたします。  それではその次に進みますが、次は苦情、紛争の解決、調停の関連です。十三条から十五条、この間ですね、これを一括して取り上げてみたいと思います。  これは先ほど午前中のお話の中にも出てきておりましたけれども、女性はその立場上、自主的に差別が解消されるということは大変に困難だと思うのです。なぜかと申しますれば、女性が働いている職場はすべて労働組合があるわけでもありませんし、仮に組合があったといたしましても、その中の組織率は大変少ないし、いろいろな意味で条件がよくありません。自主的解決をするという場合には、必ず団体交渉権あるいは団結権、そういったものが背景になければ自主的解決ということは難しい、個人で自主的解決をするなんということは到底考えられません。ところが、そういうふうな条件の中にない場合が女性の場合は非常に多いです。団結権が実際にはありませんし、到底こういった対等性は与えられていないということになりますとどうなるんでしょう。自主的解決ができない場合というのが大変に多いわけですけれども、そういう場合には解決できないままてしょうがないというふうに考えられるのか。あるいはその先は法条で救済手段が、自主的に紛争が解決されない場合には解決援助のための行政指導があるというふうに言っておられますね。そしてその行政指導でうまくいかなかったらその先は調停がある、こういう言い方をして、そういうふうに仕組まれているわけでございます。  そこで問題があると思いますのは、「調停の委任」の十五条の中に「必要があると認めるときは、」というのがあるのですね。「必要があると認める」ということは、これは限定しているわけですね、必要がないと認めればやらない。この必要性の判断というのはどうやって決めるのか。多分、その前に行われているであろう自主的解決というようなものがしんしゃくの対象になるんじゃないかしらというふうには考えられますけれども、そうだとすればこの自主的解決というのは余り役に立たないですね。そういうふうな規定をしておきましても、それでもって解決できる人は余りいないということもわかっておりますし、あるいは自主的解決を待つということになりますと、その次の時点の行政指導をやる場合でも、今自主的解決を努力しているんだから口出ししないで待っていようというようなことになって、いたずらに時期が延ばされる。時期が延ばされた結果、解決はしないでうやむやにされてしまうということだってないわけではありません。前例として二年ぐらい引き延ばされても解決しないというのがあるわけですから。そういうことを考えますと、私は、「必要があると認めるとき」というような文言を入れるのでありますくらいでしたら、この十二条の「苦情の自主的解決」というものは要らない、明文化してもしょうがない、だからこれは外していいんじゃないですか。そして、この部分については行政指導でなさればいいんじゃないかというふうにも考えることができると思います。  ついでに、もう一つの問題を続けて申し上げますので、御答弁ください。  十四条の中で、「労働省令で定めるものについて」というのがあります。皆こういうふうにして制限がついているわけです。私はおかしいと思うのですね。こうじゃなくて、あらゆる紛争は、すべての紛争は解決の援助が与えられなければならないんじゃないでしょうか。労働省令でこういう問題、ああいう問題と区分をして、このことは解決してあげるけれどもこのことはやらない、こんな不公平な行政というものがあるものでしょうか。この「労働省令で定める」とか「別に定める」とかというような言い方は、法律のつくり方として非常にたくさん出てまいりますけれども、そのことが法律の中身を非常にあいまいにしてしまう、できるものもできなくしてしまうというおそれが私は非常にあると思うのです。ですから、ここの場合でも、「労働省令で定める」などというようなことは必要ない、外していいのじゃないかと思うわけです。この部分について御答弁をいただきたいと思います。     〔委員長退席、稲垣委員長代理着席〕  時間の関係がありますから続けて質問をしますので、御答弁は一緒にお願いします。  もう一つの問題は、大変大きな問題です。十四条で「指導又は勧告をすることができる。」となっています。勧告をした場合に、勧告に従わなかった事業主に対してはどうするのですか。何の制裁措置もありません。だから結果的には解決しないですよ。勧告されて、「はあ」と聞いて、勧告文を受け取っただけで頭の上を通り過ぎてしまう。別に何の制裁もありませんから、そのままにほっておいても困らない、こういう問題になって、これは全然意味がない。だから、制裁の中身はいろいろあると思いますけれども、それをここで議論するつもりはありませんが、せめて勧告違反の事業所の公表ぐらいあったっていいのじゃないでしょうか。あるいは職安からそこへ人をあっせんすることを一時停止するとか、何か方法はあると思うのです。いずれにしても何か制裁の措置は講ぜられなければならないと思います。  そして、いま一つ大きな問題がここの条文の中にあります。もう一つの問題は、十五条の中に大変なことが決めてある。「当該紛争の解決のために必要があると認めるとき」というのは今申し上げました。もう一つ、「他の関係当事者が調停を行うことを同意したときに限る。」、両方から、あるいはどっちかが問題を出してきた、調停を望んで出してきたときに、他の方もこれに同意をしなかったら調停はできない。もちろん互譲の精神でやるということはわかります。しかし、この場合どう考えてみても、訴える方は大体労働者です、訴えられる方は事業主だと思う。そうすると、互譲の精神とは申しましても力関係があります。そうして、事業主の方が同意しなかったらどうなるのでしょう。全然調停はできません、何もできません、解決できない、こういうことになるのじゃないでしょうか。  私は、このことは非常に問題だと思う。こういう条文を決められるということは、互譲の精神だから当たり前だとおっしゃるかもしれませんけれども、労働者を全く無視している。労働者を何とかして引き上げよう、先ほど来お話しがありましたような形でいこうと思っていらっしゃるのだったら、それに反するようなこのような条文はつくるべきではない、こういうふうに私は思います。ですから、機会均等調停委員会が機能を発揮する場合に、機会均等調停委員会の方でも、調停案を関係者に示しますが、これを受諾する場合に期間が定めてありません。いつまででもほっておいていいのでしょうか。何も期間が決めてないのですよ。だから、そうなりますと引き延ばし引き延ばしということになって、結果的には差別が救済されないことになるおそれがあるのです。この条文を読んでみますと、非常によくできているみたいに思いますけれども、考えてみるとこういう問題があるということを私は指摘したいと思うわけです。  今この関連で幾つか申し上げましたが、そうではないのだ、こういうふうにきちんとやれるのだというお考えがありましたら聞かせてください。
  65. 赤松良子

    赤松政府委員 いろいろたくさん御質問でございますので、あるいはお答えが落ちたりあるいは順序が逆になったりしてもお許しいただきたいと存じますが、できるだけお尋ねの順序に従ってお答えいたしたいと思います。  まず、自主的解決について書かれているが、自主的な解決というのは労働組合があったりして初めて効果が上がるのではないか、組合のないような場合に個人的な労働者の争いでは自主的にといってもなかなか無理ではないか、このような御指摘だったかと存じますが、そのようなことがあるということは、確かに小さな企業などで組合もなく個人の力で争わなければならないというようなことが起こり得るということは私どもも考えられると存じます。しかし、そのような場合でもまず当事者同士が話し合うということが必要だということはやはりあるのではないかというふうに思いまして、そのような考え方を書いたわけでございまして、この自主的な解決の方法をどのような場合にも全く必要性がないというふうには言えないのではないかというふうに思うわけでございます。また、これ以外に別の方法もあるわけでございまして、これだけが唯一の方法ではございませんから、これが書かれているということは考え方を示しているというふうにお受け取りいただくような場合もあり得るわけで、決してそれだけが唯一のものではないというふうに御理解をいただきとうございます。  それから次の、調停の場合に「必要があると認めるとき」というふうにあるのはどういうふうに読むのかということでございますが、これは婦人少年室長が判断をすることになっておりまして、紛争の性格あるいはいろいろな客観的な条件をよく調査などいたしまして、あるいは聞き取りなどをいたしまして、これが調停になじむ紛争かどうかということを婦人少年室長は考えるべきだというふうに思うわけでございます。そもそも調停に全くなじまないようなものを調停委員会にお願いするということも余り適切でございませんので、そういう判断は婦人少年室長がするということを前提に置いて考えるのが適当ではないかと思うわけでございます。調停の制度というのは、当事者が話し合いをすることによって解決の方法を探り当てるということが基本でございますから、そのようなことがそもそも無理だというような場合には調停にかけても仕方がないのではないか、こういうふうに考えるわけでございます。  これはちなみに、婦人少年問題審議会におきましても、その建議の中で、紛争の処理、苦情の処理の機関が必要というふうに指摘されていることを勘案したものでございます。また、十四条の省令で定めるというふうに何でも省令にゆだねているのはよくないのではないかということでございますが、やはり法律に書ける限界というのはいろいろございまして、手続とかあるいは細かいことを省令にゆだねるということは普通法律のテクニックでは使うわけでございまして、これが必ずしも悪いというふうには私ども考えていないわけでございます。  それから、具体的な範囲をどういうふうにするかということは、先ほど来いろいろ、省令の内容をもっと具体的に言えという御質問に対しまして答弁が抽象的で私も申しわけないと思ってはおりますが、なかなか具体的に申し上げるに至らない状態でございまして、これはいろいろな件を審議会の御意見を聞きながら具体的には決めていくというようなこと、これまでの審議会お話の中でいろいろと出てきているということもございます。またそれは、この審議会が三者構成でできておりますので、労働者側の意見、公益側の意見、使用者側の意見、これが審議会の中へよく反映し得るシステムだというふうに考えておりますので、審議会の御意見を伺いながらいろいろ省令などを決めていくという考え方は、必ずしも不適当ということにはならないのではないかというふうに思っているわけでございます。  それから、調停は両方の当事者が同意して行うというのが前提でございますので、片一方の当事者が全くその調停を受ける意思がないというような場合には、そもそも調停が成り立たないわけでございます。したがいまして、このようなことを条文に明らかにしたにすぎないわけでございます。  それから、受諾勧告についてその是正の期限を決めるべきではないか、あるいはこれに従わなかった場合の制裁を設けるべきではないかという御趣旨でございますが、受諾勧告は当事者の調停案の内容によってはそのような期限を定めて勧告をつくるというようなことはあり得ることだというふうに考えますが、常にそのような期限をつけることが適当かどうかということは、必ずしもそうでない場合もあるかと存じますので、できるだけ早期に解決することが望ましいというような形のものもあり得るというふうに考えるわけでございます。具体的な手続は、また省令で恐縮でございますが、省令で定めたいというふうに思うわけでございます。  まだあったかと存じますが、もし答弁漏れがございましたらまた後ほど補足させていただきます。
  66. 金子みつ

    金子(み)委員 困りました。一生懸命御答弁いただきましたけれども、よくわからないのです。それで、これは大変重大な問題ですから、これを取り上げて、これだけででもまだまだ時間がかかると思いますので、局長は非常に一生懸命御答弁をいただいたんですけれども、「必要があると認めるとき」というのは、婦人少年室長が、この問題はなじむかなじまないかということを判断してという、判断基準はそこにあるみたいにおっしゃったんですけれども、これは問題だと思いますし、そしてせっかくこれは難しいですね、禅問答しているみたいで。今度は、勧告してもこれを断ったりあるいは聞かなかった場合どうするかというのは何もないですね。今お答えいただいたのにも入っていません。期限はつける必要がないんじゃないかというようなことをおっしゃいましたが、これもそんなことはないと思う。一つ一つ問題があって、私はここで今この問題をやっても切りがないので、私の意見は申し上げたわけですから、それに対する御答弁についてはとても納得できない。ですから、今は納得できないということをわかっていただきたい。それで、この問題は私は保留にします。今これを議論できません。  そこで、時間も大変に詰まってまいりましたから、残った時間で、私は労働基準法の問題の中のポイントだけを質問したいと思うのです。  きょうは、今まで雇用平等法にかかわる課題をずっとやってまいりましたが、満足すべき答弁をいただけたものは数えるほどしかありませんでした。大変残念です。それで、そのことにつきましては、きょうは解決したことになりませんからこの問題は保留にいたしまして、別の同僚の質問者も立つことでございますし、機会があれば私も時間をもらってさらに詰めていきたいと思いますが、きょうのところは第一段階としてこれくらいにおさめておきます。  そこで、労働基準法の問題に入りますが、最初に申し上げましたように、今度の法案が、勤労婦人福祉法と労働基準法を一本にまとめ上げて、無理してくっつけて法案にしているという実態は大変問題であるわけであります。婦人雇用における男女平等の確立のために法律はつくられるべきであったのに、そうじゃないということは大変に問題なんですけれども、雇用問題としての労働基準法の関係も出てくるわけです。今度提案されてまいりましたこの法案の中の労働基準法に関連する部分を読んでみましても、この改正部分は大変に問題があり過ぎて、労働基準法の精神を大きく逸脱している。具体的に申し上げれば、基準法が定めた最低基準をさらに下回る、低下する、結果的には条件が悪くなる、こういうことが決められようとしているわけでありますから、私は絶対反対。ですから、労働基準法はここでいじらないで、むしろ現状維持をとるべきではないかということを最初に申し上げておきたいと思います。保護と平等というこの古い考え方、けさほども申し上げましたけれども、保護を排除しなければ平等にならないというような視点は大変に間違っていると思います。そういう観点で今度ここに基準法をはめ込まれたんだとすれば、根本的に考え方が間違っていると申し上げなければならないと思います。その辺をしっかとわきまえていただきたい、私はそのことをまず申し上げて、この改悪された基準法の中身、重要なポイントだけを申し上げたいと思います。まず最初に、労働基準法の一条、「労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない。」、「この法律で定める労働条件の基準は最低のものであるから、労働関係の当事者は、この基準を理由として労働条件を低下させてはならないことはもとより、その向上を図るように努めなければならない。」、こうなっているのです。これよりも下げてはいけない。ところが今度の案は下がっているんです。そこで問題だと私は申し上げているわけであります。  その問題となっている下がっている点を一つ、二つ申し上げます。  その一つは、労働時間の問題です。労働時間、休日・深夜業、関連した一つの課題でありますけれども、ここで申し上げなければならないと思うことがあります。それは労働時間の問題です。時間がありませんからいろいろと詳しく申し上げることは省きますけれども、日本労働基準法が定めている一日八時間、週四十八時間という労働時間の決めは実際には余り守られていない。今国際水準は週四十時間。昨晩のテレビでも言っていましたが、西ドイツで三十五時間を要求して、とうとうそれが三十五時間にはならないで三十八・五時間ということに決まったそうです、そのかわり賃金を上げることにした、こういう報道があったくらいです。およそほど遠いと思いながらそれを聞いていました。そのときにさらに続けて放送されていたのは、日本は年間二千時間にしたいと思っているんだけれどもなかなかそれができない、こういうふうにも報道されておりました。    〔稲垣委員長代理退席、愛知委員長代理着席〕 だから、日本は年間二千時間以上、二千百時間も働いているという数字が労働省の方から報告されております。欧米諸国が千六百—千八百という時間帯であるのに関連しまして、大変に問題だと思います。この問題は低賃金の問題だとか貿易摩擦の問題だとか本会議でも議論になりましたけれども、こういう問題を醸し出していることはとっくに御承知のはずだと思うのでございます。この長い労働時間に、今度は、法律改悪して女性も同じようにできるように改めようというのですから問題だと思うのです。  例えば今度の法律でいきますと、工業的業種の場合だったら一日二時間の現行法の制約は外されます。だから一日十四時間働くことも可能になるのです。大変な問題じゃありませんか。その他の業種についても時間外を四週四十八時間というふうに改められるといいますから、極端なことを言えば一番長い時間は一週間に四十八時間残業ができる、こういうことになるのですよ。すごいじゃないですか。こういうことですと一日八時間、週四十八時間という原則はどこかに吹っ飛んでしまう。何ということを考えておられるのだろう。こんな過酷なことが起こるということをあらかじめ御承知の上でなさったんでしょうね。知らなかったとはおっしゃらないと思うのです。大変な問題ですよ。これに女性をそういうふうにしていこうというわけです。  今度は、休日の場合でも四週に一日しか休めなくなったりする。一週一日の休日はなくなる。しかも三十六条協定が現在青天井です。これは男性だけになっていますが、同じように女性も今度はそれにつけていくわけですから青天井になる、こんなことをしてごらんなさい、私は働き続ける女性家庭仕事が大変困難になると思います。これではできませんね。ことに、残念ながら家庭の責任をほとんど今女性がかぶっています、妻がかぶっています。そういう場合に、その人たちが働き続けるということは、こんな長時間労働をさせられたのでは続けられません。だから退職しなければならなくなったり、パートへ切りかえなければならなくなったりということが起こるというふうにお考えにならないのでしょうか。この点についてまず私はきちっと御答弁いただきたいと思います。
  67. 望月三郎

    ○望月(三)政府委員 労働基準法の女子保護規定につきましては、今度の男女雇用均等ということを契機に、母性保護規定を除きまして、基本的には婦人差別撤廃条約に抵触し、究極的にはこれを改廃することが求められていると解されますので、条約の精神に沿いまして、婦人局長からも何回か答えてきましたように、労働基準法の女子保護規定の一部を改正するということで提案しておるわけでございます。  特に、今先生から御指摘がございました、例えば工業的業種について一日二時間の残業の枠が外れるとして、一日十四時間も働けることになるのは問題ではないか、こういう御指摘があったわけでございますが、工業的業種の事業につきましては、非工業的業種の事業に比べて一般的に労働による身体の負担が重く、作業管理が画一的で、労働時間についても弾力的な取り扱いをすることの必要性が比較的少ないことなどから、婦人少年問題審議会婦人労働部会の公益委員のたたき台におきまして、現行規制を若干緩和して存続するという提案を受けて、一日二時間の規制を廃止するにとどめたということでございまして、(「そんなことは国際的に通用しないよ」と呼ぶ者あり)現在、男子も含めた一日の時間外労働数は三時間までで、男子も含めて約九二%を占めております。女子について一日二時間の規制を廃止しても、直ちに御指摘のような長時間労働に結びつく可能性は少ないと思います。仮に例外的にそのような事態が生じましても、一週六時間の規制がございますので、恒常的な長時間労働はこれを契機にあり得ないというように私どもは考えておるわけでございます。
  68. 金子みつ

    金子(み)委員 今の御答弁でいいんでしょうか。本当に心配ですね。「労働者が人たるに値する生活を営む」ことができるような労働条件を最低として、現在労働基準法はつくってあるんですよ。ところが。今度の改悪によると今申し上げたようなことになる。今の御答弁だと、必ずしもすぐそうなるとは思わないなんて、私はよくそんなことをおっしゃれたと思うのですよ。そういうことになるじゃありませんか。全部がなるとは言いませんよ。だけれども、そういうふうになるんだから、そういうことをするところだってありますよ。これはやってもよろしいということでしはう。これは問題じゃないでしょうか。  先ほど「国際的に云々」というやじが入りましたけれども、この労働時間は確かに、そうでなくても日本は国際的には問題になっているのですよ。御承知でしょう。私なんかよりかよっぽど御承知だと思います。それなのにまたこんなことをして、みっともなくないんでしょうかね。みっともないだけではない。日本労働者の、しかも女性がそうなるんだということになるんですから、黙っていられないわけです。それをしっかり考えてください。今の御答弁、続けていただいても同じだと思いますからやめますけれども、これは承服できません。こんなものを法律にするなどということは私たちは納得できませんし、承知できませんから、そのつもりで私どもは私どもの動きを進めますが、この問題は保留です。とても進められません。  その次、関連です。「深夜業」というのがあります。これまた問題ですね。深夜業というのは女性だけではない、男性にとっても非常に問題の多いところです。日本の深夜業は男の人にとっては青天井ですから、男性の健康状態が非常に痛められているという報告もあるくらいです。この「深夜業」、今度私は問題だと思っているのは、この中に本人の申し出というのがあるのです。これは驚きました。本人が申し出れば深夜業をしてよろしい、解禁いたしますということになるのですよ。これは大変な問題だと思うのです。私はなぜこんなことを法律におつくりになったんだか疑いたいのですが、何が根拠でこの本人というのを、どこの本人労働省として法律をつくろうとお考えになった以上は、何か根拠があるはずですね。何の根拠だということをお尋ねしてみたらば、タクシーの運転手だということを聞きました。女性のタクシーの運転手さんたちの希望があるからということ。たった一つの職種なんですね。私はタクシーの運転手さんの問題はわかります。だから、その人たちが希望するように仕事をしようと思うんだったら、何もこんなところにわざわざたった一つの原因で法文をつくる必要はない。こんなものを一つつくることによってすべての労働者の健康が破壊されていくわけです。この労働基準法というのは、本人がどんなに申し出てもだめなものはだめということを決めているのですよ。それは労働者の健康を、それこそ福祉を守るためです。だから、例えば産後の休暇が六週間労働基準法では決められていますが、五週間まではどんなに本人が申し出ても仕事をさせちゃならぬと書いてありますよ。最低基準です。これは労働者の健康を守るためですよ。それなのに、本人が言ってくれば何でも「はい、よろしい」になるというのはとんでもない問題だと思う。このことを許せばすべての労働者の健康が守られなくなる、そういうおそれがあるからこれは絶対に私は許せないと思うのです。もしタクシーの運転手さんたちがやりたいんだったら八条でいけばいいじゃないですか。八条の四運輸業、この中にタクシーの運転手さんのことを考えたらどうですか。病院の看護婦さんたちも八条の十三です。こういうようにして適用除外例があるわけでしょう。これをお使いになればいいじゃないですか。どうしてこんなものを新しくおつくりになるのですか。その必要性は私にはわかりません。その理由をはっきりと教えてください。
  69. 望月三郎

    ○望月(三)政府委員 御指摘のように、タクシーの運転手で希望する方につきましては深夜業の適用を除外するという案でお願いしているわけでございますが、労働者本人が希望しているのに、あくまでも深夜業に従事することを認めないということはかえって実情に沿わない場合もございますので…(発言する者あり)
  70. 愛知和男

    愛知委員長代理 静粛に願います。
  71. 望月三郎

    ○望月(三)政府委員 これは先生方も御存じだと思いますが、ぜひやらしてくれというタクシー労働者も相当におるわけでございます。(発言する者あり)
  72. 愛知和男

    愛知委員長代理 静粛に願います。
  73. 望月三郎

    ○望月(三)政府委員 そういうことでございますので、それを認めないというのはかえって実情にも沿わない場合もありますので、現にお客の多い深夜時間帯に働くことができることについて強い要望がある、そういうタクシー運転手のような特殊の事情のある者について、行政官庁の承認を条件に、例外的に深夜業に従事することを認めるということで考えたわけでございます。  なお、誤解をしていただいては困るのですが、タクシー事業に従事する女子のすべてについて深夜業の禁止を解除するということは、タクシー事業の労働内容等から見て、全般としては時期尚早であると私どもは考えるものでございます。  労働基準法では、労働条件の最低基準を定めるものでございまして、先生のおっしゃるように、労働者の申し出がある場合でも、この基準以下の労働条件を認めることは原則としては適当ではないというように考えておりますが、例えば現行法でも、産後休業の場合におきます労働者の請求による休業の解除など、労働者の保護上問題がないと考える場合には本人の申し出に基づいて例外的に認めているという規定もあるわけでございまして、基準法の考え方を全く原則的に崩したものとは私どもとしては考えてない。ぜひ働きたいという人にとっては、これは選択の問題でございまして、それを認めてやるということはやはり必要なことではないかというように私どもは考えるわけでございます。
  74. 金子みつ

    金子(み)委員 局長、そういうふうに問題を変えてしまわれちゃ困りますよ。そういうことをしてはいけないです。問題は真っすぐに議論していただきたい。素直に議論してくださいはぐらかしては困ります。  私、お尋ねしますが、今の場合すべての人にするんじゃないとおっしゃった、すべてにするのは時期尚早であるというふうにもおっしゃった。それならごく一部の人でしょう。すべての人についても言っているのは、この八条の「適用事業」の範囲ですよ。適用除外例ですよ。これをどうして使えないのですか。それの答弁をお願いします。ここでやれないのですか。
  75. 望月三郎

    ○望月(三)政府委員 タクシーの運転手について、今度の法律提案を通じましてそういう特に強い希望がございましたので、これは個別のチェックをやりながら行政官庁が承認するという形で処理をするのが、私どもとしては一番ベターであるという判断をしたわけでございます。
  76. 金子みつ

    金子(み)委員 私の質問に答えておりません。私はそんなことを今聞いてないんです。それはさっき聞いたんです。私は今そんなことを聞いてない。私が今質問したのは、八条でどうしてできないかと言ったんです。あなたは労働基準法の専門家でしょう。八条の四、私はそれでできないんですかと質問したのです。
  77. 野崎和昭

    ○野崎説明員 先生の御質問の八条という意味が私、正確には理解できなかったかもしれませんが、労働基準法の八条の意味でございますと、労働基準法の八条に確かに「運送の事業」というのがございます。そして、これを運送の事業全部について深夜業の禁止を適用除外するという御趣旨でございますと、本人が希望している場合、希望していない場合、すべて深夜業の禁止が解除されるわけでございます。これにつきましては、やはり現状ではそこまでいくのは時期尚早であろうということで、しかしながら、先生よく御承知のとおり、タクシーの事業というのは夜になりますとお客が非常にふえるわけでございます。昼間八時間働く、それから夜間も含めて八時間働くということでは収入が非常に違うということで、夜間についても働きたいという強い希望もございます。しかし、それは困るという御意見の労働者の方もいらっしゃいます。そういった実情を勘案いたしまして、ただいま申し上げましたような、本人の申し出に基づきまして行政官庁の方で承認をする、そういう形でそういう強い要望のある方について深夜業を認める、そういう案になっているわけでございます。
  78. 金子みつ

    金子(み)委員 時間がなくなりましたけれども、この八条が使えないという御説明には納得できません。そういうことにはならないのですよ。例えば十三の「病者又は虚弱者の治療、看護」等の看護婦さんの場合を例にとりましても、本人が申し出をして夜勤を免除することができるのです。だから、ここに書いてあるから全部がしなければならないということにはならないのですよ。だから、今のタクシーの問題も、何でタクシーにばかりそんなにこだわられるのかよくわからないのですけれども、そのことだけしかおっしゃらないのですけれども、事実タクシーが言ってきたからだということは労働省の方もおっしゃっていましたから、だったら、たった一つの職種のために法律をつくるのか。法律をつくって悪いとは言いませんけれども、筋が違ってつくられていくじゃないかということは非常に問題だと思うのです。だから、八条の四を適用できないことはないじゃないかということを申し上げたので、それに対する御答弁としては大変に不満足です。そうじゃない。答弁になっていない、これはもう一度御答弁ください。それで私、やめますから。基準局長、いらっしゃるでしょう。
  79. 望月三郎

    ○望月(三)政府委員 今監督課長が答えましたように、運輸業全体についてそういうことを認めるということになりますと、これは単にタクシーがけでなくて、いろいろなほかの運輸機関すべてに該当しますので、問題を非常に大きくするわけでございまして、その点についてはちょっと私どもとしてはそこまでは踏み切れないということでございます。
  80. 金子みつ

    金子(み)委員 やりとりをお聞きくだすっていると思いますが、大臣、どのようにお考えになりますか。
  81. 坂本三十次

    坂本国務大臣 原則はかりでいかぬこともありまして、例外も多少はあるわけでありまして、これもタクシーの女性運転手さんが大変御熱心に陳情に来られたもので、労働省はやはりその情けにほだされた点もあるかもしれませんけれども、まあこれも一つのケース・バイ・ケースだということで、悪意はない、こういうつもりで御了解を願いたいと思います。(発言する者あり)
  82. 愛知和男

    愛知委員長代理 静粛に願います。
  83. 金子みつ

    金子(み)委員 問題があります。私は、今の大臣の御答弁は大変に不満です。大変にふまじめな御答弁でした。もっとまじめにこの問題に取り組んでください。大勢の傍聴者の方たちが我慢できなくて発言なさるのだろうと私は思うのですけれども、そのことが問題になっているのだったら大変な問題だと思います。大臣はこの法案を通したいと考えていらっしゃるのでしょうから、そうだったらそのようにきちっと御答弁いただきたいのです。非常にまじめでないニュアンスの答弁を今なさいましたので、大変に残念でございます。  あと五分しかないというメモが回ってまいりました。あと五分ではこの法案の問題はとても審議し切れません。大変に残念ですが、たくさんの問題を保留に残してしまいました。労働基準法の問題でもまだどうしても申し上げなければならない問題がありますので、一つだけ申し上げて最後にしたいと思います。  それは産前の休暇、産後は今度八週間にした、これは私は結構だと思います。子宮の回復がもとへ戻るまでの期間というのを見ていらっしゃるのだといいと思いますが、産前の方は問題です。産前六週間になっていますが、これは私は産前八週間ということを前々から主張してきています。なぜかと言えば、日本の周産期死亡率の高いこと、そして妊産婦死亡率の高いこと、これを私は何としてでも防がなければならないと思っているわけでして、特に周産期死亡率は妊娠八カ月以降の死産です。生後一週間以内の新生児死亡とあわせて言いますけれども、これはどこに原因があるかといったら、原因は妊娠時代の問題なんです。子供の原因もあります。しかし大きいのは妊娠時代の問題。妊娠八カ月以降というのはちょうど産前八週間です。だから、産前八週間休暇をとるということが実現できれば、この指数は大分下がるだろうと思います。今時間がありませんから、こういう状態になっていますということを一々数字で申し上げることができませんけれども、お調べください。大変な問題なんです。だからこれはぜひ八週間にするということを私は強く要望しておきます。当然のことだと思いますので、御答弁は要りません。  そこで、もうおしまいになりますので、最後に、外務省とそれから労働大臣にお尋ねしたいことがあります。  まず、先に外務省に聞きましょう。締めくくる問題として取り上げてみたいと思ったわけでありますけれども、今までの話し合いを聞いていてくだすって、このような雇用に関する法律が仮にできたとして、そのほかいろいろな部分があります。例えば教育の問題とかあるいは国籍法の問題とか、いろいろ手直しをしている法律があることは承知いたしておりますが、きょうのこの雇用における問題が中心課題ですから、この法案が仮に成立したといたしまして、果たして差別撤廃条約批准できるでしょうか。私がきょう質問いたしました中で十項目以上撤廃条約に違反しているのです。この法案の中身がそぐわないのです。それでも無条件でこれは批准できるでしょうか。条件づき批准なんということになるおそれはないでしょうか。専門に聞かせてください。  なぜそんなことを言うかと申しますと、昭和五十一年に批准されたILOの百二号条約社会保障の最低基準を決めた条約でした。これは日本は二十三年間も批准ができなかった。経済大国日本がこんなことぐらいできないのかと言って、後ろ指を指されてきたわけです。それがやっと五十一年にできた。ところが完全批准してない、部分批准です。未批准の部分が四部門もあります。批准しなければならない部門は九つあったが、そのうち四つ残っています。しかもその四つの中身は、何と家族給付、母性給付、遺族給付、そして医療給付、この四つが未批准です。こういう格好になるおそれがありはしないかということを私は心配しているのです。だから、この条約がこんなことにならないで完全批准できるかどうか、外務省の御答弁をまずいただきたい。
  84. 遠藤哲也

    遠藤説明員 お答え申し上げます。きょう御審議いただいております雇用関係法案のうち、まず均等法案につきましては、確かに募集、採用、配置、昇進について努力義務規定にはっておりますが、同時に、労働省の方からの御答弁のように、労働大臣による指針の策定、労働大臣または都道府県婦人少年室長の助言、指導、勧告、調停委員会の調停等が規定されておりまして、我が国の国情を勘案しますれば、全体として、本条約内容を相当程度の実効性をもって実現し得る仕組みが図られていると考えております。したがいまして、条約の要請を充足するものと判断しております。次に、第二番に女子保護規定の点でございますけれども、女子保護規定が一部残置されていることはそのとおりでございますが、これらにつきましても、けさの労働省からの答弁のように、漸進的に撤廃されていくものと承知しておりまして、これもまた条約上許容されると考えております。したがいまして、本均等法案制定されますれは、雇用部分につきましては本条約の要請を充足するものと考えております。
  85. 金子みつ

    金子(み)委員 私は、きょう朝からずっと質問させていただきましたけれども、大変に問題だと今しみじみ思っております。この法案をどんな形で整え、直しても来年の批准に持ち込めるのかどうか、大変に疑問が残りました。条約批准を最大目的として、そのためにとにかく急いで、婦人の十年の期間中に法律を不十分ながらつくってしまって批准にこぎつけておかないと顔が立たない、そんなふうな姿勢が見えるのです。不十分で平等の目的を達し得ない法律なら今急いでやる必要はない、そのために批准は多少おくれてもやむを得ない、そういう声すらございます。どういうふうにお聞きになるでしょう。私は、そういうようなことにならないためにも、完全批准できるような女子雇用における平等の権利の確立、そしてその実現のための救済、そういうものをきちっとうたい込んだ法律に改める必要があると思います。そのためには今の法案撤回してつくり直しをして出していただかなければならぬ、こういうふうに考えますが、大臣いかがですか。
  86. 坂本三十次

    坂本国務大臣 ただいまも外務省から答弁がありましたように、私どもがただいま提案しておりまするこの法律案が成立をいたしますれば、差別撤廃条約批准には差し支えはない、こう思って提案をしたわけであります。  それで、もっと完全な法案をつくれという御意見でありまするが、午前中も申しましたように、その人その人の立場におきまして、女性の側でもいろいろ論がありますし、男性側でも論が分かれておりますし、労使でも分かれております。この九年間のいろいろな皆さんの御苦労審議会で集約して、最終的にとにかくここは、批准のために批准にたえ得るような法律案をつくれ、これはもういろいろな立場が各論にありましても、総論としては審議会でも皆さん納得をされた点でございます。そういうようなところから判断をいたしまして、やはり来年批准をするということを一つのタイムリミットにいたした方がいいのではないか。それは各人の見方によりまして、こちらから見たりあちらから見たり、みんな理想の案をお持ちでありまするからなかなかまとまりません。しかし大方の見通すところ、最大公約数は大体この辺であろうということでこの法案をつくったわけでございます。私は批准年を来年にするということをタイムリミットにしてこの法案をつくった方が、長年の男女均等平等法に対する期待にこたえられるし、また日本も一歩前進ができるもの、そう思っております。  それは一つの外圧ではないかという御意見もあります。しかし、そういう国際的な条約批准するというのは国際国家日本の責任でもありますし、またいいことがあったら、外圧を利用したっていいと私は思っております。  ついこの間であります、民主主義とか自由主義とか人権とかいうものが戦後初めて日本に入ってきたわけです。日本人はそれを相当こなして今までやってきて、ここまで日本の発展があったわけでありまして、差別撤廃条約、これくらいのことならば今後努力によって私どもはクリアしていける、それだけの能力は日本人にある、そう思ったから今度やった方がいいと思っておるわけでございます。  どうも社会というものは生き物でございまして、やはり潮の満ちてきたときに船を出さぬとなかなかうまくいかない、一つの潮どきだ、私はそう思って今度提案をしたわけであります。
  87. 金子みつ

    金子(み)委員 私は、幾つかの問題を保留にしたまま、きょうの質問はこれで終わります。  ありがとうございました。(拍手)
  88. 愛知和男

    愛知委員長代理 沼川洋一君。
  89. 沼川洋一

    ○沼川委員 約六年にわたるいろいろな審議会審議を経て、やっと男女雇用均等法案国会に上程されてきたわけでございますけれども、大臣もお耳に入っておると思いますが、結論から申し上げますと、極めて評判が悪い、そういう声が恐らく届いているのじゃないかと思います。こういう法案ではとてもじゃないけれども婦人差別撤廃条約批准できるようなものではないとか、あるいはこういう内容ではこれは均等法ではなくて平等を禁ずる法案、禁等法だ、こういう声も聞いておりますし、ある御婦人の方からはこれでは差別促進の法案だ、こういうお話も聞きました。実は、きのう、きょうにわたって随分各方面の女性の団体の方から私自身陳情を受けまして、るるお話をお聞きしながら、確かにそういうふうに言えるのじゃなかろうかと実は私自身思っておるわけでございますが、おつくりになった労働省として、大臣の所感をまずお聞かせいただきたいと思います。
  90. 坂本三十次

    坂本国務大臣 先ほどからも申し上げておりますとおり、審議会のあれだけのメンバーの御努力にもかかわらず、なかなか一本化した答申というものは得られなかったというのが実情であります。しかし、そうかといって、それでは答申が一本になるのを待つとかまた世論が一本化するのを待つとか、それをずっと待ってもいいのかというと、私は待っていたって決して今よりははるかにすぐれた案で一本化するというようなこともちょっと考えられません。  評判が悪いということは、なるほどこっちの人に評判が悪いのはあっちの人に評判がいいこともあります、いろいろあるわけでありまして、それほど論が分かれておるということは、これは長い間の日本の歴史的伝統をここで大きくギアをチェンジしようというのですから、それくらいの反発は来ると覚悟しておりますが、あるべき姿に向かって動き出すということについては私は自信を持ってスタートした方がいい、そして一生懸命ここで機会を同じく与えることにより、また意識と自覚が成長することにより、必ず将来はこの待遇の平等というところに向かって成果を上げていくもの、こう判断をいたしましたので私も決断をしたわけでございます。一概に評判が悪いだけではございません。賛否両論というところがいいところだと思います。
  91. 沼川洋一

    ○沼川委員 私は客観的に見て、率直な意見を申し上げたつもりでございますけれども。  そこでまず、今回のこの法案の名前ですが、雇用分野における男女の均等な機会及び待遇確保を促進するための労働省関係法律整備等に関する法律案、恐らく今国会に上がっている法案の中で一番長たらしい、またよくわからぬ題名じゃないかと実は思っております。この随分長たらしい名前の法案ですけれども、タイトルは「雇用」、このようになっておりますけれども、中身を見ますとこれははっきり言って福祉法ですね。福祉法を改正した形で、法案趣旨をいろいろとうたっていらっしゃいます。法案趣旨内容に非常にギャップがございまして、何か無理にこじつけた、そういう感じを実は受けるわけでございます。  最初労働省婦人少年局では、独立立法でいわば雇用平等法案、そういうものをつくろうということでたしかいかれておったはずだと記憶しております。たしか公益委員の試案が出るあの時点ぐらいまではそういうお考えではなかったか、このように実は記憶しておりますが、それがいつの間にか最終案ではこういう非常に長い名前の法案になってしまいまして、この法案の中に「平等」という言葉が消えてしまいました。このいきさつについて、どうして「平等」という言葉が消えてしまって「均等」という言葉になってきたのか、その辺の経過といいますかいきさつといいますか、ぜひお聞かせいただきたいと思います。
  92. 赤松良子

    赤松政府委員 法律が、途中まで雇用平等法だったはずではなかったかという第一点の御指摘でございますが、確かに新聞などで雇用平等法、雇用平等法という言葉が使われておりましたことはよく存じております。しかし、私ども、そのような言葉を正式に使ったことは全く一度もございませんでした。(「中曽根さんが使ったでしょう。都合の悪いことは忘れないでください」と呼ぶ者あり)  それから、審議会の中でも、もともと勤労婦人福祉法の中に規定されておりましたような育児休業、それからまた、新たな規定ではございますが、再就職の援助というような、もともと福祉法になじむような内容のことにつきましても審議されたのは御存じのとおりと存じます。したがいまして、そのような福祉に関連する部分が、全く関係のないことであったということではございませんで、そのようなことが同時に同じ審議会審議されていたということを御承知願いたいと思うわけでございます。  それから、この二つをくっつけたということでございますが、先ほどからるる申し上げましたが、この日本の現状におきましては、機会の均等、待遇の平等を促進するということは、家庭生活と職業生活との調和を図る具体的な措置と相まってうまくいく、先ほどは車の両輪というような例えで申し上げましたが、この二つは決して無関係なものではなくて、両方が合ってその方がうまくいくのではないかと考えるわけでございます。審議会でもそのような考えは受け入れられていたものと存ずるわけでございまして、そのために、育児休業あるいは再雇用制度あるいはもっと別の環境の整備というような言葉が使われたこともございますが、そのようなことが審議の中で触れられているわけでございます。この二つが全く関係のないものだというふうには私どもには思えないわけ、でございます。  それから、均等と平等という言葉の問題でございますが、先ほど来私も何度か、機会の均等と待遇の平等というような言葉を使っていたのを思い出していただけるかもしれませんが、私ども、ずっとそういうふうに機会の均等、待遇の平等というような言葉で言いあらわしてきております。雇用平等法という言葉は使いませんで、機会の均等と待遇の平等を確保するというような言葉で言っていたことがしばしばございますが、機会の均等と待遇の平等という言葉は、平等あるいは均等という同じ内容のことを二つの違った言葉で言っているということが指摘されるわけでございます。この二つの言葉は同じなのか違う言葉なのか、違う意味なのかということになれば、これは同じ意味を持った言葉だというふうに思えるわけで、いろいろな辞書なども研究いたしましたが、均等と平等とは別の意味ではなくて、同じ意味だと思います。  そこで、均等な機会あるいは待遇の平等というふうに言わないで、同じ意味ならば、一つ法律の中では同じ一つの言葉を使うというのが普通ならわしたというふうに思います。そういたしますと、均等と平等であれば、平等の方を使ってもいいわけでございます。今までの話からいいますと平等でもいいわけでございます。それを均等としたのはなぜかということになりますと、この言葉、法律上のいろいろな使われ方をしております。憲法では「平等」という言葉が使われております。ところが、労働関係法律では「均等」という言葉が多く使われているわけでございます。労働基準法の三条は「均等待遇」でございます。そのほか、法律の一々を挙げるのは煩雑でございますから申し上げませんが、労働関係法律では「平等」という言葉よりもむしろ「均等」という言葉が使われて、「均等待遇」という言葉はちっとも悪い言葉ではないと思うわけでございます。「待遇の平等」という方が「均等待遇」というよりもいいということには必ずしもならない。これまでの、労働法の関係法律でございますから、労働法の用例に従って「均等」という言葉を使ったわけでございます。
  93. 沼川洋一

    ○沼川委員 非常にわかりにくい説明、長々お聞きしたわけですが、何も「均等」という言葉が悪い言葉とは私は思っておりません。ただいまの御説明で、これは労働関係の言葉だ、平等は憲法にもあるけれどもと。法案労働省関係法案だから「均等」を使ったというような御発言でございましたけれども、わかりにくいわけですね、この「均等」という言葉は。今までだれしもが男女雇用平等法案、こんな一般に大衆にわかりやすい言葉はありませんよ、平等というのは。すべての国民が使っておる最も平易な、最もわかりやすい言葉です。「均等」と言われると、今言葉の意味は同じだとおっしゃいましたけれども、極めてわかりにくい、これは法律用語です。しかも日本で新しい画期的な法律をつくろうというのですから、もっと一般にわかるような、だれでもすっと入っていけるようなそういうタイトルにしたらいかがでしょうか、このように思うわけですが、タイトルは「男女雇用平籍法案」、こういう法案ではいけませんか。
  94. 坂本三十次

    坂本国務大臣 せっかく局長が一生懸命になって「均等」も「平等」も一緒だと言っておるのでありまするが、均等法案としてスタートさせたわけでございますので、お認めいただければ結構かと思っております。  ただ、私の考えの中には、男女平等の待遇を実現をするという目標のためには、やはり男女に非常に厳しい実社会雇用社会において、まず機会の均等を与える、これは民主主義の原点ですから、その均等な機会の上に立って能力と実績を上げる、そうすれば待遇の平等にもちろんならざるを得ない、しなければならぬ。そう考えれば、機会均等という名前を先に出してもまんざらおかしいことはなかろう。せっかくこういう名にしたのですから、どうぞよろしくお願いします。
  95. 沼川洋一

    ○沼川委員 これ以上この論争をやっておったってしようがありませんが、大臣、やはり名は体をあらわすとよく言われますね。中身が余りお粗末で、幾ら何でもおこがましく「平等」とうたえたかったというのがどうも本音のような気がしますけれども、もうこの論争はこれ以上いたしません。ただ、こういうタイトルではちょっとどうかと一番これが気にかかっておったものですから、あえて御質問したわけです。  次に、これもちょっと大臣にお尋ねしたいと思いますが、本会議の御答弁の中で、大臣がこの法案について、「まず山に登ることが大事だ、一緒に登りましょう、それにはまずスタートだ、そして後はスロー・バット・ステディー」、こういろ御説明をされました。これは大臣、私もこのお考えにちょっと異論を挟むわけでございますけれども、今登ろうとする山は、そこらここらにあるような平凡な山じゃないわけです。かつて日本が経験したことのないそういう険しい山に今から登るわけですから、スタートして歩きながら考えるというようなそういういいかげんなスタートをすると、これは遭難するんじゃないですか。やはりスタートの仕方が問題だと思います。ですから、大臣の御発言のなかには、何でもいいから法案をつくればいいというような、どうもそういう考え方がこの言葉の中にあるように思えてなりませんけれども、やはりスタートするに当たっては、男と女というのはもともと特質が異なるわけでございますから、特に産む性を持った女性と持たない男性とでは生き方や体力も異なるわけでございますし、したがって、労働の場の平等もこの点を無視しての平等はあり得ないと思うわけでございます。母性保護はこれは当然のこととして、まだまだ家庭責任が大きく女に負わされている日本社会では、やはりこの平等ということを考える場合は、スタートラインは女性に手厚く底上げしておかなければならぬ、そういった考え方に立って慎重なスタートをすべきだと思いますし、また、先ほどからもいろいろと問題が指摘されておりますように、やはり日本が先進国の一員としてこの男女差別撤廃条約批准するに当たって、それにふさわしいそういう国内法のスタートをやらなければならぬと思うわけです。  そういう点で、どうもちょっと、大臣のせっかくスリーSでいく、こういう御発言でございますけれども、その点いかがでございましょうか。
  96. 坂本三十次

    坂本国務大臣 私は、この山が高いことも知っております。だけれども、その高い山が見えるわけなんです。見えれば、そこへひとつ前進をして登りたい。これはいろいろ人にもよります。足元の道を探してから山へ登るという人もありましょうし、そこに山があるから、よし道を探そうという人もあるでありましょうし、これはまあいろいろやり方がございましょうけれども、とにかく六年もやったけれども、なかなかあれだけの知能を絞っても審議会では一本化しない、道は一本だというわけにはいかないのです。そこで、そうかといってここでじっと立ちどまって、山ははっきり見えるのに歩かないというよりも、来年は批准年でもございますし、やはりこのタイミングをつかまえた方がいい。  だから、あなたのおっしゃるように山が高いのですから、今まで歩いたことのない山なんですから、これはひとつ、その山が見えるのですから、歩きながら考え、考えながら歩く。それは、考えてからぱっと歩くという人もあるかもしれませんけれども、歩きながら考える、考えながら歩くということもこれはあっていいんじゃないかな、私はそう思います。(「山は見えているけれども、植村さんは遭難したじゃないか」と呼ぶ者あり)まあそれほどのベテランでも遭難されることもあるのですから、だからなおさらスロー・バット・ステディーでいきましょう、こういうことでございます。
  97. 沼川洋一

    ○沼川委員 こういう論争ばかりしておってもしょうがないわけでございますが、しかし、私が言わんとする意味はおわかりいただけると思います。大臣は登山の経験は恐らくおありにならない、山登りの経験のない方だと私はお見受けいたします。やはりどんなに山が見えていても、険しい山に挑戦するときは、行く前の装備とかいろいろな準備が大変なんですよ。それを怠って、入って入って、とことこ歩いていく登山家がおりますか。そういう意味で私は申し上げたわけです。だから、本当にいろいろな角度から検討して、いわば国内法として恥ずかしくない完璧な、一〇〇%完璧とは私は言いませんが、やはりきちっとした要点は踏まえてそこからスタートするというそういう姿勢が大事ではなかったか、そういう意味で申し上げたわけでございます。  いつまでもこの論争をするつもりはございませんので、次にまいりたいと思います。  今回出されました法案は、十三の関係法律の改正と整備に及んでおりますけれども、中心になるのは、これは勤労婦人福祉法の改正及び労働基準法の一部改正の二つとなっております。  大体政府は、本来男女差別は基本的人権を侵すものとして禁止する、先ほどから申し上げております男女雇用平等法を単独で制定して、真に有効な措置をとるべきであったわけでございますけれども、それをこの法案は、勤労婦人福祉法の改正という形でいわば雇用分野における男女の均等な機会及び待遇確保の推進を図る、このように題名だけを変えておりまして、法律の目的とかあるいは理念も、勤労婦人福祉法の精神といいますか、全くこの法律を継承している格好になっております。したがいまして、女性労働権が基本的人権であるということがこの法案の中に明確にうたわれていないわけでございますが、この点はどのようにお考えになっていらっしゃいますか。
  98. 赤松良子

    赤松政府委員 お答えいたします。  勤労婦人福祉法の目的や理念をそのまま受け継いでいて名前だけを変えたという御指摘は、やや私どもの認識と違っておりまして、名前を変えただけではなくて、第二章といたしまして、機会の均等、待遇の平等を促進するための具体的な施策の中身を織り込んだわけでございますし、また目的も、勤労婦人福祉法の「目的」をよく読みますと、多少時代錯誤的なものもあり、また今度の法律にはふさわしくない表現もございます。「基本理念」も同じようなことが言えるかと存じます。そこで、「目的」も今度の新しい法律ともいえる改正法の中身にふさわしいものに書きかえ、また「基本理念」もそのように変えたわけでございまして、名称のみを変えたということではございません。  また、機会の均等、待遇の平等ということにつきましては、それが福祉の増進と地位向上という中に吸収をされるような内容のものであると考えますので、その点も格段不都合はないのではないかというふうに考えております。
  99. 沼川洋一

    ○沼川委員 どうもちょっと私の考えと違うようでございますが、さらにお尋ねしたいと思います。  本会議における中曽根総理の答弁の中で、「均等の機会待遇確保女子労働者の福祉と理解している、勤労婦人福祉法の抜本的な大改正で対応したのは適切である。」、こういう答弁をなされましたけれども、これは労働省としても同じお考えですか。
  100. 赤松良子

    赤松政府委員 ただいま申し上げたような趣旨でございますので、総理の御説明と何ら違いはないと思います。
  101. 沼川洋一

    ○沼川委員 女子労働者の福祉という理解の仕方ですけれども、もとより社会福祉を受ける権利というのも、憲法第二十五条第一項及び第二項が保障するところの基本的人権であることは間違いないと思います。しかし、むしろ性格的には、この二十五条というのは、身体的、精神的ないし社会的な事由によりみずから健康で文化的な生活を維持することが困難である者が、国や地方公共団体等から必要な援助を受ける権利です。これに対して憲法第二十七条が保障する労働権というのは、同二十二条、これは職業選択の自由がうたってあるわけでございますが、並びに同二十五条と密接な関係を有しますけれども、第一義的には、労働の意思と能力を持つ者が労働機会の提供を要求する権利である。すなわち、福祉を受ける権利と労働権はもともと生存的基本権であるけれども、その性格を異にして、保障の方法にも大きな違いがあるわけでございます。したがって、労働権の保障を福祉法によって行うこと自体にこれはもともと本来的にどうも無理があるように思えてなりませんけれども、いかがでしょうか。
  102. 赤松良子

    赤松政府委員 いろいろ憲法の論争になりますと私も若干よくわからない点がございますが、この法律で使われております「福祉」の概念というのは非常に広い中身で使っておりまして、福祉という言葉をもっと狭い意味で使われることもたびたびあるということは存じておりますが、そういうふうに限定して使わなければならないということもないわけでございます。用例等も見ましても、広い意味で使っていることもあるわけでございます。この法律の「目的」が「福祉の増進」と婦人の「地位向上」というふうに、わざわざ婦人の「地位向上」というのも並べているわけでございまして、不適当ということはないのではないかと思います。
  103. 沼川洋一

    ○沼川委員 どうもちょっとその辺がよく理解できません。そんなに遠回しな難しい説明をするよりか、明らかに雇用の場ですから、労働権の中における基本的人権をもっと明確に法案にすぱっとうたったらいいのですよ。そんな回りくどい説明は必要ありません。すぱっとうたってあればだれでも納得いくでしょうし、その辺があいまいであるところにこの法案の目的自体が非常にはっきりしていない。また「基本理念」にしても、一つ一つ見ていきますとこれは非常に不明確です。そういう点で私も非常に納得ができません。しかも、この法律制定理由とされていますところの婦人差別撤廃条約は、男女の平等を基礎として、第十一条一項には、「すべての人間の奪い得ない権利としての労働の権利」を確保するため、「雇用分野における婦人に対する差別撤廃するためのすべての適当な措置をとる」ことをいわば締約国に義務づけているわけでございます。すなわち、この条約が求めておるものは何かといいますと、福祉におけるそういった基本的人権じゃなく、女性労働権を基本的人権として確保すること、これを締約国に求めておるわけでございますから、この辺ちょっとおかしいのじゃないでしょうか。     〔愛知委員長代理退席、委員長着席〕
  104. 遠藤哲也

    遠藤説明員 お答え申し上げます。  先生今御指摘の第十一条は、「雇用分野における婦人に対する差別撤廃するためのすべての適当な措置をとる。」、こういうふうになっておりますが、ただいま御審議いただいております法案は、私の判断では、この「適当な措置」に当たる、こういうふうに思っております。
  105. 沼川洋一

    ○沼川委員 ちょっと余り簡単過ぎてよくわからなかったのですが、結論を聞いておるわけじゃないのです。締約国に求めておる内容に合致しているかどうか、最低のものをつくれ、そういう意味で、これだけのものをつくれば合うとか合わぬとか、そういう問題を聞いたつもりじゃないわけです。  さらにちょっとお尋ねしてみたいと思いますが、本会議の安倍外務大臣の御答弁でも、「法案条約の要請に合致したものだ」、こういう御答弁があっておりますが、この点いかがでしょうか。
  106. 遠藤哲也

    遠藤説明員 まず均等法案でございますけれども、募集、採用、配置や昇進について努力義務となっておりますが、同時に、労働大臣によります指針の策定、労働大臣または都道府県婦人少年室長の助言、指導、勧告、それから調停委員会の調整等を規定しておりまして、我が国の国情を勘案いたしました場合には、全体として条約内容を相当程度の実効性を持って実現し得る仕組みができておる、こういうふうに判断しております。したがいまして、条約の要請を充足する、こういうふうに考えております。  それからまた、女子保護規定の点でございますけれども、これは確かに一部残されておるわけでございます。これらにつきましても漸進的に撤廃されていくというふうに承知しておりますので、これも条約上許されるということで、全体といたしまして、安倍大臣が本会議答弁をいたしましたように、この法案でもって婦人差別撤廃条約批准の条件を十分満たしておる、こういうふうに考えております。
  107. 沼川洋一

    ○沼川委員 十分と言われると随分抵抗があるわけですが、本当を言いますと、外務省は、この国内法についてはもっと中身の濃いものを最初は期待していらっしゃったというように伺っておりました。十分と言われるとまたいろいろ言いたくなるわけですけれども、実際は出てきたのは、外務省としても恐らく非常に期待外れのものだったというのが本当の本音ではないかと思っております。しかしこれ以上聞きません。時間がありませんので次へ進めたいと思います。  きょうは、実は私の前に二時間半、またさらに午前中四十分、三時間にわたっていろいろ質疑があっておりますので、問題点がダブるかもしれませんけれども、これは極めて重要な箇所でございますので、あえて質問をさせていただきたいと思います。今回の政府案を見ますと、特に雇用管理の入り口となる募集、それから採用、これについては努力義務、また採用後の配置、昇進についても努力義務、このようになっております。これは、特に配置、昇進については禁止規定を主張していた公益委員の試案よりか後退しておりますね。特にこの男女雇用平等法というのは、募集、採用の段階からいわば退職、解雇に至る全ステージにわたってあらゆる差別を禁止する法律でなければならぬ、このように私は思っておりますし、公明党の対案の中にもこのことは明確にうたっております。特に、平等を確保するための最も基本的な事項がすべて努力義務という規定になっていることは条約の精神からしたってはるかに逸脱したもの、このように考えざるを得ないわけでございます。募集、採用の段階における男女差別は、個人の尊重をうたっております憲法第十三条、第十四条の法のもとの平等、こういった趣旨に反するばかりでなくて、第二十二条の職業選択の自由、さらに第二十七条の労働権の保障、これらにも反するいわば人権侵害であることはもう疑いのないところではないかと思うのです。ですから、これは国際的に見ましても、ILOの第百十一号条約あるいは国際人権規約並びに婦人差別撤廃条約にも、このような男女差別女子に対する人権侵害としているばかりでなくて、アメリカ、イギリス、フランスなど諸外国の立法においてもいわば運法として禁止しておるわけでございますが、こういう点についてはどのようにお考えになりますか。
  108. 赤松良子

    赤松政府委員 公明党が男女雇用平等法について今国会に御提案になっている内容につきましては、よく勉強をさせていただいているわけでございます。先ほど先生がおっしゃいましたような点について、非常にすっきりした法案をおつくりになっておられるということについては、十分敬意を持って眺めているわけでございます。  確かに、私どもの今提案させていただいております法案が、公明党の法案と比べましてすっきりしていないという点は、御指摘の点が当たる点があろうかと存じますが、これは、この法案が、いわば機会均等及び待遇確保と並んで、このような格差是正のための就業の援助等の措置を同時にこの法律の中で措置をしようということで、これをいわば車の両輪のようにとしましたが、車の両輪のように両方やっていくことが実効が上がるというふうに、それがふさわしいというふうに考えたために、両方一つの第二章、第三章というような形で含まれることになり、それを含まれる目的として現在のような法案になったわけでございます。  そこで内容でございますが、募集、採用あるいは中へ入ってからの配置、昇進につきまして、御指摘のように罰則つきというような強行規定ではございません。それが条約の要請するところに合致するかどうかは、先ほど外務省の方からの御説明あるいは条約の解釈として申されましたので繰り返しませんが、私どもといたしましては、男女の合理的な理由もなく差別されるということをなくしていきたいというふうに基本的に願っていることには変わりがないわけでございまして、このような差別がいいというふうに決して思っているわけではございません。その差別をなくしていくための方法としては、まず努力義務規定を法律に明らかにし、そして先ほど来申し上げておりますような行政指導、あるいは勧告あるいは調停というようなものを通じて、総合的に現在ある差別をなくしていこうというための有効な措置をとろうとしているわけでございまして、そのような趣旨をお酌み取りいただき思いと思います。
  109. 沼川洋一

    ○沼川委員 随分苦しい御答弁ですが、差別はなくなるわけはないと思います。このことは赤松局長、一番御存じじゃないですか。本当は困ったなという、どうもそういう、御答弁の端々にそれが真意じゃないかということがわかります。  そこでちょっとお尋ねしたいのですが、これは労働大臣の私的諮問機関でございます労働基準法研究会報告の指摘がございます。五十三年の十一月です。この中に「雇用機会男女平等が確保されなければ、労働関係に入る前に女子が排除されるおそれがある。」として、「募集、採用から定年、解雇に至るまで雇用機会待遇の全般にわたって規制しうる」男女平等法の必要性について述べておりますが、考えてみると、この時点から随分後退しておるわけですが、こういう一つの指摘はどう受けとめていらっしゃいますか。
  110. 赤松良子

    赤松政府委員 先生御指摘の労働基準法研究会の中に、そのような表現があるということは承知いたしております。その労働基準法研究会は、その他いろいろな御指摘があるわけでございます。そういう内容をいろいろと勘案し、その後につくられた男女平等問題専門家会議、またそれを受けました婦人少年問題審議会労働部会というふうに順次検討を進めたわけでございまして、その検討の結果、目指すべき方向としては一つのものを目指しながらも、現状から余りにかけ離れたものであっては法律は機能しないであろうということを思い至りまして、現行の法案のような策定をしたわけでございます。
  111. 沼川洋一

    ○沼川委員 御答弁が何か随分苦しい御答弁に思えてならないわけですが、実際赤松局長も、こうでなければならぬというのは本当にわかっていらっしゃると思います。ところが、今のお話しを承ってもわかりますように、結局審議会で、これは非常に労使が対立点となったところの問題点でもございますし、公益委員も交えて答申が二論併記あるいは三論、こうなったいきさつもわかるわけでございますが、本当は全ステージにわたって禁止をしなければこれは意味がないとわかっていらっしゃるのだけれども、結局はコンセンサスを得なければならぬという日本の特殊事情、特に日本社会というのは、男は社会、女は家庭と、そういう分担意識が非常に濃厚でございますし、また日本の経済界は、ほかの面では非常に国際社会の中にいわば斬新的な考え方で進出しておりますが、ところがこの男女平等という問題になると、一番おくれているのはその辺じゃないかと思うわけですが、そういういわば使用者側の委員の意見に押しまくられて、押し切られて、本当はそうじゃなければならぬと思っているのだけれども、その辺が努力義務規定になってしまいました、これが赤松局長の本音じゃございませんか。
  112. 赤松良子

    赤松政府委員 審議会の御審議はずっと終始伺っていたわけでございますが、その審議の中で私の最も印象に残っておりますのは、目指すべき方向は目指しつつも、現状から余りに遊離することがあってはならないであろうというような御見解でございましたので、そういうことを頭に強く刻みつけて、今のような法案を策定したわけでございます。
  113. 沼川洋一

    ○沼川委員 この努力義務がいかに頼りがないかということにつきましては、これはもう局長が一番よく御存じだと思います。例えば、今回も問題になりました育児休業の問題がいい例だと思いますけれども、これは勤労婦人福祉法に規定されておりまして十二年たったわけですが、労働省はこれに奨励金まで出しておるわけです。ところが普及は今もって一割程度、その現実が今回の法案では法制化に時期尚早、見送りの理由にさえされておるわけですが、これなんかは、努力義務規定というのがいかに実行できないものであるかという一番いい例じゃないかと思います。また逆に罰則がついている、こういった労働基準法の例えば第四条に賃金の問題がございます。差別を禁じておるわけでございますけれども、これでさえ現実は平均額で男の半分、いわば男性に対して五二・八というのが女性の賃金の実情でございます。このように罰則規定を設けておってさえも守られない。まして努力義務で果たして差別撤廃ができるだろうか。だれが考えたってこれはもうとてもじゃないけれどもできない、そう思うわけですけれども、まして企業のモラル頼みでそれを期待して、本当に実行を期待する場合に今私が申し上げましたように努力義務では実行は期待できない、ころ思えてなりませんけれども、どうでしょうか。
  114. 赤松良子

    赤松政府委員 ただいま賃金格差の点につきましてお話しくださいましたが、その点につきましては若干私ども認識が違っておりまして、先生御指摘の男性一〇〇に対する女性五十幾つというような数は、いわば総平均の格差でございまして、これは賃金上の差別的な取り扱いが仮に全くなくなったとしても、その格差というものは残るかもしれないような性格のものであろうかと思いますので、その点は若干の違いがあるのではないかというふうに思います。また、基準法四条につきましては罰則が確かにございます。それがあってもというお話してございますが、罰則つきの法律というものには、それはそれなりに非常に限界があることも事実だろうと思います。これは罰則があるために、構成要件の厳格さが非常に要請されます。したがいましてその運用は非常に厳密でなければなりませんので、何でもかんでも取り締まるというわけには決していかないというのは、その事の性質上当然のことであろうかと思います。  一方、努力義務規定というのは大変弱いというような印象をお持ちの方が多いようでございますが、先ほどの罰則つきの強行規定とは全く逆のメリットもあるわけでございまして、努力というものは目指すべき方向でございますから、多少構成要件があいまいであろうと、目指すべき方向を目指してほしいということはだれにでも言えることでございまして、その点は努力義務のいい点というのもあるわけでございます。したがいまして、努力義務だから全く役に立たないというふうには思っておりません。今まであった差別というものがよくないものだということを明らかにするという点では、大きな意味があるのではないかというふうに思います。
  115. 沼川洋一

    ○沼川委員 別に努力義務のいい点、悪い点を聞いておるわけではないのです。言ってみれば努力義務ではこれは実行できない、これはもう明らかです。要するに、強行規定でなくて罰則がないものでは、はっきり言って何も怖いものはないわけです。何を担保したがその実態がないのでは、これは裁判になった場合に裁判も非常に厳しくなると思います。特に、担保の実態がなくて幾ら指導とか勧告を繰り返したって、聞く人は少々いるかもしれません、しかし聞かなかったらそれでおしまいです。  では、行政指導でどうしても改めてくれない場合に、納得できない人は今申し上げました裁判をするしかないわけですが、考えますと、こういう努力義務規定がうたわれできますと裁判は今よりもちょっと難しくなるんじゃないか、こういう懸念があるわけです。現在、日本男女雇用差別を争う場合には民法の第九十条の公序良俗、これで裁判を争うしかなかったことはよく御承知のとおりだと思いますが、今度は、こういった肝心かなめのところが骨抜きの雇用平等法が制定されますと、努力義務の法律ができて、今まで以上にこのために裁判が難しくなるということは考えられませんか、いかがでしょうか。
  116. 赤松良子

    赤松政府委員 もし今度の法律が成立したとして、裁判がしにくくなる、あるいは裁判上不利になるのではないかという見解は私もしばしば耳にいたしましたので、これまでも勉強はしたつもりでございますが、実はどういうわけでそういうふうに言われているのかは余りよくわからないわけでございます。と申しますのは、本法の努力義務規定は、機会の均等、待遇の平等を進めるということを目的としているわけでございます。この法律ができたからといって、公序良俗の一般的な法理を排除するというような趣旨は全くないわけでございます。したがいまして、これまで公序良俗で争えたようなものは、この法律ができたからといって争えないというようなことにはならないだろうというふうに私は考えているわけでございます。仮に、労働者が特定の事案について公序良俗違反がありという裁判を提起いたしましたとすれば、そのことについての裁判の判断というものが行われるわけでございまして、努力義務ができたからといって、公序良俗であったものが公序良俗でなくなるということは私には考えられないわけでございます。
  117. 沼川洋一

    ○沼川委員 こういった努力義務規定がうたわれますと、今度は、先ほど言いました民法九十条の中身の解釈に努力義務の要素が入り込んでくるわけです。この点について、努力義務が公序良俗の中身になる、これはたしか労働省の方がおっしゃったと私は聞いております。こうなると、憲法第十四条の性によって差別されないという原理で解釈をされておりました公序良俗が、いわば努力すればいいという内容で解釈されるおそれがあるのです。法的責任は問われないということになりかねないのじゃないか、このように心配するわけでございます。要するに、我が社は女性を平等に遇するように努力をいたしました、しかし財政的な事情や何かでまだ平等に扱うには至っておりません、このように言うならば、もう公序良俗違反にはならないわけです。  大体、法理論的に見て、ほんのわずかでも努力の証拠を出せば努力を立証できるけれども、これに対して、努力していないと証明するのは極めて難しいのじゃないかと思うのです。司法救済というものもむしろ一層難しくなる。ですから私は、このところはやはり非常に大事なところの大事な問題点ではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  118. 赤松良子

    赤松政府委員 女子労働者が、公序良俗違反に加えて、事業主が努力義務を怠ったかどうかというような立証をする必要はないのではないかと思うわけでございます。努力義務規定違反を主張するわけではなくて、公序良俗違反かどうかということを裁判で争うわけでございますから、今までよりその点が女子労働者にとって特に不利になるというふうには考えられないと思うわけでございます。  それから、調停あるいは行政指導というのは全く別の法理でございまして、この努力義務規定ができることによって行政指導ができる根拠が非常にはっきりすることは争いのないところだろうと思います。
  119. 沼川洋一

    ○沼川委員 時間がありませんので、ここは法的にもっときちっと詰めてみてください。これは大きな問題だと思います。今の御説明では全然わかりません、きちっと詰めてみていただきたいと思います。  そこで、もう一つ大臣にお尋ねしてみたいと思うのです。これが強行規定にならなかった、もちろんこれは、大臣に言わせればそれぞれのコンセンサスを得ての結論だとおっしゃるでしょうが、いきなり今の時点で強行規定で差別を禁止すると、今の日本の経済社会が混乱するという背景が多分にあるのじゃないでしょうか、いかがでしょうか。
  120. 坂本三十次

    坂本国務大臣 これは強行規定にしろという案も審議会の中にもあったわけでありますが、審議会の大勢を制するにはとても至らなかった。大半の意見は、罰則をつけるなどというそういう余り強いのは今の日本では無理だ、こういう意見だったようでございます。  それで、あなたのおっしゃるようにとにかく今初めてやろうというわけでありますから、そして、今まではやはり男性主導型でやってきて、終身雇用でやってきて、男性は、おれがおれのかい性で妻子を養うんだというぐらいのけなげなつもりで今までやってきておりまして、それが労働慣行にも今言ったような終身雇用、年功序列、こういうようなことになってきておると思います。つまりそれだけ女性が実社会に出てきた、実社会に出て働いたという実績がまだないわけでありまして、これからが問題なんです。それは三分の一を超してはおりますよ。だけれども、明治以来の今までの長い慣行というものを見てくれば、やはりそれはまだそういう女性に対する雇用政策、こういうものはまだ会社の方もなれておらない、まだ未熟であるということは事実でありまして、しかしそうかといってそういうことはいつまでもほっておいちゃいかぬ。それで、今までは憲法と公序良俗に征しておいたところもありましょうけれども、それでも裁判所の判決はやはり向かうべき筋をちゃんと示しておると思います。そこへ持ってきて国民の名において法律をつくる、それは努力義務であろうと、それでは手ぬるいとおっしゃるかもしれませんが、国民の名において法律をつくる、かくあるべしということでありますから、それは大きな前進である。それは判決にもっと前進的な加速をさせるというような点ももちろん生まれると私は思いますけれども、それは判決だけでなしに、国民の名においてこうしてはいかぬ、かく努めなければならぬ、これは大きな社会的インパクトであろうと私は思います。日本の企業も決してそんな悪い人ばかりじゃございませんので、日本の企業、労使関係なんというのは世界的に見ればこれで一番いい方だという人もたくさんございますよ。ですから、企業が社会的責任を自覚をしておるわけですから、そこに国民の名において法律ができれば間違いなく前進をしていく、私はこう思っております。
  121. 沼川洋一

    ○沼川委員 今の御答弁を伺っていますと、雇用の場における女性の基本的人権という問題を、どうも大臣は、何か女性は非常におくれておる、このおくれておる女性をもっと自覚させ、意識を目覚めさせ、そして啓発することによって引き上げるんだ、どうもそういうのが何か雇用平等法みたいな、そういうふうにちょっととられるような御発言だったのですが、その辺いかがでしょうか。
  122. 坂本三十次

    坂本国務大臣 理念として、その労働権といろものは、基本的人権の中の特に労働権なんというのは、これは当然、それこそ男女どころか人類の間でもすべて同じく尊重されなければならぬ。ただ、実際の場合、日本の長い歴史的伝統の中では、男に比べて女性の能力開発はおくれてきたという現実は残っておるわけです。これをなくさなきゃいかぬ。それを直すために今の法律を出しておるわけなんです。だから、それを活用するということが女性の勤労権を、大いにひとつここで自覚をしていただければ非常に立派に伸びていくと思うし、社会もそれを法律の名においてバックアップすれば、女性の能力開発のみならず社会に対する貢献にもなる、こう思っておるわけです。
  123. 沼川洋一

    ○沼川委員 大臣のおっしゃることはわからぬでもございません。確かに女性自身としてもそれは女性地位向上に努めることは当たり前です。能力の開発、これは当然やらなければならぬと思います。ただ、この法案で求められておるのはもっと大きな問題なんです。基本的人権という雇用の場におけるこの問題と、今おっしゃったその問題とはちょっと違うと思うのです。むしろ、そういう女性地位向上を言うならば、女性自身も言うと同時に、今度は使用者側にそういう立場に立っての考え方というのを法案の中にももっと強調しなければならぬのではないか、このようにも実は思います。ともあれやはりここのところが一番生命線であるだけに、男女雇用平等を言うのだったら、全ステージにわたる禁止規定というのはこれはぜひとも最低限、ほかのどんなものを譲ってもこれだけは絶対必要なものじゃないか、このように思います。  さっきからの大臣との論争じゃございませんが、初めて経験するこういった中に日本が入っていくわけですけれども、たしかこれは大臣もおっしゃっておったと思いますが、大体、日本という国は、歴史的に見ましても、特に国際的な問題になりますと、残念ながら余り主体性のある歴史がございません。かつて黒船で開国になったという歴史があります。戦争に負けて民主主義が入ってきました。だから、よほど外から何かない限りはなかなか国際社会の中に日本は開いていこうとしない、こういう歴史が確かに日本にはございます。今、ちょうど来年の七月にこの男女差別撤廃条約批准しなければならぬ。言ってみれば、これがなかったならばこの男女平等という問題はあと五年も十年もおくれたんじゃないかと思います。もちろんこれは日本社会の中に女性の下からの盛り上がりもございます。しかしそういった外圧がなかったならばまだまだおくれた、そうも思うわけでございます。だから、こういう絶好の機会だからこそ、つくるんだったらやはりいつまでも日本の古い社会のそういった因襲といいますかそういうものにとらわれておるんじゃなくて、やはり世界に冠たる、さすがは先進国の日本として恥ずかしくないようなそういうものをこの際思い切ってつくる、こういう考えが必要じゃないかと思いますよ。特に財界、経済界が大反対でございますけれども、意外やこれがきちっとした禁止規定でできてしまいますと、逆にそういった方々が一番に女性をどんどん採用するといいますか、我が社はこうしてやっていますよという意味で、一番なさる方々じゃないかなという感じも持つわけです。ですから、こういう面については、余り下からのコンセンサスばかり考えておったんじゃきちっとしたものができないと思います。むしろやはり、いわば男女差別撤廃条約締約国に求めておるその理念なりそういった精神なりをきちっと踏まえて、やはりこういう問題だけはきちっとした対応をすべきではなかったか、何回も繰り返すようですけれども、そう思いますが、いかがでしょうか。
  124. 坂本三十次

    坂本国務大臣 あなたのおっしゃるように、日本の歴史の中では外圧によってそして対応をしてきたという歴史は多うございます。黒船が来た、それで世界に門戸を開いた。尊王攘夷とかいってやっておったわけですからね。佐幕開国とかいって血を流しておった。だけれどもそれが尊王開国という、何だかうまくやりまして、それからやはり追いつき、追い越せが始まったと思いますよ。「坂の上の雲」を望んで走ったわけなんです。しかし、それからはやはり相当な時間努力をしたということ、これが一番大事なところであろうと思います。  戦後新憲法ができました。あの憲法は非常に立派な理想的なものだと私も思いますよ。だけれども、憲法ができたからといってすぐ日本人全体が自由で民主主義でという、そんな一遍になれるものではございませんね。しかし、あの指針というものが大いに引っ張ってきた。非常に効果があった。あの平和主義なんというのは非常に立派であった。これは言えると思います。しかし、そこへ着々と進んではきておりますけれども、一片の法律だけで事態の完成はこれはできないと思いまして、特に雇用の場などにおきましてはやはり積み重ねというものも非常に大事だと思いまして、そういう意味で私はコンセンサスをつくりながら一歩一歩前進をしていった方がいい、こう思っております。  経済界の中でもそうでございます。それは経営者の中でも、いや、もう女子の能力をうんとフルに出さなくては企業の存立はない、だから女性をどんどん揺れと言う人もあるのです。だけれども、昔ながらの第二次産業の人はそういう経験がありませんから、それはどうも家庭に置いておいて子供を育ててもらった方がお国のためじゃ、家庭のためじゃと言う人もあります。だけれども、まあしかし、ここまでどんどん女性が勉強して、自覚をしてだんだん出てきたんですから、私どもは、いや、そんな家庭に置いておくだけではもったいない、御本人家庭におると言えば結構だけれども、外に出てやりたいと言えば大いに伸ばしてあげたらどうか、やはりそのための門戸開放の一助としてこの法案をつくった、こういうことでございます。
  125. 沼川洋一

    ○沼川委員 時間がありませんのでまた先に進みたいと思います。  紛争解決の問題ですけれども、これもいろいろと御質問があったと思いますが、その紛争を解決するためのいわば救済機関として、第十二条に「苦情の自主的解決」、第十四条には「紛争の解決の援助」、さらに第十五条には「調停の委任」、こう書いてございます。これはずっと十三、十四、十五とこう並んでおるということは、まずは自主的な解決をやりなさい、それでだめならば行政指導による解決に頼みなまい、それでだめならば調停に持ち込みなさい、これはこういうふうに読んでいいわけでございますか。
  126. 赤松良子

    赤松政府委員 法案の条文は先生のおっしゃったとおりでございまして、また考え方も、自主的な解決があり、そして行政指導があり、そしてその中で調停になじむようなものは調停にということがあるいは適切ではないかと思います。しかし、これは必ずしもそうでなければならないというような規定ではございませんので、いわゆる前置主義というようなものではないというふうに御理解いただきたいと存じます。
  127. 沼川洋一

    ○沼川委員 ただ、この法律をずっと見ていきますと、自主的に話し合いなさい、解決しなさい、こういうのが前にあるということは、この第十五条の調停委任の要件の中に、「当該紛争の解決のために必要があると認めるとき」という要件があります。この必要性の判断に当たっては、自主的解決に努めているからというようなことがしんしゃくされるおそれがあるわけですね。ですから、この調停に持ち込んでも、実際に使用者側が、いや、これは今一生懸命自主的解決をやっております、こういうことになれば、結局なかなかここに持ち込まれない、こういう問題が出てくるのではないかと思います。さらに、この第十四条の行政指導も同じでございまして、やはり使用者が今自主的解決に一生懸命努めております、こういうことになると行政指導すらできない。  ですから、自主的解決というのがあとの二つの行政指導、調停にも何か非常に影響が大きいような感じを持ちますけれども、こういう点はいかがでしょうか。
  128. 赤松良子

    赤松政府委員 先ほども申し上げましたように、自主的解決が行われることは大変望ましいことだと存じますが、自主的解決が前置されて初めて調停が始まるというものではございません。この「必要があると認めるときは」というのは、申し上げたかと思いますが、調停になじむかどうかということが専ら判断の一番のポイントになろうかと思います。全く調停に依存して、努力しようというような気配もないような場合に、いたずらに調停をするということもかえって長引くということにもなりますので、必要があるかどうかは婦人少年室長が判断することになろうかと存じます。自主的解決の努力というものは望ましいことではございますが、絶対的に必要な条件ではございません。
  129. 沼川洋一

    ○沼川委員 さらに、この自主的解決の問題ですけれども、結局、女性差別問題に関する限りこの自主的解決というのはあり得ないのではないか。この実行性について極めて疑問があるわけでございますが、特に、組合に入っていらっしゃる方は別としても、未組織の方が非常に多いのですね。大体、女性労働者の四分の三がほとんど未組織の方です。また、組合に入っていらっしゃってもその組織率の上からいけば男性から見ればわずかの方でしょう。ですから、団結権とか団体交渉権を背景にしてという担保があれば別ですけれども、未組織の方にとっては何もないわけですから、自主的解決をやれといったって一番からできないことをうたっているのではないか、こういう感じを持つわけでありますが、いかがでしょうか。
  130. 赤松良子

    赤松政府委員 御指摘のような点は確かにあり得ると思いますが、また一方、自主的な努力で解決できるような事例もいろいろとあるわけでございますので、自主的解決が望ましいということを法案にうたったわけでございまして、これがなければほかのものができないというのであればまた格別ですが、そうではございませんということは先ほども申し上げたとおりでございますので、この規定にデメリットというものがあろうというふうには思っていないわけでございます。
  131. 沼川洋一

    ○沼川委員 確かにおっしゃるように、自主的解決で解決すれば一番いいわけですが、現にこういうことはほとんどあり得ないのじゃないか、こういう角度から申し上げたわけでございます。  というのは、例えば、募集の段階で禁止規定を設けているアメリカなんかの例を見ましても、裁判やら何やらで一番件数が多いのはやはり募集です。これは禁止規定があったって問題が非常に多いのです。まして禁止規定がなければこれは自主的解決ではもうどうしようもないですね。そういう気がいたします。  そこで要望ですが、こういうようなややこしい時間のかかる救済機関ではなくて、もし男女雇用平等法の中につくるのだったら、少なくとも、まず一つには迅速な救済解決が可能であること、二つには手続が簡単で経済的精神的負担を伴わないものであること、三つには訴えた本人だけではなくて同じ差別を受けた者全員が救済されること、四つには同じような差別は全国どこでも均質な救済が行われること、五つには救済機関の行った調査内容や判断、結論に対して不服の審査請求ができること、六つには救済を申し立てたことを理由に報復することが禁止されていること、少なくともこういった内容の紛争の救済機関、これが今一番望まれているものではないかと思いますが、そういう点から見ますと、今回うたってあるこの救済措置というのは非常に何か時間がかかって、これでもどうにもならず裁判にまで持ち込まなければならないのではないか、そういう気がしてなりません。  その意味でも、先ほど局長は、私ども公明党が今国会提出いたしております男女雇用平等法を十分読んでいます、こうおっしゃっておりますので、公明党のそういう内容についてはよく御承知と思います。簡易で迅速で低廉である、こういう救済機関でなければ、こんなややこしいものでは紛争が起こったときどうにもなりませんよ。ぜひひとつ御検討いただきたいと思います。  余り時間がございませんので先に進みたいと思います。特に、先ほどもこれは御質問になっておりましたが、雇用分野における男女差別撤廃労働基準法のいわば保護規定との関係についてでございますけれども、今回の法律の改正整備婦人差別撤廃条約批准のための国内法の整備ということですけれども、ここで求められているのは、きょう何回も申し上げましたように、男女差別撤廃である。ですから、平等を名目にあるいは撤廃条約批准を口実に、女性に対する保護を外すということではないはずです。条約批准を口実に、労働基準法を規制緩和の方向で改正してしまうというのは非常に許しがたい問題じゃないか、こういうふうに考えておりますけれども、この点についてはどうお考えになっていらっしゃいますか。
  132. 赤松良子

    赤松政府委員 基準法の規定につきましては、条約を口実にこれをなくそうというわけではございません。条約の目指しているものは、本来究極的には男女同じ条件、同じ基盤で働くということでございますので、条約の本質的な点であろうかと思います。決して口実とかそういうことに使っているつもりは全くございません。条約の本来目指しているものに忠実であろうとすればそういうことになるのではないか。ただ、それを直ちに一週にやるということについては、諸般の事情からそういうことは適当でないという考えで、どの部分を緩和するかあるいは廃止するかということにつきましては、女性機会均等を進める上から特に早くそれを緩和した方がいい、あるいは廃止した方がいいと思われるもののみにとどめたわけでございます。
  133. 沼川洋一

    ○沼川委員 男女平等を言うんだったら保護規定を外せ、こういう論争の中でいろいろと審議会でも論議があったことを承知しておりますが、外国の場合なんかを見ますと、大体一九七〇年代にアメリカ、イギリス、フランス、西ドイツ、こういった国々が男女雇用平等法をつくっているわけです。いわば日本よりかもう十年も二十年も進んだそういう国々において平等という原則が打ち出されておるものですから、そういう中では保護規定を外すという論議もこれは当然起こってくると思いますし、私どももこの保護規定を一切外すなということを言っているわけじゃございません。ただ、日本の場合には、余りにも一番大事なこの男女平等、女性の基本的人権という問題が確立していない日本において、これを同次元で考えるというのはやはりどこかがおかしいんじゃないか、こういう感じを持つわけでございます。そういう面で、男女平等法案と同時にこの労働基準法の保護規定の問題に手を触れるというのは、これはもっと慎重に考える必要があるんじゃないか、こういうように思います。  時間が余りありませんので、たくさん問題がありますけれども、その中で一つだけちょっとお尋ねしておきたいと思います。特に工業的業種とその他のものを区分したといつ問題でございますが、職場のME化、OA化によって、事務労働と工場労働の区別が非常に困難になっている現状はよく御承知じゃないかと思います。特にVDTの作業による眼精疲労等が新しい職業病として非常に社会的問題になっておるわけでございますけれども、このようないわば社会の環境、状況の変化というのがどうも余り考慮に入れられてないような気がするわけでございますけれども、こういう点についてはどうお考えでございますか。
  134. 望月三郎

    ○望月(三)政府委員 御指摘の点は私どももよく理解しているつもりでございますが、今まで非工業的業種の事業については一般的に工業的業種の事業に比べて相当実態が違うということで私どもやってきたわけでございまして、その点につきましては、ILO条約だとか諸外国の立法例でも異なった規制をしている例が見られるわけでございまして、その問題につきましていろいろ審議会でも議論がございましたが、大くくりとして工業的業種の事業については若干規制を緩和する、しかし非工業的業種の事業については相当大幅に規制を見直すということで、本案が成り立っておるわけでございます。  しかしながら、先生おっしゃるように、確かに工業、非工業を問わずVDTの普及というのは相当の勢いで進んできておりますので、私どもとしては、健康管理上特別な配慮が必要な作業につきまして、専門家の意見を聞いて、去る二月に一つの指導指針、ガイドラインをつくりまして、これに基づき、事業の種類にかかわらず自主的な健康管理対策がとられるように行政指導を進めているところでございます。
  135. 沼川洋一

    ○沼川委員 時間がございませんので、最後に一つだけお尋ねしておきたいと思います。管理職とか専門職についての範囲をどの程度含めるかといった問題やら、ほかにいろんな、こういった労働基準法を緩和する方向の中で、省令によって定めるというのが非常に多いわけです。この法案全般にわたって見ましても、省令で定めるこいうのがたしか二十くらいあるんじゃないかと思うのです。この省令で定めるということは非常に問題が大きいと思いますし、ある意味では国会審議軽視、そういう意味でもこれは問題じゃなかろうかと思いますが、この点どうお考えになっていらっしゃいますか。
  136. 望月三郎

    ○望月(三)政府委員 今回の改正によりまして、先生御指摘のように、労働省令で定めることとされておるのが何点かございます。その中で例えば、非工業的業種の事業の時間外・休日労働の規制の問題、妊産婦等の危険有害業務の就業制限、管理職、専門職の範囲等がございますが、これらは、事業や労働の態様等に応じまして、中央労働基準審議会を初め関係審議会の意見を聞きまして、省令で具体的に細かい内容を定めることが今までのやり方として非常に適当であるということで、三者構成の審議会でよく煮詰めて決めたい、こう思っております。  しかし、特に非工業的業種の事業の時間外・休日労働の規制について申し上げますと、労働省令で定める時間の上限と下限が法律に書いてございます。そういったことで法律上は明らかにされておりますので、その範囲の中でつくるということにしておるわけでございます。
  137. 沼川洋一

    ○沼川委員 時間が参りましたので終わりたいと思いますが、実はまだ詰めたい問題がたくさんございます。  実は私も、ことしの二月にこの問題で街頭の署名に立ちまして、この法案を大勢の方がいかに関心を持って見守っていらっしゃるかということを肌身で感じてまいりました。それだけに、来年の七月の批准に向かってこの国内法が整備されていくわけでございますが、せっかく一生懸命つくられた労働省方々には申しわけないのでございますが、きょうも問題点だらけでございまして、こういったいわばざる法みたいなものがもし成立すれば、外務省の御意見では十分批准できるとはおっしゃるけれども、何も格好だけつければいいというものではないわけです。やはり中身のある、国際社会の中でさすがと通用するような立派なものをつくっていただきたい。そういう意味では、今回の法案はぜひ撤回して、中身についてもう一回十分な再検討をお願いしたいと思います。  何回も申し上げますように、幸い私ども法案提出しておりますので、その中に大事なところは押さえておるつもりでございます。私どもが全部一〇〇%完璧だとは決して申し上げてはおりません。少なくともそれに近づいたような、もっと中身のある法案をぜひつくっていただきたいことを御要望申し上げまして、質問を終わりたいと思います。
  138. 有馬元治

    有馬委員長 塚田延充君。
  139. 塚田延充

    ○塚田委員 当該法律案についての労働大臣提案理由説明によりますると、昭和五十年の国際婦人年を契機として、かつ、昭和五十五年署名婦人差別撤廃条約批准に備えることが必要であり、さらに我が国自体の情勢としても、既婚女子労働者の増加に伴い、母性保護等についての施策の拡充が求められていると指摘されています。  さて、国際婦人年でございました昭和五十年の第七十五通常国会及び第七十六臨時国会におきまして、ILO第百二号、社会保障の最低基準に関する条約批准承認案件が可決、成立し、翌五十一年二月二日に、ILO事務局に対し批准登録されたことは大変意義深いことだったと思います。しかし、残念ながら、この条約のすべてを受諾したのではなくて、九部門のうちの四部門のみであって、母性給付及び遺族給付など五部門は未受諾、すなわち積み残しとなったのであります。その際、外務委員会におきまして、次に述べる決議が全会派一致で行われております。   婦人関係ILO条約批准促進に関する件  一、国際婦人年の意義に照らして、政府は、未批准婦人関係ILO条約をすみやかに批准するよう努力すべきである。  一、政府は、一〇二号条約に関し今回受諾しない部門、特に、母性給付及び遺族給付について、本条約趣旨をふまえてその改善をはかるとともに、すみやかに条約第四条の規定に基づく義務受諾の通告を行うよう努力すべきである。  そこで、外務省にお尋ねいたします。  この決議の中で言及されております「未批准婦人関係ILO条約」とは、第百二号以外にどんなものがあるのでしょうか。
  140. 遠藤哲也

    遠藤説明員 ちょっと申しわけありませんが、今すぐ調べて御返事申し上げます。
  141. 塚田延充

    ○塚田委員 これは、決議を外務省は知らぬ顔をしておったというようなことになってしまいますね。じゃあ、その中でちょっと詰めて申し上げますが、母性保護に関する第百三号条約批准のための努力、すなわち外務省内での検討がいつどう行われ、その結果はどう出ているのか。そして、関係省である労働省、厚生省とどういう協議が持たれたのか。八年半の経緯を報告してください。
  142. 遠藤哲也

    遠藤説明員 それでは、先生最初の御質問に対して申し上げます。
  143. 塚田延充

    ○塚田委員 最初はいいです。後で資料を持ってきてください。
  144. 遠藤哲也

    遠藤説明員 次の御質問につきましては、確かに先生御指摘のとおり、ILO百二号条約で五部門がいわゆる積み残しになっております。その五部門は御指摘のとおりでございます。これにつきましては、その後、義務受諾の可能性につきまして関係省庁を含めて検討しておるわけでございますが、まだ結論には至っておりません。今後とも引き続き検討さしていただきたい、こういうふうに思っております。
  145. 塚田延充

    ○塚田委員 私は、結論を聞いているのじゃなくて、この決議が出てから、百二号及び百三号について具体的にどのような検討を省内及び関係省庁としたのか、その実績をお願いします。
  146. 遠藤哲也

    遠藤説明員 先生御指摘のとおりの決議をいただきましてから、関係省庁とは何回も会議を開いて検討を続けておるのでございますけれども、かなり難しい問題もありまして、協議は必ずしもうまく進んでおりませんで、まだ結論に至っていない、極めて申しわけございませんけれども、そういう状況でございます。
  147. 塚田延充

    ○塚田委員 検討したけれども答えが出ていないというような御答弁ですけれども、私の受け取り方としては、結局は何にもやっていなかった、こうなりますと、行政府国会の決議を全くと言っていいくらい無視したということになるわけです。これは決議をないがしろにしたというだけじゃございません。と申しますのは、その決議に際しまして、実は当時の宮澤外務大臣がはっきりと決意表明をされておるのです。読んでみましょうか。   ただいま採択されました御決議に関し、政府といたしましても婦人関係ILO条約の履行を確保し得るよう、国内法の整備を行った上これを批准することは、国内における勤労婦人地位向上につながるのみならず、労働問題の分野におけるわが国の国際信用を高めることにもなり、きわめて有意義と考えておりますので、今後とも十分検討してまいりたいと考えます。  また、このような観点から、先ほど御採決いただきましたILO第百二号条約につきましても、今回義務を受諾しない部門につき、今後とも引き続き関係各省間で緊密な連絡を保ちつつ、政府として最善の努力をいたす所存であります。 このようになっているわけでございます。  そこで、外務省にお伺いしますけれども、この決議及び外務大臣の決意表明に関し、大体において委員会の決議の重みというのをどう考えておるのか。また、決議を履行する努力が全然されなかったことに対してどう責任を感じているのか。さらに今後、もう八年半前のことではございますが、この決議履行の具体的な手順をどうするのか。御答弁いただきたいと思います。
  148. 遠藤哲也

    遠藤説明員 外務委員会の決議、それからそれに対します当時の外務大臣答弁につきましては、私どもはこれを非常に重いものとして受けとめております。その後、先ほど申しましたように検討を続けたわけでございますけれども、残念ながらまだ結論に至ってないことは先ほど申したとおりでございますが、今後精力的に検討を進めさせていただいて、なるべく早いうちに結論を見出したい、こういうふうに思っておりますので、少々お時間をかしていただきたいと思います。
  149. 塚田延充

    ○塚田委員 結果的にはほとんど進んでなくて、今からやるということですが、今までの経緯で外務省の方の努力が足りなかったからそうなったのか、それとも相手側といいましょうか、労働省もしくは厚生省が誠意がなかったからこういうことになってきたのか、外務省としての見解をお聞かせください。
  150. 遠藤哲也

    遠藤説明員 条約締結権の責任は政府部内では外務省が負っておりますので、関係各省庁等の意見はともかくといたしまして、条約締結責任者である外務省が今後とも中心になって努力してまいりますので、そのようにぜひ御了承いただきたいと思います。
  151. 塚田延充

    ○塚田委員 ILO条約関係は、形式的には外交上の問題でございますけれども、実質的及び国内的には労働行政と密接不可分だと思います。その意味におきまして、今私が質問し、外務省がお答えした件につきまして、労働大臣としての見解をお聞かせいただきたいと思います。
  152. 赤松良子

    赤松政府委員 直接には、ILO百三号条約の母性保護全般についての規定と現在労働基準法その他にございます母性保護の規定がどういう関係にあるかということについては、私どもは十分検討しているつもりでございます。  これまで問題となると考えておりましたのは、労働基準法では産前産後の休暇が六週間でございますが、そのうち強制は産後の五週間でございまして、本人が請求した場合に医師が支障がないと認めた業務につきましては、産後の六週間目は就労が可能という規定でございました。これが百三号条約とは抵触するように考えておりましたが、このたびの新しい法案内容をごらんいただきますと、この点は解決したと申しますか百三号の条約の水準に達したものと存ずるわけでございます。(塚田委員「いや、もう答弁は結構です」と呼ぶ)その余についてはまだ条約の水準には達していない問題点が幾つかございますので、その点において、ただいまは百三号条約労働省分野におきまして批准できる水準に達しているとは考えていない次第でございます。
  153. 塚田延充

    ○塚田委員 赤松局長の方からまじめにお答えいただいたようですが、私が今質問したのは、労働大臣に対して決議の重み、その実効が担保されていない、国会審議軽視じゃないか、行政府としてどう責任を考えるのか、この件の労働大臣としての見解をお伺いしたわけでございます。あくまでも内閣の中の一大臣としてお答えいただきたいと思います。
  154. 坂本三十次

    坂本国務大臣 外務大臣も一生懸命やるという、これは担当者として当然でございましょう。私としても全力を挙げて努力をしたい、こう思っております。
  155. 塚田延充

    ○塚田委員 とにかく行政府としては、私どもがせっかくこんなに一生懸命審議し、また決議を行ったこういうことについては、ないがしろにしないで徹底的にそれをフォローしていただきたいと思うのです。その場限りの答弁でその場を逃れればそれでいいのじゃないか、このような態度がこの委員会のみならず外務委員会においても、あらゆる委員会で多過ぎるのじゃないか、このようなことを指摘しておきたいと思います。  次に、婦人差別撤廃条約批准要件ですが、主なものとして雇用平等法、これは勤労婦人福祉法の改正の形をかりることによってただいまこうやって審議中でございますし、また国籍法の改正は成立したようでございます。そして、教育課程の同一化ということで家庭科を男子にも履修させる、こういうことが必要だということになっておりますが、そのほかどんな案件を整備することが必要であり、またそれについてどのような処置をしてきたのか、外務省にお尋ねいたします。
  156. 斉藤邦彦

    ○斉藤説明員 ただいま御指摘の分野に加えまして、ほかにいかなる措置を講ずべき分野があるかという点につきましては、この条約批准時期を念頭に置きましてこれからさらに検討を進めたいと考えております。  どういうものがあり得るかという点でございますけれども、例えば民法上男女の婚姻の可能となる条件が現在異なっております。これが果たして婦人差別撤廃条約上このままでいいのかどうかという問題点、あるいはこれも例示でございますけれども、現在の皇室典範におきましては皇位継承権というのは男子に限られております。これが果たしてこのままで条約上問題がないか、こういうような問題点をこれから検討していきたいと考えております。
  157. 塚田延充

    ○塚田委員 文部省にお尋ねいたします。  高校における家庭教育の見直しについてでございますが、先月やっと検討会議を設置したということでございますけれども、これは差別撤廃条約署名してから今日まで約四年半もたっているわけです。それで今までどうしてきていたのか。また今後この見直しについてどう対応するつもりなのか。また、その対応策を実施する前提として学習指導要領を改定する必要があるのじゃございませんか。その辺いかがでございましょう。
  158. 阿部憲司

    ○阿部説明員 お答え申し上げます。  家庭教育につきましては、我が国の実情に即しまして長い歴史と伝統を持って展開されてきておるところでございまして、現在では、高等学校について「家庭一般」四単位が女子のみ必修となっておるところであります。しかしながら、このような取り扱いが、男女に同一の教育課程を確保するよう規定しております婦人差別撤廃条約に抵触するのではないかという問題がございまして、文部省といたしましては、先ほど先生から御指摘がございましたように、この六月に設けました家庭教育に関する検討会議におきまして、条約との関連も十分考慮しながら、高等学校「家庭一般」の今後のあり方についての基本的な考え方を年内を目途に取りまとめていただきまして、家庭科の取り扱いが条約批准の妨げにならないよう対処していくこととしているところでございます。
  159. 塚田延充

    ○塚田委員 今のお答えの中で、そうなると学習指導要領を変える必要が出てくる場面に追い込まれはしないかと、私は文部省につきまして心配しているのですけれども、いかがでしょう。
  160. 阿部憲司

    ○阿部説明員 「家庭一般」女子のみ必修という履修形態を変更することにつきましては、当然高等学校学習指導要領の改定が必要になるわけでございます。しかしながら、学習指導要領を改定することにつきましては、高等学校教育の今後のあり方をどう考えていったらいいかとか、あるいは社会科や保健体育といった他の教科との関連などもございますので、やはり教育課程全体の中での検討を必要とするところでございます。  また、教育課程の改定に当たりましては、手続的にも教育課程審議会の議を経るなど慎重な手続で改正を行ってきた経緯もございます。そういうことで、六十年までの条約批准に向けて直ちに学習指導要領を改定するということになりますと、これは実際上無理かと存じますけれども、文部省といたしましては、この年末を目途に家庭科の基本的な改善の方向についてまとめていただきまして、それに基づきまして、次の教育課程の全面改定の際に家庭科の具体的な改善を行ってまいりたいというふうに考えておるところでございます。その際には当然学習指導要領の改正も行うということになるわけでございます。
  161. 塚田延充

    ○塚田委員 さて、母性保護等についての施策の拡充が求められる情勢になったから本法律案提出するのだと、提案理由では御立派にも説明されておりますけれども、労働基準法の改正面では、母性保護の観点では、男女平等化ということを逆手にとってほとんど後退、すなわち改悪というものになっているということは、これまでの本委員会審議において各委員が強く指摘してきたとおりでございます。同時に、いわゆる男女雇用機会均等法の面では平等のチャンスのみを羅列して、実際の効力については疑わしいのじゃないかということも指摘されているとおりでございます。言ってみれば、平等になるのですよというにおいだけかがせて、労働基準法では改悪というようなびんたを食らわしているようなものではないでしょうか。雇用分野で効力が上がる担保がないけれども、少なくともチャンスを与えるということは考えようによってはプラスの方向と言えば言えないことはございません。しかし、そのプラス面の数値は私は極めて小さいのじゃないかと判断されるわけです。一方、労働基準法の改正は明らかに勤労婦人にとりましてマイナスの方が大きい。両方合わせて差し引き勘定すると、マイナスということになってしまうのじゃないか。これでは勤労婦人を平等化という名目のもとにペテンにかけることと同じじゃございませんか。これを総合的にプラスにして、婦人差別撤廃条約批准のための本当の条件整備とするためには、このプラスの面をもっともっと大きく変えなければいけない。これは、今までも各要員が指摘しましたように中途半端な雇用均等法というのではなくて、私たちが提唱しておるような雇用平等法に名前も変え、その名にふさわしい完全平等を実現できる内容を規定することがどうしても必要だと思うのです。また一方での、マイナスを少なくしてゼロにする、これも総合勘定として点数を上げることになります。これはすなわち労働基準法をいじくらない、改悪しないということだと思うのです。そのいずれかしか勤労婦人を納得させる道はないのじゃないかという気がするのですけれども、労働大臣の御見解をお伺いします。
  162. 赤松良子

    赤松政府委員 お答えいたします。まず、労働基準法の面につきまして申し上げますと、先生の御指摘では、母性保護の概念が余り見られるべきものがないというふうなお言葉でございましたが、私どもといたしましては、母性保護の規定の改善につきましては、先ほど百三号条約のところで申し上げましたように、産後の休業につきましては、百三号の条約内容を満たすことのできるような改善措置を講じたところでございます。また、産前の休業につきましては、産前休業全体としては延長はいたしませんでしたが、多胎妊娠の方につきましては、その方の特殊性を考慮に入れて、六週間を十週間へと延長したところでございます。また、妊産婦の方の保護のためには必要だと考えられます深夜業その他の就業の禁止等、きめ細かく配慮したつもりでいるわけでございます。  そこで、条約の中で「母性保護」という言葉が四条で使われておりますが、この内容は、ただいま申し上げましたような妊産婦の保護あるいは妊産婦の出産あるいは産前の保護、それからもう一つ、狭い意味での保育、直接関係のある保護というふうに限定して使われているというのが私どもの差別撤廃条約の解釈でございまして、この点につきましては、私どもといたしましては、できる限り母性保護の充実に努めたつもりでございます。  それ以外の一般的な女子保護につきましては、これは条約上、究極的には男女同じにするという方向が目指されなければならないと思うわけでございますので、その方向を示し、しかしながらそれを急激に行うということではなくて、実情を踏まえた程度のものにいたしたということは、先ほど来この委員会で申し述べているところでございます。  一方、機会均等の場面につきましては、委員先生方から、大変不十分であるというような御指摘はいろいろございますが、私どもといたしましては、進むべき方向は非常にはっきりさせた、そして、その中で盛ることのできる規定というものは現実を考慮してそれを実現すべく規定の中に盛り込んだ、このように考えている次第でございます。
  163. 塚田延充

    ○塚田委員 私は、立法の精神もしくは行政の根本理念について大臣にお尋ねしたわけなんですが、それでは、次のことについて労働大臣、よく聞いていただき、また御理解していただきたいのですが、男女の平等という場合、神様が与えられた男女の性の差及びある程度の社会慣習を配慮しないと、形式だけの平等はかえって不平等になるケースが多いのだということです。この婦人の特有の条件を認めてこれを整備することが、雇用分野における真の男女平等を実現させる基盤だと私は考えます。  例えば出産、育児はいわば神様の御手配です。育児休業が十分に保障されていないと、幾ら法文に平等を規定しても婦人は脱落してしまいます。これでは、神の御心を大臣は知らない、神に背いてしまうということになりませんか。また、重病人が出た場合の看護休暇の必要性も同じです。ですから、育児休業法及び看護休暇制度の確立は、福祉的な観点から恩恵的に認めるというのじゃなくて、男女平等の基本理念を実行するための基本条件、すなわち基盤そのものだと私は理解しておるのですが、この点、労働大臣はいかが理解されるかお聞かせください。
  164. 坂本三十次

    坂本国務大臣 育児休業の請求権の法制化につきましては、婦人少年問題審議会の建議もいただいておりますが、多数意見は「我が国における普及率も一割強にすぎないこと等を考慮すると、現段階において全企業に本制度の実施を強制することは困難であり、当面、行政側の積極的な指導、援助等により本制度のなお一層の普及を図ることが先決である」というふうにいただいております。社会的コンセンサスは得られていないと考えられることから、今回は措置しなかったものでございます。現行の事業主による育児休業制度実施の努力義務規定に加えて、今回の法案では、国は育児休業の普及を促進するため、助言、指導その他必要な援助を行うように努めるものとしておるわけであります。  今回の規定を受けて、現在行っている育児休業制度普及指導員による事業主に対する助言、指導、育児休業奨励金及び特定職種育児休業利用助成給付金の支給等を引き続き行うこととするほか、今後さらに普及促進のために有効な措置を検討し、努力を重ねていきたいと思っております。  あなたのおっしゃるような社会的基盤をつくることは非常に大事なことでありまするが、現在直ちに実行することは無理という建議をいただいておりますので、現実からあなたのおっしゃる基盤づくりに向けて努力をして、着実にこの普及の促進を進めてまいりたい、こう思っております。
  165. 塚田延充

    ○塚田委員 私が今述べたことをきちんと理解できなければ、ちょっときついですけれども、男女平等を口にする資格があると言えないのじゃないか。この件につきまして、恩恵的に、福祉的にこの基盤を整備するのじゃなくて、全くの基本条件であるということを関係者の方にぜひ御理解いただきたいと思います。  次の質問に移ります。  労働基準法の改正案は、結果的には勤労婦人労働条件の切り下げであるということは、何回も何回も指摘されており、労働省側としてはああでもない、こうでもないというように防戦これ努めているようでございますが、同法第一条第二項では、同法の基準を理由とする労働条件の切り下げを禁じております。企業において現行の就業規則とか労働協約を、今労働省提案されておるまあ改悪案でしょうか、これにあわせて改定するということは、この法律の条文に照らした場合許されなくなってしまうわけです。労働省はいかがお考えでございましょうか。
  166. 望月三郎

    ○望月(三)政府委員 労働基準法の女子保護規定は、先ほど来お答えいたしておりますように、母性保護規定を除いて基本的には婦人差別撤廃条約に抵触をするという観点から、究極的にはこれを将来はなくしていくという方向で改正をしておるわけでございます。ただ、その場合に、各国の国情に応じて漸進的にこれを実施するということが条約でも認められておりますので、私どももそういった範囲内で考えておるわけでございます。  御承知のように、婦人少年問題審議会で長年の検討結果として出された建議を踏まえまして、我が国社会経済の現状や、女子家庭責任をより多く重く負っているという状況等にかんがみまして、労働基準法の女子保護規定のうちに、現段階において、男女の均等な機会及び待遇確保していく上で、その廃止または緩和が特に必要なものについて廃止または緩和することとしたわけでございまして、条約趣旨に沿ったものでございますので、私どもは、労働基準法第一条第二項との関係では問題はないというように考えておる次第でございます。
  167. 塚田延充

    ○塚田委員 今、第一条第二項に抵触せずに何とかなるんじゃないかという御答弁ですけれども、これは、学界とか何かにおいてはいろいろ今後論議が出てくると思います。そうでしょう、やってはいけないということをさらに就業規則を切り下げるわけですから。これは企業の労務担当者としてはそういうことはできないわけです、第一条二項を守る限りにおいては。この件につきまして問題が起きないように、逃げの答弁ではなくて、実質的にこれをよく検討しておくことが将来において必要かと私は指摘しておきます。  さて、それでは個別の問題につきましていわば逐条的に御質問申し上げたいと思います。今までの各委員の質問で結構出尽くしておりますので、私としては、落ち穂を拾うようにいろいろ御質問してみたいと思っております。  まず、苦情処理機関でございますが、これは必置、必ず置くべきとされておりませんが、私は必置にした方がいいのではないかと思っております。そして「労働者を代表する者」とありますけれども、これと労働組合の関係をどのようにお考えなんでしょうか。特に労働組合が複数ある場合はこういうケースも結構多いのですよ。このときにはどうするのか、簡潔にお答えください。
  168. 赤松良子

    赤松政府委員 企業内の苦情処理機関についてでございますが、「苦情処理機関」という言葉を一応用いておりますが、これは「機関」というような言葉が与えるようなそれほど大げさなものとは必ずしも考えておりません。苦情処理をできるような、委員会があれば委員会でもよし、あるいはそういう人事管理者の相談体制というようなものでもよろしいのではないかと思っております。そのような緩やかなものでございますので、それほど厳しい規定を設ける必要はないのではないかということでございまして、企業の規模あるいは労働組合の有無その他、企業の状況に応じた方法がとられればよろしいのではないか。これは、自主的な解決ということが望ましいということからこのような表現をとったわけで、これが前置でもないということにも対応し、必ず置く、先生のお言葉で言えば必置ということにはいたさなかったわけでございます。  それから、労働組合がいろいろ第一、第二というふうに分かれているというような場合にどうするかというようなお尋ねであろうかと思いますが、先ほど申し上げましたように、この機関はそれほど厳格な規定を設けてつくるというようなことは必ずしも前提に考えておりませんので、当該事業所の労働組合が選任した方、あるいは労働者の普通の選挙で組合と関係なく選ばれた方でも差し支えなく、あるいは極端には組合がない場合もございましょうし、非組合員の中から選ばれた方、それは差し支えはないのではないか。いずれにしても、機関をそれほど厳格にする必要はないのではないかというふうに思っております。
  169. 塚田延充

    ○塚田委員 都道府県婦人少年室長による実効性ある行政指導のためには、事実調査が場合によっては必要になってくることが結構多いのじゃないかと思います。その際、事業場への立ち入りとか、関係書類の提出命令とか、関係者への尋問を行い得る調査権限を与えるべきではないかと思いますが、いかがでございましょう。
  170. 赤松良子

    赤松政府委員 労働省婦人少年室の権限でございますが、労働省といたしましては、この婦人少年室の充実強化ということは非常に大きな課題というふうに認識しております。  ただ、先生御指摘のような強い権限を持たせるかどうかということにつきましては、その行う任務が行政指導ということでございまして、その根拠もこの法律にあるような程度のものでございますので、立入検査権その他非常に強い権限、例えば労働基準監督宮が持っているような権限を与えるということは、あるいは事柄の性質から均衡をやや損なうのではないかというふうな考えから、現在の程度としたものでございます。
  171. 塚田延充

    ○塚田委員 ところで、現在の婦人少年室のメンバーといいましょうか、人員は全国で何名ほどおられ、これは各都道府県当たりに直しますと何名ほどの構成になっているのでしょうか。
  172. 赤松良子

    赤松政府委員 婦人少年室は各県に一カ所ございますが、その人員は平均して四名程度でございます。
  173. 塚田延充

    ○塚田委員 全国で何名でしょう。
  174. 赤松良子

    赤松政府委員 全国で百六十八人でございます。
  175. 塚田延充

    ○塚田委員 割り算をすると三・何人で、四までかなり離れているんじゃないですか。一まあそれはいいとして、その程度、三ないし四名のスタッフで、今回予定されておりますこの法案の中で大変な期待を受けておる婦人少年室が、それなりの機能を十分に発揮できると実際お考えになっているのでしょうか。
  176. 赤松良子

    赤松政府委員 婦人少年室は、これまで、雇用分野における男女の均等な機会待遇の問題を含めまして、広く婦人労働問題の行政に携わってきたわけであります。したがいまして、人数は先生のおっしゃったように非常に少ない行政機構でございますが、それなりの知識や経験を有しているわけでございまして、現在いろいろな行政機構がございますでしょうが、やはり、この問題につきましては婦人少年室が携わるのが一番適当なのではないかというふうに考えているわけでございます。その人員について不十分というような御指摘は、私どもといたしまして今後の大きな課題として充実強化に努めたいと思っておりますし、また婦人少年問題審議会の建議の中でもそのことは触れられているわけでございますので、その方向鋭意努力をいたしたいと考えております。
  177. 塚田延充

    ○塚田委員 少数精鋭でいくということで、結構でございましょう。  調停委員会の方でございますが、三名となっておりますけれども、腹案と申しましょうか、内々労働省としてその構成、例えば労働側、使用者側、公益委員というような三者構成という基準みたいなものを考えておられるのかどうか。その構成メンバーについての腹案と、それからこのメンバーにはどうしても女性を入れるべきじゃないかと思うですが、この件についてどうお考えになりますか。
  178. 赤松良子

    赤松政府委員 調停委員会の三名の構成でございますが、これは先生今おっしゃったような三者構成、いわゆる公労使というようなもので考えているわけではございませんで、公益と申しますか中立的な立場の方、これは調停の中立性、客観性ということを担保する必要からそのように考え、高度に専門的な知識を有し、かつ、労使双方に影響力を有する委員の合議体で行うことが必要と考えているわけでございます。したがいまして、その委員の方の資格といたしましては中立、公平な学識経験者ということを考えているわけでございます。  女子についてこの三人の中に入れることが必要ではないかという御指摘につきましては、女性で先ほど申し上げましたような基準に該当しておられる方には、積極的にこれをお願いするというふうに考えたいと思っております。
  179. 塚田延充

    ○塚田委員 この調停委員会に事務局みたいなものはつくのでしょうか、つかないのでしょうか。実質的なそういうバックアップ業務はどこがされるのでしょうか。
  180. 赤松良子

    赤松政府委員 この調停委員会の事務局は、都道府県の婦人少年室がいたす予定でございます。
  181. 塚田延充

    ○塚田委員 先ほど婦人少年室の人員の構成をお聞きいたしまして、僕は、三ないし四名くらいでは、とてもとてもそういう調停委員会のバックアップ業務まで入れたならばやり切れないのじゃないかというような心配もするのですが、それはさておきまして、調停をしてそれが不成立になった場合、具体的な処置につきましては法文上欠けております。これでは迅速な救済が難しいと思いますが、この件はいかがでございましょう。
  182. 赤松良子

    赤松政府委員 この調停は、もともと個別の紛争につきましては従来のように最終的には裁判所で争うという形にならざるを得ないと思いますか、その前に簡便迅速な調停という、いわば行政のサービスということをするために新たに設ける機関でございますので、そのように御理解いただきたいと思います。
  183. 塚田延充

    ○塚田委員 調停の対象に募集、採用に関する事項をわざわざ除外しておりますが、どうしてでございましょう。
  184. 赤松良子

    赤松政府委員 この調停は、もともと、当事者としては事業主と労働者が、個別の事案について紛争が起きたときにそれを調停するという趣旨のものでございますが、募集、採用につきましては、まだ企業の中に入っていない不特定多数の方を相手にするものでございますので、この調停の性質上なじまないのではないかというふうに考えて、かようにいたしました。
  185. 塚田延充

    ○塚田委員 先ほどの質問の中にも出たのですが、余りきちんとした答えがなかったと思いますので、ずばりお聞きいたします。調停を申し立てた者に対する不利益処分についてどのような救済を考えておられますか。
  186. 赤松良子

    赤松政府委員 調停につきまして不利益処分、調停を申し立てたことを理由にする不利益処分というようなことは、当然あってはならないものと考えておりますので、そのようなことがないように行政指導をいたしたいと思います。
  187. 塚田延充

    ○塚田委員 具体的に何か救済する方法を講じておかないと、行政指導でうまくやるといっても、大体世の中というのは、こういう申し立てをしたりなんかすると必ず使用者といいましょうか、そちらからしっぺ返しを受けるとか、いろいろな悪いケース、これが多分に予想されるわけでございます。ですから、これについてはもっと慎重にはっきりした処置を事前に講じておく必要があるのではないか、私は強くその面を主張し、指摘しておきたいのですが、もう一度何らかの方法を研究するとかいうような方向について御答弁いただけないでしょうか。
  188. 赤松良子

    赤松政府委員 これまでの、法令等によって労働者がある行為をした場合に、行政府に対して申し立てというようなことをした場合に、それが不利益処分の対象になるというようなことを法律上禁止した例というものは確かにございます。しかし、そういう例を個別的によく検討してみますと、監督機関に対する申告でございますとかその他、そのもとになっている法律というものが非常に強い罰則つきの強行法規であったりする例が多いわけでございまして、全部つぶさに調べたわけではございませんが、私どもの見た限りではそういう法令でございます。したがいまして、今回予定いたしております調停では、調停を申し立てたことに対する不利益処分のみを非常に強い罰則をかけるというようなことでは、法律の間の権衡、他の類例と比較いたしましてバランスを失するのではないか、このような考えで法律上の罰則規定等は設けておりませんが、先ほど申し上げましたように、これは非常に好ましくないことだというふうに考え、そのようなことがないようにいたしたいと思います。
  189. 塚田延充

    ○塚田委員 この調停委員会が三人でただひそひそと知恵を出し合う、これでは本当の解決にはならぬと思うのです。ということは、やはり関係当事者から事情を聴取するとか、必要な資料を提出させてそれをチェックするとかいう検討をしなければいけない。そのような権限が与えられてないのですけれども、この辺の権限は与える必要があるのではないでしょうか。また、そのような事情聴取に応じなかったとか資料提出に応じなかった場合、制裁処置みたいなものをやらないと、今言ったように、調停委員会は三人、三人寄れば文殊の知恵というけれども、何も出てこない、こういうふうになりはしないでしょうか。いかがですか。
  190. 赤松良子

    赤松政府委員 先ほど来申し上げておりますように、この調停は、本来労使に対して影響力のある公正申立な学識経験者が、当事者間の同意を得てやるという性質のものでございますので、そのような強行的な規制にはなじまないのではないかというふうに考えております。
  191. 塚田延充

    ○塚田委員 問題は、その同意に応じないケースがかなりあり得る、これは当然予想しなくちゃいけないことだと思うのですよ。これはやはりまじめに考えていただかないといけないと思います。もう一度、この点について前向きに検討する旨の御答弁をお願いいたします。
  192. 赤松良子

    赤松政府委員 前向きと申しましても、ただいまるる申し上げましたように、この調停委員会の性格から申しまして、現在の法案内容のようなものが適切なのではないかというふうに考えておる次第でございます。
  193. 塚田延充

    ○塚田委員 どうもありがとうございました。これで質問を終わります。
  194. 有馬元治

  195. 田中美智子

    ○田中(美)委員 まず、外務省に質問いたします。  もし労働基準法部分の残業、休日労働、深夜勤、ここの部分が削除されるならば批准ができないでしょうか。差別撤廃条約批准できないでしょうか。簡潔にお願いしたいと思います。
  196. 斉藤邦彦

    ○斉藤説明員 仮定の場合についての御質問でございますので、私がここで結論を申し上げるのは適当でないと存じますけれども、本条約は、いわゆる女子保護規定というものが女子の採用、昇進を阻害することになるという認識のもとに、女子保護規定の見直し、基本的には男女同一の条件とすることを求めているものと考えております。  したがいまして、我が国の国情に沿いまして改廃すべきものは改廃していくということが我が国に求められているところであると存じますので、全くこの点に手をつけないで批准をするということには問題があろうと考えます。
  197. 田中美智子

    ○田中(美)委員 どういう問題がありますか。
  198. 斉藤邦彦

    ○斉藤説明員 我が国として、条約上果たすべき義務を果たさないままに条約批准することになるという問題があろうと思います。
  199. 田中美智子

    ○田中(美)委員 時間が私の場合は三十五分しかありませんので簡潔にお答え願いたいのですが、どういう問題があるかということに対して外務省は答えられない。しかし外に対しては、一般の陳情の方に対しては、必ずしもこれがなくても批准できるというようなことを言っているということも聞いています。政府の中では非常にあいまいじゃないでしょうか。  その点で本題に入っていきたいと思うのですけれども、この労働基準法の改悪部分、特に残業、休日労働、深夜勤の問題です。工業的業種の人たちは、多少変わりましたが、ほぼ今の規制が残されたというところですが、一体どれくらいの人数がいるかということで、そちらの方にも伺いましたが、時間がありませんのでそちらのおっしゃったことを私が申します。  もし千五百万ぐらい婦人が働いているとして、大きく換算しまして、三二・七%が製造業だといたしますと約四百九十万ぐらい、そのうち実際に工業的業種で働いている人は三分の二と見ても三百二十七万ぐらいだと私は思うのです。そうしますと、いわゆる政府が言っています非工業的ホワイトカラーの婦人労働者は千二百万、この方たちが、今のところは年間残業は百五十時間ですが、これがこの法案が通りますと三百時間まで上限が上がってしまう。それともう一つの問題は、新たに管理職、専門職という、労基法の適用する専門職、下級専門職とでも言うのでしょうか、こういうものが女性だけにつくられて、この方々の範囲が今なおはっきりされないままに、この人たちは上限が男子と全く同じ上限六百時間、深夜勤も男子と全く同じに要求されても拒否できないという状態になるわけです。  この点から考えますと、今、内閣総理大臣官房広報室が出しております五十九年三月の「婦人の就業に関する世論調査」十一ページの表を見ますと、表十二というところに「仕事に対する不満の理由」というのが出ておりますが、この第一位は賃金とか収入の問題ですけれども、第二位は、残業が多く休日が少ない、もっと休みがとりたいということが仕事に対する不満の第二位として非常に大きくランクされております。  それで大臣伺いますが、この法案が通りますと、こういう不満はどの程度解消されるのでしょうか。簡単にお願いいたします。
  200. 赤松良子

    赤松政府委員 今のような不満がどの程度解消するかという御質問でございますが、残業が多いとかというような不満が解消されるというふうには考えておりません。
  201. 田中美智子

    ○田中(美)委員 この不満はこの法案が通っても全く解消されない、こういうことがよくわかりました。  その次、「賃金と社会保障」という雑誌がありますが、このナンバー八百四十二、ここに武村晴正さんというお医者さんの論文が載っております。この中に「子供のために今譲ってはならぬもの」という表題で論文が載っております。細かいことは後で読んでいただきたいと思いますが、この中にあちこちのお医者さんが調査をした結果の表が出ているわけです。  これは私、簡単にわかりやすく計算をし直してみたのですけれども、家庭婦人労働婦人の健康比較が出ている。これは妊娠、出産にかかわる部分です。まず流産の場合は、家庭婦人が一二・五%の場合に勤労婦人の方は二〇・四%と一・六倍にもなっています。それから死産の場合、これも医者や研究者の何人かの調査があるわけです。これを私の方で計算して平均をとってみたのです。こうしますと、家庭婦人は死産が二・一、そのときに勤労婦人は四・八、まさに死産は二倍以上に、二・三倍という驚くべき数字が出ているわけです。また未熟児の場合、これも同じような計算をしてみますと、家庭婦人が九・三%のときに労働婦人は一一・四%、これは二二%増し、多くなるということですね。こういう状態があります。  それからもう一つの調査は、これは労働省の調査と国立習志野病院の先生の調査、これを見ましても、微弱陣痛などというのは五・八倍、異常出血は二・八倍というような驚くべき数字が、あなた方の調査の中にも出てきているわけであります。ですから、この均等法案が成立しますと、婦人の長い時間働くのは困るのだ、これ以上働くのは困るのだという不満も解消しないと同時に、健康破壊が起きないかという声が出ておりますが、今のような状態がどの程度解消するのでしょうか。この点をお答えください。大臣、ちゃんと聞いててくださいよ。
  202. 赤松良子

    赤松政府委員 ただいまの御質問は、先生のお触れになった調査などが手元にございませんので、あるいは細かいことを聞き漏らしているのではないかと思いますが、それにつきましてはまたそれを取り寄せて検討させていただきたいと思います。でも、大まかな点は大体把握できたように思います。  それは、勤労婦人の方が家庭婦人よりも産前産後の時期にいろいろ支障が多い、このような御指摘であったように思うわけでございます。それが今度の法案が通ればどの程度よくなるかということでございましょうが、どの程度かということは、はっきりはかれるような種類のことでもございませんし、また効果があらわれるのは時間がかかるかと思いますので、数でどの程度というふうには申し上げかねますけれども、ただ、決して悪くならないだろうと私は思います。  と申しますのは、先ほども先生が聞いておられに場所で申したつもりでございますが、産前産後の保護に関しましては、今度の法律案内容充実の方向でつくられているわけでございます。産後は今のこととはあるいは関係がないかもしれませんが、産前のことについては、例えば深夜業務、休日労働、時間外労働について、現在は妊娠をしたからといって当然には規制の対象にならないわけでございますが、今度の法案、基準法の改正によりまして、妊婦についてそのような規制が新たに加えられるということを申し上げたいと思います。
  203. 田中美智子

    ○田中(美)委員 悪くならない。よくなるとは言えないわけですね。  次に進みます。  今花形産業である日本ビジネスオートメーション、こういう産業では、三六協定を結んだ場合に、大体五十時間から六十時間結んでいるわけです。しかし実際には、報告を聞きますと、百二十時間または——これは一カ月ですよ、年間ではありませんよ。最高残業二百五十九時間などという状態が、男子労働者女子労働者を含めてこういう状態が出ております。この中での男子労働者の健康破壊が大変進んでいるということと、また夫がいるべきときに家庭にいない、父親が家庭にいなければならないときに家庭にいない。これは予算委員会のときにもこのような質問をしたわけですけれども、そういう中で、男も家庭職場が両立しなければならないのにますますできない状態になっています。こういう中に女性たちも組み込まれていっているわけです。新しい花形産業の中に婦人が組み込まれていくということはいいわけですけれども、こういう恐るべき労働状態の中に婦人が入っていって、こういう中で今度のような法改正がされていけばどうなるかということは、火を見るよりも明らかだと思うわけです。  ここで、そこに働いている女子労働者の健康調査を見てみますと、十六人のオペレーターに「あなたは健康ですか」と聞いたところが、一人も「イエス」と答えた人がいない。これはみんな若い人たちです。この人たちがやめざるを得ないということでどんどんやめていくわけです。そのときに、なぜやめていくのかということを聞きますと、仕事を続けられないのは結婚したりしたからではないのだ、決して自分の夫が足を引っ張っているからではないのだ、もう体力がもたないのだと言っているわけです。今の労規法の規制があってさえこのような状態が出てきているわけです。  もう一つの事例は、これは全損保関係職場は最近はほとんどだそうですけれども、事務量が飛躍的にふえています。しかし、労基法がありますので一週間六時間以上はさせられない。二時間というのがあるわけですけれども、これも無視して六時間。それが実際にはもっと多くさせてぎりぎりまで。勤務時間は大体四時三十五分で終わるところだそうですけれども、ほとんど週に三回から四回、夜八時まで働かされる。そうしますと、うちへ帰るのは九時、十時近くなるという労基法ぎりぎりのところで悲鳴を上げているわけです。ですから、ここで働く婦人労働者は、妊娠したらとてもできない、とても働いてはいかれない、また子供を二人も産むことはとてもできない、仲間が子供を産むと冷やっとするこういうことを言っているわけです。  このあなた方が自慢にしております男女雇用機会均等法が通りましたら、こういう状態はどれくらい解決できるのでしょうか、お答え願います。大臣、お願いします。
  204. 赤松良子

    赤松政府委員 今の御質問の趣旨も、私どもといたしましては手元にあれがございませんで、どこまでどういう実態がということをつぶさに検討をしてみないと、どのくらい改善されるかということがよく申し上げられないような状態でございます。調査というものはいろいろな要素が集まって一つの結果が出てくるわけでございましょうから、一つの要素が解決されても別のもっと大きな要素が残っていれば変わりませんし、その逆もまたあるわけでございまして、現在どういう…
  205. 田中美智子

    ○田中(美)委員  (「簡潔にお願いします」と呼ぶ)変更があるかというようなことにつきましては、お答えがなかなかしにくいような状態でございます。
  206. 田中美智子

    ○田中(美)委員 答えができないということだけ、はっきりと記録にとどめおいてください。  さてその次、均等法部分の七条の募集のところにいきます。  これは去年の八月、日本リクルートセンターの調査したものをいただいたのですが、女性に対して「採用予定なし」というところ、採用しないと言っている企業が千百十八社のうち八百八十六社、パーセントで言うと七九%が女性を募集しない、こういうことになっているわけです。特にその中でも、四年制の大学を卒業した女子学生はわずか一三%しか募集をしない、こういう結果が出ております。これは十分御存じのことと思います。  また、これは一つの話ではありますけれども、大変けしからぬことで、ある本屋の話ですが、女子社員に限ってはブス、チビ、デブ、メガネ、カッペは採用しない、こういうようなことを募集の条件に、女性にだけつけているという話もあります。  それから、これはつい二、三日前に私が聞いてきた調査ですけれども、新聞記者の中に占める女性の割合です。新聞は今男性よりも女性の方が多く読むと言われているぐらいです。審議中に新聞を読むのはやめてください。自民党、もう少しまじめにやってくださいよ。女性が大変読んでいるこの新聞ですね。これをつくっている男性、これは編集部も含めてですが、朝日新聞で女性の記者は二・二%です。毎日新聞は一。八%、読売新聞は一・八%です。これを見てもいかに女性が採用されてないか。これは募集のところで、人生の入り口のところで切られているという状態だと思うのです。また、放送関係女性がたくさん働いているとよく言われますけれども、嘱託だとか一部契約だとかということばかりです。正社員のアナウンサーというのは大変少ない。日本テレビは、アナウンサーですが男性十八人に対して女性は十一人。TBSは男性が二十八人、正社員の女性アナウンサー十二名、ABCに至っては男性三十七人に対して女性のアナウンサーはゼロです。また読売テレビも男性アナウシサー十二人に対して女性はゼロです。またOBCは十一人の男性に対して正社員の女性アナウンサー五人、こういう状態です。  そういうところからきょうはこの資料をお配りいたしましたが、これも日本リクルートセンターからの資料を抜粋しまして私がつくり直したものですが、これを見ますと、四大卒を大変たくさん採用していると最近新聞などで言われておりますこの向かって左側の資料の上から五までです、私はこれは多いと思いませんので会社の名前は申しませんが、これだけ多いと言われているこの一流企業でも一六・四%しか女性が採用をされていない。募集がこうなっているわけですから、採用も一六・四%。また銀行、生命保険会社に至っては、あれだけたくさんの低賃金の勧誘員を抱えておきながら、正社員や四大卒の社員というものは銀行、生命保険会社は一三・八%です。また、放送テレビ関係も一四・一%というふうに女性の採用が際立って少ないわけです。  これは義務教育の中で、男女平等で一緒に勉強してきた若い人たちの未来に対する夢を大変につぶすというふうに思います。今度のこの平等法ができるのではないか、まさか均等法とは思っておりませんので、平等法ができればこうしたものが少しでも解決の方向を向くのではないか、若い人たちは夢をふくらませてこれを待っていたわけです。これに対して、この均等法案が通れば今のような状態がどの程度改善の方向に向くのか、大臣にお尋ねをしたいと思います。
  207. 坂本三十次

    坂本国務大臣 女性の、特に今例示されたような若い大卒の女性などの門は大変狭いということは、あなたのおっしゃるとおりだと私は思っています。それを今度は門を広げようというわけなんです。そういう意欲もあるし、そしてやる気もあるし、そして、もう今までと違いまして入社しても男に負けないでやりたいという元気もあるのですから、そういう人が入り口で切られてしまうということは残念なことなんで、将来に向かってそういう意欲のある女性というものは、これから何百万、何千万出てくるかわからないわけですね。これから何十年にわたってそういう女性の能力を開発したい。そのためには差別撤廃条約趣旨にのっとって今度の改正もしたい、こう思っておるわけでございまして、今あなたのおっしゃったこれからの若い女性に何とかして門戸を広げさせるという趣旨については、私は非常に賛成なんです。  ただ、今現実に働いている人に大変な変化を与えてもこれまた不安が大きいですから、それはやはり徐々に進めていくにしましても、将来のそういう若い女性をひとつ何とか、意欲と能力があるのですから、働きたいという人に門戸を広げたいというのが確かにこの法案の大きな眼目であると思っております。
  208. 田中美智子

    ○田中(美)委員 大臣、私が聞いていることに簡潔に答えてください。私の考え方に賛成か反対がなんて聞いてないのです。あなたが出している法案でこれが直るかと聞いているのですよ。答えられないんじゃないですか。努力をすればって、どういう努力をするんですか。
  209. 坂本三十次

    坂本国務大臣 よくなっていくと思いますよ。間違いなく前進をいたします。
  210. 田中美智子

    ○田中(美)委員 間違いなく前進するということをきちっと記録にとどめおいていただきましょう。どういう努力をするのか。少しずつ努力をすれば、来年はブスのところは切りましょう、再来年はチビのところは切りましょう、その翌年はメガネを切りましょう、その次はカッペを切りましょう、百年努力してもこの法案では努力になるのです。これでいいということになるのです。あなたが私の言うことに賛成ということは、現状がそのとおりだということに賛成しているのであって、決してよくなるはずはない。しかし、これはもう結構です、私は時間がもうあとちょっとしかありませんから。私に対するきちっとした答えをしていない。  その次に、第八条の昇進昇格のところで、先ほど赤松局長が、女子は働く年限が短いからということを何回も言いました。働く年限が短いということは、現状の計算をすれば確かに働く年限が短い。短くさせられてきているんじゃないですか。この状態を直すために、今度の雇用平等法をつくり、そして差別撤廃条約批准しよう、男の役割、女の役割というものを変えていこう、間違っているから変えていこうというのに、現在女の働いた時間が短いからだから昇進、昇格はいいんだ、努力でいいんだ。結局今のところは、あなた方の出している、これは衆議院の社会労働委員会の調査室の出しておる資料ですよ、これでも女は部長相当まではわずか五・四%しかいっていないのですよ。こういうものを見ても、いかに女の昇進がこれは鶏か卵がという論理ではありません。あなた方の方は、まさに女が働かないからこうなっているんだ、こういうことで、今後この昇進やなんかがよくなる可能性があるでしょうか。赤松さんは長くなりますので、一言簡単にお願いいたします。
  211. 赤松良子

    赤松政府委員 簡単に申し上げますが、よくなると思います。
  212. 田中美智子

    ○田中(美)委員 九条の「教育訓練」のところですけれども、これはある銀行の現在やっております教育訓練です。女性の場合には職場のルール、執務上の心構え、また行員としてのあり方、職場のマナーと心構え、顧客への応対、電話応対、こういう教育訓練がなされております。男性の方は当行の営業推進体制、銀行の収益の仕組み、証券業務の概要と当行の現状、銀行商品解説、こういうふうに、女性の方は銀行員のあり方としてのマナーとか電話の応対、また男性には銀行業務や知識的な内容、明らかに教育訓練のところで現在違っているわけです。  これは私もかつて大学におりましたときに、名古屋トヨペットというところの社員教育を三年したことがあります。そのときは女子社員だけ集めて礼儀作法です。小松製作所でも、私の秘書が入ったことがありますが、ここでも電話のマナー、応対の仕方、こういう教育女性は受けているわけです。ですから、これは一応禁止規定になっていますけれども、こういう教育訓練のあり方というものが、この法案によって、今度は努力義務ではなくて禁止規定ですから、著しく改善されるでしょうか。
  213. 赤松良子

    赤松政府委員 ただいまの先生の御指摘の中で、例えば秘書について接遇訓練をするというようなことは、秘書という業務に必要な訓練でございましょうから、秘書であるからそういう訓練をする、これは違反にはならないのではないかと思います。しかし、同じ仕事に同じ業種で雇われている者について、男子はこれこれ、女子はこれこれと全く違った訓練をすればこの法律の違反になりまして、それは今後この法律によってなくしていくことのできる訓練だと思います。
  214. 田中美智子

    ○田中(美)委員 なくなっていくのだと思います、ということですね。  その次の質問にいきます。  国家公務員宿舎法という法律の中に、住宅いわゆる宿舎に入るときに、「職員及び主としてその収入により生計を維持する者を」という言葉が書かれております。厚生省から出したものにもこういうことが書かれています。これが一般の民間では非常に大きく使われているわけです。この間は赤十字病院でも「主たる生計を維持している者」ということで、女性をそれから外そうという動きがありました。私は、この赤十字の本社に乗り込みましてこれを食いとめることができたわけですけれども、一般の企業では私が繰り込んでもなかなかそうすることはできないわけですね。これは十条、十一条の「福利厚生」「定年、退職及び解雇」のところにかかわってくるわけですけれども、何かと言えば女は家計の主とした維持者から外されていく。住友重機の「勇退(首切り)基準」というのがあるのですけれども、この中で「共稼ぎの者で配偶者の収入で生計が維持できる者」ということになっています。だんなの給料が少しでもよければそれで維持できるんだからということで、高橋富美子さんという人の首を切っているのです。これはこういう公務員のやり方を、政府のやり方をみんな企業がまねしてやっているわけですね。  そうすると、この均等法があなたのおっしゃるようにすばらしいものであったとしても、福利厚生にしても教育訓練にしても定年、退職、解雇にしても、これはみんな主たる家計の維持者ではないんだということになって、つくられたものが実際には女性には適用されない。女だから差別するのではないんだ、家計の維持者ではないからこういうものはしないんだ、女だから差別するのではないんだ、残業や深夜勤を嫌がるからこれにはこうしたものは与えないんだ、住宅一つにしても住宅資金を貸すにしても手当にしても、いろいろなことでこれから結果的には女が外されていく、こういうものに対してこの法律がどれくらいの歯どめになるのか、お答え願いたいと思います。
  215. 赤松良子

    赤松政府委員 福利厚生という面につきましては、それが女性であるという理由差別されているのであれば明らかに禁止規定に該当すると思いますので、先生がお乗り込みにならなくてもこの法律で違反となり、婦人少年室長も行政指導ができることになり、その行政指導の根拠がはっきりすることになると思いますので、その種類の差別は今後減ると思います。
  216. 田中美智子

    ○田中(美)委員 全くこれに対しても、私の質問に対して当たった答えをしてこない。私が何遍も言っているのは、女としてでなく主たる生計の維持者、ちょっと大臣、こっち向いてください。主たる家計の維持者というのは一体どういうことですか。妻と夫が共稼ぎしている場合、どういうところで区別するんですか。答えてください、大臣
  217. 赤松良子

    赤松政府委員 この法律は、女性であることを理由とした差別を禁止しているものでございます。したがいまして、主たる生計の維持者ということがその家計に一人であると考えられる場合は、合理的な判断基準でなされた場合はこの法律の対象とならないと思います。しかし、その基準が男女全く別々に設けられているということであればそれは対象になると思います。
  218. 田中美智子

    ○田中(美)委員 そうすると、結局は女であるから差別はしないんだ、そのかわり主たる家計の維持者ではない、また残業や深夜勤を嫌がるということになれば、結果的にどんなことになってもこの法律は構わないということを言っているわけですね。
  219. 赤松良子

    赤松政府委員 残業や深夜勤というふうに、どのような関係で結びつくのかは理解が多少できにくい点がございますが、男子と女性と別々の基準で設けられたような場合にはこの法律の違反になると思います。
  220. 田中美智子

    ○田中(美)委員 別々に設けられていなければ女の場合はなかなかできないじゃないですか。今だって残業はなかなかできないじゃないですか。わかり切っているのにそういうことを言っている。  もう一つ大臣に聞きますけれども、家計の主たる維持者というのは、夫と妻が共稼ぎしているときはどっちですか。赤松さん、おたくのだんなは大学の先生だそうですけれども、どちらが家計の主たる維持者ですか。
  221. 赤松良子

    赤松政府委員 私の夫は、若いときは大学の教授ではなくて研究生でございました。そのときは私の扶養家族でございましたので、私は扶養家族手当を私の名前でもらっておりました。公務員については非常に平等だったと思っております。
  222. 田中美智子

    ○田中(美)委員 私は若いときのことなんか聞いていません、今を聞いているのです。家計の主たる維持者というのは、大学の研究者で金を持ってこないときは扶養家族になるのは当然ですよ。両方が働いていてお金を持ってきているときには、どっちが主たる家計の維持者かと言っているのですよ。どっちですか大臣、答えてください。
  223. 赤松良子

    赤松政府委員 それはどちらかと申しますと多い方が主たるということになると思います。
  224. 田中美智子

    ○田中(美)委員 それでは幾ら多かったら、一円でも多かったら多い方が主たる家計の維持者ですか。男は、酒を飲んだりばくちをしたり外で遊んだりして家へ持ってくる金が少ないときがあるでしょう、そういうときはどうですか。家へ持ってくるお金ですよ。女は全部家へ持ってくる、こういう場合。例えばと言っているのです。すべての男がそうだと言っていません。男にはそういう傾向がある。女はみんな家計に安い賃金だけれども持ってくる。男は高い賃金だけれども外で遊んで家へ少ししか持ってこない。それで、どちらが多いと計算するのですか。答えてください。
  225. 赤松良子

    赤松政府委員 多い方が多いとしか言いようがないわけでございまして、マージャン狂いをする人は女にもいるように思います。
  226. 田中美智子

    ○田中(美)委員 恐れ入りました。これが日本国の婦人少年局長かと驚きました。  私は、きょうわずか三十五分の質問でしたので、本当に大事な点だけを指摘したわけですが、これに対して胸を張って何一つ答えていない。婦人に対するこういう不満が解消するかと言うと、しないと思う。その次は、私は悪くならないと思う。よくなるとは言ってないのです。手元にないので、実態がわからないから、やってみなければわからない。大臣は、ただ、私の意見に対して、賛成だ、軽くよくなることだと思う。女性だけを差別すればいけないが、それ以外の合理的なものならばいいのではないか。こういうお答えしかないのです。ということは、いかに今度の均等法に対する労働省自身の自信がないかということです。今日本じゅうの婦人が非常に失望しているのです。婦人局長はあなた一人しかいないのですよ。あなたという人がどういう人か知りません。しかし、そこに婦人がいるのだ、婦人参政権に匹敵するようなものができるのだ、こういう期待というものをどんなに後進国と言われた日本の女たちが待ったか、それはあなたの肩に相当かかっていたと思うのです。そこに、例えば自民党からどのような圧力がかかったかわかりませんし、政府からどのような圧力がかかったかわかりませんが、しかしはっきりわかっていることは、財界からの物すごい圧力がかかったということは、新聞などの報道で明らかなことです。あなたの立場でそれに抵抗できなかったとしたら、それに屈してこのような法律をつくったならば、つくらなければ仕方がないというところに置かれたならば、けつをまくったらどうですか。(発言する者あり)辞職願を出したらどうですか。日本の歴史に、まさに女性の歴史に汚点を残すようなところに、あなたが今座っているということです、このままの法律が通るならば、それは同じ女として、あなたの胸の中には無念さがあるに違いないと私は思うのです。だからこんな回答しかできないのです。胸を張って答えられないのです。あなた自身が抵抗できないということはよくわかります。それならば辞職したらどうですか。そうすれば日本じゅうの婦人があなたを守ると私は思うのです。  私はそれを強く要求して、この法案、顔を洗って出直してほしいということを最後に訴えて、質問を終わります。
  227. 坂本三十次

    坂本国務大臣 この雇用均等法が通れば、婦人地位は私は着実であっても必ず前進をすると思います。  赤松局長の責任問題をあなたがおっしゃいましたが、赤松局長はベストを尽くしたわけであります。責任は私にあるわけであります。私の判断で、この法律は国民に期待をされるものと信じて提出をしたわけであります。(田中(美)委員「あなたは何も期待はしていません。」と呼ぶ)
  228. 有馬元治

    有馬委員長 江田五月君。
  229. 江田五月

    江田委員 委員各位の御理解をいただきまして、私たち最小会派ですが、三十分という質問時間をいただきました。大臣もそれから赤松局長も随分痛めつけられたのでお疲れでしょうが、ひとつ貴重な時間ですので簡潔にお答えを願いたいと思います。今の田中委員の質問の中にもあったのですが、私は、まず最初に、大臣には恐縮ですが、赤松局長の感想を伺いたいと思うのです。婦人差別撤廃男女の平等というのは大変に長い長い闘いの歴史があったと思うのですね。母系社会の時代というのは一部に一ときありましたけれども、大部分の歴史がやはり男の方が優位の歴史であって、その間にずっと、何とかして差別をなくしていきたい、男も女も同じ人間じゃないかということで闘いが続いてきた。日本も、戦前は民法では女子が無能力だ、あるいは参政権はない、あるいはまた、男は幾ら姦通してもいいけれども女は姦通すると罪になる、そういう時代があって、戦後改革、さまざまな法律の制度がたくさんできてきた。そして今こういうところに来ました。しかし、現実にはまだまだ男女差別というものがある。  こういう中で、女性に対する目がまだ非常に厳しい時代に大学を卒業なさって、いろんな差別の中で、雇用における男女の平等を実現する最先端の責任を負っている労働省というところに、働く女性として入省されてウン十ウン年ということなんだと思いますが、今も質問があったとおり、赤松良子さんというのは、私たちにとっても、もちろん全働く婦人にとってあこがれの的なんですね。  ついこの間、三淵嘉子さんがお亡くなりになりました。私も前に裁判官をやっておって、やはり本当にすぐれた裁判官だと尊敬をしておりました。こういう場では男女差別が全くない、それだけの実力を示してこられたわけですから。  そこで、そういう赤松さんが、今担当の省におられて、この男女雇用機会均等法提出をされてどういう感想をお持ちか。あなたの半生から見てというとちょっと長くなりますから、そのポイントのところだけちょっと伺いたいと思います。
  230. 赤松良子

    赤松政府委員 大変しゅんとするような御質問でございます。  私は、長い間働いてきて、男女差別というものは大変よくないものだというふうに思い続けてきたわけでございます。それから、国連の公使に行っておりましたときに、この差別撤廃条約が採択されまして、採択されたその瞬間に、日本政府代表として参加することができたのも大変喜びに思っているわけでございます。そのとき議場には大勢の女性の代表、女性ばかりではございません、この差別撤廃条約の採択を喜ぶ男性政府代表も大勢おられました。その方たちと、非常に大きな感激で喜びを分かち合ったことは、今でもまざまざと記憶をしております。  また、コペンハーゲンで日本政府代表が署名をいたしましたときの感激も忘れることはできないわけでございます。  そして、その仕事を終わって労働省に復帰いたしましたときに、まさにこの条約批准するための一番大きな、いわば難物ともいうべき雇用における男女機会均等法を成立させるという任務に当たったことは、大変難しいと同時に生きがいでもあったわけでございます。いろいろ限界はございましたが、そのために私としてはベストを尽くしたつもりでおりまして、私がやめることによってもっといいものができるのならばいつでもやめたでございましょう。でも私はそうは思わなかったわけでございます。
  231. 江田五月

    江田委員 御努力に敬意を表しますが、赤松さんにとって今思い返してみて、やっとここまで来たという思いもおありでしょうが、この男女差別をなくしていく、女性差別をなくして男女の平等を実現していく闘いは終わったんでしょうか、それともまだまだこれから続くのでしょうか。
  232. 赤松良子

    赤松政府委員 差別をなくすことは、これまでも長い歴史がございましたけれども、決して終わったわけではなくて、これからますます大きな仕事があるわけでございまして、まさにこの法律をてこにしてそれが進めやすくなるというふうに私は思っております。
  233. 江田五月

    江田委員 この法案をてこにしてこの男女差別をなくす運動か進めやすくなる、そうおっしゃいましたが、それじゃこの法案男女差別をなくするという目的から見て本当に十分なものができた、本当に満足すべきものができたというふろにお考えですか。それとも、現実にはいろんな束縛があります。だから、どこまでいけるかというのは非常に難しいですが、これから例えばこの男女差別をなくしていく長い長い歴史が進んでいく中で、この法案法律としてはもうでき上がった、こういうお感じですか。それとも、もっともっと事態を進めて、もっとすばらしい法律をつくるということが課題としてこれから残るんだとお感じですか。どちらですか。
  234. 赤松良子

    赤松政府委員 この法律は百点満点だとは決して思っておりません。いろいろな制約の中で現実に見合ったものにしなければならない、余りに現実と遊離したものではワークしないのではないかという考慮もございましたので、いろいろな点で不十分な点があることは審議会の答申の中にも言われているとおりでございます。したがいまして、審議会の答申にございますように、見直しを今後も引き続き行っていくべきものだというふうに思いますし、また条約の中にも、これらのことは常に科学的な知識に照らして定期的に検討していくべきものだというふうにも書かれていることにもかんがみまして、そのようなことはずっと必要だと思います。しかし、この法律があることによって、その進歩が現実により具体的になるというふうに私は信じております。
  235. 江田五月

    江田委員 私も意見はいろいろありますけれども、私自身の意見で言えば、この法律がない方がいいというようなそんな法律ではないと思うのです。ただ、今の百点満点ではないにしても、もうちょっとこれよりいい点数がとれるのじゃないか。現実に今すぐ理想的な、男女差別が全くない世の中をそのまま法律に移しかえたような法律ができる時代にはまだ日本は来ていないかもしれないけれども、もうちょっといい法律がそれでもできるのじゃないか。あるいはひょっとしたら、この法律は、確かにない方がいいというわけではないけれども、部分的にはこれは困るなあという内容を持っているという意見は今までもなくさん出されましたし、私もまたそういうような意見に同感の部分もあるわけです。  婦人差別撤廃条約が目指している世の中と、この今の法律案が完全に実現された場合に予定される世の中の秩序と、これは同じでしょうか、どうでしょうか。
  236. 赤松良子

    赤松政府委員 目指すところは同じではないかと思います。しかし、この法案はそれを一挙に実現するという方法はとっておりませんで、時間をかけてそれをスロー・バット・ステディーに目指しているというふうに考えております。
  237. 江田五月

    江田委員 大臣は今のような点、どうお考えですか。  例えば、私は、婦人差別撤廃条約では男女差別は募集、採用、配置、昇進、あらゆる段階で禁止されているという、そういう秩序を予定していると思うのですね。しかし、この法律自体は禁止されているという秩序を実は予定をしていないのです。この法律はあくまで、そういうためにみんなで努力しましょうというところまでしか予定していない。だから、この法律というのは今の婦人差別撤廃条約への一里塚だということなのか。それとも、今の日本社会だと、条約条約だけれども、実際の秩序としてはこんなものですよというお考えですか。どうですか。
  238. 坂本三十次

    坂本国務大臣 目指すところは、現在、特に日本におきましては婦人差別のあることは事実でありまして、それには歴史的な長い経過もあったでありましょう。しかし、その差別撤廃しようとして私どもはこの法案をつくっておるわけでございまして、今局長も申しましたように、これそのものが百点満点だと私も思いませんけれども、いや、百点でなくったって、仮に八十点だ、九十息だとしても、しかし、そういう理想に向かっての大きな跳躍台になるという点では私は歴史的な一歩だ、こう思っております。
  239. 江田五月

    江田委員 いずれにしても、この法案がもう十分のものだ、ここまで来た、もうこれで、男女の問題は少なくとも法制度では、日本社会雇用の面においては法律の制度としてはもう終わった、そういうものではない。これはいいですね。そういう認識だけしっかり持っておいていただかないと困ると思うのですね。  そこで、それならば、つまり婦人差別撤廃条約が目指すもののところまではまだいっていないのだとするならば、せめて目的とか理念ぐらいは、婦人差別撤廃条約が予定をしておる秩序、そういうものをうたいとげるというようなものであっていいんじゃないか。実際の規定についてはそれはいろいろあるでしょう、現実の日本の世の中ですから。皆さん方も、先ほどから話が出ておりますが、財界からの圧力もこれは私もあっただろうと思います。しかし、せめて目的、理念、ここはもっとはっきりしたものにした方がいい。  私は、この「目的」の「もって女子労働者の福祉の増進と地位向上を図る」というのは、これはやはりいただけないと思うのですね。福祉ということと男女雇用の面において差別されないということとは同じなんでしょうか。福祉というのはあくまで、憲法の考え方で言うと社会人権と言われるわけですね。ところが、差別をされないということは社会人権なんでしょうか。もっと進んで憲法十四条の課題なんで、これはいわば自然的人権、つまり長い歴史の中で言えば、ロックだ、モンテスキューだという時代にまでさかのぼるそういう人権じゃないのですか。何か福祉についていろいろ言葉を言われているようですが、そういうものと違う、差別をされないということはもっともっと一もちろん社会人権も今重要な課題ですが、その社会人権のさらに基礎にある、どうしても侵し得ない人権だと思うのですが、どうですか。
  240. 赤松良子

    赤松政府委員 今まで申し上げたことと違う、変わりばえのする御答弁が余りできないので非常に残念でございますが、「福祉」の概念が広いということを御理解いただきたいと思います。そしてその「福祉」の概念の中に男女の均等な機会待遇確保するということが含まれ、そのことは婦人地位向上ともつながるということで、「目的」が書かれているわけでございます。  勤労婦人福祉法の中にもその芽生えがあったわけでございまして、勤労婦人福祉法ははっきり福祉を目指した法律でございましたが、しかしその中にも、女性が「母性を尊重されつつしかも性別により差別されることなく」という文言があったわけでございます。その文言があったことを受け、そしてさらに具体的な措置をつけ加えることによって、この法律を抜本的に改正し、具体的な措置を明らかにした、こういうふうに考えている次第でございます。
  241. 江田五月

    江田委員 局長は、おわかりになっているとは思うのですが、なかなかおっしゃりにくいのかもしれませんが、三条ですね。この三条は、女子労働者に何を求めているのですか。
  242. 赤松良子

    赤松政府委員 三条もこれは今度の改正で書きかえられた部分でございますが、勤労婦人福祉法の場合は「勤労婦人は、勤労に従事する者としての自覚をもち、みずからすすんで、その能力を開発し、」云々とございましたが、新しい条文では「労働に従事する者としての自覚の下に、」というふうに今度の趣旨を取り入れた表現にし、また「その能力の開発及び向上を図り、」というふうに修文をしたわけでございます。
  243. 江田五月

    江田委員 読んで字のごとしと言えばそうですが、二条と三条が基本的理念でしょう。二条は、いろいろ書いてあるけれども、結局中身はよくわからぬのですね。「女子労働者は、経済及び社会の発展に寄与する者」だ。経済及び社会の発展は男子だって寄与するわけです、女子ほどじゃないかもしれないけれども。「家庭の一員として次代を担う者の生育について重要な役割を有する」、こちらも女子以上に、あるいは男子の方が役割を果たしているとも言えるのですね。ここで女子労働者はこうこうであることにかんがみ、こう言ったって、男女の差は全然出てきていないのです。「母性を尊重されつつ」という点では、これは確かに女性女子労働者ですがね。「性別により差別されることなく」、これは男子ももちろん差別されてはいけないのです。「その能力を有効に発揮して」というのは、何か有効に発揮して一生懸命働け、こう言われているような感じです。「充実した職業生活を営み、」、これも男子にも当たることです。「職業生活と家庭生活との調和を図る」、これも男子にも当たることです。二条の方は何も言っていない。ただ「女子労働者は」「配慮されるものとする。」だけしか言っていない。女子労働者は配慮されるものであるのだ。  そして三条の方は、「女子労働者は、労働に従事する者としての自覚の下に、自ら進んで、その能力の開発及び向上を図り、これを職業生活において発揮するように努めなければならない。」、女子労働者というのは配慮されているんだからしっかり働きなさいよ、自分で自分の能力の開発及び向上を図って頑張りなさい、これが基本理念ですか。  そうではなくて、差別は本来基本的人権にも反するのだ、あるいはまた人間の尊厳にも反するのだ、かつ経済及び社会の発展を阻害するものだ、だからすべての女子雇用における機会及び待遇について差別を受けない、女子労働者に課せられることは、そういうような差別がある場合には進んでこれを直していく、これからは長い長い歴史の中で先輩が築いてきたこの女子地位向上というものを自分たちが担っていくんだ、そういう自覚のもとに差別をなくしていく営みに積極的に参加していかなければならぬ、こういうことでなければいけないのじゃないですか。  本来婦人差別撤廃条約日本で実現しよう、その理念を掲げようとするとき、この理念というのはまことにどうもお粗末きわまりないと思うのですが、いかがですか。
  244. 赤松良子

    赤松政府委員 均等法の二条は、前段で、家庭生活を含めた我が国社会生活において女子の果たしている役割について述べた上で、後段で配慮事項を規定したものでございます。先生の御指摘のとおり、「現実に女子労働者差別を受けていることにかんがみ」という規定の方法は確かにあり得ると存じますけれども、そういう方法をとりますと、後段の「職業生活と家庭生活との調和を図ること」というところの据わりか悪くなるということでございます。それで、家庭生活と職業生活の調和ということは、先生がおっしゃいましたように男子労働者にとっても重要なことであって、女子労働者についてのみ重要というふうに考えている趣旨ではございませんが、我が国の現状においては、女子がより多く家事や育児の負担を背負っているというのが現実でございまして、このことが女子の就業のあり方に大きな影響を与えているということも否定できませんので、女子労働者について、職業生活と家庭生活との調和を図ることがより容易になるような配慮をするということは、事実上の平等の促進という見地からも意味のあることで、そのような配慮がされるべきだということを第二条にも明定したわけでございます。その意味から申しまして、ただいま先生の御指摘のような「かんがみ」という表現よりは、現在ある表現の方がこの法律全体としては適切ではないか、このように考えておるわけでございます。
  245. 江田五月

    江田委員 もう何か本当に気の毒になってくるのです。先ほどの公序良俗の説明でも同じなんで、公序良俗というのは時代によっていろいろ変わるのです。中身が変わるのです。こういう基本的理念を出されますと憲法十四条の中身がここまで小さくなってしまって、何だか今の日本男女の差が、非常に激しい雇用の現場というのが当たり前なんだ、公序良俗というのは公の秩序、善良の風俗でしょう。今の世の中の常識というのはこんなものだからというので、これは公序良俗というような判断基準から見て、女性差別されていることが何ら不思議ではないということになってしまう。そうではないのだという一つの基準をはっきり示す。女性差別をされないということは権利なんだ。権利というのは一体何かというと、自然のままで置いておったら人間というのは弱肉強食になっていくわけです。だから、そういう力と力の対決だけではなくて、一つの価値をはっきり定立するのです。これは力と力の対決、自然の成り行きではなくて、こういう価値を我々はみんなで守るのだという、その価値の規範が権利なんです。そういう価値の規範をはっきりとこの基本理念で書いておくことによって、男女差別はいけないのだ、憲法十四条が労働の場で生かされるのだということが公序良俗に初めてなっていくのです。私はこの点では本当に危惧します。  さて、ちょっと話を変えまして外務省に伺いますが、労働基準法を手直しをすることが条約批准のために必要なのだ、手直しという言い方が皆さんの言葉であったかどうかちょっと忘れましたが、こういうお考え、この中身がなぜそうなのかということですが、男と女で差を設けているからいけないのだということなのか。それとも、今までいろいろな検討の結果、どうも女性に不合理ないわれなき労働の場における束縛を課している、そのことが女性労働市場に出ていくについてハンディキャップになっているからいけないのだというのか。どちらなんですか。
  246. 斉藤邦彦

    ○斉藤説明員 この条約の考え方といたしましては、いわゆる女子保護規定というものは、女子の採用とか昇進とかいう面において女子の利益を阻害する結果になるという認識のもとに、女子保護規定というのは究極的に改廃すべきものだという考え方に立っているものと思います。
  247. 江田五月

    江田委員 今のお話し、それでいいですか。女子保護規定は改廃すべきものだ、それが外務省の見解でいいですか。
  248. 斉藤邦彦

    ○斉藤説明員 ただいま申し上げましたのは、条約が目的としているところは、究極的には女子保護規定は改廃されるべきだということを申し上げた次第でございます。
  249. 江田五月

    江田委員 外務省、男子についても労働時間の問題、あるいは深夜業の問題その他について、今の女子保護規定と同様の規制を設けるということはいけないのですか。
  250. 斉藤邦彦

    ○斉藤説明員 この条約が問題にしておりますのは、男子と女子の間の差別の問題でございます。したがいまして、その差別がなくなるという限度におきましてそれをどの水準でなくするかということは、条約のあずかり知らぬところであります。
  251. 江田五月

    江田委員 先ほどの説明と変わったわけですね。いいですか、変わったわけですね。
  252. 斉藤邦彦

    ○斉藤説明員 私が女子保護規定と申し上げましたのは、女子を男子と区別をして特別の保護を与えている規定という趣旨で申し上げましたので、女子差別して扱っているもの、これを女子保護規定と申し上げた次第でございます。
  253. 江田五月

    江田委員 ちょっとよくわからないのですが、とにかく男子の労働条件についても、今の労働基準法にある女子に対するさまざまな規制と同様のものをつくれば、これは婦人差別撤廃条約の要請に合致することになる、これはいいですか。
  254. 斉藤邦彦

    ○斉藤説明員 そのとおりでございます。
  255. 江田五月

    江田委員 そうすると、女子についての労働条件についての規制を取り払うのか、それとも男子についての労働条件に新たないろいろな規制を加えるのか、どっちを選択するかというのは、どういう方向を向いていくかですね、どっちを歩いていくかということの判断、選択ですね。今、婦人差別撤廃条約が目指しているのは、そこはニュートラルですか、それともこういう方向があるじゃありませんか、家庭責任は男も女もどっちも負っているのだということを書いてありますね。家庭責任を果たすために、今の日本では家庭責任、現に婦人の方が重く肩にのしかかっているから、労働時間にしても、深夜業にしても、その他にしてもいろいろな規制がある。男も家庭責任を果たそう、そういうことになるならば、男の方にも労働時間を短かくする、深夜業をなくする、そういう方向を選ばなければならぬ、それが婦人差別撤廃条約の示している方向じゃありませんか。どうですか。
  256. 斉藤邦彦

    ○斉藤説明員 条約の解釈に限ってお答えいたしますけれども、外務省の考え方といたしましては、この条約の目的としているところは婦人に対する差別撤廃でございます。それをどういう手段で実現するかということは、労働政策上の問題になるかと存じます。
  257. 江田五月

    江田委員 差別撤廃といっても、みんなが奴隷になったらいいというものじゃないでしょう。やはりある種の方向があるんだ。一番最初にこの条約に書いてあるじゃありませんか。一番最初国際連合憲章が出てくるのですね。「基本的人権人間の尊厳及び価値と男女同権とに関する信念をあらためて確認している」、こう出てくるわけです。やはり一つの方向性を持っているわけで、とにかく男と女が全部、みそもくそも一緒になればいい、そういう条約と違いますよ。  さて、時間がもうありませんので、最後に労働省の方に伺いますが、今私の言った婦人差別撤廃条約というのは、つまり一つの方向を持っているので、そのどちらの、今の婦人差別撤廃条約が目指しているような男も女もともに、例えば家庭責任も一緒に果たしていきましょうという方向を選択するのか、それとも雇用の場における使用者の御都合だけを考えて、本当にどんどんみんなが働け働けと、ただそれぞれの労働能力において、しかも労働者それぞれが自分の能力を向上させて働くことだけにいそしむ、そういう方向を目指すのか、これは一体どうなんですか。私は、労働省となれば、そういうただいたずらに労働強化につながる、働け働けという方向になっていくそういう道ではなくて、もしどうしても労働基準法に手をつけなければならぬとするならば、私は必ずしもそうは思わぬけれども、もしそうだとするならば、せっかく女子労働者にできている一つの保護、こういう労働こそが人間としての労働なんですよという労働についての一つの基準を、この際男子にも持ってくる、そういう方向で頑張るべきじゃないかと思いますが、いかがですか。
  258. 赤松良子

    赤松政府委員 先生おっしゃいましたように、労働省労働者の福祉の向上を任務としている役所でございます。したがいまして、男女の平等ということがより高い水準で果たされるということは望ましいことだと存じます。
  259. 江田五月

    江田委員 今の答弁はかなり重要ですね。とにかく高い水準で果たされることは望ましいと、こうお答えくださったわけで、そのことはみんなでこれから実現をしていかなければならぬ課題だと思います。ひとつ労働省、頑張ってください。  この男女機会均等法、平等法というのは歴史的な法律なんで、歴史的な第一歩を踏み出すに当たって、みんなで知恵を絞ってすばらしい法律にするように、労働省の方も、政府の方も自分の出したものにこだわることなく、みんなの知恵をひとつここで合わせていこうじゃないかという姿勢でこれからの審議に臨まれることを希望して、質問を終わります。(拍手)
  260. 有馬元治

    有馬委員長 次回は、明四日水曜日午前九時三十分理事会、午前十時公聴会を開催することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時五十五分散会