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1984-05-08 第101回国会 衆議院 社会労働委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年五月八日(火曜日)     午前十時一分開議  出席委員  委員長 有馬 元治君   理事  愛知 和男君 理事 稲垣 実男君   理事  今井  勇君 理事 丹羽 雄哉君   理事  池端 清一君 理事 村山 富市君   理事 平石磨作太郎君 理事 塩田  晋君       伊吹 文明君    稲村 利幸君       古賀  誠君    斉藤滋与史君       自見庄三郎君    谷垣 禎一君       友納 武人君    長野 祐也君       西山敬次郎君    野呂 昭彦君       浜田卓二郎君    河野  正君       多賀谷真稔君    竹村 泰子君       永井 孝信君    森井 忠良君       大橋 敏雄君    沼川 洋一君       橋本 文彦君    森本 晃司君       小渕 正義君    浦井  洋君       小沢 和秋君    菅  直人君  出席国務大臣         労 働 大 臣 坂本三十次君  出席政府委員         労働大臣官房審         議官      野見山眞之君         労働省労働基準         局長      望月 三郎君         労働省婦人少年         局長      赤松 良子君         労働省職業安定         局長      加藤  孝君         労働省職業安定         局高齢者対策部         長       守屋 孝一君  委員外出席者         厚生省年金局企         画課長     渡辺  修君         労働省職業安定         局雇用保険課長 齋藤 邦彦君         社会労働委員会         調査室長    石黒 善一君     ――――――――――――― 委員の異動 五月八日  辞任         補欠選任   森下 元晴君     渡辺 秀央君   田中美智子君     小沢 和秋君 同日  辞任         補欠選任   小沢 和秋君     田中美智子君     ――――――――――――― 四月二十七日  身体障害者福祉法の一部を改正する法律案(内  閣提出第五八号)(参議院送付) 同月二十五日  児童扶養手当制度改正反対等に関する請願  (小谷輝二君紹介)(第三六〇九号)  食品添加物規制緩和反対食品衛生行政の充  実強化に関する請願草野威紹介)(第三六  一〇号)  同(宮崎角治紹介)(第三六一一号)  同外三件(天野等紹介)(第三六五七号)  同外一件(竹内猛紹介)(第三六五八号)  同(水谷弘紹介)(第三六五九号)  同(竹内猛紹介)(第三七一一号)  国立病院療養所統合等反対医療従事職員  の増員に関する請願(阿部未喜男紹介)(第  三六一二号)  同(近江巳記夫紹介)(第三六一三号)  同(岡田春夫紹介)(第三六一四号)  同(河野正紹介)(第三六一五号)  同(城地豊司紹介)(第一一六一六号)  同(田並胤明君紹介)(第二六一七号)  同(辻一彦紹介)(第三八一八号)  同外一件(永井孝信紹介)(第三六一九号)  同外二件(水田稔紹介)(第三六二〇号)  同外四件(矢山有作紹介)(第三六二一号)  同外一件(小川省吾紹介)(第三六六〇号)  同(近江巳記夫紹介)(第三六六一号)  同(岡田利春紹介)(第三六六二号)  同(嶋崎譲紹介)(第三六六三号)  同(辻一彦紹介)(第三六六四号)  同外二件(馬場昇紹介)(第三六六五号)  同(浜西鉄雄紹介)(第三六六六号)  同(安田修三紹介)(第三六六七号)  同(横山利秋紹介)(第二六六八号)  同(網岡雄紹介)(第三七一三号)  同(嶋崎譲紹介)(第三七一四号)  同(辻一彦紹介)(第三七一五号)  医療保険改悪反対等に関する請願外二件(小  林恒人紹介)(第三六二二号)  同外一件(近江巳記夫紹介)(第三六七〇号  )  同(佐藤観樹紹介)(第三六七一号)  同(天野等紹介)(第三七一六号)  同(新井彬之君紹介)(第三七一七号)  同(稲富稜人君紹介)(第三七一八号)  同(小澤克介紹介)(第三七一九号)  同(塩田晋紹介)(第三七二〇号)  同(竹内猛紹介)(第三七二一号)  同(中村重光紹介)(第三七二二号)  同外三件(武藤山治紹介)(第三七二三号)  同(村山富市紹介)(第三七二四号)  同(吉井光照紹介)(第三七二五号)  同(渡部一郎紹介)(第三七二六号)  同(渡部行雄紹介)(第三七二七号)  医療保険制度改善に関する請願岩垂寿喜男  君紹介)(第三六二三号)  同(大野潔紹介)(第三六二四号)  同(城地豊司紹介)(第三六二五号)  同外一件(池端清一紹介)(第三六七四号)  同(石田幸四郎紹介)(第三六七五号)  同外一件(山花貞夫紹介)(第三六七六号)  同(網岡雄紹介)(第三七三五号)  同(井上一成紹介)(第三七三六号)  同(遠藤和良紹介)(第三七三七号)  同(菅直人紹介)(第三七三八号)  同外三件(左近正男紹介)(第三七三九号)  同(永井孝信紹介)(第三七四〇号)  同(福岡康夫紹介)(第三七四一号)  同(矢追秀彦紹介)(第三七四二号)  同(吉井光照紹介)(第三七四三号)  同(吉原米治紹介)(第三七四四号)  同(渡部一郎紹介)(第三七四五号)  年金医療雇用保険改悪反対充実改善に  関する請願伊藤茂紹介)(第三六二六号)  同(上野建一紹介)(第三六二七号)  同(大野潔紹介)(第三六二八号)  同(駒谷明紹介)(第三六二九号)  同(左近正男紹介)(第三六三〇号)  同(斎藤実紹介)(第三六三一号)  同(石田幸四郎紹介)(第三六七七号)  同(新村源雄紹介)(第三六七八号)  同(多賀谷眞稔紹介)(第三六七九号)  同(富塚三夫紹介)(第三六八〇号)  同(野口幸一紹介)(第三六八一号)  同(馬場昇紹介)(第三六八二号)  同(浜西鉄雄紹介)(第三六八三号)  同外一件(矢山有作紹介)(第三六八四号)  同(渡部行雄紹介)(第三八八五号)  同(小川国彦紹介)(第三七四六号)  同(小澤克介紹介)(第三七四七号)  同(串原義直紹介)(第三七四八号)  同(武藤山治紹介)(第三七四九号)  同(森本晃司紹介)(第三七五〇号)  同(矢山有作紹介)(第三七五一号)  療術の制度化促進に関する請願岸田文武君紹  介)(第三六三二号)  同(三原朝雄紹介)(第三六三三号)  仲裁裁定完全実施に関する請願島田琢郎君紹  介)(第三六三四号)  同(湯山勇紹介)(第三六三五号)  同(嶋崎譲紹介)(第三六八六号)  同(田中恒利紹介)(第三六八七号)  同(浜西鉄雄紹介)(第三六八八号)  男女雇用平等法パート労働法制定に関する  請願草野威紹介)(第三六三六号)  同(二見伸明紹介)(第三六八九号)  食品添加物規制緩和反対等に関する請願(近  江巳記夫紹介)(第三六三七号)  同(近江巳記夫紹介)(第三六九一号)  児童扶養手当法の一部を改正する法律案の撤回  に関する請願矢追秀彦紹介)(第三六五五  号)  医療保険改悪反対に関する請願池端清一君  紹介)(第三六五六号)  腎疾患総合対策早期確立に関する請願塩田  晋君紹介)(第三六六九号)  医療保険改悪反対充実に関する請願池端  清一紹介)(第三六七二号)  医療保険抜本改悪反対に関する請願外三件  (池端清一紹介)(第三六七三号)  同外一件(網岡雄紹介)(第三七三一号)  同(菅直人紹介)(第三七三二号)  国立病院療養所の廃止及び地方移管反対等に  関する請願元信堯君紹介)(第三六九〇号)  中途失聴者難聴者救済等に関する請願(谷  垣禎一紹介)(第三七一二号)  医療保険制度改悪反対等に関する請願外一件  (村山富市紹介)(第三七二八号)  児童扶養手当制度改悪反対に関する請願池端  清一紹介)(第三七一九号)  同(塩田晋紹介)(第三七三〇号)  国民年金法改正促進に関する請願相沢英之君  紹介)(第三七三三号)  同(佐藤文生紹介)(第三七三四号)  医療保険制度抜本改悪反対充実改善に関す  る請願菅直人紹介)(第三七五二号)  国立腎センター設立に関する請願宮下創平君  紹介)(第三七五三号) 同月二十六日  国立病院療養所統合等反対医療従事職員  の増員に関する請願井上泉紹介)(第三七  五九号)  同(岩垂寿喜男紹介)(第三七六〇号)  同外一件(上田卓三紹介)(第三七六一号)  同(小川仁一紹介)(第三七六二号)  同(工藤晃紹介)(第三七六三号)  同(佐藤祐弘紹介)(第三七六四号)  同(津川武一紹介)(第三七六五号)  同(辻一彦紹介)(第三七六六号)  同(中島武敏紹介)(第三七六七号)  同外一件(遠藤和良紹介)(第三八五二号)  健康保険法改正反対等に関する請願経塚幸夫  君紹介)(第三七六八号)  同(佐藤祐弘紹介)(第三七六九号)  同(瀬崎博義紹介)(第三七七〇号)  同(瀬長亀次郎紹介)(第三七七一号)  同(田中美智子紹介)(第三七七二号)  同(津川武一紹介)(第三七七三号)  同(辻第一君紹介)(第三七七四号)  同(中川利三郎紹介)(第三七七五号)  同(中島武敏紹介)(第三七七六号)  同(中林佳子紹介)(第二七七七号)  同(不破哲三紹介)(第二七七八号)  同(藤木洋子紹介)(第二七七九号)  同(三浦久紹介)(第三七八〇号)  同(簑輪幸代紹介)(第三七八一号)  同(山原健二郎紹介)(第三七八二号)  医療保険改悪反対等に関する請願梅田勝君  紹介)(第三七八三号)  同(不破哲三紹介)(第三七八四号)  同(三浦久君外一名紹介)(第三七八五号)  同外一件(浅井美幸紹介)(第三八五三号)  同(網岡雄紹介)(第三八五四号)  同(上野建一紹介)(第三八五五号)  同(河野正紹介)(第三八五六号)  同(木下敬之助紹介)(第三八五七号)  同(兒玉末男紹介)(第三八五八号)  同(後藤茂紹介)(第三八五九号)  同(田邊誠紹介)(第三八六〇号)  同外一件(玉置一弥紹介)(第三八六一号)  同(宮崎角治紹介)(第三八六二号)  同(渡辺嘉藏紹介)(第三八六三号)  医療保険制度改善に関する請願梅田勝君紹  介)(第三七八六号)  同(浦井洋紹介)(第三七八七号)  同(小沢和秋紹介)(第三七八八号)  同(岡崎万寿秀紹介)(第三七八九号)  同(経塚幸夫紹介)(第三七九〇号)  同(工藤晃紹介)(第三七九一号)  同(佐藤祐弘紹介)(第三七九二号)  同(柴田睦夫紹介)(第三七九三号)  同(瀬崎博義紹介)(第三七九四号)  同(瀬長亀次郎紹介)(第三七九五号)  同(田中美智子紹介)(第三七九六号)  同(津川武一紹介)(第三七九七号)  同(辻第一君紹介)(第三七九八号)  同(中川利三郎紹介)(第三七九九号)  同(中島武敏紹介)(第三八〇〇号)  同(中林佳子紹介)(第三八〇一号)  同(野間友一紹介)(第三八〇二号)  同(林百郎君紹介)(第三八〇三号)  同(東中光雄紹介)(第三八〇四号)  同(不破哲三紹介)(第三八〇五号)  同(藤木洋子紹介)(第三八〇六号)  同(藤田スミ紹介)(第三八〇七号)  同(正森成二君紹介)(第三八〇八号)  同(松本善明紹介)(第三八〇九号)  同(三浦久紹介)(第三八一〇号)  同(簑輪幸代紹介)(第三八一一号)  同(山原健二郎紹介)(第三八一二号)  同(網岡雄紹介)(第三八七二号)  同(井上泉紹介)(第三八七三号)  同(岩垂寿喜男紹介)(第三八七四号)  同(上田卓三紹介)(第三八七五号)  同(上野建一紹介)(第三八七六号)  同(長田武士紹介)(第三八七七号)  同(河野正紹介)(第三八七八号)、  同(木島喜兵衞紹介)(第三八七九号)  同(古川雅司紹介)(第三八八〇号)  同(水谷弘紹介)(第三八八一号)  同(宮崎角治紹介)(第三八八二号)  重度戦傷病者と妻の援護に関する請願井出一  太郎君紹介)(第三八三三号)  同(大塚雄司紹介)(第三八三四号)  労働基準法改悪反対男女雇用平等法制定  等に関する請願梅田勝紹介)(第三八三五  号)  健康保険本人の十割給付堅持予防等給付の改  善に関する請願浦井洋紹介)(第三八三六  号)  同(岡崎万寿秀紹介)(第三八三七号)  同(瀬長亀次郎紹介)(第三八三八号)  同(中島武敏紹介)(第三八三九号)  同(不破哲三紹介)(第三八四〇号)  健康保険本人給付引き下げ反対に関する請願  (柴田睦夫紹介)(第三八四一号)  健康保険本人の十割給付継続に関する請願(柴  田睦夫紹介)(第三八四二号)  政府管掌健康保険等改悪反対に関する請願  (田中美智子紹介)(第三八四三号)  食品衛生法改正及び食品被害者救済法制定  に関する請願外一件(藤田スミ紹介)(第三  八四四号)  被保険者本人の十割給付堅持等に関する請願  (吉原米治紹介)(第三八四五号)  食品添加物規制緩和反対食品衛生行政の充  実強化に関する請願長田武士紹介)(第三  八四六号)  同(竹内猛紹介)(第三八四七号)  医療年金改悪反対充実改善に関する請願  (五十嵐広三紹介)(第三八四八号)  医療保険制度改悪反対国民医療改善に関す  る請願田中美智子紹介)(第三八四九号)  医療保険改悪反対充実改善に関する請願(柴  田睦夫紹介)(第三八五〇号)  同(中島武敏紹介)(第三八五一号)  医療年金雇用保険制度改悪反対等に関す  る請願津川武一紹介)(第三八六四号)  医療保険制度改悪反対等に関する請願網岡  雄君紹介)(第三八六五号)  同(河野正紹介)(第三八六六号)  医療保険制度改悪反対充実改善に関する請  願(田中美智子紹介)(第三八六七号)  児童扶養手当制度改悪反対に関する請願(梅田  勝君紹介)(第三八六八号)  医療保険抜本改悪反対に関する請願野間友  一君紹介)(第三八六九号)  同(東中光雄紹介)(第三八七〇号)  同(山原健二郎紹介)(第三八七一号)  年金医療雇用保険改悪反対充実改善に  関する請願浅井美幸紹介)(第三八八三号  )  同(網岡雄紹介)(第三八八四号)  同(加藤万吉紹介)(第三八八五号)  同(田邊誠紹介)(第三八八六号)  同(藤田高敏紹介)(第三八八七号)  同(横江金夫紹介)(第三八八八号)  健康保険本人十割給付堅持等に関する請願  (中島武敏紹介)(第三八八九号)  療術の制度化促進に関する請願中川秀直君紹  介)(第三八九〇号)  医療保険年金制度改悪反対に関する請願  (不破哲三紹介)(第三八九一号)  仲裁裁定完全実施に関する請願五十嵐広三君  紹介)(第三八九二号)  同(鈴木強紹介)(第三八九三号)  同(細谷昭雄紹介)(第三八九四号)  国立腎センター設立に関する請願三塚博君紹  介)(第三八九五号)  医療保険制度改悪反対国民医療改善等に関  する請願田中美智子紹介)(第三八九六号  )  児童扶養手当制度改正反対等に関する請願  (経塚幸夫紹介)(第三八九七号)  同(田中美智子紹介)(第三八九八号)  同(中林佳子紹介)(第三八九九号)  同(東中光雄紹介)(第三九〇〇号)  同(藤木洋子紹介)(第三九〇一号)  同(藤田スミ紹介)(第三九〇二号)  同(正森成二君紹介)(第三九〇三号)  同(簑輪幸代紹介)(第三九〇四号) 五月七日  年金官民格差是正に関する請願岩垂寿喜男  君紹介)(第三九二八号)  同(安田修三紹介)(第三九二九号)  同(渡辺美智雄紹介)(第三九三〇号)  障害福祉年金受給者所得制限廃止に関する請  願(岩垂寿喜男紹介)(第三九三一号)  同(安田修三紹介)(第三九三二号)  同(渡辺美智雄紹介)(第三九三三号)  在宅重度障害者暖房費支給に関する請願(岩  垂寿喜男紹介)(第三九三四号)  同(安田修三紹介)(第三九三五号)  同(渡辺美智雄紹介)(第三九三六号)  在宅重度障害者介護料支給に関する請願(岩  垂寿喜男紹介)(第三九三七号)  同(安田修三紹介)(第三九三八号)  同(渡辺美智雄紹介)(第三九三九号)  重度障害者終身保養所設置に関する請願(岩  垂寿喜男紹介)(第三九四〇号)  同(安田修三紹介)(第三九四一号)  同(渡辺美智雄紹介)(第三九四二号)  労災年金厚生年金等完全併給に関する請願  (岩垂寿喜男紹介)(第三九四三号)  同(安田修三紹介)(第三九四四号)  同(渡辺美智雄紹介)(第三九四五号)  重度身体障害者雇用に関する請願岩垂寿喜  男君紹介)(第三九四六号)  同(安田修三紹介)(第三九四七号)  同(渡辺美智雄紹介)(第三九四八号)  重度障害者の無年金者救済に関する請願岩垂  寿喜男紹介)(第三九四九号)  同(渡辺美智雄紹介)(第三九五〇号)  労災年金給付改善に関する請願岩垂寿喜男  君紹介)(第三九五一号)  同(木間章紹介)(第三九五二号)  同(渡辺美智雄紹介)(第三九五三号)  身体障害者家庭奉仕員の採用に関する請願(岩  垂寿喜男紹介)(第三九五四号)  同(安田修三紹介)(第三九五五号)  同(渡辺美智雄紹介)(第三九五六号)  国公立病院における脊髄損傷者治療に関する  請願岩垂寿喜男紹介)(第三九五七号)  同(安田修三紹介)(第三九五八号)  同(渡辺美智雄紹介)(第三九五九号)  労災被災者脊髄神経治療に関する請願岩垂  寿喜男紹介)(第三九六〇号)  同(安田修三紹介)(第三九六一号)  同(渡辺美智雄紹介)(第三九六二号)  労災被災者介護料に関する請願岩垂寿喜男  君紹介)(第三九六三号)  同(安田修三紹介)(第三九六四号)  同(渡辺美智雄紹介)(第三九六五号)  健康保険国民健康保険による付添介護人派遣  に関する請願岩垂寿喜男紹介)(第三九六  六号)  同(安田修三紹介)(第三九六七号)  同(渡辺美智雄紹介)(第三九六八号)  労災年金のスライドに関する請願岩垂寿喜男  君紹介)(第三九六九号)  同(安田修三紹介)(第三九七〇号)  同(渡辺美智雄紹介)(第三九七一号)  身体障害者福祉行政改善に関する請願岩垂  寿喜男紹介)(第三九七二号)  同(渡辺美智雄紹介)(第三九七三号)  脊髄損傷治療技術研究開発に関する請願(岩  垂寿喜男紹介)(第三九七四号)  同(安田修三紹介)(第三九七五号)  同(渡辺美智雄紹介)(第三九七六号)  労災年金最低給付基礎日額引き上げに関する  請願岩垂寿喜男紹介)(第三九七七号)  同(安田修三紹介)(第三九七八号)  同(渡辺美智雄紹介)(第三九七九号)  旧々労災被災者労働者災害補償保険法適用に  関する請願岩垂寿喜男紹介)(第三九八〇  号)  同(安田修三紹介)(第三九八一号)  同(渡辺美智雄紹介)(第三九八二号)  重度障害者福祉手当増額に関する請願岩垂  寿喜男紹介)(第三九八三号)  同(安田修三紹介)(第三九八四号)  同(渡辺美智雄紹介)(第三九八五号)  労災重度被災者終身保養所設置に関する請願  (岩垂寿喜男紹介)(第三九八六号)  同(安田修三紹介)(第三九八七号)  同(渡辺美智雄紹介)(第三九八八号)  労災脊髄損傷者の遺族に年金支給に関する請願  (岩垂寿喜男紹介)(第三九八九号)  同(安田修三紹介)(第三九九〇号)  同(渡辺美智雄紹介)(第三九九一号)  労災重度被災者暖房費支給に関する請願(岩  垂寿喜男紹介)(第三九九二号)  同(安田修三紹介)(第三九九三号)  同(渡辺美智雄紹介)(第三九九四号)  労働者災害補償保険法改善に関する請願(岩  垂寿喜男紹介)(第三九九五号)  同(渡辺美智雄紹介)(第三九九六号)  食品添加物規制緩和反対食品衛生行政の充  実強化に関する請願伊藤忠治紹介)(第四  〇二〇号)  同(安井吉典紹介)(第四〇二一号)  医療年金改悪反対充実改善に関する請願  (伊藤忠治紹介)(第四〇二二号)  国民に対する医療改善に関する請願中村茂君  紹介)(第四〇二三号)  医療保険改悪反対充実改善に関する請願(中  村茂君紹介)(第四〇二四号)  国立病院療養所統合等反対医療従事職員  の増員に関する請願外二件(伊藤忠治紹介)  (第四〇二五号)  同(金子みつ紹介)(第四〇二六号)  同(木間章紹介)(第四〇二七号)  同(日野市朗紹介)(第四〇二八号)  医療保険改悪反対等に関する請願木間章君  紹介)(第四〇二九号)  同(多賀谷眞稔紹介)(第四〇三〇号)  同(中村茂紹介)(第四〇三一号)  同外三件(浜西鉄雄紹介)(第四〇三二号)  同(横江金夫紹介)(第四〇三三号)  医療保険制度改悪反対等に関する請願(多賀  谷眞稔紹介)(第四〇三四号)  国民年金法改正促進に関する請願橋本龍太郎  君紹介)(第四〇三五号)  医療保険制度改善に関する請願伊藤忠治君  紹介)(第四〇三六号)  同(左近正男紹介)(第四〇三七号)  同(沢田広紹介)(第四〇三八号)  同(田中恒利紹介)(第四〇三九号)  同(橋本文彦紹介)(第四〇四〇号)  同(矢追秀彦紹介)(第四〇四一号)  年金医療雇用保険改悪反対充実改善に  関する請願小川国彦紹介)(第四〇四二号  )  同(小川仁一紹介)(第四〇四三号)  同(上西和郎紹介)(第四〇四四号)  同(村山富市紹介)(第四〇四五号)  同(矢山有作紹介)(第四〇四六号)  仲裁裁定完全実施に関する請願伊藤忠治承紹  介)(第四〇四七号)  同(安井吉典紹介)(第四〇四八号)  医療保険年金制度雇用保険改悪反対に関  する請願田中恒利紹介)(第四〇四九号) 同月八日  保険給付等充実改善に関する請願浦井洋君  紹介)(第四〇六一号)  同(工藤晃紹介)(第四〇六二号)  年金医療改善に関する請願外三件(上坂昇  君紹介)(第四〇六三号)  政府管掌健康保険等改悪反対充実改善に関  する請願田中美智子紹介)(第四〇六四号  )  被保険者本人給付引き下げ反対等に関する請  願(松本善明紹介)(第四〇六五号)  医療保険改悪反対に関する請願渡部行雄君  紹介)(第四〇六六号)  同(前川旦紹介)(第四二七三号)  食品添加物規制緩和反対食品衛生行政の充  実強化に関する請願青山丘紹介)(第四〇  六七号)  同外一件(永末英一紹介)(第四〇六八号)  同(永末英一紹介)(第四二七四号)  中途失聴者難聴者救済等に関する請願(永  末英一君紹介)(第四〇六九号)  国民に対する医療改善に関する請願(阿部未喜  男君紹介)(第四〇七〇号)  民間保育事業振興に関する請願永末英一君紹  介)(第四〇七一号)  医療保険改悪反対充実改善に関する請願(網  岡雄君紹介)(第四〇七二号)  同(佐藤祐弘紹介)(第四〇七三号)  同(不破哲三紹介)(第四〇七四号)  同(三浦久紹介)(第四〇七五号)  同(武藤山治紹介)(第四〇七六号)  国立病院療養所統合等反対医療従事職員  の増員に関する請願嶋崎譲紹介)(第四〇  七七号)  同(山本政弘君紹介)(第四〇七八号)  同外一件(石橋政嗣君紹介)(第四二七六号)  同(嶋崎譲紹介)(第四二七七号)  医療保険改悪反対等に関する請願(佐藤徳雄  君紹介)(第四〇七九号)  同(嶋崎譲紹介)(第四〇八〇号)  同(中井洽君紹介)(第四〇八一号)  同外三件(中村正雄君紹介)(第四〇八二号)  同(永末英一紹介)(第四〇八三号)  同外五件(広瀬秀吉君紹介)(第四〇八四号)  同(松浦利尚君紹介)(第四〇八五号)  同(三浦久君外一名紹介)(第四〇八六号)  同(石橋政嗣君紹介)(第四二七八号)  同外一件(大橋敏雄君紹介)(第四二七九号)  同(佐藤観樹紹介)(第四二八〇号)  同(渋沢利久君紹介)(第四二八一号)  同(竹内勝彦君紹介)(第四二八二号)  同(中村巖君紹介)(第四二八三号)  同(永江仁君紹介)(第四二八四号)  同(西中清君紹介)(第四二八五号)  医療保険改悪反対充実に関する請願(中林  佳子君紹介)(第四〇八七号)  医療保険制度改悪反対充実改善に関する請  願(網岡雄紹介)(第四〇八八号)  同(小沢和秋紹介)(第四〇八九号)  同(柴田睦夫紹介)(第四〇九〇号)  同(中川利三郎紹介)(第四〇九一号)  同(山原健二郎紹介)(第四〇九二号)  医療保険抜本改悪反対に関する請願(津川武  一君紹介)(第四〇九三号)  同(中林佳子紹介)(第四〇九四号)  同(松浦利尚君紹介)(第四〇九五号)  同(山原健二郎紹介)(第四〇九六号)  同(天野等紹介)(第四二八七号)  同(大橋敏雄君紹介)(第四二八八号)  同(山花貞夫紹介)(第四二八九号)  医療保険制度改善に関する請願新井彬之君  紹介)(第四〇九七号)  同(工藤晃紹介)(第四〇九八号)  同(小谷輝二君紹介)(第四〇九九号)  同(沢田広紹介)(第四一〇〇号)  同(馬場昇紹介)(第四一〇一号)  同(不破哲三紹介)(第四一〇二号)  同(山本政弘君紹介)(第四一〇三号)  同(渡辺嘉藏紹介)(第四一〇四号)  同(大橋敏雄君紹介)(第四二九〇号)  同(竹内勝彦君紹介)(第四二九一号)  同(富塚三夫紹介)(第四二九二号)  同(中村巖君紹介)(第四二九三号)  同(日野市朗紹介)(第四二九四号)  同(森本晃司紹介)(第四二九五号)  年金医療雇用保険改悪反対充実改善に  関する請願網岡雄紹介)(第四一〇五号)  同(佐藤徳雄君紹介)(第四一〇六号)  同(島田琢郎紹介)(第四一〇七号)  同(嶋崎譲紹介)(第四一〇八号)  同(戸田菊雄君紹介)(第四一〇九号)  同(野口幸一紹介)(第四一一〇号)  同(松浦利尚君紹介)(第四一一一号)  同外一件(山下八洲夫君紹介)(第四一一二号  )  同(渡辺嘉藏紹介)(第四一一三号)  同(大橋敏雄君紹介)(第四二九六号)  同(新村源雄紹介)(第四二九七号)  同(竹内猛紹介)(第四二九八号)  同(森本晃司紹介)(第四二九九号)  同(和田貞夫君紹介)(第四三〇〇号)  社会保障制度の改悪反対に関する請願浦井洋  君紹介)(第四一一四号)  同(中川利三郎紹介)(第四一一五号)  医療用漢方製剤の健康保険適用存続に関する請  願(稲垣実男君紹介)(第四一一六号)  療術の制度化促進に関する請願(安倍基雄君紹  介)(第四一一七号)  同外三件(臼井日出男君紹介)(第四三〇一号  )  同外三件(倉成正君紹介)(第四三〇二号)  同(戸塚進也君紹介)(第四三〇三号)  同(福岡康夫紹介)(第四三〇四号)  医療保険年金制度改悪反対に関する請願  (津川武一紹介)(第四一一八号)  同(簑輪幸代紹介)(第四一一九号)  労働基準法改悪反対男女雇用平等法制定等に  関する請願永末英一紹介)(第四一二〇号  )  国立病院療養所の廃止及び地方移管反対等に  関する請願浦井洋紹介)(第四一二一号)  医療保険制度改悪反対国民医療改善等に関  する請願東中光雄紹介)(第四一二二号)  健康保険本人の十割給付堅持予防等給付の改  善に関する請願浦井洋紹介)(第四一二三  号)  同(佐藤祐弘紹介)(第四一二四号)  同(東中光雄紹介)(第四一二五母)  同(藤木洋子紹介)(第四一二六号)  健康保険本人給付引き下げ反対に関する請願  外一件(田中美智子紹介)(第四一二七号)  同(辻第一君紹介)(第四一二八号)  同(中島武敏紹介)(第四一二九号)  健康保険本人の十割給付継続に関する請願(不  破哲三君紹介)(第四一三〇号)  年金官民格差是正に関する請願(愛野興一郎  君紹介)(第四一五一号)  同(岡田利春紹介)(第四一五二号)  同(齋藤邦吉君紹介)(第四一五三号)  同(渡辺省一君紹介)(第四一五四号)  障害福祉年金受給者所得制限廃止に関する請  願(愛野興一郎君紹介)(第四一五五号)  同(岡田利春紹介)(第四一五六号)  同(齋藤邦吉君紹介)(第四一五七号)  同(渡辺省一君紹介)(第四一五八号)  在宅重度障害者暖房費支給に関する請願(愛  野興一郎君紹介)(第四一五九号)  同(岡田利春紹介)(第四一六〇号)  同(齋藤邦吉君紹介)(第四一六一号)  同(渡辺省一君紹介)(第四一六二号)  在宅重度障害者介護料支給に関する請願(愛  野興一郎君紹介)(第四一六三号)  同(岡田利春紹介)(第四一六四号)  同(齋藤邦吉君紹介)(第四一六五号)  同(渡辺省一君紹介)(第四一六六号)  重度障害者終身保養所設置に関する請願(愛  野興一郎君紹介)(第四一六七号)  同(岡田利春紹介)(第四一六八号)  同(齋藤邦吉君紹介)(第四一六九号)  同(渡辺省一君紹介)(第四一七〇号)  労災年金厚生年金等完全併給に関する請願  (愛野興一郎君紹介)(第四一七一号)  同(岡田利春紹介)(第四一七二号)  同(齋藤邦吉君紹介)(第四一七三号)  同(渡辺省一君紹介)(第四一七四号)  重度身体障害者雇用に関する請願(愛野興一  郎君紹介)(第四一七五号)  同(岡田利春紹介)(第四一七六号)  同(齋藤邦吉君紹介)(第四一七七号)  同(渡辺省一君紹介)(第四一七八号)  重度障害者の無年金者救済に関する請願(愛野  興一郎君紹介)(第四一七九号)  同(岡田利春紹介)(第四一八〇号)  同(齋藤邦吉君紹介)(第四一八一号)  同(渡辺省一君紹介)(第四一八二号)  労災年金給付改善に関する請願(愛野興一郎  君紹介)(第四一八三号)  同(岡田利春紹介)(第四一八四号)  同(齋藤邦吉君紹介)(第四一八五号)  同(渡辺省一君紹介)(第四一八六号)  身体障害者家庭奉仕員の採用に関する請願(愛  野興一郎君紹介)(第四一八七号)  同(岡田利春紹介)(第四一八八号)  同(齋藤邦吉君紹介)(第四一八九号)  同(渡辺省一君紹介)(第四一九〇号)  国公立病院における脊髄損傷者治療に関する  請願(愛野興一郎君紹介)(第四一九一号)  同(岡田利春紹介)(第四一九二号)  同(齋藤邦吉君紹介)(第四一九三号)  同(渡辺省一君紹介)(第四一九四号)  労災被災者脊髄神経治療に関する請願(愛野  興一郎君紹介)(第四一九五号)  同(岡田利春紹介)(第四一九六号)  同(齋藤邦吉君紹介)(第四一九七号)  同(渡辺省一君紹介)(第四一九八号)  労災被災者介護料に関する請願(愛野興一郎  君紹介)(第四一九九号)  同(岡田利春紹介)(第四二〇〇号)  同(齋藤邦吉君紹介)(第四二〇一号)  同(渡辺省一君紹介)(第四二〇二号)  健康保険国民健康保険による付添介護人派遣  に関する請願(愛野興一郎君紹介)(第四二〇  三号)  同(岡田利春紹介)(第四二〇四号)  同(齋藤邦吉君紹介)(第四二〇五号)  同(渡辺省一君紹介)(第四二〇六号)  労災年金のスライドに関する請願(愛野興一郎  君紹介)(第四二〇七号)  同(岡田利春紹介)(第四二〇八号)  同(齋藤邦吉君紹介)(第四二〇九号)  同(渡辺省一君紹介)(第四二一〇号)  身体障害者福祉行政改善に関する請願(愛野  興一郎君紹介)(第四二一一号)  同(岡田利春紹介)(第四二一二号)  同(齋藤邦吉君紹介)(第四二一三号)  同(渡辺省一君紹介)(第四二一四号)  脊髄損傷治療技術研究開発に関する請願(愛  野興一郎君紹介)(第四二一五号)  同(岡田利春紹介)(第四二一六号)  同(齋藤邦吉君紹介)(第四二一七号)  同(渡辺省一君紹介)(第四二一八号)  労災年金最低給付基礎日額引き上げに関する  請願(愛野興一郎君紹介)(第四二一九号)  同(岡田利春紹介)(第四二二〇号)  同(齋藤邦吉君紹介)(第四二二一号)  同(渡辺省一君紹介)(第四二二二号)  旧々労災被災者労働者災害補償保険法適用に  関する請願(愛野興一郎君紹介)(第四二二三  号)  同(岡田利春紹介)(第四二二四号)  同(齋藤邦吉君紹介)(第四二二五号)  同(渡辺省一君紹介)(第四二二六号)  重度障害者福祉手当増額に関する請願(愛野  興一郎君紹介)(第四二二七号)  同(岡田利春紹介)(第四二二八号)  同(齋藤邦吉君紹介)(第四二二九号)  同(渡辺省一君紹介)(第四二三〇号)  労災重度被災者終身保養所設置に関する請願  (愛野興一郎君紹介)(第四二三一号)  同(岡田利春紹介)(第四二三二号)  同(齋藤邦吉君紹介)(第四二三三号)  同(渡辺省一君紹介)(第四二三四号)  労災脊髄損傷者の遺族に年金支給に関する請願  (愛野興一郎君紹介)(第四二三五号)  同(岡田利春紹介)(第四二三六号)  同(齋藤邦吉君紹介)(第四二三七号)  同(渡辺省一君紹介)(第四二三八号)  労災重度被災者暖房費支給に関する請願(愛  野與一郎君紹介)(第四二三九号)  同(岡田利春紹介)(第四二四〇号)  同(齋藤邦吉君紹介)(第四二四一号)  同(渡辺省一君紹介)(第四二四二号)  労働者災害補償保険法改善に関する請願(愛  野興一郎君紹介)(第四二四三号)  同(岡田利春紹介)(第四二四四号)  同(齋藤邦吉君紹介)(第四二四五号)  同(渡辺省一君紹介)(第四二四六号)  医療年金改悪反対充実改善に関する請願  (渋沢利久君紹介)(第四二七五号)  医療保険制度改悪反対等に対する請願外一件  (池端清一紹介)(第四二八六号)  国立腎センター設立に関する請願(綿貫民輔君  紹介)(第四三〇五号)  重度戦傷病者と妻の援護に関する請願(粕谷茂  君紹介)(第四三〇六号)  同(河本敏夫君紹介)(第四三〇七号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  雇用保険法等の一部を改正する法律案(内閣提  出第二三号)  身体障害者雇用促進法の一部を改正する法律案  (内閣提出第四九号)(参議院送付)      ――――◇―――――
  2. 有馬元治

    ○有馬委員長 これより会議を開きます。  内閣提出、雇用保険法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。永井孝信君。
  3. 永井孝信

    永井委員 労働省は、雇用保険法の改正の理由に、「高齢化社会の進展その他最近における経済社会情勢の変化に伴い雇用構造が著しく変化していること等にかんがみ、失業者の生活の安定及びその就職の促進を図りつつ」雇用保険制度の効率的な運営を進める見地から、所要の改正を行う、このように言っているわけであります。  そこで、まず初めに大臣にお尋ねをするわけでありますが、単純に申し上げまして、失業している労働猪の生活保障という視点からの改正なのか、あるいは保険財政の節減が目的なのか、ここのところをひとつ明確にしてもらいたいと思います。
  4. 坂本三十次

    ○坂本国務大臣 今度の改正というのは、前回の法の改正以来十年間たっておるわけでありまして、その間の雇用失業情勢が非常に大きく変化をいたしまして、構造的変化とも言われるような変化でございます。これに対応をいたさなければならぬということで、再就職手当を新設したりして失業者の再就職を図る、あるいはまた、制度の中でもいろいろもっと合理的に改める点もありましたのでそういう点を改正する、また、労使の負担をできる限りふやさない方がいいということで、将来にわたる制度の健全な運営を図ろうとしたものでありまして、これらの論議は、中小職業安定審議会におきましても議論が行われたわけでございます。  今回の改正において、賞与などを含んだ総賃金を基礎として算定される現行の給付の額には、毎月の手取り賃金や労働市場における通常の再就職賃金の額に比べて割高になっているという現状もございますので、こういう現状を考えて、失業給付の額を算定するに当たってこれを除くこととしておりますが、同時に、賃金の低い受給者層を中心に給付額の最低保障額と給付率の引き上げを図ることによりまして、この改正による影響を少なくするよう配慮しているところでございまして、改正後の失業給付の額も、失業者の求職活動中の生活保障という面ではまあまあ十分なのではなかろうかと考えております。  単に保険財政という観点からのみではなしに、この保険財政の赤字というものは大きな構造変化から生じたものであって、保険財政はこの構造変化の結果としてあらわれたものでありまして、問題はこの構造変化に対応するということが先であります。そういう意味で改正をいたしたわけでございます。
  5. 永井孝信

    永井委員 どうももう一つすっきりと理解をしにくいわけでありますが、再度お尋ねします。  失業している労働者に対して手当を支給するという制度ですから、そういう観点からいくと、失業者に対して一定の生活保障という視点を大切にしたそういう政策なのか、あるいは、今大臣がいみじくも言われましたように、保険財政の赤字というものは構造変化がもたらしたものである、こう言われているわけでありますし、労使の負担をできるだけふやさない、こういうふうに今お答えになったわけでありますが、そういう観点からして保険財政を節減するというところに重点が置かれているのか、どちらに重点を置いてこの法改正を考えられたのかということをもう少し明確に答えてほしいと思います。
  6. 坂本三十次

    ○坂本国務大臣 これは、もちろん生活保障にも十分できる限りの配慮をいたしながら、制度の効率的な運営を図っていきたいというところに重点があるわけでございます。
  7. 永井孝信

    永井委員 生活保障にも十分な配慮をしたい、こういうことでありますが、繰り返してお聞きをいたしましても、どうもそこがあいまいなんですね。どう考えても、どう聞いてみてもあいまいだと言わざるを得ないと思うのであります。  それでは、この生活保障にも十分な配慮をしたという根拠についてちょっとお尋ねをしてみたいと思うのであります。  例えば給付額の改正面では、今大臣も言われました下位等級の底上げを図る、そしてそのことは低所得者への手厚い保護を講じているんだというふうに、本会議の趣旨説明における総理の答弁でも言われているわけであります。しかし、もう何回も既にこの委員会の審議の場で質疑が繰り返されてきていることでありますけれども、等級を算定する基礎からボーナス等一時金を除くことによって等級ランクが結果的に現行より下がる、実質支給額が減少する、このことは否めない事実だと思うのですね。これを私どもはやらずぶったくりの法改正ではないか、こう言っているわけでありますが、この実質支給額が減少する、現実に等級ランクが下がっていくということについて、これが今大臣の言われたように生活保障に十分な配慮もしているということになるのかどうなのか、これを具体的にお答えいただけますか。
  8. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 大臣からもお答え申し上げましたように、具体的に、この基本手当の日額表における、給付率が六割から八割という賃金日額の範囲を現行では一ないし十三等級、こうなっておりますものを一ないし二十等級に拡大する、そして賃金日額の最低額を二〇%、最高額を一〇%それぞれ引き上げをいたしまして、最低額が今まで二千百四十円でございましたものを二千五百七十円に上げる、あるいはまた最高額が口額六千六百七十円のものを七千三百三十円に引き上げる、こういうような形での底上げ等を図っておるわけでございます。  具体的に例を挙げて申してみますと、例えば月給十二万円の方でボーナスが五%、こういうようなのを仮定いたしますと、月給士一方に対して現行では給付の月額が八万百円になるわけでございます。この方については今後改正によりまして八万七千六百円になる、こういうような形になるわけでございます。また月給が十八万円、二十二等級にランクされている方について見ますと、この方が仮に一〇%の賞与ということでございますと、現行では十八万円の月給に対しまして十一万九千四百円の保険が入る、これに対しまして、改正後によりましてはわずかに落ちまして十一万六千百円、ほとんど変わらないような額でございます。  そんなようなことでございまして、下の方に対しましてはいろいろそういう支給最低額の引き上げであるとか、あるいは率の引き上げ等をいたしまして、こういう賞与を除くことによります影響というものが下の方についてはできるだけないように、人によりましては、ボーナスの少ない人などについては上がるところもある、こういうような形の新しい日額表の展開をいたしまして、そういう生活保障的な面での配慮をした形のものとしておるところでございます。
  9. 永井孝信

    永井委員 ボーナスをこの手当の基礎日額の算定の基礎にしないということが、反面で、最低や最高の金額を引き上げるということとの連動である程度相殺される、こういうふうに言われているわけでありますけれども、しかしそれは数字上はそういうことが言えても、現実に、今昔われたようにボーナスだって多い人も少ない人もいるわけだし、企業によっても大きな格差があるわけですから、一概にそのことが結果として相殺されるということになっていかないと私は思うわけですね。そういう場合の減額される人々に対してはどのようなお考えをお持ちになっておるのですか。
  10. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 今回の賞与を算定基礎から外すということにつきましては、一つの問題といたしまして、現在の給付の額が、毎月の賃金の手取り額というようなものに比べまして、基本的にはそういう標準家庭を例にとれば九割ぐらいの手取り給付になっておる、あるいはまた、再就職賃金というものとの絡みで言えば相当の割高になっておる。こういうような現状にあることが、これが一つには受給者の再就職の促進という面でいろいろ阻害的な面もある、こういうような現状を踏まえてのものであるわけでございます。  そういう意味で、基本的には、ボーナスを算定基礎から外すということは、これは全体的に見れば給付の額は下がるということはもうおっしゃるとおりでございます。しかしながら、そういうことに一よって一律に下がるということではなくて、給付の日額の低い層についてはこういうことによる大きな変化を受けないような配慮をする、こういうふうにいたしておるわけでございまして、賃金が比較的高い層、あるいはまたボーナスの多い層については確かにそういう支給額というものは下がってくるということはございます。ございますが、しかし、そのことがそれでは全然生活ができないほどになるものかということになれば、そういう金額のものになるわけでもない、こういうことで考えておるわけでございます。
  11. 永井孝信

    永井委員 後で申し上げてみたいとは思っているのでありますけれども、今失業者が非常に多いわけですね。景気の回復の気配が見えてきているというものの、現実に失業者がかなり多い。そうすると仕事をしたくても仕事をすることができないという労働者にとって、この雇用保険というものは生活を安定させる上で欠かすことのできないものなんですね。それを、結果としてその手当金額が減少するという現実を労働省としてはもっと重視をすべきではないか。もちろんこの保険財政が赤字だということから、大臣も言われているように、構造的な影響で赤字になってきておるというのでありますけれども、この資料で見る限り、もちろん五十七年度は二百十七億円の赤字は出しておりますけれども、積立金を五千七百四十八億円持っている。もちろんこの積立金をそれだけ持っておったとしてこれから先もずっと安定していくという保証はないかもしれませんけれども、今のこの段階で五千七百四十八億円という積立金を持っておって、その前を振り返ってみれば、五十四年、五十五年、五十六年度と三年度にわたって保険会計が黒字を出している、こういう現状から、これから失業者がさらにふえていくという前提でこの改正をもくろまれたのかどうなのか、その辺のところをひとつ明確にしていただけますか。
  12. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 先ほど大臣も今回の保険法の改正の基本的な考え方について申し上げましたように、今後高齢化社会がますます進んでいく、そういう中で高齢失業者が増加をしていくということは避けがたいであろう、あるいはまた女子の職場進出というものがどんどん進んでいくであろう、そしてまた、特にいわゆる子育て等を終わりました中高年の女子が、フルタイムだけではなくて、パートというような形でも実際にはフルの形での就業がどんどん進んでいくであろう、そしてまた、これからの産業構造がどんどんサービス業にウエートを置いたような形で移っていく、こういう女子あるいはサービス業というような就業形態というものは一般的には比較的離職率とか転職率の高い場面でございまして、そういう意味で、こういう雇用保険の受給というような形で労働市場にあらわれる方というのはますますふえていくであろう。これに加えまして、若年層を中心といたしますいわゆる転職意識というようなものが相当に変わってきておりまして、そういう意味で、一つの企業に最後まで頑張る、いわゆる終身雇用という形で頑張るというのではなくて、ほかに適当なところがあると思えば比較的容易に変わっていく、こういう転職意識の変化というようなものも一つの背景として見落とせないわけでございます。これに加えまして、今産業構造の大きな変化が進んでおります。かつての日本の産業をリードいたしました、鉄鋼とかそういう素材産業などがやはり非常に不況になってきておる。それからまた、技術革新というものが進んでおります。特にMEを中心といたしまして技術革新が進んでくる中で、雇用の抑制というような面の問題も出てきておる。そういうような状況を考えますと、やはり今後長期的には失業者というものはこのままほうっておけばどんどんふえていくというふうに考えざるを得ないのではないか、こういう基本認識に立っておるわけでございます。  そういうような基本的な情勢を踏まえて、それじゃ失業者がふえていくのにそのまま任しておいていいか、そういう意味で政府として雇用対策を適切に立てて何らかの対応を進めなければいかぬではないか、こういうことで、第五次雇用対策基本計画においては昭和六十五年度には失業率を二%に持っていくということを目標に掲げておるわけでございますが、今回の雇用保険制度改正も、内容におきまして、こういう受給者の再就職を促進するための再就職手当制度であるなどいろいろな制度の改善を織り込んでおりまして、そういうような新しい雇用保険制度改善等も効果を上げる中でこういう失業者の増加というものを食いとめていこう、こういう基本的な立場におるわけでございます。  そういう意味で、我々としては、今度のこういう改正というものもやらなければ失業者というものはますますふえていく、そういうことであれば雇用保険財政は、今おっしゃいましたように五千七百億の積み立てはございますが、年々それが五百億、一千億という単位で取り崩しが増加をいたしまして、近い将来にはこの積立金もなくなってしまう、こういうような基本的な認識に立っての改正をお願いをしておるわけでございます。
  13. 永井孝信

    永井委員 今非常に大切なことを言われたと私は思うのでありますが、端的に言って、終身雇用志向ではなくて、転職意識の変化というものが一つ顕著に出てきたということ。もちろん女子の職場進出もある、そうして産業構造の変化もあるが、これは具体的に指摘されたわけですね。そこで、短絡的に言って申しわけないのですけれども、失業者の増加を何とか止めたいということで、この雇用保険制度改正にも非常に大きくそのことを意識的に作用していったという意味のことを今答弁されたわけですね。そういたしますと、今局長か言われたことを私なりに受け取ってみると、どんどん転職を安易にしていくことが問題である、むしろ一たん就職をしたら終身雇用制の中でずっと一つの企業に働くべきだ、そういうことであれば途中でやめることもないから失業手当の支出が少なくなるわけですね。だから、転職意識の変化という問題についてそれを否定する立場をとっていらっしゃるというふうに受けとめられるのですが、それはどうなんですか。
  14. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 今度の制度の改正で一番ねらっております点は、再就職の促進、こういうことでございます。要するに、現在の受給者がなかなか就職が進まない、一つ例を挙げますと、昭和五十年ごろまでは、失業者の一般の求職者についても雇用保険受給者についても大体四〇%くらいの就職率でございました。それが、一般の求職者については現在も四〇%前後の就職率でございますが、雇用保険の受給者になりますとその就職率がどんどん下がってきておりまして、現在は一〇%前後の就職率、こういうような状況になってきております。もちろんいろいろ周囲の環境の厳しさというものもございますが、やはり雇用保険制度の中にもいま一つ再就職を促進するためのいわば制度的な面で改善を加えるべき点があるのではないか、こういうことでやっておるわけでございます。  先生が転職意識の関係でおっしゃいましたけれども、私どもそういう若者の転職意識というものを一概に否定するわけではございません。ただ、いわゆる正当な理由のない自己都合退職というものについての給付制限というものを一つ考えております。これは安易な離職、要するにもうちょっとやってみたらどうか、もうちょっと辛抱してみたらどうかというようなことで申し上げた方がいいような、いわば一つの考え方なり客観的な事情があって転職するというのではなくて、あるいは本人がその仕事に基本的に向かないというようないろいろ事情があっての転職というのならば、これはこういう時代でございまして、私ども否定するつもりは全くありませんが、ちょっとやってみてすぐ、俗な言い方をすれば嫌になっちゃうといいう程度で転職するという人については、もうちょっと慎重な配慮、それから現在の再就職状況というものがどういうものであるか、それから簡単に転職をするといっても次の転職先を見つけてそれからやめたらどうかとかいう、いろいろ転職についての慎重な配慮、これはもう少しあってもいいのではないか。結果として転職されることを否定するものではありませんが、もう少し慎重な配慮があっていいのではないか。そういう意味において、いわゆる正当な理由のない自己都合退職についての給付制限期間を延ばすということをやっております。これはそういう趣旨でございますので、その辺御理解を賜りたいと思うわけでございます。
  15. 永井孝信

    永井委員 もっともなところもあるのですけれども、安易に離職しないようにということが先行していきますと、極端なことを言えば失業手当、いわゆるこの雇用保険による失業手当がもしゼロだった場合、なかった場合はたちどころに生活に困るから離職をしにくくしていくだろう、離職の抑制になっていくだろうという思想がその中に流れていく危険性を私は感ずるわけです。その辺はどうなんですか。
  16. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 やはり仕事というものは基本的にはつらい面がいろいろあるわけでございます。本当に楽しみながら、いや、これはおもしろいおもしろいとばかり言って勤まるものでもないわけでございます。ところが、その仕事の過程でちょっとつらいことがあるとすぐ嫌になっちゃうとか、もうやめたあというようなことはいかがか。そういった点については制度面で何らかの配慮があったっておかしくないではないか。ただ問題は、そういうことによって、例えば本人にどうにも合わない、適性とか能力等からいって合わない仕事とか、あるいはまたどうしても郷里に帰らなければならぬ事情が出たとか、そういう客観的なやむを得ない事情というものがあって転職される者、これはもう当然やむを得ないことでございますし、それはまたそれで、若者のこれからの職業志向の方法として当然あってしかるべきだと思います。要は仕事というものに伴うそういうつらさにすぐ負けてしまうというようなことについては、やはり今後の生活のことも考えながらもう少し慎重に判断をして行動するというようなことは、制度の面でも期待するところがあって構わないのではないか。それで、現行におきましてもそういう自己都合退職者については一カ月間の待期期間というものを置いておるわけでございますが、今の運用でいきますと、一カ月くらいの待期期間はそういう意味ではほとんど効き目がないというような現状も運用の面であるわけでございます。そういうようなことなども考慮いたしまして、そういう給付制限期間の延長なども今度織り込んでおる、こういうことでございます。
  17. 永井孝信

    永井委員 この議論はすれ違いになってしまうと思うのでありますけれども、私の言いたいことは、最初に大臣にお尋ねをしましたように、この保険財政の節減ということがまず前面に出過ぎてしまっている。いろんな言葉をあなた方が言われても、本音としては保険財政の節減ということが前面に出てきていることは間違いない。だから、その保険の手当を抑制することによって安易に離職できないようになっていくのではないかという、いわば後からそういうつじつまをつけたような気がしてならぬわけです。むしろ、現時点においては大変な失業率を示しているわけですから、ちまたにたくさんの失業者があふれているという状況からいくと、その失業者の暮らし向きをどう考えていくのか、生活保障をどう考えていくのかということが本来の法の精神でなければいかぬ。それが私は逆転しているように思えてならぬわけであります。  そこで、ひとつ具体的にその点について触れてみたいと思うわけでございます。  労働省は、五十八年の十月に第五次雇用対策基本計画というものを策定したわけですね。ところが、策定をする前の昨年の九月の新聞の報道によりますと、そのとき突如としてこの雇用保険改正問題が新聞で報道されてきた。そのときの新聞の報道を見てみると、まず失業保険の抜本改革が必要である、それは大蔵省の基本方針である、そうして年金との併給を排除することが一つの目的であって、さらに結婚退職女性には支給をしないようにすべきではないか、そうしてそのことを通して赤字の慢性化を防止をする、労働省と近く協議に入りたい、こういう趣旨の報道が去年の九月になされているわけですね。各紙一斉に取り上げられました。  そういう大蔵省を中心とした政府の考え方が一般に報道された後で、この雇用対策基本計画というものが策定をされて発表されたわけでありますが、この流れからいくと、どのような言い回し方をしようとも、どのような表現を使おうとも、結果的に大蔵省主導による雇用保険財政の節減ということだけが先行していったと言わざるを得ない、私はそう思うのですが、この辺の関係については労働省はこれにどう対応されたのですか。
  18. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 この雇用保険制度改正問題の直接のきっかけになりましたのは、昨年の八月の中央職業安定審議会におきまして、労働省側の方から、現在の雇用保険の運用状況、特に赤字の進行といったような状態に対して問題が出てきておる、そういう意味でこの問題点について御検討を煩わしたいということで、去年の八月に中央職業安定審議会にお願いをいたしまして、その後これが雇用保険部会において議論が始められた、こういう経過をたどっておるものでございます。  その過程におきまして、確かに一つの新聞において今先生がおっしゃったような記事が出まして、私どもも偶然としたわけでございます。これはまだどう改正するというような形の論議の全くない段階での話でございまして、私どももすぐ大蔵の方に確かめましたけれども、大蔵省としてもそういうことを言ったり漏らしたことは全くないということでございまして、そういう意味では、今回の改正においても、こういう結婚退職制度をどうこうするとか、年金との関係をどうこうするというふうな形のものを打ち出しておるわけではございません。  そういう意味におきまして、雇用保険の財政が赤字に転落しつつあるという状態はこの雇用保険法の制度検討の一つの大きなきっかけではございましたけれども、しかし、その検討の内容、そして検討した結果の制度改善の考え方というものは、決して雇用保険財政だけを考えてどうこうしようというのではなくて、なぜこういうふうに赤字に転落してきたかということを考えると、現在の雇用保険制度が受給者の再就職の促進という面について必ずしも十分に機能してないではないか、現に昭和五十年ごろの雇用保険制度改正以来雇用保険受給者の就職率というものがずっと落ちてきておる、こういうような現象についてやはり何らかの制度的なメスというものを加えなければならぬのではないか、雇用保険制度というものを失業者の生活保障機能にも配慮しながら再就職促進機能というものにもう少してこ入れしていくのにはどうしたらいいか、こういうようなことで検討が行われたものでございます。そういう意味におきまして、昨年の十月に閣議決定されました第五次雇用対策基本計画、この計画の中において「近年の失業構造の変化に対応して雇用保険制度が効果的に機能するよう、制度のあり方について検討を行う。」、こういう考え方が示されておるわけでございます。そういう意味で、この基本計画のこういう基本的な方向に沿ってこの制度が効果的に機能する、具体的には再就職促進機能、求職活動を援護しながら再就職を促進していくという機能をもう少し高めていくという面に配慮した改善をお願いしておるわけでございます。
  19. 永井孝信

    永井委員 どう御説明いただいても、保険財政の節減ということが前面に出てきて、本当の失業者に対する政治的な対策というものが言うならばおろそかになっているという受けとめ方を私は頭の中で変えることができないのです。二言で言えば、やらずぶったくりの改正であると言わざるを得ない。  これは若干すれ違いになりますから、あとは具体的に問題点をお尋ねしてみたいと思うわけでありますが、今言われておりました第五次雇用対策基本計画、これの中で「労働力需給の円滑な調整」という項目があります。今局長が言われておることは、この再就職促進を含めていわゆる「労働力需給の円滑な調整」の分野に入る問題だ、私はこう理解するわけでありますけれども、労働省の策定しましたその関係でいきまして、まず一つは「職業紹介機能の強化」という項目がございます。この「職業紹介機能の強化」の中に「公共職業安定機関のほか、学校、民営の職業綿公事業、労働者供給事業、業務処理請負的な事業等多岐にわたっている。」、その中での相互的な連携が必要だということをこの中で触れられているわけです。そして「それぞれの機関において求職者の適性に応じた需給の結合ができるよう、紹介技術等についての情報を提供する。」こう言っているわけであります。ここで言っている「学校」はわかるのでありますが、「民常の職業紹介事業」とは具体的に何を指しているのですか。
  20. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 現在、労働大臣の許可のもとに、例えば看護婦、家政婦の紹介所であるとか、あるいはまた人材の職業紹介事業であるとか、マネキンとか配ぜん人の職業紹介専業であるとか、こういったような職業紹介事業をいたしておるわけでございまして、こういったものを職業安定機関の補助的な機関ということで位置づけて、私ども考えておるわけでございます。
  21. 永井孝信

    永井委員 そうすると、これも私は委員会で質問したことがあるし、同僚議員からも質問がありましたが、例えば職業紹介についてのたくさんな刊行物がありますね、いわゆる「就職情報」というのですか、四十二社が発行しているということまで明らかになっているわけですが、そういうものはどのように見られているのですか。
  22. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 あれはいわゆる文書募集という形のものでございまして、職業紹介機関ではないわけでございます。もしそういう文書募集のような形をとりながら職業紹介をやるということであれば、これは違法なものとして私どもは取り締まる対象にしておるものでございます。ですから、純粋にそういう情報誌を通じての求人広告、あくまでこういうものにとどまるべきものである、こんなふうに考えておるものでございます。
  23. 永井孝信

    永井委員 そうすると、労働省が主として扱ってきたILO条約とかILOの韓国がたくさんありますけれども、この一つ一つの条約とか勧告に基づいて具体的な政策を国内で定めたり、あるいは勧告に基づいて実施すべきものは実施しなくてはいけない、こういうことになると思うのですが、全般的にきょうはその議論に触れる時間はありませんけれども、このILOの条約にしたって未批准が極めて多いわけです。しかしその中に、これは批准されておるものでありますけれども、第九十六号の「有料職業紹介所に関する条約」というのがあります。これで見ますと、第一条に「営利を目的として経常される職業紹介所」云々ということがずっと定義されておりまして、「(もつぱら又は主として使用者と労働者との間をあっせんするため刊行される新聞その他の刊行物を除く。)」というふうに定義がされているわけです。言いかえるならば、ここで有料職業紹介所として認定されたものにこの「就職情報」というものは合致してないわけです、これは営利の目的でやっておるわけですから。そして第三条で、「営利を目的として経常される有料職業紹介所は、権限のある機関が定める期限までに廃止しなければならない。」となっている。そして「前項の有料職業紹介所は、公共職業安定組織が確立されるまでは廃止しないものとする。」ということが第三条でうたわれているわけです。  そうすると、今、労働力需給の調整ということが非常に重要な課題となってこの第五次基本計画の中にも出されているわけですけれども、この労働力の需給の円滑な調整が欠けているとすると、それは一体那辺にその問題があるのか。例えば就職情報誌がはんらんをする、これはそれぞれが金を出して貰うわけですから、営利を目的としておるわけです。そうすると、そういうものが野放しになっているという状況は、この第三条に定める「公共職業安定組織が確立されるまでは」云々ということからいくと、まだ公共職業安定所は完全な機能を倣えていないのかということにもなってくると思うのですが、これはどのように理解したらいいのですか。
  24. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 これは実は条約の批准の仕方でございまして、それに書いてある形のものをずばっとやるかやらないか、その辺、この条約については、条約の性格がございまして、日本の場合にはそれについては暫定的な形のものになっておるわけでございます。それで、日本の場合には安定機関で全部をやっていくという基本方向そのものを持っておりません。日本の場合には、こういう民営の職業紹介機関であるとかあるいは学校にも職業紹介機能の一部を持っていただくというような形で、いろんなところで職業紹介機能というものを分担していただきながら、そしてそれを公共職業安定所あるいはまた安定機関というものが、そういったものとの連携を十分とりながら全体として需給調整機能を果たしていく、こういう方向を目指しておるわけでございまして、今先生がおっしゃったような形で、いずれ公共職業安定所で全部やっちゃうという方向を目指してずばり批准をしておるというものではないわけでございます。
  25. 永井孝信

    永井委員 そうすると、労働省の職安行政というものは主体性を持ってやらないということなんですか。今言われたように批准の仕方はいろいろありましょう。批准の仕方はいろいろあるけれども、政府が雇用政策を進める上において、大臣も所信表則で言われているように雇用不安の解消、雇用の拡大、これは重要な柱でしょう、労働省にとっては。ところが、その労働省がそういう政策を持っているときに、もちろん学校やいわゆる大臣の認可した民営の職業紹介事業、こういうものと協力をし合うのでありましょうけれども、本来職業紹企業務というのは労働省の一つの最たる任務じゃないのですか。職安行政はそういうものじゃないのですか。今局長の答弁を聞いておりますと、批准の仕方はいろいろありますけれども、職業安定所の機能というのは全部を責任を持って遂行するようなことになっていない、あるいはしようとするつもりもないというふうに聞こえるのですが、そこのところは非常に重要ですから、どうなのですか、はっきり答えてください。
  26. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 公共職業安定所を中心といたしまして、この職業紹介機能というものを全体として取りまとめ、そして需給調整を図っていく、こういう基本的な考え方は貫いておるつもりでございまして、貫いていかなきゃならぬ、こう思っております。  ただ、対象によりましてその機能を分担するという面がございまして、例えば現在、大学生の職業紹介というものは、具体的に言えば大学のそういう職業紹介部門において職業紹介をやるというような形で、そこはお任せをしておる。しかしその状況については我々も連絡を受けてやっておる。それからまた、高等学校の職業紹介については高等学校と十分連携をしながら両方でタイアップしてやっていく。一方また、中学校の職業紹介というのは安定所が主体になりまして学校側と十分連携をとりながら職業紹介をやっていく。それからまた、看護婦とか家政婦とかマネキンとか配ぜん人とか、こういうような方の紹介についてはそういう民税の職業紹介というものにお任せしてやっていただくけれども、そこについての業務の適正指導なり監督というものは公共職業安定所がやっていく。こういうようなことで、それぞれ対象によっていろいろ分担を多少専門分野にお願いしておるという形がございますが、中心はあくまで公共職業安定機関というものを中心にして、そのネットワークの中で全体の職業紹介機能というものを進めていく。こんな考え方で進めていくという基本的な考え方に立っておるわけでございます。
  27. 永井孝信

    永井委員 繰り返して恐縮でありますけれども、労働省の位置づけというものが、よく言葉で言うように、近代社会になればなるほど、たくさんある省庁の中で重要な省庁でなければいかぬ、私は常々そう思っておるわけですよ。労働者が圧倒的に多くて、その労働者によって社会の仕組みが成り立っているわけであります。そう考えると労働大臣のポストというものはきわめて高いポストだ、こう思っておるわけです。だからそういう前提でお附きしておるのでありますけれども、この職安行政というものが今言われたように有機的にいろいろなところで結合して能力を発揮する、目的を果たすということはあっていいと思うのです。あっていいと思うのだけれども、その中心になるものはあくまでも労働省の職業安定業務でなければいかぬ、私はそう思っておるわけです。だから、この有料職業紹介所に関する条約の批准についても、そのとおりずばりの表現で、あるいはずばりの内容で批准されてないかもわからぬが、法律の整備の上からいって。しかしその精神というのはあくまでも底に貫かれておらなくてはいけないと思うのです。そういう考え方でいきますと、今言われたように、大学卒であるとか高校卒であるとかいう人たちが卒業に当たって、学校が主としてそういう職業の紹介とかいろいろなことを企業との関係を持ってやっていくということはあっていいと思うのです。私はここで言っているのは、そういう学卒者でなくて、一般の人々が、今いみじくも局長が言われておるように転職志向が非常に倣い、あるいは産業構造の変化に伴ってそこに勤めたくても勤められなくなった、合理化で首を切られる、あるいは労働背が倒産して職を失う場合だってあるわけだから、そういう場合にどこまで職安機能というものが実際に遂行できているのかというのが一番問題だと思うのです。それが十分でないからいわゆる就職情報誌なんというものがのさばってくる。もちろん情報多様化の時代でありますから、そんなものがあってはいかぬとは言いませんけれども、四十二社も全国にそういうものがあって、それが利益を上げることができる状況というものは、むしろ労働省にとって恥ではないのか。労働省がみずからの能力のなさというものを暴露したことにならないのか。その辺のところを非常に問題視しているわけです。  だから、転職志向が強いこと、あるいは産業構造の変化などに伴ってやむなく自分の勤務先を変えなくてはいけない、あるいは自分の持っておる技術を次の就職に生かしていこうという場合でも、もっともっと職安機能が充実をしておれば失業者というものももっと救われるのではないか、こういう気がするものですから、その辺のことについて再度局長から、当面の責任者ですから御答弁いただきたいと思うのです。
  28. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 大変力強い御激励をいただきまして恐縮でございますが、私どもも、こういう就職情報誌がはんらんしておるということについて十分問題意識は持っておるわけでございます。とにかく、昭和四十年代のいわゆる人手不足時代において企業は盛んに人を求める、しかしなかなか人が集まらない、こういうような時代を背景にいたしましてそういう就職情報誌関係のものがどんどん出てまいりまして、それが今日に及んできておる。その背景には、確かに御指摘のように、私ども公共職業安定所あるいはまた安定機関というものが、そういう職業関係の情報について十分な収集なり提供なりという面で欠けるところがあったのではないか こういう某本的な問題意識は持っておるわけでございます。  現在のこういう就職情報誌の提供しております情報というものが、率直に申しまして一都問題がないわけではないわけてございます。いろいろ新聞等でもにぎわしておりますが、実際に掲示をされておる求人内容と働いてみたらえらい違うというような形の問題もいろいろ起こってきておるようでございます。私どもとしては、特に、そういう情報によって労働者の生活が左右されるようなそういう情報であるわけでございますので、どうしても正確な適切な情報というものを的確に提供していくというようなシステムを進めていかなきゃならぬということを強く考えておりまして、実は本年度から三カ年計画で、昭和六十一年度運用開始ということをめどにいたしまして、全国の求人求職情報というものを全部コンピューターにインプットいたしまして、そしてそれを各安定所においていつでもまた取り出せるというような形でやっていく、そういう総合的雇用情報システムというものの開発に今取り組んだところでございまして、そういう意味で、私どもも、こういう情報化時代において、公共職業安定所を中心としたこの職業紹介機能の充実という面についていまひとつ馬力をかけていきたい、こんなふうに今対応を進めておるところでございます。
  29. 永井孝信

    永井委員 今局長の答弁されたことが、二月十日の中職審の答申の中で触れられていることに対しての答えなんですか。ちょっとここで私が申し上げてみますけれども、この二月十日の中職審の答申によりますと、「今後の労働力人口の急速な高齢化、産業構造の転換等に伴い、労働力需給のミスマッチが拡大し、失業者が増加するおそれもある。 このような事態に的確に対応するためには、失業の発生の防止と離職者の早期再就職を図るための雇用対策を中長期的展望のもとに見直し、その実効性を高めていく必要がある。労働省としては、このための検討を早急に開始されたい。」このように注文がついているわけですね、中職審の答申の中では。今局長の言われたことはこのことに対する対策なんですか、どうなんですか。
  30. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 今最後に申し上げました、こういう総合的雇用情報システムの問題などは、それに対する対応の一つの姿勢であるわけでございます。
  31. 永井孝信

    永井委員 それでは、今指摘いたしましたように、労働省の職安業務というものがもっと機能強化するということを前提にしたものでなくてはいけない。今言われたようにインプットして対応していくということもその一つでありましょうけれども、この前の当委員会におきます質問で私は触れましたけれども、職業安定所における第一線の職員の数が足らないとか窓口へ行っても親切に対応してもらえないというのは、業務が余り多過ぎてできないということがその主たる原因でありますけれども、そういうことも含めてこの職安の機能を強化するというふうに受けとめていいのですか。
  32. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 業務はますます繁忙化する一方でございます。これはもう離職者の数がふえていく、こういうような中で安定所の業務はふえる一方でございますが、一方、安定所の職員の数は残念ながら、いろいろ財政のこういう窮迫事情、そしてまた臨調の答申の考え方というものの中で、職員の数は、必要なところへの増員は認めていただいておりますものの、ネットでいきますと毎年減少の傾向をたどっておるわけでございます。こういう中で、私ども、職員の数をふやす形によって対応するということはなかなか難しい状況にございますので、今申し上げましたようなそういうコンピューター等の整備、そういうシステムの整備等によりまして、できる限りの、そういう職員の減が求職者に対するサービスの低下にならないような対応をしていきたい。具体的な窓口の対応の仕方も、いわゆる手のかからないといいますか、比較的選職が容易な方についてはいわゆる自主選択というような形で、安定所の方としてはある程度コメントする程度のお手伝いをしていく。一方また、中高年者とか身障者のようにいろいろきめ細かな相談を要する人については、集中的に職業相談というものをやっていく、こういうような仕組みをつくる。あるいはまた、安定所の職員についても、専門官制度というようなものを導入いたしまして、そういう専門官を通じて、特にそういうきめ細かな職業相談や指導を要する人については対応していくというような形での、職業紹介機能の強化を今進めていくという方向で努力をしているところでございます。
  33. 永井孝信

    永井委員 もう一つだけこれに関連をしてお聞きいたしますけれども、この就職情報誌がはんらんをするとかいうことは、どこに実際問題点があるのだろうかということで、今答弁の中にも触れられておりましたけれども、就職情報誌で出された紹介の中身ですね、労働条件を含めて。これがもし守られなくても、就職情報誌は責任をとってくれませんね。あくまでも本人がそれを一つの参考にして就職するのですから、あるいは企業の側にしても、就職情報誌が掲載をした労働条件というものはいわば関知しないということにもなりかねない。ここが本来の職安の中で職安の窓口を通して就職する場合との決定的な違いなんですね。そういうことがまた安易に離職者をふやしていくということになっていきはしないのか。いわば悪循環になっていくということですね。  だから、私は、執拗にこの雇用保険法の改正問題に関連をして職安行政というものを今お聞きをしておるわけですから、ひとつ、そういう就職情報誌があえてそのすき間を突いてはんらんをしてくるようなことになっていかないように、労働行政というものをきちっとしてもらいたい、職安機能というものを強化してもらいたいということを重ねて強く要望しておきますが、二言、それに対してどうですか。
  34. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 こういう情報誌のはんらんについては、先ほど私も申し上げましたが、安定所のそういう情報提供機能、こういったような面について対応が立ちおくれておった問題は、私どもも感じておるわけでございます。  また、現在、こういう就職情報誌を通じましてのトラブルというような関係については、先生おっしゃいますように、雑誌なり掲載したところを文句をつけるという形になかなかなりかねておりまして、現実には、こういうことで問題がある、おかしいと言ってきたそういう従業員の方なり離職した方なりにつきまして、例えば安定所でもそういう事業所とのかけ合いをするとか、あるいはまた、基本的に労働条件が食い違っておるというようなことであれば、例えば監督署なんかにもそういう申告がございまして、監督署においてもそういう指導をしておるというようなことで対応しておるわけでございます。  しかし、問題は、やはり安定所というものがもっとしっかりすれば、これはそんな就職情報誌に頼らないでということにもなるので、こういうことはやはり基本的には私どもも今後腹に入れていかなければならぬ。一方また、この就職情報誌そのものについても、言論出版の自由とかいろいろそういうような関係もあって国が画一的にこういったものについてどうこうするというのはなかなか難しゅうございますが、こういう就職情報誌関係において自主的に何かそういういわば倫理綱領、こういうような形で、いろいろそういう情報掲載についてのモラルといいますか、モラルアップといいますか、あるいはまた事前チェックをやるとか、何かそういう面での対応といったものはお願いできないだろうか、こういうようなことは私どももいろいろ折に触れて今申し上げておる、こういうような段階でございます。
  35. 永井孝信

    永井委員 今後の雇用対策として、第五次雇用対策基本計画の策定をされておる中身については、この時間の後でもう一回、別の角度から触れてみたいと思いますが、質問の順序から、ほかの問題にちょっと具体的に入ってみたいと思うのです。  具体的な問題として、六十五歳以上の者については被保険者としないということになっているわけですね。いわば年齢によって差をつける、言葉をかえれば差別をするということになってくると思うのですが、このILOの勧告においても、いゆわる労働者の引退の時期というのは本人の意思によって決めるべきものであるという勧告が出されていますね。だから、六十五歳でやめようと七十歳でやめようと本来本人の自由意思であるということは、これはもう当然なことだと思うのですね、就職をとめることはできないのでありますから。  そこで、それに関連をして若干お聞きをしてみたいと思うわけでありますが、この労働省の出されました「労働経済の分析」で見ますと、高齢者の問題がかなり意識的に取り上げられていろんな調査をされているわけですね。その中には、例えば高年齢者の職業意識に関する国際比較という問題も、事細かく調査をされて、こういうものが分析をされておるということについては、さすがに労働省だなと思って、一つは高く評価をしているわけであります。そこで、せっかく調査された資料ですから、それに基づいて若干お聞きをしてみたいと思うのでありますが、この就業状況でいきますと、収入の伴う仕事をしているという者が日本では五七・二%、これは国際比較でありますから、フランスでいうと七・八%、これは六十歳以上を対象にしておるわけですね。イギリスは二二・二%というふうにずっとこの数字の大きな違いがあるのですね。これは収入を伴う仕事をしているのはなぜかというと、その収入が欲しいから、仕事を続けたいという理由の中身は生活を安定させるために収入が欲しいからという答え、大半の人がそういうことで資料としては出てくるわけですね。私はこの数字を見ておって、日本は経済大国だと言われているのでありますけれども、しかし実際の生活実態というものが、この労働省の調査されました数字の中にも端的にあらわれていると私は思うのです。ここでは日本とタイ、アメリカ、イギリス、フランスという国の比較をしているわけでありますが、収入が欲しいから働くという人は、仕事を続けたいという理由の中の三九・七%に上っています。フランスでは一九・二%ですが、日本より多いのはタイ国であって、タイ国は八一・七%という驚異的な数字に上っている。これを裏返して言えば、日本の労働者の生活実態がタイに続いて極めて劣悪な条件に置かれておるということを証明しているのではないか、こう私は思うのですよ。そういうことを考えていく場合に、六十五歳以上の人の雇用保険の加入制限ということについてはそういう意味からも問題があるのではないか、こういうように思うのですが、これはどうですか。
  36. 守屋孝一

    ○守屋政府委員 確かに今先生御指摘のように、数字としてはそのような数字が出ております。しかし、この場合、国際比較をする場合に考えなければならない点が幾つかございます。その一つとして、我が国の場合には第一次産業、いわゆる農林水産業あるいは自営業主、家族従業者として就業をしている方々が、高齢の階層になるほど就業者の中でウエートが高いという問題がございます。  実はこの調査につきましても、今先生お話しのように、日本の場合男子で五七・二%の人が就業しているということになっておりますが、実はここに表はございませんが、これを就業上の地位別に分けて分析いたしますと、実は日本の場合はここの五七・二%のうちの五割弱、約四八・四%の人が今言いましたような就業の形をとっているわけでございます。アメリカはその場合二三・一%、イギリスは一二・五%というように、仕事をしている人の中の割合で、日本はずば抜けて農林水産業とか自営業主、家族従業者という形が多いわけであります。  さらにこれをアメリカと日本で、というのはイギリス、フランスは従業者の数が非常に少のうございますので、アメリカと日本で比較してみますと、アメリカの場合は六十歳以上については、六十から六十五のあたりも、あるいは六十五から六十九のあたりも、あるいは七十以上という年齢階層別に言いましても、今申し上げましたような自営業主、家族従業者の割合というのはほぼ同じなんです。ところが日本の場合は、だんだん年齢が高まるに従って、この自営業主、家族従業者の割合がふえてくる。ということは、私が言いたいのは、今の雇用保険の問題として、常用労働者の問題としてこの数字をそのまま当てはめてみることはちょっとどうかということでございます。  ちなみに、常用労働者として収入を伴うような仕事をしたいという男子の割合を、この常用労働者だけで取り出してみますと、五七・二に相当するパーセンテージは一七%でございます。アメリカの三二・六に相当するパーセンテージは一二・七%、こういうような状況でございます。どちらかというと、日本とアメリカはいわゆる就業の意識その他が大分似ている国でございますが、そういう状況でございまして、必ずしもずば抜けて高いというのは常用労働者としての面ではないということが一つ言えると思います。  それからもう一つは、収入を伴う仕事をしている人が、今後ともに収入が欲しいからその仕事をしたいという点でございますが、実はこの点も、この調査の後の方をごもんいただきますと、これは例えば十二表の老後の生活の生活費はどうしようか、何に頼っていくかというところでございますが、この十二表をごらんいただきますと、老後の生活費は働けるうちに準備し、家族、他人などには頼らないようにする、いわゆる自立型といいますか自助型、これが日本は、アメリカも高こうございますが、イギリス、フランスに比較して非常に高い。むしろ、その次にはまた、老後の生活は家族に面倒を見てもらうというのは、日本が欧米諸国に比較してずば抜けて高いわけでございます。やはりこういうのは、自営業者、一次産業就業者であるがゆえにこういう志向をとる、そういう面が収入が欲しいからという面に強く反映しているのではないかということであります。といいますのは、イギリス、フランスの場合ですと、実は就業上の地位別で見てまいりますと、農林水産業とか自営業主ではなくて実はパートが非常に多いのです。臨時、パートに働いている人の割合というのがイギリス、フランスはずば抜けて高こうございます。こういう人は何を考えるかというと、仕事につくのは仕事そのものがおもしろい、これは第三表にございますが、こういう形をとるわけでございます。生活ができないから仰ぐんだという御指摘もございますが、この調査には、一体今収入面で生活費について困っているかどうかという調査もあるわけでございます。ところがこの場合、生活に困っていないという回答をしているのが実は日本が一番高いのです。困っていると言っているのは日本は三%ぐらいで、困っていないというのが六割ぐらいあるわけでございまして、そういう面から、この問題につきましては、困っているから働くんだというのが必ずしも一概に言えるかどうか、この調査からはなかなか申し上げかねる点だというように考えております。
  37. 永井孝信

    永井委員 今の御説明によると、日本の場合のこの数字の分析の中身というのは、常用雇用者ばかりではなくて、いわゆる第一次産業的なものが非常に多い、こういう御説明なんですね。それは中身が第一次産業であろうと第三次産業であろうと、そんなことを今私は問題にしているわけじゃないのです。どんな仕事であれ、収入の伴う仕事を続けたいという志向は極めて高い、このことがこの「労働経済の分析」の中で私どもから見ると極めて重視をしているところなんですね。そして、今言われたように、生活の困窮度というものは、たまたまこの調査の中では、困っていないと言っている人が非常に多い、六〇%を超えているとか、こういう答弁でありますが、何を尺度に困っているか困っていないかということまでの分析はないわけでありまして、アメリカやフランスやイギリスと日本の労働者の生活水準というものが同じレベルで置かれたらどうなのかということになると、これまた全然数字が違ってくるのでありまして、日本人特有のつつましやかな生活ということが前提であると何とか食っていける、こういうことでこの数字は出てきているのではないか、こう思うのですね。  そこで、自立型というふうに言われました老後の生活費、働けるうちに準備しておいて他人に迷惑はかけたくない、これが六〇・二%、このように数字が第十二表の中で川でいるわけです。私はひねくれているのでしょうかね、やはりひねくれて問題を見るのですけれども、働けるうちに準備して他人に頼らないということは、裏返して言えば、老後の社会保障政策というものが不十分過ぎるから、自分で働いて老後の生活の安定のために蓄えておこう、こういうことになってくるのではないか、そういう数字だ、私はそういうふうに見るのですよ。私の根性がちょっとゆがんでいるのでしょうかね、私はそう思うのですが、そういう関係からいくと、今の日本の社会保障政策からいって、六十五歳以上の人がもっともっと働いていたいということがあって今の現実は当然だと私は思うのですね。  今この表の方で御説明がありましたから、その表で問題提起をいたしますけれども、望ましい引退年齢ということについてやはり調査されているわけです。六十五歳くらいと答えている人が一番多くて、日本の場合三三・六%。七十蔵ぐらいと答える人はその次に多くて、三〇・五%にも上っているのです。その後は、六十歳の一四・三%を除いては全部一けたなんですね。そうすると、日本の社会の現実というのは、六十五歳でまだまだ仕事をやめるわけにいかぬという現実がこの数字の中にもあらわれてきているのではないか。そう考えていくと、六十五歳で線引きということが現実に合致していないというふうに言わざるを得ないと私は思うのですね。まして憲法の第十四条に言っている法のもとにおける平等の問題であるとか、第二十七条の勤労の権利、あるいは第二十五条の文化的な生活を営む権利ということの憲法の理念を生かしていくとすれば、六十五蔵で線引きをして、六十五歳以上の人は新たに被保険者となることができないという法改正は大きな問題点ではないのか、こう思うのですが、どうですか。
  38. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 望ましい引退年齢が六十五歳か七十歳か、またそれについての数字をお示しをいただいたわけでございますが、私どももやはりこういう数字をにらんでおります。雇用保険制度というのは一つはフルタイムの常用雇用、こういう形のものについての求職活動に対する援助、こういう仕組みのものでございます。こういう六十五歳を超える方についてのフルタイムの常用雇用希望者ということになってまいりますと、これががたっと落ちてまいりまして、私どもの推計では約七%弱というような形に落ちてくるわけでございます。そういう意味で、要するにフルタイムの求職活動というものを、国も金を払いながら独制適用してやっていく制度の中でこの六十五歳以上というものについてやっていかなければならぬのか、具体的に言えば、いわばそういう七%弱の人のための制度という形のものをやっていくのかどうか、ぎりぎりいきますとこういう問題に帰着してくるのではないかと思うわけでございます。私ども、決して六十五蔵以上の方は一切働くなどか働く必要がないとかそういうことを申し上げておるのではなくて、問題は、そういうフルタイムの常用雇用としてなおこの雇用保険制度というもので求職活動を援助していかなければならぬそういう年齢脳がどうか、こういうことで、今回六十五歳以上の問題についての対応を考えておるわけでございまして、現実に六十五歳以上の方でも元気な方はたくさんおられます。そして私どもも、例えばシルバー人材センターというような形でいろいろそういう方々の就労の場の提供もいたしておりますし、あるいはまた、全国二百七十の市におきまして高齢者の職業相談室というものを置きまして、職業相談もやっております。そういうことで働く場の提供というものについてのお手伝いをしていきますが、そういうフルタイムの常用雇用というものについて六十五蔵以上の方についてなおやっていくかどうか、こういうことについての一つのけじめといいますか割り切りとして、今働こういう制度を御提案申し上げておる、こういうことでございます。
  39. 永井孝信

    永井委員 私の記憶が間違っておったら御訂正いただきたいのでありますけれども、たしかこの麻用保険法の改正案の審議が始まった段階で、我が党の池端議員だったか、名前は忘れましたが、どなたか御質問なさったときに、八十五歳の線引きの問題が出まして、六十五歳までは労働省の雇用政策として責任の範疇である、八十五歳を超えればむしろそれは社会保障に責任があるというふうな御答弁をなさったことがあったと思うのであります。それは間違いございませんか。
  40. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 そこまでずばっと割り切った言い方ではなくて、六十五蔵まではやはり、国の労働力政策として特別な援助をしてでも、とにかくその労働力の活用政策、労働力の対策をやっていきます。しかしそれ以後についても、私ども公共職業安定機関あるいはまた関連機関等におきまして、そういう希望される方については、やはり労働力として能力を発揮される場の確保といった面についてはやっていきます。ただ、特別なそういう国としての政策をとっていくものとして、例えばそのほかにも、定年延長奨励金も現在六十五までの定年延長について奨励金を出しておる、あるいは特開事業というのがありますが、これもまた六十五までとか、あるいはまた高齢者の雇用確保奨励金という形で特別に援助して雇用確保をするのも六十五歳までというような形で、特別のそういう制度として打っていく年齢層というものを一応六十五歳にしておる、しかしこれは、それ以上は一切やらないとかそういう意味で申し上げておるのではないわけでございます。  ただ問題は、六十五以上については社会保障政策の方が主として分担していく場面になるだろうということも、これはまた私どもも否定するものではございません。そういうような大まかな分け合いをしながら、例えば年金の場面についても在職老齢年金がございますように、相互乗り入れをしなければならぬ年齢層といいますか、そういうのがやはり六十歳台であろうということでございまして、そういう意味での六十五歳ということを申し上げておるわけでございます。
  41. 永井孝信

    永井委員 そこで、高齢者対策という立場でありますから、また変わった視点からこの問題についてお尋ねしてみたいと思うのです。  高齢者問題の世界会議というのが一九八二年八月六日に開かれていますね。ここに翻訳文を持っております。長い長い翻訳文でありますからここで全部に触れるわけにいきませんけれども、この翻訳文の中身でいきますと、その中のこの問題に関するエキスとも言うべき部分をちょっと摘出してみますと、「社会保障体系の中で、また必要なら他の方法で、失業中の高齢者あるいは労働能力のない者の所得保障に対する特別のニーズにこたえること。」ということがこの中で結論づけられているわけです。あるいは「所得保障の問題と明白に関連するのが、働く権利と引退する権利という二つの命題である。」ということで、今私どもがいろんな表現を使って質問をしているわけですけれども、そのことの集約的なことがこの中にずばりと触れられているわけです。そうして「年齢による差別は広く行われており、多くの高齢者が年齢による偏見から労働力の中にとどまること又は労働力に再び加わることができずにいる。」現実を注視しなくてはいけないということも、この中で触れているわけです。まだたくさんあります。例えば「高齢労働者が満足のいく条件で働き続け、かつ雇用の安定を享受することをできる限り保障するため、使用者及び労働者の団体と協力して適切な方策を講ずるべきである。」、さらに「新たな就業機会を創出したり、訓練、再訓練を促進することにより、高齢者が独立した就業を探したり、それに再びついたりすることを援助する方策が講じられるべきである。高齢者の働く権利は暦年齢ではなく、仕事を遂行する能力に基づくべきである。」、いいことを言っているのです。「多くの国で若年層を中心として深刻な失業問題が生じているが、雇用労働者の引退年齢は自ら望む場合を除き、引き下げられるべきではない。」、こういうふうに勧告しているわけです。そして「各国政府は、労働生活から引退への円滑かつ漸進的な移行を可能にするような方策を講じ、さらに年金受給資格年齢をより弾力化すべきである。」、こういうことをこの高齢者問題世界会議でまとめられて勧告されているわけでありますが、労働省はこれを具体的にどう受けとめていらっしゃいますか。
  42. 守屋孝一

    ○守屋政府委員 この国際行動計画につきましては、全部で六十数項目の勧告がございます。非常に多岐にわたっておりまして、今先生の御指摘になりました点等につきましても、私どもも、既に、こういうことはある程度念頭に置いて今馬齢者対策を進めておるところでございます。私どもとしては、この行動計画は、今後の我が国の高齢者対策を進める上で非常に貴重な参考といいますか、幅広い指摘がございますので指針になるというふうに考えておりまして、この行動計画を念頭に置いて高齢者対策を進めていきたいというふうに考えております。  ただ、この行動計画にも書いてございますように、それぞれの国の雇用慣行等を念頭に置いて、その雇用慣行等に適するような、国内事情等に沿ったような形での実効性ある対策を進めていくようにという御指摘もございます。私どもはそういう線を踏まえて、今の六十年・六十歳定年延長の一般化の問題にいたしましても、六十歳台前半層の多様な就業ニーズに対応するところのいわゆる雇用延長諸対策にいたしましても、また、シルバー人材センターの育成というような雇用でない非常にフレキシブルな形での就業の援護策にいたしましても、こういう行動計画の基本的な精神を踏まえて進めていっておるつもりでございますし、今後も進めていきたいというふうに考えております。
  43. 永井孝信

    永井委員 今私が申し上げました、この高齢者世界会議の勧告の中身を十分に配慮しながら対策を進めているということでありますが、その関係からいくと、この第五次雇用対策基本計画はそういうふうな趣旨でまとめられたと理解していいのですか。
  44. 守屋孝一

    ○守屋政府委員 この行動計画は一九八二年、昭和五十七年の七月から八月にかけてウィーンで行われております。私どもは、この会議の後、当然これを入手しておりますし、こういうことも念頭に置きつつ、ただそれぞれの国情に適したやり方でこれを進めていっておるということでございます。
  45. 永井孝信

    永井委員 それぞれの国情に適したやり方なんですけれども、他の国のことはいいのです。日本ではこれがどこまで生かされようとしているかということなんです。どうですか。
  46. 守屋孝一

    ○守屋政府委員 ですから、我が国の国情に適したやり方で進めているというふうに申し上げましたのは、先ほど先生、年齢による差別禁止、こうおっしゃいましたが、これは年齢による雇用の差別禁止を定めている国もございますけれども、我が国の五十五歳定年というような雇用慣行をどう変えていくかということになりますと、ただすぐ法律でもって強制するという性格のものかどうか、これは労使で十分話し合うべき余地が非常に大きい問題でございます。例えば、年功序列の賃金カーブをどうするかということが定年延長を導入するかどうかの非常に大きな決め手になるわけでございます。これは賃金問題もございますから、労使で十分自主的に話し合ってもらう必要があるわけでございます。  一例を挙げますと、例えばこの年齢差別のような問題につきましても、定年延長の推進、六十年・六十歳定年の一般化ということを最大の眼目にして今進めているわけでございます。さらに言えば、今後我が国の高齢化の波は六十歳台前半にこれから及んでくるわけでございます。そこで、先ほども局長答弁いたしましたが、六十歳台になりますと体の面での個人差も非常に出てまいりますので、早期に引退を志向される方もございますし、職種によってはいろいろ問題がある職種もございます。そこで私どもは、今度は雇用延長という形でもってこれを六十五歳まで進めていこうということでございまして、これは基本的にはこの行動計画に反するものではなくて、その国情に適したやり方として私はそれに乗っておるというように考えております。
  47. 永井孝信

    永井委員 そこで、この基本計画の具体的な中身にちょっと触れてみたいと思うわけでありますが、まず初めに産業構造の変化という問題があります。技術革新という問題もあります。この関係で言うと、まず「不況業種、不況地域問題への対応」として、「雇用対策において、企業内での配置転換のみならず企業間での出向や失業を経験しない形での再就職等も含め、失業予防などの企業の雇用安定努力を援助する。」、こう書かれているわけです。そうして「構造不況業種・不況地域の指定を機動的に行うとともに、雇用調整がなだらかに行われるよう離職前の能力再開発の実施等の対策を推進する。更に、諸助成措置を活用し、下請中小企業からの離職者も含め、積極的に再就職を促進する。」、こう計画の中に触れているわけです。こういう問題が、今部長の言われたような、国際会議のそういう意向を十分に酌んだものとして合致しているのだろうかという問題が一つあります。具体的に言えば、この下請関係と大企業との関係を言っても、下請への労働者の振り向けということが、逆にこの諸助成措置の中で促進されることになっていかないか。私の経験するところでは、例えば一つの職場にあって、今まで直接その企業が内分の雇用者をそこで業務につかせておった、ところが合理化ということでその職場の仕事を外注に切りかえていく、いわゆる下請に切りかえていく、そうして合理化ですから、労働者の希望退職という名目も含めて人員整理を行う、行ったものは再就職のあっせんを責任を持って行うという労使間の協定などもあって再就職をさせる、その再就職をした先が、今までと全く同じ仕事で、同じ職場であるけれども、その職場自体が下請企業に任されるものですから、中身は変わらない、しかし労働条件は著しく変わる、そういうことだってあるのですよ。そう考えていくと、この基本計画の中でうたわれている例えば諸助成措置を活用するということなどが、結果的にそういうことの促進剤になっていきはしないかという心配があるのです。これはどうですか。
  48. 守屋孝一

    ○守屋政府委員 今の先生がお話しになっておられる点は、言うならば不況対策といいますかそういう面でのお話かと思います。  この国際行動計画の面につきましては、例えばこの勧告の三十七になると思いますが、簡単に言えば勧告の要旨というのは、高齢者が満足のいく条件で働き続けて、その雇用の安定を享受するための方策をとれということを言っておるわけでございます。恐らく先生のおっしゃるのはこの点かと存じますが、これにつきましては、一つには、先ほども言いましたような定年延長の促進とかそういう問題もありますが、さらには、それぞれの高齢者の雇用を促進するためのいろんな助成金がございます。こういう面を活用してこういう方々の雇用の促進を図るということが、まさにこの行動計画で言われている視点にも合致するのではないかと思います。ただ、行った先が前よりも労働条件がどうか、こういう問題はございますが、これはやはり日本の言うならば年功序列型賃金体系といいますか、そういう中で、どうしても一つの会社に長くおれば賃金がだんだん上がってくる、後から入ってくるとなかなかそうもまいらぬということからくる問題でございまして、そこまで企業の中に立ち入って今の賃金慣行を変えてしまえというところまで、この行動計画はそこまで企業に問題を指摘し迫っておるかといいますと、これは実は政府間の会議でございまして、政府としての努力を言っておる問題でございます。我々としては、そういう場合に、何はともあれ再就職されるということが重要なことでございまして、そういう面でいろんな助成措置も講じておりますし、さらには今の高年齢者について、正式には特定求職者雇用開発助成金という給付金でございますが、これを出すことによって少しでも高い賃金で雇われる可能性を求めて、こういう助成金を出しているわけでございます。そういう意味では、この行動計画に相反するような施策をとっているということにはならぬのではないかというように考えております。
  49. 永井孝信

    永井委員 さらにこれに関連をしてお聞きをしてみたいと思うのですが、「本格的な高齢化への対応」という項目がございますね。この中に「高年齢者の高い就業意欲を生かし、その能力を有効に発揮させていくことが必要であり、高年齢者の雇用就業機会の確保が重要な政策課題となっている。」ということをちゃんと御認識していらっしゃるわけですね。ちゃんと指摘されている。そうして、その中で例えば、今百われたように定年の延長の問題がありますね。直ちに法制化することがいいのかどうなのか、労使関係の問題も存在するというように御指摘されているわけでありますが、この中でこの資料を引用すれば、「定年延長の立法化問題については、定年延長の今後の進展の動向を見ながら、昭和六十年頃の適当な時期に改めて検討を行う。」、こうなっているわけですね。これをあえて言うならば、労使関係の協議あるいは企業の姿勢、そういうものに結果的に期待するにとどまってしまいはしないのか。これだけ高齢者問題が政治課題になってき、社会問題になってきているときに、従来から労働省は、定年延長は重要な政策の柱であるということをうたってきている。ところが昨年十月の基本計画の中では、依然として定年延長の今後の進展の動向を見ながら六十年ごろに改めて検討するというのです。これは今までの歴代の労働大臣が、労働時間短縮の問題についてあるいは定年延長の問題について質疑が交わされた時点で、昭和六十年に六十歳定年制を目標にして強力に推進するという答弁を繰り返して行ってきているわけです。ところが基本計画では、その時期に改めて検討を行うということは、あくまでも能動的ではなくて受動的な立場に置かれているのではないか、基本計画そのものが。  さらに、高年齢者の雇用率の問題についても何回も問題になってまいりました。これはまだまだ雇用率は定められたとおりに達成し切っていないはずなんですね。六%ですか、六%の雇用率の達成というのができていない。しかし、この高年齢者の雇用問題については、引き続き未達成企業に対する指導を強化するということに実はとどまっているわけですね。今の現実を踏まえて高齢者対策を進める場合に、画期的にあるいは即効力を発揮するようなことの対応は難かしいのかもしれませんけれども、しかし、労働省が消極的ではなくてむしろ積極的に打って出るぐらいの姿勢がないと、なかなかたくさんある企業を指導し切れるものではないだろう、こう思うのですが、これはどうでございますか。
  50. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 労働補としては、高齢者対策の推進については労働政策の最重要課題として取り組んでおるわけでございまして、私ども決してこの問題に対して消極的な取り組みをしておるとは思っておりません。  今御指摘ございました六十年度には六十蔵定年が一般化するよう引き続き積極的に推進する、こういうことでこの基本計画にも書いてございまして、そのための行政指導はさらにまた一層ごとしも強めていこうということで、個別企業の指導までことしは具体的に入っていこうというところまで、今進めておるところでございます。  ただ、問題は、それを法律で六十歳定年制というものを決めるかどうかということにつきましては、今高齢者対策部長が申し上げましたように、具体的には年功序列賃金の形になっておる場合に、五十五歳以上の方を今後六十まで雇用する場合に、そのままの賃金カーブに例えば乗せていっていいのかどうか、それで企業としてうまく対応できるのかどうか、それからまた労働者の側もそれでいいのかどうか。あるいはまた、具体的には人事の問題などもあるわけでございます。今まで五十五歳で係長なり課長なりという人が、ずっと六十歳までそのままでいくことでいいのかどうか、いろいろポストの問題、処遇の問題等があるわけでございまして、そういうような問題を考えると、なかなか簡単に法律で六十歳定年制というものをすぱっとコンクリートすることにはいろいろまだ解決しなければならぬ問題がある。そういう状態の中で、雇用審議会を中心に六十歳定年問題がいろいろ論議をされ、そして、一応現段階においては、六十年ごろの適当な時期に定年延長の推進状況を見ながらもう一遍どうするか検討しよう、こういうことになっておるわけでございまして、決してこの六十歳定年問題について私ども消極的なるがゆえにこういう表現になっておるというふうには考えていないわけでございます。  それから、雇用率制度の問題についても御指摘ございましたように、現在、六%の雇用率に対してトータルでは七%ぐらいの雇用率になっておりまして達成いたしておりますが、ただ個別企業について見ますと、まだ六%の未達成企業というものが約四八%ぐらいあるということで、半分近くのものがまだ五十五歳以上の高齢者について六%達成という努力義務を達成していない、こういうような現状にあるわけでございます。こういった点についても今後精力的に我々も取り組んでいかなければならぬし、また、定年延長というものが進んでいきますればある程度おのずから進んでいくという面もあるわけでございます。今まで五十五歳で定年だから、そこでみんなやめるということになれば五十五歳以上の雇用率が一つも進まない仕組みになっておるところを、定年延長という形でだんだん雇用率を実質的に伸ばしていく、こういう仕組みで今がんばっておるところでございまして、しかもまだ、雇用率制度についても今のままの制度でいいだろうか、この辺についてはいろいろ問題もございますので、今後高齢者の雇用動向に即して雇用率制度についてのあり方の検討を進めていこう、こういう構えでございまして、決して消極的な段階にとどまっておるものでないということを御理解賜りたいと思うわけでございます。
  51. 永井孝信

    永井委員 文言上のことでどうこう言って質問をするわけじゃないですけれども、政策を進めていく上での労働省の姿勢の問題だと思っておるのです。そういう考え方からいくと、例えば身体障害者などの雇用率の達成問題については、仮にこの雇用率が達成できない場合は、ペナルティであるのかどうなのかということは何回も議論してきたことだけれども、一応一定額を納付金制度で納めることになっております。ところが、高齢者の雇用率の問題についてはそういう規制もないわけです。強制力も持っておらないわけです。それが各企業に安易な姿勢をとらせてしまうということになるのではないか。そうすると、この高齢者の雇用率の問題についても、一定のそういうペナルティ的なことを考えるべき時期に来ているのではないか、こう思うのですが、どうでございますか。
  52. 守屋孝一

    ○守屋政府委員 この点につきましては、先ほど局長が申し上げた点とまたある程度重複する問題になりますが、結局高齢者の雇用が進まないという問題は二つあると思います。一つは、定年延長とかそういう形で企業内市場の中に抱えておく期間が短いという問題、これは定年の問題だろうと思います。これは先ほども言いましたように、定年延長の促進を我々は強力に図っております。もう一つは、人を新規採用する場合に、高齢者を雇うかどうかの選択の問題があろうかと思います。それ以外に、現に既に何人かの人がいまして、この雇用率が未達成であるから若い人を首を切って高齢者を入れろ、こういうわけにはちょっとこれはまいらぬ事情があるということも御理解いただけるかと思います。  そうなると、新規雇い入れの問題が中心になってまいりますが、この場合にも、やはり問題になりますのは、雇い入れるとした場合でも、高年齢者の場合でも、一たん離職いたしますと、前職賃金よりも再就職賃金が非常に安いという問題があってなかなか進まないということになるわけでありますが、これは先ほども言いますように、我が国の一つの雇用賃金慣行ということがその前提になっておるわけでございます。しからば、この雇用賃金慣行行をどう改めるかという問題になりますと、これは使用者が一方的に変えるわけにはまいりません。どうしても労使が十分に自主的に時間をかけて話し合っていく必要があるわけでございまして、このような問題を、身体障害者の方々の場合と同様にペナルティをかけ、あるいは公表するとかいったような一種の制裁規定をかけるのが果たして適当かどうかということでございます。むしろ、私どもとしては、この雇用率未達成企業につきましては、いわゆる雇用率達成のための計画の作成命令を出しておりまして、それに基づいて指導しておるわけでございますが、非常に重要なのは、そういう形で、非常に成績の悪い企業については個々に当たって、個々に安定機関が指導していくというのが今の段階では最も必要な措置ではないかというふうに考えております。必ずしも法律に基づく強制なり罰則なりあるいはペナルティというのがいいのかどうか、私どもは、今の段階においては、そういう賃金慣行を前提にする以上、具体的な指導をやっていくというのが必要だということで、これに対しては全力を挙げて進めてきておりますし、今回もさらに一段とその内容を強化して指導を強めていこうという考え方でございます。
  53. 永井孝信

    永井委員 繰り返して恐縮ですが、定年延長問題は依然として六十年の現状を見て改めて検討するということになる。労働時間短縮問題、きょうは余り触れませんけれども、労働時間短縮問題についても、なかなか現実に効果を上げていない、依然として二千時間を超えているというそういう状況にある。なおこの法内超勤問題などは、公共企業体あたりでは積極的に取り上げられて、労使間で四十八時間以下に決められた労働時間が、法内超勤として週四十八時間に労働時間が倒達するまでは労使の協議が必要ない、一方的に勤務時間を超過勤務として延長することができるというふうに、いわば労働基準法そのものの定めている最低基準でなければいけないものが、最大限に逆に活用されているという現実の姿がある。その片方で失業率が二・七三%という現状にある。どうもばらばらなんですね。定年延長は進まない、時間短縮も進まない、そうして片方では、不況のために不当労働行為だってどんどん出てきて労働者が首を切られるということで、今現実に起きていることは、大変などろどろした渦の中に労働行政がいわば沈んでしまっているというふうな状況に、表現は厳しいような表現をとりますけれども、そういう状況に現実は置かれているのではないか。  そういう段階の中で、この第五次基本計画が示しておりますようなことを具体的に進めていく場合は、労働省がもっとある意味では強制的な力を発揮できるようなものを求めていくべき時期ではないか。単に検討するとか、こういうふうに指導するとか、このように努力をするとか、こういうふうに研究するとか、いろいろなことを並べてみても、それだけではなかなか効果を上げることができない状況に置かれているのではないか、こういう気がするわけですが、これについてどうお考えになりますか。
  54. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 おっしゃることはよくわかるのですが、問題によりけりだと思うわけでございます。現実に、今たびたび申し上げておりますように、そういう賃金体系をどう変えていくかというようなことにずばり絡むような問題、あるいは処遇にどう絡んでいくかということにずばり絡むような問題を法律で強制し得るものであろうかというような而もございまして、そういう点については、日本独特の行政指導というような中で、例えば、単に役所がそういうことで呼びかけていくというだけではなくて、具体的に、定年延長もし、そして賃金体系もそれなりの直しをし、処遇についても実際にいろいろやってみたというよう経験を豊富に持っておられるような企業の元労務部長であるとかコンサルタントであるとか、そういうような方に、実際に、そういう定年延長を呼びかけていく企業に対していろいろまた示唆を与えていただくという、定年延長アドバイザー制度というようなものを使いながらのいろいろ行政指導というものの方が、実際に効果を上げるというようなものがあるのではないか。物によりましてはもちろん法律でぴしっと決めておかなければならぬような問題もあると思いますが、やはり対象によって、そういう法律で一律にやる場合の方が妥当の場合と、それからまた、行政指導という形でいろいろ具体的な現実打開を試みながらの進め方という道もあるのではないか。こういうことで、いろいろ対象によってのいわば行政手法の使い分けというものもあるのじゃないかと思うわけでございます。
  55. 永井孝信

    永井委員 賃金の問題まで法律で決めろ、そんなことは私どもも考えていないし、言っているわけじゃないのですね。しかし、定年延長問題に例をとれば、定年延長を実現させるように政府としても努力をする、指導を強める、こう言ってきておるわけですけれども、そういう範疇にとどまっている限り、本来の定年延長というものは目的を果たすことができないのではないかという気がするわけです。だから定年延長を一定の強制力を持ったものにする、そのことが、なおざりにされておった高齢者の賃金問題の労使協議を促進する発火点にもなっていくのではないか。定年延長の問題が具体的に進行しないままに高齢者の賃金問題と言ってみても、労働組合が要求したって企業の側がおりてこない場合もあるだろうし、あるいは定年延長がされていないために、効率的な企業活動をするためには労働時間が非常に長くされていくということも私はあり得ると思うのですね。そういう意味での強制力を実は申し上げているのでありまして、今言われたように賃金の問題まで法律でという、そんなことはできるわけがないのでありまして、そのことはひとつ私の言っている意味は十分御理解いただけると思うのですね。  そこで、それに関連をして、今度の雇用保険法の改正の中で新設されようとしている定年退職者等雇用促進助成金という制度がありますね。これは、私が今幾つか質問してきました中に、例えば事実上、合理化によって同じ会社の同一業務につく場合、そういう場合では現実には労働条件が低くなっていくという、たくさんそういう現実はあるわけですから、そういうことも考えてみると、この定年退職者等の雇用促進助成金というものが、結果的に高齢者の労働条件引き下げのための役割を持たされてしまうということにもなりはしないか、こう思うのですが、これはどうですか。
  56. 守屋孝一

    ○守屋政府委員 定年退職者の問題につきましては、そのままではなかなか就職が難しい。そこで、できるだけ早くこういう方々の再就職を促進させる必要がある。そのためには我々安定機関も全力を挙げてこの問題に取り組みますが、やはり何といいましても、定年でもって離職されたところの事業主の方々が親身になって、こういう定年退職者の方々の就職のあっせんをしていっていただきたい。我々とこういう事業主とが一体になってこれを進めていくことがより容易に定年退職者の就職の促進に結びつくだろうということで、そういう意味合いからこの助成金を出すわけであります。したがいまして、これが必ずしも先生御指摘のような悪い形で、悪用されるというような形で進むというようには私どもは考えておりません。
  57. 永井孝信

    永井委員 よかれと思って計画というか策定されたと思うのでありますけれども、企業の側にすれば、その定年退職者の雇用促進助成金がもらえるということになると、むしろそれを最大限に活用して、定年延長どころかこれは人情としてできるだけ早くやめてもらうということに走るんじゃないんでしょうかね。その辺のところを私は非常に心配をするわけでありますから、この新設される制度というものは、むしろ雇用の確保あるいは雇用の拡大、雇用不安の解消ということと逆行するような気がするのですが、ひとつ再度お答えいただきたい。
  58. 守屋孝一

    ○守屋政府委員 これは単に、いかような定年を決めておってもとにかく定年でやめたらやめた人についての再就職についての助成金を出すという制度では実はないわけでございます。というのは、定年により退職したといいましてもそれは六十歳以上の方を対象にしております。言うなれば、もし先生がおっしゃるような点で言いますれば、これはむしろこの制度に乗ろうとすれば五十九歳の定年を引いておってはこの制度に乗れないわけでございまして、何とか六十歳の定年に持っていくようにしなければこの制度が利用できないということで、逆に私は定年延長の促進につながるものではないかというふうに考えております。
  59. 永井孝信

    永井委員 それでは、それに関連をして、最前若干質疑をいたしましたこの老後の生活問題についてさらに触れてみたいと思うのですが、繰り返して恐縮ですけれども、老後の生活費というものは働けるうちに準備して、他人に頼らないということを一つの意識として持って働きたいという自立型、これが六〇・二%になっている。そして社会保障によって賄えという気持ちを持っていらっしゃる方は同じ調査では二四・一%にすぎない。この二四・一%の中には願望も入っていると思うのです。ところが、この資料で見ると、最前私が指摘しましたように七十歳ぐらいまで働きたい、しかもまだ、そこまで働かないと生活の保障が十分でないということもあって三〇・五%もの人は七十歳ぐらいまで働きたい、こう言っている。そうすると、仮に社会保障で賄えという願望を含めた二四・一%の人たち、あるいは今までのこの当委員会における質疑を通して労働省が、今局長が言われたように表現は明確でないにしても、六十五歳までは雇用政策の範疇に入る、六十五歳を超えれば社会保障の範疇に入る、こういうことになりますと、六十五歳でこの雇用保険の被保険者にしないということでありますから、そこで一定の線引きをする場合に雇用政策と社会保障というものがリンクされておらなくてはいけない、それであって初めできちんとした線引きも可能になってくるわけですね。全然抵抗なく労働者も受け入れることができる、こうなっていくのですが、それじゃ、今の六十五歳以上の人のこの社会保障という部面で見た場合に、これが十分なものだと労働大臣はお考えになっていらっしゃるか、どうですか。
  60. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 六十五歳以上の方につきましての国民年金、あるいは厚生年金というものについての受給率は九〇%を超えた数字になっておるわけでございますが、現実にその給付の額ということになりますと、低い方では三万円未満というようなところもあるわけでございまして、そういう意味では、今のままで全く生活が、社会保障のそういう年金だけで大丈夫だという状態にすべての人がなっておるというわけではないわけでございます。しかし、そういう年金制度についてもいろいろな改革も今進められつつありますし、また制度そのものの成熟の中で、やはりそういう年金で一応の六十五歳以降の生活が支えられるような状態に持っていくということは、国の一つの基本的な政策としてそういう方向をにらんでの政策が今進められておる、こういう段階にあることは事実でございます。
  61. 永井孝信

    永井委員 私の申し上げたいことは、社会保障が十分に確立されていない現実の中で、仮にも労働力の供給ということを法律によって一定の制約を加えるということは、もちろん労働省側、政府側が答弁されているように、何歳になろうと働きたい人がおって雇うところがあれば、それはいいのですよ。もちろんこの自営業とかいうことはこれはまた本人の意思でできます。あるいは農業に従事する人などは企業に就職する場合と状況が違ってまいりますけれども、しかし、企業に就職するという場合を例にとってみると、働きたい、雇いたいということがあればこれは何歳でも可能なことである。しかしこの制度、仕組みの中で一定の労働力の供給という問題について制約を加えるということは、それはあくまでも老後の生活保障が確立されているという前提でなければならぬ、こう思うのです。  そこで厚生省、来ていますか。――厚生省にお聞きするのですが、今この六十五歳以上の人たちの社会保障については、まあ年金制度でも幾つかありますけれども、今の現状において、仮に六十五歳以上超えて就職する場合でも、被保険者になることは認めないという一定の制約を加える段階で就職がしにくくなる、こういう状況を踏まえた場合に、いま年金なんかで、いわゆる社会保障の部面として十分に老後の生活の保障ができておるというふうにお考えなのかどうなのか。厚生省にひとつお答えいただけますか。
  62. 渡辺修

    渡辺説明員 民間の一般のサラリーマンを対象としております厚生年金保険の例で申し上げますと、新たに退職をいたしまして年金を受けるごく標準的な経歴を持った男子の場合は、五十八年度の年金額で十五万円強ということで、かなりの水準に達しているものと考えております。  それからまた、この国会に御提案申し上げております年金改正案によりますと、六十五歳以上の方々につきましては、在職しておりましても厚生年金の被保険者としない扱いとしておりまして、この結果、六十五歳以上の方については働いて所得がありましても年金は一〇〇%支給される、この点も民間サラリーマンの老後所得保障の上では一つの改善ではないか、こんなふうに考えております。
  63. 永井孝信

    永井委員 たくさんの企業がありまして、大企業の場合はそれなりに例えば退職金も比較的まとまったものが手に入る、あるいは今言ったように、よかれ愚かれ部長の言をかりると定年延長に非常に貢献する、こう言われておるのでありますから、それをそのまま受けとめるとして、この再就職のための助成金もいただいていろいろなことが対応してもらえるということもあるんでしょうけれども、中小零細になるとなかなかそうはいかぬと思うのです。厚生省から今お答えがあったように、厚生年金の標準年金ということでお答えになりましたけれども、例えば厚生年金に入る資格を持っていない零細企業など、これはどういうことになっているのですか。
  64. 渡辺修

    渡辺説明員 厚生年金の適用を受けておりません零細事業所の従業員につきましては、現在国民年金制度の適用を受けておるわけでございます。国民年金制度は第一義的には農業、商業といった自営業の方々を対象にしておりまして、有形無形の営業用の資産を有しておるという方々を典型的な加入者とする制度でございますから、同じ被用者であるにもかかわらず、こういう第一義的に自営業の方々を対象とした国民年金制度の適用を受けている方がサラリーマンの中におられるということにつきましては、御指摘のとおり不均衡な面もあろうかと思います。この点につきましては、関係の審議会からも、いわゆる五人未満事業所等の被用者への厚生年金の適用問題については、その前進を図るための具体的な方策を今回の年金改正案で講ずるように、また、そのために必要な事務処理体制の整備を図れという御指摘を受けたところでございます。  こうした御指摘を踏まえまして、今回の私どもの年金改正案におきましては、五人未満事業所等で現在厚生年金保険の適用を受けていない被用者の方々についても段階的に厚生年金保険を適用していこう、こういう改正案を御提案申し上げているところでございます。
  65. 永井孝信

    永井委員 今答弁を聞いておりますと、国民年金などに加入している人も順次段階的に厚生年金に切りかえていきたいということですが、しかしこれにはかなりの時間を要するわけでしょう。そうすると、自営業とか農家の方はさておいて、雇用関係を結んで、雇用関係という契約をもって仕事をしている零細企業で働く人たち、この人たちは、労働省が言うように、六十五歳以上は社会保障の分野である、六十五歳までの雇用政策は労働省がいわば責任の範疇としていろいろ対応をしていかなければいかぬといって、そこで六十五歳線引きをするということが、いかに働く人にとって過酷なものであるかということがここで私は浮き彫りになってくると思うのですね。国年でもらっている金額は三万円にもなっていないでしょう、たしか三万円になっていないはずであります。そうして、制度が制定されたのが昭和三十六年でありますから、今もらっている人も十八年年金なんですよ。そうすると、国民年金がもともとその柱に置いている四十年加入者として保険金を積み立ててもらう場合と、現実に今国民年金をもらう人との乖離というものは大変大きなものがあるわけですね。そういう現実の中で、六十五歳以上の再雇用者については被保険者としないというこの雇用保険改正というものは、そこにも問題がある。年齢でそこで差別をつけることにも問題がある。あるいは、最前から何回も指摘しておりますように、高齢者の世界会議での勧告、あるいはILOに示されている雇用政策に関する条約、こういうものから見ていくと、今回の雇用保険改正というものは本来の実態に即しない部面がかなり多いと言わざるを得ない。言いかえるなら、労働省はいろんな意味で答弁を繰り返していらっしゃいますけれども、六十五歳以上の者の生活保障、生活安定については結果として責任が持てないということになっているのではないか。  だから、私は冒頭に大臣にお聞きしたのです。今回の雇用保険改正というものは、失業者の生活安定及びその就職の促進を図りつつ、雇用保険制度の効率的な運営を進める見地から所要の改正を行うとしているけれども、今回の改正というのは、失業する労働者の生活保障という視点が重視をされるのか、保険財政の節減が重視をされているのかということを冒頭にお聞きをしたのです。今の社会保障制度が不十分過ぎるという現実の中で、今回の雇用保険制度改正というものは時期尚早であると言わざるを得ないと思うのでありますが、どうでございましょうか。
  66. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 今回、六十五歳以上の方につきまして再就職される場合に新たに雇用保険の被保険者としないというふうにいたしましたのは、そういう年金制度との絡みでそう割り切ったということよりも、実態として、六十五歳以上の方については、就業希望者はいろいろあります、ありますが、そこでの希望が短時間就労の希望であったり、あるいはまた任意就業の希望であったり、あるいはまた実態としては引退をされる方であったりということであり、そういう雇用保険の本当の制度の意味でのフルタイムの常用雇用希望者という方は極めて少なくなってくる、こういう一つの実態、そしてまた現実に、その六十五歳以上の方についての今度は求人側の方の事情も、求人倍率が〇・〇四というような数字にあらわれておりますように、そういう常用の求人といったものも極端に少なくなってくる。こういうような実態の中で、多くの方が六十五歳を超えられるとそこでフルタイムの雇用から離れていかれる、こういう実態に着目しての制度の改善でございます。  具体的に言いますれば、この雇用保険制度に入っておって、六十五歳を過ぎてそして就職したときに、雇用保険制度に入るということの具体的な意味は何かといいますと、例えば六十五を過ぎて就職されて二、三年たってやめられる、やめられた場合に再度フルタイムの常用就職を希望する、こういう形で就業希望が本当にある場合において、この雇用保険に加入していることの意味が出てくるわけでございます。そういう意味で、そういうケースというのは極めて少なくなってくるというような実態に着目しての今回の改正であるわけでございます。六十五歳以上の人は働く必要がないとか働くなどか、決してそういうことではないわけでございます。雇用保険制度というものの制度の仕組みとの絡みで、この六十五歳以上の方のそういう就業の実際の希望なり、求人の現状なりというものに着目した制度としての対応であるということでございます。
  67. 永井孝信

    永井委員 いま少し問題点を掘り下げてみたいと思うのです。  六十五歳の線引きを私は非常に問題にしておるのであります。具体的に申し上げて、六十五歳以上で失業した場合は、結果として一時金みたいになりますね。新たに就職した場合は被保険者としないということ、これも問題ですけれども、六十五歳以上で失業した場合は三百日が百五十日分になるのですから、まあ二分の三時金的な性格を持ってしまう。それは再就職が難しかろうということからの一つの考え方もその中に盛り込まれているとは思うのですよ。これは労働者の側からすれば、六十五歳を超える前にやめた方が現実の問題として得だということにもなりかねませんね。六十五歳を超えて雇用関係を解消した場合には日額百五十日分の手当をもらう。六十五歳を超える以前なら三百日分の日額手当をもらえる。そうすると、雇用する側からすれば、あなたは早くやめた方が得だという肩たたきの材料にも使うことができる。あるいは労働者自身にしても、自分の損得計算というものを勘定する場合もあるでしょう。そうすると、結果的に労働者の雇用年齢を引き下げてしまうという役割を果たすことになっていかないか。六十五歳で線引きをした場合に、六十五歳以下をいわゆる若年とすると、若年失業者というものが拡大することに拍車をかけることになっていかないか。さらには、六十歳定年制だって今質問しましたように具体的にまだ前進をしていないという状況でありますから、働きたい意欲があっても六十五歳を超えてなおかつ長期間雇用されるという保証が今のところない。しかし、労働省の調査によると、七十歳まで働きたいという人が圧倒的に多い。そういう数字が出ている中で、結果としてそういう願望を打ち砕いてしまうことになりはしないか。また技術面でいきますと、基本計画の中でも触れておりますけれども、本人の技術、能力を生かすようなことも政策として労働省は推進することになっているわけですね。ところが一般の人、特定の技術を持たない人よりも技術を持っている人の方が、たとえ年はとっておっても再就職をする可能性が高い場合にはむしろ若年でやめるということになって、政府の考えている雇用保険の財政問題から見ても結果として意に反することになっていきはしないか。こう思うのですが、これらについてはどうでございますか。     〔委員長退席、今井委員長代理着席〕
  68. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 六十五歳以上でやめた場合には、六十五歳前でやめた場合の半額になるということでの問題提起でございますが、先ほどから制度の仕組みとして申し上げておりますように、制度としては、六十五歳以上の方がおやめになりまして雇用保険が例えば三百日、十カ月もらえるということは、フルタイムの常用就職希望をされるという状態においてそういう問題があるわけでございます。しかし、現実の高齢者、六十五歳前後の方の就業希望というものを見れば、短時間の就業希望であったり、任意就業の希望であったり、あるいは実際的には引退希望であったり、こういうような現状にあることを踏まえて先ほどから申し上げておるわけでございます。そういう意味で、制度論としてうるさく申し上げれば、六十五歳以上でやめられる方が、おれは十カ月もらえるんだぞとおっしゃっても、それは今申し上げました前提、フルタイムの常用雇用希望というものがあって十カ月というものがあるのだ、こういう仕組みであるわけでございます。したがいまして、今の百五十日というものが出るという話で、半額になるからおれは早くやめて十カ月分もらうんだというような形に本当になるだろうか。制度の仕組みからいって、そこのところを少し嫌な言い方をいたしますと、運用面で、制度の本来の趣旨に従ってきちっと認定をすれば、必ずしもそういう形にはならないわけでございます。窓口でのいろいろなトラブルを、がたがたしながらそういう運用をするかどうかという問題も一つあると思うわけでございます。  それから、もっと突っ込んで言えば、そこでまだ勤務ができる状態にあるにもかかわらず、半額余計もらえるからというので、その後どの程度就業が続くような状態なのかどうかわかりませんが、そういうものを犠牲にして、倍額もらえるからというのでさっとやめちゃうだろうかということを考えるわけでございます。そういう意味では、決して先生御心配になるような、そういう制度があるから、本当は六十六とか六十七まで働こうと思っていたのが、六十五前でみんなぱっとやめちゃうというような対応にはなってこないのじゃないか、こういうふうに見ておるわけでございます。
  69. 永井孝信

    永井委員 本人が損得を計算して六十五歳直前にやめるという場合もあるでしょう。私が最前言いましたように、雇用主からすれば、高齢者を抱えて企業の運営を図っている場合に、何とかやめてもらいたい、やめさせる理由がなかなか見つからないときに、あなた六十五歳を超えてまでおったら損じますよ、だから早くやめた方が得じゃないですかという、よく現場で使われる言葉で言うと、肩たたきという退職勧奨がさらに強まっていくのではないか。事実上、六十五歳以下で首切りということが促進をされるのではないか。まだ六十歳までの定年制も法制化されていない現状の中で、六十歳以前にやめさせられる方も確かに多い。その人が再就職をする。その再就職をした人は、この「労働経済の分析」じゃありませんけれども、七十歳ぐらいまでは少なくとも働いて、老後の生活のために、他人のお世話にならないようにしていきたいという願望が強い。そういう現状の中で、結果的に、六十五歳を超えた人は完全な老人として、社会の仕組みから横へのけられていくということの促進剤になるだろうと私は思うわけですよ。この六十五歳の線引き問題では実はそこのところを非常に重視をしているわけです。だから、厚生省にも今お聞きをしたように、仮に六十五歳で線引きをするなら、繰り返して恐縮だけれども、社会保障制度というものが完全にリンクをされておって初めてそういうことも万々歳ということになってくるわけですね。雇用政策というものも一定の成果が上がったということになってくる。しかし現実には、片方ではそれがないんだから、厚生年金の標準で十五万ぐらいあるだろうと言ってみたって、全部が全部そうじゃないんだから。  しかも、今パート労働者が大変ふえてきて、現に短時間、短期間の雇用労働者に対する労働条件を定めるための法律案を、私自身も提案者になってここで提案しているわけです。議員立法で出しているわけです。今短時間、短期間労働者もそれほどに拡大をしてきている。しかも、短時間、短期間労働者が拡大をしてきているということは、本来のフルタイマーで雇用する場合には企業者もいろいろな法律上の制約を受けるけれども、短時間、短期間の雇用者であれば、いわばそこまで厳しく制約されることがないという安易な気持ちから、労働条件をぐんと引き下げて雇うという場合が多い。しかもこれだけ失業者がふえておる段階でありますから、高齢者が就職しようとすれば、短時間労働あるいは短期間労働につかざるを得ないという社会環境に現実に置かれている。そのときに社会保障制度が十分でないということは、私は大変な政治的な問題だと思うのですね。  そう考えていくと、六十五歳を超えた人に対しても、一定のそういう線引きではなくて、負担と給付の平等という関係からいっても、少なくともある程度のことは今までの延長として措置をされていって当然ではないか。六十五歳を迎えるまでに長年勤務しておった人が、長年かかって雇用保険に加入して一定の負担を繰り返してきた。しかし、もらうときにたまたま六十五歳を超えたためにそれが二分の一の手当しかもらえないとかいうことになってしまう。全部が全部そうじゃありませんでしょうけれども、そういう問題点を含んだままの問題の処理というものは、私は労働行政上からいって大きな問題じゃないかと思うのですね。だから、この辺の関係について再度お答えをいただきたいと思います。
  70. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 六十五歳以上の方について、今申し上げましたように、本人たちの就業希望というものの中身が実際にはフルタイムの常用雇用というのは比較的少なくなってきておる、こういう状況の中で、今の制度でございますと、フルタイムの常用就職の求職活動というものを、安定所へ十カ月間毎月出てきておやりになるというような形において十カ月の給付がある、こういうことであるわけです。しかし、実際には、さっきから申し上げておりますように、その保険の受給終了後の状態を見ますと、結果としては引退なり任意就業なりあるいは短時間のというような形になっている方が大部分であるというような状況を見ますと、十カ月毎月安定所へ常用就職という形の希望としてお出かけになるようなことではなくて、一時金という形でそこはお支払いをして、後は本人が、何もフルタイムじゃなくて、実際の本人の希望に合った任意就業なり、短時間勤務なりというような形でもいろいろ求職活動をされる、自由にその辺をおやりになる、ぜひということであれば安定所もお世話しますし、また、さっきから申し上げておりますようなシルバー人材センターであるとか、各市の窓口で開設しております高齢者職業相談室であるとか、場合によっては厚生省で社会福祉法人でやっておられます高齢者無料職業紹介所との連携とかというような形で、そういう多様な就業希望に合った仕事のお世話というものは我々も制度として国の機関としてやっていきましょう、あるいは国の協力団体に対してお願いしていきましょう、こういうことで申し上げておるわけでございまして、あくまでそういう六十五歳を過ぎた方の実際の求職態様なり求職活動の実態というようなものを配慮して、その一時金という形で、そうした方がまた実際に即しておるのではないか。実際にはあなたは、常用就職希望ということで十カ月毎月お通いになるけれども、本当はもう常用就職希望じゃないのでしょうというような形で言うような、いわゆる認定というような形でのそういうことをするようなことで、お互いに不愉快な思いをするというような現実の場面もあるわけでございますが、そういうような制度であるよりは、一時金ですぱっとそこのところは、本人が自由な求職活動に転じられるということがむしろ高齢者の実情に合った方策ではないだろうか、私どもとしてはこういうふうに考えておるわけでございます。
  71. 永井孝信

    永井委員 大分時間がなくなってきましたので、あとはもうまとめ的に申し上げていきたいと思うのですが、この第五次雇用対策基本計画の中で、最前から何回も引用させてもらっているのですが、高齢者のための生活保障というものが不十分過ぎるということはだれしもが認めているところなのですね。これは立場が違っても、高齢者の生活保障という面に絞って考えれば、年金制度も十分でないあるいは雇用状況も不十分過ぎる、いろいろな面で生活保障というものは十分じゃないと思うのですね。ところが、この基本計画の中には「高年齢者の所得保障については、職業生活からの円滑な引退にも配慮しつつ、就業のあり方、公的年金のあり方等について総合的な生活設計の視点から検討を進める」、もちろんこのとおりに進めてもらわなくてはいけない、もっと具体的にこれを積極的にしかも早期に進めてもらわなくてはいけない。しかし、後段に書いてあるように「企業の退職年金制度及び勤労者財産形成年金貯蓄制度の一層の普及に努める。」ということは、結果として、よく政府の方で好んでお使いになる言葉でありますけれども、民間の力を活用する、そういう方向に流れ過ぎていってしまう危険性も片方で持っているのではないか。  そして、最後の方で「地域における雇用の安定」という問題も出されている。今、地場産業がどんどん落ち込んで、私の地元もそうでありますけれども、伝統的な地場産業がどんどん落ち込んで、その地場で働いておった職場というものが縮小されるものだから、その人たちが都会の方へ出ていくということで過疎化問題も出てくる。あるいは、都会の方では求職者がどんどんそういうことでふえてくるものですから、範囲が広がってくるものですから非常に就職が厳しくなってくるという状況も生まれてきている。そうすると、片方で地場産業の特徴を生かした地場産業の育成強化ということも、これは通産省だけの問題ではなくて、地域雇用の拡大という視点からも労働省も一枚かんで、こういう問題にも対応してもらわぬといかぬということになってくる。  ところが、最後の「行政体制の整備」という段階に来ると、言葉どおり受けとめていいのかどうかわかりませんけれども、「合理的、効率的な公共職業安定所の再配置を図る。」ということがうたわれている。果たして私どもの求めているような、政策の遂行に役立つような立場での効率的、合理的な職業安定所の再配置ということになっていくのだろうか。今まで使われていた言葉を実際に見てみると、合理的あるいは効率的な再配置という問題は、えてして機構の縮小であったり統合であったりする場合が多い。そうではなくて、最前から何回も繰り返して申し上げておりますように、職業安定所の機能が十分に備わっていない、現実に非常に全国的にそういう状態に置かれているときに、その備わっていない部分を他の部分で補ってもらうということ、この問題がもっと深刻な問題として受けとめられて、職安行政の本当の強化ということになっていかなくてはうそだと思うのです。  そういう面で、最後になりましたけれども、労働大臣からも局長からもお答えを願いたいと思います。
  72. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 最初のころにもお答えを申し上げましたように、今後の雇用情勢を見ますと、ほうっておけば離職者というものがどんどんふえていくような情勢が進んでおる。高齢者問題、女子の職場進出問題、サービス経済化問題、構造不況業種の問題、MEの問題等々、どれをとりましても失業者がふえていくような情勢が進行していく。こういう情勢の中で失業者をできるだけ少なくしていく、有効な職業紹介をやって失業者を少なくしていくことを基本的な目標に掲げておるわけでございまして、そういう意味で、そのための職業紹介機関である安定所の機能の強化ということは基本的に今後の重要課題である、こう考えておるわけでございまして、先ほど申し上げました総合的雇用情報システムの開発もその一つでございますし、あるいはまた安定所におけるいろいろの窓口の専門官制、あるいはそういう特別な援助の窓口を設けてやっていくというようなこともその一つであるわけでございます。  それからまた、今御指摘ございましたように安定所の再配置の問題、これは実は行政管理庁からもたびたび指摘をされておる問題でございますが、とにかく国全体としてはそういう国の出先機関というものを基本的には減らしていくという臨調の方向が出ておるわけでございまして、そういう基本的に減らしていくという中で、この安定機関の機能を維持し拡大を図っていくためには、どうしてもその再配置というものは避けて通れない問題だと考えております。具体的に申し上げれば、今までのいろいろな産業の歴史等々の中で、比較的短い距離の間に安定所が二つも三つもあるという地域があるかと思えば、新興の工業地帯などではそこに安定所が一つしかない、あるいはまた一つもないというような地域も出てきておるわけでございます。しかし、いろいろなこれまでの歴史的な事情を背景に、そういった再配置が進まないで今日に至っておる、しかし全体としては数を減らさなければならぬというような現状がございますれば、そういう地域社会の御理解も得ながら本当に必要なところに安定所を移していく、そしてまた、そういう形によって機能強化を図ることにも、こういう臨調の指摘等もあります中で我々としても対応を図っていかなければならぬ、こういうことで考えておるわけでございます。
  73. 永井孝信

    永井委員 まとめて申し上げますと、いわゆる財政節減、給付を減らすということを目的にしてこの法律の改正を図ったり行政を進めていくのではなくて、労働省の行政というものは失業をなくすることが前提でなければいかぬ。失業者がなくなっていけば雇用保険の財政ももちろん逼迫してこないわけですから、雇用保険の中身を変えるというよりもまず失業をなくすることに全力を挙げる、このことが労働省の最大の課題でなくてはいけない。そして、その職業安定のための機能というものを充実強化するということでなければいかぬ。それで、なおかつ、高齢者の生活保障、老後の生活保障というものについては積極的にそれを充実していかなければいかぬということになってくると思うのですね。  この辺の関係について、この第五次基本計画でもいろいろな面で触れられているのですが、この第五次基本計画が単なる作文に終わらないように、これはもちろん具体的な細かいことまで決めておるわけではありませんけれども、理念として掲げられている部面が非常に多い、あるいは大綱的に述べられている部面も多い。これをもっときめ細かく、もっと多様なニーズにこたえていくような立場で労働省として取り組んでもらいたい。これを、最後に労働大臣からまとめてお答えをいただきたいと思います。
  74. 坂本三十次

    ○坂本国務大臣 先ほどの、職安の機能を高めよ、そのためには再配置は避けて通れない問題だが、しかし、ますます失業防止のためにしっかり働けというのは、全くそのとおりだと思います。  私も幾つも職安の状況を見てまいりましたが、私はひいき目で見たせいでしょうか、ほかの役所の窓口から見れば親切だろうと思ってきたのです。しっかりやってくださいと言って、職員の皆さんに頼んでまいりました。しかし、あなたのおっしゃるとおりでございまして、変化の大きい時代に失業をふやすということは大変なことでありますから、もちろんこれは労働省の目標でございますから、ひとつ全力を挙げて職業安定業務の機能拡充のために努力をいたしたいと思っております。  それから、今あなたのおっしゃいますように、今度の改正が、単なる財政面からだけではないのでございまして、大きな変化に対応するためなのであるならば、もちろんその最大前提となる雇用の促進という、雇用対策の基本についても単なる作文ではなしに、本当に実の入ったものにしろという御主張は、全くそのとおりだろうと思っております。念仏だけでは話にならぬのでありまするから、労働省挙げて全力を尽くしてまいりたいと思っております。  技術革新とか、産業構造の変化とか、高齢化の促進とか、サービス経済化の対応とか、そういうようないろいろな問題を抱えておる労働省の任務というものはまことに重大だろうと思っておりますので、ただいまの御趣旨も踏まえながら、審議会におきましてもいろいろ御勉強しておりまするが、この花をひとつ実として実らせるように最大の努力をいたしたいと思っております。
  75. 永井孝信

    永井委員 最後にお願いしておきますけれども、雇用保険の今回の改正案で、労働者側として納得のいかない部面、あるいは事実上改悪になる部面、前進する部面、よくなる部面はいいのですけれども、改悪になる部面は、率直にこの委員会の審議の経過を踏まえて対応をしてもらうということを最後にお願いし、労働省が、国の財政の関係でいわば労働行政にしわ寄せがやってこられないように、大蔵省主導だけで労働行政がゆがめられることのないように、大臣の特段の踏ん張りと労働省挙げての対応をお願いいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。(拍手)
  76. 今井勇

    ○今井委員長代理 この際、暫時休憩いたします。     午後零時三十四分休憩      ――――◇―――――     午後二時三十三分開議
  77. 有馬元治

    ○有馬委員長 休憩前に引き続き、会議を開きます。  質疑を続行いたします。橋本文彦君。
  78. 橋本文彦

    橋本(文)委員 私は、高齢化社会を迎えまして、その高齢者対策について、特にそこに重点を置きまして質問いたします。  まず、我が国における高齢化の特性を踏まえた制度改正なのかという点でございます。我が国の急激な人口の高齢化は、完全に西欧諸国を追い抜き、世界最高の高齢者国となると推定されております。いわゆる老齢人口の国際比較を見ましても、現在では我が国よりも老齢化が進んでいる国もありますけれども、我が国の高齢化のスピードは極めて速いものがあります。例えば、老齢人口比率が七%から一四%に達するまでの所要年数は、我が国の場合には二十六年間である。ところが、フランスにおいては百十五年間、スウェーデンにおいては八十五年間、アメリカにおいては七十五年間、西ドイツ、イギリスでは四十五年間かかって、七%から一四%になっている。ところが我が国はわずか二十六年で到達してしまう、こういうふうに言われております。このように、諸外国との所要年数と比較しましても、いかに我が国の人口の高齢化が世界に類例のない状況の中で進んでいるか、また高齢化速度が急激で、しかも高齢化の内容も西欧諸国を上回るという現実、また、多くの西欧諸国はある程度高齢化が進む中で経済成長期を迎えた、しかし我が国は低成長期に突入してから本格的な高齢化社会に直面することになるということからも、他の高齢者国と同様な施策では対応できないと考えておりますが、まず最初に、その点はいかがでしょうか。
  79. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 私ども、今後の日本の高齢化社会に対応していくためにどういう施策を進めていったらいいか、こういうことでいろいろ論議もいたしておるところでございますが、今いろいろ例を挙げられました高齢先進国の対応策というようなものもまた勉強させていただいておるわけでございます。しかし、これらの高齢先進国においても、実は高齢者対策という面について言えば必ずしも成功していない。むしろ現状において、例えばそういう年金の負担の問題、そしてまたその開始年齢を上げる、下げるの関係、それからまた逆に若年失業者問題との絡み等々、いろいろやはり、この高齢者対策の関係でむしろ悩みは一層深くなってきておるというようなことでございまして、これらの高齢先進国が必ずしも高齢者対策として成功している例というふうには見られない。私たちの先生としてこれを考えるよりは、むしろ反教師的な面も多分にある、こういうような感じがしておるわけでございます そういう意味で、そういういろいろな表と裏の風味を含めまして、これら先進諸国のいろいろな対策というものを頭に入れながら日本的な高齢者対策というものをどう組み上げていったらいいか こういうふうなことで対応を進めておるわけでございます。  そういう場合に、一つ基本的なスタンスとして申し上げてみますと、こういう欧米高齢先進諸国の例を見ますと、むしろ六十五蔵あたりから引退をするというようなことで、それ以降年金生活に入っていく、こういうのが一般的なパターンでございますが、これらの国におきましては、最近においては、高齢者たちももっと引退年齢を早くしてほしいというようなことで、逆に六十三歳であるとか六十二歳であるとか、あるいはスウェーデンあたりになりますと六十歳であるとか、こういうように引退年齢を早める動きがいろいろ出てきておるというようなわけでございます。例えば西ドイツにおきましても六十五歳が六十三歳に早まるとか、イギリスにおいても六十五歳が六十四歳に早まるとか、むしろそういうようなことになってきておるわけでございます。これは、 一つには、早く高齢者が若い人に職場を譲るというような含みもございまして、むしろ若年失業問題への対応ということもあってそんなような動きが相当顕著になってきておる、こういうような事情もあるわけでございます。しかし、実際にそれじゃそういうことで年金問題がうまく解決していけるのかということになりますと、いずれもそういう国国では、実は年金のことを考えれば六十五歳をさらにもうちょっと、六十七歳ぐらいにでもしていかないともたないんだとかいうような悩みをやはり抱えておるというようなことでございまして、やはり大変に悩み多き高齢者対策の現状でございます。我々としては、こういう早く引退をしたいという欧米流の考え方に対しまして、むしろ、やはり元気なうちはできるだけ働きたい、働くことが生きがいである、こういうような日本的な勤労観というものを一つてこにしながら高齢化社会への対応というものを考えていったらどうだろうか、こういうようなことを一つ基礎に据えて、現在そういう六十歳への定年延長、さらにはまた、六十歳から六十五歳までの雇用延長等によります就業の場の確保というようなことでの対応策というものを本格的に進めよう、今こんな構えでおるわけでございます。
  80. 橋本文彦

    橋本(文)委員 どうも、のっけから正反対の方向に話が進んだので大変困っておりますが、次は、今回の改正が中期あるいは長期的な展望に立った上での改正ではないのじゃないか、このように思うわけでございます。これまでにおきましても、労働省は、雇用保険制度に関しましては極めて慎重だったように思います。ところが、受給者が増加していること、失業者がなかなか再就職しない、したがって財政が赤字になってしまった、何とか財政の赤字を立て直さなければいかぬ、そういう点で、今回の改正が赤字財政を立て直すだけのものなのか、あるいは赤字解消をするだけの一時的な制度改正なのか、この辺がどうもひとつはっきりしないのですけれども。それに加えまして、先ほど述べましたように人口の高齢化問題というものは一朝一夕では絶対調節できない、それだけにマクロ的な視野に立っての対策を講じなければならない、こう思うわけでございます。したがいまして、そういう人口問題に絡んでの中長期的な展望から今回の改正になったのか、あるいは現時点での問題を解決するための糊塗的なものなのか、その点をまず明確にお答え願います。
  81. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 今回の改正は、直接には、御指摘ございましたように雇用保険財政が、受給者が急速にふえてきておる、そしてまたこれに伴って雇用保険財政も窮迫しつつある、こういうことを契機に検討を始めたことは事実でございますが、その検討に際しましての基本的なスタンスとしては、今後の高齢化問題を含むいろいろな就業構造とか産業構造の変化というものをどう見るか、そしてこういう変化に対応できるような雇用保険制度、こういうことで考えたわけでございまして、そういう意味では、当面の問題も考えながらもちろん今後のロングの、中長期的な問題点も踏まえての対応を考えた、こういうことでございます。
  82. 橋本文彦

    橋本(文)委員 そうでしょうかね。今回の改正につきましては、中央職業安定審議会の検討期間が五十八年十月から十二月までのわずか二カ月間だった。こういう重要な高齢化社会に向かって、わずか二カ月間で十分な検討ができたのかはなはだ疑問に思うわけでございます。たった二カ月という期間で、どの国も経験したこともないような高齢化社会に向かっていく、そういう状態に対しまして、今回の改正では十分対応ができないんじゃないか、こう思うわけでございます。  我が国の労働行政の将来あるいは高齢化社会という問題を真剣に考えるのであれば、より中長期的な展望に立った制度の見直しがどうしても必要ではないか、こう思うわけです。高齢化社会という我が国全体の問題ですので、各関係機関によって見解を異にしている点も間々散見をいたしますので、現状のままでは来るべき高齢化社会に向け何ら解決策になってこないんじゃないか。各関連機関一体となっての高齢化社会への対応ということが望ましいと思いますけれども、労働省はその点どのように考えておられますでしょうか。要するに基本的な見解の統一が必要じゃないか、こう思うわけでございます。
  83. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 今回の改正のもとになりました中央職業安定審議会雇用保険部会の検討というものは、御指摘のように十月、十一月、十二月と、この三カ月間の九回にわたる検討を経た結論でございます。それを踏まえまして、労働省としての改正の考え方を職安審議会にお諮りをして、職安審議会での数回にわたっての御審議を経ましてこういう形で御提案を申し上げておる、こういうことでございます。  しかし、今後の高齢化社会、女性の職場進出の問題だとか、あるいはまたマイクロエレクトロニクスを中心とする技術革新の問題であるとか、今後のこういう構造変化に伴ってどうなっていくかという基本的な問題につきましては、実は昨年の十月に閣議決定をいたしております第五次雇用対策基本計画の策定というものをいたしておるわけでございます。この基本計画の策定に当たりましては、一年ぐらいも前から、雇用審議会におきまして専門部会を設け、そしてまた専門部会の作成いたしましたたたき台をもとにいたしまして、一応公益委員、全部が学識経験者という委員構成になっておりますが、内容的に言えば、日本の労使のトップクラスの方々がメンバーに入っていただいておりますこの総理府の雇用審議会というところにおきましていろいろ突っ込んだ御検討をいただき、そういう労使も含めましたところでの検討を経まして意見の一致したものとして、この第五次雇用対策基本計画というものが策定をされておるわけでございます。そういう意味で、今後の日本の中長期的な問題点への対応というのは、こういう第五次雇用対策基本計画の策定作業を通じて実は既に行われておったわけでございます。そういったものをまた踏まえて、雇用保険法の改正問題もこの十月から雇用保険部会で検討された、こういうことでございまして、いきなりそういう基本的な問題についてまで十月から始めたというものでは決してないわけでございまして、その点は御理解を賜りたいと思うわけでございます。     〔委員長退席、今井委員長代理着席〕
  84. 橋本文彦

    橋本(文)委員 今の質問は、要するに高齢化社会に対する関係機関の見解の統一があるのかないのかという質問だったのですが……。
  85. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 高齢化対策という一点に絞って申し上げますれば、昭和五十七年以来、高齢者問題は、雇用審議会の場でも既に、今後の定年延長の問題等について懸命に努力を続けておりますし、あるいはまた、六十歳台前半層問題についても一つの大きな問題としての取り組みが始められております。そういう意味では、今後の高齢化対策については、六十歳定年制というものを法制化するかどうかという、その辺の問題についてはまだ関係労使の十分なコンセンサスを得るには至っておりません面もありますが、既に、こういう雇用審議会の場であるとかいうようなところを通じまして、高齢者対策についてのコンセンサスというものはおおむねできておるというふうに考えておるところでございます。
  86. 橋本文彦

    橋本(文)委員 話を中年の方に向けまして、現在四十五歳以上のいわゆる中年属の雇用状況を考えた場合、今回の改正案は三段階制になっておりますけれども、むしろ給付日数の点では保護すべきではないか、こう思うわけでございます。四十五歳以上の中年者における昨年、五十八年一年間を通じましての有効求人倍率は〇・四倍、再就職は極めて困難だ、こういう状況にあります。ところが今回の改正案では、被保険者であった期間によって給付日数に変化を持たせる、こうなっておりますね。したがって、中高年齢者の給付日数減少という問題が考えられる。  ちなみに昭和五十六年度の労働省の雇用動向調査によりますと、離職者の勤続期間別の構成は、十年以上、今回の一番の大きな金額ですが、これはわずか一二・二%しかいない。それから五年から十年の期間の人が一二・九%、一年から五年の人が三〇・八%、それから一年未満の人が三六・九%となっており、十年以上勤続した人の構成比率がわずか一割強である、こういうのが現実だろうと思います。したがいまして、この統計にあらわれました数値から見ますと、被保険者であった期間を原則としている今回の改正の所定給付日数では、いわゆる中年者にとっては重要な問題だと思うのです。なぜならば、その再就職は厳しいし、給付日数も減少する、しかも、生活の面において一番困難な面に逢着するのがこの四十五歳以降、こういう年齢層でございます。こういう厳しい立場にある中高年齢者、今回の改正の、いわゆる失業保険がもらいたさに再就職しないのだという年齢じゃございません。どうしても一生懸命働かなければならないけれども、失業せざるを得ない、こういう立場の人が一番多いと思います。こういう四十五歳以降あるいは五十五歳までの特にこの階層を保護しなければならないと思うのですが、その点はいかがでしょうか。一律的なものじゃなくて、年齢別において実態に即して考えていただけないものだろうか。
  87. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 今回この三段階制を設けましたことは、給付日数の長い高年齢者層を中心といたしまして給付と負担の極端な不均衡が生じつつある、そういうことから、従来の就職の難易度に応じて所定給付日数を定める、こういう現行の考え方は基本的には維持しながら、一方、負担の程度を示す勤続期間、こういうものを加味した給付体系というものを取り入れることによりまして、こうした給付と負担の不均衡をある程度是正して、制度の健全な運営を図ろう、こういうものであるわけでございます。  しかしながら、今御指摘こぎいましたように、勤続期間が短い人の中にも就職が困難な人がいることは御指摘のとおりでございまして、特に解雇者など就職が困難な事情にある人たちについてはやはり何らかの配慮をしていかなければならぬだろう、こういうことで、個別に給付日数を延長する制度を新たに設けまして、御指摘のような真に援助を必要とする受給者に対しましては手厚い措置が図られ得るようにしていきたい、こう考えているところでございます。そういうような形によりまして今御指摘のような問題には対応していきたい、こんなふうに考えておるところでございます。
  88. 橋本文彦

    橋本(文)委員 その対応の方法なんですけれども、具体的には、真に給付日数の延長が必要だというその認定は、どういう手順でだれがするのでしょうか。
  89. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 現在その検討を進めておりますのは、それは具体的な認定というよりは、そういう人員整理等によって解雇された就職困難者というような、一つの制度の仕組みとしてそういったものを考え、そういう人についてはこの給付日数に加えまして個別延長給付というものを制度的に考えていく、こんなようなことを検討しておるところでございます。
  90. 橋本文彦

    橋本(文)委員 単純に言いますと、要するに任意退職じゃなくてやむを得ない退職の場合には特別な配慮をしよう、こういう考えでしょうか。
  91. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 やはり基本的には、やむなく退職をさせられた、そういうことの中で再就職というものを真剣に考えておられるという方が、幾ら努力をされても、今度の新しい三段階の仕組みの中で、就職できなかったという場合について、延長をするという形でこの求職活動を御援助申し上げる、こんな考え方での内容を検討しております。
  92. 橋本文彦

    橋本(文)委員 次に、中高年齢層の再就職する際の労働市場が特定職種に集中している、この問題でございます。  五十八年度の東京都における五十五歳から六十五歳の高齢者職業相談所における求人職種、これを見ますとサービス、特に清掃員、このクラスが一番多くて三三%、それから単純労働、街づくり等でございますけれども、これが一七・三%、それから保安関係、守衛等、これが一五・八%、この清掃あるいは街づくり、守衛、こういう職種で全体の求人職種の約三分の二が占められておる、したがって、経理とか一般事務等の事務的職業はわずかに一割しかない、こういうのが東京都の例でございます。しかも、その会社はというと従業員が三百人未満の中小企業が八割以上である、こういう現状から、再就職する人にとっては大変だ、こう思うわけでございます。同時に求人職種が特定の職種に集中している、この問題があります。  したがって、受給者がいざ再就職しようという場合に必ず直面してくる問題は、今まで勤めた会社と同じような規模、仕事の内容もさほど変化がない会社を選びたいのが人情でございますけれども、そういうことは絶対ない。したがって、中高年齢者の人にとっては、希望するような会社あるいは仕事内容というのは望めない現状ですね。したがって、労働市場の拡大を積極的に進めていかなければ、労働省の中高年齢者の雇用政策の問題と現実の問題とでは随分距離があるように思うのです。労働省としては中高年齢者の雇用政策、どういうふうに労働市場を拡大していくか、その点についてまずお尋ねいたします。
  93. 守屋孝一

    ○守屋政府委員 確かに先生おっしゃいますように、中高年齢者の場合、大企業を離職いたしましてその就職先というのは中小企業に集中する、あるいは職種も特定の職種に集中するという傾向があることは事実でございます。私どもといたしましては、こういう問題に対してできるだけ、先生おっしゃいますように労働市場の拡大策を考えておるわけでございます。ただ、これはやはり、何といいましても雇用関係というのは労使間の問題でございます。したがいまして、これを強制的に雇えとかというようなわけにはまいりません。そういう意味で、例えば特定求職者雇用開発助成金とかいったような、雇用、雇うことに伴うところの助成金制度を我々幾つか持っておりますし、またいま一つ、就職する場合に新たに技能を付与する、あるいはより技能を高めて就職をより容易にするということも考える必要がございまして、こういう意味ではいわゆる離転職訓練という形で求職者に対する職業訓練を強化しておるところでございます。  こういうような施策と両々相まちまして、中高年齢者の就職促進に努めておるところでございますが、特に今年度は、この対策の一環といたしまして、いわゆる定年退職者、こういう方々について、その定年退職者を出した企業がこういう退職者の方々に就職をあっせんするという場合にも助成するという制度を設ける等によりまして、この促進に努めておるところでございます。
  94. 橋本文彦

    橋本(文)委員 労働市場というものは企業の問題であって労働省はタッチできないのだ、こういうふうに言われますと、では企業の出方を待つしかないのだ、こういうふうに聞こえるのですけれども、もっと積極的に労働省が、これからの高齢化社会に向かってどのように労働市場を拡大しなければならないのか、そういうようにむしろ労働省の方で音頭をとって進めていかなければならないと思うのです。ただ座して、高齢者の問題を企業の方の問題から解決するのではなくて、労働省の方がむしろイニシアチブをとっていかなければならない、こう思うのですが、いかがなものでしょうか。
  95. 守屋孝一

    ○守屋政府委員 私が今申し上げましたのは、ただ単に企業任せにするというつもりで申し上げたわけではございません。もしそのようにお聞き取れましたら、私の説明不十分でございます。  私が申し上げたのは、法的に強制するとかそういう形は、仰せその人を雇う、雇わないということについては、雇われる側と雇う側とのいわゆる契約に基づくものであって、これを法的に強制するというわけにはいかないという意味で申し上げました。したがいまして、私どもとしては、行政指導の面においてはこれをいろいろと知恵を出して進めているわけでございまして、例えば高年齢者の雇用率を今設定しておりますが、この雇用率未達成企業については、達成するべく計画を提出させまして個別に具体的に指導を行う、こういうこともとっておりますし、また定年延長も、ある意味においてはこれは企業の内部労働市場の問題にはなりますが、高齢者の雇用の安定に資するという面で大きな役割を果たしていっていると思います。また、先ほど言いました助成措置は、これはそういう金でつるというわけではございませんが、いろいろな面で金を出すことによって、より企業の方が、若い人を採るよりも、そういうことなら、そういう助成措置があるなら中高年齢者を採ろうという気持ちになるように指導するということも重要なことでございます。その一環としての助成措置でございますので、決して企業がなすがままにしておるという意味ではございません。その点御了解いただきたいと思います。
  96. 橋本文彦

    橋本(文)委員 先ほど、むしろ引退年齢を早めてもらいたいという声が多いんだ、そういうお答えがありましたけれども、現実にそうなものでしょうかね。実際には、生活に困るから再就職をするという人が多いんじゃないでしょうか。したがいまして、今回の改正では、高齢者を労働市場から締め出すことになるんじゃないか、こういうふうに思っております。  労働省で調査しました昭和五十四年度の定年到達者調査、これを見ましても、働かないと生活に困るから、こういう理由を挙げる人が男性では四一・三%、女性では二八・六%という極めて高い数値を示しております。また逆に、定年制を設けていない企業は現状で約五〇%ありますし、その人々は現に六十五歳から七〇歳まで働いている人が多い。したがって、今回の六十五歳でいわゆる被保険者になれないという方は極めてマイナスを受けるんじゃないか、このように思っております。同時に、日本人の平均寿命が男は七十五歳、女性は八十歳、世界でも有数の長寿国となってきておりますし、厚生省の人口問題研究所の将来的統計では、昭和七十五年度には全人口の約二割が六十歳以上になる、こういうふうに予想しております。これに伴いまして定年延長を目指す企業も増加しておりますし、現実に六十歳定年制、これがだんだん定着するんじゃないかというふうに考えております。  このように、定年が徐々にではあるけれども延長されている事実、しかも世界有数の長寿国となった日本の現状では、あるいは日本人の平均寿命を考えた場合に、六十歳定年が仮に完全実施されたとしても、なお残された老後は十数年あるいは二十年もあります。したがって、貯蓄あるいは退職金、年金等で暮らすことは余りにも不安の多い第二の人生ではないか、こう思います。  今回の改正では、こういうような現状を正確に把握した上での改正なのか、どうもそういう点は配慮がないように思うんです。どうも高齢者を労働市場から締め出すことになりそうな気がするんですが、いかがなものでしょうか。
  97. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 最初に、私が先ほどお答えしました点がちょっと言葉足らずだったかと思いますが、引退年齢を早めてほしいという傾向にあると申しましたのは欧米諸国のことを申し上げたわけでございまして、日本のことではございません。欧米諸国においてはそういうことで、引退年齢が少しずつ早まってきておるということを申し上げたわけでございます。むしろ、日本はそうではないということで申し上げたわけでございますので、その点は補足説明させていただきたいと思います。  確かに日本の場合、高齢化社会がどんどん進んでいく中で、基本的には、元気な高齢者の方は元気なうちはできるだけやはり働いていただくという基本的な構えの中で、対策を進めていくということが大事だと思っております。  ただ、雇用保険制度というものとの絡みだけで申し上げてみますと、要するに六十五歳以上の年齢層になってまいりますとフルタイムの常用雇用希望、こういう方たちは少なくなってくるということを申し上げておるわけでございまして、恐らく働きたい、元気なうちは頑張りたいとおっしゃっておられる方の多くは、そういう任意就業であるとか、短時間勤務であるとか、あるいは自分の店の仕事を手伝うとか、あるいはまた農業等をやっておられる方はそれをやるとか、そういうような形で、いわばフルタイムの常用雇用、こういう形でない就業の希望というものが大部分を占めてくる。こういう現状に着目し、そしてまた、現実に、そういう求人も六十五を過ぎてまいりますと大変に少なくなってくる、こういうことからそういう雇用保険の受給対象にしないということを制度としてやろうということでございまして、現状のそういう就業のいろんなニーズとかなんとかというようなものが、こういう雇用保険への制度加入というものがなくなったからといってそれがストップさせられるというものではない、こういうように見ておるわけでございます。現に、私どもも、こういう雇用保険制度とは関係のない、例えばシルバー人材センターでのたくさんの高齢者がやはり働いておられますし、あるいはまた高齢者の職業相談室等を通じましてのそういう短時間勤務とか、任意就業的な形のものであるとか、いろいろ働いておられるわけでございまして、そういう制度をそういうことで一つけじめをつけたということで、何かそこに高齢者対策というものが大きくストップしてしまうというものとは違うのではないか、こう考えておるわけでございます。
  98. 橋本文彦

    橋本(文)委員 どうもお話を伺っていますと、高齢者は六十五歳以降で引退してパートの方で余生を何とか送ってもらいたいというようなニュアンスに聞こえてどうしようもないんですけれども、いかがなものでしょうか。高齢化が進んできますと、いわゆる高齢核家族あるいは高齢者の単独世帯という人が当然多くなってくると思うのです。先ほど言いましたように、どうしても定年後再就職しなければ生計が立てられないのじゃないか、こういう人が多いと思うのです。現在高齢核家族あるいは高齢者単独世帯というものが増加しております。住宅あるいは経済、距離的な事情等によりまして、親と子が同居することが必ずしも可能と言えない現状、こういう段階において高齢核家族あるいは高齢者単独世帯の人々は、仮に六十歳の定年延長があったとしても、定年となった後も働ける限り再就職して生計を立てていきたい、こういうふうに思うのです。  したがって、今回の改正で六十五歳というこの基準を導入した点はまさに弱者切り捨て、どうしてもこういう感じがするのですが、いかがなものでしょうか。
  99. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 まず、六十五歳を過ぎられた方でそこで離職をされた求職者という方について、こういう高齢者に対して一時金をお支払いする、こういう制度に切りかえるという点につきましては、こういう六十五歳を過ぎて今までの雇用の場から離職された方の多くは、そういう臨時的、パート的な仕事、あるいは任意就業的なもの、あるいは中には引退というような方が大部分でございまして、その後もなおフルタイムの常用雇用というものを希望される方というのは、数字の上で私ども推計いたしますと七%ぐらいというような数字になってまいるわけでございます。そういう意味において、こういう方たちについて、そういう十カ月間安定所へ通っていただいて、そして毎月フルタイムの常用就職というものについての職業相談をいろいろ続けていく、こういうような形をとるよりは、最初の離職の受け付けの時点におきまして、そこで一時金という形でお支払いをいたしまして、あとは本人のそういう任意就業であるとか短時間就労であるとか、あるいはフルの就労を希望される方があればもちろんこれもまた安定所も御相談に応ずるというような形で、そういう多様な就業ニーズに対応し得る求職活動というものをやっていただいた方がベターではないかということであり、それからまた、六十五歳以降新たに就職される方について雇用保険の受給対象者にしないという点は、こういう方が雇用保険に受給者として対象になっておりましても、実際にその方が六十五を過ぎまして就職し、そして今度離職をするという時点においてさらにフルタイムの常用雇用というものを希望されるということは、むしろ極めて少なくなって例外的な形になってくる。こういうようなことからいきますと、制度本来の筋からいきますと、結局は正規の受給対象者にならないというような問題も起きてくるわけでございます。そういったような問題をこの際明らかにし、解決をしていくものとして、この一時金の制度であるとか六十五歳以上についての適用をやめる話であるとかというようなことを御提案申し上げておるわけでございます。決して高齢者というものについてこれをもう働くなとかいうことではなくて、むしろそういう方々の多様な就業ニーズというものに対応するような形にしようというところに一つ意味があるという点も御理解を賜りたいと思うわけでございます。
  100. 橋本文彦

    橋本(文)委員 多様なニーズという点で、あとは高齢者の任意に征したいというようなお考えのようですけれども、現実的には、労働省は例外と言うかもしれませんが、実際には引退希望年齢は七十歳、あるいは働ける限り一生働きたいという人が多いというこの事実を認識していただきたいと思うのです。  昭和五十六年十二月の総理府の勤労者の老後の生活設計に関する世論調査、これによりますと、何歳ぐらいまで働きたいかという問いに対しまして、働ける限りずっと一生と答えた人が全体の三三%だ、そういう点でどうも労働省の見解と随分差があるように思うのです。それから、昭和五十五年五月に行われました労働省の高齢者就業等実態調査、これによりますと、高齢者による引退希望年齢は七十歳と答えた人が、男性の場合五十五から五十九歳の人が二二・二%、六十から六十四歳までの人が四二・七%、六十五歳から六十九歳の方は何と五六・六%が、また働きたいと言うわけです。女性も同傾向の数値を示しております。  そういう一生働きたいとか七十歳が引退だという数値を見ますと、今回の六十五歳以上は雇用保険法を適用しないという考え方は、高齢化社会に直面するこの事態を全く考えていないんじゃないか。むしろ時代の状況に逆行する施策ではないか、こう思えてならないのですが、いかがでしょうか。
  101. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 私どもも、高齢者が非常に高い就業意欲を持っておられる、また六十五歳を過ぎても働きたいという方も多数おられるという、このこと自身は大変結構なことであり、むしろそういう御希望にできるだけ対応するような努力はしていかなければならぬだろう、そういうようなことで、市町村の窓口での高齢者相談室を安定所のほかにつくるとか、シルバー人材センターというものの拡充を図るとかいうことはいたしておるわけでございます。  ただ、雇用保険の制度からいきますと、そういうフルタイムの常用希望という形での就労希望というものは、率直に言いまして六十五を過ぎてまいりますと相当に下がってくる、そこを申し上げておるわけでございまして、雇用保険制度というのはまさにそういう就職希望というものを、就職活動というものを支えるための制度だということから、雇用保険制度の面では六十五でそこの一つの区切りをつけていいではないかということでございまして、六十五以上で働くということについて何か否定的な意味で申し上げておるのでは決してない、その点は御理解を賜りたいわけでございます。
  102. 橋本文彦

    橋本(文)委員 このところ急に人生八十年型社会という言葉が使われるようになりまして、ついせんだっても、厚生省の「今後の医療政策の基本的方向」についてという中にも、人生八十年型社会に適応するため云々という表現があります。それから、つい先ごろ出ました経済企画庁と労働省のこれは共同なんでしょうか、委託調査研究によりますと、「人生八十年時代における創造的自由時間活動のための条件」と題するいわゆる研究がございます。これを見ますと、内容的には「精神的・文化的に充実した「人生八十年型」のライフスタイルの実現を図る上で」云々とこうあるわけでして、精神的な面においても文化的な面においても充実した人生八十年、こういう表現があるんですけれども、これは極めてきれいごとを言っておりまして、文化的あるいは精神的に恵まれるためにはどうしても安定した雇用がなければならないと思うのです。  現在の人生五十年型というのは直線型の人生だと、この研究では言っておるわけです。教育期、労働期、引退期、こういうふうに分類しておるわけですけれども、この人生八十年型というのは、生涯を通じて教育、労働、余暇を選択する複線型ないしは循環型人生が望まれるようになった、したがってそれに対応した社会システムが必要なんだ、こういうようなことを述べております。このように、人生八十年型時代における社会システムという問題について労働省としてはどのような見解を持っておるのか、お聞かせを願いたいと思います。
  103. 守屋孝一

    ○守屋政府委員 今先生お話しの調査報告でございますが、この内容を簡単に言いますと、今先生お話しになりましたような直線型から複線型、あるいは循環型の生涯設計という中で、今後の一生のあり方を描いていく中でどうあるべきかということを考えていく。ただ、その前提には、先生も御承知と思いますが、これは一つの未来学というか、文明論がこの伏線になっておるわけであります。というのは、言うところの産業革命以降のいわゆる今の機械文明に対する反省からこの考え方が出ておるわけでありまして、言うならば今までの機械文明というのは直線的な発展をしてきておる、したがって人間の思考も直線的である、そういう中で直線的なライフサイクルが仕組まれ、それが人生五十年の中で何とか回ってきた。しかしこれからは、人生八十年になる中ではそういう直線型では済まないだろう、何となれば、高齢化社会ということもさることながら、今は機械文明の何といいますか終えん期にかかってきておる。そこで、常に発展ということがあるんじゃなくて自己充足、その本にも再三ダニエル・ヤンケロビッチの本なんか引いてありますが、自己充足という観点から物を見直そうという意味でこれが出てきておるわけであります。そういう意味で、ここで非常に重要なのは労働の時間、これが非常に軟構造にならなければならぬということであります。  私どもも、そういう面におきましては、今の高齢者対策、特に六十歳台前半層の部分につきまして、多様なニーズに対応したところの、これは多様なニーズというのは、就労時間につきましても勤務形態につきましても、多様な形に対応するような雇用のあり方を研究開発して、その助成措置を進めていこうという考え方をしておるわけでありまして、それとある意味では非常に合った考え方だろうと思います。  また、ここで非常に重要なのは、教育と労働と余暇の活用ということについて、こういうものは生涯を通じて常に考えられていかなければならぬ、そういう関係から複線型とか循環型と言われているわけでありますが、そういう意味から見ましても、もう一つ重要なのは、生涯にわたる職業教育訓練だろうと思います。これにつきましても、五十七年から生涯職業訓練教育を推進するための助成金制度をつくる等によりまして、ある意味では能力的にリフレッシュすることもちょうど循環する形で組んでおりまして、今私どもが対応しようとしている今後の高齢化社会に向けての雇用政策の基本的考え方と、この調査報告の基本的な考え方といいますか提言とは必ずしも相反するものではなくて、ある意味では方向を一にしておるということが言えるのではないかというように考えております。
  104. 橋本文彦

    橋本(文)委員 いずれにいたしましても、人生八十年型社会というのが一つの固有名詞になってまいりました。厚生省も使ってきた、経済企画庁も使ってきた、労働省もこの見解に反対ではない、こうなりますと、今回の雇用保険法の改正に先立ちましても、この八十年型社会にいわゆる雇用政策はどうあるべきなのか、失業という問題を高齢者の場合どういうふうに扱っていくのか、やはり関係官庁と十分な論議を尽くした上で、また数年先に雇用保険法の改正をしなけりゃならないんだというようなことを招かないためにも、特に高齢者の問題にじっくり焦点を当てて考えていきたいと思うのです。ますます余命が長くなってきますでしょうし、働く期間も長くなるし、恐らく就労希望者の年齢層も高くなってくる、こういうことが確実に来る、こう思うわけでございますので、その点が今回の改正では配慮がないのだ、こう思って先ほどから一生懸命、しつこく高齢者の問題を扱いましたが、最後に一点だけ、関係官庁といわゆる協議をしての高齢者社会に対する労働省の見解、今後どうあるべきなのか、これをお聞かせ願いたいと思います。
  105. 守屋孝一

    ○守屋政府委員 この高齢者社会に対応する施策のあり方としては、先生御指摘のように複雑、複雑というよりも各官庁多岐にわたる問題でございます。それぞれの分野でそれぞれに知恵を出していく問題かと思います。  私どもとしては、基本計画において、高齢者対策の今後の中期的な対策のあり方というものを出しまして、これは閣議決定を見ております。そういう意味では政府の、各省共通した雇用政策における一つのコンセンサスが得られたというように考えてもいいのではないかと私は考えております。  また先ほどから、人生八十年ということでの調査研究でございますが、ただ、この研究で言っておりますのは、創造的な自由時間活動をいかに確保するかの提言でございまして、人生八十年だから、とにかく体が動かなくなるまで働けという意味での指摘ではございません。私もそのようには理解しておりませんし、働くといいましても、それはその国々、またその時期時期の企業の受け入れ方、また雇用慣行等もございますが、私どもは、六十歳定年制といいましても、六十五歳まで、いわゆる六十歳台前半層につきましては雇用延長という形でもって、企業内市場にできるだけいていただけるような体制を組みたいということでいろいろな助成措置を講じておりますので、その点も申し添えておきます。
  106. 橋本文彦

    橋本(文)委員 最後に、私も、人生八十年型社会であるから人間八十まで、死ぬまで働けと言っているわけじゃございません。このように高齢化社会が真剣な問題になっておる、しかも八十年という言葉が一つの固有名詞になってきた、こういう中で、従来の考え方から一歩脱皮して、これからの高齢者対策をどうすべきかということで関係各省の方と十分協議をして、国民が納得できるようなそういう一つの社会システムをつくっていただきたい、こう申し上げておるのでございます。  政府の見解によりまして公式的な見解ができたという答弁が先ほどありましたけれども、それはあくまでも労働省の見解でございまして、厚生省、経済企画庁、あるいは労働省とその他の関係官庁が、一つの高齢化社会に向かっての意見統一はまだできていない、こう思うわけでございます。速やかにそういうような高齢者対策というものを出していただきたいと思うものでございます。
  107. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 高齢化社会の進展に今後どう対応していくかというのは、御指摘のように国政の最重要課題の一つでございます。また、それぞれ各省にもまたがる問題でございます。そういう意味では、この第五次雇用対策基本計画というものも、雇用対策の面で関係各省と十分協議をいたしまして策定をいたしておるものでございますが、こういう対策そのものは各般にわたっておるわけでございます。例えば年金問題についても、私どもの立場からもまたいろいろ注文もつけていかなければならぬ問題もあるわけでございます。また、老年の医療問題とかあるいはまた社会教育の問題もいろいろあるわけでございまして、そういう意味で、この最大の課題の一つに向かって、今後とも関係各省とよく連携をとりながら対応に遺漏なきを期していかなければならぬ、こう考えておるところでございます。
  108. 橋本文彦

    橋本(文)委員 終わります。
  109. 今井勇

    ○今井委員長代理 次に、大橋敏雄君。
  110. 大橋敏雄

    ○大橋委員 私も、若干時間をいただきまして、前回の委員会で積み残しました質問について整理をしてみたいと思っております。  今も同僚議員から質問があっていたわけでございますが、高齢者の給付金問題です。これは高年齢者の就業希望あるいは労働市場の状況等にかんがみて今回の措置をとったのだ、つまり六十五歳以降に離職、いわゆる失業した場合には基本手当にかえて高年齢者給付金、これは最高百五十日分になっているわけでございますが、これを一時金として支給して、また六十五歳以上で新たに就職した場合には被保険者としない、こういう施策をとるようにしたという話でございますが、今も話があっておりますように、これは六十五歳以上の労働者の切り捨てではないかとさえ、厳しい指摘があったようでございます。つまり、全面的に切りかえていくということは確かに問題だなと私は感ずるわけです。労働者の労働の権利を侵害する、そういうものになっていくのではないか。年齢のいかんを問わず、働く意思あるいは能力を持っている者に対しては、労働者としての権利が保障されねばならないのだ、私は原則的にはこう考えているわけであります。  したがいまして、高年齢者の就業希望については、労働省の説明でも種々さまざまあったわけでございますけれども、労働省が実施した五十六年度の「高年齢者就業等実態調査」、この資料を見てまいりましても、六十五歳から六十九歳欄を見ていくと、「雇用労働をしたい」という人が四六・四%。確かにこれはフルタイムばかりではございませんが、とにかく「雇用労働をしたい」という方が四六・四%、「非雇用労働をしたい」というのが五三・五%、約半々になっているわけですね。  このような実態に照らしてまいりますと、六十五歳以上の離職者には、基本手当を望む方には基本手当の方を、あるいは高齢者給付金で結構だという人にはそちらをというふうに、選択制にすべきではないかなという感じを受けるのです。  また給付金の額、いわゆる日額、これも見直す必要があるんではないか。なぜならば、今度の改正案によると、五十五歳から六十五未満は、従来は一律三百日を支給していたわけですけれども、今回は九十日、二百十日、二百四十日、三百日、このように決めまして、今度の高年齢者給付金はその半分になっているわけですね。仮に選択制をとったとしても、三百日とその半分の最高で百五十日となれば、人間の心理としてやはり三百日の方、もっとも百五十日の方は一時金ではございますけれども、三百日の方に気持ちが移っていくんではないか。したがいまして、この三分の一を少なくとも三分の二くらいに考えたらどうだろうか。そうしていくとこれは公平な姿で選択していくんではないかな、こう思うのですけれども、いかがですか。
  111. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 確かに、六十五蔵以上の高年齢者の方でございましても、フルタイムでの常用雇用というものを希望する方があるということは事実でございますが、率直に申しまして、個々の受給者についてフルタイムの常用雇用での就職意思というものを明確に確認をして給付をするということは、実際には大変難しい問題でございます。荒っぽい言い方をいたしますと、わしはフルタイム希望だと言えばもらえるぞというような形での問題と、それを実際に本当に希望しておるかどうかというようなことを選択するということが大変また運用が難しい問題でございまして、そういうことで窓口業務で一々トラブルを起こすようなこともしたくないというようなこともございます。それからまた、ただそう言えばそうなるというような問題でも本当はない。そこにまた、雇用保険制度の乱用の問題も出てくるわけでございます。そういう意味で、こういう点については、私どもとしては、選択制にするということには大変に問題が多いというふうに考えておるわけでございます。  また、今三分の二というお話しがございましたが、この基本手当の半分程度といたしておりますのは、これらの六十五歳以上の方が全般的には引退過程にある方々に対する給付である、こういう趣旨からこうしておるわけでございまして、一時金として前もって支給されるものであるというようなことを考えれば、これらの方の求職活動、その後のいろんな多様な就職活動の援助のために一応十分なものではないか、こう考えておるところでございます。     〔今井委員長代理退席、委員長着席〕
  112. 大橋敏雄

    ○大橋委員 今の局長の答弁では、選択制にした場合、これはフルタイムかどうかという判断が難しい。職安の立場でそれを仕分けするんではなくて、失業した方の希望によって、基本手当の方向で進みたい、完全雇用の方向で進みたいんだ、フルタイムの仕事を探したいんだという方にはそちらをあげましょう。そうでない方、一時金で結構ですよという方には一時金を支給した方がいいんじゃないか。これは、どちらかと育ってみても、今の人間の心理からして、三百日と百五十日と開けば、やはり三百日の方を希望して、それこそフルタイムではなくともフルタイムを希望しているかのごとく見せて受給しようとする方が出てくるかもしれない、それはそのとおりだと思うのですよ。しかし、本人の正直な気持ちからどちらをとらせるかというその判断の迷いを捨てるためには、三百日と百五十日というような大きな開きにするんではなくて、少なくとも三分の二にすれば、一年未満は九十日、一年から五年未満は百四十日、そして五年から十年は百六十日、十年以上は二百日、最高は大体二百日、こういうことになるわけでありまして、このような一時金ならば、なるほど十カ月間一々職安に通っていただくよりもこちらをいただいて自分の好きな仕事をしたい、こういう気持ちに決まる方もかなり出てくるんではないか、こう思うわけですね。ここのところは非常に大事なところだと私は考えるわけです。大臣にこの辺のお気持ちをもう一つ聞いておきたい。  というのは、この法律が実施されますと、七月一日から極端に変わってしまうのですね。それ以前に決定した人は三百日の立場で基本手当が支給される、その後の人に対しては百五十日ということで一時金でばっさり切られてしまう、これは余り激変過ぎるんではないか、こう私は思うのですね。だから、もし三分の二ということにできないのならば、六十五歳を当分の間七十歳ぐらいに年齢を引き上げた方がいいんではないか、このように思うのですけれども、大臣のお考えを聞かしていただきたいと思います。
  113. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 御提案なさっておられる趣旨はわからぬでもございませんが、やはり基本的に引退過程にある方についての一時金ということの性格から言えば、二分の一というのは一つの妥当な線ではないだろうか。逆にまた、そういう従来の三分の二という線でございますと、実際問題として、ただ全額一時金で払うのと似たような形になってくるような面もあるわけでございまして、その辺は一つ問題があるんではないだろうか。それからまた、七十歳という問題になってまいりますと、これは今までの例えば雇用政策としていろいろやっておりますようなものが全部、今一応六十五歳までということでやっておるということも一つございます。それからまた、現実にやはり私どものいろいろな統計で推計いたしますと、六十五歳を契機にいたしまして常用雇用希望者というものも激減をしてくる、あるいはまた求人も激減をしてくるというようなそういう現状から見て、決して何か無理な形で六十五歳にしておるんではないんだというふうに見ておるわけでございまして、七十というのは、今までのいろいろな制度との関係でも年齢的にはちょっと考えることがいささかどうかという感じがする年齢ではないか、こう思うわけでございます。
  114. 大橋敏雄

    ○大橋委員 今、半分だからまあ妥当な額じゃないかとおっしゃるわけですけれども、従来は一律三百日だったのですね。今度は被保険者期間が加味されたから随分と変わってきたわけでございまして、そういうことからいけば、一年から十年未満の方は、半分といえども実質的には物すごく減らされる格好になるわけですね。そういう意味で私は激変過ぎるんではないか、だからせめて三分の二程度の内容に改めるべきである、こう主張しておるわけです。これは非常に重要なところですけれども、時間の関係もありますので、次に移ります。  高年齢労働者の保険料免除制度がございます。雇用保険制度には、高年齢者のためにいわゆる高齢化社会に対応するための種々の施策が組み込まれているわけですが、例えば所定給付日数の定め方、今回また手が加えられるわけでございますけれども、これだとか、あるいは雇用改善事業としての定年延長奨励金、あるいはまた高年齢者の雇用奨励金の支給等々があるわけでございますけれども、この高齢労働者の保険料免除制度もこの一環として設けられていると私は思うのでございますが、この点いかがでしょうか。
  115. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 確かに、保険料免除制度が設けられましたときの考え方は、長期間保険料を納付しておられる反面、離職した場合にもそのまま引退して給付を受けられない方も多いというような事情のほかに、こういう保険料免除という助成措置によりまして一つの労働費用の負担を軽減するということで、高齢者の雇用の促進を図るということを目的として設けられたものでございます。しかしながら、その後におきまして、六十歳以上の労働者も増加をいたしますとともに、六十歳台前半層の者に対する、今先生がいろいろお挙げになりました助成措置も設けられてまいりまして、こういう免除という形での助成的な意義も薄れてきておる、こういうようなことを勘案いたしまして、今回免除年齢を六十四歳に引き上げるというようなことにいたしておるわけでございます。もちろん今後とも、高年齢者のこれまでの他の助成措置についてはなお一層の活用という面での配慮はしていかなければならぬ、こう考えておるところでございます。
  116. 大橋敏雄

    ○大橋委員 現在免除者数、六十歳以上の被保険者で何人ぐらいいるのか、つまり全被保険者数に占める割合というのはどの程度か、教えてください。
  117. 齋藤邦彦

    ○齋藤説明員 現在保険料免除になっております六十歳以上の被保険者の方は、大体百十三万人でございます。被保険者総数が大体二千六百万を少し超えている感じでございますので、全体の四・三%ぐらい、こういうふうに思っております。
  118. 大橋敏雄

    ○大橋委員 これは、あくまでも高年齢者の雇用の促進を図って福祉の増進に資するのだという大きな役割を果たしてきているわけでございますが、これは私が申し上げるまでもなく、雇用保険法に関する労使の保険料が免除されるということから、そうした高年齢者を雇用していこうという意欲も高まって、大変な役割を果たしてきておるわけでございます。そこで、これを六十四歳に引き上げるということは、まさに高年齢者雇用の促進あるいは福祉の増進に逆行する姿ではないか、率直に私はこう思うのでございますが、これはやはり従来の考えどおり六十歳に据え置くべきである。この免除制度がとられたもう一つの考え方の中には、労働者として長い間勤務して失業もしないでずっと働いてきた、そういう方々に対する何といいますか、御苦労さまでしたと、もう全く失業保険をもらわずにずっと続いてきたわけですから、そういう方々に対する配慮も加わってこの免除制度ができているとも聞いております。そういう立場からいきますと、無理にこれを六十四歳に引き上げる理由は何物もない、こう思うのでございますが、これは大臣の答弁をお願いしたいと思います。
  119. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 この六十歳以上について保険料を免除する制度は、十年前の雇用保険制度において制定されたわけでございまして、その目的としては、先生も今御指摘のように、高齢者の雇用の促進とかあるいは高齢者に対する実際のいろいろな配慮というようなことでございますが、今回御提案申し上げております一つの基本的な考え方としまして、給付と負担のある程度の均衡というものもやはり考えていかなければならぬ。これは率直に申し上げましてやはり雇用保険財政というものも考えていかなければならぬ。そうすると、給付と負担という面でまいりました場合に、こういう高齢者の雇用がどんどんふえてきております中で、こういう高齢者に対する給付という面も大変に増大をしてきておるわけでございまして、そういう意味で、給付と負担の公平という観点からもやはり免除年齢というものを六十四歳までいたしたい。  それからもう一つは、さらに、この十年間におきまして高齢者の雇用促進のための対策が、こういう保険料の免除だけではなくて、各種の雇用確保助成金であるとか定年延長奨励金であるとか、いろいろ助成のための制度もできておるというような事情も踏まえましてこういう制度にいたしたわけでございます。
  120. 大橋敏雄

    ○大橋委員 じゃ、大臣には最後にまとめてお願いしますから、ずっと聞いておってください。  次に、もう一つ私が疑問に思っている問題があるのですが、これは未支給の基本手当についてでございますけれども、現在は、例えば失業しまして、職安が認定をします。その認定をして初めて基本手当の支給になっていくわけですね。ところが、その失業の認定を受ける前に仮に死亡したような場合には、その直前の認定日と死亡するまでの間に失業していた日については、一定範囲の遺族についてその該当の日分の基本手当が請求できる、こういうことになっていると思うのですけれども、これは確認ですけれども、これは間違いありませんね。
  121. 齋藤邦彦

    ○齋藤説明員 先生おっしゃるとおりの制度になっております。
  122. 大橋敏雄

    ○大橋委員 そこで、今回の改正で、定年退職者はもちろん失業ですが、この人が一年以内を限度として再就職活動をすることをある程度延ばしたい、こう希望すれば、一年以内であればそれを認めましょうと、つまり再就職活動の開始時期を延期することができることになっているわけでございますが、この延期を希望したその期間中に死亡した場合、これはどうなるのでしょうか。
  123. 齋藤邦彦

    ○齋藤説明員 今度の改正法の中では、定年退職者等につきましては、希望によって受給期間を延長する制度を設けております。これは御本人の希望によりまして、本当に就職の意思がはっきりしたとき、要するに求職活動ができる時点からその給付を行おう、その方が受給者本人にとって非常に便宜ではないかというような趣旨からこういう制度をお願いをしておるわけでございますけれども、いわばその受給期間の延長期間中と申しますのは、御本人にとっては求職意思がない期間、求職活動ができない期間、こういうことでございます。とすれば失業状態にない期間ということになるわけでございまして、そういう期間について保険給付を支給するのはいかがか、問題が多過ぎるのではないかと、こういうふうに思っておる次第でございます。
  124. 大橋敏雄

    ○大橋委員 じゃ、例えばきょう退職をしました、十カ月先に私は就職活動をしたいと思います、これは認めるのですね。私が今言わんとするのは、この十カ月間は求職活動を延期します、この十カ月後に就職活動を開始するということは、ここでいわゆる失業の認定をするのと等しくなるのですかどうですかということを聞いているわけです。
  125. 齋藤邦彦

    ○齋藤説明員 今御指摘のような期間でございますけれども、その間は先ほども申し上げましたように失業している期間ではない、いわば雇用保険上失業している期間と申しますのは、御本人の就職の意思と能力があって熱心な求職活動をしている期間、そういう期間についての生活を見よう、こういう趣旨で保険給付を支給するわけでございます。御本人は、いわばその期間はいろいろな求職活動ではない、ほかのために使いたい期間、こういうことを言っておられるわけでございますので、そういう意味で、その期間について失業の認定をするというのは非常に困難ではないか、むしろ矛盾してしまうのではないか、こういうふうに思っているわけでございます。
  126. 大橋敏雄

    ○大橋委員 それでは、例えば失業する人の立場に立って、直ちに失業認定してもらっていれば、その間いろいろと、基本手当をいただきながら、ほかのこともやってみたい、あれも考えてみたい、これも考えてみたいとできるわけですね。それはもちろん再就職活動をしていなければなりませんね。なりませんけれども、手当を受けながらそれはできますね。そこで、仮に十カ月先にその人が不幸にも亡くなったとしても、その間まではそれだけの失業保険がいただけているわけですね。そうでなくて、今度の制度のおかげで、自分は定年退職した、しばらくちょっと休んでおきたい、そして再就職活動をするんだという、せっかくの制度に乗ったそういう人が、もしその間に死亡したならば、全く死に損であって、保険金も一銭だって家族にも来ない。こうなると、非常にこれは矛盾しているような感じがするのですけれども、いかがなものですか。
  127. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 齋藤雇用保険課長から申し上げておりますように、求職活動をしておるという期間について、失業の認定をし、そこで保険金も出る、こういうことであるわけでございます。  今度の定年退職者についてこういう制度を設けましたのは、長年会社などに勤務をいたしまして、例えば六十歳でそこで定年退職をした。そうすると、今の制度でございますと二、三カ月以内に求職活動に入らないと、この雇用保険の受給期間が一年でございますので丸々もらい切れない。例えば半年後に求職活動を開始すればあと六カ月分はもらえないような形で終わる、こういうような形になるわけでございます。そうしますと、実際には、長年、会社勤務を三十年、四十年して、ここで例えば家族と一緒に外国旅行したい、あるいはまたここで郷里へ行ってしばらく落ちつきたいとか、いろいろ長年の勤労生活の中での一つの、定年退職をしたら海外に一度とか、いろいろな夢といいますかそういったようなものがあるわけでございます。そうすると、今の制度でございますと二、三カ月以内には求職活動に入らないと保険金が丸々もらえない、こういうような問題もございまして、ぜひひとつ、本当に求職活動というものをしたくなる時期まで保険のそういう支給期間を延期してもらえないだろうか、こういうのが定年退職した方々の希望としていろいろ出てきておりましたのを制度として組み入れたわけでございます。  そういう意味で、その人が郷里で悠々自適なりあるいは外国旅行を家族と一緒にするとか、そういう期間については失業期間ではないわけでございまして、これは制度上それを失業とみなして保険金を払う、こういうわけにはいかない、こういうことでございます。
  128. 大橋敏雄

    ○大橋委員 確かにお話しはよくわかるのですけれども、非常にその辺は矛盾点を感じますので、今後もこれは検討していただきたいと思います。  もう時間が迫りましたので、最後に、今回雇用保険の給付削減を大幅に講じようとしているのだけれども、こういう給付削減を講ずる前に、不正受給に対する適切な対策を強化すべきではないかという声がちまたに上がっているわけでございます。そこで、最近また不正受給が増加していると聞いておりますけれども、その状況はどういうふうになっているのか、どのような態様の不正受給が多いのか、こういう点も説明していただきたいし、また、不正受給の増加は国民の制度に対する信頼を失わせることになると私は思うのでございますが、その防止あるいは摘発対策を強化すべきではないかと思うわけでございます。また、雇用保険の印紙の等級とその枚数によって給付金の日額が決定されております日雇労働求職者給付についても、印紙の不正使用等による不正受給が多いと聞いているわけでございますが、その実態及び防止摘発対策等をお尋ねしたいと思います。
  129. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 御指摘ございましたように、最近におきまして、雇用保険の不正受給が増加している事実があるのは大変残念なことでございます。  数字で申し上げますと、昭和五十二年度不正受給件数が二万三千件、五十八年度が二万七千件、こうなっております。また金額につきましても、五十二年度二十二億円、昭和五十八年度では三十四億円、こういうような金額になっておりまして、大変問題があると私どもも考えております。  この不正受給の態様につきましては、就職していながらその事実を届け出ないで、さも失業しておるごとく不正に失業給付を受給しておるというものが全体の九割でございまして、やり方としましては、こういう関係書類の偽造、変造というようなこと、あるいは架空の届け出、申告、就職しておりながら失業しております、こういうような申告をするというような形のものが多いわけでございます。  また、日雇いの印紙の関係につきましては、この印紙を不正に入手をいたしまして、実際には就労してないのに、その印紙をどこかから買ってきて入手をして張るというような形でのやり方が行われておりまして、これは特に、事業主の印紙購入の関係につきまして十分ひとつ、いろいろな購入手続の面だとかそういう面でのチェックをやっていかなければならぬと考えておるわけでございます。  基本的に、こういう不正受給というものは、御指摘ございましたように、こういう雇用保険制度への国民の信頼を失わせるということになるわけでございまして、私どもとしましても、特に、昨年の十一月に雇用保険の不正受給防止啓発月間というものを設けまして、職業安定機関の全力を挙げまして、この月間におきまして、雇用保険制度の正しい理解、そして雇用保険制度のそういう守っていただくというようなことについてのいろいろPRも行ってきたところでありますし、また、今後こういう不正受給がございました場合には、現在のところは不正受給が見つかった金額を返していただく、こういうことになっておりますが、制度としましてはそれを倍額返していただく納付金命令制度、こういうものもあるわけでございます。しかし、それが運用基準が非常に厳しいということでほとんど実は使われていないわけでございますが、こういった納付金制度の運用基準につきましても見直しをいたしまして、ぜひひとつ不正受給というものを何とか根絶するようにしたいというようなことで、私どもも懸命な努力を今後していかなければならぬ、こう考えておるところでございます。
  130. 大橋敏雄

    ○大橋委員 大臣、もう時間が来ましたので最後に一言、今までの質問について、また最後の不正問題について、大臣のお気持ちをお聞きして終わりたいと思います。
  131. 坂本三十次

    ○坂本国務大臣 大橋さん、いろいろ御意見を述べておられました。単なる意見だけではなしに、あなたのお考えも具体的にお話しをなさった幾多の点もあります。例えば給付金額の激変緩和の措置であるとか、それからまた保険料免除年齢を六十四歳に引き上げようとしておるのを六十蔵に現行どおり据え置けとか、いろいろ具体的な御提案がございました。私、今ここでイエスともノーともちょっと申し上げるわけにもまいりませんが、よく承らしていただきたいと思っております。  それから、最後の不正受給について、これは納付金命令制度などでやはりこれからは厳しくやらなければいかぬと今局長も答弁をいたしました。全くこれは、政府の金と言えば国民の金でございますし、それから二千数百万人の方々の保険金でもありますし、事業主のこれまた協力も得ておるわけでありますし、非常に社会性、公共性の高いお金、その運用について、今私も正直にそんなに多いのかなと思ったのですが、二十億、三十億というような不正受領が行われているということは、これはまことにゆゆしきことでございます。こういう件につきましては、私も初めて御指摘をいただいたのかなと思って、これはいかぬな、ここだけはひとつ十分に厳正にやっていきたい、審議会からも特にこれは厳しく注文がございますから、心して国民の期待にこたえていきたいと思っております。
  132. 大橋敏雄

    ○大橋委員 終わります。
  133. 有馬元治

    ○有馬委員長 塩田晋君。
  134. 塩田晋

    塩田委員 私は、雇用保険、世界の各国の例で見ますと失業保険、これの基本的な性格につきましてお聞きをいたしまして、そして、今回の雇用保険法の一部改正法案がどのような位置づけをされるか。したがって、その提案されている法案の個々につきまして、その性格から当然に、いいものはいい、悪いものは悪い、隠すべきところはこれだという結論が出てこようかと思います。そういった根本的な問題につきましてお伺いをしたいと思います。  まず、我が国の雇用保険制度、これの基本的性格を大臣はどのようにお考えでございますか。
  135. 坂本三十次

    ○坂本国務大臣 これは、長年働いてこられた方が不幸にして失業したという場合に、その失業期間中の、今まで勤めてこられたのに急に失業したため、それを補う意味で、補償をする意味で生活の足しにする、そしてその期間に再就職をしてもらいたい、保障的な性格があると思っております。
  136. 塩田晋

    塩田委員 我が国の場合は、先ほども言いましたように雇用保険となっていますね。恐らく日本だけではないかと思うのです。他のところはほとんど全部が失業保険、失業保障、こういった表現になっていると思うのです。我が国の場合は雇用保険とされている、この現行法は何を保険するのでございますか。
  137. 齋藤邦彦

    ○齋藤説明員 現在の雇用保険制度の性格いかんということになろうかと思いますけれども、雇用保険制度の根幹をなしておりますのは、やはり何と申しましても、被保険省が失業した場合に失業保険金を支給してその生活安定を図るということが根幹になっておるだろう、そういう意味での失業補償ということが中心的な機能を持っているということは事実だろうと思いますが、雇用保険制度はそれだけではなくて、それに加えて再就職の援助の必要性というものも加味している、そういう意味で能力に応じて御負担をいただき、必要に応じて必要な給付をする、そういう意味の性格もあわせ持っているのではないか、こういうふうに理解しております。
  138. 塩田晋

    塩田委員 この雇用保険の保険する対象は何かということになりますと、今大臣も課長も言われましたように、失業である、失業に対して保険するものだ、こういうことでございますね。日本の場合には死亡という事故に対して保険するのが生命保険と言われていますから、そういう意味では失業に対する保険であるのだけれども、言葉としては生命保険と同じように雇用保険と、このように変わったんだと思いますね。これは十年前ですね。それまでは日本の場合もずうっと失業保険制度としてなじんできたものでございます。基本的性格は変わらないということをここで確認しておきたいと思います。
  139. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 失業保険という言い方をしてきたものにつきまして、名前だけのことで言えば、例えば疾病に対する保険を健康保険という形で言っておりますように、従来の失業に対する保険ということに加えまして、そういう雇用という面から、雇用の促進であるとか、失業の未然防止であるとか、雇用の安定、こういうような側面を加えまして雇用保険、こういうふうに名称も変更になりましたが、そういう失業保険的な性格というものは依然として基本的には流れておるということでございます。
  140. 塩田晋

    塩田委員 現行雇用保険法の第一条「目的」に規定されておりますのも、「雇用保険は、労働者が失業した場合に必要な給付を行う」こうなっていますね。ですからあくまでも失業というのが保険の対象である、言うならば事故だと考えてよろしゅうございますね。  そこで、大臣が先ほど言われました補償ということですね。労働者が失業した場合にその補償をする、その補償ということですね。日本語では同じ言葉に償う方の補償、英語で言いますとコンペンセーション、それとセキュリティーという保つ方の保障という言葉がありますね。日本の現行雇用保険制度は、ホショウするという場合のホショウは、発言は同じですけれども、どちらの方でございますか。
  141. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 やはり基本的に保険制度という形でやっておりますことから、そういう補う方の補償的な性格というものを基本に持ちながら、そこへ保つ方の保障的な要素もまたいろいろ入り込んできておる、こういうような見方をいたしております。
  142. 塩田晋

    塩田委員 今言われましたのは、償う方の補償だ、そういう性格が強いということですね。償う方の補償をはっきり法律上表現しているのは労働者災害補償保険法ですね。あの場合は償う方の補償になっていますね。そこには、一つのやはり無過失賠償責任というものの原則があって、そのようになっておるということが考えられますね。したがいまして、日本の労災補償保険の場合は倣う方であって、無過失だけれども賠償するんだ、したがって事業主は責任はなくてもこれは事業主が払わなければならない、こうなっていますね。そのための基金を集めたのが労災保険制度になっているわけですね。日本の労災の場合は徹底してコンペンセーションという思想で貫かれていますから、事業主丸々負担という制度になっていますね。  しかし、日本の雇用保険制度というのは、御承知のとおり、戦後整備されてから以降も、これは単なるコンペンセーションという補う補償でなくして、やはり失業という事故に対するコンペンセーション、償いとともに、やはり失業は国家的な見地から、制度として法律でもってこれをセキュリティー、雑用を保障しなければならぬという立場ですね。すなわち「生活の安定」ということを法律にも、第一条の目的にもはっきり書いてあります。「生活の安定を図る」、そして就職の促進を図るというのが大きい二つの眼目になっていますね。そういった性格を持ったものだと思うのですが、いかがでありますか。
  143. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 まさに御指摘のとおりでございます。
  144. 塩田晋

    塩田委員 そこで、生活の安定ということに重点を移しますと、いわゆるコンペンセーションでなくして、失業をしている限り、困っている限り、所得がない限りは所得を保障する、セキュリティーだ、こういう考え方が強くなってくるはずですね。現にこの失業保険制度の歴史的な展開を見ますと、もともとはやはり救貧法ですね。イギリスにおいて発展してまいりました救貧法から、すなわち生活の扶助をする、職を失ったりその他で生活に困っている者に対する生活費の面倒を見る、こういう現在の生活保護法の発想がまずあったわけですね。そしてそれが、その後の運用状況その他によって、イギリスにおきましては一九一一年に初めて世界最初の失業保険制度ができている。それはいわゆる保険、インシュアランス、これを活用してこの保険制度というものがイギリスに初めてできた。それが世界的にいわゆる保険技術を援用した制度として発展をした、こういう歴史的いきさつがあると思うのです。したがって、現在でも、いわゆる最初の救貧扶助的な、失業手当的な、拠出によらないで、保険によらないで、国なり地方公共団体等が保障をするというような手当制度、いわゆる失業手当制度をとっている国もあるはずですね。それは生活の保障ということ、所得のない間を国家的に公的に埋めるということでそうなっていますね。  我が国の場合は、今最初に言われた償う方の補償と救貧法的なものから一歩出た失業手当というもの、その中間にあるんじゃなかろうかと私は思うのです。  現在、日本の労災補償制度と同じような考え方に立って、失業というものは社会の責任である、本人の責任でない場合の失業で、しかも社会的にほっておけない、放置できないから、制度的に法律でもってこれを決めていくけれども、その考え方として、そもそも失業という事故を出したのは事業主である、雇い主だ。だから雇い主が、失業を出した、事故を出した責任を、無過失といえ弁償すべきだということで、いわゆるコンペンセーション・インシュアランス・アクトというような、失業を償うというような思想の上に立って制度が組まれている国が現在でも幾つかあると思うのですが、そのような例につきまして御説明をしていただきたいと思うのです。
  145. 齋藤邦彦

    ○齋藤説明員 日本の雇用保険制度は、先生おっしゃられましたように、国も原資を出す、それから労働者、使用者もそれぞれ半分ずつ同じ額だけ保険料を負担する、こういう意味でいわば保険という形をとっておるということだろうと思います。  これに対しまして、例えば一番典型的なアメリカのような場合をとりますと、事業主がすべてのその保険に要する費用を負担する、そのかわり、給付する事故と申しますか、失業という事故につきましては事業主都合による場合に限って給付をする、こういうような例があるだろうと思います。  これは、各国それぞれ歴史的な関係で、失業というものに対してどのような制度を設けるかということは、各国がそれぞれ長い間の社会の発展段階においてつくり上げてきたものだというふうに思っておる次第でございます。
  146. 塩田晋

    塩田委員 我が国の現行雇用保険、その原型である、十年前までは失業保険であったわけですが、これが戦後初めでこのような形で整えられた、これの手本になっているのはどこの岡のものだと思われますか。
  147. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 この制度は戦後昭和二十二年に、御存じのようにアメリカの駐留軍のいろいろ指導の中でできた制度でございますが、アメリカの場合には今申し上げましたように事業主だけが保険料を出す、そして自己都合退職のような労働者が勝手にやめたものについては保険金を払わないというような、そういうアメリカ的な制度をとっておりませんので、内容的に見ますとむしろドイツの制度がやはり一番原型になっているのじゃないだろうか、こんな感じがしております。
  148. 塩田晋

    塩田委員 ドイツの制度をかなり大幅に取り入れているという感じはいたします。それは基本になるのは、やはり労働者が負担をし、また事業主が負担をし、そして政府が負担をするという三者負担の制度ですね。これはドイツです。アメリカにはありません。アメリカは、おっしゃったように、事業主が全額拠出をして支払う日本の労災みたいな形、したがって、失業という事故が少ないところにつきましてはどんどん保険料をまけていく。保険料の基準はありますけれども、メリット制によって、失業者を多く出さないところはどんどん保険料を安くしている、逆に失業者を多く出すところは保険料はどんどん高くなってくる、こういう制度になっていますね。ちょうど日本の労災補償制度と同じ形になっていますね。その点は日本の現行制度はとっていないわけなんです。  そして、しかも拠出が三者負担であるということにおきましては、これも、もとは、日本の失業保険の場合にはちょうど三分の一ずつでしたね。給付額の三分の一を国が持って、そして保険料は労使の折半、ですから結果的には三分の一ずつを三者で持つ、こういうことでしたね。ところが、その後の法改正によりまして、現行は、その三分の一ずつを負担する、拠出するということを原則としながらも、政府の方は負担が減ってきていますね。四分の一になっている。ある一定条件を超えた場合にはまた三分の一になるけれども、四分の一になっていますね。それだけ政府の方が後退していますね。それはそれといたしまして、日本の制度も、ドイツの制度なりあるいはまたスウェーデンその他の失業保障、倣う方じゃなしにセキュリティーの方の保障、失業手当的な思想に近いものにかなりなっておった、こう見られるわけです。  ところが、この中身の組み立て方を見ると、例えば一週間の待期がありますね。失業してから失業保険金をもらうまでは一週間の待期がある。これはいろいろ理由があると思うのです。財政的な問題もあったでしょうし、就職活動のための準備をするとか、あるいはその心構えをつくるとか、一定の期間をそこに見て失業というものを味わうというか、その期間が全然ないときは失業と認めるわけにいかぬですから、その者が雇用から雇用へ移るのではなしに、失業と認められるに足るそういうために、一定の待期期間というものをそこに設けた、こういう趣旨がこれはあると思うのですね。この待期期間を設けている点とか、あるいは給付制限を設けていますね。現行制度では一カ月ないし二カ月、今回は法改正でこれを三カ月まで延ばそうということです。こういった考え方はアメリカにもありますね。ほかの国にもありますけれども、給付制限という制度がある。これも一カ月、二カ月、あるいは三カ月というような濃淡があると思うのですね。こういうものは、失業についての一つの検査期間といいますか、場合によっては制裁期間のような感じの意味もあるかもわかりませんね。いずれにいたしましても、そういう給付制限の期間があるといったこと。あるいは、保険ですから掛けた額について、これは大体どの国におきましてもそうでございますけれども、支払われた給与所得に対する一定比率でもって拠出をするということですね。ですから、片やそういった拠出をしながら、片やそういった測度を組み立てていっておる、こういう現行制度になっておると思うのです。  セキュリティーか、コンペンセーションかという両極端の中間を日本がとっているとしても、その基本にあるのは、失業というのは現代社会にとって極めて危険なものであるということですね。そのことからこの制度は来ていると思います。危険というのは社会的に危険というよりも、例えばここに私が持ってきましたのは、アメリカの典型的なニューヨーク州の失業保険法ですが、日本でいいますと目的に当たるところにかなり詳しく書いてあります。それによりますと、失業による経済的不安定というものは市民の健康、本人の健康、それから福利及び道徳に対する重大な脅威である、こういう規定をしておりますね。したがって、自分からやめたいわゆる自発的失業は別として、非自発的な失業については立法機関が適切な活動を行ってその拡大を防ぐ。すなわち、雇用政策を積極的に行って失業が出ないようにするとともに、「失業者及びその家族に順々破壊的な力で加わるその重圧を軽減することが要請される。」、これがニューヨーク州の公共政策だ、パブリックポリシーだということで宣言しているわけですね。  そして、その次のくだりで「失業の問題は、税という強制拠出に基く救貧扶助」、税金で救貧扶助なりあるいは失業の手当てをやってきておった。あるいはまた、現にやっているところもあるわけですが、アメリカのようなところでは、いわゆる救貧扶助というのは非常にむだが多いという言い方をしていますね。むだが多いという実情にかんがみて、一層効果的に処理をするために、失業保険という保険制度を用いて、事業主の主たる責任でこれを補償していく、償っていく、こういうことにいたしました。これは、ニューヨーク州の失業保険法の第一条にも当たる目的のところに書かれておるわけですね。そういった観点で制度ができている。  このように、世界で失業保険あるいは失業手当、保障、こういった制度をとっているところの一番の基本は、まず本人が大変だということ。そして家族が大変だ。これは道徳、教育、健康から、生活についてのいらいらから社会に対する暴発的な行動につながる等々、そういった社会的な、社会の根底を揺るがすような、しかも大量になれば大変な事態になるという観点から、積極的失業対策、雇用政策というものが打ち出されて、それとともに拠出による、あるいは税金による失業対策、失業保険あるいは失業救済制度が実施されていっている。これは世界的な共通の理念じゃないかと思うのです。いかがですか。
  149. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 まさに御指摘のように、今の日本でも、経済政策の基本的な運営、あるいはその国の運営の基本に完全雇用というものを掲げておるわけでございます。そういう意味で、我が国におきましても、完全雇用、そしてまた失業者をできるだけ出さないということが大きな国是になっておるわけでございます。  それからまた、近い例で言いますれば、例えばアメリカにおきまして、失業者が一〇%を超えるというような大量の失業発生の事態に対しましてどう取り組んでいくかというのは、国を挙げて大きな問題になりました。あるいはまたヨーロッパ諸国におきましても、今イギリスでは一二%であるとか、西ドイツも九%であるとか、フランスもまた一〇%前後であるとか、こういうように失業問題というのが国政の最大の問題になっておる。したがって、そういう失業問題をめぐりまして、いわゆる貿易摩擦問題という形でまた国際間の問題にもなっておるという意味におきまして、この失業問題というのは、およそこういう先進諸国における最大の問題である、こんなふうに考えております。
  150. 塩田晋

    塩田委員 今局長が言われたとおりだと思います。失業をなくするということ、逆に言うと完全雇用を目指しての積極的な雇用政策、これが国の政治の最も基本に置かれておる。アメリカには雇用法というのがあって、完全雇用というものにすべてを集中してやっていくということ、あの不況後の苦い体験から今までやってきていることは御存じのとおりでございます。そういったあらゆる政策に優先して、政治の中心に雇用失業対策が置かれているということについては、十分にひとつ大臣に御認識をいただいて、その上に立ってのあるべき姿、それこそ我が国に適応した失業保険制度というのを樹立していただきたい、こう思うわけでございます。  ところが、戦後の失業保険制度の推移を見ますと、ちょうど十年前の改正で名称が変わったと同時に、若干基本的な考え方が変わったんじゃなかろうかと思われる節があるわけですね。といいますのは、保険制度であるとすれば、これは掛けた掛金あるいは勤続した勤務年数あるいはそれに対応する被保険者期間、この長短に応じて給付の内容が変わってくる。これは、保険制度をとっているものはあらゆる保険制度がそうなっていますね。そうでないとすれば、年齢に応じてあるいは困った人の度合いに応じて金額を多くするということであれば、これは失業保険制度でなくしてむしろセキュリティーの保障、あるいは失業手当制度だ、あるいは扶助制度だ、こういうふうに言えると思うのです。  その考え方から見れば、十年前の改正というのは一体どちらを向いてどうしようと考えておったのか。将来の我が国の失業保険制度をどうしようと考えておったかということにつきまして、極めて疑問なわけです。しかし、その当時の雇用失業情勢あるいは社会情勢からいろいろ考えられた末に国会を通過した法律ですから、今さらとやかく言うわけではないのですが、戦後ずっと来た失業保険制度というものの根本的な性格が、その時点から一たんぐっと変わってきた。  というのは、年齢によって、年齢の多い者ほど給付日数を多くした、こういうことは根本的な思想の変革ではなかろうか。それは保険制度によるよりも、むしろ、ドイツなりスウェーデンは失業基金制度でやっています、あるいは失業保険税という目的税でもってやっている、そういうところに近づいていくような、しかも、今の政府の負担分も、三分の一、三分の一、三分の一の三者構成から、国が財政的援助を少なくしていくという方向等から見まして、どうも根本的に変わってきたのじゃなかろうか。  思想がそういうふうに変わっていったのに、今度また年齢別はやめて被保険者期間の長さによって給付日数を決めるという、以前の方法に全く返るということではないとしても、それを加味していこうということになってきますと、保険制度を突き詰めていきますと補償、いわゆるコンペンセーションの制度の方にまた戻っていくような方向が出ているのではなかろうか。その点を私は指摘したいために、今このことを各国の状況を通じて申し上げたのです。  もちろん、アメリカにおきましても、五十州あるわけですから、しかも連邦社会保障法という基本法があって、その枠組みの中で各州が失業保険法を持っている、州法を持っているということにおきまして、五十州が皆それぞれ違っていますね。給付内容も給付期間も決め方も皆違います。それぞれの実情に応じて違っておりますね。先ほど申し上げましたのは最も典型的なカリフォルニアとかニューヨークの例で申し上げたわけですけれども、もちろん労働者が負担している州もある。アラバマとかアラスカあるいはニュージャージーという三州においては、日本のように労働者も負担しておりますが、大部分が、五十州のうち四十七州が事業主が全額拠出をしての失業保険制度を持っているということですね。  そこで、今回の改正はそのような性格の大きな変更というか、若干かじを大きくまたもとへ戻すような感じが出ておるのですが、そういう性格から今度の改正が来ているのかどうかお伺いいたします。
  151. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 いろいろ諸外国の制度の例も引きながらの、この雇用保険制度の性格につきましての鋭い御指摘なり問題提起もあったわけでございますが、雇用保険制度に変わりましたときにおいても、それでは全く償い的な、そういう補償的な面がなくなってしまったかといえば、これはそうではなくて、やはり例えば勤続年数が六カ月未満、保険期間が六カ月未満であれば受給資格はないというような問題は一つやはりあるわけでございます。それからさらに申し上げれば、前職賃金の六割ないし八割という形で、そういう前職賃金との絡みでの性格がもちろんあるわけでござます。そういうような点を見れば、これはもう基本的に、失業手当制度であるとかあるいは生活保護的な形のものとはまだまだその辺は違うわけでございまして、そういう意味では、そういう償い的な補償制度の骨格というものは基本的には残しておるものである。しかし、御指摘のように、勤続年数というもので給付の期間をずばっと決めるという面において、セキュリティー的な保障の性格も色濃く出てきておったというようなことが言えるわけでございます。  今度御提案申し上げております改正案は、この雇用保険の現行制度についての基本的な骨格を特に変えるというところまで踏み込んでやっておるわけではございませんが、こういう勤続年数だけに応じまして給付を考えていくということ、言うならば、先生のおっしゃるセキュリティー的な保障の面が色濃く出ておるという点についてこれを保険制度の中でやっていくというところに、実はこういう高齢化社会の進展等、雇用構造の変化の中でいろいろ問題が出てきておる、それがすなわち負担と給付との著しいアンバランスという形でそこのところが問題が出てくるというようなことでございまして、そういう点について、要するに保険制度というものでこれをやっていくということとセキュリティー的な意味での保障的なもののいわばミックスの中での、若干の給付と負担のアンバランスという問題点を解消する限度において、基本的には年齢というものをベースに置きながら勤続年数というものも加味するという制度の導入を図った、こういうことであるわけでございます。
  152. 塩田晋

    塩田委員 私は、今最後に言われたところがちょっとひっかかるのです。というのは、年齢別の給付日数、給付内容を基本にしながら被保険者期間を加味するという表現ですと、私は非常にひっかかるのです。現在の雇用保険制度自体の性格が非常にあいまいになってしまうと思うのです。基本には戦後の失業保険制度があって、そこへ年齢というものを入れてちょっと性格があいまいになったというところを、またもとへ戻すのだという考え方ならまだこれはすっきりするのですよね。その辺は議論しても尽きないかもわかりません。  いずれにいたしましても、現在の改正前あるいは改正後の雇用保険制度、これの基本的性格をしっかりしたものにして、あっちへ行ったけれども十年やってみてうまくいかないからまた戻す、あるいはこちらへ戻しているのか、いや、こっちへ行こうとしているのを基本にしながらも、セキュリティーの方を基本にしながらもこっちを考えておるとか、そういうあいまいなものでなくして、やはり世界的な水準、共通理念の中で確たるもの、我が国の保険制度はこれだ、これでいくんだというものを持って、そして、それぞれの時期における社会的情勢に適応したやり方でもって適応させていくという制度を考えないと、大もとのところであっちへ行っているのかこっちへ行っているのか、十年ごとにふらふらしているようでは、すべての画で混乱が起こるのじゃないかということを私は思うがために申し上げておるわけでございます。この点はひとつ要望しておきます。  これに若干関連いたしまして、簡単に結論だけ言っていただきたいのですが、現在の雇用保険制度、前の失業保険制度もそうでございますが、現在国税等は免税になっていますね。これはどういうところから来ておるのでございますか。年金制度等では国税等がかかっているのがございますね。そこはどういう思想の上でそうなっておるのか、ちょっと参考のために聞かしていただきたいと思うのです。
  153. 齋藤邦彦

    ○齋藤説明員 御指摘のように、現在失業給付は非課税とされておるわけでございます。失業給付自体が失業中の労働者の生活を見る、要するにその生活を支えることによって安心して求職活動ができるようにしよう、そういう意味で失業給付をしておる、したがってそういうような給付について課税するのは問題であろう、こういう趣旨で非課税とされておるのではないか、こういうふうに理解しておるわけでございます。  厚生年金の老齢年金は、所得の補てんというような給付の性格であるというふうにみなされておるのではないかと思っておるわけでございまして、そういう意味で課税がされておるということだろうと思います。
  154. 塩田晋

    塩田委員 時間がございませんので、これについては伺うだけにしておきます。  今申し上げましたのは大体自由諸国ですね。世界の自由諸国についての失業保険制度を中心にした失業対策、あるいは雇用政策というものについて申し上げたわけでございますが、世界の三分の一は今や共産国ですね。社会主義国と言われておる共産圏ですね。そこにおいても同じような失業の状態、自由主義諸国における失業といったものに対応するような状況があるのではなかろうかと思うのですが、いかがでございますか。
  155. 齋藤邦彦

    ○齋藤説明員 御指摘のようないわゆる共産圏諸国の失業問題についてどういう実態にあるかということになりますと、私どもの不勉強で申しわけないのでございますけれども、いろいろ統計資料等入手困難な点もございますので、どういう状況になっているかということは定かに把握することをいたしておらないという状態でございます。
  156. 塩田晋

    塩田委員 世界各国の状況で、三分の一が全然わからぬというのではやはり困ったことだと思うのです。もちろんマルクス経済学あるいはマルクス論者からいうと、共産国、社会主義国においては失業はないんだ、こういうことになると思うのですね。しかし、失業には御承知のとおり摩擦的失業、景気的失業、構造的失業というものがありますね。自由主義諸国においてはそれは完全に出てきておる、それに対するそれぞれの対策が行われておるということでございますね。名目は別として、現象的には同じようなものがあるのではないか。  例えば摩擦的失業というのは、職を変わるときにあるいは技術革新によって職場がなくなった場合に転職したりとか、その間には訓練をしなければならぬだろうし、また地域を離れて移動するという場合に摩擦的失業というものは起こるわけですね。これは共産圏であろうとどこであろうと同じだと思うのですね。それから、景気的失業というものがありますけれども、社会主義経済においては景気サイクルはない、トレードサイクルはないというふうに言われていますけれども、しかし現実には、そのような資本主義国におけるような景気変動・循環というものはないとしても、同じような経済の実態というのはうねりとしてあるわけです。その中における雇用調整はどうやっておるか。余った職場、余った地域、失業と言わなくても、そのような過剰な労働状態があると思うのですね。それを失業として出さなければ、いわゆる過剰雇用という、非常に能率の悪い状況、大体ソ連圏等を初めとする社会主義経済がうまくいかないというのは、そのような労働生産性の低さが問題になっておると思うのですね。また、完全に労働力の需給調整ができないところに、硬直化したところに経済がなかなかうまく動いていかない、そういう面があると思うのですね。  そういうことは別といたしまして、いずれにいたしましても、中国におきましても、名前こそ失業者と言わないけれども、待業者、業を待つ待業者というものが随分できて、何千万と言われたこともありましたね。また、下放青年がチベットや新疆地区へ行っておったのがどんどん上海や大都会へ帰ってきた、文革で下放されたのが帰ってきた、その人たちが上海とか北京でもってうろうろしておる、こういうことも報ぜられました。いずれにいたしましても、賃金の問題にしても労使関係にいたしましても、中国なんかもう労使交渉が始まっていますね。一定の利潤に当たるものをめぐって、福祉を労働者のためにどうするかといったことについて労使の交渉が行われている。資本主義の手法にならって非常に近づいてきている面もありますね。  おっしゃるとおりソ連でも内容はわからないのです、秘密主義で鉄のカーテンで遮られておりますからなかなかわかりませんが、しかし同じような状況があるのは決まっておるのですね。シベリア開発のためには、人が足らないからベトナムから労働省を入れているということも報ぜられていますね。シベリアにはなかなかソ連人は行かないから、手当を出してそこへ行くように労働力の流動化を図っておる。また、職業訓練はどうしても技術革新に伴ってやらざるを得ないから、そのための訓練をやる間は失業手当的な訓練手当を渡しておるとか、資本主義国で考えられるようないろいろな実態、現象が起こっておると思うのですね。しかも、ソ連を含めて共産圏の各国もILOという国際組織に入っておるわけですね。アメリカは出ましたけれども、日本も参加して世界的な共通の労働問題の処理に当たっておる。ソ連や各共産圏の諸国は入っておるわけですね。しかもそこにおいては、労働というものがある限りは、使用者と被用者の間の使用従属関係というものは、形あるいは言い方は別としてあるはずですね。つまり労使関係というものがあるはずです、現に組合もあるわけですから。官製とはいえ組合があるわけです。  大臣、世界の三分の一を占めておる共産主義国、社会主義国、こういった中における労働問題、失業というのはなかなか出てこない問題ですけれども、同じようなものがあるということを考えた上で、賃金問題から労使交渉問題から、そういった問題をもっともっと調べる必要があるのじゃないかと思うのです。  ILOに入っておるということにおいて共通であるとともに、これから中国との関係が深まってきますと、日本の場合はどんどん企業も出かけていくと思うのです。今中国におきましては経済特区は四カ所ですけれども、これを十四カ所にまた広げると言っていますね。日本の企業もどんどん出ていけるわけです。ところがイデオロギーの違い、理論の違い、理念の違いで、非常に遮ったものがありますね。違っているからといって、中国人を向こうへ進出した企業が使わないわけにいきませんね。向こうの論理でやらないといかぬ、今、向こうへ行った企業あるいは援助している事業においては日本のベースで賃金を払っているわけです。日本のレートで賃金を払っているわけですね。ところが、現地の中国の労働者はそれだけもらっておりません。向こうのベースでしかもらっていない。その差額はどうなっているかというと、これは国に入っているわけです。これを搾取というか何というか、これは非常に理屈のあることと思いますから我々の理論ではいかないと思いますけれども。それだけならいいけれども、日本に来ている中国の人にも日本のベースで払いますけれども、これはやはり中国に合わせて中国のベースでもらっているわけですね。それで留学生のいろいろな問題が現に起こっています。  いずれにいたしましても、日中国交回復後、特に熱烈にお互いが歓迎して日中友交関係を深めていっているわけですね。その中において、そういう経済関係が非常に密接になればなるほど、そういったわからないということだけで済まされない問題が今あると思うのです。向こうは向こうの理屈、こちらはこちらの理屈で合わせでやらないといかぬ。しかも協同でお互いに理解し合ってやらないといかぬ。そういう問題が起こってきますから、大臣どうですか、少なくとも北京に、あるいは一番総本山であるソ連のモスクワ、なかなかそれは調べることは難しいかもわからぬけれども、とにかく行ってやるのとこちらで調べるのと違うと思いますし、レーバーアタッシェをモスクワとか北京とか、あるいは前はプラハに置いてありましたね、ああいったものをもっと積極的に、これから労働省の大きな労働外交政策としてやらなければならぬと思いますが、いかがでございますか。
  157. 坂本三十次

    ○坂本国務大臣 共産圏にも、特にソ連、中国にもレーバーアタッシェを置いたらどうか。なるほどおっしゃるとおり、最近の日本の国際化に伴って、特にアジアの中の中国などという関係については非常に経済協力が進んでおりますから、そこの国と経済協力をし、あるいは技術協力をやり、あるいはまた最近職業訓練を希望しておる、非常に待望しておるような雰囲気でもございますので、レーバーアタッシェを置いて向こうの経済、雇用、労働関係をよく観察をする、そうすれば、こちらが協力するにしても有効な協力の仕方もあろうかと思いますので、レーバーアタッシェについては非常に適切な御提言だと思いますので、ことしはだめですが、来年の予算のときぐらいに当たりましてひとつ積極的に考えてみたい、こう思っております。
  158. 塩田晋

    塩田委員 ただいま大臣から非常に前向きの御答弁をいただきまして、ありがとうございました。ぜひとも来年度予算編成のときには、この問題に積極的に取り組んで、いずれもう必ず、経済関係が密接になり、友好関係が深まれば深まるほど、理解するためにも、労働問題というのは非常に大きい問題であるはずですから、それを全然わからぬというわけにはいかないと思いますので、ぜひともひとつ実現をしていただきますようにお願いをいたします。  それでは、雇用保険法の一部改正の個々の問題につきまして、簡単に、要約的に意見を交えての御質問を申し上げますので、お答えいただきたいと思います。  まず第一点は、今回の法改正でボーナス、年間の年末あるいは夏季等の賞与ですね。これを保険料は取りながら給付の中には算定しないということについては、この前もお伺いいたしましたし、またそれなりの理由があってのことだということで御答弁いただいております。それを踏まえた上で、なお給付の中に入れる努力はできないものか、算定の基礎に入れることはできないかどうかということについてお伺いすると同時に、それはどうしてもできないということになれば、特に低所得のところについてはボーナスが入っておると同じような効果が出るような運用でもって考えてもらう余地はないかどうか、このことについてお伺いいたします。
  159. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 今度ボーナスを算定基礎から除きましたことについては、何度もお答え申し上げておりますように、実際の手取りの給付額というものが毎月の手取りの賃金額に比べまして、そういう標準的なものでいいまして九割を超えるというような状態になっておること、そうしてまた再就職賃金と比較しまして割高になっておる現実、こういったものが実際に雇用保険受給者の再就職の促進という面でいろいろ阻害をしておる面があるというような現状を踏まえてのものでございまして、ぜひ私どもとしてはこのボーナスを外すという点は御理解を賜りたい、こう思っておりますし、また何かほかに効果が出るようなというものについての御指摘も、今、私どもも、それにかわるものとして放ちにお答えできるものは特に持ち合わせておらないわけでございます。
  160. 塩田晋

    塩田委員 今は考えておらなくても、まだこれから時間がありますから、十分にひとつ考えて知恵を出していただきたいと思います。  それから、今も出ましたように、最近こういう例があるのです。私も前々から就職を頼まれておるのです。今勤めておるところでは――大学を出て三十一歳の人なんです、神戸の人なんですけれどもIとしておきましょう。I氏、この人は月給がいまだに十万円になっているのです。ちゃんと技術を持っておるし、しかるべき大学を出て就職しているのですけれども、いまだに十万円になっているのです。それで、前から、どこかへ転職したいから何とかしてくれ、こういうことを頼まれておるのですが、なかなかできない。もう少し待ってくれ、またそのうちと話をしておったところ、ついこの間の連休に帰りましたら、やめたという。もう黙ってやめてしまった。そして一週間の待機を経まして、六カ月間、月に十三万円の失業保険給付金をもらうという。これは現にそういう人があるのです。私は具体的に名前まで言ってもいいのですよ。そういう現実があるのです。これがいい、悪いというのは言えません。それはもともと十万円という方が安過ぎるということですけれども、この保険制度というものは、半面そういうものを引き出す効果もあるのですね。月給が安いからその技術者がいなくなった、そうしたら、その後は賃金を上げて人を雇わなければしょうがないでしょうから、労働条件は上がると思うのです。失業保険はそういう役割をしておると思います。賃金を極端に低いところを上げるという機能を果たします。しかしそれが目的ではないわけですね。ここの法律にもあるように、雇用の促進を図る、就職の促進を図るというのが目的ですから、そういう制度でなければいかぬ。そうなると、十万円の手取りで十三万円の失業保険金がもらえるというのはいかにもおかしいですね。これはむしろ賃金をもっと上げる、最低賃金をもっと上げるとか、あるいはもっと企業が限界労働生産力に合うようにちゃんと払うべきだと思います。それはまた大きな積極的雇用政策だと思うのですけれども、いずれにいたしましてもそのような状況が現に起こっておるということ、その点からもこの問題は考えないといけない面を含んでいると私は理解します。理解しますが、先ほど申し上げましたことはひとつ十分に御検討いただきたいと思います。  それから第二点の、給付区分が被保険者期間と年齢を基本にして、局長がおっしゃったのは被保険者期間を加味してと、こういう制度に改正しようとしておられますね。これも一挙に三区分に被保険者期間を分けておりますけれども、これを二区分ぐらいにして、軟着陸というか、弾力的に運用するということが考えられないものか。二区分ぐらいに実質なるように考えられないかどうか。その一つのヒントは延長給付だと思うのです。現行一、二カ月まで延長、三カ月までありましたかね、個別給付を含めて。これを援用することと、時間がございませんから端的に申しますが、その辺を実質二段階ぐらいのところに場合によっては運用できるように考えられないかどうか、このことについてお伺いいたします。特定の地域とか業種とか、いろいろなもので絞ってもいいですよ。実質、そういう軟着陸できるような運用を考えてもらえないかどうか、この問題が一つ。  それから船員の関係は、海にいて陸に上がったときの被保険者期間の通算については運用で考えていただけるような答弁を、前に我が党の質問者に対する回答で大体感触は得ておるのですが、これはひとつお忘れなくお願いしたいということ。  それから六十五歳以上の一時金です。六十五歳以上は被保険者にしないというのを少し考えてもらえないだろうかと思いますが、この点いかがでございますか。六十五歳以上は一切被保険者にしないというのはちょっと激し過ぎるのじゃないかということ。したがってそれとの関係におきまして、この一時金についての配慮をしてもらえないかということ。  それから、なお細かい問題になりますけれども、六十五蔵以上という場合に、定年が六十五歳という場合、満年齢六十五歳になったときが離職の日の前日であった場合にどうなるのか、あるいはそれが離職の日であったらどうなるのか。細かい問題ですけれども、やはりその辺についてかなり細かく配慮をしていただかないといかぬ問題じゃなかろうかと思いますが、いかがでございますか。  以上、まとめて申し上げましたが、簡潔に御答弁いただきまして、終わりたいと思います。
  161. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 まず、三区分を二区分にということでございますが、これは、現在御提案していますのが給付と負担の著しいアンバランスを手直ししたい、こういうことでございますので、そういうことであるならばやはり三区分程度は必要であろう、こういうことでございます。  また、延長給付の関係につきましては、これはしばしばお答えしておりますように、今度短くなる人のうち、解雇などによりまして失業を余儀なくされた方につきましては、個別延長給付の制度の充実という面での検討をいたしたい、こう考えております。  また、六十五歳以上の一時金問題、あるいはまた被保険者にしないという関係の問題につきましては、私ども、現在の六十五歳以上の方々の就労希望の実情なり、求人の状況なり、こういったようなものを配慮しながらのものでございまして、内容的には御指摘のような感じがあるかもしれませんが、実態としてはそういう極端に激しいというものではないというふうに思っておるわけでございます。  また、六十五歳の定年の問題につきまして細かく配慮というお話しがございました。これは六十五歳ということで現在御提案をしておるわけでございますが、結局この辺のところを何歳で、その一日前か後がその日かというような問題になってきますと、一つの制度の割り切りの問題ということでございまして、そういう意味で、私どもとしては、こういう六十五ということで、まさにその日ということで今は御提案申し上げておる、こういうことでございます。
  162. 塩田晋

    塩田委員 ありがとうございました。(拍手)
  163. 有馬元治

    ○有馬委員長 小沢和秋君。
  164. 小沢和秋

    小沢(和)委員 政府関係者の皆さん、大変お疲れさまだと思いますけれども、私は最後のバッターでありますので、ひとつ要領よく、元気を出して答弁をお願いしたいと思います。  まず初めに、雇用保険法提案の背景として、雇用失業情勢の構造的な変化ということが言われております。このことについて一言お尋ねをしたいと思うのです。  これは大臣にお尋ねしたいと思うのですが、失業者はここ数年急速にふえ続けて、三月の総理府労働力調査によりますと、完全失業者が百七十八万人、対前年同月比六万人増、完全失業率三・一%に達しているわけであります。我が国の失業情勢は、この数字を見ましても極めて深刻だと思うのです。特に五十八年に入ってからここ一年ぐらいは、景気が回復してきたというようなことが言われ、生産などもかなりの勢いで伸びているけれども、雇用情勢についてはさっぱり好転してこない。一体これはどういう原因によるものか、この点をまずお尋ねをしたいと思うのです。
  165. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 全体の雇用失業情勢の動きについて見てみますと、この間におきまして、景気の回復を反映いたしまして、求人も建設業等ごく一部の業種を除きまして全体的にふえ続けてきておる、こういう状況もございますし、また、この間の雇用の実数も対前年比で百万ないし六十万というような規模でふえてきておるわけでございます。  しかし、一方、今御指摘のように失業者がなかなか減らないということも事実でございますが、その失業の中身を見てみますと、やはり就職の困難な高齢者の方の求職者、失業荷というものがなかなか減らない、それからまた中高年の女性、いわゆる子育てを終わりましてまた就労したい、こういうような中高年の女性の就業希望というものもむしろふえるような形でなかなか減らない、こういうようなところが総理府で言うこの完全失業者というものがなかなか減らない一つの問題点だ、こんなふうに見ておるわけでございます。
  166. 小沢和秋

    小沢(和)委員 私は、今のこの失業者がなかなか減らないというのは、景気が回復しつつあるといっても、輸出産業などを中心にしておって、国内の需要が本格的な回復を迎え全面的に回復をしてきていないということが一つあるし、いわゆるME化といいますか、生産過程の無人化と言っていいような非常に激しい合理化が進行していっている、こういうようなことが重なって、今の雇用がなかなか好転しないという原因になっているのじゃないかと思うのです。ここのところを本当にしっかり押さえておかないと、先ほどからも答弁を聞いておりますと、婦人やあるいは若い人などの間で転職の志向というのが非常に強まってきているというようなことが失業者が出る大きな原因にもなっているというような話をされておるのですけれども、そういう発想と結びついて、だからその辺の転職に慎重になるように、そういう部分を締めていかなければいかぬというふうなことで、失業をしている人たちのことを本当に親身に考えるよりは、やはり締め上げて何とか帳じりを合わせていこうという発想に流れていくというのも、私はその辺の今の失業の実態についての認識と関係があるんじゃなかろうかというふうに思うので、そこのところをお尋ねしたわけですが、もう一度どうでしょうか。
  167. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 確かに御指摘ございましたように、昨年の八月ごろまでは主として輸出関係のところにおいて求人が増加するというような動きでございましたが、昨年の秋以降はこういう求人増というものがほとんど企業種的に波及をしてきておるわけでございます。ただ建設業においては依然として厳しい状況は続いておる、こんなような状況でございまして、現在はむしろ全般的にはそういう求人増という現象がございます。ただ問題は、むしろ特定の業種、例えば素材産業であるとか、あるいは特定の地域、例えば室蘭であるとか釜石であるとか、そういう特定の地域なり特定の業種というものにおいてやはり依然として厳しい雇用失業情勢が続いておる、こういう景気全体の回復の中でのいわゆるまだら的な回復というようなところは一つ問題だと思っております。  ただ、今のME化の関係は、御指摘ございましたが、ME化という問題は二面においては省力効果ということで雇用抑制効果もございますが、反面におきましてこれがやはり大きな生産力というような形に転化いたしまして、むしろ経済の規模を拡大するということを通じて雇用の増が図られている面もあるわけでございまして、ME化そのものが全体の雇用量を何かマイナスにしたという言い方はできないのではないか、こういうように思っておるわけでございます。  そういう意味で、現在のこの総理府の完全失業者の数字の内容そのものを、世とか年齢とかこういったような形で分析してみますと、先ほど私が申し上げましたような点が大きなウエートを占めておる、こういう意味で申し上げたわけでございます。
  168. 小沢和秋

    小沢(和)委員 今局長が言われているような見方でいくと、もうしばらく時間がたつというと、今の失業が対前年比でまだ伸びているという状態がおさまってしまう、こういう見通しを持っているようにも聞こえるのですけれども、そういうふうな見通しをお持ちなんですか。
  169. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 現状についての御説明を申し上げたということでございまして、今後の問題ということでいきますと、やはりさっきもちょっと触れましたように、高齢者の就業希望者というものがむしろふえていく傾向があるというようなこと、あるいはまた中高年の女性層の職場への復帰というようなことも進んでおるというようなこと等々、そしてまた、素材産業などについての産業転換が今後円滑にいくだろうという見通しを必ずしも持ち得ないような問題もあるわけでございます。そういう意味で、失業全体としては、対策を適切に講じていかなければふえていく可能性は十分に持っておる、こういう情勢のままで推移しておる、また今後もそういうことであろう、こんな見方をしておるわけでございます。
  170. 小沢和秋

    小沢(和)委員 私は、今のこの高失業というのが、やがて欧米のような高失業時代に結びついていく第一歩にならなければいいがという点で、事態は非常に重大ではないかというふうに考えているわけですけれども、その点についてはきょうはもうこれ以上は議論をしないことにしたいと思うのです。  それで、いずれにしろ失業者が非常にふえてきて、そのことが雇用保険を大きく赤字にした。そのために、この赤字対策ということが主な動機になって、今回のこの改正が行われることになっておるように思われるわけです。  そこで、法の改正の項目がいろいろ挙げられておりますけれども、重立った項目別に、この改正によってこういうふうな節減効果を見込んでいるという数字を、ちょっとこの機会に挙げていただぎたいと思います。
  171. 齋藤邦彦

    ○齋藤説明員 今回の改正でいろいろの点を考えておるわけでございますが、各項員別に申し上げますと、一つは再就職手当をつくりたいということがございます。これは、再就職手当として支給する金額と受給者が減るという効果と、差し引き大体とんとんと申しますか、同額ぐらいであろう、そういう意味でマイナスになることはないということだろうと思います。  次に、臨時の賃金を算定基礎から外すというところがございます。これにつきましては大体五百五十億程度だろうと思います。そのかわりに給付の最低額を引き上げる、あるいは六〇%以上八〇%の範囲を引き上げるというようなことに要します金額、は二百億程度でございます。そうしますと、差し引きますと三百五十億程度減少になるということだろうと思います。  次に、所定給付日数の変更がございます。これはほぼ何五十億程度の減少だろうと思います。  次に、高年齢者給付金の創設でございます。これは高年齢者給付金を支給いたします所要額が大体二百億程度だろうと思いますが、一般給付を支給しないということになりますので、その減少額が二百七十億、差し引きまして七十億程度、こういうようなことだろうと思います。  そのほかに、日雇いにつきまして給付の改善をいたしております。この所要額が六十億かかっております。  以上が大体個別の点でございます。そのほかに給付制限期間の延長がございますが、これは三カ月後にまた同じ金額を支給するということになりますので、単年度では減少になりますが、結果としては同じことになるということだろうと思います。
  172. 小沢和秋

    小沢(和)委員 今項目別に挙げていただいたのですが、私がいただいている資料では、失業給付等で全体として大体千三百億くらい減になる、こういう資料をいただいているわけです。失業者の生活保障という本来の目的などにお戦いなしにこのような支出の削減を行うということは、今回このほかにも、健康保険の改悪とか年金とか児童扶養手当とか、いろいろこういうふうに大なたを振るう法案が出ているわけですけれども、そういうものの一連の一つとして、私はこれは到底承服することはできないというふうに考えます。赤字の解消ということであれば、現行法で国は三分の一までは支出の義務づけが行われておりまして、これで五十七年、五十八年、それから五十九年度の二百三十三億というのも、これは今のやり方でいってこの程度の赤字が出るという数字じゃないかと思うのですが、この程度の赤字であれば、今労働保険特別会計の雇用勘定の中から事務費、人件費、それから宿舎や庁舎などの新築や営繕費、このようなものが出されていますけれども、これなどは一般会計から支出するのが当然の項目じゃないかと私は思うのです。こういうようなものを削るだけでも十分にカバーをしていくことができるのじゃないかと私は思うのですが、このようなものを一般会計から出すように、もっと大蔵省などと積極的に交渉をすべきではないのか。私が計算したところでは、これは五十九年度は四百六十億ぐらいになると思うのですが、大体そういうように認識しているが、金額としてはそのとおりですか。
  173. 齋藤邦彦

    ○齋藤説明員 五十九年度予算におきまして、いわゆる業務取扱費として計上いたしております金額が四百五十四億でございます。そのほかに、安定所の施設等の施設整備費が三十二億ございます。その他、徴収勘定への繰り入れ等の事務費がございますので、合わせますと大体六百十六億ぐらいというふうにお考えをいただきたいと思います。
  174. 小沢和秋

    小沢(和)委員 その金額を尋ねているのじゃないのですよ。そういうようなものを一般会計から本来出すべきじゃないか。健康保険などについても、私は一般会計からこういうような事務費やらは大部分出されていると承知をしておるのですけれども、そういう方向で大蔵省などと積極的に取り組むべきではないか。これは私、大臣がどう思っているかもお尋ねしたいと思いますが、いかがですか。
  175. 齋藤邦彦

    ○齋藤説明員 ただいまの事務費の関係でございますが、現在事務費は雇用保険の積立金の運用収入を主たるものとして充てておるわけでございます。これは法律上、特に運用収入の使い道についての制限もございません。また、従来からの一般的な長い間の慣行と申しますか、そういうようなもので運用収入をもって充てておるというのが現状でございます。一般会計から若干事務費について繰り入れをしていただいておりますが、いわゆる不足分につきまして一般会計が負担するというような形で、今まで過ごしてきておるというのが実態でございます。  先生御指摘のように、一般会計から所要額を繰り入れるように努力をすべきではないか、こういうお話してございます。ただ、現在、一般会計も御承知のように非常に財政的に厳しいというような状況がございます。また臨調の答申等の関係もございます。そういう意味で、一般会計から事務費等をいただくということは非常に困難な問題であろうというふうに思っておるわけでございますが、いずれにいたしましても、今後もできるだけ、雇用保険財政も厳しい折からでございますので、できるだけその増額には努めてまいりたい、こういうふうに考えております。
  176. 小沢和秋

    小沢(和)委員 そういうような他のところでは一般会計から事務費などを支出させたりしているのに、この雇用保険の関係では、今まである程度財政に余裕があったからかもしれないけれども、特別会計から出している。それで、赤字になってきたからといって、そっちの方は手をつけないで、失業している人たちにそのしわ寄せを一方的にするというようなことは、これはもう全く許されないのじゃないかと私は思うのです。  以下、若干の具体的な点についてもお尋ねをしたいと思うのですが、改正案によると、基本手当の日額が、先ほどから議論をされているように、ボーナス分をカットするということによって大幅なダウンになるわけであります。このことについて、さっきからお話を伺っていると、いわゆる標準的な労働者はボーナスを入れた分でこの手当を支払われるというと月々の収入に近いくらいの手当をもらうことになる、だから高過ぎるから下げるのだというようなお話しなんですけれども、何かそれでいくと、今失業手当を現実にもらっている人たちが平均してそれぐらいもらっている、それが高過ぎるというお話しのようなんですけれども、実際にそうなんですか。  一方の統計を見るというと、失業者が一人一カ月当たりどれくらいもらっているかということで計算した資料があるが、五十八年十二月で十万三千八百四十三円、つまり十万円をようやく超したという程度なんですよね。だから、これが現実に平均的な失業者がもらっている手当額でしょう。ところが、あなた方の方は、標準的な労働者の場合はこれぐらいになるということで、たしか十八万近い金額をもらうように言っている。これは私は、この宣伝には偽りがあるのではないかと思うのですが、どうなんでしょうか。
  177. 齋藤邦彦

    ○齋藤説明員 確かに雇用保険受給者につきまして、一人当たりどれくらいもらっておるかということを計算するのは甚だ難しいわけでございますが、単純に雇用保険の実人員で給付総額を割るということで計算をいたしますと十一万四千六百円、これは五十七年度でございますけれども、そういう形になります。  ただ、雇用保険部会等でいろいろ御議論の中で指摘がございましたものは、こういうモデルをとった場合にはこれぐらいの形になる、こういう意味で九〇%近くなっておるという例を挙げたわけでございます。全く単純に平均をいたしますと、確かに十一万ぐらいの保険給付でございまして、そういうようないわば平均的な方につきましては賞与の割合はそれなりに少ないであろうということも考えられるわけでございます。  それからまた、現に平均的な十一万ぐらいのところは、たしか現行の等級でまいりますと二十等級を少し超えたところ、二十二、三等級のあたりだろうというふうに思いますが、この辺のいわば中間的な層の方々につきましては、先ほどから再三申し上げておりますように六〇%以上の給付率を保証するということで、金額を引き上げておるわけでございます。  そういう意味から申し上げまして、今回の措置でボーナスを給付の算定基礎から除きますけれども、大体その平均的な方々のところまでは、給付率の引き上げ等の措置によってほぼカバーできるのではないかというふうに思っておる次第でございます。
  178. 小沢和秋

    小沢(和)委員 今あなたが十一万何がしというふうに言われたけれども、それは男の人の平均じゃないのですか。男女合わせたら、さっき私が言った五十八年十二月は十万三千八百四十三円じゃないかと思うんですよ。それは別に私は論争しませんけれども、いずれにしろ現実にもらっている平均はこれぐらいでしょう。しかもこの平均の中には、定年などで出てきた失業者の人、こういう人は非常に高いお金をもらうというような群も一部にあるわけでしょう。だから、そういうような特殊な高い部分をのけた場合には、失業者として出てきている人たちは、現実にはもらえる金額は非常に少ない人たちが多いわけでしょう。この人たちをさらに今度はカットをするということになるわけでしょう。さっき私が項目別に見てくれというふうに言ったら、実際に項目別の部分でも五百五十億全体としては減るというふうに言われたのですからね。だから、実際にはこんなに少ない人たちが圧倒的であるのに、十七、八万もらうケースがあるというふうなことを盛んに言って、それが平均であるかのように印象づけて、そしてこの少ない人たちをさらに減らさせる、これは私は許せないのではないかと思うのですが、大臣どうですか。
  179. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 今保険課長からも申し上げましたように、そういう低いところについては、こういうカットについての激変緩和ということで、給付額の最低額の引き上げ、あるいは給付率の引き上げということでカバーをいたしておりますので、結局ボーナスの多い、高い層についてこのボーナスカットの問題が響いてくる、こういうことでございまして、低い層をカットしたわけではない、低い層はそういう引き上げという形で対応をしております、こういうことでございます。
  180. 小沢和秋

    小沢(和)委員 しかし、高い層をカットするというふうに言われるけれども、そういう高い人も含めて実際にもらっているのは平均でこの数字なわけですよ。そうでしょう。だから全体として見ればこの数字はさらに下がるんでしょうが。実際に五百五十億この人たちに出す額は減らすというふうに言われるんですからね。そうしたらこの低い平均額がさらに下がる、それは否定できないでしょうが。だったらこういう低い人たちをどうして減らすか、それは何か合理性があるのかと私は言っているわけです。
  181. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 何度も申し上げておりますように、平均は下がりますが、高い方が下がる形で平均が下がるということでございまして、中位以下のところについてはこれをカバーする形での給付日額の引き上げをしております、こういうことでございます。
  182. 小沢和秋

    小沢(和)委員 いや、あなたのその理屈からいったら、高い方を減らして低い方を上げたら大体もとの数字くらいにならなければ理用としておかしいわけでしょう。しかし全体として下がるんですよ。  そのことはもうこれ以上言いませんけれども、とにかくそうやって下げて、しかも給付日数は大幅に減らす。一番極端な例は、三十歳以上四十五歳未満の方が百八十日であったのを九十日に減らす、これはもう半分になってしまうわけですね。こうなるというと、落ちついて次の転職先を探すということなどもできなくなってしまう。どんなに低い賃金のところでもいいからとにかく就職しなければならぬということになれば、雇用保険法の第一条で、「雇用保険は、労働者が失業した場合に必要な給付を行うことにより・労働者の生活の安定を図るとともに、求職活動を容易にする等その就職を促進し、」云々と書いてあるように、労働者が失業中の生活を安定させて安心して求職活動ができるようにさせてやるということのはずなのに、こういう額は下げて期間は短くしたら、これはだれが考えてみたって、もうとにかく一刻も早くどんなところでもいいから入らなければということで、一層劣悪な低賃金労働者を、そういう形で雇用保険の仕組みを通じて大量に生産をしていくということにならざるを得ないんじゃないかと思うんですね。そうなりませんか。
  183. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 今回御提案をいたしておりますのは、雇用保険部会の報告にもありますように、この給付水準の問題あるいはまた再就職賃金との関係の問題、それからまた就職を早くするということについてのインセンチブになるようなものがない、こういうような中で雇用保険受給者の就職の実態を見てみますと、就職率はどんどんと低下をして、一般求職者四〇%ぐらいに対して一〇%前後、こういうふうな状況になってきておる。そしてまた、実際にもらい終わった方を見ますと、保険をもらい終わってその後に就職するというような形の方があらゆる年齢層を通じまして五〇%を超える。あるいはまた、高齢者になっていきますと八〇%、九〇%という方が保険を満額もらい終わるまでおられるというような状況であり、しかも実際に保険をもらい終わられた後どうなっておるか、こういうことを見ますと、保険をもらい終わった後一、二カ月の間に大部分の方が就職をされる、こういうような実態が出てきておるわけでございます。  そういうような全体の動きを見てみました場合に、現在のこの雇用保険制度が、本来、失業中の生活の安定を図りながら、一方また、失業者の就職の促進を図っていくということが制度の一つの大きな目的であるにかかわらず、逆にこの保険制度というものが、ある意味では早期に就職するということについての足を引っ張っておるというような側面もやはり出てきておるわけでございます。そういうような意味におきまして、こういう給付の水準の問題であるとかあるいは再就職促進のための手当制度であるとか、こういうようなものを今考えて、この雇用保険制度というものが一方においてこういう就職の促進という面においてもその制度の効果を適切に発揮できるようなものにしたい、こういうようなことで御提案を申し上げているわけでございます。
  184. 小沢和秋

    小沢(和)委員 何か、この保険金が非常に高くて居心地がいいものだからみんなもらい終わるまでおる、だからそれを削って給付日数も減らしたらもうみんな急いで就職するようになるだろうというような話のようですけれども、さっきも申し上げたように決して居心地がいいほどの保険金などではおよそないということは、私がもうこれ以上繰り返すまでもないんじゃないかと思うのです。だから、今あなたが言われたような就職の足を引っ張らないようにしたいということは、逆に言うと、ますます低賃金で一刻も早く就職せにゃいかぬようにこの雇用保険の仕組みを通じて駆り立てられるということになったのでは、これは雇用保険が低賃金を一層広げていくということになってしまうという点は、私は重ねて警告しておきたいと思うのです。  それで、自己都合退職の問題でも、これも議論になっておりますけれども、私も一言申したいと思うのですが、この自己都合退職の場合にはいわゆる給付制限が行われるわけですね。この給付制限が強化をされることによって、これは五十九年度だけかもしれないけれども八百億マイナスということになるようになっておりますね。つまり、今まで一カ月給付制限をしておったのを三カ月程度にするというのがこういうマイナスを生むのだろうと思うのですけれども、どういうのが一体自己都合退職なのだということで聞いてみたら、定年退職から希望退職までみんな含むというわけですね。これも自己都合退職だ。ただ、これは、自己都合退職であるけれども「正当な理由がなく」という方には入れないということのようですね。  私は、こんなのがそもそも自己都合退職になるということ自体もおかしいと思うのですけれども、それにしても、そういうような人たちを除いていわゆる正当な理由がないというように判定をされたこの自己都合退職者が、何と退職者全体の六四・三%にも達しておる。私は、幾ら何でも、正当な理由が全然ないような退職者が六四・三%も出るというようなことは、常識で考えてみてもあり得ないんじゃないかと思うのですね。実際、転職というのは各人にとって、これは人生にとっても極めて重大な事件ですよ。だから、みんなやっぱり真剣に考えた上で転職するかどうかを決めるんじゃないかと私は思うのですね。そういうみんなが考え抜きあるいは悩んだ末にそうしたのが、大部分が正当な理由がないというふうな判定をして、一カ月にしろこの給付の制限をする対象になるということは、私はこの判定基準の方がおかしいんじゃないかと思うのですが、その点どうですか。
  185. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 これの判定基準につきましては、詳細な基準を設けましてやっておるわけでございますが、中には、こういう時代の変化から見まして正当だというふうに考えた方がいいようなものも新しくまた考えなければならぬという問題はあろうかと思っております。  しかし、現実に、この雇用保険受給者につきまして、今小沢先生おっしゃるようにこんなにいるのかというような意味で、やはり相当おられる。要するに、今先生おっしゃるように、本当にやめる、転職するということについてはもう少し悩むといいますか、慎重な判断をというような方も実は非常にたくさんあるという現状につきまして、私どもも大変憂えておるわけでございます。そういう意味で、私ども、こういう転職の問題について、職業選択の自由とか、あるいはまた、今までのような終身雇用ということだけで若者を、あるいはまた一般の方を縛りつけるつもりは毛頭ございませんが、やはり転職とか離職という問題についてもう少し慎重な判断というものも期待をしたい。単に仕事が何となくどうもおもしろくないとか、つらいとかいうようなことでの転職というのは問題ではないだろうかという意味で、こういう正当かどうかの判断の基準については私どもも再検討させていただきますが、そういう安易な離職については制度の面でももう少し配慮を求めるような仕組みになってもいいではないか、こういうふうに考えておるわけでございます。
  186. 小沢和秋

    小沢(和)委員 今この判定の基準を再検討する意思はあるというふうに聞こえるような答弁があったから、私はそれはそういうふうに理解をしますけれども、実際、前の議論のときには、いわゆる単身赴任などを強要されてやめたというようなケースも正当な理由がない中に入っているというようなことが議論になっていますね。私も、安定所の窓口を担当しているような人などにいろいろ聞いてみると、例えば職業病一歩手前みたいな状態にまで追い込まれてしようがなくてやめたようなケースとか、あるいは婦人がもう連日のように残業させられる、これなんか基準法違反だと思うのですよ。ところが、違反だということで申告やらをし切らないというようなことでやめてしまう、これも正当な理由がないということに入っているというような話も聞くんですよ。だから、実際に開いてみると、だれが考えたってこんなに六四・三%も、自己都合でやめる人の大部分が正当な理由がないなんというはずはないと私は思うのです。  こういうほんの幾つかの事例を私、挙げてみたけれども、こういうような広範な部分についてあなた方の方は再検討してくれるわけですね。私は、こういうようなことはそもそもそんな基準など設けないで全部保険をやったらいいと思うのですけれども、少なくともそういうようなことを再検討しますね。
  187. 齋藤邦彦

    ○齋藤説明員 この国会におきましても、正当な理由のあるなしについての基準につきましていろいろ御議論を賜ったわけでございます。私どもといたしましては、先生等から御指摘を受けました点も踏まえまして、職業安定審議会にも十分お諮りをして御相談した上で、改めて新しい基準をつくっていきたい、こういうふうに思っておるわけでございます。  一例でございますけれども、例えば単身赴任者のような場合ですとか、あるいは技術革新の導入等に伴いまして職場になかなか適応できないような場合ですとか、そういうような場合等が一番典型的な例だろうと思っておりますけれども、そのほかにも多々あるだろうと思います。いずれにいたしましても、いろいろ関係者等の御意見等も伺いながら基準を見直してまいりたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  188. 小沢和秋

    小沢(和)委員 私は、最初にも申し上げましたように、今失業者がこんなにたくさん出ている、こういう状態をどう打開をしていくか、今度の改正のように低賃金の労働者をさらにたくさんつくり出してしまうような方向に変えていくということになるなら、逆にまたそれがはね返って、結局失業者をたくさんつくり出し、雇用保険を悪化させるということになってしまうんではないかと思うんです。そうではなくて、私は、労働条件などを改善しながら雇用を拡大するという方向をもっと積極的に取り組んでこそ、雇用保険の赤字というのも前向きな形で解決していくことができるんじゃないかと思うのです。そういう立場からは、私は、定年延長とか労働時間の短縮というようなことが非常に重要な意味を持ってくるのじゃないかと思うのです。  時間もなくなってまいりましたので、その点ごく簡単にお尋ねをしたいと思うのですけれども、定年延長は若干ずつ進んで、五十八年度ですかは四九・四%まで六十歳定年制が来た。若干ずつにしろ毎年これは改善をされていっているわけですけれども、六十年度・六十歳定年一般化という方針から見れば、今のテンポでは全く実現できないことははっきりしているわけです。これはどういうふうにして真の意味で一般化をさせるのか。私は行政指導ではなくて法制化ということも考えなければならないのではないかというふうに考えるけれども、この点大臣、どのようにお考えになるか、ひとつお尋ねします。  それから、労働時間の短縮の問題についても同じことが言えると思うのです。調べてみると、労働時間の短縮という点では、週休二日制とか年休の消化の促進とかあるいは残業の規制とか、いろいろな手法で労働時間の短縮を進めていくということになっていますけれども、率直に言って、こっちの方はなかなかはかばかしくないという状態じゃないかと思うのです。特に残業時間の規制という点で見ると、景気がちょっとよくなってきたら途端に残業なんかぐっと伸びていっているんですね。この三月の労働省の毎勤統計を見ますと、全産業が平均で十四・九時間、製造業では十九・一時間で、これは去年の同月に比べて一八・六%も伸びているわけです。だから、こういうふうに景気がちょっとよくなってきたらずっと伸びてくるというような状態では、残業の規制に取り組んでいるとはこれはちょっとお義理にも言えないんじゃなかろうかと思うのです。私はその点では、特に残業の規制を促進するという点でも、三六協定だけの手法に頼っていることはもうできないんじゃないだろうか。特に女性について、いわゆる雇用平等法をつくっていくということが今問題になっていますけれども、その中で、女性についても残業規制は一部を除いてみんな外してしまうというようなことが言われている。そうすると、いよいよもって大量に残業が広がっていくということになってしまいはせぬかと思うのです。だからそうなると、残業時間の規制を強力に進めていくためにも、三六協定だけじゃなくて、法の規制ができるような根拠をはっきりつくるということもこの機会に考えるべきじゃないかという点を指摘したいと思うのですが、以上の点をどうお考えかお尋ねをして、終わります。
  189. 守屋孝一

    ○守屋政府委員 六十歳定年制の一般化につきましては、年々大体四ポイント前後の上昇を見てきております。私どもといたしましては、この五十八年度に定年延長アドバイザi制度を導入するとともに、五十九年度におきましても、個別行政指導をさらに一層より強力に進めていきたいという気持ちでおります。  なお、この法制化問題につきましては、大体定年延長をする場合に一番問題になるのは、いわゆる年功序列型賃金体系のもとでの賃金の上昇カーブをどう倒すかという問題が一番大きな問題になります。いわばこれは労使間の話し合いが非常に重要なポイントになりますので、果たしてこれを今の段階ですぐ法制化、法律で強制するということに踏み切るかどうかは非常に問題があるのではないかというように考えておりますが、いずれにいたしましても、六十年のしかるべき時期に、雇用審議会において、これはどうするかということについて御検討いただくということになっておりますので、立法化問題については今後の雇用審議会の検討を待ちたいというふうに考えております。
  190. 望月三郎

    ○望月政府委員 労働時間の短縮の問題でございますが、確かに先生のおっしゃるように、労働時間の短縮というのは非常に難しい問題でございます。  まず私どもは、その手段として、例えば年次有給休暇について計画的な取得を励んでもらいたいということでやっておりますが、現在平均取得日数は八・七日でございまして、六〇%弱の消化率でございます。そういう意味で、私ども、あと四割を職場の中で相談しながらそれぞれ計画的にとっていくという点について指導をしておるわけでございます。  また、長時間労働についての問題でございますが、確かに基準塗二十六条で、法制的にはこれは労使が協定すれば何時間でもできるという体制になっておるわけでございますが、しかしそれはやはり問題があるということで、先生御承知のように、五十八年の一月から私どもは一つの目安を設定しまして、監督署の窓口において、あるいは各企業への指導において、月五十時間というのをめどにその中での協定をやっていただきたいという指導をしておるわけでございますが、これについては非常に労使の理解が得られまして、今のところ大きなトラブルもなく、非常に評価され、理解されているのではなかろうか、こう思うわけでございます。  また、週休二日制の普及につきましては、現在企業数では四九%でちょうど半分でございますが、対象労働者から見ますと七六%ということで、四人に三人が何らかの形の週休二日制の対象になっているということでございます。そういうことで、労働時間の短縮は、やはりこういう環境でございますので非常に大変だと思いますが、私どもは最善の努力を尽くしてやっているつもりでございます。  また、先生御質問の三六協定の上限の法制化をもう考えろ、こういう御指摘でございますが、私どもその点についてももちろん考えてはおるわけでございますが、しかし、我が国の場合は終身雇用慣行というのがございまして、景気の動向によってある程度、やはり雇用調整機能というものを時間外労働というものに持たせておるというのが実態でございまして、その点が外国とは非常に違うわけでございますので、そういう幅を持たせることが必要でございますので、一律に三六協定の上限を引くというのは非常に我が国の実情に合わないというように考えておるわけでございます。ただ、このような我が国の実情を考慮しても、恒常的な長時間労働は確かに好ましくないわけでございますので、先ほど申し上げました時間外労働の適正化ということを今後とも強力に行政指導をしていきたい、こういうように考えております。
  191. 小沢和秋

    小沢(和)委員 終わります。      ――――◇―――――
  192. 有馬元治

    ○有馬委員長 内閣提出、身体障害者雇用促進法の一部を改正する法律案を議題とし、趣旨の説明を聴取いたします。坂本労働大臣。     ―――――――――――――  身体障害者雇用促進法の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――
  193. 坂本三十次

    ○坂本国務大臣 ただいま議題となりました身体障害者雇用促進法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。  身体障害者雇用対策につきましては、昭和五十一年に身体障害者雇用促進法を全面的に改正し、身体障害者雇用率制度による事業主の雇用義務を法的義務とするとともに、身体障害者雇用納付金制度を創設し、これらの制度を中心に、その雇用の促進と安定に努めているところであります。  この身体障害者雇用納付金制度は、身体障害者雇用率未達成の事業主から一定額の納付金を徴収し、これを雇用率を達成している事業主に調整金として支給する等により、身体障害者雇用に伴う事業主の経済的負担を調整するとともに、身体障害者雇用を全体的に引き上げることを目的とするものであります。  現在、この納付金制度に係る業務につきましては、特殊法人である雇用促進事業団が実施しており、その業務の一都は、認可法人である身体障害者雇用促進協会に委託されておりますが、先般の臨時行政調査会の答申におきましては、雇用促進事業団の業務の整理合理化という観点から、この納付金関係業務を身体障害者雇用促進協会に全面的に移管すべきである旨の指摘がなされているところであります。政府といたしましては、この答申の趣旨に沿うとともに納付金関係業務の効率的な運営を確保すべく、この業務を身体障害者雇用促進協会に全面的に行わせるために必要な改正を行うこととしたものであります。  また、近年においては、障害の種類が多くなり、かつ、その内容が複雑になってきていることにかんがみ、身体障害者雇用促進法の対象となる身体障害の範囲を拡大し、その雇用対策を的確に推進することが必要となっております。  これらの観点から、政府といたしましては、この法律案を作成し、身体障害者雇用審議会にお諮りした上、ここに提出した次第であります。  次に、その内容の概要を御説明申し上げます。  第一は、現在、雇用促進事業団が実施している納付金関係業務を身体障害者雇用促進協会に行わせることとしたことであります。  これに関連して、身体障害者雇用促進協会の組織及び体制についての整備を図ることといたしております。具体的には、納付金関係業務を身体障害者雇用促進協会に全面的に行わせるに当たっては、本業務の有する高い公共性にかんがみ、納付金関係業務が適正に運営されるよう身体障害者雇用促進協会について、新たに、学識経験者によって構成される評議員会の設置や予算、事業計画、業務方法書に対する労働大臣の認可等所要の措置を講ずることといたしております。  第二は、身体障害の範囲を拡大することであります。  身体障害の範囲について、従来法律で定めているもののほか、新たに政令で定めることができるようにし、政令においては、人工肛門、人工膀胱の造設者等の排せつ機能障害で日常生活が著しい制限を受けるものを定める予定にしております。  なお、この法律の施行は、納付金関係業務に係る部分については昭和六十年四月一日から、身体障害の範囲の改正に係る部分については本年十月一日からといたしております。  以上、この法律案の提案理由及びその内容の概要につきまして御説明申し上げました。  何とぞ御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。(拍手)
  194. 有馬元治

    ○有馬委員長 これにて趣旨説明は終わりました。  次回は、明九日水曜日午前九時三十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時五十九分散会      ――――◇―――――