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1984-04-24 第101回国会 衆議院 社会労働委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年四月二十四日(火曜日)     午前十時二分開議  出席委員  委員長 有馬 元治君   理事  愛知 和男君 理事 稲垣 実男君   理事  今井  勇君 理事 丹羽 雄哉君   理事  池端 清一君 理事 村山 富市君   理事 平石磨作太郎君 理事 塩田  晋君       伊吹 文明君    稲村 利幸君       古賀  誠君    斉藤滋与史君       自見庄三郎君    中野 四郎君       西山敬次郎君    野呂 昭彦君       浜田卓二郎君    網岡  雄君       河野  正君    多賀谷真稔君       竹村 泰子君    森井 忠良君       大橋 敏雄君    沼川 洋一君       橋本 文彦君    森本 晃司君       小渕 正義君    塚田 延充君       浦井  洋君    田中美智子君       菅  直人君  出席国務大臣         労 働 大 臣 坂本三十次君  出席政府委員         社会保険庁医療         保険部長    坂本 龍彦君         社会保険庁年金         保険部長    朝本 信明君         労働大臣官房審         議官      平賀 俊行君         労働大臣官房審         議官      野見山眞之君         労働省労政局長 谷口 隆志君         労働省労働基準         局長      望月 三郎君         労働省婦人少年         局長      赤松 良子君         労働省職業安定         局長      加藤  孝君         労働省職業安定         局高齢者対策部         長       守屋 孝一君         労働省職業訓練         局長      宮川 知雄君  委員外出席者         資源エネルギー         庁石油部備蓄課         長       岩田 満泰君         運輸大臣官房政         策計画官    亀甲 邦敏君         運輸省船員局労         政課長     佐藤 弘毅君         労働省労働基準         局安全衛生部長 小田切博文君         労働省職業安定         局雇用保険課長 齋藤 邦彦君         日本国有鉄道常         務理事     太田 知行君         社会労働委員会         調査室長    石黒 善一君     ――――――――――――― 委員の異動 四月二十日  辞任         補欠選任   古賀  誠君     江藤 隆美君   谷垣 禎一君     加藤 紘一君   西山敬次郎君     丹羽 兵助君 同日  辞任         補欠選任   江藤 隆美君     古賀  誠君   加藤 紘一君     谷垣 禎一君   丹羽 兵助君     西山敬次郎君     ――――――――――――― 四月二十日  身体障害者雇用促進法の一部を改正する法律案  (内閣提出第四九号)(参議院送付)  厚生年金保険法等の一部を改正する法律案(内  閣提出第六八号)  職業安定法等の一部を改正する法律案(内閣提  出第六九号)  育児休業法案本岡昭次君外三名提出、参法第  五号)(予) 同日  医療保険制度抜本改悪反対充実改善に関す  る請願(大野潔君紹介)(第三〇七七号)  同(工藤晃君紹介)(第三〇七八号)  国立腎センター設立に関する請願(山本幸雄君  紹介)(第三〇七九号)  食品添加物規制緩和反対食品衛生行政の充  実強化に関する請願(小林恒人君紹介)(第三  〇八〇号)  同(田中恒利君紹介)(第三〇八一号)  同(津川武一君紹介)(第三〇八二号)  同(二見伸明君紹介)(第三一五一号)  同(山口鶴男君紹介)(第三一五二号)  医療・年金の改悪反対充実改善に関する請願  (野口幸一君紹介)(第三〇八三号)  同(細谷治嘉君紹介)(第三〇八四号)  同(松沢俊昭君紹介)(第三〇八五号)  同(竹内猛君紹介)(第三一五三号)  同(村山喜一君紹介)(第三一五四号)  医療保険改悪反対充実改善に関する請願(関  山信之君紹介)(第三〇八六号)  国立病院療養所統合等反対医療従事職員  の増員に関する請願(井上一成君紹介)(第三  〇八七号)  同(小川国彦君紹介)(第三〇八八号)  同(左近正男君紹介)(第三〇八九号)  同外二件(清水勇君紹介)(第三〇九〇号)  同(田中恒利君紹介)(第三〇九一号)  同(辻一彦君紹介)(第三〇九二号)  同(中林佳子君紹介)(第三〇九三号)  同(林百郎君紹介)(第三〇九四号)  同(正森成二君紹介)(第三〇九五号)  同(天野等君紹介)(第三一五五号)  同外二件(上西和郎君紹介)(第三一五六号)  同外一件(川崎寛治君紹介)(第三一五七号)  同(川俣健二郎君紹介)(第三一五八号)  同(小林進君紹介)(第三一五九号)  同外一件(児玉末男君紹介)(第三一六〇号)  同外三件(多賀谷眞稔君紹介)(第三一六一号  )  同(富塚三夫君紹介)(第三一六二号)  同(野口幸一君紹介)(第三一六三号)  同外二件(藤田高敏君紹介)(第三一六四号)  同(前川旦君紹介)(第三一六五号)  同外四件(村山喜一君紹介)(第三一六六号)  同(八木昇君紹介)(第三一六七号)  同(山下八洲夫君紹介)(第三一六八号)  医療保険改悪反対等に関する請願(津川武一  君紹介)(第三〇九六号)  同(三浦久君外一名紹介)(第三〇九七号)  同外三件(和田貞夫君紹介)(第三〇九八号)  同(河上民雄君紹介)(第三一六九号)  医療・年金・雇用保険制度改悪反対等に関す  る請願(松本善明君紹介)(第三〇九九号)  医療保険制度改悪反対に関する請願(関山信之  君紹介)(第三一〇〇号)  同(上原康助君紹介)(第三一七一号)  医療保険制度の改善に関する請願(上田哲君紹  介)(第三一〇一号)  同外一件(佐藤祐弘君紹介)(第三一〇二号)  同(富塚三夫君紹介)(第二一〇三号)  同(中林佳子君紹介)(第二一〇四号)  同(松本善明君紹介)(第二一〇五号)  同(沢田広君紹介)(第三一七二号)  同(多賀谷眞稔君紹介)(第三一七三号)  年金・医療・雇用保険改悪反対充実改善に  関する請願(柴田睦夫君紹介)(第三一〇六号  )  同(山下八洲夫君紹介)(第三一七四号)  社会保障制度改悪反対に関する請願(佐藤祐  弘君紹介)(第三一〇七号)  同外一件(小平忠君紹介)(第三一七五号)  重度障害者の無年金者救済に関する請願(安田  修三君紹介)(第三一〇八号)  療術の制度化促進に関する請願(江藤隆美君紹  介)(第一三〇九号)  同(澁谷直藏君紹介)(第三一七六号)  医療保険年金制度改悪反対に関する請願 (佐藤祐弘君紹介)(第三一一〇号)  同(林百郎君紹介)(第三一一一号)  仲裁裁定完全実施に関する請願(小川省吾君紹  介)(第三一一二号)  同(富塚三夫君紹介)(第三一一三号)  同(堀昌雄君紹介)(第三一一四号)  同(松沢俊昭君紹介)(第三一一五号)  同(横江金夫君紹介)(第三一一六号)  同(上田卓三君紹介)(第三一七七号)  同(上原康助君紹介)(第三一七八号)  同(兒玉末男君紹介)(第三一七九号)  同(沢田広君紹介)(第三一八〇号)  同(嶋崎譲君紹介)(第三一八一号)  同(戸田菊雄君紹介)(第三一八二号)  同(山下八洲夫君紹介)(第三一八三号)  男女雇用平等法パート労働法の制定に関する  請願(正木良明君紹介)(第三一一七号)  同(矢野絢也君紹介)(第三一一八号)  同(坂井弘一君紹介)(第三一八四号)  同(二見伸明君紹介)(第三一八五号)  同外二件(渡部一郎君紹介)(第三一八六号)  医療保険年金制度改悪反対等に関する請願  (梅田勝君紹介)(第三一一九号)  同(岡崎万寿秀君紹介)(第三一二〇号)  同(柴田睦夫君紹介)(第三一二一号)  同(瀬崎博義君紹介)(第三一二二号)  同(田中美智子君紹介)(第三一二三号)  同(辻第一君紹介)(第三一二四号)  同(中川利三郎君紹介)(第三一二五号)  同(中島武敏君紹介)(第三一二六号)  同(東中光雄君紹介)(第三一二七号)  医療保険抜本改悪反対、その充実改善に関す  る請願(佐藤祐弘君紹介)(第三一四四号)  同(不破哲三君紹介)(第三一四五号)  国民医療医療保険制度改悪反対に関する請  願(佐藤祐弘君紹介)(第三一四六号)  医療・年金の抜本改悪反対に関する請願(瀬崎  博義君紹介)(第三一四七号)  労働基準法改悪反対男女雇用平等法制定等に  関する請願(玉置一弥君紹介)(第三一四八号  )  同(西中清君紹介)(第三一四九号)  国立病院療養所の廃止及び地方移管反対等に  関する請願(村山喜一君紹介)(第三一五〇号  )  医療保険抜本改悪反対に関する請願(井上一  成君紹介)(第三一七〇号) 同月二十三日  食品添加物規制緩和反対等に関する請願(経  塚幸夫君紹介)(第三二〇三号)  同(小谷輝二君紹介)(第三二〇四号)  同(藤田スミ君紹介)(第三二〇五号)  医療保険制度改悪反対国民医療改善等に関  する請願(藤田スミ君紹介)(第三二〇六号)  国立病院療養所統合等反対医療従事職員  の増員に関する請願外一件(五十嵐広三君紹介  )(第三二〇七号)  同外一件(伊藤茂君紹介)(第三二〇八号)  同(池端清一君紹介)(第三二〇九号)  同(梅田勝君紹介)(第三二一〇号)  同外六件(小澤克介君紹介)(第三二一一号)  同(河野正君紹介)(第三二一二号)  同外一件(権藤恒夫君紹介)(第三二一三号)  同(新村源雄君紹介)(第三二一四号)  同(関晴正君紹介)(第三二一五号)  同外八件(武郎文君紹介)(第三二一六号)  同(辻一彦君紹介)(第三二一七号)  同外二件(広瀬秀吉君紹介)(第三二一八号)  同(藤田スミ君紹介)(第三二一九号)  同(村山富市君紹介)(第三二二〇号)  同(和田貞夫君紹介)(第三二二一号)  同外二件(石橋政嗣君紹介)(第三二九五号)  同(岩垂寿喜男君紹介)(第三二九六号)  同(角屋堅次郎君紹介)(第三二九七号)  同(上西和郎君紹介)(第三二九八号)  同(木島喜兵衞君紹介)(第三二九九号)  同外三件(小林恒人君紹介)(第三三〇〇号)  同(佐藤敬治君紹介)(第三三〇一号)  同(島田琢郎君紹介)(第三三〇二号)  同(新村源雄君紹介)(第三三〇三号)  同(高沢寅男君紹介)(第三三〇四号)  同(細谷昭雄君紹介)(第三三〇五号)  同外四件(細谷治嘉君紹介)(第三三〇六号)  同(堀昌雄君紹介)(第三三〇七号)  同(松浦利尚君紹介)(第三三〇八号)  同(松前仰君紹介)(第三三〇九号)  同外一件(武藤山治君紹介)(第三三一〇号)  同(森中守義君紹介)(第三三一一号)  同(安井吉典君紹介)(第三三一二号)  同(山口鶴男君紹介)(第三三一三号)  同(山中末治君紹介)(第三三一四号)  同(山花貞夫君紹介)(第三三一五号)  同外三件(湯山勇君紹介)(第三三一六号)  同(吉原米治君紹介)(第三三一七号)  同(渡部行雄君紹介)(第三三一八号)  同(渡辺嘉藏君紹介)(第三三一九号)  医療保険改悪反対等に関する請願(新村勝雄  君紹介)(第三二二二号)  同(小川国彦君紹介)(第三三二〇号)  医療保険制度改悪反対等に関する請願(藤田  スミ君紹介)(第三二二三号)  児童扶養手当制度改悪反対に関する請願外一件  (土井たか子君紹介)(第三二二四号)  医療保険抜本改悪反対に関する請願外一件  (永井孝信君紹介)(第三二二五号)  同(村山富市君紹介)(第三三二一号)  カイロプラクティックの立法化阻止等に関する  請願(土井たか子君紹介)(第三二二六号)  医療保険制度改悪反対に関する請願(岩垂寿喜  男君紹介)(第三二二七号)  同(渡辺嘉藏君紹介)(第三三二二号)  医療保険制度の改善に関する請願(岩垂寿喜男  君紹介)(第三二二八号)  同外一件(上田哲君紹介)(第三二二九号)  同(大久保直彦君紹介)(第三二三〇号)  同外六件(河野正君紹介)(第三二三一号)  同(工藤晃君紹介)(第三二三二号)  同(新村勝雄君紹介)(第三二三三号)  同(中島武敏君紹介)(第三二三四号)  同(沼川洋一君紹介)(第三二三五号)  同(藤田スミ君紹介)(第三二三六号)  同(沢田広君紹介)(第三三二三号)  同(新村勝雄君紹介)(第三三二四号)  同(鈴木強君紹介)(第三三二五号)  同(関山信之君紹介)(第三三二六号)  同(高沢寅男君紹介)(第三三二七号)  同(細谷昭雄君紹介)(第三三二八号)  同(武藤山治君紹介)(第三三二九号)  同(村山富市君紹介)(第三三三〇号)  年金・医療・雇用保険改悪反対充実改善に  関する請願(小沢和秋君紹介)(第三二三七号  )  同(岡崎万寿秀君紹介)(第三二三八号)  同(辻第一君紹介)(第三二三九号)  同(中川利三郎君紹介)(第三二四〇号)  同(中島武敏君紹介)(第三二四一号)  同外三件(永井孝信君紹介)(第三二四二号)  同(東中光雄君紹介)(第三二四三号)  療術の制度化促進に関する請願外四件(宇野宗  佑君紹介)(第三二四四号)  同外一件(江藤隆美君紹介)(第三二四五号)  仲裁裁定完全実施に関する請願(池端清一君紹  介)(第三二四六号)  同(河野正君紹介)(第三二四七号)  同(戸田菊雄君紹介)(第三二四八号)  同(角屋堅次郎君紹介)(第三三三一号)  同(沢田広君紹介)(第三三三二号)  同(鈴木強君紹介)(第三三三三号)  同(山中末治君紹介)(第三三三四号)  同(湯山勇君紹介)(第三三三五号)  同(渡辺嘉藏君紹介)(第三三三六号)  男女雇用平等法パート労働法の制定に関する  請願外一件(権藤恒夫君紹介)(第三二四九号  )  男女雇用平等法法制化促進に関する請願(澁  谷直藏君紹介)(第三二五〇号)  食品添加物規制緩和反対食品衛生行政の充  実強化に関する請願(小川省吾君紹介)(第三  二九三号)  医療・年金の改悪反対充実改善に関する請願  (水田稔君紹介)(第三二九四号)  国立病院療養所の廃止及び地方移管反対等に  関する請願(小川仁一君紹介)(第三三三七号  )  同(角屋堅次郎君紹介)(第三三三八号) 同月二十四日  国立病院療養所統合等反対医療従事職員  の増員に関する請願(竹内勝彦君紹介)(第三  三四九号)  同(辻一彦君紹介)(第三三五〇号)  同(井上普方君紹介)(第三五三九号)  同(岡崎万寿秀君紹介)(第三五四〇号)  同(奥野一雄君紹介)(第三五四一号)  同(加藤万吉君紹介)(第三五四二号)  同(経塚幸夫君紹介)(第三五四三号)  同(佐藤観樹君紹介)(第三五四四号)  同(佐藤徳雄君紹介)(第三五四五号)  同(渋沢利久君紹介)(第三五四六号)  同(新村源雄君紹介)(第三五四七号)  同(関山信之君紹介)(第三五四八号)  同(田中克彦君紹介)(第三五四九号)  同(田中恒利君紹介)(第三五五〇号)  同(田邊誠君紹介)(第三五五一号)  同(竹内猛君紹介)(第三五五二号)  同(土井たか子君紹介)(第三五五三号)  同外一件(中村茂君紹介)(第三五五四号)  同(中村重光君紹介)(第三五五五号)  同(野間友一君紹介)(第三五五六号)  同(東中光雄君紹介)(第三五五七号)  同(不破哲三君紹介)(第三五五八号)  同(藤木洋子君紹介)(第三五五九号)  同(松沢俊昭君紹介)(第三五六〇号)  同(松本善明君紹介)(第三五六一号)  同(横江金夫君紹介)(第三五六二号)  医療保険改悪反対等に関する請願(森田景一  君紹介)(第三三五一号)  医療保険制度の改善に関する請願(池田克也君  紹介)(第三三五二号)  同外一件(木内良明君紹介)(第三三五三号)  同(上野建一君紹介)(第三五六九号)  同(岡崎万寿秀君紹介)(第三五七〇号)  同(加藤万吉君紹介)(第三五七一号)  同(工藤晃君紹介)(第三五七二号)  同(沢田広君紹介)(第三五七三号)  同(柴田睦夫君紹介)(第三五七四号)  同(渋沢利久君紹介)(第三五七五号)  同外一件(関山信之君紹介)(第三五七六号)  同外一件(田並胤明君紹介)(第三五七七号)  同(多賀谷眞稔君紹介)(第三五七八号)  同(戸田菊雄君紹介)(第三五七九号)  年金・医療・雇用保険改悪反対充実改善に  関する請願(岡本富夫君紹介)(第三三五四号  )  同(橋本文彦君紹介)(第三三五五号)  同(木島喜兵衞君紹介)(第三五八〇号)  療術の制度化促進に関する請願外一件(江藤隆  美君紹介)(第三三五六号)  同(熊谷弘君紹介)(第三五八五号)  労働基準法改悪反対男女雇用平等法制定等に  関する請願(竹内勝彦君紹介)(第三三五七号  )  年金の官民格差是正に関する請願(愛知和男君  紹介)(第三三八二号)  同(田邉國男君紹介)(第三三八三号)  同(高橋辰夫君紹介)(第三三八四号)  同(野呂田芳成君紹介)(第三三八五号)  同(葉梨信行君紹介)(第三三八六号)  障害福祉年金受給者所得制限廃止に関する請  願(愛知和男君紹介)(第三三八七号)  同(田邉國男君紹介)(第三三八八号)  同(高橋辰夫君紹介)(第三三八九号)  同(野呂田芳成君紹介)(第三三九〇号)  同(葉梨信行君紹介)(第三三九一号)  在宅重度障害者暖房費支給に関する請願(愛  知和男君紹介)(第三三九一号)  同(田邉國男君紹介)(第三三九三号)  同(高橋辰夫君紹介)(第三三九四号)  同(野呂田芳成君紹介)(第三三九五号)  同(葉梨信行君紹介)(第三三九六号)  在宅重度障害者介護料支給に関する請願(愛  知和男君紹介)(第三三九七号)  同(田邉國男君紹介)(第三三九八号)  同(高橋辰夫君紹介)(第三三九九号)  同(野呂田芳成君紹介)(第二四〇〇号)  同(葉梨信行君紹介)(第三四〇一号)  重度障害者終身保養所設置に関する請願(愛  知和男君紹介)(第三四〇二号)  同(田邉國男君紹介)(第三四〇三号)  同(高橋辰夫君紹介)(第三四〇四号)  同(野呂田芳成君紹介)(第三四〇五号)  同(葉梨信行君紹介)(第三四〇六号)  労災年金厚生年金等完全併給に関する請願  (愛知和男君紹介)(第三四〇七号)  同(田邉國男君紹介)(第三四〇八号)  同(高橋辰夫君紹介)(第三四〇九号)  同(野呂田芳成君紹介)(第三四一〇号)  同(葉梨信行君紹介)(第三四一一号)  重度身体障害者の雇用に関する請願(愛知和男  君紹介)(第三四一二号)  同(田邉國男君紹介)(第三四一三号)  同(高橋辰夫君紹介)(第三四一四号)  同(野呂田芳成君紹介)(第三四一五号)  同(葉梨信行君紹介)(第三四一六号)  重度障害者の無年金者救済に関する請願(愛知  和男君紹介)(第三四一七号)  同(田邉國男君紹介)(第三四一八号)  同(高橋辰夫君紹介)(第三四一九号)  同(野呂田芳成君紹介)(第三四二〇号)  同(葉梨信行君紹介)(第三四二一号)  労災年金給付改善に関する請願(愛知和男君  紹介)(第三四二二号)  同(田邉國男君紹介)(第三四二三号)  同(高橋辰夫君紹介)(第三四二四号)  同(野呂田芳成君紹介)(第三四二五号)  同(葉梨信行君紹介)(第三四二六号)  身体障害者家庭奉仕員の採用に関する請願(愛  知和男君紹介)(第三四二七号)  同(田邉國男君紹介)(第三四二八号)  同(高橋辰夫君紹介)(第三四二九号)  同(野呂田芳成君紹介)(第三四三〇号)  同(葉梨信行君紹介)(第三四三一号)  国公立病院における脊髄損傷者の治療に関する  請願(愛知和男君紹介)(第三四三二号)  同(田邉國男君紹介)(第三四三三号)  同(高橋辰夫君紹介)(第三四三四号)  同(野呂田芳成君紹介)(第三四三五号)  同(葉梨信行君紹介)(第三四三六号)  労災被災者脊髄神経治療に関する請願(愛知  和男君紹介)(第三四三七号)  同(田邉國男君紹介)(第三四三八号)  同(高橋辰夫君紹介)(第三四三九号)  同(野呂田芳成君紹介)(第三四四〇号)  同(葉梨信行君紹介)(第三四四一号)  労災被災者介護料に関する請願(愛知和男君  紹介)(第三四四二号)  同(田邉國男君紹介)(第三四四三号)  同(高橋辰夫君紹介)(第三四四四号)  同(野呂田芳成君紹介)(第三四四五号)  同(葉梨信行君紹介)(第三四四六号)  健康保険国民健康保険による付添介護人派遣  に関する請願(愛知和男君紹介)(第三四四七  号)  同(田邉國男君紹介)(第三四四八号)  同(高橋辰夫君紹介)(第三四四九号)  同(野呂田芳成君紹介)(第三四五〇号)  同(葉梨信行君紹介)(第三四五一号)  労災年金のスライドに関する請願(愛知和男君  紹介)(第三四五二号)  同(田邉國男君紹介)(第三四五三号)  同(高橋辰夫君紹介)(第三四五四号)  同(野呂田芳成君紹介)(第三四五五号)  同(葉梨信行君紹介)(第三四五六号)  身体障害者福祉行政改善に関する請願(愛知  和男君紹介)(第三四五七号)  同(田邉國男君紹介)(第三四五八号)  同(高橋辰夫君紹介)(第三四五九号)  同(野呂田芳成君紹介)(第三四六〇号)  同(葉梨信行君紹介)(第三四六一号)  脊髄損傷治療技術研究開発に関する請願(愛  知和男君紹介)(第三四六二号)  同(田邉國男君紹介)(第三四六三号)  同(高橋辰夫君紹介)(第三四六四号)  同(野呂田芳成君紹介)(第三四六五号)  同(葉梨信行君紹介)(第三四六六号)  労災年金最低給付基礎日額引き上げに関する  請願(愛知和男君紹介)(第三四六七号)  同(田邉國男君紹介)(第三四六八号)  同(高橋辰夫君紹介)(第三四六九号)  同(野呂田芳成君紹介)(第三四七〇号)  同(葉梨信行君紹介)(第三四七一号)  旧々労災被災者労働者災害補償保険法適用に  関する請願(愛知和男君紹介)(第三四七二号  )  同(田邉國男君紹介)(第三四七三号)  同(高橋辰夫君紹介)(第三四七四号)  同(野呂田芳成君紹介)(第三四七五号)  同(葉梨信行君紹介)(第三四七六号)  重度障害者福祉手当増額に関する請願(愛知  和男君紹介)(第三四七七号)  同(田邉國男君紹介)(第三四七八号)  同(高橋辰夫君紹介)(第三四七九号)  同(野呂田芳成君紹介)(第三四八〇号)  同(葉梨信行君紹介)(第三四八一号)  労災重度被災者終身保養所設置に関する請願  (愛知和男君紹介)(第三四八二号)  同(田邉國男君紹介)(第三四八三号)  同(高橋辰夫君紹介)(第三四八四号)  同(野呂田芳成君紹介)(第三四八五号)  同(葉梨信行君紹介)(第三四八六号)  労災脊髄損傷者の遺族に年金支給に関する請願  (愛知和男君紹介)(第三四八七号)  同(田邉國男君紹介)(第三四八八号)  同(高橋辰夫君紹介)(第三四八九号)  同(野呂田芳成君紹介)(第三四九〇号)  同(葉梨信行君紹介)(第三四九一号)  労災重度被災者暖房費支給に関する請願(愛  知和男君紹介)(第三四九二号)  同(田邉國男君紹介)(第三四九三号)  同(高橋辰夫君紹介)(第三四九四号)  同(野呂田芳成君紹介)(第三四九五号)  同(葉梨信行君紹介)(第三四九六号)  労働者災害補償保険法の改善に関する請願(愛  知和男君紹介)(第三四九七号)  同(田邉國男君紹介)(第三四九八号)  同(高橋辰夫君紹介)(第三四九九号)  同(野呂田芳成君紹介)(第三五〇〇号)  同(葉梨信行君紹介)(第三五〇一号)  医療保険改悪反対に関する請願(多賀谷眞稔  君紹介)(第三五三四号)  食品添加物規制緩和反対食品衛生行政の充  実強化に関する請願外三件(岡田利春君紹介)  (第三五三五号)  同(田邊誠君紹介)(第三五三六号)  医療・年金の改悪反対充実改善に関する請願  (中村重光君紹介)(第三五三七号)  医療保険改悪反対充実改善に関する請願(関  山信之君紹介)(第三五三八号)  児童扶養手当制度改悪反対に関する請願(梅田  勝君紹介)(第三五六三号)  同(竹村泰子君紹介)(第三五六四号)  社会保障・福祉の充実等に関する請願(中村茂  君紹介)(第三五六五号)  医療保険抜本改悪反対に関する請願(経塚幸  夫君紹介)(第三五六六号)  同(竹村泰子君紹介)(第三五六七号)  国民年金法改正促進に関する請願(熊川次男君  紹介)(第三五六八号)  社会保障制度改悪反対に関する請願(岡田利  春君紹介)(第三五八一号)  同(松浦利尚君紹介)(第三五八二号)  健康保険年金制度改悪反対に関する請願(竹  村泰子君紹介)(第三五八三号)  同(戸田菊雄君紹介)(第三五八四号)  仲裁裁定完全実施に関する請願(上野建一君紹  介)(第三五八六号)  同(河上民雄君紹介)(第三五八七号)  同(佐藤誼君紹介)(第三五八八号)  同(田邊誠君紹介)(第三五八九号)  国立病院療養所の廃止及び地方移管反対等に  関する請願(小川仁一君紹介)(第三五九〇号  )  同(戸田菊雄君紹介)(第三五九一号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  雇用保険法等の一部を改正する法律案(内閣提  出第二三号)      ――――◇―――――
  2. 有馬元治

    ○有馬委員長 これより会議を開きます。  内閣提出雇用保険法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。多賀谷眞稔
  3. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 まず大臣に、今日の日本の雇用情勢並びに今後の展望、これをひとつ具体的にお聞かせ願いたい。
  4. 坂本三十次

    坂本国務大臣 最近の雇用失業情勢は、なお厳しさを残してはおりまするものの、景気の回復を背景に改善の動きが見られております。  具体的に申し上げますれば、まず求人は、製造業を中心に増加傾向にございます。それから求職は、落ちついた動きを示しております。このため、有効求人倍率は、五十八年八月が〇・五九倍でありましたが、それ以降上昇を続けて、五十九年二月には〇・六五倍まで持ち直してまいりました。それから完全失業率でありまするが、五十八年八月には二・八%を記録いたしましたが、五十九年二月には〇・七三%と若干盛り返しております。雇用者は全体として増加をいたしておりまして、五十九年二月には前年に比して六十六万人の増となっております。しかし、業種別、地域別に見ますと雇用改善には跛行性が見られますので、必要な対策に遺憾のないように図らわなければいかぬと思っております。  それから次に、この中長期的な構造変化への対応でございますが、まず第一に、六十歳台前半層の急増など本格的な高齢化が進展をしており、主婦を中心とした女子の職場進出が目立ち、そしてさらにサービス業を中心とする第三次産業の拡大、それからMEを中心とする新しい技術革新の進展など、需給両面にわたって広範な構造変化が進むことと見込まれております。このため、労働省としては、第五次雇用対策基本計画に基づいて構造変化に対応した雇用対策を積極的に進めて、物心、質量両面にわたる完全雇用の達成に努力をいたしたいと思っております。
  5. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 今、大臣は失業率、完全失業者の話をなさったのですけれども、大体完全失業者というのはどういうように労働省としては把握されておるのか、一体どういう層なのか、これをお聞かせ願いたい。
  6. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 完全失業者の統計そのものは、御存じのように総理府統計局でやっておるわけでございますが、出てきておりますこの数の中身の問題といたしまして、もちろんこういう企業の解雇とかいう形で失業状態になっておる方が中心でございますが、特に最近においての顕著な中身の変化といたしましては、家庭の主婦層で新しく就業したい、それについてまだその場が得られていない、こういうような方が相当のウエートを占めてきておるということが一つございます。それからまた、高齢者でやはり、従来であれば引退というような形になっておられる方が、これがなおやはり就業を続けたい、就業したいという形で完全失業者となって統計上出てきておる、こういうような関係の内容が新しい動きとしてふえてきておる、こんな内容を持ったものでございます。
  7. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私は、完全失業者というのは一体どういう層なのか、かねてから疑問に思っておったわけです。要するに毎月の最後の週の一週間全然働かなかった者という、最後の週の一週間全然働かなくて生活ができる層は一体どういう層なんだろうか、こういう疑問を常に持っておったわけです。ですから、真の意味の就職を求めておる人が一体完全失業者の中に入っておるかどうか。要するに、一週間一時間も働かなくて生活のできておる人はどういう層か、こういうことを考えて、一体完全失業者という率は統計上どういう意義を持っておるのか、こういうように思うのですが、一体完全失業者というのはどういう層なんでしょうか。
  8. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 典型的な例といたしましては、雇用保険の受給者という方などは全く就労しなくても一応主として雇用保険の給付によりまして生活をしておられる、あるいはまた高齢者なんかでございますと、求職状態にはあるけれども、例えば退職金であるとかあるいは年金であるとか、比較的そういうような形での生活の手段はある。それから先ほど申し上げましたように、家庭の主婦などで一応子供の手なども離れて新しく働きに出たい、こういうような層であればこれはある程度、そういうだんなの収入とかいうような形の中でその辺の生活がもっておるということで、その辺が、パターンとして大きく言えばそんなような形でのあれではないだろうか。ですから、その中における雇用保険の受給者というものもやはり大きなウエートを占めておるのではないか。現に、現在雇用保険の受給者数が九十万前後で推移しておるわけでございまして、一方完全失業者数が百六十万前後ということになりますと、そのうちの九十万ぐらいは雇用保険受給者、こういうような内容になっておるわけでございます。
  9. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そうすると、雇用保険が終了した後の人は大体完全失業者の中に入ってこないわけですね。――今の質問、わかりましたか。
  10. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 保険が終了いたしましてなお失業しておるという状態で、他に収入がなければ完全失業者になるわけですが、その場合の生活の態様としまして、何らかのアルバイト的なことでもやるという形になるのか知りませんが、とにかくそうであればそういう一時間もしなかったということになってくるのですが、逆に例えば奥さんがその間働いている、あるいはまた家族のだれかが働いてその辺の家計の補いをつけておるという形で本人は一応失業状態を続けておるということ、それから逆に若い層でございますと、統計調査によりますれば家からの仕送りがあるということとか、結局親父の収入で何とかつないでおる、そういう層も一応完全失業者になってくるわけでございまして、現に総理府の調査によりますと最近若年層での失業者の率が非常に高いのですが、主としてそういう家からの仕送りなり家での援助なり、そういう形でいわば失業状態が続いておるというようなものもいろいろ出ておるわけでございます。
  11. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 新規に学校を出てまだ就職についてないという人は、これは完全失業者に入るわけですね。それから、雇用保険が切れた後事実上一時間も働かなかったということになると、もうこれは完全失業者には入らないのじゃないか、こういうように思うわけです。  ですから、一体完全失業者というのはどういう層かと実は思っておりましたら、五十五年三月の総理府の労働力特別調査というのがある。これは毎年出ておるわけですけれども、これによりますと、ちょっと私も意外でしたが、雇用保険を主としておる者というのは男子で二六・七%、女子で一六・三%しかないのです。さすがに世帯主男子は三六・八%。それから年金、恩給受給者が二八・九%、そして、本人は収入なしですけれども世帯主収入というのが圧倒的に多いのです。そこで、完全失業者統計というのは何を意味しておるのだろうかと、一つ疑問を持つわけです。ですから、完全失業者というのは傾向値としては非常によくわかるけれども、絶対的な政策の対象を限定する場合にはどうも極めて不明確な統計ではないか、こういうように考える。日本の場合は安定所の窓口から雇用保険をもらわなくなったら消えてなくなるわけですから、それほど安定所というのを信頼してないと言えば大変語弊があるけれども、事実上二〇%しか就職を世話してないのだから、そうすると、就職活動というのが実際上把握できない。そこで、傾向値としては非常によくわかるのですけれども、日本の完全失業者が諸外国に比較して非常に低いということは、トータルとして言う場合には必ずしもそうは言えないのじゃないかと思うのですが、その点どうですか。
  12. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 御指摘ございましたように、絶えず日本の失業率がそういう二・五%前後で推移しておる、一方ヨーロッパでは、西ドイツも含めまして一〇%近い数字、あるいはまたイギリスなどでは一〇%を超える失業率である、そういう場合に、失業統計のとり方とか失業の定義とか、そういった関係で何か実態とは食い違った数字がそこでいろいろ出てきておるのではないか、こういうような観点からの問題意識はいろいろ投げかけられており、我々もまた、そういう問題意識を持って、失業の定義な久失業統計のとり方などで、例えば日本とアメリカの統計は非常によく似ておるのですが、数字を比較するという観点で、例えば軍隊をどうするとかなんとかいう問題がございますので、そういう操作をいたしましても実は余り変わらない、本当に〇・一とかそんなような動きでありまして、そういう意味では全く変わらない。それからまた、ドイツとかイギリスなどではそういう失業のとり方が違いまして、公共職業安定所に対する求職登録とかいうような形での数字で押さえているわけですが、それをこういう国際的な、ILOなどの統計では日本やアメリカのような統計でいろいろ全体的な比較をやっておりますので、そういうようなむしろ国際的な基準の方に直して、そういうところをとり直しましても実は余り大きな動きがないわけでございます。そういう意味では失業統計というものについては、今のこの数字の上でのあれをいろいろ合わせてみても、実は数字的には今示されておるような数字と余り変わりはないので、そういう意味では日本の失業率というのは低いものだということは言えると思います。  ただ問題は、先生も踏まえて御指摘に言っておられます、いろいろ社会雇用慣行の違いというものが背景にあるわけでございます。例えばアメリカの場合でございますれば、仕事がなくなってこの労働者はもう今働かせるところがないとなればこれはすぐレイオフという形で出てくるということですが、日本の場合にはそれをなるべく終身雇用制の中で何とかこれを抱えて、なるべく解雇という形に持っていかないようにしよう、こういう企業努力をいたしておりまして、現に企業がどのくらい余分に、本当に必要とする労働力を必要以上に抱えておるかというような形での統計を一・四半期に一回ずつやっておりますが、昨年の今ごろでございますと三割ぐらいの企業が、製造業でございますが雇用過剰感を持っておる。多少余分に人を抱えているのだというところが三割ぐらいございまして、それがまた、昨年景気がよくなりますにつれまして、そういう過剰に人を抱えておる企業というのが一七%ぐらいに下がり、あるいは一五%ぐらいに下がりというような形でございますが、そういうことで、とにかく企業としては多少オーバーになってもやはり終身雇用の関係もあってこう抱えてきているという問題がございます。それから逆に、そのかわり多少仕事が忙しくなってきても新しくすぐ人を雇うというのじゃなくて、超過勤務という形でそれをまたカバーしていくという形で、時間外労働のふえぐあいというものがまたある程度景気の指標にもなってくるような意味も出てくる、そういう状況がございまして、そういう意味で、そういう雇用慣行の違いというものが失業率のこういうあらわれ方にいろいろ影響しておるだろうということは感ずるわけでございます。  それからもう一つ、完全失業者というものをいろいろ内容の分析をいたしました場合に、その全部が求職活動をどの程度真剣にしておるかという問題が一つ基本的にあるわけでございます。その辺のところが、全部が全部というわけでなく、何かいいところがあったら就職したいなというようなところから、何が何でも就職したいというところまでいかない、いろいろ求職活動の意欲の強さ等もございましょう、そういう意味で、完全失業者数そのものが全部政策対象としてのそういうものだということで押さえていいものかどうか、その辺の内容についてはいろいろまた検討を要する。要するに、緊急を要する完全失業者もあれば、特に緊急に何らかの対策をしなければいかぬという層もその中には入っておるというようなことは言えようかと思うわけでございます。
  13. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 分母を労働力人口ではなくて雇用者プラス失業者、分子を失業者と見た場合に、日本の場合は一体どういうようになりますか。
  14. 野見山眞之

    ○野見山政府委員 雇用者プラス失業者に対する失業者の割合、ちょっと今正確な数字を持っておりませんが、三%近くになろうかと存じます。
  15. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 イギリス、それからドイツもそうですけれども、ドイツは二つ使っているのですが、雇用者プラス失業者というのを分母にして失業者というのを分子にして出しているのです。大体、自営業とかあるいはまた農村に働く人というのは、労働力人口ではあるんだけれども雇用の求職には出てこないのです、あるいは一部出てくる可能性もないことはないけれども。ですから、雇用者プラス失業者というのを分母、分子に失業者という統計もとる。これはILOの統計もありますし、各国とも違うのですが、日本は伝統的に分母に労働力人口をとっておりますから、それを変えるとは言っておりませんが、やはりそういう統計も示されていただきたい、こういうように思うのです。
  16. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 御指摘の趣旨は私どもやはり同じように考えておりまして、いわゆる雇用者失業率という数字は、私どもも時折そういうものを出して、いわゆるUV分析なんかに使ったりなんかいたしておりまして、そういう意味では、こういう完全失業率だけではなくて、雇用者失業率というものも一つの重要な指標として見ていかなければならぬだろう、こういう考え方を持っておるわけでございます。  また、実はちょっと先のお答えになるかもしれませんが、現在のこういう日本の雇用状態というものを示す指標というものを、例えば今の完全失業率だけで物を言ったり、あるいはまた有効求人倍率だけ見て物を言うということではなくて、いろいろ関連する指標がございますので、そういったようなものを総合的に勘案しました新しい雇用指標というようなものの開発もしていかなければならぬではないかというようなことで、本年度、そういうための研究会を設けての検討も進めたいというような準備も、今始めておるというような事情もあるわけでございます。
  17. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私も久しぶりに労働白書及び参考資料を見たのですが、随分労働省も勉強して、最近は数字も使って詳しく述べておられることに敬意を表する次第ですが、政策とぴちっと結びつくかどうか、それを疑問に思うわけです。  そこで、雇用保険法の問題に入ってみたいと思います。失業保険法時代から四十九年の雇用保険法の成立といいますか、失業保険法を改正して新法にしたのですが、そのときとまた五十九年の今度の改正、こう見ると、労働省は基本的には何をねらって改正をしようとしておるのか、これがどうも私は納得できないのです。大臣は今度の改正で一体何をねらって改正しようとしておるのか、これをお聞かせ願いたい。
  18. 坂本三十次

    坂本国務大臣 十年間の日本の社会経済、雇用情勢というものが大きく変化をいたしまして、この十年間の変化というものは大変大きなものになっております。先ほども私、申し上げましたように、高齢者社会に突入するスピード、あるいはまた女子がパートなどを含めまして非常に進出をしてきておるとか、いわゆる先端技術関係、ME関係の雇用に及ぼす影響、いろいろな面で大変な変化が生じておりまして、十年前の法では予想されなかったような変化が大きく動いたということで、雇用保険制度もやはりこの変化に対応しなければならないということで改正をした。もちろん財政の悪化もございましょうけれども、その財政の悪化というものの基本になるものはそういう大きな変化があった、その変化に新たに対応し直そうということだと思っております。
  19. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 大臣、失礼ですけれども、条文とか内容をよく御存じなのかどうか疑問に思うのですよ。というのは、大臣の言ったことと全く違うことが今度の改正になっておるのです。大臣がおっしゃることは、四十九年度の改正のときに大臣が言ったことです。それならばまさにそのとおりです。高齢化社会を迎えるから、就職の難易に応じて保険の給付を変えるんです。これが四十九年度の提案理由なら私は納得いたします。ところが、四十九年度の提案理由のことを言って、大臣としては情勢の変化とおっしゃるけれども、四十九年から情勢の変化はしてないのです。むしろその点は深刻になっている。ところが本当のねらいはそこにないのです。一体いつから内務省に復活したのか。あなた方は皆若いから、労働省時代に採用されたんだ。今度のも伝統的な内務省的発想が続いておるのです。否、四十九年度のときも、口ではそう言ったけれども、内容的にはそうですよ。要するに犯人を追っかけているような格好ですよ。思わぬところに意外な結果が出た、それを防ぐ、それを追っかけ回しているというのが四十九年から今度の五十九年の改正です。  四十九年の改正というのは、結局、女子が短期に勤めて結婚をする、そうして退職する、その退職金を何とか切ろうではないか。そうしてまた、季節労働者が長く保険をもらう、これを何とかぶった切ろう。そうして、就職支度金というのがせっかくあったけれども、これが乱用されるからやめよう。こういう発想なんですよ。今度も思い当たるでしょう、五十九年度も。これは全然態様が違うけれども、あなた方が一つ一つ改正項目を掲げたのは、どういう発想から改正をしようとしておるのか。大臣が言うことと全く違うことをお役所はおつくりになっておるのです。どうですか、局長
  20. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 大臣が申し上げましたように、高齢化が進んでいく、あるいはまた女子の職場進出も進んでくる、あるいはまた第三次産業がどんどんふえてくる、こういうような中で失業水準もどんどん上がってくる、受給者もふえてくる、そしてそういう中で保険財政も窮迫をしてくる。こういうような経過の中で、こういう変化、流れというものは、今後、こういういわば景気の低迷で続いているだけのことなのか、それともこういう変化というのは構造的な変化としてつかまえていかなければならぬのだろうか、こういうことでいろいろ検討をしていただきまして、そういう中で、こういうのは今後の構造的変化だ、そういう構造的変化の中で、雇用保険としていかに受給者の生活の安定を図りながら就職の促進というものを図っていくかということ、そしてまた、その中において、保険というものの制度のいろいろな不合理な面は直しながら、何とかこの制度の健全な運営というもの、これを維持をしていきたい。また、労使の負担というものはできる限りふやさないという形において、現在のどこをどう是正した場合にそういう保険の就職促進の機能を持たせながらいけるだろうかというようなことで、いろいろ御検討いただいて、その結果を踏まえて御提案を申し上げておるということでございます。
  21. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私が内務省的発想と言ったのは、労働市場は依然として厳しいとおっしゃった、まさにそのとおり。ところがなかなか就職をしない。そこで、安定所も残念ながら二〇%ぐらいしか就職あっせんができていない、これを再就職を促進するためにいびろうという、こういう政策がこの五十九年度の改正案ですよ。  大臣、まず言うならば、基本的には財政面の問題があります。国庫補助金をもう出したくない、その次には、給付が高いから再就職が困難である、こういう考え方があるのです。高齢者は優遇されておるから再就職をしたがらない、こういう考え方が一つあるのでしょう。そして、六十五歳以上はもう労働省はお断りです。あれは厚生省でやってもらいたい。こういうことで六十五歳以上は保険から排除した。次に、死んだはずの就職支度金をまた復活さしておるのです。そして、再就職手当というえさで再就職を促進しようとしておる。どうも考え方が、本当に筋道を立てて、雇用情勢が悪い、高齢化社会を迎えるからこうするというのじゃないのですね。大臣、どう思われますか。あなたの言うとおりになっていないでしょう、役人が書いた文章は、この法律案は。
  22. 坂本三十次

    坂本国務大臣 しかし、どうもこの十年間の動きというものは相当大きなもので、十年前の法の改正のときにとても予見し切れなかったような動きが先ほど申し上げましたようにあった。そこで、雇用関係でもアンバランスが生じてきたという構造変化の方が私はどうも大きいように思いますね。そうしますと、保険財政もそれは変化をこうむるということで、それはいろいろな柱を立てて今度手を加えてはおりまするけれども、その構造変化に対応し切れないような保険制度というものを何とか変えたいということで、それではということでいろいろな細かい技術的な手を加えたと思いますが、それも保険というものがやはりどうしても必要なことですから、それをどうしても守っていきたいということでいろいろな技術的な改正を今度盛り込んだのだ、こう思っております。保険制度がつぶれてはこれは大変でございますから。  しかし、そうかといって、その保険金額を労使双方から上げるということも、これはどうもまだ。もっとこっちは勉強してそういうことをしないでやっていきたいし、それから御承知のとおり財政難も財政難でございますし、ですからそういう保険金額を上げない範囲内で何とか知恵を絞ろうということで、保険制度を守っていかなければならぬということで、一生懸命知恵を絞ったものだと私は考えておるので。これは私は善意に過ぎますかね。
  23. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 十年間の労働市場の構造の変化というのは、四十九年に見通したとおりです。全然変わってない。四十九年改正のときに見通したとおり、若い者の就職は今日厳しさは若干あるけれども、やはり企業は若い者を優位に採る、一方、高齢者の方は就職は依然として困難である、しかも高齢化はどんどん進んでいく、こういうところで四十九年改正ができたのです。要するに若い者は薄く、高齢者は厚くしましょう、それから今まで保険を掛けた日数にはこだわりません、これが四十九年改正、これは大改正です。十年間一つも構造の変化はないのです。まさに見通したとおりです。その意味においては立派だったと思う。  ところが、大臣が最後におっしゃった、それが四十九年と違うところなのです。本音をおっしゃったけれども。要するに財政が窮迫してきたから国庫補助金を上げたくない、削減したい、これが結局今度の改正になってあらわれてきたわけです。四十九年の改正のとき、あれだけ勇断をもって労働省はやったわけでしょう。ですから、我々はいろいろ批判をしたのです。ところがそれは誤りだったと言われたら、そのときの改正にタッチした人の立場はないですよ。誤ってない。雇用情勢はそのとおりなんです。一体どこに変化があったのか。あなたは変化があったと言う。変化はないのです。あなたはどこに具体的に変化があったとお考えですか。
  24. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 高齢者の高齢化が進んでいくということにつきましては、十年前の改正のときにそういう一つの方向は出ておりました。しかし、そのときでも、例えば現実にこれだけ高齢者がどんどん労働市場に出てこられる、そしてまた失業者として入っていかれるというような点について、現実にそこまで踏まえたものであったかどうか、これがやはり一つあると思うのです。  現実に、例えば今度、給付の関係につきまして、年齢だけではなくて若干勤続年数というようなものを加味したということなども、こういう比較的短期間の就業の中で離職をされて保険を受給する方が相当ふえてきておるというようなことであるとか、あるいはまた、再就職手当を今度つくりました点について、この雇用保険部会の指摘においてもありますように、そういう再就職をするということについて具体的に意欲をかき立てるものがない、そういうこともあって、あるいはまた現在の給付水準等の問題もあって、現実に受給者が、再就職の機会があってもすぐに就職しないで、給付を受け続けた方が有利であるような状況が醸し出されておる、それがまた受給者の滞留傾向を助長してくるというような形の現象が出てきておるというような、当時制度が予定していなかったような現象が現実にいろいろ出てきておる。そういったようなものをある程度解決しながら、受給者の就職促進というものをどう図っていくのか、あるいはまた、その結果として、保険そのものの健全な運営というものをどう図っていくのかというような観点というものが必要になってきておるわけでございます。  そういう高齢化の方向についての見通し、あるいはまた女性の職場進出が進んでいくであろうという見通し、それからサービス業がふえていくであろうというようなことは、一応方向としてはにらまれていたものの、そういう形で制度ができて、現実の運用の中で、やはり理想といいますか、ねらいと実際の運用との乖離というようなものもいろいろ出てきておる、そういったものを是正して今後に対応していかないと制度としてももたないぞ、こういうようなことであるわけでございまして、まさに先生おっしゃるような、そういう大きな方向としてはにらみながらでございますが、この十年間の運用の中で、予想以上にそういうものが進む中で、いろいろ制度と運用の実情との乖離の問題が出てきておるということも一つの大きな問題でございます。
  25. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 ですから、大臣、雇用情勢、労働市場という問題はまさに四十九年に見通したとおりなんです。むしろそのときよりも六十五歳以上等が労働力に出てくる数が若干少なくなった、しかし見通したとおりである。ですから、問題はそうではなくて、あなたたちは運用をしておる過程の中でどうもあそこが甘かったのじゃないかということで改正をしたというのですが、そのことの意味は、厳しく取り締まって労働市場に追い出そう、そういう発想がある、だから私は、内務省的発想だ、こう言ったのです。そういう意味においては、女子の労働者がどんどん出てくるというのも予想されておった。一つも違ってないのです。ただ、あなた方は、締め上げてひとつ労働市場に再就職をさそうという意図が出ておるところに問題がある。  そこで、私は逐次各論について質問をいたしますが、まず第一に、大臣は、現状は高齢者社会と思われますか。
  26. 坂本三十次

    坂本国務大臣 先ほど来多賀谷さんのお話しを承っておりますと、高齢化であれ女子の進出であれ、いろいろな点でその方向は見通したとおりであろう、こうおっしゃっておられます。しかし、実際十年間というものをやってみまして、雇用政策の運用、それからそれが失業にはね返って雇用保険財政の悪化という点は、それは確かに一応の方向は見通したかもしれませんが、実際の対応の厳しさはやはりまだまだ足りない点があったのではなかろうかと思っております。  おっしゃる高齢化の方は、そういう方向でいよいよ高齢化社会が到来したぞという実感で、労働省といたしましても、六十歳までの定年延長をと、一生懸命やっておりましたが、もうそれでは足りないということで、今六十歳台前半層に最重点を置かないと大変な手おくれになるという危機感がありまして、この前の予算折衝のときでも、大蔵大臣と、六十歳台前半層に対する施策というのは新制度でございまして、予算折衝の最後まで大臣折衝に残ったということでございますが、今労働省としては、それらの点などを最重点に取り組むという態勢でございまして、おっしゃるように高齢化社会にいよいよ本当に突入してきた、今後この対策が重点対策になってくる、こういう考えは多賀谷さんと同じでございます。
  27. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私はどうも、こういう情勢を、現在は高齢者社会だという認識のもとで政策が行われておるところに間違いがあると思うのです。今は高齢者の社会じゃないです。やがて高齢化に向かうのですよ。ですからその準備は必要でしょう。それを、長期的ないろいろな政策と短期の現状政策とを混同したらいかぬ、混同しておるところに今度の雇用保険の問題もある。現在はまだ余裕があるのです。ところが、保険の短期的な制度を、将来に向かって、高齢化社会になるのだということで今の年寄りを抑えよう、こういうところは間違いです。それを利用して今のお年寄りにいろいろな抑制政策をする。私は短期的な保険と長期的な保険を混同したらいかぬと思うのです。年金のような将来に向かって今から準備をしなければならぬという政策と、現状の失業問題をどうするかというのはおのずから距離があるはずです。  私は、そういう意味において、今度のこの六十五歳以上の人々を雇用保険から排除するという政策は、年金制度やその他が充実してない今日においてまさに労働省が先行し過ぎておる、しかもあなたがおっしゃる趣旨とは全く違った方向に法律は今改正されようとしておる、かように思うわけです。どうですか。
  28. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 高齢化社会に現在あるのか、今向かっている段階かということについて、そのパーセンテージでの水準ということでいきますればこれは向かっている段階というふうに言えると思いますが、しかし現実に、今例えば定年延長ということをやっておる、それは何も将来に向かって定年延長をやっているだけではなくて、現実に定年延長をやって、それによって定年が延長されている人もどんどん出てきておるという中で、確かにより高い水準に向かって動いてきておる段階ではございますが、一方また、現実にそういう高齢者の就労者、就労希望者というものもどんどんふえてきておるというような実態もあり、その辺については、完全に向かっている段階だ、今はまだ高齢化社会でないのだ、あるのだとかいう形で、必ずしも一概に決めつけられないのではなかろうか。現に、私どもも、大臣が申し上げましたように、六十五歳を目指して、六十歳台前半層の対策をいろいろ進めてきておりますが、現実にそういう形での就労希望というものもいろいろふえてきておるというような現状もあるわけでございます。そういう意味では、必ずしも将来の対策ではなくて、今のまた必要な対策という面もあるわけでございます。特にこの定年延長対策というのは今必要な対策であり、また、今そういうことでカバーしていかなければならぬという面がある対策だというふうに思うわけでございます。  それからまた、御指摘ございました今度の改正が締め上げとおっしゃいますが、これは率直に申しまして、私ども、以前雇用保険制度の運用の面で、窓口におきまして非常に厳しく対応いたしまして、鬼の職安というふうに言われたことがございました。そういう意味で、個々の求職者に対して、窓口においていわゆる締め上げというふうにとられるようなそういう運用というものはすべきではないということで、その辺について改めておるわけでございます。しかし、だからといって、それで雇用保険の受給者というものが保険制度に全く安住してといいますか、そういう状態の中で再就職への意欲というものを持たないで、保険をもらい終わってからやっと本気になって就職の気持ちを起こしてこられるということにはやはり問題がある。それなりに、そういった面についてこの雇用保険制度が、やはりできるだけ早く失業者を就職させるという機能をまた持つべきものであるわけでございますので、そういったような観点から制度のある程度の見直しというものも必要だということで、この辺については、公労使三者構成の雇用保険部会においてのいろいろな御検討も踏まえまして、そういう方向での対応をしておるというものでございまして、それが、そういう内務省的発想と言われると大変あれでございますが、そういうまさに雇用保険部会でのいろいろな論議を踏まえての対応でございまして、雇用保険部会は決して内務省ではないわけでございます。
  29. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 これは雇用保険部会と社会保障制度審議会との違いです。これは最初の四十九年度の改正のときからそこには差がある。社会保障制度審議会は広い見地から見ておる。ところがそこの雇用保険部会というのは、やはり保険をどうするか、運用をどうするかという見地から論議をしておる。そこに差があることを我々は残念ながら知るわけです。  そこで、抽象的な話をしておりますと時間がありませんから、具体的にお聞かせ願いたいと思いますが、六十五歳以上を制度から排除しておりますが、これについて、六十五歳から排除されたこの人々は一体年金資格はあるのでしょうか。それは国民年金はある人とない人があるが、厚生年金をどのくらい持っておるのか。これは従来は雇用者ですから当然厚生年金の受給があるはずです。それがもう成熟しておるのかどうか。これは厚生省でも結構ですが、お聞かせ願いたい。
  30. 朝本信明

    ○朝本政府委員 厚生年金保険が成熟しているかというお尋ねでございますが、御承知のように、戦後のインフレの時期を乗り越えまして、どうやら受給者数が、現在在職者労齢年金を含めて二百四十五万六千人という数に相なっております。成熟の半ばと言ってよろしいのではないかと存じております。
  31. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 厚生年金というのは非常に冷たい、情けのない非情な法律でして、二十年間受給者が出なかったというような法律である。炭鉱の場合は十五年で出たのですけれども、こんな法律はないです。保険制度が発足して二十年間受給者のいないという制度をつくった。これはすなわち、昭和十七年に労働者年金として出発したわけです。そして十九年に厚生年金になった。この意図は軍費調達ということと、それから、給与を持たすと物を買うから、当時は物資が不足でしたので、購買力を助長するとインフレになるという、この二つのねらいがあったです。これは、当時のいろいろな文献で明らかに知ることができるわけです。  そこで、例えば国鉄の場合あるいはその他の共済の場合は、過去勤務、すなわち制度が発足する前の期間は全部通算したのです。大正九年に国鉄は共済年金になったでしょう。それで、国有鉄道になるまでの十三年間の期間を通算したのです。これは国鉄がやっただけではなくて、その他の制度は全部やったわけです。ですから成熟度が早かったわけです。ところが厚生年金は、それから出発して、二十年間掛けなければ受給者の出ない仕掛けになっておったのだ。これが非常に問題だった。ですから大部分が脱退一時金をもらったのです、これはもうだめだというので。もらった人の数が六百二十万人ですよ。いいですか、昭和十九年に厚生年金になったときには受給者が八百万人いたのです。それなのに、四十年たった今日、まだ二百四十万人しかもらっていないのです。厚年はこういう制度であるということ。その制度の中の人々が雇用保険に入っておるということです。  しかもこの制度は、御存じのように飲食店とかサービス業、農林漁業というものは入ってないでしょう。五名未満というのも入ってないのです。今でも入ってないです、厚生年金には。ですから、私は、実際に住民と接触をして、厚生年金の老齢年金の資格のない人が非常に多いことを痛感している。これらが雇用保険からほうり出されたらどうしますか。これらの人々は福祉年金はもうもらえないのです、明治四十四年の四月二日以降に生まれた人はもらえないのだから。ですから、国民年金に入っておった人はまだもらえるけれども、しかし、国民年金の今の給付額は二万四千円でしょう。  一体、なぜ労働省は、今日のような過渡期の状態の中ではっさり六十五歳以上は切ったのか、これをお聞かせ願いたい。
  32. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 まず、先生の問題提起の前段のところについて考え方を申し上げてみますと、今回の六十五歳で新しく雇用保険加入を認めないということは、この年金の関係があるからそうしたというわけではないわけでございまして、そういう背景というものはございますが、私どもも、今、年金制度が成熟をしていない段階で、こういう年金があるからやるのだ、そんなことを申し上げているわけではございません。現実に今の六十五歳以上の方の就業の実態なり、そういう実態面に着目をいたしまして、こういう制度にしたということでございます。  現実に、六十五歳問題につきまして、私どももいろいろな数字を調査をいたしておるわけでございますが、要するに一般的に労働者が引退を希望する年齢がおおむね六十五歳である、そしてまた、雇用保険の制度というものがいわゆるフルタイムの勤務を前提にしておるものでございまして、そういう普通勤務の雇用者の割合が六十五歳を境に急速に低下していく、こういう実態にあるわけでございます。したがいまして、六十五歳以降に新たに就職をされるという方がその後離職された場合に、今度はそのままもう引退をされるか、あるいは短時間の就労につかれるか、任意の就労につかれるか、あるいはまた、もう一度フルタイムの常用雇用というものを希望される方もあるでしょうが、それは非常にわずかな率になってくるであろう、こういうような実態に着目をしておるわけでございます。雇用保険は、御存じのようにこういうフルタイムの常用雇用を希望する人についての制度でございます。そういう意味で、六十五歳以降新たにフルタイムの就職をされ、そしてまた、一年以上勤務された後に再び離職をされて、今度またフルタイムの常用雇用を希望されるという方が非常にわずかな率になる。それで、制度として運用する場合に、そういう非常にわずかな率の方がおられるということで、それを窓口で一々、本当にフルタイムを希望されるかどうかというような形での仕分けをするのは、現実問題としてなかなか困難でございます。  そういう意味で、この際、六十五歳以上の方について制度上適用除外にしたということでございますし、また現に、六十五歳以降もそれ以前からずっと就業を続けておられる方につきましては、そこで例えば六十七歳でやめてこられたという場合に、その方が続いてフルタイムの雇用を希望されるか、あるいはまた、いろいろさっき申し上げましたような任意就業であるとか、短時間勤務であるとか、就業形態がいろいろ多様化してくるわけですが、そういう場合、一応雇用保険制度というものの性格からいいまして、本来的にそういうフルタイムの雇用を希望するという形のものがないと、ここで保険の支給を続けるということには問題があるわけでございます。そういう意味で、それを窓口でどうこうというのではなくて、この際それを、多様な就業希望に合うようにそこは一時金で振りかえて対応していこう、こういうような考え方で御提案をしておるものでございます。
  33. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 これは新しい制度をつくるのではないのですから、今までのをそのまま続行せよと言っているのでしょう。今までは六十五歳以上は区別しておりましたというのではないのです、区別していなかったのです。それをそのまま続けなさいというのですから、安定所の窓口のことをいろいろ言われても迷惑な話で、そんな職員ばかりおるわけではないでしょう。そのくらいのことは職員にもわかりますよ。  そこで、六十五歳から六十九歳までの中で、雇用労働者でありたいというのは四六・四%いるのです。そして普通の雇用につきたいというのは一六・六。そして、その普通の勤務につきたいという人のうちで、今までの仕事をやりたいというのが八五%いるのです。ですから、六十から六十四は普通の仕事につきたいという人は二五・八で、そして六十五歳から六十九歳が一六・六、そんなに下がっていないのです。それを截然と、六十五からは労働省は見ませんなんということは極めて不親切じゃないか。年金がまだ成熟していない今日において、なぜそういう区別をなさるのですか、こう言って聞いているのです。  これは局長に幾ら聞いても、局長は案を出した本人ですから、大臣に聞きますが、これは極めてお年寄りに不親切な制度じゃないですか。私は平均値で議論をしてはいかぬと思うのです。これは権利関係なんですから。権利関係の議論をするのに、平均がこうだから、人数が少なくなったからと言うのはいかぬ。人数が少なくなればなお大事にしてやったらいいじゃないですか。こういう制度にした今度の改正は間違っているんじゃないか、こういうふうに私は思うのです。
  34. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 先生、例えばそういう一六・六%の人が普通勤務で雇われたいということでおるじゃないか、こういうふうにおっしゃるわけですが、これは実際には、六十五歳以上の方については就業をもはや希望しないという方もいろいろあるわけでございます。そういった未就業者がおられる、その中で、仕事をしたいと思わないという方もありますし、仕事をしたいと思う方もございまして、そういう関係で、全体の推計をいたしますと、約六・九%の方が現在六十五歳以上の高齢者でフルタイムの常用雇用を希望する人だ。約六・九%、こういう推計を一ついたしております。  問題は、こういう数が少なくったって制度的にいろいろそういうふうにするのは問題ではないかということでございますが、やはりある程度、制度というものは全体の実態の中でいろいろ考えていくという面も必要なわけでございまして、そういう制度の持つ画一性の問題もいろいろございますが、ある程度、一つの制度としていろいろ仕組んでいく場合にはどうしてもそこに多少の画一性というものが出てくるのはやむを得ない。  それで、先ほどから申し上げておりますように、仮に六・九%あるいは一〇%そういう人がいるからということで、実際にそれがあるためにということで、いろいろまた現実に窓口でのトラブルがあるような関係の問題を私どもとしては起こしたくないというようなこともございまして、実際の現実的なある程度の大多数の動向からいって、制度としてそういうふうに踏み込んでいくということもある面では必要であり、またやむを得ない面もあるのじゃないか、こういうふうに思います。
  35. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 ですから、私は、年金が成熟しておるならばあえてこんなことは言わないのです。人数が少なくて、しかも年金が成熟してない、厚生年金がもらえない。そして、たまたまその人が年金に関心があって、国民年金に入っておったとしてもまだ二万五千円しかもらえない。一体こういう人をどうせよと言うのですか。労働省はそれを見捨てるというのか。そんなことをするにはまだ時期尚早じゃないですか、こう言っておるのです。この人たちを毅然と区別するには、日本においては年金制度はまだ成熟してないのです。ですから、雇用保険だけがひとり突っ走っても困るわけです。総合的に、社会保障あるいはまた労働関係を見てもらわなければ困る、こう言っておるのです。大臣にひとつ答弁を願いたい。
  36. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 年金の問題は、おっしゃる趣旨はよくわかりますが、雇用保険の場合には、仮にそういう受給資格があるといたしましても、例えば十カ月ということでございまして、要するにずっとその後の生活を見ていくという制度ではないわけでございます。ですからそういう意味では、年金があるとかないとかということは、雇用保険があればずっとそこで後の生活ができるとかなんとか、そういうものではないわけでございまして、長くて十カ月、短期の場合でございますと九十日、三カ月、そういう間における求職活動のためのいろいろな御援助というようなことでございますので、その意味では、年金制度と比べながらの議論には必ずしもなじまないんじゃないかと思います。
  37. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 五十五歳以上の人の統計しか出てないのですけれども、それでも求人倍率というのは非常に低いです。全国平均で〇・一一です。五十五歳以上がですよ、これは六十五歳じゃないのです。これから見ても、いかに六十五歳以上が低いかということがわかる。それを労働省は、本人は働きたいと言っているし、今日六十五歳でも肉体的には若い者と変わらぬような人もいるのだし、精神の方がぼけていなければ、我々だってもうその近くになっておるわけですから、これは六十五でも変わりないと思いますけれども、労働省は、そういう人々をなぜ労働省の政策の対象から外すのか、こう言っておるのです。  この五十五歳以上でも、地域的によって非常にアンバランスになっておるのです。例えば最近、北九州の大牟田、筑豊も同じですけれども、五十五歳以上の求人倍率を見ると、八幡で〇・〇四です。大牟田は〇・〇二、若松が〇・〇五、戸畑が〇・〇四、門司が〇・〇三。百人の者が安定所の窓口に行って、四人とかあるいは三人とかしか五十五歳でも就職がないのです。ましてや六十五歳以上になるとなかなか困難です。本人は働きたいと言う。せめて、労働省としては、数が小なりといえどもそれを政策の対象にすべきでしょう。それを排除するというのは何事であるか、こう言っておるのです。  それからもう一つ聞きたいのだけれども、あなたの方の雇用保険の被保険者は今どのぐらいですか。  以上の二点についてお尋ねしたい。
  38. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 これは、六十五歳以上の方につきましても、現に公共職業安定所ではそういう求職は受け付けるし、またそのために、求人があれば御紹介申し上げるということはもちろん続けていくわけでございますし、それから、また現に、全国二百四十ぐらいの各市役所の窓口におきまして、高齢者職業相談室というものを設けまして、そういう人たちのための職業相談もやっておるわけでございますし、あるいはまた、シルバー人材センターという形で、そういう高齢者の方々で就労を希望される方には、そういう就労の場の確保という面でのお世話もしておるわけでございまして、決して、働くという面では政策の対象から除外しているとか、そういうわけではございません。  ただ、雇用保険制度という労使と国が強制的な保険においての、その求職活動というものを特に援助していく年齢というものを六十五歳未満にしよう、こういうことでございまして、雇用保険制度の対象という面で今後対象から外そうということでございまして、労働対策として全く手を放すとか労働政策から全く外すとかいうことではないわけでございまして、その辺はひとつ御理解をいただきたいと思うわけでございます。  それから、現在の雇用保険の適用対象は今二千六百三十万人ということでございます。
  39. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 雇用保険の方は全労働者を対象にしているのでしょう。
  40. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 法律的には全労働者を対象にしておるわけでございますが、小零細企業におきましてまだ遺憾ながら適用が進んでいない面がございます。そういう意味で、まだ全部をカバーし切ってはいないわけでございます。
  41. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 僕は統計を見てみましたら、厚生年金の被保険者と雇用保険の被保険者が同じなんです。厚生年金は業種別に排除しておる、それから五名未満は入れない、こうやっておる。それなのに、全部入れますという労働省の雇用保険と大体数字が二千六百万で同じだというのが、どうも僕にはわからない。これは後から聞きますけれども、精査してもらいたいと思う。我々統計を見て、相当食い違いがあるのだろうという気持ちで見ていったところが、統計は同じだという。一体どうなっているのか、かように思いますが、これは後で伺います。  そこで、次に、私は、北九州の地域経済の問題を少しお聞かせ願いたいと思います。  北九州、筑豊、大牟田というのは、御存じのようにみんな不況地域でありますけれども、例の地域雇用の奨励金については、大牟田は適用に入っておるわけですけれども、北九州は入っていないのですが、大体有効求人倍率はどのくらいになっていますか。
  42. 野見山眞之

    ○野見山政府委員 最近時点におきます北九州地区管轄王安定所の求人倍率でございますが、有効求人倍率で約〇・二四倍程度でございます。
  43. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 全国が〇・六五という状態の中でそれほど悪いし、今私が申しましたように、五十五歳以上は百分の四とか百分の五という状態であります。  そこで、この北九州地域の産業構造を見ると、御存じのように素材産業が非常に多いわけです。これが合理化のあらしの中でだんだん工場閉鎖が行われておる。かつては発祥の工場でありました日本板硝子若松工場がなくなった。あるいは小野田セメントの八幡工場もなくなった。先般は明治製糖戸畑工場もなくなった。こういう中で、また日本化薬の小倉染料工場が今閉鎖を通告されようとしておる。しかも、製鉄関係は合理化で、新日鉄八幡工場もあるいは住友金属の小倉工場もだんだん減りつつある。北九州は合併をしまして二十年になるのですけれども、人口が全然ふえていない。千名以上の従業員を抱えた工場が十九あったわけですが、それが今日は一けた台になっておる。こういうことで、筑豊と余り変わらない状態が今北九州に来つつあるわけであります。大牟田においてもまた一層深刻な問題があるわけです。  そこで、地元としては、何とか工場の閉鎖だけはやめてもらいたい、こういうように要望しておりますし、それから、もう一つ私がぜひ耳に入れておきたいのは、あの筑豊炭田やその他が閉山をして労働者が全国に散った時代とは違うのです。これは、日本板硝子若松工場が閉鎖をするときに、かつて二千名ぐらいおった従業員が三百名になった、そこで会社は、三百名の人に全部配置転換を申し渡して、就職口だけは決めた。ところが、百五十名は行かなかったのです。そして、五十名だけは地元の流通センターに就職した。あとの百五十名は退職願を出した。  その第一の原因は大臣、住宅問題です。最近は、労働力の流動化を言っても、持ち家制度をどんどん奨励しておるでしょう、だから人は動かない。もちろん子供の教育の問題もありますけれども動かない。今こういう新しい問題が起こりつつあるのです。ですから私は、この日本化薬の小倉工場にしても、長い歴史のある工場ですから従業員は恐らく移動できない、こういうように考えるわけです。  そこで、労働省としては、こういうところについて、今までと違って、労働力が流動するんだ、移動するんだという政策もそれは必要でしょうけれども、なお地元に労働者の仕事を確保してやるという何らかの政策がより必要ではないか、こういうように考えるのですが、御所見を承りたい。
  44. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 確かに御指摘のように、これは北九州だけの問題ではございませんで、かつて昭和三十年代に炭鉱離職者を、労働省も、全国いろいろな求人地域に家族ぐるみに移転就職という形で努力をいたしまして、一応そういう方々の就職の問題の解決に努力をしたわけでございますが、今の時点になってまいりますと、家族ぐるみの移転ということがいろいろな問題で非常にむずかしい事情が出てきております。  むしろ一番大きなのが、持ち家等があるからということよりは、かつては東京とか大阪へ行けばそこで何とか生活ができるようになり、また、そこで一応ある程度自分の家も建ってというような時代でございましたけれども、今は、東京とか大阪へ行きましてもなかなか自分の家がいずれまじめに働いておれば建つというような事情にない、そういうようなことで、逆に若い人たちが地域の方へ戻っていって、そして、地元就職というもの、いわゆるUターンという形でどんどん逆にUターンの方が進んできておるような時代になっておるわけでございますので、まさに当時とは逆に、家族持ちがまたそういう都会地等へ出かけていくというようなことは、さらにその年になって新しくそういう土地へなじむというのも大変だし、そういう家の問題も大変だし、教育の問題も大変だしというようなことで、非常に地元志向というものが強くなってきております。私どもとしては、かつてのああいう広域圏での求職活動というものはある程度進めなければなりませんが、もう一つ今進めております対策は、広域通勤圏内でのいろいろな求職活動、あるいは求人情報の提供というような、いわゆる広域通勤圏、多少運動での時間がかかっても、何とか通い切れるような範囲内でのそういう職場の開発、あるいは新しい産業の誘致というような面を、むしろこれからもう少し重点を置いて進めていかなければならぬというようなことで、今そのための対応を、全国二十の安定所、ことしの予算で三十になりましたが、そういう安定所単位で、雇用開発事業というように銘打ちまして、そういうところでの雇用開発というものを一つ進めておるわけでございます。しかし、これはなかなか、私どもの対策としては、そういうところで企業が新しく立地をされた、誘致なり地場産業の開発なりでそういうものができたといっても、それに対していわば雇用促進の給付金を二万八千円あるいは二万九千円差し上げるという程度の域にとどまっておりまして、やはり基本的には、いろいろ通産行政等との関連も含めながら、そしてまた、まさにそれぞれの地域における自力での雇用開発といいますか、自力での産業の開発、そういうエネルギーというものもなければ難しいわけでございます。  そういう意味で、むしろ私どもも、これからはそういう地域地域での広域通勤圏での雇用開発というような形で対応を進めていかないと、なかなか難しい事態になってきておる、こんな認識を持っておるわけでございます。
  45. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 かつて私は、炭鉱の調査に諸外国へ行ったときに、向こうでは日本の労働者が移動するのにびっくりしていました。こんなに移動するのですか、どこにその秘密があるのですか、こっちでは隣の村でも行けませんよ、こう言うのです。聞いてみると、結局うちなんです。向こうでは、日本のようなあんな炭鉱住宅のようなちゃちなものじゃないですからね。日本では、炭柱なんか魅力も何にもないからぱっと移動する。ところがその移動先で家を建てる。新しい地域に行ってローンで住宅を建てる。これは大変なことです。ですからやはり、今からの政策は、いかにして雇用のある場で新しい職場を見つけるかというのが非常に重大な問題になってくる。それは、そういう観点から今後推進していただきたいと思うのです。  そこで、今私が申しました閉鎖というのは何としてもやめる、あるいは新しい企業を持ってくる。かつてこういうことがありました。火薬工場というのは、筑豊炭田なんかは炭鉱の開発にダイナマイトを使ったわけですから、随分ありました。それが皆つぶれましたね。恐らく北海道も同じでしょう。火薬工場がどんどん閉鎖された。ところが、日本油脂という会社でその火薬工場を丸ごとホームハウスをつくる工場にした。それで一人の首切りも出なかった。私はすばらしく立派だと思うのですよ。今まで火薬工場ですから女性も多いのですね、雷管をつくる。その女性も含めて、男性も入れて要するにプレハブの製造工場をつくった。約百名近い従業員を今でも抱えておるのですよ。ですから、私は何か工夫すればそういうことは不可能じゃないと思うのですね。ですから労働省も、通産省なり建設省といろいろ相談をして、何とかしてその場で雇用を維持するように努力をしてもらいたい。この問題は、きょうは通産省も呼んだつもりでしたけれども来ていませんから、これは後に残しておきます。一つは、この間も質問があったそうですが、白島の石油備蓄基地、これを非常に期待をしておるのに、地元には仕事がない。あるいはまた今の小倉の染料工場問題、あるいは東洋セメントというセメントの閉鎖問題、これらをひとつあわせて後で質問をいたしたい、こういうように思います。  それから、次に運輸省にお尋ねしたいのですが、運輸省は国鉄貨物はほとんどぶった切る、そうして海運と自動車あるいは若干航空輸送でいこう、こういうことです。しかし、私は、今のトラックの運転手の労働条件を見ると、将来トラックの運転手を求めることは、若い層にはほとんど不可能じゃないか、こういうように思わざるを得ない。一体運輸省は、将来展望として、国内の貨物輸送について自動車、トラックにどのくらい頼り、運転手をどのぐらい雇用し、そうして運転手の労働条件はどうあるのか。これはあわせて労働省にもお聞かせ願いたい。
  46. 亀甲邦敏

    ○亀甲説明員 いわゆる産業界あるいは一般消費者がどのような交通機関を利用するかというのは、基本的には、各交通機関が現実に提供いたしますサービスの内容とか質、あるいはそれに対する対価などによって決まっていくべきものだというふうに考えておりまして、運輸省としましては、そういう各交通機関の特性が十分発揮されますように環境を整備していくことを考えておるわけでございます。  現在のところ、今後の輸送需要の見通してございますけれども、御承知のとおり、過去から見ますと自動車の分担率が徐々に上がってきて、一方において鉄道の分担率は下がっているという状況でございますが、産業界の軽薄短小等の影響も受けまして、量的ベースではさほど大きな伸びは見込まれないわけでございまして、その辺のところも含めて、分担率も大体現在ぐらいの分担率で、あとは経済界の伸びに応じた程度の輸送量の伸びがあろうかというふうに考えておる次第でございます。
  47. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 トラックと鉄道の調整というのは欧州では非常に古くから問題になっている。一九三三年、三四年、ですから今から五十年前から、将来のトラックに対して鉄道はどうあるべきかということを論議して、ドイツもフランスもイギリスも法律を出している。ところが、日本は全然そういうことは関知しなかった。コンテナだって戦争中にドイツはもう開発したのですが、日本は全然してない。そうして、三十年代になってからも、この国鉄の増強ということを一時言った時期もある。皆さん、自民党の諸君が崇拝する田中角榮さんの日本列島改造論には、将来二千七百万台のトラックが必要である、だから運転手の確保も容易でない、だから鉄道を増強しろということを書いておるのです。私は、そのときのトン数等と大分経済が変わりましたから台数は違いましょうけれども、やはり、この過長な労働で命をぎりぎりにすり減らしておる今のトラックの運転手、しかも長距離の、睡眠時間もほとんどないような状態の中で、鹿児島から東京まで、あるいはまた青森から東京までという輸送が一体いつまで続くだろうか、こういうように考えるわけです。  この前、運輸労連で、そのことについて委員長が「エコノミスト」にいわば論文を載せておられます。それを見ると、そのことを的確に批判をされておるわけです。要するに今の若い層、若いといいますと大体三十までの層、それから中堅の層、三十一から後の層ですが、今までの若い層が多かった時代から、今や中堅の層が多くなった。その中堅層の運転手は大体前職は農村から来ておる、いわば筋肉労働者である。ところが、最近の若いトラックの運転手は都市型といいますか、ですから前職はほとんどサービス業の労働者である。そこで、きついけれども頑張ってやろうというのはいわば中堅層である。若い人はできればやめたいと言う、この仕事を続けていきたくないという層であります。  この数字は毎年調査するものだそうですが、御存じのように、拘束時間は十三時間ということを、労働省では通達として出しておるでしょう。そうして十六時間まではよろしい、要するに寝る八時間を除いたらよろしい。しかし、実際は十六時間を超える労働者も相当おるということです。そういう統計が出ておるのです。そうすると、高速道路を走っておる運転手のうち、三分の一くらいは睡眠不足のまま走っておるのです。ですから、私は、こういう苛烈な労働条件に対して、一体どういうように労働省は対処するか、これをお聞かせ願いたい。
  48. 小田切博文

    ○小田切説明員 自動車運転者の労働条件の問題でございますが、自動車運転者につきましては、ほかの職種、他の業種等と比べまして、一般的に常態的に過長労働が見られるというような実態にあるというふうに私ども考えております。そういうようなことが原因になりまして、過労運転による交通事故に結びつくおそれがあるというようなことで、私ども労働省といたしましては、御承知のように、昭和五十四年十二月に、拘束時間であるとか、休息時間であるとか、運転時間等の規制を内容といたします「自動車運転者の労働時間等の改善基準」というようなものを策定いたしまして、これに基づきましてトラック運転者の労働条件の確保に努めているところでございます。  毎年、特に春秋の交通安全週間等の時期に合わせまして、五千ぐらいの事業所を監督しておりますが、この通達、次第に遵守状況はよい方向に向かっておりますが、まだまだ御指摘のように、総体的に、トラック運転者の労働条件は他の職種、業種と比べますと長時間労働というような点では劣っていると思います。私ども、悪質な違反等につきましては、司法処分等も含めましてこの改善に当たっていきたいというふうに考えております。
  49. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 数字を言いますと、これは毎年十一月九日に統一労働日を設けて、運輸労連が調査をしておるそうです。そして、トラック輸送業に働く者が全国で六十万、その調査結果に基づいてデータが発表されておるのですが、昭和四十七年には十八歳から三十歳までが五三・七%いたけれども、今日は三一・六%である。三十一歳から四十歳までが四四・二%になっておる。そして、実際拘束十六時間という人は三七%。拘束二十時間というのが現実に三二%も出たというのです。そうすると結局、主要幹線国道を走っておる大型トラックの三台に一台は睡眠不足です、二十時間だから。ですから、こういうような状態の中で一体これらを今後どうするつもりなのか。何か改善をしつつあるようなお話しがありましたが、今は料金を抑えられて過当競争になっておるのです。これは実際に改善されておるのですか。
  50. 小田切博文

    ○小田切説明員 先ほど御説明いたしました改善基準の中身の一つといたしまして、今お話しもございましたように、通常の日勤勤務の場合でございますが、一日の最大拘束時間が十六時間を超えないようにというような内容があるわけでございますが、これにつきましての監督指導の結果におきます違背状況を見てみますと、この点の違背が監督いたしました際一番多いわけでございますが、五十五年当時三五%程度の違背状況でありましたのが、最近では三一、二%というようなことで、若干ではございますが改善は見ておるというふうに考えております。  先ほどもお答えいたしましたように、いずれにいたしましても、全般的にはまだまだ、トラック運転者の労働条件につきましては、長時間労働という点を中心にいたしまして総体的に劣っておるというふうに私ども認識しておりますから、悪質な場合には司法処分等も含めまして厳正に対処してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  51. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私は労働大臣に、国務大臣としてあなたにお願いしたいのですけれども、本来これは運輸委員会でやればよかったのですが、労働力から見た日本の輸送体系というものもやはり考えなければいかぬと思ったわけです。ただ国鉄の経営だけのことを考えておるけれども、労働力はもうトラック自体が若い職場から中年職場に変わっておるのです。これがやがて高年に移っていったとき、これは体力に限度があるので長距離になかなか乗れない。こういう状況について労働省は一体どういうように見るのか。  それから、私の住んでおります近くに脊損センターというのがある。これは御存じのように、二十四時間以内に脊損患者を連れてきてそして治療をすれば比較的治るというセンターですが、しかし症状が固定をしましても、院長さんはこぼしておるのだが、なかなか引き取り手がないというのです。本来あれは空きベッドを相当置かなければならぬのに、そういうことでなかなか困難な情勢になっておる。これは皆交通事故です。この交通事故の社会的負担というものは莫大なものです。今のように災害がどんどん起こっておる、こういうものを一体どういうように考えておるのか。国鉄で積めばあるいは鉄道で積めば比較的災害が少ないのに、災害が非常に多いトラック、自動車に依存しておる。こういうことを考えれば、単なる一企業体の経営だけで論ずるべきものではないのじゃないか。労働力の面から、社会的費用の面から問題を見ておかないと大変なことになる。あえてもう少し言うならば、エネルギーの値段の問題もまさにそのとおりである、こういうように考えるわけです。  ドイツあたりは、日曜日と土曜日はトラックが運行していません。もう既に、世界は、今までの鉄道から道路へというのが、今や道路から鉄道へと変わっておるのです。日本は逆に、今ごろ鉄道から道路へやろうとしておる。どうも政策として先行性がないし、一体将来をどう考えておるんだろうかというように思うのですけれども、これは運輸省並びに労働大臣にお聞かせ願いたい。
  52. 亀甲邦敏

    ○亀甲説明員 今、先生御指摘のとおり、日本の鉄道輸送につきましては、少なくとも鉄道輸送側が本来鉄道で引き受けるべき貨物、これも、利用者側の要望にこたえる対応がなかなか鈍かったということで、いわばほかの方へ取り逃がしておったという嫌いもあったかと思います。その点につきましては、国鉄自身も今いろいろ検討いたしまして、先般の貨物輸送体制の合理化近代化等で、鉄道向きの拠点間直行輸送に特化して、荷主さんを呼び戻す対策を講じておるわけでございます。ただ、非常に残念なことは、現在の日本におきましては、鉄道輸送の問題というのが、純粋に鉄道輸送の問題の議論をする前に、国鉄という企業体の経営問題と密接不可分でございまして、なかなか純粋な鉄道輸送の問題の議論ができないのが遺憾なところでございますけれども、いずれにしろ、少なくとも鉄道で運ぶべき貨物については鉄道に吸収するように、鉄道側も努力をしておるところでございまして、私どもとしては、それにまたいろいろと力をかしていきたいというふうに考えておる次第でございます。
  53. 坂本三十次

    坂本国務大臣 委員のおっしゃるように、今や国鉄からトラックにとうとうと移ってきて、過当競争になって、交通事故が出てきて大変な社会問題になっておる。これは、国家的なコストの面から見てもある程度の距離は鉄道の方がいいに決まっておりますけれども、今運輸省から答えられたように、やはり国鉄の企業体質というものの面もあったのでしょう、これほどトラックに移行したということは、一面にはそういうあれもあったと思いますよ。だけれども、そういうところが改善をされていかれれば、やがては、今委員が言ったように運転者も高齢化してきますし、また、私どもから見て、三分の一が基準違反をやっておるというような、こんなことをこのまま見逃しておけば交通事故を野放しにするというおしかりを受けてもやむを得ないことになるわけですから、労働省とすれば、そういう基準の遵守というような面も含めて、それからまた運輸省ともよく相談をしたりして、総合的な交通体系というものも今やしっかり考え直すべき時期には来ておる、私はそう思っております。
  54. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 これは私の全くの私見ですけれども、今鉄鋼を見ますと、新日鉄を初めとして販売はしていないわけです。これは商社を通じて販売しておるのです。私も不思議に思って調べてみたのです。ところが、これは官営時代に、役人だから、品物は売ったけれども代金の回収ができなかった。その名残で、今でも一切販売の取引はやらない、大口の話はするけれども、あとは全部商社渡しです。それで、商社が代金を回収してくるわけです。ですから、今の国鉄の体質からして、貨物の注文をとってこいと言ったってそれは無理じゃないかと思うのです。もっとも、社会主義国は別にして、日本ほど旅客が鉄道に乗っておる国はないですね。日本は一番多いですよ。ですから、貨物と旅客の比重というのは、よその国はみんな貨物で六、七〇%の収入があるのです、旅客の方が少ないのです。日本は逆に八〇%ぐらいが旅客です。日本は人の方がよく乗っているのです、問題は貨物の方なんです。ですから私は、そう考えますと、何号車の貨物の列車は日通なら日通、何号車の列車はどこどこ運輸、こういうようにやらしたらいいと思うのです。国鉄はそれを運ぶだけで、集荷も配達も全部通運がやる。何かこんな発想を入れないと、将来の輸送計画も立たなければ、国鉄の今の状態をそのまま、貨物をなくして全部ストップするというのも、全く今の政治家が後の人に笑われる、こういうように思うのです。運輸省でも何かそういう計画がされておるのかどうか、運輸省が一体どういうように考えているのか、これをお聞かせ願いたい。
  55. 亀甲邦敏

    ○亀甲説明員 先生御指摘のような考え方は、運輸省も全く同じような考えを持っておりまして、いわばその辺は、協同一貫輸送の強化あるいはトラック業者との協調と申しましょうか、例えば最近、私どもの東京陸運局という組織で、トラック事業者を集めて調査した結果によっても、トラック事業者自身も必ずしも長距離輸送を積極的にやりたいわけではない、ただ荷主さんの要望があってやむを得ず今までのつながりでやっておる。今度は、荷主さんの方はまた、国鉄なら国鉄の輸送体制がなかなか自分の思うようなものに合った輸送を提供してくれないからトラックに頼むのだということが言われておりまして、その辺のことを見定めて、その研究会には国鉄の貨物局も参加してございますので、何とかトラック業者と協調して、端末はトラックで運ぶにしても幹線部分は鉄道で運ぶような仕組み、これは現在でも既に、例えばコンテナ等につきましてはフレートライナーという形で一部実現されておるわけでございますけれども、今後はやはりその辺のところを、いわば荷物を集める体制も含めて、トラック事業者等と協調して一貫輸送体制を築き上げていく必要があろう。これは運輸省はもちろんでございますが、国鉄自身も認識して取り組んでおるはずでございます。
  56. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 今、国鉄の場合は各局に過員というのがある。過員というのを一カ所に集めまして、普通の駅の人ですと何駅かの者を集めて、そしてビラを持たせて旅客の勧誘にやらしておるのですね。そういう職場を見つけてこい、仕事を見つけてこいということで、そしてビラをまいているのです。そんなことをするぐらいなら何かほかに方法がないだろうか。既にそういう旅行社はいっぱいあるわけですから、その中に今新規に飛び入ろうとしたってなかなか難しいでしょう。しかし、現実にそういう仕事をさせているのです。  それからまた、技術屋の人を集めてやっている。この前も私は直方の気動車区へ行ったのですけれども、ここは機関車の検査をしたり修理をする工場なんです。そこに若い三十五、六くらいまでの人たちを一カ所に集めて、過員と言って、そして教育をするんだと言って、何にも教育していないのです。それで一カ所に集めておる。これは民間で言うと金の卵時代の技術屋ですよ。そういうことも今国鉄はしておるのです。そして、教育するのだと言うけれども、実際には何も教育していない。教育する先生がいない。今コンピューター時代で、ME時代を迎えるというのに、何をこの諸君にやっているのか。元々技術屋さんだから、数理的な頭は十分にあるわけですから、何かそういうものでも教えておいてもいいんじゃないか。すぐに役立たぬでも将来役立つんじゃないかと思うのですが、全然やっていない。僕は非常に残念に思うのは、仕事が与えられぬ、人間としてこんな寂しいことはないのです。みんなこれでは不安ですよ。それなのに、もとの机や腰かけは全部倉庫に入れてしまって、そうして教室に集まっておる。教室には何もない。だから、せめて職場はもとの職場に置いておいて、食事も一緒にして、その教育の時間帯のときだけに来ればいいようにさせる。そういうこともさせていない。何か異常じゃないかという感じがする。一体どういうつもりでこんなことをさせておるのか、私はこういうように思うのです。私が現実に調査をしましたのは門鉄局と直方の気動車区であります。一体国鉄はどういうように考えておるのか、これをお聞かせ願いたい。
  57. 太田知行

    ○太田説明員 最初に、過員あるいは余剰人員の発生してきている背景でございますけれども、私ども、経営改善計画を策定いたしまして鋭意その遂行に努力しているところでございますが、当初の計画の前提が、旅客の輸送量が微増、貨物は横ばいということで想定いたしました。その後、旅客も大変頑張っているつもりでございますけれども、微増が果たせませんで若干減少、微減の傾向が出てまいりました。それからまた、先ほど来いろいろ先生から御指摘ありましたのは、私も伺っておったのでございますが、いろいろな問題があったにせよ貨物が激減をいたしました。昭和四十九年ぐらいには二億トンの輸送量がございましたのが、五十五年ぐらいには一億五千万トンぐらいになりまして、ことし五十九年度においては七千万トン強の目標を掲げているのでございますから、最盛期に比べますと三分の一強というところまで下がってまいりました。当初の計画のとおり旅客、貨物それぞれ輸送量が維持できるならば、いわゆる三十五万人体制の計画のとおり推移するはずでございまして、そうであれば、毎年毎年合理化はやってまいりますが、その合理化人員を上回る自然退職人員が発生するのでございますから、補って若干新規採用をする余地があったはずでございますけれども、今のような状態に相なりましたので、当初より合理化を大幅にふやさざるを得ない状況に相なった。自然減員の方は当初どおりでございます。むしろ、私どもの労務構成が非常にこぶが多い世代がございましたのが、逐次推移してまいりまして、自然退職人員が減ってくる現象になりましたので、合理化を要する人員と自然退職人員の差が非常に大きくなった、それが余剰人員あるいは過員と言われる現象の背景でございます。  こんなことを申し上げましたのは、一つには貨物の問題がございまして、先生御指摘の門鉄局管内は貨物のウエートが高い局でございまして、管理局によりましては旅客のウエートが高いところもあり、東京なんかは旅客のウエートが高いのでございますが、北海道とか九州は石炭輸送の関係から貨物のウエートが非常に高こうございました。そこで、今のような状況なものですから、門鉄局とか北海道地区は非常に合理化を他の馬よりももっとふやさなければいかぬ状況に相なりましたので、余剰人員の発生状況も門司地区においては多いことも一つの背景としてございます。  今のような余剰人員の発生については、従来は今言いましたように自然減で吸収しておりましたものが、ことしになりまして、合理化を五十八年度より多くしなければいかぬという状況が出てまいりましたので、やや準備が不十分な面がございました。しかしながら、各地においてそれぞれ知恵を出し工夫を凝らしまして、その活用に今努めているところでございます。  方法は、それぞれの地区によって状況が幾つかございますが、大別いたしますとまず教育、これは今もお話しがありましたように、技術者は本当に大事な、しかも電車の運転手とか機関車の機関士というのは五年も六年もかけて養成する職種でございますので、この人たちの技術も保存しなければいかぬ。しかもだんだん近代化が浸透してまいりますと、電車も運転できる、気動車も運転できる、電気機関車も運転できる多能工化といいますか、多能化が必要になってまいりますので、そういう教育もする必要がちょうど出てまいりました。今までは人間が足りない状況がずっと続いていましたのでそういう余力もなかなかありませんでしたが、この人間が余剰になりました機会に、技術屋さんの技術の温存と、かつ、その多能化の要請にこたえるために教育をこの際徹底して行うという考え方を持ちまして、それなりに対応をしております。五十八年度を終わって新年度にかわりましてまだ幾らもたっていないものですから、教育の範囲なり内容が必ずしも充実していない面もございますが、急速にそれを充実すべく今努力しております。  今の技術屋さんのは一例でございますが、そのほかに営業関係の職員につきましても、フロントサービスの教育、それから余ってまいりました職種が貨物関係でございますので、その人たちを旅客の方にシフトしなければいけないという面がございますので、旅客についての営業面の制度だとかいろいろなやり方の教育もやっている。それも学園だけでは、鉄道学園という内部の教育機関がございますが、そこだけでは不十分でございますので、教育センターを設けたりそれぞれの開発センターの中で教育をしたり、必ずしも十分ではございませんが、急速に浸透、充実を図っていきたいと考えている次第でございます。  一方では、教育と並行いたしまして、先生御指摘ございましたようにセールスにも活用する、今スタートしたばかりでございますのでそう成果は上がっていませんが、それなりにそれでも努力をいたしまして、セールスの効果も上げつつあるところ。でございます。
  58. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 国鉄というのは今大変な外部からの圧力が加わっておる。ですから、労使はやはり一体になってこの外圧をどうして防ぐかということでなければならぬと思うのに、こんなに大きな問題が起こっておるのに、理事者側は何であんな小さいことをいろいろ言うんだろうかと私は思うのです。私は今までいろいろ労働運動をしたけれども、労務に重点を置いた会社はほとんどうまくいっていないのですよ。これは労務行政に重点を置いたところほど悪い。これは本当におかしな現象だと思うのです。ですから、かえってトラブルが多くなって運営がうまくいっていないのです。私は、今日のような状態のときは、お互いに傷をなめ合い、かばい合いながらやらなければならぬときに、なぜあんなささいなことを一々、復古調のような教育をしたり点呼をしたりするのだろうか、その気持ちがわからないのです。  今問題になっております地域は直方の気動車区ですけれども、本来自分の机におって、仕事がなくなって教育するというのですから、自分の机からその時間帯に出ていけばいいでしょう。何もない小学校の教室のようなところで、それは機関区の中ですけれども一カ所に集めておるでしょう。あそこは何もないのですよ。そこで、先生が来ると言ったって先生は来ないのです。それは準備が間に合わなかったと言うけれども、集めた以上はやらなければいかぬのに何もやらない。そうして予算が全然ないそうですね。あなたはいろいろ言うけれども、教育予算というのは全然ない。人員の配置もできてない。ただ、机だけは全部本来の倉庫にしまい込んであった。そうでなくて、これはもとの机に座らして、そして自分は今から教育に行くんだといって、近いのですから、五、六十メートルのところですからそこから行けばいいのです。それをそのようにやらせてない。そして、あれはみんな寂しい気持ちなんですよ。私ども閉山の山を随分知っておりますけれども、その直前は非常に寂しい。気持ちが寂しくなっておるときになぜそんなことをするんだろうか。これは、国鉄というところへ来て大失敗だったかなという気持ちを持っておる青年だって、中にはいっぱいいるわけですよ。国鉄は一体なぜそういうことをやるんだろうか、こういうように考えるわけですけれども、労使問題に余りにも重点を置き過ぎておる。殊に助役等が、一回点呼をするのに三人も四人も五人もついてくるなんて、そんなばかげたことはないですよ。一人が来て点呼すればよろしい。そういう何といいますか、いじけたような労務管理ということがされておりますね。これは非常に遺憾に思います。  そこで、私は具体的な事例でお聞かせ願いたいと思います。この五十八年の二月十八日、直方気動区の助役から暴力を受けたという組合員が、五日間の診断書を提出して休んだところが、休みを認めず、無届け欠勤の扱いで賃金カットをした。五十九年の四月六日、久留米駅の助役から暴力を受けた組合員が、七日間の診断書を提出して休んだところ、休みを認めず、無断欠勤の取り扱いにしておる。五月分は賃金カットの予定。この暴力を受けたかどうかということは、これは別個の議論であります。しかし、とにかく本人は診断書を持っておるわけですから、休みたいと言ったら、それは有給をとらせればいいじゃないですか。それを認めない。それを認めれば暴力を受けたことになるからという気持ちでしょうけれども、それを賃金カットをする。こういうやり方がますます紛争を来たして、暗い暗い職場にしてしまっておる。今日のような国鉄の情勢にあるのですから、そこは、労使一体となってひとつ踏ん張ろうという気持ちを起こさせるような職場環境にしなければならないのに、逆に行っておるじゃないか、こういうように思うのですが、どうですか。
  59. 太田知行

    ○太田説明員 二点、お答え申し上げたいと存じます。  まず最初に、具体論に入る前に、総論的におっしゃいました労務管理の姿勢の問題でございますが、大変広い次元でおとらえになっておりますので、あるいは私のお答え申し上げるのが正確には御趣旨に沿ってないかもしれませんが、一つには、私どもが今非常に大事にしなければいけないと思っておりますのは、職場規律の問題でございます。これは先生も外圧とおっしゃいましたが、二年ほど前に、国鉄の職場規律が大変乱れている、これではもう組織の体をなさない、もう即刻解体すべきであるといったような議論までいろいろあった状況がございました。しかし、これは必ずしも外圧だけではなくて、私ども、運輸大臣の特別命令によりまして、みずから総点検をやりました結果を見ましても、かなりいろんな具体的な事象について、しかも広範囲に、基本的な職場規律にかかわる事項が乱れておるという状況がありまして、まずこれを確立しなければ国鉄再建は到底おぼつかない、また国民や利用者の信頼ももうこのままでいたら地に落ちてしまうという観点から、再建の基盤として職場規律の確立にいろいろ努力しているところでございまして、具体的なことは省略いたしますが、大分改善はされつつあると思いますが、まだまだ幾つかの問題が残っておりまして、それもその地域によってやはりアンバランスが出ております。特にどこだとは申し上げませんが、具体的な地域について、具体的な項目についてやはり他と肩を並べ得るように、同じ水準に回復できるように今努力している状況が一つございます。  それから二つ目に、今具体的にお話しがございましたが、私どもの方もいろいろ状況を調べておりますが、まず管理者が暴力を振るったという御指摘がございますけれども、細かい経緯は省略させていただきますが、そういう事実はないと私どもは現地から報告を受けておる次第でございます。特に直方の気動車区の問題につきましては、本人から告訴、そして地本の委員長から告発がございまして、警察、検察庁においてもいろいろお取り調べをいただいたのでございますが、先般不起訴処分が確定しております。     〔委員長退席、今井委員長代理着席〕  ありようは、去年、門司地区、特に直方地区におきまして、勤務時間内の入浴問題というのが大変ございまして、それを是正すべく管理者が指導し、どうしてもその制止を押し切って勤務時間内に入浴する者がおりますものですから、やむを得ず現場確認という態勢をとった。その際に、ある管理者が歩いたときに、その足がある職員の足元をかすめたという状況があったようでございますが、それが暴力ということで、今申し上げましたような告訴、告発が行われたということでございます。それで、そういう経緯を経て、本人から診断書の提出があったようでございますが、現場長あるいは当該管理者がその状況をいろいろ病院に聞き合わせたりなどいたしました結果、それからまた再診を求めました結果、勤務に差し支えないということで判断をいたしまして勤務を命じたのでございますが、どうしても不参だというようなことがありましたので、三日ほど不参扱いにいたしまして賃金カットをしたという次第でございます。  それから、もう一件久留米駅の問題の御指摘もございましたが、これはたまたま久留米駅で傷害事故が発生いたしました。けがをした職員が出ました。その人の穴をほかの人で埋めなければいけない。それで年休を予定している人が何人か、四、五人おったようでございますが、ぜひその年休を取り消してこの人のかわりに入ってくれという依頼、説得をしたのでありますが、みんなそれぞれ都合があってだめだ、こういうお話であった。最後にある職員に、どうしても君に頼みたいという話をしたのでありますが、いろいろやりとりがあったようでございますが、最終的にだめ。そこで年休を取り消して、ぜひ君はこのけがをした人のかわりに仕事に入ってくれというやりとりをした際に、出口のところで通せんぼうをされて管理者の肩がその職員のどこでしょうか、肩と肩でしょうかにさわった、これがやはり暴力、そして事件といって本人が申告し、診断書が出されたのでございますが、やはりこちらとしては、当局側がいろいろ調べました結果、暴力というものではない、肩が触れた程度であるということでございまして、勤務にも支障ない模様だというので出勤を命じたが、出てこないものですから不参にした。これはやはり今告訴、告発がありまして、久留米の警察署で捜査中ということでございますので、それ以上のコメントは差し控えたいと思います。  以上でございます。
  60. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 それは有給休暇を申し出ておるんでしょう。ですから、これは別個の事案として休暇をやったらどうですか。それを無断欠勤だというので、無届け欠勤ですか、賃金カットをする。その事件は事件ですけれども、それを賃金カットをするということ自体が問題じゃないですか。それはいわゆる争っているのですから、それはそれでいいでしょう。本人が休むと言うなら、じゃ有給にします、こう言えばいいでしょう。ですから、私はそれを言っているのですよ。それは因果関係をつけていろいろ言うなら、言い分もあるでしょうし問題もあるでしょうが、賃金カットまでする必要があるだろうか。規律について徹底的にやろうというけれども、今の情勢というのは、やはり当局が大人にならなければそんなこともできないですよ。ですから、むしろ今こそそういう配慮が必要なんじゃないですかと私は言っているのです。それは、何かあぶり出しをして、マークをして、それで後に至ったときには首切って、新しい会社なら新しい会社に入れまいとする選別をしているのなら別ですよ、そういう態度は。そうでないでしょう、こう言っておるのです。そういう時期でないでしょう。もう余り時間がありませんから、それを御答弁願います。
  61. 太田知行

    ○太田説明員 最初の、直方気動車区の事件は去年の事件でございまして、これがことしのように余剰人員をたくさん抱えておる状況であれば、有給休暇の申し出に対しては比較的希望どおりにいけると思いますが、去年はまだこういう新しい仕事の体制になっておりませんので、有給休暇につきましては、それぞれ組んでおりますから、急な申し出についてはにわかには応じがたいという状況があったのではないかと推測いたします。  それから久留米の問題につきましては、さっきちょっと申しましたように、突発の傷害事故がありましたその穴埋めということでございますので、やむを得ないことではなかったかと存ずる次第でございます。  ただ角を突き合わせないで、再建のために一生懸命協力する体制をつくるべきであるという御指摘はまさにそのとおりでございまして、そういう面に向かいましての努力は今後とも一生懸命やらなければいけないと存じておる次第でございます。
  62. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 賃金カットまでする必要はないでしょう。これでは、本当に職場に入って、今度は再建という気持ちがわかないぞ、僕らはこう思いますよ。急に、今までの慣行は一切排除してやろうと言ったって、それはできっこないのですから。ですからカットまでする必要はないでしょう。私はそれを言っているわけですよ。
  63. 太田知行

    ○太田説明員 最終的には、私どもの専門用語で言いますと勤務認証の問題でございまして、この両方の案件につきましても勤務を命じているわけでございます。それに対する無断欠勤という形が現実として出ているのでありまして、これはやはり賃金カットの対象とせざるを得ない。現に、二つ目のケースはまだでございますが、最初のケースにつきましては苦情処理委員会にも提起されておりまして、そこで議論を二度やりまして結論が出ないものですから、もう一つ上の段階に上杉手続が進められておりますので、そこでの議論がまた行われるであろうと考えている次第でございます。
  64. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 これに時間をとっているいとまはないのですが、もう少し明るい職場にするように努力してもらいたいですね。力で押そうといったって、今の情勢はそういう時期でないのですよ。戦前のような気持ちでやられたんではそれはとてもやっていけない、そのことも申し上げておきたい、こういうように思います。  そこで、さっき北九州の受注の話をしたのですが、要望だけですけれども、地元ではいろいろ論議があった白島の備蓄基地の問題で、結局今の不況打開のためにはやむを得ないじゃないかという声の方がむしろ先行したんです。そこで、不況の打開の一翼になるんではないかという期待があるわけです。ところが、地元の方にはどうも発注がないようだ、それで非常に心配しておるのですが、重ねて御答弁を願いたい。
  65. 岩田満泰

    ○岩田説明員 地元の方におきますいろいろな声と申しますかそのようなものは、このプロジェクトはまだこれから発注手続を進めていくというものでございますので、あるいはいろいろな形での御心配があるのかなというふうに想像いたします。私ども、まだ具体的に、会社の方からも石油公団からも、このように発注していくということも全然聞いておりません。現実問題としてこれからの問題でございます。  それから、先生が今おっしゃいましたとおり、地元のいろいろな御理解も得ましていよいよ本格的な工事に入れるという段階になったわけでございますので、このプロジェクトは、洋上備蓄基地をつくるということで世界的にも例のない建設工事ということで、高度な技術を使うということもございます。したがいまして、その安全性とか経済性ということも十分に考えなければならないことでございますが、同時に、先生御指摘のように、地元の御理解と御協力が得られるということも極めて大事な要素でございますので、今後、個々に、工事区分に従いまして契約発注という手続が順次進んでいくということでございますので、その各過程におきまして、先生御指摘のようなことを念頭に置いて、可能な限り地元の人材あるいは資材の調達ということができますように、石油公団なり備蓄会社というところに対して要請をし指導していきたい、このように考えます。
  66. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 実は私どもも苦い経験を持っていまして、石炭合理化法案ができましたときに、炭鉱をつぶしてその失業者はどうするのだと言ったら、油須原線を筑豊につくるからそれで一日ピーク時には三千名雇います、西田労働大臣は本会議でそう答弁した。ところが、実際建設に当たったら三名しかお茶くみを雇わなかった、あとはよそから全部連れてきた、そういう経過があって、我々は非常に苦い経験を持っているのですが、そういうことのないようにひとつ努力していただきたい、かように思います。  続いて本論に返りますけれども、六十五歳以上を排除して、そうして今度は、失業給付のうちで基本手当はやらないというのでしょう。それで、高齢者給付金にするというのでしょう。なぜこんな難しいことをするのですか。
  67. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 この点は先ほどもちょっと申し上げましたが、六十五歳以上となってまいりますとだんだん本人のそういう就業希望も多様化してまいりまして、フルタイムの就業希望だけではなくて、むしろそういうのが少なくなりまして、短時間の勤務希望の方が多くなる、あるいはまた任意就業希望というものも出てくる、さらにはまたいろいろな関係で、それが可能な人は自営業という形もある、こういうような形で非常に多様化してくるわけでございますが、そこの場面で、雇用保険の受給者として求職活動の場面が出てくる。そうしますと、雇用保険はフルタイムの常用雇用というものを対象にした制度でありますので、そういう意味では、今の雇用保険の給付体系というものでは必ずしもそういう希望に適切に対応し得ない、こういう問題があるわけでございまして、そういうような現状を踏まえまして、六十五歳以上の方が離職されて求職申し込みということになった場合には、その時点におきまして、安定所の窓口へ十カ月お出かけいただいて、毎月毎月そういうフルタイムの常用雇用の職業相談というような形を続けるのではなくて、むしろ高齢者のそういう多様な就業ニーズに合った形で、いわばフルタイムに限らないでいろいろな求職活動がおできになるようにということで、そこで一つの一時金という形で一応の給付を差し上げて、そこでこの現行制度が必ずしも高齢者の多様なニーズに合っていないという点を解消しながらその問題に対応しようということで、こういう制度にしたわけでございます。
  68. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 保険料の免除は、今まで六十歳だったが六十四歳まで引き上げたでしょう、払いなさいというのは。そうしておいて、六十五歳になったら、今までのように現行でありますと、一年から五年あるいはさらにそれ以上も同じですが、三百日くれたのを、大臣、今度は保険料は六十四まで払わして、給付は一時金として一年から五年までが百日、これは現行の三分の一ですよ。それから五年から十年が百二十日。それから十年以上掛けた人は百五十日しか上げませんよ。こういうのです。保険料はずっと掛けさせておいて、給付の方は半分以下に削るのです。これが高齢者社会に向かう政策ですか。それで、本人はフルタイムをやりたいと言ったって、画一にやってあるのですから、そんなことは聞かないのです。労働省が一体なぜこんなことを考えるのか。労働行政というものは平均政策、平均値ではいかないのですよ。短時間雇用を望む人は望む人で制度をつくればいいのです。本人はフルタイムをやりたい、そういう人にまで、せっかく長い間掛けたのを、三百日もちえたものが今度はたった百日しかもらえないとか、あるいは百二十日しかもらえないとか、百五十日しかもらえないとか、これはまさに基本的な権利侵害だと思いますよ。大臣、どういうふうにお考えでしょうか。
  69. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 まず、六十歳以上を保険料の免除をいたしておりましたのを今度六十四歳まで持ってきましたのは、その制度をつくりました当時は、高齢者の雇用を促進するためにはこういう保険料というものを免除するということが促進に役立つ、こういうことでそういう制度が考えられたわけでございますが、その後におきまして、こういう高齢者の就職促進のためいろんな助成措置も拡充をされてまいりまして、そういう保険料の免除という問題よりももっと大きな形での援助が出るようになっておりますので、そういう意味で、保険料免除によって雇用を促進する、その点についての効果というものは非常に薄いものになってきたという問題。  それからもう一つは、費用と負担のアンバランスの問題、要するに、保険料を全く免除の形の中におきまして、高齢者が十カ月給付がもらえるという形における給付と負担の不均衡問題というものが、当初ある程度予想されておった問題ではございますが、実際にこういう高齢化社会が進む中において、特に高齢者を中心にその辺のところがいろいろ問題が出てきておる。こういうような事情等を考慮いたしまして、そして、さらにまた、六十五歳以上についてはそういう制度にするということとの兼ね合いで、六十四歳まで保険料を徴収するということにしたものでございます。  それからまた、言われるような六十五歳以上の人について今までは十カ月もらえた、三百日もらえた、それが百五十日とはというような形で、純粋に現行と比較しての御議論でございますが、実は先ほど少し申し上げましたが、フルタイムの就業ということで本当に求職活動をされるという形でございますれば十カ月のそういう給付になる、こういうことでございますが、現実には、先ほど申し上げましたように、そういう求職の形はとりましても、本当の求職のニーズというのはいろいろ多様化してきておる。それを窓口で、一人一人についてぎりぎりそういう認定をして、本当に希望している人だけをそういう給付体系に乗せていくというのは、また非常にぎすぎすしたものになるわけでございます。そういう意味におきまして、この際一律に六十五歳以上については一時金の形で、そういう多様な就業ニーズに応じた給付がされるような考え方ということでやったのでございます。
  70. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 個人の権利関係は平均値政策ではだめなんですよ。我々が立法をつくるときにも、レアケースを考えながら立法をつくるのですよ。それなのに、これは何ですか。現実にフルタイムの人もいるのでしょう。数字から言うとかなり多いでしょう。それを全部ぶった切るような政策というのは、これはあなた方が、失業保険というのと失業手当というのを間違って混同しておるのですよ。全部が国庫から出すんだというならば、それは政策としてできるでしょう。しかし、これは期待権を持って今まで払っているんでしょう。また、六十の人が六十四まで免除されぬということなら、現実にそれまで保険料を払うわけでしょう。政府が全部金を出すのなら、自由自在にそのときどきの政策でそれは変えてもいいでしょう。しかし、これは変えることができないのですよ。六十四歳の人は三百日上げますよ、六十五歳になったら百日しか上げませんよということができますか。これはできないんですよ。そうして、フルタイムの人がおられればと言うが、じゃあフルタイムの人はそれを希望すれば今までどおりくれるかといえば、そうじゃないのです。窓口で選別ができませんからこれは削ります。そういう平均値の政策では権利関係は律することができないのです。そもそも物の発想が、初めから言っておるように、ぐるぐる変えるというのがおこがましいのです。それが失業手当というならば私はこうまで言わないのです。これは労使から保険料を取っているのですから、これは保険ですよ。それを年齢によって打ち切るという、こういう発想がそもそもけしからぬ、こう私は言っている。大臣、どうですか。
  71. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 先生のおっしゃいますこと、例えば年金のように、ずっと掛けてくるというような形のものについては一層そういう性格が強いということはわかりますし、それからまた雇用保険だって、特に今度は給付の関係を、保険を掛けた期間というものを持ってまいりますと、そういう性格の面が出てまいりますが、基本的にはこれはある程度掛け捨て保険という性格のものでございまして、それでずっと蓄積をしてどうこうするというものではないわけでございます。そういう意味では、ずっとそのために蓄積をしてきたという形の保険でないということは、年金みたいなものとは一つまた違う面があります。  それからまた、制度の面でいろいろございますが、この制度の運用の現状の中で、安定所の窓口で、いわゆる鬼の職安というようなことを言われて、ぎりぎりそういうようなことをやるような制度にすることがいいのかどうかという問題もございまして、窓口での制度の厳正な運用というものをなかなか期待しがたい問題も一つあるわけでございます。現実にこの失業ということの認定、それからフルタイムの雇用の希望の認定というような面での問題もいろいろございまして、そういった面を配慮しながら、それからまた、フルタイムの常用雇用を希望される方が非常に少なくなってきておるという現実にも着目しながら、制度のある程度の画一性というものはやむを得ないのではないだろうか。現実に例えば、個別の給付の関係で、短くなるような形のものも提案をしております。それについても、個別延長給付というような形のものも、個別という問題も制度的には十分配慮しながらやっていかなければならないものだとは思っておりますが、そういう個別の事情というものを十分配慮し得るものと、制度としてある程度画一的にやらざるを得ないものと、その辺はいろいろあろうかと思うわけでございます。そういう意味で、完全に個別の事情というものを失業の認定という関係で織り込むことが、現実になかなか難しい問題もあることも御理解いただきたいと思うのでございます。
  72. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 加藤さん、あなたの言われることは全く論旨が一貫してないのですよ。さっきは掛け捨て保険です、こう言いながら、今度は二分の一以上期間が余ったら金を返しますよと、こう言うのでしょう。今までの、現行法は掛け捨てですよ。ところが今度は、法律を改正して金を返すと、こう言うのでしょう。この前の就職支度金とは違うのですよ。掛けた年数によって金の量、返す金額が違うのですよ。この前はそれは違っておったけれども、ですから返す金額は少なかった。今度は余計返してくれるのでしょう。ですからどうも、自分たちが考えれば自由自在に法律は変えることができる、そう思っていることが間違いじゃないのですか。これは保険なんですよ。そして失業手当ではないのです。手当なら全部が国庫負担です。ですから、それは政策によって自由にできる。これは保険なんですよ。しかも、六十四歳から五歳になったらこれはもうもらえないのです。こんな政策があるのでしょうか。ですから、これを逆に言うと、みんなやめろ、六十五歳までいかないうちにやめろ、六十四歳でやめる、こういうことになって、大臣、これは高齢者の就職促進にならないのだ。みんな一回やめろ、それでもらえ、こういうことになりかねないでしょう。いや、そうなりますよ。あなた方が幾ら首を振っていたってだめです。私どもがかつて注意をしたとおりになったからといって、またこれを変えるのでしょう。こういう危険がありますよと言ったら、いや、そんなことはありませんと言っておきながら、そうなったら今度はやはり大変ですから、またもとへ少し返しましょうとやってくる。だから私は信をおけないと言うのだ。大臣、どういうように思いますか。
  73. 坂本三十次

    坂本国務大臣 いろいろ長い間の御忠告にもかかわらず、うまくいかなかったということもあるでしょう。それから試行錯誤もこれはあったことだろうと思いますよ。だけれども、先ほどからも申し上げましたように、私どもも、確かに、重点を絞るときには六十歳まで、次は六十五歳までは何としてでも最重点にやらなければいかぬということで、個々の人たちについて、能力もあり、希望も高いですしということでいろいろな助成制度もやったりして、今全力を尽くしておる最中でございますが、今おっしゃった六十五歳以上切り捨てというような、そんな薄情なつもりはないのですけれども、しかし六十五歳になれば、今まで局長がいろいろ御答弁もしたように、やはりどうしても、残念なことには、御本人の希望もいろいろあり、フルタイムだけではなしに、多様化してくるということもありますし、今度は求人の方がまたもっとレアになってくるわけですね。求人倍率がまたうんと下がる。ですから、御希望の方もレアになってきますけれども、求人の方の、会社の方の希望もやはりもっとレアになってくるようですね。それで、これはやはり、安定所が幾ら頑張ってももう限度がある、そういう場合には、しょっちゅう安定所に来てもらっていろいろ言うということよりも、御本人の希望には、御本人の努力にも依存をしながら、お互いにまた知恵も出し合って、安定所もいろいろお世話をするわけですから、それと両々相まってやった方が結局効果がいいのではないか。力不足を認識をしたというところもありましょうけれども、両々相まってやろう、こういうつもりだと私は見ておりますけれどもね。
  74. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 今この法律が通過して一番困るのは安定所ですよ。となり込まれますよ。今まで金をくれておったのになぜくれないのですか、私は保険を払っていましたよ、なぜ六十五歳になったらもらえないのですか、こうなって窓口が一番混乱をするよ。それは困るよ、あなた。それは加藤局長のところに行くわけにはいかないのだから。それが一番困るよ。窓口が応対できないですよ。理屈がないでしょう。ですからこれは、六十四歳になったら皆一斉にもらえ、これは六十五歳になったらもらえないぞ、こういう法律です。これは六十五歳首切り法案だ、このことを指摘しておきたいと思う。  大臣、ここで幾ら言っても、局長がああして答弁しておる以上は、違うことを答弁できぬでしょうが、これはひとつ考慮を願いたい。私はここに十三問書いてきましたが、まだ二問しかやってない。  そこで、もう一つ問題点を指摘しておきたいのは、賃金算定の基礎の変更ですね。簡単に言いますと、今まではボーナスが入っておったけれどもボーナスを除外した、保険料はボーナスを含めて取りますよ、こういう問題です。これは非常に影響が大きいのです。社会保険というのはかなり関連性があるもので、厚生省は労働省を横目で見ておるでしょうし、労働省は厚生省を横目で見て法律をつくるのですよ。例えば、現在労災保険に特別加算というのがある。これは今まで六〇%であったのを、二〇%を特別加算して八〇%にした。これは失業保険の方がボーナスを含めて算定をされるからという意味があった。一方の方は平均賃金でいくわけですから、平均賃金を総収入にするわけにはいかない、短期の休業補償もありましょうからね。そこで二〇%の特別加算にしたのです。  しかし、そもそもこの雇用保険というのと年金というのは若干違うのですよ。雇用保険は、やむを得ず離職をした人に、次の就職まで要するに従前の賃金を保障して、そこで充てんをするんだというそういう考え方がある。老齢年金の方は、それで一生きさやかながら生活していくんだ。ですから、従前所得の保障といいましても、性格が違うのですよ。失業しておる間にぐっと生活を変えるわけにいかない、そこで次の就職まで何とかつないでやろうというのがこの失業保険であり、今度の雇用保険なんですよ。それを、言うならば、この法律ができて以来初めて、ボーナスを給付の対象にしないということにする。しかも、その人が再就職をした場合にすぐボーナスがもらえますか。これはもらえないのです。就職したときにはまだ短期ですから、これは恐らくボーナスの算定基礎の計算にも大抵入らないのです。ですから、再就職してもボーナスがもらえない層であるということを前提に、こういう制度ができでおるのです。それを、その給付が少し高過ぎたということでこれを切るなんというこの考え方がそもそも間違っておるのじゃないか。雇用保険というのは老齢年金ではないのです。どうなんですか。
  75. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 現行の失業給付の額は、受給者が失業する前六カ月の毎月賃金プラスボーナスの毎月割りというものを含んだ総賃金を基礎として算定され、かつ、非課税になっておるということでございます。そのため、給付の額が毎月の手取り賃金に比べまして九割程度というような金額になっておりまして、手取りという面で見ますと余り変わらないような額になっております。それからまた、労働市場での通常の再就職賃金というものと比べまして相当高目のものになっておるというようなことが、率直に言いまして再就職意欲を阻害しているという現状にある、こういうことが一つございます。  それからまた、実は、毎月の賃金に比べまして、ボーナスの額が業種とか規模によって格差がいろいろあるわけでございます。毎月の賃金でございますれば、中小企業の賃金と大企業の賃金、あるいは一般の平均賃金に比べましてせいぜい三割ぐらいというような数字でございますが、ボーナスになりますと、これはまた、そういう中小企業に比べて、例えば電機、ガス・水道であるとか、金融・保険というようなところは二倍以上の格差になっておるわけでございまして、格差が非常に大きいわけでございます。例えば中小企業だとかあるいは業績が悪化してボーナスがほとんど出ないというようなところから離職をされた方については、これはボーナスが少ないために給付額も低い、他方業績のいい企業とか大企業を離職された方はボーナスが多いため給付額も比較いたしまして一層高くなる、こういうような問題もございます。  さらに言えば、離職時期がボーナスの支払い時期を含むかどうか、ある場合にはこういう問題も出てくるというような問題もございます。  こういったような問題点を総合的に考慮いたしまして、毎月の賃金のレベルを基準とした生活保障を行っていきながら再就職の促進を図る、こういう考え方によって雇用保険制度を有効に機能させていきたい、こういうことで今度算定から外すことにしたわけでございます。  しかし、確かにそれによって給付が平均いたしまして、二割程度下がってくるという問題がございます。そういう意味で、現実に中低位の給付を受けておられる方についての問題点を避け、いろいろ激変緩和を配慮する、こういうことで中低位層間につきましては最高二〇%からの給付のアップをする、あるいはまた、八割ないし六割を超えるそういうところの日額のランクも今までの十三等級から二十等級まで上げる、こういうような配慮をしながらのこういう措置でございます。
  76. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 ですから老齢年金とは違うのです。老齢年金は永久でしょう。これは期限があるのです、日数が限定されておるのです。ですから九割でもいいじゃないですか。九割といいましても、ボーナスを含めての九割じゃないのです。いわゆる定期的にもらう九割のどこが悪いのですか。ずっともらえるわけじゃないのですから、九十日で切られる、百二十日で切られるのですから、どこが悪いのですか。私は何か考え方が間違っておると思うのです。  私は、生活保護とか失業手当なら言いませんよ。しかし失業保険、雇用保険というものなんです。これを下げれば今度は民間の私的雇用保険ができますよ。それはやってもいいけれども。しかも、残念ながら、その財源はボーナスからも取られておるというのだ。これは失業保険というものの性格を御存じない、あるいは知っておって曲げておやりになっておる。そんなものじゃないですよ。あの苦しい時代にボーナス、一時金を入れて六割と決めたのです。それは今の年金で論議されておる六割とは違うのです。そのことをひとつ考えてほしい。これは現役ですよ。子供もおり、今から就職するというのですから現役ですよ。現役の諸君がもらう給付が日々の九割でどこが悪いのです。それはボーナスは除かれていますからそれだけ下がっているわけです。局長、どうも発想がおかしいのじゃないですか。
  77. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 現実に働いているときの毎月の賃金の手取り額というものと、こういう保険の給付の形でもらう額とのバランスがどの程度が妥当かという問題については、いろいろ議論があると思います。あると思いますが、これは現実にそういう水準にあること、それからまた、それが再就職する場合の賃金と比べましてある程度高目の関係にいろいろあることなどを見ますと、それが現実の運営の姿としては、保険をもらい終わってから就職しようという方が非常に多くなってきておる。実際に保険の受給満了者、満額もらい終わってという方があらゆる年齢層で五割を超えておる、あるいはまた高齢者になりますと八割、九割というようなことでございます。要するに雇用保険制度というのは、受給中にできるだけ早く就職をしていただくための、いろいろ求職活動をするための援助という趣旨も含んでいるものでございますが、実際に保険をもらっておると逆になかなか就職が進まないというようなこと、そしてまた、いろいろな実態の統計調査によりますと、保険をもらい終わった後において就職される方の分布を見てみますと、保険をもらい終わられて一カ月後、二カ月後あたりに皆どっと就職されるというようなところから見ますと、実際問題としては、この保険の給付水準というものが、こういう早く就職をしようという面での意欲というものをある程度阻害しているような状況というものがあるのじゃないだろうか、こういうことが雇用保険部会での一つの報告論議でございます。そういった報告等を受けて、それに対応して、この際ボーナスというものを算定基礎から外すことを考える、そしてまた、そういう低いところについては激変緩和でちゃんとアップする、こういうような対応をしておるということでございます。
  78. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 余り部会部会と言わないでください。原案はあなた方が書くのだから、資料もあなた方が出すのですから。それを部会部会と。部会が独自に発想するのじゃないですよ。全部こういう事情ですからと言って、本当にそういう点においては部会部会と逃げるけれども、部会だって非常に問題がある。短期間に審議をやれというのだから。ですから、そういう点において、まずこの算定基礎が変わった。それに今度は日額が変わったでしょう。日数が変わっておるでしょう。この日数を変えて、これは御存じのように若干プラスになるのは二ランクだけですよ。五つのランクは下げられておる。こういう形をとっておるのです。  それで、私どもが、若干考慮する必要があるのではないか、年齢だけでよろしいですかと言ったら、年齢だけでいい。そうして、二十九歳と言っても十何年も掛けた人がおるから、それが六十日ではどうですかと言ったのです。十数年も掛金を掛けて六十日分しかやらぬ、それはひどいじゃないかとこの前言ったのです。そこで与野党修正になって、それから今度は、政府から案が出されて九十日になったのです。それは労働省がやったのではないのです。全部流れたから、それは最後には改めて労働省が持ってきたのだけれども。とにかく六十日、おまえたちは勇気があるなど我々は言ったわけです、二百日ぐらいもらえる人を今度は六十日に切っちゃったのだから。ところが今度は、またもとへ少し返したでしょう。そうして今度は、やはり長く納めた人には色をつけたということです。こんなようなことでは、私どもはどうも安心して任せるわけにはいかない。  そこで、これに関連していろいろあるのですよ。個別延長給付とかいろいろありますけれども、次に、この問題点を指摘しておきましょう。  再就職手当、これは就職促進手当の復活ですよ。これも大変議論を生んだ問題です。OECDからも注意を受けておったのを私は初めて知ったのです。OECDから、国別調査があったときに、日本を調査されたOECDの労働力社会問題委員会、一九七一年の十一月ですが、これからも、当時の就職促進手当というのは疑問を持たれたのですよ。要するに「少なくとも西欧人の目から見ると、この制度は、就職支度金が運よく早く就職できた人には、余分の思いがけぬ授りものであるのにひきかえ、不幸にしてすぐに仕事をみつけることのできなかった人には支給されないという」、こういうことが一体許されるだろうかという疑問を投げかけておるのですよ。そこであなたの方は、得たり応とばかりこれをなくした。そうしたら、また復活するとは何事ですか。そういうことにはけりをつけて、日本政府としては、それは今申しますように、OECD等のなにもあるし、あなたの方は就職支度金が乱用されるという問題もある、それでこれはなくしてしまった。それを十年後にまた復活してきたわけですね。これもおかしな話でして、しかも、当時の就職支度金というのは三分の二以上が五十日ですよ。それから、二分の一から三分の二までが三十日ですよ。それから、さらに支給残が百五十日以上ある人が二十日間。これに比べて、今度は、いい悪いというよりも、内容的にはこれはずっと前進しておる。金額も多くなっておるでしょう。私は、これもおかしなことをやるなという感じですね。最高の多いところが百二十日にふえるのですから、一体何を考えているのだろうかと言わざるを得ないのです。  しかも、このときにはいろいろ議論がありまして、社会保障制度審議会の方からも、これでいいのですかということも何回も言われたけれども、労働省はあえて踏み切ったのです。一体なぜ、この前死んだものが今度生きてくるのですか。
  79. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 確かに、当時はそういうOECDの批判というものがございまして、それについて配慮したことも事実でございます。それからもう一つは、それが非常に乱用されまして、特定の人だけがこの制度を使って、どんどん就職をし、また離職を繰り返すというような形の問題がございました。そういう批判にこたえるために、この支度金制度を廃止をいたしまして、まさに常用就職支度金ということで、就職の困難な方で、そういう受給期間の真ん中以前に就職するというのがなかなか難しいというような事情のある方、特に就職困難者については常用就職支度金というものを三十日分出すという制度を設けたわけでございます。今回は、その制度はその制度としてちゃんと残して、OECDのそういう批判にもこたえながら、それからまた、前回問題になった乱用という点については、これは三年以内にそういうことの使われた方については、一般的にはそういうものは適用しないということで、そういう乱用防止規定を設けまして、そしてやはり、現在のこの制度の運用の中におきまして、保険をもらっておられる方について早く就職することの具体的なメリットがなかなかない、むしろ保険をもらい終わってからというような形になって、就職がだんだんおくれがちになっておることが、また制度の本来の姿としても問題があるし、保険財政からいっても問題があるというような事情を踏まえまして、こういう何とか早く就職することの具体的なメリットというものも、やはりインセンティブをつけていかないと、就職促進というものに具体的になかなか結びついていかないというようなことで、相当思い切った形ではございますが、これは率直に言いまして、先生さっきその方がもうかるというふうにおっしゃいましたけれども、そういう意味では思い切って出しておりますから、そんなもうかるということじゃなくて、要するに、保険をもらっている方が早く就職をしていかれるということにできるだけ思い切って援助をしていく、そういうインセンティブをつけていく、こういうようなことでそういう制度に踏み切ったわけでございます。
  80. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 もうかるのは国庫負担だよ。これは国庫負担が入らぬからです。返す金は労使の金ですよ。もうかっておるじゃないですか。日本政府は、国庫負担がもうかっておるんですよ、これは国庫負担が入ってないのですから。そうでしょう。再就職手当というのは国庫負担が入ってない。こういうことを平気であなた方はやるんですよ。これは国庫負担を入れた分が助かったんでしょう。そして今度は、返す方は労使の積立金から返すのですから、国がもうかるじゃないですか。実におかしな細工をするんですよ。  実は、これは五十六条の一とありましたから、それで再就職手当には国庫負担金が入るのだと思った。僕がもらった、あなた方がつくってくれた改正案と現行法の差異から見たら、そう思ったのです、五十六条の二だから。ところがそうでなくて、本文を見ますると、第五節の中に入れておるんですよ。しかも、冒頭が五十六条の二から始まっておるのですね。こんな便宜的な法律の条文というのは、僕は国民にとって不幸だと思うのです。わからぬ。やはり五十六条と五十六条の二は全く性格が違うのだから。それなのに五十七条から始めている。五十七条の現行法はずらすべきですよ。そんな安易なことばかりやっているのです。ですから国民はわからぬのですよ、間違えるのですよ。ああ、五十六条の二だから国庫負担も入るんだろう、前は五十六条は入っているのですから。そうすると、いや、節の冒頭に五十六条の二がくる。節の冒頭に何々の二がくるなんという条文は大体おかしいですよ。きょうは法制局が来ておりませんから、いずれ聞こうと思う。それは違法とかなんとかじゃないでしょう、条文整理ですから。しかし、そういう条文の書き方は、国民は大変迷惑しますよ。労働省は平気でこういうことをやっているんですよ。よそもやっておるかもしらぬけれども、僕は後で法制局を呼んで、ここのところを聞いてみたいと思うのです。  時間もありませんから、問題を全部保留しておきたいと思いますが、最後に、実は、失対事業の中に四つ制度があるわけです。それは一般失対と言われるのと、それから緊急就労というものと、それから開就というものと、それから特開という制度です。そこで今度は、六十五歳以上をこの雇用保険から排除いたしますから、六十五歳以上の制度事業におる人のうちで、開就とか特開という人は一般雇用保険に入っておる、ですから日雇雇用保険は継続されますけれども、一般のそれ以外の人は雇用保険は排除になる。これらの人を一体どういうように扱うのか、これをお聞かせ願いたい。
  81. 齋藤邦彦

    ○齋藤説明員 ただいま先生御指摘の失対四事業の問題でございます。確かに、現実に働いておられる方の実態等を見ますと、非常にいろいろ問題があろうというふうに思っております。このままの形で、一般保険のままでいいのかどうか、ほかの手だてがあるのではないかというふうにも思っております。現在、関係の県に対しまして、どのような措置をとればいいのか、あるいは現在の就労の実態をもう一回よく見直して、今後のとるべき形を検討しろというふうに連絡をいたしております。  いずれにいたしましても、改正法を今国会におきまして御審議の上通過させていただきましたら、その辺は、就労者の方々に御迷惑をかけないと申しますか、妙な不安を来さないように適切な処置をとっていきたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  82. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 制度の改正ですから、事前に態度がはっきりしておった方がいいと思うのですが、これは保留にしておきます。  残念ながら、四事業、給付制限、ME下における雇用問題、それから全体の雇用保障法制についていろいろ質問したかったのですけれども、これらは後に保留して、本日は終わりたいと思います。  以上です。
  83. 今井勇

    ○今井委員長代理 午後二時から再開することとし、この際暫時休憩いたします。     午後一時二分休憩      ――――◇―――――     午後二時十一分開議
  84. 有馬元治

    ○有馬委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。大橋敏雄君。
  85. 大橋敏雄

    ○大橋委員 大臣、私は、この雇用保険法の審議に当たって非常に感慨無量なるものを感ずるわけでございますが、それはやはり、十年前の審議のときにも私は参画いたしております。  言うまでもないのですけれども、戦後の経済の動乱期と言われた昭和二十二年に、失業保険法というのが制定されたわけですね。それ以後、我が国の何といいますか、雇用失業対策の中心的な役割を果たしてきたわけですね。ところが、社会も産業もまた経済の方も大きくさま変わりをいたしまして、この失業保険法が対応し切れなくなったということで、二十八年ぶりの大改正になったわけですね。この改正は、家で例えるならば、家の中の改装ではなくて、家を建てかえてしまうというほどの大改正であったわけであります。ですから、失業保険という名前から雇用保険法という名称に変わってしまったわけでございますが、非常に難産でございましたね。季節的労働者の問題も大きな問題であったわけでありまして、その実情を調査しようということで、東北の方に視察に行ったり、あるいは連合審査をやったり、あるいは参考人の意見聴取をやったりということで、大変な努力が払われたわけでございまして、そのあげく一部が修正されまして、衆議院は通過するわけでございますが、参議院に送付されて、時間切れで実は廃案になるわけですよ。ところが、時代の要請といいますか、雇用失業情勢が非常に厳しくなってきたので、この雇用保険法を早く成立さしてくれ、実施してくれという声がちまたから上がってきまして、そういう状況の中で臨時国会が召集されたわけです。そのときに自民党さん、社会党さん、それから公明党、民社さんで、さらに一部を修正して可決、成立したものなんですね。あのときの苦労といいますか努力といいますか、これは忘れられないものがあるわけでございますが、労働省の職員の皆さんも、成立をしたときは本当に涙ぐんでおったですね。あのときの状況を私は忘れることができないわけでございますが、とにかく政治の目標というものは、生きがいと活力ある福祉社会の建設にある、言いかえれば完全雇用社会の実現だということではないかと思うのですね。     〔委員長退席、今井委員長代理着席〕  雇用失業情勢というものは、国の経済あるいは産業政策の動向と非常に密接なかかわり合いを持つわけでございますが、景気が低迷しますと企業が倒産します。そして失業者が続出する。そうなりますと給付者が増大しまして、保険財政も大変に圧迫される、こういう悪循環になっていくわけでございますが、今回の改正の主な理由としまして、この前もおっしゃっておりましたが、給付の増大、保険財政の悪化がきっかけとなっております。しかし、これは単なる景気変動等の一時的な現象ではない、もうこれは構造的な悪化であるということで、大幅な改正に踏み切ったんだという説明があっておりましたけれども、私は、この雇用保険法の根本的な解決というものは、先ほど言いましたように、産業あるいは経済政策にあると思うのですね。どうしても失業率を少なくとも二%程度に抑えていくぐらいに頑張っていかないと、これはいつまでたっても悪循環を繰り返して、毎回毎回手直しをしなければならぬようになるのではないか。  その完全失業率を二%に抑えるためには、やはり雇用創出といいますか雇用改善、そういうものをどしどしとやっていくわけでございますが、そのためにはやはりある程度の経済成長率がなければだめだ、私はこう思うわけですね。言うならば、今のような低成長でなくてもっと中成長といいますか、そういう状況に持っていかねばならぬと思うわけでございます。  これは、ただ労働省だけの仕事ではございませんけれども、労働省を所管しておる労働大臣という立場から、あるいは閣僚の一人として、その完全雇用に持っていくために少なくとも中成長というものは何%程度を目指しているのか、まずお尋ねしてみたいと思います。
  86. 坂本三十次

    坂本国務大臣 大橋さんのおっしゃるとおりでございまして、いろいろな雇用政策に気を配ることも大切でございまするし、それからその前に、もし失業したときの失業保険制度、雇用保険制度を充実することももちろん大切でございますけれども、やはり一番ベースになる、一番基本になるのは、経済の健全な発展と申しましょうか、もっと具体的に言えば、ある程度の景気、経済成長、これが一番基本になるということは、私どもそのとおりだと思っております。  そして、二%程度ということになりますと、考えられるミスマッチなども入れますと、世界的にはそれは最高の水準に近いのじゃないかと思いますが、そこへ持っていくときには、経済の運営よろしきを得て、そして景気が適当に伸びていく、これが大切だと思っております。  それで、二度にわたるオイルショックを乗り越えて、世界も我が国もいよいよこれからという希望を持てるとぎでもございまして、政府とすれば、成長率を四%ちょっとというような目標を定めております。もう少し上ならもっといいわけでございましょう。積極経済を唱える人も閣内にもございます。そういうふうな大きな経済政策ということをやってやれない時代ではこれからはないのではないか。今までの方が、二度のオイルショック、これは世界同時不況であって、例外と見れるのではないか。これからの方が、ひとつ世界の安定成長拡大というものの方が、これが本式の軌道に乗るのではないかという見通しのもとに、四%以上、五%ぐらいいけばまことに結構なのではないかというところを目指して経済政策を進めなければならぬ、そう思っております。そうすれば、失業問題の寄与にも随分これは効果があるだろうと思っております。  しかし、一面、大きな経済の変革がございましたし、また、これからはかっての一〇%のような高度成長が続くとはどうもだれも考えにくいことでございまして、いつ何とき中東あたりで何かが起こりますと、それはまた大変なことにならぬとも限りません、火種はいつもくすぶっておるわけでございますから。しかし、これからの方が今までよりは安定成長にいくのではないかということで、御期待のとおり、私どももそういう経済政策を進めなければならぬと思っております。ただ、いろいろ雇用の構造変化があるということだけは、これもまた確かでございまして、その面もにらみながら、基本はあなたのおっしゃるとおり経済の安定拡大にある、こう思っております。そうすれば、福祉国家に雇用の面でも近づいていけるのではないか、こう思っております。
  87. 大橋敏雄

    ○大橋委員 確かに、苦みたいな一〇%程度の経済成長はまずこないんじゃないかということもわかりますけれども、今のような四%台では完全雇用を目指している政策とは言えない、経済企画庁長官も五%を超えなければだめだ、こう言っていたとおりです。時間があればあともう少し経済問題をやりたいと思いますが、時間に限りもありまして、法案の内容もたくさん聞きたいところがありますから、法案の内容に移りたいと思います。  今回の主な改正点について私なりに採点をしてみたわけですけれども、受給者の早期再就職促進のための再就職手当の創設というのがありますね。これは賛成していいんじゃないか、私はこう思っております。  次に、基本手当の算定基礎となる賃金から賞与等を除外するということが今度出てきたわけでございますが、これは賛成できません。  次に、所定給付日数は被保険者であった時期を考慮して三区分としたということになっているわけでございますが、これは賛成できる部分と、断じて反対という部分がございます。  それから、六十歳台前半層の受給者を短時間就労者として雇い入れる事業主に対して助成金の支給を行う、これはまあいいでしょう。  それから、六十五歳以上の者が失業した場合、基本手当にかえて高齢者給付金、これは一時金として最高百五十日分を支給し、再就職した場合には被保険者とはしない、これはいろいろと問題がございます。        ・  したがいまして、今のような基本的な考えに立ちまして、順次質問を申し上げます。  まず初めに、労働者の賃金ですね、これを基礎として一般保険料の方はボーナス込みで計算して大きく取り上げる。ところが、失業時に極めて重要な給付金の方はボーナスを抜いて小さく計算して支給する。これはどうも納得いきません。保険財政の赤字解消という立場からは手っ取り早い対策かもしれませんけれども、これは片手落ちである、公平を欠く、私はこう思うのであります。  そこで、初めに確認しておきたいことがございます。一般保険料の算定の基礎となる賃金ですね。ここで言う賃金、つまり賃金とか給与あるいは賞与その他、名称のいかんを問わず、労働の対償として事業主が労働者に支払われるもの、それは通貨で支払われるもののみに限らず一定範囲の現物給付も含んだもの、このように私は理解をしているのですけれども、この点は間違いありませんか。一言でいいですから。
  88. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 現在の賃金についてはそういうことでございます。
  89. 大橋敏雄

    ○大橋委員 さて、以上のように労働者の収入というものは完全に捕捉されているわけです。ことごとく捕捉されて源泉徴収をされるわけです。あるいはトーゴーサンだとかクロヨンだとかいう言葉でよく表現されるわけでございますが、いずれにしましても取られる方は大きく取り上げられる。そこで納得いかないというのは、先ほど言ったように、給付の方はその算定の基礎となる賃金からボーナスを抜くというわけです。ということは給付額が非常に小さくなってくる。賃金を除外するということについては納得がいかないということです。  そこで、納得がいかない理由を順次明らかにしていきますが、もし私の理解がおかしければ遠慮なく訂正していただきたいと思うのです。  労働保険料のうち労災保険料というものは全額事業主負担ですね。ところが、雇用保険料は事業主及び労働者の双方が負担をするというのが原則になっているわけです。このように雇用保険が労働者に保険料の一部を負担させるというものは、労働者の責めに帰すべき理由であれ自己の都合による退職であれ、どのような失業であっても失業給付の支給の対象とする、このように私は理解をいたしております。もし間違っていれば後で訂正してください。確かに重責解雇あるいは自己都合退職についてはそれなりの給付制限をつけておりますけれども、結局は失業中の生活の安定あるいは最低生活を行おうという立場に立って支給されているわけですね。すなわち、雇用保険というものはその中心的役割を果たしているのは失業給付であるのだ。そこで、労働者の一般保険料の納入の義務というものは、失業した場合の受給、失業受給に対する労働者の固有の権利である、また失業給付というものは失業者の最低生活を保障して、あわせて労働力の維持保全を図るという目的を持つものでありまして、すなわち労働者個人の所得能力、言いかえれば労働者が有していた労働の価値を反映させ評価したものが賃金なんだ、私はこのように考えているわけでございます。したがいまして、失業給付の目的あるいは趣旨に従うならば、ボーナス等を除いて算定するというのは給付の削減になるわけですから、こういう考え方は問題である、私はこう思うのですけれども、いかがですか。
  90. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 労働者が離職をいたしました場合に、労働の意思と能力を持ちながら、また求職活動をしておるのに就職できない、そういう場合に失業給付を受ける権利を持つというのは当然であると思います。  それからまた、失業給付が、労働者が失業いたしましてその所得のもとを失いました場合に、必要な給付を行うことによって再就職までの生活の安定を図り、再就職の援助を目的として離職前の賃金の六割ないし八割、こういう限度においてその生活を保障していくという機能を持っておるものでございます。
  91. 大橋敏雄

    ○大橋委員 私が言っていることは、失業給付というのは失業者が再就職するまでの生活の安定あるいは最低保障なんだ、だから、そちらはできるだけ多く支給しようという精神に立つべきである。ところが今回は、取る方はボーナス込みで取って、支給する方はボーナス抜きの計算で小さく支給しようという考えは、失業給付本来の趣旨、目的に逆行しておるのではないか。例えば十一条の受給権者の保護規定がありますね、あるいは十二条には公課の禁止の規定がありますね。この趣旨は一体何を言わんとしておるものですか、答えていただきたいと思います。
  92. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 ボーナスは算定の基礎としないけれども、徴収の際にはボーナスからちゃんと取るという、そこのところは、支給の原資をどう徴収したら無理なく徴収できるかという観点での話でございます。そういたしますと、これは毎月の賃金だけから取って、そして毎月の賃金の六割ないし八割という形での支給の仕方というものはありましょうが、その場合に、今の制度をそういう形にいたしますと、毎月の賃金から取ります保険料をさらに相当上げなくてはならぬ、こういう問題があるわけです。そういう毎月の給料からいただくものを上げるという形でいくのか、それともそういうボーナスという形で出ておるものからいただいて、全体としてならすといいますか、そういう取り方をした方が無理がないのか、そういう関係の問題でございまして、徴収したもとのものとの絡みで必ずリンクしなければいかぬ、必ずしもそういうものではないのではないか。問題は、どう取ったら無理がないのかという配慮も要るのではないか。そうしますと、賃金とボーナスとの若干の性格の相違もございます。それからまた、ボーナスについては賃金格差以上に、規模別の格差あるいは業種別の格差が非常に大きいものでございます。そういう意味では、よりボーナスからいただくという形を残した方が、実際の徴収の仕方として、他の全体の労働者からの取り方という面からいっても、言うならば高いところからたくさんいただき、少ないところからは少しいただくという形によりなるという問題もあるわけでございまして、そこは給付の関係と徴収の関係は制度的には今リンクしてやっておりますが、厳密に言えば必ずしもそれはリンクしたものでもない。そういう意味では、現に労災保険においても休業補償については給付はボーナスを含めておりませんが、徴収の際にはもちろんボーナスも含めて取っておるという関係にもあります。あるいはまたほかの社会保険においても、健康保険の関係でもボーナスからは一応保険料として千分の二十いただくという形をやりながら、支給の関係ではボーナスが入っていないというような問題等もございまして、その辺は必ずリンクしなければいかぬというものではないのじゃないかということでございます。  ただ先生の、できるだけ多く支給せよというところが一つ問題がございますのは、今支給しております金額とその人の基礎になりました前職賃金との手取りの関係が、今九割ぐらいになっておるという問題があるわけでございます。
  93. 大橋敏雄

    ○大橋委員 今局長のおっしゃることは、言っておることはわかるのですよ、わかりますけれども、まず私が聞いたことに対して答えてくださいね、時間に限りがあるのですから。聞きたいことはたくさんあるわけですよ。  今私が開かんとしたのは、受給権者の保護規定だとか公課の禁止規定がありますね、それはどういう趣旨ですかと聞いたのですよ。
  94. 今井勇

    ○今井委員長代理 ちょっと政府委員に申し上げますが、今の質疑者の質疑どおり的確に答えてください。注意申し上げます。
  95. 齋藤邦彦

    ○齋藤説明員 ただいま先生御指摘の雇用保険法十一条では、受給権の保護ということで、失業保険給付を受ける権利を譲り渡してはならないという規定がございます。それから、公課の禁止という規定が十二条にございます。この規定の趣旨は、雇用保険給付が、失業者の方が失業をしている期間、ある一定の給付を受けながら安んじて求職活動に専念できるだろう、それだけの額を保障しているといいますか、それだけの額を給付している、そういうような性格の失業給付について公租公課をかけるのは適当ではないだろう、あるいは譲り渡しを許すことによってその人たちが、一時の生活のために譲り渡して結局生活が非常に苦しくなるというようなことを防ごうではないか、こういう趣旨だろうと理解しておるわけでございます。
  96. 大橋敏雄

    ○大橋委員 要するに、雇用保険法の中で労働者が一般保険料を負担している、これは失業したときの失業保険をもらうための義務納付ですね。したがいまして、それは失業中の生活の安定あるいは生活保障のためなんだから、受給権者を保護していきましょう、公課をかけません、こういうことで守られているわけなんですね。したがいまして、私は、失業給付の算定に当たってそれがダウンするような方向での考え方は、あくまでも大幅な給付削減に通ずるのだから賛成できません。確かに先ほど局長が言ったように、雇用保険も公保険ですよ、だから相互扶助精神といいますか、この機能は働きます、当然そうだと思います。そして、所得再配分機能の立場からいけば、持っている者から大いに取り上げて、そしてかわいそうな人に支給しよう、こういうことからいけばわからぬでもないですよ。しかし、同じ労働者の賃金から、取る方は大きく取って支給する場合は除きましょうという考えは、片手落ちだと言っているわけですね。  そこで、現在の雇用保険制度において見直すべき点としまして、正当な理由のない自己都合退職者に対する現行の給付制限期間、現在一カ月間のそれを見直すということになっていたわけですけれども、どのように見直されたのか、お答え願いたいと思います。
  97. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 現在、この見直しにつきましては、国会でのいろいろな御議論も踏まえ、あるいはまた現場レベルでのいろいろ実務の専門家の意見等も聞き、そしてそういったもので案をつくりまして、職安審議会にかけてその辺を決めていく、こういうような関係で検討を進めるということでございます。
  98. 大橋敏雄

    ○大橋委員 自己都合退職者に対する見直しはどうされましたかと聞いたのですよ。
  99. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 ちょっと質問の内容を聞き違えまして大変失礼いたしました。  現在一カ月から二か月となっておりますのを三カ月というように、一カ月から三カ月、こういうふうにするように御提案をいたしております。
  100. 大橋敏雄

    ○大橋委員 自己都合退職者といえども、好きでやめていく人というのはほとんどないのであって、慎重な判断の上に立ってやむを得ず退職されていくわけです。そういう方々に対して、従来も一カ月間の給付制限があったわけですけれども、これを三カ月に延ばすというのは、ちょっと労働者の人権を軽視しているのじゃないかという感じを受けてなりません。これが一つです。  それから、このように一月から三カ月間の制限を設けるわけでございますが、一体だれが何を基準に判断をして、あなたは一月でいい、あなたは二カ月にします、三カ月にしますというふうに決定していくのか。もし職安局長がその判断を下すとなれば、職安局長のさじかげんになるわけですね。したがいまして、私はこれには当然ある程度の基準を設けるべきだと考えるのですけれども、その点いかがでございますか。
  101. 齋藤邦彦

    ○齋藤説明員 ただいま先生御指摘いただきましたように、確かに、こういうような判断が行政官庁の恣意的な判断によって行われるということになりますと、これは非常に問題が大きいだろうと思います。そういう観点から、この給付制限をするかしないかの判断は安定所長の決することにはなっておりますけれども、これは一定の基準に基づいてしなければならないというふうになっております。この基準は職業安定審議会の意見を聞いた上で労働大臣が定める、こういうふうな規定になっております。そういう意味におきまして、職業安定審議会は御承知のように公労使三者構成でございます。そういうようなところで十分御議論をいただいた上での基準に基づいて実際の運用をやっていく、こういう形になるだろうと思っております。
  102. 大橋敏雄

    ○大橋委員 それじゃ、現在まだ具体的には決まってないということですか。
  103. 齋藤邦彦

    ○齋藤説明員 現在、安定審議会において意見を聞きまして労働大臣が定めた基準がございます。いかんせん、この基準は旧失業保険法時代からの基準をずっとそのまま引き継いております。雇用保険法が制定のときに若干手直しをいたしましたけれども、そのままでございます。現在の時勢に合うかどうか甚だ疑問なところもございます。そういう意味におきまして、先ほど局長も申し上げましたとおり今後新しい時代に合った形にできるだけ直していきたい、こういうように思っておるわけでございまして、この関係法律が国会でもし御通過いただけましたならば、安定審議会に十分御意見を伺った上で新しい基準に改正したい、こういうふうに思っておるわけでございます。
  104. 大橋敏雄

    ○大橋委員 大臣、私はこれは重要な問題だと思うのです。というのは、仮にこの法案が予定どおりに通過すると、実施は七月一日ですよ。そのときに、職安の所長さんが、自己退職した人に対して、あなたは待期期間は一月にするぞ、二月にするぞ、三月にするぞ、こう決めるわけですね。その基準が今までの基準しかないというのですよ。これじゃ私は間に合わぬと思うのですよね。もし今回成立しないでいいんなら別ですよ。もしどうしても成立させたいということであれば、こういうところは、現場の職安所長が直接関係する問題ですから、早く決めるべきだと思うのですね。成立してからそういう審議会を開いて云々していたのでは間に合わぬでしょうと思うのですが、いかがでしょうか。
  105. 坂本三十次

    坂本国務大臣 それはおっしゃるとおり、法律が通ってから慌ててやってもおくれてしまいますので、法案をぜひ通していただきたいとお願いをすると同時に、その傍ら、通った場合に備えて勉強を重ねて……(大橋委員「基準をつくるかどうか」と呼ぶ)基準をつくれるように勉強をしておる、こういうことでございます。
  106. 大橋敏雄

    ○大橋委員 それならば理解いたします。当然これは基準をつくらないと、職安ごとにもう混乱するのではないか、私はこういう感じがいたします。  時間の関係もありますので、先ほどのボーナスの入れるか入れないかという問題、あれで切れたんじゃないのですよ。ちょっとくどいようですけれども、もう少しやりますよ。  ボーナス期に離職者が集中する傾向にあって保険財政を圧迫しております、このように労働省の方は言うのです。また資料にも書いてあります。しかし、私はどうも理解に苦しむのですよ。というのは、なぜかといいますと、賃金日額の算定の原則となっていることなんですけれども、被保険者期間の最後の六カ月間に支給された賃金の総額を百八十で除して得た額になっているわけでしょう。だから、いつやめようとも半年間の計算で百八十日で割っているわけですから、労働省の言っていることはどうもぴんと理解できないのですけれども、これはどういうことなんですかね。
  107. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 例えば極端な例で言いますと、ボーナスがお盆手当という形で八月に出るというようなケースがございますね。そうしますと、一月から六月までの六カ月間、その間にはボーナスが入っていないというような問題もまたあるのです。要するに、前六カ月といった場合にそういうケースもないわけではない。そういうことを、ちょっと支給時期との関係で若干問題もございます、こういうふうに申し上げておるわけであります。
  108. 大橋敏雄

    ○大橋委員 私は、この前の審議のときにこれも一つの大きな問題になったと思うのですが、半年間の賃金に対して百八十日で割るわけですね。それはなぜかというと、離職の月によって賃金日額に著しい差が生ずる。したがって、それには基本手当の日額と連動していくから不公平が起こるということからその方式はとられたのであって、多少十二月の離職と夏の離職のボーナスの幅は違いますよ、それは多少の差はあるでしょうけれども、基本的には六カ月間のことで解消されているのではないか。あるいはまた、この六カ月間のこれをとった理由に、離職した月の賃金のみによって基本手当の算定をすることになれば、事業主が意図的に名目的に賃金を増額して、退職手当等の減額を図っていくというような不正の介在を恐れるからである。あるいはまた逆に、離職した月だけ平常の月よりも安い賃金であった場合には、その離職者が非常に不利になるということで半年間をとったわけでしょう。ということになれば、先ほど労働省がおっしゃるような、離職をする月がボーナスの月に偏るなんということではなくなってくる。私は基本的にはそう理解するのですけれども、いかがですか。
  109. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 おっしゃるようにそういうボーナスの月に偏る、ボーナスをもらったらというところに偏るというようなことは、もちろんそういう形で解消される問題であると思います。だけれども、私が申し上げました例は相当極端な例でございまして、ただそういう問題もまだ残ってはいる。先生おっしゃるように、基本的には六カ月ということで解消されている問題であるということでございます。
  110. 大橋敏雄

    ○大橋委員 だから大臣、今の問題は、ボーナスの月の離職者の多発あるいは保険財政を圧迫するというような言い方は余り妥当ではないのですね。この考え方は改めた方がいいと思うのですよ。  もう一点、ボーナスと定期給与の関係から、大企業と中小企業の労働者間に大きな格差がついているから、これを解消するためにボーナスを外して中小企業、大企業の労働者の公平を図りたい、そういう意味からもボーナスを抜くんだという説明がなされているようでございますが、この点についてもちょっと理解に苦しむのです。というのは、先ほど申しましたように、失業給付というのは失業期間中の生活の安定あるいは最低生活の保障ということなんですから、少ないよりも多い方がいいに決まっていますね、考え方としてですよ。そうなれば、大企業と中小企業の格差があるとしても、中小企業の方に合わせるのではなくて、つまり多い方にできるだけ合わせて措置をとっていくんだ、こうでなければならぬと思うわけです。だから、私が今言いたいところは、格差の是正を図るというならば、失業の給付額という大事なものを低い方のレベルで中小の方に合わせるのではなくて、高い方のレベルを基準に行うべきではないですか。そこで、大企業だとか中小企業の格差の調整というものは、ボーナスでどうのこうのとするのではなくて、もともと調整を図っている賃金日額の上限と下限があるでしょう。これで調整するのが妥当ではないですか、本当の意味の調整の仕方ではないですか。私はこう理解するのですけれども、いかがですか。
  111. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 もちろん、今回のボーナスを算定基礎から外すことは、その中小企業の実態に合わせるということではなく、こういうことによりまして、結果としてボーナスの少ないところに影響が少なく、ボーナスの多いところに影響がたくさん出る、こういう結果になるということを申し上げておるわけでございます。  基本的なそういう格差是正のことで、そういう給付の下を上げ上の方を抑えるといいますか、そういう形で全体のバランスをとる、基本的にはそこのところで格差是正を図るべきものであるということは御指摘のとおりだと思います。
  112. 大橋敏雄

    ○大橋委員 それでは、私の考えが正しいことを証明してくださいました。要するに、賃金日額の上限を設けた理由は、結果的には基本手当の日額が高くなり過ぎて最低生活保障という目的から見て適当ではなくなってくる、また再就職への意欲を減退させるおそれもあるということでこういう上限が設けられていると私は思いますし、また低所得層の保護については、基本手当の八〇%から六〇%の範囲を拡大すること、あるいは下限の日額を引き上げること、今回も二〇%引き上げられるということを私は非常に評価しているわけでございます。そういうことで、ボーナスを除くとか含むとか、こういうことで調整することは間違いであることをこの問題は指摘をして、次に移りたいと思います。  そこで、定年退職者などが退職後しばらく休養してそれから再就職活動をしたい、こういうふうに希望する人には一年間の範囲においてそれを認めましょう、こういうふうに今度は改正なされたと思うのでございますが、実際にそんな悠長な人がいるんだろうかなと、私は職安の現場の人の話を聞いてみたら、そんな人はないとは言いませんけれどもまず少ないですね。むしろ、そういうことを決めることで給付をおくらせるというのが落ちですよ。またもう一つ心配なことは、しばらく休養してその後に求職活動をします、それから基本手当をお願いしますということになるわけですけれども、その休養の希望期間のうちにもし交通事故等で大変なことになったとなれば、その人の失業給付の権利はどうなっていくんだろうかということも起こってくると思うのですよ。これはどういうことになりますか。
  113. 齋藤邦彦

    ○齋藤説明員 今いろいろ定年退職者の受給期間の延長の問題について御指摘がございました。私どもといたしましては、確かに数としてそうおられるかどうかは若干やってみなければわかならないことがあるだろうと思いますけれども、現実にそういうことを希望しておられる方が大分我々の耳にも入ってまいります。そういうことを考慮いたしましてこういう制度を、道だけはとにかくつくっておいた方がいいのではないか。これは別に、決して強制して一年間待てというわけではございません。御本人の希望に応じましてそういう処置をとろうというだけでございます。  それからもう一つ、先生御指摘、ございました、その期間で何か病気等の事故があった場合にはどうなるかということでございますが、これにつきましては、現行でも、病気等の関係で受給ができないという場合は四年間受給期間を延長する規定がございます。その規定と組み合わせていけば受給者にそれほど御不便をかけることはない、別に権利を奪うことにはならないだろう、こういうふうに思っておるわけです。
  114. 大橋敏雄

    ○大橋委員 要するに、四年間のうちに再就職できるような状況になる方については今の措置でいいんですね。もしそれ以上、まず再就職は無理だ、考えられないという状況になった方は自然消滅ですか。
  115. 齋藤邦彦

    ○齋藤説明員 まことに遺憾ながら、そういう結果になるだろうと思います。
  116. 大橋敏雄

    ○大橋委員 だから、これはそういう面ではよしあしですね。時間が非常に切迫してきておりまして、まだ聞きたいことがたくさんありますから、次に移ります。  所定給付日数の問題ですけれども、再就職の難易度によってこれまで配慮されまして、九十日、百八十日、二百四十日、三百日の四段階に分かれたわけです。今度は被保険者期間を加味して新しい考え方で給付日数を決めましょうということでございますが、この難易度の状況の変化があったのかどうかということ。それから、従来も被保険者期間の問題があるのでということで、一年未満の者は一律に九十日にいたしますということで、一応は被保険者期間のことも配慮された内容になっていると私は理解しているわけでございますが、その点はどうかということが一つ。それから、被保険者期間を重視した給付日数になるということになれば、その被保険者期間の通算問題が出てくると思うのですよ。その通算問題の出てきたときに、職安職安によって被保険者のいわゆる帰属のない者、また明確でない者等がいると思うのです、そういう者についてはどのような措置なり方法をとられようとしておるのか。また、遡及措置について確認のあった日の二年前までは算定いたしますとなっているわけでございますけれども、もし二年以上私は被保険者でございましたと申し出た者については、それは二年で打ち切りにするのかどうか。その点を明確にお答え願いたいと思います。
  117. 齋藤邦彦

    ○齋藤説明員 今回の改正法におきまして、所定給付日数について若干の変更を加えたいということでお願いしているわけでございますが、これは基本的には就職の難易度によって所定給付日数を定めるという原則は残しつつも、ある程度の勤続期間と申しましょうか被保険者期間の要素を加味した形にしたい、こういう趣旨でございます。この被保険者期間の長短によって所定給付日数がある程度定まるということになりますと、被保険者期間はどうやって現実にはかっていくのかということが先生の御質問の趣旨だろうと思います。御指摘のように、従来とは違いますのでやはり通算的な考え方を入れなければならないであろう、こういうふうに思いまして、離職をしてから一年以内で、しかもその間に保険給付を受けていない場合、このような場合についてはすべて通算をしていくという措置を規定いたしております。これは現実には、すべて労働市場センターにおきますコンピューターに、被保険者の支払金がデータとして保存されておりますので、それをつないでいけばできるということになります。  それから、もう一つ遡及確認の関係でございますが、現行法でも、現行法の十四条に被保険者期間の規定がございますが、これでも、「被保険者となったことの確認があった日の二年前の日前における被保険者であった期間」は通算しない、期間に含めない、こういう規定がございます。これは二年以上たちますと事実の確認が非常に難しいということ、それともう一つは、保険料の時効の期間が二年でございます。二年以上は保険料を取ることができない、こういうシステムになっておりますので、そのような関係から二年以上の期間については確認をしない、こういう規定の趣旨になっております。
  118. 大橋敏雄

    ○大橋委員 一応説明はわかるのですけれども、現場の職安に働いている方々の意見を聞くと、ここら辺が非常に難しいと言っていましたね。理論的にはそうかもしれませんけれども、現場の職安で働いている方々が、被保険者の帰属のない音あるいは明確でない者について今後どうやっていくのだろうかという不安を持っておりましたことと、今回被保険者期間を非常に重要視して給付日数を決めていくわけですから、従来の考え方はもう一回見直すべきだと思うのです。遡及二年の打ちどめをしていることもこれは従来の考え方でありまして、それは年齢だけで支給していた給付日数のときの考え方でありますから、今回このところは見直すべきだということを強く要望しておきます。  次に移ります。再就職困難な音あるいは高校生、大学生の子供のある家庭は、教育費を含めて家計が非常に圧迫されております。そういう年齢の方々は四十五歳から五十五歳、今度の改正でここに給付制限がかかってきたわけです。私はこれは改正ではなく大改悪だと思うわけでございますが、ここはぜひとも現状維持にすべきではないかと私は思うのです。なぜならば、総理府が五年に一度、勤労者世帯の消費実態調査あるいは家計収支調査のきめ細かい調査を実施して公表している資料を実は持ってはきているのですけれども、時間がもう余りありませんから割愛しますけれども、要するに四十五歳-五十五歳というときは、可処分所得よりも消費支出の方がずっと上回っているわけですよ。それにまた教育費がかさむのですよ。この年齢というのは大変なんですよ。給付日数を、従来の二百四十日を、十年以上は現状のままにしましょう、それ以下は落としますということになっているでしょう。これはいかぬ、少なくとも現状維持でいくべきだ、こう思いますが、いかがですか。
  119. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 今御指摘の四十五歳以上五十五歳未満の受給者につきまして、この所定給付日数内に再就職をする人たちの割合は非常に高い率になっております。やはり御指摘のように、家計の主たる担い手というような事情もあるかと考えるわけでございます。したがって、こういう層の人に対しましては、再就職手当制度というものをあわせて創設をいたしておりますので、こういう制度なども使いまして再就職の促進に努めていただく。あるいはまた、それがどうしてもできなかった場合で、特に解雇などによりまして失業を余儀なくされているというような事情のある方につきましては、個別延長給付制度というものの再検討をしっかりいたしまして、そういう個別延長給付の中でそういうような方たちに対応していく。特に解雇というような場面でそうなったような方については、そんな対応を私どもも検討しておるところでございます。
  120. 大橋敏雄

    ○大橋委員 大臣、本当は時間があれば、この総理府の資料を見せれば、四十五歳-五十五歳の間の方々がいかに大変な生活をしているかということが明白になるのですけれども、時間がございませんので割愛いたしますけれども、この四十五歳-五十五歳のところは断然現状維持にしていただきたい。私は大臣にこれを強く要望しておきたいと思うのですよ。大臣の気持ちもひとつ聞いておきましょう。
  121. 坂本三十次

    坂本国務大臣 なるほどおっしゃるとおり、ちょうどその年ごろは子供が大学へ行ったり高校へ行ったりしておって、社会的地位もありましょうし、一番つらいということはよくわかります。今政府委員の答弁を聞いておりましたら、個別延長ということで何とか手助けをしたいということでありますが、あなたのおっしゃることもよくわかりますのでひとつ考えさせていただきたい。
  122. 大橋敏雄

    ○大橋委員 ぜひ私たちの要望を受け入れていただきたいと思います。  次に、雇用保険の四事業の関係の給付金の中には、特定求職者雇用開発助成金などのように、職安の紹介した者を採用した場合でないと支給対象としないというのがございますね。しかし、実際に身障者や高齢者を多数雇用している企業というのは中小零細の事業主でありまして、制度の内容をよく知っていないのですよ。直接雇い入れるようなことが多いし、助成の対象になっていないというわけでございますけれども、中小零細の事業主については以上の要件を外してでも助成すべきではないか。少なくとも、制度を知らないから利用できなかったという事態は解消しなければならないと思いますし、保険料徴収の際は熱心に広報している労働省ですけれども、雇用助成のための制度は特に中小企業等が効果的に利用されて初めて制度が生きると考えるわけでございますが、この具体的な方策を示していただきたいということが一つです。
  123. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 特に中小企業は、大企業に比べまして非常に手厚くしておるというような配慮もしておる制度が多うございます。そういう意味で、特に中小企業によくPRをしていかなければならぬということで、約二十万部パンフレットをつくりまして、各種団体あるいは中小企業団体等の協力を得ながら今PRに努めておるわけでございます。さらにまた、手続等でも中小企業が使いやすいようにするという面でもいろいろ配慮していかなければならぬだろう。そういうことで、PRの面、手続の簡素化の面、こういった面で、特に中小企業でもより使いやすくできるような努力を一層させていただきたいと思います。
  124. 大橋敏雄

    ○大橋委員 要件の緩和もあわせてできますか。
  125. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 要件の緩和についても、同時にいろいろ検討さしていただきます。
  126. 大橋敏雄

    ○大橋委員 時間がありませんので、次へ移ります。  パート労働者対策の問題ですけれども、この委員会でも何回も議論にはなっておりますが、言うまでもなく、女子労働者は五十八年度で四百六十万人、過去十年間で倍増しております。さらに増加傾向にあるわけでございますが、低賃金、劣悪な労働条件で不安な生活を余儀なくされているわけでございまして、この改善が急務でございます。したがいまして、我々公明党も、党独自のパート労働者の労働法を今国会に提案したわけでございます。今後は、高齢化社会が進んでいく状況の中で、女子のみならず高齢者男子のパートの希望者が増加すると考えるわけでございますが、この雇用保険法の中でどう改革されていくのかが一つ。それから、一定の範囲でパート労働者も雇用保険の対象にはなっているようでございますけれども、実際には適用漏れが多いわけです。これに対してどのように対処なさっていこうとするか。また政府も、パート労働対策要綱というもので、こういうレベルで今指導しているようでございます。こういうふうにもう極めて必要な状況になってきておる段階で、法的整備を図っていくべき見地から対処していく必要があるのではないか、こういうことで、これはひとつ大臣にお尋ねしたいと思います。
  127. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 まず、今御指摘のように、女子、高齢者を中心に、パート対策の重要性をお述べになられました。今回の法改正におきましてはこの点については特に触れておりませんが、今度五十九年度においては、雇用保険法の改正とあわせまして省令改正によりまして、特に六十歳台前半層の雇用保険受給者をパートというような形で雇い入れられるということについての助成をしていこうというような形で、制度の発足を今進めておるところでございます。  それからまた、女子については今回の措置には特に触れておりませんが、この問題については、雇用保険適用者として扱い得るパートであるにかかわらず、それがパートという名称だけで適用になっていないというようなところについては、この雇用保険部会の報告書でも指摘をされておるところでございまして、その一層の適用促進を図っていかなければならぬ、そのつもりでございます。
  128. 大橋敏雄

    ○大橋委員 パート労働対策要綱ということで、今労働省が指導していっているわけでございますけれども、もうその段階ではない、もう法律をつくるべきだ、私はこう思うわけでございますが、最後に大臣の見解を聞いて、時間も参りましたので、終わりたいと思います。
  129. 坂本三十次

    坂本国務大臣 公明党初め各党からも出されておられることは承知をいたしております。重要問題であるという認識はもちろん同じでございますけれども、労働省の方といたしましては、いろいろな労使関係の成熟を待ったり、それから労使への啓発、指導をもっと進めてからやった方がうまくいくのではないかというようなことで、まずとりあえず要綱をつくりまして、それによって実質的に進めていきながら、行政指導を進めながら法制化の問題も考えていきたい、こういうふうに思っております。
  130. 大橋敏雄

    ○大橋委員 今、大臣の御答弁を聞いておりますと、とりあえず今の対策要綱で行政指導しながら、あわせて必要があると考えたときは法制化に踏み切っていくのだ。必要であると理解したとき、判断したときということでしょうけれども、我々が主張しますように、まさに今がそのときでありますから、一日も早くそういう判断に踏み切られることを強く要望いたしまして、私の質問を終わります。
  131. 今井勇

    ○今井委員長代理 次に、菅直人君。
  132. 菅直人

    ○菅委員 まず大臣に、今回の雇用保険法の改正について御意見を伺いたいのですが、この間いろいろな議論がなされましたけれども、私が見るところ、今回の雇用保険というのは、やはりいろいろ理屈をつけても、財政的なことを目的として組み立てられているのではないだろうか。特に、国庫負担を何とか削って労使の負担に振りかえれば何とか国としては助かる、こういうねらいであるように思えるのですが、大臣に、そういうねらいというふうに理解していいのかどうか、お尋ねしたいと思います。
  133. 坂本三十次

    坂本国務大臣 国庫の負担をなるべく抑えたいというのは、確かに財政難の時代で、それはやはり国庫負担はできるだけ抑える。しかし、何か工夫をしてこの制度を生かしていきたい、それから労使の負担も、増税なき財政再建の時代でございますから、これもふやさないで、しかし、その中で何とかこの雇用保険制度を守るためにいろいろ工夫をいたさなければならぬ、こういうつもりでございます。  確かにおっしゃるとおり、この雇用保険制度の財政難ということは非常に大きな問題でございまして、これを私どもは、いや、財政難のためではございませんと言うわけにはいきません。それは財政難は大いにあります。しかし、その財政難というものは、いろいろなこの十年の間の大きな変化によってもたらされたものでございますので、構造的変化ということが財政難の原因だ、こういうことで、私ども、構造的変化に対応して、いろいろな雇用政策を進める傍ら、雇用保険制度におきましてもそういう変化に対応した手直しをしたい、こういうつもりでございまして、一概に財政難ではございませんと、そういうしらを切るつもりではありませんが、しかし、財政難は重要な問題であるというか、その基礎に構造変化があるので、これにも対応をいたさなければならぬ、こう思っておるわけでございます。
  134. 菅直人

    ○菅委員 財政難であるということ自体は、これは大臣も、もちろん我々もよく理解するところなのですが、それを改革するに当たって、何か逆の理由をつけているというか、もっともな理由があって改革をしているというふうに幾つかの点でおっしゃるのですが、そこでどうもねらいがそうではないのではないかということを、内容を見て感じるわけです。  少し具体的な中身に入っていきたいのですけれども、労働省からいただいた資料にいろいろな数字が出ておりますが、まず五十八年度の予算ではなくて実績ですね。五十八年度の実績と今回提出されている五十九年度の予算を比べてみて、まず保険給付の総額、いわゆる失業保険給付の総額が五十八年度実績見込みと五十九年度でどれだけふえていくか、その中に占める国庫負担がどれだけになっていくか、そして、逆に言いますと労使の負担がどのように変化するか、五十八年度実績見込みと五十九年度予算について簡単に数字を述べていただきたいと思います。
  135. 齋藤邦彦

    ○齋藤説明員 まず五十八年度実績の見込みでございます。実績見込み、現在のところ支出といたしまして一兆二千九百億ばかり、恐らく一兆三千億ぐらいであろうというふうに思っております。五十九年度予算におきます支出見込みは一兆三千億ばかりでございます。それで差し引きどういう形になるかということでございますが、五十八年度の一般会計からの受け入れは三千三百九十九億ばかりであろうというふうに思っております。それから次に、五十九年度予算におきます一般会計の額でございますが、国庫負担二千九百十億を予定をいたしております。この関係で国庫負担が現実問題として四百億以上、五百億近く減っておるということは現実でございます。ただ、支出の予定額は一兆三千億でございますが、これが五十八年度よりふえておりますけれども、この点につきましては、先ほどもいろいろ御議論がありましたように、再就職手当等に割合多目に予算を見込んであるつもりでございます。そのうち、再就職手当は国庫負担が入りませんので、その意味で国庫負担の方には響かないわけでございますけれども、給付額としましてはそれを入れてあるということになりますので、その辺が多く見込んであるという関係で、給付額自体としてはふえておるということでございます。
  136. 菅直人

    ○菅委員 時間が、私の質問は三時半までですので、こちらの方で少し説明を加えますが、大臣、今の数字、つまり五十八年度実績というのが給付総額は一兆二千九百八十八億、約一兆三千億なんですね。そして五十九年度の予算が一兆三千百三十億、つまり給付総額の伸びは百四十二億、一・一%の伸びに見込まれているわけです。百四十二億給付総額がふえるんだけれども、どういうわけか、国庫負担は三千三百九十九億から二千九百十億、つまり四百八十九億円減るのですね。ですから裏返して言うと、労使負担というのを今聞いたのですが答えられませんでしたが、私の計算によれば五十八年度実績が九千五百八十九億、それが五十九年度が一兆二百二十億、労使負担は六百三十一億円ふえるのですよ。つまり給付総額が百四十二億ふえる。このふえはかなり小さく、一・一%にいろいろな制度の改革によって抑え込む。そのこと自体も大変議論があるところですけれども、その内容自体はもちろん議論があるのですが、その百四十二億ふえる費用の中で、国庫は逆に四百八十九億減って、労使が六百三十一億ふえる、こういう仕組みになっているということを大臣にぜひ、再度よく理解をしていただきたいのですね。  そこで、私が最初に言ったように、財政的なねらい、特に国庫負担を労使負担で振りかえているのじゃないかということになるのですけれども、これについての見解をお聞きしたいと思います。
  137. 齋藤邦彦

    ○齋藤説明員 確かに先生御指摘のような数字になっておるわけでございますが、この理由は、先ほども申し上げましたように就職促進給付、いわゆる再就職手当の創設に伴いまして、それを多額に見込んである関係から、結果としてこのような形になったということでございます。
  138. 菅直人

    ○菅委員 それでは、今言われた再就職手当という問題について話を移っていきたいのですが、今回の制度を見ますと、再就職手当といわゆる給付制限の強化、これがあめとむちの関係に仕組まれていると見ることができると思うのです。つまり、これは後でまた聞きたいのですけれども、給付制限を強化することによって、失業の一般給付を受けるよりは、求職者給付を受けるよりは、もう不十分でも早目にどこかに就職してしまう人がふえるだろう。そうすると再就職手当がたくさん出る。再就職手当がたくさん出れば、これは国庫負担がゼロですから、国の支出が減る。今の労働省の回答は、こうなるのですよと言われたのですけれども、実はそうじゃない。こうするためにこういう形の制度を組んだのじゃないか。つまり、一般求職者給付がふえればこれは国庫支出が四分の一自動的に入ってくる、だから一般求職者給付は何とか抑え込もう。しかし抑え込むだけではなかなか難しいので、それを就職促進給付の方に回そう。それを回すためにはどうしたらいいかというので、あめとしては再就職手当、むちとしては給付制限の強化、これによって振りかえを推し進めよう。その効果がこれだけ大きく見込まれている。こう理解できるのですけれども、こう理解していいのでしょうか。
  139. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 再就職手当の方は、前にもお答えしておりますように、若年層を中心にして転職意識に変化が見られる。そして、容易に転職を重ねる傾向が強くなってきておる。あるいはまた、現行制度に受給者の再就職意欲を喚起するための援助制度がないために、再就職の機会があってもすぐに就職しないで、給付を受け続けた方が有利であるような状況が醸し出されており、いたずらに受給者の滞留傾向が助長されている。こういう問題にこたえるためにこの再就職手当を設けたということであり、再就職手当は、失業中の金ということではありませんので国庫負担がつかないという一つの実態を先生がとらえて、今のようなお話してございますが、そういう金の関係で、いろいろなそういう制度を設けたりあるいは給付制限を設けたりという話ではなくて、あくまで就職の促進ということを基礎に置いての制度創設であるということでございます。
  140. 菅直人

    ○菅委員 これは、大臣が聞かれていて、今の局長の回答をどう受け取られたか。それは理屈ですからいろいろ言えますけれども、給付総額がふえるのに、国だけは一方的に減って、労使負担だけがそれを超えてふえていくという仕組みを考えられたのは大変に巧妙だなと私は思っているのですけれども、ここにねらいがあったのではないかとやはり思わざるを得ないわけです。  そこで、あと短い時間ですが、今言われました再就職手当が若年層にということで、いろいろな議論がなされています。  まず、大臣にお尋ねしたいのですけれども、最近は大変に、若年層を中心に職業をかわるという傾向があります。多分、この部屋にいる、この辺から後ろにいる人は、一度や二度は職業をかわった経験があるのじゃないか。私などもその経験者の一人ですけれども、大臣は、就職の形態として終身雇用というものが理想というふうに考えられるのか、考えるべきと思われているのか。それともある程度、アメリカ社会なんかはその傾向が強いですけれども、自分の適した仕事に、あるトレーニングの期間を経たらさらに適した仕事に移っていく、こういうことも当然あってもいいというふうにお考えになっているのか。その点についての見解を伺いたいと思います。
  141. 坂本三十次

    坂本国務大臣 アメリカのように、自由に職業を選択をして、自分の責任においてまた選択をして移っていくという傾向が、日本の若手の中にも広がってきておることは私も承知をしております。  この間、新宿の職業安定所を私は見学をしましたけれども、確かに受給者の方々がたくさん、ちょうど初めての方々がお集まりでして、その方々は、どちらかというと若手の方々、女性の方々も多いです。定年になって深刻な顔をしているような人はまず少なかったですけれども、そういう傾向はなるほどなと思いました。しかし、それはそれで否定すべきものではないでしょうけれども、日本の経済は一挙にして変化するというわけにもまいりませんし、社会の慣行、雇用システムというものも一遍に変化をさせるというわけにはいかぬと思いますね。今日、ここまで日本が来た一つの大きな原動力というものは、もちろん勤労者の質が高かったのですけれども、労使関係、なかんずく終身雇用制度というものがありましてやってきた。外国のように簡単にレイオフしない、頑張ってやっていくのだ、一つの家庭みたいな気持ちでやっていく、それがいろいろな意味でよかれあしかれあるとしても、そういう終身雇用制度が柱になってここまでやってきたことだけは、諸外国にない一つのメリットではなかろうかと私は思っております。しかも、それをベースにしながらここまで世界第二の豊かな国になってまいりましたし、それから昔と違いまして、第二次産業が大宗でしてあとの産業はその次という位置ではなしに、今逆転しておるような状態で、三次産業だとか新しい先端産業も出てまいりますし、女性も進出してまいりますし、こういう大きな変化のときになりますれば、それはやはり自分に合った職業選択をしたい、こう思っておられる方々が出てくるということも一概に悪いとは私は申されませんが、ですけれども、安定所などで聞く程度では、安定所が全部が全部お世話しているわけではないと思いますが、どうも簡単に転職をされる、いいところへ行く人もあるけれども、トータルとして見るとどうもプラスではなさそうだというふうに、現場の職員は非常に心配をしておりました。というようなことで慎重な配慮も求めたいという気持ちも持っておりますが、それは自分の責任でおやりになることですから、そこに若者が、新しい産業分野が開けているのですから、チャレンジすることは悪いと私は申し上げるつもりはございません。     〔今井委員長代理退席、委員長着席〕
  142. 菅直人

    ○菅委員 もちろん私は終身雇用そのものが悪いと言っているわけではなくて、それが日本の産業のうまくいっている客観的な理由の一つにはなろうかと思いますが、だからといって、若年層が職をかわることがこれまた一概に悪いとは言えないと今大臣がおっしゃったように、悪いこと、いいことということとは違うと思うのですね。つまり社会状況が、その年齢の段階では、そういうふうにある程度自分の意図で職を移っていくことも十分にあるということを前提として、この制度がどう運用されるかという立場に立つべきじゃないか。そうしますと、今回給付制限を一カ月から二カ月というのを一カ月から三カ月に延長するということですけれども、もう時間がありませんので、私の方で問題点を指摘をします、  大臣、これが一番効くのは若年層なんですよ。つまり定年退職であれば、例えば退職して一カ月や二カ月で就職する人は余りいないので、しばらくはちょっと様子を見ようといって、三カ月、半年、様子を見るのは普通なわけです、もちろん定年であれば給付制限も受けませんし。しかし若い人が、二十代ぐらいの人が思い切って何か新しい仕事を始めようと思ったときに、飛び出してはみたけれども次のいい仕事がなかなか見つからない、このときに例えばの話、制限が三カ月というその上限まで持っていかれれば、これは非常に大きな影響を受ける。そうすると、先ほど言いましたように、それじゃとりあえずどこかへ勤めようかという形になって再就職手当を受け取る。それでもいいじゃないかと言われれば、そういう考えでやはりこれはやっているのじゃないかということなんですね。つまり若年層の失業給付というものを結局は再就職手当という形に振りかえることによって、国庫負担はそれには出していませんから大幅に削減される。そういう点で私は、この給付制限それ自体が若年層に与える影響を非常に心配をいたしますし、若年層の転職を、何かこの間の審議を聞いておりますと悪いことだとして議論されているのは、大変問題ではないかというふうな気がいたします。  そのことを特に申し上げ、実は六十五歳以上の問題についても、年金との関係などを含めて大変問題が大きいということを指摘をしてまた質問したかったのですけれども、時間がありませんので、問題の指摘にとどめて、私の質問を終わりにさせていただきます。
  143. 有馬元治

    ○有馬委員長 田中美智子君。
  144. 田中美智子

    ○田中(美)委員 雇用保険の問題について質問いたします。  まずお聞きいたしますが、再就職手当とそれから一般求職者給付とはどうして区別をしているのか、なぜ区別をしなければならないのか。その点について、時間がありませんので、聞いたことにだけ簡潔にお答え願いたいと思います。
  145. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 一般求職者給付は、これは失業中の生活を維持するための給付、こういう形でございます。再就職手当というのは、そこで就職が決まって就職されるについて差し上げるというものでございます。そこが一つ違っておりまして、そこがまた、国庫負担がつくつかないという形になるということでございます。
  146. 田中美智子

    ○田中(美)委員 差し上げるって、どうして差し上げるのですか。
  147. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 これは先ほどから申し上げておりますように、この就職促進給付を差し上げるということでできるだけ早く就職をしていただく、その一つの刺激といいますかインパクトとなるように、こういうものを制度として設けるということでございます。
  148. 田中美智子

    ○田中(美)委員 そうすると、再就職手当というのは御褒美なんですか。
  149. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 御褒美とかそういうものではなくて、とにかくそういう制度がございますのでぜひ、できるだけひとつ再就職をすることについての具体的なメリットというものを生かしてください、保険を全部もらい終わってから就職するという態様ではなくて、早く就職しても、そういう早く就職してもらえるものがもらえなくて損したということはございませんよ、そういうようないろいろな意味を含めましての、一つの制度的な促進のためのインパクトを与えるものでございます。
  150. 田中美智子

    ○田中(美)委員 局長、御自分でおっしゃっていることがわけがわからなくなっているんじゃないですか。論理がおかしいと思うのです。このいわゆる失業給付費というのは生活費なんだと、じゃ再就職手当というのは何か、御褒美でもない、何でもないのにただ金を出すのだ、そんなおかしいことないじゃないですか。これだって生活費ですよ。生活費というのは何ですか、食費だけですか。洋服だって買わなければならないし、新しい職場に行くときには、男の方はネクタイだってワイシャツだって欲しいとか、女だってスカートの一つは欲しいとか、これは生活費じゃないですか。ですから、再就職手当というのはあなたがおっしゃる生活費なんですよ。生活費なのになぜここに国庫補助をつけないかということなんですね。  これはもう聞いても、今までのいろいろな議員へのお答えで、お答えできないということはわかります。結局、国庫補助をサボって労使の方に金をかぶせてくるということです。そして給付はずっと切り捨てていく。ここに非常にその性質が出ている。失業給付というのはもともと全部生活費なんです。そうでしょう。生活というのは子供の教育まで入るのですから、生活費なんですよ。それを、御褒美でもない、何でもない、ただ差し上げますと。こじきに物をくれるのじゃないでしょう。これは生活費なんですよ。ですから、これに国庫補助をつけるのは当然のことだと私は思います。しかし、これはもうこれ以上言っても、あなたの論理の合わないお答えをいただいても仕方がないと思いますので、次の質問に移らせていただきます。  今度の改悪を見てみますと、三十歳以上四十五歳未満の一年以上五年未満、ここのところが、今まで百八十日給付にされていたものが半分の九十日になる。ここのところはどういう人かということですけれども、ここだけが半減されるというように、大変ここだけに絞っている。  これは中職審の答申の中身を見てみますと、今までの審議の中で――局長、ちゃんと聞いていてくださいよ。御自分の頭で考えて答えていただきたいので、うろうろなさらないで。この答申と、それから今まで局長が他の議員にお答えになったことなどを私はずっと聞いていたわけですけれども、この答申に沿ったお答えが非常に多いというように思うのです。これを見てみますと、「雇用失業情勢の構造的変化」と、それからもう一つは「雇用保険制度の運営の特徴」というところで、ここに出ているのを見ますと、高齢者がたくさん給付を取るということと、女がたくさん取るということ、両方ともそうですね。高齢者のことは、きょうはちょっと時間がありませんので、婦人の方に焦点を当てたいのですけれども、既婚者を中心に女子の職場進出が進んでいるということと、また、雇用期間の比較的短い女子の職場進出が続いているというところに非常に焦点を絞っているのですね。そうしますと、この改悪の表を見ますと、ちょうどこの三十歳から四十五歳未満というところは女の人が非常に殺到しているところなんですね。そこをすぱっと切っている。まさに今度の改悪は、国庫負担を減らして給付を減らす、その減らす給付は主に高齢者と婦人にかぶせるという形で、給付を減らすというところを特に婦人にかぶせているというのが非常に明らかに見えているというふうに思います。  では、その三十歳以上四十五歳未満のところですけれども、これは労働省雇用保険課の資料、これで見ますと、大体この年齢のときには、ここでは男子と女子が同じ数で失業給付を受けているのですね。しかしこの調査によりますと、実際の被保険者、掛金を掛けている人、働いている人は、これで見ますと女性の方が三分の一なのに、給付を受けているのは女性の方が半分なんですね。ですから、三分の一になってちょうど男女の比が同じになるわけです。それが半分になっているということは、この年齢のところでは、給付を受ける人が女性が大変多いということが、おたくで出ている数字で言えるというふうに思います。そうですね。
  151. 齋藤邦彦

    ○齋藤説明員 ただいま御指摘がございましたように、三十歳から四十五歳までのところの問題でございますけれども、大体構成比から申し上げますと、その辺の層は、被保険者で申し上げれば、先生御指摘のように三〇%内外が女性だということになっております。一方、受給者の方を見てまいりますと、実員ベースでございますが、三十から四十五歳のところを見てみますと、女性と男性の数、実員ベースで申し上げますと、ほぼ同じぐらいの方がもらっておるということが言えるだろうと思います。
  152. 田中美智子

    ○田中(美)委員 もうちょっとちゃんと聞いていていただきたいと思うのですね。だから実際には女性が多いということじゃないですか。被保険者は少ないのに給付を受ける方は半々だということは、女性の受ける率が非常に高いということではないですか。そういうことじゃないですか。
  153. 齋藤邦彦

    ○齋藤説明員 確かに御指摘のように、受給率の計算をいたしますと女性の方が高い、こういうことでございます。
  154. 田中美智子

    ○田中(美)委員 その次に、これも昭和五十八年の職業安定局の調査ですけれども、これによりますと、自分の都合による退職者というのが、女性の方が男性よりも一八・二%多くなっています。いいですね。ですから、そうしますと今度は、自己都合退職者の場合には今までは一カ月の給付制限があったわけですけれども、今度は三カ月待たなければできないというところですね。そうすると、まさに一番女の多いところ、これをぐっと下げているということが言えるんじゃないかと思いますね。女を目指して、女性を目指してここのところをがさっと半分に給付を切ったんじゃないですか、そういうねらいでやったんじゃないですか、局長さん。
  155. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 今度の改正について、男だ女だという関係でということではなくて、要するに受給者の再就職の促進を図っていくのにはどうしたらいいか、そしてまた、離職と転職意識というものが進んでいく中で、離職というものについてもう少し慎重な判断を期待していくという面からどうしたらいいかというような判断でいたしたということで、それが今お示しの年齢層において先生の分析されたような状態が出ておるという、そのことは否定しませんが、そこをねらってどうこうと、こういうものでは別にございません。
  156. 田中美智子

    ○田中(美)委員 そんな詭弁を言っても、ここだけががさっと落ちているのですからね。そこは一番女が多いところですからね。そこを削っているのですから、そういうつもりじゃないのだけれども、結果的には女のところにかぶせたというお返事だと思います。  さて、この年代の女の人を考えてみますと、最近は、学校を出て働きながらでも子供を産んだりなんかしていくわけですけれども、それで働けなくなって、三十歳ごろになってからまた働くとか、そういう意味で、なかなか女の人が続けて働いていくということは困難だということはおわかりだと思うのですけれども、これも総理府の統計ですね、これを見てみますと、完全に失業給付を受けてしまった人の離職理由というのがあるのですね、なぜやめたかという。なぜ自分でやめたか。この中で圧倒的に多いのが、家事、通勤、健康上というのが多いのですね。それから結婚、出産、育児というのが男はゼロですね。育児のために男が仕事をやめるということはないのですね。この統計ではゼロですね。出産ではないかもしれませんけれども、これは女が多いのですね。ということは、現在の女性の置かれている立場というのは、家事のためや結婚、出産、育児のためにやめざるを得ないということになっているということ、こういう現状があるということ、男性と女性が同じような条件で働けるようにはなっていないということですね。ですから、この年齢のときに自己退職する人が多いのです、自己退職せざるを得ない人が多いのですね。これはこの数字を見て非常にはっきりしています。  それで、こういうことを答申の中でも言っています。「自己都合退職者に対する給付制限期間が一カ月と短いことから、安易な離職をさそう結果」となる、これはおわかりになりますね。期間が短いから安易に退職する。すぐに給付がもらえるから安易に退職する。これはどういう意味なんですか。
  157. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 雇用保険部会の報告でそういう報告がされておりますが、要するに、やめてもう一カ月の待期が終われば、ほかの一般の解雇とかそういうような離職者と同じようにもらえるという形になっておるので、その一カ月をしのげばお金がもらえるというところが、保険があるからというような形で、離職をする際に慎重な判断がなしに、例えばちょっと嫌になったからやめるとかいうようなことだっていろいろあるんではないかというので、そういう表現になっておると思います。
  158. 田中美智子

    ○田中(美)委員 いろいろあるだろうと言うけれども、大臣、寝ないで聞いておいてくださいよ。局長さん、あなたの頭の中には、人間というのは男しかいないと考えているのですか。ちゃんと言ってください。
  159. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 いや、もちろん女性もございます。
  160. 田中美智子

    ○田中(美)委員 そうでしょう。女が半分いるのですよ。その女がなぜ働けない状態にあるかということを考えないで、一カ月だと早く保険給付をもらえるから、だからさっさとやめてしまう、そういうふうに女性を考えてもらったら大変なんです。ちゃんとあなた方の出している資料の中で、きちんと、何のために働けなくなっているかということは家事が女の方にかぶさってきているからだ、こう出ているのです。家庭を持っていたらなかなか働けなくなるのですよ。今のように通勤時間も非常に長くなってきていますと、独身のときには働けていた者も、結婚して家事が多くなってそれがかぶさってきた、こういうことになるだけでも通勤時間が大変苦痛になるということもあるのですね。まして子供を産みますと、子供を育てるということもこれは大変だ。男の人たちが家事をやったり育児をやったりということは非常にまだ少ないわけですから、それはみんな女性にかかってくるわけですね。それだけではありませんよ。例えば保育所に子供を預けて働きに行く。保育所がそれこそポストの数のようにあって、自分の働くのに都合のいいところに子供をぽっぽと預けられればいいですけれども、職場はこっちにあるのに保育所はあっちだということになりますと、今までだったらこういうふうに行くだけでいいわけですけれども、今度は子供をそっちに預けてこう行って、また子供を連れにこう帰ってきてと、こういうことになりますと、今まで勤めていたそちらの職場には勤めにくくなる。だから女性は、自分の家の近くに新しい職を求めざるを得なくなったり、または保育所のそばに仕事を見つけなければならなくなったりという形で、自己退職ということをせざるを得なくなってくるのですよ。何も倒産したとか首を切られたとかそういうことでなくても、そうなってくるのです。  これは、逆説的に言えば働き続けたいということで、最近はほとんどの人たちが働き続けたいと言うのです。今局長さんも、今度の改正は再就職を図るために、できるだけ再就職が早くできるようにするためにこういう改正をしたのだとあなたは言われるわけですけれども、そこの言葉は私はよく聞いておりますので、覚えていてくださいよ。そのために早くしようとしているのに、三カ月の間女性の場合にはこれは出さない。実際には女性は自己退職にならざるを得ない場合が多い。これがあなた方の労働省の統計の中にもきちっと出ているわけですね。ですから逆説的に言えば、働き続けたいのに働けない状態に女性が追い込まれていくのですよ。独身ならばまだ男性とほぼ近い形で行かれますけれども、家庭を持ち子供を持ったら、社会的にも家庭の中の状態にしても、女はみずからやめざるを得なくなってくる。結局は職場というところから女ははじき出されるようになってくるのです。それを自己都合退職だなんて言ったり、そして、次に再就職する意欲が弱いだとか、早く給付が出ると簡単にやめてしまうとか、これはみんな女性を想定して書いているのです。女性と書いたら問題になるからそういうふうに言っていないけれども、実際は女性を想定して書いているとしか思えません。だから、そこのところががさっと半分に削られているのですよ。三カ月に延ばされた上に、給付も半分に減らされるということは、今度の改悪案は女性にとっては踏んだりけったりです。全くひどいものだと思うのですね。労働省の頭の中にそれがこびりついているのですよ。ひょっとしたら罪の意識さえないのかもしれない。まさにこの計画をした人は、これは労働大臣がしたんじゃないでしょう、局長さんの指示のもとにこういうことをやったんでしょう。まさにあなたは女の敵という感じですよ。どう思いますか。まずあなたと、大臣はどう思いますか、両方に。
  161. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 この自己都合退職については、女性の自己都合退職の数も男性の自己都合退職の数もとっておりますが、例えば比較的若い層についての自己都合退職の数は女性の方がやや高こうございますが、男性も同じように高いという事情がこざいまして、別に特に女性だけをねらって自己都合退職を取り上げたということではございません。男性の場合も、比較的若い人についてそういう転職意識が強いという問題がございます。  もう一つ、女性が働けなくなった事情でも、本当に育児のためあるいは家事のため就職ができないという状態があれば、これはたとえ労働をしようと思っても働けないわけですから、そこは雇用保険の受給対象から一応一時中断されるという事情にあるわけでございます。問題は、例えば結婚して今住んでいるところから家を変わりましたために、今おるところからそこの事業所へ通えなくなりましたというような自己都合退職、これは自己都合退職でございますがこういったちゃんとそれなりの理由のあるものは、これは正当な理由のある自己都合退職ということで給付制限もないということでございますので、まさに給付制限の正当な理由ありなしの事情をどう規定するかということとの絡みでございますので、自己都合退職が全部給付制限というわけではございませんので、その辺も誤解のないようにお願いをしたいと思うわけでございます。
  162. 田中美智子

    ○田中(美)委員 誤解しているのはあなたですよ。そんなことは知っていますよ。結婚してもう働かない人には初めから給付は出ない、それは理論的にそのとおりです。そんなことを私は言っていないでしょう。働き続けたいのに自己退職せざるを得ないようになってきている。こういう人たちには十分に給付を与えながら、働き続けられるように早く仕事を探さなければならない。何も育児をしたら必ず仕事ができないということはないのですよ。職場がないからできなくなるということはあります。さっき言ったように遠くへ行くことができにくくなるから、保育所はこっちだし、だから保育所のそばか、自分のうちの近くに職を探そうとすれば、ずっと選ぶ範囲は狭くなるじゃないですか。そういうのを探すときに、そのときにこそ失業給付が本当に必要なんですよ。まして子供を育てながらやっている婦人ですからね。その婦人が一番集中しているところをがさっと半分に削るということは、結果的にそうなったという言い方をなさるかもしれないけれども、まさにそういうすりかえの論理はいけないと思うのです。もうちょっと女性の置かれた立場というものを考えてこの給付は考えなければならないのです。ですから、三カ月に延ばすこともけしからぬし、一番けしからぬのはこの三十歳未満のこれですよ。ここを半分に切ってしまうなんというのは、これは女の給付を削って、失業給付が広がることを削ろうとしているのです。女の犠牲でまだやろうとする。女は働けない、働けないような状態がいっぱいできている。その中を無理して働いてきているのです。その上にまだ足げにするようなやり方だと思います。  もう一つ、大臣よく聞いていてくださいよ。パートですね、常用パート。これは総理府の統計局の調査ですけれども、これによりますと、パート労働者の短時間雇用者数は女が七〇・七%ですね。七〇%は女性なんです。     〔委員長退席、今井委員長代理着席〕 このパートというのがどういう扱いを受けているかということですけれども、これは労働省の雇用管理調査で見てみますと、常用パートタイム労働者を採用する企業がどうしてパートが欲しいかという調査なんです。おたくの方の調査です。この調査でいくと、一番多いところが、人件費が割安になるためだと言っています。人件費が安くなるためだ、そのためにパートが欲しい。パートの七〇%は女性なんです。だから、女を使えば安く使えるからとこう言っているわけですね。その次に多いのが、生産・販売量の増減に応じて雇用調整が容易であるため。ということは、パートはいつでも簡単に首が切れるということです。七〇%のパートは女なんですね。これは低賃金で使える、いつでも生産や販売のあれに合わせて首が簡単に切れるから。こういう形で婦人労働者を使おうという企業の姿勢があるのです。さっきから私は、婦人労働者の方の家庭の事情や男女の関係のことを言ったわけですけれども、企業の方が女性を雇うときには、あなた方の調査によればこういう状態になっているのですね。ですから、女性というのは、もう初めから安定して長期に働かせないという状態で雇っているのが多いわけです。そういう中で、自分の都合でやめたからという形で給付を切る、そして給付の日にちを、待期期間というものを三カ月に延ばすなどということは全く許せない問題だと囲います。  大臣、この点についてどう思いますか。ここは何としても改善してもらわなければ、こんな法案を許すわけにしきません。大臣、自分で私の話を聞いていたのですから、お考えいただきたいと思います。
  163. 坂本三十次

    坂本国務大臣 今あなたと局長のお話を聞いておりましたが、しかし女性でも、自己都合退職の中でもいろいろあって、あなたのおっしゃるように、育児だとか家事とかいうことで特に都合が悪くなったというようなときは、それはその女性が都合が悪いと見ないで、女ですから家事、育児は大事だから、正当な理由の中に入れていけばそういう制限はなくなるはずですから、そういうところをいろいろ、労働省は女の敵ではありませんよ、どっちかと言うと女の味方をし過ぎるくらい大事にしているところでございますから、そこは一々考えてそして基準づくりをしますから、そういうところについては、決して女性だからといって、女性が育児をやったり家事をやったりしたいというのは当然のことですから、そこは基準のところで考えて、そんな女性いじめなんてあなたに言われるようなことのないようにしますから、どうぞ了承してください。
  164. 田中美智子

    ○田中(美)委員 何も、女が家事をしたいとか育児をしたいと私は言っているわけではないのですよ。家事とか育児というものは男も一緒にやらなければならない問題ですけれども、今のところは女がせざるを得ないようになっている。それは基準の中でこれから入れるんだということですが、それは三カ月の話でしょう。三カ月だけの話でしょう。どうして給付を半分にするのですか。給付をなぜ半分にするのですか。これも直してください。なぜそこのところは給付を半分にしてしまうのか。百八十日をどうして九十日で切ってしまうのですか。女性は新しい仕事を探すときに仕事がないのですよ。例えば今大臣がおっしゃったように、育児や家事のためにそこの職場にいられなくなって自己退職した場合はこれは自己都合退職にはしないんだ、こういうことを考えると言われたわけですから、そういうふうに考えていただいてそれはいいと思います。それでそこは一カ月で支給される。しかし、この年齢のところは百八十日を九十日に切っているでしょう。これは、幾ら大臣がそういう気持ちになったからといっても一それではそこも直してください。私が言っておりますのは、男だって自己退職でやめて働く意欲のない人もいますね。女だって自己退職でやめて働く意欲のない人もいます。それはいますけれども、圧倒的多数の女性というのはそうではないのだ。そこをねらってここを削っているというところが女の敵だと言っているのですよ。そこのところをもう一度大臣、お答え願いたいと思います。
  165. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 これは、今までその年齢層に応じまして一律に定めておりましたところについて、給付と負担のある程度の均衡も考えようということで、それを加味して延ばしたところもあれば短くしたところもある、こういう形で持ってきたわけでございます。そういう意味では、ふえるところがあれば減るところもあるという中で、ある程度そういう給付と負担の公平という点を加味しながら審議会で御議論いただいて、そういうものを御提案させていただいておるということでございます。
  166. 田中美智子

    ○田中(美)委員 それは論理のすりかえですよ。ここだけなぜこんなにがたっときているかということです。一番女性が多くて、一番女性が働きにくくて、そして一番女性がパートに使われるところですね。そこの給付が半分になっていることは、どんなに何と言われても、女性を切ってそして給付を減らそう、そして国庫補助を削ろう、こういうことが見え見えたということを言っているんです。それほど女性に失業給付をやりたくないと言うのだったら、女性がもっと働けるようにしてほしいんですよ。そうでしょう、局長。あなたはさっき、再就職ができるだけ早くするためにそういうふうにしているんだ、こう言っていますね、覚えていてくださいよ。それならば、そういうふうにしてほしいのです。女性がここで給付も少なくなるし、三カ月はお金なしで生活しなければならないというところに追い込められるわけです。早く女性が就職できるようにするにはどうしたらいいのですか。
  167. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 確かに女性の場合には、現状においては家事の問題、育児の問題等々ございまして、それがまた就職の阻害といいますか、就職しにくい要因になっているという問題があることは事実でございます。そういった点について、雇用保険の四事業等においても、例えば育児休業の問題等についても若干お手伝いをしておるという形はあるわけでございますが、保険制度の一般論としていけば、例えば今度の再就職手当というものなどもございますので、これはたとえ三カ月の制限期間中でございましてもその手当は出るわけでございますので、そういうものを使って早く就職するということも一つ可能な道ではございます。
  168. 田中美智子

    ○田中(美)委員 出る出ると言われるけれども、半分に削っているじゃないですか。たとえ出たとしても、出るものなんかほんのちょっとじゃないですか。そんなことを私は言っているのじゃないのです。何も女性はお金が欲しくてやっているわけじゃないですよ。大体がみんな働きたいのです。働き続けたいのですね。  これも労働省の調査ですけれども、「勤労者及び勤労者世帯の妻の家族意識に関する調査」、これで見てみますと、「女性が結婚後も職業をもって働くために必要なこと」というので、これもあなた方の調査ですよ、この中で一番多いのは保育所をたくさんつくってほしいということです。その次は育児休業制度をやってほしい、こういうのです。数字を見ますとおもしろいのですよ。「既婚無職」、結婚して働いていない人、この人が働きたいと思うから、育児休業制度が欲しいというのが一番多いのです。いかに結婚してしまうと働けないか。それは家庭の中の育児とか家事だけじゃないですよ。仕事がない。それもろくな仕事がないのです。大学を出ていても、いろいろな技術を持っていても、女の場合なかなかろくな仕事を与えられない。企業は先ほど言ったように低賃金で、そしていつでも首を切れるようにして雇いたい。ここの無職の既婚者が四八・三%あるんですね。この人たちが育児休業が欲しいと言っているんです。それからその次に多いのが、今度は未婚の人、これが自分の将来を見た場合に、これから結婚して子供を産んで今働いている仕事をやっていきたいと思うときに、この未婚の人が育児休業が欲しい、こうなっている。私は未婚の方が少ないのかと思ったら、未婚の人が多いのです。既婚で今働いている人も三八%もいるのですけれども、この三つの中で一番ここが少ないということは、相当無理して働き続けているのです。これを見ましても、未婚、既婚で働いている人、既婚で無職の人が、いかに育児休業を欲しがっているかということが、労働省の調査でもはっきりしていると思います。  そういう意味で、この間の予算委員会の一般質問のときに、私が育児休業制度をすべての企業の中につくるには、企業から、雇った労働者一人についてわずか十円ぐらいを取るならばそれでできるじゃないか、国は一銭も金がかからないじゃないかということを大臣にお話ししたときに、それは大変いい考えたから検討すると言われたのですけれども、そのことについてちょっとどのように検討していらっしゃるか、大臣から伺いたいと思います。
  169. 坂本三十次

    坂本国務大臣 あなたがたしか、企業から十円ずつ出せばうまくいくじゃないか、それはいい話だなと思って、早速、婦人局長は頭がいいですから、検討してもらうように私からもよく言っておきましたから、婦人少年局長の方から……。
  170. 赤松良子

    ○赤松政府委員 先生御提案の紙は、よく拝見させていただきました。さすがに緻密な御計算でございますので、この御計算、そのとおりだ。  ただ一カ所、七カ月育児休業の期間と計算されております点だけは、なぜ七カ月かなというふうにちょっと思いましたが、それ以外についてのことはこのようになるかと思いますが、ただ五千六百円云々というところは、今ある保険料の総額ではございません。それがまず一点でございます。  それからまた、育児休業が普及しない理由、あるいは企業が、あのとき先生の御質問にありました、日経連その他の反対理由を挙げておられるところでも、これだけがネックになっているというわけでもございませんというふうに、ただいま勉強の途中ではございますがそのように思っております。
  171. 田中美智子

    ○田中(美)委員 私が計算しました七カ月というのは、今の平均をとったのです。もっと理想的なものをつくってほしいのですよ。しかし、今制度のあるところでとっている人の平均をとり、今の金額で計算して、このままで十円でできるじゃないか、こう言っているわけです。ですから七カ月が理想だと言っているのじゃないのです。理想を言ったって、こんなひどい改悪案を出してくる労働省ですから、現状で普及するにはということで言っているわけです。  大臣、私は婦人少年局長に今質問をしたのじゃないのです。職安局長、あなたのところが雇用対策四事業でやっているのでしょう。あなたのところが金を持っているのじゃないですか。そうでしょう。それは婦人少年局もやってもらわなければいけないけれども、あなたが一番の張本人のところですよ。育児休暇といえば何でも婦人局長と思っていたら、大臣、認識が足らないですよ。金はそこが持っているんじゃないですか。そうでしょう。それで今、失業給付をいかに減らそうかというのです。このとき育児休業制度をつくったら、これはぱあっと減りますよ。雇用保険のところは女性がだあっと減りますよ。男より女の方がなかなかまじめですから、働いたら。ですから、育児休業制度はあなたの問題じゃないと思ったら大変ですよ。あなたの方がきちっとやらないといかぬと思います。どうですか。
  172. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 雇用保険の四事業で現在はその育児休業手当の財源は出しておりますが、具体的な施行なり、あるいはまた要件の設定なり、PR、普及という点は婦人少年局でやっていただいておる、こういうことでございます。
  173. 田中美智子

    ○田中(美)委員 PR、普及なんて言っていませんよ。制度をあなたがつくればいいのですよ、そういうふうに。そうでしょう。これは先ほど言いましたように、自己退職して全部給付をもらった、これは女が男性の約半分なんですね。ですから、被保険者の数でいけばこれは八万二千ぐらいになっているのですね。これは普通でいけば、育児休業ができれば、これは男と女を同じように考えますと、大体五万ぐらいに女性の給付が減ると思うのですよ。これはあくまでも推定ですけれども。そうすれば、失業給付というのはがたっと減る、雇用保険の財源というのはそれだけ浮くじゃないですか。なぜ女が働けるような努力をしないのですか。そうでしょう、大臣。育児休業制度をつくれば、女の人は雇用保険を取らないですよ。そうでしょう。失業給付をもらわないですよ。なぜ女の方がここの年齢のところが特に多くなっているかということは、育児休業制度がないから、子供を育てながら働ける職場を探さなければならないというところで失業給付を受けるのですよ。育児休業制度があればそういう人はがたっと減ると私は思うのですね、ここのところが異常に女の人が多いわけですから。給付を削って女を追い出すというのではなくて、育児休業制度の方に女を寄せて、そしてこの給付を減らす。その失業給付というのはもともとないのが一番いいのですよ。みんなが働けたら、ないのがいいのですよ。ですから、そういうふうにするには、そこの決断なんです。雇用対策四事業の中にあるわけでしょう。金額はあなたが全部持っているじゃないですか。婦人少年局の方ではやろうと努力していますよ。一〇〇%かどうだかわからないですけれども、していますよ。しかし、何かだんだんトーンダウンをしているので、私は心配しているわけですから。あなた、そこがしっかりせぬからですよ。大臣はあっちばかり見ておってはだめですよ。きょうは雇用機会均等法の質問をしているのじゃないですからね。雇用保険の立場から考えた場合に、国庫補助を五百億ぐらい削ろうというような、それほどこそくなことをしておるわけでしょう。それほど金を出したくないならば、育児休業制度は金を使わないでできるじゃないですか。どうして踏み切らないのですか、大臣。
  174. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 こういう出産により退職された女子が一体どの程度の割合で失業給付を受給することになっていくのか、あるいはまた、失業給付を受けられると思われる方のうち、育児休業制度があった場合に、離職せずにどの程度それが利用されるようになるか、この辺もやはりいろいろ、必ずしも明確な見通しというものができないわけでございまして、そういう財政効果というような形で、ずばりこうなるという形での計算というのは、これは難しいと思います。  いずれにしても、この育児休業制度に対する助成策の拡充という点については、こういう一時的な財政効果という点だけではなくて、やはり今後における女性の就業のあり方、あるいは援助対策との均衡問題、あるいはまた、こういう女性が働けるような状態に全体をどう持っていくかということの兼ね合いの中で検討されるべき問題でございまして、この財政的な計算だけでどうこう議論する問題ではないのではないかと思うわけでございます。
  175. 田中美智子

    ○田中(美)委員 あなた、本当におかしいね。財政的なことだけを言っているわけじゃないでしょう。女が働きたいから働かしてくれと、そうすれば財政的にも失業給付を受ける人が少なくなるということは、これは正しいことじゃないですか。失業給付を受けない人がふえるということはいいことじゃないですか。あなたの論理はちょっとおかしいですよ。ちょっと分裂しているのじゃないかと思うのです。大臣、そうでしょう。失業給付を受ける人が少なくなるのはいいことでしょう。国の金を使わなくったって育児休業制度ができるじゃないですか。  時間がありませんので一なぜ大臣が渋るのか、なぜそこの局長さんは渋るのか。それは財界は、女が定着して働いていくと賃金が高くなるから嫌なんじゃないですか。労働省が財界の気持ちに沿って動いちゃだめですよ。労働省はもっと毅然としてもらわなければだめですよ。女が定着していったら困るのは財界なんですよ、給料が上がりますから。だからパートでやりたい。それに何で協力することがあるのですか。育児休業をつくったらいいじゃないですか、金も何にもなくてできるのに。それに踏み切ってほしいというように思うのです。大臣、どうですか。     〔今井委員長代理退席、稲垣委員長代理     着席〕
  176. 坂本三十次

    坂本国務大臣 いや、経済界だって、女性が働いて、しかも有能な人が働くことを、それをいやがっておるとは私は思いませんですね。しかし、今までそれは過渡期ですから、男性主導型で終身雇用で来たですから、女性がわき役になってきたということはあるにしても、だんだんそうでなくなってきた。優秀なのがだんだん出てきたじゃないですか。あなた、代議士にまで出てきたでしょう。みんなそのまねをすれば、社会に出ても働きたいという人がうんとふえてきておりますから、それを経済界が受け入れないとは、私はそう考えたくはございませんが、しかし、経済界にも一度にこの制度を受け入れろと言っても、確かに抵抗があることは事実です。それは人事管理から何からいろいろ考えておるのでしょう。しかし、これは法律で努力義務にしてあるのですから、婦人少年局だけでなしに、加藤さんの方ももっと熱心にやりますから、もう少し勉強さしてください。
  177. 田中美智子

    ○田中(美)委員 はい。一言、婦人少年局長に伺いたいのですけれども、この間の均等法で、この育児休業制度のところで、記者に発表したときの文言とそれから審議会に諮問したときの文言が違っているのですけれども、この違い方にはどういう意味があるのか。わずか一日の間に文言が変わっている。このことについてお答えをいただいて、私の質問を終わりたいと思います。
  178. 赤松良子

    ○赤松政府委員 私、今ちょっと両方を持っておりませんで比べにくいわけでございますが、私の記憶では、内容的な変化ではなくて文言の整理であったというふうに記憶いたしております。
  179. 田中美智子

    ○田中(美)委員 もう終わろうと思ったのですけれども、それじゃ覚えていらっしゃらないから、ちょっと私が読みましょう。「その他必要な援助を行うことができるものとする」、こういうふうに記者に出したものには書いてありました。しかし諮問したものには、「事業主に対し、助言、指導等必要な援助を行うように努めなければならないものとする」となっていますね。これはどう違うのですか。なぜ文言を一日で変えたのですか、お答え願います。
  180. 赤松良子

    ○赤松政府委員 「できるものとする」と「努めなければならないものとする」でございましょうか。――これは法律用語としては「援助を行うように努めなければならないものとする」と、「なければならない」と書く方が適当である、こういう判断でございます。
  181. 田中美智子

    ○田中(美)委員 そうすると、諮問のときには、「できるものとする」を「行うように努めなければならないものとする」に、文言が悪いから変えたのですか。
  182. 赤松良子

    ○赤松政府委員 文言は、最終諮問は「行うように努めなければならないものとすること。」としたと思います。
  183. 田中美智子

    ○田中(美)委員 じゃ時間になりましたので、質問を終わります。
  184. 稲垣実男

    ○稲垣委員長代理 小渕正義君。
  185. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 私は、前回の委員会で船員関係について若干のお尋ねをいたしまして、時間が不足いたしましたので、その点に限って再度御質問をしたいと思います。  まず、この前の委員会の中でも、運輸省から船員の雇用対策についてのお話しをいろいろなさっておられたわけでありますが、この船員の失業保険の給付数でもわかるように、五十五年には約八万九千件でありましたが、五十七年度にはもう十万四千五百件近くに上り、逐次増大の傾向でありまして、雇用対策はいろいろやられておるにもかかわりませず失業率は依然として高くなっている、こういう現状であります。  前回、陸上については、雇用対策基本計画というものを持ちながら六十五年度に一つの目標を設定していろいろと取り組んでおるというお話がございました。この点に対して、船員の雇用対策についてもこういった具体的な目標を持ちながら中長期的な形の中で雇用対策が推進されておるのかどうか、そこらあたりについて少し具体的な御説明をいただきたいと思います。
  186. 佐藤敬治

    佐藤説明員 運輸省といたしましては、昭和五十二年の十二月の船員中央労働委員会の御答申に基づきます「船員雇用対策の基本方針」というものを持っておりまして、それに沿いまして現在雇用対策を推進しておるということでございます。  具体的な中身につきましては、雇用船員に対します職域確保対策ということ、それから船員制度の近代化の問題、船員の教育訓練に関する対策、離職船員の雇用促進及び救済に関する対策、船員雇用安定及び促進機能の充実強化に関する対策、こういった事項でございますけれども、これに沿いまして現在鋭意検討を続けておるところでございます。
  187. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 いや、先ほど質問しましたように、一つの何らかの目標値を持ちながらそういった努力、計画の推進をされておるのかどうか。さっき例を申し上げましたが、陸上では六十五年度には失業率を二%におさめる、こういった一つの目標を設定して逐次努力するというのを言われたわけでありますが、船員の雇用対策については、一つの何らかの目標値を持ちながら取り組んでおるのかどうかということについて、いかがですか。
  188. 佐藤敬治

    佐藤説明員 船員の雇用問題につきましては、非常に流動的な問題が多うございます。現在、船員制度の近代化の推進をやっておるわけでございますけれども、これのテンポがどのように展開するかというようなこと、それから諸外国の船員の状況等々非常に船員を取り巻く環境条件というものが流動的でございますので、一定の数値を掲げるということがなかなか難しゅうございますので、そういったことではなしに、対策の柱となります考え方というものを答申でいただいております。そういったことに即しまして対策を進めているというのが現状でございます。
  189. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 今いろいろ努力されておるかもしれませんが、年々船員の失業は増大しておるにもかかわらずなかなか実効が上がっていない、有効な対策をどうしても設立させることができないという感じであります。  具体的にお聞きしますが、船員の失業者に対する就職指導あっせんはどこでやられておるのか、具体的にどういう形でそういった仕事に取り組まれておるのか、その点をお尋ねいたします。
  190. 佐藤敬治

    佐藤説明員 船員の職業あっせんにつきましては、全国六十一カ所に船員職業安定所あるいはその安定事務を行うところがございまして、そこで求人求職というものの受け付けを行いまして、あっせんの行為を行っておるわけでございますけれども、現在求人求職の関係が非常に広域化しておるということもございます。したがいまして、ファクシミリというものの整備を進めておりまして、現在全国で二十七カ所、ことしまた一カ所追加いたしますけれども、そういうファクシミリを導入いたしまして、広域的に求人求職というものがいわゆるドッキングと申しましょうか、できるような形で進めてまいりたい。そのほかに職業相談員というものも設けておりまして、求職内容、求人内容が非常に複雑化しておりますので、そういったものに対応できるような相談体制というものもとってまいっておるところでございます。
  191. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 建前はそういうことでしょうけれども、実態として見るならば、失業給付作業に追われて、具体的なこのような仕事というものが余り推進できにくい状況に置かれているのじゃないか、このような状況であることを私ども耳にするわけでありますが、そういう点で、こういった批判に対しては何か御見解がございますか。
  192. 佐藤敬治

    佐藤説明員 船員職業安定所におきましては、失業保険金の給付あるいは失業の認定、それから職業転換の給付金等の支給、そういったことも行っておるわけでございますが、先ほども申し上げましたように求人求職のあっせんというものも非常に重要な業務でございます。こういったものも力を入れてやっておるということでございます。
  193. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 具体的数字をきょうは持ち合わせておりませんので申し上げません。そういうことも手がけておられるということを言われますが、実際にそれぞれの各地域における実態は、今私が申し上げましたように失業給付の認定業務に追われ、それからそれの給付に追われ、しかも窓口はほとんど一人か二人しかおらない、こういうことで、それぞれの窓口の中では、こういった具体的な就職指導あっせんを強化するところまでとても手が回らないというのが実態だと我々は聞いております。したがって、このことについてはまた別の機会に、いろいろと具体的に数字を挙げて申し上げてもいいと思いますが、そういう状況であるわけであります。  運輸省としては、もう少しこういった船員の就職指導あっせんというか、失業率を下げていくための具体的な雇用対策の推進ということについても、地域におけるそういった機関の窓口をもっともっと強化する、こういうことが今日まず一番先決ではないかという気がするわけでありますが、この点についていかがですか。
  194. 佐藤敬治

    佐藤説明員 先ほども申し上げましたように、広域的な職業あっせんというものに力を入れまして、ファクシミリの整備を続けておるわけでございます。それからまた、職業相談員の配置というものをやっておるわけでございます。また人員の増強でございますけれども、これも努力を続けておるところでございます。そういった諸般の対策を講じまして、できる限り効率的に、かつ、十分なる対策を講じていきたいというふうに考えておるところでございます。
  195. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 時間がありませんのでこの問題はここらあたりでやめますが、例えば失業給付金の給付にしても、銀行振込その他を活用すればもっと簡素化するわけであります。そういうことも行われてないという話も聞きます。いずれにいたしましても、そういう事務の合理化をやりながら、そういった就職指導あっせんの方に重点的に取り組まれるような体制を十分研究し、取り組んでいただきたいということを特に申し上げておきたいと思います。  次に、今回の雇用保険法の改正に伴いまして、船員保険についても保険料の大幅なアップをなさっているわけです。今回、陸上の雇用保険については、こういった保険料率等を上げないで、何とか運用の中で切り抜けていきたいということから今回の改正案につながっておるわけでありますが、この船員保険の場合においては、陸上と比べまして約倍までいきませんけれども、料率がかなり高くなるわけであります。そういう料率の引き上げというものは非常に問題だと思いますが、この件について、特にこの社会保険審議会の中でも、「失業部門の財政は、船員の雇用対策の推進と制度運用の適正化によって健全化を図ることが基本であり、保険料率の引上げは極力小幅に止めるべきである。」、こういうふうに答申の中に一言特に触れられておるわけですね。これとの関係で、この料率をどのようにして、どのような考え方でこれだけの大幅アップということになったのか、この点についてお尋ねいたします。
  196. 坂本龍彦

    坂本政府委員 まず、船員保険の失業部門の財政状況が、最近極めて悪化しているということが非常に大きな問題でございます。特に船員の場合には失業率が非常に高くなっておりまして、こういった状態を反映いたしまして、例えば昭和五十七年度の収支を見ますと、単年度で十三億円の赤字でございます。それ以前にも毎年度赤字が続いておりまして、累積で四十一億円になろうとしておるわけでございます。  今回の改正は、雇用保険の改正に準じる改正を行うと同時に、将来のいろいろな船員保険の安定的な運営というものを考えまして、ぜひともこの収支均衡を図りたい、こういう意図を持って改正を考えておるわけでございます。  その際に、私どもといたしましては、社会保険審議会の御答申にもございますように、雇用対策の推進あるいは制度運用の適正化によって健全化を図る、これについては当然であるというふうに考えておりますし、また、それに見合う努力もする考えでございますけれども、何分にも、それだけではどうしても収支を均衡させるというのはなかなか困難である、そういうことから、適正化のほかに給付の見直し等も考えた上で、なお千分の五の料率の引き上げがどうしても必要である、こういう判断に立ち至ったわけでございまして、この点については、極力保険料負担というものの増を避けたいという気持ちを持ちつつも、制度運営上やむを得ない、必要な料率であると考えておる次第でございます。
  197. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 制度運用上必要な措置と言われますが、もちろん、そういう財政上の見地だけから見ますればそういう数字が出てくるかもわかりませんが、こういうアップというものはやはり小幅に、段階的に行うべきでないか。今回は一挙に五%も上げるということになったわけでありまして、そういった点で、被保険者に対する影響がかなり大きいわけであります。したがって裏を返しますと、そういうふうに、陸上の雇用保険については保険料率アップだけは極力考えないということでやるにかかわらず、船員についてだけはこんな大幅なアップが料率になって示された。しかも中身を、給付の均衡ということで雇用保険との関係で見ますならば、今回、雇用保険の改正に伴って船員保険の中身も給付日数その他の改善を行うということになっておりますが、保険料率は陸上の雇用保険よりは上がる、しかも給付の中身は、しからば陸上の雇用保険並みの給付内容かといいますと、陸上の雇用保険よりももっと切り込んでしまった状態にあるわけでありまして、これは被保険者の立場から見ればまさに踏んだりけったりということであります。少なくとも給付が陸上の雇用保険並みぐらいの給付の内容であれば、まだ料率のアップについての理解もそれなりにできないこともないわけでございますけれども、料率は上げるわ、しかも給付の切り込みは陸上よりももっと大きく切り込んでおるということでは、まさに被保険者にとっては踏んだりけったりという、言葉は悪いですが、そういう感がするわけであります。そういう点で、これはどちらかの関係でありますけれども、もう少しそういった意味における考慮が払われてしかるべきじゃないか、これは率直な私どもの意見でありますが、この点についてはいかがですか。
  198. 坂本龍彦

    坂本政府委員 今御指摘ございましたように、確かに保険料率の方は引き上げをいたすわけでございます。一方、給付につきましても今回見直しをいたしておるわけでございます。  この給付の見直しの問題でございますが、陸上の雇用保険に基本的には準じた考え方を持っておりますけれども、やはり船員の失業の状況、それから船員保険という、いわば陸上があらゆる産業を一体として保険制度をやっておるのに対して、私どもの方は海運と漁業という限られた業種における制度であるということで、そういう意味におきまして非常に情勢は厳しい面があるわけでございます。しかしながら、船員の失業問題についてできるだけ私どもの方でも考慮いたしつつ、今回の見直しを行ったわけでございます。  この給付日数などにつきましては、雇用の実態あるいは総合保険という面からいたしまして、従来から雇用保険と違っている面もございますので、必ずしもぴったり一致しているという関係にはなっておりません。その辺も考えまして、雇用保険の方でもある程度の見直しが行われる、その見直しにほぼ見合ったような見直しをこちらとしてもいたしておるというような考え方でございます。  また、実際にはいろいろと、失業の状態等につきまして個々の被保険者の方の実情というものもあろうかと存ずるわけでありますけれども、現実の取り扱いといたしまして、再就職がどうしても困難だという場合には、現行制度におきましても個別に給付日数を延長するという制度もございますので、運用の問題といたしまして、そういう面についても今後できるだけ配慮いたしていきたいというようなこともあわせて考えておる次第でございます。  その他、やはり私どもの立場といたしまして、できるだけこの船員保険制度を何とか安定した形で推移させていきたい、先ほどから申し上げておりますように、こういう考え方を基本に置きまして、今回の改正案を策定したということでございます。
  199. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 見直しをすること自体を否定するものではありませんが、雇用保険の中では、一部については給付日数がふえるというところもあるわけですね。ところが、船員保険ではふえるどころか全部切り込み、しかも、雇用保険の場合最高が三百日というところがありますが、船員保険はすべて二百四十日、こういうところに大きく差をつけておるわけです。だから、そういう雇用保険に準じて見直しをされることそのものを否定するものではありませんが、見直しの中身が雇用保険に準じているどころでない、もうまるっきり独自性を持ってやられているというところに一番大きな問題があるわけです。しかも、先ほど申し上げますように保険料率は大幅に上がる、こういうことです。  今、時間がありませんので具体的に申し上げませんが、一年未満の被保険者の期間の人についても、陸上は九十日そのままであるが、海上については五十日に切り下げる。その他再就職手当の問題、また支給に対するときの退職時の理由のいかんによってはということがありますが、船員の場合には自己都合は一切支給しないとか、そういう意味で、船員保険についてのみが、そういう陸上との雇用保険と見た場合にかなりアンバランスがひどいわけでありますので、そういう意味で、今のようなこういった状態ではどうしても私どもとしては納得できません。したがって、この点については、いま少し雇用保険との均衡をとるという立場での再考慮をぜひひとつお願いしておきたいと思うわけであります。  それからあと一つ、最後になりましたが、実は船員の実態といたしまして、最近のこういう業界の合理化その他もありまして、船員で陸に上がられて陸上勤務につかれる、これは船会社の合理化の一つでありますが、そういう関係が、ケースが多々あるわけであります。したがって、労災法との関係で、陸に上がられて陸で仕事をなさる場合には雇用保険に切りかえるということで、船員保険から雇用保険に切りかえられておる人たちがおられるわけでありますが、今回、こういう被保険者期間を通算する制度を新たに導入することによって、非常に問題になるわけであります。したがって、船員保険の被保険者期間と陸上の雇用保険との期間を少なくともこれは通算するということをしてもらわないことには、一つ非常に問題がある。かように実はなるわけでありますが、この点についてはいかがですか。     〔稲垣委員長代理退席、委員長着席〕
  200. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 この両保険の勤続期間通算の問題につきましては、これは今いろいろ先生御質問にございましたように、保険料の負担であるとかあるいは給付水準の関係だとか、いろいろ相違がございます。それからまた、事務処理上の問題といたしまして、船員としての勤務期間の把握の問題など、いろいろ難しい問題がございまして、簡単に通算というわけにはいかないのですが、今回の雇用保険法の改正で、今後は勤続期間というものも考慮して給付日数を決定する、こういう考え方も持ってきておるわけでございまして、こういう不適合な陸上勤務のために短期間のうちに離職せざるを得なくなったような方については、個別延長給付の要件を定める際に、そういう御指摘のような問題があるということを十分頭に置いて考慮をしていきたい、こんなふうに今の段階では考えておるところでございます。
  201. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 新たにでき上る制度ですから、そういう制度のそういった移行時における問題としてここで新たに出てきたわけですから、ぜひこれは、単なる機械的な、公式的なことじゃなしに、ひとつ柔軟な考えを持って対応していただきたいということだけ強く要望いたしまして、とりあえず私の質問を終わります。
  202. 有馬元治

    ○有馬委員長 塩田晋君。
  203. 塩田晋

    ○塩田委員 雇用保険法一部改正法案につきまして、労働大臣、職業安定局長雇用保険課長にお伺いいたします。  先ほど、小渕議員の最後の質問にございました船員保険の関係で御答弁をいただいたわけでございますが、なおもう少し詰めた話をお願いしたいと思うのです。  今言われましたように、船員保険の被保険者として長年海上で勤務しておられて、いろいろな合理化その他の関係で陸上に上がられる方がかなり多いわけです。その場合に、船員保険の失業保険金を受けずに陸上勤務についた後に、短期間のうちに、仕事に適合しなかったとかいろいろな理由で離職される場合が多いわけです。そういう場合に、先ほどの御答弁では、被保険者期間の通算ということは難しい、こういうことですね。しかし、実質それと同じような効果が出るように、延長給付の中で要件を加味してこれを措置しようということでございますね。それは確認してよろしゅうございますか。
  204. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 そういう事情を考えまして、個別延長給付を検討いたします際に、その事情もよく検討させていただきたいということでございます。
  205. 塩田晋

    ○塩田委員 例えば、具体的に個別延長給付の要件の中にどういう形で入れるようなことになりますか。
  206. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 この個別延長給付問題は、具体的にそれを規則で定める場合に、やはり職安審議会におきまして十分御審議もいただいて決めるという形になるわけでございまして、今ここで、具体的にこういう形というところまで申し上げる段階には来ておりませんが、私どもも、御指摘の趣旨はよく踏まえてその辺は検討していきたいと思っております。
  207. 塩田晋

    ○塩田委員 ここで、こういうふうに入れますということが言えない事情はわかるのです。まだ手続が審議会等の議を経ないといけませんし、各方面の意見を聞いて決められることだと思います。しかし、技術的な問題を私は聞いているわけです。例えば決まったとしなくても、どういうような形でどういう表現で入れることが可能だ、どういうような文言といいますか表現で、要件を入れるようなことが考えられるか。決まったと言わなくてもいいのです。例えばこういうことが考えられます、決まったことではないけれどもそういうことを検討いたします、ということをちょっと具体的に言っていただきたいわけです。
  208. 齋藤邦彦

    ○齋藤説明員 具体的にどのような形で省令等を定めますかは、今後の問題でございます。安定審議会等の御意見を伺って、具体的にどういう形にするかはこれからの問題だろうと思いますが、ただいま局長から御答弁申し上げましたように、そういうような実質的に通算的な感じが出るような日数で何とかいたしたい、こういうふうに思っているわけでございます。
  209. 塩田晋

    ○塩田委員 もう少し具体的な御答弁が欲しいのですけれども、今の御答弁にございますように、何とかいたしますということは確認してよろしゅうございますね。それは何とかできる、こういうことで確認してよろしゅうございますね。
  210. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 そういう審議会の審議もございますのであれですが、私どもとしては、そういうことをいたしたいということで検討させていただきたいと思っております。
  211. 塩田晋

    ○塩田委員 わかりました。ぜひともそのように措置をしていただきたいということを、ここでお約束できたものと受け取っておきたいと思います。  今回の雇用保険法の一部改正の主なる柱といいますかになっておりますものの第一が、基本手当の日額の引き上げでございます。この問題につきましては、趣旨は結構でございます。非常に結構なことであると私は思います。ぜひともこれは実現をしていただきたい。いい方向だ。福祉の前進という立場からこれはいいことだと思っております。ただ、非常に先の心配をするわけでございますが、財政事情がいいときは、できるだけ賃金の低いところの方々のために給付額を上げるというのは結構なことでありますね。六割原則で成り立っている雇用保険の給付を八割までできるだけ賃金の低いところから上げていくということは、考え方はいいのですけれども、財政が豊かであるときはどんどん上げてもいいように思いますけれども、福祉というものはかなり長期を見て、財政的に余裕があるからといってそのときに大盤振る舞いをしますと、いずれまた、いや、財政が苦しくなりましたので、もとへ戻して、八割しておったのを七割、あるいは七割から六割に落とさなければなりません、というような改正になっては困ると思うのですね。ですから、社会保障というものは着実に前進すべきであって、一挙に大盤振る舞いして、また戻して、またということにならないように。そういう点からいいますと、私は、果たしてこう大幅に上げて大丈夫かなということを危惧するわけです。それが単なる危惧、杞憂であればいいわけですけれども、今回の場合がなり上げていますね。本当にその点は大丈夫でしょうか。財政必ずしも十分と言える中でないところ、こういうふうにかなり大幅に上げていくということはいかがなものでしょうか。大丈夫ですか。
  212. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 この引き上げにつきましては、先ほどからも議論が出ておりますように、ボーナスを賃金の算定基礎から外すということに伴いまして平均いたしますと二割ぐらい給付が下がる、そういうことと対応いたしまして、特に低位、中位の方たちについてそういった問題を解消することが必要だ、適当だということで措置をしたものでございまして、財政的にそういった点についての今後の見通しというようなものも一応ロングで見ながら、基本的にこういうことでいくしかないではないかということで、そういう制度の提案になったものでございます。
  213. 塩田晋

    ○塩田委員 これは各国の雇用保険といいますか、各国は雇用保険という名称の制度はほとんどないんじゃないかと思います。全部と言っていいほど、失業保険あるいは失業保障という制度になっておると思うのです。その各国の例を見ますと、大体六割から多いのは八割、あるいは八割を超えておるところもございますが、大体六割が基準になっておるのが通例です。そういう点からいいますと、八割まで上げるというのは、社会保障という面からは相当思い切った前進だと思うのです。財政的に大丈夫だということであればそれで結構でございますが、後戻りしないようにぜひともやっていただきたい。ヨーロッパの社会福祉の先進国と言われている北欧の諸国におきまして、昨年ずっと視察してまいりましたところ、やはり保険の給付の率が余りにも高過ぎて、八割を超えているところを八割に戻すとか、あるいはそれを見直していくという動きが最近出ておりますね。行き過ぎだから戻すというか、正常化するんだと言っておりますけれども、一たん八割五分なり九割までいったところから戻されるのは、やはり受け取る側からいいますと予定しておったものが突然減るわけですから、そういうことのないように着実に、しかも一たん前進すれば後退しないように、その辺を配慮してやっていただきたいと思います。  なお、我が国の場合はこれは無税ですね。年金なんかは、あるいは退職金はもちろんそうですが、税金がかかってまいりますね。ところが失業保険に限っては、これはほかの制度ではほとんどないんじゃないかと思いますが、無税ですね。無税であるということは、ほかのものと並べますと、こういう制度であって非常に昔から優遇されているわけです。そういったことを考えますと、名目の賃金支払額に対する八割ということは、実質は九割あるいは九割を超えている場合もあると思います、手取り額から見ますと。手取り類とほとんど変わらない層も出てくるんじゃないかと思うのです。そういう点からいいますと、再就職促進という雇用保険の制度的な趣旨からいいますと問題の出ている面もあるんじゃないかと思いますが、この点いかがですか。
  214. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 この雇用保険の給付金は、失業中の生活を支える貴重な資金であるわけでございまして、これについては法律でも無税という形になっておるものでございます。今度それが問題になっておりますのは、これは無税ですので、結局賃金の方の説とか社会保険料等々をいろいろ抜きました後の手取りとの関係で、それと比べて相当高い水準にあるということで、ボーナスを算定基礎から外すという措置をとったわけでございまして、雇用保険のこれは私どもとしては無税という原則をできるだけ貫いていきたい、またそうすべきものではないか、こう考えておるわけでございます。
  215. 塩田晋

    ○塩田委員 次に、今回の改正案の大きな柱になっておりますのは賃金日額の算定方法の変更であり、この委員会でも議論をされてまいりました、例のボーナスを保険料徴収の算定の基礎にするけれども、給付額の算定基礎には入れない、こういうことですね。これのどうしてもこうしたいという一番の根拠は何でございますか。
  216. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 ボーナスを算定基礎から外しますのは、現在の保険の給付水準が、課税対象になってないため、毎月の手取り賃金という、税金とかそういったものをいろいろ抜きましたものと比べると九割とか、相当高い水準にある、それからまた、再就職賃金というものと比較してみますと再就職賃金よりは相当高目の給付になっておる、そして、またさらに、こういう再就職促進のための具体的な制度もないこともあって、雇用保険受給中において逆になかなか再就職が進まないというような問題を解消して、再就職の促進を図っていく保険制度本来の趣旨をある程度もっと生かせるように、効果的に発揮できるようにということでやったわけでございますが、保険料の徴収という面で考えますと、これは、この保険給付というものを賄う財源を毎月の賃金でのみ徴収していくのか、あるいはボーナスも含めたものから徴収していった方がより無理がない形ではないか。毎月の賃金だけから徴収することにすれば、毎月の賃金から徴収する保険料を今よりも相当上げなければならぬ、それよりもボーナスという臨時に支給されるものにも保険料負担というものをかぶっていただいて、毎月の賃金から取るものは今までどおりにしていくというような形でやることが無理がない徴収方法であろう、こういうようなことから、ボーナスを算定基礎から外し、しかしながら徴収についてはボーナスからもいただく、こういう制度が提案しております理由でございます。
  217. 塩田晋

    ○塩田委員 ボーナスから保険料を徴収しないとした場合、五十九年度の保険収入額はどれくらい少なくなりますか。それと、健康保険等はいわゆる三カ月の標準報酬月額の算定方式で、保険料も給付の方も考えていますね。そういう標準報酬月額という厚生省の各種保険がとっているような方式をなぜとられないのか、あわせてお伺いいたします。
  218. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 賞与からの保険料収入が二千八百億でございますので、これは全体の三二・九%に当たる額で、もし取らないとすればそういうことになるということでございます。  それから、標準報酬月額方式ではなくて賃金という形をとりますのは、今までの経緯からいきまして、賃金プラスボーナスという形できましたものを、前六カ月の賃金という形を残したまま、それで今までの事務手続等々構成されておりますので、そういうものでやろうということでございまして、標準報酬月額方式というのは実は労働省はとっておりませんで、例えば労災保険の場合には前三カ月の平均賃金、こういうような考え方をとっておりまして、そういう前三カ月の平均賃金というものをとる方式もあれば、あるいは前六カ月の賃金というものをとる方法もあれば、あるいは標準報酬月額方式というものもあろうかと思いますが、既に制度的にそういう形でずっとそれぞれ仕組まれておりますので、特に今回そういった形に変えなければならぬ、変えるべきものだという積極的な事情は見出しがたかったので、今までの前六カ月の賃金ということでやっておるものでございます。
  219. 塩田晋

    ○塩田委員 総保険料額の二三%程度ということですと、掛けると大体五百何十億になりますか。
  220. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 二千八百億です。
  221. 塩田晋

    ○塩田委員 掛ける二三でしょう。
  222. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 二千八百億でございまして、総トータルの二三・九%を占めるということでございます。全体としては五十七年度保険料収入は一兆一千七百億でございまして、その二三・九%で、二千八百億が賞与からの保険料収入でございます。
  223. 塩田晋

    ○塩田委員 そうしますと、この賞与からの保険料を取らないという場合は二千八百億減になるのですか。五百億じゃないのですか。
  224. 齋藤邦彦

    ○齋藤説明員 今局長から御説明をいたしましたように、現在の保険料率及び被保険者数がこのままであるということを前提にして計算をいたしますと、恐らくボーナスからの保険料収入というのは大体二千八百億になります。したがって、現行の保険料率は平均千分の十四・五でございますけれども、この千分の十四・五をもとにして賞与以外の通常の賃金に対してだけ保険料を収納するという形になれば二千八百億減収になる、こういう意味でございます。
  225. 塩田晋

    ○塩田委員 そうですか。それはちょっと多過ぎませんか。
  226. 齋藤邦彦

    ○齋藤説明員 ただいまは保険料の減収の関係の数字を申し上げました。もう一つ別な感じといたしまして、ボーナスを保険給付の算定基礎から除くことによってどれくらい節減と申しますか、本来払うべき金額から節約になるか、こういうのを計算いたしますと、五十九年度予算におきましては大体五百五十億、これは今年度七月実施を予定しておりますから、七月からの計算をいたしまして、減少額として五百五十億だというふうに御理解いただきたいと思います。
  227. 塩田晋

    ○塩田委員 今の点はわかりました。五百五十億円ということですね。  次の大きな柱でございますが、この給付日数、これの変更でございますが、所定給付日数を、今までは年齢別に一律に決まっておったのを、被保険者期間に応じて年齢別に決めていくという新たな変更でございますが、この点につきまして、諸外国で現行制度のように年齢別で給付日数を決めている国はございますか。世界の大勢はどうでございますか。
  228. 齋藤邦彦

    ○齋藤説明員 各国それぞれ独自の保険制度を持っております。したがいまして一律にどうこうというわけではございませんけれども、私どもが把握している限りにおきましては、フランスで同じように年齢によって給付日数を定めていた例がございます。しかしこれも、御承知のようにフランスは保険財政が極めて悪化をいたしまして、年齢でなく被保険者期間をも勘案した所定給付日数を決めるように、制度の改正がごく最近行われております。私どもが承知しておる限りにおきまして、そのほかに給付日数を主として年齢によって定めておるという国はないように承知しております。
  229. 塩田晋

    ○塩田委員 大体この失業保障、失業時に所得を保障していくというこの制度は、イギリスの失業保険制度を初めといたしまして各国ともこの制度が整備されてくる中で、世界共通の観念というものがあるはずです。この失業保険法が今各国で持たれておりますけれども、その基本的な原理というものはかなり確立されたものがあるわけでございます。その中で、年齢が高いほど給付額を多くするということは、思想的には失業保険制度の中にはなかったと思うのです。フランスの例をちょっと言われましたけれども、これは全面的に年齢だけでやっているのではなしに、年齢を加味しておったということであって、最近また手直しをしておるということでもありますように、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、スウェーデン、デンマーク等々のこういった社会保障の先進国といわれるところは、全部被保険者期間に応じて保険というその技術的なものをここに導入して、失業についての保険制度を確立しておる。これが実情ですから、被保険者期間に応じて給付日数を定めるというのが、これはもういかなる国であってもそうであったはずです。我が国において十年前にこれをやられたときは、恐らくかなり財政的な余裕があったからやられたのと、一つは事務的に非常に簡素化されるという面があったと思うのです。その点のメリットは認めるのですけれども、極言をすれば、そもそも保険原理、失業保険保障という面からして基本的に間違っておったのではないか、私はそのように考えるわけです。そういった面で、まあ一挙にもとへ戻さないで、若干経過的に本来の姿に、世界的な共通の立場に立ち返ろうという方向であることにおいては、私はこのことを認めるものです。しかし、同じ年齢階層におきまして三段階にしているということにつきましては、一挙に三段階にしないで、二段階ぐらいに手直しをするというお考えはございませんか。
  230. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 今回やはり、保険原理といいますか、要するに保険の給付とそれから負担というもののある程度のバランスというものが必要であろう、こういう保険というものの性格からいってやはりそういうものが要るであろうということで、こういうのを導入したわけでございますが、これについては、これを二ランクにするということでございますと、そういうバランスの関係の問題からいって、そういう給付と負担のある程度のバランスという観点から言うと、二ランクというのは少し少な過ぎるのではないか。やはり三ランクぐらいは要るのではないか。また、それがもう少し多くなりますと、今度はまた事務的にも大変な刻みになってくるという問題等もございまして、私どもこの三段階の刻みというものを御提案を申し上げておるということでございます。
  231. 塩田晋

    ○塩田委員 私は、基本的には被保険者期間だけで決まっておった、何十年来そうやってきた、戦後もやってきた、その方が本来的な姿であるし、世界の姿だと思うのですね。そういう点では、もとへ戻していくのはいいと思いますけれども、一挙に行くのではなしに、軟着陸するということが必要じゃないか。そのためにも、特に四十五歳前後の人たちは、雇用の必要、再就職の困難性からいって、実質二段階になるような、運用上今の延長給付制度を活用して十分に配慮していただくことは可能だと私は思うのですが、そういうふうに運用をしていただきたいと思いますが、大臣、いかがですか。
  232. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 三段階の刻みを今度入れてきたわけでございますが、その中で給付が下がる人が出てくるということがあるわけでございます。しかし、倒産あるいはまた人員整理等によりまして離職をされ、就職が困難で、実際にこの短縮された期間において就職することができないというような方については、この個別延長給付という形によりましてその就職のできるまでの期間というものも配慮しながら、ある期間、こういう個別延長給付によって短縮した形のものの問題点を解消する方向での対応、これは一定の、人員整理等によってという方とか就職困難な方とか、そういう要件は要ると思いますが、そういうような検討というものをしていく必要があるだろう、こんなふうに考えておるところでございます。
  233. 塩田晋

    ○塩田委員 今御答弁ございましたように、運用で延長給付一カ月あるいはもっと一カ月を延ばしてもらいたいと思うのですが、そのあたりは、一たん直した制度ですから、それを戻すのに余り急激にやらないで、就職の促進の観点から、あるいはその必要性から、状況によって個別に、その点は運用で延長給付を十分に活用してやっていただきたい、このことを要望しておきます。  そして、我が国の雇用保険、失業保険というものは世界的水準を行っていると思います。しかし、根本には労働の意思と能力があるにかかわらず就職ができない。それを雇用促進という立場からこの制度が各国とも組み込まれておるわけでございます。しかも労働の意思というものと能力、その能力の中には単にアビリティー、体力的能力、知的な能力だけではなくして、環境的な能力、いつでも働きにいける、アベイラブル・ツー・ワークというか、いつでも働きにいける状態にあるということも環境的能力というものになると思うのです。そういった観点からは、自己退職というか自分で勝手にやめみ、勝手にというわけじゃないが、自分の意思でやめていった、いわゆる自発的失業と言われるような人はやはり非常に問題があると思うのです。各国の制度では、そういうものには給付をしないというものもあります。我が国は給付していますね。しかし給付制限をある程度加えている。我が国の場合は一カ月ぐらいでしたけれども、今度は二カ月ということですが、そういった制度でもってこれを運用していっているというのが各国の例ですから、そういった各国の例をよく調べられて、そして世界的な水準でこの雇用保険、いわゆる失業保障というものを運用していっていただきたい。このことを切に望みまして、私の質問を終わります。      ――――◇―――――
  234. 有馬元治

    ○有馬委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  内閣提出健康保険法等の一部を改正する法律案審査のため、五月九日、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  235. 有馬元治

    ○有馬委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次回は、明後二十六日木曜日午前九時三十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時十六分散会