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加藤(孝)
政府委員 今回の一時金を外しました
理由につきましては、
雇用保険部会でこの辺は特にまたいろいろ議論をされたわけでございまして、この関係につきましては、私ども、
雇用保険部会の考え方に従いまして、この
ボーナスを外す関係についての考え方を固めたわけでございます。
具体的にその点について申し上げてみますと、まず、
失業給付の額が今まで通勤手当だとか
ボーナスを含めて
算定をされておる、そしてそれの六割ないし八割、こういう形で来ておる。そしてまた、この
保険金には所得税とか
社会保険料がかからない。また、
失業中でございますので、安定所へ月に一回ないし二回とか出てこられる費用は要るかもしれませんが、一般的な通勤費というものもかからない。こういうような関係がございまして、まず一つには、この
保険の
給付の水準というものが、実際に毎月の
手取り賃金というものとの対比をしたらどんな割合になるだろうか、こういうふうなことで試算してみますと、総理府の統計局調査による家計調査で標準世帯の第Ⅱ分位階級、こういうものをとってみますと、主婦と子供二人、こういう標準世帯をとってみたわけでございます。いろいろ税の関係がございますので、そういう例をとってみたわけでございます。
それでいきますと、定期収入が、毎月の給料が二十二万五千円の方という例でまいりますと、その方の賞与を月割りにいたしますと毎月五万五千六百円、こんなような数字になるわけでございます。現在の
保険の
給付額は、この毎月の給料二十三万五千六百円と賞与を月割りにいたしました五万五千六百円というものを加えました二十九万一千円という額に対する六割ないし八割、こういうような
給付になるわけでございまして、この二十九万一千円に対比をいたします
給付額は十七万八千二百円、こういう金額になるわけでございます。
一方、毎月の給料で二十三万五千六百円をもらっておられる方の手取り収入、そういう各種の
社会保険料であるとかあるいは所得税とか住民税等を引きました手取り収入と手取り
給付額といいますか、それを対比してみますと、実際にはその割合はこの例でいきますと九一・二%、こういうような割合になる。大体そういう
意味で、毎月の
手取り賃金と
保険の毎月もらう金額との関係が相当に、そういう
意味では
失業しておるときと実際に働いておるときとの額が余り変わらないような額になっておる、こういう問題が一つあるわけでございます。
それからまた、
保険をもらいながら次に
就職を探しておられるわけでございます。その
就職の際の再
就職賃金というものがどんな水準にあるかということで見ますと、これは東京の飯田橋の安定所といいますと
日本では一番
賃金の高いところではございますが、そういうところにおける男性の再
就職賃金の中位数というものが約十二万円程度のところにある。あるいはまた、女性の場合でございますと十一万円程度のところにある。こういうような状況でございまして、例えばこういう十七、八万円というようなところになってきますと、求人が極めて少ない状態になってくる、こういうような現状にあるわけでございます。
こういう
保険の
給付の実際の額というものが、実際に働いておる
賃金との対比で余り変わらない額になっておる、あるいはまた再
就職賃金との関係で言うと相当に高いものになっておる、こういうようなことが、再
就職をその人に勧めていくことについて、ある程度
保険をもらい終わってから
就職をするか、こういうような状況をひとつ醸し出しているという問題があるというような指摘がされておるわけでございます。
それから、もう一つの問題といたしまして、
ボーナスの今の分布というものを考えてみますと、毎月の
賃金で規模別に見ますと、中小企業では確かに
賃金は低い、それからまた大企業では
賃金は高いという状況がございますが、こういう三十人未満のところとそれから大企業と比べましても、
賃金の格差というものは三割程度でございます。ところが、これが
ボーナスとなってまいりますと倍以上の違いがある、こういうような問題があるわけでございます。
それからまた、
ボーナスの
算定を入れるということの絡みでの問題は、
ボーナスをもらっておる時期が算入をされるかどうかによっての違いがある。具体的に申し上げますと、前六カ月ということでやっておりますので、極端な例を言いますと、
ボーナスが七月に出る人が六月にやめるということになりますと、
ボーナスが全く算入されないという形で、
ボーナス全くなしの形の
賃金だけの
算定になる。あるいはまた、夏の
ボーナスと冬の
ボーナスとは一般にはある程度冬の方が高いというような問題がございまして、夏の
ボーナスを含む六カ月でやめた場合と冬の
ボーナスを含む形でやめた場合との金額もまた違ってくる。それからまた、
ボーナスの性格からいたしまして、景気のよしあしによりましてこれはまたいろいろ変動するというようなこともございまして、
算定基礎として
ボーナスが入っておるということによりますいろいろ問題等も非常にあるということでございまして、今申し上げましたようなそういった事情を総合的に勘案をいたしまして、この際
ボーナスというものを
算定基礎から外して、そして毎月の
賃金の六割ないし八割
原則というものにしよう、こういうことで踏み切ったわけでございます。
しかしながら、やはりそれによりまして、したがって全般に
保険の
給付額が下がるわけでございます。そういう面について、特に低
所得者層について、あるいは
給付の額の低い層につきまして、そういう措置によって大きく下がるということは問題でございますので、そういう低い層あるいは中位層につきましては、
給付の額あるいは率の引き上げをいたしまして、そういう
意味で、この
ボーナスを外すことに伴う措置についてのそういう中低
所得者層への影響の緩和というようなことの
配慮をしながら、こういう
ボーナスを外すという措置をとった、こういうことでございます。