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1984-04-17 第101回国会 衆議院 社会労働委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年四月十七日(火曜日)    午前十時二分開議  出席委員  委員長 有馬 元治君   理事  愛知 和男君 理事 稲垣 実男君   理事  今井  勇君 理事 丹羽 雄哉君   理事  池端 清一君 理事 村山 富市君   理事 平石磨作太郎君 理事 塩田  晋君       伊吹 文明君    稲村 利幸君       古賀  誠君    斉藤滋与史君       自見庄三郎君    谷垣 禎一君       中野 四郎君    西山敬次郎君       野呂 昭彦君    浜田卓二郎君       箕輪  登君    網岡  雄君       河野  正君    多賀谷眞稔君       竹村 泰子君    永井 孝信君       森井 忠良君    大橋 敏雄君       沼川 洋一君    橋本 文彦君       森本 晃司君    小渕 正義君       塚田 延充君    浦井  洋君       田中美智子君    菅  直人君  出席国務大臣         労 働 大 臣 坂本三十次君  出席政府委員         労働大臣官房審         議官      野見山眞之君         労働省婦人少年         局長      赤松 良子君         労働省職業安定         局長      加藤  孝君         労働省職業安定         局高齢者対策部         長       守屋 孝一君         労働省職業訓練         局長      宮川 知雄君  委員外出席者         社会保険庁医療         保険部船員保険         課長      佐藤 隆三君         農林水産省構造         改善局就業改善         課長      大賀 忠直君         通商産業省立地         公害局立地指導         課長      岩田 誠二君         資源エネルギー         庁石油部備蓄課         長       岩田 満泰君         運輸省船員局労         政課長     佐藤 弘毅君         労働省職業安定         局雇用政策課長 佐藤 仁彦君         労働署職業安定         局雇用保険課長 齋藤 邦彦君         社会労働委員会         調査室長    石黒 善一君     ――――――――――――― 四月十二日  母子保健法の一部を改正する法律案平石磨作  太郎君外四名提出衆法第一六号)  児童福祉法の一部を改正する法律案平石磨作  太郎君外四名提出衆法第一七号)  医療法の一部を改正する法律案内閣提出第六  七号) 同月十七日  国民年金法等の一部を改正する法律案内閣提  出第三六号) 同月十六日  男女雇用平等法パート労働法制定に関する  請願浅井美幸紹介)(第二七六三号)  同外一件(新井彬之君紹介)(第二七六四号)  同外二件(有島重武君紹介)(第二七六五号)  同外一件(池田克也紹介)(第二七六六号)  同外一件(石田幸四郎紹介)(第二七六七号  )  同外一件(市川雄一紹介)(第二七六八号)  同(遠藤和良紹介)(第二七六九号)  同(小川新一郎紹介)(第二七七〇号)  同外一件(大久保直彦紹介)(第二七七一号  )  同(大橋敏雄紹介)(第二七七二号)  同(近江巳記夫紹介)(第二七七三号)  同外二件(岡本富夫紹介)(第二七七四号)  同外一件(長田武士紹介)(第二七七五号)  同(貝沼次郎紹介)(第二七七六号)  同外三件(木内良明紹介)(第二七七七号)  同(小谷輝二君紹介)(第二七七八号)  同(駒谷明紹介)(第二七七九号)  同外六件(斉藤節紹介)(第二七八〇号)  同外三件(斎藤実紹介)(第二七八一号)  同外一件(柴田弘紹介)(第二七八二号)  同(鈴切康雄紹介)(第二七八三号)  同(竹入義勝君紹介)(第二七八四号)  同(竹内勝彦紹介)(第二七八五号)  同外三件(武田一夫紹介)(第二七八六号)  同(玉城栄一紹介)(第二七八七号)  同外一件(鳥居一雄紹介)(第二七八八号)  同外二件(中川嘉美紹介)(第二七八九号)  同外二件(中村巖紹介)(第二七九〇号)  同外一件(西中清紹介)(第二七九一号)  同(橋本文彦紹介)(第二七九二号)  同(日笠勝之紹介)(第二七九三号)  同(平石磨作太郎紹介)(第二七九四号)  同外一件(福岡康夫紹介)(第二七九五号)  同(伏木和雄紹介)(第二七九六号)  同(伏屋修治紹介)(第二七九七号)  同(古川雅司紹介)(第二七九八号)  同(水谷弘紹介)(第二七九九号)  同(宮崎角治紹介)(第二八〇〇号)  同(宮地正介紹介)(第二八〇一号)  同(森田景一君紹介)(第二八〇二号)  同外一件(森本晃司紹介)(第二八〇三号)  同(矢追秀彦紹介)(第二八〇四号)  同(薮仲義彦紹介)(第二八〇五号)  同(吉井光照紹介)(第二八〇六号)  同(吉浦忠治紹介)(第二八〇七号)  同外九件(神崎武法紹介)(第二九〇一号)  同(春田重昭紹介)(第二九〇二号)  同(山田英介紹介)(第二九〇三号)  医療保険年金制度雇用保険改悪反対に関  する請願串原義直紹介)(第二八三七号)  男女雇用平等法法制化促進に関する請願(志  賀節紹介)(第二八三八号)  国立療養所てんかん治療施設等整備拡充に関  する請願志賀節紹介)(第二八三九号)  食品添加物規制緩和反対食品衛生行政の充  実強化に関する請願神崎武法紹介)(第二  八四〇号)  同(菅原喜重郎紹介)(第二八四一号)  同(平石磨作太郎紹介)(第二八四二号)  民間保育事業振興に関する請願大久保直彦君  紹介)(第二八四三号)  医療保険医療供給体制改悪反対等に関する  請願外一件(河野正紹介)(第二八四四号)  医療保険改悪反対充実改善に関する請願  (平石磨作太郎紹介)(第二八四五号)  社会福祉社会保障拡充に関する請願(大久  保直彦紹介)(第二八四六号)  医療保険改悪反対等に関する請願伊藤英成  君紹介)(第二八四七号)  同(左近正男紹介)(第二八四八号)  同(佐々木良作紹介)(第二八四九号)  同(吉浦忠治紹介)(第二八五〇号)  医療保険制度改悪反対等に関する請願網岡  雄君紹介)(第二八五一号)  同(中川嘉美紹介)(第二八五二号)  児童扶養手当制度改悪反対に関する請願大橋  敏雄紹介)(第二八五三号)  同(橋本文彦紹介)(第二八五四号)  同(平石磨作太郎紹介)(第二八五五号)  社会保障福祉充実等に関する請願(阿部未  喜男君紹介)(第二八五六号)  医療保険抜本改悪反対に関する請願新村勝  雄君紹介)(第二八五七号)  カイロプラクティックの立法化阻止等に関する  請願新井彬之君紹介)(第二八五八号)  同(谷洋一紹介)(第二八五九号)  国民年金法改正促進に関する請願愛知和男君  紹介)(第二八六〇号)  パート労働法早期制定に関する請願大久保  直彦紹介)(第二八六一号)  同(平石磨作太郎紹介)(第二八六二号)  医療保険制度改悪反対に関する請願森井忠良  君紹介)(第二八六三号)  医療保険制度改善に関する請願池田克也君  紹介)(第二八六四号)  同外一件(大久保直彦紹介)(第二八六五号  )  同(長田武士紹介)(第二八六六号)  同(小谷輝二君紹介)(第二八六七号)  同(渋沢利久紹介)(第二八六八号)  同(田並胤明君紹介)(第二八六九号)  同(中川嘉美紹介)(第二八七〇号)  同(日野市朗紹介)(第二八七一号)  同(平石磨作太郎紹介)(第二八七二号)  同(藤田高敏紹介)(第二八七三号)  同(渡部行雄紹介)(第二八七四号)  年金医療雇用保険改悪反対充実改善に  関する請願山下洲夫君紹介)(第二八七五  号)  医療用漢方製剤健康保険適用存続に関する請  願(平石磨作太郎紹介)(第二八七六号)  医療保険全面制度改悪反対に関する請願(藤  田高敏紹介)(第二八七七号)  健康保険年金制度改悪反対に関する請願外一  件(河野保正紹介)(第二八七八号)  同(野口幸一紹介)(第二八七九号)  同外一件(村山富市紹介)(第二八八〇号)  療術の制度化促進に関する請願森田一紹介  )(第二八八一号)  原子爆弾被爆者等援護法制定に関する請願  (大橋敏雄紹介)(第二八八二号)  同(近江巳記夫紹介)(第二八八三号)  同(平石磨作太郎紹介)(第二八八四号)  同(福岡康夫紹介)(第二八八五号)  同外一件(古川雅司紹介)(第二八八六号)  同(富崎角治紹介)(第二八八七号)  仲裁裁定完全実施に関する請願石橋政調君紹  介)(第二八八八号)  同(小林進紹介)(第二八八九号)  同(後藤茂紹介)(第二八九〇号)  同(左近正男紹介)(第二八九一号)  同(田中克彦紹介)(第二八九二号)  同(高沢寅男紹介)(第二八九三号)  同(武部文紹介)(第二八九四号)  同(水田稔紹介)(第二八九五号)  同(村山喜一紹介)(第二八九六号)  同外一件(森井忠良紹介)(第二八九七号)  同(森中守義紹介)(第二八九八号)  同(山下洲夫君紹介)(第二八九九号)  同(渡部行雄紹介)(第二九〇〇号)  原子爆弾被爆者等援護法制定に関する請願  (市川雄一紹介)(第二九〇四号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  雇用保険法等の一部を改正する法律案内閣提  出第二三号)      ――――◇―――――
  2. 有馬元治

    有馬委員長 これより会議を開きます。  内閣提出雇用保険法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。自見庄三郎君。
  3. 自見庄三郎

    ○自見委員 雇用保険法等の一部を改正する法律案について、政府見解をただしたいと思います。  御存じのように、失業というのは、これは本当に疾病と並びまして人生の二大不幸と申しますか、トルストイの有名な言葉にもございますけれども、「幸せな家庭は同じように幸せであるけれども、不幸な家庭はそれぞれに不幸である」という言葉がございます。そういった意味で、近代社会におきまして、御存じのように、疾病失業というのは、やはり何と申しましても、客観的に考えても不幸をもたらす二大災害でございます。そういった意味で、昭和二十二年から失業保険法というのが施行されまして、雇用保険法御存じのように昭和四十九年に成立し、五十年に施行されたわけでございます。  失業保険法では、御存じのように失業した後の自己対策と申しますか、自己救済だということでございますけれども、やはり社会保障概念と申しますか、救貧から防貧、貧しくなった人を救おうということから、貧しくなる前に救おうという何といいますか理念の拡大によりまして、そういった意味では、私は、五十年の雇用保険法の成立というのは、ある意味では大変画期的なことだろうと思うわけでございます。  しかしながら、御存じのように十年たちまして、この法案ができて十年、その間にいわゆる産業構造の変革と申しますか、第三次産業は非常にふえてきた。それから、十年前よりもずっと女性が職場に進出するようになった。そういったいろいろな雇用構造的変化が来たと思います。  それからもう一点は、御存じのように昭和四十八年の石油ショックでございまして、この石油ショックで、各先進国も軒並みに、社会保障財政とをどうするかという非常に苦しみがあるというふうに私は思っています。一九八三年にはアメリカのバージニア州ではいわゆる失業給付の打ち切りをやったというようなこともお聞きしております。そういった意味で、今回の雇用保険法の一部を改正する法案が十年たちましたので、ひとつここで改正をしようじゃないかということが私は基本的な政府の趣旨じゃないかと思うわけでございます。  まず質問の一点でございますけれども、現行雇用保険法では、ボーナスを含めた総賃金に基づいて給付額算定しておるわけでございますけれども、これに対しまして今度の改正案では、御存じのようにボーナスは含めません。これは算定基礎からは除外するということにしております。この措置は、財政上の理由から、単に財政が非常に厳しいんだ、ですから失業者に対する失業給付の水準を切り下げる、悪く言えば失業者切り捨てじゃないか、こういう論議もあるわけでございますけれども、そういった意味失業者生活の破壊を招くものではないかというような御批判も聞くわけでございますけれども、まずこの点につきまして政府の御見解をただしたいと思います。
  4. 坂本三十次

    坂本国務大臣 自見さんのおっしゃるとおりで、この雇用保険制度というのは、失業者生活の安定を図りながら再就職促進をするということでありまして、非常に大切な雇用政策の柱でございますが、おっしゃるとおり、この十年間の変化の大きさというものは目を見張るばかりでございます。経済、社会、いろいろな面で国際化の中に入った日本でありますから、大変な大きな変化でありますが、雇用の面でも、今おっしゃったように高齢化進展とか、女子の進出とか、新しい技術の開発に伴うMEの問題であるとか、それからサービス産業就職する人が非常に多くなりまして、これらの方々の移動というものも大きいし、大きな変化がございましたことはおっしゃるとおりでございます。そういうようなことで、この変化に対応して制度をうまく守っていくということが、勤労者皆さんに対する私どもの務めでございます。  今、しかし、私どもよく聞かれるわけでございますけれども、ボーナス給付額算定基礎から除いた理由はどうか、給付に対して少し冷たいではないかというお話しがございましたが、このボーナスを含んだ総賃金基礎として算定される現行給付額には、毎月の手取り賃金、それから労働市場における通常の再就職賃金の額に比べて現在の給付額が割高になっておるというようなことで、再就職が進まないというような不合理な点もありますので、これらをひとつここで、再就職促進という観点から制度改正を考えてみたというところでございます。  しかし、賃金の低い受給者層中心に、給付額最低保障額給付率の引き上げとを図ることによりまして、ボーナスを控除したという影響を薄めていく、弱めていくということに配慮をいたしておりまして、とにかくやはり、雇用保険制度というものをしっかり守らないことには勤労者皆さん方が安心して働くことができないという、非常に大事な雇用保険制度の一面というのがありますので、そういうところをひとつ考えながら制度の健全な発展を進めていく、そして、低所得者層中心給付額を引き上げるということをやって配慮をしていきたい、御心配のないようにいたしたい、こう思っております。
  5. 自見庄三郎

    ○自見委員 ボーナスが各業種によって、それから季節的な景気の変動によって非常に異なるものだからそこら辺は含めなかったのだという大臣の御答弁だと思います。しかし、そのかわりに、基本手当最低額は引き上げてきちっと最低限の保障はするんだ、こういう御意見かと思います。  もう一点でございますけれども、給付の方について、やる方にはボーナス算定基礎と含めないけれども、取る方ですね、保険料徴収をするときは、これを含めた総賃金から徴収する。今は賃金の千分の五・五ですか。ということは、やる方は、要するに給付の方はボーナスをのけた賃金算定しますが、取る方はボーナスを含めた総賃金から保険料を取りますよというのは、どうも取るのは取るけれども出すのは出し渋るのじゃないか、こういう論議もあるかと思いますけれども、その点につきまして労働大臣に御所見をお伺いいたします。
  6. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 こういう保険制度におきまして保険料給付に必要な財源をどういう方法で調達するか、こういう点については、できるだけ無理のない取り方をしていくということが必要かと思うわけでございまして、そういう意味で、給付に当たっての算定基礎の問題とそれから徴収の範囲の問題というのは、必ずしも直接に連動させなければならないというものではないのじゃないか、要は無理のない方法で取っていくということが一番大事なところではないか、こう思うわけでございます。  具体的に申しますと、例えば労災保険徴収につきましても、これはボーナスを含んで徴収をいたしておりますけれども、休業補償につきましてはボーナスを含まない形で現に行っておるわけでございますし、また健康保険におきましても、財源調達の必要からボーナスについて特別保険料というものを徴収しておる、こういうような形で、要はできるだけ無理のない形で徴収するということでやっていくべきものだと思うわけでございます。  また、仮にボーナス保険料徴収します基礎から外すということになりますと、今までボーナスから徴収しておりましたこの保険料の部分を、毎月の賃金にまた上乗せして徴収していかなければ調達できないというような問題もあるわけでございまして、そういう意味では、こういう臨時に出ますボーナスのような、生活への関連が賃金ほど直接でないものから徴収していくということが無理のない徴収の仕方ではないだろうか、こういうふうに考えておるわけでございます。
  7. 自見庄三郎

    ○自見委員 いわゆる、ほかの保険でもそういう例があるんだという御答弁かと思います。  時間が余りございませんので、今度は所定給付日数ですね。給付日数決定方法というのは、今度はかなりの変更を改正案でもくろまれているようでございますけれども、現在までは、御存じのように年齢に応じた、高齢者であればあるほど再就職の機会が少ないわけでございまして、有効求人倍率を見ましても、六十五歳以上の有効求人倍率というのは非常に低いわけでございます。そういったことを考慮しまして、一般的に年齢が高くなればなるにつれて就職が非常に困難になるだろう。ですから、失業をした後の再雇用求職活動にもお年寄りの方はそれなりに時間がかかるだろうという概念で、年齢が上がれば上がるほど、年をとられれば給付日数が長いという原則があったのじゃないかと思うのです。ところが、今回の改正案では、御存じのように年齢と、年齢だけでなくて被保険者であった期間、要するに働いておった期間雇用されておった期間も加味して所定給付日数を定めることにしております。こういう改正案でございますけれども、従来の、お年寄り失業された後の再就職が非常に困難だ、求職にも時間がかかるじゃないか、そういった基本的な精神でやってきたことに対して、そこに働いておった期間を加味するということは、今までのやり方と矛盾するのではないか、こういう御意見でございますけれども、これについてどのようにお考えか。
  8. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 御指摘のように、昭和五十年の雇用保険制度創設におきまして、こういう再就職援助必要性に応じて給付期間を定める、具体的にはそれを年齢で定めるという原則でやってきたわけでございますが、その結果、高齢者に例をとりますと、一年ちょっとというような比較的短期間離職をされる、こういうような場合におきましても、長期間給付が一応制度的に保障されているというような形になっているわけでございまして、最近におきまして、こういう高齢化社会進展の中で高齢者求職者が非常に増加してくる中で、給付負担の不均衡というものがだんだん拡大をしてきた、こういうような問題が出てきたわけでございます。  そういうような観点から、今回の改正におきましては、こういう従来の年齢など就職困難性に応じて給付日数を定める、こういう基本的な原則は変えませんが、これらの給付負担の不均衡を是正するために、離職前の勤続期間というものも若干考慮に入れるというようなことでの改正を考えたわけでございます。  しかしながら、例えば企業倒産というような形によりまして解雇をされてなかなか就職が難しい、こういうような方々に対しましては個別延長給付というような形で、そういう短縮された面についての補いをつけて対応していく、こういうようなことも一応検討することにしておるわけでございまして、基本的には就職の難しい人についてできるだけの援助をしていく、こういう基本原則は堅持しながらやっていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  9. 自見庄三郎

    ○自見委員 失業保険給付者を見ましても、御存じのように自己失業といいますか離職と申しますか、いろいろな自己都合による退職事業主都合による解雇というものがあるわけでございますけれども、これも、私は、今ごろの非常に大きな問題点だろうと思うのですけれども、二十歳台で八〇%以上の方が自己都合によって退職する。なおかつ、そのうち八〇%がいわゆる失業給付を受けているという状態でございますね。それに比べて、年齢がどんどん上がるに従いましてこれは事業主都合による解雇がふえてまいりまして、それに伴って自己都合による退職というものは減ってくるわけでございます。四十歳から四十九歳になりますと、自分の都合で会社をやめる、事業所をやめるというのは五五%ぐらいになっておりますね。そういった意味では、失業の形態と申しますか、失業というのはほかの保険と違いまして、保険事故と申しますか、正直に申し上げましてこれの認定が非常に難しいと思うのですね。医療保障であれば、病気病気でないか、これはかなりの方が、健康な人か病気の人かは見ればわかるわけでございます。年金だとこれは年齢でございます。年齢ははっきり言いまして客観的に、何歳だ、何歳だ、労働大臣のお年は幾つだ、これは余りだませないわけです。だませないというと悪いけれども、客観的に認定ができるわけです。失業の場合はそういった事故認定が、保険事故認定と申しますか、これはかなり難しいことがあるんじゃないか。そういったことで、失業給付の月別の発生を見ましても、六月、七月、八月と、毎年いわゆる夏に多いわけです。そういったことで、それから先は私は申しませんけれども、失業認定基準と申しますか、そういったものも時代に即応して、労働大臣が申されましたように時代が変わるわけでございますから、根幹は変えなくても、対応すべきところは積極的に変えていく必要があるんじゃないかと私は思うわけでございます。  それはそれでおきまして、もう一点でございますけれども、いわゆる高齢者社会、六十五歳以上の方が九・九%ですか、十一人に一人ぐらいが六十五歳以上でございます。御存じのように、今から日本国というのは、過去歴史上、いかなる国もいかなる時代にも経験できなかったように急速に高齢化が進むわけでございまして、高齢化対策というものが政府の最も基本的な対策の一つだろうというふうに私も思うわけでございますけれども、今回の改正案では、労働省では、一方では、高齢化社会に向けて、高齢者雇用を積極的にしてくれというような施策をしておられるわけでございます。雇用改善事業の中のいわゆる定年延長奨励金でございますね。それから高齢者雇用の確保の助成金、こういうことを一方でやりながら、今度の改正案では、御存じのように、六十五歳以上の高年齢者雇用保険の被保険者としないということを加えておるわけでございますけれども、これが従来の政策と矛盾するのではないかという意見でございます。
  10. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 御指摘いただきましたように、現在、高齢者雇用対策がますます重要になってくるということで、労働省は懸命に取り組んでおるわけでございますが、ただ六十五歳以上、こうなってまいりますと、既に一般的には労働市場からの引退過程に入ってくる年齢でございまして、就業を希望される方もございますけれども、その内容は、例えばフルタイムの雇用を希望される方は比較的少数になってまいりまして、短時間就労とか任意就労というような多様化した就業希望が増加してくるという事情にあるわけでございまして、現在の雇用保険制度はフルタイム雇用を前提にした制度であるわけでございますので、こういう現在の雇用保険制度ではなかなか対応しにくいというような問題があるわけでございます。  したがいまして、六十五歳以上で離職された方については、基本手当を支給するという制度をやめまして、そのかわりに一時金を支給するという制度を創設することにしたものでございます。また一方、六十五歳以降になると、雇用保険制度の建前からいいますと、保険の適用を受けるということは、新たにフルタイムの仕事について、その後離職して再びフルタイムの求職活動に入るという場合に初めて保険の適用を受けていることの意味が出てくるわけでございますが、そういうケースは極めて少なくなってくるというような状況を勘案いたしまして、今回この被保険者にしないという扱いにしたわけでございます。  しかし、六十五歳以上の方でも、いろいろな形で就業を希望される方はもちろんあるわけでございます。そういう意味で、これらの希望者に対しましては、国といたしましても、公共職業安定所における職業紹介活動はもちろん、いろいろそれを通じてお手伝いをしていく、あるいはまた、今、全国主要二百七十の都市において、高齢者職業相談室というものを市役所の窓口等安定所と一緒につくっておるわけでございます。そういうところでの紹介、相談という形での援助もやっていきたい。あるいはまた、シルバー人材センターというようなものも、六十五歳以上の方でも元気な方は就労を希望されれば受け入れられるわけでございます。そういうような形での就業の援助はもちろん進めていきたいということで、今回の制度改正に踏み切ったわけでございます。
  11. 自見庄三郎

    ○自見委員 本当に、高齢者社会というのは夢物語じゃございませんで、私が六十五になるときはまさに四人に一人が六十五歳以上になるという計算でございますので、その点をしっかり踏まえてやっていただきたいと思います。  もう一点でございますけれども、受給者の早期再就職促進することが必要です。言うまでもなく、失業者というのは働く意欲と能力がありながらたまたま職につけないという人でございますので、何とか再就職促進するというのは、憲法にも保障されていますように勤労の権利と義務があるわけでございますから、そういった意味でも、特に日本国は資源がなくて、持っているのは国民の優秀さと申しますか、孜々営々として衝かれる日本人の、先輩方の非常な特性があって、それでここまで日本国が来たわけでございます。しかし、今日の再就職手当の趣旨というものは、失業した後、これは失業保険でももらってのんびり一年間でも寝かせておこうかという精神ではなくて、働こう、働くことをできるだけ促進させるようなことが基本的な趣旨だと思うのですけれども、この再就職手当だけでその目的が達成できるのかどうか、この点について御意見を伺いたいと思うのです。
  12. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 この雇用保険の受給者が増加していっております一方、安定審議会の雇用保険部会の報告でも指摘をされておるわけでございますが、現行制度に「受給者の再就職意欲を喚起するための援助制度がない。このことは、給付額が比較的高いこととあいまって、受給者にとっては再就職の機会があってもすぐに就職しないで給付を受け続けた方が有利であるような状態をかもしだしており、いたずらに受給者の滞留傾向を助長している。」という問題がある、こういう指摘をいただいておるわけでございます。それで、受給終了後に再就職をされる方を現に追跡調査してみますと、実はその受給終了直後の一、二カ月の間に大部分の方がまた就職をしておられるというような現状もあるわけでございます。そういう意味で、今度この再就職促進を図る意味で手当の制度をつくったわけでございます。  しかし、もちろんこれだけで再就職促進が図れるわけのものではないわけでございます。そういう意味では、今後安定機関において積極的な求人開拓とか職業紹介というものをやっていかなければならぬ。あるいはまた、そのための職業紹介機能をさらに充実をしていかなければならぬ。そのためにまた、こういう求人求職情報というものを的確に収集し分析するような、そして提供すもような雇用情報システムというようなものも開発を進めていかなければならぬ。こんなふうに考えておるわけでございます。  また、この制度改正にあわせて、再就職促進のための講習給付制度であるとか、高齢者についての短時間就業でも援助していくという形での再就職促進制度であるとか、定年退職者についての雇用促進助成金制度であるとか、こういうような制度の創設などもいたしまして、いろいろな行政対応、いろいろな援助制度の中で再就職促進をぜひ進めていきたい、こんな対応を考えておるところでございます。
  13. 自見庄三郎

    ○自見委員 これは労働大臣にお聞きしたいのですけれども、今回の改正によって健全な運営を図るための基礎が固まるというふうに考えられております。西欧の諸国も、保険料を上げてみたり給付を厳しくしてみたり、本当に青息吐息という国もあるようでございますけれども、今後保険料を引き上げることはないのか。厳しくなってきて、そのうち保険料の引き上げを図るのじゃないかという不安が国民の側にも事業主の側にもあるわけでございますけれども、この保険料を引き上げることはないのかどうかについて大臣の明確な御答弁をお願いしたいと思います。
  14. 坂本三十次

    坂本国務大臣 今回の改正は、先ほども申し上げましたように、この十年という間の大変大きな構造変化があって、それに対応しなければこの制度の根幹が保てないというようなところから発足いたしたものでありまするが、しかし行政改革でも「増税なき財政再建」こう言います。私どももそういう精神を考えまして、労使の負担の増加は極力避ける、そして仕組み、運営その他で工夫をいたしまして、この変化に対応していきたいと考えております。  先ほども局長からも申し上げましたように、今後の見通しとしては、保険財政をうまく確立をしていかないと勤労者皆さんに不安をもたらすわけでございまするから、再就職手当制度というのを新しくつくってやっていくという制度の創設がございます。そういう制度の運営がうまくいくかどうか、あるいはもっと大きく言えば景気の変動がございますが、そういう動向、そういうような、再就職手当制度の運営とか景気の動向とかそういうことをよく見なければなりませんけれども、この制度創設によって、これまでのような受給者の急増傾向や滞留傾向は改善できるのではないかと期待をいたしておりまして、この面から財政改善に寄与できるのではなかろうか、こう思っております。  また、中央職業安定審議会の答申におきましても、全体的な支出の効率化を図ることによって、安易な保険料率の引き上げにつながらないよう努力すべきである、こういう指摘がございました。私ども、保険料率を引き上げるような事態に至らぬように、今後とも制度の効率的な運営を図ってまいりたい、こう思って最大の努力をしたいと思っております。
  15. 自見庄三郎

    ○自見委員 十年に一遍の改正ですけれども、どうもうまくなくてまた保険料率を上げるということにゆめゆめならないように、ひとつ本当に御努力いただきたいと思います。  少し話は変わりますけれども、私は北九州の出身でございまして、現在も産業医科大学の衛生学講座の非常勤講師をさしていただいております。ことしの二月も講義に行かしていただきました。あそこに今回、大臣のお計らいによりまして大学院を設置していただきまして、この場をかりまして厚く……。労働衛生というのは非常に世界に冠たるものでございますので、いろいろな厳しいお立場があっても、ひとつ産業医学と申しますか、この興隆のためにますますの御尽力をしていただきたいという要望でございます。  それからもう一つ、北九州地区では御存じのように鉄鋼などの素材産業中心とした産業が非常に多いものでございますから、雇用失業情勢が低迷しております。全国の平均の有効求人倍率が五十八年度で〇・六〇でございますけれども、北九州市の八幡区では〇・二〇、小倉区では〇・三一、戸畑区でございますけれどもこれも〇・二九ということでございます。全国の約半分から三分の一というふうな雇用失業状態の混迷が続いておるわけでございます。労働省といたしまして、これまでどのような雇用対策を北九州市を中心にやってこられたか。そして、今後こういうふうに全国の三分の一、二分の一のような非常に悪い雇用状態の中でどのような雇用対策をやっていくようにお考えなのか。その点をお聞きしたいと思います。
  16. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 御指摘ございましたように、北九州地区が現在、鉄鋼を中心に素材関連産業が多うございまして、大変に雇用失業情勢は厳しい状況にあるわけでございます。このため、我々安定機関といたしましては、北九州市の当局あるいはその企業の団体、それから商工会議所、こういった関係団体と一体となりまして、北九州地区雇用対策連絡会議、こういうものを設けまして、現在この雇用失業情勢の的確な把握、あるいは失業の予防、求人開拓、こういった面でのいろいろ対策の協議あるいは推進を図っておるわけでございます。  具体的には、雇用調整助成金制度の積極的な活用を図っていく、あるいはまた、かなり離職者の発生が見込まれる企業には、この安定所と当該労使の代表によりまして再就職あっせん委員会、こういうようなものを設けまして、離職予定者の就職促進のための情報交換をやるなどして再就職促進に努める、あるいはこういう対策連絡会議のメンバーによります求人情報の交換であるとか、あるいはこういう情報収集などに努めまして、求人確保に努めるというようなことをやっておるわけでございまして、今後も、この地区の雇用失業情勢はなかなか簡単によくなるような情勢にないわけでございますので、これらの雇用対策を一層強化して積極的に展開をしていかなければならぬ。こういうふうに考えておるところでございます。
  17. 自見庄三郎

    ○自見委員 その点を強く、積極的に推進していただきたいというお願いでございます。  もう一点は、これは北九州市の若松の沖に、石油の国家備蓄の一環として白島の石油備蓄基地、これは海上に船のようなものを浮かべてそれに石油を貯蔵しようという、これはもう国家プロジェクトの一環でございますけれども、これが本年度からいよいよ北九州市で着工になるということでございます。それで、北九州市長からも五十六年ですか、それから五十九年にわたりまして、それを実際に担当します白島石油備蓄株式会社及び石油公団に対しまして、北九州は雇用が非常に悪いんだ、不景気だということで、白島の石油備蓄基地の建設及び運営について要望を出しております。その第二点のところに、地元の雇用について、工事受注企業に対し、労働者等の雇用に当たってはできるだけ地元の労働力を優先的に活用していただきたい。それから、そのプロジェクトの従業員の採用に当たっても、できるだけこの北九州の住民を優先的に採用されたいという要望書を出しております。そういった点につきまして、ひとつ労働大臣の御決意を、ございましたらお聞かせいただきたい。私の後ろには百万の北九州の、本当にお父ちゃんが職にあぶれて泣いている子供もおるわけでございます。そういった点を含めて労働大臣の御所見をお聞きしたいと思います。
  18. 坂本三十次

    坂本国務大臣 ただいまの自見さんのお話しにもございますように、北九州地区の不況というものは大変深刻であるということでございまして、私どもも非常に心配をいたしておるところでございます。けさの閣議におきましても、地域的ばらつきの多いところはもう重点的に、弾力的に、機動的に不況対策を進めなければいかぬ。公共事業の配分などに当たっても、その公共事業の配分によりまして、そういう地域不況の激しいところは非常に雇用に大変な効果をもたらしますから、公共事業の配分についても非常に配慮すべきであるという閣議の決定もいたしました。私も発言をいたしまして、これら地域の不況の激しいところについての公共事業については特段の機動的配慮をするように、こういうことを要望いたしておったところでございます。  おっしゃるとおり、この白島の開発の問題について、地元の住民をできるだけ雇用をしろというお話しはもうもっとものことでございまして、私どもも、この島の建設、それから稼働に伴う具体的な雇用の場の確保ということがありましたならば、通産省などの関係各省と連絡をとりまして、できるだけ地元住民を雇用するように努力をいたしたいと思っております。
  19. 自見庄三郎

    ○自見委員 きょうは通産省の資源エネルギー庁の備蓄課長さんにおいでいただいておりますけれども、同時に、北九州市の谷市長からの要望で、「地元産業の活用について。工事の発注に当っては、工事の特殊性に鑑み、海洋土木の十分な実績を持つ業者を活用することとし、可能な限り工事分割などを行い、地元企業が受注できるように対応されたい。」やむを得ずほかの企業が来る場合も、できるだけ地元企業の技術、能力を生かすようにしていただきたい。これは本当に北九州市民の悲痛な願いなんでございます。そういったことにつきまして、ひとつその白島の石油備蓄基地問題につきまして、具体的に御答弁いただければと思います。
  20. 岩田満泰

    岩田(満)説明員 私どもは、備蓄基地の建設を進めるに当たりまして、やはり基本的に重要なことは地元の深い御協力と御理解があるということでございまして、それがまた建設を円滑に進める道であるというふうに考えておりまして、そのような意味合いにおきまして、もし、我々の基地の建設が、地元の雇用の確保であるとかあるいは資材の調達というようなことで、地域経済の振興にも役に立つということであればこの上ないことである、このように考えております。  現在、先生御指摘になりましたように、地元北九州市長さんから、石油公団あるいは国家備蓄会社に対しまして御意見をお寄せいただいておるということは私どもも承知いたしておるところでございまして、本日先生から改めまして御指摘でございますので、通産省といたしましても、これを外しまして対処したいと思います。  具体的には、今先生野にお触れになりましたけれども、この白島プロジェクトの場合には五十九年度から工事が本格化するということでございまして、今後個々の建設工事について発注契約が逐次行われていくということでございますので、その過程におきまして、地元の資材調達あるいは雇用の確保ということで対処するように、石油公団、備蓄会社を指導したいと思いますし、また、具体的に受注いたしました企業に対しましても、必要に応じまして、私ども、地元の活用ということで要請をしあるいは指導していきたい、このように考えます。
  21. 自見庄三郎

    ○自見委員 これで終わります。どうもありがとうございました。
  22. 有馬元治

    有馬委員長 池端清一君。
  23. 池端清一

    ○池端委員 私は、まず最初に、今回の改正案の立案に至る経過についてお尋ねをいたします。  申すまでもなく、今次雇用保険法改正案は、まさに雇用保険制度の根幹にかかわる抜本的な改革案でございます。それだけに事前の慎重な審議が必要であったにもかかわらず、いわば突如として、しかも短期間にこのような改革案が作成をされ、今国会に提案されたことは、私はまことに理解に苦しむ次第であります。なぜこのようにこの改正案の作成を急ぎ、今国会に提出をしたのか。何ゆえにこのように急いだのか。まずその理由を明らかにしていただきたいと思うのであります。
  24. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 雇用保険の受給者数が、ここ数年相当大幅な増加傾向をたどってまいりました。また、これに関連をいたしまして雇用保険の収支状況も急速に悪化をしてきたわけでございます。こういう運営の現状を踏まえまして、これが、このような状況になってきておる現状をどう見るのか、そしてまた今後こういう状態に対してどう対応していったらいいか、こういうことを検討しなければならぬ状況に立ち至りまして、昨年八月に、中央職業安定審議会に対しまして、この雇用保険制度問題点及び対処の方向についての検討を依頼いたしたわけでございます。  以来、職安審議会におきましては、雇用保険部会におきまして九回の御審議がございました。その結果、雇用保険部会報告というものが提出されまして、それを踏まえまして、労働省としても、今後の雇用保険制度改善の考え方をこの職安審議会の本審議会にお示しをいたしまして、五回の御審議をいただく。さらにまた、社会保障制度審議会におきましても、四回にわたりまして慎重かつ熱心な御検討が行われたわけでございます。こういう経緯を経まして、今回の改正案提出になったわけでございます。  そういうような経緯にかんがみまして、我々としては、関係方面の御意見等もいろいろ聞きながら、必要な検討は行われてきたものである、こういうふうに考えておるところでございます。
  25. 池端清一

    ○池端委員 今の答弁は私は全く納得できません。なぜならば、昭和五十七年度の後半、既にこの時期は、五十七年度の収支決算の赤字が見込まれていた時点であります。この時点におきましても、労働省側は、雇用保険制度の見直しが必要な事態ではない、このように公式な発言をされているわけであります。また、去年の夏ごろからマスコミ各紙でこの問題が取り上げられました。その時点でも、労働省側は一貫して、現時点では雇用保険法改正は考えておらない、新聞報道はあくまでも新聞記者の個人的な憶測にすぎない、こういう発言を繰り返しておったわけであります。  そういう経緯を考えてみますならば、まさに今回の態度は君子豹変する、こういう状況ではないか。前言を翻してこのような態度になったのは一体どういうわけか、重ねてお尋ねをしたいと思います。
  26. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 先ほど申し上げましたように、雇用保険の受給者数がここ数年急速に大幅な増加をし始めてきておる、また、これに伴いまして雇用保険財政の収支も悪化してきておる、こういうような状況の中におきまして、こういう事態をどうとらえていったらいいのか。具体的には、これが景気の低迷が続いておることに伴う一時的な現象なのか、それともまた今後の雇用構造というものの変化による構造的な現象なのか、こういうものの判断が我々の方としてもつきかねておったわけでございまして、そういう意味で、この五十七、八年という時期は、模様眺めといいますか模様をじっと注視しておる、こういうような時期があったわけでございます。その過程におきまして、中央職業安定審議会への御検討を依頼し、雇用保険部会の検討が始まった、こういうような経過をたどっておるわけでございまして、その過程におきまして、我々としても、これが保険制度改正そのものをやらなければならぬ、やるのだ、こういうような判断を固めるに至っていない、そういう時期におきましていろいろ聞かれた場合に、雇用保険改正をやるのかと言われて、まだやるということを断言的には言えないという時期があったことは事実でございます。ただその段階で、絶対にやらない、やらなくてもいい、将来にわたってこの保険制度改正というものは考えなくてもいいのだ、そういうような意味での発言ということはないと思うわけでございまして、そういう非常にまだ判断がつきかねておった時期での発言に、先生おっしゃるようなニュアンスに受け取られるような発言もあるいはあったのではないか、こんなふうに思っておるわけでございます。
  27. 池端清一

    ○池端委員 受給者が非常にふえている、したがって収支状況が悪化をしているということが最大の理由のようでございますが、私も、確かに昭和五十七年度は収支決算では二百十七億円の赤字が出たことは承知をいたしておる。しかし、単年度収支が赤字になったのは何も昭和五十七年度ばかりではございません。過去にも幾つかの例があったと思うのであります。過去どういう状況であったか、赤字が出た年度を具体的にひとつお示しいただきたいと思います。
  28. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 雇用保険制度が始まりまして、失業保険制度から雇用保険制度に変わりました昭和五十年の段階で三十五億の赤字、それから五十一年で八十九億の赤字、それから五十二年で九十四億の赤字、こういう状態でございまして、五十三年度におきまして三百二十五億の赤字が出まして、そういう状況の中でこの保険料率が千分の十から千分の十一に変わる、こういうようなことがございまして、五十四年には六百五十八億の黒字、五十五年には五百七億の黒字、五十六年に五十六億のわずかな黒字に転化いたしまして、五十七年には二百十七億の赤字、そして五十八年の見込みといたしまして二百四十五億の赤字、こんなような収支差についての経緯をたどっておるわけでございます。
  29. 池端清一

    ○池端委員 それでは積立金の方はどうなっておりますか。現状をお知らせいただきたいと思います。
  30. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 保険料に対する積立金の割合あるいは金額について、これもやはり各年度で申し上げますか。(池端委員「いや、現在ですよ」と呼ぶ)そうですか。現在では、五十七年度末におきましての積立金の累計が五千七百四十八億になっておりまして、これは保険料収入に対する割合が〇・六四九、こういう数字になっておりまして、五十八年度の見込みといたしましては、積立金が五千五百三億になりまして、この保険料収入に対する割合は〇・五八九、こういうことに下がってくる、こんなような見通しとなっております。
  31. 池端清一

    ○池端委員 先ほどからの私の質問に対して局長は、その時点では雇用保険制度改正に踏み切るべきかどうかその判断がつきかねておった、そういうことからそういう発言を繰り返しておった、こう言うのでありますが、具体的に昭和五十七年十二月三日には雇用保険部会が開かれています。また、五十八年一月二十六日には中央職業安定審議会も開かれております。この中で、委員の質問に対して労働省側は何と言っておるか。具体的な制度改正は考えておりません、明確に言っているのですね。五十八年一月二十六日の時点でもこういうふうに言われておる。  しかも、私は、今回非常に手続的にも非民主的だと思うのは、現場第一線で職安行政に携わっている職員の皆さん方、窓口で毎日苦労されている皆さん方意見というものがこの改正案に十分反映されてない、いや十分ところか全く反映されていないということでございます。  問題は雇用保険の根幹にかかわる問題でありますから、この問題は慎重に審議されてしかるべきであるのにもかかわらず、極めて唐突な問題提起である。私はその手順においても極めて非民主的なやり方ではないか、こう思うのでありますが、この点についてはどうですか。
  32. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 確かにおっしゃいますように一まさに安定行政の第一線で失業者皆さんと接しておられる、そういう方々意見を聞くというのは大変大事なことでございます。私どもも日ごろこういう第一線の職員の意見をできるだけ聞くような配慮というものはしておるつもりでございますし、また、今回の雇用保険改正案をまとめる過程におきましては、主要な県の保険課長にお集まりをいただきましていろいろ意見を聞く、あるいはまた、主要な安定所の所長さんをお呼びしましていろいろ意見を聞くというようなこともやっております。また、我々安定局の主要幹部が、できるだけ機会を見ては安定所の第一線の窓口へ出かけまして、その職員の率直な意見を聞くというようなことに努力をしておるわけでございます。そういうような過程でいろいろ出てきております意見というものを十分配慮をしながらの今回の改正案の取りまとめであるというふうに考えておるわけでございます。また今後も、いろいろ行政の運用に当たっても常にそういう配慮が必要である、こういう基本的な考え方で進めていかなければならぬものである、こういうふうに考えておるところでございます。
  33. 池端清一

    ○池端委員 いろいろな機会を通じて現場の意見を吸い上げるための努力をしてきた、こういうお話してありますが、実際はそうではないんじゃないですか。まさに一部の幹部の間でこの問題が取りまとめられて、多くの職員の声というものが十分反映されてない。そのことは、全労働あたりの機関紙等を見ましてもはっきり出ておるわけであります。だから、こういう問題は管理運営事項だから職員団体の意見なんか聞かなくてもいいんだということではなしに、率直に職員の声を聞いていく、率直な意見の開陳を仰ぐべきだ、こう私は思うのです。  それでは、次の問題について具体的にお尋ねをいたします。  労働省制度改正についての具体的な考え方を公式的に明らかにしたのは、ことしの昭和五十九年一月十三日、労働省が中央職業安定審議会に「雇用保険制度問題点への対処についての具体的な考え方」なるものを提示したとき、そこが最初であった、こういうふうに私は理解をしておりますが、それでよろしゅうございますか。
  34. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 公式の場で具体的にこういう労働省の考え方を示したのは一月十三日でございますが、ただ、その前の十二月二十七日に雇用保険部会の報告が出されまして、そこにおきましての部会報告では、こういう今後の変化に対応するための制度についての見直しを労働省は速やかにやるべきである、こういう報告をいただいておりますので、その部会報告の中身について、十二月二十七日にこの職安審議会でいろいろ御論議がございました。その席上におきまして、労働省としても、この部会報告を受けて、その対応をしなければならぬと考えておりますということは、公式にこの十二月二十七日段階で申し上げておるわけでございます。
  35. 池端清一

    ○池端委員 昭和五十年の四月に、それまでありました失業保険制度が廃止をされまして、そして雇用保険制度が発足をしたわけでありますが、この制度改革の際には、労働省はどういう手順を踏んで法改正を行ったのか、五十年改正の際の手続等についての経過をお示しをいただきたいと思います。
  36. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 五十年の制度改正に際しましては、失業保険制度研究会といういわば私的な研究会が設けられまして、そこでの検討が事前にあったわけでございます。そして、職安審議会に対しまして、四十八年の十二月に、研究報告についての説明がありまして、以後、十二月二十一日に諮問及び審議が開始をされた、そうして、五回の審議を経まして二月三日に答申が出されておるわけでございます。  なお、この間、四十八年の十二月二十六日から四十九年の一月二十五日にかけまして、五回にわたる失業保険部会というものの審議も行われておるわけでございます。また、社会保障制度審議会におきまして、四十八年十二月十七日から七回にわたっての審議が行われておる、こういう経過がございます。
  37. 池端清一

    ○池端委員 今も答弁がありましたように、五十年の制度改正の際には、労働省は、学識経験者を研究委員とする失業保険制度研究会を設置して、実に十四回にも及ぶ研究会を開催をして、慎重な検討を行った上で、中職審等に対して諮問するという手順を踏んでいるわけです。今回はこの五十年改正にも匹敵するような大改革、制度改変でありながら、今回はこのような措置は全くとられておりません。しかも、昨年十月六日の雇用保険部会の検討開始から法案確定までわずかに四カ月です。四カ月の間に猛スピードで制度改革の原案を取りまとめる、まさに異常、異例な事態であると言わなければならないと思うのであります。したがって、五十八年十二月二十七日に出された雇用保険部会報告書でも何と書かれているか。今回は限られた期間論議をしなければならなかった、したがって、とりあえず、とりあえずですよ、次のような論議結果を取りまとめた、こういう表現がこの報告書には載っておるわけであります。しかも、制度の当事者である労働側委員からは、雇用保険制度の根幹にかかわる、基本にかかわる意見書が出される、こういう極めて異例な事態になっておるわけであります。極めて重要な問題でありますから、もっと議論を詰めて合意形成をする、そういう努力がなぜなされなかったのか、本当に私は不思議に思えてならないのであります。なぜもっと議論を詰めてコンセンサスを得るような努力をしなかったのか。どうしてですか。この点についてお尋ねをいたしたいと思います。
  38. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 時期的に見ますと、そういう短期間という関係はあるかもしれませんが、この間、雇用保険部会におきましては、九回にわたっての審議を重ねていただいておるわけでございまして、後の保険部会の報告で言われておりますことは、やはり何らかのこういう制度の見直しというものをやらなければならぬだろうが、とりあえずその方向を示して、そしてそれについて労働省で具体的な案を一応示せ、そしてそれをまた論議をしようじゃないか、こういうような形になっておるわけでございます。  私どもは、この保険部会での審議というものは、内容におきましては諸外国の制度等も含めまして本当に懸命にやっていただいた審議であった、こういうふうに見ておるわけでございます。そういう意味で、この期間が十月からというようなことではありましても、内容において実に濃密な御検討をいただいた、こういうふうに考えておるわけでございます。  また、私ども労働省として、職安審議会に諮問をいたします前に、先生さっきお触れになりました制度改正についての考え方というものをお示しをいたしまして、そこで審議会でのいろんな御論議をいただきまして、その示されましたいろいろな御意見等を受けて、この考え方での述べましたものをいろいろ修正もいたしまして、そして正式諮問に至った、こういうことであるわけでございます。  そういう意味で、私どもとしては、今回の改正案につきましてはできる限り、この関係審議会あるいは部会における御意見等も踏まえて作成したものである、こう考えておるわけでございます。
  39. 池端清一

    ○池端委員 検討の回数を九回もやったとか、濃密な内容の検討をしたとか局長は言われますけれども、それじゃこの二月十日に出された中職審の答申をどういうふうにお読みになりますか。ここでははっきり「なお、今回の改正に際しては、検討のための時間が必ずしも十分でなかったという意見もあるので、今後の制度の見直し及び運営上の問題点については、十分早い機会に本審議会に諮ることを要望する。」という要望意見書が付されているではありませんか。濃密な検討をしたとか回数を重ねたということをいろいろ言われておりますけれども、私は実態はこの報告書にはっきりあらわれていると思うのですよ。  大臣、この報告書が端的に示しておりますように、今回の改革案はまさに泥縄式であります。全く短期間に拙速主義で事を運んだことは極めて遺憾であります。事柄が、国民の失業に対する脅威からいかにして国民生活を守るか、こういう重要な問題であるだけに、これは慎重な検討が望まれていたと思うのであります。しかるにそういうような経過にはなっておりません。極めて遺憾だと思いますが、労働大臣はどういう御所見でしょう。
  40. 坂本三十次

    坂本国務大臣 一つの制度改正しようというときのこの時代認識と申しましょうか、これはやっぱり、役所の対応というものは、私ども政治家から見れば常に後手後手になりやすいということが、私は日ごろから感じておったことでございます。  先ほどから政府委員が申しておりますように、雇用保険で赤字が出てきた、そうなって、これは大変だ、さてこの原因は、そういうことで中央職業安定審議会にも、いかがいたしたらいいでしょうかというふうにして駆け込んだというような状況があったかもしれません。それは労働省といたしましては、自分のところの雇用保険がパンクしそうだということになれば大変だと思うのは当たり前のことでありますが、さてその原因は何かという、そのもっと基礎的な認識と基本的な認識と大局的な認識ということになりますと、さてと、こうこうと、その対応を迅速かつ果断にやるということは、役人にはなかなか難しいことではないだろうかと私は思います。しかし、それはいいことじゃありません。  しかし、そこでやはり考えてみれば、これはいろいろ、なるほど保険財政の赤字だけじゃないので、その保険というのは雇用対策の非常に大事な柱でありますけれども、雇用全体を取り巻く基礎というものがなるほどこれはどうも一時の不景気ではなさそうだ、二度のオイルショックだけの一時的なものではなさそうだ、一時的ならほっておけば、また景気がよくなればもとへ返りますから、保険財政も立ち直るということになるでしょう。だけれども、考えてみればどうも一時的なものではない。ここ十年、十数年という大きな高齢化変化とか技術革新だとか、それから、第二次産業によって日本の復興は戦後緒につきましたけれども、最近になったら、世界第二の経済大国というようなことになれば、第三次産業が大きく展開をしてくる。構造が変わっておる。そこへ持ってきて女子の進出が以前に考えられないほど大変大きい。なるほどそういう大きな構造変化が起こっているのだな、それなら当然これは景気の変動による一時の赤字ではない、やはり構造的なものだということに気がついて、保険制度そのものも構造的に根本から考え直して対応をいたさなければなるまい、こういう結果になったのではなかろうか、こう思います。  というような構造的変化が大きく起こっておるといたしますれば、この変化に機敏に対応するということが行政、また政治の責任でもございますので、私といたしましては、慎重に審議をするということは大事なことであることは間違いございませんけれども、単なる一時的現象ではない、構造変化から来るものであるとすれば、基本的な制度改正によって変化に対応するということにしないと、この雇用保険にもしものことがあったならば日本勤労者に対して大変なことになりますので、生活の安定と再就職促進ということを目指す保険制度といたしましては、やはりここで機敏に変化に対応した方がいいという判断によって今の法案提出にこぎつけた、そういうふうに感じておるわけでございます。
  41. 池端清一

    ○池端委員 一時的な赤字ではない、構造的なものであることに気がついたというのでありますが、そのことは我々がこの委員会でも何回となく繰り返して言ってきていることではありませんか。何も今初めて構造的なものだというふうな問題認識を持つ、そんなものではなかったはずであります。もしそれが事実であるとすれば、まことに労働省というのは一体どんな役所なのか、お粗末この上もない役所だというふうに言わざるを得ませんよ。大臣、そんなことを今この場で言われるのであれば。  私は、状況の変化に応じて制度の見直しをすること、これを否定するものではありません。雇用保険財政が悪化してきているというのであれば、その改善方法を検討するのは当然なことでございます。しかしその場合でも、事柄は失業から国民の暮らしをどうして守るかという問題でありますから、慎重かつ十分な検討が必要だ。同時に、単に財政問題ばかりではなくて、雇用政策を含めた労働経済全般にわたる総合的、きめ細かな論議が先行されなければならない、こう思うのです。  マスコミ各社も言っております。雇用保険制度改正の前にやるべきことがあるではないか、それからでも遅くはないというようなことを論説等でも言われているわけであります。もしそういうことをしないで単なる制度いじりに終わるのであれば、労働者側の委員意見書にもありますように「一時しのぎの制度改革に終り、ごく近い将来において、再び制度見直しが必要となる事態をまねく」こう言っておるのでありますけれども、こうならないというふうにあなた方は考えておるのでありますか。この労働者側委員意見についてどういうふうにお考えになっておられるのか、その見解を承りたいと思います。
  42. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 今度の改正案におきましては、ただいま大臣も申し上げましたように、本格的な高齢化が進みつつある、あるいはまた女子の職場進出がどんどん進んできておる、あるいはまたサービス経済化ということで第三次産業での雇用が進んできておるというような、各般の構造変化というものに対応しながら離職者の再就職促進というものを図っていかなければならぬ、あるいはまた制度の効率的かつ健全な運営というものも確保していかなければならぬ、こういう観点から考えておるものでございまして、単なる一時しのぎのものではなくて、まさに今後の日本雇用構造の変化に対応していかなければならぬ、こういう中長期的な観点を持って作成をいたしておるものでございます。  もとより、この雇用保険制度だけでこういう今後の構造変化というものに対応できるものでないことは事実でございまして、そういう意味ではもっと広い立場から、さらに、こういう失業の未然防止あるいは離職者の再就職というものを図りながら完全雇用の達成を目指して努力していく、こういうことは雇用政策全体の目標であるわけでございます。  そういう意味におきまして、昨年の十月に、第五次雇用対策基本計画というものを政府といたしまして策定をいたしました。この計画に基礎を置きましてその具体的な政策展開を図っていかなければならぬということでございまして、そういう今後を見通した雇用対策全体の中でのまた今回のこの雇用保険制度改正でもあるわけでございます。  また、この雇用対策全体の再検討、そして拡充というものがどうしても今後必要であるということで、実はこの雇用保険の審議と関連いたしまして、中央職業安定審議会におきましても、そういう根本的な立場からの雇用対策の再検討をしよう、こういうことで、現在中央職業安定審議会に雇用対策基本問題小委員会というものを設置していただきまして、この雇用保険だけではなくて、雇用対策全体の新しい観点からの練り直しというものに今取り組みを始めておる、こういうことでございます。
  43. 池端清一

    ○池端委員 私は、ある新聞のこれも雇用保険制度改正の論説について一部引用させていただきたいと思います。「政策の失敗や不十分さを、平然と国民につけ回すかのようにみえる最近の風潮に注意を促したい。」こう述べておられる。そして大事なことは、「いまは「勘定あって、行政さえなく、まして政治はない」ようにみえはしないか。とくに反省を促しておきたい。」ということを重ねて述べておられます。まさに今日の労働行政に対する痛烈な批判でありまして、私も全く同感でございます。  そこで大臣、先ほど来から私も申し上げておりますように、制度改正についての検討が必要ないというようなことは申しておりません。十分な検討は必要であろう、こう思います。しかし、単年度赤字になったから即制度改正、こういうやり方ではなしに、先ほどお答えをいただきましたように、当面五千五百三億円からの積立金もございます。一時的にこれを取り崩すことによって当面の処理を行う。そして、今後どうするかという問題については、一定の期間内で、学識経験者をも含めた各界各層からの広い意見を聞き、そういう意見を求めて抜本的な根本的な対策を講ずべきではないか、私はそうすべきだ、今からでも遅くはない、こう思うのでありますが、大臣、どうですか。
  44. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 ちょっとその前に。  私どもも今御指摘になりましたような論説、拝見をいたしておりますが、先ほども申し上げましたように、現在積立金は五千五百億というような金額でございまして、一年間の保険料収入の〇・六倍という程度でございます。せいぜい四、五カ月程度の保険給付に必要な額しかないわけでございます。これを取り崩して一時的に穴埋めしながらというわけにもなかなかいかないものであるわけでございまして、そういう意味では、御指摘の点はある程度わかるのでございますが、積立金を取り崩してというような形で一時的にしのぐというような性格のものではないという点は、御理解いただきたいと思うわけでございます。
  45. 坂本三十次

    坂本国務大臣 制度の根幹にかかわることであるから、慎重にやりなさいとおっしゃるお気持ちは私はわかるわけでございますが、しかし、物事には潮どきというものがありまして、時代のテンポに合わして、おくれないように行政を進めるということはまた非常に大事なことではなかろうかと思います。  私どもの感覚では、もうちょっと早く改革をしてもよかったのに、ちょっとおくればせになったというぐらいの反省があるわけでありまして、もうこれ以上おくれては申しわけがない。これは大事な一つの柱ではありますが、大きな雇用政策全般の動きと同時に、この雇用保険制度もそれにおくれないようにして、この際改正をするということが数千万の勤労者皆さんの不安を取り除くことにもなるであろう、こういう意味で、もうちょっと早くやってもよかったのに、ちょっとおくれておって申しわけがないというような気持ちを持っておるようなわけでございまして、内容は、それは積み重ね、練りに練って、もっと立派なものをつくれというお気持ちはわからぬでもございませんけれども、決断の時期としてはややおくれておる、これ以上おくらしてはいかぬのではないかというのが私どもの感じでございます。
  46. 池端清一

    ○池端委員 いや、物事に潮どきがあるということは私もよく承知しております。しかし、潮どきばかり考えて合意形成をおろそかにしたら、これは大変なことになるということを私は言っているわけであります。特に今回の場合は、保険料の一方の拠出者、すなわち当事者ですよ、当事者の代表である労働側の委員の合意が得られておらない、合意が形成されておらない中で強引に制度改革を進めるというのは、まさに問答無用、こういう状況ではないか、やり方ではないか。そういうことで、今回の改正案を取りまとめる手続においては大変な誤りを犯している、そういう意味では欠陥法案であると言わざるを得ないのであります。そのことを重ねて強く申し上げ、時間の関係もございますから、次に進みたいと思います。  昭和五十年改正の際の最も主要な改正点はどういう点であったでしょうか、それを述べていただきたいと思います。
  47. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 五十年に失業保険制度雇用保険制度改正をされたわけでございますが、主な点は五つございます。  一つは、これまで所定給付日数勤続期間に応じて定められておったわけでございますが、これが年齢などの就職困難性というものに応じて定めることに変更をされたということでございます。  それから、二つ目といたしまして、低所得者層に対する給付面での配慮をする、こういう観点から、離職前の賃金に対する給付率が従来六割原則というものでございましたが、六割から八割原則、六割ないし八割、こういうようなことで、特に低所得者層に対する給付の割合を引き上げる、こういう措置をとったことでございます。  それから、三番目といたしまして、就職支度金制度が大変乱用をされたということで、弊害が多発をいたしました関係で、その制度を廃止をしたということでございます。  それから、四番目といたしまして、季節出稼ぎ労働者等に対します従来の保険制度にかえまして、特例一時金制度というものを創設をいたしたことでございます。  それから、五番目といたしまして、完全雇用達成を目指しまして、事業主からだけ特別に保険料徴収いたしまして、給付事業のほかに、雇用改善事業などの三事業というものを創設をしたことでございます。  この五つが、大きな改正点であったと考えております。
  48. 池端清一

    ○池端委員 今、五十年改正の際の、五つの主要な改正点が示されたわけでございます。  その一つには、今もお話しがありましたが、就職困難な人たちにより手厚くきめ細やかな対策を講ずるというのが、一つの改正点の眼目であったわけであります。当時の長谷川労働大臣の提案理由の説明では、こう言っておられるわけであります。「これからの高齢者社会への移行等に即応して中高年齢者や心身障害者等の就職困難な人たちに、より手厚くきめこまかな対策をとること」とした、「このため、給付日数についても、従来、被保険者期間の長短によっていた点を改め、年齢等の事情による就職の難易度により定めること」にした、こういうふうに提案理由でも言われているわけです。就職の難易度、すなわち、これは今もお話しがありましたように年齢中心にして給付日数を決定する、こういう方式が大きな改正点であったにもかかわらず、今度の改正案を見ますると、実は、また年齢による給付日数に加えて被保険者期間を加味する、こういうことになっているわけであります。従来、問題があったとしてこの勤続年数を考えなかった、年齢中心にしていったというものを、今度は十年経ずしてまた百八十度の転換です。これは一体どういうことなのか。十年前にあれだけこの制度改正の必要をるる述べられて、こうしなければだめなんだと言われておったものが、十年経ずしてまた百八十度の転換、これでは雇用政策に全く一貫性がない。  私は今その制度の是非を論ずるのではありませんけれども、こういうふうに右に揺れ、左に揺れ、振幅が激しいわけでありますよ、十年の間に。これでは雇用政策、一貫性がないと言われても仕方がないのではありませんか。大臣、どうですか、ひとつ。
  49. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 十年前の制度で考えておりました当時は、先生今お示しございましたように、まさに就職の難易度といいますか、具体的には、年齢が例えば五十五歳以上の高齢者については三百日、これは保険期間が例え一年でも二年でもあるいは十年以上でも同じ三百日、こういうことで定めたわけでございます。この十年、そういうことで運用してまいります中で、最近におきまして、当時予想していたよりは、本当に急速に高齢受給者の増大傾向も出てきておる、こういう中におきまして、比較的短期間離職をする方につきましても長期の給付保障される、こういうような形がずっと続きます中で、制度全体として見た場合に、給付負担の不均衡というものが相当に拡大をしてきた、こういう問題が出てまいったわけでございまして、これがまた保険の健全な運営という面でも若干問題があるというようなことで、これまでのそういう年齢に応じて、あるいは就職の難しい人には長く、就職の比較的容易な方には短くという原則は基本的には維持しつつ、若干の給付負担の公平という観点からの手直しも今回やった、こういうことでございまして、そういう事態の推移にやはりある程度対応もしていかなければならぬだろう、こういうことで、そういう原則は維持しながらも若干の手直しをした、こういうことでございます。
  50. 池端清一

    ○池端委員 論理が一貫しておらないんですよ。政策の振幅が激しい、こういうふうに言わざるを得ないのです。  ここに「雇用保険の理論」という遠藤政夫氏著、昭和五十年七月一日発行の書物がございます。遠藤政夫氏は現在自由民主党所属の参議院議員でございます。昭和五十年当時は労働省のどういうポストにおられて、この雇用保険法制定にはどういうふうに関与されたのか、お尋ねをしたいと思います。
  51. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 昭和五十年当時は労働省の職業安定局長でございまして、この雇用保険制度への改正の担当局長で、その制度創設に携わった方でございます。
  52. 池端清一

    ○池端委員 その遠藤さんがこの書物の中で書いております。書物ばかりではありません。当時の会議録にも実は明確に出ているわけでありますが、一応私はこの書物を取り上げて申し上げたいと思うのであります。   拠出期間の長短に応じて給付日数を決める方式が保険固有の原理であるかのような考え方が生まれてきたが、これは私保険的な考え方に近いものである。より社会保障の理想に徹していくには必要な人に必要な給付を行うというしくみにできるだけ近づけていくことが必要である。失業給付は、失業という事故に対して、再就職までの生活の安定を図るための給付を行うのであるから、現段階においては、年齢等による就職の難易度に応じて給付日数を定めることが最も合理的であると考えたものである。 そういうことを強調しているんですね。最も合理的だ、こういうふうに言っているんであります。ここまではっきり言われていることが、今度はまた大きく変わる。さっきから私が言っておりますように、労働省の労働政策雇用政策には哲学がないんではないか、こう思うのであります。フィロソフィーがないんじゃないか、こういうふうに思うのです。  大臣、あなたは「眼は遠山を望むがごとく」と言われた。遠山を見つめるのですね。しかし、これでは右顧左べんでしょう。右を見、左を見、これでは剣道の極意じゃないでしょう。どうですか、大臣。こんなにぶれが大きくていいんですか。
  53. 坂本三十次

    坂本国務大臣 剣道のお話が出ましたが、確かに「眼は遠山を望むがごとく」ということは、常に大局を見なさいということであります。歴史の歩みもまたよく考えなさいということであります。単なる労働行政、単なる雇用面、その中の一環の雇用保険制度だけを見るというのではなしに、もっと世界を見、日本を見、その大きな流れに従って労働政策を考え、その一環として雇用保険制度もその中に見る。しかし、大きく目をつけるということが基本でございます。その次に、「ただし手の内は生卵を握るがごとく」というのがございまして、これは眼は遠山を見るんですけれども、手の内がかたかったら変化に対応できなくてやられてしまう。これは常に、真剣勝負の間にあっても非常にソフトなやわらかな対応をしまして、硬直しておるということが一番悪いことでありまして、それは死んでしまった――人間、死ぬと硬直します。生きているうちはやわらかいでしょうから、生卵を握るような態度で変化にまた対応しなければならぬ。この両方が要るわけでございまして、遠山を見る眼の方が格が上であります。しかし、常に変化に対応していくことが、時代の進運に応じて行政がとらなければならない、特に政治はそう心がけるものである、こう思いますれば、大きな変化が起こっておりますので、世界の中の日本にもなりましたし、あるいはまた日本の経済社会、いろいろな情勢が変化しておりますし、その中で雇用の形態も大きく変化しておりまするし、また、その中の一環としての雇用保険変化に対応いたさなければならない、こう思っておりまして、労働省といたしましては、雇用保険制度をしっかり守っていくということが勤労者皆さんに対する一番の務めでありまして、その中で、技術的にちょいちょいと動かすことはそう永久不磨の規則とまでは私は考えてはおりませんので、ここはやはり変化に対応したらいかがかと思う。しかし、遠藤さんのおっしゃることは私は一つの理想として、技術的な面であろうとその中には哲学があるということはよくわかりますが、私どもといたしましても、この際は保険料を上げないでその中でやりくりをするという点、そこの点も買っていただきまして、つまり大衆の負担というものに甘えないで、自分の中で汗を流して何とかやりくりして、この保険制度を守っていくということが日本勤労者のために非常に大事だ、そういう点からいたしますれば、多少の手直しもある程度お許しをいただきたい、私はそう感じておるわけでございます。
  54. 池端清一

    ○池端委員 生卵の話は前回もしましたから、もう繰り返すことはやめますけれども、「手の内は生卵を握るがごとく」と言っておるけれども、実際は、雇用保険法改正は生卵を握りつぶすがごとき内容だということだけは、はっきり申し上げておきたいと思う。この理論は十年も持たなかったということになりますね。十年も持たない耐用年数でやられたんじゃ労働者はたまったものではございませんよ。首尾一貫しない。先ほどもお話しがありましたが、朝令暮改的なやり方で振り回されるのでは労働者はたまったものではない。このことを強く申し上げておきます。  特に、次に触れたいことは、五十年改正でも強調されておりました中高年齢者就職困難な人たちに手厚い方針であったものが、今度は六十五歳以降新たに就職した者に対しては雇用保険は適用しない、こういう措置になっておるのです。高齢者を優遇するのだ、こう言いながら、一方では六十五歳以上新たに就職した者については適用しない。これは年齢差別ではないですか。高齢者切り捨てではないですか。言うこととやることが違うじゃないですか。私はそう申し上げたいのですが、どうですか。
  55. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 今回、六十五歳以降新たに雇用された人たちを被保険者としないということにしましたのは、六十五歳以上の人たちは一般には引退過程にある人たちでございまして、したがってフルタイムの常用雇用を希望する人よりは、むしろ短時間勤務だとかあるいは任意就業とかこういうようなことを希望する人が多いとか、あるいはそのまま引退することを希望する人も多い、こういう実態を踏まえたこともありまして、労働省としては、五十五歳以上の高齢者対策について懸命に、なお定年延長促進であるとかあるいはまた六十歳台前半層の雇用就業対策促進であるとかをやっておりますが、六十五歳以上になりますと、その辺は一般的には引退過程にある、こういう実態を踏まえたものであるわけでございます。高齢者のそういうニーズに合わせまして、フルタイムの就業というものを対象とする雇用保険制度において、これはなかなか十分に対応できないという面もあるわけでございます。そういう意味で、今後、こういう高齢者が現実に六十五歳以上になられますと、フルタイムの職業につく、そしてそこで一年以上勤務して、また再び離職をされてフルタイムの就業を希望される、こういうケースというものが一般的には非常に少なくなってきておる、こういうような実態を踏まえまして、こういう雇用保険制度の対象からは除外していく。しかし、こういう人たちで実際に六十五歳を超えた方でも、なお就業をいろいろ希望される方はあるわけでございます。そういう任意就業の形、短時間就業の形、いろいろございます。また、中にはフルタイムの雇用を希望される方も、数は、率は落ちますがあるわけでございます。こういう方たちに対しましては、もちろん国といたしまして、安定所というものを通じましての職業紹介上、できるだけのお世話をする努力はしていく。あるいはまた、現在全国二百七十都市におきまして、安定所と市と共同いたしまして高年齢者職業相談室というものを設置しておるわけでございまして、そういうところにおいて、紹介とか相談というようなことでの高齢者の就業の促進という面での御援助はいろいろ申し上げていきたい。こういうようなことでおるわけでございます。
  56. 池端清一

    ○池端委員 六十五歳以上の高齢者雇用からの引退過程にあるものだというふうに決めつけることが私はおかしいと思うのですよ。人それぞれには個人差がございます。引退するかどうかは個人の選択にゆだねてしかるべきものではないでしょうか。それをもう、六十五歳以上は引退過程にあるのだから、そして年金生活でやっていきなさいと、引退志向を促すがごときやり方というのは、私は憲法二十七条に言ういわゆる勤労権の否定だと思います。再三労働省は、六十五歳以上は引退過程ということを強調されますけれども、私はそのことには絶対納得できないわけでございます。特に、現実の調査でも、労働省の調査ですよ、六十五歳以上の就業希望者の中で、どういう就業形態を望むかという調査に対して、雇用労働を希望する者が四六・四%、そのうちでの通常勤務、いわゆる今局長の言われたフルタイムというものですね、通常勤務希望者が実に一六・六%に上っているのです。二割近い数字がフルタイムを希望する。これは労働省の厳然たる調査によって出ているのじゃないですか。そういう現実をも否定するやり方ではないか。老後、悠々自適であるとか晴耕雨読であるとか、そういう言葉があります。私たちも老後はそういうような悠々自適の生活をしたいという願いを持っておりますけれども、しかし人によっては六十五歳以上になっても食わんがために働かなければならない、家族を養うためには働かなければならないという人も現実に相当たくさんいる、それが日本の今日の状況なんですよ。そういう人たちを一律に引退過程にあるというふうに決めつけること、これは高齢者対策ではないのではないですか。大臣、どうですか。高齢者対策を充実強化するということと現に行おうとしていることにあなたは矛盾を感じないのかどうか、その点をはっきりとお聞かせ願いたいと思います。
  57. 坂本三十次

    坂本国務大臣 人生五十から人生八十になったのですから、それは今おっしゃったように、人に雇われたいという人が四六%、しかも自分で相変わらずフルタイムで働きたいという人も十数%、二〇%近く、一六%あるという、それはまあそうでしょうね。その人たちのためには、労働省といたしましてもできるだけのことをしたいと今政府委員答弁をいたしておりますが、一六%、ほとんど多数がフルタイム希望というわけではないわけでございますから、そこのところの兼ね合いでございますけれども、この雇用保険制度はフルタイムを一応前提にしておるものでございますから、その中で十数%ということになると率が非常に低い。薄情なわけではないのでありまするが、政策の重点を置くにしてはちょっとウエートが低いのではないか。限られた能力と財政の中で重点を志向するのは、やはり六十五以上よりも六十から六十五歳、この辺に今最重点を置いておる。それから、これはもう大分動いておりますけれども、六十までの定年延長をしなければならない。そういうふうに重点が向いた結果、六十五歳以上の方々に対する施策というものは、今局長が申し上げたようなことになっておるのではなかろうかな。決して比率が少ないからといって切り捨てをするつもりはございませんけれども、その前にもっとやはり、六十歳台前半層に精力をつぎ込んでいかないと大変なことになるというそっちの方の危機感が強かった結果、今の局長のような答弁になったのだと私は思っております。
  58. 池端清一

    ○池端委員 切り捨てをするつもりはないと大臣は言われました。言われましたけれども、私にはどうしても、今度の改革案を全体を通して見ると、これはもう年齢差別であり、高齢者の切り捨てにつながるものだと言わざるを得ないと思うのであります。  かつて、枯れ木に水をやるばかはないという暴言を吐いた人がおりました。枯れ木に水をやるばかはない、こういう思想が今度の改革案にもつながっているのではないでしょうか。私はそのことを断じて容認できないということを明確に申し上げておきたいと思います。  さらに、労働政策に一貫性のないものとして、再就職手当の問題がございます。今度また出されてきた。これは、失業保険法時代には就職支度金制度というものがあったわけです。ところが、先ほど局長も言われたように、乱用され、弊害が多かった、こういう理由でこれは十年前廃止をされたのです。ところが今度は、名前こそ違いますよ、再就職手当という名前になっておりますけれども、中身はあの廃止された就職支度金制度の復活、こういうものになっているわけで、名前こそ違え、また再び衣装をかえて登場した。これでは私が先ほどから言っているように雇用政策に一貫性がない、こういうふうに言わざるを得ないのであります。  この制度については、OECDの日本雇用政策の検討の際にも、これは大変な問題だというふうに指摘をされ、この制度はその政策目的と政策効果がほとんど失われたということで廃止をされたわけでございます。先ほど触れた「雇用保険の理論」の中にもそのことは明確にうたわれております。ところが、また再び頭をもたげてきている。どうしてこんなふうにくるくる政策が変わるのでしょうか。朝令暮改ですよ。なぜ再びこの制度が姿をあらわしたのか、その理由を明らかにしていただきたいと思います。
  59. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 前の失業保険法時代におきます就職支度金制度というのは、確かに今回提案しております再就職手当制度と考え方が似たものでございますが、ただ、前回のこの制度は乱用防止の規定が十分でなかったというようなことなどもございまして、就職支度金を受給すると直ちに再就職先を離職してしまう、あるいはまた就職支度金の受給を目的に半年程度の短期の就職を繰り返す、こういうようなことが一部行われまして、この制度本来の趣旨と非常に異なった乱用が相当見られたわけでございます。そういうような実態の中で廃止をされたわけでございますが、今度御提案申し上げておりますものは、就職支度金制度時代のこういう運用の問題点にかんがみまして、その支給につきまして、一年を超えて雇用されることが確実であると認められるような安定した職業につく場合に限るというようなことにいたしまして、そして再就職手当を受給した後三年以内にまた再就職したという場合には支給しない、こういうような形で乱用防止の趣旨をしっかり盛り込んだ形で御提案をしておるわけでございます。  この再就職促進のための特別な手段が、この雇用保険制度に切りかわったときになくなった関係もございまして、雇用保険部会での検討結果の報告にございますように、現行制度に「受給者の再就職意欲を喚起するための援助制度がない。このことは、給付額が比較的高いこととあいまって、受給者にとっては再就職の機会があってもすぐに就職しないで給付を受け続けた方が有利であるような状態をかもしだしており、いたずらに受給者の滞留傾向を助長している。」、こういう問題指摘が今度の雇用保険部会からなされておるわけでございまして、こういうような問題指摘を踏まえまして、再就職促進のためのこの手当制度を、乱用防止の規定をはっきり設ける形において御提案をさせていただいておる、こういうことでございます。
  60. 池端清一

    ○池端委員 先ほどからいろいろお答えは聞いておりますけれども、本当に時計の振り子のように右に揺れ左に揺れて一貫性がない、残念ながら私はこのことを申し上げざるを得ないのです。  再三の引用で恐縮でございますが、ここに昭和四十九年五月七日の雇用保険法を審議した際の会議録がございます。ここで我が党の多賀谷委員がこうおっしゃっている。   どうも労働省のお役人は、頭がいいせいか、ゆれが非常に大きいんですよ、振れが。ことに、失業保険法改正の歴史をずっと見てごらんなさい、実にゆれが大きいんですよ。ですから、いま問題の就職支度金だってそうでしょう。あるいは、勤続年数によって給付を増した者でもそうでしょう。そうして今度は反省がどうか知らぬが、その上に立って、ばっさりこの制度をや めて、そうして今度は年齢層でいくんだ。年齢層によって区別するんだといったら、今度若い者をぼっと下げてくる。どうも政策が一貫してないんですよ、これはものすごく。 どうも先生、恐縮です。私は同じせりふを十年後また繰り返さざるを得ない、多賀谷先生が言われた話をまたここで申し上げなければならない、こんな残念なことはないと思うのです。大臣失業保険法改正の歴史にはこういう経緯があるのですよ。左に行き、右に揺れ、こんなことでいいんでしょうか。だから、私は先ほど哲学という、生意気ですけれどもこんなことを言ったんだ。大臣は、事実を正確に押さえて言っているのかどうかわからないけれども、もっと早くやるべきだなんということも言われている。どうですか、こういう歴史があるということを御承知ですか。
  61. 坂本三十次

    坂本国務大臣 いろいろな試行錯誤を経てきたということは事実でございましょう。しかし、人間のやることでございますから、一遍決めたらいつまでもそのままそれが通用するということなら本当に結構でございましょうけれども、右へ行ったり、これはいかぬと思って左へ戻ったり、こうやってジグザグやるのが大体のケースじゃないでしょうかね。大きな失敗だったらこれはいけませんけれども、人間のやることですからそれぐらいのことはあるのではなかろうかと思っております。  かえって時計の振り子が動いている方が大過がないのでありまして、振り子がとまるとこれはそれで終わりなんです。そういう点もあって、そのときそのときにぶれが大き過ぎた、おっしゃる点はわかるような気持ちもいたしますけれども、今の十年の間に朝令暮改とおっしゃいますけれども、この十年間は過去の五十年、百年に匹敵する部分もあるのではないでしょうか。そういうようなことも考えあわせれば、一生懸命知恵を絞って、少しでもいいようにと思って、今度おっしゃるようなぶれを起こしたので、決して悪い意味でやったわけではないのです。少しでもよかれと思ってやった軌道修正であると私は思っております。
  62. 池端清一

    ○池端委員 単なる軌道修正ならわかりもしますが、中身はそんな軌道修正なんというものではないのです。あなたは、人間のやることだからと、私もそうだと思います。人間のやることだから慎重にやりましょう、こう言っているのですよ。余り拙速では過ちを犯すことになるから、人間のやることだから慎重にやろうということを私は口を酸っぱくして言っている。  時間の関係もございますので次に進みますけれども、問題は失業者をいかにしてふやさないで低く抑えるか。失業者を出さない、完全雇用というこの政治の大原則に向かって労働政策にどう取り組んでいくか、これが大事だ、私はこう思うのであります。  そこで、最近の雇用失業情勢でありますが、景気は回復基調に向かっているということを盛んに言われている。一条の光明が漏れ始めたと言われている。しかし現実の雇用失業情勢は厳しい。一体労働省としては雇用失業情勢の現状と見通しについてどういうふうに押さえておられるか、どう把握されておられるか、その点をお尋ねしたいと思うのであります。
  63. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 昨年の春ごろあたりから、輸出を中心にいたしまして生産が増加いたしました。それに関連いたしまして、夏ごろから輸出を中心に求人が増加してまいりました。秋から暮れにかけまして、そういう輸出関連業種からさらにいろいろ消費関係、繊維関係等々へも波及をしてまいりまして、現在、建設業を除きまして企業種的に対前年求人増、こういうような情勢になってきておるわけでございます。  この間、求職は比較的落ちついた動きを示しておりまして、このため有効求人倍率も昨年の七月を底にいたしまして、〇・五八倍というものを底にいたしまして、毎月じりじりとわずかずつではございますが求人倍率が上昇を続けておりまして、ことしの二月には〇・六五倍というところまで回復をしてまいりました。  また、この間におきまして雇用者数も全体としては増加を続けておりまして、ことしの二月には前年に比べまして雇用者数で約六十六万人の増、こういうような状況にあるわけでございます。  しかしながら、一方、完全失業率というものの動きを見てみますと、昨年の八月に二・八〇というこの完全失業率統計始まって以来の高い数字を記録いたしまして、その後一進一退を続けながら、ことしの二月には二・七三、比較的やはり厳しい状況になっておるわけでございます。また、業種別あるいは地域別に見ますと、なお、こういう全体の景気回復とはまた別に、構造的な不況業種というようなものを抱えておる業種、地域等におきましてなお依然として厳しい情勢が続いておるというようなことで、やはりこの雇用改善にはなおいろいろ跛行性が見られる、こういうような状況にあるわけでございまして、また、雇用の求人がふえ、あるいは求職がそれに見合った程度になりましても、新しい業種、職種についてうまく求職がそれに結びつかないとか、あるいはまた都会で求人が出ても求職者の方は地元で就職したい、あるいはまた年齢が、求職者の方は高齢者就職したいと言いましても、求人側の方は若い人が欲しい、こういう年齢だとか地域だとか業種等によるミスマッチというようなものが、今後やはりこういう構造変化が進む中で拡大していくおそれもあるわけでございます。  そういう意味で、私ども、今後の雇用失業情勢についてはなお十分注意をして見ていかなければならぬというふうに見ておるわけでございます。その結果、一応こういう全体的な景気回復の中で、完全失業率も今二・六%という五十八年の状態が二・五程度にわずかですが下がる、完全失業者も百五十五万が百五十万程度というような程度にこれがおさまる、というようなことを目がけての努力をしていかなければならぬ、そんな情勢にある、こんなふうに見ておるわけでございます。
  64. 池端清一

    ○池端委員 それでは、具体的な雇用対策について幾つかお尋ねをしたいと思うのです。  一つは、ME革命の問題でございます。産業革命に次ぐ新しい第三の波と言われているマイクロエレクトロニクス革命、大変なスピードで進んでおるわけです。これが雇用に及ぼす影響ははかり知れないものがあるということは今さら申し上げるまでもないのでありますが、実は本年二月、電機労連が「マイクロエレクトロニクス革命化における雇用確保と労働の人間化をめざすガイドライン」というものを発表いたしました。これは当時マスコミでもいろいろ取り上げられました。私も読んでみました。非常に貴重な労作だ、こう思うのであります。今日、私はここに出ておりますME技術システム協定、こういうモデル案がやはり各企業において締結されることが望ましい、そういう方向でやはり行政指導というものを強めていく必要があるのではないか、そういう時期に来ているのではないか、こう思うのでありますが、その点についての見解をお聞かせ願いたいと思います。
  65. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 御指摘にございましたように、最近このMEを中心にいたしまして技術革新が急速に進んでおり、それが単にこの生産部門だけではなくて、事務部門、流通部門、あるいはまた国民生活の各分野にまでいろいろ広がってきておるという状況にあるわけでございます。このMEの導入に伴います雇用への影響につきましては、私どもも非常に問題視をいたしておりまして、いろいろ調査なり検討なりを続けておるわけでございますが、現在までのところは、関係労使の大変な御努力によりまして、全体としては深刻な問題が生じている、こういうふうには考えられない状態にございます。  しかし現実には、今の御指摘の報告にもありますように、労働者の適応の問題、あるいはまた、配置転換に当たっての問題等々いろいろございます。あるいはまた、導入された分野では新規の採用が抑制されるというような傾向もございます。あるいはまた、仕事の内容にもいろいろ変化が出てきておりまして、それをめぐりまして、不適応の問題とか新たな職業訓練の問題とか、いろいろそういったようなものが必要になってきておるというような問題があるわけでございます。  そういうような状態の進行する中で、私どもも、こういうMEの導入に絡みまして、何はさておき、とにかく労使間での十分な意思疎通というものが図られていかなければならぬ。あるいはまた、この導入に絡んでのやはり基本的な物の考え方、例えばできるだけそういう離職者とかいうようなものを出さないようにするとか、あるいはまた、できるだけ不適応を起こさないように能力を高めていかなければならぬとか等々、いろいろなそういう必要な観点というものをしっかり国民的コンセンサスにまで高めていかなければならぬ、こんな考え方を持っておるわけでございまして、現在、学識経験者あるいはまた労使のトップレベルの皆さんに参加していただきまして、雇用問題政策会議というのがございまして、有沢広巳先生を座長にする会議でございますが、そこにおきましていろいろ今御懇談、御意見の交換をいただいております。近く、今までその御懇談をされてこられました、検討されてきました意見大臣あてに出されるというような段階に来ておりますので、そういった広い立場からのME問題の導入についての国民的コンセンサスの形成を目指して私どもも努力をしていかなければならぬ。こんなふうに考えておるところでございます。
  66. 池端清一

    ○池端委員 私はきょうここに就職情報誌を持ってまいりました。いろいろ今売られているんですね。分厚いものも相当あります。週刊、月刊、何種類あると思いますか。
  67. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 現在全国で発行されております有料の就職情報誌というのは、私どもが把握しておりますのでは四十二種類、それから無料の情報誌、パンフレット、こういったものが約百五十種類、こういうような数を私どもとしてはつかんでおるわけでございます。
  68. 池端清一

    ○池端委員 私も四十二種類、有料なものがあるというふうに聞いておるわけであります。これは今まさに就職情報誌のはんらん時代ですよ。これがベストセラーズで売れているということ、これは裏返せば、現在の公共職業安定所が残念ながら真に職安の機能を果たしていないということにもなるのではないか、こういうふうに思うのです。現場の第一線で頑張っておられる職員の方、本当にその御努力には敬意を表するわけでありますが、何せ人員が足らない。圧倒的に不足だ。ですから、一人の紹介について対応できるのは大体五分程度だ。これでは満足な紹介活動なんかできませんよ。だから、私はこの際、こういう就職情報誌がはんらんをしている、その陰にあるものにメスを入れて、やはり職安を真に国民に愛される魅力のある職安にするためには、人員の増を含めた再検討が急務ではないか、私はこう思うのです。  それからもう一つは、いろいろな就職情報誌の中には、私もぱあっと見ましたけれども、誇大広告ではないかなと思うようなものもございました。先日は「高給優遇、女性を求める」という広告があった、行ってみたらこれは愛人バンクだったというケースも実はあったというふうに報道されております。行き過ぎもあるわけです。こういうものについてやはり的確な行政指導というものはあってしかるべきだ、こう思うのですが、どうですか。
  69. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 まず、安定所の体制の整備の関係でございますが、率直に申しまして、この全体の定員削減の中で、我々安定所の職員についてもネットでは減という状態が続いておることは事実でございます。そういう中でいかに安定所の機能を高めるか、こういうことで、昭和五十五年度からこの安定所の窓口につきましての再編整備というものを進めておりまして、ある程度自主的に求職を選択できるような人についての対応についてはある程度簡略にしよう、そして、実際に専門的な相談、援助が必要な人については、就職援護の窓口を設けましてそこできめ細かくいろいろ相談する、あるいはまた心身障害者など特に就職に当たっての特別なお世話をしなければならぬ人については、そういう特別の窓口を設けまして、要するにその求職者のそれぞれの必要性に応じましてある程度、職員の対応の仕方も窓口窓口で変えていくというような形での、効率的な窓口対応のあり方を進めておるわけでございます。  しかし、それだけではもちろん十分ではございません。私どもも、この昭和六十一年度を目指しまして、全国の安定所の求人求職情報というものをネットワークで結びまして、総合的な雇用情報システムを何とか完成いたしまして、まさに地域における総合的な雇用サービスのセンターとして何とか安定所というものを確立していこう、こんなことで今鋭意取り組んでおるわけでございます。  就職情報誌の関係でございますが、これはいろいろ御指摘ございましたように、私どもも注意して見ておりますが、やはり実際の勤務条件あるいは仕事の内容といろいろ違っておるというような問題もございます。あるいはまた、労働者の募集の名をかりて、今そういう例もありましたが、不動産会社がその営業職員を求む、こういうことで募集いたしまして、営業職員をやるにはまず自分で土地を買ってみなければだめだから、まず買えという極端な例まであるそうでございます。そういう意味では大変いろいろ問題もある、こう考えております。  そういう意味で、今、こういう情報誌に対しまして広告掲載基準というものをしっかり自主的につくって、そしてそれを自分自身で守っていただくような指導をしておるわけでございますが、うっかりしますと言論統制的な形の問題にもなりかねませんので、なかなか慎重を要します。要するに読者を惑わし誤解を与えるようなことのないよう、やはりとにかく、そういう発行者が良識を持って自主的にそういうようなことをやっていただくよういろいろ働きかけを今いたしておりますが、一般の問題と違いまして、行政権力でどうこうするという形のものでないので、対応については今後またいろいろ検討さしていただきたいと思っておるわけでございます。
  70. 池端清一

    ○池端委員 次に、婦人労働者の問題でありますが、婦人労働者が妊娠、出産、育児等のために仕事を続けたくとも続けることができないで、やむなく退職をせざるを得ないという方が多いということは私は非常に大きな問題だと思うのであります。今、私ども日本社会党・護憲共同は、一部の職種に適用されている育児休業制度を充実して、これを全職種に適用すべきだというふうに考え、その法案提出すべく準備中でございますが、育児休業制度の充実強化を推進する、こういう考えについてはどうか、労働省見解をいただきたいと思います。
  71. 赤松良子

    ○赤松政府委員 お尋ねの育児休業制度につきましては、昭和四十七年に制定されました勤労婦人福祉法の中で、初めて育児休業という言葉が取り入れられ、それにつきましては、使用者がこういう制度を導入するようにという努力義務規定が設けられたところでございます。  労働省といたしましては、先生が今御指摘になりましたように、育児のために職場を去るということが、日本のような終身雇用のもとにありましては、婦人の職業上の地位を高くしにくいという状況を認識いたしまして、また、出産後の一定の期間は子供を直接自分が育てたいという方の多いことにも着目いたしまして、この制度が非常によい制度であるというふうに考えているわけでございます。  そこで、勤労婦人福祉法ができました後、いろいろな方法を講じまして、これが普及されるようにということで普及のための努力を続けてきたわけでございます。例えば、この制度を取り入れた企業に対しては、その導入のために必要な経費の一部を援助するというような方法もとってきておるわけでございます。また、最近は、育児休業の促進のためのPRと申しますかキャンペーンのために旬間を設けまして、その十日間は集中的に育児休業についての知識を普及するというようなキャンペーンの期間も設けて、その普及の推進に努めているところでございます。
  72. 池端清一

    ○池端委員 大変時間もなくなりましたので、まだまだいろいろお聞きしたいのでありますが、最後に、船員保険の関係についてお尋ねをしたいと思います。  今度の改正案を見ますると、雇用保険と船員保険との間にはあらゆる面で大変な格差がある、こういう状況です。例えば受給資格の制限にしても、陸の場合は六十五歳であるにもかかわらず海は六十歳。給付日数にしても、あるいは高齢求職者給付金や再就職手当金についても同様に格差がある。制度の成り立ちが違うからこうなっているんだというふうにおっしゃるのかもしれませんが、同じ労働者ではないか。なぜこのように海陸格差、それも著しい格差があるのか、その理由を明らかにしていただきたいと思います。
  73. 佐藤隆三

    佐藤(隆)説明員 船員保険失業給付につきましては、従来から、原則といたしまして、陸上労働者につきましての雇用保険給付に準じた取り扱いをするということでございます。今回の改正に当たりまして、基本的には雇用保険法改正の趣旨に準じたものでございますけれども、所定給付日数等につきまして、船員の特殊性あるいは財政事情といったものを勘案いたしまして、一部雇用保険法の内容と異なる取り扱いをしているところでございます。特に所定給付日数につきましては、現行給付日数におきまして既に雇用保険法と船員保険とでは日数に差がございますので、それを踏まえまして給付日数改正をした、こういう事情でございます。
  74. 池端清一

    ○池端委員 どうもはっきりしませんね。船員の特殊性ということで抽象的に言われたら、これはもう話にならぬわけですよ。  あなたが言いたいことは、例えば年金の支給開始年齢が厚生年金は六十歳だ、船員は五十五歳だ、こんなところにも差があるんだから、優遇されているんだからということを言いたいのだろうと思うのですが、私はそんなことは理由にならないと思うのです。  先ほど雇用保険のところでも申し上げたように、働く能力には個人差がある、しかも、五十五歳を過ぎても、陸上生活が長かったということで年金の受給資格のない方もたくさんおります。さらにまた、五十七年十月一日現在の運輸省の調査でも、五十五歳以上でも就労している方がかなりの数に上っておる、こういう実態を見るならば、この陸と海とで差をつけるというやり方は、船員の特殊性の名に隠れた大変な船員切り捨て政策である、こう言わざるを得ませんが、どうですか。
  75. 佐藤隆三

    佐藤(隆)説明員 ただいま先生のおっしゃいましたように、六十歳と六十五歳の問題につきましても、雇用保険におきましては、六十歳の定年制というものを考慮いたしまして、引退過程にある年齢ということで六十五歳としているわけでございますけれども、船員につきましては、定年制の実態というところを見てみますと、労働協約によりまして五十五歳から五十八歳というところがほとんどでございまして、こういったような面が今申し上げました船員の特殊性ということかと思いますが、こういったことから、海上労働からの引退過程ということで六十歳としているというようなことでございます。
  76. 池端清一

    ○池端委員 引退過程、引退過程と盛んに強調されるが、実態としてはそうではないということをさっきから申し上げておるのです。そういうようなことを理由にして格差を設けるということは、私は全く納得できません。きょうは時間がございませんので、この船員保険の問題は、また別な日に、同僚委員からいろいろ御質問をお願いしたいと思うのであります。  そこで二、三点だけ聞いておきます。  この船員保険制度を支える船員、被保険者の数が最近非常に減少しております。失業部門ではわずか十六万人、こういう状況、ピーク時には二十七万人もおった方が今は十六万人という数であります。こういう現象はどんな理由でこんなふうになったのですか。時間がないから早く答えてください。
  77. 佐藤隆三

    佐藤(隆)説明員 今おっしゃったように、船員保険の被保険者の減少が非常に目立つわけでございますが、私どもが考えておりますのは、基本的には、第一次オイルショック以来の海運業界の不況、それから二百海里問題に伴います漁船の減船、船舶の近代化に伴う必要人員の減少等といったことが、この被保険者数の減少につながっておるものと理解しております。
  78. 池端清一

    ○池端委員 今言われた理由だと思うのですが、その中でも非常に大きいのは最近の近代化と称するところの船員切り捨ての合理化政策、私はこれが非常に問題だと思うのです。実はこれは労働省の所管ではない、運輸省だというのです。労働政策雇用政策がこうやって各省庁にまたがっているというのも私は摩訶不思議だと思うのでありますが、それは今はさておくとしまして、運輸省にお尋ねをします。  例えば、近代化船と称して二十二人の乗組員が必要なものを今十八人に削減している、将来は十六人にしようという計画さえあると私は聞いております。こういうような形で余剰船員をどんどんつくっていく。一方ではどうしているか。安い賃金で外国の船員を雇い入れている混乗方式というのだそうであります。日本人の船員と外国人の船員を一緒に乗せるから混乗方式、この混乗方式を推進している。そして安上がりの雇用政策というものを進めている。そして日本人船員の雇用の場を縮めている。日本人船員切り捨ての方針をとっているというところに問題があるというふうに私は思うのでありますが、運輸省どうですか。
  79. 佐藤弘毅

    佐藤(弘)説明員 船員制度の近代化でございますけれども、近代化の眼目といたしますところは、海運の国際競争力、これを維持するというところにあるわけでございます。例えば、船員費が途上国の船員に比べまして相当高くなっておるという現実問題もございまして、そういう現実問題に対応いたしまして、優秀なる日本人船員の能力をいかに発揮せしむるかということが眼目になるわけでございます。そのためには、少数の優秀なる乗組員で運航できる船舶というものを推進していくということがあるわけでございます。したがいまして、これは、雇用対策上から見ましたら、日本人の船員を切り捨てるということではなくて、むしろ日本の船員の雇用の場を確保するということにつながるというふうに私どもは考えておりまして、その対策を推進しておるというふうに考えておるわけでございます。
  80. 池端清一

    ○池端委員 本当に、それほど胸を張って雇用対策を進めていると言い切る自信があるのでしょうか。陸の部門も悪いけれども、陸の部門に比べて海はもっともっとこの対策が立ちおくれているというふうに私は指摘せざるを得ないのであります。  いわゆるマルシップの問題ですね。日本船籍でありながら外国の船主に貸す。したがって、船主は外国人という形をとったペーパーカンパニーです。こういうことになるのです。こういうマルシップによって日本人船員が締め出される。これが低賃金や中間搾取の温床になっている。しかもマルシップであるために、日本人船員は船員保険にも加入できない、こういう状況も一部ある。これはどうですか。
  81. 佐藤弘毅

    佐藤(弘)説明員 マルシップという形態でございますけれども、マルシップと申しますのは、日本の船籍を有する船舶でございますが、一たん外国に裸貸しをする、外国人がいわゆる配乗権を持ちまして船員を雇い入れるということになるわけでございます。したがいまして、配乗権者はあくまでも外国人ということになるわけでございますけれども、去年の四月三十日に施行をいたしました船舶職員法という法律の改正がございます。これによりまして、いわゆる船員の中には職員と部員と両方あるわけでございますが、職員につきましては日本の免状を持たなければならないというふうにいたしておるところでございます。
  82. 池端清一

    ○池端委員 まだまだ私は申し上げたいことがたくさんありますけれども、残念ながら時間が後二、三分しかないので、また改めてやりますが、私は、海運業というのは非常にいろいろな国際的なあれもあるから複雑になっているとは思います。けれども、この雇用対策が非常におくれているということを重ねて指摘せざるを得ないのであります。しかも海運業というのは季節的・短期的な事業でないはずであります。船舶は継続して年中運航している。ところが、この船員の職業紹介、これは船員職業安定所で行われているのでありますが、この職業紹介でも短期求人の紹介が非常に多いという実態だというのです。これはどういうわけですか。
  83. 佐藤弘毅

    佐藤(弘)説明員 船舶の運航形態によりますいろいろなタイプがございまして、長期間雇用を要するもの、短期で済むものというふうにいろいろな種類があって、そのようなものがあらわれておるものと思われます。
  84. 池端清一

    ○池端委員 二月十五日に出されました社会保険審議会の答申でも、この船員保険失業部門についてはこういうふうに書いてあります。「失業部門の健全化のためには、基本的に失業の防止、雇用の安定を図るための諸施策が不可欠であり、関係省庁が一体となって船員に対する雇用対策の実施を積極的に推進すべきである。」こういう意見が付されているわけであります。「関係省庁が一体となって」こういうふうに書かれているわけであります。この問題は労働大臣、運輸省の問題だということではなしに、海に働く労働者の生活の場、雇用の場を確保するという観点からも、あなたも積極的にこの問題に取り組むべきだと思いますが、決意のほどをお伺いしたいと思います。
  85. 坂本三十次

    坂本国務大臣 なるほど、海に働く人もおかに働く人もひとしくこれは勤労者でございます。そういう点におきまして、私どもは、勤労者生活を一番大切に守らなければならぬし、そのために労使関係も配慮しなければならぬという点は共通をいたしておりますので、しかし一応役所の所管は運輸省でありますから、運輸省ともよく相談をいたしましてできるだけ配慮をいたしたいと思っております。
  86. 池端清一

    ○池端委員 最後に一問だけ。  積雪寒冷地における季節労働者の雇用生活の問題、これは非常に深刻でございます。私は北海道、大臣は石川県、同じ積雪寒冷の地であります。北海道では三十二万人の季節労働者がおります。この人たちは冬は全く仕事がない。したがって、五十日の特例一時金で細々とその日を暮らしているというのが状況であります。かつて九十日ありました。これが五十日に切られました。さらにまた、これが財政対策の見地からしわ寄せがくるのではないかという不安がございます。さらに削減されるのではないかという不安がありますけれども、こんなことになったら大変だ。我が北海道は暴動が起きますよ。はっきり予言をしておきます。おどかすわけではありませんが、しかし、大臣はこんな血も涙もないやり方はしないと思うので、同じ雪国の大臣としてその決意のほどを最後にお聞かせ願って、私の質問を終わりたいと思います。
  87. 坂本三十次

    坂本国務大臣 この間、北海道へ行きまして、大変不況で困っておる、特に労働者の皆さん雇用の場がなくて困っておる、ひとつ何とか景気をよくしてくれ、そして公共事業ももう少し回してくれ、非常に切実なお話しがございまして、きょうの閣議におきましても、公共事業の配分などは、そういう北海道などとか東北などとかありますね、そういうところに重点的に、弾力的に配分をして雇用の安定を図る、こういうことが決まりまして、私もぜひそれを推進してくれと発言をしてきたばかりでございます。  しかし、中央職業安定審議会などでは検討してみたらどうかという意見もあるということは聞いておりますが、しかし、その生活の実態というのは、あなたもよく御存じ、私もよく知っておるつもりであります。それをどういうふうに改善するかというめどもできておりません。そういうときに、一時金を切ってしまうなんということはむちゃなことでありますから、私といたしましては、雇用保険法改正はいたしますけれども、この一時金を変えるというつもりはありません。これは現行どおり見守っていきたい、こう思っております。
  88. 池端清一

    ○池端委員 終わります。
  89. 有馬元治

    有馬委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時三十四分休憩      ――――◇―――――     午後三時二十分開議
  90. 有馬元治

    有馬委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。網岡雄君。
  91. 網岡雄

    網岡委員 午前の池端先生の質問に答えて、雇用保険改正に伴う雇用保険財政の現状について一応の御答弁がございましたが、改めてお尋ねをいたしますけれども、改正に踏み込んでいくことになった雇用保険財政の現状について、そして、その原因を特に特徴的なものを挙げて御説明をいただきたいと思います。
  92. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 雇用保険の収支状況を失業給付事業について見てみますと、五十四年度以降は年度を追うごとに黒字幅が小さくなってまいりまして、五十七年度においては遂に約二百十七億の赤字に転じたというわけでございます。また、五十八年度予算では景気の回復等を見込んで失業給付費を一兆二千億程度計上したわけでございますが、実際にはこの受給者の増加傾向が引き続いた、こういうことでございまして、五十八年度の年度末には約七百億程度の不足を生ずる見込みとなったわけでございます。そのために一般会計の予備費の追加受け入れ約五百億をいたしまして、最終的には約二百三十億程度の赤字になる、こういう見込みになっておるわけでございます。  こういう受給者の増加が続いておりますいろいろな基本的な問題につきましては、雇用保険部会の報告においてもいろいろ指摘されておりますように、やはり高齢者の増加、高齢化進展が非常に急速であるということであり、また女性の職場進出が非常に進んでいる、あるいはまた第三次産業での雇用がふえてきておる、こういうような事情が特に大きいわけでございます。それで、こういうサービス産業であるとか、あるいは女性の場合でございますと一般には終身雇用という形が製造業に比べてまだ比較的少ない、したがいまして転職の回数が多いというふうなことが結局失業の回数増、それから受給者の増、こういうような形になっておるわけでございます。  また、加えまして、最近の若い人を中心といたします人たちの転職についてのいろいろな考え方といったようなもの、割合に安易な転職というものがふえておる、こういったような関係の問題でこういう保険の受給者の増加傾向が続いておる、こんなことになってきておる、こういうふうに見ておるわけでございます。  それで、雇用情勢のこういう低迷状態が続いておる、景気の回復がはかばかしくない、こういうふうな関係も一つあると思うのでございますが、実際に受給者の離職理由を見てみますと、やはり事業主解雇という形で受給者になられる方よりも、むしろ、さっき申し上げましたそういう転職についての考え方といいますか、いわゆる自己都合による離職というような方々が相当に多い、もう若い人では八〇%ぐらいそういう方になっておるというような関係の問題も、やはり一つの大きな理由になっておるだろうというふうに見ておるわけでございます。
  93. 網岡雄

    網岡委員 いろいろ理由を述べていただきましたが、午前中聞いておりまして、一つ御説明が落ちているのかと思うのでございます。転職の率が多いものは、今言った女性、サービス産業雇用者、そして若年のほかに、いわゆる高年齢者給付の率が比較的多いことによって転職の率が非常に高くなってきている、こういうことを午前中の池端委員の質問に対してたしか局長はお答えになったことを私、記憶をいたしておりますが、今御答弁いただいた三つ以外にはないわけでございますね。
  94. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 原因はやはりいろいろあろうかと思いますが、大きいものといたしまして、今申し上げましたような高齢化進展であり、また女性の職場進出であり、あるいはまたサービス経済化の進展であり、そしてまた若年労働者の転職意識というものの変化といいますか、こういった四つの点が大きな理由である、こういうふうに考えておるわけでございます。
  95. 網岡雄

    網岡委員 こだわるようですが、今言われた女性、サービス産業、若年、高年齢という四つの中で、離職の率の高いものは、順番をつけるとどういう順序になるでしょうか。
  96. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 この辺は、いろいろこういった要素が絡み合っておるわけでございます。例えば、女性の職場進出が進んでおるということとサービス経済化が進んでおるということは、また女性がサービス業の関係へいろいろ入っていくというような形で絡んでおる。また、サービス業関係においてはやはり若者が比較的多く入っていく、それがまた転職などについて比較的転職率が高いというような関係等々ございまして、いろいろ絡み合っておりますので、必ずしもどこが特にどうという順番をつけられるたぐいのものではないと思うのでございます。
  97. 網岡雄

    網岡委員 局長、それはやはり説明としてはおかしいと思うのですよ。これだけのことを、審議会を通じ、労働省改正について原因を挙げるぐらいですから、その離職の度合いというものは量を含めて検討なさっているはずでございますから、それはもう一度御答弁をいただきたいと思いますが、はっきりしていただきたい。特に明らかにしていただきたい点は、女性、サービス、若年、この三つよりもむしろ老年者の離職の方が少ないと私は見ておるわけです。その理由は、一遍職を離れれば次の職につくことが非常に難しい高年齢方々にとりましては、やはり離職というものは非常に慎重にされるということで、先ほどいろいろ理由を挙げられましたけれども、実際の中にはそのことが各人の中できちっと踏まえられておるわけでございますから、女性、サービス、若年と比較をいたしますと高年齢者離職率というものは低いというふうに思っておりますが、その点はどうでしょうか。
  98. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 例えば高齢者だけの受給者の増加状況を数字で見てみますと、昭和五十一年度におきまして五十五歳以上の初回受給者が二十七万五千、こういう数字でございます。これが五十七年度の数字で見ますと四四%増加をいたしまして三十九万六千人、こういうような数字でございまして、約十二万ぐらい増加をしておるというような問題があるわけでございます。  また、高齢者の場合について見ますと、五十五歳以上の高齢者につきましては十カ月、三百日というような給付になっておるというようなことで、またこの保険期間が非常に長い、あるいはまた給付される金額も大きい、こういうような問題等も絡んでおりまして、保険制度における高齢受給者の増加というのは非常に大きな問題を持っておる、こういうふうに考えておるわけでございます。
  99. 網岡雄

    網岡委員 次の質問に移りたいと思いますが、いろいろ御説明はいただくわけですが、これは後の質問にかかわってくるものですから私はこだわっているわけですけれども、量としてどちらが多いかということを明確にしていただきたいと思います。そうしないと後の質問というものができませんので、やはりこれははっきりしていただきたいと思います。
  100. 齋藤邦彦

    ○齋藤説明員 今のお尋ねでございますけれども、ちなみに所定給付日数別に初回受給者数の推移をとって考えてまいりますと、昭和五十一年度で三百日以上、要するに五十五歳以上だと思いますが、五十五歳以上の高年齢者の方の初回受給者数は、五十一年度におきましては二十七万四千五百というような数字でございます。五十七年度になりますとそれが三十九万五千六百というようなことでございます。それからまた、女子の受給者数が初回受給者数でどういうようなことになっておるかということでございますが、女子は、昭和五十一年度におきまして初回受給者数は六十四万五千人でございます。これが五十七年度におきましては九十三万七千、統計上からはそうなるということでございます。ただ、それが保険給付全体の中でどういう割合でどうこうということになりますと、所定給付日数いろいろございますので、先ほど局長が申し上げましたように高年齢者の方の増加の与える影響が大きい、また、その辺がいろいろ絡み合わされまして全体として受給者数が増加しておる、こういうことだろうと理解をしております。
  101. 網岡雄

    網岡委員 やはり問題がはっきりしてきたと思うのでございますが、約倍近く女性の方が多い、若年層の方が多い、こういうことになるわけでございまして、高年齢者離職率というものは従前から比較をすれば高いかもわかりませんが、前三者に比較をいたしますと量的にも半分だ。こういうことから見て、むしろ労働省側が力点を置いていますことは、給付からくる金額というものが上がってくるというところに非常に注目を払っておみえになると思うのでございます。それはそれなりに理由があると思いますが、雇用保険というものの性格からいきますと、午前中の論議ではございませんが、財政だけに目を注ぐのではなくて、雇用全体というものを考えたときに、むしろ女性や若年層の中に問題がある。特に女性の場合には全般的に言えることでございますけれども、労働条件というものが必ずしもきちっと定着をして就職をすることができるかどうかということなども、やはり労働省がきちっと調査をした上で、総合的な判断の上に立って検討をされるということが必要じゃないかと私は思うのでございますが、この点についてこれから留意をしていただきたいということを申し上げて、本論の質問に移っていきたいと思います。  雇用保険財政が五十七年赤字に落ち込んで非常に窮迫をしてきた、これは推移を見ますと確かにそのとおりでございますが、労働省側がおっしゃった理由のほかに、例えば雇用保険の中に占める国庫負担あるいは、後で質問いたしますけれども、雇用勘定の中にある人件費の支出というものが雇用保険の積立金の利子によって運営されているなど、つまり雇用保険の運営というものは、一面におきましては国の国庫負担金をできるだけ少なくする、できればゼロにしたい、こういう発想のもとでやられてきている、結局それが保険財政を窮迫に追い込んでいったもう一つの大きな柱ではないかというふうに思います。  それからもう一つは、保険料金のアップというものが、人勧凍結を初めといたします政府の低賃金政策が影響いたしまして、そのために雇用保険料の伸びをとめている、収入の面からの伸びのとまりが相対的に雇用保険財政の逼迫を招いている、こういうふうに思うわけでございますが、以下、私は具体的な問題を通じて御質問してまいりたいと思います。  そのまず一つは、本会議でも私は質問をいたしたところでございますが、昭和五十七年の雇用保険収支決算を見ますと、一般会計からの受け入れ金額は三千二百二十六億、こういうことになっておるにもかかわりませず、当初で二千八百九十五億しか計上されなかった。そのことによって、結局最終的には二百十七億円の赤字を生む結果となってきておる。そしてそれは、次の年の五十八年にも連動いたしまして、最終的に国庫からの受け入れ金額が幾らになったかをまず答えていただきたいと思いますが、いずれにいたしましても、五十七年の当初に計上いたしました二千八百九十五億、これをそのまま横滑りに、いわゆるゼロシーリングという形で計上した、こういうところが結局雇用保険財政というものを逼迫していく要因をつくっているというふうに思うわけでございます。それは違っていたらお答えいただきたいと思いますが、二千八百九十五億しか当初で計上していないけれども、三千五百億から三千四百億近くの一般会計からの受け入れが行われたと思うのでございます。その不足額は結局積立金の中で運用をしていかざるを得ないのじゃないでしょうか。そうなりますと、雇用勘定の中で出てきている積立金の利子の収入というものが相対的に目減りをしていく、こういう形になる。ゼロシーリングの二千八百九十五億円の計上というものが結局積立金の流用、そしてそのことが利子を目減りさしていく、こういう悪循環をしていくことによって、五十七年、五十八年の雇用保険財政というものが非常に逼迫をしていった要因をつくっていると思うのでございますが、その点についてどういうふうか、お答えをいただきたいと思います。
  102. 齋藤邦彦

    ○齋藤説明員 確かに、五十七年度当初予算におきましては、二千八百九十五億一般会計受け入れということで、予算を編成さしていただいております。これはもちろん先生御指摘のようにゼロシーリングとの関係もございますけれども、我々といたしましては、できるだけ受給者の方に早期に就職をしていただく、その方途が望ましいという、いわば我々の政策の努力目標とも兼ね合わせまして、必要な給付費総額を出しまして、それの所定国庫負担額ということで計算をして、予算を計上したわけでございます。しかるに、受給者が非常に急増をいたしましたために、結果といたしまして給付費総額が足りないということになりました。また、それに伴いまして国庫負担額も不足をしたという経緯でございます。  五十七年度末に国庫負担の不足額約三百億でございますけれども、それは五十七年度中に受け入れることが可能になりました。したがいまして、そういう意味で国庫負担の受け入れ不足は五十七年度においてはないということでございます。したがって、積立金を五十七年度におきまして二百億ばかり取り崩しをいたしましたけれども、これは、国庫負担が法律上定められている額まで繰り入れた後でさらに生じた赤字ということでございまして、これは一般会計とはいわば関係がない事由によって発生した赤字だというふうに御理解をいただければ幸いでございます。  それから、五十八年度見込みでございますが、現在決算中でございますのでまたしかとは最終数字は出ておりませんけれども、先ほど局長が申し上げましたように一般会計で大体五百億、そのほかに二百四、五十億足りないと思いますので、恐らく給付費総額にいたしますと七百四、五十億足りないだろうというふうに思っておりますけれども、そのうちほぼ五百億は五十八年度中に一般会計から受け入れることができました。したがいまして、残りの赤字の二百四、五十億は、これも五十七年度と同じようにやはり保険料で持つべき負担、赤字額ということになります。そういう意味で、これは積立金から取り崩しをしても差し支えない金額であるというふうに御理解をいただければ幸いでございます。
  103. 網岡雄

    網岡委員 そうすると、もう一度お尋ねをいたしますが、当初で、例えば五十八年でいきました場合に二千八百九十五億、こういう一般会計からの受け入れに対する当初予算の計上がなされているわけでございます。結局これが推定で三千六百億ぐらいに行ったことになるわけですが、その金額というものは、国から五百億近く補てんをされた時期というのは恐らく二月ないし三月ぐらいだと思いますので、その間にどんどん支払っていくわけでございますから、当然二千八百九十五億では足らぬ時点が来るわけですが、その足らぬときにはどこでそれは補ったんでしょうか。
  104. 齋藤邦彦

    ○齋藤説明員 資金運用の問題になろうかと思いますが、幸いにいたしまして、二月と三月に一般会計から合わせまして五百億ばかり繰り入れをさせていただくことができましたので、そういう意味におきまして、一般会計と今まで当年度におきます保険料収入の残りとでほぼ間に合っておるということでございます。ただ、結果としまして二百億ばかり赤字ということでございますので、この辺はもちろん資金運用との関係もございますが、積立金を崩して使うという形になっております。
  105. 網岡雄

    網岡委員 五十九年の雇用保険勘定の予算書がここにございますが、これによりますと積立金の中からたしか二千九百七十八億円ですかが出ておりますね。これはその既定の予算のやりくりといいますか、当初ほうり込んでもらった国の受入金額、それをやってもまだ足らないというときにその取り崩しをしてもらう最高限度額、こういうふうに私は説明を受けておるわけでございますが、そうだとすれば、所定の手続をとればこの限度額まではいつでも外せるということになるんじゃないでしょうか。
  106. 齋藤邦彦

    ○齋藤説明員 五十九年度におきましては、確かに積立金から二千九百七十八億受け入れ予定をいたしております。これは、一つは保険料収入と申しますか、保険給付に必要な金額を、もちろん保険料収入及び一般会計をもって間に合わせるような仕組みで予算本体はできておるわけでございますが、不時の場合、要するに我々が今年度こういう改正をさしていただければこの予算で間に合うだろうという予定ではございますが、予見しがたい予算の不足という場合もあり得るであろう、こういうことをおもんぱかりまして、予備費といたしまして二千七百九十四億積んでございます。ほぼ積立金の受入額と見合うだけの予備費を組んでおる。したがいまして、そういう意味で、年度末近くになりまして予算の歳出権がないということになりますと給付ができないことになります。そういうふうな事態に備えるためにある程度の予備費を従来から組んでおりますので、そういう意味で、それに必要な金額として積立金から受け入れ予定を考えておるということでございます。
  107. 網岡雄

    網岡委員 そうすると、もう一遍前に戻りますけれども、高率負担額というのは五十八年にも当然出たと思うのでございますが、幾らになるんでしょうか。
  108. 齋藤邦彦

    ○齋藤説明員 五十八年度の高率負担額は百四十一億でございます。
  109. 網岡雄

    網岡委員 先ほど課長の御説明によりますと、二千七百九十四億というのが不慮の事故があったとき、必要があったときにいつでも取り崩しができるような予備費的な計上がなされている、こういう御説明があったわけです。そうすると、かなりこれは資金的には余裕財源をお持ちになっているわけでございますから、ちっとやそっとのことでは資金がショートしないはずだと思うのでございますが、仄聞するところによりますと、去年そしてことしと二年間にわたりまして、三月末までに支払いをしなければならない保険受給者の支払いを四月に繰り下げをした、こういう事実があるやに聞きますけれども、その事実はありますか。
  110. 齋藤邦彦

    ○齋藤説明員 今年度二月から三月にかけまして、保険給付を現実に支払っておりますのは安定所で認定をしまして支払いをするわけでございますが、その辺の業務繁忙のことがございますので、認定日の変更を全国的に行った事実がございます。それは昨年度も行いましたけれども、今年度も行ったということでございます。そういう意味で、業務繁忙の関係から認定日を変更いたしましたので、結果として、通常の場合であれば三月に支払うべき保険金が四月になって支払われたという事実はございます。
  111. 網岡雄

    網岡委員 業務繁忙というのは、具体的にはどういう繁忙があったんでしょうか。
  112. 齋藤邦彦

    ○齋藤説明員 御承知のように二月、三月は、我々の職業安定所が最も忙しい時期でございます。資格の得喪等の関係でいろいろ業務が多くなります。そのような関係で、できるだけ受給者に御迷惑をかけないようにその辺は十分に配慮しながら、かつまた、受給者の方々の御協力をいただきましてその辺のことをやったということでございます。
  113. 網岡雄

    網岡委員 そういう程度の業務繁忙ならば、これは去年どことしだけではなくて、ずっとその前もあったんじゃないでしょうか。どうなんでしょう。
  114. 齋藤邦彦

    ○齋藤説明員 従来から、職業安定所におきましては、いろいろな機械化等を図りまして受給者の急増に対応してまいりました。また、受給者の急増に伴いまして離職票の発行等というような業務もふえてまいりました。従来は機械化によって減る定員の中でできるだけ努力をしてまいったわけでございますし、こういうことは余り好ましいことではないだろうとは思っておりますけれども、いかんせん安定所の窓口において非常に混乱を来しそうなおそれがございましたので、この二年ばかりそういうことをやらせていただいたということでございます。
  115. 網岡雄

    網岡委員 今一応の御説明を承りましたが、私、答弁を聞いておりまして納得ができないのでございます。それは、全国一斉にどこの職業安定所も例外なく受給者の急増で業務繁忙のために延ばさざるを得なかった、こういうことは、日本の国土が狭いと言われますけれども、こんな広い日本の全国の中で例外なしに繁忙なところがあったというようなことは、今までの職安行政の中で例がなかったんじゃないですか。ありましたか。
  116. 齋藤邦彦

    ○齋藤説明員 先生御指摘のように、確かに、日本全国で五百ばかり職業安定所がございますけれども、その中には忙しいところもあれば暇なところもあるということは事実だろうと思います。しかし、我々といたしましては、現在雇用保険業務はすべて電子計算機をもって統一的に処理をいたしております。そういうような関係から、一つの安定所では早くやる、こちらの安定所では業務繁忙だということでは、なかなかやりにくいということもございます。それからまた、受給者の方々に御納得をいただくためには、やはり全国的にならないと御納得をいただけないだろうということも配慮をいたしまして、全国にやらせるように話をしたわけでございます。
  117. 網岡雄

    網岡委員 そうしますと、これは今後、全国で五百ある中で、十の職安あるいは二十の職安ぐらいで繁忙事故が起きたということになったら、コンピューターの関係でやはり全部おくらせなければいかぬことになるんでしょうか。
  118. 齋藤邦彦

    ○齋藤説明員 先ほども申し上げましたけれども、こういう事態といいますのは、やはり受給者の方々にある程度御迷惑をおかけするということにもなりますので、我々としてはできるだけやりたくない、こういうふうに思っております。したがいまして、今年度は前年度の轍を踏まないように、できるだけ業務の繁閑をうまく調整をするようにして、今後こういうことのないように最善の努力を尽くしてまいりたい、こういうふうに思っておる次第でございます。
  119. 網岡雄

    網岡委員 これは私も今後ずっと調査を続けますが、今のような御答弁では私は納得できないんです。全国的にどこも例外なしにそういう事故があったというようなことは、もう説明としてはなり立たないですよ。だから、私はもっとほかの要因があったというふうに思われるのです。ですが、きょうはそういう御答弁ですから、私はこの点については質問を留保しますので、これは引き続いて当局の方も一遍検討をいただきたいということで、次の質問に移りたいと思います。  次は、雇用勘定の中の人件費の問題について御質問いたしますけれども、職安行政の国家公務員の定員は何名でしょうか、五十八年、五十九年。
  120. 齋藤邦彦

    ○齋藤説明員 本省、それから地方庁、県の職業安定課、雇用保険課、それから第一戦の職業安定所の職員を含めまして、五十八年度末定員で申し上げますと二万五千二百三十七人、それから五十九年度は二万五千百十八人、こういうことになっております。
  121. 網岡雄

    網岡委員 そうしますと、職安行政の中で一般会計で賄っている公務員はどれだけか。それから、雇用勘定の中で雇用保険の運用収入で賄っている職員というのは一体何名か。それから徴収勘定は何名か。
  122. 齋藤邦彦

    ○齋藤説明員 先ほど申し上げました二万五千二百三十七の内訳でございますが、雇用勘定がそのうち五千百五十六人、その他が二万八十一人でございます。そのうちさらに分けますと、一般会計所属職員が一万四千七百五人でございます。それから徴収勘定所属職員が千八百九十八人、こういうことになっております。
  123. 網岡雄

    網岡委員 そうしますと、今度は予算の面でお尋ねをいたしますけれども、運用収入は五十八年でいくと幾らですか。それから、一般会計で業務取扱費として入っている金額は幾らになりますか。
  124. 齋藤邦彦

    ○齋藤説明員 五十八年度におきますいわば事務費財源として一般会計から受け入れるべき金額は、予算上八億五千万でございます。それから運用収入が四百八十四億一千百万、その他雑収入がございますが、大体そういうような感じになっております。
  125. 網岡雄

    網岡委員 そうしますと、今御答弁をいただいた五十八年でいきますと、五千百五十六人の職員給与のうちで実際に支払っている人件費というものは、運用収入、つまり雇用保険の積立金の利子というものでほとんどが支払われている、こういう勘定になるわけですが、そう理解してよろしゅうございますか。
  126. 齋藤邦彦

    ○齋藤説明員 五十八年度、業務取扱費として予算上計上しておりますのは四百十四億でございます。この中には、先生御指摘の人件費もございますし、そのほかに必要な庁費等もいろいろ入っております。しかし、御指摘のように運用収入がほぼ四百八十四億でございますので、その辺が大体見合いという感じで運用はさせていただいておるということでございます。
  127. 網岡雄

    網岡委員 そうなりますと、雇用保険というものの原則からいって、午前中の議論ではございませんけれども、これは一つの社会保障、そして強制的に労働者をあるいは使用者も加入させていく、国が責任を持った社会保険ですね。そして、六十六条の第六項の規定によりますと、事務費は予算の範囲内において国庫が補助するという規定がございますが、この規定の精神からいきますと、雇用保険の行う職安の職員の給与というものは国が持つということが原則じゃないでしょうか。それを積立金の運用収入でほとんどを賄ってしまうということは主客転倒になると思うのでございますが、この点についてはどうでしょうか。
  128. 齋藤邦彦

    ○齋藤説明員 従来から、こういうような事務費につきましては運用収入でほとんどを賄ってきておるというのが現状でございます。これは、失業保険法ができまして、失業保険制度ができてからずっとそのような形で運用をさせていただいておるわけでございます。現実に法律上、運用収入をどこへ使わなければならないとか、あるいはこういう使途で使ってはならないというような規定もございません。  それから、そういうような関係もございまして、確かに一般会計の比率が非常に低いという御批判はあろうかとは思いますけれども、いわば長年の財政当局との間の慣行というような形で運用ができておる、また、予算をずっとそのような形で編成してきて。おるというのが実態でございます。
  129. 網岡雄

    網岡委員 午前の池端先生の質問ではございませんけれども、雇用勘定の人件費の賄い方、そしてその財源というものにつきまして、今度いわゆる給付水準の改定の中で一時金の算入を外しましたね。その根拠の一つに、労災保険健康保険の手当というものには一時金は入っていない、したがって社会保険全般から眺めてみると受給額やその率などについて均衡を欠く、したがって均整を保つために雇用保険の方は一時金を外した、実は外した理由は幾つかあるようですが、後で説明をいただくことになりますけれども、こういうことがその一つの理由に掲げられておるわけでございます。この点から見ると、健康保険年金の業務をつかさどっている国家公務員の人件費は、年金の利子収入で賄われていますか、健康保険の利子収入で賄われていますか。
  130. 齋藤邦彦

    ○齋藤説明員 たしか健康保険の場合は一般会計の事務費の占める割合が非常に高い、たしか九〇%を超えておるように私は承知をいたしておりますけれども、そういうような状況でございます。  ただ、事務費の関係がち申し上げれば、それは各保険制度それぞれ長い歴史がございまして、その中でおのずからそういうような形になってきておるということだろうというふうに理解をしておるわけでございます。雇用保険の場合も、そういうように長い間こういう形で運用をしてまいりました。そういうことで、一般会計からの受入額は非常に低いわけでございますけれども、それと、今回御提案を申し上げました賞与を算定基礎日額の基礎から外してしまうということとは全く別問題だろうというふうに考えておる次第でございます。
  131. 網岡雄

    網岡委員 それは詭弁だと思うのですよ。はっきり言っているように、部会でも資料で出されているのですが、社会保険の全体を見ましたときに不均衡である、こういうことがはっきり言われているのですから、不均衡と言う場合は、給付率やそういうものだけではなくて、それぞれの財政全般にわたる運用自身についてもやはり言われるべきでございまして、給付の率だけを取り上げて均衡を保つというようなことは、まさに論理のごまかしであると思うわけです。  労働大臣社会保険というものは一体どういう性格のものでしょうか。午前中の議論にもございましたけれども、これは今の雇用保険のやり方ですと、結局積立金がある、利子収入がある、だからその利子収入を雇用勘定の中の人件費に使っていこう、金がそこにあるから使っていこう、健康保険の場合は余りないから国庫で人件費を賄っていく、こういうやり方では場当たりではないでしょうか。もともと社会保険原則というものは国に責任がある、こういうことに基づいて社会保険ということになっておるわけでございますから、国が責任を持っている保険の運用は、その人件費は国が持っていくというのが原則でございまして、この点では、健康保険年金がやっている方法が正しいのでございます。雇用保険のやっていることが間違いであると私は思うのでございますが、この点について労働大臣はどういう御見解でしょうか。
  132. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 先生の御指摘の中で、誤解があるといけませんので特に説明させていただきたいと思いますが、今回のボーナスを除くのは、これはほかの社会保険でもそうしておるからそうするとか、そういうことでは全くないわけでございます。これはもう何度も御説明しておりますように、ボーナス算定基礎に入れておることに伴う就労時の毎月の給料、手取り賃金との比較の関係であるとか、再就職賃金との関係であるとか、あるいはまた、保険の受給者がそれによって再就職する意欲の関係において阻害されておる問題であるとか、そういったような関係でボーナスをこの際算定基礎から外すということでございまして、ほかの社会保険の労災でそうしておる、あるいは健康保険でそうしておるとか、そういうような関係では全くないわけでございまして、そういう意味で、その点についての先生の御指摘は私どもとしてはちょっと誤解ではないだろうか、こう思うわけでございます。  また、事務費の関係でございますが、これもまたそれぞれの保険制度におきましていろいろ歴史がございます。率直に言いまして、雇用保険が、いわゆる神武景気という昭和三十年代のああいうときから、非常に積立金も余裕のあるような状況も続いてまいりました。一方、健康保険というようなものは絶えず赤字赤字というような状況で来ました中で、そういう事務費についてもそれぞれの保険の中で賄えるものはできるだけ賄ってほしい、どうしても貯えない保険については国が持つというような形の中でやってきておるわけでございまして、臨調の指摘におきましても、こういう事務費関係は今後はもうできるだけそれぞれの保険において持つように、こういうような指摘も受けておるわけでございます。  そういう意味で、こういう社会保険における事務費をどう持つべきかについてはいろいろ議論はあろうかと思いますが、そういう国の財政事情も非常に厳しいというような現状の中におきまして、臨調もこれをそれぞれの保険において事務費も賄っていくべきである、こういう方向を出しておる現在でございまして、少なくとも、現時点におけるこういう事務費の負担のあり方についての国の方向といたしましては、そういう事務費的なものもそれぞれの保険で持つ方向でやっていくのだというような方向が出ておるわけでございます。  そういう意味におきまして、いろいろそれぞれの保険の歴史的な経緯からまちまちになっている点はございますが、全部統一して同じようなやり方でやっていかなければいかぬというように必ずしも言い切れるものでもないのではないか、こう考えるわけでございます。
  133. 網岡雄

    網岡委員 重ねて申し上げますけれども、私がお願いしまして手元に参りました資料によりますと、昭和四十年から昭和五十七年までの資金運用の積立金の運用利子の合計額は何と四千八百六十六億円です。これは昭和四十年でございますから、局長がおっしゃったように、これは失業保険始まって以来昭和二十二年からこういう運用をなさっているそうでございますから、そうなりますと、そういうものを全部合計をいたしますと五千億を下ることはない、私はこう思うのでございます。積年にわたりほかの会計では国の金で人件費が賄われているにもかかわらず、ひとり雇用保険の会計だけが、こうした人件費を自前でやっていかなければならぬ。こういうことによって負担をした金額というものは、国からいえば負担じゃないかもわかりませんが、とにかく使った金というのは五千億を下らない。こういうことになりますと、優に一年分の積立金に匹敵するわけでございます。こういう財政運用が結局積もり積もって今日のような財政の危機を迎える、こういう一つの要因をつくったことになるのじゃないでしょうか。  重ねて御質問をいたしますが、今はこれで、積立金の元が大きいものですからかなり収入も大きいわけです。しかし、改善をしたといっても、これからだんだん、いつまた五十七年、五十八年のような事態が来るとは予想できないわけですね。そういうときになったときに、この運用収入というもので人件費をあるいは事務費を賄うことができないような事態になったときには、一体労働省は大蔵省に対してどういう姿勢で臨んでいくのでしょうか。
  134. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 いろいろ事務費の関係につきまして御指摘ございまして、実はこの問題は古くて新しい問題といいますか、かねてからもいろいろ議論のあるところでございまして、この辺は、例えば今度の雇用保険部会での議論におきましても、あるいはまた職安審議会での議論におきましても、国庫負担というものをできるだけふやすようにというようなことで、保険料負担しておる労使というようなものは強くこの辺を要望しておられるという経緯がある問題でございます。  しかし、率直に申しまして、国の方も大変財政事情が厳しいということで、あるいはまた臨調というようなところから答申等もありまして、なかなか、事務費の負担を今ここで全額国庫で持たせるというような形は、非常に不可能に近い状態でございます。ただ、基本的には、我々もかねてから、とにかく一般会計で事務費をできるだけたくさん持ってほしい、こういう折衝なり努力はしてきたわけのものでございます。  そういう意味におきまして、今後、先生御指摘のようなことで、どうしても事務費がやっていけないというようなことであれば、これはもう我々の方としては基本的には一般会計でこの辺は負担してほしい、こういう形で要求していかなければならぬ問題であると思います。ただ、現時点での見通しで申し上げれば、今度のこういう改正というようなことを通じまして、中長期的には現在のような形で何とか運用がしていけるのではないだろうか、こういうふうに見ているわけでございます。
  135. 網岡雄

    網岡委員 労働大臣、最後にこの問題の締めくくりで御答弁をいただきたいと思うのでございますが、審議会も、省に向けて答申をする際に、特に項目を起こして、国の国庫負担についてはこれは十分確保するように、こういう内容の答申が出ているところでございますが、今局長からも御答弁がありましたように、それから質問を通じて明らかになっておりますように、人件費の負担というものは、一万五千人のうちの三分の一を実は積立金収入で賄っている歴史というものがずっと長い間続いている、こういうことからいいまして、大蔵省に対しては相当大きな貸しを労働省としてはしてあるわけであります。したがって、先ほどの質問申し上げたような事態などが起きたときに、国庫負担というものについて、労働大臣は、労働省の立場に立ってそれを確保するために積極的に御努力をなさるのかどうかということを改めてお尋ねしたいと思います。
  136. 坂本三十次

    坂本国務大臣 確かに歴史的な経過もあり、それから雇用保険のみが人件費を自前でやっておる、そんなことで将来続くのかという御指摘でございまして、確かに委員の御指摘は傾聴に値しますし、審議会でもやはりそういう御心配もあるようでございます。  ただ、今、臨調の真っ盛りみたいなものでございまして、まことに時期が悪いわけでございます。しかし、雇用保険制度は大変な危機にある。この時期に危機を招くということがあっては大変なことでありますから、私どもといたしましても、この審議会の答申にもございますように、必要な国庫負担というもの、どうしても必要なものは今後とも確保していくように努力をいたします。
  137. 網岡雄

    網岡委員 次は、今度改正になりました個々の各論的な問題につきまして、若干お尋ねを申し上げていきたいと思います。  まず局長にお尋ねをいたしますが、受給基本手当というものは一体どういう基本的な考えで設定されるものでしょうか。
  138. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 雇用保険失業給付というものは、労働者が失業をいたしました場合に、その人の離職前に得ておりました賃金の一定割合のものを保障いたしまして、これによりまして生活の安定を図ると同時に、再就職促進を図る、こういうことを目的としておるものでございます。そういう意味におきまして、従来、離職前の賃金の六割原則、こういうようなことを一つの水準としてきたわけでございますが、昭和五十年の雇用保険制度への改正におきまして、賃金の低い受給層につきましては、離職賃金の高いところは八割、六割以上八割、こういうような形で前職賃金に対する一定の割合を保障する、こういうようなことで行われておるものでございます。
  139. 網岡雄

    網岡委員 それではひとつ方向を変えてお尋ねをいたしますが、今度の改定で一時金を算定から外した労働省の根拠理由というものはどんなものでしょうか。
  140. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 今回の一時金を外しました理由につきましては、雇用保険部会でこの辺は特にまたいろいろ議論をされたわけでございまして、この関係につきましては、私ども、雇用保険部会の考え方に従いまして、このボーナスを外す関係についての考え方を固めたわけでございます。  具体的にその点について申し上げてみますと、まず、失業給付の額が今まで通勤手当だとかボーナスを含めて算定をされておる、そしてそれの六割ないし八割、こういう形で来ておる。そしてまた、この保険金には所得税とか社会保険料がかからない。また、失業中でございますので、安定所へ月に一回ないし二回とか出てこられる費用は要るかもしれませんが、一般的な通勤費というものもかからない。こういうような関係がございまして、まず一つには、この保険給付の水準というものが、実際に毎月の手取り賃金というものとの対比をしたらどんな割合になるだろうか、こういうふうなことで試算してみますと、総理府の統計局調査による家計調査で標準世帯の第Ⅱ分位階級、こういうものをとってみますと、主婦と子供二人、こういう標準世帯をとってみたわけでございます。いろいろ税の関係がございますので、そういう例をとってみたわけでございます。  それでいきますと、定期収入が、毎月の給料が二十二万五千円の方という例でまいりますと、その方の賞与を月割りにいたしますと毎月五万五千六百円、こんなような数字になるわけでございます。現在の保険給付額は、この毎月の給料二十三万五千六百円と賞与を月割りにいたしました五万五千六百円というものを加えました二十九万一千円という額に対する六割ないし八割、こういうような給付になるわけでございまして、この二十九万一千円に対比をいたします給付額は十七万八千二百円、こういう金額になるわけでございます。  一方、毎月の給料で二十三万五千六百円をもらっておられる方の手取り収入、そういう各種の社会保険料であるとかあるいは所得税とか住民税等を引きました手取り収入と手取り給付額といいますか、それを対比してみますと、実際にはその割合はこの例でいきますと九一・二%、こういうような割合になる。大体そういう意味で、毎月の手取り賃金保険の毎月もらう金額との関係が相当に、そういう意味では失業しておるときと実際に働いておるときとの額が余り変わらないような額になっておる、こういう問題が一つあるわけでございます。  それからまた、保険をもらいながら次に就職を探しておられるわけでございます。その就職の際の再就職賃金というものがどんな水準にあるかということで見ますと、これは東京の飯田橋の安定所といいますと日本では一番賃金の高いところではございますが、そういうところにおける男性の再就職賃金の中位数というものが約十二万円程度のところにある。あるいはまた、女性の場合でございますと十一万円程度のところにある。こういうような状況でございまして、例えばこういう十七、八万円というようなところになってきますと、求人が極めて少ない状態になってくる、こういうような現状にあるわけでございます。  こういう保険給付の実際の額というものが、実際に働いておる賃金との対比で余り変わらない額になっておる、あるいはまた再就職賃金との関係で言うと相当に高いものになっておる、こういうようなことが、再就職をその人に勧めていくことについて、ある程度保険をもらい終わってから就職をするか、こういうような状況をひとつ醸し出しているという問題があるというような指摘がされておるわけでございます。  それから、もう一つの問題といたしまして、ボーナスの今の分布というものを考えてみますと、毎月の賃金で規模別に見ますと、中小企業では確かに賃金は低い、それからまた大企業では賃金は高いという状況がございますが、こういう三十人未満のところとそれから大企業と比べましても、賃金の格差というものは三割程度でございます。ところが、これがボーナスとなってまいりますと倍以上の違いがある、こういうような問題があるわけでございます。  それからまた、ボーナス算定を入れるということの絡みでの問題は、ボーナスをもらっておる時期が算入をされるかどうかによっての違いがある。具体的に申し上げますと、前六カ月ということでやっておりますので、極端な例を言いますと、ボーナスが七月に出る人が六月にやめるということになりますと、ボーナスが全く算入されないという形で、ボーナス全くなしの形の賃金だけの算定になる。あるいはまた、夏のボーナスと冬のボーナスとは一般にはある程度冬の方が高いというような問題がございまして、夏のボーナスを含む六カ月でやめた場合と冬のボーナスを含む形でやめた場合との金額もまた違ってくる。それからまた、ボーナスの性格からいたしまして、景気のよしあしによりましてこれはまたいろいろ変動するというようなこともございまして、算定基礎としてボーナスが入っておるということによりますいろいろ問題等も非常にあるということでございまして、今申し上げましたようなそういった事情を総合的に勘案をいたしまして、この際ボーナスというものを算定基礎から外して、そして毎月の賃金の六割ないし八割原則というものにしよう、こういうことで踏み切ったわけでございます。  しかしながら、やはりそれによりまして、したがって全般に保険給付額が下がるわけでございます。そういう面について、特に低所得者層について、あるいは給付の額の低い層につきまして、そういう措置によって大きく下がるということは問題でございますので、そういう低い層あるいは中位層につきましては、給付の額あるいは率の引き上げをいたしまして、そういう意味で、このボーナスを外すことに伴う措置についてのそういう中低所得者層への影響の緩和というようなことの配慮をしながら、こういうボーナスを外すという措置をとった、こういうことでございます。
  141. 網岡雄

    網岡委員 御説明を伺いまして、私、次に御質問申し上げたいと思うのですが、一番大きな理由というのは、一時金を加えていけば、実質手取りというものと雇用保険の受給金額とがほぼ九一・二と、こういう格好でほとんど変わらない。それが求職市場の賃金よりも高くなるからしたがってすぐ就職に行かない、こういう弊害が出てくるから。要約すればこういう、そのほかに根拠をいろいろお示しいただいたのですが、大きな問題はそういうことだと思うんです。  そこで局長、大多数の人たちは、実際問題としてそんなに大きな金額をもらっておみえにならないわけですよ。これは労働省の統計ですが、「基本手当の受給月額と受給者構成」、こういうものを見ますと、年齢別に三十歳から五十五歳以上というのがございますけれども、そういうすべての階層にわたる加重平均でいきますと、これは月額九万九千四百六十九円ですよ。男の人は十一万八千九百九十九円、それから女性で八万二百三十五円、こういうことです。この金額は実際に高くはないのですね。  例を挙げれば、生活保護の給付金、これは標準四人家族で一級地、東京、大阪の場合ですと標準家庭での生活保護は十四万八千六百四十九円です。それから三級地でいきましても、同じ標準家庭では十二万一千八百九十三円、いずれも加重平均の受給額を上回っているのであります。  そして、もう一つの判断としてお示しをいたしますと、東京の地場最低賃金の最高額ですが、それは三千三百五十二円なんです。これを給付の等級で眺めてみますと、ちょうど局長がおっしゃった中級位です。ここのランクで十九等から二十二等、二十二等が三千八百円でちょっと多くなりますけれども、大体十九等と二十二等のちょうど真ん中ぐらい、この辺ぐらいのところがちょうど東京、大阪の地場の最低賃金の最高額に匹敵するわけでございます。だから最低賃金にどうにかこうにか同水準になる。局長、こういう金額が果たして大きいですか。これは五十七年の表でございますから、もちろんボーナスは含まれているわけでございますよ。そのボーナスが含まれていても、結局のところ加重平均でいきますと、ならしてみたときには、生活保護の基準からいっても、それから最低賃金の基準からいっても、いずれもこれは劣っている受給金額であるということを示しているわけでございますが、こういう金額が果たして高水準でございましょうか。こんな金額で、もし就職をしようとしたときに、勤めていく会社の賃金がそれよりも低いとするならば、むしろそういう低い賃金に置かれている状況の方が問題でございまして、むしろ労働省の指導すべきことは、こうした低い賃金に抑えられているこの労働条件というものをよくしていくための行政の指導というものが、一面においてなされることが必要じゃないでしょうか。それをやられれば保険料も上がるわけですから収入もよくなってくるわけでございますが、それは余分なことですけれども、そういう一面がある。それが実態なんだということを見ていただきたいと思います。そうすると、局長が言われた一時金を外すという理由が、逆に言うとなくなってくるわけでございます。  そして二つ目に、その一時金をカットしたことによって実質目減りがあるから、低水準の受給等級に二〇%から九・九%の傾斜配分をしていく、こういうことで埋め合わせをした、こういう御答弁がございましたけれども、二〇%の埋め合わせをしてもらったのは一等級です。だから、一番低い人はボーナスの目減り分というのは大体ならして二〇%、大企業と中小企業との比較がございますから、それは差がありますから一概には言えませんが、平均でいったときには大体二〇%と言われているのであります。そうすると、上げてもらっても、目減りをした二〇%を差し引きいたしますとプラス・マイナス・ゼロでございます。そうすると、一等級が二〇%で、そこから上に向かって漸減していくわけでございますから、九・九に向かっていくわけですから、上の方に行けばもっと下がるわけでございます。そうなると、埋め合わせをしてもらった、してもらったといっても、一番率のいい人で前と同水準、あとは全部実質的に目減りをした、切り下げられた、こういうことになるわけです。そしてかてて加えて、先ほどのように生活保護基準よりも、そして最低賃金の金額よりも低いというような、こういう雇用保険の受給で、第一条で規定します、局長自身もおっしゃったように、失業したら次の就職を見つけるまでの間の生活保障求職活動を容易にする、そういう目的でつくられた雇用保険の趣旨とは違ってくるんじゃないでしょうか。どうなんでしょう。
  142. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 賃金を基本的には上げていく最低賃金という制度を設けまして、これによって下支えをしていく、こういうことは労働省は一つの大事な仕事としてやっておる仕事でございます。  私の方が申し上げておりますのは、働いておる状態の手取りの実際の収入というものと、それから失業した後実際にもらう手取りの保険給付、こういうものとの対比において、これが例を挙げれば九割前後というような、手取りでいけば相当割高のものになっておる、こういう比較論を今申し上げておるわけでございまして、そのことが再就職への意欲という面で、要するに雑を言い方をいたしますと、働いていても雇用保険をもらっていても余り変わらないというような状態というものが、再就職についていま一つ意欲を阻害しておるものであるということで申し上げておるわけでございます。  今のお示しの最低賃金との関係であるとかあるいは生活保護との関係であるとか、こういう金額レベルでのことを今申し上げておるのではなくて、働いておるときと離職をして保険をもらっておるときとの対比の関係の問題、これを申し上げて、これについて今後の保険受給者というものが再就職をしていこう、こういう面からいって一つこの辺に阻害する要因があるんではないか、こういうことでの問題提起を一つの要素にしておる、こういうことを申し上げておるわけでございます。
  143. 網岡雄

    網岡委員 局長のおっしゃることは私の言っていることと違うのですよ。局長が御説明になった手取り十九万、そして雇用保険の受給額十七万何がしで九一・二%、これは雇用保険の等級にすると三十六が一番上なんです、恐らく三十五、三十四ぐらいのランクなんですよ。こういう高いところの水準の人だったらあるいは局長が言われたようなことが出てくるかもわかりません。しかしそれは、雇用保険を受給している人たちから見れば、全体の数字からいえば非常に限られた人数なんです。私が申し上げているのはそういうことではなくて、実際にもらっている大多数の加重平均をした場合に一体どうなるか。その金額と、よそへ勤めていく場合に一つの判断になるのは最低賃金というものが一つの歯どめだ。これより安いところは実際は制度上からいけばないわけです。ところが最低賃金よりも低いのが半分以上あるのだ。こういう雇用保険の受給額というものが一体理屈が通るかどうか。  それから、生活保護基準よりも少ないということは、これは国が責任を持つ社会保険の受給として、それから本人もこれはただでもらっているわけではないのです。掛金を納めているのでございます。掛金を納めて、しかも十年も二十年も家で左うちわで寝ておってもらう金額ではないのでございます。昔でいけば五十五歳以上は三百日、削られて今度はどれだけですか、後で表を見ればわかるのですが、そういうことです。だから限られた日にちでもらう金額としては、今言ったような金額というものは余りにも少な過ぎるのじゃないかというのが私の指摘でございます。どうでしょうか。
  144. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 若干議論になるかと思いますが、生活保護のこのお示しの金額というのは、そういう標準家庭の家族の生活をいろいろ見ることでの金額でございます。最低賃金といいますのは、これは家族構成とかそういう問題じゃなくて、まさに労働の対価としての賃金がどうか、こういうことでございまして、そういう最低賃金で食えるか食えないかとかいうようなことになってまいりますと、例えば家族が多ければそれではなかなかやっていけないというようなことで、あるいは家族の多い方についてはやはり生活保護を受けなければやっていけないという方もありましょうし、それからまた、扶養家族がいないというようなことであればそれでやっていけるでしょう、というような関係のものでございまして、これを裸で比較することはなかなか難しいものでございます。  それから、今雇用保険の関係で申し上げておりますのは、賃金をもらっておる、例えば働きながら最低賃金というものをもらっておるという関係においては、その人がそこで離職をしたという場合にもらう最低の、例えば一級というお話しが出ました、その金額との関係でございます。そうであれば、最低賃金よりも低いということが何か大変に問題であるようにおっしゃいましたけれども、一番低い給付の額というものが、やはり最低賃金をもらっている方もあるわけでございますので、この最低賃金額よりも失業しておる人のもらうその給付の金額の方が高いという形になるのはおかしいわけでございまして、やはりそれ以下のランクというものもこれは当然あり得るものでございます。そういう意味では、こういう一等級というようなところにランクされる方については最低賃金より低いという面があるのはむしろある意味ではやむを得ない、当然のことであると思うわけでございます。  そこで、一等級のこういうところだけではないかというふうにおっしゃいますが、実は八時間、九時間労働でのパートタイマーと言われる方たち、実は本当に六時間以下の就労であればこれは保険の対象にならないのですが、こういう八時間働いておられるようなパートタイマーということであればこれは保険の対象になるわけでございます。そういうような方が実は相当にたくさんおられるわけでございます。これは何か一等級というのはほんのわずかしかいないようですが、実はこの一等級というレベルに相当たくさんの層がやはりあるという問題がございます。それからまた、逆に一番上の方の層もこれも大変にたくさん分布としてはあるわけでございます。そういう意味で、この一番下の一等級の層がこの二割アップ、二〇%アップによりまして実害のないようになるということはそれなりに大きな意味のある対応である、こういうふうに私は考えるわけでございます。
  145. 網岡雄

    網岡委員 もう一つ言って、私は次の問題に移りたいと思いますが、局長、あなたのおっしゃっていることも違っておるのですよ。最低賃金の三千三百五十二円というものより低いと言ったのは、一等級から二十等級、これはちょっと表を実際に見てみぬとわからぬのですけれども、十九等級は完全に最低賃金の方が高いのですよ。最低賃金の方が高い。それ以下なんです。これは間違いないのです。だから一等級から十九等級ですから、これはかなりの人数の人が東京、大阪の最低賃金よりも低いことは間違いないのですよ。そういう賃金だということです。  それから、生活保護標準家庭給付の金額と比較をして私が申し上げましたのは、これは確かに一人と家族四人との問題だというふうにおっしゃると思うのでございますが、この保険の受給の権利は家族が何人でどうこうじゃないのですよ。本人が何年勤めて、そしてもらっている賃金がどれだけで、法律に照らし合わせてそろばんをはじいたらどれだけだということが法律の定めなんでございます。だから、そのことがきちっと決まっている以上は、一人でもらう金額というものが、そういうことで比較されても別に構わないというふうに私は思います。  それからもう一つ、実態的に言うならば、家族が五人おって働いている人が三人おるといいましても、最近は核家族でございますから、そう働く人間が三人おるから全部どんぶり勘定で一家をやっていくというふうにはなっていないのでございます。これはいいことか悪いことかわかりませんけれども、そういうことです。そうすると、やはり、失業すればその人の受給額で一応次の就職をするまでの生活の確保を図っていかなければいかぬというのが、今の核家族時代の実態でございます。  こういう実態を踏まえて、やはり受給額の計算というものはしていかなければならぬと思うのでございますが、そういう面から言えば、私が申し上げた一つ一つの指摘点というものは、最低のものを超えていないという点で私は問題があるというふうに思うのです。  それから、短時間労働の問題で一つ私はさらに加えて質問していきたいのですが、局長がおっしゃったように、最低の六万四千二百円というもの以下であるとみんな切り捨てられてしまうわけでございます。行政管理庁が、去年、パートタイマーに対する各種の社会保険制度の適用が不十分で、あり、改善を要するということを指摘をいたしております。私どもはパー上雇用法をつくれ、こういうふうで、社会党も本委員会に提案をしておるところでございますが、労働省も、この間、大臣の施政演説によりますと、調査会をつくって検討に入る、こういうことをおっしゃっているわけでございますが、そういうパートに対する対策を考えようとしているときに、実際もらっている金額、例えば時間給三百三十九円、これは実際にある金額でございます。それから時間給四百三十円、こういうのはざらにある。パートで働いている人たちはこういう給料、賃金でやっているわけです。そういう人たちは、この雇用保険のネットにはかからなくなってしまうわけでございます。こういうことで、一方においては雇用促進を図るのだと言って格好のいいことを言っておる労働省が、一方においてはこれを切り捨てる、見直されようとしているというようなことがされるとするならば、私は大変問題だと思うのでございますが、この点について労働省はどういうふうですか。
  146. 齋藤邦彦

    ○齋藤説明員 いろいろな論点があろうかと思いますが、若干先ほどの御質問からあわせまして追加的に御説明をさせていただきたいと思います。  現在、賃金等級でいきますと一等級に所属しておられる方が、非常に受給者の数としては割合が高いわけでございます。それからもう一つの山が、大体十六等級から二十等級ぐらいの間でございます。それからもう一つ、三十六等級は当然のことながら一番多い、こういうような形、賃金日類別に区分をいたしますとそういうような実態になっております。  それで、今回のボーナス算定基礎から外しますに伴いまして、二つの措置をとったわけでございます。  一つは、最低の賃金日額を二〇%引き上げる、こういう措置をとりました。そういたしますと、現在で申しますと、現在の一等級から七等級までの範囲の方はすべて引き上げになります。最低が現在給付日額二千五百円でございますから、一等級から七等級までの方は全部引き上げになります。これはボーナスあるなしに恐らく関係ないだろうと思いますが、そういう意味で引き上げになります。  それからもう一つは、先生言われましたように中間層について、非常にここが多いということを考慮いたしまして、新二十等級以下のところはすべて六割を超える給付率にしようではないかという措置をとっております。したがいまして、新二十等級と申しますのは現在の等級に直しますと大体二十五等級ぐらいでございます。そういう意味におきまして、一番真ん中ぐらいのところまで含めて、給付率ボーナスを外しますから、それは個々人によって差がある方はいらっしゃるだろうと思いますけれども、ある程度、半分以上の方はそういう意味給付率が上がるということによって大分カバーできるのではないか、そういうような措置をとっているわけでございます。  それからもう一つ、パートの問題でございますが、現在、我々は、いわゆるパートタイマーというような方を保険給付の対象にしますようなことは、財政状態は別にいたしましても非常に難しい、現在の雇用保険法の建前から申し上げますと非常に難しいだろうと思っております。しかし、そうは言っても、いろいろとそういう実態があるということを考えまして、過労働時間、通常の労働時間に比べまして四分の三以上働いておられる方については保険給付の対象とする、いわば被保険者とするというような取り扱いをして、できるだけその辺の方々生活の安定を図るようにしておるということでございます。
  147. 網岡雄

    網岡委員 一番最後の短時間労働に対する点でございますが、一週四分の三を働いてみえる人については一応これを救っていくようなことで考えていきたいという御答弁がございましたが、これはやはり、今はパートの占める位置というものは非常に高いわけでございます。したがって、労働行政の立場から見ましても、こういう人たちを雇用保険の適用の範囲に入れるということは、やはり時代の要請にこたえるものだというふうに思うわけでございますし、同時に、調査室までつくってそして将来のパート雇用というものについて一つの施策をつくろうとなさっておみえになる労働省でございますから、これはやはり前向きに、大半の人が雇用保険に加入できるようなそういう体制になるように、ぜひひとつ御検討いただきたいと思うのでございますが、この点について、最高の責任者である労働大臣の御答弁をいただきたいのですが。
  148. 坂本三十次

    坂本国務大臣 随分この国会、予算委員会を通じて、また当委員会でも、パートタイマーについての最近のこの非常な伸びを見まして、これはやはり、これに対する対策というものは労働行政にとっては欠かすことができないという声が非常に上がっております。私ども、それをそのとおりだと受けとめまして、現在のような六時間以上働く人を保険の対象にしておるということでございますが、余り時間が少ないのもどうかと思いますが、その辺が一応、普通は八時間以上というフルタイム労働でありますが、特にやはり最近の情勢というか社会的なニーズにこたえて、六時間以上を保険の対象にしておるということはまあ妥当なところではなかろうかな、これについて対策を進めていきたい、こう思っております。
  149. 網岡雄

    網岡委員 では、時間がございませんので、次に移っていきたいと思います。  次の問題は、今度の改正によって、自己都合退職をするという人たちについては、現行は一カ月から二カ月まで、しかもこれは刑事罰で解雇を受けた人は二カ月、そして自分の責任があって解雇された者については四十五日、そして任意の場合には一カ月、こういうふうにそれぞれケースにはめた一定の基準というものがあるわけでございますが、聞くところによりますと、今度一カ月から三カ月に延長はされましたが、そういう意味での基準というものがない、こういうふうに一応私は聞いておるのでございますが、この点について現行と同じような段階別の規定をなさるのかどうか、その運用についてお尋ねをいたします。
  150. 齋藤邦彦

    ○齋藤説明員 今回改正法でお願いをいたしておりますのは雇用保険法の三十三条でございますが、一つは、「被保険者自己の責めに帰すべき重大な理由によって解雇され」た場合、それからもう一つは、「正当な理由がなく自己都合によって退職した場合」、このような場合は、現在「一箇月以上二箇月以内の間で公共職業安定所長の定める期間は、基本手当を支給しない。」という規定になっております。いわばこれが給付制限の規定でございます。この一月以上二月以内という規定を、一月以上三カ月以内というふうに改正をお願いしているわけでございます。具体的に、現在は、正当な理由がなく自己都合によって退職した場合と申しますのは、一月の給付制限をいたしております。その基準が現在ございます。これは職業安定審議会にお諮りをした上で、労働大臣が定める基準でございます。そういう形で、現在の基準で運用をいたしております。  ただ、この関係で、改正法を作成するとき職業安定審議会でいろいろな御議論がございました。それから部会でも御議論がございました。そういうことを勘案いたしまして、現在の認定基準のままでいいかどうか、これはもう少し再検討をせざるを得ないだろう、こういうふうに思っているわけでございます。再検討した結果、また、安定審議会にお諮りをした上で決めるというようなことにいたしたいというふうに思っております。
  151. 網岡雄

    網岡委員 御検討されるということですから、今断定的なことを申し上げることはできないのでございますが、しかし、もし仮に段階をつくらずに職安所長の判断で、離職反復といいますか何回も積み重ねている人については、これはもう三カ月だ、こういうようなことでやられるとすると、私はやはり問題があると思うのです。もともとこの雇用保険の受給をする権利というのは、非任意的であるかあるいは任意的であるかを問わず、失業をする、職から離れる、こういうことの二つの要件があれば、それは雇用保険としての受給の権利を得るように、これは雇用保険法第四条の規定で明確でございます。だから、非任意的なものである場合はいいけれども、そうでない場合はだめなんだ、そのときにはこういう段階をつくるのだというようなことは、本法には全然示されていないわけでございます。それを運用でやられているわけでございますけれども、そういうことになると、これは職業選択の自由というものからいって、私は憲法にも抵触することになるんじゃないかというふうに思うのでございます。  現に吾妻という社会保障法の学者がお見えになりますが、この人の学説によりますと、本来こういう給付制限をするということは憲法違反の疑いがあるのだということを言っておみえになる学者さえあるわけでございまして、最近は単独出張というものがよくあります。今、どうもこの規定の中によりますと、単独で職につかれる人が、もうとてもこれは行けないということでやめるようなことになった場合には、その人でも一カ月の給付制限ということがやられているということでございますが、これなどは行きたくとも行けない、こういうやむにやまれない家庭の事情や労働条件からくる制約というものがあるのでございまして、さきの学説などからも判断をして、こういう自己都合によって退職をする人についての給付制限というものをもっと大幅に緩和をする、こういう方向で検討をしていかないと、私は憲法違反の疑いが出てくるような気がするわけでございまして、この点について、例えば単独出張というようなときにやむを得ず離職をするような人とか、あるいは雇用主の方が人格的に非常に欠陥のある人でこれ以上勤めることができないというような、やむを得ざる事由によって自発的に任意にやめていくような場合など、これらについては無理からぬ点があると思うのでございます。そこでこういうような点については弾力的に運用する、こういうようなことが必要だと思うのでございますが、今回の改正でどういうふうな運用をなさっていくか、お答えいただきたいと思います。
  152. 齋藤邦彦

    ○齋藤説明員 先ほども申し上げましたように、審議会の御議論でも、確かに職業選択の自由を十分に配慮した上でいろいろな基準を設けるようにという御指摘もございました。確かにただいまは、いわゆる単身赴任者が自発的に離職した場合には給付制限にかかるということで運用をいたしておりますけれども、その辺は現在の実情になかなか合わないのではないかという御指摘もただいま先生から伺いました。そういうような国会での御議論、あるいはこれから安定審議会にいろいろお諮りをして決めたいと思っておりますので、そのときのいろいろな御議論、そういうようなものを踏まえまして、現在の基準を現在の社会経済情勢に合うような形に直してまいりたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  153. 網岡雄

    網岡委員 まだ高年齢雇用対策などがございますけれども、時間が来たようでございますから、次の時間に質問を用意いたしまして、終わります。
  154. 有馬元治

  155. 平石磨作太郎

    ○平石委員 私は、雇用保険法改正に関連をしまして、この雇用保険法による事業についてお尋ねをしてまいりたいと思うわけです。  ところで、労働省は、勤労者のために、雇用保険法による各種施設を雇用促進事業団に設置をさせておるわけです。したがって、この施設は雇用促進事業団法に基づく施設として、特にこの保険法によるところの保険料を原資として設置がなされておるわけでありますが、これがどのように、そしてどのくらい設置されてきたか、経過をお知らせいただきたい。
  156. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 労働省では、御指摘ございましたように、雇用保険保険者福祉の増進と、中小企業などにおきます労働力の確保対策、あるいはまた雇用促進に資するために、労働保険料を原資といたしまして、教養、文化、体育等の各種の福祉施設を設置いたしておるところでございます。  その主なものといたしましては、中野にございます全国勤労青少年会館、俗称サンプラザと言っておりますが、ああいったものを初めといたしまして、中高年齢者福祉センターあるいは勤労身体障害者の教養文化体育施設あるいは勤労者の体育施設あるいは共同福祉施設、こういうようなものを建設をいたしておりまして、五十七年度末で十九種類、千百九十二カ所におきまして運営中でございまして、これに対する出資総額は千六百三十六億ということでございます。
  157. 平石磨作太郎

    ○平石委員 今お話しがございましたように十九種で千百九十三カ所、しかも千六百三十六億円が現在出資されておる、こういうことでありますが、私は、きょうは、この四事業の中で雇用福祉施設に限定をしましてお尋ねを申し上げてみたいと思うわけです。  ところで、この雇用施設につきましては、昨年の十二月五日、会計検査院の方で指摘がございます。この指摘によりますと、この施設は今申し上げたように保険料を原資とする施設であって、しかもこの施設が、会計検査院の調査によりますと被保険者の利用率が非常に少ない、三〇%以下と低率であったり、それから被保険者の利用者数が著しく少ない、特にこの中の農村教養文化体育施設については、農工法に基づく導入企業の従業員の利用が皆無となっている、一切ない、こういうことです。また、共同施設につきましては会議室、研修室等施設の一部がほとんど利用されておらず、中には全く利用されていないものがある、労働保険料を原資として被保険者等のために実施している本事業の意義が十分生かされているとは認められない事態が見受けられた、こういう指摘がございます。御存じでしょうか。
  158. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 今先生御指摘のようなことにつきまして、会計検査院の方から今回指摘を受けました。そういうようなところが一部においてあるという現状につきましては、私どもも、今後、こういう施設の設置基準というものをしっかり見直しをいたしまして、この施設の本来の目的、趣旨が本当に達せられるようなところに、そしてまたそういうような方法でやっていかなければならぬ、こういうことで、現在その設置基準等についての再検討をしておる段階でございます。
  159. 平石磨作太郎

    ○平石委員 指摘については大体承知のようですが、利用状況はどうなっていますか。
  160. 野見山眞之

    ○野見山政府委員 五十七年度におきますこれら三つの施設の利用状況について申し上げますと、勤労者体育施設につきましては一所平均で約一万八千人、そのうち被保険者は約六千三百人でございます。農村教養文化体育施設につきましては一所平均約一万六千人で、そのうち被保険者の利用が約五千四百人、共同福祉施設につきましては一所平均で約一万八千人、そのうち被保険者は約七千二百人となっておりまして、被保険者の利用割合はほぼ三四%から四〇%という状況でございますが、この事情につきましては、勤労者は主として夜間に御利用いただくというようなことですとか、もう一つは、これらの福祉施設につきましては、現在の被保険者のみならず、かつて被保険者であった人たちも対象にしているわけでございますが、このようなかって被保険者であった人たちについての利用状況は実はこれまで把握しておりませんでした関係で、この利用率の中に入っていないわけでございます。そういう方々も入れますとさらに上がるのではないだろうかというふうに思っておりますので、この辺の事情につきましては御理解いただきたいと思います。
  161. 平石磨作太郎

    ○平石委員 今、大体お話しを聞きましたが、なぜ利用ができないか。しかも、この設置につきましては、検査院の指摘の中にもございますが、この設置そのものからおかしなことがある、こういうことが私どもの実態調査の中で明らかになったわけでございます。したがって、この会計検査院の指摘の中に「貴省では、体育活動等の実情及び当該施設の利用計画、同種施設の設置状況、農工法に基づく実施計画の策定状況、導入企業の実績等について十分な調査」が行われてないとありますが。ここに利用の上がらない一つの原因があるのではないか。したがって、この点から私も調査をいたしてみましたが、この設置につきましては、農村地域工業導入促進法の規定に基づいて、通産大臣、農林大臣、そして労働大臣は、実施計画、工業導入に伴う基本方針を立てることになっておるわけです。したがって、それに基づいて、三省の間において、農村地域への工業の導入に関する基本方針を策定し、そして第一次としては四十六年から五十年度。第二次計画としては五十一年から五十五年度。現在、第三次が行われておるわけであります。この第三次の農林水産大臣は亀岡農林大臣、そして通商産業大臣が田中六助、労働大臣が藤尾正行、これで基本方針が決定をされ、これに沿ってそれぞれの市町村、さらに県段階において実施計画がなされ、本省に要請される。こういう経過のもとに、労働省が設置市町村を決定し、その設置については出資金、すなわちこれが建設費でありますが、出資金でもって雇用促進事業団に設置をさせておるというのが現状であります。  そこで、私もこれらについて一応いろいろと調査をさせていただきました。非常に時間も少のうございますので簡単に申し上げていきますが、また御答弁も簡単にひとつよろしくお願いしたいと思うわけです。それで見てみますと、この実施計画の中で、もちろん今の指摘にありましたように、十分な調査がなされてないということ。さらには、いろいろ調査の中で出てきたことは、実施計画がないままに設置されておるということも出てきました。これは多くはございません。したがって全体がそうだとは申しませんけれども、六カ所程度はそのものが出てきております。これはどういうことでこう相なったのか、一言お答えをいただきたい。
  162. 野見山眞之

    ○野見山政府委員 今御指摘のような箇所につきましては、地元からの要望がございまして、少なくとも翌年度程度には導入計画が策定されるということのもとで、その計画に基づいて進出企業が期待できるという状況のもとで、私どもとしてはその前提に立ちまして、設置決定をいたしたわけでございますが、これらの御指摘の施設は、設立された時期がほぼ石油ショック以降の経済環境が比較的困難な状況のもとでございまして、当初の進出の予定がめどが立たないということで、結果的に導入計画が策定されなかったというような事態に相なったものと考えております。
  163. 平石磨作太郎

    ○平石委員 それは経済の実情から判断したときに、私も、この農村地域工業導入事業進捗状況、これを見てみますと、今お話しにございましたように、この設置が非常に行われたのがこれが始まってから三年間、それから以降、五十年からこちらはずっと低調になっておるわけですから、したがって、実施計画がなされたものの、今おっしゃったような状況で入ってきてなかったというのは仕方がないことであって、これはやむを得ないことだと私は思います。したがって、この数字で見ましても、実施計画面積と導入面積、そしていわゆる未導入の空白面積というものがございますので、それはいいのですが、計画そのものがないというのは非常に理解に苦しむところなんです。どういうことでこう相なったのか、そこらあたりをお示しいただければ理解ができるのではないかと思うわけです。
  164. 野見山眞之

    ○野見山政府委員 今御指摘のように、導入計画が策定されるという見込みで設置決定いたしましたにもかかわらず、計画策定されなかったというような結果を招いておりますことは非常に遺憾に存じておりまして、今後、これらの農村地域に建てられる施設につきましては、農工法の所管省庁でございます通産省、農水省とも十分協議しながら、導入の見通しその他につきまして連携をとりながら、設置の方針を立ててまいりたいと考えております。
  165. 平石磨作太郎

    ○平石委員 これ以上は追及をいたしませんが、そういったことが実績の中に出てきておるということ、これはひとつしかと頭に入れていただきたい。この件について大臣、どうです。大臣の所感をお願いしたいと思います。
  166. 坂本三十次

    坂本国務大臣 会計検査院から指摘を受けるなどということはまことに不名誉なことでございます。いろいろな環境の激変があったにしても、やはりやるべきことはきちっとやらなければいかぬ。ということは、裏を返せば、これらの施設は全国的に見て割と喜ばれておる施設なんでありますから、これは今後ともその期待にこたえていかなければなりません。そういうようなときに、ちょっとした不注意でそういう不名誉な指摘を受けるというふうなことは、私どもの本意ではございませんので、こういう問題については、設置基準の見直しなども含めて、今後とも関係各省と連絡をとりながら篤と気をつけてまいりたいと思っております。
  167. 平石磨作太郎

    ○平石委員 そこで、また指摘をせざるを得ないのですが、今六カ所のそういったところが出たわけです。それで、この設置については労働者の保険料を原資とする、こういうことでなされておりますが、設置についての運営要領がここにございます。これは労働省がつくって雇用促進事業団に示しておるものだと理解をしておるわけですが、この中の第三のところに、農村教養文化体育施設運営要領というものがございます。この体育施設の運営要領の第三のところでは、「農村地域に導入される工業に就業する雇用保険の被保険者に利用させるものとする。」、こうなっております。間違いないか、ひとつ。
  168. 佐藤仁彦

    佐藤(仁)説明員 そのとおりでございます。
  169. 平石磨作太郎

    ○平石委員 そこで、私どもが見ましたところによりますと、これは一施設しかよう調査をしませんでしたが、ここへ行ってみますと、現実には、実施計画はもちろんないわけですが、その設置がなされた施設の利用、これが今全く雇用保険法の目的に沿ってない、そういう運営がなされておるわけです。それで、この設置条例を見てみますと、地方自治法第二百四十四条による施設、いわゆる公の施設としてこれが設置、運営をなされておる、こういうことでございます。  この地方自治法に言う公の施設というのはどういうことかということを調べてみますと、これは一般の村民の福祉の向上、こうなっておるわけです。そういたしますと、雇用保険法で設置した特定目的を持った施設が一般目的に使われておる。そして、勤労者はいない、農村工業導入が入ってないし、実施計画もないのですから、この法が求めておる勤労者の利用というものは皆無である、こういうような事態になっておるのでありますが、実施状況についてこのような結果が出ておるのはどういうことなのか、御説明をいただきたい。
  170. 野見山眞之

    ○野見山政府委員 御指摘のとおり、市町村の単独で設置いたしました施設とあわせまして、施設の利用につきましては、利用料金なりあるいは対象について条例で定めているものがございますが、今御指摘のような地方自治法二百四十四条、すなわち地方公共団体が住民の福祉を増進するという一般的な目的のために設置したというような根拠に基づいて、設置条例を定めているという例が見られることは非常に遺憾なことだと存じております。大多数の条例の場合は、雇用保険法の趣旨に基づきまして、雇用促進事業団が設置した施設については勤労者中心に利用させるという条例がほとんどでございますが、今お尋ねのような条例の例がございますので、これは適切でございませんので、所要の措置を講ずるように指導してまいりたいと考えております。雇用促進事業団では、従来から、事業団施設の管理運営につきましては、設置目的に沿った条例を制定するように指導してまいったところでございますけれども、こういった例がございますので、雇用促進事業団を通じまして、改めて条例のモデルを市町村に示していくというようなことを考えてまいりたいと思っております。
  171. 平石磨作太郎

    ○平石委員 これは、今申し上げたように法の目的を全く理解しない市町村、そして、今大臣のお言葉にありましたように、この施設につきましては地方団体の方も非常に要望の強いものです。したがって、私は、特に地方の財源のないいわゆる過疎地域といいますか農山村地域におきまして、企業導入を図って、そして、農村の振興と同時に、そこに働く勤労者が体育施設あるいはいろいろな福祉施設として利用していくということはまことに好ましいことであって、その運営を適切なものとしていかなければ、今私が指摘を申し上げておるようなことでは正常な発展がなされない、こういうことで御指摘を申し上げておるわけでございまして、当然この法に示された基本方針に沿い、そして関係市町村、関係県もこれらの方針に基づいての実施計画を定めてやってほしいと思うわけです。  したがって、私は、今お言葉にございましたが、体育施設がそのまま一般施設に変化しておる、さま変わりになっている。こういうように、いわゆる市町村が設置した総合的な一つの施設へ、それと一緒にそこのエリアの中に建てるとするならば、これは二つの条例が要るのではないかというような気がするわけです。一つは雇用保険法に基づく施設である、このことを条例に設定をしていかねばならぬというような気がするわけですが、そういう指導がなされるのかどうか、適切な方法というものはどういうことなのか、お聞かせをいただきたい。
  172. 野見山眞之

    ○野見山政府委員 体育施設につきましては、中小企業に働く労働者の福祉の増進のために設置しておりますけれども、最近、特に若い人たちを中心にスポーツ志向というような傾向が高まってまいりまして、体育施設の要望が非常に高いわけでございます。中でも、この体育施設につきましては、労働省としては一カ所九千万の規模で建設することにいたしておりますけれども、地元の市町村によりましては、さらに地元が自主財源をもって建てたいというような御希望もございますので、これは勤労者の体育施設であるという趣旨に基づく限り、事情に応じて御相談申し上げているという状況でございます。しかしながら、この建てられた施設につきましては、いわば共同登記という形で設置されたものでございますので、地元市町村から寄附をもらったというような形ではございませんけれども、あくまでこの施設が勤労者福祉の向上という目的のために運営されるわけでございますので、これは、それぞれの市町村におきまして、勤労者のための体育施設であるという目的の条例を設定していただくという立場に立っております。
  173. 平石磨作太郎

    ○平石委員 私の聞かぬところまで踏み込んできたんですが、今私が体育施設と言うたからそういうことをおっしゃったと思うのですけれども、今申し上げたように地方自治法によるものでなしに、もう一本、この文化施設につきましての条例をつくる必要があるということですね。  それともう一つ、今答弁にございました、これは私は聞かなかったんですけれども、ちょっとほかのことでも一緒にと思っておったんですけれども、今話が出たからその体育施設へ入らしてもらいますが、これは設置が一万人以上となっておるわけです。その町村の人口一万人以上という条件がついておるわけですが、これを調べてみますと、一万人以下で設置されて、どうも規定に決められたとおりに設置されてないというのが九十五カ所あります。これもちょっとおかしいんではないかと思うが、これはどういうことでしょうか。
  174. 野見山眞之

    ○野見山政府委員 体育施設につきましては、これまで建設いたしました五百五十六カ所のうち、一万人以下の人口の町村に設置されたのは九十五カ所ございます。これらの体育施設につきましては、運用の基準といたしまして一応一万人以上ということを設置の基準にいたしているわけでございますけれども、これらの体育施設が、近隣の二、三カ町村を含めまして交通の便がいい、あるいは大勢の利用が見込めるというようなケースの場合につきましては、広域的な御利用をいただくという建前で設置しているわけでございます。ただ、これらの施設、広域的な利用というのはいわば運用の方針としてやっているわけで、必ずしも明確にしていないという面がございます。したがいまして、今後一万人以下の市町村につきましても広域的な利用が見込まれる、あるいは今後とも広域的な利用を進めていくという立場からも、これらの設置の基準についてはできるだけはっきりしたものにしていきたい、そういうように考えております。
  175. 平石磨作太郎

    ○平石委員 今御答弁にありましたように、一つの市町村に限定をしますと非常に設置しにくくなる。この事例を見てみますと、ある県では二千二百四十九名の人口のところへ建ててあるわけですね。だから、五千人以下というようなところがずらっと並んでいる。これは実情としていろいろとやむを得ない点があるかもわかりませんけれども、この決められたことが実情に合ってない。だから、無理をしてこういうことになるわけですから、ここらは、今答弁にありましたように、確かにそういう町村に要望が高いものですから、企業導入を図って、そして人口がどうのこうのというようなことにつきましては、設置箇所は少なくても広域的に利用できる、こういう形に規定を変えておかないと、指摘を受けることに相なろうかと思うわけです。  そして、ここでさらに、この利用率、大体指摘があります三〇%以下というのですが、この利用率を見ましても大体一五、六%、中には七%から八%ということです。それからついでに申し上げますが、共同施設につきましては、これは一年のうちに七日しか使ってない、こういうものもあるわけです。これはやはり、こういうような利用状況の中では設置が妥当かどうかという、もとへかえって考えなければならぬようなことに相なるわけであって、そこらは実施しなければならない労働大臣は相当適切に調査をして、指摘にもありますように十分、企業が入ってくるのかどうなのか、あるいは、共同施設は企業と関係ありませんが、勤労者がおるのかどうか、あるいは体育館も、勤労者がその町村におるのかどうなのかあるいは勤労者であった方がおるのかどうなのか、そしてそこは雇用保険のお金を納めておるのかどうなのか、こういうことを前もって十分調査をして、そして大体利用もできるんだな、こういうことも見込んで設置をしなければならぬのじゃないかと思う。  そこで、利用するのには大体どのくらいが穏当のものなのか、どのように考えておるか。指摘されておるのは三〇%以下、非常に低利用である、こう指摘を受けておりますが、労働省は大体何%ぐらいを思っておるのか、一言。
  176. 野見山眞之

    ○野見山政府委員 現在の利用をこれからもできるだけ高めていくという前提のもとで、会計検査院からの御指摘あるいはその他、これからの利用のあり方等も含めまして基準の見直し等を図ってまいりたいと思っております。
  177. 平石磨作太郎

    ○平石委員 今答弁の中に出てきましたこの設置の状況について、ちょっと、私、また今の答弁の中から拾ってえらい悪いのですけれども、この施設は促進事業団が出資金でもって建てておるわけですね。したがって所有権は促進事業団にある。これを見ますと、敷地についてはできれば提供いただきたいというようになっておる。そして、建物については促進事業団の建物なんです。これはいわば勤労者の建物ですよ。この勤労者の建物であるものが、今言ったように一般施設に変わっておるということと、それから所有がいわゆる事業団のものであって、しかも市町村がそれに相乗りで負担をしておる。そしてここに共同出資という形で建設されておるわけですよ。これでは法律関係その他も非常に複雑になってしまうわけですね、実情やむを得ぬかもしれぬけれども。ここの整理については、維持管理の問題等いろいろの問題が出てきます、あるいは建てかえの問題、そして共有関係で登記をそれぞれしております、こういう話ですけれども、こういうことがいいのか悪いのか判断に苦しむわけですが、少なくとも市町村が負担をして出しておるものであるならば、所有はあくまでも事業団のものなんだから事業団に寄附をする、こういうことであるならばこれはまたはっきりしてくるわけですが、これは私の分です、これは私の分です、こういう形にして登記をしておるということになりますと、非常に複雑に相なるわけです。ここらはどんなことに考えておられるのか、ひとつお示しをいただきたい。
  178. 佐藤仁彦

    佐藤(仁)説明員 ただいま先生御指摘のように、市町村におきまして体育施設をつくりたい、それもよりよい施設をつくりたい、こういう要望が極めて高い状況でございます。このようなもとで、私ども、予算で認められました勤労体育施設についていうならば、一施設九千万という限度でやっておりますから、市町村からは自主財源を投じてもよりよいものにしたい、施設内容も規模もよりよいものにしたいという要望があるわけでございます。その際、私どもとしては、これが労働保険料を原資として設置されるものでございますから、その本来の趣旨が失われない範囲内で、関係市町村と御相談しながら市町村からの自主財源の追加を認めておるところでございます。  御指摘のように、でき上がりました建物につきましては、出資額に応じまして共同登記をいたしておりますが、これにつきましては地方財政に関する法律で事業団に対する寄附が禁じられておる面もございますし、そうした制約もございまして現在こういう措置にしておるわけでございます。ただ、そういうことで市町村が出資し、かつ、出資したものとしてあるということは、市町村自らの自主的な活用を進める、それも地元の勤労者のためにということで、市町村の自主的な活動も促進できる面もあるのではないかと思っております。
  179. 平石磨作太郎

    ○平石委員 今そういう御答弁でございましたが、考えてみますと非常に複雑な法律関係になってくるわけですし、あるいは、雇用促進事業団にはもちろん財産目録もあるのだろうと思うが、それには当然その持ち分だけが入ってくる、こういうことの処理がなされておると思うわけです。だが将来、この維持管理その他補修、そういったような問題が出たときにどういうことになっておるのか。そして、現在までにトラブルがあっておるかどうか。ここらもひとつあわせお答えをいただきたい。
  180. 佐藤仁彦

    佐藤(仁)説明員 でき上がりました建物について修理が必要であるというような場合にも、これは出資の割合についてそれぞれが負担するということで処理いたしてきております。これまでのところ、私どもの承知している限りではトラブルは別に起きていないと承知しております。
  181. 平石磨作太郎

    ○平石委員 トラブルが起きていなければ、問題としてそう噴出することはないと思うけれども、トラブルがないから適切だとは一概に言い切れません。そういうことでございますので、これらについては将来において御検討を賜りたい、こう思うわけであります。  私もこういうことを指摘させていただいたわけですが、ただ、決してこういう事業そのものがとまれば云々というようなことではございませんで、特に田舎の方にとりましてはのどから手が出るほどの要望しておる施設です。そういうことですから、そういった法の趣旨を十分に生かされた形において実施してほしいということです。  それから、通産省はお見えいただいておりますね。通産省、農林省、これに関係があるわけでありますが、通産省としたら、今までこの導入法に基づいて、あるいは工業再配置、そういった法律に基づいて工業導入を図っておられることだと思うんですが、この今までの過去の導入企業、この進出状況をひとつお知らせをいただきたい。
  182. 岩田誠二

    岩田(誠)説明員 御説明いたします。  過去におきます農工地区への導入企業の進出状況でございますが、昭和四十六年に農村地域工業導入促進法が策定されて以来昨年三月までに、農村地域工業導入地区へ導入された企業の合計は二千九百六十八社、導入面積で約七千五百ヘクタールに上っているわけでございます。
  183. 平石磨作太郎

    ○平石委員 この導入の経過を見てみますと、今おっしゃったように今までの進出がございますけれども、今後はどんな見通しでしょうね。
  184. 岩田誠二

    岩田(誠)説明員 今後の見通してございますが、御高承のとおり近年の経済成長率の鈍化によりまして、全国的に工場立地動向というのは停滞をしておるわけでございます。しかしながら、その農工地区について見ますと、加工組み立て型の業種の立地が、期待されるような内陸型の工業用地であるということがまず一つ。それから最近徐々に景気の回復が見られる、こういうようなことから、農工地区への工業導入というのは今後も着実に増加するものと私どもは考えておる次第でございます。
  185. 平石磨作太郎

    ○平石委員 これは、私どもの田舎の方にも大きな工業団地として敷地をつくっております。これは市町村としたら、開発公団とかいろんなものをつくって、公社をつくって設置をするわけですが、この設置に対する金利、企業が入ってこられてこれに売却をしていけば償還ができるんですけれども、入ってこないというようなことで、金利が非常にかさんでおるというような実情にあるわけです。そういうことを見てみますと、これからの景気回復にはよりますけれども、ひとつ農村の方にもっともっと導入を促進をしてほしい。  それから、農林省お見えいただいていますね。農林省の方も、もちろん農山村の振興ということから考えてみますと、当然のこととして、この計画、方針に基づいて三省がひとつ連携を持ちながら企業導入を図ってほしい。そして、この企業ももちろん採算ベースに合わないと入ってきません。したがって、交通の問題やらいろいろコスト等、なるべく企業採算ベースに合うような形にやはり開発をしていかなければいかぬ。だから、道路の問題やらいろいろ運搬手段の問題等それぞれの問題がございますけれども、そういったことを、この方針の中にもございますが、ひとつ農林省の方もそこを十分連携をとって促進をしてほしい、こう思うわけでございますが、一言御答弁いただきたい。
  186. 大賀忠直

    ○大賀説明員 先生の御指摘のとおりでございまして、農村におきます所得の確保、それから不安定な就業状態を改善をいたしまして、安定的な就業に持っていくということでこの法律が定められておりますし、私どもも、通産あるいは労働各省とも連携をとりながら今後とも進めてまいりたいというふうに考えております。  それから、さらに一方では過疎、山村等がございますが、なかなか工業が入りにくいというようなところにおきましても、地場の産品の振興を図るなりあるいは観光開発をやるというようなことによりまして、少しでも就業の安定的な確保ができるようにということで各種の施策を進めておるところでございます。
  187. 平石磨作太郎

    ○平石委員 それぞれの三省が協力をしていただきたいと今お願いを申し上げたわけですが、ここで、今の問題をちょっと振り返ってみたいわけです。  なるほどこういった法の趣旨、目的、これは非常に結構なことですが、そこで、この実施計画を立てるのはどこなのか。そして要望はどこから来るのかといいますと、市町村でつくって県へ上がってくるのですね。そして県から本省に出てくる。ここのところで、私は、この基本方針にあるからそれで連携ができておるものなりとこう思っておりましたが、要望は市町村から上がってきて、そういう経過をたどる。そのときに、実施計画はそれぞれの、通産省へ一本入る、そして農水へ一本入る、それから労働省へ一本入る、これだけなんです。そうすると連携がとれてない。そのために今御指摘申し上げたような結果が出てくるわけです。  だから、ここで基本方針をつくるようなことであるならば、上がってきた実施計画そのものについて、やはり三省がお互いにその検討をし、これでいいのかどうなのか。全く三省は今までは受け身であった。来たらもうそのまま倉庫へ入る、来たらそのまま倉庫へ入るということで、そして労働省は、ああ来ておるからというので金を出すというような形になっておるのじゃないか。したがって、上がってきた実施計画については内容の検討、見込みがあるのか、企業が入ってくるのかどうなのか。通産省さん、これは来ますか。あるいは農水の方とは、これは入れるような条件が整っていますか。そういうことをやって、これは労働省の方で十分そこは連携をとりながら、協議をして検討をせなければならぬじゃないかと思うのです。どうです、ひとつ。
  188. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 この農村工業導入の関係が、いわゆる石油ショック等の関係がございまして、計画全体が大変に進んでいないという中におきまして、しかし、今後、こういう雇用の場の少ない農山村地域におきましてやはりこういう雇用の場をつくっていく、こういう観点から、労働省としても大変重要な施策であると考えておるわけでございまして、現在公共職業安定所単位に雇用開発委員会というのを県に、今三十県、三十安定所におきまして雇用開発委員会というものをつくり、そして、それぞれの開発を進めるためのいろいろアクションを起こしておるわけでございます。  そういう中におきましては、一つには、こういう工業の導入を図っていくという関係での施策も進めなければなりませんし、また、今農林省からもお話しございましたように、その地場産業で今後ある程度発展が見込めるようなものを新しく、例えば一村一品運動というような形もございますが、そういうような形で、それぞれの地域でのやはり自立的な形での工業の発展、あるいはまた地場産業の発展というような形での雇用の場の創出というものも図っていかなければならぬ、こう考えておるわけでございます。  そういう意味におきまして、これはもちろん労働省だけでできる話ではございません。地域との密接な関係も必要でございますし、特に中央レベルでは、通産省、農林省との密接な関連を要します。あるいはまた、物によりましては国土庁などとも発展、計画との連携も要るかと思うわけでございますが、そういう関係も、いろいろ今先生御指摘いただきましたような視点をよく私どももかみしめ、これを踏まえて推進を図っていかなければならぬ、こう思うわけでございます。  今後さらにこういうものを発展させていかなければならぬわけでございますので、十分各省との連携を今まで以上に深めてやっていきたい、こう思うわけでございます。
  189. 平石磨作太郎

    ○平石委員 局長、一般論にすりかえて余り広げたらいかぬです。これに限って言っているのですからね。まあそれは子としますが、問題はこの施設です。この施設については、こういう形で設置の順序が決まっておるから、これがそのまま上がってきたときには、三省のそれぞれお蔵へ入ってしまう、検討がなされてないというところからこの問題が出て、会計検査院から指摘を受けておるわけですから、だから今後は、上がってきた実施計画については、三省がそれぞれ話し合って、こういう企業導入を図るという実施計画があるが、通産省さん、これは見込みありますね。農林省さん、これは入れるようなことになっていますかと。そうすると私の方の雇用拡大もできる、雇用の機会もできる、十分いけますねと。こういう確認をして、それから労働省は金を出しなさいと私は言うのです。だから、各省と話し合わせてというような一般論ではないのです、私が今指摘しておるのは。検査院の指摘事項について御質問申し上げておるわけですから。それが今まではそういうことがなかったように私の調べでは出ておるのですよ。そのままで行っておるからこんなことになる。ここの点をもう一回お答えをいただきたい。
  190. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 御指摘のこの施設の関係につきましても、まさにそういう連携が十分でなかったことでこういう結果が出てきておるということでございます。私どもも、地元のそういう申請の市町村長がこういう導入計画をつくってくることになっているからと、そうかというような形で、いわば安易な対応をしておったという面もあるわけでございます。今後、そういう施設の関係に絡みまして、まさにこの導入が進められるというようなことであれば、いろいろ御指摘を受けましてそれを契機に、十分その導入計画がまさに本物になっていきますような連携をとりながら設置決定も進めていく、こういうことで対応していきたいと考えるわけでございます。
  191. 平石磨作太郎

    ○平石委員 これはそうしていただかないと、私が調査に入った段階で、県庁が知らぬわけですね。あれ、そんな実施計画ございますかと。ございますかではなしに、実施計画はないのだから知らぬのですわ。だから、実施計画はあるけれども十分になかったといったようなことについても、県庁が実施計画について余り知らない、だから、三省へ上がってきたときにその確認を三省でし合えば、県庁へ聞き合わすことができるし、市町村へ聞き合わすこともできます。そのままでお蔵へ入って金を出すからこんな結果になるのですから。だから、そういうことのないようにお願いをしたいと思って、最後に、この三省の連携協力ということを申し上げたわけです。  大臣、今ずっと御指摘申し上げましたが、もっと徹底した審議をと思っておりましたけれども、時間の都合で十分な審議にはなりませんでしたが、問題点だけは指摘したつもりです。このように六件も実施計画のないところがある。しかも、中には全く地方自治法の施設、一般施設に変わっておる。こういうようなやり方でこの雇用保険事業が行われ、しかもこの原資は御案内のとおり事業主が出しておる、そういう施設の事業です。したがって一般会計、税金が入ったものではありません。特定目的の勤労者福祉施設、体育施設として、あるいは共同施設としてその原資でもってやることですから、これが一般の村民といったような形に使われるようなことでは困るので、こういった点を十分把握、認識の上で、ひとつ大臣見解を最後に承りたいと思うわけです。
  192. 坂本三十次

    坂本国務大臣 いろいろ参考になりました。貴重な御意見をいただいてありがとうございました。あなたの御趣旨に沿うようにやっていきたいと思っております。  しかし、非常に希望が多いのですから、やはりそれなりの大変なメリットがあると思います。これは申すまでもなく勤労者のための施設です。勤労者保険金を使っている施設ですから、その主たる目的からこれが逸脱をしないように、そしてこの施設がまた全国にもっと広がって、勤労者の諸君が元気で安心してやれるようにしたいものだと思っております。  ただ、勤労者は昼は働いておるのですから、そこの奥さん方が子供を連れてママさんバレーをやるとか、あいたときには大いににぎやかに使わしてもらいたい、そういうようなメリットが多いものですから、市町村もまた非常に人気があるのだろうと思いますが、しかし、何といっても主目的は勤労者のためのものでございますから、そういう眼目を外さぬようにして運営、設置基準その他を考えていきたいと思っております。ありがとうございました。
  193. 平石磨作太郎

    ○平石委員 以上で終わります。(拍手)
  194. 有馬元治

    有馬委員長 小渕正義君。
  195. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 長時間御苦労さまですけれども、私も担当で質問させていただきます。  このたびの雇用保険法改正についてでありますが、午前中の論議の中でも指摘されておりましたように、このたびの改正については、かなり短時日の中でこの問題が審議されたということで、審議会の中でも非常にその点に対する意見が提起されておったと思いますが、今回のこの改正の主な理由としては、いろいろ労働省として、労働人口の高齢化とか婦人の職場進出の増加とか、サービス産業または技術革新、産業構造の転換とか、いろいろとこういう新しい、今の社会情勢の中での雇用問題をめぐる環境の変化ということで、今回の改正をしたということで言われているわけでありますが、改正の中身を見ますならば、ただ単に、雇用保険財政の悪化に対する財政上のつじつま合わせといいますか、そういう保険財政の悪化に対する対応策としてのみ今回この問題が出されているのではないか。当然その基本となるべき雇用対策というものについては、どのような展望の中でやろうとされているのか、ひとつそういうものとのセットでないといかぬのじゃないかと私は思うのでありますが、今回の雇用保険法改正に当たって、そういう基本的な雇用対策そのものについては一体どのような認識の中で進められようとしておるのか、その点をまずお尋ねいたします。
  196. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 今回の雇用保険制度改正につきましては、中長期的な雇用対策の一つの展望の中におきましてやっていこう、こういうことでおるわけでございまして、具体的には、昨年の十月に閣議決定いたしました第五次雇用対策基本計画というものを、昭和六十五年度完全失業率二%程度というものを目標にいたしましてこの雇用対策というものを進めていこうという、その施策の一環としてこの雇用保険制度改正についても御提案を申し上げておる、こういうことでございまして、確かにおっしゃいますように、この雇用保険制度だけで今後の高齢者対策、パート対策あるいはまた女性の職場進出の問題等、そういった問題に対応できるものではないわけでございます。そういう意味で総合的な雇用対策というものが連係していかなければ、今後のいろいろな雇用構造の変化への対応は難しいわけでございます。  そういう意味におきまして、今後の雇用対策の大きな方向といたしましては、一つには、高齢化社会対策というものに対して積極的に取り組んでいく、あるいはまた女性の職場進出というような問題にいろいろ取り組んでいく、あるいはその雇用構造が第三次産業という面でどんどんふえているという形で変わりつつある、こういったようなものに対して機敏に対応していくというようなことが必要なわけでございます。  そのための具体的な対策がくっついていかなければだめではないか、こういうような御指摘は職安審議会等の中にもあったわけでございまして、この雇用保険制度改正作業を進めますと同時に、一方におきまして、現在中央職業安定審議会におきまして雇用対策基本問題小委員会というものを設置いたしまして、現在、この雇用対策の中長期的な観点に立って具体的な政策の中身の見直しというような作業もあわせて進めていただいておる、こういうようなことでございます。
  197. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 今お話しのありました、そういった雇用対策のいろいろな面について作業が進められていることについての内容が、私どもに明らかにされてない立場から申し上げているわけでございますが、ただ、確かにそういった将来的な昭和六十五年度ですか、失業率を二・〇にするとかいう一つの目安を持ちながら、いろいろ中長期的な対策も現在検討中だと言われておりますが、今回改正案として出されたものを見ると、端的に言うならば失業給付率を削減する、そういう中で就職促進させようというのがねらいのように思えるわけであります。ですから、ただ単なるこういった改正だけでそういった問題とどう結びつくのかということになりますと、どうしても合点がいかないわけであります。したがって、その点についてはこれはまた後の議論にもなりますので、先に進ませていただきます。  そういった意味で、雇用対策の面に対してのもう少し具体的なものについてぜひひとつお尋ねしていきたいと思いますが、これからの産業構造変化というのはかなり長期にわたっていろいろ変わっていくものだと私なりに理解するわけでありますが、これに対しては労働省としては、雇用情勢の中でそういった将来展望というものを大体どういうふうに見ておられるのかということが一つ。  それから、今回改正されることになって、とりあえず保険料を上げないで運用の中で何とか保険財政を守っていくといいますか、確保していくといいますか、そういうことで今回の改正案になっているわけでありますが、今回のこのような対応策によって、今後この雇用保険財政というものは十分いけるというような見通しを持っておられるのかどうか、大体どの程度までを見越して今回の改正ということで踏み切られたのか、そこらあたりの雇用保険財政の今後の見通し等についてもひとつぜひ御説明いただきたいと思います。
  198. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 まず今後の雇用構造の変化についての見通してございますが、まず労働力の供給面につきまして中長期的に見てみますと、第一には、本格的な高齢化社会進展していく、そして、この労働力人口に占める高年齢者、ここでは五十五歳以上ということで申し上げますと、こういう高年齢者の割合が現在の労働力人口の六分の一ということから昭和六十五年には五分の一になっていく、そうしてさらに七十五年には四分の一に高まっていく、こういうようなテンポで高齢者が急増をしていく。そうして、昭和五十年代は五十歳台後半層で急増したわけでございますが、昭和六十年代に入っていきますと六十歳台前半層において高齢者が急速に増加をする、こういうような見通しを一つ持っておるわけでございます。  それからまた、労働力供給面での変化の第二といたしまして、女子の職場進出への意欲が引き続き高まっていく、そして家事あるいは育児負担の軽減、主婦の働きやすい就業形態の増加、あるいはまた社会参加意識の高まり、こういうようなことから、女子の労働力率は、特に主婦層を中心にいたしまして、主婦層でもとりわけ三十歳前後、こういうような層で高まっていくであろう、こんなような見通しを持っておるわけでございます。  一方また、労働力の需要面の関係でいいますと、第一には、素材関連業種などこういうような産業におきまして、今産業構造の転換が進んでおるわけでございますが、こういうようなところで、いわゆる不況業種、こういうような形での問題の発生が見込まれるという面があるわけでございます。他方、サービス業などの第三次産業では、就業機会が次第に製造業などの第二次産業を超えて拡大をしていくだろう、そういうことで昭和六十五年には第三次産業の就業者の構成比が六割程度になっていくだろう、こういうようなことで、特にその中ではサービス業の伸びが著しくて、製造業を超えてサービス業の方がウエートの高い産業構造になっていくだろう、こういうような見通しを持っております。  また、もう一つ需要面の変化といたしまして、MEを中心といたします技術革新というものが一層進展していく、こういう中でこの職業というものの構成あるいは職業というものの内容が大きく変化をしていくだろう、こういうような見通しを持っておるわけでございまして、こういう労働力の需要と供給の両方の面で広範な構造変化が進んでいく。  こういうことになっていきますと、たとえ労働力の需要と供給というものが全体の総量としてはバランスをするといたしましても、年齢間のミスマッチ、技術や技能でのミスマッチ、あるいはまた地域間でのミスマッチ、こういうようなものが生じまして失業が増加していく可能性があるのではないか。したがいまして、このミスマッチの解消ということに具体的な政策の焦点を当てまして、今後の六十五年度完全失業率二%程度というものの実現へ向けて努力をしていかなければならぬ、こういう将来推計に立っての考え方を持っておるわけでございます。  また、雇用保険財政についての見通してございますが、今回の改正案は、最近のこういう雇用失業情勢の変化に的確に対応しながら離職者の再就職促進を図っていこう、そうしてまたそれを通じて制度の効率的な運営を図ろう、あるいは健全な運営を確保していこう、こういうことを目的にお願いをしておるものでございます。  この改正後の見通しにつきましては、例えばこういう再就職手当制度などの効果等々、こういったものが現実に運用した場合にどういうような効果が本当に出てくるのか、あるいはまた今後の景気の動向がどうなっていくのかというような点について、いろいろまだ確とした見通しができないような面もございまして、こういう推計が簡単にはしかねるような面もあるわけでございますが、一応私ども、この改正法の施行に当たりまして、この運営をさらに適切に行っていく、こういうようなことによりまして、中期的に見た場合には、雇用保険制度についても健全な運営が確保できるものである、こう考えておるところでございます。
  199. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 今、雇用対策を進めるに当たって、いろいろなファクターによる労働力の需要供給のお話しがありましたが、その点は資料でまた後日いただきたいと思いますが、そういういろいろな作業が進められる中で、そのポイントになるべきもの、失業率は一つの目標として二・〇%をめどにしているということでありましたが、その他、我が国の労働時間というものをどのようにめどを持っておるのか、最低賃金等についてはどういうようなめどの中でそういうものをいろいろと検討されるのか、そういう政策推進の基礎になるべきファクターについて、労働省の方で明示できるものがあればお示しいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  200. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 この失業率の目安といたしましては、今おっしゃいますように六十五年度二%程度の完全失業率、こういうものを目標として努力していく、こういう目標を持っておるわけでございます。  また、労働時間の短縮の問題につきましては、具体的には週休二日制等労働時間対策推進計画というものを策定をいたしておりまして、我が国の労働時間を昭和六十年度までに欧米主要国並みの水準に近づける、こういうことを目標に掲げておりまして、具体的には、全産業平均の労働者一人当たりの年間総実労働時間というものについて、二千時間を割る姿というものを想定をいたしておるところでございます。  また、最低賃金につきましては、これは毎年公労使の三者構成の最賃審議会におきまして、全国各都道府県ごとに類似の労働者の賃金を考慮して定められる、こういう仕組みのものでございますので、これにつきまして、これを幾らに長期的に定めていくかというような具体的な目標数字というものは特に持ち合わせておるわけではございません。
  201. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 今のいろいろな数字についての議論はまた別の機会にお願いすることといたしまして、先に進ませていただきますが、職業安定所を通じて離職に対する再就職、いろいろ努力をしているわけでありますが、労働省が出された資料を拝見いたしますと、安定所を通じて受給者が再就職をされた件数で見ますならば、五十三年度が二・一%、それからずっと、五十四年二・二、五十五年は一・力とずっと下がってきて、五十七年度では一・六%程度しかない、こういうふうな資料が出されているわけでありますが、要するに、職業安定所としていろいろ努力されておるにかかわらず、離職後の再就職を安定所としてお世話できたものはこれくらいのものなのかどうか。それから、別の資料を見ますと、職業安定所の利用率で見ますならば、大体二〇%から二一%ないし二%程度のところにあるようでありますが、この利用率とまた就職率は当然係わりますけれども、どうしてこういう状況なのか。大体、離職者が再就職する率というのは、こういう安定所を通じないで、いろいろなルートを通じてそれぞれ就職されることもありますが、全体的な傾向としてはどの程度というふうに労働省としては見ておられるのか、把握されておるのか、そこらあたりはいかがでしょうか。
  202. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 公共職業安定所を経由して就職される方の割合につきまして、私どもの見方としては、昭和四十年代後半に比べるとやや低い状態にはございますが、最近では就職者全体の二〇%をちょっと超えるような率で、最近やや上昇傾向にある、こう見ておるわけでございます。  また、中小企業というものについて見ますと、これは中小企業団体中央会の調査でございますが、正社員の採用に当たりまして公共職業安定所を利用するという企業が五七%程度あるわけでございまして、ほかの採用経路に比べると一番高い、こういうようなことになっておるわけでございます。  今後安定所の利用というものを一層高めていく、そういう中で適職者の紹介というものが進められていく、そしてまた就職の困難な方は安定所を通じて就職していただく、そういうようなことで安定所の機能を高めていかなければならぬ、こう思っておるわけでございまして、今後こういう安定所の機能を強化するためのいろいろな施策をさらに積極的に進めていかなければならぬ、こう考えておるところでございます。
  203. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 時間が余りありませんので本題に入りますが、今回の雇用保険法改正は、要するに給付負担の極端な不均衡を是正する、そのために被保険者期間における段階別給付日数制度を新しく採用したというのが一つでありまして、そのために給付日数の一部削減、それから雇用保険受給者の再就職意欲を促進するために失業給付額を引き下げる、こういうことで、就職中の賃金とのバランスを見ようということ等で、要するにそういう一連の考え方の中で、今回、基礎となるべき基準の収入については臨時の給与は除外するというのが今回の改正の大きな柱だと思うわけでありますが、我が国の今日までの一般的な社会通念として、収入の中から臨時給与分を除くということは、ちょっとこれは余りにも後ろ向きな政策じゃないかという感じがするわけですが、先ほど午前中の質疑の中では、健康保険にしても労災保険にしても、標準報酬月額の算定基礎の中にはそういった臨時のものは入っていないのだ、だから今回の雇用保険の方もそうしても差し支えないのだ、差し支えないということではないでしょうけれども。それから、保険料もまた臨時の収入からはもらっているのだ、そういうことで御答弁があっておりましたが、この臨時の給与も算定基準の基礎の中に入れるというのは、雇用保険法だけが現在あるわけですね。これは制度のスタートのときからこのような状態であったのか、その途中から臨時の給与まで入れて算定するようにしたのか、この点はどうでしょうか。
  204. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 今度、この雇用保険給付の額の算定基礎からボーナスを除くというのは、ほかの労災とかあるいはまた健康保険とか、そういったものでそうしているからそうするというような、そういう意味で申し上げたわけではございませんで、他の保険でもそういう給付の際には除外しているけれども、徴収の際にはちゃんと算定に入れておるという保険も他にありますという例として申し上げたわけでございまして、その点は誤解のないようにお願いしたいと思うわけでございます。  このボーナス算定基礎に入れます制度は、これは雇用保険の発足当初はそうでなかったのですが、発足いたしましてすぐ二、三年後に入れる、こういう制度に変わって、ずっと今日まで来た、こういうことでございます。
  205. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 先ほどの労災と健保の関係とのお話は、そういうこともあるから理由としては成り立つ、こういうことで採用されたんだろうと思うのですが、今御答弁ありましたように、労災についても、健康保険のそういう標準報酬月額の算定基礎にも臨時の報酬は入れないにもかかわらず、失業保険についてだけはそれを入れようということで、制度発足から何年か、二、三年か経過した後でわざわざここにそういうものまで採用したということは、それだけ失業保険給付というのはいかに生活を守るという意味で大事なのか、いかに働く人たちを、雇用保険、当時失業保険でありますが、失業保険という性格からいって、本当にそういう生活安定を願うが余り、制度をより充実するためにそういうことにしたと私は思うのですね。だから、そういうことからいきますならば、先ほど私は後ろ向きと発言をしましたが、ほかの労災とか健保がしてないからこれもしてなくても当然だと、そこまでは言わなかったにしても、そういう理由は成り立つかもしれませんけれども、やはりせっかくそういう各種保険制度の中で非常に中身が充実しつつあるこの雇用保険を、何で逆に今の時代にそういうことにするのかということが、今回のこの問題に対する私たちの一つの大きな不満であります。そういう点で、なぜそういうことにしたのか、ただほかのところがしておるからこれもしてもいいということじゃなしに、なぜそういうことをしたのかということについて、もう少し明快な御答弁をお願いしたいと思います。
  206. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 この点につきましては、現行失業給付の額が、失業する前六カ月の毎月の賃金に加えましていわゆるボーナスを含んだ総賃金というものを基礎にして算定され、それの六割ないし八割というものが保険給付額になっておる、そしてまた、保険給付額というものが非課税になっておるという事情にあるわけでございます。そういう事情のために、現在の給付の額が毎月の手取り賃金に比べて余り変わらないような額になる、毎月の手取り賃金というものに比べると余り変わらないような相当の額になっておる。一つの試算によれば九割程度というような試算もあるわけでございます。  また、再就職いたします場合め通常の再就職賃金というものと比べてみましても相当に割高の金額になっておる、今こういうような水準にあるということが、これがまた一面において、この雇用保険部会の報告に指摘されておりますように、再就職をするという意欲を阻害しておって、保険をもらい終わってからひとつ就職するか、こういうような考え方になりがちな作用をしておる、こういうような問題があるわけでございます。  また、こういう問題だけではなくて、ボーナスの額そのものが、毎月の賃金に比べて、業種とか規模によりまして相当格差が開いておるわけでございます。中小企業のボーナスと大企業のボーナスということになりますと二倍以上の格差がある。賃金でございますれば二、三割の格差、こういうようなことでございます。こういうようなことで、今日の不況から中小企業などで解雇をされて、本当に援助を必要とするという人についてはボーナスが少ないために給付額が低い、こういうような問題もあるわけでございます。逆に、業績のいい企業とか大企業を離職した人はボーナスが多いというようなことから給付額も高いというようなことで、ボーナスが非常に大きく給付額に作用をしてきておる、こういう現象があるわけでございます。  それからまた、離職時期がボーナスの支払い時期を含むかどうか、前六カ月ということでいった場合に含むかどうか、あるいはまたそれが夏のボーナスか冬のボーナスかとか、そういうようなことで給付額が異なるというような問題もあるわけでございまして、こういうような事情を総合的に勘案をいたしまして、毎月の賃金のレベルを基準とした生活補助を行いながら再就職促進を図っていく、こういう考え方によって、雇用保険制度を再就職促進という面でもさらに有効に機能させていくということで今回の制度改正をやろう、こういうことでございます。
  207. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 今のお話してありますが、はっきり申し上げますと、要するに、再就職する場合における今日の我が国の賃金水準が非常に低いから、雇用保険失業給付の金額と比較した場合に非常にアンバランスがあるので、できるだけ再就職の意欲を持たせるためには雇用保険失業給付金額を下げたがいい、こういうことの発想から、今回そのためには臨時資金、ボーナスを除こうということになってきたのではないかと思うわけであります。その他いろいろな理由づけは、それぞれ何でも理由は物事を考えればつくわけですからそれはいろいろありましょうが、どうしてもそういうふうに思えてならないわけですね。そういう意味で、私は、今回の雇用保険改正の中には非常に後ろ向きなことばかりしか考えないような感じが実はするわけであります。  したがって、少なくとも現在の我が国の社会慣習といいますか、大小の差はあったといたしましても、勤労者生活実態というものは臨時に支給されるボーナス、例えば中小企業でいろいろ程度、差がありましょうけれども、臨時に支給されるボーナスも含めて年間収入の中でやって勤労者の世帯はやりくりしているというのが実態でありまして、これは総理府の統計の資料で見ましても、七月、十二月の臨時の資金を貯金しておって、それぞれ各月のマイナス分をカバーしていって、何とかバランスのあるやりくりをしていこうという形が、はっきり数字として、総理府の勤労者の標準世帯の実態の中にも出ておるわけでありますから、そういうことを考えますならば、まさにそういう臨時の資金をそういった基礎から外してしまうということは、これはまさに本末転倒だ、かように思うわけでありまして、どうしてもこの点は納得できません。したがってそういう意味で、少なくとも我が国の社会通念上の、今の社会慣習的な状況からいっても、これはぜひ再考慮すべきでないかと思うのですが、その点はいかがでしょうか。
  208. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 現在のこの失業給付の水準につきましては、これは労災保険とか健康保険とか、こういう他の社会保険制度と同様に、就労中の稼得能力の損失を補償する、こういう原則に立って定めているものでございまして、決して再就職賃金と比較する上で定める、こういう性格のものではないわけでございます。  ただ、申し上げておりますのは、例えばそういう再就職賃金との比較において見た場合に、これが通常の求人賃金と比べてかけ離れたものになっておって、受給者の再就職意欲を阻害しているというようなことの指摘もあっておる、こういうような事情も一つあるということを申し上げておるわけでございまして、決してこういう再就職賃金の額をにらんで決める、こういうものではございません。  また、ボーナスを除くことによりまして給付が低下をする、こういう面があるわけでございますが、実際にそれによって影響を受けます人については、特に中低位の方々につきましては最高二〇%からの給付の日額のアップあるいは率のアップを図ることによりまして、こういうボーナスを除くことに伴う激変緩和といいますか、そういうふうな形の配慮も十分しながらこういう措置をやろうというものでございまして、そういったいろいろ配慮もしておるというような点についても御理解を賜りますようお願いを申し上げたいと思うわけでございます。
  209. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 失業という事態は、一部の人にとって、例えば若い人がしょっちゅうみずからの都合でやめたり入ったりということはあるかもしれませんが、ほとんどの勤労者にしてみればこれはもう大変なことなんですよ。そのために、せめて失業中だけは生活に不安がないようにということでこの雇用保険制度があるわけでありますから、そういう意味では、ぜひ、こういう雇用保険制度の中身というものをもっと充実させる方向で考えるのが本来的な制度の本質じゃないかと私は思います。そういう立場から、今回のこのようなあり方だけは、どうしても雇用保険制度そのものを否定するようなあり方にもつながる、かように考えるわけであります。  もちろん、被保険者期間によってある程度の段階を設けるということについてはそれなりの理由はわかりますが、ただ、こういう算定基礎の中から、こういう我が国の少なくとも常識的になっている臨時の給与を外すということについては、先ほども申しますように、再就職賃金とのバランスを考えてそこらあたりをひとつ何とかしようという発想から来たのではないかという意味で、この点について意見を申し上げたわけであります。この点は水かけ論ですから、時間がありませんのでまた後日に譲りたいと思います。  次に、今回こういう形で、新しい被保険者期間を導入することによって三段階に分かれたわけですね。前は年齢別はありましたけれども、こういう被保険者期間によってという制度は初めてでありますが、これは三段階に分けた根拠はどういうところにあるのでしょうか。それから、それぞれ部分的には給付を削減しておるわけでありますが、その削減率もかなり部分的には大きいものがありますが、ここらあたりについての、どういう考え方でこのような三段階にし、そして削減率をこのように設けたのか、その点をお尋ねいたします。
  210. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 今度こういう三段階に分けましたのは、この雇用保険部会の報告にもございますように、給付日数の長い高年齢者層を中心にいたしまして、給付負担の極端な不均衡が生じてきておる、そういうような観点から、これまでの年齢、すなわちその就職困難性の度合い、そういうものに応じて給付期間を定めていくという基本的な原則は維持しながらも、ある程度負担の程度を示す勤続期間というものを加味した給付体系にしていこう、これによって極端な不均衡をある程度是正して制度の健全な運営を図ろう、こういうものであるわけでございます。  こういう見地からいたしますと、勤続期間を例えば十年以上とそれ以外、こういうような二段階に分けるというだけでは、必ずしもこういう給付負担とのアンバランスという問題に沿ったものにもなり得ないというようなことで、ある程度給付負担とのバランスを加味していく、こういうような観点から三段階に分けた、こういうことでございます。  また、そのランクごとの給付日数というものにつきましてはいろいろ御意見はあるかと思いますが、これにつきましては、一応雇用保険部会あるいはまた職安審議会というところでいろいろな論議を経ました結果こういうような形に落ちついておる、こういうものでございます。
  211. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 時間がないので先に進まなければいかぬわけですけれども、要するに三段階が絶対的という根拠は何もないわけですね。二段階でもいいわけですな。四段階でもいいわけでしょう。問題は、どこにそういうめどをとるかということになると思いますが、この段階の問題はそういう意味で理解しておっていいですね。
  212. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 例えば極端な多段階にいたしますと、これまた給付事務の面で大変なことになるわけでございます。そういうようなこともございまして、余り細かく分けるというのも、いろいろ年数計算というのはこれまた大変なことになるわけでございます。そういう意味で、そういったものを兼ね合わせ、ある程度給付負担均衡を考えるということで、三段階程度というものが適当ではないかということでございます。
  213. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 この問題についての意見はまた別の機会を設けることにいたしまして、次は、雇用保険関係とあわせて提案されております船員保険についての御質問を申し上げたいと思いますが、運輸省その他、関係者おられますね。  このたび、陸上の雇用保険法の一部改正に伴いまして船員保険改正をこれに準じて行うという形で、いろいろ出されているわけであります。先ほど私、申し上げましたように、まず、その基礎となるべき船員に対する雇用対策と無関係では、船員保険法はあり得ないわけであります。特に最近の船員の失業状態は陸上よりも大きくありまして、五十七年で見ますならば、失業率は陸上は三一%程度でありますが、船員については四三・四%と非常に高い失業率を示しているのが最近の船員の雇用情勢だと思いますが、こういう船員の雇用情勢、雇用対策についてはどのようなものをお持ちなのか。そういう中の一つとして今回の船員保険法の改正が着手されなければならないと思いますが、この件については何ら触れられてないわけですが、この点に対してどのような雇用対策等についての御見解をお持ちか、お尋ねいたします。
  214. 佐藤弘毅

    佐藤(弘)説明員 運輸省といたしましては、船員の雇用生活の安定を図るために鋭意努力をしておるところでございます。  まず、船員制度の近代化という政策を進めておりますけれども、これは、日本海運の国際競争力を確保するということのために、現在十八人の乗り組みで運航できる船舶というものをスタートさせておるということでございます。これも現在いろいろ検討を続けておりまして、今後とも、その人数をどうするかあるいは船舶数をどうするかということにつきまして検討を進めていく必要がある問題でございますけれども、いずれにいたしましても、こういう船員制度の近代化を進めまして、日本船員の雇用の場の確保ということを図ってまいりたいと思っておるところでございます。そのためには船員の再教育というものが必要でございます。そのような少数の乗組員で運航できるだけの資質がなければなりません。したがいまして、既存の船員を再教育いたしまして、これは海技大学校というところで再教育をいたしておりますが、そのような船舶の運航にたえるような資質を育てるということを現在鋭意推進しているところでございます。  それから、財団法人の日本船員福利雇用促進センターというところがございまして、ここにおきまして、外国の船舶に日本の船員を乗せるということの、いわゆる配乗のあっせんをやっておりまして、これを今後とも大いに推進して、船員の雇用の場の確保を図っていきたいと考えております。それとともに、技能訓練の実施といったこともこのセンターではやっておるところでございます。  それから、船員職業安定所は全国各所に置かれておるわけではございますけれども、この効率的なあっせん事業の推進のために、ファクシミリを導入いたしまして、広域的な求職求人のあっせんができるように現在鋭意推進しているところでございます。  このほかに、いわゆる二百海里問題に端を発しました漁業のいわゆる締め出しによります失業船員の発生に対しましては、国際協定の締結等に伴う漁業離職者に関する臨時措置法が制定されておるわけでございます。また、内航海運その他の構造不況業種に伴う離職船員の発生に対しましては、船員の雇用に関する特別措置法という法律が制定されておりまして、そのような特別法によりまして就職促進給付金の給付、こういった措置を鋭意講じておるというところでございます。  このような対策を鋭意講じておるわけでございますけれども、どちらかと申しますと、今までの対策はいわゆる離職船員にウエートを置いた対策であったというふうに考えております。もちろん雇用船員の対策もやってきてはおりますけれども、どちらかと申しますと離職船員というものにウエートを置いた対策ではなかったかというふうに考えております。離職船員対策といいますものは今後とも非常に重要な分野である、推進しなければならないと我々も思っておりますが、それとともに、やはり雇用船員対策等を講じましていわゆる失業船員の予防ということをやってまいりたいと考えておりまして、昭和五十九年度からは、特に中高年の船員を含めました雇用促進失業の予防、そういったことのための対策を講じたいと考えておるところでございます。  具体的に申し上げますと、船員の中にはいわゆる職員と部員という二つの部類があるわけでございますけれども、この部員に対しまして職員になれるだけの訓練をすることによりまして、職員としての活動の場を広げていくということがまず第一点でございます。それから第二点といたしましては、中高年齢層の船員に対しましてより高い技能の習得をしていただくということ、それから職種転換がスムーズにいけるような技能の講習その他の対策を講じていくというようなこと、そういったことを積極的に展開してまいりたいというふうに考えておるところでございます。  そのほかに、外航船舶でございますとかあるいは遠洋漁船におきましては、やはりどうしても外国語というものが緊要になってまいりますので、そのような外国語の訓練でございますとか、あるいは最近STCW条約を批准したわけでございますけれども、これは国際的に船員の資格要件等を一定の水準に保つということの条約でありますけれども、これに対応した資格要件に当たるように訓練をやっていくようなことも現在考えておるところでございます。  そのような対応策をとりまして失業船員の発生予防ということをやりまして、離職船員対策並びに失業予防対策というものを車の両輪のように考えまして施策を遂行してまいりたい、かように考えておるところでございます。
  215. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 いろいろとお聞きしたいわけでありますが、限られた時間でありますので後に譲ることにいたします。それで、今もお話しがありましたが、船員の近代化対策などをやっているということであります。確かに取り組まれていることは私も承知しておりますが、そのピッチたるや遅々たるものであって、今の外航海運の中でその割合を見たらどの程度かということについて、今の段階では、今のままの状態ではかなり問題があるのではないかという感じもしているわけであります。  いずれにいたしましても、今いろいろお話しいただきましたそういったものに関する資料をひとつぜひいただきたい。そういう今の船員に関するいろいろお話しなさいました対策についての資料をいただければ、その資料を拝見させていただいて、次の機会にまた御質問申し上げたいと思いますので、その点ひとつよろしくお願いしたいと思います。いいですね。  次に、漁船員関係について、今も触れられておりましたが、漁船員の方の船員保険の対象者の実数は現在どれくらいか、あわせて、対象外になっている人たちはどれくらいおられるのか、その点について、行政当局としてその実態を把握されておればひとつそれをお示しいただきたいと思います。
  216. 佐藤隆三

    佐藤(隆)説明員 昭和五十八年三月末で申しまして、船員保険の被保険者十九万二千人でございます。いわゆる汽船船員につきましては約九万九千人でございまして、ほぼ全員が失業部門の適用を受けております。漁船船員につきましては被保険者数が九万三千人でございまして、そのうち失業部門の適用を受けておりますのが五万九千人ということでございます。
  217. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 なぜ失業保険の適用を受けていないのか、その理由をもう少し具体的にお示しください。
  218. 佐藤隆三

    佐藤(隆)説明員 漁船の船員につきましては、漁期によりまして通年雇用にならないという、いわば通年雇用の実態にない船員につきましては失業部門を適用しない、こういうことでございます。
  219. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 漁船員は通年雇用じゃないということのようでありますが、実態としてはほとんど六カ月以上の通年雇用になっておるというふうに我々は承知しておるわけでありますが、その点はどうですか。
  220. 佐藤隆三

    佐藤(隆)説明員 私どもといたしましても、通年雇用の実態にあるという漁船船員につきましては適用の努力を進めているところでございまして、逐年その適用率も向上しておるわけでございます。  ちなみに昭和五十一年度末で申し上げますと、漁船の失業部門の適用率三三%でございましたが、五十七年度末で見ますと六三・七%というような形で適用の拡大が進んでいるわけでございます。
  221. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 五十四年に衆議院、参議院のそれぞれの委員会で、漁船員の失業保険非適用について適用の拡大を図れということが附帯決議としてなされているわけでありますが、この附帯決議に沿って今日まで取り組まれた結果が今このような形の数字に出ている、こういうことで理解していいわけですか。  では、次に移りますが、陸上には短期雇用特別被保険者という形での特例措置がございまして、雇用保険制度として運用されているわけでありますが、陸上にあるこのような短期雇用特別被保険者という特例制度を当然漁船員も対象として設けて運用されるべきでないかと思います。これこそまさに、雇用保険制度としては陸であれ海であれ思想的な統一性がないといかぬと思いますが、この点がいまだ適用されてないのはどういう理由によるものか、御説明いただきたいと思います。
  222. 佐藤隆三

    佐藤(隆)説明員 雇用期間が一年未満の漁船船員という問題かと存じますが、漁期がございまして、毎年特定の時期に定期的に離職を繰り返す、こういうような漁船船員につきまして、こういった離職が事故の偶発性といったような、いわゆる保険事故になじむものかといった制度上の問題が一つございます。また同時に、船員保険は御案内のとおり小集団でございまして、そういった中で仮にこういった漁船船員をカバーするということになりますと、財政的な面から見ましても大変大きな負担になるわけでございまして、そういった面で困難があるのではないかと考えております。
  223. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 財政負担その他のことのお話しがあっておりますが、これはまた別のときに議論したいと思います。  もう時間が参っておりますので、あと一つだけお尋ねいたします。  今回の雇用保険法改正に伴って船員保険法が一部改正されておるわけでありますが、要するに陸上の雇用保険法に準じて、それに右へ倣え式でそういった被保険者期間の導入というようなことが新しく改正の中に入っているわけであります。その中身を見ますならば、具体的なものはいろいろありますが、まず端的に申し上げまして、今回陸上の雇用保険法改正に伴って、準じてやるということとは少し違って、船員保険の場合についてはもっと切り込んでやられているのじゃないか。内容がいろいろありますが、今回の雇用保険法は、陸上雇用保険に準じて船員保険にもそういった制度を導入するということになりますが、それになお、陸上雇用保険改正以上に非常に切り込んだ内容の改正になっておりますけれども、その点の考え方はどこらにあるのですか。その点をまず基本的なものとしてお尋ねして、とりあえずきょうの私の質問を終わりたいと思います。
  224. 佐藤隆三

    佐藤(隆)説明員 ただいま御指摘のとおり、船員保険改正雇用保険改正に準じてということでございますが、例えば所定給付日数等につきまして、既に現在でも、雇用保険給付内容と船員保険失業部門の給付内容には相違する点がございまして、そういう点を前提といたしまして制度を仕組んでおりますので、そういった面で若干の相違があるわけでございます。
  225. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 若干の相違どころじゃない、かなり大事な問題がいろいろありますので、またこれは次回にひとつ機会をいただきたいと思いますが、とりあえず本日はこれで終わらせていただきます。(拍手)
  226. 有馬元治

    有馬委員長 浦井洋君。
  227. 浦井洋

    ○浦井委員 朝から大臣、大変だろうと思うんですが、私が最後のようでありますから、頑張っていただきたいと思います。  大臣に最初に端的にお伺いしたいんですが、けさ方から他の委員方々も言われておりますが、大体論点が同じようなところに来ておると思うんです。これはもう今度の雇用保険法、あえて改悪と申し上げますが、これはもうこんなひどいものはないだろう、朝からそう思われておるんではないかと思うんです。ひとつ虚心に反省をして、もう一遍出直しをされたらどうですかと思うんですが、どうですか。
  228. 坂本三十次

    坂本国務大臣 労働省の知恵も、それは満点なものではもちろんございません。いろいろけさから御批判をいただいておるところでございます。しかし、現在の社会変化、経済情勢の変化、その中で、今日ここまで、日本勤労者皆さんがよく働いていただいて、世界第二位の経済大国にもなったというようなことを考えますると、やはり雇用政策全般ということがもちろん大切であります。変化に対応してしっかりやっていかなければならぬということが大事であります。しかし、その中の一環といたしまして、もし失業をしたときに少しでも心配が少ないようにというこの保険制度というものは、どうしてもやはり守っていかなければならぬ、こういうことであります。  かてて加えて、あなたのおっしゃるように今は確かに財政難、ゼロシーリングという厳しい状況にはございますが、そこはそこで、いろいろ保険の内容、細かい技術的な問題もいろいろございましょうけれども、それを総合的にいろいろと考えまして組み合わせまして、現在の案を、私どもといたしましては、これがまず私どもの考えによっては一番いいところだろう、こういうことで御提案をいたしておりまするので、ひとつどうぞ、いろいろ御指導をいただきながら、ぜひひとつ御協力をされる点があったら御協力を賜りたいと思っております。
  229. 浦井洋

    ○浦井委員 反省がまだ足らぬようでありますが、御指導をしていただきたいということであれば、やはり我々の言うことも聞いてもらわなければ指導ができないわけであります。  そこで、今度の法案は一言で言えば結局国の支出を減らしてそしてさらに低賃金相場といいますか、こういうものを固定さしていく引き金といいますか、槓桿の役割を果たすものだと私は思うんですよ。そこで、もうかなり出た論点でありますけれども、改めて各論的にお聞きをしていきたいと思うんです。  今も出ておりましたけれども、今までの総賃金制を、ボーナスなどを除くことによってこれで給付が約二割は低くなる。これはもうこの制度の根幹に触れる問題だと私も思うわけです。そこで、そういう初心といいますか、原点といいますか、こういうものに立ち戻ってお聞きをしたいのですけれども、それではなぜ現行法では賃金総額を今まで基本にしてきたのか。それから、こういうやり方が三十五年間維持をされてきた意義はどこにあるのだ、これはどうですか、こういう聞き方をすれば。
  230. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 今までボーナス算定基礎に入っておったということは、賃金というものの六割給付というもので保険制度を運営している、こういう中で、この賃金というものを、いわば一つの労働者の生活をそれによって維持するというような観点から、ボーナスについてもまた賃金の一部としてこれを評価し、そして生活を支えるというものとしてボーナスを入れる、そういうことについての基本的な考え方があってやってきたものだと思います。  しかし、今御提案しておりますのは、そういう考え方でやってきたけれども、現実の今の姿というものを見、そしてまた、この保険の受給者がいろいろ滞留してきておるというような問題等々考える中で、これについてももう一度見直さなければならぬのじゃないか、こういうことで御提案をしておるということでございます。
  231. 浦井洋

    ○浦井委員 今加藤さんの言われたことは、私は、その前半のことではこういう大幅な見直しをする理由にはならないと思うわけですよ。やはり相変わらず今までの総賃金制というものは堅持をしていかなければならぬわけですよね。先ほどからも言われておりますように、ボーナスというのが基本賃金の一部にもう入り込んでしまっておるわけですよ。だから夏、冬の一時金というものでローンの返済をしたり、いろいろなそれまでの借金を返したりというようなことになっておるわけですし、失業すれば失業したで、その間の生活保障やあるいは労働力の再生産、再就職に備えての再生産、維持保全というようなことを図る上で、やはり現行給付水準が必要であるからこそ、失業保険時代から三十五年間続いてきておるわけですよね。失業前六カ月間に支払われた賃金総額の六〇%を基本にしてそれで算定するという原則が維持されてきたと思うわけですよ。だから、ここで一番根本のところを崩してしまいますと、まさに私が先ほど言った、それもその理由が、国の支出を減らす、あるいは次は再就職のときには必ず下方移動で低い賃金のところにいかなければならぬ、そういう低賃金の相場を固定するという格好に私はならざるを得ぬと思うんですが、加藤さん、反省されませんか。
  232. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 ボーナスがこういう生活費の一部という形でいろいろ充てられてきたというこういう歴史的な経過については、これは否定をいたしません。しかし、現在においてのボーナスというものの位置づけでございますが、これは確かに、低賃金層というところにおきましてはそのボーナスがまさにずばりそういう生活費というようなことになってきておりますが、必ずしも中以上のところにおいてそのボーナスというものがこれまた必要最小限ぎりぎりの生活の補てん費かどうか、こういうような問題もいろいろ見方はあろうかと思うわけでございます。  今回お願いをしております考え方は、とにかくこの毎月の賃金の六割ないし八割原則というものでこれを考え、そしてかつ、そういう中位層あるいは低位層の方々についての給付の額については、この措置によって下がらないように、そういう中低位層についての給付の引き上げをやってその辺の問題点の解消を図ろう、こういうことでやっておるわけでございます。ただ、ボーナスを除いて下がる下がるというだけのことならばいろいろ御指摘のような問題もあろうかと思いますが、そういうような、また中低位層についての給付日額の引き上げというようなことも配慮しておるというような事情についても御理解をいただきたいと思うわけでございます。
  233. 浦井洋

    ○浦井委員 これも中位、低位の人たちの激変緩和措置をとっているのだから、それとボーナスを含めないという点とはバランスをとって、我々の改正はよいんだというような、私はそれはちょっと聞こえないというふうに思うわけです。  それで、そのほかの点もあわせて、私はこれは憲法違反の点、憲法十四条、それから二十五条、二十七条、そんな点にも抵触するのではないかと思うのですけれどもね。これは後で申し上げますけれども。  それから、この自己都合退職の問題も、これも大変なことで、「被保険者自己の責めに帰すべき重大な理由によって解雇され、又は正当な理由がなく自己都合によって退職した場合」の給付制限の期間、これが今まで一ないし二カ月であったのが、一ないし三カ月に延びる、そういうふうに延伸する。実際の運用はどうするのですかね。というのは、改正案にも何も載っておらないし、それから政令を出すわけでもなしに、恐らくこれは通達になるだろうと思うのですが、ここが、失業給付を受けるために職業安定所に来られる人とそれから窓口の職業安定所の職員との間の一番のトラブルが起こるところなんですよね。これはどないするんですか。
  234. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 現在、その点につきましては、職業安定審議会に諮りました基準によりまして、こういう場合は自己都合退職でも正当な理由あり、あるいはなし、こういうような形での細かい基準を設けておるわけでございます。したがいまして、自己都合退職という形をとりましても、例えば示された賃金・労働条件と、実際に行ってみたら賃金が違っていたというようなことだとか、あるいはまた通勤がとてもこれでは通い切れないというようなことだとか、あるいはまた郷里の例えばおやじさんが亡くなったので郷里へ帰らなければならぬということでやめるとか、いろいろ細かい具体的な事例を示しながらの基準を設けておるわけでございますが、そういった点については、今後また、最近におけるいろいろな社会事情の変化等もよく踏まえまして、新しい基準を検討いたしまして、職安審議会にお諮りした上で要件を固める、こういうような作業の進め方を今考えておるわけでございます。
  235. 浦井洋

    ○浦井委員 そこがわからぬわけなのですよね。今は二カ月、四十五日、一カ月というような期間を設定していますね。自己都合退職は今後は大体ほぼ一律に三カ月支給しないという格好になるわけですか。
  236. 齋藤邦彦

    ○齋藤説明員 先ほど局長から申し上げましたように、現在の運用基準がそのままでいいかどうかということは、もう一回検討をいたしまして、職業安定審議会に諮った上で、現在の社会情勢に見合った形でやりたい、こういうふうに思っております。  それで、今御質問の御趣旨は、正当な理由のない自己都合退職の中でもさらに区分があるのか、こういう御趣旨の御質問ではないかというふうに思うわけでございますけれども、我々現在考えておりますのは、正当な理由のある自己都合退職と、それから正当な理由のない自己都合退職との区分の基準を設けたい、こういうふうなことを申し上げておるわけでございます。したがいまして、正当な理由のない自己都合退職者の中でもいろいろな区分を設けるということは、やはり実務上非常に難しゅうございます。運用上これはちょっと実務にたえないのではないかというふうに思いますので、そういうようなことは今のところ考えておらないということでございます。
  237. 浦井洋

    ○浦井委員 そうすると、要するに三カ月もらえない人は収入がなくなる。えらい素朴な言い方ですけれども、そういうことになる。そういうケースがかなり出てくるわけですね。
  238. 齋藤邦彦

    ○齋藤説明員 今度の改正法でお願いをいたしておりますのは、一月-二月とありますのを一月-三カ月と、こうお願いをしたいということでございますので、当然正当な理由のない自己都合退職者の給付制限期間は三カ月にいたしたい、こういうことは前提に、ございます。
  239. 浦井洋

    ○浦井委員 とにかくその企業でいろんな理由退職をせざるを得なかった人、その人たちが今度は失業者一般になって、そして職安へ行ったら、企業のやめ方次第によって場合によっては三カ月無収入になる、これは古くて新しい議論だろうと思うのですが、非常に素朴ではありますけれども、そういう人が現実におるわけですよ。皆が皆、退職金があるわけでもないし、皆が皆、貯金があるわけでもない。こういう人を一体大臣、どうしますかね。今までは一カ月ないし二カ月、これが一カ月ふえるだけだと言ってしまえばそうでありますけれども、これは大問題なんですよ。
  240. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 要は、申し上げておりますのは、安易な離職というようなものについてもう少し慎重な対応をしていただきたいという観点から、そういう制度を提案しておるわけでございまして、そういう意味で、いろいろ本当にやむを得ない事情があっておやめになるというような方については、これはもう正当理由ありというような概念に振り分けていく、こういう基本的な対応であるわけでございます。
  241. 浦井洋

    ○浦井委員 そこの今の基準を法案審議のときにきちんと案として出さぬと、ここが一番大事なところなんですよ、実際に現実には。そうでしょう。失業給付を受けるときに離職票を事業主に作成してもらう。そのときに、退職理由の欄に「倒産」とかあるいは「企業閉鎖」というようなはっきりした場合は、これは自己都合ではないですよね。こういう場合を除いては「依願退職自己都合)」こういう格好になるわけですよ。だから、失業者本人がよほど職安で説明をして、退職が正当な理由であったということで承認してもらわなければ、これは今度のケースで言えばほとんどが三カ月間無収入にならへんか、私はそのことを危惧しておるわけです。こういう給付制限をあなた方は今やろうとしておられる。しかもその基準は、法案が通ってから、政省令でもなしに、単なる通達でやろうという格好でしょう。そうじゃないですか。
  242. 齋藤邦彦

    ○齋藤説明員 現在でも、正当な理由のない自己都合退職と正当な理由のある自己都合退職との区分がございます。現在、一カ月の給付制限がかかることになっております。それでその基準では、例えば実際に就職をしてみましたら、採用条件と実際の労働条件が非常に違っていて離職をしたとか、あるいは結婚をしたために住居をどうしても動かさなければならない、したがって、今の企業には勤めておられないから自分としてはやめるというような場合ですとか、いろいろな場合を想定いたしまして、そのような正当な理由のある自己都合退職につきましては、給付制限をかけないというシステムになっております。  それで、今回一カ月から三カ月に延ばすに当たりまして、現在の基準でいいのだろうか、それをもう少し考え直すべきではないかという御議論が安定審議会の審議の過程でもございました。そういう意味で、我々としましては、もう少し安定審議会での御議論も踏まえまして、また国会でもいろいろ御議論のあるところだと思いますのでその辺も踏まえて、現在の社会情勢に合った形での基準をつくりたい、こういうことを単に申し上げておるわけでございます。
  243. 浦井洋

    ○浦井委員 いや、だから私が言っているのは、今は一カ月ないし二カ月ということでそういう基準が一応ある。それを一カ月ないし三カ月にするについては、雇用失業情勢も変わっておることでもあるし見直しをするという議論もあるので、法案が通ってから審議会で議論をしてもらって、それで通達でやりたい、こういうことでしょう。私はそれがいかぬと言うんですよ。ここが一番大事なわけですから。法案の審議をやる際に、せめて政省令みたいな案にでも格上げして案をつくって、そして法案審議のときに間に合うように、ここで議論ができるようにしなければ、実際に職安行政の中でここが一番大事なわけですから。課長、現場をよう知っておられるでしょう。ここが一番大事なわけです。だから、私が職安の窓口の方に事情を聞いたときに、ここをはっきりさせてもらわなければあかん。もう職安の窓口が今まで以上に物すごく混乱する。あなた方、こんな案を出してくるぐらいですから、より厳しく、三カ月無収入の人をたくさん出すようなことをやるに決まっておるわけですよ。そこをはっきりしなさいと言っているわけです。でなければ審議できへんですよ。
  244. 齋藤邦彦

    ○齋藤説明員 先ほどから再三御説明を申し上げている次第でございますけれども、確かにここの認定をめぐっていろいろトラブルが現在でもございます。まして今後、仮に法案を通していただけるといたしますと、一月から三カ月に延ばしますと、またそういう意味認定をめぐっていろいろなトラブルが起こることは当然予想をされることでございます。そういうようなことも考えまして、現在の認定基準でいいのかどうかということは、先ほど申し上げましたようにこれからいろいろ御議論を通じましてはっきりさす、もう少し明確なものにつくっていく、あるいは、現在の社会情勢に合わないような文言のところもございます、そういう意味でその辺を直していきたい、こういうことを再三申し上げておるわけでございます。  それで、ここの正当な理由のない自己都合退職概念でございますけれども、抽象的に申し上げれば、退職について客観的にやむを得ない事情があるかどうかということで判断をすることになるわけでございますが、その辺が現在の基準は非常に詳細にできておるわけでございまして、その辺を一々申し上げると時間が長くなりますので省略をさせていただきたいと思いますが、その現在の基準に手直しをすればいいだろう、こういうふうに思っておるわけでございます。  ただ、この機会にまたどうせ厳しくするのではないかという先生のお話しがございましたけれども、我々はそういうつもりは毛頭ございません、持っておりません。むしろ、現在のところで、正当な理由のない自己都合退職だといって給付制限をかけられておってさらに気の毒な方がおるのではないか、こういう御指摘がいろいろございますので、その辺を救っていきたい、こういう意味で申し上げておるわけでございます。
  245. 浦井洋

    ○浦井委員 だから、その基準云々を今言っておるわけではないんですよ。だから、よいものが出るか悪いものが出るか知らぬけれども、それを法案審議のときに政省令案としてないしは、それを通達でやるのなら、私はそんなものはもっときちっと政省令案で決めなければいかぬと思うのですけれども、ともかくそういう我々が判断できる基準を労働省が責任を持って出しなさい、でないと、実際の職安行政といいますか雇用保険行政といいますか、こういうものを実行していくのにさまざまな混乱が起こってうまいこといかぬだろう、だからそれを我々審議しますから案を出しなさい、こういう手順を言っているわけですよ。どうですか。
  246. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 この問題は、安定所の窓口で無用なトラブルを起こさないように、また、本当にやむを得ない事情で離職された方を正当な理由なしというような形で扱わないようこれはまた配慮していかなければならぬ、非常に実務的な問題でございます。そういう意味で、この点について今後改正するに当たりましてはやはり当然現場実務の方々意見もよく伺ってみにゃあならぬ、そしてまた職安審議会でも、労使の代表も入っておられる審議会でもよく御検討いただかにゃあならぬ、そういう形でこれを具体的に固めていきたい、我々としてはこう思っておるわけでございます。
  247. 浦井洋

    ○浦井委員 加藤さんは、それは実務の問題だ、だからこの問題というのは、無用な混乱を招かないようにというような格好で軽く考えておられるわけですけれども、失業者一人一人にとっては、文字どおり路頭に迷うかどうかわからぬ非常に切実な問題であり、基本的な問題ですよ。だから、その判断を国会審議というところできちんとやろうというのが私の意見なんです。だから案を出しなさい。これはどんなものができ上がるか、何となく抽象的、一般的に言われて、そんな悪いようにはしませんというようなことであるけれども、私は信用できぬから、審議しますから案を出しなさいと言っておるわけですよ。
  248. 齋藤邦彦

    ○齋藤説明員 先ほどから再三申し上げておるのでございますけれども、法律上の建前から申し上げますと、労働大臣が定める基準によってやるということになっておるわけでございます。それで、その基準が具体的にどうなるかということでございます。確かに現在非常に細かい基準をいろいろ書いてございます。例えばの話でございますけれども、国に残した老父母が死亡して帰らなければいかぬから退職をした場合とか、いろいろ非常に細かい事情が書いてございます。ところが、例えば最近のように技術革新が発展をしてまいりますと、技術革新の進展に伴いまして職場でいろいろトラブルが起こってまいります。例えば卑近な例を申し上げますと、ワープロを使い過ぎて視力が落ちたとか、職場に適応できなくなってしまったとか、そういうような技術革新の進展に伴っていろいろ起こるトラブルのようなことは、現在の基準では何も書いてございません。そういうようなところを訂正をしなければならないとか、いろいろな面で訂正をしていくところがあるだろう、こういうふうに思っているわけでございます。そういうことを先ほどから再三繰り返してお話しを申し上げておるということでございます。
  249. 浦井洋

    ○浦井委員 それもわかるのですよ。手直しをして、より労働者、失業者の立場に立ったものをつくってほしいと我々思います。だから、それをここへ出してきて審議しましょうと言っている。これは本当に保険行政の中で大事な部分ですから、根幹の一つであると私は思うのですよ。これは現場の人に聞きましてもそう言っている。  しかも、けさ古来ずっと議論をされておるように、職安の現場職員で組織されておる全労働というような労働組合の方々に聞いても、突然出てきた。新聞に出ているから本当かといって聞いたら、いや、あれは新聞の書き過ぎですとか勝手に書いておるのですからと言って、それで突然一月段階で出てきた、何も知らされてないのだ。もう不満たらたらというよりも不安がいっぱいなんですね。そういう人たちのためにも、失業者のためにも、そういう具体的な、どういうふうに処理するんだ、三カ月に延びるけれども一体それがどうなるんだろう、そういう案があるはずなんですよ。それを出して我々はここで審議をしましょうと言っているわけですから。大臣、どうですか。
  250. 坂本三十次

    坂本国務大臣 私は、もう少し信用していただいてもいいのではないかなと思いますよ。それはする、しないはおれの勝手だとおっしゃればそれはそうかもしれませんけれども、労働省というのは、労働者が安心して働いていただけるように、失業した場合でも御不安の少しでも少ないようにというようなつもりで、全員一生懸命にやっておる立場でございます。  それで法律といたしましては、自己都合退職でも、正当でない理由なのか、あるいは常識から見てこれは妥当だ、無理からぬ、つまり正当な理由でやめるのか、この線の線引きというものは、法律事項はその程度にして、後はもう千変万化、幾らでもございます、具体的事実は。それですから、そこは御信用いただきまして、ひとつ細目につきましてはこれから一生懸命に、今まで及ばなかったところも、技術革新の部類などもそうでしょう、そういう詳細な基準も追加をいたしましたり、また社会情勢の変化に従って、この辺までは妥当、無理からぬなと思われるところは、また少しふやして正当な理由に入れてもいいように思いますけれども、とにかく厳しくするためにこういう正当でないなんというものの比重をふやすなどというのは、私どもは考えておりません。
  251. 浦井洋

    ○浦井委員 労働省は労働者の立場に立っておるから信用していただいてと。しかし、この雇用保険法を見ても、今給付の引き下げをちょっと議論しているわけですけれども、給付日数を縮めるわけでしょう。それから給付制限は強化するわけでしょう。だから労働省設置法ですか、労働条件の向上及び労働者の保護などの労働行政を行って云々労働者の福祉と職業の確保を図ると書いてはおるのですけれども、果たして労働者の立場に立っておるのだろうか、私はそう思わざるを得ぬわけです。だから大臣、もうしつこく言いますけれども、それは千変万化と言うたって、大体皆さんは長年の経験があっていろんなケースが分類できるわけですし、きちんとした原則というものは持っているはずですから、それを出して、我々もそれとあわせてこの法案を審議しようというわけですから、出せぬのですか、どうですか。
  252. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 こういう基準というものは、まさにいろいろ時代変化とか、あるいはまたそれぞれのこういう労働者の意識の変化とか、あるいは新しい産業構造変化とか、そういったものに合わせまして随時見直しをしながら、妥当なものとして決めていくということが必要なものでございます。そういう意味で、これが法律という非常にかたい形ではなくて、大臣が審議会の意見を聞いて定められるような、ある程度随時対応できる、そういう仕組みのものとして決めておるわけでございます。  そういう意味で、国会でいろいろ御意見をいただくのは大変結構なことだと思いますし、我々もそういう御注意というものを十分腹に入れてそういったものの対応を考えていかなければならぬと思いますが、国会でそういう御議論をいただいた、それを今度は変えてはいかぬというまたそれなりの問題も出てくるわけだと思うのでございます。そういう意味で、やはりそこはいろいろ御意見をいただく中で、時代変化というものに応じながら、随時必要に応じて変更もできるような柔軟性もあり、かつまた、現実に即したものに運用させていただく、こういう観点からひとつお願いをしたいと思うわけでございます。
  253. 浦井洋

    ○浦井委員 ここは大事だ、ここを何とか問いただして、失業者皆さんやら職安の窓口におられる方に安心をしてもらおうと思ったのです。私は法律にせいなんということは今言ってないわけですよ。せめて政省令にしなさい。とにかく職安の人たちが困っておるのは通達行政なんですよ。ばっと局長なり何なりの名前で通達が来て、また業務を変えなければならぬ。そういう通達行政なんですよ、法律というのは本当に骨格だけで。それがもう定評になっているわけですよ。だから、それをあわせて審議をしなければ本当の実態が出てこないのです。  私、委員長にお願いしたいのですが、何かよい方法で収拾していただけますか。
  254. 有馬元治

    有馬委員長 浦井先生、政府側とよくやりとりをやってください。
  255. 浦井洋

    ○浦井委員 そういう通達の案はまだないわけですか。建前はないことになっていますけれども、実際にないのですか。
  256. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 この点につきましては、先ほどから申し上げておりますように、現場の窓口の実務家たちの意見等もいろいろ聞き、最近におけるそういう変化の状態がどうなっておるかというようないろいろなケースというものを聞かなければならぬというようなこともございます。そういうようなことを経まして、この労使の代表も参画していただいております審議会という場で、またそれについていろいろ御意見を賜って、そういう中でこういう大臣の基準というものを定めていく、こういう形を考えておるわけでございまして、そういう意味で、率直に申しまして、今私どもこの基準をどう変えるという詳細な具体案を持っておるわけではございません。
  257. 浦井洋

    ○浦井委員 加藤さん、それは逆ですよ。さっきから実務家という言葉が二遍ほど出てきましたね。私が労働省の職員の方、職業安定所の職員の方に聞いたら、全く事前に相談もなしにこんな大事な改正案なるものを出してきておいて、一-二カ月を一-三カ月にするということで後はブランクにしておいて、そうしておいてから、実務家の意見を聞いて通達をこしらえてというような、順序が逆じゃないですか。一番矛盾なところこそ職業安定局としてきちんと押さえて、その上で法律という骨格をつくり上げて、さあ国会議員の皆さん審議してください、私たちは胸を張ってこれはこうだと思いますという格好で出してくるのが筋じゃないですか。どうもおかしい。これでは審議が進まへんです。
  258. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 私ども、例えば、今回のこの改正法案につきましても職安審議会での御意見もいろいろ聞いておりますが、その過程におきまして主要府県の雇用保険課長を呼びましていろいろ意見を聞くとか、あるいはまた身近な東京の現場、実務の責任者、担当者などを伺いましたり、あるいは呼びましたりというような形で意見を聞くとか、あるいはまた、地方でいろいろ安定所を回ります際に、今こういうような形での意見がいろいろ行われておるこういうことについて、実際に窓口の職員に安定所の会議室に集まっていただいて、いろいろ意見を聞くというようなことなどもやっておるわけでございます。そういう意味で、こういうものはどうしても、私どもが机の上で、頭の中だけで考えるものであってはならぬ、やはりそういう制度を実際に扱っておる人、そしてまた今度改正した場合に扱っていただく人、そういう人の意見というものもよく聞かなければならぬということでの努力は日ごろいたしておるつもりでございます。
  259. 浦井洋

    ○浦井委員 建前としては加藤さんの言われることが順序かもしらぬけれども、実際に、何遍も言いますけれども、職安の窓口なんかにおる人、あるいは出先の職案の方たちの意見を聞いた上で、こういう一ないし三カ月のところは、後はブランクというようなことでなしに、きちんとここで答えられるようにして出てくるのが当然だと私は思うのですよ。私、四十分までですが、まだこの問題だけでもあと――委員長は議論してくださいというようなことでしたから、重要な問題なので、一応とにかく私の発言をよく聞いて、これは本質的な問題の一つですよ、ここのところは大問題なんです。ここのところをやはり……(「保留、保留」と呼ぶ者あり)保留にせいと後ろで言っていますから、私はこの点は保留にしておきますけれども、なるべく早く、やはり出先でそういうふうな認定をするときにはどうするんだという案を我々に示してほしい、こういうことを要望しておきます。  それから六十五歳以上、これも大分けさ方から出ておりますけれども、あなた方を言うのでは、六十五歳以上の高齢者は一般的に労働市場から引退過程にある、その人たちの就業希望も多様化しておる、それらの人たちが通常雇用につく機会も極端に少なくなっておる、ほぼこういうような理由で、今回高齢者に対する施策が非常に大改悪されようとしておるわけです。私はこれは文字通り憲法二十七条に違反すると思うのですが、我が国では六十五歳以上の高齢者もたくさん働いておるわけなんです。きのうお願いしておいたんですが、アメリカ、カナダ、西ドイツ、フランス、日本、六十五歳以上の男女別の労働力率をちょっとお知らせ願いたい。
  260. 守屋孝一

    ○守屋政府委員 では、申し上げます。  アメリカは、これは一九八二年、六十五歳以上でございますが、男子一七・一%、女子七・四%。イギリス、一九八一年、男子七・五%、女子三・〇%。西ドイツ、一九八二年、男子六・三%、女子二・七%。フランス、一九八二年、男子四・〇%、女子二・一%でございます。(浦井委員日本は」と呼ぶ)日本は、これは一九八三年で、男子三八・九%、女子一六・一%でございます。
  261. 浦井洋

    ○浦井委員 日本が際立って高いわけでしょう。何で西欧諸国と日本とが違うのですか。
  262. 守屋孝一

    ○守屋政府委員 これは、我が国の高齢者の労働力率が高いということは、言うなれば就業者比率が高い、これと非常に相関があるわけでございますが、なぜ就業者比率が高いかということになってまいりますと、いろいろな理由を学者で挙げられる方もございますが、一番明白に大きく聞いておりますのは、これは産業別の就業構造の諸外国との違い、またそれに伴うところの従業上の地位別構成比の違いというのが非常に大きいというように考えております。  といいますのは、農林水産業、いわゆる第一次産業の場合、これは日本の場合にはこの第一次産業の就業者が非常に高こうございまして、ちょっと一、二数字を申し上げますと、日本が一〇・四%、ところが、アメリカは、就業者比率は三・六%、イギリスは二・七%、西ドイツはちょっと高うございまして六%、こういう数字でございます。しかも我が国の場合には、第一次産業に就業する人の割合というのは、年齢構成が高い階級ほど就業者の割合が高くなるという状況がございます。平均では今申し上げましたように一〇・四%でございますが、六十歳以上の人の就業者中に占める第一次産業への割合を見ますと、これは三三・六%という非常に高い数字でございます。むしろ二次産業、三次産業はこれと逆の現象が出ております。  また高齢者の場合に、従業上の地位別の状況を見ましても、自営業種、家族従業者という方の割合が非常に高こうございます。といいますのは、年齢平均で見ますと二八・一%でございますが、六十歳以上の場合には実にこれは六二・八%という数字になっておりまして、諸外国の場合はもともと自営業種、家族従業者の割合そのものが低うございまして、日本が二八・一の場合に、アメリカが九・四、イギリスが七・六というような状況でございます。  私が申し上げたかったのは、自営業の場合には、相当高齢になりましても就業を続けるというのが一般的でございます。さらに言えば、今も申し上げましたように農林水産業、いわゆる一次産業の場合はまたこれ長く勤められると思います。  以上のようなことでございまして、これはむしろ雇用者比率で考えていただきたい。雇用者比率で考えていただきましたら、アメリカと日本はほぼ同様な状況である。雇用者比率でいいますと、アメリカが八・三、日本が八・四で、大体アメリカと同じぐらいなところだと考えていただきたいと思います。(発言する者あり)
  263. 浦井洋

    ○浦井委員 それは守屋さん、だめですよ。要するに、今も後ろから応援がありましたけれども、老後保障制度が成熟しておらぬ、立ちおくれているということなんですよ、一言で言えば。だから働かなければならぬ。労働省、今何で一生懸命その統計を、役に立つのか立たぬのか知らぬけれども、いろいろ数字をつくられるけれども、端的なところ、わからへんわけですね。要するに老後の社会保障制度が立ちおくれておって、高齢者も働かなければならぬ。だから諸外国に比べて日本の労働力比率が高いんだ、こういうことなんですよ。一言で言ったらそういうことなんです。  そこで、もう時間がしまいになりましたから、私、言いたいことを言いますけれども、であるのに、先ほどから言いますように、けさから出ておりますように、高齢者失業給付は一時金にするとか保険適用から排除するとか、まさに高齢者の再就職の道を閉ざそうとしておるわけです。  そこで、私は提案なんですけれども、確かに六十五前後でもう引退しようと考えておられる方もあると思う。これは否定しないです。そういう方にはそういう方途を、あるいは今までのような雇用保険が欲しいんだ、我々は働かなければならぬし、体力もある、気力もある、こういうことの人には今までのようなやり方をというような選択制がとれないものか。これは守屋さんもよく御承知のように、七十歳で失対事業の方は今度、この間も言いましたけれども、就労日を減らすということでありますけれども、この場合でも、体力もある、気力もある、働かなければならぬ人がたくさんおるわけなんです。それをびしゃっと線を引いてしまうというのは、やはりこれからの近代国家としての雇用政策のあり方からいったら根本的に間違っておるのと違いますか。少なくとも選択制にしたらどうですか。
  264. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 今いろいろ、六十五歳の問題で高齢者対策部長からも申し上げましたが、やはり六十五歳以上となりますと、確かに常用就職、フルタイム雇用を希望される方もわずかではございますがあるわけでございますが、むしろ一般的には、今後はそこから引退するかあるいは短時間の就労あるいは任意的な就労、こういうような形へ移行される方が大部分であるわけでございます。雇用保険制度というのは、まさにフルタイムの雇用、こういうものを前提とする制度であるわけでございまして、そういう意味で、そういう六十五歳以上の方がフルタイム以外のいろいろな多様な就業を希望されるというようなことには実は対応できない制度であるわけでございます。そういう意味で、いろいろ窓口で、そういった関係での短時間希望だ、任就希望だというような形でのトラブルを起こすというようなことで、いろいろ問題がございます。そういうような多様な就労希望というものを踏まえて、ここで、雇用保険制度としてもそれについて何らかのお手伝いをしていくというような観点からすれば、ここで一時金というものに切りかえてやっていくということの方が現実的な対応として妥当ではないだろうか。ただ、現実にそういうフルタイム希望の方がおるからというので、窓口で実際に御相談に乗るというようなことになった場合に、これを保険との絡みでやりますと、いや、フルタイム希望だ、フルタイム希望だという形で、窓口でまた大変いろいろなトラブルを起こすということもございまして、現実に、その辺についての窓口での仕分けというのは実際問題としてはなかなか難しい問題があるわけでございます。そういう意味で、今回、そういう高齢者給付という形で一時金の形に切りかえるという現実的な対応を図って、高齢者のニーズに対応しようとしたものでございます。
  265. 浦井洋

    ○浦井委員 もう終わります。  そういうふうに年齢をぱっと線を引いて一つのやり方でやるというやり方は、私は間違っておるというふうに思います。  そこで、時間が来ましたが、皆さん方は朝から、現実に対応させなければならぬとかいろいろなことを言われたのですけれども、要するに、皆さん方雇用保険のこういうふうな改正をやろうとされたのは、経済が低成長に入り、大企業が減量経営をやり、雇用が悪化をし、失業者が多発をし、そして失業給付が増大した。そこに臨調だ。二千八百九十五億円ですか、こういうことでゼロシーリングだというような制限もこれあり、そこでこれをやろうとしておられる。だから、こういう改悪を行うということは、結局資本が失業者を大量に発生させることを免責することになる。しかも保険料の値上げはないわけですから、新しい負担はない。先ほどから財政論議でいろいろ言われておりますけれども、国は負担減になる、受給者だけが犠牲になる。三万一両損というような言葉がありますけれども、二万が二両得をして、一方が一両損をするというような格好で、受給者、労働者、失業者、こういうところにしわ寄せが来るんだ。だからこういう案はだめだ。我々は、こういう雇用保険の改悪案は成立させませんよというかたい決意を持ってこれからも臨んでいきたいと、私は最後に申し上げて、質問を終わります。
  266. 有馬元治

    有馬委員長 次回は、明後十九日木曜日午前九時四十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時四十三分散会