-
-
○有馬
委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、
健康保険法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
これより質疑に入ります。質疑の申し出がありますので、順次これを許します。
丹羽雄哉君。
-
○
丹羽(雄)委員 今回の
医療保険制度の改革は、サラリーマンなどの
健康保険本人の給付率を現行の十割から九割、そして六十一年度からは八割にして自己負担を導入するということで、昭和二年の制度創設以来の大改正と言われておるわけでございますが、まず最初に、その改革のねらいとその背景について、大臣の御見解をお伺いしたいと思います。
-
○
渡部国務大臣 今回の
健康保険法の改正を私ども提案いたしましたのは、御案内のように
医療費が年々増加しておりまして、残念ながら
国民所得の伸びを上回っている状態でございます。こういう厳しい経済情勢、また先生御案内のように、財政状態も、今日の我が国の財政でこれ以上国費をさらに増額して投入するということが困難な状態にあります。したがって、このまま放置しておけば、保険料率を
引き上げるかあるいは患者の皆さん方に一部御負担をお願いするか、いずれかの方法をとらなければ、今日の
国民の健康を守る基本である
医療保険制度というものの将来がだめになってしまうという中長期的展望から、今回、保険料率を
引き上げるということは、将来の
年金の保険料とかいろいろな租税負担とかを考えますと困難であります。やはり
国民全体の総合的な利益という中で、現行の保険料率をこれ以上上げない、現行制度にとどめる、そしてまた
国民所得を
医療費が上回らないようにする、そういう方向の中で、今度、大変御負担をお願いする被用者保険の皆さんには恐縮なんですけれども、これは目先のことだけ考えれば一割負担というのは大変過重なものになるということで恐縮しておるのでありますが、中長期的に将来の
国民健康を守る、この健保法を揺るぎなきものにするという点では、被用者保険
本人の皆さん方にも中長期的にはこれはかえって利益をもたらすものであるという判断で、今回提出をいたしました。
したがって、このためには、
国民の負担能力を勘案して、
医療費の規模を適正な水準のものとする、つまり現在の保険料水準を維持する、また、給付と負担の両面にわたる公平化を図り、被用者保険
本人の家族との間にある給付の格差を直していく、これも先生にぜひ御理解いただきたいと思うのであります。
やはり社会保障というものは、
国民ができるだけ平等にその給付と恩恵を受けるものであって、現在のように、農家の皆さん方とか零細な商工業者が多く加入している国保の皆さんは七〇%、そして被用者保険
本人の皆さんだけが一〇〇%、そういうものはやはり必ずしも妥当、適当と言えないので、将来は
国民すべからくが同じような社会保障の恩恵、給付を受けるという広大な理想も念頭に置きながら、今回このような案を出しましたので、ぜひ先生の御理解を賜りたいと存じます。
-
○
丹羽(雄)委員 今大臣のお答えを聞きまして、趣旨はよく理解できたわけですけれども、大臣自身もお認めになっているわけでございますけれども、その背景は財政事情ということでして、これは財政の帳じり合わせではないかな、こういう声も一部に出ている。年間一兆円近く
医療費が増大している、それとともに
医療費を抑制しなければならない、これはだれしもがよくわかっていることでございます。自己負担導入というのもいずれは避けては通れない問題ではないかな、こういうふうに理解しておるわけでございますけれども、そういう財政事情の中で、初めにマイナスシーリングありき、こういうことで、
医療の本質やあるいは
国民生活の実感からかけ離れたところでこの制度が論議されているのではないかな、どうもごういう危惧をする声が一部にあるわけでございます。大臣、ひとつこの危惧を払拭していただきたいと思いますが、いかがですか。
-
○
渡部国務大臣
丹羽先生の御質問、これは非常に大事なものでありまして、一方では、財政のしわ寄せあるいは予算の帳じり合わせがこの案でないかという御指摘がございます。私は、これは財政問題に全く関係ないとは申し上げられません。ただ、この際先生に御理解をいただきたいと思うのは、この種の問題の議論が出ると、国費を出せばいいんじゃないか、国費を出せば何も負担しなくていいじゃないか、いかにもこれが非常に立派な意見に聞こえるようでありますけれども、ただ、国費でも、中曽根さんが出すわけでも私が出すわけでもありません、
国民の皆さんのとうとい税金であります。今増税をしてもいいという議論はないので、増税なき財政再建、そういう中で今でも
医療費については三兆九千億の国費が投入されておるわけでありますから、これ以上
国民の税金が
医療費に投入されてよいかどうかということには、一つの
国民的な合意を必要とすると思います。
そういう条件の中で、二十一世紀の将来にわたって、
国民の健康を守っておる
医療費、
健康保険制度というものをより揺るぎないものにして安定させていくためには、今回、患者の一割負担というものをお願いする。これは決してお金がないからお願いしますということだけではございません。昭和四十年以後、
医療保険制度に対する抜本改正をすべきであるという意見は、この
社会労働委員会でも幾たびか起こされ、また野党の先生方の間にも、何回かの議論の中で、一割負担程度はというようなお話、あるいは国対委員会でそういうことについての話し合い等が行われ、前に進んだりまた後に退いたり、一進一退を繰り返してきたわけでありますけれども、そういう中で、もはや二十一世紀が極めて近い時期に迫っておることを考えると、もうこれ以上我々がためらっておったのでは将来の
国民の健康を守ることができないということで、私ども今回提出に踏み切ったわけであります。
その中で、決して一割負担によって
国民の皆さん方の健康が失われるようなことがあってはなりませんから、私どもは、この案を出すに当たって一番先に考えたことは、一割負担によって受診率が低下するようなことがあってはならない。これは先生も既に御承知のとおり、三割負担の国保あるいは二割ないしは三割負担の被保険者の家族の皆さんの受診率は変わりませんから、このことによって
国民の皆さん方の健康を損なわれるようなことはない。また、
国民の皆さん方に御負担を強いることも大変恐縮なんでありますけれども、これも被用者保険者全部平均しますと、一カ月六百二十円程度、それから病気におかかりになる八五%の人の一カ月の負担は大体二千円程度、これより非常に大きな費用のかかる人たちには高額療養費制度で歯どめをかけておる。また、委員会の皆さん方の御意向を拝聴しながら、低所得者の皆さん方がこのことによってお医者さんにかかれないようなことはないようにというような御配慮もちょうだいしてまいりたいと思います。
したがって、このことによって、現在の保険
医療に対する五%程度の負担は上がらないで
医療費の適正化ができ、しかもかかった
医療費がわかり、しかも
国民の皆さんが自分の健康を守ることに努めて、これからは余りたばこの吸い過ぎなんかしないようにして、そして、お医者さんにかからないで健康を守っていくということになると、総合的には
国民の皆さんの負担も少なくなって、これは
国民の皆さん方の御利益を増進することになるということをぜひ先生に御理解賜りたいと思います。
-
○
丹羽(雄)委員 今大臣の答弁の中で、
医療費の伸びを
国民所得の伸びの以内に抑えたい、こういうことはこれまでも再三言明していらっしゃるようでございますけれども、これは一つの、これからの
医療費問題を論じる場合のガイドライン的なものになるのですか。ちょっとその点について。
-
○
渡部国務大臣 私どもの今後の
医療制度、中長期的に今展望して、今後、この一割負担だけではございませんで、あらゆる総合的な監査体制の
強化であるとかいろいろなことをやりながら、将来にわたって現在の保険料率の
引き上げは行わないで済むような
医療費の節減、適正化を行っていくというのが私どもの基本的考えでございます。
-
○
丹羽(雄)委員 政府委員の方で結構でございますけれども、それではここ四、五年間の
医療費の伸びと
国民所得の伸びとの何か資料がありましたらちょっとお示し願います。
-
○吉村政府委員 まず
医療費の伸びについて申し上げます。五十年度から申し上げますと、五十年度が二〇・四%、五十一年度が一八・四%、五十二年度が一一・七%、五十三年度が一六・八%、五十四年度が九・五%、五十五年度が九・四%、五十六年度が七・四%、五十七年度の見込みでございますが、これが七・八%、こういうことになっております。
それから
国民所得の伸びが、五十年度から言いますと九・九、五十一年度が一二・四、五十二年度が一〇・三、五十三年度が九・三、五十四年度が七・一、五十五年度が八・四、五十六年度が四・四、五十七年度の見込みでございますが四・六、いずれにいたしましても
国民所得の伸びを上回る
医療費の伸び率になっております。
それから五十八年度につきましては、
医療費の伸びが四・六、
国民所得の伸びが五二二、五十九年度の推計でございますが、
医療費の伸びが二・五、
国民所得の伸びが六・四、五十八年度から
医療費の伸びと
国民所得の伸びとが逆転をしております。
-
○
丹羽(雄)委員 五十九年はまだ聞いていませんけれどもね。
今の保険
局長の答弁によりますると、五十八年になって初めて
国民所得の伸び率を下回った、これは老人保健の導入等いろいろあると思いますけれども、それまでいずれも
医療費が常に所得を上回ってきておるわけです。問題は、これから五十九年度とうなるかということが今度の改正案の一つの影響、効果ですけれども、五十九年度の
国民所得の政府見通しは今
局長がおっしゃったように六・四%ということですけれども、そうするとやはり、それ以内におさめたいというのが基本方針と考えてよろしいんですか。
-
○吉村政府委員 そのとおりでございます。
-
○
丹羽(雄)委員 それでは、私が質問する前に非常に手回しよくもう五十九年度の
医療の見通しまでお答えになったんですけれども、この改革案を実施した場合と実施しない場合の
医療費総額の伸び率、この違いをちょっとお示し願います。
-
○吉村政府委員 今回の改正案を全然やらないで、
医療費を自然のままに任せた自然増だけでどういう伸び方をするかといいますと、私どもの計算によりますと五十九年度は七・二%伸びるはずだ、こういうような計算でございます。それで、先ほど先生から御指摘もありましたように、今回の
医療保険の改正いろいろやるわけでございますが、そういうことをやった結果その伸び率が二・五%にとどまる、こういうことでございます。
-
○
丹羽(雄)委員 それでは、
医療費の伸び率が改革を実施しない場合は七・二%ということですけれども、その内訳がどういうふうになっているのか、お示し願います。
-
○吉村政府委員 私ども、何もしなかった場合には
医療費の総額といたしましては十五兆五千六百億円になるはずだ、しかし今回の改正をやることによりまして十四兆八千八百億円にとどまる、こういうような計算をしております。したがって、その差し引き六千八百億円がいろいろ改革の効果によってそれだけの削減ができる、こういう前提に立っておるわけでございますが、一つは薬価改定によりまして三千五百億円を削減をしております。薬価改定そのものは、この三月から薬価ベースでニハ・六%の引き下げをいたしました。これを
医療費ベースに直しますと五・一%の引き下げになるわけです。薬価基準だけで計算をしますと一六・六%ですが、
医療費全体にこれを換算いたしますと五・一%のマイナスになるわけでございます。しかしながら、一方におきまして診療報酬の合理化を三月一日から行いました。そして、その
医療費の
引き上げ率というのが二・八%でございました。したがって、薬価基準で五・一%引き下げ、診療報酬の合理化、
引き上げで二・八%
引き上げたわけでございますので、差し引き二・三%のマイナスということになるわけでございますが、この分が三千五百億円ということに相なります。それから、
本人の給付率の変更に伴う
医療費の減が約千四百億円でございます。それからその他、私どもいろいろ指導監査の適正化あるいは審査の厳格化というようなこと、あるいは薬剤の使用についての適正化というようないろいろな政策を考えておりますが、その政策の効果が千九百億。三千五百、千四百、千九百を合わせますと六千八百億の節減をする、こういうことに考えておるわけでございます。
-
○
丹羽(雄)委員 今保険
局長から御答弁があったわけですけれども、薬価の引き下げ三千五百億円、二・三%、これはもう既に実施しているのですね。それから、今お話しがあった
医療の適正化ですか一千九百億円、一・四%、これは今回の改正とは別にもう既に実施されるべきものである。そうすると、改正しない場合でも十五兆二百億円ですか、ですからこの二つを除いた伸び率は三・五%ということであって、改正しない場合七・二%というのは根拠がおかしいのじゃないか。だから、三・五%というのが今度の改正によって効果が出てくる分でございまして、いずれにいたしましても、これでは先ほど申し上げました政府のガイドライン、五十九年の
国民所得の六・四%を大幅に下回っているのじゃないか、こういう指摘があるわけでございますけれども、いかがですか。
-
○吉村政府委員 おっしゃるとおりでございまして、五十八年度、五十九年度におきましては、政策のよろしきを得て、
国民所得の伸びの範囲に
医療費の伸びがとどまっておる、これは事実でございます。そこで、何もやらぬでもいいではないかという意見じゃなしに、それでは今後どうなるかという……
-
○
丹羽(雄)委員 いや、そうじゃなくて、七・二%というのはおかしいじゃないか、もう既に薬価基準の引き下げはしているし、要するに
医療の適正化というものは今度の改正とは別に行われるべきものであるから、改正による
医療費の抑制というのは残りの分の自己負担の三・五%だけではないか、こういうことです、どうですか。
-
○吉村政府委員 それはそのとおりでございます。
-
○
丹羽(雄)委員 そのとおりと認められると私も非常に困るのですけれども、そうしたら、この保険法を改正するという今までの数字はまやかしですか。おかしいな、これは。
-
○吉村政府委員 そのとおりだと申し上げたのは、数字として、薬価改正、それから
医療費の適正化というものを除いて、
本人の一部負担だけをやった場合にその効果はどうなるか、それは三・五に
医療費の伸びはそうなります、こういうことでそのとおりだと申し上げたのですが、薬価基準の改正あるいは診療報酬の適正化というものも、これは法律事項ではございませんが、私どもどうしてもやらなきゃならぬ
医療費の適正化の方式でございます。ただ、数字が毎年薬価基準の改正によって一六・六%になるかというと、これは相当な改革でございまして、毎年毎年薬価基準の引き下げをして一六・六%というような大きな財源を出すということは、これは不可能であろう。したがって、五十九年度における薬価基準の改正はこういう大幅なものになっておりますが、これが毎年毎年こういうことで財政効果を含む、及ぼす、これをずっと継続するということは不可能であろう、したがって、五十九年度に関する限りは、先ほど申し上げましたように、そのとおりでございますと申し上げたわけでございます。
-
○
丹羽(雄)委員 それはよくわかりました。では、今度の改正による
医療費の抑制効果というものが六千八百億円、これはですから訂正した方がよろしいのじゃないですか、今の答弁でお聞きしたように。ですからそれは、今言ったように、今度の
医療費の抑制効果は千四百億円、三・五%、これははっきり言った方がいいですよ。誤解される。
-
○吉村政府委員 私ども、
医療費全体の伸びというものは、今申し上げましたように、何もしないと七・二%伸びるであろう、しかし、五十九年度はいろいろな対策をすることによって二・五%の伸びにとどまってくる、ただ、その中で給付率の引き下げによる部分の影響は幾らかというと千四百億円でございます。しかし
国民医療費全体でいいますと六千八百億円、これは予定よりも節減をしてくる、こういうことでございますので、取り消す必要はないと思います。
-
○
丹羽(雄)委員 余り深追いしてもいけませんから……。
要するに私が申し上げたのは、今年度の
医療費の抑制はわかるのですよ、六千八百億円ということは。ただ、今度の改正に伴うものは千四百億円じゃないのですかということです。大臣、いかがですか。
-
○
渡部国務大臣 数字の点は今保険
局長がいろいろ答えておりますが、ただお互い政治家ですから、一つの常識的な考え方を私、申しますと、今度の
医療費の節減は、今まで審査体制を
強化しろとか監査体制を
強化しろとか、野党の皆さんからもいろいろ御指導をちょうだいして、これは感謝しておりますが、そういうこともやり、また、今言ったように一六・六%というような思い切った薬価の引き下げもやり、今までいろいろ先生方の御指摘を受けて努力して、その中でも特に一番大きいのは老人保健、やはり四百円の初診料、わずかに四百円の負担でも大変な節減効果があって、こういうものでこれだけの成果が上がってきた。しかし、それならこのまま放置しておけばどうなるかといえば、さっき
局長が言った、毎年一六・六%ずつ薬価基準の引き下げをできるはずのことでもないし、それから、監査体制の
強化やあるいは審査体制の
強化で節減したものも、もうほとんど限界飽和点に達してきているし、そうするとやはり、
医療費の節減というのはこれだけでいいということでなくて、あれもやりこれもやりという中で、
国民の皆さんの期待にこたえていただかなくちゃならない。いわば第一弾はやった、そしてまた第二弾、第三弾とやっていくことによって、
国民の皆さん方の御納得のいく
医療費の適正化が進んでいくので、その一つが、今回の一割負担もそういう効果を上げるだろう、こういうふうに御理解をいただきたいと思うんです。
ただ、ここで一つだけ誤解を賜ると困るんですが、そうなると、
医療費一割負担によって受診率が低下すれば、今度は予防、健康を守れなくなるのじゃないかというあれがあるんですね。ところが、私もこの点が一番心配だから調べてみましたら、家族の方は受診率は下がらないんですね。ここにサラリーマンの方がいらっしゃると思いますから、一人一人みんな尋ねていただけばわかるのですが、お役人の人でも、
本人は十割だから病院に行って、しかし家族の方は二割、三割負担しなくちゃならないから、お父ちゃん、私はお医者さんに行かないわと言うかというと、ちゃんとお医者さんには行っているんです。ところが、患者一人当たりのかかる費用というのは、やはり十割負担の
本人の場合と七割ないしは八割負担の家族や国保加入者の場合とでは二、三割程度違うんです。やはり一割負担というものをやれば、決して本来の病気の人が医者にかかれないために健康を阻害するような心配はない、必要な受診は妨げないけれども、むだな
医療費は節減できるということをぜひ御理解賜りたいと思います。
-
○
丹羽(雄)委員 どうも、私の質問によく答えてくださってないのじゃないかと思います。
局長、この点はもう一回よく検討して、
国民の皆さん方が不信感を持たないような数字というものも出していただきたいと思います。尊敬する
渡部厚生大臣ですから、これ以上深追いはやめますけれども、こういう点では、本当に
国民の皆さん方に、今度の改正によってどれだけ
医療費の抑制効果が得られるのかということをはっきりと、別の機会にこれはもう一回、きょうは時間がないですから私はこれ以上申し上げませんが、ひとつお願いします。
-
○吉村政府委員
本人の給付率変更に伴う
医療費の減は、先ほどから申し上げましたように千四百億でございます。(「何%」と呼ぶ者あり)それは一・〇%でございます。
-
○
丹羽(雄)委員 ですから、もう私はこれ以上申し上げませんけれども、ちょっと今までの議事録を見ますると、今度の改正による
医療抑制効果云々ということで、この七・二%という数字は、出さない方が私はよろしいんじゃないかということを申し上げたいわけでございます。これ以上余りあれしてもいけませんので。
今回の改革で、サラリーマン
本人が一割負担となったわけでございますけれども、定額か定率がということが最初大分論議されたわけでございます。医師の関係者の中には、定率より定額の方が望ましいという声があったわけでございますが、なぜ定額ではまずいのか、なぜ定率というものを導入したかということについてお聞きしたいと思います。
-
○
渡部国務大臣 これは今回の改正案のポイントともなるべきことですので御理解を賜りたいと思うのですけれども、一部定額という御意見等も私ども随分お聞かせいただいたのであります。しかし、今回のこの一部負担というのはいろいろの要因がございまして、一つは、かかった
医療費がすぐわかるということで、患者の皆さんにコスト意識を持っていただく、これも大きな要因で、今まで私も予算委員会で、野党の先生方から随分と、明細書を患者に義務づけて見させるとか、いろいろな意見をちょうだいしておりますが、そういう皆さんからの御意見というものが、一部定率負担ということで、もう患者にかかった
医療費をすぐわかっていただくということで、今までそういう明細書がないじゃないかとか、受取りが出てないんじゃないかとか、いろいろ疑問にされていた問題を解決する一つの方向になる。これは定額ではそういう目的は達せられない。定率でなければならない。
もう一つは、将来構想で、先ほども私が申し上げましたように、やはり社会保障の大きな柱である社会保険が、それぞれの人たちによってその給付率が違ったり、制度によって格差があるということを好ましいと思っている人はいないのであって、やはり将来展望から言えば、サラリーマンの方も中小企業の方も農民の方も、すべての方が同じような給付を受けられるような社会保障が望ましいということは合意を得ているので、そういう点から言うと、やはり将来八割とかそういうふうにひとつ統一していく必要がある。それには今回、今まで全額給付をしておったサラリーマンの方に大変恐縮ではございますけれども、定率一割御負担をお願いするということによって、現在のいろいろの問題を解決し、また将来にわたっての
医療保険の展望が大きく開かれてくるという、いわばこの改正案の哲学というべきものであることを御理解いただきたいと思います。
-
○
丹羽(雄)委員 サラリーマンの負担が大きいので、患者の負担を緩和する措置として、これまで家族なんかにやっておりますけれども、財政上余裕のある組合では附加給付制度、こういうものを行っておるわけですけれども、今度のこの一割
本人負担でこの附加給付制度を認める考えがあるのかどうか、お聞きしたいと思います。
-
○吉村政府委員 附加給付を認めるかどうかということについては、私どもも最後まで迷いに迷った点でございます。
附加給付というのは、やはり給付の公平という観点から言えば問題があるんであろう。財政が豊かならどういう給付をしてもいい、そして貧乏な保険では附加給付はできないということでは、給付の公平という点からいってやはり問題があるというように思っております。しかし、九割給付にすることによって給付率が下がるわけですから、その辺を保険者の努力によって、例えば附加給付ができるような努力をする保険者があった場合に、やはりそれは認めてもいいんではないかという一方における感情はあると思います。また、現在健保組合を認めるその利点として、附加給付を実施するというのが健保組合の利点ということになっておりまして、大抵の健保組合においては、附加給付を実施している実態がございます。そういう実態をこの際全部全面的に無視してよろしいかというと、やはり経過的に考えましても、またそういう実際を考えましても、この際附加給付を全面的に禁止するということはいかがなものかということから、附加給付は禁止しない、こういうことにしたわけでございます。
-
○
丹羽(雄)委員 次に、高額
医療費の問題についてお聞きしたいと思います。
高額療養費の患者の自己負担最高五万四千円、これについて厚生大臣が、たしか
村山先生に対してかな、本会議で、委員会の推移を見守ってこれから検討したい、こういうような趣旨の発言をなさったと思いますけれども、これは現行の五万一千円、これの維持を示唆したものというふうに受け取ってよろしいですか、大臣。
-
○
渡部国務大臣 これは非常に難しい御質問でございます。私ども、今提案しておるこれが最善最良のものとしてこれを出しておるのでございます。ただ、これは議会民主政党政治でございますから、国会の先生方が、あるいは各党の皆さんの合意と申し上げてよいかもしれませんが、こういうふうにしろとお決めになったとき、政府の大臣である私がどこまで抵抗できるかということでございますので、その辺のところで御賢察を賜りたいと思います。
-
○
丹羽(雄)委員 私も政治家の端くれでございますから、今の答弁でよしとしますけれども、低所得者に対して、入院が三万円、外来が三万九千円までが患者負担、こういうふうになっているわけですけれども、これで十分に低所得者に対して配慮がなされているかなという声があるわけです。特に総理大臣の諮問機関である
社会保障制度審議会、大河内先生がたしか会長をやっていたと思いますけれども、この
社会保障制度審議会の中でも、高額療養費の自己負担については「所得に応じた仕組みを導入するなど今後その抜本的な見直しを図るべきである。」、こういうふうに述べておるわけでございますけれども、これについて大臣のお考え方をお聞きしたい。
-
○
渡部国務大臣 低所得者層に対するきめ細かい配慮ということは、私ども謙虚に受けとめて検討していかなければならない問題だと考えておるものであります。ただ事務的に言いますと、今二段階ですが、これを例えば十段階とか細かくやりますと、大変な事務的、物理的な困難さがあるようでございます。そこで私どもは、政府の考え方としては二段階でお願いしておるわけでございますが、これらの点についても、私は党人政治家でございますから、各党の御意見、国会の皆さん方の御意見に今後謙虚に耳を傾けてまいりたいと思っております。
-
○
丹羽(雄)委員 そういうことで、大変前向きな御答弁をいただきましたものですから大変結構でございますけれども、続いて、療養費の支給制度の改正の問題についてちょっとお聞きしたいと思います。
高度の
医療、特別なサービスについで、厚生大臣の承認を受けた
医療機関では、保険で見られない部分が含まれていても根っこが同じであるならば、今度は特定療養費というものを支給するということですけれども、一番のポイントは、この
医療機関の承認基準をどういうふうにするかという問題でございますけれども、これについて御見解をお伺いしたいと思います。
-
○吉村政府委員 承認基準そのものは中医協の御意見を聞いて決める、こういうことにしておりますが、私ども現在考えております基準といたしましては、大学附属病院を一応原則として考えております。そしてさらに、大学附属病院だけではなしに、例えば国立のがんセンターだとかあるいは腎臓センターだとか、そういう特殊の高度先端技術を持っておる
医療機関を対象に加えたい、こういうように考えております。高度先進
医療を提供できる施設、それは個々にとりますといろいろあるわけでありますが、その
医療機関全体としてそういうものが提供できるような高度の技術水準、それから設備の水準、それから人的なスタッフ、そういうものを抱えた
医療機関を頭の中に描いております。
-
○
丹羽(雄)委員 今の御答弁の中にありましたように、大学病院とか要するに附属のいろいろな研究所、こういうようなものが基準の対象になると思うのですけれども、形式的にこういう基準を決めていくと、最近は大変いろいろな高度の
医療を提供したり研究している専門的な病院が大分ふえてきているのですけれども、その辺が基準から漏れるという心配があるのではないかな、こう私は考えるのですけれども、この辺を十分に網羅できるかどうか、いかがですか。
-
○吉村政府委員 高度先端
医療といいましても非常に幅が広い概念になると思います。私どもとしては、少なくとも
医療技術というものの安全性が確かめられ、そして効率性はかなり確かめられておる、ただ、まだ全国的に普及されていない段階の技術を頭の中に描いておるわけでございます。例えば、現在人工透析というのは保険の中に取り入れておりますが、この人工透析の技術が我が国に入ってまいりましたのは昭和二十九年でございます。そして保険に取り入れたのが四十三年でございます。したがって、十三年はかりの期間は、高度先進
医療ではあるけれども、そして安全性もある程度確かめられておる、そしてその効率も確かめられておった技術ではあるけれども、まだ全国的に普及するには若干難点があった、普及度において低いところがあった。それがだんだんと普及をいたしまして、全国どこでも人工透析が行われるような普及度になった時点で、保険給付の中に取り入れたわけでございます。したがって、今人工透析の話をいたしましたが、そういうようなものに類する高度先端技術というものを今後大学病院等でやる、こういう場合にその
医療機関を特定承認保険
医療機関として承認をしたいということでありまして、高度
医療と名づけられる
医療をとにかくやればそれは全部特定
医療機関に承認をする、こういうような考えはございません。
-
○
丹羽(雄)委員 そこで、今ちょっと
局長からもお話しがありましたけれども、この制度を保険
医療の中に持ち込むということは
医療機関の差別につながるのじゃないか、こういうことで医師会等では大分反対の意見もあると、こういうふうにお聞きしておるわけでございます。例えば、今
局長もお答えになったけれども、同じ
治療をしていても、承認を受けた病院ではこの療養費が支給される、しかし承認を受けない病院では支給されない、この辺が私はどうもちょっと矛盾していると思うのですけれども、いかがですか。
-
○吉村政府委員 具体的に私どもまだ考えておるわけではありませんが、例えば体外受精を高度先端技術だと仮に考えましてお話しをすれば、体外受精というものをやる
医療機関というのはたくさんあるのかもしれません。町の中の産婦人科でもやれる技術かもしれません。しかし、その体外受精の技術を安全に、かつ、それだけの技術に合うような形でできるのはやはり特定の大学病院でなければならぬ、そういうところでない限りやはり認めるべきではないのではないか。仮にその技術を持った個人の産婦人科のお医者さんがおられたとしても、やはりそれを療養費払いの対象にするというのはおかしいというような観点から、施設を主体に物事を考えていき、施設を主体に考えればやはり設備、それから人的スタッフというものも総合的に考えることができるわけでありますから、そこで、全部の
医療機関を指定するのではなしに、そういう技術水準と設備の水準を持っておる
医療機関を指定するのが妥当なのではないか、こう考えた次第でございます。
-
○
丹羽(雄)委員 ちょっと今の答弁は穏当を欠いているのじゃないかと僕は思うのですよ。それは言わんとすることはよくわかるのですけれども、ちょっと差別的な発言のように私には聞こえるのです。今のはそういうふうに、私の聞き違いかもしれないけれども、要するに大学病院ならばこれはできる、しかしほかの病院ならばこれは十分できない、非常に危険である、そういうようなことは、やはり厚生省の態度としては好ましくない、穏当でない、僕はこういうふうに考えるのですけれども、いかがですか。
-
○吉村政府委員 それが全体のお医者さんに普及をし、お医者さんがどういうお方でもできるような普及度を持った場合には、これは私は保険
医療の中に入れるべきだ、こう思っておるわけであります。
それで、今申しております高度先端技術というようなものは、それはいろいろやり方はある、そしてそれを実施する人もあるでしょう、あるでしょうが、あくまでやはり研究段階の
医療であろうと私は思うのです。したがって、そういう研究段階の
医療というものは、やはりある一定の設備を持ち、ある一定の人的スタッフを持ったところでないといけないだろう、こういうことを申し上げておるわけであります。
-
○
丹羽(雄)委員 ちょっとよくわからないのですね。研究段階ということで逃げられたわけでございますけれども、それでは、この制度を別の観点から見ますと、保険で見られる部分が含まれている場合にはこれは根っこが同じであるということで支給の対象になるわけですけれども、要するに高度の
医療を保険診療外に、外に定着する可能性が一面出てくるのではないか。
医療技術というものが今急速に進歩をしている、そういう中で、せっかくの保険制度が、この考え方を推し進めていくと、数年先には保険
医療そのものが時代おくれの
医療になるのじゃないか。こういう危険性を含んでいるのではないか。こういうふうに考えるのですが、いかがですか。
-
○吉村政府委員 私どもは、この運用というのは中医協を通じていろいろ御審議を願ってやっていこう、こういうわけでございまして、私どもは従来、保険の診療として取り入れておる哲学というのは、必要にして適正な
医療というものは保険の中に取り入れる、こういう観点でずっと保険給付というものを考えてきたわけでございまして、その考え方には変更がございません。したがって、高度先端技術というものは、先ほど申し上げましたように普及度というような観点から、全国、例えば東京の人は受けられるけれども沖縄の人は受けられぬとか、あるいは北海道の人は受けられない、こういうことでは保険給付としての公平を欠くのではないか。どこの人でもその地域で受けられるようになった場合に保険診療の中に入れるべきではないか。したがって、普及がある程度の段階に達すれば保険診療に取り入れていくという方針を堅持するつもりでございます。
-
○
丹羽(雄)委員 保険の枠を拡大していく、こういうようなお考え方というふうに受け取って、私はこの問題は打ち切りますけれども。
あともう一点、歯科の問題ですね。歯科の差額徴収というのは非常に複雑なわけでございますけれども、これはどういう形で歯科の差額診療を解決していくかということ。前歯の金歯については従来どおり差額徴収の方式で認めるべきである、そういうような方針のようでございますけれども、そのほかの自由診療として認めている部分についてこの制度を導入する考えがあるのかどうか、お聞きしたいと思います。
-
○吉村政府委員 歯科につきましては、現在、材料についての差額徴収を行政的に認めておるわけでありますが、今度この法律が成立いたしますならば、行政指導あるいは行政運用として認めるのではなしに、法律に基づく規制、法律に基づく運用、こういうことに性格が変わってくる。
それでは歯科の場合に何をそういう対象にするか。今のところは、私どもは、現在の材料費というものを頭に置いて法律の規制をし、運用をいたしたいと思っております。その以外に広げていくかどうか、こういう点につきましては、歯科の問題は中医協でいろいろ議論をされております。私どもは、それを保険の診療に取り入れるならばそれはそれだけ保険料の負担がふえる、こういうことになるだろうと思います。それを是とするか、あるいは歯科の会合金というようなものについてこれは差額徴収の方に残しておけばよろしいということになれば、保険料の負担と関係なしに患者の負担ということで今までどおり実施できるわけでありますから、そういうような形で中医協の議論の結果によって運用を図っていきたい、こう思います。
今回の改正によって、法律によって規制をし法律によって運用をする、そこが変わってくる、こういうように考えております。
-
○
丹羽(雄)委員 次に、退職者の
医療制度の問題についてお聞きしたいと思います。
今度の
医療改革の最大の柱になっておるわけでございますけれども、その趣旨は、大変長年の懸案となっておるものでございますし、結構だと思います。ただ、私もサラリーマン生活を十年やっておったわけでございますけれども、その拠出金を現役のサラリーマンだけに押しつけるというのは、どうもちょっと虫がよ過ぎるのじゃないか。国庫負担がゼロということは、ちょっとサラリーマンの間では、みんな我々の方にしわ寄せが来るのじゃないか、こういう指摘が出ておるわけでございますけれども、これは、こういう考え方があるかどうかよくわかりませんけれども、将来厚生省としては、
医療保険の負担をできるだけ抑制していくということで今度の改正案も出たわけでございますけれども、最終的にゼロにする、こういう考え方のようなものがあって、その伏線としてこれを持ち出してきたのかどうか。そういう考えはございませんですか。
-
○
渡部国務大臣 これは先生にぜひ御理解を賜りたいのでありますが、今度の退職者
医療はまことに結構なことだ、そこまでは皆さん一致しているのですが……(「一致してないよ」と呼ぶ者あり)今回の退職者
医療は、これは今まで会社にお勤めになり、役所にお勤めになっておられる方が十割給付である、これが退職されて、退職されるということは五十五、六歳を過ぎるところですから、だんだん病気にかかる率が余計になる、しかもこれはお勤めをおやめになりますから収入は少なくなる、その方が国保に入って十割給付から七割になるということは、やはり非常に過激な変化で、それが今度、退職者
医療ができることによって今度は給付率が高くなるということに御反対の方は、今までは、私の予算委員会等の審議を通じてはおらなかったわけでございますけれども、非常によいことだとこれは野党の皆さんからも評価を賜ったわけですが。ただ、今
丹羽先生のお話しのように、国庫負担も、国からも金を出すべきでないかという御意見を承ったのですが、これは国保には国が出しておるわけですけれども、この退職者
医療は国保の窓口を借りて行う被用者保険でございますから、現在のところ、被用者保険の財政状態というものは、おかげさまで国庫から負担をしなくても現行保険料率をそのままにとどめて退職者
医療を支えることのできる財政能力なのでありまして、これが、退職者
医療をつくることによって保険料率を上げなければならないとすると、現役の皆さん方に迷惑をかけるということになりますが、現行の保険料率で退職者
医療をおかげさまで創設することができる、しかも現行の保険料率は上げないで済む、そういう財政状態に被用者保険があるということで、先生御了承を賜りたいと思います。
-
○
丹羽(雄)委員 ですから、要するに国は金がない、それで、サラリーマンを中心とする組合健保などは金がある、そちらの方でひとつ国のかわりに肩がわりをしてほしいというのが、平たく言えば今度の法案ですわな。
それで、要するに今までの国保に対する補助率も、百分の四十五から三十八・五に削減したわけです。ですから、今私がお聞きしたいのは、現行の
国民医療費がありますね、その中でいわゆる保険負担があるわけです。その中の一部分に国庫負担があるわけですけれども、この保険負担のうちに国庫負担の割合というものが現在どのくらいあって、そして将来これをどの程度まで下げたい、こういう考え方があるのかどうかということなんですけれども。
-
○吉村政府委員 私どもが考えておりますのは、現在もしも、仮の話でございますが、全保険を統合したとすれば、八〇・三%の給付が可能なのであります。したがってそれは今の保険料の負担で八〇・三%の給付ができる、その保険料の負担の中には、もちろん保険料だけでなしに保険に対する国庫負担というのも入っております。したがって、私どもが、保険料の負担率を今後変えないで
医療給付をやっていこうとすれば、当然現在保険に入っておる国庫負担というものはそれをそのまま維持をする、そして保険料率はそのまままた維持をしていく、それで八〇%ぐらいの給付が可能だ、それならば
国民所得に対する保険料の負担率というものは、先ほど大臣が申し上げましたように現在五%でございます、その五%というものは変えないで二十一世紀に突入できる、こういうことに考えておるわけでございます。
-
○
丹羽(雄)委員 今度の制度は、先ほどから申し上げておりますように、国保以外から拠出金をかき集めてきてそれに充てる、こういう方式をとっておるわけでございますけれども、拠出金が今後どういうふうになっていくかというその見通しをお聞きしたいと思います。
-
○吉村政府委員 五十九年度の私どもの試算によりますと、退職者
医療に対する拠出金の額は、満年度ベースで申し上げますと五千四百十七億円なのでございますが、これを全被用者保険の標準報酬に対する率で考えますと、千分の五・七四の料率に相なります。したがって、十割給付をそのままやりながら退職者
医療制度を実施しようと思えば、現在千分の五・七四の保険料率が新たに必要なわけでございます。しかし、私ども定率一部負担をお願いをしておりますし、またその他
医療費の適正化をするという前提で、現在の保険料率を
引き上げないでもこの千分の五・七四の料率が引き出せる、つまりそういう新たな負担でなしに、現在の負担の中にこれを潜り込ませると申しますか、現在の負担で千分の五・七四の費用を賄うことができる、こういう計算になっておるわけでございます。
それで、三十年後これがどういうようなことになるか、こう言いますと、三十年後というのは高齢者人口がピークに達する時点でございます。したがって、私どもも、退職者
医療の対象者が大体ピークに達する時点ではないか、もちろんこれは定年制の動向等によって変わってくることは変わってくると思います。しかし、今のままでいってやはり一番ピークになるときじゃないかと思いますが、そのピーク時における料率をはじいてみますと千分の九・八になります。したがって、五十九年度は千分の五・七四であったものが三十年後のピークでは千分の九・八、こういうことになるという計算をしております。
-
○
丹羽(雄)委員 現在は五・七四であるけれども、三十年後には、倍までいかなくても一割近くまで増大するということでございます。千分の九・八、ここまで増大するということでございますけれども、こういうものに対して、各保険組合が非常に、これはえらいことになるのじゃないかな、こういうことで心配しておるわけでございますけれども、これに対して、将来の問題でございますけれども、何か歯どめ的なもの、そういう措置を考える必要があるのではないかと考えていますが、これについていかがですか。
-
○吉村政府委員 確かに負担がふえるということは嫌なことでございまして、なるべく負担が少ない方がいいというのが人情であろうと思います。しかし、退職者
医療制度というものを制度として考える以上は、やはり必要な経費については負担をしていかなければいかぬ。そしてピーク時においてもわずかに一%、今先生は一割とおっしゃいましたが、千分の九・八でございますので、パーセンテージにすると一%ではないか。まあ一%が高いとおっしゃれば高いかもわかりません。しかし、まあピーク時においても一%、したがって、五十九年度が千分の五・七で三十年後が千分の九・八でございますので、三十年間に千分の四ぐらいの負担は、過大な負担かと言われるとそれほどでもないんではないかという感じが私はいたします。したがって、退職者
医療に必要な費用というものは負担をしていけるし、またいかなければならぬ費用だと思います。
しかしながら、一方におきまして、やはり納得がいくような形で負担をしていただくとすれば、金額に対する歯どめ措置ではございませんが、その拠出金に関する拠出者の意向というものが反映させられるような仕組みというものは、これは考えていかなければいけないだろう、こう思っております。
-
○
丹羽(雄)委員
局長は大した負担じゃないということでございますけれども、負担する方にすればこれは大変深刻な問題で、今ちょっと、何か将来は何らかの形で歯どめの処置を考えていかなければならないのかなという趣旨のことをおっしゃったわけでございますけれども、ひとつ具体的に今後検討していただきたいと思います。
それから、この制度の対象者は、老齢
年金の受給時点の六十歳から老人
医療制度が受けられる七十歳までの十年間が対象となるわけですね。問題は、最近は定年制も延びてきておるわけでございますけれども、五十五歳定年で、次に働きたくとも働けない人もいるわけですね、例えば病気になったりなんかする方もいるわけでございますけれども、それまでの空白期間、これをどういうふうにするか。五年間ですね、この空白期間をどうするかということですけれども、これはいかがですか。
-
○吉村政府委員 なかなか一番つらい、答えにくいところの部分なんでございますが、私どもとしては、任意継続被保険者制度というのがございまして、二年間はこれでつなげる、現役時代と同じような給付を受けられる、こういう制度があるわけでございますが、その二年間でも、先生がおっしゃったように、五十五歳から六十歳というと五年間ですからあと三年足りない、こういうことになるわけで、答えにならないのでありますが、せめて私ども慰めになるのは、五十五年の五月一日現在で、労働省の調査によりますと、そのときの平均定年退職者年齢が、男が五十七・一歳、女が五十七・〇歳ということでございます。したがって、あと平均的に言うと三年、しかも五十五年の調査でございますので、その後やはり定年退職の年齢というのも若干は延びておるんではないかというようなことで、任意継続被保険者制度というものを活用すればそのつなぎができるんではないか、正確につなげるとは申せませんが、つなぎの助けにはなる、こういうように考えておるわけでございます。
-
○
丹羽(雄)委員 そこで、今おっしゃった任意継続制度、これは二年間で打ち切りになる。いろいろ調べてみますと、これは若い人なんかが対象となったりするものでなかなか難しいという点もあるわけでございますが、そこで党人政治家の大臣、こういういろいろな問題があるわけですよ、
局長自身も大変苦しい問題だということを認めておるわけですから、ひとつこの問題、任意の継続制度が二年で打ち切りとなるのを引き延ばす方向で検討していただきたいと思いますが、大臣いかがですか。
-
○
渡部国務大臣 これは私も前々から、ここはどうかなということを感じておりました。きょうは
丹羽先生から大変適切な御指摘をちょうだいいたしまして、これはやはり病気になったときお医者さんにかかれる、これが大事なことでありますから、この点を十分踏まえて検討させていただきたいと思います。
-
○
丹羽(雄)委員 次に、将来のビジョンについてお聞きしたいと思いますけれども、今度の改正を通じて、厚生省は給付の公平化ということも最大の柱としておるわけでございます。サラリーマンとか公務員の被用者保険
本人の給付率を現行の十割から一割ないし二割引き下げる、こういうことと同時に、
国民健康保険あるいは被用者保険の家族負担、これは現行七割、これを八割に
引き上げて、将来は、何かさっきちょっと
局長もおっしゃったように横並びにする、こういうような考え方があるのかどうか。もしあるとするならば、いつごろをめどにこういう八割制度、横並びにするというものを導入していくのかどうか。これはひとつ大臣にお答え願います。
-
○
渡部国務大臣 この審議を通じて、将来方向としての給付率の統一ということはたびたび申し上げていることでありますが、私は一度この委員会で、これは大臣になんかなるのも時期があって、要するに、厚生大臣にしてもらうなら、十割を九割とか八割にするときでなくて、七割を八割とするというようなときになりたかったものだなという実感を漏らしたことがありますが、できるだけ早い時期にそういう方向に進んでいかなければならないものだと私は考えております。
-
○
丹羽(雄)委員 時期については、今すぐどうのこうのという……(
渡部国務大臣「今度は
丹羽先生が厚生大臣になったときに……」と呼ぶ)それは大分先の話ですが、あと十五年後ぐらいじゃないですか。(笑声)まあ冗談は後にして……。
それで、八割に
引き上げるには、これはさっきいろいろお話ししておりますけれども、いろいろな国庫負担があると思いますけれども、将来は全部の、今九つですか、ある組合をやはり統合していかなければ、この問題は根本的な解決をなさないんじゃないか、こういうふうに考えておりますけれども、こういう考え方も将来の中長期ビジョンの中に入れていく用意があるかどうか、いかがですか。
-
○
渡部国務大臣 現在の
健康保険制度、たびたび御指摘いただきましたように、これは長い歴史と沿革がございまして、今日も多様的ないろいろな役割をそれぞれのところで果たしておるわけであります。ですから、これを今すぐに私が統合するとかしないとか言うと、かえってこれは混乱を起こすことが多く、益することが少ないものであります。
ただ、はっきり申し上げられることは、やはり先生の理想も私の理想も同じだと思うのですが、まずやはり給付率が統一されることが将来望ましい、そのためには当面財政調整をしていくとか、今提案しているようないろいろの改革によって一つの
社会保障制度、それを
国民が等しく給付、恩恵を受けるという方向には持っていかなければなりませんけれども、ただ、それを今すぐ制度の統合ということではかえって混乱を起こしますので、やはり現在までのそれぞれの果たしてきた役割というものを尊重しながら給付の面で統一してまいりたいと思いますので、御了承賜りたいと思います。
-
○
丹羽(雄)委員 保険制度の問題はちょっとこの辺までにいたしまして、私が関心を持っている問題について一、二お聞きいたしたいと思います。
最近、カンボジア国境のタイの難民村で、病気とか飢えで次々に死んでいく難民を救済しようという、若い医師のボランティア活動というのが大変目立ってきております。大臣も御存じだと思いますけれども、タイに流れ込んだカンボジア難民の
医療救護活動は、難民が急増した五十四年からアメリカ、フランスなど三十七カ国、五十三団体から派遣され、その数はもう四百人を超えておるわけです。日本政府もこれに全面的に賛成するということで、五十四年の暮れから第一陣を送って、既にメディカルセンターを開設したり外科病棟を設置するなど、十数億円を投じてきておるわけでございます。政府がその
医療救援活動を打ち切った後、民間のボランティアの方々、青年医師たちが、このまま難民を捨て去るわけにはいかない、こういう点で非常に自主的に戦場に出向いておるわけでありますが、最近医師に対する風当たりが非常に強い中で、こういう良心的な医師もいるということで、私は大変感心し、感銘しておるわけでございますけれども、こういう
医療の海外援助についで、厚生大臣はどういうお考えをお持ちか、恐縮でございますが、お聞きしたいと思います。
-
○
渡部国務大臣 タイのカンボジア難民に対するボランティアの医師が、非常に立派な善意で活動してくださっていることを承知しております。また、
丹羽先生のヒューマニズムにあふれた格調の高い寄稿も読ませていただきました。まさにこれは南北問題、日本がこれから開発途上国に
医療面で貢献していくということは、大変重要な問題だと思います。また今日、御案内のように、我が国の医科大学の定数が八千三百人ということで、将来の医師過剰というような問題もありますし、また薬等の問題にいたしましても、あるいは薬価の問題、たびたびここで議論されますけれども、我が国の医薬業界も、国内だけでなくてむしろ国際的に、先端技術として進出していただく将来の方向を持たなければなりません。そういう意味でも、今発展途上国に
医療の面での経済援助を進めていけば、これは将来にも大きな期待のできるもとをつくることになりますので、経済援助でこういう
医療技術の供給というような面に積極的に力を入れるように、これはそれぞれの担当の周あるいは大臣に私からも強く要望したいと思います。
-
○
丹羽(雄)委員 ボランティア活動といいますと、これはもちろん民間人がやることでございます。ただ、善意の結集ということだけで片づけて果たしていいのかという問題があるわけでございまして、基本的にはあくまでも民間人が自主自律で行うものである、こういうことでございますけれども、外国などでは最近、国が大変積極的に、こういうボランティア運動を援助する方針を打ち出してきておるわけでございます。
外務省の方おいでだと思いますが、そこでお聞きしたいのですけれども、例えばフランスなんかでは国境なき医師団、大変有名なあれなんですけれども、政府がこういう事業団みたいなものに三五%近く出資している、こういうふうに聞いておるわけでございますけれども、こういう外国の事例、ボランティア運動、難民救済等の問題に国が金を出しているような事例があるかどうか、もしわかりましたならば、資料をちょっと出していただければ幸いだと思います。
-
○増井説明員 難民問題に対し大変な御関心を持っていただき、大変感謝にたえないところでございます。
ボランティア活動ということにつきましては、欧米社会におきましては歴史的背景等々もあり、非常に長い歴史を持っているわけです。我が国の場合は、戦後高度成長の中で、日本
国民の中にもそういうゆとりが出てきたということで、近来、ボランティア活動を内外で展開されるようになってきておる、これは非常に結構なことだと我々は考えておるわけでございます。
それで、先ほど御指摘がございましたように、よその国は政府の政策として民間のボランティア活動に対する支援を行っている事例があるのではないか、私、全部を必ずしも今の段階でつかんでおりませんけれども、私がいろいろの関係者と話しまして聞いて承知しておるところによりますと、基本的には、直接的な形での支援というのは比較的例外的な形になっておる。むしろ、国際的な難民活動ということになりますと、国連にUNHCR、国連難民高等弁務官府というものがございます。これはジュネーブに本部がございますが、主要国とも、国際的な難民救済活動のためにそれなりの資金協力といいますか、拠出を行っておるわけでございます。その中で、もちろんその前提といたしましてUNHCRの救援プログラム、計画がある、それで、自分の国のボランティア団体がそのプログラムに非常に関心があってぜひやりたいという場合、その拠出を行う際に、UNHCRのこのプログラムを日本ないしはその国の団体に仕事をぜひやらせてくれというようなことは、各国ともやっておる次第でございます。
我が国につきましても、昨年たまたま安倍外務大臣が、バンコクで行われたASEAN拡大外相会議に御出席された際に、日本の海外におけるボランティア活動は諸外国との対比からしますとまだまだ足腰が弱い、したがってどこまでできるかは別といたしまして、極力政府としての支援体制をとるようにしてまいりたい、こういうことを拡大外相会議の場でおっしゃったわけでございます。
そういうこともあったわけでございますが、具体的な事例を申し上げますと、タイにつきましては、幼い難民を考える会という団体があそこでいろいろなことをやっております。それに対しまして、我が国の拠出の一部をUNHCRから回るようにして、これは六万ドルばかりだと私は記憶しておりますが、やっていただいております。それから、JVCにつきましては、アフリカのソマリア、あそこも難民問題が大変深刻になっておりますので、そこに対して十七万ドル程度だったかと思いますけれども拠出させていただいて、今鋭意活動をやっていただいているということでございます。
いろいろ至らぬ点はあると思いますけれども、限られた財政状況の中で最大限の努力は今後とも引き続きやっていきたいと思っておりますし、その結果といたしまして、我が国のボランティア団体なるものが欧米の歴史のある団体に比肩し得るようになるまで、我々としては一生懸命頑張っていきたい、こういうふうに思っております。
-
○
丹羽(雄)委員 今外務省の方の御答弁の中でも、我が国はボランティアに対して非常に認識が薄いということで、外務大臣も、足腰を強くしてこういう問題について前向きにこれから考えていかなければならない、こういうようなことを発言なさったということで、大変我が意を得たりという感じがするわけでございます。
どうも、ボランティアというとすべて民間人に任せる、そこに何か我が国の風潮として、ちょっと国とか公共団体が援助をするとボランティアの精神が失われるんじゃないかとか、そういうような傾向、認識がまだまだあるのではないかな、こういうふうに私は考えるわけでございます。
厚生大臣、今こういう時期でございますし、経済の摩擦問題であるとかあるいは開発途上国に対してまだまだ経済援助が足りないのじゃないか、こういうふうに指摘されているのですね。経済援助だけが国がやるべき形ではないと私は思います。本当にこういう若い人たちが、つい一週間ぐらい前の新聞にも、国立病院をやめて、タイに行ってそしてまあ骨を埋めるんだ、こういうような決意をする青年もおるわけでございますので、ひとつこういう機会に、海外での
医療活動、ボランティア活動、こういうものについても、金を出すということについては今おっしゃったようにいろいろ確かに規制はあると思うのですが、何か直接金は出してないけれどもいろいろな形で出しているという事例があるわけですので、日本政府としても、厚生大臣がイニシアチブをとって、ひとつこれから前向きに考えていただきたいと思いますが、いかがでございますか。
-
○
渡部国務大臣 全く同感でございまして、私は、国内の社会保障政策も、物と金に心が伴わなければ本当に立派なものにならないということを言っているのです。経済援助なんかもどんどんやらなければならないことですが、やはりそこに心が伴う、献身的な心が伴うことによって、相手が受ける感動は全く別のものになると思います。しかも、我が国の
医療技術は世界に誇っていいすばらしい進歩と発展を遂げて、立派なお医者さんあるいはすぐれた医薬品、そういう技術が進んでおるのでありますから、これを発展途上国の皆さん方に、今先生の御指摘のあった、国立病院までやめてそういう活動をされよう、そういう人道的な皆さん方のボランティア活動によってこれが行われれば、すばらしい実績を上げることができると私は思います。そういうボランティア活動がやりやすいようなバックグラウンドをつくっていくということは、私ども行政の面でも大いにやらなければならない責務であると痛感しております。御趣旨に沿ってこれから努力してまいりたいと思います。
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○
丹羽(雄)委員 最後に一点、こうしたボランティア活動をしていくに当たって、いろいろ関係者の皆さん方の話を聞きますと、財団法人のような受け皿がないと、医師の身分保障の問題とか、積極的に金を出したいという企業はあるのですが、課税の問題とかいろいろな問題で非常に難しい、受けにくい、こういうような実情があるようでございます。こういう財団法人、事業団の設置の認可については海外向けという場合には非常に難しい、こういうふうに聞いておりますけれども、ひとつ最後に、この問題について前向きに、しかも若い人たちが次々に二十数人も行っているのですから、そういうことを踏まえて前向きに、早急に検討をしていただきたいと思います。
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○
渡部国務大臣 財団法人の設立については、先生も、御案内のように、その行う事業の公益性を見きわめた上で、事業の具体的内容、また基本財産等の財政基盤、組織体制、そういう一定の条件があることは御了承賜りたいと思います。そういう条件の中で整うようにしていただいて、できるだけ法人化のために御協力申し上げたいと存じます。
-
-
-
○
村山(富)委員 いよいよ、この国会の最重要法案と言われ、しかも全
国民が注目をしておる
健康保険法の改正案の審議が始まったわけでありますが、大臣も御案内のように、連日反対の
請願行動が繰り広げられております。同時に、国会の
請願を見ましても、健保
改悪反対という
請願が一番多いわけです。これだけ
国民が注目をし、しかも重要法案として位置づけられておる、その意味は那辺にあると大臣は受けとめていますか。それをまずお聞かせください。
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○
渡部国務大臣 政治の極めて重要なものが
国民の健康を守ることである。そういう意味で、私は、
国民の健康を守る行政の責任者である厚生大臣という仕事に、大きな責任と誇りを痛感しておるものでありますが、この
国民の健康にかかわる法律の改正でありますから、
国民の皆さん方が非常な関心をお持ちになるのは当然のことだと存じます。
-
○
村山(富)委員 今まで与党議員の質問があったわけでありますけれども、今度の
健康保険法の改正案について、問題点として指摘される点は共通する問題があるように思う。共通する問題があるということは、提案をしておる与党の方にもそれだけ疑念があるわけです。ですから、私は、やはりそれだけ問題のある法案だというふうに受けとめなければならぬと思うのです。これから質問をする内容にも重複する点が若干あるかと思うのですが、それだけそういう点は重要なんだというふうに受けとめてお答えをいただきたいと思うのです。
大臣は、予算委員会の答弁を聞いていましても、きょうもまた同じことを言われたのですが、給付を上げるときに大臣になりたかった、こういう下げるときに大臣になったことは運が悪かった、運が悪かったと思っているぐらいにこの法案は悪いんだ、こういうふうに思っておるのなら潔く撤回したらどうですか。私は冗談で言っているとは思いませんよ。大臣の心の底では、やはりよくないというふうに思っているのだと思うのです。あなたの輝かしい政治家の歴史に汚点を残すことになりますよ。どうですか。
-
○
渡部国務大臣 これは
国民の皆様、私も
国民の一人として、税金が余計重くなることを喜ぶ人はおりませんし、また、それぞれの負担が余計になることを喜ぶ方はないのであります。負担がふえるとか税がふえるとか、いずれにしてもこれは喜ばれないのであります。しかし、税金を一銭も取らないで、社会保障の負担を皆さんに一銭もお願いしないで今日の日本があるかと言えば、やはり必要なる税金をお願いし、必要なる国庫負担をお願いして、今日のすばらしい日本ができておると思うのでありまして、今日の厳しい財政の中で、しかも二十一世紀にわたって我が国の
社会保障制度の揺るぎない基盤をつくるために、今度、被用者保険
本人の皆さん方にとっては好ましくない、一割負担というものをお願いせざるを得ないのであります。そういう意味で、これはだれだって、政治家でありますから人気が大事でありますから、どうせ厚生大臣になるならば、国保の給付率を七割を八割にするときの厚生大臣になった方がいいんで、被用者保険十割を九割にするときの厚生大臣になったことを喜ぶ人はいないと思うのでありますけれども、しかし、私は与党の政治家であります。
国民の生活に責任を持ち、将来に責任を持っていく与党の政治家でありますから、あるときは、ことしはあの
渡部厚生大臣はけしからぬとおしかりを受けても、五年後、十年後、やはりあの
渡部厚生大臣が勇気を持ってやってくれたから、今日
国民は安心してお医者さんにかかって健康を守れるのだということで、時に政治家は勇気を必要とするということで、身の不運をかこちながら、
国民のためにやらなければならないことはやらなければならないと今決意を新たにしているところでございます。
-
○
村山(富)委員 それじゃ、むしろあなたは、いいときに大臣になったと言わなければいかぬ。言うことと違うじゃないですかね。
そこで私は、この法案の審議をする前に、幾らか伺っておかなければならない問題点がやはりあると思いますから、そういう点についてこれからお伺いしたいと思うのです。
午前中のお話にもあったかと思うんですけれども、この法案が余りにも唐突に出された。少なくとも
年金なんかは三年ぐらい前からいろいろな審議会で審議をして、そして
国民に、やはり世論を問いながらコンセンサスを得るような方向で法案をつくってきたわけです。ところがこの法案に関する限りは、去年の八月ごろですか、予算のシーリングが決められた段階から、突然といったような格好で出てきているわけですね。そういう法案作成の過程についてやはり問題点があるのではないか。
現に
社会保障制度審議会なんかも、「これを短期間に審議し結論を見出すことが著しく困難であったことは否めない。」、こういう意見も具申をしておりますし、それから「本審議会は、これまで、今日の
医療保険制度における問題の根本的原因は、
医療に関する諸々の体制の整備、合理化を怠ったことにあることを指摘し、これら基本的諸問題の改革についての方向を示し、いくたびか対策を求めてきたが、政府は総合的展望を樹立しないまま推移し、そして、今回の改正に当たってもその点が明らかにされていない。」、こういうふうに指摘されているわけですね。
それから社会保険審議会でも、「今回の改正案は、我が国の
医療保険制度の根幹にかかわるものであり、慎重かつ広汎な検討を行う必要があるにもかかわらず、予算編成後の極めて限られた審議期間で審議し、答申をとりまとめざるを得なかったことは、遺憾である。」、しかも、この社保審では意見が一致せず、併記で答申をなさっておる。今までの審議会等の答申からすれば私は異例の中身だと思うんですよ。こういう答申を受けた大臣の受けとめ方、どういうふうにお感じになっていますか。
-
○
渡部国務大臣 ただいまの御指摘については、これは私どもも厳しく反省をしておる面もございます。それはもう、昭和三十年代から四十年代になって加速度的に、やはり目先の改正だけでなくて、
医療保険に対する抜本的改正をやれということは、関係団体の皆さんからも、またこの
社会労働委員会あるいは予算委員会等で、与野党を通じて、国会の先生方からこれは出てきておるのであります。ですから、本当はこういう追い込められた時期でなくて、これは四、五年前にこういう抜本改正というものをやっておくべきだったと私は思います。しかし、やれ、やれと言われながらずるずるとやらないできたのでありますけれども、しかし、そういう国会で幾たびか意見が出てき、例えば与野党国対
委員長会談で患者一割定率負担ということが議題になったり、議論がいろいろ今日まで行われてきたことも事実でございます。ただ、四年、五年、もう少し財政的に余裕のあるときに出しておれば、皆さんからもっと素直に、この基本的な私どもの二十一世紀の未来を目指しての
医療改革というものが理解していただけたと思うのですけれども、財政逼迫したぎりぎりになって出てきてしまったために非常な誤解を受けておること、これは私は大変反省をしているのです。私どもも、あの学生のときなんか、試験のもっと前に勉強しておけばいいのに、どうもずるずる、ずるずる、結局あしたが試験だというときに徹夜で勉強する、こういうようなことになったことも反省しておるのであります。
ただ、この点は先生御理解を賜りたいと思いますのは、昨年の八月の概算要求時点で、今よりもはるかに厳しい内容のものが世間に公表され、これは非公式とはいいながら、
社会保障制度審議会にも社会保険審議会にも明示され、総選挙という一つの大きな洗礼を受けてきたものであることも、これは御理解を賜りたい。そしてまた、それらの総合的な意見の中で、最初の案が、なるべく
国民の皆さん方の負担にならないようにという方向で、与党の皆さん方の御意見を承って、あの総選挙前の内容よりはかなり緩和した内容になって提示しておることも、御理解を賜りたいと思います。
それから、
社会保障制度審議会と社会保険審議会の答申を尊重したか、こういうことでありますけれども、
社会保障制度審議会では、被用者保険
本人の定率一部負担ということについては、私は御理解を賜っておるものとこれを読ませていただきました。社会保険審議会の方では両論併記、大変残念ですけれどもこういうことになっておりますけれども、これは政府のいろいろな施策が行われる場合決して異例のことではなくて、私は厚生大臣になる前、十年間あのベトコン運動の総大将を務めてきたんですけれども、農民の皆さんが非常に関心を持つあの生産者米価の決定のときなど、米価審議会ではほとんど両論併記が常識になっております。米の値段が安い方がいい消費者の代表と、米の値段を高く買ってもらいたい農民の代表というものがあれば、やはり両論併記となるので、そのときは農林大臣がそれを十分に熟読玩味しながら一つの方向を裁断する。今度の労働省の答申なんかは三論併記というのも出ておるのでありまして、やはり消費者的な立場、生産者的な立場の代表の方が出ておられるわけでありますから、これはお互いに譲らないということになる。公益委員の方がおるということで、両論併記になってしまったのもやむを得ないので、こういう場合は私は、審議会が両論併記してきた場合は、この両論をよく尊重して、熟読玩味していずれかに厚生大臣決めろ、こういう答申と考えてこれは決断をさせていただいたので、お許しをいただきたいと思います。
-
○
村山(富)委員 ほかの例を引き合いに出して、これもそうじゃないか、あれもそうじゃないかというようなことでこれを言いわけするようなことじゃいかぬと私は思うんです。これはやはり
国民の命と健康に関する重要な問題ですよ。やはり少なくとも関係者が十分に議論を尽くして意見の一致を見出すという努力は、時間をかけてもやるべきだ。これはそういう性格の法案じゃないですか。それを、責任を持った審議会の審議の中で、時間がないから十分な審議ができないとかというような格好で扱われてきたところに、やはり問題があったんではないか。私は、やはり率直に、謙虚に受けとめなければいかぬと思いますよ。言いわけはすべきことじゃないというように思うんですよね。
先ほどの質問にもあったようですけれども、たまたまマイナスシーリングが決められて、そして厚生省では、恐らく概算要求の中では大体九千億円ぐらいの自然増を見込んでおった、それが二千数百億円の伸びにとめられた。したがって、その差額の六千二百億円をどう調整するかというので、逆算をしてつくられたつじつま合わせの法案ではないかというように与党の議員も言っているわけでしょう。疑念を持っているわけでしょう。そういう見方をされていることについて大臣はどう思いますか。
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○
渡部国務大臣 これは、この法律の問題とはまた別個に、我が国の方向が増税なき財政再建ということで、政府・与党といたしましては、当分これはゼロシーリングあるいはマイナスシーリングという厳しい条件の中で、特例を認めないで予算審議をしていくというのもその方向で、私も、そういう今の中曽根内閣の閣僚の一人として、その方向から逸脱するわけにはまいりません。しかし同時に、この
健康保険の改正というものが、もちろん今先生御指摘のような財政問題もございましょうが、同時に、今日までいろいろ懸案になっておった制度の格差是正であるとか、将来給付率を一つに統一していくとか、あるいは乱診乱療をなくするために患者の皆さん方にかかった
医療費をすぐわかっていただくようにするとか、あるいは
国民の皆さんが自分の健康を守っていく、病気にならないということがいかに自分の幸せのために大事であるかということを知っていただく、そういうような一つの
医療保険の将来の方向のための改正内容であるということも、御理解賜りたいと思います。
-
○
村山(富)委員 そういう予算編成の過程における経過が、一つは問題である。
もう一つは、今までの国会の質疑の中でも、中長期の展望がないとかいろいろ指摘されてきましたね。この
医療保険制度に対する政府の考え方に一貫性がないのではないか。と申しますのは、端的に申しまして、昭和五十三年度に国会に、政府は
健康保険法の改正案を出しましたね。そのときには、家族の給付も
引き上げて十割にするという改正案だったわけですよ。そのかわりに薬代を取るとかいろいろなものがありますよ。しかし、そういう基本的な立場で法案が出されておるのです。それがわずか五、六年で、今度は逆に
本人の給付率を下げていくというふうに変わってきた。一貫性がないじゃないですか。しかも差額ベッド等については、これは三カ年計画でもって解消する、そしてできれば全体の二%ぐらいにとどめたい、こういう方向で今まで取り組んできているのですよ。今度は公然と差額ベッドを認める、こういう方に変わったのじゃないですか。ですから、そういう経過を振り返ってみますと、
医療保険制度に対する考え方に全く一貫性がない、行き当たりばったりじゃないか。だから、中長期の展望がないのではないかと言われてもこれはしょうがないのじゃないかと思うのですが、そこらの見解はどうですか。
-
○吉村政府委員 経過と今回の改正案とのつながり、こういうことであろうと思いますが、私ども、まず、先生御指摘になりました五十三年の法改正のときに、家族、
本人も十割というのを出しました。出しましたが、そのときには薬代というのは全部給付から外すということで私どもは考えておったわけであります。したがって、技術料部分みたいなものについては十割給付、しかし薬は全部外す、こういうことですから、保険給付全体として考えますならばどこかに一部負担を課する、こういう思想は歴然とあったわけでありまして、一部負担のかけ方についてはいろいろな議論がございますが、薬剤にかけるというかけ方もございましょう、それから初診、入院にかけるという考え方もございましょう、いろいろな患者負担のあり方はありますけれども、しかし患者負担は必要である、しかも今後の
医療費等の動向を考えまして定率の一部負担が最も適当な一部負担ではないか、こういうことで私ども今回提案をしたわけでございます。
それから、第二番目の差額徴収についての問題でありますが、私ども差額徴収の解消については努力をしてきましたし、それなりの実績も上げてまいっております。したがって、今回の法律の改正によりまして差額徴収を拡大しようというような気持ちは全くございません。ただ、今までの差額徴収というのは行政指導と申しますか、行政措置として認めておった。したがって、行政措置としましてはやはり限界がある。例えば現在、差額ベッド等につきましては、私立医科大学の附属病院等の差額ベッドは一番問題でございますが、私ども幾ら行政指導をやっても、なかなか行政指導である以上は限界がある。したがって、今回は、差額徴収というものを法的な規制の中に置いて、法的な規制のもとで運用していきたい、こういうことでございまして、むしろ私どもは前進の方向に向かっておる、こういうように考えておるわけでございます。
-
○
村山(富)委員 差額ベッドの問題なんかについては後で議論をしたいと思うのですが、ただ、
医療保険制度に対する基本的な考え方というのは、これは例えば、今あなたが言われたように技術料は全額負担をする、そのかわり物については一部負担してもらう。誤解されると困るけれども、私はどっちがいい、こっちがいいということで言っているのではないですよ。ただ、厚生省のこの問題に対する基本的な考え方が大きく変わってきているものですから、そこで質問しているわけです。物に対して一部負担をしてもらうという考え方と、
本人の給付率を下げるという考え方とは大変な違いですよ。違いますよ。ですから、そういうことに変わってきた理由は何なのか。例えば今度も一部、薬は除外しようという話がありましたね、それは途中で消えたわけだけれども。そういうふうにいろいろな部面で変わってきていますから、少なくとも、
本人の給付率を下げるというのは、
健康保険制度がつくられて、この十割給付が創設されて初めてなんですよ。今まで三K赤字といいまして、
健康保険は赤字だけが問題になって、そして大変だ大変だと議論したでしょう。そのときでもこの
本人十割給付だけには手をつけられなかったのですよ。そうして薬代の一部をもらうとか、あるいは初診料の一部負担をもらうとかいろいろやってまいりました。だけれども、
本人の給付率に手をつけるというのは今度が初めてなんですよ。それをやはり同じような考え方で物を考えていくところに、ちょっと問題があるんではないか。だから、物に対して負担を取ろうということと、給付率を下げようというのとは基本的に違うと思うのですよ。そういうところに一貫性が欠けるのではないか。
差額ベッドも同じですよ。差額ベッドも、例えばこういう考え方があるでしょう。
本人が希望して、私はもう金もうんとあるから一人部屋で安楽したいから入れてくださいと言って
本人が希望するものについて、平たく言えば必要以上なぜいたくを要求した場合に、その分までみんな保険で賄うというのはおかしいじゃないか、だから差額ベッド料を取ってもいいじゃないか、そういう考え方があるでしょう。しかし、本当に体が悪くてこの人はやはり個室に入れる必要があるというような人を、個室に入れて差額料を取るなんということは行き過ぎではないかという考え方もあるでしょう。同時に、そうしたことが蔓延をして、部屋があるにもかかわらず、個室しかありませんよと言って個室に入れて差額料を取るという行き過ぎもあったというような、いろいろ問題があるものですから、したがってこの際、差額料を取ることについても、前提としては撤廃をするという前提に立って行政指導していこうというので、取り組んできたのじゃないですか。そういう考え方でしてきたと私は思うのですよ。それが今度はそうでなくて、公然と認めることになる、こういうのですから大変な考え方の違いだと思うのですよ。どうですか。
-
○吉村政府委員 確かに五十三年の原案は薬剤を給付外にする、こういうことであったわけでございますが、そういう案を出しましたが、審議会でも、これはいろいろ問題があるということで、もちろん国会に出ましたときは給付外ではなしに二分の一の薬剤負担ということで出てきて、また国会でもそれは否定をされた、私どもとしてはそういう経緯があるわけでございます。
そこで今回は、また考え方を改めてこういう案にしたのでありますが、私どもは、基本的には結局がかった
医療費をだれがどういう形で負担するか、ここが基本ではないか。保険料で全部見るというのだったら、それはそれでも一つの考え方だと思います。十割給付というようなことでいけば、それはやはり現在の制度のもとでは乱診乱療というようなものを誘発する可能性がある。したがって、そういう形の十割給付でやっていくと、やはり保険料というものの負担がふえていくではないかというようなことでございます。それからまた、国庫負担を幾らでも投入できる、こういうことならまた別の考え方もあるのだろうと思います。それから患者負担につきましても、これが過大になって、
国民の生命、健康にかかわりがあるような形で患者負担をかけるというのは、これはやはり私どもは問題があると思いますが、先ほどから大臣も言っておりますように、今回の程度の改正ならば生命、健康を非常に阻害する要因になる、こういうようには私どもは考えておりませんわけでございますが、要は、
医療費を賄うのは患者、保険料、それから国庫負担、この三つしかないわけでありまして、そのバランスをどうとるか、それに尽きるのではないかと思うのです。したがって、その一部負担のかけ方ということにつきましても、かけないという考え方をとるのならば保険料なり国庫負担をふやしていく、つまり国庫負担というのは税金だと思いますけれども、それをふやしていく、こういうことに相なるでしょうし、私どもは、今回は一保険料率というものを将来にわたって
引き上げないで運用する方法はないだろうか、こういう観点から患者負担ということを考えて、一応患者負担と保険料と国庫負担のバランスを考えてみた、こういうことなのであります。
そして、その患者負担のところについてどういう取り方がいいかというのはいろいろな考え方がありますが、私どもは、将来の給付や負担の公平というようなものも考え、それから、現在の
医療の乱診乱療というような実態も見きわめて一割程度の定率負担がよろしいのではないか、こういうような踏み切り方をしたわけでございまして、私は、五十三年から今日に至って考え方が変わった、思想が変わったというようには考えておらないわけでございます。
それからまた、差額徴収につきましても、私ども、三人以上のいわゆる大部屋について差額徴収を解消していく方向は今後も堅持をしていくつもりでございますが、それでは一人部屋、二人部屋は幾らでも野方図に任せていいか、こういうことになりますと、私どもはやはり、保険診療と一緒に行われる以上は、ある程度の法的な規制、法的なカバーをした方がよろしいのではないかというようなことで今回踏み切ったので、先生がおしかりになるように考え方が全く転換したではないか、こういうようには私どもは思っておらないのであります。
-
○
村山(富)委員 これは議論しても見解の違いがあればやむを得ませんから、それ以上は言いません。
ただ、今
局長が答弁された答弁の中で、揚げ足をとるわけじゃないのですよ、とるわけじゃなくて、そういう考え方が基本にあるとすればそれは問題ではないかという意味で申し上げたいのですが、十割給付がやはり乱診乱療の背景になっておるというふうに言われたのですね。乱診乱療をしておるのは、それは
医療を供給する側の方でしょう。そうでしょう。患者には責任はないのですよ。それは例えばはしごするとか、風邪を引いたぐらいで薬をうんともらいに行くとか、それはいろいろあるかもしれませんよ。しかし、そんなものはそれほど大きな問題じゃないと思います。あなたが乱診乱療と言われるほどの大きな問題じゃないですよ。患者の方は、どの程度の
治療を受けることが妥当かなんというのはわからぬわけですから。そうでしょう。ですから、乱診乱療が行われるのは十割給付に原因がありというような、患者に原因があるのではなくて、むしろ供給側のいろいろな背景に問題がある。あるいはまた、後でまた議論しますけれども、診療報酬の支払い方式のあり方なんかにも問題がある。それを、十割給付がいかにも乱診乱療の原因になっておるから、この際患者に負担をさせればよくなるのではないか、こういう考え方が基本にあるとすれば、それはやはり問題ではないかというように私は思うのです。
-
○吉村政府委員 乱診乱療の意味でございますが、私どもは、乱診乱療の言葉から感じられるように本当にむちゃくちゃをやっておる、こういうことではございませんで、やはり十割給付というのは過剰診療になることは、これは人間のさがとしてそうなるのだろうと思います。ただならやはりむだな面が出てくる、過剰な面が出てくるというのは、これは人間性からいってもそうではないか。
今、先生は、お医者さん側にあれがあるのであって、患者の方は責任がないというようなことをおっしゃいましたが、私どもがお医者さんから聞く話では、やはり患者からいろいろ、疲れたからビタミンを打ってくれとか、二日酔いだからちょっと薬をくれとか、こういうことを言われて、片一方はサービス業でございますのでなかなか断り切れぬ、こう言うのです。本当は医学の立場から言えば不必要なんだがなと思いながらやる。それは確かに、お医者さんなら、そこで見識を持って、帰れ、こう言うのも一つの見識かもしれませんが、やはりお医者さんも開業している点ではサービス業でございますので、そこまで強く言えないというような話は、たびたび私ども聞いておるわけでございます。
だから、両面あるのではないかと私は思います。それはどちらかといえばお医者さんの方にある、こういうことはそれは私も認めます。しかし、全くお医者さんだけの方に原因があって、患者の方に原因は全くないのだということではないと私は思っておるのであります。
十割給付というものがやはり過剰診療、あるいは不必要な
医療も誘発する、こういうことは言えるのではないか。それは、先ほど先生も御指摘のように、診療報酬の支払い方式にももちろん関係がございます。ございますが、やはり人間の心理として、ただの場合は少し過剰になる、これは避けられないのではないかというような感じがして、十割給付にメスを入れることによって
医療費が適正化されていく方向に向かうのではないか、これは私ども確信をしておるわけでございます。
-
○
村山(富)委員 過剰
医療になる、しかも過剰を誘発する要因になるということだが、私はさっきもちょっと言いましたけれども、十割給付になっているがゆえに過剰な受診をしたり、また過剰な
治療をしたりなんかするような向きが全然ないとは言わぬのです。それは全然ないとは言いません。しかし、それが大きく根幹に影響するようなものではないと私は思うのですよ。これは見解の違いかもしれませんけれども、そう思うのです。であるとするならば、その責任を患者だけの負担にかけて、そして負担を押しつけるのはやはり行き過ぎではないか。むしろその前に、そうした過剰になっておると思われる、乱診乱療になると思われるような背景についてもう少しみんなが納得できるような改革をやって、それでもなおかつ問題がある、そういう場合の話であって、むしろ順序が逆ではないか。これはどうですか。
-
○
渡部国務大臣 これは
村山先生、患者一部負担、とにかくそれはただが一番いいに決まっておりますけれども、今日置かれている厳しい条件、今日までの経過の中で、患者に一部御負担を願おうということはここ十年間ずっと議論してきたことですね、それを薬にするか、これにするか、あれにするかで。患者に一部御負担をお願いしよう、それじゃそれを何にするかという場合、昔は薬を抜くという意見もあったそうですが、最近では定額か定率か、こういう議論になったわけで、そのとき、定額よりもむしろ定率でお願いすることが
医療費の適正化に、いわゆる患者の皆さん方に
医療費をわかりやすくする、そういう効果がある、だから、もちろんその目的のためじゃないのですよ、患者の皆さんに
医療費を一部御負担いただくということは。もう恐縮でございますが、そのことはお願いいたします、ここはもう決まっている。その次、それなら取り方をどうするかというので、定額よりは定率ということの方が、乱診乱療を排除したり、あるいは濃厚
医療と言われるようなものをなくしたり、とにかく今まで予算委員会等で先生方から、医師は患者に必ず明細書を出すように義務づけるとか、あるいは審査体制をもっと
強化しろとか、いろいろの御意見がありまして、それらについて今までも厚生省は随分とよくしてきているようですけれども、行政改革という中で、これ以上人数をどんどんふやしていったりすることには限界がありますから、そうすると一石二鳥というか三鳥というか、
医療費を一部お願いするという中で、これは定額でいただくより定率でいただくことの方が
医療費の将来の適正化に、あるいは患者の皆さん方が
医療費というものに非常な関心をお持ちになって、今度は余り病気しないように一生懸命健康を守っていこうという自己の健康管理に努力をするとか、お医者さんの皆さん方にも乱診乱療的なことは慎んでいただくとか、そういう総合的な効果を上げることができるので、患者の皆さんに御負担をちょうだいすることは申しわけないのだけれども、御負担をお願いする以上、
医療費の節減により役に立つために一部定率御負担でお願いをしたい、こういうことなんでございます。
-
○
村山(富)委員 これは議論し合っても切りのない話ですから、皆さんの答弁を納得するわけじゃありませんけれども、次に移りたいと思います。
これも先ほど質問があったようですけれども、
国民医療費の伸びというのは五十六年が七・四%、五十七年が七・八%、五十八年が四・六%ですね。五十九年はもしこの制度が改正されずに現行のままいくと七・二%になる、こういうことなんですね。改正されれば二・五%、それで、五十八年は四・六%になると見込まれておるでしょう。五十八年は伸び率が四・六%、そうですね。この四・六%のままいくと考えた場合どうなりますか。意味はわかりますか。
-
○吉村政府委員 五十九年度も四・六%の伸び率だったらどうなるかということでございますか。
-
○
村山(富)委員 いや、そうじゃないです。確かに五十七年までは
国民所得を伸びが上回っているわけですね。五十八年は四・六%で
国民所得の伸びを下回っているわけですよ。下回っているというのは下回った理由があるわけでしょう。そうすると、五十九年になるとその理由がなくなってまた伸びるということになるのか。五十八年の条件というものが五十九年も引き継がれていくとするならば、七二一%ということにはならぬのではないかというふうにも思われるのですが、その点はどうですか。こう聞いているわけです。
-
○吉村政府委員
医療費の推計というのはなかなか難しい推計でございまして、非常に極端に言いますと、本当にお医者さんのさじかげんで
医療費の額が変わってくるわけでございます。したがって、一応私どもの推計のやり方としましては、過去のトレンドというものを基礎に置かざるを得ない。そして、過去のトレンドで推計をして、それから
医療費の節減をするあるいは制度を改正する、こういうことでその分を差っ引いていく、こういう方式をとっておるわけでございます。
したがって、五十八年度四・六という数字を申し上げましたが、五十八年度におきましても、もし何らの改正をしなかったとすれば七・三伸びたであろう、こういう推計はしておったわけであります。そこで、老人保健法を成立さしていただいた、その老人保健の効果、それから五十八年度におきましても薬価基準の改正をしております、そういう影響率を差っ引きまして、五十八年度の
医療費の伸びは四・六%になるであろう、こういう推計をしておるわけであります。
そうすると、老人保健法は五十九年度においても当然行われるわけですから、その影響は残る。残ることは残りますが、私どもは、先ほど申し上げましたように過去のトレンドというものを基礎に推計をするわけでございますので、何もしないと五十九年度は七・二%程度の
医療費の伸びになる、こういう推計をしたわけでございます。そして、先ほど申しましたように薬価基準の改正だとか、制度改正だとか、適正化の効果を引いて二・五程度にとどまるのではないか、こういうことでございます。
したがって、今後も二・五とか四・六ぐらいで伸びる、最近ぐっと伸び率が下がっておりますので、それで伸びていけば確かに
国民所得の伸びよりも低くなることは事実なんです。しかし、
医療費の中身というのは、コストの方からいえば大体半分は人件費でございます。したがって、やはり
医療従事者の人件費というのは上げていかなければならぬ、これは当然だと私も思うのであります。そうしますと、ここ数年四・六%の伸びだとか二・五%の伸びでおさまったならば、やはり
医療従事者の待遇の問題というようなことで、あるいは
医療機関の経営というようなことで問題が起きるに決まっておる、こういうように思うのでありまして、しからば六十年度以降についてはどういう伸びになるのか、こういうことになるわけですが、やはり過去のトレンドというようなものを頭に置きながら推計をしていかざるを得ないのでありまして、五十八年度、五十九年度の低い伸び率というのはそういう意味の数字だ、こういうように受け取っておるわけでございます。
-
○
村山(富)委員 五十八年度は四・六%におさまるであろうと推定しておる背景は、老人保健法と薬価基準の引き下げということを今言われましたね。これは五十九年度もやはり同じ傾向で残っていくのではないか。特に薬価基準につきましては、今年三月からまた一六・何ぼか下げたわけですね。ですから、むしろ五十八年度よりも五十九年度の方が、その問題に関する限りは相当下がっていくのではないかと推定されますね。そうしますと、今あなたが言われたように、人件費が五〇%を占めておる、だから人件費が五十九年度はうんと上がるだろう、それがまた
医療費を押し上げるだろう。これだけですか、五十九年度改正をしなければ七・二%にまた伸びていくという背景になる要因は。これはやはり、審議するのには、改正をせずに現行のまま行くとこういうふうに財政はなります、
医療費はこうなります、改正すれば二・四%になるという中身を、納得できるように資料を提供してもらわないと、本当を言って審議になりませんよ。
同時に、ことしだけの問題ではないのですから、六十年はどうなるか、六十一年はどうなるか。今の政府が出している法案からすると、六十一年からは二割にする、それまでは一割。そうすると、そういうふうに動いていく条件の違いの中で、
国民医療費の推計というのはどういうふうになっていくのかという、少なくとも四、五年ぐらいの展望を踏まえた中でこの法案がいいか悪いかという議論をしなければ、ことしだけ見ると財政はこうなりますよというだけの話で議論をするのは、やはりちょっとおかしいのではないか、議論しにくいのではないかと思いますが、そういう資料を出してもらえますか。
-
○吉村政府委員 今私が説明をいたしましたことについての資料はお出しできます。
それから、確かに先生おっしゃるように、将来の
医療費推計をおまえらどう考えておるのだ、これはおっしゃる意味は十分よくわかります。わかりますが、
医療費の推計というのはなかなか難しい話で、責任のある国会のこの場所で、将来狂うような
医療費の推計を出したのでは申しわけないという気持ちがあるのです。そこは一つの前提を置いてこういう推計をしてみる、こういうことならもちろん私どもいろいろな推計をしております。コストの方からも推計をしたり、従来のトレンドからも推計をしたり、それから年齢構成の変化を加味した推計もしております。したがって、それを出せ、こういうことならいつでもお出しいたします。ただ、それじゃその数字について責任を持てと言われると、積算についての責任は負えますが、将来そのとおりになるかとおっしゃられると、やはり私どもは、今申し上げましたように仮定を置いた数字であるということで、十分御理解を願いたいと思います。そういうことならいつでも出せます。
-
○
村山(富)委員 これは推計です。だから、見通しが狂えば、狂った理由はこういうことで狂ったのだということがはっきりすればそれでいいわけですから、言ったのが違うじゃないか、そんなことは言いませんよ、それは当然のことだから。ただ、この改正案を審議するのに、やはり三年か四年先ぐらいの財政の見通しというものを踏まえた上で議論をしなければ、それは議論にならぬじゃないですか。
私は、この七二一%か二・四%かという質問については、その資料が出されるまでは保留します。それは審議になりませんよ。単年度だけの問題ではないのです。これは来年また変えるというなら別ですよ。そうじゃないのですから、そういうものを踏まえた上で議論をするということが大事だと思いますから、この質問については保留しておきます。
それから、具体的な内容に入っていきたいと思うのですけれども、やはり
医療保険の問題等々審議するには、一つは
医療を受ける側の条件がどうあるか、
医療を供給する側の条件がどうあるか、その受ける側と供給する側の仲を取り持って、そして支払いを保証するというのが保険制度ですから、それぞれの分野の問題点というものを洗って、分析をして、そして一番正しい処方せんを出していくということでなければいかぬのではないかと思いますから、そういう意味でこれから少し議論を深めていきたいというふうに思うのです。
まずお尋ねをしたいと思うのですが、これは本会議でも申し上げましたけれども、特に近年は、人口の高齢化とか、あるいは生活環境、社会環境が変わったとか、食生活が変わったとか、いろいろな意味で人間の暮らしの条件というものが変わってまいりましたね。それに応じて疾病構造も大きく変わってきているわけです。そこで、これから
医療を考える場合に大事なことは、病気にかからないようにする、病人を出さないようにするということが大事ではないかというように思いますから、それを前提にして二つばかりお尋ねしたいと思うのです。
一つは、
食品添加物の問題なのです、私どもの周囲には、
食品添加物やら農薬やらあるいは抗生物質やら、化学合成品というものがはんらんしていますね。日常生活の中で
本人が意識する、しないにかかわらずそういうものを体内に取り込んでいるわけですね。ある学者に言わせますと、食生活だけで七十から八十種類ぐらいの抗生物質を取り込んでいる。そしてその量は十グラムぐらいだというような意見もあるようですが、いずれにいたしましても、相当多量に体内に取り込んでいることは間違いないと思うのですよ。
そこでお尋ねをしていきたいと思うのですけれども、この食品衛生法というのが施行されたのが昭和二十二年ですね。その施行されて以後、
食品添加物として指定された品目はどれぐらいありますか。それからもう一つは、取り消された品目はどれぐらいありますか。取り消された理由は何ですか。その三つについてまずお答えください。
-
○竹中政府委員 現時点におきまして、
食品添加物として指定しております数は三百四十七品目でございます。
それから、取り消しをいたしました数でございますが、昭和四十年以降では四十二品目になっております。食品衛生法施行時点からを全部足しますと、たしか五十品目ぐらいになると思っております。
そこで、古いものは別にいたしまして、昭和四十年以降現在までに、指定の取り消しをいたしました四十二品目の取り消しの理由でございますが、まず第一番目に、安全性に疑いが出てまいったということで取り消しをいたしましたのが十六品目でございます。この十六品目のうち、発がん性があるのではなかろうか、発がん性の疑いで取り消しをいたしましたのが四品目でございます。それから使用の実態がなくなったもの、つまり一度指定をしたわけでございますけれども、その後新しい、別のより有効な添加物が出てまいったというようなことがございまして使用されなくなったもの、これが二十三品目でございます。それからあと三品目でございますが、その時点での科学に立脚いたしまして安全性について十分な資料がない、後になっていろいろ調べてみましたところ、これは再評価の過程で出てまいった問題でございますが、再評価をいたしましたところ、その時点での科学では安全性を再確認するに足る資料がないというのが三品目ございました。それが四十二品目の取り消しの内訳でございます。
-
○
村山(富)委員 そうすると、それ以前に取り消されたものについてはつまびらかじゃないわけですか。四十年以降については四十二品目。ですから、それ以前に指定されて取り消された品目、取り消された理由等については明確じゃないわけですか。
-
○竹中政府委員 先ほど申し上げましたように、あと十品目ばかりが昭和二十三年以降三十九年までの間に取り消しをされておるわけでございますが、現在、その十品目ばかりにつきましては取り消しの理由を調査いたしておる段階で、まだ私ども確認ができておらないわけでございます。
-
○
村山(富)委員 調査をしているというのは、私の質問があって調査を始めたのですか。
局長、それはどういう意味ですか。
-
○竹中政府委員 大変、十数年以上も前ということで、調査を始めておるわけでございますけれども、まことに申しわけございませんが、三十九年以前取り消しのものにつきましては、なお若干時間の御猶予をいただきたいと思っております。
-
○
村山(富)委員 それはやはりちょっとおかしいような気がするけれども、記録はないのですか。
-
○竹中政府委員 もちろん記録はございます。その記録を今調べておるところでございます。
-
○
村山(富)委員 そうすると、私の質問の通告があって、それから調べにかかったわけですか。
-
○竹中政府委員 後でもまた問題として出てくるかと思いますが、四十年代の初めに、実は動物実験のやり方が非常に進歩をいたしたわけでございます。したがって、四十年以降に、慢性毒性でございますとか発がん性の実験が非常に進歩いたしまして、それらによる指定削除というのが非常に具体的に問題になった。したがいまして、私ども、現時点では四十年以降を中心に検討しておるわけでございます。
なお、三十九年以前の指定取り消しの数につきましては、すぐ、先生の御質問が終わるまでに御答弁できると思います。
-
○
村山(富)委員 数はもとよりですけれども、それじゃこうしてください。この委員会中に、品名と取り消した理由、何年に取り消したということを全部資料にして出してください。
-
○竹中政府委員 お出しいたします。
-
○
村山(富)委員 それで、一つは、三百四十七品目指定されているわけでしょう。これを常時、全部とり込んでいるとは思いませんけれども、しかし、さっき言いましたように、七十から八十種類ぐらいの化学合成物質をとり込んでいるわけです。ですから、そういうものが体内に蓄積されていった場合に、相乗効果、複合毒性といったものに対する研究というものは今どうなっていますか。
-
○竹中政府委員
食品添加物は、御承知のように、体内にとりましたものは排泄されていくわけでございますので、体内で蓄積するという例はまずないと考えております。
それから相乗作用の点でございますが、よく相乗効果についての議論が出るわけでございます。御承知のように、一般の食品、普通の食品もみんな化学物質でございまして、化学物質の塊でございますが、そういった一般の食品につきまして、現在言われておりますのは、相乗ということよりも、むしろ相殺あるいは拮抗作用がよく見られる。御承知のように、魚の焼け焦げに入っておりますトリプP1という非常に強い発がん物質がございますが、こういうものが、野菜のジュースでありますとかビタミンCの拮抗作用によって発がん作用が薄れるというようなことがございまして、むしろ、今食品で言われておりますのは、相殺作用あるいは拮抗作用、そのことは、添加物も全く同じ化学物質でございますのでそういうことが類推をされるわけでございます。それが一点でございます。
それから二点目といたしまして、
食品添加物の相乗作用、相乗毒性ということでございますけれども、
食品添加物につきましては、御承知のように動物の最大無作用量、つまり動物やら人体に対しまして何の作用も起こさない量、医薬品は御承知のように人体に作用を起こす量を使うわけでございますが、
食品添加物は人体や動物に作用を起こさない量、結論だけ申し上げますと、それの千分の一から数千分の一の量を使いまして、それで防腐なり何なりの効果のあるものだけを
食品添加物として使っておる。つまり動物、人体に対する作用が起こる、それの三けた低いこく微量で使っておるということでございますので、私どもといたしましては、相乗毒性、相乗作用ということは
食品添加物についてはまず考える必要はないのではなかろうかと思っております。
ただ、いろいろとそういう点で御関心がございますので、実は念のために、昭和四十九年度以降、具体的な
食品添加物につきまして相乗作用というものが本当にあるのかどうか、現在までに二十種類の
食品添加物につきまして、その組み合わせで相乗作用があるかどうか実験を続けてまいっておりますが、現在までの段階では何らそういう作用は見つかっていないということでございます。
-
○
村山(富)委員 今言われたように、相殺効果のあるものもあるかもしれませんね。それはそういう意見もありますから、あるかもしれません。しかし、相乗効果の出るようなものもあるかもしれません。これはわからぬわけだ。だから、やはりこれは常時研究を続けていく必要があるのではないかと思いますけれども、これは大臣どうですか。
-
○
渡部国務大臣
食品添加物行政について何よりも大事なことは、安全性、今の安全を確保することでございます。ただ、今日、国際化しておりますし、また
国民の皆さん方の食品に対するニーズというものも多様化しておりますから、これらを一切認めないというわけにはまいりません。やはり消費者のニーズというものを我々は尊重しなければなりません。そういう中で、あくまでも人命尊重ということが第一でありますから、そういうことで許可してまいりますし、また、そういうことに不安があればどんどん取り消しをしてまいります。
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○
村山(富)委員 いやいや、私が質問したのは、そういう相乗効果で人体に影響を及ぼすようなことがあるかもしれないですね、ですから、そういう意味ではやはり引き続いて研究をしていく必要があるのではないかということを言っているわけですから、それはどうかということに対する答弁だけでいいわけです。
-
○
渡部国務大臣 そういう意味で、許可したものでも、また、いろいろ調べて不安が起こってくればそれを取り消すということもしていくという意味のことを私は申し上げたわけですが、今度は、相乗効果とかそういうものは極めて専門的な問題でございますから、専門家のお医者さんに聞いていただいた方がよくわかると思います。
-
○竹中政府委員 相乗毒性試験と申しますのは、
食品添加物の安全性の再評価の一環として実施をいたしておりまして、昭和四十九年度以降、先ほど申しましたようにずっと続けてまいっておりまして、五十九年度予算においてもそれに必要な経費を計上いたしております。
-
○
村山(富)委員 ですから、今後も真剣に取り組んで研究を続けていきます、そう言えばいいわけです。
-
○
渡部国務大臣 人命尊重で、真剣に取り組んで頑張ってまいります。
-
○
村山(富)委員 そういう前提に立って、具体的な問題について二、三お尋ねしたいと思うのですけれども、BHAというのは発がん性が指摘をされて、経過を見ますと、五十七年五月七日に、食品衛生調査会から意見具申が文書で提出をされておるわけですね。それを受けて厚生省は、五十七年五月十日に、環境衛生
局長名で各都道府県知事、政令市の市長、特別区の区長あてにその文書を出しておるわけです。その文書はここにありますけれども、もう中身は言いませんが、いいですね、出していますね。同時に一九八二年、五十七年八月二日に、パーム原料油を除いて、BHAは
食品添加物として使用できない規制告示がされたわけです。それは間違いないですね。ところが、その規制の施行日は五十八年二月一日からとなっておったんですけれども、どういう理由が、厚生大臣が——当時の厚生大臣ですよ、今の厚生大臣ならそんなことはなかったかもしれませんけれども、当時の厚生大臣は、その施行日を延期するという告示をしたんですよ。これは言うならば行政の姿勢が二転三転しているわけですけれども、それは一体どういう理由が、納得できる説明をしてください。
-
○竹中政府委員 BHA問題につきましての経過は、今先生がおっしゃったとおりでございます。
このBHAと申しますのは、油脂の酸化防止剤でございまして、日本はもちろんでございますが、諸外国でも非常によく使われておる添加物でございます。そこで、昨年の五月にそういう決定をいたしました時点で、各国から大変関心が寄せられまして、ひとつ科学的に国際的に検討をしたいということで、日、米、英、加の四カ国で四カ国会議が行われまして、それからさらに、それはWHO・FAO
食品添加物合同専門家会議にも引き継がれて、現在まで国際的に学界の論議の焦点になっておる、非常な論議が行われておるということでございます。
その中身をちょっと御
紹介をさせていただきますと、BHAに発がん性があることは、これは日本はもちろん各国ともそのとおりであるというふうに認識をいたしておりますが、どうも従来の発がん物質とはちょっとメカニズムその他について違うようである。果たしてこれがヒトの発がんに結びつくものかどうかということが議論の焦点になっておるわけでございます。
中身といたしまして、まずメカニズムでございますが、昔の有名な発がん物質はすべてイニシエーターと言われるものでございますが、どうもこのBHAはプロモーターらしい。食品衛生調査会で五十七年に議論されたときもそういう意見はちょっと出ておりましたが、その後の国際的な検討によりまして、どうもプロモーターの可能性が非常に強い。御承知のように、プロモーターというのはイニシエーターが働いた後でなければ発がんというのには寄与をしない、プロモーターだけでは発がんをしないというものでございます。
それからもう一つ、このBHAと申しますのは一種類の、ラットでございますが、一種類の動物だけに発がんをする。それからまた、人間にない前胃、ネズミにだけございます前胃という臓器だけに発がんをする。それから、普通人間が摂取をいたします量の約二万倍の量を今のラットに与えたところが、前胃に発がんをしたというような中身でございまして、ヒトの発がんにつながるのかどうかという疑問が呈されたわけでございます。
現在、先ほど申しましたFAO・WHOの合同専門家委員会でさらに実験を続けようということで、前胃のない動物、つまりネズミ以外の例えば犬でございますとか猿でございますとか、そういった普通の動物でさらに実験を続けようということになりまして、昨年の秋以降、日本、アメリカ、カナダ、スウェーデンが実験を進めてまいっておりまして、その結論が出た段階でこのBHAの発がん問題について国際的な決着をつけよう、こういうことになっておるわけでございます。
そこで、食品衛生調査会との関係でございますけれども、食品衛生調査会、特に添加物部会、それから毒性部会の合同部会の御意見では、ほかに代替品があるので、できたらやめた方がいい。しかし、やめるについては、いつやめるかはひとつ政府でよく考えて決めればいいというような御意見、提唱でございまして、したがって、私ども、昨年の施行延期の段階で食品衛生調査会に御報告を申し上げまして、今の施行延期については、特に現時点では問題はないという御意見を調査会からいただきまして、現在の段階に至っておるということでございます。
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○
村山(富)委員 その食品衛生調査会から大臣に意見具申があって、それを受けて厚生省は、使用してはならないという告示をしたわけですね。それはさっき経過を言ったら、そのとおりだと言ったじゃないですか。そして現に五十九年二月二十日に、九州山口地区漁連水産製品主務者協議会という会が主催をしたんでしょうけれども、そこに厚生省の食品化学課から担当官が出席をして、こう言っているじゃないですか。昭和五十七年五月十日付
局長通達はあくまでも生きています。煮干し関係業界としては、BHAが使われることのないよう全面的な協力を要請する。
食品添加物協会に対しては、メーカーがBHAを食添用として製造販売しないよう協力する。今あなたが答弁されたのと大分中身が違うじゃないですか。
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○竹中政府委員 先ほど申しましたように、食品衛生調査会の毒性部会・添加物部会の御意見では、代替のもの、BHTでございますとかあるいはビタミンEが同じような作用、酸化防止の作用をするということで、若干値段等は違いますが、そういうこともございますので、BHAは禁止をしたらいいだろう。ただし、いつから禁止をするかという施行時期については、ひとつこれは政府に任すということで、厚生省はかなり長い、一年近い猶予期間を置きまして、五十八年二月一日から施行するというようなことにしておったわけでございます。
ただいまお話しの漁連、煮干し関係だと思いますが、漁連につきましては、そういうふうに決定をいたしましてから施行までの間、かなり時間もございます。そこで、施行日以内であっても、できれば違うものに、BHTなりビタミンEにかわってもらった方がいい、そういう指導を、つまり施行日までの間の指導を、BHAからBHTないしはビタミンEに乗りかえてもらった方がいいという指導をした。そのことは現在も、施行時期は来ておりませんけれども、できるだけBHAからビタミンEにかわってもらった方がいいという指導をしておるということでございます。
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○
村山(富)委員 それは指導だけであって、文書は、通達の中身は大分変わってきたわけですね。一遍は禁止したわけでしょう、使ってはならないと。
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○竹中政府委員 これは要するに、一昨年の五十七年五月に禁止をするということでありますが、いつから禁止をするかという施行日というのが五十八年二月一日からでございます。五十八年二月一日から禁止をするが、それまでの間も、五十七年から五十八年二月までの間も、できればひとつ早く乗りかえていただいた方がいいという指導をした。現時点も、禁止はする、しかし、その施行の日は別に厚生大臣が定める日とするというのが現在の状態でございまして、その状態は前と変わりはない。禁止はするが、いつから禁止するかはこれから決めるということに今なっておるわけでございますので、今直ちに禁止するということではないが、その間もひとつできればビタミンEにかえてもらった方がいいじゃないか、こういう指導をしておるということでございます。
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○
村山(富)委員 あなたの説明する意味はわからぬではないけれども、しかし、明確に文書は言っているのですよ。五十七年の五月十日に
厚生省環境衛生局長が各都道府県知事に出した文書によりますと、「パーム原油及びパーム杉原油以外の食品には使用しないこと。 パン以外の食品に使用しないこと。」と言って、明確に規定づけているわけですね。これが今お話しがあったように二月の何日ですかから施行されることになっておったものを、大臣が施行日を延期をされたわけです。延期をした期間もこの通達の精神は生きていますよ、だからできるだけ使わないようにしてください、こう言っているわけですよ。言っているけれども、それは行政の指導があいまいだから、現に東京都の消費者センターが調査したら、マーケットの煮干しの中にうんと出ているじゃないですか。検査した資料はありますよ。
ちょっと申し上げますと、これは五十八年の十一月から五十九年の一月にかけて調査しているわけですね。BHAは六十点中二十六点、四三%から検出された。
食品添加物について表示義務のある密封包装のもので、BHAが検出されたにもかかわらず、酸化防止剤使用の表示がされていないものが三点あった。これはもう食品衛生法違反ですよ。
食品添加物についての表示義務がないはかり売り及び簡易包装のもののBHA検出率は、はかり売りが六二%、簡易包装は三一%であった。現に市場に出ているわけでしょう。
これはさっき大臣が言われましたように、命と健康に関する重要な問題ですよ。そういう行政のあいまいな姿勢でもって、これでは業者も困るでしょう。つくっていいのかつくって悪いのかわからぬし、使う方も、使っていいのか使って悪いのかわからぬ。こういう格好ではやっぱりおかしいのではないかと思うのですがね。これは大臣、どうですか。
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○竹中政府委員 先ほども申しましたように、現在施行の延期をしておるわけでございますが、その施行の延期によって、つまりあと半年になりますか一年になりますか、その程度の期間なお従来の使用基準で使用されても、それによって
国民の健康に被害が起こるということはないというふうに私どもは考えております。そういうことで、現在は、全く予防的な措置としてどうするかということを考えておるわけでございまして、今ここで施行を若干延ばしておるということによって、全く
国民の健康には問題はないというふうに考えておるわけでございます。ただ、そういう予防的な措置でございますから、結論はどっちにいくかわかりませんが、予防的な措置でございますから、禁止の施行は直ちにしなくてもいいけれども、できればかわってもらった方がいい、それが行政指導でございまして、そういうことで現在はやっておるということでございます。
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○
村山(富)委員 それはやっぱりそういうふうに行政指導しているのでしょう。行政指導しているのなら、あなたを言うように、それはもう人体に関係ありません、安全です、こう言い切るのなら、それはもっと違った手法があるべきですよ。それはやっぱり疑念が持たれて疑いがあるから、できるだけ使用しないでください、使用しない方がいいですよ、こう言って指導しているのですよ。私はやっぱりこれは、そういう行政のあいまいな姿勢ではいかぬと思いますからね。やっぱり疑わしきは使わせないという精神に立って、この指導は徹底させるべきだと思いますがね。
これはもう専門的な中身の問題ではなくて、行政の姿勢として、疑わしきものはやっぱり使わせない方がいい、はっきりするまでは。だからこういう通達も出しているし、こういう指導もしているんだから、なお一層指導を徹底させるということが必要ではないかと思いますけれども、大臣、どうですか。
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○竹中政府委員 先に一つだけ。
先ほどからるる申し上げておりますように、発がん性の問題についてはここ二、三年で大変な科学的な進歩がございまして、従来は発がん性がある、つまりクロとシロというものは非常にはっきりしておった。ところが疑わしい、まあ疑わしいという言葉の内容にもよりますけれども、例えば現在の段階では、魚の焦げから、ワラビから、あるいはみそから、しょうゆから、ぬかみそから、お茶から、みんな変異原性がある、こういう議論になっておるわけでございますので、その辺につきましては、十分科学的な議論をした上で最終決定をしたいということで申し上げておるわけでございます。
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○
村山(富)委員 いや、それは最終決定より、結論がまだ出てないのでしょう。最終決定をしたい、こういうんだから。結論が出てないから、その結論が出るまでの行政指導として、やっぱり疑わしいものは使わない方がいい、だから協力してくださいよと言って指導しておるんでしょう。それならやっぱりその指導を徹底させていくべきではないかと私は思いますよ。それを抗弁して、そうでないのですというなら言いなさいよ。そうでなくて、あなた方は一貫してそういう指導しているじゃないですか。だから、指導しているにもかかわらず、現にマーケットにははんらんして出ているわけですからね。調査の結果としては出ているわけですから、やっぱり指導は徹底させて、そういうことのないようにすべきではないですか。結論が出て万人が認めてはっきりしたのなら、その上で対策を考えればいいじゃないですか。どうですか。
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○
渡部国務大臣
食品衛生行政で何よりも大事なことは、
国民の健康を守ること、これは言うまでもございません。また、食生活というものは、我々が毎日毎日生きていく糧でもあり、また生活の楽しみでもあるわけですから、それに
国民の皆さんが不安を持っておるようでは困りますので、これはできるだけ安心をして食生活を行っていただくということが我々に与えられた大きな仕事だろう、こう思います。
ただ、今政府委員からも話がありましたように、この発がん性の物質というようなものは、よく私ら週刊誌で見るのですけれども、いっとき、あれを食ったらがんになるから大変だぞ、こう思っておると、何年かたつと、今度それはかえっていい場合が出てきたりして、これは世間のそういうことに一々とらわれてやったらなかなか大変でありましょうが、私はきのうがんセンターに見学に行きまして、これだけすぐれた研究所なんだから、ひとつ一日も早く我々が、
国民の皆さんに、これはもういけませんよ、またこれは大丈夫ですよ、これはかえっていいんですよというようなことを、自信と責任を持って言えるようなデータを出していただきたいということを言ってまいったのでありますが、今の先生の御意見、まことにごもっともなことでありますので、行政の面でできるだけ指導してまいりたいと思います。
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○
村山(富)委員 じゃ次に、この問題は、先般も社会党の
網岡委員から問題提起がございましたけれども、アスパルテームですね。これは一般の健常な人には害はないんじゃないかと思いますけれども、特殊な症状を持っている体質の子供にはやっぱり影響があると言われていますね。それは、フェニルケトン尿症という病気を持った子供がおりますね。その子供にはできるだけやっぱり摂取させない方がいい。そうすると、これはやっぱり極端な場合には精薄、痴呆化する可能性があるということが言われていますね。したがって、わざわざ、この使用については、厚生省の児童家庭局の母子衛生課長名で、五十八年の八月二十七日、そういうことを含めた警告的な文書が出されていますね。その文書が出されているということは、やっぱりそういう心配があるということを認めていると思うのですね。それはどうですか。
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○竹中政府委員 アスパルテームが分解をいたしますと、アスパラギン酸とフェニルアラニンができるわけでございます。そこで、このアスパルテームは、今お話しのフェニルケトン尿症の子供さんはお使いになっては困るということでそういう表示をいたしまして、また、お話しのような通知を児童局に出してもらいまして徹底をしておるということでございます。
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○
村山(富)委員 第七十二国会で、参議院も衆議院も附帯決議の中で、今日の諸科学の到達点も踏まえながら、食品の安全確保については全力を尽くすという附帯決議もついていますし、やはりできるだけ最小限にとどめることがいいと私は思うのですけれども、今度はそういう国会決議があるにもかかわらず、この十一品目の指定をしたわけですね。追加したわけです。その追加した中に今言ったアスパルテームが入っているわけですね。これは私はやはり、児童家庭局の母子衛生課長が通達を出したように、その通達は、今も言いましたように、そういう子供さんが飲むと影響があるかもしれないということを警告している、であるとするならば、いいですか、私はここに品物を持ってきていますけれども、これからこれがはんらんをするわけですよ。これはもう味の素みたいに大変使いやすいですから。これなんです。家庭でどんどん使いますよ。そして確かにその添加物が入っている、含有しているということはここに表示してありますよ。全部表示してある。表示してありますけれども、そういう病気になっている子供さんが、どこか病室に入って
治療しておるとかなんとかいうなら別ですが、もう普通の子供と同じようにあちこちで集まっているわけですから。そうすると、どこかに行ってこの入っているものを飲むかもしれない、使うかもしれない。しかし、この品物を宣伝をする文書にはいいことばかり書いてありますけれども、そういう人はやはり注意した方がいいですよということは一行も書いてない。どうですか、この点は。
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○竹中政府委員 フェニルケトン尿症につきましては、御承知のように児童局で大変力を入れておりまして、新生児について九八%が検査をされまして確認をされておるわけでございます。
そういうお子さんにつきましては、これは何もアスパルテームだけではございませんで、母乳についてもあるいは普通の粉ミルクについても飲むと困る、普通の母乳や粉ミルクの中にもフェニルアラニンが入っているわけでございますので、そういうのは困るということで、それぞれそういったお母さん方に対して
医療機関から十分に指導が行われて、食事の制限をしておる。したがって、このフェニルケトン尿症のお母さん方は、フェニルアラニンの入っているものはできるだけ少なくしなければならぬということは十分御存じで、そういう食事の制限なりそういう食事を子供さんにやっておられる。そういう前提で、そういうお母さん方に対して、このアスパルテームというものはフェニルアラニンが入っておりますよということを表示をして御注意申し上げれば、このアスパルテームを使う場合、アスパルテームは甘味料でございますから恐らく生まれたての赤ちゃんには使わないと思いますが、いずれにいたしましてもそういうことで、フェニルケトン尿症のお母さんは十分に認識をされておってうまくいっているわけでございますから、そういうことでこのアスパルテームの表示で十分ではないか。このことは、フェニルケトン尿症の子供さんなりお母さんなり、つまり患者さん、患者のお宅、それからまた、日本小児科学会等でも、現在のこの表示で特段に異議が出ていないということでございますし、また各国におきましても、アスパルテームにつきましては、私どもとほぼ同じような表示をして一般に発売しておるというのが実態でございます。
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○
村山(富)委員 その子供さんを持っているお母さんは、今言われるように特殊な病気を持った子供さんですからね、注意して徹底するかもしれませんよ。だけれども、お母さんがいつも目の届くところにその子供さんがおるのならいいのですが、普通の子供と同じように遊び回るわけですからね。どこかへ行ってコーヒーをごちそうになるかもしれない。飲料水をごちそうになるかもしれない。ですから、やはりこの種のものは社会的に共通して安全について責任を持ち合う必要がある。そういう意味では、そういう注意をぴしっとする必要があるのではないかというように思いますけれどもね。
それからもう一つは、やはりそういう疑いのあるものについてはもっと慎重な扱いをする必要があるのではないか。ですから食品衛生調査会あたりでも、そういう問題については広く意見を聞いて、真剣に議論してもらう必要がある。何か話に聞きますと、十一品目を指定する際も、わずかな時間に会社から出されたデータだけを頼りにして審査をして、指定を決めだというような話も聞いていますけれども、そういう扱い方をされますとやはり
国民は不安に思いますよ。本当にガラス張りで、
国民の皆が知る中で十分審議をし尽くして、そして安全ですよ、こう言ったなら皆さん納得するかもしれませんよ。しかし
国民の目には全然触れない、耳には入らないところで審議をして、しかも後で聞けば、言うならば十分納得のできるような審議の時間もなくて決められておる、しかもこういう問題をはらんでいるではないかというので、やはり不安に思っているわけですよ。
これはもう、私はここに資料を持っていますけれども、全国の都道府県市町村のほとんどで意見書を出していますよ。議決していますよ。そして、今ある団体が署名活動をやっていますけれども、それはかってない署名が集まっていますよ。それだけ多くの
国民がこの問題については疑念を持っているのですよ。
私は、一つは食品衛生調査会ですか、その食品衛生調査会の中にも、以前に、齋藤
邦吉さんという厚生大臣が、質問に答えて、いや、それはもう消費者の代表で十分
国民の意を受けてやってくれる人があれば、二人でも三人でも委員に出て結構ですよという答弁もしていましたけれども、今は一人も入っていない。ですから、もう少し納得できるようなメンバーをそろえる、そうしてガラス張りで
国民が十分承知できるようなところでこの扱いをしていくというようなことも必要ではないかと思うのですが、そういうことも含めて今後のあり方について、どうですか。
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○竹中政府委員 アスパルテームの審議に当たりましては、やはりフェニルケトン尿症というのは調査会でいろいろと十分な御検討をいただいたわけでございます。その結果、調査会としても、こういう表示でやったらどうかということで意見書をいただいておるわけでございます。しかし、そういう状態でございますけれども、先生お話しのように、アスパルテームによってフェニルケトン尿症の子供さんが、障害が起こるということはないと思いますが、そういうことでは困りますので、さらに一層、小児科学会あるいは小児科学会を通じて
医療機関の方々等々関係者の方々に、なお十分な周知徹底を図ってまいりたいと思っております。
それから調査会でございますが、調査会の運営につきましては、調査会に出しました資料につきましては、この閲覧をしたいという御希望の方につきましてはすべてオープンでお目にかけておるわけでございます。ただ、調査会を公開にするということについては、調査会自身としても十分な忌憚のない意見の交換をぜひしたい、そのためには公開というのはなかなか難しいというのが調査会の御意見でございまして、そんなことで、少なくとも資料については全部オープンにやるということでやっておるわけでございます。
-
○
村山(富)委員 この問題だけで時間をとるわけにいきませんからここらでやめますけれども、ただこれは、最後に大臣の、やはり責任者の回答を得ておきたいと思うのですが、さっき言いましたように、四十七年の六月と四十七年の四月に、衆参両院ともこういう附帯決議をしているわけです。「
食品添加物については、常時その安全性を点検し、極力その使用を制限する方向で措置すること。」、ですから、極力制限するというのが趣旨なんですよ。広げていくことは趣旨じゃないんですよ。制限していくことが趣旨なんですからね。その趣旨はやはり尊重してもらわなければいかぬ。
また、「カビ毒等の有害性物質及び発がん性物質並びに化学物質の慢性毒性、相乗毒性等に関する研究を
強化すること。」、「食品衛生調査会の委員に一般消費者の意見を代表する者を加えるよう配慮すること。」、これは衆議院の決議ですね。それから参議院の方でも、「
食品添加物の安全性については、その時点における最高の科学的水準により常時点検を
強化するとともに、
食品添加物の使用は極力制限する方向で措置することとし、とりわけ諸外国で有害であることが実証された場合には、既に使用を認めたものについても、すみやかに、その使用を禁止する等必要な措置を講ずること。」、こういうふうに明確にきちっと附帯決議は言われているわけですから、私はやはりこの附帯決議はあくまでも尊重して、この趣旨でもって
食品衛生行政はやっていく必要がある、今後にやはりこの附帯決議を生かしてもらう必要があるというふうに思いますが、この問題については大臣の見解を聞いておきたいと思います。
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○
渡部国務大臣 民主主義、議会政治の国でありますから、衆参両院それぞれで御決議をちょうだいいたしましたこと、私ども行政府はできる限り尊重してまいらなければなりません。今御指摘のように、
食品添加物についてもその趣旨をできるだけ尊重するように努めてまいりたいと思います。
-
○
村山(富)委員 その次に、上水道の問題についてちょっとお尋ねをしたいと思うんですけれども、これもやはり人間の命と暮らしには欠かせない、健康には欠かせない大事な問題ですから、この際承っておきたいと思うのですが、五十七年に自治労の大阪府本部がアンケート調査をしているのですが、「毎日飲んでおる水道に汚染の不安がありますか」という質問に対して、一七・九%が「あります」、「生水は飲まないようにしている」というのが四九・八%、水道に対する不安はこの調査だけでもやはり六〇%ぐらい持っているわけですよね。これが現状なんですね。
特に最近は、ビルや高層の建物ができますから、したがって、そのビルなんかの場合には受水槽で水を受けて、それをポンプで上のタンクにくみ上げて配水する、こういう仕組みになっているわけですね。法律の改正で、その受水槽は二十トン以上のものについては検査したりする義務があるわけです。ところが、二十トン以下のものについては今野放しになっているのです。それはそうですね。
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○山村説明員 そのとおりでございます。
-
○
村山(富)委員 じゃ、その二十トン以上の分についても、これは一九八一年の行政管理庁の調査によりますと、法律で義務づけられている水質検査を受けていたのはわずかに六六・八%にとどまっている。あとは受けてないわけですからね。これは行政管理庁の調査の結果の指摘ですから間違いないと思いますけれども、これはやはり一〇〇%水質検査を常にやる必要があるのではないかと思いますけれども、その点はどうですか。
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○山村説明員 法律で当然に義務づけておりますので、一〇〇%にすべきだというふうに考えております。
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○
村山(富)委員 具体的にどういう指導をしてやらせますか。
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○山村説明員 簡易専用水道ということで法律上位置づけておるわけでございますが、これはビル等の設置者みずからの責任で管理するという仕組みにいたしておるわけでございますので、何よりもまずその簡易専用水道の設置者の啓蒙といいますか、理解を深める、高めるということが不可欠と思っております。したがいまして、設置者に対して自分の水道は自分で守る、それで、そのためには年一回の清掃でありますとか指定検査機関による検査を受けるとかいうことが制度上ございますので、その制度の中身を周知徹底を図っていく、また指定検査機関がみずから歩いて指導していくというようなことを考えていくべきであろうということで、都道府県を指導いたしております。
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○
村山(富)委員 いずれにいたしましても、これは法律で義務づけられているわけです。しかも毎日使う水ですから、体内に入る水ですから、やはり一〇〇%水質検査がされて、そして安全なんだ、安心なんだという、責任を持った行政をしっかりしてもらう必要がある。
二十トン以上の法律で義務づけられているものについても、検査されたのはわずかに六六・八%、まして二十トン以下の何も義務づけられておらない野放しになっておる、そういう受水槽というのですか、それはどういうふうになっていると思いますか。
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○山村説明員 二十トン以下のものについての管理状況について、必ずしもその実態を把握はいたしておりませんが、二十トンを超えたものに比べて、よりうまくいっているというふうには思っておりません。やはり問題があるというふうに認識をいたしております。
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○
村山(富)委員 これは新聞なんかにも書いてありますが、大型ビル簡易専用水道は三分の二が不良、ビル簡易水道は七割を超すものが飲用不適、これはもう公の新聞で報道されているわけですから、そういう状況にあるのじゃないかと思うのですよ。ここに写真を撮ったのがありますけれども、清掃する前と清掃する後とはこんなに違う。(
村山(富)委員、写真を示す)それは小学校の受水槽ですよ。それはもう厚生省が実態を把握されておらないように野放しになっているわけですね。今私が指摘したのはほんの一部ですからね。実際にはもっとひどい話も聞いていますよ。しかし、余りそんなことを言ったら不安を与えますから私は言いませんけれども、もっとひどいものになっている。したがって、この二十トン以下の受水槽というものに対してやはり何らかの対策を考える必要があるのではないかと思いますけれども、どうですか。
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○山村説明員 基本的に先生のおっしゃるとおりだと思います。
御案内のとおり、この立法は先生にもお世話いただきまして議員立法で成立をいたしまして五年余りという状況で、先ほど先生おっしゃいました三分の二がやっと検査を受けているんだというような御指摘もございましたが、その検査率も徐々に上がっておりまして、その二年前では四〇%台、五〇%台、六〇%台、七〇%台というふうに着実にその実施率は上がってきておる、つまり法律の趣旨が生かされてそれが軌道に乗りつつあるというふうな状況にあるかと思うわけでございます。したがいまして、二十トンを超えたもの、法適用を受けたものについてまずその万全を期していく、受検率を上げていくということに全力を挙げておるのが現状でございまして、今後、小規模なものにつきましては当然御指摘のとおり管理の適正化を図っていかなければならないというふうに思っておりますので、具体的に検討してまいりたいというように考えております。
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○
村山(富)委員 この法律で見ますと、そういう意味の検査機関というのは地方公共団体の機関がするというふうに言われているわけですね。その地方公共団体の機関というのはどこを言うわけですか。
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○山村説明員 保健所、衛生研究所を想定いたしております。
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○
村山(富)委員 民間が有料でやっているところもありますね。
-
○山村説明員 その公的機関に加えまして、厚生大臣の指定する検査機関というもので補いながら進めていくという体制をとっております。
-
○
村山(富)委員 そこで、この水道の問題については、一般住民というのは、各市町村には水道局がありますね、水道事業をやっている水道事業体。この水道事業をやっている事業体が蛇口から出るまでの責任を持ってくれている、こういうふうに通常思っていると思うのですよ。ここまでは仮に水道局で言えば水道局の責任ですよ、これから先はビルを管理している人の責任です、こういうふうには住民は思っていないと思うのです。ひねれば出るし、水道料金は取られるわけですから、したがって、水道事業をやっている事業体が蛇口から出る水までの安全の責任を持ってくれているというふうに思うのですね。またそれが自然な姿ではないかと思いますから、この種の水質検査、受水槽の検査等については、やはり水道事業体が最後の水まで責任が持てるような何らかのかかわりを持っていく必要があるのではないか。これは住民の素直な意思を受けた場合にはそうなると思うのですが、そういうことは考えられませんか。
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○山村説明員 全く御指摘のようなのが一般消費者の感覚であろうというふうに思います。
ここで法律上二つに分けられておりますのは、ビル等の水道設備が、市町村水道とは受水槽というところで完全に縁が切れておる。市町村側から見ますと、蛇口から出した後のコップの水までは責任は持てないというような、平たく言いますとそんな感じで、法律上、都市の水道と簡易専用水道はそれぞれの設置者が管理をしている、そういう仕組みがとられておるのが現在の制度であるというふうに理解をいたしておりまして、その辺の内容の
充実を鋭意図っておる段階でございます。
水道事業者をどう絡ましていくかについてはいろいろ研究をする必要もあろうかと思いますが、基本的には、衛生行政の方から保健所が、そういうそれぞれのビルの管理者がちゃんとしておるかどうかということを監視もし、指導もしていく建前をとっておりますが、それに加えて、市町村の水道事業者と十分連携をとって、例えば水道事業者は給水した実態をよく知っておりますから、そういう実態を、どこに何があるかということも情報収集をとりながら、保健所が鋭意進めていくというのが現在の制度下におけるやり方であろうというふうに考えておるところでございます。
-
○
村山(富)委員 現状でうまくいっているのなら何も言うことはないんですよ。ところが、今いろいろ指摘されたような現状にありますから、やはり水道に対して、事業体、市町村が最後まで責任が持てるような仕組みに変えていく必要があるのではないか。どういうふうにするかは言いませんけれども、そういう意味では、最後まで責任を持てるような形で、地方の公共事業体なり水道事業者がかかわり合いを持てるようなものにしておくことの方がもっとよくなっていくのではないか、またそうすべきではないかというふうに思いますから、その点は今後ひとつ検討してください。どうですか。
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○山村説明員 ビルの給水設備を見ますと、実態として、市町村が全く関与できない形で設備がつくられ、管理されておりますから、なかなか市町村に本当に責任を持ってやれという仕組みができるのかどうか、非常に難しい部分があると思うのです。五年前にこれが立法化されて、それまで全く野放しであったものを、一つの簡易専用水道と、変な言葉ですが、ビルの水道という形で独立させまして、何らか
改善を図ろうと考えたわけでございますが、その辺は接点として非常に難しい部分があるということで、このような裁きがなされたというふうに解釈をいたしておりますので、今後なお、御指摘のようなものが実態でありますし、いろいろ問題がありますので、よく研究さしていただきたいと思っております。
-
○
村山(富)委員 五年前に法改正をしたときには、二十トン以上ぐらいを対象にすべきではないかというので決めたわけだけれども、しかしこの五年間の経過を振り返ってみますと、実態は必ずしも想定したとおりになっていない、だから是正する必要があるのではないかという意味で言っているわけです。水の問題については水道事業者が一番全体を知っているわけです。だから、一番詳しく知っている者が、その安全についても何らかの関与をし得るような仕組みというものを考えた方がいいのではないかというだけのことですから、ひとつ十分検討していただきたいと思います。
その問題はそのくらいで打ち切りまして、次に移りたいと思うのです。
今まで御質問申し上げましたのは、
医療を受ける側の暮らしの環境なり公衆衛生なり、そういう点がどういうふうに変わってきているか、こういう点が問題があるじゃないかという意味の問題提起をしたわけですけれども、次には、
医療供給サイドの問題点についてこれから少し御質問していきたいと思うのです。
大蔵省見えていますか。——大蔵省にお尋ねしますけれども、ここ三年ぐらいで、
医療機関や医師の脱税件数、それから脱税額、その内容がわかれば御説明いただきたいと思うのです。
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○岡本説明員 お答え申し上げます。
御案内のとおり、医師の課税につきましては、まず個人と法人と分けて御説明させていただきたいと思うわけでございます。
まず個人につきましては、税務統計によりますと、我々のところは業種分類があんま、マッサージ等を含んだところで個人は医師についてやっておりますが、大体
医療・保健業に属する納税者数が五十六年分の所得で約十万件ほどございます。一人当たりの申告所得金額が約一千六百万ということになっているわけでございます。
片や法人の方でございますが、
医療法人につきましては、これも税務統計によりますと約三千社でございまして、これが一社当たりの申告所得金額が六千六百万円ということになっております。
これらに対する税務調査の状況でございますが、当然のことながら、我々といたしまして、必ずしもすべてのお医者さんであるとか
医療機関であるとか、そういったところの申告が世に伝えられておりますように低調だというふうには考えておりません。むしろ、多くのお医者さん方は適正な申告をしていただいているということがほぼ言えるのじゃないかと思っております。
ただ、お医者さん等の最近の調査結果を見ますと、やはりそれなりにかなりの多額の脱漏が出ているのも事実でございます。
例えば個人開業医について申し上げますと、これは五十七年度の分でちょっと申し上げてみたいと思いますが、病院につきましてが五百六十二件調査をいたしまして、一件当たりの申告の漏れ所得が一千三百八十八万円というふうになっております。産婦人科に例をとりますと、七百七十九件調査をいたしまして、一件当たり七百十二万円の漏れということでございます。耳鼻咽喉科につきましてが百二十件調査いたしまして六百四十四万円、それから整形外科医につきましては、三百八十二件調査いたしまして六百四十三万円、それぞれ漏れがございます。外科医につきましては、九百八十七件調査いたしまして五百九十八万円の漏れがある、こういうことでございます。
片や、
医療・保健業を営む法人の方でございますが、これにつきましても、五十七年度におきまして調査を行ったものが九百八十八件ございますが、その中で一件当たりの不正所得といいますのは一千七百十四万ということになっております。
この脱税といいますか申告漏れの内容といいますか、手口でございますけれども、我々そこまで計数的な管理はしておらないわけでございまして、実際の第一線の調査担当者のいわば感触的なことになって大変恐縮でございますが、我々考えておりますのは、やはり自由診療収入、これの漏れが多いのではないかという感じがしております。
申告漏れの態様といたしまして、収支の面から考えますと、やはり収入を除外するということと、それから経費を過大にするということと、それからもう一つはつまみ申告、後ほど申し上げますが、大きく三つぐらいに分けられるわけでございます。
この収入除外といいますのがやはり
医療業の中では一番多いのではなかろうかと思っておりますし、中でとりわけ多いのがやはり自由診療収入の除外じゃなかろうかと思っております。このほかの収入除外の例といたしましては、例えばリベートの収入除外、こういったものも間々あるようでございます。
経費の過大の方に参りますと、医薬品等の架空仕入れ、あるいは仕入れを過大に水増しするとか人件費の水増しであるとか、こういったところがございます。
これらは、いずれにしましても、どういった手段でもって所得をごまかしたかというのがわかるわけでございますが、このほかに、ごくまれにつまみ申告と申しまして、とにかくいいかげんにまとめて幾ら、こういった申告の仕方もございます。
大体、大要以上のようなことでございます。
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○
村山(富)委員 総額にするとどれぐらいになるんですか、五十七年度で。
-
○岡本説明員 大変恐縮でございますが、総額ではちょっと把握しておりません。
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○
村山(富)委員 把握してない。しかし、計算すればそれはわかるんじゃないですか。
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○岡本説明員 業種別にそこまではまとめた統計はとっておりませんので、御勘弁いただきたいと思っております。
-
○
村山(富)委員 それならいい。
それからその次に、不正請求の件数というのはどれぐらいになっていますか。
-
○吉村政府委員 五十七年度における保険
医療機関の監査をいたしましたのが百三十四件でございまして、不正請求をした、こういうことで取り消し処分をしたのが五十件でございます。
-
○
村山(富)委員 その不正請求の中身というのは、どういうのが一番多いんですか。
-
○吉村政府委員 架空請求を、もう死んだ人の
医療費を生きておるかのごとく請求するようなのが架空請求でございますが、そういう架空請求、それから振りかえ請求、これはある薬を使ったにもかかわらず、もっと高い薬を使ったかのごとく請求するのが振りかえ請求でございます。それからつけ増し請求というのは、注射を五本しか本当は打たなかったのに、十本打ったかのごとく請求するのをつけ増し請求と申します。それから重複請求、既にもう請求しておったものをまた請求をする、こういうのが重複請求でございますが、こういうのを不正請求として私どもは考えております。
-
○
村山(富)委員 今のは五十七年度ですね。その次に、五十七年度中に倒産をした件数というのはわかりますか。その倒産をした理由も。
-
○吉崎政府委員
医療機関の倒産でございますけれども、これはちょっと政府としては調べておらないのでございますが、民間の調査機関によりますと、負債額が一千万円以上の倒産件数、五十七年は四十三件でございます。
主な理由といたしましては、機器設備の過剰投資、それから
医療事業以外の投資などによるものが多い、それから放漫経営が多い、このように言われております。
-
○
村山(富)委員 そうすると、今の
医療の仕組みの中で、不正請求とかそんなことはなくて、乱診乱療もせずに、どう言ったらいいかわかりませんけれども、まともな
医療をやっていることによって倒産をしたなんというのはないんですね。
-
○吉崎政府委員 日本じゆうでないかどうか、ちょっと正確にはお答えできませんけれども、まずはないのではないかと思います。
-
○
村山(富)委員 私はなぜそういうお尋ねをしたかと言いますと、やはり保険の目的というのは、いい
医療を
国民に提供するというのが目的ですから、いい
医療を提供してもらうためには、提供する側がやはり安定していなければいかぬ。いかにも悪貨が良貨を駆逐するみたいに、何か悪いことをしなければ、不正請求をしたり、不当な請求をしたり、乱診乱療をやったり何かしなければ病院の経営が成り立たないというようなものであるとするならば、これはやはり是正する必要がある。そういう意味で御質問をしたわけですから、誤解のないようにしてくださいよ。何かいかにもそれだけを悪者にするようなことで聞いたわけじゃないんですからね。
そこで、
医療内容を分析してみますと、やはり依然として薬が多いですね。ちょっとここ三、四年ぐらい、三年なら三年でいいですが、投薬と注射と検査の三つの部門の占める率はどれぐらいになっていますか。——それじゃ、時間だそうだから、これで一応質問を打ち切って、答弁は午後の冒頭にしてください。
-
○有馬
委員長 この際、暫時休憩いたします。
午後一時三十六分休憩
————◇—————
午後三時九分
開議
-
○有馬
委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
質疑を続行いたします。
村山富市君。
-
○吉村政府委員 お尋ねの薬剤比率、それから検査比率についてお答えを申し上げます。
まず、薬剤比率でございますが、五十二年の薬剤比率が三七・七、五十二年が三四・二、五十四年が三六・〇、五十五年が三八・二、五十六年が三八・七、五十七年が三四・一。なお、私ども五十八年にも薬価改正をいたしましたし、また五十九年においても薬価改正をしたわけでございまして、まだ確定数字はわかっておりませんが、その推計をいたしてみますと、五十八年度の見込みでは三二・九ぐらいになる。それから五十九年は二八・二程度になるんではないか、こういうように見込んでおります。
それから検査関係の比率でございますが、検査につきましては、五十九年が九・〇%、五十三年が九・一%、五十四年が一〇・六%、五十五年が一一・〇、五十六年が一一・五、五十七年が一一・八%になっております。
それからレントゲン診断、これも検査の一部門でございますが、五十二年が四・〇%、五十三年が三・三、五十四年が三・五、五十五年が三・九、五十六年が三・七、五十七年が三・五、こういう数字になっております。一〇
村山(富)委員前年に比較してことしは、五十八年度は若干下がるということですね、薬価基準の改定がありましたから。しかし、いずれにしてもまだまだ、外国に比較をして、よく比較をされますけれども、
医療が高い、薬剤が高いということは指摘されているところです。
そこで、私はやはり、薬の問題についてはいろいろ薬に絡まる問題があるわけですよね。例えば藤沢薬品が新薬を開発するのにスパイ事件があったとか、それはやはり、それだけ新薬の開発に魅力があるからそんな事件が起こるんでしょうからね。それからまた、スモンみたいに薬害があったとか、それからさらに、薬価基準を下げれば
医療機関は卸屋なら卸屋に少し無理を言う、そうするとメーカーは、値崩れをしたら困るから値崩れをしないように話し合いをすると、そこに公取が入るというようなこともあるわけですね。そういう非常に複雑な絡みがあって難しいとは思いますけれども、やはり
医療費全体の中で占める薬剤のウエートが高いとするならば、今の高い薬剤の使われ方がまともなのかどうかということについては、もう少しまともに検討してみてもいいんではないかと思いますから、その点はどういうふうに思いますか。
-
○吉村政府委員 確かに先生御指摘のように、我が国における薬剤の使用というものは諸外国に比較いたしまして多い、これはもう定説でございます。
しからば、その薬剤が正当に使われておるのかあるいはそうでないか、ここが問題なんでありますが、私どもは、全体的にそう不合理とこう言うわけではございませんけれども、中には、不適正な使用あるいは不必要な使用というものがあるということも否定できないというように思っております。
けさほど大臣から御説明申し上げましたが、
本人の場合と家族の場合に、薬剤の費用というのが二、三割
本人の場合高い。その二、三割
本人の方が高いというのが、本当に必要があって高いのか、あるいは十割給付なるがゆえに若干過剰な投薬が行われているのか、ここはなかなか難しいところでありますが、私ども不正請求をした医師あるいは過剰診療をしておる医師等について監査をした結果によりますと、やはり
本人の場合と家族の場合、社保の
本人の場合と国保の場合明確に差がある、こういうこともまた私どもとしてわかっておるところであります。したがって、薬剤について不適当な使用方法があるという事実はこれは間違いない、こういうように考えております。ただそれを、この薬剤の使用が不適正か適正かというのを個々について当たって調べてみるというのは、これは非常に困難な作業でございまして、あるということはわかっておりますが、なかなか個々のケースをとらえて明らかにするということは難しいのではないか、こういうように思います。
-
○
村山(富)委員 日本の薬というのは、国際価格に比較しますとやはり高いですね。この資料はどこまで信憑性があるかどうかというのはちょっと私もわかりませんけれども、私が調べて入手した範囲の資料によりますと、国際的な薬の価格と比較をしますと、やはり日本の薬は高いですね。そっちの方に何か比較するものはありますか。全部の薬じゃなくて、非常に頻度の高い幾つかの薬について、外国の薬の価格というものを調べたことがありますか。
-
○吉村政府委員 外国、例えばアメリカあるいは西ドイツの場合には、レッドブックだとかローテリストとかそういうものに載っておる価格、これは日本における薬価基準とは少し性質が違います。違いますが、そのローテリストとかレッドブックと日本の薬価基準とを比べますと、大体日本の方が少し高い。もちろん日本の場合が安いものもございます。もし御要求があれば、私どももその数字を出すのはやぶさかでございません。
-
○
村山(富)委員 公正取引委員会が調査したのは五十五年段階ですから、その調査によりますと、日本の薬で外国に輸出されておる量というのは、全製造量の中で二・八%ぐらいですね。少ないわけですね。その外国に輸出をされておる薬で、日本で売られている薬の価格と、同じ薬ですよ、輸出をする価格と国内で販売する価格とは大分差がある。日本が高い、国内の方が高い、こういう話もよく聞くんですが、その点はどうでしょうか。
-
○吉村政府委員 その薬によるわけでございますが、大体開発をしたその国における価格は低うございます。例えば日本の場合でも、日本で、これは名前を挙げるのがいいのかどうかわかりませんが、明治製菓で開発をいたしました抗生物質、これは日本の価格の方が低くて、アメリカで売っている価格の方が高い。これは日本で開発をした製品であったからそういうことになったわけでありますが、例えば西ドイツで開発をしてそれを日本に輸入した場合には、西ドイツの方が安くて日本の場合が高い、こういうのが大体一般的な原則だと私どもは考えております。
-
○
村山(富)委員 この資料を見ますと、国際薬価比較を見ると、フルシトシン錠というのですか五百ミリグラムの一錠、日本の場合には四百十五円七十銭、それからアメリカの場合は八十七円、西ドイツの場合が二百六十七円。それからメルファランというのが二ミリグラムで一錠、これはアルケランという薬ですね、日本の場合が二百六十四円、アメリカの場合が三十二円五十銭、イギリスの場合が五十一円六十銭、西ドイツの場合が百二円七十銭。さっき言いましたようにこれはどこの資料ですかね、やはり外国の雑誌か何かからとった資料だと思いますが、いずれにしても何種類か挙げてありますけれどもみんな高いのです。特別高いのだけを言うたわけじゃないのですよ。全部言えば一番いいのですが、高いのです。
それから、高い薬価の実態という意味で、製造原価の内訳をある薬について分析してありますけれども、それを見ますと製造原価が十五円八十五銭です。薬価基準は二百二十円五十銭ですね。これだけ見ますと相当薬価基準との間に乖離がある。これまで議論されてきましたのは、実勢価格を調査してその実勢価格と薬価基準との差がお医者さんのもうけになる。これは余りにも大き過ぎるのじゃないか。だから、実勢価格を毎年調査して、そして実勢価格に薬価基準をして近づけるという意味で引き下げなさい、こういうお話があるわけです。だけれども、先ほど言いましたように、薬価基準を下げてまいりますと
医療機関が卸屋に無理を言う。そうすると今度は卸屋は製造メーカーに泣きつく。製造メーカーの方は、そんなことならおまえのところはとらぬでいいとか言って、やはり強いですから、したがって、値崩れを防ぐためにいろいろな問題が起こる、こういうことになっていますから。しかし、少なくとも保険で使う医薬品というのは公金を払うわけですから、単に実勢価格だけでではなくて、全部とは言いませんけれども、頻度の高い薬については生産コストまで一遍足を踏み込んで、そして妥当なのかどうかということぐらいはやってみる必要があるのではないかというふうに思うのですが、どうでしょうか。
-
○吉村政府委員 個々の医薬品のコストというのは、単に製造原価だけではなしに、その薬を生み出すに至ります過程の
研究開発費だとか、あるいは副作用情報を収集するための情報収集の費用と申しますか、あるいは副作用に関する伝達をする経費だとか、そういういろいろな要素を含んだものが個々の医薬品のコストになるのであろう、こういうように思うわけでございます。
そこで、それらをどのように評価をしていくか、特に製薬メーカーの場合に、ある会社がたった一つの薬をつくっておるわけではございませんで、百種類も二百種類もつくっておる会社がたくさんあるわけでございますが、その二百なら二百の医薬品に今申しましたような費用をどういうような割り振りをするか、これが一つ問題でございまして、確かにその会社の製造原価全体は、これは有価証券報告等を見れば出てくる経費でございますが、それを個々の医薬品の製造原価としてどう評価していくか、これが難しいので、ほとんど困難、不可能、こう言ってよろしいのではないか、こういうように思います。
例えば化学的な製品でなしに、脳下垂体からとるとか、あるいは動物の何かからとってつくる、こういったような場合は比較的原価の計算もやりやすいわけでありますが、化学的な製法によってつくられる医薬品についてはなかなか原価をはじき出すということは難しい、こういうことでございます。
-
○
村山(富)委員 すべての薬について、相当種類があるわけですから全部というのは無理かもしれませんけれども、しかし、比較的使われる頻度の高いそういう特殊な薬について、一遍ぐらい洗ってみて、今の薬価基準が妥当性を持っておるのかどうかというようなことぐらいはやってみる必要があるんじゃないですかね。それは、
医療費の中で薬の占める率が高くなければいいですよ。現にやはり三〇%以上も持つようなウエートを占めておるわけですから、そして、このまま
医療費が膨らんでいったら保険財政が崩れる、こう言っておるのですから、そのために患者に負担をかけようとしているのだから、それぐらいのことをするのはある意味では当たり前じゃないかと私は思うのです。いいですか、幾つか五種類ぐらいでいいですけれども、比較的日本に入ってくる薬と日本で使っている薬の価格の比較を一遍調べてください。それは調べられるでしょう。それから何種類かの薬、三種類でも四種類でもいいです、国内で販売している価格と輸出している価格とどういう関係になっておるかというのを調べて出してください。
-
○吉村政府委員 市場レベルの価格を出せ、こうおっしゃるなら、これは十分出せます。しかし、製造原価まで調べて出せ、こういうことになりますと、今申し上げましたような理由で、その医薬品の製造原価というものが幾らかということを算定するのは非常に難しいことでございまして、製造原価の比較の資料は出すことは非常に難しいと思います。市場価格について比較するのなら、これはお出しいたします。
-
○
村山(富)委員 それは外国のメーカーの生産コストまで調べるわけにはいかぬですから、だから生産コストはいいです。ただ、外国の例を見ますと、これは最近の資料だと思うのですけれども、例えばスウェーデンなんかは薬品は供給公社で適正価格で購入している。それからフランスの場合には厳格な原価管理をする。それからアメリカなんかは独禁法やら物価安定法なんかで適正価格に落ちつくように誘導しておる。それからイギリスなんかは利潤の総額を八%なら八%で抑えておる。やはりよその国もいろいろな意味で薬の価格を決めるのに生産コストまで足を踏み込んでやっておるわけでしょう。これは何の関係もなくて一般の取引でやられている分ならそうは言いませんよ。だけれども、法律で義務づけて保険料を取るのですから、その保険料で払うのですから、しかも
医療費がこれだけ膨らんで将来が心配になるというような問題を抱えておるときだけに、やはり薬価基準なんかについても単に実勢価格と薬価基準だけの対比でなくて、すべてと言いませんけれども、何種類かの頻度の高い薬については生産コストまで足を踏み込んで、そうして妥当な価格でもって薬の取引ができるような状況をつくっていく、それがやはり
医療費を適正化していく大きな要素になるというふうに私は思いますから、それはぜひやってもらいたいと思うのです。どうですか。
-
○吉村政府委員 確かに先生御指摘のように、薬価の算定の方式は各国で違います。ただ、私どもとして、市場価格主義に立って市場価格を調べて、それを薬価基準に反映させるというのが日本の場合には一番適しておるのではないか。つまり、例えば製薬企業の数が非常に少ない、例えばスウェーデン等につきましては製薬企業の数が非常に少ないわけでございますが、そういう場合にはあるいは原価というようなところまで立ち入ってすることもできるでしょうし、あるいは配給公団供給公団みたいなものをつくってやるということも一つのその国の国情に合った方式ではないかと思いますが、私は、やはり日本の場合は医薬品については自由競争が非常に激しい、そして、中には談合したとか価格を協定したとかというおかしいこともございますけれども、大体一般において自由競争が行われている市場だと思うのでありますが、そういう国の場合には、やはり現実に市場で取引をされている価格というものを基礎にするのが一番いい方法ではないか。ただその場合に、今先生がおっしゃっておられるように、製造原価みたいなものもとってみる、あるいは販売の実情みたいなものも調査をしながらその価格の補正をしていけ、そういうことなら、私どももある程度具体的な価格を決定するときにそういう手法を用いるということはできると思いますが、今の市場価格主義にのっとった薬価形成というものを全く変えて原価主義にするとか、あるいは全国的な薬の配給公団をつくるとか、そういうことはなかなか難しいのではないか、こういうように思います。
-
○
村山(富)委員 いや、今
局長の答弁を聞いておると、できない、できないという要因だけ説明しておるのですね。これは日本とアメリカとイギリスとフランスとでどう違いますか。それは確かにいろいろ違う要件があるかもしれませんよ。あるかもしれませんけれども、やろうと思えばできないことはないと私は思うのですよ。ただ原価主義をとって薬価基準を決めなさいと言うのではないのですよ。単に、薬価基準を決める際に実勢価格だけを調査して、それに基づいて薬価基準を決めるのはやっぱり問題があるのではないか、だから生産コストにも足を踏み入れて、一遍調べた上で、どの程度の薬価基準が妥当なのかという決め方をしてもいいじゃないですか。それはすべてのメーカーに対して、すべての薬品に対してやれというのではないですよ。それは、薬は銘柄別に登載するだけに、大手のメーカーがつくった銘柄品とそうでない薬とは価格が違うのですから、だから頻度の非常に高い主要な薬だけぐらいはその程度までの調査をして、そしてお互いが納得できるような薬価基準に決めていくというのも一つの手法じゃないですか。やらなければならぬことじゃないですか。それがなければ一割なり二割なりの負担なんというものはできませんよ。本当に
国民が疑念を持っているところにメスを入れて、そしてこうなんです、だからこうしてくださいというのなら、それは説得力がありますよ。だけれども、そこは手は入れられません、こうしてくださいというのでは、ちょっと納得できないのじゃないですかね。どうですか。
-
○吉村政府委員 おっしゃる意味がわからないわけではございませんが、原価主義といいましても、個々の薬品の価格について一番難しいのは、先ほど申しましたコストを算定する難しさが一つと、利潤をどうプラスするか、この薬の適正利潤というのは幾らか、その配分が非常に難しいわけであります。それを仮に一〇%を適正利潤率と考えてその薬の価格を考えるか、あるいは五%として考えるか、あるいは三%として考えるか、そこの決め方がなかなか難しいのではないか。ですから、ある程度の製造コストを調べ、それに例えば製造業平均の利潤率というものを加えた価格で、市場価格で調べた価格と比較してみるとか、そういう仮定を置いた比較はできないわけではないと思いますが、その比較をやってみて、本当にそれによってある薬の価格を決めるということについては非常に難しいのではないかと思うので、否定的に言っておるわけでございます。
-
○
村山(富)委員 それを基礎にして薬価基準を決めなさいと言うのじゃないのですよ。ただ、薬価基準を決める資料にはやっぱりすべきではないですか、そうでなければわからぬじゃないですか、そういう意味で言っておるわけですからね。——答弁はちょっと待ってください。もういいです。この問題も、例えば国際価格と国内価格の比較とか、それから輸出価格と国内で販売される市場価格との比較とか、そういう資料もいただかないと薬全体がどうなっておるのかということはなかなかわかりませんから、ですから、この問題については私はその資料が出るまで保留しますからね。
ただ、薬というのは、もっと厳しく言えばできるだけ使わない方がいい、こう言っていますね。それはもう最少にすべきなんですよ。その最少に扱うべき薬が最大に売り出されておる。しかも、そうでなければ病院の経営が成り立たぬといったような言い方もありますけれどもね。そういう状況に置かれているところに、私はやっぱり薬の本質的な問題があると思うのです。そこらはもう少しやっぱり解明する必要があるのではないかと思いますがね。
同時に、公取と一緒に調査をした資料の中で、厚生省自体が、薬価基準制度についてさらに検討する、こう言っていますね。その検討するというのは、どういう意味で検討するというふうに言われているのか。今は銘柄別ですからね。銘柄別は、やっぱりメーカーが相当研究費を使って、莫大な経費を使って新薬を開発していく、そして登載するわけですから、したがって五年間くらいは独占的にやることになっていますし、価格がそれを模造した品物と先発と違うのはある意味でやむを得ぬ、こう思いますけれども、しかし銘柄別に登載されておる今の薬価基準の扱い方というのは、さっき振りかえ請求があるとかいうようなことをいろいろ聞いていますけれども、やっぱりそういうことが起こり得る背景になっているわけですよ。そういう点はもう少し今の現状に照らして何とか
改善をする必要があるのではないかというような気がしますけれども、ここで言われておる「この薬価基準制度についてもその
改善を検討する」という意味はどういう意味なのか、御説明を願いたいと思うのです。
-
○吉村政府委員 薬価基準の算定方法についてはいろいろな御意見がございます。少なくとも、現在の薬剤費が高い、その薬剤費のウエートというものを低くしていく、あるいは薬剤の過剰使用のインセンティブみたいなものを少なくする方法、それを検討すべきだということは、これはもう本当に我々も考えておるわけでございまして、薬価基準を引き下げていく、これが一つだと思います。薬価基準の引き下げのためには、バルクラインを引き下げるというのも一つの方法でございます。それから、今先生が御指摘のようないろいろな方法をやってみて、現在の市場価格主義を修正し得る余地があるかどうか、こういうこともやはり検討してみる一つの方法であろうと思っておりますが、私どもは、今、五十七年の九月に一応中医協から御答申をいただいて、競争の激しいものについては八一%のバルクライン、それから普通のものについては九〇%バルクラインでやるという基本の答申をもらっておるわけですが、それに基づいて二回ほど薬価基準の改正をやったわけです。したがって、今直ちにその方式を変えて別の方式をとるというのは、少し改正をしてから日が浅いものですから、しばらくはこれを踏襲をしていくと同時に、薬価基準の算定方式について検討をしたいと思っております。
その一つの方向としては、銘柄別収載方式というものを修正する余地があるかどうか。今回も少しはいたしました。銘柄間の格差が非常に高いものについてはそれを圧縮するという方法をとりました。それからまた、バルクラインにつきましても八一%でいいのかどうか、もう少し競争が激しいようなものについては下げてもいいんではないかとか、いろいろ部内で検討をしておるわけでございますが、そういうことで、薬価基準について今のままがいいとは思っておらないわけでありまして、研究を重ね、検討を重ね、そして改正をしていく、こういう方向で物事を考えておるわけでございます。
-
○
村山(富)委員 いずれにいたしましても、銘柄別に登載する手法と、それから八一、九〇というバルクラインの設定が妥当かどうかということは、もう少し実態に照らして、薬価基準の決め方については再検討を加えていく必要があるのではないかと思いますから、そのことだけ申し上げておきます。
それから次に、この
医療費の中で占めておるのは注射とか検査とかあるわけですが、検査の問題だけについて若干お伺いしたいと思うのですけれども、最近
医療機器の開発がどんどん進んで、そのためにまた人間の健康と命を守る上では大きな役割を果たしている部面もあるわけです。しかし、本会議でも申し上げましたように、余りにも高額な
医療機器がどこへでもここへでも配置をされて、そして稼働率はなかなか少ない。そうすると、やはり投資した金は回収せにゃいけませんから、必要以上に検査をする。あるお医者さんの話によりますと、薬も含めて今の検査はもう三分の一以上はむだです、こう言っている人もありますよ。しかし、その人はこう言うんですよ。三分の一以上はむだだと思うけれども、しかしその三分の一以上をしなければ病院の経営が成り立たないんです、こう言うんですね。そういう仕組みになっている背景も全然否定できない面もあると思います。ただ、しかし、こういう高額な
医療器械がそういうふうな形で無計画に購入をされて配備をされていくことについては、やはり弊害を生み出していくのではないかと思いますね。
それで、この資料を見ますと、CTスキャナーというんですか、これは日本、アメリカ、イギリス、フランス、西ドイツ、イタリア、オランダ、スイス、ベルギー、もうずっと表がありますけれども、一九八一年十二月の調査によると、日本の備えつけ稼働台数は千六百八十六台、人口十万人当たりでいきますと一・四四です。アメリカが二千で〇・九二ですね。イギリスが九六で〇・一七ですね。これはだんだん下がっていますけれども、日本がもう圧倒的に多いわけですね。やはりそれだけ必要以上のものが購入をされて稼働しているのではないか。必要以上のものが稼働しているということは、必要以上の検査が行われているのではないか。短絡に結びつかない面もあると思いますけれども、そういうことも言えるのではないか。共同利用をするとか、こういう高額な
医療機器についてはもっと計画的にこの配備を考えるとか、こういうようなことをやはり今後は考えていく必要があるのではないかと私は思いますが、その点だけちょっと御説明ください。
-
○吉崎政府委員 後段にお話しになりましたことにつきまして全く同感でございます。ただ、前段で、確かに非常なスピードでふえたのでございますが、一面、この
医療制度の一つの眼目は進歩した医学をできるだけ早く
国民に行き渡らせる、こういうことがございますので、そういう意味ではこれは非常によかったことではなかろうかと思うのでございますが、後段で御指摘になりましたように、確かに無理な投資がございましたり、お話しにもございましたけれども、投資をいたしましたので、あるいは必ずしも必要ではない検査も行われるということもあり得ようかと思います。そこで地域、地域の
医療需要に合ったような地域
医療計画を作成いたしまして、器械の共同利用を図るとか、あるいはベッドなどにもそのようなことを考える、地域
医療のシステム化を進めていく必要があろうと考えております。この点はお話しに全く同感でございまして、そのために
医療法の一部改正案を今国会に提出しておるところでございます。
-
○
村山(富)委員 ちょっとこれは時間がないから余りなにされぬのですけれども、もし地域
医療計画なんというものが前提にあるのなら、それを出しなさいよ。そうでなければ審議できませんよ。それはやはり
医療費の中の重要な要素になっているわけですから、そういうものが一体これからどうなっていくのかということがわからずに審議するわけにいきませんよ。ですから、もしなんだったら、その地域計画を出してください。
-
○吉崎政府委員 今いろいろな準備を進めておるところでございますけれども、各都道府県にも依頼をいたしましていろいろな調査を進めておりますが、お話しにありましたようなことを進めるに当たりましては、地域
医療計画をつくりまして、そうしてそのシステム化を進めていくということが必要であろうかと思います。そこで、都道府県知事にそれをつくってもらうという趣旨の
医療法の一部改正案を提出しておるところでございます。
-
○
村山(富)委員 完全なものでなくていいですから、考え方の基本ぐらいは出しなさいよ。そうしないと、これはやはり
医療費の中の重要なウエートを占めているわけですから、それがどうなっていくのかということがわからなければこの法案の審議はできませんよ。これもまた保留しておきますから、出してください。
それからもう一つは、ことしNHKの朝のテレビ「おはよう広場」で、「いま
医療を考える」こういうテーマで何か放映があったらしいのですが、そのときに検査問題というのが大分話題になりました。
今民間の検査所ができていますね。その検査所に検体を検査をしてもらうわけです。どういう点が指摘をされるかと申しますと、薬価基準の改定によって
医療機関差益が著しく減少したこと、検体検査の差益が六〇−七〇%もあり、中にはそれをさらに超えることが少なくないこと、
医療機関は不当に低い技術料をこれらの差益によって経営を辛うじて維持していること、安い検査料で果たして信頼できる検査が行われているだろうか、こういった問題が議論されているわけですね。言うならばテレビを見た方は大変不安に思った向きもあるのではないかと思うのですが、今民間検査所の実態というものはどういうふうになっていますか。
-
○吉崎政府委員 衛生検査所につきまして最も肝心なことは、検査の精度がしっかりしていることだろうと存じます。そこで、昭和五十五年の十二月に臨床検査技師、衛生検査技師等に関する法律の一部改正によりましていろいろな手当てを講じておるのでございますけれども、その一つに登録を義務づけたわけでございます。それで、五十九年二月一日現在七百八十五カ所となっております。
-
○
村山(富)委員 検査所の規模も大同小異あるのでしょうね。どうなんですか、大きいところはどれぐらいの大きさ、小さいところはどれぐらいの小ささか。
-
○吉崎政府委員 大同小異あろうと存じますが、今ちょっと手元に資料を持ち合わせておりません。
-
○
村山(富)委員 一つだけ言っておきますけれども、これは
医療機関が検査所に検体の検査を依頼するわけですね。そうしますと、
医療機関がやる検査は、点数でもって請求して診療報酬をもらうわけですね。その診療報酬の点数と、検査所が依頼されて検査をする、これは手数料というのですか検査料というのですか、これとの関係というのはどういうふうになっているとつかんでいますか。
-
○吉村政府委員 診療報酬点数表の検査の点数というのは、その病院内でやる検査を前提として点数を設定しております。また、その検査を行って、その検査の結果について、その読み賃と申しますか判断賃と申しますか、判断料、読み料というようなものもその検査の点数表の中に入っております。したがって、院内であればそういう形になるわけでございますが、今先生がおっしゃったのは、そういう検査を外部に委託して検査所でやってもらう、こういう場合に、その検査の点数は、その
医療機関から請求をいたしまして、
医療機関にその検査の点数が払われる、そして
医療機関と検査所との間は相対で払う、こういうことになっておるわけでございまして、したがって、診療報酬点数と具体的に検査所に払う値段の産みたいなものがございます。明らかにあるわけでありますが、私ども、例えば尿の検査につきましては、委託検査料金は診療報酬点数を一〇〇といたしましたときに支払う値段が五六・八%、あるいは血液学的検査におきましては五一・七%、しかしホルモン検査のようなのは一一六・三%ということで、点数をオーバーしているというのもございますが、一般的に保険点数以下の値段を払っておる、したがって薬価差と同じような差額というものがそこに生じておることは明らかでございます。
-
○
村山(富)委員 そのNHKのテレビのときに、例えば一名の検査技師に対して十名ぐらいの補助職員がおるというようなところもありますし、同一検体による二カ所の検査センターの成績がかなり違っておるというようなこともあったり、何かそんなことが言われたらしいのです。私は見ておりませんからわかりませんがね。これは検体の検査をした結果を判断してやるわけですから、検査そのものが疎漏になったり間違いがあったりすれば重大な影響を及ぼすわけですからね。検査所の仕事がもう少し正常な形でできるような条件というものは確保される必要があるというふうに思いますから、そういう点も少し目を配って指導するようなことも考えた方がいいのじゃないかと思いますが、どうなんですか。
-
○吉崎政府委員 まず、先ほどのお尋ねの件でございますが、資料が参りましたのでちょっと申し上げます。
ちょっと古いのでありますが、昭和五十六年十月一日現在で、六百六十七カ所の登録検査所のデータでございます。検査室の面積について申し上げますと、二十から五十平方メートルのものが二三・五%、百平方メートル未満のものが三五・一%、二百平方メートル未満が二一・三%、三百平方メートル未満が八・九%、五百平方メートル未満が五・二%、千平方メートル未満が四・五%、千平方メートル以上……(
村山(富)委員「もういいです。後で資料を出してください」と呼ぶ)そうですか。
そこで、お尋ねになりました件でございますけれども、先ほども申し上げましたが、衛生検査所につきましては精度の管理というのが非常に大事であることはおっしゃるとおりであろうと存じます。そこで、先ほども申し上げましたけれども、昭和五十五年十二月の法改正によりまして、精度、管理というものを検査所でもしっかり実施しなければならぬ、こういうことにしておるところでございます。私どもも、都道府県をよく指導をいたしまして、その精度、管理には間違いのないようにやってまいりたいと考えております。
-
○
村山(富)委員 それはひとつ、不安のないようにきちっとする必要があると思いますから、お願いします。
次に、先ほどちょっと言いましたけれども、必要でない検査をしなければ採算がとれないとか、あるいは薬をたくさん与えてその差益を稼がなければ病院の経営が苦しいとかいう意見がありますね。ですから、薬価基準を下げるという議論をする際に必ず下げた分は技術料に回してくれ、振りかえてくれ、こういう意見があるわけでしょう。従来もありましたね。
私は、物と技術というものを分離すると仮定すれば、やはり技術料というものはどういう評価をすればいいのか。一体言われる技術料とは何なのかということについては、どういうふうにお考えですか。
-
○吉村政府委員 技術料の評価をすべきである、これはもう昔から繰り返された議論でございます。技術料をどの程度に決めるか、これは非常に難しい問題で、結局は技術料というのは医師の所得なんではないか、所得で考えるよりほかにないんではないか。したがって、医師の所得が高い場合には結果的に技術料を評価しておることになる。それから、所得が非常に低い場合には技術料を評価してない結果そうなるのではないか。少なくとも、
医療報酬に関する限りは、
医療報酬に関する所得というもので見るよりほかにないんではないか。そうすると、医師の所得はそれでは一体どの程度であるべきか。これもまた非常に難しい議論でございまして、恐らく理論的には永遠に解決しない問題ではないか。したがって、逆に言いますと、医師が結果的に得た所得というものが高いか低いかというようなことでもって判断をしていかなければならぬ問題ではないか、こういうように考えておるわけであります。
そこで、私どもは、現在のお医者さんの所得というものを
医療経済実態調査で調査をしております。その結果によりますと、五十六年の数字でございますが、個人病院の院長の所得は年間三千八百三十六万円でございます。それから、医科の開業医の平均は二千百九十八万円、特に無床診療所の場合には千八百八十八万円、それから歯科の開業医の場合は千九百二万円、こういうことに相なっております。比較できるのかどうかわかりませんが、ちなみに常用労働者の賃金は年間三百三十五万円でございます。それから、大会社の社長の報酬を賃金管理研究所の調査で見ますと二千九百十七万円というようなことでございますので、常用労働者とストレートに比較するのは少し問題があろうかと私は思いますが、大会社の社長の所得というようなものと比較してもそれほど遜色はない、こういうことでございますので、技術料というものは結果的に所得にあらわれるんだということが正しいとすれば、現在はかなり技術料を見ておる、こういうことになると思っております。
ただ、現在技術料が低いではないかという議論の底には、これは現在の我が国の診療報酬点数は、個々の例えば盲腸なら盲腸の点数を何点と決めております。したがって、その盲腸の点数とアメリカの盲腸の
医療費とを比べると、圧倒的にアメリカの方が高いわけでございます。しかし、
医療費というのは価格に量を掛ける結果出るわけでございますので、個々の価格は低くても量はかなり多い、その結果、恐らく医師の所得というものも高くなっておるのではないか、こういうように考えておるわけでございます。
-
○
村山(富)委員 医師の総収入で技術料が評価されるわけですね。そうすると、医師個人の場合でなくて、病院の経営の場合、やはり医師の技術料というものが主体になって、その医師の技術料以外のものなんかの収益といいますかそういうものが
医療機関全体の報酬になる、こういうことになると思うのですね。
そうすると、私がなぜこんなことを取り上げたかといいますと、さっきもちょっと言いましたように、検査づけ、薬づけといったような風評がある。実態はともかくとしてある。これはお医者さん自身がそう言っていますからね。まともにしていたらやはり経営は苦しいんです、だから、やむを得ず必要悪として、必要以上に薬を使ったり検査したりするんじゃないでしょうか、というような意見が強いのですよ。私どもに来る文書にだってそういうのがたくさんありますよ。ですから、もう少しまともな経営をして、まともな
医療行為をして病院経営が安定的に保障されるというような仕組みというものをもっと真剣に考えておく必要があるのではないか。
さっきも言いましたように、それは薬なんか使わない方がいいわけですから、使わない方がいい薬をやはり最小限にお医者さんに使ってもらう、そしてしかも病院経営は成り立っていく。
だから、そういうふうな今の
医療経営の現状ということから考えた場合、例えばここに、これはおたくの出した資料だけれども、一般病院の移動年計による医業収支率というのがありますね。これを見ますと、もう五十六年ごろから慢性的に一般病院の経営というのは赤字になっているわけですね。その赤字にはやはりいろんな要因があると思いますよ。あると思いますけれども、今の診療報酬自体の点数の決め方、一つ一つの
医療行為に対する決め方にやはり問題があるんじゃないか。
ある病院なんかにしますと、基準看護病院で一人入院しますともうそれだけで赤字になります、と言っているところもあるわけです。そういう無理を承知の上で、無理がどうか知りませんよ、言われることをそのまま受けとめるならば、承知の上でやらせるとすれば、やはりどこかで赤字を埋めなければいかぬわけですから、したがって、埋めやすいところに手が伸びていくということになって、だんだん悪貨が良貨を駆逐する、これが
医療荒廃の最大の原因になっている、こういうふうにも言われるわけです。
したがって、私は冒頭にも申しましたように、保険制度というのはできるだけいい
医療を
国民に保障する、保障できるような供給者の体制でなければならぬ、そのためには安定した経営がやはりある程度保障される、こういうことでなければならぬ。そういう意味からしますと、今の診療報酬の決め方自体にもそういう意味では問題点があるとお思いになっていますか。
-
○吉村政府委員 私はお説のとおりな面が十分あると思っております。したがって、診療報酬の改定というのは、今おっしゃられたような方向というものを、それを一つの方向として改正をしていかなければならぬ。それは、ただそれだけじゃございませんが、いろいろな改正の目標はあるのでありますが、少なくとも不必要な薬や検査をしてそれによって病院経営をカバーしていかなければならぬ、そういうような事態はやはり解消をしていくのが一つの方向だ、私どももそういう方向で今検討をしております。
-
○
村山(富)委員 不正請求というのは、単なるむだというような話じゃないのですよ。公金ですからね、これは犯罪行為ですよ、ある意味からいいますと。やはりそれぐらい厳しく悪いものは悪いとやっていただく。そのかわりに、大事なことですから、大事なことがまともにできるような基礎をつくってあげるということも大事なことですから、そういう意味で診療報酬の検討もしてみる必要があるんではないかと私は思うのですが、それに関連をして、大学の附属病院の問題についてちょっとお尋ねしたいと思うのですが、おられますか。
大学附属病院の機能というのは、教育、研究、それに
医療行為という三つがあると思うのですね。どういうふうな運営になっておるか知りませんけれども、
医療行為によって附属病院のすべての経費がある程度賄われる。こうなってまいりますとやはり必然的に
医療行為に無理がいく。同時に研究の素材に使われる。例えば薬を与えますね。その薬がどういう効果をあらわしてくるかということのために、薬を使って検査する。その患者に必要なことではないわけですから、ある意味では研究の素材に使われる。そういう話もありますしね。そういうものまで診療報酬の中で請求されますと、それはやっぱり普通の一般の病院とは大分違うんではないかということも言えるわけですね。そういう点は今仕組みはどういうふうになっていますか。
-
○
佐藤説明員 先生御指摘のように、大学の附属病院というのはいろいろな機能を同時に果たしている。とりわけ最近は地域の
医療の中核的なものになっておりますし、また重症あるいは難病等の難しい患者さんを受け取っている、こういうことで、先生御指摘のようにその機能別に分けるということはなかなか難しいことなんですね。
それと、例えば国立大学で申しますと、歳入と歳出を見てまいりますと、実際収入で得ているお金というのは、例えば五十七年度で七八%なんですね。あと二二%がないわけでございます。これは一般会計からの繰り入れということで、その他のお金をもってやっているわけでございますね。したがいまして、ほかの私立大学の方は、病院等の収入が実際カバーするのが九六%というような数字が私どものもらっている数字ではあるのでございますが、やはりこういった、司法で言うと最高裁判所のような形で頼られる最終的な診療機関というところでございますものですから、かなり高度のことをやる。そういうことからお金がかかる。また、そういった意味から三区分をするということはなかなか困難でございますけれども、先生の御指摘の趣旨も十分に生かしながら今後とも指導してまいりたい、こういうように考えております。
-
○
村山(富)委員 それはそういう指導をしてもらう必要はありますけれども、ただ、普通の病院と違うわけですからね。ですから、例えば一件当たりの点数表なんかを見ましても、やっぱり大学病院は高いんですよ。高いのは、やはり普通の
医療機関と違った検査をしたりする。その検査がその患者にとって必要な検査だと言われればもうそれまでの話ですよ。それまでの話ですけれども、そうでなくて、やはり薬の効果を試すとか、それがどうあらわれるか検査するとか、そういうようなことにまで検査の枠が広がっているのではないか。なぜならば研究という機能を持っていますからね。そういうものまですべて診療報酬で賄って見ていくという無理があるのではないか。だから、やはりもっと教育、研究という経費についてはまともな意味で別々に見る必要があるのではないかということを言いたいわけですね。どうですか。
-
○
佐藤説明員 お答えいたします。
まさに先生御指摘のとおりだというふうに私ども考えておるわけでございますけれども、やはり国立大学等の置かれた状況からそれぞれ研究費等も注ぎ込んできておるわけでございますし、私立大学に対しても、相当多額の私学の助成金というものを出しながらそちらの方の教育費の方の面倒も見てきているわけでございますけれども、やはり今後とも教育研究経費というものについては文部省の方で可能な限り配慮していきたい、こういうように考えております。
-
○
村山(富)委員 きょうは資料をちょっと持っていないものですから、それ以上突っ込んだ議論はできませんけれども、やはりそういう点を診療報酬のあり方としても検討を加えていい問題ではないかというように思いますから、その点もひとつ意見として申し上げておきます。どうぞ、もういいです。
それから、時間が余りないものですから、僻地
医療の問題について一点だけお尋ねしますけれども、僻地
医療については、今まで中核僻地
医療とか、中核病院とか、あるいは無医地区の巡回診察とか、僻地診療所の医師派遣とか、いろいろな意味で計画的に進めてきておって、若干の成果も上がっているのじゃないかと思いますけれども、しかし聞いてみますと、まだまだ無医地区というのは大変な数があるわけですね。これは、保険税は
医療機関もお医者さんもなくったって取られているわけですから、言うならば強制的に切符は買わされて乗る汽車がないというような状況になっているわけですから、無医地区がうんと存在しているということはやはり行政としては責任を感ぜにゃいかぬと思うのですよ。そういう意味で、僻地
医療対策というものは従来の経験を踏まえてどういうふうにやろうと思っていますか。予算を見ますと、これは前年度よりも予算は減っているんですよ。どうですか。
-
○吉崎政府委員 お話しにもございましたけれども、趣旨には全く同意でございます。
従来から無医地区をなくする、僻地
医療の
充実のために私どもとしては力を入れてきておりまして、現在は昭和五十五年度から発足した第五次計画の進行中でございます。いろいろなお話しにもございましたような多角的な対策を講じまして、無医地区の解消、僻地
医療の
充実を図ってまいりたい。自治医大の卒業生もだんだんふえてまいりまして次第に効果をあらわしてきておるように存じますが、これからはさらに地域の
医療需要に沿った
医療供給体制の整備を進めますために、先ほども申し上げましたけれども、地域
医療計画の策定を目的といたしますところの
医療法の改正案を提出しているところでありますが、適正なる医師の配置にさらに努めてまいりたいと考えておるところでございます。
-
○
村山(富)委員 これは大臣、やはり
医療行政を預かっているところとしてもっと責任を感ずる必要があると私は思うのです。保険料を取っていなければいいですよ。保険料は取っているわけですからね。だから、この僻地
医療対策に取り組む大臣の決意をひとつ言ってください。
-
○
渡部国務大臣 これは先生おっしゃるとおりでございまして、僻地
医療、離島、山村、豪雪地帯、いろいろありますけれども、この国のどういう地域に生まれた方も、やはり我が国の保健
医療制度の恩恵を受けるというのは当然のことでございますから、私も非常な関心を持っていろいろ当局に指示をいたしまして、今政府委員から答弁のありました
医療法の改正による地域
医療計画もその一端でございますけれども、これから少なくとも文明国日本、近代国日本、文化国日本でございますから、無医地区というようなことがないようにこれから全力を尽くして努力してまいりたいと思います。
-
○
村山(富)委員 その決意に見合うだけの予算が組まれておればいいけれども、予算は減額されておるわけですからね。その点も一つ含めて言っておきますからね。真剣な気持ちで積極的に取り組んでください。
それから、それと関連をして、市町村が
医療施設等を整備してつくる場合に国は補助金を出しているわけですけれども、その補助金の基準単価について、基準の決め方ですね。A地域、B地域、C地域、D地域とこうあるわけです。四区画あるわけです。そして、A地域にはどういうところが入っているかといいますと、北海道から埼玉、千葉、東京、神奈川、長野、京都、沖縄まで入っているわけです。それから、B地域には青森とか岩手とか、大臣の出身地も入っているんじゃないですか。それから、C地域には鳥取、島根、広島、山口。D地域には徳島、香川、愛媛、高知、福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、こういうふうに四つの区分に分けておるわけです。そして、この四つの区分に分けてどう違うかといいますと、例えば木造の場合、ブロックづくりの場合、鉄筋コンクリートづくりの場合、今木造というのは余りないでしょうからブロックで言いますと、ブロックづくりの場合に、A地域は五十七年度の基準単価で十万五百円、B地域が九万五千七百円、C地域が九万九百円、そしてD地域が八万六千百円だ、これはどういう根拠でこんな区分をして単価が違うんですか。——わからなければこれを見ていいよ。
-
○吉崎政府委員 御指摘のような地域区分をやっておるわけでございますけれども、この単価はそれぞれの地域の実情に応じまして定められておるものであると考えております。
-
○
村山(富)委員 その実情において決められているというのは、その実情は何ですか。どういう実情でそんな区分をしているんですか。適当なことを言いなさんな。
-
○吉崎政府委員 ただいまちょっと手元に細かい資料がございませんので、後ほどよく調査をいたしましてお答えさせていただきたいと思います。
-
○
村山(富)委員 いやいや、細かい資料がなくったって、この資料があればわかるでしょう。そういう計算でもって補助金を計算しているんじゃないですか。
-
○柳沢説明員 ちょっと手元に、今先生がおっしゃった基準単価の基礎になる細かい積算がございませんので、また後日よく調査いたしましてお答え申し上げたいと存じます。
-
○
村山(富)委員 それなら、それもちょっと保留しますからね。実情に応じてなんというような余り適当な答弁をしなさんなよ。
それから、国保診療所なんかを積極的につくろうという意欲があっても、補助金の上限が決められているわけですよ。例えば一般の
医療器械器具の場合の補助は七百五十万円の三分の一で上限が二百五十万円、それからレントゲンなんか千二百万円掛ける三分の一の上限が四百万円、今ごろレントゲンをその程度の上限でくくって補助金を上げてますなんていったって、これは時代が違うんですからね。こういう点はもう少し直す必要があるのではないかと思いますけれども、どうですか。−
-
○吉村政府委員 国保の直診のことでございますので私が答えますが、先生のおっしゃるような金額になっていることは事実でございまして、それが本当に補助の目的を達しておるかどうか、こういう御指摘でございます。
私どもも、もっと実情に応じた補助単価を設ける必要はあるかと思いますが、国保の直診だけ補助単価を変えるとか、補助率を変えるとかということは非常に難しゅうございまして、横並びみたいなことでそういう補助単価になっておるわけでございます。したがって、これは全体的に眺め直して検討をしなければならない問題だと考えます。
-
○
村山(富)委員 それはひとつ検討しておいてくださいね。
それから、もう時間がありませんからこれは端的に確認だけをしたいと思うのですけれども、
国民健康保険について、本会議でも質問しましたけれども、退職者
医療制度をつくることによってその分だけ国保の負担が軽くなる、したがって国庫負担はこれだけ削ります、その国保の負担を削った分と退職者
医療で軽くなった分とイコールしますか。
-
○吉村政府委員 私ども、その退職者
医療制度の創設部分だけで物事を考えておりませんで、それも含めまして国保の保険料につきまして、退職者
医療制度をつくり、あるいはそのほかのいろいろ適正化対策もする、こういうことにしておりますので、そういうことに伴いまして保険料がどうなるか、こういうように全体的に考えますならば、今回の改正によっては保険料の増減はございません。したがって国庫補助金が少なくなる、その結果その分が保険料に回る、普通ならそういうことになるのでありますが、その部分は保険料の
引き上げにならない、こういうことにしております。
-
○
村山(富)委員 しておるというのでなくて、なりませんね。
-
○吉村政府委員 これは一年たってみないと本当にわからないわけでありますが、私どもは、ならない、こういう確信を持っております。
-
○
村山(富)委員 しかし、理屈としてはそうでしょう。理屈としては、退職者
医療制度をつくって、国保が抱えた分がその点で見てもらえるから、その分だけ軽くなる、だから、その分だけ国庫補助は削る。だから、それがイコールすればいいわけです。イコールしなければ、その分はまたどこかへはね返っていくわけですから。その心配はない。いいですね。
それからもう一つは、都市と地方では国保の抱えておる退職者のウエートが違うと思うのですね。極端に言えば、一人もいないところがあるかもしれません。そういうところは国庫補助だけ削られてそして恩典は何もないわけですから、そういう地域の調整というのはどうしますか。
-
○吉村政府委員 先生御指摘のように、市町村によって退職者の数にばらつきがある。ゼロというところは相当僻地へ行かぬとないかもわかりませんが、そういう場合があるかもしれません。その場合に、私どもは、今度は財政調整交付金の幅を広げております。
医療費の一〇%分を財政調整交付金ということでやっておりますので、その財政調整交付金でもってばらつきによる財政力のアンバランスというものを是正したいと考えております。
-
○
村山(富)委員 財政調整交付金というのは、今度は五〇%のうちの一〇%ですか。そして、しかも
医療費ベースに直しますと、計算しますと七・七ぐらいにしかならぬわけです。だから、それがそれほど財政調整の機能を果たし得るかどうかというのもちょっと問題のような気もしますけれども、まあいいです。そういう点を十分勘案して、決して負担がかからないように、無理がいかないようにしますということですね。
それからもう一つは、OBの退職者
医療の対象になる人たちも
国民健康保険には入っているわけです。ですから、国保の中に、退職者
医療制度に入っている者とそうでない者とが同じ年齢で存在するわけですね。そうしますと、退職者
医療制度に入っている者も国保だけに入っている者も、納める保険料は同じです。そして、退職者
医療制度に入っている者は八割給付、国保だけに入っている者は七割給付、これでは国保の中に新しい格差を持ち込むことになる、そう思いませんか。
-
○吉村政府委員 確かに、六十歳台の国保の被保険者が五百八十二万人おりまして、そのうちの退職者
医療対象者になる人が三百三十二万人ですから、残りの約二百五十万人というのは六十歳でありながら七割給付になる、そして、三百三十万人は退職者なるがゆえに八割給付になる、こういうことで給付の格差が生ずる、これはそのとおりであります。
ただ、私どもは、先ほどから申し上げておりますように、将来目標というものを掲げて、それに少しずつ近づいていこう、こういう漸進的な方法をとっていこうと思っておりますので、若干の期間の格差というものは許容していただいて、少しでも早く国保全体が八割に近づくように努力をしていくべきである、こういうように考えております。
-
○
村山(富)委員 今度の改正案は、負担の公平と給付の平等ということを前提にしているのでしょう。それを前提にしながら、中身は逆に格差をつくっていく、これはおかしいじゃないですか。そんなことであるならば、この際国保も八割にする、それがいいじゃないですか。そうすれば、提案理由の説明で言われたとおりを実行することになります。
-
○
渡部国務大臣 先生の御指摘でございますけれども、逆に格差を助長するということとはちょっと内容が違うと思うのです。
国保の人が七割が六割になるとかなんとかですと助長しますけれども、最低の国保の七割、しかし、その中に被用者保険から退職された方、これは今まで十割給付だった方が一挙に七割になるという差を今度は八割ということでとどめるわけでありますから、確かに国保の中にそういうばらつきが出てくることは間違いないのですけれども、保険制度全体の中では、一番いいのが全額給付、一番悪いのが七割、その中で、今度の退職者
医療でかなりの人数の方が八割という目標に一歩前進する、これはお認めいただかなければならない。しかし、おっしゃるように、私が何度も言っているように、本来財政的な余裕があって、今回は被用者保険の十割の方に一割御負担願って九割になっていただく、しかし、国保の七割の方は今度は一割上げて八割になっていただくという案を私どもが出せるようだったら非常に説得力もあるし、私も気分がいい大臣になれたのですが、今の非常に厳しい条件で十割を九割にするという悪役を私が引き受けて、この次にまた厚生大臣になっていただく方に、今度は七割から八割といういい役をやってもらう、こういうことでございます。
-
○
村山(富)委員 格差を助長しているとは言いませんよ。これはある程度の期間だけの話ですからね。しかし、今ある制度の中で、同じ立場で存在して、同じ立場で負担をしながら八割給付の者と七割給付の者が出てくる。新しい格差をつくることは間違いないのです。
そこで、やはり今の制度の
改善をする必要があれば
改善をして、任意継続でつないでいくということの方がまともじゃなかったかと私は思うのですよ。それはなぜかといいますと、若い間働いて険料納めてきておるわけです。それはうんと使った方もあるかもしれません、しかし使わなかった方もあるかもしれませんからね。ですから、引き続いてそこはやはり面倒を見る、言うならば、使ってきた者が面倒を見るというのがまともで自然じゃないかというふうに思いますから、私はその方がよかったのではないかと思うのですけれども、これはこれからの議論ですから、大いに議論をして結論を出さなければならぬと思うのです。
ただやはり、
国民健康保険の場合には、もうきょうは時間がないから申しませんけれども、必ずしも負担が軽いわけじゃないのですよ。保険料は、幾度も言いましたようにばらつきがあります、大きな格差がありますけれども、だんだん上がって、掛金は相当高くなっているのですよ。その割合に給付が七割ということはやはり無理があるのではないか。だから、やはり積極的に給付の
改善をしなければならぬと思うのですね。全体の均衡の中で負担の公平と給付の平等ということを言うのなら、むしろ積極的にこういう点に手を加えるのが本当ではなかったか、それが
国民の期待にこたえる道ではないかというふうに思うのですけれども、ひとつその問題に対する大臣の取り組みと決意を聞かしてください。
-
○
渡部国務大臣 御指摘の
医療保険の今後の方向については、先生と私と全く同感でございます。
ただ、私の方が政府という財政的な責任も負わなければならない立場にあるために、今回そういう方向まで出せなかったわけでありますけれども、今後引き続きそういう方向に向かっていくように努力をしてまいります。
-
○
村山(富)委員 これはもう本当なら、いつごろまでにするつもりですかということまで回答をもらった方が、やはりこの法案の審議をするのにいいと思うのですよ。もしできればそういうことを聞かしてください。
それから、日雇健保です。日雇健保で、印紙を張るのに張れない労働者がいる。それはなぜかといいますと、例えば東京の山谷や、あるいいは横浜の寿町やら、大阪の釜ケ崎等々は寄せ場があって、違法な労務供給業者がまだ野放しになっている状態があるわけですね。そういうところでは
雇用者が保険料を納付しないために印紙が張れないわけです。
本人は払うという意思があっても、できないような仕組みになっておる現状にある。そういうところで働いておる労働者の救済措置というのは、やはり何らかの方策を考える必要があるのではないかというふうに思うのですけれども、これはどうですか。
-
○吉村政府委員 今先生が御指摘のような事態はあってはいけないことでございますので、仮にそういうことがあるとすれば、適正に指導をしてまいります。
-
○
村山(富)委員 それはそれ以上深追いしませんから、ひとつ十分疎漏のないように対策を考えてください。
それから、
医療監視員の問題についてちょっとお尋ねしたいと思うのですが、
医療監視員というのはどういう目的で何を監視するのですか。
-
○吉崎政府委員
医療機関は
国民の
医療を預かるものでございますから、例えば人の数でありますとか、施設でございますとか、備えるべき帳簿でございますとか、そういう基準を定めております。そういう基準をきちっと守って適正な運営をやっておるかどうか、そういうことを監査することを主眼としております。
-
○
村山(富)委員
医療監視員が本当の意味で機能を発揮しておれば、いろいろな事件は未然に防げるんじゃないかという節もありますね。例えば、先般事件のありました宇都宮病院ですね。これは厚生省からいただいた資料によりますと、宇都宮病院に対する過去の
医療監視の指摘事項、昭和五十四年に、医師、薬剤師、看護婦が不足をしている、患者の超過入院、二つの点が指摘されておるわけですよ。そして、五十五年、五十六年、五十七年、五十八年と同じことが毎年指摘されているわけです。ということは、監視はするけれども、何の監視の効力もないということをこれは示しているわけですよ。もし本当に監視が行き届いて
改善が徹底していれば、あの事件は起こらなかったかもしれないというふうに考えられる節もありますよ。これについてどう思いますか。
-
○吉崎政府委員 確かに、宇都宮病院に対する
医療監視につきまして、御指摘のようなことを私どもも感じておりまして、反省をしておるところでございます。
医療監視員に対しましては、講習会を開くなど、また各年度、重要事項を定めるなどいたしまして、監視の実を上げるように努めておるところ。でございますけれども、今回のこの事実を契機といたしまして、さらにこの適切な効果が上がるような措置がとれるように検討してまいりたいと考えております。
-
○
村山(富)委員 そういう通り一遍な答弁でなくて、これは重要な大事な問題ですから。
今ある
医療監視員という制度が本当の意味で機能を果たし得るのかどうか、私は無理だと思うのですよ。正直言って無理だと思うのです。それはなぜかといいますと、一行政職員が
医療監視員という資格をもらって、資格というか証書をもらって、身分証をもらって、そして
医療監視に行っても、その人が行える
医療監視の力、能力というものはおのずから限界があることはもちろんですよ。その証拠に、指摘は毎年するけれども、指摘のされっ放しで、五年間も同じことを毎年毎年指摘するだけじゃないですか。
改善も何もされていないのですよ。ですから、もう少しまともに物を考えて、どこにできない理由があるのか、どうすればできるようになるのか、どうすればこういう事件が未然に防げるようになるのかということをもっと真剣に考えるべきですよ。どうですか、この監視員制度というのは。
-
○吉崎政府委員 先ほど申し上げましたけれども、本件につきましては御指摘のようなことでありまして反省をしておるわけでありますが、継続的に勧告を行いましても
改善がされないとか、または違法の内容が重大である場合とか、そういう場合にはどういう措置をとったらいいか真剣に検討し保ておるところであります。
また、
医療に関しましては信頼関係が何より大事でございますから、
医療相談あるいはその他の関連部局との連絡を密にするなど、
改善に努めてまいりたいと考えております。
-
○
村山(富)委員 神奈川県では三つばかり
医療機関の指定が取り消されたとかいうようなことも聞いておりますけれども、
医療法があるのですから、もし
改善命令をして、
改善命令を出しておるかおらないかわかりませんけれども、五年間も同じことを指摘されて、指摘されっ放しになっておるということはどう考えたっておかしいですね。だから、指摘をしてどうしても言うことを聞かなければ、それは
改善命令を出すとか、
改善命令を出してなおかつ聞かなければ取り消しをするとか、処分するとか何とか、やはり対策を講ずべきじゃないですか。人間を預かっておるのですから、患者を預かっておるのですから。そういう意味で、やはり行政上の責任があるんではないかと言われても仕方がないと私は思いますよ。ですから、監視員制度というものをやはりもう少しきちっとしてもらう必要があるんじゃないかと思うのです。
そこで、この問題に関連してお尋ねします。
宇都宮病院に入っておった患者さんからの訴えとして、例えば患者の通信、面会の自由といったような人権が全然無視されておった。例えば電話をかけておればそばで聞いておってそして話がなかなかされないとか、あるいは手紙を出せばその手紙は一遍検閲されてそれでなければ出せないとか、そういうこともあったというふうに患者は訴えているわけですよ。しかも、最近どうなっているか知りませんけれども、話に聞きますと、今でもやはり職員が不足している、しかも患者は過員になっているというので、職員の数に合わせて過員の患者は追い出されているわけですよ。むしろ逆に患者の数に合わせて職員をふやす、そして患者は保護して守っていくというふうにすべきだと思いますが、その実態はどうなっておりますか。
-
○吉崎政府委員 患者の数に合わせて職員を採用すべきである、これは全くそのとおりであろうかと思います。
これにつきましては、県から非常に強い指導をいたしておりますけれども、三月二十四日現在で常勤の医師が三人ふえております。しかし一方、現に入院しておる患者の処遇が一番であると考えまして、ほかの病院とよく連絡をとって、転院できる者についてはやはり転院させる等、両様の措置を講じておるところでございます。
-
○
村山(富)委員 今実際にそういう措置をとっていますか。
-
○吉崎政府委員 とっております。念のために申し上げますと、三月二十七日付の院長あての栃木県衛生環境部長の指導でございますけれども、その中の項目幾つかございますけれども、今御指摘のありました点につきましては、医師、看護婦等の
医療従事者を速やかに充足すること。先ほどのような成果も一部あらわれておるわけでございます。それから、
医療従事者の充足がなされるまでの間、入院患者を他の精神病院に転院させるようにすること。ただし、転院先の決定する前に入院患者を退院させることのないように特に配慮されたい。このように、今の二点につきましては指導をしておるところでございます。
-
○
村山(富)委員 それはひとつ、ああいう事件があったところですから疎漏のないように、やはり患者の保護を前提にしてきちっとしてもらいたいと思うのです。
先般、厚生省が精神患者の実態調査をやりましたね。あの実態調査でつかまれている数というのはどの程度ですか。
-
○大池政府委員 お答え申し上げます。
調査を行いました結果、調査票の回収数といたしまして五千百七十二枚となっております。ちなみに、大変各関係道府県の御協力をいただきまして、三十七自治体におきまして実施をしたところでございます。
-
○
村山(富)委員 回収率は、施設とそれから人数、どうですか。
-
○大池政府委員 お答え申し上げます。
この実施をいたしました地域におきましての調査対象者数は七千三百六十一人でございまして、したがいまして先ほどの調査票回収数に割り算をいたしまして、七〇%強となっております。
それから施設について申し上げますと、実施をいたしました地域の対象となりました施設は四百八十三施設、それからこの調査に協力をいただいた施設がそのうち四百二十一施設ということで、八七%強になっております。
なお、全国規模という観点で申し上げますと、当初調査抽出施設として八百三十四という施設が想定されておったわけでございます。しかるに、先ほど触れましたように、十カ所の自治体においてこの調査が実施できなかったということがございましたので、その結果四百二十一施設で実施が行われた、こういうことでございます。
-
○
村山(富)委員 もう時間がありませんから申し上げますけれども、この
愛知県の資料によりますと、調査対象施設は三十五、実際に調査をしたのは二十一、六〇%ですね。人数で言いますと、対象数は五百三十六、実際に調査をされて回収されたのが二百七十、五〇・四%。今あなたが言われたのとは大分開きがあるわけですね。
愛知県は特に低くて、よその県はそれぞれ苦労されたと言えば別ですよ。後でまた確認しますけれども、その数字に間違いないですね。
それから、実際には調査は医師が患者もしくは家族の承諾を得て記入しなければならないことになっていますね。それを、中にはケースワーカーが電話を受けて、電話で聞きながら書き込んで出したのが二十通ばかりある。ですから、今度の実態調査には相当無理があったのではないかというような気が実際にするのですよ。ですから、もう少し実態調査をする限りにおいては関係者の了解も得て、みんなが協力をしてやらなければできないことなのですから、私は今あなたが言われたほどの回収率はないのではないかと思っておりますけれども、それはここで争いませんが、そういうものではないかと思うのです。むしろ調査をするのなら、精神病院に入っている患者がさっきから言っていますように本当に人権が保障されておるのか、そういう面の実態も調査をしてそして明らかにする。患者の立場に立っての調査をするということの方が先行すべきだというように思いますから、これからの調査については十分ひとつ配慮してもらうということの注文をつけておきまして、若干時間を残しておかないと、全部言いますと後で言えなくなりますから、ここらで私の質問は終わります。(拍手)
-
-
○
河野(正)委員 若干時間の制約もあるようでございますけれども、順次質問を展開してまいります。
そこで、日本の
健康保険法は、御案内のように昭和の初期から、もちろんねらいは当時は、社会福祉というよりも、社会保障というよりも、労務政策という形で発足いたしましたが、今日まで約六十年間延々と続いてまいったわけでございます。しかし、最近はやはり社会保障、
医療保障という立場でその
充実向上というものが図られてまいったわけです。
そこで、大臣も、とにかく厚生大臣になるのはちょっと回り運が悪かった、こういうようにおっしゃっておるわけですが、そういう意味では、今まで六十年間ずっと
医療保険というものが続いてきて、そして今日の段階でちょっと後ずさりをする、その後ずさりをするかせぬかということはまた論議の争点でございますから申し上げますが、いずれにしても後退をする。そういう意味で、私はやはり六十年の歴史に一つの汚点を残すような結果になったと思うのです。そういうように考えます。
そこで、日本には非常に立派な言葉があって、本音と建前という言葉がある。ですから、大臣もまあ誠心誠意努力していただいておることは私どもも理解しますよ。しかし、今度の法案というものが、先ほどからちらちら出てまいりますように、最良の法案だという言葉もあるわけですけれども、私どもは最良と言うのはいささかどうだろうかと思う。やはり大臣も、もっと時期がよければもう少し給付でも下げぬでもよかったんじゃないか、そういう意味では大臣みずからもある意味においては十分でないというような御感想も述べられておるわけですから、やはり今度の改正案というものは、大臣が努力されたことはわかるけれども、しかし最良のものであるかどうかということになりますと、私は最良のものというわけには相ならぬであろう、こう思うわけですが、いま一つ大臣の見解を承っておきたいと思います。
-
○
渡部国務大臣 大先輩のお言葉ですけれども、誤解があると恐縮ですので明確に申し上げておかなければなりませんが、これは、私がたびたび申し上げておりますのは、いずれにしても
国民の皆さんが、今よりも余計税金を出すとかあるいは現在よりも少しでも余計御負担をいただくということは恐縮でございますから、この点は皆さんにお願いするよりほかないという意味でありまして、決して、今回被用者保険の
本人の皆さん方に患者一部負担をお願いすることが、間違ったことだとかあるいは社会福祉の後退だとか、全くそういう意味ではございませんで、今日の置かれたる財政的、経済的な条件の中で、我が国の
国民生活の健康を守っていく
医療保険制度を将来に揺るぎなきものとするためには、今回の制度改革をやらざるを得ないし、まことに恐縮でございますが、被用者保険の皆さん方にも一割御負担ということを御辛抱願いますということをお願いしておるのでございまして、これが間違ったことだとか、間違ったことだったら私はやりません、これは撤回させますので、そういう意味で、先生に誤解をいただくと恐縮でございますから、現在、置かれた条件の中では私ども最良の改革案であると固く信じております。
-
○
河野(正)委員 決して間違っておるというふうに申し上げておるのではないのです。最良の法案だとおっしゃるけれども、もっともっと大臣としては、意欲的には、あれもやっておけば、これもやっておけばというような気持ちも述べられておるわけですから、したがって私は、少なくともこれが最良のものだというふうには理解しがたい。ですから、決して間違いだというふうに申し上げておるわけじゃないですから、その点むしろ私の方から、誤解なさらないようにお願いいたします。
そこで、この前も社会保障の基本理念というものは一体どういう問題だ、そういうことで、日本国憲法を取り上げて、大臣の所見も承ったわけですが、やっぱり今日の財政事情が厳しいという場合と財政事情がかなり余裕があるという場合の対応というのは違うと思うのですね。しかしながら、私は、この日本国憲法というものは、すべてにおいてやっぱりそれが一つの目安にならなければならぬということになりますと、そういう意味から前回も取り上げたわけですけれども、この二十五条には、「すべて
国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」、特にその後段は「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」というふうに書いてあるわけですね。ですから、かねがねこの
医療保険のあり方について、やっぱり
医療保険制度でいくのかあるいは
医療保障制度でいくのかという議論が長い間ございましたことは、大臣も随分勉強なさっておりますから御案内のとおりだと思うのです。そういう意味で、私どもは、憲法では今申しましたようにやっぱり保障制度という道をとっておるわけですね。そうしますと、そのときそのときの財政事情もありましょうけれども、やっぱり建前としてはこの
医療保障ということにあらゆる努力をしていかなければならぬ。こう書いてあるわけですから、特に後段では。
そういう意味で、例えば今まで十割給付だったのが今度は九割給付になるということになれば、少なくともその部分を見ればこれは後退でしょう。それはいろいろな背景の事情はわかりますよ。わかりますけれども、少なくとも、今まで十割給付だったのが九割給付になれば、その部分では当然後退になるということは指摘せざるを得ないと思うのですね。そういう意味で、ひとつ大臣、別に誤解しておるわけじゃございませんから、要するに、私どもはやっぱり
国民のためにいい制度、いい健康を守る制度というものをつくっていきたいというのが、大臣もそうでしょう、私どももそういう願いで申し上げておるわけですから、もうざっくばらんに申し上げていただいた方がいいと思います。
-
○
渡部国務大臣 今先生のお話しを聞いておりますと、これは私の考えと共通しておると思うのですが。ですから、今日の経済条件、これは財政状態もございます、その中で、
社会保障制度というものが大変厳しい状態に置かれております。例えば
年金というようなものがいろいろ今討論されておりますけれども、今六・七人の働き手で一人の老人を支えておる。しかし急速に高齢化社会がやってきて、四人で一人を支えるというようなことになれば、今のままの制度でそのまま置けば、
年金制度はあっても
年金を支払う金がなくなってくるのじゃないかというようなことがよく言われます。すると、これは将来に対して非常に不安になってくるわけでございます。したがって、今、私ども、国の
社会保障制度をお預りする立場からいえば、二十一世紀の将来にわたっての高齢化社会、これはやはりみんなが長生きして健康でいてくださることは大いに喜ばなければならないのでありますから、かりそめにもそのことを迷惑がるようなことになってはならないわけでありますから、心からみんなが健康で長生きすることを喜べる、そして
年金も払えます、またみんな老人になったら安心して病院に通えます、
医療保障の恩恵を受けられます、そういう制度を揺るぎないものにするためには、今この時期に、被用者保険の今まで十割給付であった人に九割であれ、あるいは八割になってくれということは大変心苦しいことだけれども、全体がよくなるのだということで御辛抱をお願いしたい、こういうふうにお願いしておるわけで、気持ちは相通ずると思います。
-
○
河野(正)委員 そこで私どもは、冒頭に申し上げましたが、やっぱり憲法で示されているように
医療保障制度、その
充実のために努力しなければならぬと書いてあるわけですから、そういう方向で努力しなければならぬという意味で指摘をいたしておるわけですが、そういう意味で、例えば今度の予算の編成の中身を見てまいりましても、厚生省の五十九年度予算の対前年度比というものは二・一%の増。しかし、ちょっと機械的な計算になりますけれども、一方防衛費の伸びというものは六・五五%。しかも一方では、
医療保険関係費が六千二百億今削減されておる。こういう現象を見てまいりますと、やっぱりどうしても申しわけないが、最良のものとは言いがたい。しかし、非常に厳しい情勢の中で努力したなという努力は評価するにしても、そういった意味においては私はやっぱり不満の意を表せざるを得ないということに相なると思うわけです。
そこで、いろいろ具体的な問題等を今から申し上げてまいりたいと思うわけですが、ただ、そういう情勢が厳しいということはわかるけれども、しかしそういう情勢の厳しい中でどういう姿勢で臨んでおるのか、その辺に私はやっぱり、私どもが納得するかしないかという条件というものがあると思うのです。
それで、揚げ足をとるわけじゃないけれども、例えばきょうのさっきの委員の中から、
社会保障制度審議会あるいは社会保険審議会の答申というものに対して十分尊重されていないじゃないか、あるいは大臣もやっぱり自己批判なさっておるようですけれども、要するに唐突に出して、そして社会保険審議会のごときは、審議がわずか四回、そして延べ時間が十一時間、こういう形で今日の
健康保険という重大な法案の、しかも抜本的改正を含んだ法案ですね、それが突如として提案されてきた。そういう点に対して、ちょっと大臣、ベトコンの話しやないけれども、米価審議会の話が出ましたですな。これは、生産者と消費者等と意見が食い違うて併記答申になるのは、私は明らかだと思うのです。しかし、この社会保障害議会、社会保険審議会等は、私は米価審議会とはおのずから本質的に違うと思うのですね。これはみんなが、いわゆる今の日本の
医療保障制度をどうしてよくしていこうか、よくするためにはどうあるべきだということで、大臣もそういうことで諮問をなさったと思うのですね。ですから、この米価審議会のいわゆる構成と、社会保険審議会あるいは
社会保障制度審議会の構成とは違うわけですから、そこで、その違うということを十分踏まえて、この社会保険審議会が併記の答申をしたじゃないかということに私は相ならぬと思うのです。ですから、そういうふうな、ちょっとこれは口が滑ったんでしょうけれども、大臣、そういう例えというものは私は必ずしも適切なお答えではなかったかのような気もいたします。
それからいま一つは、試験勉強の例が取り上げられました。とにかく前からずっとやっておけばよかったけれども、やっぱり試験前日にならないとやらないんだ。何か今度の
健康保険というものは一夜漬けで出されたような印象を受けるような発言でしたから、そうすると、私どもはやっぱり今度の改正案に対していろいろ不満を持っておるし、それからまた、大臣と違ったいろんな意見を持っておるわけですから、そういう立場の者からすると、ちょっとあの表現は残念であるという気がいたします。これについて、恐らくちょっと口が滑られたんであろうと思うけれども、ひとつその気持ちを私どもとしてはやっぱり明確にしておきたい。
-
○
渡部国務大臣 大変ありがたい御質問をちょうだいいたしました。
私が申し上げておりますのは、一夜漬けで出したとこういう意味じゃなくて、本来は昭和三十年代、四十年代から
医療保険制度の抜本改正をやれという御意見を各方面からちょうだいしておるのでありますから、もっと早く、厚生省当局でこういう案を出しておければ、その案というものが素直に御理解いただいたであろうに、何か今、これは皆さん予算をごらんになってわかるわけですから、予算が非常に厳しい財政のときにぎりぎりになって出さざるを得なくなったために、何か皆さんから、これは単に財政上のつじつま合わせでないかというような御批判を受けざるを得ないのが非常に残念なことだ、こういうふうに申し上げておるのであって、決してこの案が一夜漬けでできたというようなものではございませんので、この点はぜひ御理解を賜りたいと思います。
それから米価審議会、これはたまたま私が十年近く米価の問題の中心になってやっておったものですから、それが例として出てしまったわけでありますが、ただ、社会保険審議会でも、審議委員の方が全部公益委員ということであれば、そこで話し合って意見の統一ということが容易にできると思いますが、やはりそれぞれの団体なり組織の立場を代表する方が入っておられますと、その組織や団体では、
医療保険については賛成だとか反対だとかいうその組織があって、その組織を代表する方が出ておられればなかなか意見の統一ということは難しくなってくるのでありまして、残念ながら、今回一番皆さん方の関心を持っておるところの患者一部負担ということについて、社会保険審議会で一本化した答申はいただけなかったのであります。しかしその内容は、こうこういう人はこう、こうこういう人はこうとちゃんと書いてあるわけでありますから、その審議経過なりその選出委員の背景なり、そういうものを熟読玩味して、そして厚生大臣、おまえの責任で判断しろという答申をちょうだいしたと思っておるわけでございます。
-
○
河野(正)委員 そこで、今申し上げましたように、私どももこの改正案についてはいろいろな異論があるわけですから、やはり大臣は大臣として納得がいくような、誠意を持って対応をしていただきたいということで指摘をいたしたわけです。
そこで、関連しますけれども、保険
局長、あなたにも一言物を申し上げなければならぬ。
局長が二月の九日、国保主管課長会議で述べられた中で、少し誠意を疑うような演説がありますよ。御案内のように、二十一世紀を望んだ将来展望というような話をいろいろ大臣は取り上げていらっしゃるわけですが、しかし一説では、
医療保険制度が黒字が出てきたし一応安定期にある、こういう意見もあるわけですね、それは賛成するしないは別として。しかるに、この安定期に入ったというのに、なぜ突如としてこうした抜本的改革をしなければならぬのかというような意見があることは御承知のとおりだと思うのです。そこで、そういう情勢の中でこの抜本的改革を行う必要はないのではないかというような見解に対して、これが保険
局長がおっしゃった言葉の中身です。被用者保険
本人の給付率を十割から九割にすることも天地がひっくり返るほどのことではない、これで
国民の生命、健康が破壊されると指摘するがそんなことはない、国保は三割負担で皆健康を破壊されてはいない、こういう意味のことが書いてあるんですね。ですから、やはり非常に数多くの方が今度の改正法案に対して反対だ、やめてほしいというふうないろいろな要望等があっておりますことは御案内のとおりです。これは単に私どもだけではなくて、自民党の皆さん方にもそういうような要請がたくさん来ていると思うのですよ、それは二論あるわけですから。ただ、それに対して、
局長がおっしゃっておる何か皮肉ったような、被用者保険の
本人の給付というものが十割から九割になっても天地がひっくり返るほどのことではない、こういうちょっと何か山師的な表現をされるとは……(「そんなことはない」と呼ぶ者あり)それはそうですよ。天地がひっくり返るとかなんとか、そういうふうな形容をする必要はないじゃないですか。だから、そういう御意見もあろうけれども、しかし、今の財政の厳しい中で二十一世紀を展望すると、かくあらなければならぬですよというような、これならそれはそれなりに私はわかりますよ。それを殊さら、天地がひっくり返るようなことではない、国保が七割給付であってみんなぴんぴんしておるではないか。やはりこういう姿勢というものは、発言というものは、今日いろいろ両論があって非常に激しい意見の対立があるわけでしょう、これは適切じゃない、こういうように私は思いますね。もしそんな気持ちでこの法案を強行されようとするならば、私どもはそれこそ断固として反対しなければならぬ。どうでしょうか、
局長。
-
○吉村政府委員 先生の御指摘ごもっともで、そういう感覚で受け取られたとすれば、私の気持ちとは少し違うわけでございまして、どうも十割を九割にすることによって患者負担がそれだけふえる、そうしてそれが、
国民の生命、健康に破壊的な要因をもたらすのではないかという御意見があるわけでございます。しかし、十割を九割にしたからといって、国保と比べ、家族と比べ、そして受診率あるいは一日当たり診療費等を比べてみますと、
医療費の過剰部分というものは少なくなるかもしれないけれども、生命や健康に破壊的な要因になる、こういうようには思わない、こういうことを、私は若干口が悪くて下手なものですから、天地がひっくり返るとか生命や健康に影響がないとか、そういうことをすぐばかのように言う男なものですから、不愉快な思いを相手に与えるということもあります。それはやはり保険
局長として考えねばならない、また慎まねばならないことだと思いますが、私が言いたい本質は今申し上げたとおりでございます。
-
○
河野(正)委員 今もある程度釈明をされましたからね、要するに国保が七割でそして何とか運営をされておる、だからさらに被用者保険も十割が一割負担になってもそう影響がないだろうという言い方は、言い方とし理解はしませんよ、理解はしませんけれども、
局長の気持ちはわからぬことはないのです。ですけれども、今言うように一割負担はだめだ、それは困る、こういう
国民が、どっちが多いか少ないかは別ですよ、かなりの数おられることは事実でしょう。天地がひっくり返るようなことではないというよう宣言葉は、それこそ今の反対をされておる
国民の方々の気持ちを逆なでをするということになるから、やはりこの法案を、大臣じゃないけれども、最良のものに近い、だからこの際ぜひひとつ成立をさせたい、こう言っておるわけでしょう、そういうことなら、やはり
国民に対しても気持ちを逆なでするような発言はお慎みになった方がよろしかろう。これは私は非常に紳士的な発言だと思っているわけです、先ほど後ろでちょっとやじがありましたけれども。これは、そういうことで一応釈明がございましたから、子といたしませんが、時間がございませんから先に進ませていただきます。
そこで、実は、本会議でもそれからまた予算委員会でも総理もお答えになっているのですね。それは中長期ビジョンの問題ですね。これは提案理由の中にも大臣もおっしゃっているわけですが、「中長期の観点に立った
医療保険制度の改革を行うことは緊要の課題となっております。 今回の改正は、このような情勢を踏まえ、
医療保険の揺るぎない基盤づくりを」進めていかなければならぬ、これが大臣が提案なさった理由の前段になっているわけです。基本になっている。ですから、今度の
健康保険の改正というものは、二十一世紀を展望した中長期のビジョンというものがあって、そしてその前段の
健康保険の改正である、こういうことだろうというふうに理解せざるを得ないわけです。その点間違いございませんか。
-
○
渡部国務大臣 幾たびか本会議でも予算委員会でも総理からも御答弁があり、私も同じ気持ちを申し上げております。
-
○
河野(正)委員 総理もやはり大臣と同じような発言をなさっておるわけですね。同時に、
社会保障制度審議会の答申も、中長期ビジョンの示されていない点に対しては全く不満である、こういう答申内容があるわけですね。そうしますと、私どもが今から
健康保険法の改正案にいろいろ意見の交換をしていくというか、論議をしていくということになりますと、総理もおっしゃっているように、また大臣もおっしゃっているように、今度提案された
健康保険改正案というものが、いわゆる中長期ビジョンと無関係のものであれば別ですよ、それが一体のものであるということになるならば、この審議に入る前にやはり中長期ビジョン、そういう構想というものを承って、その上に立って議論せざるを得ないと私は思うのです。それはもう細かいことは別ですよ、大綱というものだけは示していただかなければいかぬ。それに対してひとつ大臣の見解を承りたいと思います。
-
○
渡部国務大臣 御指摘の点、大変大事な問題でありますので、この
社会労働委員会において私ども出さなければならないと思っておりますし、また関係者で今それらの作業を進めておるところであります。
ただ、私どもの一つの考え方はありますけれども、これはできるだけこの
社会労働委員会における先生方の御意見も十分踏まえて出したいという考えから、できれば各党の皆さん方に御意見を一巡承りまして、それらの先生方の考え方も十分入れられるものは入れて出したい、私はこう考えておったのであります。これは
委員長から各党の皆さん方に御相談を賜りまして、
委員長から出せという命令がございますればいつでも出すつもりでございます。
-
○
河野(正)委員
委員長が出せとおっしゃれば出すとおっしゃっているわけですが、むしろ自発的に、中長期ビジョンはこうですよ、その一里塚が今度の
健康保険の改正案ですよ、こういう形で審議に入っていかぬと、今度の
健康保険の改正案に対して私どもが十二分に取り組みますね、取り組んでそして中長期のビジョンとはかけ離れたものになった、こういうことになりますと、私どもが熱心に
国民の健康を守るためということでいろいろやってみても、意義がないのじゃないかと私は思うのです。恐らくそんなことはないと思うけれども。やはり審議の過程の中で出すというお約束をなさっているわけですから、私の意見を聞いただけではいかぬ、またほかの人の意見も聞かぬといかぬということなら別ですが、私どももこの問題に対しては十二分に取り組んで、できるならよりよいものにしていこうという見解ですから、大綱ぐらいはここでお示しいただきたい。示すことについて、
委員長どうでしょうか、同意していただけませんか。
-
○有馬
委員長 河野先生、御相談ですが、いろいろな先生から御要望があった問題でございますから、
理事会で相談をして政府側に要望する、そういうことでいかがでしょうか。
-
○
河野(正)委員 本来から言うと、ビジョンが出てこなければ審議に入ってもむだだ、こういう気持ちを私は持っておるのですよ。今言うように、後ほど
理事会で相談をして、これじゃちょっと審議に入れぬものだから……。
-
○
渡部国務大臣 今、私が考えておる基本的な大綱だけ申し上げさしていただきたいと思います。
将来ビジョンについては、
国民の健康水準の向上という観点から、
医療保険についての将来ビジョンだけにとどまらず、疾病予防、健康増進、
医療供給体制など、
国民の健康と
医療にかかわる関係分野を含め幅広い観点から検討を進めておるところでありますが、まとまり次第これを提示したいと存じております。なお、
医療保険の将来ビジョンについては、
医療費の規模を将来にわたって適正な水準のものとする、
医療保険による給付率については統一を図る、人生八十年型社会に適応するような
医療保険の構造とし、負担の公平を図るという三点を骨格としたものを考えております。
-
○
河野(正)委員 大綱だからそんなものかもしれませんけれども、いささか内容に欠けておるような気がするものですから、非常に残念ですね。私もこの質問は留保して、いずれ具体的に……
-
○
渡部国務大臣 誤解をいただくと困りますが、今私は、当局に指示しておるその骨格を申し上げただけのことでありますから、もちろんこれに肉づけをいろいろしたものを、
委員長からのお話しがあれば出したいということです。ただ、基本的な考え方がないと審議は進まないと大先輩が言われたので、今私のおおよその考え方を申し上げただけでございますから、これは御容赦をいただきたいと思います。
-
○
河野(正)委員 残念ながらちょっと抽象的過ぎる。肉づけして枝葉をつけてということまでは期待してなかったのですが、大臣は誠意を示しているわけでしょうけれども、ただ少し抽象的過ぎるものですから、これではちょっと、いろいろ私どもが論議をする材料に乏しいというような気がいたします。ですけれども、いずれ
理事さんの方で
理事会を開いてまた検討いただくでしょうから、
委員長よろしくお願いをいたします。
-
-
○
河野(正)委員 そこで、本来から言うと、長期ビジョンに基づいた
健康保険法の改正だということは肯定なさっておるわけです。多少長期ビジョンについての内容が不明確な点もございますからちょっと進めにくいような問題もございますけれども、せっかくの機会でございますから、さらに質問を続けてまいりたいと思います。
そこで、今からちょっと各論みたいなことになりますが、今度の
健康保険法の改正について大体柱が三つございますね。
健康保険の改正のねらいというものは、八千億とか一兆円とか言われておりますが、この伸び率に歯どめをかける、そして国庫負担を軽くする。これは初年度が六千二百億。そして改正案の骨子は、一つは被用者保険
本人の一割負担ですね。六十一年から二割負担ということですが。それから第二が、いわゆるOB、退職者
医療制度の創設。それから第三が、要するに約四百万ですか、国保から退職者
医療に移行しますね。そして、そのことによって国保に対しまする国庫補助が切り下げられる、従来四五%が三五%に切り下げられる。大体こういう三つが、取りまとめますというと骨子になっておると思うのです。ところが、三つの骨子はずっと底の方ではつないでおるわけですね。お互いに関連があるというようなことですから、これらに対して私どもが意見を申し上げても、政府としてもなかなかすぐ即答ができぬというような立場はあると思うのですね。ですけれども、やはりよりよい
健康保険をつくっていくんだという意味で、私どもも、先ほど申し上げましたように各論として今から若干の質疑をさらに展開してまいりたい、こういうふうに思います。
そこで、先ほどちょっと嫌みだったかわかりませんけれども、
局長、この一割負担が決して
国民の健康を損なわないということになるのかどうか。これは従来国保が七割だったということと、被用者の
本人が十割だったのが今度は九割に下がるということとは、これは本質的に違うのですね。あなたの方は、従来国保が七割給付だから、この被用者保険の
本人の十割給付が一割下がって九割になっても、それは大したことがないんだという議論になると思うのですね。しかし、やはり被用者保険というものは十割給付で長い経過というものがあるわけです。ですから、それは天地をひっくり返すようなことにならぬかもわからぬけれども、やはり大なり小なり影響が出てくることは明らかであると思います。そこで、そういう点を具体的に、調査資料その他がありますから若干申し上げて、そしてまた、九割給付もさることながら、六十一年から八割給付とおっしゃっているわけですから、その辺もやめてもらわなければならぬだろうし、そういうことで若干影響調査といいますか、被害調査というような結果がございますから、ここで一つ指摘をして、ぜひひとつ再考をお願いいたしたい。
それで、一つは、もしも
健康保険改正案が成立したならば一体どうなるのか、これに対するいわゆる反響調査といいますか、被害調査、影響調査、その結果が出ておりますが、それはいろいろ厚生省は厚生省の考え方がありましょう。どなたか先ほどおっしゃったが、NHKの特別番組が朝のうちに放映されましたね。私ども全部朝早く国会へ出てくるものですから、これを見ることはできませんでしたけれども、このNHKの特集番組で放映された状況を見てまいりましても、やはりいろいろ問題がありますね。例えば、これは今度の健保法が通ったらということが前提ですが、通ったならば、病気が治らないけれども退院するというお答えをなさった方が四三%、それから負担の関係ですぐ退院をしなければならぬ、それが一六・六%、財政上の理由でなるべく早く退院しなければならぬ、これが二六・一%、こういうように、それこそ治っておらぬけれども、
治療は終わっていないけれども、一部負担のために退院せざるを得ないという、それがアンケートの中で二四・七%に達しておるわけですね。ですから、この影響調査が正しいか正しくないかは別として、アンケート調査をやってそういう答えが出てきたことは事実ですね。どこを選んだか、ここを選んだかということで見解の相違がありましょうけれども、そういう実態というのが出てまいっております。したがって、今まで十割が一割減っても、九割給付になってもそう大して影響は出ないんだ、やはり影響はあろうけれども今日の厳しい情勢の中では二十一世紀の展望をにらんでこうしなければならなかったというようなことならばわかるけれども、十割給付を九割給付にしても影響はみじんもないんだというようなことは、やはりこういった、もしも健保が改正されたならば一体どうなるのかという影響調査、被害調査といいますか、そういう点について今のようなアンケートが出ておるわけですね。これはパーセントが高いか低いかは別ですよ。しかし、その一部はどうしてもやはり認めていただかなければならぬと思うのですね。それが為政者としての任務じゃないでしょうか。これについて御意見を。
-
○吉村政府委員 確かに、今先生おっしゃるように、心理的にはそういう面がかなりあろうかと思います。私どももそれを否定するつもりはございません。それからまた、全然影響がないというように私は思っているわけでもございません。ただ、先ほど申し上げましたように、生命や健康の破壊につながるような影響があるかというと、そういうことはないように私は考える、こういうことを申し上げたわけでございますが、果たして一割の負担をした場合に入院の日数が下がるかどうか、これはもう確かに心理的には、お金がかかるんだから早く出たい、こういう心理が働く、その結果、それが退院というような行動になってあらわれる、こういうことももちろん考えられます。御指摘のとおりだと思います。
ただ、私どもが一件当たりの例えば入院の日数を
本人と家族で比較してみますと、
本人の場合が十七・六七日、家族の場合が十八・二七日、こういうようなことで、むしろ家族の方が長いような統計を私どもは持っておるわけでございます。それから受診率におきましても、むしろ年齢階級別に見ましても、入院の受診率は家族の方が高い、入院外において大体
本人と家族が同じぐらいの数字を示しておる、こういうデータも私どもは持っておるわけでございまして、例えば一割負担をする、それは確かに十割から一割の負担が生ずるわけでありますから影響がないとは申しませんが、家族は三割を負担しておる、あるいは二割を負担している場合と比べまして、生命、健康あるいは受ける
医療の中身というようなものに影響を与えるほど大きなものではなかろう、こういうように私どもは考えておるということを申し上げたいわけでございます。
-
○
河野(正)委員
医療について、今申し上げますような影響調査が出てきておる。それがすべてでないにしても、そういった影響が来ることはやはり否定できないというふうに思うのです。
そこで、大臣は、
医療に限らず社会保障、社会福祉、こういう点についても非常に意欲的でございますから、参考になるかどうかわかりませんけれども、あえて影響調査の結果を申し上げておきますが、その中に一部負担が出てくるために家庭内がうまくいかなくなる、やはり苦しくなるからということだろうと思うのです。それはまあ零細な人を対象にして物を言っているわけですから、大臣はなかなかそこまで御理解ができにくいかもわかりませんがね。それから生活保護を受けなければならぬ、そういう者、それから子供の高校、大学進学をあきらめさせなければならぬ、こういうような深刻な気持ちになっておられる階層もあるということですね。ですから、なるほど十割給付が九割給付になった、それがために受診がしにくくなった、それからまた入院が長くできなくなった、
治療を長期にわたって受けることができなくなったということは、これは即健康にあるいは疾病に重大な影響を及ぼすわけですが、ただそれだけでなくて、やはりそういうふうな負担が生ずることによって子供たちが進学をやめなくちゃならぬとか、あるいはまた家庭内がおもしろくないようになるとか、いろいろなそういう深刻な問題があるということは、ぜひ頭の中におとどめいただいて、今後の私どもの意見に対してひとつ前向きに考えていただきたいというふうに思います。
そこで、
医療費が今言うように単に一割という負担ですけれども、これは大臣も御承知だと思いますが、具体的に見てみると非常に深刻な問題がありますね。例えばいわゆる世間で言う盲腸炎、虫垂炎、これにいたしましても、現行では四千三百円の負担であるけれども、今度法改正が行われますと一万八千四百二十四円ですね。そういうような非常に大きな負担増が出てくる。ですから、虫垂炎の場合は一週間入院して手術するということですから短期ですけれども、例えば胃がんなら胃がんで比較的長期入院した場合は、御承知のように現行では一万五千八百円の負担というものが五万四千円、具体的にこうなる。そうしますと、虫垂炎では一週間入院して一万四千円の増ですね。それから胃がんで、胃がんでも胃潰瘍でも同じことですが、一カ月入院するというと三万八千円の増ですね。ですから、一割というと中にはやはり簡単にお考えになる方がいらっしゃるけれども、時と場合によってはこういうふうになる。大体一世帯当たりが年に九千五百円の出費増になる、計算しますとこういうふうになるわけです。こういうように、単に一割負担だということだけで直感しますと何かわずかな負担のようですけれども、個々に検討しますとかなりの負担になるわけですね。
ですから、そういうことで、先ほど影響調査の結果を報告しましたけれども、やはりあの影響調査の報告というものは、これは私はある意味では当を得ておるような報告ではなかろうかという感じもするのです。これらの具体的な例について一体どういうふうにお考えになりますか。大臣、ひとつお答えいただきたい。
-
○
渡部国務大臣 これは
河野先生御指摘のように、今まで十割給付、つまりただであった方々が今回は一割御負担をいただくのでありますから、今までよりは御負担になるのであります。ですから、私どもは大変恐縮ですがこれをお願いをいたしておるわけでございます。
それなら、そのことによって
国民の皆さん方の健康の保持ができないかというと、さっきも先生と
局長との御質疑にありましたように、現在三割負担の国保の皆さん方あるいは健保の家族の皆さん方の健康も、被用者保険
本人の皆さんと同じように保持されておるわけでありますから、これは御負担をいただくことは大変恐縮でございますが、そのことの効果は、むしろ保険料率を将来にわたって今後中長期的に上げないで済むということで、結果的には被用者保険加入者の皆さん方の利益を守る、負担をふやさないで済むということにもなります。
こういうことを言うとおしかりを受けるかもしれませんが、人間これはただであるという安心感と、やはり一割負担をしなければならないということによってとでは、健康の自己管理の意欲も違ってまいりますし、また
医療機関の
医療態度も締まってまいると思います。そのことによって、むしろ、今まで心配されておった過剰
医療とかそういうものの
医療費の節減ということに働きますと、これも結果的には被保険者の皆さん方の保険料を将来上げないで済むという、被保険者の皆さん方の利益にはね返っていくということであります。
ただ、一番御心配になられるのは、低所得者の皆さん方が、このことによって長期入院というようなことで大病を思った場合、これは生活破壊になるようなことになってはいけませんので、そこで高額療養費制度という歯どめがあるわけでございます。その中にも低所得者の皆さん方にはかなり思い切ったそれなりの施策があるのでございまして、これらについてはなおまた、そういう御心配がないように先生方のお知恵もちょうだいできればこれも謙虚に耳を傾けてまいりたい、こう申しておるのでございます。
表現はいろいろあるでございましょうけれども、今の日本の置かれたる厳しい立場、なかなかこれ以上増税もできない。増税もできないということは、これ以上国費を
医療費に——先生、先ほどから社会保障の予算についていろいろ御心配を賜っておりますけれども、五十九年度は確かに二・何%かの伸びでありますが、今でもこの十年間を見ていただきますと、それは他の予算よりはるかに飛躍的に社会保障費が伸び、現在でも、九兆二千四百億円という社会保障に投ぜられておる予算は、先生御承知のように、我が国の国の予算全体の二八%を占めておりますし、その中で
医療費に対して国庫が出しておる金は三兆九千億。これも、よく臨調等で農業の保護政策とかいろいろ指摘されておりますが、農林省全体の予算よりも多いし、防衛庁の予算よりもはるかにオーバーし、あるいは防衛庁と通産省の予算を合わせたよりもオーバーしておるという状態なんでありますから、これ以上、さらに現在の「増税なき財政再建」の中で三兆九千億の
医療費の負担をふやすわけにも相ならぬ。しかもまだ、被保険者の皆さん方の保険料率をこれ以上上げるということになると、健康を一生懸命守ることに努力してお医者さんにかからなかった人が何か損をするというようなことになってもなりませんので、ここはひとつ被用者保険の皆さん方にも一割御負担をいただくことを御理解いただいて、そのことによって、先生の御心配になるような低所得者の生活破壊につながるようなことはないようにこれからもできるだけの配慮を払っていきたいと思いますので、まげてひとつ先生、これは御了承を賜りたいと存じます。
-
○
河野(正)委員 まげてもまげなくても了承はできぬわけです。
そこで、一般の
国民の方が憂慮していらっしゃるのは将来どうなるかということで、そこで私はビジョンが聞きたい、こう言ったわけです。というのは、やはり十割が九割給付になる、それが今度は八割になる、七割になるということですね。そうすると結局、私どもが言っているのは、行き着く先はアメリカ型の
医療になりはせぬか。実際、アメリカと日本とは随分違います。私も実際向こうの実情を知っておりますが、違いますね。ですから非常に、日本的な
医療保障というものがございませんから、要するに財団がやってみたりあるいは特殊のグループがやってみたりということですから、
医療を受ける貧富の差というのが非常にひどいですね。ですから私どもは、アメリカの病院を見てみても、非常に高度な
医療を受けておられる方々もいらっしゃるが、非常に
医療から遠ざけられておるという階層もありますね。そういう意味で、やはり現在の日本の
医療保障というものはもう世界で冠たるものですよ。それを今度は後退させようとするから私どもはいかぬと言っているわけです。
そういうことで、結果的にはそれがどうなるかというと、アメリカ人の場合は平均寿命が日本よりも低いです。それから乳幼児死亡率も高い、こういうようないろいろな欠陥というのが出てきていますよね。ですから、そういう意味で、日本は経済大国であるし、また健康大国でもなければならぬ、そのためにはやはりできるだけ今の十割給付だけは崩したくないということですね。そういうふうに私どもは強く念願しておるところです。
しかし、いろいろお答えをいただいておりますように、なかなか思うようなお答えをいただけないことが非常に残念です。ですけれども、それは一般の人は、十割給付が九割給付になった、それがアメリカ型の
医療なんというのはおわかりにならぬけれども、私どもはある程度わかるものですから、そういうことになっては大変だというふうに強く考えておるから、そういう意味で、この長期ビジョンというものを見せていただいて、そういうことにならぬのかどうか、そういう意味で冒頭にお願いしたわけですけれども、大綱をお示しいただくという程度に終わりまして、深く承知することができないことがちょっと残念ですけれども、せめてアメリカ型の
医療にだけはなってほしくないという強い念願があります。これについて大臣ひとつ。
-
○
渡部国務大臣 これは、先生のお考えと私の考えは共通していると思います。これは、私ども一般常識として考えておりましたのでも、日本のすばらしさというのは、皆さんが
医療機関に安心して信頼してかかれる、こういうことでありまして、アメリカでは非常に高い
医療費を払っているというようなことになってはいけないという反省があるので、私は、ここではっきりと、アメリカ型のようにすることのないことをお約束もできますし、またむしろ、この点は先生と同じで、そういうアメリカ型のそんなことになってはいけないので、日本型のこのすばらしい
医療制度を将来にわたって残すために一割御負担をお願いしたい、こういうところですから、最後のところはちょっと先生と変わるのですけれども、あとは先生と全く同じ考えなのでございます。
-
○
河野(正)委員 そこで、午前中からの議論の中に出ておりましたが、
医療費の伸び率が大幅に鈍化をしてきた、これはさきにも認めましたが、この
医療費の伸び率が鈍化をした。五十八年が対前年度比六千四百億、伸び率が四・六%、それが五十九年が前年度比三千七百億ふえるけれども伸び率は二・五%、これは大体史上最低ということになっておるわけですが、そういう伸び率が鈍化をする。私は今からそうこれが大幅に伸びていくということはないだろうと思うのです。それは今の行政指導の面から見てみてもなかろうと思いますよ。だから私は、余り先を悲観して、そして今回のような九割給付、六十一年から八割というような、六十一年はまだ今から大分あるわけですし予算とも関係しているわけですから、これは恐らく外さしていただくだろうと期待しておるわけですけれども、大臣としてもそのとおりでございますとはなかなか言えぬでしょうけれども、そういう気持ちでおります。今の
医療費の伸び率の鈍化は、私は今からずっとかなり続くのじゃなかろうか、こういうふうに思いますよ。ですから保険
局長、余り取り越し苦労されてお考えにならぬでも私はいいのじゃなかろうかと思います。
それからいま一つは、予算委員会その他で、
医療保険がつまみ食いみたいに議論されていますので、あちこちでいろいろな答えが出ておりますからね。それから、高額
医療の限度額も大体現状維持だというような感触を受けるような答弁があっておりますね。ですから、もう大体あとは、九割給付を十割給付にしてもらう以外には答えがないのじゃないかというふうな気もするわけです。しかし、いずれにしてもこの問題は非常に深刻な問題です。ですから、一つは総
医療費の伸び率が鈍化する、鈍化させるためには一体どういうことなんじゃといったら、やはりいろいろな施策がありますね。午前中からずっと薬価基準の問題が出ておりましたが、そういうこともありましょうし、また、今の医師過剰時代とかあるいは病院過剰時代とか、これは
医療法の改正をするとかなんとか医務
局長がおっしゃっているが、私もちょっと異論がありますけれども、いずれにしてもそういう問題の中で解決する方法が私はたくさんあると思うのです。そういうことを踏まえておるから、今から、この鈍化というものがまたそう伸びていくということにはならぬのじゃないかと私は判断して申し上げておるが、こういう見通しについては一体どうでしょうか。
-
○吉村政府委員 私ども別に故意に悲観をしておるわけではございません。やはり
医療費増加の原因というものを考えてみますと、一つは人口の高齢化、一つは疾病構造の変化、それから医学医術の進歩、こういうようなものが基本的に
医療費の増加要因になるんだろう。そのほかに、もちろん乱診乱療だとか不正の問題とかいろいろございますが、基本的な
医療費の増高を支える要因というものは今申し上げたようなことではないか、こういうように思うわけでございます。
そこで、人口の高齢化ということにつきまして、私どもいろいろ諸外国との比較もしてみました。私どもがそれによってわかりましたのは、人口の高齢化率と
国民所得に対して占める
医療費の比率、これは大体比例をしております。相関関係が極めて強いわけでございます。そこで、私どもは、今の
医療費というものは、確かに
国民所得に比べましても諸外国と比べて低いパーセンテージになっておりますが、これから本格的な高齢化が始まるとすれば、現在フランスや西ドイツやスウェーデン、イギリス、アメリカ等が悩んでおる問題が、二十年先、つまり二十一世紀を迎えるに当たって必ず来るというように見通しておるわけでございまして、人口の高齢化というのはどうしてもそれだけ大きな要因になるだろう、こう思います。
それから、医学技術の進歩というのも、やはり現在の科学技術の進歩の推移を考えますと、これも避けられない要因であろう。特にバイオテクノロジーというような分野というのが今後非常に拡大されていくとすれば、それが
医療費を高からしめることは避けられないことではないか、こういうように思うわけであります。
かてて加えて
医療従事者もふえていくだろうと私は思います。現在の
医療費の約半分は人件費だと考えてまあ間違いないところでございますが、この人件費を、
医療従事者の賃金所得でございますので、やはり
国民所得と少なくとも同じくらいは伸ばさないと
医療機関の経営そのものがおかしくなる、そしてそれが日本の
医療を崩壊させることになる、そういうことになるのではないかと私どもは思います。したがって、
医療従事者の待遇というものもやはり今後考えていかなきゃならぬ。しかもその
医療従事者というのはふえることはあっても減ることはない、こういうことでございますので、ふえる要因ばかり多くて、
医療費を減らす要因というものは少ない、こういうことに思えます。
したがって、余り取り越し苦労をするなという先生のありがたいお言葉なのでありますが、やはりいろいろな角度から考えて取り越し苦労をせざるを得ない、そして今のうちにいろいろな手を打っていかないと、
国民医療費を負担する能力と
医療費の伸びとの間にギャップが出て、
医療保険の基盤そのものが揺らいでくる、こういうように思うがゆえに、今回の改革案の提案をさせていただいたわけでございます。
-
○
河野(正)委員 一つは、今まで政府の方針としては、
医療費の伸び率というものを
国民所得の伸び率以下に抑えていく、それならばうまくいく、それはもうそうなっているわけですね。
それから高齢化の問題、これはそのとおりでございます。しかし、これは老人
医療の問題でプライマリーケアその他ありますね、どのくらいの額になるかわかりませんけれども、それである程度の成果は上がってくるかと思いますね。
それから、これは各論ということですから後でいろいろなことを申し上げたいわけですけれども、病院その他の医業経営が健全でないと、
医療も健全でないですね。これは大臣もそういうことを新聞なんかに書いておられたようですが。ですが、残念ながら今の医業経営というものは非常に行き詰まりつつあります。
局長は人件費が五〇%とおっしゃるけれども、五〇%なら病院はつぶれますよ。そういった重大な問題も出てきておるわけですね。
例えば、先ほど例の宇都宮病院の話が出ましたが、あれは極端に言いますと悪いことをするからあれだけ成長しているのですよ。今、まともに病院を運営してそうもうかるものではない。かつて薬の差益でよかった時代もありますよ、それで病院というものは非常に近代化されましたね。私的
医療機関というのは近代化された、そういう時代もあった。ところが、今日は病院経営に対する明るい展望はないでしょう。薬価基準は毎年下がりますね、閣議決定されるんだから。そして
医療費は上がらぬでしょう。今度三月になるほど上げてもらったけれども、算術計算で言えば二・三下がるわけです。片や五・一で、片や二・八ですから二・三収入が下がる。そういうことですから、機械的に言えばことしの三月から非常に悪くなってきた。そして七月からまた——これは私どもはぜひ十割給付にしてもらいたいということだから、それから先は余り論及せぬ方がいいかわからぬけれども、しかし一応案が出ておりますから言わざるを得ぬですが、やはり九割給付で受診率が落ちる、これは確実ですよ。それは、例えば国保とかと対比しておっしゃるけれども、今まで十割にならされておるでしょう、十割にならされておるから、一割負担するということでも被保険者にとっては大変なことなんですよ。これは自分たちの生活もそうですね。生活をよくすることは非常にスムーズにいくけれども、今度は生活を落とすことはなかなか難しいですよ。これはどなたでも御経験のとおりだと思うのですよ。ですから私は、やはり七月以降はさらに情勢は厳しくなる、こういうふうに思うわけです。
そこで、私的
医療機関、公的
医療機関がありますが、私的
医療機関についてはいろいろ議論があるところでしょうから、公的
医療機関だけ取り上げてまいりましても、大体公的
医療機関で黒字が四四・七%、赤字が五五・三%、赤字の方が黒字をオーバーする、これは公的
医療機関ですね。私的
医療機関でも大体フィフティー・フィフティーぐらいの状況になっておると思うのです。健全な医業経営のもとに健全な
医療というものは成り立つわけですから、そういった意味では
医療の質が低下しますよね。これはまともな話をしているわけだから。病院の経営者の中には悪いのもおりますよ、そういうのは取り除いて話をしているわけだから、ひとつ謙虚に聞いてもらいたいと思う。ですから、今のまま推移しますと、私は
医療の質というものが低下すると思うのです。この点についてはいかがでしょうか。
-
○吉村政府委員
医療の質というものをどういう形ではかるかということでございますが、確かに
医療機関の経営基盤というものがおかしくなれば
医療の質というものも下がっていくであろう、これは先生のおっしゃるとおりだと思います。ただ、やはり、薬価基準の引き下げ等あるいはこの改正をやって生じてくる影響は、個々の
医療機関によっていろいろ違うのではないかと私は思います。したがって私ども、いい医業、いい
医療機関が育っていく、その経営がうまくいく、そしていい
医療が育っていくということは、どうしても確保しなければならない私どもの義務でございますから、やはり現在の改正案によって、若干、私どもは
医療費の、こう言うとまた先生に怒られるかもわかりませんが、水膨れみたいな部門あるいは肥満したような部分を少しスリムにして、糖尿病体質みたいなものを残さぬようにする必要があるのではないか、こういうことからやっておるわけでございます。
したがって、今回の改正というものによって
医療機関の経営等に非常に大きな影響を与えるとすれば、そのときにはやはり考えなきゃならぬ別の問題が出てくるであろう、こういうように思います。
-
○
河野(正)委員 そこで、先ほどこれは医務
局長からもお話しをしておったようですが、毎日新聞の社説によりますると、「病院倒産時代が来たのか」、こういう社説が掲げられておりますが、民間の信用調査機関のデータによりましても、倒産件数は増加の一途をたどっておる。「五十四年、十八件。五十五年、四十二件。五十六年、三十四件。五十七年、五十一件。そして昨年、五十八年は過去最高の五十四件」ということですね。「今年は、一、二月だけで、すでに十七件の倒産。昨年の一、二月の五件を大きく上回っている」。それから、倒産の負債額にいたしましても、「五十七年は五十一件で、百五十七億六千四百万円。五十八年は五十四件で、四百五十七億六千百万円。」、件数で三件ふえただけで、この負債というものは約三倍になっておる。いわゆる大型倒産ですね。こういうことになっております。
こういう状況であるわけですが、もちろん病院の倒産というものがどうして起こってきたのかということになりますと、いろいろな考え方があります。必ずしも不健全な運営をしたから倒産したということばかりではないですね。これはもう先ほど医務
局長がちょっと話されておりました。まじめに病院の経営に努力しながら行き詰まる。行き詰まらないでも、先ほど申し上げました明るい展望がないですね。来年、薬価基準がまた下がるでしょう、ことしほど下がるか下がらぬかは別にして下がるでしょう、これは閣議決定ですから。ならば、
医療費は来年上がるかということですね。そういうことで、ここで医業経営が非常に厳しくなりましたから、大臣が、来年は
医療費を上げますよと約束した場合は明るい展望になるわけです。そうしますと、私どもも、ならひとつ、この春のベースアップはどうするかとかあるいは病院の近代化をどうするかとか、いろいろやりましょう。しかし、それらは絶対考えられないという状況になるわけですね。ですから、これは何も私ども病院のために言っているのじゃなくて、健全な医業のもとで健全な
医療というものがあり得るという建前から言っているわけですから、これは大臣からも、病院の安定経営については努力してあげる、しなければならぬというようなお話も承っております。ですが、今申しましたのは、病院の利害ということじゃなくて、今申し上げますように、こういう健全な医業が行われなければ健全な
医療というものが成り立たぬわけですから、そういった意味で、この点に対してどういうふうに安定経営のために努力していただくのか。また、
局長もさっき、そういう事情が出てきたならば当然考えなきゃならぬだろうとおっしゃっておるわけですから、ひとつそれぞれからお答えをいただきたい。
-
○
渡部国務大臣 私は、大臣就任のときの記者会見で、まず患者のための
医療行政の推進ということを申し上げました。その患者のための
医療行政の推進ということは、つまり患者の皆さんが安心して
医療機関にかかれる、また、
国民の健康を守り困難な病気を治していく
医療機関が常に進歩発展をしていくということでありますから、したがって、患者のために安心してかかれる
医療体制をつくるということは、病院、開業医を問わず
医療機関の経営基盤をしっかりとしたものにすることでございます。開業医の皆さんもあるいは
医療機関を運営しておられる皆さん方も、やはり意欲を持って、希望を持って
国民の健康を守るお仕事に頑張っていただかなければならない。そういうことから、今度の五十九年度の税制でも、新規政策税制というのは極めて困難なときでありましたが、皆さん方の御協力をちょうだいして
医療法人の承継税制というようなものもつくったわけでございます。先生も病院経営でございますから、これらは評価していただいてよいと思うのでありますけれども、これからも、先ほど先生のお話しで私が申し上げましたが、将来の我が国の
医療行政に対するビジョンづくりというものの中では、やはり医業経営の基盤安定も入れてくれ、これは直接私から、保険
局長を初め関係の
局長に申しておるところでございます。
ですから、今まで議論がありましたように、確かに、
医療機関というものが、かつての時代より今日非常に厳しい経営状態に置かれておる現実というものも私も承知をいたしております。先生は病院の経営者ですから私よりよく知っておるわけでありますが、私も家内が歯科医院を経営して、そこに居候をしておりますから、保険
局長よりは
医療機関に近い直接の経験を持っておるのかもしれませんので、これらの点は厚生省の幹部の皆さん方にもしっかりとお願いしておる。しかし、これはあくまでも患者の皆さん方の
医療助成、患者の皆さん方の利益を増進するという意味で、その手段として、
医療機関の経営の安定ということにこれから努めてまいるということを申し上げたいと存じます。
-
○吉村政府委員 保険局の行政の範囲で申し上げますならば、現在、中医協におきまして診療報酬の問題というのは引き続き検討をしております。この三月一日に
医療費の改定をいたしましたが、それで終わった、こういうわけではございません。あらゆる観点から引き続き検討をする、こういうことで毎月一遍、ただ三月、四月はちょっと医師会長選挙の関係で延びておりますが、毎月一遍
医療費の診療報酬の問題について継続して議論をするということになっておりますので、私は、今先生がおっしゃられたような状態というものは十分含みながら診療報酬の問題の審議をしていただく、こういうことにしたいと思います。
-
○
河野(正)委員 大臣、
局長もそれぞれ今日の厳しい医業経営の実態を踏まえてお答えをいただいたわけですが、大体今の病院の倒産の理由を大別しますと、一つは病院過剰ですね。一つは、午前中も出ておりましたが、過剰設備あるいは放漫経営といいますか、中には副業に手を出すとか、今度の宇都宮病院がいい例です。しかし、大体構造的な倒産、そういう意味を持ちつつあるというのが今日の特徴じゃないでしょうか。
ですから、いずれ後でお尋ねしたいと思いますが、その前に一言、今中医協でも
医療費の適正化について御相談いただいておることですから、なるたけ早く結論を出していただくことも、今日の病院経営の危機を救う一つの手段になると思いますね。
ところが、先ほど
村山委員の質疑の中で聞いて、私、これはいかがなものだろうかというふうに考えておったわけですが、技術料ですね。この問題は、あのとき聞いておりましたところは、大体所得によってというような話がございました。所得で技術料が判断される、こういうような話があったのですね。しかし、私は所得と技術料とは別個のものであると思うのです。例えば、大学教授が開業したって大して収入は上がりませんよ、点数が同じですからね。ところが、今度は研修医あたりがばっと開業して、それこそ体力に物を言わせて駆けずり回ったら、出来高払い制度ですから収入は上がりますよ。だから、所得が技術料じゃないですね。そうすれば、研修医の方が大学教授よりも技術が上だということになる。ですから、技術料の評価というものはなかなか難しいと思うのですね。特に、一つの解決策は専門医制度ではないだろうかというようなことを考えてみていろいろ言ってきた時代もありますが、ところが、これはまた、学会は学会でいろいろな意見があって、私、あの当時それに近いものはないだろうかということで、専門医じゃないけれども、同じ点数では矛盾があるわけですから、そこで、学校出たての人と十年も二十年も経験のある人が同じ点数じゃこれは全く無理な話ですよ。ですから、せめて年限で、十年
医療の経験があったならば幾らか歩増しをしてやるとか、十年がいいか悪いかは別ですよ、そういうような議論もしたのですが、なかなか武見大先生の御意向に沿うことができないでうまくいかなかったのですね。しかし、何らかの形でそれをやらぬと、本当の適正な技術の評価というのはできぬのではないでしょうか。それは私どもとしてもなるたけ早くやってもらいたいが、政府もやりたいことはわかっておるけれども、なかなか具体的にはうまくいかない。今は出来高払い制度、そうでしょう。この出来高払い制度はいかぬと言って、いろいろ議論がありますね。なら、それにかわるべき方法が何かあるかといったらなかなかない。それが現実だと思うのですよ。ですから、今申し上げますように、健全な
医療のためには健全な医業というものがなければならぬという建前からいけば、病院倒産というものは阻止しなければならぬ。阻止する方法が幾つかあるかといったら、一つはやはり今の点数の合理化。ですから、いろいろな議論を聞いておりますと、私は別に医者だということで議論したのじゃないですよね、ただ、医者としてその方面に若干知識があるからそういう立場で物を言っておるのですがいろいろな議論を聞いておりますと、今の医業危機というのは、薬さえたたけば解決するような意見が強い。私はそうじゃないと思うのですよ。それもありますよ。ありますけれども、やはり薬価基準なら薬価基準に対する啓蒙は厚生省みずからがやらなければいかぬですよ。ですから、それはどういうことかといいますと、薬でもうけるというそれは随分薬価基準は下がりましたからね、もうかつての時代じゃないですよ。そしていま一つは、バルクラインが九〇%、八一%でしょう。だから、むしろ薬価基準よりも高い薬があるということなんです。ですから、私どもの経験では、やはり何千種類かの品目を扱いますが、その中の五品目、六品目はやはり薬価基準より高いですよ。ですけれども、医者がいわゆる道義的に診療をしようとすればやはりそれを使わなきゃならぬ。ところが、医は算術なんていう議論が出ておりますけれども、そうすればばからしいからやめておこうということで、医は算術なんていう議論がいろいろ出てきておると思うのですが、ですから、そういうことになりますと、やはりまじめな非常に良識ある医者の今後というものほかえって非常に厳しいと思うのです。悪いやつは徹底的に痛めつけてもらっていいですよ。しかし、まじめな良心的な医者というものは、先ほどから大臣からも
局長からもお答えがあったように、やはり助成してやらねばいかぬ、それが日本の正しい医業というものを守る道だと私は思うのですね。そういう意味で、正直者がばかを見るようなことがないように願いたい。
ですから、今申し上げましたように、薬価基準をたたけば今の
医療の赤字問題が解決するというようなことじゃなくて、それはなるほど一部はそうですよ、しかしその他たくさんな解決しなければならない問題があるわけです。ですから、その際やはり、薬価基準だけたたけばよろしいという議論に対しては、薬価基準とはかくあるべきでしょうと、天井はこうですよと、正々堂々と言っていただいていいと思うのですよ。それを、反発したらまたたたかれよう、出るくぎは打たれるというようなことで、すぐみずから萎縮してしまう、こういうことでますます医業の実態というものが認識されない。医業というものを誤って理解することによって
医療制度が変わったら、日本の
医療というものが逆行しますよ。ですから私は、どっちがいい悪いじゃなくて、やはり正しく理解してもらう、その上に立って
国民がどう批判するか、そういう建前というもの、大臣はなかなか演説がうまいですから、ひとつ十分、奥さんからも随分陳情が来ておるでしょう、ありませんか。——どうかひとつ、そういう点を今後十分お願いしたい。これに対する御見解を伺いたい。
-
○吉村政府委員 確かに、薬を一概に悪者にしたような議論が正当な議論でないことは、おっしゃるとおりでございます。ただ、私どもとしては、薬の価格というものはやはり実勢価格を薬価基準に反映させていく、こういう政策をとる。同時に、診療報酬の点数のいわゆる技術料なり経営の問題というものは、また別個の観点から、今先生が言われましたように健全な経営が育つように、あるいはいい
医療が育つように考えていかなきゃならぬ問題だろうと思うのです。したがって、私どもは、今薬価基準については実勢価格に応じて下がるものは下げるし、上げるものは上げるという政策を一方でとりつつ、一方では診療報酬の合理化、診療報酬の是正、こういうものについても考えておる。こういう二本立てみたいなことで現在進んでおるわけでございます。
そこで、先生がおっしゃいました技術料をどう評価するか、こういう問題でございます。これはもう先生も御承知のように、昭和二十年代あるいは三十年代の初めからいろいろ議論が積み重ねられたのでありますが、技術料というものをどう設定するかというのは非常に難しい問題で、いまだに解決がついていない話でございます。
確かに常識的に言いますと、大学を出たてのお医者さんと経験豊かなお医者さんと技術料が同じというのは、これほど不合理なことはないとみんな思っておると思うのです。しかし、それではどういう技術差を両者の間に設けるか、ここが一番難しいわけでございまして、今先生が示唆されました経験年数をとるというのも一つの考え方でありますが、いたずらに馬齢を重ねておる人だっておるわけでございまして、私は、経験年数と技術が比例する領域とそうでない領域があると思うのです。したがって、専門医制度みたいなものができることがこれまた望ましいかもしれませんが、これも難しい。
これは若干私の個人的な見解にわたるかもしれませんが、各お医者さんの中で医学会ができております。内科学会だとか、耳鼻科学会だとか、眼科学会だとか、いろいろ学会がございます。そこで認定医みたいなものを自主的につくっておられる学会がたくさんございます。そういう認定医というようなものについて、何らか特別の技術加算というようなものを設けるというようなことが一つの解決策でございます。
それから、もしこういうことを言えばまたおしかりをこうむるかもわかりませんが、技術料の差額徴収というものは一つの考えるべき課題であろう、中医協でも議論をしてもらおうと思っております。差額徴収で技術差の問題を解決するのがいいかどうか、これは問題がございます。しかし、解決の方法であることは間違いないと思っております。いろいろ技術差というものを勘案する仕方というものはあると思うのでありますが、少し医師会あたりで自主的にランクを決めてもらうというようなことができるならば、非常にありがたいと私どもは思っておるのです。正直に思っておるのです。それを公的な制度の中に取り入れることができるならばある程度解決の方向へ向かう、こういうように思っております。この辺も含めて中医協で検討してもらおうと私は真剣に考えております。
-
○
河野(正)委員 いろいろ真剣に考えておられる内容はわかりました。ただ、今気になるのは、例の技術料の差額徴収ですな。これはかねがね厚生省が、差額徴収はやめよう、今度もそれで問題となっておりますのは、例の指定を受けますと、特定の機関になりますというと差額徴収ができるということで、これも問題の一つになっておるわけです。そういう意味で、これはいろいろ意見のあるところです。ただ、基本的には差額徴収というものはやめようというのが今日までの厚生省の方針であったはずですね。そこにまた改めて技術料を差額徴収でいこうというこの構想は、ひとつぜひおやめいただきたいと思います。どうですか。
-
○吉村政府委員 私は、差額徴収で技術差の問題を解決すべきだと言っておるわけではございません。一つの方法としてそういうものもございます。それを
国民の皆さんがそれでもいいではないか、その方法をとることが日本のお医者さんを優遇し、日本の
医療をよくすることにつながるのなら、みんながそれでいいではないかとおっしゃるのなら、一つの方法としてありますということを言っておるだけで、私はぜひその方向で推進をすると申し上げておるわけじゃございませんので、ひとつ誤解のないようにお願いをいたします。
-
○
河野(正)委員 実は私はそういう意味で言ったわけじゃないのですね。ただ基本的に、差額徴収をすることは
医療に格差をつくるでしょう、金持ちはいい
医療を受けられるし、貧乏人は受けられない、こういう結果になるわけですから。というのは、差額徴収を受けようとしている人は立派なお医者さんでしょう。高度な技術を持った人でしょう。そうすると、金持ちはそういうような立派なお医者さんから診療を受けられるけれども、貧乏人は受けられない。これはかねがねずっと議論してきたところですよ。それで行きますと
局長が言ったわけじゃないけれども、そういうことすら、ここでまた改めて芽が出てくることは適切ではない、そういう考え方が出てきたことは適切ではない。だから、それをあなたが強行しようとかあるいはそれだけを解決方法として絶対やるんだという、そういう意味で私は言っているんじゃなくて、やはり厚生省の今日までの方針というものがそういうように変わっちゃいかぬ。もう
局長に言わせると、何もそうすることではありませんよ、解決方法の中の一つですよとおっしゃるけれども、少なくとも厚生省は、今まで差額徴収というものはいかぬぞということで指導してこられた、そういう中で、その一つと言いながらそのことをここで取り上げられたことは、私は適切な答えではなかったというふうに思うわけです。そういう意味で、これは考え方としては聞きますよ。しかし、少なくともそれを実行するようなことはやってもらいたくない、こういうことですね。大臣、よろしゅうございますか。
-
○
渡部国務大臣 いろいろの御意見があると思いますが、私は素人でありますが、やはり過去にも、医師の学問研究というものが医師の収入というものに結びつかない今の平均的な診療報酬制度というようなことで、いろいろの御批判があったことも聞いております。そういう議論の中で、今の
局長の意見というようなものも一つの考え方としてあるわけで、それを保険
局長は披露したのでありまして、これから厚生省の方針として政策を決めていく場合は、もっと幅広く、これは
国民を代表する各党の皆さん方の御意見も聞かなければなりませんし、いろいろ判断していくことであって、今は一つのこういう考え方もあるという意見を御披露した、こういうことだと思っております。
-
○
河野(正)委員 そこで、先ほどから
医療費の伸び、そういう問題について、鈍化がまた上向いていくということはないだろうと言ってきたのですが、今後の情勢というものが保険財政に及ぼす、いろいろな要因があると思うのです。
今、私は病院の倒産危機の時代が来たということを指摘をして取り上げた、その中の一つに医師過剰、こういう時代がやってきておるわけですね。御承知のように四十五年に、人口十万に対する百五十医師、こういう方針を策定されたが、六十年を待たずしてもう既に達成したわけですね。どちらかと言いますとそれが今からだんだん余剰になっていくわけですね。少なくとも人口十万に対する百五十は一応達成したわけですから、二年も早く達成したわけですから、それが今から余剰になっていく。今後開業する人もおりましょうし、そういうことでこの保険財政を圧迫する。圧迫するという言葉が適切であるかどうかはわかりませんけれども、そういう状況を現出しはせぬだろうかという感じがいたします。それと、いま一つは、医師が過剰になっても、それが普遍的に配置されればいいのですけれども、都市集中ですね。ですから、ますます
医療競争というふうな時期になっていきますね。
ですから、これは予算委員会の中でも、もう医師過剰だからこの際ある程度抑制していかなければならぬということが文部大臣からも言われておりますね。厚生大臣にも私は若干質問いたしました。それはそのとおりです。ただ、試験の前にやはり試験要領というのを出さなければならぬですね。受験生は、とにかくこの大学の医学部は何人採るんだろうかということでいろいろ模索しておるわけですから、やはりこの方針というものは早く出さぬといかぬのじゃないか。それで、そのことが結果的には、やはり今申し上げますように医師過剰の中で今後保険財政に及ぼす影響があるとするならば、早くこの問題も解決しなければならぬということでございますから、そういう意味で、ひとつ大臣のお答えを改めて承っておきたいと思います。
-
○
渡部国務大臣 これは誤解をして受け取られると大変間違ったことになりますので、明確に申し上げておかなければならないわけです。
昭和四十五年、先生御承知のように、厚生省は、十万人当たり百五十人ぐらいの医師が適当であろうという一つの方向を決めて、それには文部省で大体六千人程度の医師の養成機関をつくっていただければ六十年度に目標を達成するということで、文部省にお願いをいたしました。その結果、今では、厚生省の当時の医務
局長がお願いした六千人ところか、八千三百人をオーバーする医学部の定員になってまいりまして、百五十人という初期の第一回の目標は既に達してきたわけでありますが、それならそのことが今すぐに医師過剰であるということにつながるかといいますと、その当時と若干条件が変わってまいりまして、いわゆる想像もできなかったような老齢化人口が急速に進んでまいります。そうすると、これは老人の方が
医療機関にかかる件数は若い人よりはるかに多いわけでありますから、やはりこれから急速に近づいてくる老齢化人口ということをもう一遍物差しのはかりに入れて、十万人・百五十人というのが適当であるかどうかということをもう一遍見直さなければならない必要性が出てまいりました。
もう一つは、先ほど先生の党の
村山先生からも御指摘がありましたように、まだまだ医師の配置についてはばらつきがありまして、離島であるとか僻地であるとかにまだ無医村で困っておるというような地域もあるわけでありますから、一方で過剰な地域もありますけれども、一方ではまだ医師がいなくて困っているということもありますから、医師の適正配置ということももう一遍これは見直さなければならないわけであります。
ですから、八千人を既にオーバーする医学部の定数というものをこのまま放置しておけば、これは将来は医師過剰の時代が来るのではないかという心配はもっともなのでありますが、直ちに今すぐこれは医師の過剰になっておるということではございませんので、そこで厚生省としましては、これから文部省当局と密接な連絡をとり、また
医療機関それぞれの代表の方などにも入っていただいて、これから二十一世紀の日本の
医療を揺るぎなきものにするのには医師はどのくらいが適当であるか、それにはまた医学部の定員を文部省にどの程度のことをお願いすればいいのかということを、検討委員会をつくってこれを慎重に検討して、今後の医師の配置、また、医師の過剰を将未来してはなりませんが、しかし、同時にまた、医師不足というようなこともあってはならないのでありますから、その辺を間違いないように検討してまいりたい、こういうことでございます。
-
○
河野(正)委員 私は、今医者が多いのか少ないのかと言えば、やはり世論的には多い。ですから予算委員会では、文部大臣はもう率直に、来年から減らすんだ、こういう御答弁をなさっていますね。ただ問題は、要するに国立大学、それから私立の大学がそれぞれありますから、そこで、なかなか大臣も言いにくいところもあろうかと思いますよ月それは文部省関係でしたらすぱっとそう言える。とにかく定員が少ない方がいい教育ができるわけですから。しかし、私立大学の場合はなかなかそうはいきませんね。だから、大臣はなかなか慎重にお答えになったなと私は心の中でそういうことを感じながら御答弁に感服しておったんですが、ところが一つ問題は、私はこういうところにあると思うんですよ。
医師が多いか少ないか、それはやはり地域
医療に対する方針というものが出ていないものだから、それは一つは国が自治大学なんかをつくったけれども、大した効果は上がらぬですよ。ですから、とにかく医師養成と同時に地域の配置、これをどうやるのかということが今まで実践されてないものだから、結局都市に集中しちゃって、僻地や離島にはだれも行かぬでしょう。ですからやはり、いろいろ今後検討委員会で方針を策定されるなら、そういう問題を十分念頭に入れながら、地域
医療に対する対応というものを考えながらやってもらわぬと、それは幾ら八千ふえようがあるいは七千ふえようが、とにかく都市に集中して、もう大学に行ってごらんなさい、たくさんいますよ。ですから、言葉ではそう言いながら、要するに僻地とか離島には行きたがらないということですね。
そこで、私はコロンボ計画について特に思うたんですが、やはり僻地とか離島へ行ったら、子供の教育もできぬし、とにかく知らぬものばかりでしょう。とにかく知識は上がりませんよね。やはり都市におれば勉強の機会も多い。ですから、僻地や離島へ行けば腕は下がるばかりですよ。そして文化生活もできないし、それでまた子弟の教育も困る。それで、そのコロンボ計画で医者を後進国に派遣するときに、これは私の提案で恐縮ですけれども、やはり裏づけというものがなければならない。金だけではいけませんよ。幾ら金をやったって文化生活ができない、幾ら金をやったって子供の教育はうまくいかないという問題ですからね。やはりそういう僻地に勤めてくれる医師については、勤めたらその後勉強の機会をつくらせるという条件をつけるとかなんとかして、やはり僻地対策を、今度の医師過剰問題に対して対応されるならば、当然それを盛り込んでやられぬと、それはもう幾らふえても、医者は僻地、離島には行きませんよ。最近も新聞に出ておりましたが、もうみんな僻地、離島は、島民がむしろ帰ってくれというぐらいな状況でしょう。ですから、私は、医師過剰時代が来たということは大体一般的な常識ですが、ところがそれを解決する道は、今も言うように、やはり地域
医療対策というものをぜひ盛り込んでやってほしいというように思います。それについてひとつ見解を聞いておきたいと思います。
-
○
渡部国務大臣 全く先生の御指摘と同感でございまして、そういう先生のお考えのようにこれを進めるためには、どうしても地域
医療計画というものを立てていかないと、そういう医師の適正配置とかいろいろなものが進んでまいりません。
そこで、私どもは、この健保法を御審議いただいた後に、
医療法の改正案を出しておりますので、この御審議を賜りたいということでございます。今までも私どもは、自治医科大学の創設等そういう大きな夢を持ってそれなりの効果を上げてまいりましたが、まだまだこれは僻地、離島そういうもの、また
医療というものは、やはりむだがあってもならないし、また
国民すべてがやはり安心して
医療機関にかかれなければならないのでありますから、北は北海道から南は九州、沖縄まで、まず第一次
医療、これは
国民すべてが受けられ、それから重い病気になるに従って、むだのないように第二次
医療、第三次
医療に行けるようなそういう計画、これは非常に大事なことだと思います。そういうことで、これからそういう計画を立てるように進めてまいりますので、先生の御協力を賜りたいと思います。
-
○
河野(正)委員 先ほども聞きましたし、それからまた予算委員会でも承ったわけですが、その検討委員会というのはもう既にできたんですか。
-
○吉崎政府委員 ただいま人選を鋭意進めておるところでございまして、遅くとも一月以内ぐらいには発足させたいと考えておるところでございます。
-
○
河野(正)委員 これは速やかにやってもらわぬと、予算委員会における文部大臣の答弁が適切だったかどうかわかりませんよ、それはわかりませんけれども、あの答弁を聞く限りは、もう来年からやりたい、検討を命ずる、こういう意味の話がありました。そうしますと、やはり早く結論を出さぬと、入学試験要領なんか出さなければいかぬわけでしょう。そうしないと、これは受験生に非常に迷惑をかけますよ。だから、今から人選というようなことじゃ、これは現実がそうですから仕方がないとしても、やはり早う委員会を成立させてそして速やかに、先ほど私が私見を述べましたが、そういうことを含めてひとつ検討に入っていただきたい、こう思います。よろしゅうございますか。
-
○吉崎政府委員 先ほど大臣からお答えしたとおりでございますけれども、医師の養成にはかなりの期間がかかりますので、確かに過剰になるだろうと思われますのは将来の課題でございますが、できるだけ早く計画的に着手する必要があると考えております。
なかなかこの養成数を削減するというのも大変なことでございますから、過剰になったからといって一気にどかんというわけにまいりませんので。一方、将来の我が国の医師の数がどれくらいが適切であるかということは、これはなかなか難しい問題であろうかと思います。お話しにもございましたように、地域
医療の実態、医学の進歩、それからまた人口構造の変化、その他諸般の情勢の変化に伴いますところの
医療事情の変化、そういう多角的に御検討いただかなければいかぬと思うわけでございますが、一方、しかし、先ほど申し上げましたように、早く計画的に着実にやる必要があると考えておりますので、委員会にお願いをいたしまして、中間的なものでも六十年度からの施策に間に合いますようにお願いをいたしたいと考えておるところであります。
-
○
河野(正)委員 ぜひ検討委員会を速やかに発足させていただいてそして検討に入ってもらう。その際には、先ほど申し上げましたような、私見ですからそれはいろいろな意見があると思いますが、そういう意見も踏まえながらぜひひとつ早急に結論を出していただきたいと思います。
相前後しますけれども、先ほど薬価基準の問題が出ました。そこで、この問題も今後の
医療を考えていく際に非常に重要な問題でございますから、私どもはそのことを否定するものではございません。そこで、できるだけ病院の経費を抑制していこうということで極端に言えば安い薬、それは何か、今までの議論によりますと開業医はみんなそういうことをやっておるというような議論ですけれども、ところが、私どももいろいろな情勢もわかっておるわけですが、そこでここで承っておきたいのは、今はやっておる薬の第二市場、言葉をかえて申しますとブラックマーケットのあることを御存じでしょうか。
-
○正木政府委員 医薬品の流通市場というのは先生御案内のようになかなか複雑でございますが、お尋ねのございましたいわゆる現金問屋というのは、回転率の高い商品を中心的に取り扱いまして、流動的な取引先を相手に、価格面を主体とした販売活動を行っておるという卸でございます。
御案内のように、医薬品の卸は直販と一時卸、それで九十数%ということで、現金問屋の占める割合というものは極めて少ないわけでございますが、これが流通市場にかなり影響を持っているということは事実でございます。
-
○
河野(正)委員 それが多かったら大変なんですよね。ですから、このブラックマーケット、薬が非常に安いのですよ。東京でいいますとアメ横みたいなもの。薬のアメ横ですね。この第二市場、これは合法的であるわけですね。正規の手続をして許可を受けてやっておる。ですけれども、その営業が果たして信頼できるのかどうか。極端に言いますと、このブラックマーケットがあるために、錠剤その他そういうものは割合長くもてるものですから、ブラックマーケットから仕入れてくるわけですよ。そして水物、アンプル物、こういうものは変質しますから、これだけは自分の地元から購入する、これが公的
医療機関にあるのですよ。そういう実態を御存じかどうか。
-
○吉崎政府委員 公的
医療機関におきましても、先ほど業務
局長からお答えいたしましたような現金問屋から購入しておるという事実は承知をいたしております。
-
○
河野(正)委員 承知をしておられるということは、それでも差し支えない、要するに安上がりなら差し支えない、こういう判断でしょうか。
-
○吉崎政府委員 医薬品は
医療の分野で非常に重要な役割を示すものでございますので、その品質は極めて重要であると考えております。
そこで、この有効期限あるいは現金問屋の場合には流通過程における品質管理が適切であるかどうか、それから安定供給の能力があるかどうか、そういう点に十分配慮をして細心の注意を払って購入をすべきであると考えます。
-
○
河野(正)委員 細心の注意を払われたわけですか。
-
○吉崎政府委員 公的機関は重要な役割を担っておりますから、そういう細心の注意を払って購入しておるものと考えております。
-
○
河野(正)委員
局長がお考えになっているのですか、あるいは事実をチェックして差し支えないというふうにお答えになっておるのですか、どちらですか。
-
○吉崎政府委員 公的
医療機関の責任において、今申し上げましたようないろいろな点に十分配慮してやっておるのでありまして、私どもがチェックをしたわけではございません。
-
○
河野(正)委員 配慮してやっておる、それは
局長の想像でしょう。十分実態を調査してそうだという意味でお答えになっているのでしょうか。そうじゃないと思う。
-
○吉崎政府委員 ただいま申し上げましたけれども、調査はいたしておりませんが、公的
医療機関でございますからそうに違いないと思っておるわけでございます。
-
○
河野(正)委員 このブラックマーケットで購入すれば薬は安いのです。べらぼうに安いのです。べらぼうに安いということは正規のルートに乗ってないわけでしょう。ですから、いつどういうことがあるかもわからぬということで、このブラックマーケットについてはいろいろ議論になっているのですよ。それを実態も知らぬで、そして多分それはそうでしょうということで、もし事故が起こったら、あなたは責任をとりますか。
-
○正木政府委員 いわゆる現金問屋、これは薬事法で卸売一般販売業の許可をとっておるわけでございます。
医薬品につきましては、生命関連商品と言われますように、安全性、良質な薬、それの安定的な供給ということが極めて大事でございます。この現金問屋につきましても、卸売一般販売業ということで、構造設備であるとかあるいは衛生面についての規制があるわけでございます。この点について問題があるということになれば、薬事監視等の面できちっとした措置をとっていくという体制になっておるわけでございます。
-
○
河野(正)委員 これは今やはり問題の火種になっておるわけです。そして、もし事故が起これば当然公的
医療機関ですから民間のようなわけにはまいりませんね。その責任は重大ですよ。だから、とにかく病院のいわゆる支出が抑制されればよろしい、どういうことをやっても手段を選ばすという形で、いわゆる公的
医療機関の支出が抑えられればよろしい、そういう見解でしょうか。決して悪いというような御発言が出てこぬわけですが。
-
○吉崎政府委員 先ほど先生からお話しもございましたが、また今業務
局長からもお答えいたしましたけれども、医薬品は非常に重要な商品でございますので、薬事法でもってきちんとした監視をしておるわけでございますけれども、一方、
医療機関の管理者は、当然のことながら、先ほども申し上げましたようないろんなことに十分細心の注意を払う責務があると思います。
そこで、先ほど申し上げましたように、特に公的
医療機関では、先生からもお話しがございましたけれども、そういう注意を払っておるものと考えておりますが、全部について調べたわけではありませんけれども、私どものところでお話しになった限りでは、公的
医療機関は当然のことでありますけれども、そのような注意を払って購入をしておられるというふうに考えております。
-
○
河野(正)委員 なるほど、先ほど業務
局長からもお答えがあったように、合法的な企業であることは間違いないわけですよ。ですけれども、べらぼうに安いわけですからね。どういうルートでどういう形のままで出てきているかということについては、私どもはやや疑惑を持っておるわけですよね。ですから、疑惑で済めばいいけれども、もしそれが不純なもので、ダンピングで流れてきたということになれば、当然そこで責任問題が出てくるのですね。それが公的
医療機関でしょう。それは民間よりももっともっと——今民間の
医療機関が、宇都宮じゃありませんけれども、悪いことをしてたたかれておるわけですけれども、公的
医療機関自身がそういう実態であることはちょっと私どもは許せぬと思うのですよ。
そこで、これは地方でもう議論になっておりまして、そして、それはもうやめなければいかぬというふうな議論も既に出ておるのです。私は具体的な事実を知っているわけです。しかしここで、公の場で言うべきことではないから申し上げませんけれども。だから、今言われたように多分問題ないようにやっているだろうというような観測じゃなくて、そういう実態があるなら調査をして、適当でなければ適当でない、そしてやはり正規のルートで買いなさい、こういうことにならぬと、今のように、それは結局出先の立場を擁護するということもありましょうが、それでは今度は人間の命を軽率に取り扱われてはかなわぬですよ。ですからもう少し的確に、これはひとつ大臣から答えてください。
-
○正木政府委員 いわゆる現金問屋につきましては、その売買が現金決済で行われるということで、一般に比較しまして低廉であるということが一つ言えると思います。それ以外に、先生おっしゃいますように、実は率直に申しましてこの現金問屋の仕組みというのはなかなかつかみにくい面が、ございます。どういう形で医薬品を購入しておるかということはなかなかつかみにくい面がございます。ただ、先生もおっしゃいますように、この価格の面につきましては自由競争で行われるわけでございますから、安いからいかぬというわけには私どももまいらないわけでございます。あくまでも安かろう、悪かろうと言ってはなんでございますが、そういったおそれなきにしもあらずというようなことで、医薬品の安全性、良質な医薬品という面でのチェックをしていかなければならぬし、さらに申し上げさせていただきますと、実は昨年も、ある貿易会社の関係で、輸出用ということで、検定医薬品でございましたが、未検定のものを輸出しませんでそれで国内に流したというのがございました。これも実は現金問屋が関与しておったということで、厳重な処分をいたしたわけでございますが、そういった面で、良質な医薬品を
医療機関に安定的に供給していくという面からチェックをしていかなければならぬ。
それから、先ほど医務
局長からもお話しがございましたように、一般に
医療機関の場合には、薬剤の購入に当たりましては、購入委員会のようなものをつくりましていろいろ皆さんでチェックをされるということでございますので、そういった面でも念には念を入れて、安全性、良質な医薬品の購入という面については、各
医療機関に御留意をいただかなければならないというふうに私どもも考えているわけでございます。
-
○
河野(正)委員 やっぱり
医療経営というものが非常に厳しいわけですから、良質で安ければそれは一番いい。ただ、それが物すごい安いのですからね。ですから、一体どういうルートでどういう形のもので市場に出てきておるのか、その辺に私は疑問を持つものですから、そういう疑問のあるものはこの際使わぬで、絶対数が少なくて現金問屋から買わなければ品物がないという薬品なら別ですよ。薬品問屋というのはざらにあるわけですからね。ですから、そういう疑わしい企業となぜ取引しなければならぬのか、こう言っておるわけです。ですから調査をしたら、それがとにかくこれこれこういう理由で流れてきたんだ、しかもこれこれこういう理由で価格が安いんだ、それならばそれでいいですよ。ですけれども、
局長自身もわからぬでしょう。私ども、その疑いがあるから、そんな疑わしい薬を買わぬでも、とにかく地元の業者から、問屋から買ったって、もう業者はたくさんあるわけですから、昔のように薬が不足するというような時代ではないわけですから、そういう取引をあえてなさることをどうして厚生省が援護なさるわけでしょうか。私はわからぬですね。そういう疑わしいものだったら、この際やはり正規のルートできちっとしたところで買ったらどうだということにならなければいかぬのじゃないか。そうじゃないでしょうか。
-
○
渡部国務大臣 今業務
局長から答弁がありましたとおり、これは薬事法がきちっとあって、厚生省では、
国民の健康を阻害するような不良な医薬品というものが出回ることのないような指導はしておるわけでございます。
国立病院でも、これはそれぞれやっぱり経営をよくする努力目標を持っておりますから、安くて悪い薬を求めておるということになればこれは問題でありますけれども、できるだけいい薬を、またできるだけ安い値段で購入して
国民の負担を軽くするというための努力も、一概にこれをだめだとこう言うわけにはまいりませんので、今業務
局長から答弁がありましたように、薬事法の中で、そんないかがわしい薬が出回るようなことはないように指導していくということで、御了承賜りたいと思います。
-
○
河野(正)委員 これは個人の
医療機関が買うような量じゃないのでしょう。公的
医療機関ですから大量ですよ。そういう大量の薬がどこから出てきたのかルートも明確でない、それで値段だけ安い。その値段が安いところに飛びついておるわけでしょう。したがって、どういうルートで流れてきたのかその流れも明白ですし、そして価格もそういうルートで流れてきたのでこれだけの安い価格で取引ができるんだ、そういうことならばそれはまあいいですよ。そういう実情は御存じないわけでしょう。
大体第二市場、ブラックマーケットの話は今まで聞かれたことがありますか。あったとしたら大変ですよ、これは。そういういろいろな議論が市場の中に出ておるわけです。これはどうですか——大臣のお答えは結構です。
-
○正木政府委員 率直に申しまして、現金問屋の実情というのはなかなかわからないのでございます。どういったルートでそれを購入されたのか、そこが問題でございますが、調査してもなかなか実情をつかめないということでございます。また、これは一つの販売政策になりますので、どこから買ってどうして安いんだということは、私ども衛生面の規制からはなかなか難しいわけでございまして、先ほど申しましたように、これは薬価調査で実勢価格をつかんでいくわけでございますから、実勢はつかむわけでございますが、問題は、その安いために古い医薬品であったり、あるいは欠陥商品であったり、先ほど申しましたように検定をしなければならぬものを未検定でやっておったりというようなことがありますれば、これは
国民の健康保持という面から大変なことでございます。そういう面で薬事監視で目を光らしておるわけでございますが、私どもとしても、
医療用医薬品の流通市場それ自体がなかなか複雑でございまして、いろいろ問題点もあるわけで実情をつかみたいという努力はやっておりますが、率直に申しまして、現金問屋は一体幾つあって、どうなって、どういう経営をしているのかということを明確にお答えできないということを大変申しわけないといいますか、遺憾に思っておるわけでございます。
-
○
河野(正)委員 どうも納得いきませんね。というのは、今言ったように安くてしかも大量取引ができる、だからそれについてはやはり疑問があるでしょう。なぜそんなに安く取引ができるのか、なぜそんなに安いものが大量取引ができるのか、そういう疑問はあるでしょう。今その薬が非常に手に入りにくいというならやむを得ないということがあるでしょう。そしてまた、欠陥商品があったら、これはあったときにはもう遅いわけです。
だから、私が言っているのは、そういう状況がある、実情がつかみにくい、それも私はわかるわけです。だから、そういう疑わしいものは別に取引する必要はないわけです。そこで、今まで取引をしてきたという経過がありましょうから、そういう実態があるかないか十分調査をして、その上で強力な指導をする、こうなれば私どもは納得するわけです。それを御存じであったかなかったか知らぬけれども、今言ったようにああだこうだということでこの問題をあいまいにされる、それはちょっと納得いきませんよ、いかがですか。
-
○正木政府委員 どうも同じようなお答えになって恐縮なんでございますが、現金問屋を通じます場合には一般に低廉だということが言われております。それは、先ほど申しましたように現金決済で行われるということのために、メーカーから急場の現金を必要とするためにかなり安く卸すという場合がほとんどだと思いますが、その流通面が一体どうなのかという点が実際問題としてなかなかつかめないわけでございます。
そこで、先ほどから繰り返すようでございますが、医薬品というのは良質な医薬品を安定的に、しかもできるだけ低廉に供給するということでございますから、低廉であってもこれが良質であれば問題はないわけでございます。そういう面でのチェックをしていく。それから、購入される
医療機関の側も、ただ安いということだけで飛びつかれないで、やはりこれが本当にいいものかどうかということは十分チェックをしていただく。これは
医療機関側もそういう面で十分配慮していただくことが必要ではないかというふうに思うわけでございます。
-
○
河野(正)委員 何度も繰り返して恐縮ですけれども、それはあなたのお考え方を述べられておるだけであって、そういう実情があることに対してどうする、こうするという答弁になっていないわけです。だから、いい薬が安くて安定して取引されるのが一番いいのです。ですけれども、それに対して疑点があるわけでしょう。その疑点に対して調査なさったかどうかと聞いたら、それは非常に難しいと言われる。その難しいというのはあなたの考え方でしょう。そういう調査をいたしましたが全然そういう疑いはございませんでした、だから安上がり
医療じゃないけれども
医療費がそれだけ節約されるならばということで認めたのです、こういう答弁ならば納得しますよ。ところが、あなたのお考えだけで多分そうだろう、多分こうだろう。これは市場では違う意見があるのです。
安定供給といいますけれども、安いことはもう事実です。それから良質であるかないかはわからぬですね。安定供給もわからぬわけです。ある物はぱっと出るけれども、あるときにはその品物が枯渇する、こういう事情があるわけです。いい点はこの三つのうちただ一つ、安いだけですよ。今の欠陥商品であるかどうかというのは疑問、安定供給も疑問ですね。正規なルートじゃないわけですから、出るときは大量に出てくるけれども、必ずしもそれが翌月も出てくるかどうかは疑問なんです。それがブラックマーケット、第二市場だというのですよ。
ただ、私がここで非常に言葉が渋るのは、やはり許可を受けた現金問屋ですから、それは合法的な商売です。しかし内容的に非常に問題がある。ですから、そういう問題があるならば直ちに調査してチェックしましょうという答えならば、私どもは納得しますよ。あなたのお答えの内容は、それが望ましいのです、多分そうでしょうということでしょう。それでは納得できない。何遍そこで答弁されても同じことですよ。何遍でも繰り返しますよ、私も、
理事さんと相談してできるだけ早く打ち切ろうかなと思って質問しておるわけですが。
-
○正木政府委員 先ほども申しましたように、現金問屋は薬事法で卸売、一般販売業の許可を受けておるわけでございます。実情調査ということのお話しがございましたけれども、単に低廉であるということでは問題にならないわけでございます。これは薬事法という衛生法規の面からチェックをいたしておるわけでございますから、構造設備の点、あるいは管理体制の面等で問題があればこれはチェックをしていく。
それから、先ほど申しましたように先年事件がございました。これは現金問屋が関与をしておったわけでございまして、そういった不適切な事例があった場合においては、私どもとしては厳重な処分措置をとっておるわけでございます。
-
○
河野(正)委員 私は、あったらでは遅いと言うのです。ですから、そういう疑問があるならばまず疑問を解く努力をしなさい、こう言っているわけです。あったらあったらなんて言って、そこで事故が起こって、薬というのは人命に関することでしょう。これはもう何遍繰り返しても同じことです。
-
○
渡部国務大臣 私も就任して日が浅く、これはブラックマーケットというようなところまで、隅々までまだよく研究をしておらないのでありますが、小説では流通革命の旗手というようなことでいろいろ読んだことがございます。
今、
河野先生から御指摘もあり、また政府委員から答弁がありましたが、他の品物と違ってこれは人間の生命に関するものですから、同じ流通機構の問題でも、テレビや何かとは性質が違いますので、そのことのために人間の生命を危うくするような不良な薬品というようなものが出回っておるということになれば、それで万が一のことが起これば、これは厚生省として大きな責任を指摘される問題にもなるわけでありますから、
国民の生命に危害を与えるような不良な悪質なものが出回ってはなりませんので、ひとつそういう点は十分調査させるように勉強してまいりたいと思います。
また、国立大学、国立病院等でそういう安くていい品物を買う努力、これは今日の市場自由主義経済では当然だろうと思うのです。しかし、安くていい品物を買う努力をすることは、ある意味では褒める場合もあるわけですけれども、そのためにそれが行き過ぎて、不良な薬、悪質な薬を買って患者に迷惑をかけるようなことがあってはなりませんから、そういうことのないように厳重に指導してまいりたいと存じます。御了承ください。
-
○
河野(正)委員 大臣から適切なお答えをいただきましたから、
局長には納得しませんけれども、大臣が最高責任者ですから、恐らくその指示には当然従っていただくというふうに思いますので、そういう意味で話を進めます。
そこで、これはどうしようかと思ったのですが、ついででございますから、ひとつ厚生省におきゅうを据えておきたいと思うのです。これは、がん免疫振興財団のいわゆる予算の流用についてひとつお尋ねしたいと思います。
がん免疫振興財団は、さきに幹部が人の論文を盗用して登載したとかいって新聞種になっておるわけです。それで今度は、この振興財団がいわゆる予算を流用したということでいろいろ物議を醸しておるわけです。これはとにかく、今の宇都宮病院ではないけれどもいろいろ
医療機関にも問題があって、この委員会でも問題になっていますから、ひとつ今度は厚生省の方でも、こういう問題があるということを私どもは十分訴えて、もう少しきちっと引き締めていただきたいと思うわけです。これは事情を御承知でしょうか。
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○吉崎政府委員 御指摘のございましたがん免疫振興財団についてでございますけれども、これにつきましては、補助金を交付いたしました日本船舶振興会が、去る四月の四日と五日にわたりまして監査を実施いたしました。今検討中でございますけれども、厚生省といたしましてはその結果を見守っているところでございますが、公益法人の運営につきましてはさらに厳正に指導監督を行ってまいりたいと考えております。
-
○
河野(正)委員 ちょっと後先になりましたけれども、文部省、まだおられますか。——御出席いただいておることを存じ上げておりませんで、失礼しました。
先ほど申し上げた医師過剰の問題について、予算委員会では、文部大臣、非常に前向きで具体的に御答弁なさっていますね。ですから、厚生大臣とあわせてお尋ねしようと思ったけれども、おいでいただいておることを承知しなかったものですから失礼しました。せっかくおいでいただいておりますから、文部大臣の代理としてひとつ、この問題について一言。
-
○
佐藤説明員 機会を与えていただきまして、どうもありがとうございました。
厚生大臣あるいは医務
局長の方から詳細な御答弁が先ほどございましたけれども、私どもは、従来から、厚生省医務局の事務担当者の方々とともに協議をしてきているところでございますけれども、このたび厚生省の方で将来の適正な医師数を検討する委員会を起こす、こういうお話でございますので、私どもも、その結論を待ちまして、もし必要ならば全面的な見直しをしてまいりたい。
この前、二月十七日の大内啓伍先生に対する文部大臣の御答弁の中では、こういうことを言っているわけでございますが、この辺は、先生の方に若干誤解があるのではないかというふうに思いますので申し上げさせていただきたいと思います。
この中では、全面的な見直しについては厚生省の結論を待ってやりたい、しかしながら、国立大学の中には入学定員が百二十名のところがございまして、こういったところは従来から臨床研修等で、医師の質を考えた場合にこれではなかなか教育上困難であるという話が来ておりまして、こういった大学につきましては、もしその大学内部の対応が可能だとかあるいは地域の
医療事情等で検討ができるということであれば、入学定員の削減について昭和六十年度から検討を始めたい、こういうことでございますので、誤解のないようにお願いしたいと思います。
ありがとうございました。
-
○
河野(正)委員 誤解したわけじゃないけれども、私は、これは予算の第四分科会でやったのです。そのときにお答えになったのは課長じゃないでしょうか。厚生大臣の答えは随分慎重になっていますね。これは私学があるからじゃなかろうかと想像しておるわけですが、もちろん文部省は、もう来年からやらせる、減員する、その検討を実施しました、こういう意味の発言があったわけです。ただ、その際、私は、厚生省が今後いわゆる医師の数はどうあるべきかという上に立って、文部省もやはりどれだけ定員を減らすか、そういうことにならなければいかぬじゃなかろうか、そういうことを考えておったわけですよ。ですから、きょうの厚生省、厚生大臣の答弁で、大体私もそういうことをひそかに考えておったわけですが、予算の第四分科会の答弁はかなり前を向いておりましたね。ですから、よかったと思いますが、きょうは文部大臣代理としての適切な御答弁、ありがとうございました。
そこで、
委員長、再び前に戻らさせていただきます。
要するに、がん免疫振興財団というのは厚生省、そのものではないですね。ですけれども、厚生省が指導監督されておるわけでしょう。
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○吉崎政府委員 厚生省所管にかかる公益法人でございます。
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○
河野(正)委員 実は、医学雑誌に人の論文を盗用して幹部が出したというような非良心的な行為もございましたが、私が今言っておりますのは、予算の流用ですね。金は例のモーターボート振興会から出ておるわけですけれども、しかし、助成金が出てくるについては、厚生省がちゃんと書類をつけて出しておるわけですから、その予算がどういうふうにして行使されたかについては当然チェックされなければならない。ところが、一部、金額は大したことはありませんが、百七十七万八千四百九十四円ですが、これは動物、要するにモルモットとかハツカネズミとかそういう動物の飼料費で使いましたと。ところが、動物はこの振興財団にはおらぬらしいですよ。一匹もおらぬそうですね。
-
○吉崎政府委員 ちょっと動物の話は承知をいたしておりませんでしたが、先ほども申し上げました、補助金を交付いたしました交付主体であります日本船舶振興会が、去る四月の四日と五日、二日間にわたりまして監査を実施しております。その結果につきまして、現在、日本船舶振興会で検討中でございまして、厚生省といたしましては、その結果を見守っておるところでございます。
-
○
河野(正)委員 どうも厚生省、消極的ですね。とにかく動物が一匹もいないのに、動物の飼料を買いましたと、そういうことで決算をしているわけですね。これは船舶振興会が金を出しておるわけでしょう。国が出しておるわけではない。しかし船舶振興会が出しておるにしても、いかに予算を行使したかということについては、結局厚生省に監督責任の義務があるわけですね。
それから今一つは、研究事業費ということで整理されておる中で、この三年間は研究なんかも動物もおらぬぐらいですから全然やってない。それが研究費としてこの予算が行使をされておる、そういう事実が明らかになっておるわけです。厚生省が監督しなければならぬ財団がそういうでたらめをやる。例えばモルモットの飼料代を水増ししたとか。
健康保険は水増ししたら大変ですよ、水増ししたら不正請求で監査を受けるわけでしょう。ですから、水増しどころかこれは架空請求だ。動物がいないのにその飼料代としてやっている。これは
健康保険で言えば、保険
局長、横におられますけれども、これは架空請求です。それから、今申し上げたように研究事業費、これも架空請求ですね。そして何をしたかというと、何かこの財団の附属機関があるそうですね、そこの入院患者用に無塩しょうゆとか、流動食とか、冷凍食品だとか、そういうものを買っておるわけですね。要するに、金は事務
局長がポケットに入れたわけじゃなくて、買うておるけれども、財団の研究と全然関係がないところにその金が使われておる。これは
健康保険でしたら大変ですよ。監査を受けて処分を受けますよ。医務局はそれでいいのですか。
-
○吉崎政府委員 新聞に報道されましたことが事実であるかどうか監査をしたところでありますが、船舶振興会が監査をしたところでございますけれども、いずれにいたしましても厚生省所管の公益法人でございますから、その監査の結果をよく調査をいたしまして厳正に指導監督してまいりたいと思います。
-
○
河野(正)委員 それは船舶振興会が金を出しておるわけですから当然監査をするでしょう。しかも、この財団の事務
局長はどう言っているかといったら、当時モルモットやマウスがいたと思った。だからそういう手続をした。また研究費を利用したのは、それは病院の患者にやったんで、研究費とは全く無縁ではありません。ところが、財団の研究費として渡っておるわけでしょう、船舶振興会から。それを隣の併設された病院の患者さんにいろんなものを買ってやって、それが研究だと言う。こういうことはとにかく許されないと思うのです。民間なら許さぬでしょう、保険
局長。厚生省なら許されるのですか。だから、船舶振興会が出した金だから船舶振興会が監査してますからそれを見守っておりますじゃなくて、いただいたことについては医務局が関係があるわけでしょう。だから積極的に、むしろ船舶振興会よりも先に厚生省が調査をしてやるべきじゃないでしょうか。
-
○吉崎政府委員 所管の法人でございますので、よく調査をいたしまして厳正に指導監督してまいりたいと考えております。
-
○
河野(正)委員 またそれに類するような問題があるんです。これはやはり、今財政上厳しいということで、
国民世論も健保に対して再考願えぬだろうか、こういう声があることはそのとおりですね。それから、健保財政についても非常に厳しいですね。そこで一部負担が出てきたというような問題もあるわけです。そういう事情の中で、厚生省は、一方においては今言ったように全くでたらめな運営が行われておる。医務局がやったわけじゃないでしょうけれどもね。当然医務局が監督しなければならぬということは、医務局の責任ということですから。もちろん医務局は、そういうことが持ち上がったなら、真偽のほどはわかりませんというようなこと三言わぬで、実態調査をして、そしてその新聞の記事が誤りであるならば誤りであるということでただすだけの答弁をされればいいわけです。そういう点、何か自分のところでやったことは要するに臭い物にふたをするような態度では、医務
局長だけじゃないですよ、業務
局長もそのとおりですよ。首を曲げることは要らぬのです。それは厚生大臣が答弁されたから私は納得しただけだから、今さらあなたが首を曲げたってそれは解決になりません。
それから、またこれに類する問題があります。しかし、今のようなぬらりくらりの答弁では私どもどうも納得いきません。特に今は
健康保険の改正をめぐっての委員会でしょう、私も真剣なんですよ、私はこれを真剣にやっておるのに、厚生省が一方においてはそういうでたらめをやっておるということについては、私どもは納得いかぬですね。(「健保の審議はできぬ」と呼ぶ者あり)今、筆頭
理事が健保審議はできぬとおっしゃるから、私はこれ以上やりません。もうあとは全部留保します。そして、さらにいろいろ今のに類したようなことがございますから、言葉は悪いけれども悔い改めてもらいたいと思います。あとは調査した結果、これは業務局もそうですよ。どれだけ調査できるか、非常にむずかしいことは承知しておるのです。承知していますけれども、そういう疑いがあるならやはり調査をして、疑いがございますというような、そのことがずばり解明できないでも、それだけのことぐらいはぜひやっていただきたいと思うのですね。そういうことも次回にいろいろと御報告をいただいて、また審議を進めたい。特に、先ほど申し上げましたように、
健康保険問題については私ども真剣にやっておるわけですから、ひとつ役所も姿勢を正してこの審議に対処していただきたい。そういう意味で、あとは全部留保いたします。そういうことで本日は一応終わります。
以上です。
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○有馬
委員長 次回は来る十七日火曜日、午前九時四十分
理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午後七時二十五分散会