○渡部国務大臣 ただいま議題となりました
健康保険法等の一部を改正する
法律案について、その提案の理由及び
内容の概要を御説明申し上げます。
我が国の
医療費は、人口の急速な高齢化、疾病構造の
変化、医学医術の高度化等により、根強い増加傾向を示す一方、経済成長は鈍化し、今後、
医療費と国民の負担能力との間の乖離が
拡大していくおそれがあります。
また、厳しい国家財政の
状況下で、国庫による各
医療保険制度間の不均衡の調整機能を維持することが困難となってきております。このような
状況に的確に
対応し、本格的な高齢化社会に備え、中長期の
観点に立った
医療保険制度の改革を行うことは緊要の課題となっております。
今回の改正は、このような情勢を踏まえ、
医療保険の揺るぎない基盤づくりを進め、すべての国民が適正な負担で公平によい
医療を受けることができるよう、
医療費の適正化、保険給付の見直し、負担の公平化を三本の柱とした制度全般にわたる改革を目指したものであります。
改正案の主要事項について、概略を御説明いたします。
第一は、
医療費の適正化のための改正であります。
保険
医療機関等の不正、不当を排除するため、診療
内容が適切を欠くおそれがあるとして、重ねて
厚生大臣等の
指導を受けている保険
医療機関等については、その再
指定を行わないことができることとし、また、不正請求による処分を逃れるために保険医の登録を取り下げる等の場合については、再登録等を行わないことができることとしております。
さらに、社会保険診療報酬支払基金の主たる事務所に特別審査
委員会を新設し、極めて高額の診療報酬請求書等について重点的な審査を行うこととしております。
第二は、
医療保険における給付の見直しであります。
まず、被用者保険本人の給付率を改定することとしております。
現在、被用者保険本人の給付率は十割、その家族は入院八割・外来七割であり、また、国民健康保険の給付率は、世帯主・家族とも入院・外来七割となっております。このような給付率の格差を漸次縮小し、全国民を通じて公平化を図っていくとともに、かかった
医療費の額がわかりやすくなること等により
医療費の効率化が促進されるという見地から、被用者保険本人の給付率を
昭和六十年度までは定率九割、
昭和六十一年度からは定率八割に改めることとしております。なお、これに伴い、現行の初診時一部負担金及び入院時一部負担金は廃止することとしております。
また、受診時の自己負担額が過大とならないよう、被用者保険本人についてもその家族や国民健康保険の被保険者と同様の高額療養費支給制度を設けることとしております。
次に、療養費の支給に関する改正であります。
新しい
医療技術の出現や患者の欲求の
多様化等に
対応し、高度
医療や、特別のサービス等について保険給付との調整を図るため、療養費制度を改正するものであります。これは、高度の
医療を提供すると
認められる
特定承認保険
医療機関において療養を受けた場合や保険
医療機関において特別の病室の提供等
厚生大臣の定める療養を受けた場合に
特定療養費を支給するものであります。なお、この療養費については、被保険者への支給にかえて、直接
医療機関に支払いを行うことができることとしているほか、被保険者が支払った費用については、領収証の交付を義務づけることとしております。
第三は、
医療保険制度の合理化等による負担の公平化であります。・まず、退職者
医療制度を創設することとしております。
事業所の退職者は、退職後、国民健康保険の加入者となるため、給付水準が低下し、また、その
医療費の負担は、主として国庫と自営
業者や農
業者等他の国民健康保険加入者に依存することとなるという不合理と不公平が生じておりますので、これを是正するため、退職者
医療制度を創設することとしたものであります。
すなわち、これらの退職者及びその家族を対象に、市町村が国民健康保険事業の一部として事業を行い、給付率は、退職者本人は入院・外来八割、家族は入院八割・外来七割とし、また、高額療養費支給制度を適用することとしております。この
医療給付に要する費用の負担は、退職者及びその家族の支払う国民健康保険の保険料と現役の被用者及び事業主が負担する拠出金により賄うこととしております。
次に、国民健康保険の国庫補助に関する改正であります。
退職者
医療制度の創設等による市町村国民健康保険への財政影響等を考慮し、市町村に対する国庫補助を現行の
医療費の百分の四十五から
医療給付費の百分の五十へと変更するとともに、国庫補助の財政調整機能を
強化することとしております。さらに、国民健康保険組合に対する国庫補助についても、補助対象を
医療費から
医療給付費に改める等所要の改正を行うこととしております。
第四に、日雇い労働者の健康保険の体系への取り入れに関する改正であります。
日雇労働者健康保険制度を廃止し、日雇い労働者を健康保険の日雇特例被保険者とするとともに、その給付
内容及び保険料については、就労の特性を考慮し、一般の被保険者と実質的に均衡のとれたものとなるよう定めております。
また、国庫は、
政府管掌健康保険の事業所の日雇特例被保険者に係る給付費等について一般の被保険者についてと同一の補助率により補助を行うこととしております。
なお、廃止前の日雇労働者健康保険事業に係る累積収支不足については、借り入れをすることができることとし、その償還を一般会計からの繰り入れにより行うことができることとしております。
以上のほか、保険料負担の適正を図るため、標準報酬等級について所要の調整を行うこと、船員保険法、国家公務員等共済組合法等の共済組合法についても、健康保険法に準じた改正を行うこと等の改正を行うこととしております。
なお、この
法律の施行期日は、本年七月一日からとしておりますが、退職者
医療の拠出金等に関する重要事項について社会保険
審議会の意見を聴くこと等については公布の日から、また、標準報酬等級の改定については本年十月一日からとしております。
以上が、この
法律案の提案理由及びその
内容の概要であります。
何とぞ、慎重に御
審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
次に、ただいま議題となりました
原子爆弾被爆者に対する
特別措置に関する
法律の一部を改正する
法律案について、その提案の理由及び
内容の概要を御説明申し上げます。
昭和二十年八月、広島市及び長崎市に投下された原子爆弾の被爆者については、
原子爆弾被爆者の
医療等に関する
法律により、健康診断及び
医療の給付を行うとともに、
原子爆弾被爆者に対する
特別措置に関する
法律により、
医療特別手当、特別手当、原子爆弾小頭症手当、健康管理手当、保健手当等の支給を行い、被爆者の健康の保持増進と生活の安定を図ってまいったところであります。
本
法律案は、被爆者の福祉の一層の
向上を図るため、
原子爆弾被爆者に対する
特別措置に関する
法律について改正を行おうとするものであります。
以下、その
内容について御説明申し上げます。
まず第一は、
医療特別手当の額の引き上げであります。
医療特別手当は、
原子爆弾被爆者の
医療等に関する
法律の規定により、原子爆弾の傷害作用に起因する負傷または疾病の
状態にある旨の
厚生大臣の認定を受けた被爆者であって、現に当該認定に係る負傷または疾病の
状態にあるものに対して支給されるものでありますが、この
医療特別手当の額を現行の月額十万二千四百円から十万四千四百円に引き上げるものであります。
第二は、特別手当の額の引き上げであります。特別手当は、
原子爆弾被爆者の
医療等に関する
法律の規定により、原子爆弾の傷害作用に起因する負傷または疾病の
状態にある旨の
厚生大臣の認定を受けた被爆者のうち、
医療特別手当の支給を受けていないものに対して支給されるものでありますが、この特別手当の額を現行の月額三万七千七百円から三万八千四百円に引き上げるものであります。
第三は、原子爆弾小頭症手当の額の引き上げであります。原子爆弾小頭症手当は、原子爆弾の放射能の影響による小頭症の患者に対して支給されるものでありますが、この原子爆弾小頭症手当の額を現行の月額三万五千百円から三万五千八街円に引き上げるものであります。
第四は、健康管理手当の額の引き上げであります。健康管理手当は、造血機能障害等
特定の障害を伴う疾病にかかっている被爆者であって、
医療特別手当、特別手当または原子爆弾小頭症手当の支給を受けていないものに対して支給されるものでありますが、この健康管理手当の額を現行の月額二万五千百円から二万五千六百円に引き上げるものであります。
第五は、保健手当の額の引き上げであります。保健手当は、爆心地から二キロメートルの区域内において直接被爆した者であって、
医療特別手当、特別手当、原子爆弾小頭症手当または健康管理手当の支給を受けていないものに対して支給されるものでありますが、この保健手当の額を、一定の範囲の身体上の障害のある者並びに配偶者、子及び孫のいないと十歳以上の者であってその者と同居している者がいないものについては、現行の月額二万五千百円から二万五千六百円に引き上げ、それ以外の者については、現行の月額一万二千六百円から一万二千八百円に引き上げるものであります。
また、これらの改正の実施時期は、
昭和五十九年六月一日といたしております。
以上が、この
法律案を提案する理由及びその
内容であります。
何とぞ慎重に御
審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
次に、ただいま議題となりました
保健所法の一部を改正する
法律案につきまして、その提案理由及び
内容の概要を御説明申し上げます。
保健所は、地方における保健衛生
行政のかなめとして、我が国の保健衛生水準の
向上に大きく貢献してきたところであり、都道府県等がこれを設置、運営し、国は、その創設費、人件費等について
昭和二十四年以来、定率の国庫負担を行っております。
今後、保健所においては、本格的な高齢化社会の到来に伴う地域ごとの多様な保健需要に十分
対応することが必要でありますので、この際、保健所の自主的、弾力的な運営に資するため、保健所に対する国の財政援助の方式を、地方公共団体の創意と工夫が保健所の運営に反映しやすい方式に改めることとし、この
法律案を提案することとした次第であります。
なお、このことは、臨時
行政調査会の第三次答申において人件費補助の見直しが
指摘されている趣旨にも沿うものであると
考えております。
改正の
内容は、保健所に関する経費のうち、人件費等の保健所の運営に要する経費については健所運営費交付金として交付し、保健所の施設または設備に要する経費については引き続き定率により負担することとすることであります。
また、保健所運営費交付金は、各地方公共団体の人口及び面積を基礎とし、地理的事情その他の地方公共団体における保健所の運営に関する特別の事情を考慮して政令で定める
基準に従って交付することとしております。
なお、この改正は、
昭和五十九年四月一日から施行することとしております。
以上が、この
法律案の提案理由及びその
内容であります。何とぞ慎重に御
審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。(拍手)