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永井議員 私は、日本社会党・護憲共同を代表して、ただいま議題となりました
短期労働者及び短時間
労働者の
保護に関する
法律案について、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
近年、過
労働時間が三十五時間未満の非農林業
雇用者、いわゆるパートタイム
労働者が急増し、
昭和五十七年現在四百十六万人と、四十五年の二百十六万人に比べ約二倍にもなっており、全
雇用者に占める割合も約一割に達しております。五十一年以降で見ると、全体の増加率一〇・八%に対し、短時間
雇用者は三二・五%と三倍もの
伸び率を示しているのであります。
これは、女子の職場進出と重なり合っているわけでありまして、企業でいわゆるパートタイマーのうち九割以上が女子であり、女子
労働者の五人に一人がパートタイマーとなっております。その年齢構成を見ますと、三十五歳以上四十五歳未満が四三・二%と最も多く、四十五歳以上五十五歳未満は二三・二%、二十五歳以上三十五歳未満は二一六%となっております。一方、男子の場合はむしろ高年齢者が多く、五十五歳以上が約五割を占めているのであります。
さらにパートタイム
労働者の産業別構成を見ますと、
製造業と卸売・小売業がともに三七・六%、
サービス業が一七・三%となっており、合わせて全体の九割以上を占めております。
また、企業規模別構成を見ますと、三十人未満が五六・一%、三十人以上五百人未満が三一・四%となっており、多くが中小企業で働いていることがわかるのであります。
俗にパートと言いますと、
労働時間が特別に短いような響きがあるのでありますが、実際には、過
労働時間が三十五時間ないし四十八時間の者が約五割を占め、週五日以上勤務者が約九割と圧倒的であります。就業時間も就業日数も正規従業員と同じ者が、実に約四分の一を占めているというのが
実態であります。
しかるに、その賃金や
労働条件を見ますと、実に劣悪な
状況に置かれております。まず賃金については、女子パートタイム
労働者の時間当たり賃金は男子正規従業員の二分の一
程度でありますし、女子正規従業員と比べてみましても、約四分の三
程度でしかありません。また、ボーナス等を支給している企業は約八割ありますが、支給額は正規従業員の約二割でしかありません。退職金のある企業は一割にも満たないのが実情であります。
その他の
労働条件を見ましても、年次有給休暇を与えている企業は約四分の一であり、
雇用保険、
健康保険、厚生
年金等の適用があるのは、それぞれ四割弱、定期昇給やベース・アップがあるのは約五割、パートタイマー用の就業規則がある企業は三割弱、
雇用条件の取り決めを口頭で行っている企業が五割強などとなっているのであります。
ところで、このような実情にあるパートタイム
労働者のうち、一般社員化を希望している
労働者は、多少古くなりますが、
昭和五十四年の
労働省の第三次産業
雇用実態調査によれば、男子は三二・五%、女子は一七・四%となっております。しかし、一般社員化を希望しないと答えている者のうち、男子で四六・八%、女子で六四・四%が勤務時間帯の都合が悪くなるのを理由としており、パートタイム
労働者の多くは、
労働条件が確保されさえすれば、一般社員化を希望しているというのが実情であります。
パートタイム
労働者は、とりわけ
昭和四十八年のオイルショック以降、
我が国企業がいわゆる減量経営を進める中で人件費の節約と
雇用調整の安全弁として、その
雇用の増大を図ってきているのでありまして、昨今の
雇用情勢を考えますと今後もふえ続けるものと予想されます。したがいまして
我が国の
労働政策、
労働行政におきまして、その賃金や
労働条件等の
改善、確保を図ることは大きな課題となっているのであります。
日本社会党は、このような
状況にかんがみ、パートタイム
労働者の賃金、
労働条件の
改善、確保を図るための立法が必要であると考えます。なお、あわせて、同様に劣悪な
状況に置かれております臨時
労働者等についても、その
改善を図ることとし、この
法律案を提案する次第であります。
次にこの
法律案の内容について御説明申し上げます。
第一は、この
法律の目的であります。
この
法律は、
労働基準法を初め、すべての
関係諸法令と相まって、パートタイマー等の不安定
雇用労働者が人たるに値する生活を営むための必要を満たすため、
雇用、
労働条件、福利厚生、各種保険制度の適用等、諸条件の
保護、向上を図ることを目的としております。
第二は、定義であります。
この
法律においては、パートタイマー、アルバイト、臨時、嘱託等その他名称のいかんを問わず、日々または期間を定めて雇い入れられる者を
短期労働者といい、同一
事業所における同種の一般
労働者と比べて所定
労働時間が短いか、賃金が一般
労働者と比べて差別的に時間単位で支給されている
労働者を短時間
労働者ということとしております。
一方、社員、本雇い、本工その他同趣旨の名称によって期間を定めないで雇い入れられるすべての者を一般
労働者ということとしております。
第三は、
労働条件記載文書についてであります。
使用者は、
短期労働者または短時間
労働者との
労働契約が成立したときは、
労働時間、賃金、休暇その他の
労働省令で定める
労働条件を記載した文書をその
労働者に交付するとともに、その写しを公共職業安定所長に送付しなければならないことといたしました。
第四は、
短期労働者の雇い入れについてであります。
使用者は、一般
労働者または短時間
労働者を採用できない季節的業務その他これに準ずる特別の事情がある場合を除き、
短期労働者を雇い入れてはならないことといたしました。また、季節的業務等に必要な契約期間を超えて
短期労働者を雇い続ける場合には、その期間後は一般
労働者の資格が与えられることといたしました。
第五は、
短期労働者等の優先
雇用に関する規定であります。
使用者は、短時間
労働者または一般
労働者を雇い入れる場合には、既に雇い入れているか、または雇い入れることが予定されている
短期労働者及び短時間
労働者に当該募集の旨を遅滞なく知らせ、これらの者の応募がある場合にはそれを受理し、同じ職種であれば優先的に雇い入れなくてはならないことといたしました。
第六は、一定の条件を満たす短時間
労働者を一般
労働者とする
努力義務の規定であります。
使用者は、
労働時間が一日五時間かつ一週三十時間を超える短時間
労働者を一般
労働者とするよう努めなければならないことといたしました。
第七は、
短期労働者または短時間
労働者に係る職業訓練についてであります。
使用者が
短期労働者または短時間
労働者に、一般
労働者となることを容易にするための職業訓練を受けさせる場合には、
政府は、
雇用保険法第六十三条に規定する能力開発事業を行うものとしております。
第八は、同一
労働同一賃金の原則であります。
使用者は、
労働者が
短期労働者または短時間
労働者であることを理由として、賃金について、手当、賞与、退職金を含めて、同種の一般
労働者と比べ不利益な取り扱いをしてはならないことといたしました。
第九は、格付等同一の原則であります。
使用者は、
労働者が短時間
労働者であることを理由として、昇進、配転、解雇その他の不利益処分等について、同種の一般
労働者との差別的取り扱いをしてはならないことといたしました。
第十は、休暇等同一の原則であります。
使用者は、
労働者が
短期労働者または短時間
労働者であることを理由として、有給休暇その他すべての休暇、休憩時間、育児時間及びその他女子に認められる特別の時間並びにすべての福利厚生施設の利用等について、同種の一般
労働者との差別的取り扱いをしてはならないことといたしました。
第十一は、短時間
労働者の所定
労働時間外の
労働及び休日
労働の制限であります。
使用者は、短時間
労働者については、その意に反してその所定
労働時間を超えて
労働させ、または休日に
労働させてはならないことといたしました。
第十二は、各種保険の適用の
拡大についてであります。
短期労働者及び短時間
労働者について、
関連法の改正により、過
労働時間が八時間以上であれば、
雇用保険制度、
健康保険制度及び厚生
年金制度が適用されるものといたしております。
なお、格付等同一の原則、休暇等同一の原則、各種保険の適用
拡大等については、過所定
労働時間が八時間以上の
短期労働者または短時間
労働者に適用するものといたしております。
以上、この
法律案の提案理由及びその内容の概要について、御説明申し上げました。
早速御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
ありがとうございました。(拍手)