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磯田会計検査院説明員 昭和五十六
年度農林水産省の
決算につきまして
検査いたしました結果の
概要を
説明いたします。
検査報告に掲記いたしましたものは、
不当事項十五件、意見を表示しまたは
処置を要求した
事項二件及び特に掲記を要すると認めた
事項一件であります。
まず、
不当事項について
説明いたします。
検査報告番号七一号は、頭首工工事の施行に当たり、仮設足場費の積算を誤ったため、
契約額が割高になったものであります。
これは東北農政局で白川農業水利
事業の一環として施行した長瀞頭首工工事の工事費の積算に関するもので、仮設足場費の
算定に当たり、足場材料は所要数量の三分の一を現場に搬入し、これを工事の進捗に応じて繰り返し三回利用することとして積算することになっておりますのに、全所要数量を現場に搬入することとして積算したなどにより仮設足場費を過大に
計算したため、
契約額が割高になったものであります。
また、
検査報告番号七二号から八五号までの十四件は、
補助事業の実施及び
経理が不当と認められるもので、工事の施工が設計と相違していたり、
補助の目的を達していなかったりなどしていたものであります。
次に、意見を表示しまたは
処置を要求した
事項について
説明いたします。
その一は、輸入麦の売り渡しに関するものであります。
食糧庁では、輸入麦を製粉業者等に袋諦めでなく、ばらの荷姿で売り渡す場合には値引きを行っており、
昭和五十六
年度の値引き額は三十七億六千三百万円に上っております。
この値引き
措置は三十四
年度から実施しているものでありまして、当時は港頭におけるばら受け施設が不足しており、輸入麦の八〇%は港頭で袋詰めにして取り扱わざるを得なかったため、多額の取扱
経費を要する状況でありました。このため、食糧庁ではばらのまま売り渡しが行われるようになれば、輸入港における袋詰めなどの政府
経費が節減されることに着目して、その一部を売り渡し
予定価格から
差し引き、それによって買い受け者側のばら受け施設が整備されるよう誘導することとしたものであります。
しかし、この
措置はばら受け施設が未整備の段階における物流の合理化を図るための誘導策でありまして、今日のようにばら受け施設が整備された状況においては、もはやばら受け施設の整備を目的としたこの値引き
措置を継続して実施する意義は失われていると認められましたので、食糧管理
特別会計の財政負担の軽減という観点からも早急にこの値引き
措置を取りやめるよう求めたものであります。
その二は、沿岸漁業構造
改善事業等の実施に関するものであります。
市町村、漁業協同組合等が水産庁の
補助を受けて実施している沿岸漁業構造
改善事業、水産物流通対策
事業等により設置した漁船用補給施設、製氷冷蔵施設、水産物荷さばき施設、処理加工施設、倉庫、卸売場建物、蓄養殖施設等の利用状況や管理
運営状況等その
事業効果について調査しましたところ、施設設置後二年から八年を経過しているのに、
事業計画に対する利用
実績がいずれも三〇%以下と低い利用率となっているなど、
事業効果の発現がなく、
補助の目的を達していないと認められるものが多数見受けられ、中には、施設が設置後全く使用されていなかったり、目的外に使用されていたり、無断で
貸し付けられていたりしているなど著しく適切を欠いているものがありました。
このような事態が生じた
原因について見ますと、
事業計画に問題があるわけでありまして、漁獲量、加工技術、立地条件、加工製品の販路、需給動向等についての事前の調査検討が十分でないまま
事業を実施していることによると認められました。
したがいまして、
指摘した不適切な事態については、早急に効率的な利用促進陸図らせることはもとより、今後のこれらの
事業実施に当たっては、
事業主体に対する指導を強化し、適切な
事業計画を提出させるようにするとともに、
事業実施後の施設の
運営状況
報告を励行させ、それに対する審査、現地確認を
都道府県に行わせるとともに、水産庁においても
補助目的の達成が困難と認められるものについては、
補助金返還を含む厳格な
措置を講ずるなど、国庫
補助金の効率的な使用が図られるような体制を整備するよう求めたものであります。
次に、特に掲記を要すると認めた
事項について
説明いたします。
これは団体営草地開発整備
事業によって開発した草地に関するものであります。
農林水産静、畜産物の生産基盤を整備するため、地域の実態に即した比較的小規模な草地の開発整備を行う地方公共団体、農業協同組合等の団体に国庫
補助金を交付して草地開発整備
事業を実施させてきております。
この団体営草地開発整備
事業によって開発した草地の一部について、その利用状況を調査しましたところ、開発された草地が利用されず荒廃していたり、目的外に使用されたりしていて
事業効果の発現が十分でないと認められるものが相当数見受けられました。
このような事態は、直接には畜産経営をめぐる情勢が変化したことなどのため、営農意欲が減退し、経営の継続が困難となったことによると認められますが、その背景には我が国の畜産経営は規模が零細で飼料の海外依存度が高いため、国際的要因による影響を面接受けやすい脆弱な経営体質であること、畜産物の需要の伸びが鈍化していることに加え、海外から取引の自由化を強く望まれていることなどの社会経済事情があると考えられます。
このように本
事業によって開発された草地が、直接的要因あるいは社会的要因により所期の効果を発現していないという事実を厳しく受けとめ、今後の
事業運営簿に関し問題を提起したものであります。
なお、以上のほか、
昭和五十五
年度決算検査報告に掲記しましたように、自然休養村整備
事業等、飼料用小麦の売り渡し
予定価格の積算及び林道
事業の実施の各件について、それぞれ
処置を要求しましたが、これらに対する農林水産省の
処置状況についても掲記いたしました。
以上が
昭和五十六
年度農林水産省の
決算につきまして
検査いたしました結果の
概要であります。
次に、
昭和五十六
年度農林漁業金融公庫の
決算につきまして
検査いたしました結果を
説明いたします。
検査の結果、特に違法または不当と認めた
事項はございません。
以上をもって
概要の
説明を終わります。