○小和田
政府委員 一般論として、今
委員が御質問になりましたことについて国際法上どういう
考え方になるかということについて申し上げたいと思います。
まず、
核兵器保有国は
核兵器を使う権利があるのかということでございますが、御
承知のように、国連憲章のもとでは武力の行使というものは一般的に禁止されているわけでございます。したがいまして、国違憲章二条四項に該当するような武力の行使は、
核兵器を用いる場合であろうとなかろうと許されないということは、国連憲章上の明確な義務であって、その義務は
核兵器保有国についても適用がある、こういうことをまず第一点として申し上げたいと思います。
ただ、これも
委員御
承知のとおり、自衛権の行使の場合、国連憲章第五十一条に基づいて自衛権を行使する権利というものは、これはまた国連加盟国を含めすべての主権
国家の権利でございますので、そういう自衛権の行使ということになってまいりますと、その自衛権の行使はどういう武器に限定されなければならないという規則は、現在の国際法上は、特定の既に禁止されている武器の使用の場合を除きますとそういう限定はないわけでございます。
この
核兵器が現在の実定国際法に違反するか、こういうことになりますと、もちろんこの
核兵器というものは非常に大量の破壊を伴うという面から、国際法の
考え方の根底になっております基本思想の一つであります
人道主義というような見地から申しますと、その精神に合致しないということは申せると思いますけれども、残念ながら、現在の段階で
核兵器の使用が実定国際法上禁止されておるかということになりますと、そうは言えないということにならざるを得ませんので、その意味におきましては、
核兵器の使用についての現在の国際法上の規定から
考えて許される範囲というものはおのずから出てこざるを得ないというふうに
考えます。
それから
条約によっても規制できないかということでございますが、もちろん
条約によって
核兵器の使用を規制するということは理論的にはあり得るわけで、現に、御
承知のとおり国連の軍縮
委員会その他の場におきまして、
核兵器の使用を抑制するあるいは禁止するという方向で国際的な努力が続けられているわけでございますけれども、今までのところその努力がまだ実を結んでいないというのが実態であろうと
考えます。
それから第三番目の、
条約で
核兵器の使用を規制することが主権侵害や
内政干渉になるのかという御質問でございますが、これは
前提がはっきりいたしませんと一般的な形で
お答えすることが非常に難しいと思いますけれども、もちろん、
核兵器を持っている国がみずからの自由
意思によってその
核兵器の使用を抑止するということは、その国自身が自分自身に対して規制を課すわけでございますから、したがってそういう意味で
内政干渉であるとかあるいは主権侵害であるとかいうようなことにはならないと思います。他方、他国がこの第三国に対して、第三国の
意思に反して
核兵器の使用を禁止するというようなことになってまいりますと、これは国際法上の評価はまたおのずから別なものになるであろうというふうに
考えます。
いずれにいたしましても、一般論を離れて中曽根総理の御発言との関連で申しますならば、先ほど
外務大臣が御答弁いたしましたように、総理御自身がこのことについて、その内容について正確ではない、そういうことを言ったわけではないということを言っておられますので、総理の発言との関連においてこの問題を解釈することは差し控えたいと思います。