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新村(勝)
委員 そこで、先端技術、特に独創的な先端技術を開発するという点については、通産省だけではなくて、教育の基本的な考え方にも関連をしてまいりますし、また通産を初めとする行政のあり方にも関連をしてくるわけでありますけれども、この独創性ということについて、ノーベル賞学者である江崎玲於奈氏が極めてすぐれた見識を示しておられるわけでありますので、若干の引用をさせていただきたいわけであります。
江崎さんは、「異質の文明が接触するとき、紛争が避け難いことは歴史の教えるところである。私は、
日本が必ずしも西欧に対決するような文明を作ったとは思わないが、西欧文明に挑戦するような要素を持っていることは否定出来ない。例えば、
日本の工業製品の世界市場における際立った成功、そして貿易摩擦などは、その一つの表れと見ることが出来る。」こういうことを言っているわけです。
日本の輸出ドライブあるいは貿易立国ということでありますけれども、それが極端な自己本位になると、
日本文明と外国文明との摩擦というような形で出てくるのではないかというふうに江崎さんは言っておるわけですけれども、これが現在の
日本の貿易摩擦の一つの側面をとらえているものではないかと思うわけです。
それから、なお、江崎さんはこういうこと直言っておるわけです。「教育面を考えても、
アメリカでは独立した個性、各自、判断力、創造力を備えることを強調されるが、わが国では小さいときから、他人への思いやり、素直な心、和、気くばりの大切さが教えられる。個性は抑えられ、グループ環境の中で役割を果たす人材が育てられるのである。」
アメリカでは個性を尊重して、そこから独創的な文明なり発明なりができていく。
日本ではグループ活動は得意だけれども、ですから、外国の先進的なものを摂取をして、それを同化する能力は非常にすぐれているけれども、最も先端的な独創力においては欠けるところがあるんだというようなことを江崎さんは言っておられるわけです。
例えばコンピューターにしても、最初に発見してつくったのは
アメリカであって、それを摂取をして
アメリカをしのぐような力になったのは
日本の力であるけれども、やはり根本的な点において独創力が欠けるのではないかということで、
日本人は、集団方式にはなれている、競争には強いけれども、創造能力は残念ながら欠けているというようなことを江崎さんはおっしゃっておるわけです。これは非常に示唆に富む分析ではないかと思うのです。
そうして、「端的にいえば、目標を設定して、それに邁進する集団方式は、経済価値を持つ物質的所産を作り出すには都合よいのであるが、学術、芸術などにおける価値的所産を生むには過ぎないといえる。」こう江崎さんは言っておられるわけでありますけれども、これは
日本人の欠点の痛いところをついておられるのだと思うのです。
そういう点で、まだ
日本は世界の最先端を行くところまでは行ってないというふうに考えられるわけで、それらについては、これから通産省の御指導等も必要であると思いますし、また文部省の教育の基本的なスタンスにも触れる問題ではないかと思うのです。
別の面からそういった点を見まして、これはこれによって
日本人の独創性を判断するということにはならないとは思いますけれども、ノーベル賞を受けた学者の数、これを各分野ごとに見てみますと、物理学でも化学でも生理学でも、残念ながら
日本は五番以内に入っていない。物理学は
アメリカが四十七、イギリスが二十一、
ドイツが十四、フランスが九、ソ連が七。化学では
アメリカが二十六、
ドイツが二十四、イギリスが二十一、フランスが六というふうになっておりますし、生理学においても
アメリカが五十八、イギリスが十九、
ドイツが十一、フランスが七、こういうことで、現在の段階では、まだ残念ながら先端技術の開拓という点では一歩譲るのではないか。そこの根本は、やはり
日本における
日本の伝統的な考え方、あるいは教育のあり方、社会のあり方にあるんだということを江崎さんは言っておられますけれども、こういった問題は、今問題になっておる教育改革ということにも関係があるのではないかと思いますけれども、こういった問題について通産
大臣はどうお考えであるのか、まず
大臣のお考えを伺いたいと思います。