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井上(一)
委員 今明らかにされたように、非常に不当な国有林の払い下げを受け、片側では労働債権を十分保障していかない、こういう驚くべき企業、このことについてはまた改めて私は質問をいたしますが、特に
労働省に、先ほど
指摘をした労働債権についての十分な確保のための
行政指導、さらには、今お聞きのように、
会計検査院が
指摘をしたそのことでもわかるように、何が飛び出すかわからない。飛び出してからでは——
労働省の
行政指導の中で十分な把握をすべきであるということを私は強くお願いをしておきます。
次に、今非常に問題になっている単身赴任の問題について
労働省の見解を少し聞いておきます。
このほど発表された
労働省の「勤労者家庭の妻の意識に関するアンケート調査」です。これは五十九年三月、
労働省の婦人少年局ですね。この調査によると、勤労者家庭の一六%が単身赴任の経験がある。このうち留守家庭で困ったことがあると答えた人は全体の九二%にも上っているわけです。さらに、その困った理由を複数
回答で聞いたところ、経済的
負担が五九%、子供のしつけあるいは勉強、進路等が三六%、夫の生活がわからず不安であるというのが二二%と、単身赴任が勤労者家庭の生活に深刻な影響を及ぼしているということがこの調査でわかるわけなんですね。
しかも、このような単身赴任は最近急激にふえる傾向があるわけであります。例えば、労務
行政研究所が
昭和五十七年の九月に二百七十八社を
対象に調べたところでは、単身赴任がふえる傾向にあるという
回答が全体の五四%を占めているわけです。また、ある産別組合の五十八年七月の調査でもほぼ同様の結果があらわれているわけです。組合の調査結果によると、このように単身赴任の割合は年齢が高くなるにつれて上昇しておる。特に高校生を抱える家庭では四人のうち三人までが別居生活を強いられる、こういう中高年にとって非常に厳しい現実を浮き彫りにしているというふうに私は思います。
単身赴任は転勤に伴って生じてきた問題であるわけでありますが、企業と転勤についてのルールがきちんとできているところは必ずしもそう多くはないと私は思うのです。私の
承知する組合の調査によると、本人の同意が必要だとするところは四・二%、協議の上会社が決定あるいは事前に本人の意見を聞き会社が決定をする、これを加えても、本人の意向が多少とも参酌されるというのは半分くらいにしか達しない。勤労者の家庭生活に極めて深刻な犠牲を強いるばかりではなく、場合によっては家庭の崩壊につながっていく、あるいはそういう問題を引き起こしかねない。それほど転勤問題から起こる単身赴任というのは問題を非常に多くはらんでいる。とりわけ、十分なルールのない、そういう立場で働いている、あるいは転勤を命ぜられる、単身赴任をしなければいけない中高年層の、私は言葉は妥当ではないかもわかりませんけれども、泣き寝入りを防いでいこう、あるいはそういう
人たちの問題を何とか
解決していこう、そういう意味からも、
労働省として何らかの保護措置を講ずる必要があるのではないだろうか、こういうふうに思うのです。
ただ、保護措置という、この保護という言葉になるとまた非常に過保護的な発想に受けとめられるわけですけれども、私は、そういうのは保護措置ではない。むしろ、そういう結果問題の起こらないように措置を講じていくための
対応策ですね、そういうものが今必要ではないだろうか。大きい企業等では労働協約があって、本人の同意条項を盛り込むように指導するのも一つの
解決策ではあるわけでありますが、中小零細企業の場合には
労働組合のないケースも多いわけであります。労基法等の法令による保護措置を早急に検討すべき
段階に来ていると私は思うわけであります。だから、どのような
対応策がいいのか、これはこれからいろいろと検討していかなければいけないわけでありますし、そういう意味で、ひとつ単身赴任に対する問題を少なくするための
労働省の何らかのお
考えを、この際私は聞いておきたい。
十分なルールがあって、あるいは本人の同意があっても、例えば帰郷旅費というのですか、東京−大阪なら東京−大阪の帰郷旅費は半年に一回しか手当を
支給しないとか、あるいはよくしても月に一回だ、そういうことではいわゆる家族の信頼
関係あるいは家庭の幸せというものはそこには十分に成り立っていかぬわけでありますから、いろいろ問題があろうと私は思うのです。だから、これは総まとめで私なりの
考え、調査に基づいた見解を申し上げましたけれども、ひとつ、
労働省としても単身赴任に対する問題意識をどのようにとらえ、そしてそれに対してどういう
対応策を
考えていらっしゃるのか、ここで聞かしていただきたいと思います。