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1984-03-05 第101回国会 衆議院 決算委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年三月五日(月曜日)     午前十時開議 出席委員   委員長 横山 利秋君    理事 近藤 元次君 理事 白川 勝彦君    理事 谷  洋一君 理事 東家 嘉幸君    理事 井上 一成君 理事 新村 勝雄君    理事 貝沼 次郎君 理事 神田  厚君       天野 光晴君    榎本 和平君       小坂徳三郎君    塩崎  潤君       澁谷 直藏君    白浜 仁吉君       中西 啓介君    額賀福志郎君       松野 頼三君    河野  正君       城地 豊司君    近江巳記夫君       水谷  弘君    塚本 三郎君       中川利三郎君    阿部 昭吾君  出席国務大臣         内閣総理大臣  中曽根康弘君         法 務 大 臣 住  栄作君         外 務 大 臣 安倍晋太郎君         大 蔵 大 臣 竹下  登君         文 部 大 臣 森  喜朗君         厚 生 大 臣 渡部 恒三君         農林水産大臣  山村新治郎君         通商産業大臣 小此木彦三郎君         運 輸 大 臣 細田 吉藏君         郵 政 大 臣 奥田 敬和君         労 働 大 臣 坂本三十次君         建 設 大 臣 水野  清君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     田川 誠一君         国 務 大 臣         (内閣官房長官)藤波 孝生君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖縄開発庁長         官)      中西 一郎君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      後藤田正晴君         国 務 大 臣         北海道開発庁         (国土庁長官)稻村佐近四郎君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 栗原 祐幸君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      河本 敏夫君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      岩動 道行君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 上田  稔君  出席政府委員         内閣参事官         内閣官房内閣審         議室長     中村  徹君         兼内閣総理大臣         官房審議室長  禿河 徹映君         内閣法制局長官 茂串  俊君         内閣総理大臣官         房会計課長         兼内閣参事官  渡辺  尚君         内閣総理大臣官         房地域改善対策         室長      佐藤 良正君         警察庁長官官房         会計課長    立花 昌雄君         行政管理庁長官 古橋源六郎君         官房総務審議官         行政管理庁長官         官房会計課長  前山  勇君         防衛庁参事官  古川  清君         防衛庁参事官  西廣 整輝君         防衛庁長官官房         長       佐々 淳行君         防衛庁防衛局長 矢崎 新二君         防衛庁人事教育         局長      上野 隆史君         防衛庁経理局長 宍倉 宗夫君         防衛施設庁総務         部長      梅岡  弘君         経済企画庁長官         官房会計課長  遠山 仁人君         経済企画庁調整         局長      谷村 昭一君         科学技術庁長官         官房会計課長  窪田  富君         科学技術庁研究         調整課長    福島 公夫君         科学技術庁原子         局長      中村 守孝君         環境庁長官官房         会計課長    廣重 博一君         沖縄開発庁総務         会計課長    大岩  武君         国土庁長官官房         長       石川  周君         国土庁長官官房         会計課長    安達 五郎君         法務大臣官房会         計課長     村田  恒君         法務省刑事局長 筧  榮一君         外務大臣官房会         計課長     林  貞行君         外務省アジア局         長       橋本  恕君         外務省北米局長 北村  汎君         外務省経済協力         局長      柳  健一君         外務省条約局長 小和田 恒君         外務省国際連合         局長      山田 中正君         外務省情報文化         局長      三宅 和助君         大蔵大臣官房会         計課長     渡邊 敬之君         大蔵大臣官房審         議官      大山 綱明君         大蔵大臣官房審         議官      行天 豊雄君         大蔵省主計局次         長       的場 順三君         大蔵省理財局次         長       志賀 正典君         文部大臣官房会         計課長     國分 正明君         厚生大臣官房会         計課長     黒木 武弘君         厚生省社会局長 持永 和見君         厚生省児童家庭         局長      吉原 健二君         厚生省援護局長 入江  慧君         農林水産大臣官         房経理課長   岩崎 充利君         通商産業大臣官         房会計課長   山本 雅司君         運輸大臣官房会         計課長     宮本 春樹君         労働大臣官房会         計課長     若林 之矩君         建設大臣官房会         計課長     牧野  徹君         建設省住宅局長 松谷蒼一郎君         自治大臣官房長 矢野浩一郎君         自治大臣官房会         計課長     大塚 金久君         自治省財政局長 石原 信雄君  委員外出席者         国立国会図書館         長       荒尾 正浩君         人事院事務総局         管理局会計課長 木村 正次君         公正取引委員会         事務局官房庶務         課長      地頭所五男君         北海道開発庁総         務課長     高橋 昭治君         防衛庁経理局会         計課長     源氏田重義君         防衛庁経理局監         査課長     渡邉 正身君         防衛施設庁総務         部会計課長   風間  登君         大蔵省主計局司         計課長     加藤 剛一君         会計検査院長  鎌田 英夫君         日本国有鉄道常         務理事     岡田  宏君         決算委員会調査         室長      石川 健一君     ――――――――――――― 委員異動 二月二十八日  辞任         補欠選任   森下 元晴君     谷  洋一君 三月五日  辞任         補欠選任   小坂徳三郎君     中西 啓介君   桜井  新君     額賀福志郎君   玉城 栄一君     水谷  弘君 同日  辞任         補欠選任   中西 啓介君     小坂徳三郎君   額賀福志郎君     桜井  新君   水谷  弘君     玉城 栄一君 同日  理事森下元晴君二月二十八日委員辞任につき、  その補欠として谷洋一君が理事に当選した。     ――――――――――――― 二月二十八日  昭和五十八年度一般会計予備費使  用総調書及び各所各庁所管使用調  書(その1)  昭和五十八年度特別会計予備費使  用総調書及び各省庁所管使用調 (承諾を求  書(その1)          めるの件)  昭和五十八年度特別会計予算総則  第十一条に基づく経費増額調書  及び各省庁所管経費増額調書  (その1) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件 理事補欠選任  昭和五十五年度一般会計歳入歳出決算  昭和五十五年度特別会計歳入歳出決算  昭和五十五年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和五十五年度政府関係機関決算書  昭和五十五年度国香財産増減及び現在額総計算  書  昭和五十五年度国有財産無償貸付状況計算書      ――――◇―――――
  2. 横山利秋

    横山委員長 これより会議を開きます。  この際、理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴い、現在理事が一名欠員になっております。これよりその補欠選任を行いたいと存じますが、これは、先例によりまして、委員長において指名することに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 横山利秋

    横山委員長 御異議なしと認めます。よって、谷洋一君を理事に指名いたします。      ――――◇―――――
  4. 横山利秋

    横山委員長 次に、昭和五十五年度決算外二件を一括して議題といたします。  ただいまの各件は、第九十六回国会に提出され、第九十八回国会概要説明を聴取の後、審査を行ってまいりました。  本日は、それらの経過に基づき、各件について締めくくり総括質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。新村勝雄君。
  5. 新村勝雄

    新村(勝)委員 五十五年度決算締めくくりに当たりまして、まず最初に、総理にお伺いをいたしますが、決算審査は、国政の実績を評価し、貴重な国民の税金がどういうふうに使われたかを検討するものでありまして、極めて重要な意義を持つわけでございますが、実際には決算の取り扱いが軽視をされておる、こういう事実があるわけであります。  端的な一つの例でありますけれども、総理一つ年度決算審査に当たって、きょうのこの五十五年度におきましては締めくくりのときにわずか二時間しかおいでにならない、こういうことから見ても、いかに決算軽視されているかということがわかるわけでありまして、予算委員会並みとはいかないまでも、せめて各年度の初めと終わりくらいは総理のお出ましを願って、国政全般にわたる決算審査でありますから、そこで十分な審査、討議をすべきであると思いますが、決算軽視をされているという事態に対して、まず総理の御見解をいただきたい。
  6. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 決算は、国政の行われた後、全部審査いたしまして、それが適正に行われているかどうかということを検証する非常に重要な場であり、決算委員会もその意味におきましても重要な委員会であると心得ております。私もできるだけ時間を都合いたしまして出席して、いろいろ皆さんの御意見を承りたいと思っております。  今まで決算軽視されていたのではないかという御質問でございますが、時間の割り当て等を見ますと、私の出席に関しましては、予算委員会と比べますとはるかに時間が短いようでございまして、そういう点につきましては、軽視しているわけではございませんが遺憾の点がなきにしもあらずである、そのように考えております。
  7. 新村勝雄

    新村(勝)委員 これからは総理におかれましても、決算軽視しない、重視するという態度でひとつ対処をお願いいたしたいわけであります。  きょうは五十五年度決算締めくくりでございますので、五十五年当時の財政状況からまず伺っていきたいと思います。  五十五年の予算審議をされた五十五年の通常国会におきまして、当時の大平首相は、まず第一に財政再建が急務である、そして財政再建めどは、特例公債がない状態にすることが当面財政再建の道標であると言われたわけであります。そしてその時期を五十九年度とされました。五十九年度には赤字公債から脱却する、こういうことを約束されたわけであります。  ところが、特例公債ゼロのはずの五十九年度予算におきましてなおかつ六兆四千五百五十億の特例公債の発行を予定せざるを得ない、こういう事態であります。今まで財政再建計画というのは何回も立てられたわけであり良して、三木内閣のときに、これは五十二年度に立案をされ、五十二年度から再建にかかって、五十五年にはゼロを目指す、こういう計画がございました。また、福田内閣のときには、五十四年度から出発をして五十七年度にはゼロを目指す、こういう計画がございました。また、大平、鈴木両内閣におきましては、出発の時点は少しずれておりますけれども、ともに五十九年度特例公債ゼロを期したわけであります。そして、これを国民にお約束をされたわけでありますけれども、これらの各計画とは全く関係がないかのように、減るのではなくて、むしろ毎年毎年ふえてきたという事態が進行いたしました。そして、依然として特例公債は、脱却するどころかふえ続けて、ついにことしは特例公債の累計が五十兆円に達するという事態を迎えたわけであります。この事態について、この経過について、まず総理の御所見をいただきたい。
  8. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 歴代内閣赤字公債依存体質から脱却するために五十年代におきまして非常な努力を傾けてきつつあったと思います。しかしながら、この五十年代は石油危機後遺症によります世界的同時不況に見舞われまして、各国とも非常に財政苦心惨たんをした時代でございます。日本はこれを公債によって切り抜けて、それによってある程度事業を興しつつ、雇用を確保し景気を維持しよう、こういう形をとりまして、欧米のような増税政策をとらないで、公債依存政策をとらざるを得なくなった。これは不況のために財政収入が著しく減ってきた、経済成長も鈍化してきた、そういう理由によると思います。日本独特と申しますか、公債依存政策によって景気雇用を維持するという至上命令を実現しようと思って歴代内閣努力してまいりまして、そのために公債依存脱却ということは難しくなってまいりました。この政策がいいか悪いか、これはもう少し歴史的批判を待たなければなりませんが、欧米諸国が異常なインフレ、物価高あるいは深刻な失業に見舞われましたのに対しまして、日本はその点につきましては比較的軽微でうまくやってきた、外国からも日本を学べというようなことがその後五十年代の後半に出てまいりました。これはもう少し歴史的批判を待たなければならぬと思いますが、ともかくそういう日本独自のやり方で参りました。  そういうこともありまして、公債依存、特に赤字公債依存脱却を所期どおりできなかったことは甚だ遺憾でございます。また、その結果現在このような百十兆を超す公債の累積に見舞われましたことも非常に大きな負担になっているわけでございますけれども、その過程において雇用景気を維持しようというその目的はある程度実現し得たと思うのでございまして、今この後始末につきまして全力を振るって行おうとしておる次第でございます。
  9. 新村勝雄

    新村(勝)委員 公債政策がいいか悪いかということは、なお後世の史家にまつ以外にはないと思いますけれども、そうしますと、財政再建に失敗をした原因は主として、少なくともこの点については失敗しているわけですから、その失敗した最大の理由はどういうふうにお考えですか。
  10. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 やはり石油危機による後遺症によりまする世界的同時不況によりまして歳入欠陥等も生じてきた、そういうような経済的要因が非常に多いのではないかと思います。
  11. 新村勝雄

    新村(勝)委員 それもあるでしょうけれども、政府に本当に財政再建をする決意があったかどうかということを私は疑うわけでありまして、毎年度大蔵省財政試算なるものを出しますけれども、そこには必ず要調整額、ことしも来年度に対してそういう額がございますけれども、歳入歳出ギャップが必ず出る、そのギャップをどういうふうに埋めていくんだという具体的な計画ないし構想が示されていなかったわけですね。この再建のいずれのときにおいてもなかった。ただ将来大変厳しくなるという一つ試算だけを示している。そうして、このギャップについてはどうされますかということを国会ないしは国民に問いかけるという形で大蔵省は今日までまいったわけでありますけれども、それではいつになっても財政再建はできないわけでありまして、そのギャップ政府としてどういう方針で埋めていくんだ、歳出の切り詰めあるいは歳入の増加をどういうふうに図っていくんだという、いわゆる財政計画がなかったというところにあるのではないかと思います。  この点については、五十五年の予算審議のときに、当時の、現在でもそうですけれども竹下大蔵大臣は、財政計画をつくります、財政計画をつくるために真剣に取り組みます、こういうことをおっしゃっているわけであります。大蔵大臣いらっしゃいませんけれども、こうおっしゃっているわけですよ。ところが、その後何年たっても財政計画なるものは示されていないわけです。単なる試算しか示されていない。こういうことではこれからの、六十五年までに脱却するということを現在政府はおっしゃっていますけれども、これも画餅に帰するのではないかということを恐れるわけであります。  そこで、少なくとも財政再建を言うからには、財政計画をきちっと出して国会ないし国民にこれを示すということが必要だと思いますけれども、その点については総理いかがですか。
  12. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 財政計画を提出してしかるべきではないかというお話でございまして、我々も一応ごもっともの御議論のように拝察をいたします。その財政計画の基本になるのは経済政策でございますので、去年の八片でございましたか、「八〇年代の展望と指針」と書きました主として定性的な性格を持った経済運営方針をこの前お示しいたしました。それに基づきまして財政をどういうふうに始末していくかという構想、アイデアを出してまいりました。それは具体的には、各年度ごと予算編成の際にその翌年度にわたるものにつきまして計画を具体的にお示しして、そしてそれを積み重ねてやってきたという次第であります。このように、為替相場につきましてもかなり変動的要因もあり、経済動向等につきましても必ずしも予断を許さないというような情勢のもとにありまして、数値を的確に示した財政計画というものは必ずしも適当ではないと私は思うのでございます。それは過去におきましても相当計画と現実が乖離したという事実もございます。そういう意味におきまして、定性的な性格を私の内閣の場合にはとってきたつもりでございます。  ただしかし、ある程度のめどを持たなければ財政改革というものはできません。そういう意味におきまして、八年かかって赤字公債依存体質から脱却しよう、そういう最終ターゲット、目標というものはつくりまして、それを実現していくためにこれからいかに機動的に経済政策なり財政政策というものを運用していくかということを、ローリングプランあるいは毎年毎年見直すというやり方でそれを追求していくという方策をとっておるのでございます。  そういうことをやるためにある程度の判断をしていただくよすがが必要である。そういうので、五十九年というものを基準にしてそれが投影された形で平行移動的に展開すれば大体こういうふうになります、その幾つかの条件によりましてA、B、Cというような形の中立的な機械的な基準数値をお示しした。それが要調整額という数字になっておりますけれども、これは、八年目に赤字公債依存から脱出するという目的を実行するために一応機械的に割り振ってみればこういうふうになります、幾つかの条件によってこのように変化いたします、そういう数字をお示しいたしまして、そしていろいろ御議論をいただき、それを頭に置きつつ政府が毎年毎年具体的計画を推進していく、こういう考えに立ちまして実行しておるのが現状でございまして、私はこういうやり方が目下のところ適切であると考えるのでございます。
  13. 新村勝雄

    新村(勝)委員 時間がありませんので、次の問題に移ります。  ロッキード事件の反省から出発をして、現在の会計検査院法は不十分であるということで、その改正をすべきであるという議論が既に長いわけであります。ところが、政府は一向にこの問題について誠意を示していないわけでありますけれども、総理のお考えはいかがですか。
  14. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 この点につきましては私も重大な関心を持ってきておるところでございます。ただ、一つ問題点は、政府関係機関が融資したその先まで会計検査院がこれを検証するということは、企業の活動を阻害しないか、それは少し行き過ぎではないか、そういう自由主義的、民間の自由や経済活動活発性というものを確保しようという考えが他面にございまして、そういう意味におきまして慎重にならざるを得ないというのが現状でございます。  しかし、実際は、会計検査院活動は活発にする必要があるというので、関係各省庁に訓示をいたしまして、会計検査院に対しては積極的な協力を呼びかけたり、あるいは会計検査院の人員や予算等につきましては、非常に財政緊縮の折からではありますが、その範囲内でできるだけ機能を活発にできるような配慮をしてきておるというのが現状でございます。
  15. 新村勝雄

    新村(勝)委員 財政再建院法の問題については、時間がありませんので改めてまたお伺いをいたします。  ここで一つの別の問題をお伺いしたいのです。それは行刑の問題でありますけれども、帝銀事件の犯人とされている平沢貞通は、昭和二十三年に逮捕されてから三十五年間、三十年に死刑が確定してから二十八年間、拘禁をされているわけであります。この事件物的証拠も決め手もないままに死刑判決が下され、多くの人々判決に疑問を抱き、平沢シロ説も有力に主張されてまいりました。有名な政治家、法曹界、学界の人々、多くの文化人が無実を訴え、平沢氏の釈放を求めてきたという経過がございます。  刑が確定しながらこのように長い間、刑を執行できなかったのにはそれなりの状況があったわけでありまして、判決に疑いを持つ世論が起こる中で、昭和四十四年、時の西郷法務大臣は、当時、占領下の七人の死刑囚について恩赦の実現に努力をするという言明をいたしております。ところが、その後、七人のうちでそれぞれ再審が認められたりいたしまして、今残っておるのはこの七人のうち平沢氏がただ一人ということであります。また、五十四年の当時の古井法務大臣は、獄中三十一年、当時八十七歳の高齢という事情から、人道上の観点より恩赦を行う旨の意向を固めた、こういうことが報ぜられたわけでありますけれども、実現しないまま今日に至っております。  平沢氏はことし九十二歳、来年五月七日になると死刑判決を受けてからちょうど三十年になるわけでありまして、刑法三十二条には判決から三十年を経過した場合には死刑の時効が成立をするという規定があるわけであります。そして本人はもう既に九十二歳で老衰が著しい、こういう事態であります。  こういう事態に対して、政府はこの問題をどう考えるのか。今から死刑を執行する、これは事実上できないと思います。それならば獄死を待つとか、これは司法制度から考えても大変遺憾なことである。こういう状況考えた場合に、総理は、ひとつこの際、決断をなさって、釈放の道を開くべきではないかと考えるわけでありますけれども、御見解を伺いたいと思います。
  16. 住栄作

    ○住国務大臣 お尋ねの平沢の件につきまして、東京高等裁判所において、再審請求が行われており、現在審理中でございます。それからまた、恩赦につきましては、中央更生保護審査会に平沢から上申がなされております。そういうふうな段階でございますので、お尋ねの件につきましては、どうのこうのということをお答えすることは差し控えさせていただきたいと考えております。
  17. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 まず、裁判所の判決につきまして論評することは、行政府の長としてこれは差し控えさせていただきたいと思っております。  それから、刑の執行の問題等につきましては、これは歴代法務大臣、慎重に考えてきたところでございまして、私もこれは慎重に取り扱わなければいけない、そのように考えております。
  18. 新村勝雄

    新村(勝)委員 三十年を経過してもなお結論が出ないということは、裁判に対する批判ということを離れて、この問題の持つ社会的な重要さというか、この判決に対する疑問というか、そういうことで政府としても今日まで決めかねていた、手に余る問題として今日までじんぜん日を送ってきたということですね。ですから、現在ではもう法的な解釈あるいは法的な手続という段階を既に越えているのではないか。既に九十二歳という高齢で、いつ老衰死するかもしれないという状況の中で、しかも三十年にわたって拘禁を続けているという事態に対してどう対処するかということですよね。もう再審も十二回、十三回ですか、繰り返し行われている。恩赦の請求も三回、四回と行われている。これを同じように繰り返していったのでは、全く時間稼ぎということになってしまうわけであります。単に検討あるいは裁判には口を入れないということではなくて、総理のもう少し具体的なあるいは前向きな御見解をひとついただきたいと思うのであります。
  19. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 先ほど申し上げましたように、政府としては慎重なる態度で臨みたいと思っておりますが、そういう御議論国会におきまして一応慎んで拝聴しておく、そういうことで御容赦願いたいと思います。
  20. 新村勝雄

    新村(勝)委員 拝聴といったって、これは聞いていただくだけではしょうがないのですから、十分検討を願いたいと思います。  それからもう一つですが、最近、自衛隊員が訓練中に自分が持っている銃器で、兵器で同僚を殺傷したという事態がございます。これは極めて重大な問題でありまして、報道されるところによりますと、前もってこの者の性格異常がわかっていたというようなことも言われております。こういう事態が起こることは、自衛隊員の管理あるいは上司の監督、こういったことに不備な点があるのではないかということが疑われるわけであります。また、現職の警官が銀行強盗を起こした、こういうことがありまして、特殊の任務についておるいわば特別の公務員でありますが、特別の公務員がこういう犯罪を犯すということについては、国民の深刻な疑問を招きかねないわけであります。総理の御見解を伺いたい。
  21. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 現職の自衛官が訓練中にあのような衝撃的な事件を起こしまして甚だ遺憾でございます。国民の皆様方にも、監督不行き届きでありまして申しわけないと思う次第でございます。事態は今厳重に真相を究明中でございます。とりあえず全自衛隊に対しまして、再びこういうことが起きないように諸般の措置をとっておるところでございますが、また一面におきまして、真相の究明等を的確に行いまして善後措置を万遺憾なきを期してやりたいと考えておるところでございます。
  22. 新村勝雄

    新村(勝)委員 自衛隊員とか警察官というのは兵器を持っておる、武器を持っておるわけですね。一般国民は身に寸鉄を帯びていないわけであります。これは、国民一人一人の身を守るという権限を一切そういう特別公務員の皆さん方にお預けしているということですよね。だから、自衛隊あるいは警察官の兵器、武器というのは、国民からそういう意味で信託を受けている武器である、こういうことが言えると思います。そういうことから、武装しておる人たち、これは他の任務についておる公務員や他の職についておる方とは全く違う、極めて特殊の任務と責任を負っておるということだと思うのです。  そういう点で、自衛隊や警察官にはいささかも緩みがあってはならないと思うのです。その点でもう一言、今後そういう問題を再び起こさないための総理の御決意をいただきたい。
  23. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 お示しのとおり、自衛隊やあるいは警察官は、武器あるいはそれに類するものを持っておるわけでございます。したがいまして、これらの国を防衛しあるいは治安を取り締まるための道具が人民を殺傷する凶器になるがごときことは、政府としては甚だ許すべからざる行為でございまして、厳重に監督しなければならないところでございます。そういう点につきましては、自衛隊並びに警察、そのほかそのような衝に当たっている者に対しまして、さらに厳重に監督を加えてまいりたいと思っております。
  24. 新村勝雄

    新村(勝)委員 終わります。
  25. 横山利秋

    横山委員長 井上一成君。
  26. 井上一成

    ○井上(一)委員 私は、最初に、リムパック82のときにカホーラウエ島に艦砲射撃をしたわけなんですね。米国の内務省の文書によると、このカホーラウエ島には史跡が多くあり、史跡指定がされているわけですね。こういうことで海軍と同島の住民との間に一定の協定があったと思うのですが、そういうことは防衛庁は十分承知をしていらっしゃったのか、まずこの点を聞いておきたいと思います。
  27. 西廣整輝

    西廣政府委員 従来カホーラウエ島で対地射撃訓練をやったことがございますが、史跡等が存在しているということは最近になって承知をいたしました。
  28. 井上一成

    ○井上(一)委員 それは私はおかしいと思うのです。外務省はどうだったのでしょうか。
  29. 北村汎

    ○北村政府委員 外務省といたしましては、リムパック84はことしの巻あるいは夏ごろに中部太平洋方面で行われると承知しておりますが、まだこのリムパックの訓練の詳細でございますね、時期とかあるいは訓練内容、訓練の詳細については目下調整中の段階にあるというふうに承知をいたしております。
  30. 井上一成

    ○井上(一)委員 何を言っているのですか。外務省は強い抗議を受けているでしょう。それから、ここに一九八一年一月二十八日、米国の内務省が三月十八日付でカホーラウエ島が考古学上史跡として国の指定を受けたことを米海軍のフートハイム次官補に通知をしている文書がちゃんとあるわけです。今ごろ何も知らないと…。  委員長、私は今当時の写真を手にしているわけです。お許しがいただけるなら総理以下御一覧をいただきたいと思いますが、よろしいですか。
  31. 横山利秋

    横山委員長 どうぞ。
  32. 井上一成

    ○井上(一)委員 常々私は、外務省のその姿勢については総括の予算委員会の中でも指摘をしてきました。今回も外務省は、住民からの抗議も受けたあるいはそういう強い申し入れがあったことも何ら承知してないということで言い切れるのでしょうか。
  33. 横山利秋

    横山委員長 御返事ありますか。
  34. 北村汎

    ○北村政府委員 御指摘の島に対する問題につきまして、私ども外務省に対してそういう陳情があったということはございません。ただ、そういうような陳情が行われたということは新聞報道では承知いたしております。
  35. 井上一成

    ○井上(一)委員 現地の公館が島民からの抗議を受けたことはないのですか。
  36. 北村汎

    ○北村政府委員 ただいま私の承知いたしますところでは、現地の総領事館に対してそういう陳情がなされたという事実は承知しておりません。
  37. 井上一成

    ○井上(一)委員 それでは、すぐに確認してください。私の承知する中では、現地公館がそういう強い陳情を受け、デモられているじゃないですか。そういう実態を我が国の政府当局、外務省に通知がないということは、それじゃ現地の公館は何をしているのですか。どんな情報を本国に送っているのですか。私の質問が終えるまでに事実関係を明確にしてほしい、こういうふうに思います。ごらんになっておわかりのように、島民は史跡を守るという意味も含めて強い抗議をいたしております。  それで、さらに防衛庁にお聞きをしたいのでございますが、ことしの訓練はいつごろ予定されていますか。
  38. 西廣整輝

    西廣政府委員 先ほど北米局長からお答え申し上げたとおり、今回の84リムパックの訓練の細部につきましては、今調整中でございまして決まっておりませんが、私どもの方の年間の訓練計画等から見まして、日本側の希望としては五、六月ごろを中心にしてやってほしいというように申し出ております。
  39. 井上一成

    ○井上(一)委員 ことしはタヒチのフランス海軍も参加するのではないだろうかという情報があるわけであります。そういう情報をつかんでいらっしゃるのかどうか。また、ことしの参加国は何カ国であり、訓練の規模はどれぐらいの規模を想定されているのか。あるいは、例年訓練日時決定前でありますけれども、そういう概要についても、八二年以上の大規模な、そして参加国もさらに多くの国が参加をしての合同訓練になる予定であるのか、その点も聞いておきたいと思います。
  40. 西廣整輝

    西廣政府委員 まず、参加国でございますが、前回は先生御案内のように、米国、日本以外にカナダ、オーストラリア、ニュージーランドが参加をいたしております。なお、フランス海軍の参加につきましては、昨年あたりそのようなうわさのようなものもあったわけでございますけれども、私どもは今最終的には確認をいたしておりませんが、フランスは参加しないのではないかというように考えております。  なお、我が方の参加規模といたしましては、現在予算でお願いしておるのは、艦艇五隻、航空機八機を参加させたいということでございます。
  41. 井上一成

    ○井上(一)委員 さらにここで聞いておきます。  今お見せしたように、リムパック82、二年前のリムパックでは、カホーラウエ島で艦砲射撃の訓練をやったわけですね。ことしはそういう強い抗議もありますし、史跡保存の内務省の資料もここにあるわけでありますけれども、防衛庁としては、今回はカホーラウエ島に対する艦砲射撃が訓練予定の中に入っているのか、あるいはもうそういうことは再び繰り返さないというお考えなのか、聞いておきたいと思います。
  42. 西廣整輝

    西廣政府委員 海上自衛隊といたしましては、リムパックヘの参加あるいはそれ以外の派米訓練に際しまして対地射撃訓練を行うことがあるわけでございますが、84リムパックに関連をいたしまして、現在いろいろ調整中で決まっておりませんけれども、海上自衛隊の対地射撃訓練につきましては、やるという方向でいろいろ調整をいたしておりますけれども、その際の候補地としてカホーラウエ島は対象といたしておりません。
  43. 井上一成

    ○井上(一)委員 カホーラウエ島は対象にしない。前回も対象にしますと言ってこれをやったのじゃないんです。  ここでもう一度再確認、リムパック84は、艦砲射撃の対象にカホーラウエ島は位置づけない、こういう理解をしてよろしゅうございますね。
  44. 西廣整輝

    西廣政府委員 先ほど御答弁申し上げたとおり、カホーラウエ島を今回のリムパック84に関連した訓練候補地として対象にいたしておりません。
  45. 井上一成

    ○井上(一)委員 専守防衛を大原則とする我が国の防衛のあり方から見て、艦砲射撃はどういう位置づけをしているのか、この点についても聞いておきたいと思う。恐らく水際防衛だというような答えがあろうかと思いますが、これは私は少し逸脱しているんじゃないか、こういうふうに思うのですよ、そういう位置づけであれば。専守防衛という我が国の防衛政策の大原則、艦砲射撃、どのような位置づけなんですか。
  46. 西廣整輝

    西廣政府委員 自衛隊が行います防衛作戦にいろいろな態様がございますが、例えば相手方が上陸をしてある地域を確保されてしまったというような場合に、逆上陸をするとかそういった際に際しまして対地射撃等も当然行われるというふうに考えております。
  47. 井上一成

    ○井上(一)委員 それはおかしいじゃないですか。では、東京が占拠された、東京湾から艦砲射撃をやる。東京に住んでいるのは日本国民ですよ、あなたの論理からいけば。余り時間がないからこの問題には長く質問できないけれども、あなたの論理からいけばそうじゃありませんか。それはどうなんですか。
  48. 西廣整輝

    西廣政府委員 先生の御意見のように、東京が占領されるということは大変な事態でございますが、そういったことでなくて、ある橋頭堡をつくられるというようなことはある程度覚悟せざるを得ないということで、それに対応する手段も訓練をしておかなければならないということでございます。
  49. 井上一成

    ○井上(一)委員 この問題は、改めて私はそのことについてはさらに質問をいたします。  ここで、国際交流の盛んな今日、出版物の国際交流は非常に大切であるということは私が言うまでもありません。外国政府出版物、学術出版物等の購入その他の方法では入手しがたい資料、これはどのような方法で入手しているのか、まず、これは国会図書館長さんに聞いておきたいと思います。
  50. 荒尾正浩

    ○荒尾国立国会図書館長 国立国会図書館の現在の国際交換業務には、当館がみずから行う国際交換とそれから受託交換がございます。  まず、当館がみずから行う国際交換ですが、当館が収集した資料を利用して、三十八の国際機関を含めまして百九カ国六百九十三の学術研究機関、図書館等と出版物の国際交換を行っております。昭和五十七年度には当方から図書二万四千四百九十一冊、雑誌八千二百五十九部、地図千八百四十二枚等の資料を送り、外国からは図書二万六千五百十冊、雑誌三千六百三十七部、地図千二百三十五枚等の資料が送られてきております。  なお、この国際交換は、当館の外国出版物収集の有力な手段、わけても政府出版物つまり公の出版物が交換資料のうちで相当の量を占めているので、外国政府出版物収集の有力な手段となっております。  次に、受託交換でございますが、内外の学術研究機関、図書館等が国際交換を行う際に、当館はその仲立ちをいたします。国内の学術研究機関、図書館等から委託され衣資料を外国の交換先に送り、一方、同じようにして送られてきた資料を受け取った後、国内の学術研究機関、図書館等へ送付しております。昭和五十七年度には、外国の交換機関あてに四万二千百四十包みの資料を送り、外国からは当館を経由してもしくは交換機関に直接ほぼ等量の物を受領しておるわけでございます。
  51. 井上一成

    ○井上(一)委員 ここで私は外務省に尋ねておきたいのですが、政府は常々国連中心主義の立場をとってこられたわけでございますし、そのことは国連の機能強化を私も指摘をしておるわけです。ユネスコを重視するというこのことも、安倍外務大臣に、アメリカの脱退について私は強い再加入、これは指摘をしてきたわけです。  一九五八年十二月三日、第十回ユネスコ総会において採択された出版物の国際交換に関する条約、A条約、国家間における公の出版物及び政府の文書の交換に関する条約、B条約ですね。この出版物の国際交換に関するユネスコの二条約を我が国は早く批准すべきである、こういう考えを持つわけでありますが、外務省の見解を聞いておきます。
  52. 山田中正

    ○山田(中)政府委員 お答え申し上げます。  今先生御指摘いただきました二つの条約につきましては、今国会に承認のため御提出申し上げたいと思っております。
  53. 井上一成

    ○井上(一)委員 私は、ここで障害者の問題について、具体的な問題として、昨年の十一月にスウェーデンでねむの木学園の子供たちの展覧会が開かれました。スウェーデンは御承知のように福祉国家だ、施設は十分に整えられているわけであります。しかし、スウェーデンの教育大臣がこの展覧会に出席をして何と言ったか。これは報道を通じて私が承知するその範囲ではありますけれども、失われようとしているもの、今考えなければならないもの、それは何なのか、愛と幸せと平和がやってきた、忘れていたものを持ってきてくれたんだ、こういうふうに語っているわけなんです。小さな子供たちの芸術は見事な花を吹かせてくれました。私は、優しい日本を紹介してくれた、こう思っています。文化交流の意義をここに果たしてくれた。このことは、ただ単に、宮城まり子さんという福祉や教育に強い情熱を持っている、小さな体で力いっぱい生きているその熱意が成功させたんだ、それだけの認識で済まされていいんだろうか、こう思うのです。その情熱なり努力なり、あるいはその成果なりあるいはその経過、プロセスを踏まえて、いろいろな意味で一人でも多くの人がかかわりを持って、こういう民間文化交流、国際交流をより深めていくことが必要ではないか。  私は、ここで、このねむの木学園の果たしてくれた国際交流、そしてこの展覧会の成功をどのように政府は認識をされていらっしゃるのか、その実績の認識について尋ねておきたいと思います。
  54. 三宅和助

    ○三宅政府委員 昨年二回ねむの木学園の児童絵画展が行われましたが、特にスウェーデンにおける昨年十一月につきましては、たまたま越智大使の方からその評価について電報が入っております。一万八千人もの人が実は参加いたしまして、この種の展示会としては会場始まって以来の大入りであって、老若男女が何回も実は見に来たということでございます。  その原因の一つが、実は作品自体が非常に優秀であったということのほかに、大使館とそれから主催者側が連携プレーをやって実にいい広報活動をやったということが指摘されております。  また、最後に、これが障害者の単なる問題を離れまして、障害児童の芸術、それを支える創造重視の教育という観点から、非常に対日イメージアップにつながったということで非常に高く、現地からも報告が参っておりますし、外務省といたしましても同じ認識を持っている次第でございます。
  55. 井上一成

    ○井上(一)委員 高く評価をする、そしてその実績を高く評価した認識をしているということですが、今後どういうふうに外務省は手助けをしていこう、協力をしていこうというお考えを持っていらっしゃいますか。
  56. 三宅和助

    ○三宅政府委員 このように高い評価を現在与えておりますが、この実績を踏まえまして、今後同種の企画がその以外の地で行われます場合には、外務省としてもできるだけの、いろいろな面での協力をしていきたいということで、主催者側と今後十分協議して積極的に対処してまいりたい、こう考えております。
  57. 井上一成

    ○井上(一)委員 このことについては一言総理大臣からも御所見を承っておきたいと思います。
  58. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は、宮城まり子さんのねむの木学園の子供たちのその絵の展覧会を日本のデパートで行われましたときに拝見に行きまして、非常に感動をさせられました。あの子供たちをよくここまでその才能を見出して発揮させた、また、宮城さん以下関係者が非常に熱意を持って、そのことに自分の生きがいを感じて人生を傾倒しているのを見まして、非常に感銘した次第です。でありますから、たしか官邸にお越し願って私から感謝を申し上げたこともあったと思います。私自体があの絵を見ているうちに涙が出るような気がいたしました。恐らくスウェーデンの皆様も同じ感動に打たれたのではないかと思います。  それで、その問題については私も関心を持っておりまして、外務省の方にも連絡をさせまして、いろいろ協力するように言ってあるところでございます。今後もそういうようないいものにつきましては積極的に協力する必要があると思って、指示していきたいと思っております。
  59. 井上一成

    ○井上(一)委員 もう時間がありませんが、少し理解を深めるために、総理に短な文章を読んで所見を聞き、対応を聞きたいと思います。  これは差別の問題であります。   私の住んでいる所も同和地区。いわゆる「村の子」です。結婚はもちろん、職場でも目には見えない差別があると聞きます。私は幸か不幸か差別とはっきりわかるような待遇を受けたことはありませんが、何年か前、長男の友人の誕生会がありました。仲よし五人組。他の四人は招待されたのに自分だけ声がかからず「お母さんが、いいっていったら」ということでした。でもやっと母親の許可がおり自分も行けるとわかった時の嬉しそうな顔。さっそくプレゼントをもっていそいそと出かけたものでした。「今度は僕の誕生日にみんな来てもらうんだ」と。その日、お赤飯に子ども達の好きなお子様ランチにケーキ。でも誰一人として「おめでとう」とは言いにきてくれなかったのです。   すぐ電話したところ「お母さんが行ったらあかんやて」と寂しくこたえていました…。お子様ランチの飾りについている小さな旗、揚枝に小さく切った半紙をノリづけして色をぬる、親子でその日のためにいっしょに作ったのに…。   近頃学校、教育委員会その他で同和教育と称してさかんに差別をなくすようさけばれています。しかし、そう言われている諸先生方、 も含めてですね、少し中略します。「ホンネとタテマエの違う世界をここにも見た思いです。」これはお母さんが訴えているわけです。   だれも食べにきてくれなかったお子さまランチ。その夜、坊やがどんな気持ちだったかと思うと、たまらない気持ちになりました。そして子どもにそんなつらい目をさせたお母さんが「世の中そんな人ばかりではない。幸福にやっている人もたくさんいます」と そのお母さんは子供を励ましたのだ。こういうことが「開け心が窓ならば」という、読売新聞大阪社会部編「差別反対大合唱」という中に記載をされているのです。  総理、これは「走れ村の子 負けるなよ」、そういう表題がついていますけれども、どちらかといえば、今までは住宅整備だとか環境整備あるいは地域改善、ハードな面での取り組みは一定の前進がなされている。まだまだ十分ではありませんけれども、この点については取り組みをされてきたことは認めます。  私がここで申し上げたいのは、今後差別をなくしていく、そういう世の中の仕組みを変えていく。総理は仕組みの問題だとよく言われますが、私も全く同感で、仕組みの問題だと思うのです。その仕組みを変えるためにも、やはりソフトな面、教育の面にもっと目を当てていくべきではないだろうか。もちろん就職や雇用や労働等の面もありますけれども、そういう意味でソフト面における取り組みがどういうふうに今後なされようとしているのか。やはり差別というものは後を絶たない。いろいろな差別がありますけれども、私は、とりわけ部落差別というものが今我が国における一番大きな差別事象だと思うのです。そういう差別をなくすために共通のベース、そういうベースをつくるというのでしょうか、そういうものが必要になってくるのではないだろうか、こういうふうに思うのです。私はそのことが、法律でしっかりと決めつけられたからすべて差別がなくなってしまう、そうは思いませんが、今のような状況では、この子供のあるいはお母さんの差別に対する声、こういうことも踏まえて、今のままではどうしても不十分だ。やはり基本的なベースを、各省庁間でいろいろなことがあるから、総理は恐らく、各省庁間でこういう問題は討議検討して取り組んでほしい、こういうことを言われますけれども、教育改革、財政改革、あなたが言われていること、各省庁間ではどうもまとまりがとれぬ、そういうときに、やはり総理がみずから先頭に立って、そういう差別をなくする仕組みをつくるためのベースをつくろう、私はそのことが大事だと思う。物や金じゃない。やはりそういう一つのベースをつくるという、それが基本法という、ベースだから、基本だから、基本法というものでいいのか、名前は別として、やはりそういうベースをつくっていく、そういう強い決意が私は欲しいと思うのです。そのことがすべて世の中、意識を変えることにもつながるし、仕組みを変えることにもつながるし、あらゆる社会の問題を解決していく糸口になる、こういうふうに思います。  私の申し上げたいこと、そして総理にお願いをしたいこと、基本的なそういう問題について、ひとつお答えを願いたい。ぜひ総理の所見を、私はもう質問の時間がこれで終えましたから、総理、どうぞあなたの思うことをずっとおっしゃってください。
  60. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私も、今あなたが御指摘になった「開け心が窓ならば」という本を拝読いたしまして、その部分を読んで実は暗然としたのが率直なところでございます。まだこんなことがあるのかというのが率直なことで、しかし、これはレアケースでなければならぬ、こういうことが日常茶飯はあり得べきではない、本当のレアケースであってほしい、そして、これをなくさなければいかぬ、そういうことをしみじみと感じた次第でございます。やはり一番のポイントは心の問題でありまして、我々が本当にヒューマニズムと申しますか、人間としての尊厳性にお互いが目覚めて、もし間違った認識を持っている人がいるならばそれを行動で改めさせる、そういう点について各省庁がもっと積極的に努力もすべきであるし、また、民間団体とも提携して、そういう面について特に力を入れていく必要がある、そのように痛感した次第であります。
  61. 井上一成

    ○井上(一)委員 時間が参りましたから、このことについてはまた機会を改めて総理質疑をいたしたいと思います。  終わります。
  62. 横山利秋

    横山委員長 貝沼次郎君。
  63. 貝沼次郎

    貝沼委員 総理は行政改革ということに対して大変御熱心に断行されるという決意を私は伺っております。行政改革は断行しなければならないということは私の賛成するところでもございます。これはぜひやっていただかなければならない、国民もこのことに期待をしておると思います。しかし、その内容が果たして国民の思っておるものと合っておるのか、あるいはずれておるのか、これはまた議論があるところだと思うわけでございます。  したがいまして、私は、この決算審議に当たりまして、今回は行政改革という立場から決算を見直す必要があるのではないか、こういう考えを持っておるわけであります。やり方としては、行政改革は、臨調の結論を踏まえて、制度であるとか機構であるとか規模であるとかあるいは立法化の伴うものが多いと思いますが、一方にはまた、現実の組織の中で力を入れればまだまだ行政改革の精神にかなう実効を上げることができるのではないかというところもあると思います。そういうところから、予算予算の執行そして監査、決算、そしてこの決算審議を経て次の予算の編成にどういうふうにこれが生かされるか、フィードバックするか、ここのところが、ただ形式だけでなく内容として重く取り上げ、これをやることが国民にこたえる行政改革の第一歩ではないかと考えておるわけでございますが、総理はこの点どのようにお考えでしょうか。
  64. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 行政改革によりまして、政府は簡素にして効率的な政府をつくろう、こういうことで鋭意努力してきたところでございます。  会計検査院が指摘されました諸般の事項は、冗費であったりあるいは運用や使用を誤っていたり、そういうような面を厳しく指摘されておるところでございまして、まさに行政改革が焦点を当てて改革しなければならぬポイント、ポイントを突かれているところであるとも思っております。我々といたしましては、そういうふうに会計検査院から突かれる前に、そのようなことを起こさないということが第一でございますから、そういう病巣を先に切って捨てていくことが行政改革でなければならぬ。そういう意味におきまして、余分な仕事はやめさせるとか、あるいは間違っていることは改めさせるとか、できるだけ早く日本の行政機構、政府関係機関全体を健康体に持っていこう、こういうことで努力しておるところでございますが、今後とも会計検査院とも連絡を緊密にいたしまして、我々が行政改革を実行していく上のいろいろな指針を得たいと考えておる次第でございます。
  65. 貝沼次郎

    貝沼委員 先般、五十七年度決算に伴いまして会計検査院の報告が出されておりまして、その中に五十三年度から五十七年度までの五年間にわたる検査院の結果の報告がなされておりました。そして、これを見てみますと、ただいま審議いたしております五十五年度、これは最もむだ遣いの多い年度でございます。  試みに申し上げますと、五十三年度は件数にして百九十四件、金額にして二百六十九億八千五百万円。ところが五十四年度は百八十一件で三百三十六億四千五百万、それから五十五年度がどんとふえまして二百八件、金額で五百十億三千三百万、また五十六年度は二百十四件で二百七十五億六千三百万、五十七年度が二百十三件で二百十八億四千四百万円、こういうふうに、今審議しておる五十五年度は、件数はあれですけれども、金額にして最も多い年でございます。こういうような金額の面。  それからさらに、内容的に見ると、相も変わらず毎年毎年指摘されておるにもかかわらず同じようなことが指摘されております。しかも、これも件数にいたしましても、私、各省庁全部何年度にどういう件で何件指摘されたか調べてみましたら、相談したように同じですね、非常によく似ております。そうして、大体二百十四件とか二百十三件とか、よくぞまあこれだけそろった数字が出てくると思うくらい同じようになっておる。この辺が私は、結果的にそうなんですから一概に言えませんけれども、何かしっくりしないものがある。  さらに、むだ遣いの内容を見てみますと、年々何となく悪らつ化してきておる、手口の悪質化、非常に巧妙になってきておる。それから投入資金が相も変わらず生かされていない。それから技術などの進歩があるわけですが、これに追いつけない。こういうようなことから、制度もあるんですけれども、やはりもっと足元からきちっと正すべきものは正す、まじめにやる、こういうことが必要だと思うわけであります。もう一度、総理の見解を求めたいと思います。
  66. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 具体的に各年度ごとの御指摘をいただきまして、まことに恐縮に存じておるところでございます。一つ一つ各省庁が検査院の報告を検討いたしまして、次年度あるいは将来にわたってその過失を繰り返さないように、あるいは同じような性格のことをほかでやっておるかもしれぬのでそういう点をチェックして、会計検査院の迷惑にならぬように今後ともきつく指導してまいるつもりでおります。
  67. 貝沼次郎

    貝沼委員 そこで、ただ決意は恐らく毎回の委員会であるんだろうと思うのです。しかし、結果がこうなっておるということを私は申し上げているわけでありまして、したがって、それだけの決意がおありならば、必ずそれだけの結果が、あるいは行動が伴わなければならない、こういうふうに思います。  そこで、先ほど話が出ておりましたように、行革という立場から考えてみまして、決算の強化をするということは、一つは検査員をふやすとか、こういうような機構の問題があると思いますが、これは恐らく行革という建前からいくと大変なファクターがあるだろうと思うわけであります。これもやらなければならぬことでしょうが、なかなかすぐに間に合うというものではない。それからもう一つは、それならば決算というものを議案にしたらどうかという議論も従来あったわけでありますけれども、これもすぐ間に合うものではなく、これは検討していただかなければなりません。そうすると、もう一つの方法としては、現在の法律内で効果を上げる方法、これはただいま総理が決意をされましたので、これをどのようにして実行するか、こういうことにかかっておるわけでございます。  そこで、私は、この三番目の点について総理にさらにお伺いしたいと思いますが、先ほど総理は、従来ややもすれば予算委員会よりは決算委員会に出る数は少なかった、こういうふうにおっしゃいましたけれども、今までこの五十五年度決算に限り、総理は何時間この審議に御出席されましたか。
  68. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 何時間出席したか、私まだ正確な記憶ございませんので、これは政府の方でもう一回検討さしていただきたいと思います。
  69. 貝沼次郎

    貝沼委員 じゃ、何時間というのが正確でなければ、何日ぐらい、何回ぐらい出席なされたか、御記憶はございますか。
  70. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 そう多い回数でないと思います。前回出席したのはいつであったか、私の記憶に正確に残っておりません。はなはだ遺憾でございます。
  71. 貝沼次郎

    貝沼委員 そういうふうに総理が忘れるほど出ておらないわけであります。少なくとも、この前、きのう出たとかそういうふうなものなら、この優秀な総理大臣が忘れておるはずはありません。私は、総理大臣が忘れるほど決算委員会軽視されておる、このことが遺憾だと思うわけであります。  したがいまして、総理は、これからなるべく出席したいという答弁が先ほどありましたけれども、ただそういうようなことではなしに、具体的にこれからは決算委員会には何日ぐらいは出席したい、こういうような御決意はありませんか。
  72. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 与野党の理事で御相談願ったところに従っていたしたいと思っております。
  73. 貝沼次郎

    貝沼委員 理事で相談した結果と言いますが、それならば、委員会から要請があればそれに応ずるというふうに解釈してよろしいですか。
  74. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 できるだけ審議には御協力申し上げる気持ちでおります。
  75. 貝沼次郎

    貝沼委員 できるだけというのはどれぐらいかわかりませんが、私どもも理事会でできるだけ総理出席を願って、そうして国民にこたえられる実の上がる決算委員会をやってまいりたい、こう思っております。ちょこちょこお願いすると思いますから、そのときは万障繰り合わせてひとつ御出席を願いたいと思います。  それから、もう一つの提案でありますが、委員会で本日もまた議決案が出るわけでありますけれども、この議決案に対する総理の報告が議長あてに提出をされます。ところが、この報告に対する、その処置に対する質疑というものを予算委員会の前に行うのが私は筋であると思います。予算にはこのように反映いたしました、こういうことでありますから、予算委員会の前に決算委員会をセットするなどして総理の説明を受ける、こういうことも一つの方法だろうと考えておりますので、もしこちらの方で、理事会等で検討しそういうことをやろうというふうに決まった場合は、総理出席する考えはありますか。
  76. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 まず第一に、会計検査院からいろいろ御指摘を受けたその過程におきまして、各省庁は会計検査院といろいろ連絡をとって、その指摘事項を自分でチェックし、誤っているものは認め、改めるものは改める、そういう過程を今まで通ってきて、そして、この決算委員会に最終的に御審査をいただく、そういう形になっておると思います。そういう意味におきましては、各省庁は指摘されたことを来年度予算等において繰り返さないように、また将来繰り返さないようにみんな改めつつここに臨んでおる、こういうことであると思っております。  国会の内部におきますいろいろな議事手続、審査の方法等につきましては、これは国会におきましていろいろ御検討願えれば幸いであると思っております。
  77. 貝沼次郎

    貝沼委員 ちょこちょこお願いすると思いますから、そのときはひとつ勇んで出席していただきたいと思います。  さらにもう一点、これは要望でありますが、やはり議案として扱う方法もあると思いますので、この点について政府として検討するかどうか、この点をお尋ねしておきたいと思います。いかがですか。
  78. 茂串俊

    ○茂串政府委員 いわゆる決算を議案として扱うかどうかということにつきましては、前々から御議論のあるところでございますが、やはり決算性格上どういう事案にすべきかという点は、これはなかなかむずかしい問題でございまして、いわゆる議決案件にするかどうかという点だと思いますけれども、その点はなおたしか前々から検討しているのじゃないかと思いますが、私もちょっと詳しいところは存じておりませんので、御了承をお願いいたします。
  79. 貝沼次郎

    貝沼委員 詳しいことは存じませんでは、答弁にならないのですね。もう少しちゃんとしてください。それは時間がありませんから、今はやりません。  次に、総理の責任問題についてちょっとお尋ねをしておきたいと思います。  きょうのこの委員会も十二対十一だそうでありますが、与野党が非常に伯仲した状況になっておるわけですね。こういう伯仲時代に入りますと、これが否決される可能性もなきにしもあらずであります。ところが、昭和四十四年二月二十六日参議院の本会議で、国会において決算が不承認になった場合の政治責任について質問があり、当時佐藤総理大臣は、内閣総辞職あるいは衆議院の解散も考えられると答弁をいたしております。伯仲状況をにらむと新しい問題に見えてくるわけでありますが、中曽根総理大臣はやはり同じ御見解でございますか。
  80. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 それはそのときの政治情勢によるのでありまして、私はなるたけ物騒なことは考えない方が安全だろう、国政の円滑なる推進を政府考えた方がいいと思っております。
  81. 貝沼次郎

    貝沼委員 時間が余りありませんので、次の問題に移りたいと思います。  海洋開発の問題でございます。これは総理が最近、教育問題につきまして、総理直属の諮問機関を設けるという話が専らでございますが、諮問機関をつくってそれがどれだけの実効を上げるものか、その助言、その答申がどれだけ実行されるものか、国民にとっては関心のあるところであります。  そこで、前々から総理のもとにつくられております海洋開発審議会という諮問機関がございます。この海洋開発審議会では総理に対してさまざまな答申をしておるわけでございます。中でも、私どもが一生懸命進めてまいりました海洋開発に対しては基本法を制定せよということを答申いたしております。  なぜこういう海洋開発基本法が大事なのか、これはもう時間がありませんのでくどくど申し上げられませんが、予算委員会でもまたやらなければならない問題だと思いますけれども、とにかく海洋開発が海洋国日本にとって重大な問題である。しかも、海洋生物、海底鉱物資源、あるいは海水資源とか海洋エネルギー、海洋空間というふうなことを考えた場合、十四省庁にもわたる問題がございます。これがおのおのがばらばらに行われておるわけでありまして、効率の面あるいは資金の面など考えた場合、どうしてもこれは一本化して、そして一つの基本に沿ってやらなければ実効が上がらないのではないか。しかも、今重大な問題として海底鉱物、いわゆるマンガンノジュールの問題がありまして、資源の少ない日本の国にとってこのマンガンを採鉱するということは非常に重大な問題があるわけでございます。したがいまして、海洋開発基本法というものを制定せよということを私どもは前々から主張し、そうしてそのためのいろいろな法律を出してまいりました。  また、この海洋開発審議会も、昭和五十四年八月十五日第一次答申、昭和五十五年一月二十二日第二次答申を行いまして、その中で、海洋開発基本法の制定と、特に海洋開発委員会の設置を指摘しておるわけでございます。こういうような答申を総理が守るのか守らないのかということは、総理の今後の姿勢にもかかわる問題でありますので、この点についての御答弁をいただきたいと思います。
  82. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 海洋開発は、海洋国家日本にとりましては非常に重大な問題であると考えております。特にまた、海洋法条約がカバーしている範囲というものは、領海の問題から今の海底開発に至る問題、あるいは近来いわゆる経済水域の問題等々も出てまいりまして、これから非常に大きな問題をはらんでいると思っております。そういう意味におきまして、私も重大関心を持っておるのであり、これらについてしっかりとした国策を推進していく基準をつくる必要を私自体も感じております。  しかし、そのやり方を、基本法というやり方でやるのがいいのか、あるいはほかのやり方があり得るのか、もう少しいろいろな諸情勢、諸条件の熟成を待って、そういうような方向に進むのが適切であるのか、そういう問題について今後とも検討を続けていきたいと考えております。
  83. 貝沼次郎

    貝沼委員 ただいまの総理の答弁は、海洋開発基本法というその形がいいのかあるいは別の方法がいいのかは別として、少なくともそういう海洋開発を一本化して、そして国策としてそれを強力に進めるという方向で検討を進めるということですか。基本法という名前が出ておりますのは、今経団連とか自民党の方もお考えのようでございますけれども、これははっきりわかりませんが、私は基本法の中身はいろいろ議論する点があると思いますけれども、その答申の結果を踏まえて早く実現できるようにお願いしたいと思うわけでございます。そうして、諮問機関からの答申を非常に尊重しておる総理の姿を見せるべきではないかと思うのでありますが、いかがでございますか。
  84. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 先ほど申し上げましたように、非常に広範多岐にわたって、しかも非常に重要な内容をはらんでおるものでございますから、そういう諸般の問題の行く先等もよく検討し、国際関係等もまたよくにらんで、そうして、それらの関係の熟成を見きわめ、万全を期したものをやるのがいい、そういう考えに立っております。国策としてしっかりとした基盤で推進する必要があるということは、もう全く同感でございまして、それらの問題につきましては、今後検討を重ねていきたいと考えております。
  85. 貝沼次郎

    貝沼委員 もう一つ、行政改革が叫ばれておるにもかかわらず、しっくりしない問題といたしまして、新幹線の雪に弱いという問題がございます。もう私がるる説明するまでもなく、雪のあるところの新幹線はとまることがないようでありますが、雪の少ないところの東海道・山陽新幹線の方はしょっちゅうとまっております。これは大変判断に苦しむところでございます。このために払い戻しをした金額は恐らく相当なものだと思いますが、国鉄の方、ことしになってから払い戻しをした金額はどれくらいですか。
  86. 岡田宏

    ○岡田説明員 お答え申し上げます。  今年度になりましてから、東海道新幹線、山陽新幹線におきまして雪のための遅延で払い戻しをいたしました金額は、三億七千五百万円に達しております。
  87. 貝沼次郎

    貝沼委員 総理、お聞きのとおりでございます。時間がありませんので詳しくは申し上げられませんが、これを直すように対策を講ずべきだと私は考えるわけです。国からも相当のお金が出ておるわけでありますから、総理からもよくこの旨をお願いし、また、国鉄の方でもぜひこの対策を講じていただきたいと思いますが、この点についての御答弁を承りたいと思います。
  88. 細田吉藏

    ○細田国務大臣 お答え申し上げます。  ただいまの御質問にもございましたように、東北・上越では、設備に相当金もかけましたが、万全を期しておりますのでおくれはございません。東海道・山陽につきましては、それ以上に重要な主要幹線でございますので、しばしば遅延または運転休止ということは大変遺憾なことでございます。  これにつきましては、このような状態ではいけませんので、国有鉄道でどのような対策を立てるか、費用との兼ね合いの問題がございます。経費をうんとかければ、これはもう大丈夫いけるということははっきりしておりますが、その兼ね合いをどう考えていくか。少なくとも現状では困りますので、改良するように国鉄で今検討を進めさせておるところでございまして、明年からはこのようなことがないようにぜひしたいものだと考えております。
  89. 貝沼次郎

    貝沼委員 しっかりお願いいたします。  それから、総理に最後に一つだけお尋ねをいたします。  それは、防衛関係費をGNPの一%以内にという従来からの議論でございますが、簡単に申し上げまして、この議論は、予算委員会におきまして一%以内を守るという答弁が出まして、一応終わっておるわけでありますが、私は確認だけしておきたいと思います。  この総理の答弁は、決算ベースで一%以内を守る、こういうふうにとってよろしいか。それからさらに、この総理の答弁は国民への約束だと私は考えておりますので、もしこの一%というものを外れた場合、一般論としては私はこれはうそになると思うわけでありますけれども、守ると言った以上これを外れた場合にうそを言ったと判断されてよろしいかどうか、これだけお伺いして終わりたいと思います。
  90. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は、三木内閣昭和五十一年につくりました閣議決定の方針は守ってまいりますとお答えをいたしておるのでございまして、それはできるだけ忠実に守ってまいる、そういう私の考えの表明であります。
  91. 貝沼次郎

    貝沼委員 終わります。
  92. 横山利秋

    横山委員長 先刻の井上委員質疑に対し、北村北米局長から発言の申し出がありますので、これを許します。北村北米局長
  93. 北村汎

    ○北村政府委員 先ほど井上委員からの御質問に対しまして、ハワイのカホーラウエ島を標的とする射爆演習のことにつきまして、外務省は陳情を受けたことはないかという御質問に対して、私から、私は今知っておる限りございませんということを申し上げましたのは、今回のリムパックのことに関してのことであろう、私がそういうふうに解しまして、今回のことについては陳情はないと申し上げたのでございますが、その後調査をいたしまして、二年前の五十七年四月八日にホノルル総領事館に対しまして、約十五名のハワイアン系住民が朝七時ごろ本件で抗議のデモを行ったという事実が判明いたしました。八時十五分ごろ総領事館はそのうちの二名と会見をいたしました。そうして、その二名の代表の申しましたことは、この島はハワイアンにとって神聖な土地であり、何年にもわたって同島の住民への返還を要求すると同時に、射爆訓練の中止を米海軍に要求しておるけれども、現在まで誠意ある回答を得ていないということが第一点。それから、ハワイは王国であり、日本とも直接外交関係があった。一八八三年アメリカは不法にこれを合併した。そうして、アメリカには日本その他の諸国をハワイにおける演習に招待する合法的な権利はない、こういう点を主張いたして陳情したということが調査の結果判明いたしましたので、御報告させていただきます。
  94. 横山利秋

    横山委員長 井上君は御意見ありますか。
  95. 井上一成

    ○井上(一)委員 あります。
  96. 横山利秋

    横山委員長 どうぞ。
  97. 井上一成

    ○井上(一)委員 僕の持ち時間がないのですが、あなたはさっき質問に対して、ことし云々と――ことしはやらないと防衛庁は言っているのだよ。今までにそういう抗議があった、そういうことをあなたは全然承知していなかったのでしょう、聞いていなかったのでしょう。まあそのことはいいですが、それを防衛庁に連絡しておったのかどうか、八一年にそういう陳情を受けて、そういうことについて防衛庁に連絡してありましたか。
  98. 北村汎

    ○北村政府委員 その点また二年前の調査のファイルを調べますけれども、当然この種の電報は関係の省庁に連絡をされておると思います。
  99. 井上一成

    ○井上(一)委員 防衛庁に連絡をして、防衛庁が承知しながら艦砲射撃をしたのかどうか。調査して、あと三十分ほどありますから、防衛庁に連絡済みなのかどうか、このことを調査して報告してください。
  100. 西廣整輝

    西廣政府委員 お答えいたします。  82リムパック、五十七年度でございますが、防衛庁がそれに参加したときに海上自衛隊として対地射撃訓練をやったわけでありますが、その当時私どもはそういう遺跡等があるということは存じませんでして、その後そういうものがある、それをやった後そういう御連絡を受けまして、以後そういう問題について十分留意をしておるということでございます。
  101. 井上一成

    ○井上(一)委員 北米局長、おかしいじゃないかね。防衛庁は承知してから今度も含めて艦砲射撃をやらない。委員長、僕の持ち時間を終えていますし、これは両省のもうちょっとまとまった見解を後刻報告してください。
  102. 横山利秋

    横山委員長 わかりました。委員長のところへ先ほどの点で御報告を願います。  神田厚君。
  103. 神田厚

    ○神田委員 まず最初に、原子力船「むつ」の問題で、総理並びに科学技術庁長官にお尋ねをしたいと思うのであります。  原子力船「むつ」が自民党の科学技術部会での廃船決定を契機といたしまして、本年八月までに政府・自民党内でその存廃を検討する、こういうことになっております。仮に実験データを何一つ得ないまま廃船するならば、これまで「むつ」に要しました約六百億円がむだになるだけではなくて、今後の我が国の原子力開発の推進にとりまして極めて重大な影響を及ぼすものだ、こういうふうに考えておりまして、以下質問をさせていただきます。  まず、科学技術庁は、会計検査院から原子力船「むつ」につきまして二度にわたって指摘事項があったわけでありますが、それにつきましてはどういう対応をなさいましたか。
  104. 岩動道行

    岩動国務大臣 御指摘のように、会計検査院から「むつ」の経費につきましての御指摘をちょうだいいたしました。私どもはこれに対しましては謙虚にその御指摘を伺いまして、そして、今後の「むつ」のあり方について十分におこたえをしてまいりたいと考えておるところでございます。
  105. 神田厚

    ○神田委員 既に会計検査院はかなり早い時期からこの「むつ」問題につきまして指摘をしているわけでありますが、それにつきまして私どもの考え方といたしましては、科学技術庁といたしましては何ら有効な対応をすることができないでいる、こういう事態だというふうに認識をしております。したがいまして、この原子力船「むつ」が就航しましてから現在まで、そういう意味におきましては「むつ」自身がいわゆる政治漂流といいますか、関係機関の間でたらい回しをされて母港も得ないままに政治漂流を続けてきた、この責任は極めて重大だというふうに思うのであります。  ところで、責任問題はともかくといたしまして、五十九年一月二十四日に原子力委員会は「今後の原子力船研究開発のあり方について」という報告書を出しまして、その中におきまして、「原子力船「むつ」の実験・運航」につきまして、「開発を継続し、海上における実験・運航による諸データを得ることは、我が国の原子力船研究開発にとって極めて重要であり、1に述べた原子力船の技術等の蓄積のための」、1というのは「原子力船研究開発の必要性」ということでありますが、「最も有力な手段である」、こういうふうに指摘をしております。この点につきまして科学技術庁長官はどういうふうにお考えでありますか。
  106. 岩動道行

    岩動国務大臣 御指摘のように、原子力委員会におきましてはそのような決定をいたしたわけでございます。私どもは、予算編成の段階におきましてこのようなことも十分に踏まえて、政府と与党との関係においていろいろな検討をいたしまして、その結果、さまざまな御意見もございまするので、今後「むつ」のあり方につきましてはおおむね八月末を目途として政府と党の間においてさらに検討する、こういう結論になったわけでございます。したがいまして、原子力委員会の意見は私は十分にこれを予算編成の段階において御意見として申し上げてきたところでございます。
  107. 神田厚

    ○神田委員 また、この報告書の中で、第二番目の項目といたしまして、舶用炉の改良研究問題につきまして言及されております。この問題につきましては、「舶用炉の改良研究は将来の原子力船研究開発にとって重要であり、今後着実に進めていくべきである。また、同研究は、「むつ」の成果が得られなければ本格的には進められないものであり、この点に十分留意しつつ研究を進めることが肝要である。」こういうふうに言われております。この点につきましていかがでありますか。
  108. 岩動道行

    岩動国務大臣 私どもは、原子力の平和利用という観点、そしてまた、日本の置かれている資源の少ない国あるいは海運、造船の国として、このような原子力の舶用炉を研究開発するということは極めて大事な平和利用の一環である、このように認識をいたしまして、長い年月をかけて今日に至っているところでございます。したがいまして、私どもは、従来「むつ」による研究開発が最も適当である、このような立場で今日までまいったのでございまするが、先般の予算編成の段階におきまして、いろいろな御意見を踏まえてさらにこれを検討してまいる、こういうことで、今日「むつ」のあり方はことしの八月末を目途として結論を出す。しかしながら、たびたび総理も申しておられまするように、この原子力の舶用炉というものの研究開発は必要であり、これは続けてまいる、このような基本方針は依然として私どもは持っているところでございます。
  109. 神田厚

    ○神田委員 ですから、舶用炉の研究は必要であるということはよくわかるのでありますが、舶用炉の研究開発が「むつ」の成果が得られなければ本格的にはならないのだということをこの委員会報告は指摘をしておるわけでありますから、この問題につきまして長官といたしましてどういうふうな考え方をお持ちになっているのか。
  110. 岩動道行

    岩動国務大臣 たびたび申しますように、舶用炉の研究開発は極めて重要な原子力の平和利用として私どもは認識をいたしているところでございます。したがいまして、そのような立場から「むつ」、それにつきましては今後の検討にまっていかなければなりません。先生の御指摘は極めて貴重な御意見として十分に承っておきたいと思う次第でございます。
  111. 神田厚

    ○神田委員 ちょっと答弁が十分でないのでありますが、時間もありませんので、総理にお伺いをいたします。  原子力委員会及び原子力安全委員会設置法の第二十三条に、「内閣総理大臣は、原子力委員会から、又は第十二条の決定について原子力安全委員会から報告を受けたときは、これを十分に尊重しなければならない。」尊重義務の項目がありますが、総理といたしましてこの問題についてどういうふうにお考えでありますか。
  112. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 もちろん法律に従いまして政府といたしましては尊重してまいるつもりでございます。この予算編成に当たりまして、「むつ」の問題につきましては自民党としてもいろいろ意見がございまして、今科学技術庁長官が御答弁申し上げたとおりでございますが、関根浜港の開発はやる、それから舶用炉の研究は引き続いてやるべきである、八月、今回の概算請求までに党内で権威者等も集めてその方向を決めよう、そういうことでございますから、その結論を待っていろいろ考えてみたいと思います。その際におきましても、やはり原子力委員会あるいは安全委員会のお考えというものは念頭に置いてやるべきであると思っております。
  113. 神田厚

    ○神田委員 重ねて要望したいのでありますが、原子力船「むつ」を何らの実験もしないでそのまま廃船にしてしまうということについては、税金のむだ遣いも甚だしいし、さらには、原子力の平和利用という長年にわたって取り組んできました国民の合意といいますか、理解というものを十年も二十年も後戻りをさせてしまう。そういう意味では、原子力船「むつ」は原子力平和利用の象徴的な問題でありますから、少なくとも実験をすること、さらには、改修された後何ら実験もされていない、こういうことでは原子力行政といたしまして非常に怠慢であります。そういう意味では、この原子力船「むつ」の研究開発の実験継続を要望したいと思うのでありますが、科学技術庁長官の御答弁をお願いします。
  114. 岩動道行

    岩動国務大臣 極めて貴重な御意見として十分に私どもは今後の対応に資してまいりたいと考えております。ありがとうございます。
  115. 神田厚

    ○神田委員 この問題また予算委員会等で少し触れさせていただきますが、時間の関係がありますので、防衛庁にお尋ねをいたします。  防衛問題でありますが、その前に、このところ隊員乱射事件さらにはPS1の飛行機の遭難問題等々いろいろ防衛行政について事件が続発をし、国民がこの問題につきまして非常に関心を持ち、このままこういう状況を放置しますと、防衛庁に対する、自衛隊に対する信頼感を失ってしまう、こういうふうに考えておりますが、これらの問題についての対応と防衛庁の考え方をお示しいただきたいと思います。
  116. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 きょうのこの委員会でも総理から御答弁がございましたが、私ども自衛隊を預かるものといたしましてまことに申しわけない、そういうように考えております。私どもといたしましては、どうしてこういう乱射事件が起きたか、また事故が起きたかということにつきまして、言いわけを考えるのでなしに、積極的に、足らなかったところがないかというような姿勢で原因を究明いたしまして、事故対策あるいは今後こういう事件が起こらないように責任ある施策を講じたい、こう考えております。いずれにいたしましても、大変国民の皆さんに御迷惑をかけたことに対しましておわびを申し上げたいと思います。
  117. 神田厚

    ○神田委員 続いて、防衛計画大綱の問題について御質問しますが、この問題につきましては、国際情勢等の認識等について御意見を伺った上で御質問するのが丁寧でありますが、時間の関係もありますので、過日二月二十五日に我が党の木下委員の質問に対しまして、長官は、五九中業も大綱の達成を基本とする、こういう答弁をいたしました。そうしますと、五九中業の基本目標も五六中業も同じく防衛大綱の水準を達成することを基本とするというのでは、五九中業と五六中業と基本的にどういう点が違ってくるのか、この点につきまして、防衛計画大綱の見直し問題で、五九中業におきまして本当に見直しをしないで済むのか、この辺をお答えいただきたいと思います。
  118. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 木下さんの御質問の際にも申し上げましたが、まだ五九中業につきましてはいわゆる長官指示というものを出しておりません。したがいまして、今の段階で五九中業がどういうふうになるかということについて詳細を申し上げられないわけでございます。ただ、私はその際にも申し上げましたとおり、非常に国際情勢が厳しい、その中で考えなければならぬことは質の高い防衛力の整備である、国際間の技術の水準の問題、そういうものもいろいろございますので、質の高い整備をしなければならない。後方と正面とのバランスをとらなければならない、また掲上すべき業務につきましては、その必要度、優先度というものを勘案しなければならない、そういうことを考えているけれども、具体的にどうするかはまだお示しをする段階にないということをお断り申し上げたわけでございます。五六中業また五九中業と続くわけでございますけれども、私どもの今最大の頭の中にありますのは、いかにして早く「防衛計画の大綱」水準に到達するか、そういう点にございますので、「防衛計画の大綱」の水準に到達することを一日も早くいたしたい、そういう念願でいろいろと考えておるということを申し上げたわけでございます。
  119. 神田厚

    ○神田委員 そうしますと、これは五六中業での大綱水準の達成、つまり五六中業におきまして大綱水準を完全に達成するという目標は依然としてお持ちでありますか。
  120. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 もちろんでございます。
  121. 神田厚

    ○神田委員 ただ、現在の防衛力の整備の状況からしますと、五六中業中に「防衛計画の大綱」の水準を達成することは不可能だというふうに私は考えておりますが、その点はどうでありますか。
  122. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 五六中業をやったらすべて「防衛計画の大綱」水準に到達するかといいますと、これは今までも政府答弁で述べておりますように、全部達成できる、そういうことではもちろんございませんけれども、五六中業が達成できれば「防衛計画の大綱」に非常に近づくようになるだろう、そういうような意味合いで私は申し上げているわけでございます。
  123. 神田厚

    ○神田委員 総理にお伺いいたします。  総理の私的諮問機関と言われております平和問題研究会が、このいわゆる防衛計画問題、防衛問題につきまして精力的な作業を続けているというふうに報道されておりますが、総理といたしまして、いわゆるこの計画大綱見直しの問題につきましてはどういうふうなお考えをお持ちでありますか。
  124. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 政府といたしましては、大綱の水準にできるだけ早く到達するということで、今鋭意努力している点でございまして、それ以下の問題につきましては今防衛庁長官がお答え申し上げたとおりでございます。
  125. 神田厚

    ○神田委員 そうしますれば、現時点におきましては「防衛計画の大綱」の見直しはしないというふうに受け取ってよろしゅうございますか。
  126. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 ともかく水準に達するというのが現在の政府考えであり、目的でございまして、大綱というものを変えるということは今考えてはおりません。
  127. 神田厚

    ○神田委員 次に、時間の関係がありますので、二、三、日中問題につきまして質問をさせていただきます。  総理が訪中をなさるということでございますが、今中国残留孤児の肉親捜しの問題が関係者の皆さん方の大変な努力で精力的に行われております。ただ、この種の問題は時間がたてばたつほど困難な状況が加わってくる、こういうことでありまして、聞くところによりますと、なおかなりの関係者が中国に残留をしている、さらに日本に来て肉親捜しをしたいという希望を持っている、こういうふうに聞いております。私もちょうどたまたま同世代の人間といたしまして、この問題につきまして非常に人ごとならない感情を持っているわけでありますが、訪中なさいました折にこれらの問題の関係促進について何か提案なり相談なりするようなお気持ちはございますか。
  128. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 まず、いろいろ便宜を図っていただいていることにつきましてお礼を申し上げたいと思っております。  なお、今後の取り扱い、運営等につきましても、政府間でいろいろお話をしまして、これが円滑に行われるように希望を申し上げてみたいと思います。
  129. 神田厚

    ○神田委員 さらに、政治的な問題はともかくといたしまして、報道するところによりますと、韓国政府が、ソウルのオリンピックに中国が参加できるようにということで、非公式に日本に対しましてそのあっせん方を希望している、こういうふうなことを言われておりますが、これらの問題につきましてお触れになるつもりはございますか。
  130. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 朝鮮半島の平和及び安定の問題は、我が国の非常に重大な関心を持っておるところであり、かつ、それはアジアの平和及び安定、世界の平和及び安定に非常に関係するところでもありますから、それらに関して双方で意見を交換するということはあり得ると思います。その一環といたしまして、中国と韓国の間におきまして、両国関係にその希望があればできるだけ交流を促進するということは平和に役立つのではないかと思います。先般、デビスカップの選手が入国を許されて昆明で試合をしたということは、アジアにとりましても一大朗報ではないかと思います。国際会議に参加するとか、あるいは文化やスポーツの交流とか、そういう面について両国関係が交流を重ねていくということは、日本としてもまた関係の国々としても恐らく歓迎するところであるだろうと思いまして、そういう面を手始めにできるだけ交流を促進する方向に協力申し上げたいと思っております。
  131. 神田厚

    ○神田委員 最後に、中国の政府指導部が中曽根総理の訪中を非常に期待をして待っているようであります。訪中に当たりましてどういうふうなお考えでこれらの中国の皆さん方とお会いになるのか、お気持ちをお聞かせいただきたいと思います。
  132. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 先般、胡耀邦総書記の御来日をお迎えいたしまして非常に大きな成果を上げ得たと考えております。その答訪という意味もございまして、引き続いて今度私が中国へ伺いまして、日中間の二十一世紀にわたる平和と長期的安定、友好提携というものをさらに堅実な着実なものにするように努力してまいりたいと思いますし、また、日中不戦の話し合いをいたしましたが、そういうような考えに立って揺るぎなきものに日中関係を築いていく、これがアジア及び世界の平和、安定の一つの大事な基礎であると考えておりまして、誠心誠意取り組んでまいりたいと思っております。
  133. 神田厚

    ○神田委員 終わります。
  134. 横山利秋

  135. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 今度の閣僚の資産公開に当たりまして、総理は施政方針演説で、さきの総選挙における国民の皆様の審判を厳しく受けとめ、深い反省のもとにこの倫理の問題に取り組む、その一環としての資産公開だ、こういうことでございましたが、しかし、実際行われた資産公開は、国民が強く期待した本人の資産は当然として家族名義のものや事業資産など本人に関係するすべての資産公開ではなくて、非常に制限され限定された公開にすぎなかったために、これでは資産公開ではなくて資産隠しの勧めじゃないか、こういう声もあったことは御存じのとおりです。  そのようなしり抜けの事例といたしまして、大変失礼でありますが、稻村国土庁長官石川県羽咋市島出町にある自宅と事務所所在の土地問題があるわけであります。つまり、その土地が稻村長官がその発行済み株全株を所有している稲村建設の所有となっておりましたために、その土地の部分は借地となって公開の対象外となっていることであります。こういうことでありましては、せっかく仏をつくっても魂入れずということになりまして、逆に政治不信につながるおそれもあると思うのでございます。  ここで総理にお聞きいたしたいことは、選挙で厳粛な国民の審判、その結果としての公開でございますので、そういうようなあり方で、一体、総理自身は、立派にやったんだ、こういうことなのか、それとも見直しを含めまして今後どういう認識を持っているかということについて、最初に総理からお答えいただきたいと思います。
  136. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 資産公開を行うという趣旨は、閣僚個人の資産及びその増減というものを明らかにして、特にその地位についているがゆえに不当に財産が増加したとか、そういうようなことはありはしないかというのを、国民の皆様に客観的に検証していただく、そういう趣旨も含めて資産公開を行ったところでございます。会社のものというものにつきましては、いろいろ法制局も含めて検討もしていただいたところでございますが、やはり個人というものを中心にしてそれはやる方が適切である、そういうような判定を得まして、そういう形に今回は持っていったものでございます。やってみましていろいろの御意見もあると思いますので、いろいろな御意見をずっと整理いたしまして、改良すべきものは改良していきたいと考えております。
  137. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 我が党は、政治家の資産公開については、今言っただけではなくて、さらに、その資産がいつどのように取得されたのか、その形成過程も明らかにされなければ国民の納得を得られないと思うのですが、その点でも、稻村長官の羽咋市の島出町にある自宅、事務所所在の土地の資産形成の過程について、この機会にぜひひとつお聞かせいただきたいことがございます。いろいろ複雑多様に入り組んでおりますので、委員長、私実はその略図を持ってまいりましたので、ここで委員長総理並びに稻村長官にお渡しいただきたいと思います。これお願いします。
  138. 横山利秋

    横山委員長 どうぞ。
  139. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 これは一口に申しますとどういうことかと申しますと、石川県選出代議士であった羽咋温泉稲村センター社長稻村佐近四郎氏から、絶対この土地を私有にはしない、政治生命をかけて福祉の整備をやるからと再三の誠意ある申し出を受けまして、それを前提に昭和四十五年八月八日、当時の羽咋市長西橋義一氏との土地売買契約書によって二万九千三百六平方メートル、約八千八百六十五坪、実態がそうです、それを一千七百七十三万円、坪二千円でその市有地の売り渡しを受けたものと言われております。しかし、そうした道義的政治的前提にもかかわらず、その土地所有権名義が、その二日後には長官の奥さんに変わり、その十カ月後には再びセンター社長稻村氏に変わり、そのまた二十二日後の昭和四十六年七月十五日には、その前日の十四日に設立したばかりの千里浜ボウルという長官の御長男その他を取締役として設立された会社へ土地の一部が切り売りされ、引き続いて四十八年五月八日に二度目の切り売りをなさっています。ところが、四十九年一月五日になってこの千里浜ボウルという会社は株式会社大一家具に吸収合併され、二度にわたって切り売りされた土地の半分ほどはそれぞれ宅地分譲されております。なお、登記簿によって見ますと、千里浜ボウルと大一家具の取締役は数名にわたって重複いたしております。その一方、長官が社長の羽咋ヘルスセンターの方も五十六年三月三十一日に稲村建設に吸収合併され、それが長官が借地と記載している土地の現在の概要であります。  そこで、長官にお聞きいたしますが、羽咋市から払い下げを受けた公有地のその後の経過について、私が申し上げた事実に相違ないかどうか、この点をお聞きいたします。簡単にお答えいただきます。
  140. 稻村佐近四郎

    ○稻村国務大臣 大分違っておりますね。私が国会議員にならない以前に、稲村建設と羽咋市とが借地権で契約をいたしました。四十五年に市の方で、一部これを利用したいからぜひこれを市の方に分けてもらいたいということであったと承っております。あとの半分については、いろんな財源等これあり、価格の問題等々話し合って、そして買い受けてくれないかということで、会社の方がその手続をとったというふうに承っております。
  141. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 今長官からそのようなお答えがございましたけれども、この問題が現地で、例えば切り売りしたとかということ、これが大変大きな地元の問題になりまして、昭和四十七年九月十二日第三回羽咋市の定例議会本会議、ここで市長がこういう答弁をしておるわけであります。  「なぜ禁止条項をつけなかったかという御質問であります。私といたしましては、先ほども触れましたように天下の代議士、この政治家というものは文字に書いた契約よりも口約束、こういうものを認めなければならんというような道義的な責任がございます。市民の半数前後の信頼のある方でありますから、これは地元の市長といたしまして、しかも市の発展のために、何かと御援助をいただかなければならん先生であります。」「そういう信頼感の中で禁止条項をもあえてつけなかったということであります。」こういう答弁をなさっているわけであります。  同時に、昭和四十七年九月十四日、つまりその二日後にはこういうことになっております。第三回羽咋市議会定例会「稲村佐近四郎代議士にたいする道義的責任遂行要望決議」、こういうことでありまして、ここには「稲村センター社長稲村佐近四郎は借り受けの稲村センター敷地の市有地を市長より譲り受けの際、今後この施設をさらに充実し、広く羽咋市民福祉のために寄与するということで譲り受けたにもかかわらず、この施設の一部をとりこわし千里浜ボールへ売却現在ボーリング場が建設されておる現況であり、」云々で、「いまここに羽咋市議会の名において道義的責任遂行を果たすよう市長より稲村センター社長に申し入れることを要望する。」という決議が決議されております。つまり、歴代、数ある大臣の中でも、地元の市議会から道義的責任、政治的責任の遂行を求められたということは前代未聞のことと私は思うのであります。  ここで総理にお伺いしたいのでありますが、あなたは、政治倫理の問題は、第一義的には私たち政治家の良心と責任感に帰着する問題であると述べておりますが、今の経過を拝見いたしますと、世間の常識では、市の公有地を何ら条件をつけられないで払い下げたと言いますけれども、約三町歩に及ぶようなものが全然前提なしに個人に払い下げを受けるなんということは考えることもできませんし、常識的には土地転がしの典型であるように私は見受けるのであります。こういう資産の形成の過程、しかもこの中には全部衆議院議員としての稻村さんがかかわっておるのでありまして、そういうことについて、あなたが任命した閣僚の一人であり、また同じ派に属するこの人物の不明朗きわまりない資産形成の過程について、これがどのようにあなたの言う政治倫理とかみ合うのか、この点について総理から御見解を承りたいと思います。
  142. 稻村佐近四郎

    ○稻村国務大臣 私が先にお答えした方がいいと思いますが、そのようなことを一回も聞いたこともないのです。あなたどこで聞かれてきたか知りませんが、そんな申し入れを聞いたこともない。これは正常な姿で、正常で、また価格の問題も話し合いで決めるわけでもなし、やはり正式なルールの中でいくわけですから、あなたのおっしゃるようなことでそれはいけるものではないのですよ。そういう意味から、市長どこのことについてお会いしたこともなければ聞いたこともない。ただ、事務的に進められておって、そして半分を何としても返していただきたいということで、半分を何とかして買い受けてもらいたいということで、正式なルールでいっておるわけでございますから、そこで倫理とかという問題が出ましても、会社は会社としてやっておるわけでありますから、その点をひとつ誤解のないようにぜひお願いを申し上げたいと思うのです。
  143. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 今突然こういう問題を提起されまして、どちらが正確であるかわかりませんが、私は、稻村大臣においては公正なことをおやりになっておるのであって、疑義を挟むようなことはないのではないかと確信しております。
  144. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 稻村さんは、今全然そういう問題についての実体がないのだ、聞いたことも見たこともない、こういうようなお話でございましたが、私は、ここで質問する以上、当時の市長からあなたの土地の売買契約書からいろいろな資料を全部取りそろえて申し上げているのでありまして、その経過についても十分確固たる資料を持って申し上げているわけであります。しかし、このように見解が大きく分かれているということにつきましては、総理大臣におかれましては、政治倫理を確立するという立場からも、どうか後ほど実態の御調査をしていただきたいと思いますが、この点についていま一度総理大臣からお答えいただきたいと思います。
  145. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 国会でも質問があることでございますから、一応調査はいたしたいと思います。
  146. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 では、終わります。
  147. 横山利秋

    横山委員長 この際、午後零時三十分まで休憩いたします。     午後零時十二分休憩      ――――◇―――――     午後零時四十分開議
  148. 横山利秋

    横山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  先ほどの井上委員質疑に対し、政府当局から発言の申し出がありますので、これを許します。北村北米局長
  149. 北村汎

    ○北村政府委員 先ほど井上委員の御質問に対しまして、当初、外務省に本件の陳情あるいは抗議のあれが来てなかったかという御質問に対して、私はそういうものは承知しておりませんと答弁をいたしました。その後調査をいたしましたら、二年前にホノルルの総領事館に対して、先ほども御答弁いたしましたように、十五人のハワイアン系の住民が抗議のデモを行ったということが判明をいたしました。  私の最初の答弁におきまして、陳情を受けたことがないというふうに答弁したことはまことに申しわけなかったと思いますので、おわび申し上げます。
  150. 横山利秋

    横山委員長 これにて昭和五十五年度決算外二件についての質疑は終了いたしました。
  151. 横山利秋

    横山委員長 昭和五十五年度決算についての議決案は、理事会の協議に基づき、委員長において作成し、各位のお手元に配付いたしております。  これより議決案を朗読いたします。     議決案   昭和五十五年度一般会計歳入歳出決算特別会計歳入歳出決算国税収納金整理資金受払計算書及び政府関係機関決算書につき、左のごとく議決すべきものと議決する。   本院は、毎年度決算審議に際し、予算の効率的執行並びに不当事項の根絶について、繰り返し政府に注意を喚起してきたにもかかわらず、依然として改善の実があがっていないのは、まことに遺憾である。  一 昭和五十五年度決算審査の結果、予算の効率的使用が行われず、所期の成果が十分達成されていないと思われる事項が見受けられる。    左の事項がその主なものであるが、政府はこれらについて、特に留意して適切な措置をとり、次の常会のはじめに、本院にその結果を報告すべきである。   1 会計検査院の検査の充実強化については、本院において数回にわたり議決を行ってきたところである。     政府は、会計検査院の検査の充実強化が行政改革との関連においても重要な課題であることにかんがみ、今後とも会計検査の実施に当たっては、その目的が十分達せられるよう所要の措置を講ずべきである。   2 登記所については、登記簿等の管理の適正を図るため、管理体制の充実強化等必要な措置を講ずべきである。   3 政府開発援助(ODA)は、経済協力の中核をなすものであるが、その援助に当たっては、相手国の発展的段階、開発ニーズ、我が国との全般的関係等を総合的に勘案しつつ、効果的な援助を積極的に実施するとともに、その予算の執行状況の概要を総合的に把握するよう努力すべきである。   4 医療保険制度の問題については、国民が適正な医療を保障されるよう十分配慮すべきである。   5 我が国の民間航空の運航の安全を確保するため、十分に配慮すべきである。   6 高齢者雇用対策については、第四次雇用対策基本計画における定年延長の促進を図るとともに、技術革新による産業構造の変化に対応した高齢者の職業訓練制度の充実を図るべきである。   7 住宅・都市整備公団の未入居住宅や保守管理住宅の問題については、早急にその解決を図るとともに、長期保有土地の適正な有効利用を図るべきである。   8 現在の財政制度の下では、地方公共団体は国の財政運営の影響を強く受けている。     政府は、地方公共団体の財政の円滑な運営、特に資金繰りについて十分な配慮をすべきである。  二 昭和五十五年度決算検査報告において、会計検査院が指摘した不当事項については、本院もこれを不当と認める。    政府は、これらの指摘事項について、それぞれ是正の措置を講ずるとともに、綱紀を粛正して、今後再びこのような不当事項が発生することのないよう万全を期すべきである。  三 決算のうち、前記以外の事項については異議がない。   政府は、今後予算の作成並びに執行に当たっては、本院の決算審議経過と結果を十分考慮して、財政運営の健全化を図り、もって国民の信託にこたえるべきである。     ―――――――――――――
  152. 横山利秋

    横山委員長 これより昭和五十五年度決算外二件を一括して討論に付します。  討論の申し出がありますので、順次これを許します。白川勝彦君。
  153. 白川勝彦

    ○白川委員 私は、自由民主党・新自由国民連合を代表いたしまして、昭和五十五年度決算につき、ただいま委員長より御提案の議決案のとおり議決するに賛成の意を表するものであります。  当委員会は、昭和五十五年度予算がいかに執行されたかを各省各庁別に順次審査を続け、その間、是正改善を要すると思われる事項については、その都度関係当局に注意を喚起してまいりました。しかし、ただいま委員長御提案の議決案に示されたとおり、予算の効率的使用等所期の成果が十分に達成されていないと思われる事項並びに会計検査院昭和五十五年度決算検査報告に不当事項、改善処置要求事項等が指摘されたことは甚だ遺憾であります。  これらの指摘事項等につきましては、政府は誠意をもって改善に努力されたいのであります。  我が党は、その改善を期待しつつ、本議決案に賛成いたすものでありますが、ただ、この際予算の執行に関して政府に一言希望を申し上げておきたいと存じます。  政府及び政府関係機関等の予算執行については、当初の予算年度内に完全に執行することを目途としていると思います。しかし歳出予算額で多額の繰越額及び不用額を生じているのが現状であります。  すなわち、昭和五十五年度予算のうち、用地の取得難のため年度内にその支出を終わらないで五十六年度に繰り越された金額は、一般会計において五千三百九十一億円、特別会計の合計において四兆四千九百八十四億円、政府関係機関の合計において七千三百三十二億円であり、また、諸般の事情により不用となった金額は、一般会計において三千七百十四億円、特別会計の合計において六兆九百十八億円、政府関係機関の合計において二千七百九十億円になっております。  また、国の財政施策に基づく事業投資が最大限の効果を発揮するよう執行機関が努めるべきは言うまでもないが、公団、事業団等で必ずしも投資効果が上がっていない実例が見受けられます。  このような実情にかんがみ、政府予算の執行及び財政投融資等については、国の財政事情の厳しい折から、さらに格段の配慮をされ、もって所期の目的を達成し、国民の信託にこたえられることを希望いたしまして、私の賛成討論を終わります。(拍手)
  154. 横山利秋

  155. 新村勝雄

    新村(勝)委員 私は、日本社会党・護憲共同を代表して、昭和五十五年度決算につき、ただいま委員長から提案された議決案に対し、反対の意思を表明するものであります。  議決案のうち、予算の効率的使用等に関し、政府が適切な措置をとり、報告をすることを求める第一項及び会計検査院が指摘した不当事項について本院もこれを不当と認める第二項については賛成であります。  しかし、「決算のうち、前記以外の事項については異議がない。」とする第三項に反対するものであります。反対の理由は、昭和五十五年度決算における不当事項、非効率的使用事項等が、この議決案の指摘のほかに多くあるものと認められること、さらに、同決算が以下四点にわたり申し述べますように、重大な問題点を持っていることがあるからであります。  第一は、決算とその審議結果が以後の予算の編成と執行に十分生かされていないことであります。この点を改めるために、まず決算審議を促進して、二年おくれというような審議状況を一刻も早くなくすべきであります。加えて決算検査の拡充が必要であります。現在、検査は主として事務や事業の実施、経理における不当事項等について行われていますが、この検査だけでは不十分であります。  予算の使用目的が社会経済の変化に伴って減少している事項、同じ目的を達成するために他の方法を用いた方が効率的な事項等を科学的に調査分析し、これを予算編成に反映させ、財政の効果的、効率的運用を図り、もって国民の厚生を向上させるべきであります。  第二は、第二次石油危機後の不況、高物価で苦しめられている国民に対し、昭和五十五年度会計が国民負担増、福祉切り捨てをもたらしたことであります。我が党は、昭和五十五年度予算審議に当たり、社会党独自の修正案において、福祉、年金の引き上げ、雇用の安定、所得税の減税、不公平税制の是正、防衛費の削減、国債発行額の圧縮を行うことを主張し、社会、公明、民社三党共同修正大綱を政府・自民党に提示し、国民生活安定の予算に改めるよう要求いたしました。しかし、自民党政府はこれに応ぜず、そのため、福祉、教育の後退、不況の長期深刻化、十四兆円を超える大量の国債発行に見られる財政破綻を招いたのであります。この中で防衛費を六・五%も増額し、P3C十機、F15三十四機の取得など、軍備拡大、危険な軍事大国化を進めたのであります。このような国民犠牲の昭和五十五年度会計に賛成することはできません。  第三は、我が党が決算審議において明らかにした多くの問題点に関して改善措置がなされていないことであります。自治体の財政運営における資金繰りについての配慮、米軍艦載機の訓練場の問題、ODAの執行状況の把握、航空交通管制における民間航空機の安全確保と我が国の主権の問題、中国からの引揚者の雇用対策等々の問題であります。これらの緊要な課題が解決されないままに、五十五年度決算を承認することはできません。  第四は、予算のむだ遣いの多いことであります。昭和五十五年度決算検査報告は、不当事項が百八十件、額にして六十七億円、これに意見表示・処置要求事項を加えた予算のむだ遣いが二百二件、総額二百九十一億円にもなると指摘しているのであります。しかも検査は、検査対象機関の八%について実施されたのでありますから、全体では三千六百億円の血税のむだ遣いが行われているものと推定されるのであります。  社会保障費、教育費を切り詰めながら、多額の予算の浪費をしている自民党政府による財政運営を是認することはできません。  以上の理由に基づき、私は本議決案に反対の意思を表明するものであります。  最後に、国民の切望する清潔な政治を実現するための重要な制度改正の一つである会計検査院の権限の拡充強化を早急に図るよう強く要求して、私の反対討論を終わります。(拍手)
  156. 横山利秋

    横山委員長 貝沼次郎君。
  157. 貝沼次郎

    貝沼委員 私は、公明党・国民会議を代表して、昭和五十五年度決算外二件につき、ただいま委員長から提案されました議決案に対し、反対の意思を表明するものであります。  以下、反対の主な理由を申し上げます。  それは、「前記以外の事項については異議がない。」としてこの決算を総体的に是認している点について承服できないからであります。すなわち、この事項以外にも異議があるからであります。  具体的に指摘するならば、一つは、財政運営上の失敗であります。  昭和五十五年度は、財政再建の名のもとに昭和五十三年以来の課税最低限が据え置かれて特別減税もせず、その上公共料金の引き上げをしています。また、五十五年には、消費者物価の高騰により、実質賃金は対前年比マイナス一・六%と昭和二十七年の統計発足以来初めてマイナスとなっています。このことは、国民生活を圧迫し、個人消費の伸びを抑え、特に、社会的弱者に対しては極めて厳しいものとなりました。  そして、長期景気停滞は、五十五年度には二千七百六十二億円の税収不足、その後五十六年には二兆八千七百九十四億円もの大型税収不足を生むに至ります。しかも、政府は、明確なる財政計画を持たずに、五十五年度十四兆一千七百二億円という大量国債の発行をしたため、今日の財政再建の足かせとなっています。  国会決算は、国民の代表者として、政治的見地から、決算の内容を通じて内閣の財的措置を批判し、その責任を明らかにすることも含まれていることを考えたとき、絶対に見逃すことができないのであります。  次に、財政資金の効率的使用についての疑問であります。  例えば、議決案にも個別的事項として出ていますが、住宅・都市整備公団などの空き家問題は、投資効果や住宅建設に係る金利など財政資金効率の面で十分反省すべき事項であります。  以上、理由の一端を申し述べましたが、最後に、決算をより充実させるために、以前から主張されておる会計検査院の権限拡充強化など、政府は速やかに提案し、検査体制の整備を図るべきであると主張し、反対討論を終わります。(拍手)
  158. 横山利秋

    横山委員長 神田厚君。
  159. 神田厚

    ○神田委員 私は、民社党・国民連合を代表し、昭和五十五年度決算外二件につき、ただいま委員長より御提案の議決案のとおり議決することに反対の意を表するものであります。  そもそも、昭和五十五年度一般会計等に対して、我が党は、その予算審議の過程において、幾つかの問題点について厳しく追及し、批判を行ってきたところであります。  その主な問題点は、第一に、国民的課題である行財政改革が極めて不徹底であったこと、第二に、福祉予算の充実、雇用対策の強化などが不十分であったこと、第三に、一連の公共料金の引き上げ等を行うことによって国民の負担を増大させたこと、第四に、政府・与党が野党の修正要求を受け入れたにもかかわらず、メンツにこだわって予算書の書きかえを行わなかったことなどであります。  これらの指摘は、今日の我が国経済国民生活の実態、財政現状などから見ても、非常に正鵠を射るものであったと考えるものでありますし、政府の今日の姿勢に対しても同様な指摘を申し上げないわけにはまいりません。このように、五十五年度の一般会計等はその当初予算自体が誤れるものであったのであり、その予算の執行の結果である五十五年度決算に対し、我が党は到底賛成できるものではありません。  また、我が党が五十五年度予算の執行に対して格別の関心を払い、予算の効率的使用、公正な執行に注意を喚起したにもかかわらず、ただいま委員長御提案の議決案に示されたごとく、予算の効率的使用等所期の成果が十分に達成されていないと思われます事項が見受けられたことは極めて遺憾であります。これらの指摘事項につきまして、今後政府が早急に改善を図る努力を行うよう強く求めるものであります。  その他の諸点についても改善すべき問題点を今日まで指摘してまいりましたが、これまでの審議を顧みるとき、委員長御提案の議決案のうち、第一の「特に留意して適切な措置をとる」よう政府に求めている点、及び第二の「会計検査院が指摘した不当事項については、本院もこれを不当と認める。」点に対しましては、我が党も賛成するものでありますが、第三の「決算のうち、前記以外の事項については異議がない。」とすることに対しては、我が党は到底認めるわけにはまいらないのであります。  なお、我が党は、今後の予算編成及び執行が効率的かつ合理的に行い得るよう会計検査院の権限を強化すべく、会計検査院の検査対象範囲の拡大、チェック機能の充実等を図るとともに、会計検査院予算編成時に大蔵省に意見を具申することができ、予算が効率的に執行されていないときは年度途中においても執行停止、変更の勧告ができるように制度を改善することを提案するものであります。  最後に、今後とも政府が、本来の行財政改革である国鉄など特殊法人の改革、公務員定数の実質大幅削減による総人件費の抑制、むだな経費の削減、行政経費の節約、補助金制度の改革等に全力を傾注するよう強く求め、五十五年度決算については、これを認めることができないことを申し上げて、私の討論を終わります。(拍手)
  160. 横山利秋

  161. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 私は、日本共産党・革新共同を代表し、昭和五十五年度決算を議決案のとおり決するに反対の意を表明します。  第一の理由は、本決算が、長期にわたる不況を打開し国民生活の安定と日本経済再建を願う国民の期待とは全く逆行し、公共料金の大幅値上げ、福祉の切り捨て、減税の見送りによる実質大増税を盛り込むなど、国民に重税と高物価と高負担を押しつけるまさに三重苦の内容になっているからであります。  第二は、国民への福祉切り下げ、負担増の押しつけとは対照的に、軍事費はふやし、日米軍事同盟の侵略的強化と軍事大国への道を目指す危険な内容になっているからであります。  とりわけ、五カ年で総額十数兆円に上る、事実上の五次防と言われている中期業務見積もりの初年度として、一機百億円もするF15戦闘機やP3C対潜哨戒機など疑惑に包まれたものや、七四式戦車などの新規装備を盛り込み、自衛隊の侵略的機能を一段と強めるものになっていることは断じて容認できません。  第三は、財政再建の道を踏み出すと言いながら、国債発行を前年度より五・二%も上回って発行するなど、財政再建の道には全く逆行するものとなっていることであります。  周知のように、歴代自民党政府が行った大企業奉仕の予算と赤字国債の乱発によって、我が国財政は破局的な危機に陥っております。国債費は五十五年度決算で五兆数千億円にも達し、しかも、今後十五年間に国民が負わなければならない国債の元利償還は二百二十兆円にもなるのであります。軍事費や大企業向けの不要不急の予算を執行した本決算は、何ら財政再建の名に値しないものであります。  このような内容を持つ昭和五十五年度決算について、ごく限られた指摘事項のほかは異議がないとする本議決案には、到底賛成することはできません。  また、国有財産増減及び現在額総計算書は、広大な米軍、自衛隊基地使用が含まれており、政府出資も専ら大企業向けの機関等への出資が大幅にふやされており、このような国有財産管理のあり方を示す本計算書を是認することはできません。  さらに、国有財産無償貸付状況計算書についてでありますが、我が党は従来、公園、緑地等の目的で地方自治体に無償で貸し付ける本制度の趣旨にかんがみ、これまで賛成してきたのであります。しかし、本委員会で我が党の三浦委員が指摘したように、福岡市に貸し付けられた墓地に大東亜戦争戦没者之碑が建立され、過去の侵略戦争を賛美する内容となっているとともに、貸付契約の用途目的にも違反したものとなっているのであります。しかも、大蔵省はこれを撤去させないばかりか、事実上その碑を擁護する態度をとっており、本制度を運用する姿勢に重大な疑義が生じている以上、本計算書に賛成することはできません。  以上で私の討論を終わります。(拍手)
  162. 横山利秋

    横山委員長 これにて討論は終局いたしました。     ―――――――――――――
  163. 横山利秋

    横山委員長 これより順次採決いたします。  昭和五十五年度一般会計歳入歳出決算昭和五十五年度特別会計歳入歳出決算昭和五十五年度国税収納金整理資金受払計算書及び昭和五十五年度政府関係機関決算書を議決案のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  164. 横山利秋

    横山委員長 起立多数。よって、議決案のとおり決しました。  次に、昭和五十五年度国有財産増減及び現在額総計算書昭和五十五年度国有財産無償貸付状況計算書の両件は、これを是認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  165. 横山利秋

    横山委員長 起立多数。よって、両件は是認すべきものと決しました。  なお、ただいま議決いたしました各件の委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  166. 横山利秋

    横山委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――     〔報告書は附録に掲載〕     ―――――――――――――
  167. 横山利秋

    横山委員長 この際、各国務大臣から順次発言を求めます。藤波官房長官。
  168. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 ただいま御決議のありました会計検査院の検査の充実強化につきましては、政府といたしまして、会計検査の実が上がるよう今後も協力をしてまいりたいと存じます。
  169. 横山利秋

    横山委員長 次に、住法務大臣。
  170. 住栄作

    ○住国務大臣 ただいま御決議のありました登記所の登記簿等の管理に関する件につきましては、御決議の趣旨に沿い、管理体制の充実強化等必要な措置を講じ、その適正化を図ってまいる所存であります。
  171. 横山利秋

    横山委員長 次に、安倍外務大臣。
  172. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 ただいま御決議のありました我が国の開発途上国に対する政府開発援助につきましては、御決議の趣旨に沿うよう、今後とも努力してまいる所存であります。
  173. 横山利秋

    横山委員長 次に、渡部厚生大臣。
  174. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 ただいま御決議のありました医療保険制度における適正な医療の保障につきましては、医療保険制度の改善充実、各般の医療費適正化対策等を推進してきたところでありますが、今後とも必要な施策の充実強化に努めてまいる所存であります。
  175. 横山利秋

    横山委員長 次に、細田運輸大臣。
  176. 細田吉藏

    ○細田国務大臣 ただいま御決議のありました民間航空の運航安全の確保につきましては、従来からも最重要事項としてやっておりますが、さらに、最も重点的な施策として取り組んでまいりたいと考えておりまして、御趣旨に沿いたいと存じます。
  177. 横山利秋

    横山委員長 次に、坂本労働大臣。
  178. 坂本三十次

    ○坂本国務大臣 ただいま御決議のありました高齢者の雇用対策の充実につきましては、御決議の趣旨を踏まえ、六十歳定年の一般化の早期実現と高齢者の職業訓練制度の充実に努めてまいる所存であります。
  179. 横山利秋

    横山委員長 次に、水野建設大臣。
  180. 水野清

    ○水野国務大臣 ただいま御決議のありました昭和五十五年度決算に関する住宅・都市整備公団の未入居住宅、保守管理住宅及び長期保有土地の問題については、建設省において総合的に対策を取りまとめ、その早期解決について公団に指示をしてまいりまして、公団においてもこの指示を受け、鋭意対策の実施に努め、逐次成果を上げているところでありますが、今後とも御趣旨に沿ってこれらの問題の解決を図るよう公団を指導する所存でございます。
  181. 横山利秋

    横山委員長 次に、田川自治大臣。
  182. 田川誠一

    ○田川国務大臣 ただいま御決議のありました地方財政への配慮につきましては、国、地方を通ずる厳しい財政状況下におきまして、地方公共団体の財政運営上国の財政事情等が及ぼす影響も少なからず見受けられます。    自治省といたしましても、できる限りこれを回避し、地方公共団体の円滑な財政運営を図る必要があると考えております。  また、各省庁に対しましても、本決議の趣旨について十分配慮いただきますよう要請してまいりたいと考えております。
  183. 横山利秋

    横山委員長 以上をもちまして各国務大臣からの発言は終わりました。  次に、鎌田会計検査院長から発言を求めます。
  184. 鎌田英夫

    ○鎌田会計検査院長 ただいま会計検査院の検査の充実強化は重要な課題であるとの御指摘がありましたが、会計検査院といたしましても、御指摘の趣旨を十分踏まえまして、一層の検査体制の整備強化に努めますとともに、最近の状況にかんがみ、財政が健全かつ効率的に執行されますよう会計検査の一層の徹底を図り、本院の使命と職責を果たしてまいる所存であります。
  185. 横山利秋

    横山委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後一時八分散会