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1984-05-18 第101回国会 衆議院 環境委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年五月十八日(金曜日)     午前十時六分開議 出席委員   委員長 竹内 黎一君    理事 國場 幸昌君 理事 戸塚 進也君    理事 畑 英次郎君 理事 福島 譲二君    理事 岩垂寿喜男君 理事 中村  茂君    理事 春田 重昭君 理事 中井  洽君       榎本 和平君    太田 誠一君       金子原二郎君    田澤 吉郎君       戸井田三郎君    中村正三郎君       林  義郎君    天野  等君       上野 建一君    金子 みつ君       斉藤  節君    竹内 勝彦君       薮仲 義彦君    近藤  豊君       藤田 スミ君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (環境庁長官) 上田  稔君  出席政府委員         環境庁長官官房         長       加藤 陸美君         環境庁長官官房         審議官     大塩 敏樹君         環境庁企画調整         局長      正田 泰央君         環境庁水質保全         局長      佐竹 五六君  委員外出席者         議     員 岩垂寿喜男君         農林水産大臣官         房公害環境保全         対策室長    吉池 昭夫君         農林水産省農蚕         園芸局農産課長 畑中 孝晴君         農林水産省畜産         局畜産経営課長 香川 荘一君         林野庁業務部業         務課長     小澤 普照君         水産庁研究部漁         場保全課長   山添 健一君         通商産業省立地         公害局工業用水         課長      糟谷  晃君         通商産業省立地         公害局公害防止         指導課長    廣瀬 定康君         建設省計画局環         境管理官    緒方 啓二君         建設省都市局下         水道部下水道企         画課長     黒川  弘君         建設省河川局河         川計画課長   陣内 孝雄君         環境委員会調査         室長      綿貫 敏行君     ————————————— 委員の異動 五月十七日  辞任         補欠選任   金子 みつ君     松沢 俊昭君 同日  辞任         補欠選任   松沢 俊昭君     金子 みつ君 同月十八日  辞任         補欠選任   齋藤 邦吉君     太田 誠一君   田村  元君     戸井田三郎君   渡辺美智雄君     中村正三郎君   上坂  昇君     上野 建一君   山本 政弘君     天野  等君 同日  辞任         補欠選任   太田 誠一君     齋藤 邦吉君   戸井田三郎君     田村  元君   中村正三郎君     渡辺美智雄君   天野  等君     山本 政弘君   上野 建一君     上坂  昇君     ————————————— 本日の会議に付した案件  湖沼水質保全特別措置法案内閣提出第四八号  )  湖沼環境保全特別措置法案岩垂寿喜男君外二  名提出衆法第二七号)      ————◇—————
  2. 竹内黎一

    竹内委員長 これより会議を開きます。  内閣提出湖沼水質保全特別措置法案及び岩垂寿喜男君外二名提出湖沼環境保全特別措置法案の両案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。天野寺君。
  3. 天野等

    天野(等)委員 湖沼水質保全特別措置法につきましてまず環境庁長官にお尋ねしたいのでございますが、この法案関係しまして環境庁の方からいただきました資料の中に、湖沼水質汚濁状況ということで環境基準達成率の推移を示す表がございます。これによって見ますと、昭和五十七年度で湖沼基準達成率が四一・七%、それに対して河川が六五・三%、海域が八一・三%でございますけれども、このグラフを見ておりますと、当初の四十九年度に湖沼四一・九%、河川五一・三%、海域七〇・七%という達成率で、湖沼は実はこの四一%台が最高でございまして、最低のところで三五・二%の達成率ということです。  河川海域は幾らかずつでございますけれども、ほぼ達成率上昇湖沼についてはずっと停滞をしておる、これは一体どういうところに原因があるのか、この点をまずお伺いします。
  4. 佐竹五六

    佐竹政府委員 湖沼につきましては、御指摘のとおり、海域あるいは河川と異なりましてほとんど環境基準達成率横ばいでございますが、その原因といたしましては、湖沼がいわゆる閉鎖性水域である、水が非常に停滞しやすいという自然条件の特性に加えまして、最近湖沼周辺経済活動あるいは社会活動が非常に活発化いたしましたために人口増加する、その結果、水質汚濁防止法等規制の対象にならない生活雑排水が流入してくる、あるいはさらに、特に霞ヶ浦等では畜産飼養頭数が非常に増加してくる、あるいは水産養殖が盛んになる、その他工場等増加もございます。そういう社会経済活動が活発化したことによって湖沼汚濁が非常に進み、従来から私ども種々対策は講じておるわけでございますけれども、結果的に横ばい、かような状態になっているものと理解しておるわけでございます。
  5. 天野等

    天野(等)委員 今のお答えは、湖沼というものの外的な環境の変化といいますか——私、基本的にはそう変化しておらないのじゃないかと思うのですよ。閉鎖水域であることは当然のことでございまするし、それから、この十年間をとってみましても、特に湖沼水域人口増とかいうものが進んだのかどうかということになりますと、必ずしもそうではないのではないか。これはもう少し突っ込んだ湖沼についての対策なり何なりというものと関係があるのではないだろうか。今お話しになられましたのは湖沼水質を保全していくための一つ条件にすぎないものであって、この条件の中でどういうふうに水質保全という行政を進めていくかという問題、これは湖沼にとっては必然的な条件だと思うのですね。そういう中で、それではどういうふうに湖沼水質保全ということについての対策環境庁としては進めてこられたのか。湖沼環境基準達成率というのは非常に低いわけですね。それについて、これは閉鎖水域だから仕方がないということでただやってこられたのか。それともこれについての対策を打ってこられたのか。とすれば、どういうふうな対策を打ってこられたのか。この点について……。
  6. 佐竹五六

    佐竹政府委員 湖沼につきましては、まず水質汚濁防止法発足と同時に湖沼環境基準を決めまして、これに基づきCODにより排水規制を行ってまいりました。そのほか特に最近人口が非常に増加する、これは宅地開発が進むということに加えて観光人口等増加もございまして、こういうものの増加に対応するために特に建設省にお願いいたしまして、第五次下水道五カ年計画におきましては、湖沼等閉鎖性水域水質汚濁防止を重点的な投資項目に挙げていただいております。同じような思想から五十一年度から特に市街化区域外でも下水道整備が行えるように特定環境保全下水道というような制度もおつくりいただいておるわけでございます。しかし、遺憾ながら湖沼水質改善がはかばかしく進んでいないのは御指摘のとおりでございまして、五十七年末には、湖沼富栄養化の最大の原因である窒素、燐についてまず湖沼環境基準を進めまして、五十八年一月中公審にその環境基準に基づく排水基準について諮問をいたしておるわけでございまして、現在検討中でございます。  今回御提案いたしました湖沼法と並んでこれらの対策を並行的に進めてまいることによって湖沼水質改善を図ってまいりたい、かように考えております。
  7. 天野等

    天野(等)委員 琵琶湖富栄養化条例ができたのが五十五年でございますよね。五十七年には霞ヶ浦条例ができた。国として湖沼富栄養化に対する対策がおくれをとっていたのではないか。そのために滋賀県あるいは茨城県では進んだ基準条例をつくりました。やはり全体として、国の富栄養化に対する対策の立ちおくれがこの湖沼基準達成率横ばいであるということにあらわれてきているのではないかと私は思うのですが、いかがでございますか。
  8. 佐竹五六

    佐竹政府委員 確かに湖沼環境基準達成率が非常に低い。特に現在環境基準の二倍、三倍に達している湖沼が現存する。それに対して先ほど御説明いたしましたような私どものとった対策では足りなかったんではないか、こういう御指摘は率直に認めざるを得ないわけでございます。ただ、富栄養化の一番の原因になります窒素、燐につきましては、この除去技術等につきまして技術的にもまだ必ずしも十分開発されておらなかった。近時各研究機関等で精力的に研究が進んだ結果、ほぼ経済的にも実用化できるめどが徐々に立ってきたところから、琵琶湖あるいは霞ヶ浦においても富栄養化条例を出され、私どもとしても窒素、燐の規制にも進もう、こういうふうに考えているわけでございまして、そのような事情のあることもひとつ御理解いただきたいと思います。
  9. 天野等

    天野(等)委員 結局、富栄養化現象というものについて、地方がまず取り組んでいった。それに後からといいますか、国がおくればせながら対策を立て、国全体としての基準値を決めたり排水基準を決めたりということの関係になってきている。ここのところに私は大きな原因があると思うのです。  それで、先ほど下水道問題等もちょっとお話がありましたが、これはまた後で建設省の方からもお聞きしたいとは思っておりますけれども、今後の富栄養化対策、実は窒素、燐についての告示が五十七年に出たわけでございますけれども、その後実質的にこれが効力を発生するような形にまだなってこない。また五十六年に出された中公審答申でもこの富栄養化対策については出ているわけですけれども、しかし、これもいまだに現実的に効力を発生するというところに来ていない。こういう現状の中で、この湖沼水質保全という名前を掲げましても羊頭狗肉で、湖沼水質保全についての一番重要な点がまだこの法案の中でも抜けているのではないか、この対策がいまだになされていないという気がするのです。八月ごろをめどにというお話ですけれども、今まで窒素、燐の基準についてなかなか打ち出せないというのには何が理由があったんでございますか。
  10. 佐竹五六

    佐竹政府委員 幾つかの問題点があるわけでございますけれども一つは、現在湖沼で問題になっております淡水赤潮あるいはアオコの発生、こういうものと窒素燐濃度関係というのが科学的にも非常に未解決な問題が一つある、こういうふうな点についてもいろいろ議論が重ねられている点でございます。  それからまた、実際に排水規制をやることになりますと、非常に多数の業種窒素、燐を排出しているわけでございます。この業種は大体五百八十くらいあるわけでございますが、それらにつきまして、私どもが今の環境基準基準にいたしましてつくりました排水基準に果たして適合できるかどうかということのチェックが必要になるわけでございまして、それが経済的に短期間に達成することが無理である場合には当然ある程度暫定的な基準を設けなければならない、こういう問題もございます。それらの点がございまして、実際に中公審諮問をいたしましたのが昨年一月でございます。現在まで検討が続いているのが状況でございまして、私どもできるだけ早く結論をいただきたい、こういうふうに考えているわけでございます。
  11. 天野等

    天野(等)委員 それから、湖沼水質汚濁の面で、これは今の富栄養化とも関係があると思うのですけれども湖沼の場合に、特定事業場とかそういうような汚染源といいますか、汚染排水を出すそういう特定事業場、いわゆる点源負荷というのでしょうか、そういうようなものと、それから湖水周辺の自然的な条件から流入してくるいわゆる面源負荷といいましょうか、そういうもののバランスで、やはり面源負荷というものが湖沼の場合にかなり大きな汚濁負荷になっていくんじゃないか。これは河川よりも湖岸の延長距離等が大きいわけですし、滞留する。そういう面源負荷という点で湖沼水質考えていかなければいけないのじゃないか。湖沼の周りが山林から農地に変わったり、あるいはそれが市街地に変わっていくというようなことでの負荷量、こういうようなものについて御検討になっていらっしゃるのか、この辺いかがでしょうか。
  12. 佐竹五六

    佐竹政府委員 確かに、点源負荷と並んで面源負荷が相当なウエートを占めるということが推計されるわけでございます。これは実際に湖沼の中の物質の存在量と、それから特定の、先生今御指摘点源負荷からの排出量と比べてみますと、どうもいろいろ数字が突き合わない面があって、これはどうしても農地山林も含めた面源からの排出量が相当あるのではないか、こういうふうに見ざるを得ないわけでございます。  ただ、これにつきましては、一面、農地等についてはむしろ窒素、燐の吸収作用を営む場合もあり得るということでございまして、それからまた、用排水路でそれらの窒素、燐がどういうふうになってきているかというような問題もございます。これらについては今研究機関等でいろいろ研究を重ねていただいているわけでございますが、御指摘のように、やはり面源対策というものを考えていかなければ湖沼水質改善ができないわけでございまして、特に、全く人為的汚濁負荷源のない山の中のダム等でも赤潮等が発生しておりますので、そのような意味で、ただいまの先生の御指摘は私ども今後の一つの重要な課題考え研究を進めてまいりたいと考えております。
  13. 天野等

    天野(等)委員 五十六年に出されました中公審答申、これも湖沼について、湖沼周辺環境一体のものとして考えていく、湖沼環境保全という考え方に立っています。これは水質という点から考えた場合、面源負荷という面を考えていくときに非常に重要な考え方なんじゃないか。今局長お話しになりましたけれども点源負荷量のあれを足していっても実際の湖沼汚濁値になってこないということが現在言われているわけです。  そうなってきますと、湖沼水質をよくするというためには、これはどうしても周辺環境一体のものとして考えていかなければだめなんじゃないか、そこに湖沼としての特質があるんじゃないだろうかというふうに考えるわけなんです。その点で私は、今度の法案が、まあ名前が変わったこともございますけれども、全体としての考え方が、そういう面源負荷という立場についてもやはり弱いのではないだろうかという気がするわけです。この点は今後の課題ということでさらに検討していただけるものなのかどうか、この点をお伺いいたします。
  14. 佐竹五六

    佐竹政府委員 湖沼周辺環境湖沼水質に重大な影響を及ぼすということは、少なくとも環境庁はそのとおり考えているわけでございます。ただ、それに対する対策としてどのような手段が必要かという点につきましては、必ずしも新しい地域地区制度に基づく開発規制等は行わなくても従来の制度で対応できるのではないかというところが私ども考え方でございまして、その点から法案の名称もあのような格好になったわけでございますが、実際に、先ほど申し上げました面源として農地等が果たしている役割あるいは山林が果たしている役割をどう見るかというような点も含めまして、湖沼周辺環境とそれから湖沼水質についてのメカニズムを今後さらに勉強してまいりたいということを私ども考えておるわけでございます。
  15. 天野等

    天野(等)委員 そういう点から考えまして、湖沼周辺の例えば下水道整備とかあるいは湖水しゅんせつというような面が具体的にいろいろ問題になってくると思うのですが、こういう点については、今度の法案でもやはり各担当省庁、具体的に言えば建設省等計画を立ててやるということになるのでしょうか、あるいは環境庁、あるいは都道府県知事等環境庁が指導しながら全体としての対策を進めていくことができるのか、この辺はいかがですか。
  16. 上田稔

    上田国務大臣 お答え申し上げます。  先生から、ただいまいろいろな施設につきまして御質問がございましたが、これはこの法案を採択していただいて通していただきますと、県知事が、いろいろの湖沼指定をした場合に湖沼についての計画を立てる、こういうことになっております。その計画は五年を目標にいたしますが、箇所箇所に応じて必要なものをやっていく、例えば下水道が必要なところは下水道をやる、それからまた、しゅんせつの必要なところはしゅんせつをやる、あるいは、し尿処理を急がなければいけないところはし尿処理を急ぐ、こういう計画でずっと湖沼周辺にわたって計画を立てていく。その立てた計画を、公害対策会議と申しまして、これは各省大臣もお入りいただいて、関係大臣が入っていただいておるわけでございますが、その会議にかけさしていただいて各省にもその内容を十分に認識をしていただいて、そうして御協力をいただく、こういうことになるわけでございます。したがいまして、その御協力によって知事各省予算要求をいたしますと、それに計画を配慮してそうして進めていただける、こういう仕組みになっておるのでございます。
  17. 天野等

    天野(等)委員 結局、そうなってまいりますと、各省庁で具体的な施策を進めていくときにどのくらい熱意を持って環境行政というものに取り組んでもらえるのかということになってくると思うのですね。そういう点で一、二お尋ねしたいと思います。  最初に、建設省にお尋ねしたいのですけれども湖沼周辺下水道整備というような点について、特に汚濁の非常に進んでおります、緊急に対策を立てなければならないような湖沼幾つかあるのではないかと思うのですが、建設省としてはこの辺どういうふうにお考えになっておられるか。
  18. 黒川弘

    黒川説明員 現在、湖沼周辺につきましては、いろいろな種類の、四十一の湖沼について下水道整備を進めております。  今回、法案が審議されておるわけでございますが、それに基づきます湖沼水質保全計画で定められました事業につきましては、湖沼法の趣旨に従いまして、非常に厳しい財政状況下ではございますけれども、関連する下水道整備に努めてまいりたいと考えております。
  19. 天野等

    天野(等)委員 下水道の少し細かい問題になるかもしれないのですが、先ほども水質保全局長お話の中にもありましたけれども下水道終末処理場関係窒素、燐を抜くという問題がある。実際問題として、今の活性汚泥法による終末処理のもとではかなり難しいのではないかということがいろいろな点で言われておると思うのですが、この辺についてはいかがなんでしょうか。
  20. 黒川弘

    黒川説明員 現在、一般的に採用されております二次処理は、主として有機性汚泥除去によって水質改善を図ろうとするものでございますが、その際でも、窒素、燐につきましても大体二〇%ないし四〇%の除去ができるという状況でございます。ただ、建設省といたしましては、我が国の非常に低い下水道普及率の現況あるいは限られた下水道予算という制約のもとでございますので、湖沼水質保全につきましても、今申しましたように、まず二次処理区域を拡大するということが一番大切なことではないかなと考えておるところでございます。
  21. 天野等

    天野(等)委員 下水道につきまして、終末処理施設をつくってということは結局そこに汚水を集めることですから、それを今度は窒素、燐について——今二〇ないし四〇%という程度です。大体そのくらい、四〇%取れれば非常にいい方だろう、普通二〇%程度しか窒素、燐は取れないのじゃないかと言われている。そうすると、結局窒素、燐について濃度の強い排水が出てくる、あるいは濃度は別としてそれが一カ所に集中して出てこないかという問題があります。その辺について、そういう終末処理場をつくることによって富栄養化現象をむしろ逆に進めてしまわないのかというおそれがある。これについてはいかがですか、環境庁長官いかがですか。
  22. 佐竹五六

    佐竹政府委員 最後に御指摘になりました富栄養化を進めるということはないかと思いますけれども、現下の財政事情から見まして、三次処理まで行うことは広く下水道普及率を上げる上で非常に難しい問題であるというのは御指摘のとおりでございます。  そこで、最近、科学技術庁資源調査所から報告書が出ておりますけれども、今後、窒素、燐も含めまして人口の低密度地域水質浄化のためには自然浄化機能を広く活用すべきであるということが言われておるわけでございます。私どもも、特にこの水質保全計画等を通じまして各省の御協力をいただきながら今後仕事を進めていくわけでございますが、農林水産省等の御協力もいただきまして下水処理、二次処理水農業用排水路を使った浄化とか、これはまだ技術的にいろいろ問題があるようでございますけれども、さらに水田への利用というようなことも考えていきたい、そのようなことを考えることによってこの非常に難しい問題について解決の糸口がつかめるのではないか。私ども、その点まだ技術的にも未解決の問題が非常に多うございますが、恐らく方向としてはそのような方向を追求することが可能な方途ではなかろうかと考えておるわけでございます。
  23. 上田稔

    上田国務大臣 ただいま局長が申しましたのは一つ方向でございます。そのほかに、建設省おいでになっておられますけれども建設省の方でもその二次処理をやり三次処理、今までの三次処理という概念でいきますと非常にお金がかかるということでございますが、もう少し菌を利用した、つまり燐とか窒素を食うようなものをもっと多くするようなことを考えて燐、窒素を安く除きたい、こういうことも今御研究をいただいておりますので、そういうような面で解決がされていくと私は思うのでございます。今現在では、燐、窒素はなかなか除きにくいものであるということは定説でございます。
  24. 天野等

    天野(等)委員 結局、そうなりますと、現在の状況としては、湖沼汚濁を何とか取り除くという点で単に下水処理施設をつくる、下水道を普及させていくだけでは窒素、燐の問題が解決していかない。しかも、それが湖沼水質汚濁の一番大きな富栄養化の元凶だということになりますと、今まで生活雑排水についてとにかく下水道をつくっていくことだというふうに考えられていたこともあるかと思いますけれども、それだけでは湖水は十分されいにならぬという状況が出てきていると思うのですが、これについて、環境という面から建設省ではどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。
  25. 黒川弘

    黒川説明員 下水道整備をいたしますと、その地域の全体としての窒素、燐を含めました汚染負荷量が減少するわけでございますので、下水道整備によって富栄養化の解消に役立っているという認識は全体として持っております。  具体的に、下水道整備する場合に二次処理を当面重点的にやられなければいけない、湖沼周辺下水道普及率も二十数%でございますので、第二次処理を重点的にやるという考え方が基本だろうと思いますが、具体的な窒素、燐の環境基準などが現在当てはめ作業が進められておりますけれども、個別的に高度処理が非常に効果的であるというふうなところにつきましては、今でも琵琶湖霞ヶ浦等につきまして一部そういった事業を実施しているところもあるわけでございますので、今後ともこういう態度を堅持しながら全体としての普及率の向上に努めてまいりたいと考えております。
  26. 天野等

    天野(等)委員 建設省としてこの下水道普及率を高めていく方針だということはよくわかるわけです。私たちもそれはそれで進めていっていただかなければならない事柄だと思うのですが、それと同時に、それだけでは湖沼環境の保全あるいは湖沼水質の保全ということには足りないのじゃないかということを私は申し上げているのです。そこの観点から、建設省として一歩突っ込んだ湖沼水質の保全という観点での施策をお考えになられないか、そういう点をお聞きしておるわけです。
  27. 緒方啓二

    ○緒方説明員 湖沼水質保全が国民生活あるいは社会環境上非常に重要であることはもう従前から指摘されているとおりでございますし、また、全体として総合的な施策を講じていかなければならぬことも各方面から指摘されているところでございます。  私どもとしても、このような観点からいろいろな施策を講じているわけでございますが、ただいま説明がございました下水道整備、あるいは先生もおっしゃっておられました汚泥しゅんせつあるいは浄化用水の導入あるいは曝気に関する施策というようなこと、いろいろ取りまぜて実施しておるところでございます。  なおまた、湖沼をめぐりますいろいろな自然環境の保全、こういったことにつきましても、都市計画法に基づく各種施策あるいは河川法に基づきます良好な河川管理の実施というようなところで鋭意努めてまいっておるところでございます。  なおまた、いろいろな新規施策等につきましても検討を重ねておるところでございまして、そのようなことで、河川水質の保全あるいは河川環境の保全といった点に鋭意努力してまいってきておる、かようなことでございます。
  28. 天野等

    天野(等)委員 建設省が所管していらっしゃる水資源という観点から考えましても、水資源というのは単に水があればいいということではないのは当然でございます。やはりどうやって良質な水を確保していくかということで、今の湖沼状況あるいは汚濁の進行の状況建設省としてもかなり深刻に考えなければならない状況なんじゃないか。いろいろな手をそれなりに打つが、あるいは足りないのかもしれませんけれども、一向にきれいにならない。きれいにならないところか、どんどん悪くなってきている。これは水資源という観点からもっと深刻に考えていかなければならない。  それに関係してですが、例えば湖沼の淡水化、水かめ化というような問題が二、三の地域に出てきております。これと水質汚濁関係、地元の住民との間でいろいろな問題も出てきているのじゃないかと思うのですけれども、従来の自然環境を無視した形での水かめ化、淡水化というのは湖沼汚濁をむしろ進めていくのじゃないかというように考えられるのですが、この点いかがでしょう。例えば中海とかいろいろございますけれども
  29. 陣内孝雄

    ○陣内説明員 湖沼におきます水資源開発におきましては、流入量を単に調節しながら利用するものでございます。したがって、これに伴う汚濁負荷、これは循環、流動して流出していくというような性格のものでございますので、水質の変化の傾向に対しての影響はないというふうに考えておるわけでございます。
  30. 天野等

    天野(等)委員 ということは、入ってきた水はそのままの性質で出ていくんだ、だから、その間に変化はないんだという考え方のように聞こえるわけですね。それで果たしていいのかどうか。環境庁としていかがでございますか。今みたいな形で本当に水質保全ができるのか。
  31. 上田稔

    上田国務大臣 中海の問題を先生お取り上げになっておられるのではなかろうかと思うのでございます。淡水湖化というのは、本当はなかなか難しい、非常に時間のかかるものであると思うのでございます。というのは、児島湾で淡水湖化をおやりになられたのでございますけれども、これは中海と比べますと大分規模が小そうございますが、入ってくる水も少のうございますけれども、非常に長い間おかかりになっておられるのでございます。そういうようなことで、中海の場合も相当年月がかかると私は思うのでございます。しかし、それによってそれでは水質が悪くなるかということになりますと、水質そのものは、海水というか、塩分の相当多かったものが塩分が少なくなって、上の方が淡水になっていくということは起こってまいりますけれども、その上の方にたまる淡水にBOD、CODが非常にふえてくるとかいうようなことはちょっと考えられないと思うのでございます。
  32. 天野等

    天野(等)委員 今長官がいみじくもおっしゃいました児島湖の状況でございますけれども、これは環境庁で出されました説明の資料の七ページにございますが、CODの環境基準五ppmですが、五十七年度の測定値九・八です。五ppm、それでいて、それに到底達し得ない、二けたになるということ。これはこの水質保全という観点からいきましたら完全に失敗したのではないかとさえ言えるのではないかと思いますが、こういうことになっていくのではないかというのが淡水、水がめ化の危険性ということなんです。いかがでしょう、長官。
  33. 上田稔

    上田国務大臣 児島湖の例でございますが、私も児島湖については余り詳しくは存じませんけれども、児島湖に入ってきております河川、その流域に人口が相当張りついたものでございますから、その水質が大分悪くなっておるというようなことはお聞きをいたしておるのでございます。
  34. 天野等

    天野(等)委員 淡水化によって水がめにしてしまうために自然の浄化作用が非常に弱くなってしまうということから来る汚濁というのが、この場合にはかなりあるのではないかというふうに考えられるわけです。もちろん、児島湾周辺の工業地帯がございますから、そこの産業排水等の問題があると思います。そうやってかなり長い期間がかってこしらえ上げた。しかし結局、それが環境という観点から見ると、むしろない方がよかったとさえ言えるようなものになってしまう。そうしたら、やはりこれはもともとのところからもう一回考え直しをしなければならぬのではないか、こういうことなんですが、この点で建設省いかがですか。
  35. 陣内孝雄

    ○陣内説明員 湖沼としてつくった場合に、あるいは自然湖沼湖水調節をするような形に変えた場合に、そこで起こります水質の変化現象というのは、これは湖盆の形状とか湖内の流動形態あるいは湖そのものの特性、水利用の形態、いろいろな要素によって変わってくるわけでございます。したがいまして、私どもは、そういう特性に応じてしゅんせつとかあるいは浄化用水の導入、これは霞ヶ浦でこれから始めるわけでございますが、あるいはアオコの除去とか、いろいろ多様な方法をとりましてその改善に努めておるわけでございます。  この湖による水資源開発というのは、一方ではその地域あるいは生活のために水の供給は必要なものでございますので、その辺との調和を図りながら、今後とも地域の開発あるいは環境の保全のために努力してまいりたいと思います。
  36. 天野等

    天野(等)委員 まだ建設省にお聞きしたいことはいろいろあるのですけれども建設省にお願いしたいのは、環境保全という観点から全体の施策を見直していただくことをぜひともこの機会にお願いしたいと思うわけです。特に湖沼のヘドロのしゅんせつというような問題がございますから、この点もう少しお聞きしたかったのですが、ちょっと時間がございませんので、何かの機会にまたお尋ねしたいと思います。  あと農林水産省に。これは霞ヶ浦なんかが特徴的で、より目立っている例でございまして、必ずしも一般的とは言えないかもしれませんが、しかし湖沼周辺の農業排水あるいは畜産排水あるいは湖沼の中の水産養殖、そういうものによる湖沼の汚染ということで、農水省としては湖沼水質保全ということでどういうふうな対策をお考えでありますか。
  37. 吉池昭夫

    ○吉池説明員 お答えいたします。  湖沼水質保全を図るということにつきましては、農林水産関係にとって重要なことである、こういうふうに考えているわけでございます。御承知のように、農林水産業はその生産活動を通じまして、国土や自然環境の保全あるいは自然景観の維持、そういう環境保全的な役割を果たしているわけでございます。こういうことからいたしまして、むしろ農林水産業の健全なる発展というものは、ひいては湖沼水質保全につながるものではなかろうか、こういうような考え方を持っているわけでございます。  現在湖沼に対する農業関係の寄与がどうなっているかというお話でございますけれども、達観いたしますと、湖沼によって状況が違うわけでございます。多いところで、例えば農業あるいは畜産あるいは水産を含めまして、霞ヶ浦の場合が多いようですけれども、CODで見ますと、その関係で三〇%ぐらいございますけれども、ほかの湖沼は平均して一〇%前後でなかろうかというふうに考えているわけです。そういうこともございまして、私ども農林水産業の発展と調和を図りつつ、諸対策を進めてまいりたい、こんなような考え方を持っているわけでございます。  以上でございます。
  38. 天野等

    天野(等)委員 一番問題になるのは畜産ふん尿だと思うのですね。これの農林省としての処理の構想、お尋ねすれば、恐らく農地に還元するのが基本なのだということかとは思うのですけれども、単純にそれでもって湖沼環境保全になっていくのかどうか、その辺はいかがでございましょうか。
  39. 香川荘一

    ○香川説明員 お答えいたします。  畜産につきましては、私ども周辺との環境問題、こういうものが十分調和されていかないと、畜産そのものの発展にも影響が大きいというふうに考えております。御指摘のように、家畜のふん尿というのは、一方で従来から貴重な土壌還元の有機質資源ということもございますので、私どもはその辺を重点に対応を考えておるわけでございます。  ただ、それだけでどうかというお話でございますが、私どもはむしろ、従来畜産につきましては水処理をやっていた部分もあるわけでございますけれども、これは経費的な問題あるいは技術的な問題等で、やはり土地還元ということを重点に考えていかなければならないというふうに思いまして、そういう面での対応を従来からやっております。一つにはそういう指導を、特に今回の湖沼法関連では、その周辺畜産につきましては個別的、重点的に指導を進めていきますし、また、それに伴う施設整備、畜舎の整備あるいは機械の整備等につきましての助成策というものも講じていくということで対応しているところでございます。
  40. 天野等

    天野(等)委員 一例ですけれども霞ヶ浦周辺で言いますと、あのあたりの窒素考えまして、必要な作物の標準施肥量でいきまして一万五千トンぐらいの窒素肥料が必要だということで、そのうち現実に霞ヶ浦の流域で使用されている化学肥料の窒素肥料を調べたものがあるのですけれども、それによると一万二千二百トンぐらい、それから農林省の方で言われております豚のふん尿を農地還元するのだということで計算をしてみますと、窒素分が五千七百トンぐらい、合わせると一万七千九百トン、三千トンぐらい余計になってしまうわけです。ですから、単純にぶん尿等を肥料として農地に還元していけばいいというわけにはいかない。そうすると、やはりどうしても余分になってしまう。それでは、化学肥料の施肥を抑えることができるか、その辺との総合的な施策を考えることができるのかどうか。実はそれを考えない限り、湖水周辺畜産のふん尿の汚泥というものは解決しないのではないか。これはしゅんせつしたヘドロの処理の問題でもやはり同じようなことが言えるかと思いますけれども、この辺で何か具体策がございますか。
  41. 畑中孝晴

    ○畑中説明員 先生が今おっしゃいましたように、普通そういうふん尿を還元いたしまして、そこへ同じような量の化学肥料を入れれば、当然肥料分としては多くなってしまうわけでございますけれども、むしろ私どもが今非常に問題にしておりますのは、有機物といいますか、家畜のふん床とかそういうものは土壌に入らなくなっているということの方をむしろ問題にいたしまして、実はこの国会にも地力増進法案という地力を高めようという法案をお願いいたしまして、きょう公布になる日になっておるわけでございますけれども、そういう意味でまず基本的にはそういう畜産のふん尿等を利用しました有機物、そういうものを土壌に還元いたしまして、それにプラスして化学肥料をどのようにやっていくか、これは全国の普及所に土壌診断室というものをつくっておりますけれども、そういうところで十分な地力診断等をいたしまして、その必要なものを入れていく。やはり化学肥料はお金がかかるわけでございますので、できるだけ適正な量を入れていくということではないかと思います。  それから、ここ何年かずっと見てまいりまして、水稲などでも非常に収量がふえてきているわけでございますけれども窒素肥料いわゆる化学肥料の施用量というものは余り変わっておりません。これはいかにうまく使っていくかという意味で、元肥だけではなくて、それを分けて必要な時期に必要な量だけ入れていくとかいろいろなことをやっておりますので、そういう意味からも家畜ふん尿を土壌還元して、それに合った施肥を適切にやっていくということが私どもの基本でございますので、そのように指導もしておりますけれども、実現はなかなか難しゅうございまして、むしろ化学肥料をたくさん入れてしまうという傾向もございますので、先生の御指摘のような形で指導をしていきたいというふうに思っております。
  42. 天野等

    天野(等)委員 実際の今の農業経営の実態から言えば、今の御説明のとおりだと思うのです。そんな面倒くさい有機肥料なんかを使っているよりは化学肥料でもってやってしまうということなので、その辺の対策なしに簡単に、いや畜産のあれは土に戻すのだと言ってみましても、これは湖沼水質保全という観点から見ますと、全く何の役にも立たぬ、全く何の役にも立たないわけではないかもしれません、土の浄化作用というものもございますから、全く何の役にも立たないということではないかもしれませんが、それではやはり足りない。その辺で先ほどちょっと私なにしました面源負荷の問題も、やはり全体として湖沼周辺環境をどういうふうにつくっていくかということが重要になってくるのじゃないかと思うのです。  次に、水産の問題なのですが、いわゆる網いけす、これが湖沼水質に非常に悪影響を及ぼしているのじゃないかということがいろいろ言われておりますが、農水省の方としてはこれについての対策ございますか。
  43. 山添健一

    ○山添説明員 先生がただいま御指摘になりました網いけすの養殖は、魚種はコイの養殖でございますが、コイにえさをやって養殖している。このえさが残りまして、これが非常に湖水水質に影響しているということでございます。  私どもこの対策としまして、一つは、富栄養化防止のための技術開発をやっておりまして、中身は底質の改良試験、それからまた燐の少ないようなえさの開発、それからさらに水産生物、テラピアニロチカとかシジミ等を使っての燐とか窒素の回収試験、こういう技術開発をやっているのが第一点でございます。それから、第二点としまして、養殖を適正に行うということで養殖指導指針を現在策定中でございます。それから、業界に対しましても、食べ残しの少ないような飼料、それから燐の少ないような飼料、こういう新たな飼料の開発、それから投餌の方法も過剰投餌なんかを抑制する技術的な方法、こういうものの開発に努めるように指導しておりますし、さらにはいろいろな水質汚濁防止するための施設等の整備に対する補助制度等、こういうものを準備しております。また、湖沼水質保全につきましては、水産の方から申しましても湖沼の水を利用するということで非常に重要な課題でございますので、これらの対策、指導を通じまして養殖漁業の健全な発展ということに努力してまいりたいと考えております。
  44. 天野等

    天野(等)委員 今お話の中にありましたテラピアというのですか、あれは窒素を食べてしまうのでしょうか。いろいろ話として言われているようですけれども、現実的な効果はあるのですか。
  45. 山添健一

    ○山添説明員 魚が大きくなるということはそれだけ体の中に燐、窒素をとってしまうわけなのでございますが、このテラピアニロチカはえさを余りやらなくても大きくなるということは、水質中の燐、窒素を吸収しているということでございます。
  46. 天野等

    天野(等)委員 そういうことで現実に網いけすの水質保全ということで役に立っているのか、役に立ち得るのか。その辺の調査なり研究なりというものは、話としてはいろいろ聞くのですが、実際問題としては行われていないのが実態なのじゃないかと思うのですが、いかがですか。
  47. 山添健一

    ○山添説明員 私どもこの技術開発試験につきましては、五十七年度から五十九年度、今年度終了ということで今実験をやっておりますので、今年度末には見通しがつくかと考えております。
  48. 天野等

    天野(等)委員 湖沼水質という点、一番最初にも話がありましたように、非常に難しい条件の中のことではあると思いますけれども、この対策について各省庁が本気になって考えてもらわないと、私は日本の湖は本当に死んでいってしまうのじゃないかと思うのです。現に死んでいると言っては悪いかもしれませんが、本当に死んでしまっているのじゃないかと言えるような湖沼もあるかと思います。私のところの霞ヶ浦なんかももう死ぬ前の瀕死の状況だと思いますけれども、これを何とか救ってもらうためには本当に各省庁で考えてもらいたい。  その点で、せっかく湖沼水質保全特別措置法というような法案が出ていながら、今年度の環境保全関係の予算を見ますとかなり大幅に減っている。「昭和五十九年度において講じようとする公害の防止に関する施策」の中に出ております環境保全関係の予算は昨年度よりも二百九十億、約三百億近く減っておるわけですね。マイナスシーリングの時代だからということが言いわけとしては出てくるだろうと思います。しかし、どういう施策を施すにせよ、湖沼水質を保全していく、あるいはむしろこれを良好なものにしていくというためには、やはりお金がかかることだと思います。これにもっと集中してお金を使っていく。それも重点的な形でひとつ対策を立てていっていただきたい。そのためにも環境庁長官環境行政のリード役として、産業政策のリード役ということまで買って出ていただく必要があるのじゃないかと思うのですが、その辺の長官のお考えを伺いたい。
  49. 上田稔

    上田国務大臣 先生お話しのとおり、環境関係の予算が減るということは大変申しわけないことでございます。したがいまして、お願いをいたしております湖沼関係水質をどうしてもよくしていかなければいけない、こういうことからこの法律を出させていただきました。それには対策のいろいろな計画を立てて、先ほど申し上げましたように、各省に皆それを承知してもらって協力をいただくということで、環境庁は強力に環境行政を推し進めていかせていただきたいというのが私ども考えでございます。
  50. 天野等

    天野(等)委員 これで終わります。
  51. 竹内黎一

    竹内委員長 次に、春田重昭君。
  52. 春田重昭

    ○春田委員 政府提出湖沼水質保全特別措置法案につきましては、今日まで本委員会で種々論議されてきているわけでございますが、私は本日は時間の都合もあり、基本的なことを再確認しておきたいと思っているわけでございます。  まず、湖沼水質環境基準達成状況についてお答えいただきたいと思います。あわせて、汚染されているワーストの湖沼状況をひとつ簡潔にお答えいただきたいと思います。
  53. 佐竹五六

    佐竹政府委員 五十七年度の公共用水域水質測定結果によりますと、湖沼のCOD環境基準達成率は四一・七%でございます。環境基準が当てはめられている湖沼は百三ございますので、その四十三の湖沼環境基準を達成しておりまして、残り六十が未達成、かようなことでございます。  それかも、水質の悪い順に湖沼を五つ取り上げますと、手賀沼、印旛沼、愛知県の油ヶ淵、静岡県の佐鳴湖、霞ヶ浦、こういうことになっておりまして、これらの湖沼水質環境基準の大体三倍ないし五倍と、大幅に超えているような状況でございます。
  54. 春田重昭

    ○春田委員 大臣は、去る二月二日ですか、湖沼で汚染度全国ナンバーワンの千葉県の手賀沼を視察されたと聞いておるわけでございます。大臣は視察後、記者会見の中で、湖沼法の制定で手賀沼を浄化へのモデルケースとしたい、こういう抱負を述べられたと報道されておりますが、これはいかなることを指しているのか、大臣の御見解をお伺いしたいと思うのです。
  55. 上田稔

    上田国務大臣 お答えを申し上げます。  私、手賀沼を視察させていただいたのでございますが、先ほどのお話じゃございませんが、まさに死にかけておる湖沼であるという感じがいたしました。  どこが悪いかと言いますと、やはりいろいろな対策を皆講じなければ水質がよくならないのではなかろうか、こういうことを考えたのでございます。まず、余り悪くないところでしたら、新しい良質の水を、つまり血液なら新しい血液を入れるようなものでございますが、河川からいい水を入れてというようなことはしなくても、その中で何とかやっていけるように思えますが、手賀沼についてはもう水質が非常に悪くなっているから、これはどうしても利根川の水を導水して、そして早く悪い水がかわってしまうように、あるいは薄めていくようにしていかなければいけないのではなかろうか。そういうことをしないと、まず、においが取れない、それからアオコがふえるのをとめることができない、こう考えました。それからまた、次にしゅんせつをやらないとヘドロがいっぱいたまっておりまして、このヘドロがやはり水質を悪化させる原因になっておる、そういう対策も立てなくてはいけない。次に、人口が非常に集中してきておりますので、生活雑排水が非常に流入をいたしております。この流入をしてくる生活雑排水浄化を図っていかなくてはいけない。これには下水道をやらなくてはいけない。また、そのほか周辺人口の集中してない、希薄といいますか、ぱらぱらとあるような地域に対しても対策を立てる。これにはし尿処理対策を立てたり、あるいはその他の対策を立てていただく。こういうことを考えますと、非常に典型的なものではなかろうかと思うのでございます。しかも、利用していただいておりますのは、農業用水に、水産に、また、そのほかのものにお使いをいただいておりますし、また出口といいますか、利根川に出たすぐ下流において千葉の飲水、水道の水をそこからおとりになっておるということでございますので、手賀沼の水質が非常に影響してくる、こういう状態でございます。  したがって、そういうことを考えると早くやらなければいけないのではなかろうか、ワーストワンでございますので、これを一つのモデルといいますか、そういうことで考えて早くよくしていかなければいけない、こう考えて申し上げた次第でございます。
  56. 春田重昭

    ○春田委員 その汚染されている最大の原因は何と思いますか。
  57. 上田稔

    上田国務大臣 汚染の一番の原因は、私はやはり生活雑排水であるというふうに考えております。
  58. 春田重昭

    ○春田委員 大臣も御存じのように、手賀沼は環境基準五ミリグラム・パー・リッター、五ppmに対しまして、五十七年度COD測定値で二五ppmとなっているわけでございまして、基準の五倍の汚染度であります。我が党の独自の調査を、今週の十四日、十五日、月曜と火曜に調査したわけでございますが、やはり高いところで二六ppmと出ているわけでございまして、ほぼ数値は一致している。このことは、五十七年度の二五ppmと何ら変わってないということが示されているのです。  そこで、お伺いいたしますけれども、今大臣、いろいろな施策をおっしゃいましたが、この湖沼法の制定によって、手賀沼の水質を何年くらいで、現在の二五ないし二六ppmをどれぐらい下げるのか、こういうことを私は聞きたいと思うのです。
  59. 佐竹五六

    佐竹政府委員 手賀沼につきましては、千葉県におかれまして五十七年に水質管理計画を立てまして、これは考え方として、私どもが今後水質保全計画を立てる際の考え方とほぼ同じような考え方をとっておりますが、これで、当時二二ppmだったわけでございますが、これを七十年までに五ppmまで下げたい、こういう計画を持っているわけでございます。  ただ、このためには、現在の下水道人口普及率が一八%でございますが、これを七十年までに九一%ぐらいまで上げなければならない、こういうことでございまして、この計画は県が独自に立てられたものでございますけれども、今後この普及率を上げるために必要な投資について建設省にもよく御協力をお願いいたしまして、今後の予算の伸び等の問題もございますけれども、大体このような考え方を例えば手賀沼についてはとってまいりたい、かように考えているわけでございます。
  60. 春田重昭

    ○春田委員 今後この法案が制定されれば、当然各地方自治体で保全計画を立てていくわけでございます。したがって、その保全計画に大きな決め手があると思いますし、さらに、環境庁一省だけではできない問題だと私も承知しているわけです。建設省や通産省や農水省、厚生省等の協力がなかったならば湖沼水質浄化はならないということは私どもよくわかっているわけでございますが、私はやはりそうした地方自治体任せといいますか、または各官庁があるからということで、環境庁がそれを逃げ口上として消極的になっては何にもならない、いわゆる湖沼浄化にならないわけでございますので、そういった面では環境庁の強い姿勢が必要だと私は思うわけでございます。  先ほど御説明があったように、現在四一・七%が環境基準に達している、あと六割近くが達成してないという状況でございます。そこで、この湖沼法の制定によって、四一・七%を何年後には何%ぐらいまで上げていくのだ、そういう目標というか計画というかめど、そういうものはお持ちなんですか。
  61. 佐竹五六

    佐竹政府委員 これは先生もよく御案内のように、湖沼ごとに、湖沼の性格それから流域の状態等非常にまちまちでございます。したがいまして、私ども今後水質保全計画を立てる過程でその辺を具体的に詰めていきたいというふうに考えておりますので、一律に何年後に何%にするという目標を設定いたしましても、実際に湖沼ごとの特性がまちまちであるというようなこともございまして、実現の可能性が少ない。逆に一つ一つ積み上げてそういう目標をつくっていきたい、かように考えているわけでございます。
  62. 春田重昭

    ○春田委員 確かに今言ったような理由で、具体的に何年後には何%にするという明確な数字を出すことは難しいとしても、しかし、政府提出湖沼法案につきましては賛否両論の意見があるわけです。例えば、内容はいまいちであるけれども一歩前進というか、二、三歩前進であるがゆえに賛成して通していこうかという意見もありますし、また反対の意見としては、たとえこの法案が通ったとしても果たして公共下水道は期待どおり整備されるのか、家庭雑排水窒素、燐の富栄養化対策等が確立されるのか、こういったさまざまな疑問が出されているわけですね。むしろ地方自治体の方に負担がかかってくるのではないか、こういう声も出ているわけでございます。そういった反対の意見を説得するためにも、千葉県が手賀沼は七十年ぐらいには五ppmにしますということを出していますけれども環境庁自身に、この法案が通れば五年、十年後には四一・七%を少なくとも何%に持ってまいります、そういう決意があって初めでいろいろな事業等ができるわけです。当然環境庁事業官庁ではございませんし、予算がないから、わからないことはないのですけれども、そうした環境庁の姿勢というか、長官の決意次第によって、この法案だけで果たして本当に湖沼浄化されるかどうかわからない面があるわけです。過去委員会でも論議されましたけれども、そういった環境庁ないし長官の強い姿勢がなかったならば、この法案は絵にかいたもちである、そう指摘せざるを得ないと私は思うのです。そういう面で大臣にもう一回……。
  63. 上田稔

    上田国務大臣 お答え申し上げます。  先生の御指摘のとおり、実施官庁は各省にまたがっておりますし、環境庁自身が予算を持っておらない。その点におきましては非常に弱みがあるのでございますけれども環境庁は調整官庁でございますし、公害対策会議には関係の大臣に入っていただいて、その場においてこの計画が認められるということでございますので、環境庁長官としては、この計画の推進に当たりまして各省に対して徹底的に強く要望をして、実現していくということをやらせていきたいと考えております。
  64. 春田重昭

    ○春田委員 大臣からいみじくも答弁されましたけれども、調整官庁であるという概念は捨てなかったらいけないと私は思うのです。環境庁が実施しなかったらできないのだ、そういう腹を持っていなかったら湖沼法は何にもならないのです。  そこで、具体的な問題に入っていきたいと思いますが、環境保全計画は都道府県知事が五年ごとに作成することになっておりますね。もし、五年経過しても実効性がなかった場合、この法案の見直しというのはあるのですか。
  65. 上田稔

    上田国務大臣 お答え申し上げます。  先生の御質問のとおり、これにつきましてはいろいろと最善の努力をしてやらせていただくのでございます。特に環境保全とのバランスといいますか、これは今ある法律を使ってやらせていただくということでございます。そういった点にそごができてまいりましたり、あるいは推進が非常に遅いというようなことも、いろいろな問題が起こってくると思うのでございますが、そういうときには見直しということも考えなければいけないと考えております。
  66. 春田重昭

    ○春田委員 五年でその効果が十分出なかったとして、この法案が制定されても結果的に余りよくないとなった場合、十年以内においては湖沼法案の見直しを含めて十分検討する余地があるのではなかろうかと私は指摘しておきます。  さらに、この保全計画は都道府県知事が立てますけれども、この計画を立てる費用につきましては国は出さないのですか。
  67. 佐竹五六

    佐竹政府委員 当面予定しております十湖沼程度につきましては、水質保全計画を立てる新しい手法を開発するという意味で国がそれに必要な費用を都道府県に委託する、こういう考え方をとっているところでございます。
  68. 春田重昭

    ○春田委員 当面十湖沼ということでございますが、今回の指定湖沼については十ないし二十ということをおっしゃっておりますけれども、どうなんでしょうか。
  69. 佐竹五六

    佐竹政府委員 今後の予算要求の問題でございますので、今後の検討課題とさせていただきたいと思います。
  70. 春田重昭

    ○春田委員 この保全計画に対する費用というのは、地方自治体の要望の大きな項目の一つになっていたわけですね。そういった面でひとつ前向きに取り上げていただきたいと思うわけでございます。  さらに、指定湖沼環境庁としては十カ所の湖沼名を挙げておられますし、あと十カ所ぐらいを追加して二十カ所ぐらいを考えているみたいでございますけれども、先ほど局長の答弁にあったように、五十七年の調査でも百三の中で四十三が一応達成になっているわけですね。したがって、まだ六十あるわけですから、今回十ないし二十といっても、まだ残りは六十あるわけですね。  そういった面で、予算面もあると思いますけれども、この十ないし二十をもっと広げるという御意思はございませんか。
  71. 佐竹五六

    佐竹政府委員 私どもは当面十ないし二十というふうに申し上げているわけでございますが、具体的な湖沼につきましては各都道府県と相談して決めていくわけでございまして、その過程でその増減ということは当然あり得ることになろうかと思います。
  72. 春田重昭

    ○春田委員 そうしたら、二十湖沼と固定しないで、要するに都道府県知事がどうしても指定湖沼に入れてほしいと言った場合については、環境庁としては若干広げる御意思はある、そう考えていいのですか。
  73. 佐竹五六

    佐竹政府委員 湖沼の指定につきましては、やはり都道府県知事の申し出が第一の要件でございますが、それと同時にその水の利用状況、汚染の進み程度というような客観的な指標も考えなければならないわけでございますが、そういうことを総合的に勘案して、先ほど申し上げましたように、増減することは当然あり得るということでございます。
  74. 春田重昭

    ○春田委員 いずれにいたしましても、五十七年の調査段階では環境基準未達成の湖沼が六十あるわけですから、二十と固定しないで、さらに広げていただきたい、私はこう要望しておきます。  次に、湖沼に流入する事業所の窒素、燐の排水規制の設定でございます。  中央公害対策審議会に昨年一月に諮問されましてまだ答申されていない。当初、この答申につきましては昨年末と言われていたわけでございますけれども、それもできなくて、次にことしの六月までには答申する、こういうように言われたわけでございますが、六月もだめみたいで、この国会では夏ごろと答弁されているわけでございます。夏といっても六月から九月まであるわけでございまして、一体何月ごろを具体的に指すのか。詰めの段階に入っていると私は思いますので、大体何月ごろなのか、明らかにしていただきたいと思います。
  75. 佐竹五六

    佐竹政府委員 まことに恐縮な点でございますが、八月ないし九月ごろまでにやれば、この湖沼法を成立させていただいた暁に水質保全計画が実際に動き出しますのに間に合うというふうに考えております。何とかそれに間に合わせてまいりたい、かように考えております。
  76. 春田重昭

    ○春田委員 湖沼法の制定とリンクするようなそうした設定の時期にしていただきたいと思います。  ところで、排水基準でございますが、伝えられるところによりますと、各省との協議がありますので相当後退といいますか、緩やかな規制になっていくんではなかろうかと言われているわけでございます。例えば地方自治体では滋賀県や茨城県が条例等で窒素、燐の排水基準を設けているわけでございまして、御案内のとおり、滋賀県は窒素につきましては新設で八ないし二五ppm、既設で八から三〇ppm、燐は新設で〇・五から五ppm、既設で〇・八から五ppmとなっております。茨城県も窒素の場合は新設が八から二五、既設で一二ないし五〇、燐は新設で〇・五ないし三ppm、既設で〇・五ないし五ppmとなっております。  こうした地方自治体のいわゆる先進例があるわけでございますが、この八月ないし九月に出てくる国の排水基準、全国一律ですから、これと比較した場合、相当緩やかになると思いますが、どんなものでしょうか。
  77. 佐竹五六

    佐竹政府委員 具体的な数値は現在中公審で御検討いただいているところでございますが、私ども考え方といたしましては、一般家庭排水、これはし尿浄化槽で浄化されたし尿排水と雑排水を込みにした数値でございますが、これとバランスをとっていただきたい、その程度にはきれいにして出していただきたい、こういうのが一つ考え方でございまして、現在BODについてもそのような考え方で全国一律基準を決めているところでございます。  したがいまして、現在までの議論の過程ではございますけれども中公審排水基準専門委員会においても大体お認めいただいているわけでございまして、そのようなことになりますと、今先生から御指摘のございました霞ヶ浦ないし琵琶湖規制値よりは若干緩目になるわけでございます。それについては各都道府県においてその湖沼の特性に応じて上乗せの基準値を設定する、水濁法上かようなことになるかというふうに考えております。
  78. 春田重昭

    ○春田委員 若干緩目になるどころか大幅に緩目にならないように、ひとつ環境庁として十分その協議の場で主張していただきたい。当然各省との協議が必要でございますのでわかりますけれども、妥協の産物としてあってもなくてもいいような環境基準で決着がつかないように、あくまでも公害防止環境を守っていくという環境庁の強い姿勢で排水基準をつくっていただきたい、こう思うわけでございます。  環境庁は先ごろ「公害の状況に関する年次報告」、通称環境白書と言われておりますけれども、これを国会に提出されたわけでございます。その中には、環境は一時の危機的状況からは一応脱し、全般的には改善されている、こういうように載っているわけでございますけれども、こういった認識では困るのでございまして、環境庁はその保全には毅然として対処していただきたい、こう思うわけでございます。  時間がございませんので、もう一点だけお尋ねしますけれども湖沼の汚染の最大の原因は何といっても生活雑排水なんですね。長官もおっしゃっていたように、千葉県の手賀沼はその汚染の七五%、滋賀県の琵琶湖では五七%、茨城県の霞ヶ浦では五二%となっております。この生活雑排水対策として、各家庭では共同で処理施設を、升なんかつくっているわけでございますが、こうした施設につきましては、地方自治体では助成はしておりますけれども、国ではやっていない、こういう状況なんですね。何とか国としてこうしたいわゆる処理施設につきましても、汚染の最大の原因が家庭雑排水であるがゆえに、前向きで取り組んでいただきたい、私はこう思うわけでございますが、どうでしょうか。
  79. 佐竹五六

    佐竹政府委員 御指摘のとおりでございまして、関係省庁もほぼそのような認識を持っております。そのような点から、厚生省におかれましては今年度から生活雑排水専用の処理施設についての助成の道を開かれたわけでございます。また、農林水産省の集落排水整備事業先生今御指摘のような事態を解決するのにも役立つかと思うわけでございまして、これらの事業湖沼周辺における活用について関係各省に強くお願いしてまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  80. 春田重昭

    ○春田委員 厚生省が五十九年度から補助の対象にしたわけでございますが、これも百人以上の施設については補助の対象にしたわけでございまして、百人以上と限らず、これは各家庭でもつけておるわけでございますから、この枠を拡大してもっと下げるべきだ、環境庁としてどんどん厚生省に要望していただきたい、私はこう思いますので、お願いいたします。  それでは、時間が参りましたので、最後に、長官に決意をお聞かせいただきたいと思います。  いずれにいたしましても、環境が汚染されたものをもとに戻すことは大変な時間と金がかかるわけであります。環境庁は各官庁の調整機関ではないわけでありますので、環境保全に対しましてはもっと積極的に、また自信を持って行政を進めていただきたい。この湖沼法が成立して、そして結果として本当に湖沼浄化され、美しい湖が戻るようにしなかったならば何にもならないわけですよ。地方自治体に保全計画は任せます、各官庁のいろいろな事業等にお願いする以外にないのですという形の環境庁のいわゆる逃げでは湖沼浄化はできません。そういった面で長官の強い決意を私はお伺いしたいと思いますが、どうでしょうか。
  81. 上田稔

    上田国務大臣 湖沼法を成立させていただきましたならば、湖沼は一日も早く浄化をしていかなければならない。人間の特に飲料水にもなっておりますし、農業用水にもなっておりますし、また、その他お魚の問題もございますし、これは早く浄化された、いい水にしていかなければなりません。環境庁はこれに全力を挙げてやらせていただきます。
  82. 春田重昭

    ○春田委員 終わります。
  83. 竹内黎一

    竹内委員長 次に、中井洽君。
  84. 中井洽

    ○中井委員 先週に引き続いて残余の質問をさせていただきますが、その前に、今各党の御質疑もありましたし、またマスコミ等でも大変騒がれております猛毒のダイオキシンを含む2・4・5T除草剤の処分の問題について幾つかの質問をいたします。  林野庁に最初にお尋ねしますが、調査の方は全国的に大体終わったと考えていいわけですか。また、その中で通達と違った形での、過般愛媛で見られたような処分が行われておるということが幾つぐらいの箇所で見つかったか、そういったことを御報告いただきます。
  85. 小澤普照

    ○小澤説明員 お答えいたします。  私どもの方の調査が既に終わったかという御質問でございますけれども、私どもの方といたしましては全国各地に所在しております現地機関を督励いたしまして、実態の調査を現在まだ続行中でございます。  なお、通達違反という御質問があったわけでございますけれども、その辺の処理の方法、内容について現在調査しているところでございまして、四国におきます現に報道されております宇和島営林署管内の問題、こういうのも通達違反であるかないかということもあるわけでございますけれども、このようなものを除きまして、他の各営林局におきます処理方法につきましては現在時点ではおおむね通達に適切に従っているというようにも考えておりますけれども、さらに、そういうものの詳細な内容につきまして現在確定を急いでいるところでございます。
  86. 中井洽

    ○中井委員 いつまでに日本じゅうの調査が終わるのか、これについてお答えをいただきます。  それから、大体どのくらいの量が昭和四十六年十一月五日の林野庁長官の各営林局長あての通達によって処理をされたのか、これらも現在わかっている範囲でお答えをいただきます。
  87. 小澤普照

    ○小澤説明員 調査がいつまでに判明するかという点につきましては、私ども現在鋭意急いで調査を進めているところでございますけれども、私どもの現在の見方といたしましては来週中ぐらいには調査の結果を明らかにしなければならないかと考えております。ただし、その場合に完全に全体の内容が必ずしも明確にならない場合があるいはあるかもしれませんが、そのような場合にはそのようなものはさらに続行するというようなことを仮に考えるといたしましても、少なくとも判明した部分につきましては明らかにしてまいりたいと考えているところでございます。  なお、国有林におきます2・4・5T系の除草剤の使用実績でございますけれども昭和四十二年度から事業用に使用するようになりまして、使用の年度は四十二年度から四十五年度の四年間にわたっているわけであります。なお、この期間におきます除草剤使用量につきましては、その有効成分量に換算いたしまして七十四トン程度と推定をいたしております。
  88. 中井洽

    ○中井委員 この間も他党の議員さんから、どのくらいの量がこういう形で通達に基づいて処理をされたか、資料がない、量がわからない、こういうことだったのですが、現在でも変わりませんか。
  89. 小澤普照

    ○小澤説明員 処分量につきましては現在の調査と関連する問題でございまして、その確定を急いでいるところでございます。現時点におきまして正確な数字をまだ把握、確定しておりません。
  90. 中井洽

    ○中井委員 私どもはこの問題でなかなかわかりにくい、理解しがたい点が幾つかございます。それは、日本の官僚機構にお働きの皆さん方は世界でも一番優秀な人たちがやっておられる、その人たちが通達に基づいて、しかも他の省庁のいろいろな事項でいけば次官通達だとか長官通達というのは大変重い意味を持っておって、環境委員会でも水俣病のことに関してたびたび取り上げられるけれども、次官通達などというのは揺るがないものである、こういう格好になっておる。そういう形で出された通達に基づいて処理されたものが、どこにしまったかわからない、幾らぐらいしまったかわからない、こういうことが日本の官僚機構であるのか、こう思うわけです。  そうすると、林野庁は何か隠しているのと違うのか、こういう悪い悪いイメージになっていくわけであります。承ると、四年間薬を七十数トンお使いになっておった。すると、これは厚生省の発売禁止だとか使用禁止じゃなしに、林野庁が自主的にダイオキシンを含んでおるということで使用中止にされた、こういうことからとんとんときている中で十数年たってぽこっと出てきて、それを隠そうとすればするほど疑惑を投げかけて、あるいは地域住民に大変な不安を与えていると思うのです。  何かそういう資料がぽこっと欠落するようなことがあったのですか、それとも本当にわからないのですか。大変失礼な聞き方でありますけれども、もう一度お答えをいただきたい。
  91. 小澤普照

    ○小澤説明員 先生のおっしゃいますように、当時の情勢といたしましては、この除草剤、疑問を持たれたわけでございます。要するに、毒性の疑いありということで使用を中止すべきではないかという意見が非常に強かったということで、昭和四十六年四月にとりあえず中止指令を出しました。そして、これはまさに私どもの独自の判断でございまして、その時点において農薬登録取り消し等の処置があったわけではございませんで、まさに一方においてはそういう農薬登録ということがありながら、私どもとしてはまず使用を中止するという事態でございました。  その後、それに引き続きましてそれを厳重に保管しなければならないということになりまして、まず保管通達を指令いたしまして、そして、その後の十一月に至る期間においてその適正な処置をしなければならないということであったわけでございますけれども、この辺につきましては関係省庁とも打ち合わせをいたしまして適正な処理に努めるということでございましたが、いずれにいたしましても、突然の中止というようなこともありまして、各現地機関はそのころその処置が非常に大変であったろうと私ども考えておるわけでございます。ただし、その後の処置経過等につきましては、これは官庁でもございますから適当にということでは決してございませんで、その処置につきましては文書等のやりとりもあり、どこにどう処置したかということは当時はそれぞれ報告もいたしたところでございますけれども、私ども今回その辺の資料につきましていろいろ究明しましたところ、当時の書類というのは保存期間が五カ年ということでその後にすべて廃棄されているということも判明したわけでございますが、そういうことで書類等が手元にないということで今回再調査せざるを得なくなったわけでございまして、決して私どもが当時の事実等を——それが現実に不明確であるという実態から現在調査を進めているところでございます。
  92. 中井洽

    ○中井委員 今御答弁にありました関係省庁と相談をしてこういう処分をしたのだということはどの官庁を具体的にお指しになるのか、お答えをいただきたい。  それと同時に、私の手元に昭和四十六年四月十七日に農林省の農政局長が出された文書がございまして、これは「有機塩素系殺虫剤等の処分について」という文書でございます。そのエの項に、「やむをえず砂質土壌の場所に埋没する場合は石油かん等に密閉するか厚でのビニール袋につめ、袋の口をよくおりまげて埋没すること。」こういう文書があります。林野庁長官が出されました通達が四月十九日ということでございます。それには、厳重保管ということが書いてあるわけでございますね。そして、土壌やらコンクリートにまぜてというものが半年後の十一月に出されておる。  今のお話を聞きますと、使用中止にして、そして処理方法について各営林局がこの有機塩素系の殺虫剤の処理の中の項を見て地元の役所等と相談をしながらああいう処分でいいんだということで埋めちゃった、その後長官通達が出たけれども、もういいじゃないかという形でほったらかしたというのが真相のように私は推察をするのであります。大体そういうふうに考えていいものかどうか。あるいは、そういうことであるならば、そういう形で処理をした営林局が幾つかあるのか。もう十何年前のことでありますから、罰するとかということでなしに、逆にどういう処理をしたかを早く明らかにして、そして影響があるかないかを調べる方が大事なんですから、そういったことを急がれるべきだと私は思うのですが、いかがですか。
  93. 小澤普照

    ○小澤説明員 第一点の関係機関との打合わせ等でございますけれども、これは明確な記録が残っているわけではございませんで、当時の担当者からの聞き取り等でということでございますが、厚生省の業務関係の部局、それから農林水産省におきましては、当時は農政局の植物防疫関係、それから各試験研究機関で農薬等を扱っているところがございますから、そういう試験研究機関、そういうところに種々打ち合わせを行っているわけでございます。  それから、第二点目の林野庁長官の十一月の処理通達が出る以前に処理をした問題につきましては、そのときに処理通達がなかったということ、その前に、なぜ急いだかという問題がございますけれども、これも聞き取り等によりますと、四月に中止指令を出しまして保管を命じたわけでございますけれども、保管中に容器が腐食して薬剤が流れ出すんじゃないかというようなこととか、盗難のおそれがないかとか、当時いろいろなことが論議されたようでございます。そのようなことから処理を急ぐという事態が一部において発生したと見られるわけでございますけれども、その場合に、先ほど先生がおっしゃいました四月に出ております一般の他の農薬の処理の通達もあるわけでございますが、そこで当時そういう他の農薬の処理の手法というものを参考にするということ、それから今回の四国の例について調べてみますと、当然関係機関とも相談をし、地域の保健所の技術的な指導も受け、その処置をしたというように推定いたしております。  それからなお、三点目でございますけれども、いずれにいたしましても、私ども地域の不安を引き起こすというようなことにつきましては、これは大変重要と考えておりますので、そのようなことのないように必要な箇所につきまして種々検査を行うなど、その点につきましては、現在関係の機関とも御連絡を密にとりながら今後適切な対応をいたしてまいりたい、かように考えているわけでございます。
  94. 中井洽

    ○中井委員 先ほども申しましたように、地域住民の不安を一刻も早く解消するというのが先決ですから、だれがやったとか、どうだったとか、労働組合の対決だとか何だとか、そんなことは抜きにして、できる限り早く調査をされて、そして住民の健康に対する影響等も早く調査を終えて安心をさせていただきますように繰り返し要望いたしておきます。  それでは、湖沼法の残りの問題に簡単に触れさせていただきます。  法案の中に地域の指定という問題がございますが、この地域の指定をどのような範囲でされようとお考えになっておるのか。特に河川の範囲ということについてるる御質疑もあったように思いますが、確認の意味でお答えをいただきます。
  95. 佐竹五六

    佐竹政府委員 法律の三条二項によりますと、「指定湖沼水質汚濁関係があると認められる地域」というふうに規定されております。私どもは、この関係のある地域というのは原則的にいわゆる集水域、こういうふうに考えているわけでございます。
  96. 中井洽

    ○中井委員 河川管理者と相談をする、こういうことが何カ所かに出てくるわけでございます。この地域指定をする場合に、当然建設省あるいは都道府県、こういった河川管理者との相談が行われる、このように理解してよろしいですか。
  97. 佐竹五六

    佐竹政府委員 湖沼法の運用全般につきましては、指定湖沼そのものが河川でやっている場合もございますので、よく御相談いたしますが、この集水区域の指定につきましては、法律上は特に協議せよということは要件とはなっておりません。
  98. 中井洽

    ○中井委員 そうしますと、この集水区域が指定をされて計画の中で規制値が当てはめられていく。過般の質問とダブるわけでありますが、これらのそれぞれの集水地域は、例えば東京湾、瀬戸内海、伊勢湾に注ぐような流水区域であれば既にもういろいろな意味での規制値があるわけです。この湖沼法でとられる規制あるいは規制値というのは、琵琶湖の問題、霞ヶ浦の問題にしても大変緩やかな規制値が考えられているような話を私どもは承っている。そうしますと、琵琶湖においても霞ヶ浦においてもあるいは河川においても、この法案に対する地方自法体の実効的なもう既に行われておる上乗せというものが存在する格好になると思うのです。もう先に対策がどんどん行われておる、後からあえてこの委員会でもつくれつくれということで私ども質問する、環境庁も必死になって御努力いただく、その法案ができ上がってみたら規制値的には随分少ないものになる、こういうことではいささかという感じがありますが、いかがですか。
  99. 佐竹五六

    佐竹政府委員 問題は二つあるかと思いまして、窒素、燐の規制につきましては、これは湖沼対策として非常に重要でございまして、これにつきましては、ただいま御指摘ございましたように、既存の条例でやっている規制値に比べまして全国規制値というのはやや緩やかになるわけでございまして、これは上乗せということになりますが、この湖沼法に基づく規制負荷量規制、つまり濃度掛ける水量ということで、一日当たり何キログラムまで排出できるかといういわば総量規制的な意味での規制をかけるわけでございます。このような規制の仕方については現在どこの都道府県でもやっていないわけでございまして、ただ問題は、そのような規制は新増設施設に限って規制される、この点が問題があるんではないかという御指摘もあろうかと思いますが、一応そのような仕組みになっておりますので、一概に県の行っている規制の後追いをするというようなことにはならないと私ども考えております。
  100. 中井洽

    ○中井委員 そうすると、過般お尋ねをいたしました窒素、燐の当てはめの問題がありますけれども、あれが決まりますと水濁法の中へ盛り込まれる、こういうことでありますが、この流域にも窒素、燐の規制値というものを当てはめていく、そういうふうに考えていいですか。
  101. 佐竹五六

    佐竹政府委員 窒素、燐の規制は、湖沼及びその集水域について窒素、燐の規制をやるということになりますので、まさに先生のおっしゃられたとおりでございます。
  102. 中井洽

    ○中井委員 通産省にお尋ねをいたします。  この法案が前回廃案になりまして、今回新しく前回と同じ形で再提出をされた中で、私どもは即刻国会の冒頭から出されるものだと考えておりましたところ、随分遅くなって提出をされました。その間通産省と環境庁とでいろいろと調整が行われたと聞いております。過般の委員会で質問をいたしましたところ、環境庁の方から窒素、燐の問題である、そして環境庁と通産省とで、中公審答申を待ってその数値を水濁法の中へ湖沼規制値として当てはめていくんだ、こういう了解に達した、そのために時間がかかった、こういうふうに御答弁をいただいたわけでありますが、通産省、間違いありませんか。
  103. 廣瀬定康

    ○廣瀬説明員 御承知のとおり、湖沼水質保全につきましては、有機汚濁あるいは富栄養化の問題が非常に相互に相まって湖沼汚濁を形成するものでございまして、法案検討の過程で窒素、燐を含めました富栄養化問題につきましても議論を行いましたことは事実でございます。
  104. 中井洽

    ○中井委員 環境庁に承りますが、琵琶湖の総合計画の中で水源としてお使いになっている大阪や京都からお金をいただく、こういう形で実施されているわけでございます。私どもの郷里でも、実は大阪湾へ流れる淀川の最上流になっております。ある地域で渓谷をぶち抜けばほとんど水がつかなくなるのですけれども、それをやりますと淀川水系の堤防に大変な迷惑をかけるので我慢をする、そのかわりその我慢賃としてというような形のいろいろな工事、対策がとられているわけであります。  湖沼の場合には、それぞれ湖沼によって汚濁原因というものは別でありましょうけれども、流域全体を指定する場合には当然県も違えば行政区間も違ってこようか、こう考えるわけであります。そして、この計画のもとにいろんな事業をやろうと思えば大変なお金がかかっていくのはるる議論のあったところであります。そういうときに、きちっと規制を何年後からしていけばいいということであるならばまあそういう金銭的な負担ということは考えられないでしょうけれども、御答弁のありましたように、新設の工場だけだ、あるいは規模はどうだとかいろいろあるわけであります。そういった意味で、集水域全体から湖沼をきれいにするためのいろいろな負担、こういったものをお考えになる、こういう発想はありませんか。例えば中公審では監視をする、あるいは水質汚濁について見る、こういうことについての負担を考えるべきだとかいろいろな意味で負担について提言をしているわけであります。しかし、残念なことに、この法案の中には環境庁の今置かれておる状況もあって金銭面についてはなかなか盛り込めない。発想的には、私の言ったような形での発想というものがあり得るのかどうか、環境庁のお考えをお尋ねいたします。
  105. 佐竹五六

    佐竹政府委員 湖沼富栄養化防止のために窒素、燐が除去される、その結果下流の上水道の浄化経費がかなり節約されるわけで、そういうメリットがあることは確かでございます。そういうことを前提にいたしまして、受益県と費用負担県との間でお話し合いがなされ、妥当な負担額をお決めいただくということは湖沼対策の観点から見ても好ましいことではないか、かように考えているわけでございまして、現に、他県に非常に大きな流域を持っておられます相模川とか多摩川につきましては関係都府県の間でそのような協議が行われておるというふうに承知しておりまして、私ども湖沼水質浄化の観点から大変結構なことではないかと考えております。
  106. 中井洽

    ○中井委員 通産省にお尋ねいたしますが、通産省の工業用水課の方でアクアルネッサンスというのですか、大変名前の大きな計画に取り組まれて、下水あるいは排水処理に画期的な方法で取り組もうとされておる、こういうふうに聞いておりますが、この計画が今どういう状態になっておるか、どういう段階にあるか、御説明をいただきます。
  107. 糟谷晃

    ○糟谷説明員 通産省の工業用水課長でございます。  ただいま先生御質問のございましたアクアルネッサンス計画という計画でございますが、現在下水あるいは排水処理する方法といたしましては、いわゆる活性汚泥法というものを中心として処理が確立しているわけでございますけれども、最近いろいろな分野で新しい技術が芽生えておりまして、これは水処理の分野でも例外ではございません。その中で特に私ども注目しておりますのがバイオテクノロジー、いわゆる遺伝子工学、微生物工学、それからもう一つは膜分離技術、こういうような新しい技術があるわけでございまして、これを組み合わせることによって新しい総合的な水処理システムができるのではないか、こういうふうに考えておるわけでございます。  私ども計画といたしましては、この新しい組み合わせによりまして処理水水質を向上させることが可能でございますので、環境負荷を軽減させる、あるいは水の再利用といったものにも使えるのではないか、なおかつ、この新しいプロジェクトは非常にコンパクトで省エネルギー型だというメリットもございますので、この開発を進めているところでございます。ただいま先生名前についてのお話もございましたけれども、アクアというのは水でございますし、ルネッサンスは復興ということで、私ども水の総合的な再生利用という期待を込めてこういう名前をつけているわけでございます。  現在の私どもの準備状況でございますけれども、実は五十九年度から工業技術院傘下の試験研究所を動員いたしまして基礎的な研究開発に着手しておりますが、こういうシステムの開発というのは非常にお金と時間がかかるものでございますので、私どもでき得れば、通産省に大型プロジェクト開発制度という制度がございます。ここに移しますと現在以上に資金の投入が可能になるわけでございますので、五十九年度は今のような形で行いまして、六十年度からでき得ればこの大プロ制度に移しまして本格的な開発に着手したい、こういうことで現在省内で検討中でございます。  いずれにいたしましても、これがうまくいくためには産業界あるいは学界、官界、そういうところの総力を挙げて取り組まなければならないと思っております。私ども、その覚悟でこれからも努力してまいりたい、こういうふうに考えております。
  108. 中井洽

    ○中井委員 最後に、大臣に申し上げてお答えを賜りたいと思いますが、二回にわたって質問をさせていただきました。また、ここ数年間の経過を知る一員としてこの湖沼法がいよいよ採決のところまで来たということについては大変感慨深いものがあります。しかし、私ども法案の賛否をめぐりましていろいろと議論をいたしました。先ほど春田先生のお言葉にもありましたけれども、ないよりましというと大変失礼でありますけれども、そういった気持ちも含めての賛成ということでございます。その点をこの委員会の質疑を通じて大臣は十分御認識をいただいたと思います。問題点がどこにあるかもよく御承知であろうかと思います。そういうことを踏まえて、この法案をつくったということだけではなしに、湖沼対策に全力を挙げてお取り組みをいただく、こういう御決意をお聞かせいただいて、質問を終わりたいと思います。
  109. 上田稔

    上田国務大臣 お答え申し上げます。  この法案、お通しをいただきましたならば、環境庁は、公害対策会議に各湖沼計画をかけまして、そうして各省に十分に、大臣にも理解をいただいて、私どもはその推進、これはもう懸命にやらしていただきます。
  110. 中井洽

    ○中井委員 終わります。
  111. 中村茂

    中村(茂)委員 議事進行に関する動議を提出いたします。  先般来、内閣提出及び日本社会党・護憲共同提出湖沼関係法案の審議を進めてきたのでありますが、両案に対する質疑も事実上終局したと考えられます。  つきましては、両案の議事を進めるに当たり、内閣提出案に先立ち、日本社会党・護憲共同提出に係る湖沼環境保全特別措置法案を議題として、その審議を進められんことを望みます。
  112. 竹内黎一

    竹内委員長 中村茂君提出の動議を採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  113. 竹内黎一

    竹内委員長 起立少数。よって、本動議は否決いたしました。     —————————————
  114. 竹内黎一

    竹内委員長 内閣提出湖沼水質保全特別措置法案を議題といたします。  質疑の申し出がありませんので、本案の質疑は終局いたします。     —————————————
  115. 竹内黎一

    竹内委員長 委員長の手元に、藤田スミ君より本案に対する修正案が提出されております。  提出者より趣旨の説明を求めます。藤田君。     —————————————  湖沼水質保全特別措置法案に対する修正案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  116. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 私は、日本共産党・革新共同を代表して、湖沼水質保全特別措置法案に対する修正案の提案理由及びその内容の説明を行います。  湖沼は、言うまでもなく、我が国の豊かでおいしい水の供給源であるとともに、その美しい景観と自然はかけがえない国民の憩いの場となり、また、特産の水産資源を持つなど、その環境の保全は極めて重要な課題であります。  しかし、政府・自民党による高度経済成長政策以降、大企業本位の水費源政策、また、湖沼周辺の無計画な市街化の進行、それと相まった下水道整備のおくれなどによって湖沼環境は悪化の一途をたどっております。そして、湖沼における水質環境基準達成率は現在約四〇%にまで落ち、各地で水道が異臭を放ったり、特産の水産資源が危機に瀕するなどの事態が起き、湖沼とその周辺の美しい自然の破壊も進んでいます。  今回政府が提出した湖沼水質保全特別措置法案は、こうした湖沼環境の深刻な状況に比べるならば、水質の面では現行の水質汚濁防止法の一定の改善にはなるものの、中公審答申からは大幅に後退、極めて不十分なものとなっています。  その主な点は、第一に、本法案の内容が水質保全に限定され、開発や埋め立ての規制など環境保全の措置が欠落している点であり、その第二は、水質保全の面でも窒素、燐など富栄養化対策が明示されていない上、湖沼特定施設の設置も許可制ではなく届け出制になっているなど、その対策が不十分なことであり、そして最後に、水質を保全する上で極めて重要な下水道整備等に対する国の財政上の特別措置が全く見送られている点であります。  我が党の修正案は、これらの点を是正、湖沼水質周辺環境一体のものとして湖沼全体の環境を守ろうとするものであり、以下その主な内容を御説明いたします。  第一は、名称を湖沼水質保全特別措置法案から湖沼環境保全特別措置法案へと変更することであります。  第二は、湖沼環境保全基本方針及び湖沼環境保全基本計画環境の保全を最優先として策定することにしている点であります。  第三は、環境保全の具体的措置として、指定湖沼においては湖沼水辺環境保全地区を設け、開発の規制を行うこと及び埋め立て、干拓は原則的に禁止とし、これを厳しく規制するという点であります。  第四は、湖沼特定施設は届け出制ではなく許可制とすること及び窒素、燐の対策など富栄養化対策の実施を明示することなど、水質保全対策を強化するという点であります。  第五は、下水道整備など、地方公共団体が湖沼環境保全計画に基づいて実施する事業については、国が特別の財政的措置をとることを明示している点であります。  以上、慎重に御審議の上、速やかに可決されますようお願い申し上げます。
  117. 竹内黎一

    竹内委員長 以上で修正案の趣旨の説明は終わりました。     —————————————
  118. 竹内黎一

    竹内委員長 これより本案及び修正案を一括して討論に付するのでありますが、別に討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  湖沼水質保全特別措置法案及びこれに対する修正案について採決いたします。  まず、藤田スミ君提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  119. 竹内黎一

    竹内委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。  次に、原案について採決いたします。  原案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  120. 竹内黎一

    竹内委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     —————————————
  121. 竹内黎一

    竹内委員長 次に、ただいま議氏いたしました本案に対し、戸塚進也君、中村茂君、春田重昭君、中井洽君及び藤田スミ君より附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  まず、提出者から趣旨の説明を聴取いたします。戸塚進也君。
  122. 戸塚進也

    ○戸塚委員 私は、ただいま議決されました湖沼水質保全特別措置法案に対する附帯決議案につき、自由民主党・新自由国民連合、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党・国民連合及び日本共産党・革新共同を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     湖沼水質保全特別措置法案に対する附帯決議(案)   政府は、本法の施行に当たって、次の諸点につき適切な措置を講ずべきである。  一 湖沼水質保全基本方針の策定に当たっては、湖沼水質及びその周辺の自然的環境一体のものとして保全することの重要性に十分配慮すること。  二 指定湖沼の指定に当たっては、都道府県知事の意向を十分尊重し、適切に指定が行われるよう配慮すること。  三 湖沼水質保全計画の実施に当たっては、下水道し尿処理施設、農業集落排水施設等生活排水処理施設整備その他の湖沼水質の保全に資する事業が円滑に実施されるよう、指定地域に対する重点配分等財政的援助を強化すること。  四 湖沼富栄養化防止対策を推進するため、速やかに、リン、窒素環境基準のあてはめ及び排水基準の設定を行うこと。  五 湖沼の生態系の把握、淡水赤潮及びアオコ等の発生機構の究明等に関する調査研究を推進すること。  六 湖沼が主要な水道水源となっている実情にかんがみ、医学、生物学部門を含めた総合的な調査研究体制を確立すること。  七 湖沼周辺の自然環境保全を図るため、現行関係法令等諸制度を積極的に活用するとともに、必要に応じて施策の拡充強化に努めること。  八 湖沼周辺地域の都市計画及び埋立・干拓については、乱開発を防止し、自然環境及び景観の調和に留意した計画を策定し、実施すること。 以上でありますが、その趣旨につきましては案文中に尽くされておりますので、説明を省略させていただきます。  何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。  以上であります。(拍手)
  123. 竹内黎一

    竹内委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  124. 竹内黎一

    竹内委員長 起立総員。よって、本案については、戸塚進也君外四名提出の動議のごとく附帯決議を付することに決しました。  この際、上田環境庁長官より発言を求められておりますので、これを許します。上田環境庁長官
  125. 上田稔

    上田国務大臣 本法案の御審議をお願いをいたしまして以来、本委員会におかれましては、熱心な御討議をいただきまして、ただいま議決されましたことを深く感謝申し上げます。  審議中における委員各位の御高見につきましては、今後、その趣旨を生かしまして、ただいま御決議になりました附帯決議につきましてもその趣旨を尊重して善処してまいりたいと存じます。  ここに本法案の審議を終わるに当たりまして、委員長を初め委員各位の御指導、御協力に対しまして深く感謝の意を表する次第でございます。(拍手)     —————————————
  126. 竹内黎一

    竹内委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました本案に関する委員報告書の作成等につきましては、委員長に御一任を願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  127. 竹内黎一

    竹内委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  128. 竹内黎一

    竹内委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時二十二分散会      ————◇—————