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1984-11-09 第101回国会 衆議院 外務委員会 第20号 公式Web版

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  1. 会議録情報

    昭和五十九年十一月九日(金曜日)     午前十一時開議 出席委員   委員長 中島源太郎君    理事 石川 要三君 理事 野上  徹君    理事 浜田卓二郎君 理事 山下 元利君    理事 高沢 寅男君 理事 土井たか子君    理事 古川 雅司君 理事 河村  勝者       鍵田忠三郎君    北川 石松君       岡田 春夫君    河上 民雄君       小林  進君    玉城 栄一君       岡崎万寿秀君  出席国務大臣         外 務 大 臣 安倍晋太郎君  委員外出席者         外務政務次官  森山 眞弓君         外務省アジア局         長       後藤 利雄君         外務省北米局長 栗山 尚一君         外務省経済協力          局長      藤田 公郎君         外務省国際連合         局長      山田 中正君         外務委員会調査         室長      高橋 文雄君     ————————————— 委員の異動 九月十一日  辞任         補欠選任   岡崎万寿秀君     簑輪 幸代君 同日  辞任         補欠選任   簑輪 幸代君     岡崎万寿秀君 十一月一日  辞任         補欠選任   宮澤 喜一君     田中 六助君 同月二日  辞任         補欠選任   近藤 元次君     北川 石松君   与謝野 馨君     渡部 恒三君     ————————————— 八月八日  一、国際情勢に関する件 の閉会中審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国際情勢に関する件      ————◇—————
  2. 中島委員長(中島源太郎)

    中島委員長 これより会議を開きます。  この際、安倍外務大臣及び森山外務政務次官より発言の申し出がありますので、これを許します。外務大臣安倍晋太郎君。
  3. 安倍国務大臣(安倍晋太郎)

    安倍国務大臣 このたび、図らずも三たび外務大臣就任することになりましたので、外務委員会の冒頭に当たりまして、一言あいさつを申し上げます。  現在の国際情勢は、東西関係を初めとしまして、まことに厳しいものがあります。このような困難な国際情勢のもと、我が国の平和と繁栄を確保していくため外交に課された使命は重大であります。  近年、我が国国際的地位が向上するに伴い、我が国の積極的な役割に対する国際的な期待がますます高まっておりますが、こうした期待にこたえるため、私は、この二年間、外務大臣として、世界の平和と繁栄に積極的に貢献するいわゆる創造的外交を展開してまいりました。今後は、これまでの実績を踏まえさらに発展させるべく、一層の努力を傾けてまいりたいと存じます。  当面の外交課題について申し上げますと、まず、現在最も緊急を要する課題は、申すまでもなく世界平和の問題であります。抑止力均衡が平和を支えているという国際社会の現実は認めざるを得ませんが、このような認識に立ちつつ、私は、米ソ間の軍備管理軍縮交渉を初めとする東西間の対話交渉の促進のため努力を続けてまいる所存であります。また、イラン・イラク紛争などの地域紛争世界平和への大きな脅威となっており、このような地域紛争早期平和的解決のための努力を継続していきたいと考えております。  同時に、世界経済は依然諸困難を抱えておりますが、その健全な発展のため、自由貿易体制維持強化、累積債務問題への対応、政府開発援助拡充と効率的な援助実施などに、より一層の努力を払ってまいりたい考えてあります。とりわけ、現在緊急な課題となっているアフリカの飢餓問題やインドシナ及びアフガン等の難民問題に対しては、緊急の食糧援助を強化するとともに、中長期的に根本的な対策を講ずべく、各国と協力して努力を進めるべく特段の努力を払ってまいりたいと考えております。このため、私は、今月中旬にアフリカ地域を訪問する予定であります。  このような世界の平和と繁栄のための我が国外交努力を進めるに当たって、その基軸となるのは日米関係であります。両国関係は、広範な分野にわたり、首脳外相間の揺るぎない信頼関係に裏打ちされた成熟した関係にあります。米国においても、レーガン政権が第二期目を迎えるわけですが、この緊密な関係を一層強固なものとし、世界の平和と繁栄に向けての日米協力を推進してまいる所存で、あります。  また、我が国が位置するアジア太平洋地域は、世界で最も活力とダイナミズムに満ち一層大きな発展可能性を秘めております。我が国は、この地域の諸国との友好協力関係を増進して、域内のみならず世界発展と、この地域の自由で開放的な協力と連帯を目指して努力していく所存であります。  最後に、ただいま申し上げましたような外交を積極的、機動的に展開するためには、その足腰たる外交実施体制強化拡充が急務であります。この点につき、委員会皆様方の御理解と御支援をいただきたいと考えております。  この委員会に御出席皆様方は、外交に精通され、多年にわたってこれに真剣に取り組んでこられた方々でありますが、今後とも、皆様のよき御指導と御鞭撻を賜り、引き続き外務大臣の重責を無事果たせますよう、皆様の御激力をお願い申し上げまして、私の就任のごあいさつとさせていただきます。(拍手
  4. 中島委員長(中島源太郎)

  5. 森山説明員(森山眞弓)

    森山説明員 私、このたび外務政務次官就任いたしましたので、一言あいさつを申し上げます。  申し上げるまでもなく、現在の国際情勢は依然厳しいものがあり、その中にあって日本のかじ取りの任務に当たる外交使命は極めて重大でございます。また、相互依存関係がますます深まっている今日の国際社会におきましては、世界の平和と繁栄なくして我が国の平和と繁栄も確保できないことは申すまでもございません。ただいま大臣も述べられましたとおり、自由世界第二位の経済力を持つに至った我が国が、国際社会において、より積極的な役割を果たすことに対する期待はますます高まっております。私といたしましては、微力ではございますが、安倍大臣を補佐いたしまして、我が国世界の平和と繁栄のために貢献し、もって日本の平和と繁栄を確保していくため、最善を尽くしてまいりたいと考えております。  また、特に来年は「国際婦人の十年」の最終年に当たるわけでございますが、その面におきましても積極的に取り組んでまいりたいと考えております。  外交問題に精通しておられる外務委員会皆様方の御指導と御鞭撻により、任務を全うできますよう、諸先生方の御協力をお願い申し上げまして、私の就任のごあいさつとさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)      ————◇—————
  6. 中島委員長(中島源太郎)

    中島委員長 国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小林進君。
  7. 小林(進)委員(小林進)

    小林(進)委員 私は、まず、外務大臣の御再任をお祝い申し上げたいと存じます。次いでは、アメリカで、中曽根さんの親分と言ってはちょっと言い過ぎかもしれませんが、レーガン大統領、圧倒的な勝利を得て大変これも一応おめでたいということになりましょうが、ただしかし、日本国民は、レーガンざんが当選されたことによりまして、ますますアメリカ対ソ強硬態度が続けられるのではないか、いま一つは、それに基づくアメリカ軍拡競争、いろいろまた軍事力強硬路線レーガン政策は走るのではないか、こういうことに対して非常に心配をいたしておるのであります。  これをまた受けて、新聞紙上でありますが、ソーラ・アメリカ下院委員長は、当然レーガンの再選は日本に対して軍事力の増強を要求することになろう、こういうことも言われているのであります。  これに対して中曽根総理は、レーガン勝利経済政策対ソ外交政策勝利である、こういうふうに位置づけて、レーガンさんの対ソ外交姿勢勝利に結びついたのだということを言われているのでございますが、これを聞く国民の側からはますます恐怖を感ぜざるを得ないのであります。これに対して外務大臣は、一体レーガン対ソ外交政策に対してどうお考えになったか。  率直に申し上げますけれども、私は、安倍さんが再任されたことを喜んだということは、中曽根外交安倍外交の違いを我々の前に示してもらいたいという、その期待を含めて申し上げているのでございますから、その点をひとつ御答弁願いたい。
  8. 安倍国務大臣(安倍晋太郎)

    安倍国務大臣 レーガン大統領が第二期目の勝利を得たわけでありますが、これにはもちろんいろいろ原因があると思います。レーガンさんの個人的な魅力というものもあるでしょうし、あるいは内外政策に対する国民の支持というのもあるんじゃないかと思いますが、全体的に見まして圧倒的な勝利で、これによってレーガン政権自信を持ってこれからの政策を進めていく、こういうふうに思います。  そういう中で我々が期待をしておりますし、また恐らくレーガン大統領もこれから力を入れ取り組んでいくと思われる最大の課題は、何といいましても対ソ外交ではないかと思います。残念ながら、第一期レーガン政権の時代は対ソ関係が大変ぎくしゃくして、そしてINF交渉だとかSTARTの交渉だとか全部中断をするというふうな事態で、そういう中で、いわば米ソ軍拡が進むということで世界的に大変憂慮の声が高まっておったわけでございます。しかし、第二期に入って、そろそろ米ソ間でも、さきにグロムイコ外相レーガン訪問にも見られるように、対話といいますか、米ソ間の関係の是正、改善を図っていかなければならぬという空気が出ておるわけでございますので、私は、第二期の当選を契機としましてレーガン大統領も積極的な対ソ外交に乗り出すもの、こういうふうに考えておりますし、これを強く期待いたしております。特に、核軍縮交渉が一日も早く再開されることを期待いたしておるわけです。
  9. 小林(進)委員(小林進)

    小林(進)委員 どうもあなたはレーガンさんばかりに期待していられるようでありまするけれども、我々国民側から見ますると、日本歴代外交はいずれも右顧左べんなんだな。アメリカの時の大統領の方だけ眺めていたり、あるいはこっちの方を見ると、どうも韓国政府の朴さんの顔を見たり全斗煥さんの顔を見たり、一体どこに日本外交の主体性があるのかということを常に私どもは疑って見ている。今もあなたはレーガンさん、レーガンさんとおっしゃるけれども、レーガンさんばかり期待している御答弁。そんなレーガン期待する答弁を私はあなたに求めているのではない。安倍外交の哲学といわゆる信念がどこにあるかということを私はお聞きしているのであります。  繰り返して申し上げまするけれども、あなたの二年間の外交実績とおっしゃったが、あなたの外交実績を私はそれほど高く評価しているわけではないのだ。ただその中で、今年の六月あなたは、ジュネーブのあの軍縮会議の中で演説をせられ、終わった後で新聞会見をおやりになった。僕は、あれは非常に高く評価しているのです。今や世界危機を招来しているのは米ソ大国にあるのだ、この超大国人類に対する特別の責任があるのだから、その責任を感じて率先して軍縮、平和のために進むべきである、これはあなたにしては実にいい話だ。それからなお、その後の新聞記者との談話の中にあらわれた、まさに世界の平和、軍縮あるいは戦争危機は、米ソ大国政治指導者手のひらに握られているじゃないか、あの人たち手のひらにあるのだ、あの政治指導者責任を持って問題の処理に当たらなければならぬということを言われた。これは安倍さんにしては立派だ。私はそれを高く評価している。ただしかし、法華の太鼓じゃないけれども、音だけ立てたのでは政治にならないのです。もし言われたならば、それを事実の面において具体的に進めてもらわなければならない。  限られた時間ですからしゃべっている暇がないので、本当に私は残念でしようがないのでありまするけれども、昔はよかった。外務委員会なんというものは一日かかってやったものです。時間の制限がなかった。立法府でだんだん言論の圧迫が出てきて、私なんか三十年も政治家をやっているのにたった四十五分だ。時間が来たらやめろというのだ。こんな審議の仕方なんてあるものじゃないけれども、しゃべっていると時間がたちますからやめますが、ともかくあなたは、この問題を具体的にどう進めるかということを私は知りたいわけです。  同時にあわせて、あなたは、日本外交一つ西側に属すると同時に、アジア一員なんだ、アジアのいわゆる指導国とはおっしゃらぬけれども、アジア一員としてアジア外交を進めたい。この前半は別だ。前半西側なんというのは中曽根君に任せておけばよろしいよ。あれは西側強化論者である。西側だけの力を強めて、そしてソ連にいわゆる圧力を加えて、力で屈服させた上で米ソ話し合いに入ろうというのが中曽根基本的な物の考え方だ。こんなことは国民は支持しておりませんよ。そこへくると、あなたのニュアンスは少し違うのじゃないかという期待を兼ねて今私は質問している。  アジア国々の中で、西側の陣営に属して西側を強化しなければならぬという国は一体どこにありますか。お隣の韓国さえも、八八年のオリンピックもありましょうけれども、いずれの国とも仲よくしていく。西側一辺倒であるということは、全斗煥大統領も決して言っておりません。アジアには、西側に属して西側の団結を強化するという国がどこにありますか。あなたが本当にアジア外交に中心を置かれるというならば、そこに中曽根首相安倍外交との違いがきちっと出てこなくてはいかぬ、私はそれを要望いたしておきます。  そこで、駆け足一つ一つ言いますけれども、レーガンさんに期待をしないで、世界の平和と軍縮米ソ両国指導者の腕にあるというならば、早くこの問題解決のために話を進めたらどうだ。あなたもそれをおやりになったらどうですか。おやりになりませんか。全斗煥さんにそれを忠告したらどうですか。期待なんかしないであなたが指導力を握ればいいのです。  もっと言いましょうか。あなたはことし軍縮会議に行かれて、ニューヨークグロムイコとお会いになった。会われぬよりはいいです。それから中曽根さんはインドヘ行かれて、いわば人の葬式に便乗してソ連首相とお会いになった。弔間外交弔い外交でしょう。これもやってむだではなかったと思いますが、しかしそんな人の場所を借りなくたって、本当にソ連に対して平和のために闘ってくれという言い分があるならば、一番難しいのがソ連外交なら何で飛んでいかないのです。あなた方は口を開くと、グロムイコが来る番だ、来る番だ。我々の方では全く子供のままごと遊びみたいなもので、こっちが行ったんだから今度はあなたがいらっしゃい外交は呼び込みじゃありませんよ。この問題が本当に人類の平和に通じ、アジアの平和に通じ、日本の平和に通ずるというならば、飛んでいったらいいじゃないですか。あなたがもしアメリカ外交まねをするとなるならば、ニクソンさんのまねをしなさい、フォードさんのまねをしなさい、キッシンジャーまねをしなさい。四十七年、米ソの問題が重大なときには、ブレジネフさん、あなたいらっしゃいなんて言わないで、ちゃんとニクソンさんはモスクワまで飛んでいって米ソ外交を続けている。その二年後の四十九年には、やはりフォードさんがウラジオストクまで飛んでいって、そしてソ連との首脳外交をやっている。  あなた方は、ニクソンさんに頭の上の中国外交をやられて、びっくりして飛び上がったという恥ずかしむべき日本外交の汚点もあるけれども、あのときにはキッシンジャーさんは二回も北京へ飛んでいって、そして米中の国交回復のために死力を尽くして活動しているのです。これが外交ですよ。外交は呼び屋じゃありません。いらっしゃいいらっしゃいじゃだめです。あなたが飛んでいけばいいのです。中曽根さんも飛んでいけばいいのです。  そして、モスクワであろうとウラジオストクであろうとレニングラードであろうと、言わんとすることの誠実を尽くして会談をするのが、日本国民を代表するあるいは人類の平和を祈念する外交姿勢ではないか。経済大国になった日本でありまするから何も遠慮は要りません。ひとつ、自信を持っておやりになったらどうですか。これが再出発の安倍外交に対する私の注文です。いかがですか。
  10. 安倍国務大臣(安倍晋太郎)

    安倍国務大臣 日本外交継続性を持っておりますし、そういう中での基本は私が先ほどから申し上げますような平和外交でございます。その平和外交の根幹としまして、私たちは常に言っておりますが、例えば日米関係の安定的な発展である、あるいは自由主義国家群との協調である、さらにまた先ほどからお話のあるようなアジア一員としての原点に立った外交を展開していかなきゃならぬことも当然でありますし、あるいはまた今お話しのソ連を初めとする体制の違う国々との間においても、対話協調を進めるということも当然のことであります。  さらに、開発途上国に対する積極的な支援、そういうことも含めまして日本平和外交、そして特に最近の情勢の中にあっては、平和と軍縮を積極的に推進をし、日本の力の限りを尽くしていくということが根本でなければならぬ、そういう立場に立って私も今日まで努力をしてまいりましたし、今後とも努力を傾注する覚悟であります。  そういう中で、今ソ連との話が出ましたが、私たちソ連とは隣国同士でありますし、体制は違いますが、この隣国という関係は永久に変わらないわけでありますから、何とかこの冷たい関係を解消して、そして安定した友好関係を持っていきたいというのが日本国民の願いでもあるし、我々の念願でもあるわけです。しかしそれには、今、日ソ間に存在している領土問題を何とか解決をして、そして平和条約を結ぶということが日本確固不動基本の考えてあります。  そういう点に立って、我々は日ソ間の対話を進めておるわけでございますが、現在に至るまでなかなか大きな前進を見ないのは残念に思います。しかし、その他の点では、徐々にではありますけれども対話が進んでいることは喜ばしいことでございます。  そういう状況の中で、私にソ連に飛んで行け、日本外交は呼び屋じゃないんだ、こういうお話でありますけれども、そのお話のほどはよくわかります。しかし、日本ソ連との間の日ソ定期外相会談を我々はお互いに約束しておるわけで、やはりそれは相互主義の原則でありますから、日本外務大臣が行った明くる年にはソ連外務大臣がやってくるというのは、もう国際的な常識なんですね。ですから、日本が一方的に何回も行って向こう外務大臣が来ないというのは全く不公平で、相互主義という立場からも反するわけでありますし、また、国家の威信という立場からもそういうことを我々は認めるわけにはいかない。  今度は何が何でもグロムイコさんが来る番ですし、グロムイコさんもニューヨークで私に、今度は私が行く番だということを言っているのですから、私は当然グロムイコさんは来るであろうと思いますし、相互主義という立場からも来るのが当然であります。ひとつ東京でじっくり話をする、何とかテーブルに着いて領土問題を論議するとともに、その他の日ソ間の懸案を解決するためにお互い努力をしたいものだ、こういうふうに思います。
  11. 小林(進)委員(小林進)

    小林(進)委員 施政方針について聞くわけですが、時間がありませんからソ連関係はまた後で質問をします。  私は不幸にして聞かなかったのですが、あなたは平和憲法改正論者ですか、憲法擁護論者ですか。中曽根さんが憲法改正論者であることは天下周知であって、国民はみんなそれを恐れているのです。中曽根さんにいま少し力をかしたらこの人は憲法改正するぞ、これは大変なことになるということで国民は今恐れているのだが、安倍さんは一体どちらの方だか私は寡聞にして知らなかったので、ひとつその辺を聞かしていただきたいと思います。
  12. 安倍国務大臣(安倍晋太郎)

    安倍国務大臣 自民党の中で、いわゆる自主憲法といいますか、憲法問題について改正のための論議もいろいろとしておりますし、私も、政治家として党員としてその論議に参画もしてきたわけでありますが、今日、現在の憲法を厳格に守っていくというのは、政府、特に閣僚としては当然の責務であると考えております。
  13. 小林(進)委員(小林進)

    小林(進)委員 若干、どうも歯切れが悪いところがありますけれども、平和憲法を誠実に守っていくという点だけはこれを受けとめまして、ひとつ評価をいたしましょう。  それで次に申し上げまするけれども、今ソ連からもお客さんが来たり、ともかくいろいろ行き来はいたしておりますけれども、いわゆる均衡論というか、あなた先ほど抑止力均衡と言われたが、軍事力均衡というか、その名に籍口して西側の力を強めていき、その強い力でソ連というかソ連圏を圧迫しながら、そこで外交の糸口を開こうというのが中曽根外交基本だということは私も知っている。ここに非常に危険性を感じているわけです。  あなたは今、新しい外交方針をずっと羅列された。私は控えたけれども、世界平和と安全とか地域とか世界経済の云々とか緊急の課題だとかアフリカとかいろいろ言われたが、私はそれに賛成するのです。賛成だが、一つ賛成できないのがある。それは、二番目に言われた抑止力均衡ということです。これは非常に危ない。こんなものは、物理的に一体均衡がどうなのかだれもわからない。科学的にも判断できない。お互いに主観に立って、向こうが強い、向こうが強いと国民を扇動しながら、だから負けないようにこっちの軍事力を強めなければならないと言う。これが均衡論なんだな。これほど危険なものはない。ここに中曽根外交の危険ありと私は判断するのだが、あなたが本当に世界の平和と安全、二つの超大国の中の軍縮と平和を話し合いで進めていくと言うならば、この均衡論というものは捨てなくてはいけませんよ。この均衡論が一番災いをなしているのだが、この問題についてひとつあなたの所見を承っておきたい。
  14. 安倍国務大臣(安倍晋太郎)

    安倍国務大臣 これはいろいろと議論のあるところですが、私も、第二次大戦以後これまでの世界が、地域的な紛争はありますけれども、大きな戦争が始まらないという背景には、やはり米ソ大国の力の均衡というものが現実問題として存在をしておる、そこにいわゆる抑止力が働いて平和が曲がりなりにも保たれてきておる、こういうことは率直に認めざるを得ないと思うわけでございます。  しかし、そういうことに甘えておってはいけないというのは私もそういうふうに思うわけでありまして、いわば力の均衡を維持するために軍拡競争相互に行われるということは、将来において世界を非常に危険な状況に陥れるということであります。現実的には、残念ながらそうした均衡というのが平和を保ってきた大きな背景になっておるわけですが、同時にまた、軍縮に向かって、超大国だけでなくて、我々世界国々が積極的な努力を傾注していかなければならない。そうでなければ、世界は今後非常に危険な状況に陥るおそれがある、こういうふうに思っております。
  15. 小林(進)委員(小林進)

    小林(進)委員 私は申し上げますが、古今東西歴史をひもといても、相手の国を力で抑えて、それで平和を樹立したという歴史はございません。また、どんな弱い国でも、力で抑えられて参ったという国もありません。一番新しい例はベトナム戦争において見ることができるがごとく、また日本だって、第二次大戦に入った侵略戦争をやったけれども、その行程はやはり抑えられた。それからだんだん問題が横道に行ったのでありますから、この均衡論に籍口した、力で相手を抑えるという外交政策だけは安倍外交から払拭してもらいたい。ここに中曽根外交との違いを一つ出してもらえば、あなたも次は総理大臣です。そういうことですよ。  駆け足で申し上げますが、次に核兵器の不拡散に関する条約。五十一年六月にやっているけれども、これは我が党もこうしてみんな質問しているから繰り返しになるけれども、この中で、締約国は「核軍備競争の早期の停止及び核軍備の縮小に関する効果的な措置につき、並びに厳重かつ効果的な国際管理の下における全面的かつ完全な軍備縮小に関する条約について、誠実に交渉」することになっておる。この条約アメリカをきちっと縛っておる。アメリカもやりますと言うから、我々は国会の中でこの不拡散条約の議論をした。私は最後まで反対だったけれども、ここにいる河上君が当時我が党の外交部長であって、小林さん、そう言うなと言うから、まげてこんなことに賛成したんだが、何も行われていない。こんなに不誠実な条約を黙って見ていくなんということは、成立の当初から見て、日本外交には自主性なしと言わなければいけない。あなたの外交の第一の仕事として、こんな不拡散条約を廃棄するか、修正するか、不実行のアメリカに厳重な警告を発するか、それをひとつここに明確にしてもらいたいと思います。
  16. 安倍国務大臣(安倍晋太郎)

    安倍国務大臣 やはり核不拡散条約を誠実に守っていくということが大事であろうと思います。まさにそういう観点に立って、米ソに対して、日本としましても、国連総会あるいは軍縮委員会等を通じまして、積極的に軍縮を強く求めてきておりますし、今後ともそういう考えは変わらないわけであります。
  17. 小林(進)委員(小林進)

    小林(進)委員 まことにこれは言葉の遊戯であります。年々歳々、反対の方向に軍備拡張が行われているけれども、縮小の方向なんか一つもない。それを単なる言葉の遊戯で軍縮をするなんと言うのは、全く逃げ口上も甚だしい。外務大臣としての責任ある答弁と聞くわけにはまいりません。この辺は、きちっと事実の前に示していただくことをお願いいたします。  次に私は、朝鮮問題についてお尋ねいたします。  我が党の委員長も行ってこられて生々しい対話を続けておいでになった、それに基づいて私は御質問するのでありますけれども、朝鮮民主主義人民共和国——悪いけれども、これは共和国という言葉で改めて言わせてもらいますが、この共和国が南に対して南進をしてくるという脅威があると外務大臣は一体お考えになっておるかどうか、これをお聞きいたします。
  18. 安倍国務大臣(安倍晋太郎)

    安倍国務大臣 日本として、そうした南北の関係に対して緊張状態、さらにまた北が南を侵略する、あるいはまた南が北を攻撃するというふうな状況が起こることは、何としても避けなければならぬというふうに思っておりますし、私は、例えば中国の外務大臣等と会ったときもいろいろと意見を交換しておりますが、中国は、北が南に侵入する意図は全くないということをはっきり言っております。これば外務大臣だけでなく、中国の指導者が一貫して言っておるわけであります。また、この前全斗煥大統領日本にお見えになったときの総理大臣との会談におきましても、南は北を攻撃し、あるいは侵入する考えは毛頭持ってない、こういうことを何回も明言をいたしておるわけでございますから、確かに南北関係、南北間には緊張状態はあると思いますけれども、今の状況の中でこれが爆発するということはあり得ないだろうと思いますし、そういうことはあってはならないし、そのための最大の努力をやはり周辺国の我々としても続けていかなければならぬ、こういうふうに思っております。
  19. 小林(進)委員(小林進)

    小林(進)委員 外務大臣、どうもあなたの言葉はまだちょっと歯切れが悪いのですよ。あなたは先ほど外交継続性があるとおっしゃった。あるとおっしゃったが、同じ自民党の外務大臣の、亡くなられた木村さんは何と言われましたか。木村俊夫、あれは歴史に残る名外務大臣でございました。私は、個人的にも親交を深めてまいりました。彼は外務大臣という公の席にいながら、共和国は大韓民国——これは民国と言いましょう、民国を侵略する危険はない、断じてない、彼は明確に言明をいたしました。なおかつ、民国が朝鮮半島全部を支配している国家でない、これも事実である、これは木村外務大臣は実に明確に言われた。継続性があるなら、あなたは一体何でこのことを——今日、もう木村さんが亡くなられて歳月は夢のごとく過ぎていったけれども、北から南に対する侵略は実に一つもない。外務大臣が言われたとおりです、何にもない。しかも、南が半島全部を支配している、こういう架空の事実もない。もうお互いお互いの国の独立を認め合っている今日の状況。実に、木村外務大臣の言葉は切々として我々の胸を打つものがあるのでありますが、この外交の一貫性、継続性外務大臣は一体どうお考えになるのか、お聞きしておきます。
  20. 安倍国務大臣(安倍晋太郎)

    安倍国務大臣 木村大臣がどう言われたのか、私も今はっきりこれを承知しておりませんが、政府としましては一貫して、この南北間には確かに緊張状態があるということは現実問題として認識せざるを得ないということでございます。しかし、先ほど私が申し上げましたように、北と最も近い関係にある中国の指導者も北は南を攻撃する意図は全くないということを言っておることも、これは私、この耳で聞いておるわけでありますし、あるいはまた南の韓国大統領も、北を攻撃する意思は全く持ってないということもはっきり言っておるわけでございます。緊張状態はあることはあるし、あるいはまた韓国が北朝鮮を一つの脅威と考えておる、主観的にこう考えておるということは、韓国政府関係者等から我々は聞いておるわけでございます。しかし、日本としましては、そうした緊張状態が一日も早く緩和されることを願っておるということを私は申し上げておるわけであります。
  21. 小林(進)委員(小林進)

    小林(進)委員 木村外務大臣継続性の問題についてはあなたの答弁はなかったが、なかったということは私の言ったことを認めたことになりますが、それでよろしゅうございますね。私の言うことを認めますか。木村俊夫氏の言ったことが正しいということをお認めになるというならば、答弁は要りません。私はそういうふうに理解しましょう。よろしゅうございますか。
  22. 安倍国務大臣(安倍晋太郎)

    安倍国務大臣 この問題は、何回も議論されたように聞いておりますが、そういう中で政府としてのこの点についての統一見解を出しておるわけです。それを申し上げますと、北朝鮮の軍事力増強が我が国にとって脅威であるか否かという点については、北朝鮮の軍事力増強は半島の軍事バランスに影響を与えるものであり、ひいては直接的ではないとしても、我が国に影響を及ぼす可能性があるというのが政府の考え方である、こういうことで一貫して答弁をいたしておるわけでございます。  しかし、私が申し上げましたように、今日の状況の中で非常に国際的な多角的な関係が進んでおりまして、日本と中国との関係も非常に近くなっております。そういう中で私自身、北は何らの南進の意図というものは持ってないんだということを、中国の指導者と会うたびに何回も聞いておるわけでございまして、そういうふうな状況から見て、確かに緊張状況はあったとしても、我々周辺国あるいは友好国等がお互い努力をしていけばこの緊張状態は緩和できるし、また、南北対話というものが進んでいる以上は、その南北対話が進むことによってそうした緊張状態はだんだんと緩和していくであろうと思うし、これからそういう方向に持っていかなければならぬ、私はこういうふうに考えておるわけであります。
  23. 小林(進)委員(小林進)

    小林(進)委員 あなたの願望はわかりました。わかりましたが、私の聞いているのは、北が南に対して南進をしてくる危険が一体あるかないかというあなたの判断を聞いているのです。また、南が北に北進をしていく危険があるかないか。あなたは、いずれもそういうことがないということを聞いたということだけをおっしゃった。聞いたということであって、あなた自身の意見が一つも入っていない。私は、中国の胡耀邦総書記があなたに何を言ったかということを聞いているのじゃない。  あなた、総書記のことを言うなら、ついでに我が社会党の委員長のことも言ってください。石橋さんがわざわざ金日成氏と会っている。その報告は、あなたのところまで行って報告しているでしょう。補完外交ですと言って、あなたの外交のお手伝いをしているんだということまで、こんなに好意的に言っているにもかかわらず、石橋委員長のことを一言も言わないで、中国だ、胡耀邦だとはかり言っている。均衡論なら、均衡論にのっとった答弁をいま少ししてください。  そういうわけで、うちの石橋委員長も数回にわたって金日成主席から、南進の意向は一つもないし、やろうと思えばやるチャンスは前に何回もあったんだ、けれどもやらなかったし、現実に力もない、これほどに言われているのですからね。その話は、もう十年近く前から木村外務大臣が、南進の危険はありませんと公の席で言明している。すばらしい外務大臣でしたね。  僕はなぜそれを聞くかというと、この問題に関連して五月に我が党の土井副委員長中曽根さんに質問している。同じく南進問題に対する質問をしているんだが、それに対してこれは中曽根さんの答弁なんです。その中で、「北朝鮮が韓国を侵略することはないというようなことは私も聞いております。そして、それが必ず実現されるように熱望してやまないところであります。ただ、果たしてそのとおりいくかどうか、これは国際情勢の問題というものはなかなか予断を許しません。それを非常に熱望はし、期待はしておりまするけれども、将来の問題という問題につきましては注意深く言う必要がある、」「韓国の方の言い分を聞いてみますと、やはりビルマの爆弾事件というものが非常に大きなショックを与えておるわけです。」云々ということがあって、彼はそういうような問題もあっていろいろ言っているが、結局南進はないということを肯定はしていない、やはり南進の危険ありという答弁を我が土井先生の質問に答えている。  ここで、私はあなたに質問している。ここら辺で安倍外交中曽根外交の違いをきちっと打ち出してもらわなければいかぬ。将来総理を目指すならば、ここら辺にきちっと違いを出すところに安倍さんの価値がある。これは安倍外交の補完として、私は好意的にあなたに質問をしているのでありますから、ひとつ明確にお答えを願いたいのであります。
  24. 安倍国務大臣(安倍晋太郎)

    安倍国務大臣 先ほどから答弁しておるわけであります。今私が中国の指導者のことも言いましたが、確かに社会党の委員長が北朝鮮を訪問されたときに、北朝鮮の最高首脳から南進の意図は全くないということを明確に聞いたということは、私自身も委員長からお聞きをいたしておるわけでございますし、今の南北の状況、朝鮮半島の状況からすれば南北対話がいろいろな面で進んでおるわけでありますし、そういう状況から見まして、私は今南北が衝突する危険があるというふうには考えておりません。おりませんけれども、しかし今の南北間にはやはり対立というものもあるし、緊張というものはこれまでの歴史の中で続いてきておるわけですから、そうした緊張が爆発しないことを我々としても念願をし、そのための努力はしていかなければならぬ、こういうふうに思っておるわけであります。
  25. 小林(進)委員(小林進)

    小林(進)委員 やや答えが前進いたしまして結構でございます。  その具体的な方法としてあなたが一つ役割をしていられるのは、韓国と中国との折衝、交流についてはあなたも頼まれている。韓国から中国との橋渡しをひとつ頼むということは、中曽根さんが訪中したときに韓国からの意向も受けてそういう橋渡しの役割を演じていられて、これは効果があったかは別といたしても、自来中国と韓国との交流はあらゆる場面において行われている。スポーツあるいは経済なんかもだんだん幅広く行われておる。非常に私は結構だと思うのです。  北の方はどうですか。私どもの石橋委員長が行ったときに、共和国の方は、アメリカにも友好の手を差し伸べたいからよろしく、共和国の考え方もアメリカに伝えてくれ、石橋君はそういう依頼を受けてきたのだが、北の方に対してもあなたの方は、共産国の中国が韓国話し合いをしているように、今度は社会主義国家の共和国と日本政府あるいはアメリカとの話し合いが当然あるべきだし、それをまた北は要求しているのですから、ひとつこっちの方に手を差し伸べるということをお考えになったらどうですか。その点は我が党の石橋委員長も、いつでもお手伝いはいたします、あっせんはいたします、補完外交です、こういうふうに言っているのですから。そこからくれば、なおさら今の南進、北進の問題は非常に緩和をされ、やれ東だ西だという東西対立の関係もこういう形の中からほぐれていくと思うのでありまするが、おやりになる気はありませんか。中国へ韓国話し合いを橋渡しをされたような形で、北の方への橋渡しをお考えになる気はないかどうか。大事なことですよ。
  26. 安倍国務大臣(安倍晋太郎)

    安倍国務大臣 我々は、まず朝鮮半島の問題についての基本的な考え方は、北朝鮮と韓国がいわゆる南北対話を進めていく、これを進めるということであります。これを進めることによって南北間の緊張も緩和され、そして朝鮮半島の統一化ということも可能になってくるのだ、基本は南北の対話にある、こういうふうに思っておりますが、最近の状況から見ますとその対話も徐々に進んでおる、そしてこの十五日には経済問題についての会談も行われるということで大変これは喜ばしいことである、こういうふうに思っております。  日本と北朝鮮との関係は、これはこれまでの長い歴史の中で一定レベルの民間の交流というものは持っておりますし、今後とも維持していかなければならないと思っておりますが、しかし、国家間の関係を持つ、いわゆる外交的に北との関係を持つという考えは持っておらないということは申し上げておきます。
  27. 小林(進)委員(小林進)

    小林(進)委員 もう時間が来たそうでございますから、私は金大中氏の帰国問題だとか三者会談、二者会談の問題についても御意見をお聞きしたいと思いましたが、これは省略いたします。これはもうやめまして、問題は幾つもありますが、最後に一つソ連関係、これは五十九年十月十六日でありまするが、チェルネンコ書記長がワシントン・ポスト紙に対して、四つの条件を提示してその一つでもアメリカが応じてくれるならば——応じてくれるわけじゃない、一つ可能性があるならば、いつでも同じテーブルに着いて話し合いに応ずるという、私ども第三者から見ても実に無理のない素直な提案だ、何もアメリカが否定する理由はないじゃないか。  時間もありませんから駆け足で申し上げまするけれども、ともかく、一つは宇宙の軍事化を阻止するための交渉開始。交渉開始と同時に宇宙兵器の実験あるいは配備はともに中止する。それから、運搬手段、核弾頭を含む核兵器増強の相互凍結。三番目が、地下核実験の制限の交渉をやろうじゃないか。米ソ地下核実験制限条約の米国の批准。七四年、七六年に調印されたものをアメリカは批准してないのだから批准しなさい。四番目が、ソ連が一方的に誓約している核兵器の第一使用放棄だ。ソ連は核を第一に用いない。これに対してアメリカは、核の限定使用などという実に震え上がるような、人類滅亡に通じるようなことを言っているのだから、おれの方は先に使わないのだからあんたの方も先に使わないという約束をしてくれぬか。この四つの条件です。  これに対してアメリカの方は、一応はコメントしておりますよ。コメントをしているが、私はこれなど実際具体的な交渉の場にのせるべき価値あるものと思うのだが、日本の外務省は、何もこういうことに対して意見も述べてなければコメントも出してないのですね。私は、こういうことに対して日本の外務省が一体どんな姿勢を示すか、本当に祈るような気持ちで見たのでありまするが、何も出てこない。こういうところを見ても、アメリカがせきをすればこっちは風邪を引くという、実にアメリカの言い分だけを見ていられるというような個性のない外交が気に入らないのでありまするが、安倍さんいかがでございますか。もう時間が来ましたから私はやめますが、この問題に対してあなたはどうお考えになりますか。私ならばレーガンさんに言いますよ。これはもっともな提案だから、直ちにこれに応ずべきだ、そして人類に平和の曙光を与えるべきだと、私ならそう言いますよ、私が外務大臣なら。かわってみますか、あなたと私と。私は今でもそれはやりますよ。どうですか。
  28. 安倍国務大臣(安倍晋太郎)

    安倍国務大臣 米ソの核軍縮交渉、あるいは宇宙軍縮交渉も含めて、そうした軍縮交渉全体につきましては、アメリカも積極的にテーブルに着いていつでも話し合いをしようということを言っております。特に、レーガン政権が第二期勝利を迎えた後の記者会見においても、積極的な姿勢を示しておるわけですから、ソ連がいろいろ具体的な案は持っておるとしても、まずやはりアメリカとの間で、テーブルに着いてこの軍縮問題について話し合いをするということが私は大事じゃないかと思いますし、私たちも、全体的に見てそういう機運が近づいておるといいますか、そういう機運になっておるというふうに思っております。
  29. 小林(進)委員(小林進)

    小林(進)委員 ちょうど時間が参りましたので、私はこれでやめます。  きょうは、ともかく安倍外務大臣の初めてですから、あなたの施政方針を聞くつもりで御質問を申し上げましたが、米ソの超大国の間では片一方に余り偏らないで、それはアメリカが大事なことはわかっていますから、日本経済から見ても、すべてを見ても。けれども、調停役になって軍縮、平和をひとつ目標にして、あなたが堂々として第三者の道を多かれることを心から祈念をいたしまして、私の質問を終わります。
  30. 中島委員長(中島源太郎)

    中島委員長 次に、土井たか子君。
  31. 土井委員(土井たか子)

    ○土井委員 このたび、三たび外務大臣に御就任されました安倍外務大臣、そして有史以来、女性の外務政務次官としては初めてと思われる森山次官、お二方、これから大変な時期を迎えるわけでございますけれども、ひたすら御健闘を願ってやみません。  折しもアメリカの方では、大統領選挙でレーガン大統領の再選が決まりまして、世にロン・ヤス第二ラウンドなどと言われております。もちろん私たちも、対米関係が重要であるということは言うまでもなく承知をいたしておりまして、私たちもこれに対してどう対応するかということが非常に差し迫った問題であり、外交問題に対して、これなくして考えられないくらいに重要視はいたしておりますけれども、ひとつきょうはその対米関係ということも含めて、外交姿勢のあり方について、特にアジアというところに焦点を絞って大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思うのです。  さて、今から一カ月くらい前に、一九八四年版の外交青書が発表されました。八三年の外交青書を見ますと、西側一員としての外交というのが非常に強調されてまいりました。今回、私見ますと、いささかニュアンスが違ってきているのです。西側一員としての外交というのを事改めて強調している部分というのが姿を消しまして、民主主義諸国の一員というふうな表現にこれが改められてまいっております。また、いろいろその中身を読んでまいりますと、大分八三年版とニュアンスが違ってきたなと私自身は読み取っているわけであります。  先日、安倍外務大臣の「創造的外交をめざして」というこの本、千五百円でございますが、私、大枚千五百円出しましてこれを買い求めてまいりまして、拝読をいたしました。いろいろ中身についてもお聞かせいただきたいこともございますけれども、一言で言うと、安倍外務大臣は、福田総理時代の全方位外交というのをどのように考えていらっしゃいますか。いかがですか。
  32. 安倍国務大臣(安倍晋太郎)

    安倍国務大臣 私は、やはり日本平和外交基本としておるわけでありますし、そうした基本に立った世界との外交、そしてそれは全方位外交というのがその根本であってしかるべきだと思っております。  ただ、全方位外交といいましても等距離外交ということではなくて、日本は、あくまでもやはり世界相手の全方位外交というのは基本の精神として貫いてまいってきておると思うし、これからも貫いていかなければならぬ、これが平和外交の基礎でなければならぬ、こういうふうに思っております。
  33. 土井委員(土井たか子)

    ○土井委員 やはり大分変わってまいりましたですね。昨年、同様のことを聞きますと、もう真っ向から全方位外交に対しては否定的な御発言が答弁の中では出たのです。外務省のお役人というのは変わり身が非常に早いなあということを、私は今回の外交青書を読んでおりまして、やはり大物の外務大臣になるとお役人も全部変わってくるということを肌身で感ずる青書の中身でもございました。  外交青書を見ておりましてそういうことを私は痛感をしたのですが、外務大臣御自身は、この九月にニューヨークでの国連外交を終えたその後に記者会見の席で、アジア安定に対していかに日本としては貢献していくかということに力を込めたお話があったようであります。これは、新聞紙上で私たちは読む限りのことでございますから、じかに外務大臣からもそういうことについてお聞かせいただきたいと思うのです。  ところで、今度のアメリカ大統領選挙の中では、レーガン大統領は終始一貫、アジア重視外交を展開するということも力説をされてまいっておのまして、どうもこういう表現になるかどうかよくわかりませんけれども、新聞では「環太平洋共同体構想」というふうな表現が既にとられる向きが伝えられております。この中身については、もう外務大臣は先刻よくおわかりになっていらっしゃるはずでありますから、るるそれに対してここで講釈をする必要は何にもないと思いますけれども、少なくとも来年の比較的早い時期に日米首脳会談が開かれると言われております。その席では、恐らく日本に対してアメリカ側から、この環太平洋共同体構想なるものの中身に対して協力要請が出てくるに違いないという向きも言われているわけでありますが、アメリカ側の、特にレーガン大統領を中心にして考えられるこのアジアに対する環太平洋共同体構想なるもののアジア外交姿勢と、安倍外務大臣御自身がお持ちになっていらっしゃる、日本としてアジア外交いかにあるべきかということをお考えになっていらっしゃる中身と、同じなのですか違うのですか、その辺はどうなんですか。その辺をちょっとお聞かせいただけませんか。
  34. 安倍国務大臣(安倍晋太郎)

    安倍国務大臣 私は、そのレーガン政権あるいはレーガン大統領アジア環太平洋共同体構想ですか、そういうものはまだ何も聞いておりませんし、もちろんその内容も知りません。ただ、レーガン大統領アジアといいますか太平洋を非常に重視しておるということは、昨年の十一月のこの我が国会におけるレーガン大統領の演説にもはっきりあらわれておるわけですし、また日米間のいろいろの会議の中でも、こうした大統領の太平洋重視という考え方というものは出ております。しかし、それじゃ今後どういう方向で進めていくかという具体的内容については、私は何も聞いておらないわけです。  そうしてまた、日本も私も、例えばことしのASEAN拡大外相会議でも、太平洋の将来について日本の考え方を述べたわけでございますが、日本としましても、やはり太平洋がこれから二十一世紀に向かって世界の中で最も活性化が進む地域になるだろう、そうして、この太平洋地域の持っておるダイナミズムというものが、これから二十一世紀に向かって世界のいわば最も活発な地域を構成するだろう、こういうことを言っておるわけでありまして、これについてはアメリカも、あるいはアジアのASEAN諸国等も同じ認識を持っておるわけですが、しかしこれに対して、これからどういう形でこの太平洋の将来について国家間の協力を進めていくかとか、あるいは地域間の協力を進めていくかというふうな点についてはまだ全く協議もしていないし、話し合いをするという素地も出てないということでありまして、民間では環太平洋構想その他いろいろあるわけですが、国としては、そういう問題についてはまだはっきりした構想あるいはまた話し合い等もしていないというのが現状であります。
  35. 土井委員(土井たか子)

    ○土井委員 話し合いはこれからでしょう。恐らくは、来年できる限り早い時期の首脳会談の中で出てくるであろうという予想が一般であります。したがって、その場合に安倍外務大臣とされては、日本としてアジア外交いかにあるべきかということに対するお立場というものがしっかりあった上での話し合いでないと、話し合いも何もあったものじゃないですから、この節、安倍大臣アジア外交に対する基本姿勢というものを聞かせていただきたい。
  36. 安倍国務大臣(安倍晋太郎)

    安倍国務大臣 何としても日本自身がアジア一員でありますから、そういうやはりアジア一員としての連帯の中でアジア外交というものを進めていかなければなりませんし、今日も進めてきておる、こういうふうに思っておるわけでございます。  アジアといえば体制の違う国もあります。例えば中国との関係においても、我々は体制は違いますけれども、しかしアジア一員として将来にわたって世界の平和のための、あるいはアジアの安定のための協力関係はできておるわけでありますし、この協力関係をさらに進めていくということが極めて必要であるというふうに認識もしております。  あるいはまた、韓国との関係も、全斗煥大統領日本を訪問されまして、さらに一層安定したものになってきておる。そして、そうした日韓関係を不動のものにするとともに朝鮮半島自体の緊張緩和、あるいはまた平和的解決に向かっての努力が進むことを念願し、そのために努力もしていくということは当然のことでございますし、ASEANあるいはまたその他の南西アジア地域等に対して、日本が積極的な経済協力等を進めておることも御案内のとおりで、日本日本経済援助の七割をアジアに集中しておるわけでございますが、これはアジア一員として当然のことであると思いますし、この基本姿勢というものは今後とも続けてまいりたい、こういうふうに思っております。  とにかく、日本アジア一員としてアジアの中に溶け込み、アジアの中で本当に信頼されるような国にこれからなっていく、そういう外交をやはり進めていかなければならぬ、こういうふうに私は思っております。
  37. 土井委員(土井たか子)

    ○土井委員 何か、おっしゃっていることは教科書に書いたようなお話でありまして、殊さらここでわざわざ御答弁を求めるような中身でもなかったように今お伺いをしておるわけでありますが、そうすると、大臣御自身がアメリカにいらして、国連のあの九月の御出席の後の記者会見で力を込めておっしゃったことに対しては、余りこれを日ごろから心して考えていらっしゃることではなかったのじゃなかろうかなという気もしながら、今承っていたのです。  それはどういうことかといいますと、あの記者会見の席では、外務大臣は、アジアの安定ということに対して日本の果たす役割はいろいろあるけれども、軍事大国にならないという選択こそ大切であるということを心を込めておっしゃっているのです。今、私じっと耳を傾けて聞いておりましたけれども、その言葉は一言半句出てこない。経済援助が大事だの何だのということはただいま聞きましたけれども、その経済援助のあり方によったら、これは日本の軍事大国化の道を選択することに持っていく経済援助もあり得るのですよ。軍事大国にならぬ選択というのは、これは外務大臣、はっきりお考えになっていらっしゃるのでしょうね、いかがですか。
  38. 安倍国務大臣(安倍晋太郎)

    安倍国務大臣 これは申すまでもなく当然のことで、日本国民が選択した道だと思います。したがって、軍事大国にならないという日本国民の選んだ道を通してアジア協力していく、またそのことが大きくアジアの信頼をかち得、アジアヘの協力に大きな前進を果たす道につながっていくということでありまして、これは前提の最前提の問題として私は言っておるわけですから今申し上げなかったのですが、これは日本基本ですから……。
  39. 土井委員(土井たか子)

    ○土井委員 なるほど基本だと言われた。大前提でしょうね。大前提だと今言われたように私は承りますが、そうすると、私も国会が休会になりましてフィリピンの方に出かける機会を持ちました。かの地でいろいろな人に会い、いろいろな意見を聞くと、一致してみんなが不安を持ち、憂えている問題があります。これは、今から取り上げる経済援助もしかる問題でございますけれども、日本が軍事大国になるかならないか、ただいまは安心できない、だんだん軍事大国へという気配がある、そういうことを——人間というのは大変なもので、肌で感じ取るというのは、率直に申し上げてこれまた理屈以前の問題でございますけれども、直観というのは物をまともに見るという点からすると、非常に大事な物の見方だと私は思うのですが、それを手厳しく言われました。  政府国民に対していろいろ約束される中に、軍備にかける費用はGNP比一%以上にしないという約束があります。これは政府国民に約束されていることですね。しかし、これは国内向けの問題じゃなくて、アジア人たち一つじっと見ていることは、軍備にかける費用がGNP比の一%を超えない、この問題は日本が軍事大国化していくことに対する歯どめになっているという意味で見ているのです。外務大臣は、軍備費に対して一%を超えさせてはならないというこの問題、これはアジア安定に向けて日本努力をするあかしであるとお考えになっていらっしゃるかどうか、その点はきっぱりお答えをいただいておかないと、これは一つの具体的なあかしですからね。いかがですか。
  40. 安倍国務大臣(安倍晋太郎)

    安倍国務大臣 軍事費のGNPに占める割合を一%以内に抑えるということは、三木内閣のとき閣議で決まりまして、現内閣もこれを踏襲しておるわけでございます。閣僚としても、これを守るための努力を重ねておるわけで、こうした日本姿勢というのが、おっしゃるようにアジア国民をして日本が軍事大国にならない決意をしておるという一つの象徴といいますか、あかしであるというふうにも私は思いますし、こうした軍事大国にならないというこの道がまさに日本のバーゲニングパワーといいますか、むしろそういう形の力として日本平和外交を強く進める推進力になるということを、私はロサンゼルスの演説でも強調したわけでございます。その気持ちは今も変わりません。
  41. 土井委員(土井たか子)

    ○土井委員 南西アジア・太平洋について安定を促進させることのために、日本としては貢献をするということに大変力を入れて外務大臣はいつも主張されるわけであります。ことしの三月十二日の予算委員会でも、フィリピンに対しての経済援助のあり方が取り上げられて、安倍外務大臣に対する我が党議員からの質問があったのですが、その節「アキノ氏の暗殺が契機となって一挙に政治不安が噴出した、」ということに対しても安倍外務大臣はこれを是認され、そしてまた「ああしたテロ行為というのはいずれにしても排除されなければならない憎むべきことであろう、こういうふうに思いますし、そういう立場でこのテロ行為の真相が明らかにされることを我々は心から期待をしております。」という御答弁があり、引き続いて「日本のできる協力はしなければならない、こういうふうに思います。」つまり、テロ行為の真相究明に対して、日本としてできる限りの協力はしなければならないと思うという意思表明も、はっきり御答弁の中でしていらっしゃるのです。  さて、その後九月二十三日に、ベニグノ・アキノ元上院議員暗殺事件の真相を究明しているアグラバ委員会から二種類の報告書が出されました。この二種類の報告書はいずれも、アキノ氏暗殺はフィリピン共産党系新人民軍に操られたガルマンの犯行だというマルコス大統領側からの主張を退けております。これは、アグラバ委員長の報告と他のアグラバ委員長以外の四委員による報告とで中身は全然違いますけれども、この点においては一致している。軍部を恐れるな、民衆の声を恐れよという警告が、実は非常にフィリピンの中ではこの報告書の中に生かされているということを私自身は思いながら受けとめているわけでありますけれども、まず外務大臣、この報告書についてどういうふうに御認識をお持ちになったか、その辺を伺わせていただきます。
  42. 安倍国務大臣(安倍晋太郎)

    安倍国務大臣 この報告書が、委員長の見解とまた委員の見解とそれぞれ多少違ったこともあるわけですが、しかし、フィリピンにおいてもこうしたアグラバ委員会というような真相究明の委員会ができて、そして公正な真相の究明が熱心に行われておる、その結果がこの報告にあらわれておるというふうに私は判断をしたわけであります。
  43. 土井委員(土井たか子)

    ○土井委員 そうすると、この報告書に対しては評価をされるということでありますね。
  44. 安倍国務大臣(安倍晋太郎)

    安倍国務大臣 先ほど申し上げましたように、私は基本的には、フィリピンのああしたテロ事件というのがどういう形にしろ行われるということは、これは排除されなければならぬし、民主主義を守る我々の立場としては、そうしたテロ事件が起こった際においては、どういう状況において起こったとしても、真相が明らかにされるということが必要であるという姿勢をとっておるわけでございます。しかし、この委員会の報告につきまして、これが報告書としては相当な苦心を重ねられた、あらゆる調査を重ねられた結果の報告であろうと私は思いますが、フィリピンの司法当局にこの報告書に基づいていろいろと告訴等が行われておりますから、最終的には私はフィリピンの司法当局の判断によって問題が決するものである、こういうふうに思っておりますし、そういう点で日本政府としても、司法当局におけるこの結末が、裁判がどうなるかというものを見ておる、こういうことであります。
  45. 土井委員(土井たか子)

    ○土井委員 裁判の問題は裁判の問題として、私は報告書についてお尋ねをしているわけでありますから、問題のポイントをそらさないでひとつお答えをいただきたいと思うのです。  先ほど、アグラバ委員長と四委員による報告書というこの二様の報告書では多少違うとおっしゃいましたが、多少どころか大変違うのです。アグラバ委員長は、軍の最高幹部であるべール参謀総長の暗殺関与を認めていないのに対して、その委員長以外の全部の委員、つまり四委員は、ベール参謀総長が関与をしていたということをはっきり認めている点で大変大きな相違があるわけです。ベール参謀総長を初めとして、三人のフィリピンの将軍を含む軍人二十五人と民間人一人が暗殺の陰謀に加担して、そして起訴されるべきだということをその報告書の中で論じているのが、この四委員によるところの報告の中身であります。つまり、軍部の陰謀であるということをはっきりこれは結論づけている。しかも、その軍部の陰謀のみならず、マルコス大統領、マルコス独裁政権について、一体となって今まで存在してきた参謀総長の暗殺関与というのが明らかにされたということになるわけなんです。  ただ、この点につきましては、この四委員の中の一人であるサントス委員日本に来られたときに、いろいろこの報告書の内容に対して自信を持って語られているわけでありますが、大統領自身の調査については、だれでも事件として人を呼んで聞くことができるけれども、現職大統領だけは法に免訴規定があって喚問できなかったというふうなことを述べられております。したがってこの点は、ただいまの独裁政権の特徴でございまして、大統領自身を喚問することができない中で、しかしマルコス大統領に対して一心同体である参謀総長が暗殺に関与していたということが真っ正面から明らかにされたということは、大変大きな政治的意味があると言わざるを得ません。その後、マニラを中心にフィリピンでは、大変反マルコス民衆運動というのがただいま盛り上がっているということも大臣御承知のとおりであります。  私どもは、フィリピンに対しまして、先ほど申し上げた予算委員会大臣の御答弁があるときもそうでありますが、従来から、まことに不安定な政権に対して、不正常な政権に対して経済援助すべきでないという意味で、フィリピンに対する経済援助に対しては反対の立場をとってまいりました。ところが最近、一九八三年度の経済援助について、中身を見ますと、はっきりそのことを決めたから仕方がないという点で見切り発車をされ、しかも商品借款については、前代未聞の額がフィリピンに対して取り決められているわけであります。この商品借款について、フィリピンに認めた八三年度の額に匹敵するようなものが今までございますか。こういう商品借款の例が今までにございますか。いかがです。これをまず聞かせてください。
  46. 藤田説明員(藤田公郎)

    ○藤田説明員 ただいま御指摘のように、本年の四月に交換公文を締結いたしましたフィリピンに対します円借款四百二十五億円のうち三百五十二億円が商品借款でございますが、それと同程度ないしそれ以上という例では、私の記憶では、最近の例では中国に対する商品借款がほぼ同規模になっております。
  47. 土井委員(土井たか子)

    ○土井委員 ほぼ同規模とおっしゃるのは、中国に対する何年の商品借款が同規模であり、額がどのくらいということになるわけですか。
  48. 藤田説明員(藤田公郎)

    ○藤田説明員 数字で申し上げますと、新しい順に申し上げます。一九八三年度は百九十一億、八二年度が二百億、八一年二百億、それから七九年は四百億という商品借款が供与されております。
  49. 土井委員(土井たか子)

    ○土井委員 この商品借款についての資料を提出してくださいと申し上げたら、外務省としては八〇年以降のものを持ってこられて、その中身からいたしますと、フィリピンがもうけた外れに多いんです。ほかの国には、そういう商品借款に対して認めている国がございません。そして、先ほどのODAの問題に対しての倍増計画というのは、一体いつからいつまでの分を考えているんですか。いつから倍増ということを考えられておるんですか。そういう意味があって、八〇年以降の資料をただいま持ってこられたんでしょう。そういう意味があって、八〇年以降の資料というのは意味があるのです。そういう意味のある資料の中で見ていくということが、大変必要であると私は思っている。  その中で見ると、フィリピンに対しての経済援助というのは抜群ですよ。七九年までの資料と八〇年以降の資料というのは、私が申し上げた意味において違うわけでありますから、フィリピンに対しての商品借款というのは抜群であるということをまず申し上げて、中身について言う時間的いとまがございませんからこれは割愛いたしますけれども、このことを問題にした国会での場所ではまだアグラバ委員会の報告が出ていなかったんです。その時点では二つ問題があった。一つは、アグラバ委員会の報告が出るという段階でありましたから、フィリピンに対して、この問題の真相究明がどういう形で進むのかというのを見守りたいということが一つ。あと一つは、IMFがまだ決定をしていないので、どういうふうにこれを取り決めていくのかというのが近々取り決められるであろうからその成り行きを見守りたい、この二つだったんですね。  さて、その一つ目のアグラバ委員会の報告が出まして、外務大臣、さっきは一般論としての御答弁をいただいたんですけれども、ベール参謀総長ら三人のフィリピン将軍を含む軍人がこれに関与したということが明らかにされた四委員の報告、それに基づいてただいま起訴されております。もう既にベール参謀総長は解任されたから一件落着じゃありませんよ。こういうふうな実情が明らかになったということに対して、まずどうお思いになりますかということをお聞きします。いかがです。
  50. 安倍国務大臣(安倍晋太郎)

    安倍国務大臣 これは先ほどから申し上げましたように、今のこのアグラバ委員会というのが真剣に真相究明に努力されて、その結果の報告であろう、こういうふうに判断をしておるわけです。ただ、報告書の内容は、お話もありましたように、随分内容も違っておる点があるわけですが、最終的には司法当局がこれに決着をつけるわけで、今司法当局で裁判が進んでおりますから、この裁判によって私はこの事件というものが適正に解決するといいますか、決着、処理されることを期待いたしております。  なお、私は、こうしたテロ事件というものは非常に忌むべきことであると思いますが、そしてまたフィリピンにおける政情不安ということは率直に認めざるを得ないと思いますけれども、しかし、これと経済協力あるいは経済援助とは別である。これは、フィリピンの国民あるいはフィリピン経済に対して日本政府がこれまでやってきておるわけですし、これは今後とも続けていくということはこれまでも国会で述べておるわけでございまして、この事件と経済援助というものを我々は関連をして考えておるわけではありません。ただ、関連をして考えておるのはIMFの調査、これはやはり経済援助をするにしても協力にしましても、フィリピン経済がそれによって再建をして、そして円借等が返還されるということが基礎でなければなりませんから、IMFの調査と我々の経済協力というものは重大な関連を持つと我々は判断をしておるわけであります。
  51. 土井委員(土井たか子)

    ○土井委員 非常に外務大臣は矛盾したことをおっしゃるのですね。アジアの安定に貢献するとおっしゃっているのです。いわば、そのための経済援助なんでしょう。その国の民生を安定させる経済援助というのは、ひいては日本から見れば、必ずこれがアジアの安定に貢献しているという確信があっての経済援助でなければならぬはずですよ、大臣が大前提として言われるところから考えていけば。そうすると、これは少なくとも政情不安であり、しかも独裁政権が民衆の大変な反対運動の中にある、そういう国に対して経済援助をすることが果たしてアジアの安定に貢献するんですか。  したがって、テロ事件というのは忌むべきである、テロ事件というのは好ましくないということを言われ続けながら、そういうことが現に行われ、だれが一体テロ行為に対して責任があるかということに対しての真相究明がされ、真相究明の結果、今度は大統領と一心同体である人が名指しで報告書の中で出たという実情がある国に対して経済援助をすることが、アジアの安定に貢献することになるんですか。これはいかがなんです。大臣の大前提からいえば、それとこれとは別とは断じて言えませんよ。いかがです。
  52. 安倍国務大臣(安倍晋太郎)

    安倍国務大臣 確かにアキノ暗殺事件以来、フィリピンの政局が混乱をし、マルコス長期政権に対して非常な国民の批判が高まっておることは事実でありますし、その状況というものは今も続いておる、こういうふうに思いますけれども、しかし同時に我々考えなきゃならぬのは、フィリピンの経済がさらにこうした政情不安に応じて混乱をすれば、フィリピン国民というのは塗炭の苦しみに陥っていくわけでありますから、したがって我々としてはやはりそうしたフィリピンの経済を助け、そしてフィリピンの国民に対して協力をするということは、これは日本がこれまでとってきた経済協力の原則でございますから、政権はそういうふうな非常に不安定な状況にありますし、また確かに国民的な批判が出ておるとしても、やはりフィリピンの経済の安定あるいはフィリピンの民生の安定というものを考えれば、この経済協力は続けていかなければならぬというのが日本の考えで、そうした立場に立って我々協力をし、そして円借あるいはまた無償供与を決定いだした次第であります。
  53. 土井委員(土井たか子)

    ○土井委員 民生安定とか国民のためとおっしゃるのは名目でありまして、政府政府で決められる経済援助ですからね。政府を経由してどう使われるかという問題なんですよ。その相手のマルコス政権に対して、日本政府としては経済援助をお決めになるわけでしょう。それが、国民のために果たして役に立つかどうかという問題がフィリピンの場合にはあるんじゃないですか。  さて、IMFは決定をされたのですか。いかがですか。
  54. 藤田説明員(藤田公郎)

    ○藤田説明員 IMFのフィリピンに対しますスタンドバイクレジットの供与、これはフィリピンの国内の経済再建策というものをIMFが審査をいたしまして、これが納得できるという場合にこれを了承され、スタンドバイクレジットの供与が決定されるわけでございますが、累次にわたりIMF当局とフィリピン側との折衝の結果、十月十一日にIMFの事務局としてフィリピン側の経済調整計画というものを承認いたしまして、十一月二日にIMFの専務理事がフィリピンに対しますスタンドバイクレジットの供与を承認いたしました。しかしながら、若干形式的ではございますけれども、これが現実のものとして発効いたしますにはIMFの理事会の承認を得なければなりません。IMFの理事会は、専務理事の了承を得ました後準備等の手続から三、四週間たって行われるということが従来の慣例でございますので、十一月の中旬、今月の中旬以降に理事会が招集され、この決定が最終的に承認を得るという手続で進むものと思われます。
  55. 土井委員(土井たか子)

    ○土井委員 そうすると、正式にはまだ決定はしていないのですね、理事会を経ないと決定にならないわけですから。いかがです。
  56. 藤田説明員(藤田公郎)

    ○藤田説明員 実質的には専務理事の承認ということで内容は固まったわけでございますが、形式的な意味での正式承認というのは理事会の決定ということになります。
  57. 土井委員(土井たか子)

    ○土井委員 したがって、正式決定はまだ、実質的には専務理事の方で内容は固められたという格好だ。その内容というのはどんなものです。
  58. 藤田説明員(藤田公郎)

    ○藤田説明員 はっきり申しますと、これは理事会の承認を得ませんと対外的には発表されないという性格のものでございますが、どのようなものかという御質問でございますので申しますと、二つの点がございます。一つは、フィリピンの承認された経済再建策というものがどういうものかということと、それに基づいてスタンドバイクレジットがどのくらい供与されるかということでございます。  第一の経済調整政策の内容を私どもが承知いたしておりますところで概略申し上げますと、一つは財政政策、財政の面で予算の削減、公共企業体への投資の削減、政府の職員、賃金の抑制、それから公共企業体の財及びサービスの値上げ、このようなことで緊縮財政を実施するということでございます。それから、第二番目は金融政策でございまして、金融面では預金準備率の引き上げ等による国内流動性の抑制ということでございます。それから、第三番目は為替政策でございまして、為替についてはフロート制の移行、このような内容になっております。  このような経済再建策が了承されました結果、これは私どもの口から申し上げるということよりも、フィリピン側が申しておりますところによりますと、IMFはこれに対しまして六億一千五百万SDR、ドルにいたしますと六億三千万ぐらいになるかと思われますが、六億三千万ドルのスタンドバイクレジットの供与を承認する、このような内容になるものと承知いたしております。
  59. 土井委員(土井たか子)

    ○土井委員 新聞で伝えられるところによりますと、IMFが決定をして手続をとられるのに時間がかかる、時間がかかる間フィリピンは困る、フィリピンが困ることに対してつなぎ融資という格好で、日本アメリカ韓国のそれぞれの銀行が協議、協調してやろうじゃないかというふうなことが新聞紙上出ておりますが、これは事実そういうぐあいになっているのですか。どうなんです。
  60. 藤田説明員(藤田公郎)

    ○藤田説明員 ただいま先生の御指摘のとおりで、十一月の七日に日本、米国及び韓国がつなぎ融資を供与するという決定を行ったということでございます。内訳をもし必要でしたら……。アメリカが四千五百万ドル、日本が三千万ドル、韓国が五百万ドル、計八千万ドルということになっております。
  61. 土井委員(土井たか子)

    ○土井委員 過去、これまでにあった例を見てまいりますと、ブラジルやメキシコに対してあった例があるのです。ところが、これは今回とやり方が全く違うのですね。ブラジルやメキシコの場合というのは、BISつまり国際決済銀行を通じてやってきたというのが今までのいきさつなのですが、今回は何でBISを通じてやらないのですか。
  62. 藤田説明員(藤田公郎)

    ○藤田説明員 その点は実は国際金融の問題で、私どもの所管しておりません、大蔵省所管の問題でございますので、私としてはちょっとお答えする知識を持ち合わせておりません。
  63. 土井委員(土井たか子)

    ○土井委員 これは対外援助に関する問題でしょう。こういうことに対する取り扱いをフィリピンが言ってくるのはどこに言ってくるのですか。直接大蔵省ですか、違うでしょうが。外務省が窓口ですよ。さっき、IMFが決定するまでどういうことになるかというフィリピンの経済援助に対する取り組みも、日本としてはそのことを注目しながら勘案せざるを得ないという外務大臣の一貫した御答弁だったのだけれども、IMFからは聞いておりませんがフィリピンから言うところによるとという御答弁局長から出ているのです。IMFから何も聞きもしないで、つなぎ融資に対して、大蔵省が単独でよろしゅうございますと言ったのですか。外務省は全然知らない間の出来事ですか。こういうばかげた話はないですよ。いかがです。
  64. 藤田説明員(藤田公郎)

    ○藤田説明員 第一点の、先ほどフィリピンの発表云々と申し上げましたのは、理事会の正式決定がございませんうちに私どもの口からそれを発表するという立場にはございませんが、たまたまフィリピン側が発表いたしましたので、それを引用する形で申し上げたということでございます。  それから、先ほどのつなぎ融資の件は、外務省と申しますよりも、中央銀行間で話し合いを行って決定をしたものというふうに承知しております。
  65. 土井委員(土井たか子)

    ○土井委員 幾ら銀行間と言われても、IMFに対するつなぎ融資でしょうが。そうすると、これに対する取り扱いは、外務省に何ら関係なく勝手にこれはひとり歩きしちゃったのですか。そうなると問題は大変ゆゆしいですよ。そうすると、日本の場合なんかは、日本銀行が勝手に取り決めると、政治に介入をしてどんどんそれに対して勝手なことができるということになっていくのじゃないですか、日本銀行法二十四条というのがありますけれども。要は、これは政治問題なんです、中身は。直接間接、外交問題ですよ。それに対して勝手なことをどうぞおやりください、外務省は知ったこっちゃありません、関係ございません、こうなるのですね。
  66. 藤田説明員(藤田公郎)

    ○藤田説明員 私どもは、関係ございませんということではございませんで、もちろん御相談を受けておりますけれども、先ほど来の先生のおっしゃったBISをどうして使わないのか云々ということにつきましては、金融的な問題ですので、私どもとしては知識を持ち合わせておりませんということをお答え申し上げた次第です。
  67. 土井委員(土井たか子)

    ○土井委員 金融的な面と、これはやはりもう一つあるのじゃないですか。大蔵省と協議をされて、こういう問題に対する取り扱いが進められたはずなんです。万事、その中であったことは外務省としては答えることがまことに難しくてできかねる、そういう金融上の問題ばかりなんですか。そうじゃないでしょう。なぜBISということにならなかったかというのは、ちょっと聞きますけれども、これは韓国は入っているのですか、入っていないのですか。
  68. 藤田説明員(藤田公郎)

    ○藤田説明員 韓国がこのつなぎ融資に参加しているかということでございますか。
  69. 土井委員(土井たか子)

    ○土井委員 そうです。
  70. 藤田説明員(藤田公郎)

    ○藤田説明員 つなぎ融資には、先ほど申し上げましたように五百万ドルということで参加しております。
  71. 土井委員(土井たか子)

    ○土井委員 そのつなぎ融資ということではありませんで、今回この取り扱いがBISを通じて取り扱うことにならなかったといういきさつについて、関係をしている部分に対して私はお尋ねをしているわけであります。  したがいまして、そのことを申し上げていくとこれは時間が非常にかかりますから、あとは簡単に申し上げますけれども、このつなぎ融資を決めることについて大蔵省との間で協議の上の話であったということ、これは言うまでもないことです、さっきも言われたとおりなんですが、そうすると、つなぎ融資というのは日本として、先ほど言われた額、三千万ドルでしょう。
  72. 藤田説明員(藤田公郎)

    ○藤田説明員 日本は三千万ドルです。
  73. 土井委員(土井たか子)

    ○土井委員 日本として三千万ドルのつなぎ融資でしょう。これを出されることに対して——これは簡単に言うと、IMFが出されるまでの肩がわりなんでしょうが。中身はどういうものなんですか、一般につなぎ融資と報道されておりますが。
  74. 藤田説明員(藤田公郎)

    ○藤田説明員 どうも私も余り知識がございませんので、正確なお答えができないのでございますけれども、私の理解しておりますところでは、IMFのスタンドバイクレジットの承認までに時間がかかる。他方、実質的には専務理事の承認を得たということなので、その間の融資をつなぎ的に行うということだと理解いたしておりまして、それ以上ちょっと知識を持ち合わせておりません。
  75. 土井委員(土井たか子)

    ○土井委員 どうもいいかげんな知識ですね。そんな程度で、大蔵省との間で協議された意味があるのですかね。恐らくは、IMFの出されるまでの間つなぎをしてあげましょうというのだったら、IMFとの間でもこれは話をしないといかぬでしよう。そのことに対しての取り扱い方をどういうふうに決められたのですか。つなぎ融資とは何ですか、よくわからないです。
  76. 後藤説明員(後藤利雄)

    ○後藤説明員 お答えします。藤田経協局長の御説明をちょっと補足させていただきます。  つなぎ融資というのは、IMFの専務理事、この場合は十一月二日に事実上の承認をしたわけでございますが、このIMFの専務理事の承認がない限りは日本として、日本の銀行もつなぎ融資を出さないということでございますので、その前に、IMFの専務理事の実質的な承認がある前に、つなぎ融資を出すとか出さないということではございません。ありましたから、これでつなぎ融資をするということでございます。それは、今後正式にIMFが理事会で決定しまして第一回目のトランシュをするのを、その間とりあえず、これからは十一月二日以降出してやる、そういうことでございます。
  77. 土井委員(土井たか子)

    ○土井委員 そうすると、これはIMFとの間で協議をされて、その中身に対して、取り交わされている中身があろうと思うのですね。これは中身について出していただけますか。はっきりこういう取り交わしをしている、こういうふうなことで日本としては多額ですよね、三千万ドル、日銀を通じて出すことになったという。出していただけますか。
  78. 後藤説明員(後藤利雄)

    ○後藤説明員 これは日本銀行と先方のIMFとの話し合いでございますので、私どもとしてこれを出し得るかどうかというのは、ちょっとお答えしかねます。もし、あれでございましたら、先生のそういう御要望があったという点は、日本銀行に話してみたいと思いますけれども。
  79. 土井委員(土井たか子)

    ○土井委員 こういうことが前例になると、これからひとり歩きをするということに対して、どういうふうにチェックをしていくかということが大変問題になると思うんですよ。外務大臣、これは大丈夫なんでしょうね。日本銀行が外国に対してつなぎ融資ということを取り決めて、そしてそれに対して面倒を見ましょうというふうなことは、勝手にやっていいんですか。これはある意味では政治的介入というときも起こり得ますよ。いかがです。——大臣に聞いているんです、政治問題なんだから。
  80. 安倍国務大臣(安倍晋太郎)

    安倍国務大臣 これは、日本銀行がやはりつなぎ融資をするという場合においても、慎重に判断をしてやっておると思いますから、間違いはない、こういうふうに考えております。
  81. 土井委員(土井たか子)

    ○土井委員 つなぎ融資というのは、簡単に言うと肩がわり融資でしょう。IMFが出すまでに時間がかかるから、それにかわって出してあげましょうという肩がわり融資でしょう、簡単に言えば。つなぎというのは肩がわりじゃない、この場合は。だから、そういうことからすると、中身についてはもうちょっとはっきりわかるようにしていただかないと、さっぱり先ほどからの御答弁では、局長もよくわからぬ御答弁をなさるし、そして今聞いた限りでもそれは日銀のやったことだから、そういう御要望があったと言うてみますとメッセンジャーボーイみたいなことを言われますし、これじゃ国民は納得しないと思いますよ。
  82. 後藤説明員(後藤利雄)

    ○後藤説明員 つなぎ融資といいますのはあくまでもつなぎでございますので、これで正式のIMFの理事会の決議が出まして、IMFから最初の引き出しが行われますと、この八千万ドルはそれぞれの銀行に返されるわけでございます。
  83. 土井委員(土井たか子)

    ○土井委員 返されるわけでございます、えらい力を込めて言われますけれども、それはきちんと約束してお互いが取り交わしてないとそうならないんですよ。あなたがここでお答えになったから、それが約束にはすなわちならぬでしょうが。IMFとの間できちっとなすったお約束をひとつここに出してください、こう申し上げている。したがって、そこが大事なんです。そういう御答弁をされた以上は責任がありますよ。出してもらえますね。
  84. 後藤説明員(後藤利雄)

    ○後藤説明員 お答えいたします。  そういう約束がなされたということは、私ども知っておりますけれども、文書そのものは日本銀行間でございますので、先ほども申し上げさせていただきましたように、私どもの手元にございません。したがいまして、先生の御要望をもう一度改めて日本銀行に話してみたいと思います。
  85. 土井委員(土井たか子)

    ○土井委員 委員長の方からも、これはぜひとも督促をお願い申し上げたいと思います。  さて、もう時間が来ましたが、外務大臣、きょうは終始一貫、アジア安定に外務大臣としては貢献するという基本姿勢がおありになるということで出発をして、御質問をしてまいりました。このフィリピンに対してのアメリカのつなぎ融資というのを見ると、フィリピンには大きな大きなアメリカの基地が二つあります。これはアメリカにとっては枢要な拠点であります、アジアに対しても、世界に対しても。日本も、シーレーンでフィリピン以南について、これは枢要な基地であるということも言うまでもないし、フィリピンの置かれている立場というのも、そういう目で見れば、アメリカの側から見たときと同じようにオーバーラップするでしょう。韓国韓国で、アメリカの軍事基地、核基地を持っている立場があり、したがって、アメリカに対しては同じような意味でフィリピンが枢要な場所になるでしょう。この三国が寄ってフィリピンに対して、ただいまもう前例のないつなぎ融資という格好がIMFに対して行われるわけです。したがって、この問題も非常に政治的であるということは否めませんよ。  と同時に、先ほどのあの報告書以後裁判にかけられて——裁判の成り行きを見守りたい、終始一貫大臣はそうおっしゃいますけれども、フィリピンにおける政情不安というのは覆いがたい。国民の多くは民主化を求めておりますし、それに向けて今まで動かなかった人たちも動きを始めております。大きな一つのうねりになりつつある。そのフィリピンに対して、八四年度経済援助、商品借款というのは、これはぜひとも思いとどまっていくのが、日本としてはアジア安定に向けての努力のあかしじゃないか、このように思いますが、大臣の御所信を承ります。
  86. 安倍国務大臣(安倍晋太郎)

    安倍国務大臣 確かに、フィリピンで政情不安があるということは否めないと私は思います。ただ、我々は、この政情不安がフィリピンの経済不安につながっていくことを非常に恐れておるわけでありまして、日本としましては、何としてもフィリピンはASEANの一国でありますし、これまでも非常に深い隣国としての友好関係を続けてまいったわけでありますし、またフィリピンに対する経済援助はずっと続けてきたわけであります。これはフィリピンの政権に対するというよりは、フィリピンの国民に対し、フィリピンという国に対して行ってきているわけですから、したがって、現在こうした政情不安はあったとしても、これが経済不安になって、そしてフィリピン国民に大変に大きな犠牲が生まれることは隣国として忍びないわけですから、やはりこれまでの経済協力を続けていくことが経済不安を避ける道につながるということで、実は決断をしたわけであります。  しかし、決断をするにしても、やはり一つの尺度、歯どめというものがなければならぬと思います。我々は、IMFの調査、再建計画が立案できるかどうかということにその歯どめを求めたわけでありますが、そのIMFが結論を出すという方向が見通しがついたという段階で、私も決意をいたしたわけでありますし、また、つなぎ融資もそうした中でこれを行っておるわけでございますから、あくまでもこれはただ単なるマルコス政権を助けるという短絡的なものではなくて、やはりフィリピンの経済の安定を図り、さらにフィリピン国民の民生を救う、民生の安定をこの厳しい段階で図っていく、それに日本が何らか手をかさなければならぬ、こういうことでやってきておるということを御理解いただきたいと思います。
  87. 土井委員(土井たか子)

    ○土井委員 またそれに対して私も意見がありますけれども、時間がオーバーしました。終わりたいと思います。
  88. 中島委員長(中島源太郎)

    中島委員長 午後一時三十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時四十八分休憩      ————◇—————     午後一時三十一分開議
  89. 中島委員長(中島源太郎)

    中島委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。玉城栄一君。
  90. 玉城委員(玉城栄一)

    ○玉城委員 第二次中曽根内閣に再び安倍外務大臣外務大臣に御就任なされました。心からお祝い申し上げますとともに、これまでも大変見識豊かな安倍外務大臣創造的外交というお立場から大変御尽力をされてきたことについても、心から敬意を表します。さらにまた、新内閣におきましても一層御尽力されんことを念願いたします。  まず第一点目にお伺いをいたしますことは、今回、レーガン大統領が再任をされまして、何といっても我が国にとって日米外交というものは極めて重要な位置づけをされる、そういう認識は私も当然持っております。ところが、強いアメリカというレーガン大統領の思想と、それから中曽根総理のいわゆる不沈空母発言等からしまして、今後我が国として軍事大国化の方向へさらに進むのではないかという強い懸念があるわけでありますが、大臣の御所見をまずお伺いをいたします。
  91. 安倍国務大臣(安倍晋太郎)

    安倍国務大臣 第二次レーガン政権が誕生いたしたわけでありますが、レーガン政権日本を非常に重要視しております。日本アメリカとの関係は今極めて安定をしておりますが、今後ともさらにいろいろの問題を解決しつつ、この日米関係というものを安定、定着させるために双方の努力を続けていきたい。これが、太平洋の平和と安全、さらに世界の平和と安全に寄与するものであると確信をいたしております。  なおまた、日本の平和と安全を守っていくための日米安保条約を堅持していくということも不動の考えでありまして、我々はこうした条約を守りながらも、なおかつ日本基本的な選択であるところの軍事大国にはならない、こういう体制は今後とも国民の選択としてこれを守っていかなければならない、それがまた平和外交を大きく前進させるゆえんにつながる、こういうふうに確信をいたしております。
  92. 玉城委員(玉城栄一)

    ○玉城委員 さらに、巨大な米軍基地を抱えている沖縄の立場からいたしまして、レーガン大統領のそういう考え方からいたしますと、当然、いわゆる対ソ戦略上からいいましても沖縄の米軍基地というものがさらに重要視され、さらに強化されるのではなかという懸念もあるわけでありますが、いかがでしょうか。
  93. 安倍国務大臣(安倍晋太郎)

    安倍国務大臣 沖縄には米軍の基地があるわけでございますが、これは日米安保条約を効果的に運用していくために、日本の平和と安全のために必要なことである、こういう観点から基地の配備を認めておるわけでございます。我々は、この沖縄の基地は日本のために必要である、こういうふうに考えておりますが、同時に、基地が存在することによって沖縄の民生というものにいろいろと影響が出てまいりますので、こうした民生の安定を図っていくために政府としても努力を重ねていかなければならない、こういうふうに考えております。
  94. 玉城委員(玉城栄一)

    ○玉城委員 先月の二十三日に、B52G型核戦略爆撃機、これが十一機沖縄の嘉手納飛行場に飛来したわけですね、KC135空中給油機四機を伴って。沖縄が返還されて今回でちょうど二十四回目の沖縄飛来なんですね。当然県民が大きな不安を感じたわけです。実は昨日の沖縄県議会におきましても、超党派、全会一致で、これは自由民主党さんも含めてですけれども、そういうB52の飛来についてはたとえ台風避難という名目であっても反対である、拒否をするという抗議決議をやっているわけです。その決議も外務省の方にそのうち参ると思いますが、台風避難であっても反対である、県議会が全会一致でそういう意思表示をしたことについて、大臣の御所見を伺いたいのです。
  95. 安倍国務大臣(安倍晋太郎)

    安倍国務大臣 政府としましては、B52を含め米軍の航空機の我が国への飛来につきましては、日米安保条約及びその関連取り決めを踏まえて対処すべきものであると考えておりますが、B52の我が国への飛来については、米側として台風などの緊急事態を避ける場合にのみ限っている、このように承知をいたしておるわけであります。
  96. 玉城委員(玉城栄一)

    ○玉城委員 ところが、台風避難など緊急事態に限って飛来していると今おっしゃっておられるわけですが、確かに当日我々も気象条件——グアムから飛来しておるわけですが、ああいう程度の台風というのはB52に影響を与えるようなものじゃないのですね。沖縄県は台風常襲地帯ですからよく私たちは肌身で感ずるが、B52という飛行機は台風ということでそんなに避難するようなものではないと私は思うのですね。ところが、台風避難という名目でたびたび沖縄の嘉手納基地に飛来してくる。これは、極めて常識的に言いまして、台風避難というのは名目であって、やはり核戦争を想定した軍事演習の一環であるというふうに見るのもまた常識的な見方ではないか、そういう考え方があるわけですが、いかがですか。
  97. 栗山説明員(栗山尚一)

    ○栗山説明員 B52の台風避難については従来から申し上げておるところでございますが、グアムの米軍基地において台風等の悪天候の場合に必要なシェルターの施設がないということから、台風避難のような場合に限って沖縄に飛来するということでございまして、先般の台風避難の場合も、私どもの方でも別途気象庁の方から情報を入手いたしておりましたが、確かに台風が来るということで、米軍として特段それ以外の理由によって沖縄に飛来をしたというようなことは認識しておりません。過去の事例から申しましても、ただいま先生の方から御指摘がありました核戦争を想定して云々というようなことは、米軍としては考えておらないというふうに理解しております。
  98. 玉城委員(玉城栄一)

    ○玉城委員 この問題、これ以上議論しましても、外務省の方とされてはおっしゃらないと思いますが、ただ、そのように沖縄の県議会等で全会一致で、台風避難という理由にせよ沖縄飛来については反対である、拒否をしますという、そういう意思表示をしているということについては深く御認識をしておいていただきたい、このように思います。  それから次にもう一つは、やはりこれは米軍の演習に伴う事故なんですが、先月の三十一日、沖縄の北の方にあります名護市の上空で米軍の大型ヘリが軍事演習中に、途中でドアが地上に落下したのですね。これは幸いといいますか、人命に被害がなかったわけですけれども、部落の至近距離に落下しておるわけです。しかも、これは重さ二十四キロのものですから、まともに落ちていたら大変なことです。当然、地域住民は大変な不安に駆られますし、名護市当局を初め、これまたきのうの沖縄県議会におきましても厳重抗議をする、こういうことなんですね。  そこで、一つはこの県議会の決議、おいおい外務省にも来ると思いますが、原因の徹底究明ということと、それから事故の再発は絶対困るということ。もう一つは、飛行コースの変更を当然すべきである、いわゆる米軍の軍事演習でそういう住民地域を飛び交うというそのコースを当然変更すべきである、そういうことなんですが、いかがでしようか。
  99. 栗山説明員(栗山尚一)

    ○栗山説明員 十月三十一日の委員御指摘の事故につきましては、私どもの方も大変遺憾であるというふうに認識いたしまして、これは十一月の二日でございますが、直ちに米軍側に合同委員会の事務局長を通じまして非常に遺憾であるということを申し入れた次第でございます。事故の原因等については、ただいま米軍の側で調査中であるというふうに承知しておりますが、私どもといたしましては、今後ともこの種の事故の再発がないように、厳重に米側に注意を喚起し続けていきたいというふうに考えております。  ただ、ただいま先生御指摘の県議会の決議の中にございます飛行ルートの変更につきましては、これは米軍側のいろいろ活動の必要性から生じておるものでございますので、まずこのような事故が再発しないように米側に十分注意をしてもらうということが何よりも大事であろうというふうに認識しておる次第でござまして、飛行ルートの変更という問題につきましては、ただいまそのようなことを米側に申し入れるというようなことは考えておりません。
  100. 玉城委員(玉城栄一)

    ○玉城委員 栗山さん、それはそのようなことをおっしゃいますけれども、ヘリのドアというのは二十四キロものものが落下してくるわけですよね。これはもう私はこの委員会で、何回もそういう事故のあるたびに申し上げているわけです、それこそ数え上げれば枚挙にいとまがないほど。おっしゃることは、米軍にもう事故の起こらないように注意する、米側としてはまた注意します、ところが起きる、そういう繰り返しですよね。栗山さん、本当に真剣になって考えていただきたいわけですが、その下に住民が生活していますでしょう。そんなところに二十四キロもあるヘリのドアがおっこちてきて、もし当たったらどうしますか。そういうようなことは戦場みたいなものじゃないですか。また、戦争さながらとしてその地域住民は受けとめますよ。いつ何が起きてくるかわからないわけでしょう。その飛行コースを変更してくれと言うのは当然なことであるわけですね。いかがですか。
  101. 栗山説明員(栗山尚一)

    ○栗山説明員 地元の方々の御心配、御懸念については、私どもも十分理解いたすところでございます。さればこそ、例えばヘリの整備が不十分であるとか乗組員の不注意というようなことによりましてこのような事故が起こるのであれば極めて遺憾なことでございますので、先ほどの繰り返しになりますが、あらゆる機会を通じまして、米軍側には事故の再発防止というものについて厳重に申し入れをしていきたいと考えておる次第でございます。  ただ、地元の方々の御懸念、御心配はまことにごもっともでありますが、他方におきまして政府といたしましては、沖縄に駐留しております米軍の所要の活動というものに対して、これを必要以上に制約するということはいかがか、安保条約の効果的運用という観点から申し上げればいかがなものかというふうに考える次第でございまして、あくまでも一方におきましては安保条約の効果的活用と、他方におきましては地元の沖縄の方々の十分の御理解が得られるような安全性の確保ということにつきまして、政府と米軍と双方において努力をして、住民の方々にそういう御迷惑、御心配をかけないように最大限の努力をするということが、私どもの責任であると考えております。
  102. 玉城委員(玉城栄一)

    ○玉城委員 栗山さんは矛盾したことを平気でべらべらおっしゃっています、安保条約の効果的あるいは円滑な運用ということ、あるいは安全性の確保ということ、いろいろなことを。さっき申し上げた飛行コースの変更について米軍側と話し合う、そういうことはできませんということはどういうことでしょうか。
  103. 栗山説明員(栗山尚一)

    ○栗山説明員 私どもの現在の認識は、飛行コースの変更ということよりは、この種の事故はやはりそれなりの注意が払われれば十分防ぎ得るものであるという認識でございます。したがいまして、そういう面で今後一層米軍側に注意を払ってもらうことによって住民の方々の御心配、御不安というものが取り除けるのではないか、そういうふうに考えておる次第でございます。
  104. 玉城委員(玉城栄一)

    ○玉城委員 これは、ちょっと私の立場としては納得ができないわけです。さっきから申し上げましたように、復帰後ですらも何回も、枚挙にいとまがないということを申し上げましたし、その都度その繰り返しをやっておるわけでしょう。米軍は、それは向こう向こう立場でやっておるでしょうけれども、やはり安全性の確保という立場からその飛行コースについても、例えば海上の方を通るとかそういうことを含めて、とにかく外務省とされては一体どういうふうなコースも考えられるのか、それこそあなた方は安保条約を効果的に運用すると言うならば、そういう努力が相伴ってこそそういうこともできると思うのですよ。ただ突っぱねるだけでは、安保条約の効果的運用とか円滑な運用ということはできませんよ。大体地域住民の協力を得られないでしょう、そういう姿勢であっては。いかがですか、栗山さん。もう一回。
  105. 栗山説明員(栗山尚一)

    ○栗山説明員 私どもも将来の問題といたしまして、ヘリの飛行コースの変更の可能性というものにつきまして、米軍側と話し合う可能性を全く排除するということまで申し上げるつもりはございません。しかし、何よりも大事なことは、飛行コースのいかんにかかわりませず、こういう事故が発生すること自体、米軍側に十分注意を払って再発防止の措置を講じてもらわなければならないわけでございますので、その点にまず当面重点を置いて米軍側と話していきたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  106. 玉城委員(玉城栄一)

    ○玉城委員 それは、おっしゃることは当然なんです。事故は起こさないように米側に強く望む、それはもう大前提ですよね。ところが、今おっしゃいましたように、飛行コースの問題も含めて、これはやはり当然米側と相談するなり検討するなり、変更の必要というか、その可能性があればそれも含めて考えていくということでいいですか。もう一回、栗山さん。
  107. 栗山説明員(栗山尚一)

    ○栗山説明員 私といたしましては、現状におきまして、今直ちに飛行コースの変更ということを主題にしてアメリカ側と話し合うということは考えておりません。先ほど答弁申し上げたことの繰り返しでございますが、そういう可能性につきまして今後とも念頭に置きながら、まずはもってそういう事故の再発防止について米軍側とよく話し合っていきたいというふうに考えております。
  108. 玉城委員(玉城栄一)

    ○玉城委員 とにかく、私の要望を強く受けとめていただきたいわけです。  それで、大臣もさっきちょっとおっしゃっておられましたけれども、先月の十七、十八日沖縄に行かれて、沖縄の米軍の基地を視察しておられるわけですからよくおわかりだと思いますが、とにかく基地の周辺には多くの部落が点在しているわけですね。まさに基地周辺に住民が張りついて生活しているわけです、ああいう狭い地域に。ですから、たとえ基地内といえども、実弾を撃ち込んでのそういう実弾演習というのは非常に危険だと思うのですね。そういうことはすべきでないと私は思うのです。大臣、いかがでしょうか。
  109. 安倍国務大臣(安倍晋太郎)

    安倍国務大臣 おっしゃるように、沖縄でいろいろと米軍の訓練をめぐって事故等も起こりまして、住民が迷惑をしているという事件も間々あるわけでございます。我々は、基地の重要性というものは訴えておるわけでございますが、しかし、基地で訓練が行われることによって住民に危険が及ぶということは、これは避けなければならぬ。そういう意味で、私も沖縄に参りましたときに、真っ先に嘉手納基地を訪れまして責任者と話をしました際に、米軍基地の重要性は我々も十分認識しておるけれども、しかしやはり住民の安心という立場から、訓練の安全性さらに基地の安全性等については、十分配慮してほしいということを強く申し入れたわけでございます。今後とも、そういう基本的な考え方で米軍あるいはアメリカ当局とも対処してまいりたい、こういうふうに考えております。
  110. 玉城委員(玉城栄一)

    ○玉城委員 ちょっとそこに私たち調査結果をお配りいたしましたけれども、実は九月の十九日にキャンプ・ハンセン、ここは海兵隊が駐屯している基地ですけれども、そこで最新鋭の一九八型百五十五ミリりゅう弾砲、原子砲ですね、それを使って実弾を撃っての演習をして、また事故が起きたわけです。もう時間がありませんので詳しい説明は省きますが、それでまた大騒動になりまして、私たち党としましても、そのキャンプ・ハンセンの基地内の現場視察を外務省の御協力もいただきまして行いました。その結論としていろんなことを書いてございますが、こういうところでああいう最新鋭の原子砲、実弾を撃っての演習というのはこれは無理だ、むちゃだ。しかも、この基地の中を高速道路が通っているんですよね。そしてまた、高圧線も通っていますよね。当然周辺に部落も点在していますし、私、こういうところではすべきでないと思うのですね。  そこで、これは私の方から申し上げますが、この一九八型百五十五ミリりゅう弾砲というのは、射程距離が約二十五キロから三十キロです。ところが、今このキャンプ・ハンセンでやっていますのは、この砲座から弾を撃ち込む地点まで二キロぐらいですよ。射程距離二十五キロの弾を二キロのところで撃つ、そういう実弾演習をやっているわけです。そういうことからしましても、ここに私、地図を持ってきましたけれども、ちょっと見てください。ここが砲座なんです。これが着弾地です。大体二キロぐらいなんです。ここが涵養林ですね。これが高速道路です。これはキャンプ・ハンセンです。この辺が目標地点。この間これを通って、ここにまた落ちているわけです。ですから、こういう狭い地域で、しかもそういう二十五キロも射程距離のある弾をここで撃ち込むという、そういう実弾演習は危険である。これはこれでなにしますけれども、そういうことで、実弾演習というのは中止すべきであるということを申し上げますけれども、しかし大臣とされては、この場で、はい、じゃ中止しますということはおっしゃりにくいかと思います。  そこで、私、提案ですけれども、私たちのこの調査した結果が本当にそうなのかどうか、この地図も本当にそうなのかどうか、当然政府としてもそれは調査をしてみる必要があると私は思うのですが、いかがでしょうか。
  111. 栗山説明員(栗山尚一)

    ○栗山説明員 ただいまの委員の方の調査結果につきましては、私どもの方も十分検討さしていただきたいと思います。  ただ、御指摘の山林地帯への誤った着弾につきましては、アメリカ側も非常に遺憾であるということを申しておりまして、私どもその後米側と話し合いましたところでは、目標設定の位置を問題の森林地域、いわゆる涵養林と呼ばれております森林地域から離すとか、射角の設定等につきましては必要な調整を行って、このような誤った着弾が再発しないような措置をその後講じておるというふうに承知しております。  しかし、いずれにいたしましても、ただいま委員御指摘の御調査の結果につきましては、私どもの方でもさらに検討さしていただきたいというふうに考えます。
  112. 玉城委員(玉城栄一)

    ○玉城委員 今検討しますということは、私たち調査結果を検討するということも含めてだと思いますが、私が申し上げているのは、そういうキャンプ・ハンセンが本当に実弾演習が可能な地域なのかどうかをぜひ政府としても調査をしてみる必要があるのじゃないですか、こういう意味です。  それで大臣、これはもう大臣からお答えいただかないと、栗山さんでは全然らちが明きませんので……。  実は、私たち先月の二十三日に調査したときに、米軍側がずっと案内してくれたわけですけれども、米軍さんも、二度と事故を起こすなということを保障してくれというのは、この地域からして無理ですよ、そういうことを暗に、非公式に言っているわけです。そういうことでありますから、ぜひやはりここを調査してみる必要がある。政府としても、また私たち調査結果もそうなのかどうかということも含めて必要があると思うのです。先ほど飛行コースの問題もありましたけれども、この問題につきましても、ひとつ大臣、やはりそこまで誠意を示すということが、皆さんのおっしゃるそういう基地行政を進めていく上で大事なことだと私は思うのです。いかがでしょうか。
  113. 安倍国務大臣(安倍晋太郎)

    安倍国務大臣 せっかく今貴重な資料を御提供いただいたわけでございます。政府としましても、そうした水源涵養林の保護という立場もありますし、それだけでなく、住民の安全という立場は重要視しなければなりませんから、そうした立場で、今の行われておる演習の状況が、そうした安全性というものについて大丈夫なのかどうかということも含めて検討して、そして場合によってはまた米軍とも相談をしてまいりたい、こういうふうに思います。
  114. 玉城委員(玉城栄一)

    ○玉城委員 ぜひそのことを強く要望して、質問を終わります。ありがとうございました。
  115. 中島委員長(中島源太郎)

    中島委員長 次に、古川雅司君。
  116. 古川委員(古川雅司)

    ○古川委員 安倍外務大臣に若干の御質問を申し上げます。  第二次中曽根内閣の発足に伴いまして、連続三期目の外務大臣のポストにおつきになったわけでございますが、安倍大臣基本姿勢でいらっしゃる日本外交の幅を広げようということで東奔西走していらっしゃいまして、ますます自信を深めていらっしゃると思いますし、これからまた手腕をお振るいになると思うのでございますが、総理と表裏一体で今後も日本外交をお進めになっていくのか、あるいはまた外交の最高責任者として、総理の一定の方向性にある程度牽制を加えながら外交を進めていらっしゃるのか、その点は非常に国民にとりまして関心も高いし、また心配の種でもございます。その点、ひとつ明確に一言で御答弁いただければ幸いです。
  117. 安倍国務大臣(安倍晋太郎)

    安倍国務大臣 日本外交は一体でなければならぬと思います。したがって、総理大臣外務大臣の意見が食い違ってはやはり真の信頼される外交というのは展開できない、そういうふうに思いますし、十分相談をしながらやっていきたい、こういうふうに思っています。
  118. 古川委員(古川雅司)

    ○古川委員 四十一代のアメリカ大統領が現職レーガンさんの圧倒的な勝利で決定をいたしまして、向こう四年間の政権を進めていくわけでございます。ここでいわゆる懸案の米ソ関係改善の問題、これは大統領選待ちという形になっておりまして、今後の進展いかんによりましてはこれは非常に大きな国際的な課題であると思います。この点、外務大臣としてレーガン大統領ないしアメリカ政府に対して日本姿勢をどういうふうに示して、あるいはまた本格的にアメリカがこの問題に乗り出していくということについて大臣の御意思をお伝えになる、そういうお考えはございますか。
  119. 安倍国務大臣(安倍晋太郎)

    安倍国務大臣 レーガン大統領が再選されたこの時期こそ、まさに米ソ関係改善のチャンスであると私は思っております。政府としましても、これまで米国、同時にまたソ連に対しまして、平和と軍縮を推進してもらいたい、推進すべきである、特に核軍縮が中絶しておるので、これを一日も早く再開すべきであるということを強く要請をし続けてきておるわけでございますが、このチャンスでありますし、そういう機運も出ておりますから、さらに重ねて政府のそうした考え方を米ソ両国に伝えてまいりたいと思います。
  120. 古川委員(古川雅司)

    ○古川委員 大臣、その点につきましては、どういう形でレーガン大統領あるいはアメリカ政府に対してお伝えになる、どういう機会を大臣は今お考えになっているんでございますか。
  121. 安倍国務大臣(安倍晋太郎)

    安倍国務大臣 例えば、インドの故ガンジー首相の葬儀に参列した際もシュルツ国務長官と会いまして、その際も、レーガン政権が再選されたらやはり最大の課題米ソ関係改善じゃないか、これに対してどういう考え方を持っておるのか、日本としてはこれを一日も早く推進すべきであるということを申し上げまして、シュルツ国務長官も、アメリカとしてもソ連との関係を最も重要な課題として再選後取り上げていく考えであるということを述べられたわけでございますが、今後とも日米間で事あるごとにこうした問題について協議をしてまいりたい、そうして、日本の考えをアメリカ政府にも、アメリカ首脳にも伝えたいと思っております。  また、ソ連との関係におきましても、最近グロムイコ外相との私の会談、あるいはクナーエフ政治局員と総理大臣あるいはまた私との会談、さらにまたチーホノフ首相総理大臣との会談等でも、こうした日本の平和、また軍縮に関する熱意はソ連に伝えておるわけであります。
  122. 古川委員(古川雅司)

    ○古川委員 ところで、中曽根総理が明年一月二十日のアメリカ大統領就任式以前に訪米をしたいという意思を表明されていると聞いておりますけれども、そこで当然レーガン大統領との間に首脳会談が行われるのでありましょうが、この点について外務大臣は総理からその内容についてお考えを聞いておられるかどうか。さらにまた、総理訪米については、外務省部内ではまだ末調整の部分がかなり多いというふうにも報じられております。現在総理が早急にこの訪米をしなければならない、そういう日米間の緊急課題をどの辺にとらえていらっしゃるのか、外交の最高責任者である外務大臣でございますから、その辺のお見通しとまた御見解を伺っておきたいと思います。
  123. 安倍国務大臣(安倍晋太郎)

    安倍国務大臣 私は、まだ中曽根総理からそうした就任式前の訪米の計画というものは問いでおりません。ただ、ロン・ヤス関係ですから、そうした気持ちを持っておられるかもしれませんけれども、そうしたことがまだ具体的な日程に上がっておらない、こういうことであります。
  124. 古川委員(古川雅司)

    ○古川委員 これは安倍大臣らしくもない、甚だ不明確な御答弁でございますが、日本国の総理が訪米をしたいあるいはしようとしている。外務省部内でも未調整ということは、恐らくいろいろ検討を進めていらっしゃるのだろうと思います。既に総理がそういう意思表明をされた以上、これは外務大臣の方から総理に対してどういうお考えなのか、何をひっ提げていってレーガン大統領と会おうとしているのか。先ほど私がお伺いをしましたように、早急に日米首脳会談を持たなければならないという、そういうときなのか、どういう課題があるのか、その点はこの際大臣の方から総理に対しても明確に打診をすべきではないかと思うのですが、いかがですか。
  125. 安倍国務大臣(安倍晋太郎)

    安倍国務大臣 中曽根総理がそういう考えを持っておったとしても、恐らくそうした肩ひじ張ったような会談ということじゃないと思います。ワシントンに行って正式に両国の首脳会談をする、こういうことではなくて、やはり選挙の祝意を表明するとともに、中曽根内閣も第二次スタートを切ったわけですから、これからの日米二国間の関係基本、さらにまた米ソ関係とか世界の平和と軍縮の問題、そういった問題について非常に高い立場から意見を交わしてこようということであろうと思います。具体的に日米間の経済、貿易問題がどうだとかこうだとかそういうことを意識して言われているのではない、こういうふうに思っておるわけでございます。おっしゃるようにまだ全く未調整、そういう段階であります。
  126. 古川委員(古川雅司)

    ○古川委員 どうもはっきりしないわけでございますが、総理として訪米をしたい、恐らくそこにはレーガン大統領とも会っていろいろ話をしたいということで意思表明をされているのでしょうけれども、外務大臣として、ああそうですか、じゃ行っていらっしゃいと言うわけにはいかないと思うのです。時期もそう先のことではありませんし、その辺はひとつ明確にしておいていただきたいと思うのでございますが、この点いかがでございますか。
  127. 安倍国務大臣(安倍晋太郎)

    安倍国務大臣 まだ明確にできる段階じゃないのですね。私はまだ相談を受けておりませんし、そしてこれは一つの考え、発想としては出ているかもしれませんけれども、具体的にはまだ未調整の段階ですから、これがいよいよ本格的になれば、調整が進むというようなことになれば、その段階で十分これは相談はしなければならぬ、こういうふうに思います。
  128. 古川委員(古川雅司)

    ○古川委員 くどいようでございますが、きょうはもう十一月の九日でございます。段階でないときょうは大臣答弁になったわけでございますが、総理はもう明確にこうおっしゃっているわけでございますので、そうのんびり段階を待つという事態でもないと思います。ときがときでございますので、その点、総理との間の調整をひとつしっかりして、外務大臣のお考えを明らかにしていただきたい、そう希望いたしまして、次の質問に移ります。  過日、インドのガンジー前首相の葬儀に、総理とともに大臣も御参列になりました。そこで中曽根総理ソ連チーホノフ首相会談が行われたわけでございます。外務大臣も葬儀には参列をしておられるわけでございますが、一九七三年十月以来の日ソ首脳会談ということで、十一年ぶりでございます。非常に時間も短かったと思いますけれども、意義は大きかったと私は思うわけでございます。     〔委員長退席、石川委員長代理着席〕  懸案のグロムイコ外相の来日の問題でございますが、この点につきましてはグロムイコ外相またソ連側としても、領土問題で話し合おうというのなら訪日をしても仕方がない、そういう従来の訪日全面拒否という態度ではない、見方によっては一歩進んだ姿勢を示してきているわけでございます。この外相訪日につきましては、例えば日ソ経済協力を進展させるというようなテーマ、あるいは広範な国際情勢についで日ソ間の理解を深めるというテーマで、グロムイコ外相の訪日の可能性、見通しというものもつけていけるのじゃないかと思いますが、大臣としては、今後何らかの条件をつけたりあるいはまた前提を持ってさらに要請を続けていくお考えなのか、その辺のところをひとつこの際明確にしていただきたいと思います。
  129. 安倍国務大臣(安倍晋太郎)

    安倍国務大臣 まず、私がグロムイコ外務大臣ニューヨークで会ったときのことについてお話し申し上げたいと思います。  私からグロムイコ外相に対して来日を要請いたしました。今度はあなたの番ですということで要請したわけです。これに対してグロムイコ外相からは、今度は自分が日本を訪問する番であることはよくわかっております、ただ、今ここで自分がお国を訪問しても、そのときは必ずあなたが領土問題を持ち出すでしょう、そうしたら冒頭からこの領土問題でお互いに対立をして、そして物別れということになってしまえば、結局自分が行った成果というものが上がらぬのじゃないか、こういうふうな御意見がありました。私は日本外務大臣として、グロムイコさん、あなたがおいでになったときに領土問題を真っ先に取り上げるのは当然であるし、私は取り上げます、しかし日ソ間にはただ領土問題だけではありません、その他いろいろ唐問題があるわけですから、その他の問題も含めていろいろと論議対話、協議すれば、それなりの成果は上がると思うということをお答えをしたわけでございまして、これに対して明快な返事はないままに別れたわけでございます。  今回、チーホノフ首相中曽根首相との会談におきましても、このグロムイコ訪日問題が出ました。中曽根総理からも、グロムイコさんが日本に来るべきであるということを言われましたし、私も、ぜひともおいでをいただきたいということを主張したわけでございます。残念ながら、チーホノフさんからはっきりした返事はありませんでしたけれども、しかし非常に快適な、いい状況ならば、もちろんグロムイコさんは行くでしょうというふうなお話もあったわけでございます。  ただ問題は、この領土問題等につきましては残念ながら前進を見なかったわけでございますが、しかし日本首相ソ連首相がとにかく会った、会談をしたということは、まさにそれなりに大きな意義があったと私は思いますし、またソ連日本を非常に重要視しておるということは、グロムイコさんとの会談あるいはクナーエフさんとの会談、チーホノフさんとの会談で私自身感じておるところでございます。したがって、今後は我々としては、あくまでも領土問題を解決して平和条約を結ぶという基本的な姿勢を変えることはできませんけれども、そういう姿勢の中で日ソ対話というものはいろいろな面で進めていきたい、こういうふうに考えております。
  130. 古川委員(古川雅司)

    ○古川委員 次の質問に移ります。  防衛問題に関連をいたしまして二つございますが、一つは、中曽根総理が九月二十五日、日米諮問委員会の報告書の内容の実現に努力をしろという指示をされました。この内容には、我が国の国連の平和維持活動の一環として、自衛隊員の海外派遣を考慮すべきであるということが含まれているわけでございます。これは、自衛隊法の改正が必要だという含みもございますし、自衛隊の海外派兵への道につながるのではないかという非常に大きな危慎も含まれているわけでございまして、この点について、外務大臣としての御見解をこの際伺っておきたいと思います。  二つ目は、十一月二日、これは総合的な安全保障政策を検討している民間の研究機関でございますが、平和・安全保障研究所というところで、「防衛力整備についで」と題する政府への提言をまとめました。これは恐らく御存じであると思います。この中で、「日米の役割分担を進展させるため集団的自衛権問題の検討」をすべきだというふうに述べているわけでございます。その内容を引用いたしますと、「集団的自衛権を認められないという憲法解釈が日米間の軍事協力を自制させる要因であった。集団的自衛権を全面的に否認したままで日米の役割分担を進展させることは無理である。シーレーン防衛問題が登場して公海上での日米協力が具体化してくるのに伴って、検討が必要となろう」このように明確に今日の事態が集団的自衛権の行使を求めているということを指摘しているわけでございます。  こうした提言が再三行われているわけでございますし、それから、民間的な研究機関とは申しましても、総理の諮問機関であるこうした研究機関と、御存じかと思いますが、メンバーはそれぞれ共通をいたしております。政府に対してこういう提言をし、また判断を求めてくるということは今後十分考えられるわけでございます。  この二番目にお伺いした件につきましてさらに三点。一つは、集団自衛権を全面的に否認したままで日米の役割分担を進展させるということは、条約的に無理があるとお考えになっているかどうか。  二点目は、シーレーン防衛について、公海上で日米間協力が具体化してくるのに伴って集団自衛権行使問題の検討は必要であるという認識を持っていらっしゃるかどうか。  三点目は、集団自衛権を認められないという憲法解釈が日米軍事協力を自制している、コントロールしている、そういう要因になっているという認識を持っていらっしゃるかどうか。  時間の関係で質問をまとめて申し上げましたけれども、以上、明確な御答弁をいただいて私の質問を終わります。
  131. 安倍国務大臣(安倍晋太郎)

    安倍国務大臣 まず、去る十一月二日に、平和・安全保障研究所の「防衛力整備について」と題する政府への提言があったことは承知しておりますが、政府として個々の具体的な提言の一々につき見解を述べる立場ではありません。いずれにしましても、我が国憲法上集団的自衛権の行使は認められないという考えは一貫をしております。自衛のために必要最小限度の質の高い防衛力を保有するとともに、日米安保体制の円滑かつ効果的な運用を確保することにより、我が国の安全を確保すべく努めてきたところでありまして、今後ともこの方針には変わりはないわけであります。  次に、中曽根総理が九月二十五日の日米諮問委員会報告書の内容実現に努力せよ、こうした指示をされましたが、自衛隊法の改正と海外派兵にこれはつながるのではないかというふうな御質問でございます。  我が国としましては、国連の平和維持機能は、国際平和と安全の維持を第一義的目的とする国連の重要な機能と考えております。かかる機能を強化するとの観点から、国連の平和維持活動にさらに積極的に貢献する目的で、我が国としては従来から実施している財政面での協力に加え、現行法令下でいかなる協力ができるかにつき検討していきたいと考えております。  なお、現在自衛隊の派遣は検討していないということは、これまでしばしば私が述べたとおりでございます。
  132. 古川委員(古川雅司)

    ○古川委員 終わります。
  133. 石川委員長代理(石川要三)

    ○石川委員長代理 岡崎万寿秀君。     〔石川委員長代理退席、委員長着席〕
  134. 岡崎委員(岡崎万寿秀)

    ○岡崎委員 中曽根総理レーガン大統領が時を同じくして再選されました。新しいロン・ヤスの時代が始まったというふうに言われていますが、こういうときでの日本外交の方向はどうなるのか、国民も関心を持っていると思うのです。そこで、今日の国際政治、国内政治で非常に重要な問題となっている核兵器の廃絶の問題、それから民族自決権を擁護する問題、三つ目には、ただいまもちょっと触れられましたが自衛隊の海外派遣の問題、私は以上の三点について御質問いたします。  まず最初に、核兵器の廃絶に関する問題ですが、八月の五日、六日、NHKの特別番組で「世界の科学者は予見する・核戦争後の地球」という報道がございましたけれども、これは大変な反響がありまして、その後も再放送があったようです。安倍外相、これをごらんになりましたか。
  135. 安倍国務大臣(安倍晋太郎)

    安倍国務大臣 全部は見ませんでしたが、部分的には見ました。
  136. 岡崎委員(岡崎万寿秀)

    ○岡崎委員 その中で米ソの科学者の警告として、「核の冬」の問題が新たに出てきたように思いますが、これは極めて重大な問題を含んでいまして、現在世界に保有されている原爆、水爆約五万発、その一%、百メガトンが爆発するだけで世界はちりに覆われて、たとえ核の被害を受けないところでも地球が凍結し人類が死滅する、そういう非常に危険な、科学的な警告がなされているわけでございます。そういう点から見ますと、核兵器の完全禁止、全廃というのが極めて緊急な全人類的な課題になってきたというふうに考えますが、従来からそういう方向については安倍外相答弁されていますけれども、こういう「核の冬」という新たな科学者の警告を踏まえて核兵器全廃の問題についてどう認識されているのか、見解を伺いたいと思うのです。
  137. 安倍国務大臣(安倍晋太郎)

    安倍国務大臣 軍事大国となることなく、また非核三原則を堅持しております我が国にとりまして核軍縮を初めとする軍縮の促進に努力することは、みずからに課せられた責務であると考えております。去る六月、我が国外務大臣として初めてみずから軍縮会議出席をし演説を行ったのも、こうした認識に基づき、平和と軍縮の問題に対する私自身の考え及び我が国立場を明らかにするとともに、世界各国が平和と軍縮のために努力を結集するよう、そして軍縮会議が今こそ具体的行動を起こすよう訴えることが極めて重要と考えたからでございます。  もとより、現下の国際社会の平和と安全が国家間の力の均衡により保たれていることは冷厳な現実であります。我が国としては、このような現実を踏まえ力の均衡の維持に努める一方、可能な限りより低い軍備水準で国際の平和と安全を確保し得るよう、実現可能でかつ効果的な検証措置を伴った具体的な軍縮措置を一つ一つ積み重ねていくことが肝要であると考えます。  我が国としては、こうした基本的な立場を踏まえながら、今後とも核実験全面禁止、核不拡散体制維持強化、化学兵器禁止の実現等に努力するとともに、INF交渉及びSTARTという重要な米ソの間の核軍縮交渉について、我が国としての立場からその実質的な進展を訴える等の努力を行っていく考えでございます。
  138. 岡崎委員(岡崎万寿秀)

    ○岡崎委員 私が聞いたのは、端的に、国会決議にもあります核兵器の完全禁止、核兵器全廃の問題について、緊急の課題と認識されているかどうかという点です。もう一回御答弁願います。
  139. 安倍国務大臣(安倍晋太郎)

    安倍国務大臣 核がこの世からなくなることが、全く人類が熱望しているところだと思います。しかし現実には、なかなかそう簡単に一挙に廃絶というところまでいかない。ですから、これは現実的に可能な方法でそういう方向に持っていく以外にはないのではないか、私はこういうふうに思います。理想はあくまでも核の廃絶であります。
  140. 岡崎委員(岡崎万寿秀)

    ○岡崎委員 先ほど私は「核の冬」の問題を申し上げました。つまり、新しい警告、人類的な危険が迫っているという状況の中では、やはり新しい対応が日本政府としても必要だろうと思うのです。現実的というふうにおっしゃいますけれども、果たしてそれが現実的か。私は六月二十日の当委員会において、核抑止力論に立った今の米ソ軍縮交渉というのが過去四十年間成果があったのかと質問しましたところ、政府委員の方も、結果としては残念ながら現状では縮小に向かっていないということをお認めになったのです。これまでのやり方で果たして展望があるかどうか、そのことなんです。米ソが、お互いに核抑止力立場から相手を上回る軍備強化に狂奔している状況の中で、私たち米ソ間の交渉待ちでは、新しい打開はできないというふうに思うのです。やはり政府として新しい対応が必要じゃないか。その辺、大臣いかがでしょうか。
  141. 安倍国務大臣(安倍晋太郎)

    安倍国務大臣 日本日本としての最大の努力は重ねてきておりますし、今後ともやっていかなければならぬ。しかし、日本努力といってもそれは限界があるわけで、核を巨大に持っているのは米ソですから、米ソ交渉して、そうして軍縮を進めることが最も大事なことであろう、我々は積極的にそうした方向を支援していくということもまた我々の外交努力一つ大きな課題であろう、私はこういうふうに思っています。
  142. 岡崎委員(岡崎万寿秀)

    ○岡崎委員 核を持っているのは確かに米ソです。しかし米ソ交渉待ちでは、これまで四十年間成果が何ら上がっていない、この繰り返しではだめだということが、世界の科学者が警告している今日の状況を生んでいると思うのですね。そういう点で、私たちは単に米ソ交渉待ちではなくて、世界の世論をもっと動員してくる、核兵器廃絶の各国政府の国連その他での意見を大いに結集して核軍拡競争を盛んにあおっている米ソ両国に迫っていく、その手を抑えることが必要だろうと思うのです。  そういう点で、日本政府がこれまで国連でどういう態度をとってきたのか。私は、日本政府が国連に加盟した後の核不使用に関する決議案や核不配備に関する決議案を調べて見ましたところ、これは前者が十二回、後者が五回あるのですが、日本は加盟した当初に一回だけ賛成していますけれども、後は全部反対ないし棄権ですね。これでは核兵器廃絶の方向に、日本政府が唯一の被爆国として責任ある態度をとっているとは思えないのです。「核の冬」という新しい問題が提起されているときだけに新しい態度が必要じゃないか。これからも外相は同じような態度をおとりになるのか。あるいは、いろいろな理由をおつけになりますけれども、ずっと全体を通じて十七回あったうちの十六回が反対ないし棄権というのは、これは日本政府姿勢そのものが核の不使用やあるいは不配備について極めて熱心じゃなかったということを証明していることになろうと思いますので、この態度を変える必要があると思いますが、この点どうでしょう。
  143. 安倍国務大臣(安倍晋太郎)

    安倍国務大臣 私は、先般ジュネーブの軍縮会議に臨みまして、日本の核政策につきまして所信を述べたわけでございますが、その中で特に強調したのは、やはりこれから大事なことは現実的な核軍縮へのアプローチでなければならぬということでありまして、日本はそういう意味で核実験禁止のための段階的な措置を提唱をいたしたわけであります。  例えば、核実験の全面禁止というのは理想としてはありますし、我々はこれを絶えず国連にも提案してまいったわけですが、しかしこれではやはり世界がついてこない。どうしても検証という問題があるわけですから、検証可能な措置、軍縮から始めていくということが大事ではないかと私は思うわけであります。  また、世界的には相当軍縮の機運というのは盛り上がっております。私は、米ソもこれを無視できないと思っております。そういう意味では、私は必ずテーブルに着いて交渉が始まるのじゃないかと思っておるわけでございますし、そういう中で大事なことは、一度に核廃絶だとか核実験の全面禁止だとか言っても、それは世界としてまとまっていかないわけですから、現実的、具体的に検証可能な手段で措置がとられることが現実的な対応としては必要であろうと思うわけでございまして、日本はそういう立場で、理想は掲げながらも、しかし現実的なアプローチをとっているというのが日本の考え方でありますし、今後もその方針を進めでまいりたいと思っております。
  144. 岡崎委員(岡崎万寿秀)

    ○岡崎委員 外相は何回となく現実的とおっしゃるけれども、過去四十年の歴史を見るとちっとも現実的でなかった。やはり私たちは、日本政府として大いに検討すべきじゃないかというふうに思うのですが、私が聞いたのは国連での態度です。これは現実的に国連で不使用の決議案その他が出るわけですね。これに対して現実的に対応して、それこそこれまでのような反対ないし棄権ではなくて賛成して、世界の不使用決議あるいは不配備などのそういう方向について日本政府も大いに参加すべきじゃないかというふうに思うのですが、この点についてどうです。国連の問題です。
  145. 安倍国務大臣(安倍晋太郎)

    安倍国務大臣 ですから、申し上げましたように、一方的な検証というような問題を無視した決議案、ただ理想だけを掲げた、あるいはまた政治的な一方的な決議案ということだけでは効果がないわけでありますし、多くの賛成を得られないわけですから、日本の場合はそうしたことも踏まえながら、やはり現実的に検証可能なそうした核の決議に対してはこれまでも賛成もしておりますし、これからも積極的に推進をしていこうという日本の態度は一貫しておりますし、今後とも変わりません。
  146. 岡崎委員(岡崎万寿秀)

    ○岡崎委員 不使用決議案というのは検証は要らないのですよね。それは、単なる日本政府のこれまでとった態度を繰り返すということのお答えにすぎないのであって、ちっとも変わらない。これでは、危険な状況から新しく日本が被爆国としての責任ある対応をとろうという姿勢がないというふうに言わざるを得ないと思うのです。  残念ですが、時間の都合もありますので、私は第二の民族自決権の問題に移りたいと思います。  中米のニカラグアの問題です。御承知のように先日国政選挙が行われまして、八二%の投票で与党のサンディニスタ民族解放戦線は六八%の得票を得ています。レーガン政権は、これは茶番劇だというふうに言っていますけれども、多少一部の野党のボイコットがあったにせよ、国民の八割が参加した意思は否定できないと思うのです。民主政治立場からこれを尊重する必要がある、尊重さるべきであるというふうに思いますが、大臣いかがでしょうか。
  147. 安倍国務大臣(安倍晋太郎)

    安倍国務大臣 これはもちろん民主的に行われたとするならば、尊重されなければならぬと思います。
  148. 岡崎委員(岡崎万寿秀)

    ○岡崎委員 そうしますと、アメリカは中米を歴史的にアメリカの裏庭というふうに認識している点がありまして、人民革命政府ということについて、これまでゲリラを支援するとか機雷封鎖をするとかさまざまな軍事干渉をやってきたわけですが、レーガン大統領再選後直ちに、既にもう報道されていますけれども、二隻のフリゲート艦がニカラグアの領海を侵犯しているわけで、今、直接軍事干渉の危険が迫っている。そういう点の口実としまして、ミグ戦闘機の配備の問題とか滑走路の問題とか挙げていますけれども、アメリカ自身が、ホンジュラスとかコスタリカあたりのゲリラを支援し、そして飛行機も飛ばしている状況の中で、祖国防衛のための一定の措置をとるのは、民族自決権の立場からいっても当然だと思うのですね。これは否定できないと思うのです。  大臣、民族自決権という立場をとるならば、自分の国は自分で守るという見地から、そういう一定の武装をするのは当然であるし、これを軍事干渉の口実としてはいけない、こういう見地にお立ちになると思いますけれども、いかがでしょう。
  149. 安倍国務大臣(安倍晋太郎)

    安倍国務大臣 民族自決権というのは当然守られなければならぬと思いますが、しかしこのニカラグアの問題、事実関係というものをもう少しはっきりさせなければならぬと思いますし、我々はいずれにしても、ニカラグア問題についてはコンタドーラの決議がございました。このコンタドーラの決議というものを支持いたしておりまして、この決議によって平和的にニカラグアの紛争というものが解決されることを日本政府としては望んでおるわけでございます。今後ともそうしたコンタドーラというものを支持していきたい、こういうふうに思っております。
  150. 岡崎委員(岡崎万寿秀)

    ○岡崎委員 私、直接七月に中米、そしてニカラグアを訪問しましたので、この目で見てきましたけれども、やはりこれは民族自決権という問題で、東西問題という形で事をそらしてはいけないと思っているのですが、コンタドーラ・グループの意見もその見地なんですね。そうしますと、その国が一定の武装をするということに対して、軍事干渉の口実にしないということは当然であると思うのですね。その点に絞ってどうでしょう。その国が祖国防衛のために一定の措置をとること、それを他国がとやかく言って軍事干渉の口実にしてはいけないということ、これは当然でございましょう。
  151. 安倍国務大臣(安倍晋太郎)

    安倍国務大臣 日本としましては、紛争は平和的に解決され、処理されるべきものだ、こういうのが武力によって解決されるべきじゃないというのが日本基本的な外交姿勢ですから、こういう立場で我々は平和外交を推進しでいるわけです。
  152. 岡崎委員(岡崎万寿秀)

    ○岡崎委員 それならば外相レーガン大統領は第一期ではグレナダを侵攻したことは事実です。第二期に、今度は中米・ニカラグアに侵攻する動きが今、極めて濃厚になっている。ロン・ヤスの時代と言われるならば、私は、こうしたレーガン政権による中米・カリブ海地域の軍事干渉を許すべきじゃないと思います。親密な関係にあるだけに、日本からレーガン政権に対してもうグレナダのようなことはするな、自分たちの国の国民の圧倒的な支持を受けて、国家再建に励んでいるニカラグアヘの軍事干渉をやめなさいということを言うべきではないかと思いますが、これは外相いかがでしょうか。
  153. 安倍国務大臣(安倍晋太郎)

    安倍国務大臣 これはもう何回も申し上げましたように、中米の紛争に対して日本外交姿勢というのは、コンタドーラの平和解決への動きを支持していくということでございます。あくまでも日本平和外交基本に徹して、平和的に処理、解決されるべきものであるというのが日本の考えてあります。
  154. 岡崎委員(岡崎万寿秀)

    ○岡崎委員 コンタドーラの立場を支持するのはわかりました。  じゃ、その立場から、たとえ中米の問題でありましても、これはやはり世界の平和にかかわる問題、民族の自決権にかかわる問題なんですね。だからレーガン政権安倍外相として、あるいは中曽根総理としましても、当然軍事干渉をやるべきじゃないということを言うべきだと思うのですが、その点に限っていかがでしょうか、言われるか、言われないか。
  155. 安倍国務大臣(安倍晋太郎)

    安倍国務大臣 今、日本日本基本的な外交姿勢というものを世界に対して表明することで十分である、同時にまた、中米紛争に対しては、日本のそうした考えに基づく先ほど申し上げましたような方向をはっきりさせれば、それで私は十分である、こういうふうに考えております。
  156. 岡崎委員(岡崎万寿秀)

    ○岡崎委員 平和外交とおっしゃりながら、グレナダ侵攻のときは、サッチャー・イギリス首相でさえも間違っているということを言ったのです。やはりそういう姿勢が必要であろうと思いますが、どうも第二次ロン・ヤスの時代に入った今日でも、そういう自主的な立場での積極的な提言をお示しにならないのは残念に思います。  第三の問題は、自衛隊の海外派兵に関する件です。外相自身アメリカで、これは九月二十六日でございましたが、記者会見において、自衛隊の海外派遣は現在検討してない、自衛隊法を改正する考えはない、きょうもおっしゃいましたけれども、そういうことを述べられたわけでございます。この自衛隊の海外派遣問題では、これまでも例えば園田外相が一九七八年三月二十二日の当委員会で、「憲法に海外派遣を禁止してあるということも考えて、」医療班、補給班、衛生班、通信などを出して協力するという意見もあるが、「海外派遣の一つの突破口になって、それから崩れる可能性国民の方からも非難されるおそれも」ある、こういうふうに答弁されています。また、伊東外相も一九八○年の十月三十一日の参議院の安保及び沖縄・北方特別委員会で、「私は、政策的に、法律が許しても自衛隊員を派遣するということは平和活動のためにもやらぬ方がいい」「外務省としては私の考えが統一見解だ」、こういうふうにはっきりと述べられているわけでありますが、安倍外相アメリカでの記者会見の内容、この統一見解と同じ見地と理解してよろしゅうございますか。
  157. 安倍国務大臣(安倍晋太郎)

    安倍国務大臣 基本的には一緒ですね。  我が国としましては、国連の平和維持機能は国際平和と安全の維持を第一義的目的とする国連の重要な機能と考えております。こうした機能を強化するとの観点から、国連の平和維持活動にさらに積極的に貢献する目的で、我が国としては従来から実施している財政面での協力に加え、現行法令下でいかなる協力ができるかにつき検討していきたいと考えております。現在自衛隊の派遣は検討していない、さらにまた自衛隊法の改正についても検討していない、これを行う考えはないということは、私がこれまでも国会等でしばしば申し述べたとおりであります。
  158. 岡崎委員(岡崎万寿秀)

    ○岡崎委員 自衛隊の海外派遣については、かつての侵略戦争日本アジア諸国に侵犯したという痛い戦争体験に根差していますし、平和憲法でもはっきり禁止している点でございますが、そういう国民世論も強いわけです。たとえ国連の平和維持活動であっても制服の派遣はしない、これは当然の立場であろうと思います。  ところが、九月に発表されました日米諮問委員会での報告書では、「可能であれば制服要員の派遣を通じて参加すること」も、これは準備と訳した方が正確です、準備すべきであろうと述べています。これに関しまして、十月十六日の衆議院の安保特別委員会政府委員答弁は、総理の指示に基づいて日米諮問委員会の報告をこの部分を含めて検討するというふうに答弁されているわけですね。つまり、制服要員の派遣を通じて参加することを準備するということを含めて検討するということですが、これは従来の、先ほどもまた確認されました政府の統一見解と矛盾する立場ではないかというふうに思いますが、いかがでしょうか。
  159. 安倍国務大臣(安倍晋太郎)

    安倍国務大臣 いずれにしても政府としましては、先ほども申し上げましたように、現行法令の範囲内でこの国連平和維持活動に対する協力は行うということでありまして、自衛隊法を改正するとかあるいは自衛隊の派遣ということは考えてないということは、これまで私が何回も述べたとおりであります。
  160. 岡崎委員(岡崎万寿秀)

    ○岡崎委員 それではお聞きしましょう。従来の法令の範囲内、つまり現在の自衛隊法の範囲内、その枠内では制服の派遣は可能と考えられるか、その点いかがでしょうか。
  161. 山田説明員(山田中正)

    ○山田説明員 国連の平和維持活動への参加につきましての政府の統一見解、これは昭和五十五年の十月二十八日に答弁書の形で提出いたしておりますが、その要旨を申し上げますと、いわゆる国連軍というものにつきましてもそれぞれの場合におきまして任務、目的が異なりますので、その参加の可否を一律に論ずることはできないのでございますが、その平和維持活動の「目的・任務が武力行使を伴うものであれば、自衛隊がこれに参加することは憲法上許されないと考えている。これに対し、当該「国連軍」の目的・任務が武力行使を伴わないものであれば、自衛隊がこれに参加することは憲法上許されないわけではないが、現行自衛隊法上は自衛隊にそのような任務を与えていないので、これに参加することは許されないと考えている。」というのが政府の正式な立場でございます。  ただ、先ほどから大臣繰り返し御答弁申し上げておられますように、自衛隊の派遣、自衛隊法の改正は現在考えておりません。
  162. 岡崎委員(岡崎万寿秀)

    ○岡崎委員 自衛隊法の法令の枠内だったら制服要員の派遣はできないというふうに、はっきりこれはお認めになりますね。統一見解、そのように理解してよろしいですね。
  163. 山田説明員(山田中正)

    ○山田説明員 私、先ほど統一見解を読ませていただきましたように、創設されます国連軍の任務が武力行使を伴わないものであれば、憲法上これに自衛隊員の派遣が許されないわけではないが、現行自衛隊法ではそのような任務が与えられておらないということでございます。
  164. 岡崎委員(岡崎万寿秀)

    ○岡崎委員 時間が少ないから、繰り返しじゃなくて端的に言ってもらいたいのですよ。要するにできないということでしょう。  安倍外相にお尋ねしますけれども、現在検討してないとおっしゃいますね。これからも検討しないということですか。そう理解してよろしゅうございますか。
  165. 安倍国務大臣(安倍晋太郎)

    安倍国務大臣 今政府としては検討してない、こういうことです。
  166. 岡崎委員(岡崎万寿秀)

    ○岡崎委員 これからもと聞いているのです。外相、これからはどうかということです。
  167. 安倍国務大臣(安倍晋太郎)

    安倍国務大臣 これからはどういう政府ができるかわかりませんから、今の政府における私の責任において申し上げたわけです。
  168. 岡崎委員(岡崎万寿秀)

    ○岡崎委員 そうしますと、政府委員の方の答弁ですね、自衛隊制服の派遣を含めて検討するということと矛盾するように思いますけれども、お取り消しになりますか。政府委員の方が、日米諮問委員会での報告に基づいて、この部分を含めて検討すると言っていますからね。今政府は検討しないとおっしゃいました。じゃ、前の政府委員答弁を取り消してもらいたいと思うのです。端的にお願いしますよ。
  169. 山田説明員(山田中正)

    ○山田説明員 先生御指摘になりました答弁、私が行いました答弁だろうと思いますが、私がそのとき申しましたのは、日米諮問委員会の報告に述べてありますことを検討するということを申し上げたわけでございましてただ、そのときも、先ほど繰り返し大臣が申し上げておられますように、自衛隊員の派遣、自衛隊法の改正は現在考えていないということをその同じ場で私、答弁申し上げております。
  170. 岡崎委員(岡崎万寿秀)

    ○岡崎委員 全然答えになっていませんね。要するに、日米諮問委員会の報告では検討すると言っているのでしょう。しかし、今大臣は、これからというふうに長期的には言われませんが、少なくとも今の政府は検討しないとおっしゃった。その検討するということと検討しないということとは矛盾するのですよ。そのことを聞いているのです。端的にお答え願います。
  171. 山田説明員(山田中正)

    ○山田説明員 私の記憶が正しければ、そのとき答弁申し上げましたのは、日米諮問委員会の報告の中にございます、可能であれば制服要員というそこを私が削除をしてということではない、そういう報告書が出ておりますのでそれを検討はいたします、ただ、自衛隊の派遣は考えておりませんと、こういうふうに申し上げた次第でございます。
  172. 岡崎委員(岡崎万寿秀)

    ○岡崎委員 何かわかりにくいことをおっしゃるけれども、要するに、じゃ、この部分は除いて検討するというふうに理解してよろしゅうございますか、大臣。この部分は検討することになっているのですよ。しかし、政府は検討しないというふうに大臣おっしゃった。そうすると、この部分は除いて、全体については検討するというふうに理解してよろしいですね。
  173. 安倍国務大臣(安倍晋太郎)

    安倍国務大臣 私が言ったことが、政府責任者の一人として言っておることですから、最も責任の持てる発言でありますが、私は自衛隊の派遣は考えていないし、あるいは自衛隊法の改正は少なくとも考えていない、現行法令の中での平和維持活動への参加を行うということですから。ただ、諮問委員会の答申については、全体的に検討するということは、それはそれでいいのじゃないかと思います。しかし、その中でそうした問題はありますから、これについては政府の態度をはっきり打ち出しているわけですから、ちっとも矛盾はないと思います。
  174. 岡崎委員(岡崎万寿秀)

    ○岡崎委員 いや、大いに矛盾していますよ。これは検討することになっていますからね。先ほどもおっしゃったように、私の見解が政府を代表するのだとおっしゃるのだったら、この部分は検討しない、この部分は除くということをはっきりおっしゃらないといけないと思うのですよ。そう理解してよろしゅうございますか。
  175. 安倍国務大臣(安倍晋太郎)

    安倍国務大臣 その点に関しては、私の言っているとおりです。
  176. 岡崎委員(岡崎万寿秀)

    ○岡崎委員 じゃ、これははっきり確認しましょう。もうあなたはいいです。あなたがおっしゃったことと矛盾することははっきりしていますからね。  私は、これまで新しいロン・ヤス時代と言われる中での日米外交の問題について聞きました。自衛隊派遣についてはややはっきりいたしましたが、その前の核兵器全廃の問題あるいは民族自決権の問題等については、従来のアメリカ追随と言われても仕方がないような、そういう方針が少しも変わっていない。私はこのことを残念に思うわけですが、そういう点ではもっと自主的な立場に立って日米外交を進めていただきたいということを希望するわけです。このままでは、一層アメリカ外交の渦に巻き込まれる危険があることを指摘して、私の発言を終わります。
  177. 中島委員長(中島源太郎)

    中島委員長 本日は、これにて散会いたします。     午後二時五十二分散会