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安倍国務大臣 私が
創造的外交と言ったのは、これからの
日本外交は今までのような受け身ではなくて、もっと能動的でなければならないという気持ちを込めて言っておるわけであります。私も、
外務大臣をやりまして一年数カ月ですが、二十一回外国に出張し、多くの国際的な指導者にも会いまして非常に感じたことは、
日本の存在が
世界の中で日増しに重くなってきている、
発言権も強くなっておりますし、国際的な役割も非常に期待されるようになってきた。そこで、今までのような
日本の
外交のあり方では国際社会で浮いてしまうのじゃないか、もっと国際社会から信頼されるような
外交というものを進めていかなければならない。
そして、今
世界情勢は決して安定していない、ある
意味においては非常に危険な
状況にある、その中で
日本が取り組んでいかなければならないのは平和
外交の面であります。そういうことで、
日本の
外交の道というのは、
アメリカにもできない、ソ連にもできない、
日本でなければできないというふうな面の
外交の
方向というものがいろいろと出てきたと思っております。これを積極的にやり抜いていくということが
世界の期待にこたえ、
世界の信頼をつなぎ、そして
日本が国際社会においてこれからも堂々として生きていけることになるのじゃないか、こういうふうに思っております。
しかし、
日本の場合は、もちろん基本的な
外交の姿勢というのはあるわけでございます。いわばこの
外交の
原則というのは、御
承知のように自由主義国家群の一員として
アメリカとの間の基軸関係を強化していく、さらにまたヨーロッパ諸国との連帯関係を拡大していく、そうした日米欧の関係の強化、連帯、さらにまたアジアの一国としてのアジア
外交を積極的に推進するということももちろんでありますし、さらにまたソ連を初めとする東側の国との協調とか対話を進めていくということも、これまで
日本外交の歩いてきた道ですし、これからもこの道は
原則として守って進めていかなければならぬと思います。
そうした基本的な
原則は守りながら、その上に立って今の
日本の国際的な
発言力を踏まえて、
アメリカにできない、ソ連にできないというふうな積極的な平和
外交、これは具体的に言えば、今お話がありましたようなイラン・イラク
外交なんかもその
一つに入るのじゃないかと私は思っておるわけでございます。これは、自由国家群の中でイラン、イラクと物の言える、両方とも非常に親しくつき合っている国は
日本だけと言っても過言でないわけですから、そういう中でイラン、イラクの平和解決へ向かって
日本が何らかの役割を果たしていく。
私は、戦争が拡大しないで今日何とか保っておるのは、
日本の役割というのがある程度あったのじゃないか、こういうふうに思いますし、あるいは軍縮の面におきましても、先ほどからお話がありましたような全面核実験禁止といった理想論を掲げておりましたが、検証可能な核実験禁止措置から、さらに全面的な核実験禁止という
方向へ具体的なアプローチをしていくということも、
一つの新しいやり方であるとも思いますし、あるいはカンボジアに対する三提案、あるいはまた中国と韓国との間の非政治面の交流といった面について、これは中国も韓国もそれぞれ両国が直接的にアプローチできないという中で、
日本がそれなりに動いた役割というのは相当あったのじゃないか、こういうことなんかが朝鮮半島の緊張緩和にはこれから何らかの役割を果たしていくのじゃないかと思うわけです。
そういう
意味で、これから
日本が積極的に
日本でなければなかなかできないような役割を果たしていく、これこそまさに創造的といいますか、クリエーティブな
外交ではないだろうか、そういうことを言っておるわけでございまして、全体的には先ほど申し上げましたように
世界の中の役割を果たしていく、それもただ受動的な姿勢じゃなくて能動的に果たしていかなければならぬ、そういう時代に来たという
認識で今取り組んでおるわけであります。