○瀬崎説明員 マハティールさんは、一九八一年の七月に、前内閣総理
大臣のフセイン・オンさんが非常に高齢になりまして引退された後を受けまして、八一年七月から政権を担当されている方でございます。八二年の四月に国会を解散いたしまして、その選挙で非常に大勝されまして、現在では、百五十議席くらいのうちの百三十四の議席を占めるということで、連立内閣ではございますけれ
ども、非常に安定した政権を担当されておりまして、この政治的な安定した基盤を踏まえまして経済政策を次々と打ち出されているわけでございます。
そこで、現在のマハティールさんの一番基本的な政策は、いわゆる東方政策、ルックイーストということでございますが、これは一九八一年に政権を担当された直後に打ち出された方針でございますが、従来のマレーシアの政策というのは、どちらかというと非常に西欧向きであった。かつてイギリス、それからスペイン、ポルトガル等が十六世紀から十七世紀にかけましてアジアに入ってきまして、それから徐々にアジアと西欧の
交流が開かれた段階では、確かに西欧の
文明というのは非常にエリートの
文明でありまして、そういったエリート
文明の影響を受けたアジアの近代化というのが西欧化の道をたどったのは当然である。ところが、最近の西欧の
文明を見ておりますと、非常に衰退期にあるのではないか。
一つは、マハティールさんが非常に強調されておりますことは、西欧の個人主義というものが全体の利益、国の利益というものを度外視いたしまして強調されている結果、社会が非常に混乱しておる。西欧のように非常に富んでいる社会ではそういったことも許されるかもしれませんけれ
ども、マレーシアのように開発途上にある国におきましてはこういった余裕はないわけでございますから、衰退する
文明ではなくて、もっとほかのところを見る必要があるだろう。
そこで、特に注目されておりますのは
日本と韓国でございますが、
日本と韓国におきましては、全体の利益と調和を図りつつ、個人の権利ということが主張されている。しかも、民主主義国家でありまして、ここは非常に学ぶところがあるのではないか。特にマハティールさんが強調されておりますことは、労働倫理でございまして、勤勉、それから組織に対する忠誠心、規律、こういった労働倫理というものが社会の開発の原動力になっておる。ここは従来の西寄りの哲学を学ぶよりかも、韓国とか
日本の労働倫理あるいは経営哲学、こういうことをマレーシアとしては大いに学ぶべきでありましょうということで、いわゆるルックイースト、私
どもは東方政策と訳しておるわけでございますが、こういった政策をとり出したということでございます。そこで、ただ単に哲学的にこういった理念を打ち出すだけではなくて、具体的に裏づけを幾つかしているわけでございます。
その第一は、例えば
日本に産業技術研修員を送るとか、あるいは
日本の大学に留学生を送るというようなことをやっております。また、私
どもといたしましては、こういったマレーシアの人づくり計画に対しまして、農業開発、中小企業の振興、それからエネルギーの開発、人づくりというようなことが
日本の経済
協力の基本的な理念でございますが、こういった人づくりを重視しておるということを踏まえまして、マレーシアに対しましても非常に
協力しているということでございます。
それから株式会社論でございますが、これば八三年二月、マレーシアの公務員研修所で初めてマハティールさんが演説の中で言ったことでございます。要旨は、これもまた
日本に学べというところに尽きるわけでございますが、
日本では官と民間との協調ということが非常に充実しておる。したがって、官の能率化、それから民間の活性化、こういうことを相互に協調させつつやることがマレーシア経済開発にとって非常に有益ではないかということでマレーシア株式会社論というのを打ち出したわけでございまして、先般、現在の五カ年計画の見直しの中間
報告みたいなのが出たわけでございますけれ
ども、その中でも官側と民間との協調をいかに図るべきかということで、この株式会社論を裏づけるような政策が打ち出されておるわけでございます。
それから人口の問題でございますが、この問題につきましては、本年の三月二十九日、マレーシアの国会におきましてマハティールさんが、現在の千四百七十万の人口を七千万人にすべきであるということを言いまして、私
どもとしてはどういうことかということでいろいろ調べたわけでございますけれ
ども、これは基本的には人口が増加いたしますと、国の経済単位も大きくなりますし、市場も大きくなるということでございまして、マレーシアの経済規模の拡大ということを念頭に置いたわけでございますが、詳細調べますと、これは百十五年間にそういった人口の五倍増、七千万人ということを言っておるわけでございまして、二十一世紀ではなくて二十二世紀にそういった規模になるだろうということ空言ったということがわかっておるわけでございます。したがいまして、この人口問題につきましては、長期的に、現在のマレーシアの人口増加の趨勢が大体二%台でございますので、二十二世紀になりますとその程度の人口になるのではないかということで、格別奇異なこと空言ったというふうには私
どもは受けとめていないわけでございます。