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1984-05-11 第101回国会 衆議院 外務委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年五月十一日(金曜日)     午前十時三十一分開議 出席委員   委員長 中島源太郎君    理事 石川 要三君 理事 野上  徹君    理事 浜田卓二郎君 理事 山下 元利君    理事 高沢 寅男君 理事 土井たか子君    理事 古川 雅司君 理事 河村  勝君       鍵田忠三郎君    金子原二郎君       近藤 元次君    仲村 正治君       西山敬次郎君    野中 広務君       井上 普方君    河上 民雄君       小林  進君    八木  昇君       玉城 栄一君    渡部 一郎君       木下敬之助君    岡崎万寿秀君  出席国務大臣         外 務 大 臣 安倍晋太郎君  出席政府委員         外務政務次官  北川 石松君         外務大臣官房外         務参事官    斉藤 邦彦君         外務大臣官房領         事移住部長   谷田 正躬君         外務省中南米局         長       堂ノ脇光朗君         外務省条約局長 小和田 恒君         外務省情報文化         局長      三宅 和助君  委員外出席者         外務大臣官房審         議官      川村 知也君         外務大臣官房審         議官      遠藤 哲也君         外務大臣官房審         議官      市岡 克博君         外務大臣官房外         務参事官    瀬崎 克己君         外務大臣官房調         査企画部長   岡崎 久彦君         文部省学術国際         局ユネスコ国際         部企画連絡課長 内田 弘保君         文部省学術国際         局ユネスコ国際         部留学生課長  岡村  豊君         郵政省郵務局業         務課長     伊藤 修介君         郵政省貯金局第         一業務課国際室         長       舘野 忠男君         郵政省電気通信         政策局国際課長 長谷川憲正君         郵政省電波監理         局周波数課長  宍戸 成夫君         外務委員会調査         室長      高橋 文雄君     ————————————— 委員の異動 五月十一日  辞任         補欠選任   町村 信孝君     金子原二郎君 同日  辞任         補欠選任   金子原二郎君     町村 信孝君     ————————————— 五月十日  朝鮮民主主義人民共和国へ帰還した日本人妻の  里帰り促進等に関する請願大塚雄司紹介)  (第四三二六号)  同(奥野誠亮紹介)(第四三二七号)  同(古賀誠紹介)(第四三二八号)  同(柴田弘紹介)(第四三二九号)  同(稲富稜人君紹介)(第四四二三号)  同(中川昭一紹介)(第四四二四号)  同(林義郎紹介)(第四四二五号)  同(松野幸泰紹介)(第四四二六号)  同(吉田之久君紹介)(第四四二七号)  同(若林正俊紹介)(第四四二八号)  核巡航ミサイル・トマホーク米太平洋艦隊艦  船への配備日本寄港反対等に関する請願(梅  田勝紹介)(第四四二二号)同月十一日  朝鮮民主主義人民共和国へ帰還した日本人妻の  里帰り促進等に関する請願外一件(大久保直彦  君紹介)(第四五〇五号)  同(鍵田忠三郎紹介)(第四五〇六号)  同(津島雄二紹介)(第四五〇七号)  同(上草義輝紹介)(第四五六九号)  同(志賀節紹介)(第四五七〇号)  同(鈴木宗男紹介)(第四五七一号)  同(唐沢俊二郎紹介)(第四七一六号)  同(野上徹紹介)(第四七一七号)  同(平石磨作太郎紹介)(第四七一八号)  核巡航ミサイル・トマホーク米太平洋艦隊艦  船への配備日本寄港反対等に関する請願(梅  田勝紹介)(第四五六八号)  婦人に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関す  る条約早期批准等に関する請願河上民雄君  紹介)(第四七一〇号)  同(後藤茂紹介)(第四七一一号)  同外十一件(土井たか子紹介)(第四七一二  号)  同外十件(堀昌雄紹介)(第四七一三号)  非核三原則厳守等に関する請願外一件(井上一  成君紹介)(第四七一四号)  同(上田卓三紹介)(第四七一五号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  日本国マレイシアとの間の国際郵便為替の交  換に関する約定締結について承認を求めるの  件(条約第五号)(参議院送付)  日本国政府ペルー共和国政府との間の文化協  定の締結について承認を求めるの件(条約第六  号)(参議院送付)  国際電気通信条約及び紛争義務的解決に関す  る国際電気通信条約(千九百八十二年ナイロビ  )  の選択追加議定書締結について承認を求める  の件(条約第八号)(参議院送付)      ————◇—————
  2. 中島源太郎

    ○中島委員長 これより会議を開きます。  日本国マレイシアとの間の国際郵便為替交換に関する約定締結について承認を求めるの件、日本国政府ペルー共和国政府との間の文化協定締結について承認を求めるの件及び国際電気通信条約及び紛争義務的解決に関する国際電気通信条約(千九百八十二年ナイロビ)の選択追加議定書締結について承認を求めるの件の各件を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。河上民雄君。
  3. 河上民雄

    河上委員 私は、今委員長が読み上げられました三件のうち、日本国政府ペルー共和国政府との間の文化協定について主として質問をいたしたいと思います。  先般、海外日系人大会第二十五回大会というのが東京で開かれまして、私もその議長団の一人を務めました。世界各国からその地で活躍をしておられる海外日系人の代表の方が東京にお集まりになったわけでありますが、その中にもペルーからお見えになった方もございまして、私は、そうした人たちのためにも、またその人たち活動をいたしております居住国国民との間の友好関係促進するためにもこの文化協定が役に立つことを期待しておるものでございます。  ただ、その前に一つだけ安倍外務大臣お尋ねをしたいのでございますが、今問題になっておりますオリンピックのボイコット問題につきまして既に大臣は、ソ連に対しいわば翻意を求めるという立場努力をされるというふうに言明されておるわけでございますけれども、その後の状況を見ますと、ソ連だけではなくて、これに同調する国もだんだんふえてきておるのでございますが、こうした展開に対しまして、日本政府として、外務大臣として、そうした国々に対してもソ連と同じような角度で対応、努力をされるおつもりがおありなのかどうか、その点をちょっと伺っておきたいと思います。
  4. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 オリンピックソ連不参加を表明して以来、同調国がふえておるようでありまして、日本としましては何とか全世界が参加して盛大にオリンピックが開かれることを期待しておるだけに、大変に残念に思っております。  そこで日本立場は、ソ連不参加ということに決まったことは非常に遺憾である、何とかひとつ参加してほしいということを日本は心から期待をしておる、こういう日本立場ソ連に伝えたいと思っております。いろいろとその手続等につきまして研究をいたしておるわけでございます。IOCの委員長等大変努力をしておられるようであります。これは日本だけがどうやったからといってどうなるものでもありませんけれども、やはり日本国民オリンピックに対する率直な気持ちをソ連にも伝えたい、こういうことで近く日本のそういう真意をソ連に伝達したい、こういうふうに思っております。
  5. 河上民雄

    河上委員 大臣に重ねて確認の意味お尋ねをいたしますけれども、今ソ連に対してそういう努力をされるということでございましたが、ブルガリア、東ドイツ、その他の国々に対してもそういう努力をされるおつもりがおありかどうか、それをちょっとお尋ねをいたしておるわけです。
  6. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これからどういうことになりますか、少し見当がつきませんといいますか、非常に心配状況が出ております。各国に広がっているという心配状況が出ておりますが、やはりソ連がまず不参加ということから始まった問題ですから、まずソ連に対して日本立場を伝えたいと思っています。
  7. 河上民雄

    河上委員 この問題は非常に重大なことで、四年前にはアメリカがボイコットして日本政府がこれに同調したわけでありますけれども、四年後に因果はめぐるような形でこうなってまいりますと、また先の四年後も大変心配だというようなことになってくるわけでして、ひとつオリンピックあり方そのものについてももう少し初心に返って考えるべきときが来たように思っておりますが、この問題はまた別な機会に論じたいと思います。  きょうはペルーとの文化協定でございますので、そのことに絞ってお尋ねをいたしたいと思います。  今回のペルーとの文化協定は、日本が結んでおります文化協定としては二十四番目のものというように伺っておりますけれども、今後それ以外の国に対しても機会があれば文化協定を結んでいくというか、そうした関係を広げていくというお考えがあるのではないかと思いますが、そういうことについて何か予定心づもりというのはおありでしようか
  8. 市岡克博

    市岡説明員 御説明申し上げます。  今先生指摘予定ということにつきましては、特に確と定めているわけではございませんですが、元来文化協定と申しますのは、我が国とその国との関係我が国とその国との文化関係における実績その他を総合的に判断して締結考えるということでございますので、特に予定を立ててということではないわけでございます。
  9. 河上民雄

    河上委員 今回のペルーとの文化協定は、鈴木前総理がペルーを訪問されたときに結ぶことが決まったわけでありますが、この文化協定というのをこれまでずっと見てみますと、どうも首脳外交の一産物というような感じもしないわけではないのであります。安倍外務大臣はことし精力的に各国を回られるようでございますけれども、これから行かれます国、サウジなんかも入っているかと思いますが、そのような国々文化協定が結ばれてないところは多々あるわけですけれども安倍外務大臣としてはせっかく今後首脳外交をおやりになる中で文化協定というものもその機会に結んでいくというようなお考えはおありでしょうか。
  10. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 外交は、ただ政治面だけではなくて、やはり広く経済あるいは文化人的交流、そういう面で活発に行っていかなければならぬと思いますので、そういう立場からいえば文化交流を深めるための文化協定締結するということはそれなり外交の幅を広げる、両国間の関係をさらに深めるという意味では意義深いものでございますから、文化協定を結んでいない国につきましては、機会があれば結ぶための努力はお互いにしてみたい、こういうふうに思っております。まだ具体的に、それじゃどことどこと文化協定を結ぶという予定を立てておるわけではございません。
  11. 河上民雄

    河上委員 今回の文化協定を見ますと、その前文に、「両国国民を結ぶ伝統的な友好のきずなを認識して、文化的及び歴史的遺産を有する両国の間の文化及び教育の分野における協力促進し、かつ、発展させることを希望して、」こうなっております。  ペルーは、私ども歴史でしばしば学びますようにインカ文明というものを歴史的に背景として持っておる国でございまして、私ども学生時代和辻哲郎先生の「鎖国」という本のもとになりました講義を伺いましたときにも、インカ帝国西洋文明に触れて崩壊していくプロセス大変感銘深くまた衝撃を受けて聞いたのを思い起こすのであります。文化ということになりますと、特に歴史的遺産ということになりますと、私は、インカ文明というものについてもこの際日本としても相当の考慮を払うべきではないかと思うのでありますが、インカ文明出土品を多く集めて、ペルー在留邦人の誇りともなっておりましたが、五十七年惜しくも亡くなられました天野芳太郎先生、亡くなられる前に国際交流基金賞も受けられておりますけれども、その天野先生が創設されました天野記念館というのが、その後新聞等によりますとこれを本当に存続できるかどうかというので一つ大きな問題になっておるようでございます。これはあくまでプライベートなものだあるいはペルーでできたものだからということだけで済むのかどうか。これにつきまして、せっかく国際交流基金賞まで贈った日本としてこうした存続問題についてもっと熱意を持つべきではないかと思うのでありますが、外務省あるいは文部省でこうした問題についてどのように承知しており、また今後どのようにしていきたいと思っておられますかをお尋ねいたします。
  12. 市岡克博

    市岡説明員 御説明申し上げます。  御指摘天野博物館につきましては、我が方政府といたしましてもこの大きな価値を考えまして、これの維持運営を長期的に可能にすることを種々検討いたしました。そこで、昭和五十四年のことでございますが、文化交流促進関係の経費の中に補正予算において三千万円を計上いたしまして、国際交流基金を通じてこれを天野博物館研究補助のためとして交付したという事実がございます。このお金は天野博物館におきまして一定の割合で運用されておりまして、運用された果実がこの博物館事業費に充てられているというように承知いたしております。  現在のところ、こういうこともございまして、この博物館運営につきましてはその後特に非常な困難を生じているという報告には接しておりませんので、我が方の協力等もあり、また同博物館のみずからの努力もあって、比較的順調に運営が行われているのではあるまいかというように考えている次第でございます。
  13. 河上民雄

    河上委員 新聞などでもそれが問題になることでございますので、もしこれが何か運営が大変困難になるということですと、今回のペルーとの間の文化協定の趣旨も生かされないと思いますので、今後とも国際交流基金などを通じて、もしそういう事態が起こりました場合には、日本政府関心を示すとともに、それなり努力をするというふうに今の御答弁を理解してよろしゅうございますか。
  14. 市岡克博

    市岡説明員 この種の活動はもちろんペルー国における民間の活動でございますが、我々といたしましても非常に価値あるものと考えております。もちろん、我が方におきましては、国際交流基金も含めてでございますが、財政的に制約された中ではございますが、こういう博物館が非常な困難に陥るというようなことがあってはならないと考えておりまして、そういう制約の中でございますが、できる限りのことを検討する必要があるというように考えております。
  15. 河上民雄

    河上委員 ひとつよろしくお願いをいたします。  先日、海外日系人大会というのが東京で開かれまして、そのときに世界各国から集まられました海外日系人方々が決議をいたしまして、要望書を置いてそれぞれの国に帰られたのでありますけれども、その中の一つに「日本語教育の振興について」というのがございまして、これは海外日系人に対する日本語教育と、それから最近海外における日本語熱というのが従来から比べますと非常に高まっておるのだけれども、これについてもう少し日本側熱意を持ってほしい、こういうような意味のことが強く要望されました。私はそのことを政府にもお伝えしたいと思うのでありますけれども、その中で次のようなことが指摘されておるのであります。   しかしながら、米州・東南アジア各国においては、寺小屋式教育施設のもとで現地日系人が中心となり日本語教育が続けられております。ところが、教師教科書教材等が極度に不足を告げているのが現状であります。言葉は文化交流に重要な鍵であることは言をまちません。一層の御支援、御協力をお願い申し上げる次第であります。 こうなっておるのでありますけれども、さらに伺いますと、日本語ができるからといって日本語教師としてすぐれているかどうかはまた一つ問題があることは皆さん御承知のとおりでありまして、日本語先生を送るということだけではなくて、むしろ日本語先生を訓練する先生を送ってほしいというような要望も出ておったのでございます。  こういう日本語教育につきまして、外務省なりあるいは文部省はどのように対応しておられますか。これはひとりペルーだけではなく、今申しましたように、アメリカあるいは中南米、そして東南アジア等状況について教えていただきたいと思います。
  16. 市岡克博

    市岡説明員 海外におきます日本語普及は、諸外国我が国に対する理解を深め、各国との友好関係促進に大きな役割を果たすものでございます。もちろん外務省としても、従来より国際交流基金等を通じまして諸外国日本語教育機関に対する日本語教育専門家の派遣とか、それから現地におきます日本語講座を担当される講師の謝金を助成するとか、それから現地にありまして日本語を教えている講師日本人でない方々でございますが、そういう方々日本に招いて、再訓練と申しますかブラッシュアップのために勉強していただくというような事業を積極的に実施してまいっておるわけでございます。  特に、我々、こういう関係でさらに進めていく必要があるというように思っておりますのは、今後の問題でございますが、できる限り現地において現地の方が日本語を教えられる能力を身につけていただくということが肝要でございまして、日本人が行って教えるということもさることながら、今申しましたようなことが肝要、こういうように考えておるわけでございます。  ちなみに、世界全体をとってのことでございますが、現地方々日本に招聘し、あるいはフェローシップを供与したというケースは、五十八年につきまして、長期の方、一年以上でございますが、これが五名、七週間程度の方が約五十七名、それから日本に来て日本語ブラッシュアップするための奨学金と申しますか、そういうものを一年ばかりにわたって提供する者が十名、そのほか器材の供与でございますとか研究に対する助成とか、そういうことを通じて日本語普及に役立っている方々に手助けをしていく、こういうようにやっている次第でございます。
  17. 河上民雄

    河上委員 そのための、何というのですか、予算なんというのはどのくらいになっておるのですか。
  18. 市岡克博

    市岡説明員 ただいま申しました海外におきます現地日本語講師育成のための事業というものに関連をするものを挙げますと、これは国際交流基金事業の中で全部カバーされているわけでありますが、五十八年度、十億三千九百万円でございます。
  19. 河上民雄

    河上委員 今のは概括的な御報告でありましたけれども新聞によりますと、「中南米日本語教材を」ということで、ボランティア活動として日本から日本語のテキストを送り続けている方がおられる。その方は白鳥幸子さんとおっしゃるのでありましょうか、かつてペルーのリマで生活をされた商社員の奥さんですけれども、帰られました後も、かつて駐在をされた中南米の人々のために日本語教材を自分で編集をし、出版をし、孤軍奮闘で頑張っておる。ところが、現地からの注文は後を絶たないのだけれども資金が続かないというふうな、そういう訴えが出ておるのでございます。しかもこれは、ペルー政府日本語教材として推薦教材に指定しだというような大変役に立つものだというふうに権威のあるものなんでありますけれども、向こうから評価されているのに、これに対して日本側として十分なサポートがないというような印象でございますが、こういう日本語教材というような問題につきまして、今の、日本語教育を盛んにするための現地状況に適したいろいろな措置をされているというふうに辛されましたが、こういう日本語教材についてはどういうふうなお考えでいらっしゃいますか。
  20. 市岡克博

    市岡説明員 御説明申し上げます。  日本語教材教科書も含めてでございますが、これは日本語教育に当たって日本人を派遣するあるいは現地先生方を養成していくということと並んで、極めて重要な一部門というように考えております。  例えばペルーについて申し上げますると、昭和五十六年には、学校の数でございますが、交付団体でございますが、九件、五十七年度におきましても同様九件、五十八年も八件、こういう供与を行っておりまして、これらの中には、小中学校あるいは日系人協会、さらには日秘文化協会トルヒーヨ国立大学、こういったところが含まれているわけでございます。  政府は、今後とも、国際交流基金日本語活動についての一つの大きな柱として行っております、その一環として、教材供与につきましてもできる限りの手配をしていきたい、財政的な制約はあるけれども、それの中でも、日本語というのは非常に重要な地位を占めているわけでございます、そういう観点から考えていくという考え方でございます。     〔委員長退席石川委員長代理着席
  21. 河上民雄

    河上委員 白鳥幸子さんという方の活動については御存じだと思いますけれどもボランティア活動として一生懸命こういう教材をつくっておるというような場合、今のような日本語教育に対する援助の対象にならないのですか。     〔石川委員長代理退席山下(元)委員長     代理着席
  22. 市岡克博

    市岡説明員 この件につきましては、白鳥さんの方から万博基金に対して申請が出てくる、その場合に基金としてはこれを前向きに検討して応ずる方向で考えていきたい、こういう状態に今のところなっておるというように承知いたしております。
  23. 河上民雄

    河上委員 そうすると、まだ実現はしていないけれども申請にこたえていくということでございますか。
  24. 市岡克博

    市岡説明員 この件につきましては、万博基金が決定するプロセスを踏む必要があるわけでございますが、私先ほど申し上げましたとおり、万博基金におきましてもできるだけ前向きに六十年度において考えていきたい、こういうことを聞き及んでおるということでございます。したがいまして、こうなりますと今の段階で万博基金の決定に先立って申すことは控えさせていただきますが、前向きに検討しているはずでございますし、また、そういうように私どもも期待いたしたいと考えます。
  25. 河上民雄

    河上委員 この前も海外日系人方々とお会いいたしますと、一世の方はだんだん少なくなりまして、二世、三世あるいは四世というようなことになりつつありまして、それに伴って日系人の間でも日本語教育が非常に重要になっているという状況でございますだけに、日系人あるいは非日系人を問わず、日本語教材を、単に日本学校で使っている教科書を送ればいいということではなくて、それに適した教材をつくるためのこうした努力に対し政府も前向きに取り組んでいただきたいと思います。  次に、文化協定の条項の第六条を見ますと、フィルムとかラジオ番組、テレビジョンの番組とかいうようなものの相互の交換ということも非常に強調されておるわけでございますが、そうした視聴覚メディアの位置づけが特に第六条では大変高く行われているわけです。国際交流基金による映画祭昭和五十七年に南アジア、ことしの秋にはアフリカ映画祭というようになっておるのでありますが、中南米映画祭、つまり中南米映画日本人紹介するというような予定はないのか、特にペルーとの文化協定締結を機にそういうような努力をしてみるつもりはないのか。特に昭和五十七年の南アジア映画祭我が国では大変珍しいということもあったのか、東南アジアを初めとする国々に対する関心が予想以上に高かったのか、大変人ヒットをしたというふうに聞いているのでありますけれども、こうした映画祭という問題についてどういうお考えですか。
  26. 市岡克博

    市岡説明員 先生既に御理解いただいておりますとおり、視聴覚、特に映画と申しますものは、我が国の実情を目で見て耳で聞いて現実にわかっていただくという意味で非常に重要でございますし、また、私どもにいたしましても外国の事情をそれによってよく理解できるということで、相互理解に非常に役立つものと考えております。  それで、映画の方でございますが、ペルーにつきましては、今申しましたような観点から昭和五十六年度におきまして二つの事業をいたしました。二年前のことで恐縮なんでございますが、一つは、現地のテレビ局に対して日本映画を貸与いたしまして上映していただいた、いま一つは、中南米映画巡回上映会をいたしたということがあるわけでございます。  今後のことでございますが、基金を中心に視聴覚の分野も含めまして各年次にわたって中長期的な事業を想定して計画を立案しているところでございます。ペルーにつきましても、今後、映画を含めそういうような活動をできるだけ盛り込みたいと考えておる次第でございます。
  27. 河上民雄

    河上委員 日本というのは世界のことは非常によく伝わっている国だと一般的に考えられ、我々自身は思っているわけですけれども、しかし、映画館なんかを見ますと、本当に特定の国の映画しか実際は入っていなくて、かえってパリあたりではいろいろな国の映画が自由に見られるのに我が国では案外見られないという状況があるわけでございますので、それをどこで打破するかということは大変難しいことでありますが、国際交流基金映画祭というものをこれまでずっとやってこられているわけですから、中南米映画祭というようなものもぜひこの協定を結んだことを記念して少しやってみてはどうかと私は思うのであります。ここに国際交流基金の方はおられないようでございますが、それは外務省の方からそのようにぜひひとつ伝えてもらいたいと思うのです。  続いて、このフィルムの問題に関連してお尋ねしたいのでありますが、かつて二年前に高沢委員から質問を申し上げましてそれに対して政府からも御答弁を一応いただいている件であります。  反核映画を在外公館に備えつけるべきではないかという高沢委員の質問に対しまして、当時の橋本政府委員から、「いま御指摘の在外公館に備えつけの、フィルムライブラリーと申しますが、この中に先生の御提案をいかに生かすべきかについて真剣に検討してみたい、こういうふうに考えております。」という御答弁があったのでありますけれども、その後この点、在外公館に反核映画を備えつけるようになったかどうか、具体的な実行について御答弁をいただきたいと思います。
  28. 市岡克博

    市岡説明員 御説明申し上げます。  外務省国際交流基金は、核問題と申しますか、反核という形容詞を使っていいのかどうかつまびらかでない点がございますが、核問題を扱ったフィルムを各在外公館に配付いだすことは通常の映画配付の一環として行っておるわけでございまして、例えば昭和五十六年にはNHKドラマの「夏の光に」というものをシドニーにございます大使館、フィルムライブラリーに送付するとか、それから五十七年には、短編の「ヒロシマ・ナガサキ—核戦争のもたらすもの—」と申します映画を在外公館にありますフィルムライブラリーに送付する、また五十八年度には、「この子を残して」と申します映画を在外フィルムライブラリー、基金事務所等に送付いたしました。これは外務省が行っております映画の配付の中に含めて送付している、こういうことでございます。
  29. 河上民雄

    河上委員 具体的な映画の名前まで言われたわけですけれども、それならこちらめ方も具体的にお尋ねいたしますが、その際高沢委員から、日本の市民団体が編集した「にんげんをかえせ」あるいは「予言」というような映画があったわけですけれども、これもぜひ買い上げて在外公館に配置するということの実現をお願いしているわけですけれども、その後約二年たつわけですが、これにつきまして実際はどうなっておるか、お答え願いたい。
  30. 市岡克博

    市岡説明員 先ほど申しましたような映画の送付はいたしたわけでございますが、ただいま先生が御指摘になりました映画につきましては、送付に至っておりません。引き続き検討させていただきたい、かように考えます。
  31. 河上民雄

    河上委員 アメリカでも昨年でしたか、「ザ・デイ・アフター」という、その翌日というテレビドラマが大変な反響を呼んで、一億数千万人が見たというふうに言われておるのでありまして、あれを見たアメリカの小学生の子供たちの感想では、もうこうなったら生き残るより死んだ方がましだというのが大多数の感想だったというふうに聞いております。しかし、我々日本人から見ますと、深刻な現実を伝えるものにはほど遠い、単なる物語にすぎないような気がするわけでございます。「ザ・デイ・アフター」というのはアメリカではまだテレビドラマのタイトルでしかないけれども日本ではまさにザ・デー・アフターというのはもう既に起きた現実であるわけでして、このことを正確に世界に伝えることは日本の当然の義務ではないかと思うのであります。そういう点から、これはもう在外公館すべてに——大した費用を必要としないわけですから、ぜひこれは在外公館に、今言った「にんげんをかえせ」とか「予言」というような、高沢委員がもう二年前に要求されているわけですけれども、これをぜひ全部買い上げて、設置して、そしてもしそれぞれの国の方々要望されるならば貸し出すというような体制をとってもらいたいと思うのですが、今外務政務次官、大変うなずいておられますけれども、ひとつ政務次官の立場で御答弁願います。
  32. 北川石松

    ○北川政府委員 ただいま河上委員から、被爆国である日本として、核に対して大変理解のある熱心な御質問をちょうだいいたしました。外務省といたしましては、この点につきましては当然前向きで御要望にこたえるようにしなければいけない、このように思っておりますが、何分いろいろの準備その他ございますので、この点についても御了承賜りまして、ともに世界平和のために頑張っていきたい、こういう考えを持っております。以上でございます。
  33. 河上民雄

    河上委員 ひとつ外務政務次官は、その勢いで頑張っていただきたいと思います。  今回の文化協定の第四条を見ますと、学位、資格証明を互いに認め合う、同等な価値を認め合うという問題について研究することになっておるのであります。これはいろいろ難しい問題がありますけれども、こういうふうに協定でうたっております以上、既にある程度の準備をされているのではないかと思います。もし準備されておるならば、大体こういう考え方でいきたいというふうに御答弁いただきたいと思います。
  34. 市岡克博

    市岡説明員 学位、医師、弁護士等の国家資格の問題につきましては、これはそれぞれの国の教育制度、資格に関する試験の内容等が異なっているため、必ずしも国によって相手の国において同等の扱いが行われていないというのが現状でございまして、それにはいろいろな事情が絡んでいるというように考えております。  これにつきましては、協定は、両国がいかなる条件のもとで相互に同等の価値が認められるかについて研究する、こういうことになっているわけでございまして、私どもといたしましては、こういった点につきましてはこれから文部省とも協議を重ね、実情を明らかにし、あるいはまた場合によっては、十一条に書かれております随時協議の機会などを使って相手国との研究結果のすり合わせと申しますが、情報の交換その他に進んでまいりたい、こういうふうに考えている段階でございます。
  35. 河上民雄

    河上委員 文部省の方も来ておられますが、アジア・太平洋学位相互認定条約というのがあるようでございます。ペルーはこれに未加入ということでありますが、こういうことはペルーとの間でも十分できるのではないか、こんなふうに思うのですが、文部省は学位の相互認定という問題についてどういうふうに考えておられますか。
  36. 内田弘保

    ○内田説明員 お尋ねの件に関しましては、文部省といたしましては、既に、我が国の高等教育においては外国の高等教育下において取得した学位、資格を、その取得に要する年限等を勘案の上、それぞれ我が国の相当する学位、資格と同等なものとして位置づけておりまして、これらの学位、資格と同一の取り扱いをしているところでございます。  例えば大学院の入学資格につきましては、外国において十六年の学校教育の課程を修了した者に対してこれを認めている。あるいは大学院の博士課程の後期三年の課程への入学資格につきましては、我が国の修士課程に相当する学位の保有者として認めている。あるいは大学の教授資格につきましては、我が国の博士の学位に相当する学位の保有者として認めている。このように高等教育の分野、とりわけ入学資格あるいは教授資格等については実際的に支障のないように配慮されているところでございます。  ただ、外国の学位等を一律にそのまま認めるということについては、これらの取得要件や認定の基準等が国によって違っておりますので困難な状況にあるわけでございますが、本件のようにお互いの国が教育制度や学位の取得条件等について研究しまして、お互いに相手の国においてその国の研究者あるいは留学生ができるだけ円滑に教育研究が行えるように努力していきたいと思っておるところでございます。
  37. 河上民雄

    河上委員 これは制度的な問題であるとともに社会的な問題でもあると思うのです。例えば東南アジア諸国へ参りますと、例えば日本で非常に高く評価されている東大を卒業しても、東南アジアのそれぞれの母国へ帰りましたときには全然評価されない。オックスフォードとかケンブリッジとかあるいはアメリカのハーバードというふうなところの方がはるかに高く評価されてしまうという社会的な問題もかなりあると思うのですね。今おっしゃったようにちょっと法律的にお互いの国の修得年数と合わせてどうこうというのは、そういう問題だけではないと思うので、そういう点をどうするかということはただ文部省を責めても始まらない問題ではありますけれども、しかしその点を本気で考えないと、日本にすぐれた留学生が来るという状況はなかなか来ないと思うのです。どうも西欧あるいはソ連とかアメリカとかそういうところの大学には一流の者が行って、日本には二流の人しか来ないと言うと差しさわりがあるかもしれませんが、そういうようなことを言う人もあるのでございまして、それを根本に据えて、そういう状況を是正するためにどういうふうに制度を改めていくかというふうに考えていただかないとなかなか難しいと思うのでございます。これは一気にできないことかもしれませんけれども、そこを文部省も少し本気で考えてもらいたいと思うのです。  五月五日の新聞を見てびっくりしたのですけれども、これは今ここにおられる土井委員が大分前に質問されたことなのですね、もう五年くらい前に質問されておるのですが、クレイトン大学医学部を卒業したら医師の資格が外国でも取れる、こういうような学校の案内を日本でばらまいて、それを真に受けて行った留学生三人が結局だまされたというので、裁判に訴えておる事件が最近出てまいりました。実は土井委員昭和五十四年の十二月三日に当委員会で質問しておられるのでありまして、こういうことを言っておられるのです。「こういう留学の方式については文部省は指揮監督なさるというお立場にはないのですか、どうですか。」という質問がなされておりまして、それに対して周知徹底させるように文部省としても努力をする、「十分私どもも指導してまいりたいと思っております。」というように文部省は答えておるのです。にもかかわらず、こういうまるで漫画的な事件が起きたというのは、一体文部省はどうお考えになっておるのですか。ちょっと伺いたいのです。
  38. 内田弘保

    ○内田説明員 まだ私ども今度の件につきましては調査中でございますが、確かに土井先生からこの前そういう御指摘がございまして、私どもとしましては留学あるいは海外研究の際には、そういうプログラムについて慎重な配慮を払ってほしいということを各大学の事務局長会議あるいは国際関係の担当主幹会議等で説明しまして、また文書も局長名で出しまして、そういう趣旨をよく徹底するように指導をしているところですが、今回の件は非常に残念なことだと思っております。
  39. 河上民雄

    河上委員 まだ十分承知してないというお話ですけれども、一般論で言っているわけじゃないので、具体的に日本側の募集要綱を見て御質問申し上げた。それに対して、そういうことのないようにちゃんとしますと五年前に答えて、今文部省の方がいやまだその件については十分承知してないというのはまことにいただけない御答弁ですね。余り時間がないのですが、ひとつ委員会での答弁というのはその場限りで済まさないようにしていただかないと、こちらは一般論で聞いているのじゃない、まさにそのものずばりで聞いていることに対して五年たってこのような始末、しかもその件についてはまだ十分承知してないということでは困るのじゃないかと思うので、外務委員会で答弁した以上はちゃんとしたそれに即応した行動をしていただきたい、こんなふうに思います。ともかく五年前にちゃんと名前まで挙げてやっていることですから、その点ひとつ十分反省の上、頑張って留意していただきたいと思います。  それでは最後に、もう時間もありませんので御要望申し上げたいのでありますが、先ほど私が申しましたように、海外日系人大会で幾つかの要望が出されておるのであります。その中で、一般論ではなくて特に具体的に要望が出ております点について外務省の見解を承りたいと思うのであります。  その一つは、外務省の中に海外日系人に対応する窓口を設けてもらえないかということであります。もう一つは、これは外務省がやることかどうか知りません、ひとつサポートしていただきたいということでありますが、海外日系人センターというもの、つまりその方々日本を訪ねられたときに集まれる場所みたいなものをつくってほしい、こういう要望が出ております。     〔山下(元)委員長代理退席、委員長着席〕 それから三番目には、国際交流といっても特に米州各国の場合、日系人一つの核として国際文化交流を図ってもらえないかという、いわば位置づけの問題でありますけれども、そういうようなことが要望されておるのでございますが、これについて外務省の御見解を承って、私の質問を終わりたいと思うのです。
  40. 谷田正躬

    ○谷田政府委員 御質問の各点についてお答え申し上げます。  第一に、日系人対応の窓口新設の問題でございますが、外務省では現在それぞれの各部局、これは地域局を主体といたしまして、文化関係でございますとただいまの情報文化局というように、各部局でそれぞれ対応しておりまして、特に問題はないと考えております。ただ、総合的な見地からの対応ということの必要も現在非常に考えておりまして、いかなる組織で総合的、一元的にこの日系人問題を扱うかということを目下真剣に検討いたしております。  次に、海外日系人センター設立の問題でございますが、これは、現下の財政事情から申しまして、国として、政府としていかなる協力が可能であるかということにつきましては慎重に検討させていただきたいと思います。ただ、このセンター設立要望につきましては、実は長年、海外日系人大会の方からの御要望として出ております。その設立の必要ということは我々も十分認識しておりますが、この財政状況下においてどのようなことが可能かということは検討させていただきたいと思います。  それから、三番目の日系社会を媒体とする国際文化交流促進の問題でございますが、確かに我々といたしましても、対外文化交流をいたします場合、日系社会を媒体とする効果というものについては十分に認識しております。特に有力な日系人社会が存在する相手国におきましては、これを媒体としていくということにつきましては、関係部局との間で具体案を早速に検討いたしたいと思っております。
  41. 河上民雄

    河上委員 それでは私の質問を終わりますけれども文化協定などというと、これは義務規定ではないというようなことで、とかくその場限りになりがちでございますけれども、ここで答弁されたことはひとつ確実に誠意を持って実行していただきますようにお願いをして、私の質問を終わりたいと思います。
  42. 中島源太郎

    ○中島委員長 次に、高沢寅男君。
  43. 高沢寅男

    ○高沢委員 私は、日本とマレーシアとの国際郵便為替約定についてお尋ねをしたいと思います。  初めに、マレーシアという国についてのある程度総論的なお尋ねをいたしたいと思います。  マレーシアではブミプトラ政策、新経済政策、こういう政策が一九七一年から九〇年までということで行われている。そのもとに、現在は第四次のマレーシア計画が実施中、こう言われておりますが、これらの政策といいますか、計画といいますか、これはどういうふうな特徴を持ったものであるのか、それをまずお尋ねいたしたいと思います。
  44. 瀬崎克己

    ○瀬崎説明員 マレーシアの新経済政策でございますが、これは先ほど先生おっしゃいましたとおり、一九七一年から一九九〇年まで二十年間にわたりましてマレーシアの国づくりの根幹を定めた政策でございます。  マレーシアという国自体でございますけれども、現在の人口は千四百七十万でございますが、人口のうちの五四%がマラヤ人、三五%が中国人、一〇%がインド人、あと残りの一%はアラブ系の方でございますが、こういったことで、非常に多民族国家でございます。この多民族国家の融和を図りつつ経済の開発を図るということで、マレーシアの歴代の政府は非常に苦慮されていたわけでございますが、特に最近の政策におきましては、民族の融和、中でも非常に経済的水準の低いマラヤ人の生活水準をほかの人種に比べまして引き上げつつ調和を図ろうというようなことでございまして、この新経済政策もそこら辺に力点が置かれているということでございます。  そこで、この新経済政策の基本目標につきましては、社会の再編成、先ほど申し上げましたように、こういった多民族国家の中でどうやって調和を図るかという社会の再編成、それから貧困の撲滅、これは、もちろん所得が高くなれば民政が安定するということでございますので、この貧困の撲滅ということを基本理念としているわけでございますが、この中で、特に人種間の所得格差の是正、それから地方、農村を中心といたしました生産性の向上、それから生活の質的改善、雇用におきます人種比率の反映、資本所有におけるいわゆるブミプトラ、マラヤ系及びその他の原住民族の比率の向上等がございます。そこで、具体的に例えばブミプトラについて申し上げますと、一九九〇年までに合弁企業の資本比率のうち、三〇%は少なくともマラヤ系の人に与えなければいかぬというようなことで、かなり具体的な骨格を持った内容となっております。  それから、五カ年計画でございますが、これはこの新経済政策を具体的に肉づけして推進していく計画でございまして、現在、既に実施されました第二次それから第三次五カ年計画の後を受けまして経済計画が策定されているわけでございますが、この五カ年計画の中では、経済成長の促進、製造業の拡大、輸出主導型から内需主導型経済への転換、民間部門の経済活動の活発化、工業の地域的分散、農業の生産性向上、各種インフラの拡充等に重点が置かれているわけでございます。  そこで、マレーシアの経済でございますが、特に一九八〇年代の初年におきましては、世界経済のあおりを受けまして非常に停滞を極めたわけでございまして、成長率も三%台に落ち込んだわけでございますが、ようやく世界経済の立ち直りを踏まえまして、マレーシアの経済にも明るい見通しが出てきている、こういうような現状にあるわけでございます。
  45. 高沢寅男

    ○高沢委員 時間が制約されますので少しまとめてお尋ねをしたいと思いますが、今説明されたようなそういう新経済政策という背景の中で、マハティール首相が何かマレーシア株式会社構想というものを考えておられる、こう聞きます。あるいは同じマハティール首相は、これからマレーシアの人口五倍増、こういう政策を進めるというふうにも聞いております。と同時に、また、いわゆるルックイースト政策、こういうふうなことも、何といいますか、非常に特徴的な政策が次々に出されているように思いますが、それら全体としての、今の御説明の土台の上での性格はどういうことになって、どんなふうに進展しているのか、お尋ねいたします。
  46. 瀬崎克己

    ○瀬崎説明員 マハティールさんは、一九八一年の七月に、前内閣総理大臣のフセイン・オンさんが非常に高齢になりまして引退された後を受けまして、八一年七月から政権を担当されている方でございます。八二年の四月に国会を解散いたしまして、その選挙で非常に大勝されまして、現在では、百五十議席くらいのうちの百三十四の議席を占めるということで、連立内閣ではございますけれども、非常に安定した政権を担当されておりまして、この政治的な安定した基盤を踏まえまして経済政策を次々と打ち出されているわけでございます。  そこで、現在のマハティールさんの一番基本的な政策は、いわゆる東方政策、ルックイーストということでございますが、これは一九八一年に政権を担当された直後に打ち出された方針でございますが、従来のマレーシアの政策というのは、どちらかというと非常に西欧向きであった。かつてイギリス、それからスペイン、ポルトガル等が十六世紀から十七世紀にかけましてアジアに入ってきまして、それから徐々にアジアと西欧の交流が開かれた段階では、確かに西欧の文明というのは非常にエリートの文明でありまして、そういったエリート文明の影響を受けたアジアの近代化というのが西欧化の道をたどったのは当然である。ところが、最近の西欧の文明を見ておりますと、非常に衰退期にあるのではないか。一つは、マハティールさんが非常に強調されておりますことは、西欧の個人主義というものが全体の利益、国の利益というものを度外視いたしまして強調されている結果、社会が非常に混乱しておる。西欧のように非常に富んでいる社会ではそういったことも許されるかもしれませんけれども、マレーシアのように開発途上にある国におきましてはこういった余裕はないわけでございますから、衰退する文明ではなくて、もっとほかのところを見る必要があるだろう。  そこで、特に注目されておりますのは日本と韓国でございますが、日本と韓国におきましては、全体の利益と調和を図りつつ、個人の権利ということが主張されている。しかも、民主主義国家でありまして、ここは非常に学ぶところがあるのではないか。特にマハティールさんが強調されておりますことは、労働倫理でございまして、勤勉、それから組織に対する忠誠心、規律、こういった労働倫理というものが社会の開発の原動力になっておる。ここは従来の西寄りの哲学を学ぶよりかも、韓国とか日本の労働倫理あるいは経営哲学、こういうことをマレーシアとしては大いに学ぶべきでありましょうということで、いわゆるルックイースト、私どもは東方政策と訳しておるわけでございますが、こういった政策をとり出したということでございます。そこで、ただ単に哲学的にこういった理念を打ち出すだけではなくて、具体的に裏づけを幾つかしているわけでございます。  その第一は、例えば日本に産業技術研修員を送るとか、あるいは日本の大学に留学生を送るというようなことをやっております。また、私どもといたしましては、こういったマレーシアの人づくり計画に対しまして、農業開発、中小企業の振興、それからエネルギーの開発、人づくりというようなことが日本の経済協力の基本的な理念でございますが、こういった人づくりを重視しておるということを踏まえまして、マレーシアに対しましても非常に協力しているということでございます。  それから株式会社論でございますが、これば八三年二月、マレーシアの公務員研修所で初めてマハティールさんが演説の中で言ったことでございます。要旨は、これもまた日本に学べというところに尽きるわけでございますが、日本では官と民間との協調ということが非常に充実しておる。したがって、官の能率化、それから民間の活性化、こういうことを相互に協調させつつやることがマレーシア経済開発にとって非常に有益ではないかということでマレーシア株式会社論というのを打ち出したわけでございまして、先般、現在の五カ年計画の見直しの中間報告みたいなのが出たわけでございますけれども、その中でも官側と民間との協調をいかに図るべきかということで、この株式会社論を裏づけるような政策が打ち出されておるわけでございます。  それから人口の問題でございますが、この問題につきましては、本年の三月二十九日、マレーシアの国会におきましてマハティールさんが、現在の千四百七十万の人口を七千万人にすべきであるということを言いまして、私どもとしてはどういうことかということでいろいろ調べたわけでございますけれども、これは基本的には人口が増加いたしますと、国の経済単位も大きくなりますし、市場も大きくなるということでございまして、マレーシアの経済規模の拡大ということを念頭に置いたわけでございますが、詳細調べますと、これは百十五年間にそういった人口の五倍増、七千万人ということを言っておるわけでございまして、二十一世紀ではなくて二十二世紀にそういった規模になるだろうということ空言ったということがわかっておるわけでございます。したがいまして、この人口問題につきましては、長期的に、現在のマレーシアの人口増加の趨勢が大体二%台でございますので、二十二世紀になりますとその程度の人口になるのではないかということで、格別奇異なこと空言ったというふうには私どもは受けとめていないわけでございます。
  47. 高沢寅男

    ○高沢委員 いずれもマレーシアという国がいわばいかにして国としての活力を出すかということで非常に頑張っておるという姿は、今の御説明でもよくわかりました。  さて、そのマレーシアが非同盟中立政策というものを推進しているわけです。その立場から一九七一年十一月に、マレーシアの主導のもとにASEANの五カ国が中立地帯を設定する、こういうことの宣言を採択しているわけです。あれから既に十年以上たっております。このASEANの五カ国の中立地帯設定の宣言というものはその後の情勢の中でどういう変遷をたどって、現在どういう段階になっておるのか、その御説明をお願いします。
  48. 瀬崎克己

    ○瀬崎説明員 マレーシアの中立化の計画につきましては、かなり前からマレーシアの歴代内閣が主張してきたところでございまして、特にこれが集大成されましたのは一九七〇年、ラザク氏が首相になりました際にルサカの非同盟首脳会議に行かれまして、東南アジア全域に大国の保障を得た中立地帯をつくる必要があるのではないか、こういうような主張をされたわけでございます。それから、その年の国連総会におきましてもやはり同じような主張をされまして、こういったマレーシアの中立に対する強い熱意を踏まえまして、一九七一年十一月にクアラルンプールでASEANの臨時外相会議が開かれたわけでございますが、そこでこの問題が討議された結果、東南アジアのいかなる国も外部からの干渉から自由な、平和・自由・中立地域として承認され、尊重されることを確保する必要があるというような、いわゆるクアラルンプール宣言ということが打ち出されたわけでございます。  このクアラルンプール宣言を具体的に推進するために高級官吏会合というのがつくられまして何回か会合を持ったわけでございますが、この詳細については、外部には一切発表されてないわけでございます。ただ、一九七六年二月にバリ島におきましてASEANの首脳会議が開催されたわけでございますが、その際に、この高級官吏会合の経過報告なるものが出されております。この経過報告を読みますと、彼らが何を考えつつあるかということがある程度わかるわけでございますが、この中で特に言っておりますことは、域内諸国、地域の問題に関しまして域外国の介入を回避すること、紛争の平和的手段による解決、武力の不行使、外国軍事基地の不設備、特に外国軍事基地につきましては、当時フィリピン、それからタイにもアメリカの基地があったわけでございますので、これにつきましてはかなり柔軟なラインで、基地については即時撤退というようなことではなくて漸次解消を図っていく、こういうような注釈がついております。それから域内の非核化。そして、こういった域内の熱意に対しまして諸外国からの尊重ということを期待するということを打ち出しまして、この中立化構想の具体的な手順といたしまして、東南アジア友好協力条約、それから国連における決議、地域の非核化宣言、諸外国との不可侵条約、こういう四つの具体的なステップを踏んで中立化構想を具体化しようということがうたわれたわけでございますが、今日までのところ、この四つのステップのうちで実現されておりますのは、一九七六年に調印されました東南アジア友好協力条約だけでございます。  他方、こういったASEAN諸国の中立化に対する熱意というのは非常に強いわけでございますが、その後東南アジアにおきます情勢が非常に激変しておりまして、特に一九七八年十二月にベトナムがカンボジアに武力介入をいたしまして、今日に至たるまでカンボジア領土を武力占領しておる、こういうような厳しい現実があるものでございますので、このASEAN側の自由・平和・中立化地帯構想というものも若干足踏みをしているということでございますが、ASEAN諸国としては、いずれにせよ、中期、長期的な政策目標として、こういった理念を追求しようという気構えでいる段階でございます。
  49. 高沢寅男

    ○高沢委員 ここでちょっと大臣お尋ねをしたいと思います。  今の瀬崎参事官の御説明でASEAN諸国は中立に向かっての意欲が非常に強いということはよくわかりました。ただ、その強い意欲が本当に実現できるかどうかとなれば、ASEAN諸国とインドシナ三国の関係、言うならば友好協力関係が確立できるというふうなことが非常に大事だと私は思います。ただ、不幸にして、今そこにカンボジア問題というような事態があるわけです。  先般のESCAPの会議にベトナムの外務次官のハ・バン・ラウさんが来日されて、その際外務省の首脳とも会談をされた。そういう中において、外務大臣とベトナムのグエン・コ・タック外相でいずれ外相会談というものが行われるというふうなことも私はニュースで拝見をしております。いずれにせよカンボジア問題は解決しなければいかぬし、また私はされるだろうと思いますが、そのことを踏まえつつ、このインドシナ三国とASEAN諸国、その両者の友好関係というものを進める大きな役割が日本にあるのじゃないのか、私はこう思います。その辺の大臣の御所見、あるいはまた先般のハ・バン・ラウ次官とのお話の内容がどうだったか、グエン・コ・タック外相との外相会談の見通しはどうか、この辺のところをひとつ大臣からお聞きしたいと思います。
  50. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私も、今おっしゃるように、やはり東南アジアが真の平和を確立していくためには、ASEANとインドシナ三国との友好関係、相互理解というものが進まなければ真の平和は確立できない、こういうふうに思うわけでございます。そうなったときに本当に東南アジア一帯が全くの平和というものを享受できるのじゃないか、こういうふうに思うわけですが、残念ながら今カンボジア問題をめぐりまして全く対立をしておるという状況になっておるわけでございます。  そして、今ASEANはそろってカンボジアのいわゆる民主三派政権を支援しておる、そしてカンボジアの真の自主独立政権ができることを期待をしておるということでございます。同時にまた、ベトナムのカンボジアからの撤兵を強く要求しておるということでございまして、そうした問題をめぐりまして、ただ対立だけじゃなくて、外交活動も活発に行われていることも事実でありまして、ベトナムのグエン・コ・タック外相もインドネシアに飛ぶということもありましたし、あるいはまたインドネシアその他の国々の要人もベトナムに入るということも行われておるわけでございまして、いろいろと活発にそうした平和を求めるための努力が続けられておるわけでございますが、残念ながら今日の状況では確たる平和への方向というものが打ち出されておらないわけでございます。  そういう中にあって、やはり日本もアジアの一国でありますし、またインドシナ三国とも外交関係を持っております。長い間の歴史的なつながりもあります。同時にまた、ASEANとは特に深いつながりを持っておるわけでございますので、日本もこうした状況がいつまでも続くということは憂慮すべきことでございますし、この状況を打破して平和を回復するために日本なりの平和外交といいますか努力は続けていかなければならない、こういうふうに思うわけでございます。  もちろん日本の基本的な立場はカンボジアからベトナム軍が撤兵するということでございますし、また同時にカンボジアに真の自主独立政権というものが生まれることでございますが、そういうことを前提にいたしまして日本なりの努力もしてみなければならない、こういうふうに思っております。  そういう中でESCAPの総会も行われまして、たまたま旧知のベトナムの外務次官も見えましたので、立ち話でございましたが、私も話をいたしまして、日本としても重大なインドシナ半島の平和回復、そうしてカンボジア問題の解決について重大な関心を持っているのでグエン・コ・タック外相とも率直に話し合ってみたい、こういうことも言いまして、国連の総会にはお互いに出ることになっておりますのでこの際会ったらどうだろうという御提案もいたしまして、外務次官もぜひともそういう機会を持つように私も国に帰って大臣に伝えたい、こういうことになっておりまして、その後どの程度まで話が進んでおりますか、いろいろと事務当局間で努力をしておると思いますが、私は国連総会ではそういう機会を持ちたいと思いますし、外相会談を持つまでもなくていろいろとその間に、七月にはASEANの拡大外相会議等も行われるわけでございますし、その間にもいろいろといろいろのパイプを通じまして努力外務省としてしてみたい、こういうふうに考えておるわけであります。
  51. 高沢寅男

    ○高沢委員 ぜひその努力をお願いすると同時に、ここで大臣に対してはややだめ押し的なあれになりますが、昭和五十二年八月、当時の福田総理がASEAN諸国を歴訪されて、いわゆるマニラ・ドクトリンというものを発せられて、その中の重要な一つの柱が、日本としてはASEAN諸国との友好関係、同時にインドシナ三国との友好関係というものを進める、こういう大きな柱があったわけでありますが、私はこの柱は現在も、また将来も我が国外交のアジア政策としての重要な基本である、こう考えるわけでありますが、特にこのいわゆる福田ドクトリンについての評価は現在も変わりない、大臣のこういう御見解もひとついただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  52. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 東南アジアの永続的な平和と繁栄のためには、ASEAN諸国とインドシナ諸国が友好関係を築いていくことが不可欠であります。我が国としましても、ASEAN諸国との友好協力関係の増進を図るとともに、インドシナ諸国との相互理解に基づく関係の醸成を図る必要性を十分認識しておるわけでございます。したがって、福田元総理が一九七七年にマニラで宣明されました右考え方には今後とも基本的な変更はありません。
  53. 高沢寅男

    ○高沢委員 まだまだいろいろお尋ねしたいのですが、もう時間の関係条約プロパーの方へ移りたいと思いますが、今度は郵政省にお答えいただくことが多くなるかと思います。  まず、今回のこの郵便為替約定ですが、日本は既に万国郵便連合、UPUに入っているわけです。そこで、相手のマレーシアもこのUPUに入ってくれれば当然こうしたお互いの為替業務は順調にできるというわけですが、そうならずに別に二国間約定を結んだ、こういうふうになった経過、いきさつ、相手側のマレーシアはどういう考えだったのか、この辺のところからお尋ねをしたいと思います。
  54. 舘野忠男

    ○舘野説明員 日本側といたしましてはUPUの条約で業務を行うことを提案いたしましたけれども、マレーシア側が二国間条約で行うということに固執いたしまして、これを強く主張いたしました。最終的には日本側もこれに同意をしたものでございます。  マレーシア側が二国間条約を強く主張した背景でございますが、UPUの条約には料金の最高限度額に関する規定がございます。マレーシアとしてはこれに縛られたくないという事情があったようでございます。  なお、マレーシアは既にオーストラリア、カナダ等十一カ国と国際郵便為替業務を行っておりますけれども、いずれの場合にもUPUの条約でございませんで、二国間の条約で実施をいたしております。
  55. 高沢寅男

    ○高沢委員 今度のマレーシアは、日本とそうした二国間の郵便為替のあれを結ぶ九番目の国と聞いています。その前に既にそういう二国間を日本との間にやっているのは八つあるわけですね。それはアメリカ、イギリス、カナダやインドであったりフィリピンであったりというふうなことですが、それらの今までの八つの二国間条約を結んだ国の立場は、今御説明のような料金の最高限度に縛られたくないというふうな同じような理由であるのかどうか、この辺はどうですか。
  56. 舘野忠男

    ○舘野説明員 アメリカあるいはイギリスでございますけれども、いずれも二国間条約で行っておりますけれども、事情は似たようなものでございます。
  57. 高沢寅男

    ○高沢委員 条約の第二条、「郵便為替の種類及び交換方式は、両郵政庁の間の合意により定める。」この種類はどういうものになるのか、交換方式はどういうものになるのか、この合意の現状はどうなっていますか、また、これからどういうふうな合意をつくるための交渉をされるのか、それを御説明願います。
  58. 舘野忠男

    ○舘野説明員 条約の二条でございますが、こちらに「郵便為替の種類及び交換方式は、両郵政庁の間の合意により定める。」こうございます。現在マレーシアの郵政庁間と手紙等によりましていろいろやりとりいたしておりますけれども、郵便為替の種類に関しましては、郵便で送達をいたします通常為替、これを行いましょうということでございます。それから交換方式でありますが、これは目録式といいまして、目録をマレーシアに送付いたしましてマレーシアで為替証書を発行するという目録式で行いましようということで話が進んでおります。
  59. 高沢寅男

    ○高沢委員 それはもうそういうふうに合意ができるというふうに考えてよろしいですね。
  60. 舘野忠男

    ○舘野説明員 そのとおりと考えております。
  61. 高沢寅男

    ○高沢委員 それから、こういう郵便為替の利用目的では、今までのケースとしてどういうふうな利用目的が多いのか、その辺はどうでしょうか。
  62. 舘野忠男

    ○舘野説明員 郵便為替の場合でございますが、一般に利用されておりますのは、書籍の販売代金の送金でありますとか現地におります親族への送金、こういう個人間の小口の送金に利用される場合が多い状態でございます。
  63. 高沢寅男

    ○高沢委員 それから、この郵便為替の利用をするには、日本に在留しているマレーシアの人たち、マレーシアに在留の日本人たちのお互いの利用の便宜ということからすれば、両国の郵便局の配置状況というものは大変重要だと私は思います。郵便局があるところでこれは利用できるわけであって、したがって我が日本における郵便局の配置状況、マレーシアにおける郵便局の配置状況、そういうものは相互の関係はどうなっているのか、為替利用の便益に格差が生ずるようなことはないのかどうか、この辺はどうですか。
  64. 舘野忠男

    ○舘野説明員 日本から為替を送ります場合でございますが、これは普通郵便局と申しまして大きな郵便局でございますが、これと、集配特定局と申しまして郵便物の集配業務を行っております特定局、合計日本で六千局ありますけれども、ここから為替を送ることができます。マレーシアの場合には、マレーシアに約二千局郵便局がございますけれども、これらの局から日本にあてて為替を送ることができるというふうに聞いております。
  65. 高沢寅男

    ○高沢委員 ということは、日本の面積、マレーシアの面積、日本の人口、マレーシアの人口等々からいって、今言われた六千と二千で別段不均衡はない、こういうふうに考えていいのですか。
  66. 舘野忠男

    ○舘野説明員 別段支障はないと考えております。
  67. 高沢寅男

    ○高沢委員 次に条約の第三条ですね。第三条の二に「郵便為替一口の金額の限度は、両郵政庁の間の合意により定める。」この一口の金額の限度は今どんなような合意の状況になっているのか、この辺はいかがですか。
  68. 舘野忠男

    ○舘野説明員 第三条でございますが、為替一口の金額の限度は郵政庁間の合意により定めるとなっておりますけれども、これを受けまして現在、マレーシア郵政庁と手紙によりましていろいろ話し合っておりますけれども、現在のところ五万円程度を限度にしたいということで話が進んでおります。
  69. 高沢寅男

    ○高沢委員 次は第四条ですが、第四条の二で、「各郵政庁は、払渡国の通貨に対する自国の通貨の換算割合を定める。」というふうなことになって奉ります。日本の通貨とマレーシアの通貨のお互いの換算の比率を定める、こういうことですが、これはかつての、例えば日本の円とドルなら、一ドル三百六十円というふうな形の固定的なレートで決めるのか、あるいは、国際通貨は毎日動いていますが、そういうふうにその日その日の国際通貨の為替相場の動きが反映されるような決め方をするのか、これはどういう決め方になりますか。
  70. 舘野忠男

    ○舘野説明員 送金業務に関しましては、銀行等が行っております外国への送金業務と郵便局が行っております為替によります送金業務と同様の業務でございます。したがいまして、為替レートの問題に関しましても、銀行が行っております、日々変動するということでございますけれども、こういうものを参考としつつ決めております。
  71. 高沢寅男

    ○高沢委員 ということは、為替の場合も銀行のやり方を基準にしながら日々変動する、こういうふうに見ていいわけですね。そしてその際、日本の円とマレーシアの通貨との換算をするのに、その間にドルという物差しを入れるのかどうか。そうすると、ドルと円の関係というものも変動要因になってきますが、その辺の仕方はどうなんですか。
  72. 舘野忠男

    ○舘野説明員 現在、ドルを間に入れるかどうかという点につきましてははっきりいたしておりませんけれども、現在までのところでは、ドルを入れないで行おうか、こんな感じでもって話が進んでおります。  なお、銀行の場合には日々レートが変動いたしておりますけれども、郵便局の場合には実は一週間固定レートでやっております。これも近く、郵便局全局のオンラインネットワークというものが完成を見ましたので、これを受けまして、日々変動するということに変えようということで目下進んでおりまして、この六月に日々変動するという制度に変えようということで準備を進めております。
  73. 高沢寅男

    ○高沢委員 その点はわかりました。  第五条の二、「各郵政庁は、徴収した諸料金を収得する。もっとも、各郵政庁は、徴収した料金の一定の割合に相当する金額を他方の郵政庁に支払う。この割合は、両郵政庁の間の合意により定める。」さて、この割合はどんなような合意になるのか、既に合意はできているのか、いかがでしょう。
  74. 舘野忠男

    ○舘野説明員 第五条にあります相手郵政庁に支払う料金でございますが、これは、日本で振り出しますとこの為替が相手国に参りまして、相手国の郵政庁がこの払い渡し業務を行うという手数がかかるわけでございます。この分をお互いに見ましょうということでこの料金がございますけれども、この料金の割合に関しましては、現在為替金額の二百分の一ということで行いましょうという話が進んでおります。
  75. 高沢寅男

    ○高沢委員 次は第七条です。「郵便為替証書の有効期間は、両郵政庁の間の合意により定める。」この合意はどのくらいの期間でできるか、あるいは既に合意ができているのか、この辺はどうでしょうか。
  76. 舘野忠男

    ○舘野説明員 第七条に規定がございます為替証書の有効期間でございますが、この点に関しましては実はまだ含意に至っておりません。有効期間に関しましては、六カ月有効にするという方法がございます、それから三カ月間有効とする方法もございますけれども、三カ月にするかあるいは六カ月にするかという点につきまして現在話し合いが進行中という状況でございます。
  77. 高沢寅男

    ○高沢委員 第十二条、「いずれの郵政庁も、特別の事情により郵便為替業務の全部又は一部を一時的に停止しなければならない場合には、直ちに他方の郵政庁にその旨を通知する。」こうなっていますが、この場合の「特別の事情」というのはどういうことが想定されているのか、説明を願います。
  78. 舘野忠男

    ○舘野説明員 十二条の規定、「いずれの郵政庁も、特別の事情により郵便為替業務の全部又は一部を一時的に停止しなければならない場合には、直ちに他方の郵政庁にその旨を通知する。」という規定でございますが、これは二国間のこの種の約定の場合には従来から入っている規定でございます。それを踏襲したわけでありますけれども、この「特別の事情」という場合でありますが、これは大規模な災害でありますとかあるいは外貨事情の急激な悪化でありますとか、そういう場合に対応できるような規定ということでもって入っているものでございます。
  79. 高沢寅男

    ○高沢委員 きょうの社会党の持ち時間はあとほんのわずかでございますが、私は以上で終わりまして、あと土井委員に交代をいたします。
  80. 中島源太郎

    ○中島委員長 次に、土井たか子君。
  81. 土井たか子

    ○土井委員 社会党の持ち時間というのがあと十分もありません、六分そこそこですから、その時間内でというとこれは問題が非常に大きいわけですが、私自身は国際電気通信条約について質問させていただくということであります。  今回この問題をずっと見てまいりますと、国際電気通信連合、ITUの最高機関である全権委員会議が一九七三年のマラガ・トレモリノスの会議以来九年ぶりにナイロビで開かれているのです。新しい国際電気通信条約がそこでつくられたという経過が御案内のとおりございます。日本から代表団がそこに参加をされて昭和五十七年九月二十八日から十一月六日までの長い間、四十日間という会議であったわけですが、私は会議の概要と問題点について承りたい気持ちなんです。  というのは、今回のいろいろな関係資料というのを少し拝見いたしてまいりますと、ITUというのは国連の電気通信に関する専門機関でございまして、技術的な分野における機関であるにもかかわらず全権委員会議では政治問題の審議というのがかなりの部分を占めてきているということを言わざるを得ません。  そこで具体的にお伺いいたしましょう。どういうふうな問題が提起されて、日本としたらどういう態度で臨まれたのですか。いかがでございましようか。
  82. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 お答え申し上げます。  確かに四十日間のナイロビ会議で政治問題がかなり取り上げられたわけでございますけれども、いわゆる専門機関としては比較的政治色の少ない技術的な会合であったかと思います。しかしながら、そのナイロビ会議で取り上げられました主な政治問題は二つございまして、一つは、ちょうどこの時期がイスラエルのレバノン侵攻の直後ということもこれありまして、イスラエルの非難及びこのITUからの追放問題、それからもう一つは、南アフリカをITUの諸会議から追放するという、この二つの政治問題が取り上げられたわけでございます。  まず最初のイスラエルの方でございますけれども、ナイジエリア等の諸国からは、イスラエルの行動というのは非常にけしからぬ、したがってこのITUから追放すべきである云々という決議案が出てきたわけでございます。しかしながら他方、このITUといったようないわゆる技術的な機関からイスラエルを追い出すことは、やはり不偏性の問題もあるし、もっともイスラエルの行為自身は非難されるべきであるというようないろいろな議論が錯綜いたしまして、結果としましてイギリスから、イスラエルの行為については非難をする、しかしながらイスラエルをITUから追い出すかわりにレバノンの破壊された通信設備の復興援助を検討する、こういうふうなイギリス提案、修正案でございますけれども、これが提出されて採択されたわけでございます。日本はこのイギリスの提案につきましては賛成しております。  それから次に、南アフリカの件でございますけれども、これもやはり開発途上国、ソ連等々の国から、南アのアパルトヘイト政策を非難しながら南アをこの会合から追放すべきであるという決議案が出てまいりまして、私ども日本としましては、南アのアパルトヘイト政策は反対するとしても、やはりITUといったような機関の不偏性、技術性にかんがみて、南アを締め出してみてもアパルトヘイトの事態というのは改善されないんじゃないかということでこの決議案には反対したわけでございますけれども、この決議案自身は賛成六十九、反対二十六、棄権四ということで採択されております。
  83. 土井たか子

    ○土井委員 合いろいろお答えになった問題について少し質問を進めさせていただくだけでも大分時間をとらなければならないと思うのです。ただその中身は、特に今回の修正点と申しますか主要な改正点、それについて一つ一つ見ていっただけでも、これまた大きな問題が一つ一つあるわけなんで、これをお尋ねするとなると、あと一分しかありませんから、これまた困った話だと思うわけですが、きょうは一つだけお尋ねをここの場所でしておきましょう。  それはどういうことかといったら、今回の主要な改正点の中で取り上げられております分担等級に対して新たな単位等級がここで考えられているということです。どうもそのITUの経費というのは各加盟国の分担金によって賄われることになっていて、その分担金は定められた分担等級表で各国が任意に選定して決めていくという任意選定制度、任意選定方式をとってきているわけなんですね。分担等級の任意選定制度をとっているというのはITUとUPUだけだと私は認識しておりますが、ITUが国連方式によらないで、分担金制度によらないで任意選定制度をとってきた由来というのはどの辺にあるのですか。これは私はさらに聞きたい原則の問題です。
  84. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 ITUが任意選定方式をいつからとったかというのは、はっきりわからないのでございますけれども日本が明治十二年にこの前身の万国電信連合に加盟したときにも既にこの任意選定方式があったところを見ますと、恐らく設立当初からではなかったかと思うわけでございます。その背景は、そのときの、恐らくというか、加盟国というのは数も少ないし、そういうようなことからこういった機関は任意選定方式でいった方がいいんじゃないかな、そういうふうな経緯でもってできたんじゃないかなと思うわけでございます。  しかしながら、現在、先生ちょっと御指摘のように、今度のケニアの会議でも、発展途上国の方からは、任意選定方式ではどうも結果として発展途上国にきつく、先進国に甘いというか軽いということから、発展途上国側の方はこれを国連のいわゆるGNP方式に変えるべきだという強い議論が出てきているわけでございます。そこで議論の結果、しかしやはり他方、長い百年以上の伝統もこれあり、他方、発展途上国の要求もあるということでコンセンサスが成立しましたのは、一種の妥協でございますけれども、選定単位というものの上方を少し上げるということと、下方修正というか、今まではたしか二分の一単位が最低単位であったのでございますけれども、それを四分の一単位及び八分の一単位の下方修正を行う、こういうことで南北双方の妥協が成立したわけでございます。
  85. 土井たか子

    ○土井委員 確かに今御答弁になったとおりで、先進国に対してやはり甘いですね。それは開発途上国からの指摘どおりだと私は思います。先進国の、特に主要先進国と自負している国々が寄ってこの分担についていかに考えていくかと一言ったら、ほかに対しての要求は強いけれども、自分がそれに対して分担するということに対しては消極的であるという姿勢をお互い持ち合っているのじゃないか、そういうことが今回の主要先進国の分担内容を見たって出てきていると私は思うのですが、日本の場合は、今回二十から三十になったわけでしょう。積極的にそうしたのですか。言われてそうしたのですか。他からの要求が強いからそうなったのですか。そのいきさつはいかがですか。
  86. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 日本は、独自の判断でもって二十から三十単位に上げたわけでございます。
  87. 土井たか子

    ○土井委員 そうですかね。どうもそういうふうな向きでないというのが、ここにあります、郵政省が出していらっしゃる報告書を見ると出てきますよ。大体、主要分担諸国から日本は非常に強く言われて、日本が二十単位の選択をしていることは適切と言えない、日本の国力、電気通信分野における国際的影響力にかんがみて高い等級を選択すべきだ。強い要求があって日本としては今回三十になったといういきさつが書いてありますよ。だから遠藤さん、今のは、それはあなたの御発言としてはしにくかろうと思うけれども、そういういきさつがあるということも考えていくと、こういう分担方式というのは、いずれかの機会に国連方式という方向に切りかえられていくということが世界の趨勢としてあるのじゃないかなと思うのです。  もう時間が経過していますから、大事な問題なんで、それについての外務省としての姿勢、それから将来に対しての見込み、そういうことも聞いてみたいと思うのですが、こういう問題について総括的に大臣からちょっと一言いただいておいて、きょうは、私は時間が来ましたから、きょうの質問はこれでひとまずおきたいと思います。大臣、こういうのはどういうふうに考えられますか。
  88. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日本の場合は、国力に応じて国際的な貢献をしていくということが基本的には必要じゃないか、そういうように思います。
  89. 土井たか子

    ○土井委員 時間ですから、きょうはこれで終えます。
  90. 中島源太郎

    ○中島委員長 午後一時二十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時二十四分休憩      ————◇—————     午後一時二十分開講
  91. 中島源太郎

    ○中島委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。古川雅司君。
  92. 古川雅司

    ○古川委員 ただいま議題になっております三件の中で、私は、日本・マレーシア郵便為替約定並びに国際電気通信条約及び関係議定書、この二件について若干の御質問を申し上げます。  最初に、郵便為替約定の方でございますが、万国郵便連合いわゆるUPU及びアジア・太平洋郵便連合、APPUの今年度の分担金はどのぐらいになっているか、おのおの日本の分担割合がどうなっているか、もしよろしければ、この分担金が連合の運営のためにどのような支出をなされているか、まず、そこからお伺いをしていきたいと思います。
  93. 伊藤修介

    ○伊藤説明員 ただいまの御質問に対してお答えをさせていただきます。  まず、UPUの関係でございますけれども先生御承知のとおり、この分担金の原則につきましては、憲章それから一般規則によりまして一単位から五十単位までを八つに区切りまして、それぞれの分担等級に応じまして支出をする、こういうことになってございまして、我が国はこの分担等級の中の最高単位とされております五十単位を分担しております。昭和五十九年度の予算ベースで申し上げますと、金額的には我が国の支出としては約一億三千万円ということであります。  それからAPPUの関係でございますけれども、このAPPUの分担金につきましては、ただいま申し上げましたUPUの分担等級に応じまして五単位、三単位または二単位ということになっておりまして、これにつきましても我が国は最高の五単位を分担しているところでございます。金額的に申し上げますと、五十九年度の経費で約百十八万円ということでございます。
  94. 古川雅司

    ○古川委員 支出の方はどうですか。——概要でいいですよ。
  95. 伊藤修介

    ○伊藤説明員 お答えします。  UPUの関係についてはちょっと手元にございませんけれども、APPUの総体の予算の中で申し上げますと、人件費が約四〇%という形で一番高い率を占めてございます。金額的には、四万ドルのうちの約一万六千ドルが人件費ということでございます。
  96. 古川雅司

    ○古川委員 UPUの方はわからないわけですか。
  97. 伊藤修介

    ○伊藤説明員 申しわけございません、ただいま手元に資料がございません。
  98. 古川雅司

    ○古川委員 その点は、また機会がありましたらひとつお教えをいただきたいと思います。  このアジア・太平洋郵便条約に基づいた連合の機関として、アジア・太平洋郵便研修センターというのが設けられているそうでありますが、この研修センターの運営の実態、またその運営費の各国の分担というのはどうなっているか。この研修センターというのは実際に機能して効果を上げているものなのかどうなのか。先ほどの御答弁で金額としてはそう多い金額ではないと思いますので、どれだけの効果を上げているか、それをひとつ御答弁願いたいと思います。
  99. 伊藤修介

    ○伊藤説明員 お答え申し上げます。  研修センターの設置につきましては昭和四十五年にさかのぼるわけでございますけれども、当初国連の開発計画の一環という形で設置されまして、その後、その援助の廃止によりまして、APPUの一つの機関、こういうことにされて、現在まで活動を続けてきているわけでございます。その目的といたしますところは、アジア・太平洋地域における郵便業務の改善に資するために、主として中堅幹部の訓練を目的として設置をされてございます。年間八コースに分けまして、それぞれの参加国の研修生を訓練するという形で研修を続けてまいりまして、現在までのところ千六十七名が訓練を修了してございます。修了いたしました後、それぞれの国におきまして各方面で活躍をしておりまして、高い評価を得ているものというふうに考えでございます。  この研修センターの運営の経費等でございますけれども、センターの運営経費につきましては、研修に参加する国の負担金、それからその他のAPPUの加盟国からの維持分担金、それから国際機関からの拠出金によって賄われておりまして、八四年度の運営経費を申し上げますと、総体で約一億二千万円相当ということでございます。
  100. 古川雅司

    ○古川委員 この連合の中央の事務局がマニラに、それから研修センターがバンコクに設けられているということでございますけれども、それぞれ別々に設けられているということについて、非能率的であるというようなことはないのか、一つの国にまとめるというような構想はないか。さらに、この中央事務局につきましては、その所在国は、少なくとも五年間、昭和六十二年六月三十日まではマニラであると聞いているわけですが、六十二年以降どうなるのか。我が国がこれを誘致するというような考えはお持ちなのか。その辺はいかがですか。
  101. 伊藤修介

    ○伊藤説明員 お答えします。  ただいま先生指摘のとおり、マニラとタイのバンコクに分かれているわけでございますが、それぞれ歴史的な経緯もございまして、マニラあるいはバンコクという形になっているわけでございます。現在のところ、これを一つにしたらどうかという動きについては承知をしておりません。  それから、二点目のAPPUの中央事務局の件で、ございますけれども、御指摘のとおり、条約によりますとマニラからよその国に動くという道は開かれているわけでございますが、現在、加盟国でマニラから動かしたらどうかというような動きも出ておりませんし、我が国としましても当面マニラに存置しておくのは望ましいのじゃないかと考えているところでございます。
  102. 古川雅司

    ○古川委員 そこで、この約定締結することによりまして、両国国民の間の送金の利便を拡充することになるわけでございますが、大体どういう方々が対象になるのか、それが一点。  特に、留学生等の送金の利便が図られるというふうに考えられるわけでございますが、この留学生問題に関連をいたしまして、昨年の五月中曽根総理がASEAN諸国を訪問された際に、総括演説で提唱した「二十一世紀のための友情計画」、この計画に基づいて青年訪日団の第一陣百二十六人が今月六日に来日をするというふうに報道をされておりますけれども、「二十一世紀のための友情計画」というのはどういう目的、どういう発想であるのか、そして、こうして訪日第一陣を迎えるということは、その計画を具体的にスタートさせたというふうに受けとめていいのかどうか、これは御答弁が二つに分かれると思いますけれども、ひとつよろしくお願いいたします。
  103. 川村知也

    ○川村説明員 「二十一世紀のための友情計画」でございますが、趣旨は、二十一世紀に向けて日本とASEAN諸国との友好協力関係をさらに強固かつ実りあるものにするため、将来の国づくりを担うASEAN各国の青年合計三千七百五十名を今後五年間にわたりまして我が国に招聘して、日本の同世代の青年との交流を通じて相互理解を深め、友情と信頼を培うことを目的とするものでございます。  具体的に申しますと、計画はASEAN各国から農村青年、都市勤労青年、教員あるいは学生等の広範な分野にわたる青年を我が国に約一カ月招聘いたすものでございまして、この間、これら青年は東京並びに地方におきまして各種の研修あるいは交流プログラムに参加することとなっております。当面、本年度でございますが、約七百五十名の青年を招聘する予定でございまして、既に第一陣であります百二十三名がこの五月六日より来日しております。
  104. 古川雅司

    ○古川委員 これはASEAN諸国の青年の訪日を図るということでありますが、その反対に、日本の青年たちをASEAN諸国に派遣するという計画についてはいかがでございましょうか。
  105. 瀬崎克己

    ○瀬崎説明員 青年の交流につきましては、二十一世紀を目がけまして、若い人たちの間に相互理解を深めるということで、我が方から積極的にASEANのみならずほかの諸国、例えば今回安倍大臣も行かれたわけでございますが、南西アジアにおきましても青年を招聘するというようなことでやっているわけでございますけれども、相互理解という観点からいきますと、やはり一方的にASEANの青年を日本に招くだけではなくて、日本からもASEANに対して、あるいはほかの地域に対しまして青年を送り出すということは非常に重要かと考えております。ただ、これにつきましては、経費の分担等につきまして、例えば日本側でありますと、日本が経費を全部持ちましてASEANの青年を招くことができるわけでございますが、他方、こちらから送り出す分につきましてはどういう経費分担をするかというような点につきまして、必ずしもまだ話が詰まっていないわけでございます。  ただ、基本的な考え方といたしましては、相互交流ということで今後ASEAN並びにその他アジアの諸国に日本の若い青年にどんどん行っていただくということを考えている次第でございます。
  106. 古川雅司

    ○古川委員 ASEAN諸国の青年に対する奨学金制度についてでありますが、これは外務省がお出しになっております「わが外交の近況」という資料によりますと、我が国がASEAN諸国の有為な青年に対する教育機会の増大に寄与するために、八〇年度からASEAN青年奨学金を拠出している、八二年度に百万ドルという数字も出ているわけでございますが、今年度はこれはどうなるのか。またこの拠出金の運営でありますけれども、具体的にはどういうふうに使われているのか、その機会の増大が実際問題として図られているのかどうか。この点はいかがでございましょうか。
  107. 市岡克博

    市岡説明員 申しわけございませんが、今手元の資料をちょっと調べまして、改めて答弁させていただきたいと思います。恐縮でございます。
  108. 古川雅司

    ○古川委員 ではその答弁は後ほどお願いいたします。  我が国への留学生も年々ふえているわけでございますが、その留学生の大半を占めるのは、やはりアジア諸国からの留学生でありますけれども、この点については若干減少の傾向にあるということも伺っております。アジア諸国についての減少の傾向、これはどういう理由によると受けとめていらっしゃるか。その点いかがでありましょうか。
  109. 岡村豊

    ○岡村説明員 先生指摘のとおり、我が国に留学してまいります学生のうち約八割はアジア地域からの留学生でございます。我が国への留学生数は、昭和五十四年以降年々ふえておりまして、例えば昭和五十七年五月で八千百人でございましたものが、昭和五十八年度一万四百人ということになっております。  なお、アジア地域について見ますと、昭和五十七年は六千三百四十八人でございましたが、昭和五十八年は八千四百十一人ということで、約二千人の増ということになっております。したがいまして、私どもアジア地域からの留学生が特に減少しているということはないというふうに考えております。  なお、ASEAN地域に限って見ますと、昭和五十三年から昭和五十七年までそれほどふえていなかったという点では先生指摘のとおりでございますが、昭和五十八年にはこれが約二百人ちょっとほどふえておりまして、ASEAN地域についても留学生の数はふえておるという現状でございます。
  110. 古川雅司

    ○古川委員 これも昨年の総理のASEAN諸国歴訪の際に、日本にかつて留学をしていた諸君から、日本留学の非常に不人気なことを知らされまして、それが帰国した後の就職の問題、特に日系企業への就職が非常に困難である、そういう実情等が指摘されたわけでございます。この際、外務省は、安倍外務大臣がASEAN拡大外相会議に出席されるに際して、各現地の大使館に対して、元留学生の就職の実態について実態調査を行ったというふうに聞いております。昨年のことであります。これが日本の合弁企業の意識改革、あるいは元留学生の就職の促進運動に取り組むそういう一つのねらいを持っていたというふうに言われておるわけでございますが、約一年を経過いたしておりますけれども、この実態調査の結果、どうなっているのか、その後どのように経緯が進んでいるのか、その点をひとつ御報告願いたいと思います。
  111. 市岡克博

    市岡説明員 御指摘の、東南アジア諸国等におきまして元留学生等の間に日系企業への就職問題を初め、不満が存在するということは常に承知いたしております。従来より我が方大使館と現地の日系企業等との間で雇用問題等について話し合ってきた経緯があるわけでございます。また、大使館自身といたしましても、元留学生の名簿の整備でございますとか同窓会の開催など、アフターケアに努めまして、雇用問題にも側面的に寄与してきたわけでございます。  昨年の総理のASEAN諸国訪問の際、特にこの問題が総理に対して提起された事情もございまして、私どもといたしましては在外公館に対して、改めてこの点について現地において事情を徴し、対策を話し合うように指示いたしました。また同時に、雇用状況の実態についてできる限り調査するように訓令を発した次第でございます。この調査をした結果を見てみますと、ASEAN諸国にはそれぞれいろいろ特有の事情がございまして、帰国後の進路については必ずしも一様のパターンをもって論ずることはできないということが実態であるというように考えております。  おおむねこの人たち教師研究者、公務員、会社員等に従事する者が多い。わけでございますが、日系企業への雇用に関しましては、企業の側では、日本語能力の問題はさておき、人柄、専門知識、技術にすぐれておって、かつ企業のニーズに合う資質を備えておる者であるならば前向きに対処していくという姿勢は示しておるわけでございます。しかしながら実際には、元留学生で日系企業に就職を申し込んでいる者がむしろ少ないという一面も判明いたしております。またそのほか待遇面、就職観念、学力、日本語能力等の問題で結果的に日本語留学生を雇用している企業は少ないということも実情であるという結果を得ておるわけでございます。
  112. 古川雅司

    ○古川委員 先ほど報道等を通しての実態調査についてお伺いしたわけでありますが、昨年ではありますけれども大臣もASEAN諸国を歴訪されるに当たってこうした一つの実態調査ということを踏まえて、今後の留学生の日本に対する一つの評価を高めるための努力を意図されたと思うのですけれども、今後、この問題についてどのように取り組んでいかれるか、その方向をひとつ大臣からお示しをいただきたいと思います。
  113. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私も東南アジア、特にASEAN諸国に参りまして、日本で学んだ留学生の諸君と行く国々で懇談をいたしました。率直な意見が聞かれまして、大変参考になったわけであります。  確かに日本では非常に勉強になったけれども、その勉強が国に帰って役に立たないという例も聞きました。これは例えば医師の免状なんか、日本で取った資格がその国では通用しない。ヨーロッパの資格等は通用するんだけれども、どうも日本の資格は通用しないという点とか、それから日本の商社等が非常に活動しておる、合弁事業等もあるが、これがどうも日本で学んだ留学生を積極的に登用しない、雇ってくれない、こういうことも聞かされまして、これは非常に残念に思って、日本の商社等には強く訴えたわけであります。中には、自分は日本で学んでそれなりに得たものはあるけれども、自分の子供は留学させるとするならば日本には行がしたくない、ヨーロッパに行がしたいんだということすら言う人もありまして、これは日本の留学生対策というものをいろいろと反省をし、再検討しなければならぬのじゃないか。これからの日本の将来を考えますと、経済協力も大事ですが、やはり人的なつながりというのが日本とASEANとの間においては最も大事なんです。特に将来を考えるときに大事です。そういう意味で、留学生と日本との間に心のつながりが深く根差さなければ意味がないのだということを思うわけでございます。  外務省としましても、これからそうした日本で学んだ各地の留学生の経験談を聞くとかあるいは日本の留学生のいろいろな意見を聞くとかして、改善に努力していかなければならぬ。生活環境とかあるいは生活そのものにいろいろと問題もあるようですから、この点は改善すべき点がいろいろとあるのじゃないか。それはやはり早急にやらないと、真の友好親善関係というものは発展をしないというふうに私は思うわけであります。
  114. 古川雅司

    ○古川委員 せっかくこういう実態の調査、実態の把握をされたわけでございますから、大臣の今の御答弁のとおりだと思いますが、ひとつ国内的にもこの留学生の日本に対する評価が高まっていく方向でさらに御努力をお続けいただきたいと思うわけでございます。  次に、国際電気通信条約及び関係議定書に関して質問を進めます。  国際電気通信条約の説明書によりますと、国際電気通信連合、ITUの歴史はかなり古いというふうに言われております。我が国にとってこのITUというのはどういう機関なのか、簡単で結構でございますから、その点まずお伺いしておきたいわけです。
  115. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 簡単に御説明申し上げます。  先生御承知のとおり、電気通信というのはそもそも発生の時点から国際的な性格を持つものでございますけれども、最近の国際電気通信の一層の発達、それからさらには宇宙通信等々の発達によって、どうしても国際間の調整が要る。殊に日本は電気通信の分野では最も進んだ国の一つでございまして、こういったITUを通じて国際的な調整をする。その中身としましては、例えば料金の問題もございますし、あるいは電信に使われます周波数の調整の問題、あるいは最近、今度のナイロビ条約で出てまいりました発展途上国への技術協力の問題等々がございまして、日本のような電気通信に非常に多くを頼らざるを得ない、頼ることの多い国にとりましては、このITUを通じての国際間の調整というのは非常に重要な点ではないかと思っております。
  116. 古川雅司

    ○古川委員 このITUの最高機関である全権委員会議のたびごとに、新しい条約をつくる、そういう形式で改正がされてきているわけでございます。今回のこの条約の改正につきまして日本の態度はどうだったのか、全面的に賛成だったのか、あるいは留保事項というようなものについてはどうだったのか、その点いかがでございますか。
  117. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 今回の改正の主な点と日本のとりました態度について御説明申し上げます。  まず一つの改正点は、先ほども申し上げましたように、今回開発途上国に対する技術協力ということをITUの一つの目的にしようじゃないか、こういうことでございまして、これにつきましては種々議論はございましたけれども、コンセンサスでもって採択、こういうことになりました。  それから重要な点だけ申し上げますと、次は、先ほどの宇宙通信の点で、周波数、それから静止軌道衛星、これは将来はかなり混雑も予想されますので、それに対しまして発展途上国の特別な地位、それからある国の地理的な要素も勘案して、この静止軌道衛星の位置の決定とか周波数の決定がなされるべきである、こういうふうな改正が出てきたわけでございますけれども、これにっきましても種々の議論はございましたけれども、これもコンセンサスでもって採択されたわけでございます。  しかしながら、この点につきましては、実は各国、殊に赤道上の各国からの声明といいますか、宣言が出まして、日本はこれに対しまして反対宣言をする。つまり日本立場というのは、宇宙空間というのは主権の行使の対象にならないものである、こういうような観点からの宣言をしたわけでございます。  それから、もう一つの改正点は、これは財政面でございますけれども、発展途上国からは、分担金というものを国連方式のGNPでやるべきだ、こういうような議論が出まして、それに対しまして、日本も含めてでございますけれども、やはり長い伝統を踏まえて任意選択方式でいくべきである、こういうふうな二つの意見が対立したわけでございますけれども、これにつきましても妥協が図られまして、任意選択方式のいわゆる単位と申しますか、単位を上方修正と下方修正する。したがいまして、発展途上国についてもより低い分担金で済むような方式ができまして、これもコンセンサスで採択されております。  大体主な改正点は以上でございますけれども、他方、電気通信の運用上の問題につきましては、実質的な意味での改正は行われておりません。
  118. 古川雅司

    ○古川委員 開発途上国に対する技術援助が新設をされたということは今よくわかったわけでございますが、質問の繰り返しになって恐縮でありますけれども、第十条と第三十三条、この中で明記されておりますが、開発途上国の特別な必要性を考慮するというふうにあるわけでございます。先進国といわゆる開発途上国との間でかなり意見の相違やコンセンサスに至るまでに経緯があったのではないかと思いますけれども、この点はいかがですか。
  119. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 今先生指摘の十条と三十三条は宇宙通信の点でございますけれども、地球の約三万六千キロくらい上空にある静止軌道は、通信とか気象その他にとって最も役に立つといいますか、重要な軌道であるわけでございますけれども、ここが有限である。つまり、必ずしも物理的な意味での有限ではないのでございますけれども、周波数等々の観点からいきまして有限である。ところが、現在、静止衛星を打ち上げておる国というのは圧倒的に先進国であるわけでございます。去年の数字で恐縮でございますけれども、打ち上げられました静止衛星というのは百八十三だと言われておりますが、もっとも今寿命がありますのはその半分くらいかと思いますけれども、そのうちインドネシアとインドが発展途上国としましては静止衛星を打ち上げておりますけれども、あとは圧倒的に先進国である。したがいまして、発展途上国としましては、いわゆる早い者勝ちみたいなことで、静止軌道というものが先進国の静止衛星によって占められてまいりますと非常に困る。殊に発展途上国の場合、通信網の発達からいきますと、衛星通信というのは場合によっては非常に役立つことでもあるので、したがいまして、発展途上国の方からは、発展途上国の将来打ち上げる可能性も踏まえて今後やっていくべきである、こういうふうな主張が出てきたわけでございます。  その結果合意されましたのが発展途上国の特別の理由ということでございまして、それじゃ具体的にこれをどうするかということでございますけれども、実は来年とそれから一九八八年にITUの加盟国の担当官庁が集まりまして、この静止軌道衛星の問題について議論をする、こういうふうな会合が持たれることになっております。
  120. 古川雅司

    ○古川委員 最後に、発展途上国に向けていわゆる第三の国際通信事業体が発足をする、設立の計画があるというように伺っております。ITUの独立国際委員会で提言をされているそうでありますが、日本もこれに対して積極的な態度をとって出資をしていくということも検討されたと聞いておりますが、この実態はどうなのか。そしてまた、他の国際約束との関係、インテルサットあるいはインマルサット、そのほかアジア=太平洋電気通信共同体憲章、それらとどういう関連があるのか。今後の見通しとこの意義についてひとつ御答弁をいただきたいと思います。これは最後の質問になりますので、先ほど御答弁漏れのあった点も後から補足をいただいて私の質問を終わります。
  121. 長谷川憲正

    ○長谷川説明員 ただいま御指摘のありました独立国際委員会は、今御審議いただいております条約が審議をされました一九八二年秋のナイロビの全権委員会議の中で決議としてなされたものでございまして、これに基づいて設立をされたものでございます。正式な名称は、電気通信の世界的発展のための独立国際委員会という名称になっておりまして、条約の目的の中に、技術協力が加えられたのと同様の趣旨におきまして、これからITUが本格的にこういった発展途上国の電気通信設備の拡充のために尽力をするとするならば、一体どういう方法でやるのが最も効果的であろうかというようなことを世界的に著名な方々に集まっていただきまして、いわば賢人会議と申しましょうか、ワイズメンの方々に時間をかけて検討していただくという性格のものでございます。昨年の十月にジュネーブで第一回の会議が持たれまして、来年まで審議をいたしまして、来年のITUの管理理事会にレポートを提出するということになっております。  今お話のありました第三の国際機関というお話でございますが、この独立国際委員会の第二回目の会合が現在ロンドンで行われております。この七日から十一日まででございますが、これに日本から選ばれております委員でございますNECの会長の小林宏治さんがお出かけになる前に、同じくクウェートから選ばれておりますところの通信省の事務次官のアルーグナイムさんから、実はこういう提案をしてみたいんだがということで通知をいただいたものでございます。それは、ワールドテルという名前を本人おつけになったようでございますが、各国がいろいろな形で技術援助をするのではなくて、マルチの機関をつくって、これを例えばインテルサットあるいはインマルサットのような各国が株を持つという形の組織にして、ここにいろいろな途上国の電気通信設備の設計をさせたりあるいはコンサルタントをさせたらどうだろうかという構想のようでございます。具体的な内容は今度の会議の中で提案をされると伺っておりますが、私どもまだ承知をいたしておりませんので、小林委員がお帰りになりまして内容を聞いた上で検討してまいりたいと思いますが、途上国の電気通信の発展を図るという上からいきますと、一つの大きなアイデアではあろうというふうに考えております。
  122. 市岡克博

    市岡説明員 先ほど御質問ございましたASEAN奨学金の件でございますが、この計画は、散大平総理がマニラにおかれまして、訪問なさいましたとき、昭和五十四年五月の時点でございますが、その時点においてこの発表、コミットをなされたものでございまして、十年間にわたって各百万ドルの拠出を行うというのが中核の点でございました。これに基づきまして、我が方は昭和五十五年度から拠出を開始いたしまして、昭和五十八年度まで第四回目の拠出になるわけでございますが、拠出済みでございます。五十九年度は、今後恐らく六、七月ごろになろうかと考えますが、これを改めて拠出するということになりました。その後、各年次予算の中で要求して認めていただいていくということで、昭和六十四年までこれを続けるということであります。  この奨学金は、ASEAN諸国の域内、それから域外へのASEANの人々の留学のための奨学金として使われるということでございます。域外といたしましては、米、豪、日本等が含まれている、こういうことに相なっておるわけでございます。
  123. 古川雅司

    ○古川委員 終わります。
  124. 中島源太郎

    ○中島委員長 次に、玉城栄一君。
  125. 玉城栄一

    ○玉城委員 日本国政府ペルー共和国政府との間の文化協定について、若干質疑をさせていただきたいと思います。  我が国ペルー共和国との間の文化交流及び人物交流促進し、両国民の間の相互理解を増進することを目的としたこの文化協定は、むしろ従来の両国の歴史的な関係からしましても遅きに失した感すらあるわけでありますが、こういう文化協定は早目に締結されてしかるべきではなかったかと思うわけであります。さらに両国友好親善を深めていくということからしますと、むしろ今後積極的に我が国ペルー共和国に対して経済協力活動というものをやる必要があるのではないかと思うわけであります。  そこで、今後我が国としてペルーに対してどういう経済協力をしようとするプランがあるのか、具体的に御説明いただきたいと思います。
  126. 川村知也

    ○川村説明員 お答え申し上げます。  ペルーに対する我が国の開発援助でございますが、近年における同国との良好な二国間関係の進展を踏まえまして拡充されてきております。  これまでの実績をまず申し上げますと、円借款が、送電線建設計画、それから中部漁港建設計画など八件、総計五百三億円ございます。それから、無償資金協力でございますが、地域精神衛生センターの建設計画、生活用水供給計画など十三件、七十七億円に上っております。それから、これは技術協力でございますが、研修買受け入れ、専門家派遣等、総計百一億円でございます。  我が国といたしましては、今後ともペルーの開発ニーズに合致した良好な案件に対して可能な限りの協力を行っていく方針でございまして、このような観点からペルー国政府と常時緊密な協議を行っておるところでございます。
  127. 玉城栄一

    ○玉城委員 たしか我が国ペルーとの間には技術協力協定も結ばれていたかと思うわけでありますが、たしか五十七年六月だったでしょうか、ペルーの方から、向こうのイカ漁の開発について日本協力するということを条件にして、ペルーの二百海里水域内における入漁料を半分にするというような話を聞いているわけですが、その後どういうふうにこの問題が進展しましたか。同時に、向こうの二百海里水域内における我が国の漁船の数だとか、それから漁獲高、それを御説明をいただきたいと思います。
  128. 堂ノ脇光朗

    ○堂ノ脇政府委員 お答えいたします。  ただいま先生の御指摘ございました漁業に関する問題でございますが、二年前、鈴木前総理がペルーを訪問されました際随行された田澤農林水産大臣ペルーの漁業大臣に対しまして、一九八一年に入漁料が前年の三・三倍に値上げされましたことにつきまして善処方を申し入れたのでございます。これに対しまして先方は、必要に応じて、例えば入漁料の減免あるいは技術協力による解決策などを検討したいというふうに述べたということでございます。その後入漁料につきましては、業界関係方々の説明によりますと、一九八二年には対前年比で二六%減額がございましたけれども、その翌年一九八三年には、八二年に比べまして五〇%の増額になったというふうに聞いております。  ペルーにおきます日本漁船の数という点につきましても御質問ございましたが、水産庁の調べによりますと、ペルーの水域で操業しております日本漁船の数は、一九八三年現在でございますが、九隻ということで、ひところに比べますとかなり減ってきている。例えば一九八〇年には百七隻でございましたけれども、ただいま申しましたような入漁料の問題もございまして、それが漸減してきているということかと思います。
  129. 玉城栄一

    ○玉城委員 ペルー我が国移民の最初だったと伺っているわけでありますが、今も南米全体でおよそ百万近い日系の方々が在住していらっしゃるわけです。このペルーにしましても、およそ七万人ぐらい、その七〇ないし八〇%くらいが沖縄県出身でいらっしゃるわけですが、長い間、移住者の方々は今日に来るまで大変な御苦労があったかと思うわけでありますが、現状について、移住者の方々の特徴的なことについて概略御説明をいただきたいわけであります。
  130. 谷田正躬

    ○谷田政府委員 我が国からの海外移住に関しましては、これは我が国の移住の歴史は百年以上あるわけでございますが、戦後の移住再開後の傾向、それから実態について申し上げますと、我が国からの海外移住は、自営とかあるいは雇用による農業移住者が大勢を占めておったわけでございますが、近年では、各種の工業技術者等、あるいは自由業等の職業と、大変多様化してきております。  それから、最近の傾向といたしましては、特徴的なのは、我が国からの農村社会よりも都会地からの新しい機会を求めようとする移住の希望者が多くなってきているということが申せるかと思います。それから、移住先国につきましても、かつては中南米が主流であったわけでございますが、カナダ、豪州向けの移住者が見られるほか、相手国で新しい雇用を創出する企業移住というものが求められている、これは新しい傾向でございます。
  131. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで、この移民の方々につきましては、例えばブラジル等におきましては、非常に成功していらっしゃるというような話等をよく聞くわけであります。その逆に、大変気の毒な状態でいらっしゃるということもあるわけですね。特に孤老男性といいますか、一世移民の方で非常に気の毒な生活の状態にあるというような方もあるわけですが、そういうふうな実態について外務省としてはどういうふうに掌握をしておられるのか、そしてどういう援助と申しますか対応をしていらっしゃるのか、その辺の御説明をいただきたいと思います。
  132. 谷田正躬

    ○谷田政府委員 御質問の孤独な高齢者、老人の問題につきましては、これはブラジルにおきましては日系社会は比較的長い歴史を持っており、また安定した日系社会というものができておりまして、この日系社会内におきます相互扶助体制というものが一応整っており、これに対しましてもちろん政府としても側面的に援助するということでございまして、いろいろな措置を講じております。  その一つとして、国際協力事業団を通じまして、昭和五十三年度以降からは毎年南米各地のいわゆる孤老移民問題調査ということで、老人問題指導員を派遣いたしましていろいろと調査と指導に当たってまいりました。  それから、五十九年度、本年度からでございますが、今度はこちらから派遣するのではなくて、現地の援護関係の団体の福祉担当者を育成するという見地から、本邦におきます福祉機関にブラジルから招請いたしまして研修を行うという措置をとっております。  それから、もう一つ外務省でとっておりますのに保護謝金の制度がございますが、これも生活困窮老人に対する救済措置として、生活扶助、それから医療扶助等の形で、先ほど申しました現地の日系の援護団体を通じてこれらの謝金を供与しておるという状況でございます。
  133. 玉城栄一

    ○玉城委員 ぜひそういう方々に対して外務省としてできるだけの御援助をしていただきたいことを要望して、次の質問は、私はこの委員会で去年もお伺いしたわけでありますが、例のアルゼンチンの行方不明事件についてであります。  これは沖縄出身の方を含む十二名の日系人の方が、例の一九七六年と七九年あたり、当時、向こうの軍事政権ができた直後大量の方々が逮捕されて行方不明になっている、その中に今申し上げた方々も含まれていて、その消息は全くわからない、関係者は大変心配、気がかりということであります。その後アルゼンチンの政権も新しい政権が誕生しているわけでありますが、その後の状況について御報告をいただきたいと思います。
  134. 堂ノ脇光朗

    ○堂ノ脇政府委員 お答えいたします。  昨年、先生も御指摘のとおり、ちょうど今ごろ御質問がございまして、政府委員からもお答えしたわけでございますが、その後、昨年十二月にアルゼンチン軍事政権からアルフォンシン大統領の民主政権に交代が行われまして、新しい政権ができましたので、直ちに日本政府からもこの問題についての重大な関心を表明いたしまして、消息の解明のための協力を要請したわけでございます。  これに対しましてアルゼンチン政府側は、日本政府のこの問題に関する関心の深さは十分に承知しており、新政府は本問題解明のために全力を尽くす所存である、関係者と緊密な連絡をとりつつ事態解明に努力することをお約束する、そういう旨の回答をいただいております。これが昨年の十二月二十日ごろでございまして、アルゼンチンの新しい政府は発足当初からこの行方不明者問題につきまして真相究明のための大統領直属の委員会を設置しておりますし、またアルゼンチンの外務省の中にも人権問題担当の新しい局をつくるということをしておりまして、強力に本件解明のための政策を推進している。  また、アルゼンチンの国内でも種々の所要の法令の改正を行いまして、例えば恩赦に関する法令を訂正しまして、前政権のこの問題についての責任者については恩赦は適用しないということもやっておりますし、かなり本格的に取り組んでいると思いますので、アルゼンチン政府側から何らかの情報とか事実関係が明らかにされるということを私どもとしても強く期待しております。
  135. 玉城栄一

    ○玉城委員 今御答弁がありましたとおり、新しい政権によって非常に前向きにこの問題についてアルゼンチン政府が取り組んでいるということがうかがわれるわけでありますが、昨年のこの委員会でお伺いしたときも、五十一年からずっと外務省とされても早くその真相を究明してくれということを何回も要請していらっしゃるわけです。問題は、その真相がどうなっているのかということが一向にわからないわけですね。いろいろの報道等によりますと、当時七千から三万とかという若者が自宅や路上から引き立てられていって、船とか飛行機で川だとか海に数珠つなぎで突き落とされたというような事実もあったというようなことからしますと、果たしてこれは生存の可能性があるのかどうか非常に危惧されるところでありますが、そういう点いかがですか。
  136. 堂ノ脇光朗

    ○堂ノ脇政府委員 この問題につきましては、我が国ばかりじゃなく、イタリア、フランス、ドイツ等西欧諸国も類似の問題を抱えておりまして、はるかに人数も多いということもございます。  そしてまた、先生指摘のように、その行方不明者たち、八千名から一万五千名とも言われておりますけれども、その行方不明になった過程で非常な残虐行為があった。飛行機から数珠つなぎにして落としたとかいろいろな報道がされておりまして、そういうことから新政権はこれは軍事政権時代の一部の者が犯した犯罪ではあるまいかということでかなり真剣に調査を行っているというふうに聞いておりますし、現に軍事政権当時の首脳九名の訴追も行われているという状況でございますが、何分そのようなアルゼンチン政府側の調査が進んでいる状況でございまして、まだ私ども関心を有しております日本国籍者十名ないし十一名でございますかにつきましては回答をいただいていないという状況でございます。
  137. 玉城栄一

    ○玉城委員 時間が参りましたので、問題は別ですが、従来、外務省とされて民間レベルでの平和、文化教育友好親善外交とかということについてバックアップしておられることについては心から敬意を表するわけでありますが、世界平和ということからしまして、外務省とされてもそういう民間レベル外交については今後とも積極的なバックアップをされることを要望して、質問を終わります。
  138. 中島源太郎

    ○中島委員長 次に、木下敬之助君。
  139. 木下敬之助

    ○木下委員 まず最初に、国際電気通信条約及び紛争義務的解決に関する国際電気通信条約選択追加議定書について御質問いたします。  現在、電気通信分野は新しい技術が次々に開発されて、高度化、多様化の時代を迎えていると思いますが、通信衛星は二十一世紀の電気通信システムにおいて重要な役割を果たすものと考えられるわけですが、国際電気通信連合は現在宇宙通信の分野でどのような活動をし、どういった役割を果たそうとしているのか、お伺いいたします。
  140. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 宇宙通信の重要性につきましては、まさに先生指摘のとおりでございます。したがいまして、ITUにおきましても、その最も大きな重要な業務の一つとしてこれに取り組んでおるわけでございますが、この問題につきましては、ITUの常設機関の一つでございます国際周波数登録委員会というのがございますが、そこでの業務が本件の中心になろうかと思います。そこの業務は、要するに静止衛星の軌道の位置の調整それから国際的な承認、それから宇宙通信に使われます周波数の調整、登録、この二つが一番大きなITUの宇宙通信における業務ではなかろうかと私は思います。  なお、これにつきましては、明年及び一九八八年に、静止衛星軌道及びその軌道を使用する宇宙業務に分配された周波数帯の公平な使用を保障する、こういったことを目的といたしまして担当官庁の国際会議が開かれることになっております。
  141. 木下敬之助

    ○木下委員 国際交流の拡大と活発化に伴い、国際的電気通信の増大が予想されますが、現在の国際電信電話の通信量のうち、衛星による通信量とその他の通信量との割合はどうなっているか、また将来にどういう見通しを持っているのか、お伺いいたします。
  142. 長谷川憲正

    ○長谷川説明員 国際通信の世界全体を見た場合の衛星とその他の割合というのはちょっと資料がございませんが、我が国に発着する国際通信を見た場合に、現在、通信衛星と海底ケーブル、それから散乱波通信という三つの方法をとっておりますが、これを回線割合で見ますと、衛星通信が六二%、海底ケーブルが三四%、散乱波通信が四%という数字になっております。インテルサットの発表している数字を見ましても、太平洋それから大西洋、海を二つ挟んでの通信量のうち、三分の二が通信衛星、三分の一がケーブルというふうに言われておりますので、全世界的に見ても、衛星とその他が大体二対一ぐらいの数字になるのではないかというふうに考えております。  将来の見通しでございますけれども、国際通信の伝送路を衛星だけに頼りますとか、あるいは海底ケーブルだけに頼るということになりますと、一たん障害が出たときに受信が途絶するということも考えられるわけでございます。したがって、信頼性の高いサービスを提供するというためには、今後とも衛星それから海底ケーブルの両方を充実させて、通信回線の確実な確保を図っていくことが必要だというふうに考えております。ただ、先生指摘のとおりに、国際通信の通信量そのものが非常な勢いで伸びておりますので、衛星にいたしましても、海底ケーブルにいたしましても、必要な回線容量はどんどんふえてくるだろうというふうに考えております。
  143. 木下敬之助

    ○木下委員 今後の問題で途上国等の問題が出てきますので、どうか、そういう割合等でもう少し詳しい資料がありましたら、また教えていただきたいと思います。  静止衛星の打ち上げをめぐって、静止衛星軌道のうち赤道諸国からその上空の主権が主張され、今回の国際電気通信条約の最終議定書にも関係諸国はそれぞれ留保を行っておると聞いておりますが、赤道諸国の留保内容と日本の態度についてお伺いいたします。また、通信衛星をめぐる南北問題の現状についてもお伺いいたしたいと思います。
  144. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 お答え申し上げます。  まず最初の先生の御質問の点でございますけれども、コロンビア、コンゴ、エクアドル、ガボン、インドネシア、ケニア、ウガンダ、ソマリア等こういった赤道諸国は、自分の国の三万五千八百キロぐらいの上空にある静止軌道は、自分の国の国民のためにその真の利益をもたらすことを意図されているんだということを確認し、したがって、その下にある国というものが有限な天然資源の独占的な受益者であって、国際社会の他の構成員、特に開発途上国に損害を与える一握りの国の利益に奉仕する、いわゆる早い者勝ちの原則の継続的な適用に対して異議を唱える、こういうふうな宣言を行っておるわけでございます。一言で言いますと、主権行使あるいは優先的な権利の主張、こういうことになろうかと思います。  これに対しまして、日本でございますけれども、一九六七年にできました宇宙条約日本も加入しておりますけれども、宇宙条約の第二条に宇宙空間というものは主権の対象にならないということを言っております。したがいまして、日本は、宇宙空間というものはそういったような主権の対象とかあるいは優先的な権利の対象にならない、こういうことから、今申し上げましたような赤道諸国の権利の主張といいますか宣言に対しましては日本はこれを認めない、こういうふうな宣言をいたしております。これが第一点でございます。  次に、第二点の宇宙通信をめぐる南北問題でございますけれども、これは一言で申し上げますと、静止衛星軌道をめぐっての争いというか対立になろうかと思います。  発展途上国としましては、そういった自分の主権的ないし優先的な権利の主張の結果、今ほっておくとどうも早い者勝ちになる。したがって、発展途上国が将来自分の通信網の拡充のために静止衛星を打ち上げることの可能性が現にあるわけでございまして、そういったことのために自分たちの特別な必要性を認めてほしいということが発展途上国側の主張であるわけです。  これに対しまして先進国側の方も、主権の行使であるとかあるいは優先権の主張に対しては反対しているわけですけれども、しかしながら、他方、この有限の静止軌道というものをみんなのためにどうやって有効に使っていこうかという、静止軌道衛星の位置の確定とかそういったことについてはやはり国際的な調整がなされるべきなのは当然であって、したがいまして、先ほど申し上げましたように、来年のITUの会議あるいは一九八八年の会議においてこういった問題を世界的に取り上げて議論していきたい、こういうふうに思っております。
  145. 木下敬之助

    ○木下委員 そういうふうに真っ向から対立した形になっているのはわかるわけですが、そういうことで今回の条約改正に、宇宙無線通信のための周波数及び対地静止衛星軌道の使用に当たり開発途上国の特別な必要性を考慮する、第十条、第三十三条ですか、こういった規定をわざわざ加えておるようですが、これはどういった意味なのか、お伺いいたしたいと思います。
  146. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 お答え申し上げます。  この点は、先ほど私御説明申し上げましたように、そういったような発展途上国の立場も踏まえまして、法律的な論争はともかくとしまして、発展途上国も含めた世界的な規模での、経済的な考慮も加えた上での実際的な観点から調整が図られるべきである、こういうような趣旨からこの「開発途上国の特別な必要性」それから「特定の国の地理的事情」、こういうことが、これはコンセンサスで入ったわけでございます。
  147. 木下敬之助

    ○木下委員 ざっと考えてみますと、静止衛星の軌道というのは有限で数に限りがあるだろうから、その中で主権を主張しているところもあれば、必ずしも赤道の下にないけれども、途上国で将来のために必要とするところもある、そういうところの主張等も含めて、有限なものが一応平等にかどうかわかりませんけれども、一部だけが利用するような形でないようにしたいという気持ちがあらわれているというのはわかるわけですね。そして早い者勝ちという空気がある。それで、我々は細かいことはわからないのですが、これはどのくらい逼迫した問題なんですか。有限といっても現実にはどの程度の有限で、あと必要とするのがどのくらいあって、どのくらい逼迫した問題なのか、ちょっとはっきりわからないので、少しお伺いいたしたいと思います。  まずその前に、開発途上国というのは大体どういう定義で考えていて、これはどのくらい数があるのです。
  148. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 私の方から開発途上国について御説明申し上げます。  この条約の審議過程においては開発途上国が何であるかという審議は実はなされていないわけでございます。したがいまして、この条約からは開発途上国の範囲は出てこないのでございますけれども、他方、それじゃほかの分野、例えば国連であるとかその他の分野で一体開発途上国の定義があるのかと申しますと、これも実は非常に雑というか、大ざっぱに使われておりまして、開発途上国はこうであるというはっきりした定義はないのであります。しかしながら、一つの分類の代表的なものとしまして、OECDにDACというのがございますが、DACで開発途上国のリストというものをつくっております。ここには、国及び地域がございますけれども、全部で百五十九の国がリストアップされております。これが典型的な例でございますけれども、その他UNCTADのいわゆる南北間交渉のG77と申しておりますけれども、現実には今百二十七あるわけですが、これも開発途上国と概念されるのかなと思ったりいたしますし、他方世銀にも開発途上国というのがありまして、これは百二十一カ国になっておるわけです。したがいまして、定義自身が余りはっきりしないところからかなりばらつきがあるのであります。  しかしながら、百二十七にしろあるいは百五十九にしろかなりな部分は共通しているわけでございまして、私ども大体そういうふうに、これは極めて漠たるあれでありますけれども、使っておりますし、他方、ITU条約に返って、さてそれじゃ開発途上国はという点に関しましては、かなり広く、例えばDAC的に解していいのじゃないか、こういうふうに私自身は思っております。
  149. 木下敬之助

    ○木下委員 経済面から見たときの途上国も、電気通信、宇宙通信の面から見ておくれているという意味での途上国も余り変わらないけれども、本条約においては要するに今後発達に伴ってこういった衛星を必要としてくる国、こう考えてもいいわけじゃないですか。そういう意味でそれは何カ国ぐらいあるのですか。先ほど出た百二十一、大体こんなものですか。
  150. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 先生の御質問、ちょっとお答えしにくいのでありますけれども、DACの統計によりますと開発途上国が百五十九となっているわけでございます。ITU条約に関して申し上げますと、国の数が何カ国かというのは非常に難しいのでございますけれども、先ほど申したようにこれは広く解した方がいいのじゃないか。例えばGNPでとりますと、GNP上ではとてもパーキャピタが上にあっても技術的にはまだまだという国もございますし、かつ、そういった国で宇宙衛星を必要としている国も実はあるわけで、例えばサウジアラビアなんかがその例がと思いますけれども、したがいましてかなり広く解していいのではないかな、こういうふうに私は思っております。
  151. 木下敬之助

    ○木下委員 その広く解した百五十とか、そういった数字の国が将来必要としてくる、そのための配慮も考えて、また現在も相当数が必要として早い者勝ちで打ち上げようとしている、こういう状態の中で、じゃ一体どのくらいのものが打ち上げることが可能なのかということをお伺いいたしたいと思います。これは現在とのくらいの静止衛星が上がっていて、あとどのくらい上げることができて、全体ではどのくらいの許容ができるのか、お伺いいたしたいと思います。
  152. 宍戸成夫

    宍戸説明員 お答え申し上げます。  第一点は、まずどのくらい打ち上げられるかという可能性について御説明申し上げます。  静止衛星軌道に配置できる衛星の数でございますけれども、使用する電波の周波数帯あるいは衛星や地球局に用いるアンテナの大きさ、こういった条件によって異なるわけでございますけれども、条件を極めて単純に仮定して数を申し上げたいと思います。  現在、静止衛星通信用として最もよく使われております六ギガヘルツと四ギガヘルツの周波数帯で地球局のアンテナの直径三十メーターという大きさのを使用した場合には全世界的に約百八十個でございます。それから、それを直径十メーターのアンテナ、小さくします、そのような条件の場合には約百二十個の衛星を打ち上げることができるであろうと考えております。それから、今度は周波数をもう少し高くします。我が国で打ち上げております通信衛星さくら二号も使っておりますけれども、三十ギガヘルツと二十ギガヘルツ、この周波数帯ですと、直径十メーターのアンテナで約百八十個、先ほどお話しの四ギガヘルツ、六ギガヘルツの三十メーターと同じ相当の数の衛星が打ち上げられるであろうというように考えております。  それから、現在の衛星が静止衛星軌道に何個あるかということでございますけれども、昨年末の統計でございますけれども、全世界的に約二百個の静止衛星が打ち上げられております。ただ、この衛星はいろいろ用途がございます。この大多数が通信あるいは放送の衛星として使われているであろう、そのほかは気象衛星だとかあるいはまだ実験用として使っているというような統計が出ております。  それからもう一点。我が国は現在七個の静止衛星が打ち上げられて、使っております。  以上でございます。
  153. 木下敬之助

    ○木下委員 百八十とか百二十とか、周波数変えたら百八十とか言われて、今二百上がっているという話ですが、私の方が一番知りたいのは、有限と言われているけれども、どの程度有限なのかということで、周波数をいろいろ変えたりして最大限に上げたときに実際にどのくらいまで可能なのか、そしてあとどのくらい残っているのかが知りたいのです。さっき、こういう場合に百八十個でこういうとき百二十、こういうときには百八十と言われた、あれは全部足しただけ出せるのですか、それともどうなっているのですか、もう一遍ちょっと教えてください。
  154. 宍戸成夫

    宍戸説明員 先生の御質問、大変難しゅうございましてお答えが大変苦しいわけですけれども、ただいま申し上げた数は現状でございます。そして各国とも、衛星通信に使うあるいは衛星放送に使う、そういった衛星をできるだけたくさん上げる、有効利用したいという研究もまた一生懸命やっております。そういうことで、現在今申し上げた数が可能であるが、将来いっぱいかどうかということは、時間的な意味でも非常に流動的でございまして、少なくとも今の時点では、今上げたいという国の衛星は打ち上げられると考えております。
  155. 木下敬之助

    ○木下委員 全然答えにならないんで、今、その前の前提として途上国に配慮すると言うし早い者勝ちと言っている、だからどの程度逼迫した問題かと私は聞いていて、最終結論は打ち上げたいと思っているところは上げられるというのなら全く逼迫していないということですか。こんな問題、現在では全然考える必要もない、そういうことですか。
  156. 宍戸成夫

    宍戸説明員 お答え申し上げます。  衛星の業務、サービスの別にお答えしたいと思うのですけれども、放送に使います放送衛星、これにつきましては一九七七年、今から七年前ですけれども、そのときに全世界的な各国別の軌道の位置それと周波数、これが十二ギガヘルツ帯という周波数帯で計画が確立しております。したがいまして、世界の今打ち上げたいという国ではその軌道の位置と周波数が確保されております。それから、先ほどもお話出ましたけれども、その他の業務につきましては一九八五年、来年とそれから八八年に静止衛星軌道の問題と周波数の使用の計画を検討するための世界無線通信主管庁会議というものが開かれる予定でございます。この会議におきましてその点の検討が十分行われるというように見通しを立てております。
  157. 木下敬之助

    ○木下委員 私の質問に全然答えていただけていないような気がいたします。私の方は、現在の計画があって今すぐにでも打ち上げようとしているところの話をしているのではなくて、今後に向かって随分上げたいと思うけれども有限であるのでいずれ争いがある、それがいずれでなくて、現実にもう相当逼迫した争いであるというふうな認識でこの条約のことも考えているわけです。そんな意味で今後どの程度有限なのかを教えていただかないと全然話にならないのです。もう一遍だけ確認させてください。先ほど言った百八十、百二十、百八十という数字は合計の四百八十全部を打ち上げられるのですか。それともこういう場合は百八十でこういう整理をしたら百二十でということなんですか。せめてそれだけでも教えてください。
  158. 宍戸成夫

    宍戸説明員 先ほどお答えいたしました百八十個という例は、四ギガヘルツ、六ギガヘルツの周波数を持っている衛星だけを考えて軌道上に並べますと百八十個打ち上げられるということでございます。したがいまして、ほかの周波数帯、先ほど御説明申し上げた三十ギガ、二十ギガの周波数帯だけを使う衛星を打ち上げた場合にはやはり直径十メーターで百八十個別に打ち上げられるということでございます。
  159. 木下敬之助

    ○木下委員 それでは研究が進めば合計数は相当たくさん打ち上げられるということですね。
  160. 宍戸成夫

    宍戸説明員 はい。研究の結果の問題だと思いますけれども、さらにもっと打ち上げられる数がふえるというように考えております。
  161. 木下敬之助

    ○木下委員 結構でございます。  最後に、報道によりますと、経団連は今国会提出の電気通信事業法が成立し、国際通信分野が開放されれば、現在国際電電が独占している国際通信の分野への進出を目指して検討するといった新聞報道を見ましたが、この経団連構想の第二KDDの実現性と国際通信を一元的に運営していますインテルサットとの関係制約等についてお伺いいたします。
  162. 長谷川憲正

    ○長谷川説明員 現在の公衆電気通信法の体制のもとにおきましては、国際電気通信はKDDの独占ということになっておりますが、現在審議をお願いしております電気通信事業法案が成立をいたしますと、法制度上はKDD以外に新規参入の国際通信事業者が出てくる可能性が出てまいります。ただ、国際通信の分野は自分の国の通信事業体だけではサービスができないわけでございまして、相手国の通信事業体といわば共同事業のような形でサービスをするということになりますので、国際約束でありますとかあるいは相手国の通信政策との関係がございまして、必ずしも国内通信で新規参入者が出てくるような簡単なぐあいにいかないであろう。そういった面では違った側面があるというふうに考えております。しかしながら、いずれにいたしましても、これから国際通信に関する利用者のニーズも高度化、多様化してくるというふうに考えられますので、新しい需要にきめ細かく対応するという形では今後新規参入もあり得るであろうというふうに考えております。  そこで、それではインテルサットとの関係がどうなるかという御質問でございますが、インテルサットの衛星を使用いたします場合には、衛星の回線容量の割り当てなどをインテルサットに申請をする必要がございます。しかしながら、法律が成立をいたしますと、国内的にも申請手続を整備するということになりますので、この手続を踏めば新規参入の制約になることはないというふうに考えております。現にアメリカにおきましては、そういった衛星を使ったたくさんの国際通信事業者が存在するわけでございます。  そこで次に、インテルサットの衛星を使わずに別個の衛星システムを例えば自分で打ち上げるということが可能かどうかということでございますが、これはインテルサット条約で運用されているわけでございますが、この協定上インテルサットに経済的に著しい損害を与えないこととかインテルサットと技術的に整合性を保つというような条件が課されておりますが、こういった調整ができれば実施すること自体は不可能ではないわけでございます。ただ、いずれにしましても、先ほど申し上げましたように相手国のある話でございますので、技術的な問題が解決をされたという場合でも実際にサービスの合意に至るかどうかというのは、これはやってみなければなかなかわからない部分であろうというふうに考えております。
  163. 木下敬之助

    ○木下委員 次に、日本国マレイシアとの間の国際郵便為替交換に関する約定について質問いたします。時間も少ないので、第十条に関してお伺いいたします。  この十条に仲介業務のことが書いてありますが、日本の仲介によって郵便為替の交換を行っている国はありますか。あるとすればどの国とどの国が行っておりますか。
  164. 舘野忠男

    ○舘野説明員 マレーシアとの為替約定の十条でございますけれども、こちらに、国と地域との間に仲介を行うことができるという条文がございます。現在日本が仲介を行っている国があるかということでございますが、現在日本が仲介を行っている国はございません。     〔委員長退席、浜田(卓)委員長代理着席
  165. 木下敬之助

    ○木下委員 他の国の仲介によって日本と郵便為替の交換を行っている国はありますか。あるとしたらどういう国ですか、列挙していただきたいと思います。
  166. 舘野忠男

    ○舘野説明員 現在日本はフランスとオーストラリアに仲介依頼をいたしております。フランスに依頼をしております国はモナコ、マリ、セネガル等々十四カ国でございます。それから、オーストラリアに仲介を依頼いたしております国ですが、ニュージーランド、トンガ、フィジーという合計九カ国に仲介を依頼をいたしております。
  167. 木下敬之助

    ○木下委員 この十条の中に、国じゃなくて「地域」という言葉もありますが、「地域」というのはどういう意味ですか。
  168. 斉藤邦彦

    ○斉藤(邦)政府委員 一般論といたしまして、場所によりましては国家ではないにいたしましても国家と同様の機能を果たす中央の組織があって、その一定の統治を行っている場所がございます。それを条約で国家と並べて類似の扱いをするときに「地域」という言葉を使っております。
  169. 木下敬之助

    ○木下委員 具体的には……。
  170. 斉藤邦彦

    ○斉藤(邦)政府委員 この約定に即して申しますと、ここで使われております地域は、香港を頭に置いていると承知しております。
  171. 木下敬之助

    ○木下委員 その香港への通常郵便物、郵便為替の送達は、現実にはどういう取り扱いがなされておりますか。
  172. 舘野忠男

    ○舘野説明員 香港との間でございますが、通常郵便物につきましては、現在送達が行われております。郵便為替でございますけれども、これもかつては送達が行われておりましたけれども、実は昭和五十年にイギリスが香港との仲介を停止をいたしております。現在香港との間の郵便為替は行われておりません。
  173. 木下敬之助

    ○木下委員 最後にもう一間お伺いします。  朝鮮民主主義人民共和国との通常郵便物、郵便為替の交換はどういう取り扱いがなされておりますか。
  174. 舘野忠男

    ○舘野説明員 通常郵便物につきましては、船便に関しましてはソ連の仲介によりまして送達をいたしております。航空便でございますが、これに関しましては中華人民共和国の仲介によりまして交換を行っております。郵便為替でございますが、同国はいずれの国とも交換業務を行っていない模様でございまして、実はUPUの為替約定にも入っておりません。こういう状況ですので、現在郵便為替の業務は行っておりません。
  175. 木下敬之助

    ○木下委員 きのうちょっと電話しまして、朝鮮民主主義人民共和国との文通を特に望んでいる人たちとも少し話をしましたが、現実としては出したものも三通に一通ぐらいしか届かないんじゃないかという話もしておりましたので、これは人道問題とも関係があって今一生懸命進めてもらいたいところでございますので、今後ともどうぞよろしくお願いしたいと思います。  三番目の日本国政府ペルー共和国政府との間の文化協定についてお伺いいたします。  本協定が発効したら、両国の相互理解及び友好関係を増進させるため努力研究し、いろいろな活動を奨励することになるわけですが、具体的には特にどういったことを考えているのか、またそのための予算は確保されるのか、お伺いいたしたいと思います。
  176. 市岡克博

    市岡説明員 我が国ペルーとの間にはこれまで人物交流日本語普及事業、各種の催し物に関する事業等々各種の分野での文化交流が行われております。特に人物交流の分野におきましてはかなりの数の双方の国民交流があり、特に日本語の分野におきましては、ペルー日本語を学び日本に関する研究を行っているそういう方々が約三千八百人という数であると承知いたしておりますが、そういう方もおられ、我が国としては日本語研究努力を重ねていきたい、こういうように考えておるわけでございます。この協定ができました暁には、もちろん今まで協定書なしにこういうような交流をやっていたわけでございますが、この交流を契機として今申しましたような交流を量的に一層拡大してまいりたい、こういうように考えているわけでございます。  特にどこの分野に重点を置くかということにつきましては十分検討も重ねてまいりたいとは思いますが、現在までの双方の交流から見まして、人物の交流それから日本語普及あるいは日本に関する研究に対する助力、こういったところが重点になっていこうか、こういうように考えるわけでございます。  予算的には、主として国際交流基金にございます事業費を使っていくということになるわけでございます。現在ペルーに対する国際交流基金事業は、数字的には、五十七年度事業費でございますが約四千六百万円ということでございます。これは中南米地域における順位といたしましては第三位のものでございます。予算手当てといたしましてはこの国際交流基金を通じて、もちろん制約があるわけでございますが、それの中でできるだけ有効に事業を進めていきたい、かように考える次第でございます。
  177. 木下敬之助

    ○木下委員 予算について精いっぱい努力したとしても、政情が不安であれば両国文化交流もままならないと思いますので、政情について少しお伺いいたしたいと思います。  中南米は今政治的にも経済的にも激動の渦中にあるようですが、まず中南米諸国というのは押しなべて債務危機に苦しんでいるようでペルーも例外ではないと思います。この累積債務についてのお考え。そして、中南米二十八カ国の代表が借金の返済条件の緩和などを求めてエクアドルの首都キトで会議を開き、宣言を採択して、その後二月末から三月にかけて議長国のエクアドルが債務諸国を代表して大物特使三人を債権国の日米欧に派遣して金利引き下げなどを直訴するという一種の泣きつき外交とも言えるものを展開してきたと思いますが、中曽根首相はその際に、債務や金利などの問題はあるが関係省庁に研究するよう指示する、このように答えたように伝えられております。その後の経緯、この問題への対応もお伺いいたしたいと思います。
  178. 堂ノ脇光朗

    ○堂ノ脇政府委員 お答えいたします。  先生指摘のとおり中南米諸国は政治的にも経済的にも困難な状況にございまして、中南米諸国の累積債務の総額は世界の途上国の累積債務総額の約半分、三千百億ドルと言われております。そのうち百六億ドルがペルーの累積債務であると言われておるわけでございます。こうした中にございまして、中南米二十六カ国、左はキューバから右はチリの軍事政権に至るまで二十六カ国の代表が本年一月キトで首脳会談をいたしまして、そしてキト宣言というものを採択いたしました。その宣言を主として先進国諸国に伝達するということで、我が国には特使が二月にやってまいりまして中曽根総理にそれを届け、そして特にサミットにおいてこの問題を真剣に検討してほしいということを言われたわけでございます。中曽根総理からは、この問題は外務省を初めとして関係各省に検討せしめるということをお約束されまして、検討しているところでございます。
  179. 木下敬之助

    ○木下委員 その検討の結果が出たらいろいろお聞きしたいことがあったのですが、時間がないので少し飛ばして短く御質問申し上げます。  中南米五カ国の在日大使は四月十三日に松永外務事務次官と会って、六月のロンドン・サミットで中南米諸国の累積債務問題に前向きに対処するよう求めて、さきのキト宣言を支援する態度を打ち出してほしい、このように要請したと伝えられておりますが、キト宣言は累積債務の責任を先進国も分担するよう求めているわけですが、この宣言の評価、そしてサミットでどのように対応するのか、お伺いいたしたいと思います。
  180. 堂ノ脇光朗

    ○堂ノ脇政府委員 お答えいたします。  キト宣言はただいま申し上げましたとおり検討している段階でございますが、その中で債権国と債務国とがお互いに協力する必要がある、債権国だけで努力してもこの問題は解決できないし、債務国側としてはこれまでも精いっぱい努力をしてきたけれどもそれだけでは不十分である、協力してやりましょうという姿勢であると見られまして、債務国が団結してモラトリアムを宣言するという対決的な姿勢が前面に出てないというところは一応評価されてよろしいかと思います。いずれにしましても、サミットにおきましてもこの問題を中曽根総理を初め日本の首脳方が十分念頭に置いて御議論していただけるものと思っております。
  181. 木下敬之助

    ○木下委員 時間もありませんので最後に一問。  ペルーは穏健な非同盟主義をとり、ニカラグア、エルサルバドル紛争では中南米周辺国による自主的話し合い解決を目指すコンタドーラグループ、これはメキシコ、ベネズエラ、コロンビア、パナマの四カ国と思いますが、この立場を支持しています。しかし、四月末から五月初めにかけてコンタドーラと中米五カ国の外相会議があり、これが物別れに終わったのも、アメリカが表面的にはコンタドーラ支持を言いながらニカラグアなどへの介入強化を続けるからだとする見方が大変支配的なように思えるのですが、混迷している現在の情勢をどのように把握し、中米紛争解決に向けてどう対応していくのか、お伺いいたしたいと思います。  外務省はコンタドーラグループに対してどう評価しているのか、アメリカはコンタドーラグループの動きをどう見ており、どう評価しているのか、アメリカのそういった姿勢を外務省はどう評価しているのか、こういった点でお伺いいたしたいと思います。
  182. 堂ノ脇光朗

    ○堂ノ脇政府委員 ただいま先生指摘のとおり、ペルーも穏健な非同盟諸国の一員としましてコンタドーラグループの作業を支持しております。残念ながら、この四月三十日、五月一日に開かれましたコンタドーラ諸国四カ国と中米五カ国の九カ国外務大臣会議というものは、実質的な合意というものが非常にたくさんはできなかったということがございまして、これは私どもの得ております情報では、ニカラグアがほかの中米諸国との間で意見が対立しまして、今回は結論が出なかった、しかし、引き続きこの問題解決に向かってコンタドーラ諸国が努力をするということでございます。  また、アメリカ政府も口先だけでなくて実際今回の、昨日でございますか、レーガン大統領の演説の中でも、アメリカ政府もこの努力を支持しているというふうに申しておりますので、日本政府としましても、このようなアメリカ政府の態度はまことに好ましいものであるというふうに考えております。
  183. 木下敬之助

    ○木下委員 時間が参りましたので、これで終わります。
  184. 浜田卓二郎

    ○浜田(卓)委員長代理 次に、岡崎万寿秀君。
  185. 岡崎万寿秀

    岡崎委員 まず、日本ペルー文化協定から質問いたしたいと思います。  ペルーとの文化交流促進されることはまことに結構だと思います。もともと、中南米諸国との文化交流はもっと以前からもっと活発にすべきであったと思うのです。六四年にブラジル、八一年にアルゼンチンとの文化協定が結ばれているわけですけれども、この中南米地域における文化交流の実際はどうなっているのか、日本としてこの活発化のためにどんな努力をされているのか、かいつまんで御答弁を願いたいと思います。
  186. 市岡克博

    市岡説明員 中南米諸国との文化交流の現状でございますが、我々といたしましても中南米諸国は日系人の多さ、あるいはまた我が国にとって極めて友好親善関係にある国が多いこと等を考えまして、我々の文化交流事業の中でも一つの重要な地域として把握いたしております。  このうち、例えば文化協定につきましては、ブラジル、メキシコ、アルゼンチンといった各国との文化協定締結いたしております。それらの国との間には随時協議を行う等のことを進めまして、相互にこの文化交流についての打ち合わせをするというようなことをいたしております。  また、そういうような協定がない国につきましても、人物交流、芸術交流あるいは日本語教育といった面につきまして、我が国として可能な限りの協力をしていく、そういう方針で臨んでいる次第でございます。
  187. 岡崎万寿秀

    岡崎委員 文化交流の前提というのは、それぞれの国との相互理解を深めることだと思うのです。ついては、中南米諸国、この地域というのは支配、抑圧、そして貧困に対する民族自決を求める運動が非常に大きな勢いで広がっているところなんです。そういう国々との文化交流促進するという見地に立つならば、当然こういう運動に対する理解も必要だと思いますけれども、この点についていかがでしょうか。
  188. 市岡克博

    市岡説明員 御説明申し上げます。  もちろん、国によりまして国情は千差万別でございますし、その国の政権とそれからそこに住んでおります国民との関係について一様ならざる関係があるケースもあろうかと思います。しかしながら、私どもといたしましては、何よりも大切なのは日本国民とそれぞれの国の国民及びその国民について指導的な立場にある政府との関係の相互の理解ということでございまして、その国におきまして政府と民衆との関係がいかがであるかということについて特に差別をするということにつきましてはかなり慎重に考えていくというようにいたしておる次第でございます。     〔浜田(卓)委員長代理退席、石川委員長     代理着席
  189. 岡崎万寿秀

    岡崎委員 何を答弁されたかさっぱりわからぬですが、要するに民族自決を求める運動についてどう認識されているかということを御質問したわけなんです。  話を進めますが、レーガン大統領は九日の全米テレビ放送で、中米地域においてソ連、キューバなどの共産主義の侵略によってこういう事態が起こっているかのような発言をされたわけですが、日本政府はもとより独自の立場にお立ちになっていると思いますので、こういうレーガン的な見解ではなくて、中米地域の問題、運動につきましては、これはやはり民族自決の立場に立った運動であるというふうに理解されていると思いますが、安倍外相、そのように理解してよろしゅうございますか。
  190. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これはアメリカはもちろんアメリカ立場に立ったレーガン大統領の判断でおろうと思います。また中米諸国が、特にニカラグアとがそれぞれ当事国がそれぞれの立場に立った判断を下すのはもちろん当然だと思いますが、日本は、今行われておる紛争でございますし、今ここで軽々に今おっしゃるようなこと空言う立場にはない、こういうことでございます。
  191. 岡崎万寿秀

    岡崎委員 そうしますと、レーガン大統領が言うように単純にこういう地域の問題をソ連やキューバなどの侵略——間接的なものであれ、直接的なものであれ、侵略であるというふうに見ないで、やはり独自の立場で判断するというふうに理解してよろしゅうございますね。
  192. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日本は、今この事態というものを冷静に見ながら、事態の成り行きを注目している、こういうことでございます。
  193. 岡崎万寿秀

    岡崎委員 冷静に見るというのが独自の立場だというふうに理解するならば、やはりこの地域における運動の基本的な立場というのは民族自決を求める運動だというふうに理解してよろしゅうございますか。
  194. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 もちろん、その国の主権の問題ですから、主権の範囲内においてその国が独立を求めるのは当然のことだろう、そういうふうに思います。
  195. 岡崎万寿秀

    岡崎委員 それに関連して、十日にハーグの国際司法裁判所でアメリカ政府に対してニカラグアの機雷封鎖並びにその他の軍事行動について直ちに停止するよう裁定をおろしたわけです。これについて外相の御所見をお伺いしたいと思います。
  196. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは国際司法裁判所の権威のある判断でございますから、それなりに我々は重く見なければならぬと思いますし、また尊重はされなければならない、こういうふうに考えます。
  197. 岡崎万寿秀

    岡崎委員 権威のある判断だというふうに言われます。そうしますと、この判断は、アメリカに対して機雷封鎖を直ちにやめるように提言しているわけですが、この件について外相としてはそういうお立場、御見解というふうに理解してよろしゅうございますか。
  198. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 我が国としましては、国際司法裁判所という国際社会の重要な司法機関による命令である以上は、当該命令の内容は尊重さるべきである、そういうふうに思います。
  199. 岡崎万寿秀

    岡崎委員 権威のある判断とか尊重さるべきであるというのは、記者会見でも安倍外相、厳正に受けとめるというふうにも言われておるようでしたけれども、それは機雷封鎖を直ちにやめるべきだという御見地ではないのですか。
  200. 斉藤邦彦

    ○斉藤(邦)政府委員 昨日のICJの命令の内客の詳細は、決定の内容の全文がまだ入手できる状態になっており幸せんので、正確に判断することは困難でございます。しかしながら、米国は、裁判の今の段階では専らICJに管轄権はなしという点の主張を行いまして、事実関係に関しましては全く論議しないという立場をとっております。裁判所は、その米国の立場を前提といたしまして、ニカラグアが主張しております事実関係について米国が争う権利は今度の決定により影響を受けるものではないということを明確にした上で、今度の命令を下したという事情がございます。
  201. 岡崎万寿秀

    岡崎委員 私は事情を聞いたのじゃなくて、要するにニカラグアの機雷封鎖は直ちに取りやめろというふうに裁定を下しているわけなので、これについては御同意がどうかということについて聞いているわけでございます。
  202. 斉藤邦彦

    ○斉藤(邦)政府委員 ただいま私がお答えいたしましたような背景がございますので、裁判所が通常の意味での事実の認定を行ったというのと若干事情が異なっていると思います。いずれにいたしましても、この命令の詳細を全部承知いたしませんと日本政府としてのコメントというのはできないのだろうと思いますけれども、とりあえずの感触といたしましては、今度の命令は、米国が機雷敷設等をしているということがあれば、これは中止しろということだろうと考えております。
  203. 岡崎万寿秀

    岡崎委員 それに対する日本政府、外相の御見解を聞いているわけですが、この問題は国会でもしばしば追及されて、日本政府は、日本船も被害を受けたことでもありますし、調査するということを答弁されているわけですね。しかし事態はそのまま過ぎているわけですが、今度国際司法裁判所ではっきりと、アメリカ政府は機雷封鎖を直ちに取りやめるべきだ、こういう裁定を下したわけですから、新しい段階に入っていると思います。  そういう見地に立って先ほどから私が言っているのは、日本独自の立場でこういう問題は判断すべきであって、権威ある国際司法裁判所が判断を下したわけですから、やはりそういう状況を踏まえてこの問題についての御答弁を願いたいと思うわけです。コメントすべき段階でない、これは全文取り寄せてからということでしょうけれども、それはそれでいいわけです。しかし、判断はすでに下っているわけですから、その問題で、機雷封鎖について、これはアメリカがもしやっているならばという前提つきでも結構なんです。しかし、やめるべきであるということについては御同意なさるわけでしょう。そういう見地に立ってよろしゅうございますか。
  204. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いつも我々が言っておりますのは、やはり事実をはっきりしなければならぬ、事実が明らかにならない限りは日本政府としてこれに対してはっきり物空言うわけにはいかない、こういうことであり良す。  そこで、今、国際司法裁判所でいわゆる措置命令というのは、この事実についての認定はされてないわけですね、アメリカがやったかやらないかという事実の認定はないわけです。もしアメリカがやったということが事実ならば、これはアメリカが機雷を取り除くべきである、こういう措置命令なんですね。ですから、私は詳細にこれを検討しておりませんけれども、司法裁判所としては、機雷を敷設したのはアメリカであるとは言ってないわけですよ。ですから、その事実の認定の上に立った機雷の除去の命令ではないわけですね。もしアメリカがやっておったということになるならば、これは取り除くべきであるということであろうと思います。  したがって、日本政府としましては、国際司法裁判所という権威のある裁判所でございますから、この司法裁判所の判断というものは厳正に受けとめなければなりませんし、これは尊重さるべきであるというのが私たちの見解であります。
  205. 岡崎万寿秀

    岡崎委員 今、安倍外相は、こういう国際司法裁判所の裁定というのは厳正に受けとめなくちゃいけないし、尊重さるべきであるし、そして権威ある判断であるというふうに言われているわけでありますから、当然、事実についてはおっしゃるとおりで結構でございます。しかし、アメリカがやったとするならば機雷封鎖は直ちに取り除くべきだという判断については、当然そのとおりだというふうに理解してよろしゅうございますね。そういうふうにお考えになっていると思ってよろしゅうございますか。
  206. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 もし事実であったならば、これは取り除くべきであるという司法裁判所の判断を我々は尊重すべきである、こういうことです。
  207. 岡崎万寿秀

    岡崎委員 尊重すべきであるというのは、そのようにお考えになっていると理解してよろしゅうございますね。
  208. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 尊重すべきであると考えております。
  209. 岡崎万寿秀

    岡崎委員 私は、中南米問題で、ペルーとの文化協定が今審議されておるわけですけれども文化交流を活発にするためにも、日本が独自の立場に立ってこの種の問題は対処すべきであるというふうに考えるわけです。相手がアメリカであり同盟国であろうが、正しくないものは正しくないと言う形で、追随ではなくて、日本の独自の立場から、過ちについてははっきりと進言する姿勢が必要ではないかというふうに思うわけです。  この問題は何回繰り返してもそれ以上進まないようですから、次の国際電気通信条約に入りたいと思います。この問題では外相への質問はありません。一番最後にありますけれども。  従来の国際電気通信条約には各全権委員が行った留保や宣言を掲げた最終議定書というものがついていましたが、今回のナイロビ会議での扱いはどうも違っておるように思うのですね。ITU事務局は最終議定書を正式な条約謄本と認めなくなったのかどうか、この辺はどう理解されておりますか。
  210. 斉藤邦彦

    ○斉藤(邦)政府委員 御指摘のとおり、今回のITU条約には最終議定書はついておりません。国会に御提出いたしましたテキストについておりません。  この事情を御説明いたしますと、今回、事務局よりこのITU条約の認証謄本を入手いたしましたところ、この認証謄本には最終議定書が含まれていなかったわけでございます。この点につきまして事務局の考え方を確認いたしましたところ、先方は、最終議定書というのは、従来、若干取り扱いに不明確なところもあったけれども、今般、最終議定書は国際約束を形成する文書ではなく、またこのITU条約と不可分一体の関係にある文書でもないと判断したということ、したがいまして、その結果といたしまして、この最終議定書をITU条約の認証謄本から削除したという説明を受けております。     〔石川委員長代理退席委員長着席〕
  211. 岡崎万寿秀

    岡崎委員 ITU事務局がそのように言うのは結構ですが、日本政府はそれについてどういうふうに理解されていますか。
  212. 斉藤邦彦

    ○斉藤(邦)政府委員 日本政府といたしましても、この事務局の説明はもっともだと思って、その考えに納得しております。
  213. 岡崎万寿秀

    岡崎委員 そちらの方からいただいたナイロビ条約最終議定書一覧表を見ますと、これは各国の主張や態度が非常によく反映されていまして重要だと思うのですね。私は、やはりこういう最終議定書ははっきりと正式の謄本として認めた方が賢明であろうと思っていますけれども、そういう見地にはお立ちになりませんか。
  214. 斉藤邦彦

    ○斉藤(邦)政府委員 ただいまの御指摘には十分傾聴すべき点があると存じます。各国によります留保それから一部の解釈宣言につきましては、ITU条約から発生いたします各国間の法的関係に変更を与えるものでございますので、その限りにおきましては条約の一部ではないかという議論は当然できると思います。しかしながら、この留保とか解釈宣言、これは従来条約の署名時点に行うべきであるという考えがとられてきた時期がございまして、そうだといたしますと、この最終議定書に書かれております留保、解釈宣言、これはもうその時点で法的関係が確定するという意味におきまして、ITU条約の不可分の一部だという考え方が成り立ちやすいのだろうと思います。  ところが、最近に至りまして留保とか解釈宣言は、署名の時点に限らず締結時点においても留保を行ったり解釈宣言を行ったりするということが可能であるという考え方が出てまいりまして、これが全権委員会議においてこういう説明がございまして、反対なく受け入れられたという事情にございます。こういう事情を反映いたしまして、今般事務局といたしまして、この最終議定書がITU条約の不可分の一体をなすものではないという考えに立ったというふうに了解しております。
  215. 岡崎万寿秀

    岡崎委員 時間の都合もありますので、次の日本・マレーシア国際郵便為替交換に関する約定に移りたいと思います。  約定の相手国マレーシアは非同盟政策をとっているのは御承知のとおりなんですが、そこで、日本政府はこの非同盟政策、非同盟運動についてどう理解され、どう対応されるのか、改めてここで御所見をお伺いしたいと思います。
  216. 岡崎久彦

    岡崎説明員 非同盟政策につきましては、我が国の方針は一貫しておりまして、真正な非同盟である場合は必ずこれを支持する、そういうことでございます。(岡崎委員「シンセイとは」と呼ぶ)真正というのは、まことの非同盟。非同盟というのは東側西側いずれにもくみしない、そういう意味でございます。
  217. 岡崎万寿秀

    岡崎委員 従来、政府は尊重するというふうに答弁されていましたが、今回安倍外相も御一緒に中曽根総理とインド、パキスタンを訪問されたわけです。御承知のようにインドは非同盟運動のリーダー国でありまして、ここで首相もそして安倍外相も、核軍縮問題での協力関係について、これを強めるということを表明されている、新聞等で拝見いたしましたが。この協力というのはどういう内容と考えてよろしいでしょうか。
  218. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これはインドがリーダーとなって主張しております核軍縮、あるいはまたさらに突き進んで核兵器の絶滅、そういうものに対しては、日本も広島、長崎でああいうふうな体験を受けて、日本の核に対する理想も核兵器の廃絶であるし、さらにそのための均衡のとれた核軍縮を行わなければならない、そういう日本の主張であるから、ともに世界の平和を実現するためにそうした目的に向かってお互いに協力して主張いたしましょう、こういうことであります。
  219. 岡崎万寿秀

    岡崎委員 そうしますと、これまでインドなど非同盟諸国がしばしば国連に核兵器使用禁止条約を提案しましたし、それについて日本は反対ないし棄権の態度をとられてきたわけですね。昨年の第三十八回国連総会でも、ごく少数の棄権国の一つ日本だったわけですが、この問題で我が党の不破委員長がその理由を中曽根総理にただしたところ、これは抑止が壊れるからだというふうに言われたわけですけれども、改めて非同盟運動のインドと核軍縮問題について協力を強めるということを約束されてきたわけですから、今回はさらに一歩進めた態度でこういう核兵器使用禁止条約について臨まれるというふうに理解しよろしゅうございますか。
  220. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 そういったこれからの核軍縮に対するいろいろのやり方については、例えば核実験禁止を強く主張している日本の軍縮委員会等における主張があります。あるいはインドが中心になってやります核不使用決議といったものもあります。そういうそれぞれの国の方向というものがあるわけですから、私はインドの外務大臣とも話し合ったのですが、目的は核廃絶、そして核の軍縮であるから、それに向かって核軍縮会議だとかあるいは国連だとか、そういうところでよく相談をして、そして足並みが一緒にやれるところはやりましょう、こういうことですから、インドと日本ではやはり核軍縮を求めるやり方についても、いろいろと立場はあります。それは、今核不使用の決議案についても検証という面からすれば、日本からすれば不十分である。したがって、これには賛成できないという立場もあるわけですから、こういう点はもっと話し合って、そして足並みが一緒になればやっていこうということでありますから、その点では私は今回のインド訪問は大きな成果であった、こういうふうに思います。
  221. 岡崎万寿秀

    岡崎委員 訪問が成果であったというふうにおっしゃいますならば、今の核使用禁止条約というものは非常に重要な意味を持っていると思いますし、検証の必要も実際はこれはないはずなんでございます。今回はそういうことについて前向きで、これまでのような反対ないし棄権という態度ではなくて、前向きで対応するというふうに協力関係をさらに進めるという意味に理解してよろしゅうございますか。その辺が大事だと思います。
  222. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 十分首脳で核問題について話し合ったわけです。そして日本とインドとはそれぞれ外交政策も違いますけれども、やはり平和に向かってお互いに努力していこう、いろいろとこれからあらゆる会議で十分連絡を取り合っていこうということでありますから、核の問題につきましては、特に我々はインドとの間でいろいろと、決議を出したり、これに対して態度を決める場合においても話し合うということが必要になりましたし、またこれは必要である。そうしてその場合に、意見がどうしても一致しない場合もあるわけですから、そのときは、これはやむを得ません。しかし、なるべく意見を一致させるようにお互いに努力していく。そうして意見が一致した場合はその主張を実現すべくお互いに努力をしていこう、こういうことであります。
  223. 岡崎万寿秀

    岡崎委員 おっしゃるのはそのとおりなんですよ。核使用禁止条約について意見が一致するように努力され、意見が一致するならば、今度は前向きで臨むようにやられてほしいと思いますけれども、そうはできませんか。
  224. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 そういう具体的な問題については何も話をしておりません。これからです。
  225. 岡崎万寿秀

    岡崎委員 時間が来ましたのでこれでやめますけれども、この間NHKの「総理にきく」を聞いておりましても、核廃絶に向けて、目標は非同盟運動もそれから核抑止力の立場に立つ日本も同じだということを強調されておりましたし、中曽根外交の原則というのは平和である、核戦争を食いとめなくちゃいけないと大いに強調されておりました。それならば、やはり日本における核持ち込みの問題、核巡航ミサイル、トマホークの問題等も考えなくちゃいけないと思いますし、口先だけでない現実的な平和外交を進めてもらいたいというふうに考えるわけです。  時間が来ましたのでこれで終わりますが、そういう見地から大いに頑張ってもらいたいと要望して、終わります。
  226. 中島源太郎

    ○中島委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時三十分散会