運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1984-04-18 第101回国会 衆議院 外務委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年四月十八日(水曜日)     午前十時三十三分開議 出席委員   委員長 中島源太郎君    理事 石川 要三君 理事 浜田卓二郎君    理事 山下 元利君 理事 高沢 寅男君    理事 土井たか子君 理事 古川 雅司君       鯨岡 兵輔君    近藤 元次君       佐藤 一郎君    谷垣 禎一君       仲村 正治君    西山敬次郎君       野中 広務君    町村 信孝君       松田 九郎君    与謝野 馨君       井上  泉君    岡田 春夫君       河上 民雄君    小林  進君       八木  昇君    玉城 栄一君       渡部 一郎君    木下敬之助君       岡崎万寿秀君  出席国務大臣         外 務 大 臣 安倍晋太郎君  出席政府委員         外務大臣官房審         議官      山下新太郎君         外務大臣官房審         議官      都甲 岳洋君         外務大臣官房外         務参事官    斉藤 邦彦君         外務省アジア局         長       橋本  恕君         外務省北米局長 北村  汎君         外務省欧亜局長 西山 健彦君         外務省経済局次         長       恩田  宗君         外務省条約局長 小和田 恒君         外務省国際連合         局長      山田 中正君  委員外出席者         大蔵大臣官房審         議官      桐渕 利博君         厚生省援護局業         務第一課長   森山喜久雄君         外務委員会調査         室長      高橋 文雄君     ————————————— 委員の異動 四月十八日  辞任         補欠選任   鍵田忠三郎君     松田 九郎君   宮澤 喜一君     谷垣 禎一君   岡田 春夫君     井上  泉君 同日  辞任         補欠選任   谷垣 禎一君     宮澤 喜一君   松田 九郎君     鍵田忠三郎君   井上  泉君     岡田 春夫君     ————————————— 本日の会議に付した案件  千九百八十三年の国際熱帯木材協定締結につ  いて承認を求めるの件(条約第七号)  出版物国際交換に関する条約締結について  承認を求めるの件(条約第九号)  国家間における公の出版物及び政府文書の交  換に関する条約締結について承認を求めるの  件(条約第一〇号)  国際情勢に関する件      ————◇—————
  2. 中島源太郎

    中島委員長 これより会議を開きます。  千九百八十三年の国際熱帯木材協定締結について承認を求めるの件、出版物国際交換に関する条約締結について承認を求めるの件及び国家間における公の出版物及び政府文書交換に関する条約締結について承認を求めるの件の各件を議題といたします。  各件に対する質疑は、去る四月十三日に終了いたしております。  これより各件に対する討論に入るのでありますが、別に討論申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  まず、千九百八十三年の国際熱帯木材協定締結について承認を求めるの件について採決いたします。  本件承認すべきものと決するに賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  3. 中島源太郎

    中島委員長 起立総員。よって、本件承認すべきものと決しました。  次に、出版物国際交換に関する条約締結について承認を求めるの件について採決いたします。  本件承認すべきものと決するに賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  4. 中島源太郎

    中島委員長 起立総員。よって、本件承認すべきものと決しました。  次に、国家間における公の出版物及び政府文書交換に関する条約締結について承認を求めるの件について採決いたします。  本件承認すべきものと決するに賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  5. 中島源太郎

    中島委員長 起立総員。よって、本件承認すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました各件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 中島源太郎

    中島委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  7. 中島源太郎

    中島委員長 次に、国際情勢に関する件について調査を進めます。  この際、北村政府委員から発言を求められておりますので、これを許します。北村北米局長
  8. 北村汎

    北村政府委員 去る三月二日の当委員会におきまして、土井委員からの御質問に対し、私の答弁にわかりにくい点がございまして、御迷惑をおかけいたしましたことをおわび申し上げます。したがいまして、この場において明快な形で御説明をさせていただきたいと思います。  第一に、政府は、昨年一月に対米武器技術供与に道を開くことを決定いたしまして、同年十一月に相互防衛援助協定のもとでその実施のための枠組みを定める取り決め米国との間で締結いたしましたが、現在に至るまで米側から武器技術供与についての具体的要請は出されておりません。したがいまして、相互防衛援助協定のもとで我が国から武器技術米側供与されたことはございません。  第二に、したがいまして、昨年十一月の取り決めに基づく対米武器技術供与のための実施細目取り決め締結されたことはなく、その締結方式等につきましては、今後米側との間で協議の上、検討していくことになります。  第三点といたしまして、実施細目取り決めの公表の問題につきましては、実施細目取り決めは、防衛安全保障上の考慮から基本的に公表し得る性格のものではないと考えられます。しかしながら、我が国米国から武器等供与を受けた場合の実施細目取り決めにつきましては、その締結当局である防衛庁が米側の了解を得た上でその概要を公表したことがございますので、そういうことをも踏まえまして、今後対米武器技術供与がどのように行われているかという点について、米側とも協議の上、可能な範囲内で公表し得るように検討していきたいと考えております。     —————————————  以上でございます。
  9. 中島源太郎

    中島委員長 質疑申し出がありますので、順次これを許します。土井たか子君。
  10. 土井たか子

    土井委員 昨日の夕刻、石橋政嗣委員長を団長にいたしました社会党訪米団が帰ってまいりました。十日にわたる大変目まぐるしい日程でございましたが、おかげさまで元気にその全日程を終えまして帰ってくることができたわけでございます。  安倍外務大臣を初めといたしまして、外務省皆さんに大変にお世話になりました。心から厚く御礼を申し上げます。また、マンスフィールド大使を初めとして在日米大使館皆さんにもお心遣いやお骨折りをいただいたことを重ねてこの場所で御報告とともに感謝の意を表したいと思うのでございます。民間団体では、国際交流センター皆さんにも大変なお骨折りをいただいたことも、あわせてここでお礼の気持ちを申し上げたいと思います。  さて、全日程の中では、政府高官議会人、学者そうしてまた民間の方々と交流機会を持たせていただいて、いろいろ率直な意見をこちらも申し上げ、またアメリカ側の見解というのも聞かしていただくということができたわけですが、私、つくづく思いますのに、やはり率直な意見交換というのは非常に大切、わけても日本側からアメリカに対しては、やはり政府レベル政府政府という、これは外交正式ルートでございます。これを通じていろいろな意見お互い交換される。と同時に、やはり議会レベルということに立って考えてまいりますと、政府与党である自由民主党だけではなくて、国民意見というものをしっかり反映をしている野党の第一党の責任というのは非常に大きゅうございます。そういうことからいいますと、やはりアメリカ側に対しても、私どもの物の言い方というのは、国民意見をそれだけ反映している意見であるということをはっきり認識してもらうというのは、今後交流を深めていく上では非常に有用であり、さらに友好を促進するという意味では大変大事な、私は、不可欠の要件だというふうに考えているわけです。そういうことからすると、今後私どもが持って帰ってまいりました中身をどのように生かしていくかは党レベルの問題にもなりますし、私どもの責任ある姿勢が問われるわけですが、外務大臣野党外交と申しますか、こういう交流を深めていくための野党立場での努力は非常に大きいと私は思うのですが、率直にどのようにお考えになっていらっしゃるかをまず承って質問をさせていただくことにいたしたいと思います。
  11. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今回の石橋委員長を初めとしました社会党代表団訪米大変実りの多いものではなかったかと思います。特に土井委員の活躍は特筆すべきものがあったのではないかと思っておるわけでございまして、外から見ておりますと大変率直な意見交換が行われまして、もちろん対立する面もあったわけでありますが、しかし突っ込んだこうした意見交換というのはそれなりにまた今後の日米間というものを考えるときに非常に意義は大きかったのじゃないか、こういうふうに考えております。政府政府としての立場から日米外交を推進しておるわけでございますが、野党第一党としての社会党国民気持ちを代表する形で野党としての立場から率直に意見を開陳された、論議をされたということも日米関係の将来というものを思うときにこれまた非常に意味はあったのじゃないか、こういうふうにも率直に思っておるわけであります。いずれにいたしましても、こうした率直な意見の開陳あるいはまた思い切った話し合いというのが今後とも与党だけでなく野党アメリカあるいはその他の国々との間で積極的に行われるということは、日本外交の幅というのを大きく広げることにつながっていくわけでございますし、そういう意味でも心から今回の訪問に対しまして我々は歓迎を申し上げる次第でございます。
  12. 土井たか子

    土井委員 それで向こうでいろいろ話し合いの機会の中に、概して申しますと関心は非常に多岐にわたっているということをまず申し上げることができると思うのですが、この外務委員会場所ではやがてそれを質問の形式で私も出させていただくことがこれから続いていくと思います。  ただきょうは、その多岐にわたる関心事の中でシュルツ国務長官を初めとしてつい目の前にレーガン大統領訪中があり、そして今刻々動いていっておりますアジア情勢の中での朝鮮半島をめぐる緊張緩和の問題があり、これに対してどういうふうに感慨を持ち、どのように対処を進めるかということが一大関心事であったということははっきり申し上げることができると思います。したがって、どこに参りましてもこの話題がまず何よりも先行する問題になりまして、いろいろそれに対しての討議を進めるような格好になったわけです。御承知のとおりに、考え方といたしましては、当然のことながらと申し上げることがそれは常識だと思いますが、一致はいたしません。お互い考えの違いはございますが、違いがあるからこそ非常に討議こそ大事だというふうにも言うことが可能だと私は思うのですが、特にシュルツ長官にお会いした節、朝鮮半島をめぐる緊張緩和に向けてアメリカは誠意を持ってどのように対処していくべきかということを終始考えておられるという姿勢はありありと出ているわけです。もちろんのことながら、日本では朝鮮半島をめぐる緊張緩和について与党だから野党だからという差はございませんで、緊張緩和ということについては各党一致をして、どのように考えていくかということについてそれぞれの党の立場での問題の認識とそれに対する対応があろうかと思うのです。  アメリカいろいろ話をいたしました中に、シュルツ長官を初めとして朝鮮半島についてかつて一時期あったように北に対しては問答無用で寄せつけないという姿勢はもはやみじんもありません。やはりいかにして朝鮮半島緊張緩和に対して努力を払っていくかということに対して非常に真摯な姿勢で臨んでいるということは私は率直に言うことができると思うのです。かつてカーター政権時代アメリカ側がむしろ提唱されて三者会談ということを言われ始めたという一幕があったということも、飛鳥田委員長時代訪米団政府高官との話し合いの中ではっきりアメリカ側から出ているという事実がございまして、そのことを石橋委員長指摘をされますと、アメリカ側は一時期そういうことがあったということを率直に言われたのでありますけれども、当然のことながら日本外務省とされてもその事情については御承知おきになっていたはずではないかと私も思っているわけですが、大臣、そういう一時期はあったのでございますね。
  13. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 アメリカとして朝鮮半島緊張緩和を願っての動きをしなければならない、こういう点についてはもちろん日本一致しておるわけでありますし、日本の中におきましても、今御指摘のありましたようにその点に限っては各党においてほとんど差異はないわけなんですが、そういう中で確かにアメリカではカーター政権時代には三者会談というような動きも現実的にあったように承知をしておるわけでございます。また、大韓航空機撃墜事件以前にはレーガン政権の内部におきましても、三者会談というはっきりしたものではないとしても、朝鮮半島緊張緩和を行うためにはやはりアメリカそれなり一つ役割を果たさなければならぬ、こういう機運といいますかそういう空気が出ておったことは、私もシュルツ国務長官と何回も会談をしてその過程の中でその空気は察知しておったわけですが、残念ながらあの事件でそういう空気がすっかり冷却化してしまった、こういうことであります。
  14. 土井たか子

    土井委員 ただしかし、そうだからといって手をこまねいているわけにはいかないので、レーガン大統領訪中を目の前にして、四月下句でございますね、その訪中話し合い中身についてもそういう意味で非常に注目を集めるという格好にもなるわけですから、アメリカ側もそのことに非常に意を使っておられるようにこれははっきり受けとめられます。そうして、どういうふうに朝鮮半島に対して対応するかという問題に対して私どもがどのように考えているかということに対しても終始非常に関心を払いつつ意見を聞きたいという姿勢が大変出てきたわけなのであります。いろいろな質問に答える形で、こちらとしては朝鮮半島の問題については、政府レベルということで残念ながら大韓民国に対してだけ今は国交がきちっとあり、そして緊密な交流が続けられている。しかし幸いにして、日本政府でなくして政治全体を見た場合に、私ども野党の中で社会党朝鮮民主主義人民共和国交流機会を今まで緊密に持ち続けてパイプを持っているという実際がある。日本全体を見た場合には朝鮮半島に対しては政府与党と私どもとでワンセットという格好になって今日まで来たのではないか。それに対してはアメリカ側もそれはそのとおりでしよう、緊張緩和ということに向けてどういうふうにしていくかということを考えるとそれは非常に大事な話である、こうなるわけでありますけれども、さてその次にアメリカ側それなり関心を払って、大臣がおっしゃったように一時期考え続けてきたことが残念ながら今ちょっととんざしたような格好になっておる段階ではあるけれども、今後何とか打開をということを考えたらそれなり努力が問われているということがしきりにやはり話の中で受けとめられるのです。  私は思うのですけれども政府としては急にきょうあすじゅうに何かをと言われたらそれは難しい話であるということは私は百もよくわかるわけですが、何とか霧に閉ざされてどうにもこうにもならないような状況から、その霧の奥底に何かを見て、何かを足がかりにしようじゃないかという努力を北側、つまり朝鮮民主主義人民共和国側に対して模索をしていただくという努力なくして、緊張緩和とか環境に対して、やはり朝鮮半島の平和という状況をつくり上げるための努力をと言ったって、どうもそうはいかないという大事な問題が私どもの前にはあるという、こういうことのお互い課題を今さらながら私も強く強く感じさせられるのですが、大臣、こういうことに対しての、何か模索なさると申しますか、努力と申しますか、そういうことについてのお心づもりとかお気持ちというのはおありになりやしませんか。この点をちょっと承らしていただきたいと思いますが、いかがでございますか。
  15. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今お話を聞いておりまして私も全く同感である点があるわけですが、それは、シュルツ国務長官という人は、今おっしゃいましたように、大変コンセンサスを重んずる人でして、アメリカ指導者には珍しいと私は思います。全体的にコンセンサスの上に外交を進めていこう、こういう基本的な姿勢であります。ですから、恐らく日本政府との対話だけじゃなくて、皆さん方社会党石橋委員長初め、皆さん方対話も非常に重んぜられて、そういう中で何か一つの盛り上がった全体的に共通するものがあったら、それをとらえてやはり日米間あるいはまた国際情勢に対応していきたい、こういう気持ちがそこにはあると私は思います。ですから、率直な意見交換もあったし、そしてそういう立場シュルツ長官も話を聞かれたのだろう、こういうふうに私は思います。そして、アメリカとしても北朝鮮との関係を、既に三者会談とかあるいはまた四者会談とかいろいろと出ておるわけでございますから、何らかやはり緊張緩和という中で進めたい、こういう気持ちももちろんあると私は思うわけであります。  したがって、今回のレーガン大統領訪中は、これはもちろん米中関係あるいは米ソ関係、そうしたものを踏まえた会談、特に米中関係をどういうふうに構築していくかというのがその大きな中心でありましょうが、しかし、さらにもう一つは、朝鮮半島意見交換というのが相当大きなウエートを占めるのじゃないか。シュルツ長官日本にお寄りになるということも、そしてまた韓国に行かれるということも、これはやはり朝鮮半島問題について相当レーガン大統領として突っ込んだ話をするということが前提であろうと私も思っておるわけであります。  そのような中でいろいろと動きが出ておりますし、私は、アメリカ北朝鮮、それから中国韓国日本北朝鮮、そういう交流関係を見てみますと、日本北朝鮮交流関係というのは一番進んでいる。もちろん政府ベース外交関係ないですからありませんが、民間ベースでは中韓関係よりもあるいはまた北とアメリカとの関係よりも非常に進んでおるわけであります。それはやはりおっしゃいましたように野党皆さん方それなりのお骨折りもあったと思いますし、これまでの長い歴史的な関係もあったと思いますが、一番進んでいるわけでございます。そうした状況で、我々としましてはもちろん政府間の関係外交関係を結ぶという考えは今のところ持っておらないわけですが、しかし、やはり日本が進んでいる中で、我々としては、中国韓国関係も何らか、ある程度非政治的な面についてはもっと進んでもらいたいという気持ちを持っておるわけでございます。それはそれなり日本役割を果たしておるわけでございます。  さらにアメリカとの関係がどうなるか、これはまさに米中関係、大きなウエートがあるのじゃないか。我々これに対して何だかんだ言う筋合いはないのですが、米中関係というのが今後の朝鮮半島状況、そしてまた米国の対朝鮮半島政策というものにどういうふうに変化が出てくるかあるいは出てこないか、これはまさにレーガン大統領訪中にかかっておる、私はそういうふうに見ておりますが、全体的には緊張緩和を図っていくというコンセンサスはありますし、そのための動きは失敗しながらも次々と出ておるわけですから、私はその動きをさらに進めていくために、日本環境づくりに何らか役に立つということならば努力をしていかなければならぬ。それは何であるかということについて今ここで具体的に申し上げるということではありませんが、少なくとも中韓関係におけるいろいろな問題の非政治面推進等はその一つでありますし、さらに日本北朝鮮との関係で、ラングーン事件以来大変いろいろ問題がまだ途絶した関係にあるわけですが、そういう面につきましても多少とも何かここで一つの措置に対して弾力的に進めるかどうかということも、これからのそうした全体の動きというものを見ながら日本として適応していかなければならぬ、こういうふうに考えておるわけであります。
  16. 土井たか子

    土井委員 今大臣がいろいろ御説明を賜りましたとおりで、情勢というのは一時期いろいろな努力の積み重ねの中ではとんざするようなことがあっても、また結局緊張緩和の方に向けてお互い努力をし続けなければならないという情勢が刻々動いていくというのがやはり現実の外交の実態だと私は思うのですが、今おっしゃったとおり、中韓、韓中というのは、ただいま、スポーツ等々を見ましても、具体的に国民の目にも鮮やかにどんどん事情が、以前に比べてお互い国対国というレベル話し合いというのが進みつつあるというのがよくわかります。  それで、大臣、いかがでございますか、ソ韓韓ソと申しますか、ソビエトとの間での韓国動きというのがございますのですか、いかがですか。これちょっと、もし何かをお考えになっていらっしゃる点がございましたらお聞かせいただき。たいと思います。
  17. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 大韓航空機撃墜事件以前にはソ連韓国との間には相当やはり動きがあったように私も見受けておりますし、ソ連の要人も韓国に来る、あるいはスポーツ関係も進捗をするというふうな情勢もあったことは間違いなかったわけですが、しかし、残念ながらあの事件以来というもの大変不信感が高じておりまして、今の段階では韓国ソ連の問にはほとんど見るべきものはない、こういうことでございますし、今ここで日本がどうするこうするという立場にはないと思います。  私は、まず日本ソ連対話を何とかひとつ拡大をしたいということでこれから積み上げてまいりまして、そういう中でこれから世界情勢アジア情勢に対して日ソ関係でどういうふうにいろいろとやっていけるかというものを協議を進めたい、こういうふうに思っておるわけです。
  18. 土井たか子

    土井委員 そうすると、いろいろこれからソビエトとの間での話し合いを進められるということが具体的に新聞紙上にも記事に載っておりましたが、政府レベル話し合いをお進めになる中で、当然のことながら朝鮮半島緊張緩和に向けても話題は避けて通れない。したがって、そういう中で何ができるか、どのように話し合いを持っていくかということに今後の課題は、ひとつそれは持ち込まれるであろうというふうに理解をしておいていいわけですね、日本としては。
  19. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 もちろんソ連との間では二国間の情勢問題だけではなくて、広く世界情勢について活発な意見交換を行おう、対話を広げていこう、こういうことでございますから、これからの対話の中で、日本、そしてソ連が共通の関心を持っている朝鮮半島情勢について意見交換をしていくあるいは協議をしていくということは、これはもう当然あり得ることでありますし、我々もその方向で進めてまいりたい、こういうふうに思います。
  20. 土井たか子

    土井委員 さて、日程からいいますと、先ほど来質問の中で申し上げている四月下旬のレーガン大統領訪中、そうして五月の上句には胡耀邦総書記の訪朝、そうして、今日程では七月の六日、七日でございますか、外務大臣が訪韓されるというふうなことがおおよそ今私たちのよく知っている日程として動きがずっと進んでいくわけでございますが、そうすると、この夏くらいまでの間、これは外交問題というと、やっぱり鉄は熱いうちに打てというふうな表現もよくございますけれども環境というものがどんどんどんどん動いていっているときというのはやっぱりあるわけなんですね。そうしてそういう環境が動いているときに時を移さず以前できなかったことが努力の成果としてきちっとできるということもあるわけですが、この夏に向けて朝鮮半島をめぐる問題としては非常に大事な時期だということが受けとめられるのですが、これはそのように言えますですよね、大臣。いかがです。
  21. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 非常に大事な時期だと思いまして、そういう方向で何とかこの事態が進んでいくことを我々も期待するし、また、日本もただ手をこまねいて見ているだけではなくて、その中で日本が果たす役割は果たしていかなければならない、こういうふうに思います。
  22. 土井たか子

    土井委員 対米関係ということからするとまだまだ問題点はたくさんありますけれども、きょうはまず、帰国いたしまして初めての機会ですから、特に朝鮮半島をめぐる問題ということに一点集約のような形でのお尋ねをさせていただきました。  そうしてまた、私は国連を訪れた節、国連の中で女性の地位向上ということ、そして権利を確保するということからすると大変な役割を今までのところ果たしてこられている国連事務次長を中心に女性の方々にお集まりをいただいて討議機会を持つことができました。アメリカでは、それとは全く別に雇用機会平等委員会というのを、これは政府機関でございますが、訪ねて、そこでの委員会を傍聴するという機会にも恵まれたわけですが、総じてそういうところに参りましてつくづく思いますことは、女性に対して、今日本でも婦人に対するあらゆる形態における差別撤廃条約を来年は批准するということを目標に種々国内での法整備の積み上げが進められているさなかでございます。私はアメリカでいろんな人と話をしてみますと、特にいろんな場所で働いていくということが人間にとってはやはり元気で生きていくということの出発の条件だ、女性に対しても男性と同じように雇用ということに対する平等を確保するということは、したがってそういう問題からするとイロハのイに当たる問題であるということはもう言うまでもないわけですが、募集とか採用ということが雇用ということについては窓口になるのです。で、女性に対しては、やはり雇用の平等を考える場合には、募集とか採用ということを一〇〇%確保する、保障するということが非常に大切だと私自身思っているのですが、大臣、それに対して率直にどうお考えになりますか。
  23. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今度アメリカへ行かれましていろいろと婦人問題、特に婦人の今の雇用問題等について、地位向上、地位問題について意見交換されたということを私もよく承知しております。日本も、当委員会でもいろいろと論議していただいておりますが、婦人の差別撤廃条約、これはぜひとも来年中には批准をしたいということで目下関係省庁間でそれに伴うところの法令の整備をしておりまして、雇用平等法についてもまさに大きな焦点になっておるわけですが、調整が進んでおるというふうには承っているけれども、まだ調整は完全に終わったという段階でもないようでありますし、いずれにしても批准ができるようにいろいろと整備をして、そして我々が国会で説明をしお話をしてまいりましたような六十年度の批准だけはもうどうしても行わなければならない、こういうふうに考えております。
  24. 土井たか子

    土井委員 それは今の大臣の御答弁のとおりで、政府としてはその方策で臨んでおられる、これはもうだれもがよく認めているところでありますが、メイヤー国連事務次長なんかを中心に各国の女性が集まりまして討議をする中では、やっぱり入り口に当たる雇用問題を取り上げた場合には募集、採用というのが目安である、その辺が非常に大事だというのが国際的常識だということがはっきりこちらとしてもうかがえたのですが、この問題については、大臣、どのようにお考えになりますか。
  25. 山田中正

    ○山田(中)政府委員 先生御指摘のように、男女の平等を図ります場合に、その入り口でございます募集、採用についての平等が達成されないと意味がないと私どもも思っております。したがいまして、この条約の批准に当たりまして労働省の方にお願いいたしておりますのは、募集、採用の面についての男女の平等が実質的に十分確保できるようにということでお願いいたしております。
  26. 土井たか子

    土井委員 事務局からそういうふうな御答弁ですけれども、具体的にそれがどのように取り扱われるかというのは今国会での非常に大事な問題になりますから、せっかくアメリカに行ったことをひとつ意義あるものとしてこの国会の審議の中でも私は生かしていきたいと思います。今の御答弁からすると、募集、採用というのは目安であってその辺での平等を確保したいというふうな御趣旨のほどがうかがえたわけですから、それはそれなり外務省サイドだけではなくてやっぱり政府としてそういうことで臨んでいただくということをもう一たび外務省の方からも強く押し出していただくということを私は期待したいと思うのですね。  その国連の場所日本からも出かけられて向こうで頑張っておられる職員の方々がおられますけれども、特に外務省としては、そして日本外交姿勢としては、国連中心主義ということでやってまいりました。非常に国連を重視している立場がございます。そういうことからいたしますと、非常に向こうでは骨身を削る努力をして国連職員として日本から出て頑張っておられる方々の数は、決して外国から出ておられる職員の方々の数に比べて多くございません。やっぱり国連中心主義とか国連のあり方に対して国民の多くが期待をかけ、そして日本としては果たす役割が大きいということを思えば思うほど、国連に出向いて頑張っておられる、外務省がしかも責任を持つでそれに臨んでおられる職員の方々に対して、もう少しこれをきちっと人数もふやす、そして中身に対してもしっかり頑張っていけるような条件を整備する、これは非常に大事だと思います。  わけても、女性の方々というのが今国連の中では大変頑張っておられるわけですけれども、女性の数も、雇用平等をせっかく今申し上げているのですが、考えていただいて、外務省が率先をしてしっかりこの確保に向けて頑張るということは大事だと思いますが、女性の数もふやし、国連で頑張る職員に対しても今市し上げたような取り組みを進めるということをひとつ考えていただけませんか、大臣。それは私はいつも思うことですが、今回も行ってそういうことをつくづく痛感いたしましたが、いかがですか。
  27. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日本外交は何としても国連中心外交というのが一つの大きな目玉でありますし、また、国連に対する日本の寄与度というのも非常に高いわけであります。また、予算面における負担も非常に大きいものがあります。それだけにやはり日本に対する国連当局の期待も非常に強くなっております。しかし、残念ながら、今の国連において働いておる日本人の職員というものは、それほど日本ウエートが大きいのに比較すればまだまだ非常に少ないということははっきり言えるわけで、私も事務総長にお目にかかったときは、何回も、もっとやはり日本人の職員の数をふやしていただきたいということを強く主張し、事務総長もまた、日本の方は大変優秀な方が多いし、我々としてはこれを拡大をし、さらに幹部職員として大いに頑張っていただきたいということを言っておられました。ですから、この対話等も続けまして、今お話しのように、職員、特に婦人の職員等の採用についても、これからもひとつ積極的に働きかけていく、同時にまた、地位の安定、向上についても、これから日本それなり役割をひとつ果たしてまいりたい、こういうふうに思います。  今ちょうど東京でESCAPの総会が行われておりまして、私もきのう出たわけでありますが、二、三の委員の方から、日本の婦人のESCAPにおけるもう少し積極的な活動を求めたいという発言を私聞きまして、そういう点もあわせて、国内だけではなくて国際的な面への日本の婦人の積極的な進出に対して、もっと外務省努力しなければならぬということを痛切に感じておるわけであります。
  28. 土井たか子

    土井委員 今おっしゃったとおりなんで、明石さんという日本から事務次長として出て頑張っておられる方を中心に、日本人の職員は本当に大変だと思うのです。その中で女性の齋賀さんは、今私たちと会うかと思うと明後日からまたヨーロッパへ、つい先日は三カ月ずっとジュネーブに張りついて軍縮問題に取り組んで大変だったという御努力も、謙虚ですからいろいろ遠慮ぎみにおっしゃるのですが、私はよくわかるのです。  そういう職員の方々の努力が大変で、そのために、日本が海外で意のあるところをその方に託して問題を持ち込んで、どれだけいろいろとその場所での意思表示をしてきているかということは、私も身にしみてわかるのですが、特に齋賀さんなんかを私見ておりましてつくづく思うのは、女性でこれほど頑張って、一生懸命にまじめに取り組んで、国連でも評価は物すごく高いのですよ。齋賀さんは実によくやっておられると、評価は高いのだけれども、人間には生理的条件がございますから、年をとって、だんだん若いときと同じように仕事に対してあっちに走りこっちに走ることも難しくなってくるとポイだという格好外務省が臨まれたのでは、本当に努力に報いることもなければ、先に対して考えたときに、御当人の身になれば、今の仕事に対してそれだけ責任を持って頑張っておられるという立場もおありになるわけですから、私は非常にいたたまれぬ気がするのです。そういうことも配慮の中にきちっと入れていただいて、先ほど身分保全とか条件に対して整備していくということをおっしゃいましたが、それも口だけではなくて実行ということでしっかり取り組んでいただきたい、このことを私はあえて申し上げたいのだけれども大臣、よろしゅうございますね。いかがですか。
  29. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 十分配慮してまいりたい。口先だけでなくて、いろいろな面でこれは実行してまいりたいと思います。
  30. 土井たか子

    土井委員 最後に一問。今女性で大使、公使の数は、日本でどれだけございますか。公使としては、私がニューヨークでお会いした黒河内公使お一人だと思います。ましてや大使はただいま一人もない。  外国に出るたびごとに私が痛切に感じるのは、女性の大使が一人や二人あるのは先進国の常識なんです。日本は、先ほど来意欲を持って述べられたとおり、婦人に対するあらゆる形態における差別撤廃条約を来年は批准するということでやっております。これは結構なんです。当然のことだと思うのですよ。しかし、外から見た場合に、日本の国というのは先進国の中でももう一つという格好になるのじゃないかなと思いますが、大使、公使への起用を初めとして女性のそういうことに対しての登用というのを外務大臣安倍外務大臣でおありになる間に考えていただくことも非常に大切な課題だと私は思います。いかがでしょう、大臣
  31. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 実は公使が一人で、高橋大使がやめられましてから婦人の大使がなくなりまして、私の外務大臣時代に婦人の大使がそのままいなくなってしまったということでは残念だと思いますので、事務当局にも松永次官にも話しまして、何とかひとつ婦人の大使を置くように考えてくれと言っておるわけでございます。検討しているようですが、ちょうど今外務省にとってもいわば端境期みたいなもので、外から補充しなければならないと思います。私はそれは大変結構だと思うのですが、今、下では相当育っておりますから、もう数年たてば公使とかあるいはまた大使とか、外務省で育ったそういう人材がずっと出てくると思いますけれども、今の段階ではむしろ外の有為な人を物色をして、そして大使等になっていただくための努力をやっていかなければならない。来年は条約も批准しようかというときですから、少なくとも一人ぐらいは何とかなってもらいたいということで今やっておるところです。
  32. 土井たか子

    土井委員 終わります。やはり最後の方は便宜的な御発言のように思えてならないのですが、ひとつ頑張っていただきたいと思うのです。
  33. 中島源太郎

    中島委員長 次に、井上泉君。
  34. 井上泉

    井上(泉)委員 具体的な問題に入る前に、今、日本ほど国際的に大変重要な地位を占めておる国はない、私はこういうように思うわけであります。政府も国是とする非核三原則もあるし、平和憲法を持っておるし、最大の野党社会党は非武装中立の絶対的平和路線をしいておるということから見まして、イラン、イラクの問題、あるいはまたカンボジア、ベトナムの紛争の問題、あるいは朝鮮半島の問題、こういう大きな、今いわゆる硝煙のにおいのいつも立ち込めておるような世界のそういう地域に対して、日本の果たすべき役割というものは非常に大事な使命を持っておると思うわけですが、こういう点について大臣はどうお考えになっておるか、その点をまず第一点としてお聞きしておきたいと思います。
  35. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 おっしゃるように、日本立場というのは世界の中では非常に重大なところに来ておると思います。世界の中で発言権も非常に強くなりましたし、同時にまた、反面責任も非常に重くなった。存在自体が大変重要視されるような事態になりましたから、それだけに、これから世界の平和に向かって積極的に貢献を果たしていく時代に入ったというふうな認識を持っておるわけであります。
  36. 井上泉

    井上(泉)委員 そういう認識を持っておることはよいことだと思うわけですけれども、実際の具体的な実行の段階でどれだけそれが実行され、成果を上げるか、例えばイラン、イラクの問題についてはどういうふうに対応しようと考えておるのか、あるいはベトナム、カンボジア、タイ、この地域の問題についてはどういうふうに対応しようと考えておるのか、あるいはまた、朝鮮問題については今土井先生からもいろいろと質疑をされたわけでありますが、朝鮮問題に対してもそういうふうな南北の平和的な意思統一というものについて日本政府としてはどう考えておるのか。この三つの点を簡単に大臣の見解を承っておきたいと思います。
  37. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日本日本なりの立場を生かした積極的な平和外交をやっていかなければならぬ、そういうふうに思うわけで、その中の一環としてイラン・イラク戦争にも今取り組んでおるわけであります。  先般もベラヤチというイランの外務大臣日本に招待をいたしまして、日本とイランとの二国間の問題だけでなくて、いわゆるイラン・イラク戦争を終結するために日本がいかに熱意を持っておるかということを訴えたわけでごぜいます。そして、戦争拡大をしない、自制をするということについて強く要請をしたわけであります。もちろんイランは戦争遂行については強い決意を持っておりますが、しかし同時に、日本のそうした平和への呼びかけに対しましては、非常に善意のある、真情のこもった呼びかけだということで、私の呼びかけに対しては、むしろ心を開いて聞いてくれたと思いますし、そしてまた、ホルムズ海峡の封鎖はイランの石油が壊滅するまではしないとか、あるいはまた、ホルムズ海峡だとか湾岸諸国だとかあるいはまたペルシャ湾における戦争の拡大は、これは一切しないといったふうなことをはっきり打ち出したわけでございます。  私は、そうした会談の中で、イランも、戦争を遂行しながら、今日の状況の中でやはり平和というものに対して一つの強い気持ちを持っておる。そして、それはそれなり日本環境づくりのために何らかの役割を、これは一挙にできるものではありませんが、辛抱強くやっていかなければならぬ、こういうことを痛感をいたしました。  去年以来ずっと続けてきた地道な外交活動でありますが、私はさらにイラクの外務大臣もまた日本にお招きをして同様な話し合いもしてみたいと思いますし、イラン、イラクに対していい関係を持っておるのは西側では日本だけでありますから、アメリカやあるいはイギリスやフランスやあるいはソ連のできない、そうした大事な仕事を今こそ日本がやっていく。これは大変難しいことですが、しかしやはり執念を持って取り組んでいくということが大事ではないか、そしてそういうことによって必ず何らか道も開けてくるのではないか、こういうふうな感じで、今鋭意努力を重ねておるわけであります。  それから、カンボジア、ベトナム問題については、実は昨日も、ちょうどESCAPの総会で、ベトナムの外務次官が代表で来ておりまして、そのベトナムの外務次官と立ち話をしたわけでございますが、日本は今ベトナムに対してはカンボジアからの軍隊の撤退を強く求めておりますし、そしてまたカンボジアにおける自主独立政権の誕生を心から念願しております、そしてベトナムがカンボジアから軍隊を撤退しない限りはベトナムに対する経済協力は再開しないという基本的な態度は持ち続けておるわけでございますが、しかしそういう中にあっても、やはりベトナムとの対話というものは壊してはならないと私は思います、そういう意味のことを外務次官にも言いました。そして、ベトナムの外務大臣とも国連総会で会えるということならば会いましょう、こういうことを提案したわけでございます。  ベトナムの次官も、ベトナムとしてもやはり平和に向かってベトナムと日本との対話はぜひともひとつ前進をさせたい、外務大臣同士の会談はぜひともひとつ実現をさせたい、こういうことを言っておりました。  そういうことで、日本がどれだけカンボジア問題あるいはベトナム問題に役割を果たすことができるかわかりませんが、しかし少なくとも対話を拡大をし、外務大臣同士が話し合いを重ねることによって、時期が来れば完全にインドシナ半島に平和がもたらされる、そういうことも不可能ではありませんし、そのための努力は重ねてまいりたいと思います。  朝鮮半島につきましては、先ほど土井委員にお答えをいたしましたように、いろいろと朝鮮半島緊張緩和をめぐって、韓国北朝鮮との二国間の動きもあります。あるいはまたアメリカの四者会談の提案、あるいはまた中国の三者会談の支持、いろいろとこういった動きがあるわけでございます。そういう動きがいろいろな面で進んでいくことは、朝鮮半島緊張緩和には何らかの成果が生まれるわけでありますし、また日本もそういう中で、朝鮮半島緊張緩和こそまさに北東アジアの平和と安定のためには欠くことのできないことであろう、こういうふうに思っておりますので、それなり環境をつくるための努力をひとつ重ねてまいりたい、そういう一つの大きな流れといいますか時期が来ておる、こういうふうに判断をしておるわけであります。
  38. 井上泉

    井上(泉)委員 今大臣の述べられた見解が具体的に実行され、そしてそのことによって日本という偉大な国が世界の平和に大きな役割を果たすことができるわけなので、その点についても通り一遍の委員会の論議でのやりとりではなしに、外務省としても誠意を持った対応の仕方、取り組み方を、いわゆる大臣から、下の外務官僚の優秀な皆さん方も協力をしないと、あっちこっちで足を引っ張り、あるいは大臣が指示したことが前向きに進んでいなかったりするようなことになりますと、せっかくの大臣の見解も宙に浮いてしまう、私はこういうふうに思うわけであります。  そういうことはないのではないかと思うわけでありますけれども、戦争をやって一番迷惑を受けるのはその国の人民であり、そしてその戦争をした者、いわゆる戦闘員のその家族やあるいはまた地域の人たちが一番迷惑を受けるわけですから、戦争というものは絶対避けなければならぬ。ましてや日本は戦争放棄をうたった、いわゆる絶対平和主義のもとにある憲法によって日本の国が今日の繁栄を築いておるわけですから、私は今の三つの点、イラン、イラクの問題あるいはベトナム、カンボジアの紛争の問題、朝鮮問題、この三つの問題についてこの機会にいろいろと質問申し上げたいと思うわけですが、時間の制約もありますので、私は、一番戦争によって被害を受けたその象徴的なものが、いわゆる中国における残留孤児の姿ではないかと思うのです。  この中国の残留孤児に対する日本政府の対応の仕方も、この前の当委員会で公明党の渡部先生が質問された中にもそのことが鋭く追及をされて、今のような対応の仕方では中国の残留孤児の問題を解決するのに、死ぬるを待つような状態ではないか、八年も十年もかかるじゃないか、こういうふうに言われているわけで、その点についてもやはりスピードを速める。スピードを速めるということは、日中の間で取り決めたところの残留孤児問題に対する口上書、これは私は非常にいいことであるし、この口上書に基づいて、そうして日本中国との友好関係というものを踏まえた場合に、今日日本政府の持っておる経済力をもってするならば、私は、この中国の孤児問題を、八年も十年も先までいかねば問題の解決のできないようなテンポで残留孤児の肉親捜しをやるということはなしに済むではないかと思うわけですが、その点について大臣どうですか。
  39. 橋本恕

    ○橋本(恕)政府委員 先生御指摘のとおりに、この問題をできるだけ早急に解決しませんと、関係当事者もだんだん年をとってまいりますし、いままでのようなまどろっこしいやり方では所期の目的を達し得ないという御指摘については、私ども考え方といたしましては全くそのとおりだと思います。  そこで、実際にどのようにしてこの問題を早急に解決するかということでございますが、これはやはり基本はあくまでも痛ましい人道問題であるということで、一人一人の方々それぞれの事情がございますので、一人一人の方々について個別に十分な配慮をして物事を進めていくということが大事であろうかと思います。  それから、技術的な問題あるいは予算の問題それぞれあろうかと思いますが、いずれにしましても、国内の主管官庁でありますところの厚生省と、それから対外的、つまり中国との関係について責任を持ちます外務省との間で促進方、うまくいくように今後とも引き続きよく相談して努力してまいりたいと思っております。
  40. 井上泉

    井上(泉)委員 それはそういうお考えを持つのは当然でありますし、別に目新しいことでもない、特に評価すべきことではないと思うわけです。私は、あえて外務省を追及するという考え方でこの問題を取り上げておるのではありませんで、外務省に一生懸命やってもらおうという気持ちでいろいろと問題を提起し、質問を申し上げるわけですが、きのう厚生省からいただいた資料によりますと、現在調査中のものがまだ六百九十三人ある。その六百九十三人に対して五十九年度においても何人か調査をされるということでありますが、今までのペースでいきますと、これは渡部議員が指摘したとおりもう十年近くかかる。そうすればますます調査が困難になるわけなので、そういう点でいわゆる所管官庁である厚生省としては、残留孤児の問題の身元調査が早期に確認されて一応の終止符が打たれるようにするためにはどれだけのスピードでやらねばできないのか、そうしてまた、今の計画どおりでこの目的が十分達せられるとお考えになっておるかどうか、これをひとつ厚生省の事務当局にお伺いしたいと思います。
  41. 森山喜久雄

    ○森山説明員 この残留孤児の肉親捜しの促進でございますが、これは、実は五十七年に厚生大臣の私的な諮問機関でございます孤児問題懇談会というところで有識者の方々が御検討されまして、その時点では、昭和六十年度までに概了するような格好努力しなさいという提言があったわけでございます。  それで、その段階では、いわゆる孤児の訪日調査も含めまして、何とか六十年までにはおおむねの調査が終了するというめどだったわけでございますが、その後いろいろ問題がございまして予定の訪日の数が確保できなかったわけでございまして、それだけ押せ押せになって後にずれてきたわけでございますが、そういう御提言もございますので、なるべく早く六十一年ないし六十二年といった段階までに終了させたいというふうに考えておるわけでございます。それで、今年度は、訪日の数を百八十人ということで中国側にお願いをしたいというふうに考えております。  それから、国内的ないろいろな資料をもう少し調査して整備しようということで、実は現在厚生省が把握しております中国関係の未帰還者、それから戦時死亡宣告と申しまして、いわゆる民法三十条の失踪宣告でございますけれども、こういう格好で処理された方の中で当時孤児年齢であった十三歳未満の方が約三千人ぐらいいるわけでございます。この方が全部生存されているとは限らないわけでございますが、こういう届け出のありました方について、もう一度当時の資料を確認するということでこれから各人につきまして調査実施したい、そのような格好努力をしてまいりたいというふうに考えております。  それからもう一つは、これは中国側の御許可を得る必要があるわけでございますけれども、こちらから厚生省の職員が中国の方へ出かけてまいりまして孤児のビデオ撮りをやってまいりまして、それを国内的に流していただくような方法も検討してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  42. 井上泉

    井上(泉)委員 厚生大臣の諮問機関としての中国残留日本人孤児問題懇談会が、六十年までに肉親捜しを完了させるべきであると提言をしておる。こういういわば民の声を厚生省は実現をするように図らなければならぬわけですけれども、六十年と言うたらもう来年度だけですから、恐らくこの提言も不可能でしょう。六十年度にこの提言が実現できるとお思いになっておるのか、あるいは提言はもう不可能だと思っておるのか。もし可能とするならば、どうやったらこの提言どおり六十年度までに肉親捜しが完了するように実行できるかどうか、その点もう一回。
  43. 森山喜久雄

    ○森山説明員 ただいま申し上げましたとおり、提言のございました時点とその事情が後でちょっと変わってまいりまして、つまり、訪日する人員を予定どおり呼べなかったということになっておりますので、六十年までに終了するということは事実上無理ではないかというふうに考えております。
  44. 井上泉

    井上(泉)委員 これは外務省にお尋ねするわけですが、この口上書はもう取り交わされておるのでしょう。その点伺います。
  45. 橋本恕

    ○橋本(恕)政府委員 そのとおりでございます。
  46. 井上泉

    井上(泉)委員 それでその口上書ではいろいろ細かく内容が定められておるわけだし、このことを忠実に実行すれば六十年も決して不可能ではないのじゃないか。しかし、五十九年度のことがもう日程に上っておるわけですから、これはかなり積極的に取り組まないと、六十年はおろか六十一年も二年も達成は困難だと思うのです。やはり政治的な決断というものが必要だと思うわけなので、これの所管庁は厚生省であるけれども、直接の外交機関としての外務省の責任というものが非常に重要なものを持っておると私は思うわけです。ひとつ大臣としても、残留孤児のこういう答申が出されておるそのことにこたえるための国内の体制あるいは口上書に盛られた条件、これに基づいてこの残留孤児の問題に早く終止符を打つことのできるような状態をつくり上げることが大事ではないか、かように私は思うわけですけれども大臣の御見解を承りたいと思います。
  47. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 残留孤児の問題は非常に大事な問題ですし、これはいつまでも放置といいますか、やはりスピードを速めていかなければならぬ、こういうことでございますので、厚生省、関係省庁ともよく相談をいたしまして、外務省としてもできるだけの協力といいますか、努力は重ねてまいりたいと思います。
  48. 井上泉

    井上(泉)委員 この委員会で論議をされたことがその後経過をたどっても目立った動きがないというのが通例でありますが、(小林(進)委員「場当たりの答弁だからだ」と呼ぶ)少なくとも孤児問題については、ここで論議をされたことがまたそのまま次の年まで経過せぬようにお願いしたい、私はこう思うわけです。これは先輩の小林さんも言われるとおり、場当たりの答弁では本当に日本国民として不名誉なことですから、こういう戦争の被害者に対して何らかの積極的な対応をしていただかなければならぬと思うのです。  それで、中国の残留孤児の問題については一定のそういうことでやっておるわけですけれども、同じような環境の中で北朝鮮朝鮮民主主義人民共和国、これは朝鮮民主主義人民共和国と言うと長いから北朝鮮と略して言いますけれども朝鮮民主主義人民共和国の中に日本人の残留孤児がかなり多数存在しておるという報道を聞くわけでありますが、そういうふうなことについての情報を厚生省、外務省は得ておるのかどうか、その点伺います。
  49. 森山喜久雄

    ○森山説明員 北朝鮮における孤児ということでございますが、実は私の方ではこれは全く把握しておりません。それで、ただいま現在、北朝鮮関係の未帰還者という人は八十二名ございますけれども、このうちで終戦の当時十三歳未満といいますか、いわゆる孤児年齢の方が十六人ございます。そしてこの十六人についての資料を見てみますと、終戦の当時北朝鮮に肉親といだというだけの資料でございまして、その後全く資料が入ってないというのが現状でございます。北朝鮮につきましては国交もございませんので、なかなか調査というものが困難な事情はございます。  それで、厚生省といたしましては、未帰還者のリストを赤十字ルートを通しまして二回、それから国会の先生方が北朝鮮にいらっしゃるときにお願いをいたしまして持っていっていただいたわけでございますけれども、それについての回答というものも全く来ておらぬわけでございます。したがいまして、北朝鮮におきましても中国と同じような格好で孤児の方がどういう人がどこにおられるのかということもわからないわけでございます。  孤児調査といいますのは、まず向こうにいる孤児の方が手を挙げていただいて、厚生省にひとつ私の親を捜してくれというような御依頼と、当時別れたときの状況とか手がかりになる事情をお聞かせ願わないとなかなか調査というものはできないわけでございまして、非常に残念でございますけれども、現状はそういうことになっているわけでございます。
  50. 井上泉

    井上(泉)委員 三十八度線以北のいわゆる朝鮮民主主義人民共和国の中で、終戦当時、日本人が戦闘員でない者でも二万五千人という死亡者がおるわけですから、その死亡者が親子もろともという場合もありましょうし、親だけという者もあるし子だけという者もあると思うわけですが、そういう戦闘員でない者だけでも三十八度線以北には二万五千人の者がなにしておる。今未帰還者八十何名、こう言われたわけですけれども、これはどういうものをもとにして調査をされた数字でしょうか。
  51. 森山喜久雄

    ○森山説明員 未帰還者の把握といいますのは、日本におられる御親戚であるとか親族であるとかという方が届けを出していただくわけでございます。届けを出していただいてそれを未帰還者という格好で厚生省が登録するという形になっているわけでございます。
  52. 井上泉

    井上(泉)委員 朝鮮民主主義人民共和国の中に存在する残留孤児がどれだけおるということも厚生省としては直接把握されてはないということでありますが、私はこれをさらに小さいから、少ないからといって放置すべき問題ではないと思うわけです。たとえ十人でも二十人でも残留孤児が存在するかもしれないとするならば、それに対する調査の手を差し伸べ、残留孤児に対して祖国の肉親に面会のできるような、対面のできるような手段を講ずるのが政治としてのあるべき姿であり思いやり、温かみのある政治の姿ではないかと私は思うわけですが、これに対して、これは厚生省としてもお考えになっておられると思うわけですけれども外務省としても私はこれを等閑視すべきでないと思うわけですが、外務省、どうですか。
  53. 橋本恕

    ○橋本(恕)政府委員 御指摘の問題につきましては、いわゆる中国残留孤児と本質的には全く同じ問題でございまして、つまり戦争の悲劇が今日現在この方々の上においてまだ続いているという意味におきまして本当に痛ましい問題であり、しかも何とか解決しなければならない問題であるというふうに認識しております。  ただ、中国の場合は、幸いにして国交が正常化されまして中国側の全面的な協力を得まして、完璧な形ではないにしろともあれ残留孤児の方々が相当数が肉親とめぐり会えた、こういう状況にあるわけでございますが、残念ながら北朝鮮との間には外交関係もございませず、そこで先ほど厚生省から御答弁がございましたとおりに、あるときは日朝議員連盟の先生方にお願いし、あるときは日赤にお願いし、いろいろ調査その他をお願いしたわけでございますが、残念ながら北朝鮮からはいまだに何の返事もございませず、したがいまして、思うように調査その他もできかねている状況であることは先生御承知のとおりでございます。であるからといって、ほっておいていいという問題ではございませんので、何とか方法がないものかということで、今後とも厚生省を初め関係各省とも十分協議を進めて努力してまいりたいと考えております。
  54. 井上泉

    井上(泉)委員 北と国交がないということが残念だというなら、その残念さをなくすような手だてを講じていくのが当然の姿だと私は思うわけです。そこで、その残念さを残すことのないようにするために一つのよい出来事として、この間中曽根総理が訪中をしたときでありましたかどうか、日本朝鮮民主主義人民共和国の橋渡しをという中国申し出にこたえて、外務省はそれについて検討しておるということを聞くわけですが、これは事実ですか。
  55. 橋本恕

    ○橋本(恕)政府委員 私直接胡耀邦さんと総理との会談に立ち会ったわけではございませんが、しかしその後その内容を承ったところによりますと、胡耀邦さんは北朝鮮日本との関係が現在満足すべき状態にないことを指摘されまして、そこで中国として北朝鮮日本との関係についてお役に立つことがあればやりましょう、こういう趣旨を言われたというふうに伺っております。  これは、主たる問題は、特定して胡耀邦さんが中曽根総理に言われたわけではございませんが、私の推定では、胡耀邦さんのそのお申し出の基本的な問題は、日本北朝鮮との間の政治関係を指しているのだろうと思います。しかしながら、この点につきましては率直に申しまして、現在日本政府といたしましてはいわゆる日朝問の政治問題につきましては現在直ちに中国にお願いするという考え方は持っておりませんので、ただ人道問題につきましては中国のせっかくのお申し出でございますから検討してみようということで検討中でございまして、日本北朝鮮との間の人道問題といいますと、まさに先生御指摘の今のような問題、あるいは北朝鮮に残置されております日本人の遺骨の問題、あるいは北朝鮮当局によりまして拿捕されております船の船長、機関長がいまだに帰ってないという問題、あるいは北朝鮮の方々のところにお嫁に行って御主人と一緒にかつて日本におりましたいわゆる在日朝鮮人の妻の、いわゆる日本人妻の問題、こういう問題が私どもの頭の中にあるわけでございます。これらのいわゆる人道問題につきまして、何をどのように中国にお願いするかということを現在検討中ということでございます。
  56. 井上泉

    井上(泉)委員 これは外務大臣も、事務当局に、政治、経済問題で依頼する考えはないが、人道問題ではあり得るということから、その中身の人道問題とは何かということで、ではどういう問題があるかということで検討させておる、ところが、その検討の対象となったのがかねて人道問題として国際赤十字社を通じて北朝鮮申し出ていた抑留船員の帰還、日本人妻の里帰り、北朝鮮への日本人墓参の三点だ、こういうことを言われておるわけでありますが、北朝鮮の残留孤児が元気に成長して学校の教師にもなっておる、そういう事実関係が判明をしておる。政府はそのことは承知をしておらないと言うかもしれませんけれども、こんな捏造したこと空言うわけはないと思うのです。  中国側から、中国の学校の先生が随分調査をしていただいて、日本人の残留孤児が今朝鮮で中学校の教師として元気にやっており、本人も自分の肉親に会いたい、こう言っておる。それで、こっちの肉親のお母さんもこれに非常に喜んで、三十何年毎日毎日陰ぜんを供えたかいがあった、こう言って涙を流して喜んで、一日も早く会いたい、こういう話が提起をされてきておるわけです。これはまさに人道問題として中国の残留孤児に対して日本政府としても一生懸命やっておる、それと同じように共和国に存在をする残留孤児のこうした肉親との対面その他のことについても、外務大臣としてはこれは人道問題の一つの大きなものとして位置づけて検討してもらわなければ困ると思うのですが、どうでしょう。
  57. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 外務省で、今、局長も答弁いたしましたように、人道問題に限って中国を通して北朝鮮にどういう要請をするかということで検討をしておるわけでございますが、中国にお願いするわけですから中国立場もありますから、そういう点等も踏まえながら、いわば内々でいろいろと調査をしたり検討したり続けておりまして、まだ結論は出しておりませんけれども、事務当局にもその結論を急ぐように言っております。今お話しのような北朝鮮の残留孤児の問題、これはこれまでは赤十字を通じて依頼をしておった問題であろうと思います。赤十字にも問い合わせたわけですが、日赤もこれまで北朝鮮との問に積極的に努力をしておる、こういうふうに聞いております。
  58. 井上泉

    井上(泉)委員 そこで、昭和五十五年の三月に私が朝鮮への墓参の問題を提起をしたときに、当時の木内局長が、何とかそのことは赤十字等を通じて調査を進めたいと思います、こう言っておった。ところが、一向そういうふうな調査をした実例がないわけで、そこで五十五年十一月の当外務委員会において私は木内局長になぜしなかったか、こう問うと、木内局長も、「十分に積極的に対応しておらなかったという点については、私、はなはだ遺憾に存ずる次第でございます。 この問題の処理につきましては、御承知のとおり北朝鮮との関係もありまして、いろいろ難渋すると思いますが、ぜひ私どもとしては、井上委員の御意見も伺いまして、できるだけこれまでと違いまして積極的に取り組みたい、かように考えております。」——考えは立派だ。その考えが実際に具体的行動として、いつ赤十字社へそういうものを依頼したのかどうか、お願いをしたのかどうか、それを私は明らかにしてもらいたいと思う。恐らくまだ日赤にもそのことは言っていない、こう思うわけですが、日赤へそのことを照会をしておるとするならば、何月何日、こうこういうことでこうだということをここでお示しを願いたい、かように思います。
  59. 橋本恕

    ○橋本(恕)政府委員 確かに先生が御指摘のとおりに、この問題につきまして当委員会におきまして先生から御指摘があったにもかかわらず、十分な対応をしなかったということについてはまずおわびいたしますが、事実関係で申し上げますと、先生の再度の御指摘が去年ございました直後に、これは昭和五十八年、昨年の十月五日でございますが、私のところの北東アジア課長が日本赤十字社を訪問いたしまして、この問題については外務省としても重大関心を持っているという趣旨を篤と日赤に説明をいたしました。北朝鮮との交渉の進展は一体どうなっているかということを聞くとともに、残念ながら外務省北朝鮮当局と直接話す手だてがないので、今後とも一層、日赤にぜひお願いをしたいということで協力を要請いたしました。  さらに昨年の十月二十日、再度北東アジア課長から日赤の外事部長に対しまして同じ要請をいたしました。それに対しまして日赤の外事部長から、昭和五十六年八月に出した手紙、例えば墓地に関する事情、例えば墓地の位置がどこにあるとかそういった確認の問題、その他もろもろの情報についての督促という形で再び北朝鮮の赤十字の当局に手紙を出ました。それからもう一つは、日赤として近々のうちに朝鮮総連と接触する機会がありますので、北東アジア課長から、つまり外務省から申し入れのあった趣旨は十分朝鮮総連にもお伝えして側面協力をお願いする、こういう回答がございましたことを報告申し上げます。
  60. 井上泉

    井上(泉)委員 それはそういう対応をされておる。ところが、幸せなことには中国から日朝の問題についてお世話してもよろしゅうございますということになり、政治、経済の問題抜きにして、人道問題としてこれをどういうふうに取り上げるのかということで外務大臣も検討を指示をしたという報道でありますので、私はそのことを信じまして言うわけでありますが、そこで、そういうような問題と今私が指摘しておりますこの朝鮮における残留孤児の問題についてももっと調査をする方法、何か具体的に、中国の残留孤児の数を調べたように具体的に朝鮮の残留孤児を調べる道というのはあると思うわけですが、厚生省の方ではそのことについてお考えになったことがあるのですか。ないとするならば、考えてもらいたい。
  61. 森山喜久雄

    ○森山説明員 中国の場合を申し上げますと、厚生省の方に肉親捜しをしてくれという孤児本人からの依頼があるわけでございます。その数が先ほど申し上げた数でございまして、北朝鮮にっきましても同じような道が開ければそういう数が把握できると考えております。
  62. 井上泉

    井上(泉)委員 それは調べないから困っておるのでしょう。だからそれを打開する道を講じなけばいかぬ。その打開する道としては、向こうから言うのでなくてこちらから調査するという方法、これは当然とり得ることではないか。つまり、たまたま事実として厚生省の方にも私は資料として出したわけですが、三月十八日付の朝日新聞に、りっぱに成長して教師になっておるという残留孤児の記事が載っておるわけです。そういうことから見ても、北朝鮮にも大分おるんじゃないかということをまず厚生省としても考えるのが当然である。その新聞が目にとまってなければそれはしようがないことですけれども、天下の朝日新聞が報道しておることですから、この関心の深い問題に目を通さないということはないと私は思うわけで、目を通さないことはないと思うわけですから、目を通しておられると思う。そうすると、残留孤児に対して中国はこういうことでやってきておる。だから困っておるというのではなしに、困っておること、それを打開することが行政としての任務ではなかろうかと私は思うのですが、何も道はないのですか。
  63. 森山喜久雄

    ○森山説明員 ですから、先ほどから申し上げておりますように、いわゆる未帰還者といいますか、それと死亡処理した方々のリストを赤十字ルートなどで向こうへお願いしたわけでございます。そういう格好で御回答があれば、こういうところに生きておるというようなことである程度わかると思うのでございますが、厚生省が考えるのは、現在はそのリストを向こうに出して、向こうで調査をしていただくということ以外にはちょっと考えられないと思います。この問題につきましては、厚生省としてももちろん深い関心を持っておりまして、その新聞の記事も、出たときに拝見させていただきました。こういう問題は余り長くならぬうちに解決しなければならぬ問題でございます。今後とも、外務省ともよく御相談いたしまして、前向きに考えていきたいと考えております。
  64. 井上泉

    井上(泉)委員 厚生省の方でもそういう見解を述べられたわけでありますが、こういう事実関係に対して、大変幸せなことには、中国朝鮮民主主義人民共和国とは密接な関係があるわけだし、そして人道問題についてはお世話してもようございますという話もされておるし、そういうことを抜きにしても、北京の日本大使館を通じて中国政府に連絡を取り合って、この実在しておる残留孤児の先生に何らか、朝鮮から中国へ行って、中国から日本へ来るとかいうような道がないかどうか。これは一例でありますけれども、個人というようにこれを位置づけずに、戦争の大きな犠牲の落とし子、民族の悲劇として、この残留孤児と日本の肉親との対面が実現をできるように何らか研究を講じていただきたい、私はかように思うわけですが、大臣、どうですか。
  65. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 北朝鮮との関係、残念ながら国交がないものですから、なかなか政府としては手出しができないということでありまして、どうしても日赤等を通じまして協力をお願いする以外にはないわけで、日赤もその辺は十分承知しております。これまでも北朝鮮との関係について、人道的な問題についてはそれなりに日赤が努力してきております。今後ともこうした努力に期待をしたいと思います。
  66. 井上泉

    井上(泉)委員 それでは、こういう場合にはどうですか。中国が、この朴英哲さんという残留孤児の先生に、中国へおいでなさい、それで中国から日本へ帰らすというようなことをする場合に、日本政府としては入国を認めることは当然でしょう。どうですか。
  67. 橋本恕

    ○橋本(恕)政府委員 日本の国籍を持っていることが確認された場合には、いかなる人であろうとも、その人が日本に帰りたいという場合は、どこからであろうと日本としては受け入れるというのが当然のことであろうと私は考えております。
  68. 井上泉

    井上(泉)委員 しかし、この人は日本の国籍は持ってないわけですね。もう既に向こうで結婚をして、いわゆる朝鮮民主主義人民共和国国民としての生活をしておるわけだから、日本としての国籍は持てないけれども、私は肉親に会いたい、それでその肉親が、お母さんである安芸さんという方がぜひ息子に会いたいから、個人ではあるけれども、直接中国政府に対して、朝鮮のこの先生を中国経由で日本へ一度帰国させてもらいたい、帰国なのかあるいは一時訪問かどうか知りませんけれども、そういうような願いを出した場合に、中国政府がそういう取り扱いをしていただくことができて、この先生が中国へ渡って、中国から日本の国を訪問する、日本の国のお母さんを訪ねていくというような場合には、国籍は朝鮮民主主義人民共和国の国籍であるかもしれぬけれども日本政府としてはそれを拒まずに入国を認めてやるのが人道的な取り扱いではないか、私はかように思いますが、この点についてはどうでしょうか。
  69. 橋本恕

    ○橋本(恕)政府委員 御指摘のような具体的な例、つまり日本に肉親の方がちゃんとおられるということが立証されます場合には、これはたとえ所持しておられるパスポートが北朝鮮のものでありましょうとも、あるいは中国のものでありましょうとも、これは一般論、政治論、外交論あるいは人情論といいますか、そういう一般論、常識論からいいますれば、日本に肉親の方がちゃんとおられるという場合は、当然入国を認めてしかるべきであると考えます。外国のパスポートを持っている人が日本に入国を認めるかどうかという問題につきましての法的な解釈は、これは法務省入国管理局の主管でございますので、法的な観点で私、断定的に申し上げることは自信がございませんが、ただ、御指摘のとおりに、一般論あるいは常識論として申し上げますれば、肉親がおられる場合は日本に入国されるのを認めるのが筋であろう、かように考えます。
  70. 井上泉

    井上(泉)委員 そういう見解で対処していただいておきましたらば、これは日本の法務省もそれを頑迷に拒否するということにはならぬと思いますので、私はこれはこれといたすわけですが、戦争の被害というものが、もう戦後三十五年、四十年たっても今日までもまだずっと続いておる、だから戦争ほど悪いものはない、戦争ほど国家の行為で犯罪行為はない、政治の衝にある者としては、こう考えるべきであると私は思うわけだし、その戦争の被害者の救済については、これは派手ではないかもしれぬ、こういう孤児問題だとか墓参問題だとかいうようなことは派手ではないかもしれぬけれども、人間としての人道問題ですから、その点、いわゆる優しい心を持っておる外務大臣としても積極的に対応してもらいたいと思うわけなので、その点についての見解を承っておきたいと思います。
  71. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 まさに戦争の残した痛ましい後遺症でもあるわけでございまして、こうした問題について日本政府として積極的な対応をしていくのはもう当然のことであろうと思います。残念ながら、北朝鮮との間に政府関係がないわけですから、ストレートな道が閉ざされておりますが、いろいろの方法を講じまして、そして、せっかく今お話しのような、何としても親子の対面をしたい、こういうふうに思い続けられておるそうした二人の思いを何とか実現をさせてあげたい、こういうことで、また日赤、あるいはまた中国を通すか、いろいろな点についていろいろと検討さしてみたいと思います。
  72. 井上泉

    井上(泉)委員 私、質問も、時間が来ましたので終わるわけですが、初め申し上げました三つの、朝鮮あるいはベトナム、イラン、イラク、こういう地点の平和についての外務大臣としての努力を高く買うわけでありますが、その中で、きょうの新聞ですか、「日越、正常化へ動く 外相級対話を復活」ということで、大きく見出しで出ておるわけで、これは私は歓迎すべきことだと思うわけでありますが、その歓迎すべきこと、これはえらいいいように言うて、今度カンボジア、タイとまた、それにもいいことを言うような形になると、話がこじれて、一体日本は何を考えているのか、こういうことに関係国から思われるわけであります。やはり、日本政府としての外交の柱というもの、つまり、これらの国々との関係の柱というものは何であるのか、これはあくまでも民主カンボジアは我が国が唯一の合法政府としての外交関係を持っておる国だ。ところが、民主カンボジアのその国の中に起こっておる出来事は何によってそれが起こっておるのかという点については、やはりベトナムとの対話の中にも、あるいはまたタイとの対話の中、あるいはソ連との対話の中、そういう中できちっと主張して行動していただきたい、こう私は思うわけですが、この紛争が激化しますと、タイの飛行機がベトナム軍に対して攻撃を加えた、あるいはソ連の軍艦がトンキン湾でうろうろしておるというようなこと、中国がまたベトナムに対して攻撃を開始したというようなことになると、これはもう大変なことになるわけなので、そういうソ連が参戦をするとか中国が参戦をするとか、タイとベトナムとの間にこういうことが起こらないようにするためにはどうするのか。こういういろいろながんじがらめの中で、風見鶏のようにあっち向きこっち向くということではなしに、やはり日本外交の方針というものをきちっと位置づけて対処してもらいたい、かように思うわけですが、大臣の見解を承って私の質問を終わります。
  73. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 全くおっしゃるとおりだと思います。やはり日本外交の筋はきちっとしないと諸外国からの信頼を失うと思います。  対ベトナムあるいは対カンボジア政策につきましては、日本外交姿勢ははっきりしておりまして、今カンボジアにベトナム軍が侵入しておりますが、我々としてはこのベトナムの軍隊の即時撤兵を強く要求をしております。同時にまた、現在の三派を中心とする民主カンボジア勢力をASEANとともに支援もいたしておるわけでありまして、カンボジアにおいて一日も早くベトナム軍隊が撤兵をして真の自主独立の政権が樹立されることを期待をし、そのために日本努力を重ねてまいりたい。同時にまたベトナムに対しては、我々は強くカンボジアからの撤兵を求めております。同時にまた、この撤兵が行われない限りはベトナムに対しては経済協力は行わないという方針を堅持いたしておるわけでございます。しかし同時にまた、ベトナムとの間には外交関係も持っておりますし、我々としてはこうした基本姿勢は貫きながらもやはりベトナムとの間で対話を行って、そしてまた、今申し上げましたような路線でインドシナ半島に平和が回復するように日本はやはりアジアの一員としての外交努力をしなければならぬ、こういうふうに思います。  そういう立場で、実は昨日もラウ外務次官と会ったときに、日本とベトナムとの対話はこれは行っていきましょう、そして率直に話すことによってインドシナ半島の一つの平和構築に対して日本役割を進めていきたい、こういうことを述べたわけでございます。これに対しましてラウ次官も、グエン・コ・タク外相も日本の外相との会談を求めておるし、また日本の平和への努力をベトナムは非常に期待する、こういうこと空言っておりましたので、今後時期が来ればそうした会談等も持たなければならない、こういうふうに考えておるわけであります。
  74. 井上泉

    井上(泉)委員 終わります。
  75. 中島源太郎

    中島委員長 午後一時十五分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時十四分休憩      ————◇—————     午後一時二十分開議
  76. 中島源太郎

    中島委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。渡部一郎君。
  77. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 私は、最近の日米円ドル委員会の交渉の様子について承りたいと存じます。  まず、日米間には、牛肉、オレンジの問題、VANの問題あるいは国際的な為替、通貨の問題について、先日よりいろいろな交渉が行われていることを存じているわけであります。しかしながら、これらはいずれも農林省が行ったり、通産省、郵政省の担当官が交渉したり、あるいは大蔵省の担当官が交渉したりされているわけでございますが、外交は本来からいって外交一元化のルールがあるものであり、外務省としては当然その内容について熟知すると同時に、交渉の成り立ちというものを十分承知の上、把握の上当委員会にも報告しつつ万事を進めていくべきであろうし、いっていなければいけないと考えるのでございますが、いかがでございますか。
  78. 恩田宗

    ○恩田政府委員 先生御指摘のとおり、農産物の問題、ハイテクノロジーの問題あるいは国際金融に関する問題、これは米国日本との間に現在行われている大変重要な問題でございます。私どもは、関係御担当の省庁からは常にいろいろなお話を伺っております。また、私どもも、私どもでできる範囲内の御協力を申し上げるという形で、協力してこの問題に当たっているわけでございますが、当委員会においても外務大臣等にしばしば御質問いただきまして、それに応じてお答えするという形でやっております。今後ともまた、御指摘のとおり御連絡をよくして情報の提供等はやってまいりたい、かように考えております。
  79. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 今の言い回しを聞いていると、局長の御答弁は余り適切ではないように思います。というのは、交渉の当事者に御協力を申し上げてというふうなお話しぶりでございますが、外務省はいつからサポートする団体に堕落して、外交交渉の当事者から脱落したのかと私は聞かなければなりません。今の局長のお答え方でございますと、通訳とかあるいは交渉員を車で運搬する役はやるけれども、交通公社みたいなことはするけれども、交渉の中身はそれらの省庁がやって我々は眺めているのだ、そういうふうにさせられたのだ、ここのところ変わったのだ、そして今指をくわえて見ているのだ、悲しいのだ、ひがんでいるのだというふうに聞かれるのですが、それでいいのですか。
  80. 恩田宗

    ○恩田政府委員 どうも失礼しました。日本アメリカとの間の交渉の経路あるいは場というのはいろいろございまして、例えば投資委員会あるいはハイレベル協議等々におきましては当然外務省が代表になりまして、各省庁からも御参加いただいて、協力しながら先方と交渉ないし意見交換をやるということもございます。私がサポートと申し上げましたのは、問題によっては担当省庁が前面に出られることもある。先般の農産物問題につきましても、山村農林大臣がお出かけになったわけでございますので、その際は外交当局は全面的なサポートということで交渉等についても当然御協力申し上げたという趣旨で申し上げたわけでございまして、もちろん在米大使館等当然フルに関連してやることもございます。また、先方からも安倍大臣等に対して直接いろいろな申し入れもございますし、大臣からマンスフィールド大使あるいはブロック代表、シュルツ長官等に直接コンタクトされることも当然あるわけでございます。
  81. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 まだ納得できない。というのは、サポートという言葉が気に入らないのです。この円ドル委員会においては、日本側出席者は大場財務官、関係局長ほかとなっているし、米側はスプリンケル財務次官、マルフォード財務次官補以下となっているから、両方とも財務担当の方々が打ち合わせをされた。これは日米円ドル委員会の作業部会だから、当然あり得ることですね。私は円ドル委員会そのもの空言っておるのではなくて、この円ドルに関する金融の自由化なら自由化という問題について交渉する交渉の責任は、大蔵省が持つのか、外務省かと聞いているわけです。それをサポートなんという言葉で外務省の性格をあらわされては私はたまらない。  条約局長はこういうことをきちんと言う方ですからあなたにちょっと聞きますけれども、私の意見と彼の言い回しとどちらが正しいか、足し合わせてうまく答えてください。
  82. 小和田恒

    ○小和田政府委員 ただいま経済局次長が御答弁いたしました趣旨は、私の想像でございますけれども、交渉の実態に着目をして、実態が非常に技術的な問題であるような場合には、その技術的な専門的な知識を持っておられる関係省庁の責任者の方々に交渉の中心になっていただく、実態的な意味で交渉の中心になっていただくということがその交渉を進捗させる上で非常に好都合であるというような場合には、これはあくまでも日本政府としての交渉でございますから、日本政府の中のだれが、どういう形で参加しなければならないかということは、政府全体として決めればいいわけでございますので、そういう意味で今経済局次長が申し上げたような形での交渉のやり方というものはあるであろう、こういうことを申し上げたのだと思うのです。  ただ、渡部委員が御指摘になりましたように、外交というものはあくまでも最終的に一元的なものでなければならない、日本政府の、国家としての、あるいは政府としての最終的な意思というものは、政府を代表して表明されなければならないわけで、その最終的な責任を持つのは外務省である。したがいまして、この国家の意思あるいは政府の意思というものが最終的な形でまとまって確定されるのは、国際約束というような形で確定されるのが一番典型的な場合でございますけれども、そういう場合には、外務省条約作成、国際約束の作成の最終的な責任に当たる、こういう仕組みになっているわけでございます。その点はもちろん、今後とも確保していかなければいけないと思いますが、繰り返して申し上げますように、経済局次長がお答えいたしましたのは、現に行われておる交渉の過程において、実態的にそういうことがあるであろうというてとを申し上げた趣旨であろうと思います。
  83. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 経済局の方もそれでよろしいですね。——では、うなずいておられるということを速記にとっていただいて……。ああいうふうにうまく答えなければいけない。  そうすると、第二問。今度、非常に面倒くさいテーマがたくさんあるので、第二も言わなければなりません。  それは、オレンジ、牛肉の問題にしても、この外務委員会外務省はほとんど報告をしなかった。全部終わってから怪しげなペーパーを一枚出しただけである。VANについてはまだ何にも聞いてない。委員が散発的に質問するのに対して、多少ほのめかす程度の報告はあったけれども、正確な報告は行われていない。外交交渉の機微にわたる点であるからという議論を展開なさるのであるならば、当委員会は秘密会を開会することができ、あるいは理事会あるいは理事懇談会で意見を表明することもでき、あるいは資料の一部を配付することも可能であり、各議員に対して状況を公開することは可能のはずである。しかるに、何にも報告しない。円ドル委員会についても、甚だ不本意なことではありますけれども、私も相当資料をかき集めてみてわかったのですが、ほとんど説明が行われていない。甚だしきは、外務省の担当官が、大蔵省が全部教えてくれないのでよくわからないのですなどと放言される向きすらある。こうしたことで外交の一元化が回復され得るのか否か、この辺を、甚だ言いにくい話を聞いているわけでございますが、責任のある方に御返事をいただきたい。
  84. 恩田宗

    ○恩田政府委員 今回の一連の米国との間の懸案の処理に当たりまして、当委員会に対し、私どもから十分な御連絡を申し上げることができなかったことを大変申しわけなく思うわけでございますが、今後とも重要な問題についての御連絡、御報告については努力してまいりたい、かように考えております。
  85. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 外交の一元化というのは、政府が一体となって国益を守り、外交を進める上においては基本的に大事なことであろうと思うわけですね。そういう意味で、今まで外務省がやってきました外交につきまして、一元化であるとかあるいは二元化であるとかいう論争もありましたし、あるいはまた、国際関係が非常に複雑になり、また、経済外交というのが国内において大変多岐にいろいろの措置を求められるような時代に入りますと、どうしても外交面において二元的な動きというのも出てくるということでいろいろと批判もあったわけでございますが、しかし、そうした非常に複雑な時代に入れば入るだけ、国益というものを守っていかなければならぬ外交は、対外的には一本の筋を通したものにしなければならぬと私は思っております。  私も、通産大臣をしておるときに、いろいろと通産省がやっておりますいわゆる対外的な接触、折衝、そういうもので外務省との間の二元的な動きだというふうな批判もありましたし、農林大臣をやっておりましたときに、あるいは漁業だとか農業だとかいう面について農林省、農林大臣が中心になりまして、専門的な農業あるいは漁業交渉ですから、交渉をやるわけですが、しかし、その場合においても、もちろん外務省の協力を得る、積極的に外務省と相談をしてやる。最終的には国会にかける、その場合の責任は、最終的には、外務委員会でやっていただくわけでありますし、外務大臣がこれを持つわけですから、交渉の過程においてはいろいろあるとしても、最終責任においては外交一元化が国会と政府との間では制度として整っておるのじゃないかと私は思うわけです。  ただ、農産物交渉の場合は、まだ協定という形に持っていくわけでないので、いわば自主規制といいますか、そういう国会の承認を要するものでないだけに問題は非常に重要な内容を含んでおるわけであります。また、日本のこれからの農業にも非常に深いかかわり合いを持つ約束事ですから、問題そのものとしては非常に重要でありますけれども、しかし、国会の承認を求めるような案件でない、そういうことで、国会に対しましては十分説明をして、そうして議論をしていただくということは大事でありますけれども、しかし、国会の承認を求めるというところにはいかないわけです。  これはVANについても同じようなことも言えると思います。法案という形で、これは日本政府が一方的に法案をつくって、国会に日本の自主的な立場で出すわけで、その間のアメリカ政府との間のいきさつについては、いろいろと話し合いはしておるわけですが、これは別に協定的なものじゃないわけでございます。その話し合いの内容についても、我々としてはできるだけ国会に報告をし、国会の意見も聞かなければならぬ、これは確かにそのとおりだと私は思います。  いずれにしても、今御指摘がございました問題、特に外交の一元化をめぐってのこれからの日本外交のあり方というものは大変難しいような時期を迎えておりますが、しかし、私は、複雑であればあるほどやはり外交の一元化というものの筋だけはきちっと通していく姿が大変大事じゃないか、そういう点で外交を担当している外務省役割もますます重要になってくる、こういうふうに考えております。
  86. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 今外務大臣は、いろいろと繰り返し二度も三度もうまくなでられて、大体うまく説明されたと私は思いますが、余り適切でない部分もあるので、やむを得ずちょっと聞きます。  まず、日米農産物交渉で言うと、私の手元に「日米農産物協議、山村・ブロック会談」のペーパーがある。「五十九年四月九日北米二」と書いてあるから、これは北米局でしょう。経緯が書かれているのですが、このぺーパーは大体まとまったところが書かれているが、これは当委員会のメンバーに配られていないのです。私が要求したら持ってこられた。ほかの委員会のメンバーには配られていないということは不穏当ですね。そうしてこの後ろに「山村農林水産大臣談話」として、四月七日のワシントンでの談話がくっついておる。これは言ってみれば協定に当たるものであって、相互にこうしたペーパーを交わすことによって実質的に会談を決着させた最終ペーパーですね。これはまさに協定、交換公文あるいは交換レターに当たるものです。憲法に基づいて協定あるいは条約等については当委員会に持ち出すということは指定されているわけですが、政府はいろいろなルールを決められたわけだけれども、協定の中でも我が国の国内法と絡まないものは当委員会に出さなくてもいいと思っているという見解を前に出されたことがある。これはぎりぎりのところで、日本国内での自主規制なんだから出さなくていいという理屈は成り立ち得る。しかし、内容の意味するところは我が国農業に与える多大な影響性があるのだから協定並みに扱わなければならぬものであって、少なくとも我が国は代議院制をしく以上、国民の代表たる国会議員に周知徹底せしめた上、その理解を得せしめるような配慮が必要である。大臣も述べられたとおり、この点についての対応は極めて拙劣であったと言わなければならない。  ところが大臣は、今そこのところでVANもほぼ同じと言われた。牛肉とオレンジについては、大臣の言い方も私はいいだろうと思います。そういう言い回しもあるだろうと思うし、一部反省されている点も含めて、いい言い方だと承認しますが、VANについては、今二つの郵政省と通産省の意見が対立して、法案の中身まで取りかえるほどの論争が国内法について行われている。内容も二つの法案が出そうなところまでエキサイトしている。そしてその都度、アメリカ側から言われた、大使館の幹部が言った言葉であるとか、アメリカ政府の言った言葉によって法案の中身まで揺れておる。この決着というものは明らかに我が国の国内法の生成過程にまで絡んだという意味で極めて重要な意味があって、オレンジ、牛肉の比ではないと思われる。  ところが、ここの円ドル委員会でやっておることはもう一つすごくて、これは法律あるいは政令あるいは省令を変えなければいけない。大蔵省はこれで無数の法令、省令を——無数のというのはちょっとオーバーでありますけれども、相当の数のものをこの間から交渉しながら、たたき大工がたたいて直すように、トンカチで直しながら交渉をやっておられる。これは明らかに我が国の国内的ルールを取りかえる作業を並行させつつこの作業部会というのが行われておるということを示しておる。そうすると、これは当委員会に十分な理解を得るだけではなくて、VANはそれより高いレベルで何か言わなければいけない、そして、VANよりもレベルの高い円ドル委員会の作業部会の行った結論、両大臣に提出された結論に対してはもう少しレベルの高いものが必要なのではないか、こう思われるのでありますが、いかがでございますか。
  87. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 確かに、農産物につきましては、渡部さんのおっしゃるように、私も協定ぎりぎりのところだと思います。ですから、この内容については、やはり外務委員会説明をして、そしていろいろと御議論していただくということはもう大事なことであろうと思うわけでありまして、それは当然外務省の責任においでやらなければならぬ仕事の一つであろうと思います。もちろん農産物交渉には外務省そのものが深くタッチしてきておるわけで、最終的には全権を委任した山村農林大臣において決着がついたわけですけれども、その過程において外務省が深く関与しておりまして、私自身も一月に参りまして農産物交渉についても一つの方向というものを話し合ってきた過程があるわけでありますから、まさに、国会で承認を要する取り極めとか協定ではありませんけれども、ボーダーラインに等しいものとしてこれはこれから外務省としては十分注意をしていかなければならぬことであろうと私は率直に言って思います。  それからVANにつきましては、これは日本考え方を一方的に伝えておるわけで、アメリカが理解をするのか、評価をするのか、あるいはまだ自由化が足らないといって怒ってくるのか、まだその辺のところは決着をいたしていないわけでございまして、それまでの段階においていろいろとアメリカの要請等も聞いて、そして日本政府部内もまた各省に相分かれていろいろと論争とかあるいはまた対立があって、その中で日本政府日本政府として自主的に決着といいますか、法案という形で決着がついておるわけでございます。ですから、これは外交交渉といったものなのかどうか、これからも恐らくいろいろとアメリカからは注文をつけてくると思いますが、しかし、これは一々交渉で決着をする、協定にする、そういう筋合いのものではないように私は思っております。  それから円ドルの問題は、これはまさにこれからの日本の金融体制を基本的にどうしていくかという非常に根本的な日本の金融制度あるいは日本の金融体制そのものにかかわることでございますから、日米の交渉というものは、今後の日本の金融制度体制の将来というものを考えるとき、私はまことに重大な意味を持った委員会であろうと思うわけでございますが、これに関しましては、外務省としては十分説明は受けておると思いますけれども、そしてまた最終的には政府全体としてもちろん外務大臣も責任者の一人として決着の責任を持たなければならぬと思いますが、この過程は、専門家同士の話ということで、外務省としては、説明は私は受けておりますが、まだ我々概略的なものだけで、これがどういう方向になっていくかということについては、私は外務大臣として大蔵大臣との話で聞く以外にはないわけですが、しかしそうは言っても、これは役所間の問題ではなくてやはり日本政府全体としてとらえていかなければなりませんし、また、外務大臣外務大臣として全体を踏まえた中で大蔵大臣とも相談をして、そしてその責任において外務大臣としての考え方をはっきりさせなければならない、こう思うわけですが、どうも専門的になればなるほどなかなか外交交渉も外務省だけでやれないという非常に困難な状況になりつつある。しかし、最終的な責任はやっぱり外交一元化ということで外務省あるいは外務大臣がとらなければならないのではないか、こういう基本的な考え方を私どもは変えておらないわけで、それはやっぱり死守していかなければならぬと実は思っておるわけです。
  88. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 金融に関する日米交渉についてどういう形になさるかということは、最終的なペーパーを見た上で当委員会承認を得る。承認を得るマターになるかどうかは後から判断なさることなのだろうと私は思います。また、今その気はないと言われるならば交渉自体に一定の枠をかけることになるでしょうから、それもできがたいだろうと思うし、今すぐかけるというならばそれはまた別の影響性を与えることでしょうから、ここで答弁を求めることは私は避けた方がよかろうと思います。しかし、これは中身についての概略の説明のみを受けているのであってと今はしなくも言われましたが、概略の説明を受けているだけでは済まぬテーマがもう大量に盛り込まれているということだけは改めて私が注意を喚起するまでもないと存じますし、最終的な責任をとられる方としては発言しないでおいて最後の土壇場にだけ責任をとらされるという悲劇を私は外務大臣にかぶせたくないという温かい気持ちもあるものですから、この点はふだんから厳格にもうちょっと関心を持たれた方がいいのではないかと思うのであります。  それでは、現在の作業部会の行っているテーマについて、私は公式のあるいは今外側に出ているペーパーの中からちょっとお尋ねをしたいと思います。  金融の自由化の問題については、これはいろいろな意味時代の趨勢としてそういう方向になっていると思います。昭和五十八年度における日本の各企業の資金の調達は海外において百億ドルを超しております。これは日本国内における資金調達をオーバーしているものでありまして、このように多額の資金を海外で調達する日本の企業の姿を考えておりますと、日本国内だけは自由化を阻止し、海外においてのみ我が国関連企業が資金調達その他の自由を満喫するということは許されがたいと考えられるのが時の方向ではないかと思います。また、現在のコンピューター等の大発展によりまして金融機関相互における情報の交換、事務の関連づけというものがますますもって、ユーロ円債の自由発行というようなものに象徴的にあらわれるのでありますけれども、当然となってきつつある。その時代の流れがあるのではないかと思います。また、大量に増加し続けてきた国債の借りかえ時期が昭和六十年度に一斉にその日からやってくる。その膨大な国債の借りかえ、償還という時期を迎えますと、どうしてもそのもたらすものは国債等の金利の自由化をめぐっての圧力としてこの問題が登場する可能性がある。そうすると、アメリカとの交渉において単にこれを扱うというだけではなくて、我が国が金融の自由化というものについて積極的に取り組まなければならない時期を迎えつつあるというのは一つの大勢的な流れであろう。というのは、日本における金融各機関のいろいろな意見を聴取いたしましても、早かれ遅かれその方向に向かうのではないかという点については一致しておる。スピードについての速い遅いはあるとしても、大体一致しておると見ていいのではないかと考えるわけであります。  そこで、この交渉が単に日米間の交渉というだけではなくて、日本の国内におけるさまざまな金融機関に対する日本の基本的な財政政策それ自体というものが問われている交渉になっているのではないかと思われるわけでありまして、黒船と言われるほどの交渉になる理由があるのではないかと私は思います。この辺の基礎認識についてまずちょっとお尋ねをしたいと思いますが、大臣はいかがですか。
  89. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私ももちろん金融の専門家ではございませんが、今おっしゃるように、まさに世界の趨勢は金融の自由化という方向へ、スピードのいかんは別にして大きく流れつつあると思います。そういう中で日米間のいろいろの懸案事項を見ておりましても、やはり円ドル問題、円の国際化と資本市場の自由化、こういう問題がまさに日米間においては最大の懸案になってきておることは事実だろうと私は思います。世界の流れとともに日米間における懸案としての重大さはますます増してきておる。  実はこの円ドルの問題につきましては、初めて出ましたのはたしか昨年の国連総会で私がシュルツ国務長官にお目にかかったときに、シュルツさんの方から、あの人は財務長官もやりましたし、金融、財政の専門家ですが、安倍さん、とにかく日米関係のいろいろな懸案問題を考えてみても問題の底にはやはり円ドル問題があるんだ、これに対して積極的なアプローチをしないと、幾らほかの問題が解決しても日米間の本当の解決にはならないのじゃないか。しかし、残念ながら今アメリカの財務省はそれに対して積極的でない、だから私とあなたで話をしようじゃないかというふうな発言も実はございました。  私はこれに対しまして、これは日本においては大蔵省の問題ですし、大蔵省と財務省がこの問題についてはもっとよく話し合うというのがまず第一に前提として必要じゃないでしょうかということを答えたわけでございますが、これが一つの発端になりまして、そして昨年の暮れにレーガン大統領が見えましたときに、この円ドル問題について日米間で委員会をつくって積極的にやろうということからいよいよスタートが切られたわけであります。  そして、今日に至るまでアドホックの委員会が続けられておりまして、今もちょうどアメリカで大場、スプリンケル両代表によるところの交渉が続けられておるわけでございますが、日本としましては、四月の末にはいわゆる日米懸案のこの問題をパッケージとしてまとめたいという日本政府全体としては方向を持っておりまして、今その取りまとめをしております。その中で大体懸案についてはある程度の見通しのつく可能性も出てきつつあるわけですが、やはり円ドル問題がその中で日米間の話し合いがきちっとつかないと本物の懸案解決にはならない、こういうふうに私は思っております。  しかし、そうは言っても、日本の資本市場の自由化であるとか円の国際化であるとか口では言いましても、今までの日本の長い間の伝統と歴史が金融界にはありますから、そう簡単にはなかなかいかないだろうと素人なりに考えておりまして、なかなか交渉も難航しているのじゃないかと思います。しかしユーロ円の自由化とか、そういうふうな点については相当話も進んでおるというふうにも承っておりますし、問題がやはり円ドルに集約されておりますから、それだけに両国も相当真剣になって取り組んでおりますし、そういう意味では、我々は何とかこの交渉が、完全に決着するのじゃなくても、前向きに実質的に一つの前進が見られるというところまでは四月いっぱいにはぜひとも持っていってもらいたいものだというふうに考えて実は見ておりますし、竹下大蔵大臣ともその点で話し合いをしておるわけであります。
  90. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 昨年の九月、国連で、安倍外務大臣のところにシュルツさんが来て突然おっしゃった、これは財政担当の人にやらせておいてはだめなんだ、国務長官と外務大臣でやろうじゃないかと言われたお話は私も大臣から直接伺いました。そして、財政担当官に任せておいてはだめだという認識をシュルツさんが辛されたことに意味があるなど私はそのときそう感じたのです。ということは、これは政治問題にするという発言ですから。財政担当官同士が議論すれば、双方には両国固有の財政政策があり、渡り合って何にも、まあ大型な前進というのは行われ得ないというニュアンスを感じていたのではないかと私は思います。  しかし、この円ドル問題あるいは為替の問題等を議論する場合に我々の方で感じなければならぬのは、中長期的な日本全体の金融政策の問題を今や確立するテーマと日米関係の問題と、この二つの問題が絡んで議論されることであります。ところが、我が国の方ではこの問題が、日本側立場が余り明快に確立されたとは言いがたくて、そしていきなり交渉しているものですから、その交渉の中身というのが極めてあいまいな形で決着する可能性がある。そして、この交渉は幾ら決着しても半年後にもう一回持ち出され、また半年後に持ち出され、その次にまた持ち出されるという可能性がある形で決着するのではないかというのが私の心配なんです。  これは実際実務で交渉されている方々にとっては非常に酷空言い方ですけれども、私は、何を交渉しても今度の場合決着は長引くだろう、そして自由化というものがさらに強烈に押されるだろうと思うのですけれども、この辺どうお考えですか。
  91. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 確かに、金融政策あるいは金融制度はそれぞれの国の長い間の歴史と伝統の中ではぐくまれた制度ですから、世界の流れは大きな体制として移っておっても、こういう制度を基本的に変えていくということはなかなか困難な点が起こってくる。ですから、一挙に根本的な解決ということにはいかないと思いますけれども、しかし方向を着実ににらんで、できるものから着実に解決をしていくということが必要ではないか。そして、日本は特にいろいろと長い歴史を持っておるけれども、自由貿易体制、そして金融の自由化といったような世界的な方向に対しては、日本がその国際的な責任の中で日本みずからの努力を人一倍果たしていかなければならないのじゃないか。そうしないと保護主義というものが金融市場の中にも台頭してきて、そういうことになれば、結局非常なしわ寄せを受け、打撃を受けるのは日本でありますから、いろいろと困難はあっても、そして一挙には解決できないとしても、確実に見通しをつけて解決の方向に進めていかなければならぬ、そういう責任が日本にある、こういうふうに私は思います。
  92. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 さっきから随分ゆっくり質問しているわけですけれども、まだ中身に行かないで外側を詰めているのですが、これは十五日の新聞なんです。一つの新聞の見出しを持ってきたのですが、「金融自由化決着めざす あすから日米円ドル特別部会 首相、時期明示など指示」こう書いてある。これによりますと、十六日、十七日、ワシントンで日米円ドル特別会合第三回作業部会が開かれる。「これに先立ち、酒井大蔵省国際金融局長は十四日、中曽根首相に、今度の会議米側に対し日本として考えられるすべての金融自由化策を示して実質的に決着させる方針を説明、了承を得た。首相は「自由化の時期を具体的に示すなど、思い切ってやってほしい」と指示したが、日本に対して大幅で即効的な譲歩を求めるリーガン財務長官の出方いかんでは、さらに折衝が長引く事態も予想される。」  それで、僕は取材した人にけちをつけているわけではなくて、この首相の指示が奇妙ではないかと思っているわけです。ということは、この首相の指示は金融の自由化の問題について、我々も金融の自由化についてはやっていきたいけれども、例えば金利の自由化を例にとれば、金利の自由化をやれといきなり言った瞬間に中小あるいは農業関係の金融機関などは壊滅的な打撃を受けることはもう明らかですね。そして、小口の預金を有するところの郵便貯金と銀行の問題はまだ決着していませんね。それなのに金融の自由化に決着をつけて、時期を明示してすぐいけということを総理が本当に言われたのかどうか、これは問題だと思う。しかも、新聞記事を通して交渉の相手にそれがリークすることはもっと問題だと思う。したがって、私はそれを調べてみた。これはこの記者のスクープであって、優秀な才腕のある人がスクープしたのか、本人がそう指示されたのか。ところが、この指示はかなり広く出回っておって、総理がそう言われたことはもう明らかである。交渉の前にアメリカ側がそれを知っていたことも明らかである。つまり、交渉の手口というものをもうほとんど全部ばらしておいて、これ以上譲れぬよ、これが最後だよというテクニックでおやりになったやり方だなということが僕はわかってきた。  しかし、それは適切ではない。オレンジと牛肉の決着を見るまでもなく、総理のこのときの指示は明らかに、最善を尽くしてくれてありがとう、しかし関係団体の意向もあることだし、国民の利害というものを十分考えた上で調整しながらやってくれよと指示するのが指示の仕方である。そうでなかったら、交渉担当官に、後ろから時期明示を指示なんという指示をもらって出かける交渉官というのは、向こうでどういう目に遣わされるかというのは、時期はいつだと二夏言われた瞬間にだめではないか。交渉にならぬじゃないか、そんなものは。これが、外交が知らないテーマだと僕は言っているのです。  大蔵省に責任をかぶせるつもりはないけれども、きょうは大蔵省の最高レベルの方は来ておられないが、首相から時期明示と言われたので、大蔵省としては頑張ったけれども、首相が明示しろと言うから困ったんだという言い方が今ごろ出ている。交渉になるのか、こんなので。しかも、もっと後の記事を見ると、もっとおかしなことが書いてある。我々としてはいろいろ言ったけれども、時期を明示しろということについて先方が言ったのならば我々としては大変困るのだということを背景説明の中で大蔵省の方々が言うておる。交渉になるか、こんなので。そこを言ってくれ、それを言われるとおれの方は参るぞと交渉官が言っている、それを言いながら交渉する、こんなのは交渉にならぬでしょうが。  もっと具体的な例で言いましょうか。将棋を指すときに、この角筋のところをあけられたらおれは参るのだと言いながら将棋を指すばかがありますか。ここの端歩を突いたらおれはあと三手詰めだなどということを言いながら将棋を指す人がいるでしょうか。外交交渉というのは、向こうのテーブルに着いて、英語と日本語でやり合うだけが外交交渉じゃないのです。その陰で新聞記者と応対するのも、新聞記者といろいろなお話をするのも、背景説明も、全部ひっくるめて外交交渉じゃありませんか。だから、たくさんの専門家を飯を食わしているのじゃありませんか。それを、作業部会の人が悪いからだというわけにいかないじゃないですか。  責任をとるのはだれかとさっき丁寧に聞いたら、最後は外務大臣だと外務大臣は胸を張っておっしゃったよ。つまらぬことを言ったものだと思うけれども。かわいそうに、何も知らないのにやられているのだ。だけれども大蔵省の担当官が責められますか、いいと思ってやっているのだもの。こんな時期を明示しろということでは交渉にならぬ。しかも、この記事は違っていないのだ。残念なことに違っていない。首相は時期明示をちやんと示唆したのです。さあ、だれかうまく返事をしたまえ、この問題について。
  93. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 首相が、大場君が行くときに何回も会っておるということは聞いておりますし、いろいろと話をして行ったと思いますが、また指示も受けて行ったと思いますが、しかしこれは外交交渉ですから、その中身が一々出るし、日本はここまででもうおしまいだ、これ以上は主張しないとか、おりるつもりだということが表に出たら外交交渉になりませんし、おっしゃるようになかなか日米関係お互いに相親しい関係にはありますけれども、四つに組んだ相撲ですから、そう簡単に手の内を見せるわけにいかない。ただ、方向としての流れは、これは両国とも認識して取り組んでおる、こういうふうに思うわけです。したがって、総理がどこまで言った、その言ったことが新聞を通じて表に全部出て、手の内が全部さらされたとは私は思っておりませんで、これは直接責任者から聞いておらぬですから、私も自信を持って言えないわけですが、しかし恐らくそういうことはないだろう。  そういう中で今ぎりぎりの交渉が行われておって、今この交渉で大場、スプリンケル両氏の交渉の電報もいろいろと入ってきておりますが、今のところは相当順調に、我々が外で心配しておるよりはもっと順調にお互いの合意が進みつつある、こういうふうに聞いておるわけです。どういう決着になるかは、これからの問題だと思います。
  94. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 交渉が終わったときに、順調にうまくいったというふうに表現していい場合、それは国内に向けて交渉がうまかったぞ、交渉員は立派だったと宣伝するにはそれは非常に巧みでしょう。しかし、交渉相手に対しては泣いてみせることがなければ交渉にはならないのです。真っ青な顔をして座席を立ち上がるぐらいの芝居がなければできないでしょう。  外務大臣に私はちょっと小言を言いますけれども、あなたも非常にお人柄のいい方だと私は思います。とても順調だと向こうは言ってきておりますなんて言おうものなら、さらに苛烈な要求が最後の土壇場で出るでしょう。したがって、外交を担当する外務大臣が、こういう委員会で言うせりふとしては不穏当です。順調がどうかなんて言ってはいけません。電報で見るところ順調だなどとあなたの言ったその一言で、また日本は大損害を受けるのです。交渉途中のことについて発言してはならない。そういう評価をしてはならない。中身を冷厳に理解しなければならない。それは人間的な感覚からはほど遠いものですけれども外交交渉者が極めて困難なところに追い込まれるというのはいつもそれなんです。芝居ができなければいけない。外務省の人々は芝居の上手な人がそろっているじゃないですか。笑いたいときに泣いてみたり、泣きたいときに怒ってみたり、役者だらけだ。外務大臣もすべからくそうであっていただかなければならない。  それはそれとして、あなた、私が言っているのは、そういうことはないだろう、私もないだろうと思います。ないだろうと思うけれども、畳みかけて次の記事が出ていますよ。それはどういうことか。大場さんは先方の要求について、すぐできること、中期的にできること、長期的にできることで返事したと記されている。私が見るところでは、それほど三種類に細かく分けたかどうかは別にして、短期的にはこれもできない、あれもできないとは明らかに言っている。そうでしょう。ここのところで私はこの交渉の中身について余り触れたくないから、この辺で責め立てるのはやめます。これ以上責め立てるとぼろが出るのはわかってきた。だけれども外務大臣はもうちょっとその点について責任を持たれた上、責任を持つということは、この問題についてもうちょっとしっかりやってもらわなければいけないなという感じが僕はしますね。  特にまずいポイントがまだ二、三点ある。それは、金融の自由化といっても、確かに金融の自由化は日本の国内的要請でやらなければならぬ面、例えば日本では各種の審議会やその他の相談するグループの中で、大蔵省は何回も注文を出して、それぞれの答申も受けてやる気でいるテーマもある。しかし、そういうところにかかっていないテーマで、今考えなければならないテーマもある。いろいろある。  しかし、金利の自由化の前に、何で向こうが言ってきたかということを理解しなければならない。第一番目、余り言われていないけれどもレーガン大統領が大統領選挙の前でいい格好をしたいのです。これは絶対的な要請として存在しておる。このレーガン大統領にいい顔をさせなければ、アメリカの金融業界は今レーガン再選のためのキャスチングボートを持っていると言われているじゃありませんか。そうでしょう。前回のレーガンの地すべり的大勝利は、アメリカの銀行、証券等を中心とする金融業界の圧倒的な支持によって当選したといういきさつがある。今度、余りレーガンがだらしないのだったらそっぽ向くよと言われたら、レーガンはだめでしょう。そのレーガンにどういうお土産を持たせるか。選挙運動に介入するわけではないけれども、それを配慮してやるやり方が日本側に要るのじゃないでしょうか。そうすると、東証に対して、東京兜町に対して今先方が進出したいと言っておる。日本側の企業は向こうの兜町に当たるところにどんどん進出しているのに、日本側は入れようとしない。入れてくれと向こうは叫んでいる。ルールとしては入れるけれども、実際的には入れない仕掛けをこしらえておいで、こちらは笑っておる。三菱銀行が向こうの信託銀行をほいほい買うところを日本側は黙って見ていながら、向こう側が日本で信託業務を行いたいと言うと、日本の今までのルールになじまないと言って阻止する。それは深いいろいろな理由がある。そして、その申請すらさせない。自主的に取り下げさす。こういう態度が、向こうで小さな事件が大きなはね返りになることは予想できる。これは何かで譲ってみせ、そしてメンツを立ててあげる必要があるのではないかと思われる。これは財政のわかる人に私は言っているのではないのです。財政はわからなくてもいいけれども、バランス感覚があって、外交交渉のできる能力が発揮されなければいけないでしょうと申し上げている。  だから、私は作業部会でいろいろやるのもわかるけれども、作業部会の最後を色づけをするためには、外務省が乗り出してその泥水をかぶって決着するしかないだろうと私は申し上げておる。そうでなければ、交渉すればするほど理屈から言えば有利であるところの我が方側の主張が勝ちを占めるだけで、一番基本的な日米関係について不必要な打撃を与えることだけは避けなければならないと思われるのですけれども、どうでしょうか。
  95. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 確かに、おっしゃるように大事なときだと思います。金融問題はまさに専門的な問題ですから、専門家同士にある程度まで任せることは当然なことだと思いますが、最終的には大蔵大臣と財務長官の話し合いにもなると思いますし、そういう政治のランクに入ってくれば我々が、例えば外務大臣として今おっしゃるような大局的な立場に立ってこうした問題に対しても十分発言をし、あるいはまたその中で自分の考えを通していくということは、相手はアメリカですし、対外交渉でございますから、そういう時期が来ると思いますし、またそういうことは大局的に私自身がやらなければならぬ責任だというふうに私も思います。
  96. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 私はきょうは大蔵省のベテランの担当官の何名かをそこにお招きしてありますが、申しわけないけれども、またそれに伺うところまでいきません。  ただ、私が残念なことは、外務省が大蔵省の担当官の責任に押しつけられるほどこの問題は簡単なテーマではないということをさっきから何回も繰り返して申し上げておるわけです。アシストする程度だとか援助するとか、その程度のことでは済まない問題である。しかも、これは日本の国益を強度に守らなければいけない。  そこで、私は申し上げておきたいのですけれども日本側のこの金融自由化に関してアメリカ側は非常に不満がある。それはなぜかというと、何のためにこんなことを急に言い始めたかといえば、ビジネスラウンドの代表であるところのキャタピラー社のリー・モーガン会長がワシントンヘやってきて、そうして「何のことはない、最近の米国産業全体を見ると際限もなく増大する貿易赤字に打ちのめされている。国内でも海外でも市場を失っている。八一年から八二年にかけてのGNP低下の四分の三というものについて、また二百万の失業というものについては、責任は経常収支全体の悪化による。その主犯はだれか。それは過小に評価された日本円である。円安は日本の輸出に二〇%の補助金を与え、アメリカ製品に二〇%の関税をかけたのと同じ効果を生んでおる。」こういうふうに述べ立てた。そして、これはワシントンの法律家でフォーリー・アンド・サイモン事務所に所属するデビッド・マーチソンとスタンフォード大学救援のエズラ・ソロモンに特別に依頼してまとめた調査レポートである。このレポートは「アメリカの貿易の不均衡の最大の原因は日本円と米ドルとの為替レートを長い間不均衡のままに放置したことにある。」と告発した。「日本政府は円安を誘導するようなことはやっておらぬが、雇用水準を高くし金利水準を低く抑えるというようなやり方で、結果的には外貨準備をコントロールするやり方を巧みにやっておる。そして、低金利というものが非居住者に日本の株式、債券への投資を思いとどまらせ、日本の居住者による外国の株式、債券への投資を促進しておる。だからこそ円安というものが恒常化しておるのだ、だからこそ貿易がだめなのだ。」と述べ立てているわけですね。  ところが、今までの我々の論理からいけば、世界でこのような円安が続行しているということは何のためだったかというと、ひたすら米国側の高金利によるものである。この米国側の高金利というものは世界じゅうの資金をアメリカに集め、アメリカ自身の輸出というものを妨害し、日本からの対米輸出というものを急上昇させ、貿易を不均衡ならしめるということになってしまっておる、けしからぬ、こう言い続けてきた。そして、それはアメリカ側でさえも、日本側の責任とアメリカ側の責任の中でアメリカ側の責任の方が重い、こう言っている論者もたくさんあることだし、議論としてはそういう議論になるのではないかと思われるのだけれども、こうした「マーチソン・ソロモンレポート」等について、日本のそういう作業部会に出た人はしっかり言っているのか、そしてそれだけの主張をしているのか、何か日本側ばかり直すことを言っているみたいだけれどもアメリカ側もその高金利を直せよという一札をちゃんととっているのかいないのか、これは最後にちゃんと伺っておかなければならない。交渉の途上ではありますけれども、それらの主張は明快に行われているかどうか、外務大臣もその辺はまとめてよく御存じだろうと思うから外務大臣がお答えいただいても結構だし、担当される方がお答えいただいても結構です。
  97. 桐渕利博

    ○桐渕説明員 お答え申し上げます。  ドル高なのか円安なのかという問題、あるいはドル高の原因がどこにあるか、あるいはアメリカの国際収支の悪化がどういう理由でなっておるかということにつきましては、まことに先生のおっしゃったとおりでございまして、私どももこの円ドル作業部会という対話を通じまして全く先生のおっしゃったような意味で、例えばアメリカの赤字というのはむしろアメリカの需要喚起政策とかヨーロッパの通貨に対するアメリカの通貨の全面高とかいうこと、あるいは債務累積問題というようなことでアメリカのヨーロッパとの間あるいはアメリカのラテンアメリカとの間の貿易の赤字による面が多いのだというようなこと、あるいはおっしゃったように円安の状況ではなくてドル高の状況であって、その主たる理由がアメリカの金利高、しかもその理由は主としてアメリカの財政政策にあるのだということを申し上げております。  それだけではございませんで、この対話の中では直接投資の交流の問題なども話し合っておる次第でございますけれども、例えば日本の直接投資を阻害するようなユニタリータックスの問題についても申し上げております。あるいは、日本ではアメリカの銀行あるいは外国の銀行が進出した場合に、一度進出すれば、支店の申請をすれば各県で活動ができるようになっておりますが、アメリカの場合には、一つの州に出ますとほかの州に出られません。州際業務というのは禁止されているわけでございまして、こういうことにつきましてもアメリカの方に要望をいたしておる次第でございます。  ただし、この作業部会と申しますのは、日米経済が非常に近くなる、日米の金融界も近くなるということで、お互い対話というものは非常に大切だということでやっているのでございまして、それぞれ今申し上げたようなアメリカの金融政策とか財政政策あるいは私どもの銀行行政とか証券行政というのは、国内の政策でございますので、この対話を通じてお互いに理解を深めて、あるいはお互いにどういう点を不満に思っておるか、希望を持っておるかというようなことを参考にさせていただくという意味があるのじゃないかなというふうに思っている次第でございます。
  98. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 問題があり過ぎますから、この続きはまたいたしましょうか。だけれども、私はこの場をかりてもう一つ申し上げておきたいが、大蔵省の国金局は一月日本の各銀行におふれを回して、米国での邦銀活動に関する先方への要望を出せとおっしゃった。そして何項目も挙げられている。例えば、預託金の撤廃とか資産負債比率規制の撤廃とかユニタリータックスの撤廃とか貸倒引当金の繰り入れ限度率の引き上げとか関係会社間取引制限の適用除外とか、これは本支店の間に税金がかかるものなんですけれども。それから、再保険業務関係信用状発行制限の撤廃とかビザ取得業務の簡素化、迅速化とか受託業務の拡大とか銀行局検査の無料化とか、日本ではちょっと考えられないようなことが続々ある。また、州際業務の禁止の問題とか監督官庁の系統が複雑だとか預金保険の問題とか外銀規制法が存在して大変だとか諸規制比率が過重だとか証券業務とか従業員の構成比率というのが問題になっているとか、いろいろあるわけですね。これを全部ちゃんと話してくれているのかなと思うわけですね。明らかにこうした問題はふだんからわかっているべき話で、ふだんから対話しているべきテーマなんだけれども、これだけ全部持ち出すということは、こうした場所では不可能ではあろうとは思いますけれども、言うだけ言ってくれているのかな。ただ日本の方ばかりだめで向こう側ばかり立派にやっているというような印象を与えるような話が続き過ぎておる。それでは交渉にならないのではないかな。これは、現場で財政担当官が必死になって交渉しているのをバックアップしている外務省のやり方というものがそれこそ非常に問題があるのではないかなと私は心配しているわけであります。したがって、交渉としては大体大筋がまとまって、五月、その内容が財務長官と大蔵大臣報告されるぺーパーが今まとめられようとしておる。このいよいよまとめる段階こそ、外務省が責任を持たなければならないそれこそ肝心かなめのポイントに到達したと私は思うわけであります。したがって、私は今こそ我が国内の、一つは当委員会において明快な説明をしていただかなければならぬと思う。もう一つは、それより先に外務省と大蔵省の担当官はよく打ち合わせをされて、この問題に対してもう少しきちんとした打ち合わせと明快な対策を立てていただく必要があるのではないかと思いますが、よろしくお願いいたします。きょうみたいなことではとてもじゃないけれどもうまくいくとは思われない。まさか外務委員会でこんな面倒くさい話をするとは思わなかったとおっしゃるかもしれない。  そして、さっき言われたけれども、プロとアマチュアという言葉はよろしくない。外交の担当者が、この問題はプロ同士が話し合うのでというようなお話し合いをされたのなら、外務省というのは常にアマチュアなのであって、外務省の係官は相談する能力を失ってしまう。外交交渉にはプロもアマもないのであって、むしろ外交という立場でおのおのの持ち分を発揮して足らざるを補い合いつつ交渉するのがまともなんではないかと思われる。その点ひとつ今後十分注意をされて、言うべきを言い、ただすべきをただし、主張する面は主張すると同時に、言いにくいことですけれども日米関係を考慮しつつ、引くべきは引き、花を持たせるところは花を持たせ、しかも我が国の中小企業者あるいは国民の経済的に弱い層に対して十分な配慮をしつつ、交渉の生きを期していただきたいと思いますが、いかがですか。
  99. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 もう私から申し上げる必要もないほどはっきりおっしゃいまして、そのとおりであります。やはり外交交渉で言うべきことは言い、約束はきちっと守っていかなければなりませんし、やるべきことはやらなきゃならぬと思うわけであります。特に日米交渉も、農産物問題も一応決着する、そしてVANも一応の見通しがついてきた。あと残っている問題が関税の引き下げ問題、それからサテライトの問題、そして一番難しい問題はこの円ドルの問題でございまして、これらの問題を大体一括して何とか四月の終わりごろまでには見通しをつけたいということで鋭意交渉も続けられておるわけでございます。政府としましても、特に外務省としましてはこうした関係省庁とも十分連絡をとる。特に円ドル問題では大蔵省とは密接不離な連絡をとって、この交渉を成功裏に推し進めなければならない。  私がさっき専門的など言いましたが、得意な分野ですね。農業だとか漁業だとか金融というのはなかなか特有な面があると思います。そういう面ではもちろん外務省も十分連絡をとり合ってやっていかなければなりませんが、しかし非常に複雑化している状況ですから、それなりにある程度得意な分野での交渉というのは当然やむを得ないことであろう。しかし最終的には経済対策閣僚会議あるいはまた外務大臣としての責任はとって、そして日米経済全体をまとめてこれを前向きに進めていくように今後とも全力を傾けてまいりたい、こういうふうに思います。
  100. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 ありがとうございました。
  101. 中島源太郎

    中島委員長 次に、木下敬之助君。
  102. 木下敬之助

    ○木下委員 安倍外務大臣は、今月十四日札幌におかれまして「一日外務省」ということで地元関係者と話し合いをされた後、記者会見でソ連との対話の拡大強化に本格的に着手をされる意向を表明され、西山欧亜局長を今月末ソ連に派遣する方針を明らかにされておりますが、今後の日ソ対話の具体的スケジュールをどのように考え、何を特に重視しておられるのか、お伺いいたします。
  103. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 確かに先般北海道で行われました「一日外務省」におきまして、私自身が、やはり対ソ対話を拡大をすべきであるということを述べたわけでございます。政府としての基本的な考え、私の考えは、日ソ関係が厳しい状況にあるだけに日ソ間の対話の道は閉ざしてはならない、これを拡大強化すべきと考えておりまして、本年二月にアンドロポフ前書記長の葬儀の機会を利用しての日ソ外相会談においてこの点につき日ソ間で合意を見たところであります。かかる外相間の合意を具体化するため、先月モスクワにおきまして次官級の日ソ事務レベル協議実施したところであります。今後も引き続き局長レベルの日ソ間の国連等に関する意見交換等を具体化させていくことによりまして、日ソ間の政治対話の強化を図っていきたいと考えておる次第でございます。  西山局長を連休に派遣をいたしまして、これからの政治、経済、文化あるいは日ソ関係、二国間だけじゃなくて国際情勢も含めたこれからの日ソの対話をどういうスケジュールで行っていくかということをソ連側と詰めたい、こういうふうに思っておるわけであります。例えば、政治協議としては中東問題あるいは先ほど御質問も出ました朝鮮半島の問題等もこうした日ソ間の協議として行わなければならないと思いますし、あるいはまた、経済の面におきましては、政府間の経済の協議が絶えて久しくなかったわけですが、この秋口にはこの協議も再開をしたい。さらにまた、文化の面での映画祭の開催だとか人的交流、そういう面もいろいろと詰めていきたいと思っております。さらに、これは政府が直接タッチするわけじゃありませんが、議会と議会との交流であるとか民間レベルの経済の対話だとか文化の交流だとか、そういう面につきましてもいろいろと話し合いはしてまいりたいと思うわけです。  領土問題あるいは極東をめぐる軍事情勢意見の対立はありますけれども、しかし、それはそれなり対話の道は、今の状況ではこれを拡大していくというのが日本にとっては必要なことであると考えております。
  104. 木下敬之助

    ○木下委員 新聞報道に割と細かくいろいろ出ていますから、これはこのとおりだと思いますので細かく一つ一つはお伺いいたしません。  日ソ関係改善に対する大臣のお考えは、私さきの予算委員会のときにもいろいろとお伺いいたしました。そのとき大臣がおっしゃっておられました、永野日商会頭が団長になってソ連に行かれて、そのとき向こうで四月ごろに日本の方に来られて日ソ貿易経済会議をやられるという話があって、それがそのまま延期になっておられる。これが、永野会頭が六月に開きたいとの意向で協力を要請された、このように聞いておりますが、具体的にこの問題にどう協力し、また、この会議に何を期待されるか、お伺いいたします。
  105. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 永野会頭が先般私のところへお見えになりまして、会頭を辞任するというごあいさつがあったわけでございますが、その際、一番心残りなのは去年約束して帰った日ソ経済協議の問題だ。去年あれだけの財界人が集まって大挙してモスクワを訪問して、非常に歓迎もされ、非常に友好裏に会談も行って、四月にはぜひとも日本で開きましょうという約束をして帰ったにもかかわらず病気でそれができなかった、そしてやめるという状況になったけれども、自分は男として約束した以上はどうしてもこれはやらないとやめるにやめ切れない、だからどうしてもやりたいと思う。四月はもう終わる状況で準備ができてないし、入院していたから六月には何としても実行したい、こういうことで外務大臣にも協力を求めたいということでありますから、これは喜んで御協力申し上げます、今後の打ち合わせ等は、事務当局と日本商工会議所の事務当局間で話し合いをさせましょう、こういうことにいたしたわけであります。
  106. 木下敬之助

    ○木下委員 この会議大臣としてはどういったものを期待されるかというところをお伺いいたしたいのです。
  107. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは民間の経済協力等の問題ですから、その内容について一々私たちがどうだこうだと言う立場にはないわけですが、今までどちらかというと停滞気味の日ソ貿易だとか日ソの経済協力というものを、何かもう一段と飛躍させられないかというのが永野さんの期待じゃないかと思いますし、またソ連側もそういうことを期待しているんじゃないかと思います。ですから、これは民間ですからお互いに話が合わないとそういうことは進まないと思いますけれども、しかし会議をやることによりまして今後とも可能性は出てくるのではないだろうか、こういうふうに思いまして、いずれにしても去年に引き続いてことしの東京で行われる民間のこうした経済会議が、とにかく実り大きいものであったというふうなことであることを私は期待をしておるわけです。
  108. 木下敬之助

    ○木下委員 そういうことで民間同士が貿易等の問題について前進することを大臣も期待されておる、こういったことだろうと思いますが、そのようなソ連との対話の拡大とか民間交流促進等の政府姿勢というものは、アフガニスタン、ポーランド事件以来とってきた対ソ経済制裁をやめるということなのかどうか、お答えをいただきたいと思います。
  109. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これはアフガニスタンに対するソ連の侵入がストップしたとか、あるいは引き返したとかいう状況でない、基本的な状況は変わっておりませんから、経済についていわゆる西側がとった措置というものの基本的な状況が変化しておりませんから、これを変えるという情勢には一般的にはない、私はこういうふうに思っております。そしてこの措置は、ただ日本だけがやっているわけじゃなく、西側と相談してやっているわけですから、これを緩和する、あるいはまた、やめるというふうなことになれば、西側の諸国で相談して行わなければならないわけであります。基本的にはまだそういう情勢にはないわけですが、しかし日本としては今日の東西の関係あるいは米ソ間の核軍縮の交渉こそ壁にぶつかっておりますが、しかし米ソ間の一般的な状況というものは必ずしも悪化という方向じゃなくて、むしろ何らかお互い対話を求めたいという空気があるようにも思えますし、東西関係ではいろいろと動いておるわけですから、日本としてもそうした大きな枠組み、そして西側で共同して行っておる措置を今日本が一方的にどうだこうだと言う立場にはないわけですけれども、しかしそういう全体的な一つの流れといいますか、動きを見ながら適切に対応していくことが必要ではないだろうかと思います。
  110. 木下敬之助

    ○木下委員 重ねてお伺いいたしたいのですが、アフガニスタン、ポーランド、こういったものに直接何も変化がないから対ソ経済制裁はやめるとかそういうのじゃない。しかし全体としては何となくそういう方向にあるような空気で、これはアフガニスタン、ポーランドの方に直接何かがない限り、制裁をやめるということをしないまま、実際には貿易等も拡大されて促進されていくことを望む、こんなふうに聞こえるのですが、これはどういう範囲までそういうふうに拡大を望んでおられるのか、日ソ貿易経済会議いろいろ話し合われた中で幾つかの結果が出た、結果はまとまったんだけれども、できない、こういったものも出てきたりするのか、この込もう少し聞かせていただきたいと思います。
  111. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 対ソ経済は、日本の場合はいわば政経不可分という姿勢で対処しておりますし、今後ともそういう姿勢は崩す考えは持っておらないわけです。     〔委員長退席、浜田(卓)委員長代理着席〕  そういう中で、対ソ措置としての一つの大きな問題は、いわゆる公的信用ですが、それについて日本の場合はケース・バイ・ケースでやるということを貫いてきております。また、この考え方、姿勢は変えていかないわけでありますが、しかしそのケース・バイ・ケースというのは全体の動きを見て日本が判断をしていけばいいんじゃないかと私は思うわけで、ドイツの動きとかあるいはフランスの動きとか、いろいろと諸外国の動きも出ておりますから、そういうことも十分考えながら、一つの大きな枠組みとしてはありますけれども、その中で弾力的に運営をしていくということは、今日の時代においては必要じゃないだろうか。そしてそういうときはやはり民間がやられる経済協力あるいはまた貿易等につきましては、あるいは投資だとか合弁事業というものについては、日本政府としてもそういう今お話し申し上げましたような基本的な姿勢の中で相談を受けながらこれに対して日本政府の態度をお示しして、そしてこれを進めていくという方向でいきたい、こういうふうに思うわけです。
  112. 木下敬之助

    ○木下委員 それでは、次に朝鮮半島問題で質問をいたします。  今月十二日にベルギーのマルテンス首相と中曽根総理とが会談された際に、総理は朝鮮半島問題に触れて、ラングーン爆弾テロ事件は、韓国の国際的地位向上を挫折させようという北朝鮮の試みであり、北朝鮮の三者会談提案も、中国との交流など韓国の地位向上に対するあせりから出てきた、このように述べられているようですが、政府として北朝鮮が三者会談を提案する真意を何と見ているのかをお伺いいたしたいと思います。
  113. 橋本恕

    ○橋本(恕)政府委員 先生御承知のとおりに、北朝鮮の専門家が一般に先ほど先生が総理の発言としてお述べになりましたような見解を持っていることは事実でございまして、そこでそういう専門家の大体一致した見解というようなことで総理が述べられたというふうに私は了解をいたします。  外務省でございますが、まず初めに申し上げなければなりませんのはいこれは総理も外務大臣も、つまり日本政府の全体の考えでございますが、動機はともあれ、ともかく話し合いによって朝鮮半島をめぐる情勢を解決しようという考え方自体は、これは朝鮮半島緊張緩和、絶対に戦争を起こしてはならぬという日本立場からいいましても、それはそれなりに評価できるところでございます。ございますが、ただ、今問題になっております北朝鮮のいわゆる三者会談提案が行われましたのは十月の八日でございまして、これは第三国である中国を通じてのアメリカに対する申し入れでございますが、十月の八日に三者会談をやりたいということを申し入れて、十月の九日にビルマのラングーンにおけるあのすさまじいテロ事件が起こったということは、やはりそれはそれなりに重要な意味を持つであろうというのが私ども考えでございます。
  114. 木下敬之助

    ○木下委員 政府はオリンピック等への統一チームづくりを目指す南北朝鮮会談とその決裂をどう受けとめているのか。第二回会談の行われる見通しはあるのか。また、この統一チームづくりを呼びかけた北朝鮮の真意はどこにあると考えておるのか、お伺いいたしたいと思います。
  115. 橋本恕

    ○橋本(恕)政府委員 政治の面におきまして、現在三十八度線、休戦ラインの北と南におきましてすさまじい緊張、相互警戒の空気があることは事実でございます。それにもかかわらずやはり朝鮮半島の平和、緊張緩和という観点から南北が話し合いをするということがぜひとも必要なことであるということは、これは日本、それから中国アメリカも、関係周辺国すべて認識を同じゅうしているところでございます。一挙に政治的な話し合いができない段階におきましても、スポーツでありますとか人道問題につきましての話し合い一つの突破口として行われるということ自身は歓迎すべきことであろう、私はこういうように考えております。  ただ、北の呼びかけに南が応じまして、先生御承知のとおりに四月の九日に板門店で実際にオリンピック出場のための南北会談が行われたわけでございます。ところが、韓国側が北朝鮮代表に対してまして、まずビルマ事件に関する北朝鮮の責任を問う、それから謝罪を要求する、これが一つ。それからもう一つは、南北統一チームをつくる場合に、南側の選手が北朝鮮に入る場合の身辺の安全ということを問題にしたわけでございます。これに対しまして北朝鮮の代表が、スポーツの話をしようというときにこのような政治問題を頭に出すということについては到底納得できないということで退場して現在に至っている。その後韓国側から再び、これは四月の十二日でございますが、韓国オリンピック委員会から北側に対しましてもう一度話し合いをやろうじゃないかという呼びかけがございました。それに対して四月の十四日に北朝鮮オリンピック委員会から韓国側に対しまして、会談が続行できるかどうかは韓国側の態度いかんにかかっている、つまり政治問題を頭から取り上げるということでは困るのだということでございまして、それに対してさらに四月の十七日に韓国オリンピック委員会は、従来の主張を繰り返しながらも、北朝鮮側が会談に出てくることを期待する、いつでもどこでも話し合いをしたいのだということで、これが四月の十七日の手紙でございます。こういうふうにもうオリンピックへ向けての統一チーム結成の問題について二度と再び話し合いをしたくない、もう会談は決裂だという意思表示は南北双方とも現在のところいまだいたしておりません。  私どもとしましては、事柄が事柄だけに、できることならばこのスポーツの分野におきまして何とか南北の円満な話し合いがつけられることになれば、全般的な緊張緩和にもつながるものとして期待をしているところでございます。
  116. 木下敬之助

    ○木下委員 政府朝鮮半島の平和と安定を確保するための話し合いは南北両当事者の会談が基本である、そう言ってこられましたが、しかし単にスポーツの統一チームをつくるというようなテーマだけでも南北両当事者の話し合いはこのように極めて困難でございます。これでも当事者同士の話し合いを基本とするという政策を変えないつもりなのか、お伺いをいたします。
  117. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 我々としては、基本はあくまでも韓国北朝鮮両当事者間の話し合いでなければならない、こういうふうに思っておりますし、そして南北間の話し合いはこれまでも行われた経過はあります。失敗した経過もありますし、スポーツは失敗しましたけれども、これから情勢の変化によってはまた対話が始まるかもしれない。そうしてまた、そういう中で三者会談、四者会談、そういう動きも出ておるわけでございますから、私はそうした緊張緩和がずっと進めば当事者間の話し合いが行われる機運が十分に醸成をされるのじゃないか、こういうふうに考えております。
  118. 木下敬之助

    ○木下委員 当事者が二者で話すのがいいのか、三者か四者か六者かとか、こういった論議の中で、二者がいいというのを基本にしてこられた、今も変わってないということで御発言でございましょうか。ちょっと確認させてください。
  119. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは二者で、当事者同士ですから、ですから、まず当事者同士が基本的に話し合うということが大事ではないか。しかし、それでもって我々は三者とか四者とかそういうものを否定しているわけではありません。
  120. 木下敬之助

    ○木下委員 否定してはいないでしょうけれども、これはきょうの新聞で見たのですが、総理が十七日、来日中のハワード・ベーカー米上院共和党院内総務と首相官邸でお話をされたときに、朝鮮半島緊張緩和については、「米、中両国と韓国朝鮮民主主義人民共和国の四者による話し合いが望ましい」、このように述べたとありますが、この発言はどういうふうに真意を解釈すればいいわけですか。
  121. 橋本恕

    ○橋本(恕)政府委員 私は、ただいま先生御指摘の報道、申しわけございませんがまだ実は見ておりませんけれども、私の理解するところを申し上げます。  私は、外務大臣とはもちろんのこと、朝鮮半島問題につきましてはほとんど毎日のように大臣の御意向を承っておりますし、それから総理に関しましても、私は何度も総理から直接御意向を承った記憶がございますが、私の理解する限り外務大臣も総理もこの問題につきましては完全に同じ御意見でございます。つまり、朝鮮半島の問題は何といってもそこに住んでいる北朝鮮の人々と韓国の人々とが平和的な話し合いによって解決するということ、これがもう何よりもかによりも問題の基本であって、あと三者か四者か六者かというのは、南北二者当事者間の、朝鮮半島の問題は朝鮮半島に住む人々によって解決されるべきであるというその本質的な命題、これを何とかうまく実現するような雰囲気づくりということのために考えられるべきことでありまして、したがいまして、我が国はもちろん、先ほど大臣もおっしゃいましたとおり、三者でなければならぬ、四者でなければならぬ、六者でなければならぬということは総理も外務大臣もただの一度もおっしゃったことはございませんし、それから、そういう南北当事者が平和的な話し合いができるような国際的な環境づくり、雰囲気づくりに日本としてもできるだけの努力をする、こういうのが日本政府の上から下までの一致した見解である、かように私は理解しております。
  122. 木下敬之助

    ○木下委員 最終的に南北の統一は当事者同士が話す、何も入らずに話すのが一番いい、それが基本であり、最初の入り口もそれでやられるのが一番いいけれども、それが困難だという中で環境づくり、雰囲気づくりで現実に今から先の、何者がいいのか、どうするのか、どういう会談がいいのかというのは、その雰囲気づくりに何が一番最適か、こういう状況でこれから論議されていくのだろうと思います。そんな意味で私どももそういう方向がいいのではないかという意見を持って、我々なりに民間外交のチャンスがあればそういう姿勢で話してきているところでございます。大体同じような状況ではないかと認識させていただきたいと思います。  少し話を進めさせていただきますが、韓国は米中を含めた四者会談は必ずしも否定していない、このようにお聞きしておるのですが、これは事実であると受けとめてよいか、政府のお考えをお伺いしたい。
  123. 橋本恕

    ○橋本(恕)政府委員 韓国はまず南北両当事者間の会談つまり二者会談ということをあくまでも強く主張しながらも、それと並行してあるいはそれとの関連において四者会談、それから、もしソ連が入ってくるということであれば、日本にもお願いして六者会談というのが韓国の主張でございます。しかしながら、三者会談はどんなことがあっても絶対に受けないということはいまだかつて韓国政府の公式発言として出てきたことはございません。
  124. 木下敬之助

    ○木下委員 中国が四者会談に対して否定的な態度をとっているのは、北朝鮮に対する配慮以外にどのような理由があると考えておられるか、お伺いいたします。
  125. 橋本恕

    ○橋本(恕)政府委員 先月、総理、外務大臣が公式訪問されましたときにもこの問題で中国側の首脳から説明がございましたが、中国側は北朝鮮の提唱するところの三者会談に理がある、つまり北朝鮮の提唱するところの三者会談中国としても支持するという説明だけでございまして、その背景その他、中国側の今申し上げました立場説明はるるありましたけれども、ただいま先生御指摘のような点につきましては説明はございませんでした。
  126. 木下敬之助

    ○木下委員 いろいろな角度からお伺いしてまいりますが、アメリカが非公式に提唱していると言われる、米中がオブザーバーとなってのいわゆる二者会談について、政府アメリカ側の真意をどのように把握しておられるか、またこれについてどう評価しておられるのか、お伺いいたします。
  127. 橋本恕

    ○橋本(恕)政府委員 先生の御質問、恐らくは四月八日付のワシントン・ポストに報道されましたシュルツ国務長官の発言を指してのことだろうと存じますが、シュルツ国務長官アメリカの実業界代表との会合におきまして、南北双方が会談を行うこと及び米中両国が南北双方に資するようテーブルの隅に座ること、このテーブルの隅に座ることを提案したというワシントン・ポストの報道で米中がオブザーバー、こういう日本の新聞報道になったのであろうと推定いたします。  これはアメリカ政府の公式筋、アメリカ政府あるいはアメリカの責任ある立場の人々から私どもが直接に聞いておりますところでは、アメリカのこの問題についての考え方は依然として従来と一緒でございまして、アメリカ政府考え方は、まず朝鮮半島に住む南北双方の両当事者の平和約話し合いによって解決されるべきだ、それから、それを順調に進めるためには南北両当事者プラス・アメリカ政府それから中国政府、この四者による会談が望ましい、それから、もしもソ連を入れなければならないということになれば日本の参加を考えたい、以上がアメリカの公式の考え方であるというふうに理解をいたしております。
  128. 木下敬之助

    ○木下委員 一口にオブザーバーとなっての二者会談という解釈の提言ではないと思われておるわけですか。
  129. 橋本恕

    ○橋本(恕)政府委員 これはワシントン・ポストの報道でございますし、私は、シュルツさんが朝鮮半島の南北二者会談とプラス、あるいはそれと一緒に中国アメリカがオブザーバーとしての形で入るという形での四者会談を新たな提案として打ち出した、かようには考えておりません。  と申しますのは、これはこの問題のそもそもの発端からアメリカ政府はほとんどあらゆる場合に、公式にアメリカ政府の態度を打ち出す場合にも背景その他アメリカ考え方を詳細に伝えてきておりますし、韓国も同様でございますし、また中国朝鮮半島の問題につきましては極めて詳細に日本政府に一々通報がございますので、そういう観点からいたしましても、私どもはこれが公式の提案であるというふうに考えておりません。
  130. 木下敬之助

    ○木下委員 しかし、こういう報道でいろいろな国から反応があるのじゃないかと思いますが、北朝鮮中国がこういう報道でどのような反応を示しておるか、おわかりなら教えてください。
  131. 橋本恕

    ○橋本(恕)政府委員 現在ただいまの時点では北朝鮮からもまた韓国からも、先生御指摘の南北朝鮮プラス米中のオブザーバーという形、こういう考え方に対して、公式にも非公式にも現在の時点では私は何も反応を聞いておりません。
  132. 木下敬之助

    ○木下委員 この朝鮮半島の問題は、各国の思惑がいろいろ絡んでまことに複雑な問題でございますので、ソ連も含めたいろいろな角度からの質問を続けさせていただきたいと思います。  韓国ソ連のSS20に対してどのような認識を持っているのか、我が国中国との間ではこの問題についての協議、情報交換を行おうとしておりますが、韓国との間でも同様のことを行うつもりはないのか、お伺いいたします。
  133. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 韓国ソ連のSS20に対してどういう認識を持っておるかはよく承知しておりませんが、韓国の国防努力というのはやはり北朝鮮に対して向けられたものである、そういうふうに思っております。同時に、日韓間でSS20の問題につきまして今のところ相談するとかそういう考えは持っておりません。
  134. 木下敬之助

    ○木下委員 中国とはやって、韓国とはやらない、そこはどういうふうな理由なのか、お聞かせいただけませんか。
  135. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これはもちろん、韓国としてもそれなりの判断があると思います。したがってまた、世界情勢あるいは極東情勢について議論する場合に、またそうした判断について日本韓国との間に意見交換を行うということもあり得ないわけではないわけで、これまでやってなかったということで、今後はそれはないとは言えないわけでございます。  同時にまた、日中間においてはこれはもう中国が非常にソ連のSS20を脅威と考えております。それだけに、日本中国との間でいろいろと話し合いをしているのはもちろんそのとおりであります。
  136. 木下敬之助

    ○木下委員 ソ連は最新の朝鮮半島情勢に対してどのような対応をしようとしているのか、北朝鮮の三者会談提案を支持していると見ておられるのかどうか、政府考えをお伺いします。
  137. 橋本恕

    ○橋本(恕)政府委員 先月、日ソ事務レベル協議というのがございました。その際に、これは名前を出していいかどうかわからないのですけれどもソ連のカピッツァ次官が、朝鮮半島情勢につきましてソ連北朝鮮との関係は良好であるということを述べたほかに、朝鮮半島では全体として紛争の生じる危険があるとは現在のところ考えていないという見通しを明らかにしたということでございました。  それから、もう一つの御質問の三者会談につきましては、これはソ連の態度が極めて明確でございましで、北朝鮮の提唱するところの三者会談を断固支持するというのがソ連の公式の見解でございます、
  138. 木下敬之助

    ○木下委員 日中が朝鮮半島の問題について協議し、できるだけ協力し合おう、このような話であることに対して、ソ連はどのような反応を示しておりますか。また、北朝鮮は同じ内容の、日中が朝鮮半島の問題について協議していることについて、協力し合おうとしていることについてどのような反応を示しておりますか。     〔浜田(卓)委員長代理退席、委員長着席〕
  139. 橋本恕

    ○橋本(恕)政府委員 お尋ねの朝鮮半島問題につきまして、日本中国が協力していこうとしているこの姿勢に対しましてソ連が公式に批判したということは、私は承知しておりません。内心でどういうように考えているかということは別といたしまして、朝鮮半島問題における日中協力に対して公式に批判あるいは反対という強い意向が表明されたというふうに私は承知しておりません。  それから北朝鮮でございますが、これも公式の反応という点に限って申しますと、今までのところこれに強い反発あるいは批判あるいは反対という意向が表明されたというふうには承知しておりません。
  140. 木下敬之助

    ○木下委員 総理が訪中した際に、中国側が日本北朝鮮との仲介をしようと提案されたですね。あの提案は、北朝鮮の意向を受けて、その了解のもとに行われたと考えているのかどうか。日本側はこの提案に全面的に応じようとしなかったです。そのことについて北朝鮮はどのような反応を示しているのか、お伺いいたしたいと思います。
  141. 橋本恕

    ○橋本(恕)政府委員 けさも御答弁申し上げましたけれども、胡耀邦総書記が中曽根総理に北朝鮮日本との関係について提案されましたが、これは胡耀邦総書記と中曽根総理と全く二人だけの会談の席上であったというふうに承知しております。私が承っておりますところでは、現在北朝鮮日本との関係は必ずしも満足すべき状態にない、そこで胡耀邦総書記としては、中国として何かお手伝いすることがあればやりますよという趣旨のことを言われた、これに対しまして中曽根総理は、政治、経済の問題については今お願いすることはありません、こういうふうに言われたということでございます。このことにつきまして、北朝鮮は現在のところ沈黙を守っておりまして、いまだ公式の論評は加えていないというのが私の理解でございます。
  142. 木下敬之助

    ○木下委員 中国韓国との関係をお聞きいたしますが、現段階において、中国韓国との交流をどの程度まで拡大しようとしているととらえているのか、お伺いいたします。
  143. 橋本恕

    ○橋本(恕)政府委員 この点は、中国考え方は非常にはっきりしておりまして、政治的あるいは外交的な関係は一切持たない。しかしながら、非政治的な、つまり人道問題でございますとかあるいはスポーツ、それから文化、しかも国際的な催し、特にスポーツ、文化その他、二国間でもやりますが、特に国際的な催しについては、これは参加していくといいますか、韓国と協力していく、相互交流を行うというのが中国の明確な態度だろう、こういうふうに理解しております。
  144. 木下敬之助

    ○木下委員 きょうの新聞で、ロサンゼルス・タイムズ紙の報道についての報道があったのです。もう時間がないので細かく申しませんが、お読みになったですか。大体こんなものですか。
  145. 橋本恕

    ○橋本(恕)政府委員 ロサンゼルス・タイムズの報道というのは、これは「韓国交流拡大」という見出しでされていますが、私はこれは率直に申し上げますと、ここまで本当にいくのかなという気持ちで読みました。先ほど申し上げましたとおりに、中国が仮に、先ほど私が御説明申し上げました以上に、つまり人道、スポーツ、文化以上に韓国との関係を拡大するということを決意し、かつ実施していくつもりであれば、当然日本にも通報、説明があろうし、また韓国側からもそれについての通報、説明があろうというふうに、当然のことながら期待をしております。
  146. 木下敬之助

    ○木下委員 時間が来ましたので、最後に。今後の南北朝鮮の直接会談について、政府はどのような見通しを持っているのか。また、その見通しを踏まえ、朝鮮半島の平和と安定の実現に向けどのように対応していくつもりか。そして、外務大臣は七月にも訪韓する予定と聞いておりますが、これは事実でしょうか。また、その際、これらの問題について話し合う予定でしょうか。これらをお伺いいたしまして、私の質問を終わりといたしたいと思います。
  147. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 朝鮮半島緊張緩和、これはもう我が国としても強く望むところであります。そのためには、我が国としてもできるだけの緊張緩和のための貢献、役割努力を果たしていかなければならぬと思っております。肝心なのは、何としても南北の対話の促進でございますが、これは先ほどからお話しのように、なかなか一進一退、困難な点もありますが、しかし、幸いにして三者会談、四者会談というふうな動きも出ておるわけでございますから、そうしたいわゆる緊張緩和を進める動きが現実化していくように働きかけてまいりたい、こういうふうに存じます。  同時に、私自身が韓国の外相との定期会談ということで七月六日から二日間にわたりまして韓国を訪問することにいたしておりまして、李源京外相との間で日韓両国の問題、特にまた朝鮮半島情勢あるいはまた緊張緩和のための今後の両国の考え方、あるいはまた世界情勢アジア情勢等について幅広くそしてまた積極的に意見交換を図ってまいりたい、こういうふうに思っております。
  148. 中島源太郎

    中島委員長 次に、岡崎万寿秀君。
  149. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 私は、沖縄に配備されるグリーンベレー、アメリカの特殊作戦部隊について質問いたします。  この問題につきましては既に当委員会で四月十一日我が党の瀬長委員質問しておりますし、三月三十日には参議院の予算委員会で内藤議員が質問いたしまして、政府の答弁も私はよく読んでまいりました。どうもすっきりしない点がありますので、きょうは問題点を絞って御質問したいと思います。  一つはSOFの性格と任務についてなのです。一九八五年度のアメリカの国防報告によりますと、アメリカの特殊作戦部隊は、ソ連が第三世界に焦点を当てた世界的な攪乱活動、これについては北村さんの方は揺さぶり作戦と翻訳されたようですが、どっちでもいいです、それに乗り出したので、それに対抗するために使われているんだ、こういうふうな任務づけをしているわけなんです。  ところでニカラグアは、機雷封鎖やあるいは反革命軍の侵攻などで世界的な注目を集めていますが、ここにもニューズウイークによりますとこのSOFが参加しているわけなんです。  お聞きしますけれども、これは北米局長でしょうか、ニカラグアはソ連による揺さぶり作戦の地域であるというふうにお認めになっているのですか。
  150. 北村汎

    北村政府委員 ただいま委員が御指摘になりましたアメリカの国防報告の中に書かれております特殊部隊についての説明の中に、ソ連が第三世界を中心にいわゆる揺さぶり作戦と申しますか、キャンペーン・オブ・テスタビリゼーションといいましたか、そういうようなものを繰り広げておる。それに対抗するためにアメリカとしてはそういう地域の国々に特殊部隊を置いておる。置いておるというか訓練をしておる、ワーク・トゲザーという言葉が使ってあったと思います。その地域の中にどの国が入るかということは、アメリカの国防報告の有権的な解釈になりまして、私どもはそれは申し上げられる立場にないわけでございますが、大体文脈から申しまして中東地域における国、いわばそのあたりの国は入るのではないかと思っております。
  151. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 私が聞いたのは、中東地域はもちろんでしょうけれども、現にアメリカの介入が伝えられ、世界的に懸念が広がっているニカラグアのことなんです。この地域は今言われるようなソ連の介入等による揺さぶり作戦の地域と見られるかどうか、このことをお聞きしているのです。
  152. 北村汎

    北村政府委員 中米、中東の地域がソ連の揺さぶり作戦の地域に当たるかどうかということは、アメリカがどう判断しておるかということでございまして、私どもはここで有権的な解釈をすることはできません。
  153. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 いずれにせよ、ニューズウイーク等によりますとここにはアメリカのSOFがちゃんと参加している。  それではもう一回聞きますけれども、グレナダ、これも六千人のアメリカの海兵隊が侵攻して民主的な政府がつぶされたわけですけれども、ここもスターズ・アンド・ストライプスによりますと、やはり特殊作戦部隊が参加していますが、このグレナダもソ連の揺さぶり作戦の地域と見られるかどうか。北米局長、いかがでしようか。
  154. 北村汎

    北村政府委員 先ほども御答弁いたしましたように、アメリカが一定の地域を揺さぶり作戦の地域と見ておるかどうかということについて、私どもが有権的にそうであるとか、そうでないというふうに答えるのは差し控えさせていただきたいと思います。
  155. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 北米局長はすべて逃げられるのですけれどもアメリカのそういうような権威ある報道筋によると、はっきりと特殊作戦部隊が参加してグレナダやニカラグアで作戦をやっていることはもう周知の事実なんです。こういう民族自決に対する抑圧、第三世界の民族解放の闘いに対する抑圧にこのグリーンベレーが使われるとなると、これは非常にゆゆしい問題だと思いますけれども、こういうことについて絶対使われないというふうに判断されますか。
  156. 北村汎

    北村政府委員 グリーンベレー、すなわち米陸軍特殊部隊と申しますのは、これはここで私どもが何度も御説明をいたしましたけれども、いろいろな訓練を十分に施した少数精鋭の部隊であって、それは紛争のいろいろな段階において投入される部隊でございます。特にその紛争がまだ小規模であるとき、その紛争のエスカレーションを避けながら有効的に対応するという場合に非常にこれが有益であるということで、近年アメリカでこの特殊部隊の有用性が非常に認められるようになりまして、そしてそのために最近再編成が行われだというのが経緯でございます。  そこで、この部隊は、いろいろな兵器を操作すること、あるいは空挺、偵察、通信、その他いろいろな訓練を施されておりますので、それは必要とあらば友好国の軍隊の戦技向上の訓練をすることもあろうと思います。また、有事の際にそれが必要なところに移動していくということもあろうかと思います。
  157. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 北米局長も中東方面にはこのグリーンベレーが派遣されていることはお認めになったのですが、先ほど、中南米にも派遣されていること、現に紛争地域にこれははっきり民族自決に基づくいろいろな行動に対する抑圧、干渉をやっていることを私は言って、そういうことを任務とするグリーンベレーをどう思うかということを聞いたわけですけれども、それについては明確な回答がないようです。一般論は私は承知していますので結構ですけれども、それでは大臣にお聞きしますが、参議院の我が党の内藤功の質問に対して、グリーンベレーがベトナム戦争のときに活躍したこと、これはよく承知しているというふうに言われましたが、どういうふうに承知なすっているのでしようか。
  158. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 活躍の内容については具体的には承知しておりませんが、ただ、当時の記憶をたどってみれば、グリーンベレーがベトナム戦線において相当華やかな存在であったということは記憶に残っておるということです。
  159. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 華やかな存在というのが相手にとってはどういうものであるか、おわかりだと思うのです。  私はここに一冊の本を持ってきました。これは土井寛さんといって、元航空自衛隊の空将補でアメリカに駐在武官としても行かれていますし、防衛研修所の室長もされている方なんです。この人の「世界の特殊部隊」という本の中に、ベトナムでのグリーンベレーの役割について次のように書いてあります。これは権威のある専門家が書いたのですからお聞きいただきたいと思いますけれども、ベトナム戦で、「北ベトナム要人の誘拐計画、現地人の宣撫など堂々と行えるものもあったが、作戦に付随して、捕虜に対するごう問、虐待、虐殺、化学剤の秘密使用、同志である競争相手の抹殺、南ベトナム軍督戦のための悪といトリックなどもあった」こういうふうに土井さんが述べられているわけですね。こういう本の中身でございます。  一九八五年のアメリカ軍事情勢報告を見ましても、また国防報告を見ましても、このSOFというのが心理作戦や対民間作戦あるいは直接行動やゲリラ作戦、情報等々の任務を持っていることは明らかでございまして、これは謀略、諜報作戦もやり得る能力を持っているというふうに理解するのが当然だと思うのですね。では沖縄に配備されるSOFですね、こういう機能、能力を持っていると思いますけれども、それはそう見てよろしゅうございますね。
  160. 北村汎

    北村政府委員 SOFにつきましては、先ほど私が申し上げましたとおり、いろいろな訓練を施された少数精鋭の部隊でございまして、いろいろな場面、いろいろな紛争の段階に投入される部隊でございます。そういう意味では沖縄に派遣されておるものも、もちろんそういう性格を持つものでございますが、しかし先生のおっしゃる謀略という意味がどういうものか私もつまびらかにいたしませんけれども、そういう特殊な任務だけを持っておるような部隊ではなくて、先ほどから申し上げておりますように空挺、通信あるいは偵察、いろいろなことをやる、またその状況に応じていろいろな任務を与えられる、そういう意味で御理解いただければいいのじゃないかと思います。
  161. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 いろいろな任務とおっしゃったのですけれども、私はベトナムの例をはっきり挙げたのですよね。これが明らかに謀略活動なんですね。心理作戦ということもはっきり明記されておりますし、直接行動、ゲリラ作戦、いろいろあるわけですね。これは私は、非常に危険な手法を使う、すべてじゃないでしょう、しかし、しばしばそういう手法を使う部隊であるということははっきりしておると思うのですよ。第三世界の民族自決に基づく闘いを抑圧する部隊であるし、同時にしばしばこういう汚い諜報、謀略的なこともやる能力を持っておる、こういう部隊、これが今度沖縄に派遣される米陸軍の特殊作戦部隊であるわけなんですね。  さて、これが沖縄に配備された場合、当然タイやあるいはフィリピンや韓国やパキスタン等にも移動することはあり得ると思いますが、そういうことはございませんか。
  162. 北村汎

    北村政府委員 今般、SOFの一個大隊が沖縄に配備されるということになりましたのは、私どもアメリカがこの極東地域における抑止力をさらに一層万全なものにするということでその決定をしたのであろうと考えております。もちろん軍隊でございますから移動することは、これはあり得ることでございます。また、先ほども申し上げましたように、この特殊部隊というのはいろいろな種類の訓練を受けておるものでございますから、それ自体が軍事教官としての資格は持っておると思います。そういうことで移動していくということも、これは大いにあり得ることであろうと思います。
  163. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 北米局長に重ねて聞きますけれども、いろいろな訓練を受けておると言いますね。私が先ほど土井寛の本を読んでベトナムにおける行動を言いましたね。こういう行動は一切しないというふうにお認めになりますか。いろいろな訓練の中には、心理作戦とかゲリラ訓練とか諜報とかいろいろあるわけでしょう。当然こういう汚い手口も含まれるというふうに理解すべきだと思いますけれども、それは否定されますか。
  164. 北村汎

    北村政府委員 アメリカ側説明によりますと、特殊部隊と申しますのは、先ほど申し上げたような訓練を受けて、そして有事の際には敵のルート、通信網あるいは供給ルート、指揮統制システムというようなものをカットしていったり、あるいは情報収集という面でも有効に機能する、そういうことはその活動の中に入るものであると思っております。  ただ、先ほども申しましたように、この部隊というのは、小規模な紛争にエスカレーションを避けながら有効的に対処するということでございますけれども、また、大きな規模の紛争にも投入することはできるものでございまして、そういう意味ではほかの部隊、例えばマリーンであるとかあるいは普通の陸軍の部隊とその点は何ら変わらないわけでございます。そういうことでございますし、また、アメリカの国防政策というものは、これは国防報告にもあるいは軍事態勢報告にもよくあちこちに書かれておりますけれども、あくまでも抑止というものを旨としておる、すなわち、いかなる形の攻撃に対しても有効に対処し得る抑止力をつけること、これがアメリカの国防政策の基本であるというふうに私ども考えております。したがいまして、そういう特殊部隊の使用ということにつきましても、そういう意味であくまでも抑止のために使っておるということであろうと思います。
  165. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 今説明のように大規模な作戦の場合は補助部隊として使う。これは当然書いてございますが、同時に、それ以上に役割を果たすのは小規模の紛争のときだ。ゲリラ作戦等々について挙げておりますね。こういう機能を持っていることは否定できないと思いますよ。そういう機能を持っている部隊が沖縄に駐留して、日本の沖縄を根拠地にしてそういうところに出ていって今言ったような役割を果たすということ、抑止力というふうにおっしゃいましたけれども、これについてどういうことをやってもいいというふうにお考えになっておりますか。日本に置くからには日本政府として当然責任がありますし、チェックする必要があると思いますけれども、それはできますか。
  166. 北村汎

    北村政府委員 沖縄に配備されることになりますこの特殊部隊も、当然、日本に配備されている以上は日米安保条約それから地位協定の適用を受ける軍隊でございます。そういう意味でそれはあくまでもその枠の中で活動をするということは当然のことでございます。  それから、先ほど来委員がいろいろゲリラ活動であるとか謀略活動であるとかというふうにおっしゃっておられますが、これは軍隊である以上、有事の場合には普通のマリーンであろうともあるいは普通の軍隊であろうとも場合によってはゲリラ的な活動もしなければなりませんし、あるいは通信網を切断したり情報を集めるというようなこともしなければならないと思います。そういう意味では特殊部隊というのは決して特殊であるということではなくて、彼らの受ける訓練がほかの軍隊に比べて非常に充実した、しかも少数精鋭の人でできておる、そういう意味で特殊部隊というふうに呼ばれておると我々は説明を受けております。
  167. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 そうしますと、再度質問しますけれども、ニカラグアでの、今、反革命軍が南北から侵攻しているようですが、そういう部隊の訓練とかあるいは機雷封鎖とか、こういうことも当然任務としてやり得る能力を持ち、あるいは任務を持っているというふうに理解してよろしいですね。
  168. 北村汎

    北村政府委員 先ほども申し上げましたが、特定の国に対してアメリカが特殊部隊にどういう任務を与え、またどういうことをさせるかということについて、私どもがこれを有権的に申し上げるということは差し控えたいと思いますが、特殊部隊というのはいろいろな訓練を施されておるわけでございますから、それは必要とあらば機雷を敷設することもできると思います。しかし、それをどこの国において、例えば今、委員がおっしゃいましたようなニカラグアにおいて特殊部隊がやるとかやらないとか、そういう任務のことについて私どもは今ここで云々するのは差し控えさせていただきたいと思います。
  169. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 必要とあらば機雷封鎖もできるしゲリラ作戦もできる、こういうふうにおっしゃっているわけですが、こういう部隊が沖縄に来るわけですね。沖縄に来てアジア諸国の地域に派遣された場合、おっしゃいましたように、日米安保条約によって現に派遣されている部隊の行動について拘束されるものですか。
  170. 北村汎

    北村政府委員 先ほど申し上げましたように、軍隊でございます以上、移動することはあり得ることでございまして、例えば沖縄からほかの国に移動していくということは安保条約上何ら問題のないところでございます。しかし、とにかく日本に配置されておる以上は、そして日本の施設、区域を使用しておる以上は、日米安保条約の枠の中において行動されるべき軍隊でございます。
  171. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 それでは、日本を基地としてアジア地域に移動することはあり得るとおっしゃいましたが、移動した先でゲリラ作戦とか機雷封鎖は安保条約に基づいてできないと判断してよろしいですか。
  172. 北村汎

    北村政府委員 移動していった先において、アメリカの友好国の場合、その国の要請に応じて特殊部隊の持っておる知識とか技術というものをその国の戦技の向上のために訓練するということがあり得るかと思います。しかし、それは日米安保条約との関係では問題以外のところでございまして、日米安保条約から見て何ら問題のないところでございます。
  173. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 日米安保条約にとって何の問題もないというわけですから、つまりその国の要請という言葉の上に何でもできるということになりますね。タイ国境あたりあるいはパキスタンあたりへ行きましていろいろなことがやられることもあり得ると思いますけれども、そういうことが日本の沖縄を本拠地としてやられることを足とされるかどうか、これは非常に大事な問題があると私は思うのです。北米局長は明確にはお認めになりませんけれども、第三世界の民族自決権、民族解放闘争に対する抑圧機能を持っている。これは小規模の紛争のときに非常に役立つと言っていますが、それはまだ公然とした大国の介入なしにそういうことが起こったというふうに判断して、そこでそういう抑圧機能を果たす部隊なんですね。しかも、やる手法としては、先ほど言った要人の誘拐とか虐殺とかあるいはゲリラとか、さらに機雷封鎖とか、非常に物騒なことをやる汚い作戦部隊でもあるわけです。これが日本の沖縄に一個大隊も駐留してアジア各地に移動していろいろなことをやる、こういうことは容認できるかどうか、私はその点についてもう一回聞きたいと思います。
  174. 北村汎

    北村政府委員 この特殊部隊は、先ほども申し上げましたように、日本の平和と安全並びに極東の平和と安全のために、その抑止力を万全ならしめるためにこの地域にアメリカが配置することにしたものであると我々は了解しておるわけでございます。また、アメリカの国防政策というものはあくまでも抑止を旨としておる、いかなる態様の攻撃が行われてもいかなる侵略が行われても、それに有効に対応し得る備えをいつでもしておく。それは汚いという言葉をお使いになられましたけれども、しかし、それはいろいろな紛争の態様あるいは相手の出方、いろいろな侵略のあり方、そういうものによってはいろいろな対応をしなければならない。そういう意味で、あくまでも抑止というものがその中心でございますので、私どもといたしましては、この特殊部隊が沖縄に配置されるということは、日本の安全を高める、あるいは日本の抑止力というものを高めるということに資するものであると考えております。
  175. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 抑止という口実を使うならば、汚い手口、作戦もあり得ることだし、私は、ニカラグアとかグレナダとか、こういうところに参加したことは、はっきりアメリカの権威ある報道筋が言っておりますし、これはこのSOFの非常に危険な性格を示しておると思うのです。  そこでお聞きしますけれども、四月十四日のNHKの朝の報道によりますと、アメリカ議会の秘密聴聞会で、沖縄に配備されるSOFというのは最終的には千八百名になるというふうに報道されていますけれども、将来その可能性はないと見た方がいいですか。
  176. 北村汎

    北村政府委員 ただいま御指摘の報道の詳細につきましては私ども承知をいたしておりませんが、あくまでも私ども米側から説明を受けておりますところによりますと、沖縄のトリイ通信施設に配備される米陸軍特殊部隊の規模は、一個大隊約二百五十名から三百名であるというふうに承知をいたしております。もちろん、これはあくまでも概数でございますから、現実にはある程度の増減はあり得ると思います。しかし、いずれにいたしましても、政府としては一個大隊規模であるというふうに承知をいたしております。(岡崎委員「将来のことを聞いているのですよ」と呼ぶ)その点につきましては、私どもアメリカから何ら説明を受けておりません。
  177. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 最後に、安倍外務大臣にお聞きしたいのですけれども、今言ったような任務と役割を持ち、そして手段を使うこういうSOFの部隊が沖縄に配備されるということは、以前はありましたけれども、一応沖縄復帰後は撤退していましたね。新しく今度配備されるとなりますと、これは日米安保条約、中曽根さんはこれを軍事同盟とおっしゃいましたけれども日米軍事同盟の性格がさらに変わってくる非常に危険な性格を持つと思うのですが、私は当然日本国民立場に立って、特に沖縄県民の立場に立って、この危険なSOFの日本配備、沖縄配備については断るべきだと思いますが、外務大臣、その決意についていかがでございましょうか。
  178. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 こうした少数精鋭な練度の高い、非常に高度の技術を持った部隊が沖縄に駐屯するということは、それなりに沖縄の安全あるいはまた日本の平和と安全にとって安保条約を守る上から非常に効率的である、効果的である、こういうふうに思います。
  179. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 こういう危険な謀略部隊が効率的であるというのは、安保条約がどういうものであるかということを逆に物語っていると思いますが、もう時間も参りましたので結構です。また論争しましょう。  最後に一言、トマホークの問題で大臣にお聞きしますけれども、今アメリカで大変ショッキングな話題となっている「ザ・デイ・アフター」というテレビ映画を御存じでしようか。
  180. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 全部は見ておりませんけれども、部分的にちょっと見ました。
  181. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 この次に質問したいと思いますので、ぜひお聞きいただきたいと思いますが、私が見たところ、これはあすでは遅過ぎる、つまり核兵器禁止の問題というのは今から真剣に考えないとあすでは遅過ぎるんだということを教えていると思います。核基地というのは、非常に危険な核の報復攻撃を招くということを示していると思うのです。私はその二点を強調して、ぜひ次回までに大臣にごらんいただきたいと思いまして、きょうの質問を終わります。
  182. 中島源太郎

    中島委員長 次回は、来る二十日金曜日午前十時三十分理事会、午前十一時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時三十九分散会