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1984-04-11 第101回国会 衆議院 外務委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年四月十一日(水曜日)     午前十時三十分開議 出席委員   委員長 中島源太郎君    理事 石川 要三君 理事 野上  徹君    理事 浜田卓二郎君 理事 山下 元利君    理事 高沢 寅男君 理事 古川 雅司君    理事 河村  勝君       石原慎太郎君    鍵田忠三郎君       鯨岡 兵輔君    佐藤 一郎君       仲村 正治君    西山敬次郎君       野中 広務君    町村 信孝君       岡田 春夫君    河上 民雄君       小林  進君    玉城 栄一君       渡部 一郎君    木下敬之助君       瀨長亀次郎君  出席国務大臣         外 務 大 臣 安倍晋太郎君  出席政府委員         外務大臣官房領         事移住部長   谷田 正躬君         外務省アジア局         長       橋本  恕君         外務省北米局長 北村  汎君         外務省中南米局         長       堂ノ脇光朗君         外務省経済局次         長       恩田  宗君         外務省経済協力         局長      柳  健一君         外務省条約局長 小和田 恒君         外務省国際連合         局長      山田 中正君         外務省情報文化         局長      三宅 和助君  委員外出席者         大蔵省国際金融         局調査課長   畠山  蕃君         文部省学術国際         局ユネスコ国際         部国際学術課長 長谷川善一君         農林水産省畜産         局食肉鶏卵課長 鎭西 迪雄君         運輸省海運局外         航課長     寺嶋  潔君         外務委員会調査         室長      高橋 文雄君     ――――――――――――― 委員の異動 四月十一日  辞任         補欠選任   近藤 元次君     石原慎太郎君 同日  辞任         補欠選任   石原慎太郎君     近藤 元次君     ――――――――――――― 四月九日  非核三原則堅持に関する請願外一件(上坂昇君  紹介)(第二二九一号)同月十一日  核巡航ミサイル・トマホーク米太平洋艦隊艦  船への配備、日本寄港反対等に関する請願(中  島武敏紹介)(第二四〇七号)  同(不破哲三紹介)(第二四〇八号)  同(藤木洋子紹介)(第二四〇九号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国際情勢に関する件      ――――◇―――――
  2. 中島源太郎

    中島委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。浜田卓二郎君。
  3. 浜田卓二郎

    浜田(卓)委員 本日は、日米関係懸案事項につき問題を取り上げてみたいと思いますが、時間が極めて限られておりますので、今回決着を見た農産物自由化の問題あるいはVANの関連の問題等、幾つかお聞きしたい問題があるわけでありますけれども、問題を金融自由化に絞りまして質問をさせていただきたいと思います。  日米懸案事項のうち当面残っている課題というのは、円の国際化あるいは金融自由化という問題であるわけでありますが、この経過を見ますと、十一月に行われたレーガン中曽根会談でこの問題に関する対日要求八項目というものが出されたわけでありまして、それを解決するために日米円ドル委員会が設置をされ、第一回、第二回と会議を重ねてきておりますが、この中で絞られてきた課題ユーロ円市場自由化問題であるというふうに伝えられております。そして、次の円ドル委員会がワシントンで四月十六、十七日に開かれるというふうに聞いておりますが、この第三回の円ドル委員会中心テーマ課題というものはどういうことになっているか、お聞かせいただきたいと思います。
  4. 畠山蕃

    畠山説明員 お答えいたします。  第三回のワーキンググループにおきまして、今御指摘のようにユーロ円市場の問題が取り上げられるということが言われておりまして、その中でいろいろな議論が行われることになると思いますが、やはり中心となりますのはユーロ円債、特に居住者ユーロ円債につきましてはこの四月から緩和をいたしましたので、残る非居住者発行に係るユーロ円債の問題というのが焦点になろうかと思われます。
  5. 浜田卓二郎

    浜田(卓)委員 ユーロ円市場自由化問題というのは、単に自由化ということだけでとらえ切れない、国内金融市場あるいは資本市場に及ぼす影響の大きさというものがあると思うわけであります。ただいま居住者ユーロ円起債については既にある程度の自由化措置が決定され、非居住者に問題の重点が移ってきているということでありますが、ユーロ円債起債自由化というものが大きく進行していきますと、日本事業債発行についての有担保原則とか、そういうものが大きく修正をされてくる。さらには、現在は起債に際しては起債委員会金利の格付をやっておるわけでありますけれどもユーロ円市場で自由に起債が行われるということになりますと、金利について事実上の自由化が進んでくるというような問題が出てくるわけであります。現在でも既に日本起債マーケットというのはほとんど国際マーケットになっているわけでありますけれども、この傾向にさらに拍車がかかって、日本事業債というのは国内市場では起債されずにほとんど海外に、ユーロ円市場にシフトしていくという問題も、これは将来ユーロ円市場の規模が大きくなれば出てくる事態だと思うわけであります。私自身国内金利自由化を初め、資本市場あるいは国内金融市場自由化については促進すべきという議論をしている一人でありますけれども、いわゆる外圧による自由化というパターンを否定するわけではありませんけれども、どうもいささか性急な国際化が進められつつあるような気がしてならないわけでありまして、私は、国内金融市場あるいは資本市場整備と並行してこの国際化という問題が進められていかないと、国内マーケットに不測の混乱を起こすことにもなるのではないかというふうに危惧するわけであります。こういった問題について今大蔵省当局からお答えをいただいたわけでありますけれども、どういうふうな配慮をしつつ交渉を進めていっておられるのか、そのあたりをお伺いしたいと思います。
  6. 畠山蕃

    畠山説明員 一般論としてまず申し上げますと、アメリカ側ユーロ市場の拡大ということについて極めて熱心でございまして、これをあらゆるユーロ取引について完全に自由にしてくれということを申し述べております。それに対しまして我が方といたしましては、現に第二回のワーキンググループにおいてもそのような主張をしたわけでありますが、まさに今御指摘がございましたように、円の国際化という問題につきましては、ユーロ市場を拡大するということもさることながら、やはり国内金融資本市場をまず自由化し、整備する。それをやりますと、非居住者国内東京マーケットにおいて資金の運用、調達が自由にできるという形を通じて円の国際化がまず促進されるという形になる。したがって、国内金融資本市場整備がまず主であるべきである。ユーロマーケット整備につきましては、あるいはユーロ取引自由化につきましては、国内市場自由化と見合った形で行うということを申し述べておりまして、これが我が方の考え方であるということを言っております。  そこで、いわば応用問題みたいな話になるわけでございますが、今御指摘ユーロ円債基準緩和といった問題について将来どういうふうにしていくのかということでございますけれども、ただいまの原則からいたしまして、例えば今度四月から現に緩和いたしました居住者ユーロ円債の際におきましても、まず国内における起債基準緩和をいたしまして、それと見合った形で、つまり国内起債ができる優良企業ユーロにおいてユーロ債発行できるというような形で、つまり国内基準に見合った形で、その限度でユーロの方を認めていくという形に考えておりまして、今後ともそういった基本的考え方のもとに進めてまいりたいと思っております。
  7. 浜田卓二郎

    浜田(卓)委員 私も基本的には、繰り返しになりますけれども金融自由化あるいは資本市場自由化というのはどういう形にせよ進めなければならないと思うわけでありますが、外交日程に余り縛られて性急に事を運ぶということは国内に対する混乱を非常に招くことにもなると思いますので、今おっしゃったような配慮を十分なさって進めていっていただきたいと思うわけであります。  そこで、外務省にお伺いをするわけでありますが、今後の外交日程ですけれどもサミット前に懸案事項の処理を終えでおきたいというお気持ちだろうと思いますが、伝えられるところでは、ブッシュ大統領サミット前に懸案事項のいわば手打ちと言うと言葉が正確でないかもしれませんが、そういう目的で来日をされるというふうにも聞いておりますが、そのあたり外交日程はどうなっておりますか。
  8. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 先ほどからお話しのように、日米間の懸案がだんだん片づいておりますが、まだアメリカ要求している関税引き下げの問題だとか、それから先ほどのお話し円ドルの問題だとか、それからサテライトの問題が残っておりまして、これは大体四月の末にパッケージにして解決あるいはまた実質的に前進を図ろう、こういうことですが、今お話し円ドルの問題については二回やって、また四月にもやるということで、果たしてどういうことになるか、専門的な話し合いでしょうし、まだ難しい面も残っております。リーガン財務長官は二回目の会談大変不満だということを言っておりまして、どういうふうに発展するか、我々もこの問題が何とか建設的な方向で解決することを望んでおりますが、資本市場自由化等非常に難しい問題もありますから今後の交渉に我々は期待をするわけですが、いずれにしても何とか四月の末ごろには関税あるいはまたサテライトについては一つ方向性を出そう。  それで、関税は、日米間だけじゃなくて、ECからの要求もありますし、あるいはまた開発途上国からの要請もありますから、そういうものを踏まえたものでなければならぬ。なかなかこれも容易でない側面もあるわけでございますが、いずれにしてもこれから事務当局、さらに経済対策閣僚会議検討を煮詰めていきたい。  ブッシュ大統領は来たいという御意向があるようですが、まだその点は何も決定していないということであります。副大統領ですかち、おいでになるということになれば早目に時間を設定しなければならぬのですが、今のところはまだそういう具体的な動きがありませんで、これは今後の日本の作業の進捗あるいはまたアメリカ情勢等も踏まえて今後の課題として、しかしこれは早く結論を出さなければならない、こういうふうに思っております。
  9. 浜田卓二郎

    浜田(卓)委員 最後に、外交基本姿勢でありますけれども、今回の農産物の牛肉、オレンジの問題にせよ大変な問題ではありましたけれども、これによって改善される貿易収支の額というのは微々たるものでありますし、今後日米貿易均衡の問題というものは続いていくだろうと思うわけであります。そういう前提に立って考えるときに、日米関係というのは一体どうあるべきかということを私ども大変心配をしているわけであります。例えば先ほど指摘しました金融国際化の問題でありますが、この前の第二回目の円ドル委員会の後、リーガン財務長官不満を表明しておる。これは中曽根さんとレーガンさんの約束だから守らないと後で大変なことになるぞというような話のようでありますが、そこで言っている相互主義なんというものが一体金融問題にも当てはまるのかということは私はいろいろ疑問があると思うのです。ですから、外交基本というのは、それぞれ違った国でありますし、違った成り立ち、生い立ちを持っておるわけでありますから、相互の違いというのをきちんと踏まえて、その上でうまくやっていくということじゃないかなと思うわけでありますが、そういう点から最近の日米外交というものがもうちょっとどうにかならないかなという気持ちを強く持つわけであります。  そういうことで、貿易収支の不均衡は今後ある程度は続いていかざるを得ないと思いますけれども、そういうものを背景にして、日米外交というものを、今のような形でなくて、もっとお互いに認めるものは認めるという前提に立てないかという気持ちを持つわけでありますが、外務大臣の御所見を伺って、質問を終わりたいと思います。
  10. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 浜田さんの御指摘はまさにそのとおりで、我々がこれからの日米外交を考えるときに頭に置いて取り組んでいかなければならないことだと思います。日米関係はいわば同盟関係ですから、これは将来にわたって確固不動の友好安定の基盤というものを築き、そしてこれを発展させていくという基本的な立場でなければならぬわけでございます。そして、もちろん安保条約というものを堅持していくということは当然のことであります。幸いにして現在の日米関係政治外交の面におきましては大変安定している、いいということが言えるわけでありますが、今お話し経済の面においては非常な摩擦が生じておる。経済日米関係で六百億ドルという膨大な経済交流貿易がありますから、そしてその中で三百億ドル近い日本の出超という状況にありますし、そしてまた日本アメリカ自由世界一位、二位という立場に、競争関係にあるわけですから、経済関係においては経済摩擦というのを一挙に解決するというのは難しいし、一つ解決してもこの次にはまた何か起こってくるということで、やはりエンドレスのものだと思いますが、しかしそういう中でこの経済問題は経済問題として解決していくという日米間にもう一つの大局的な度量というものがなければならぬのじゃないか。これを政治問題に転化させていったら、今の日米関係はいつでも火がつくような状況にありますから、経済問題は経済問題で解決していく。  そういう面では今度の農産物も非常に危なかったと私は思います。非常に象徴的な問題で、これは政治問題に火がつきそうな状況でしたが、両国自制によりまして最後にああした痛み分けというようなことで決着が図られて、これは日米関係でこれからあるいは政治的に噴火する火を抑えることができたと我々思うわけでございますが、そうした経済関係についてはそういう一つ立場というのが、両国自制というのが必要じゃないか。  そういう意味では、私は自由貿易を推進していくには日本はもっと努力していかなければならない面があると思いますし、もっと痛みを分かち合うという考えが必要だと思いますが、見ておりますとアメリカも随分乱暴なことを言ったり要求したりしておりまして、その辺はアメリカ自体も実情というものを、また日本の努力というものを、また日本アメリカはそれぞれ手法が違いますし成り立ちが違いますから、そういうことをやはりアメリカにも知ってもらう必要がある。そういう点の相互理解というのがもっと必要だろう。そういう面ではアメリカもそれなりの配慮をしてほしいと思うこともあります。しかし、これは信頼関係というのが両国の首脳あるいはまた責任者の中に生まれていけばそういう問題もぼつぼつ解決していくのじゃないだろうかと思っております。  日米関係は非常に親しいだけに、また近いだけに非常にむずかしい。そしてまた、場合によってはぶつかる可能性もありますが、そういうことを十分両国とも踏まえながら、しかし大事な関係ですから、これは大事に育てて安定をさせていくというためにお互いに努力していかなければならぬ、こういうふうに思って一生懸命やっておるわけでございます。これはまさに日本外交基軸ですから、この基軸を揺るがしてはならないという決意のもとに頑張っていきたいと思います。よろしくお願いいたします。
  11. 浜田卓二郎

    浜田(卓)委員 終わります。
  12. 中島源太郎

    中島委員長 次に、石原慎太郎君。
  13. 石原慎太郎

    石原(慎)委員 いろいろ問題の多いフィリピン問題について主に三つほど質問をさせていただきます。  この時期、この状況の中で日本から膨大な経済援助フィリピンの現政府に与えるということにいろいろ疑義と不安もあるわけですが、とにかく行政改革財政改革でつめに火をともして苦労している日本から、教科書の無償配付の問題でも随分議論しましたけれども、あれでも四百五十億円、それを上回る五百五十億円の、しかも過半を商品借款という形で行う。現在のマルコス政権がその効果を十全に発揮させることのできる政権であるかどうか非常に問題があると思いますけれどもアメリカはこれを見て三つ条件、アキノの暗殺の真相究明、それから自由な報道の保障、公正な選挙の運営という条件をつけて、来年度の予算でできれば援助をする、しかしかなわなければしないということで、レーガンもこの拘束を受けて、マルコスに手紙を出して、約束どおり行くかどうかわからぬということを言っているようでありますが、日本政府は、まあ総理大臣が非常に熱心で、外務大臣も複雑な心境だと思いますけれども、とにかく借款をすることに決めたようでありますが、この間も党内の調査会で申し上げましたし、それが大方の意見だったと思いますけれども政府委員もとにかく有効に使ってもらう約束なり条件をつけたいとおっしゃっておられましたが、商品借款の現在のメカニズムの中で、輸入業者が物資を受けて、そのかわりに現地通貨中央銀行に積む。それから先はおぼろでありまして、それが正確に、有効に使われるか。妙なことに使われないという保証はないわけですが、現行の商品借款メカニズムの中で日本側は今回何かきちっと条件をつけられるのかどうか。だとすればどういう形のものを望まれているか、お聞きしたいと思います。
  14. 柳健一

    柳政府委員 商品借款を供与いたしました後の見返り内貨でございますね。この見返り内貨が適正に使われる保証がとれるかどうかという御質問だと思いますが、これは、過去におきましてフィリピンには商品借款出したことがございますが、過去におきましても、商品借款見返り内貨フィリピンにおきましては我が国が供与いたしました円借款プロジェクトに大体充当してきておりますし、かつ定期的に報告をとりまして追跡調査をしていたわけでございます。私どもとしてはそれを把握しているわけでございますが、今回の商品借款につきましてもさらに、私ども今考えておりますのは、当初結びます交換公文の中などできちんと円借款プロジェクトならプロジェクトに使う、その内貨分として使うということを約束させてそういうふうにやっていくということを検討している最中でございます。
  15. 石原慎太郎

    石原(慎)委員 検討だけじゃなしに、交換公文の中でしっかりうたって、後の監督を向こう任せということじゃなくて、何か与野党の中でこういうものの調査なり監視の議員団が行くとか行かないとかという計画もあるようでありますけれども、とにかく大事な国民の血税を非常に問題の多い政権借款させるわけですから、それが有効に使われるという責任日本側にもあるわけでありまして、厳重に公文の中にうたうだけじゃなしに、その後のフォローを講じていただきたいと思うわけでございます。その点、外務大臣、いかがですか。
  16. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは非常に大事なことだと思います。やはり日本経済援助とか借款がどういうふうに使われるかということを見届けることが、これまでもそうでしたが、これからもさらに大事になってくるのじゃないか。特にフィリピンの場合におきましては、政局も不安ですし経済にも非常に混乱が起こる、こういうふうな状況にあります。また、反対派の勢力がこれが政治的に使われるのじゃないかというふうな危惧を持って見ておる、こういう状況ですから、やはり非常に透明性がなければいけない、こういうふうに私も思います。そういう意味において、今回の援助も、これはこれまでの全体的な日本援助計画の中でフィリピンも行ってきましたが、その延長線上でやるわけですけれども、やはりこの援助透明性を持って、フィリピン経済の発展といいますか、経済混乱の防止という意味で本当に有効に、具体的に使われるように、これは最後まで見届ける、こういうことは必要だと思いますし、交換公文、それからその後の外交関係を通じてのフォローアップ等を私も今事務当局に指示してやらせておるところであります。
  17. 石原慎太郎

    石原(慎)委員 現地の大使は、フレンド・イン・ニード・イズ・フレンド・インディードとか言って、この際絶対にマルコス政権を助けるべきだ、政情も好転してきたなんてあほみたいな報告しているけれども、何が好転したかさっぱりわからない。政府の高官も、だれが言ったか知りませんけれども独裁政権援助していかぬのだったらイギリスやドイツにするわけにいかぬでしょうとわけのわからぬレトリックで言っていますが、マルコス政権というのは非常に悪いことをするには有能でありますけれども、実質的には、アミンとか、ボガサですか、アフリカのああいうわけのわからぬディクデーターとも本質的には同じですよ。例えば法的には大統領にすべての立法権が集められているとか、マルコス政権の中でどんな問題が出てきても大統領責任を問うて最高裁の問題にしないという決議を最高裁自身がしたり、公共の安全と国家の安全を名目大統領自由裁量でどんな人間でも勾留できるとか、そういう権限を大統領命令自分に与えている。それから政治犯と目される人間予防逮捕、拘束できる、しかもその逮捕された人間財産権市民権も剥奪されるという大統領命を、とにかく大統領自分自分に出しているわけです。こういう状況は全然変わってないのですけれども、しかもその中で非常にたくさんの人間逮捕されまして、私もけさ、ちょっと正確な数字を知りたいんで、今ちょうど日本に来ています、前の下院議員のサニー・アリバレスに電話しましたら、七百九人逮捕されている。その中に予防逮捕が何人いるか知りませんけれども、とにかくそういう状況で、軍隊が拉致していって殺してしまってほうり出して、それをサルベージした死体が千五百ある。アリバレスの弟も学生運動で反マルコスをやっていたら撤まって、軍隊に殺されて、両目えぐられてスラム街のどぶから出てきたというような非常に悲惨な体験をしているのですが、こういう事実は事実として厳然としてあるということぐらいは外務省は認識していらっしゃるのでしょうね。事実としてそういうものを掌握していらっしゃるかどうかということをイエス、ノーだけでお答え願いたい。
  18. 橋本恕

    橋本(恕)政府委員 政治犯につきましてはフィリピン政府は公式に一切発表しておりませんが、しかしながら、国際的に信用できる機関でございますアムネスティー・インターナショナル、この八三年の報告書によりますと、現在フィリピンにおきましては約九百名の政治犯が存在する、こういうふうに言っております。  それからさらに御指摘の、大統領緊急立法権でございますとか、あるいはマルコス大統領により発出されましたいわゆる予防拘禁令、これは確かに存在いたします。ただこれは、例えば予防拘禁令について申し上げますと、先生御承知のとおりに、戒厳令を廃止してより民主化するというその前提のもとで予防拘禁令というものをつくった、こういうふうに御理解を賜りたいと思います。
  19. 石原慎太郎

    石原(慎)委員 そこで、これは大臣にお伺いしたいのですけれども戒厳令というものが一応名目上は解除されたわけで、解除した人間から見れば政情がやや安定したということだと思うのですが、つまりそれ以外に解除する口実はないわけですけれども、ならば、特に悪名高い予防拘禁令で何人の人間逮捕、勾留されているか知りませんが、ほかに余り例のない、こういう政治犯と目される逮捕者、予防的に逮捕されている人間だけはやはりこの際、世界じゅうが見守って、日本も非常に問題のある政権にそれだけの犠牲を払って借款もしようというときですから、日本政府からそういう政治犯は釈放したらどうだという申し入れをされたらいかがでしょうか。国の主権というものはありますけれども、しかし前のアメリカ大統領のカーターさんは人権外交というのを非常に華麗に展開された、成果はいろいろ賛否両論ありますけれども、しかし私は、フィリピンのケースに関しては、これはやはり世界じゅうの人間が見てもごく妥当な日本政府の申し入れだと思いますし、そういうことを日本政府なり外務省がおやりになるつもりはありませんでしょうか。
  20. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 フィリピン政情とか経済状況というのは日本政府としてはやはり正確に把握しておかなければならぬと思います。ただ、政治状況がどうであるとかこうであるとかいうことで日本政府がこれに対していろいろと口出しをするということは、これも相手の国の主権の問題でありますし、また主権の中の裁判の問題でもあるし、内政干渉にわたるわけですから、これは韓国においてもそういうことがありましていろいろと国会でも質問を受けたわけですが、政府としていろいろと口出しとか要請とかいうことはなかなか困難であります。ただ人道という問題については、これは人道的立場において政府が考えた場合においては、それはそれなりの要請とかそういうものを行うことはあり得るわけですが、しかしそれ以上に相手の国の制度あるいはまた裁判、内政そのものに立ち入ることはやはり慎まなければならぬことじゃないか、こういうふうに思うのです。
  21. 石原慎太郎

    石原(慎)委員 しかし、今いみじくも外務大臣が言われた人道上の問題だと思うのですね。予防的に、しかも大統領の個人の自由裁量で百人単位の人間を要するに政治犯と目して逮捕、勾留する、市民権や財産まで没収してしまうという、これは自分の気に食わない人間を殺して食ってしまったアミンと本当に同じようなもので、私はそういう点で、そういう非常にうろんな政権に対して私たちの血税から膨大な借款を許すことが是か非かという問題、国民は非常に重大な関心を持っていると思いますし、人道上の見地で日本からそれぐらいの忠言をする、申し込みをするということは、あくまでも人道上の見地でぜひやっていただきたいと思うわけでございます。  先般、香港で野党の指導者たちが会合しまして、私の友人も同席したり、私の知人の記者たちも取材しておりましたが、私が非常に心配だったのは、そこに来たある野党の若いリーダーが、会議に正式に出席してないけれども随伴した人ですが、日本の観光団が随分フィリピンにやってくるが、あの観光団の中にパイナップルを一つか二つほうり込んだら日本人は何カ月ぐらいフィリピンに来なくなるだろうかと、割と真顔で聞いたのです。パイナップルというのは手りゅう弾のことです。これは実際に今そういうことが頻繁としてある国であります。  隠された話ですけれども、私、一九八一年の春にボストンで、亡くなったアキノと話をしたときに彼が、実はこの間イメルダが私にひそかに会いに来た、それはほかの要件を構えていたけれども、実際の目的は、そのときの日本の総理、鈴木善幸さんがASEAN訪問に行くときに、つまり嫌がらせて、マルコスのメンツをつぶすために、鈴木総理の出られるある会合に爆弾を仕掛けるという予告をしてきた、今でもそうかもしれませんけれども、当時のマルコス政権はそれを探知して防ぐ能力がなかった、あなたがやらしているとは言わないけれども、あなたならとめられるからとめてくれという依頼を受けたという話を彼はしていました。それはぜひそうすべきだと言って、彼は実際にそれをとめさしたわけですが、とまったからいいようなものの、問題は、その当人のアキノ氏が暗殺され、非常に静かだけれども大きな混乱が続いている中で、日本現地の高官が、政情が安定してきたとか何か現実と全然違う報告をしてきますが、もし日本の観光団に対して、この借款はとにかく意に沿わない、この時点でこういう大きなバックアップをマルコス政権日本はすべきでないという人たちがそういうラジカルな行動に出たときに、政府は、もしそういう犠牲者が仮に出たとしたら、その現実性というのは非常にあるわけですけれども責任をとりますか、とれますか。私は別におどかすわけでも何でもないけれども、あの国の政情を知っているだけに非常に不安だし、そういう発言が香港やフィリピン日本人の新聞記者を含めて有識者に時々されるという実情があるだけに非常に心配してお聞きしているわけです。
  22. 橋本恕

    橋本(恕)政府委員 御承知のとおりに、この間もJICAの職員のああいう事件がございまして、現在も調査中でございますが、今までの調査に関する限り、政治的背景はないようでございます。  先生から御指摘のございましたとおりに、治安の問題につきましては、特に在留日本人あるいは観光客を含めまして海外における日本人の生命財産を守るということは非常に重要なことでございますので、今回のケースにつきましても重大なる関心を表明するとともに、フィリピン政府がすべての日本人の治安について責任を持ってやってもらうように非常に強く申し入れてございますし、フィリピン政府責任を持って善処すると言っております。  それから経済協力の問題でございますが、これは先生御承知のとおりに、フィリピン国民、特に昨年来非常に苦しい状況にあるフィリピン経済を、同じアジアの国として何とかできるだけお手伝いしよう、こういうことでございますので、フィリピン政府あるいはマルコス大統領個人の政治的な立場に対する援助ということではなくて、これはもう外務大臣が何度も御答弁申し上げておりますとおりに、フィリピン国民、特に経済的に今非常に苦しい状況にあるフィリピン国民に対する友情のあかしとしての経済協力であるということにつきまして、今後とも現地の在外公館はもちろんでございますが、何とかフィリピン国民の方々にもその点を十分御理解いただくように努力したいと思っております。
  23. 石原慎太郎

    石原(慎)委員 局長の言われる建前はわかるのですけれども、しかし、日本は別に自民党が代表しているわけでもないし中曽根さんが代表しているわけでもないけれどもフィリピンの場合には、フィリピンという国が実際にあるのかないのかわかりませんが、それぐらい非常に不思議な構造の社会ですけれども、ともかくフィリピンと称している国家というものをマルコス氏が代表しているわけですが、それは本当にルイ十四世みたいなところがある。それ以上のものですよ。ですから、日本政府はそういう公式的な眺め方をしても、あの体制あの社会に不安を感じ不満を感じている多くの大衆というものは決して日本政府と同じ見解を持たないということは、これは別にカルチャラルギャップでも何でもなくて当然のことだと私は思うのですが、そこら辺はやはり相当慎重にしんしゃくされませんと、政府に全く関係のない日本の一般市民がフィリピンでとんでもない目に遭うということにならなければいいなと私は思うわけでございます。  最後に、この間もアグラバ委員長以下、委員会日本にやってきまして、アキノ元上院議員の暗殺真相究明に努力をしております。日本外務省も警察庁、警視庁も協力をして、こちらの委嘱尋問というのですけれども、やっておられました。アグラバ委員長にも私会いましたけれども、彼女がわざわざ持参した、あの委員会自分の名前を述べて宣誓し、委員会の尋問に答えて証言した、当時機内に出向いた五人の兵士の声を日本の技術で声紋分析してほしいということだったんですが、どういうわけか持参したノートバーバル、口上書の中にアイテムとしてそれが入ってなかったために、日本のお役所もそういうところはしゃくし定規なんで、入ってないからだめだと言った。きょう御出席の橋本局長が非常に苦労されて、ドラフトをアグラバさん、あなた書いて、そして日本の大使館で大使がサインしたらそれでいいんだから早く出しなさいと言ったのに、何か知らぬけれども、後になっていろいろ理由が挙げられておりましたが、アグラバさんと当地の高官が言うことは全く百八十度違って、結果として口上書なるものが追加されなかった。私は個人的にそれを引き受けてあげてもいいからと言ったら、とにかく帰ってすぐに口上書を送りますと言って帰ったんだけれども、テープも口上書もいまだに来ないわけです。これは世界が注目し、アメリカの下院が条件一つにうたって、また日本も、ことしは別にしても来年度の分はこれに近い、これ以上の条件をつけなきゃならぬと思っておりますけれども、当然その中に入ってくる、あの次期の指導者と目されていたアキノ元上院議員の暗殺の究明は、これは単に事件の解明だけしゃなくて、国家対国家の関係を左右する非常に大きなモメントだと思うのですが、それが日本の科学技術で究明されかかっていたのに、どういうわけか知らぬけれどもとにかく口上書がとまってしまっている。マルコス政権が、みずからが主張しているように清廉潔白ならば、ほかの問題については委嘱してきたんですから、日本の科学技術にこの問題もゆだねて声紋の分析をし、彼らがシロであるかクロであるか、あるいは結果とすれば、予測がつくことですけれども政府の言っていることが少なくとも全くうそである、そして委嘱を受けているテープの中にある兵士たちがあそこで現地の言葉で、やつがやってきたとか、おれに殺させるとか、連れ出せとか言っている言葉が符合するならば、政府が発表した、同時に殺されたあの犯人なるものが実はにせものでしかないということだけは判明するわけですから、私はやはりフィリピン政府は速やかに、日本の協力を仰いできたならば、この問題についても口上書を送って世界にみずからの潔白を証明するための要するに依頼を日本政府にすべきだと思うのですけれども、世界じゅうが見守る中で、どういうわけか知らぬけれども口上書がとまってしまった。外務省もいらいらしている、政府もいらいらしている、アメリカもいらいらしている。私は、やはりここまでの行きがかりからいって、あの口上書はどうしましたか、できるだけ早く送りなさい、あなたのお国のためにも世界のためにもフィリピン日本なりアメリカなりあるいはほかの外国との信用関係のためにもこういう究明を急ぐことがおためですよということで、ひとつ外務大臣外務省から口上書はどうしたという催促といいましょうか、それぐらいの勧告をされたらいかがでしょうか。私は、これは決して内政干渉にならないと思うし、世界じゅうが納得する、しかも部分的にはその依頼を受けた、要するに既に協力を果たしてきている日本政府のとっておかしくない態度だと思いますけれども、いかがでしょうか。
  24. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 口上書の問題は、おっしゃるようになぜ出してこないのかそれはわかりませんが、しかし、これはやはりフィリピン国内問題ですから日本が催促するということはちょっと外交上はできないことだ、こういうふうに思いますけれども、しかし、我々もこのアキノ暗殺事件というものはやはり究明されなければならない。せっかく立派な中正な委員会ができたわけですから、これによって徹底的な究明が行われて真相が明らかにされることを日本としても期待しておりますし、また、フィリピンに対する今の経済援助についてもいろいろと今お話もありましたが、私も、やはり全体の状況というものを十分踏まえてやらなければならぬということで今日まで慎重に来ておるわけなんでして、今後とも経済援助方向は、これは基本的に決まっておりますからやらざるを得ないと思いますが、その援助が本当に、やはりマルコス政権そのものに代用されるとかそういうことがあってはならぬわけで、マルコス政権てこ入れとかそういうことじゃなくて、やはりフィリピン経済のてこ入れという、あるいは国民生活の福祉だとか民生の向上につながっていく、そういう形にこの援助が活用されなければならぬ。それは当然のことですから、そういう点については今後行うとしても十分配慮してやりたい、こういうふうに思っています。
  25. 石原慎太郎

    石原(慎)委員 最後一つ、また口上書の問題ですけれども、こちらから何を言うかかにを言うかというのはいろいろ問題があるかもしれませんが、外務大臣個人としても、途中まで協力を頼んできて、すっと手を引いてしまって、最後の決め手で依頼してこないというのはちょっと不思議でしょう。不思議に思われませんか。極めて不思議じゃないですか。
  26. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 それぞれの国にはそれぞれの事情がありますから、フィリピンフィリピンのいろいろの事情だろうと思いますね。
  27. 石原慎太郎

    石原(慎)委員 終わります。
  28. 中島源太郎

    中島委員長 次に、河上民雄君。
  29. 河上民雄

    ○河上委員 安倍外務大臣に幾つかお尋ねしたいのでありますが、今もお話がありましたが、農産物交渉で一応の決着がついたということでございますけれども、先日交渉決着の後の記者会見の写真が、これは朝日新聞を初め各社に出ておるのですけれども、これちょっと、コピーを持ってきましたけれども大臣もごらんになったと思いますが、大河原大使と山村農水大臣の表情は大変対照的でして、大河原さんは腕を組んで大変にこにこ、呵々大笑をしておられる。一方山村さんは苦虫かみつぶして下の方を向いておる。これはとても同じ交渉団とは思われないですね。今もちょっとお話がございましたけれども、どうも日本の出先の外交官というのは向こう、赴任国の立場に立ってやることが何か国際的だというような感じがあるのじゃないかという気がするのでありますが、今日までよく外務省国内音痴というように言われましたけれども、どうもこの写真はそれを非常に象徴的にあらわしているような気がしてならないのですが、大臣も御承知のとおり、少なくとも国内の農業関係者は大変な不安と憤りを覚えているわけで、どうもこういう態度というのは穏当を欠くのではないかというように私は思うのでありますが、外務省は今回の交渉を成功したというように見ておるのですか。大臣、いかがでございますか。
  30. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 あのときの写真はスナップでして、両方が笑っているときの写真を撮ろうと思えば撮れたと思いますが、たまたまああいう形の写真が載ったと思うのですが、別にこれが外務省の姿勢、農林省の姿勢を示しているわけじゃないと思うので、これは今度の交渉団は山村農水大臣中心に大河原大使も含めて一体となって取り組んだ交渉です。大変な真剣勝負だったと思います。最終的にはいわば苦渋に満ちた決着ということになるかもしれませんし、お互い不満を残した決着ということになったと思うわけでございますが、しかし、私は、また一面においては、農産物交渉日米経済摩擦のいわば象徴的な存在であって、これがいつ政治問題に転化するかもわからないというふうな情勢にあっただけに、日米全体ということを考えますと、ある意味においてはほっとしたという一面もあるわけでございます。全体的に見ればお互いにやはり本当に難しい交渉でありましたし、そういう意味ではお互い不満を残したわけでありますけれども、それはそれなりに日本として最後の結末については、農業の問題、畜産の問題あるいは果樹振興の問題等については、今後は国内問題としてどういうふうに対応していくかは政府として考えていかなければならない問題であろうと思います。外交交渉としては大変難しい真剣勝負でありましたけれども、一応の決着はついたということは、それなりに今後の課題を解決する上においては一つの前進であったというふうに思います。
  31. 河上民雄

    ○河上委員 今、将来に向けて一応一つの前進だというようなお話でございましたが、今回決定したことは、協定期間は四年間ということでございますね。どうも四年ごとの交渉といいますと、これはもう大統領選挙のある年に必ず農産物交渉がある、こういうことになりまして、私もアメリカ政治の体質というのはある程度承知しているつもりでありますけれども、やはり大統領選挙の年というのはどうしてもそれぞれの選挙区の利害を反映して政府も非常に強く出てくる、こういうことでございまして、これは将来にとって前進という見方もあるかもしれませんが、むしろ将来に禍根を残した決定ではないかというような気がするのでありますが、今回の内容自体は言うまでもありませんけれども、それとは別に四年ごとにこの交渉をするということは、これは一体どういう経緯でそうなったのでありますか。
  32. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 この辺の詳しいいきさつについて私も承知をいたしておりませんが、日米間で大統領選挙ごとにこういう問題をどうしても政治的な圧力という中で行うということになればますます解決を困難にする。ですから、こういうことを繰り返したくない。ですから、五年に一回とか三年に一回ぐらいにしようじゃないかという日米間の話し合いがあったことも事実で、私も五年に一回ぐらいがいいのじゃないかということを言ったわけでございますけれども、しかし、最終的にはああいう形になったわけであります。どういう経過か知りませんが、しかしそれはそれなりに両国政府の苦渋といいますか、そういうものが出て、それがああいう形で決着をしたということではないだろうか、こういうふうに思っております。  それから私は、農産物交渉はこれが決着をしたというのは四年間で、また四年たったら起こるわけですから、これが非常に前進であったということを言っておるわけじゃなくて、この農産物交渉決着をしたことによって――今日米関係懸案問題、随分たくさんあります。そういう問題をこれから進めていく上においては、農産物交渉決着について不満であるかどうかということは別にして、ほかの問題を解決する上においては一つのいわば前進であったということを私は言っておるわけでございます。
  33. 河上民雄

    ○河上委員 今のお話ですと、日本政府は二年ないし三年ごとの交渉大臣は五年ごとではどうか、こう言われたのですが、結果的に四年ごとになったというのは、やはりアメリカ側要求がそこにあったというふうに判断してよろしいんですか。
  34. 恩田宗

    ○恩田政府委員 私どもが承知しているところでは、最終的には五年にするか四年にするかということではなかったかと思いますが、アメリカ側考え方は、現在の体制は農産物日本の輸入の制度が比較的自由になっていない、こういう体制はできるだけ早く自由にしてほしいという根本的な希望があるわけでございますから、どちらかと言えば短い方がいいというのがアメリカ側の希望ではないか。今度の合意する体制が長く続くということよりは、できるだけ短い方がいいということで、どちらかと言えばアメリカ側が短い方を希望した、こういうことだと思います。
  35. 河上民雄

    ○河上委員 そういう御説明ですけれども、やはりアメリカは四年というところにかなり重点があったんじゃないかというふうに理解せざるを得ないのでありますが、ここは農水委員会でありませんから余り詳細には入りませんが、安倍外務大臣、今度はオーストラリアのホーク首相が近く来られますけれども、さきに参議院の予算委員会の首相の答弁等によりますと、オーストラリアには犠牲を与えない、こういうふうに言明されておるわけですが、そういうことはアメリカと同じ程度に輸入枠の拡大を図ると約束する、そういう方針でいらっしゃいますか。
  36. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは日豪関係は日豪関係として安定した状況にありますから、これを進めてまいる、そして他国との交渉といいますか、他国との問題で日豪関係に影響を与えないように努力するということは当然のことであろうと思います。しかし、具体的な農産物なんかについては、これはもう私の立場でなくて、農林水産大臣国内の需給関係とかそういうものを配慮してその中でやはり交渉をするということであるわけでございます。日米関係農産物が片づいたわけですから、今度は日豪関係、それも全体の農産物という問題の中で、国内の需給関係も踏まえた中で、あるいはまた畜安法というものもありますが、そういうものを踏まえた中でのこれからの交渉ということになってくる、こういうふうに思います。
  37. 河上民雄

    ○河上委員 ちょっと農水省の方に伺いたいのですけれども、今回の四年間の枠の拡大、ずっと単純計算いたしますと、従来は国内産と輸入肉との割合が大体七対三ぐらいになっておりますが、四年先には六対四ぐらいになるのではないかと思うのですが、今後七対三という比率というのは、もうここで捨てるというお考えですか。それともあくまで七対三という比率は守っていきたい、こういうことでございますか。その点ちょっと伺いたいと思います。
  38. 鎭西迪雄

    ○鎭西説明員 現在の食肉需要に占めます国産の割合は、今先生おっしゃいましたように約七〇%でございます。私ども昭和六十五年を目標年次といたします需要と生産の長期見通し、これを持っておりまして、この長期見通しの六十五年時点におきましても、おおむね自給率は七〇%になる、こういうことで鋭意国内の合理的な生産振興を図っております。  ただ自給率というのは結果的に出てくるものでございまして、その途中年次にどういう自給率になるかというのは長期見通しでも示しておりませんし、それから今先生おっしゃいましたように、今後日豪と総枠についての協議というのを持つことになると思いますので、今後のトータルとしての輸入量がどうなるかということによりまして、もちろん国産の生産の伸びというものもございますので、その時点時点で自給率というのは結果的に決まってくる、こういうように考えております。
  39. 河上民雄

    ○河上委員 私、この問題はここで余り深く入ってもと思いますのでこの程度にいたしますけれども、どうも先ほど来お話も出ましたが、やはりここで今度の農産物交渉というのは二つの大きな教訓を与えていると思うのであります。  一つは、日米関係を今後どういうふうにしていくのか。先ほど大臣は、経済の分野にいろいろトラブルの要因がある、それが政治に反映しないようにということでありましたが、それにしても、基本的に日米関係というのはどうあるべきかということ。それからもう一つは、日本は食糧について基本的に一体どういう考え方を持つのか。自給率はもうこれ以上、どんどん下がってもいいということなのか。ヨーロッパなどは自給率をどんどん上げようとしているわけですけれども日本は自給率を上げる方向でいくのか、それともこれ以上、どんどん下げても日米関係を、まあ外務省的な感覚でよくするためにはやむを得ないのだ、こういうことなのかという問題が実は今提起されていると思うのであります。これ以上余り詳しく入ることは避けたいと思いますけれども、ひとつそういう点、大臣も今後よく考えていただきたいと思います。  中曽根総理がこの前中国を訪問されまして、大臣も御一緒に行かれたわけでありますが、その中で幾つかのことがあるのであります。  その一つでありますが、日本側が、韓国政府の要請を受けまして南北の接触等について中国の仲介を要請したのに対しまして、中国の胡耀邦総書記が、日本と北朝鮮、朝鮮民主主義人民共和国との仲介の用意があるというふうに言われたと伝えられております。  新聞によりますと、「「日本、北朝鮮は、お互いに少々不満があるようだが、日本と北朝鮮間の意思疎通を図るべく中国も努力したい。私個人の考えとしては、日本・北朝鮮間で交流の幅を広げたらどうか」と持ちかけた。これに対し首相はとくに発言しなかったとされる。」というふうに報道されております。これはそのとおりであったのか……。
  40. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 その前に農産物問題に対して。後で局長から日中関係についての具体的な答弁をいたしますが、先ほどから日米農産物の話が出まして、何か外務省と農林省との間に考え方の差があるのじゃないかということですが、これはもう全くありません。特に私は農林大臣を二年もやった経験もありますし、食糧問題というのは、いわば国の安全保障の問題でもあると思いますし、非常に大事な問題である。最近世界的に、特にアフリカなんかああいう飢餓状況が生まれておる、そして人口がどんどんふえるという中で、やはり国として食糧政策を確定するということは、国の運命、将来を考える上において一番大事な課題でありまして、そういう意味で、食糧の自給体制というものを進めていく努力はやはり政治中心課題として取り組んでいかなければならぬ課題であろうと思います。  それから、日米関係で今度の農産物交渉はいわば痛み分けということになったわけですが、これは、日本政府全体として自由化には絶対応じない、幾らアメリカに言われても困るのだということについては完全な意思の統一はできておるわけですね。ただ枠の問題については、日米間で、日本日本の自給体制の中で日本の農業が守れるならば、できるだけその範囲内でのお互いの妥協というか協力はしようということであって、その間に意見の懸隔というものは全くなかったわけであります。その辺はひとつ御理解をいただきたいと思います。  それから、今の日中間の問題につきましては、橋本局長から具体的に答弁させます。
  41. 橋本恕

    橋本(恕)政府委員 先生御質問の後の方の部分でございますが、実はただいま新聞報道でお読み上げになりました御指摘の時間帯は、総理と胡耀邦総書記と全く二人きりの会談、それから昼食会をやっていたときでございました。実はその時間帯には安倍外務大臣と呉学謙外交部長との会談がございまして、私も安倍大臣に随行してそちらに入っておりました。したがいまして、これは胡耀邦総書記と総理の二人きりの会談でございますので私も後から聞いたわけでございますが、私が聞いたところによりますと、中国側、つまり胡耀邦さんの方から、日本と北朝鮮との間の意思疎通のために役割を果たす用意があるという趣旨のことを言われた、それから、日本と北朝鮮との間の交流の拡大について期待が表明された、それに対しまして中曽根総理から、朝鮮半島の緊張緩和の実現が大事です、そのためには中国の役割が重要であるという趣旨のことを述べられた、ただ当面日本と北朝鮮との接近は困難というふうに説明された、こういうふうに私は伺いました。
  42. 河上民雄

    ○河上委員 そういたしますと、これは総理と総書記二人だけのお話ということでございますが、日本政府としては胡耀邦総書記のいわば申し出に対して、一体お断りをしたのか、笑って済ましたのか、それとも真剣に受けとめたのか、その辺はいかがでございますか。
  43. 橋本恕

    橋本(恕)政府委員 御指摘の点でございますが、胡耀邦総書記の発言は、広い意味日本と北朝鮮とがお互いに実情をよりよく理解することが朝鮮半島の緊張緩和という観点からも望ましいということでございまして、北朝鮮と日本との間の意思疎通のために中国としても努力してまいりたい、こういう趣旨であると受けとめております。いずれにしましても、当面日本政府といたしまして、日本と北朝鮮との間の仲介を政治経済の分野で中国に依頼する考えはございませんが、人道上の問題はございますので現在詳細検討中、こういうことでございます。
  44. 河上民雄

    ○河上委員 今、人道上の問題に限ってというようなお話がございましたけれども、仮に人道上の問題に限るとしても、それは胡耀邦総書記の申し出に対してこたえたものとしてお考えになっておられるというように受け取ってよいのか、それとも全く別にそのことを考えておられるのか。
  45. 橋本恕

    橋本(恕)政府委員 これも私は、先ほど申し上げましたとおりに安倍大臣のお供で外相会談の方に出ておりましたので、直接その場に立ち会っておりませんので自信を持ってお答えできませんが、私がその後いろいろ間接的に伺いましたところでは、胡耀邦さんは一般的に北朝鮮と日本との関係がもう少しうまくいってくれればいいなという期待を表明されたというのが私の印象でございました。  まずその第一は、これも私の印象でございますが、北朝鮮と日本との間の政治関係が胡耀邦総書記の頭にまずあったのではなかろうかと思います。しかしながら、胡耀邦総書記は政治とか経済とか、文化だとかスポーツだとか、あるいは人道というように特定して指摘されたのではないというふうに聞いておりますので、もちろん人道上の問題も日本と北朝鮮との間の全般的な関係の中に含まれるというのが私どもの解釈でございます。
  46. 河上民雄

    ○河上委員 新聞等によりますと、橋本局長が記者会見で、朝鮮民主主義人民共和国と日本との交流については当面政治経済というのはちょっと難しい、人道上の問題に限ってというふうに語られたと聞いているわけですし、その後総理大臣、これはテレビでも見たのですが、新聞記者団の質問に答えて、人道上の問題に限る、こういうふうに言われたのでございますけれども、これはあくまでも記者団にそう答えたのであって、中国政府に既にこの件で申し入れを行ったことがあるのかないのか、それをちょっと伺います。
  47. 橋本恕

    橋本(恕)政府委員 事実関係でございますが、人道問題に限って、つまり政治経済をとりあえず頼むことを考えておりませんで、人道問題については中国に頼むことを検討中というのは、これは私の発言ではございませんで、北京におきまして総理の内外記者団との記者会見だったと記憶しておりますが、あるいは日本人記者だけのときだったかもしれませんが、いずれにしましても総理がそういうふうに説明され、また、その後日本に帰りまして安倍外務大臣が記者団に説明をされたということで、私ではなくて、総理と外務大臣の御発言だというように御理解を賜りたいのです。  それから人道問題でございますが、具体的な案件につきまして中国に依頼することとするか、あるいはやめておくか、あるいは既に依頼を行ったかどうかという、その具体的内容につきましては日本側関係当事者の、それぞれの個人個人の方の御意思もございましょうし、それから依頼を受ける側の中国の意向あるいは北朝鮮と中国との関係というようなことも、さまざまな配慮がございますので、これはしばらく公表することは適当でない、こういう判断でございます。
  48. 河上民雄

    ○河上委員 具体的なケースについてはそうだと思いますけれども、中国政府に対して、日本政府としてこういう問題についてお願いすることがありますよというような意味の申し入れというか、意思の伝達をされたのかどうかを伺っているのです。
  49. 橋本恕

    橋本(恕)政府委員 御指摘の問題も含めまして検討中でございます。
  50. 河上民雄

    ○河上委員 そうすると、まだやっておられないということでございますね。
  51. 橋本恕

    橋本(恕)政府委員 どうも回りくどい答弁で申しわけないのですけれども経済の問題ですと、幾ら損したもうかったという話だけでそれはそれで深刻なのでしょうけれども、人道ケースといいますと、その人の生命あるいは直接その人の一身上の問題、しかも家族も含めまして非常に痛切な問題でございますので、先ほど申し上げましたとおりに詳細について今の段階では公表することは御勘弁願いたいと存じます。
  52. 河上民雄

    ○河上委員 私も実は今起こっておる問題の幾つかに個人的にも関係し、また御家族からいろいろ御相談を受けている立場でございますので、今局長が言われたこと以上にここで突っ込んで御質問続ける気持ちはございませんが、人道的な問題の解決を一日も早く願っている一人であることをここで申し上げておきたいと思います。ただ、人道的配慮ということを、人道的問題の解決のためには先方に人道的配慮を要請するわけでございますが、人道問題を解決するためにも両国間に横たわっている懸案事項を全般的に解決をしていくかあるいは一つ一つ何か解決していくか、そういうことが私は必要だと思うのです。これは外務大臣はもう政治家として当然そういうことはおわかりと思うのでありまして、単に手続の問題だけではない。そういう点から見まして、今両国間にはお互いに制裁措置をとっているとかあるいは要人の入国問題についていろいろ厳しい条件がついているとかあるいは漁業協定が今中断しているとか、いろいろ難しい問題がたくさんあるわけですけれども、そういうものと無関係に今当面の状況を打開するということは私は非常に困難だと思うのでして、総体的に両国間のパイプ、日本としてもう少しパイプを通じる努力をすべきではないかと思うのでありますが、外務大臣、その点いかがでございますか。政治家としてそういう点をお考えいただきたいと思うのです。
  53. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 先ほどからの話は、中曽根総理と胡耀邦総書記との二人だけの話で私も詳しく聞いておりません。これは一緒に入ってないとなかなかニュアンスというものはわからぬ面がありまして、正確な我々認識はないわけですが、しかし、総理のその後の記者会見で明らかにされましたように、そういう胡耀邦さんから北朝鮮に伝えることがあったら、何かないかということで、これは人道問題に限ってお願いするかもしれない、こういう記者会見がありましたから、私もそれを聞いておりまして大変結構なことじゃないか、日本と北朝鮮の間には外交関係がありませんし、しかし中国に対して政治の問題、経済の問題を頼むなどということはもっとも今は考えてもいないことであります。しかし、人道問題に限ってならせっかくの中国の好意ある発言ですから、これにこたえることもいいのじゃないか、こういうことで実は橋本局長にも指示いたしまして事務当局で今、それじゃ人道問題となるとどういう問題があるだろうか、もし頼むとすればどういう点を頼んだらいいんだろうかということで検討をいたしておるわけでございますが、しかしなかなかいろいろと検討すればするほど難しい面もあるようでございますが、そういう中でせっかくの中国側の申し出ということになっておりますので、私たちも中国に対して何らかのアプローチをとりたいと思っておるわけであります。  全体的に今日本と北朝鮮との間は、ラングーン事件が起こってさらに冷たくなっておるわけで、いわば制裁措置といいますか、措置をとっておる。また、北朝鮮もこれに対して、日本に対して報復措置といいますか、そういうものがとられておるということで漁業交渉、民間の漁業協定等も中断しておる、こういうことで、大変その意味においては残念なことですが、しかし南北間では緊張緩和の動きも出ておりますし、オリンピックの問題をめぐっての南北の対話なんかも行われたわけですから、我々は緊張緩和方向へと事態が動いていく、そういう中で日本もそれなりの役割を果たす事態が来ることを望んでおるわけであります。
  54. 河上民雄

    ○河上委員 そういう情勢が生まれることを期待しているという大臣のお考えですが、これは中国にすべてお任せするというようなことではなくて、やはり日本日本としてできることをやるということが大事ではないかと思うのです。率直なことを言いまして、日韓基本条約ができまして以降の韓国と日本関係、特に韓国から言ってきていることは、要するに北とつき合うな、先ほどのフィリピンの例ではありませんが、日本はもっと金を出せというような強い希望が出されてきているのでありますけれども、その北とつき合うなというだけで果たして今の情勢がうまくいくか、それは賢明なる安倍外務大臣はそろそろお気づきだと思うのでありまして、ただ中国にお願いするというだけではなく、日本としても何かやるべきことが今求められているのじゃないか、そのことをひとつそろそろお考えいただかないと、世界の朝鮮半島をめぐる流動的な情勢の中で日本がむしろ立ちおくれるということさえあるのじゃないかと私は心配しておるわけでございます。  いわゆる三者会談につきまして、外務大臣に改めてお伺いするまでもないのでありますけれども、私はあのやりとりをずっと見ておりますと、基本的には三者会談は、当初は一九七九年アメリカ、韓国から提案されて、当時は朝鮮民主主義人民共和国側としてはこれを拒否した。拒否した理由はいろいろありますけれども、その中の重要な点は南朝鮮当局は話し相手として認められないということであったわけですが、今回はピョンヤンの方から三者会談の提唱がなされまして、しかもその前提として南朝鮮当局を話し相手として認めるというように態度が変わっているのじゃないかと思うのであります。そういう非常に微妙な変化がいろいろあるわけですし、アメリカ政府当局者のいろいろな発言を見ましても、三者会談の提唱に対して四者会談を逆提案はしておりますけれども、三者会談そのものを明確に否定した言動はない。それから南北朝鮮につきまして、北の方は三者会談を提案したのに対して、南が南北直接対話を優先させるべきだという逆提案をしているわけです。しかし、よく注意して見ますと、北の方も南北対話を直接否定していない、現にスポーツとかそういう限られた問題では既に南北対話を始めておるわけでありまして、そういうことをいろいろ考えますと、私は、北京とソウル、ワシントンとピョンヤンでアヒルの水かきが始まっているのじゃないかということさえふっと頭をよぎるような幾つかの事実を聞いているわけでございますが、日本政府として北とつき合うなという方針だけに固執をしておりますと日本だけが取り残されて、頭越しにされて再び衝撃を受けるというようなことになりはしないかということを私は心配をいたしておるのでありますけれども、安倍外務大臣並びに外務当局としてはそういう心配に対してはどういうふうにお考えになりますか。
  55. 橋本恕

    橋本(恕)政府委員 前段の部分でございますが、先生御指摘のとおり、確かにアメリカはカーター大統領の時代に三者会談を提案いたしました。つまり南北朝鮮プラス・アメリカでございます。もちろん韓国もそれを一緒に提案したわけですけれども、それに対して北が明確に断ったわけですね。断った理由は、実は何度も調べましたが、在韓米軍の撤退、それから現在あるところの休戦協定を平和協定に格上げする問題、これは北朝鮮の言葉を使いますと、韓国当局が口を出す問題じゃない、全く無関係だ、したがってこの問題はアメリカとピョンヤン、北朝鮮とで直接話すんだ、それからもう一つ、朝鮮半島を統一するという問題については、南北統一の問題についてはアメリカが口を出す問題じゃない、あくまでも北朝鮮と韓国との話し合いなんだということで拒否したわけでございます。  今回は三者会談を北が明確に提案してまいりましたが、その内容は三者会談と言いながら――まさに三者会談なんですが、従来の北朝鮮の主張とその点では一貫しておりまして、三者会談をやって、その中で在韓米軍の撤退、それから休戦協定を平和協定に格上げする問題をアメリカと話すんだ、それから北朝鮮と南との南北統一については南北で話すんだ、そういう議題のもとでの三者会談、こういうことでございます。  それからアメリカについてでございますが、アメリカは、現在のレーガン政権は終始一貫いたしましてあくまでも南北二者が、つまり朝鮮半島に住む北朝鮮の人々と韓国の人々が、当事者同士が話し合うべきであるということで一貫しておりまして、その南北の話し合いによる朝鮮問題解決に役立つのであればアメリカも、それから中国は休戦協定の当事者だから中国も入ったらいいのではないか、これが四者会談でございますし、それから、その場合にソ連がもし入るというのであれば当然日本にも参加をお願いしなければなるまいというのがアメリカの一貫した考えでございます。  それから、こういう状況のもとで日本政府としてはどうするかということについては、これは高度の政治判断の問題でございますから、これまで御説明申し上げましたような事実関係の説明と違って、これは安倍大臣が御答弁される問題と思いますが、一つだけ申し上げますと、私の理解する日本政府の一貫した考え方は、南北朝鮮つまり朝鮮半島に住む北の方と南の方々とが平和的な話し合いによって平和がもたらされるということが一番いいのであって、そのための環境づくりについては日本はどんな努力もする、こういうことだろうと思います。そういう全般的に韓国をめぐる情勢が緊張緩和、平和の方向へ向かっていく中で日本と北朝鮮との関係も考えるべきだというのが一貫した政府考え方であろうというふうに理解しております。
  56. 河上民雄

    ○河上委員 今三者会談について橋本局長から御説明がありましたが、私はまさにそのとおりで、朝鮮民主主義人民共和国側も、韓国側もあるいはアメリカ政府も、論理的には一貫性を持たせながらなおかつ何とかすり寄せをしようという状況にあると思うのであって、前と現在とが立場が全く違ったという意味でないことは私もよく承知しているわけです。しかしそれにもかかわらず、ニュアンスといいますか従来どおりの論理を守りながらなおかつそれに固執したんではどうも打開できないからということで、何とかお互いににじり寄ろうとしているわけだと思うのでありまして、それだけに今の三者会談をめぐるいろいろなやりとりというのは非常に重要な時期に来ているのでありますが、日本政府として従来のように韓国だけを相手にする、北とつき合うなという韓国側の強い要求をいつも念頭に置きながらやるというのではなくて、ここではもう少し広い見地から朝鮮半島の情勢をしっかりと見詰めて、日本としてなすべきことあるいはできることをもうそろそろやるべきときが来たんじゃないか、こう思うのでありますが、安倍外務大臣、一九七一年のときの米中接近で当時の佐藤内閣は大変な衝撃を受けたわけですが、そのようなことがないようにするだけの自信はおありですか。
  57. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 我が国としましては、北朝鮮と外交関係を結ぶという考え方は現在の情勢の中では持っておりません。これはアメリカも同じことであります。  なお、アメリカ日本の頭越しに北朝鮮とかつての米中関係をニクソン政権のときに展開したようにやるのではないかという御指摘もありますが、日本を無視してやるということは絶対にないということは現在の日米関係ではっきり言えると確信をいたしておるわけです。したがって、日本と北朝鮮との関係はやはり今の民間関係のレベルを進めていく、同時にまた朝鮮半島の緊張緩和のために南北の対話というのが基本となって進んでいくということが最も適切であると思いますし、そのために我々としても努力をしなければならない、こういうふうに考えております。  三者会談あるいは四者会談、いろいろな考え方、構想も出ておるわけでございます。我々はこれを決して否定するものではありません。しかし、南北の理解というのが進んで初めてそういうものに進んでいくわけでありまして、石橋委員長訪米されてシュルツ国務長官と会われたときに三者会談アメリカ政府に対してお話しになって、シュルツさんから、やはり基本は南北の対話じゃないかということを言われておりますから、現在においてアメリカは四者会談も言っておりますが、しかし朝鮮半島問題、緊張緩和に対する日米間の考え方、認識というものは完全に一致いたしておるわけであります。
  58. 河上民雄

    ○河上委員 安倍外務大臣、今度の中曽根総理の訪中の際に中国側と話し合った中の一つに、極東におけるSS20の問題について中国と共同歩調をとるというようなことを合意されたように新聞では伝えられておるのですが、時間もありませんので私ここで余り深く入りませんけれども、共同歩調というのは具体的に何を意味するのか。例えば国連で何かあったときに一緒にやるというようなことなのか、具体的にはどういうことを指しておられますか。
  59. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 SS20の展開、最近のとみに急速な配備というものは、中国にとりましては非常な脅威であるということを中国の当局者ははっきり言っておりまして、また日本にとりましても大変これは重要に考えておるわけでございまして、したがって日中はSS20の問題についてはいわば共通の認識を持っております。したがって、昨年の暮れ以来、我々が合意しましたように、お互いにSS20の問題については共通の関心事項であるし、だから情報の交換等もやっていきましょう、同時にまた、核軍縮に向かって、あるいはSS20の撤去に向かって、日中双方がそれぞれの立場でひとつ強く主張していきましょう、声を大にして世界に訴えていきましょう、こういうことを申し合わせたわけで、別に共同歩調をとってどうするというところまでいっているわけじゃなくて、情報の交換、そしてお互いにそれぞれの立場で、世界、あるいはソ連、あるいはアメリカに対しても核軍縮の推進、INF交渉の再開、あるいはSS20の撤去、そういうものを力強く訴えていこうということを申し合わせたような次第で、これについては呉学謙外相も私の考えに大変同調されたようなわけであります。
  60. 河上民雄

    ○河上委員 もう一つ最後になりますけれども、中国へおいでになられましたときに直接話題になったのかどうかその辺定かじゃございませんが、要するに時を同じくして二十一世紀委員会というものを日中両国でつくられた。日米間の賢人会議に当たるようなものとして発足されたということなんでありますが、そういう委員会の発足に当たって、特に二十一世紀に向けての日中関係を考えるときに、私は、今日の留学生制度についてもっと真剣に取り組まなくちゃいけないのじゃないか、こんなふうに思うのであります。  特に、先日も中国のある大学の助教授の方と懇談をいたしましたときに出たテーマなんですけれども、中国からは今現在研修生的な留学生がたくさん来ておられるのでありますが、それも大事だけれども、実はそれよりも、今中国で切実に困っているのは、留学生が中国へ帰って大学の助教授、教授になっていくそういう人材が足らない、これを早急につくらなければいけないというようなお話がございました。そういう意味で、留学生制度という場合に、一方では研修生的な留学生あるいは四年制の大学生というような形の留学生も非常に大事なんですけれども、いわゆる大学院生みたいな人を急速に育てていくために日本側として協力ができるならば大変いいのではないかというような話になったのでございます。そういう意味から、敗戦後の日本の復興過程でフルブライト留学生制度というのは非常に大きな役割を果たしまして、今日、日本外務省、あるいは大学の教授あるいは学長クラスにフルブライターの卒業生は非常にたくさんおられるように聞いておりますし、事実知っているわけでありますが、将来のことを考えると、いわば日中版フルブライト委員会というものを何とかっくってみてはどうかというふうに考えるわけでございます。  特に、日中国交回復に至る過程では周恩来首相やあるいは先般亡くなった廖承志先生のような、非常に困難な時代に歴史の風雪に耐えて日中間のかけ橋になった方がたくさんおられまして、その方々のおかげで今日の日中関係というのは土台が固まったんだと思うのでありますけれども、今後はああいう形の方を見出していくということは非常に困難になってくると思うのでありまして、そういう意味で、何かいわば高度な留学生制度というのを我々としてこの際考えてみてはどうか。合いろいろ制度的な制約はあると思うのでありますけれども、例えば日中間の借款の返済の何%かはこれに充てるとか、何かそういう工夫を相互の信頼と尊敬を基礎にしてやっていくべきではないか。そして、我々日本側からも中国に留学するというような制度も同時に考えなきゃいけないと思うのであります。これは今すぐお答えができないかもしれませんけれども外務大臣、せっかく今回首相の訪中を、何というのでしょうか、成熟期の訪中の第一歩というふうに銘打って行かれたわけですので、そのときに外務大臣の職にあられる安倍晋太郎政治家のお一人として、ひとつその点のお考えを聞かせていただきたいと思うのであります。これは一外務大臣とかそういうことでなく、現在この時期に政治にかかわっている者として、こういう問題について与野党を問わず協力すべきではないか、こんなふうに思うのでありますが、安倍外務大臣のお考えをいただきたいと思います。
  61. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日中両国にとりまして将来のことを考えると一番大きな問題、大事な問題だと思います。二十一世紀委員会もできたわけでございますが、この委員会もただ単に中曽根内閣の時代だけで終わりということでは意味のないことになるわけですから、やはり長期間にわたってこの委員会が大きな成果を上げるような形にもっていかなきゃならない。私は、両国のいろいろな委員が決まり、いよいよ発足ということを踏まえてそういうことを感じたわけです。日本には日本の事情があるのですが、やはり中国は長いサイドで考えていますから、日本もやる以上は少し長期的な基盤に立ったものでなきゃならぬと思います。留学生の交換であるとかあるいはまた研修生の受け入れであるとか、そういう問題についてもいろいろと具体的に進んでおりますけれども、これなんかも非常に大事な課題であります。問題は日本の受け入れ態勢、受け入れる側の問題であって、先ほどお話しのように日中間の長い歴史の中で人材がそれぞれ育っていったわけですから、やはり日本もただ人数だけふやせばいいというような考え方でなくて、もっと中国あるいは日本の歴史を踏まえた、そういう中でのこれからの取り扱い、アプローチが非常に大事であるということを私は強く感ずるわけであります。
  62. 河上民雄

    ○河上委員 余り時間がございませんのでこの辺でやめますが、私は、戦後の日米関係の中でフルブライターが果たした役割というのは非常に大きいと思いますので、日中版フルブライト委員会みたいなものをつくって、第二の周恩来、第二の廖承志、あるいは日本の中国研究者として第二の吉川幸次郎のような人を出していくような留学生制度というのをやはりつくっていくことが必要ではないか、こんなふうに思っておりますので、これはここで外務大臣から確たるお返事はいただけなかったのですけれども、ひとつぜひ外務省あるいは大蔵省、文部省、すべての省にわたって考えていただきたい、このように思います。  もう時間が余りございませんが、ただ最後一つだけ、これは数字だけでございますが、我が国から中国に今行っている留学生の数それから中国から現在日本に来ている留学生の数、これだけちょっと教えていただきまして、こういう問題を検討する基礎にしていきたいと思いますので、よろしくお願いします。
  63. 三宅和助

    ○三宅政府委員 お答えします。  昨年五月の在籍者数でございますが、中国から日本に来ております国費留学生が百七十五名、それから中国政府派遣の留学生、これが八百六十三名、自費が千九十八名ということでございまして、合計二千百三十六名という数字になっております。片や日本から中国に派遣されております留学生につきましては、日本政府奨学金が二名、中国政府奨学金が三十九名、自費四百五十七名、計四百九十八名というのが我々が把握している一番最近の数字でございます。
  64. 河上民雄

    ○河上委員 もうやめますが、なお、国立大学あるいは私立大学で中国側から教授などを呼ぶ制度をどの程度持っているかというようなことを、お答えがなければ今後調べて御報告いただきたいと思います。
  65. 長谷川善一

    ○長谷川説明員 中国からの教官あるいは研究者の受け入れは極めて多様なシステムで行われているわけでございますけれども、このうち、文部省の予算措置によりまして日本の大学に受け入れておりますものは、これは昭和五十八年度の数字でございますが、受け入れの方が二百八十八名、派遣しております教官、研究者は九十二名、そのほか、中国で行われました学術調査は十件、国際共同研究は五件となっております。以上が文部省が関係いたしました教官、研究者の交流の数でございます。
  66. 河上民雄

    ○河上委員 それでは、私立大学でどうなっているかについては今恐らく調査がないと思いますので、後ほどまたお知らせいただきたいと思いますが、私の質問はこれで終わりたいと思います。
  67. 中島源太郎

    中島委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時十三分休憩      ――――◇―――――     午後一時四分開議
  68. 中島源太郎

    中島委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。高沢寅男君。
  69. 高沢寅男

    ○高沢委員 午前中河上委員から先般中曽根総理と外務大臣が中国を訪問された関係でいろいろお尋ねがありましたけれども、私もそれに関連してこれから若干の御質問をいたしたいと思います。  今度中国を訪問された総理、外務大臣と中国側の指導者とのお話し合いの中で、いろいろ経済関係とかその他もありましたが、政治的な問題で一番重要なポイントは、いかなることがあっても朝鮮半島で戦争を起こしてはならぬ、起こさせてはならぬということを確認された、これで意見が一致した、私はこれが一番重要なポイントであった、こう思うわけです。そして、全面的にそういう立場を支持するつもりでございます。  ただ、それにしてはいささかちぐはぐな感じがするのは、ちょうど総理や大臣が中国を訪問されているそのときに、その朝鮮半島でチームスピリット84という演習が行われている。まさに戦争を想定した演習が行われていて、その演習の現場を見た新聞社の人たちの報道によれば、まさに実戦さながらというようなことがあったということをあわせて考えてみると、これは大変ちぐはぐな状況だというふうな感じがするわけですが、まずそのことについての大臣の御所見はいかがですか。
  70. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日中首脳会談において、日中はもちろんのこと、朝鮮半島においても戦争を起こしてはならない、それが日中両国責任である、中国も非常に強い決意を述べられましたし、中曽根総理もこれに関して強い日本側の決意を述べられたわけでございます。おっしゃるように、これはこれからの日中関係あるいはアジア全体、朝鮮半島、そういうものを考えるときに、この会談両国が誓い合ったということは非常に大きな意味を持つものであろう、こういうふうに思うわけであります。  そういう中でチームスピリット84の演習が行われている。しかし、これは今アメリカ軍隊が韓国に駐留しておるわけですから、毎年演習ぐらい行うのが軍隊の常としては当然のことではないか、こういうふうに思うわけでございますが、この演習が朝鮮半島情勢を非常に悪化させるとか緊張を激化させるとか、そういう方向にはつながらなかったのじゃないか。演習は演習として毎年のことである、こういうことではないだろうか、そういうふうに理解しておるのです。
  71. 高沢寅男

    ○高沢委員 その演習の評価についてはまだ後で触れたいと思いますが、戦争が絶対にあってはならぬという立場を、今度は逆に、それではもしまた朝鮮半島で戦争が起きたらどうだろう、もう一度朝鮮半島で戦争が起きたときに直接その戦争の当事者になるのは一体どことどこだろう、こう私も考えてみました。考えてみると、当然北の方では朝鮮民主主義人民共和国、南の方では軍事境界線のこちら側にある韓国、またその韓国には今大臣も言われたアメリカ軍がいるわけですから、そうするとこの朝鮮の北と南プラス・アメリカ、この三者は朝鮮でもしまた戦争が起きた場合にはどう見てもその戦争の当事者になるものではないか、こう私は考えます。この点についての大臣の御所見と、あわせてもう一つ進めてお聞きしますと、今度北の方から提案している三者会談というのはまさにそういう三者で会談をやろう、こう言っているわけでございまして、ここでこの朝鮮半島の緊張緩和あるいは平和を求めるために三者で会談をやろうというならば、この三者こそ会談をするに一番適した三者ではないのか、こんなふうに思いますが、これも含めて大臣のお考えはいかがでしょう。
  72. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 仮に朝鮮半島で戦争が起きた場合の直接当事者はどこの国かといったような問題について我が国として予測をすることはできませんし、軽々に予測を述べるということは適当でないと私は思うわけでありますが、いずれにいたしましても我々が中国側と話した際も、北朝鮮は絶対に南、韓国には侵略はしないのだ、侵入はしない、これは中国が責任を持ってはっきり確言できる、こういうことを言っておられますし、我々が韓国の当局と話し合った中にあっても、これはしばしば確認いたしたわけですが、韓国としてはあくまでも防衛というのが中心であって、韓国が北に向かって侵入していくということは絶対あり得ない、こういうことも何回か明言しているわけでありますし、アメリカの駐留軍がおりますが、恐らくこれは米韓条約に基づいてのものでありましょうが、これもあくまでも防衛的なものである、私たちはそういうふうに考えております。したがって、そういう中での戦争が起こるということは到底あり得ないというふうに私は考えてもおるわけであります。確かに、かつての朝鮮戦争では北朝鮮側に中国の人民義勇軍が参加をし、韓国には国連安保理の決議に基づいて米国を初め十六カ国の軍隊が国連軍として派遣をされたという経緯が歴史の中ではあるわけでございますが、今後の事態を考えてみると、そういう歴史は絶対繰り返されてはならないわけだし、今の状況からそういうことにはなり得ない、あり得ない、こういうふうに私は確信をいたしております。
  73. 高沢寅男

    ○高沢委員 私も、昨年の九月のちょうど月末のころでありますが、社会党の石橋代表団の一員として中国へ参りまして胡耀邦総書記とお会いをしたときに、恐らく大臣がお聞きになったのと同じ趣旨かと思いますが、私たちに対しても胡耀邦総書記から朝鮮問題の説明がありました。それは簡単に言えば、ちょうど我々が行ったときと同じ時期にアメリカのワインバーガー国防長官が来ておりまして、鄧小平さんとワインバーガー国防長官の会談の中で朝鮮問題について鄧小平さんはこういうふうに言いましたと。つまりそれは簡単に言えば三つの柱です。一つは、中国は朝鮮の南北の統一されることを強く支持しておる。それからまた、北の方から南を攻めることはない、こういうふうに中国は見ておる。それから、今度は逆にもし南から北を攻めるようなことがあれば中国は黙って見ちゃいない。この黙って見ちゃいないという言葉は、裏返して言えばそういうときは我々もやりますよというふうな意味になるわけですが、この我々もやりますよというふうな事態は絶対にあってはならぬということではあるわけです。  しかし、現実には一九五〇年の朝鮮戦争、あのときは今大臣もおっしゃった、ちょうど当時は三十八度線を挟んで北と南で始まったわけです。初めは北の方が優勢で、ずっと釜山の近くまで追い込んでいった。それに対して、一九五〇年の九月に日本からマッカーサー司令官の率いる国連軍、中身は米軍であったわけですが、それが仁川に上陸をして、そして今度は米軍と韓国軍が一緒に三十八度線を越えてずっと北に攻めていって、いよいよ鴨緑江に迫るというところまで行ったのが十月であったわけです。この段階で、今度は中国の側から見れば、鴨緑江まで迫ってくるようでは自分の安全が危ないというような立場から中国の人民義勇軍が朝鮮に出てきて、ここで朝鮮の南北とこれに今度はアメリカ、中国、こういうふうな戦争に発展したという経過があるわけであります。  私は、そうなってはいけないという前提を持ちつつも、もしもう一度朝鮮半島に戦争が起きたら、どうもそういう発展をたどる可能性が極めて大きい、こう言わざるを得ないと思うわけですが、この点について、そうなってはいかぬという大臣のお気持ちはよくわかりました。けれども、この朝鮮半島については絶対に心配ございませんということは今だれも言えない状態です。その危険性が現にあるわけで、その場合に今のような発展をたどる危険性ということについての大臣の御所見をお聞きしたいと思います。
  74. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 想定化すればいろいろなことが考えられるわけであります。しかし、我々は軽々にそうした想定を差し控えなければならぬと思います。  いずれにいたしましても、とにかく南北の緊張をあおって、そして南北が戦争に突入するというようなことはどんなことがあっても避けなければならぬ。幸いにして中国との友好関係において北もしばしば中国にも明言している。中国が言っているように絶対に南には入っていかない、南の方の韓国も北には入っていかない、こういうことを言っておるわけでございますから、そういう中でアメリカも中国も日本もとにかく緊張緩和、そういう事態は絶対避けなければならぬということで、この点については三国がみんな共通の非常に強い関心を持っておりますし、そのための努力を惜しまないという形でいろいろの会談構想というのが出ているわけですから、我々としてはそうした周辺のこれからの緊張緩和の努力を強力に進めていけば、南北の話し合いというものもだんだんと芽を吹いてくる可能性が出てくるのではないか。そういう方向に期待しておりますし我々はそういう方向にどうしても持っていかなければならない。むしろ逆の方向に持っていったら、これは大変ですから。ですから、どうしても持っていかなければならぬ、そういうふうに存じております。
  75. 高沢寅男

    ○高沢委員 私も、日本の国を代表する立場外務大臣の口から、もし朝鮮で次に戦争が起きたらこの国とこの国がこうなるだろうというふうなことはお控えになっておる、その事情はよくわかります。けれども、私の見方としてみれば、もともと朝鮮が南北に分かれて戦った、その結果一応休戦はまとまった、しかし、この南北のにらみ合いとそこに紛争の起きる、特に今では三十八度線ではなくて軍事境界線、こうなっているわけですが、あの境界線をめぐる小さい意味のトラブルというのはしょっちゅう起きておるという状態に現実にあるわけです。そうして、それに対して韓国とアメリカの間には御承知の米韓軍事同盟条約があるわけです。この米韓軍事同盟条約というのは、朝鮮半島で何かあれば米韓は一緒に戦うぞというまさに軍事同盟条約ですね。他方、それに対して今度は朝鮮民主主義人民共和国の側には、あの中朝の相互援助条約あるいはソ朝の相互援助条約というのが現にあるわけですね。これもまたそちら側から、もしこの朝鮮半島で戦争状態が起きたときは中国と朝鮮は一緒にやりますよ、ソ連と朝鮮は一緒にやりますよ、こういう条約の枠組みが、あそこで両者がっぷり組み合っておるという状態にあるわけですから、もしあそこで何かの事態から戦争状態が起きればそういう枠組みと枠組みがまさにぶつかり合う、戦争になるというこの危険性、可能性について、これはだれも目をつぶることはできない、こう思うわけですが、さてそういう現状、状況の中で、先ほど言いましたチームスピリットの演習が行われているわけです。先ほどの大臣の御説明では、これはどうせ毎年やっているんだから、ある意味においてはあれは年中行事のようなもので大した意味はないんだというような意味にちょっと私は受けとめたのですが、私は決してそういうものじゃないだろうと思うのです。年中行事であるからあんなものは無視していいということではなくて、現実にこのチームスピリットの演習が始まるときはその相手と想定されている北朝鮮の、朝鮮民主主義人民共和国の側は、例えば臨戦態勢をとるとか、例えば非常警戒態勢をとるとかいうふうな体制を現にとっているということは、これは彼らはあれはおれに向けてやっているんだという認識を持っていることは間違いないわけであります。  そこで、今度中国を訪問された際、このチームスピリットのこういう軍事演習というものについて、中国側の指導部と何かこのことの認識についてお話をされたようなことはあるのかどうか、この辺はいかがでしょうか。
  76. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 チームスピリット84とかそういう問題については、いろいろ会談をやりましたけれども、そういう中では一切話は出ておりません。
  77. 高沢寅男

    ○高沢委員 私は、この問題は大変重要な問題であるから、今度はそういう話は出なかったということでありますが、これからいろいろ中国との接触をされる、そういう状況の中で、この問題についての中国側の見解を求めてみよう、見解を聞いてみようというようなお考えは、大臣おありでしょうか。
  78. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは別に、先ほど申し上げましたような我々の認識ですから、あえて中国側と話す必要のない問題だ、こういうふうに思います。
  79. 高沢寅男

    ○高沢委員 朝鮮半島における戦争の危険性ということに関連して、もう一つお尋ねしたいことがあります。  それは、韓国には、約千発と言われますが、アメリカの核兵器があるということが明らかになっているわけです。御承知のとおり、アメリカは、核兵器についてはあるとかないとか言わないというのがアメリカの公式な立場である、こう聞いているわけです。しかし、韓国にあることについてはアメリカはこれを公認しておるというふうに私は受けとめておりますが、このことについては、私は、韓国にある核兵器というのはアメリカから見ても特別な位置づけを持っておるというようなものではないかと思うのですが、この点については、大臣の御所見はいかがですか。
  80. 橋本恕

    橋本(恕)政府委員 ただいま御指摘の点につきましては、私ども日本政府は全く承知しておりませんで、また、アメリカ政府からも韓国政府からも何らの通報も受けておりません。
  81. 高沢寅男

    ○高沢委員 すると、このことについてはいかがですか。これは昭和五十年の六月のことですが、当時はシュレジンジャー国防長官がおられたわけですが、新聞記者会見の場で、記者からこういう質問がありました。北朝鮮が韓国を侵攻した場合、アメリカは核兵器を使うのか、こういう質問に対して、我々はいかなる選択も除外することができない、もし状況が必要とするならば、慎重にその使用が考慮されるだろう、こういうふうな当時のシュレジンジャー国防長官の答えがなされているわけですが、これは、アメリカの核兵器は韓国にありますよ、そしてそれが必要な場合には使いますよ、こういうアメリカ当局者の見解の表明だ、私はこう思うのでおりますが、この点はいかがですか。
  82. 橋本恕

    橋本(恕)政府委員 先生御指摘のとおりに、シュレジンジャー国防長官が、確かに一九七五年の六月二十日に国防省におきます記者会見の席上、まさに先生御指摘のような会見での発言をされたということは私どもよく承知しております。しかしながら、これはアメリカ政府高官が当時国防省において一方的に行った記者会見ということでは承知しておりますが、先ほども御答弁申し上げましたとおりに、韓国の内部に核兵器があるか否かにつきましては、アメリカ政府からも韓国政府からも今日に至るまで全く何の通報も説明も受けてないというのが実情でございます。
  83. 高沢寅男

    ○高沢委員 そうすると、記者会見で言ったものであるということですが、しかし責任ある国防長官がそういう発言をされたということは、当時のその段階におけるアメリカ政府一つの公的な方針であった、私はこう受けとめていいと思うのですね。それはその後、今は一九八四年であるわけですが、その間の時間の経過の中で、現在のアメリカ政府の公的な政策としてこれが引き継がれておる、受け継がれておるということは一体どうなのか。私は明らかにそうではないかと思うのですが、こういう点について、日本政府が、これは朝鮮問題に関する極めて重要な問題でありますから、アメリカ側にそういうことについて今はどうなんだ、そういうアメリカの公的な方針が今でも維持されているのかどうかというふうなことについてお尋ねになった、そういうことはございますか。
  84. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 先ほど局長が言いましたように、これはアメリカが核の存否を明らかにしないという基本政策ですから、仮に日本が尋ねてもアメリカが核の存否を明らかにするはずがありませんし、日本としても、そうしたアメリカとの間で、どこに核があるとかないとかいうことについて、これまで、韓国だけじゃなくてその他の国々についての一切の情報の交換とか、またアメリカ側がこれを説明したということは一切ありません。
  85. 高沢寅男

    ○高沢委員 私がお聞きしたのは、シュレジンジャー長官は、朝鮮半島においてこれこれこういう事態が出れば核を使うことを排除しない、その可能性を排除しない、つまり、やりますよということを言った。つまり、このアメリカ政府の方針というものが今でも持続されているのかどうか。このことについて、日米というのは非常に頻繁ないろいろな会談や意見交換をされておるわけですから、そういうことについて向こうに確認をされたことがあるのかどうか、これをお尋ねしたわけです。
  86. 橋本恕

    橋本(恕)政府委員 現在までのところ、先生御指摘の確認をアメリカ政府にしたことはございません。
  87. 高沢寅男

    ○高沢委員 これはむしろすべきではないのか、ございませんだけで済む問題ではないと私は思うのであります。そういうふうなことをアメリカはもし万一のときに本当にやるのですか、こういうことを――もちろんそこには、我々からすればそんなことをされては大変だ、こういうことが前提にあるわけですが、やはり尋ねるべき問題ではないのか、こう私は思います。  それに関連をしてもう一つ、それと似たケースとしてお尋ねをしたいことがございますが、ヨーロッパでは、アメリカの戦域核ミサイル、パーシングⅡとかあるいはトマホーク、これが現に配備されているわけです。この場合には、西ドイツに何発、オランダに何発、あるいはまたイタリアに何発、イギリスに何発、これはあるかないか言わないどころじゃない、非常にはっきり、置くぞ、こういうふうに新たに配置するぞ、こう言ってやっているのがヨーロッパの状況であるわけです。これと今度、アジアにおける対応する関係で、アメリカが我が国にも、トマホークを積んだ戦艦ニュージャージーが間もなくやってくるというふうな情勢であるわけですが、例えば韓国にパーシングⅡあるいはまたトマホークというふうな戦域核ミサイルを置くというようなことが出てくる可能性はないのかどうか、この点については大臣、御所見はいかがですか。
  88. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 韓国とアメリカとの間で軍事問題についてどういう話し合いがされておるか、これは私どもは承知しておりませんし、また、日本が軍事的に参加するということは全くあり得ないわけですから、それは韓国とアメリカのみの問題であろう、こういうふうに思うわけで、日本立場からすれば、あくまでも日本の非核三原則を堅持していくということが現在のアジアの中で、アジアの平和を求めていく上において一番大事なことではないだろうかと思うわけですし、同時にまた、朝鮮半島の緊張緩和――緊張激化のことを考えるのではなくて、緊張緩和に向かって日本は努力をしていく方が日本外交のあり方としては正しいあり方ではないだろうか、こういうふうに思っております。
  89. 高沢寅男

    ○高沢委員 私がこういうことをお尋ねするのは、昨年の、御承知のウィリアムズバーグ・サミット中曽根総理がヨーロッパヘのアメリカの戦域核ミサイルの配備ということについては大いにやりなさい、断固やるべきだということを主張されたということを我々は知っているから、そうするといよいよアジアで、例えば朝鮮の韓国にというふうな事態が出てきたときに、同じように大いにやるべきだ、やりなさいというふうなことが中曽根総理の方針として出てくるようなことが万が一にもあっては大変だというような考え方からお聞きしているわけですが、この点は、中曽根総理のことでこれを外務大臣にお尋ねするのもちょっとあれかと思いますが、しかし、少なくも日本政府の方針としてはそういうことはあり得ない、こういうふうに受けとめてよろしいですか、もう一度お聞きしたいと思うのです。
  90. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは朝鮮半島、特に韓国に、米韓関係で軍事的ないろいろとコミットするとかそういう段階において、我が国がこれにとやかく言う、また協議に参加するということは、我が国の憲法あるいは基本的な安全保障政策、防衛政策、そういうものからそれは到底あり得ないことであって、これはもう中曽根総理大臣といえども――いえどもと言ったら問題があるかもしれませんが、あの中曽根総理大臣もその基本的なあれを、我が国の立場を逸脱することはできない、そう思います。
  91. 高沢寅男

    ○高沢委員 先ほどチームスピリットの演習のことについて大臣のお答えの中で、アメリカは韓国に駐留しているのだからこの両者がそういう演習をやるのはある意味においてはそれはもうちっともおかしいことじゃないという意味のお答えがあったわけですが、毎回そうですけれども、ことしもそうだったわけですが、このチームスピリットの米韓軍事演習には日本にいる米軍が出ていって、そして日本海においてあるいはまた朝鮮半島の沖合において、朝鮮半島においてこの演習に参加している、こういう実態が明らかにあるわけですね。  ここにはその演習の状況を報道した新聞がございますが、これは三月二十日の朝、韓国の東南部浦項海岸で行われた米韓合同上陸演習、これに参加しているF4それからA4は山口県岩国基地から出ていった。F16は米第五空軍ですね。司令部は横田にあります。この指揮下にある沖縄嘉手納基地から韓国へ出ていった、そういう飛行機である。それからまた、米海兵隊はロバート・E・へーベル少将率いる沖縄の第三海兵水陸両用部隊である。沖縄から出ていっているわけですね。それから、はるか沖合には米第七艦隊の空母キティーホーク、それと横須賀、沖縄に寄港後韓国沖に着いた旗艦ブルーリッジ、佐世保基地を母港とする揚陸艦セントルイスなど、こういう艦隊が二十数隻。つまり、在日米軍がそっくり韓国へ引っ越してきたような感があるというふうなことが報道されているわけですが、そうすると、このチームスピリットの演習はアメリカと韓国でやっているのだということだけでは済まない。日本の基地が要するにこの演習の基地になっておる、発進基地になっておる、こういうことはもう明らかにあるわけですが、この点については我々日本は、それは日本はかかわりないことでござんす、それはアメリカ、韓国がやっていることだから我々は関係ございませんということにはとてもならぬと思うのですが、この点は大臣、いかがでしょうか。
  92. 北村汎

    ○北村政府委員 ただいま委員が御指摘になりましたように、チームスピリットの演習には毎年在日米軍が参加をいたしております。そして、我が国は安保条約に基づいて米軍の駐留を認めておるわけでございますので、その米軍が必要に応じて必要な場所に移動するということは、これはまあ軍隊というものの属性というものから当然のことであるということで、在日米軍がチームスピリットの演習を含めましていろいろな演習とか訓練に参加するというために移動していくということは、これは何ら安保条約上問題のないところであると私どもは考えております。  そういうことで、我が国の施設、区域を使用する在日米軍が本件の演習に参加をするということは、これは軍隊の単なる移動ということで私どもは考えております。
  93. 高沢寅男

    ○高沢委員 ちょっと今のは、アメリカ局長の御説明は、演習のための移動である、訓練のための移動であり何ら問題ない、こういうお話でありましたが、それではこれ、本当の戦争になって在日米軍が朝鮮半島へ出動していく、こうなったときはこれはどうですか。これは安保六条でしょう。この場合にはこれは事前協議の当然対象になるわけです。この場合には差し支えございません、何ら問題ないということにはなりませんね。本当の戦争で在日米軍が朝鮮半島へ出動するというときは第六条による事前協議の対象になるわけですが、これは私が先ほど来ずっと申し上げてきたことの結論になりますが、朝鮮半島に戦争は絶対にあらせてはならぬ、南北のお互いの信頼感を、対話を進めるようにしなければいかぬと、繰り返しきょう大臣言われました。そういうことを日本立場として進めていくには、そういう朝鮮半島の戦争に日本はいささかたりともコミットする考えはありませんよ、朝鮮半島の戦争に日本はいささかたりとも手をかす考えはないということを明らかにした上で初めて、あなた方南北話し合いをしなさい、仲よくしなさいということが言えるのじゃないですか。そうすると、そのいささかも日本は朝鮮半島の戦争に手をかす考えはないということを明らかにするには、大臣、仮定の問題と言わずに、仮にそういう朝鮮半島の戦争状態が起きて在日米軍の出動が問題になったときは絶対にこの事前協議はノーである、絶対に出動は認めないということを明らかにされるということが、これからの朝鮮の平和に向かって日本が発言していくのにまことに重大な前提条件になると私は思いますが、いかがですか、大臣
  94. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは安保条約の解釈の中で第六条についての解釈、そしてその中での事前協議条項についての説明を北米局長はしたわけですが、その場合においては、いわゆる有事、朝鮮半島有事の際事前協議を、米軍の出動についてはなるわけで、これがイエスもあるしノーもあるということは、これまで我が政府として長い間そういう立場を堅持してきたところでありまして、この解釈は今後とも変える考えはありませんし、これは安保条約という日本の安全と極東の安全というものを考えるとき、そうした有事の際というのは想像はしたくないわけですが、そういう場合においてやはり今の解釈は、今日それなりに当を得たものである、こういうふうに思うわけです。これは日米安保条約の解釈ですが、しかし今の朝鮮半島に関して言えば、これはあくまでも戦争を起こしてはならない。戦争を起こさないための努力というものをやらなければならぬし、そして、その中で日本の役割というのは非常に大きいのだという点については、我々は人一倍認識もしておりますし、また努力も続けておるわけであります。  基本的に申し上げますれば、今の世界情勢、特にアジアの状況は非常にいいところにいっているのじゃないか。。というのは、日中関係が今までにないほど安定しておるわけですし、それから米中関係も非常によくなってきておる。日米関係安保条約を通じての深いつながりを持っている。そしてまた、この三者が朝鮮半島に非常に深いかかわり合いを持っているわけですから、この三者が軌を一にして、とにかく考えを一にして平和を、朝鮮半島の緊張緩和をやろうというような状況が今生まれておるわけです。ですから、これを大事に育てていけば、私たちは朝鮮半島の緊張緩和、そして民族の統一とか南北の話し合い、そういうところに持っていくことは決して不可能な状況じゃない。そういう朝鮮半島を取り巻く状況は、今戦争のことを考えるよりはむしろ平和の方へ動いていく可能性の方が非常に強い、そう思っておりますし、これは育てていかなければならぬと我々は思って努力を重ねておるわけでございます。
  95. 高沢寅男

    ○高沢委員 事前協議だからイエスもあればノーもある、大臣もそれは一般論としておっしゃいました。私は、我が国にアメリカの核の持ち込み、これが出てきたときの事前協議は、イエスもあればノーもあるじゃなくて、これはノーだ、こうなっているわけだ。それと同じ重要性を持って朝鮮半島に米軍の出動、これはもうイエスもありノーもあるじゃない、これはノーだということを明らかにされることが、今言った朝鮮半島の周りの平和の環境を進めるまことに重大な一歩である。日本のなし得るのはそれじゃないですか。ほかに日本は一体何ができますか、朝鮮半島の緊張緩和のために。日本がなし得るのはそれだ、私はこう思うのです。  そこで、先ほど北村局長が言われた、演習ならばと言われたのですが、本当の戦争での出動に対してノーと言うならば、その戦争のいわば練習、訓練のための演習に対しても日本の基地は使わぬでくれ、チームスピリットには日本の基地は使わないでもらいたい。もう一歩進めば、チームスピリットはもうやめなさい、いまや日中はこういう関係にあります、米中だってこうじゃないか、そして今朝鮮半島をこうやって平和にしようというときに、毎年毎年朝鮮と戦争をやるぞというチームスピリットなどはもうやめなさい、これを言うのが日本の平和のためのまことに大きな役割じゃないのか。それをやっておいて、日本が南北朝鮮に対して、さあひとつ話し合いをしなさい、戦争はやめなさい、こう言えば本当の力ある発言になるのじゃないか、私はこう思うわけであります。そういう点において、今までの外務省日米関係や日韓関係を進めてこられた、そういう経路から見れば、きょう私の言うことはいささか乱暴な議論かもしれません。しかし、乱暴な議論ということも、たまにはそういうふうなところに発想の場を置いて考えてもらいたい。そうでないと、本当の平和に向かって大きな一歩を踏み出すということはなかなかできぬのじゃないかということを申し上げたいわけです。  既に約束の時間が来ましたから、最後のこのことは私の意見として、大臣に対する強い御要望として申し上げまして、終わりたいと思います。
  96. 中島源太郎

    中島委員長 次に、玉城栄一君。
  97. 玉城栄一

    ○玉城委員 私は、今国会でも問題になっております例のアメリカ陸軍特殊作戦部隊の沖縄配備の問題についてお伺いをいたします。  この問題が明らかになって以来、現地沖縄におきましては大問題になっておりまして、なぜ今沖縄にこういうものが入ってくるのか、そういうことで、県議会はもとよりでありますが各市町村議会等におきましても絶対容認できないという決議がされて、既に外務省の方にもそういう要請団が来ていることはもう御案内のとおりであります。  そこで改めて、特殊作戦部隊、いわゆるグリーンベレーの沖縄配備の問題についてその経過をお伺いいたします。
  98. 北村汎

    ○北村政府委員 お答え申し上げます。  グリーンベレーにつきましては、最近米国におきましてその有用性が非常に認められてまいりました。ここ二年ぐらいの間にいろいろこの特殊部隊の関係の部隊が再編成されるというようなことが行われておりまして、そういうような意味で、アメリカのそういう作戦上の問題については一般的な説明を我々は受けておりました。これを沖縄に一個大隊配備するということにつきましてはこの三月一日に政府アメリカ側から内報を受けました。そうして三月十七日に公表をすることになっておる、それまでは外部に対して明らかにすることは差し控えてほしい、こういう内報を受けたわけでございます。
  99. 玉城栄一

    ○玉城委員 いや、ですからもっとあるでしょう。どれくらいの数、どこにどうするとか……。
  100. 北村汎

    ○北村政府委員 今般沖縄のトリイ通信施設に配備するということになりました米陸軍特殊部隊、通称グリーンベレーと呼ばれておりますが、これは最終的には一個大隊、約二百五十名から三百名程度の規模でございますが、隊長はジェームズ・エステップ中佐でございます。そしてこの配備は段階的に行われるということでございまして、第一段階としては、ことしの三月に約三十名程度の配備を皮切力といたしまして、その後大体夏までに百五十名ぐらい、その後残りというようなことで、最終的には先ほど申しましたように二百五十名から三百名程度の一個大隊の部隊が沖縄に配備されるということでございます。
  101. 玉城栄一

    ○玉城委員 この特殊作戦部隊、通称グリーンベレー、よく言われているわけでありますが、その実態については私たちよくわからないわけです。それでこの際ぜひ御説明いただきたいのは、この特殊部隊がこれまでどういう国々に配備をされ、これまでどういうことをやってきたのか、そういうことについてちょっと概略御説明いただきたい。
  102. 北村汎

    ○北村政府委員 お答え申し上げます。  米陸軍特殊部隊と申しますのは、例えば空挺、偵察、通信その他軽兵器、重兵器等のいろいろな兵器の操作などのいろいろな技術的分野で十分に訓練をされた優秀な兵隊たちから成り立っておるいわば少数精鋭の部隊というふうに聞いております。  この米陸軍特殊部隊と申しますのは、ノースカロライナ州のフォートブラッグというところに配置されております第一米陸軍特殊行動軍の管理下にございまして、その人員は全部で約三千六百名ということのようでございます。現在フォートブラッグに第五及び第七特殊部隊のグループ本部がございます。またマサチューセッツ州のフォートディベンズに第一〇特殊部隊グループ本部が置かれております。  また在外では西独及びパナマにそれぞれ第五特殊部隊グループ及び第七特殊部隊グループ所属の一個大隊が配備されておると承知しております。  一九八四年度の米国防報告におきまして明らかにされておりますとおり、米国政府は一九八四年の会計年度中に新たに一特殊部隊グループ本部及び二個大隊の設立を計画いたしまして、この特殊部隊グループは第一特殊部隊グループというふうに呼ばれておりまして、その本部及び一個大隊がワシントン州のフォートルイスに置かれており、他の一個大隊が今回沖縄のトリイ通信施設に配備される計画である、こういうふうに承知いたしております。
  103. 玉城栄一

    ○玉城委員 この特殊部隊は、今西独それからパナマとおっしゃいましたけれども、海外に配備されているのはそこだけですか。あるいはこれまでも含めて……。
  104. 北村汎

    ○北村政府委員 海外に配備されておる特殊部隊は、先ほど申し上げましたように、西独とパナマそれに今回沖縄ということでございます。
  105. 玉城栄一

    ○玉城委員 今はそうかもしれませんが、よくわかりませんが、これまではどういう国々に配備されておりましたか。
  106. 北村汎

    ○北村政府委員 私ども過去の特殊部隊の配置その他についてつまびらかな情報を持っておるわけではございませんが、私どもが承知しておりますところでは、この特殊部隊にベトナム戦争が終わったころから縮小されてまいりまして、そうして部隊の規模もずっと縮小されていったわけでございますが、それが先ほど申し上げましたように、ここ二年ぐらいの間にその有用性が非常に認められるようになって部隊が再編成されていったわけでございます。したがいまして、現在西独とパナマと、今回沖縄ということになっております。その以前のことにつきましては、ベトナム戦争以後はずっと部隊が縮小されておりましたから、どこにいたということについては私どもつまびらかにしておりません。
  107. 玉城栄一

    ○玉城委員 ですから、この特殊部隊、私たちもその実態がよくわかりませんので、お伺いしているわけですけれども、過去にこの特殊部隊がどういう国々に配備されていたかということは非常に重要な問題なんです。  では、私が読んだいろいろな本の中に、例えば中米のホンジュラスとか中近東のレバノン、モロッコとかリベリア、ソマリア等々の国々は配備されていたことがあったわけですか。
  108. 北村汎

    ○北村政府委員 ただいま委員が御指摘になりました中米の国であるとか、あるいは一部中東の国もあろうかと思いますが、こういう国で特殊部隊が共同訓練といいますか、その国の部隊の戦技、技量を上げるために訓練をしたということは、私ども米側の資料でも承知しておりますが、特殊部隊がその国に配置されておったということではないと思います。
  109. 玉城栄一

    ○玉城委員 これはまた後で伺います。  それで、特殊作戦部隊、今回沖縄に配備する、極めて特殊な任務を持つ部隊であるということからしまして、いわゆる安保条約で言う事前協議の対象にならないということについては一応理解いたしますが、特殊性のある部隊だけに、やはり事前に日米間でこの部隊配備について何らかの話し合いがされたのか、協議があったのかなかったのか。ただ外務省としては、アメリカ側から事前にそういう通報があった、はい結構ですよと了解して、配備する沖縄の方にそういうふうに伝えたというだけなのかどうか、その辺いかがでしょうか。
  110. 北村汎

    ○北村政府委員 アメリカにおきましては、いかなる攻撃に対してもこれに有効に対応し得る体制をとる、これが抑止の基本であるというふうになっておりまして、特に小規模の紛争についてそのエスカレーションを回避しながらこれに対処する、こういう観点からこの陸軍の特殊部隊というものの有用性についての認識が高まってきておるということでございまして、これを極東の方面に配置するということは、この地域における抑止力を高めるということで今回の決定になったものであると私どもは考えております。  それで、委員が御質問になりました、事前に日本政府とこの件について協議があったかということでございますが、先ほど御説明いたしましたように、昨年の夏ごろからこの特殊部隊についての一般的な説明を受けたことはございますが、その時点においては、沖縄に配備するというようなことは決定されていたわけではないので、沖縄に一個大隊を配置するということをアメリカから通報を受けましたのはことしの三月一日でございまして、それが十七日に発表された、こういうことでございます。
  111. 玉城栄一

    ○玉城委員 そうしますと、外務省とされては、去年の夏ごろから我が国にこの部隊が配備されるということは知っておったということですか。
  112. 北村汎

    ○北村政府委員 昨年の夏ごろから、米国において特殊部隊の有用性というものが最近非常に認められてきておるとか、あるいは特殊部隊とはどういう部隊であるとかというような一般的な説明は受けましたけれども、決してこれを日本、沖縄に配備するということを去年の夏の段階で知らされたわけではございませんで、日本に配備するということを政府に申してまいりましたのは先月の三月一日である、こういうことでございます。
  113. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで、三月一日にはっきりと米側としては日本に、そして沖縄に配備したいということを正式に申し入れた、通報してきた。そのときに北村さんとしてば、そうですか、わかりました、それでその旨配備先の沖縄知事に伝えた、そういうことですか。
  114. 北村汎

    ○北村政府委員 この三月一日にアメリカから沖縄に陸軍特殊部隊の一個大隊を配置するという内報を受けまして、その際、政府といたしましては、米国による沖縄への特殊部隊配備というものは、極東地域においても抑止力を一層万全なものにするという考慮で行われたものであると考えたわけでございます。そこで、三月一日に内報を受けまして、同日、沖縄県に対しまして米国からあった内容をそのままお伝えしたわけでございます。
  115. 玉城栄一

    ○玉城委員 そのままお伝えしましたとおっしゃる、これは何か話を伺っておりますと、外務省は米側のメッセンジャーボーイみたいな、物を伝えるというだけのようなことしかやっていないようですけれども、これはこの部隊の特殊性からいいまして、米側としても前もってその配備についていろんな配慮をして外務省に通報してきたわけでしょう。それを皆さんとしては、はいそうですかとその日に伝える、これは何か物を伝えるだけの役目ですね、メッセンジャーボーイみたいな感じがしませんか、いかがですか。
  116. 北村汎

    ○北村政府委員 先ほどからも御答弁をいたしておりますように、アメリカの防衛体制というものは、いかなる侵略あるいはいかなる危機に対しても有効に対応できる体制を常時備えておくことにあるということで、今回の特殊部隊の極東方面への配置ということにつきましても、これはその抑止力を一層万全なものにするためであるということは明らかでございますので、日本政府といたしましても、その配置というものは日本の安全及び極東の平和と安全の維持に資するものであるという判断をいたしたわけでございます。
  117. 玉城栄一

    ○玉城委員 なぜ今沖縄にこういう特殊な部隊が配備されるのか、一体その目的は何でしょうか。
  118. 北村汎

    ○北村政府委員 配備の目的と申しましても、先ほど来お答えいたしておりますように、極東における抑止力を高めて極東の平和と安全、日本の平和と安全に資するということが目的であると思います。  なぜ沖縄に配備するかということにつきましては、別にアメリカ側からその説明を受けたわけではございませんが、沖縄にはトリイ通信施設というところがあって、そこに現在おります部隊が引き揚げていくということもありまして、その後の施設が利用できるということも一つの理由であったろうし、あるいはまた、訓練する施設、区域があるということもその理由であったろうと思いますけれども、特になぜ沖縄に配備するかということについては、特に説明は受けておりません。
  119. 玉城栄一

    ○玉城委員 それは今おっしゃいました極東における抑止力を高める、あるいは平和と安全云々ということからしますと、別に沖縄でなくてもいいわけでしょう。例えば横田であってもいいし岩国であってもいいし、横田でなくて岩国でなくてなぜ沖縄にこの特殊部隊が配備されるのか、その目的は何でしょうかということを伺っているのです。
  120. 北村汎

    ○北村政府委員 先ほどから申し上げておりますように、極東地域においても抑止力を万全なものにするということで今回の配置になったということであると思います。  なぜ配置先として沖縄を選択したかということにつきましては、先ほども申し上げましたけれども、考えられるところとしてトリイ通信施設の現存部隊がこれから次第に撤去される計画であるということ、それに伴って同施設を米陸軍特殊部隊の駐留のために使用することは可能であるという便宜がある点、あるいは沖縄には米陸軍部隊が存在をいたしまして行政面あるいは後方支援面及び訓練上の支援を与え得るというようなことがあろうかと思っております。
  121. 玉城栄一

    ○玉城委員 いや、ですから全然あなたは私の質問に的確に答えていらっしゃらないのです。いろいろトリイ通信施設はアメリカの兵隊が引き揚げるのでそこがどうのこうのと、それはちゃんと米側はそういうふうに言っているのですか。  それともう一つは、盛んに抑止力ということをおっしゃいますけれども、抑止力を万全に高める、そのことは一体何に対する抑止力なのですか。グリーンベレーが沖縄に配備される、何の抑止力になるのですか。例えば、おっしゃる核の抑止力、それについては、いい悪いは別にしてもそれは理解できます。三百名余のグリーンベレーがそんなに極東の平和と安全の抑止力、そういうことからすると沖縄でなくともいいわけでしょう。例えば横田であってもあるいは岩国であってもいいですね。
  122. 北村汎

    ○北村政府委員 沖縄を配置先として選択をいたしましたのは米軍の決定でございますので、私どもが米軍がその決定をするに至った、なぜ沖縄を選んだかということについて特にアメリカ側にただしたことはございません。ただ、先ほど私ども申し上げましたような理由はあったろうというふうに考えておる次第でございます。  それから、何のための抑止であるかという御質問でございますけれども、これはいろいろな事態というものは特定して考えることはできないわけでございまして、あらゆる種類の事態に即応して効果的に対応するためにこういう部隊の存在というものも抑止を高めるということになろうかと思います。
  123. 玉城栄一

    ○玉城委員 ですから、そこを私はなぜしつこく聞くかといいますと、抑止力と、我が国あるいは極東のということをおっしゃいますから、それは何も沖縄でなくてもいいでしょう、あるいは横田であっても岩国であってもそういう意味であれば構わないでしょう、なぜ沖縄なのかと聞いているわけですね。そうすると、北村さんは、沖縄になぜ配備されたかということについては知らない、これはアメリカの決定だ、これではちょっと説得力がないし、我々も納得しかねるわけです。そこら辺をもう少しきちっと答えていただきたいですね。
  124. 北村汎

    ○北村政府委員 確かに一般的、理論的に申せば、抑止力を高める配備先として一つの特定の地域でなければならないということはないと、一般的、理論的には言えるかもしれないと思います。しかし、先ほど来申し上げておりますように、沖縄には米陸軍部隊が存在をしておるし、行政面、後方支援面及び訓練上のいろいろな支援も与えられる、あるいは訓練のための施設も存在する、先ほど申し上げましたように、既存の施設、区域からある部隊が引き揚げていく、その後の施設、区域を利用できる、こういうようないろいろな具体的な条件というものがいろいろ重なって今回の決定をしたのだろうと私どもは考えるわけでございます。
  125. 玉城栄一

    ○玉城委員 それはあなたの勝手な考え方でありまして、本当にそのように考えていいのですか、受け取ってよろしいですか、北村さん。部隊が減るとか陸軍がいるとか、そして抑止力がどうのこうの、あなたの説明は全然つじつまが合わないじゃないですか。
  126. 北村汎

    ○北村政府委員 答弁を繰り返すことになって非常に恐縮なんでございますけれども、米側として今回沖縄を選んだということは、先ほど来申し上げましたようないろいろ具体的な条件、事情、そういうものを全部勘案してアメリカ軍がそういう決定をいたしたということでございます。そういうふうに私どもは考えられます。別に、アメリカに対して特になぜ沖縄を選んだかということをまだ尋ねたことはございませんけれども、私どもとして考えられるところは以上のことでございます。
  127. 玉城栄一

    ○玉城委員 だから、繰り返し私同じことを質問させていただいていますけれども、なぜこの特殊部隊が今沖縄に配備されなくてはならないか、その目的は一体何でしょうかと繰り返し私は伺っているわけです。あなたのお答えは全然説得力がない。なぜですか。必然性があるからでしょう。なぜ沖縄にこの特殊部隊が配備されるか。やはり米軍にとってもその必然性があるから配備するわけでしょう、いかがですか。だから、あなたのおっしゃるようなそういう話であれば、たとえ横田であっても岩国であってもいいわけです。
  128. 北村汎

    ○北村政府委員 沖縄への特殊部隊の配備の目的は、先ほども申し上げましたように、日本の安全それから極東の平和と安全を維持するためにこの地域に一個大隊を配備するということになったわけでございますが、それをどこに配置するかということについては米軍内でいろいろな事情を勘案して、いろいろな条件その他を勘案した上で決定したものであろうと思います。そこに決定することがその目的に最も有効に資するということで決定されたものであると私どもは考えております。
  129. 玉城栄一

    ○玉城委員 北村さん、なぜ沖縄に配備したかといいますと、沖縄にトリイ通信施設があるからでしょう、いかがですか。
  130. 北村汎

    ○北村政府委員 先ほども申し上げましたように、トリイ通信施設の現存部隊がこれから次第に撤去される計画であるというふうに聞いております。それに伴って同施設を米陸軍特殊部隊の駐留のために使用することが可能になる、これはやはり沖縄を選んだ一つの理由であろうと私は考えます。
  131. 玉城栄一

    ○玉城委員 北村さん、それじゃトリイ通信施設の軍事的な機能についてちょっと説明していただきたいわけです。この通信施設は沖縄の米軍基地の中で非常に警戒が厳重なエリアです。なぜ厳重なのか、その説明をしてください。
  132. 北村汎

    ○北村政府委員 トリイ通信施設と申しますのは、現在千五十九名の軍人がおりまして、用途は通信所でございます。使用部隊名といたしましては米国陸軍のフィールドステーション、それから空軍所属の人員、それから海軍所属の人員、それから陸軍の情報保安部隊、それから陸軍の基地勤務部隊、こういうものがおりまして、米国陸軍のフィールドステーション部隊が段階的に撤収の予定であるというふうに聞いております。  以上でございます。
  133. 玉城栄一

    ○玉城委員 私の伺っているのはだれがいるとかではなくて、軍事的な機能はどういうものですか、なぜそれほど警戒が厳重にされているかということを伺っているわけですね。といいますのは、去年この委員会でも取り上げましたでしょう。トリイ通信施設のゲート前に、ある日本人が近づいてMPからけん銃を発砲されるという事件がありましたね。そういう米軍の過剰防衛はけしからぬという立場からこの委員会でも取り上げましたね。これは北村さんよく御存じのとおりです。それほど警戒が厳重な通信施設ですから、それだけ軍事的な機能があるわけでしょう。それを説明してくださいと申し上げているわけです。
  134. 北村汎

    ○北村政府委員 先ほどもお答えいたしましたように、このトリイ通信所はアメリカ軍の通信所で、通信関係の役割を果たしておるところであるということで、それ以上どういう具体的なことをやっておるかということについては、米軍内部のオペレーションの問題でございますので、私どもとしては承知いたしておりません。
  135. 玉城栄一

    ○玉城委員 ですから、なぜ今沖縄にこの特殊部隊が配備されなくてはならないか、その目的は何ですか、そこにトリイ通信所があるからではないですかと、私が伺っているのはそこなんですね。ところが、あなたは全然的確に答えていらっしゃらない。  ではそのトリイ通信所というもの、ちょっと私申し上げましょうか。  米国にとって西太平洋地域における戦略通信網の最重要施設で、社会主義諸国等の放送、通信、暗号等はすべて傍受され、施設内の統合分析センターで整理、分析されている。主要部隊もアメリカ国防総省下の云々ということでいろいろな部隊がここに配備をされている。したがって、米国の全世界通信ネットワークに欠かすことのできない米軍統合情報処理センターとして四軍によって使用されている。米国にとっても最重要軍事施設の一つであり、もしこの施設が破壊されるようなことになれば米国の極東戦略は大混乱に陥るであろう。いかがですか。
  136. 北村汎

    ○北村政府委員 トリイ通信施設というのは、先ほど来申し上げておりますように米軍の通信所でございまして、それは米軍の通信にとって大事な場所であるというふうには思っておりますけれども、それが一体どういうような施設を持ち、そしてどういうことを実際にやっておるかは米軍の内部のオペレーションの問題でございますので、私どもとして今おっしゃったことを肯定も否定もできない立場でございます。
  137. 玉城栄一

    ○玉城委員 米軍というのはみずからの基地を警護することはできますね。
  138. 北村汎

    ○北村政府委員 地位協定第三条に基づく管理権の範囲内でできることでございます。
  139. 玉城栄一

    ○玉城委員 そうしますと、特殊作戦部隊もみずから配備されるトリイ通信施設を警護する役目も含まれますね。
  140. 北村汎

    ○北村政府委員 現在まで米軍から聞いておりますところでは、私どもはその点承知しておりません。
  141. 玉城栄一

    ○玉城委員 この特殊作戦部隊、いわゆるグリーンベレーは、先ほどもちょっと御説明がありましたけれども、大体過去にこの部隊が配備されていた国々の様子を見ますと、非常に共通した特徴的なものがありますね。これは北村さんも参議院の予算委員会でおっしゃっていますけれども紛争地域、紛争が起こっている、内戦、内乱、そういうような特徴的なところがございます。したがって、この特殊作戦部隊の任務は対ゲリラであるとか対テロとか、そういう特殊任務を帯びているわけでしょう。違いますか。
  142. 北村汎

    ○北村政府委員 最初に私から御説明をいたしましたように、この特殊部隊というのはいろいろな訓練をしかも充実して受けておる少数精鋭の部隊であるということでございますので、紛争のあらゆる段階において投入できる部隊であるというふうに聞いております。特に紛争がまだ非常に低いレベルの小規模な紛争である場合に、その紛争のエスカレーションを避けながら有効に対応するあるいはその紛争が大規模なものになった場合でもまた有効にそれが使用できる、こういうことで、特殊部隊といいましても別に極めて特殊なことをやるということじゃなくて、特殊な訓練を充実して受けておる、こういう部隊でございますので、いろいろな紛争の段階において投入されるという意味においては、他の部隊とも特別変わることはないのだろうと思います。     〔委員長退席、石川委員長代理着席〕  そういうことで、先ほど来紛争地域に配備されておるという御指摘がございましたけれども、私ども承知いたしております限りでは、また国防報告などに書いてございます米国政府の説明などを読みましても、この特殊部隊はいろいろな第三世界の地域において、このアメリカの国防報告によればソ連側がいろいろ揺さぶり作戦をかけてくる、そういうことに対応して、アメリカと友好な関係にある国がその国の軍隊の戦技を向上させるためにいろいろな訓練を受ける、そういうことがあろうということは考えられるところでございますけれども、紛争地帯に配備されているということではございません。現在配備されているのは西独とパナマと、それから沖縄でございます。
  143. 玉城栄一

    ○玉城委員 それでは、今三十名沖縄に配備されていますね。この前そういう御説明をされておりましたが、その三十名のグリーンベレーは今どの基地にいるのですか。
  144. 北村汎

    ○北村政府委員 三十名と申しますのは、皮切りに三十名程度の配備をやるということで、これが三月中に三十名程度の配備を皮切りに開始するという説明を受けております。  場所は、トリイ通信施設に配備すると向こうが公表しておりますので、そこに配備されているものと私どもは承知しております。
  145. 玉城栄一

    ○玉城委員 だからそこに最終的に配備するのはわかりますが、三十名は今どこにいるのですかということを伺っているのですよ。
  146. 北村汎

    ○北村政府委員 今現在その三十名が実際にどこにいるかということについては、私ども今承知いたしておりません。
  147. 玉城栄一

    ○玉城委員 改めてもう一回繰り返しますが、このトリイ通信施設という基地が、楚辺という通信所もございますが、非常に重要な軍事施設である。そこに最終的に特殊部隊が配備される、今キャンプ・キンザーにもおりますけれども。それだけ重要な軍事施設に配備されるわけです。ですから、なぜ沖縄に配備されるか、なぜドリイ通信施設に配備されるのか、一体その目的は何でしょうか。改めて北村さんのお考えを伺いたいと思います。
  148. 北村汎

    ○北村政府委員 また繰り返しになることになりまして申しわけございませんけれども、これはトリイ通信所に配備されるわけでございます。しかし、これは日本の平和と安全、極東の平和と安全に資するという大きな目的のためでございまして、これは自分たちがいろいろな特殊な訓練を経てきておる少数精鋭の部隊でございますから、それが自分たちを訓練すると同時に、また場合によっては友好国との訓練も一緒にやるということもあり得ようと思います。必ずしもこれはトリイ通信施設にくぎづけになった部隊であるというふうには私どもは考えていないわけでございます。
  149. 玉城栄一

    ○玉城委員 なぜ私がこのことをしつこく伺うかといいますと、特殊な任務を持つ部隊だけに、それが重要なトリイ通信施設に配備されてくるだけに、ある意味ではこれは国内治安対策の意味も含まれているのじゃないか、そういう懸念をするから伺っているのですが、いかがですか。
  150. 北村汎

    ○北村政府委員 私どもといたしましては、米軍の特殊部隊の配備は日本の治安対策というようなことではないと信じております。
  151. 玉城栄一

    ○玉城委員 それでは北村さんに伺いますが、これはちょっと別の話になりますが、この特殊作戦部隊の配備、アメリカ側から通報を受けて三月一日に沖縄県にすぐ伝えたということをおっしゃいましたですね。それは参議院の予算委員会でもおっしゃっているわけですが、それはどういうことを伝えたのでしょうか、お伺いいたします。
  152. 北村汎

    ○北村政府委員 先ほど申し上げましたように、三月一日に、米側から外務省に対しまして、米陸軍特殊部隊を今回沖縄に再配備するという内報を受けたわけでございます。  その際、私どもといたしましては、これが沖縄に配備されるということであり、またこの特殊部隊についての現地の関心というものは非常に高いということは私どもは承知しておりましたので、早速沖縄県に対して、米側からの先ほどの内報の内容を伝えたわけでございます。その際、米側から外務省に言ってまいりましたように、これは今内報するけれども、公表は三月十七日になるので、三月十七日までは外部に公表しないでもらいたいということを言ってまいりましたので、そのこともあわせて沖縄県に通報したわけでございます。
  153. 玉城栄一

    ○玉城委員 ですから、そのことが原因になりまして沖縄県の方では大混乱が起きているわけですね。県議会は二、三日空転しますし、知事はうそつき呼ばわりされて、憮然としているわけですね。大変な迷惑を外務省としては与えたと思うのですが、いかがでしょうか。なぜ、あなたはそのように言っておきながら、公の場でそういう事実を暴露したのでしょうか。それが原因になって大変な窮地に追い込まれております。どうでしょうか。
  154. 北村汎

    ○北村政府委員 先ほど申し上げましたように、外務省は、アメリカ側からこの特殊部隊の配備の内報を受けましたときに、沖縄県にこれが配備されるということ、それから沖縄県ではこの特殊部隊に対する関心は、これは前にもいたことがございますから、そういうこともあって非常に関心が高いということがあって、これはできるだけ早く県にお伝えした方がいいということで、私ども従来から沖縄県との間では、できるだけ連絡を密にしてそういうことをやっております。そういうことで、外務省としてはその日に御連絡をしたわけでございます。私どもは、このことについて参議院の予算委員会で御質問を受けましたので、その事実を申し上げたわけでございます。
  155. 玉城栄一

    ○玉城委員 ですから、北村さん、それは秘密伝達でしょう。三月一日に、十七日までは公表しないでくれ、発表しないでくれと口をふさいでおいたわけでしょう。それをなぜあなたは、そういう事実を、公の場でそういう事実がありましたということを公表するのですか。向こうの立場はどうなりますか。私は、沖縄の知事の立場考え方と大分違いますけれども、しかし向こうの立場は、そのことによって窮地に追い込まれるわけでしょう。あなた方のおっしゃったことを守って、いわゆる信義を重んじて黙っていたわけですよ。ところが、あなたは参議院の予算委員会でそういう事実があったということを暴露したときに、知事の立場はどうなります。おっしゃってください。
  156. 北村汎

    ○北村政府委員 私どもが通知をいたしましたのは、三月一日に配備の内報があって、しかし十七日の公表までは外務省も、日本政府は全部これを公表できない立場にあるということを沖縄県にもお伝えしたわけでございます。しかし、十七日に発表された後は、アメリカ側から三月一日に内報があったということは私どもも外に対して申しておることでございまして、そのことを答弁いたしたわけでございます。
  157. 玉城栄一

    ○玉城委員 ですから、そこらも外交のイロハだと思いますね。外務省外交姿勢というのは大体そんなことなんですか。  では北村さん、私があなたに、こういうことがあります、ただしこれは非常に大事なことだから、これまでは言わないでおいてくれと言いますね。ところが私は、そういう事実があったということを別の公の場で公表した場合、当事者であるあなたはどういう立場に追い込まれますか。どうでしょうか。
  158. 北村汎

    ○北村政府委員 こういう問題、仮定について申し上げるのは非常に誤解があってどうかと思いますが、要するに、秘密にしておいてほしいということは公表までの期間でございます。ですから、その期間はこれは外に言えないわけでございますが、その公表された後、実際どういうような経緯があったかという御質問に対してそれを言いましても、それは公表までの間言えないという立場は十分外務省からむしろお願いしたわけでございますから、当然のことでございます。
  159. 玉城栄一

    ○玉城委員 それは違うのですよ。あなたは、これは秘密事項として伝えたわけでしょう。だから、期間が切れたらあなたは話していいというものではないですよ。あなたがそういうことを伝えたために、向こうではうそ呼ばわりされて、私はそんなことを聞いた覚えはないと言わざるを得ないわけですね。ところが外務省は言ったんだと。それは北村さん、ちょっとひきょうなやり方だと私は思いますよ。しかも、公の場でそういう事実があったという暴露。その受けた方の立場はどうなりますか。これは極めて外交のイロハだと思いますよ。向こうは信義を重んじて、あなた方のおっしゃった条件を重んじてそのことを言わなかったわけでしょう。しかし、そういうふうに私たちは伝えましたということが公になったら、言わなかった人の立場はどうなりますか。これはあなたは責任問題ですよ。
  160. 北村汎

    ○北村政府委員 私どもが外に言わないでほしいと申し上げたのは、これは三月一日に内報があって、それを十七日までの公表までの期間はそういう内報があったということを外に言わないでほしいということを申し上げたわけでございます。それをそういうことについて沖縄県との間で我々は十分連絡をとったと考えております。
  161. 玉城栄一

    ○玉城委員 ですから、そういうふうな立場で、県知事はいろいろ議会でも、そんなことを知っていてどうしてそれを県民に説明しなかったのか。向こうは忠実にあなた方のおっしゃることを、信義を重んじていたわけですよ。ところが、あなたが参議院の予算委員会でそういう事実があったということを暴露したものだから、知事の立場がなくなってしまったのですね。うそつき呼ばわりされたと言って、県議会もそのために二、三日空転するし、知事は公舎に引っ込んでしまう。沖縄において、御存じのとおり基地をたくさん抱えているわけでしょう。そういうやり方というのは、北村さん、この際この席できちっとあなたの釈明をすべきだと私は思いますが、いかがですか。
  162. 北村汎

    ○北村政府委員 外務省は、先ほども申し上げましたように、できるだけ沖縄県との間にいろいろ連絡を密にして、そして内報は内報の段階でお伝えをしたわけでございます。ただ、それは公表されるまでの間は口外していただいては困るということをお伝えしたわけでございます。ですから、十七日の公表の後は、これはそれ以前に内報があったということとは外務省も外に申しておりますし、沖縄県がそれをおっしゃることは、これは私どもも通報の事実をお伝えいただくということでやっておるわけでございます。
  163. 玉城栄一

    ○玉城委員 それは北村さん、あなたのおっしゃるのは違う。そういう事実、外務省は事前に沖縄県知事に伝えましたと公表しないでくれという事実をなぜあなたは公の場で暴露したのか。そのために向こうはどれだけの迷惑を受けているかということを申し上げているのです。その配備問題が公表どうのこうの、そんなことじゃないのですよ。これはきちっとしてくださいよ。
  164. 北村汎

    ○北村政府委員 先ほど来申し上げておりますように、私どもは沖縄県に対してできるだけ連絡を密にしようということで御連絡をしたわけでございます。この連絡は口頭で行われたわけでございまして、そういうことが受け取られた沖縄県の方で今先生がおっしゃられたように受け取られたかどうか、それは私どもわからないのでございますけれども、私どもとしてはあくまでも、三月一日に内報があり、これは十七日までの間は外には言わないでいただきたい、公表があれば、これはその後のことは言ったとおり言っていただいても結構だというように私どもは連絡したように考えておりますけれども、その連絡方法が口頭でございますし、そういうこともあって何か誤解が生じたとすれば、これは遺憾に存じます。
  165. 玉城栄一

    ○玉城委員 大臣、もう沖縄の知事のことはよく御存じのとおりです、所属も同じ政党でありますから。しかも、安保条約に基づいて大半の基地は沖縄にあることも御存じのとおりですね。今のやりとりのいきさつがありまして、知事そのものが大変な窮地に追い込まれているわけです。ところが北村さんは、何か話が全然違うようなことです。これは陳謝をしてもらわないとおさまりがつかないと思うのですね。知事は大変だ、私は立場は違いますけれども客観的に申し上げているわけです。そんなふうな外交の姿勢だったらこれはイロハにももとるじゃないか、そういうことなんです。大臣の御所見はいかがですが。
  166. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 沖縄の知事も、この沖縄には多くの基地がありますし、そういう中で大変苦労しておられるわけでございますが、今回のこのグリーンベレーの問題について外務省から連絡をした、そういう点についていろいろと行き違いがあって知事さん初め議会の皆さんにも大変御迷惑をかけたとするならば、これは大変申しわけないことでありまして、非常に大事な外務省と沖縄県との連絡問題でございますから、今後ともそういうことが起こらないように十分慎重を期してまいりたい、こういうふうに思います。
  167. 玉城栄一

    ○玉城委員 いずれにしても、外務省ですから私はあえてそのことを申し上げているわけですね。やはり信義は信義としてお互いに重んじた上でそういうことをやり合わないと、今のような片一方が大変な迷惑を受ける。そのことはこれからのいろいろな行政にも影響してくることは火を見るよりも明らかですから、そのことをあえて申し上げているわけです。  それで北村さん、米側は通常部隊をわが国に配備する場合に一々外務省に事前に通報してくるのですか。あるいは、どういうケースについてアメリカとしては外務省に事前に通報するのですか、内報するのですか。
  168. 北村汎

    ○北村政府委員 法律的に申しますと、安保条約の枠の中で、通常、米軍がある部隊を多少ふやしたり減らしたりする場合、これについて特に事前の通報とかそういうものはございません。ただ、委員御承知のように、配置における重要な変更というような場合は事前協議の対象でございますから、その場合は事前に協議があるということでございます。
  169. 玉城栄一

    ○玉城委員 こういう特殊作戦部隊、いわゆるグリーンベレーのような特殊性のものについては米側としても前もって外務省の方に通報してくるわけですね。例えばエンタープライズだとか、ああいう核積載疑惑のある艦船についても前もって通報してくるのですか。
  170. 北村汎

    ○北村政府委員 艦船の寄港というものにつきましては、例えばその艦船が原子力推進のものである場合、これは限られた時間の前に通報するということになっております。しかしそれ以外、特に核の持ち込みという事前協議の対象でない限りは、その寄港その他について事前の通報があるというわけではございません。
  171. 玉城栄一

    ○玉城委員 時間も参りましたので、最後大臣にお伺いいたしたいのですが、アメリカ側も、今申し上げている特殊作戦部隊、この部隊の持つ任務の特殊性からいろいろ配慮をして事前に外務省に伝え、それがまた今さっき申し上げたトラブルの原因にもなっているわけですけれども、ぜひ最後大臣の御所見を伺いたいことは、この特殊作戦部隊についていろいろ言われております。過去のいろいろな、ベトナム戦争の経緯等も伝えられているわけですね。なぜ今沖縄にこういう特殊部隊が配備されなければならないのかということで、地元においては大変不安が伴うのは、これまた当然なことなのですね。     〔石川委員長代理退席、委員長着席〕  それで、沖縄が本土復帰をしました。それは沖縄が平和で豊かな島に再生したいという一つの誓いあるいは願いでもあったわけですね。過去の第二次大戦の悲劇とか、ずっと米軍に占領されていたとか、それが復帰によって平和憲法のもとに沖縄も帰って、平和で豊かな島に再生していきたい、そういう願いがあったわけです。  ところが、今、こういうような極めて特殊な部隊がさらに配備されているということについて、さっき申し上げましたとおり、これは抑止力等いろいろなことが言われますけれども、地元においてはそんなふうな抽象的な話では通らないわけです。ですからその点について大臣も参議院の答弁では、いろいろ調整をしたい、外務省としても調整をしたい。調整ということがどういうことかよくわかりませんけれども、いずれにしてもこういう特殊な部隊が沖縄に配備されるということについては絶対に困る、容認できないという立場でありますので、ひとつ大臣の御所見をお伺いいたします。
  172. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 グリーンベレーにつきましては、ベトナム戦争で大活躍したというのは私も承知しておりますし、また、かつては沖縄に大量に配置されておったということも承知しておるわけでありまして、米軍の中における少数精鋭の特殊部隊である、こういうことで、今、米軍の中においてもこの有用性といいますか、それが非常に高く評価されてきておる、こういうことで今回一個大隊を沖縄に配置することになった。この点については、先ほどから局長が答弁しましたように、いろいろな理由といいますか、いろいろな条件を考えて沖縄が最も適当である、そういうことで沖縄に決まったということであろう、こういうふうに思うわけです。  しかし、これは先ほどから言っておりますように、これが特殊な部隊であるとはいえ、もちろんあくまでも安保条約という一つの枠組みの中での配置でありますし、そしてこれはアメリカ軍の日本国内におけるいわゆる軍隊の作戦能力といいますか、活動能力といいますか、戦闘能力、そういうものを高めていくということが一つの目的ではないか。そしてそれは結局、安保条約の有効性を高める、そして、これがまた日本の平和と安全を守っていくというところにつながっていくものであろう、こういうふうに私は解釈をしております。  ですから、今沖縄にグリーンベレーの配置によって非常な何か不安が起こっているというふうなお話を聞いたわけでございますが、そういうことならば、やはりこういう今申し上げましたような理由であろうと私は思いますから、もっと沖縄の皆さん方にそうしたグリーンベレーの配置というものについての説明をして、そして理解をしていただかなければならない、こういうふうに思いますし、それはまた外務省としてもそれなりの役割をひとつ果たしていかなければならぬな、こういうふうな気持ちを持っておるわけでございますが、いずれにしてもこれは沖縄のやはり我々は今後を考えますと、沖縄の立場というものも踏まえながら、同時にまた安保条約の効果的な運用というものを踏まえながら、これから慎重に対応してまいらなければならぬ、こういうふうに思うわけですが、しかし、この一つ方向というものを変えるということは困難であろう、こういうふうに思います。
  173. 玉城栄一

    ○玉城委員 沖縄を一つの拠点としまして、そういう特殊作戦部隊がこれから第三国にいろいろなそういう特殊作戦行動を展開することが予想されるわけですね。これは基地間の移動は自由ですから、あちこちに特殊部隊は国内的にも回るかもしれない。今後いろいろな問題が出てくると思います。それで、きょうは時間がございませんので、また問題につきましては今後いろいろ質疑を交わしていきたい、このように思います。  以上です。
  174. 中島源太郎

    中島委員長 次に、河村勝君。
  175. 河村勝

    ○河村委員 外務大臣は、けさ来日したイランの外務大臣と会見をされて、きょうまた夕方から会談をされるそうでありますが、今度の来日は、さきに外務大臣がイラン、イラクを歴訪した際にイラン、イラク両外相を日本に招致して、それぞれ一緒ではないけれども別個に話をしてイラン・イラク戦争の解決に、向けて何らかの努力をしたい、その一環として今度来日したものと考えてよろしいですか。
  176. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 ベラヤチ・イラン外相が昨日、来日をいたしまして、きょう第一回の会談を午前中に行ったわけでございますが、このベラヤチ外相の訪日は、これは今お話しのように、私が昨年イランを訪問いたしましたときに招請をいたしました。その招請に基づいてやっと今回実現をしたものでありまして、同時にイラクの外相も招請をいたしております。  今回の訪日の目的は、あくまでも日本の招請に基づくものでありますが、二国間の問題そして国際情勢等について忌憚のない意見の交換を図る、同時にまた同じアジアの国々として日本とイランの二国間の関係をより安定的なものにしていきたいというのが今回の来日の大きな目標であります。同時に、もちろん今イラン、イラクは紛争が続いております。この紛争について我々も非常に憂慮いたしておりまして、調停や仲介はできないとしても何とか平和的な環境づくりには日本も貢献しなければならぬ、こういう気持ちを私は非常に強く持っておりまして、そうした日本の平和に対する熱意もあわせてイラン外相に伝えたい、こういうふうに思うわけであります。
  177. 河村勝

    ○河村委員 イラクの外務大臣が来るのはまだ決まってないのですか。
  178. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは招請は続けておりますが、まだ決まっておりません。
  179. 河村勝

    ○河村委員 日本は特に、調停、仲裁するような力はないかもしれないけれども、イラン、イラク両方に友好的な関係を持つ数少ない先進国であるばかりでなくて、戦後復興には相当な力を持ち得る国なんですから、そういう意味では発言力があると思うのですね。最近、インドあるいはアルジェリア、そうした国々が調停に動いているようでありますが、そういう動きとのつながりというものは何も考えてないわけですか。
  180. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 そういう動きがどういうものか、いろいろと会談の中で聞いてもみたい、こういうふうに思いますし、また、イランの立場はイランの外相として説明があるもの、こういうふうに考えております。
  181. 河村勝

    ○河村委員 これからの話でしょうから、せっかくの機会ですから精いっぱい努力されることを期待をいたします。  ところで、けさほどから朝鮮半島をめぐる情勢がいろいろな角度から議論がされました。そこで伺いたいのは、一昨日九日、坂門店で南北の対話があって、ロサンゼルス・オリンピックに向けて統一チームをつくるということを議題として会談が初めて始まろうとしたわけでありますけれども、しょっぱなからラングーン事件に対する釈明問題をめぐって対立をして壊れてしまった。こういう結果になったことをあなたは、当然そうなるだろうと思ったのか、意外であったと考えたか、その辺の感想はどうですか。
  182. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私は、北朝鮮が、ロサンゼルス・オリンピックが行われるということで南北で話し合いたい、こういう提唱をした、両国のオリンピック委員会の問題ですが提唱した、そして板門店で会合したということは、今日高まっております南北のいわゆる緊張緩和の動き、そういう中で大変結構なことである、そしてこれが実ることを期待しておったわけでございますが、政治問題、特にラングーンの問題、事件等が表に出て、そしてそれが契機で中断してしまったということは非常に残念だと思います。  しかし、これまでもこうしたオリンピック委員会同士の会談等はやっておるわけでございます。私は、この中断が将来どういうことになりますか、また何かのチャンスで再開というところに結びついていくことを期待をしておる、決してそれは絶望的じゃないんじゃないか、こういうふうに思うわけでございます。いずれにしてもこうした会談自体が開かれるような雰囲気というものになりつつある、なっているわけじゃありませんが全体としてなりつつあるということは、これは朝鮮半島の緊張緩和のためには歓迎すべき傾向ではないか、こういうふうに思っております。
  183. 河村勝

    ○河村委員 ラングーン事件というのは北側は一切関知しないと言っているけれども、北朝鮮の最も友好的な国の一つであるビルマが事実を認めて国交を絶ったというくらいの問題でありますから、こうして会談を呼びかけられて出ていってこの問題を抜きに話を進めるというわけにはいかないのは当然だろうと私は思いますから、今度の話が壊れるのは、ほかにいろいろな事情はありますけれども、当たり前だと思うし、これからもそう簡単に南北の会話というものが緊張緩和に向けて――もちろん、統一に向けて話が進むとは私は思っておりません。ですから、先ほどアジア局長が、日本立場ないし方針として南北直接対話をもとにして日本はその環境づくりに努力する、それをやりながら北朝鮮との関係も改善をしていく、こういう方針を述べられましたが、私はそれで正しいんだと思います。  今、三者会談とか四者会談とか言っておりますけれども、実際韓国では、アメリカの四者会談の提案にもこたえてはおりませんね。それから北朝鮮の三者会談の提案も、さっき局長が言ったように中身は南北直接対話ですから。ですから、ああした三者会談とか四者会談というものがそう成功する可能性はないと私は思うし、朝鮮民族というのは誇りが高いし、これまで大国に支配されて引きずり回されてひどい結果を持ったという過去に対する非常な恨みがありますから、そういう方法というのは余り成功しないだろうと私は思っているのです。もしそうでないということであれば意見を聞かしてほしいと思います。  それで、環境づくりとして私は今ようやく機運が熟してきたんじゃないかと思うことに、クロス承認問題というのがあるのです。古い話なんですけれども、数年前まではそういう機運は全くなかった。今ようやく機が熟してきたように思うのですけれども外務大臣あるいは外務省としてこのクロス承認問題というのを検討されたことがありますか。
  184. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは、私が外務大臣になりましてから検討したことはございますし、また韓国の李範錫というラングーン事件で亡くなりました外務大臣とも真剣に話し合ったこともございます。同時にまた、中国やアメリカともこの問題について接触をしたこともありますけれども、残念ながら客観情勢から見て困難である、こういう結論に達しまして、一応クロス承認の問題は現在の段階では御破算になっておる、こういうことでございます。しかし、時代が動いておりますし、客観情勢も変化しておるわけでございますから、決して去年だめだったからことしだめだ、こうも言えないわけでございますし、緊張緩和一つの現実的な案としては、基本的には韓国や北朝鮮が承認するものでなければならぬわけでございますし、また中国も了承するものでなければならぬわけでございますが、決して現実離れをした構想ではないと思います。
  185. 河村勝

    ○河村委員 私どもはもう韓国の野党、新民党と言った時代からずっと交流を持っておりまして、大分前の話になりますけれども、そのころ双方で南北国連同時加盟、そしていわゆるクロス承認、ソ中が韓国を承認し、日本アメリカが北朝鮮を承認するということを促進するという共同発表をいたしまして、それで韓国政府もそれをだめだとは決して言わなかったわけです。その状況は今も続いているはずであります。ただ、今韓国の方が北朝鮮に比べるとはるかに国際的な地位が強くなっていますから、今はやや消極的になったかもしれないけれども基本的にはいいはずであるし、中国も昨今の韓国との交流の関係を考えれば、やはり交流を一歩進めて承認を――それぞれの国が自分だけではできないわけです。それぞれ北朝鮮ないしは韓国に対する遠慮がありますから、また、ソ連と中国とが牽制をし合うということがあるから単独ではできない。だけれども、そういう可能性があるし、ソ連は、これも随分前から韓国との交流を深めたいという実績は、昨今はちょっと動きが少ないけれども、あるわけですね。韓国がそうで、中ソがそういう条件であれば、北朝鮮は昨今非常に孤立状態に陥っておりますから、もしそういうことになるならば、私は決して否定的な立場はとらないと思う。アメリカはもちろんのことですから、私は、昨今の情勢がひところに比べて随分変わっているんだと思うのですね。だから私はそういう意味で現実性がかなりあるんじゃないかという気がしておるのですけれども、どうでしょうか、最近の変化というものをどうお考えになります、やっぱり同じですか。
  186. 橋本恕

    橋本(恕)政府委員 先ほど大臣が御答弁申し上げましたとおりに、クロス承認ということがすべての関係当事者の納得のいく形ででき上がるということは、朝鮮半島の平和を求めます我が国といたしましても大変結構なことだと思います。ただ、これは実際の問題として、望ましいけれどもなかなか容易ではないという見通しといいますか、御感想を述べられましたけれども、これは既にもう先生御存じのとおりのことだと存じますけれども、クロス承認がだんだんと現実のものになっていかない一つの主要な理由は、北朝鮮がこれに対して積極的でないということが主たる理由の一つであると理解をいたしております。
  187. 河村勝

    ○河村委員 これはなかなか難しい問題があることは私も承知しておりますけれども、情勢はだんだん変化しつつあると私は思うので、ぜひ頭に置いて今後努力をしていただきたいとお願いをいたします。  そこで、当面の問題について二つばかり要請をさせてもらいたいと思います。  先ほど、中曽根訪中の際に、胡耀邦中国共産党総書記との間で、北朝鮮との間の意思疎通について中国があっせんする用意があるということに対して、人道上の問題に限って依頼をしようかというお話がございました。同時に、人道上の問題であるだけに余計関係するところが多いから、今のところ公表したくないというお話でありましたが、特に私はきょう二つ、ぜひとも考えていただきたいということをお願いしたいと思っているのです。  一つは、もうこれは我が党の議員が他の委員会でも再三申しておるのでくどいようでありますが、北朝鮮に居住しているいわゆる日本人妻の問題でありまして、これまでもいろいろ心配をしていただいて既に十分検討中だと思います。思いますが、余りにも関係の方々が非常につらい思いで切なる願いを込めておいでになるものですから、私もあえてくどいようですけれども、もう一遍お願いしたいと思っているのです。  外務大臣あてに幾つかの手紙が行っておると思いますが、多分外務大臣自分でお読みにならぬとも思うので、そのうちの一つだけ本当に涙なくしては読めないようなものがございますので、その一部だけをちょっと読みます。   私は今年八十四歳になる母親でございます。二十四年前に娘が北朝鮮に渡りまして、それっきり会う事も出来ず、音信もままならず、苦慮しつつ、再会を唯一の希望として生きております。朝鮮に渡ります時は、二―三年すれば、里帰りも出来るから、と申しまして、朝鮮人の主人とその先妻の子供と共に渡って参りました。便りは時々は来ておりましたが、最近はずっと音信不通でございました。ごく最近便りが参りまして、体が弱くなりきってしまっていると言って参りました。又、日本での里帰り運動のおかげで、自分達も里帰り出来る日も近いかもしれないといって、私に長生きしてくれ、と書いてよこしました。   私は、娘に会えるのなら、どんな事でもいといません。 あといろいろあるのですけれども、とにかく本当に切実なる手紙が来ておりまして、何とか今度は解決していただきたいと思う。  昭和五十五年、一九八〇年、自民党のAA研の代表が北鮮に行って金日成氏と会談をしたときに、金日成主席は日本人妻の里帰りは歓迎すると述べて、同時に政府当局から代表に対して相互主義でやってほしいという通告があったそうであります。もう御存じでしょうから確認を求めませんが、その後日本側は北朝鮮に対して人道上の理由、親族の訪問とか里帰りで日本に在留する北朝鮮人三千人近くの再入国を認めているという例があるわけですから、相互主義原則というのはもう既に確立をしているわけですね。ですから、こういう中国のあっせんがなくても、また国交はなくても、そうしたいきさつから見て、当然できてもいいはずじゃないかと思うのですね。  ですから、この際、日本人妻と称せられる人が総数千八百七十三名いるそうですが、そのうち在否の照会を北朝鮮にやったところが、わかったものはわずか九名だというお話でございますが、昨今の関係者のお話を伺いますと、既に里帰りを依頼してきた者、消息がある者、北朝鮮のどこに住んでいるかというのがわかっている人だけでも二百三十九人いるのですね。ですから、これから安否を照会していくというのでは大変でありますけれども、まず第一着手として消息のわかっている二百三十九人だけでも、今度胡耀邦総書記が北朝鮮を訪問されるそうでありますから、その際にでもこれを解決してあげることが本当に外務省として人道上の問題として取り上げる最大の問題じゃないかと思うのですが、いかがでしょう。
  188. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 北朝鮮におられます日本人妻の中には大変お気の毒な方もおられるということも聞いておるわけでございます。日本に里帰りをして両親や親族の皆さんと会われる機会を何とかつくってあげたいという気持ちは我々も人後に落ちないわけでございますが、政府間の国交がないわけですから政府が動き出すというわけにいかない。そういうことで、これまでも実は赤十字を通じましていろいろと努力が重ねられてきておるわけでございます。  これは、現在もその努力が続けられておるわけでございますが、そういう状況の中で、今回の中曽根総理の訪中に当たりましての胡耀邦さんとの話し合いの中で、北朝鮮と日本との関係をよくするために何かお手伝いをすることがあったならば、こういう胡耀邦さんの申し出があった。こういうことで人道的な問題に限ってそれではお願いをしようか、こういうことになりまして、今アジア局で検討をしておるわけであります。何を頼んだらいいのか、あるいはまた果たして頼んでうまくいくかどうかということもいろいろの角度から調査をしなければなりませんし、また中国側の立場というものもあるわけですから、まだ中国側とはそういう面について話し合っていないわけですが、そういうことも含めまして今事務当局検討を鋭意進めておるわけでございまして、これを公にしていくということには外交上の問題もありますから困難な面もあると思いますが、いずれにしても今の日本人妻の問題も我々は人道上の問題と心得て、そういう検討事項の一つとして今鋭意勉強しているということだけを申し添えておきます。
  189. 河村勝

    ○河村委員 これ以上申しましてもここでもって決定的な御返事は得られないと思いますが、しかし今読み上げたのはほんの一部でありまして、何しろもう北朝鮮に渡ってから二十数年たつわけですから、皆親がもう高齢でありまして時間的に余裕がございませんので、その点篤とお願いを申し上げたいと思います。  それともう一つ、北朝鮮に抑留されている船員の問題なんですけれども、昭和五十八年の十一月に第十八富士山丸という船が拿捕されて、現在も抑留されておる。乗組員五人のうち二人、船長と機関長が現在でも抑留中でございます。これはスパイ容疑だということなんですけれども、調べてみますと、これはたまたま北朝鮮の港に入港している際に閔港九、北朝鮮の脱走兵士だということでございますが、それが逃げ込んできて、それを日本に連れてきて福岡の入国管理局に移管をした、その事実がスパイ容疑になった原因だということなんですね。ですから、スパイ容疑だということになると、今回人道上の問題としてあっせんを依頼したりあるいは北朝鮮に要請したりするのは難しいかもしれませんが、この脱走して日本に入ってきた閔港九という人のその後の始末というのは一体どういうふうになっておりますか。
  190. 橋本恕

    橋本(恕)政府委員 御指摘の閔氏、つまり北朝鮮から密航してまいりました閔氏につきましては、現在法務省におきまして身柄を保護しているという状況でございまして、これは外務省から答弁いたしますよりは、法的な問題につきましては法務省が入管令に基づくところのいろいろな措置をとったし、また考えているようでございますので、私が答弁申し上げるのは適当でないのでございますが、法務省が入管令に基づいて保護している、私はこういうふうに承知しております。
  191. 河村勝

    ○河村委員 ちょっと最後のところがわからなかったけれども、釈放されたのですか、送還されたのですか、どっちなのですか。
  192. 橋本恕

    橋本(恕)政府委員 現在法務省が身柄を法務省のしかるべき施設に置いている、こういうことでございます。
  193. 河村勝

    ○河村委員 この件については北朝鮮との間でもって接触は外務省としては何もないのですか。
  194. 橋本恕

    橋本(恕)政府委員 外交チャネルがございませんこともありまして、現在までのところこの閔氏についての交渉は行っておりません。
  195. 河村勝

    ○河村委員 そういう状態のもとでなかなか難しいのかもしれないけれども、これも一つの機会でありますから、もうすでに抑留されてから五カ月を経過しておるわけでありまして、家族のことを考えればこれも人道上の問題ですし、この経過から考えてスパイ容疑というのはどうも考えられませんので、今度の日本人妻とはスケールにおいてはうんと違いますけれども、これにつきましてもぜひともひとつ今度の検討する中に加えてほしいと思いますが、いかがですか。
  196. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私もこの件はいわば人道的な問題の一つだと思います。したがって、今いろいろと検討課題一つとして検討しておる、こういうことです。
  197. 河村勝

    ○河村委員 これは私のお願いみたいなものでありますけれども、この両件につきましてはぜひともひとつお骨折りをいただきたいと思います。  次に、便宜置籍船の問題でお尋ねをしたいのですが、この七月にUNCTADがありますが、そこで便宜置籍船に関する全権会議が開かれます。  便宜置籍船というのは、御承知のように、日本で申せば日本の船主が、リベリアとかパナマとかシンガポールというようないわゆる便宜置籍国に自分のつくった船の船籍を置いて、そこで登録をして、それで事実上日本人の荷主なり船主なりが使ってこれを動かすというものでございまして、これらの国というのはいずれも船の税金が安い。それからいろいろな船の登録要件が非常に緩いものですから安全性その他で楽ができる。それから発展途上国の賃金の安い船員を使って船を動かすことができるから、そういう意味でも経営上非常に楽だということでだんだんとふえてきまして、現在は日本の商船の中でも相当数になるし、世界の商船隊の中で三〇%ぐらいになると言われておるのです。そのためにこれがいろいろと問題に相なっておりまして、今度の七月の全権会議前提として一九八一年の第三回のUNCTADの海運委員会一つの決議がされております。「イ、船舶登録要件の強化によって徐々に便宜置籍を通常の置籍に変更する。ロ、この登録要件を検討するための全権会議を開催する。」それで、この第一項目の「船舶登録要件の強化によって徐々に便宜置籍を通常の置籍に変更する。」こういう決議がされているのですね。ただし、これは賛成四十九カ国がほとんど全部発展途上国。先進国は反対。全部で反対が一九カ国。発展途上国が数が多いものですから当然これは採決されておりますけれども、依然として途上国と先進国との間の対立が大きいわけです。これに対して、全権は恐らく外務省から派遣されるのだろうと思いますが、一体どういう態度で臨むつもりで現在いるのか、それをひとつ伺わせてもらいたい。
  198. 山田中正

    ○山田(中)政府委員 先生今御指摘のように、七月十六日から三週間、船舶登録要件に関するUNCTADの会議が行われます。それに臨みます我が方の態度につきましては、関係各省とさらに打ち合わせを要するわけでございますが、我が方の基本的な考え方を述べさせていただきますと、先生も御指摘のように、便宜置籍船の場合には労働条件でございますとか船舶の安全の面でございますとか、また海洋汚染の面でございますとか、こういう面で適正な基準に達しない、サブスタンダードの問題を持った便宜置籍船が往々にしてございます。したがいまして、これについては改善すべきだというのが我が方の基本的たてまえでございます。例えば労働条件の問題につぎましては、ILOの百四十七号条約に加盟いたしましたのもそのような立場からでございます。  一方、これらの便宜置籍船が持っております弊害を除去いたしますれば、経済的な面では民間企業のできるだけ自由な活動を認めるという立場からいたしますと、便宜置籍船が一概に悪いというわけでもございません、この点で必ずしも各国の見解の一致があるわけではございませんが。  それからまた先生御指摘のように、UNCTADでこの問題が取り上げられておりますのは、やはり開発途上国の、便宜置籍船が開発途上国の海運の発展、自国商船隊の発展の妨げになるという立場でございます。我が方といたしましても開発途上国の海運の健全な発展、それに対する希望というのは尊重すべきだろうと思いますが、一方、そのために過度の政府の介入でございますとか保護主義的なものに走ることは開発途上国のためにもならないと思います。したがいまして、UNCTADの会議におきましては開発途上国の意向も十分勘案しつつ、先進海運国、開発途上国双方の利益になるような合意点を見出したい、かように考えております。保
  199. 河村勝

    ○河村委員 開発途上国と先進国の双方の意見の一致を見るような方向でというお話でありましたが、必ずしも先進国がことごとくこの登録要件強化に反対しているわけではなくて、雇用問題その他になりますと、実際先進国の中でも必ずしも利害は一致しないわけであって、確かにこの便宜置籍船というのは非常に安上がり、安い労働力を使って安い税金で動かすことができるから経営側にとっては非常に有力であって、それに任せておけばことごとく便宜置籍船になってしまうというような傾向がございますが、しかし日本の場合でも、昨今非常に困る不安な情勢というのは、日本人船員の乗り組む日本船というのはほっておきますというとだんだん減ってしまうのですね。ほっておきますというと日本人船員がだんだん船に乗れなくなってしまう。もちろん日本人船員は給料が高い。給料が高いのはいいけれども、ただ労働条件の面でとかく予備員率が非常に高くて、実際に乗り組んでいる船の倍以上も予備員が必要であったりするような非常に能率が上がらない面があったわけであります。そういう面はやはりだんだん是正をしていってもっと合理化に努力をしてもらわなければ困りますが、しかしそういう努力を前提として、そして、やはり日本人船員が日本の船に乗るという経済的な安全保障にもつながるところだけは確保していかないというと、海運国日本としての将来も非常に憂慮すべきものに相なりますから、そういう先進国側の単なる経営側だけの論理ではなくて、両方を考えてぜひともこの会議に臨んでもらいたい、そう考えるわけです。と同時に一体見通しはどういうふうにお考えになっていますか。
  200. 寺嶋潔

    ○寺嶋説明員 ただいま先生お話しのございましたように、便宜置籍船というものについて海運政策上どういうふうに考えていくかということにつきましては、四月九日開かれました海運造船合理化審議会におきまして、今後の外航海運政策はいかにあるべきかという諮問をいたしまして、そこで将来の日本商船隊の構造につきまして十分御審議いただきたいというふうに考えておるわけでございます。  御承知のように、現在日本の海運会社が保有しております日本商船隊と言われますもののうち約六割は日本籍船でございますけれども、残りは外国用船でございまして、その中には便宜置籍船も含まれておる。そのような便宜置籍船はただいま御指摘がございましたように、人件費等の面ではコスト競争力がございますので、そういうものもあわせ使うことによって日本商船隊全体の競争力を維持しておるわけでございますが、かといって、これに過度に依存いたしますと日本籍船の減少を見るというわけでございますので、今後商船隊の構成をどう持っていくかということにつきまして海運造船合理化審議会の御審議を願うということにしておるわけでございます。  なお七月の外交会議の見通しでございますが、これは予見するのは大変難しいことではございますが、現在までのところ先進国の間でいろいろ打ち合わせをしておる限りにおきまして、この会議に臨みます先進国の態度は一致しております。すなわち、いかなる登録要件を定めるかというのは各国の自由にゆだねるべきである、しかしながら、安全面でありますとか労働条件面あるいは船を使用する者の責任の明確性というような点については先進国側としても最大限の努力をすべきだ、こういうような対応で臨むことにいたしております。
  201. 河村勝

    ○河村委員 時間が来ましたから終わります。
  202. 中島源太郎

    中島委員長 次に、瀨長亀次郎君。
  203. 瀬長亀次郎

    ○瀨長委員 私は最初に外務大臣にお伺いします。  既に御承知のように、ニカラグアの二つの港に対する機雷敷設、この問題は国際的にも非常に大きい問題になっております。十日のワシントン・UPIは、米国防総省は九日、、「CIAがニカラグアのコリント、フェルト・サンディノ両港に機雷を敷設するため六週間以上かけて秘密作戦を指揮し、この作戦実行には中南米系の元軍事要員が参加した」ということを明らかにしております。この機雷敷設の問題は既に御承知だと思いますが、これは国連の安保理事会でも機雷封鎖非難決議がアメリカの拒否権によって拒否されましたが、だが、米英以外のすべての国がこれを支持しております。イギリスは後で米国に機雷敷設停止に努力するよう求めております。フランス政府は機雷を除去するために協力をする意思があることをはっきり述べております。この問題は、国際法上からいっても、さらに人道上からいっても極めて重視しなければならない問題であります。とりわけ今申し上げましたこの危険性の問題については、既に御承知だと思いますが、日本の船も触雷しております。この機雷敷設について日本政府は、特に外務大臣はどういう見解をお持ちであり、さらにどう対処されるか、最初にお伺いいたします。
  204. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 四月六日のABCテレビ放送は、米国政府関係者のABC放送に語ったところとして、レーガン大統領が昨年十一月にニカラグアの港湾に機雷を敷設する政府資金の支出を承認したと報道していることは承知しておりますが、報道内容が事実であるか否かについては承知をしておりません。  また、日本郵船のチャーター船輝潮丸が三月三十日二十時ごろ、現地時間ですが、ニカラグアのコリント港に入港時の接岸に至る航路途上で突然爆発によると思われる振動を受けたが、乗組員の被害は軽微であったと承知しております。いずれにいたしましても、本件の事実関係が明らかでないこともありまして、とりあえずの措置として外務省より運輸省に対して改めて付近を航行する日本の船舶に対する注意の喚起を要請する一方、関連情報の収集に努めているところであります。  また、米国の責任の有無につきましては、我が国としては本事件の事実関係が明らかでない、そういう事情でございますから、この点について今政府としての立場を申し上げる段階にはない、こういうふうに存じます。
  205. 瀬長亀次郎

    ○瀨長委員 事実関係があるから国連安保理事会でも非難決議をしたんだ。そうでしょう。そうして、アメリの拒否権で葬られただけの話なんです。フランス政府は、この敷設された機雷を除去するために協力を惜しまないということまで言っておるわけです。なぜ日本政府が今ごろ事実関係調査しなければいけないという段階であるのか。常に後手後手に回るのが日本外交であるのか。もっと先を読んで、こういった危険、しかもニカラグアの主権に干渉している。いわゆる民族の自決権を否定しているわけです。そういうふうな問題について、もし事実関係が明らかになったら、除去するように外務大臣アメリカ政府に申し入れするつもりであるかどうか、もう一遍お答え願います。
  206. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 こういう問題は、やはりきちっと事実関係が明らかでなければ対応策を打ち出すことはできない。後手後手と言われますが、一番大事なことは、後手に回っても事実関係を客観的に明らかにすることだと思います。したがって、今の状況では日本政府は、日本政府独自の立場でいろいろと調査もして、照会もしておりますが、この事実関係をまだ明らかにするわけにいかない、そういう状況にないわけですから、これに対して今日本政府の見解を申し上げる段階ではない、こういうことでございます。
  207. 瀬長亀次郎

    ○瀨長委員 常にアメリカに対してはほとんど独自の政策をとれないというのが特徴で、現在の外務大臣の答弁の中でもそれが明らかになっていると思います。  もう一つ、機雷敷設とともにアメリカがやった特殊作戦行動なんです。これはニューズウイークにはっきり書いてあります。「特殊部隊が、一九七一年ベトナムから帰った後、グリーンベレーの各部隊(単位)は、五つの異なった陸軍司令部の下に分散配置された。今、ドナルド・レーガン非通常戦争に関する公式政策がグリーンベレーを復活し、」すなわちレーガン大統領になってから復活して、「ニカラグアからペルシャ湾にいたる前衛戦において、アメリカの同盟諸国を支援する中心的役割を担わせている。」これはまさに。機雷敷設とほぼ同時に特殊部隊が既に潜入しておるという問題であります。  この問題につきましては、ニューヨーク・タイムズのレーガン大統領に対するインタビューの中で大統領自身がこう言っております。これは三月二十九日ニューヨーク・タイムズ、このニカラグア問題に限って読みますが、このインタビューでレーガン大統領は、「ニカラグアの反政府ゲリラに対する米国の支援は「エルサルバドルの民主主義政権への支援と何ら矛盾しない」と言い切り、ニカラグア政府を「国民の選任を経ない武力で樹立された政権」と強く批判した。」これは大統領が言っておるわけであります。  したがって、このニカラグアに対する特殊部隊の作戦行動が行われたことはニューズウィークだけで指摘する問題ではなくて、レーガンも言っておるわけなんです。これは許されでいいものかどうか。外務大臣どうお考えですか。
  208. 堂ノ脇光朗

    ○堂ノ脇政府委員 ただいま先生の御指摘になりましたニカラグアのゲリラでございますが、ニカラグアにおきをしてはサンディニスタ政権に対してこの政権が民主的な政権でないということから、かつてはサンディニスタ政権に同調した者たちの中から反乱軍が形成されて、そしてニカラグアの国境でこのサンディニスタ政権に対してゲリラ活動を行っているということでございます。また、アメリカ政府が現在この反政府勢力に対しまして援助を行うということで予算の要求をしておるということも事実でございます。  しかし、先ほどから先生の御質問にございました機雷を果たしてゲリラが敷設したのか、それともアメリカ援助によって機雷が敷設されたか、その辺につきまして事実関係は少しも明らかになっておりませんで、これまでイギリス、フランスがこれにつき抗議をしだということが伝えられておりますけれども、それもアメリカが敷設したということではなくて、一般的に港湾を機雷で脅かすのはよくない、そういう趣旨からいろいろ物を申しているというふうに了解しております。
  209. 瀬長亀次郎

    ○瀨長委員 これから特殊部隊に絞って質問いたしますが、私はこの前外務省に、一九八三年か八四年のグリーンブックに書かれておるもので、「一九八一年及び一九八二年会計年度は、三十九の特殊部隊機動訓練チームが異なる十五カ国の軍隊を訓練した。」この米国防報告の十五カ国について事実関係調査して報告するように言いましたが、これを明らかにしてください。
  210. 北村汎

    ○北村政府委員 アメリカの国防報告の中に、我々の安全保障援助計画の重要な要素として、特殊部隊は世界のあらゆる地域の十五カ国の軍隊と協力をして、これら軍隊が不安定な情勢や侵略に効果的に対処し得るよう彼らを訓練しているという記述がございます。この国防報告の文脈から見まして、これはこの前段でソ連が最近第三世界に焦点を置いて直接あるいはその代理人を通じていろいろ揺さぶり作戦というものをかけてきておる、そういうことを述べて、それに対処するためにこの特殊部隊がいろいろ友好国の軍隊を訓練している、こういうことで書かれておるわけでございます。  そういうことで、特殊部隊と申しますのは、これはいろいろな訓練を施された少数精鋭の部隊でございまして、当然そういう性格から軍事教練を行う資質を持っておる部隊でございますので、それらがアメリカと友好関係にある国から特に戦技の向上をするために要請された場合には、そういう訓練を施すということをやっておるものと承知しております。
  211. 瀬長亀次郎

    ○瀨長委員 私はそんな長たらしく答えてくれとは言わないんですよ。この十五カ国の国はどこどこかと聞いているだけの話なんです。ちょうちょうといろいろ言ってくれとは言っていない。「三十九の特殊部隊機動訓練チームが異なる十五カ国の軍隊を訓練した。」十五カ国とはどこどこかということを尋ねているのですよ。だから、委員会ではすぐは答えられぬから事前に調べてくれと言ったはずなんです。わかりますか、わかりませんか。
  212. 北村汎

    ○北村政府委員 先生が今御指摘になりましたのは、「USアーミー」という雑誌の昨年十月号を引用してのことであろうかと思います。その中に、米陸軍特殊部隊が十五カ国の軍隊に対して訓練を行っているという旨の記述がございます。  その中では、具体的な国名としてホンジュラス、レバノン、モロッコ、リベリア、ソマリア、コロンビア、エルサルバドルというものが挙げられております。以上でございます。
  213. 瀬長亀次郎

    ○瀨長委員 これ、十五カ国になっていないじゃないですか。あらかじめ言っておいたのですよ。
  214. 北村汎

    ○北村政府委員 私どもは、以上のアメリカ側の資料に基づいて先ほど申し上げました国名は、そういうものを挙げた資料があるということでございますけれども、十五カ国全部についてアメリカに問い合わせをしておるということではございませんので、十五カ国がどこであるかということについては承知いたしておりません。
  215. 瀬長亀次郎

    ○瀨長委員 外務省、実にふまじめだな。前もって言ったことをなぜきょう言えないのかという問題なんだ。もう少しまじめになって真剣に委員会では答えてほしい。だから、あらかじめあなた方に連絡したわけなんです。十五カ国を調査して、委員会では検討しますじゃいかぬから発表してくれと、むしろ頼んでおいたのです。それをわかりませんでは、これはまさにふまじめじゃないですか。  さて問題は、今のと関連しますが、この特殊部隊は大変な部隊なんです。普通の部隊みたいに考えておるようでありますが、八五年米国防報告によりますと、SOF特殊部隊は、「非通常戦争、対テロリスト作戦、安全保障援助、心理作戦、直接行動、情報任務など、さまざまな任務」を持っておるのです。はっきり書かれています。  今なぜ日本にこういった挑発部隊が来るかという問題については、まあ外務大臣は聞いても抑止力でございますと言うでしょうが、沖縄では百万余りの県民に対して、県議会で、これは非平和部隊だ、環境破壊の部隊であるからまかりならぬということを全会一致で決議をしているのだ。だから、抑止力ということは平和、安全でしょう、大臣。ところが県民はそうは言っていない。それはなぜかというと、あのベトナム戦争時代の苦い経験を持っているからなんです。沖縄の人々は殺し屋部隊と言っているのですよ。戦争のプロ、やみの軍団、殺し屋部隊来るな、こういうふうなことなんです。しかし、政府はにこにこ笑って、なにこれは普通のものだと言っておりますが、これはそうじゃないですよ。これに書かれているわけですよ。しかも、それを現実にやっていて、「八三年の最初の九カ月の間に特殊部隊は十二の異なった国へ三十六のチームを派遣した。 去る七月に四名、特殊部隊の兵士がエルサルバドル、ホンジュラス軍の多数の大隊を訓練するためにホンジュラスに派遣された。 八十名以上の特殊部隊兵士がレバノン軍を訓練し、政府援助するためにレバノンに派遣された。 また、別なチームが安全保障援助の役割でモロッコ、リベリア、ソマリア、コロンビア、エルサルバドルに展開した。」次に、八三年の二月二十五日の上院軍事委員会においてメイヤー米陸軍参謀長はこう言っているのだ。「我々は現在レバノン軍隊の能力開発という点で、レバノン軍隊検討し、援助する”移動訓練チーム”と呼んでいるものを通じて援助を行っている。」こう証言しております。この特殊部隊は、まさにこれは殺し屋部隊、戦争のプロなんですよ。これは本質的にはベトナム戦争時代と余り変わらない。一応解散されても、またレーガン時代に再編成されておりますが、これが日本にやってくるわけなんです。しかも沖縄に来る。沖縄に来る場合にこの部隊はどこどこに移動するか予想できますか。予想されるのは、例えば韓国、パキスタン、タイ、それからフィリピンですね。予想されるところはどこですか。これは事前協議制関係にも影響しますので、大臣いかがでしょうか。
  216. 北村汎

    ○北村政府委員 米陸軍特殊部隊と申しますのは、いろいろ米側からも説明を受けておりますが、これは空挺であるとか通信であるとかあるいは偵察であるとかあるいはいろいろな軽兵器、重兵器、そういうものを、いろいろな兵器を操作すること、特別な訓練を経た少数精鋭の部隊であるというふうに聞いております。それは平時の場合にはいろいろなそういう戦技の向上の訓練を友好国の軍隊にすることもございましょうし、あるいは有事の場合には、今先生が国防報告の一文をお読みになりましたように、通常戦力の補完戦力としていろいろな行動をするということは、これは予想されているところでございます。しかし、これはあくまでもアメリカの国防政策においていかなる種類の侵略に対しても有効に対処する、その抑止力の一環としてこれがつくられており、特に最近この特殊部隊の有用性というものがアメリカでとみに高まってきておって、ここ二年ほどの間にその再編成が進んでおるわけでございます。それは、紛争が小規模のときにそのエスカレーションを避けながら有効に対処するということが言われておりますが、いかなる段階の紛争におきましてもこれは投入できる部隊でございます。そういう意味で決して特殊ではないわけでございます。  先ほど御質問にございましたどの国にこれが動くかということにつきましては、これは米軍のオペレーションの問題でございますので、私どもは承知をいたしませんが、あくまでも沖縄に配備されております特殊部隊と申しますのは安保条約の枠の中で配備されておるわけでございまして、日本の安全と極東の平和と安全に資するために配備されておるわけでございます。そういう部隊がその目的のために移動するということは、これは軍隊の移動ということで、安保条約上別に問題があるわけではないわけでございます。
  217. 瀬長亀次郎

    ○瀨長委員 部隊の移動ですから、今申し上げました韓国、パキスタン、タイ、フィリピン、これに移動する場合でも、政府はオーケーなんでしょうな、移動だから。どうなんですか。オーケーかオーケーでないか、余り説明する時間がないから、これだけ言ってください。
  218. 北村汎

    ○北村政府委員 軍隊が移動するのは、これは軍隊の属性でございますので、それは別に安保条約上問題ではございません。
  219. 瀬長亀次郎

    ○瀨長委員 それから、時間がございませんので縮めますが、沖縄の場合、私はこれは強く要請したいと思いますが、これは大臣答えてください。  沖縄県議会が全会一致でこの部隊を環境破壊の部隊であり反平和部隊だということ、これはトリイ通信基地のある読谷村議会、村当局、これも同じことなんです。これに対して抑止力というのは、平和でしょう。平和であるためというのが抑止力でしょう。沖縄の現地の受け取り方、平和じゃないのだ、反平和部隊だと言っておりますが、この矛盾はどう説得されますか。
  220. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 この部隊につきましては今局長が詳しく申し上げたとおりでありまして、我々も、これは日米安保条約の枠組みの中で配置をされる部隊であって、そして、このことによっていわゆる日本の平和と安全を確保できる、抑止的な役割も担うものである、こういうふうに考えております。したがって、沖縄の県当局あるいは議会の皆さんにもぜひこの部隊の性格、そういう抑止力的な性格というものを理解をしていただきたい、やはり関係当局もそのための努力を行って、沖縄の県民の皆さんにも理解を得たい、こういうふうに思うわけであります。
  221. 瀬長亀次郎

    ○瀨長委員 最後に、これは強く要請と同時に要求も含めてですが、沖縄の場合、今申し上げましたように、安倍外務大臣の抑止力論ではきかないのですよ。きかないようになっておる。これは平和、安全のためでないぞということなんです。危険なんです。  一例ですが、この部隊の訓練場、北部訓練場、海兵隊が今使っている。沖縄は今本島に百万いる。これはこの百万県民の水がめなんです。その水がめの上で湖上訓練をやったことがある。ボートを浮かべて、ボート訓練、波乗り訓練をやる。七種類の訓練をやる。水中破壊訓練もやる。これは絶対にさせてはいかぬという問題。  それから山岳部隊。既に大臣御承知でしょうが、あのヤンバルクイナ――ヤンバルというのは、今の山岳部隊が、ヤンバルというのですよ、向こうは。最近発見されたヤンバルクイナとかいろいろ天然記念物があって指定されているわけだ。そういった山岳でやる場合に、特に最近、珍重な昆虫類がこれまた天然記念物に指定されておりますが、この特殊部隊は何をやるかという問題なんです。サバイバル訓練、生き抜く訓練、ハブを食うんですよ、蛇を。昆虫類まであさって食う。ネズミまで食ったのですよ、沖縄で。これは絶好のあれだ。こういうのが現在の北部訓練場で訓練を許す場合には、百万県民の飲む水かめ、これを汚すわけなんだ。もうこれ心理的にもこういったのは許されぬですよ。これを絶対させない。  それから今、北部にいるヤンバルクイナなど、そういったのを天然記念物と指定されております。そういうところでは訓練はさせない、そういうことを大臣はぜひ約束してほしいと思うのだが、いかがですか。
  222. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 軍隊というのはそれぞれ性格的にその当然の性格からやはり危険なものを持っております、有事になったら戦わなければなりませんから。だから今のグリーンベレーもそうした軍隊の一環、そしてそれは少数精鋭主義という立場をとったそういう中で鍛え抜かれた軍隊であって、私はそういう意味では日本の大きな抑止力だ。抑止力というのは核だって抑止力ですから、やはり今のグリーンベレーもそういう意味においては非常に強い軍隊である、それはそれなりの抑止的効果は持つものであろう、こういうふうに思います。  ただ、県民の皆さんに無用な誤解を与えないようにいろいろと説明もしなければなりませんし、また場合によっては調整も行う場合もあり得る、こういうふうに思います。これはやはり日本外務省だとかあるいは関係当局がそれなりの沖縄県民の皆さんの御期待にこたえて配慮をしていかなければならない、調整もしなければならぬと思いますから、今の水がめの問題等、そのようなことが起こり得るとは私は思っておりませんけれども、しかし今の御指摘については十分関係当局にも伝えておきます。
  223. 瀬長亀次郎

    ○瀨長委員 最後に、特にこの部隊はかってやったんですよ、ダムの湖上訓練を。これは飲料水に口紅、これを入れたというだけで最高裁で罪になっているんですよ。こういう湖上訓練はさせないこと。さらに今申し上げました天然記念物、これは国が指定した天然記念物だから、これを大事にして、大臣として特段にアメリカにぜひ折衝して約束さしてほしい、こう思いますが、いかがですか。
  224. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 かつてやったからこれからもやるとは言えませんし、部隊としてはまだ三十人程度、これは大体二百人くらいになるわけでしょうが、やはり沖縄に駐留していただいている以上は沖縄県民との間がうまくいくということが大事ですから、そういうことのためには関係当局にもいろいろと調整をし配慮を加えるようによく我々も考えておきたい、こういうふうに思います。
  225. 瀬長亀次郎

    ○瀨長委員 最後に一言、この数ですが、これは県議会の代表が横田の司令部に行きましたとき、最終的には秋口までには三百七十五人になるということを説明しておるようでありますが、現在は二百五十名から三百名と言っている。ところが三百七十五というのは横田の司令部で言っているそうでありますが、これは確認しておられますか。
  226. 北村汎

    ○北村政府委員 現時点で私どもアメリカ側から聞いておりますのは、これは一個大隊約二百五十人から三百人という規模の軍隊であるというふうに聞いております。
  227. 瀬長亀次郎

    ○瀨長委員 終わります。
  228. 中島源太郎

    中島委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時五十四分散会