○安倍国務大臣 今度の
中曽根総理の訪中、それに私もついていったわけでありますが、これは大変成果はあったんじゃないかと私は思います。
中国側も大変な歓迎でありまして、これは胡耀邦総書記が昨年十一月
日本に来た。それに対して
日本が至れり尽くせりの歓迎をして、胡耀邦総書記も大変大きな感銘を受けたということで、帰られてから早速
日本に見習うべきものは見習おうじゃないかということで、どんどん改革が進められておるようでございます。そしてまた、今回の訪問についても、
中国の
政府がこれを歓迎するということだけでなくて、党も一緒にやろうということになったわけで、いわゆる
政府、党一体となった歓迎ですから大変な盛り上がりを見せたわけです。武漢、いわゆる昔の武漢三鎮なんか行ってみましても、百万以上二百万と言われますから、大変な人出でありまして、
中国の人が言っておりましたが、やはりこれは胡耀邦総書記の指示が出た、ですから党が動いておるのですよ、
政府だけじゃなくて党が動いておるからこんな歓迎になったのですよ、こういうことを言っておったのであります。それなりに
中国が
日本に対して大きな期待を抱いておるということであろうと思います。
農業
関係は、生産も相当順調に進んで非常に自信を持ってきたわけですが、特に現代化、工業等の発展についてはこれからだ、そしてそれはやはり
日本の力をかりる以外にないというのが
中国側の
考え方で、それがあらゆる会談に、先ほど申し上げましたように
日本の
投資歓迎といったような形で強く打ち出されたわけでございます。
日中間の話し合いとしては、二国間の問題だけではなくて、広く国際情勢について話し合いをいたしました。首脳会談そして外相会談において、例えば米ソの問題あるいはまた中ソ
関係、中米
関係、朝鮮半島に対する議論等あるいはカンボジア問題等、今日、我々の周りに横たわっておるところの重要な国際問題についてはほとんど余すことなく論議をいたしまして、その中では意見の一致するところもありましたし、また対立、並行する点もあったわけでございます。そういう中で、特に外相会談で我々がお互いに確認をし合ったのは、要するにソ連の最近の軍事力増強、特にINF、いわゆるSS20というものが非常な勢いで極東部に増強されておるということでございまして、今も百三十五基あるわけですが、これが私が
中国へ行きましたときは百四十四基ということでありましたが、その後の
状況では百五十三基までこれが増強される、今こういう
実態になっております。このような膨大な軍事力、特に中距離核ミサイルのアジア部における増強というものに対しまして、やはり
日本と
中国がお互いに
情報交換しながら、ともに核軍縮に向かって声を大にして進んでいかなければならぬ、こういう点について話し合って、これは大変意見の一致を見たわけであります。これは実は昨年の国連総会に私が呉学謙外相と会ったときにこの話を持ち出しまして、当時
中国は、ソ連のSS20、いわゆるINF
交渉についてはほとんど物を言わなかったのですが、私は、これをほうっておいたらアジアが無視されてしまう、どうしてもINF
交渉の焦点が西側に移ってしまって、
日本がグローバルだとかあるいはアジアを犠牲にしてはならないということを言っても、結局ヨーロッパが
交渉の中心になってしまって無視されるおそれがある、それにはやはり
日本だけが声を大にして言ったってだめで、
中国が大きな声を出すということが、いわばある意味においては
アメリカを牽制しあるいはヨーロッパに対してパンチ、一つの圧力をかける上においても必要だ、こういうふうに思いまして、実は
中国側に働きかけたのですが、呉学謙外相がこれに応じてきましたので、その後
情報交換を続けて、今回もさらにそれを確認し合ったわけでありました。これは今中断をしておりますけれ
ども、ソ連のSS20というのは
中国にとりましては非常な脅威だということをはっきり言っておりまして、そういう意味においては、これからのINF
交渉再開における
日中間の
情報交換、そして核軍縮へ向かって足並みをそろえて進むということは
外交面においては大変意味がある、そういうふうに私は確信をいたして、この辺はお互いに進めてまいりたい。
もう一つは、朝鮮半島の問題で、やはり中韓
関係を進めるということが必要じゃないか。朝鮮半島の
状況緩和については、二者会談、三者会談あるいは四者会談、六者会談といろいろと構想は出ておるわけでございますが、現実問題としてはどの構想も、それでは実現するかというと、すぐ右から左にはそういう
可能性はないわけです。しかし
日本としては、この半島の緊張を緩和するということは非常に大事なことでありますし、それなりに
日本としても努力していかなければならぬ。そういう意味で、
環境をよくするという意味での
日本のできる役割というのは、
中国と韓国とは全然
外交関係がないのですから、非政治的な面で中韓の橋渡しをしていくということが、これからの
日本の朝鮮半島の
状況緩和に対する一つの役割であろう、こういうふうに
考えております。実は、ラングーンで亡くなりました李範錫外相が、生きておられるときからこの中韓
関係には大変熱心でありまして、私もしばしば要請といいますか
要望を聞いたわけでございます。
私は、昨年、
日中閣僚会議で
中国に行ったときから既に、中韓問題については呉学謙外相に打診をしておったわけでございますが、今回はさらに具体的な、例えば親族の交流とかそういう面で打ち出しまして、非政治的な面、そして人道的な面ではこれに対して
中国が応ずるというふうな姿勢がはっきり出ました。これはこれから具体化していくでありましょうが、これからの朝鮮半島の
状況を
考えますと、中韓が非政治的な面でいろいろと交流を進める、そういう中に
日本が立って努力をするということは、今後の朝鮮半島の
状況を緩和して、韓国と北朝鮮との話し合いを進めるという意味では何か一つの役割を果たす
可能性はあるのじゃないか、これは腰を据えて、非政治的な面に限ってひとつ努力を重ねていきたい、こういうふうに私は思うわけでございます。
主として大きな
問題点として私が取り上げたのは、SS20の問題と中韓の交流、こういう問題でございました。