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1984-04-04 第101回国会 衆議院 外務委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年四月四日(水曜日)     午前十時二十一分開議 出席委員   委員長 中島源太郎君    理事 石川 要三君 理事 野上  徹君    理事 浜田卓二郎君 理事 山下 元利君    理事 高沢 寅男君 理事 土井たか子君    理事 古川 雅司君 理事 河村  勝君       奥田 幹生君    鍵田忠三郎君       鯨岡 兵輔君    佐藤 一郎君       仲村 正治君    西山敬次郎君       野中 広務君    町村 信孝君       岡田 春夫君    小林  進君       玉城 栄一君    渡部 一郎君       木下敬之助君    岡崎万寿秀君       瀬長亀次郎君  出席国務大臣         外 務 大 臣 安倍晋太郎君  出席政府委員         外務政務次官  北川 石松君         外務大臣官房審         議官      山下新太郎君         外務大臣官房外         務参事官    斉藤 邦彦君         外務大臣官房領         事移住部長   谷田 正躬君         外務省アジア局         長       橋本  恕君         外務省経済局次         長       恩田  宗君         外務省国際連合         局長      山田 中正君         外務省情報文化         局長      三宅 和助君  委員外出席者         防衛庁防衛局防         衛課長     藤井 一夫君         防衛庁人事教育         局人事第一課長 村田 直昭君         外務大臣官房審         議官      川村 知也君         外務大臣官房外         務参事官    瀬崎 克己君         大蔵省主税局国         際租税課長   瀧川 哲男君         国税庁調査査察         部調査課長   木下 信親君         運輸省航空局管         理部国際課長  向山 秀昭君         外務委員会調査         室長      高橋 文雄君     ――――――――――――― 委員の異動 三月三十一日  辞任         補欠選任   江藤 隆美君     園田  直君 四月二日  委員園田直君が死去された。 同月四日  辞任         補欠選任   宮澤 喜一君     奥田 幹生君 同日  辞任         補欠選任   奥田 幹生君     宮澤 喜一君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  所得に対する租税に関する二重課税回避及び  脱税防止のための日本国政府中華人民共和  国政府との間の協定締結について承認を求め  るの件(条約第三号)  航空業務に関する日本国政府スリ・ランカ民  主社会主義共和国政府との間の協定締結につ  いて承認を求めるの件(条約第四号)  千九百八十三年の国際熱帯木材協定締結につ  いて承認を求めるの件(条約第七号)  出版物国際交換に関する条約締結について  承認を求めるの件(条約第九号)  国家間における公の出版物及び政府の文書の交  換に関する条約締結について承認を求めるの  件(条約第一〇号)      ――――◇―――――
  2. 中島源太郎

    中島委員長 これより会議を開きます。  この際、御報告申し上げます。  本委員会委員でありました園田直君が、去る二日、逝去されました。まことに痛惜の念にたえません。  ここに、謹んで委員各位とともに哀悼の意を表し、御冥福を祈るため、黙祷をささげたいと存じます。  御起立願います。――黙祷。     〔総員起立黙祷
  3. 中島源太郎

    中島委員長 黙祷を終わります。御着席を願います。      ――――◇―――――
  4. 中島源太郎

    中島委員長 所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税防止のための日本国政府中華人民共和国政府との間の協定締結について承認を求めるの件及び航空業務に関する日本国政府スリ・ランカ民主社会主義共和国政府との間の協定締結について承認を求めるの件の両件を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。野上徹君。
  5. 野上徹

    野上委員 ただいまも委員長から報告ございましたように、本委員会委員でありまして、そしてかつては外務大臣をやり、日中関係に大きな功績を残されました園田先生のきょうは葬儀がとり行われる日でございます。園田先生の御冥福を念じつつ、自由民主党を代表いたしまして本租税協定に関する、そしてまたスリランカの航空協定に関する質疑に入らしていただきます。  まず、日中租税協定でございますけれども、御承知のように日本中国との経済交流というものは、過去十一年余り日中の国交が回復して以来非常な伸びを見せているわけでございます。その貿易額に至りましては、この十一年余りで約四倍、百億ドルという大変な伸びを示しているわけでございますが、まさにこの中国対外開放政策がこの租税協定によって本格的な幕あけ時代を迎える、このように受けとめたいと思うわけでございます。  そこでまず、この協定に関しましては、昨年の九月に第三回の日中閣僚会議安倍外務大臣呉学謙外交部長との間に署名が交わされたわけでございますけれども、私といたしましては、この租税協定、やや遅過ぎた嫌いがあるんじゃないかなという感もあるのでございますが、ようやく締結署名が交わされたということでありますが、この間の経緯につきまして簡単に御説明を願いたいと思います。
  6. 瀬崎克己

    瀬崎説明員 お答えさしていただきます。  日中間経済交流につきましては、国交正常化以前から民間レベルでいろいろ貿易があったわけでございますけれども中国側は一九七九年以降対外開放政策を追求してまいったわけでございます。その関連で一九八〇年、昭和五十五年に中国個人所得税法合弁企業に関連いたします税法整備いたしました。それ以前には課税の問題はなかったわけでございます。また、日本企業進出余りなかったという実情もございまして租税協定必要性はなかったわけでございます。他方中国におきまして税法整備いたされまして、日本民間企業進出に対してもいろいろ呼びかけがある、こういうような状況を踏まえまして二重課税防止するという必要性が出てまいりまして、一九八○年の日中閣僚会議の際にこの必要性日本側が強調いたしましたところ、租税協定、それから今まだ交渉中でございますけれども投資保護協定につきまして早期交渉を開始するという合意が成立いたしました。その後五回の交渉を経まして租税協定署名に至りまして、これが中国側外国締結いたしました最初租税協定でございます。そういう意味で非常に画期的な意義があるというふうに私どもは位置づけておるわけでございます。これから民間経済交流、特に先方が期待しております企業進出等についてこたえていくためには企業進出のための基盤と申しますか環境整備が必要なわけでございまして、その一環でこの租税協定必要性日中双方で認識された、こういうことで協定妥結に至ったわけでございます。
  7. 野上徹

    野上委員 いわゆる四つ近代化建設ということでいよいよこの対外開放政策中国にとって非常に必要になってきた、こういうことで本協定締結必要性が出てきたと思うわけでございますが、これまでの日本民間企業中国進出状況貿易状況などの実態を聞かしていただきたいわけですが、私の調べたところによりますと、日本合弁企業はわずか六件しかない。それに比べて、これは日中経済協会の調べでございますけれども香港あたりは六十八件、一億二千六百万ドル、米国は十八件、八千五百万ドルといったふうに日本の六件、二千四百万ドルをはるかに上回る進出がされているわけでありますが、これまで日本民間ベース企業合弁停滞ぎみであったという理由はどこにあるのでしょうか。
  8. 瀬崎克己

    瀬崎説明員 最初先生の御質問なさいました日中の貿易現状等について若干御説明させていただきますと、一九八三年の貿易総額は百億ドルでございます。中国の総貿易額は四百億ドルでございますので大体二五%ということでございまして、日本から見ますとこの百億ドルというのは日本の総貿易額の三・七%ということでそれほど大きな位置づけではないわけでございますが、とにかく中国側から見ますと対外貿易の四分の一が日本との貿易ということで、非常に重要な貿易であるということが言えるはずでございます。そうして、中国側から見まして、輸出では香港に次ぎまして日本が第二位、それから輸入では日本が第一位を占める、こういう状況になっております。  それから企業進出でございますが、先ほど先生おっしゃいましたとおり合弁企業が六件、それから一〇〇%出資の子会社が一件ということでかなり少ないわけでございまして、今回の中曽根総理の訪中の際にも、先方側から日本貿易パートナーとしては第一位だけれどもどうも資本進出の面では少ないからもっと大いに進出していただきたいということがあったわけでございます。他方、これに対しまして我が方からは投資環境整備がやはり必要だということを強調したわけでございますが、今先生がおっしゃいましたとおり、企業進出の数が非常に少ないというのは実態でございまして、これについては、やはり投資環境整備されるということが基本になるわけでございます。  中国側は一九七九年以降四つ近代化ということを前提といたしまして紀元二〇〇〇年には一九八〇年の農工業生産の四倍にするということを前提にいろいろな諸策を進めているわけでございますが、経済特区をつくったりあるいは合弁企業法律整備したり、いろいろ努力はしているわけでございまして、その一環で今回の日中租税協定締結されたということでございますが、他方日本企業から見ますと、例えば経済特区というような企業誘致のためのいろいろな誘致策をとっているわけでございますけれども中国の中にこういった経済特区につきましてもかなり批判的な意見があるということで、果たしてこういった中国側企業誘致策というものが定着するかどうかということについて不安があったと思われるわけでございます。  しかし、この近代化路線を追求する中国政策というのはかなり堅実な進展を示しておりまして、その証左といたしまして、最近では経済特区に対する企業進出の数も非常にふえている。あるいは特許法を制定いたしましたり、その他もろもろの法律を制定しているわけでございますが、こういうことで徐々に企業の不安というものも解消しつつあるやに見受けられるわけでございます。  企業の方でも例えば合弁企業が現在百八十八件進出しているわけでございますけれども、そのうちの百件は一九八三年に進出したということでございまして、最近では外国企業中国に対する目というのが徐々に変わりつつあるということかと思います。  他方、いま一つ日本企業にとりまして若干問題となっておりますのは、経済特区にせよあるいは企業誘致にいたしましても、中国側としてはどちらかと申しますと輸出振興に重点を置いているわけでございまして、日本企業から見ますと、中国の十億の人口を相手といたしました中国市場の中に参入するということで、若干目的の点でずれがあるということでございます。  他方、この点につきましても、中国側といたしましては非常に改善の方策をとっておりまして、例えば日本進出しておりますある電機メーカーの製品でございますけれども、最近のお話をお聞きしますと、テレビジョンの五五%を中国市場に売ることを認めたり、テープレコーダーの一五%を中国市場の中に売ることを認めるというようなことでございまして、徐々に日本側あるいは外国進出している企業問題点ということについても中国側が理解しているということでございます。  したがいまして、今までのところは確かに日本企業進出の数、実態というものはそれほど中国側の期待にこたえてなかったという面もございますが、今後恐らく締結交渉が進展するであろうと期待されております投資保護条約あるいは中国側法体系整備されるにつれまして、日本企業進出可能性というのはさらに開けてくるのではないか、このように私ども考えているわけでございます。
  9. 野上徹

    野上委員 確かに貿易の方は二五%ということで相当なものでありますけれども投資面で七%というのはいかにも低いように感じるわけであります。  ところで、ただいまお話にありましたように、これから大いに資本進出の面で日本企業進出をしていくには環境整備ということをこれから中国は本当にやっていかなければならない、そういう時代だと思いますが、ただいまお話にありました経済特区の問題あるいは投資保護協定の問題、そのほか、つい先般特許法ができたわけでございますけれども、この投資保護協定とはどんなもので、いつごろこれは締結される見通しがあるのか。そしてまた、ただいま挙げましたもののほかに経済法規整備という点ではどういうことを中国日本側から要求していこうとされているのか、そこら辺について聞かせていただきたいと思います。
  10. 瀬崎克己

    瀬崎説明員 先ほど御説明させていただきましたとおり、投資保護条約につきましても、一九八〇年の第一回日中閣僚会議の際に日本側から提起いたしまして、先方政府としても早期締結を目途に交渉早期に開始するということについて合意いたしまして、その後五回にわたりまして事務的なレベルでこの条約協定交渉をやっているわけでございます。  先般、中曽根総理中国を訪問されました際にも、先方側から日本民間企業進出につきましていろいろ要望がございまして、それに対しまして総理の方から、企業進出するにはやはり安定した投資環境整備するということが非常に重要である、その一環投資保護協定についてもできるだけ早い機会に締結する必要があるのだということを強調されましたのに対しまして、先方としても、この点については非常に理解するので、できるだけ早期投資保護協定についても交渉が妥結する方向で努力したい、このような意思を表明しております。  この協定内容につきましては、現在交渉中でございますので、先方の立場もございますから、私どもの方としてはできれば差し控えさせていただきたいというふうに考えているわけでございます。  それから、現在の中国のいろいろな法律整備でございますが、外国企業進出を誘致するための必要な法律といたしまして、合弁企業所得税法個人所得税法外国企業所得税法経済契約法商標法合弁企業法、それから合弁企業実施細則労働組合法環境保護法特許法等が制定されておりまして、例えば特許法については今年三月に成立したわけでございますが、一年後に発効するということでございます。  それから、日本側といたしましては、投資環境整備一環といたしまして投資保護協定についての要望はいたしましたが、それとあわせまして工業所有権保護に関するパリ条約の加入につきましても先方要望いたしまして、これにつきましては中国政府首脳の方から、日本側要望については十分留意する、このような発言がございました。  以上でございます。
  11. 野上徹

    野上委員 経済特区について伺います。  現在、本日もそうでありましょうが、この経済特区に関する会議中国で開かれているやに聞いておるわけですが、これまでの経済特区をさらに数をふやして、沿海諸都市にふやしていくという趨勢にあると聞いておりますけれども、具体的にどういう都市がこれからその特区になっていこうとしているのか、その辺についての一番新しい情報を聞かせていただきたいと思います。
  12. 瀬崎克己

    瀬崎説明員 中国経済特区につきましては、一九七九年にこういった外国企業を誘致するような特別な区域をつくろうということで中国側がいろいろ準備いたしまして、福建省広東省に現在では四つございます。すなわち、深セン珠海スワトウアモイ、この四つ地域がいわゆる経済特区といたしましていろいろ環境整備等が進められているわけでございますが、最近、中国側といたしましては、外国企業を誘致するためにやはりこのような経済特区をいろいろもう少し考える必要があるのではないかということで、今回中曽根総理が訪中されました際にも経済特区のような地域あるいは経済特区政策を拡大するということを向こうが示唆しておりまして、これが経済特区そのもの新設につながるのか、あるいは経済特区でとられております優遇措置をいろいろな都市でとるのかという点につきましては若干不明確な点があるわけでございますが、いずれにせよ現在経済特区でとられている優遇策をほかの都市に拡大しようという動き中国内にあるわけでございます。  具体的な動きといたしましては、三月二十六日から中国におきまして、大連、青島、寧波、温州、海南島、深セン珠海スワトウアモイ、北海の市長さんクラス責任者が集まりまして経済特区問題点をいろいろ討議しているようでございます。私が先ほど申しましたように、経済特区そのもの新設につながるのか、あるいは政策的に経済特区優遇措置をこのような都市に導入することになるのか、まだ結果は明らかではございませんけれども、この十都市市長さんクラス責任者が集まっているというところから見ますと、恐らくこの十都市に、既存のものにつきましては経済特区の拡張、あるいは新しいところにつきましては特区政策を導入する、このような動きになるのではないかと見られるわけでございます。
  13. 野上徹

    野上委員 中国にとっては外国と結ぶ租税協定としてはこれが第一号だ、こういうことでありますが、日本はこうした条約を何カ国ぐらいとやっているか。それともう一つ、中国の場合にはOECDモデル条約案というものに沿ったものにする、こういうことでありますが、一方、発展途上国に対しては国連モデル条約案というものに沿ってやるという場合もあるわけであります。このOECDモデル条約案国連モデル条約案相違はどこにあるのか、そしてどういう国に対してどっちの条約案に沿ってやるのか、その辺を御説明願いたいと思います。
  14. 斉藤邦彦

    斉藤(邦)政府委員 最初にお尋ねの点でございますが、日本は今まで三十四カ国と租税条約を絡んでおりますので、これが三十五番目の租税条約ないし租税協定ということになります。  この条約OECDモデル条約または国連モデル条約とどういう関係にあるかという点でございますが、我が国といたしましては、基本的には今度の中国との租税協定OECDモデル条約のパターンに沿いまして作成したものでございますが、中国開発途上国でございますので、この点を考慮に入れまして国連モデル条約内容も取り入れております。  OECDモデル条約と申しますのは、これは主としてOECD加盟諸国間で租税条約を結ぶとき、できるだけこういうような内容で結ぶことを目指すべきだという考えからつくられておりますので、基本的に経済発展段階がそれほど異ならない国同士の間の租税協定ということを目指しているわけでございます。これに対しまして、国連モデル条約の方は、先進国開発途上国との間で租税協定を締ぶときのモデルとしてつくられたものでございます。したがいまして、租税協定は、もちろん規定の内容が双務的な書き方になるわけでございますけれども先進国開発途上国との間におきましては、資本の流れもそれから企業進出もどうしても実態上は一方的なものになるわけでございます。それを考慮いたしまして、国連モデル条約におきましては源泉地国での課税を広く認める形とするために恒久的施設範囲をより広く認めるとか、あるいは投資所得制限税率を明記していない、こういうような特徴があるわけでございます。  今度の日中租税条約租税協定におきましては先ほど申し上げましたような考慮から、基本的にはOECDモデル条約のラインに沿いつつも、中国開発途上国であるということを考慮いたしまして、恒久的施設範囲をより広く認めているというような点におきまして国連モデル条約、それから日本が今まで発展途上国との間でつくりました協定、この考えをある程度取り入れてつくってございます。
  15. 野上徹

    野上委員 この前もらいました提案理由説明では、OECDモデル条約案というものだけ前面に出ておりましたので。確かに広大な資源と市場がある国ではありますけれども事経済管理その他に関してはあくまでも中国発展途上国だ、こういうふうに私も受けとめますし、昨年来日されました胡耀邦さんあたりもそういうふうに言っているわけですが、そこら辺でどうして国連モデル条約案の方に沿わなかったのかな、こういう疑問が実はあったわけであります。そうすると、これは結局今のお話ですと、両方を折衷してつくった、こういうふうに受けとめてよろしいですか。
  16. 斉藤邦彦

    斉藤(邦)政府委員 そのとおりでございます。
  17. 野上徹

    野上委員 さてそこで、先ほどから申しておりますように、これが中国の対外的な租税協定の第一号であるという点で大変高く評価しているわけでありますが、今アメリカ中国米中租税協定、これが仮調印されたと聞いているわけですけれどもアメリカの方に先を越されてしまうというような見通しはどうですか。
  18. 瀬崎克己

    瀬崎説明員 米中租税協定につきましては、去る三月二十一日リーガン財務長官が訪中した際に仮署名されているようでございます。この協定内容につきましては、私どもの方から中国側に照会したわけでございますが、現在まだ仮署名段階でございますので外部には明らかにできないということでございますが、おおむね日中租税協定に似たものである、ただしアメリカ法律制度との相違を踏まえまして、日本とは若干違っているけれども、それはアメリカ法律制度日本法律制度との違いを反映したものであって、基本的には日中租税条約と類似のものである、このような説明を受けているわけでございます。  他方、この協定につきましては三月二十一日に仮署名されたわけでございますが、今月下旬に予定されておりますレーガン大統領中国訪問の際に正式に署名されるやに聞き及んでいるわけでございます。他方発効手続につきましては日中租税条約の場合と同様でございまして、アメリカ議会承認を得た後に発効するわけでございます。したがいまして、現在我が方の国会で御審議いただいているわけでございますが、日本側国会審議状況と、四月二十六日以降正式に調印されますこの条約アメリカ議会における審議状況、どちらの方で早く御審議いただくかということになるわけでございますが、とにかく日中租税条約なるものが中国側最初締結した租税条約であるということでございますので、先方といたしましても日中租税条約ができるだけ早期発効することを期待しているやに聞き及んでいるわけでございます。
  19. 野上徹

    野上委員 せっかく交わすこの協定でありますし、お隣の中国日本とはこれから長期かつ安定的にもっともっと友好を深め、さらに経済交流も進めていかなければならぬ、こういう状況にある中で、せっかくなら第一号に日本がなってほしいな、こういうふうに思うわけですが、この国会でこれが承認されると、すぐ発効して一号になるというわけであるならば、一日も早くこれを承認させてもらいたいな、こういうふうに思うわけですが、そこら辺、これを承認すれば自動的に発効になるわけですか。
  20. 斉藤邦彦

    斉藤(邦)政府委員 この協定発効手続は、二十九条に書いてございますけれども日中双方におきまして効力発生のための必要とされる手続が完了したことを通知する外交上の公文が交換された日から三十日目に発効することになっております。したがいまして、我が国におきましては、国会の御承認をいただいた後内閣の決定をいただきまして、この旨の公文を交換し得る体制になった後、早くて三十日後に発効するということになります。
  21. 野上徹

    野上委員 さて、この協定発効し、いろいろな環境整備がなされていく、中国は現在百億ドルの貿易額を将来は四百億ドル、五百億ドルに持っていきたいんだ、こういうことでありますが、そうなってまいりますと、ここでちょっと懸念されるのは、確かに中国は大きな市場を持っておりまして、日本にとっても将来性のある市場でありますからそういうふうな日本企業進出というものは大変な伸びを見せるかと思います。そうなってまいりますと、今アメリカとの間に貿易摩擦というようなことが起きているわけでありますけれども、そこら辺まで心配するのは杞憂かもしれませんが、そうした膨れ上がっていくであろう日中の貿易に対しまして政府側はどのような予測を立てておられるか。貿易摩擦というものは起きてからやってもなかなか取り返すのに時間がかかるわけですので、そこら辺をどのように考えているのか聞かせていただきたいと思います。
  22. 瀬崎克己

    瀬崎説明員 日中間貿易でございますが、中国側の指導者の予測によりますと、現在の百億ドルの貿易の規模を一九九〇年には二百億ドル、二〇〇〇年には四百億ドル、こういうような希望的観測を述べているわけでございます。日本中国との貿易の構造を見ますと、どちらかと申しますとこれは補完的な関係にある。要するに日本側から鉄鋼製品であるとか機械類が出てまいりまして、中国側からは鉱物資源、すなわち石油と石炭が中心でございますが、これが輸入のほぼ半分、五〇%ないし六〇%を占めているわけでございます。こういった貿易構造は恐らく今後も長期的に変わらないと思いますし、また、民間締結しております長期的な資源輸入の協定を見ましても、恐らく相当な規模で今後日本の輸入需要というのは伸び続けるのではないか、かように期待されますので、現在アメリカとの間あるいはヨーロッパとの間にございますような貿易摩擦というのは当面予測されないところでございます。  他方日本中国との間にはいわゆる日中四原則というものがございまして、平等互恵を中心といたしました精神規定というものが政府関係を律する上でのガイドラインであるのみならず、日本民間の方々についても十分理解されているところでございまして、企業進出等につきましても混乱がないというふうに予測しているわけでございます。
  23. 野上徹

    野上委員 それから四つ近代化、工業、農業、防衛、科学技術、こういうことでありますが、確かに工業、農業、科学技術というのはまあ結構なのですけれども、防衛となりますとやはり神経質にならざるを得ない面もあるわけであります。その点について、これから日本企業がどんとん進出していくといった場合に、この武器関連の企業となりますと、広い意味での武器といいますといろいろ不明瞭になってくるわけでありますが、そういった企業進出についてのチェックというものはどうなるのでしょうか。
  24. 瀬崎克己

    瀬崎説明員 この問題につきましては外務省が直接に所掌する立場ではございませんが、私どもといたしましては日本企業進出する際につきまして日本側の規制に際しまして、少なくとも軍事協力につながるような企業進出というものはあり得ないだろうというふうに確信するわけでございます。  なお、日中政府間の経済協力につきましては、この点は非常に明確になっておりまして、一九七九年に大平元首相が訪中された際に日本の経済協力の基本的な姿勢といたしまして、西側諸国との協調、軍事協力は行わず、アジア諸国との均衡を保つ、この三つの基本的な原則が明確になっておりまして、軍事協力につながるような少なくとも政府レベルでの経済協力というのはあり得ないというふうに確信してお力ます。
  25. 野上徹

    野上委員 この日中租税協定に関しましては後ほど大臣が見えられましたら、最後に一問質問をすることにいたします。  スリランカとの航空協定でございますけれども、昨年の七月末にスリランカでシンハリ人とタミル人の事件が発生をいたしましたが、このスリランカの国内情勢、これについて少し聞いておきたいと思うわけでございます。  と申しますのは、この航空協定によってこれから日本とスリランカの間の人的な往来、日本人の観光客も非常に増大するでありましょう。そういうところへ行きますと、向こうの国内の安全というものについてやはり相当神経質にならざるを得ない、こういうふうに思うわけでございます。そこで、この人種問題に絡むざわめきが日本とスリランカ間の観光投資面でいかなる影響があると考えておられるのか、その辺についてお聞かせ願いたいと思います。
  26. 瀬崎克己

    瀬崎説明員 スリランカの人口は約千五百万でございます。このうちの七〇%近くがシンハリ人でございまして、他方一七、八%が少数民族のタミル人ということで、このタミル人とシンハリ人の間には長年にわたって確執があったわけでございますが、昭和五十二年以降、このタミル人の少数過激派が各地でかなりテロ的な行為をやっておりまして、銀行を襲撃したりあるいは強盗殺人を行うというようなことで、かなり過激な動きがあったわけでございます。この過激派のタミル人がたまたまセイロン島の北東部に集中しておりますので、分離運動というような動きもございまして、いろいろ政治的に問題があったわけでございますが、不幸にして昨年の七月、たまたまシンハリ人の兵隊さん十三人がタミル人によって殺害されるという事件が起きまして、これを契機といたしまして各地で暴動が起きまして、その際に約四百人近いスリランカの人々が亡くなったわけでございます。こういうような事態を受けまして、政府は非常事態の宣言をいたしまして政情の鎮静化に努めたわけでございますが、幸いにして約一カ月程度でこういった事態が解消されて、現在では政情も安定しているということでございまして、大統領を中心といたしまして、現在全政党間における民族融和のための話し合いというようなものが行われております。最近になりましても、何かシンハリ人の殺害事件が起きたというようなことがございましたけれども、これは大事には至っていないということでございます。  他方、こういった一連の政情不安が特にスリランカが重視しております観光事業にどういう影響を与えたかという点につきましては、八三年の統計数字が必ずしもつまびらかではございませんのではっきりしたことは申し上げられないわけでございますけれども、我々がいろいろ仄聞しておるところによりますと、観光収入がかなり減った、要するに観光客のスリランカ訪問が減ったように聞いております。したがいまして、スリランカとしてはそういった観光収入の減少を防ぐためにも、現在の政情の安定ということを非常に重視しておるわけでございます。  スリランカにつきましては、現在の大統領が中心となっておりまして、政府、同会では多数党を占めておりますし、政情そのものは安定しておるわけでございますが、残念ながらこのような少数民族問題をめぐりまして若干問題があるということでございますけれども、基本的には私どもとしてはスリランカの政情は安定しているというような認識に立っているわけでございます。
  27. 野上徹

    野上委員 定刻に大臣がお見えになられましたので、先ほど残しておきました租税協定に関しまして最後の質問をしたいと思います。  安倍外務大臣は、この租税協定に関しましては昨年来大変御努力をされ、署名者として一つの感慨をお持ちになっていると思いますが、本協定発効した晩には、対中経済交流拡充の面でずばりどんな役割を果たしていくお考えでしょうか。その点について、大臣から御説明を願いたいと思います。
  28. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 今回ぜひお願いをして、日中租税協定承認を得たいわけでございます。これは、これからの日中関係の長期にわたる安定を確保していく、さらにまた、中国のいわゆる経済の現代化を促進する意味におきましても、日中双方にとりましても大変重要な意味を持った協定である、私はこういうふうに思っております。  中国に今回参りまして、中国の首脳からいろいろと話を聞きましたし、我々も率直に注文も出したわけでありますが、日中双方において、政府間については、今回も第二次七カ年で四千七百億という膨大な協力をすることになって非常に順調にいっておりますが、ただ、民間投資という面につきましては、中国の統計によると全体の中で日本民間投資は六%ぐらいしかしていない。経済協力は世界で最も多くしてもらっている。しかし、民間の方の投資は非常に少ない。これでは本当の日中の安定的な経済関係というものは確立できないし、現代化は、政府の御協力は大変ありがたいのですが、それだけではできないので、これはまた日本の経済のこれからの発展というものにはね返ってくるのでぜひとも民間関係を強化していきたい。それにはやはり民間投資をお願いしたいということで、投資環境あるいはまた投資の条件というものを整備してもらわないと、政府が行けと言ってすぐ民間が出るわけにはいかないわけだから、ぜひともそうした整備をしてもらいたい。そういう意味で、今度の租税協定も、投資環境整備という意味で中国側も努力しまして、今回この運びになったわけでございます。  私は、今後の日中関係にこの協定はそれなりに非常な役割を果たしていく、こういうふうに考えておりますし、民間投資が促進される上においても大変意義深いものであろうと考えるわけであります。鄧小平主任と中曽根総理との会談の際も、特に民間投資問題が非常に大きな課題になりまして、いろいろと条件整備もするし、同時にまた、中国民間が出てきて非常に失敗をするとか、そういうふうなことがあれば遠慮なしに言ってもらいたい、中国は必ずこれは補いをつけます、ぜひとも日本民間側にそういう説明をしてもらいたい、日本民間の協力があって初めて中国の現代化は完成できるということを口をきわめて言っておられたわけであります。そういう意味からも今度の租税協定は非常に意味を持った協定であるということで、ぜひとも御承認のほどを早くお願い申し上げたい次第であります。
  29. 野上徹

    野上委員 大臣には大変たくさん質問をしたいわけですが、限られた時間でございますので、日中に限ってさせていただきたいと思います。  大臣におかれましては、例えば日米ということになりますと、本日も山村農林大臣が訪米されておられますが、農産物の問題初めVANあるいはソフトウエア、ソフトプログラムあるいは金利、いろいろな面での対米経済パッケージという面で大変な御活躍をされ、また、中東におきましてはイラン、イラクの紛争を初めといたしまして対中東政策に安倍外交の実を上げられているわけでございます。我々から見ておりますと、中曽根外交というよりも今やまさに安倍外交ということで世界が評価をされている、こういうふうに受けとめているわけであります。また、先ごろの訪中は大変大きな成果を上げられてお帰りになられたわけですが、私といたしましては、安倍外交の基本は、もちろん主張すべきは主張し、そして話し合いによって日本の平和外交政策を強力に進めていくんだという基本姿勢は非常によく理解できるわけですが、今回の訪中に関しまして、安倍外交のいわゆる主張すべきを主張する、こういう面におきまして外相会談その他でどのような主張をなされたか、そしてまた、今回の訪中で最も大きな成果は何であったのか、今度の訪中の一連の問題をどのように大臣として評価なさっておられるか、この辺についてお聞きしたいと思います。
  30. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 今度の中曽根総理の訪中、それに私もついていったわけでありますが、これは大変成果はあったんじゃないかと私は思います。中国側も大変な歓迎でありまして、これは胡耀邦総書記が昨年十一月日本に来た。それに対して日本が至れり尽くせりの歓迎をして、胡耀邦総書記も大変大きな感銘を受けたということで、帰られてから早速日本に見習うべきものは見習おうじゃないかということで、どんどん改革が進められておるようでございます。そしてまた、今回の訪問についても、中国政府がこれを歓迎するということだけでなくて、党も一緒にやろうということになったわけで、いわゆる政府、党一体となった歓迎ですから大変な盛り上がりを見せたわけです。武漢、いわゆる昔の武漢三鎮なんか行ってみましても、百万以上二百万と言われますから、大変な人出でありまして、中国の人が言っておりましたが、やはりこれは胡耀邦総書記の指示が出た、ですから党が動いておるのですよ、政府だけじゃなくて党が動いておるからこんな歓迎になったのですよ、こういうことを言っておったのであります。それなりに中国日本に対して大きな期待を抱いておるということであろうと思います。  農業関係は、生産も相当順調に進んで非常に自信を持ってきたわけですが、特に現代化、工業等の発展についてはこれからだ、そしてそれはやはり日本の力をかりる以外にないというのが中国側考え方で、それがあらゆる会談に、先ほど申し上げましたように日本投資歓迎といったような形で強く打ち出されたわけでございます。  日中間の話し合いとしては、二国間の問題だけではなくて、広く国際情勢について話し合いをいたしました。首脳会談そして外相会談において、例えば米ソの問題あるいはまた中ソ関係、中米関係、朝鮮半島に対する議論等あるいはカンボジア問題等、今日、我々の周りに横たわっておるところの重要な国際問題についてはほとんど余すことなく論議をいたしまして、その中では意見の一致するところもありましたし、また対立、並行する点もあったわけでございます。そういう中で、特に外相会談で我々がお互いに確認をし合ったのは、要するにソ連の最近の軍事力増強、特にINF、いわゆるSS20というものが非常な勢いで極東部に増強されておるということでございまして、今も百三十五基あるわけですが、これが私が中国へ行きましたときは百四十四基ということでありましたが、その後の状況では百五十三基までこれが増強される、今こういう実態になっております。このような膨大な軍事力、特に中距離核ミサイルのアジア部における増強というものに対しまして、やはり日本中国がお互いに情報交換しながら、ともに核軍縮に向かって声を大にして進んでいかなければならぬ、こういう点について話し合って、これは大変意見の一致を見たわけであります。これは実は昨年の国連総会に私が呉学謙外相と会ったときにこの話を持ち出しまして、当時中国は、ソ連のSS20、いわゆるINF交渉についてはほとんど物を言わなかったのですが、私は、これをほうっておいたらアジアが無視されてしまう、どうしてもINF交渉の焦点が西側に移ってしまって、日本がグローバルだとかあるいはアジアを犠牲にしてはならないということを言っても、結局ヨーロッパが交渉の中心になってしまって無視されるおそれがある、それにはやはり日本だけが声を大にして言ったってだめで、中国が大きな声を出すということが、いわばある意味においてはアメリカを牽制しあるいはヨーロッパに対してパンチ、一つの圧力をかける上においても必要だ、こういうふうに思いまして、実は中国側に働きかけたのですが、呉学謙外相がこれに応じてきましたので、その後情報交換を続けて、今回もさらにそれを確認し合ったわけでありました。これは今中断をしておりますけれども、ソ連のSS20というのは中国にとりましては非常な脅威だということをはっきり言っておりまして、そういう意味においては、これからのINF交渉再開における日中間情報交換、そして核軍縮へ向かって足並みをそろえて進むということは外交面においては大変意味がある、そういうふうに私は確信をいたして、この辺はお互いに進めてまいりたい。  もう一つは、朝鮮半島の問題で、やはり中韓関係を進めるということが必要じゃないか。朝鮮半島の状況緩和については、二者会談、三者会談あるいは四者会談、六者会談といろいろと構想は出ておるわけでございますが、現実問題としてはどの構想も、それでは実現するかというと、すぐ右から左にはそういう可能性はないわけです。しかし日本としては、この半島の緊張を緩和するということは非常に大事なことでありますし、それなりに日本としても努力していかなければならぬ。そういう意味で、環境をよくするという意味での日本のできる役割というのは、中国と韓国とは全然外交関係がないのですから、非政治的な面で中韓の橋渡しをしていくということが、これからの日本の朝鮮半島の状況緩和に対する一つの役割であろう、こういうふうに考えております。実は、ラングーンで亡くなりました李範錫外相が、生きておられるときからこの中韓関係には大変熱心でありまして、私もしばしば要請といいますか要望を聞いたわけでございます。  私は、昨年、日中閣僚会議中国に行ったときから既に、中韓問題については呉学謙外相に打診をしておったわけでございますが、今回はさらに具体的な、例えば親族の交流とかそういう面で打ち出しまして、非政治的な面、そして人道的な面ではこれに対して中国が応ずるというふうな姿勢がはっきり出ました。これはこれから具体化していくでありましょうが、これからの朝鮮半島の状況考えますと、中韓が非政治的な面でいろいろと交流を進める、そういう中に日本が立って努力をするということは、今後の朝鮮半島の状況を緩和して、韓国と北朝鮮との話し合いを進めるという意味では何か一つの役割を果たす可能性はあるのじゃないか、これは腰を据えて、非政治的な面に限ってひとつ努力を重ねていきたい、こういうふうに私は思うわけでございます。  主として大きな問題点として私が取り上げたのは、SS20の問題と中韓の交流、こういう問題でございました。
  31. 野上徹

    野上委員 時間がなくなってまいりましたので、まとめてお聞きいたします。  確かに、ソ連の極東の軍事増強に関する情報交換、そしてまた中韓交流拡充という意味でのいわゆる里帰り問題についての強力な大臣の提案が、向こうの呉学謙その他の方々によって相当はっきりした形をとってきたということは本当に大きな成果だと思うわけであります。  そこで、細かい問題でありますが、まだ幾つかお聞きしておきたいのですが、ソウル五輪への参加を中国は相当明確に打ち出しているんじゃないかというような気がする点が一つ。  それからアジア大会。これは北京と広島で綱引きしているわけでありますが、このアジア大会の誘致だとか、あるいは国際司法裁判所、ICJの立候補の問題、この問題について円満な話し合いで解決するという話し合いをされたそうですけれども、そこら辺の行き先はどうなっていくんだろうかという面で、大臣は具体的にどの程度自信をお持ちになっておられるのか、この点。  さらに、日本と北朝鮮との関係で、大臣は、今まで国際赤十字社を通してやっていた拿捕事件があった場合のことを、これから中国を通して頼むんだ、こうおっしゃっておられますが、その点の突っ込んだ話し合い、この三点についてお聞きしたい。  さらに、青年交流の拡充という機運が非常に高まってきておりまして、今秋には三千人の日本の青年が向こうに行くというわけであります。この青年交流に関して、総理も、二十一世紀委員会の提言があれば文化交流センターを北京に建ててもいいんだ、こういうふうなことを言っておられますけれども、これを建てる場合には無償援助という形でいくのかな、こういうようなことについてお答えを願いたいと思います。  時間がございませんので、この辺でやめますけれども、最後に経済援助につきまして、円借款、無償援助あるいは輸銀ローン、こういったものを合わせると一兆円を超すという大変大きな、大型の援助になっていくのでありますが、これは、ASEAN諸国だとかいろいろな経済援助と比較すると、非常に大き過ぎないかなという嫌いもあるのですが、その辺の感触もあわせてお答えを願いたいと思います。
  32. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 いろいろと御質問でございますが、時間の関係もございまして簡単に申し上げます。  ソウルで、アジア・オリンピック大会、それからまた世界オリンピック大会が行われるわけでございます。これに対して中国が参加するかどうかということについては、その感触は聞いてみました。中国としてはいろいろな事情といいますか、状況等を判断をしてということでありますが、私自体が受けた感じとしましては、スポーツとかそういう問題でありますから、中国としてはやはり参加したいという感じを強く持っているんじゃないかという感触を受けたわけであります。中国がはっきり言ったわけではございません。  それから、広島と北京で争っておりますアジア大会につきましては、これは日本も広島が立候補しております、これに対して政府としてもバックアップをしております、こういうことを言いました。同時にまた、国際司法裁判所に小田判事、これもまた立候補しておりますのでぜひともよろしくということも言ったわけでありますが、国際司法裁判所の判事もまた中国から立候補しておりまして、ですからアジア大会と国際司法裁判所の判事、両方とも中国日本が実は争っておるような形になっておるわけであります。しかし、この点については中国側も、日本中国は友好関係にあるのですから、我々としても立候補はしておるけれども、ひとつまたそのうちに友好国らしくこの辺は対処してまいりましょうということで、それはそのとおりです、これからの問題ですから友好国同士で話し合いもすることもあるし、あるいは場合によっては堂々と争うということもあるし、友好国らしくして、後に問題を残さぬようにやりましょうということにいたしたわけであります。  それから、中国に対する日本の援助ですが、これは全体から見ますとASEANと大体同じ程度の円借款です。輸銀のローン等も含めまして、全体的にASEANあるいは韓国、大体同レベルの経済協力を行うことになるわけでございまして、中国のGNPが二百五十ドルということを鄧小平主任も言っておりましたが、そういう状況、そして十億以上の人口、さらにまた日本中国との関係、そういうことを考えますと、日本に力があるわけですからやはりこの程度の経済協力が当然じゃないか、これに対してASEAN諸国もあるいはその他の国々も日本の立場というものは大体理解をしておる、私はこういうふうに判断をいたしておるわけであります。
  33. 野上徹

    野上委員 終わります。
  34. 中島源太郎

    中島委員長 次に、高沢寅男君。
  35. 高沢寅男

    ○高沢委員 大臣、先日は中曽根総理とともに中国訪問、大変御苦労さまでございました。  そこで最初に、中国外交のあり方、あるいはそれに関連して我が国外交のあるべき基本姿勢で、一つだけお尋ねしたいと思います。  私は、今の中国外交のあり方は、一言で言えば一種の全方位外交をやっておるということではないかと思います。対アメリカ関係、対日本、それから西欧の西側の諸国、さらにはまた、いわゆる発展途上国はもちろんでありますが、今までは断絶をしていたソ連とも今や会談をずっと継続、ソ連と断絶したときに同じように東ヨーロッパの社会主義諸国とも断絶していたのがこれも今やいずれもずっと回復をしてきておるというような形で、そういう全方位外交というあり方が、中国にとっては今のいわゆる二〇〇〇年を目指す経済建設のためにはどうしても国際環境が平和でなければいかぬという立場からも、出ているものだと私は思うわけです。それに対する大臣の御認識、御所見と、同時にそれに引き比べて、我が国外交も同じようにやはり日本の立場に立った全方位外交でなければいかぬじゃないか、私はこう思うのですが、この辺の基本論について、まず初めに大臣の御所見をお聞きしたいと思います。
  36. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 中国外交の基本は、私は中国側といろいろ話し合ってみまして感じたわけですが、全方位外交というよりは、むしろ非同盟といいますかそういう色彩が大変強くなったというふうな感じを持つわけでございます。そして、もちろん中国がこれからの現代化を進める上においては、どうしても世界が平和、特にアジアが平和でなければならぬということについては非常な強い意欲を持っておるわけでございます。そのために中国としてもやるべきことはやらなければならぬという意思もまた持っております。  同時にまた、非常に印象的であったのは、最後に趙紫陽首相が、自分たちは社会主義国である、また日本資本主義国だ、しかし日本中国がこんなにいい関係というのは、これは歴史の中でも体制の違う国々がこんなにいい関係を持つということは珍しいことではないか、同じ体制でも北の方のソ連との間ではどうもまだぎすぎすしている、大きな問題が残ってむしろ日本ほどいい関係でない、体制は違うけれども日本とはこんないい関係になっている、やはりこれからの新しい時代というのは、そうした体制の問題を超えたところに新しい外交というのはあり得るのじゃないか、これを日本中国が証明しているといってもいいんだということを言っておられましたが、まさに私はそういう感じがしないわけでもないし、中国外交の一つの方向というものを示したのではないかと思うわけであります。  日本も、中国との間では、とにかく平和が続くということがもちろん一番大事なことであろう、世界の平和、アジアの平和、そのために日中が手を携えてやるということについては完全に意見が一致しておるわけでございますし、日本につきましても、もちろん外交の基軸は日米関係に置いておるわけでありますが、これはまた中国側も十分理解しておるわけでございます。同時にまた、日米を基軸としながらも、やはり中国であるとかその他のアジア諸国、あるいはまた体制の違う諸国とも積極的に平和外交を展開していくということは、これまた日本も、これまでとってきた外交の基本でありますし、これは今後とも展開をしていかなければならない外交の基本姿勢であろう、こういうふうに私は認識をいたしておるわけです。
  37. 高沢寅男

    ○高沢委員 中国の指導層と会談をされた際、先ほどの野上委員の御質問にもありましたが、紀元二〇〇〇年までに工業、農業を四倍にふやしていく、これが中国の今の最大の課題だということは当然お話で出たと思いますが、その四倍という目標が、どうも今のところ目標として非常に強調される、また、ぜひそうしたいという願望として非常に強調される、けれども、今からその四倍になるまでの間のプロセスとかステップ、どういう手段方法で四倍に進んでいくかという、この辺のところがどうもまだ中国側でも十分に詰まっていないのじゃないか、十分にその具体的な作成がされていないのじゃないかというような感じはやや持つのですが、この点は大臣の御所見はいかがでしょうか。
  38. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 率直に言って、確かに私も高沢さんのおっしゃるような感じは中国側と話して持ちました。鄧小平主任は、四倍といったらどういうことかというと、今中国の一人当たりのGNPが二百五十ドルだ、これは大変低いものであって、だから自分の目標は千ドルにしたい、決して欲張った目標じゃない、千ドルというのが結局四倍だということで、二〇〇〇年までに四倍にしたいということで一つの目標を定めて、そして党でいろいろと計画を立ててやっているけれども、なかなか困難なことが多い。ただ、最近非常に自信を持ってきておるのは、食糧生産といいますか農業の分野が大変な成功をおさめつつある。これは私も農村地帯を視察いたしましたけれども、生産割り当て制といいますか、そういう方式が随分浸透しておりまして、これが農民の生産意欲を大変駆り立てて、そして生産が向上しているということで、食糧はむしろ余りつつあるといいますか、もちろん食糧問題ですから天候異変等も左右することがあるでしょうけれども、全体としては余っておるというふうな状況になってきておる。ですから、肝心の、非常に大事な農業が成功の過程に入ったということは指導者は相当な強い自信をその中でも持っておる。  ただ、問題はその他の分野ですね。インフラであるとか工業であるとか、そういう点がこれからであって、どうしてもそうした社会基盤といいますか、そういうものをやはりやっていかなければならぬ。それにはやはり今の日本からの経済協力とかが必要であるし、同時に工業の発展近代化、それには政府間の協力だけではなくて民間投資とか協力が必要である。ですから、この部面を充実していけば決して千ドルといろ壁を破っていくことは不可能ではないんだ、こういうことで相当自信を持っております。  しかし、そこに至る過程において、それでは完全な体制ができておるかというと、日本も指摘しておるように、いろいろと投資環境等の整備、そういう面がまだまだ自分たちもおくれておる、こういう点はやはり受け入れやすいような環境整備を図っていかなければならぬということは各方面で強調いたしておりまして、確かに私もそういうような感じを持つわけでございます。
  39. 高沢寅男

    ○高沢委員 今言われたような、そういう中国の経済発展のために向こう側としては当然、日本からの政府ベースの経済協力あるいは民間ベース企業進出、この役割を非常に大きく期待をされておる、これはもう間違いないと思います。また我々の側でも、日本側としてもその期待にこたえていかなければいかぬということだと思いますが、ただ、私、一抹の心配は、例えば東南アジアの国々はいずれも日本からの援助をもらいたい、日本企業にも来てもらいたい等々のことがあって、またこっちも出ていっているという状況の中で、しかし実際上日本とその東南アジア諸国には非常に大きな経済の力の差があります。そうすると、その進出が進めば進むほど逆に相手側では、何だまた日本の経済侵略がやられているんじゃないのかというたぐいの、そういう一つの国民感情もまた出てくるというふうなことが現にあるわけです。  対中国関係でも、今中国としては日本から出ていくものに対していずれも大変歓迎歓迎ということでやってくれるとは思うのですが、そこのところを、出ていくこちら側の考え方やこちら側の姿勢がもし万が一にも向こうの歓迎歓迎に甘えてしまって、少しこっちの方がいわばだんな風を吹かして、おれは中国を助けてやっているんだぞというような立場で臨んでいくと、長い間の日中の過去の歴史があるわけですから、そういう東南アジアと同じような予期せざる矛盾も出てくるおそれはなしとしない、私はこう思うのであります。この点は、対中国の経済協力の一つの基本的な姿勢として、政府の立場あるいは今度は民間の立場として、両面において今からきちんと押さえておかなければいかぬのじゃないか、こう思いますが、ひとつ大臣の御所見をお聞きしたいと思います。
  40. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 全くそのとおりだろうと思います。  中国は今大変な歓迎ムードで、政府の経済協力を歓迎する、同時にまた民間の経済協力を歓迎する、そのための投資関係とか条件の整備等を積極的にやるということでございますが、そういう状況の中で日本民間企業がどんどん進出していく。進出していっても、これは中国側は認めているのですが、利潤のない進出はあり得ないでしょう、それは中国もよくわかっておりますということを言っておるわけでありますが、そういう中でいろいろとまた摩擦等が起こってくる可能性もないわけではありませんし、それがまた日中関係を悪くするという方向で動いてくると大変なことになってしまうと思うわけであります。それはやはり出る方の民間側も十分ひとつ注意をして、慎重な立場で検討して進めてもらいたい、こういうふうに思います。  ただ、最近は日本民間側もその辺は十分考えておりまして、東南アジア、特にASEAN関係では、かつては民間進出で彼らに非常な威圧感を与えて、経済侵略などという声で暴動的な状況が起きたこともあるのですけれども、その後、政府の経済協力も向こう側の立場というものを十分踏まえたきめの細かい経済協力をやるようになりましたし、あるいはまた民間の方も非常に自制しながらの経済協力ということになりまして、最近ではASEANにおいても、そうした日本の経済侵略といった経済的な圧力、帝国主義とか、そういうふうな声はほとんど聞かれないで、むしろ、日本の経済協力あるいは日本民間進出でASEANの経済を強くしてもらっている、国民生活を安定してもらっている、大変感謝するという声の方が非常に強いように思うわけであります。しかし、それでまた図に乗ったら大変なことになると思いますけれども、全体的には、その辺はいろいろな試練を日本企業も経ておりますし政府も経ておりますから、これからそういう経験を十分踏まえて対応していかなければならないし、また対応していくものである、私はそういうふうに考えております。
  41. 高沢寅男

    ○高沢委員 私は、今大臣、ASEANの方も非常によくなっているというお話でしたが、最近のフィリピンの例などを見ても、必ずしもそこまで楽観ができないというふうに思うわけですが、しかし、これはきょうは一応別にいたします。  それで、中国のそういうこれからの経済発展を進めるための非常に独特な、ほかの国に例のないやり方として、いわゆる経済特区というふうなやり方が進められているわけです。この特区の性格づけ、特区特区でないところは一体どう違うのかというふうなことなど、そういう一つの評価、認識を、大臣、きょうはアジア局長もおいでですから、そういう認識をひとつお尋ねしたいと思います。
  42. 瀬崎克己

    瀬崎説明員 お答えさせていただきます。  経済特区は、いわゆる対外経済開放政策追求の一環として中国が一九七九年以降推進している特別な地域でございます。この地域を設定した目的は、外国や華僑の資本、先進技術を優遇措置のもとに誘致いたしまして、中国といろいろな合弁事業をやったり、あるいは単独経営をやらせて輸出外貨を獲得しようということが基本的な目的になっているわけでございます。  そういった外国企業を誘致いたすために、例えば所得税につきましては通常の特区外でございますと三三%支払うわけでございますけれども、この特区進出いたします企業につきましては一五%、あるいは特区進出いたしております企業の輸入いたします設備、機械、原材料等につきましては輸入税を免税する、あるいは生活用品につきましては関税を減免する等の優遇措置がとられているわけでございます。それからまた、用地の使用期限、賃貸借料等につきましても、特区以外と特区ではかなりの差がございまして、いずれにせよ、この特区外国企業を大いに進出させてあげようということで中国はいろいろな優遇措置をとっているわけでございます。  その具体的な裏づけとして、現在中国には外国合弁企業が百八十八出ているわけでございますけれども、この百八十八のうち百三の合弁企業経済特区に出ているということでございまして、ここら辺の数字を見ますと、やはりこの特区というのは外国企業にとって非常に魅力のある地域であるということが御理解いただけるかと思います。
  43. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 今の経済特区については中国の指導者も非常な期待を寄せておりまして、東北地区とか、その他上海、あの辺の地区とかそういうところにも特区を設けて、そして大々的にこれを推進したい、これはもう成功しているし、ぜひともこれはひとつ推進をしていきたいということをしばしば言っておりました。
  44. 高沢寅男

    ○高沢委員 私は、特区というそういうやり方が非常に独特なやり方で、これを我が方も今度は中国との経済協力で非常にうまく活用していくというやり方が必要かと思います。ただ一つ、こういう心配は当たるのか当たらないのかちょっとお尋ねしたいのですが、いわゆるタックスヘーブンというのがありますね。これは私の手元には一昨年の十月段階の国税庁が調査を発表した資料がありますが、タックスヘーブンを利用して我が国企業が税金逃れをした、こういうふうなケースが国税庁の調査で何か四十八億円もあるというふうなことが一昨年発表されておりますが、タックスヘーブンそれ自体についてはそういうあり方を正していかなければいけませんが、この中国経済特区というものがそういう同じような問題が出る可能性をはらんでいるのかどうか、私はその辺の認識がわかりませんので、この際お尋ねをしておきたいと思います。
  45. 瀧川哲男

    ○瀧川説明員 お答えします。  中国経済特区の制度につきましては先ほど御説明あったとおりでございまして、その趣旨は、外因の投資家が経済特区に工場の新設等、そういう一定の資本投下を行いまして正常な事業活動を営むということを奨励しようとするものでございまして、このような地場産業に密着したような事業活動、こういうものを行う企業進出につきましては租税回避行為には当たらないと当方は考えておるわけでございます。したがって、特区の制度がそういうものを目的としている以上、タックスヘーブンとして利用される心配はない、このように考えております。
  46. 高沢寅男

    ○高沢委員 それでは今度はスリランカ航空協定との関連で若干日米の航空協定について、大臣がおいでですからお尋ねいたしたいと思います。  まず現行の日米航空協定、ちょうどアメリカの占領が解除された直後にできたというふうなこともありまして非常に不平等的なものだというのが我々の認識の共通しているところでありますが、アメリカ側から見ればこの協定は決して不平等なものではないというような認識があるというふうに聞いておりますが、まずその大前提として日米航空協定の認識について大臣のお考えをお尋ねしたいと思います。
  47. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 これまで十回以上にわたる日米航空協議を経て昭和五十七年九月の暫定取り決めによりまして、便数、機材につき一定の制限つきではありましたが、ロサンゼルス以遠ブラジルヘの運輸権並びにシアトル及びシカゴヘの乗り入れ権を獲得し、暫定的ではあるが不均衡是正に向けて前進を見たわけであります。しかし現行協定においては依然として以遠権において日米間には不均衡が存在すると考えます。  このような状況のもとで我が国としましては、長期的観点により日米間に総合的に均衡のとれた航空関係を築かなければならない、そういう立場で今後の交渉に当たっていく考えてあります。
  48. 高沢寅男

    ○高沢委員 私も八二年の九月にできた暫定取り決めでそういう不均衡の是正、別な言葉で言えば不平等性の是正に向かって一歩前進、二歩前進というものがあったということは認めますけれども、しかしなおかつ私は完全な平等な状態ではないと思う。そうすると、この暫定取り決めを踏まえてさらに前進するための努力が当然必要で、この三月段階でまたそういう交渉が始まっていると思うわけですが、その交渉の現状、そしてまたこれからそうした路線権や以遠権という問題でどこをどういうふうに我々日本側としてこれを獲得すればそういう平等性というものに接近できるのか、ここら辺の交渉の経過なり目標についてこの際お尋ねしたい思います。
  49. 山下新太郎

    山下(新)政府委員 お答え申し上げます。  先ほど御指摘ございました五十七年九月に暫定取り決めの合意ができたわけでございますが、これに基づきまして昨年十二月、ハワイにおきまして協議を行いました。その結果といたしまして、昭和六十年九月までに数回にわたりまして日米間の総合的利益の均衡を実現するために改定の交渉を行うということが合意された次第でございます。先月二十七日から三十日までその第一回目の協議を行った次第でございますが、それはこれまでの交渉の経緯を踏まえまして、先ほど申し上げましたように長期的観点に立った日米航空関係の権益の均衡を実現する方向につきまして日本側の基本的な考え方を米側に開陳した次第でございます。これに対しましてアメリカ側は権益の拡大均衡を図るという考え方に立ったものだというふうに一応理解をいたしましてそれな力の評価をしていた次第でございます。これに対していかなる立場をとるかは第二回目に予定されておりますアメリカで行われる九月の協議で公式にアメリカ側のコメントが来るのではないかと予想いたしております。先ほどの暫定取り決めによりまして不均衡の是正に向けて前進したことは大臣が御説明したとおりでございますが、日本側といたしまして長期的観点に立って総合的に均衡のとれた形での日米航空権益の是正を図る必要があることは全くそのとおりでございまして、そのために今後、明年の九月まででございますが、協議の場を通じまして粘り強く交渉していくというふうに考えております。
  50. 高沢寅男

    ○高沢委員 今の御説明のありました六十年の九月までにやっていく過程で、もう我が方としてはあとこの路線、あるいはまた以遠権ならばとの路線でどこまでというふうな具体的なものを持って恐らく臨んでおられるのじゃないか、こう思いますが、交渉過程ということもありますが、その辺はどうなんでしょうか、聞かしていただきたいと思います。
  51. 山下新太郎

    山下(新)政府委員 先生ただいまおっしゃいましたとおり、まさにこれはある意味で協議、交渉の過程でございまして、この場でその詳細を申し上げることは控えさせていただきたいと思うのでございますが、私ども考えまして不均衡が存在すると思われますのは、大臣もおっしゃいましたように、例えば路線権がその一つである、あるいは以遠権の問題、さらに輸送力に関するメカニズムの問題等があるわけでございまして、これらに関する私どもの基本的な考え方を米側に伝えたという次第でございます。
  52. 高沢寅男

    ○高沢委員 それではもう一つだけ具体的にお聞きしますが、暫定取り決めでシカゴに貨物便の乗り入れということが一応合意された。しかしそれはいつからということは決まっていない。これが決まらなければ結局絵にかいたもちで終わるということがありますが、この点はどういうふうになりますか。
  53. 山下新太郎

    山下(新)政府委員 一昨年の九月の暫定取り決めにおきまして、御指摘のとおりシカゴに対する貨物便の乗り入れの問題が取り上げられておりまして、そこでは両国政府によりまして後刻合意される期日から行う、こうなっている次第でございます。確かにこれができるだけ早く実現すればよろしいわけでございますが、これも私どもといたしましては、全面的な改定協議の途次、その場を通してその実現を図るべく処理するということを考えております。そういう考え方に立ちまして協議を進めているということでございます。
  54. 高沢寅男

    ○高沢委員 これはもうアメリカ側に暫定取り決めで与えたものと我が方が得たもの、この関係ですからね。六十年の九月まで交渉されることとは別枠で当然これはいつから実施ということをむしろとるべきで、それとは別に六十年九月までの今度は不平等のないようなそういう交渉交渉で進めるというふうにされるべきだと思いますが、もう時間がございませんので、これはひとつ私の要望として申し上げておきます。  大臣、せっかくおいでですから、私の大臣に対する質問の最後としては、大韓航空機の事件の補償問題ということに限って私はお尋ねをしたいと思います。  この件はもう御承知のとおり、大韓航空機がああいう事件を起こしたのは昨年の九月が初めてではないわけでありまして、その前にすでにソビエトのムルマンスクの上空に入った、こういうふうな事件があったわけです。このムルマンスクの事件のときもこの飛行機に乗っていた日本人の旅客がそのために一人死亡されるというふうなことがあって、その補償問題、賠償問題というのがいまだに解決されていないというふうな状況になっていて、私はこれは、大韓航空の当局の対応としてはまことに遺憾である、こう思うわけでありますが、そういう状態がずっと引き続いてくると、今度の昨年の九月一日の件も同じようなことにされてしまうというふうなおそれが大変大きいわけですが、この点についてまず大臣の御所見をお尋ねしたいと思います。
  55. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 私もこの補償問題については頭を痛めておるわけであります。この補償問題は、遺族と大韓航空との間のいわば民事事件でありますから、政府として直接介入はできないわけなんですが、しかし日本側の遺族の皆さんの立場を思うと何とかひとつ円満な形で補償問題が解決してほしいということを心から念願をし、そのために私自身も韓国の外務大臣に対してしばしば大韓航空に対して日本の遺族との交渉に十分誠意を持って当たってほしいということを韓国政府もひとつやってほしいということを要請をいたしておりますし、また事務当局もしばしばこの点については韓国政府に対して言っておるわけでございます。恐らく韓国政府といたしましても大韓航空に対しては、今の日韓の関係から見まして我々のそうした要望を伝えておる、こういうふうに思っておるわけでございますが、遺族と大韓航空会社の交渉がどうも今うまくいってないといいますか、十分満足するような形で進んでないということは聞いておるわけでございます。今後とも側面的には努力をしていきたいと思いますが、何とかひとつ円満に解決することを心から祈るのみであります。
  56. 高沢寅男

    ○高沢委員 大韓航空の当局は、昨年の九月一日の事件は何かソビエトの電波に誘導されて間違ったコースヘ入ってしまったので過失は我々にはない、過失はソビエトの方にあるというふうな言い方をしておるということでありますが、電波に誘導されて入ったんだ、だから自分らには過失はないんだというような立場を、果たして大臣としてはどういう認識をお持ちか、認識の問題で結構ですが、聞かしてもらいたいと思います。
  57. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 これは証拠となるものがほとんど、全部なくなってしまったと言ってもいいほど――乗っておられた人は全部亡くなられたし、肝心のかぎを握るブラックボックスも出てこない、肝心な機材等も出てこないということで、もう想像ということしかないわけです。  しかし、今の段階では、想像というよりは、一番中立的な立場、そしてまた国際的な権威をもって調査したのがICAOであります。これが調査報告を出しておるわけでございます。したがって、私としましては、このICAOの調査報告、これは日本も協力しました、このICAOの調査報告が最も信頼されるものではないかというふうに判断をせざるを得ないわけであります。  その報告によれば、これは断定はしておりませんが、大韓航空機のああした撃墜事件が起こった背景としては、やはり乗務員の操作ミスという可能性が最も高いということを指摘をいたしておるわけでございます。今までのICAOの国際的な立場から見まして、我々はそれを一つの大きな根拠といいますか、判断の大きな根拠にいたしておるわけであります。
  58. 高沢寅男

    ○高沢委員 何というかあれほど常識を超えた航路の逸脱ということは、私の考えでは、一つはわざとそういうふうに入ったか、そうでなければ重大なミスがあったか、このどちらかしかないわけであります。で、わざと入ったということになれば、これまた責任はますます文句なしということになるわけですが、仮にミスでそうなったとしても、その乗務員を雇用しておる大韓航空という法人の責任はまことに重大な責任である、重大な過失である、こう思うわけであります。したがって、賠償もその前提に立って当然行われなければならぬということではないかと思います。その辺は、今ICAOの判断をと大臣おっしゃったわけですが、その判断から見て賠償問題ではまさにそういう結論になるのじゃないか、こう私は思うわけですが、重ねてこの点はいかがでしょうか。
  59. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 私としましては、今申し上げましたICAOの報告書が今のこの問題を判断する場合の唯一の中立的な判断の材料である、こういうふうに思うわけでありますが、遺族と大韓航空の交渉に当たっては今いろいろと議論も行われておるわけでありますし、大韓航空会社がとにかくあれだけの事故を起こして、そして撃墜されたにしても貴重な人命が失われたわけでありますし、やはり日本の遺族に対しては十分な補償といいますか見舞いといいますかが支払われてしかるべきじゃないか、私はこういうふうに思っておるわけであります。しかし、この点は今後どういうふうに発展するか見守りながら、政府として側面的にできるだけのことはやはりしてまいりたい、こういうふうに思っております。
  60. 高沢寅男

    ○高沢委員 お聞きしたところでは、ムルマンスクの事件が起きたときの被害者の遺族の方と外務省当局とのお話の中で、初めは外務省の方で、それはひとつ交渉の窓口になってやりましょうというふうなお話があった。しかし、だんだんやっているうちに、相手が相手の態度ですからなかなからちが明かないということの中で、そのうちに、これはもう民間同士でやってくれというふうなことになったやに聞くわけです。一人の人が亡くなったムルマンスクの事件でそうであったわけですが、今度の昨年の九月一日はそれよりはるかに多くの犠牲者が出ておるというふうなことからすれば、これは被害者の人たちと大韓航空当局で、ひとつ民間ベースでやってくださいというような、私たちもひとつ側面的に御協力しましょうというよりもっと強い態度が外務省にあるべきじゃないのか、私はこう思うわけです。  今までの一つの歴史的な経験としては、例えばビキニの水爆実験で久保山さんが亡くなったというふうな事件、あるいはつい最近のことでありますが、アメリカの原潜にぶつかられて日昇丸が沈没した、このときは相手は確かに米軍、政府当局であったということはありますけれども、これはもう外務省が全面的にその賠償問題等の解決に当たられたという前例もあるわけでありまして、今度の大韓航空機のような事件の場合は、韓国のお国柄から見ても政府当局と大韓航空というものは実際上は不離一体、あのパイロットはみんな韓国の空軍将校がパイロットをやっているというようなことすら聞くわけであって、そういう点において、この事件はむしろもっと外務当局が前へ出て、そしてみずからの外交問題、外交課題として解決に当たるというふうな姿勢はぜひ持たれるべきじゃないのか、こう思うわけですが、この点重ねて大臣の御所見をお尋ねしたいと思います。
  61. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 これはなかなか難しい問題でして、もちろん外務省としましてもいろいろと遺族の皆さんのお手伝いはしておるわけでございます。しかし当の交渉相手は何といいましても遺族団と大韓航空であります。もしこの交渉が決裂して万一うまくいかない、こういうときになればまた裁判ということにも、ムルマンスクの事件もなっておりますが、それはまた裁判で争われることになるわけでありますが、我々としては裁判にいかないでこの問題が円満に解決できるように期待をしております。  そういう中で外務省ができるのは、やはり向こうの政府に対して、向こうの政府は大韓航空に対して、今おっしゃるように相当大きな影響力を持っていると私思います、だから向こうの政府に対しまして、日本の遺族の立場それから大韓航空の責任、そういうものを踏まえてひとつ十分な補償をしてもらいたいという日本要望は強く伝えておりますし、これは今後とも政府間で、我々としては日本側考えを強く主張いたしまして、そして韓国政府の善処を求めてまいりたいと思うわけでございます。  同時にまた、賠償としてもう一つはソ連の賠償責任の問題があります。これは無抵抗の民間航空機を撃墜した、理由のいかんを問わずそういうことは国際法上許されないということで、ソ連に対しても賠償を強く求めておるわけでございますが、これは残念ながらソ連の応ずるところとならないという状況であるわけでございます。
  62. 高沢寅男

    ○高沢委員 これで終わります。  大韓航空は既にちゃんと六十五億円も保険金をもらってしまったというふうにも聞くわけです。そういうふうに聞けば、遺族の方の立場としてはなおさら悔しい思いでいろいろ交渉されていると思います。それが話がまとまらず裁判にいく。裁判にいくようになればますますそれでは今度は裁判所の判断を待ってということで、事柄がなおさら遠くなってしまう、こういう感じがするわけです。  そこで、今大臣の言われた、そこまでいく前にこの決着を図るということはぜひお願いをしたいと思いますが、私のような外交の素人の考えとしてみれば、そういうときに対韓国政府の我が外務省からのいろいろな交渉の仕方の中で、もしこの問題が満足できる解決ができなければこうするぞというぐらいの何か切り札くらいは使いながらやるべきが至当ではないのか、こんなふうに私は思うわけですが、この辺は私の素人論議として、そういう気持ちの問題としてそのくらいやってもいいじゃないかという感じがいたすわけですが、それをひとつお尋ねして終わりたいと思います。
  63. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 何とか円満に解決できるように、大韓航空が誠意を示すように、我々としても外交ルートを通じましてできるだけのことはしなければならぬと思っております。
  64. 高沢寅男

    ○高沢委員 終わります。
  65. 中島源太郎

    中島委員長 次に、古川雅司君。
  66. 古川雅司

    ○古川委員 ただいま議題になっております両脇定に関連をいたしまして、大臣の御所見を中心に若干お伺いをしてまいります。  今回の中曽根総理の訪中につきまして、新聞等の報道で承知する限り非常に異例な歓迎ぶりで首相をお迎えになったわけでありますが、鄧小平主任を初めといたしまして各指導者層の発言等からも、日本にかける期待というのは非常に並み並みならないものがあると思います。経済協力、そしてまた日本企業進出ということに対して、中国側のこうした熱い要請に対して大臣はどのように受けとめていらっしゃるか、まずそこから御所見を伺いたいと思います。
  67. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 今御指摘がございましたように、大変な歓迎を受けまして、これは今の日本中国との大変安定した関係を示すものであろうと思うし、まだこれからの日中関係を象徴するものであると言っても過言でないと思っております。  そういう中で、中国は特に経済の再建を力強く進めておりますし、そしてその経済の再建、現代化は日本の協力が最も必要だという認識に立っておりまして、そういう意味で日本も国としての経済協力も七年間で四千七百億というものをめどに大きく打ち出したわけでございますが、同時に民間投資あるいは合弁、そういう点についても中国側としてもいろいろ体制を整備していくのでぜひともこれは積極的にやってほしいということで、これは今後の大きな課題として我々も十分民間側と話し合って、ぜひともやらなければならぬ、民間にも大いにやっていただきたい。同時にまた中国に対しましても、いろいろと投資環境あるいはまた経済の環境整備されるように、これからもその辺のところを求めてまいらなければならぬ、こういうふうに思っております。
  68. 古川雅司

    ○古川委員 大臣から今後の課題も含めて御所見を伺ったわけでございますが、この中曽根・鄧会談において特に鄧小平主任みずから日本経済の協力の拡大、特に大企業も含めて合弁会社の進出を求めてきたわけでございますけれども、先ほど来、いわゆる国内法の整備が不十分なのに中国がなぜ合弁会社の設立を急いでいるのかということについて、もう一つまだ明確でない点があるのではないかと思います。先月の十二日に特許法を制定しているわけでございますが、これを例にとりましても万国特許条約に加盟をしていないという問題もございますし、商法、会社法、こうした中国で安心をしてビジネスを行っていくために必要な法律がほとんど未整備ではないか。これからその努力を求めていくという大臣の御見解ではございますけれども、国有化に対する懸念や経済政策の安定性に対する懸念、また合弁期間を原則として十年ないし三十年と限られている、そういうこともさまざまございますし、また生産計画、製品の販売価格の決定に対してどこまで自由が認められるかという問題、こういった今申し上げた点はすべて不明確なままでございます。     〔委員長退席、野上委員長代理着席〕  なぜ、こうして中国側が急いでいるのか。しかも、この協定締結に当たりまして通産省が四月八日に中国に対して大型の投資調査団を派遣するというふうに伝えられております。商社、銀行、製造業を含めまして中国に人を派遣して実態を調査するという意味でありましょうけれども、こういう点からいきますと、何かすべて事態が前後しているのではないかという感じを受けるわけでございますが、大臣、この点どう受けとめていらっしゃいますか。
  69. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 中国の指導者の話を聞いてみますと、中国は四人組の横暴によって三十年くらいおくれたのだ、だからこれを取り戻さなければならぬということを鄧小平さんなんかも言っておるわけでありまして、そして今の一人当たり二百五十ドルのGNPをぜひとも千ドルにしたい。日本はもう一万ドルに近いのだ、だから二十一世紀までにぜひ千ドルに持っていきたいのだ、決してそれは夢のようなことではないのだ、そういうことで大きな目標を立ててやっていることは事実でございます。大変な意気込みであるわけです。  そういう中で、日本との関係はまさに相互補完関係である。日本は資源に不足している、資源は中国にある。日本は工業力とか技術力、資本力というものを持っておる。そういうもので相互補完的に中国の現代化を進める中で日中関係がしっかり結びつけば中国にとっても大きなプラスになるけれども日本にとってもこれは大きなプラスではないか、こういう認識でございます。それは全く私も同様の考えてあります。ただ日本が一方的に中国に協力するということだけではなくて、やはりそれによって中国の発展とともに日本がまた大きく発展をしていく、こういうことにつながるわけでありますから、まさに中国側も言っておりますように、我々もこれは相互補完的な、中国が栄えれば日本も栄えていく、こういうことでなければならない、またそういう立場でいろいろと協力関係をこれから進めていかなければならないのではないか、私はそういうふうに率直に思っておるわけでございますが、しかし、それにしてもまだいろいろと中国の法制が不整備な点があることは事実です。やはり民間が出ていくとすれば投資が保証されなければならぬと思いますし、あるいは保護もされなければならぬ、あるいはまた利潤というものは確保されなければならぬ。そういう点についての法的な整備がまだおくれておる。鄧小平さんとの話で、日本法律が少し多過ぎるくらい多い、中国はむしろ法律の数が足らないくらいの状況で、今その中国が法の整備を急いでおる、そして日本は行政改革で法律を今整理をしておる、そういう状況なんだということを中曽根総理と鄧小平さんとの間で話があったわけです。まさにそのとおりだと思っております。  そういう意味で、目標というのははっきりしていますし、それに向かって着実に進んでおりますし、また農業は確かに一つの明るさが出てきていることは間違いないと思っておるわけで、我々は日中関係でいろいろな問題を協議しながら整備していけば、これからの将来に向かってのすばらしい日中の関係というものを生み出すことができる、こういうふうに確信をいたしております。
  70. 古川雅司

    ○古川委員 大臣も仰せのとおり、先ほど私がいろいろ御指摘申し上げました不安材料、リスクを十分伴っているわけでございまして、これは重ねてお尋ねする格好になりますが、そういう中で、中国側が要求するからそれて何でも進出をしていけばいいという無節操なものでは決してないと私は信じます。ただ、これがいわゆる政府レベルだけのものなのかあるいはやはり人民とか国民あるいは民間という点にも及んで将来を展望しながらこれから取り組んでいく、そういう十分な御決意があるのかどうか、その点がもう一つ確かでない、未確定であるというふうに考えているわけでございます。特に、今度総理が訪中をされ、外務大臣も同行されまして、いろいろお感じになってお帰りになって、その御発言を伺っているところでございますが、いわゆる日中関係が一時の熱烈歓迎あるいは熱烈乾杯の時代から、明らかに冷静な実務の時代、実務を処理していく時代に転換をしたのじゃないかということが感じられるわけでございますが、その辺の非常に緻密な個別的な具体事例の処理という方向へ向かっていかなければならない。この協定に関連をいたしましても、今後の日中間の交流、協力については一つのルールづくりというものが必要になってくるのではないかというふうに考えるわけでございますが、この辺の取り組みについてはどう対処していらっしゃいますか。
  71. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 日中間の今後につきましては大枠はできたわけでございますから、今お話しのように、やはり実務的なルールづくりというのは確かに私も必要だと思います。その辺についてはまだまだ日中間で足並みがそろっていない、ちぐはぐな点があるわけでございます。ですから日本は、政府の場合は向こうの政府との間できちんと取り決めてやっていけるわけですが、民間が出ていく場合は、日本の場合は強制して出ていくわけにはいかないわけですから、民間が自由意思でやはり出ていくわけでありますから、そういうルールづくりがちゃんとして安心して出ていけるんだという体制が中国側にも生まれないと、これはやはり民間の大企業、中小企業のそうした進出というものは非常に十分にいかないのじゃないか。この辺は中国側にもよく説明をしておるわけでありますから、そういう出ていきやすいような体制をつくる、そのための今の実務的なルールづくりというのが、この協定もその一つでありますが、まさに必要な時代に入った、こういうふうに思います。
  72. 古川雅司

    ○古川委員 そのルールづくりの問題でありますけれども、具体的にそれはもう着手をなさっているということでしょうか。今回のこの協定も含めてというふうに大臣がおっしゃったわけでございますが、その点はいかがですか。
  73. 橋本恕

    ○橋本(恕)政府委員 先生御存じのとおり、日中国交正常化以来さまざまな、航空協定でございますとかそれから貿易協定でございますとか漁業協定でございますとか海運協定とか、国と国との協力の根幹となるところの協定はつくりましたし、それから、ただいま先生の御質問にもございました我が国中国との経済協力を具体的に実施する上におきましても、租税協定はもう既にできましたし、それから現在交渉しておりますのが投資保護協定でございまして、これは日本民間企業中国進出してまいります場合に安心して合弁あるいは単独出資の形で企業活動ができるようにその環境整備をやっていただくという国と国との協定、取り決めは着々と交渉し、また既にでき上がったものは調印しておりますが、それと同時に、先ほども大臣が御答弁申し上げましたとおりに、今回中曽根総理安倍外務大臣が参りましたときに、中国のそれに伴うところの国内法をしっかり固めてほしい、それに対して中国側首脳から、先ほども大臣御答弁になりましたが、その関連の国内法規は十分ではない、完全ではないということを中国側首脳が率直に認めまして、それにつきましては今後時間をかしてください、次第次第にやってまいりますという趣旨の説明があった、こういうことでございます。
  74. 古川雅司

    ○古川委員 いずれにいたしましても日中双方の間でまだ整備されてない部分が非常に多いということ、これは大きな問題として今後残っていくのではないかと思います。  この協定内容につきましても、例えば第二条の「この協定が適用される租税は、次のものとする。」というこのくだりでございますが、中華人民共和国における税の内容等について今後これが整備された場合、この協定の取り扱いはどうなるのか、その点はいかがでございますか。
  75. 斉藤邦彦

    斉藤(邦)政府委員 私どもの了解では、この第二条に書いてございます四つの税につきましては、これは既に中国側で公布をされているというふうに了解しております。したがいまして、これが今後整備されたらという問題は当面のところないのではないかと考えます。
  76. 古川雅司

    ○古川委員 今後これが整備される可能性はないとはっきり言明をされるわけですか。
  77. 斉藤邦彦

    斉藤(邦)政府委員 整備される可能性がないと申し上げました趣旨は、既にできているので、今後近い将来にこれが急に変わるということはないであろうということでございまして、むしろ既に整備されていると考えていいのではないかという趣旨でございます。
  78. 古川雅司

    ○古川委員 その点については午後からまた詳細にお伺いいたします。  第三条の(a)のところでございますが、「「中華人民共和国」とは、地理的意味で用いる場合には、中国租税に関する法令が施行されているすべての領域(領海を含む。)及びその領域の外側に位置する水域」という規定がございます。ここに関連をいたしまして、両国のいわゆる国境線が明確に合意されていない地域についてはどうなるのか、特に「その領域の外側に位置する水域」とは何を指しているのか。時間がございませんので具体的に申し上げますと、尖閣列島についてはどうなるのか、あるいはまた台湾と中国との国境についてはどうなるのか、そこに非常に不明確な部分がある点、その辺はどう解釈するか、その辺をお伺いしたい。
  79. 斉藤邦彦

    斉藤(邦)政府委員 尖閣列島につきましては日本の領土でございまして、日本が実効的な支配を及ぼしております。したがいまして、尖閣列島の周りの水域、これもこの条約上の日本国の中に含まれることは疑いがございません。  それから、台湾につきましては、現在台湾に対しまして中国の実効的支配が及んでおりませんので、この協定に申します中華人民共和国の中には含まれないと考えております。
  80. 古川雅司

    ○古川委員 一条にあります「居住者」という規定でございますが、日本中国人の居住者がいるわけでございますが、中国本土、台湾、香港と区別ができるのかどうか、その場合の取り扱いはどうなるのか。香港中国の間においては特に不明確な点が残っておると思いますが、その辺の処理はどうなさるのか、この点をお伺いします。
  81. 瀧川哲男

    ○瀧川説明員 あるいは私の理解が間違っているかもしれませんが、居住者の概念についての御質問と思いまして手を挙げたわけでございますが、日本国におりまする人は、どこの国籍を持ちましょうが、一年以上居住すれば居住者であるということになりますので、どこの国から来て日本の居住者になったかということにつきましては税法上は特に差がない、こういうふうに御認識いただきたいと思います。
  82. 古川雅司

    ○古川委員 識別ができるということなんですね。
  83. 瀧川哲男

    ○瀧川説明員 お答えいたしますが、税法上は識別する必要がない、つまり日本国におきまする税法の適用上は居住者か非居住者かということでございまして、条約にもございますが、政府職員であるとかそういう国籍が問題になるような特別の非常に狭い範囲のものを除きますと国籍というものが問題にならないということでございます。
  84. 古川雅司

    ○古川委員 これも後ほどお伺いをしてまいります。  中曽根総理の訪中の折に合意をした第二次の円借款の内容でございますが、どういうプロジェクトになるのか、またその条件はどうなのか。七事業が挙げられておりますけれども、それぞれの金額はどのくらいであって、日本企業の参加はどうなるのか、この点をお伺いしておきます。
  85. 川村知也

    ○川村説明員 このたび総理訪中の機会に先方に伝えましたいわゆる第二次対中円借款の内容でございますけれども、対象といたしましては、鉄道、港湾、通信それから水力発電、この各分野におきまして計七事業を対象として円借款を供与するということでございまして、その円借款の供与の対象額につきましては、現段階ではおよそ四千七百億円に上ると見込まれるというふうに伝えてございます。それから、供与期間につきましては、現段階では一応七年間にわたると予想されるということをまた伝えてございます。具体的な借款の額それから条件につきましては、これは年次ベースで供与するということでございますので、今後、今年度以降毎年両国政府実務者間で行われます協議を通じていろいろな事情、例えば我が方の財政事情でありますとかあるいは工事の進捗状況というものを勘案いたしまして決めていくということになっております。  それから、本邦企業の参加でございますが、この具体的な条件についても今後協議を通じて決定する問題でございますけれども、相当程度我が国企業が参加する機会は与えられるということになろうかと予想しております。     〔野上委員長代理退席、委員長着席〕
  86. 古川雅司

    ○古川委員 最後に、スリランカとの航空協定に関連をいたしますが、長年にわたりましてこの問題が懸案事項になっておりまして、今になってなぜスリランカなのかということが一つ疑問でございますし、スリランカの外交政策に対する大臣の御所見をまずお伺いしたいと思います。  スリランカは昭和五十六年の五月にASEANの加盟申請をいたしております。一方では、スリランカ、インド、パキスタンなどのいわゆる南アジア七カ国で南アジア地域協力、SARCの設立に向けて動きをいたしております。このようなスリランカの外交政策をどう受けとめていらっしゃるか。そしてさらに、昨年十二月の中島外務審議官のインド、パキスタン訪問に続いて、この四月には中曽根総理もこの両国を訪れるということを伺っているわけでございますが、今回のその訪問の目的、スリランカに対してはどういう受けとめ方をしていらっしゃるのか、この点も含めてお答えをいただきまして、私の質問を終わります。
  87. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 昭和五十六年五月にスリランカはASEANに対しまして加盟申請を行ったわけですが、その後今日に至るまで右申請はASEAN側の受け入れるところとはなっておりません。南アジア地域協力は昭和五十五年にバングラデシュ大統領が提唱したものでありますが、その後累次にわたり事務レベルで協議が行われてきた結果、昨年八月に至り域内七カ国、すなわちインド、パキスタン、バングラデシュ、スリランカ、ネパール、モルジブ及びブータンの外務大臣による会議を開催し、正式に発足をいたしました。スリランカはこの地域協力に積極的に取り組んできております。スリランカは、非同盟創設以来の穏健派メンバーとして、非同盟・中立を外交の基本政策としておりまして、南西アジア諸国、ASEAN諸国とも友好関係の維持発展に努めております。我が国といたしましては、アジアの親日国でありますスリランカとの友好協力関係を今後とも進展をさせてまいりたい、こういうふうに考えておるわけでございます。  なお、四月末、中曽根総理の訪問、インドを中心とする訪問につきましては、まだ国会の御承認等の関係もありますし、これは公表もされておらないわけでございまして、スリランカはぜひ来てほしいというふうな声もあるわけでございますが、日程の関係もあってなかなか困難であるという状況にもあります。いずれにしても公式に発表するまでにこれから多少時間を要するのじゃないか、こういうふうに考えております。
  88. 中島源太郎

    中島委員長 次に、河村勝君。
  89. 河村勝

    ○河村委員 先般、中曽根総理が訪中をされて、外務大臣もそれに同行をされたわけですが、今度はわき役だったと思います。わき役であっただけに、かえってお互いのやりとりの中から、いわば本音みたいなものが聞き取りやすい立場にあったんだと思うのです。そういう目から見て、一体今後の日中をどう考えるかということを伺いたい。  今度の訪中によって日中友好のきずながさらに強くなったということは、大変喜ばしいことだと思います。さっき安倍外務大臣は、趙紫陽首相が日本中国とはこれだけ体制が違いながらこんなにうまくなっている関係はないと言ったことを非常に礼賛あるいは評価されましたが、事は必ずしもそう簡単ではないのであって、体制の違いというものも今後いろいろな面で大きく出てくる場合もあります。お互いに安全保障の面においても経済の面においても国益というものは違うんですから、日中といいますと過去の犯した罪の贖罪というような負い目みたいなものがあって、それに友好ムードが加わりますと、どうも友好におぼれていって日本の主張がとかくあいまいになってくるという傾向が一般に見られるのですね。ですけれども、それでは将来に禍根を残すし、本当のお互いの国益にもかなわないと思うので、やはりこれからも日本としては日本の国益を踏まえて言うべきことを言い、対処すべきは対処するということでなければならぬと思うのですが、安倍外務大臣としての基本的な政治姿勢、外交姿勢といいますか、それについてまず伺います。
  90. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 今回の中曽根総理の訪問は、これまでの歴代総理の訪問の中では最も歓迎された訪問の一つだろうと私は思います。向こうで聞いてみましてもそういうことでございましたが、やはり日中関係が今最も安定している、それから成熟といいますか、そういう方向に入ってきたんじゃないかというふうにも思うわけであります。そうして、その背景としては、中国が現代化を非常な勢いで進めておる。その現代化を進めるには日本の協力が絶対に必要だ。同時にまた日本も、中国に協力することによって日本自身のこれからの発展にも大きくつながってくる。こういうことで、お互いに相寄るといいますか、そういう状況の中での今回の訪問であったということであります。もちろん体制の違いはありますし、国際情勢についても認識の違いあるいは意見の違い等もありますが、それは余り表に立たないでむしろ日中間で意見が合意した、そういう面が非常に強く打ち出された。こういう点はやはり中国日本の立場を十分踏まえておるし、また日本としても中国の立場というものを考えながら今回の訪問に臨んだということであろうと思うわけでございますが、私も、さっきお触れになりました趙紫陽さんが言っておりますように、日本中国は体制は違うけれどもこんなにいい関係になっておるというのは歴史の中でも非常に少ないんじゃないか。隣の北の大国と言っておりました、北の大国とは同じ体制だけれどもどうもうまくいかない、日本とは体制が違うけれどもうまくいっておる。時代はまさにそういう新しい時代に入りつつあるんだ。だから、この日本でも何か中国が共産主義だからこれに対しては警戒しなければいかぬ、あるいはまた信用してはいけないという声もあるように聞いておるけれども、しかし我々としてはこれまでの日中の歴史そしてまた今日の日中の状況、体制は違うけれどもこんなにやっていっているということであるからどうかひとつ安心してもらいたいというふうな趣旨でもあったわけであります。それなりに私は感銘を受けて聞いたわけでございますが、いろいろと確かに問題はこれからも起こることはあろうと思います。また、時局認識、国際認識についても違う点はあると思いますけれども、こういう関係になりましたから率直に物が言えるといいますか、私も呉学謙という外務大臣と四回目でありましたけれども、そうした体制の差を越えて、そしてもう思ったことはずばずば言えるような関係になって、これはやはり非常にいいことだな、こういうふうに思いました。  ですから、言うべきことは言い、できないことはできない、やることはちゃんとやるという姿勢でこれからも臨んでいくならば、日中関係はここまで先輩の皆さんのお力によって安定してきたのですから、そうしてまた客観的にそういう状況は今日あるわけですから、私はこれからも注意深くやって取り組んでいけば、この安定は確かなものになっていく、こういうように考えております。
  91. 河村勝

    ○河村委員 中国という国は政治的には非常にしたたかな国でありまして、また過去の例を見ましても米帝国主義は日中共同の敵であったものが一転してアメリカと組んでソ連に当たるというふうに大変化を平気でやる国でもあるわけですね。ですから、その辺を踏まえてよくやっていただきたいと思うのです。  それで中曽根さんも北京大学の講演などをやりまして、中国の今やっております開放政策、これは一体続くものかどうか、それについてかなりの不安を表明した、それに対してお互いの会談の中でそれが全部氷解したというようなあいさつをされておりますが、あなたは一体本当にどう考えておられるのか。もともとこの体制の違いというのは基本にあるわけで、もともとの中国の経済原理というのはやはりソ連型の中央集権的な統制経済ですよね。それに市場経済の原理を持ち込んで、さらに対外的に開放政策をとって投資を誘発するという政策なんですけれども、しかし、ソ連の例を見ても、やりかけては失敗し、また逆戻りという例がこれまで繰り返されて、ソ連の場合には結局だめですね、どうやってみても。中国は今非常な勢いでかなり強力にやっておられるようであります。しかし、常に社会主義経済体制と市場原理との両方を支持する者の対立、それに文化大革命のような例でもおわかりのように、資本主義的汚染というものに対する非常な反発というのは常にあるのですね。ですから、この対外開放政策市場原理を導入していくというやり方がそう安定的にすんなりいけるものとは考えにくいのですよね。その点はあなたは今度の訪中ばかりでなくてどういうふうにお考えになっておるか、それを伺います。
  92. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 中国としては一つの非常に大きな歴史の実験に入っておるんだろうと私も思うわけでございます。これが最終的に成功するかどうかというのはこれからもちろん見詰めていかなければならないことであろうと思うわけですが、しかし、中国の指導者は非常に自信を持っておる。そして特に中国側がこの政策を進めるに当たっての非常に大きな自信は、現在の政治体制が安定しておる、そしてこの体制を堅持していく上において非常に強烈な自信と信念を持っておるということで、例えば鄧小平主任が言っておりましたけれども、自分はこういう年になって、今胡耀邦と趙紫陽に新しい時代をゆだねた、この胡耀邦と趙紫陽の二人のコンビというのは、天が落ちてもというような表現をしておりましたが、天が落ちても変わらないのだ、こういう言い方で、今の自分がつくり上げたこの政治体制、右から左からのいろいろな批判等ももちろん出ておるわけでしょうが、この中国の政治体制というものは変わらないという非常な信念がありますし、確かに、我々いろいろと中国の古い政治家にも会っていろいろと話も開いたわけですが、皆、この体制は変わらないだろうという非常な強烈な支持でありますから、その体制のもとに行うこの政策は今後安心していいということだろうと思います。  そういう中で経済については、例えば農業についても大変失敗もした、ところが最近ではいわゆる生産割り当て制という制度で、いわば市場原理を取り入れた制度であろうと思いますが、私たちも現地を見てまいりましたが、ある程度の政府に納入する食糧生産をすればそれ以上の生産は自由市場で売れる、こういう制度に取り組んでこれを下部にまで浸透したために大変農民の生産意欲が出てきた。これはどうも事実のようでありますし、あるいはまた経済特区、この制度も深セン等で大変成功して、それに自信を持ってこれから開放政策の大きな一環としてこれを積極的に進めていくんだ、こういうことを強調しておりました。いわゆる開放政策、経済開放体制というものは変わらないのだ、あなた方は疑うかもしれぬけれどもこれは絶対に変わらない、それは、今の政治体制が安定しているし、この政治体制は変わらないからだ、こういうことでございまして、大変な実験であるわけですが、そしてまた共産主義的手法に対して資本主義的な手法も取り入れた中国流のやり方でしょうが、私は問題は政治体制だと思います。今の鄧小平体制というものの実務者を中心にしたああした体制が続いていく限りはこの政策は維持され、そしてそれはそれなりに実を結んでいく可能性は十分ある、私はこういうふうに思っておるわけであります。
  93. 河村勝

    ○河村委員 時の政権の責任者が体制が変わる可能性があるなんて言うはずはないのですから、やりとりとしてはそういうことになるだろうと思いますが、注意深く見守っていってほしいと思います。  それからさっき大臣は、農業政策が大変成功しているから二〇〇〇年までに所得四倍増は十分可能性があるとおっしゃいましたけれども、つい二、三日前に外務省からもらった資料を見ますと、さっき一人当たりの所得を大臣は二百ドルとおっしゃったけれども、外務省の資料だと二百九十七ドルになっておりますが、これはどっちが本当かわかりませんが、どっちでもよろしいでしょう。だけれども、その中で農業に従事する人間が八四・四%、この所得は全体の四四・六%にすぎない。半分でしょう。十億のうちの八億何千万が一般の所得の半分しかない。これを二〇〇〇年までに四倍に引き上げるということが常識的にできると思いますか。
  94. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 これは鄧小平さんも、四倍ということは言ってみたけれどもなかなか困難だ、しかし二百五十ドルということを言っていました。それは中国側の判断ですが、二百五十ドルを千ドルにする、世界の今の大勢の中でできない相談でもないのじゃないか。だから中国がうんと努力すれば全くできないとも言えない。しかし現在の進捗状況では今なかなか難しい情勢になっていることは事実だ。ただ、一つの大きな明るさは農業に明るい展望が出てきたことだということを言っておりました。そしてまたこれから工業の面において、あるいはまたインフラ等の整備の面において中国が努力し、それに対しいろいろな協力、特に日本からの協力というものが大きく期待できれば、この面における飛躍というものも十分期待できるので、そういうものを合わせると全然できない相談でもない、こういうことであります。これは、これから例えば日本の経済協力、七年間ですが四千七百億といえば相当膨大な経済協力であります。それに今度は二十億ドルぐらいの輸銀の借款をつけていくわけですから、これは鉄道とか発電所なんかもその対象に入っていますが、そういうものが確実にどんどん進んでいけば、ああいうふうに非常に低いわけですから、それなりの大きな成果が上がってくるのじゃないか、上がるときはうんと上がってくるのじゃないか、そういうふうにも私は思うわけであります。
  95. 河村勝

    ○河村委員 四倍増と言ったのは間違いで、四倍増でなしに、千ドルにはなると鄧小平さんがおっしゃったというのですけれども、もし二百ドルというのが正しければ農村はその半分、五十ドル、あるいは平均だからどういう計算になるのか、ちょっと計算機を持ってこなければだめだけれども、七十ドルかそこらになるのか。それを千ドルといったら大変ですよね。これはまず無理な相談だと私は思いますが、これはここで議論しても仕方がありませんが、なかなか難しいものだと私は思います。  それはそうとして、これからいろいろ民間投資を進めていかれるのに今度の租税条約、大変結構であります。ですから、それと並行して一番大事なのが投資保護協定ですね。これはさっき交渉中だというお話でありましたが、一体めどはついているのかということが一つ。それと、交渉中ですから機微に触れることは言えないかもしれませんけれども、本来ならこの租税協定なんかと一緒にないと、この数年間の中国の経済政策の突然変異することを考えましても本当に心配でしようがないわけですが、一体投資保護協定で一番基本になるこれだけは押さえておく、これだけはどうしても盛り込みたいと考えているのは何ですか。
  96. 橋本恕

    ○橋本(恕)政府委員 投資保護協定締結のめどでございますが、これは、この間中曽根総理安倍外務大臣が行かれましたときに日本側から、これは日本企業が安心して進出できるように早急につくってほしい、つくりましょうやという話をいたしました。それに対して中国側首脳も、もちろんです、これはどうしても急いでつくらなければなりませんということで、早期締結につきまして日中両首脳で合意した、こういうことでございます。  それではなぜおくれているかということでございますが、今の先生の御指摘のとおりに、これは交渉内容でございますので明らかにすることは難しいのでございますが、せっかくのお尋ねでございますから一、二、申しますと、重要な点が二つございます。  一つは、いわゆる内国民待遇、つまり日本企業中国進出した場合に、中国の国、政府中国企業に与えると同じ待遇を日本進出した企業にも与えてほしいという、これがいわゆる内国民待遇でございますが、この問題が一つ。  それからもう一つ、これは体制の差から来る問題と申しますか、投資保護協定でございます、この投資保護、つまり保護する対象となるところの投資というものの中の定義でございますね。一体何を保護するか。一つ具体的な例でわかりやすく申しますと、これも社会主義体制と日本資本主義体制の体制の差から来るのでございますが、日本企業中国進出いたしました場合に、当然駐在員事務所あるいは支店を設けます。日本側からいいますと、ここにかかるところの経費というものは生産されたものの原価に当然含むべきである、あるいはこれを投資の中に含めて保護してほしい、こういうことでございますね。これに対しまして中国側は、これは社会主義の理論から来るのでございますが、生産された財貨そのもの自体の価値ということが生産原価の根っこにあるのであって、例えば広告の費用でありますとか駐在員事務所、支店の費用、そういうものが必要ということはわかりましても、社会主義の経済理論からいいますと、それを生産原価に入れる、したがって保護の対象とする、そこまではなかなか踏み切れないというような、つまり先方は社会主義経済理論をとっている、こちらは資本主義ということで、そこで多少の、これはやむを得ないと言えばやむを得ないのでございますが、お互いに理解し合うのに時間がかかっている。これは話し合いでございますので、あるいは楽観に過ぎるかもしれませんが、お互いに譲り合うことによって、こういう技術的な問題は何とか解決が可能ではなかろうか、かように考えております。
  97. 河村勝

    ○河村委員 終わります。
  98. 中島源太郎

    中島委員長 次に、岡崎万寿秀君。
  99. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 持ち時間が少ないので、大臣に絞って質問をいたします。  今審議されている二つの協定の相手国、つまり中国とスリランカというのは、かつて日本帝国主義の犠牲を受けた国でございます。また、アジア諸国もそうなんです。したがって、戦後の日本外交、アジア外交の基本姿勢としては、この反省の上にしっかり立つということが必要だと思いますが、この点につきまして初めに安倍外務大臣の認識をお伺いしたいと思います。
  100. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 もちろんおっしゃるように、日本の戦前の行動、そういうものに対しては日本としては十分に反省をして、その上に立ってアジア政策あるいは対中国政策というものは進めていかなければならない、こういうふうに思っておりますし、そういう考え方で一貫して政府も取り組んでおる、こういうふうに我々は認識をいたしております。
  101. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 両国に対する外交の姿勢として、そうした戦争責任の反省の上に立って平等互恵という立場を貫くことが必要だと思います。協定内容につきましては後で政府委員の方に質問いたしますけれども、この二つの協定、これは完全にそうした立場に立っているというふうに大臣は明言できますか。
  102. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 日本外交政策としては今申し上げましたような基本姿勢を貫いておる、こういうことでございます。(岡崎委員「二つの協定が貫いているかということです」と呼ぶ)もちろん我々の提出しました二つの協定についてはそういう基本姿勢が貫かれておると考えております。
  103. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 中曽根総理は訪中の際北京大学で講演されましたが、そこで、我が国が再び軍国主義の復活を許すことは絶対ないということを非常に強い調子で断言されています。しかし、現実には中曽根総理も日米軍事同盟だというふうに認められている日米安保条約のもとで、軍事予算は突出していますし、シーレーン防衛の問題やあるいは日米共同作戦の問題など、さまざまな点で自衛隊の大増強が進んでいるのも事実なんですね。中国政府は、先ほど大臣の話でも非同盟をとっているということでございますけれども、この日米安保条約の問題について、中国政府は今回も支持する態度をとっていたかどうか、お聞きしたいと思います。
  104. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 日本が今後軍国主義の道を選ばないということは私も断言できるわけであります。  なお、中国に対しましては、日本の防衛政策あるいは安保政策につきまして私からも趙紫陽総理説明をいたしました。安保条約あるいは日本の憲法の中における日本の防衛のあり方、非核三原則、専守防衛、そうした日本の防衛に当たる安保問題についての基本的な政策説明をいたしたわけでございますが、それに対しまして趙紫陽首相も日本のこうした防衛政策については基本的に理解できるということでございまして、中国日本の安保政策あるいは防衛政策については理解があると私は見ております。
  105. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 台湾問題についてお伺いしたいと思います。  言うまでもなく、中国政府は一つの中国、一つの台湾、この立場については厳しく批判しています。一方、レーガン政権は台湾への武器売却、援助等については前の政権以上に強化しているわけですが、これは明らかな矛盾なのですね。中曽根内閣は西側一員論の立場でいるわけですけれども安倍外務大臣としましてこのレーガン政権の台湾政策をどう判断されているのか、御所見をお伺いしたいと思います。
  106. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 日米関係は非常に深い関係でありますが、それぞれ独立国でありますし、アメリカ外交政策アメリカ自身の決定に基づく外交政策でありますから、それに対してとやかく言う筋合でもないわけでございます。日本日本外交政策。そして、あくまでも日中関係については、日中の共同宣言あるいはまた日中平和友好条約の趣旨を貫いてまいるというのが日中外交の根本の原則であります。
  107. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 日本の姿勢はわかりましたけれども、レーガン政権の台湾政策についてはどういう判断ですか。そこにずばり答えてもらいたいと思うのです。
  108. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 これはアメリカのとっておる政策ですから、日本がこれに対してとやかく批判すべき筋のものではない、こういうふうに思います。
  109. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 時間もありませんので、日米安保条約に関連しまして三宅島の問題について聞いておきたいと思います。  ミッドウェーの艦載機の着艦訓練基地化が問題になっているわけですが、これについて村議会が一時これを容認するかのような決議をしたことがありましたけれども、その後島を挙げての大きな反対運動が起きまして、村議会もこの決議を公式に白紙にしましたし、その後の村会議員選挙では反対派が圧倒的に勝利したわけですね。これはこうした危険な基地化に対する住民の審判だったと思いますが、外務大臣としてはこの住民の意思、審判を尊重されるかどうかについてお伺いしたいと思います。
  110. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 アメリカのいわゆる着艦訓練につきましては今厚木で行われておりますが、いろいろな問題がございまして、何とかこれを移したいということで、日米間でいろいろと話し合いが行われております。日本としましても、安保条約の効果的な運用という立場から見れば、このアメリカ要望にもこたえなければならない、また厚木の住民のそうした非常に強い苦情に対してもやはり配慮しなければならぬ、こういうことでいろいろと苦心惨たんをいたしておりまして、そういう中で一つの構想として生まれたのが三宅島での着艦訓練を行うための基地をつくるということでございます。しかし、これについては今お話しのように三宅島の議会あるいは村民の意思というものもいろいろあるわけでございますし、政府としてはそうした一つの構想を持って努力は続けておるわけでございますが、もちろん住民の意思というものも考えなければならぬ。しかし、事の重要性があるわけでございますから、この点については今後関係各省が十分連絡をとりながら粘り強く事に当たっていきたい、そういうふうに考えておるわけでございます。
  111. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 三宅島村民の意思を考えるとおっしゃいましたけれども、この審判を尊重するかどうかという点についてお聞きしたいのです。その間には随分距離があると思いますので、尊重される意思があるかどうか、その辺お伺いしたいと思います。
  112. 山下新太郎

    山下(新)政府委員 大臣がお述べになりました御答弁を補足してちょっと御説明させていただきたいと思います。  夜間離発着訓練場の問題につきましては、御質問のとおり、現在いろいろなところの一つといたしまして三宅島等が考えられていることは事実だと思いますが、現在政府におきましては、防衛施設庁が中心になりまして、関東地方ないしその周辺地域を対象といたしまして、既存の飛行場につきまして所要の訓練ができるかどうか、あるいはまた陸上の飛行場を新設することに関しまして適地があるかどうかという調査、さらにまた浮体滑走路と申しまして、海の上に浮かせた滑走路みたいなものをつくることが技術的、経済的、さらにまた社会的な見地から実現の可能性があるかといったようなことを検討している次第でございます。具体的にどこにしたらいいかといったようなことはまだ結論を得ていないというのが現状でございます。
  113. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 私が聞いたのは、安倍外務大臣に、村民の選挙に示された意思を尊重されるかどうか、このことをお聞きしたかったのです。あれこれの事実は知っていますので、政府委員は結構です。安倍外務大臣がこれを尊重されるかどうかについてお聞きしたいのです。
  114. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 もちろん民主主義の時代ですから、住民の意思とか議会の意思というものは十分踏まえながら事を進めなければならない、そういうふうに思うわけでございます。
  115. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 今政府委員の方からあれこれの施策について話がありましたけれども、数日前のNHKの報道でしたが、米軍側は既に三宅島という形で特定して、ここにNLPの基地をつくる意向を示しているように報道しましたが、この情報はつかまれていますか。
  116. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 現在のところはワインバーガー米国防長官の訪日について米側から何ら正式な通報は受けておりません。また、同長官が訪問するような場合に、三宅島における夜間離着陸訓練場の問題が提起されるといったようなことも何ら聞いていない次第でございます。  なお、本年二月十日の三宅島村議会選挙の結果については事務的に米側に一般的な情報として説明したこともありました。米側としても承知しているものと考えております。
  117. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 ワインバーガー米国防長官が来日したときにも伝えるというふうにも報道されておりますけれども、経過は今の話でわかりました。しかし、一般的じゃなくて、いよいよ三宅島というところに焦点を置いてそういう問題が米側から提起されるような段階に入っている。私はこれは新しい段階であろうというふうに考えるわけです。したがって、今大臣も言われたように、三宅島村議会の意思をはっきりとワインバーガー国防長官にも伝え、そして三宅島については断念するように迫るのが必要であろうと思いますが、この点について、大臣、いかがでしょうか。
  118. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 ワインバーガーさんが来るということもはっきりしていませんし、それからワインバーガーさんが来た場合、そういう問題を提起するかどうかも何らはっきりしておりませんから、そういうことについて予断を持っていろいろと御答弁をするのは差し控えるべきだ、こういうふうに思います。
  119. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 ワインバーガー国防長官についてはそれでいいと思います。しかし、少なくともマスコミの報道等によっても、三宅島という形で特定されてこのNLPの基地化の問題が進んできておりますので、この問題が起きたときには、日本外務大臣として、住民の圧倒的な意思として反対の意向であるので、これについては断念してほしいということを伝えられるかどうかということなんです、仮定の問題じゃなくて。もうその話が具体的に報道されている段階でありますので、今度話が具体的にあった場合はっきり伝えてほしいと思うし、その意思をお聞きしたいと思うのです。
  120. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 何にもこの問題については結論も出ておりませんし、いろいろと経過が――過程というのはあるわけですけれども、そういう状況で、アメリカ側と状況についての、経過についてはお互いに意見の交換というのはあるんでしょうけれども日本がどうするとかこうするとかいうのを伝えるとか伝えないとか言うまだ段階ではない、こう思います。
  121. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 時間がありませんからこれで打ち切りますけれども、やはり村民の圧倒的多数が反対しておりますので、この意思に従って政府は行動されることを強く要望して質問を終わります。
  122. 中島源太郎

    中島委員長 午後一時三十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後一時三分休憩      ――――◇―――――     午後一時三十一分開議
  123. 中島源太郎

    中島委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。古川雅司君。
  124. 古川雅司

    ○古川委員 午前中に引き続き、両協定に関連をして質問を進めさせていただきます。  普通一般に租税条約というふうに言っておりますが、中国との場合協定となっておりますけれども、何か意味があるのかどうか、その点御答弁を願います。
  125. 斉藤邦彦

    斉藤(邦)政府委員 今回の協定に関しましては条約と申しましても協定と申しましても、国会の御承認をいただいた上で締結するという意味において違いがございません。今度の場合は中国側が、この協定が実務的な性質のものであるので協定という名前をつけたいという希望を表明いたしましたために、我が国もそれに応じまして租税協定という名前にした次第でございます。     〔委員長退席、石川委員長代理着席〕
  126. 古川雅司

    ○古川委員 そうしますと、この協定につきましては条約という呼び方は適当ではないということになりますか。
  127. 斉藤邦彦

    斉藤(邦)政府委員 我が国から見ますと、租税条約という名前をつけたものもございますので、今回の協定条約と呼んでも何ら支障はなかった次第でございます。中国側にとりまして、条約という名前は非常に政治的に重要なものにのみつけるという慣行があるそうでございまして、今回の租税二重課税回避内容とするこの協定はそういうものに当たらないので、協定という名前を使いたいという希望が表明されましたので、我が国もそれに応じたという事情でございます。
  128. 古川雅司

    ○古川委員 午前中の質問に対する御答弁で、台湾がこの協定の適用外になっているということでございましたが、台湾との二重課税回避及び脱税防止は実際どうなっているのか、その点御答弁願います。
  129. 斉藤邦彦

    斉藤(邦)政府委員 我が国は、台湾との関係の処理に当たりましては日中共同声明に基づく立場を堅持しておりますので、台湾との関係は一貫して非政府間の関係という枠組みの中で進められております。したがいまして、台湾との間で二重課税防止のための条約ないし協定というのはできておりませんので、この点特に何らの条約関係もないというのが現状でございます。
  130. 古川雅司

    ○古川委員 午前中、日本におる中国人居住者の問題で、中国本土、台湾、香港との区分けができないと思うがということをお尋ねをいたしました。実際上、二重課税上どういう取り扱いをしていくのか、その点をもう少し明確に御答弁願いたいと思います。
  131. 瀧川哲男

    ○瀧川説明員 お答えします。  午前中もお話ししたことでございますけれども先生の御質問の対象となっております人物が日本国の居住者であるということを前提にいたしますると、実は日本国におきましては国籍という概念で課税を行っておらないということを申し上げたわけでございます。そこで翻って、今外務省の方から御答弁申し上げましたように、日中については今度この条約発効しますと、その条約に基づく各種の優遇措置等が動く。それに対しまして、台湾につきましては、台湾との関係条約関係にないということになるわけでございますから、台湾の方々につきましては日本国の国内法が適用されるということになるわけでございます。条約関係ではなく、日本国の国内税法が適用になるということでございます。
  132. 古川雅司

    ○古川委員 日中間の海運、航空の往来状況に関連いたしまして、第八条の、船舶または航空機の運航から生ずる所得以外の、いわゆる付随所得、国際運輸に付随したコンテナの使用料等は免税になるのかどうか、この点はいかがでございますか。
  133. 瀧川哲男

    ○瀧川説明員 お答え申し上げます。  先ほど午前中にもちょっと話の出ましたOECDモデル条約というのがございますけれども、これは大体日本がいつもフォローしている条約でございますが、その条約におきましては、国際運輸業者が受領するコンテナのリース料につきましては国際運輸業所得条項が適用される、と申しますのは、大体国際運輸業者が受領するコンテナリース料は一般的に運輸業に付随する業務として受領するということで運輸条項が適用されるわけでございますが、それ以外の者が受領いたしまするコンテナリース料につきましては一般的には使用料条項が適用されるということになっておりまして、本協定我が国の一般的な条約例と同様これに従って適用があると考えております。
  134. 古川雅司

    ○古川委員 十四条の「自由職業」という規定の中で、医師あるいは弁護士といったものは日本の国家試験だけで中国でそうした活動ができるのかどうか、この点はいかがでございますか。
  135. 瀬崎克己

    瀬崎説明員 先生の御質問の点でございますが、この点につきましては中国法に従いまして、中国の資格試験が必要のようでございます。特に弁護士についてはその点明確でございますし、医師についても同様と理解しております。
  136. 古川雅司

    ○古川委員 その点は十分確認をされているのかどうか、再度御答弁をお願いいたします。
  137. 瀬崎克己

    瀬崎説明員 弁護士につきましては非常に明確でございまして、中国の国家公務員のみが弁護士の資格を持ち得るということになっておりますので、この点は、日本人であるとかその他の外国人が中国におきまして弁護士活動を行うということは事実上あり得ないと理解しております。
  138. 古川雅司

    ○古川委員 本協定締結によって今後企業進出等が進められていくわけでございまして、その場合の不安材料については午前中具体的に御指摘をしたわけでございまして、御答弁もございましたが、中国近代化我が国が最大限に協力をするのはあたかも当然でございますけれども、確かにいろいろな不安が残されているわけでございます。特に企業レベルから見れば契約が一方的に変更されるかもしれないという不安もあるし、あるいは原材料の供給はどうなっていくのか、製品の販路はどうか、数々あるわけでございます。さらに、電力であるとか水資源であるとか、法規上の整備が十分でないということのほかに、現実にこういった不安材料が数多く残されているわけでございまして、午前中の質問と多少重複はいたしますけれども、こうした受け皿が十分整っていない現状においてこの協定に問題はないか、この点改めてまた御答弁いただきたいと思います。
  139. 瀬崎克己

    瀬崎説明員 中国に対する民間企業進出の点でございますが、これは今回の日中首脳会談におきましても、日本側から、とにかく日本企業進出する際に、投資環境、経済環境を十分整備していただきたいということを明確に申しておるわけでございます。  他方中国側におきましては、けさほど御説明申し上げましたとおり、いろいろ法律的な点が整備されつつある段階でございまして、まだ例えば商法が完備していないとか民法がないとかいろいろ問題点があるわけでございますけれども、経済立法五カ年計画というようなことで、我々といたしましても中国側の進歩の度合いがはっきりしているということは理解している点でございます。  それから、現実に中国との関係で、例えばプラントの契約が一方的にキャンセルされたというような事態が起きたわけでございますが、これは中国側が過渡期のいろいろ試行錯誤の段階でそういった事態が起きたわけでございまして、これにつきましては中国側も誠意を持って、例えば契約が破棄された分については補償する等の措置をとっているわけでございます。  それから、今回の首脳会談におきましても、確かに中国側としてはまだ経験が浅いので、今後こういうことがあるかもしらぬけれども中国というのは非常に信頼を重んずる国でございますので、とにかく中国側が責任を持ってそういった問題について対処するのだということを明確に述べている点につきましても私どもとしては十分注意を払っているわけでございます。  それから、中国におきますインフラストラクチャーの整備でございますけれども、確かに先生がおっしゃいましたとおり、電力が不足しているとか水道の水が足りないとかいう問題があるわけでございますけれども、これにつきましても現実に徐々に改善策がとられている、かように理解している次第でございます。
  140. 古川雅司

    ○古川委員 そういう不安材料を残したままこれから企業進出していくわけでございますが、先般の総理訪中の際、トウ主任が幾つか中曽根首相にお約束をなさった中に、中国は最も信用を守る国であり、もし損を与えることがあれば中国が責任を持つというふうに述べておられますが、この責任という意味を、既に大臣は席を外されましたけれども政府として、外務省としてどのようにお受けとめになっていらっしゃいますか。
  141. 瀬崎克己

    瀬崎説明員 先ほど申し上げましたとおり、中国が過渡的に近代化追求の路線におきまして大型のプロジェクトを百二十件一九七九年から八〇年にかけまして契約したことがございます。こういった大型の重工業偏重のプロジェクトを重点的に実施しようとしたために、国内の各経済分野におきまして非常に混乱がありました。そういった混乱を受けまして調整政策というのを現時点ではとっているわけでございます。  ただ、中国の対外折衝の経験というのは非常に少のうございますし、それから中国側と体制の異なる国との経済交流についてはいろいろ問題がある。そこで、鄧小平さんが先般中曽根総理に対しまして今先生がおっしゃったようなことを申したわけでございますけれども、この際の責任というのは、万が一そういった不測の事態で日本企業ないしは外国企業に経済的な損失をかける場合にはちゃんと経済的に補償いたします、かように理解しているわけでございます。
  142. 古川雅司

    ○古川委員 日本企業進出に当たっては、そうした不安材料の中、非常に条件の整わない中で進出をしていくわけでございまして、当然相当の大きなリスクを覚悟していかなければならないと思います。大臣はいらっしゃいませんけれども政府としてはこの中国への日本企業進出をどういう形でお進めになっていくのか、局長ないし政務次官がいらっしゃいますので、政務次官にも御答弁いただければ幸いです。
  143. 瀬崎克己

    瀬崎説明員 民間企業外国進出していく場合におきましては、やはり民間企業の自主的判断、責任において出ていくわけでございます。他方政府といたしましてはやはり民間が安心して出ていけるような基盤を整備する必要がございますので、この点につきましては先方政府に対して法律制度整備しろとか、あるいは条約を結びましてもっと安定した規模の上に双方の経済進出を図るべきである、かような申し入れをしているわけでございます。  他方、近々中国に対しましては投資環境調査団等を送るわけでございますが、そういった面で側面から政府といたしましても企業が安心して出ていけるような基盤整備のために今後とも努力していきたいというふうに考えているわけでございます。
  144. 古川雅司

    ○古川委員 この協定締結と若干関連をして、香港の将来をめぐっていろいろ議論をされておりますが、中英交渉が行われまして、双方とも香港の安定と繁栄に向かってそれぞれ配慮をしているようでありますが、外務省としては香港の将来、前途をどう見ていらっしゃるのか。既に中英間では一九九七年ということで原則的な合意が成立をしているわけでございます。今後五十年間は資本主義制度を変えないという観測も流れております。今後いろいろな形で変動があり、またいろいろな影響があって見通しも難しいと思いますけれども、外務省として今後香港に対する取り組みをどうしていくのか、その点ひとつ御答弁願います。
  145. 瀬崎克己

    瀬崎説明員 香港問題につきましては八二年の九月にサッチャー英国首相が訪中された際に双方の首相の間で話し合いがなされたわけでございます。そして、最終的に香港の繁栄と安定を維持するという共通の目的に基づき外交ルートを通じて交渉することに合意したということで、自来十一回にわたる中英会談が開催されております。他方、この中英交渉と申しますのは日本から見ますと第三国間の交渉でございます。したがいまして、その見通しにつきまして日本がとやかく言う立場にはないということについては御理解いただきたいわけでございますが、他方日本民間企業等も大量に進出している香港でございます。したがいまして、香港問題が英中間の合意に従いましてまさに交渉の目的としているところの香港の繁栄と安定を維持する形で解決されるということを強く期待しているわけでございます。  それから、先般訪中の際に外相会談が持たれたわけでございますが、その際先方の呉学謙外務大臣から香港問題についての中英交渉内容につきまして簡単に説明があったわけでございますが、その際に中国としては外国進出して得ている経済的な利益につきましては十分保護するということをかなり明確に伝えているわけでございます。そして外務大臣から、この点につきましては日本民間企業にも伝えていいかと念を押したところが、ぜひそれを伝えていただきたいというようなことでございますので、私どもとしてはまさに香港問題が香港の繁栄と安定を維持するという形で円満に解決されるということを強く期待しているわけでございます。
  146. 古川雅司

    ○古川委員 これは将来にわたる問題でございますので、また後日にゆっくりお伺いをしたいと思います。  次に、スリランカとの航空協定の中身に入りますが、午前中伺いましたとおり、なぜ今スリランカなのかということについてはもう一つ明確ではございません。この航空協定ができましても当面日航等の就航の予定はないということでありますし、またスリランカからも乗り入れは早ければ五月、週二便程度と伺っております。成田空港の燃料その他滑走路等受け入れの整備が果たして整っているのかどうか。この点、運輸省との間で外務省は十分に確認した上での今回の協定となったのか、その辺を確認いたしたいと思います。さらに、日本との航空協定締結についてまだ三十一カ国申し出があり、残されていると言われておりますけれども、このスリランカの後に来るのはどこか、お考えになっているのかどうか、その点お尋ねいたします。
  147. 瀬崎克己

    瀬崎説明員 スリランカとの航空協定の件でございますが、これにつきましては今から十八年前にスリランカから申し出があったわけでございます。ところが、日本側の空港の事情とかジェット燃料の輸送とかいろいろ問題がございまして、環境が整わなかったということで交渉の開始が延びていたわけでございますが、他方その間にスリランカとの経済交流もかなり着実に伸びておりますし、そういった見地からぜひとも早急に解決する必要があるということで、先般先方の大統領が訪日した際にまたこの話が浮上いたしまして、外務省といたしましては運輸省と十分連絡協議しつつ、十分受け入れの態勢が整ったという状況のもとに交渉を進めたわけでございます。  それから、スリランカといたしましてはできる限り早く飛行機を飛ばしたいという希望を持っているわけでございますけれども、今我々が承知しているところによりますと、スリランカとしては七月一日から週二便程度飛行機を運航したいと希望しているように聞いております。
  148. 古川雅司

    ○古川委員 第一条で言う「航空当局」が日本側では運輸大臣になっておりますが、スリランカ側は国防大臣になっております。スリランカには運輸大臣もいるわけでありますが、なぜ国防大臣になっているのか、この経緯をお聞きしたいと思います。当然これはスリランカの航空会社エア・ランカの経営形態の問題もあると思いますが、かつてカーター大統領が民間航空は第二の空軍だと言ったことも思い起こされますし、この点は今後問題がないかどうか、その点をお尋ねいたします。
  149. 瀬崎克己

    瀬崎説明員 協定第一条のスリランカの航空当局が国防大臣の管轄下にあるということは、まさに先生の御指摘のとおりでございます。この点につきましては、スリランカというのはかつては国防大臣の所管ではなかったわけでございますが、たまたま現在のスリランカの行政制度からいきまして大統領が国防大臣を兼任しているわけでございます。そして、昭和五十三年にスリランカの航空会社を強化するという見地から大統領がぜひ自分で直轄したい、こういうことでスリランカの航空当局を国防省の直轄下に移したわけでございます。ただ、現時点ではスリランカの行政組織からいきまして国防大臣は国防、警察、市民権、航空の四つの独立した分野を所掌しておりまして、それぞれの行政機関は全く独立しているということでございまして、たまたま国防大臣が航空当局を所掌しているわけでございますけれども、これにつきましては国防省直轄ということではなくて全く独立した航空局があるということでございます。  それから、国防省が航空当局を管轄している事例といたしましては、スリランカただ一つということではございませんで、例えばイタリア等につきましても同じような事情にあるわけでございます。
  150. 石川要三

    ○石川委員長代理 関連質問の申し出がありますので、これを許します。渡部一郎君。
  151. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 古川委員の御好意によりまして最後のところ、ちょっと質問させていただきます。  航空業務に関する日本国政府スリ・ランカ民主社会主義共和国政府との間の協定について、まずお尋ねをいたします。  この協定を論議する前に、現在日本国内に発着陸を希望している各国政府あるいは民間機関の航空機の申し出はどのくらいあるものか、運輸省の御担当の方、おわかりでしたらお知らせいただきたいと思います。
  152. 向山秀昭

    ○向山説明員 外国からの日本に対する乗り入れの要請につきましてはいろいろな時期にいろいろな形で行われておりますけれども、今までに日本にそういう要請をもたらしたことがある国ということから申し上げますと三十数カ国になっております。
  153. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 便数で言うとどれくらいでございますか。
  154. 向山秀昭

    ○向山説明員 具体的な要望内容につきましては必ずしも明確ではございませんで、総トータル何便になるというようなことは明らかになっておりません。
  155. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 日本に飛行機を入れたい、発着陸したいと要請される便数が非常に多いということは、大阪の豊中にあります空港の論議の際にしばしば聞くところでございますが、二十四時間空港が早い時点でありませんと、特に発展途上国に対しては非常に失礼なことになっておる。どうしてスリランカを入れて我が方は入れないのかという怨嗟の声がこの議場の外側で聞こえているような気がするわけであります。したがって、スリランカを入れて我が国を入れない理由、スリランカを入れて我が国の便数をふやさない理由は何かと言われたときに、我々としては答えようがないわけであります。聞くところによると、国際空港という規定は必ずしも飛行場の規模その他にかかわるものではないようでございますから、この際二十四時間空港を、これらの外国から要求されるものをもっと大々的に受け入れるという方向に方針を変更なさることがよろしいのではないか。いよいよ明日、新国際空港についての御論議が国会の本会議場に趣旨説明として出るというのを承っておるわけでありますし、政務次官もその辺大変強い御関心をお持ちの御様子でありますのであえて申し上げるわけでありますが、例えば那覇空港、あそこは今沖合に張り出すといたしますならばわずか一年か二年でこれを完成することができる、費用も実際の土木工事レベルで勘定いたしますと千億ぐらいでできる。千億というのは少しオーバーかもしれませんが、千五百億もあれば十分だと思います。借款能力も十分にある。そうしますと、政府としてはやっていいよと言うだけで国際空港ができ上がる。でき上がってしまえば、日本の南端でございますので、発展途上国の方々の要求に対しては非常に簡単に応ずることができる。南の玄関として沖縄の例で申し上げたわけですけれども、気候的にも人情の上でも礼儀作法の上からでも非常にいいポストとして要望に応じることが可能である、こうしたことを考えてみた方がいいのではないかと先日那覇空港の横を通りながらしみじみ思ったわけでございます。政務次官に承りたいのでございますが、それが東京、大阪に直で乗り入れするのではなくて、そういう二十四時間空港というものをもう少し日本の地方空港と今目されているところに開放する姿勢をとられることも大切なのではないかと思いますが、いかがでございましょうか。
  156. 北川石松

    ○北川政府委員 ただいま渡部委員の御指摘また御質問の趣旨は、外務省といたしましては、スリランカとだけ結んで他の国と結び得ないということはよくないと思います。速やかに他の国々との航空協定を結べるように体制を整えなくてはならぬ。この点につきましては、運輸省のそれぞれの機関との話し合いもありますけれども、私は、日本政府としては二十四時間空港は一日も早く完成させてほしいという願望を持っております。  ただいま沖縄の那覇空港についての御所見でございますが、この点につきましては、いろいろ日本の地勢状況、またそれぞれ諸外国から日本の二十四時間空港を利用する点におきましてもなお検討しなければならない問題が多々あると考えるものでございまして、そういう点について関西新空港がまさにその緒につこうとしておりますので、この速やかな完成を祈る気持ちでございます。  以上であります。
  157. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 那覇空港にこだわります理由は、本土に復帰されましてから経済自立のために非常に苦労しておられるのはわかっております。しかし適切な大きな仕事場というものが依然として少ないのが実情である。しかも、那覇空港は昔那覇インターナショナルエアポートと表示して本土に復帰して、本土に復帰した途端にインターナショナルという字を引きずりおろされてネオンサインが壊されたいきさつがある。こういうのは非常に反発的な雰囲気を地元は抱いているわけであります。本土復帰十年を記念する事業ももう幾つか行われているわけでございますが、私はそういうことを配慮されるということは必要なのではないかとも思うわけであります。そしてすべての条件はそろっておる。荷物を取り調べる税関の職員を数名配置しただけで本日からでも使えるという状況になっております。おまけに沖縄国体が六十二年に行われる。だから六十一年中につくってしまえばもうこんないいことはない。日本の国体であるというだけでなくて世界の国体になる。日本のハワイとして世界じゅうに売り込むことも可能である、こう考えるわけでございます。きょうは沖縄だけを私論じておりますから他の空港について申し上げないのは大変失礼なのでございますけれども、こういう希望を持つ空港は日本全国ほかにもあるわけでございます。  それからもう一つ。自家用機を東南アジアの方から飛ばしてくる場合におもしろいことがありまして、香港で全部着陸しなければならない。例えばボルネオの某王族が、この人は日本の旧軍人でありまして、残留した人なんですけれども、今はボルネオの偉い方でございますが、向こうから飛行機を飛ばしてくるとどうしてもおろされてしまう。香港でおろされるかソウルでおろされる。そして民間航空機に乗りかえなければ日本に入ってこれない。どうして日本人はそういうふうに我々に対して警戒的なのか、空襲されることを恐れているのかとこの間しみじみ言っておられたのです。セスナであるとかその他の飛行機に対して日本は極端に警戒的であって、運輸省という極端に閉鎖的、排他的、非国際的官庁というものが何かと許認可権を行使して意地悪をされているのはよくわかりますけれども、また日本国内が狭いから遠慮されているのかもしれませんけれども、現在それほどの厳しい障害をつくることはないと思うわけでございます。そうすると、少し面積の広い、航空管制も緩やかな地域にこうしたものを置いておいて、どうぞいつでもおいでください、二十四時間いつでも着陸結構ですと言える空港が、日本の本当の玄関口というものが必要ですね。ところが、東京、大阪空港というのは玄関口どころか心臓の上に着陸するみたいなところですからやかましいのもわかる。しかし、もう少し先の方にもう少し気楽な空港をつくった方がいいのではないか。  私は、運輸委員会でなくてここで言うのは、スリランカとの航空協定、大変喜んではいるのですけれども、スリランカと同じように私ども日本と飛行機を発着させる関係を結びたいという多くの国々に対してどうぞおいでくださいということがどれだけその国の威信を高め、当該政府に対する友好的な感情を育てるかと思いますと残念でならないわけであります。それが単なる飛行場の問題、単なる権限の問題、単なる石頭の問題で阻害されておる。全く何ということか。ちょっとしたアイデアと思いつきがそれらの国々を大きく日本国に引きつける要因になると私は考えますので残念でたまらないのであります。しかも日本航空という希代の、採算性だけ考えて、航空関係だけで国際友好を余り考えない飛行機会社をわざわざ指定企業にされて、こちらからは飛ばさない、おまえだけ飛んでこいなどという協定をつくるということはどう考えても友好とはなり得ない。私はそういう意味では、友好のためにこういうことをやるのだったらこうしたことを全部一緒に配慮すべきではないかと思いますが、運輸関係にもお強い政務次官は言いたいことが定めてたっぷりおありだろうと思いますから、ここでちょっとお尋ねするわけであります。どうぞお願いいたします。
  158. 北川石松

    ○北川政府委員 渡部委員の非常に博識また将来を考えた、世界各国との友情、きずなをなお深めるための御質問をちょうだいいたしまして、外務省の政務次官としてはごもっともであるなと思いますが、日本の航空のいろいろの関係考えまして、やはり慎重にやらなくちゃならぬという思いもいたす次第でございまして、ただいま御指摘のありました諸点につきましては今後大いに勉強し検討いたしたいと思っております。よろしくお願いいたします。
  159. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 検討するというだけで、検討されましたら必ずこの委員会で御報告をされますように期待してよろしいのでございましょうか、くどいようでございますが、重ねてお伺いいたします。
  160. 北川石松

    ○北川政府委員 ただいま検討するというのは、やはり運輸省のいろいろの形また法の決定、いろいろなものがありますので、それはよく関係各省との連絡また検討を加えた後、御報告をさせていただきたい、こう思っております。
  161. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 以上です。
  162. 石川要三

    ○石川委員長代理 次に、河村勝君。
  163. 河村勝

    ○河村委員 今回の租税協定OECDモデルをもとにして開発途上国向けの国連モデルの要素を加味したということでございますが、それによって事業の行われる恒久施設の範囲を広げて、それによって、この場合でいえば中国側に利益を多くするというような説明でありましたが、この条文にある建築工事現場その他を含めることによって一体どの程度中国側が利益をするということになるのですか。
  164. 斉藤邦彦

    斉藤(邦)政府委員 この協定発効いたしますことによって中国側がどれだけの利益を受けるかという点につきましては、今後の企業進出状況その他、実態がどうなるかということによりますので、この時点で幾ら幾らというお返事をすることはちょっと難しいかと存じます。
  165. 河村勝

    ○河村委員 いや、ちょっと質問が悪かったのかもしれないけれどもOECDモデルに対して国連モデルを加味した、それによって恒久施設の範囲を広げたというわけでしょう。それによって利益する、そういうふうな説明だと思ったが、そうじゃないのですか。そうであれば、その部分というのは一般論として一体どのくらいの割合になるのかということなんですよ。
  166. 斉藤邦彦

    斉藤(邦)政府委員 必ずしも御質問の趣旨を把握していないかもしれませんが、OECDモデル条約におきましては恒久的施設とみなされる建設工事は十二カ月を超えるものでございます。国連モデル条約におきましては、これは開発途上国の事情を考慮いたしまして、この十二カ月という期間を六カ月に縮めております。  今度の中国との租税協定におきましては、これを国連モデル条約に従いまして六カ月という短い期間の方に定めている次第でございますので、こういうところから中国側の利益が考慮されているということを御説明した次第でございます。
  167. 河村勝

    ○河村委員 だから普通の常識――つくる以上は大体相手方もある程度プラスになると思うからそれを選ぶわけでしょう。一体それによって何%ぐらい得になるのかという見当というのは全然つかないわけですか。ただ十二カ月を六カ月に縮めれば何ぼかはふえるであろうというくらいのところでこの協定はまとまっているということになるわけですか。
  168. 瀬崎克己

    瀬崎説明員 協定締結ないしは成立に伴います具体的な経済的な利益につきましては、企業進出あるいは貿易実態を踏まえて判断すべきことでございます。したがいまして、今の時点で、例えば今後一年先あるいは二年先にどれだけ企業が出ていくかということにつきましては、必ずしも明確に物差しではかるようにははかれないわけでございます。ただ、こういった法律が成立することによりまして、あるいは条約が成立することによりまして投資環境整備されるわけでございますから、したがいまして、大いに中国側にも利益が均てんすることになるというまさに一般論的な御返答しかできないわけでございます。この点につきましては御理解いただきたいわけでございます。ただこの条約締結することによる中国側の利益というのは、やはり日本企業進出が非常に促進されるという点で中国側も大いに評価しているわけでございますし、それから外国企業に対するみなし税と申しますか、中国の税制上の優遇措置が生かされるわけでございます。したがいまして、中国の外資導入政策にまさにマッチするわけでございまして、そういった点からこの協定の積極的な面を評価すべきである、かように認識しているわけでございます。
  169. 河村勝

    ○河村委員 これによって投資が促進されるのは大変結構でありますが、過去に、昭和五十六年、中国側の突然の政策変更で、宝山製鉄所初め幾つかのプラント輸出計画が突如破棄されて、それによって日本側企業が大きな損害を受けた。三千億円と聞いております。それに対して今度中曽根訪中の際に鄧小平氏が、今後日本側企業進出した場合に中国側が迷惑をかけるようなことがあれば、それは中国側の責任において経済的な補償をします、宝山製鉄所についても中国側の責任で補償しましたという発言をなさったという報道がなされておりますが、一体そういう発言があったのか、一体どういう補償が中国側の責任においてなされたのか、それを説明してください。
  170. 瀬崎克己

    瀬崎説明員 中国のプラント問題につきましては、中国側が一九七八年に経済発展十カ年計画要綱というのを採択いたしまして、その際に重化学工業を重点的に推進するということで百二十の大型プロジェクトを契約したわけでございます。ところがこれを推進した結果何が起こったかと申しますと、経済分野の間で非常に大混乱が起きたりあるいは財政赤字が大幅に伸びたり国内の物価が非常に暴騰したりいたしましてかなりな混乱を来したわけでございます。したがって、そういった中国経済の中の若干の混乱を踏まえまして、中国といたしましては一九八〇年に経済調整政策をとりまして、特に大型プロジェクトにつきましては一部中止したりあるいはその実施を延期するというような措置をとりまして、八一年の予算では基本建設投資予算を四五%削減するというような状況になったわけでございます。  このような状況を踏まえまして、日本との間でも話が進んでおりました石油化学プロジェクトであるとか製鉄所の話も一時はかなり大幅に契約キャンセルというような状況になりかけたわけでございますが、政府レベルでの話し合いあるいは民間同士の話し合いを踏まえましてかなりの部分につきましては契約どおり実施するということになったわけでございます。それから、契約が破棄された部分につきましては、中国側は明確に経済的な補償をしているわけでございます。それから、そのときに、プロジェクトを実施する際に資金不足がございましたので、その点につきましては中国側から二十六億ドル近い資金要請がございまして、これにっきまして商品借款あるいはサプライヤーズクレジット、シンジケートローンなどで総枠三千億円程度の資金供与がなされたわけでございます。そういった過程を経てとにかくこの一連の問題につきましては円満に双方の間で決着がついた、かようなことであったと記憶している次第でございます。  それから、今般鄧小平主任と中曽根総理との間でもこの話が出まして、確かに中国としては現時点で民間企業等の進出を大いに期待するという話が出まして、それに関連して中曽根総理の方から、先般来繰り返してございますように、投資環境整備について中国側としても努力してほしいというような話し合いの後で、実はそういった経済調整期に日本側企業にも迷惑をかけたけれども、これについてはきちっと補償したはずである。中国というのはとにかく信用というのを非常に重要視する国でございまして、これについては万が一そういうことがないことを期待するけれども、経験不足でありまして、今後ともそういうことがあるかもしれぬ、しかし万一そういうことが起これば必ず中国としては補償するということがあったということでございます。
  171. 河村勝

    ○河村委員 中国側が補償をしたというのはどういうやり方で補償をしたのですか。
  172. 瀬崎克己

    瀬崎説明員 宝山製鉄所につきましては、契約がキャンセルされた部分につきましては中国側から契約当事者である三菱商事の方に違約金が支払われたというふうに理解しております。ただその金額の詳細につきましては、私どもとしては把握してないということでございます。
  173. 河村勝

    ○河村委員 こういう契約破棄で今後のこの種の投資活動にも大変な影響を及ぼす問題において、損害がどういう形で補償されたかという実態を外務省として知らないのはどういうわけですか。
  174. 瀬崎克己

    瀬崎説明員 これは商事契約の内容でございますので、まさに私どもとしては直接の当事者ではないということが第一点でございます。それから、かなりいろいろな話し合いがあったわけでございますが、契約の大部分は履行されたというふうに聞いておりまして、そのほんの一部分につきまして中国側が違約金を支払った、かように理解しているわけでございます。
  175. 河村勝

    ○河村委員 どうもその答弁には私は納得ができない。私も新聞報道等だから的確な中身は知りません。しかしおおよそわかっているところでは、八一年の十月、契約破棄に関連をしてプラント救済借款を新しく三千億供与した。そしてその内訳というのは、商品借款が千三百億、輸銀融資が一千億、民間融資七百億、このうちで商品借款が救済資金に充てられているという報道、また別の報道ではそのうち四百三十四億円は第一次の円借款のうちの水力発電所やトンネル関係のプロジェクトの借款分を削ってそれを救済用に回した、こういう趣旨の記事が当時出ております。これはうそですか、本当ですか。
  176. 瀬崎克己

    瀬崎説明員 当時の話し合いを踏まえまして、先生御指摘のとおり三千億円の資金が日本側から約束されたということは事実でございます。その内訳は、千三百億円の円借款、一千億円のサプライヤーズクレジットそれから七百億円のシンジケートローンでございます。ただ、これは中国側の経済的な損失を補償するというようなことではごごいませんで、全く切り離して処理された案件でございます。現にこの千三百億円の日本側の商品借款につきましては、今まさに、まだこれから供与が約束されるということでございまして、千三百億円を一挙に支払ったということではございません。これにつきましては、年度その都度都度中国側と話し合いまして、商品借款を分割して支払ったということでございます。  ただ、なぜこの当時こういった大きな金額の資金供与が約束されたかということにつきましては、当時の記録を調べますと、やはり中国側が対外経済政策を追求する過程でいろいろ試行錯誤を重ねた、ただ、外から見ておりましてこういった対外開放経済政策というのは非常に健全な中国の将来を保障するものでありまして、中国がこういった開かれた社会を続けていくということが中国の経済的な繁栄ないしは安定に非常に貢献するものである、それを日本としては支援するという姿勢で経済協力を進めておるわけでございまして、こういった試行錯誤の過程で、若干の中国側の後退ということが中国側の開放経済政策の蹉跌ということにつながってはいかぬ、こういうような認識で経済協力を行ったというふうに記憶しておるわけでございます。
  177. 河村勝

    ○河村委員 商品借款というのは、受けた方の政府から言えば、その商品を売却することによって一番簡単に資金が手に入りますね。ですから、それを使って現金で補償するというのは非常に楽なことだし、あり得ることだ。だから、商品借款がすべていっているかどうか、これは別にして、そこから損害分が払われだというのは非常に想像しやすいことだ。しかし、そういうことは絶対ないと言うのですね。中国側は全然別のことで支払ったと言うのですか。間違いありませんか。
  178. 瀬崎克己

    瀬崎説明員 日本側に補償いたしました中国側のプロジェクトと円借款等の問題は全く無関係でございます。
  179. 河村勝

    ○河村委員 それ以上私も追及する材料を持たない。しかし、当時の新聞等では、プラント救済借款と銘打って報道されていることも事実だ。だから私も、これはなお自分でも調べてみたいと思う。確かに中国側がふなれでいろいろな挫折をやってそのプラント全体が将来にわたって挫折することは日本にとっても不利益だからさらに応援するという、そのこと自体が悪いとは私は言わない。だけれども、そういう過程で起きた補償問題、そういうものを、こちらから金を供与してそれを見返りにして補償を済ませるというようなやり方は、決して互恵平等ではない。きょうは午前中にも私は大臣に、やはりこれからは単なるムードにおぼれないで本当に国益を踏まえておやりなさいと言ったのは、そういうところにもあるわけですね。だから、私もそれ以上のことを追及する材料を持たないからこれでやめておきますけれども、こういうことはないことを期待をします。  そこで、今私が申しました三千億の追加借款、プラント救済借款が八一年に出ているわけですが、第一次借款というのはいつから始まっているのかな、その前から第一次借款というのは別にあるわけですね。この供与された借款の消化状況、実績は一体どういうふうになっているのですか。
  180. 川村知也

    ○川村説明員 対中国第一次円借款でございますが、御指摘のとおり昭和五十四年度から五十八年度までにわたりまして供与されまして、対象となりました事業は鉄道、港湾の分野における案件でございます。全部で四案件でございます。これらの事業は中国が推進しております経済建設、国家基本建設と申しますか、そういうものにかかわる事業でございまして、これの推進に積極的な役割を果たしたと考えております。さらに、これによりまして日中友好関係の促進にも役立った。それからまた、中国側におきましてもこのような日本の協力を非常に高く評価しているところでございます。  対象案件の工事の進捗状況でございますけれども、これは中国側としても最優先案件として取り上げているものでございますので、その完成には最大限の努力を払っておりまして、進捗状況は極めて順調と承知しております。  具体的に、借款の支出状況でございますけれども、本年の二月末現在でおおむね六〇%ということになっております。
  181. 河村勝

    ○河村委員 そうすると五十四年から五十八年度分で三千億、そのうち実際に供与したものは六〇%、そういうことですか。
  182. 川村知也

    ○川村説明員 三千億円は、供与を約束しかつそれに基づいて経済協力基金の借款契約が締結されている額でございます。このうちから御承知のように工事の進捗状況に従って実際の支出が行われますので、ただいま申し上げた六〇%というのは、三千億円全体に対しまして二月末日現在の実際の支出状況でございます。
  183. 河村勝

    ○河村委員 大変順調にいって、それで所定の年限が終わって六〇%、これは順調と言えるんですか。第二次借款がことしから始まるわけですね。そうすると、第一次借款が一体どの程度のチェックをしているのか知らないけれども、おおむね六〇%で順調というような格好で、そしてさらに第二次借款で四千七百億というような額を投入していくというのは一体どういう精神なのか、私にはよくわからない。その点、さっきから日中友好に役立ったというようなことばかり強調しておられるけれども、友好に役立つことは結構だ。しかし、これから実際国民の血税を使って借款を供与していくんですから、それが本当に使われないでいたのでは、まだ使い終わらないうちにさらにまた新しい借款を供与するというのはおかしいんじゃないんですか。どうなんですか。
  184. 川村知也

    ○川村説明員 先ほど触れました第一次円借款の対象となっております四案件は、いずれも経済基本建設のための事業でございまして、五年ないし六年程度の工期が最初から見込まれている大事業でございます。したがいまして、例えば鉄道案件について申しますと、そのうちの一件は来年いっぱい、一九八五年十二月まで。それから港湾の計画もございますが、そのうち一つは本年いっぱい。それからもう一つは、鉄道と同じように八五年十二月いっぱいということが当初から当然の進捗見通しとして予想されていたところでございます。ただいま申し上げたようにほぼこの予想に従って工事の進捗が図られているということでございます。  それから、第二次借款につきましては、これとは全く別というか、大体似通った分野が多うございますけれども、鉄道、港湾あるいは新たに通信の領域、水力発電といった領域で、同じく経済の基本建設にかかわる事業に対しまして借款を供与するということでございまして、これも今年度から供与が開始されるに伴って新しく事業が開始されるということで、第一次の対象となった事業が行われているのと同時並行的にまた行われるということになるわけでございます。
  185. 河村勝

    ○河村委員 そうすると、第二次借款については中身はまだ確定してないで、これから具体的なプロジェクトは決まっていくということになるわけですね。
  186. 川村知也

    ○川村説明員 第二次借款につきましても、このたびの総理外務大臣訪中の際にはっきりと対象案件を先方に伝えております。案件及びこれに要する借款対象額となるおおよその額、これはあくまでもめどということでございますけれども、これを先方に伝えでございます。対象の案件は鉄道、港湾、通信、水力発電、これらの分野を通じまして合計七案件でございます。
  187. 河村勝

    ○河村委員 その借款の条件はどういう条件になっていますか。
  188. 川村知也

    ○川村説明員 ただいま申しましたように、一応今後約七年間にわたる全体の供与額のめどを示したわけでございまして、この円借款が今後どういうふうに取り進められるかと申しますと、年度ベースでその当該年度の供与額についてまず両政府間で合意して決めていくということでございます。それと同時に、ただいまの御質問の条件、例えば金利でありますとか返済期間というものも同時に年次ベースの両者の協議を通じて決定されるものでございまして、第二次借款につきましては、現在その点はまだ今後の問題として残されております。
  189. 河村勝

    ○河村委員 第一次借款は十年据え置き二十年返済、利子が三・五%ですね。大体そんなことになるわけですか。
  190. 川村知也

    ○川村説明員 第一次借款の場合は返済期間が全部で三十年、そのうち据え置き期間が十年、これはただいま先生御指摘のとおりでございます。金利につきましては三%でございました。  第二次借款につきましては、先ほどお答え申し上げましたように幾らになるかはこれからの交渉の問題でございます。
  191. 河村勝

    ○河村委員 ほかに輸銀融資について三十億ドル供与の約束がされたというふうに聞いておりますが、それはそうであるかどうか、そうであればどういうプロジェクトを対象にしてやっておるか、それを聞かしてください。
  192. 瀬崎克己

    瀬崎説明員 輸銀の借款につきましては、第一次輸銀借款といたしまして二十億ドル供与した事実はございますが、今般、総理の訪中の際に先方から輸銀の対象案件といたしまして石油関連プロジェクト、石炭関連プロジェクトに対しまして輸銀から資金供与を得たいというような話がございましたが、金額につきましては、今次訪中の際には全く出ておりません。
  193. 河村勝

    ○河村委員 そうすると、輸銀融資については額は全然不確定であって、これから相談してとにかく何らかの供与をしようということだけを約束してある、したがって、対象についても何も決まっておらぬ、こういうことになるわけですか。
  194. 瀬崎克己

    瀬崎説明員 対象につきましては、先ほど申し上げましたとおり石炭関連プロジェクトそれから石油関連プロジェクトでございます。一説と申しますか、新聞紙上等で三十億ドルというような話が出ておりますけれども、これにつきましては、そういったプロジェクトの総合的な積算が三十億ドル程度になるのではないかという話はあるわけでございますけれども先方から三十億ドルというような明確な話が首脳会談で出たような事実はございません。  他方、我が方といたしましては、やはり中国が現時点におきましてエネルギーの開発ということを非常に重視して開発プロジェクトを進めているわけでございますし、他方日本側としてもいろいろ石油等につきましては需要があるということで、こういったプロジェクトにつきまして前向きに対応することは必要だという判断に基づきまして、首脳会談におきましてできる限り前向きに対応したいというような印象は与えておりますけれども、金額につきましては、先ほど来御説明しておりますとおり、こちら側から何億ドルというような話は出てないわけでございます。
  195. 河村勝

    ○河村委員 借款関係はわかりました。  次に、合弁事業のことで聞きたいのですが、中国側が合弁事業に対する日本投資を特に非常に積極的に要請をしているということでありますけれども中国側が合弁事業に非常に熱心な理由、目的といいますか、それは一体何だとお考えになってますか。
  196. 瀬崎克己

    瀬崎説明員 中国は、開放政策を進めていくに際しまして非常に外国からの資金供与に期待しているわけでございます。それと同時に、また外国からの先進技術の習得あるいは経営のノーハウということにつきましてもこういった資本とともに中国進出することを期待しているわけでございますが、こういった企業進出が図られますと中国の労働力の雇用機会を創出するという効果もあるわけでございます。したがいまして、中国といたしましては合弁はもちろんのこと、単独の一〇〇%の出資でありましょうとも、外国企業につきましてはできる限り来てほしいというような考え方に立ちまして、先ほど来御説明申し上げましたとおりいろいろ法制面での整備を進めているということでございます。
  197. 河村勝

    ○河村委員 合弁の期間が今までの実績で見ますと十三年と二十年、いずれかになっておりますね。二十年以上のものは存在をしない。こうした投資の期間からいうと短い。その間に一体投資による利益をどれだけ上げられるかというのは大変疑問な期間でありますが、今中国側がこれに非常に熱心なのは、一つにはもちろん日本資本が欲しいということと、もう一つは、今お話しのように経営管理を含めた技術移転、これを非常に中国としては今切望しているんだろうと私も思います。それだけに期間が短いというのは大変気になるわけで、一体中国側というのは、経営管理を覚えてそれから技術も習得したら大体これでもって後はもう終わり、合弁事業はその十三年ないし二十年で終わりにしてしまうのだ、後は自前でやろう、こういうことなんでしょうか。その辺の考え方は一体どうお考えになってますか。     〔石川委員長代理退席、委員長着席〕
  198. 瀬崎克己

    瀬崎説明員 中国は外資導入につきましては非常に積極的な施策を講じているわけでございますが、外資導入法というものはまだ制定されてないわけでございます。したがいまして、合弁事業に関連する法規でいろいろ中国の施策を判断する必要があるわけでございますが、先生が御質問されております期間につきましては、確かに合弁企業実施細則百条によりますと「十年ないし三十年を原則とする」ということが書いてございます。ただ、これにつきましては例外規定がございまして、投資額が大きい場合あるいは利益率が低い場合、これは恐らく農業等そういった面での投資考えているのだと思いますが、こういった利益率が低いもの等につきましては三十年以上についても認める、こういうような規定を設けている次第でございます。
  199. 河村勝

    ○河村委員 三十年以上のものがあるのはわかりましたが、考え方として今私がお尋ねをしたのは、中国は、合弁事業というのは大体期間が終わったらもうそれでもって日本資本はお引き取りを願って、あとは自前でやります、その間に技術も経営管理のノーハウも吸収してしまうのだ、そういうところに比重があるのか、それとも末永く一緒にやりましょうというのか、その辺の見当によって随分これからの対応の仕方が変わってくると思うのですけれども、その辺は一体どのように判断をしておられますか。
  200. 瀬崎克己

    瀬崎説明員 確かに合弁事業につきましては合弁の期間等についていろいろ制約を設けているわけでございます。他方、その他の法規を見ますと、再投資につきましては税法上の優遇措置を講じている等の施策もありますし、また双方の契約の話し合いによりましてはこの期間を延長することも可能だと思います。いずれにせよ、中国といたしましては長期的な対外開放政策をとるということを非常に明言しておりますので、我々といたしましては単純に十年、二十年で縁を切るというような話ではなくて、長期的に民間企業進出を期待しているというような強い印象を持っているわけでございます。
  201. 河村勝

    ○河村委員 合弁期間が終わった後に、仮にそこでもって期限が切れてしまったという場合の出資した企業に対する投資資金の返還、そういうものはやはり合弁法で決まっているのですか。その点は一体どうなっているのですか。
  202. 瀬崎克己

    瀬崎説明員 この点につきましては中国側法律的に手当てしているわけでございます。他方、合弁につきましては、相手側のあることでございますので、その終了に際しましては双方の話し合いで処理されるというふうに理解しております。  それから、外国送金につきましては、合弁企業につきましては外国送金を法律的に保証しているということでございます。
  203. 河村勝

    ○河村委員 すると、期限が切れた場合の投資した金の処理についての法律的な保護は現在のところまだない、投資保護条例でもできない限りはだめだということになるわけですか。
  204. 瀬崎克己

    瀬崎説明員 この点につきましては、中国合弁企業法を解釈する必要があるわけでございますけれども、この合弁企業法によりますと、中国政府外国側出資者の投資、利益その他合法的権益を保護するということが明確にうたってございます。したがいまして、こういった資本を撤収する際につきましても、双方の利益というものは法的な保護を受ける、かように判断して差し支えないのではないかというふうに理解しております。
  205. 河村勝

    ○河村委員 これまでの日本から行った合弁企業というのは数が少ないのですけれども、その中でも外務省から最近もらった資料の中にある福建日立電視機有限公司、これは日立の合弁のラジオ、テレビ会社ですか、これなんかの例を見ても、どうも生産計画そのものが中国の国によって規制をされてしまって生産台数が制約される、あるいは生産台数のうち何台は輸出しなければならない、そうした中央の規制が多過ぎて、なかなか思うような活動ができないというような話を聞いておりますが、一体そうした規制のたぐいはやはり法的な根拠があってやっているものか、国の行政指導でやっているものか、実態は今どうなっているのか、それはどういうふうに判断をしておられますか。
  206. 瀬崎克己

    瀬崎説明員 日本から合弁企業進出しておる企業の数は六件でございます。それから一〇〇%出資の会社が一件ございます。この中国に合弁進出しておる企業の方々のお話をいろいろ香港総領事館あるいは外務本省で聴取しておりますが、こういった方々のお話を総合判断いたしますと、進出の当初においてはいろいろ問題があった、しかし逐年中国側の反応も改善されておるし、企業の将来性についてもある程度の明るい見通しが出てきている、かような報告を受けている次第でございます。したがいまして、まさに法的な整備も徐徐に体制が整いつつあるという状況下にございますので、いろいろ過渡的には問題があるという事態もあるわけでございますが、いずれも進出企業といたしましては長期的な将来性についてはある程度のめどが出てきているということでございます。  それから、特に経済特区等につきましては、やはり輸出奨励ということを中国は非常に重視しておりますが、この点につきましても、進出企業の方からいたしますとやはり大きな中国市場に魅力があるわけでございまして、これについても例えば先生の方にお出しした資料の中にございます三洋電機、電機メーカーでございますが、この生産しておりますテレビにつきましては、当初はどの程度中国市場輸出し得るかということについてめどがなかったわけでございますけれども、今では五五%程度中国国内に輸出しておる、あるいはテープレコーダーについては一五%というようなことで、徐々に中国市場への参入も可能になっているというような道も開けているようでございまして、日本進出企業の悩みにつきまして中国側としても理解を示しているということかと思います。
  207. 河村勝

    ○河村委員 時間が来たから終わります。
  208. 中島源太郎

    中島委員長 次に、岡崎万寿秀君。
  209. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 私は、まず日本・スリランカ航空業務協定から質問したいと思います。  この協定が基本的には両国の友好協力、交流の増進に寄与するということは認めますが、その中で見過ごせない問題点もあるように思います。  付表に載っている航空路線の問題ですけれども日本の方はコロンボより先五本の以遠権を持っているわけですけれども、スリランカの方は東京より先一本も以遠権を持たない、これは明らかな不平等、不均衡だというふうに思いますけれども、これについてなぜこうなったのか、お伺いしたいと思います。
  210. 瀬崎克己

    瀬崎説明員 航空協定締結する際におきましては以遠権の問題というのは非常に重要な問題だという認識は持っておるわけでございます。  他方、やはり実質的な経済的な利益という判断が根底にあるわけでございまして、この点につきましては、東京とコロンボの航空市場としての価値に大きな差異があるということが一つの大きな前提でございます。私どもが運輸省からお聞きした話によりますと、スリランカに発着する航空需要は五十五年度乗降客合計で八十九万七千人でございます。他方、同年度日本に発着する航空需要は一千百五十万人ということで、非常に大きな差があるわけでございます。スリランカにとりましては東京まで飛行機を乗り入れるということに非常に力点があるわけでございますが、他方日本側から見ますと、スリランカでとまるということでございますとそれほど魅力がない。この問題につきましてスリランカがもしか以遠権ということを非常に強調いたしますと、実体的な経済利益という点から均衡が必ずしも守れないということで航空協定もなかなかうまくまとまらないというような事情が背景にございまして、今回の航空交渉におきましては、スリランカといたしましてはとにかく日本まで乗り入れるということが大前提でございまして、先方からもこの点については強い主張がなかったというのが事実でございます。現に、国別によりまして東京の市場の大きさという判断につきまして、日本側と相手国ではかなり判断が違っておりまして、今まで日本締結しております航空協定の中でも、例えばスイス、パキスタン、エジプト、クウェート、ギリシャ、イラク、バングラデシュ、フィンランド、これら航空協定におきましては、いずれも我が方としては以遠権を確保しておりますが、先方は東京以遠権を確保してない、こういうような事例があるわけでございまして、今次スリランカの航空協定が決して不平等というようなことではないという認識に立っておるわけでございます。
  211. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 先ほどの同僚議員の質問の中にも、日米航空協定で以遠権の問題が、その是正のために日本が非常に努力していること、回答がありましたけれども、やはり必要性、それから実質的な経済性という問題と同時に権利の問題もあると思うのですね。将来的にその国がそれを必要とすることがあり得るし、協定の場合は長期的な視野に立って、現在必要かどうかということよりか、その国の権利として相互性を認めるかどうかという問題が多分にあるように思うのです。  今航空協定の中でこういう以遠権を相手国に制約しているのはたしか八カ国でしたね。先ほど固有名詞挙げられましたけれども、これらの国と航空協定を結ぶ際に日本の方からやや強制といいますか、押しつけ的にそういうことをさせたことはないのかどうか。私は、特に午前中に安倍外務大臣に対して平等互恵の立場に立ち切ってやったのかということを聞いたのはそういう意味もあったのですけれども、この点についていかがでしょうか。
  212. 向山秀昭

    ○向山説明員 一番最近に結びました協定の例をとりまして申し上げたいと思いますが、フィンランドとの航空協定が数年前に結ばれたわけですけれども、やはり路線を決定する場合には需要の流れというものに即して路線を決定する必要がございまして、フィンランドとの例で申し上げますと、フィンランドというのはヨーロッパに対する一つの入り口としての意味がございます。フィンランド航空は、フィンランドからヨーロッパヘの路線をそれぞれ自分で持っておるわけですから、東京までの路線を日本から得ることができればヨーロッパと日本との間の輸送が可能になるわけでございます。それに引きかえまして日本の場合は、フィンランドまでの路線では路線としての意味もございませんし、それから需要の実態にも即していない、こういう事情がございまして、そういう路線の実態市場の価値、そういうものを勘案して双方がこれで実質的に均衡がとれているという判断をして話がまとまっているわけでございます。
  213. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 いずれにしても、日本はコロンボから五本の以遠権を持ち、そしてスリランカの方は一本もないというのはだれが見ても不均衡だと思うし、現在実質的には問題なくても将来の権利の問題としては、これはやはり、私は発展途上国に対する態度としてはいささか問題があるように感じます。  時間がありませんので次の日中租税協定の問題に移りますけれども、これも基本的には両国間の経済交流等に寄与するものだと思いますけれども協定二十三条の第四項ですが、これは、進出した日本企業あるいは合弁企業中国で税金をまけてもらって、これは免税も軽減もあるいは還付もあるのですが、そうした際に中国側で納入したものとみなされるいわゆるみなし税額控除の規定があるわけですね。これは、進出する日本企業にとっては大変なメリットになると思いますが、現在中国進出している企業、さっき六つとおっしゃいましたが、どういう企業があるでしょうか。そしてまた、これからどういう企業が具体的に名前が挙がっているのか、お聞かせ願いたいと思います。
  214. 瀬崎克己

    瀬崎説明員 これまでに進出しております合弁企業は六社ございます。一つは大塚製薬関係の薬品製造会社でございます。それから第二は東方租賃有限公司、リース関係の仕事をやっている会社でございます。第三が日立製作のテレビ関係の会社でございます。第四は南通力王有限公司、これは力王タビという地下足袋をつくる会社でございます。それからホテル関係の日中友好飯店、これは杭州にございます。それから深センにございますセメント企業、三井鉱山セメント製造、これが合弁企業でございます。  それから、一〇〇%出資の単独出資会社といたしましては、三洋電機が深セン経済特区進出しでございます。  今後の分野でございますが、これにつきましては、今般政府が派遣いたします投資環境整備調査団等の報告に基づいていろいろ企業が御判断されることでございますし、また、企業単独でいろいろ経済、市場価値等につきまして経済特区等調査を行っておりますので、今ここで我々といたしましてはどの分野に今後出ていくかということには即断できないわけでございますけれども、いずれにせよ中国といたしましては進出企業につきまして非常に優遇措置を講じているということで、今後はかなり多面的な分野におきまして企業進出していくということではないかというふうに予測しているわけでございます。
  215. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 進出する企業、大企業が多いようですが、現在租税協定を結んでいる国は三十四だというふうに聞いていますけれども、この中で、日中租税協定のようなみなし外国税額控除の条項が入っているのは、十四ありますか、どこどこでしょう。ちょっと名前を挙げてください。
  216. 瀧川哲男

    ○瀧川説明員 お答え申し上げます。  十三でございまして、中国が十四番目という意味でございます。アイルランド、インド、インドネシア、韓国、ザンビア、シンガポール、スペイン、スリランカ、タイ、パキスタン、フィリピン、ブラジル、マレーシア、以上でございます。
  217. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 ほとんどが発展途上国なんですね。外資を導入する必要からそうなったと思いますけれども、これらの国の中で、もうそろそろこういう税額控除の規定は見直したいというふうに希望している国はありませんか。
  218. 瀧川哲男

    ○瀧川説明員 お答え申し上げます。  これらの開発途上国からみなし税額控除をやめたいという希望が来たことはこれまでございません。
  219. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 協定もさることながら、これは国内の問題としても重要だろうと思います。今の財政危機の折から、こういう進出した企業、特に大企業が優遇税制のもとにある。こういう外国進出によって税額控除を受けている企業は、これは概算で結構ですが、何社くらいありますか。また、総額は、年間どのくらい控除を受けていますか。大蔵省の方ですね。
  220. 木下信親

    木下説明員 社数はちょっと今ございませんが、金額で申し上げますと、五十七年でみなし税額控除を受けております金額は約五百三十億でございます。
  221. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 五百三十億といえば決して少ない額ではございませんが、今の収支の大変な中でこういう優遇税制が一面ではあるわけですね。一面ではこういう外国との協定発展途上国資本輸出する、また片方からいえば資本を導入するという必要からこういう協定が結ばれるわけですが、しかし、国内の財政事情からいうならば、これは見直しも考えなくてはいけない問題が入っているように思うのですね。この点、大蔵省国税当局としてはこの状態をこのままでいいと御認識なさっているかどうか、お伺いしたいと思います。
  222. 瀧川哲男

    ○瀧川説明員 みなし税額控除の関係でございますが、まずこれはどういうものであるかということを、くどいようでございますけれども先生御案内かもしれませんが、ちょっとお話しさしていただきたいと思うのです。  一般的に開発途上国と申しますのは、自国の経済開発を促進するために外国から自国への投資につきまして租税上の優遇措置を講じているということが多いわけでございます。このような開発途上国におきまする優遇措置がございましても、例えば日本のように、相手国、つまり一般的には先進国になるわけですが、その先進国におきまして二重課税排除の方式といたしまして外国税額控除、つまり相手国でかかった税額を差し引くという形で二重課税の排除をするという制度を持っておりますと、――結局こういう制度がございませんと、開発途上国から投資をお願いされる側になります先進国企業にとりましては、最終的には外国税額控除額が少なくなってしまうということで、結局、開発途上国投資促進のためにねらっている租税負担の減少、つまり開発途上国におきます税制上の優遇措置というものが働かなくなって、開発途上国で予定しました企業進出に対するインセンティブというものがなくなってしまう、こういうことがございますので、言うならば開発途上国課税できる課税額の一部を開発途上国から先進国の方に移転されてしまう、こういう結果が起こるわけでございます。そこで、例えば本協定におきますように、租税条約あるいは協定におきまして、みなし外国税額控除制度というものを採用いたしまして、開発途上国で国内法あるいは条約によって軽減、免除されましたその税額を納付したものとみなしまして税額控除するということにいたしますれば、本来開発途上国におきまして予定されておりました減免税というような優遇措置が生きるということでございまして、その結果として税負担が減るということで投資が促進される、こういう趣旨でできておるわけでございまして、言うならば、一度開発途上国がみずからの課税権を放棄した部分を、その放棄をもう一度見てあげるということでございまして、一般的に言われているいわゆる我が国内におきます優遇措置というものとは趣を異にしているというふうに考えておるわけでございます。
  223. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 いずれにせよ、進出した企業がメリットになることは事実なんで、進出先でも税金取らないし、日本でも取らないということになりますと、これは問題があろうと思いますが、時間がありませんので、次へ進みます。  中国投資環境整備を図っていることについて、それを前提としてこの協定が結ばれた事情はわかります。しかし、もう一面は、先ほども質問がありましたけれども日本から進出する企業が東南アジアあたりではいわゆるエコノミックアニマルと言われるようなそういうもうけ本位の活動をしていることなども指摘されていますが、中国は社会主義国でございますので、こういう問題に対してどう原則的な対応をしているのか、簡単に御答弁願いたいと思います。
  224. 瀬崎克己

    瀬崎説明員 中国側は現在、経済建設を進めるに際しまして、資本先進国からの先進技術導入につきましてまだ非常に不足している、こういう認識でございますので、それを導入するために環境整備を図っているということでございます。したがいまして、当面我々としては、経済的なオーバープレゼンスによるいろいろな問題は発生することはないというふうに想定しております。他方日本との関係におきましては、先ほど来御説明しております四原則に基づきまして政府間の交流を進めていると同時に、この四原則に基づきまして民間との経済交流も進めていただきたいということで我々は御説明しているわけでございますが、相互理解、平等互恵、こういうような原則に基づいて交流が進む場合には、経済的な摩擦というようなことは生じ得ないのではないかというふうに考えております。  それから経済摩擦につきものの貿易の不均衡でございますが、これにつきましては、日中間の経済構造がかなり補完的な要素が強いものでございますので、大幅な貿易の不均衡ということも想定されないということで、客観的にも条件はほかの東南アジアの国とはかなり違うというふうに認識している次第でございます。
  225. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 進出企業の業種の問題や労働条件の問題等について、中国は社会主義の国らしく規定はあるようでございますけれども。  日中間の制服組の交流の状況、これはどうなっているのでしょうか。
  226. 村田直昭

    ○村田説明員 お答えいたします。  昭和五十五年以降について申し上げますと、自衛官の訪中状況は次のとおりでございます。  昭和五十五年には三件九名の者が中国に行っておりますが、これは主としてスポーツ競技大会に参加するためでございます。それから、五十六年には三名の衛生関係者が中国人民解放軍の衛生機関視察のために参っております。また、五十七年には三件三名の者が訪問しておりますが、うち二件二名は、やはり重量挙げのスポーツ大会に参加しておりまして、残り一件が、陸上幕僚監部の調査部の者が向こうにおります防衛駐在官との連絡業務を遂行するために行っておる。以上、七件十五名が五十五年以降の訪中実績でございます。  また、向こうから中国人民解放軍の関係者がこちらに参りましたのは、五十六年に二件二名、五十七年に一件二名、五十八年に一件二名が、それぞれ親善あるいは部隊、機関等の視察のためにこちらに参っておるという状況でございます。
  227. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 経済交流は結構ですけれども、軍事的交流が活発化することについてはいささか問題があると思っております。  軍事にかかわって、硫黄島の問題について最後に触れておきたいのです。  昨年の参議院の予算委員会で夏目防衛局長が硫黄島の問題について、「きわめてわが国のシーレーン防衛にとっても重要な位置にあるというふうに認識しております。」と答弁されております。また、外務省から出しております「海外政経情報」によりますと、ジョーンズ米国防省東アジア太平洋部長が、この硫黄島につきまして、対ソ防衛上の価値は高いというふうに話されているのですけれども、防衛庁とアメリカ国防総省との認識は同じものかどうか、お伺いしたいと思います。
  228. 藤井一夫

    ○藤井説明員 今先生おっしゃいました秦議員とジョーンズ米国防省東アジア太平洋部長の記事は私どもも承知しておりますが、これは議員が個人的に会われました記者会見の内容でございますので、私どもからコメントを差し控えさせていただきたいと思います。ただ、一般的に申し上げますれば、防衛庁は今硫黄島を航空機の飛行訓練の訓練基地として整備しているわけでございます。しかし、そういう防衛力整備考え方と離れまして、一般的にあの硫黄島という地理的存在を考えますれば、シーレーン防衛作戦上重要な意味のある場所にあるという認識を持っております。
  229. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 それでは、防衛庁の方は対ソ戦略上の拠点というふうには理解されていませんね。
  230. 藤井一夫

    ○藤井説明員 防衛庁といたしましては、先ほど申し上げましたように訓練基地として整備することを考えておりますので、これを作戦上使用する作戦基地として整備をする考えはございません。
  231. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 そうしますと、対ソ作戦基地として整備しないということでしたら、国防省のジョーンズ部長の意見については是認する立場じゃないということをはっきり明言できますか。
  232. 藤井一夫

    ○藤井説明員 ジョーンズ米国防省太平洋部長がどういう観点から御発言になったのか、私どもその場におりませんのでわかりませんが、もし一般的な地理的な意味ということをおっしゃったのであれば我々の認識と合っておりますが、自衛隊が何かここで作戦基地として整備をするというようなことを念頭に発言されておるのであれば、私ども考えとは違っておるということでございます。
  233. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 一般的認識でも、一致するというのはちょっとゆゆしい問題だと思いますけれども、ここは二万人の日本人が戦死した場所なんですね。しかも、旧島民の復帰への願いが踏みにじられて、今だに帰島ができないという状況なんです。そして、専ら軍事要員だけがここにいまして、訓練は終わりましたけれども、とにかく、一般民間人のいない、こういう島が日本にほかにございますか。
  234. 藤井一夫

    ○藤井説明員 ちょっと私がお答えする立場がどうかわかりませんが、ほかにも人の住まない島というのはあるかと……(岡崎委員「いわゆる無人島という意味じゃ決してないですよ。軍事的に使われていて……」と呼ぶ)自衛隊が使っていまして民間の方がおられないというところでございますか。それは多分ないと思います。
  235. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 これは非常に重大な問題だと思います。島民の人たちは今、復帰を願って真剣な運動を続けているわけですが、帰れない。しかし自衛隊はそこに基地をつくるし、そして有事の際はシーレーン防衛の拠点にしようとしている。米軍の方は、これは対ソ防衛上極めて価値が高いというふうに言っている。見忘れられた日本の一つの島であるようになっていますけれども、こういう軍事拠点として非常に重要な意味を持ってきていることについてはもっと私たちは重視しておく必要があるように思うのです。これも防衛庁ではお答えにくいと思いますけれども、最後に、北川さんでしょうか、こういう問題について帰島させない理由が、こういう特定の島が軍事拠点となっているために一般民間人が帰れなくなっているんじゃないか、そういう問題は非常に重大だと思いますので、お答え願いたいと思います。
  236. 藤井一夫

    ○藤井説明員 一点、お断りしますと、先ほど私、多分ないと申し上げましたが、南鳥島という島がやはり自衛隊だけが使っておる、米軍も使っておりますが、そういう例があるそうでございます。  それから、ただいまの旧島民の帰島の問題につきましては、私ども硫黄島を訓練基地として使用したいという希望は持っておりますが、それと帰島問題とは全く別でございまして、自衛隊の基地があるがゆえに帰島していただきたくないとか、あるいはそのようなお願いをしているとか、そういうことは全くございません。
  237. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 では最後に、防衛庁としては帰島したい島民がいるならば軍事上の目的があったにしても決してノーと言わない、ほかの理由であるならば結構ですよ、軍事的目的のためからノーと言わないということをここで明言できますか。
  238. 藤井一夫

    ○藤井説明員 硫黄島に自衛隊の施設があることを理由に島民のお帰りいただくことを拒否するとか反対をするということは、従来からもしておりませんし、今後も防衛庁といたしましてはいたしません。
  239. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 じゃ、そのことを確認してから、きょうは終わりましょう。
  240. 中島源太郎

    中島委員長 次に、高沢寅男君。
  241. 高沢寅男

    ○高沢委員 午前中の大臣にお尋ねしたのに続きまして、日中の租税協定についてなお幾つかお尋ねをいたしたいと思います。  この日中租税協定OECDモデルに沿ったもの、こういうふうな説明がされているわけでありますが、相手の中国はみずからは我々は発展途上国である、こういうふうに言っているわけですね。そうすると、発展途上国である中国と進んだ先進資本主義国である日本、これの間の租税条約ですから、単なるOECDの両者対等の先進国同士という原則だけではいかぬだろう、こう思います。そういう意味において今度の日中の租税協定にもそうした発展途上国との協定という側面が当然考慮されているだろう、こう思いますが、そういう側面がどこどこにあらわれているか、こういう点ひとつまず御説明願いたいと思うのです。
  242. 斉藤邦彦

    斉藤(邦)政府委員 ただいま御指摘のとおりでございまして、この協定は、中国開発途上国であることを考慮に入れまして、必ずしも資本ないし企業進出動きが対等でなかろうという前提のもとにつくられております。  例えば、これが具体的にあらわれております点といたしましては、この「恒久的施設」としてどういうものを認めるかという点に関しまして、OECDモデル条約におきましては、建設工事等の場合、これが十二カ月を超えたときに初めて恒久的施設と認めることになっておりますが、中国の今度の協定におきましてはこれが六カ月を超えた場合というふうに条件が緩和されております。  それからOECDモデル条約におきましては、監督活動とかコンサルタントの役務の提供、これにつきましてはこれらを恒久的施設と認める規定がございませんが、日中協定におきましては、監督活動の場合もコンサルタントの役務の提供の場合もいずれもこれが六カ月を超えて行われた場合には恒久的施設として認めるという規定になっております。
  243. 高沢寅男

    ○高沢委員 今「恒久的施設」についてのお答えをいただいたわけでありますが、この「恒久的施設」ですね、この中の(f)の「鉱山、石油又は天然ガスの坑井、採石場その他天然資源を採取する場所」こういう規定がありますが、これは向こうで石油なり石炭なりというふうな開発のところには該当するかと思いますが、ただ、今御承知のとおり中国は非常に農業の発展を重視しておる、こういう立場があります。私は昨年の九月の末、社会党の石橋委員長の代表団で中国へ参りまして、その際、北京の郊外の養鶏、鶏を五千羽飼っておるというふうなところなども見学をいたしましたが、今、中国ではそういうふうな鶏の多頭飼育、それで大量な鳥肉や卵を得る、そしてそれによってそのやる農家は非常に高い所得を得る、こういうふうな形で農業の生産力の発展を促進するというようなやり方をしておりますが、例えばそういうふうな鶏なら鶏というふうなもので見た場合、やはり日本の鶏の多頭飼育の方が中国の鶏の多頭飼育よりずっと進んでいるという側面があります。そうすると、そういうふうな技術、そういうふうな施設に対する資本の導入とかあるいは日本からの協力とかいうふうなことも出てくることは当然あり得る、私はこう思うわけであります。そうすると、そういう例えば鶏とかあるいは酪農とかいうような農業関連、あるいはまた日本では蔬菜とか果物とかのつくり方もビニールハウス等々で中国に比べればはるかに進んだそういう農業技術があります。そういうものを今度中国から見ればひとつ導入したい、日本の協力を得たいというふうなことも大いにあり得ると私は思います。農業に関連するそういうものが出てきた場合、この「恒久的施設」というものにそれが当てはまってくるのかどうか、当てはまってくるとすれば、(a)から(f)までありますが、これのどういうところに当てはまってくるのか、そういうことは見通しとしてはどうでしょうか。
  244. 瀧川哲男

    ○瀧川説明員 お答え申し上げます。  この第五条「恒久的施設」に書いてあるわけですけれども、いわゆる企業の取得しまする事業所得につきましては、この第一項にございますように、当該企業が相手国内に事業活動を行う一定の場所、これがいわゆる恒久的場所ですが、これを有する場合に限って相手国で課税されるということになっておるわけでございまして、本協定におきましては、この「恒久的施設」につきましてOECDモデルあるいは国連モデルと同様に「事業の管理の場所」であるとかいうことで、(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)と書いてあるわけでございますけれども、実はこれは二項の柱を見ていただきますと、「「恒久的施設」には、特に、次のものを含む。」ということでございまして、ここにございますのは例示として挙がっているわけでございます。そういたしますと、先生、今、例におっしゃいました養鶏のための農場といいますのは、農業にかかわる事業所得を得るための生産活動を行う一定の場所と考えられるわけでございますから、当然のことながら協定第五条第一項に言う「事業を行う一定の場所」に該当するということになるわけでございます。
  245. 高沢寅男

    ○高沢委員 ではその点はわかりました。  それから、中国の一つの特性としてコンサルタントの役務、これについて先ほど斉藤さんから説明がありました。そこで、コンサルタントの役務というふうなことにしてもこの用語だけでは極めて抽象的な言葉でありまして、これが実際に日本中国の間でそういうふうな活動が行われるという段階になってきたときに、このコンサルタントの役務という抽象的な言葉の中身の理解で日中間で何か食い違いが出るとかいうふうなことが予想されないのかどうか。そういう点の詰めというものは中国側との間でちゃんとなされているのかどうか、この辺はいかがでしょうか。
  246. 瀧川哲男

    ○瀧川説明員 おっしゃるとおり、コンサルタントの役務につきましては、一般的な定義としては専門的な知識を必要とする調査、企画、立案、助言等にかかわる役務の提供ということになっておりまして、先生おっしゃっていることは、恐らく具体的にこれこれと考えると難しいのではないかというお話だろうと思いますけれども、例えば工業プロジェクトに関して言いますと、計画の検討であるとか立案の段階におきましては、市場の調査であるとか将来の販売可能性の予測、立地、原料プロセスの選定、投下資金あるいは製造コストの見積もりなどの業務がこれに該当するということでございます。実はコンサルト業は先生御心配のとおり比較的新しい産業分野でございまして、難しい面がないわけではないのですけれども、工業であるとか土木であるとか鉱山開発といった各分野ごとにおきましてコンサルト業の業務の範囲が次第に一般的に固まりつつございます。そういう意味では、中国でも最近いろいろと開発等進めておりますので、日中間においても双方の認識にそれほど相違はないというふうに考えております。
  247. 高沢寅男

    ○高沢委員 これは、私はまだ新聞で見た程度ですからあれですが、何か鄧小平主任は例えば一〇〇%の外資でも来てくれるものは歓迎すると言われたということですけれども、一〇〇%外資となりますと、これはまた合弁とは違った概念になるわけであります。合弁のものについては今中国はそれの裏づけとしての法的措置なり、あるいはまた今度はそれの施行条例というふうなものもつくられたと聞いておりますが、その合弁の場合の施行条例などは具体的にはどういうやり方になるのか。それと、今言った今度は全然別な概念の一〇〇%外資というふうなものが中国に仮に出ていった場合に、それは一体中国側からすればどういう法的制度上の位置づけになるのか、その辺がわかっているならばひとつ説明をいただきたいと思います。
  248. 瀬崎克己

    瀬崎説明員 中国におきまして外資法がまだ制定されでないことは先ほど御説明したとおりでございます。したがいまして、現在中国進出しております外国資本というのは、結局合弁企業法というものに基づいて出ていくわけでございますが、この合弁企業法の第四条によりますと、合弁企業資本比率は二五%以上ということでございまして、下限は二五%というふうに決まっております。ただ、上限につきましては制限がございませんが、一般的な慣行といたしまして資本比率は五〇、五〇というのが多いというふうに承知しているわけでございます。  他方、一〇〇%出資の会社は現に日本で三洋電気が出ているわけでございますがそのほかかなりの数の一〇〇%出資の外国会社が企業進出しているというのが実態でございます。
  249. 高沢寅男

    ○高沢委員 そうすると、今二五%以上、上限は別に規定されないとおっしゃったのですが、仮に一〇〇%外資であっても法的、制度的には上限が規定されてない合弁法の枠内だ、そういうふうに考えていいわけですか。
  250. 瀬崎克己

    瀬崎説明員 外国資本進出のための法的な整備が整っていないというのはまさにこの点でございまして、ほかの国では大体外資を導入する際に外国資本導入関連法案をまずつくるわけでございますけれども中国につきましては現時点では外資法はまだできておりません。したがいまして、合弁企業法に基づいていろいろ判断するということになるわけでございます。
  251. 高沢寅男

    ○高沢委員 今そういう法的な整備はまだ皆いずれもこれからだというお話ですが、例えば日本ならばこうした会社の活動の土台になる商法であるとかあるいは会社法であるとか、そういうふうな法体系がいずれ中国でもできてくる、あるいは今中国ではそういうものをやるための準備をされておるというふうに考えでいいのかどうか、その辺はどうでしょうか。
  252. 瀬崎克己

    瀬崎説明員 中国が対外的な開放政策を開始いたしましたのは一九七九年以降でございます。したがいまして、外国との関連で法的な整備がなされましたのもこの年以降でございまして、まだ日が浅いものでございますから、完全に法的な整備が整っていないということも事実でございます。現にまだ中国では民法もございませんし、商法もございません。それから外資導入関連の外資法もまだ整備されてないわけでございます。ただ、現時点で中国では経済関係立法五カ年計画というものをつくっておりまして、この委員会が中心になりまして経済関連法規を整備しておる。例えば、ごく最近でございますけれども特許法が制定されたわけでございますが、こういうように、外国資本進出しやすいような法的な体系を漸次整えつつあるというのが現状かと思います。
  253. 高沢寅男

    ○高沢委員 日本なり、あるいは日本でなくとも例えばアメリカなりヨーロッパ諸国なり、こういう国々が中国へ経済協力の中でかなり先進的な技術を出していくという面は当然あるわけですね。そういうときに、今度は先進的な技術を受ける側の中国が、ある中国の公司といいますか合弁企業のところでそういう先進的な技術を受けて、これはいいとなったときに、今度は中国の中にあるほかの公司へそれがどんどん使われるということになっていけば、出す側からすれば、そうやって高度な先端技術がいわば盗用されるということにも該当してくるということですが、中国の場合には、要するに日本のような私的な企業は原則としてないわけですね。中国企業活動をやるものは、非常に小さいものは別とすれば、いずれも国営的性格の公的な企業体がやるわけであって、したがって、国の政策としてこの技術はいいぞとなれば、各種の中国の公的性格の企業体にそういう技術がざっと導入される、採用されることになることは、中国側からすれば私は非常にあり得ると思うわけですが、その辺、特許の保護という側面から見て、資本主義の体系を持った我々日本の側と社会主義の体系の中国の側で、そういう技術なり工業所有権保護という点について一体どういう話し合いをされて、またどういう法的措置が今なされておるか、それをお聞きしたいと思います。
  254. 瀬崎克己

    瀬崎説明員 先生御指摘のとおり、まさに体制の相違に基づくいろいろな問題点があるわけでございまして、無体財産権に関連する問題はその一つかと思います。  中国特許法につきましては、本年の三月十二日に全国人民代表大会において可決されまして、一年後、明年の四月一日から実施されることになっているというふうに承知しているわけでございます。他方工業所有権保護に関するパリ条約の件でございますが、我々の承知しているところによりますと、一九八○年に中国は世界知的所有権機構に加入しておりますし、それから八三年には国際工業所有権保護協会に加入して、パリ条約に加入するためのいろいろな準備を整えているというふうに承知しているわけでございます。  今般、中曽根総理が参りましたときにもこの点を非常に重視いたしまして、日本側から、企業進出の際には工業所有権保護という点が争点になるので、ぜひともパリ条約に加入してほしいということを指摘いたしまして、先方としては日本要望については十分留意する、この点につきましては下部機関に日本側の希望を伝えるから、こういうようなことでございまして、中国側といたしまして十分この点の問題点の重要性を認識しているというふうに我々としては理解しております。
  255. 高沢寅男

    ○高沢委員 何かこれに関連して、中国の特許の関係のいろいろな専門家、担当者がかなり日本へ来て見学やあるいは交流をされたというふうに聞いておりますが、実際に特許の関係の実務を担当する実務者間の交流というか合意というのは着々と進んでいるのですか、どうでしょうか。
  256. 瀬崎克己

    瀬崎説明員 中国の専門家が日本に来て研修したかどうかについては私、現在承知しておりませんが、ただ中国側の書類を読んでみますと、こういった専門家を四百人育成する必要がある。他方、現時点では百人程度しかおりませんので、この専門家を大至急養成する必要があるのだということを非常に強調しておりまして、各国に派遣いたしまして、各国の制度を研修するというようなことについて中国としては配慮しているというふうに承知しております。
  257. 高沢寅男

    ○高沢委員 今までに我が国中国との間でつくった合弁企業、何か現在六つほどあるというふうにお聞きをしておりますが、まだケースとしては非常に数は少ないと思いますが、そういう六つほどの例の中で、これは非常にうまくいっておる、だからこれから進めていくには、このうまくいった例を大いに活用してやればいいというような経験が恐らくあると私は思います。あるいは、やっている過程で、これはまずかった、これからやっていくのにこういう失敗はやっちゃいかぬというふうなまた逆の意味の経験もあろうかと思いますが、そういうふうな面はどんなような経験を教訓として外務省は見ておられるか、いかがでしょうか。
  258. 瀬崎克己

    瀬崎説明員 中国合弁企業進出しております会社は六社でございます。それから、一〇〇%出資の会社は、先ほど御説明いたしましたとおり、電気製品をつくっておるメーカーが出ておるわけでございますが、各企業企業それぞれ分野が異なるわけでございますので、問題点は全く違うわけでございます。ただ、企業進出に際してのいろいろな問題につきましては、既に各社の悩みあるいは問題点というのがかなり公表されておりまして、それぞれケース・バイ・ケース違うものでございますから、統括的にここが問題だということはないわけでございます。  ただ、一つ言えることは、やはり中国に対する進出企業の最大の関心と申しますのは、十億の人口を抱える中国市場に物を売るということが非常にポイントになっておりまして、この点につきましては、中国側も徐々にその必要性を認識しているということかと思います。  それからいま一つは、中国が現在特区として指定しております四地域につきましては、工業立地条件の見地から見まして必ずしも好ましいところではないというような問題点も指摘されているわけでございます。したがって、そういった日本側の指摘を踏まえまして、沿海十都市会議ということにもつながっているのかと思いますが、工業立地条件の好ましい地点に、先方経済特区に現在適用しているような企業優遇策を広げることが今後の企業進出につながるというふうに私どもは判断しておりますし、またそういった日本側問題点につきましては、中国として十分認識してこれに対応しつつあるという現状かと理解しているわけでございます。
  259. 高沢寅男

    ○高沢委員 今のお答えにも関連しますが、今まである四つ特区は皆ずっと南の方ですね。深センとかアモイ、マカオ、珠海、こういういずれも中国の南部の方で四つ既に特区ができているわけですが、何か近々、今度はぐっと北の方へ持ってきて、大連にも置くようになるだろうというふうな話も聞くわけです。それが事実とすれば、恐らく中国側としては、大連に開設する特区は当然日本というものを頭に置いて、日本が入ってくることを期待するというような場所としてつくるんだろうと思うのですが、今度はこちら側から見て、そうした進出のために、その後の活躍のために、立地上非常に好都合な場所として、例えば上海に特区を置いてもらいたいとか、あるいは青島に置いてもらいたいとか、天津に置いてもらいたいとかいうようなことを、こちらから中国側地域指定までして要請する、そのようなことがあり得るのか、お考えなのか、いかがでしょうか。
  260. 瀬崎克己

    瀬崎説明員 今般の総理の訪中の際に、先方の首脳がいろいろ経済特区について言及しているわけでございますが、例えば鄧小平主任は、今後開放政策をさらに進めたい、沿岸地域において今までよりも多い地域経済特区でとっている政策をとることを検討中でございます、こういうような話をしております。それから趙紫陽総理は、沿岸地域で一部の合弁を優遇することを準備中でありまして、深セン経済特区のような経済特区でとる政策に近い政策をとる予定である、例えば大連でもこのような政策をとる予定である、こういうようなことを発言しておりまして、中国側といたしましては、今後、経済特区でとっております政策を沿岸の大きな都市でとるということをある程度考えているやに見受けられるわけでございます。  現に、三月二十六日から北京におきまして、谷牧国務委員主宰のもとに、沿海十都市区域会議というのが開催されておりまして、ここには大連、青島、寧波、温州、海南島、深セン珠海スワトウアモイ、北海の市長クラス責任者が呼ばれておりまして、今後中国側といたしまして、経済特区でとっているような政策をとるということについていろいろ検討しているやに見受けられるわけでございますが、こういったところで経済特区でとっておる政策が適用されますと、日本側企業にとりましても、ある程度工業立地条件に見合うような地域に該当するのではないかというふうに考えられるわけでございます。  ただ、特区の指定につきましては、これは外国の制度に関することでございますので、日本側から特にここが好ましいというようなことではなくて、今後とられる中国の策を見つつ、民間ないし政府レベルで今後の対応策を検討して、民間企業進出が容易になるような方向でいろいろ検討してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  261. 高沢寅男

    ○高沢委員 今まで我が国から中国企業が出て、そこの日本人の職員が行って向こうで働くというようなケースがずっとあったわけですが、今度は租税協定ができるということになりますが、この租税協定のなかった今までは、例えば北京に駐在しておる、あるいは天津に駐在している、上海にいるというようなそういう日本企業の職員、その人たちに対して中国側から、所得税とかが課税されるということがあったのかどうか。  それからもう一つ、ついでに聞きます。今度は中国でもそういう税法所得税法をつくったということですが、向こうの所得税法というのは、日本のような、一番下は課税最低限という、税をかけない一つのラインがあって、それから上が一〇%、今度は何か一〇・五%にするので、これはけしからぬ、こう言っておりますが、一番下は一〇%から一番上は七五%、日本所得税はこのように高度累進という構造になっております。中国所得税というのもそんなような形になっているのかどうか、その辺はいかがでしょう。
  262. 瀧川哲男

    ○瀧川説明員 お答え申し上げます。  もう先生が一部お答えされまして、中国におきましては、昭和五十五年の九月に個人所得税法というのが公布、施行されたわけでございまして、したがいまして、それ以降は、中国に滞在する外国人につきましても、一定期間滞在する等の要件はございますけれども、その要件を満たす場合には、その給与所得に対して課税が行われるわけでございます。  もう一つの御質問の税率でございますけれども中国におきましては、五%から四五%のいわゆる超過累進税率を持っております。
  263. 高沢寅男

    ○高沢委員 それは中国の人たちの所得水準の配置をずっと頭に置いて、今言われた五%から四五%、こういう税率で恐らく決めていると思います。例えば日本の大手企業の人たちの給料が、日本の金でいえば月給で四十万とか五十万とかいうような金額を北京あるいは上海、ああいう場所に持っていって当てはめる場合に、この中国税法からすれば、どのくらい税金がかかることになるのか。その辺はどうですか。日本でかかる税金と比べてどうでしょうか。向こうの方が軽いんでしょうか、重いんでしょうか。
  264. 瀧川哲男

    ○瀧川説明員 計算機など持ってきませんでしたので、感じでお答えして恐縮でございますけれども中国の現在の給与水準等を考えますと、今おっしゃられた金額でありますと、一番高い方に入るだろうというふうに想像いたします。
  265. 高沢寅男

    ○高沢委員 一番高いところが四五%とすれば、日本でかかるよりはやや軽いかなという感じになりますな。しかし、それにしても、今度は二重課税はなくなる、こういうことになるわけですね。  今までにも既に御質問で出ていたようでありますが、みなし外国税額控除の制度、今度の協定はこれを採用しているわけですが、これは日本中国と双方にとってどういうふうなメリットがあるのか、それをお聞きしたいと思います。
  266. 瀧川哲男

    ○瀧川説明員 お答え申し上げます。  午前中にこの条約全体のメリット、双方におけるメリットというのが外務省からお答えありましたけれども条約と申しますのは全体パッケージでございますから、全体について評価をするのが一番いいのじゃないかと私は思いますけれども、本条に限って御質問でございますので一応お答えしますと、先ほどお答え申し上げましたように、みなし外国税額控除と申しますのは中国側におきまする外資の導入の奨励のための税制上の優遇措置の効果を減殺しないようにという趣旨で設けられたものでございますから、これによって我が国の対中投資が促進されるということになりますので、そういう意味で日本投資が促進されることによって日中の経済関係が一層緊密化し、相互に発展できるというメリットが双方にあるというふうに考えております。
  267. 高沢寅男

    ○高沢委員 今までに我が国外国と結んだ租税条約の中で、ハンガリーとかポーランドとかあるいはチェコ、ルーマニアというような東ヨーロッパの社会主義諸国と結んだ租税条約の中には今のみなし外国税額控除の規定はない、こういうふうに聞くわけですが、今度中国と結んだ中にはある。東ヨーロッパの社会主義国の租税条約にはない。これは、中国の方は発展途上国という位置づけでそうなって、東ヨーロッパの社会主義国の方はそんなに先進国とは言えないが、経済の発展の水準はまた中国とは違う、もう少し高いところに行っておるから必要ないというようなお考えでそうなったのか。この辺の判断はどうですか。
  268. 瀧川哲男

    ○瀧川説明員 お答え申し上げます。  先ほどもちょっと申し上げましたように、みなし税額控除の規定と申しますのは、一般的に開発途上国側から要請があって、我々はその開発途上国が持っているインセンティブを減殺させないようにしようということでございますので、言うならば外国からの御要請があって初めて問題が動くということでございまして、東欧諸国がどのようにお考えになられたのか、私の方からはそんたくするしかないのでございますけれども、御要請がなかったということと御認識いただければよろしいかと思います。
  269. 高沢寅男

    ○高沢委員 その経過は了解しました。  スリランカとの航空協定のことであと残った時間お尋ねをしたいと思います。  まず、スリランカとの今度のこの航空協定ができますと、今の日本とスリランカとの間の人や物の往来がこれからどういうふうに伸び、発展していくという、そういう予測をお持ちか。その辺のところをまずお聞きしたいと思います。
  270. 瀬崎克己

    瀬崎説明員 スリランカとは日本昭和二十七年の外交関係樹立以来、非常に緊密な関係が徐々に構築されつつあったわけでございますが、近年、特に昭和五十七年に投資保護協定が成立いたしまして日本投資家の関心も非常に高まっているということで、経済関係もますます密接になりつつあるわけでございます。  今般の航空協定締結によりまして、私どもといたしましては、スリランカに対する直接航空、直行便が開けるということで日本側のスリランカに行かれる方の便益も非常に図られるということで、経済交流にあわせまして人的交流もますます盛んになるのではないかということを期待しておりますし、また、先方政府といたしましては日本の観光客の誘致に非常に強い関心を持っておりますので、この面からもこの直行便が開設されることによりまして日本からの観光客も若干なりともふえるのではないかというふうに私どもも期待しておるわけでございます。
  271. 高沢寅男

    ○高沢委員 この協定ができて発効しても、しかし当面は我が方は飛ぶ計画はないわけですね。スリランカ側は飛ばすというふうなことですから、この点においては日本の、この場合には具体的には日航になるでしょうが、航路を開設するいろいろなコストというふうな計算上まだ当面は飛ばさない、こういう判断でしょうが、しかし、スリランカ側が飛ばせば先方には明らかに利益になる。したがって、先方の利益というものを考えて、そういう立場で今回の協定を結ばれたというふうに考えていいですかな。どうでしょう。
  272. 瀬崎克己

    瀬崎説明員 この点につきましては、まさに先生御指摘のとおりだという認識でございます。
  273. 高沢寅男

    ○高沢委員 あともう一つ、以遠権ですが、これはスリランカ側は東京へ飛んできて、その後の以遠権はない。それから我が方は、実際はまだ飛ばないわけですが、しかしスリランカから先へ飛ぶ以遠権というものがこの協定で与えられているわけですね。当面はさっき言ったように飛びませんから、別段それによるあれがどうこうということはありませんが、こういう権利として日本にはある、スリランカには以遠権はないというふうなことが将来日本とスリランカの間で、ちょうど今我我がアメリカに対して言っているみたいに不平等だというような議論が出てくることになる心配はないのかどうか、可能性はないのかどうか、いかがでしょう。
  274. 瀬崎克己

    瀬崎説明員 スリランカは、今回の航空協定交渉におきまして、以遠権の点につきまして特に主張したことはないわけでございます。現在のスリランカ航空の力からいたしまして、それほどネットワークを拡大するということには関心はございませんで、むしろ東京に乗り入れて、東京からまた戻るというところが最大の関心でございます。したがいまして、当面、私どもとしては、先生が御懸念になるような問題は生じないという認識でございます。
  275. 高沢寅男

    ○高沢委員 今度は日米の関係になりますが、この四月一日からアメリカのユナイテッド航空が太平洋航路に物すごい割引の運賃を設定した。そうするとノースウエストとか、そういうものも追随するだろうというふうなことですが、このやり方が国際航空における一種の不公正取引というような立場に立ってアメリカ民間航空委員会の方へ提訴するとか、あるいは日米航空協定に基づいてアメリカ政府当局にけしからぬじゃないかと物を言うとかというふうなことは、どんなふうにされるのか。  それからついでに、もう時間がないからあわせて聞きます。そうやってもしかしらちが明かぬとすれば、我が日航の方もそれに対抗して負けないだけの値下げをやるというふうなことをお考えになっておるのかどうか、その辺はどうでしょうか。
  276. 山下新太郎

    山下(新)政府委員 ただいま御指摘の、四月一日からユナイテッド・エアラインが行いました運賃の値下げでございますが、このユナイテッド航空の発表に引き続きまして御指摘のとおりノースウエスト航空も、この一日から自分の会社の太平洋線に導入した運賃につきまして自分の社の日本発の利用者だけが利用可能になる、こういう形でやっているわけでございます。  それで、その額でございますが、これは通常の国際線利用客に対して提供している似たようなアメリカ訪問の特別運賃に比べますと、非常に低くなっている。その結果、日本―米国間の旅客で複数のアメリカ国内の地点を回遊する者にとりましては極めて有利な形になるというだけでございませんで、アメリカ国内のあるところへ、一つの地点に行く者にとりましても、大半の場合には最初の寄港地で乗り継ぎを行いますとかなり安くなるということが言えるわけでございます。  そこで、このような廉価の運賃が両方の会社の太平洋線の利用客のみに限られているという極めて排他的なものであり、また日本の指定航空企業である日本航空がこれに対抗し得る適当な手段を持ち得ない、いろいろ検討もしたようでございますが持っていない、こういう状況がございますので、私どもといたしましては、このような運賃を導入することは、航空業務を運営する公平かつ均等な機会を損うものである。さらにまた、日本航空に対しまして不当な影響を及ぼすというおそれがある、こう考えまして、航空協定の十条及び十一条でございますが、これに抵触するおそれがある、疑いが深い、こういうふうに考えている次第でございます。  そのようなことにかんがみまして、三月の末でございますが、政府といたしましては、これらの運賃が我が国指定の航空企業、すなわち日航を含むその他の日米間路線を運営する企業、これは日本航空に限りませんですが、そういう企業にも利用されるようなものであるならばとにかく、そうでない限りにおきましてはこれらの運賃は停止されるべきである、かつまた、そのためにアメリカ政府が適当な措置を講ずることをアメリカ政府に対して検討してほしいという申し入れを行った次第でございます。それと同時に、たまたま機を合わせまして、先ほど御説明申し上げました航空関係の協議を先週アメリカ側と行っておりましたので、その場におきましても同じようなことを詳細に説明いたしまして、アメリカ側としてはできるだけ早く検討いたしましてその回答をよこす、こういうことになっております。
  277. 高沢寅男

    ○高沢委員 今御説明のあったような対アメリカのそういう点は強い態度で臨んで、そして先方の反省を求めるあるいは撤回を求めるというふうなことで、この際大いに強く押すことが日米の航空協定の全体の権利の平等化を進めるのに大事なスタートになる、私はこう思いますので、それはしっかり臨んでいただきたいと思います。  同時に、私はこれで終わって、あと土井委員から関連質問を申し上げますが、最後にちょっと北川政務次官に評価をお聞きしたいと思います。  今のアメリカの航空政策、一言で言えばオープン政策、開放政策でいきましょう、自由競争でいきましょう、これがアメリカの公式な航空政策じゃないか、私はこう思うのです。しかし、そう言いながら他方で非常に矛盾していることは、例えば我が国の航空の路線権とか以遠権というものについては、この間の暫定取り決めではややできましたけれども、原則としてそういうものは皆ノー、ノーと言って断ってくるという非常に閉鎖的な側面があるのじゃないのか、こんなふうに思います。それからまた、聞くところによれば、アメリカの公務員関係とかそういうふうな人たちは飛行機に乗るときは必ずアメリカの飛行機に乗れ、よその飛行機に乗ってはいかぬというような、フライ・US・ポリシー、そういうのがあるのだそうです。そんなようなことで、これも私はアメリカの航空政策の一つの閉鎖性のあらわれじゃないのか、こう思うのです。原則は開放政策、大いにオープンで、こう言いながら、実際にやっていることは大変閉鎖的なそういう矛盾したやり方をやっているし、それが結局我が国の対アメリカの航空政策の権利が平等にならぬことの大きなネックになっている、こう思いますが、この辺の政務次官の評価もいただきながら、その評価の上に立ってこれから権利平等に向かってひとつ大いに強く交渉していただくことをお願いしたいと思いますが、その辺の評価をお聞きして私は終わりたいと思います。
  278. 山下新太郎

    山下(新)政府委員 先生ただいま御指摘のアメリカのオープン・スカイ・ポリシーでございますが、これは御承知のとおり、米国が国際航空運送競争法という法律をつくりまして、それに基づいていわゆるデレギュレーション政策を展開しているということでございます。それの意味するところは、私どもの理解では、アメリカ企業の自由な運営による航空企業の発展を目指すものだというふうに理解している次第でございます。  他方、二国間の航空交渉等におきましては極めて多岐にわたる権益の、言うなれば交換を行う、それが交渉になっておりまして、そういうプロセスにおきまして私どもとしては日米の航空関係で総合的な権益の均衡を図ることを目的として今まで交渉に臨んでいる次第でございますし、先ほど来申し上げておりますとおりこれからもやっていくつもりであるということでございます。  なお、おっしゃるとおり、アメリカ側がフライ・US・ポリシーと称するものを、一九七五年の末ぐらいからのようでございますがやっておりますが、実は似たようなことは私ども日本側もやっておりまして、昭和三十六年の十月でございますが似たような政策を打ち出していることがございます。
  279. 高沢寅男

    ○高沢委員 では、政務次官、評価を聞かせてください。それで終わります。
  280. 北川石松

    ○北川政府委員 ただいま御指摘のありました点につきましては政府委員から詳しく説明をいたしましたが、昭和五十七年九月暫定取り決め以来、あるいは以遠権とかそういう点につきましてもまだ不均衡な点があるという考えを持っておりますので、前向きの姿勢で関係省とよく話し合った上で、前向きで頑張っていかなければならない、こう思っております。
  281. 高沢寅男

    ○高沢委員 それでは、あと土井委員の方から関連の質問をちょっといたしますので、よろしく。
  282. 中島源太郎

    中島委員長 関連質疑の申し出がありますので、これを許します。土井たか子君。
  283. 土井たか子

    ○土井委員 ただいまのスリランカ民主社会主義共和回との間の定期航空路の開設に関してのこの協定なんですが、これは東京―コロンボ間の定期航空路を開設するということですから、当然のことながら乗り入れの空港は成田空港という形になると思いますが、そのとおりに考えていいんですね。
  284. 向山秀昭

    ○向山説明員 ただいまおっしゃられたとおりでございます。
  285. 土井たか子

    ○土井委員 スリランカの場合、協定にこぎつけるまでのいろいろな話し合いの中で、成田空港以外の日本の回際空港に対する乗り入れに対して意欲を示されたというふうなことはございませんか。
  286. 向山秀昭

    ○向山説明員 スリランカ側からはそのような話は全くございませんでした。
  287. 土井たか子

    ○土井委員 今回の場合は、スリランカとの間ではそういう話がなかったという御答弁ですが、先ほど来の御質問の中にもございましたとおりで、三十何カ国かの航空協定がまだ残ったままの形になっていて、これから続々そういう問題に対しての話し合いが恐らく進められていくであろうと考えられるのですが、今まで外国との間の航空路を新たに設けたり、また以遠権の問題を話し合ったりするたびごとにいろいろ日本の乗り入れの空港に対して、特に私は名指しで申し上げると、大阪国際空港に対して、これが取り上げられて話題になる、そして、何とぞ乗り入れをというふうな話がちらほら聞こえてくるというふうなことも私は耳にいたしておりますが、そういう事実はございませんか。
  288. 向山秀昭

    ○向山説明員 現在までに多数の国から日本に対する乗り入れの希望があるわけでございますが、中には大阪に対する乗り入れの希望を有しているところもございます。これは、既に日本との間で航空協定締結して、成田に乗り入れている国の中からも大阪への乗り入れを希望する国が幾つかございます。
  289. 土井たか子

    ○土井委員 さあそこで、これは時間のかげんがありますから、はっきり簡単なお答えをいただいておいて、私は終わりたいと思うのですが、大阪国際空港周辺の激甚地域で暮らしていらっしゃる方々が国を相手取っての訴訟を起こされて以来足かけ十五年なんです。十五年の訴訟たるや血を振り絞るような訴訟だったと私は申し上げていいと思いますよ。最近、運輸省御承知のとおりで、和解でこの問題に対して一応収束させられたような形になっておりますけれども、住民の方々の悲願の中身は補償の問題じゃないんです。要は、九時以後の発着陸に対してこれを禁止するということをはっきりしていただきたいという問題なんですが、これは、運輸省、大丈夫でしょうね。九時以後の発着陸は大阪国際空港に関しては禁止するという姿勢、大丈夫でしょうね。
  290. 向山秀昭

    ○向山説明員 大変申しわけないのですけれども、私、担当の責任者ではございませんので、確たることは申し上げられませんが、私が航空局の中で聞いているところによりますと、九時以降のジェット機の発着につきましては従来どおりこれを極力控えていただくということで運用していきたいという考え方で臨むというふうに私は理解しております。
  291. 土井たか子

    ○土井委員 大分緩和されたんですか、それでは。できる限り控えていただくなんという表現は初めて聞いたのです。九時以後の発着陸は禁止と今まではっきり言われてきたんですよ。国際協定の中では九時以後は発着陸禁止するなんという空港はちょっとございませんで、大体は、九時のその門限破りをやるという定評のあるところが外国の航空会社で一つあるのです。その都度九時をはるかに超えて飛ぶということで、これは困るという異議を申し上げに行ったら、そうしたら運輸省の方から我々はそういうことはしかと強く聞かされていないなんていうふうなことを言われたりするので押し問答になるのです。ただしかし、今まで運輸省の我々に対しての答弁としては禁止しておりますと言われてきたので、我々としては禁止をしたということをちゃんとあそこを利用して発着陸をしている外国の航空会社にも伝達をしておいてもらわぬと困る、かしこまりましたと言われて今日に至っているのです。できる限りそういう努力をしたいと思うなんというのは大分後退だと思うのだけれども、ひとつそこのところははっきりしてください。
  292. 向山秀昭

    ○向山説明員 従来の方針を変えるという意味ではございませんで、従来から行政指導で九時以降の発着を抑えてまいりましたけれども、その方針は今後も変わりないというふうに私は理解しております。
  293. 土井たか子

    ○土井委員 それは従来どおり変わらない、このことを続けてもらわぬとまず困る。  それから、日本の国内のローカル空港では、ジェット化が進んで、ジェット機の発着便数がそれによって変わってくる、これは当然の成り行きなんですが、残念ながら大阪国際空港におきましては二百回以上の発着陸をジェット機に対して認めていないのです。外国の航空会社との間で、また外国政府との間でこういう問題が出るたびごとに、二百回の発着回数というのは守れるかなどうかなというのが大変な関心事になっていることは事実なんです。二百回のジェット機の発着回数、それ以上のものにはしない、これもはっきりおっしゃっていただけますね。いかがですか。
  294. 向山秀昭

    ○向山説明員 何分にも突然の御質問で、私は担当外の者ですから的確な御返事ができなくて申しわけないのですけれども、現在二百回の制限があることは事実でございまして、これを今すぐ変更するというような話は今のところ私は聞いておりません。
  295. 土井たか子

    ○土井委員 最後に、大阪国際空港というのは国際空港という名前がついておりますので、外国便の発着陸も当然のことながら認めていく空港であるということで今日まで来たのですが、御承知のとおりあの空港は他の空港に比べても非常に危ない立地条件を持っております。屋根すれすれに着陸をし、屋根すれすれに離陸するわけですね。この国際空港というものを恒久化していくというのは好ましくないというのが私は常識だと思うのです。国際間の往来というのは今から特に盛んになっていくことはあっても下火になることはないわけですから、そういうことから考えるとこの大阪国際空港をいつまでも国際空港にして、そして発着回数をそのたびごとに考えていくということばかりをやっていったのではお話にならないということが考えられていいのじゃないか。どのように思われますか。大阪国際空港というのは国際空港として永続化すべきであるということをお考えになっていらっしゃるか。それとも、そうじゃない、やはり国際空港というのは、発着回数についても発着時間についても、国際間の交流というふうなことから考えて十二分にやっていけるような空港というものを別に考えるべきだというふうにお考えになっていらっしゃいますか。どうです。この問題を最後に聞いて、私は終わりたいと思います。
  296. 向山秀昭

    ○向山説明員 この大阪の空港問題の将来の扱いに関します運輸省の考え方としましては、従来から地元の方といろいろお話をしておりまして、運輸省は関西国際空港の建設が決定された時点から可及的速やかに本空港の存廃を決定するために必要な諸般の調査を行い、関係地方公共団体の意見を十分聴取した上で、運輸省の責任において関西国際空港の開港時までに存廃についての結論を出すということを地元に申し上げておりますが、現在もその方針には変わりがございません。
  297. 土井たか子

    ○土井委員 文書の丸読みというのでは味もそっけもないような答弁なんで、課長さんにそれ以上聞いても、政治的判断ということに立ち至った質問になっていくと思いますから、御答弁は御無理だろうと思います。したがって、後で運輸委員会あたりに出かけていってこの問題に対しては続行をさせていただくことにいたしましょう。  以上で終わります。ありがとうございました。
  298. 中島源太郎

    中島委員長 これにて両件に対する質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  299. 中島源太郎

    中島委員長 これより両件に対する討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  まず、所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税防止のための日本国政府中華人民共和国政府との間の協定締結について承認を求めるの件について採決いたします。  本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  300. 中島源太郎

    中島委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。  次に、航空業務に関する日本国政府スリ・ランカ民主社会主義共和国政府との間の協定締結について承認を求めるの件について採決いたします。  本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  301. 中島源太郎

    中島委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました両件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔異議なし」と呼ぶ者あり〕
  302. 中島源太郎

    中島委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――     〔報告書は附録に掲載〕      ――――◇―――――
  303. 中島源太郎

    中島委員長 次に、千九百八十三年の国際熱帯木材協定締結について承認を求めるの件、出版物国際交換に関する条約締結について承認を求めるの件及び国家間における公の出版物及び政府の文書の交換に関する条約締結について承認を求めるの件の各件を議題といたします。  これより各件について政府より提案理由説明を聴取いたします。外務大臣安倍晋太郎君。     ―――――――――――――  千九百八十三年の国際熱帯木材協定締結につ   いて承認を求めるの件  出版物国際交換に関する条約締結について   承認を求めるの件  国家間における公の出版物及び政府の文書の交   換に関する条約締結について承認を求める   の件     〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――
  304. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 ただいま議題となりました千九百八十三年の国際熱帯木材協定締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  この協定は、国際連合貿易開発会議の一次産品総倉計画の対象産品のうち従来商品協定が作成されていなかった熱帯木材について作成されたものであって、昭和五十八年十一月十八日に、ジュネーブで開催された熱帯木材に関する国際連合会議において採択されたものであります。  この協定は、研究開発等の事業の実施等を通じて熱帯木材生産国の輸出収入の安定を図ることを主たる目的としております。我が国がこの協定締結することは、消費国である我が国にとっても利益をもたらすとともに、開発途上にある熱帯木材生産国の経済発展に協力する等の見地から有意義であると考えられます。  よって、ここに、この協定締結について御承認を求める次第であります。  次に、出版物国際交換に関する条約締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  この条約は、昭和三十三年十二月三日に第十回ユネスコ総会において採択されたもので、昭和三十六年十一月二十三日に効力を生じ、現在三十九カ国が締結しております。  この条約は、政府機関及び非営利的な非政府団体の間の出版物国際交換を奨励しかつ容易にすることを主たる目的とするものであります。  我が国がこの条約締結することは、我が国における出版物国際交換の発展に寄与するとともに、この分野における国際協力に積極的な貢献を行うとの見地から極めて有意義であると認められます。  よって、ここに、この条約締結について御承認を求める次第であります。  最後に、国家間における公の出版物及び政府の文書の交換に関する条約締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  この条約は、昭和三十三年十二月三日に第十回ユネスコ総会において採択されたもので、昭和三十六年五月三十日に効力を生じ、現在四十一カ国が締結しております。  この条約は、国家間における公の出版物及び政府の文書の交換を促進することを主たる目的とするものであります。  我が国がこの条約締結することは、我が国と諸外国との間の公の出版物及び政府の文書の交換の発展に寄与するとともに、この分野における国際協力に積極的な貢献を行うとの見地から極めて有意義であると認められます。  よって、ここに、この条約締結について御承認を求める次第であります。  以上三件につき、何とぞ御審議の上、速やかに御承認あらんことを希望いたします。
  305. 中島源太郎

    中島委員長 これにて提案理由説明は終わりました。  各件に対する質疑は後日に譲ることといたします。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時十一分散会      ――――◇―――――