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1983-12-28 第101回国会 衆議院 外務委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    委員昭和五十八年十二月二十六日(月曜日) 議長の指名で、次のとおり選任された。      赤城 宗徳君    石川 要三君      石原慎太郎君    柿澤 弘治君      鍵田忠三郎君    鯨岡 兵輔君      佐藤 一郎君    竹内 黎一君      玉沢徳一郎君    中島源太郎君      中山 正暉君    仲村 正治君      浜田卓二郎君    町村 信孝君      宮澤 喜一君    山下 元利君      井上  泉君    井上 普方君      河上 民雄君    上坂  昇君      高沢 寅男君    土井たか子君      八木  昇君    玉城 栄一君      古川 雅司君    渡部 一郎君      近藤  豊君    渡辺  朗君      岡崎万寿秀君    瀬長亀次郎君 十二月二十六日  中島源太郎君が議院において、委員長選任さ  れた。 ————————————————————— 昭和五十八年十二月二十八日(水曜日)     午前十時二分開議 出席委員   委員長 中島源太郎君    理事 石川 要三君 理事 浜田卓二郎君    理事 山下 元利君 理事 井上  泉君    理事 土井たか子君 理事 古川 雅司君    理事 渡辺  朗君       赤城 宗徳君    鍵田忠三郎君       佐藤 一郎君    玉沢徳一郎君       中村正三郎君    中山 正暉君       仲村 正治君    西山敬次郎君       町村 信孝君    岡田 利春君       高沢 寅男君    八木  昇君       玉城 栄一君    渡部 一郎君       岡崎万寿秀君    野間 友一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 安倍晋太郎君         農林水産大臣  山村新治郎君  委員外出席者         防衛庁防衛局調         査第一課長   松村 龍二君         外務大臣官房審         議官      都甲 岳洋君         外務省欧亜局長 加藤 吉弥君         外務省条約局長 栗山 尚一君         水産庁長官   渡邉 文雄君         外務委員会調査         室長      伊藤 政雄君     ————————————— 委員異動 十二月二十八日  辞任         補欠選任   石原慎太郎君     西山敬次郎君   柿澤 弘治君     中村正三郎君   竹内 黎一君     伊東 正義君   井上  泉君     小林  進君   上坂  昇君     岡田 利春君   近藤  豊君     河村  勝君   渡辺  朗君     木下敬之助君   瀬長亀次郎君     野間 友一君 同日  辞任         補欠選任   岡田 利春君     岡田 春夫君   野間 友一君     瀬長亀次郎君     ————————————— 十二月二十八日       石川 要三君    浜田卓二郎君       山下 元利君    井上  泉君       土井たか子君    古川 雅司君       渡辺  朗君  が理事に当選した。     ————————————— 十二月二十七日  北西太平洋ソヴィエト社会主義共和国連邦の  地先沖合における千九百七十七年の漁業に関す  る日本国政府ソヴィエト社会主義共和国連邦  政府との間の協定有効期間延長に関する議  定書締結について承認を求めるの件(条約第  一号)  日本国地先沖合における千九百七十七年の漁  業に関する日本国政府ソヴィエト社会主義共  和国連邦政府との間の協定有効期間延長に  関する議定書締結について承認を求めるの件  (条約第二号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事互選  国政調査承認要求に関する件  北西太平洋ソヴィエト社会主義共和国連邦の  地先沖合における千九百七十七年の漁業に関す  る日本国政府ソヴィエト社会主義共和国連邦  政府との間の協定有効期間延長に関する議  定書締結について承認を求めるの件(条約第  一号)  日本国地先沖合における千九百七十七年の漁  業に関する日本国政府ソヴィエト社会主義共  和国連邦政府との間の協定有効期間延長に  関する議定書締結について承認を求めるの件  (条約第二号)      ————◇—————
  2. 中島源太郎

    中島委員長 これより会議を開きます。  この際、一言あいさつ申し上げます。  このたび、私が外務委員長重責を担うことになりました。  今日の国際情勢は多くの難問難題が山積しており、本委員会使命はますます重大でありまして、その職責の重要さを痛感している次第でございます。  何分にも微力な私でございますが、幸い委員各位におかれましては、外交について練達堪能な諸先生ばかりでございますので、皆様の御指導、御鞭撻を賜りまして、誠心誠意円満な委員会運営に努める所存でございます。  何とぞよろしくお願い申し上げます。(拍手)      ————◇—————
  3. 中島源太郎

    中島委員長 これより理事互選を行います。  理事の員数は、十二月二十六日の議院運営委員会決定の基準に従いまして、その数を八名とし、先例により、委員長において指名するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 中島源太郎

    中島委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  委員長は、       石川 要三君    浜田卓二郎君       山下 元利君    井上  泉君       土井たか子君    古川 雅司君       渡辺  朗君を理事に指名いたします。  なお、本日指名しなかった一名の理事は追って指名することに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 中島源太郎

    中島委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  6. 中島源太郎

    中島委員長 次に、国政調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。  国際情勢に関する事項について研究調査し、わが国外交政策の樹立に資するため、関係方面からの説明聴取及び資料の要求等の方法により、本会期中国政調査を行うため、議長に対し、承認を求めることにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 中島源太郎

    中島委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  8. 中島源太郎

    中島委員長 この際、安倍外務大臣より発言の申し出がありますので、これを許します。外務大臣安倍晋太郎君。
  9. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 このたび再び外務大臣に就任いたしましたので、一言あいさつを申し上げます。  東西関係を初めとして、近年になく厳しい国際情勢において、わが国の平和と繁栄の確保のため、外交に課せられた使命はまことに重大なものがあります。  外務大臣としてのこの一年余の経験を顧みるに、諸外国わが国に対する期待と関心は年とともに強まっており、わが国が果たすべき国際的責任はますます増大しております。  また、外交と内政の結びつきが著しく緊密化している今日、外交の幅とすそ野を広げ、真の国際国家となることが求められております。  本委員会皆様方には、外交問題に精通され、多年にわたってこれに真摯に取り組んでこられております。皆様のよき御指導、御鞭撻を賜り、外務大臣としての重責を今後とも無事務めさせていただきますよう、皆様の御協力をお願い申し上げまして、私の就任のごあいさつとさせていただきます。  よろしくお願いいたします。(拍手)     —————————————
  10. 中島源太郎

    中島委員長 北西太平洋ソヴィエト社会主義共和国連邦地先沖合における千九百七十七年の漁業に関する日本国政府ソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定有効期間延長に関する議定書締結について承認を求めるの件及び日本国地先沖合における千九百七十七年の漁業に関する日本国政府ソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定有効期間延長に関する議定書締結について承認を求めるの件の両件を一括して議題といたします。  これより両件について政府より提案理由説明を聴取いたします。外務大臣安倍晋太郎君。     —————————————  北西太平洋ソヴィエト社会主義共和国連邦の   地先沖合における千九百七十七年の漁業に関   する日本国政府ソヴィエト社会主義共和国   連邦政府との間の協定有効期問延長に関   する議定書締結について承認を求めるの件  日本国地先沖合における千九百七十七年の漁   業に関する日本国政府ソヴィエト社会主義   共和国連邦政府との間の協定有効期問の延   長に関する議定書締結について承認を求め   るの件     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  11. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 ただいま議題となりました北西太平洋ソヴィエト社会主義共和国連邦地先沖合における千九百七十七年の漁業に関する日本国政府ソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定有効期間延長に関する議定書締結について承認を求めるの件及び日本国地先沖合における千九百七十七年の漁業に関する日本国政府ソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定有効期間延長に関する議定書締結について承認を求めるの件の二件につきまして、提案理由を御説明いたします。この二件は、それぞれ別個の案件ではありますが、経緯上も内容的にも互いに密接な関係にありますので、一括して御説明いたします。  昭和五十二年五月二十七日にモスクワで署名されました北西太平洋ソヴィエト社会主義共和国連邦地先沖合における千九百七十七年の漁業に関する日本国政府ソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定及び昭和五十二年八月四日に東京で署名されました日本国地先沖合における千九百七十七年の漁業に関する日本国政府ソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定有効期間は、昭和五十二年末、昭和五十三年末、昭和五十四年末、昭和五十五年末及び昭和五十六年末に署名された議定書によって延長されましたが、さらに昭和五十七年末に東京で署名された二つ議定書によって一年間延長されました。したがって、両協定有効期間は、ともに本年十二月三十一日に満了しますので、政府は、ソ連邦政府との間にこの有効期間をさらに延長する議定書締結するため、本年十一月二十一日以来モスクワにおいて交渉を行いました。その結果、本年十二月二十四日にモスクワにおいて、わが方高島駐ソ大使先方カーメンツェフ漁業大臣との間でこの二つ議定書の署名を行った次第であります。  この二つ議定書は、いずれも二カ条から成っており、それぞれ右に述べました協定有効期間を明年十二月三十一日まで延長すること、両政府代表者は明後年以降の漁獲の問題に関して明年十一月二十一日までに会合し協議すること等を定めております。  この二つ議定書締結によりまして、一方では、わが国漁船ソ連邦地先沖合いにおいて引き続き明年末まで操業することが確保されることとなり、他方では、わが国は、ソ連邦漁船が明年においてもわが国漁業水域においてわが国法令に従って操業することを認めることとなります。漁獲割り当て等実体的事項につきましては、両国水産当局間の書簡にその詳細が掲げられておりますが、今回の交渉の結果、明年のわが方漁獲割り当て総量として七十万トンを確保し、他方ソ連邦に対する明年の漁獲割り当て総量につきましては、六十四万トンを定めた次第であります。また、ソ側から要望の出されていた休養、補給のためのソ連邦漁船わが国への寄港については、相互主義確保等一定条件のもとでわが国国内法令に従い認める用意があるとの日本側立場ソ側に対し表明いたしました。  この二つ議定書締結は、互いに相まって、日ソ両国の二百海里水域における円滑な漁業秩序確保するものであると考えております。  よって、ここに、これらの議定書締結について御承認を求める次第であります。何とぞ御審議の上、速やかに御承認あらんことを希望いたします。
  12. 中島源太郎

    中島委員長 これにて提案理由説明は終わりました。     —————————————
  13. 中島源太郎

    中島委員長 これより質疑に入ります。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。岡田利春君。
  14. 岡田利春

    岡田(利)委員 私は土井委員の質問に先立って、主として今次漁業協定の具体的な内容について御質問いたしたいと思います。  その前提として、今次交渉が昨年に比べて非常に難航したということであります。交渉期間に三十四日間も要している。しかも交渉は三十五回にわたって、トップ交渉も十二回にわたって行われておるということは、最近の日ソ漁業交渉にはなかったことではなかろうかと私は思うのであります。したがって、この交渉背景をわれわれは考えてみなければならないのではないかと思うのです。  その一つは、アフガン以来今次大韓航空事件に及ぶ対ソ経済措置というものがわが国としてとられた。いわば日ソ関係が冷たい関係に今日ある。そういう背景についてわれわれは考えてみなければならないのではなかろうか。あるいはまた、日ソ関係における漁業操業実態を見ますと、ソ日日ソ漁業協定許可船及びサケ・マス漁業協定許可船においても非常に違反が続出しているということも非常に象徴的ではなかろうかと思うわけであります。したがって、今次交渉が難航したという背景として外務省は特に対ソ関係が今日冷たい関係にある、これを改善していくというむしろ積極的な考え方に立つべきではなかろうかと私は思うのであります。そういう面を含めて今次交渉についてどのように外務省として評価をされておるのか、大臣見解を承っておきたいと思います。
  15. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 昭和五十二年十二月に日ソソ日漁業暫定協定延長されまして以来、本交渉は七度目を数えておるわけでありますが、この間にソ連のアフガニスタンヘの軍事介入あるいはまたポーランド情勢緊迫化等があったにもかかわらず、双方の当事者は例年実務的な雰囲気のもとに話し合いを行っておりまして、今回もその例外ではございません。  今回の交渉が特に難航しましたのは、ソ連側がここ数カ年クォータ消化率が低調であるということを背景として日本側クォータ大幅削減を求めてきた、日本水域におけるソ連漁船に対する操業条件の緩和を強く要求したのに加えて、さらにソ連漁船わが国への寄港要求し、これらの調整に時間を要したということでございます。こうしたソ連側の強い要求は、ソ連側日ソ間の実質漁獲量等量化をすべきであるとする漁業面での考慮の結果でございまして、ご指摘のような国際社会あるいは日ソ間の政治情勢を反映したというふうには私ども考えておらないわけでありまして、今後ともこの問題につきましては実務的な雰囲気のもとで漁業関係交渉というものは進められていくというふうに判断をいたしております。  しかし、今日の日ソ関係が冷たい雰囲気にあるということは事実でございまして、われわれとしましては北方領土問題を解決して平和条約締結することを対ソ外交の基本といたしておるわけでございますし、これも今後とも変わらないわけでございますが、こうした基本的な立場を踏まえながら種々の対話は積極的にやっていきたい。そして日ソ間の諸懸案を解決するという方向でソ連側に働きかけてまいりたい、こういうふうに考えております。
  16. 岡田利春

    岡田(利)委員 そういたしますと、現在とられている対ソ経済制裁措置については冷静にこれを再検討されるというお気持ちがおありなのか、見直しを進めていくというお気持ちがおありなのか、この点も少し突っ込んで見解を承りたいと思います。
  17. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日ソ間には御承知のように領土問題がございます。また平和条約問題が根底にはあるわけでございますし、同時に、最近の大韓航空機撃墜事件以来日ソ間はどちらかというと冷えた関係にあるわけですが、先ほど申し上げましたようにやはり日本にとっては隣の大国でありますし、この友好関係を構築していきたい、こういう考えは変わっておりませんし、そういう中でいろいろと厳しい状況にはありますけれども対話を進めております。事務レベル高級事務レベル等会談等も持っておりますし、経済交流あるいはまた人的交流文化交流といった面につきましても私どもは取り組んでおるわけでございまして、これからもそうした面についてはソ連側とも友好雰囲気発展をさせていきたい。経済の面でも諸外国関係各国ソ連との関係等も十分配慮しながら日本としてもケース・バイ・ケースという形で経済交流、貿易の発展についてはこれに取り組んでいきたい、こういうふうに思っております。
  18. 岡田利春

    岡田(利)委員 今次漁業協定妥結内容から判断しますと、一般的にはわが国の譲歩が目立ち過ぎる妥結ではなかったのか、こういう批判もあるわけであります。その内容としてはいま大臣からも述べられましたクォータの問題、海域の規制の問題、漁船相互寄港の問題、この三点が新しく挙げられてまいるわけであります。ただ一方、渡邉水産庁長官大変御苦労さんでしたけれども一つ談話として、しかしこの案は業界に理解ができるし、しかも減船をしなくても済む、こういう内容なんだ、きわめて楽観的な談話が出ておるわけであります。この面について私は交渉の経過あるいはまた交渉出発等を判断すると、今度の交渉妥結したということで楽観すべき問題ではないのではないのか、こう思うわけであります。そういう点に関連して御見解を承っておきたいと思うのです。
  19. 渡邉文雄

    渡邉説明員 ただいま先生から御指摘ございましたように、結論としまして私が現地で報道関係機関に申しましたことが楽観的にとられたとすればまことに私の言葉足らずでございまして、私自身交渉を二週間余りやりました実感といたしまして大変厳しいものとこれを受けとめておるわけでございます。特にトン数、総クォータ異動よりもソ連の今回の私どもに対する強硬な態度が一番きつかったのは、ソ連水域におきます五百メーター以浅操業禁止問題が一番むずかしい問題でございまして、私ども交渉の全般の精力の大部分はこの五百メーター以浅問題をいかにして撤回させるかということに傾注されたわけであります。通常でございますと、交渉が始まりまして三分の一ぐらいの期間が経過しますとそれぞれの歩み寄りが見られるわけでありますが、今回は最終段階までそのかたくなな態度相手方は崩さなかったわけであります。思いますに、先ほど外務大臣からもお話がございましたように現実問題としての総クォータに対する消化率、逆に申しますれば漁獲高でございまして、日本側は約五十万トンとっている、ソ連側は十九万程度しか日本側でとれていないということに対するソ連側のいら立ちと申しますか焦りと申しますか、そういったものが非常に先鋭化した形でことし集中的に出てきたのではないかというのが私の受けとめ方でございまして、今後ともその問題につきましては厳しく受けとめてまいりたいと思っております。
  20. 岡田利春

    岡田(利)委員 割り当て量の場合は、スケトウが前年のマイナス二万トン、それからイカが前年のマイナス一万三百トン、双方で約三万トン、ここに集中いたしておるわけです。しかし、昨年のわが国実績よりもそれぞれの魚種別クォータは上回っておるという意味減船その他の必要はない、こうおっしゃっておるのだろうと思うわけであります。しかしながら、そうしますと、実際に七十五万トン、五年間連続してクォータが割り当てられてまいったわけですが、今回七十万トンになったということは、魚種別も前年の実績をすべて下回っているのであるから、言うならば空の部分が一応五万トン削除されたのだ、こういうお考えなのか、それともやはり改善すれば七十五万トンのクォータの達成はわが国漁業技術からいって可能である、そういう前提にあって五万トンの削除は厳しいとお考えなのか、いずれでしょうか。
  21. 渡邉文雄

    渡邉説明員 先生御案内のように、多数の漁船操業しておりますし、クォータ自体魚種別水域別に細かく配分されております。各漁船別にも配分されるわけでございますので、全体が円満にいくためには、何がしかのアローアンスがないと円満な操業ができないという事実はあるわけであります。  それにいたしましても、相手方水域前提に、した場合、現在までの実績であります消化率七割、ないしは七二、三%がピークであったわけですが、これを引き上げるということはなかなか至難のことではないかと思っております。ソ連側水域日本に対しましてより緩和してくれれば話はまた変わってまいりますが、それは現実として認めざるを得ないかと思います。だからといって七十五が七十に減ってよろしい、裸でよろしいというふうに思うものでは決してないわけでありまして、先ほどもちょっとございましたが、減船がないからよかったというふうに私は決して思っておりません。むしろ今回の厳しい交渉過程からにじみ出ました実感といたしまして、従来の日ソ漁業の基本的な枠組みといいますかそういうものが維持できたということで、私はそれなりの評価といいますか考えを持ったわけでございます。
  22. 岡田利春

    岡田(利)委員 昨年の日ソソ日漁業協定のときに松浦水産庁長官が訪ソされておった時点、私もちょうどたまたまモスクワを訪れておったわけであります。長官が会う前にクドリャフツェフ第一次官とも会って日本側立場を訴えたこともあるわけでありますけれどもソ連クォータに対して実績が非常に低い、十八万八千トン程度である、これはある程度改善させなければ結局等量主義の原則で日本側クォータが漸次減らされていくという危険性があるのではないか。この点、水産庁としても、たとえば海況魚模、そういうものをある程度知らせるということを考えてもいいんだというようなお話もしておったわけですが、この一年間、ソ連クォータに対して実績が低い、この点が問題であるという認識は当時からあったわけでありますけれども、今度の交渉に臨むに当たって、この認識に対して何か特に対応策考えられて臨まれましたか。
  23. 渡邉文雄

    渡邉説明員 ソ連側クォータ消化率の向上につきまして、技術面で協力できるところがあればいつでも応じますという意味での意見の交換が去年あったことは、私も引き継ぎで聞いておるわけであります。しかし、今度の交渉過程ではそういった問題よりも、私はむしろ積極的に反論をしたつもりでございまして、ソ連日本海域に来てとれなくなったと言うけれども、それはとれなくなったのではなくてとらなくなったのだということでかなり激しい議論をしたつもりでございます。それが証拠に、かつてソ連側も七割の漁獲を上げたことがあったではないかとか、あるいは七割ないし五割以上の漁獲高を上げておった当時のソ連日本海域における操業隻数は現在よりもはるかに多かった、勝手に隻数を減らしておいて、漁獲高が減って、結果的に消化率が下がったということはとても納得できないし、日本側操業条件がその責任であるという議論には私は屈するわけにまいらないという議論が前段の議論であったわけでありますが、ソ側議論しておりましてしみじみ感じますことは、なかなか議論がかみ合わないという側面がございました。たとえば私がそのような反論をいたしますと、ソ側は、何隻日本水域に派遣するかはソ側の自由であって、日本から干渉されるいわれはないという返事しか返ってこないわけでありまして、そういう意味ではなかなか議論がかみ合わないというのがほかの国の場合の交渉とちょっと違うところではないかというのが私の実感でございます。
  24. 岡田利春

    岡田(利)委員 かつて国内的な大問題になって、せっかく譲歩した漁場をソ連側操業しない、こういう実績もあったわけでありますから、やはり長官のおっしゃることもよく理解ができるわけであります。  そこで、今次妥結内容漁船相互寄港日本側がナホトカ、ソ連側は小名浜港に寄港する、これが双方で認められたわけであります。今回これは国内法の許可事項になっているわけですが、これは単にソ連だけではなくしてほかの国にも関係ありますから、特に基本的な方針を決められて踏み切られたものと私は思うわけであります。したがって、漁船相互寄港に踏み切られたそのときの原則的な考え方をここで明らかにしていただきたいと思うのです。
  25. 加藤吉弥

    ○加藤説明員 ソ連船の寄港を認めるに当たりましては、漁業の秩序維持という観点もさることながら、日ソ関係全般、わが国の公安、治安、そういう問題を含めて検討してまいりました。したがいまして、関係各省庁とは入念に協議を進めてまいっておりますし、また、その都度稟請に従ってこれを許可するという原則の中には、ただいま申し上げた日ソ関係、治安、公安、さらには漁業の秩序というようなことを勘案した上でその都度判断をしてまいりたい、かように考えている次第でございます。
  26. 岡田利春

    岡田(利)委員 ニュージーランドが今年ソ連に対する漁船寄港を認めたという一つの流れも国際的にはあるわけですね。それから、いま述べられたように確かに漁場の取り締まり、治安対策、あるいはまたソ連貨物船が寄港しておるかどうかというような判断、また他国の漁船寄港要求に対する一応の配慮というものがやはり考えられたと報道も実はされておるわけであります。私もそうだろうと思うのです。ただ、二百海里の相互協定を結んでおる場合には、漁場とクォータ、すべて二国間の協定に基づいて操業されるわけなんですよ。かつてソ連側から寄港申し出があった場合は、まだ公海で自由に操業できる、これではわが国ソ連漁船の競争上問題がある、断じてこれは認められないという政府見解が示された経過もあるわけです。しかし、今日はもう日ソ関係は二国間で二百海里の枠組みがぴしっとできたわけですね。どこの漁場で、どれだけの期間で、どういう網を使って幾らとるか、すべて監視もできるわけであります。やはりそういう新しい状況になっておることをわれわれは考える場合に、ある程度寄港を認めてもその点についての規制というものはぴしっとできるだろうと思うのです。ところが、韓国のような二百海里の協定を結んでいない場合、もしこの寄港を認めるとすれば、わが国漁船と韓国の漁船との競争上問題が出てくるわけですよ。だから私が原則的なものを決めたんでしょうと言うのは、そこの面の配慮が、判断があったのではないんですかということを聞きたかったのですけれども、触れてませんから、いかがでしょうか。
  27. 渡邉文雄

    渡邉説明員 ただいま外務省の方から幅広い観点での御答弁があったわけでございますが、水産関係だけに限っての考え方を申し述べさせていただきますと、先生御案内のように、日本の港を基地として日本の沿岸水域漁獲をやられると、沿岸漁民としましては、感情的にも、実際問題としても非常な反発が生ずるわけでございまして、そういった問題を処理するために十数年前に外国漁業の規制に関する法律ができまして、領海内での漁業外国人はやってはいけない。それから、日本の港に寄る場合には、緊急避難とか貿易行為みたいなものはいいけれども、それ以外は許可が必要である。それ以外の許可の運用につきましても、修理とか特定の場合を除きましては原則不許可で現実に運用をしてまいったわけであります。  今回ソ連側は、先ほど申しましたように、消化率の差は日本水域におけるソ連船の操業規制が強過ぎるからだ、その一つとして、日本の港に寄れればソ連の漁民は喜んで日本水域に行くだろう、寄れないから行きたがらない、したがって魚がとれないのだという一つの論理を展開したわけでありますが、一部そういった側面もあろうかと思います。  いずれにしましても、先ほど来申しましたような五百メーター以浅の禁止問題等を解除するための激しいやりとりの過程寄港に踏み切らざるを得なかったわけでありますが、おっしゃいましたように、日本ソ連日本と韓国の場合には決定的に違うところがございまして、日ソは相互入り会いの関係になっております。韓国との関係では、現実は別といたしまして、二百海里の保護のような法制度に基づく相互入り会いの関係はまだ樹立されておらないわけでございますので、そういう意味での差はあるだろうと思います。それから、相互入り会いということは、とりもなおさず、逆に言いますと、取り締まり権限とか、あるいは入り会っている相手国の船は、水域とか漁業種類とか漁法とか隻数とがそれぞれ厳重な約束事のもとに行われておるわけであります。そういった事実も今回の寄港に踏み切る場合の判断の基準になったことはおっしゃるとおりでございます。
  28. 岡田利春

    岡田(利)委員 私は、こういう国際関係協定に当たって新しい譲歩をする場合にはまさに厳格な原則の上に立って行われないと、後から非常に問題を起こすという意味で実はお伺いをいたしたわけでございます。  そこで、日ソソ日漁業協定の長期協定化ということは大変毎年毎年話題に上ってくるのですが、毎年協定で終わってしまうのであります。しかし二百海里時代も、まだ対米関係を見ましても、あるいはまた大西洋関係を見ましても、非常に揺れておるという中で長期協定締結は無理がという感じもいたしますけれども日ソ関係は二百海里から六年目、今度七年目になるわけですね。ですから、そういう意味ではある程度長期協定化、五年がいいのか三年がいいのかは別にして、長期協定化が望ましいと思うのであります。それにはいろいろな環境も整備をしなければなりません。しかし、今次交渉でもこの問題は当然提起をされたと思いますし、ソ連側見解はどうであったのか。また、日本側としてどう判断をされておるのか。長期協定を進めるための環境整備について先ほど外務大臣からも答弁がありましたけれども、もう一歩進めて具体的にその対応策考えるべきではないのか、こう思うのですけれども、この点の御見解を承っておきたいと思います。
  29. 加藤吉弥

    ○加藤説明員 日ソ漁業関係を長期安定的な基礎の上に置くということはもとより望ましいことでございまして、毎年漁業交渉を行うたびごとに、わが方からは協定の長期化という問題をソ連側に提起しております。それに対しましてソ連側は、ソ連の基礎的な国内法であります二百海里に関する最高会議幹部会令が暫定的な措置であるということを理由といたしまして、今日に至るまで長期化に応じてきていないというのが残念ながら実情でございます。わが方といたしましては、今後も引き続き協定の長期化につきましてはあらゆる手段を尽くして、その実現を図るべく努力を続けていきたい、かように考えております。
  30. 岡田利春

    岡田(利)委員 きわめて聞かなくても聞いてもわかっているような御答弁でありますけれども、たとえば日米漁業協定というのは長期協定になっていますけれども内容たるやアメリカの国内法で内容が変わっていくという問題点を持っている漁業協定であるのが日米漁業協定でもあるわけであります。ですから、二国間の漁業協定というものはいろんなケースがいま生まれつつあるのですね。だがしかし、日本の場合対米、対ソというのは、量から言っても二大主柱なわけですね。そういう意味で、対ソ関係漁業協定の長期協定化については積極的な姿勢で環境整備をできるだけ図っていくという前向きの姿勢が必要だと私は思うのであります。  そこで、日ソソ日漁業協定以外に四月にいつも交渉されておりますサケ・マス漁業協定もあるわけであります。日ソ漁業協力協定もあるわけであります。サケ・マスは今年大変な違反問題で、これも日ソ間でも問題になっておるわけであります。もちろん日ソソ日漁業協定の中でも問題点が出ているわけでありますけれども、そういう意味で来年度交渉のサケ・マス漁業協定の展望について非常に危惧する向きが多いのであります。特にクォータが減るということになりますと、今度は減船にストレートに結びつくということですし、現在時点でもある部分については採算が合わない、こういう局面も出ておるわけでありますから、非常に重要な問題だと思うのです。したがって、これは水産庁長官でいいのですが、今年の日ソソ日漁業協定交渉の経過と締結までに至る日ソ間の折衝の中で、サケ・マス漁業協定の展望についてどのような御見識を持たれておるか、承っておきたいと思うのです。
  31. 渡邉文雄

    渡邉説明員 一般論で大変恐縮でございますが、今回の日ソソ日交渉の厳しさからしまして、サケ・マス交渉が通常の年よりもより以上に厳しいものになろうかという予感と申しますか、感じはいたしておるわけであります。さらに、先生指摘のように大変大鼓の違反問題があって、今度の交渉過程でも、議論過程でときどき違反問題の指摘をされまして困ったこともあったわけでありますが、そういう違反問題もその問題には悪い影響を与えるのではないかという感じは持ってはおります。しかし違反問題につきましては、私着任早々ではございましたが、事の重要性にかんがみまして、従来と違って水産庁内部に水産庁次長を長といたします特別の委員会をつくらせまして、従来は、ある漁業種類で違反が起きた場合には当該漁業種類を所管している課限りでの処分のルールであったわけでありますが、それを広く関係課全部集めまして次長のもとで厳しい議論をし、従来になくきちんとしたといいますか、厳しい処分をいたしたわけであります。それにつきましてはソ側もそれなりの評価をしているやに受けとめられる感じもしたわけでございます。  しかし、それはそれといたしまして、従来にない大量の違反があったという事実はぬぐえないことでございますし、さらにこれは前回のサケ・マス交渉以降科学者の中から、昔は豊漁年、不漁年ということでの年ごとの数量の差というものがあったわけでありますが、ここ数年問四万二千五百トンということで豊漁年、不漁年の差の区別なしに数量が一定でございます。それはやはり基本的におかしいのではないかという議論があるようでございます。来年が豊漁年であればよろしいわけでありますが、逆に来年はどうも不漁年であるようだということでまた心配をする向きもあるわけでございます。いずれにしましても従来に比べまして決していい材料が今年度あるとは思えませんが、私としましては事前の準備を十分にすることによりまして何とか従来の枠組みを維持していきたいという覚悟でございます。
  32. 岡田利春

    岡田(利)委員 最後に、もう一問で終わりますけれども、かつて金子農林水産大臣はカメンツェフ・ソ連漁業相を招待されたわけであります。そしてまたカメンツェフ漁業相は日本農林水産大臣ソ連側に招待をするという招待状が出されておるわけであります。これは、今度の漁業交渉を見ますと、最終局面は農林水産大臣の出る場面でもなかったかという感じもするのですが、政局がああいう状態であったわけであります。したがって、これからのサケ・マス漁業協定漁業協定の長期化、こういうものを展望しながら、考えながらやはり農林水産大臣としても、金子農林水産大臣が向こうの大臣を招待して向こうの大臣が招待をされておるわけでありますから、これはまだ招待状は有効であると私は判断をいたしておるわけです。したがって、そういう点で時機を見てこの招待状に応じて訪ソされるなどの積極的な展開がいまの渡邉水産庁長官の答弁からも必要である、こう私は思うのですけれども農林水産大臣の御見解を承っておきたいと思います。
  33. 山村新治郎

    ○山村国務大臣 岡田先生いまおっしゃいました金子大臣ソ連に対する招請があった、しかし金子大臣の訪ソにつきましては何か諸般の事情から実現できなかったようでございますが、もし私にこの日ソ漁薬関係発展という見地から招請がございました場合には直ちに検討したいというぐあいに考えております。
  34. 岡田利春

    岡田(利)委員 終わります。
  35. 中島源太郎

    中島委員長 次に、土井たか子君。
  36. 土井たか子

    土井委員 今回の日ソ漁業交渉が例年になく厳しいというのは中曽根内閣の対ソ外交姿勢に起因しているのではないかという疑念が国民の間に大変ございます。また、ただいまも岡田議員の方からの御質問の中でございましたけれども渡邉水産庁長官が十二月八日の記者会見でも、ソ連側の出方は従来に比べて非常に厳しいという面を述べていらっしゃる。こういうことなどは、日ソ間の緊張関係というのがやはり日ソ漁業交渉に強く反映しているということであると理解せざるを得ないのです。したがいまして、まずお尋ねしたいのは、対ソ外交のあり方なのです。  第二次中曽根内閣の顔ぶれがいよいよ決定をいたしましたが、いま、漁業交渉の相手でございますソビエトの最高幹部であるアンドロポフ・ソビエト共産党書記長について、どうもどういうことなのかはっきりいたしません。八月十八日に米国上院議員団と会見をされたときの写真が公表されて以来約四カ月たちますね。四カ月間公式の場所に姿を出しておられないということもはっきりいたしておるわけです。中曽根総理にしましてもレーガン大統領にいたしましても、四カ月も国民の前に姿を出されないということになりますとこれは政治的には大変なことになるわけですが、アンドロポフ書記長の重病説が流されたり、かぜで、すでに回復されつつあるなどというふうな情報も流されたりいたしております。二十六日のソビエト共産党中央委員会の総会に欠席をされるということが事実上ございまして、アンドロポフ書記長の身辺に何か変化が起こりつつあるのではないかというふうな憶測が飛び交っているわけです。昨日の夕刊を見ますと、書記局四人の方々の昇格、登用人事が発表されているようでございますけれども外務省とされましては、このような情報をまずは的確に、しっかり把握されるということがお仕事の非常に大事な出発になるのだろうと思いますが、対ソ外交の一歩であるこういうお仕事からいたしますと、アンドロポフ書記長に対してどのような情報を掌握されておりますか。いかがでございますか。
  37. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いまお話がありましたように、アンドロポフ・ソ連共産党書記長は、本年の八月十八日にアメリカの上院議員団と会談をしてからすでに四カ月以上国民の前に姿をあらわしていない、特に去る十一月七日の革命記念日のきわめて重要な儀式にも姿を出しておりませんし、また一昨日、昨日と開催をされました中央委員会総会にも欠席をしております。     〔委員長退席、石川委員長代理着席〕 中央委員会の総会に欠席したというのはレーニン以来だと言われておるわけでございますが、それほど重要なこの委員会にも欠席をした。そういうことから政府外務省としましては、これはアンドロポフ書記長の健康状態が相当深刻な状況にあるのではないか、こういうふうに判断をいたしておるわけでございます。  何分にもああいう国でございますからそれ以上のことは、いろいろと情報は飛び交ってはおりますが、的確だと思われる情報にはわれわれは接しておらないわけです。しかし、以上申し上げましたような経過から、健康状態が相当深刻な状況になっておるというふうに判断をしておるわけです。
  38. 土井たか子

    土井委員 アンドロポフ書記長不在の間に政治的に目についたのは、オガルコフ軍参謀総長であるとかウスチノフ国防相という軍部関係の方々が表面に出てこられているような面であります。大韓航空機撃墜事件であるとかINF交渉の共同記者会見では、オガルコフ軍参謀総長であるとかザミャーチン党国際情報部長であるとかコルニエンコ第一外務次官などがその場所にはたしか出席をされていたようでありますが、軍と政府という三位一体の姿勢を見せられているような気がいたします。こういうことについて外務省としてはどういうふうに分析をされているのか、どういうふうな評価をお持ちになっていらっしゃるのか、その辺はいかがですか。
  39. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いろいろの情報から推測をいたしますと、アンドロポフ書記長に次いで権力の座に近いと思われる人は、チェルネンコ政治局員、ロマノフ政治局員あるいはまた若手のゴルバチョフ政治局員という人たちの名前が挙げられておりますし、われわれもそれが有力ではないかと考えております。  なお、ソ連軍部のソ連の中における力関係でございますが、これもいまお話がございましたように、大韓航空機事件の処理に見られる中でも、オガルコフ参謀総長がその重要な決定にはしばしば参加をして、また姿をあらわしておるというふうなことであるとか、アンドロポフ書記長自身もソ連軍の戦闘能力の強化に努力する旨を公式に明らかにしておる。そういうことから見ますと、軍事安全保障上の考慮が前政権と同様に現政権の政策決定にとりましてきわめて重要な要素となっておることは事実であります。しからば、ソ連内部でソ連軍部の力がきわめて増大しておるかどうかということにつきましてはいろいろの議論があるところでありまして、いまわれわれはこれにつきまして断定をする立場にはないわけでありますが、その動きはきわめて重要であるということで、いろいろ情報を収集しながらその動きに注目をいたしておるわけであります。     〔石川委員長代理退席、委員長着席〕
  40. 土井たか子

    土井委員 どうも動きに注目されているだけのようでありますが、八四年という来年は大変大事な年になるであろうと思います。恐らく、ポスト・アンドロポフということが問題になってくるのではないかということが日ソ間の今後の外交にどう取り組んでいくかということにも非常に大きな影響を持ってくる、そういうことも考えておかなければならない年になるのではないかと考えられるわけですが、中曽根内閣が出現して以来、外交に対して大変力を入れられたようでございますけれども、そのために、特に不沈空母発言であるとか日米運命共同体発言等々に始まりまして、夏のウィリアムズバーグのサミットでの、例のINF交渉等々について、当事者でもない日本がまるでNATOの核配備計画そのものに立ち入って、むしろ配備すべきであるというふうなことまで言われるような始末にずいぶん国民はまゆをしかめてきたということは、現実の問題になっております。ですから、今回の選挙結果というのが、倫理問題が前面に出たということは言うまでもございませんけれども、しかし国民の本音からいたしますと、この大変な中曽根さんのタカ派路線に対しまして明確にノーという答えを出した選挙結果がこういうことになったというふうにも国民の多くは理解しているのです。そういうことからいたしますと、第二次中曽根内閣の所信というのはまだ伺っていませんけれども、この選挙の結果を踏まえて、相変わらずこういうアメリカの戦略体制に取り込まれていくような外交をするということであってはいささかの反省もないというかっこうになることでありまして、外務大臣としてはこういう問題に対してどういうお考えをいま持っていらっしゃるかというところをあらましまず承りたいと思うのです。いかがです。
  41. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私は、やはり今度の選挙の結果というものは、これは国民の審判ですから、厳粛に受けとめていかなければならない、こういうふうに思います。しかし私は、日本のこれまでとってまいりました外交政策の基本が国民から批判をきれるとかあるいはまた否定をされたということにはなっていないというふうにも考えております。日本外交政策は、御承知のように平和国家としまして世界の平和に積極的に貢献していくという立場を貫いてきておるわけでございますし、そういう中で、たとえば米ソの核軍縮についての交渉が一日も早く妥結することをわが国としても念願をして、そういう立場でこれまで努力をしてまいったわけでございますし、現在の国際情勢がきわめて厳しいことはわれわれも十分認識をいたしております。特に最近のいろいろの大きな事件の勃発あるいは地域紛争の拡大の懸念、さらにまた核軍縮の中断というふうなこともありまして、一段と来年は世界の情勢が厳しくなってくる。やはりこの情勢を何とか緊張緩和の方向へ持っていくという努力を日本は積極的に国際的にもやっていかなければならぬ、こういうふうに思っておりますから、われわれとしては、これまでの考え方というものを基調にしまして、さらに日本の平和外交路線というものを鮮明に打ち出して、国際的に平和に貢献するために努力を重ねてまいりたい、こういうふうに思います。
  42. 土井たか子

    土井委員 教科書みたいな御答弁なんですけれども、例の東西の三つのチャンネルがINFヨーロッパ配備という事態でことごとく中断してしまいました。それで西側諸国は、やがて交渉のテーブルにソ連は着くだろうという非常に楽観論を持っております。ところがソビエト側は、その点大いなる幻想であるということで、交渉への唯一の復帰条件というのはアメリカのミサイル撤去であるということをはっきり述べているわけですね。私は世界の平和にとってこの交渉が成功するということを願っている一人でもございますから、したがいまして、そういうことからすると、もし不成功の場合は軍拡路線へとますます傾斜していってしまうおそれということも当然のことながら非常に憂慮しつつ感じているわけです。外務省はこのINF削減交渉の再開に対して単に楽観論で臨まれているのかどうか、何らかの努力をしようとなされているのかどうか、これは非常に大事な問題ですから、この節ちょっと承っておきたいのですが、いかがです。
  43. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 INF交渉が中断をしたということに対しては、わが国、また私としましては、きわめて憂慮いたしております。INFの問題は、ただ米ソの問題でなくて、日本にとりましてもきわめて重要な関心のある問題でございますし、また世界のいわゆる軍縮といった面からしても、こうした中断が続き、さらにまた決裂と、というふうにいけばこれはゆゆしいことだ。おっしゃるような、これが中断から決裂ということになれば、一挙に米ソ関係というものが悪化をして、そして核軍拡の方向へ進んでいくことは間違いない。これだけは何としても防がなければならぬ。それにはやはりそれなりに日本の役割りといいますか、努力も求められておるのじゃないかと、私はそういうふうに思います。したがって、このINF交渉が再び行われる、両国がテーブルに着いて論議を進めるという方向に、ヨーロッパも強く求めておるわけでありますから、日本もこのための努力を重ねていく。日米関係という立場の中でのアメリカに対しての日本立場も今後とも主張していかなければなりませんし、また日ソという関係の中でも、ソ連に対してもやはり軍縮の方向へさらにテーブルに着くという方向にソ連が進むために日本としても要請を重ねていかなければなりませんし、さらにヨーロッパの諸国とも十分協力をしながら、何とかやはり一日も早く再開をされるというための外交努力というものをこれからもひとつ重ねてまいりたい、こういうふうに思います。
  44. 土井たか子

    土井委員 いま外務大臣おっしゃるとおり、アメリカとの間のルートについて、それは重視をしながら、しかし対ソ友好関係も必要なんですね。対米外交をおもんばかって対ソ関係をおざなりにするということになると、これはいまおっしゃったようなことが生きてこないということだろうと思うのですが、そういうことになりますと、外務大臣とされては、今回の例の欧州に対する核配備というのは当然であり、結構なことだと考えていらっしゃいますか。いかがです。
  45. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これはやはり、いわゆるNATO諸国のみずからの判断、安全保障という立場からの二重決定が行われました、その線に従ってやってこられたものである、そして、そのことが結局INF交渉、さらにSTARTというような核軍縮に対する交渉を促進をしていくという方向につながるという判断のもとに行われたものであると、こういうふうに理解をいたしておるわけです。
  46. 土井たか子

    土井委員 そうすると、結論とすれば結構だというお考えなのでしょうか。どうでしょう。
  47. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは結論であるとか結構でないとか——やはりNATOの自主的な判断に基づいて決定されたわけでございますから、それが世界平和のためにそういう道が進められるということは、それなりにわれわれは理解をしております。
  48. 土井たか子

    土井委員 世界平和のためにとおっしゃるのは、それは空文句では困るので、中身についていままでどおりの中曽根さんの非常に強硬なタカ派的な核抑止論で賄っていくというわけにはいかないだろうと私は思うのです。その点が非常に問いただされてきているのじゃないでしょうか。したがって、そういう点から申しますと、一月のいつ訪米されますか、外務大臣は。
  49. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは、私が外務大臣に再任をいたしましたとき、やはりいまの日米関係、特にいま経済問題等いろいろと解決しなければならぬ問題もありますし、あるいはまた全体的な世界情勢の問題もいまお話しのように非常に厳しい状況にあるわけですから、これはやはり日本とアメリカとの関係で、新しい内閣ができたわけですし、意見交換をしなければならぬと、こういうことで訪米を発表したわけですが、相手のあることでして、アメリカとの間の、時期はいつにしたらいいか、向こうとどういう連中と会談ができるかといったような点につきましていま詰めておるわけでございますが、少なくともやはり国会が再開される前には訪米をしたい、こういうふうに思っております。
  50. 土井たか子

    土井委員 その中で、従来どおり何でもかんでもアメリカが日本に対して言うことに対してそれを受けることが大前提であって、事を進めるということであってはどうも私は心もとない話だと思うのですが、二十六日に自民党と新自由クラブとの間で「政策合意書」というのが出されております。これは新聞発表もされております。これはお互いの党対党の問題であるということにとどまらず、やはり公式に公表されているという中身でもございますから、国民に対してこれは言われていることだというふうに受けとめなければならないと思うのですが、その中で「平和外交の推進」というところがございますね。「国是である非核三原則を遵守し、核軍縮など平和外交と総合安全保障の推進を図る。」核軍縮などをこれは推進する、非核三原則を遵守する、これを明確に国是であるということもはっきりこれは言われているわけですが、そういたしますと、これはただいまのINF交渉なんかについても、ウィリアムズバーグで中曽根総理がとられてまいりました、NATOの核配備計画そのものに対して、むしろこれは立ち入ったぐらいの姿勢で積極的に肯定されたということは大変におかしい。これはむしろ非核三原則ということを国是として持つ日本といたしましては、軍縮を目指すための過程とはいえ、核抑止力の論理の面ばかりを重視するというのでは非核三原則の精神が失われてしまう。核はつくらない、持たない、持ち込ませない。はっきりしているわけでありますから、そういうことからすれば、これは毅然とした姿勢で臨んでいただかなければならぬ課題であるということを言わざるを得ません。アメリカにせっかく大臣赴かれるわけでありますから、こういうことについてもはっきりそういう機会に意思表明をされるということは非常に大事なことであろうと思われます。いかがでございますか。
  51. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 新自由クラブとわが党との政策協定で、「平和外交の推進」ということで「国是である非核三原則を遵守し、核軍縮など平和外交と総合安全保障の推進を図る。」これはまさにわが自由民主党もこのとおり推進しておるわけでございますから、この考えは私たちも基本的に当然のことであると思いますし、非核三原則につきましてはわが国日本政府としましても国是であるという立場はしばしば表明をいたしておりますし、またこの核軍縮など平和外交の推進といったことも、これまで強く国際的にも主張をいたしております。そういう中で、いまおっしゃいましたウィリアムズバーグの声明、政治声明についてのいろいろと御批判があるわけですが、私はもちろん参加しておるわけでございますけれども、これは何もNATOの軍事体制に日本が介入していくとか、のめり込むとか、そういうことはあり得ないことで、これは日本の憲法の原則から見ましても、非核三原則を遵守するという立場からもそういうことは考え立場じゃないので、やはりソ連との間の核軍縮を進める上には西側諸国が政治的に結束をしなければならぬ、こういうことが眼目ですから、それでもって軍事的にそれが日本が何かの介入をするとか、何かそれに対してアプローチするとか、そういうことでは決してないわけで、その辺は理解をしていただきたいと思いますし、なお日米関係でいろいろと話をする際においても、INF交渉については、日本もこれはアジアの地域にソ連のSS20が大量にいま配備されて、さらにまたこれが増強されつつあるということでございますし、日本にとりましてもきわめて重大な関心を持たざるを得ないわけですから、こうした問題も含めて、アメリカとの間でこのINF交渉が一日も早く復活するように話し合いはしてこなければならない、こういうふうに思います。
  52. 土井たか子

    土井委員 そうすると、そういう大事な政治問題も含めて一月には、それは訪米の節ですね、話し合いの中身に当然のことながらされてこられる。  核軍縮の問題については相変わらず核には核をという核抑止論で臨まれるということなんですか。西側陣営の一員として核を持つことは必要であるという立場で臨まれるわけですか。これははっきりしておいていただかないと困りますよ。
  53. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日本は御承知のように非核三原則を遵守するわけですからこれは日本立場は明快でございますが、ただこれは、これまで政府がしばしば言っておりますように、いまの世界平和が現実的に維持されておるというのは、やはりいわば核の抑止力あるいは核の均衡といったようなことが一つ背景にあって現実的に具体的にはこの平和というものが戦後維持されてきている、こういうふうな認識は持っておるわけでございます。
  54. 土井たか子

    土井委員 この問題については少し立場が、全然私たちそれは納得できない立場でありますから選挙前に、それであるがゆえに大変に今度の選挙の洗礼を受けて自民党がこれは敗北したということであるという認識をお持ちにならないと、これは日本の今後の外交のあり方についてもやはり国民の批判というのはより一層厳しくなりますよ。それは国民の批判のみならず、やはり世界の平和に対して貢献するというのが日本の役割りとして大事な至上命題としてあるわけですから、そういう点からすると、いまの外務大臣の御答弁ではまことに心もとない。この選挙の結果についてどのように受けとめていらっしゃるかということについても、これを厳粛に受けとめていらっしゃらない、そういう気配すらいたします。  ひとつそういうことについてまた時間を設けてしっかり質問の機会を持ちたいと私は思いますけれども、そうすると何のためにアメリカにいらっしゃるのか、さっぱり意味がありませんね。選挙で負けたけれども大丈夫だと言いにいらっしゃるだけの話ですか。いかがですか。
  55. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは日米関係というのは、いまさら申し上げるまでもなく非常に深い関係、いわば同盟的な関係にあるわけでありますし、そういう中でとにかく日本が解散をして少なくとも新しい中曽根内閣ができたわけでございますし、それからまた懸案の問題が日米間には現実に存在をしておる、こういう状況でございます。したがって、そういう中で、両国間で今後の問題につきまして、両国間の問題について話し合う。交渉するわけではありませんけれども、やはりお互いの立場を話し合うということは大事なことであろうと思いますし、それからやはり現在の国際情勢、いまお話しのようなINFの問題あるいはまた朝鮮半島の問題、さらにまた地域紛争の問題、そうした問題等についてもやはり意見の交換をするということはこれは日本外務大臣としては非常に重要なことじゃないか。これは日本の今後の外交を推進していく、これからの日本の国益を守っていくという立場からも非常に大事なことであるし、やらなければならない責任のやはり一つである、そういうふうに考えて積極的に行ってこよう、こういうふうに思っているわけです。
  56. 土井たか子

    土井委員 第二次中曽根内閣という新しい出発に当たってということもあるのでしょうが、非常に厳しい出発でございます。これは選挙の洗礼の結果が自民党にとっては非常につらい結果であっただけに、今度はアメリカにいらっしゃるのも以前と違いが出てこなければならないはずですが、以前にいらっしゃったのとの違いはどういうふうにありというふうに自覚をされていらっしゃいますか。その辺はっきり聞かしていただいて次へ参ります。
  57. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは私の方から積極的に乗り込んでいこうということでありまして、それなりに日米関係で出てくる話というのはこれまでとはまた違った形で出てくるかもしれない、こういうふうに思います。特に日米間の懸案については、アメリカも選挙を控えておりますからどういう対応で出てくるか。私は、相当厳しい姿勢というふうに判断をせざるを得ないわけですが、しかし日本立場というのも、第二次中曽根内閣ができたその過程、そうしてまたこれからの考え方というのも十分説明をしていく。そうして日米間でやはり信頼関係というものは今後とも維持していく一つの礎石にならなければならぬ、こういうふうに思って行くわけなんでして、なかなか問題はたくさんありますから、これは行ってみなければわからぬわけですが、しかし、私は、交渉ということではなくて、両国の基本的な考え方とかこれからの協力の問題であるとか、特に私の場合外務大臣ですから、いまの世界情勢に対する認識であるとか、あるいは核軍縮に対する考え方であるとか、朝鮮半島、アジア情勢、そうしたものも含めて広範にひとつ意見の交換をしてみたい、こういうふうに思うわけです。
  58. 土井たか子

    土井委員 いま私がお尋ねをしたところの意味が何にも生きてない御答弁しか出てこないわけですけれども、相変わらず唯々諾々とした姿勢で臨まれるのでは、これはもう意味がない。その対米関係というものをいま大変に重視をされ過ぎるぐらいにされているということはよくわかるのですが、先ほどの外務大臣の御答弁でも出てまいりました対ソ関係をおざなりにしてはいけない、これはもうもちろん大事な話であります。どのようにして進めていらっしゃるおつもりですか。
  59. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 対ソ関係もこれはきわめて重要であると思っております。特にソ連は隣の大国ですし、この間の友好関係というものを何とか維持発展をさせたい、こういう思いは恐らく共通、土井さんと私も同じ考え方だと思いますが、しかし残念ながらいまの日ソ関係というのはそう順調にいっていない。特に大韓航空機の事件が起こりまして以来、非常に冷ややかになっていることもまあ事実でございますから、これを何とかひとつ友好的な雰囲気のもとに進めていきたい、こういうふうに思います。  しかし、基本的には日ソ間には領土問題というのが存在をして、これが何ら解決の糸口が見出されてないということで、これはもう日本としてもどんなことがあっても譲ることのできない一線でありますし、これはやはり領土問題を何とかテーブルに着いて話し合うということが対ソ関係を根本的に改善をしていく最大の道であるというふうに思っておるわけでございます。そして、最終的には平和条約締結。もうソ連だけですから、この平和条約を大国の中で締結してないのは。ですから、平和条約締結に向かって努力していかなければならないと思いますが、しかしその過程はなかなか困難だと思いますから、やはり周辺の環境整備といいますか、そのためには努力していかなければならぬと思います。したがって、幸いにしましてソ連の方も日ソ経済協議であるとかあるいは文化交流であるとか、まあ人的交流であるとか、今回の漁業交渉でもそうですが、やはりソ連としても日ソ関係の改善のための努力をしようという意図はあるわけですから、そういうソ連の意図も十分踏まえながら、日本としてもさらにこの点についてはいろいろとソ連との間の交流を繰り返して、よりよい環境整備のためにこれはやっていきたい、こういうふうに思っておりますし、今回せっかく再任をしましたから、これは私の責任一つとして今後ひとつ腰を据えてがんばってまいりたい、こういうふうに思っております。
  60. 土井たか子

    土井委員 そうすると、責任一つとして腰を据えてやりたいという対ソ関係、さしずめ具体的には何から手をつけていこうというふうなお考えがおありになれば、それをここで聞かせていただきたいと思います。
  61. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 やはりいま申し上げました文化交流、これは非常に大事だと思うのですよ。文化交流であるとかあるいはまた経済の交流ですね、これもケース・バイ・ケースで日ソ間でいろいろと行われておるわけですが、こうした経済問題につきましても、やはり話し合う余地は十分あるんじゃないだろうかと思っておりますし、また要人の人的往来、そういうこともこれから一つの課題として検討してまいらなければならぬ。私はやはりソ連のグロムイコ外務大臣日本に来てもらうのが一番いい、こういうふうに思って絶えず要請をしておるわけであります。ソ連も半ばその気持ちになりかかっておったわけですが、その中で大韓航空機事件が起こりまして、さらにまた私もグロムイコ外相とは国連の総会で会う予定をしておりました。向こうもその方針であったわけでありますが、残念ながら流れてしまったということでございますが、そうした点をこれからも推進をしていかなければならぬ、こういうふうに考えます。
  62. 土井たか子

    土井委員 今回のこの日ソソ日漁業交渉の中で一つ気にかかりますのは、これは以前にない寄港の問題が今回取り上げられて、具体的にお互いの取り交わしになったわけですが、これは国際約束なんでしょうか、どうなんでしょうか。
  63. 加藤吉弥

    ○加藤説明員 日ソ間には日ソ通商航海条約がございまして、たとえば商船の入港については規定がございまして、これは国際約束になっております。しかしながら、漁船寄港につきましては、この条約には何ら規定がございません。一般的国際法に従っても、この寄港の問題は別途条約等で取り決めのない限り、その国の主権事項としてわが国が独自で判断できる問題であるということでございます。したがいまして、寄港は国際約束とは考えておりません。
  64. 土井たか子

    土井委員 これは今回は寄港地をいずれにするかということと、その目的とか対象とか内容条件についてお互いに話をして取り決めをしたわけでしょう。取り決めをした上で、今回われわれにこれについて審議をということで提示をされているわけですね。取り決め内容というのはどういうかっこうでなされたんですか。単に口約束にしかすぎないのですか。メモ程度でも文書化されたものがあるんですか。お互いがそれに対して了解をしたというのは、どういうふうな客観的な、後それはお互いがこれで了解したなというふうな決め手があるんですか。何です。
  65. 都甲岳洋

    ○都甲説明員 本件につきましては、日本側代表団の団長からソ連側に対して意図表明という形で、ソ連側の要望のあった寄港については、次の条件で認める用意がございますということを述べまして、その述べた内容を文書にして先方に手交したという形になっておりまして、ソ連側からも同様にソ連側の団長が日本側に対して一定の条件のもとに寄港を認める用意があるという意図表明をいたしまして、その内容を文書にして日本側に手交した、そういう形になっております。
  66. 土井たか子

    土井委員 文書があるわけですね。文書を取り交わしているわけですね。そして、しかも今回のこの協定内容の一環としてそれが認められるというかっこうになっているわけですね。どうなんです、
  67. 都甲岳洋

    ○都甲説明員 協定の内客の一環としてということではなくて、むしろ漁業協定に基づいて操業する船舶について認めるという形での連関はございますけれども協定内容そのものの一環としてこれを認めたということではございません。
  68. 土井たか子

    土井委員 協定に基づいて実施する実施の仕方についての取り決めでしょう、これは簡単に言えば。
  69. 都甲岳洋

    ○都甲説明員 御承知のように、日ソソ日の三条、四条等に基づきまして、操業条件等につきまして当局間書簡で定めることになっておりますけれども、そのような具体的な操業条件等とはやや性質を異にするものでございまして、私どもとしてはこれは協定の枠外の話として、ただ協定に基づいて操業する船に対して認めるという意図表明をお互いにし合ったということでございますので、直接に協定に基づく取り決めという性格は持っていない、こういうふうに了解しております。
  70. 土井たか子

    土井委員 それじゃこれは何なんです。協定に基づく取り決めでなかったら、どういう取り決めなんです。
  71. 都甲岳洋

    ○都甲説明員 先ほども欧亜局長の方から御説明がございましたように、漁船寄港を認めるか認めないかにつきましては、これは各国の主権事項になっておりますので、この協定とは離れて、別途、日本側としてはソ連側に対し、一定の条件のもとに漁船寄港を認めるという意図表明を先方に行い、そしてそれを記録のために文書にして先方に手交したという形でございまして、先方からも同様な形の意図表明を記録として文書にして日本側に手交したという形になっておりますので、いわば意図表明の相互交換という形になっておるということでございます。
  72. 土井たか子

    土井委員 幾らそれを言われても、これは漁業交渉の中で出てきた向こう側の強い要求だったのではないですか。当初、水産庁長官は、これに対して非常に消極的であった。拒否する旨を強調されて言った時期もあったのです。しかし、結局はのませられて、これについては妥結をしたという結果にただいまはなっている。交渉の中身でしょう。しかも、今回の大事な中身です。これについて、やれ約束でない、やれ協定とは全然関係のない別問題である、こういうことでいま提示をされているかっこうになるのですが、それでは何のためにいまわれわれはこういうことを審議するのです。さっぱりわかりませんね。
  73. 加藤吉弥

    ○加藤説明員 先生指摘のとおり、今回の交渉においてこの問題はソ連側から提起された問題でございます。したがって、交渉の中身と申しますか、交渉一つの焦点であったということは事実でございます。しかしながら、協定の一部であるかどうかという御質問に対しては、先般来御説明申し上げておりますとおり、この意図表明はあくまでも意図表明であって、協定の一部あるいは協定内容をなすものではない、かように考えております。
  74. 土井たか子

    土井委員 そのことはソビエト側もはっきり確認をされておりますか、それでお互いがそういうふうに理解をしよう、今後は一年限りで、今回限りであるということも確認をしよう、これは全くお互いの約束事ではないのであるということもお互いが確認しよう、こういうことに対しての、第三者が見た場合にはっきりわかるような、そのことを相互問が確かめ合っているという確たる根拠になるべきものがありますか。
  75. 加藤吉弥

    ○加藤説明員 まず、今年限りの措置であるという点につきましては、交渉過程において繰り返し当方から説明いたしております。また、意図表明の文書も、しさいにこれを読めば、一年以上にわたる何らの意図、あるいはわが方の方針をコミットしているものではないということは明瞭でございます。  本件についてその法的な性格等についてソ連側と明確な合意があるかどうかという点でございますが、その点については必ずしも詰めて、こうである、イエスかノーかという形での話は行われておりませんが、ソ連側からわが方の意図表明と見合う同種の意図表明を行っておる。それから交渉全般の進み方、その記録等から見てもこの点について日ソ間に誤解はないと考えております。  いずれにいたしましても、本件はあくまでも意図表明を記録に残すためにつくった文書である、この点については日ソ間には何ら誤解はないと確信いたしております。
  76. 土井たか子

    土井委員 時間ですから、私やめますが、それでは一つだけ最後に都甲さんに聞いておきたいのは、協定に基づかない新たな日ソ間での約束事をここで確定をしたというふうに理解していいのですね。いまさっきからの御説明を承りますと、そうなりますよ。そして、日ソ間の約束事というのは、これは国際的約束以外の何物でもないのです。日ソの、二国間の国際的約束です。新たに協定外のものをこういうふうに約束したと、こういうふうに理解していいですね、どうです。
  77. 都甲岳洋

    ○都甲説明員 本件につきまして、この文書の中の表現を若干引用させていただきますと、「日本国法令に従ってこれを許可する用意がある旨表明した。」というのが小和田代表の発言の最後のところでございます。ソ連側の発言は、「相互主義条件の下にナホトカ港を利用出来る旨ここに通報する光栄を有する。」という形になっておりまして、あくまでも双方が、もちろん話し合いの結果でございますけれども、それぞれ港を利用させる用意があるということを通報し合ったという形になっております。  もちろんその背後には、日本側として当然にそのようにソ連側漁船寄港を認める用意があるということを明確に表明したわけでございますから、それなりの重みはございますし、ソ連側としてもそれを認める用意があるということを代表の発言として記録にとどめたわけでございますし、それなりの重みがあると理解しておりますけれども、いわゆる国際約束という種類のものではないことは、この文書の表現ぶり及び性格及びその作成経緯からして明らかであろうと思います。もちろん、ですから、双方政府がそのような意図を明確に表明したということ自体はそれなりの重みを持っているということは、重ねて申し上げられると思います。
  78. 土井たか子

    土井委員 お互いが意図の表明をして、お互いがそのことについて確認をして、そして了承しているのに、約束でないということがあるのですか。こんないいかげんなことはないですよ。  そうすると、日本が取り決めたことに対してソビエト側がもし反したような寄港の仕方をしたときに、どうするのです。
  79. 加藤吉弥

    ○加藤説明員 日本側の意図表明におきましてもソ連側の意図表明におきましても、相互主義ということがはっきりうたわれております。したがって、もし当初の意図表明あるいは当初の話し合いに反するような行為があれば、相互主義という枠内で同様の措置を双方がとり得る余地があるわけでございます。したがって、御懸念のような事態は起き得ないと考えております。
  80. 土井たか子

    土井委員 時間ですから、終わります。
  81. 中島源太郎

    中島委員長 次に、玉城栄一君。
  82. 玉城栄一

    玉城委員 外務大臣にお伺いしたいのですが、この日ソソ日漁業協定なんですが、交渉は例年になく厳しかったあるいは難航したという話があるわけでありますが、これは毎年、わが国の方は後退していますね、譲歩を強いられている、毎年そういうことになっているわけです。これはいろいろな言いわけもおありだろうと思うのですが、私は、外交交渉として、この結果からしまして、これはこれでいいのかという非常に疑問があるのですが、いかがでしょうか。
  83. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 確かにこの漁業協定は、できればやはり長期化をする必要がある。私も、ことしでしたか、カメンツェフ漁業大臣が見えましたときに、そのことをお話をいたしまして、農林大臣もそういう考えのもとで日ソ間で交渉しておられますが、何分相手のあることで、これは妥結、合意を見ておりませんけれども、今後ともこうした協定の長期化というものはやはり必要じゃないか。毎年末にこうして交渉妥結をして、正月を前に控えて国会に大急ぎでかけなければならぬ、こういうことでもありますし、あるいはまた出漁者が毎年毎年非常に気をもみながら漁業協定の推移を見守っていかなければならぬ、こういうことですから、何とかこれは長期的なものになることを期待をしますし、今後ともそういう努力はやっていかなければならぬ、こういうふうに思います。
  84. 玉城栄一

    玉城委員 私が申し上げていますのは、毎年毎年わが国の方は譲歩を強いられている、後退しているということなんですね。たとえば漁業の割り当て高の問題にしましても、いまさっき問題になっています寄港の問題にしましても、何か新しいものが常に出てきていますね。相互主義ということでナホトカヘのわが国漁船寄港も認めるとは言いつつも、常にやっぱり譲歩を強いられている。これは外交交渉としては拙劣じゃないかと私はあえて申し上げたいのですが……。
  85. 渡邉文雄

    渡邉説明員 実際に交渉に当たった者としてお答え申し上げたいと思いますが、数字をごらんいただくと歴然とするわけでございますが、昭和五十二年、三年あるいは四年、両方の協定ができた当時におきましては、ソ側も六十五万トンの割り当てに対しまして七割以上の実績を上げておった時期がございます。それから日本側も同様に七割前後であったわけでありますが、その後それが日本側は六〇%ないし七〇%前後の実績率を上げ続けておるわけでありますが、ソ側におきましては毎年それが下がってまいりまして、五〇、三〇、最近では二十数%になってきたわけでございます。そのように実際の消化率の差が拡大し、それが定着化してきたことに対するソ側の焦りと申しますか、いら立ちと申しますか、自分たちが絶対量としましては二十万トンしかとらない、日本側は五十万トンとっているというその現実に対して、自分たちも日本と同じようにたくさんの消化率が上げられるように日本側操業条件の緩和を受け入れるべきであるという要求がここ数年続いておるわけであります。それに全然こたえないで一方的に交渉を続けておる限りにおきましては、総クォータ等量主義の方になびいてくる可能性が非常にあるものでございますから、受け入れられる範囲内で、現実的に問題の生じない範囲内で日本水域の対ソ緩和ということをやってきたわけであります。一昨年までは日本側も譲りましたがソ連側からも譲ってもらうという事実がございましたが、御指摘のように今年と昨年度におきましては日本側が一方的な譲歩になっておることは事実でございます。
  86. 玉城栄一

    玉城委員 先ほども外務大臣おっしゃっておられましたとおり対ソ関係日ソ関係の改善、そして対話、それを文化的にも経済的にもあるいは人的な交流、そういうお話をしておられるわけですが、八月に北方領土視察へ行かれたときにも大臣は記者会見でそういうことをお話ししておられるわけですね。先ほどもお答えがありましたけれども、非常に大切なことだと思うのです。  そこで、例のアフガン問題以降、ポーランド問題、大韓航空機撃墜事件等、わが国として一連の対ソ制裁措置というものを行ってきております。解除されたものもあれば残っておるものもある。それをちょっとおっしゃってください。大臣でなくても結構ですが、それを一つ一つどの点が解除になっておって、どれが残っておるのか、残っておるのはどうして残っておるのか、どうするつもりか、それをちょっと御説明いただきたいのです。
  87. 加藤吉弥

    ○加藤説明員 アフガン、ポーランド関連のわが国の対ソ措置の主要なものは次の諸点でございます。  まず第一点、対ソ公的信用供与についてはケース・バイ・ケースで慎重に検討の上対処する。第二点、公的人物交流についてもケース・バイ・ケースで慎重に対応する。第三点、モスクワ・オリンピック不参加。第四点、ココムにおける高度技術の対ソ輸出の規制につき西側諸国と協力すること。以上の四点が主要の問題でございます。  そのうち、モスクワ・オリンピックはもうすでに過去の出来事でございますので、この点はなくなっているということは自明の措置でございます。その他の三点につきましては、現在なおこれを維持いたしております。すなわち公的信用についてケース・バイ・ケースに判断すること、公的な人物交流についても同じくケース・バイ・ケースで判断すること、ココムの約束については西側諸国と協調してこれを遵守すること。これらの点につきましては、アフガン、ポーランドの現状が何ら改善を見ていない以上、わが方としてもこれを撤廃ないし改善することをしないまま今日に至ってきているわけでございます。
  88. 玉城栄一

    玉城委員 いまお話のあったこと、やはり大臣もそういうお考えでいらっしゃるのか。対ソ関係改善ということでいろいろな経済交流とかそういう文化交流とかということも含めて、いまのいろいろな制裁措置についてもやはり検討していくというようなお考えを持っていらっしゃるのか、いかがでしょうか。
  89. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 この問題につきましては、日本だけの問題でなくてやはり関係国もあるわけですから、関係国の動向等も踏まえながら日本としても検討していきたい、こういうふうに思っております。
  90. 玉城栄一

    玉城委員 そこでソ連漁船の小名浜港寄港、この小名浜港をそのように寄港させるというふうにした理由ですね。何かソ連の方は複数の要求もあったやに聞いておるが、これは今年限りということになっていますけれども、あるいは来年この小名浜港も含めて別の港という要求も来ないとも限りませんが、その小名浜港にした理由ですね。それから来年そういうことについてどう対応されるのか。
  91. 渡邉文雄

    渡邉説明員 寄港の問題は水産サイドに限って申し上げますと、わが国の港を利用してわが国の沿岸水域外国漁船操業することに対するわが国の沿岸漁民の反発と不安、そういうものを除くために、たしか四十二年だったと記憶しておりますが、ああいった法制度ができたわけでございます。したがいまして考え方といたしましては、寄港を認めるに際しましてもわが国の沿岸漁業の円滑な秩序、操業というものに支障を来すようであってはならないわけでありますので、そういった観点で種々の検討が行われたわけでございます。したがいまして、たとえば小名浜のその選定されるべき港の周辺に養殖施設が非常に設置されているというようなことでございますと、港に入るに際してふなれなソ連船がわが国の沿岸漁業の養殖施設を壊してしまうというようなことになりますと、新しいトラブルのもとになりますし、そのことが日本の沿岸漁業の正常な秩序の維持に支障を及ぼすということにもなりかねませんので、そういった沿岸の養殖施設の設置状況あるいは利用される港に、利用しようとするソ連船のトン数等からいきまして一定の水深が必要でございます。そういったこと。それからでき得べくんば、その港にすでにソ連船が相当程度入っている。とすればそういう意味での地元の反発も少ないのではないか。事実小名浜につきましては年間数十隻のソ連の貨物船が入っているという事実もございます。そういったことを総合判断をいたしまして小名浜を選んだわけでございますし、さらに全くフリーで入れるわけではございませんでして、その地域の漁業の一番盛んな秋、九、十、十一月は寄港を認めない時期にするとか、あるいは一時期に無制限に大ぜい入るのではなくて、隻数の制限をするとか、油とか網とかいう直接漁業に寄与する資材の補給は認めないとか、そういう意味で地元の沿岸漁業の振興と矛盾しない形での寄港ということにいたしたわけでございます。そういう意味で小名浜を選定したわけでございます。小名浜が選定された経過は以上でございます。
  92. 玉城栄一

    玉城委員 いまの長官お話で小名浜港、結局沿岸一般漁民への秩序といいますか、そういうものは混乱させないとかそういうことなんでしょうけれども、地元は大変な大騒ぎをしているのです。降ってわいたような、何でこんなことになっておるのかということですが、その影響とか、事前に地元とのどういう話し合いをされたのか、その辺いかがでしょうか。
  93. 渡邉文雄

    渡邉説明員 その前に、ソ側といたしましては複数と申しますか、かなり多くの港への希望を交渉過程では言っておったわけでありますが、先ほども申しましたような沿岸漁業との関係考えますと、数多くの港を認めるというわけにはまいらないわけで、それは一港に限ったわけでございます。さらにその場合にも各種の条件をつけたわけでございますが、小名浜港交渉過程でいよいよやはりこれは何とかそれを譲歩しなければ、日本の北洋漁業の維持ができない。特に五百メートル以浅の操業禁止問題という大変深刻な問題がことしはございました。そういったこともございまして、寄港について譲歩をする覚悟を決める前に県、地元等につきましての若干の打診はいたしたわけでございますが、もちろん時間的な関係もございまして十分な事前の説明は確かに不足しておったわけでございます。  それで、ただいま先生指摘のようなこともあるわけでございますが、先日、私自身知事さんにもお目にかかりましたし、たしか昨日、私どもの方の担当部長が地元のいわき市の方へ出向いておりまして、関係者に御了解いただくようにせっかく努力をしているところでございます。見通しといたしましては、各種の条件あるいは盛漁期を避けるというようなことで地元の理解を得られるものと考えております。
  94. 玉城栄一

    玉城委員 たとえば漁網の破損だとか、そういうトラブルですね、あるいは、たとえば人身上のいろいろな事故だとか、そういうものについては対応はどのように考えていらっしゃるのですか。
  95. 渡邉文雄

    渡邉説明員 ただいま先生指摘のように、日本の沿岸漁業で数多く設置されております養殖施設等につきましては、日本漁船は熟知しておりますからそれを壊すことはめったにないわけでございますが、ふなれなソ連船が港に入るときにそういったことがあってはなりませんから、そういうものの敷設が非常に少ないということをその選定の理由の一つにしているわけでございます。  不幸にして接触事故あるいは破損事故等を生じた場合には、当然損害賠償の請求をするつもりでございますし、過去にも二百海里以前にそういった事故が起きたことがございまして、現在、そういった事故が起きた場合、その損害賠償を円滑にするための仕組みも一応でき上がっております。そういったことを活用し損害賠償等をするわけでございますが、問題は、損害賠償の請求に至る前に、未然にそういった事故が起こらないようにすることが大事でございますので、その面での努力は具体的な問題としてこれから懸命に続けてまいりたいと考えております。
  96. 玉城栄一

    玉城委員 外務省とされても、当然対応はされる準備はしていらっしゃると思うのです。たとえば北海道にも大使級の方がいて、窓口になりましていろいろな交渉をしていらっしゃる。今回の場合は、外務省としても窓口もきちっとされないと——それは当然そういう準備はしていらっしゃるわけでしょう。
  97. 加藤吉弥

    ○加藤説明員 先ほど先生が御指摘になったような事故、人身事故とかそういうものが起きないために、まず第一に非常に厳格な条件を課しております。たとえば一時に上陸できる乗組員の数を百五十人に制限する、それから上陸時間を一日五時間にする、行動範囲はいわき市内に限定する、さらには宿泊は船内で行うというようなことを条件として課しておりますが、これはそのような事故あるいは不測の事態をできる限り避けたいという考慮にも基づいて課した条件でございます。  本件寄港につきましては、御案内のとおり、ケース・バイ・ケースに在京ソ連大使館から外務省に口上書をもってその都度申請してくる、こういうことになっておりますので、私どもといたしましては、口上書が接到し次第、諸般の観点から十分慎重にこれを検討し、関係省庁とも連絡を密にいたしまして、不測の事態が起こらないよう万全の措置を講じていきたいと考えております。
  98. 玉城栄一

    玉城委員 百五十人、それから五時間、泊まるときは船の中、この市内に限定ということ、市のエリアを決めてどこどこということでなくて、市全体、そこからはみ出したとかそういう場合はどうなるのですか、市外……。
  99. 加藤吉弥

    ○加藤説明員 実際にいわき市をはみ出したときにどうするかというお尋ねでございますが、こういう事態が万一生ずるとすれば、それは治安当局、公安当局の御協力によらざるを得ないと考えております。  ただ、ソ連との関係では、旅行制限それから行動制限というようなものを従来から相互主義でやっておりまして、私どもの承知している限り、事前に課された条件は、相互に比較的正しくこれを守っているという実績がございます。事前にいわき市に限るということをはっきり言っておきますれば、恐らく意図的にその範囲を超えるというようなことは余りないのではないかと、万一そういう事態が起これば、その土地土地におきます治安当局の御協力を得て、適切な対処を図ってまいりたいと考えております。
  100. 玉城栄一

    玉城委員 防衛庁の方に確認しておきたいのですが、今回のソ連漁船の小名浜港寄港の問題なんですが、これはわが国の安全保障上、全く影響はないと考えていらっしゃるのかどうか。
  101. 松村龍二

    ○松村説明員 お答え申し上げます。  今回の小名浜寄港につきましては、防衛庁といたしましては、防衛上の問題はないと認識いたしております。
  102. 玉城栄一

    玉城委員 これは防衛庁というよりは、外務省の方にお伺いしましょうか。よく擬装された情報収集船が紛れ込んでいるという話を聞きますね。その点、やはりそういうこともあるのかどうか、これ、外務省でしょうか。——外務省の方ですね。
  103. 加藤吉弥

    ○加藤説明員 いわゆるレポ船というような形で、日本漁船が先方と接触をして、いろいろな情報を提供しているケースがあるというようなことは伺っております。先方の寄港する漁船が、いわゆるスパイ船というような形で活動するということについては、事前に包括的にそうであるときめつけるわけにはまいらないと思います。ただ、そういう事態が起こることはあり得ないことではないと考えておりまして、先ほどの繰り返しになりますが、いろいろ厳しい条件を課しておるということ、それからその都度口上書による稟請を求めて、これに基づいて判断するというようなこと、こういう措置を講じて、公安上あるいは機密の漏洩というようなことのないように、万全の努力をしておるつもりでございますし、今後もそういう方針で対処してまいりたいと考えております。
  104. 玉城栄一

    玉城委員 そういうことで、地元の関係者の方方には大変不安感があるわけですから、外務省とされても、今後のトラブル発生の場合に窓口をきちっとしておかれて、万全の体制を、いまの公安上の問題も含めて対応していただきたいと思います。同時に、水産庁長官とされても、もっと地元の、特に一般漁民の方々に対して不安のないような御説明なり、こういう場合はこのように対応していくのだということをきちっと納得していただくような努力は、ぜひやっていただきたいと思います。  そこで、この北洋漁業の問題についてなんですが、毎年、一年ごとにこの委員会でも協定を審議して感じますけれども、最初申し上げましたとおり、どんどん後退してきているということで、長官、今後の北洋漁業の展望についてどのような考えを持っていらっしゃるのか、お伺いいたします。
  105. 渡邉文雄

    渡邉説明員 先生もすでに御承知だと思いますが、北洋漁業ソ連だけではございませんでして、アメリカとの関係でも大きな問題があるわけでございます。ソ連日ソソ日のほかにサケ・マスという問題がございまして、数量だけでいいましても、約二百万トン近いものがソ連水域あるいは米国水域での漁獲量になっているわけであります。わが国の現在の遠洋漁業が二百万トン強でございますから、その大部分ソ連ないしは米国水域ということに相なろうかと思います。  またさらに漁業種類等を見ますと、日本の沿岸ではとれない特殊な、サケ・マス等がその一つの例でありますが、あるいはカニとかスケトウとか、日本の食生活にとってきわめて大事でありながら日本近海ではなかなかとりにくい魚というものも数多く入っているわけであります。そういう意味で、北洋漁業わが国の水産業にとって大変重要なものであるということは言うまでもないわけであります。  それから、五十二年に二百海里ができました当時におきましては、従来の伝統的な漁獲国に対する実績確保するという考え方といいますか、そういうものが沿岸国それぞれ一応あったようでございますが、最近におきましてはそういった考え方は非常に少なくなってまいりまして、むしろ貿易とかあるいは政治問題等の具に供されるということが間々あるようでございます。そういった意味で、これからの北洋漁業の従来の実績確保するということは、今年の日ソのあるいはソ日交渉の経験から見ましても非常に至難のわざではないかというふうなのが私の率直な実感でございます。  しかし、何といいましても、わが国漁業にとって大変重要な分野でございますので、知恵をしぼり、努力を積み重ねることによって、何としてでもその姿を維持していきたいというふうに現在考えておる次第でございます。
  106. 玉城栄一

    玉城委員 いま長官おっしゃられましたとおり、北洋漁業を重要視しつつも、また大変御苦労しておられることもよく承知はしております。さらにまた御努力を願いつつも、同時にまたわが国の水産業の今後の発展ということを考えますと、南の方の漁業についても今後はやはり力を入れていく時代に来ているのではないかとも考えるわけですね。そういうことで、日本列島最南端の沖縄県は南の水産業の拠点となり得るべきだと思うのですけれども、現状は非常におくれていると思うのですね。どうでしょうか長官、やはり今後の南の漁業についての水産庁としての考え並びに特に加工産業ですね、水産業並びにその加工産業についての展望をぜひお聞かせいただきたいわけです。
  107. 渡邉文雄

    渡邉説明員 農業の場合でございますと、非常に南北に長い日本列島の場合、それぞれその地域的、気候的な特性を生かした各種の栽培作物の選定というものがわりあいやりやすいわけでございますが、漁業の場合にはさほどそういった気候的な特性というのは生かせないという現実は、一部否定し得ない分野としてあるわけでございます。しかし、そうは申しましても、四面海に囲まれている沖縄県が、年間の水揚げが、年によりまして差がございますが、六万ないし八万ということで、全国の中におけるシェアが、数字で見ましても、生産量、生産金額いずれも一%を切っているというようなことはやはりさびしいというのが私の実感でございます。  そういった意味で、何とか沖縄の、特に沿岸水域におきます沖縄の漁業の振興を図るというのがこれからの沖縄漁業振興策の基本ではないかというふうに私は考えておりまして、現在まででも、たとえば魚をとる産業からつくり育てる産業へという数年前から行われております行政の一環といたしまして、五十七年から石垣島に国営の栽培漁業センターの建設を進めておりまして、できれば五十九年度には完成をいたしたい。そういうことで、ハタ類とかマチ類、ノコギリガザミ等、南方の特色を生かした魚の漁獲量を上げていきたいというふうに考えておるわけであります。また、沿岸漁場の整備等で、サンゴ礁の高度利用を図るというような意味でのクルマエビの養殖というようなものも一つではないかというふうに考えておるわけであります。いずれにいたしましても、沿岸漁業の整備というものに漁業振興策としては力点を置いていきたいというふうに考えているわけでございます。  また、御指摘の水産加工業でございますが、沖縄でも現在加工業がそれなりの地位を占めているわけでありますが、特に生産量だけを見ますと四十七年以降増加傾向をたどっているということは喜ばしいことではないかと思うわけであります。ただ、品目別に見ますと、やはりかまぼこ等の練り製品が圧倒的に多いわけでございまして、この種のものの今後の需要の見通し等非常に明るいというふうになかなかまいらない面がございます。それにいたしましても、やはりもう少し原料魚を確保するということをベースにしませんと、沖縄の加工業のこれ以上の伸展というのはなかなか望み得ないのではないかという感じは持っております。しかし、それはそれといたしまして、現在あります加工自体の近代化、合理化は当然図る必要があるわけでございまして、そういった意味で先般も多獲性魚の利用高度化事業の一環といたしましてイワシ、サバ、サメ等のすり身の製造加工、これは共同利用施設でございますが、地元の御要望に応じてそういったものについての助成を行っておるわけでございます。  大変厳しい財政事情のもとではございますが、財政の許す限りそういった面で地元ともよく協議をしながら現実的な対応を進めてまいりたいというふうに考えております。
  108. 玉城栄一

    玉城委員 私たちもいろいろな御提言は申し上げてまいりたいと思いますので、長官とされてもわが国水産業の発展という立場からも、南の漁業についても力をぜひ入れていただきたいと御要望申し上げておきます。  最後に大臣、まだもう少し時間がありますのでお伺いしておきたいわけです。  大臣、来月訪米されるということで、恐らく委員会もそれまではないと思うのでぜひ一言御要望申し上げておきたいわけですが、大臣も御存じのとおり、世界終末の時計というのは四分前から、それがいま三分前に近づいたというようなことも報道されています。例のINF交渉中断ということで、米ソ核超大国が核兵粋の軍拡エスカレートをしていったらこれは大変なことになるわけですが、そういう点について、この問題、人類の生存という立場からきわめて重大な問題ですが、その点について、外務大臣いかがお考えですか。
  109. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いま国際情勢はきわめて厳しいと判断せざるを得ないわけであります。いまお話しのように、米ソの核軍縮INF交渉が中断をしているということ、さらにまた地域紛争が非常に激しくなっておる、拡大の傾向にもある。さらに最近の大事件がいろいろと勃発をしておる。こういう状況から見ると、世界全体に大変危険な素地が生まれつつある、こういうふうに考えております。したがって、そういう中で世界各国が平和をいかにして確保していくかということは、人類の共通の悲願としてこれに取り組んでいかなければなりませんし、日本も平和国家として世界平和に貢献をしていくということがこれからの日本外交の最大のテーマであろうと私は思うわけであります。  そういう中で、日米関係は非常に緊密な関係にありますから、今回私も訪問いたしまして、INFの交渉の中断、これをどういうふうにして再び開始をせしめるかといった問題、あるいはまた朝鮮半島その他の世界情勢の問題等についても隔意のない意見の交換をしてまいりたい。もちろん日本とアメリカとの間の懸案の問題もありますから、そういうこともあわせて日米間でじっくりと話をしてまいりたい、こういうふうに思っております。
  110. 玉城栄一

    玉城委員 終わります。
  111. 中島源太郎

    中島委員長 次に、渡辺朗君。
  112. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 水産庁長官を初め関係者の皆さんの今次対ソ交渉に当たっての御努力、感謝を申し上げたいと思います。  さて、従来の日ソ漁業交渉では、漁獲割り当て量というのは、実務的なあるいは技術的な話し合いの中で、ことしまでは五年連続日本側が七十五万トン、ソ連側が六十五万トン、それを維持してきております。しかし、今回の漁業交渉わが国ソ連漁船の小名浜港寄港を認めた上、昨年の漁獲量割り当て五万トンを譲っておりますし、ソ連側も前年度比一万トン減、日ソ双方ともに縮小均衡型で交渉妥結をしたということが言えると思います。  毎年言われてきたのは、ソ連側が厳しい態度であった、むずかしい交渉であったということが言われてきておりますけれども、今回も同じような言葉が言われております。水産庁長官にお尋ねをいたしますけれども、従来と同じように厳しいのか、それはもうあたりまえのことなんで、いままで交渉を何度かしていらっしゃるから、もうソ連側交渉姿勢というものは熟知のことであろうと思います。それとも、質的に違った意味での厳しさが出てきたのか、そこら辺をどのように御理解をしていらっしゃるのか、聞かしていただきたいと思います。
  113. 渡邉文雄

    渡邉説明員 率直に申しまして、私個人といたしましては今回の交渉が初めての経験でございましたので。しかし、それはそれといたしまして、トップ会談の回数などは従来の約倍近い回数を余儀なくされるとか、あるいは当初の相手方の出方が日本漁獲量を五十五に査定してきた。かつて過去数年間のうちで一番厳しい削減率に相なるわけであります。従来は最初から七十五を認めた年もございますし、削減した場合でも六十五というのが従来までの実績であったわけでありますが、今回はそれを二十万トンカットして五十五にしてきたというようなこと、それから期間が異常に長期を要したということ、そういう物理的な面からいきますと、そのこと自体は量的には非常にむずかしい、従来に比べて非常に厳しかったということは言い得ようかと思います。ただし、それが質的に違うかどうかということはなかなか、見方でございますからあろうかと思いますが、先ほど先生がおっしゃいました縮小均衡を辞さずというソ側態度が非常に明瞭に見えたという意味においては、先生がおっしゃったようなこともあるいは言えるのではないかと思うわけであります。議論過程で、ソ側としてはあえて等量とは言わないけれども、縮小均衡の方がよろしい。なぜなれば、七十五とか六十五とか言っても両国ともそれだけとっていないではないか。しかも、とれていない比率はソ連の方がはるかに厳しくて、ソ側は十八ないし十九万トンしかとっていない。日本は五十万トンもとっている。これはきわめて不公平である。このインバランスをなくさない限りにおいては今回の交渉はできなくてもやむ得ないくらいの強い議論が当初あったわけでございます。そういう意味では、質的というのが当たるかどうかは別といたしまして、従来になく大変むずかしかった交渉であることだけは事実であろうと思います。
  114. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 ソ連側が、実績というのは非常に低調であった、その低調な割り当て量消化、これを上に上げるために寄港地を日本に求めてくる、そのような要求が出てくるというのはこれはちょっと筋違いではなかろうかと思うのです。水産庁長官、どのようにお考えでございますか。
  115. 渡邉文雄

    渡邉説明員 ソ側の言い分を一応申してみますと、消化率の差が、実績率の差が拡大し、かつそれが定着してきた、それを直すためにはソ連船の日本近海における操業条件を、漁獲高をもっと上げやすいように改善すべきである、寄港問題は操業条件の最大関心品目の一つであるというのが向こうの話であったわけであります。それに対しまして私どもの方は、ソ連実績率が上がらない、とれないというのは、とれないのではなくてとらないのである。かつての日本近海におけるソ連隻数は現在の約倍、魚種によっても違いますが、倍も船が来ていた。逆に言いますと、いま昔に比べると半分に減らしているではないか、かつて七割も漁獲実績を上げた年もあったではないかという反論を私どもは強くいたしたわけであります。それに対しましてはもちろん明確な答弁は返ってこないわけでありますが、常に言うことは、そういう過去のことよりも、現時点においてこれだけの実績の差があるということについての答えが得られなければ縮小均衡でいく、それも日本に対しては五十五万トン、ノミナルに与えるけれども、実際は二十万トンぐらいしかとれないように、ソ連水域におきます水深五百メートル以浅の、より浅いところの日本漁船操業を禁止するという規制強化を最後までおりなかったわけであります。そういったことで、それでは北洋漁業が壊滅の状態になるわけでありますので、わが方も理屈の上で納得したということではなくて、北洋漁業の従来の姿を維持せざるを得ないという観点に立ちまして、寄港問題についての譲歩というものをいたしたわけでございます。
  116. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 いまもおっしゃいました、ソ連側の方はとれないのではなくてとらないのではないか、それであるならよけいに、ソ連側の方が小名浜港を、そういうふうに日本の漁港あるいは港湾の開放を求めてくるというのはますますどうも理解に苦しむ、筋が違う。実際問題としてその小名浜港を開放したらそれがインセンティブになりますか。なると判断してこれは決められたわけですか。
  117. 渡邉文雄

    渡邉説明員 ソ側の言い分といたしましては、大体三月、百二、三十日、ソ連の船は港を出てから日本近海で三カ月余操業してソ連の港にまた戻るわけであります。三カ月間海の上にいると、やはり生鮮食料品もだんだん不足してまいりますし、休養も乗組員に対して必要になってくる。ところが、たとえばニュージーランド沖等に行けば寄港を認められて上陸もできて休養もでき、生鮮食料品の積み込みもできる。ソ連漁業者がニュージーランドには行きたがるけれども日本近海に行きたがらない。日本側はとらないと言うけれども漁業者が行きたがらないからとれないのだというのが向こうの言い分であります。その言い分も一部においてはわかる点がないわけではございませんが、小名浜港の寄港がどれだけ具体的にソ連操業度のアップ、したがって実績率のアップにつながるかということは、なかなかこれは計算上はむずかしいわけでございますが、ソ側としてそれを認めてくれるならば乗組員の士気が上がるという形で漁獲実績が上がる、あるいは一々ソ連の母港に帰って水の補給、野菜の補給をしなくて済めばその分だけ操業度が上がるというメリットがあるということは言ってはおりますが、数字的にそれが何万トンの実績向上につながるかということはなかなか判定しにくい問題ではなかろうかと思います。
  118. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 その点どうもよくわからないのですけれども、それにしても今回の提案理由によれば、ソ連漁船わが国への寄港、これは一年に限るということでいろんな条件もつけてある。それを、先ほどもお話が出ましたけれども政府間の合意文書によらず意図表明という形になっております。これの拘束力というものはどういうものになってくるのでしょうか。外務大臣、これは拘束力というものは一体あるのでしょうか、ないのでしょうか。そこら辺のことをひとつお聞かせいただきたいと思います。
  119. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 法律的な問題、条約面からの問題については局長から答弁させますが、先ほども御答弁いたしましたように、国際約束ではないということでございますが、意図表明によって両国立場を明快にしておるということですから、これは実行することに相なる、こういうふうに理解しております。
  120. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 もうちょっと専門的に。
  121. 栗山尚一

    ○栗山説明員 ただいま大臣から御答弁申し上げましたとおりでございまして、法律的な形式で言えば、これは国際約束あるいは取り決めというような性格のものではございません。したがいまして、法律的な拘束力のある合意であるということではございませんが、他方交渉の実態、先ほど水産庁長官、欧亜局長の方から御説明しましたような状況でございますので、実態的にはやはりそれなりの意味はあるというふうに御理解いただいて結構であろうと思います。ただ、法律的な意味で拘束力があるかという御質問であれば、それはそのようなものではないということでございます。
  122. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 そうすると昭和五十九年限りというのも、条件というものは実はちっとも拘束力を持たないものであって、一方的に意図を表明したにすぎない、これから後の漁業交渉ソ連側寄港拡大の要求をしてこないという保証はございませんね、長官。どうもちょっと後味が悪い取り決めである気がしてならないのですが、今後ソ連漁船寄港拡大という要求がいろいろ出てくる、その懸念を解消するための何らかの外交的な配慮というものはなされているわけでしょうか。お聞かせください。
  123. 渡邉文雄

    渡邉説明員 漁業の側面から申し上げますと、ソ側要求は、何回も申し上げますように漁獲割り当て枠に対する消化率の差が拡大し、それが定着していることについての不満といいますか、焦りといいますか、そういったものがあるわけであります。したがいまして、その状態がもし仮に改善されないということでありますと、寄港問題をを含めまして日本水域におきます操業条件を改善しろというソ側要求は今後とも続くのではないかということが予想されるわけでありますが、漁業の問題でございますので漁況あるいは海況の変化によりまして漁獲高が動くということもございますし、これはやってみなければわからない問題ではございますが、もしも今回の寄港問題というようなものがソ連操業のアップに大きくつながるというようなことがありますればソ連もその拡大要求の根拠を失うわけでございますので、これは来年になって交渉をやってみなければわかりませんが、消化率の差が縮まる方向に動き出さない場合にはやはりかなり厳しい交渉が来年度以降も待ち受けているということになるのではないかというふうに思っております。
  124. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 もう一つこの問題について確かめておきたいのですけれども昭和四十二年の外国漁業規制に関する法律によりまして外国漁船わが国港湾への寄港については緊急避難あるいは貿易以外の目的での寄港は認めていない。今回初めてこういうケースが出る。これについて沿岸漁民の保護であるとかあるいは地元水産関係者の受け入れの心理的心構えといいますか、そういうようなものはきちっとできているんでしょうね。これはすでに十分に行われているという判断をしてよろしゅうございますか。
  125. 渡邉文雄

    渡邉説明員 先ほども若干御答弁の中で触れましたが、ソ連船が寄港する地域の選択に当たりましては、先生指摘のように、外国漁業規制法の趣旨にのっとりまして沿岸漁業の正常な秩序の維持ができない場合には許可ができないわけでありますから、正常な秩序が維持できるようにしなければならないのは当然でございます。そういった意味で、港の選定に当たりましては、沿岸の養殖施設の設置状況とかあるいは沿岸漁業の量的な多さかげん等も比較考量しながら港の選定を行ったわけでありますが、さらに当該地域の盛漁期であります秋の九月、十月、十一月は寄港を認めない、あるいは年間で寄れる船の隻数の制限をする。今回は七十隻というふうに制限してございますから、これがもし年間にわたって平均的な姿で入ってくるとすれば、恐らく一月に数隻にしかならないわけでありますし、しかも一回は四十八時間以内に退去してもらうというようなこと、いろいろ厳しく条件をつけたつもりでございます。そういう過程で沿岸漁業者の協力といいますか、この問題についての理解も得られるものと思っておるわけでございます。  ただ、一般的に日本の沿岸漁業者全体がこの問題について理解を持つということはなかなか至難のことでございまして、養殖施設の非常に多いようなところでは、恐らく決定的な拒否反応というのがあるだろうと思います。今回の選定に当たりましては、そういったことも十分考えて場所の選定をしたつもりでございます。
  126. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 なぜそのようなことを再度確認をしたかといいますと、農水省の出されました五十七年度漁業の動向に関する年次報告、これによりますと、「例年のように北海道南岸から銚子沖にいたる太平洋側において」「ソ連漁船三百五十七隻に対し立入検査を実施し、うち九隻を「漁業水域に関する暫定措置法」違反で検挙した。」その旨が記載されております。このようなことがいろいろある。ですから、私はこれら水域における日本漁業者に対するきちっとした事前の説明なり保護措置というものは講じられているのかということを再度確認したわけです。  関連しまして、このような九隻を検挙したということになっておりますけれども、五十七年度の事犯の内容とその処理について日ソ間でどのように取り扱われましたか、聞かしてください。
  127. 渡邉文雄

    渡邉説明員 御指摘の五十七年度のソ連漁船の違反状況でございますが、検挙九隻の違反の内容は、まず操業日誌に必要なことを書かなければいけないわけですが、その操業日誌記載事項の不備というのが九隻のうちの七隻、九件中七件でございます。それから許可証を絶えず持っていなければいけないというのが両国の約束事になっているわけでありますが、それの備えつけ違反が二隻であります。  これにつきましては、日ソ間での処理でございますが、わが国漁業水域に関する暫定措置法に基づきましてソ連側から担保金の支払いを保証する書面を提出させるというのが通常の手続になっておりまして、その提出をしてもらってから釈放する。この担保金は検挙後十日以内程度にすべて支払われているということでございますので、そういう形での処理がなされたわけでございます。
  128. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 水産庁長官にもう一点だけ聞かしてください。  来年の三月から日ソソ日のサケ・マス交渉が始まると思います。その見通しはどうですか、いままでの交渉にかんがみまして。
  129. 渡邉文雄

    渡邉説明員 サケ・マス交渉自体は日ソソ日のようにお互いに入り会って相手国の沿岸の魚をとり合うという話ではなくて、ソ連を母川国とするサケ・マスを洋上で日本漁船がとるということについての協議でございます。そういう意味ではかなり質的に違った側面を持っているわけでございますが、一般的な私の現在におきます感じといたしましては、今回の交渉がこれだけ難航したということからいたしますと、さらにことしの春、日本漁船がサケ・マス関係でかなり大量の違反事件を起こしたという事実があるというようなことも考え合わせますと、来年の春先のサケ・マス交渉は今回と同様あるいはそれ以上に非常にむずかしい局面を迎えるのではないかというふうに思っております。しかし、北洋漁業の中で非常に重要な地位を占めますサケ・マス漁業でございますので、私も知恵をしぼり、できるだけの努力をして従来の枠組みを維持するということに努力をいたしたいというふうに思っております。
  130. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 次に、外務大臣にお尋ねをいたします。  外務省では、去る九月一日、ソ連機による大韓航空機撃墜事件に伴い省内に設置した対策本部を二十八日、本日の日付でもって解散するということになったと言われますが、そのとおりですね。——そうしますと、引き続き外務省は真相究明の努力を続け、遺族に対する補償問題の円満なる解決のために側面的な支援をするとしておりますけれども、一体どこの機関がどのような形で真相究明なりこの問題の円満解決のために努力することになるでしょうか、外務大臣
  131. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 中島審議官を長とする対策本部は一応本日付で解散することにいたしましたけれども、しかし、この問題については今後ともフォローアップしていかなければならぬ、こういうふうに思っております。  遺族の補償問題につきましては、ただいま大韓航空との間の遺族間の折衝が続けられております。その状況等についても逐一承知をいたしておるわけでございますが、さらにこの点については今後とも外務省としてできるだけの御協力を申し上げなければならぬ。韓国政府に対しても私はしばしば申し上げておるわけでございますが、韓国政府からも大韓航空に対する特別な配慮を求めておるやに聞いておるわけでございます。  なお真相の究明につきましては、ICAOを中心として調査団が発表をいたしたわけでございますが、これは一応ICAOとしての調査の結果が明らかになったわけでございます。しかし、まだまだなぞに包まれておる面もないわけではない、こういうふうにも思うわけでございますし、この点も注目をして今後ともわれわれはさらに一歩進んだ真相究明ができることを期待をいたしております。  なお、ソ連からのいわゆる遺族、犠牲者の皆さんの遺留品等についての日本政府に対する受け渡しは二度にわたって行われておりますが、今後とも日ソ関係におきましてもこうした遺留品についての、さらにこれが獲得をされればこれもまた引き続いてわが方として受け取っていく体制もつくっておかなければならぬわけでございますし、日ソ間についてわれわれは正式にソ連に対して抗議を申し込むとともに、損害賠償についての要求もいたしておりますが、残念ながらソ連は一顧だにしないということでございます。しかし、われわれとしてもこの姿勢は変えずに今後とも取り組んでまいる考えてあります。
  132. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 今後ともひとつ一層の努力をお願いをいたしたいと思います。  最後に外務大臣、そのような問題があるにもかかわらず、やはり日ソ対話発展ということに力点を置いてお話をなさっておられます。先ほどの委員会における発言の中においても、平和外交路線を明確にしながらの、これからの推進を図るということを言っておられますが、具体的に特に当面、していこうとしておられる点、御決意の点、抱負の点をお示しいただきたいと思います。
  133. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いま国際情勢は非常に厳しいといいますか、むしろ悪い方向へ進んでおるというふうに判断をせざるを得ないわけで、先ほどから申し上げておりますが、米ソ間の核軍縮交渉が中断をしたということは大変憂慮にたえない状況でありまして、一日も早くこの米ソの交渉が再開されることをわれわれは望んでおりますし、この点につきましては、日本政府としても関係国に対しまして積極的に働きかけをしていかなければならないと思っております。  同時にまた、地域紛争が各所において続発をいたしておりますし、これが拡大をされるおそれすらあるわけですが、この拡大の防止のための日本としての外交努力というものも今後とも特に必要ではないか、こういうふうに考えます。この点はまさに日本外交の幅を広げて、平和に貢献するという立場から真剣に取り組んでまいりたい、こういうふうに思うわけでございます。  同時に、日ソ間につきましてはいろいろと事件のために状況は好転をしない、冷えておるという状況でありますけれども、そしてまた、日ソ間には領土問題という基本的な問題が横たわっておりますが、しかし、われわれは関係を改善をしていく、そして最終的にはやはり平和条約を結んでいくというためのこの環境の整備というものは、私はやはりやっていかなければならぬ、これは力点を置いてひとつ進めなければならぬ問題じゃないだろうか、こういうふうに思っておりまして、なかなか困難な事情はありますけれども経済、文化、人的交流、そういう面を通じまして日ソ間のこの関係改善のための姿勢をさらに進めてまいりたい、こういうふうに思っております。
  134. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 御努力を期待いたします。ありがとうございました。  終わります。
  135. 中島源太郎

    中島委員長 次に、岡崎万寿秀君。
  136. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 最後になりましたので、重複を避けて幾つか質問をいたします。  今回の協定の一番の新しい問題というのは、先ほどから質問されているように、小名浜港への寄港問題だろうと思うのです。渡邉長官の方では、養殖施設などいろんな配慮をした上でここを選んだということでございますが、しかし、以前にもソ連漁船による小名浜港漁民への被害があったことは事実でございます。絶対に日本漁業、周辺漁業への被害がないという保証はないと思うのです。そういう点で、今度の交渉の中で、もし被害が出た場合は、これは寄港問題を単なる損害賠償としてだけではなくて、問題によっては再検討をする、そういう積極的な主張をなされたかどうか、その辺について御質問をいたします。
  137. 渡邉文雄

    渡邉説明員 交渉過程外国漁業規制法の趣旨等も相手方によく伝えてあります。具体的には、わが国の沿岸漁業の正常な秩序が乱されるような場合には本措置を見直すということを私ははっきりと相手方に伝えてあります。
  138. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 本措置を見直すという積極的な発言、これは重要だと思いますので、確認をしておきたいと思います。  安倍外務大臣に聞きたいと思いますけれども外国漁業の規制に関する法律、これによって一つの先例ができたわけなんですね。韓国の漁船に関連しまして、いま北海道漁民などは相当その乱獲の問題については批判が上がっておりますけれども、もし韓国からソ連と同じように寄港要求があった場合は、これはお断りになりますね。このことをはっきりと確認しておきたいのですけれども……。
  139. 渡邉文雄

    渡邉説明員 やや詳しく御説明申し上げたいと思いますが、外国漁業規制法は、先ほど来申し上げておりますように、外国漁船日本の港を利用して日本の近海で操業することに対する沿岸漁業者の反発、不安等を取り除くために、御案内のように四十二年に設定されたわけでございます。その後、運用といたしましては、緊急避難とかあるいは貿易行為で漁船が入ってくるというような場合を除きましては原則不許可にしておるわけでありますが、その中でも、修理のためにどうしても寄りたいというような場合、あるいはかつてわが国が援助した漁業意味でのおくれている国の指導等のための漁船が入港する、無償援助でつくられた船が入港するというような場合にはこれを許可するというようなことは、運用としてはやってきたわけでありますが、原則として一般的には許可をしておらないわけでございます。  それで、今回、その外規法ができました四十二年以降非常に大きな変化が二つございました。一つは、おしなべて特にわが国の場合は三海里の領海を十二海里にふやした、それから二百海里法制というものがそれぞれの国ででき上がってきたということが新しい問題としてあるわけでございます。  それで、日本ソ連との関係におきましては、相互入り会いで日本もとりに行くしソ連日本の近海にとりに来るという形になっております。韓国と日本との関係におきましては、二百海里法の適用を行っておりません。したがいまして、ソ連の場合には日本の近海に来てとる場合も船の数、区域、操業期間協定に基づきましてきめ細かく定めてございますし、さらに取り締まり権につきましては、二百海里の中では日本国が持つという形の担保があるわけでありますが、韓国の場合にはそういった担保もございませんし、緩やかな漁業秩序維持のための約束事はございますが、きちんとした水域ごとの漁獲割り当てその他の約束事はないわけでありまして、そういう意味で非常に質的に違う側面を持っておるわけであります。そういったことからいたしまして、水産庁といたしましても、当面韓国側から要望があった場合にもこれを許可するということは考えてはおりません。
  140. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 それでは、韓国からあっても、これはもうそういうことは起こり得ないしあり得ないということと確認してよろしゅうございますね。
  141. 渡邉文雄

    渡邉説明員 先ほども申しますように、私あくまでも一般論として申し上げているわけでありまして、修理のための寄港とかそれから貿易行為とか、そういった場合には寄港を認めておるわけでございます。あくまでも一般論としての御理解をいただきたいと思います。
  142. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 次に進みまして、ソ連漁船による被害補償の問題です。  これは七三年から八一年まで六百五十五件ですか、請求金額だけでも六十二億に近いかなりの額に上っておりますが、これがどういう形でいま解決されつつあるのか。十月にモスクワ東京での合同委員会ができてグループ別に検討が始まったように聞いていますけれども、被害漁民に対してどの程度これは期待できるものであるか、これについてお聞かせいただきたいと思います。
  143. 渡邉文雄

    渡邉説明員 ソ連漁船によります漁具被害の損害賠償につきましては、漁業操業に関する日本国政府ソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定、これは五十年にできた協定でございますが、それに基づきまして日本地先沖合いの公海水域日本ソ連漁船あるいは漁具に事故が生じた場合は、その損害賠償の請求は東京モスクワにそれぞれ設置された漁業損害賠償請求処理委員会で処理されるという仕組みができておるわけでございます。現在、日本側から請求しております総件数は九百五十五件、これは五十八年の十二月二十日現在までの数字でございますが、このうち加害船が判明していない案件につきましては、一括処理方式によりまして賠償金約九千九百万円で一応解決を見たわけでございます。  一方、加害船判明案件につきましては、これらの案件の大部分が事故が発生しましてからかなり長年月を経たということもありますし、被害者の方からは、ソ連のあの船が加害船であるということを目で見て言うわけでありますが、証拠がないというようなこともございまして、なかなか話がまとまらないで今日に至っておるわけであります。  先生いま御指摘のように、ことしの十月にその問題を促進しようということで、東京で合同委員会が開かれたわけであります。この合同会議では、加害船判明案件の早期処理のための仕組み、やり方につきまして綿密な協議が行われたわけでありますが、加害船判明案件を四つのグループに区分をいたしまして、たとえば衝突または沈没事故というようなグループ、あるいは日ソ双方で事故の事実が確認されているものとか、あるいは事故発生について加害漁船と目されている漁船がこれに関与している可能性があるものとかあるいはそうでないものとか幾つかのグループに分けよう、それぞれのグループごとにどういう措置をするかというのをこれから決めようじゃないかという四つのグループに区分し、グループごとに加害船の責任の度合いを定めてこれを委員会が認定して、損害額に乗じて賠償額を決定するという方式をやろうじゃないかということについての合意を見たわけでございます。これは、従来数年間全く両者の言い分がかみ合わない状態で経過したことに比べれば質的な前進ではないかというふうに私ども受けとめておるわけでありますが、今後この両委員会案件ごとの具体的な作業が行われて、具体的な賠償額が早期に決定されることを私ども強く期待しておりますし、必要に応じて当方の委員会につきましての指導をやってまいりたいというふうに考えております。
  144. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 被害漁民にとりましては切実な問題ですので、早急な解決のために努力を願いたいと思うのですが、最後に、条約漁業との関連もありますので、三宅島の周辺漁業の問題、これに触れて質問をしたいと思います。  御承知のように、ミッドウエー艦載機の夜間における着艦訓練基地化の動きがにわかに強まってまいりまして、地元を初め大変な反響を呼んでいるわけであります。防衛庁の方も、ここを有力候補地の一つにする、そういうことも言明しております。御承知のように、この周辺海域というのは伊豆七島では有数の漁場でありまして、これは単に三宅鳥だけではなく、太平洋沿岸の岩手や四国沖からもそこに夜間に操業する船もかなりいるわけですね。そういう状況の中で、タッチ・アンド・ゴーという地下鉄に近いようなああいう衝撃音が魚群に対してどういう影響を与えるのか、そういう科学的なデータがあるかどうかについて、もしそれが不足ならば、その点について共体的な調査をする必要があろうと思いますが、この点水産庁長官いかがでしょうか。
  145. 渡邉文雄

    渡邉説明員 私どもが承知している限りでは、現在三宅島でそういう飛行機の発着訓練が行われているということを承知しておりません。  ただ、防衛施設庁におきまして、厚木基地の代替飛行場の建設につきましていろいろ検討されているというふうに私聞いておりますが、具体的な問題だというふうにはわかっておらないわけであります。もし仮に今後そういった問題が具体的になる場合には、当然のことでございますが、漁場環境評価を事前に十分行う、あるいは影響を最小限にするように措置するとか、あるいは関係漁業者に十分事柄を説明してその同意を得るとか、そういったことにつきましての適切な措置が講じられますように関係方面に働きかけてまいりたいというふうに考えております。
  146. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 現在最小限のデータはございませんか。あればそれを提供してほしいのですが……。
  147. 渡邉文雄

    渡邉説明員 三宅島周辺におきまして、そういう音と漁獲量との関係につきましての調査というのは、現在ないようでございます。
  148. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 三宅島だけじゃなくて結構ですよ。要するに、衝撃音と漁業との関係です。これについてデータがないかどうか。
  149. 渡邉文雄

    渡邉説明員 いま、担当の部長に聞きましたところ、かつてどこかの海区で、水中で、あるものを爆破させたことがどういう影響があるかというような調査をやった記憶があるようでございますが、具体的に、いつごろ、どこの水域でそういう調査をやったかということについてまではっきりしておらないので、御容赦いただきたいと思います。
  150. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 そういうことでしたら、なおさらのこと、私は、関係漁民の不安を解消するためにも、そういう科学的なデータをよく調査し、提供する必要があろうと思うのです。  それで、この問題は、ますます重要な外交問題でもありますし、また、周辺住民の安全、日本漁業の問題とも関係しますので、そういうデータを尊重して、日本漁業を守る立場を貫くということ、安倍外務大臣、いかがでしょうか、こういう見地からこの問題を処理するというようなこと、御発言いただけませんか。
  151. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 よく調査しまして、やはり日本の国益を尊重するという立場から判断をしていきたいと思います。
  152. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 時間が来ましたので、これで結構です。
  153. 中島源太郎

    中島委員長 この際、委員長から申し上げます。  日ソ漁業交渉妥結に伴う寄港問題についての双方団長の一方的な政策の意図表明の発言を記録にした文書を、本委員会に参考のため提出願いたいと存じますが、外務省は提出できますか。
  154. 都甲岳洋

    ○都甲説明員 御提出申し上げます。
  155. 中島源太郎

    中島委員長 それでは、提出願います。  発言の申し出がありますので、これを許します。土井たか子君。
  156. 土井たか子

    土井委員 いま新たに申し入れを強力にいたしました結果、寄港問題についての文書を提出されたわけでありますが、これは本来、今次交渉において非常に重要な交渉の焦点の一つでありました中身について、審議に先立って、当然のことながら当委員会に提示されるべき資料の非常に重要な部分であります。この点を提示せずして審議をしろと言われ、しかも、質問することに対して、答弁たるやいかにあいまいであるかというのが、後で議事録をお読みになってもよくおわかりになると思いますけれども、非常にはっきりしない答弁のままで今日に来たわけですが、こういう資料をあらかじめ提示すべきであるという、外務省の義務ですよ、これに対して、果たされてこなかったということに対して一言あってしかるべきだと思うのです。いかがです。
  157. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今後とも、委員会の審議に当たりましては、十分委員の皆さんの審議の御参考に供するために、外務省としては必要な文書、書類等については、今後とも積極的に提示をいたしたいと思います。
  158. 土井たか子

    土井委員 今後ともじゃないのです。ただいまのことを言っているわけであって、これは必要な資料であるということは歴然たる事実なんです。これについて、提示をせずして審議をしろと言われることに対して、責任をひとつはっきりさせていただかなきゃ困る。どうです、外務大臣
  159. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いろいろと御要求がございまして、いま提示をしたわけでございますが、しかし、外務省としましては、今回の日ソソ日協定につきましては、答弁その他において日本政府考え方を詳細申し上げておるわけでございます。ただ、文書について、先ほどからの御質問を聞いておりますと、あらかじめ提出をすべきであったというふうに私も承って判断をしておるわけであります。
  160. 土井たか子

    土井委員 そこで、一つは、資料提示をしなかったという上に立って、ひとつ外務省に、責任を持って答えてもらわなきゃ困ります。  いま提示された文書を見ますと——約束でないと言われるのです、今回の寄港問題は。協定に何ら関係のない、これはお互いの取り交わしである、こういうふうな御答弁に終始しているのです。取り扱いは日本の国内法によってやる、こういうことらしいですね。ところが、ただいまの寄港問題について、「双方団長の一方的な政策の意図表明の発言を記録のためそのまま文書にして相互に手交。」ということがまず前文として書かれておりまして、「一」以下の文書を見ますと、「一九八三年十二月二十四日付の日本側代表団長小和田恒の発言 ソ連側が「ソ日漁業暫定協定に従って漁獲に従事しているソ連漁船が、」云々、こうなっているのです。今度は、「日本側は、「ソ日漁業暫定協定に従って漁獲に従事しているソ連漁船が、」云々となっているのです。今回の寄港問題については、ほかの漁船やほかの商船の問題じゃございませんで、この協定に基づいて操業をやる漁船についてのみ取り扱いを進めているということは言うまでもない事実なんです。こんなことははっきりしているわけです。この文書によってもはっきりしているのです。どうして協定と何ら関係のない問題だと言い切れるのですか。協定に従って交渉があり、交渉の中身で主なる部分として今回取り決められた中身じゃないですか。世の中の一般概念としてこれが約束でないなんというのは通用しませんよ。どうです。
  161. 栗山尚一

    ○栗山説明員 先ほど都甲審議官の方から御答弁申し上げましたことを、若干口足らずの点があったら私から申しわけないと思いますが、先ほどの御答弁は、委員の御質問が、これは国際約束であるか、今回の協定の一環をなす国際約束であるかという御質問であったというふうに、私も伺っておりましてそういうふうに理解いたしまして、その限りにおいては、そういうものではない。すなわち、渡辺委員の御質問に対して私から御答弁申し上げましたが、法律的な拘束力のある約束事ではないということを都甲審議官の方から御答弁申し上げました次第でございまして、ただ、確かに、土井委員指摘のように、今回の交渉、全体の交渉の中で、寄港問題というのが合意のための実質的な条件であったということはそのとおりでございまして、その点は外務省あるいは政府の側として、それを否定しておる、全く今回の外でこういう了解がなされたものではないということは、これはそのとおりでございます。ただ法律的な約束事であるかという御質問でございましたので、そういう性格のものではない形で処理をしだということを御答弁申し上げました次第でございまして、そのように御理解いただきたいと思います。
  162. 土井たか子

    土井委員 これで時間が私はありませんから終わりますが、法律的な約束であるかどうかなんて一言半句私は聞いておりません。  よろしゅうございますか、約束であるかどうかということになると、今回の交渉の中での約束事というのはいまお認めになったわけですね。それは約束でしょう、こういうことになれば。約束でなければ、何のためにこういう交渉をやり、何のために取り決めをやったのです、そういうことになりますよ。これは約束ですね、もう一度はっきりその点をおっしゃっていただいて、私は終わります。
  163. 栗山尚一

    ○栗山説明員 どうも私、条約を担当しておる者として、約束という言葉をふだん使っております場合に、やはり国際法的あるいは法律的に拘束力のある文書あるいは合意であるかという観点からどうしても御答弁せざるを得ないことでございまして、そういう意味におきまして今回のものは、いまお配りしました文書からお読みいただければ明瞭なように、お互いに一方的に自分の方の意図を表明したという形で処理をしたということでございます。ただ実態は、確かに委員指摘のような性格があるということは、これは亳も否定しないところでございます。
  164. 土井たか子

    土井委員 終わります。
  165. 中島源太郎

    中島委員長 次に、渡部一郎君。
  166. 渡部一郎

    渡部(一)委員 これは全くもってけしからぬ。委員長から十分に外務省に対して御注意いただきたい。農林水産省にも御注意いただきたい。本委員会は外務委員会である。外務委員会である以上は、条約あるいは協定あるいは交換公文、共同声明、共同談話、新聞発表、議事録、交換議事録、記録文書の交換、いろいろな表明は行われるけれども外国との約束はいろいろなタイプで行われる。それを審議している真っ最中に、その文書の半分を引きちぎって半分だけこの場所に提出して審議をしろなどとは何を言っているか。当委員会をなめるもいいかげんにしなければいけない。委員長、あなたはその事実を知りながらこういうのを認めたのか。言ってもらいたい。外務委員長がまず答弁されたい。何だと思っているのか。僕は外務委員会は長いけれども、こんな醜態は見たことがない。だれがやったんだ。委員長、答弁せられたい。
  167. 栗山尚一

    ○栗山説明員 委員会に提出いたしました……
  168. 渡部一郎

    渡部(一)委員 君なんかに聞いていないよ。君に聞いていないよ。委員長が、私の意向を代弁させると言うならそれでもいいさ。けれども君がいきなり答弁する理由がどこにあるんだ。委員長が言え、自分で。ほかの委員会とは違うんだぞ、ここは。あなたがまず何か言え。
  169. 中島源太郎

    中島委員長 粟山条約局長。
  170. 栗山尚一

    ○栗山説明員 それじゃ委員長の御許可をいただきまして、ちょっと私から御答弁させていただきます。  委員会にお配りいたしました文書につきましては、これは私ども責任でございますので、私の方から御説明させていただきたいと思います。  ただいまのお配りいたしました寄港に関します文書につきましては、本来、先ほど来繰り返し御答弁いたしましたように、形式的にはあくまでもソ連側との間で口頭で処理をいたしたものでございます。したがいまして、それを記録にとどめて、内容的に万間違いがないことを確認しておく意味で、それを紙にして向こうに渡した、向こうのものもこっちへもらった、こういう形で処理をいたしました関係で、そういう処理の性格上、通常、委員会に配付申し上げております条約あるいはその関連文書の一環ではないということでお配りいたさなかったわけでございますが、確かに委員指摘のように、今回の協定の御審議をいただく上できわめて重要な内容を持っておるということはそのとおりでございますので、あらかじめそういう文書の形でお配りしなかったということにつきましては、これは私の方から委員各位に対して申しわけないというふうに存じます。
  171. 中島源太郎

    中島委員長 この際、政府に対し、委員長から申し上げます。  今後は、資料の提出については十分配慮するよう注意いたします。
  172. 渡部一郎

    渡部(一)委員 資料の提出について注意するだけじゃないんだよ。協定がこれだけあるのに半分ちぎってこの委員会に出してきたんでしょう。背景説明も十分でないんでしょう。当委員会質疑はちゃんとできていない。その責任はあなたでしょう。政府に注意するだけでは済まないでしょう。あなたは、委員全体に対して釈明するのがあたりまえじゃないですか。それを僕は言っているのです。あなたがおっしゃい。あなたの自分の責任はどうなんですか。
  173. 中島源太郎

    中島委員長 今後とも議事の運営につきましては十分注意をいたします。
  174. 渡部一郎

    渡部(一)委員 委員長も御就任早々にこういうことですから、おなれにならぬ点もあるでしょうから、御注意をいただくことを申し上げておきまして、この辺にしておきます。  けれども、先ほどの条約局長の答弁の中に、一言言うておきますが、これは国際約束がという問題に対して、法的な約束とは言えない、口頭のものだというようなお話ぶりをなさいました。これはまずいよ。北方領土の問題のときに田中総理がソビエトに行った際、北方領土の問題について応酬があり、日本政府がその言質をとったのは口頭であります。口頭で言われたものは法的な拘束力を持たないなどとあなたが弁明されると、日本外交はとんでもないことになりますよ。法的な約束と言えないなどと言った分は取り消されて、あなた、約束という言葉について、法的な拘束力のあるものとは言えないと言われた。実態はそうかもしれないがと言われた。法的な拘束力のないものならば、この協定は捨てたって構わないわけだ、こんなに問題の多いものは。そうでしょう。あなたの表現は、ふだんの英邁な条約局長の御答弁とは思われない。洗練されていない。この分については後ほど十分洗練された御答弁をいただきたいと思いますが、どうですか。あえて答弁をここでされると言うなら、私はもう許さない。どうぞ。
  175. 栗山尚一

    ○栗山説明員 一言申し上げます。  私は、口頭だから法的拘束力がないということを申し上げたものではございません。今回の処理が、そういう法的拘束力のない形で処理をしたのだ、形としては口頭で処理したということを申し上げたわけなんです。
  176. 渡部一郎

    渡部(一)委員 法的拘束力のない形で処理されたといまあなたは答弁をすりかえられたが、法的拘束力のない形ではあるが、実態的には拘束力はあるのでしょう。
  177. 栗山尚一

    ○栗山説明員 もちろん実態的にはそういう寄港を認めるということを条件として交渉が成立したわけでございますから、そういうことは日ソ双方で十分了解されていることでございます。
  178. 渡部一郎

    渡部(一)委員 この問題は問題があり過ぎます。せっかく自民党の理事が苦心惨たんしてこの時間を生んでくださった事情もわからぬでもありませんから、私は質疑をやめます。ですけれども、これは問題が多過ぎる。いまの答弁も、私はこれは今後の委員会において処理されることを同僚の議員に望みたいと思います。  もう一つ問題なのは、ここに防衛庁の人は来ていますか。——防衛庁の関係者が来ているか来ていないかわからぬけれども、いなければよろしいです、元長官までおられることですから。私言っておきますけれども、ソビエトの漁船に限らず、漁船の形をとって他国の領海内に進入する船舶が電波妨害を行ったり、あるいは行わなくともその強烈な能力を持っていたり、あるいはミサイル誘導装置に対して、その誘導電波システムに対して一定の影響を与えることのできるような能力あるいは装置を保持していたりするケースは枚挙にいとまがない。現にアメリカ政府においては、二百海里線の以内にソビエト漁船の進入を厳重に警戒しているのもそういう意味であると同僚議員から御注意までいただいた。小名浜港の中にこうした漁船を進入させることによって、東北及び北海道における自衛隊の将来の安全保障に対して重大な影響を与える可能性が生じるのか生じないのかわからないけれども、その点を十分計量されてこういうのを結ばれたのかどうか。それは戦争状態になってからの話だと言われるかもしれないけれども、そういうふうにみずからの能力を極端に削減していくということは将来大問題を惹起するんではないか。  こうしたことについて、質疑応答する時間がありません。こうした問題についても政府当局は十分反省されていることだろうと思うから、当該船舶入港に当たっては領海線において点検したり、臨検するとか——たとえばですよ。ほかの代償措置がとられているだろうと思うし、おられていないはずはないと思うが、ちゃんとルールを決めておいてもらいたい。そして、しかるべき御答弁をいただきたい。そうでないと、日ソ友好という言葉の片側で緊張のための礎石が打たれる可能性すらあるから申し上げておる。不用意な交渉の後に国益を害することが多過ぎる。これを出さない。ここの委員会に土井議員からやかましい御注意をいただかなければ出さなかった理由というのもここにあると私は考えておる。どうかその点を十分今後反省されるよう望みます。  外務大臣、私の述べましたことについて御感想を一言お話しいただきたい。
  179. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 まさにいま御指摘の点につきましては、今後の問題としてわが国としても十分注意をしなければならない課題であろう、こういうふうに考えておりますし、そのためには関係当局とも緊密な連携をとって、少なくとも国益を害することのないような方向で最善の道を講じてまいりたいと考えております。
  180. 中島源太郎

    中島委員長 これにて両件に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  181. 中島源太郎

    中島委員長 これより、両件に対する討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、順次採決いたします。  まず、北西太平洋ソヴィエト社会主義共和国連邦地先沖合における千九百七十七年の漁業に関する日本国政府ソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定有効期間延長に関する議定書締結について承認を求めるの件について採決いたします。  本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  182. 中島源太郎

    中島委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。  次に、日本国地先沖合における千九百七十七年の漁業に関する日本国政府ソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定有効期間延長に関する議定書締結について承認を求めるの件について採決いたします。  本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  183. 中島源太郎

    中島委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。  ただいま議決いたしました両件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  184. 中島源太郎

    中島委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  185. 中島源太郎

    中島委員長 本日は、これにて散会いたします。     午後一時七分散会      ————◇—————