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1984-07-12 第101回国会 衆議院 科学技術委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年七月十二日(木曜日)     午前九時四十六分開議  出席委員    委員長 大野  潔君   理事 小宮山重四郎君 理事 笹山 登生君    理事 平沼 赳夫君 理事 与謝野 馨君    理事 大原  亨君 理事 渡部 行雄君    理事 小川新一郎君       岸田 文武君    小澤 克介君       松前  仰君    村山 喜一君       遠藤 和良君    小川  泰君       工藤  晃君    辻  一彦君  出席政府委員         科学技術庁原子         力局長     中村 守孝君  委員外出席者         参  考  人         (社団法人日本         船主協会会長) 熊谷  清君         参  考  人         (社団法人日本         原子力産業会議         専務理事)   森  一久君         参  考  人         (長崎総合科学         大学教授)   山川二郎君         科学技術委員会         調査室長    曽根原幸雄君     ————————————— 七月十一日  放射線被曝線量基準緩和反対等に関する請願  (小澤克介紹介)(第七六七三号)  同(土井たか子紹介)(第七七三四号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  原子力開発利用とその安全確保に関する件  (原子力船むつ」問題)  派遣委員からの報告聴取      ————◇—————
  2. 大野潔

    大野委員長 これより会議を開きます。  原子力開発利用とその安全確保に関する件、特に原子力船むつ」問題について調査を進めます。  本日は、本件調査のため、参考人として社団法人日本船主協会会長熊谷清君、社団法人日本原子力産業会議専務理事森一久君及び長崎総合科学大学教授山川二郎君に御出席を願っております。  この際、参考人各位一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ本委員会に御出席くださいまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、原子力船むつ」問題について忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。  議事の順序につきましては、まず参考人の方々におのおの十五分程度御意見をお述べいただき、次いで委員からの質疑に対して御答弁をお願いしたいと存じます。  それでは、まず熊谷参考人にお願いいたします。
  3. 熊谷清

    熊谷参考人 社団法人日本船主協会会長熊谷清でございます。本日は、将来原子力船を利用する者の立場から意見を申し述べたいと存じます。  まず第一に、舶用燃料多様化原子力船開発必要性についてでございます。  四万海に囲まれた我が国において、海運は、資源エネルギー、食糧及び製品等の輸送を通じて、我が国経済安全保障上重要な役割を果たしてきております。ちなみに我が国輸出入物資は、昭和五十七年で六億三千五百万トンで、世界海上荷動き量の約二〇%に相当しております。我が国外航海運運航船腹量は、昭和五十七年で一億一千万重量トン世界船腹量の約一六%に相当し、日本輸出入物資の約三分の二を積み取っておるわけでございます。  今後とも、我が国経済及び国民生活を安定的に維持発展させていくためには、引き続き我が国海運が健全かつ安定的に運営される必要があると考えます。  次に、第二といたしまして、海運石油消費産業であります。我が国重油消費量のうち、外内航船で約二〇%を使用しておるわけでございます。また、外航海運運航費中、燃料費が五〇%を占めております、したがいまして、海運事業にとって舶用燃料安定的確保燃料の良質と所要量確保及び価格低廉化は、経営上一つの重要なポイントになっておるわけでございます。  石油供給余力上限界があるので、今後石油価格が上昇することは避けられず、また、二十一世紀にかけてエネルギー供給全体が逼迫してくるであろうと考えられます、海運界においても、我が国エネルギー安全保障一環として、舶用燃料確保のため、その多様化対策を講じていく必要があると考えられます。  石油にかわる舶用燃料の候補といたしましては、原子力、石炭、もちろん液化物でございますけれども水素等がございますが、これらの利用効率技術進展状況から見ますと、現時点においては、原子力実用化に最も近い位置にあるわけでございます。すなわち、ソ連では原子力砕氷船が三隻就航しているほか、アメリカ、西独では、原子力貨客船サバンナ号原子力鉱石運搬船オット・ハーン号実績がございます。これら先進諸国においては、既に原子力商船実用化に必要な基礎的技術を十分蓄積しておるわけでございます。  これに対しまして、我が国原子力船開発は十年以上もおくれていると考えられます。海運舶用燃料多様化対策一環として、かつ我が国造船業技術水準維持向上のためには、我が国としては、原子力船に関する自主的な基礎データ確保及び技術を確立しておく必要があるわけであります。このため原子力船研究開発を着実に推進し、二十一世紀における実用化に備える必要があると考えます。  原子力船実用化のための条件としましては、原子力船実用化の見通しについては、日本原子力産業会議原子力船懇談会報告書、五十七年九月、及び原子力委員会原子力船懇談会報告書、五十八年十一月などがございます。海運界といたしましても、こうした専門家の御判断を踏まえまして、二十一世紀初頭には原子力船実用化のための経済環境が整うものと考えています。  次に、原子力船実用化に当たりましては、安全性と同時に、経済性一つの大きなポイントであります。この点について、原子力産業会議原子力船懇談会報告書は、大要次のように述べておられます。「原子力船は、少量の燃料長期間にわたって運航ができ、高速化大型化に適している特徴を持っている。したがって、これらの特徴を生かして、原子力船として比較的早期に経済性を発揮し得ると思われる船種、船型としては、砕氷タンカー砕氷船については、資本費運航経費等の一定の前提条件のもとでは、原子力船の方が有利である。LNG船については、気化したガスを再液化し積み荷に還元すれば、原子力船の方が経済性を持っている。コンテナ船タンカー等については、原子炉システムコストの一層の低減を初め、運航方法改善等幾つかの条件を満たし得れば、原子力船在来船に近い経済性を発揮し得る可能性がある。」海運界としても、この専門家調査結果はそのとおりであろうと考えています。  原子力船実用化のためには、舶用原子炉プラントコスト低減のほか、原子力船安全性信頼性確保等さまざまの問題を解決する必要がございます。しかしより重要なことは、国民原子力に対してアレルギーともいえる敏感な反応を示す状況下にあって、パブリックアクセプタンスを得ることが大前提であろうかと考えます。すなわち、原子力船必要性安全性について広く社会的、国民的理解を得ることが必要であり、水産等との調整、寄港地周辺地域対策等、種々配慮を要する問題があろうかと考えます。さらには、原子力船に関する損害賠償制度原子力船に関する国際的な取り決め等、幾多の制度を確立する必要もございましょう。将来における原子力船実用化に備えて、原子力船研究開発と並行して社会的、制度的諸条件整備について、国が中心となって施策を推進する必要があると存じます。  原子力船研究開発における国の役割といたしましては、原子力船研究開発は次のような特徴を持っておると存じます。大規模かつ長期にわたるプロジェクトであり、長期かつ多額資金が必要であるということでございます。また、国家間で調整すべき多くの問題があるということでございます。問題が諸官庁、自治団体、業界等広範にわたるということもございます。  したがって、原子力船研究開発は、本質的には国民経済上の長期エネルギー安全保障一環であるとの認識に立って、国の大規模プロジェクトとして、国の負担と主導のもとに推進されてしかるべきであると考えます。  もっとも海運界といたしましても、専門分野における人材派遣ノーハウ提供等については、可能な限りの協力をいたしておりますし、今後もいたす所存でございます。  以上申し上げましたことを要約いたしますと、次のとおりでございます。  原子力船研究開発については、海運舶用燃料多様化から必要であると考えます。  原子力船実用化については、二十一世紀初頭には経済的環境が整うのではないかと考えます。同時に、社会的な環境及び諸制度整備も必要不可欠であると考えるわけでございます。  原子力船研究開発は、長期かつ多額資金が必要であることから、国が中心となって行う必要がございます。海運業界としては、人材ノーハウ提供等の面で、可能な限りの協力を今後もしていく考えでおります。  以上で私の意見陳述を終わります。どうもありがとうございました。(拍手
  4. 大野潔

    大野委員長 ありがとうございました。  次に、森参考人にお願いいたします。
  5. 森一久

    森参考人 ただいま御紹介いただきました原子力産業会議の森でございます。  世界的なエネルギー、特に石油中心といたします価格緩和あるいは低下といったことで、原子力船実用化の時期が当初の予測よりもおくれてきているということは事実であろうと思います。しかし、最近の中東情勢にもございますように、石油情勢は極めて不安定でもございますし、絶対量から申しましても、先ほどお話にございましたように、二十一世紀には石油以外の原子力のような燃料に、特に日本のような海運国造船国でありエネルギー資源を持たない国が大きな期待をすべきであることは当然であろうと考えております。  御承知のように、既にアメリカ西ドイツそれからソ連におきましては、それぞれ実際に原子力船をつくりまして、軽水炉で地球を二十周ないし三十周するくらいの運転実績を持っておるわけでございます。これらの国、特に西ドイツ等は、こういう自信を持ちまして原子力船の来るときを見ておるというのが現状だと思います。ひとり日本だけは、原子力船が既に十年前に完成しておるにもかかわりませず、主として技術的以外の理由によってこれがまだ実験に使われていないということは非常に残念なことだと考えております。  我々は昨年、原子力船開発におきまして一時かなり強く原子力船むつ」は廃船にすべきであるという批判が出てまいりました時点におきまして、それでは原子力船技術を取得するために陸上で、最近進歩しておりますコンピューターとかあるいはシミュレーションの技術を使いまして何とか海上状況を模擬して試験ができるのではないかという仮定に立ちまして、造船初め技術者の方に集まっていただきまして随分と議論をいたしました。  その結果の結論一言で申しますと、無制限に何兆円というお金をかけてよければ、海と同じような条件陸上に再現いたしまして試験をするということが全く不可能というわけではありませんけれども、実際にそういったものをつくることは事実上不可能であろう。しかも実際に日本は「むつ」を持っておるわけでございますから、これを海の上であらゆる条件を一度経験してみるということは非常に重要なことであり、またこれなくしては、幾ら舶用炉情報等が得られても原子力船技術を持ったことにはならないという結論になったわけでございます。特に動揺、衝撃、振動あるいは負荷変動といったことは、既に日本軽水炉技術世界の最高水準でございますけれども陸上発電所等では考えられないような非常に複雑な条件のもとで行うわけでございますので、実際に海の上で動かしてみるということが非常に大事であるということは申すまでもないと思います。  特に昨年来民間ベースでも、そういった原子力船開発状況が、原子力船実用化が一時停滞しておるという状況から、外国から場合によっては技術を提供してもいいよというお話もございまして、ある会社等かなりの接触もしておるようでございますけれども、その全体の結論は、確かにそういったところで紙に書いた資料等は手に入るであろう、しかしそういうものの値打ちといいますか、あるいはそれを生かしていくには、海の上での経験なしにそういったものだけでは全く役に立たないというのが結論でございまして、最近私ども関係専門家の人が向こうに行って話をしたときも、確かにデータは上げますけれども原子力船を海の上で動かしてないのではその値打ちはわからぬでしょうねと、むしろ皮肉を言われたようなこともございました。  「むつ」の運航につきましては、既に十年前にできたものでございますけれども、当時まだ軽水炉の初期でございます。日本としてもまだ美浜、敦賀が動く前でございまして、JPDRぐらいの経験しかなかったわけでございますけれども、そういった中で純国産設計をしたものでございます。私も原子力関係者の一人として、この純国産設計した最初の炉がかなり十分にでき上がっておるのに動かせないというのは非常に残念に思い続けておるわけでございまして、そういう意味でまいりますと、ある意味では非常に旧式でございます。おくれておる。それだけに、特に日本軽水炉についてのまだ十分な運転経験を持っていない時期に自分で設計したものですから、非常に慎重な設計になっております。  具体的に申しますと、例えば燃料の一本当たりの出力というのは非常に低く抑えてございますし、燃料被覆管燃料にかぶせてございます管なども、その当時実証条件が非常に整っておったステンレスを使っておる。そういう意味で、非常にやぼったい炉ではあろうと思いますけれども、そういった過酷な条件での試験にはむしろ向いておるということも言えると思います。  しかも、最近におきましては、政府関係機関等で十分に再チェックもされまして、十年間の経年変化等による基本的な問題はないという確認もなされておりますので、これを使って最低限の海上における実験をやることは十分できると考えておりますけれども、従来の経験にもかんがみまして一歩一歩着実に確認しながら進めていくということが非常に大事であろうと思いますし、そういったことに関連します安全性につきまして関係者あるいは周囲の人々にも事前十分説明して、実験でございますからどういう点を実験するかということがあるわけでございまして、こういうことを確かめながら、その次また出力を上げていくのだということを事前十分説明をしていきながら一歩一歩進めていくということが非常に大事であろうと思います。  「むつ」の問題が主として技術以外の問題で、現在まで非常に多くのお金を使いながらまだ実験に至っていないというのは我々としても非常に残念に思うわけでございますけれども、これには私どもも含めてやはり反省をすべき点もあると思います。つまり、安全に関連いたします理解が得られないといったことのいろいろな問題を、ともすれば技術以外の問題で解決をしてきたということがあると思います。今後はそういったことではなくて、厳しい財政事情のもとでもございますので、この原子力船日本の将来に必ず役に立つ、それに応じたお金の範囲でやるべきだと、やはり厳しい態度で関係者は臨むべきであろうと思います。  特にまた「むつ」を運航させますことは、先ほどからお話もございましたような技術以外の国民理解とかあるいは国際的な理解といった意味でも非常に重要だと思いますので、運航に当たっては、できれば国内だけではなくて、ちょうど先ほどお話のありましたオット・ハーンサバンナ外国の港にも出入りいたしましたように、できるだけ外国の港にも出かけていくというくらいの経験を積むことに努力するべきであろうと思います。  最後に廃炉の問題を一言申し上げたいと思います。原子力船でございますから、使った後には解役と申しますか、最終的には炉の処置をしなければいけないわけでございます。これにつきましては、陸上の炉と違いまして非常にコンパクトな炉でもございますし、技術的、基本的に不可能であるという問題はないと考えております。こういうことをいつも外国の例で申すのは残念でございますけれども、現にドイツのオット・ハーン号は既に一昨年に原子炉を外しまして、現在日本製のディーゼルエンジンを載せて、既に日本にも原子力船ではなくて普通のコンテナ船として入港して非常にお金を稼いでいるようでございますし、またサバンナ号原子炉使用済み燃料を抜きまして、圧力容器等はそのまま入れて封印をして、現在は観光船になっておりますけれども、近くホテル業者がそれをすっかり買い取ってホテルに改造するという情報を得ております。そういう状況でございますので、原子炉を動かす動かさないにかかわらず、最終的にはこれは処置をするという点において技術的に基本的な相違はないと我々も考えております。  以上、簡単でございますけれども、少し時間も超過したようでございますので、私の考えにつきましては以上で終わらせていただきます。(拍手
  6. 大野潔

    大野委員長 ありがとうございました。  次に、山川参考人にお願いいたします。
  7. 山川新二郎

    山川参考人 今御紹介いただきました山川でございます。長崎総合科学大学というところで造船学を教えております。  「むつ」のことにつきましては、佐世保港に来るという話が出まして、それからいろいろ県内で議論がございました。そのときに私も、一度国会意見を聞きたいということで参考人としてお招きいただいたことがございます。そのときに私申し上げましたことは、造船の歴史、技術の本筋と申しますか、船には信用のあるエンジンでなければ載せないのだ、これが造船屋の鉄則なんだ、ところが「むつ」は工場でできたものを船の中に積み込んでから試運転を開始しようとした、ここに大きな間違いがある、初めから間違っていたということを申し上げて、ぜひお金が少しかかっても、もう一度陸上からおやりになるようにと、技術の発展を希望する立場から申し上げた記憶がございます。  佐世保に回航されますときも、安全性その他の問題で当時の県知事が大変な御心労で、その後体を悪くされたというふうなこともございます。  佐世保で修理、再点検、総点検ということがございましたけれども、そのときも、どうも放射線が漏れた、どこからどんなふうにして漏れたのか、これの科学的な解明をなさったというふうな形跡がない。非常に不十分な形で、臨時的に漂流している船のところで計測なさった、計測の機械も非常に不備であったということも伺っております。それじゃもう一度しっかりとした計測のできる環境の中で検討されて、どんな状況なのかお調べになったらいかがかということも、長崎県でつくりました安全性検討委員会というところにお招きいただきまして、政府委員の方、科学技術庁の方、原船事業団の方に、科学者立場技術者立場として何度がお願いしたのでございますけれども、やはり安全信仰と申しますか、そういったことには耳を傾けていただけなかった、非常に残念でございます。  ところがそれから、もう絶対安全だと言われていた原子力発電所のスリーマイルアイランドで思いもかけないような事故が起こりました。そのときも原子力安全委員会ですかの方が、日本では大丈夫だ、アメリカは雑だからというふうなこともおっしゃいましたけれども、これは科学のことでございますので、アメリカ日本原子力が違った反応をするはずはないので、もし手順を間違えますと大変な事故になるという実証を私たちの前に示してくれたわけでございます。そういう経験が「むつ」の改修やその後の実験計画その他にどう生かされているかということは、我々にとって非常に大事な問題でございます。  非常に一般論にわたりますけれども人間は火を使うようになって人間になったとか申しますが、原子力という第三の火を使うようになったときには、今までとは全然変わった考え方をしなければいけないということに直面しております。火の場合ですと、火事だとかあるいは火薬の爆発だとか、そういったことで被害が局限されますけれども原子力の不本意な爆発は、あるいは意識的な殺人兵器としての原爆もございますが、大変な被害を与える。現在ございます五万発の原爆が、何かのことで偶発戦争でもございますと我々の生存の根拠を奪う。こういう重大な局面に今立っておりますので、原子力平和利用ができるといたしましても、その及ぶことの重大さを科学者技術者企業家政府の方も十分にお考えいただいて、人間が生き残る最大限の注意を原子力開発の上では払わなければいけないというふうに、国会の場でございますが、これは本当に党派を超えて御賛同いただけるのではないか、こう思っております。  それで、現在の「むつ」の将来。佐世保改修を終わりまして青森に回航された。四者協定とか五者協定とかということで大湊港は使えない、新しい港をつくる、そこでおやりになるということでございますけれども技術上の問題から見まして幾つか問題があろうかと思います。私たちが前に申し上げました本当に根本的な科学的な検討がされない状態での改修計画であったということでございまして、今建造以来あるいは事故以来もう十年です、昭和四十九年から五十九年までですから、十年間たなざらしにされざるを得ない運命は、私は造船屋としては非常にかわいそうでなりません。船屋ですから、できた船は何とか処女航海をさせてやりたいと思うのですけれども人間に迷惑をかけるおそれがあるものは涙をのんで往生してもらわなければいけない。そういう意味で、今度の「むつ」は失敗プロジェクトであった。これは伏見教授もおっしゃっておられます。国家行事としてやるときに失敗行事にピリオドを打つ、それだけの勇気がなければ、これは政治の惰性に押された後世に災いを非常に残すものと言わざるを得ないと思います。  私いろいろ検討いたしまして、「むつ」の問題というのは一言で申しまして早かろう悪かろうめ典型である。安かろう悪かろうということはございますけれども、早かろう悪かろうというような新しいことわざをつくったのではないか。大和、武蔵をつくりましたときに、あれは国策ということでだれも反対できなかった。「むつ」も、もし「むつ」のことについて危惧を持つとしても、科学を知らないものだという悪罵をいただいたこともあります。しかし、少数の意見であっても科学的に正しいことはやがて大きく皆さんに支持もされるし、御理解いただけるはずのものでございます。  申し上げますと、先ほど申し上げましたように陸上運転がなかったということ、それから事故が起こっても科学的な解明をしなかったこと、そういったことに加えて放射線の受ける影響について陸上基準が適用されていた。船という局限された場所にいる乗組員が、船内で事故が起こりましたときにどのように安全に処置し退避できるか。これについては、陸上原子力発電所での基準は、環境に及ぼす影響をどのように局限するかということに重点がございまして、作業員は、大勢の作業員を繰り返し交代させて現場に突入させることができます。しかし船舶の場合には限られた人間で、応援人員を求めることはできません。そういう中で「むつ」の場合、事故が起こったときには、ある場所に曳航して人家のあるところから離す作業乗組員がしなければいけない。必ず引き船の三隻か四隻ひっついているというようなことがございますればまた別ですけれども、そうではございません。そういう意味で、日本で初めて行う原子力船について乗組員に対する配慮が欠如している。これは我々造船屋としましても、また先ほどお話しになりました熊谷先生、船を動かし運航者をお使いになる立場でも、よく考えてみれば、ああそんなだったのかということでびっくりなさることじゃないかと思っております。  それで、この間改修されました後の現状は、私まだ見ておりませんけれども、何人か私のよく知っている人がごらんになりました。ところが、計器類なんかにいろいろラベルが張ってございます。新しくつけた計器とそれからそのままの計器、それが混在しておるのでございます。昔のはトランジスタです。初めは真空管を使おうと言っていたのが、トランジスタにやっとなった。ところがそれから十年、やっとICだとかLSIだとか、そういったものの計測装置がいろいろ入りました。それが混在しているということは技術的に見て非常に危険なわけです。ビールとお酒をまぜたら酔いが悪いですね。それと一緒です。これは本当に、非常に卑俗なことを申し上げてあれですけれども、それが混在している状況がどの程度の安全性確保されているかという点についてはまだまだ未開発でございまして、失敗をしてみなければわからないというふうなことが改修後の「むつ」に予想されることでございます。  あと、これも古くから申し上げていることでございますけれども原子炉の寸法が異常に小さ過ぎるということ。単純に申し上げますと、炉心と圧力容器との間、サバンナ号もレーニン号も約五十センチの水の層がこれにございます。そこで高速中性子が減速されます。いわゆる中性子のストリームというものが非常に少なくなる。「むつ」はそれが三十センチです。二十センチ水の厚さが少ない。それの技術的根拠が、それだけでも大丈夫なんだというのでしたら、この間の放射線漏れは起きないわけです。ですから、炉心自身がそういう根本的な検討に値する重大なものだと思われます。  それからもう一つは、私、造船屋として申し上げますが、船の幅のことです。レーニン号よりもサバンナ号よりもオット・ハーンよりも「むつ」は小型の船なんです。小型だから幅も小さくていいというのは造船学の普通の常識なんです。速力も十ノット、十六ノット出そうと思えば余り幅の広いものはつくりません。けれども実験船です。実験船で万が一の衝突のときに原子炉事故が起きないということを最大の眼目にするならば、戦艦並みの舷側の強さを持たなければいけない。今までの原子力船設計基準は、両方の船がぶつかって、くしゃくしゃっとつぶれて、お互いに衝突エネルギーを吸収し合って、そして格納容器の五センチ前でとまる、こういう結果をもとにしたものでございまして、それは標準の船型がございます。T2タンカーという二万トンの、戦前に非常にたくさんつくられて戦後も運航頻度の高かったタンカーでございます。これが十四ノットの速度で真横からぶつかるというときが計算の基準になっております。しかし、エンタープライズとか軍艦系統では排水量八万トンのものもございます。それが三十ノットで走る。それが真横からぶつかったらひとたまりもございませんが、それは確率が少ないから無視する。これが「むつ」の設計の原理原則でございます。そういうことで、私たち実験船としてつくるならば絶対安全という条件設計しなければいけない。これはできるのです。不可能じゃございません。そういう点が欠如している設計でございますので、造船専門の立場としても、旋回性能とか動揺性能とか、そういったことについては私の学友の元良東大名誉教授も参加いたしておりましたし、その点については私了解いたしておりますけれども原子力船としての性能には、非常に急ぎ過ぎてめちゃをしたと言わざるを得ないと思います。  それから、先ほど森先生もおっしゃいましたけれども、今「むつ」のはもう古ぼけてやぼったい。そのことにつきましては「むつ」の原子炉特徴は分離型という形に分類されます。現在では一体型というのが舶用炉としても適当ではなかろうかということで、日本造船研究会、NSR7という研究委員会ではこの一体型を中心検討を進めております。したがって、今後外国からお買いになるあるいは日本で再開発を新しくお始めになるときには一体型または半一体型という型式の炉が舶用炉としては最適ではなかろうか、これが現在の技術の進歩の流れの状況でございます。したがいまして、旧式炉でやぼったい炉で練習をすることはかえっていいのじゃないか、これは蒸気機関車を練習するときのことです。原子力船をやるときにやぼったいのでやったら経験がつく、データが蓄積されるというふうにお考えになるのでしたら、原子力開発立場は御遠慮願いたい、国民から見て非常に怖いものですから御遠慮願いたいと思います。  起こり得る今後の事故、どんなことがあるか。これはもう何度も繰り返されたことでございますので皆さんは耳にたこのできるほどのことだと思いますが、いわゆる蒸気発生器の細管の破損でございます。これは陸上のものでもいまだに後を絶ちません。敦賀のある発電所ではもう三分の一近くがめくら栓をされて動かなくなっておる、脳血栓にかかったような状況の蒸気発生器が多数存在しております。「むつ」でもこれが起きないという保証はございません。特に燐酸系のさびを防ぐ薬を入れておりまして、これを今度ヒドラジン系というものにかえましたけれども、前に入れた燐酸系が黒い被膜をつくっておりまして、これが徐徐にまだ水に溶け出して燐酸としての悪さをするということで、現在もあちらこちらの発電所で非常に苦労していらっしゃるところです。一たん燐酸系の防さび剤を入れたものは、もうヒドラジンを入れてもぐあいが悪くてしょうがないのだ、こういうお話でございます。  それからもう一つ燃料棒の破損の問題でございます。これも若干のセシウム説の漏えいした痕跡があるということで、一度抜いてお調べになったらと申し上げたのですけれども、抜く必要はない、微量でネグリジブルスモールというふうに安藤良夫さんがおっしゃいました。抜いて検査なさらなかったのですけれども、今度もし実験して漏れたらどうなるのです。まじめにやろうとする原子力の研究も開発も、これは本当にストップです。私たちは、まじめな平和利用の研究は進めたいと思っているのですけれども、そういうごり押し、早かろう悪かろうのやり方でやられた結果、原子力の将来に対するまじめな見通しもなくなってしまう、このことをぜひお考えいただきたいと思っております。  あと、少し飛びますけれども、関根浜のことでございますが、これは音、旧海軍があそこに港をつくりたかった。しかしその当時の技術では、波浪が激しい、漂砂が激しい、霧が濃いというふうなことで内湾の大湊に変更になった、こういうことでございますが、現在でも霧、波、風それから砂の流れ、こういったことでは大港湾をつくるのに全く適したとは言われない。またその上に、地元と十分話し合って進めるということが懇談会その他でもう当然のこととして結論に出ているそうでございますが、地元の方からのお話によりますと、どんな実験をどこまで出力上昇をやるかとか、そういう具体的な話し合いは全然進行してないという状況で捨て石がほうり込まれ、現在土地の面貌は変えられつつございます。こういったことも「むつ」の持っていた今までの早かろう悪かろうの体質の一つではなかろうかというふうに思われます。  先ほど申し上げましたように、スリーマイルアイランドの経験がどう生かされたか、これは我々技術者科学者にとって重大な関心でございますけれども、制御パネルその他も非常に見にくい、それから警報を出しますアラームの指示盤その他も非常に小さくって、現在の原子力関係の管制装置から見ればそれこそやぼったくて事故が起こりやすい、こういう代物でございます。指揮命令系統につきましても、普通の船を動かす船員さん、船長免許を持っておられる方々と原子炉のオペレーター、これは成り立ちも性格もみんな違うものですから、非常事故が起こったときにどこがどう責任を持ってやるかというのもこれからなんです。ですからその辺は、形の上でどんなときにだれの命令に従うと書いてあるのが幾つかあると思いますけれども、本当の意味での実際的な検討はまさに不十分だと言われます。  もう一つだけつけ加えますと、昨年一九八三年ですが、二月にアメリカのセーラムという原子力発電所事故が起こりました。これは二重、三重になっている安全装置がきかなかったということで、今度はATWSという略称で呼ばれておりますけれども、予知できるスクラムなしの過渡現象、予知できてしかもスクラムが起こらない、緊急ストップがきかない、そういうような過渡現象に対する防御措置、これを別系統を一つ新しく取りつけなさいというのを、八四年の六月ですからことしの六月にアメリカ原子力規制委員会が、いわゆる通達ですか強制力のある形で公示しております。このことは「むつ」には、まだことしの六月のことですから、アメリカでやったからすぐというわけではないでしょうけれども、十分考慮されないと、「むつ」がこの間の改修で二重、三重に系統を直したとかふやしたとかとおっしゃいますけれども、専門の技術者を集め、科学者を集めて十分に検討なさることがなされない状況で、実験再開を安易に期待される向きについては、十分御了解いただきたいと思います。  最後に、「むつ」は今でしたらどうなるか。今方向転換してこのプロジェクトを一応やり直すということになりますと、じゃ燃料棒をどこで抜くか、日本じゅうどこでも反対しているじゃないかとおっしゃいますけれども、ここは誠意をもってお話しになるならば、国民の合意、さっきおっしゃいましたパブリックアクセプタンス、PAが得られる種類の問題であろうと思います。地元の方に私、直接にお話ししたわけではございませんけれども、現存する設備としては大湊港が最適であろうかと考えます。ここの設備は、若干の手を加えるならば燃料の引き抜き、燃料の保管、そういったことについて周辺に迷惑をかけずに行えるだけの準備がございます。また、現在の核燃料の持ちます放射能、これの外へ出ることへの防御ということについては十分可能であります。残存の一・四%稼働したおかげでできた死の灰と言われるものにつきましても、もう現在では半減期がどんどん過ぎまして、十年たちまして非常に少ない状態でございますので、可能である。  以上のような結果で最終的にまとめて申し上げますと、「むつ」による実験、それから運航計画というのは一たんここで中止する、そして船舶用の炉については、それの実用性並びに経済性評価を含んで地道な研究を進めていくというふうに方針を立て直すことを提言したいと思うわけでございます。  造船屋の言葉にトライアル・アンド・エラーという言葉がございます。とにかく造船屋はやってみろ、そして間違いが起こったら直す、これは在来技術では技術を進歩させる上で非常にいい励ましの言葉でございました。しかし、原子力平和利用に使うという時代にございましては、もう一つ必要でございます。スロー・バット・ステディー、ゆっくり、だがしかし確実に、これをつけ加えまして原子力の安全な平和利用の発展を進める、これをこいねがってやまない次第でございます。  最終的には、先ほども申し上げましたように、もう五万発の核兵器が全部廃棄されて核戦争が二度とないという状況になれば、安心して原子力の進歩も早くなるでありましょうし、おしりの始末、廃棄物の始末も十分につけられるだけに、研究開発エネルギーが積み込めるだろうと思います。今のように廃棄物の処理については後回し後回しというふうなことは、技術屋の良心として許されません。これもただ臭いとか何かじゃなしに、本当に代々にわたって人間被害を与えることを技術屋の責任としてやることは到底できません。まして企業家としてもできないはずだと思いますので、この点を参考人意見として申し上げさせていただきたいと思います。よろしくお含みおきを賜りたいと思います。
  8. 大野潔

    大野委員長 ありがとうございました。  以上で参考人意見の聴取は終わりました。     —————————————
  9. 大野潔

    大野委員長 これより質疑を行います。  この際、委員各位に一言申し上げます。  本日は、時間が限られておりますので、委員各位の特段の御協力をお願いいたします。また、参考人におかれましても明快な御答弁をよろしくお願いいたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。渡部行雄君。
  10. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 まず私は、参考人の皆様に対しまして、御多用のところをせっかくおいでいただきましたことに心から感謝申し上げる次第であります。  さて、最初に熊谷参考人にお伺いいたします。先ほどお話を聞いておりますと、二十一世紀初頭には原子力時代がやってくるという趣旨のお話がありましたが、原子力商船というのが果たして本当にそういう時代としてやってくるでしょうか。今から約二十年前設計してやろうとした「むつ」でさえ、まだちっとも動いていないわけです。これから二十一世紀当初に、仮に五十年かけたとしても、そのころ何を運ぼうとしておるのか、地球上に石油がなくなって、それほど大型の商船をつくって一体何を運ぶのか、そういう点についてお伺いしたいと思います。  それから第二点は、今もいろいろおっしゃられましたその燃料のコストについてでありますが、二十一世紀に入ってからの燃料というのは水素とかあるいは石炭の液化、そういうものによるものも考慮されます。原子力が低コストであるという一つの論拠というものが必ずしも明確でないと思うのです。ウランを掘ってからその廃棄物の処理に至るまでどのくらいかかるのか、それから船が十五年、二十年たって廃船する場合、燃料棒を抜いたり、その廃船処理に対してどの程度の金がかかるのか、そういうことをどういうふうに考えておられるのか。  それから、原子力船の「むつ」存続に賛成の意見の大半は、やはり石油がなくなるからその代替エネルギーとして原子力を利用するということが一つ。それから第二点は、今開発途上国から日本海運事業は追い上げを食っておる。この追い上げに対してこれをかわしていくには、高度な知能と技術を有する原子力による動力を持った船でいかなければ、とても追い上げに対してやっていけない。大体大きく言ってこの二つだろうと思います。しかし、これは我々を納得させるだけの説得力に全く欠けていると私は思うのです。その点、きょうは時間が非常に制約されておりますので簡明にひとつお答え願いたいと思います。
  11. 熊谷清

    熊谷参考人 今原子力船が要るのか、五十年後には何を運ぶのかという御質問が第一にあったと思います。原子力船が要るであろうということを私が申し上げているのは、その後の御質問にもありますが、船が走るためには多量の燃料を使う。その燃料がなくなった場合に、日本にあるすべてのものを輸入によって賄わねばならない、あるいはまた輸出もしなければならない、そういうような時代に船がなくてはどうなるのかという必然的な要請からきておるわけでございます。  それでは五十年後には日本は何を運んでいるだろうかといいますと、五十年先のことは、来年のことでもわからぬという世の中でございまして、五十年後のことを言えとおっしゃっても私はわかる道理もございませんけれども日本には何もない。木材だって、ここにある木材も全部輸入のはずでございます。鉄鉱石だって石炭だって食べ物だってないという日本状況で、五十年後にそれではそういうものが見事にどこかから出てくるのかという町と、そうはならないと思いますし、やはり船舶で輸送をしなければならぬ。船舶はエネルギーが必要なんだ。石油が五十年後にあるかないか、これまた私寡聞にして知りませんし、いろいろな意見があるようでございます。その場合にもやはり何らかの代替エネルギーで船は動かさないと、日本の経済は非常に難しくなるのではないかというふうに考えるわけでございます。  その次の御質問は石炭液化、水素等があるのではないか、原子力のコストがどうか、科学者ではございませんのでそういう石炭液化だとか水素の問題がどの程度進んでいるのか存じませんが。こういう関係エネルギーのところのお話では原子力が一番進んでおる。石炭液化はなかなか技術的に難しい、研究段階ではあるけれども、多量のものということになると多分に問題があるというふうに伺ったわけでございまして、やはり原子力が一番手近にある。今砕氷船だとか等々ございますが、穏当ではないかもしれませんけれども原子力潜水艦はもうどんどん走っておる世の申だと了解しております。コストの点につきましては、私どもの試算によりますと、これはもう数年前の試算でございますけれども石油が二倍半から三倍になるのではないか。石油が枯渇するのがいつごろかというふうなことはわかりかねますけれども、一時はもう二十五年でなくなるというふうなことを十年前に言ったこともございます。その当時の試算では、例えば重油の値段が三倍になった場合には、そういう環境のもとでは恐らく原子力は、今船舶炉のコストというものがございますけれども、そういう技術が進歩をするということをあわせ考えると、その時点には原子力船がコンペティティブに使える状況であるであろうという推定を船主協会としてしたことがございます。  それからその次に、原子力船石油がなくなるから要るのだ、それともう一つの理由は、海運は中後進国の追い上げでこういう原子力というような非常に高度な技術を要するものを持ってこなければ競争に勝てないからではないかという御質問がございましたけれども、まず第一の石油がなくなったらという問題は今申し上げたとおりでございまして、これは先ほどからの話に出ております。それから中後進国の追い上げという問題につきましては、非常な超近代化船をつくるというふうなことで、船員を削減して、船舶の安全性、信頼度を高めて、今後競争できるというふうに我々は考えております。  以上、ちょっと長くなったかもしれませんけれども……。
  12. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 そこで、原子力船時代が到来するという一つお話が今述べられました。これは原子力潜水艦の父と言われているリコーバー提督が今から十年前に米国の議会で証言した言葉ですが、「軍事用の、金に糸目をつけず、また安全性について原子力商船と基本的に異なる原子力艦艇以外には”実用にならない”と言明したのです。」これを見て、実際にその衝に当たった提督がこれだけのはっきりしたことを言うには、それなりの理由が明確になっていると私は思います。ところが、まことに失礼ですが、熊谷参考人森参考人お話を聞いていると、どっちかというと期待と願望であって、科学的な解析がほとんどないのですね。科学というものはそういうものじゃないと思うのです。私たちがこうして皆さんに質問するのは、いわゆる科学の厳密性、厳粛さと政治の弾力性をどういうふうに結び合わせて、そして国民に安全と幸せをもたらすか、ここにきょうの意義があるわけでございます。  そこで、森参考人にお伺いいたしますが、あなたは原子力商船時代は今から何年後に来ると思いますか。これが一点。  そして第二点は、遮へいの欠陥は一応修理され、解決されたことになっておりますが、これが実験を開始した際に、後、絶対に事故が起こらないと断言できますか。これはいろいろ技術的な問題もございまして、先ほども若干山川先生から御指摘のあったいわゆる炉心と側壁の間隔の問題等あるわけでございますが、そういうものは全然手をつけられないでおって遮へいだけが三百トンも荷重されておる。こういう状態の中で、あの小さな船の中でほとんど半分は原子炉関係のスペースになっておるわけですよ。こういうつり合いのとれない船で、しかも二十年も前の設計を今やって、それから新しいこれからの時代のデータをどうしてとれるのでしょうか。私たち原子力開発が悪いと言っているのじゃないのですよ。その実験が悪いと言っているのじゃないのです。そういう古いもので、そして役にも立たないところにどんどん国のお金をつぎ込んで、そしてなお危険性を解決できないままこの重大な仕事を進めようとしておるところを問題にしておるわけです。今、二十年前のあのデータくらいは外国からどんどん買えるじゃないですか。しかもサバンナ号にしてもオット・ハーン号にしても、今どうしておりますか、休んでいるじゃありませんか。こういう実態を正確につかんでいただきたい。そしてもし万が一事故が発生した場合、次の実験開始までどのくらいの時間とお金がかかるとお思いになるのでしょうか。  以上の点についてお伺いしておきます。
  13. 森一久

    森参考人 御質問が三つほどあったと思いますが、まず原子力船時代が何年後に来るか、もちろんこれはだれも知らないことでございますけれども日本の努力ということが非常に影響すると思います。現に私どもも、このことに関連しましてドイツ、アメリカ等いろいろな人に聞いてみましたけれども、それはやはり日本の努力にかかっているのじゃないか、我々は海上原子力の商船を現に世界を二、三十周するくらいの研究をしておるのだから、それが見えてきたらいつでも対応できる、むしろ日本の動きに注目しておるということでございます。そういうことで、二十一世紀という言い方をしておりますけれども、二十一世紀と申しましても十六年しかございません。今実験船を動かし、また実証船も要ると思いますが、やはりいきなり実用にはいかないと思います。そういうことを重ねてまいりますと、石油状況にもよります。石油が過去一遍に二十倍になったという経験もございますから、そういうことでも起きればまたわかりませんし、いろいろな要素がありますので、具体的な年数で予言するということはひとつ勘弁をしていただきたいと思います。私も先ほどおしかりをこうむりましたように、余り非科学的なことはちょっと申し上げたくないと思います。お許しをいただきたいと思います。  それから、先ほどリコーバー提督の話がございましたけれども、これにつきましても実はリコーバー氏あるいはその下、またその下の人等に我々も原子力船の見通しについていろいろ聞いております。原子力船も商船時代がいずれ来るという点から非常にアメリカとしてもナーバスでございまして、余りアメリカからは原子力商船について明るい、ぜひやりなさいというニュースが来ないというのは当然のことでございまして、アメリカが独占しております残り少ない技術の中の非常に貴重な技術としての原子力商船技術というものは、やはり何とか優位を保ちたいという意味で、今のような発言は私は十分割引をして聞く必要があろうと思いますし、アメリカの私の友人からも割引した方がいいという意見も来ております。  それから、事故が起きるか起きぬかという問題と旧式ではないかということでございますが、これは我々自身としてちょっと申し上げたい点がございまして、軽水炉のときの苦い経験がございます。軽水炉昭和四十年に動かしまして、その後非常に進歩して、これがいいんだ、あれがいいんだということでいろいろな工夫を加えて、どんどん物の売り込みがございまして、はっきり申しまして日本はその手に若干乗ってしまったわけでございます。そのために、スリーマイルアイランドの前後から日本の稼働率が非常に低下をして、日本は非常に小さな故障でも全部とめて修理をするという考え方をしておりますので、なお稼働率が下がったわけでございます。けれども、実に苦い経験で、新しいものに飛びつくということは非常に憶病になっております。そういう意味で私は申し上げたのでございまして、現在それこそペーパーなどで出ておりますのは一貫型がもう常識である、それはそうかもしれません。しかし、そんなものがいいんだからすぐ一貫型をつくればいいんだ、そういう簡単なものではないということは、原子力関係者、この二十年の経験でいたく胸にしみておりまして、やはり自分で一歩一歩やっていかなければいかぬ。ですから、先ほど申し上げましたのは何か言いわけみたいで、古いからいいんだというふうにちょっと聞こえて、私の説明も下手だったかもしれませんけれども、今の目で見直してみると、比出力が低いとか、いろいろ随分憶病な材料を使うっておるという点からがえっていいんだという、これはむしろ皮肉なというか、たまたまそうなったという意味で申し上げているのであって、古いものが必ずいいと申し上げているわけではございませんし、現に軽水炉の改良ということで、今日本中心になってアドバンストPWRとかアドバンストBWRなんというのをやっておりまして、またドイツやアメリカもぜひ仲間に入れてくれということでやっておりますけれども、これはかなりの部分が設計をむしろコンサーバティブな方に、古い方向に戻すという面が非常に多いのです。今まで能率を追求し過ぎるためにぎりぎりのところまでやっておったのを、少しずつ余裕を持ってやっていくことが結局全体がうまくいくのだというような結果になっておりまして、これは軽水炉での、ある意味では外国技術をそのままうのみにしようとした我々の苦い経験も加わっているという点を少しお酌み取りいただきたいと思います。  以上でございます。
  14. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 次には山川参考人にお伺いいたしますが、先生は造船専門家でございますから、これからの商船というもののあり方、あるいは潜水船というのが主力になるのかどうか、なるとすればその潜水船というのはどういう利用の方法があるか、そして原子力の動力というのは結局大型の船を速い速度で動かすところにその一番の使命があると思うのですが、この原子力動力を主とした大型船で世界のどこの国でも海上輸送をするというようなことになれば、今地球上の資源というものの動きはそれに対応できるだろうか、こういうふうに考えますと、この辺が一つは大きな問題になってくるのではないだろうか。あるいは一方、宇宙船のようなあるいは衛星のようなものを利用して輸送するという事態も将来は考えられてくると言われておりますだけに、その辺の関連をひとつお伺いしたいと思います。  それから、今ならば燃料棒を抜くことは簡単で、それほど経費もかからないで済む。ところが、一たん実験が開始されてから再び事故でも起こって、そしてこれはもうやめようということになればとても燃料棒を抜くなどということはできるものではない、こういうことを聞いておるわけですが、その辺の事情についてお伺いしたいと思います。  それから、先生のシンポジウムなんかの御発言の点を読んでみまして非常に感心したわけですが、やはり科学者の良心というものをどういうふうに我々政治家は政治上で受けとめたらいいのかということでございます。今お三人のお話の中で、どなたが一番科学的な裏づけを持った主張をされておるかということを私どもは大事にしたいと思うのです。したがって、科学というのは一つの実践、実験をもって裏づけられる、そして今の仮定というのは将来において実現できる、そういう可能性を持ったものでなければ科学性があるとは言えないと思うのです。そういう点で、今「むつ」というこの現実の原子力船について、本当にこれを継続した方が日本科学の上でメリットがあるのかどうか、あるいは逆にこういうものに多くのエネルギーやあるいはお金をつぎ込んでいけばむしろ別な面で日本科学の進歩はおくれていく、何もそんなところに力を入れなくともあの古い原子炉によるデータくらいは簡単に外国から手に入れることができるのだから、新しい一つの着実な方法を考えて出発し直すべきだ、こういうふうにお考えなのかどうか、その点について明らかにしていただきたいと思います。  時間がありますからもう一つ先ほど森先生は、やぼったいということを言われました。このやぼったさが逆によくなるのだという理論ですけれども、やぼったいと思ってこれをやるということは、そのやること自体非常にやぼったいのじゃないでしょうか。これは服を着るにしても、この服はやぼったいなと思ったら着ないと私は思うのですよ、普通の方は。やはりスマートなのを着たいと思いますがね。そこで原子力船だって、私はこの前八日、九日に行って見てまいりましたけれども、確かに鉛そのものはそれほど傷んでいないのです。鉛そのものはそれほど傷んでいないけれども、あの船体全体の中に占める原子炉関係のスペースというものはほとんど半分である。そういうものであの小さな船を動かして、一体本当の大きな船を動かすときの動力とその船体のバランス、比率、そういうものについて正確なデータが出てくるのでしょうか。その点についてお伺いいたします。  以上です。
  15. 山川新二郎

    山川参考人 お答えいたします。  これからの商船はどうなるかという御質問でございましたけれども、高度成長のときには高速化大型化ということがもう宿命でございました。それと早期建造、大量建造ということで、しかも大変もうかりましたものですから、もっとつくればもうかるだろうというのでドックをいっぱいつくりました。そうしたら今度不況がやってきまして、もうそのドック関係全部、三五%廃却です。また、国民の税金を使ってお買い上げいただいて造船所は生き延びたというふうな始末でございました。そのときから造船技術として一生懸命考えて、それは企業家も熱心におやりになりましたけれども、省エネ技術も随分進歩いたしました。  まず、製鉄もセメント業も石油を今までばんばん使っていたのをほとんど使わなくなった。造船の方も、あの二十万トン、三十万トンのタンカーが十六・五ノットで走っていたのです。それをやめまして十五ノットで走る、あるいは十四ノットで走る、十三・五ノットで走る、そういうふうにスピードを二割から三割落としますと、燃料費が三割から四割安くなったのです。ですから、省エネの運航によって船会社さんも非常にお金を節約されたと思いますし、技術もそれに沿って、今までどんなにむだ遣いしていたか、石油が安いということに悪乗りをして、アメリカの自動車みたいなばんばん食う大馬力のエンジンを船につけていたということがございます。ですから、今後省エネの方にどんどん進むだろうと思います。それから省人、人手を減らすという方向には前から進んでおります。今一万トンから十万トンぐらいの船は九人で十分だという論文も出ております。しかし、これは生き身のことでございますし、また世間の常識としても十万トンを九人じゃちょっと怖いと。そうしたら、飛行機を見てみろ、あの五百人乗るジャンボはたった三人で操縦をやっているじゃないか、こういうふうなお話もあるのですけれども、海底に電線をずっと引きまして宇宙衛星からコントロールさせますと、理論的には一人でよろしゅうございます。また無人も可能でございます。港に来ればヘリコプターで迎えに行って、それから乗る。あとは自動衝突予防機というものを設けて、無理にぶつかってくるハイジャックのやつがあれば沈むというふうな仕掛けもできるという話でございます。しかし、これは非常に怖い話でございます。  これからの商船はどうなるかと申しますと、省エネと、ある意味でコンセンサスを得た意味での省人ということはあっても構わないかと思いますが、なお商売をやる上から申しますと、労賃が安いのは造船にとっては非常に大きなメリットということで、開発途上国、特に中レベル以上のところは非常に造船産業でのしてきております。これに対抗するには、そこと同じだけに労賃を下げてやっていこうという流れが一つございます。また加工技術を人力集約から人間を減らして、あるいは人間は同じでも自動化、機械化によって能率を上げて対抗していこうという流れがございます。名前を挙げて申しわけありませんけれども、台湾、韓国、そういうところの水準に労賃を落とすということでは大変なことになろうかと思いますし、付加価値の高い高度な製品をつくっていくということについては、先ほど熊谷先生、森先生もおっしゃったとおりでございますが、その方向をやみくもにやらないで、スロー・バット・ステディーということで合意を得ながら進んでいくということではないかと思います。  それから、潜水船の利用についての御質問でございました。かつては潜水輸送船というのが、波のためにとられるエネルギーが少ないということで燃料節約になる、それから波が少ないので船体も軽くできるということで、五十メートルから六、七十メートルのところを、潜水艦のように四百も六百も潜らないのですね、そういう輸送船をつくればという話がございましたけれども、これは沖合に中継基地をつくりませんと、港湾を全部づくりかえないと間尺に合わなくなります。ですから、それ専門の埠頭ができるようなときには可能かと思います。  さて、潜水船で輸送させるのに適したものは液体貨物でございます。これですと外の圧力と中の圧力を対抗させるのでメリットがございます。しかし、石炭とか鉱石のように中に空倉のあるものですと、外圧と鉄板だけで対抗しなければなりませんので建造上のメリットはございません。それで、空気が要らないで長時間航行できるという特徴は軍事的な潜水艦以外にはございません。ただ、深海開発とか海底の資源開発のための工作船あるいは掘削船、そういったものに将来使っていくとか、開発途上国に緊急に電力を援助するための発電台船というふうなことで、原子力が船の上に積まれるということはあり得るかと思います。それについても、開発途上国だから垂れ流していいというふうな形での技術協力はかえってあだを残すことになろうかと思いますので、国内で後の始末をするのと同様に厳重な研究と配慮が必要であろうかと思います。  三番目の、原子動力船は大型、速くということでなかろうかということにつきましては、今も申し上げましたように、原子動力の方は後の始末ができれば今度は小型化に向かうと思います。ですから、いつまでも大型化大型化と。陸上原子力発電所に比べまして舶用の方は大体十分の一のスケールですね。これが慎重な研究が進みますともっと小さな規模のものをつくろう、軽小短薄と申します流れもございますので、原子力メカニズムのシステムも軽小短薄の方に将来は行くのではないかと思います。しかし安全で、後の始末がある、戦争の危険がない、この三条件がそろいませんとだめですけれども。  それから、そのときの地球上の資源の動きということについての御質問がございました。これも私は経済学者ではございませんので確かなことは申し上げられませんが、今の石油をとって申しますと、アラビア湾あるいは紅海、あの近所が第二次大戦後非常に強い生産地になったわけですけれども、その後ヨーロッパの北海に出ましたし、カナダの北洋の方にも出まずし、それから日本と中国との間の東シナ海からベトナムにかけての海底、大陸棚、こういったものも相当な深さを金をかけて掘れるという状況になればあらわれてくるんではないかと予想されております。そういう意味で、今後の地上の開発がもっと開発途上国の方方とのコンセンサスを得ながら進めるようになりますと、今のような偏った状況ではなくて適地適産あるいはその中での自給自足、そういったことを満たすような形での運輸形態が生まれてくるだろう。地球上での輸送量が高度成長のときのような膨大な、輸送レベルが倍々していくということは今後は余りないだろう。そういう意味では、巨大輸送船に適する原子力船がホープだという時代は遠のいてきたというふうに言えるかと思います。  四番目に、一たん実験を開始して事故、中止ということになると抜くのが大変ではないかというのは、まさにそのとおりでございます。ただ、これは本当に不謹慎な話だと思いますけれども、「むつ」が佐世保から青森に回航されるときに、どこかで沈んでくれないかなということを希望された関係者がいらっしゃったということを承りました。保険業界でも保険を取るための偽装沈没はたくさんございます。処理に困ったらどこか深いところへ行って、潜って調査できないところで沈める。小さな漁船でもそういうことがございます。私、この前海上保安庁から、船が沈むためのキングストンバルブをあけたら何分何秒で沈むか鑑定をしてくれと頼まれまして、実物なしで鑑定はできませんと言っておいたのですけれども、実物は八十メートルのところで潜っている、これを揚げるのにはどのくらい金がかかるだろうかと専門の友達に聞きましたら、三億円ぐらいかかるだろう、これでは海上保安庁は金は出ぬと……(「委員長、時間だ」と呼ぶ者あり)はい、わかりました。  それで、シンポでの発言のことについて、科学者の良心のこと、これは先ほどから申し上げましたことでかえさせていただきたいと思います。  以上で御質問にお答えさせていただきました。
  16. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 どうもありがとうございました。以上で終わります。
  17. 大野潔

    大野委員長 松前仰君。
  18. 松前仰

    ○松前委員 かわって御質問させていただきます。三人の先生方、お忙しい中を本当にありがとうございました。時間がございませんので、端的に御質問させていただきたいと思います。  まず最初に熊谷参考人にちょっとお伺いしたいのですが、先ほど石油価格が三倍になれば原子力船が有利だ、こういうお話があったわけでございます。石油価格というものが現在十倍以上に上がっておるというような状況、二十年前は二ドル・パー・バレルというような時代でした。現在は三十ドル・パー・バレルぐらいになっている。こういうような大きな上昇にもかかわらず原子力船の経済評価については前と全然変わらないという点があるわけでございますけれども石油価格が上がるということになれば工業製品もそれにつれて値上がりする、石油を使ってやるものですから値上がりする、そういうことで単純に石油価格が三倍に上がったというときに原子力船が有利というのではなく、相対比較といいますか、原子力船と工業製品の価格の比率が三倍というように考えなければいけないのじゃないだろうか、私はそう思うのですが、その辺はいかがでございましょう。
  19. 熊谷清

    熊谷参考人 命の石油価格が三倍ということを私申し上げておりますけれども、まず前提として石油は無限ではないということから申し上げておるわけでございまして、一時は石油は二十五年後にはなくなるというふうな話がございまして、我我非常に深刻な問題として受けとめた時代がございました。現在石油がいろいろなところから出ておりまして、需給関係も緩んでおる関係から、値段は一時から考えますと十倍にも十五倍にもなっておりますけれども、やや安定をしておる。しかし、この状態は一九九〇年代になりますと、どうしても緊迫せざるを得ないのではないか。二〇〇〇年に入りますとどうなるか。我々予測するには極めて困難でございますが、非常に急迫をしてくる。そうすると、現在の割と安定をしておる値段が石油だけ上がる。御存じのように十数倍になったときには、石油だけが上がったから石油ショックが起きたということでございまして、決してその点では楽観できないということが一つ。  それから、私ども技術側ではないのでわかりませんけれども原子炉技術も当然進歩するであろう。したがって、この面からのコストも下がってこなければならない。両々相まちまして、石油がだんだん少なくなってきた時点にエネルギー多様化として原子力が浮かび上がってくるというのは、何年先か私ども予測できませんけれども、三十年とか四十年とか五十年とかその辺はわかりませんがそういう時期が来るのではないか。我我エネルギーを使う多消費産業でございますから、非常に真剣な問題として受けとめざるを得ないということを申し上げたわけでございます。  以上でございます。
  20. 松前仰

    ○松前委員 経済評価については、どうも私が先ほど申し上げたところでもう一度見直しをされた方がいいのではないかという意見だけ申し上げておきたいと思います。どうも合わないという感じがいたしますから、そういうことでございます。  今お話がありましたように、石油の枯渇ということはローマ・クラブの例の成長の限界、そんなのによりましてみんな非常に危機を感じたということで、そこから大体始まっていろいろ省エネルギーの問題が出てきたわけです。省エネがかなり浸透して、その結果今石油がだぶついているといいますか、それほど消費量がふえてこなくなった。石油消費量がふえてこないということになれば、価格もそれほど大きく変わってこないということになろうと思うのですね。  日本経済新聞の七月十二日、きょうですが「自由世界石油需要見通し」というのがありまして、OECD関係石油の需要が一九八〇年では三千八百八十万バレル・パー・日、二〇〇〇年になりますと大体三千七百万バレル・パー・日。三千八百万から三千七百万に減っているわけです。こういうような予測が出てきている。石油の消費はそれほどふえないし、さらにまた二〇〇〇年になると恐らくかわりのエネルギーも出てくるということになれば、石油価格がそんなに急激に大きく変動するものではないだろう。そうするとそこから原子力船開発のステップ、期間といいますか、どこまでターゲットを置くかということになると、もうちょっと先にしてもいいのじゃないだろうか、二〇〇〇年の半ばというところまで持っていってもいけるのじゃないだろうかというような感じがするわけであります。そういう点で、舶用炉の開発についてはもっと慎重に取り組めるはずである。まだ時間的余裕があると私は思うのでありますけれども、その辺三人の先生方に簡単に御意見をお聞きしたいと思うわけでございます。よろしくお願いいたします。
  21. 熊谷清

    熊谷参考人 かつては私どもは、昭和五十年から六十年ぐらいには原子力船が必要ではないかと思って非常に緊迫した気分であったことは事実でございます。しかし、今お話しのように、当時は八万馬力以上の船がたくさんあったわけで、これは原子力の方がいいということを簡単に言ったわけでございますが、石油も相当に省エネも進むというような点から現在ややだぶついているのはおっしゃるとおりでございまして、松前先生の御意見も私どもも必ずしも否定をするということではございません。船のエネルギーも、大型船が既にほとんど三万馬力前後の小型になっておりますし、省エネが非常に進んでおります。したがいまして、そういう時期は少しずつ延びておることは否定をいたしません。しかし、いつの日か石油というものは物理的に有限であることを考えなければならないということで、ひとつお答えとさせていただきます。
  22. 森一久

    森参考人 先ほど渡部先生からもお尋ねのあったところでございますけれども原子力船の見通しにつきましては先ほど熊谷さんからもお話があったように、確かに延びたということは言えると思います。しかし、私ども三十年近く原子力開発外国からの技術導入でやってきたものから見ますと、外国から技術を買ったりそっくり入れてきてまねをしてつくればいいというものでないことは、随分痛めつけられて苦しい思いをしておるわけでございます。そういう意味から申しますと、実験船で基礎的なデータをとる。基礎的なデータの中でなぜ船でやらなければいけないかと申しますのは、先ほど先生の御質問にもございましたことに関連しますが、軽水炉だけでございますけれども、陸の上のことについてはどうやら日本世界最高のレベルに達したと言っていいと思います。現在ではアメリカ、フランス、ドイツ等からもむしろ教えてほしいという話の方が多くなってきておる状況になっておるわけでございまして、陸上で動かない状況軽水炉を動かすことについては世界最高に来たと言ってもいいかと思いますけれども、残念ながら海洋のような条件のもとでということは何も経験がないわけでございます。船ですから、進んでおったのが急に退かなければいけなくなったということになると、何分かの間に一遍とめてまたすぐ動かさなければいけなくなる。そんなことは陸上では考えられないことでございます。そのときたまたま波が来たとか風が吹いてきたとか傾いたとかいうことになるわけでございます。これは先ほどちょっとやぼったいと申して少し先生の御批判がありましたけれども、がっちりした原子炉でとにかく海の上で動かしてみることが必要だ。そういうことを積み重ねてまいるといたしましても、結局実験炉に何年かかるだろう、その次に実証炉が一つあって、その次に実用炉に行けるかどうかということを考えますと、結果的に本当に二十一世紀初頭、十六年後に商用船と同じような技術的な内容、経済性は別としまして、そのときに石油が二倍、三倍になっているのだからコストは合うはずだ、さあ原子力船を動かせと言っても私はちょっと無理だろうと思います。ですから、今から急いでもやはり二十年とか三十年はかかる。しかしそれも非常に急ぐ、もうあした石油が十倍になるんだから何が何でも金に糸目をつけないでやれということになりますれば、それは全く新しい原子炉を今から大急ぎでつくって、金に糸目をつけないでという道もあると思いますけれども、私個人の見解といたしましてもそれほど急ぐとは思えないし、日本の限られた金の中でそんなに原子力船だけにお金を投じていいとは思いません。  そういう意味で、せっかくできたものを動かすということが一番堅実な一歩一歩積み重ねていく道であり、どうしても通らなければいけない。ほかのことはある程度陸の上でできますし、原子炉設計だけなら設計どおりつくるということは日本はうまいですから、こういうふうにつくれば小さくできるんだということで、あるリーズナブルな設計図が手に入るのならそれはつくることはできます。しかし、それを海の上で今のような前へ進み、後ろへ進み、傾き、風が吹き、波があり、縦波、横波、その中で軽水炉というようなものがちゃんとそれに対応して動かせるか、こういう経験というものは紐やお金で買えるようなものではないわけでございまして、これを持っておるかどうかが決め手でございまして、ドイツはそれを持っておるから安心して、さあ日本あたりの出方はどうであろうと見ておるわけでございます。日本だけそれを持たないで、しかも船がありながらそれが持てないというのは非常に残念で、ぜひひとつこれを早く利用してそういったデータを得るようにしていただきたい、こういうことでございます。
  23. 山川新二郎

    山川参考人 今お話にありました原子力船の問題ですが、どう見ても「むつ」の場合には問題点が多過ぎるんじゃなかろうかと思いますし、原船が必要だ、立ちおくれては大変だというふうな焦燥感がちょうど今落ちついた時期なんです。このときこそスロー・バット・ステディーでやる全くのチャンスではないか。そうでないときは、メンツがあって一たんやりかけたことは格好悪いし、ぐあい悪い。特に長崎とか青森のように現地でいろいろな苦労をしておりますところは、おやめいただければさっぱりいたします。そうでないところは、何だ、国策国策と言ってやっておって途中で腰折れてだらしないなということで、やめたことでおしかりをなさる。日本国民というのはときどきそういう興奮性がうまく利用されることがございましたので、これは気をつけないといけないかもしれませんけれども、しかし事実から申せば今が潮どきだというふうに思っております。  それから、今まで正当だと思っていろいろ御提言申し上げたり批判申し上げたりしたのにもかかわらず、納得のいく形の御返答なしに事実が進行されてきたというふうな経過にかんがみますと、これは何か知らないけれども国民目当てのショーではないかというふうに思います。これは一つは、陸上でどんどんつくられております原子力発電所に対する国民のアレルギーを消すための一つのショーではないか。あるいはまた一般に原子力が船舶の推進用に使われるときには軍事用艦艇に原子力装置をつけてもこれは核軍備ではない、これは中曽根首相が首相でない時代に申されたことであります。特に原爆の記念日が近づいておりますけれども、やはり日本人は原爆に対するアレルギーがございます。こういうのは困るということでのアレルギー解消、そういったことにも原子力が非常に役に立つんだ。その周辺条件を無視して宣伝なさるというふうなことが多いものですから、これはどうしてもそういう意味でのショーに近いと言わざるを得ない、こう思います。  以上でお答えになりましたか……。
  24. 松前仰

    ○松前委員 今ショーにすぎないという点については、私ちょっと質問の外でありましたので、その辺は余り今の時点では意見として聞かないつもりでございます。というのは、本当はもっと技術的なちゃんとした問題を取り上げていきたいと思っています。  それで、今いろいろお話がありましたけれども、現在急いで、せっかく「むつ」があるのだからそれを使ってやるのが絶好のチャンスであるという御意見と、原子力船に対するいろいろな問題点が出てきて、今こそステディーにいかなければならぬという御意見がありました。私はどちらかといえば後者をとるものでございます。それはなぜかといいますと、原子力を使うという意味は、さっきからいろいろと御議論があったし、参考人の方からもお話がございましたけれども、これまでの技術、これでいろいろなものを開発してきたものとは大きく違うということ、これが原子力というものである。これはなかなか人間が制御し切れない。緊急の場合もそうですし、ふだんでもそうでございますけれども、制御し切れないものがあるのだということでございます。だからその点については今までただディーゼルの船をつくって、それをカット・アンド・トライみたいなやり方でやってきてもよかったけれども、それが今度はいかなくなるということであります。要するにオット・ハーンサバンナ、そういうものが成功したかのように見えているけれども、これが西ドイツアメリカ技術の蓄積になっているとは私は思わないのです。  なぜかといえば、この次つくるときどうするんだ。今までやってきた原子炉、これをまたそのまま積むのですか。二十年も先になれば恐らくまた新しい原子炉が出てくるでありましょう。そのとき、その原子炉を積むときにどういうテストをするか。これは先ほど実際に船の立場からいうと確実なものしか積まないというようなお話がありました。もっと信用あるエンジンのみ乗せるということであって、これはどこの技術の場合でも同じことでありまして、その徳用あるエンジンにするためのテストをどうするか。陸上のテスト、これでやる。さらに、先ほどお話がありましたが、先に船に乗せて、横波だとか船の動揺、それから前に急に進んだり、後ろにバックしたり、急激な負荷の変動、こういうもののテストを全部やっていかないと信用あるエンジンとは言えないですね。そうすると、今までの技術をとったとすれば、そういうテストは実際できないのです。原子炉というものを積んでいる限り放射線漏れというような問題が出てくればとれないですね。だから、こういう原子力船というものを考えるに当たって、ここでこういうような議論をやっておるということ以外に、技術者が集まっていかにして本当に安全な原子力船開発ができるかということを主に信頼性の面から追求して確立をしていかなければならぬ、批判は結構でございますけれども、確立をしていかなければいかぬと私は今思っているのです。それがオット・ハーンサバンナ、この二つが成功したと見えるその後にいかに日本がやっていくべき道であるか、私はそういうふうに思うのであります。  現在のこの時点、前の先進国と同じことをやってそれでいいとするのであれば、我が国はこんなものにお金を使ってはいけない、それは外国技術をただ単に輸入すればいいのですから。日本がやるべき道は、世界に誇る信頼性の高い原子力船開発ということが必要だ。急がば回れということですね。これは急いではいけません。ゆっくりとバイ・ステディーにやることがどうしても必要である。そういう意味で私は「むつ」を廃船といいますか、「むつ」を今ここで強行してやるということよりも、もっと元へ戻ってといいますか、今の技術から積み上げるということをやっていく必要があるのではないだろうか、そういうふうに思うわけでございますが、その辺について御意見をお伺いしたいと思います。
  25. 大野潔

    大野委員長 松前さん、参考人の方どなたにお答え願いますか。
  26. 松前仰

    ○松前委員 山川先生にお願いします。
  27. 山川新二郎

    山川参考人 今御質問のございましたように、「むつ」は強行するのではなくてじっくりと出直して再検討すべきである。今お話のありました船に乗せる前に陸上でテストをしろということは、この前国会へ参りましたときにも申し上げたのですが、運輸省の機関規則というのがございまして、これには陸上運転を義務づけてある項目が二つございます。これはタービンの過給機、今自動車でもはやりのターボというのがございますね、ターボチャージャーというので空気を圧縮してエンジンの中に送り込む装置でございます。これは排気を利用してプロペラを回して空気を圧縮するのですが、回転数が非常に速い。技術者は押したり引いたりすることを一生懸命考えるのですが、回転するときも遠心力というので軸が割れるというような危険がございます、羽が割れる。これは大変危険なものです。これについては一号機の場合には必ず陸上運転をすることというのがございます、ディーゼルエンジンについても。それから蒸気タービンの場合にも一号機については陸上運転を行うというふうにございまして、それを通れば二号機、三号機については製造検査でよろしい。  そういうふうに遠心力を警戒するために陸上実験しろという項目がある以上、新しい原子力推進装置というふうなものが生まれましたときには、それについては全体を陸上でやって確認し、陸上で確認できないところを船の上でまたさらに調べる、こういう手順を踏んでこそ科学的であろうと言えると思います。これを選択の問題にすりかえておられます。どうせ初めてやるのだから陸上でやっても船の上でやっても同じ、船の上でやることを選んだ、こういう選択の問題に切りかえる判断を原子力委員会もなさったようであります。これは原子力委員会科学者の方がおられるので、科学者同士が言い合って非常に困るのですが、普通からいくと順序は陸上でおやりになるというのが正しかろう。そのときも棚当多数陸上でやれという有力な意見があったと大山委員会の報告に書いてございます。ですから、この際ですから陸上でしっかりおやりになったらと思います。ところが、陸上でやることをお勧めいたしますと、何兆円もかけてやるならやっていいが、こういうふうにおっしゃる方がいる。何兆円もかかりません。西ドイツのGKSSでは陸上をきちんとやっております。これは数兆円かけたという記録はございません。日本の「むつ」よりも安くできていると聞いております。東京大学の工学部原子力工学科にも十トン前後のものならば数十センチの振幅で縦、横、前後に回転も含めてオール方向の動揺試験機、これは私見てまいりました。それも十五年くらい前に既にでき上がっております。それよりもう少し規模の大きい百トン前後のものを六自由度で試験する試験機、日本技術では数百億円もかからずにできると私は思っております。  それからもう一つ陸上でつくったものを分解して船に乗せる、こんなことができるものですかと事業団の方が、私が溶接を専門の一つにしていることを御存じないのか知りませんけれども、公言されました。「むつ」では新製品を現場溶接をしております。一たん組み立てたものを陸上できれいに分解して「むつ」の上に持ってきて現場溶接をするということは、技術的には今不可能ではございません。それほど日本技術はおくれておりません。ちょうどあれは鋼鉄が七十三ミリぐらいございまして、ニッケル関係の合金が、三ミリのが中が二ミリ、二重になった非常に精密なパイプでございますけれども、それの溶接も完全に現場溶接でできます。これができないから陸上運転はできない、二つつくらなければいかぬのですよ、こうおっしゃいました。二つつくってもいいと私は思います。そういう意味陸上運転をきちっと順序を踏んでおやりになれば一定の成功は得られると私は思いますが、それをなさらないで無理に強行なさるのには、さっき申し上げましたような勘ぐりもしたくなる、こういうことでございます。
  28. 松前仰

    ○松前委員 同じ質問について森先生の御意見を簡単にお願いいたします。
  29. 森一久

    森参考人 今御質問の中に関連があって話が出ておりますけれども陸上での試験が必要かどうかという問題でございます。確かに十数年前の原子力船に手をつけたころには、軽水炉経験がほとんどございません。したがって、やはり小型軽水炉試験という意味で、一応陸においてやってそれを積むというのが一つの常識でもあったと思います。しかし、現在の時点に立って日本のしかも軽水炉技術の蓄積という立場で見ますと、これは今からつくる必要がないのではないかというのが大多数の方の御意見でございます。一方で先ほどお話にもございましたけれども、私が数兆円と申しましたのはそういう意味ではございません。つまり、陸上でだけやって海の上の試験をしなくていいというところまで試験をするなら何兆円かかると申し上げたのであって、別にプロトタイプをつくるのが何兆円かかると申し上げたわけではありません。誤解を招くといけませんのでちょっと申し上げたいと思います。  そういう意味で、着実にやるという意味からいえば、やはり海の上で頑丈な炉を動かしてみるというのが一番着実な方法であると私は現時点では思うわけでございます。「むつ」の今の船が現在の技術、いわゆる文献にいろいろ書いてあるような水準からいって第一流のものだ、そういう意味では私は申してないので、それをやぼったいと申し上げて先生にちょっとおしかりをこうむったのですけれども、そういうことを申しているわけではありません。今の御議論の中で参考人の方の中にもあったかもしれませんが、原子力船の理想の姿と、それからそれの第一段階である実験船の持っていなげればいけない最低帳の安全性あるいはどうしてもこれだけはデータをとりたい、そのためにこの炉でいけるか、そのことと少し混同しておりまして、私の申し上げる点もその点で少し御理解が不十分な点があったかと思います。  以上でございます。
  30. 松前仰

    ○松前委員 今のお二人の参考人からの話の中で、森参考人の方のお話は、今せっかくあるから船を使ってやる、これは非常に信頼度が高いというようなお話もあったやに思います。しかし普通、機械の開発の過程というものを考えてみますれば、その前に実験といいますか試験、そういうものをやらないで、現在の「むつ」の原子炉を載せたと大体同じ感じになっている。多少のことはやっているでしょうけれども、全体の完全なことはやっておらぬ。結局、専門であられるから恐らくもうおわかりと思いますが、これは信頼度について計算上で与えてやっておりますけれども、それについて今信頼度の計算上に乗らない状況にある。これは今「ゆり」が故障したのも私はそう思うのでありますけれども、要するに現時点では初期不良が取り除かれていないという状況である。それはいろいろ補修をしているとか言っておられますけれども、修理した後、実際に運転をやってみておらない。修理する前に放射線漏れというものが起こった。あれも初期不良という問題です。ですから、修理した後全然やっておらぬ。初期不良があるわけです。これをいきなり実験に使って、しかもいきなり洋上で波にさらされて動揺を与え、過酷な試験をしていくということに、なれば、これは危険がたくさんあるであろう。普通の機械であれば危険とは言わないでしょう。故障と言うでしょう。しかし放射線、放射能を取り扱うということになりますから危険である。だから私は、さっき言ったようにこの技術は従来のステップ、たとえそれを陸上試験しても、今度は船に積んだ後の試験、確認試験はどうするんだ、こういう問題が出てくる。非常に難しいのです。考えてみれば、完全にいくという状況をつくり出すのは非常に難しい。だから先ほど申し上げたように原子力を扱う場合においては、特に原子力船という原発以上に過酷なものを取り扱う場合には、その辺を科学者がきちっとみんなで考えて確立していかなければいかぬ、そういうふうに申し上げたわけでございます。  それで、一つ最後にお聞きしたいのですけれども、現在、こうやって「むつ」を廃船するとか実験をするとかいう議論をしておるわけでございますが、実験するにしてもかなりお金がかかるというぐあいに聞いております。  そこで、今この時点で何を判断するか。将来の船というのは原子力船でいった方がいいのかどうかという問題、これはもう原子力船だけに定めて考えないで、帆船ですね、帆をつけた船、今コンピューター制御のあるすばらしい船が実験でできてきております。こういうものにお金をかけていく方が私はいいのじゃないだろうか。さらには石炭だって、これは大型船だったらエネルギーとして必要なわけです。できるわけです。それから水素エネルギーだって、恐らく二〇〇〇年の中半ぐらいにいったら開発されるに間違いないです。スクリューの大きさをうんと大きくして、回転数を遅くすればぐっと能率が上がる、こういうことだって今もう既にやられておる。そういう大型船だけに着目していいかという問題も今考えていかなければならない。日本の現状の船で一番困っているのは小型船です。あちらこちらの造船所がみんな不況に陥って船をつくってくれない。なぜかというと、燃料費が高いから。漁船がどんどん倒産していっているのも、そういう問題。私の選挙区なんか特にそうですけれども、小型船という問題もやはり考えていかなければならない。そういう科学技術の方にお金を使うべきである、私はそう思うのです。だから、今大きなお金を使うなら、まず原子力船廃船して、そしてステディーな道へ進んで、そこに使われなかったお金というものをこの新しい技術という方向に向けるべきである、そういうふうに私は思うのですが、その辺の御意見をお三人の先生方からお聞きして、終わりたいと思います。
  31. 大野潔

    大野委員長 ひとつ簡単によろしくお願いいたします。
  32. 熊谷清

    熊谷参考人 意見として申し上げますが、私どもエネルギー原子力船にどうしても依存するのだとは申し上げていないわけでございまして、エネルギー多様化と申し上げておるので、それには石炭だけの船もありましょうし、小型船については帆船というのもいいでしょうし、何も原子力船だけが石油が枯渇した場合でもそのエネルギー源だとは申し上げておりませんので、多様化というふうに御理解を願いたいと思います。
  33. 森一久

    森参考人 原子力船にどの程度のウエートをかけ、お金をかけてやるべきかという点につきましては、いろいろな考え方があると思いますけれども、私原子力の仕事をしておりますので、そういうことを言うのは当然だとおっしゃるかもしれませんが、せっかく日本軽水炉も含めて、電気も既に五分の一は原子力で供給しているわけでございますから、それだけの技術を持ちながら、これが原子力船に実用できる準備はやはり最低限しておくべきであろう、かように思うわけでございます。  先ほどドイツについて、あれは失敗ではないかという御意見がございましたけれども、ドイツは、もう私の考えでは非常に成功しておりまして、先ほど申し上げましたようにいろいろな実験もしましたし、廃船も完全に成功しておるわけでございます。最近、私の友人が、GKSSと申します研究所の構内に倉庫がございまして、オット・パーンに積んでおりました原子炉のプレッシャーベッセルその他全部抜いて倉庫におさめてある写真を撮ってきております。その直前まで行って写真を撮っております。我々、いつ廃船になるのだろうかと思いまして、実は随分気をつけておったのですけれども、言葉は悪いのですが、ドイツの新聞にも全然載っておりません。そういう意味では、私どもはやはりこういった問題についての国民理解を得るという意味での努力があるいは足りないと反省しておるわけでございます。そういう意味のパブリックアクセプタンス、原子力船実用化の前段階までの技術と今の廃船技術、それからそれについての国民理解の問題、そういったことも全部含めて、私は大変成功していると思って非常にうらやましく思っておりますので、ちょっとつけ加えさせていただきます。
  34. 大野潔

    大野委員長 時間が来ておりますので、簡単にお願いします。
  35. 山川新二郎

    山川参考人 簡単に申し上げますと、原子力船のことにつきましては、先ほど申し上げましたように絶対安全なものをつくる。日本原爆を受けた国としても、平和利用に徹して、絶対安全な日本でつくった原子力装置の売り物だというふうに研究開発を進めていくべきだと思いますし、それから、先ほどおっしゃいました国の科学技術関係お金をどう使うかという点につきましては、造船立場から申しましても、それからまた先ほど熊谷先生からもおっしゃいましたように、エネルギー多様化しなければなりませんし、また有効利用しなければなりません。そういう意味での機主帆従、エンジンを半分の力にして、あとの半分の力を帆でもらう、それをオートメーション化して非常に効率よく走る、昔の帆船の近代化でございます。帆主機従でなくて機主帆従というのが今大きく注目を呼んで、外国からも随分引き合いが来ているようでございます。そういうもの、あるいは石炭の効率的な粉炭化したもの、それの液化した石炭と同じように使えるような工夫も今随分進んでおります。また、水素エネルギーの問題あるいは電磁エネルギー、電磁モーターもいろいろな形で推進されております。原子力エネルギー、これは非常に簡単で、ボイラーで石油を燃やしたり石炭を燃やすかわりに原子力を使うだけのことでございますから、あとのことは、もう従来の在来技術なのです。ですから、先の原子力の一次系、二次系のことと後始末、ダウンストリーム、これを徹底的に研究するということなんで、船に載せるのは後でいいのです。そういうことを焦らずに地道におやりに、なるのだったら国民は喜んで、五十年先、百年先のことでも少しずつお金を出すことは嫌だとは申さないと思います。  以上でございます。
  36. 松前仰

    ○松前委員 これで終わります。
  37. 大野潔

    大野委員長 遠藤和良君。
  38. 遠藤和良

    ○遠藤委員 原子力船むつ」の存廃が大きな国民的関心を呼んでおります今日、お忙しい中、三人の先生方には本委員会に御出席をいただきまして貴重な御意見をお聞きしますことを、私も委員の一人として大変うれしく思っております。  それで、まず基本的なことからお伺いいたします。私は、原子力船むつ」の存廃については、その存廃をめぐる判断材料を国民の前に明らかにすべきである、そして皆さんにいろいろな角度から御論議を願って、その帰趨するところを見きわめていくべきである、こういうことを常々主張してまいったわけでございますけれども、三人の先生方は、今現在、国民の皆さんの前に、この存廃をめぐる判断材料が十分に公表されているとお考えでございましょうか。まず、その御印象からお伺いしたいと思います。
  39. 熊谷清

    熊谷参考人 個人としての意見なんでございますけれども、どうも技術的な問題は非常にわかりかねます。私ども素人としても、どうも難しい問題だなあと思いながらも、技術的にはわかりかねる問題で、お金がかかるなあという程度のことしか考えておりませんので、あしからず。
  40. 森一久

    森参考人 日本原子力開発は公開でございますから、すべての情報国民の前に示されておるわけでございますけれども、私この際一言だけ申し上げさせていただきたいと思いますが、それについての説明について、先ほど私ら自身の努力の足りない点も申しましたけれども、また一方で逆な努力もございまして、非常に誤解を生んでいるという点が非常に大きいように思います。  そういう意味で、これは一例でございますけれども先ほどから、中性子のストリーミングがあって、あれは欠陥炉だというような御発言があったように聞きました。今こういうことを申しますと、特にきょうは原子力船事業団の方もいらっしゃるかもしれませんが、当事者が言いますと、まことに言いわけであり、恐らくおしかりをこうむるので、私のような者が申していいかどうかわかりませんけれども、全く同じことをオット・ハーンサバンナでやっております。特に、オット・ハーンにつきましては、最近私のところへ、いろいろ聞いてみましたら、ああそれか、それならドイツでも実際やったよという話が来ておりまして、もちろん新聞にも載りませんし、原子炉を少しずつ出力を上げながら、チェックするポイント放射線の漏れでございますから、あるところまで出力を上げて放射線が漏れれば、もちろん危険量が漏れることは絶対困りますが、危険量以下であれば漏れることはあり得るわけで、そこでとめて補修してまた上げていくのは当然の手順でございます。  そういうことが実験なんで、ただ十年前に説明が果たして十分であったか、これはもう完璧な原子炉であって何の心配もないんだ、動かすだけだという説明があるいは強過ぎたかもしれないというような反省の点もあると思いますけれども、そういう説明の点で我々の努力の不足も含めて、あるいはまた逆な、そういうことを不当にあたかもそれが幽霊船になったかのような、あの当時も御承知のように漁業者の方が船に乗られて、幽霊船に乗るぐらいのつもりでお乗りになったと思います。なぜそういうふうに漁業者に心配をかけてしまったかというのは、もちろん原因は今の漏れでございますけれども、その説明ということに大変問題があったと思いまして、私も友人の科学者の方には、その辺ひとつなるべく慎重に科学的に正確にお願いをしたいということをいつもお願いしておることでございます。
  41. 山川新二郎

    山川参考人 情報につきましては、今建前は公開ですけれども、実情はほとんど国民の中に入り込むような形にお世話していただいていない。一生懸命探してやりますと、逆な方向をやっているふうに言われる。私も、この健全な発達と申しますか、それについては科学者の一人、技術者の一人として興味があり、関心があるものですから、進めたいのです。ただ、歯どめが大事だということを申し上げておるのです。ですから、情報の公開という点についてはなかなか、私「むつ」へ個人で参りましたときも、大学の造船科の教師であるということでやっと入れていただいたのですけれども、初めは何か留置所みたいなところへ入れられまして、東京へ電話をかけたり何かして、大変な過激派扱いで警戒されて、一時留置されるのじゃなかろうかと思ったぐらいの待遇を受けました。ですから、その後のことについても長崎までは全然、青森で何をしているか、ニュースは伝わってまいりません。
  42. 遠藤和良

    ○遠藤委員 熊谷参考人にお伺いしたいのですけれども先ほど原子力船に対する意見をお聞きしたわけでございますが、「むつ」に対する存続か廃船かという意見をお聞きしてないように承知いたしました。「むつ」に対して存続という御意見でございましょうか。
  43. 熊谷清

    熊谷参考人 これも熊谷個人ではございますけれども、私は将来原子力船はいつの時点か、何十年かかりましょうが必要であるということを考えておるわけでございまして、そのための知見、技術、そういうものを蓄積していただきたい。さらにパブリックアクセプタンスだとか、国際的な諸制度、国内の諸制度というものを整備してもらいたいということを申し上げておりまして、今の原子力船に関する諸条件の中で、どのような時期にどのような段階までどういうような方法でやるのかというようなことにつきましては、これは国の問題として、ナショナルプロジェクトとしてやっていただきたいわけでありますので、政府でお決めいただいてしかるべきものであると思っておりますし、海運界がこの時点でああだこうだと申し上げる段階ではないというふうに思っておりますので、あしからずひとつ。
  44. 遠藤和良

    ○遠藤委員 いわゆる中立という感じで受けとめてよろしいですか。
  45. 熊谷清

    熊谷参考人 そういうことになろうかと思います。
  46. 遠藤和良

    ○遠藤委員 少々技術的なことをお伺いしたいわけでございますが、「むつ」の原子炉は既に旧式であるというお話がございました。例えば「むつ」は分離型でございまして、将来は一体型あるいは半一体型の原子炉になるのではないか。したがって、現在の「むつ」の原子炉で得られたデータがすぐに役立つとは考えられない、こういうふうな意見もございました。  私は、そこで燃料棒のことについてお伺いしたいわけでございます。最近の傾向を見ますと、燃料棒が丸棒の形からいわゆるキャラメルタイプの燃料棒に変わっているようでございます。特に「むつ」に載せます舶用炉のように、出力は小さいわけでございますが、いわゆる負荷変動が大変に大きい、こういったものを制御するために燃料棒そのものの構造を変えていくべきではないのかという議論があるようでございます。そういうふうに考えますと、「むつ」の燃料棒は既に時代おくれであるという議論があるわけでございますが、こういった議論に対しましてどのようにお考えになりますか。森参考人山川参考人にお伺いいたします。
  47. 森一久

    森参考人 将来の原子力船におきまして、経済性を追求するという観点で言えば確かに時代おくれだと思いますけれども、現在原子力船むつ」を動かした場合に要請されておる実験をやっていくには十分で、この数年前ではステンレスはどうもというあれはありましたけれども、むしろステンレスの方がいいという面も最近は指摘もされておりますし、将来キャラメル型、今おっしゃったようなことは、御承知のように研究炉等でなるべく高濃縮ウランを使わないようにするためにキャラメル型にするとか、負荷追従をよくするためにそうするとかいういろいろな研究、これは軽水炉というもの自身が、陸上軽水炉が完成した中で燃料だけを思い切って一歩先へ進めようという研究の中で出てきておるものでございますので、実験船にその燃料を積んでないから実験船としてだめだというような問題ではないと私は思うわけでございます。
  48. 山川新二郎

    山川参考人 燃料棒の場合も、熱応力での燃料棒の被覆の破損ということが大きな問題でございます。そこで丸い棒、細い棒のような形状がいいか。棒にいたしますと、どうしてもプレス加工いたしますので、残留応力が残ります。これを熱でなましたりして残留応力を解放したりいろいろするのでございますけれども、どうしても内圧と外圧の差その他で曲がろうとする中での応力が残る。そこから応力の強いところに腐食現象が進む。これを避けるために平面で囲われた形のキャラメルタイプというふうなものがアイデアとして生まれ、開発されつつございます。ですから決着はまだ学問的、実験的にどちらに軍配が上がったというふうなことではないと私聞いておりますけれども、しかし新しくできたものが全部だめで古いものがいいというわけじゃありませんし、古いものが全部だめで新しくできたものが全部いいとも限らない、過渡期にあろうか。ですから、そういったものも含めて陸上でどんどん実験をおやりになればよろしい。海上ではまだまだ事故が起こったときの救援体制も不十分でございますし、陸上でやるならば事故が起こったときに直してまたやる。先ほど森参考人がおっしゃったようなことが十分にできるわけです。その点も、こういう不十分な状況のものを海上の修理、救援体制の整わないところで今後続行なさろう、そして海上運航経験だけを得ようとなさるのは、これは明らかに逆立ちをした論議であろうと思っております。
  49. 遠藤和良

    ○遠藤委員 一部には、いわゆる完成されました舶用原子炉をもう輸入してしまった方が早いんじゃないか、こういうような議論もあるわけでございますけれども、こういった考え方に対しまして森参考人はどういうふうにお考えになりますか。
  50. 森一久

    森参考人 若干繰り返しになりますけれども、実は原子力発電を始めるときに全くそういう考え方で甘く見て、この二十年間どれだけ苦労したかという実感から申しまして、とてもそれで日本で物に、できるということは考えられないというのが原子力関係者の実感であろうと思います。本当に軽水炉は陸の上でございますから、先ほどからお話がありますように、ある意味では修理が簡単だとかいろいろなことがございますし、楽な面もあるのでございますが……。もちろん、一歩一歩慎重にやっていくという前提での話でございますけれども、この間も専門家の方が外国と話をされたり、あるいは企業の人が技術的な情報を得られるかというので向こうと接触した範囲で聞きましても、まことに悔しいことでございますけれどもデータは高く買ってくれるならあげましょう、しかし海の上で原子炉を動かした人に役に立ちますかねというやや冷笑を込めた答えを聞いて、若干歯を食いしばって帰ってきた八二、三人にお話を伺ったところでございますので、特にその印象を強くしております。
  51. 遠藤和良

    ○遠藤委員 船体のことについてお伺いしたいのですけれども原子炉の遮へい工事で約三百五十トン重量がふえた、こういうふうに聞いているわけですが、「むつ」の特色は原子炉かなりスペースをとっておりまして荷重が集中しているわけですね。その荷重の集中によりまして、しかも三百五十トンというのはかなりの増加でございますが、これによりましてベンディングとか、ねじれ等に対する安全性は十分に確保できておるのかどうか、あるいは重心あるいはメタセンターが移動したと思うのですけれども、これによって船の復原能力というものは低下しておらぬかどうか、この辺の技術的な知見はどうなんでしょうか。これは森参考人並びに山川参考人にお伺いします。
  52. 森一久

    森参考人 私は安全審査の方の専門でございませんけれども、そういった点非常に素人なりに気になりまして、安全審査、この前の総合点検の結果を随分詳しく聞きましたけれども、あれだけの専門の方が集まって御検討なさった結果、随分と保守的といいますか厳しい方向で見て、安全性には問題がないというふうに理解をしております。
  53. 山川新二郎

    山川参考人 今おっしゃいました船体のことでございますが、先ほど申しました幅の問題とかそういう設計思想ですね。レーニン号とかサバンナとかは五メーターあるのに「むつ」は三メーターでいいというようなことは除きまして、普通の通常船舶の計算で排水量八千トンほどのあの船が三百五十トンの重量増を招いたということについて、危険を冒してそれをやるようなことはまさかおやりになってないというふうに思っております。  ただ、昔の海軍で、まさかと思っているうちに大砲を積み過ぎて試運転後直ちにひっくり返った「友鶴」という事件がございました。そういうようなことを万が一早かろう悪かろうの方でやっておられたら大変ですから、私も一切の資料を送ってきていただいておりませんのでまだ見ておりませんで申しわけありませんが請求して拝見をさせていただきたいと思いますし、造船屋としてそんなことをやっておったら、平賀譲という海軍中将がおりましたけれども、あの人は責任をとらされずに済みましたけれども、あれの部下は死にましたね。軍令部に、たった七百トンの船にめちゃめちゃ大砲を積め積めと言われて、造船屋の常識を破って、ひっくり返る船をつくっちゃったのですが、そんなことが「むつ」に二度とないように祈っております。
  54. 遠藤和良

    ○遠藤委員 船というのはおのずから寿命というものがあるわけでございますが、「むつ」を継続したところでもう老朽しておるから寿命がないだろうというような議論があります。私はそうではないと思うのですね。「むつ」を継続する以上は何年間くらいは十分に使える、こういうふうな寿命を明確にするという意味も大事なわけでございまして、あとどのくらい「むつ」というのは実験に耐え得るのか、こういう見通しはどのようにお考えになりますか。特に「むつ」の原子炉部分の寿命それから船体部分の寿命に分けて、どういうふうに推察されますか、森参考人並びに山川参考人にお伺いしたいと思います。
  55. 森一久

    森参考人 これは私のように技術の系統ではございますけれども実験等をやったことはない者にとって大変難しい質問でございますが、軽水炉が現在までどれだけの運転をしてどういうふうになってきておるかというデータかなり蓄積されております。これはしかしある意味では、水が回っておるためによい面と、回ったために傷む面と両方あるわけでございます。「むつ」のように動かしてないという点もございます。私の感じで申し上げることを許していただければ、最低十年は大丈夫じゃないかという感触を持っております。
  56. 山川新二郎

    山川参考人 原子炉部分につきましては、初めてつくったものですから耐用年数幾らかというのはわからないと思います。しかもつくってから十年以上たっております。一・四%の出力を出した後あけて中を見ておりません。したがって、あとの耐用年数がどうか、あけてみたらもう使えないということかもしれませんし、見た目はまだ大丈夫だということもあるかもしれません。しかし、その後加熱した状態に置いてございませんので、被覆管の中の圧力がふえて中のものが外に出てくるというチャンスがほとんどございません。したがって、燃料棒に瑕疵があるかあるいは重大な傷があるかどうかは、加熱してみないとこれもまた言えない。抜いただけではわかりません。ですから、これはやはり今後解体するという方針のもとで抜くか、あるいは実験をするという方針のもとで抜くか、いずれにしろ抜いてみてまたやるかやらぬかを決めるというくらいまで慎重に事を運んでいかなければ、やるという立場のお方でもそれはしなければいけないと思っております。  それから船体の方につきましては、商売の上では大体二十年でございます。税金のいわゆる減価償却というのも二十年でやっておりますけれども、このごろは船会社に蓄積を楽にするために非常に急速な減価償却を認めておられます。したがいまして、十五年たったら帳簿価額はゼロに近いというふうな船が多い。現在長崎の橘湾に浮いております備蓄用のタンカー、二十五万トンのタンカーでございますけれども、何かこの前伺ったところでは、できたときの船価が四十数億で、現在の価格は二億前後というふうな話を伺いました。ですから帳簿価額としては非常に減ると思います。けれども使い方によっては八十年生きている船もございます。ついこの間解体されました夕顔丸というのは、明治の初年につくられて長い間生き残りました。外板を取りかえ取りかえ大事に使えば七、八十年使える。今東南アジアでは日本を初めアメリカ、イギリスの古船が、九十年くらい前の船が売られて、これが川の中を走っております。  以上でございます。
  57. 遠藤和良

    ○遠藤委員 貴重な意見をありがとうございました。  これは熊谷参考人にお伺いしたいのですけれども、特にこれは原子力船の将来性とも関連する問題でございますが、石油コストの値上がりによって原子力船時代が来るんだというふうな、いわば他力本願的な原子力船時代の到来というものではなくて、原子力船時代を来させるという意味におきましては、自力で原子力船自身のコストダウンを図っていかなければならない、こういうふうに考えるわけでございます。原子力発電が、当初はいろいろ言われておったわけでございますが、今五軒に一軒の割合でございますか、これだけ広がってきたというのは、従来の発電に比べてコストが安い、これが大きな普及の理由ではなかったかと思うわけでございます。したがいまして、こういうふうなコストダウンというものが原子力船時代を積極的に迎える一つの大きな方向、考え方だと私は思うわけでございますが、こういう考え方についてどういうふうにお考えでしょうか。
  58. 熊谷清

    熊谷参考人 今の御質問、ちょっと私わかりかねたのですが……。
  59. 遠藤和良

    ○遠藤委員 私が言ったのは、先ほどお話がありましたときに、いわゆる原子力船時代というものは、その可能性としては、石油価格がどんどん上昇していきまして代替エネルギーもなくなる、こういう危険がある場合に原子力船時代が来るんだというふうなお話がございました。それで確認をしたいわけでございますが、そういう石油がなくなればあるいは石油が高くなればというふうな他力本願のような考え方ではなくて、積極的に原子力船時代を迎えるという意味においては、ほかのエネルギーに比べて原子力の船はコストが安いというものをつくっていくことが大事ではないか、こういう考え方でございます。これに対する評価をお願いしたいと思います。
  60. 熊谷清

    熊谷参考人 石油が枯渇する、物理的になくなるということは、何年先かわかりませんが我々予測しなければならない状態だと思います。その場合に、まず石炭は無限であるというふうに伺っておりますし、今お話しのような帆船装備を取り入れるということもございましょう。原子力に一〇〇%依存するわけではございません。したがって私どもとしましては、石油もなくなるにつれてだんだん上がってくるであろう、同時に舶用炉のコストも下がってくるであろうという推定はしておるわけです。これはだんだんと、考えられぬような技術革新の時代でございますから舶用炉も少し値段が下がるし、経済性というものが出てくるのではなかろうか。こういうふうな言い回しが極めて他力本願だとおっしゃるかもわかりませんが、原子力全般につきましては国としてもエネルギーの変革を呼ぶような長期かつ非常に大きな問題でございますから、我々が他力本願というよりも、国もひとつそういう点で長期的に御尽力願わねばならないのではないかというふうに申し上げましたので、その点でどう言いましょうかひとつ……。
  61. 遠藤和良

    ○遠藤委員 船主さんの方が原子力船の未来、将来性についてどういうふうな見通しをしているのかという話に関連するわけでございますが、昭和三十七、八年ごろ「むつ」をつくろう、そういう計画がありましたときに、国の方としても「むつ」をつくった後のいわゆる「第二むつ」といいますか、実証船、これは民間の方からどんどんとつくっていただけるんじゃないかというような楽観論があったわけでございますが、先ほどお話を聞いておりますと、「むつ」の後の実証船も国でつくれというふうにお伺いしました。特に、エネルギーの安全保障という見地から、これは国策として実証船に対しても責任を持って国で考え計画をしてしかるべきだ、こういうふうな話でございまして、一番最初の船主さんの御意向とは大分後退をしているように見受けられたわけでございます。これはやはり今造船業界並びに船主さんの業界も大変不況だと承知しておりますが、そういうふうな社会的な環境の悪化等もあっての判断なんでございましょうか、いかがですか。
  62. 熊谷清

    熊谷参考人 今のお話は、もう二十年近くなると思いますけれども石油はもう二十五年で枯渇するという話がありまして、我々先ほども申し上げましたようにエネルギーを消費せざるを得ない産業といたしましては、これは大変な問題だ。当時、その後二〇〇〇年の時点では原子力船もできざるを得ないんではないかという極めて緊迫した環境のもとで、船主協会といたしましてもそういうことを真剣に検討もしたわけでございます。何せ今から十五年も二十年も前の話でございますので私どもも詳しくはわかりかねる面もございますが、当時から常に問題になっておるのは、我々はコマーシャルボートでございまして、世界じゅう、日本じゅう至るところに寄らなければならない、そこで作業をしなければならぬということを考えますと、いわゆるパブリックアクセプタンスのないようなものは我々会社として、一つの企業として、できる道理がないわけでございます。だから、その点の私どもが申し上げているような社会的な環境、国際的な環境というものの整備ができない限り、クリアにならない限り、我々は企業として、じゃあ実証船をつくりましょうということにはならないのではないかと思います。
  63. 遠藤和良

    ○遠藤委員 「むつ」の論議が今されているときに「むつ」以降の論議をちょっとしておるわけでございまして、かなり将来の話でございますが、現在の産業界の意向としましては、「むつ」以降の「第二むつ」といいますか実証船も国でぜひ計画をしてもらいたい、こういうふうな考え方と承知してよろしいですか。そうなりますと、かなりお金の面でも考えていかなければいけないし、さらにこの原子力船実用化されるという見通しは随分と先の方の話になるような気がいたしますが、そういうふうな印象と受けとめてよろしいでしょうか。
  64. 熊谷清

    熊谷参考人 私の申し上げていますのは、社会的にも国際的にも受け入れられるような環境がない限り、企業ではこれを建造するということは考えてもおりませんし、研究船をつくるというふうなことも考えておりません。
  65. 遠藤和良

    ○遠藤委員 最後にお三方にお伺いして、私の質問を終わります。  いわゆる国の原子力船行政についての評価でございますが、いろいろな御意見がございます。純技術的な問題を技術的な問題ではなくいわゆるお金で解決をしてきた、そこに「むつ」の大きな混乱があった、こういうふうにおっしゃる方もございますし、私もそういう意見に賛成でございます。やはり科学技術という問題は純粋に科学技術の問題でございまして、一切の問題を排除して、「むつ」の原子力船としての将来性というものが一体どういうふうに開かれていくのか、これを純粋に考えていかなければならない、こういうふうに思うわけでございますが、そういうことも踏まえまして、いわゆる国の原子力船行政についてとってきた態度並びに今後とっていくであろう方向性について御注文なり御意見がございましたら、お三方からお伺いしておきたいと思います。
  66. 熊谷清

    熊谷参考人 先ほどから申し上げておるとおりでございまして、そういう時期とか段階、方法というようなものは国のプロジェクトとして国家でお願いせざるを得ないと思っております。それと、私どもとしましては何といたしましても、同じことでございますけれども、国内、国際的なアクセプタンスというふうな環境整備が大事ではなかろうかというふうに考えております。
  67. 森一久

    森参考人 私も、先ほど先生のおっしゃった一番大きな原因という点について全く賛成でございます。確かにほかの問題もそういう面がありますけれども、「むつ」については余りにも技術以外の問題で妥協し過ぎたということがあると思います。先ほどから御質問の申あるいは参考人の御発言の中に強行しよう強行しようとしているとおっしゃいますけれども、十年前に一度強行したことはあったかもしれませんけれども、その後は全く強行もしなくて、私も当事者の方を存じ上げておりますので結果論で申すのは非常に心苦しいのですけれども、その場限りの対策を、しかも技術でないことで片づけてきたということが一番いけなかったことであろうと思いまして、その点我々も含めて反省をして、今度は幸か不幸か原子力船が一刻を急ぐ状況でもないという条件もございますので、一歩一歩実験を積み重ね、理解を得ながら技術に即して進めていく。今後、私が今ここで御質問もあっていろいろ申し上げておるような点について、いろいろな実験をする中でそれと違ったことが出てくれば、そこで方向を変えるとかあるいは少し立ちどまるとかのこともする。それだけの柔軟性を持って技術的に進めていただきたいと思っております。
  68. 山川新二郎

    山川参考人 今、お金技術の問題を解決することが非常に多かったというようなことを前のお二人とも言っていらっしゃいました。私もそのとおりで、こういったことは科学を扱う面ではまずなくしていかないといけないのじゃないかと思います。  今後の原子力行政という問題につきましては、実際に先行しております地上の原子力発電の問題と、原子力一般に関する研究の問題、それから原子力船の研究、原子力について申しますと大ざっぱに言って三つほどあろうかと思うのですけれども原子力発電が非常に先行いたしておりまして、なおかつ大きな問題を抱えております。「むつ」の問題も、造船関係原子力技術者はまだそのころ体験もなく、希望は持って一生懸命勉強はいたしましたけれども陸上経験を積まれた方方が非常に有力な立場におられたようでありました。したがって、船という特殊な状況についての配慮がこの計画の中身にしみ出てくるような状況が弱かったのではないか。これはどちらが強いとか、どちらがいいとかいうことではございませんけれども、船をやるときには、船に特有な専門のことを重視して、しかも時間をかけてやるというふうなことに立ち戻るような行政指導——そうでなくて、時間を急ぎ、あるいは先ほど申し上げましたように、原子力発電所の立地難は原子力商船が成功したという国民的な称賛の声があれば一気に解決するというふうな声も聞きました。「むつ」がうまくいけばもう立地問題は一気に解決するよというふうに言っておられる方がありました。そういうふうな形では科学の問題は間違った方向に進むと思いますので、これだけは改めていただきたいとお願いするものでございます。
  69. 遠藤和良

    ○遠藤委員 大変ありがとうございました。以上で、質問を終わります。
  70. 大野潔

    大野委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時二十二分休憩      ————◇—————     午後一時四十七分開議
  71. 大野潔

    大野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。小川泰君。
  72. 小川泰

    小川(泰)委員 お三人の先生方、大変お忙しいところありがとうございます。午前に引き続きまして、ちょっと私から質問をさせていただきますが、失礼の段はお許しをいただくことを前提にお願い申し上げたいと思います。  最初に、お三方に同一の質問で一言だけ御見解を賜れればと思っております。専門外のことで大変恐縮なのでありますが、造詣の深い皆様でありますから、午前中質問の焦点になっております原子力船むつ」、この問題をめぐりまして今、既に問題提起から十数年たっております。その間、舶用炉のちょっとしたトラブルで問題がとまっておるというふうな雰囲気を今全体的に受けていらっしゃるのだろうと思うのです。その後、これに対応じて、政治の立場でいろいろな論議がそれぞれされております。本日もこのようにされております。こういう流れを、専門は専門として別に置かれまして、私たち一般国民の大勢の皆さんのお気持ちを端的に受けとめながら、この種の問題の進めを誤ってはならないという気持ちに駆られる一人でございますので、それぞれのお立場で、この一連の流れに対してどんな御見解を持っていらっしゃるか、一言ずつ御見解を賜りたいと思います。
  73. 熊谷清

    熊谷参考人 私ども技術的には素人ではございますけれども、船主協会等で聞いております範囲では、サバンナ号とかオット・ハーン号というのは、世界じゅう二十数カ国、四十幾つかの港に寄って運航されてきたし、いろいろな補償等々の問題もなかったというふうに伺っております。日本はいろいろな点で、その意味では非常にデリケートなことは当然わかりますが、非常にアクセプタンスの点で大変だなという感じを受けております。
  74. 森一久

    森参考人 午前中もお話がございましたように、諸外国状況から見まして本当に残念な状況だと考えております。やはり今後は一歩一歩国民の皆様の理解を得ながら着実に進めていくということで、原子力船必要性実験安全性といったことも含めて純技術的にひとつ理解をしていただく、着実に進めていくということが最も必要ではないか、かように感じております。
  75. 山川新二郎

    山川参考人 一言で申しまして、ボタンのかけ違いをしたのではないかというふうに感じております。国策優先か科学技術の真理を優先させるか、これの問題ではなかろうか。もう一つ申しますと、平和利用そして安全ということを原子力開発の場合には最優先しなければいけないのですけれども、やはり効果を求めるのに非常に焦ったのではないか、そういうふうに思っておりますので、科学の常道に立ち返っていただきたいというふうに思っております。
  76. 小川泰

    小川(泰)委員 ありがとうございました。  もう一つ、これまた変な質問なんですが、お三方に一言ずつお願いしたいのです。  原子力、いわば核エネルギーというものの存在が発見されましてそう多くの時間はたっておりません。それも含めまして私の伺いたい点は、先ほど来質問に出ておりますとおり、地球上にある資源というものをそれぞれ用途別に最も使いやすいということのために勝手に使っていってしまっていいのだろうかというのが、私の心底にある基本であります。そう考えてまいりますと、船を動かすにも燃料が必要です。その燃料には薪炭から始まりましてあらゆる熱エネルギー源というものがあるわけです。その中の一つにこの核エネルギーというものが存在するわけです。これらは静かに眺めてまいりますと、例えば油はついせんだってまで、オイルショック以前までは安価で、お金を出せば買えるものだという前提で世界じゅうがきました。地球は有限だよというので見直しに入りました。そういう警告の中からふっと我々は感ずるのでありますが、例えば油というものの性質、この資源を果たして熱エネルギーだけに使用すべき資源としてとらえていいのかどうか。この油をうんと分析してみますならば、人間生活上各般のものに何ぼでも利用ができるという広大な内容を持った資源であることには間違いありません。しかも有限のものだ。こういう前提に立ちまするならば、資源の使い方という場合には、その持っておる資源が最も有効に人間社会のために活用される工夫がもう一面加えられていかなければならない。ウラニウムそして核エネルギーというものをぐっと詰めてみますると、ほかにどんな活用の方法があるだろうかというふうな比較論からいたしますると、まさに今回論議されておる陸上原子力発電所のもとになるべき熱エネルギーあるいは船に積む舶用炉のエネルギー、こういう使い方がそれぞれ資源のありさまとしては全体の資源立場から考えるとまあまあいいのではないかなと私は思うのでありますが、そういう見方を皆様方はどのように見ていらっしゃるか、一言だけひとつお聞かせ願いたいと思います。
  77. 熊谷清

    熊谷参考人 今の小川先生のお話のように、エネルギー、特に石油は有限であるという観点から、しかも日本はいろいろな物資を将来にわたっても、国が存立する限り、原料、食糧、着るもの、材木、もう全部輸入に頼らなければならないということからいたしまして、非常にエネルギー確保に尽力をせざるを得ない、同時に多様化をしなければならない。先ほどお話しのように昔の何十年か前にバックして石炭船、十数万トンの大きな船で石炭で走るというようなことがまた出だしております。そういう意味で、いろいろなエネルギー多様化して大事に今後も使っていかねばならない。エネルギー消費産業といたしまして特にそういう感じを深くいたしております。
  78. 森一久

    森参考人 今先生おっしゃいますとおりに、そもそも人類と申しますか将来のエネルギーあるいは資源考えてみまして、一番足りない元素は炭素だと言われております。水素、酸素もありますけれども、いろいろな材料の発展そのほかの方向で、世界の将来の研究から見ますと炭素が一番足りない。そういう意味で、炭化水素資源は単に燃してしまうだけではなくて原料として使うという方向に大きい方向としてはまいると思いますし、また炭素燃料を燃すことで不可避的に出てまいります、回収することがほとんど不可能に近い炭酸ガスの影響ということも現在心配されております。  そういう意味原子力役割も大きいと思うのですけれども、これは先ほど来御指摘もあるようにいろいろな特殊性を持っております。一歩一歩進んでいくという点から、何とか発電につきましてはかなりのパーセントまでいっております。これをさらに小型の原子炉、これは原子力船開発の結果得られる一つの方向だと思いますが、開発途上国にももっと利用を広げていくということ、それから、温度を上げて発電以外の化学工業等に多目的に使っていく、これも実は原子力研究所で大分研究が進んでおりますが、先生方にもひとつ十分御配慮願いたい次の大きな可能性だと思っております。
  79. 山川新二郎

    山川参考人 お答え申し上げます。  エネルギーが必要だという点では多様化が必要だろうと思いますが、ただ役に立つからといってそれに余り簡単に頼ってはいけない面があると思います。と申しますのは、お薬でもキノホルムという薬は下痢には非常によく効きました。効くというのでどんどん使ったらスモン病で大変な被害を及ぼしました。それからサリドマイドというお薬も妊娠調節に便利だというふうなことで使われたのが、ちょっと用途は違いましたが、奇形児をたくさん出しました。そういうことで、一定の効果があっても終末の始末ができているということを確認して初めて一般の病人、あるいはエネルギーとしても重要性をそれに負託する資格が出てくると思います。その点、核力につきましてはまだ開発途上であるというふうに考えて差し支えないかと思います。そのほかにも、核エネルギーにかわるものはないかということにつきましては、太陽エネルギーが化石エネルギーのもとでございますし、四億年の蓄積が化石エネルギーとして現在わずか数百年にもならない間に使い去られようとしている。この直接降り注いております太陽エネルギーをどのようにして人間が使わせていただくかというようなことあるいは地球構成上初めてできましたときから内蔵されております地熱エネルギー、こういったものをどう使うかというふうなことはやはり研究対象として我々の目の前にあるわけでございますが、ただ、その中でもエネルギーの多消費形態をこのままずっと伸ばしていっていいのかどうか。燃焼エネルギーでいきますと、エントロピーの無限大増加というのを促進するという、これは物理学でも言っておりますけれども、地球表面全体のエネルギーのバランスを崩すようなことを二十世紀あるいは十九世紀末の人間がやったということになってはこれは後世に対して申しわけがない、そこまでの展望を持って科学者がすべて力を合わせ、政治家の方々も人類の前途の幸せをエネルギー問題でおっしゃるならば、その後始末も含めての大きな、オールラウンドの問題として研究対象として進んでいきたい。  重ねて申し上げますけれども、当面の効用を求めるために悔いを千載に残さないということが、原子力人間の前に出てまいりましたときに大きく示された警告であるというふうに申し上げたいと思います。
  80. 小川泰

    小川(泰)委員 今度は少し絞りまして、森、山川参考人に伺いたいと思います。  今私があえて資源からまた核エネルギー、こういう格好でお話を伺ったのを、もう少し詰めてまいりますと、原子力というものの開発が現在大きく、大ざっぱに言いまして一つは発電、こういうものに向かって進んでおります。さらには医療の分野にこれが反映をされていく。そして次の問題は、今問題になっている、これも炉の問題ですから同じと言えば同じかもしれませんが舶用炉、非常に小型化という方向に行っておる。さらには宇宙開発の場合の動力に、ある部分が使われていっておる。こういうふうにして、逐次それぞれの目標に向かって核エネルギーが使われていっております。もちろん、ちょっと言い忘れましたが、とんでもない悪魔の兵器と言われている核兵器、これは冒頭に出てきたもので、当然のことでございましょうがこれは度外視するとして、造詣の深い御両者から、これからさらに核エネルギーというものが平和の分野に向かっていくだろうか、あるいは研究テーマとしてどんな方向で今創造されようとしておるのか、ちょっと一言お教えいただきたいと思います。
  81. 森一久

    森参考人 原子力の利用は、今先生おっしゃいましたように原子力発電から入りまして、現在いわゆる熱中性子炉、中性子の速度の遅い炉を中心開発が進んでおるわけでございます。御承知のように、原子力開発を始めた時期は、ウラン資源というのは非常に限られておるので、これを最大限に利用できる高速炉に早く移るべきだという方向で高速炉の開発も進んでおりますけれども、ウラン資源も思ったよりはたくさん出てまいりましたし、また原子力発電の方も思ったほどは伸びませんでした。そういう意味で随分時間的な余裕が出てきておるわけでございます。  しかし、特に日本のようなウラン資源もない国が原子力になぜこれほど力を入れなければいけないかということは、もちろんエネルギー資源として大事だということのほかに、やはり原子力の持つ特質、つまりウラン資源は単に一度燃すだけではなくて、何度も再処理等をすることによって最大限に利用できる、準国産エネルギーであるという意味に非常に重点がございますし、同時に軍事利用という全く許せない面があり、また安全性という非常に大事な面があるために、三原則というものを最初に決めてここまでまいってきておるわけでございます。  ですから、長期的にまず考えられますのは、やはり高速増殖炉に向かう原子力燃料の一〇〇%に近い利用の方向へます行き、それから小型化ということで、単に先進国だけでなくて、またもう少し取り扱いやすい炉を開発することによって途上国等ももう少し原子力の利益を享受できるようにしなければいけないということ。  それからその次に、先ほど申し上げましたことと重なりますけれども、もっと温度の高い炉によって鉄鋼に至るいろんな化学工業のエネルギーもそちらに転換していくということで、少しでも原子力の割合を安全に合理的にふやしていくという方向に向かっていくのではないかと思います。  もう少し先を考えますと、核融合ということになると思いますし、御承知のようにこれは重水素の資源からいいまして非常に長い間使える可能性がありますけれども、現在では確実に実用できるかということを見出すための研究が少なくともまだ十数年はかかるという現状であろうかと思います。
  82. 山川新二郎

    山川参考人 重ねて申し上げますけれども、人類の前に提起されました非常に責任感を伴うエネルギー採取のことでございますので、終末処理の研究が進みません限り、バラ色の夢を幾ら眺めてみても困った結果を急速に蓄積するのに貢献するということになります。したがって、今は安全性の問題、それから最終処理の問題、それを含めた地道な研究に力を注ぐことが、原爆被害を受けた日本がこの原子力開発研究に対して一番力を注ぐべきことであろうかと思うわけです。それだけにしておきます。
  83. 小川泰

    小川(泰)委員 それではまた御両人に、ぐっともっと範囲を狭めまして、よく実験という言葉が使われます。科学技術を進めるためには、実験は必ず伴うものだと思います。今度の「むつ」の舶用炉の実験という問題にも残念ながらああいうトラブルが出てきたというのも、その一つの経過だったろうと私は思うのです。こう考えてみますと、この核エネルギーという問題が、とりわけ山川さんおっしゃったように、最終終末処理あるいは安全、こういうものを積み重ねていくとしまして、さらに一歩一歩と前進させるためには必ず実験が必要だと私は思います。実験をやる以上はトラブルが起こるのは当たり前です。ただ、そのトラブルが、人命に決定的な損傷を与えたりあるいは環境を破壊したりというべらぼうなものを避けつつ、人間の知恵によって実験は続けられなければいけないと思うのです。  こう考えてみますと、私などは、先ほどちらっと森さんでしたか言われましたとおり、よその国の舶用炉の開発の途中でも出てきているのは承知しています。そういうものについて、どうも日本全体が核の問題については科学以上の神経質な点があり過ぎはせぬか、こう思っているのです。実験を行う以上はトラブルはつきもの、トラブルというものはどこら辺を限界としてこれを抑え込むべきものなのか、そういった点についてちょっと造詣のあるところをお聞かせいただきたいと思います。
  84. 森一久

    森参考人 余り造詣深くございませんけれども、先生今おっしゃったとおり、実験ということは必ずやはりいろんな確かめたいことがあるから実験をするわけでございます。しかし、従業員も含めて外部に対していかなる危害も与えてはいけないという、その範囲でどういうことを試そうとしているのか。そして、どこまで確かめたらその次に進むのかということをできればあらかじめはっきりしてやるということが、これまた「むつ」の場合、我々としても非常に深刻な反省だと思うわけであります。  つい難しいことは言わないで済まそうということが原子力発電でもあったのでございます。最初は、放射能というものは絶対出しませんと言った方が簡単なものですから、そういう言い方をしたわけでございますね。しかし御承知のように、放射能は自然にもございますし、原子力発電所を運転すれば、本当に自然の放射能の変化に比べても問題にならぬぐらい少ないんですけれども、機械は非常に精密ですから、実際に出てくる。うそついていた、こういうことになるわけで、そういったことが結局不信感を生んで、随分原子力発電の初期にも苦労したと思いますし、「むつ」の場合でも今後はそうしていただきたいと思いますけれども、ここまで実験をやるには、こことここを確かめたいから実験をするんだ、もしこれ以上まずいことが起こったらそこでとめて、もう一遍見直して次へ進むんだということで、もう少し開かれた態度で臨むということが一番大切なことではないか、このように考えております。
  85. 山川新二郎

    山川参考人 お答え申し上げます。  実験というのは、近代の自然科学の発達しました一番基礎になったことでございます。昔、錬金術師が王様に雇われて密室の中でいろいろやっておりました。その中で、爆発したり手を飛ばしたりした錬金術師もいたそうであります。それからだんだん進みまして、やはり実験と理論の積み重ねで実用に向かうということで大きな産業革命を迎えましたけれども、その中でも及ぼす被害というものは割と力学的なものであるか化学上の変化であるかということで、被害は及びましても、蒸気機関車のボイラーが爆発して一番先に飛んだのは二百メートルでございます。これは、文書で古い蒸気機関車のボイラーの爆発事故を調べていただければわかると思います。  それからタンカーが爆発いたしまして火災になってもまあ東京湾がちょっと困るということになるその辺の規模でございますけれども原子力の場合には、原子爆弾じゃなくてもシンドロームのようなことになりますと、これはもう本当に数十万の人が被害を受ける、しかも長期にわたって被害を受ける。しかも被害を受けるときには、目に見えない、痛くない、そういう形で放射能霧を受けるというふうな、人類がかつて経験したことのないことが実験であっても伴うことがございます。  今おっしゃいましたように、そういう被害を避けつつやる実験の方法はないものか。やはりございます。それがスロー・バット・ステディーということでございまして、功を焦るときには、幾ら看板にはかけておりましても事故が起きます。事故が今まで起きなかったからいいじゃないかでは、スリーマイルアイランドのことの説明はつきません。スリーマイルアイランドの事故が起きるまでは、今まで事故は起きなかった、一人も死んでないということをアメリカでも宣伝しておりました。日本ではいまだに爆発で死んだ方はいないので、いまだに無事故だ、炭鉱を見ろというふうに電力関係の方がおっしゃることがあるのですけれども、炭鉱の悲惨なことはまだ場所を改めて申し上げたいと思います。これは人知で防げる面が相当ございます。ですから、そういう実験というものはやはり人知を絞れば安全にやれるし、それはスロー・バット・ステディーでなければならないというふうに申し上げたいと思います。  それともう一つ、今の実験のことでは、新しい知見が出てきたときに、古く立てた実験計画を改めなければいけない。私たちよくそういうときに出会います。それが大きなプロジェクトであっても、その情性、慣性が強いから、これだけ金かけたんだからやってしまえということではいけないのじゃないか。もったいないということがかえって銭失いのもとになると申し上げたいと思います。
  86. 小川泰

    小川(泰)委員 ぐんと方角を変えまして、熊谷参考人にちょっとお伺いしたいのですが、細かい数字は別といたしまして、この舶用炉開発、とりわけ「むつ」にかかわって、技術的な経費で使ったものはどのくらいかは別としまして、トータル六百億ぐらい今までずっとかけて、何としても日本原子力船をつくろうというのでここまでやってまいりましたね。これは普通の企業や普通の会社や普通の責任者ですと、それでなおかつまだ結論が出てないというような場合に、出処進退といいますか、普通の民間でしたら大変な一つの事件として処理されていると思うのですが、いまだにぐだぐだしておるのですけれども、そういう姿を熊谷さんあたりから見まして、率直なところどんなふうに映りましょうか。
  87. 熊谷清

    熊谷参考人 今先生のおっしゃるとおり、一つの企業ですと、これはもう非常に苦しい。五、六百億で倒産するわけはないでしょうけれども、非常に苦しい状況だと思います。企業としては、それが数十億、数百億程度なら、損をしても将来のためにやらなければならぬ仕事はあるかもわかりませんが、少なくともそれ以上のことは企業ではできない。しかし国としては、我々日本人の一人として、国際的にあるいは世界じゅうの技術を網羅して将来のエネルギーのために必要だとするのなら、そのくらいのお金は投じてでも日本の五十年、百年の大計としてやっていただいてしかるべきではないかと思います。ただ、技術的に危険だとかそういう点ではわかりませんので、スロー・バット・ステディーかもわかりません。そういうことです。
  88. 小川泰

    小川(泰)委員 では、もう時間が来ましたので、最後に山川先生にちょっとお伺いしたいのですが、ずっと先ほど来の御高説あるいは御返答を伺っていますと、舶用炉を進めるという基本にはやぶさかではない、しかし今のやり方では危のうございますよ、したがってもっと根元からやりかえなさい、こういう論旨に私は例えるのです。その行き方も私は賢明な行き方だと思っておる一人でありますが、物事には、科学にしても何にいたしましても、世の中のテンポ、国際環境やら人間の生活環境というものとできるだけ即応しながら科学技術というものが活用されていかなければならぬ、こういうのが普通の良識的なありさまだ、こう思うのでありますが、先生の御主張のテンポで参りますと、そういう一般的な良識のテンポに間に合いましょうか。
  89. 山川新二郎

    山川参考人 話は変わるかもしれませんが、相模湾の大地震ということが今心配されております用地震の研究というのは日本のレベルは国際的だ、こう言われております。しかし、海の底に幾つかの探知器を備えつけてやるというのはごく最近でございます。その前は、東大の中に深い井戸を掘ったり、あちらこちらの火山のところに地震計を取りつけたり、これはもう日本の学者が大変な苦労をして予算をいただき、国民的コンセンサスとはなかなか言われない中で、ごくわずかな予算をいただきながら努めてきた結果が現在の高水準となっております。しかし、この地震の方にお金を出してやろうというのはなかなか聞かないのです。これはがんでも、本当にもっともっとお金を出して、がんなんかはあと二十年もすれば結核のようにほとんど治る見込みのある病気にしていただきたいと、私たちも若干のがん年齢でございますから思うのですが、まあ口ではいろいろありますけれども、そこのところはお金の回りがよろしい。  今「むつ」の問題について、私さっき申しましたように、ボタンのかけ違いである。ですから、今やれば安く済むのです。ところがこのまま、できたのがもったいないからとやったら、大変なむだ遣いになる。あと千四十億円ほど何のかんので要ると言われておりますので、千六百四十億円「むつ」にはかかる。オット・ハーンは約三百億円です。アメリカも大体そのレベルです。三百億円前後で済ましている。そして一応のあのレベルの装置の実験を終わったし、これをいわゆる商業用に使うという見込みは当分ないからということでおしまいになっておるわけです。そうとすれば、スロー・バット・ステディーで、しっかりおやり直しになった方がもっと早くていい効果が出るのではないか。  私は技術屋なものですから、いいものなら好きなんですね。ですから、何でも反対で何でもつぶせというような感じは持っていないのです。でも、今のやり方だったら悔いを千載に残すぞという気持ちが、「むつ」にかかわってからますます強くいたしてまいりました。国際的な環境に適応したり、それに順応したスピードで行かないといけないのじゃないかというふうにおっしゃいましたけれども、ボタンのかけ違いを直した方が、これはリレーで走ったときに一時ちょっとおくれたように見えても追い越すだけの力はつく、そのくらいの自信を持ってやりませんと、これはもう一挙一動でふがふがしておれば、また焦りの間違いを犯すというふうに思います。
  90. 小川泰

    小川(泰)委員 以上で終わります。
  91. 大野潔

    大野委員長 工藤晃君。
  92. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 きょう、三人の参考人の方、大変御苦労さまでした。  私は最初に、三人の参考人の方から同じ問題を答えていただきたいと思いますが、これは、原子力商船がいつ実用化するだろうか、そして普及するだろうか。二十一世紀という言葉も出てきますけれども、二十一世紀といっても二十年後というのもあるし、五十年後というのもあります。それから、今世界を見ると、原子力軍艦というのは四百隻近くになっておりますね。しかし、実際に軍艦以外で動いているのは、今はソ連砕氷船二隻ぐらいではないか。ここに一つ、今ごろはもう相当多数の原子力商船実用化されているであろうという予測の間違いがはっきり出ていると思うわけでありますが、そういうことを踏まえてお答え願いたいと思います。簡単で結構です。
  93. 熊谷清

    熊谷参考人 原子力船がいつできるだろうかというような御質問で、私ども船会社のマネジメントとしては非常に難しい、返事ができるような問題ではないと思いますが、個人の意見といたしましては、昨今の技術の革新というものは驚くべきものがあると思うのです。十年もたてばもう考えられないようなことができるし、考えられないようなことが起きるんではないかと思いますので、いろんな面で、油の有限性から考えてみましても思っているより早い時期にこういうものが安全かつ低廉で動かせるんじゃないかという感じがいたします。それでお答えといたします。
  94. 森一久

    森参考人 お答えいたします。  実用時期というのは非常に難しい。かなりの部分世界一の造船国であり海運国である日本の努力にかかっておるというと若干逃げ口上的にも聞こえるかもしれませんけれども、そういった面もございますし、何と申しましても非常に大切なのは原子力の船が普通の船と同じように国の内外に自由に寄港できるような条件、いわゆるパブリックアクセプタンスと言われておりますけれども、そういう法制上の措置も含めておかれることが非常に大切であろうと思います。ただ日本のこのおくれた立場から見ますと、たとえ二〇二〇年とか三〇年が原子力商船が自由に運航できる時代であるといたしましても、今からできておる「むつ」を十分に使って実際に動かすことを通じて技術的な知見を蓄積すると同時に、そういった理解にも資していくということをやりながらやっていくといたしまして、しかも日本のように安全を最も重視しながら着実にやっていくといたしますと、決してそんなにのんびりできる時間ではないと思います。先ほどから御意見もございますように、一つ一つ積み重ねていくといたしますと、焦る必要はないと思いますけれども、今から着実にやっていくことによってちょうど同じくらいに間に合うか。しかし、一たん石油危機のようなことが起きますと間に合わなくなるのだろうと思います。少しでもそうならないようにと我々は願っているわけでございます。
  95. 山川新二郎

    山川参考人 お答えいたします。  何度も申し上げましたように、原子力船実用化条件は核が軍事に使われない時代が来たときというふうに思っております。ですから、核軍備撤廃なり核軍縮交渉が大成功のうちに前進したというふうな時代にその前途が開かれる。技術的に申しますと、やはり終末処理の完成ということが原子力船が安心して使っていい動力装置というふうになる時期だと思います。その時期がいつ来るか、これは国際的な政治情勢と絡んでおりますのでなかなか簡単には申せませんし、二十世紀が終わるときに世界じゅうから核兵器をやめようということの合意ができれば本当にありがたい。もうそのときには特殊目的の潜水作業船にしても原子力を使っていいんじゃないかというふうに私は思います。ただ、巨大な原子力発電所の終末処理もできないときに、それになお廃棄物を追加するという技術に安住するのは正しくない技術者考え方だと思いますし、国の政策としても危険は後延ばしにということはしない方がいいと思います。ですから、原子力船が輸送目的で大型船、高速船に使われるという時代は相当遠いのではないか。むしろ逆に言って、ない。特殊目的、北洋とか潜水とか、そういう空気を必要としないという特性を生かす、燃料補給の回数が少なくて長く航海できるというふうな特徴は、北洋で大馬力で、その熱源も生かして氷を割っていくというふうなリーズナブルな形でその特性を生かすことではなかろうかと考えております。
  96. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 原子力船むつ開発の経過を見ますと、科学技術開発のやり方としては非常にギャンブル的なことが多過ぎた、私はそういう感じも受けます。最初の計画というのは、観測船をつくって砕氷施設もつくりまして、そして南極の方ですね、氷を割って進むような姿を描いたというような、いきなりそういうところから始まりましたし、陸上での原子炉実験を省略した問題もありますし、事故後の検査も大変不十分であるし、燃料棒がどうなっておるか、これもそれこそ炉をあけて見るようなことをしなかった。それに加えて大変心配なのは、原子力船懇談会の報告が佐世保改修と総点検でもうすべて大体うまくいきそうだという、あるいはもっと強い調子で断定的に書いてある。そういうところにともかくやってみようということで今までギャンブルみたいなことをやってきた、そういう印象が非常に強いわけなんですが、その点について山川参考人からまた御意見を伺いたいと思います。
  97. 山川新二郎

    山川参考人 私、ギャンブルを余りしたことないものですから、ギャンブル的というのがどういうことなのか、お金もうけのことなのかあるいは確率二分の一の丁半をやることを言うのかちょっとわかりかねますが、危険が多いことを目をつぶってやるという意味理解いたしますと、まさに「むつ」の計画というのは初めから現在に至るまで負けることを十分知った上でもなおかつやってしまうという意味で、ギャンブル的であろうかと言わざるを得ないと思います。特に陸で実験しなくても海の上でやってもいいじゃないか、これはまさに大きなギャンブルでございます。よそで陸上でおやりになったそのデータをきちっと全部いただいてから陸上試験を省いたのではなくて、自主開発だからうちでは向こうのまねはしない、船に乗せてやるんだ、この発想はめちゃくちゃなギャンブルですね。私、本当に陸上でなぜやらないのかと申し上げたときに、政府委員の方も非常に御答弁が苦しそうだったのです。それはギャンブルだからでしょうね。そういうふうにギャンブル性という意味では、おもしろい興味のある余興としてのギャンブルではなくて、国民に本当に迷惑をかけるかかけないかのことにギャンブル的なことをおやりになるのは、これは恥ずかしいことだと申し上げていいと思います。
  98. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 それでは森参考人に伺いますけれども、最初の御発言の中で、今原子力船むつ」の実験がストップしているのは技術以外のことでということを言われたわけです。しかしその後のお話の中で、十数年前なら、初めての炉で、軽水炉もまだよくつくってない時代だから、あのときはやはり陸上実験する方がよかったんじゃないか、そういうことも言われたように思います。ただ、技術以外のことでというところがその後ちょっとひっかかるわけでありますけれども、例えば大山委員会報告を見ましても、いわゆる技術に対する姿勢、簡単に原子力船実用化できるんだとかそういうことでやったことからいろいろ技術上の誤りが出たということで、結局それは技術上の誤りとか技術上の弱点としてああいう事故が起きたということが出ているのですが、そのことと、先ほど言われました技術以外のことでうまくいかないというのはどういうあれなのか、ちょっとその点だけ確かめたいと思います。簡単で結構でございます。
  99. 森一久

    森参考人 先ほどオット・ハーンの例等を申し上げました。もちろん放射線漏れということは自慢できることでも何でもないと思いますけれども、後で判明したとおり、あの当時の軽水炉技術からいえば、先進国のアメリカあるいはドイツでも同じことを実は起こしていた、だからちっとも構わなかったと申しているのではないので、その辺誤解いただきたくないのですが、そういう意味で、あの時点の水準からいって決して失敗作であるというようなことではないと思います。それから、あの当時の陸上のプロトタイプの問題でございますが、ドイツもあのころは軽水炉経験もございませんし、そういう意味陸上の炉をつくって臨むというようなこともいろいろあったわけでございますけれども、現時点の軽水炉技術の現状からいってまず必要ないんではないかというのが私が先ほどから繰り返している点でございます。  これは少し言い過ぎかもしれませんけれども日本軽水炉技術の水準を頭に置いておる外国から見ましたら、今から日本が舶用炉専用の小型の陸上のプロトタイプをつくるんだと言えば、恐らく原子力潜水艦をねらっているんじゃないかというふうに誤解されると思います、何で今ごろそういうものを必要とするかと。これは全く個人の見解でございますから、そういう意味でお聞き取りいただきたいと思います。原子力潜水艦のことは私もよく知りませんけれども、これは経済性の問題以外に大変難しい問題がございます。御承知のように見つかっては困るとか、どんな振動も許されないとか、別な意味でいろいろ厳密なことが。商業炉は商業炉なりにまた難しさがあって困っているわけです。フランスなどは今一生懸命プロトタイプでやっておるわけでございまして、そういう意味でも、今の時代で今から陸上炉をつくってやらなければとても日本技術水準でやれない、それからまた実験船をつくってやればいいんだという議論は私は余り賛成できない。こういうことで技術的なこと以外というふうにも申し上げたわけでございます。  もちろん技術的なこと以外という点も、少し差しさわりがあるかもしれませんけれども、何か技術的な問題が起きたときに、それ欠陥炉だとか危険だとか事故だとかいうふうに余りに偏った形で説明をなさる先生がいらっしゃいまして、そのことが本当に地元の方を必要以上に不安に陥れる。その結果、結局政治的あるいはお金の面でその解決にいかざるを得なかった。これは原子力船むつ」の放射線漏れは自慢できることでもなんでもございませんし、原因がそこにあることは十分わかるし、決してそれを弁護する意味で申し上げているわけじゃございませんけれども、私も先日、原子力研究所の組合でそういう議論をする会がありましたときにも、少しおしかりをこうむることを覚悟で申し上げたのです。余りその辺を誤解のあるような説明をなさる技術者がいらっしゃると、結局原子力技術開発自身の首を絞める結果になるおそれがあるというようなことをいつも申し上げるようにしておるのでございますが、その辺も含めて……(「謙虚にやらなきゃだめだよ」と呼ぶ者あり)謙虚にやるということは最初から申し上げておる。そのとおりでございますので、その上にあえて申し上げさせていただきたいと思います。
  100. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 私は、今の森さんの発言の中に、先ほど私少し言いましたように、余りにも乱暴な、特に原子力開発のあり方が「むつ」に典型的に出たという問題に対してお考えが足りないし、同意できない点ありますけれども、ここは議論するところでございませんので先に進めたいと思います。  先ほど山川参考人からのお話で乗員の安全の問題を言われまして、私も聞いて大変はっとした問題があったわけです。船の乗員の安全、原子炉事故が起きたとき、いろいろ海難事故が起きたとき、それが陸上の原発の場合と違うという趣旨のことを言われたと思いますが、大事な点なのでその込もう少し具体的に補足的に説明していただきたいと思います。
  101. 山川新二郎

    山川参考人 陸上原子力発電所の場合でございますと、緊急事故が起きた場合にそこへ行って直したりすることが必要なんです。その場合にはどうしても防護服を着て短時間そこへ出かけていって直して、その次の人がさあっと行って直す。二分といられないような状態で、ボルトを半分回しに行って出てくる。こういう作業を大勢の人を使ってやって、やっと事なきを得る。そして周辺に放射線なり放射能物質が四散することを防ぐ。それが基準が合っていればよろしいというふうなことで態勢が組まれております。  しかし、中での防護の場合に、交代要員の無制限に得られない船の乗組員の場合にそういう事故が起きたらどうするか。船を捨てて逃げるか。船を捨てて逃げてはいけないことになっております。これは、危険が起きたときには陸上から二百五十メートル離せあるいは八百五十メートル離せ、ケース・バイ・ケースでいろいろ規定がございます。事故が起きたときに、乗組員が全部逃げても引っ張っていってくれる引き船がいつでもついていてくれるという状況になっておりません。そうなると乗組員はふだんはいいです。確かに今のところは、十年間何もしないと言っちゃ悪いですが、毎日の日課をこなせばいい。免状の更新で上の方に行けるかどうか、これがちょっと実際の航海をしているほかの人よりも不利になるというので非常に悩んでおられました。それはそれとして、予想もしないような事故、これを考えなければいけないのが原子炉なんです。その場合を考えますと、一たん総員退避した上で陸の消防団をヘリコプターで周りに全部連れていってやるか何かしないといけないのですが、そういうことについては細かい具体的な想定に基づく措置あるいは検定、審査というようなことは全然行われていない。これは非常に大きな問題であろうかと思います。  それから、事故が起きましたときに周りにどのくらいの放射能が出ていくかということは非常によくモニターされますけれども、放射能を含んだ霧、ガス、こういったものが船内のどういうところを流れていくか。気密室がございます。その気密室は乗員の中で申しますと制御室のところは気密室になっております。それから原子炉格納容器の入っているところ、それからエンジンルームのごく一部、ここが気密になっておりますけれども、そのほかの乗員の生活居住区、これは気密になっておりません。したがいまして、事故が起きたときにどのような経路をたどって歩けばいいかとか、事故がここで発生したらこういうふうにガスが出てくる、そういうことは余りしたくないらしいのですね、起きないという前提で。ですから、どこかで起きたらというようなことでございますから、この点は乗員にとってははっきり言えば知らずに棺おけの中に入っている、こういうふうに言うと森先生から事を大きく、悪い印象を与えるように言うとしかられるかもしれません。しかし、事実としてはそれだけの危険性が万が一のときにはあるものに対応した措置、審査、これが十分になされてない。陸上での審査基準で済まされているというところに我々造船屋としては厳格な措置をお願いしたい。現行のまま進められるのでは厳重な抗議を申し上げたい、こういうふうに思っております。
  102. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 山川参考人の御意見だと、言葉をかえて言うと、今の我が国原子力船原子炉を含め全体の安全に関する規定というのは極めて不備であるし、規制とか安全審査の体制が極めて不備なままである、大体そういうふうに理解してよろしいですか。
  103. 山川新二郎

    山川参考人 さようでございます。今申し上げましたように、造船については明治以来日本はヨーロッパの近代造船を取り入れて、造船国日本とかあるいは海運国日本と言われてきた先輩の血のにじむような苦労の跡がありますけれども、この原子力船に限ってはその先輩の努力が全然生かされていない。さっきも申し上げましたが、戦艦陸奥、これは瀬戸内海で爆沈いたしましたけれども、その後につくられた武蔵、大和というのが世界の物笑い船であった。我々は子供のころに秘密軍艦がある、世界一だ。海軍に入りましても正式にはそういう船があるということは教えられませんでした。幻の軍艦でしたが、これが全く時代おくれの船であったということを思いますときに、現在のこの「むつ」にそういう戦時の古い指導者層の設計思想、こういったものがひょっとしたらよみがえっているのではないか、そういう危惧すら感じるわけでございます。本当のもっと近代的な明るい造船設計原子力船設計の道があると私は確信いたしております。
  104. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 それでは、時間がほとんどなくなりましたから最後に熊谷参考人一つだけ伺いたいのですが、先ほどからやはり原子力商船の見通しについていろいろお話がありましたし、それからまた国のプロジェクトとしてぜひやるべきだという御意見も承りました。  ただ、私の印象ですから当たっていなければ当たっていないと答えていただきたいのですが、かつて原子力船事業団が発足するころは、もっと早く実用化の時代が来るかのような考えがいろいろあった。しかし、そのときも、そして今も、皆さん方の海運業界立場あるいは造船業の立場だったら、この新しい技術をどうしても物にしなければいけないというときにはみずからも研究開発のため相当投資をされる、それをいかにするかによってその業界が本当に真剣になっているかを私は判断せざるを得ないのですが、そういう点でどの程度これまで投資をされてきたか、これからもやられるのか。それが何かいつ来るかわからないけれども、ともかく国がお金を出してやればいいというのじゃちょっといただけないなという感じで、あえてこの質問を最後の質問としたわけです。
  105. 熊谷清

    熊谷参考人 先ほども申し上げましたけれども、何年か前に、約二十年弱だったと思いますが、石油が枯渇すると言われた時点で我々が原子力船ということを非常に真剣に考えたのも事実でございます。現在は石油の需給関係等も非常に緩んでおる。当時二十五年だと言ったのも、その倍もあるいはその程度ぐらいの寿命も石油はあるだろう、LNGとか等々のエネルギーも出てきておるというふうな状況で、どうも二十年ほど前の緊迫感というものがなくなったのは事実でございます。  しかし、当時、船会社といたしましても、わずかでございますけれども、八億か十億か寄附をしたというふうに聞いております。  しかしながら、時間がたてばたつほど、極めて膨大な金がかかる。何か六百億だ、千億だというようなこと。どこに欠陥があって、どこが——それが正しいのか悪いのか私どもはわかりませんけれども、これは者お国がおやりになっていることでございまして、これを民間どうだと今さら言われてもとてもやれることではないというふうに思いますので、あしからず御了承いただきたいと思います。
  106. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 これをもって終わります。
  107. 大野潔

    大野委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人の方々には、本日長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。(拍手)     —————————————
  108. 大野潔

    大野委員長 この際、去る八日及び九日の二日間、原子力船むつ」の実情調査のため、青森県に本委員会から委員派遣いたしましたので、派遣委員の報告を聴取いたします。渡部行雄君。
  109. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 派遣委員を代表いたしまして、私から調査の概要を申し上げます。  派遣委員は、大野委員長を団長とし、自由民主党・新自由国民連合の小宮山重四郎君、日本社会党・護憲共同の大原亨君、小澤克介君、松前仰君及び私、渡部行雄、公明党・国民会議小川新一郎君及び遠藤和良君、民社党・国民連合の吉田之久君及び小川泰君並びに日本共産党・革新共同の工藤晃君の十一名であります。  本委員会において、原子力船むつ」問題につきまして、現在調査を進めておりますが、今般、原子力船むつ」及び現地の実情をつぶさに見聞することができました。  派遣委員の一行は去る七月八日、羽田空港を出発、三沢空港に到着、青森県野辺地町に一泊いたしました。  翌九日、同県むつ市に向かい、日本原子力船研究開発事業団むつ事業所に到着、直ちに大湊港に係留中の原子力船むつ」に乗船し、船内において、同事業所と「むつ」の概要及び関根浜新港建設計画について説明を受けた後、昭和四十九年の放射線漏れに対して遮へい改修及び安全性点検、補修工事を実施した原子炉の現状を視察いたしました。なお、この原子炉放射線漏れの後から現在まで引き続き凍結された状態となっております。  原子炉の視察に続いて、船橋、制御室等の船内設備及び燃料交換棟、廃棄物処理棟等の附帯陸上施設を視察いたしました。  原子力船むつ」の視察後、むつ市関根浜地区に赴き、新港の建設現場を視察いたしました。関根浜は、いわゆる五者協定に基づいて新定係港を建設することになった、津軽海峡に面した地区であり、ここで現在港湾建設の初期段階が進められております。  かくて原子力船むつ」の実情調査の日程を終えましたが、その間において、青森県知事及びむつ市議会から五者協定をあくまで守るべしという趣旨の意見、またむつ原子力船母港を守る会から、原子力船むつ」の研究開発を促進されたいとの要望がありましたことを申し添えます。  関根浜地区の視察後、むつ小川石油備蓄基地等を経由して三沢空港に到着し、そこから空路東京に帰着いたしました。  以上、簡単ながら派遣委員の報告を終わります。
  110. 大野潔

    大野委員長 以上で派遣委員からの報告は終わりました。  次回は、来る十七日火曜日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後二時四十八分散会