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1984-07-05 第101回国会 衆議院 科学技術委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年七月五日(木曜日)     午前十時二分開議  出席委員    委員長 大野  潔君   理事 小宮山重四郎君 理事 笹山 登生君    理事 平沼 赳夫君 理事 与謝野 馨君    理事 大原  亨君 理事 渡部 行雄君    理事 小川新一郎君 理事 吉田 之久君       岸田 文武君    五十嵐広三君       小澤 克介君    村山 喜一君       安井 吉典君    遠藤 和良君       小川  泰君    工藤  晃君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      岩動 道行君  出席政府委員         科学技術庁長官         官房長     安田 佳三君         科学技術庁原子         力局長     中村 守孝君         科学技術庁原子         力安全局長   辻  栄一君  委員外出席者         国土庁土地局土         地利用調整課長 武智 敏夫君         国土庁地方振興         局過疎対策室長 仁科 英麿君         農林水産省畜産         局畜産経営課長 香川 荘一君         資源エネルギー         庁長官官房原子         力産業課長   大塚 和彦君         運輸省海上技術         安全局技術課長 片岡 栄夫君         運輸省港湾局管         理課長     小池 公隆君         会計検査院事務         総局第一局上席         調査官     吉田 日麿君         参  考  人         (日本原子力船         研究開発事業団         理事長)    井上啓次郎君         参  考  人         (日本原子力船         研究開発事業団         専務理事)   福永  博君         参  考  人         (日本原子力船         研究開発事業団         理事)     野澤 俊弥君         参  考  人         (動力炉核燃         料開発事業団理         事長)     吉田  登君         参  考  人         (動力炉核燃         料開発事業団核         燃料部長)   渡辺 昌介君         科学技術委員会         調査室長    曽根原幸雄君     ――――――――――――― 委員の異動 七月五日  辞任         補欠選任   松前  仰君     安井 吉典君   村山 喜一君     五十嵐広三君 同日  辞任         補欠選任   五十嵐広三君     村山 喜一君   安井 吉典君     松前  仰君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  原子力開発利用とその安全確保に関する件  (原子力船むつ」問題)      ――――◇―――――
  2. 大野潔

    大野委員長 これより会議を開きます。  原子力開発利用とその安全確保に関する件、特に原子力船むつ」問題について調査を進めます。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本件調査のため、本日、参考人として日本原子力船研究開発事業団理事長井上啓次郎君、同専務理事福永博君、同理事野澤俊弥君、動力炉・核燃料開発事業団理事長吉田登君及び同核燃料部長渡辺昌介君の出席を求め、意見を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 大野潔

    大野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――
  4. 大野潔

    大野委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。安井吉典君。
  5. 安井吉典

    安井委員 こちらの委員会で「むつ」問題の集中審議だそうでありますが、私がまだ特別委員会時代委員長のときにちょうど「むつ」のあの事件が起きて、当時は森山長官で、自民党の筆頭理事小宮山理事で、大変ここで議論をしたことを今思い出すわけであります。きょうはそのことも絡んでまいりますけれども、核燃料サイクル、とりわけ高レベル廃棄物貯蔵あるいはそれ以前の処分とか、そういうような問題につきまして伺っていきたいと思います。  七月二日に総合エネルギー調査会原子力部会が、「自主的核燃料サイクルの確立に向けて」という報告書を発表しています。きょうは通産省からはおいでいただいておりませんが、科学技術庁で御存じだと思いますので初めにお答えいただきたいわけであります。どうもあれは、下北半島で電事連が進めつつあるプロジェクトに対する提言といいますか、そういうようなものであって、動燃が担当している高レベルの問題には触れていないというように受けとめられるわけであります。そういうものか、高レベル廃棄物処理については具体策提言もありません。その辺、科学技術庁からの御答弁で結構ですから、お答えをいただきたいと思います。
  6. 中村守孝

    中村(守)政府委員 お答えいたします。  総合エネルギー調査会原子力部会は、通産大臣諮問機関ということで、主として産業におきます原子力問題とのかかわりについて審議をしているものでございまして、今申されましたいわゆるガラス固化体の話につきましても、調査報告書の「技術開発等の今後の方向」という中で、動燃事業団技術開発を進めているガラス固化技術実用化達成に全力を挙げることが望まれる、処分に関しては、研究開発をより一層推進するとともに、立地確保のための具体的諸方策並びに実施体制についての検討も強力に推進する必要がある。要約でございますが、そういったような形で一応触れてあるわけでございます。
  7. 安井吉典

    安井委員 そういたしますと、ハイレベル放射性廃棄物につきましては、現在は動燃の再処理工場から出る分があるわけですが、そのほかにフランスや英国から戻ってくると考えられるものもあります。さらにまた、下北半島で新しい再処理工場ができれば、そこからもハイレベルが出てくる、あるいは原子力船むつ」は最後どうなるかわかりませんが、それにはストレートには関係ありませんけれども、そういう廃棄物一切をまとめて今考えられているとごろで処理処分をしよう、こういうお考えですか。
  8. 中村守孝

    中村(守)政府委員 お答えいたします。  高レベル廃棄物処理処分対策につきましては現在も、従来からそうでございますが、原子力委員会の中に廃棄物対策専門部会が設けられておりまして、そこで五十五年に一度報告も出しておりますし、現在また、その後の状況変化を踏まえまして審議も進めておるところでございます。  先生今御指摘の、海外に再処理委託をしている廃棄物、いわばガラス固化体となったものは将来日本に送り返されてくる、あるいは今、下北電気事業者が申し入れている三点セットの中の一つである再処理工場から出る廃棄物の取り扱いをどうするか、こういう御質問かと思いますが、それらにつきましては一応電気事業者の方が主体的に検討しておる問題でございますが、現在のところ下北地区立地をお願いしている再処理工場のところにあわせて貯蔵することになるのではないかというぐあいに聞いております。
  9. 安井吉典

    安井委員 ただ、返還廃棄物については、このエネルギー庁のものに書いてありますね。これについては、受け入れ及び一時貯蔵は再処理事業者が行い、最終処分については国内で発生するものと同様の扱いにすることが適当である、こう書いてあります。ということになると、これもこのとおりいけば動燃と同じ扱いになりそうな気がしますが。
  10. 中村守孝

    中村(守)政府委員 高レベル放射性廃棄物最終処分につきましては、現在地層等についての試験実験等を進めているという段階でございまして、具体的に処分場を決めるとか、とてもそういうような段階にないわけでございます。現在進めておりますのは、動燃事業団において検討しておりますものも、東海処理工場から出ました使用済み燃料から出てくる高レベル廃液ガラス固化しまして、そのガラス固化されたものを三十年ないし五十年貯蔵しておくという施設でございます。その後の処分につきましては国において一元的にやるという形になろうかと思いますが、まだかなり先のことでございまして、現在は先ほども申しましたように地質等についてのいろいろな調査をしているという段階でございます。
  11. 安井吉典

    安井委員 もう一つその前に伺っておきたいのは、「高レベル放射性廃棄物処理処分に関する研究開発の推進について」という原子力委員会専門部会報告書が、昭和五十五年ですか、ありますね。これは現在のところこのまま生きているというふうに聞いておりますし、現在見直しの結果が発表されるとも聞くわけですが、その点どうですか。
  12. 中村守孝

    中村(守)政府委員 お答えいたします。  五十五年の十二月に出ました専門部会報告が現在も生きておりまして、現在その見直し作業中でございます。年末をめどに検討を進めておるというところでござ、います。
  13. 安井吉典

    安井委員 では一応今のところは、その最初のものが生きている、五十五年の見直しがもう一度近く出る、こういうことでしたね。  そこで、その手順からいうと、あれにはスケジュールがありますが、現在の段階はどこまで来ているのですか。
  14. 中村守孝

    中村(守)政府委員 お答えいたします。  高レベル放射性廃棄物固化貯蔵に関します開発スケジュールにつきましては、まずコールドのいわゆる放射性のない状態でのいろいろなガラス固化に関します試験に加えまして、実廃液を用いた固化試験、それから安全評価試験というものを行うことになっておりますが、これらは大体当初予定しましたとおりに進んでおりまして、貯蔵技術による研究も順調な進捗を見ておるわけでございます。ただ、この結果を受けまして、ガラス固化プラント及び貯蔵プラント建設しようというスケジュールがあるわけでございますが、これにつきましては五十五年の報告書当時よりは若干のおくれを見せておるわけでございます。  それからその後のいわば三十年ないし五十年間保管した後の最終的な処分技術開発につきましては、五十五年の報告書では五段階に分けて研究開発を進めていこう、こういうことにしておりましたが、本年度五十九年度はちょうどこの五段階開発方式の第一段階最終年度に当たるわけでございまして、現在その第一段階の目標でございました有効な地層の選定について、当初のスケジュールどおり動燃事業団で実施しました成果を一応取りまとめ中でございます。これにつきまして、放射性廃棄物対策専門部会において評価を受けているという状況にございます。
  15. 安井吉典

    安井委員 これは動燃の方のお仕事になるのではないかと思いますけれども、一番最初研究施設ということで現地において始めるというお考えだと聞いているわけでありますが、その辺からちょっとお話しいただきたいと思います。
  16. 吉田登

    吉田参考人 お答えさせていただきます。  現在、動燃が高レベル関係ガラス固化体をどういうふうにして貯蔵していくかということをいろいろと研究をしておりまして、それには貯蔵工学センターのようなものをつくったらいいのではないかというふうなことを計画対象としております。  その内容はどうかと言いますと、貯蔵管理技術を実証するためにガラス固化体貯蔵施設貯蔵プラントとも呼んでおりますが、貯蔵施設を中心につくります。それから、それとあわせまして低レベル関係アスファルト固化体貯蔵施設をつくる。これを中核とする予定をしておりますけれども、それだけにとどまらないで、このガラス固化体から発生いたします発生熱を有効に利用できないかという問題もありますので、そういうことも勘案いたしまして、これを利用するための研究開発施設、それから放射線利用ということは既にいろいろ研究もやられておりますけれども、そういうものもあわせてそこで研究開発できないかということで、それらのことを研究開発するためのいろんな事務棟等をつくりまして、あわせてそういう有効利用研究開発もやりたい、そういうものをこの貯蔵工学センター一つ計画として今検討しているところでございます。
  17. 安井吉典

    安井委員 管理技術実証のためのプラントをつくる、そういうふうなことでありますが、将来そこに貯蔵をするという前提に立っておやりになる、こういうことですね。
  18. 吉田登

    吉田参考人 高レベル固化体キャニスターに入れまして運び込んできて貯蔵しようということでございます。そういう貯蔵を行いまして、それのいろいろな変化調査研究していこうということもありますけれども、それに関連いたしまして、今までいろんな面で地層処分ということも研究をいたしておりますので、そこでそういう固化体のものを長期貯蔵をするというようなことも考えております。
  19. 安井吉典

    安井委員 とりあえず今のような管理技術開発だとか、あるいはまた発生熱放射線利用の問題だとか、そういう研究をそこでやって、現実貯蔵というのはどこか別のところでやる、そういうふうにはならぬわけですね。必ずそれは一貫的なものだというふうなお考えなんですか。
  20. 吉田登

    吉田参考人 研究工学センターではありますけれども、その一貫した貯蔵研究もしたいということがありますので、現在計画している貯蔵工学センターの中に日本から出るすべてのものを貯蔵するということを今計画しているわけではありません。将来はそういう問題がどういうふうになるか、これからはまたいろいろと我々としても検討しなければならない問題だとは思っておりますけれども、やはりそういう一貫した一つサイクルということは非常に大切なものですから、そういう意味の研究も含んでいるということでございます。
  21. 安井吉典

    安井委員 単なる研究施設なら、もうそんな広い面積要りませんね。研究所は、もうごく周辺幾らか余裕のあるような面積で済むわけですが、将来そこに貯蔵施設をつくるということになりますと、それはかなり広い面積確保しなければいけないわけですよ。そうだとすれば、現在の段階はもうほんの狭い面積確保だけでいいということですか。
  22. 吉田登

    吉田参考人 お答えします。  今、一貫と言いましたのは、そういう先生の言われますような貯蔵も、特に動燃から発生する高レベル廃棄物につきましては、我々の方でもいろいろ、これをガラス固化体にすることの研究も進めております。そういうことで、できたものはそういう貯蔵工学センターの中で貯蔵をいたしたいというふうには考えております。
  23. 安井吉典

    安井委員 さっき私は、総合エネルギー調査会報告を見ますと英仏から返ってくるものも動燃のやっと一緒に処理するような書き方になっているものですから、それで特に伺ったわけでありますけれども、それじゃ動燃の再処理工場から出てくるハイレベル放射性廃棄物については研究もするし、その分だけはそこで貯蔵するのだ、だからかなり広い面積確保しなければいかぬのだ、そういうようなお考えのようですね。どうですか。
  24. 吉田登

    吉田参考人 今先生の言われたようなことを我々としても、あわせて長期貯蔵ということも必要でありますので、研究対象といいますか、そういうこともやらしていただきたいというふうに思います。  それから、先ほど言われました返還される固化体だとか下北で出るものだとかいうようなものにつきましては、現在我々としてもどういうふうにしたらいいかということをいろいろ検討はしておりますけれども、これは動燃だけの対象にはなりませんので、そういう点は将来の問題として電力関係等ともいろいろと打ち合わせをしてやらなければならない問題があるというふうには承知しております。
  25. 安井吉典

    安井委員 今の理事長の御答弁では、何か研究施設研究施設で、将来はまた将来で別に考えていくようなお話がありましたけれども、この前伺ったときには、とにかく七百億も八百億ものお金をそこにかけるわけですから、それだけかけておいて、後で貯蔵施設はどこか別なところ、どこかの離島に埋めるとか、そういうようなことにはなりませんよ、研究したところを、そこを地層処分の適地と見定めて、そこでやるのですよ、一貫的なものですよと、私はそういうお話を承っておりますが、大体そういうことなんですね。
  26. 吉田登

    吉田参考人 お答えします。  動燃から出てきます廃棄物処理するにしましても、やはり相当な面積なり建物も必要だと思います。ですから、研究施設はもちろん必要でございますけれども、そういう貯蔵施設としましては、やはり高レベルでもありますし、我々としてもいろいろな安全性の問題もありますので、地下の中にそういう貯蔵棟をつくらなければいけないというようなこともありますので、やはり相当の広い面積も必要だというふうに思っております。
  27. 安井吉典

    安井委員 それでは、そこでつくられる施設について、調査設計だとか、それから建設工期だとか、いつから研究施設は稼動するんだとか、そういうスケジュールをお持ちではないかと思いますので、そのことと、それからそこに持ち込まれるのは年次別にどれくらいな数量になるのか。最初とそれから最終というわけにはいかぬかもしれませんけれども、一定の時限においての処理ですね、あるいは貯蔵、その見込みについて伺います。
  28. 吉田登

    吉田参考人 お答えします。  いろいろな細部はまた後で少し説明させていただきますけれども、やはり貯蔵工学センターをやるにいたしましても立地問題というのが絡んできますので、そういう立地対応としての設備の内容ということも我々としてはいろいろ検討しなければならない問題もありますし、スケジュールといたしましても、こういう一連のサイクル問題でございますので、我々は非常に重要視しておりますから、予定としてはできるだけ早い時期につくりたいというふうには思っておりますけれども、やはり立地問題で地元の皆様の了解を得る、そういう非常に重要な問題がそれの先決問題としてありますので、そういうものとの関連で工程というのは、我々としては希望もありますけれども、今こういう状態でやっていくということを申し上げることは現在の段階ではできないというように思っております。
  29. 渡辺昌介

    渡辺参考人 お答えいたします。  貯蔵工学センター建物スケジュールでございますが、先ほど理事長が申し上げましたように、立地が決まりましてから環境調査、あるいは地盤の調査、あるいは設計、あるいは引き続き安全審査をお願いして建設ということになりますので、相当長期になります。もし貯蔵工学センター立地させていただけるならば、持ち込むといいましょうか、そこで貯蔵する固化体の量をお聞きになっていらっしゃると思いますが、東海処理工場で発生するガラス固化体と申しましょうか高放射性廃液、それを固化する技術をただいま研究をしております。その固化プラントも、今申し上げましたように立地、それから安全審査設計環境調査その他もろもろの仕事がまだまだ山積しております。そのための予算もいただかなければならないと思っています。そして、できた固化プラントの製品を運ぶわけでございます。東海の再処理工場で二〇〇〇年ごろに発生する高放射性廃液、それをガラス固化したもの、およそ千数百本ぐらいになると思いますが、これを将来は運び込みたいと思っております。二〇〇〇年に千数百本でございますので、その前に何本かずつ発生いたしますが、発生したものを順次運びたいと考えております。  以上でございます。
  30. 安井吉典

    安井委員 そのほか動燃関係から出る低レベル放射性廃棄物もやはりその場所処理処分したい、こういうふうなお話なんですが、それはどの程度お見込みですか。
  31. 渡辺昌介

    渡辺参考人 御承知のように、東海の再処理工場では低レベルアスファルト固化体もございます。これも、東海の再処理工場を運転すると年々発生しておりますが、この固化体貯蔵工学センターで集中して貯蔵し管理していきたいと思っております。その量は、数字については今すぐお答えできないので、後ほどお答えさしていただいてよろしゅうございましょうか。
  32. 安井吉典

    安井委員 結構です。  研究中身についてちょっと伺いますが、貯蔵技術だとか、そういうのはわからないわけでもないのですけれども、熱利用だとかあるいは放射線の活用だとか、そういうのは、こういう熱利用方法があるとかあるいはこういう放射線利用方法があるとかいうような中身研究して、それをどこかで実用化していくということなのか。あるいは、ここで現実に一種の工場として熱利用施設をやり、あるいは放射線施設実用に供するものをそこでおやりになるという考えなのか。そのどちらですか。
  33. 渡辺昌介

    渡辺参考人 お答えいたします。  ここの貯蔵工学センター研究項目として、貯蔵以外に研究をするわけですが、熱利用放射線利用ございます。この放射線利用熱利用ができるかどうかの検討開発をやりまして、そこに固化体があるわけでございますから、将来はその場所熱利用あるいは放射線利用をやっていきたいと考えております。  なお、先ほど御質問がございましたアスファルト固化体貯蔵量でございますが、東海処理工場では一年間におよそ二千九百本から三千八百本ぐらいの発生量がございます。これを順次貯蔵場所集中管理貯蔵したいと考えております。  以上でございます。
  34. 安井吉典

    安井委員 キャニスターよりも低レベルの方の量が量的に非常に大きいんですね。  それはそれとして、今現実にそこでブラントとして活用していくということになると、その活用する時期はキャニスターがそこに到着をしてから、施設ができてからということですか。
  35. 渡辺昌介

    渡辺参考人 お答えします。  実際に熱利用をしようと思えばガラス固化体が入ってその熱を利用することになりますので、熱利用というのはガラス固化体を相当量ためてからということになると存じます。
  36. 安井吉典

    安井委員 その時点におけるガラス固化体の一本当たりの熱はどれくらいなのか。それから、そこから出る放射能はどれぐらいのキュリーなのか。
  37. 渡辺昌介

    渡辺参考人 お答えいたします。  ガラス固化体一体およそ百二、三十リッターのガラスが入っているわけでございますが、その表面キャニスター、ステンレスの被覆をしております。その被覆表面でおよそ一・五キロワットの熱になるというふうに推定しております。なお、このガラス固化体最大量で一本およそ四十万キュリー持っております。なお、半減期がございまして、どんどん減っていくものですから、放射能量も減りますし、発熱量も多少は減ってまいります。  以上でございます。
  38. 安井吉典

    安井委員 表面が一・五キロワットといいますと、まあ我々素人にわかりやすく摂氏何度ぐらいですか、その一定の単位について。
  39. 渡辺昌介

    渡辺参考人 ガラス固化体貯蔵している場合の表面温度は約百五十度に抑えたいと思っております。空冷をいたします。よろしゅうございますでしょうか。
  40. 安井吉典

    安井委員 結局、一本当たり百五十度の熱いものが、これは東海を出るときはもっと温度は高いはずですね、それがそこまで運ばれてくる。百五十度になって、しかも四十万キュリーというすごい放射能を持っているものがどこか倉庫にある。そこから熱が放散される。放射線も出てくる。それで、何に使うのか知りませんけれども、あそこは純粋の農村で酪農地帯ですから、牛乳を温めるわけでもないでしょうけれども、何に使うのですかね。放射能印牛乳はいかがですかというようなことになる。まあ場所にもよりますけれども、そういう恐ろしい熱源なり原料で、これは私は今食い物の話だけしかしませんけれども、何に使うのかわかりませんし、それがどこにおさまるのかわかりませんけれども、いずれにしても、利用すると言っても、その利用原料というのが恐ろしいものなんですね。そんなようなもので説得力はあるのかな。私はその辺が問題だと思うのですが。
  41. 吉田登

    吉田参考人 お答えします。  放射線利用というのは、現在いろいろなところでいろいろと研究されております。放射線をジャガイモにとかいう話もありますが、皆さんも御承知のことだと思います。我々のところで特にそういう研究をやっているということではなくて、いろいろやられている研究を、ちょうどそこにそういうものを安全に保管をして貯蔵をしているんだから、そこから出てくるものを上手に利用することはできないだろうかというのが、我々に課せられたいわゆる有効利用一つの手段だというふうに考えております。  それから熱の問題にいたしましても、熱をいかにして利用するかということはもうあらゆる面で研究されております。ただ、ここでは非常に高い熱は出てきませんので、だからそういう低い温度の熱をどういうことに使ったらいいか、これはまた我々これからいろいろ研究しなければならぬ問題をたくさん抱えておる。一つとしてはプールぐらいならいいのじゃないかというような問題もありますが、それは研究結果に応じて地元にそういうものを貯蔵する、しかもそこから熱も出る、放射線も出る、そういうものの有効利用はどういう面でできるだろうかということは我々としては非常に大きな課題であると思っております。これはまた真剣に研究はさせていただきたいというふうに思っております。
  42. 安井吉典

    安井委員 そこでおやりになるのですから、百五十度の熱を利用するにしても、四十万キュリーだって、それが外に漏れて人間や生物につくなんというようなことには絶対なりませんよ、そういう御説明をされると私は思うのですけれども、それなら東京でやってもいいのですね、プールにお使いになるのだとか。しかし、その熱なり放射線原料というのが原子炉から出てくる死の灰、それの再処理、それの廃棄物、こういうつながりにおいて、なかなかあなた方が考えているように理解はいかないのではないか、私はそういう気がするわけであります。それはそれでひとつ伺っておきましょう。ただ安全確保については心配ないとか、私、素人からすれば、ステンレスのキャニスターが五百年先まで腐食せずにずうっとあるのだろうか、そういう恐ろしい半減期が長い放射能を持ったものが入っている形でもつのだろうかとか、そういう疑問がもうたくさんあるわけであります。まあこれは後で御質問もありますから、そういう疑問はもう数限りなくある、安全性についても疑問が多いということだけ、ひとつ私なりの考え方を申し上げておきたいと思います。  明年度の予算の中に動燃として要求をするというような報道もありますが、それはどうなっているのですか。
  43. 渡辺昌介

    渡辺参考人 来年度の予算につきましては、ただいま科学技術庁の方に予算をいただくように御説明をしているところであります。その中に立地のための調査費をぜひいただきたいとお願いをしております。  以上でございます。
  44. 安井吉典

    安井委員 来年の段階ではその立地関係の調査費はどれくらいですか。
  45. 渡辺昌介

    渡辺参考人 お答えいたします。  調査費などで私どもいただきたいのは何億円かの単位でございます。今後科学技術庁の方に御説明して、どのくらいの額になって、そして大蔵省の方にお願いするということになると思いますけれども、ただいまのところはおよそ何億円という単位でございます。
  46. 安井吉典

    安井委員 安全性の問題もいろいろあるわけです。その地層の問題だとかいろいろ細かい問題についても伺いたいわけですが、時間がありませんから深く入りませんが、やはりかなり人里離れたところだとか、そばに道路があるとか鉄道が走っているとか、そういうようなところは好ましくないと思うのです。その点どうですか。
  47. 吉田登

    吉田参考人 やはり放射線を取り扱うところでございますから、原子力発電所その他の原子力関係の施設と同じことでございまして、施設をつくりまして我々もこれのいろんな監視はいたしますし、それのいろんなデータもとります。そういうことで安全性を非常に厳重に確保することに今努めているわけでございますが、そういう点から判断いたしましても、やはりある程度は人里離れたところでないとそういうものに十分対応することはできないという問題が一つあります。  それから、特に日本の場合はいろんな耐震の問題もありまして、非常に地盤の悪いところだとかそういうようなところにはこういう貯蔵センターをつくることもできませんので、ある程度の地質の調査ということはどうしても必要でありますし、そういう状態のところでないとこういうセンターもつくることはできないというふうに思っております。
  48. 安井吉典

    安井委員 そういうお考えからすれば、人里離れたといったって、人のいるところから一キロ離れているのか十キロ離れているのか百キロか、その言い方もありますけれども、二キロや三キロや十キロくらいということじゃないでしょうね、人里離れたという言い方をするのは。何キロですか。そのお考えをひとつ伺いましょう。
  49. 吉田登

    吉田参考人 それには発電所と同じようにいろんな基準もありますので、そういうものに合格する範囲は今ここで何キロということをお答えする段階ではないというふうに思いますけれども、そういう意味では先ほど言われましたような輸送だとかそういう問題とも関連いたしますので、そういう点でも比較的便利なところで、しかもそういう点に合格するようなところということで、我々はいろんな点を調査していきたいというふうに思っているわけであります。
  50. 安井吉典

    安井委員 比較的便利なところで人里離れているところというのは、これは余りないと思いますね。どっちかでしょうからね。便利ということは人がその付近にいるということでしょうから。  それと、もしそれをおやりになるような場合でも、その地域に住んでいる住民、市町村はもちろんのこと、地域住民の理解と納得というのはあくまで先決だし、同様に近隣市町村の了解ということがなければならぬ、そう思います。さらに、そこの都道府県に置かれるわけですから、そこの都道府県の了解というものもなければならぬのではないかと思います。その地域の住民、近隣市町村、その都道府県、私は三段に重ねて伺うのですが、どうですか。
  51. 吉田登

    吉田参考人 原子力関係の立地問題というのは我々も非常に重要視しているわけでありまして、特に今先生言われましたような地元の住民の方々、都道府県の皆さんの了解を得てからでないと、もちろんこれを推進していくわけにはいかないというふうに思います。我々といたしましては、その最初段階としては先ほど言いましたような地質調査ということも必要ですけれども、貯蔵工学センターというのが初めての経験といいますかそういうものでありますので、この貯蔵工学センターというものはどういうものであるかというのを、先生を初めといたしまして都道府県の方、住民の方には一遍懇切な説明をやらしていただきたいというふうには思っております。
  52. 安井吉典

    安井委員 私が申し上げた理解と納得というのを、具体的にはどういうことで納得とか理解とかいうふうに受けとめられるわけですか。例えば、どこかの議決とかあるいは住民集会だとかいろいろな方法があると思いますね。どこまでいけば納得だというふうにお考えですか。
  53. 吉田登

    吉田参考人 今言われた趣旨がちょっと聞き取れなかった面があります。済みません。
  54. 安井吉典

    安井委員 今そこの説明をして、その中に私がいるのかもしれませんが、先生をも含めて説明をしますということをおっしゃいましたね。だけれども、それ以上のことをおっしゃらないから。説明しただけで納得とは言えないでしょう。何か具体的に納得というのを形にあらわさなければいかぬと思いますね。どこまでいったら納得したというふうにお考えですか。
  55. 吉田登

    吉田参考人 私の申しましたのは、前提条件としまして、この工学センターというのが我々としても最初計画でありますので、工学センター安全性ということを皆様にわかっていただくことが第一条件じゃないだろうかということを痛感いたしておりますので、そういう意味でこの説明をしたい。どういう形で説明さしていただきますか、地元の方あるいは都道府県の方の受け入れ方もあると思いますので、これからそれを我々はいろいろとやっていきたいというふうに思っております。その過程でどういうふうに皆さんの御理解を得るようにやっていくかということがこれからの問題だというふうに思っております。
  56. 安井吉典

    安井委員 風評被害というのがあるんですね。絶対安全だというふうに言われても、ここに恐ろしいものがある、特に放射能を非常に含んだものがそこにあるということになりますと、その地帯が酪農地帯なら酪農にも影響が出てくる。「刑事物語」という映画では、放射能牛乳に入っているというので牛乳をばっとまくシーンがあります。ですから、とにかくそこに本当に危険があるかどうかは別として、風評というのがあるわけですよ。それが特に食糧をつくっている地帯においては心配だし、それから特に食品の工場などがある場合は致命的になるんじゃないかと思います。  この間、グリコの事件がありましたね。あのグリコで毒が入ったと言うが、本当に毒が入っていると確実に信じた人はここにそんなにいないと私は思いますよ。いないけれども、スーパーの棚にグリコのものは置かなくなってしまうわけですよ。それは長期か短期かは別として、風評というのはどうしようもないのです。食品産業などというのはそういうものに非常に弱いわけです。だからそういう問題も、理解と納得といったって、それを超えたいろいろな問題があるのではないか、私はそう思います。  そこで、私は北海道なんですけれども、過疎で悩む。もうここは人間の人口よりも牛の人口が多いのだというようなところもたくさんあります、まあ手口という言葉はないものですから。そういうところで過疎に悩んだあげく、いやもうとにかくお金になるものなら何でもいいんだ、自衛隊でも来てくれ、放射能廃棄物でも来てくれ、何でもいいからという、そういうデスパレートな心理が働くという場合が非常に多いわけであります。ですから、そこの人たちと話してみると、酪農はもうだめなんだ、もうこれ以上借金がふえてどうしようもないような状況で、これではもうおしまいなんだ、やはり何かにすがっていかなければいけないんだ、そういうような声が出てきたりします、そこの理事者なんかから。あるいは、ここはもう過疎なんだ、過疎に対して国は何もやってくれないし、これじゃ我々もしょうがないんだ、こういうような声も聞くわけですよ。しかし、我々も過疎対策だとか農業、とりわけ過疎の地域は酪農が多いので、そういうような対策を一生懸命やっているつもりなんですけれども、きょうは国土庁とそれから農水省の方から、過疎や酪農の問題について事前に私からも申し上げておいたので、地域住民の人々に対してこういうふうに説明したいという御準備をしてきていただいているつもりなんですが、両方からお考えを伺いたいと思います。
  57. 仁科英麿

    ○仁科説明員 お答え申し上げます。  過疎地域の振興に対する考え方でございますが、昭和四十五年に制定されました過疎地域対策緊急措置法、それから昭和五十五年に制定されました過疎地域振興特別措置法などに基づきまして昭和四十五年から過疎対策が推進されておりまして、地域の生活環境あるいは産業基盤整備等につきまして総合的、計画的に施策を推進してまいりました。その結果、過疎地域の居住条件は逐年改善が図られてきているわけでございます。あわせまして人口につきましても減少率が近年相当低下をしているというようなことで、相当の成果を上げてきているところでございます。  しかし、人口の減少は低下をしておりますけれどもなお引き続いて減少している、あるいは生活水準や生産機能等、過疎地域と非過疎地域を比べますとなお相当の格差があるというようないろいろな問題も残っているところでございまして、今後まず過疎地域の振興のためには、我々といたしましては人口の減少を食いとめていく、そのために若者の定住できる条件を整備をしていきたいと考えているところでございます。そのためには、一般的な言い方になろうと思いますけれども、まず産業の振興を図る、そういうことによって雇用の場を確保することが必要であろうと考えるわけでございます。その場合に、最近の経済情勢の中で、かつての高度成長期のような形での企業誘致、そういうものによって雇用の場を拡大していくということは、特に過疎地域においては難しい状況になっておりますので、今後は農林水産業、過疎地域は農林水産地域が多いわけでございますが、そういう地域におきます基幹的な産業でございます農林水産業の一層の振興を図っていく。あわせまして、いわゆる一・五次産業といっております。そうした農林水産物を原料といたします加工、あるいはその他の地域の人的、物的資源、いろいろと過疎地域には都市にはない資源があるわけでございますが、そういうものをうまく活用いたしまして、特に地域の実態に応じた産業振興を図るということによって地域の振興を図っていくように指導していきたいと考えているところでございます。  以上でございます。
  58. 香川荘一

    ○香川説明員 酪農の問題につきましてお答えいたします。  酪農問題につきましては、昭和五十年の初めごろから生乳生産が急激に増大いたしまして、一方で飲用牛乳の消費の伸びが鈍化した、こういう状況から需給に不均衡が生じまして、乳価が低迷するとかあるいは農家の収益性が下がるとか非常に厳しい状況が続いたことは御承知のとおりと思います。そういう状況のために、昭和五十四年から生産者団体がみずから計画生産を進めるというふうなことを進めてまいり、また、そういう中で五十七年以降需給は均衡状態をとっておるわけです。そういう中で生産性も相当向上いたしましたし、また五十七年から五十八年に保証価格が引き上げられたというふうなこともありまして、最近の状況では生乳生産も順調になっておりますし、また農家の収益性も改善され、また一方で負債が相当多くなったわけでございますが、最近の状況ではこの負債の方も少なくなってきている、こういうふうな明るい見通しが出ております。  一方で牛乳乳製品の今後の動向でございますけれども、需要なり生産につきましては六十五年を見通しまして、私ども長期見通しを立てております。需要では大体年率二・四%から二・八%、生産では年率二・五%程度伸びるというふうに考えておりますが、現在の状況はいずれもこれを上回るというふうな順調な動きを示しております。  そういうこともございまして、私ども昨年酪農振興法を改正いたしまして、それに基づく酪農等の近代化を図るための基本方針を出しておりますが、今後とも需要に見合った生乳の計画的生産を推進し、長期的な展望に立ちながら総合的な振興を図っていくというふうな考え方でおります。こういうことから、我が国の酪農につきましては特に北海道のような条件の恵まれた地域を中心に着実に発展するというふうに考えておる次第でございます。  以上でございます。
  59. 安井吉典

    安井委員 今の廃棄物処理場の問題ですね、この問題をそのままにしておけば、地域をどこにするかというようなことへだんだんいくんじゃないかと思うのですけれども、考えてみれば過疎対策だとか酪農対策と核のごみ捨て場との戦いだ、私はそう思いますね。本来の意味の生活や生産の条件をきちっと整えておけば、恐ろしいものでも何でもいいから誘致したいというような気持ちにはならないのではないかと私は思います。そういう基本的な問題があるだけに、私は今、国土庁あるいは農水省から御担当のお立場での将来への展望をお話し願ったわけでありますが、しかし、現実にはそうその展望どおりみんなが満足できるような方向に行っていないのは当然であります。  そういう現状があるわけで、これはさらにそこに住む人たちが幸せに暮らせるように、そこで十分な生産が上がるようなそういう仕組みに向かって地域開発を進めていくということでなければならないと思います。もっとその地域の住民が、北海道も横路知事が一村一品運動というのでやっていますし、これは大分県の平松知事がやっているのと呼応しながら北と南でやっているわけですね。やはり地域の人たちが励みを持って村おこしをやる、そういう努力を一方でやっているわけです。しかし一方では、あちこちで一村一品運動で農産物の加工なんかやっているところがあるわけですが、私の村は核の廃棄物が一村一品運動です、こういうようなことになったのではどうしようもないことではないか、私はそう思うわけであります。  いずれにいたしましても、きょうはあと五十嵐議員の方からの質問がありますので引き継ぎたいと思いますが、今日の状況の中で、きょうはハイレベルを中心にして取り上げましたけれども、しかしもっと根本的には原発そのものあるいはそれから出てくる再処理工場、そういうものがとにかく余りうまくいっていないという現実の中で起きているような気がしてならぬわけであります。アメリカの原子力発電所は、スリーマイル島のあの事件以来、計画があってもそれがほとんど廃止されるというような状態が続いています。それから再処理工場についても、最近の事件でも例のクリンチリバー炉の問題あるいはバーンウェル再処理工場の問題、この再処理工場もとうとう放棄をしたようですね。あるいは英国のセラフィールド再処理工場も周辺の汚染拡大のために大きな問題を起こしています。外国においても、原発そのもの、それから再処理工場そのものも今日一つの大きな問題の中に置かれている。西ドイツなども、訴訟の後、つまりトイレなきマンションでは困るというので、新しい発電所の立地を拒んでいるとか、そういうような話もたくさんあるわけであります。ひとり日本だけが何か原子力産業への依存をかねと太鼓でやっている。しかし再処理工場の問題は、東海の再処理工場でも故障だらけで、最近少しよくなったのかもしれませんけれども、今日まで余りいい情報は聞かないわけですね。そういうようなことで、とりわけきょうはハイレベルの問題ですから、再処理工場の将来について動燃ではどういうふうにお考えですか、あるいは政府においてどういうふうにお考えですか。
  60. 吉田登

    吉田参考人 再処理工場につきましては、現在東海の事業所に設備があるわけでございますが、ちょっと技術的な話になりますけれども、溶解槽が今まで二つありまして、この二つは修理が完了しております。しかし、もう一つ並列をして三系列にしたいということで、新しい溶解槽を現在つくっておるところでありますので、ことしじゅうはその工事で再処理の作業をとめております。来年になりますとこの再処理工場も順調に動くようになるというような自信を持って今工事を進めているところでございます。  そういう意味で、先ほどからの外に対する安全性の問題というのを我々は非常に厳重にしておりますので、そういう点では何ら問題は起こしておりません。ただ、内部のそういう再処理作業の面でやはりいろいろな新しい技術的な問題がありますので、それを非常に慎重に我々は取り扱っております。今後は我々も相当自信を持って運転できるのじゃないかと思っております。そういう状態でございます。
  61. 安井吉典

    安井委員 時間ですから終わります。
  62. 大野潔

  63. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 きょうは「むつ」の問題を中心に御論議ということでございますので、初めに若干「むつ」の新定係港の立地上の問題でお聞きいたしたいと思います。  これは当委員会の今までの質問で再三指摘され論議されているところでありますが、下北半島東方の活断層についてであります。海上保安庁の水路部の調査によりましても確かめられているところでありますし、あるいは我が国としては非常に権威のある活断層研究会でもこれらについては出版物で既に紹介されているところでありますが、下北半島の東方、太平洋海底にほぼ南北方向に走る長さ約百キロに及ぶ大活断層が存在する可能性が強い、これがもし活動して地震が起こった場合には、学者が一般的に認めている経験式の計算でいくとマグニチュード八・一の巨大地震が起こることになる、これはエネルギーの大きさからいうと関東大地震の約二倍ぐらいの規模になるだろうというのであります。日本海中部地震の場合には通産省の地質調査所によって既に確認されていた活断層の一つが動いて発生したものだということから考えましても、もしこの下北半島東方の大活断層が動くというようなことになりますと大変なことになる。これをみんな大変に懸念をしているわけであります。まして、言うまでもなく今、下北半島は単に「むつ」の問題だけではなくて、御承知のように核燃料サイクル基地の大構想があり、そこに立地しようとしているわけでありますから、これらの活断層の懸念というのは非常に大きなものになっていると思うわけであります。  時間が限られているものですから、以下御回答は簡潔で結構でございますが、今の点についての御意見をいただきたいと思います。
  64. 中村守孝

    中村(守)政府委員 お答えいたします。  先生御指摘の下北半島東側百キロメートルに及ぶ活断層があるというお話につきましては、昭和五十五年二月に出版されました活断層研究会の「日本と周辺海底の活断層図」においてそのような表現があるということは承知しております。この調査結果は海上保安庁が海底の地形図作成のためエアガン方式で調査したものに基づいてできておるわけでございますが、原子力船事業団は活断層そのものもやはり立地調査の上で検討いたしましたが、その際、東北電力、東京電力で調査したスパーカー方式による音波探査データというのがございます。これが活断層を解析する意味ではより適切なデータでございますが、これをもとに専門家にも御検討いただきました結果、活断層とは認められないという判断に達しました。  その後また、先生御指摘の百キロの活断層の南の端の方でございますが、約二十キロメーターの部分を含めまして海上保安庁が調査を行っておりますが、その際には、当該区域には活断層はないという判断をして、その結果が公表されております。これは百キロ全部を否定したわけじゃございませんが、南の方の二十キロメーターについては活断層はないということも出ております。  いずれにいたしましても、この問題につきましては、関根浜の陸上施設建設するとかあるいは東通村の原発を建設する際の安全審査等の段階において十分吟味される問題だと思っておりますが、現在の段階のところでは我々の判断としては活断層はないのではないかというぐあいに解釈いたしております。
  65. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 今までもそういう御回答が続けられてきているようでありますが、原船事業団が検討した結果の報告というものも、お聞きいたしますと電力側の資料に基づいて調査報告がなされているというようなこと等が伝えられてきているわけで、とにかくあれだけの大変な計画を今、下北にやろうとしているわけですから、やはり当然独自の徹底した調査というものをやらなきゃえらいことになるというふうに思うわけであります。ぜひひとつ、これらの断層の徹底した調査を独自でなお行うということについての前向きな御答弁をいただいておきたいというふうに思うのですが、いかがですか。
  66. 中村守孝

    中村(守)政府委員 本件につきましては、関根浜の陸上施設安全審査等の際に十分検討をしていきたいというぐあいに考えております。
  67. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 何か事柄の重大性に比べれば極めて消極的なお答えで、言うまでもなく原子力行政において最大の重要事は安全性でありますから、どうかこの点についてお忘れなく、十分な御調査をなるべく早くあらかじめ行って、これを公表していくということでなければおかしいと思いますから、強く御要請を大臣に申し上げておきたいと思います。  次にお聞きしたいのは、今の下北核燃料サイクル基地の中のいわゆる第二再処理工場から発生する高レベル放射性廃棄物処理処分の問題であります。  ただいまも若干の説明があったようでありますが、これから質問に入るに先立って少し用語の概念をお互いに整えておいた方がいいように思うのであります。一般にもちょっと、このごろ出ている用語でまちまちな概念を持っているうらみがあるのですね。以前はよく処分処理の関係でこれも論議したことがあるのでありますが、貯蔵について、一時貯蔵あるいは長期貯蔵というような言葉が使われているわけです。これらの言葉の概念についてちょっと御見解を承っておきたいというふうに思います。
  68. 中村守孝

    中村(守)政府委員 お答えいたします。  廃棄物処分というのがいわば最終処分でございまして、その最終処分に至る間は一時保管ということでございます。ただ、その一時保管している期間が短い長いという問題はあろうかと思いますが、概念としてはあくまでも一時的に保管し最終的に処分をする、そういう理解でございます。
  69. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 答弁が足りないんじゃないですか。よくおわかりになってないんでしょう。一時貯蔵という言葉だとかあるいは長期貯蔵だとかという言葉を使っているわけですよ。これはおたくの方の文書なんかで公式に出ているわけですよ。  しかし、一時といったら何カ月かちょこっと保管するのか、こう思うわけだが、一時貯蔵というのは三十年ないし五十年間、固化してから処分に至るまでの間やろうということですね。これを一時貯蔵と言うわけですよ。一時といったって三十年ないし五十年、ヨーロッパあたりでは五十年ないし百五十年なんていう見方をしているところもあるわけですね。長期貯蔵というのは、この間からおたくの方の担当の方々なんかに実はいろいろお聞きしているのですが、一時貯蔵が終わって処分になる、この処分というのは何万年間隔離するわけですから、その隔離の前段のところで数百年ぐらい人が管理しながら処分する。だから管理処分とか管理貯蔵とか、そういうような言い方もされているぐらいのものなんですよ。それが長期貯蔵だ。僕の今言ったことでよろしいですか。
  70. 中村守孝

    中村(守)政府委員 言葉といたしましては、オーソライズされた言葉としては一時貯蔵で、処分ということにつながるわけでございますが、処分のいわば前段、処分最初の初期段階ということで先生のおっしゃったような長期貯蔵という言葉が使われているということもございます。
  71. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 とにかく科学技術委員会あたりの論議のときには、僕なんか余りそういうのに向いていない方なんだけれども、しかし思うのだが、やはり一時貯蔵だとか長期貯蔵という言葉を使うときにはそれなりの正確さがお互いになくちゃ、後で何を言ったのだかわからないことになってしまうのですよ。だから、やはり言葉の概念はきちんとしておいた方がいいと思いますよ。貯蔵に関しては、科学技術委員会やあるいは動燃事業団だとかいろいろな方々とお話ししたときにちょっと感ずるのですが、もし何でしたら、やはり内部で一遍きちんと御統一になった方がよいのではないか、こういうぐあいに思いますが、今のお答えでは、そういうことだろうということでありますから、以下そういう考え方で話を続けます。  そこで、七月二日、通産省の諮問機関総合エネルギー調査会原子力部会から核燃料サイクルに関する報告書が出たわけであります。ついこの間のことであります。これの三十四ページの「高レベル放射性廃棄物対策」の「基本方針」のところ、これはごらんになっていると思いますが、そこに「高レベル放射性廃液は、安定な状態に固化処理し、一時貯蔵した後、再処理工場敷地外において、国の責任の下に処分を行うこととする。」こう書いてあるのですね。そうですね。「一時貯蔵した後、再処理工場敷地外において、国の責任の下に処分を行う」それからさらに、その下の方のところに「官民の役割分担」というところがありまして、「再処理工場における高レベル放射性廃棄物の実際の処理は再処理事業者が行うこととするが、所要の技術開発は国が中心となって実施する」こう書いているわけですね。したがいまして、再処理工場から出てくる高レベル廃棄物というものは、それの実際の処理は再処理工場が行うんだということをそこに書いているわけであります。これを実際に即して言い直すと、つまり次のようなことでいいのかということなのであります。  下北の第二再処理工場の高レベル廃棄物処理は原燃サービスが実施するものとして、放射性廃液を固化した上、下北の敷地内で一時貯蔵する。さっきの一時貯蔵、三十年ないし五十年。その上で今度は国の責任のもとで再処理工場の敷地外の処分場でこれを処分するということになりますね。今の点まずちょっと確認しておきましょうか。今、僕が言ったようなことでいいですか。
  72. 大塚和彦

    ○大塚説明員 お答え申し上げます。  先生が今おっしゃいましたことの後半部分はまことにそのとおりだと考えております。ただ、前半におきまして先生下北というおっしゃり方をなさっておられますが、具体的な立地地点というのはあくまでも私どもは事業主体において選定されるもの、こういうことでまいっております。したがって、例えば下北を想定してとかそういうことであれば、まさしく先生のおっしゃるところの意味である、かように考えております。(五十嵐委員「その他はいいですね」と呼ぶ)はい、おっしゃったとおりです。
  73. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 では、考え方としては僕が言ったようなことでいいということのようであります。  さらに、今ごらんになっているところの少し後に返還廃棄物についてのところがある。これは我が国の電気事業者がイギリスやフランスに使用済み燃料の再処理委託をしている。それがそのうち戻ってくるということになるわけであります。その「受入れ及び一時貯蔵は再処理事業者が行うことが適当である。」としていますね。戻ってくる廃棄物の受け入れと一時貯蔵は、一時貯蔵というのはさっき言ったように三十年ないし五十年ですね、「再処理事業者が行うことが適当である。」こう書いてある。再処理事業者というのは原燃サービスですから、これを言いかえると、イギリスやフランスからの返還廃棄物は原燃サービスがこれを受け入れ一時貯蔵する、その後は国内廃棄物の取り扱いと同じようなことになるということで、大塚課長さん、いいですか。
  74. 大塚和彦

    ○大塚説明員 お答え申し上げます。  先生今、再処理事業者はすなわち原燃サービスであるからとおっしゃいましたが、実はこの報告書は具体的な事業の実施の仕方を書いておりますよりも、その前提となります政策的なフレームワークを言っているわけでございます。そういう考え方を言っているわけでございます。したがって、再処理事業者がという意味は、それすなわち原燃サービスという意味ではございません。ただ、第二再処理工場の主体として今、原燃サービスがある、そしてそれが事業をやることが期待されている、そういう意味で申しますと、先生のおっしゃるとおりだ、私はそう考えます。
  75. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 そうしますと、今の課長さんの御返事のとおりでありまして、返還されるガラス固化の高レベル廃棄物は、下北の場合、今の構想でいくとすれば今、原燃サービスがあそこで仕事をしようとしているわけですが、そこでそれも受け入れるということになるわけですね。
  76. 大塚和彦

    ○大塚説明員 お答え申し上げます。  ちょっとくどくなりますが、やはり事業を現実に進めてまいりますのは事業主体がやっていくことになるわけでございます。そこで私どもとしては、現在は電力業界なり日本原燃サービスなり、そういう事業主体として考えられているところがどのような考え方をして今計画を練っておるかということについてお答えすることになりますが、電力業界とか日本原燃サービスなどから聞いておりますところでは、具体的に再処理工場建設し、そしてその他関連施設建設していく、その計画の中には、返還廃棄物につきましても、それを貯蔵していく場所、こういうものも想定しながら計画考えておる、かように私は聞いております。
  77. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 そうですね。そうしますと、今のお話のとおり下北には再処理工場ができる、それは八百トンだ。東海のは二百十トンですから、約四倍ぐらいの大きさ。これの固化プラント、それから貯蔵プラントをそれぞれ建設しようという構想なわけだ。これは投資額なんか、やはり一応概念設計はもちろんできているのでしょうから、大体どんなことで考えているのか、もしおわかりになれば。  それから西暦二〇〇〇年では返還廃棄物が、これは予定どおり来るか来ないか問題がありますけれども、仮に予定どおり来たと考えた場合にそれを加える。あるいは東海村の第一再処理工場も、とまってはかりいてちっとも能率が上がってないが、これもさっきのお話のように来年から動くんだということであれば動くと考えて、そうやってみますと、西暦二〇〇〇年でトータルとして在庫は一体どのぐらいになるか、もしわかれば。
  78. 中村守孝

    中村(守)政府委員 お答えいたします。  下北での民間再処理工場、これは今、電気事業連合会の方で青森県に立地を申し入れているわけでございまして、そこに確定するかどうかは今後の話でございますが、一応そう呼ばしていただきますと、そこでの高レベルガラス固化ブラント及び貯蔵プラントについては建設費等どうかという御質問でございます。ここにつきましては現在、電気事業者の中で検討しているところでございまして、具体的な数字等については私どもがちょっとお答えし得る段階にございません。  ガラス固化体の累積量についての御質問でございますが、これは推計の仕方がなかなかに難しゅうございますけれども、大胆な仮定のもとでちょっと数字を言わしていただきますと、動燃事業団東海処理工場固化プラントを一九九〇年に運転開始するという前提で、かつ年二百本という仮定をいたしますと、二〇〇〇年に東海工場で千五百本。それから返還廃棄物につきましては、これはまだいつから返還されるかということも不確定な要因がございます。一応のあれでは一九九〇年からということでございますが、実態は手続がおくれておりますので、さらにおくれるかと思いますが、一応一九九〇年から十年間にわたって返還されるという前提でなにいたしますと、三千八百本。それから第二再処理工場での固化プラントにつきましても、これがいつから運開するか、それからどの程度の量が、これはまた未確定なものでございますので推算しにくいわけでございますが、一九九六年に運転開始するということで、年間八百本という一応の仮定のもとに計算をいたしますと千二百本ということで、これらを合わせますと六千五百本ということでございますが、この数字はあくまでも今申し上げましたような前提で計算いたしておりますので、仮の試算ということで御了承いただきたいと思います。
  79. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 数の点では後で少し論議したいと思いますが、ともかくも今の下北の構想の中で、従前我々新聞なんか見ても、どうも三点セットと、こう言われていたわけだ、濃縮工場、それから再処理工場、低レベルということで。そうすると今のお話聞いていると、とにかく高レベル固化体貯蔵という、しかも返還のものも含めて、これはさっき金額は言わなかったけれども、恐らく大変なものでしょう。そのプロジェクトそのものも、三点セットではなくて四点セットで考えておられるんだなという感じが、どうも今のお話を聞いてよくわかってきたような気がするのであります。  それで廃炉は、もうそのうちどんどん出てきますね。大変な問題だ。我が国はこの廃炉の解体処分をする、こう言っているわけですが、この廃炉の解体したものも、これは下北に当然持っていくということになるんでしょうね。どうですか。
  80. 中村守孝

    中村(守)政府委員 お答えいたします。  現在、三点セットと俗に言われている言葉で青森県に立地を申し込まれている中には、低レベル廃棄物のサイトがえの貯蔵施設というものもあるわけでございまして、原子力発電所の中で発生しております低レベル廃棄物、これが今発電所の中に保管されておりますが、その種のものを集中して貯蔵しようというものでございまして、廃炉の場合に出る廃棄物はどうかということにつきましては、概念的には、そういうそこに持ち込むということも十分考え得ることであろうかと思います。
  81. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 そうですね。今の構想の中では、廃炉を持っていくところは他にないですね。これはやはり低レベル廃棄物の陸上貯蔵施設、集中的な貯蔵施設のところに廃炉を持っていくほかないだろう。しかし、部分的に高レベルのものがありますから、それは一体どうするかという問題は別にあると思いますが、これは大変なものだ。(「そこまでいってないぞ」と呼ぶ者あり)そうですね。今のようなことを現地によくお話をしながら、これらの問題をやっているのかなという感じが僕はちょっとします。今の話を聞くと四点セット、五点セットという感じがいたしますね。  そういうことでややわかったのでありますが、さてそこで、近く立地を決めたい、こういう皆さんの構想にある貯蔵パイロットプラントの問題なのであります。  「工学センター計画」というなかなかりっぱなパンフレットが動燃から出ているとお聞きしましたので、この間それをいただきました。「工学センター計画」という題名がついているけれども、これはさっき動燃側から御説明がございましたように、内容的にはどうも工学センター計画というものじゃなくて、従前ずっと常に論議をしている貯蔵パイロットプラントと、そしてそれを中心にして若干の研究施設が含まれる、こういうことのこの本はPRパンフのようなものだというふうに拝見いたしました。  これに「実用化規模に於ける熱エネルギーの利用方法」というところがございまして、そこのところにわかりやすい図解がございます。我々が見ても非常にわかりいいようになっているのでありますが、この図解に熱源であるガラス固化体貯蔵施設が描かれてあって、その下に「七千キロワット」と記入されていますね。かつその前のページに、七千キロワットの熱出力を出すのは西暦二〇〇〇年までに蓄積されたガラス固化体七千本によるものと書いてあるわけですよ。そして別表のグラフにその内訳として、海外返還分、動燃分、それから第二再処理分が示されていて、それがこう三本の線になっていて、それが重なっていて七千本ということになるわけですが、これは、「工学センター計画」のパンフレットによると、動燃さんは海外の返還も、下北にできるであろう第二再処理工場の分も全部合わせてここで一時貯蔵するということに書いているでないですか。さっきの通産省の話と全然違うじゃないですか。一体どういうわけですか。
  82. 渡辺昌介

    渡辺参考人 お答えいたします。  最初にお断りしておきたいのは、このパンフレットはことしの五月につくっておりますが、地元への御説明ができるように、あるいは内部で検討を進めるためにつくったものでございます。したがいまして、動燃事業団がもしこの固化体を全部集めるとしたら、二〇〇〇年になりますと七千本集められるということで、七千本の場合にはこういう熱バランスがとれますということを御説明してあるものでございます。  この「実用化規模に於ける熱エネルギーの利用方法」先ほど先生がおっしゃいました絵がございます。これは非常にわかりやすいという評判でございまして、非常にわかりやすくできております。  その前のページに、ガラス固化体より発生する熱エネルギーが二〇〇〇年に七千キロワットという絵がございます。そしてその中に、第二再処理工場発生分、動燃事業団発生分、海外返還固化体分というのが、それぞれ絵になっております。合わせて七千キロワットぐらいになるということでございます。
  83. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 だから、それを言っているわけですよ。ちゃんと絵で、三つが集まって七千本になります、こうなっているわけですよ。  今度はその四のところで、理事長ごらんください。「四、研究開発計画の概要」というところがある。その右側のページに「第三段階」というのがありますね。これは二十年後というところです。これの真ん中辺のところに「貯蔵施設」というのがあるでしょう。ここの下にこう書いています。「返還固化体、第二再処理分も含む」明らかでないですか。そんなこと言ったってだめですよ。動燃さん自身が、ここのところには第二再処理工場やあるいは返還固化体の分も含めて、合わせて七千本、ここでやるんだということを、もうちゃんと書いているでしょう。しかも、住民のところに行って、これを説明に使うというのですね。わかりやすくというのは、まことにわかりやすく書いているのですよ。私が見ても、こうやって指摘できるくらいですから。  これは通産省、一体どうなんですか。おかしいじゃないですか。大塚さんの言うのと今のお話と全然違うじゃないですか。両方それぞれで七千本ずつやるというのですか。全然まるきり別なことを言っているのですよ。片っ方は、下北のところの再処理工場で返還のものも持ってくる。自分のところで出たのもやるということですね。片っ方の方では、今度はどこにできるか知らないが、その貯蔵工学センターなるものに全部集めるという。同じ科学技術庁が全体的に見ていをところで、こんな大事なところでめちゃくちゃな構想が出されているということはだめですよ。出直しなさいよ。どうですか、局長。
  84. 中村守孝

    中村(守)政府委員 現在、動燃事業団が進めております貯蔵パイロットプラント建設ということが、当面の高レベル廃棄物のいわゆるガラス固化技術の確立の上で、実施技術の確立の上で重要な課題であるわけでございまして、その意味で、当面やるべきことはこの動燃事業団におきます貯蔵パイロットプラント立地を推進するということでございます。パンフレットの中で若干先の方のことが書いてございまして、今先生から御指摘のような誤解を生ずるような書き方になっているという点につきましては十分注意しなければならないと思いますが、そこに書かれている気持ちは、動燃事業団としては貯蔵パイロットプラントをつくるわけでございますが、その先、地元の御意向なりあるいは可能性として、そういうこともあり得るのではないかということでございますが、現在、電気事業者サイドにおきましては、下北立地を申し入れている再処理工場におきまして、そういう固化処理なり貯蔵まで含めまして、そこでやるつもりであるというような考え方が最近示されておりますので、その意味におきましては、現在のパンフレットの中にありますパイロットプラントの先の話は、あくまでもその当時、書いたときに可能性として書いたということでございますので、御了解いただきたいと思います。
  85. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 つまり言いかえれば、あのパンフレットは現実、今日の段階では適当でないということなんでしょうね。これはそんなものを残していちゃいけないですよ。内容的にもどうとか、もっと時間があれば僕は指摘したいことは山ほどあるのですよ。しかし時間がないからしょうがないですけれども、まだそのパンフレットを使う気なら、僕は改めてまたそれはやります。それは撤回した方がいいです。そんな誤りのものを出すべきでないですよ。  僕はそれで最初に御質問申し上げたのだけれども、総合エネルギー調査会原子力部会のつい先日出されたものの中にもちゃんと書いているわけですね。そのサイト外に出すというのはどういうものだということは、原則が基本的な考え方として示されているのですから、ちゃんとそういうものを踏まえてやりなさいよ。僕はそれが正しいと思います。理事長どうですか。
  86. 吉田登

    吉田参考人 お答えいたします。  今、先生いろいろと御指摘されましたことの中には、我々としても少し書き過ぎている点があるんじゃないかという点はあると思いますが、我々の方でこういうような表現をいたしましたのは、この「第二段階」のところで「貯蔵パイロットプラント二千本」こうしております。この辺が、実際の動燃から出てくるものを貯蔵する第一棟で大体収容できるものだ。この辺が我々としては最初のステップでやはり計画しなければならないものだ。「第三段階」といいますと、この「第一段階」になるにも相当かかりますので、「第三段階」になると相当先の問題になりますが、これは先ほど指摘されましたように電力側の意向というのが一番主体にもなっておりますので、我々だけでどうするというわけにいきません。ただ、こういうようなことを書きましたのは、先ほどの熱利用のところで書いておりますように、二千本では発生する熱量というのが割に少ないということがありまして、それで、いろいろ入れればこういう利用もできる、こういうことで書かせていただきました。
  87. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 それは理事長、語るに落ちたという感じですね。お話のとおりでしょう。やはり七千本なければ、熱利用として利用するといったって、どうもうまくいかない。そこで七千本入れたいというものが先にあるわけですよ。二千本じゃ、熱利用だとか何だとかいったってどうしようもないなというものがあるんでしょう。しかし、それはさっきからお話がずっと続けられているように、うまくないですよ。これは間違っていますよ。おたくのところで、工学センターで、あっちのもこっちのも持ってくるなんということにはならぬのですから。方針は決まっているんですから。二十年なんというのは先のことだと言ったって、原子力行政で二十年なんでいったら目の前ということですよ。だから、そういう点は勘違いしないように僕は強く要請をしておきたいと思うし、両側のこういう不一致の点については、ぜひ長官御留意いただいて調整をしていただきたい、こういうぐあいに思います。  時間が余りないのですが、もう一つ大きな点でお聞きしたいと思うのは、このパンフレットの中に「貯蔵技術開発」というページがある。ちょっとごらんいただきたいと思います。それで三段階に分けて研究の進め方を記載しているわけですが、その最終段階、すなわち別表によると二十年後、貯蔵施設の拡張を図り、これらと並行して長期貯蔵に関する研究を実施する。長期貯蔵というのは、さっきも言葉の概念で言ったように、これは三十年ないし五十年の一時貯蔵を終わって処分に移す。処分は何万年だ。それの初期の段階で数百年、人間が手から放さないで管理しながら貯蔵する。これを長期貯蔵と言うわけですね。その研究を実施する、こうなっている。  これは、この前、科学技術庁の方々からも事前にいろいろレクチャーを受けました。それでそういうようなレクチャーによると、当面の一時貯蔵のものができる、その敷地内にやはり処分といいますか、かなり深い地下、深地下層にシャフトを入れていって、そしてそこに最終的にはガラス固化体を入れて処分をするわけですね。それは七百メートルともあるいは千メートルとも言われている地下の深いところに、そして将来は人間の社会と隔離をして置く、こういうことなわけですが、その深いやつをその敷地のところで掘ってみて、そうしてそれは五百メートルか七百メートルか知りませんが、地下の方に研究ルームをつくって、そこでさまざまな研究をするということもここでやろうということのようでありますが、それはそういうことですね。
  88. 渡辺昌介

    渡辺参考人 お答えいたします。  このパンフレットの「貯蔵技術開発」の左側のページの一番下のところに、「最終段階では、貯蔵パイロットプラントの運転実績をもとに、貯蔵施設の拡張を図り、これらと並行して長期貯蔵に関する研究」いろいろございますが、「(材料の耐久性・耐放性・耐熱性、岩盤の長期安定性、ガラス固化体長期安定性、代替固化)を実施します。」これは処分研究をやりますよということになるわけです。動燃事業団処分の実施の研究を国から命ぜられてやっております。したがいまして、処理だけではなくて処分研究も、当然いろいろな場所でやらせていただいております。したがいまして、いろいろなところで地下数百メートルの穴を掘って地下の状況を調べる、あるいは中の状況を把握する、あるいは将来処分をするときの試験方法を確認するというようおいろいろな。ことをやらなければいけません。したがいまして、そういうものも考えていきたいと思っております。
  89. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 そういうことですね。  そこで、深く掘る、七百メートルなり千メートル掘る、しかしそれはそこだけではないかもしれぬ。大体、今どこに工学センターができるかもまだわかっていないことですから、どこかに掘る。今お話しのように、それは一本だけでなくて複数であちこち掘るのかもしれない。しかしその部分でも、掘っていろいろ調査をしてみて、案外その岩層もいいな、いろいろな点からいってここも不可能でない、適当なところだなということになれば、それはそこで実際に処分ということだって可能性としてはあるわけでしょう。
  90. 渡辺昌介

    渡辺参考人 お答えします。  処分に関しては、ただいま原子力委員会で定められましたステップを踏んで、ステップ・バイ・ステップに処分研究を進めております。先ほどお答えがございましたように、ただいまは第一段階最終年度になっております。「可能性ある地層調査」ということが最終段階になりつつあります。  処分につきましては、この後、第二段階、第三段階、第四段階と、順に相当な期間で長期研究を進め、評価をし、そして処分に至るということになります。したがいまして、今この一つ穴を掘ったところに置くか置かないかということは全く関係がないということになると思います。
  91. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 全然そこでやらないというなら、やらないとはっきり言ってもらった方がいいのですよ。しかし、やはり可能性としてあるかもしれぬということなら、そう言ってもらわなければいかぬのですし、大事なところですよ。今のお返事で言うと関係ないというのだから、全然可能性ないのだなというふうに僕は思いましたけれども、そうとっていいのですか。
  92. 渡辺昌介

    渡辺参考人 お答えいたします。  可能性があるともないともお答えできないと今は考えられます。以上でございます。
  93. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 それは無責任でないですか、そういう言い方は。  ここにきょうお見えになっていないからしょうがないのですが、植松理事が四月二十六日、札幌に行きまして講演をしているのです。その講演をした内容として、概要こういうことを言っているようですね。「①貯蔵技術開発するための研究貯蔵施設を六十四年に建設、六十七年から運転を開始する②最終処分は固化した廃棄物を人工的な障壁を設けて地下数百メートルに収納する方式を採り、七十年に試験地を選定、それから二十年後に試験処分するとし、「両者は一体の施設考えてよい。万が一にも放射能もれがないよう地盤が強固で安定していもことが大前提」」こう講演しているというのですよ。きょうは本人いないものですから確かめられないのですけれども、こういう考え方があることは確かなのですね。  だから、これは地域や住民にとっては大変なことなんだから、いつでも僕は御質問するときに申し上げるのですけれども、公開の大原則というのは大事にしてほしい。そうして、一応住民の御意思を御意思をと言うけれども、肝心なところは何のことやらちっともわからぬということでも困るわけです。部長さんは、僕はときどきお聞きしておりながら、そういう意味では、そう隠すお人柄ではなくて、いろいろお教えいただく機会も多いのだけれども、きょうはちょっと今お聞きして、肝心なところでは困ったなと、可能性があるともないとも答えられないということでは、これは無責任と言うよりしょうがない。つまり簡単に言えば隠すということですものね。どうですか、もし何でしたら理事長さんでもいいですよ。
  94. 渡辺昌介

    渡辺参考人 お答えいたします。  決して隠しているわけではございません。本当に決まっていないことを私が今申し上げることは僭越であると思っております。したがいまして、処分になりますと、いろいろな評価をしていただき、本当に大丈夫だという確認をしていただいた地層を選んで試験的な処分に入るということになります。したがいまして、その調査も済んでない、あるいは評価も済んでないのに、ここは可能性がございますとか、あるいはここは可能性ございませんとかいうことは申し上げることはできないのでございます。  以上でございます。
  95. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 もう時間がありませんから御質問できませんけれども、あれは第一段階、第二段階、第三段階と決めたのは五十五年ですか。「可能性ある地層調査」から「有効な地層調査」にいよいよ入るわけですね。今度はいろいろ掘ったり、あるいは現地におけるバリアの調査をしたり、そんなことをやって総合評価をして試験地を決めるわけです。その試験地でいろいろなことをやっていって、問題がなければ、そこで今度はだんだん現物を持っていって調べるという段階の事態に入っていくわけですね、相当な期間を経ながら。だから、そこは問題がないということになってきますと、だんだん固まっていくわけですよ。第三段階、第四段階でも、だんだんそれは絞られていって、決定的な調査が深められていくことになるわけです。だから、もちろんきょうは言い切れないから言うのだけれども、それは可能性がないなどということにはならないのじゃないですか。局長どう思いますか。
  96. 中村守孝

    中村(守)政府委員 お答えいたします。  貯蔵工学センター、その場所処分のための試験地を探すとか、あるいはそこをもって処分地とするとかいうことについては全くの白紙でございまして、あくまでも地層を詰めて、あちこち調査をして絞っていくということでございますし、貯蔵工学センターの方は早晩やらなければならない話でございますので、その両者が同一場所になるということは今の段階で申し上げられない。  先ほどの植松理事お話についてでございますが、私どもが理解しているのは、最終処分のための試験地と処分地というのがだんだん一体的になっていくのだろうということでございまして、この貯蔵工学センターと一体的というような御説明をしたのではないんじゃないかというぐあいに聞いておりますが、今先生御指摘の、ここの貯蔵工学センターで、いい地質があった、だからそこを処分地として試験をするよという可能性が一〇〇%ないのか、これは全然その地層の奥まで調べているわけではございませんので、まさにそういう意味で、あるとかないとか申し上げられない、こういうことでございますので、御了解いただきたいと思います。
  97. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 つまり一〇〇%ないとは言えぬということですね。しかし、もう二、三分しかないから、この問題はこの程度にして、改めてまたやらせていただきます。殊に植松理事に改めてお聞きしたい、こういうぐあいに思います。  そこで、時間がないからあと一、二の点だけちょっとお聞きします。  高レベルないし低レベル廃棄物の一時貯蔵ないし処分については廃鉱を利用する考え方は可能性として含まれていますか、あるいはありませんか。
  98. 中村守孝

    中村(守)政府委員 鉱山の掘った跡の廃鉱の中に放射性廃棄物処分すること、あるいは貯蔵することはできないかという御質問かと思いますが、高レベル放射性廃棄物処分につきましては、先ほど来お話がございますようにガラス固化いたしまして、安定な形態に処理して貯蔵しておるわけでございますが、この貯蔵自身につきましても、一時貯蔵にいたしましても熱の放散に伴う管理というのが必要になるわけでございますし、最終的な処分ということになりますと、現在考えられている方法といたしましては、地下数百メートル、非常に深いところの安定な地層の中にしまい込むということでございまして、通常の廃鉱の跡へ高レベルを持ち込むということはなかなかしにくい話でございます。ただ、いろいろな地質の調査だとか、そういうことでは、たまたまそこに廃鉱があって、いろいろな岩層の中に人が入り込める状況にございますから、調査するためには非常に便利なことでございますので、いわゆる研究開発には使わせていただきたいと思っておるわけでございます。  それから低レベルの方はどうかということでございますが、低レベルにつきましては、いわゆる安全性の確立について必要な評価が得られますならば、その廃鉱の地質その他の諸条件というものがそういう安全の評価条件に合致するのであるならば、有効に使えるという可能性もあり得るのではないか。現段階において具体的にそのことについて検討しているわけではございません。技術的な可能性としてはあり得るのではないか、そういうことでございます。
  99. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 今の問題も、殊に低レベルに関してはかなり重大な発言でありますので、これも改めてまた御質問させていただきたいと思います。  そこで長官に一、二点お伺いしたいのであります。どこの場合もそうでありますが、今、特にどこの用地になるかわかりませんが、動燃さんのつけている名称によれば貯蔵工学センター、そういうものの立地をそろそろ決めるんだということでいろいろやっておられるようであります。さまざまな条件が、非常に多くの問題があるわけですから、それぞれについて御検討いただきながら、最終的に用地を決めることになろうと思うのですが、そのさまざまなうちの一つとして極めて重要なのは、地域住民の同意ということであろうと思うわけであります。この場合、事が事でありますから、極力慎重に地域住民の同意を尊重してほしいというふうに思うのでございます。少なくとも該当の市町村自治体は言うまでもないわけでありますが、近隣の市町村自治体ないし該当の都道府県の知事、その同意というものはもちろん基礎的に不可欠のものであろうというふうに思うのでありますが、そのようにお考えになっておられるかどうか、お伺いをしたいと思います。
  100. 岩動道行

    岩動国務大臣 まず原子力の平和利用につきましては、特に日本の場合は代替エネルギーとしての原子力発電が大変重要な役割を果たしてきております。これを立地をし、そして実際に国民の経済、民生の安定のために使ってまいります際には、必ず地元の十分な御理解と御協力をいただいて、そしてまた関係の自治体の御協力も当然ちょうだいをいたさなければならない、こういう基本的な考え方で私どもは今日まで着実に進めてまいりました。  また、電源立地につきましては、特に公開ヒアリング、こういう制度もつくりまして、そしてできるだけ地域住民の方々の御意見、そしてまた起業者あるいは政府の考え方も申し上げて、そして、ただいまのところ順調に進んでまいってきております。このようなことで、ただいま問題になってまいりました高レベル処理の関係についても、動燃事業団がただいま考えている貯蔵工学センター、これもまた構想を私どもも聞いた程度で、十分に念査をいたしておりません。原子力委員会におきましても、核燃料サイクルという当面の問題、そしてその先の展望としては高レベルの問題、またこの高レベル放射線の問題、放射能の問題から見ましても大変重要でございますので、十分慎重にこれから検討してまいりたい。そのためには、もちろん地域住民の方々の御理解と御協力、あるいは関係の自治体の御理解と御協力、こういうものを大前提として、そして安全性を最大の基本としてこれからも進めてまいらなければならない、かように認識をいたしておるところでございます。
  101. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 なお一言、今私から申し上げましたように、つまり最低限、その他にもいろいろなことがもちろんあろうと思いますが、基礎的なものとして該当市町村自治体、近隣の市町村自治体あるいは該当の都道府県知事、この同意というものは全く基礎的なものとして必要というふうにもちろん御判断になっていると思いますが、なおこれについて一言お答えいただきたいと思います。
  102. 岩動道行

    岩動国務大臣 近隣の市町村と申しましても、なかなか限定がしにくいとは思います。隣の町村のつい目の先でやるから隣はいいんだ、こういうことにはならないだろうと思います。そしてまた、例えばこういうような相当の規模のセンターをつくるということになりますと、港の問題でありますとか、道路の問題でありますとか輸送の問題でありますとか、いろいろ関係する問題が出てまいりますので、当然これらに関係する市町村というものは十分に御理解をいただいていかなければいけない、かように考えております。(五十嵐委員「いや、知事」と呼ぶ)知事ですか。これはもちろんその自治体の全体を見ていく立場にございまするから、当然それらの御意見も伺い、また御理解もちょうだいしていかなければいけないと考えるわけであります。
  103. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 本当に申しわけないのですが、しかし、質問の趣旨からちょっとお答えがそれている。大事な点なんであります。  つまり、同意を得なければということなんですね。これはその他の原子力施設ももとよりそういうことだと思います。例えば低レベルの問題についても、一貫して歴代の長官のお答えでもそうであったわけですが、今僕が申し上げたようなところの同意は、最低限必要な基礎的なものだと思うのです。つまり、今言ったもの、知事あるいは近隣でも殊に隣接の市町村、こういうようなところの同意も必要なことだということをお思いだと思うのです。その同意、理解を求めなければいかぬというのはもちろんそうでありますが、同意を得ることが必要だとお思いなのか、そうでないのか、これについて。どうも恐縮ですが、当然のことだと思いますけれども。
  104. 岩動道行

    岩動国務大臣 厳格な意味での同意、法律上の同意ということになりますと、私も法律をもう一遍調べてみなければわかりませんけれども、お話をして御理解をいただいていく、あるいは議会がそういう決議をするとか、いろいろな方法があると思いますので、私は実質的にはそういうことになろうと思います。法律上の同意、こういうことで政府が認識をするということについては私はもう少し勉強しなければなりませんけれども、実質的にはそういうことであって、十分な御理解と御協力ということは実質的には同意と変わらないのではないかと思っております。
  105. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 同意と同じことだというお答えでありますから、そのように受けとめたいと思います。原発そのものが、立地に当たっては皆そういう知事の同意なくしてできるものではないわけでありますが、どうかひとつそういう点では十分な御配慮、御確認をお願いしたい、こういうぐあいに思います。少し時間をオーバーして申しわけありません。  どうもありがとうございました。
  106. 大野潔

    大野委員長 午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時十三分休憩      ――――◇―――――     午後一時五分開議
  107. 大野潔

    大野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。小川新一郎君。
  108. 小川新一郎

    小川(新)委員 本日は、委員会また理事会の申し合わせによりまして「むつ」問題に絞って質問ということでございますので、私はその範囲の中に従って質問させていただきます。  前回は、当委員会委員長の温かい御配慮によって、むつ市長並びに青森県副知事をお迎えいたしまして、関係者の立場に立っての質問をさせていただきました。きょうは、そういう面を踏まえた上でひとつよろしくお願いする次第でございます。  御案内のとおり、我が国の原子力船研究開発は、昭和三十八年八月に発足した日本原子力船開発事業団、現在は日本原子力船研究開発事業団でございますが、日本原子力船第一号の「むつ」は、昭和四十九年の試験航海運転直後における放射線漏れを契機として計画は大幅におくれ、現在において何一つ実験データは得られていないのが現実であります。  原子力船研究開発のために昭和五十八年度までに約六百億の国費が使われ、今後研究開発を続けるためにはさらに約千億円の予算が必要と言われておりますが、この問題については正確な数字を後ほど御答弁をお願いすることになっております。さらに、米国原子力船サバンナは約二百三十億、西独の原子力船オット・ハーンは約百三十億円で、既に実験航海を終了している点と比べて大きな差があるわけでございます。まず、この点どのような御見解をお持ちになっているかということが一つであります。  そしてそのような背景の中から、国家財政が非常に厳しい今日、このように多額の予算を必要とする「むつ」の研究は中止すべきであるとの意見が自民党の議員の皆さんの一部からも出されております。海運国であり、同時に造船国である日本として、原子力船研究を必要とする点では私はほぼ合意ができているのではないかと思っております。しかし、研究開発をこのまま継続するか、一時中止して最初から出直すのがいいのか、この意見が今大きく分かれているところであります。政府・自民党は今年八月三十日までに結論を出そうとしておりますが、原子力船むつ」をどうするかが今大きな政治問題となってきたことも事実であります。  私たちは、こういう立場に立って、委員長の運営の中で、今回与野党が現地を視察し、親しく原子力船むつ」の中に入ってその実態を調査しようとしております。この委員会が今日まで、長い歴史と伝統の中で原子力事業、また開発研究、そして「むつ」を踏まえた問題の研究のために熱意を示していることも御理解いただきながら、ただいま私の話した中の二点について大臣に御所見を伺うものでございます。
  109. 岩動道行

    岩動国務大臣 まず、原子力船むつ」につきまして当委員会でこのように御熱心に御審議をちょうだいをいたしておりますことに心から感謝をいたし、またその御審議の経過、内容等につきましては、十分に私どもは今後の政策決定に反映をさせてまいりたいと考えております。  最初に、原子力船むつ」について大変経費がかかった、そしてアメリカあるいはドイツの例をお引きになって御比較をなさったわけでございますが、この点につきましては、日本の場合には原子力そのものの平和利用についてのいろいろな日本の国情と申しますか原子力に対する国民の考え方、受け取り方というものが非常に特異性があるということ、つまり広島、長崎の被爆国である、そういうようなことから原子力に対する非常な敏感な受け取り方、また対応の仕方、これも日本の国情としてやむを得ないものがあり、そのような環境の中で日本原子力の平和利用を進めるということでございますので、したがいましていろいろな、諸外国とは違った土壌の中で原子力の平和利用を進めなければならない。そのために大変多くの経費がかかってまいった。特にまた水産国家であり、内よりも魚を食って日本民族は生きてまいりました。これからもそういう日本民族の食糧事情であろうと思います。そういうようなことを考えますと、原子力の問題が海産物、水産に対しては非常に大きな影響がある、こういうことも念頭に置いていかなければならない。そういったような特殊事情等も考えますと、私どもは最小限度の費用で最大の効果を上げるという国民に対する責務を持っていなければなりませんし、一銭のむだ遣いがあってもならない。これを心に強く受けとめながら進めてまいったところでございます。具体的な数字の内容等については御必要とあれば担当の局長から申し上げますが、基本的にはそういうことであることをまず御理解いただきたいと思います。  今後の進め方につきましてはまだ最終の対応が決まっておらないわけでありますが、進めるにいたしましてもこれは最小限度のものでなければならない。今、一千億円という言葉がひとり歩いておりますが、これは事業団がいろいろなことを考えて、研究技術者としてはこれだけのことはしてみたい、こういう願望のある、そういう計画がおおむね一千億円、こういう数字になっているわけでございますが、これは私どもが了承している数字でもございませんし、今後国会の御審議、各方面の御議論をちょうだいをいたしまして、そしてまた私ども自身も今日まで寄せられたいろいろな批判、御意見については十分に戒心をして、そしてこれらの経費につきましても研究開発の進め方につきましても十分な対応をして、国民の納得のいく経費を念査していかなければならないと考えておるわけでございます。  さて、自民党の科学技術部会で廃船という決定が出たわけでございますが、これにつきましては予算編成の段階におきまして私どもはいろいろ議論をいたしました。そして政治折衝の段階におきましても私は強く従来の主張を通してまいりましたが、最終的には改めて専門家を中心とした検討委員会で党としては結論を出していきたい、こういうことでございますので、私どもは政府・与党の立場においては党の検討委員会の結論というものは十分に注視していかなければなりません。しかし、冒頭に申し上げましたように、このような国会での大きな御論議、御審議がございますので、それを最も重要な我々の考え方に反映させていかなければならない、かように考えておるわけでございます。まずもって、そのことを申し上げて、御理解をいただきたいと思います。
  110. 小川新一郎

    小川(新)委員 私は岩動長官の人柄また人徳、我々に対する態度、すべて好感を持って接している一人でございます。また、今後も長官の持っている見識や博学、知識については、若い私たちはさらに学ぶ姿勢でございます。そういう前提に立って長官を御支援する立場において、二、三嫌なことも聞かさせていただきますが、どうか意のあるところを御理解いただきたいと思うのでございます。  ただいま長官は、自民党の科学技術部会、「原子船を考える会」、これらの意見が今、日本の大きな政治問題に「むつ」を引き込んだということの御認識の中で、検討委員会の意を待っているのだ、また伝えられるところによると、調査団の報告、そしてそれを踏まえて自民党の三役、四役会議、こういうものの結論がこの八月三十日までに出るということでございますけれども、私は、これはまことに遺憾な事態であるということを指摘しておかなければなりません。  それはなぜかと申しますと、これは個人的な問題でまことに恐れ入りますが、岩動科学技術庁長官は、内閣総理大臣が任命なされておりますところの日本原子力関係に対する計画、審査、審議、またすべての問題について最高の権限を与えられております原子力委員会委員長でもございます。第二十三条には、内閣総理大臣は第二条の決定について原子力委員会から報告を受けたときは、これを十分尊重しなければならないとあります。また第五条では、この所属する委員は衆参両院の同意を得て内閣総理大臣が任命するという重要な委員会でございます。日本原子力問題を総括する立場に立つところの最高責任者である岩動委員長は、一面、中曽根内閣の科学技術を担当する長官でもございます。みずからが諮問をする答申を書き、みずから受けた答申を実行する立場に立つという一面、二面、背面という両面を持つ性格の指導者でございます。  そこでお尋ねしたいのは、原子力委員会報告決定は、私の確認によりますと、一月二十四日、この報告決定を内閣総理大臣に委員長は提出なされておりますが、間違いありませんか。
  111. 中村守孝

    中村(守)政府委員 お答えいたします。  一月二十四日に原子力委員会原子力船の「むつ」の問題につきましての方針を決定いたしております。
  112. 小川新一郎

    小川(新)委員 この原子力委員会の決定というものは一月二十四日、原子力委員会が十一月二十九日に当委員会へ提出された原子力船懇談会報告書をもとに、「今後の我が国の原子力船研究開発のあり方について慎重に審議を重ねた結果、今後の我が国の原子力船研究開発のあり方を次のように定めることとする。」ということでございます。それによりますと、「原子力船むつ開発の意義」については「実験再開が可能な状態にある原子力船むつ」の開発を継続することが必要であると考える。」この内容を一々読まなくても、提出された委員長でございますからよくおわかりでございますが、「結論」として、「原子力船技術のように実用化までに長年月を要する技術開発を行い、これを自らのものとして定着化させるためには、やはり基礎的段階から実船による実験運航等を含め、自主的に、一貫した研究開発を行う必要がある。また、今後の「むつ」の開発については、現下の厳しい財政事情に鑑み、極力経費の節減に努める等効率的な推進に留意」しながらこれを推進すると、あなたは内閣総理大臣に提出をなさっております。  ところが、あなたの施政方針は、二月二十八日、本委員会において科学技術庁長官の立場で、「むつ」のあり方については今後政府・自民党内において検討を行うこととしている旨の所信表明を行いながら、今なお検討委員会の意を待ってということでございます。日本原子力開発計画、そして運航、審議すべてを含めたこの大切な問題を委任されております内閣総理大臣の諮問機関である原子力委員会委員長として、推進すべきであると答申をしておきながら、片面において今度政府・自民党の意見を聞かなければ判断ができない。一月二十四日に出され、二月二十八日、わずか一カ月足らずでそのように考え方が変わるということは、一体中曽根内閣の官僚の一人として発言しているのか、それとも政府・自民党の言うところの圧力に押されているのか、私はまことに不可解に思うものでございます。御答弁をお願いします。
  113. 岩動道行

    岩動国務大臣 まず原子力委員会の決定でございますが、一月二十四日に決まったということは先ほども申し上げました。このことは私どもは大変重く考えております。そしてまた、直ちにこのことは内閣総理大臣にも申し上げたわけでございます。  そこで、予算編成の最終段階におきまして、いわゆる四役折衝というものがございました。その四役折衝に私は出席をいたしまして、そして日本原子力政策、そしてまた原子力船の将来あるいは舶用炉の研究の必要性等々、おおむね三十分にわたって、かつてない私の所信を申し述べました。また、その機会に原子力委員会の決定の重さということも強く主張いたし、党四役を初め関係の閣僚もこのことはよくお聞き取りをいただきました。その結果、四役折衝、党内のことを申し上げて恐縮でございまするが、この検討委員会を党としてやりたいというときに、政府の意見を十分に聞きながらやるというふうに最終的な案が決定をいたしたわけであります。  したがいまして、今日の検討委員会のあり方そのものは、私どもとしても大変、将来に対する重要な影響があると思いますので、特に、異例のことでございまするが事務次官を検討委員会出席をさせて、そして政府の考え方を十分に反映させる。また党の意見も十分に聞いて、そしてそこに立派な結論を出すように、こういうことで異例の検討委員会への事務次官の出席、必ず出席をさせる。そしてまた海外調査につきましても、事務次官が長期にわたって、これまた大事な科学技術行政を進める立場にありますが、特に私は調査にも派遣をいたしたわけでございます。  これは自民党の中のことでございまするので、そのままお聞き取りをいただきたいと思いますが、いずれにいたしましても私どもは、党四役との最後の予算編成段階におきましても、原子力委員会の決定の重さということは強く主張もし、またお聞き取りをいただき、したがいまして、党の検討委員会を設けるに当たりましても、原子力委員会の決定は変わっておりません。これを覆すものでもございません。否定もされておりません。厳然としてこの原子力委員会の決定は存続いたしているわけでございます。したがいまして、今後、党の検討におきましても原子力委員会の決定の重さということは十分に念頭に置いて検討されるものと考えております。  と同時に、国会の御審議の場におきましても、私は絶えず原子力委員会の決定の重さというものを念頭に置いて申し上げておりまするし、また国会の諸先生もそのような御認識のもとに今後とも御審議をちょうだいいただければまことに幸せだ、かように考えているところであります。
  114. 小川新一郎

    小川(新)委員 これほど重い原子力委員会の答申に対して、他党のことを言うことは私どもの本意ではありませんし、また言う必要もないかもしれませんけれども、事は、原子力委員会の決定が覆されるやの状態に今あるわけであります。そのために、調整がつかないために、自民党の科学技術部会、調査会では、アメリカやヨーロッパに委員を派遣して鋭意検討なされていることも私たちは知っておりますし、またそれに対しては敬意も払っております。しかるになぜ四役会議にこの問題をゆだねるかということ。「原子力船考える会」や技術部会のそういった発言で、科学技術部会の意見の方が強くて原子力委員会で答申された問題が今やまさに宙に浮かんとする状態であります。これは私ども国会の場にある者として、ただいま大臣の申しておられましたような重みを考えたときに軽々としているわけにはまいりません。これは与党と野党とを問わず、岩動長官が今置かれている立場、非常に御苦衷の中にあると思いますけれども、お言葉の中に、次官をどうのこうの、そんな問題は必要ないじゃありませんか。あなたこそ最高の権威者であり、日本原子力のすべての責任を負って発言すればいいことであって、次官がどうだのこうだの、そんなことは枝葉の問題であります。その毅然たる姿勢を貫き通さないところに、このような所信表明となってあらわれ、この前の委員会で私に苦言を呈されたわけであります。過ぎたことは言いたくありませんけれども、万々が一、この問題が四役会議検討中、続行とか、もしくは全く逆の答弁が出たときには、岩動長官として、原子力委員会委員長として、どのような御姿勢と態度を貫き通されるのか。その責任問題も絡めて、この問題点で明確に議事録にとどめおき、内閣総理大臣がみずから任。命じ、諮問を聞いている長官、委員長の言葉を尊重しないような総理大臣がもしいるならば、これはすべての問題におけるところの政治不信につながってまいるわけではないでしょうか。この問題について重ねて御見解をお願いいたします。
  115. 岩動道行

    岩動国務大臣 まず私、役所と自民党との関係については、特に次官の話を持ち出したのは、それだけ政府としての従来の考え方に対する決意というものを表明する、こういう重さを先生方にも御理解をいただきたいということで申し上げたわけでございます。これは決して軽いことではない、私の決意がそこに十分に反映しているというふうにお聞き取りをいただければ幸せであります。  なお、原子力委員会の決定が覆るということは、私は現在考えておりません。またそのようなことのないように最善の努力をしていかなければならない、このように決意を持っておりますことを御理解いただきたいと思います。
  116. 小川新一郎

    小川(新)委員 決意は決意として尊重いたしておきます。  仮にこの問題が、白が黒に、黒が白に逆転した場合にはどうなさるのですか。
  117. 岩動道行

    岩動国務大臣 そのようなことのないように努力をいたしてまいります。
  118. 小川新一郎

    小川(新)委員 私がなぜこの問題を追及しているかと申しますと、これだけの権威のある委員会が「むつ」に対してあらゆる角度から存続をしなければならないという意見をまとめられた。それは先ほど私が申したように、国民の税金を六百億も使い、なおかつこれから一千億までないにしても、どれだけの金がかかるか、これから事務当局に明確に出していただきますが、この費用と年月と、二十何年もかかっていまだに解決でき得ないところに、政治問題化しているわけでございます。この問題はきのうきょうの問題でない、それだけの深みと厚みと多くの人の怨念と、そして国家の責任と、こういう問題を踏まえた中での委員会の答申ではないでしょうか。この委員会の答申を自民党の一部の人たちが言うのならば、もっと早く反対を表明している方々の意見も慎重に聞かなければならなかったのではないでしょうか。  しかし、それは過ぎたこととして、万々が一ないようにと努力はするけれども、長官よりも、失礼な言い方かもしれませんけれども、あなたのような純真な、一面我々が尊敬するに値する人たち以上の、悪く言えばしたたかな、よく言えば精通しているといいますか、政治のプロとして、あらゆる判断の中から、今言ったような委員会とは全く逆の問題が出たときにあなたはどうするかということを私は聞いているのです。努力をする、何をする。しているのなら、こんな問題は起きないはずです。委員会の答申を受けた時点において納得しなければならない。それがあえて浮上してきた。しかも、いまだに解決できなくて、最後には自民党の実力者によるところの解決を待つ以外にない。まことに失礼な言い方かもしれませんが、岩動長官がもっとあくどく、もっとどぎつく、もっと図太く、もっと政治家の政治家たる、世に言うところの政治の発動ができ得る方であるならば私もあえてこの問題は申し上げませんが、私たちの接する長官は余りにも清潔であり、人格が高く、識見もあり、常識豊かな長官であります。あなたと太刀打ちができるかということを懸念しながら、その場に立っての決意こそ、もしこの委員会でその決意が述べられているならば、どんなに図太く、どんなにどうあろうとも、私はあなたの誠意というものに耳をかさないわけにもいかないし、この問題をいいかげんにすることはできないであろうと思うのでございますが、あえて申し上げますと、それらの方々がそうであると言っているのではございません。今担当なされている方々もそれなりに立派な見識をお持ちであり、それなりに国を思い、原子力船に対する意見を聞きながら判断をしなければならない自民党を指導なされる四役の方々の御苦衷もよくよく理解しております。そういう立場に立っての駆け引き、先ほど私が申し上げたことがもし不穏当であるならば、それぞれの立場に立った主義と主張を貫き通す男と男の、政治家としての伯仲した議論が展開されるであろうと言いかえます。その場にあって、もしお互いの立場、主張が違ったときに、委員長としてのあなたの御決意がどうあるのか、ここでお尋ねしているわけでございますから、おれはこういうふうに持っていきたいんだ、こういう覚悟なんだ、そんなことを聞いているわけではないのであって、私は、尊敬する委員長が、長官が、また、あなたが尊敬しているあなたの党のそれぞれの先輩の方々、また指導者の方々に説得し得ることを期待しての質問でございますので、どうかひとつ誤解のないよう、また私の質問の中に不穏当な言葉があればこれは訂正しますが、どうかそういう点を踏まえた上で、この科学技術の最先端をいく「むつ」問題に対する当委員会における情熱のあらわれであり、質問者も以後心していただきたいことを念願して、もう一度お尋ねいたします。
  119. 岩動道行

    岩動国務大臣 足らざる岩動に対してありがたい激励のお言葉、心から感謝申し上げます。  原子力船研究開発は、もう既に申し上げるまでもないのでございますが、やはり日本原子力平和利用の大きな柱でありまするし、そしてまた、海運国家、造船国家、貿易国家の日本にとっては必ずや必要のときが来る、当初出発のときには、定量的に今世紀中にも何隻か要るんだ、こういう見通しのもとにスタートしたわけでございますが、残念ながら、世界経済が大きく構造変化をいたしてまいりました。そのために今世紀中にいわゆる商船としての原子力船というものは今、定量的に必要だということをはっきり申し上げる段階ではなくなったことは状況変化で、まことに私どもも見通しについては残念に思っております。  しかし、ここに伏見先生もおいでになっていらっしゃるのでございますが、先般、参議院での審議におきましても、造船の最大の権威であられました山県先生が、船は海の上を走るよりも海の中を走った方がはるかに効率的である、いわゆる潜水船の構想もお持ちになって、むしろそれを念頭に置いて原子力船考えたらどうか。潜水艦ではありません、潜水船であります。そういうようなお話も御提示があったわけでございますが、かねてから私の学友である造船の専門家もそのようなことを言っておりまして、そういうようなことは今世紀中でもあるいは可能ではないだろうか、あるいは砕氷船というようなものも特殊な分野においては必要ではないだろうか、こういうこともこれからの原子力船に対する実用の面でさらに検討しなければならない。  そういう中におきまして私は、これからも原子力委員会の決定というものは十分に国民の御理解、そしてまた国会の御理解はもちろんのこと、自由民主党、各政党の皆様方にも御理解をいただけるものと、そして、これは私のこの行政に対する、政策に対する信念であります。私はいわゆる政治屋ではございません、政治家のつもりであります。そして、信なくんば立たず、こういう信条を持っております。また、行くに径によらず、これも私の信念であります。裏道をごそごそ歩いていく問題ではございません。正々堂々と国民の理解をいただき、国会の御理解をいただき、そして私はこの信念に向かって強く進んでまいりたい、このことを申し上げまして、御理解をいただきたいと思います。
  120. 小川新一郎

    小川(新)委員 ただいまの長官、そして原子力委員会委員長としてのお言葉、私は十分に尊敬をいたしますが、重ねて申し上げます。意見が全く分かれたときはどのような御態度をおとりになられますか。
  121. 岩動道行

    岩動国務大臣 政治家が信念を持って進めたことがもしも実現できないときには、政治家としての出処進退があると思います。
  122. 小川新一郎

    小川(新)委員 私も同じ政治の場にある者として、それ以上過酷な追い打ちはできませんし、今の一言が政府・自民党首脳にどう反映するか私はわかりません。しかし、一面こういう論理もあるということもひとつ聞いていただきたいのであります。  「むつ」に使われた技術は、もはや古くなって、たとえそれが完成して運航されることになったとしても、技術者たちは興奮を感じないであろう。実際、事業団の将来計画では燃料棒を取りかえて新しいフランス製のものにかえたいとしている意見もあります。そうなれば、現燃料を使ってのデータの大部分は役に立たないことになります。そしてそれは陸上発電炉と船舶用の舶用炉との違いにあらわれ、負荷変動やまたその価値において大幅に違いが出るわけでございます。急激な負荷変動に対応して炉の出力を変えるべきではあるが、それは燃料棒そのものの構造を変えてからやるべきで、現「むつ」の燃料棒はもはや時代おくれである、かような厳しい技術者の意見を長官はどのように御判断されるのでしょうか。私たちは、国民から大事な税金をいただき、預かり、運用し、使用していく立場に立つ国会議員の立場に立って、一銭一厘たりともこれはむだにできないわけでございます。この点、事業団にお尋ねをします。  その前に会計検査院から、あなたのところでは何回指摘されておるのか。また会計検査院はどのようなことを事業団に指摘したのか。その問題を踏まえた上で、長官、あなたの今述べられてきた政治家としての信念をるる聞きまして私も感動いたしておりますが、その問題と現実の問題とを混同されては、また科学者の良心を踏みにじり、国民の声なき声を無視するような政治家であってはならないことも御了解いただきたいし、なおかつ会計検査院からは事業団に対しては厳しい指摘もあるやに聞いております。この点について二、三まとめましたので、それぞれ関係の立場から御答弁をお願いいたします。
  123. 吉田日麿

    吉田会計検査院説明員 お答えいたします。  過去におきまして、五十年度及び五十七年度の検査報告で、特に掲記を要する事項、私どもは特記事項というふうに称しておりますけれども、この特記事項で記述してございます。  報告の概要でございますが、両年度とも趣旨はほぼ同趣旨でございまして、三十八事業年度から原子力船むつ」の開発に伴いまして、五十事業年度時点では百七十四億余円、五十七事業年度時点で四百四十九億余円の経費を支出していながら、放射線漏れによりまして遮へい改修工事等が必要となったこと、それから定係港の変更を余儀なくされたことから、いまだに開発の成果を確認するに至っていない状況であります。したがいまして、これに対し、事業効果の発現が著しく遅延していること、そしてこのまま推移しますと今後さらに多額の国庫負担を要すると認められる旨の記述をいたしてございます。
  124. 井上啓次郎

    ○井上参考人 お答え申し上げます。  会計検査院からは、ただいま御説明がありましたように二回の御注意がございました。これは事業団といたしましては謙虚に受けとめ、それに対して努力を重ねてきたところでございます。  今お話がありました五十年度の指摘は、定係港を撤去した、それに対して選定がおくれているじゃないか、これが第一点。第二点は修理港がまだ決まってないじゃないかという二点がございました。これは先生も御承知のように、新しい母港の選定には大変時間がかかりましたのですが、五十七年度の青森県における五者協定で関根浜に新母港をつくるということで合意がなされております。それから修理港につきましては、これは御案内のように佐世保港におきまして修理をいたしました。  それから次の御指摘は、国費を相当使っているのに効果が上がってないじゃないかという御指摘でございます。これは事業団といたしましては、実務機関の役目が果たせてないということで非常に反省をしておるところでございますが、なかなか地元との話し合いの関係もこれあり、おくれていることは残念に思いますが、その点は御事情御理解願いたいと思う次第でございます。事業団といたしましては関根浜に新港を建設し、そこに「むつ」を回航して実験を進めたい、こう考えておるものでございます。
  125. 野澤俊弥

    野澤参考人 お答えいたします。  ただいま先生から、「むつ」の原子炉は古いのではないか、それから燃料は板状燃料が舶用炉に適しているのではないかという二点について御質問がございましたので、お答えいたします。  まず第一点の「むつ」の原子炉が古いのではないかということでございますけれども、御案内のとおりこれまで建造、運航されました原子力船は、軍艦も含めてすべて「むつ」と同じように加圧水型の軽水炉を搭載しておることは御案内のとおりでございます。つまり加圧水型の軽水炉を船舶の推進用とするということは舶用炉技術の基本でございまして、今日でもそれは変わっておりません。その意味で、「むつ」の原子炉は現在でも舶用炉の基本として十分有益なものと考えております。したがいまして、今後実験に「むつ」は十分耐えられるものと考えられますので、「むつ」を運航することによりまして、船体運動によります原子炉系への影響、熱的、機械的あるいは運転制御面での影響等々に関しますデータを総合的に「むつ」を使って取得いたしますことは、我が国の今後の舶用炉の開発に極めて貴重なデータが提供されるものと考えております。なお、二番目の板状燃料についてでございますけれども、これは御承知のとおり板状燃料はフランスで現在開発中のものでございますが、現在まだ研究炉の段階でございまして、実用段階には達しておりません。今後舶用炉の開発を進めるに当たっては、研究開発対象として板状燃料というのもその候補の一つとして研究対象になり得るかとは思いますけれども、現在の棒状燃料におきまして「むつ」を運転することによって、先ほど申しましたような「むつ」運転の意義は十分に果たし得るものと考えております。
  126. 小川新一郎

    小川(新)委員 その「むつ」は、原子力船として経済的になるのは、作動するのは一体いつごろなのか。これから後どれくらい金をかけてこの研究が実り、原子力船むつ」が経済的に私たちの生活に反応して返ってくるのはいつなのか。そういう長期計画そのものの問題すらも地元には全く理解されてないのですよ。それは御案内のとおり、むつの市長さんがいみじくも申しておった。私は、「むつ」の長期計画、経済計画、そういうものの御説明があったのかどうか。ないと言う、あるとも言わず。それは政治的な判断をこの場で政治家として判断なされたと百歩譲って理解をしておりますけれども、あったにしてもないにしても、当委員会での質問に答えられない、これほどお粗末であります。ところがまた一面、私どもがこの原子力の「むつ」の船長たちに会ったとき、彼らは涙を流して、廃船ということは、担当をしておる我々が廃人になることだ、人間としてこれほどつらいことはない、「むつ」に生涯情熱をかけ、あらゆる面罵や迫害の中で、おれたちは「むつ」とともに生きているんだ、「むつ」が廃船になることはおれたちが廃人になることだと、泣きながら訴えておりました。私も人の子でありますから、そのときそのとき心が揺れ動きました。しかし、大所高所に立って、この問題についての計画性、説得力のあるものがないところに、担当する両者に、我々も不安になる。受ける側の地元も不安になる。また、今言ったような担当をしている方々も廃人になるのではないかという悲痛な思いが出てくる。これひとえに当局の責任であり、事業団の責任であると私は思うのでございますが、私の考えは間違っていますか。
  127. 井上啓次郎

    ○井上参考人 先生の御指摘の点はもっともでございまして、私らの反省するところも多いのでございます。  ただいまの御質問の中で、原子力船実用化の時期はいつだろうか、この点につきましては、原子力船研究開発事業団が発足した当時とは大分事情が変わっておりまして、現在では二十一世紀に入ってからだろうと、まあ予測でございます。そういうふうな意味では、これは後退と言うこともできるでしょうが、技術的な面から見ますと、非常に長期にわたって開発をしなければならない原子力船技術でございまして、今直ちに明らかであるということでなくても、日本の将来にとって非常に大事なものであれば、これは歯を食いしばって勉強していかなければいけないと私は考えておるものでございます。  経済性があるかないかという問題につきましては、現在の「むつ」は原子動力実験船でございまして、経済性を見きわめるようなことにはなっておりません。これは当然実験船でございまして、そういうことを積み重ねて経済性を見きわめていくわけでございますので、その点ずれがございますけれども、私は技術の基盤を確立するためには非常な長い努力が必要だということを御理解願いたいと思うのであります。  もう一つは、船員が非常に御苦心をしまして、現在維持管理に万全を期しております。そういう意味では、これは先生御指摘のように涙ぐましきことがありまして、私もときどきお伺いして、いろいろとお話を聞いております。船員が船を動かさずに陸におると同然のことは、私としても非常に心苦しいところでございますが、なるべく早く目的を達するように努力をしたいと考えております。
  128. 小川新一郎

    小川(新)委員 そういういろいろな問題を踏まえて、過日の委員会におけるむつ市長の言葉をお伝えいたします。言いにくいことでございますが、むつの市長は、あなた方に対して、原船事業団の当事者能力が欠けているんだ、この当事者能力が欠けているところに混迷を深めているという一因もあるのだと。これは、岩動長官、重大な問題であります。受け入れ側のむつの市長が深刻になって言ったことは、人と人との信頼の言葉が欠けているということでありました。二十年も二十数年たっても解決し得ないし、実験計画も明確になってない。しかも金もあとどれくらいかかるかも、これまた予測もできないという状態の中での当事者能力の問題について、長官、あなたの先ほどの御決意の中から、どのようにしてこの地元の人たちとの対話の中における信頼性を取り戻し得るのか。私は、きょうは小さな問題を聞く気持ちはございませんから、一々数字を挙げてどうのこうの言いたくありませんが、この問題についてはひとつ明確にお答えいただきたいと思います。
  129. 岩動道行

    岩動国務大臣 原子力船むつ」につきましては、一番大事なのはやはり地元の方々の理解と御協力でございます。不幸にして四十九年の放射線漏れによって一挙に地元との関係が非常に困難な事態に入ったわけでございます。自来十年にわたって母港の問題あるいは実験再開についての問題等が進展をしないで、ようやく五者協定で大湊から関根浜に「むつ」を移して、そして実験、研究、さらに廃船までの計画を行っていく、こういう話し合いを私はこの一月に地元の関係の方々とお話し合いをいたして、原則的な御理解をいただいてまいったわけでございます。そこで、長期計画につきましては、先ほどの一千億という数字の中には、原船事業団としてはこういうこと、こういうことをやって、そして二次炉心もつくって、そして何年たったら廃船に持っていく、こういう一つ計画は持っていたわけであります。しかし問題は、関根浜に移ってそこからスタートを、具体的に本格的な研究試験、実験をやるということでございますので、そこへ各方面からの御意見が出てまいったわけでありますので、今そのものをそのまま出すという段階ではない、また私どももそれを承認しておるわけでもございません。やはり国会の御審議等を踏まえまして、そして国民の最も理解のできる姿で、一千億というお金が必要なのかどうか、もっと節約できるのではないか、節約しなければならぬと私は考えております。具体的に事務当局にもそのことは十分に検討するように申しております。そういうようなことで、まず地元の方の信頼をつなぐ、そのためには五者協定を忠実に実行に移していく、これが基本であろうと私は思っているわけであります。  また、船員の心境についてもお話がございました。私も過日参りまして、船員と事業団の現地の者にもお話をいたしました。そして、いつでも刀は磨いておけ、いつでもこたえられるように心構えをしておくべきだ、こういうことも申して激励もいたし、こたえていくようにしたいと思っております。
  130. 小川新一郎

    小川(新)委員 当事者能力を十分つけていただきたいことを要望しておきますと同時に、もう一つ、科学技術者の声も聞いてあげてください。私は、反対している科学技術者の声が抹殺されてはならないと思うし、科学技術者の多くの人たちの御意見を、反対、賛成の立場から十二分に検討される。  私は、資料ももらいたいし、委員長にお願いしたいのでございますが、本委員会、国民の、この問題の判断材料としての、今後の実験計画、予算計画、さらに継続する場合の実験計画と費用と手続はどうなるのか、また廃船する場合の費用、手続、問題点などはどうなるのか、この問題を当委員会に出していただいて、我々の納得のいく時点の中で、もう少し詰めの細かい議論もしたいと思っております。どうかひとつよろしくお願いします。  時間がございませんが、過日、あの関根浜の土地の取得に関して、防風林の問題と、国土利用計画法に基づくところの土地の使用の価格については、社会党の同僚議員からるる細かい資料を挙げての御質問がございました。一平米当たり、坪単価あたりの取得価格が高いのではないだろうか、これは国土法に抵触しているのではないだろうか、こういう疑問点を、きょうは国土庁からも来ていただいておりますので、あなた方の立場から、この「むつ」の土地利用に関する公共用地取得に要した土地単価について、ひとつ御説明をしていただきたいと思います。地名等々については通告してありますから、この場では申しませんから、あなた方の私に対する御答弁、どうかひとつよろしくお願いします。
  131. 大野潔

    大野委員長 小川委員の前半の委員長に対する御要望につきましては、後ほど理事会で諮らしていただきます。
  132. 武智敏夫

    ○武智説明員 お答えいたします。  国土利用計画法に基づきます届け出と審査につきましては、これは法律上、都道府県知事が行うことになっております。したがいまして、本件関根浜の用地につきましては、青森県知事が行ったものでございます。したがいまして、青森県の知事からの調査結果に基づきまして、御報告させていただきたいと思います。  本件土地に関連いたします届け出は、去年の一月から今日までに六十九件出ております。それぞれの土地代金につきましては、山林原野につきまして平米当たり六百六十円ということになっておるわけでございますけれども、その後、青森県がそれぞれ契約についても事後確認いたしました結果、まさに土地代といたしましては届け出とおり平米当たり六百六十円ということで契約されております。  この価格が高いじゃないかというようなお話もございましたけれども、一応県からの報告によりますと、いわゆる近傍類地の取引価格、これは幾つかございます。それから県が参考のために不動産鑑定士に二件ほど依頼いたしておりますが、その評価結果に見ましても特段問題となるような価格ではないというふうに報告を受けております。  それから、新聞報道等で問題になっております、土地代の裏金ではないかということが言われておるわけでございますが、その一つでございます立木補償でございます。この立木補償は、個人の所有地につきましては通常の立木補償といたしまして八百六十四万円が支出されております。それから共有地に存在いたします防風林につきましては、いわゆる防風なり防雪の機能を持っておるわけでございますけれども、それぞれの機能に応じた補償といたしまして五千四百七十万円が支払われております。それぞれの対象土地は違っておりますので、一部新聞等によりますと二重補償ではないかというようなことが言われておりましたが、そういう事実はないということでございますし、それぞれの補償は公共用地の取得に伴います損失補償基準に基づきまして行われておるという報告を受けております。  それから、もう一つ問題となっております生活環境整備資金でございますが、金額としては三千万円が支払われておるわけでございます。これらにつきましては、地権者の方々、いろいろな要望があったわけでございますが、その中から事業団として、あるいは事業団から委託されまして用地買収に当たりました土地開発公社としまして、合理的と認められるもの、すなわち例えば代替地の選定でございますとかあるいは集会所の整備でございますとか、そういった土地代とは区別できるものにつきまして支払われたということでございまして、現実的にも二百三万円は現在保留いたしておりまして、今後、集会所の整備資金に充てるというふうに聞いております。  それから、これまでに締結された土地売買、約七十人弱あるわけでございますけれども、その人たちの契約よりも後にといいますか、実はこの生活環境整備資金が支払われることになりましたのはことしの三月十六日でございますけれども、先ほど申しましたとおり、国土法に基づきます届け出は去年の一月からことしのこの協定ができます三月十五日までに大半が既に契約されております。そういうような事実もございました。さらには、地権者会に本資金は一括支払われたわけでございますけれども、契約済みの地権者でも地権者会に加入していない者には支払われていないというような事実もわかったわけでございまして、こういうような事実から見まして、土地代の上積みとは認められないという県の結果報告でございます。  国土庁としましても県の報告検討いたしたわけでございますけれども、これはおおむね妥当であるというような結論に至った次第でございます。
  133. 小川新一郎

    小川(新)委員 大変ありがとうございました。御苦労さまでございます。  そこで、最後に一点だけ原子力局長にお尋ねいたしますが、陸奥湾にある原子力船むつ」は今すぐ稼働しても差し支えない状態にあるのですか。それはいろいろと政治的な配慮があって、あそこで試験ができるできないは別にして、今燃料に火をともせばそのままできる状態にあって、責任はとり得る状態にあるのかどうか、これが一点でございます。  二点目は、五十九年六月二十八日までの原子力船むつ」の放射線漏れ補修に関する二年間の瑕疵担保期間、石川島播磨と三菱重工に対する一年間の延長が、メーカー側と四者で合意した保証の二年間の期限が来まして一年延長いたしましたが、「むつ」の実験を継続する場合にはさらに長期にわたると思いますので、瑕疵担保期間の再延長を政府としてメーカーに申し入れることもあり得るのかどうか、この二点を最後にお尋ねいたしまして私の質問を終わらせていただきますが、科学技術庁長官であり原子力委員会委員長として御苦闘していらっしゃる岩動長官に敬意を表しますが、どうかひとつ事業団に当事者能力を与え、責任の所在をうやむやにしないよう、厳重にこの委員会を通じて申し入れておきます。そしてさらに、その検討要綱としての資料はただいま委員長にお願いをいたしました。どうかひとつ賢明なる御判断と実行を心からお願いして、私の質問を終わらせていただきます。
  134. 中村守孝

    中村(守)政府委員 まず第一に、「むつ」はすぐ実験再開といいますか、原子炉に火がともせる状況にあるのか、こういうお話でございますが、「むつ」につきましては、御案内のように佐世保におきまして遮へい改修工事を行い、この遮へい改修に当たっては十分念入りな、新しい計算コード等によって遮へいの確実を期しておりますし、その際新しい知見に基づきまして総点検を行っております。さらに、その後の維持管理につきましても最善を尽くしておりますので、現在の「むつ」につきましては、まさに実験再開し得る状況にあるわけでございます。  ただ、当然のことではございますが、この実験再開に当たりましては段取りがございまして、確実にステップ・バイ・ステップでやっていくということでございまして、冷態停止状態、さらには温態停止状態、そういう状態で各部分部分というものを十分念入りなチェックを行って、そこら辺に支障がないことを確認しながら前へ進んでいくということでございます。最終的に温態停止状態においても各部分に支障なければ、さらにその先の出力上昇試験に入っていくという状況でございます。  それから瑕疵担保の問題につきましては、メーカー側の協力によりまして一年の延長をいたしたわけでございますが、さらにこの期限内に「むつ」の取り扱いも確定し、その後の計画というものも明確になってまいることでございますので、そういった状況を踏まえて、その後の措置について改めてメーカーと協議をさせたい、こういうぐあいに考えておる次第でございます。
  135. 小川新一郎

    小川(新)委員 終わらしていただきます。
  136. 大野潔

    大野委員長 吉田之久君。
  137. 吉田之久

    吉田委員 先ほど来、公明党の小川新一郎委員から長官に対して、特に原子力船むつ」の開発促進についてのあるべき姿勢について厳しくただされました。私も大変傾聴させていただいた次第でございます。多少同じことを申し上げることになるかもしれませんけれども、御了承いただきたいと思います。  あなたは五十八年の十二月二十七日に科学技術庁長官に就任されました。私たちはそのことを知って、久々に本当に科学技術庁長官らしい長官が誕生したということで大変力強く思った次第であります。あなたは特に原子力開発原子力発電の問題等につきましても大変研さんを積まれておりまして、また権威ある御意見を各界に発表されてきた方であります。したがって、そういう意味では国民から極めて期待された長官であったと思うのです。にもかかわらず、大変皮肉なことに、あなたが長官に就任されて一カ月もたたないうちに、自民党の科学技術部会の決定は原子力船むつ」を廃船にしようという事態に立ち至ったわけであります。私たち、かねて一部自民党内にそういう御意見のあることも仄聞はいたしておりましたけれども、委員会の決定として出されたことは、我々もいわば青天のへきれきのような感じを覚えた次第でございます。しかもその日、先ほどもお話がありましたけれども、長官が委員長をなさっております原子力委員会におきましては、一つの決定を行われたわけであります。それは、いろいろと内容は多岐にわたっておりますけれども、長期的に見て我が国の将来のために原子力船に関する技術を保有しておくことは重要である、したがって今後、財政事情等を考慮しつつ、原子力船研究開発段階的に着実に進め、今世紀中をめどに実用化に適切に対応し得る技術、知見、経験等の蓄積を図っておくべきだと考える、こういう基本的な姿勢というものを確立されたわけなのでございます。ところがその後、先ほどもお話がありましたとおり、予算の重要な決定段階において自民党の四役折衝が持たれました。この四役折衝の第一条項としては、「原子力船むつ」による舶用炉研究のあり方については、政調会の中に検討委員会を設け、政府の意見を聞きつつ中止を含め昭和五十九年八月三十日を目途に検討することとする。」こういう折衝の結果の結論であります。今、長官は、十分に私の立場、主張を申し上げ、かつそれに応じて政府の意見を聞きつつということが自民党の四役折衝の結果に盛られたと半ば自画自賛なさっておりますけれども、「政府の意見を聞きつつ中止を含め」と、すぐに「中止を含め」という文言があらわれておるわけであります。これは双方の顔を立てたにすぎない表現でありまして、政府の意見に対して本当に耳を傾けた反応とは私どもは読み取れないわけなのでございます。あなたは長官に就任されて、しかも就任するや否や痛烈な反撃を受けたとお感じになりませんか。そのことに対してふんまんやる方ないお気持ちをお感じになりませんか。
  138. 岩動道行

    岩動国務大臣 長官に就任早々重大な局面に直面をいたしまして、私も最善の努力をして、そして日本原子力行政、政策のあり方について私なりに、非力ではございまするが全力を尽くして対応してまいったつもりでございます。しかし、民主政治でございまするから、いろいろな御意見が出てくることは当然であろうと思います。そういう御意見を含めながら、私は私の信念でこれに対応してまいりたいということで、かたい決意を持って今日まで進んできておりまするし、これからもそのような信念に基づいて対応してまいりたいと思っております。
  139. 吉田之久

    吉田委員 長官の信念については先ほどの小川委員に対する御答弁の中でも確かに受け取りました。しかし、それほどのかたい信念に燃えていらっしゃるならば、それから今日まで約半年間、この「むつ」のあり方をめぐって長官はもっと毅然たる態度を随所に示し得る余地はあった、また示すべきであったと思うわけでございます。本委員会におけるいろいろな答弁等を聞きましても、まあ自民党の一員でいらっしゃるお立場もわかるにはわかりますけれども、大変八月三十日待ちの姿勢で、いわば周囲の情勢を静かに見守っていらっしゃるというような感じを受けることを否めないような気がするわけなのでございます。  それで、こういう重要なプロジェクトがいろいろとつまずいておりますことは事実でありますけれども、ここに来て自民党の中から強力な廃船論が噴き出し、しかも四役折衝でも政府の意見を聞きながらも中止を含めという表現にとどまっております。そういう中で、やはり関係者も国民も、「むつ」の将来というのは全く霧の中、視界ゼロ、お先真っ暗だ、そういえばやはりだめなんだろうかなと、不安の念を確かに感じる状況にあると思うのです。状況が厳しくなればなるほど、人々はその指揮官を見詰めます。そのとき、わが党の神田君が三月五日の決算委員会で、あるいは木下君が二月二十五日の予算委員会質問をいたしておりまして、その答弁の中で中曽根総理は、かなり既定方針どおり前向きの態度を明らかにしていらっしゃると私どもは思います。だとするならば、やはりこの機会に、しょせんは人によって決定していく「むつ」の存廃論でございますから、「むつ」に政治生命をかけるという立場で長官はさらに胸を張って、「むつ」の将来や日本の科学技術振興の将来について夢を語り、また着実にバイステップで前進していく、そういう気概というものを言動にも示していただかなければならないと思うのですが、その点ややためらいながら半年間を送ってこられたように我々は感ぜざるを得ません。その点長官並びに事業団の責任者としての御答弁をお願いいたします。
  140. 岩動道行

    岩動国務大臣 科学技術の政策、行政というものは米価闘争みたいにただ騒いで――騒いでと言うと大変語弊がありますが、とにかくそういう性質とはかなり違うものでありまして、やはり科学的に技術的に十分な検討をして、再評価をして、そして着実に進めていく、こういう基本的な姿勢が大事ではないだろうかと思います。そういう意味で、私が大声を上げて絶叫することも一つ方法かもしれませんが、国会でのこのような着実な、緻密な御審議、こういうことがやはり重要なプロジェクトとしての科学技術を推進する大きな姿勢ではないだろうか。したがって、私が物足りないというお感じをお持ちかもしれませんが、内心には強い信念と情熱を持って、日本原子力の平和利用について着実に力強く進んでまいりたい、私はかように考えておるわけであります。  そこで、この委員会でも御審議、御可決をいただき、ただいま参議院で最終段階になっております日本原子力研究所に原船事業団を統合する、これがやがて可決成立を見ました暁には、今後はそのようなすぐれた評価を得ている機関と事業団とが一体となって、さらに私どもは客観的に科学技術的な緻密さと着実さを持って今後の計画の樹立もし、進めでまいるということができると思います。どうか御信頼をちょうだいいたしたいと思います。
  141. 井上啓次郎

    ○井上参考人 原子力船開発というのは、国のプロジェクトとしまして当事業団が担当しているわけでございまして、これは不幸にも四十九年の放射線漏れということで一時とんざはいたしましたが、その後、日本技術を結集しまして、遮へい。改修及び安全性総点検ということをやりまして、安全性につきましては自信が持てるような段階になっております。しかし、未開の技術開発でございますから、安心して大丈夫だと言うことも技術者としては過言でございますので、私といたしましては慎重の上にも慎重を期しながら、国民の御期待にこたえるように進んでいきたいと思っておる次第であります。
  142. 吉田之久

    吉田委員 専科学の世界に属することでございますから、私どもも蛮勇を振るえと言っているわけではございません。しかし、緻密に冷静に、しかしそこににじみ出る迫力と気概と自信とが感じられないと、国民はだんだんと、そんな難しい、めどのない、経費だけ食うということであるならば、この際やめたって仕方ないじゃないかというような感じが出てこないとは限りませんので、さらに重要な立場にいらっしゃるお二人に、そういう意味で、ひとつ胸を張ってこの問題に取り組んでいただきたいということを初めに申し上げておきます。  次に、原子力委員会の決定にも、あるいは事業団のいろいろPRなさっております刷り物などにも絶えず出てまいります一つの問題として、「新定係港については、」「地元の物流の推移等を踏まえ、可能な限り多目的に利用することを検討することが望ましい。」こう書いてあります。それから、五者協定の当事者たる国が、みずから協定を履行しないことになれば、それは地元に対しても重大な不信を招くことになる、こういうことが明言されておるわけなのでございます。  そこで、御質問一つは、言うならば傷だらけの「むつ」ですね。一つのつまづきがいろいろと尾を引き、それが増幅し、世論はますます硬化し、十年の歳月をいたずらに費やして今日に至っておる。しかも、関根浜の地元の方々にとっては、もともと横浜で話が持ち上がり、それから大湊に持ってこられ、そして放射線漏れを起こして佐世保まで曳航され、そして大湊に戻ってきたものをまたはじき飛ばされて関根浜で受ける。関根浜の方々も、日本の科学技術進展のためには協力したいという気持ちは大いに持ってくださっていると思いますけれども、なぜそんな厄介なものをおれたちが最終的に引き受けなければならないのか、理解はできるとしても、それならそれなりによほどの配慮あるいは地元に対する将来にわたってのメリット、展望、そういうものが付加されて当然ではないかと主張なさる気持ちは、私は察するに十分であります。  そこで、そういうことも考えて、関根浜の港というものを原子力船の専用港にひとりとどめるだけではなしに、原子力第一船、第二船にわたって長くそれは定係港としての役割を果たしてもらいたいとは思いますけれども、さらに多角的に、長期にわたって、多目的に利用されるべき港であってほしいというのは、むつ市民、まして関根浜の漁民ないし周辺の人たちの渇望なさっていることではないかと私は推測するわけなんです。そういうことを察して、いろいろと政治的な配慮も行いながら、こういうことをまた望むべきことだと考えて、長官の場合も理事長の場合もそれを表明なさっていると思います。私のそういう認識でよろしいでしょうか。だとするならば、そういうことをもこの際大胆にといいますか、率直に物を申されることの方が、地元に対して有形無形にいろいろと説得を強くすることになりはしないかと私は考えるわけなんですが、いかがですか。
  143. 井上啓次郎

    ○井上参考人 私が申すまでもなく、原子力船がある以上は母港がなければこれは十分機能しないわけでございまして、現在は大湊港に「むつ」はいわゆる仮泊をしている、仮の停泊をしているという状態でございますが、五者協定によりまして、関根浜に新港をつくるということで、それができ上がるような事態になったら、大湊から回航して、そこで十分実験、研究をしてもらうという約束になっておるわけでございます。したがいまして、今お話しのように、地元との共存共栄といいましょうか、御理解、御協力を得なければなりませんので、十分析衝をしながら御理解を得たいと今までもやってきましたし、これからも先生のおっしゃるような意味で十分地元との話し合いを重ねたいと思っております。
  144. 吉田之久

    吉田委員 いま一つ質問といたしましては、五者協定というもの、それは表現された言葉は十分承っておりますけれども、その奥に秘められているお互いの合意というものは、「むつ」を存続させる、そして実験段階のことごとくを終わる、そういう意味で関根浜で新定係港をつくる、それが約束されるならば大湊にしばらく係留することには文句はない、こういうことだと思うのです。  ところが、ここに来て「むつ」の廃船論が出てまいりました。八月三十日にはそれが決まるのでございましょうけれども、もしもの場合、万に一つ直ちに廃船ということに決まれば、大湊の人たちは、むつの市民たちは、もう問答無用、約束違反だ、原子力船むつ」はどこかへ出ていってくれ、こう言うと言っていました。この間、副知事さんや市長さんに承りましたら、言わざるを得ない、国が約束を守れないようなこと、五者協定を一夜にして踏みにじるようなことがあって、そしてこのまましばらくは大湊に停泊させなさい、関根浜に港ができれば移っていきなさい、そんなものは我々はもらえない、こういうお気持ちのように我々は受け取りました。だとするならば、「むつ」の廃船というものは、この五者協定が厳然として存在する限り、これは考えられ得ないことじゃないですか、長官。
  145. 中村守孝

    中村(守)政府委員 五者協定につきましては、締結する段階におきまして、「むつ」による舶用炉の研究開発を進める、そのために「むつ」の新たな定係港を探すということで大湊の再母港化をお願いし、大湊は再母港化できないけれども関根浜に新しい港をつくるということで御理解いただき、五者協定が締結されたわけでございますので、その五者協定を締結されるときに廃船などということを予想していなかったということは確かでございます。  ただ、五者協定の基本というのは、関根浜に新たに港を建設する、それまでの間大湊港に暫定停泊させるんだ、こういうことでございました。これは先日の参考人の陳述の中でも申されたと思うわけでございます。そういうことで、ことしの初めに予算編成の段階で「むつ」についての問題が揺らいだときに、青森県知事は五者協定の前提条件が何かこう揺らいだな、こういうことは確かに申されたわけでございますが、五者協定の本質はやはり関根浜に港をつくってそこに大湊港から仮泊している「むつ」を移してもらうことだ、「むつ」の存廃問題というのは県なり地元なりが意見を申すことではなくて国策として検討することである、地元としては五者協定で決められた関根浜にきちっとした新しい港をつくってそこへ「むつ」を移してくれることだ、こういうことを言われたわけでございます。先日の参考人の陳述におきましても確かに地元の方とすれば「むつ」を存続して研究開発させることを希望する、こういうように陳述されたかと存じております。
  146. 吉田之久

    吉田委員 それは後からつけた理屈ですよね。五者協定をなさったときには皆さん方は廃船の結論が出るかもしれないというようなことは夢想だにされなかったと思うのです。だから地元も県も市も国家のために受け入れるべきは受け入れよう、こういう基本的な姿勢から合意が成り立っていると思うのです。後から廃船論が出てきて、あるいは廃船になるかもしれないという可能性が出てきた。それでも協定は協定だ、港はつくります、そんなものは詭弁だと思いますよ。大湊だって、そんなもうぶっつぶさなければならないようなものをこれ以上預かることはできません。これは当然常識論としても、感情論としても出てくると思うのです。ですから五者協定ができた段階で、もう原子力船むつ」というものは進められなければならない。これは裏腹のものになっていると思うのですね。私は、そういう意味で原子力船むつ」というのを進行形で地元は受け入れているのであって、現在完了ではないはずだ。だとすれば二人の責任者は、今日こういう与党内で論議が出るのはいいとしても、そのような決定に持ち込ませないための懸命な努力をなぜなさらなかったのか。これは混乱がさらに増幅していくことにしかならないと思うのですが、そうはお考えになりませんか。
  147. 岩動道行

    岩動国務大臣 一月六日に私、就任早々でございましたが、青森に出向きまして五者協定の関係の方々とお話をして、そして五者協定を忠実に守っていきます、関根浜の港については早急に着工をいたしましょう、そうして関根浜の港ができたならば大湊から移して試験研究、実験を完結して廃船までいたしましょう、こういう基本的なお話を申し上げて地元の関係者の御了解をいただいたわけです。また「むつ」をそのまま置いておくということに対しても、国民に対しては大変申しわけないわけでございまするから、大湊に仮の停泊中でも、関根浜が着工をいたしましたならばいろいろな所要の研究については御相談を申し上げたい、協議をしたいということを申し上げて、協議があればそれに応ずることはやぶさかでない、こういうお話もいたして帰ったわけでございます。  その後、各方面からにわかにいろいろな御意見が出たわけでございまして、したがって、私どもも従来の「むつ」に対する批判あるいは経費のあり方等々を考えました場合には、この大型のプロジェクトについてはもう一遍ここで検討することが必要ではないだろうかという御意見も貴重でございました。その結果、今日いろいろな方面からの御意見を承って来年度の予算編成には誰とした対応をしたい、こういうことで進んでまいったわけでございますので、国会の御審議その他の御意見を十分に拝聴して適切な対応をいたしたい。  「むつ」を厄介者にした、またなったということについては私ども反省しなければなりませんし、また「むつ」が厄介者であるということは、そうでないんだということを国民に示すためにも、また日本原子力行政、原子力政策という立場からも、これを前向きに活用して二十一世紀へ備えた知見を得るということが「むつ」を厄介者でないものにする正しい行き方ではないかという信念を持って、これからもそのように対応してまいりたいと私は思っております。
  148. 吉田之久

    吉田委員 運輸省港湾局からお越しいただいていると思いますので、ちょっと港の問題について質問をさしていただきます。  まず初めに、関根浜港は港湾管理者はだれか、それから定係港という言葉と母港という言葉は概念としては一緒なのか違うのか、それから核燃料の交換、炉の修理など附帯陸上施設が完備していることが母港としての必要条件なのかどうか。多少運輸省として答えにくい点があれば、その点は科学技術庁からお答えいただいて結構です。
  149. 小池公隆

    ○小池説明員 お答えいたします。  関根浜港につきましては港湾管理者が設置されていない港湾、こういうことになっておりまして、港湾法五十六条に基づきまして青森県知事が水域を定めまして公告した港湾、こういうことになります。
  150. 中村守孝

    中村(守)政府委員 定係港と母港との言葉遣いかどうか、こういうお話でございますが、その両者の間に隔たりがあるわけじゃございませんで、原子力船を主として停泊させているところを定係港、寄港地だとか寄港するために寄った港という意味ではなくて、その船が主として停泊しているところということでございまして、いろいろな燃料の取りかえとか、そういうようなことを行うところがいわば母港でもあり定係港であるということでございます。そういう意味で、附帯する施設について何もかもすべてそこになければいけないということでは必ずしもないと思いますが、常時、主として定係、そこに「むつ」が停泊している際に必要な施設はそこに存在するということが当然の前提であろうかと思います。
  151. 吉田之久

    吉田委員 例えば直ちに廃船という結論が出た場合に、新関根浜港に係留されるこの「むつ」、それを抱える港は母港と言えるのですか。
  152. 中村守孝

    中村(守)政府委員 言葉の呼び方の問題でございますので、いろいろな見方があろうかと思いますが、我々はあくまでも大湊から関根浜港へ原子力船を回航する、原子力船むつ」を関根浜に回航してそこに停泊させた後、その後の取り扱いがどうあるべきかということが問題になっているわけでございますので、そういう意味で、一義的にはまず「むつ」を停泊させるという意味において考えれば、新しい大湊にかわる母港という見方もできるのではないかと考えます。
  153. 吉田之久

    吉田委員 運輸省に重ねてお聞きしますが、このできるべき港はなぜ港湾法の適用対象とならないのか。また、港をつくるに当たって港湾審議会の意見を聞く必要は全くないとお考えになりますか。
  154. 小池公隆

    ○小池説明員 この関根浜港につきましては、原子力船の「むつ」の専用港として建設されたものでありまして、一般公共の用に供することを目的としたものでないと理解しております。そういうことでございまして、少なくとも現段階におきましては、同港について港湾法上に基づく港湾管理者を設立するようなことにはならない、こう考えております。また、港湾審議会につきましてはお諮りするようなことにはなっておりません。
  155. 吉田之久

    吉田委員 長官に聞いていただきたいのですけれども、確かに今おっしゃるとおり、一つの専用港にすぎない出発点であることは私どもも認めるにやぶさかでございません。しかし、とは申せ、国のあるべき科学技術の将来を占う重要な原子力船むつ」、それをとどめる、預かる港、そういう意味ではかなり、しかも外洋に面している、オープンロードと言うそうですけれども、非常に波浪の激しいことも想定される。だとするならば、慎重の上にも慎重を期した計画設計がなされなければならない。ただ私的な専用的なもので、運輸省としても直接はかかわり知らないというようなことでいいのかどうか。  それからいま一つは、先ほど申しましたように、ともあれ現段階では専用港であることは認めますけれども、しかし、あるべき姿としては、やはり将来多目的な港にし、一般の使用にもだえ得る港にすることが望ましいとお二人がおっしゃっておるのですから、だとするならば、どこかの早い段階に港湾法の適用を受ける港にすべきではないか。少なくとも初期の段階から重要港湾に準ずるそういう港として国も最大の配意をしなければならないんではないかと思うのですが、いかがですか。
  156. 岩動道行

    岩動国務大臣 関根浜はいろいろな経緯から「むつ」のために専用港としてつくる、こういうことになったわけでございまして、これはその決定がなされ、また五者協定でもそういう性格でスタートいたしております。したがって、この港湾経費というものは全額事業団が負担をする、こういうことでございます。将来ともそのような専用港でありますが、他用途に使うかどうか、これは青森県の下北のいろいろな開発計画にも関連してまいりますし、そしてまた、北海道と大変近いわけでございまするから、あるいは室蘭あたりとの物資の関係も出てくるかもしれません。そのようなことは青森県が中心となってお考えになることであろうと思いますが、しかし、せっかくつくった港でありまするから、余裕のある限りはその他の船舶にも活用していくということは、先ほど来申しておるように望ましいことでございます。初めからそのような目的でまいりますと、一般の港湾事業は地元の負担が出てまいります。これはとても地元としては「むつ」を引き受けて、しかも負担までしなければならないのかということにもなってきて、恐らく関根浜に港をつくるということは不可能であったかもしれません。そういうことを考えてみますと、まず「むつ」の専用港として関根浜をつくり、余裕があるならば、せっかく国費を投入した港でありまするから、その他の目的にもこれを活用していくということは、当然地元でもお考えになることであろうと思いまするし、私どももそのような方向が検討されることは大変望ましいと考えております。
  157. 吉田之久

    吉田委員 地元に多少の負担もかけることは、この場合許されませんので、それはおっしゃるとおりですが、だから、そういう意味で、専用港として開設することは当然ではありますけれども、しかし、地元の受け入れてくれようとする気持ちにこたえる意味でも、また広くその周辺地域の将来の展望のためにも、これは一時期の専用港で終わらせるのではなくして、長い将来にわたって一般重要港としての使命を持つものだ。だとするならば、それに見合う中身のものを十分慎重に検討してつくっておかないといけないのではないかということが一つ。  同時に、だとするならば、ここで廃船論があってはいけない。廃船論というのは、いわば船の墓場をつくるだけの港ですからね。それならそれだけで、一時の、もうノックダウンしたらそれでおしまいでしょう。これは関根浜にしても、むつ市にしてもたまらないことだと思うのです。だから、まず一方においては廃船論を打ち消しながら、しかも将来に向かって専用港から多目的港につないでいく、そのための配慮と決意が必要じゃないかと言っているのですが、いかがですか。
  158. 岩動道行

    岩動国務大臣 仮定の問題でございまするから、廃船ということを前提にして私は申し上げるわけにまいりませんけれども、そのような事態になればまた新しい「むつ」に対するむだ遣いというような批判が出てこないとも限らない、そのことを私は恐れます。
  159. 吉田之久

    吉田委員 だから、私と同じ意見で、廃船にならないように道を求めていくしか地元のためにもこたえる道は残されないということ、そういうことですね。  次に、運輸省にお聞きいたしますが、現時点においての「むつ」は船なのかどうかということなんです。あの船に既に乗っております三十数名の海員組合に属する乗組員の方々、これはやはりいろいろと不安も焦燥も感じておられる毎日でございます。しかも、いろいろないきさつを持っている船でございまして、この船が船舶法としては国籍証書を取得している船であるけれども、船舶安全法の最終的な合格をまだ受けていない段階では、それはそういう安全法に属する船とは言えないということを聞いております。その辺、運輸省としてもっと、この段階で船として認知できないのかどうか。
  160. 大野潔

    大野委員長 吉田委員に申し上げますが、出席御要求がなかったので、それに答えられる方が――今見えましたので、恐れ入りますが、吉田委員もう一度。
  161. 吉田之久

    吉田委員 今お見えになったようですから、「むつ」の問題なんですけれども、これが率直に言いまして船なのか物なのかということなんです。既に乗り組んでおります海員組合に所属する組合員の方々にとりましてもそれは一つの不安要素でありまして、したがって我々は、船舶法の適用を受けている船ではありますけれども船舶安全法の適用も受ける船にしてはいけないのかどうかということを聞いているわけです。
  162. 片岡栄夫

    ○片岡説明員 お答えいたします。  先生御承知のように、「むつ」は国籍証書は既に受領いたしておりまして、現在安全法に基づきます検査を継続中でございます。ですから、船としては一応できておりますが、航行し得るという状態にはないということでございます。
  163. 吉田之久

    吉田委員 漂流物みたいな感じがするわけなんですけれども、やはり長官、この辺のところも、それは役所の考え方から言えばいろいろ問題はあるかもしれませんけれども、ただそういう政治的ないきさつで動いてないだけの船でありまして、したがってやはり船に乗る人たちの立場から申しますならば、何らかの早急な検討が行われていいのではないか。これは意見として申し上げておきます。  次に、若干、舶用炉の陸上開発等の意見も出ておりますので、その点についてお伺いをいたしたいと思います。  「むつ」を廃船にして陸上で開発研究してもいいではないかという継続論、陸上での継続論もあるわけでございますけれども、陸上実験では海上特有の振動、動揺、三次元的挙動、ピッチング、ローリングですね、それから急激な負荷変動、発進、加速、減速、停止等々の総合的なデータの把握ができないと我々は考えます。この点について、陸上での開発研究継続論に対し、理事長はどうお考えになりますか。
  164. 井上啓次郎

    ○井上参考人 現在の「むつ」の状態からいいますと、その原子炉を陸に上げまして実験するということは、技術的にも意味はございませんし、また実際的でもないと思います。なお、この実験につきましては、非常に慎重の上にも慎重を期してやるという体制でございまして、急がずにゆっくりと、しかもその技術的基盤が確立するような方法で積み上げたいと思っておりますので、今先生御指摘のような意味の陸上の実験は、現在の「むつ」の原子炉については考えておりません。
  165. 吉田之久

    吉田委員 よくわかりました。  また一説には、外国技術の導入によって事足りるのではないかという意見もあるようでありますけれども、しかし原子力技術は各国の高度な機密技術だと思います。それから、それはそのまま軍事技術と直結いたしますので、仮に輸出したとしても重要な部分は非公開のままである、ブラックボックスの中に入っているような状態だ、こういうふうに我々は思うわけなんです。我が国は世界第一の造船国であり、また海運先進国でありますので、舶用原子炉の自主開発は当然だと考えております。この種の開発を一たん中断したら、今度はもうそれをもう一度始めるということは容易じゃない。今までの倍も三倍もの努力や経費や合意に要する時間が必要だというふうに思います。  それから、かなり時間がたちましたので、既に舶用炉としての「むつ」の原子炉は古いのではないかという説もあるにはありますけれども、我々は加圧水型の軽水炉としてのオリジナルは今も不変であるし、これからも変わらないと思いますが、事業団はそうお考えですか。
  166. 井上啓次郎

    ○井上参考人 技術的な意味では先生の御指摘のとおりでございまして、いかに難しくても国内技術原子力船技術を確立するということが最も大切なところであります。もちろん、外国との交流によりまして技術情報は入手できるといたしましても、機密に属することは全然当てにはできません。これは先生も御指摘のように軍事機密に属することもございますので、そういうものを当てにして日本原子力船技術を育てるわけにはまいらないと私は思います。したがいまして、どんなに苦しくても国内でみんなが力を合わせて開発を進めるということが最も望ましいところであります。  なお、現在の原子力船はこれから原子力船としての開発を進めるわけでございますが、当事業団といたしましては、将来に向かって経済性のあるしかも信頼性の高い小型の舶用炉を開発することになっておりまして、現在の段階ではその設計評価段階で進めております。これは最初は陸上で実験をいたしまして、将来に向かっての経済性の見込みとかあるいは安全性とかそういうことを見きわめたいというので、現在の事業団の任務としては二本立てということでございます。
  167. 吉田之久

    吉田委員 時間が参りましたので、最後に一点だけ御質問をいたします。  ことしの二月二日に、全日本海員組合組合長土井一清氏の名前で、内閣総理大臣と科学技術庁長官に、原子力船むつ」の問題について自分たちの所信を述べ、また政府に対していろいろ要望をしているところであります。  これを受けて二月二十日に、科学技術庁原子力局長から土井組合長に対しまして「原子力船むつ」問題について」という一つの回答が来ております。その主な点は「「むつ」による舶用炉の研究開発につきましては、今後の舶用炉の研究開発の重要な柱として進めてきたものでありますが、政府自民党において本年八月末を目途に検討を行うこととしており、当庁といたしましては、各方面のお考えを十分に承りつつ、適切に対処して参りたいと考えております。」というようなこと、さらにその他のことが回答をされているわけなんでございます。  このときに、特に乗組員として苦労してくれている海員組合に対しては、六月の中ごろに海員組合とそして科学技術庁との間で意見を述べ合うことの機会をつくりたいと思うという回答が口頭でなされておりますが、今日、七月になっても何らそれらしき反応はない。やはり大変がっくりいたしております。科学技術庁というのはそういうところなんだろうか。あるいは事業団にしたって、やはり周囲の情勢でおろおろしてしまって、本当に冷静な意見の交換をしようとする姿勢まで放棄されたのではないだろうか。いろいろとそういう現場で本当に原子力船むつ」の開発研究のために身を挺して頑張っている人たちに対して心ない仕打ちではないかと言わざるを得ないと思うのです。この辺につきまして特に局長と長官から御意見、御答弁を賜りまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
  168. 中村守孝

    中村(守)政府委員 「むつ」の今後の問題につきまして各方面から御意見をいただくということで、海員組合の皆様方には従来「むつ」の開発につきましていろいろ御協力をいただいております。御意見も文書でちょうだいをいたしておるわけでございますが、今日までまだその機会をつくることができませんで非常に遺憾に思っておりますが、早急にできるだけ早い機会にいろいろと意見の交換を行いたいと思っておりますので、よろしく御了承いただきたいと思います。
  169. 井上啓次郎

    ○井上参考人 海員組合との関係につきましては私といたしましても特に気を配っているところでございまして、手紙を出す前後だと記憶いたしておりますが組合長及び役員に私はお会いいたしまして、いろいろとこちらの事情も申し上げ、しかもこれからの計画というものはこうでございますということを申し上げております。特に事業団の中に海移管理室というのがございまして、変化といいましょうか状況に応じて逐次事務的には御連絡申し上げておるところでございます。
  170. 岩動道行

    岩動国務大臣 私もまだ海員組合の方とはお目にかかっておりませんけれども、そのうちにおいでになりたいという御意向もありますので、その際にはお目にかかりたいと思っております。また、先般現地に参りまして「むつ」の乗組員、船員に対しましては、私は十分に激励をしてまいりました。
  171. 吉田之久

    吉田委員 ありがとうございました。
  172. 大野潔

    大野委員長 工藤晃君。
  173. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 私は、原子力船むつ」の問題で幾つかの点を伺いたいと思います。  最初は、原子力船懇談会の報告書というのがちょうど五十八年十一月に出まして、原子力船むつ」を実験航海までやらなければならないと推進されている方は、これをよりどころにされていると思いますけれども、科学技術庁としては、まずこの報告書そのものを今どのように評価されているか、この点を伺いたいと思います。
  174. 中村守孝

    中村(守)政府委員 原子力船懇談会につきましては、原子力船むつ」につきまして昨年いろいろな問題も出てまいりましたので、改めてこの際「むつ」の問題について原子力委員会としての検討もしておくべきということで始まったものでございまして、各界のオーソリティーにおいでいただきまして御意見を取りまとめたものでございます。この懇談会の報告書をベースといたしまして、原子力委員会としても原子力委員会の決定を行ったわけでございます。
  175. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 これがベースになって原子力委員会の決定が行われたということでありますが、私も常々読んで幾つか感じている点もありますので、もう少しただしておきたい点があります。  この中で、五ページに書いてあることですが、要するに「佐世保港で遮蔽改修を終え、更にその際、最新の知見に基づき原子炉部分の安全性総点検・補修工事も終了しており、」等々書いた後で、「試験を再開し、支障なく実験を遂行し得るものと判断される。」というくだりなんです。この判断はかなり抽象的な言葉で書いてありますが、その判断の仕方ではまたいろいろな問題が出てこないかということを考えたわけです。私は原子炉の専門家でも何でもありませんけれども、あの原子炉が三菱原子力工業の大宮研究所で臨界実験をやったのがたしか四十六年九月ということでありますね。それから五者協定に付随して、これは五者ではないわけですが四者の間で関根浜港をどうするかというときに、おおむね六十一年九月を目途に新定係港が供用を開始できるようにと書いてありますね。そうすると、最初研究所での臨界、その後臨海の実験があったわけでありますが、それから十五年間ほとんど使わない状態にあったわけなんです。私は別に炉の専門家でも何でもないからよくわからないわけでありますが、そういうふうに十五年間ぐらいほとんど使わないで、それで使ってみて余り問題なかったということは、今まで世界でもあったのかどうか、伺いたいと思います。
  176. 井上啓次郎

    ○井上参考人 原子力商船につきまして、「むつ」のように長い間停泊しているという事実は、西ドイツのオット・ハーン、アメリカのサバンナ号については聞いておりません。
  177. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 この問題はこれ以上やりませんけれども、特に科学技術庁に伺いたいのです。いろいろな試験炉の安全点検をやるときには、制御棒をどうするとか燃料をどうするとか、何かこれだけはやらなきゃいけないということがあるのかないのか、その点伺いたいと思います。
  178. 辻栄一

    ○辻政府委員 具体的な諸般の手入れ等につきましては保安規定というものがございまして、これに詳しく記述されているところでございます。
  179. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 いや、そのときせめて制御棒はこうしなさいとか、燃料はこうするとか、そういうことはあるのでしょう。簡単で結構でございます。
  180. 辻栄一

    ○辻政府委員 諸般の問題について書いてございます。
  181. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 諸般の問題ということでありますが、そういうことは当然あるわけなんです。ともかく「むつ」の場合は核封印ということでの安全点検で、普通の試験炉の安全点検なら当然やるべきことをやってない。そのことはお認めになりますね。
  182. 中村守孝

    中村(守)政府委員 お答えいたします。  今先生御指摘のように、「むつ」の原子炉についてはまだ完成したものとなっておりません。そういう意味で定期的な点検とかそういうことが義務づけられるという段階になっておらないわけでございますが、先生御心配の点は、要するに十分な点検をしてないものを運転して安全だと言えるのか、こういうお話ではないかと思います。この点につきましては、原子力委員会原子力船懇談会の報告書にもございますように、今後そういった点についてのチェックを運転再開の後で十分やっていって出力上昇試験に持っていくんだ、こういうことを前提にいたしております。  燃料棒の安全性の確認につきましては、今炉の中に入っております燃料棒と同じ被覆管を大宮の三菱工場の中で保管しておりまして、それを炉の中の水と同じような水質管理のもとで放置しておるものもございますから、そういったものからしますと被覆管は健全であろう、さらに、現在炉の中の水の水質検査をしておりまして、特にその中の水質検査でも従来ずっと異常はない、そういう意味でまあ健全に保たれているであろうということでの推測をしているわけでございますが、実際の試験に先立ちましてはこういったものも点検するという前提に立っておるわけでございます。
  183. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 私は、この懇談会の報告に基づいて伺っているわけで、聞いていくと、まだ完成されていないんだ、これからこれこれの冷態とか温態とか出力上昇とかいろいろやっていくんだということを答えられるから、それはそうだろうと思いますけれども、しかしこの懇談会の報告を見ると、さっき言ったように「試験を再開し、支障なく実験を遂行し得るものと判断される。」と大変強い調子で書いてあるのが気になったわけであります。  それでついでにこの報告書にあったことで、少し細かいことを聞き過ぎるかもしれませんけれども、例えば十三ページのところに、「試験再開後においては、周辺環境等に影響を与えるような事故等は決して起こさないことを前提に、新技術開発の過程で経験されるような初期的なささいなトラブル等は起こり得るものであると認識しなければならない。」一応もっともなことが書いてあるように思われるのですが、それならばと伺いたいのは、十年前の洋上での放射線漏れ事故はこのささいなトラブルと考えているのか、あるいはもっと重大なトラブルと考えているのか、これは今後の認識の問題ですから伺いたいと思います。
  184. 井上啓次郎

    ○井上参考人 四十九年の放射線漏れにつきましては、線量としましては非常に微量なものではございますけれども、技術的な意味でその原因が高速中性子によるストリーミングの現象で起こったということでございまして、これは原子炉の核的構造ではございませんけれども、遮へいということにつきましては重要なポイントでございまして、決して軽くは考えておりません。先生が指摘されたような多少のトラブルという意味は、これは陸上発電所でもありますような意味にもとれますし、またサバンナ号やオット・ハーン号でも多少のいわゆるふぐあいというものがあったと報告されておりますが、そういうふうな意味で今後も慎重におやりなさいという指針であると私は思っております。
  185. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 続いてもう一点になりますけれども、これは議論として、「陸上における舶用炉の研究開発だけでは、原子力船実用化を目指した研究開発としては、技術的に極めて不十分なものであると考えられる。」こういうことが強調されていて、これは私はそうだろうと思うのですけれども、だからといって、例えば大山委員会報告の中で指摘ありましたね、専門家、研究者の中には陸上に同型炉をペアで建造する、あるいは実験炉、原型炉を経て、そして開発を進めていくもっと慎重なやり方があるんじゃないか、こういうやり方があるということまで否定するかのごとく、あくまでもすぐに洋上で実験しなければ何の意味もないんだという強調の仕方は、私は少し議論のすりかえがあると思うのです。これは懇談会の報告書でありますが、どうお考えでしょうか。科学技術庁に伺いましょうか。
  186. 中村守孝

    中村(守)政府委員 お答えいたします。  実験船的な要素を持ちますオット・ハーンにしろサバンナにいたしましても、特段原型炉という形で陸上で同型の炉を建造して、あわせてそれをもとにオット・ハーンを建造したとかサバンナを建造したとかいう事実はないわけでございまして、実用化を進めていく上で、逆に言いますと陸上試験だけですべてが足りるかということにつきましてはまさに片手落ちでございまして、海上のデータが必要である、こういう意味でございます。
  187. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 アメリカのサバンナにしろ、これは軍用でありますけれども、舶用炉というものの開発をどんどんやってきたので、日本のように初めて、しかもつくったことのないメーカーがつくるというケースと全く違うわけでありまして、そこらあたり、すぐそういうオット・ハーンがどうだ、サバンナがどうだということで来るのはおかしいし、また今の答弁にありましたけれども、私は別に陸上ですべて足りるなんて、そんなことを言ったつもりはないが、もっと慎重な、一歩一歩積み上げて舶用炉を研究するやり方があるということが大山委員会報告にもある。あの大山委員会報告であるこういう指摘まで余り軽視するような姿勢だったら、私は非常に不安を感じますね。そのことだけ申し上げておきたいわけです。  また、この十三ページの中にある関根浜新定係港問題で、やはりドックあるいはこれにかわる手段をどうするかを検討しなければいけないということなんですが、これは修理港としての機能を関根浜に持たさなければいけないということなのか。それから、もう少し言うと、ちょうど十年前起きたようなそういう不幸な事故が起きたときに、今度は佐世保などではなしに修理港としての機能を果たせる関根浜港で修理をするような、そういうものでなければならないというお考えなのか、伺いたいと思います。
  188. 井上啓次郎

    ○井上参考人 関根浜新港にドックが必要だということにつきましては、これはむつ市長も最初から我々に話がありました。我々も十分検討いたしましたのですが、その点につきましてはいろいろ最新の技術の発展もございまして、それを踏まえて考えるということで事業団では細かい検討をしております。しかし、先生がおっしゃるように、すべての問題がそこで解決できるかといいますと、これはその事態によってわかりませんが、少なくとも関根浜の新港では母港としての機能、いわゆる単なるドック入りというのがございますが、定期検査、そういうふうなものは新定係港で実行できるようにしたいという希望でいろいろ検討をしております。
  189. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 今後「むつ」にかかる経費について伺います。六月二十日に参議院の科学技術特別委員会中村原子力局長の方から答弁がありまして、大体一千億円だということなんですが、これは事業団の試算だということですね。その根拠となる前提条件を説明していただきたいと思います。
  190. 中村守孝

    中村(守)政府委員 今後の「むつ」による舶用炉の研究開発計画の経費がどのくらいかかるかということにつきましては、まず「むつ」の計画がどうあるべきかということを現在検討しておりまして、今の段階で幾らということを申し上げられないわけでございますが、先生御指摘の事業団の試算による一千億につきましては、港湾の建設費につきまして、港さらには陸上附帯施設等を合わせまして約六百億円、さらに、でき上がりました後に出力上昇試験まで終えまして、いよいよ合格の免状をいただきました後に実験航海を二年やるということでございまして、二年やりますと今の炉心が取りかえの時期に参りますので、新しい炉心、これは燃料をかえるということで新しい炉心にするわけでございますが、新しい炉心に改造した後さらに四年間ほど実験航海をする、そういう長期にわたる計画を前提としたものでございます。
  191. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 あと、経常経費についてはどうなっておりますか。
  192. 中村守孝

    中村(守)政府委員 今の数字の中に、約十数年間にわたります人件費、一般管理費が約二百億、実験航海費等が二百四十億というような形で積み上げられていくわけでございます。
  193. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 実験航海を二年した後に炉心をかえて新しい改良型の炉心を設置するということについては、具体的に技術的にどういう問題を解決する改良になるのか。もう少し言うと、今の旧式のものではいろいろ不満な点があるからという意味なのか。かえるというのは同型のものでなしに改良型ということを参議院で答弁されていますので、その点について伺いたいと思います。
  194. 中村守孝

    中村(守)政府委員 例えばステンレスからジルカロイにかえるとかいうようなことも考えられるわけでございますが、長期にわたるいろいろな各部の運転経験を積むということも一つの理由でございまして、「むつ」をできるだけ活用して、できるだけ多くのデータをとろうという趣旨でそういう計画がとられております。現在その計画を我々が、科技庁としてそういう計画でやろうということではございませんで、大臣からも先ほど来お話がございますように、最小の費用で最大の効果を上げるようにということで、現在、計画そのものを検討し直しておるところでございます。
  195. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 二年使えば改良型にかえなければならないというのは、やはりこれまでの炉やその中心の炉心に対する一つの余り自信のなさのあらわれだろうと思います。それはそうだろうと思いますけれども、もう一つ、先ほど来も議論としてありましたけれども、やはり「むつ」の炉は旧型式炉で、これは分離型加圧水炉ですね。そういうことで、最近の新しい炉の形式としては一体型の炉になっているし、燃料がキャラメル型というんですか、そういうものになっているときに、古い炉の試験データというのは、やはり新しい炉に改良していくときに、ある限界があるのではないかという当然の批判がこれまで出ておりますけれども、それは加圧水炉だから、世界はみんなどうだからそうだというのはちょっと乱暴なお答えだと思うんですが、その点どうでしょうか。
  196. 野澤俊弥

    野澤参考人 お答えいたします。  まず第一点は、改良炉心にかえるということは、現在の炉心が自信を持てないということで行うものでは決してございません。二次炉心の目的は、まず出力上昇試験及び実験航海の結果、いろいろな新しいデマンドといいますかリクワイアメントが出てきます。例えば、もっと長く燃料を燃したいとか、あるいは炉内の中性子フラックスをもっと平たん化して、全体としてボリュームが小さいけれども出力が上げられるのかどうかといったようなデマンドが新しく出てまいりますし、さらには現在、改良舶用炉の試設計というのを研究開発室で実施しております。そういうデザインスタディーの方からのリクワイアメントというのも当然出てまいりますので、それらを総合して二番目の「むつ」の炉心はいかにあるべきかというのを現在勉強中であるということでございます。  それからもう一点、板状燃料についてのお話が出ておりますけれども、板状燃料につきましては、これはフランスで開発中のものでございますが、現在研究段階でございまして、まだ実用段階には至っておりません。したがって、我々が今後改良舶用炉を勉強する範囲の一つにはもちろん対象として考えてはおりますけれども、それが実際に実験炉として運転されて云々という状況にないことを改めて申し上げておきたいと思います。
  197. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 ともかく科技庁がまだ決めたという段階でないと言いますけれども、事業団として実験を進めるとすると、これは少なくともということだと思いますが、一千億円という経費がかかるということです。これまで六百億円かかったとされ、それに対してむだ遣いでないかという国民の強い批判もありますし、私もそうだと思っておりますけれども、しかし一千億という見積もりもまだまだかなり大ざっぱな段階でありまして、それからまた前提として「むつ」の実験が順調に進むということも前提になっているように思うわけですが、やはりこれまで会計検査院からもいろいろ指摘受けたということ、先ほど伺いました。そういうことがある折に、これから実験をやっていくのにこれだけ経費をかけるのは、それに値するんだということをはっきり示すことが一つ。  もう一つは、実際にかかる費用が計算して出されないと、最初六十億か七十億で出発して、だんだんそれが膨らんでいくということを経過したわけでありますから、そういう大ざっぱな見積もりと、そして際限ないコストオーバーラン、そういうことがないようにする必要がありますが、その点について長官に、そういうことを踏まえてどうしていくのかお考えを伺いたいと思います。
  198. 岩動道行

    岩動国務大臣 「むつ」に今までかかった経費というものはおおむね六百億近いものがございますが、その内訳については担当局長から必要とあれば御説明申し上げますが、私どもは会計検査院の指摘等も謙虚に受けとめております。しかし、会計検査院の指摘は決して不正不当の支出である、こういう御指摘ではなくて、それに値する研究実験の成果が上がってない、早く投資した経費に見合う試験研究の成果を上げろ、こういう御指摘であったと思います。  これにつきましては、私どもも不幸な四十九年の放射線漏れというトラブル、そのために遮へい工事ということ、またその間のランニングコストというようなものがかかっております。そして地元対策費として大変むだな金をたかりのようにむしり取られた、こういうような言葉も出てきておりますが、決して私はそのようなものであったとは思っておりません。そういう中で反省すべきことは反省し、むだは省き、そしてこれから「むつ」による試験研究を継続するという最新の対応が決まった場合におきましても、もう今から私は最小限度の費用で最大の効果を上げる、こういうことで今十分に計画と、そしてそれに必要な費用の念査を事務当局にも申しつけているところであります。そういうことによって初めて国会の皆様方のいろいろな御議論にお答えもし、さらにまた国民に対して納得のいく姿でスタートしなければいけない、かように考えておるわけでございまして、十分にそのことは念頭に置いて、これからも対処してまいりたいと思っております。
  199. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 私が申し上げたいのは、「むつ」をこのまま使って、原船懇談会の報告書にあるような実験を進める、先ほど説明があった事業団が考えているような実験を進めるということが、今これから最低一千億円かけてやる、どうしてもそれだけ必要なことなのかどうかという問題が一つと、もう一つは、かつてあったように、実際やってみるといろいろなトラブルにぶつかって、思いがけぬトラブルに遭遇して実験も中断されるというようなこと、そういうことに伴って、その一千億円がただの一千億円でなしにどんどんふえていくようなことも起こり得ることを懸念せざるを得ないという二つの大きな問題から述べたわけで、その点は十分考えていただきたいと思いますが、時間も限られておりますので、次に関根浜新定係港建設をめぐって一つだけ伺いたい点があります。  先ほどもいろいろ指摘があったと思いますけれども、ともかく関根浜は原子力船の定係港としては立地条件が大変適しないのではないか。これは事業団の方よく御存じの、事業団の理事で「むつ」の船長をやった折原氏が強く指摘されたことで、八一年二月五日、青森県政記者クラブで述べられたことで、新聞にも伝えられておりますが、この「むつ」に乗っておられて、そしてあの辺の海に一番詳しい方が、あんなところを選ぶのは論外だ、冬季間は烈風、濃霧、それから視界が悪い、潮流が激しい、それから津波、台風などの対策も考慮しなければならない、危険が大きい等々のことを言っております。  私も実は海上保安庁から「津軽海峡周辺海域における海難発生状況について」という最近のをいただきました。これは海上保安庁、五十九年四月十一日ですが、要救助船舶隻数は、五十四年が九十三隻、五十五年が百二隻、五十六年が八十四隻、五十七年が百隻、五十八年が百十隻といって、大体百隻というペースで相当厳しいところだ。私が言うまでもなく、一九五四年の台風十五号のとき、洞爺丸など五隻の連絡船がこの海域で沈没して、千四百四十六名の死者が出たという、こういう事故のあったこともあります。  こういうことで、ここに新定係港をつくるということで、事前にいろいろ立地条件として調査すべきことがかなりあるし、そしてそれは具体的に事業団が立地調査結果発表を八二年三月に行ったとき、むつ市の方で直ちにこれに対して、このような調査結果から新定係港ができるとはとても判断できないと厳しい批判、しかも専門的な批判が行われ、そして十項目の指摘、十一項目の疑問点ということが出されたわけです。  そこで問題は、事業団がそれに対してどう今後こたえて、そうして十分調査をし尽くしてこの港の建設を進めようとしているのか。その場合どこが責任を持って海象、気象あるいは地質などの調査をやっていくのか。また、どこが責任を持って自然に与えるいろいろな影響とか、さらにはまた漁業に与える影響だとかアセスメントをやっていくのか。このところについて、先日私も、むつ市長それから青森県の副知事に伺いましたが、非常に心配されておりましたので、どこが責任を持ってどうやっていくのか、その点だけお答え願いたいと思います。
  200. 福永博

    福永参考人 むつ市長の御指摘の話でございます。五十七年三月に私どもは、それまでに調査いたしました結果に基づきまして関根浜に新しい港ができるかどうか、技術的な判断を最終的にやったわけでございます。その報告お話だと思います。  そのとき、先生御指摘のように、むつ市長から十一項目にわたる大変専門的なことも含めた御指摘がございました。そこで私どもは、早速このむつ市長には文書でも御説明いたしましたし、当然のことながら直接個々の問題について御説明をしたわけでございます。それからその後も、今度は港湾の設計にかかるわけでございますので、その設計に必要なもろもろのデータというものは、その後も継続して測定調査をいたしまして、その結果が最終的には公有水面埋立免許の許可申請という形でまとめ上げてあるわけでございますが、その段階におきましても、それぞれの項目につきまして、むつ市御当局の方にはおよそ十回ぐらいの御説明は申し上げていると思います。そして、この埋立免許の許可というのは最終的には県知事の御認可をちょうだいしたわけでございますけれども、県知事が御許可なさるにつきましては、むつ市長の意見を求めておられると思います。そのとき、むつ市長も異存ない旨を御回答になったというふうに承知いたしております。  そういうことでございます。
  201. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 時間がないので先を急がざるを得ないわけでありますが、この問題も、先日お二人の参考人に私伺ったときに、私の意見として述べたことは、こういう環境の調査などを行うときに、開発を進めようとする開発の主体側が調査して、それでもうこれで安全だとかフィージビリティースタディーが整ったんだというのでは、これはやはり客観性が乏しい。何となれば、開発しようと思う者は、できるということに都合のいい材料だけどうしても集めてしまうからである、だからもっと客観的な調査ができる体制が要ると言ったところが、お二人とも大変賛成しておられたということを長官にも申し上げておきたいと思います。  そこで、残された時間に、もう一つの問題として、これは先ほどの原子力船懇談会の中でも非常に強調している点として、ともかく「むつ」が関根浜へ行って、これからどういうことをやるのか、最後までどうやるかということは、本当に具体的に全部理解を得なければならない。そして「万一、そのような理解と協力が得られないようなことになれば、関根浜新定係港は「むつ」の真の定係港たり得ないことになり、建設に値しない。」と言っているんですね。私はこれはそうだと思うのです。  先日、五月、私たちが関根浜調査に行って強く感じたことは、関根浜漁協の方も、岸壁で出力上昇試験二〇%やるという、話は出たようだけれども、そういうことまでやっていいというようなことは私たち何の了解を与えていない、これははっきり言いました。ところが、事業団に行きましたら、きょうも野澤さん、福永さん、おいでになっておりますけれども、いや、それはもう全部了解済みであるという答えで、物すごくこれが違うわけです。そういうことで心配になりまして山内副知事と菊池市長に伺ったところが、山内副知事のお答えは少し微妙で、しかしすべての人が了解したわけではないということは言われました。菊池市長は、いろいろ幾つかの集会をやったら、一カ所だけでそういう話が出たけれども、すべてでそういう話が出たわけではなくて、当然まだそういう段階には行ってはいないということになりますから、そこの問題で、一番大事な問題を先送りするというこれまでの悪いやり方が出てきて、その場しのぎで少しずつ削り取っていけばいくだろうというやり方をまたやっているのではないかという気が大変するわけなのです。そういう点どうなのか、これは長官に伺いたいと思います。
  202. 中村守孝

    中村(守)政府委員 五者協定によりまして関根浜に定係港を建設するということにつきまして地元の御了解をいただく際には、関根浜を基地として「むつ」の実験航海を行うことについては当然のことながら地元の御理解を得ているところでございますが、その後漁業補償交渉の過程におきましても、地元の関係者にどういう実験をするか、港の機能はどういうものかということについては御説明をしている。ただ、先生御指摘のように組織的に、こういうことをやるからこういうことについて了解したという文書の交換とか、そういうような形でのことはなされておりませんので、そういう意味で了解してないと言えばまさに了解してないということになるのかもしれませんが、さらに関根浜港の使い方につきましては、一月六日に岩動大臣が青森を訪問されまして、その際、地元関係者との間で五者会談を持った際にも、関根浜港で出力上昇試験から実験航海さらには廃船に至るまで行うということについての基本的な理解を得ているところでございます。これもまた、漁民の皆さん一人一人の理解を得たということではないということにおいては、先生のおっしゃるところがあるのかもしれません。  しかし、いずれにいたしましても、その後また具体的な計画につきまして説明をする機会を持ちたいというぐあいに考えておったわけでございますが、「むつ」の研究開発をどうするかという問題も出てまいりましたので、実験継続を前提にしたという形でのお話をするのもいかがかということで現在しておりませんが、今後この実験継続という方向に進んでいけば、関根浜港の使い方について十分地元の方々にも御説明をし、納得をいただいた上で、そういう実験に取りかかっていくということをしてまいりたい、そのように考えておるわけでございます。
  203. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 時間がほぼ参りましたので、最後に私の意見を一つだけ述べておきたいと思うのです。  これは、先ほどの五者協定をめぐって吉田委員もその点をただされたわけでありますが、私と吉田委員と迫まる方向が恐らく違うかもしれませんけれども、しかし五者協定の前提が、やはりあそこに新定係港をつくってこれこれの実験をするということが前提になっていることは明らかで、これは文書を見てもみんな新定係港という言葉が入っているわけでありますから、もちろん廃船港なんて書いてありませんし、そういうわけなんでありますから、そこのところをちゃんと直視することと、それから菊池市長も強く言われたように崩壊してしまう。港をつくるところに私も行きましたけれども、定置網などのあの浜では一番大事なところが港になるということで、定置網の四つか五つがあそこにあって、ほかの定置網といったらあと二つくらいだろうということを市長も言われておりましたが、私も大体そう伺ってきた。漁民の方がなぜ漁業権を放棄するのかというと、やはり国としてそういうことをやるからということだから仕方がないということになったので、廃船のために港をつくるといったら、まるっきり全体が崩れるというのは当然だと思うわけです。  ですから、そういう問題も含めまして今後「むつ」問題に対処をしていかなければならない。その場その場の言い逃れとか、そういうことでは済まなくなるということを強く申し上げまして、私の質問を終わります。     ―――――――――――――
  204. 大野潔

    大野委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  原子力開発利用とその安全確保に関する件、特に原子力船むつ」問題について、来る十二日参考人出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  205. 大野潔

    大野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、参考人の人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  206. 大野潔

    大野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時四十六分散会