○中村(守)
政府委員 お答えいたします。
三月二十三日付の朝日ジャーナルに先生御
指摘のような記事がございます。この記事では、
アメリカにおきます
原子力発電所がキャンセルに次ぐキャンセルということで、いわば
原子力発電所に希望がなくなったから何か減っていくというような印象を与えるような感がいたしますが、さらにバックエンド体制といいますか、廃棄物の処理処分あるいは再処理
技術、こういうものが未確立であるということで
アメリカの再処理工場が閉鎖に至ったとか、あるいは
アメリカでの廃棄物の輸送に当たってその州の方で反対があったとか、そういう記事、あるいはTMI、スリーマイルアイランドの事故、さらにはそれらに類似する各種の事故例等が述べられておりまして、
原子力発電所の事故というものが、
日本で考えられあるいは行
政府の方で説明している以上に深刻なものであるという感の御説明等がるる述べられておるわけでございます。
この点につきましては、かなりいわば悲観的なサイドに立った事実
関係というものを列記した感がいたすわけでございまして、例えば
アメリカのキャンセルが相次ぐということにつきましても、初めのときに大量の発注がございまして、その後、やや電力需要の減少等に応じてキャンセルされるものも出てきた。あるいは各種の事故等に基づいて、安全規制というものについてのNRCの
考え方等から改造を命ぜられる等によりまして、資金がふえた。その資金負担に耐えられなくなってキャンセルをしたという例もございます。
しかし、こういった発電所のキャンセルにつきましては、
原子力発電所については約十年間に百基ほどキャンセルされたといいますが、これは
原子力発電所だけじゃございませんで、例えば石炭火力につきましても、
アメリカの場合、この同じ期間に四十基ほどキャンセルされているという事実もまたあるわけでございます。それから、このキャンセルの事情につきましては、資金的な面、電力会社の脆弱性等々、我が国の国情とかなり異なっておる。それから、エネルギー
資源的に見ましても、石炭を豊富に抱えているという
アメリカの事情等々がございまして、我が国と事情をかなり異にする点がございますし、単に我が国のみならず、ヨーロッパにおきましては、フランス等におきまして非常に意欲的な
原子力発電の計画が進められておるというような実態もあるわけでございます。
それから、バックエンド対策につきましては、確かに我が国におきましても、現在、廃棄物の最終的な処分あるいは高レベル廃液のガラス固化されたものの最終処分、そういったものにつきましてまだ
実証的に
国民の皆様にお示しし得るという
段階にないというような事情はあるわけでございますが、既にフランス等におきましては、ガラス固化についての
技術を実用化いたしておりますし、それから、低レベルの廃棄物の処分につきましても、
現実にフランス等では地下に埋設をするというような形で進めております。私
どもも、これらのものにつきまして
技術的展望なしに
原子力発電計画を進めているわけではございませんで、
技術的展望を持ち、またそれに必要な、
国民の皆様に安全性についてお示しし得るだけの材料を整えるということで、現在
研究開発を進めております。
海洋投棄につきましては、既に、海洋に投棄しても実際に容器が破損して拡散しても安全であるというところまでの厳密なチェック等も施した上で、試験投棄は安全であるという評価の上に進めるということをしておるわけでございますが、その点につきましては、なかなかに一般の方々の御
理解を得られないということもございまして、現在はこういった一般の方の御
理解を得るための
努力と、さらにはそれを国際的なコンセンサスのもとで進めるということで、
世界各国の専門家等がこの検討を進めておりますので、そういった場に積極的に活動をしておるということでございます。
さらには、ガラス固化の問題につきましても、動力炉・核燃料開発事業団、
原子力研究所でそれぞれ研究を進めておりまして、そのパイロットプラントの建設について十分なデータを集め、近くそういうものにも着手し得る
段階にまで
技術的に我が国自身の
技術も向上しております。既にそれらについてはフランスにおいても実用化されておるところでございます。
それから、各種の事故につきましては、今後の発電所の安全管理の面で十分に反映をしていくべきことは反映していくということで、運転員の訓練あるいは施設の改善というようなものについては十分努めておりますし、今や、我が国の安全研究というものにつきましては、非常に
世界的な評価を得て、
世界各国から
原子力研究所に共同研究が申し込まれているというような実情にもあるわけでございます。私
どもも、いたずらに
原子力発電をやみくもに推進するということではもちろんございませんで、明確な
技術的展望のもとにこれを進めているところでございます。
何分にも、
資源的な事情におきましては非常にエネルギー
資源に乏しい我が国でございますので、この
原子力発電につきましては、今後とも
人類の英知を活用して、皆様方に少なくとも安全といった面でいろいろな不安を持たれないよう
技術の向上を図り、
国民生活、福祉の向上のために
原子力を積極的に活用していきたいと思っているわけでございます。もちろん、朝日ジャーナル等に掲載されました各種の事例につきましては、そういう
原子力発電を進める上でのいわば反省材料といいましょうか、一つの警鐘といいましょうか、そういう
意味で、これは安全である安全であると思い込めば、そこに危険の落とし穴があるということは事実でございますので、一つの警鐘として十分踏まえつつ、慎重に
原子力発電の開発というものを一歩一歩進めてまいりたい、そう考えておる次第でございます。