運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1984-05-08 第101回国会 衆議院 科学技術委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年五月八日(火曜日)     午前十時五分開議  出席委員    委員長 大野  潔君   理事 小宮山重四郎君 理事 平沼 赳夫君    理事 与謝野 馨君 理事 渡部 行雄君    理事 小川新一郎君 理事 吉田 之久君       鍵田忠三郎君    岸田 文武君       熊谷  弘君    佐々木義武君       西山敬次郎君    保利 耕輔君       増岡 博之君    保岡 興治君       小澤 克介君    関  晴正君       松前  仰君    遠藤 和良君       小川  泰君    工藤  晃君       辻  一彦君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      岩動 道行君  出席政府委員         科学技術庁長官         官房長     安田 佳三君         科学技術庁長官         官房審議官   堀内 昭雄君         科学技術庁原子         力局長     中村 守孝君         運輸省船舶局長 神津 信男君  委員外出席者         参  考  人         (東京大学名誉         教授)     安藤 良夫君         参  考  人         (東京大学教授小出昭一郎君         参  考  人         (東京商船大学         教授)     竹村 数男君         科学技術委員会         調査室長    曽根原幸雄君     ————————————— 委員の異動 四月二十七日  辞任         補欠選任   松前  仰君     田中 克彦君   小川  泰君     安倍 基雄君   工藤  晃君     瀬長亀次郎君 同日  辞任         補欠選任   田中 克彦君     松前  仰君   安倍 基雄君     小川  泰君   瀬長亀次郎君     工藤  晃君 五月八日  辞任         補欠選任   伊東 正義君     増岡 博之君   櫻内 義雄君     鍵田忠三郎君   森山 欽司君     西山敬次郎君   村山 喜一君     関  晴正君 同日  辞任         補欠選任   鍵田忠三郎君     櫻内 義雄君   西山敬次郎君     森山 欽司君   増岡 博之君     伊東 正義君   関  晴正君     村山 喜一君     ————————————— 四月二十五日  海洋開発基本法案塩出啓典君外二名提出、参  法第七号)(予)  海洋開発委員会設置法案塩出啓典君外二名提  出、参法第八号)(予) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  日本原子力研究所法の一部を改正する法律案  (内閣提出第五五号)  日本原子力船研究開発事業団解散に関係する  法律案大原亨君外四名提出衆法第二二号)      ————◇—————
  2. 大野潔

    大野委員長 これより会議を開きます。  内閣提出日本原子力研究所法の一部を改正する法律案及び大原亨君外四名提出日本原子力船研究開発事業団解散に関する法律案を一括して議題といたします。  本日は、両案審査のため、参考人として東京大学名誉教授安藤良夫君、東京大学教授小出昭一郎君及び東京商船大学教授竹村数男君に御出席を願っております。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ本委員会に御出席くださいまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、両案について忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。  議事の順序につきましては、まず参考人方々に各十五分程度御意見をお述べいただき、次いで委員からの質疑に対し御答弁をお願いしたいと存じます。  それでは、まず安藤参考人にお願いいたします。
  3. 安藤良夫

    安藤参考人 安藤でございます。私は、内閣提出されました日本原子力研究所法の一部を改正する法律案に、結論として賛成でございます。  理由といたしましては、日本原子力船開発事業団は、昭和三十八年に主として「むつ開発ということのみで発足したわけでございますが、その後いろいろ曲折を経まして、昭和五十四年の十二月に原子力船研究開発専門部会というものが報告を出しまして、その中で「限時的な特殊法人として「むつ開発のみをその業務としてきた日本原子力船開発事業団を発展的に改組して研究開発機関とすることが妥当であると考えるに至った。すなわち、同事業団研究開発機能を強化して主体的に研究開発を統轄、実施する研究開発機関とし、かつ、その限時的性格を取り除いて人材の定着化を図り、長期にわたって一貫した体制研究開発を遂行し得る高い技術能力をもった組織とすることが妥当である。」こういうような報告をいたしております。それに対して、昭和五十五年に従来の原子力船開発事業団原子力船研究開発事業団ということになりまして、原子力船開発に必要な研究をも行う機能を付与されたわけでございます。そうして、ちょうどそのころ行政改革がございまして、この報告では長期にわたって一貫した体制ということを述べてございますが、結局六十年三月三十一日までに他の原子力関係機関統合する、こういうことに相なったわけでございます。  それで、そのためにこの改正法案ができたと承知いたしますが、この法案では統合先として日本原子力研究所が選ばれておるわけでございます。原子力船は従来から軽水型の原子炉で動いておりまして、現在でも世界のほとんどすべての原子力船軽水炉で動いていると考えられます。原子力研究所は、さきに動力炉については動力試験炉JPDRというものを運転しまして、これはPWRではございませんがやはり軽水炉の一種であるBWR運転経験を持っておりまして、そのほか軽水炉安全性研究に関しては大きな研究テーマをたくさん持って、現在も実施しております。  そのほか、原子力研究所原子力船事業団業務に協力しておりまして、人員を派遣するほか、原子力研究所東海研究所JRR4というスイミングプール型の研究炉がございますが、これを用いて特に遮へいの研究などを遂行し、船舶技術研究所の支所もその炉を使うためにそこに設置されるというようなことで、原子力船事業団業務に協力いたしております。その後、「むつ」が放射線漏れを起こした後、「むつ」の改修のために比較的大きなモックアップをつくりまして実験をいたしたのも、その原研JRR4でございます。将来とも原子力船研究開発を進めるためには、軽水炉を取り扱って非常になれております原子力研究所、しかも恒久的な機関であります原子力研究所統合先として適当であると考える次第でございます。  それから、将来原子力船建造運航するのは造船界であり海運界でありますが、原子力船開発あるいは舶用炉に関する業務については、この改正案内閣総理大臣運輸大臣が定める基本計画に基づいて行われなければならないとしているのは、造船海運界意見も反映できるということで適当と考えます。造船は、昭和三十一年以来今日まで三十年にわたりまして、世界第一の建造量を毎年続けておりますが、それにもかかわらず、最近は発展途上国等の進出が著しく、追い上げられつつあるという立場にございます。我が国としては、さらに技術的水準の高い船の建造ができる能力を持つ、そういうことに指向する必要がありまして、原子力船造船技術の向上に資することが大であると期待されるわけでございます。  それから、非常に短期的に見ますと、最近は石油の事情が比較的緩和しておりまして、原子力船の必要が余りすぐにはないという状態にありますが、結局、当初の予想よりは遅くなったといたしましてもいつかは石油資源というのは枯渇するわけでございまして、そのときには原子力で船を走らせるという時代が必ず到来することは間違いないと考えられますので、この改正案原子力船に関する研究開発を定着させて継続されるという点では、大変結構であると考えます。  それで、この改正案では「むつ」の取り扱いに関しては今後検討を行うということになっていると承知いたしておりますが、昨年の十月に原子力委員会原子力船懇談会というのが設けられまして、私も委員の一人として参加したのでございますが、そこでは、「「むつ」は既に長崎県佐世保港で遮蔽改修を終え、更にその際、最新の知見に基づき原子炉部分安全性点検補修工事も終了しており、この間の維持管理の状況をも併せ考慮すると、今後とも原子炉等の慎重な点検整備に遺漏なきを期すこととすれば、試験を再開し、支障なく実験を遂行し得るもの」と判断いたしております。  そして、「むつ」は国産技術によって設計建造されておりまして、その開発を継続する場合は、実船の経験のない我が国としては貴重なデータ、すなわち動揺とか振動あるいは衝撃、船で申します衝撃は、大きなものでは波浪中で船体船首部空中に出まして、それがまた波でたたかれるといったような衝撃船体運動、あるいは船が急激に前進したり後進したり、あるいは荒天中に非常に大きな縦揺れがございますと、プロペラが空中に出て空転する、そういうようなときに原子炉には異常な負荷変動がかかりますが、そういうような負荷変動原子炉系への影響というものは実船を動かしてみなければ得られないデータでございまして、これによって設計値との比較検討が行われれば、将来の舶用炉改良研究にも反映されると期待されます。  それからまた、「むつ」の運航を通じて原子力船乗組員養成訓練が図れるとともに、一般の港への出入港の経験等が蓄積できれば、地方自治体の受け入れ態勢整備とか出入港方法マニュアル化など、原子力船運航システムの確立に資することが可能であると考えます。このように、「むつ」の実験運航を実施し、将来にわたって可能な限り多くの実験を行うとすれば、原子力船研究開発にとって極めて有意義な相当の技術知見経験の集積が可能になると考えられます。  それから、将来さらに進んで舶用炉改良研究等を行うといたしますと、「むつ」が経済性を余り重視して建造されておらない点を踏まえまして、将来の原子力船実用化に向けて新たな研究が行われると思いますが、この研究が新しく統合された原研において必要であるということは、今日も将来も変わることなく着実に進められると期待されます。  以上で陳述を終わります。(拍手
  4. 大野潔

    大野委員長 ありがとうございました。  次に、小出参考人にお願いいたします。
  5. 小出昭一郎

    小出参考人 小出でございます。私は、内閣提出日本原子力研究所法の一部を改正する法律案には反対でございまして、「むつ」は廃船にした方がよろしい、そういう立場意見を申したいと存じます。  「むつ」が失敗しましたその原因というのは、いわゆる大山委員会というものの報告があるわけでございますが、要するに、日本原子力船開発事業団体質に欠陥があったということが一番大きい本質的な問題であろうと思います。その後、開発事業団研究開発事業団となったわけでございますけれども、これも本質的にその事業団体質を改めたとは言いがたいというふうに私は考えております。今回それを原子力研究所統合しようという案でございますけれども、これににわかに賛成しがたいという理由が幾つかございますが、それを申し上げたいと思います。  それは、その大山委員会が指摘した原子力船研究開発事業団ぐあいのよくない点原子力研究所に持ち込むおそれがあるということが第一の点でございます。これは資料の五十三ページに載っておりますが、原子力委員会の出されました昭和五十八年十二月二十三日のこれに、原子力委員会原子力研究所がなぜ統合先として適当かという理由を書いておられますが、それは「原子力分野において、長期的観点から基礎的研究を含め、幅広く研究開発を進めている原研が適当である。」そういうふうに書いておられるわけでございます。つまり、原子力研究所事業団よりもすぐれているという点は、そういう長期的観点に立って基礎的研究を含めて幅広く研究を行うという点でございます。  こう申してはなんでございますけれども、こういう新しい技術を初めて開発するという場合には、余り功を急いでは「むつ」のような失敗を引き起こすというふうに思うわけでございますが、そのためには、企業はどうしてもお金をもうけるということを考えざるを得ませんので急ぐという傾向がございます。そういうことなしに、功を焦らずにやるということが研究のために必要な場合が多いわけでございまして、そこにこういう特殊法人研究所でございますとか、大学あるいは国立の研究所というものが必要な理由があると存じます。そして、この原子力船研究開発というような非常に長期的な事業は、そういう視点に立ってやらなければいけないと思うわけでございます。  ところが、この改正案によりますと、その第十六条、今までは「役員は、営利を目的とする団体の役員となり、又は自ら営利事業に従事してはならない。」こう書いてございました。これは、今申し上げたようなことをくぎを刺すためにそういうふうに決められていたのだと了解しております。ところが今回の改正案では、そこに「ただし、内閣総理大臣の承認を受けたときは、この限りでない。」という文言を追加するというふうになっておりますが、これに対しては私は非常に危惧を感じるわけでございます。民間の活力を利用するという方針、これは結構なことだと思いますけれども、それが往々にして先ほど申し上げました企業の論理を持ち込んで、研究者技術者意見を余り聞かないというようなことを引き起こす可能性が多分にございます。そういう点で私は、このほかにもいろいろございますけれども、例えばこういう追加をするというようなことに対して非常に危惧の念を持つわけでございます。  二番目は、この統合によりまして、原子力研究所にはふさわしくないような仕事、基礎的な研究をやるとか長期的観点からというようなことにそぐわないような仕事がいろいろ持ち込まれるということがございます。つまり、関根浜をどうするとか船の動かし方をどうするとかいうようなことは、原子力研究所では今までやっておられないと思います。そして、研究者というのは職人かたぎのようなものがございますが、既にどこかでできてやり損なったようなものを持ち込んできて何とかしろというようなことを言われた場合には、余りやる気を起こさないという性格があるのではないかと思います。そういうようなことがございまして、原子力研究所の多くの研究者方々は、この「むつ」を持ち込むということに対しては反対意見の方が多いというように聞いておりますが、それはある意味で当然であるというふうに思います。  そして舶用炉、船に載せる原子炉研究というのは、もうする必要がないとまでは私は申しません。そういう舶用炉研究原子力研究所でやるということは、これは非常に意味のあることかと思いますけれども、それとこの「むつ」の後始末とは切り離すべきであると考えるわけでございます。廃船ということにした方がいいと私は思うのでございますが、廃船にしないでもしこのままその出力試験というものをやったらどういうことになるだろうかと考えてみますと、これはまたあちこちでいろんな放射能が漏れて出るという可能性は非常に高いと思います。  それは、この種の実験ではある意味では当然なことではないかと思います。非常に複雑なシステムでございますので、コンピューターが幾ら発達したと申しましても、コンピューターを妄信してはいけないわけでございます。物理学の法則とかコンピューターとかいうのは非常に妄信される傾向がございますが、これは非常にうまくぴたりと予言することができるような場合と、全くと言っていいくらいだらしなく当たらない場合があるわけでございます。例えば日食というのは大変正確に予言できますけれども、天気予報というのは当たらないわけでございます。中性子が漏れるとか漏れないとかいうようなのは、天気予報が当たらないというのに近いようなことでございまして、コンピューターを使いましてもなかなかぴたりとは設計ができない。そういたしますと、こういう場合にはいろいろやってみて手直しをするということを繰り返して、初めて完全なものになっていくというたぐいのものでございます。つまり、複雑な新技術ではどうしても経験ということが非常に必要でございまして、それを安易に今度は大丈夫だというようなことでおやりになりますと、またどうかなりまして信用を落とすということになりますと、今後の原子力行政に非常に悪影響を及ぼすのではないかと思います。  それからもう一つは、この炉でございますけれども、十年前の大変旧式なものでございます。さすがに真空管は使ってないそうでございますけれども、いろいろな点で旧式であるということはございます。圧力容器蒸気発生器が分離型であるとか、あるいはステンレスを使用しているとかいうような点で、その後の進歩によっていろいろ改良されている点があるわけでございますけれども、そういう点である意味では大変旧式の古いものでございます。それでいろいろやったところで、そこで得られた結果というものが将来本当に役に立つかどうかということは大変疑問がございます。  それから、年限がたってございますから、経年変化というようなものであちこちがもろくなっているというおそれもございます。これは、日本原子力産業会議というところで出した「わが国の原子力船開発あり方」という中にもそういうことが書いてございます。それから、非常用炉心冷却装置等にも問題があるというようなことがございます。そうしますと、先ほど安藤先生おっしゃいましたように、確かに陸上でやるよりは海上でやった方がいいに決まっているわけでございます。その方が実際に近いわけでございますからいいに決まっているわけですけれども、そこにもし問題があるとするならば、陸上ではだめで海上でということでありますならば、旧式なのではだめで、やはり新しいものをもう一度落ちついてつくり直すということをする必要がある。それでないと、これは全くむだになるという可能性があると私は思います。  それから、廃船にできない理由というのが、この参考資料の五十九ページから六十ページにかけて書いてございます。現時点での廃船は困難でないということがそこに書いてあるわけでございますが、それは今ほとんど使っていませんので放射能が非常に少ないからということでございます。しかしこの六十ページには、廃船のためにだけ「むつ」を受け入れるようなところを確保できる見通しはほとんどないと考えられるというふうに書いてあるわけでございますが、これはちょっとおかしいのではないかと思います。放射能が少ない今でもその受け入れるところがないのならば、これを試験をやりますと猛烈な放射能がそこに残りますから、そういうものはますます引き取り手がなくなるのではないか、どうしようもなくなって、また漂流をしなければならぬという事態が起こるのではないかと私は心配するわけでございます。  それから、原子力船というのは、普通の船ではございませんから定係港というものが必要である。その港は、ただの港ではなくていろいろ附帯設備が必要であるということがございます。核燃料の交換、保管の施設でございますとか、放射性廃棄物処理施設でございますとか、そういうものがその港になければいけないわけでございますけれども、その関根浜の新しい港にそういうものまで本当に確保できるのかどうかという点に大変疑問がございます。港に関しては着工の準備ができつつあるというように聞いておりますけれども、そういう附帯設備まで本当に土地を確保してつくることができるかという点に関しましては、現地の人の反対も強いというように聞いております。  それから、大湊に比べますと、関根浜というところは太平洋の外洋に面していて、波浪注意報とか濃霧注意報が一年のうち二百日以上も出される港であるというふうに聞いておりますが、そのように非常に条件の悪いところではないかと思います。このパンフレットにも、大湊の地元の同意が得られなかったためにやむを得ず関根浜にするのだ、やむを得ずという言葉が何度も使ってあることが私にとっては大変印象的でございますが、そのように条件が悪いということを示しているのだと思います。燃料棒を出し入れするためには、船が一度以上傾くとできなくなるというようなことがこの「むつ」の設計上あるわけでございますけれども、関根浜などでそういうことが一度以下の傾斜でできるというような日は非常に少ないのではないかと考えられます。  そういうようなことがいろいろございますので、そういう非常な犠牲を払い、この財政難のときに何百億という予算をかけて、しかもむだになるという可能性も非常に高い「むつ」を原子力研究所に持ち込むということは、大変国費むだ遣いになるのではないかと私は考えます。これは自民党の議員の先生方も御反対の方が、廃船にした方がいいという御意見の方が多いように伺っておりますが、私はそういう御意見の方が常識的であろうというふうに考えまして、この内閣の案には反対し、「むつ」は廃船にした方がよろしいというふうに考える次第でございます。(拍手
  6. 大野潔

    大野委員長 ありがとうございました。  次に、竹村参考人にお願いいたします。
  7. 竹村数男

    竹村参考人 東京商船大学竹村でございます。  私は、原子力船研究開発をぜひ続けていってほしい、続けるべきである、そういうふうにかねがね思っておりますので、少し言い古されていることかと思いますけれども、原子力船開発必要性を二つばかりもっと具体的に挙げまして、あと原子力船実用化見通しとかそれから開発あり方、こういうものについて述べまして、法案との関連を述べたいと思います。  御承知のように、オイルショックのときには、日本船は四十八年の十一月から翌年一月までの三カ月間に内地外地合わせて四十四杯が一日以上停船を余儀なくされました。一週間以上とまったのは、そのうち八杯ございます。日本海運企業が用船していたのはさらに四十七杯、一週間以上が十四杯と結構な数でございます。私たちいろいろなところから生活必需物資を輸入しておりますので、そういう事態が起きても原子力船があれば何とかしのげるのではないか、こういうふうに思います。  それからもう一つは、海運造船維持発展ということでございますが、先ほど安藤参考人からもありましたように、かなり造船も新興の工業国に追い上げられております。例えば韓国、台湾といったようなところに追い上げられておる。それから海運も、フィリピンとか台湾とかシンガポール、香港、そういった開発途上国から追い上げられまして大変苦戦をしておる次第でございます。ですけれども、こういう海運の動いておる現状をちょっと調べてみますと、例えば一九八〇年と八一年の二年間、日本海事協会に登録した船八千八百四十隻でございますが、このうち日本船は約四千隻を超えております。日本はもちろん数百トンの小さな船も含まれておるわけですけれども、この二年間で外洋で動けなくなったという機関故障を起こしたのは二十七件ございます。日本は六件でございます。それも数百トンの船を含めてで、しかも四千隻からという半分を占めている隻数からしますと、日本の割合というのは非常に小さいものである、こういうふうに思います。そういうことを反映しまして、例えば船舶船体機関保険料、こういうようなものは、開発途上国日本の大体二倍から三倍の保険料を払わせているというのが現状でございます。  こういうふうに、原子力船のような非常に技術の高い、知識を必要とする船をつくりますれば、開発途上国の追い上げというものをかわせる、明治維新以来、日本海運造船が車の両輪になって日本の産業の根幹の一つとして頑張ってきたことが、もう一度やれるのではないかというふうに私は思っております。  以上が、言い古されたことで大変恐縮でしたが、原子力船開発必要性ということを少し具体的に述べさせていただきました。  次に、原子力船実用化見通しとこれからの研究開発でございますけれども、約一年半ほど前に原子力産業会議検討された報告書がございます。その中で、原子力船が在来船に比べて経済的に有利になる船というのは、カナダの北極海に産出する原油を日本に輸送するための三十万トン型の砕氷タンカー及び十三万五千馬力の砕氷船、それからペルシャ湾から日本まで液化天然ガスを運ぶ十六万立方メートル型のLNG船、それから日本と欧州との間を走る二千五百個積みのコンテナ船で速力が二十六ノット以上のもの、この四種類となっております。この経済計算というのは、船が生涯十五年間走るというようなことで、その間に船にかかる生涯のコストを生涯に運ぶ貨物量で割った値、つまり貨物一トン運ぶのにあるいはコンテナ一個運ぶのに幾らかかるか、こういった運賃率というような我々なじみのあるもので一応出している格好でございます。  原子力砕氷タンカーや原子力砕氷船がこれはかなり有利に出ておりますけれども、この有利に出た理由というのは、砕氷能力を持つために馬力が非常に大きいということと、在来船ではガスタービンエンジンを搭載して、質のいい、つまり値段の高いA重油を使用すること、こうなっているからでございます。  カナダの北極海の原油を日本へ輸送する民間プロジェクトが一九八七年から二十一年間にわたって年間約六百万トンを輸送する、こういうふうにして計画されております。このプロジェクトは今おくれる気配もございますので、もう少し先へ行くと思いますが、在来船による輸送コストを計算してみましたところ、これは中近東から持ってくる場合の三割高というふうに計算されております。ですから、このプロジェクトに原子力船が参加するという構想は、大いに考えてもいいのではないかというふうに私は考えております。言うなれば、その実証船の対象として考えられるのではないかというふうに思います。  それから、五万馬力のLNG船で原子力船が有利となった理由というのは、在来船が航海中に蒸発してくるガスをたいて走るのに対しまして、原子力船では原子炉の安いエネルギーを使って蒸発してくるガスをもう一回コンデンスして、液化して、荷物を積み荷と揚げ荷と変わらないようにする、こういうことが大きな理由になっております。このLNG船は、現在十杯ほど建造する計画が話題にあるようですので、非常に長期の輸送計画となるのであればまた原子力船の参加も考えられるのではないかというふうに思っております。このボイルオフガスを液化するというような例は、原子力エネルギーを推進以外に船で使うという一つのいいサンプルでございまして、このような新しいアイデアを持った船種、船型というものを今後とも考えないと、原子力船時代が本当に来るかということには大変厳しいものがあるというふうに私は思っております。  それから、コンテナ船についてでございますが、かつて米国のシーランド社に十二万馬力で三十ノットという超高速の船がございました。先ほどのは二十六ノット、七万馬力でちょうど在来船と競争できるんだという原産の報告書でございますけれども、しかし、このシーランド社の十二万馬力、三十ノットというのは、現在オイルショック後すっかり減速運転をしておりまして、海運会社等の推測ではここ当分現在の運航速力二十二ノットを超えることはないだろうということで、二十二ノットといいますと馬力としては四万馬力ぐらいのもので、今すぐの開発目標にはなり得ないというふうに思います。しかし私は、コンテナ船とか鉱石運搬船というのは将来の原子力船化のいい対象であろうと思っております。  それから、この原子力産業会議報告書では、三十万トン型の石炭船や鉱石運搬船、五十万トン型、七十万トン型のタンカーも一応検討しておりますけれども、在来船を十二・五ノット、約三・五万馬力ぐらいですか、このくらいで走らせたものが一番輸送コストが低いということで、三ないし四万馬力の在来船と競合するのにはまだまだというのが結果でございます。  この原産のコスト計算に用いられたコスト費目は、建造船価と利息、船員費、修繕費、保険料、廃棄物処理費、船体廃棄費というような原子力船特有のものはすべて含んでおります。しかし、このコストの見積もりは、日独共同研究のコンテナ船のものとか、あるいは造船研究協会でやりました八万馬力コンテナ船の設計評価研究とかその後の経済性評価研究といったような参考文献をもとにして計算しておりまして、原子力船特有のコスト因子については実績がほとんどないという状態なので、不確かなところがあると言わざるを得ないと思っております。  したがって、今回の手法で計算して、在来船と原子力船が一対一でちょうど競合したよ、こう言っても、私はその船種、船型について原子力船実用化見通しが得られたというふうには感じておりません。原子力船実用化時代というのは、経済的に三ないし四万馬力の船でも在来船に競合できる時代、こういうのが我が国のとらえ方でありますから、コスト低減策をどうしても考えなければならないと思います。原産の計算でも、船価を一割低減いたしましたコンテナ船の場合を見てみますと、これの競合馬力は七万から五万馬力ぐらいに下がってきております。ですから、船価を下げるということは運送コスト低減によく効くことがわかります。  さらに油が、OPECの言うように年間三%ずつ上がるということが本当に見込めれば、二十年で二倍になりますから二十一世紀には確かにやれる、こういうふうに思います。しかし、このOPECの三%パー年のアップという戦略は現在なかなか実行されておりませんから、私としましては、燃料油価格が上がるという他力本願的なことはさておいて、我々としては、原子力船のコスト下げのために何とかして船体以下のコストを下げる工夫を努力しなければならぬというふうに思います。コスト因子は今のところ不確かなところがありますから、まずそれを詰めるところから研究開発に着手すべきだと思っております。そういう意味では、「むつ」を動かしますと、あの狭いところにぎっしり詰め込んで運転いたすわけですから、それの運転、保守、修理、検査、こういったもののデータは非常に貴重なものとなる、こういうふうに私は思っております。  コスト因子がはっきりしましたら、次に今度は、その中で主要なコストをどうやって下げるかということになるのですが、最大のものは原子炉プラント価格でございまして、その中では格納容器とか遮へいというようなものの割合が一番大きいというふうに思います。そこで、こういうものの軽量化を図るということになりますが、システム的にも構成要素の個々についても、新しいアイデアを入れて基礎的に研究開発をいたしませんと、現状と言ってはちょっと語弊がありますが、現状の「むつ」のように陸上の発電炉のミニコピーというようなものだけでは、どうにも競争力はつかないというふうに私は考えます。「むつ」の改良型というような格好でやっていくこともありましょうが、新しいシステムと構成要素を基本的に基礎から考え直すべきだ、こういうふうに思います。  そういたしますと、内閣提出した法案の中にも、基礎的にやっていけというふうなことがありました。先ほど安藤参考人からもありましたように、「むつ」については原研はさまざまな力をかしておりますし、船に対しての知識も持っているだろうしというようなことで、発想をいろいろな面から出せる利点が大きいというふうに思います。そういう意味内閣提出法案に賛成する立場をとらしていただきますが、何せ船というのは自己完結的で孤立移動体でございますので、それをめぐる環境は非常に厳しいわけです。そういう意味では、船の特殊事情を十分考慮に入れた研究開発ということを進めていただきたいと思いますし、造船海運関係の技術者との意思の疎通を十分図ってやっていただきたいというふうに思います。  私、原子力船実用化見通しなどについて、ちょっと経済的な面から強調し過ぎたと思いますけれども、私の基本は、やはり経済的に競争できるのでなければ原子力船の真の時代は来ない、こういうふうに思っておりますので、幾ら長期でも実質的に着実に研究を進めていくということでお願いしたいと思っております。  これをもって終わります。どうもありがとうございました。(拍手
  8. 大野潔

    大野委員長 ありがとうございました。  以上で参考人意見の聴取は終わりました。     —————————————
  9. 大野潔

    大野委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松前仰君。
  10. 松前仰

    松前委員 きょうは、三人の先生方、お忙しい中をおいでいただきまして本当にありがとうございます。大変時間が短いので、私の質問に対してお一人三分くらいでお答えいただき、私の質問も三回くらいに分けてしたいと思っております。  今お話をいろいろ伺いましたが、原子力船の将来の形とか必要性とか、そういう問題もあるわけでございますけれども、今私ども一番心配しているのは、やはり「むつ」自身がこれから実際に実験をやっていけるかどうか、そういう点について技術的に非常に心配をしているわけでございます。そこで、まず技術的な問題について、すべてではありませんが、一番危惧しているところについてお伺いしたいと思います。  中性子線漏れの問題でございますが、原因が圧力容器と一次遮へい体のすき間の漏れというようなことで、そこに対する遮へい改修というのをやっておるわけでございますけれども、根本原因というのが、原子炉を軽くしようとして直径を小さくし過ぎたために燃料棒の束と炉の壁との空間距離が余りにも小さくなった。空間には水が張ってあるのですが、中性子を十分に下げることができないというようなことで大量の中性子が外に出てくる、そういう構造になっていると私は認識しておるわけであります。その点で、改修を行ったのですが、外部遮へいの改修というだけでは十分ではないと私は思うのですが、その辺についてのお考えを小出先生にお聞きしたい。  それから安藤先生の方には、漏えい箇所を計算機シミュレーションで特定しておられるわけでございますけれども、複雑な遮へい構造と複雑な中性子の振る舞いを解析するのは困難と思われるということを、安藤先生は日本原子力学会誌、一九七五年のナンバー2というのに後ろの方にお書きになっているわけでございます。そういう点から見ると、ほかにまだ原因があるということも言えるのではないだろうかというように私は考えるのですけれども、その辺について安藤先生にお伺いいたしたいと思う次第でございます。  それからもう一つ、今燃料の被覆管にひび割れの入りやすいステンレス製を使っておる。まあ最近ではジルカロイが使われておるようですけれども、こういう点についても、十年前のステンレス製ということで非常に問題が多い。また、船のゆがみとかそういう問題もあるやに聞いておりますし、また原子炉長期間放置しておると、原子炉自体もそうですが、そのほかの構造材料というものについてゆがみがきたり劣化がきたりしておるのではないだろうか。そういう点を考えると、運転するということ自体非常に危ないのじゃないだろうか、そんな感じがするのですが、この辺については小出先生に御意見をお伺いしたいと思います。  まず、それだけよろしくお願いします。
  11. 小出昭一郎

    小出参考人 お答えいたします。  今御指摘のとおり、中性子を遮へいするのには、水の中の水素の原子でございますが、これが非常に有効なのでございます。その水で覆う部分がどうしても小さくなるというために中性子の遮へいが不十分になるということは、この「むつ」の場合に陸上の大きな炉に比べてそういう点で非常に問題があるという御指摘でございましたが、私もそのように考えます。したがいまして、その直径を小さくしたために、炉の側壁のところをもう一度よく点検しないと、わきからもいずれ漏れるということは十分に起こり得ると考えます。大山委員会報告にも、そういうところも念のために点検することが必要だというふうに書いてあったと記憶しております。  ステンレスのひび割れの件は、これもひび割れの問題でステンレスからジルカロイにかわったという経緯がございますから、負荷変動に対する利点というようなことでステンレスを使ったということを記されておりますけれども、その後のいろいろな研究を十分取り入れるということ。それから燃料棒、棒じゃなくてキャラメル状のものもつくられているわけでございますので、そういうものとの比較で利害得失を十分検討することがこれから必要でありまして、昔ながらのステンレスの棒でやった場合には、ひび割れ等でまた漏れるという危険は非常に多いと私も考えます。  遮へいを改修したために二、三百トン重さが増したというふうに聞いておりますが、船の真ん中のところにそれだけ重みがかかったわけでございますから、当然それは船にゆがみを起こすと考えますし、十年間たっているので、いろいろな点で劣化あるいはもろくなっているということは大抵の材料では起こるわけでございますから、そういうことが起こっている可能性は十分にあると私は考えております。したがいまして、先ほど申し上げましたように「むつ」で実験をやった場合には、またあちこちからいろいろな障害が出てくるということはもう覚悟しなければならないことであろうと思います。
  12. 安藤良夫

    安藤参考人 ただいまの御質問にお答えいたします。  遮へいの計算は、放射線漏れの事件がありました後、TWOTRANとかその他の二次元のコードというものが利用できるようになりまして、それを用いて計算をいたしました。そのほか、実船と同じ大きさの模型をつくりまして、原子力研究所の先ほど述べましたJRR4という研究炉実験をいたしまして、計算と実験とはかなり一致するというようなことを得ております。  遮へいの問題は、これから実際に原子炉を動かして炉心から出る放射線源で確かめれば一番よくわかることと考えますが、これもやはり「むつ」を使う実験の非常に重要なものの一つと考えます。遮へいの計算と実験とが合わないというような例は、ほかの世界の多くのこれまでにつくられた原子炉でも経験しておりまして、例えばソ連のレーニンという船は、圧力容器の上部にグラファイトのかなり厚い遮へいをしておりまして、そこを制御棒が通るような仕掛けになっておりますが、ちょうど「むつ」と同じようなストリーミングということで、そのすき間を通して高速中性子が漏れるという似たような現象を起こしまして、数字は、その穴がないとした場合のレーニンの場合でも、大きいところは私の記憶では五十倍程度漏えいしたと記憶しておりますが、そのために、ほぼ同じくらいの厚さの遮へいをさらに追加したというような例がございます。  そのように、遮へいというのは非常に難しい。計算と合いにくいということは先生の御指摘の点もございますが、今度の場合には、計算をかなり新しいコードでいたしましたし、それからかなり大がかりな実験もいたしましたので、誤差があるとしましてもそれほど大きなことはないと一応考えておるわけですが、こういうことを実際の原子炉を動かしてやることこそが「むつ開発の意義の一つではないかと考えております。
  13. 松前仰

    松前委員 次に、これは小出先生と竹村先生にお聞きをしたいと思うのですが、軽水炉安全性の心臓というのはECCSというものですけれども、これは改良がなされてきた。しかしながら、電磁弁から原子炉容器ノズルまではまだ細いということが残っておるわけでございまして、重量がそんなに大きくできないという問題がある。またほかに、先ほどお話がありましたように、燃料棒の取りかえのときには一度の傾きを許さないとかそういうようなこともありますし、いろいろな点で原子炉について非常に細心の注意を払ってやっていかなければいかぬ問題があるわけであります。  私は特にここでお聞きしたいのは、そういう技術的な問題と少し外れますけれども、普通の機械でしたらば、故障すればお金で解決するということなんですが、この場合には、危険が伴うとか漁民に対する補償とか漁民の不安とか、そういうような問題も伴ってくるわけでありまして、非常に影響が大きい。そこで、故障とかふぐあいが起こって危険が伴う確率というものがあるわけでありまして、これは機械ですから必ずある。こういうときに、実用化というものは一体どういうふうに考えていったらいいのだろうか。少なくともフェーリア・アナリシスをやって、その危険といいますか故障の確率を持っているものについて、その影響が非常に大きいものについて、その実用化の考え方をお聞かせいただきたい。特に、船に載せるというのはさらに二重に環境が厳しくなるということでございますので、非常に慎重に取り扱わなければいかぬと私は思うわけでございますが、その点について御意見をお聞かせいただきたいと思います。
  14. 小出昭一郎

    小出参考人 お答えいたします。  御指摘の、例えばECCSの改良が十分でないというような点は私もそのとおりだと思います。「むつ」は、遮へいを改修するに当たりましても、そのほかの改良をするに当たりましても、炉の部分を封印したまま行わなければいけないという事情があったために、全部ばらして徹底的に修理する、改良するというようなことをしておりません。したがいまして、これは非常に場当たり的な修理しかやっていないのではないかと私は考えております。したがいまして、これから試験をやった場合に、非常に影響が大きいようないろいろな事故を起こす可能性はあるというのも御指摘のとおりだと思います。  そのような場合に実用化というのはどうするのかという御質問でございますが、これは当然そういう危険を全くゼロにするということはどんな場合にも不可能かと思います。飛行機にしましても電車にしましても、事故がゼロということはあり得ないと思いますけれども、ある程度以上そういう危険が少ない、ある程度以下であるということを確認してからでなければ、実用にはすべきものではないというのは当然のことではないかと思います。特にこの原子力船の場合には、いろいろな港に立ち寄るという場合にはそこへ原子力発電所を持ち込むのと同じでございますから、原子力発電所は余り人口の稠密なところにはつくれないということはよく知られているとおりでございますが、そのような危険性を伴う原子力発電所を、しかも小型とはいえ常時動いたりあるいは衝突、沈没の危険のあるようなものを人口の多い港に持ってくるというようなことは、安全の上にも安全を確認してからでなければすべきことではないと私は考えます。
  15. 竹村数男

    竹村参考人 お答えいたします。  実用化と危険性の確率というようなものについてどう考えるかということでございますが、「むつ」は十の八乗回に一回の大波に遭うという確率で設計をやっております。一億回に一回という大波は、これは北大西洋のワルデンという人の統計調査によって、世界で最も厳しい波ということから導かれたものでございます。先ほど小出参考人もおっしゃられましたように、絶対安全ということは難しいわけでございますので、やはりある程度の確率で評価するという方法がやむを得ないかと思いますけれども、「むつ」については、海難というようなことに関してはそのように十分配慮していると思います。
  16. 松前仰

    松前委員 今お答えいただいた中で、十の八乗回に一回の大波というような話もありましたけれども、それは設計の段階の仕様という形でございます。現在の「むつ」の状況というものは、先ほど小出先生もおっしゃいましたある程度以下にやはり信頼性を保たなければいけないという、そこまで達していないように私は思うのであります。その数字自身は今ここで明らかになっておりませんので何とも申し上げようがないのですが、いろいろなところから情報をとりますと、非常に不備があるように思えてならないわけであります。そういう点で先ほど御質問をさせていただいたわけでございます。  時間が迫りましたので、最後に一つ小出先生にお聞かせ願いたいのですが、これは技術の問題とは離れてしまいますが、石油が枯渇した時点で大量の物流を伴う経済様式、そういうものが本当にあり得るのだろうか。石油が枯渇したときに原子力船が必要になるという話があちらこちらで出ておりますけれども、そういう事態になったときには、本当に石油を運搬するということ自身もなくなってくるし、大量物流を伴う経済様式、そういうものが存在しなくなってくるのじゃないかというような感じもするのですが、その辺についてお答えいただければと思います。
  17. 小出昭一郎

    小出参考人 お答えいたします。と言いましても大変難しい御質問でございまして、これにお答えできるような方は世界じゅうにいないのではないかというような気もいたします。  私も、石油が枯渇した以後にどういう社会ができるのかというようなことはいろいろ考えてみてはおりますけれども、なかなか想像もつきませんが、今御指摘のような、ほかの点は変わらないで非常に大量の物資を、今、日本に運んでいる物資のうちで一番大きい割合を占めているのは石油の運搬かと思いますけれども、石油が枯渇したときに石油を運搬する必要がなくなるのは当然でございまして、そういうことも含めまして社会の仕組みがかなり根本的に変わるというふうに私は考えます。  エネルギーとして今石油のうちの船に使われている部分は一〇%程度であるというふうに計算されております。さらに、その経済性から考えて、原子力船になし得るものは船のすべてではございませんから、そういうことを考えますと、またほんのわずかの石油しか船の燃料としては使われていないということを考えますと、これだけのお金を使って果たしてその石油を節約するためにプラス・マイナス、経済性という面からいって採算がとれるのかどうか。もっとほかの点で、非常に大量の浪費をしているというところに目を向ける方がよろしいのではないかというふうに考えております。
  18. 松前仰

    松前委員 時間が参りましたので、終わります。
  19. 大野潔

  20. 小川新一郎

    小川(新)委員 きょうは、三人の御先生方お忙しいところをありがとうございました。  まず小出先生にお尋ねしますが、先生の御持論であるその反対の中で、事業団体質論というものが出ておりました。これはまことに、技術者としてまた科学者として非常に厳格な物の見方の中で、事業団がどういう体質のために、そのボタンの一つのかけ違いが、今日の日本原子力船むつ」の実験船としての使命を達し得なかったという最大の責任がその事業団体質の中にもし含まれているものであるならば、これは我々政治を担当する者としても聞き逃すわけにもいかないし、見逃すわけにもいかないわけでございます。その点、まず率直な御意見をもう少し明快にお尋ねしたいと思うのでございます。  その次に、私も昨日原子力船むつ」の視察に行ってまいりました。関根浜へも行ってまいりました。確かに先生の御指摘になったように、関根浜を見た段階では大湊と比較にならない地理的条件、海洋的条件等々ございまして、私も関根浜ではどうかなという意見を持っておる一人でございます。そういう点も踏まえて、この問題については非常に大きく考えなきゃならぬ点もございますが、当日、「むつ」へ行ってまいりましたときに、四十人近い方々が「むつ」に寝泊まりしておりまして、「むつ」の廃船ということは我々担当している者にとっては耐えがたい問題なんだという感情的な問題も踏まえた中で、定期的に毎日のようにあらゆるところの点検と検査等々をやっております。しかし、その肝心の原子炉の心臓部とも言うべきところについては、説明の範囲の中では、点検したり検査をしたりいろいろ修理したりすることができないのだということでございます。  先ほどもお話がありましたように、外部のいろいろな附属の部分については点検したりそういった問題の修理等を行って、いつでも出航できる態勢にあるのですが、今回十年間たった今日の「むつ」の状態の中で、船長初め事業団の幹部は、いつ出航命令が出ても安全に出航できる確信がある、ただあとはゴーのサインを待つばかりだ、こういうことを我々に訴えていたのでございますが、先生方の考えまた体験等からして、果たして「むつ」が今ゴーのサインが出て安全に航海ができるとお考えでしょうか、まずこの点、あらゆる角度から三人の先生方にお尋ねします。
  21. 安藤良夫

    安藤参考人 ただいまの御質問にお答えいたします。  現在「むつ」がつながれている状態では、先生の御指摘のように、原子炉のふたはあけてはいけないとか非常な制約のもとに、やれるだけのことを乗り組みの方が非常に熱心にやっておられます。ふたをあけないで中を調べる一つの方法としては、一次冷却水のサンプリングと申しまして、少しずつ抜き取りましてこれを検査する。そうしますと、もし燃料等に異常がありますと放射性の物質が例えば出てくるとか、そういうようなことがわかるわけでございますが、現在やっております検査の結果では、水質は非常にきれいに保たれて、まず燃料体などには現在のところ故障がないんじゃないか、ふたをあけない状態でそういうことが推測されます。  それで、実際に航海するあるいは航海しないまでも係留して炉を動かすということになりますれば、ふたをあけてはいけないとかそういった一連の拘束を解いていただいて、そして先生が御心配になるような点を実際に炉をあけて点検して、またしかるべき処置をすることが必要ならばする、必要がないということであればそれを確認して実際に炉の出力を上げる、そういうようなことをした方がよろしいのではないかと考えます。  以上でございます。
  22. 小出昭一郎

    小出参考人 まず、事業団体質ということでございますが、率直に述べさせていただきますと、これは事業団が、例えばドイツのオット・ハーン号の場合なんかと比べることがよくやられておりますけれども、技術者、科学者の数が少ないということが指摘されております。事務もまるで業者に発注するための事務機構であるかのようであったというような批判がされておりますが、私もそのような感じを持ちます。あの程度の人数では、技術的な面で業者を指導してちゃんとしたものをつくらせる、それを監督指導するというようなことはとてもできなかったと思います。むしろ、企業から出向してきた社員が多くて、政府のお金で研究をやって、できればそこからもうかりそうな種を自分の社のために仕入れていこうというような、そういう体質であったのではないかとすら疑わせるものでございます。そういう点で、後ほど「研究」という字がつくように若干改められましたけれども、本質的には変わりはなかった、先ほども申し上げましたがそういうふうに思っております。そのような体質で満足のいくような研究ができるはずがないわけでございまして、それがたちまちああいうふうに放射能漏れというような形で露呈したというふうに私は考えております。  先ほどからも申し上げておりますように、このような非常に複雑なシステムを初めてつくって運転するというような場合には、非常に慎重に、まずそろばんを度外視してそういうものを試作して、いろいろ試験をし、悪いところを少しずつ直して、そしてこれで大丈夫ということになってから、今度はコストをどうして下げてつくることができるか、どうすれば安くできるかということをその次の段階で考えるというふうにすべきではないかと思うわけでございます。そういう点で、この事業団体質は非常に不十分であったというふうに思います。  それから、炉の心臓部の点検をやってないのではないかというお話でございますが、これは確実に炉の中がどうかなっているということはもちろんないと思いますけれども、そういう可能性は十分にあるわけでございます。どんな機械でも、十年もほっておけば何らかのひび割れができるとかそういうようなことはあるわけでございまして、原子炉のように非常に複雑な装置の場合には、やはり内部を点検するということは必要なのではないかと考えるわけでございます。外から見てある程度のことはわかるということはございましょうけれども、人間の体のようにやたらにあけてみることができない場合は、もちろんむやみに切り刻むわけにはいきませんけれども、原子炉のような場合には、やはりもう一度中を全部改めてから運転をするというのがこういう機械の場合の常識ではないかというふうに私は考えます。  したがいまして、これで安全に航海できるかどうか。航海だけでございましたら、原子炉だけで運転するわけではございませんから何とかできるかと思いますけれども、いろいろ思いがけないことが起こる可能性は非常に高いというふうに思っております。
  23. 竹村数男

    竹村参考人 お答えいたします。  むつ原子力船研究開発事業団事業所の人たちあるいは本部のこちらにおられる人たちが、ゴーのサインが出れば今でもやれるよという、その自信は私は当然だろうと思いますし、私も間違いなくそうであろうというふうに思います。ですが、前回の臨界試験をやりましたときにも、やはり原研から相当の人に応援に来てもらっておる。そういうことを考えますと、原研と一緒になってこういう問題を着実にやっていくというのは非常によろしい、こういうふうに思います。
  24. 小川新一郎

    小川(新)委員 いろいろお話を聞いておりまして、根本問題は、こういう原子力船実験日本が続けていくべきであるのかどうか。それともやめてしまって、今世界では、もう原子力航空母艦だとか砕氷船だとかまたは潜水艦だとか、軍事の面ではもっと過酷な状態の中で原子力を使った艦船が動いているわけでございます。それはもう平和利用どころではない、最も過酷な戦闘状態にたえ得るような条件のもとでの設計や運用をされておるわけでございます。そういう中で、そこまで技術が進んでいるものを、我々は今さらここでその研究をしなくとも、そういう技術を買ってきて、日本の将来、二十一世紀に向けて原子力船実用化時代が来たときには、先進諸外国からのそういった技術を導入することの方が安上がりであり、なおかつ安全で、政治問題も起きないのじゃないか、こういう意見もあるわけでございます。  これは大切な問題でありまして、この問題の解決がはっきりしないときには、体質論がどうだとか、ここを直せばどうだとか、こういった問題は当然、進めていく以上は事業団体質も直さなければならないだろうし、それから今言ったような技術の面も、先生が御指摘になったいろいろな問題を参考にして改革していくのですけれども、根本問題であるところの日本実験する必要がないんだという発想からではそういう問題も単なる水かけ論になってしまいますので、これはエネルギー問題または原子力の平和利用という他の問題等も踏まえた上で、舶用炉研究という問題が日本では必要であるのかないのか。  また、「むつ」がただいまゴーのサインが出れば大丈夫だという確信もある中で、我々としては、今後その根本問題である点をまず三人の先生方にお尋ねをしたいわけでございます。すなわち、原子力船むつ」の研究継続がそれともいわゆる廃船がという二つの中に、こういった諸外国から技術を導入すればいいではないかというような根本問題に触れた問題がございます。あとは政治が非常に絡んでしまってごたごたになっていることも事実でございますし、これはまたこれとして解決しなければならぬ問題でございますが、その根本についてお尋ねしたいと思います。
  25. 安藤良夫

    安藤参考人 ただいまの点につきましては、先ほど引用しました原子力委員会原子力船懇談会報告にも、その点各委員で討議しまして報告書に載っておるわけでございますが、まず私は「むつ」を存続した方がよろしいという意見でございます。  それで、「むつ」を廃船としまして技術導入によって代替するという考えにつきましては、技術導入や情報の購入が可能であるといたしましても、内容に制限が加わる可能性がございまして、必要とするノーハウの導入も容易ではないと考えます。将来原子力船運航に何かトラブルが生じたようなときに、自分で技術を蓄積しておりませんと非常に困るという問題があるということで、技術導入は非常に困難ではないかと思います。  これは、「むつ」を当初やるときもそういう議論がありましたのですが、いわゆるリコーバー・ポリシーというのがありまして、アメリカではすべての原子力船の情報は一切海外に出さない、アメリカでそれを漏らした者は死刑にまでなるというような非常に厳しいポリシーがありまして、日本は独自で開発しよう、そういうことに昔からなったわけでございます。
  26. 小出昭一郎

    小出参考人 お答えいたします。  この原子力そのものの利用を、これは放射能等の危険があるからたとえ平和利用でもやめるべきだという意見も一部の方にはございます。それにも一理があると私は思うのでございますけれども、現実問題としてそれは通るとは思いませんので、現実のこういう世界において日本としてとるべき道はということで申し上げます。  そうしますと、私は、「むつ」はだめでございますけれども、「むつ」を今さら古家の造作のようなことはすべきでないと思いますけれども、今御指摘のような世界の趨勢からいたしますならば、舶用炉研究それ自身は日本で当然やるべきであると思います。そして、軍事利用等で進んだ外国の技術を安易に導入するというような考え方は、少なくとも日本のような研究あるいは工業力を持った国のとるべき道ではない、むしろちゃんとしたものをつくるのに貢献するという方に生かすべきであると思うわけでございます。ただ、その舶用炉研究というものを非常に長期的に基礎からやるべきであって、今「むつ」をどうこうするというようなこととは別のことと私は考えておりますので、そういう意味で、「むつ」は廃船にし、原子力研究所において営利などと関係なしに地道な研究をやっていただくのが一番いいのではないか、このように考えます。
  27. 竹村数男

    竹村参考人 お答えいたします。  先ほども私申し上げましたように、船というのは孤立移動体といいまして、全く自分だけで、しかも何か起きたら完結的でなければならないという特徴を持っておりますので、先ほど安藤参考人からも出ましたように、何かトラブルが起きてからその提携国へ電話を入れるというようなことでは、どうにもならないのでございます。したがいまして、ぜひ自主開発でなければならない、こう思います。  付言して申しますれば、「むつ」は、そういう意味では自主開発でございまして実験船でございますので、実験装置というのは少々のことはやはりあるわけでございます。まあ動かしていただきたい、こういうふうに思います。
  28. 小川新一郎

    小川(新)委員 終わります。
  29. 大野潔

    大野委員長 工藤晃君。
  30. 工藤晃

    工藤(晃)委員 きょうは、お忙しいところを三人の参考人の方おいでくださいまして、ありがとうございます。  私は、最初に小出さんと安藤さんに伺いたいのですが、放射線漏れの事故が起きた後で、大山委員会がつくられまして報告書を書いております。この大山委員会の結論に対しましては、科学者の中にも部分的にいろいろ批判も出されておりますが、しかし、私も改めて読んでみまして、まさに起こるべくして起きたということが読み取れるわけであります。  そこで一つ問題なのは、詳細設計とかスペックなどについては、事業団にまさにその事業団体質というようなことがありまして、メーカー任せであった、だからああいうことが起きるのは当然だということも非常に強く指摘してありますが、それだけでなしに、基本設計の段階でもやはり問題が提起されておりまして、原子炉安全専門審査会が非常勤の方ばかりである、遮へいの専門家と見られる人もいなかったという、基本設計の安全審査段階からもう既に疑問も出されているということが報告書にはっきり出ているわけです。あの事故が起きてから、その後佐世保で改修それから点検ということになったんですが、一体その基本設計まで問題があるのかどうか、あるいはそれはそういう安全審査の非常に弱点といいますか不十分さ、それがどう根本的に改善されたとお考えでしょうか、その点についてまずお伺いしたいと思います。
  31. 小出昭一郎

    小出参考人 お答えいたします。  今御指摘の点でございますが、安全審査に関しては、私はほとんど改善されていないように思います。すべてこの安全審査は、今御指摘のように、非常勤のお忙しい大学の先生の名前だけをおかりする、そして書類だけの審査というようなことがあらゆるところで起こっていると思います。これは「むつ」に限りませんで、原子力行政全体にそういうことがまかり通っているように思います。  安全審査とかそういうことは業者、メーカーに任せておいて、そしてそこが大丈夫と言えば大丈夫である、つくった人が大丈夫と言えば大丈夫だということでなしに、本当は第三者がこれを厳重に審査するというのが審査とか監査とかというものであろうかと思いますけれども、そういう点、御指摘のように非常に不十分である。アメリカ等においてはもっと非常に徹底した審査、監査がなされているというふうに私は考え、その点、日本は人手をなるべく省く、あるいは予算を節約するというようなこともあるのかと思いますけれども、非常に遺憾であると考えております。
  32. 安藤良夫

    安藤参考人 お答えいたします。  「むつ」の審査の場合の安全審査では、普通の発電所の炉のような場合の審査ですと、基本設計に対する審査を安全専門審査会がいたしまして、それから今度は工事認可に対するものは、発電炉の場合ですと通産省がやりまして、これに対して、先生方としては通産顧問の先生がおられて御意見を伺う、そういうようなシステムでやっております。船の場合には、基本設計に対しては安全専門審査会で行いましたので普通の発電炉の場合と同じでございますが、今の御指摘の遮へいのところに関しては、詳細設計はまだ出ていない段階の話でございまして、船内のいろいろな場所の放射線量率を幾ら以下に抑える、こういうようなことをいろいろな箇所においてチェックしまして、その線量以下におさまるようにする、そういうような審査をしたわけでございます。ですから、詳細設計ができておりませんから、そこでは詳細な遮へいの問題を見ておりませんし、御指摘のように、遮へいの専門家も多分いらっしゃらなかったのではないかと思います。ですから、それから後二次審査と申しますか、工事認可になるわけでございますが、私は運輸省の方に関係しておりませんけれども、運輸省はその工事が終わってできたところで検査して、合格ならば合格、不合格ならば不合格、端的に申しますとそういうことになっておりまして、今度の場合、決められた線量率におさまらなくて放射線漏れが起こったので、現在合格は与えられない、そういう形になっております。  その後、大山委員会のいろいろな勧告は原子力委員会等でも入れられまして、審査の方法がいわゆるダブルチェックをやるという形になっておりまして、発電炉の場合には行政庁が先に一次審査をして、安全審査には二次審査になってかかる、そして工事認可はさらにその後やる、そういうように何段階も経るということになっております。  原子力船の今度の遮へい改修の場合には、もうその後は遮へいの専門家も審査委員に入っておりますし、遮へいの設計ができた段階で安全審査会でそれをチェックされて、遮へいばかりでなく先ほど出ましたECCSの問題とか、そういった炉の内部に関するいろいろな改修に関しても安全審査が行われて、多くの専門家の御意見でさらに手を加えたところもございますし、万全を期しているわけでございます。  それで、私も安全審査委員をしておりますが、「むつ」の遮へい改修とかその他の問題に関する安全審査の部会には、私はほかのことで余りにも関連が深過ぎるということで委員に参加しないで、ほかの先生方がもっと完全に第三者的な立場でごらんになって、安全であるという審査をなさっておられます。  以上でございます。
  33. 工藤晃

    工藤(晃)委員 小出参考人にもう一度別の問題を伺いたいわけであります。  海上でテストした方がいいというメリットはいろいろ言われているし、そうだろうと思うのですが、だからといって、陸上で同じような炉をまず十分テストをする必要がないなんということは成り立たない議論だと思いますが、その点が一つ。  それからもう一つ小出さんも事業団体質ということを言われましたけれども、今度の改正法の法案を見ましても、これまでの原研プロパーでやっていたようなことは相変わらず原子力委員会原子力安全委員会の議決を経て、それをもとにして計画をつくるということですが、いわゆる原子力船関係のところは、安全委員会は全然入ってこないで「原子力委員会の決定を尊重して」ということだけになってきて、そこのところがまさに二元的なことになり、しかも先ほどお話がありましたように、営利事業をしている人の理事の兼任もむしろ事業団法に合わせるようなやり方をしてくると、まさに原研そのものの事業団化ということが進むと思います。  しかしもう一歩踏み込んで考えてみますと、原子力研究所はなぜ出てきたか。原子力基本法がありまして、そして公開、自主、民主という三原則の研究機関としてつくられた。それが原子力基本法から外れた事業団のそういう体質が持ち込まれると、これは原子力研究そのものにもいささか不安が出てくるのではないかと考えますが、その点いかがでしょうか。以上に限りまして小出さんから伺いたい。
  34. 小出昭一郎

    小出参考人 私も同じように原子力研究所事業団化ということに対して非常に危惧を感じているということは、先ほど申し上げたとおりでございますが、その三原則というのは非常に守りにくい。例えば企業秘密というようなものと抵触するために、公開の原則というものは非常に守りにくいということがよく指摘されているわけでございますが、事業団化が進めば公開ということは全く空文化する可能性があるというふうに考えるわけでございます。  もちろん、企業にとっては秘密というようなことはある意味では当然のことでございますから、そういう意味で、原子力研究所というのは特殊法人として、そういうものから超越した存在として存続すべきものであり、舶用炉研究もそういう立場でやってこそ、余り当面の利害というようなことを考えずにやった方が、長期的に見た場合には結局は立派なものができるのではないかと私は考えますので、原子力研究所事業団化、そういう危険を含むようなこの改正には、先ほども申し上げましたように私は賛成いたしかねるという立場でございます。  陸上でなく海上実験をやった方がいいに決まっているということは当然でございますけれども、研究の順序として、まず陸上でちゃんとしたものをつくり、それから海上へそれを持ち出すというのが常識的に考えても当然でございますし、一般の船のエンジンに関してもそのように定められていると私は伺っております。初めての国産の舶用炉ということであれば、当然そういう手順を踏むべきものであると私は考えております。
  35. 工藤晃

    工藤(晃)委員 安藤参考人に伺いたいと思います。  安藤さんは例の懇談会の一員だったと思いますが、あのことと、それから先ほどお話しされたことでありますが、石油が枯渇すればまた原子力船が出てくるのではないかというお話、それから実際原子力船がペイするのはいつかということがあります。例えば二十一世紀だなんて最近言われているのですが、実際それが二十年先か三十年先か四十年先かわからない、大体そういう漠然としたものだと私どもは考えるのですが、そうではないのかということが一つ。  それからもう一つ、これはちょっと意地の悪い質問になるかもしれませんが、原子力船懇談会としてああいう報告書を書かれる以上、これまで国民の間にあったごく当たり前の、常識的など言うけれども、これが健全な考えだと思いますが、ともかく今まで二十年間たって、実際に「むつ」が試験だといって動いたのは一週間ぐらいで、それもすぐとめられてしまったし、本来の海上での試験というのは全くやってない。当初の六十億が六百億円にもなってしまった。しかし懇談会として、これからあの船はぜひ動かして実験船として使うのだという以上、あとどのくらい費用がかかるか、そういうような検討はされたのかどうか。懇談会としては、そういうことはもう全く無関心であの報告を出されたのかどうか。  それと関係して見ますと、仮に将来原子力船がペイするのが三十年後、四十年後とするとき、令ともかく「むつ」を何が何でも動かして経験を積むことがその三十年後、四十年後役立つと一般論としては言われますけれども、炉の形も今でさえ古いと言われていることもありますし、それから少なくとも今度の原研法によりますと、「むつ」の後つくるなんて書いてありませんからね、つくらないということでやっているわけですから、「むつ」を動かすのがまさにそれだけお金をかけるのに値するのかどうか、その辺は懇談会として御検討なさったのか、そこを伺いたいと思います。
  36. 安藤良夫

    安藤参考人 お金については私は余り専門家でございませんで、できるだけ安く動くということが一番望ましいことには決まっておると思います。  それから、長期間動かなかったということもございますが、技術的に放射線漏れを起こしたというようなことがありまして、それもおくれた原因ではございますけれども、社会的な情勢とかその他で、先ほど乗り組みの方のお話が、いつでも動かせるというような状態にあってそのまま待っている、そういうような期間もかなり長かったということも事実でございます。  それで、先ほど小出参考人のお話にもございましたけれども、この舶用炉研究はステップ・バイ・ステップにやった方がよろしいという、その第一のステップが原子力船むつ」の舶用炉船体も含めて炉でございまして、これをやはり第一段階として一応データはこれでとれる。それから、船であるために、船が受ける動的な荷重その他に遭遇する航海もできる可能性が残されている、今唯一の実験装置であるわけですから、これを生かすことが非常に有益と考えます。それで、原研統合されて舶用炉研究をするということは結構でございますが、陸上でできるところをある程度やりますと、その次にはやはり海上で実際に動かしてみなくちゃいけないというようなことが必ず起こるのではないかと思われるわけです。  一例をとりますと、原子炉は非常に荒れた海で、なおかつ「むつ」の場合は五〇%出力を出さなくてはいけない。地上の原子炉ですと、例えば大地震が来たというようなときにはとまるような仕掛けになっているわけですね。ところが、船が大しけに遭ったときに突如とまるというようなことでは乗組員は安心して乗っておれないわけです。荒天でも出力は確保して動かなくちゃいかぬ、そういったような非常に重要な実験が「むつ」ではできるということが重大な点であると思います。  それから、炉が旧式だと申しましても、ほとんどすべての舶用炉というのはPWRの一種でございまして、そういう点で基本的なループを備えておるわけでございますから、例えば現在関西電力とか九州電力、四国電力あたりがつくっておりますPWRも、一次系の形態としては今でも「むつ」と同じような形態をとっておりまして、「むつ」で実験できるということは非常に多いと考えます。  以上でございます。
  37. 工藤晃

    工藤(晃)委員 時間がなくなりましたので、安藤さんにもう一問だけ簡単に聞きますから、簡単にお答えしていただきたいのですが、この委員会におきましてもこの前村山委員の方から出された問題としまして、「むつ」の事故が起きてから調査班が組織されまして、三日間いろいろ測定をやった。安藤さんもそれをどこかにいろいろ使われていると思いますけれども、実際調べてみますと、あの調査というのは、その当時もいろいろ批判もされたわけでありますが、七人のうち六人までがそれをつくったメーカーの当事者であるという問題ですね。いわば第三者として調べていないという問題もありますし、持ってきた測定器も非常に不十分なものだったのではないかということを言われておりますし、それから、実際に聞いてみますと、あの調査班というのは調査報告書も出していないというふうに聞いております。これは事業団から正式に聞いておりますが、安藤さんは何かそういう調査報告書をごらんになりましたか。
  38. 安藤良夫

    安藤参考人 放射線漏れ事故がございまして数日後に、原子力研究所の宮坂さんを団長とします一行で、多分ほかの方は今の御指摘のように原子炉をつくったメーカーの方だったと思いますが、それで「むつ」に乗り組みまして、そのときは放射線漏れを起こした後でございましたので、その最初の出力上昇が私の記憶では一・四%ぐらいの出力、あるいは一・五%と書かれているところもあるかと思いますが、一・四ないし一・五%の出力で運転したときに例の放射線漏れ事故があったわけでございます。  それで、その調査班が調べに行かれまして、そして船内で、もう少し炉の出力を上げればより多くのデータがとれたかと思いますが、それでもそのときの情勢で許せる限りの、〇・二、三%でしたか、そのくらいの出力だったと思います。そこでデータをとってこられて、そしてそのとき、狭い船内ですからいろいろな工夫をして、ニュートロンのスペクトルも、粗いですけれどもそれでいろいろな方法を工夫してはかってこられて、結論的に高速中性子のストリーミングだという結果を得てこられたわけです。その一行が船から多分釧路あたりに上陸されたと思いますが、そこから飛行機で帰ってこられまして、その帰ってこられたときに私どもの放射線漏れの究明のための委員会を開きまして、そこで宮坂さんから御報告をいただいた、そういうような経過になっております。
  39. 工藤晃

    工藤(晃)委員 どうもありがとうございました。
  40. 大野潔

    大野委員長 辻一彦君。
  41. 辻一彦

    ○辻(一)委員 私は、将来を見ればやはり原子力船は必要であると思うし、また、それには自前の技術を確立しなければいけない、そういう前提で参考人に二、三の御意見を伺いたいと思います。  一つは、この「むつ」の、結果論的にこうなるのですが、やはり当初の陸上における実験が十分でなかったということを思いますが、それは四十九年九月に、これは参議院の科技特でありましたが、当時高速中性子の振る舞いについて論議をしたことがあります。そのときに山田原子力委員また宮坂原研遮蔽研究室長の答弁等を見ますと、やはり高速中性子の振る舞いについては一部予測できなかった点があったということ、もう一つは、もう少し実験をやればよかったとも受け取れるようなニュアンスの発言もあったと思います。  そういう点で、今お話しのように軽水炉は百万から八十万というのが動いているわけですから、三万六千キロワット程度の舶用炉ならば、十分な陸上での実験を重ねればまだまだやるべきことが多かったのではないかと思いますが、その点について安藤小出参考人から一つお伺いしたいのと、もう一つは、現在の遮へいに対する安全性のいろいろな対策がずっと講じられてきたのでありますが、それらを通して、既に実験はこの段階で十分なされている、心配がないというようにお考えになっていらっしゃるのかどうか、この二点をまずお伺いしたいと思います。
  42. 安藤良夫

    安藤参考人 まず、最初の点についてお答えいたします。  最初から予算が十分でございまして、陸上原子炉をつくって、そしてまた次にそれを載せる実験船をつくる、そういう二段構えてやれば非常に理想的であったかと思いますが、私は予算のことは存じませんが、当初の計画でも予算が大変厳しかったと聞いておりますので、二つシリーズにしてつくるというようなことは当時通りにくかったのじゃないかと思われまして、そしていきなり原子力船をつくるということになったんだと承知しております。  それから、次の御質問でございますが、要点をちょっと……。
  43. 辻一彦

    ○辻(一)委員 遮へい上の対策等が講じられて、もう実験としては心配がないという段階を踏んだのかどうか。
  44. 安藤良夫

    安藤参考人 失礼いたしました。  放射線漏れを起こしてから新しい遮へいの計算コードというのが利用できるようになりまして、それで計算をいたしまして、原因が高速中性子のストリーミングということで、大体そこに究明されましたものですから、普通の原子炉から真横に一次遮へい体を通して突き抜けていく中性子というのがその当時の一次遮へい体でも十分減衰されるということはわかっておりましたわけです。それで、ストリーミングに重点を置きまして計算で解析をしたことと、それから原研実験炉でかなり大型のモデルをつくって実験してそれを確かめたこと、それでかなり解析と実験とはよく一致するということを確かめまして、そしてそれから遮へい改修をやりましたわけですが、それも、放射線漏れを起こした後でございますから、かなり安全、余裕をとりまして一次遮へい体も改修いたしましたし、それから二次遮へい体が従来鋼板とポリエチレンでありましたものを、相当厚い鉄板の間にコンクリートを入れるというような遮へいに変えまして、これは原子炉をこの次にとぼしてみたときにその成果が証明されるわけでございますが、私としては、相当の解析、実験をやりましたので、多分今度原子炉を臨界にしましたときには問題ないのではないかと思っております。
  45. 小出昭一郎

    小出参考人 高速中性子の振る舞いというものは予測できなかったのではないかという御意見、これは当然でございまして、もちろん中性子一個や二個の振る舞いでしたらば物理学者が非常によく調べておりますけれども、要するにこれは非常にたくさんの、何億の何兆倍というような数の中性子が容器の中でどういう複雑な振る舞いをするか、そういうことでございますので、大変難しい問題でございます。したがいまして、これは「むつ」をつくる当時には予測が非常に難しかった。その後若干コンピューターの改善等があって、それ以前に比べれば計算等でかなり実際に近くなったのではないかと期待されている、そういう程度だろうと思います。ですから、やはりこれは予算をけちらずに、まず陸上実験をし、十分調べるべきことは調べた上で海上に持ち出すということにすべきであったという御意見に賛成でございます。そういう点が、安物買いの銭失いというようなことになるかと思いますけれども、結局高いものについたということではないかと思います。  現在、遮へいについて心配ないかということでございますが、私はやはりかなり心配があるというふうに思います。それはまた、いろいろやってみてだんだん改善して完璧なものに近づけるということであると思います。安藤参考人の御意見も、多分心配ないのではないかというふうに、余り確信があるようにはお聞きできなかったのでございますが、この参考資料の五十八ページのところにも、これは原子力委員会の書類でございますが、「既に長崎県佐世保港において、最新の知見に基づき、原子炉部分遮蔽改修安全性点検補修工事も終了しており、また、維持管理も適切に行われているので、実験を再開することにより十分有益なデータが得られるものと判断される。」というふうに書いてございますが、ここに書いてございますのはある意味では当たり前のことばかりでございますから、何も書いていないのに等しいとすら極言できるのではないかと思います。「最新の知見」というのも、今の最新ではございませんから、十年ほど前の最新でございますから、もう一度やり直す必要もあるのではないか。この書き方全体が、ほかに比べまして何か自信のないような書き方のように私には思われます。
  46. 辻一彦

    ○辻(一)委員 若干今のお話と重なるのでありますが、原子力船むつ」に要した経費をずっと見ると、建造とか原子炉の建設に要した経費よりも、問題を起こしたときに要った経費がはるかに大きな割合を占めている。そういう点から、もしもう一度事故というか問題がこれを動かして起これば、原子力船開発のみならず、原子力全体の開発問題、さらに原子力行政あり方に非常な影響を与えるのじゃないか、こういうように思います。  そういう点で、二度と問題を起こしてはならないというのが今度の大変大事な点じゃなかろうか。そうなると、時間がかかってもあるいは経費が多少高くついても、やり直す必要があるならばもう一遍やり直していく、こういう段階を踏んでもいいのではないか。それは、今すぐ原子力船が動かなければ世界の競争におくれるというならば急ぐ必要もあるでしょうが、実用化の時代が二十一世紀の初めといえば、やはり二十年とか三十年という時間があるわけですから、そういう段階を踏んでも決して遅くはないというふうに思いますが、この点について三人の方からちょっとお伺いしたい。
  47. 安藤良夫

    安藤参考人 簡単にお答えします。  まず、段階を踏んでやるということは大変結構なことだと思います。「むつ」というのが現実にかなりの投資をしてそこにあるわけでございますから、それをまず第一段階にするのがよろしいのではないか。そして、続いて次のステップを踏むというのがよろしいと考えております。
  48. 小出昭一郎

    小出参考人 ただいまの辻先生の御意見、私は全く賛成でございまして、こういう事故を二度と起こしてはならないということ、それから時間、経費を惜しむようなことはなく、幸い原子力船実用化というのはかなり遠い先であろうと思われるので、十分時間をかけ経費も惜しまずに基本的にこれをやり直すべきであるという御意見に、私は全く賛成でございます。  そういう意味で、従来のような、従来でもいろいろ問題はございましたけれども、ともかく事業団化しない、余り企業の利益でございますとかあるいは時の政治の動向でありますとか、そういうようなことに振り回されないような体質研究所でこれをやるのが肝要なことではないかというふうに思います。そして「むつ」の始末と、それからそういう基本からやり直す舶用炉研究とは、やはりちゃんと切り離した方がすっきりする、またちゃんとしたことができるというふうに信じます。
  49. 竹村数男

    竹村参考人 お答えいたします。  経費の問題でございますけれども、日本のやり方というのは、経費と時間をちょん切りましてやっていくという悪い何かしきたりみたいなものが蔓延しております。それはぜひ国も十分考えていただきたいと思います。  それから、問題が出れば原子力開発は当然非常なブレーキになりオジャンになる可能性があるだろうということは、いかなる問題が出てもというふうには私はとりません。実験船でございますから、「むつ」が放射能を外に出すというようなたぐいの事故というのは、まず私としてはないと断言するくらいに信念を持っております。私も、原子力船むつ」の安全審査、二段階のうちの第一段階の安全審査にタッチさせていただきました。そのときにやはりかなり厳しい審査ということで、そういうふうに思っております。そういうことですから、段階的にやっていくということであれば、私は「むつ」を何とか動かすということを非常に希望するものでございます。
  50. 辻一彦

    ○辻(一)委員 最後に第三として、やはり原子力研究所は基礎研究が中心であって、そしてその政治的なあるいは企業的ないろんな要素の影響を排除してやっていく、そういう保証がされておると思うのですが、今回その事業団的性格がこれにつけ加わるということで、だから役員の選出にしてもあるいはその内容にしても、必ずしも基礎研究とは言いがたい問題が入ってくるんですが、そういうことによって原研自体の持つ、余り他に影響を受けずに原子力を中心とした研究を基礎的に進めていくというこの性格がゆがむ心配はないかどうか、この点についてひとつ安藤小出参考人から御意見を伺いたいと思います。
  51. 安藤良夫

    安藤参考人 原研開発的な研究、どこまでを基礎研究と言い、どこからを開発研究と申しますか、舶用炉研究原研に加わったといたしましても、従来似たような例では、現在動燃事業団開発しております高速炉の初期の部分はかなり原研で、これを基礎研究と言うか開発研究と言うかは別としまして、高速炉の研究も実際に行われました。現に、まだどこでも行っておりません高温ガス炉というようなものの研究、これは炉は違いますけれども、舶用炉研究と非常に性格が似ていると思いますが、そういうことが現在でも原研で行われておりまして、一つの炉を設計するというようなことに原研のうちのある部分が集結してやっておるわけでございますから、そういうようなプロジェクトがもう一つその舶用炉あるいは原子力船開発ということで加わるということで考えれば、そう不自然ではないと私は考えます。
  52. 小出昭一郎

    小出参考人 ただいまの辻先生の御指摘は、私も先ほど申し上げたことでございまして、原子力研究所体質事業団的な体質を持ち込んでは、また同じことを繰り返すおそれが多分にあるということはたびたび申し上げたとおりでございまして、先ほど、原子力研究所法の一部改正にはそういう改悪と考えられるような部分が含まれているように私は危惧すると申し上げましたが、それはそのことでございます。  研究と申しますのは、わかっていることを研究するのは研究ではございませんので、どうなるかわからない新しいものを考えるというのが研究でございます。したがいまして、それにどれだけの予算をかけたらどういうものができるか、そういうことがわかっていれば、これは研究ではないわけでございますから、予算幾ら幾らでいついつまでにというようなことを制限するというようなことは、研究というものの本質とそぐわないものであると私は考えます。そういう点、工学部の安藤さんの方と、私、理学部を出ておりますので、多少考えが違うかもしれませんけれども、今回のような舶用炉というような場合には、まだその理学的な研究の段階が終わっていないというふうにも考えますので、もっとじっくりと地道にやるということが必要ではないかと思います。  それから造船業界、十年前「むつ」をつくったころには大変関心をお持ちであったというふうに理解しておりますが、このごろは、原子力船の時代は遠のいたということで、ほとんど関心をお持ちでないというようにも伺っております。そういうふうに、これは当然のことでございましょうけれども、メーカー、業界というようなものは、非常に熱心になるかと思えば、もう捨てて顧みないというようなことがあるわけでございますから、そういうものに振り回されないような体質原子力研究所は持続してほしいということでございます。
  53. 辻一彦

    ○辻(一)委員 終わります。
  54. 大野潔

    大野委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人方々には、本日長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。(拍手)  この際、暫時休憩いたします。     午後零時十八分休憩      ————◇—————     午後零時四十三分開議
  55. 大野潔

    大野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  これにて内閣提出日本原子力研究所法の一部を改正する法律案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  56. 大野潔

    大野委員長 これより討論に入ります。  討論の申し出がありますので、順次これを許します。平沼赳夫君。
  57. 平沼赳夫

    ○平沼委員 私は、自由民主党・新自由国民連合を代表いたしまして、日本原子力研究所法の一部を改正する法律案について賛成の討論をいたします。  我が国石油を初めとするエネルギー資源に乏しく、エネルギー源の約八割を海外からの輸入に依存し、とりわけ政治的にも不安定な状態にある中東地区からの原油の輸入に多くを依存しております。かかる脆弱な体質を有する我が国のエネルギー事情等にかんがみれば、我が国が将来にわたり、経済の安定成長と国民生活の向上を確保するためには、石油にかわるエネルギー源の研究開発利用を促進し、エネルギーの供給構造の安定化を図っていくことが必要であります。このためには、石油代替エネルギーの中心的役割を担う原子力開発利用を強力に推進しなければなりません。  原子力船舶への利用を推進することは、エネルギー需給の面からだけではなく、海洋国家、世界有数の造船国、海運国としての我が国の国際的な地位を将来にわたり保持するという観点からも重要であります。しかしながら、今日までの我が国原子力船研究開発の進捗状況は、遺憾ながら原子力船むつ」の開発が著しくおくれ、既に原子力船建造運航経験を有するアメリカ、西ドイツ等の先進諸国に比べて、相当立ちおくれた段階にあります。原子力技術開発は一朝にして成るものではなく、将来における実用化に適切に対応し得るような技術知見経験等の蓄積を図るため、原子力船研究開発を段階的、着実に進めることが不可欠であります。日本原子力船研究開発事業団原子力船むつ」による研究開発あり方については、現在、種々の見地から検討が加えられておりますが、原子力船開発のために必要な研究の推進は、その検討結果いかんにかかわらず長期的に見て必要であります。  また、日本原子力船研究開発事業団は、昭和五十五年の第九十三回国会における日本原子力船開発事業団法の一部改正の際、行政の各般にわたりその簡素化及び効率化を進める見地から、他の原子力関係機関統合するものと決定したところであり、行政改革推進の見地から、これを実行に移す必要があると考えます。  我々は、今回の法律改正によって、日本原子力船研究開発事業団日本原子力研究所統合することは、同研究所の豊富な技術経験、実績を活用して、船舶原子炉研究開発の総合的な推進を可能とするばかりでなく、行政改革の見地から見ても、その効率化、高度化を図るものと期待するところであります。  以上、自由民主党・新自由国民連合を代表して、本法律案に対する賛成討論を終わります。(拍手
  58. 大野潔

    大野委員長 工藤晃君。
  59. 工藤晃

    工藤(晃)委員 私は、日本共産党・革新共同を代表し、政府提出日本原子力研究所法の一部を改正する法律案反対の討論を行うものであります。  初めに、この審議は十分尽くされてないと思います。私もまだ多くの問題を残しておりますが、それにもかかわらず、こういう重要な法案の審議をここで終わり、採決するということに対し、法案の扱いとしても、強くこれに対して抗議するものであります。  さて、反対の第一は、政府のこれまでの原子力船開発が無責任、浪費、国民と科学者無視の態度に終始してきたものであったにもかかわらず、その深刻かつ抜本的な反省のないまま、原船事業団原研統合するということの不当性にあります。  今日、「むつ」の開発をめぐって、歴代の自民党政府が単に失政というにとどまらず誤りの上に誤りを重ねてきたことは、だれの目にも明らかとなっているのであります。それは、与党内においてさえ「むつ廃船論が公然と唱えられていることでも示されております。  今回の法案は、その政治責任を明らかにし、同時に原子力船のこれからの政策、計画を確立した上で統合するというものではなく、みずからの責任を棚上げし、「むつ」の取り扱いについても明らかにしないまま「むつ」を原研に移管するというものであり、断固として容認できないものであります。この法案が成立するならば、「むつ」をいわば恒久的に存続する道が開かれるとともに、一切の責任を原研に押しつけるということになるのであります。  第二の理由は、原船事業団原研統合するという形式をとっているのに反して、原研事業団体制、組織、業務に合わせるという、いわば原研を名実ともに事業団化する点であります。  あの大山委員会報告でも、事業団事業団体質ということを強く指摘したものでありますが、その後一体どれだけ改善されたでありましょうか。本来、原子力研究所は、原子力開発における自主、民主、公開の三原則に基づき、我が国において原子力の平和利用、開発研究を行う、原子力基本法にはっきり定められた開発研究機関であります。ところが、現在原研においては、大企業への委託研究やプロジェクト研究などが増加しており、このことは基礎研究や安全研究を軽視するものであり、原研をいわば事業団化する傾向として多くのところから指摘されてきたものであります。  今回の改正案は、役員の規定、補助金の削除、余裕金の運用など、組織、資金の重要部分を事業団法の規定に合わせる改悪を行っており、主客転倒の統合というものとなっているわけであります。政府は、この改定を最近の立法事例に倣ったものと強弁しておりますが、この態度は、原研原子力基本法という原子力利用を厳格に平和目的に限定した特別な法的位置を占めていることを否定し、原子力基本法の諸原則を重視していないことを示していることをはっきり告白したものと言わざるを得ません。そのことは決して容認できないものであります。  さらに今回の改正案は、原子力船事業団法の諸規定をそのまま原研に持ち込んでおります。主務大臣の権限や業務がそれであります。これによれば、原研は二元的な組織、業務をとることになり、開発研究業務に重大な支障や混乱を生ずるおそれがあります。  第三に、政府は本法案の提案理由説明の中で行政改革をうたっていますが、本法案は全く行政改革に値するものではなく、逆に浪費の典型ともいうべき「むつ」を惰性の論理で生き長らえさせようとするものであり、浪費の拡大であります。行政改革と言うならば、「むつ」を廃船とするため原子力船事業団解散すべきであります。  日本共産党は、本法案を政府が撤回の上、「むつ」の廃船のためその手続や方法、さらに「むつ」の将来について研究者むつ市を初めとする関係自治体などの意見を反映した民主的な検討機関を設け、廃船を進めることを主張するものであります。  以上で討論といたします。
  60. 大野潔

    大野委員長 これにて討論は終局いたしました。     —————————————
  61. 大野潔

    大野委員長 これより採決に入ります。  内閣提出日本原子力研究所法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  62. 大野潔

    大野委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     —————————————
  63. 大野潔

    大野委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、平沼赳夫君外三名から、自由民主党・新自由国民連合、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議及び民社党・国民連合の四派共同提案に係る附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  この際、提出者から趣旨の説明を求めます。渡部行雄君。
  64. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 ただいま提案いたしました附帯決議案につきまして、提案者を代表し、その趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     日本原子力研究所法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   日本原子力船研究開発事業団日本原子力研究所統合するに当たり、政府は、次の事項に関し、特に留意すべきである。  一 原子力船開発のために必要な研究は、原子力基本法第二条に示された平和目的に限り安全の確保を旨として行うものとし、かつ基礎研究を重視すること。  二 原子力船むつ」の取り扱いについては、広く関係各方面の意見を聴取するとともに、従来の経緯にも配慮しつつ、国会における審議を踏まえ、国民に論点を明示するよう努め、今後かつてのような事態が生じた場合の責任と影響の重大さを認識の上、早期に公正妥当な結論を得るようにすること。  三 統合に伴い日本原子力研究所原子力に係る諸般の研究成果、経験等が有機的、効果的に活用されるよう、組織、業務運営の方法に配慮すること。  四 日本原子力船研究開発事業団のこれまでの業務運営のあり方等に検討を加え、その業務の円滑な移行及び統合後の職員の処遇について配慮するとともに、日本原子力研究所の全体の研究業務の推進に支障が生じないよう努めること。 以上でございます。  決議の各事項の内容、趣旨につきましては、案文及び委員会審議を通じ、十分御理解いただけることと存じますので、詳細の説明は省略させていただきます。  何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
  65. 大野潔

    大野委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  66. 大野潔

    大野委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。  この際、岩動国務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。岩動国務大臣。
  67. 岩動道行

    岩動国務大臣 ただいまの附帯決議に対しましては、その附帯決議に盛られました御趣旨を十分尊重いたしまして、政府といたしまして万遺漏のないよう意を用いてまいりたいと思います。     —————————————
  68. 大野潔

    大野委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  69. 大野潔

    大野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  70. 大野潔

    大野委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時五十六分散会