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1984-04-24 第101回国会 衆議院 科学技術委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年四月二十四日(火曜日)    午前十時二分開議  出席委員    委員長 大野  潔君   理事 小宮山重四郎君 理事 笹山 登生君    理事 平沼 赳夫君 理事 与謝野 馨君    理事 大原  亨君 理事 渡部 行雄君    理事 小川新一郎君       岸田 文武君    佐々木義武君       櫻内 義雄君    森山 欽司君       小澤 克介君    関  晴正君       松前  仰君    村山 喜一君       安井 吉典君    遠藤 和良君       小川  泰君    工藤  晃君       辻  一彦君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      岩動 道行君  出席政府委員         科学技術庁長官         官房長     安田 佳三君         科学技術庁長官         官房審議官   堀内 昭雄君         科学技術庁長官         官房会計課長  窪田  富君         科学技術庁研究         調整局長    福島 公夫君         科学技術庁原子         力局長     中村 守孝君         科学技術庁原子         力安全局長   辻  栄一君         運輸省船舶局長 神津 信男君  委員外出席者         議     員 渡部 行雄君         議     員 大原  亨君         参  考  人         (日本原子力船         研究開発事業団         理事長)    井上啓次郎君         参  考  人         (日本原子力船         研究開発事業団         専務理事)   福永  博君         参  考  人         (日本原子力船         研究開発事業団         理事)     野澤 俊彌君         参  考  人         (日本原子力研         究所理事長)  藤波 恒雄君         参  考  人         (日本原子力研         究所理事)   吉田 節生君         科学技術委員会         調査室長    曽根原幸雄君     ――――――――――――― 委員の異動 四月二十四日  辞任         補欠選任   小澤 克介君     関  晴正君   松前  仰君     安井 吉典君 同日  辞任         補欠選任   関  晴正君     小澤 克介君   安井 吉典君     松前  仰君     ――――――――――――― 四月二十日  日本原子力船研究開発事業団解散に関する法  律案大原亨君外四名提出衆法第二二号) 同月十九日  放射線被曝線量基準緩和反対等に関する請願  (森井忠良紹介)(第三〇四三号) 同月二十四日  放射線被曝線量基準緩和反対等に関する請願  (竹村泰子紹介)(第三五九四号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  日本原子力船研究開発事業団解散に関する法  律案大原亨君外四名提出衆法第二二号)  日本原子力研究所法の一部を改正する法律案  (内閣提出第五五号)      ――――◇―――――
  2. 大野潔

    大野委員長 これより会議を開きます。  大原亨君外四名提出日本原子力船研究開発事業団解散に関する法律案議題といたします。  提出者から趣旨説明を聴取いたします。渡部行雄君。     ―――――――――――――  日本原子力船研究開発事業団解散に関する法   律案     〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――
  3. 渡部行雄

    渡部(行)議員 私は、日本社会党護憲共同を代表して、ただいま議題となりました日本原子力船研究開発事業団解散に関する法律案について、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。  原子力船むつ」は、基本設計に着手されてから既に満二十年が過ぎ去っております。その設計は余りに古く、しかも陸上で先行させるべき基礎研究をほとんど省いており、単に遮へい装置だけでなく、原子炉本体に重大な欠陥があると推察されております。完成されてから無為に過ごした十二年の間には、炉本体燃料棒制御棒等経年変化によって脆化していることもないとは言えません。しかも、所定出力上昇試験等を実施してからでは、発生する核分裂生成物のためにその後の廃炉処理が非常に困難となります。これ以上の糊塗策を積み重ねることは、莫大な浪費の拡大になるばかりでなく、危険なのであります。そのために、「むつ」はすぐに廃船にすべきであるという日本社会党の十年来の主張の正しさは、いよいよ多くの国民の共鳴を得るところであり、自民党の賢明なる科学技術部会の皆さんも、廃船最善とお考えになっておられるやにお聞きしております。  にもかかわらず、政府科学技術庁は、日本原子力船研究開発事業団法期限切れになる来年三月末日以降も、原船事業団日本原子力研究所に統合することによって内容をそのまま存続させ、しゃにむに関根浜に新しい定係港をつくり、出力上昇試験、試運転を強行する道を温存するために、日本原子力研究所法の一部を改正する法律案を作成し、上程しております。しかも、具体的な計画は、この法律を通してから、国会の外で八月に決めようなどという許しがたい国会べっ視の方法をとっております。  そもそも平和利用商業原子力船は、港が結氷する国の砕氷船は別として、遠い将来にわたり実現性のないことが国際的にも明らかになっている現在、「むつ」の出力上昇試験等によってデータを得ることにそれほどこだわるのは、そのデータもとにして原子力潜水艦を初めとした戦艦を建造する意図を持つものと判断するほかはありません。  しかも内閣提出法案によると、本来原子力基礎研究を任務とすべき原子力研究所に、全くそぐわない船員の養成訓練等まで含む原子力船開発業務が押し込まれ、またそれらの業務運営は、原子力安全委員会等議決抜き運輸大臣等が決めることに改悪されることとなっております。  このように、これ以上の、巨額な国税の浪費を伴う危険な猪突猛進を、国民が是認するはずはありません。したがって、私どもは国出の声を代表して、最善対決法案を作成し、ここに提案する次第であります。  次に、この法律内容について御説明申し上げます。  第一は、原船事業団解散についてであります。原船事業団は、この法律が成立し次第(公布の日に)解散するものといたしております。  第二は、清算人の任命についてであります。主務大臣内閣総理大臣及び運輸大臣)は、事業団解散するとともに、原則として解散前の事業団の役員のうちから清算人を任命しなければならないものといたしております。また清算人は、事業団を代表するものと定めております。  第三は、清算事務の監督についてであります。清算人は、遅滞なく事業団財産の現況を調査して財産同録及び貸借対照表を作成し、主務大臣提出してその承認を受けなくてはならないものといたしております。また、清算人は、主務大臣の定める清算計画に従って清算を行わねばならず、主務大臣は、清算人に対し、清算に関して必要な事項を命ずることができることといたしております。  第四は、原子力船に関する措置についてであります。清算人は、設置されている原子炉が「むつ」船内において運転されることがないようにするための必要な措置をとらなくてはならないものといたしております。具体的には次のような措置考えられます。  その一つとしては、原子炉を撤去し、日本原子力研究所等に移すとともに、船は運輸省商船大学等で利用することが考えられます。購入者補助ディーゼルエンジンを増強して利用することも可能でしょう。  その二つとしては、原子炉から燃料棒のみを取り外し、廃炉として、船は同様に別途利用することも考えられます。  その三つとしては、制御棒駆動用モーターを取り外すことなどによって事実上廃炉処分とし、船体から取り外さぬまま全体を陸揚げして博物館等とし、管理することも一案でありましょう。  節工は、再就職援助等についてであります。国は、事業団職員(四十余名)の再就職援助その他その職員の職業及び生活の安定を図るために必要な措置を講ずるよう努めなければならないものと定めております。約百名に及ぶ出向社員長期出張者については、それぞれもとの企業の職場に戻るものとすることは言うまでもありません。  以上、この法律案提案理由及びその内容について御説明申し上げました。  早速御審議の上、内閣提出法案にかえて速やかに御可決あらんことをお願いいたします。(拍手)
  4. 大野潔

    大野委員長 これにて趣旨説明は終わりました。      ――――◇―――――
  5. 大野潔

    大野委員長 内閣提出日本原子力研究所法の一部を改正する法律案及び大原亨君外四名提出日本原子力船研究開発事業団解散に関する法律案を一括して議題といたします。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  両案審査のため、本日、参考人として日本原子力船研究開発事業団理事長井上啓次郎君、同専務理事福永博君、同理事野澤俊弥君、日本原子力研究所理事長藤波恒雄君及び同理事吉田節生君の出席を求め、意見を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 大野潔

    大野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――
  7. 大野潔

    大野委員長 これより質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小澤克介君。
  8. 小澤克介

    小澤(克)委員 政府提出の方の改正法案について伺いますが、この附則の第二条によりますと、この法律施行と同時に原子力船研究開発事業団の方は解散するものとし、「その一切の権利及び義務は、その時において日本原子力研究所が承継する。」こういうふうになっておりますが、これは権利及び義務のみならず、契約上の地位、そういったもの全体について包括的に承継するという趣旨でしょうか。
  9. 中村守孝

    中村(守)政府委員 お答えいたします。御指摘のとおりでございます。
  10. 小澤克介

    小澤(克)委員 そうなりますと、これまでの事業団各種民間会社等との契約関係がどうなっているのか、またこれを仮に原研が引き継ぐとした場合にどうなるのかということが問題になろうかと思いますので、以下順次お尋ねいたします。  まず、原子力第一船、現在では「むつ」というふうに命名されているわけですけれども、これの建造契約昭和四十二年十一月十六日、船体都については石川島播磨重工原子炉部分については三菱原子力工業、こういうところとそれぞれ契約をした、このことは間違いございませんね。
  11. 福永博

    福永参考人 原子力船事業団専務理事福永でございます。  先生おっしゃるとおりでございます。
  12. 小澤克介

    小澤(克)委員 まず船体部については、当初の契約では、引き渡し期限昭和四十五年五月三十一日、こうなっていたようですが、後にこれが変更になって四十五年七月三十日になっているようですが、まずこれを変更されたのはいつ、またいかなる理由からでしょうか。
  13. 福永博

    福永参考人 船体部でございますが、引き渡し期限につきましては、先生質問のとおり、当初は四十五年五月三十一日だったものが四十五年七月三十日に変更いたしております。  変更いたしました理由の主なものといたしましては、船体部在来部分についてはそれほど技術的な問題はないわけでございますが、遮へい部分が、二次遮へい部分石川島播磨の担当ということになっておりまして、新しい技術でございまして、この遮へいの工法あるいは品質管理やり方等技術的な研究開発がございまして、若干予想外の日数を要した、こういうようなことで変更いたしております。
  14. 小澤克介

    小澤(克)委員 いつ変更したのかもお尋ねしたのですが。
  15. 福永博

    福永参考人 失礼いたしました。  当然のことながら契約した当初の期限の前でございますが、今事務的に少し調査いたしておりますので、若干御猶予をちょうだいしたいと思います。
  16. 小澤克介

    小澤(克)委員 じゃ、それはまた後にお答えいただくこととしまして、結局この船体引き渡しを受けたのはいつだったわけですか。
  17. 福永博

    福永参考人 お答えいたします。  四十五年七月十三日でございます。
  18. 小澤克介

    小澤(克)委員 次に、三菱原子力工業との間で、原子炉部についても引き渡し期限が四十七年一月三十一日から四十七年八月二十日に変更されたようですが、この理由、それから現実に引き渡しを受けたのはいつか、また期限変更についての合意がなされたのはいつか。いかがでしょうか。
  19. 福永博

    福永参考人 原子炉部につきましては、引き渡し期限の当初予定が四十七年一月三十一日でございましたが、後ほど昭和四十七年八月二十日に変更いたしております。  この期限延長しました理由はいろいろあるわけでございますが、大きな理由としましては、何分にも新しい技術でございますのでいろいろ実験等もございました。そういう実験の結果を反映させる、あるいはまた外国の先進技術を持っている会社設計のチェックをしてもらうというようなこともいたしまして、その結果、設計仕様に改良あるいは変更等々がございまして、当初の予定よりも時間がかかった、こういうことだと承知しております。
  20. 小澤克介

    小澤(克)委員 引き渡しを受けたのはいつになりますか。
  21. 福永博

    福永参考人 その結果、引き渡しを受けましたのは四十七年八月二十五日でございます。
  22. 小澤克介

    小澤(克)委員 さて、その後に、主として中性子だというふうに伺っていますが、放射線漏れ事故が起こったわけです。この原因についてはいろいろ報告がなされているようですが、契約上の責任についてはどちらの帰責原因であるというふうにお考えでしょうか。
  23. 福永博

    福永参考人 引き渡しを受けましてから、所定試験をいたしまして、いよいよ出力上昇試験ということになったわけでございますが、四十九年九月でございます、その時点で、出力上昇試験初期段階に、微量ではありますけれども放射線漏れが起こりました。その技術約な原因というのは、先生もおっしゃいましたように、いろいろな検討委員会等検討されて、その後の実験等も経まして解明されております。  ただ、先生指摘のように、契約上はどうか、こういうことになりますと、契約の中に「性能保証」という条項がございます。何項目かございますが、原子炉について申し上げますと、途中省略いたしますが、三十六メガワット熱出力を……
  24. 小澤克介

    小澤(克)委員 聞いているのは、中性子漏れについて帰責原因契約上どちらにあるのかということについて、どう検討したかということを聞いているのです。性能保証のことなんか全然聞いてないですから。
  25. 福永博

    福永参考人 それで、こういう保証条項がございまして、メーカーの方としましては、こういう性能保証する義務があるわけでございます。
  26. 小澤克介

    小澤(克)委員 中性子漏れ事故のことを聞いているのです。
  27. 福永博

    福永参考人 この中性子漏れが、この性能の三十六メガワットを達成できないということにつながってくるわけでございますので、私はそちらの方を御説明しているわけでございます。
  28. 小澤克介

    小澤(克)委員 だから、帰責原因を聞いているのです。契約当事者が、事業団IHIとそれから三菱原子力とあるわけでしょう。この中性子漏れ事故はそのどちらの責任か、その三者のうちのどこの責任かということを聞いているのですよ。いろいろな責任が競合したのかもしれませんしね。
  29. 福永博

    福永参考人 いろいろ申し上げましたけれども、端的に申しますと設計製作に当たったメーカー責任であろうと考えております。
  30. 小澤克介

    小澤(克)委員 そうすると、メーカーのどっちの責任ですか。
  31. 中村守孝

    中村(守)政府委員 お答えいたします。  四十九年九月の放射線漏れ原因となりましたところの欠陥についての責任でございますが、既に契約上の性能保証とかそういう瑕疵担保期間が過ぎてしまったからどうのこうのという問題を別にいたしますと、炉の設計製作に当たりましたのは三菱原子力工業でございますので、三菱原子力工業責任があったということでございます。ただ、御承知のように原子力船むつ」につきましては、石川島播磨三菱と両方に分割発注をしたということがございまして、「むつ」が放射線漏れ事故を起こしました後に総理府に設置いたしました放射線漏れ問題調査委員会報告書においても指摘されておりますように、契約に当たりまして設計仕様書等検討がほとんどメーカー主導によって行われ、開発主体者である事業団自体による責任ある検討が十分に加えられなかったということ、それから、先ほど申しましたように、二つ契約が分かれたというようなことから、事業団側にもそういう不十分な点がございまして、その責任の一端が事業団にもあった、こういうぐあいに考えておる次第でございます。
  32. 小澤克介

    小澤(克)委員 そうすると、事業団にも責任があったということですが、事業団にはどういう責任があったのでしょうか。この間の二月十七日の予算委員会でのお話ではその辺がはっきりしないのですが、まず、基本設計はどこがやったのですか。
  33. 福永博

    福永参考人 基本設計事業団が実施いたしております。
  34. 小澤克介

    小澤(克)委員 そうすると、基本設計ミスがあったために放射線漏れ中性子漏れ事故を起こしたということにもなるのでしょうか。
  35. 福永博

    福永参考人 その御質問にお答えいたしますためには、どういう手順原子炉設計製作が行われたかということを申し上げなければならないかと存じます。  基本設計事業団がいたしました。その基本設計に基づきまして製作仕様というものを決定するわけでございます。この仕様を受けてメーカーの方は詳細に設計し、製作建造ということに相なっていくわけでございます。  そこで、技術的な原因になってくるわけでございますけれども、高速中性子がストリーミングという現象で漏れてきた。これが今私が申し上げました工程のどの段階であるのか、こういうことになろうかと思います。そういたしますと、この仕様の中では、原子力船のそれぞれの箇所と申しましょうか場所と申しましょうか、そういうところでは、こういうような線量以下に抑えるようにあるいはそういうように設計するようにという仕様になっておるわけでございまして、第一義的には、私が申し上げましたように、その詳細設計の過程において若干の見落としがあったのではないか。しかしながら、先ほど局長も申しましたように、その間には原子力船事業団としましても密接な技術的な連係も持っておりますしあるいは御相談も受けておったわけでございますので、そういう意味におきまして一〇〇%メーカー側というのも言い切れないのではないか、こういうふうに感ずるわけでございます。
  36. 小澤克介

    小澤(克)委員 わからないのですがね。基本設計ミスがあったのか、なかったのか。基本設計どおりにちゃんと詳細設計をし、その仕様とおりに設計製作しておけば漏れは起こらなかったのか、あるいは基本設計ミスがあり、そのとおりにたとえやったとしてもなお放射線漏れは起こったのかどうか。そのどっちか、はっきり答えてください。どっちなんですか。
  37. 福永博

    福永参考人 私がただいま申し上げました基本設計、あるいはその次の段階として参ります仕様書の決定、詳細設計製作、この手順をただいま申し上げたところでございます。  その基本設計と申しますのは、全体の船をこういう形であるいはこういう考え方でまとめるというような問題でございます。それで、その考え方に基づいて、しからば具体的にどういうふうに寸法あるいは仕様、工作等々を決めていくか、こういうのがその次の詳細設計ということになってくるわけでございます。  それで、この基本的な考え方の一番問題になりました、例えば放射線線量率の問題を申しますと、一例を申しますと安全区域線量率は時間当たり〇・〇五七ミリレム以下とすること、こういうような仕様になっておるわけでございます。したがいまして、私は基本設計段階ミスがあったというふうには考えておりません。
  38. 小澤克介

    小澤(克)委員 念のために伺いますが、基本設計のみを示して、詳細設計は各メーカー責任において行う、こういう契約内容なんですね。間違いないですね、そこは。
  39. 福永博

    福永参考人 基本設計とそれに伴います仕様というものが同時に示されております。
  40. 小澤克介

    小澤(克)委員 そうすると、仕様についてはいかがですか。その辺についてはミスがあったのか、なかったのか。
  41. 福永博

    福永参考人 仕様につきましても、私ただいま一例を申し上げましたけれども、そういうふうに規制の基準を十分満足するような仕様が決定されておりますので、ミスがあったとは考えておりません。
  42. 小澤克介

    小澤(克)委員 そうすると、結局メーカー責任ということになりそうですが、IHIの方にはミスはなかったとお考えですか。
  43. 福永博

    福永参考人 先生の御質問は、恐らく遮へいに関してだろうと存じますが、IHI船体部、それから先ほどちょっと私触れましたが、二次遮へいの方を担当いたしております。その二次遮へいに関しての御質問ではないかと思いますが、ただいま私が仕様のところで触れましたその値といいますものは、放射線線量率をどういうふうに設定するかという話でございます。それは放射線遮へい全体の体系としまして遮へい計算をし設計をするわけでございます。二次遮へいも含めて、つまりIHI側も含めまして計算をやっておるわけでございます。したがいまして、放射線遮へいという点につきましては、IHI側船体側にはミスはないと考えております。
  44. 小澤克介

    小澤(克)委員 そうすると、事業団としては結局、メーカー、それも三菱原子力工業詳細設計以下の段階ミスが生じたとお考えだということのようです。そうお考えだということですから、それを前提に進めますが、契約書によりますと、「保証工事」という項目があって、原子炉引き渡し後十八カ月あるいは出力試験後、ちょっと若干複雑な決め方になっておりますが、いずれかの期限を切ってその間に瑕疵が発見された場合、かつその決められた期間内に事業団の請求があったときはこれを補修する義務、こういうことが合意されていた、これは間違いございませんね。
  45. 福永博

    福永参考人 そのとおりでございます。
  46. 小澤克介

    小澤(克)委員 この期間が途中で変更されているようですが、まず、これはいつ変更されたのか、そしてまた、何ゆえに変更されたのか。いかがですか。
  47. 福永博

    福永参考人 保証工事期限につきましては、先ほど先生お話のとおりでございます。  これがその後延長された理由でございますが、当初は、この期間内に出力上昇試験ができるだろうと考えておりましたところ、その後地元情勢等、なかなか出力上昇試験に移る態勢について御協力が得にくいというようなことがございまして、その後この期限について延長をしておる、こういうことでございます。いつその延長を決めたかという日取りにつきましては、今ちょっと調べておりますので、御猶予を願いたいと思います。
  48. 小澤克介

    小澤(克)委員 それで結局は、四十九年の二月二十四日を最も短い期限とし、また場合によっては、一番長い場合でも同年の三月十二日、こういう決め方になったわけですけれども、このような期限に決めたのはいかなる理由からでしょうか。
  49. 福永博

    福永参考人 先ほど申し上げましたように、出力上昇試験について地元の方の御協力がなかなか得にくい、こういうことで鋭意事業団地元の方々と折衝をしておったわけでございます。それで、当時としては大体のめどとして三月というものを目途に置きまして、これは船体部性能保証期限が一年延長というようなことで三月というのが出てきたのではないかと思いますが、他方、そういう地元情勢等を勘案して三月十二日というふうに延長したものと考えております。
  50. 小澤克介

    小澤(克)委員 現実に性能試験に移ったのは同年の九月ということでしたね。すると、この三月十二日を徒過する前にもう一度期限延長するという交渉は行ったのですか。
  51. 福永博

    福永参考人 三月十二日という期限が来る前に、当然のことながらメーカーの方と非常に精力的な交渉を持ったようでございますが、合意に達しなかった、こういうことでございます。
  52. 小澤克介

    小澤(克)委員 しかし、この契約には「契約変更」という項目があって、いろんな予測しがたい事実が起こった場合には両者協議の上変更することができる、こうなっているのではありませんか。この条項に基づいて変更を求める、こういうことができたんじゃありませんか。
  53. 福永博

    福永参考人 当然、御指摘のような条項に基づきまして交渉を進めておったものでございます。
  54. 小澤克介

    小澤(克)委員 原子炉についての隠れたる瑕疵が発見されるのは、やはり出力上昇試験をやってみないと発見されにくい、そのことは間違いないわけでしょう。だとすれば、メーカーの方でこれを拒んだ理由というのがはっきりしないのですが、なぜなんでしょうか、またどうして合意に達することができなかったのでしょうか。
  55. 福永博

    福永参考人 おっしゃるように、出力上昇試験をやってみなければ最終的な性能の確認ができないということは、そのとおりでございます。そして、先ほど申し上げましたように、この期限延長について会社側と精力的に交渉を持ったということは、当時の記録として残っております。  しかし、それでは当時なぜこの話し合いがまとまらなかったかという御質問かと思いますが、これはだんだん地元の情勢尊厳しくなってまいりまして、期限延長するにしても、一体期間としてどれくらい延長したらいいのか、こういうような見通しが定かでなかったというような事情でございまして、会社側の事情といいますよりもむしろ事業団の方の事情、こういうような感じでございます。
  56. 小澤克介

    小澤(克)委員 事業団の事情で合意ができなかったと言うのですか。おかしいでしょう。責任期間延長を求めるのは事業団に利益のあることですよ。事業団の事情で合意に達しなかったというのは理解できないですね。どういう事情があったのですか。
  57. 福永博

    福永参考人 ただいま申し上げましたように、出力上昇試験に移る態勢が確立しなければいけないわけでございます。それについては、周辺の御了解等が必要なわけでございます。その出力上昇試験の見通しがはっきりできなかった、こういうことが実情かとと存じます。
  58. 小澤克介

    小澤(克)委員 いや、そうであれば、とりあえず半年なら半年延長するということはできたはずでしょう。メーカーがオーケーしなかったのでしょう、どうなんですか。
  59. 福永博

    福永参考人 もちろん協議でございますので、事業団側にそういう事情はございましたけれども、最終的にはメーカーの了解が得られなかったということでございます。
  60. 小澤克介

    小澤(克)委員 請負代金はどうなっていたのですか。もう全部払い終わっていたのですか。
  61. 福永博

    福永参考人 請負代金につきましては、昭和四十八年三月十二日でございますが、つまり最初の保証期限でございます、この時期にすべて支払いまして、そのかわりと言っちゃなんですが、期限延長したという経緯がございます。
  62. 小澤克介

    小澤(克)委員 そうすると、最初に延長したときに全部払ってしまったから、再度延長するときには交渉のカードがなかった、事業団には手持ちのカードが何もなかった、こういうことになりますね。どうですか。
  63. 福永博

    福永参考人 先ほど来御説明申し上げておりますような事情で、最終的には交渉がまとまらなかったということでございます。
  64. 小澤克介

    小澤(克)委員 結果的には、出力上昇試験をする機会のないままに、瑕疵担保責任期限を徒過してしまったわけですが、この責任は一体どこにあるのですか。事業団にあるのならば、この責任を今後原研が引き継ぐことになるのですよ。どうなんですか。
  65. 福永博

    福永参考人 先ほど来御答弁申し上げておりますように、保証期限が過ぎてしまった、それてそのまま交渉が不調に終わっておる、そのままに推移した、これは事業団責任であろうと考えております。
  66. 小澤克介

    小澤(克)委員 その責任はだれがどうとったのでしょうか。とってないならとってないでいいですよ、原研を追及しますから。
  67. 福永博

    福永参考人 この放射線漏れ責任というものは、その後放射線漏れ検討委員会、俗称大山委員会というのがございますが、その点でも厳しく指摘されまして、その御指摘を受けて事業団としては態勢の立て直し、技術陣の強化等々を図ってまいっております。
  68. 小澤克介

    小澤(克)委員 それじゃ、瑕疵補修については期限を徒過したということですが、損害賠償の責任追及については検討しましたか。
  69. 福永博

    福永参考人 申し上げておりますように、保証期限が切れておるということで損害賠償等の法的手続はとっておりません。
  70. 小澤克介

    小澤(克)委員 いや、保証期限というのは補修の期限ですよ。損害賠償は全然別問題ですよ。どうなんですか、何もしなかったのですか。
  71. 福永博

    福永参考人 そういう行為を起こしたということは承知いたしておりません。
  72. 小澤克介

    小澤(克)委員 だから、損害賠償の請求については内部で検討しなかったのですか。どうなんですか。
  73. 福永博

    福永参考人 この保証の問題については、いろいろ内部で議論もやっておったわけでございますけれども、何分にも保証期限が切れておるということで、それ以上の深い法的な検討はやっていないと了解しております。
  74. 小澤克介

    小澤(克)委員 違うのですよ。補修を求める期限が切れたからといって、損害賠償は全然別問題です。民法の請負の規定のところを読んでください。いいですか。瑕疵があった場合には、「注文者ハ瑕疵ノ修補ニ代ヘ又ハ其修補ト共ニ損害賠償ノ請求ヲ為スコトヲ得」と書いてあるのですよ。補修をしただけではてん補されない損害というのがあるのですよ。おくれたことや何かいろいろ、物すごい損害を受けているでしょう。それについてはどうなんですか。
  75. 福永博

    福永参考人 当時の記録を調べてみましても、そういう検討は深くなされていないようでございます。
  76. 小澤克介

    小澤(克)委員 なぜ検討しなかったのでしょうか。そんなに何か三菱原子力にしっぽでもつかまれていたのですか。何かトラブルが起こったときに損害賠償を検討するというのは、一番基本でしょう。どうなんですか。
  77. 福永博

    福永参考人 先ほど来御答弁申し上げておるように、確かに先生おっしゃっておるように、その補修了等以外にも損害があったではないか、その損害賠償はどうなっておるんだ、こういうことでございますが、当時事業団としましては、そもそも本船の開発というものが一つの研究開発でありまして、通常の船舶を発注する、請け負って製造していただく、こういうものと若干違ったニュアンスで、つまり研究開発的な要素というものを頭に描きながら開発を進めておったわけでございます。したがいまして、通常の契約のように、損害があったから直にその損害賠償を請求する、こういうような話にはならなかったのではないかと考えております。
  78. 小澤克介

    小澤(克)委員 おかしいですね。この契約では、瑕疵担保の責任のみならず性能保証まであるのですよ。試験研究的な船だから損害賠償を考えなかったと言いながら、一方で一定の性能を要求し、その性能に達しない場合には、一メガワットについて幾らという違約金まで決められているのですよ。今の答えは矛盾するじゃないですか。ちゃんと答えてください。
  79. 福永博

    福永参考人 先生おっしゃるような条項もございます。しかし他方、非常に特殊な形かと思いますが、この契約には「理念」というものがございまして、読み上げてみますと「両者は、この業務が、関係当事者の協力を得て原子力第一船を開発するという特殊な性格および重要かつ複雑な内容をもつことを認識し、信義、誠実の原則にのっとって、この契約の完全かつ円滑な履行を図る。」ということで、非常に特殊な研究開発的要素があり、協力が必要なんだというような趣旨のことを盛り込んでおります。私が申し上げましたのは、このあたりを着目しての御答弁でございます。
  80. 小澤克介

    小澤(克)委員 私が法律学で習ったところでは、信義誠実の原則というのは、瑕疵があったときにまさに発揮されるんじゃないですか。ごまかしちゃいけません、ちゃんと答えてください。損害賠償について気がつかなかったのですか。
  81. 福永博

    福永参考人 先ほど来…し上げておりますように、この保証期限が切れておりましたので、保証の工事というものは求めておりません。そして損害賠償もいたしておりませんが、他方メーカーの方としましては、保証期限が切れたからといってメーカーは一切責任ないということではございませんで、メーカーの方としてもその後の改修作業等々にいろいろ御協力いただいておるし、例えば概念設計など無償で協力していただく、あるいは協力員として優秀な技術者を派遣していただく、こういうようなことで御協力を願っておるわけでございまして、そういう情勢を踏まえまして先生指摘の損害賠償というものはやらなかったものと考えております。
  82. 小澤克介

    小澤(克)委員 補修にかえての方じゃなくて補修とともに行う、つまり補修したことによってはなおてん補されない損害については、これは普通の一般的な債権と同じ消滅時効期間というふうに解釈されているようですから、普通なら十年、商法の適用があるとしても五年間は損害賠償できたんですよ。後の概念設計について協力を得たと言うが、これは国民のお金なんですよ。五年間何もしなかった。今、そのことについてどうお考えですか。
  83. 福永博

    福永参考人 先ほど来申し上げておりますように、原子力第一船という技術的に新しいプロジェクトをまとめていくという意味では、私どもあるいはメーカー、関係者の方々、皆さん協力してその後も推移してきておるわけでございます。法律的に先生指摘のような側面もあろうかと考えておりますけれども、私ども、その後鋭意改修等々に励みましてプロジェクトをまとめていく、こういう方向で進んでまいっておる次第でございます。
  84. 小澤克介

    小澤(克)委員 損害賠償の請求を全くしなかったということについて、現在どうお考えなのかをお尋ねしているのです。
  85. 中村守孝

    中村(守)政府委員 今、先生指摘ありましたような、契約事項とは別に一般的な損害賠償請求ができるではないか、こういうことかと存じますが、この件につきましては、先ほども申し上げましたように、原子力船むつ」の開発に当たりまして、我が国最初のプロジェクトでもございますので、官員あわせて協力してきたわけでございます。  その開発の過程におきまして、先ほど申しましたように石川島播磨三菱とに分割発注をしたという過程におきまして、総合的な全体をきちっと把握するという意味におきましてはかなり事業団責任があるところでございますが、そういった点について事業団に認識が欠けていたのではないかということは、大山委員会におきましても指摘されたところでございますし、基本設計仕様書を出して、後それでは事業団は全然ノータッチだったのかというと、設計図面については承認という行為もたしかやってきたと思っておりますので、そういう意味で設計段階においても事業団が全然無関係ではなかった。それから、例の放射線漏れ原因になりました高速中性子のストリーミング現象につきましても、発注後そういう事象があった知見が原子力研究所の研究の中で得られたこともございますが、まあ三菱自身もそうでございますが、事業団もそれによって全体の設計を見直すということについての認識がなかった等々の問題もございますし、そういう意味で契約上の責任は、確かに性能保証あるいは瑕疵担保期間が過ぎたということでなかったわけでございますが、社会的道義的な責任はございますし、今先生から御質問のような意味での損害賠償の請求というのはあったのかとも思いますが、その段階においては、先ほども申しましたように諸事情を勘案し、かつ三菱としても今後の改修等については積極的に協力するという形で臨んでおりましたし、そこら辺はそういう事情を総合勘案して、最終的にはその民法によります一般的な損害賠償というところまで踏み切れなかったのだろう、そういうぐあいに存じておる次第でございます。
  86. 小澤克介

    小澤(克)委員 おかしいんですよね。そのストリーミングが起こったことについて、当時の知識ではわからなかったということであれば、メーカーにも帰責原因はないんですよ。メーカー責任であるとおっしゃるから、それを前提に先ほどから伺っているわけです。また、概念設計及び仕様書についても特に理業団にはミスがなかったというお話なんで、それを前提に伺っているわけです。  それで、じゃ損害賠償を請求しなかったのかと言うと、急に、いや事業団の方にもいろいろ無理があったし、当時原研でやっとわかったようなことも云々というようなお話では、結局責任の所在がわからないままになってしまうのです。本当に当時知られていなかったのであれば、原子炉というのは連鎖反応を起こし、かつその発生する中性子を閉じ込めるのが本質でしょう、それが漏れたということは基本的な欠陥ですよ。それが、当時そういうストリーミングについての知識がなかったということであれば、これはメーカーにも責任を追及することができなくなるはずなんですよ。一体どこに責任があったのか、まずそれをはっきりさせてください。そうじゃないと、議論が先に進まないのです。どうなんですか。しかも、原子力局長のおっしゃることと事業団のおっしゃることとでさっきから違うのですけれども、どうなんですか。それぞれ答えてください。
  87. 中村守孝

    中村(守)政府委員 お答えいたします。  高速中性子のストリーミング現象につきまして十分な知見がなかったということは事実でございまして、現実問題として、設計の過程におきましてウェスチングハウス社のチェック・アンド・レビューを受けたことがございますが、その際も、ウェスチングハウスの方から技術的な点を指摘されたことがあるわけでございますが、こちらの技術的レベルといいますか技術的な判断として、それが高速中性子によるストリーミング現象を意味しているということは判断できなかったという事実もございます。それから、原研でのスイミングプールでの実験の過程において、先ほど申した高速中性子のストリーミング現象、後でそういう認識を持ったわけでございますが、そういう兆候があったわけでございますが、その点についても十分とらえ得なかったということもございます。  設計に当たりましては、高速中性子は直進するという考え方がその当時強かったものでございますから、大体が、炉の上面の十分な水で遮へいされるという考え方であったわけでございます。それが横に出まして、狭い間隙を伝わって上がっていったということでございまして、中性子のストリーミングについて十分な知識がなかったということは、当時の事情としては事実でございます。
  88. 小澤克介

    小澤(克)委員 事業団の方、いかがですか。
  89. 福永博

    福永参考人 概要は、ただいま原子力局長の御答弁のとおりと私も考えております。  当時、いろいろの実験をやる、複雑な形状をした遮へい体の遮へい能力といったようなものについても実験をやり、あるいはチェック・アンド・レビューも受ける、そういうところで設計を進めたわけでございますけれども、そのあたりの判断力がやや足りなかったのではないか、こういうようなこともございます。それから、このあたりにつきましては、先ほど私が申し上げました大山委員会でもいろいろ指摘してあるわけでございます。  全般的に総合しまして、私は一義的にはメーカー責任ということを先ほど申し上げましたけれども、やや舌足らずでございまして、全体として考えてみると、それは事業団もともに開発をし技術的な御相談もしておったわけでございますから、事業団メーカーいずれも責任があるのではないか、こういうふうに考えております。
  90. 小澤克介

    小澤(克)委員 最初の答えと全然違うんですよね。これじゃ、もう次に進めません。  この点について、一体どこに責任があるのか、帰責原因はどこにあるのか。ないならないでいいです。だれも責任を負わないということだって、それはあるでしょう。ちゃんと統一してください。
  91. 大原亨

    大原委員 議事進行。  今の質疑応答を聞いていまして、だんだん表現も違っておるし、原子力局長事業団双方の答弁も違うんですよ。私どもが我が方の提案のときにも申し上げておりますように、根本的には陸上で先行させるべき基礎研究がやはり全体として欠けておるのですがね。それでずるずるやって事故を起こしたということなんですから、そういう点の責任の所在については明確にする必要があると思うのです。ですから、進行上の議論ですが、このまま続けましても時間がたつだけでございますから、そこで質問者の方から質問を保留してもらって、理事会で交通整理をして統一見解をきちっと出す、こういうことで進行してもらいたい、こういうふうに委員長に申し上げておきます。
  92. 大野潔

    大野委員長 大原君の御要望に対しまして、理事会で検討さしていただきます。
  93. 小澤克介

    小澤(克)委員 それでは、時間が来ましたので、次の質問について保留をさせていただきます。
  94. 大野潔

  95. 安井吉典

    安井委員 科学技術庁長官に伺いますが、二十一日の土曜日の新聞で、北海道の幌延町に高レベル廃棄物の建設計画が進みつつある、こういう報道で実はびっくりしたわけです。地元の方も、前は低レベル廃棄物の処理の問題で町長選挙まで大変な争いになった、そういう経過があるわけでありますが、それが急に高レベルになっちゃって、低レベルでさえ問題なのに高レベルならとんでもない、こういうことで問題が一遍に広がってきているという状態の中にあります。  それで、きのうも私は科学技術庁の係官あるいはまた動燃事業団の方からも御説明を願ったわけでありますが、そういう中で、私どもはその低レベルが問題だというふうに思っていたら、実は高レベル廃棄物の問題についてもひそかにずっと当初から計画なり調査なりが進んでいたんだ、それがはしなくも、低レベルが下北半島ということになったので、高レベルの方が一遍に報道に出てしまったのだ、そういう説明を聞くわけであります。その辺の事情からまず伺います。
  96. 中村守孝

    中村(守)政府委員 お答えいたします。  幌延町は、原子力施設を町の中に誘致したいという非常に熱心な動きを早い時期からいたしておりまして、原子力発衛所とか再処理工場あるいは廃棄物処理、低レベル、いろいろ原子力施設があるわけでございますが、原子力施設を幌延町に何とかして誘致したいということでございまして、動力炉・核燃料開発事業団の方へも五十六年ごろからお話がございました。具体的に動燃事業団としてそこに立地をするということではなくて、むしろいろいろ御相談に応じて、幌延町に設置するとすればどういうような原子力施設が考えられるかというようなことで最初のうちは御相談にあずかっていたわけでございます。いろいろ町の方も御勉強なさるということで、いろんな資料も出させていただいたりということでやってまいったわけでございまして、それがたまたま今回下北半島の方に低レベルの施設ができるということで、幌延町はそうするともう何も誘致するものがなくなったのかということで、恐らく新聞記者の方々がお問い合わせなり何なりして新聞に出たのだろうと思いますが、土曜日の時点でこちらとして何か特段の動きをしたということではございません。
  97. 安井吉典

    安井委員 動燃もきょう本当は来ていただくといいのですけれども、何しろ緊急に私の質問を割り込ませていただいたものですから、これは申しわけないのですが、そういうような中ですから、大急ぎでの当面のお尋ねだけをきょうはやって、動燃からはいずれまたゆっくりお聞きしたいと思っておりますが、動燃の話を聞きますと、今じゃないのですね。ずうっと以前からひそかに、高レベルを幌延にということで調査を進めていたのだ、それをずうっと隠していたのだ。あの町長選挙のときも、低レベルで、町長候補は、ドラム缶には放射能なんてあるわけないのだ、私もそれを抱いてキスをしてきました、こんな安全なものはないのですよ、そういうようなことで、あの選挙は誘致派の方が勝ったわけです。  ですから、その段階で高レベルがどうだなんというようなことにはならぬわけですね。今おっしゃったように、原子力施設といえばみんな入るのだ、こう言ってしまえばそれまでなんですけれども、それならあの段階からみんなそう言っておけばよかったわけですよ。そういうことなしに、今の段階になって、いや高レベルです、こう言うものですから、住民の方は寝耳に水という思いをするわけであります。  そこで、短い時間ですから余り長い御答弁も困るわけですが、今度のこの建設計画の内容についてまずお聞かせいただきたい。
  98. 中村守孝

    中村(守)政府委員 お答えいたします。  動力炉・核燃料開発事業団におきまして、現在高レベルの廃棄物についての処理処分について研究をしておるわけでございますが、具体的には再処理から出てまいります高レベルの廃液をガラス固化という形で固体化いたします。固体化したものは、常態では大分長いこと熱を放散いたしますので、それを人間が取り扱うことのできる形で貯蔵をしておく必要がございます。そのための貯蔵施設をどういう形でやるかということについて検討をいたしておりまして、それの貯蔵パイロットプラントをいずれ建設する必要があろうかと思うわけでございますが、そうした場所を全国いろいろ探しておりまして、そういう一つの動きとして幌延町というところの調査も細々ながらやっているということでございまして、具体的に幌延町にやるということで決定しているわけでも何でもございません。
  99. 安井吉典

    安井委員 あそこに決めたというわけじゃないとおっしゃるが、では一般論としても伺いたいわけでありますが、当面はその研究プラントをつくるというわけですね。しかし、そのプラントで研究をしたその結果によってそこに貯蔵をしていくのだ、こういう考え方のようですね。  動燃の方の話を聞いたら、その研究というのと貯蔵というのと問題は二つあるわけだが、それを切り離して考えていいのかと聞いたら、それはもう切り離しはできません、貯蔵につながらなければ研究の施設などというものはあり得ないのです、こういう答えですね。だから当面は、十年か二十年か、どれだけの期間がわかりませんけれども研究施設があるが、しかしその後は一本当たり八十万キュリーの放射能を封じ込めたステンレスの容器が五百年もそこで貯蔵される。安全だと私ども何度も何度も聞かされてはおりますけれども、そういう日本では初めての、子々孫々に至るまでの大変な経験を幌延町の町民や周辺の人たちは受けなければならぬわけですね。ですからそういう中で、研究施設はとりあえずやるのだからいいじゃないか、こう言うが、その貯蔵につながるということを言っていますよ。この辺どうなんですか。
  100. 中村守孝

    中村(守)政府委員 お答えいたします。  高レベル廃棄物の今動燃でやっておりますのは、先ほど申しましたガラス固化体にする技術とその後の貯蔵の技術でございますが、この貯蔵につきましては、現在空冷方式、要するに空気で冷やすという方式についての試験をいたしておりますし、コンクリートの材料がどのくらい長期に耐え得るかというような試験等々の試験をやっておりまして、これらの試験を総合的にシステムとして組み上げまして、いわゆる貯蔵パイロットプラントをつくって実際に実証をしてみるということが必要になるわけでございます。そういった実証的なパイロットプラントをできれば建設をし、その施設を使って、例えばそこから相当な熱が出るわけでございますので、その熱を使って農作物についての温室に利用できないかとか、いろんな利用の道等の研究もあるわけでございます。  いずれにいたしましても、高レベルの廃棄物の貯蔵施設につきましては、先ほど先生五百年という御指摘がございましたが、原子力委員会等で考えております貯蔵期間というのは三十年ないし五十年でございまして、その後最終的には地下数百メートルというような深層に処分をする、こういうことになっておるわけでございます。現在、幌延町なんかと御相談にあずかっております施設はその貯蔵施設でございまして、動燃事業団の東海村の再処理工場から出る廃液の貯蔵、廃液をガラス固化した分の貯蔵、そのぐらいのものをまず第一次的に考えておるわけでございます。
  101. 安井吉典

    安井委員 この施設ができれば地元に大変お金が落ちるのだというのが一つのうたい文句になっているようですが、大体どれぐらいお金を落とすのですか。
  102. 中村守孝

    中村(守)政府委員 お答えいたします。  この施設の建設費のほかに、いわゆる電源三法による交付金等による地元公共施設等への投資というのが考えられるのではないかということでございますが、現在の段階では特にそういう施設を政令で指定しているわけではございませんので、現在はそういうことにはなっておりませんが、この施設が我が園の核燃料サイクルを確立し原子力発電を長期的に推進していくという上で極めて重要な施設でございますので、いずれ計画が具体化をすれば電源三法のもろもろの制度に乗せて、そういう地域の公共施設等の助成等もできることではないかと考えてわるわけでございます。現在の段階で、それを政令で指定しているわけでもございませんので、金額等について申し述べ得る段階にございません。
  103. 安井吉典

    安井委員 まだそのようですが、プラントそのものには五百億とか六百億とかあるいは七、八百億とか、きのうはそういうふうに説明を受けたわけですが、まだ、きょうはほんの序の口ですから詳しい話は後にしますが、プラントの価格だけでどれぐらいかということを、五、六百億と七、八百億と大分幅があるものですから、ちょっとその点だけ明らかにしてもらいたいのが一つ。  それから、地域は新聞によれば開進地区ということで、前回の低レベルのところと場所が変わっているようですね。それもそのとおりなのか。  それから、開進地区ということになれば、近隣の町村との関係が大分変わってくるわけです。海の方と山の方と近隣とのつながりが変わってきます。したがってこの問題については、幌延町がオーケーをしても近隣の町村住民がどういうふうに出るかということが一つありますね。  それからもう一つは、北海道内どこにあっても、これは北海道内に置かれるということで、北海道の総合開発計画の中にこういうようなものが置かれていいのかどうかということは、北海道の全道民の問題になると思います。したがって、知事やその他道段階においてこの問題にどう反応するかということが非常に大事な問題になってくると私は思います。まさか道段階で反対なのを押し切るというようなことはあるまいと思いますが、そのプラントの価格の問題と、地区は開進地区かどうか、それから周辺の問題と、全体的なコンセンサスをどういう段階で得るのか、伺います。
  104. 中村守孝

    中村(守)政府委員 お答えいたします。  最初に、そこにつくるパイロットプラントの建設費はどのぐらいかというお話でございますが、私どもも、動燃のその計画につきましては、まだ先の話でもございますので具体的に念査しておるわけではございませんが、動燃が試算しているところでは、八百億という数字を言っておるように聞いております。  それから、場所でございますけれども、場所につきましては、低レベルの廃棄物の場所とは違うようでございまして、海岸寄りのいわゆる湿地帯的なところでは不向きと申しますか適当でないので、山側の方になるように聞いております。それから、これはあくまでも町の方からいろいろデータ等をいただいたり地図を見たりして決めている、考えているという程度の話でございますので、具体的にそこにするということを決めたかのようになると若干問題があろうかと思います。  それから、周辺の市町村の皆様方の御理解については、これはもう当然のことでございまして、そういう皆様方の御理解を得ながら進めていかなければならないものと心得ております。現在のところは、動燃が直接周辺の市町村の方にお話しする、あるいは動燃から積極的に今ここに立地を決めて活動をするのであれば別ですが、そういう状況にないものですから、周辺の市町村の皆さん方にそこまでの話をしておるわけじゃございませんが、町当局がいろいろ周辺の市町村の関係者とはお話し合いになっておられるように聞いております。  それから、当然のことながらこれは北海道の道政全般にかかわる問題でございますので、単に幌延町だけがいいと言っても、道自身いろいろな権限もお持ちでございますし、当然、幌延町がいいからといってそこで強行するようなことはできませんので、十分地域の方々のコンセンサスを得ながら進めていかなければならない問題であると考えております。
  105. 安井吉典

    安井委員 もう時間になりましたが、いずれにしても高レベルの廃棄物の処理というものは日本で初めてなんですね。子々孫々にわたるまでの重大な問題なんですよ。ですから、あくまでも慎重な処理という姿勢でなければならぬと思います。とりわけ北海道全体の総括的な問題処理は、北海道という自治体ですから、その意見を十分聞かなければいけないと思います。大臣、どうですか。
  106. 岩動道行

    岩動国務大臣 原子力平和利用の中でこれから最も重要な課題は核燃料サイクルの確立であり、そして次第にその実態が具体的に進められなければならないような時期に入ってきておるわけでございます。  そこで、特に放射性廃棄物の処理は大変大きな問題であり、また、これは地元の御理解をいただいて、そしてこれを実行する機関あるいは事業者というものが十分に地元の御理解、御協力をいただいて進めていかなければならない課題であると考えております。そのような意味におきまして、ただいま先生が御指摘になりました北海道の問題についても、慎重に、そしてまた十分に、高レベルについては研究開発という大きな課題がございますので、そのような立場から私どもも注目をしてまいりたいと思っております。
  107. 安井吉典

    安井委員 時間ですから、どうもありがとうございました。
  108. 大野潔

    大野委員長 関晴正君。
  109. 関晴正

    ○関委員 先般、科学技術庁の次官である方が青森においでになった。それで、何のお話をしてきたのだろうかと思っておるのですけれども、これは石渡次官が特命を帯びておいでになったのでしょうか、そして何のお話をされたのでしょうか、先にお尋ねしておきたいと思います。
  110. 中村守孝

    中村(守)政府委員 お答えいたします。  次官は原子力局長もやられておりまして、前々から青森県の方々とはいろいろお話し合いをする機会を多々持っておったわけでございますが、「むつ」の問題もございますけれども、青森県をめぐりますいろいろな原子力関係のことも含めて、いわば青森県との一般的な情報交換をしたというように聞いております。特定の課題について特段のお話し合いをしたということではないというぐあいにお聞きをしております。
  111. 関晴正

    ○関委員 情報交換ということは、どういう情報の交換なんですか。国の方として原子力船の「むつ」の問題は既定方針どおりやるから心配するな、こういうお話においでになったのですか。
  112. 中村守孝

    中村(守)政府委員 「むつ」の問題につきましては、地元でも、何かもう中央では廃船というようなことで港もつくらないのじゃないかというお話もあったりしておるようでございますが、そこら辺で中央の情勢もお伝えをし、港の建設等についての県側の御協力についてどういうことかというようなこと、そういったことが恐らく中心であったろうかと思います。
  113. 関晴正

    ○関委員 そうしますと、原子力船廃船にするかあるいは実験廃船にするかにかかわらず、関根浜に港をつくることについては予定どおりおやりになる、こういうお話においでになったのですか。
  114. 中村守孝

    中村(守)政府委員 そういった中央の事情も御説明したと思います。
  115. 関晴正

    ○関委員 その問題についてはまだ次に申し上げますが、もう一つ聞いておきたいことは、この間私がこの委員会質問した際に、下北半島を核燃料のサイクル基地にする、こういうことで電事連の一行が二十日に行くように報道されておるがどうか、そういうことについては聞いておりません、こういうお話でありました。電事連の諸君がおいでになるのはこれは御自由であるかもしれませんが、少なくとも日本における言うなれば年来の一つの課題と言ってもいい核燃料サイクルの問題において、立地点をどこにするか。その立地点を下北半脇に置こうということでおいでになり、青森県の知事にその要請をされたわけであります。そういうような重要な行為について、科技庁が何の相談も受けない、何のお話もないということは、科技庁の外でこうしたことを自由に行っても構わないんだ、こう科技庁は見ておられるのでございましょうか。
  116. 中村守孝

    中村(守)政府委員 お答えいたします。  核燃料施設の立地地点につきましては、いろいろなところを調査しておりますので、公式に特定の地点を決めるということで電気事業連合会としてもいろいろ検討しておったわけでございますが、四月の五日に一斉に新聞報道がございまして、その際に私からも電気事業連合会の方にお問い合わせしたところ、電気事業連合会としては、まだ九社全体のコンセンサスが得られているわけではないということで、決まっていないということでございましたので、十二日の本委員会におきましては、その事情を御説明したつもりでございます。その後、十六日に岩動大臣のところに連合会の会長がお見えになって、十八日の社長会でそこについてのコンセンサスを得たいと思っている、コンセンサスが得られれば二十日の日にでも向こうへ行くつもりである、こういうお話があったわけでございます。  科技庁としてももちろん、全くのつんぼ桟敷ということではございませんでいろいろと情報はありますが、少なくとも公式に電気事業連合会としても決めていないことをこういう公式の席上でお話しするという性格のものではないと思っておりますので、連合会が公式に決めたのかどうかという確認をしたところ、先ほど申しましたように、まだだということでございましたので、当委員会ではその事情を御説明した次第でございます。
  117. 関晴正

    ○関委員 私は、行った行かない、知らせた知らせないの話もさることながら、こういうような重要な一つの基地をつくろうというときに、科学技術庁というものは何ら関与していない存在なんですかと聞いておるんです。これは電事連のお仕事でざいまして、我が科技庁の仕事ではございません、こういう御認識でいらっしゃるのですかと聞いておる。それとも、重要な科学技術政策における基本に属するものであるから、我が科技庁としては重大なこれについての考えあるいは指導監督、そういうものをそろえているつもりです、こうお考えになっておられるのか、どっちなんです。
  118. 中村守孝

    中村(守)政府委員 お答えいたします。  再処理施設にいたしましても、濃縮プラントにいたしましても、低レベル廃棄物の貯蔵施設にいたしましても、我が国の核燃料サイクルを確立するという意味で重要なものでございますし、これらの施設につきましては、規制法によります所理の手続等で科学技術庁が関与していくわけでございますし、もともとのそれぞれの再処理なり濃縮の計画につきましても、規模とかそこに採用する技術とかそういったものは、我が国の原子力の開発利用を総合的かつ計画的に進めていくという観点から、当然のことながら重大な関心を持っておるわけでございます。  ただ、立地の問題につきましては、これは原子力発電所の立地も同様でございますが、一義的には設置荷がまず選定をするということで、その選定された地点が特段に問題があるといいますか、国の政策上から問題があるということであればそれは別でございますが、一義的には設置者がその場所を選定する、こういうことになりますので、それを受けてから科技庁として必要な対応をとる、こういう立場にございます。
  119. 関晴正

    ○関委員 きょうこの話に深はまりをしようとは思いませんけれども、電事連は下北半島という漠然としたあの地域に要請をしているわけですが、下北半島といいましても、東通村あり、また六ケ所村あり、またむつ市あり、あるいはまた大畑町あり、大間町あり、風間浦村あり、佐井村あり、そういうような中にあって下北半島、そうしてどこそこということがないままなんです。これだというと、青森県としてもまたさっぱりわからない。何が目的で行ったんだろう。  大体青森県の開発の歴史というのは、常にだまされてきているわけですよね。お隣の岩手県の釜石においては、三点セットみんな受けようじゃないか、こういう運動が積極的にまた出されているわけです。じゃ両方てんびんにかけられて、やがてどこかに落ちつくのかしら、こういう疑いもまたあるわけです。私は、疑った方がいいとは思っております。思っておりますけれども、少なくともこうした問題について晴れない疑点がたくさんあるわけです。ウランの濃縮工場というけれども、ウランの濃縮工場というものの計画はどうなっているのだろう。これは岡山の方に商業プラントだってつくられるはずになっていると聞いています。だが、また幾らか青森の方にも予定しておかないというと、汚いものばかり置いてくるんじゃお断りされるであろうから、幾らかはいいものもプレミアムとして持っていこう、こんな単なる構想でおいでになっているとするならば、これはとんでもないことだ。むつ小川原開発というのは三全総において打ち出されまして、もう二十年近いです。これは計画というのは全く名ばかりであって、構想で終わっているわけです。構想に振り回されて、青森県の開発の歴史というものは常に失敗また失敗、こういう現状にあるわけなんです。  それで私は、核燃料のサイクル基地、核燃料サイクルというのは一つの理念としてあるけれども、基地というものの理念は、これは最近になって出てきたものだろうと思うんです。しかし、この基地の理念だって、果たしてあそこが今必要とされ、適当とされるであろうかということについては多くの吟味が必要であろう、私はこう思いますので、この後また当該委員会がその問題についてもぞっこん討議されていくことだろうと思いますから多くは申しませんが、少なくともあの地域において計画されている数多くのことが、あるいは原発のことにしても二千万キロワットなんて言ってきたけれども、この計画だってもう見直しをしなければならない段階に来ているだろう。そのかわりに再処理工場だなんていうことは、真っ平御免だと言っている。予定されているところの白糠地域における原発だって御免だと言っているわけですよ。漁業権の獲得のための三分の二の多数なんか、とっても得られるような見込みにはなっておりません。そういうところに今度は再処理工場だと言うんですから、あの狭い村の中で大変な騒ぎになっております。先に決めたことも行えなくなって、さらに悪い条件のものを押しつけられようなんていったって、私はこれは間違っていることじゃないだろうか、こうも思えますので、科学技術庁においては、言うなれば科学行政における信頼の問題で、よほど気をつけてもらわなければならない、こう思います。  そこで、先ほど石渡次官が青森においでになって、新港だけは何とかするんだ、こうおっしゃったとするならば、新港だけは何とかするのですか、お答えください。
  120. 中村守孝

    中村(守)政府委員 お答えいたします。  五十九年度予算編成の段階におきまして、政府としては「むつ」による舶用炉の開発のあり方については検討するということにいたしましたが、関根浜に新しい港をつくるということは、五者協定を遵守するということも含めましてこれは進める、こういうことを決めておりますので、既に捨て石工事も一部終わりまして、さらに工事を進めるべく準備をしておるところでございます。
  121. 関晴正

    ○関委員 ですから、この新港というものは、廃船になった後も新港をつくって、そうして何に使うという計画ですか。
  122. 中村守孝

    中村(守)政府委員 お答えいたします。  「むつ」の取り扱いについては検討を進めておるところでございまして、廃船するということを決めたわけでもございません。いずれにいたしましても、長期的にはいずれ「むつ」が廃船するというときも来るかと思いますが、そういう長期的にこの歯根浜の港をどうするかということも含めまして、これらにつきましては地元の青森県で下北地域の開発構想というようなものも既にお持ちでございまして、その中でそこの関根浜の港についても、将来一般港湾として活用していくということについて検討を進めるということになっておりますので、地元とも御相談しながら長期的な利用の方途等は検討を進めてまいりたい、こういうぐあいに思っておるわけでございます。
  123. 関晴正

    ○関委員 では、この港は原子力船の、言うなれば「むつ」の廃船の処理場として、その後は青森県の使用に供するんだ、こういうことですか。
  124. 中村守孝

    中村(守)政府委員 お答えいたします。  その長い先の将来のことにつきまして、県にお預けするとかそういうことを決めているわけではございません。これは今後検討していく課題でございます。
  125. 関晴正

    ○関委員 原子力船懇談会においても、原子力船むつ」の行き先というものは――我々は今即刻廃船にしろ、こう言っています。それは、今のところは一番安全な処置が可能であるから、そうして一番金がかからないで済むから。だがしかし、あなた方はどうしても実験だけはしていきたい。実験をして何を得ようとするのかを聞くと、大したものでもない、得ても得なくてもいいようなものをとにかく自分のものでつかみたい、こういうだけの欲求です。このことについてはさきにも申し上げて、ドイツなりアメリカなりに行って十分にその経験を生かしてもらってきなさい、そうして新しく出直した方がよっぽどいいでしょう、こう提言もしておったわけです。これについては長官も、そうしたい、こう言っておるわけです。  そうしたいということになって考えてみますときに、わざわざ原子力船の「むつ」を廃船にするための港づくりに一千億もかけるなんということはむだじゃないかということは、だれでもそう思うわけですよ。今のところ六百億というけれども、やがてまた時間がかかるとともに金がかかっていくわけです。廃船にするということが決まっているわけです。実験前にするか、実験後にするか、いずれを問わず廃船にするということはもう決まっている。じゃ二船、三船の計画はあるかといえば、これはない。じゃつくった港をどうするのだ、青森県の産業発展のために役立つようにさせます、何ともうまい話だな、こう思いますよ、そんなに青森県民を思って新港を一千億もかけてつくってくれるならば。しかし、そんな甘い話というものがあり得るでしょうか。ここは使用済み核燃料の搬入出港に将来しようと考えておるのではないでしょうか。この点どうです。
  126. 中村守孝

    中村(守)政府委員 お答えいたします。  関根浜港の建設につきまして、再処期工場と関連づけては我々は一切考えておりません。
  127. 関晴正

    ○関委員 そうしますと、少なくともこれは使用済み核燃料の搬入出港にはならないのだし、しないのだ、こう理解してよろしゅうございますか。
  128. 中村守孝

    中村(守)政府委員 お答えいたします。  我々はそのようなことを考えておりません。
  129. 関晴正

    ○関委員 これは長官からも確認しておきたいと思うのですが、関根浜の今の新港というものは、使用済み核燃料の搬入出港あるいはウラン関係の濃縮等の仕事においてもそういうものの搬入出港というようなものにはもう考えていないのだ、その意思はないのだ、こう理解してよろしゅうございますか。
  130. 岩動道行

    岩動国務大臣 原子力船むつ」のあり方については、今後政府において十分に検討して結論を出すことにいたしておりますが、とにもかくにも「むつ」の所在につきましては地元とのいわゆる五者協定というものがございますので、その五者協定に基づいて関根浜に港をつくる、そうしてそこに移させていただく、これはお約束を守っていかなければならない。したがって、先ほど局長も答弁いたしましたように、新港をつくる、港を新しくつくるこの計画は進めてまいりたいと思っております。したがって、当面私どもはそれ以外のことは考えていないのでございまして、「むつ」のためにはどうしても新しい関根浜の港が必要である。その研究脇発をどうするかということはこれからの結論になるわけでございますが、どのような結論になりましょうとも、関根浜に港をつくって「むつ」を移す、これは既定方針どおりに進めてまいりたいと思っておるところであります。
  131. 関晴正

    ○関委員 そうしますと、この新港の使用目的というものは、原子力船むつ」の実験後の廃船の処理港である、そのためにつくるのだ、こういうことですか。
  132. 岩動道行

    岩動国務大臣 私が一月に地元に参りまして関係の皆さんとお話をいたしたときには、原子力船むつ」による研究開発実験を完了した後には廃船という段階もあるので、そこまでを含めて地元の方に御理解をいただいてお話をしてまいったところであります。
  133. 関晴正

    ○関委員 第二船、第三船の原子力船計画というのはないのですか。
  134. 中村守孝

    中村(守)政府委員 現在そのような具体的な計画は持ち合わせておりません。
  135. 関晴正

    ○関委員 そうしますと、商船の計画がないとするならば、なお多額の金をかけてやらなければならない必要性というものを疑ってみますと、原子力潜水艦あるいは原子力艦船、そういうようなものの定係港として位置づけよう、こういうお考えでもおありなんでございましょうか。
  136. 中村守孝

    中村(守)政府委員 お答えいたします。そのような考えは持っておりません。
  137. 関晴正

    ○関委員 そうしますと、原子力船むつ」の廃船の処理のためにだけ港を使うというようなことでは、余りにも一千億という金は大き過ぎるのじゃないでしょうか。  しかもまだ、廃船の処理場ということになりますと、当然陸上部がきちんと整備されなければなりません。海上部だけでき上がったからといって完了するものじゃない。その陸上部の附帯施設をつくるための土地の取得というものが依然として今日進んでいないでしょう。何らの見込みがないでしょう。七割までは進んだけれども、あと三割はにっちもさっちも動きができない。しかもその三割というのは、顔で言えばちょうど目鼻のところですよね。重要な部分のところが取得できない。後ろの方だとかわきの方だとかは取得できても、全体からいけば顔のかたちの鼻、目、口、そのあたりに属する土地の取得ができないでいるわけです。ですから、附帯施設の方の仕事をやろうとしても、ことしの予算は出せないままに終わっているわけですよね。あなた方が新港をつくる、新港をつくると言ってみたところで、陸上部の附帯施設の土地の取得がないままには新港はできないですよ。そこが取得できないばかりに、東側と西側の漁協のお世話になって、そうして海上運航によって工事を進めなければならない。海の目の前にあるところの陸上部が使用できないままで工事をしなければならない。何とつまらない金がかかることだろう、何とむだなやり方であろう、これを必ず思っているはずだと思うのです。ですから、私はそういうことを見ますときに、なおあなた方にもう一遍聞いておきたいのは、あと残っておるところの三割の土地の取得が可能ですか。可能な先が見えていますか。
  138. 中村守孝

    中村(守)政府委員 お答えいたします。  土地の取得につきましては、現在鋭意、誠意を持って関係の方々とお話し合いをしております。先般お答えした段階よりかはさらに進展しておりますので、私どもとしては円満に話を進めて取得に努めてまいりたい、こう考えておる次第でございます。
  139. 関晴正

    ○関委員 先が見えているというのは、どんな先が見えているのですか。幾らか前進してきたというのはどういうことですか。具体的にお答えください。
  140. 中村守孝

    中村(守)政府委員 五十九年三月九日時点から見ますと、施設用地につきましても、契約済みの方も一人ふえましたし、契約見込みも一人ふえておる。さらに全体の土地の割合から申しますと、前回契約済みが六九%だったものが七一%というぐあいにふえております。こういった状況から少しずつ進展しておりますので、さらに誠意を持って話し合いを進めてまいりたい、こういうぐあいに考えております。
  141. 関晴正

    ○関委員 七一%で、附帯施設は障害なくつくられますか。
  142. 中村守孝

    中村(守)政府委員 お答えいたします。  今後の「むつ」の取り扱いについては現在検討を進めている段階でございますので、その「むつ」の取り扱いとあわせまして、港全体の計画についても再検討してまいりたいと考えております。
  143. 関晴正

    ○関委員 それじゃ、土地を取得できなければ再検討だというお考えの姿勢だと思うのですが、その姿勢は私は間違っているとは思いません。だがしかし、そういう姿勢じゃなくて、にわかにタカ派になって、土地の収用権の発動もしよう、こういうようなお考えがそこにありませんか。
  144. 中村守孝

    中村(守)政府委員 お答えいたします。  現在の日本原子力船研究開発事業団は、そういう土地収用する事業者とはなり得ませんので、今はそういうことはできません。
  145. 関晴正

    ○関委員 局長、今は事業団法で守られているから我々も実は安心しているのですよ。しかし、今度法律改正で原研に移るでしょう。原研には土地収用権の発動権がございますよね。そのときになっても、これについては土地収用法などという強硬な法をもっての当たり方はしないんだ、こう理解してよろしゅうございますか。
  146. 中村守孝

    中村(守)政府委員 お答えいたします。  日本原子力研究所は、その研究施設について土地収用を行う場合の事業者たり得るわけでございますが、この実際の事業を土地収用の対象事業として認定するかどうかは、個々の事業について認定が行われるわけでございます。収用法で事業者になり得るからといって、すべての場合その工事が対象になるわけではございません。これはいずれにいたしましても、私どもは地元の方々の御理解のもとに進めてまいりたいと思いますので、まず話し合いを優先させたい、こういうぐあいに考えております。
  147. 関晴正

    ○関委員 この点については特に長官からも明確な御答弁をいただきたいと思うのです。  事業団法においては土地収用権がないから、反対しているものをどうにもならない。しかし今度は原研の方に移ると、原研にはその機能がある。その機能のあることをよいことにして土地収用法の発動をされるというようなことになるとするなら、これはまた大変なことになる。そういう意味において、そうなろうとも、これまでの方針というものを貫いて土地収用権の発動などはすべきではない、こう思うのですが、大臣のこれについてのお考えをいただきたいと思うのです。
  148. 岩動道行

    岩動国務大臣 ただいま私どもは、原子力船研究開発事業団日本原子力研究所に統合する法案国会で御審議をいただいているところでございます。そして、この法案が成立をいたしますれば、ただいま局長が答弁したように、また御指摘のあったように、土地収用法の適用ができる立場になるわけでございます。しかし、この土地収用法というものはいわば伝家の宝刀みたいなものでありまして、やはり何と申しましても、特に原子力につきましては地元の御協力、御理解をちょうだいして進めるということが第一義的に極めて大事な姿勢でございますので、今後とも円満に地元の方とのお話し合いをして、そうして事業が円滑に進められるように努力をしてまいりたいと思っております。
  149. 関晴正

    ○関委員 それは当然のこととして、今度は今までと違って法が持たれるよ、持たれた途端に今度は鬼になりますよ、こういう心配を実は和している一人なんです。仏のような顔をしているけれども、人は持つものを持つと何をするかわからないしね。だがしかし、これまで貫いてきた原則に基づいてこれには当たります、これならばいいんですが、その点できちっとした御態度を長官として示してほしいと私は思うのです。そんなことは考えていない、そんなことはしない、少なくとも岩動長官が在任中はしない、これでも結構ですよ。この点について重ねてお答えください。
  150. 岩動道行

    岩動国務大臣 今日までも事業団地元とよく話をしてまいりましたし、また特に県等御協力いただいて、青森県当局におかれましても円満に解決するように非常に御努力をいただいてきております。したがって、その線を私どもはさらに堅持してまいりたいと考えております。
  151. 関晴正

    ○関委員 ぜひそうしてください。強くこれは今から申し上げておきたいと思います。  次に、原子力船開発事業団理事長おいでになっておりますが、この間から私は再三にわたって、関根の漁協の諸君に払った漁業補償金の十八億円、この積算の根拠を示せと言ってきたんですが、依然として示すわけにはいかない、こうあなたは答えてまいりました。これから予算をつくるから秘密でございますから申し上げられませんというなら、まだわかるけれども、十八億の金はもう出ちゃっている。青森県の知事と積算の根拠は示さないことになっているのだからという、その約束を守らなければならないということで、あなたは言えないと言ってきました。しかし、いつまでもそれを秘密にしておかなければならない事情ももはやないんじゃないだろうか、こう思うわけであります。あなたは金を払った責任者なんだ。国民の税金を払った責任者で、これにはこういう根拠があって支払ったのでございますという積算の根拠というものを示していいんじゃないでしょうか。これを示さないまま、我々の科学技術委員会があなたの態度を当然だなどとは恐らくだれも思っていないんじゃないかと思うのです。  仏の顔も三度ということがあるけれども、もう三度を過ぎていますよ。(「怒れ、怒れ」と呼ぶ者あり)私も今怒りますよ、これから。怒ることを予告しながら私は聞いているのだけれども、しかし、あなただっていろいろ反省したでしょう。青森県の知事との約束が重いものか、自分の任務からいけば国民に対する、言うなれば代表である国会が論じているときに、国民の金についてどう使ったかということを一青森県知事との約束があるから言えないなんということで、いつまでもそうしていいだろうかということをあなただって反省されたでしょう。この際、積算の根拠を改めて伺いますので、お答えください。
  152. 井上啓次郎

    ○井上参考人 お答えいたします。  今までも先生からいろいろ御指摘いただいて十分反省はしておるつもりでございますが、現在、十八億の漁業補償は、関根浜漁業組合において三十八人の方々で構成しています配分委員会でこれが検討されております。内容につきましては私は十分知っておりませんけれども、協定書によりますと、関根浜の西口組合長が責任を持って公正に、しかもトラブルなくこれを行うという約束になっておりますし、さらに、何かトラブルがあったときは西口組合長が責任を持って解決すると明文にしております。私はそれを信頼いたしまして、その点を強調し、先生に御理解をしていただきたいと思っております。
  153. 関晴正

    ○関委員 あなたは何というお答えですか。どこを反省されているのですか。反省というのは、前の行いについて悪かったから今度はこうしますということを反省と言うんですよ。前のところと、あなたどこを反省しているのですか。西口組合長に任せるとかということじゃない。西口組合長は組合長でおやりになること。しかし、あなたが十八億の補償金を払うに当たっての算定基礎はこういうものでございましたとなぜ言えないのです。それをあなたは守秘義務でもあると思っているのですか。あなたはどっちを重く見るのです、青森県の北村君との話と、また我々に対する要請についてのお答えと。あなたは青森県知事の家来になったのですか。そういうことはそこまでの話で、もうこれ以上は限界だから申し上げざるを得ません、言いましたと言って知らせておいたらいいでしょう。あなたの金じゃないですよ、これは。あくまでも何も言わないつもりですか。
  154. 井上啓次郎

    ○井上参考人 この十八億円の根拠につきましては、前からも申し上げておりますように、漁業権の消滅に対する補償及び工事期間中における漁業の制限をいたしております、それに対する制限補償、あるいは工事を行うといろいろ漁業への影響がございます、その影響の補償、それから港ができますと反射波等のいろいろの影響が考えられますので、その点から漁業の価値の減少というものに対する補償でございます。さらに、消滅区域内で建て網の漁具その他を引き揚げていただきましたので、それらに対するいわゆる通損補償というものが含まれております。したがいまして、その点につきましては十分積算根拠は持っておるわけでございますが、ただいま申し上げたように、数字につきましては、ぜひ御理解願いたいのは、現在の配分委員会でトラブルが起こらないように私としては配慮しているつもりでございまして、配分委員会が終わりましたら、私はお話を申し上げたいと思っております。
  155. 関晴正

    ○関委員 あなたは今、それぞれの区分に従ってトータルの結果十八億にしたのでしょうから、その区分ごとに幾ら幾らと言ってくださいよ。これは配分が終わった後発表したって何の役に立つのですか。配分させるためにも、配分するためにも、適正に行われることを願えばこそこのことが必要なんでしょう。言ってください。
  156. 井上啓次郎

    ○井上参考人 たびたびのお話でございますけれども、私といたしましては、西口組合長の非常な御努力で配分は今行われております。それに対しまして、今先生がお示しのような数字をもってそこにトラブルが起こらぬということがございますればよろしゅうございますけれども、何しろ今配分の中身につきまして組合で盛んに議論をされておるところでございます。その点についてその円満な解決を図る意味におきまして今数字を申し上げていないのでございますので、御理解願いたいと思います。
  157. 関晴正

    ○関委員 科技庁長官、この際科技庁の長官から積算の根拠をお示しいただけませんか。
  158. 中村守孝

    中村(守)政府委員 お答えいたします。  漁業補償費の算定は今理事長からお話がございましたような区分で積算されておるわけでございますが、いずれにいたしましても、この補償金は組合の有するいわゆる共同漁業権の消滅等組合を対象にお払いいたしたものでございまして、現在その配分は組合の中で行われておるわけでございますし、その配分はあくまでも組合の中で自主的に行われるべきものでございまして、外からとやかく言うような性格のものではないのではないかと思っております。  特に、先ほど来この算定の基準が配分と無関係じゃないかというお話もございますが、一般に慣行といたしまして、本件だけが発表しないというわけではございませんで、配分を行っている間はこういうものは公表しないというのが従来からの慣行になっておりますので、そういう意味で自主的な配分というものが円滑に行われる上からも、今ここに御提示するわけにはいかないという事情でございます。決して未来永劫発表しない、こういうことを申しているわけではございませんので、よろしく御了解いただきたいと思います。
  159. 関晴正

    ○関委員 何という話ですか、一体。科学技術庁長官、私は長官に聞いているのですよ。長官は事業団の監督権はないから何も言えないというのならば、総理大臣に出てきてもらうしかない。主務大臣の、監督権を持っておるのは総理大臣だからね。中曽根総理に来てもらってこの返事をしてもらうしかない。この際、ひとつ中曽根総理を呼ぶように委員長の方から取り運んでいただきたい、こう思います。来るまでの間、私なお聞いておきたいと思うのです。漁獲の補償ですよ。まあとにかく中曽根主務大臣には出席してもらってこんな理事長の答弁というものでいいのかどうか、きちんと監督してもらわなければならない。しかも科学技術庁長官、何も答えられない、黙っているだけだ。こんなことじゃいけませんから、ひとつこれは科学技術委員長としてよろしく当たっていただきたい。次の委員会でも結構であります。そういう意味で主務大臣というものは大事な役ですから。大事な主務大臣が来ないで委任大臣がただ座っているしかない。情けないです。そういう意味で委員長、ひとつよろしく取り運んでいただきたい。
  160. 大野潔

    大野委員長 理事会で検討させていただきます。
  161. 関晴正

    ○関委員 続いて質問いたします。  漁獲の補償で、漁協においてあなた方はどのくらい漁獲高をお持ちになっていると計算されていますか。
  162. 福永博

    福永参考人 関根地区の漁獲高がどれくらいか、こういう御質問でございますが、漁業補償の交渉を当初は事業団が当事者としてやっておったわけでございます。その積算いたします際には、たしか過去の三年間だと思いましたが、もし私の記憶が間違っておりましたら訂正させていただきますが、三年間を調査させていただきました。それから算出した数字でございます。具体的数字は遠慮させていただきます。
  163. 関晴正

    ○関委員 三年間の漁獲高は幾らと見ていたのですか。
  164. 福永博

    福永参考人 平年漁獲高で算定するわけでございますが、これは漁業者の方の漁獲高がそのまま数字に出るわけでございますから、この場でちょっと御答弁するのは遠慮させていただきます。
  165. 関晴正

    ○関委員 あなた、とんでもないことを言うんじゃないよ。漁獲高も調べないで漁業補償になるわけないでしょう。何も個人の問題じゃありませんよ。そんなばかな答弁するものじゃない。漁獲高も何も調べてないで、全部青森県の知事に預けてしまったんだからわからないならわからないでいいですよ。わかっているならば言ったらどうです。そんなことも知らないのですか。
  166. 福永博

    福永参考人 全く調べてないというわけではございません。私ただいま申し上げたように、過去の三年間の漁獲高を漁協に参りまして調査させていただきましてそれを平年化したものを持っているわけでございますが、その数字を具体的に今ここで申し上げることは、やはり漁協の収入がそのまま出るわけでございますから遠慮させていただきたい。持ってないわけではございません。
  167. 関晴正

    ○関委員 それじゃ、算定の基礎において漁獲高というものは十八億のうちの何%くらいで見込みましたか。
  168. 福永博

    福永参考人 せっかくの御質問でございますが、私が今の先生の御質問に直にお答えいたしますと、割り算するとすぐに出てくるわけでございますので勘弁させていただきます。
  169. 関晴正

    ○関委員 私から申し上げましょう。  関根浜の漁協は七割は頭割り。頭割りを三百六十五人で今やろうとしていますよ。正組合員が二百五十四名で、準が百十一名。十八億の七割を三百六十五人で均等割にしようというのです。あと残りの金を漁獲高でやろうというのです。それだものだからめちゃくちゃにもめているわけですよ。五億足らずの金を分け合おうというんですよ。十三億近い金は頭割り、五億ちょっとの金は漁獲高割り。  ところが、ここにおけるこの五年間の漁獲高というのはどのぐらいになっているか。漁業組合を通しただけの金ですよ。組合を通さないのはまたさらにあるわけです。五年分のトータルを申し上げて知らせておきますが、それによりますと、昆布一億百九十六万八百一円、若生九十九万一千五百九十三円、タコ三千五百六十五万三千七百七十円、葛野漁業部二億三百七十五万六千四百八十七円、松橋漁業部七億四千二百五十八万九千百四十二円。この松橋漁業部というのが実に六七%を占めております。そのほかに組合を通さない会もまたあるわけです。合わせますと、組合を通している金額だけで五カ年のトータルが十億八千四百九十五万一千四百九十円となっているわけです。  そういうことを見ますと、わずかに五億の金を今度は分けるんだといって作業に入っているものですから、作業がうまくいくわけがない。あなた方も漁獲高というものを重んじなければいけない、損失補償なんですから。権利補償じゃない。権利補償に流れるような方向になるならば、これはあなた方の趣旨とするところとまた違っていく。しかも消滅区域というところに網を置いている人が、一番補償を受けなければならない人が一番補償を受けないことになっている。正義がここで死んでいる。死んでいる正義を生かさなければならないのが国会でしょう。西口組合長というのは網一つ、船一つ持っていない。そういう者の言うことを聞いて、そういう資格のない者に金を多く与えて、そうして三分の二をとった手柄賃として上げようとしているわけですよ。組合員の資格のない者、何ら漁業に従事しない者が寄ってたかって漁業を専業としている諸君を村八分にしようとしているんです。八分ところじゃない。今、村九分ですよ。  その責任は挙げて理事長、あなたのところにあるんですよ。あなたなんか即刻理事長をやめたらいい。国会の正規の場所で物も言えないような理事長、何も言わないで、我々を何と思っているんだ。我々は国民の代表ですよ。国会を無視して、軽視して、国会審議を何と思っているか。理事長、北村知事の方が偉くて、我々委員会の方はその下にあると思っているんでしょう、あなた。とんでもない。私は、そういう意味において人事権を持っている総理大臣に、こんなわけのわからない理事長なんかいつまでいたってしょうがないと思う。即刻罷免すべきだと思う。
  170. 大野潔

    大野委員長 関君に申し上げますが、ひとつ御質疑をお願いします。
  171. 関晴正

    ○関委員 このことを要求しておいて、私は時間だから終わりますよ。以上ですから、お答えください。
  172. 岩動道行

    岩動国務大臣 いろいろ御意見を承りましたが、私どもは最善を尽くして地元の方々の円満な補償の配分に期待をいたしておりますし、また、原子力船研究開発事業団理事長は十分にこれを信頼して今後とも進めてまいりたいと思っております。
  173. 関晴正

    ○関委員 時間がないから終わります。
  174. 大野潔

    大野委員長 午後一時十五分から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時二十分休憩      ――――◇―――――     午後一時十七分開議
  175. 大野潔

    大野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。小川泰君。
  176. 小川泰

    小川(泰)委員 ちょっと最初に、今法律の一部を改正するという問題が出ておりますこの部分が一つと、「むつ」という船自体の問題にできるだけ触れないでと思っておりますが、どうしても関連がありますので、その部分に関連をして二つのサイドから御質問申し上げたいと思います。  まず第一には、今出されておる改正法案、いろいろと改正の趣旨質問におけるやりとりの内容、こういった点を伺っておりますと、端的に私の認識するこの改正の動機といいますか、主なる要因というものは、この言葉どおりとらせていただきますと、五十五年にみんなで決めた一つの取り決めで六十年三月三十一日までに他の機関に移行するんだ、これが唯一の主因になって二つの団体を一つにまとめよう、こういう意味合いの法律改正かな、したがって、「むつ」関係の成否のいかんにかかわらずこの法律の改正が提案されておる、こういう認識に立ちたいと思いますが、そういう認識でよろしいかどうか、ひとつ伺いたい。
  177. 中村守孝

    中村(守)政府委員 お答えいたします。  先生指摘のように、五十五年の法律改正におきまして、行政の簡素化を図る、効率化を図る、こういう観点から六十年三月三十一日までに統合するということを現行法律で決められております。そのときの法案審議段階におきましても、従来の時限的な立法よりも恒久的な法人として恒久的に研究が続けられていくということが必要じゃないかという趣旨もあったかと思います。こういう意味合いから原子力船むつ」の取り扱いにつきましては、これから議論をいろいろ進めていかなければならないわけでございますが、いずれにいたしましても、舶用炉ないし原子力船研究開発というものは我が国の国情からいいまして続けていかなければならないという意味合いからも、今回法案提出をいたした次第でございます。
  178. 小川泰

    小川(泰)委員 そのような認識に立ちまして、今度の内容法律的に云々という問題ではなくて、本来原子力研究所というものが持っておる性格と、それから現在もございます事業団というものが持っておる性格とが二つになったときに、幾つかこれからなじませていかなければならない部分がある。法律上のなじませ方は、これは文言ですから技術上何とでもできると思いますが、本来のスタートの趣旨二つでスタートしているわけですから、それが一つになるという場合に、多少その点をただしていってみたいな、こういう観点から、二、三同時に質問をさせていただきたいと思います。  その一つは、研究所というのは、平たい言葉で言えば、原子力全般について、いわば舶用炉も含めて、今考えられるいわゆる核エネルギーというものをどう活用し研究し、これから発展させるか、こういう広範な前提に立った一つの研究機関ということだろうと思うのです。事業団というものは、その中の一つとして、とりわけ舶用炉というものを抜き出して、いわば十年なら十年という一応のめどをつくった中でその研究を進め、成果を得たい。片方は実はこういう出発をいたしておるものでございますので、どうもそこら辺が、一つになったときに、もしそのまま素直に読ませていただきますならば、片方の十年なら十年、十五年なら十五年というものが研究所の方へそのまますっと移行してまいりますと、研究所の性格は目的達成までというのだから、核エネルギーというのは永遠に開発が続けられるということになると、その中にずっと流れ込んでいきますから、どこら辺で一体とまっていくのだろうかという問題が一つ区切りとしてあるな、こういう点があるわけであります。そういう中で、船の方は一定の目的を持って開発をし、そして研究を行ってある程度の、運航というところまでこぎつけていくわけです。あくまでこの炉は、原子炉に例えれば原型炉あるいは実験炉の部分までいくのでしょうか、そんなところを目標にして事業団というものが目的を持って進めた、こういう経過が実はあるわけでございますので、そこら辺はどんなところで区切りがつくのかという認識がひとつ欲しいなということが一つであります。  それからもう一つ。事業団の方は主として運輸省所管という、リーダーシップが強い、それを引っ張ったまま研究所の方に入ってくる。研究所の方は総理主管で、長官が実際の旗振り部隊長になってやっていく。そこへ運輸省のものが入ってくるということになりますと、一体これはどういうことになっていくのだろうかということが先々心配になります。まして、プロジェクト的に船あるいは舶用炉というような問題を追求しようとする場合には、後ほど触れたいと思うのですが、たしか「むつ」があの多少の事故を起こしたときに、昭和五十年五月に「むつ放射線漏れ問題調査委員会、俗称大山委員会というものが相当立派な報告書を出しております。これらをずっと読ませていただきますと、その中を流れる一つの大きな問題は、責任体制の所在はどこだということがどうも不明確のままスタートしたなということと、どこが目標なのだということが明確に示されないままスタートしたなという、一連の調査報告書の、技術上の問題は別としてもセオリーが、二度と繰り返すなよ、こんな意味合いで流されておるように僕は思えてならないわけであります。そうなってまいりますと、二番目の私の質問も、このまま法案が改正されれば入っていくわけですから、まさにその辺で、どこに責任の主体があるのかという問題をこの際明確にしておく必要があるのではないか、これが二番目の質問であります。  それから三番目。一番大事なことは、船なら船、舶用炉なら舶用炉というものをずっと進めていく場合に、いわばこれはプロジェクトチームということに実はなるわけでありますので、民間でこの種の開発をしようとする場合には、例えば、これは行革の精神に沿っているわけなんですが、一つの会社に副社長が何人おる、担当常務が何人おる、いっぱいこうある。そうすると、一つのものを開発しようやとなりますと、その副社長や常務の職務分担が仮に分かれておったといたしましても、その中の一人の副社長がそのプロジェクトの長になった途端にすべての権限がそこに集約されて、その権益が侵されようと何しようと、目的達成のためにはすべての力をそこに結集して開発に、実証に向かっていく、こういうのが通常の近代化社会の中の組織のあるべき姿ではないか、私はこういう経験を自分なりに持っておりますので、そのような仕組みを、この法案統一の際、船の問題、舶用炉の問題を進めるとするならばおやりになるつもりなのかどうなのか、その場合に組織はどうなっていくか、陣立てはどうなるか、こういったような問題についての一つのセオリーを、この際三番目の問題としてお聞かせ願いたい。以上、とりあえず。
  179. 中村守孝

    中村(守)政府委員 お答えいたします。  第一の点は、原子力研究所というものが原子力全般にわたるいわば総合研究所であるのに対し、原子力船事業団はいわば原子力船の開発という特定のプロジェクトに専ら専心する機関である、そういうものが二つが一緒になってうまくいくのだろうかという御質問かと思いますが、原子力船研究開発事業団につきましては、確かに先生指摘のように、設立の当初におきましては、この現在の「むつ」を建造して運航するということによって、その先実用化への橋渡しができるというビジョンを持ってスタートしたわけでございます。したがいまして、大体「むつ」の建造、運航が終わればそれで御用済み、こういう形の法律になっておったわけでございます。  しかしながら、放射線漏れのトラブルを起こしました後は、そういった経験もさることながら、全体の原子力船に対する経済性の問題等々の点から、むしろもう少し、原子力船を将来実用化していくにつきましてももっと地道な研究開発というのが必要じゃないかということに見直されたわけでございます。その結果といたしまして、五十五年の法律改正の際に、新たに「原子力船の開発のために必要な研究」という「むつ」以降の将来に向けての舶用炉の研究項目がつけ加えられたわけでございまして、「むつ」自身につきましても、当初考えられておりましたような、実験航海が終わった後は実用のほかの用途に使おう、こういうことが一応はビジョンとして描かれていたわけでございますが、現在ではそういうことではなく、あくまでも将来の舶用炉の研究を進める上で必要なデータ、特に海上での振動、動揺等に対するデータを得るためのいわば実験船として使い、それをもって使命が終わる、そういうふうに変化してきておるわけでございます。そういう意味では、事業団はまさに原子力研究所の姿に相当近くなっておるわけでありますし、今後一体となりまして、いわば特定の原子力船建造したり運航したりということではなくて、将来に向けて舶用炉の基盤的な技術の研究を進める、こういう形になっておるわけでございます。  同じように、原子力研究所の中でも、例えば高温ガス炉の研究開発というものが今進められております。そういったものと同じような形で舶用炉についての研究開発も今後進められることになろうかというぐあいに我々としては考えておるわけでございまして、統合後原子力研究所の研究員混然一体になりましてこういった研究を進めてまいりたい、そういうぐあいに意図しておるわけでございます。  それから、第二の点で、運輸省といわば内閣総理大臣、その委任を受けました科学技術庁長官との間の共管の問題がございまして、これでは責任体制がばらばらになるのではないかという御懸念かと思います。この点につきましては、原子力研究開発につきまして原子力委員会においていろいろ御議論いただきました基本計画、これは原研全般に及ぶもの、それから原子力船だけに限るもの、二つございますが、いずれにいたしましても、我が国の原子力政策の総本山である原子力委員会での御審議、御決定をいただいた基本計画もとに研究が進められるわけでございまして、しかもその研究の実施主体はあくまでも原子力研究所でございまして、研究の遂行に当たってのトップは原子力研究所理事長であるわけでございます。それをいわば一般的な監督、そういう原子力研究所の仕事が実際定められた権限の枠外に逸脱しないか、公正な財務、会計等が行われているか、そういったことを監督するという意味で科学技術庁運輸省が加わるわけでございまして、実行の責任は原研の理事長であると岡崎に、政策全般については、当然ながら原子力委員会における原子力政策が基幹になりますので、そういった意味で、その事務局を預かり、また科技庁長官も原子力委員長を兼ねておられるわけでございますし、特に運輸省とは緊密な連絡をとってまいりますので、御懸念のようなことはないのではないかと考えておるわけでございます。  それから、今度原子力船研究開発事業団の仕事が日本原子力研究所に移りまして、舶用炉関係のプロジェクトを進めるにつきましては、これは今御審議していただいております法案の中にもございますように、副理事長を一人、原子力研究所としては増員をするという形になっておりますので、この副理事長に主として舶用炉の関係の研究を担当させるというような形で、しっかりした責任体制のもとに進めてまいりたい、このように意図しておる次第でございあす。
  180. 小川泰

    小川(泰)委員 大体そういうことになるのだろうと思いますが、私がこの問題を特に懸念して申し上げたのは、えてして、研究開発という一つの目標を掲げた場合、「むつ」の例が一番いいですが、船に炉を積んで一つの目的を達成しましたよということで、あたかもすべて完了したかのごとき錯覚に陥る。ここがちょっと技術上の問題と運営上の問題が違うところだと私は思うのです。  と申しますのは、こういう新しい技術の開発というのは、例えば「むつ」なら「むつ」で得たいろいろなデータなり実験の経過というものが、そこで終るのではなくて、いいなということになれば、よしそれでは次の実証炉に行くかさらには商業炉に行くか、こういう連続性というものが常に向こうに見えておって、得られた実験の経過が次の段階へそのままきちっと引き継がれ、そこに定着して、そこで息を継いで初めて第一回目の目的は達成できる。こういう発想でこの種のものは進めないと本物にはならないのじゃないかな、こういう懸念がありましたので、しつこく先ほど伺ったわけでございます。この点をもう一度ひとつお願いを申し上げたいと思います。  ついでにそれに関連をして、もしそうであるとするならば、本来途中で法改正や趣旨が変わったといたしましても、船は船、舶用炉は舶用炉として厳然として今あります。この船につきまして、仮に成功したという前提を設けましょう。仮にじゃなくて、本当は成功していてもらわなければ困ったのです。成功したといたしましょう。そうしたら、その先はどこへどういうふうに技術を生かしながら連続をさしていくか、その計画があるはずだと私は思いますので、そこまでちょっと触れてお答えを願いたいと思います。
  181. 中村守孝

    中村(守)政府委員 お答えいたします。  科学技術研究開発は、先生指摘のように継続性を持って進められなければならないわけでございまして、すべてが、いろいろな実験段階あるいは経験の積み上げの上に新しい技術が確立していくという点については、全く先生のおっしゃるとおりでございます。  原子力船の「むつ」につきましても、まさにそのことの経験で、原子力船開発事業団の体制問題がいろいろ議論されましたときに、まさに御指摘の点がございまして、従来ですと、時限立法であるためにもうそこで終わりになってしまうということになると人が長く居つかない、あるいはよその会社から出向してきた人が二年たつとまた帰っていってしまうということで、そのデータが次々と着実に受け継がれていかない、そういう心配があるのではないかという御指摘も受けておったわけでございますが、事業団自身反省しまして、そういう体制を克服すべくいろいろな努力もしてまいりました。五十五年の法改正のときは、まさにそういう意味合いから継続的に研究開発を進めるべきだということで、時限を切ってやめるのではなくて、原子力研究所その他原子力関係の法人に統合させて研究を永続させよう、そういう趣旨から出たものでございます。  それから、舶用炉の開発についての先行きでございますが、御承知のように原子力研究所自身が、実用化のところまで持っていくという性格の機関では必ずしもございませんで、いわばその下地をつくり上げるところまでというのがこの原子力研究所の役目かと思っております。そういう意味で、今度御提案させていただいております法律でも、いわば従来の原子力船事業団法でございますと「原子力船設計建造及び運航」というような表現がありましたのを、そういうことをそのまま原子力研究所の今度の統合法案の方に持ち込みますと、第二船、第三船というようなこともあり得るのではないかというようなことが解釈的に出てまいりますので、そういったことを避ける意味もございまして、現在御提案しておりますのは、まさに「むつ」に関する業務だけを行うことにしております。  将来、非常に夢のある話かもしれませんが、先に行って第二船、第三船という問題が出てきたときには、この原子力研究所でやるということではなく、どういう方法でやるかということは改めて検討をすべき問題である、そういうぐあいに認識しておるわけでございますが、現在の「むつ」につきましては、あくまでも実験船として海上におきますいろいろなデータを取得するわけでございます。それで、これが今後統合されました機関で舶用炉の研究を進めていく場合の、いわば陸上でのいろいろな実験データとそれから海上でのデータとが車の両輪のように相まって研究開発が進められていく。陸上だけでは、海上の特有な事象というものを十分に織り込んだ研究ができないという意味で、やはり「むつ」による海上のデータが必要なのではないだろうか、こういうのが今まで我々が考えてきたことでございまして、現在、原子力委員会で定めております原子力船開発に関する基本計画では、改良型の舶用炉につきましては、一応概念設計をしまして、その評価研究を行うというところまでやることにしておりまして、その先は「むつ」による研究開発の成果、それと、この改良舶用炉に関する評価研究を踏まえて具体的な計画を決めようじゃないか、こういうことになっております。  したがいまして、その評価研究から先の舶用炉の研究開発につきましては、統合された後における原子力研究所における研究者による自主的ないろいろな発案はもとよりのこと、広く専門家の意見も聞きつつ具体的な計画を決めていくということでございまして、「むつ」の成果は、そういった舶用炉の研究開発の上に反映させていきたい、そう考えておる次第でございます。
  182. 小川泰

    小川(泰)委員 わかりました。  では、ちょっと長官にこの際、次の質問に移る前に伺っておきたいのでありますが、この二つ法案改正を契機にいたしまして、とりわけ目に見えるものですから、「むつ」にかかわるいろいろな問題が出てまいりました。例えば外国の状況はどうだろう、こういうデータです。いろいろなことを言われてまいりまして、私、ずっと聞いていますと、この段階で舶用炉、いわゆる原子炉による平和利用の一つである船、これは世界的な趨勢から見ても、どうも余り先が開いていくようなものではないのじゃないかという印象を受けるようなやりとりに思えてならないのです。  そこで私は、前にもちょっと原子力行政全般のときに伺いましたが、この種のものはそう近視眼的に物を見てはいけない、人間の知恵がどんどん発達すると同じように、この種のものは大きく開いていく。そういう発想の中で、時には足踏みするときがあるだろう、時には階段を二つも三つも上るときがあるだろう、こんな発想でこの種のものは扱うべきだという考えを私は持っております。長期エネルギー、人間の生存にかかわるエネルギーというものを、せっかくこういったところまで相当な金をつぎ込んで進めてきた。そういう立場から見た場合に、当面は国際的にもなかなか一歩二歩進みづらいなとかこういう点があるのかもしれませんが、やがてこの種の問題は相当な視点を浴びながら開発をされていかなければならない分野のものだなというふうに私は思っておる。そういう観点から、どんな時間で進んでいくかは別としても、そういう考え方を長官として、大きな意味合いで技術開発あるいはエネルギーのあり方の問題でお持ちなのか、ひとつそこら辺をセオリー的に聞かせていただきたいと思います。
  183. 岩動道行

    岩動国務大臣 まず、日本のエネルギーのあり方でございますが、何といいましても、一番エネルギーの大宗をなしておりますのは今日までは石油でございまして、御案内のとおりでございます。この石油につきましては、ほとんど一〇〇%に近いものを日本は海外に依存をしております。しかも、その大部分を中東という地域に依存をしている。こういうようなことで、第一次、第二次の石油危機を迎えて、日本は速やかに脱石油政策をとっていかなければいけない、代替エネルギー政策を促進しなければいけない。そういうようなことで、私どもは、特に代替エネルギーとしては原子力平和利用という立場から、かねてから、もう昭和三十年代から進めてきたのでございますが、さらに石油危機というものを迎えまして、一層代替エネルギーとしての原子力平和利用が非常に大きな重みと必要性があると私どもは考えて、今日まで原子力平和利用を進めてまいったわけでございます。  そういう中におきまして、日本が海運国家であり、また貿易国家であります立場からも、原子力船というものがやがて必要になるであろう。しかも、この「むつ」の研究開発を進めたときには、今世紀中にもそのような必要が出てくるのではないかと、ある程度定量的な見通しが当時はあったわけでございます。しかしながら、石油危機を迎えて、そして原油の価格が急速に上がっていく事態が避けられて、むしろ昨年から原油価格がバレル当たり五ドルも下がる、こういったようなことになってまいりまして、したがって、エネルギーの需給状況というものが大きく変化をいたしました。  そういう中において、それならば原子力船むつ」というものの研究開発は要るのか要らないのか、そしてまた、今世紀中に定量的に考えられた原子力船というものが果たして同じような状況であるかどうかということを子細に検討してみましたところ、まず舶用炉の研究開発はどうしても必要である、これはやっておかなければいけない、したがって、「むつ」による研究開発が最も適切である。こういうことで、石油危機のころからも、そして原油が下がった時点においてもその方針は変えないできたところでございます。しかしながら、これにつきましては各方面からいろいろな御議論もございましたので、改めて政府としては「むつ」のあり方について検討して、結論をこの夏までに出すということにいたしたわけでございます。  一方、原子力船の必要につきましては、先ほど申したように、定量的に、いつ、どれくらいの船が原子力船として要るかということはなかなか見通しがつかない状況になってまいりましたが、しかし定性的には、二十一世紀に入れば必要になってくるであろう、これは私どもは疑っておらないところでございます。そしてまた、エネルギーを油に頼らないでいかなければいけない日本ということを考えた場合には、どこの国よりもむしろ原子力船というものが必要になってくる。したがって、今日でもそのような立場から舶用炉の研究開発というものを積極的に進めていかなければならない、こういう基本的な考え方でございます。したがいまして、これから石油の状況がどうなりますか、中東情勢がどうなりますか、それによっては今世紀中にも定量的な事態が起こってくるかもしれない。それに備えて舶用炉の研究開発ということは、「むつ」がどうあろうとも進めなければならない、こう考えておるところでございます。
  184. 小川泰

    小川(泰)委員 今長官の考えが明らかになりました段階で、ぐっとリアルな質問をその延長線上で申し上げてみたいと思うのです。  必要とする、この前提に立ちまして、恐らく「むつ」自体も改良が加えられたと思います。せんだっての質問によって、改良が完了しておる、こういう御答弁があり、では一〇〇%いいのかということになると、まあ一〇〇%と言われるとこの種のものはいかがかなと思うけれども、まあできますよ、こういう御答弁をなさった。私も、そうだろうと思います。ただ、あとは人為性といいますか客観条件といいますか、そういうものが整いさえすれば稼働ができる、こういうことになっておると思っておるのですが、そういう認識に誤りがあるのかどうか。もうこれは時間がありませんから、そういう意味合いで、ひとつお答えを願いたいということが一つであります。  それから、文献やお話を伺っておりますと、当時の設計段階で使われた技法、手法というものは、だんだんと世の中技術が進歩いたしておりますので、恐らく改良段階ではSN法、いわゆる二次元の輸送コード、これを適用して改修がなされたと聞くが、そういう手法でなされたのかどうか、これが二番目。だとしますならば、その新しいコードを用いて行った前例があるのかどうか、これを伺いたいと思います。
  185. 野澤俊彌

    野澤参考人 お答え申し上げます。  まず第一点は、「むつ」の健全性についての御質問かと思いますが、御案内のとおり、放射線漏れ原因調査によりますと、高速中性子のストリーミング現象にあるということが判明いたしましたので、遮へい改修工事につきましては、主として上下方向の遮へい能力の向上を図るために、場所によりましては材質変更あるいは形状変更あるいは遮へい材の新規の追加を行ったものでございます。  次に、安全性総点検の件でございますけれども、安全性総点検につきましては大山委員会の御指摘では、遮へい改修工事と並行してあわせて最新の設計知識に基づいて再検討することが指摘されております。したがいまして、それを受けまして事業団といたしましては三つの基本的な考え方に基づいて総点検を実施しております。  一つは、既存の施設が果たして設計どおりの健全な機能を発揮できるようになっているかどうかという健全性のチェック、それから二番目は、新しい設計手法、思想あるいは新たにそれ以後制定されました安全基準との対比における安全性のチェック、それから三番目には、陸上の原子力発電所の運転経験に基づく見直しといったようなことが行われまして、必要な改修、補修工事が実施されたものでございます。  以上申しましたようなことによりまして、「むつ」は長崎におきまして遮へい改修工事及び総点検、補修工事を終えまして、大湊に回航後約一年七カ月十分な維持管理を行っておりまして、技術的には「むつ」はいつでも動かせる状態にあると私ども考えております。したがいまして、技術的以外の条件がすべてそろえば「むつ」はいつでも動かせる状態にあるというふうに私どもは考えております。  それから次に、今先生指摘の改修に当たってどういう手法を採用したかということでございますが、放射線漏れ原因となりました複雑な形状の遮へい体の間隙部等の中性子ストリーミングを扱える計算法というのは、一番最初の設計当時には一般的でなかったわけでございますけれども、一九六九年でございますか、ロスアラモスで二次元のSN法によるストリーミング解析というものが計算上可能になったわけでございます。  SN法と申しますのは、中性子の輸送方程式を解く方式でございまして、複雑な形状の放射線遮へい解析及び遮へい設計に広く利用されているものでございまして、現在も陸上の原子炉施設には広く利用されているものでございます。簡単にしますと、従来の計算法は、空間分布は一応扱ってはおりましたけれども、その一点でのトータルフラックスしか求めることができませんでしたけれども、この二次元のSN法によりますとその点におきます角度分布がかなり詳細に計算できることになります。ちなみに、SN法のSというのはセグメントという意味でございまして、これをN分割いたしまして、中性子の角度分布を数値的に詳細に解くことができるという手法でございます。先ほど申しましたように、この手法は現在も陸上の発電所において広く利用されているものでございます。
  186. 小川泰

    小川(泰)委員 そのSN法の御説明は、時間がないので無理に聞かなくとも大体こっちも承知しているのですが、問題は、それをつくって固定した陸上のものは実験したり結果が出ておるのですが、この舶用炉自体にそういう手法を用いて実験した何か諸外国の文献やら実証があるのですかということを聞きたかったので、もう一度。なければないで結構です。
  187. 野澤俊彌

    野澤参考人 かねがね御説明申し上げておりますように、諸外国におきましては既に実験船の段階を終了しておりまして、次のステップの実用化のための設計というのがほぼ完了しておる状況にございます。したがいまして、実際の舶用炉で遮へい解析をSN手法を用いて行ったのは「むつ」だけでございます。陸上炉にはたくさん例はございますけれども、実際に動いているものとしては「むつ」だけが利用された例でございます。
  188. 小川泰

    小川(泰)委員 私は大変貴重な確認を得たと思うのです。せっかくそういう新しい手法ができたものならば大いにこれは活用していかなければ、それこそ宝の持ちぐされになるなという印象を強く受けました。答えは要りません。  その次に、そういう経過を踏まえながら五十年の五月の調査委員会報告書等に倣って、恐らく事業団の皆さんは、それ以来七、八年たっているわけですからいろいろな研究をなされ、また改良を続けていらしたんだろうと思います。したがって、五者協定とかなんとかというものが仮になかりせば、もう大分前に改良ができた段階でやっておったな、こう私は見ておるわけなんであります。  そこで、せっかくのものをもったいないなと思いながら次の質問に入るわけですが、同時に原子力委員会が「むつ」について、たしかことしの正月あたりですか一つの結論を出していますね。結論から言えばやれという、いろいろな論議経過その他あったと思いますけれども、そういう委員会の結論が出ておる、私はこういうふうに承知いたしております。さてそこで問題は、原子力委員会という我が国の原子力行政の総本山とも言われるような重要なポイントを握っておるところでそういう結論が出た、こういう前提に立ちますならば、もし仮に、巷間言われておるように、この原子力委員会の決定と反するような一つの政治行為なり結論が出た場合に一体どうなるんだろうかなということが、私は心配でならぬわけでございます。それは、原子力委員会自体に対する権威性の問題があるし、また原子力委員会それ肉体が日本の原子力全体の総本山であるという立場から見た場合に、原子力行政関係全般に与える影響というものも少なくないものであるというふうに思いまして、「むつ」の成否を越えて、いわば大きな原子力行政のセオリーに一つの問題が投げ与えられる結果を招来しはせぬかなということを大変心配いたしますので、これは局長なり長官なりどちらからでも結構でございますが、ひとつお答えを願いたいと思います。
  189. 岩動道行

    岩動国務大臣 大変大事な点についての御指摘をちょうだいいたしました。私どもは、原子力平和利用という観点から、先ほど申したように日本のエネルギー政策において重要な位置づけをして進めてまいりましたが、そのような政策を決定し、またいろいろな方針を示す原子力委員会というものは極めて重い立場にございます。法律上も、原子力委員会の答申等につきましては総理大臣はこれを尊重しなければならないという重要な規定もございます。そういう意味におきまして、原子力政策については委員会としては長期的な見通しのもとにそれぞれの問題に対応してきておるわけでございます。  そういう中におきまして、原子力船むつ」のあり方についても、昨年あたりからにわかにどうあるべきかという議論が出てまいりました。原子力委員会は、原子力船むつ」を舶用炉の研究の手法として継続してやるべきだ、こういう御決定をいただいたわけでございます。これに対しまして予算編成の段階におきまして、これは政府・与党の中のことでございますが、原子力委員会というものの決定の重さということを議論の中において十分に私は主張をいたしてまいりました。そしてまた、政府が五十九年度の最終の予算案を編成する段階におきましても、原子力委員会の決定というものは否定をされたのではございません。そのまま存続をいたしております。そのような中におきまして、「むつ」につきましては今後政府としても各方面の御議論、国会の御意見等も十分に拝聴して対処したい、こういうふうに考えております。  したがいまして、原子力委員会の決定ということは、十分にその重さというものを肝に銘じてこれからも原子力政策を進めてまいりたいと考えておるところでございます。
  190. 小川泰

    小川(泰)委員 長官のその言葉を信じながら、船の問題の段階でまたひとつ意見なりその他を申し述べたいと思います。  ぐっと今度は趣を変えまして、これは事業団の方への御質問になろうかと思いますし、同時に、原子力担当の科学技術庁の方の心構えにも関係するかと思いますが、この種の問題が出てまいりますと、往々にして予算あるいは現実にある姿の追求、それを取り巻く条件のいろいろな問題が論議されるわけであります。あるいは技術についても追求をされるということになるんですが、結局考えてみますると、船が動くための動力を原子炉に変えただけの話なんです。そして、それを運航し運転し活用するのは人間です。こういった点を考えてまいりますと、技術の開発やあるいは船のさらなる前進やすべてを実際実行するのは人なんです。そうなりますると、あの船というのは、単に原戸炉の運転だけではなくて鉛そのものの運転も、これは人がいなければできません。同時に、舶用炉を積んだ船を動かそうといたしますると、単に係船の技術だけで済むような人では済みません。炉がどういう変化を起こすかということに連動をして、常に船自体の運航への気配りといいますか訓練といいますか、そういうものがなされていかなければ、これはもう本当に仏をつくって魂入れずということになるわけでありまして、陸上の炉の場合にも、ある人に言わせると、一つの技術が外国でできた、お金を持っていってその技術を買ってくればいいだろう、こういう単純な考え方がありますが、そんな単純なものではありません。技術にいたしましても、お金で買える範囲というのはわずかなもので、あくまで自分が体験をし、自分が勉強をし、研究をし、自分の国のものに、自分のものにして初めてその技術というものは息をつくものなんだ。  そういう前提に立って考えますならば、この「むつ」という船とそれを動かす人、それに対する今までの訓練、これからこの船のやり方一つによっては、そういう人たちが持っておる、これは機械や無機物的な技術ではなくて、人間そのものが体得した技術というものをもっともっと大事に、もっともっと重要なファクターとして考えなければならない、私はこういうふうに思うんですが、その辺の考え方をどちらからでも結構ですから、余り触れていませんのでひとつこの際お聞かせ願いたいと思います。
  191. 福永博

    福永参考人 原子力船むつ」を動かすのは人である、まさにそのとおりであろうと存じます。  私ども、今原子力船むつ」の乗組員につきましては、先生も御案内のことと思いますが、主として航海訓練所あるいは海運大手六社あたりの非常に優秀な乗組員の方においで願っておるわけでございます。その間、原子炉の運転技術あるいは放射線管理の技術、こういったものを習得していただいているわけでございますが、具体的に申しますと、今までのところ、こういう訓練を積んだ方が二百数十名に上っております。そのうちで十数名の方は原子炉主任技術者、これは大変難しい資格でございますが、こういうものもお持ちになっておるというようなことで、大変心強く思っておりますし、また現在も鋭意努力していただいている状況でございます。
  192. 小川泰

    小川(泰)委員 今お答えいただいたとおりで、私は、そこはこれからの技術を開発するなり何なりの一番の大骨になる、銭金ではない、人が身につけた大事な技術財産というものを、これから法案で一つにされようと、もっともっと大事にみんなで守り育てていかなければ技術というものは前進をしない、こういうことになると思いますので、ひとつ十分な対応をこれからも怠りなくお願い申し上げたいということを希望として申し上げさしていただきます。  さて、もう時間もありませんので、これも長官になるんでしょうか、今たまたま原子力研究所事業団の一体化、それにかかわる法律の改正をめぐりまして、現実に多少のトラブルを起こした「むつ」という問題が絡み合ってここで論議をされております。それも含めて、我が国の原子力政策の基本というものが、どうも陸上の問題からいろいろな問題を見ましたときに、日本の場合にもう少し本腰を入れて、いろいろな事象が起きたとしても余りふらふらしない基本姿勢が大変重要な時期を迎えているのではないかな、こういう印象を私は大変強く受けるのです。その基本姿勢さえしっかりしておりますならば、多少のタイムラグがあろうと、多少のトラブルがあろうと、十分なる備えてこれに対応できるはずだがな、こう思っておりますので、そこら辺を中心にしてお聞かせをお願い申し上げたいと思うのです。  その問題について、一、二具体的にさらに中身をついてみたいと思うのですが、どういう点かといいますと、先ほどの質問にしてもあるいは予算を論議するときにいたしましても、私、前回も申し上げましたとおり、何かどうも世の中の風潮というものが物か金かということによって、権益や権力というもので安易に解決されようとする風潮が強過ぎる、こういう感じがしてならぬわけでございます。これは決まったことですから、私はよしあしは申し上げませんが、例えば電力三法一つとりましても、大きな意味合いで、ああいうお金やら補償措置によって電源開発地帯あるいはその他の人たちの心をいやしたり、協力態勢をとらしたりということも一つの手法としてあるのかもしれませんが、どうもそういう金や物やということによって、大事な民族のエネルギー、新しい科学技術の開発というものが一般の認識としてそういう方面へ流れやすい、過ってとられやすいような風潮がやや強過ぎるのではなかろうかな、私はこういう気がしてならぬわけでございます。  そういうものを一つ頭に置きますならば、この辺で、多少手間暇かかったといたしましても、いわゆる原子力行政なら行政、政策というものに対してじっくりと構えた検討とそして一つの基本姿勢というものをしっかり出すべき時期に来ているな、私はこう思っておりますので、こんな感じを持っている私が間違っておるのか、それともそうでないよということになるのか、ひとつ御所見をお聞かせ願いたいな、こういうふうに思います。この種の問題は全般にかかわる問題でございますので、例えば先ほどの十八億の分配がどうだとかという問題もありましょう、あるいは漁業補償もありましょう、あるいは用地の補償もありましょう。世の中全般の風潮に対して、まさに科学技術が持つこの意味合いは大変重いわけでございますから、そういう意味合いでひとつそのあるべき姿、こう考えたいというようなことをお聞かせ願えればありがたいな、こう思います。
  193. 岩動道行

    岩動国務大臣 原子力につきましては、日本は広島、長崎という世界で類例のない被害を受けた国でございます。したがって、原子力に対する異常なほどまでのセンシティブな国民であると思います。そういう観点からも、私どもは、まず原子力平和利用、これは一体どういうものなんであるかというその基本をよく国民に理解をしていただくことが一番大事であろうと思います。それなくしては、いかにお金で物を解決しようとしてもそれはできないことであろうと思います。  そういう意味におきまして、ただいま御指摘のように、私どもは、まず原子力というものはどういうものであるのか、そしてその平和利用はどういうものであるのか、さらにまた核爆弾あるいは核兵器というものはどういうものであるのか、そしてそこにどういう区別があるのか。原子力発電所で核の分裂をさせてエネルギーを取り出す、これが直ちに原爆につながるようなそういう不思議なイメージをとかく持たれがちでまいりました。こういうものをすっかりよく理解をしていただいて、その分別をつけながら、そして平和利用という立場から原子力というものをよく国民にわかっていただく、この政策が一番基本であろうと私は思います。そしてまた、安全性についても、十分に政策としても技術としても確立されると同時に、国民にも理解をしていただく、そういう中で初めて原子力の具体的な利用と開発というものが進められると思います。  したがいまして、そういう中において原子力発電所をつくるとするならば、温排水の問題等もございましょう。やはりいろいろ不安もつきまとわないとは申せません。そういう意味におきまして、まず地域に対する振興というような観点から、特に交付金等も考えていくことは政治としてもうなずけるところではないかと思います。あるいはまた補償につきましても、漁業補償等は、漁業権を放棄してもらう、消滅するということでございますので、その生業にかかわる経済の問題でもございまするから、これは適正な補償というものは当然経済行為としてもしなければならない。それだけですべてを解決するのではなくて、その前提として、原子力平和利用の姿というものをよく国民にわかっていただき、また地元の方にも御理解と御協力をいただく、これが前提でなければならない。お金ですべてを解決するという考え方は過ちである、かように考えて、今後とも安全性と基本的な理解というものをもとにして原子力政策というものを長期的な観点から誤りなく確実なものとして進めてまいりたい。これをふらふらさせるようなことがあってはならない、かように考えております。
  194. 小川泰

    小川(泰)委員 こういう抽象論になるとそういうお答えになるのですが、もう時間が全くありません。ただ、私の意味するところはぜひひとつきちっと受けとめていただいて、これからの実行行為の場合の一つの規範として誤りないようにお願いを申し上げたいと思います。  ある段階で触れましたとおり、組織もあるいはいろいろな科学技術も、せんじ詰めてみれば人なんです。まして研究所に勤める皆さんあるいは事業団にかかわる皆さん、大勢御苦労願っておる。もちろん科学技術庁の皆さんもそうでしょう。そういう人たちがもっとおおらかに発展的に、ひとつ自信を持って物を進める。まず隗より始めよで、その辺の風潮からこの種の法律案が、せっかく二つが一つになるわけですから、何か変なものをしょって一緒に行くんだみたいな考えだけは絶対起こしてはならぬ。もっと発展的に物を進めるんだという、人の気持ちからまずぐっと変えてこの種の問題に取っかかっていってほしいなという願いを込めて私がそんな発言を申し上げたということも御理解をいただいて、きょうお越しの理事長を初め皆さん立派なリーダーですから、その辺を十分ひとつ発展していくようにお願いを申し上げたいと思います。  最後に一つだけ。これまた時間が全くないので、これは私のひとりよがりかもしれませんが、科学技術という言葉の響き、そしてこれが受け持つエリアは、宇宙に関係する大変広大なものから人間存在のバイオテクノロジーに至るまでの大変な問題までこれからやろうとする、そして出てくるものは金がかかる、いろいろなものがごちゃごちゃ出てくる。こうなりますと、一つ一つかかってやりとりすると大変ぎすぎすしたといいますか、何かどうもそういう論議が多くなりそうな気がしてならないのです。そういう問題を取り扱う場であればあるほど、もう少し夢やロマンがこういうものの前提になければならない。すなわち、自然と科学と人間という三者が一体になってそれぞれが受け持つべき立場を、これから二十一世紀に向かって科学技術を進めようとすればするほど、ますますそれに対応して人間らしさの温かみといいますか、かってはお月様が出れば、我々の時代はあすこにはウサギがもちついてるんだよ、ああそうかなというので、月見の一つもやるかという風流もそこに生まれてきた。こういうものがどんどんなくなって、人も飛んでっちゃった、あれはこうこうだよと、昨今の人の気持ちの中に映ってくるいわゆる自然現象、こういう乖離現象がある。ややもすると、一つのことを突き詰める余り、人間が人間として生きようとする問題と乖離して別々に走っていくという傾向へすらもいきかねまじいなという感じを私は持ちますので、ぜひひとつここらあたりの論議は、時間やいろいろな問題がおありなんでしょうが、そういう側面を常に人の心の中に置きながら、科学技術は何のために存在するんだというふうな論点から、この種のものは少しおおらかに、しかも血の通った格好で進めていってみたいな、こんな所感を持っております。一言だけ申し添えて、私の質問を終わります。
  195. 大野潔

    大野委員長 工藤晃君。
  196. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 私は、まず政府提出のこの法案の概略について伺います。  その最初の点は、原子力基本法はその基本方針を平和の目的に限る、軍事的利用を絶対に禁止する、こういうかたい決意を込めまして、また日本学術会議の意見も尊重しまして、公開、民主、自主という三原則を明瞭にしており、その原子力基本法の中に日本原子力研究所というものを原子力の開発機関として位置づけている。したがいまして、原研、日本原子力研究所の方の業務運営基準というのは、原子力委員会原子力安全委員会の議決を経て内閣総理大臣が定めるこれこれの基本計画に基づいて行わなければならない、こうなっておりますけれども、それでは、原子力船事業団原子力基本法との関係は一体どうなっているでしょうか。
  197. 中村守孝

    中村(守)政府委員 現行の原子力船研究開発事業団法第一条にありますように、「日本原子力船研究開発事業団は、原子力基本法の精神にのっとり、原子力船の開発及びこれに必要な研究を行いこということで、原子力基本法の精神にのっとり行う、こういう機関でございます。
  198. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 なるほど「精神にのっとり」ということは入っております。しかし、原研の方が原子力基本法そのものの中にはっきり位置づけられているのと違いまして、「精神にのっとり」、私もよくこの精神という言葉は使います、こういうことの精神を重要視しなければいけない。しかし、精神にのっとりというのは大変広く使われるものでありまして、明らかに原子力基本法そのものの枠からは若干外れていると見られても仕方がないので、それは事業団法にある事業団業務運営基準の方を見ますと、「原子力委員会の決定を尊重しなければならない。」と、主務大臣計画をつくるけれども「決定を尊重しなければならない。」それで、原研の方は明らかに「原子力委員会及び原子力安全委員会の議決を経て内閣総理大臣が定める」、そこにかなり違いがあるのではないでしょうか。
  199. 中村守孝

    中村(守)政府委員 お答えいたします。  先ほどの御質問の中で、原研の方が「基き」で、原船事業団の方が「のっとり」ということで、そこに差があるという感じのお話がございましたが、原子力研究所原子力基本法の中に明定されておりまして、基本法にいわば原子力研究所の位置づけが行われているわけでございます。それで、「原子力基本法に基き」ということが、またその規定を受けて設置法の方でも書かれておるということでございますが、原子力船研究開発事業団につきましては、当初時限立法的なところもございまして、原子力基本法の中には明定していないという事情がございます。  それから、業務運営基準の基本計画につきまして、原子力研究所の全般的な業務の基本となります基本計画につきましては、「原子力委員会及び原子力安全委員会の議決を経て内閣総理大臣が定める」となっているのに対し、原子力船の基本計画については、安全委員会の定めもなくしかも「原子力委員会の決定を尊重」してとあるということで、そこに差があるのではないか、こういうお話かと思います。  御承知のように、原子力委員会は、法律上は総理府に置かれた諮問機関でございまして、一方、運輸大臣との関係においては、そういう意味では直接的な、諮問機関的な関係にないという事情があるわけでございます。したがいまして、原子力研究所の全般を定める法につきましては、原子力委員会の議決を経て内閣総理大臣が基本計画を定めるということになっておりまして、一方、原子力船の基本計画につきましては、そういう行政組織上の形式的な位置づけが違うということから、一応言葉としては、「議決を経て」という言葉に対して「尊重し」という言葉を使い分けておりますが、いずれにいたしましても、実質的には原子力委員会の決定を尊重しまして対応するわけでございますので、実態的にはいささかの変わりもない、そういうぐあいに私どもは考えている次第でございます。
  200. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 今の御答弁の中にもありましたが、実態的には違いがないと言いますけれども、これは、法律の読み方としては大変はっきり違いがあります。さっき言いましたように、事業団法の方は基本法から外で、したがってまた原子力基本法の精神とかそういうことでありまして、そして業務の運営基準も、明らかに片一方は「議決を経て」、片一方は「議決を経て」ということじゃなしに、決まったものを「尊重し」という違いが入ってくるわけです。  ですから、実態がそもそも同じであるという議論に対しては、実はこの事業団法が最初に制定されるときの科学技術委員会、当時科技特の方でありましたが、そこで、今の外務大臣である安倍晋太郎氏がこの問題で質問しているのですね。もともと原子力船をつくるのは原研の中でやった方がすっきりするのじゃないか、そういう立場で質問をされております。その中で、原子力基本法、それと三原則、そういうものをはっきりと中に位置づけてこういうことを進めたらいいのではないか、そういう意見も含めまして当特質問が行われまして、会議録を私ここに持ってきているわけであります。  そこで、要するに「意見をきいて」というのは一体どういう意味か、それから尊重するというのはどういうことかということに対して、当時の島村政府委員の答弁としまして「法律的に申しますと、尊重するということはその通りにするということではございませんで、これは権限的に申しましても、主務大臣に与えられましたところの責任によってやることでございますので、法律的には尊重するということは一〇〇%そのまま実施するということでもございません。また、「意見をきいて」という場合におきましても、意見を聞いてその結果によって判断するものはやはり主務大臣である」ということでありまして、そもそもこの法律がスタートするときの政府側の答弁が、この事業団に関して「意見をきいて」とかそういうことは一〇〇%やるのじゃないということをはっきり言って、そしてこの法律がつくられたわけでありますから、今になって実態は同じであるという解釈を新たに加えられても、私は、これは法律論としては無効だと思うのです。  その意味からいいますと、今度の法案を見ましても、細かくいろいろ言いませんけれども、ともかく業務運営基準というのが二手に分かれていくわけですね。一つは、「原子力委員会及び原子力安全委員会の議決を経て」計画が決まってそれをやっていくというのと、もう一つは、「原子力委員会の決定を尊重し」というような、明らかに二元的な形になっていくわけですね。  しかも、いわゆる原子力船関係について言いますと、じゃなぜ原子力安全委員会というのは外されてしまうのでしょうか。その辺についてだけお答えいただきたい。
  201. 中村守孝

    中村(守)政府委員 お答えいたします。  御質問が、先ほどの御質問につながった前半と後半と二つあろうかと思いますが、前半の件につきましては、確かに当時の原子力局長の答弁がございますが、この質疑を拝見いたしますと、要は「意見をきいて」とかあるいは尊重するという言葉の意味合いを御質問されておるわけでございまして、具体的に「議決を経て」ということとの対比において御質問があったわけではないようでございます。「意見をきいて」とか尊重するという言葉を法律的に文字どおり解釈すれば、まさにこれは行政の裁量権を否定する言葉ではございませんで、行政の裁量権があるという言葉でございますので、そのことを申し上げたものだろうと思います。したがいまして、その「議決を経て」との比較において遵守の度合いが低いということを述べたものではないと理解いたしております。あくまでも「決定を尊重」すると「議決を経て」というのは、先ほど御答弁申し上げましたように、組織論上の理由による形式上の相違というぐあいに私どもは考えておる次第でございます。  それから後半の、安全委員会のかかわりが原子力船に関する基本計画にはないのはおかしいのではないか、こういう御質問でございます。原子力研究所は、我が国の原子力政策のあらゆる部門にわたって総合的な、基盤的な研究を進める機関でございますので、そういう意味では、我が国の原子力開発利用政策、その中には、当然のことながら安全規制というものがどうあるべきかということもございますし、その安全を推進するための安全研究はどうあるべきか、こういう問題も入ってまいりますので、当然ながらそちらの基本計画には安全委員会も関与するわけでございます。原子力船の基本計画に関しましては、特にそういう安全規制上の観点からこのプロジェクトを決めるというよりは、原子力船の開発に必要な研究をどのような方法で進めていくかということの計画でございますので、そういう意味で安全委員会がこちらにはかかわってこないわけでございます。具体的に、例えば舶用炉の実験炉を陸上につくるというような段階が来ますれば、当然のことながら、規制法上のいろいろな段階において、個別具体的に安全委員会がかかわってぐるわけでございます。
  202. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 そんなことを言っても、例えば事業団がこれは舶用炉の研究テーマで委託しているのですが、改良舶用炉に適用する安全基準の作成に関する調査、これは石播に委託しているのですが、現に原船事業団でも安全問題というのをおやりになっているわけでしょう。それから、原研ではもともとJRR4ですか、舶用炉の研究用に設けられまして、それで今度仮にこういう法案が実行されまして、ここで舶用炉も研究するということになりますと、これは原子力委員会そして原子力安全委員会の議決を経ないところの、それで運輸大臣がかかわるところの計画によって動かされる、こういうことにさえなっていくのではないのですか。  それで、私がここではっきりさせたいのは、もともとこの研究所と事業団法律の性格からいいましても、片一方は原子力基本法にはっきり位置づけられて、片一方は外にある。それの規定をそのまま持ち込むから、一つの研究所、原研ですね、その業務運営基準までが二元的になって、外から新しい指導ルートとかあるいは基準を持ち込まれ、そして原子力委員会や安全委員会のかかわりも少しおかしくなってくるということが、この法案を見る限りはっきり書いてある。私たち、こういう委員会法案審議するとき、法案がどう規定しているかということから判断するわけでありますから、明らかにこれは二元的になってくるわけです。ですから、もし本当に原研というものを主体に考えて、そして原子力基本法をしっかりこの中で守っていくんだ、三原則を守っていくんだという立場をとるならば、ここらの書き方も幾らでも違った書き方が出るはずですが、明らかに二元的になってくるということになりますと、原子力基本法の中の一番大事な研究機関ですから、その性格が変われば基本法そのものの性格も若干ずれてくるということを私危惧するのですが、どうでしょうか。
  203. 中村守孝

    中村(守)政府委員 お答えいたします。  今お話しの中で、現在の事業団も安全上の問題で委託しているからというお話がございましたが、もちろん原子力でございますので、どんな原子力施設のプラントの研究開発を進める場合でも、安全性を抜きにして技術開発というのはあり得ないわけでございまして、常にその開発と安全とは裏腹になっているわけです。ただその見方が、まさに開発に付随する安全問題と、安全を規制するという立場から物事を進めていくかということの違いがございます。現に、動力炉・核燃料開発事業団のいろいろな計画原子力委員会だけでございまして、それに関係する安全問題はいわば原子力委員会と安全委員会と両方がかかわります基本計画で定めていくということでございまして、規制という立場があるかどうか、それから開発と一体となっての安全問題であるか、そこで違いますので、先生の御指摘のようなことで分けているわけではございません。
  204. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 今の答弁からいってもよく説明できないと思うのですよ。今の事業団だって、「むつ」だけでなしに研究ということになってきておりますね。それで、均然安全問題もやらなければいけない、動燃のことは、今ここでやりますといろいろやかましくなりますから、これは私、外しておきます。問題は日本原子力研究所、そこへ吸収合併みたいにして入ってくる、それを機会にして、原研の研究の業務基準が一番根っこのところでこういうふうに変わっていったり、安全委員会とのかかわりの問題が、少なくとも舶用炉とかそういうものに関してはあいまいになってくることは許されないと私は思うのです。  それで、そういう意見は意見としまして、もう少し法案に即して、大変時間がないので残念でありますが、大変平たく言うと、今度のこの統合というのは、日本原子力研究所法の改正案ですから、原研の方に事業団が吸収合併される、こういうことになりますね。そのとき、それを機会にして、もともと原子力基本法にしっかり位置づけられた法体系が貫かれるならばいいんだけれども、今みたいに二元的になるということと同時に、幾つかの点でかなり違った法体系で、吸収合併される事業団法の方にならしていく、原研法をそちらに変える、そういう点が見られると私は思うのです。  具体的に申し上げましょう。例えば「役員の欠格条項」、これはどうなっていますか。これは、原研法の方から言うと、「政党の役員」はだめだとなっていますね。事業団の方はなってないわけですね。そうでしょう。そうすると、原研法の方に吸収合併される事業団の法体系を統合するならば、当然これがそのまま続いていいのでありますが、事業団法の方にならしてしまって、この欠格条項事業団体質に変えられてしまった、これが一つ。例えば「役員の兼職禁止」、これは原研法の十六条にあります。ところが事業団法の十七条、やはり兼職禁止なんですが、「ただし、主務大臣の承認を受けたときは、この限りでない。」こうなっております。  やはり研究所の性格を決めるのに、役員とかどういう構成にするかというのは非常に大事なんでありますが、今言ったように、原研それから事業団とあって、法体系が若干違って、それで、主体であるこちらに法体系を合わせるというのならわかるけれども、吸収される側に法体系を合わしていくというのは全く納得できないし、そういうことからいえば、原研の事業団化ということを言われても仕方がないと思うし、ここにやはり法案としての大きな欠陥があると私は思うのですが、どうでしょうか。
  205. 中村守孝

    中村(守)政府委員 お答えいたします。  今の先生の御質問は、原子力研究所法を原子力船事業団法の方に倣って直したんじゃないか、そういう発想から出てくる御理解のようでございます。基本的に、原子力船事業団法に合わせたということではございませんで、役員の欠格条項にしろ役員の兼職禁止規定にしろ、最近の立法例がすべてこうなっておりまして、法律を新しく改正する際には近時の立法例に倣うという趣旨で改正したものでございます。  例えば、役員の欠格条項につきましては、役員にできるだけ広く人材を登用するという立場でございまして、欠格条項的なものはできるだけ必要最小限度にとどめられるべきであるという観点から、例えば政府、地方公共団体の職員については、これは職務に専念するという義務を有していることにかんがみ、また、この事業団と特別の営利関係にあるような営利法人の人は、これは避けなければいけないというような点があろうかと思いますが、そうでない人まで一律に、例えば営利事業に従事している人だからということだけで一律に禁止するのはいかがだろうか、そういうことから近時の立法例ではすべて、役員の欠格条項にしろ兼職禁止条項にしろ、今回御提案申し上げました法案に規定されているようなものになっているわけでございます。今回の法の改正に際して、この点を最近の立法例に倣って改正したということでございまして、決して事業団法に合わせて直した、こういうことではございません。
  206. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 それは表向きの今回の説明で、私も繰り返し伺っているところであります。しかし、現実の問題として原研法というものと事業団法というものが二つあって、これらの問題に関する規定が具体的に違うし、しかも役員の兼職禁止のところなどは極めて大事な問題がありますね。利審関係を持っている団体だとか企業だとかのつながりがどう入ってくるかという問題にもかかわる。これは原研の性格にもかかわる問題である。そういうときに、二つの法体系で違いがあるものを、それこそ主体の方に合わせないで入ってくる側に合わせるということを現実にやっているわけです。だから、これは大きな問題をはらんでいると見なければいけませんが、それは、今私が挙げたことだけではありません。  例えば、原研法には三十二条に補助金の規定がございます。もちろん事業団法にはありません。今度とうしたかというと、やはり事業団法に合わせて補助金のことを削除すると言います。あるいはまた、これは何か細かいことに見えるようでありますが、いろいろ考えると問題が出てきますが、余裕金の運用の問題もやはり今度は事業団法にならしていく、こういうことになりまして、違うところはみんな事業団法に合わせていったという結果が歴然と見られるのです。  私は、時間の限りこの問題をもう少し明らかにしていきたいと思うのですが、私が申し上げたのは今まで見た法案の中身、概略にすぎませんが、それを見ても、原子力基本法があって原研がつくられて、そして三原則を守るのだと言ってきた。そこへもう一つ、二元的な運営基準が入り出して、そしていろいろ組織などに関して言いますと、今度は事業団的な性格という方へならしていくということになってくる。ここに大変大きな問題があるということをひとまず指摘して、次の問題に移りたいと思います。  明らかにこの法案には重要な問題があります。それは、今言ったような原子力研究所のあり方、それはまた同時に日本における原子力問題の研究開発のあり方にかかわるといいますけれども、この法案と関連してどうしても明らかにしなければならいことは、当然「むつ」の扱いであり、原船開発をどうするかという問題になりますね。それでその中も考えてみますと、私は三つばかり問題があると思うのです。  これまで「むつ」をつくってやっていくというのでやってまいりました。もう二十年たちましたね。それで、こういうことを改めて関係者の前で言うのも、私が好んで言うわけじゃありませんけれども、実際に「むつ」が動いて実験したというのは二十年のうち七日間にすぎない。しかも、当初は特殊貨物船をつくるというその目的にはもちろんいってないし、また舶用炉を実験するといって荒れる海の中へ乗り出していって、一〇〇%出力して実験するという目的に関して、いわば全然これは目的を果たすことができていない。それで、当初六十億というのが六百億にも膨れ上がってしまって、その意味で言えばこの二十年間をむなしく過ごしてきたわけですが、先ほどの原子力委員会の新しい方針などを見ますと、これからさらに実験航海をやっていくのだ、そのためにいろいろ新しい港をつくる。その費用を聞きますと、六百億とも一千億ともいろいろ言われるようなことになってきますが、それで果たしてこの実験がやれるのかどうか、これもさっぱりわけがわからない。  こういうことで、明らかにここには大きな過去のむだがあったということをはっきり認めて、この問題に決着をつけるということがどうしてもなければならないと思うのです。私はもちろん、科学技術の問題では夢もロマンもあるのは大変賛成ですが、もう二十年間こういうことをやってきたのですから、いつまでも夢やロマンでは済まない段階になってきていることはもう明らかです。というよりも、十年前にこれは決着をつけなければならない問題だったろうと思います。こういう問題が一つ。  それからもう一つは、「むつ」の放射線漏れの事故をきっかけにして、いわゆる今の事業団事業団体質ということが鋭く指摘されると同時に、大山委員会報告書の中にもはっきり書いてあるのは、この事故をきっかけにして明らかになった日本の原子力開発全体の欠陥ということが鋭く指摘された。これをどう克服していくのかという問題がもう一つあると思います。  そうして三つ目の問題としては、それでは原子力船の開発についてこれからどういう研究開発の政策、方針を持たなければならないのか。こういうことがまず明らかにされないで、ともかく事業団と原研を先に統合してしまおうというのは、もう逆立ちしているのじゃないか、順番が逆ではないか、このように考えますが、どうでしょうか。
  207. 中村守孝

    中村(守)政府委員 お答えいたします。  先ほどの御指摘で、補助金規定と余裕金運用が事業団法に倣って改正されているじゃないかということがございましたが、原子力船事業団法は昭和三十八年、原研法は昭和三十一年とかなり制定の時期が違うことから、原子力船事業団の方は最近の立法例に倣っているのに対して原研法は倣っていないということで、本格的改正をする今回、そういったものを直すという趣旨で提案しているものでございます。  それから「むつ」の研究成果につきまして、過去多くの時間と費用をかけながら成果が上がらずということにつきましては、いろいろ各方面から御批判もいただいており、我々も反省をしておるところでございますが、今後の取り扱いにつきましては今検討を進めているところでございまして、先生先ほど御指摘の金額等の計画につきましては、旧来事業団等で試算をしていたものでございます。今後の問題については十分に検討を進めてまいりたいと思っておるわけでございます。  それから、今後の原子力船研究開発の展望でございますが、これにつきましては、原子力委員会として「むつ」の成果を活用して改良型の舶用炉の研究開発を進めるということでございまして、ただ、従来のように大分先の目標を立ててそれに向かって邁進するということよりも、やはり段階的、着実に進むべきであるという基本に立ち返りまして、現在は改良舶用炉につきましてはまず概念設計をして評価研究をしよう、そしてその結果と「むつ」による舶用炉の海上におけるいろいろな実験データ、そういったものを踏まえてその先の研究開発計画を決めていこうじゃないか、こういう段取りをしておるわけでございます。  先生の御指摘は、恐らく「むつ」の取り扱いが決まらないうちにこういう統合法案を出すのはいかがかという御指摘かと思いますが、いずれにしろ、「むつ」の取り扱いいかんにかかわらず長期的展望をいたしますと、我が国の原子力船技術の基盤というものは確立しておく必要がある、そういう立場から原子力船についての研究開発はどういう方法にせよ継続していくという基本は政府として持っておりますので、その線に沿っていくならば、原子力船事業団を幅広い原子力の各分野にわたる総合能力のある原子力研究所と統合して、この問題についての研究開発を進めていくのが適当であろうか、こういうことで今御審議をお願いしている次第でございます。
  208. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 今の答弁でまた先ほどの私の質問に対しての蒸し返しがあったのですが、日本原子力研究所に対して補助金がある。これは、恒常的な研究をやっていくところの補助金というものと、何か「むつ」みたいにプロジェクトを抱えてどかっと金を出してやるというのと、研究所の性格にかかわることなんですね。ですから、立法時期が違うから後の方に合わせた、これは法制局がそういう趣味を持っているのかどうか知らないのですが、その法律というのは、それをつくったときにはちゃんと法制局も入ってつくっておいて、後で少しスタイルが古臭くなったから変えるなんというのは、これは少し僭越だと思うのですね。そういう考え方だったら、それは私は誤っていると思います。だけれども、さっき言ったように、私は、補助金の問題だけでなしに一連の問題で、少なくとも原研法と事業団法で違う点、重要な違う点についてはすべて事業団法にならしたということが重大だということを指摘しているので、またこれをやると、これだけで私の質問時間がなくなると大変困りますので。  しかし、私が今質問したのは、長官に答えていただきたいのです。というのは、「むつ」を廃止するか、あるいは原子力委員会の懇談会が出したように実験航海させる、長い長い海の旅をやらして、帰ってきて、それから廃船というのと、これを今後決めようというわけでしょう。しかし「むつ」をやっぱり廃船してこうするというのは、これは戦後の原子力船開発政策、計画の大きな変更じゃないですか、「むつ」を今廃船しなければならないという議論が出ているのは。そのように、今「むつ」問題をきっかけにして、日本で原子力船の開発あるいは舶用炉の開発と言っていいでしょう、どうするかという問題、その基本方針が決まらないで、どういう事業をやるか決まらないで、それではともかくこういう統合をやってやっていきましょうというのは順番が違うではありませんか、こういうことを言っているのですが、長官どうでしょうか。
  209. 岩動道行

    岩動国務大臣 まず私どもは、原子力船むつ」の研究開発につきましては、日本の置かれておる立場から、「むつ」による舶用炉の研究開発実験は必要であるということで今日まで進んでまいったわけでございますが、五十九年度の予算編成の段階で、各方面からのいろいろな御意見も出てまいりましたので、改めて政府としても「むつ」のあり方については検討して、夏までに結論を出しましょう、こういうことになっているわけでございます。しかしながら、いずれにいたしましても、日本としては舶用炉の研究開発は必要であるという基本線は持っておるわけでございます。  そういう中におきまして、今回統合法案を御審議いただいておるわけでございますが、これは御案内のとおり、現在の団法において、六十年の三月三十一日までに整理統合する、こういう法律の規定がありますので、その法律の規定に従って私どもは提案を申し上げているわけでございます。そして、この夏にどのような結論が出るか、もしも廃船ということになったならば統合する必要はないのではないかというような御議論も当然あろうかと思います。しかし先ほど申したように、私どもは、舶用炉の研究開発原子力船研究開発ということは「むつ」によろうと何であろうと必要である、そういう立場からこれを原子力研究所で続けるということは当然のことでございますので、私どもは、行政の効率化と同時に研究開発をどこかでやらなければいけないとするならば原研でやっていただくのが最も適当である、こういうことで法案を出しておりますので、そこには何ら矛盾はないと考えております。
  210. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 私の質問にかみ合った答弁になっていないと思うのですが、これまで事業団法の改正というときは、時限立法みたいなのを延ばしてきたわけですね。ところが今度は恒久措置になるわけですね。それで原研にこういう形で、つまり法案の提起しているこういう形で統合して、そこで原子力船をやっていくんだと言うけれども、そもそも、舶用炉ということで言うならば、これは原子力研究所でもやってまいりましたね、これまでも。だから、そういうこともあるわけです。ですから、今統合するということをいきなり持ってきておりますけれども、その前に問題なのは、さっき私が提起した三つの問題ですね。  「むつ」にあらわれた大きなむだ遣い、これをどうするのかということの決着、それから、日本でそれならば原子力船の開発をどういう方針でやっていくのかという、こういう問題もはっきりさせ、あわせて原子力研究全般のあり方、「むつ」問題に露呈されたいろいろの欠陥をどう克服していくのかということをはっきりした上で、そのためにはこういう組織が要る、こういう統合形態が要るということになっていくのが筋道なんですよ。それは、世の中で何か会社合併してあるいは新しい会社をつくるというときには、こういう事業、こういう方針というのがあってそれがつくられるのであって、ともかく合併してしまってから句をやるか考えるというようなことは、これは世間の常識じゃ通りません。  また、これは日本原子力研究所の側からいっても、結婚する相手が一体財産を持ってくるのか借金を抱え込んでくるのか、何かうるさいスポンサーがついてくるのかどうかそれもわからず、ともかく結婚の相手を決めてくれというような話にもなっているわけなんで、世間ではこういうことは通じないし、少なくとも八月に自民党と政府がいろいろお決めになるという、その決める内容としては、その選択の一つとしてはっきり廃船ということが出ている。これはもうこれまでの原子力船の政策の大きな変更でありますから、そういう重要なことをこれから決めようというときに、ただ政府と自民党でそれは任してくれ、決めるというんでなしに、まさに国会の場でそのことを徹底的に明らかにする、あるいはもっともっと学者や専門家の意見もこの際徹底的に聞いてやる、それが先じゃないですか。それをやらないで、ともかく法案を通すということでは、これは順番が間違っているし、それではまた過ちを繰り返すということを大変心配しているのです。  その意味で私は、ここにおられる委員の皆さんにも、ぜひこの問題は慎重審議ということでやりたいという私の希望を申し上げまして、その次の具体的な問題に進みたいと思います。  大変もう時間が少なくて、私の用意した質問のまだ三分の一までいったかいかないかというところなんでありますが、一つは「むつ」の放射線漏れ、この事故をきっかけに大山委員会報告書が出されまして、私、当時も読みましたし、今度改めて読んだわけでありますが、これを読みますと、まさに起こるべくして起きた事件だということを具体的にここから読み取るわけなんです。そういう点で、先ほど原研が何か二元的な形になっていくとか、私いろいろ言いましたけれども、そういう法律案の体系になっていればいるだけに、この大山委員会報告、これを受けて事業団としてどういう改善をやってきたかということは、どうしてもここではっきりさせていきたいと思うわけです。  そういう点で、報告の中には政策上の問題点、組織上の問題点、技術上の問題点、契約上の問題点、こういうことが指摘されたんですが、それぞれについてどういう改善をやってきたか伺いたいと思います。
  211. 中村守孝

    中村(守)政府委員 お答えいたします。  大山委員会報告書は、原子力船開発を軌道に乗せるために非常に貴重な御意見でございまして、政府としてもこれを十分に尊重して改善を図ってきたところでございます。  まず政府の体制問題として、いわゆる原子炉の監督体制、この設計、施工、監督に至る規制体系に問題があるという御指摘がございまして、これにつきましては安全規制の行政体制を整備強化するということで、科学技術庁におきましても原子力安全局を独立させましたし、さらに、その後の原子力行政懇談会の結論を受けまして原子力安全委員会を設置する。さらに各省間に、いわゆる基本設計段階詳細設計段階と申しましょうか、許可の段階と工事認可の段階と申しましょうか、そういうぐあいに二段階に分かれていたものをそれぞれ一元的にするということで、発電炉については通産省、研究炉については科学技術庁、そういうような一貫化の体制をとったわけでございます。  それから事業団の組織につきましては、単なる事務処理機関的性格のものから一層技術的な能力を持ったものに改めるべきである、こういう御指摘を受けました。この御指摘を受けまして、まず事業団におきましては責任ある指導体制を確立するということで、五十年に役員を一新いたしました。役員の中には原子力の経験豊富な技術的素養もある方を迎え入れて、指導体制を強くしたということ。それから事業団技術部門につきましても、安全総点検を実施いたします技術第一課、それから遮へい改修を行います技術第二課というぐあいに技術部門の充実強化を図りまして、せっかくこの事業団が蓄えました技術的知識をきちっと管理するということでの技術管理課を設置するというような形で、この技術部門を強化した次第でございます。  さらに、技術面におきましては、「むつ」の原子炉部分につきまして全面的に再検討を行いまして、遮へい改修工事のみならず安全総点検を行って、しかもこの安全総点検に当たりましては、第三者の専門機関によりますチェックを受けて実施をいたし、必要な改修も行ったところでございます。  それから契約面のことにつきましては、事業団の開発責任者としてのあり方に問題があるという御指摘を受けておりまして、この反省に立ちまして、今回行われました遮へい改修工事の実施に当たりましては、事業団基本設計から詳細設計まで、いわば設計については責任を持つ。炉部分船体部分とで二つメーカーに分かれるということもございますので、事業団設計については責任を持って遂行する、こういう形で責任範囲の明確化を図った。こういうようなことを行った次第でございます。
  212. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 時間も迫ってまいりましたが、それならば今、技術部第一課、第二課は何人おられますか。
  213. 野澤俊彌

    野澤参考人 現在、研究開発室には専任の技術者が七人おります。技術部には専任の技術者が十七人おります。
  214. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 それだけの体制というのは、前よりか少しふえたように見えますが、これは佐々木周一氏が「原子力船の話」などにも書いておりますが、西ドイツの原子力研究所は五百人ぐらい技術者がいて、三百人ぐらいは博士号だとよく書いてありますが、ともかく構えがそもそも違って、一時は原子炉課とか部とかいうのさえなくしてしまった、こういうお粗末なことなんですね。そういうことで、実は時間がなくなりましたので、あと一問だけちょっと伺いたい。  それは、先ほど小澤委員からの御質問がありまして、私も大事だと思いまして、また後で御答弁になると思うのですが、この問題でメーカーの方が実際は決まった仕様書、スペック、それを守らずにつくったということがあった、それで欠陥が起きた、そういう話も伝えられております。それは事実なんですか。そのことだけお答えください。
  215. 福永博

    福永参考人 メーカーの方がスペックを守らないでつくったというようなことは、私承知いたしておりません。
  216. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 時間が参りましたので、また別の機会に質問を続けさせていただきたいと思います。
  217. 大野潔

    大野委員長 辻一彦君。
  218. 辻一彦

    ○辻(一)委員 最初に、アメリカとドイツにおける原子力船開発の現状についてちょっとお伺いします。
  219. 中村守孝

    中村(守)政府委員 お答えいたします。  西ドイツにおきますいわゆる商船としての原子力第一船はオット・ハーン号でございまして、実験を目的とする鉱石運搬船ということで建造されました。これにつきましては、昭和四十三年に完成いたしましてから昭和五十四年の運航停止までの間に約六十万海里を運航いたしまして、二十二カ国を訪問しているという実績を残しております。このオット・ハーン号につきましては、その後は原子炉を撤去いたしまして、現在一般の運搬船として運航していると承知しております。  それから米国におきましては、原子力第一船としてサバンナ号、これは実験目的でございますが、船の形態といたしましては貨客船でございます。昭和三十七年に完成いたしまして、昭和四十五年まで約五十万海里運航いたしまして、二十六カ国を訪問いたしております。サバンナ号につきましては、現在燃料等を取り外しまして、ほかの港に移して博物館として利用しているというように聞いております。  いずれにいたしましても、現在欧米先進諸国におきましては、いわゆるこれらの船に続く第二船という形での開発は行ってはいないわけでございますが、これらの第一船の運航経験を踏まえまして、さらに進んだ商船用の舶用炉の設計等も完了しておりますし、いわゆる原子力船のための技術的可能性の確認、基盤的な技術及び経験については十分に蓄積されているということで、実用化の時期を待っているというような状況にあろうかと思います。
  220. 辻一彦

    ○辻(一)委員 ちょうど十年前ですが、私は参議院の国会派遣で一カ月ほど欧米の原子力施設、政府責任者にずっと会ったことがあります。四十九年の九月ですが、当時西ドイツでは日本の「むつ」の扱いがどうなるかということに非常に深い関心を持っておりました。帰ってから科技特で「むつ」についての放射線高速中性子遮へい問題について論議をした覚えがありますが、あれからちょうど十年たっております。今御説明のように、アメリカはもちろん、ドイツのオット・ハーンは既に実験船としての成果を上げて五十四年には運航停止をしておりますが、新しい商船用の船舶炉が設計が終わっているという御報告であります。言うならば、我が国はこの面で、「むつ」を十年間漂流をさせて非常なおくれをとっておると思います。この十年を顧みて、言うならば原子力行政の大変大きな欠陥があったと思いますが、政府責任者としてこれについての反省点と、これから何を学んだかについてひとつお伺いいたしたいと思います。
  221. 岩動道行

    岩動国務大臣 原子力船むつ」の今日の状態というものは、十分に反省しなければならない多くの点があったと思います。その直接的な原因は、何と申しましても昭和四十九年の放射線漏れというトラブルが契機であったことは率直に認めなければなりません。  そこで、この放射線漏れはどうして起こったのかということにつきましては、いわゆる大山委員会、「むつ放射線漏れ問題調査委員会で詳細に指摘もされているところでございます。そういう中におきまして、まず、我々行政庁の立場におきましては安全規制の担当体制に一貫性が若干欠けていたということが一つ反省点でございます。また事業団の人事面等におきましても、技術の開発体制というものが必ずしも十分でなかったということが第二点として挙げられると思います。また第三点としましては、地元との意思の疎通が必ずしも十分でなかった、こういったような点を私どもは大きな反省点として考えております。  そこで、行政庁の安全問題に対する体制の立て直しということをまず第一にやったわけでございます。その第一は、原子力安全局を昭和五十一年に設置いたしました。それから原子力安全委員会の設置を昭和五十三年にいたしております。いわゆる原子力委員会と分離して、別の立場から厳しく安全性を確保していくという体制ができて、これによって行政庁の安全に対する一つの大きな進展を図ったわけでございます。  また、事業団につきましては責任体制を確立する。当時若干人事の異動等におきましても配慮に欠けている点がなかったとは申せません。したがいまして、この責任体制を確立するということ、また技術系の職員の増員を図るなど行いまして、事業団技術部門を強化するということを行いました。  また、何と申しましても地元の御理解と御協力が必要でございます。これを深めるという意味におきまして、修理港の選定でありまするとかあるいは関根浜の港をつくるということにつきましても、十分に地元お話し合いをいたしまして、そうして地元の御理解をいただく。さらに、五者協定の中において具体的に本年の一月には私みずからが地元に赴きまして関係者と懇談をいたし、そして今後の「むつ」の進め方等についての基本的な御理解をいただく。こういうようなことで「むつ」の全体計画についても地元に御説明を申し上げ基本的な御理解をいただく、こういったような努力を払ってきたところでございます。  しかしながら、各方面からのいろいろな御意見もございますので、政府としてはさらに改めて今年の夏までにこの「むつ」のあり方について再検討して結論を出したいということでございますが、このような過去の経過と指摘、そして体制の再検討という中におきまして、今後ともこのような反省と体制を踏まえながら原子力船研究開発を進めてまいりたい、努力をしてまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  222. 辻一彦

    ○辻(一)委員 いろいろな反省点やまとめがあると思うのですが、私の考えるところでは、最大の問題は舶用炉、原子炉の陸上における実験段階を十分経ていなかったということが非常に大きな問題でないかと思います。  「むつ」に載っている原子炉は三万六千キロワットです。当時陸上には既に三十六万キロワットから八十六万キロワットまでが稼働し、百万キロワットの発電用原子炉が建設中であった。そういう状況の中で三万六千キロワットという原子炉はそれほど大きなものではないのであって、陸上でもっと十分な実験ということを踏めばあのような蹉跌をせずに済んだのではないだろうか、少しそういう面を急ぎ過ぎた感じがある、このように思いますが、これについてどのようにお考えですか。
  223. 中村守孝

    中村(守)政府委員 お答えいたします。  先生指摘のように、陸上での原子力発電の施設も、既にアメリカを中心にしまして数々の原子力発電所が建設されており、我が国では美浜の原子力発電所等が建設中というような段階でございましたが、一般に国際的に見ましても、既に軽水炉の技術というものがその当時といたしましてはかなりな水準にあって技術が確立しておる、そういう評価がなされていたことでございます。舶用炉につきましては、当然のことながら陸上炉と違うさまざまな要件があるわけでございますが、基本的には軽水炉であるというところから、陸上炉の経験等を生かせば十分建設ができるという見込みでスタートしたわけでございます。アメリカのサバンナにいたしましても西ドイツのオット・ハーンにいたしましても、陸上で特にそのための原型炉的なものをつくってやったということではないわけでございます。  不幸にして遮へいの点が、陸上炉では経験し得ないような特異な狭い小さな炉であるところから高速中性子のストリーミングという現象が起きたということでございまして、そこの知見が不足していたということについてはまことに遺憾なことでございます。これにつきましても、原子力研究所のスイミングプールを使って実験は行ったわけでございますが、残念ながら、この現象と思われるものが発見されていながら、それが高速中性子によるものというところまで理解できなかったということがあったわけでございます。確かに陸上での補助的な実験をいろいろやりまして積み上げたわけでございますが、今の技術的なレベルから申しますとなお研究しなければならない部門がたくさんございますし、特に経済性という面からすれば今後大いに技術開発をしなければならない点もございます。今後は、陸上では実験し得ない海上での実験データを取得する、そういう意味で「むつ」を活用し、舶用炉の陸上でできるいろいろな研究は陸上で進めていく、こういう形で今後の舶用炉の開発研究に取り組んでいきたい、そのように考えておる次第でございます。
  224. 辻一彦

    ○辻(一)委員 今後のことは後にして、確かに当時洋上でなければ波の揺れぐあいとかいろいろな点がありますから、陣上ではできない面が一応考えられるわけですが、しかし宇宙開発にしても、宇宙でやることをもう陸上でいろいろな実験設備を使えばやれるという状況でありますから、海上において起こり得るいろいろな条件等もかなり今陸上でもやれるのじゃないか。もう少し陸上での実験段階を経ておれば、三万六千キロワットといえばそんな大きなものではないのですから、似たようなものをつくって幾らも実験ができたのではないか。それを踏めばあれだけの時間を浪費せずに済んだ感じがしますし、今と当時とはかなり違いますけれども、当時を思い起こしてもう少しそれらの必要があったと思いますが、再度その点いかがでしょう。
  225. 中村守孝

    中村(守)政府委員 お答えいたします。  結果論でございますが、確かにもう少し精密に実験をしておけばよかった、先ほどの中性子のストリーミング現象などについての例にもありますように、もう少し精密にやっておけばよかったという点はあろうかと思います。
  226. 辻一彦

    ○辻(一)委員 当時、多少時間をかけて段階を踏めという意見も私はあったと聞いておりますが、これはこれからのひとつ大事な反省点にぜひしてほしいと思います。  そこで、将来における舶用炉の原子力船の実用化の見通し、経済性、これらを前提にして日本における原子力船開発のタイムテーブルをどのようにとらえておるのか、お伺いしたいと思います。
  227. 中村守孝

    中村(守)政府委員 お答えいたします。  原子力船むつ」の取り扱いにつきまして検討中ということでございますので、その点の問題はございますが、従来原子力委員会として考えてまいりましたものは、「むつ」につきましては、これが海上における振動、動揺等の中で、特異な海象の中で炉がどういうふうにビヘービアするか、それから実際のシステムとして運転したときに、設計上いろいろ考えていたことと実際とがどのように差異があるか、そういったことも含めた貴重なデータを「むつ」によって得る。それから「むつ」の今の炉をそのまま実用化しても経済性がないことは明らかでございますので、将来に向かって経済性のある炉を開発していかなければならない。そのための改良型舶用炉の勉強をしていこうじゃないかということでございまして、その改良型舶用炉の研究開発につきましては、当面、概念設計をいたしまして、先行きの見通し等について評価研究を行うということまで決めておるわけでございます。それで、「むつ」の成果とそれからその評価研究と両々相まちましてその後の研究開発計画を進めていこう。いずれにしろ実用化時期は二十一世紀に入ってからという見通しもございますので、段階を追って研究開発を進めていこうではないか、こういうようなことになっておる次第でございます。
  228. 辻一彦

    ○辻(一)委員 実用化のめどが二十一世紀の初めとすれば、初めというのはいつごろかわかりませんが、二十年とか三十年という時間が実用化前にはまだあるように思いますが、かなりな時間がある。今「むつ」は原子炉を動かしてその出力の一・四%ぐらいしか出していないのでありますから、現在ならば原子炉を引き揚げてもっと実験を陸上でやるという可能性があると思うのですが、これは後になればそういうことは非常に難しい。今なら原子炉を取り出して廃船にして、陸上でもう一度実験を出直しする、そして着実にこれを積み上げていくという道があり得ると思います。こういう再出発を時間の点から見てやる余裕がまだあると思うのですが、これをやる考え方はないのかどうか、この点をお願いします。
  229. 中村守孝

    中村(守)政府委員 お答えいたします。  ちょっと先生の御質問が完全には消化し切れてない点もございますが、要するに「むつ」の炉を陸上に揚げて実験をしてみたら、こういう御質問かとも思います。「むつ」の炉を今陣上に揚げて実験することの意義ということになりますと、いろいろと検討しなければならない点が多々ございますし、特にそういう陸揚げするのをどこでやるかとかいろんな問題がございまして、実態上難しいという点が別途ありますが、今我々が「むつ」に期待しているあるいは「むつ」の炉に期待しているものは、あくまでも海上における動揺、振動、衝撃、こういった中で原子炉なり原子炉とターピン全体の船としてのシステムがどのように動作するか、それが設計考えていたものとどう異なるかというデータを得ることが目的であり、またそれが貴重なデータとなるものでございまして、もし今から陸上で何か実験をやるということであれば、これから考えております改良型の舶用炉の研究開発段階でそういうことをしていくのが適当であろう。むしろ「むつ」につきましては、陸上だけでやっていてはなかなか得がたいデータを得る手段として極めて有効なものである、こういうぐあいに考えておる次第でございます。
  230. 辻一彦

    ○辻(一)委員 これから便する経費等を考えると、陸上においてもう少し実験を踏まえた方がいいと思いますが、これはいずれにしてもなかなか難しい問題だと思います。  いずれにしても、原子力船の実用化の将来を考えると、アメリカやドイツあたりのでき上がったものを導入するということは絶対避けなければいけない。自前で積み上げていくということが大変大事だと思いますが、この点については言うまでもないことですが、長官、自主開発をいかなる点でも貫いていくという点は間違いないですか。
  231. 岩動道行

    岩動国務大臣 原子力平和利用の中で、船については研究の内容が大変複雑でございますので、やはり自前で、自分のもので研究開発実験をするということが極めて大事だと認識をいたしておりますので、今後とも自主開発技術ということを前提として、進めていきたいと思っております。
  232. 辻一彦

    ○辻(一)委員 それじゃ、仮に洋上でどうしても実験しなければならぬと言われるなら、法律期限が来ておったのですが、むしろ事業団法の延長等によって本格的な取り組みをすべきであって、そういうものをやらずに原研との統合によってやっていく、こういう方向ならば、あくまで基本的な実験を原研で積み上げていく。いずれかをとるべきではないかと思うのですが、これらについて、行革絡みあるいは行政の簡素化という観点からかなり無理な形で統合を図っていこうとするのじゃないかという感じもいたしますが、長官、この点いかがでしょう。
  233. 中村守孝

    中村(守)政府委員 お答えいたします。  原子力研究所原子力船事業団のままで「むつ」の海上データをとったらいいじゃないかというお話でございますが、御承知のように、もう第二船、第三船というぐあいな形での原子力船の開発を今考えておるわけではございませんで、先生指摘のこともございますが、着実に段階を踏んでやっていこうというのが我々の今の基本的姿勢でございます。そういうことで、「むつ」もそういう意味では今後の船用炉の研究データを取得するための船であるという一つの考え方に立っておりまして、しかも先ほど来お話がございますように、事業団の体制で技術部門を強化したといいましても、今の分かれたままの体制では充実しがたい点もございます。やはり原子力研究所と一緒になって、全体の有用な人材を活用して混然一体となって進めていくということが今後の研究開発の上で重要であろう、そういう認識も持っておりますので、そういう意味合いも含めまして今後の統合に踏み切っておる次第でございます。
  234. 辻一彦

    ○辻(一)委員 限られた時間の点から、さらにこれについて伺いたいと思うのですが割愛しまして、社会党の方から提案されておりますが、一点伺いたいと思います。  社会党案の中では、廃船実験の出直しということを内容としておられると思うのですが、原子力船の経済性の問題とかそういうところにポイントがあるように思いますが、この経済性それから原子力船の将来のめど等についてどういうように考えておられるのか、一点お伺いしたいと思います。
  235. 大原亨

    大原議員 けさほど社会党の対案を提案いたしたわけでありますが、その中におきましても、清算段階清算人が、清算の方法の一つといたしまして、原子炉を撤去して日本原子力研究所等に移すとともに、船は運輸省や商船大学で利用するというような方法が一つ考えられておる、補助エンジン等を増強いたしまして他に利用することもあるということを提案いたしておるわけですが、議論されました中で私どもが強調したい点は二つあるのです。  一つは、米国のサバンナ号にいたしましても言うなれば今は博物館になっておるわけであります、結論だけ言いますと。それから、西ドイツはオット・ハーン号ですが、これは原子炉を撤去しまして船体都は一般船として利用されておるわけであります。そういうことでありますから、私どもは清算段階で、いろいろ議論になりました点については自主的な終末の処理をする、継続をするということと一緒に、私どもが科学技術の常任委員会におきまして議論をした中で、第二の問題ですが、昭和五十六年に初めて科学技術振興調整費を三十三億円計上したのが今六十三億円になっておるわけですが、それも非常に微々たる増強の状況でございます。しかし、我々が議論いたしましたように、先端技術の新しい産業革命とも言うべき技術革新に対応する科学技術庁の大きな努力目標といたしましては、そういうところに全力を注ぐことが政治的に正しいというふうに私は思うわけであります。「むつ」の維持管理費だけでも二十七億円で、これは十八億円の賠償は除いてあるわけであります。全体の予算は七十七億円ですから、このために、議論が尽きておるこういう問題について、さらに人間の力と予算を浪費するということはどうかというふうに私どもは政治的に判断をいたします。つまり、安全性の問題、経済性の問題、将来性の問題でそれらを総合的に政治的な判断をいたしまして、自民党の中にも議論が起きておるわけですから、これにどう対応するかという一定の結論をもってこの終末の処理をやって、研究は研究としてこれから発展させることがよろしい、こういうふうに総合的な判断をいたしまして提案をいたしたわけでございますので、ぜひともそういう判断を基礎として政府案に対する対応の仕方を、自民党の皆さんも含めてひとつ政治的に決断を下していただきたい、こういうことでございます。
  236. 辻一彦

    ○辻(一)委員 その案についてはまだ他日論議の機会があろうと思いますからそれに譲りますが、ごく大まかに、政府は今これを見てどういう見解を持っていらっしゃるのか、差し支えなければ一言で。
  237. 中村守孝

    中村(守)政府委員 解散法案につきましては、私どもが提案申し上げておりますように、いずれにしましても原子力船研究開発は続けていくという建前でございまして、原子力研究所に行って、そこの研究能力を活用して、原子力船事業団職員ともども今後の舶用炉の研究開発を推進していくのが適切でないか、そう考えておるところでございます。
  238. 辻一彦

    ○辻(一)委員 これは今聞くのは無理な感じがしますので、また後の論議のときに時間があればお願いしたいと思います。  時間の点から私この問題はここで切り上げて、通信衛星に関連して自主開発という点で一つだけお伺いしたい。それは、今長官の御発言でも、原子力船についても自主開発をどうしても貫くのだというお考え、これは私はどういう形であれとにかく大事なことだと思いますが、これと同じように通信衛星についても同様の考え方を貫くべきであると思いますが、どうか。今アメリカの方からアメリカ産の通信衛星を購入せよという非常に強い圧力がかかっている。そういう中で政府部内の意見もいろいろと揺れているということも新聞等で見ますが、自国産衛星による自主開発を貫く考えがあるのかどうか、この点長官にひとつお伺いしたい。
  239. 岩動道行

    岩動国務大臣 宇宙衛星の研究開発につきましては、私どもは従来とも自主開発を基本として進めていくということで、先般の政策大綱改定に当たりましてもその線を貫いてきております。ただ、日本だけの力ではとてもできないという分野がございます。例えばスペースシャトルでありますとかあるいは宇宙基地計画とか、こういうものにつきましてはどうも今の日本の国力から見てもなかなか容易でない。したがって、こういうものはむしろ先進のアメリカ等の計画に乗っかって貴重な試験研究、実験を行っていく、こういうような考え方でございます。しかしながら、今世紀中には私どもは五十個余りの衛星を自主開発で打ち上げていく、そしてまたそのためのロケットも大型化していく、こういうようなことを基本路線として、自主開発を基本としてやっていくことは今後とも続けてまいりたいと思っています。  そういう中におきまして、アメリカにおきましては、特に昨年の夏以来通信衛星を買ったらどうかという強い要請が来ております。これにつきましては、私どもはまず通信に関する法案を新しく今度出しております。そういう中で、民間でも実需があればそれに対応できるというような法体系の改正をまずしなければなりませんが、その道は開いておきたい、かように考えております。もちろん、日本の自主開発技術というものを損なわない、あるいはその計画を実行する中においてそのような民間での購入ということは考えてよろしいのではないか、かように考えておりますが、基本は変わっておりません。
  240. 辻一彦

    ○辻(一)委員 これで終わりますが、もう一つございます。今までの委員会で随分参考人を招いて科学のあり方ということが論議をされましたが、いずれも応用面ではすばらしい力を持つ我が国が基礎の面で弱い面がある、これはどうしてもやらなければいかぬということがしばしば委員の間、参考人からも述べられたし、また長官も基礎的な面に力を入れなくてはいかないということを所信表明でもその質疑でも述べておられる。私は、やはり今でき上がりのものを入れれば安くつくし手っ取り早いけれども、それでは本物の日本のものを積み上げていくのに非常に弱くなってしまう、こういう点で委員会で論議をされた中身、長官の所信表明を具体的に通信衛星の問題においてぜひ貫いていただきたい、このことを心から期待をいたしたいと思います。一言だけ。
  241. 岩動道行

    岩動国務大臣 仰せのとおりでございまして、私どもは基礎科学というものを大事にしていかなければならないということで、実は今朝も科学技術会議を開きまして、そういう点につきましては関係の議員から強く要望も出ております。また、私どももそのように考えて、今後とも基礎科学技術を十分に尊重しながら、応用そして日本の持っている英知を集めて科学と技術の組み合わせをうまくやっていく、これが今後日本の進んでいく重要な道であろうと考えております。
  242. 辻一彦

    ○辻(一)委員 それでは、これで終わります。  残した核燃料サイクル等はまた後日お願いいたします。
  243. 大野潔

    大野委員長 村山喜一君。
  244. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 今まで触れられている問題と若干重複する点があるかもしれませんが、お許しをいただきたいと思います。  第一に、原子力船むつ」の出発から今日に至るまでの年表みたいなものをずっと拝見しながら、その中で、科学技術庁長官でありかつ原子力委員会委員長である長官や、あるいは日本原子力船研究開発事業団の方ではどのように反省をしていらっしゃるのであろうかということを、この際総ざらいしておかなければならないであろうと思うのであります。  そこで、この原船事業団が発足をいたしましたのが昭和三十八年八月十七日でございます。四十七年九月に燃料装荷をいたしまして、そして大湊の母港の岸壁で第一回の臨界試験をやるということになって、そこでやろうとしたらそれもできない、湾内でやろうとしてもできなかった。そこで結論としては、尻屋崎東方八百キロの洋上でやるというようなことで、臨界に達したのが四十九年八月二十八日。ところが、設計値の千倍以上の放射線漏れが出力のわずか一・八%、二十分の間に出てしまった、そしてその結果、太平洋を五十日も漂流を続けてきた。結局、政府側あるいは事業団の方が委託をした学者では承知ができないというので、漁協の方が委託をした学者がこれは帰っても差し支えないという証明をして、ようやく母港に帰ってこれたという経過を振り返りながら、そういうような事態が起こったら、原子力船むつ」はもちろんのこと、これからの舶用炉の研究の問題ももうお先真っ暗で、そういうような問題に二度と政治的に手をつけることは不可能になるということをまず第一に考えていかなければならない。そして、今の段階がどういうような状況に立ち至っているのであろうかということを深刻に考えながらその対応を迫られているのが原子力委員会でもあり、また研究開発事業団の皆さんでもある、あるいはまた我々国会の方にもそれが問われているんだというような意味においてお尋ねをいたしたいと思います。  この日本原子力船事業団が五十五年十一月で研究開発事業団というふうに名前が変わり、組織がえが行われてきた。それから今日までの間、今統合法案が出されようとしているわけでございますが、その脚におきましてどういうような内容を研究されておいでになったのか、その実績はどのようなものがあったのであろうか、このことをまず総括しておかなければならないんじゃないだろうかと思うのであります。衣がえをしてから、皆さん方は第二の定係港をつくるためにそっちの方に頭を突っ込んでしまって、研究開発というそちらの方にどのような実績が出されてきたのであろうかということについては我々は報告を承っていないのでございますが、その内容を反省の上に立ってお話しいただきたいのでございます。
  245. 野澤俊彌

    野澤参考人 お答えいたします。  事業団研究開発を実施するようになりましてから既に三年を経過しております。五十五年から予備的な調査が始まっておりまして、現在事業団が取り組んでおります研究開発の基本は、昭和五十四年に策定されました原子力委員会原子力船研究開発専門部会のマスタースケジュールにのっとって進めているものでございます。本格的には五十六年から研究開発に着手しております。  五十六年、五十七年は、一言で申しますと、五十八年に発注いたしました三つの種類の試設計を発注するための発注仕様の確定のための作業と言うことができると思います。その中には各種の作業がございますけれども、例えば、陸上の原子力発電所の炉心構成要素は現状どの程度の技術レベルまで到達しているか、今後の開発の方向はどういうことが考えられているか、設計をするに当たっての安全基準をいかに考えるべきか。御案内のとおり舶用炉につきましては、従前はIMCOと申しておりましたけれども、最近はIMOという国際機関がございまして、原子力船に関する安全基準を作業中でございます。現在確定した安全基準というものはございませんが、一応設計を発注するについては、IMCOの例も引きながら、かくかくしかじかの安全基準を考慮した上で設計を進めるという発注スペックが必要でございますので、暫定的と申しますか事業団として考えられる安全基準を想定した上で試設計を発注しております。そういったような作業なりあるいは当然そのバックになります各種の舶用炉の従来の設計の例をすべて網羅いたしまして、それの設計思想の考え方、相互の比較検討等々を行いまして、五十八年度には三つの形態につきまして三社に先ほど申しました試設計を発注した次第でございます。それが本年の三月三十一日をもって納入されまして、現時点ではそれらの相互比較あるいは経済性評価等々を行っている段階でございます。
  246. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 その研究は現在の「むつ」の問題とどのような関係を持たせながらやっていらっしゃるのですか。新たにこの舶用炉の、「むつ」の原子炉部分を積みかえる、そういうことを想定しながら一定の安全基準をつくる方向の中で問題をお考えになっていらっしゃるのですか。その中身の問題、目的は一体何ですか。
  247. 野澤俊彌

    野澤参考人 先ほど申しました五十四年に策定されました原子力委員会原子力船研究開発専門部会のマスタースケジュールによりますと、五十六年から六十年度にかけてを第一期と考えておりまして、その間に今後想定される改良舶用炉の設計概念を確立するというのが五年間の作業の目標になっております。したがいまして、今先生のお尋ねのような「むつ」の原子炉をそれによって入れかえるとか、そういうようなものではございませんで、従来の「むつ」の設計も当然そのうちの一つに入っておりますけれども、オット・ハーンなりサバンナなりあるいは設計作業だけで各種の作業が諸外国で行われておりますので、それらの設計例を十分比較検討した上で、次のステップとしての改良舶用炉の設計概念を確立するために、現在三つの違ったタイプの舶用炉についての比較検討を行っている段階でございます。
  248. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 それは次の世代の舶用炉の研究開発ということになっているようでございますが、そういう技術的な検討を重ねる中で、今の原子力船むつ」の舶用炉というものを振り返ってみますと、我が国で初めて開発をされた、自主開発の技術を用いましてのものでございます。したがいまして、当時はまだ未開発の分野で、しかも原子力潜水艦の軍事技術に関連もあるということから、ウェスチングハウス社の方からはそういうようなものに対するコメントをもらうことはできなかったという時代にありまして、日本の技術でつくっていった。そういう中から、私がこれからちょっと質問をしてまいりますが、技術的にはもう四十七年ごろのものでございますから今日の時代から見たら相当おくれていた代物ではないかというふうに考えられるわけでございます。  三菱がつくりましてそして今日に至っておるわけでございますが、まず第一に、炉心の構造の中から舶用炉であるという意味において燃料棒とそれから炉壁の間の空間が非常に狭い。そういうような構造物になっているからこそ、高速中性子が飛び出してくるというような現象を炉自身が構造的に持っているのではないか、これが第一点の疑問でございます。  第二点は、その時代はまだジルカロイの製品がなかったのか、あるいは船用炉に積むという技術的な問題で、負荷変動に追随をする、そういうような出力の制御的な意味を含めたものであったのかどうかわかりませんが、ステンレスの燃料棒を用いているというような問題がございますね。そういうようなものが現代の時点におけるジルカロイ製のものに変化をしているというようなものを一体どういうふうに評価できるのであろうか。  あるいは、もう建造してから十二年たっているわけでございますが、そのいわゆる経年変化に伴います原子炉壁の問題やあるいは燃料の変化の問題等が一体どのように評価がされるのであろうか。あるいはまた、問題になりますのは、遮へい工事の中で、総点検工事の中でECCSの増強をおやりになったと聞いているわけでございますが、炉についてはこれを封印をしたままの形の中でノズルのところまではいらうことができないような形になっておるのではないか。  そういうようなことを考えてまいりますと、先ほどの説明を聞いておりますと、今後の舶用炉の問題についての発注仕様書の研究や安全基準の問題やあるいは評価の問題等を行ってきたとおっしゃるわけでございますが、今日の技術水準の上から見まして、果たして今原子力船むつ」が持っているその構造的な欠陥というものはないのかどうか、そういう点についてはどのような確認をされているのであろうか。その点について説明を願いたいのです。
  249. 野澤俊彌

    野澤参考人 お答えいたします。  まず第一問でございますが、放射線漏れ原子炉構造の欠陥によるのではないかというお話かと承りましたが、放射線漏れの起きる前に原子力船むつ」は、当然のことながら冷態機能試験、温態機能試験といったような段階を踏んで、各部の機能の健全性を十分確認した上で臨界試験に入っております。したがいまして、放射線漏れ原子炉の構造的欠陥に基づくということはないと私どもは考えております。  それから次に、燃料被覆管のジルカロイチューブのお話でございますけれども、各国ともそうでございますが、舶用炉という極めてアンノーンファクターの多い原子炉の第一船の設計に当たっては、当然のことながら極めて保守的な設計思想で設計されておるわけでございます。当時ジルカロイはまだコマーシャルベースに乗っておりません。ステンレスチューブの方は既にコマーシャルベースに乗っておったわけでございますので、工業的生産という見地から見ますと、安全性を考えればステンレススチールの被覆管になるのは当然かと思います。その後、ジルカロイチューブが順次技術開発がなされまして商業ベースに乗った後は、中性子経済という面から見て、陸上発電所の場合ではジルカロイチューブを使うように大方の方向としては進んでおりますけれども、ステンレスチューブは高温における機械的強度が高いという特性がございますので、現在でもステンレスチューブを使った陸上の原子力発電所は何基か動いているわけでございます。  次に、経年変化の御質問でございますが、燃料被覆材はステンレススチールでございますし、原子炉の圧力容器は内面にステンレススチールのライニングが施されております。したがって、腐食その他の状況としては同じ状況下にあるわけでございますが、燃料の被覆管につきましては、「むつ」が燃料を装荷された時点と同じ時点から、同じ製造履歴を持った燃料被覆管が工場において水漬けになって経年変化をチェックしております。昨年そのうちの四本を引き抜きまして高温における機械的強度の劣化があったかなかったかをチェックしております。その結果は、当初製造時の高温時における機械的強度と変化のないことが証明されております。  もう一つは水質管理の問題でございます。腐食のことを考えますと、水中の酸素濃度というものを厳重にコントロールする必要がございますけれども、「むつ」は現在水中の溶存酸素の濃度、あるいは不純物の程度を示します電気伝導度であるとか、あるいはクロールイオンの濃度であるとかいったような点を厳重に管理しておりまして、現時点までにステンレススチールの腐食に至るようなものは全然検知されていないというのが現状でございます。
  250. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 後で御説明が願えればいいが、「むつ」の場合には御承知のように分離型の加圧水炉になっておるわけですね。それに比べて西ドイツのオット・ハーン号の場合には、これは還流型炉、一体化炉で、熱交換機と圧力容器を一体化して、そして熱交換機が中性子遮へい体を兼ねるような形になっておる。そういうところから飛び出すようなことはない構造になっているのに対して、日本の「むつ」の場合には、大山委員会報告書にも書いてありますように、放射線漏れ高速中性子のストリーミング現象に起因するものであって、先ほどの辻さんの質問の中にもありましたが、JRR4を用いた実験段階でも観測をされていたんだ、しかしながら計画設計建造に反映ができなかった、こういう指摘がされておるわけですね。そういうような意味から、今の「むつ」の場合には幾多の欠陥を持った、炉自身がそういう構造的なものであるのではないだろうかという疑念が我々の頭から離れ得ないのでございますが、この問題については研究開発事業団の方としては、いや今のままで、これはもう総点検も済んだし遮へい工事も済んだから使おうと思えば直ちに使い得る、絶対に間違いはない、そういうような自信をお持ちになっていらっしゃるのでしょうか。
  251. 野澤俊彌

    野澤参考人 最初の御質問は、一体型では蒸気発生器との関係で放射線漏れが少なくなるのではないか、分離型では放射線漏れが多くなるのではないかという御質問に承りますが、オット・ハーンは一体型でございますけれども、サバンナは分離型でございまして、分離型であるから一体型であるからといって、外部への放射線の影響は別にそう大きな問題ではないと考えております。特に一体型の場合の蒸気発生器は炉心の上に乗っているものでございますので、両サイドへの放射線漏れについては、蒸気発生器の問題は関係ございません。  それから、ストリーミングについての御質問かと思いますけれども、当時、モックアップ試験にしてもストリーミングという現象が存在することは関係者の間では十分わかっていたわけでございますけれども、残念ながらそれが中性子のエネルギーとどういうかかわり合いを持つかという定量的な把握に欠けるところがあったというのが放射線漏れ原因でございます。
  252. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 そこで、問題を納めてまいりますが、私の最後の質問に対してはお答えをいただいていないわけですね。遮へい工事は済んだ、それから総点検も済んだ、さあいよいよ今の「むつ」であればいつでも実験に取りかかることができる状態にあるんだよ、しかしながら、というのが報告の中に出ていますね。だから、その点についてあなた方技術陣としてはどのようにそれを評価をしていらっしゃるのかということを私はお尋ねしようとしているわけです。お答えください。
  253. 野澤俊彌

    野澤参考人 ただいま先生お話のように、遮へい改修、安全性総点検が終わりまして大湊に回航されてから一年七カ月たっておりますけれども、その間十分な維持管理を実施しておりますので、現在「むつ」は全く健全な状態にあるというふうに私どもは考えております。  もう一つのことは、今後「むつ」を出力上昇試験まで持っていく手順でございますけれども、前回と同じように冷態機能試験、温態機能試験、この二つ段階によりましてノンニュークリア部分の機能の健全性というものが十分確認されます。その後で臨界試験それから出力上昇試験に入っていくわけでございますけれども、当然のことながら、慎重の上にも慎重に一歩一歩安全性を確認しながら次のステップに進んでいくことによって安全性が確保できるというふうに私どもは考えております。
  254. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 まともなお答えが返ってこないのはよくわかりますが、私はちょっと非上参考人にお尋ねいたしたいと思うのです。  今、大湊に仮停泊はオーケーですよ。関根浜に港をつくるのはよろしいですよ。しかし、その付近の住民は、事故が起きたら帰ってこれると思っているのか、そんなのは帰すわけにはいきませんよという気持ちだと私たちは見るのでございます。八四年の一月二十四日の原子力委員会の方針なり八三年の原子力船懇談会の報告書、こういうようなのを読み合わせてみますと、先ほど私が言いましたように、実験再開は可能な状態になっている。新定係港で係船をしたまま出力二〇%の上昇試験をやる、あるいは五段階テストをやって、その係船をしたままの形の中で済ましてから洋上でやるんだ。それにこう書いてありますね。小さなトラブルは起こり得るものであることを認識をし、理解を得られるかどうかがこれからのかぎである。そうして、廃船まで関根浜の新定係港でやる、こういうことでなければならない、こう書いてありますね。ところが、この前から関代議士の質問の中でも、漁業補償をめぐる問題もまだ未解決である。また国の方針も、港をつくることはつくるんだが、この処理の問題については与党との協議が八月の末まで残っておるということで、方針は確定していない。  そういう状況の中で、そういうような小さなトラブルだと皆さんはお考えになっても、この前一・二%ないし一・四%の出力のところでアラームが鳴って出力試験を中止をしなければならなかった、五十日間も洋上に漂っていなければならなかった、そのことを考えますと、小さなトラブルというものを科学技術的に見て、それはそうであろうという評価をなし得ても、住民の中では、やはり同じ青森県でございますから、私は、そんなに認識の変化が急激に進んで許容量が大きくなっているとは思わない。そうすると、小さなトラブルだと皆さん方が言われても、現実にそれを受けとめる側の方としては、それは大変なことじゃないかということに変わっていく。そういうような場合に収拾がつかなくなるような事態というものをやはり仕事をやる以上は念頭に置いて、問題の判断を下していかなきゃならない、私はそう思うのでございます。  そういうふうにして、小さなトラブルは起こり得るものであることを認識し、理解を得られるかどうかということをみずから問う形で出されているわけでございますが、あなたはまだ今研究開発事業団理事長でございますから当面の責任者ですね。そういう意味から、あなたはこれから自信を持ち続けることができるかどうか、その点についてあなたの見解をお聞きをしておきたいと思います。
  255. 井上啓次郎

    ○井上参考人 お答えいたします。  小さなトラブルでも大変な問題を含んでいるという認識は持っておるのでございますが、今後の実験におきまして、大湊港は地元の了解を得ながら実験を進めることはできませんが、関根浜は母港でございまして、最初の上昇試験から実験航海あるいは廃船に至るまで母港で行いますという、技術的にもあるいは安全面からも地元に御説明を申し上げまして、一応の御了解を得ていると私は思っておりまして、その点は、先生の御指摘は十分私ども肝に銘じて、今後の実験には慎重の上に慎重を期して行いたいと思っております。
  256. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 漁協と漁業交渉をし、補償問題で調印をされたのですね。そういたしますと、今あなたがおっしゃったようなことは、冷態試験から温態試験からあるいは出力上昇試験から、そして最後の墓場まであなたのところでやるのですよということで、これはそういう協定書を現実に取り結んでいるのですか。それで、地元はそれに対してオーケーを出しているのですか。
  257. 井上啓次郎

    ○井上参考人 協定書ではございませんが、技術的な説明書及び今後の手順審というものをお示し申し上げて十分御説明をいたしました。それによりまして一応の御了解を得ていると思っております。
  258. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 これは、長官、あなたにお聞きしておかなければなりません。  というのは、前に大湊で、それもやはり定係港として係留したままでそういうような試験をやるんだということで出発しているんじゃないのですか。ところが、接岸したまま、係留でそういうような試験をやることは、ホタテガイがあるからだめよ、湾内でやってもだめよ、仕方がないから洋上に行って試験をやったのでしょう。その結果、見たことかということになっちゃった、帰れなくなっちゃった。今度の場合、第二の定係港として関根浜を選ぶ。そのときに、今事業団理事長が言われるようなことでまた、いや、それはそういうはずじゃなかったということになったら、一体どういうふうになりますか。その件については、科学技術庁長官、あなたは今の程度の話で自信をお持ちになっているのですか。いや、私は、長官に聞いているんだよ。
  259. 中村守孝

    中村(守)政府委員 技術的に先に。  関根浜の港の漁協等についての説明につきまして今事業団の方からお話がございましたが、ことしの一月の初めに大臣みずから現地へ赴かれまして、現地の人と懇談し、出力試験から廃船に至るまで関根浜の港でやらしていただくということについて基本的な御理解を得ておるところでございます。その後、「むつ」問題について検討を進めるということになっておりますので、その具体的な実験を継続するという結論が出た段階で、さらに地元の方々にもっと具体的ないろいろな実験計画等を御説明し、いろいろな問題が生ずることのないように対応してまいりたい、そのように考えております。
  260. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 今の中村原子力局長の答弁では納得できません。  これは基本的には了承を得ております、事業団理事長と同じようなことを言われた。本当にそうであるならば、その協定をして、そこまで大丈夫ですよということであるのかどうかということは、やはり契約条項の中ではっきりしなければ、二度と同じような失敗を繰り返したら、これはもう行政自体が信頼がおけないし、政治が全国民の立場から見て問題を追及されることになるだろうと私は思うのですよ。国会も、そういうようなあやふやなことで、それでよかろうと言うわけにはいかぬ。もう一遍は失敗をしているのだ。今度はそういうことにならないようにどのように保証がしてあるのかということを長官にお聞きします。
  261. 岩動道行

    岩動国務大臣 村山先生の御心配はごもっともだと思います。  私どもは、とにかく佐世保での遮へい工事、そしてその後の総合安全点検等、まず現在の技術の面では完璧なものとして受けとめております。また、現在の原子力船むつ」の保管の状況につきましても、管理状況もまず十分にいっていると思います。  そこで問題は、関根浜に移ってからの試験研究、実験でございますが、これは一月に私が地元に参りまして関係者とお話をいたしまして、試験研究、実験、そしてさらに廃船に至るまでの最終的な段階までの基本的なお話をして御理解をいただいておるわけでございますが、さらに、昭和四十九年に放射線漏れが起きてあのような騒ぎになりました一つには、出港に当たって、やや現地の方々との意思の疎通に欠けていたものがあったのではないかという反省も私どもはございます。したがいまして、そのようなことを十分に念頭に置いて地元の方々の御理解、御協力を君らに固めてまいりまするならば、そのような最終的な段階までのことは順調に進められるものと信じておるところでございます。
  262. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 まだ信用ができません。その文書でもお出しをいただければ別でございますが、我々はそういう話を聞いたというその状況に心理的にはございます。  そこで私は、さらにお尋ねをしてまいりますが、原子力委員長である長官、昨年の十二月二十三日に出された原子力委員会の「日本原子力船研究開発事業団の統合について」、この中で、原子力船の実用化の時期は二十一世紀だ、実用化を急ぐより段階的、着実に開発を進めて、技術、知見、経験の集積に努めておくことが重要である、こう書いてございます。ところが、ことしの一月二十四日の原子力委員会の決定によりますと、「今後の原子力船研究開発のあり方について」というのがございまして、その中で原子力船むつ」の問題を取り上げて、実験航海をやらないと舶用炉の改良研究は進められない、三次元振動台での原子炉の模擬実験は不可能であるというようなことが書いてございますね。  そこで私は、今日、宇宙開発の中で衛星まで軌道修正や位置の修正等ができるような科学技術の発展の状態の中で、果たして三次元振動台で原子炉の模擬実験をやるというのは不可能であろうかということに疑問を感じたわけでございます。そこで、民間の中でそういう三次元振動台をつくっているところはないだろうかというので調べてみましたが、ございます。これは石川島播磨重工技術研究所耐震開発部で三十五トンの三次元の大自由度の振動台をつくっておりまして、五十八年の三月に設置をしておるわけです。これはX、Y、Zの三軸の振動方向だけではなくて、ねじれ現象なども調査ができるような形の実験台をつくっている。そこだけじゃございませんで、大成建設でも技術研究所の耐震研究室で三軸振動台を備えつけておりまして、これはことしの四月二十三日に完工式をやっているようでございます。ここにも参考資料を持っておるわけでございます。  そういうような意味において、今までも各要員の方から、何で陸上におけるそういう実験、テストをしなかったのか、それをやった上で船に積み込んでやればよかったんじゃないかという質問が繰り返しなされておるわけでございます。ところが、調査室の方から配られました日本原子力研究所法の一部改正法律案の参考資料の五十八ページを見てみますと、そういう三次元振動台を開発することは事実上不可能であるというふうに決めつけておられる。これは原子力委員会が一月二十四日にお出しになった文書であると書いてございます。今日、こういう科学技術が発展をしていく中で、船の場合には振動の仕方が違ったとしても、それを模擬していくだけのそういうような陸上において実施ができるものは実施して、どうしてもできないものだけを海上の実験に頼らざるを得ないというのであるならば、その意味がわかるわけでございますが、現実にはそのような研究が民間においてなされている。そういうようなことを考えてまいりますと、どうも原子力委員会というのは、一方的に断定をして、そういうことはもう不可能なんだから、仕方がないから「むつ」の実験を実地にやる以外にない、こういうふうに判断を示しているように受けとめられるわけでございます。  その問題については、なるほど政府機関ベースとしては、原子力工学試験センターの多度津の工学試験所にありますのは二次元の振動台だけであるようでありますが、民間はそういうようなことを、耐震設計の上からという目的は違いましても、ねじれ現象までも測定ができるようなところまで研究開発を進めながらやっていこうという、その姿勢の取り組みをしている状況の中にありまして、政府並びに研究開発事業団は、そういうようなことはおれは知らないよ、そんなのは不可能なんだから、仕方がないから早く洋上で試験をするよりほかにないんだよというふうに決めつけてしまっているんじゃないだろうかという気がするのでございますが、このあたりについてはどういう判断をお持ちになっていらっしゃるのか、お答えを願いたいのです。
  263. 中村守孝

    中村(守)政府委員 お答えいたします。  先生指摘の三次元振動台の数字が三十五トンということでございましたが、小型の三次元振動台はそのようにあるのかもしれませんし、私どもの方でも防災センターという研究機関で、三次元振動台を使って耐震のいろいろなことを少し勉強しようじゃないかという動きもあるわけでございます。  ただ、本件原子力船むつ」の場合について申し上げますと、一つは規模が大分違うわけでございますし、それから静的な状態でなくて、現実に核反応を起こした状態でのデータを取得するということにも一つ大きな問題がございます。それから、海上でございますので波の上に乗っかって急に落ちるわけでございますし、十メーター以上の上下動がある、あるいは傾斜の動揺にしても四十五度の傾斜角度があるということでございまして、例えば多度津の振動台一つをとりましても、荷重が千トンでございまして、上下動はわずか二十センチということで、この建設費だけでも約三百二十億円かかっておるわけでございます。そういうことで、例えば原子炉自身をある程度システム的に組み合わせて振動をしようとしますとばかでかい設備になりますし、ましてや三次元ということになると途方もないものになるわけでございます。  先生指摘のように、各原子炉なりシステムの各部を構成するパーツ、パーツについてのものにつきましては、個別の小さな振動台で実験する、あるいは振動台というか揺動台といいますか、そういったもので実験はできることもあろうかと思います。しかしながら問題は、例えば波の上で揺れている原子炉の中に疎密波が生じることによって中性子の効率が変動する、そういうことによって核反応に変化をもたらす、あるいは蒸気発生器の水面が波の上で振動することによってそれが全体の原子炉の中の核反応に影響を及ぼす、さらには船が波の上に乗っかってスクリューが空を切った、そういったときの状態というようなものについての実験をするわけでございますので、そういったことは地上の振動台では到底達せられないということでございます。そういうものをどのようにかシミュレーションをするとすれば、コンピューターでいろいろなシミュレートをするという形になろうかと思います。コンピューターでシミュレートするためのまた基礎データというものが、実際にやってみないことには、頭の中で考えているだけのものと違うものでございますから、そういうデータを取得するという意味からも、少なくとも「むつ」ではそういうデータを取得しておこう、こういうことであるわけでございます。
  264. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 小型だからだめだとかいうのはおかしいので、やはりそれはシミュレートしていけばいいわけですから、物を突き詰めて解いていこう、それはもちろん海洋のあれに合わせて船自体の動きが陸上の場合とは違いますから、そういうようなのはわかるわけですよ。ピッチングがありあるいはローリングがあるというようなのはわかる。しかしながら、この問題は非常に危惧をしている問題ですから、陸上において、先ほどの話を聞いておりますとそういうようなのは諸外国においてもやっていないというような語を聞くのですが、我々が聞いているのでは、アメリカの原子力潜水艦のノーチラス号をつくる場合には、同じ出力のSTRという実験炉をアルゴンヌ国立研究所の構内でやったというような記録も見ているわけでございます。そういうようなところから、陸上の実験もやらないで、すぐに船に積み込んで、そしてやったあげくの結果が今日のような長い間の空白を招いたんじゃないのかということを考えますと、三次元振動の問題は、それは海の上では違いますから、そんな膨大なものは、またでかいやつはつくれませんから、それは事実上不可能でございますというふうに決めつけていいんだろうか。やはり今日までの政府あるいは事業団の取り組みの姿勢が、今日「むつ」をこういう不毛の状態に立ち至らしている原因じゃなかろうか。私は、やはりそこを謙虚に反省をしないで今後の「むつ」の将来というのはあり得ない、そういうふうに思うのでございます。  そこでお尋ねをいたしますが、負荷追従性のある核燃料をいかにしてつくるかというような問題等はどの程度まで研究を進めていらっしゃるのですか。
  265. 野澤俊彌

    野澤参考人 お答えいたします。  負荷変動に対する燃料の研究開発は、陸上の原子力発電所でもこの数年間に実施されつつある問題でございます。陸上の発電所の負荷変動の度合いと舶用炉の負荷変動の度合いとでは、陸上の場合には時間単位の変化でございますけれども、原子力船の場合には秒単位の負荷変動ということで、極めて急激な負荷変動が起こることが予想されております。したがいまして、現在では陸上の研究炉なり材料試験炉なりで負荷変動の実験が行われておりますけれども、それは陸上の発電所の荷負変動に対応する実験がスタートしたばかりでございまして、舶用炉のように秒単位で負荷変動が起こるものに対する燃料の実験というのは、現時点ではどこでも行われておりません。技術的には極めて困難なものでございます。
  266. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 そこで、またちょっと技術的な問題になって恐縮ですが、宮坂調査団が事故直後に派遣をされまして、そして七名の調査団が調査に参りました。ところが、その調査のやり方を見ておると、今でも指摘をされておりまするように、原子炉の積みかえをしたわけでもないし、そして核が封印をされたままの中で炉心の点検もできない、そういう状況であったことはよくわかります。そして、圧力容器の中のパイプの改修もできないような状態の中で遮へい改修、総点検補修は全部終わったのだ。遮へい改修の方はそういうような意味では非常にうまくいっているのだろうと思うのですが、総点検補修という言葉が使ってありますが、それは八十八億円かけておやりになった。これはどういう形でおやりになったのですか。  という疑問を私が感じますのは、どうも作業の経過から見てまいりますると、出力をごくわずかでも上昇させてきちっとした放射能漏れの測定をやっているわけでもないわけですから、再測定はやれなかったわけですから、電子計算機によるシミュレーション計算で測定結果を説明をしたものにすぎないんじゃないか。巨大で複雑な遮へい体の中でそういう計算が果たしてできるのだろうか。モックアップ試験をやったんだ、こういうような話も聞きますが、原研の研究用の四号原子炉のそれでやったと書いてございますが、一体それはモックアップになっているのだろうか。計測値と実測が合わないで、放射線の空中分布等についての調査の結果は外れていたのが、遮へい体を通り抜けた段階では合っていた。それは何か専門家は、外してパラメーターを調整したものじゃないかということが言われているわけですね。そういうような事実は一体どうなっているのだろうかというふうに我々としては疑問に思わざるを得ないのでございますが、その制限の中で精いっぱいのことをやったのだということはわかります。しかし、核が封印をされたままの中でそういうような炉心の中の点検ができたわけでもございませんので、これで「むつ」は大丈夫なんだと言われても、我々としては、大丈夫だという言葉だけは響いてくるけれどもどうもすとんと落ちない。果たしてそれで完全な補修が終わったのだろうか。  大体、佐世保に回航するときには遮へい工事をやるために回航したのですよね。それがいつの間にか総点検補修に変わってきた。総点検補修の結果は大丈夫だと皆さん方は言われるけれども、今私が申し上げたような疑問点が出ている。そういう点についてはどのように分析をされ解析をされて、そうして結論をお出しになっていらっしゃるのか、その点も御説明を願いたいのです。
  267. 野澤俊彌

    野澤参考人 まず、第一点の放射線漏れ原因調査の件だと思いますけれども、放射線漏れが起きた後、実は三回原子炉を運転して、「むつ」の原子炉そのもので各部の放射線線量率を測定しております。第一回は四十九年九月八日、原子炉出力〇・二三%で原子炉の部屋の中の各都の放射線量率を測定しております。第二回は四十九年九月九日、原子炉出力は〇・二四%。第三回は翌日の四十九年九月十日、やはり原子炉出力は〇・二四%。この三回原子炉を運転して、「むつ」の炉室の中での各部の放射線量率を測定しております。これが第一点。  それから次は、総点検のことでございますけれども、総点検につきましては、大山委員会報告にもございますように、遮へい改修工事にあわせて、この際設計を全面的に見直すべきだという御指摘がございました。これを受けまして事業団といたしましては、最新の設計思想あるいは新しく制定された基準に照らし合わせて現在の「むつ」の設計がどうなっているかということを検討したのが一点。それから二点目は、陸上の原子力発電所で各種の運転経験が得られております。その運転経験に照らし合わせて「むつ」は果たして大丈夫かどうかという、この二つのポイントから、「むつ」自体の設計なりあるいは事故解析なりを行って健全性を確認していただいたわけでございます。  なお、原子炉の中の健全性につきましては、先ほど申しましたように、燃料の健全性につきましては、「むつ」の燃料装荷のときと同じ製造履歴を持った燃料要素を燃料装荷以来水の中に漬けて健全性を確認しているということが一点。昨年それを四点、サンプルをつぶしまして高温におきます機械的強度の測定を行って、劣化してないことを確認しております。  それからもう一つは、ステンレススチールの腐食の条件が成立しないように厳重な水質管理を行って、その健全性を保持しているということでございます。
  268. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 時間が参りましたのでもうやめますが、今説明の中にありました出力試験というのは「むつ」の原子炉を使っておやりになったという意味ですか、三回にわたってというのは。
  269. 野澤俊彌

    野澤参考人 そのとおりでございます。
  270. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 そういうようなのは、佐世保において改修をするその条件の中では認められておったわけですか。というのは、炉は封印をしたままじゃないか、こういうことで、そういう条件で佐世保へやってきたのじゃないですか。それで、住民の皆さん方にもそういう条件で納得してもらったのじゃなかったのですか。
  271. 野澤俊彌

    野澤参考人 ただいま御説明申し上げましたのは、「むつ」が放射線漏れを起こした直後の洋上試験のことを指して言っております。
  272. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 時間が参りましたのでやめますが、私はやはりこの際、機構の上におきましても――その直後の検査のことを言われて、これは実際その後洋上でやられたんでしょうが、そのデータをもう一つ出していただきたいと思うのですが、今度の原子力船研究開発事業団の合併、原研への統合の問題につきましては、いろいろ法文的にも問題があるようでございまして、原子力船については、総理大臣及び運輸大臣原子力委員会の決定を尊重して云々という条項が入ってみたり、あるいは兼職規定が原研の場合には制限をされていたのに、国務大臣とか国会議員とかというようなのも兼職ができるような規定に改めてみたり、あるいは総理が認めた場合には他の営利事業を兼務することができるようになっていたり、これではどうも国民のための原子力開発ではないんじゃないかという印象を与えるような条文になっているようでございますので、その点は返事は要りませんが、指摘だけは申し上げておきたいと思います。  以上申し上げまして、若干資料として、その洋上試験の結果、直後に出されたデータは、また理事会等で取り扱いの上報告を願うように委員長の方にも要請を申し上げておきたいと思います。  終わります。
  273. 大野潔

    大野委員長 村山君の御要望は理事会で協議をさせていただきます。  小澤克介君。
  274. 小澤克介

    小澤(克)委員 午前中に、この中性子漏れ事故の契約上の責任の所在についてお尋ねしたところ、事業団の方では最初のお答えでは、基本設計及び仕様書ミスはなかったというお話だったので、メーカー責任の追及についてどうなっているか、これを前提にお尋ねしているうちに、どうもそうではない、事業団にも責任なしとしないというように変わってこられましたし、また監督官庁の科技庁の方は、当初から事業団側にも責任があったというようなお答えだったために、これでは質問が続けられないということで、一たん留保させていただいたわけですが、そこで改めて、この放射線漏れ事故契約上の責任の所在はどちらにあったのか、ぜひ監督官庁である科技庁、それからこれは共管でありますところの運輸省、それから当事者である事業団、明らかにしていただきたいわけです。  というのは、これは何も過去のことを蒸し返しているわけではございませんで、今回政府提案の法案によれば一切の権利義務を、あるいは契約上の地位等も含めまして包括的に原研が承継するということでございますから、この点は明らかにしておかないと、引き受ける側の原研が迷惑をする、そういう趣旨でぜひ明らかにしていただきたいと思います。  ついでに申し上げますと、ことしの二月に出ました「追想録 佐々木周これは、かつて事業団理事長であられた佐々木さんの追悼集でございますが、この中で当時の森山長官が、佐々木さんに一度伺ってみたいと思っていたことがあった。その一つは、中性子漏れに関して遮へい計算法が既に二、三年前に開発されていた。これは、先ほど他の委員に対してSN法という御説明がありました、このことだろうと思いますけれども、こういうものが既に二、三年前に開発されていた。そのことについて事業団理事長が知っていたのかどうか、いまだに疑問に思っている、こういうことを言っておられるわけです。  このSN法について二、三年前に既に知られていたことが、それが採用されなかったのは一体いずれの責任なのか、あるいは双方の責任であり、責任が競合するということもあり得るわけです。この問題についてはこれまでさんざん議論が尽くされていることだと思いますので、もうくだくだ理由は要りませんから、しかも与えられた時間も余りありませんので、端的に結論をそれぞれお答えいただきたい。
  275. 中村守孝

    中村(守)政府委員 まず「むつ」の放射線漏れ原因となりました設計ミス責任について申し上げます。  「むつ」の放射線漏れ原因は、御承知のとおり主として高速中性子遮へいの間隙を伝わって漏れ出る、いわゆるストリーミングと称する現象によるものでございます。この点につきましては、「むつ」の設計当時に我が国には遮へい設計の実例が少なく、遮へい設計の専門家がほとんど育っていないというようなことから、「むつ」の遮へい設計に当たりましては、計算に乗りにくい複雑な形状をした遮へい材の遮へい能力についての判断力が足らなかったということに起因していると考えられております。このような設計ミスが生じた原因につきましては、大山委員会指摘にもございますようにいろいろ考えられるわけでございますが、事業団メーカーともその責任を有していると考えられているわけでございます。  すなわちメーカー、これは三菱原子力工業でございますが、メーカーに関しては、遮へい設計製作の担当者であり、その設計に起因して生じた放射線漏れについては、当然契約上の責任を有しているということでございます。  一方、事業団に関して見ましても、契約に当たりまして、設計仕様書のたぐいをほとんどメーカー主導という形で行っておりまして、事業団自体による責任ある検討が加えられなかった、及び分割発注という形態になったときに、発注者である事業団が総合的性能保証を十分考慮する必要があったことなどの点において責任を有しているという次第でございます。こういった点から、事業団並びにメーカーそれぞれに責任があるということでございます。  さらに、なぜ損害賠償請求をしなかったかという点でございますが……(小澤(克)委員「それは後でいいから。聞いていない、聞いていない」と呼ぶ)それはよろしゅうございますか。  それから、新しい遮へい計算法を理事長が知っていたかどうかという点につきましては、事業団の方からお答えいただきます。
  276. 神津信男

    ○神津政府委員 原子力船むつ」に起こりました放射線漏れ原因となりました設計ミス責任につきましては、ただいま原子力局長がお答えしたのと同様に考えております。
  277. 福永博

    福永参考人 私の発言がやや舌足らずでございまして、大変御迷惑をおかけしたことを深くおわび申し上げます。  考え方は、原子力局長と全く同様でございます。
  278. 小澤克介

    小澤(克)委員 このSN法についてはどうだったのでしょうか、事業団
  279. 野澤俊彌

    野澤参考人 お答えいたします。  先ほどSN法自体につきまして御説明いたしましたように、SN法を用いて遮へい設計計算が行えるような実際的なコードという格好で実用化されたのは、前回申しましたように一九六九年でございますが、その時点では既に「むつ」が完成しておったわけでございます。それで、その当時、名前はTWOTRANという名前でございますけれども、この時点でその存在がわかっておって直ちに利用し得たかどうかははなはだ疑問が多いと思います。  その理由を申し上げますと、新型の、しかも大型の計算コードを使いこなすためには、想定されますいろいろなケースにつきまして計算して、計算機用語で申しますとデバッグと申しますが、だめをつぶして汎用性のあることを十分確認する必要がございます。  それからノーハウともいうべき、例えばインプットデータのつくり方、中性子のエネルギー分布をどう分割するか、あるいは遮へい材のクロスセクションがエネルギーに対応してどう変わっていくかというようなことを求める手法まで含めた上で、コードを使うことによって初めて実用化ができるものでございまして、いろいろなケースを考えますと、コード完成時点から実際にコードが設計なり解析なりに使われるまでにはかなりの時間がかかっているのが実情でございます。
  280. 小澤克介

    小澤(克)委員 結局またうやむやになってしまったわけですけれども、もうこれは時間がありませんので、次に移ります。  保証工事期限切れ、これについても当時の森山長官が、大臣である私は全くそのことを聞かされていなかった、このように先ほど紹介した追悼文に書いておられるわけです。担当の大臣が知らなかった、これはどういうことなんでしょうか。一体どこの責任なんでしょうか。これについてぜひ明らかにしていただきたい。
  281. 中村守孝

    中村(守)政府委員 当時の大臣の御記憶でもあり、そのようなことで大臣にも御報告がしてなかったということでございまして、その点については非常に遺憾なことであったと思っております。
  282. 小澤克介

    小澤(克)委員 遺憾であったということは、科技庁の責任だということになるわけですか。科技庁の事務当局の責任だったということになるわけですか。
  283. 福永博

    福永参考人 当時、保証期限が切れるということを、そういう重大なことを当時の事業団として科技庁に御報告をしたという記録がございません。したがいまして、当時の事業団が軽率であったのではないかと考えます。
  284. 小澤克介

    小澤(克)委員 次に、損害賠償の件です。これは誤解のないように、瑕疵担保とは全然別ですからね。要件も違います。瑕疵担保というのは無過失責任ですよ。そのかわり注文者の側に、指示が違っていた場合のみ免れるということで、これは無過失責任です。一方、損害賠償というのは、要するに帰責事由があった場合に請求を受けるわけですけれども、この損害賠償について全然検討もされなかったということのようですが、これは一体どこの責任なんでしょうか。
  285. 中村守孝

    中村(守)政府委員 損害賠償の請求につきましては、当時この原子力船建造にかかわる契約上、損害賠償が請求できるか否かについても議論の余地があったほかに、実態的にも当時ストリーミング現象を技術的に十分に把握することは困難であり、これに対する有効な対応をとらなかったからといって専らメーカー責任を問えるという事情にはなかったということ、それから先ほども申し上げましたように、事業団メーカーに対する指導体制という点についても不十分な点があったということからすれば、事業団にも責任が認められる。さらにメーカーにつきましては、その後の修復等について有形無形の協力を得ていたというような種々の事情もございまして、これらが総合的に勘案されて損害賠償の請求がなされなかったものと考えられる次第でございます。
  286. 小澤克介

    小澤(克)委員 そのような状態のままで、さらに補修工事を同じメーカーにお願いし、さらに何十億という金をつぎ込んだ。こういう責任の所在についての分析をしないままに、さらに金をつぎ込んだというのは私には理解できない。盗人に追い銭という言葉がそのまま当たるわけです。  私は大臣に伺いたい。当時の長官が、この保証工事期限切れについて知らなかった、打ち切られたことについては不可思議なことのように思われる、大臣である自分がそのことを聞かされていなかった、故人であるこの佐々木氏に聞いてみたかった、追悼文集にこういうことを書くというのは異例なことだと私は思います。これは責任はどこにあるのか、こういう無責任体制は長官としてどうお考えでしょうか。今長官はかつての森山さんと同じ立場にあるわけですけれども、いかがですか。
  287. 岩動道行

    岩動国務大臣 当時の森山長官の御心境は、私も理解のできるところでございます。いずれにいたしましても、このように重要な国家のプロジェクトにつきましては、やはり最高責任者としての長官のところまで十分に意思の疎通が図られていなければ円滑に事柄は進まない、かように考えておりますので、過去の経緯そうして対応の仕方につきましては、貴重な教訓として今後十分に対応してまいりたいと考えております。
  288. 小澤克介

    小澤(克)委員 もう一つ伺いたいのですが、もし政府案が通ればこの地位を引き受けることになる原研としてはいかがですか。こういう無責任体制といいますか、こういうものをそのまま引き受けることになりますと、我々は好むと好まざるとにかかわらず今後は原研に対して責任を追及しなければならない、そういうことになるわけです。原研のお考えはいかがでしょうか。
  289. 藤波恒雄

    藤波参考人 お話しのように、統合ということが決定いたしますれば原子力船開発事業団の一切の権利義務が原研に承継されるということになるわけでありますが、その処理につきましては、従来からの経緯を踏まえまして、当局の御指導も十分受けながら間違いのないように努めてまいりたいと考えておるところでございます。  いずれにいたしましても、原研が統合先として決定されました理由は、原子力委員会の見解表明にもあらわれておりますように、原子力船開発表段階的、着実に進めるために、長期的観点から幅広く研究開発を行っております原研の技術的蓄積あるいは経験、能力というものを活用することが適切である、こういう判断によってなされたものであると我々理解しておるわけでありますので、この趣旨をわきまえまして、今後いわば原研らしいやり方で着実に開発を進めていく、こういう所存でおるわけでございます。
  290. 小澤克介

    小澤(克)委員 先ほどから保証工事についてお尋ねしていたわけですが、実はもう一つ性能保証がありますね。これについても期限があって、これはもうとっくに過ぎているわけですけれども、しかしこれにはただし書きがありまして、海上試運転実施遅延の原因三菱原子力工業責任に基づく場合はこの限りでない、こういうふうに規定されているわけです。そうしますと、現在でもこの性能保証については生きているのかどうか。すなわち、言いかえれば海上試運転実施遅延の原因がMAPIにあるとお考えなのかどうか。事業団、いかがでしょう。
  291. 福永博

    福永参考人 私、先ほどの答弁でも申し上げたと思いますが、出力上昇試験の遅延の原因、それがメーカー側ではなくて事業団側にある、こういうようなことを申し上げたつもりでございます。
  292. 小澤克介

    小澤(克)委員 そうすると、メーカーには一切ないということになるのですか。先ほどの答弁はそうとは聞こえなかったのですが、どうですか。
  293. 福永博

    福永参考人 私の記憶ではただいま答弁したようなことを申し上げたつもりでございます。
  294. 小澤克介

    小澤(克)委員 確認しますと、三菱原子力工業には一切責任ない、したがって現在では、性能保証についてももう期限が徒過している、こういうことになるわけですか。
  295. 福永博

    福永参考人 そのとおりでございます。
  296. 小澤克介

    小澤(克)委員 あきれて物が言えないのですが、まあ言わざるを得ないのです。遮へい工事についても瑕疵担保責任の規定があります。これは引き渡しから二十四カ月となっております。これはいつ切れるのか、またしれについてはどういう手当てをお考えなのか。いかがでしょう。
  297. 福永博

    福永参考人 遮へい工事について納入を受けましたのが五十七年六月二十五日でございます。それから二十四カ月でございますので、五十九年六月二十四日というのが期限になろうかと存じます。  それで、これについてどういうふうに対応しようとしているのか、こういう御質問でございます。六月二十四日と申しますとあと二カ月くらいでございます。この遮へい改修工事というのは、原子炉出力上昇試験をしてみなければ最終的な確認はできないわけでございます。これから向こう二カ月の間に原子炉出力上昇試験に移れるという態勢とは考えられませんので、この期限をしかるべく延長してもらいたいというようなことで、ただいま折衝を重ねているところでございます。  ちょっと訂正させていただきます。瑕疵担保期限は、納入ではなく引き渡しを受けた日より起算いたしますので、船体部昭和五十九年六月二十七日、原子炉部昭和五十九年六月二十九日でございます。
  298. 小澤克介

    小澤(克)委員 時間が過ぎましたので、この法案自体についていっぱい伺いたいことがあるのですが、やむを得ないので一点だけ伺わせていただきます。  この政府提案の法律案によりますと、第二十二条で、この統合された後の原研の業務の範囲として「旧日本原子力船研究開発事業団法第二十三条第一項第二号の規定により建造された原子力船に関する業務を行うこと。」要するに建造された原子力船に関する業務、「むつ」に関する業務を行うこと、こういうふうになっているわけです。この文言からいたしますと、建造された原子力船むつ」に関する業務、業務一般何でもできる、こう解せざるを得ないわけです。現行の事業団法によりますと、「原子力船設計建造及び運航を行うこと。」それから「乗組員の養成訓練を行うこと。」こういうふうに限定されているわけですけれども、この限定すら外されてしまう。他方、この政府提案の法案の第一条の目的によりますと、「あわせて原子力船の開発のために必要な研究を行いここうなっているわけです。旧事業団法では開発を行う、そしてそれに必要な研究を行う、こういうふうになっていたのに開発の方は外されているわけです。研究だけに限定されているわけです。目的については限定をされながら、業務については無制限になっている。これは理解できない、欠陥法案だと思います。この業務としてどういうことを予定しているのか答えていただきたい。
  299. 中村守孝

    中村(守)政府委員 お答えいたします。  原子力船の開発という言葉でございますが、原子力研究所は先ほど来お話がございますように原子力に関する総合的な研究機関でございまして、いわゆる実用船を開発するということにつながる具体的なプロジェクト、当初「むつ」が原子力船開発事業団のプロジェクトとして考えられたような状態での開発は原子力研究所では行わないわけでございまして、今回原子力研究所と統合して行う仕事の範囲はあくまでも開発のための研究であり、「むつ」はその研究のための手段の装置であるというぐあいに私ども理解しておるわけでございます。  先ほど「むつ」に関する業務一切ということで御指摘ございました。乗員の訓練はもちろん入るわけでございますが、「むつ」を入港させるための定係港の建設、そういったようなものも「むつ」に関連する業務でございますので、その条項で読ましていただくということでございます。
  300. 小澤克介

    小澤(克)委員 目的は研究を行うということですよ。研究に限られるわけです。研究の定義づけはむずかしいかもしれませんが、要するに法則的事実についての知見を見出すこと、これが研究です。業務自体を行うということは目的の範囲に入らないわけです。乗員の訓練なんていうのは研究とは結びつかないでしょう。どういうことなんですか。よくわからない。説明してください。
  301. 中村守孝

    中村(守)政府委員 お答えいたします。  乗員の訓練は、当然のことながら実験船は動かさなければいけないわけでございますので、一般の船員の方には原子力船のいろいろ特有の知識も必要でございます。そういう形で、実験船を動かしてその目的である研究データを得るためには乗員の訓練からしなければならないわけでございますので、研究に随伴する業務でございます。
  302. 小澤克介

    小澤(克)委員 時間が来ましたので終了いたしますが、そうであれば「原子力船に関する業務を行うこと。」などというあいまいな、無限定的な文言はおかしいと思いますよ。これは要するに廃船考えであいまいな表現をしたんだろうと思いますけれども、研究という目的の機関であれば、その業務の範囲も研究に限られるはずです。それを指摘して質問を終わります。     ―――――――――――――
  303. 大野潔

    大野委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  ただいま議題となっております両案審査のため、来る五月八日、参考人出席を求め、意見を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  304. 大野潔

    大野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、参考人の人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  305. 大野潔

    大野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次回は、来る五月八日火曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時十分散会      ――――◇―――――