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1984-07-27 第101回国会 衆議院 運輸委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年七月二十七日(金曜日)     午前十時五分開議 出席委員   委員長代理理事 鹿野 道彦君    理事 久間 章生君 理事 浜野  剛君    理事 三塚  博君 理事 小林 恒人君    理事 吉原 米治君 理事 近江巳記夫君    理事 中村 正雄君       加藤 六月君    北川 正恭君       小山 長規君    佐藤 文生君       田中 直紀君    近岡理一郎君       中馬 弘毅君    中山 正暉君       林  大幹君    増岡 博之君       箕輪  登君    若林 正俊君       兒玉 末男君    左近 正男君       関山 信之君    田並 胤明君       富塚 三夫君    水谷  弘君       森田 景一君    梅田  勝君       辻  第一君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 細田 吉藏君  出席政府委員         運輸省海上技術         安全局船員部長 武石  章君         海上保安庁次長 岡田 專治君  委員外出席者         人事院事務総局         任用局企画課長 大城 二郎君         防衛庁人事局人         事第二課長   鈴木 正孝君         労働省労働基準         局安全衛生部計         画課長     松本 邦宏君         労働省婦人局婦         人政策課長   松原 亘子君         運輸委員会調査         室長      荻生 敬一君     ————————————— 委員の異動 七月二十七日  辞任        補欠選任   加藤 六月君    北川 正恭君   田中 直紀君    小里 貞利君   箕輪  登君    保岡 興治君   西中  清君    水谷  弘君 同日  辞任        補欠選任   北川 正恭君    加藤 六月君   水谷  弘君    西中  清君     ————————————— 七月二十六日  ユーザー車検代行行為の是正に関する請願(小  泉純一郎紹介)(第八八九一号) 同月二十七日  志布志湾における波見港港湾計画早期実現に  関する請願二階堂進君外一名紹介)(第九〇  四九号)  脊髄損傷者に対する運輸行政改善に関する請願  (河野洋平紹介)(第九二二七号)  北陸新幹線早期着工等に関する請願小沢貞  孝君紹介)(第九一八〇号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  船員法の一部を改正する法律案内閣提出第八  四号)      ————◇—————
  2. 鹿野道彦

    鹿野委員長代理 これより会議を開きます。  本日は、委員長が所用のため出席できませんので、指名により私が委員長の職務を行います。  内閣提出船員法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。森田景一君。     〔鹿野委員長代理退席久間委員長代理着席
  3. 森田景一

    森田(景)委員 先般来論議されておりますように、船員法の一部改正法案婦人差別撤廃条約を批准するための整備である、こういうふうになっておるわけでございます。あわせて婦人職域を拡大するために雇用促進を図らなければいけない、こういうことも問題になっているわけでございますが、最近の「船員職業紹介状況」というのを見てみますと、昭和五十六年におきましては、新規求人数外航で二万三千四百五十四人、月間有効求人数が三万九千九百六十六人、新規求職数が一万二百二十三人、月間有効求職数が三万四千五百九十一人、倍率月間有効求人倍率が一・一六、こういう数字があるわけです。成立数が千五百三十二件。内航につきましては求人倍率が一・六七倍でありますが、成立数が三千八百二十二件、漁業関係では倍率は〇・一九倍でございまして成立数が千五十七、これは五十六年の数字でございます。五十七年の数字を見ますと、外航につきましては一・六七倍、成立数が千六百一件、内航が〇・八九倍、三千三百二十件が成立している。漁業関係では〇・二一倍で七百八十九件、こういう資料があるわけでございます。  求人数それから求職数もかなりの数がありながら、成立数が余り芳しくない状況でありますけれども、こうした結果についてはどんなところに原因があるというふうに判断なさっていらっしゃるのでしょうか。
  4. 武石章

    武石政府委員 今、先生がおっしゃいましたとおりのような成立状況でございますが、この原因は、求人側の求める条件求職側条件とが必ずしも一致しない、特に若年層に対しての求人が多いのに対しまして求職側中高年齢層の比重が非常に高いというようなことで、事実上すれ違いになってしまうとか、あるいは外航、内航、漁業、それから漁業の中でもいろいろな形態がございますが、それぞれの望むような職場あるいは求人側の要請というものがどうしても合わないというような状況がございまして、このような状況になっておるということでございます。
  5. 森田景一

    森田(景)委員 求人側若年層を望んでいるのに対して求職側が比較的高年齢者だ、こういう答弁でございますけれども、今さら申し上げるまでもありませんが、日本はもう高齢化社会に入っているわけでございまして、これからの高齢者雇用促進雇用対策というのはあらゆる分野で非常に重要な意味を持っているわけでございます。  これは船員の方についても同じことが言えるはずでございます。今後の高齢者雇用対策、特に船員の場合についてどういうふうな対策をお持ちになっていらっしゃるのか、またどういう指導を求人側にしていらっしゃるのか、その辺のところもあわせてお答えいただきたいと思います。
  6. 武石章

    武石政府委員 雇用対策の上で特に中高年齢層に対してどのような対策をという御質問でございますが、現在私どもとしましては雇用促進センターというものを持っておりまして、そこで例えば海外の船主というものの職域の開拓を行いまして、そこへ、教育を行うことによって、中高年齢層職員層を新たに教育をして職員になった人たちというのをできるだけ紹介をしていく、強力にあっせんをしていく。それから、そういう教育を行わせる事業者に対して助成するというようなことをやっております。それから海技学校分校における技能講習では、陸上での就業に必要な技能資格を付与するというような教育を行っておるところでございます。  なお、本年度からは船員保険特別会計からの補助で、雇用促進センターで実施しております能力開発事業の一環として、特に中高年齢層職業訓練といたしまして陸の公共職業訓練校への入学の道を開く。さらに。それを受講させる事業主に対しては助成を行うということをやっておるところでございます。
  7. 森田景一

    森田(景)委員 今までも、御存じのとおり船員総数に対して女子船員というものは非常に低い比率でございまして、しかも現在求職求人の数がこんな状況になっております。これは今までの男性でもこういう難しい状況になっているわけでございまして、今回の法改正女性職域が拡大されるという状況になったとしても非常に難しいのではないかと考えられるわけでございますが、特に女子就職職場拡大ということについてどういう展望をお持ちでいらっしゃいましょうか。
  8. 武石章

    武石政府委員 現在の女子船員総数は、先生がお触れになりましたように千四百三十名ということで、全体の船員の〇・六七%程度という非常に数の少ない人員でございます。その中でマリンガールというような接客に携わる女子が七百四十名という状況でございまして、この改正によりまして本当に意欲能力のある女子職員がこの職場に進出してくるという道は開け、機会としては一応開かれたわけでございますが、現在の雇用状況と申しますか現在のこの業界状況というのは大変厳しゅうございます。外航海運では三部門同時不況というような状況下にございますし、内航海運最高限度量の設定をするというような非常に苦しい立場になっております。さらに漁業におきましても、二百海里対策専管水域が設定されまして、各国における漁業の規制というような管理政策が浸透してまいりまして非常に厳しい状況であるというようなことから、私どもとしましては、この法律改正によって直ちに急激に女子船員が増大するというふうにはちょっと期待しておりませんけれども、従来商船学校におきまして五十五年から門戸を開放いたしまして、そこにおきましては徐々にではございますが女子の学生がふえております。最初は二、三名というところでございましたけれども、最近では二十数名というところまでふえてきております。それから、来年度、六十年度からは商船高専でも女子を採用しようというふうに道を開いていきたいと思っておりますし、それから海員学校、部員の養成校でございますが、女子に対しても既に門戸を開いておりますが、こちらの方は従来まで実績がないという状況でございます。  今後、こういう法律改正機会にいたしまして、私どもとしてできるだけ今回の法改正趣旨を各方面にPRいたしまして、本当に能力を持って意欲のある女子の進出を図っていきたい、そういうふうに考えておるところでございます。
  9. 森田景一

    森田(景)委員 学校の方で海員志望女性がかなり進出してきているという御答弁でございますが、学校の方で勉強なさっても受け入れる方でそういう状況が整っていなければ、これは将来また大変な問題になるわけでございますので、その点十分今後の対応をやっていただきたいと思うわけです。  ただいまも御答弁ありましたように、海運業界は非常に不況状況でございまして、新しく雇用するという状況も一がなり求人数は多いにかかわらず、なかなか求職数がそれに見合っていかない、就職数が見合わない、しかもなお船員は減少の傾向にあるという非常に厳しい状況になっていることは御存じのとおりでございます。そういう中で船員方々も将来の職業については非常に不安を持っていらっしゃいまして、運輸当局におきましてもいろいろ、先ほど御説明のような対策は講じていらっしゃるわけですが、そういう中で海員の方独自に、これで海の仕事がなくなっても何とか自分たちの手で雇用は守っていきたいということから、海の男の労働組合であると言われております全日本海員組合では、この七月一日から財団法人全日本海員福祉センターをスタートさせた、こういうふうに報じられておるわけでございまして、ここで職業訓練教育に乗り出すことになっているそうでございます。そういうことに絡みまして運輸当局におきましてもいろいろと努力なさっていらっしゃることは我々も承知しているわけでございますけれども、また一方では、例えば本四架橋建設が進んでおりまして、本四架橋ができ上がりますと、その関連方々については生活の職場を失う、こういう状況にもなっていることはもう御存じのとおりでございます。  そういうことから、第九十六国会におきましては、船員法船舶職員法、この船員二法の改正あるいは船員災害防止協会等に関する法律改正、こういう審議があったようでございますけれども、ここで各種資格海陸互換性ということについていろいろと論議があったようでございます。私から説明するまでもないと思いますけれども、例えばボイラー技士でありますとかあるいはクレーンの運転士でありますとか、ボイラー整備士でありますとかあるいはガス溶接作業主任者でありますとか、十一種類ぐらい、海と陸とでは、同じ資格でありながら就職ができない状況にある、こういう論議がなされて、海でその資格を持っているならば陸でも同じ資格就職できるようにすべきであるという論議がなされたというふうに私は承っております。運輸省としては関係各省話し合いを進めてこれの実現を図っていきたい、こういう方針だったと聞いております。この話し合いの進み方はどうなっていらっしゃるのか、お答えいただきたいと思います。
  10. 武石章

    武石政府委員 先生お話しのとおり、運輸省といたしましても各種資格、特に海技関係資格というのは包括的な資格でございまして、実際に行う作業の中に陸上資格と共通する点がございますので、そういう点を中心海陸互換性を図るといいますか、そういう点についての努力をいたしておるところでございます。現在、陸上技能資格の中で海技資格と互換し得ると私どもとして客観的に考えております、今先生がおっしゃいましたような十一種類につきまして、陸上資格を所掌する労働省に対して連絡を密にいたしまして、現在協議を行っているところでございます。  この問題は、海技資格陸上資格とが具体的にどう対比できるのか、実際の教育内容とかいう点でどこまで共通であるかというようなところを十分に判断した上で両者の関連性を図る、あるいは海上資格陸上資格にかえていくといいますか転換していくというような、互換できるか否かということについてはかなり具体的な事務的な作業を必要としております。現在その作業を鋭意進めているところでございます。
  11. 森田景一

    森田(景)委員 きょうは労働省からもおいでいただいておりますのでお尋ねしたいのですが、本州四国連絡橋建設に伴う一般旅客定期航路事業等に関する特別措置法昭和五十六年十一月から施行されているわけでございます。この法律の第十六条から二十二条におきまして、離職者に関する措置が規定されているわけでございます。第十九条の内容はどういうような内容でしょうか。——お見えになっていらっしゃらないのですか。何か行き違いがあったようでございます。それでは、労働省の方は質問しても答えが出てきませんから、これはやめます。  それで今のお話ですけれども海陸資格互換性につきましては関係各省協議中だという御答弁でございます。第九十六国会といいますのは昭和五十七年だったわけです。ことしは五十九年ですから、二年間もかかって話し合いをして、まだ話し中だというのは随分ごゆっくりしていらっしゃると私は思うのです。運輸大臣、国の方がこんなにゆっくりしたのでは困るわけですから、どうなさるか、御意見を承っておきたいと思います。
  12. 武石章

    武石政府委員 お答えいたします。  今、森田先生からお話しのように大変時間がかかるではないかというような御指摘、大変痛み入るわけでございます。実は私どもといたしましても、例えば海技学校分校におきまして、船員陸上に転職する際に、その保有する知識、技能、経験がより生かせるように、関連する陸上技能資格の取得のための講習課程を設けて訓練を実施しているところでございます。このための指定講習機関といいますか、研修機関として海技学校指定をしていただくというようなことをそれなりに従来やってまいったところでございまして、今後ともさらにこういう点も含めまして資格互換性確保といいますか、そういう面での改善を図るように努力してまいりたいと思います。
  13. 細田吉藏

    細田国務大臣 できるだけ速やかに話し合いをさせるようにいたしたいと思っております。どうも役所の中の話は話が長くて、こういうことが往々にしてございまして、まことに残念でございますが、できるだけ早く話し合いを終わらせたいと思っております。
  14. 森田景一

    森田(景)委員 こんなところで地方の問題を持ち出すのは大変失礼かと思いますけれども、私もかつて千葉県議会議員の一人でございました。昔、与党の自民党の議員がこういうことを本会議で言っておりました。検討三年、やります二年、始めましたはぼちぼちと、これが千葉県の現状だ、十年も前のことでございます。国の方はもっと悠長なんじゃないかというふうに感じるわけであります。どうかひとつ積極的にこの解決を図られるようにお願いしたいと思います。  それから、先ほど労働省の方おいでになってないということでございましたが、私の質問が、ちょっと連絡が悪かったようでございます。私は、海陸資格互換性について労働省の方ではどういうふうに進めているのかということをお聞きしたかったわけでございます。その過程で若干質問が変わりました。この点についてはいらっしゃっているのでしょうか。
  15. 松本邦宏

    松本説明員 労働省計画課長でございますが、先ほどはちょっと所管法律でないものですから失礼いたしましたが、安全衛生法関係いたします資格の乗り入れの問題につきましては、かねがね運輸省の方からお申し出がございましたが、ことしの六月に具体的な内容について、こういう点について具体的な免除を図ってもらいたいという案の提示がございました。現在、それを事務的に詳細詰めておる段階でございまして、できるだけ早く処置をしたい、かように考えております。
  16. 森田景一

    森田(景)委員 ただいまのお答えでも、できるだけ早くというお話でございます。本来ならばいつごろまでと聞きたいところですけれども、お立場がお立場だと思いますから、そこまでは聞きませんが、先ほど申し上げましたように、地方でも検討三年、やります二年、始めましたはぼちぼちと、こういう状況で、いろいろと行政の怠慢さといいますか、緩慢さが指摘されているわけでございます。国の方は少なくともそういうことのないように、率先して早く対処を進めていただきたいとお願いしておきます。  次に、先般、運輸大臣船員立場の厳しさといいますか、こういうことについて「板子一枚下は地獄」ですか、こんな表現をなさっていらっしゃったと思います。本当に船のお仕事というのは厳しい状況でございまして、海難事故もかなり発生しているわけでございます。そういう中で、やはり海上安全確保海難救助というのは大変大事な仕事だと思うわけでございますが、このことにつきまして、一九七九年の海上捜索救助に関する国際条約SAR条約というのがあるわけでございまして、これは御存じのとおり、世界各国海上捜索救助活動の責任を分担し、かつ協力し合って、全海域をカバーする海難救助体制を創設しようとするものだということになっているわけでございます。  このSAR条約は、十五カ国が締約国となった日から十二カ月目に発効するということになっているようでございます。今までこのSAR条約締結国は十四カ国であったわけでございますが、デンマークが七月中に十五カ国目の締約国となることが決まった、こういうふうに最近報道されているわけでございます。そうしますと、十五カ国そろうわけでございますから来年にはこの条約は発効することになるわけでございまして、日本におきましても当然この条約を批准して締約国にならなければならないわけですね。時間の関係で短く申し上げますけれども船位通報制度あるいは広域哨戒体制等整備、こういうものを進めて体制を整えなければならないはずでございますが、これに対する取り組み方についてお答えいただきたいと思います。
  17. 岡田專治

    岡田政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生の御質問にございました一九七九年の海上捜索救助に関する国際条約でございますが、デンマークが六月二十一日に十五番目の締約国として加入いたしましたので、来年の六月二十二日には発効する、こういうような状況になっております。私ども世界有数海運国あるいは水産国という立場でございますので、海上保安庁といたしましてもこの条約趣旨にかんがみ、条約加入のための準備作業を現在外務省事務当局協議しつつ行っているところでございます。  お尋ねのございました船位通報制度でございますけれども、この条約によりましてこういう措置をとることが勧告されているわけでございますが、航行船舶の位置の把握等によりまして救助活動が非常に有効、適切に行われるというメリットがございますので、私ども昭和五十七年度から四カ年計画整備を進めてまいりました。順調に進んでおりますので、六十年度中には我が国といたしましてもこの制度を発足させることが可能であろうかと考えております。ただ、何にいたしましても、この制度は民間の船社等の御協力が必要でございますので、今関係団体船主あるいは労働組合等にいろいろ御意見を伺いながら円満な発足をさせたい、かように考えておるところでございます。  なお、今後の我が国海上捜索救助につきましては、もし私どもがこの条約に加入しましたとするならば関係締約国といろいろ御協議しながら分担を決めていくわけでございますけれども、私ども分担もかなり広範囲になるかと予想されます。そういう体制につきましても、私ども現在、ヘリコプター二機搭載型の巡視船等整備も進めておるわけでございますので、これらを中心といたしまして体制整備に遺憾なきを期したい、かように考えておるところでございます。
  18. 森田景一

    森田(景)委員 昭和五十七年の日本周辺海域におきます遭難事故海上保安庁が取り扱った海難救助を必要とする遭難は、二千百三十七隻、百九十四万六千百九十総トン、これに伴う遭難者が一万一千六百三十五人であったというふうに資料がございます。このうち死亡・行方不明が二百八十九人、過去三十年間に比べては一番少ない数であったというふうに報告されているわけでございます。  いずれにしても、この海難救助体制というのは、これからの船員雇用拡大また船工作業安全性という立場からも非常に重要な仕事だと思いますので、その確立、またSAR条約締結、こういうことにつきましてはどうか格段の御努力をお願い申し上げまして、時間でございますので質問を終わります。
  19. 久間章生

  20. 梅田勝

    梅田委員 船員法の一部改正案につきまして質問させていただきます。  今回の改正案は、御承知のように婦人差別撤廃条約の批准に伴う国内法整備で、いわゆる男女雇用機会均等法案関連したものでございます。私は、多くの婦人労働者の願いをかなえた実効ある男女雇用平等法が制定されるように望んでやまない次第であります。ただ、きょうの質問は社会党さんが一時間、公明党さんが三十分、我が共産党・革新共同は十五分しかないわけでありまして、各委員平等に扱うように私は願っているわけでございますけれども、時間がございませんので、きょうは女子船員の圧倒的な部分を占めております内航船舶におきますいわゆるマリンガールと称せられる女子船員の問題につきまして質問をさせていただきたいと思います。  まず運輸省からいただきました「女子船員数実態」という文書でございますが、職名分類におきまして「マリンガール」というようになっているわけでございますが、これは日本語ではないわけでありまして、英語というのか外来語というのか、そういう形で使われておるわけであります。直訳いたしますと「海の女の子」あるいは「海上の少女」と言うべきですか、もっとほかに適当な訳し方があるのかもしれませんけれども、しかし、女性ということだけでいわゆる性を売り物にしたような表現と受け取られるわけでございまして、役所職名分類にお使いになるやり方としては適当ではないのではないかと思うわけであります。     〔久間委員長代理退席浜野委員長代理     着席〕  マリンガール業務内容につきましては別に資料が出ておりますが、客室、給仕、案内、売店あるいは食堂の賄いなどでありまして、そこに働く女子船員のいわば総称として使われておる。よく言えば愛称ですね。しかし、この業務内容男性でもやれるものでありまして、女性だけに限定したものではないと思うわけであります。現に、外航の場合は長期にわたりますから、男性が多いようでございます。男女雇用平等という見地に立った場合には、このような船員職名分類としては不適当なのではないかと思うわけであります。ですから、正当に業務をやるわけでありますから、業務内容にふさわしい職名をつけるべきではないか、案内なら案内係あるいは飛行機の場合でも言っておりますような客室乗務員といったような、内容にふさわしいものに分類することが必要ではないかと思うわけでございます。昨日いただいた「女子船員勤務実態について」というところの職種におきましては、「客室係」「給仕係」「案内係」「売店係」「司ちゅう係」あるいは「司ちゅう員」という分類がしてございますが、この点はいかがでございますか。
  21. 武石章

    武石政府委員 今、先生御指摘のようにいわゆるマリンガールと言われておりますのは、旅客船、カーフェリー等に乗り組む船員のうち接客業務に携わる者でございまして、船内就労体制上は事務部に属する部員として位置づけられております。いわゆるマリンガールの雇い入れ公認の際の職名は売店員だとかスチュワーデス、マリンスチュワーデス、サービス員、ウエートレス、接客員、ガイド等とさまざまでございます。これらの職名のものを総称していわゆるマリンガールと呼称されているわけでございます。  マリンガールという呼称が男女雇用平等の観点から問題があるか否かということにつきましては、男女雇用機会均等法の実施にも関係する問題でございますので、関係機関とも十分相談してまいりたいと考えております。ただ、例えばイギリスなんかでもスチュワードとスチュワーデスという言葉はいけないので、何とかパースンというような呼称に改めているというようなこともございますので、この指針の中での一つの検討事項になっていこうかと思います。従来からの呼称を私どもとしては踏襲してたまたま統計上に使ったところでございますので、今後その点についてはまだ検討していきたいと思います。
  22. 梅田勝

    梅田委員 会社がマリンガールの募集に当たって女性条件としておりますか、いかがですか。
  23. 武石章

    武石政府委員 必ずしも条件としてはいないと思いますけれども、職種によっては女子ということだけで募集しているということもあろうかと思います。従来まではそういうこともあろうかと思います。
  24. 梅田勝

    梅田委員 今、船員部長が接客業務とおっしゃいましたけれども、お客さんに接するのだからそうだけれども、従来、売春防止法制定前いわゆる売春婦ということが問題になりましたけれども、接客婦というように言われた場合もあるのですね。印象が悪いわけです。だから、私はそういう言葉は女性をべっ視するのが根底にあるのじゃないかと思うのです。あなたはたまたま分類上こうしたと言うけれども、実際、客室係とか給仕係、案内係、ちゃんとあるわけだ。なぜそれでそのように分類をしないのかということで、私は差別意識があなた方の中にあるのじゃないかというように思うのです。そういう考え方は改善すべきじゃないか。スチュワーデスの問題につきましても、今日アメリカにおきましてはもはやこれは使わない、フライトアシスタントというような形で別の言葉に変わってきているのです。  だから、私は、何かこういうことでお客さんを呼び寄せようとか、あるいは非常に劣悪な賃金、労働条件だけれども、ここの職場は明るいですよとごまかすとかというように使うことは絶対許されないと思うのでありますが、あなたは、憲法第十四条に「法の下に平等」というのがありますが、これをもう一遍読み上げていただけませんか。
  25. 武石章

    武石政府委員 憲法第十四条第一項では「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」と書いてございます。
  26. 梅田勝

    梅田委員 ところで大臣、お聞きになりましたように、憲法第十四条におきましては法のもとにおいては平等だ、性別差別をしてはならぬ、明快に書かれているわけです。それをこのような分類の仕方をしておるのはやはり問題があると私は思うのです。  そこで、この際にちょっと言わしていただきたいのでありますが、六法全書には憲法は当然載っております。ところが、運輸省が監修をされております小六法、例えば運輸六法あるいは船員六法、こういうものが二十四種類ございます。それ以外にもっと出ているかもしれませんが、私は国立国会図書館で調べてもらいましたら、大体この種の小六法は我が国国会図書館に所蔵されておりますのは百八十八種ありまして、非常にたくさんあるわけでございますけれども、そのうち憲法を載せておりますのが六十一種類、載っていないのが百二十七種類というわけでありまして、運輸省関係の二十四種類には憲法は載っていないのです。憲法第十四条におきましては法のもとに平等、性別差別してはならぬと書かれている。これはお役所仕事をする場合の基本の基本になるべきものです。我が国政治の基本です。それが小六法に載ってないということは、手元に六法全書ありますよとおっしゃるかもしれないけれども、小六法を持ってうろうろすることが多いわけです。開いてみならない、これはやはり憲法軽視ではないかと思うのであります。少なくとも大臣官房や船員局において直接監修をされておりますような運輸六法や船員小六法に対して、次の機会があれば憲法をまず載せるべきではないかと思うわけでありますが、これは政治の問題でありますから、この際大臣の御答弁をいただきたいと思います。
  27. 細田吉藏

    細田国務大臣 憲法が国の基本の法律であることは御説明をまつまでもございません。ただいま十四条の話もございましたが、これは当然のことでございます。ただ、事務用にできておる六法、小六法あるいは関係法規集に載ってないということは、おっしゃるとおりそういう例もたくさんあるようでございます。私は、どちらかというと意見としては載せた方が適当であると思っておりまするけれども、憲法にございます言論、出版の自由もございますので、こういう点から載せるべしというようなわけにもまいらないのではなかろうか、出版社の都合もございますし、編集者の都合もございますから。ですから、私は基本的な問題でございますから、憲法を載せる方が適当である、かように思っております。
  28. 梅田勝

    梅田委員 私なんかは、蜷川虎三さんが知事をなさってたときにこういう憲法の小冊子をつくって、絶えずここに入れて、我々は憲法のもとに平和と民主的な条項を守ってやっていくんだ、これを心がけとしておるわけでありますから、ぜひ次の機会には改めていただきたい、強く要望をしておきます。少なくとも監修をやっておられるわけですから、そのように助言をすべきではないかと思うわけであります。  次に、マリンガール勤務実態の問題でありますが、その平均年齢、平均勤続年数、平均賃金、雇用形態、勤務形態などにつきまして簡単に御答弁をいただきたいと思います。
  29. 武石章

    武石政府委員 お答え申し上げます。  いわゆるマリンガールマリンガールという言葉を使うとおしかりを受けるかもしれませんが、そのすべてについて私どもとして就労実態を把握しているというわけではございませんが、昨年来の実態調査などによりますと、いわゆるマリンガールと言われている人たちは一般に普通高校を卒業して就職する、そして三年前後の就労の後退職するというのがどうも通例のようでございます。平均年齢は二十歳程度というようなことに聞いております。  それから、賃金でございますが、フェリー会社が加盟しております大型カーフェリー労務協会と全日本海員組合との間で締結された労働協約によっておりまして、初任給では十万円ほどで、それらに経験加給金、時間外手当、休日手当、航海日当などを含めますと、二十歳で約十五万から十六万というのが一般のようでございます。なお、賃金につきましては同一業務に携わる男子と差がないと聞いております。  勤務形態につきましては、事務部の部員として客室、給仕、案内、売店販売等を主な業務として、それぞれの船舶の就航航路の特殊性を反映した不連続の八時間労働が一般となっているようでございます。なお、夜間労働につきましては、法律にありますように午後八時から翌朝の五時まで原則として就労はできないということになっておりますが、航路によっては発着時間が深夜に及ぶというようなことがございまして、その場合は船員法上の許可を受けて午後十一時半まで就労しておるというのが大方の形態でございます。
  30. 梅田勝

    梅田委員 今の御答弁にございましたように、この人々の賃金、労働条件というのは非常によくないのですね。その証拠に、勤務実態というのが極めて厳しいのですね。ある会社の状況によりますと、例えばある客室係の場合で申しますと、七時十五分から九時まで最初働いて休みまして、二時から三時まで働いてそれからまた休みまして、五時から八時まで働くというような勤務形態ですね。あるいはある案内係で言いますと、八時から十一時まで働いて中休みをして、一時から四時三十分まで働いてまた中休みをいたしまして、六時から七時三十分まで働く、こういうような勤務形態もあるわけであります。  ですから、八時間の労働を超えるということではありませんけれども、中休の連続勤務形態ですね。船でございますから陸上のように家に帰って休むということじゃない、船内に拘束されている、海で外へ出るわけにはいかぬわけですから。ですから、船内の自分の個室なり控室に帰って休むということはありますが、全体としては拘束されている。だから、賃金が初任給が十万でそして全体としては十五、六万にはなると言うけれども、ずっと長時間拘束されておる、不連続の長時間勤務だという点を考えますと、実質的な賃金はそんなに高くはない、むしろ安いと言えるのじゃないかと思うわけであります。ですから、非常にきつい労働でありますので若い人であり、そして勤続年数が非常に短いというのがこの業務の特徴になっていると思うわけであります。  もっと遅い時間帯まで協定を結ばれておると聞いておるわけでありますが、実態として遅い場合でも九時三十分だとおっしゃっておりますけれども、全部調べたかというと、総括的な七百四十二名全体の統計というものは把握していないというのが、私、事前に調査したときの実態であったわけであります。したがって、これらの人々の賃金、労働条件等につきましてももっと詳しい実態調査をやっていただいて、そして終身雇用制の我が国の労働慣行のもとにおきましてなぜこの部門だけが短期間しか勤めないのか、結婚したら大概やめざるを得ないということでは、女性の働く職場確保するという点におきましても若干問題があるのじゃないかということで、多くの婦人労働者が気持ちよくずっと働けるような労働環境というものをつくっていく必要があるのじゃないか、かように思うわけであります。  時間がありませんので終わりにいたしますけれども、今度は夜間の労働を野放しにするわけでございますけれども、現状でもかなり問題があって、一応は禁止しているのだけれども特例という抜け穴があって、そして事実上は夜遅くまでやっている。前回の委員会でも審議になったわけですけれども、酔っぱらいがおって絡まれるとか、これから深夜労働も野放しになりましたら客室の個室に対するサービスなどもやらされるのか、そんな危ないことはかなわぬということが言われているわけでありまして、これは十分に考えて指導する必要があるのじゃないか。そういう点では、今日の時点におきまして夜間労働を野放しにすることについて、私ども反対でありますが、最後に部長と大臣の御答弁をいただきたいと思います。
  31. 武石章

    武石政府委員 今回の法改正に当たりましては、一般女子船員についての雇用機会の拡大の観点から夜間労働の禁止規定を廃止しまして、妊産婦についてのみ母性保護の観点から夜間労働の制限規定を存続させたというところでございます。しかし、今先生御指摘のありましたようにそういう御意見もございますし、改正船員法の施行に当たっては、私ども本件に関しまして船員中央労働委員会の答申を受けました際に、その答申の中に、女子船員の従来の労働実態にかんがみ、女子船員の就業上の不安がないように十分配慮した法の運用を行っていくようにされたいということで、私どもも十分この方向で運用を図ってまいりたいと考えております。  また、マリンガールが非常に短期の雇用しかされていないといいますかやめていってしまうという実態は、海上職場というものが陸地から離れて家庭から切り離されてしまう、孤立した職場であるというところにかなり大きな原因があろうと思いますので、この点は基本的には海上職員として長く乗り組むという決意のある人々でないと長いこと勤められない、これは労働条件とかそういうことじゃなくて、事実上の孤立性と申しますかそういうものが原因ではなかろうかと私ども考えております。
  32. 細田吉藏

    細田国務大臣 今回の措置によりまして労働の内容が変わってくることが当然考えられます。これに対しては、その対価といいましょうか賃金につきましては当然配慮されるべきことだと思います。第一義的にはこれらは労使関係の円満な運用によってやられることでございますが、我々政府としても十分気をつけておかなければならぬことだと考えておる次第でございます。
  33. 梅田勝

    梅田委員 時間が参りましたので終わります。
  34. 浜野剛

    浜野委員長代理 小林恒人君。
  35. 小林恒人

    ○小林(恒)委員 既に同僚議員から多くの質問があったところでありますけれども、今回提案をされております船員法の一部を改正する法律案は、我が国が署名した「女子に対する差別の撤廃に関する条約の批准に備えるための国内法整備の一環」、こう提案趣旨の中では説明をされております。女子船員についてその特別規定の見直しを行うとともに母性保護の充実を図ろうとしている。  そこで、まず冒頭御質問しておきたいと思いますが、雇用平等法、いわゆる陸上の部分に関する取り扱いについては中央労働委員会を通じて多くの激論が闘わされたと伺っております。一方、海上の取り扱いについても、船員中央労働委員会が開催をされて議論がされた。中央労働委員会の側は激論の結果両論併記という取り扱いになっているわけですが、船員中央労働委員会の側は全会一致で取りまとめがなされている。両論併記になった部分の船員中央労働委員会における議論はいかように行われたのか、この点についてまず冒頭御質問申し上げたいと思います。
  36. 武石章

    武石政府委員 お答え申し上げます。  船員中央労働委員会の答申でございますが、女子船員につきましては一般の女子労働者と同様に雇用管理の全ステージ、募集、採用、配置、昇進、訓練教育、福祉というような全ステージを対象にして、原則として一般の女子労働者についてとられる措置に準じた措置をとるということが適当であるというふうな答申をいただいておるわけでございます。
  37. 小林恒人

    ○小林(恒)委員 中央労働委員会の側では、本問題に関してはとりわけ母性保護という部分について慎重な議論をしていかなくてはいけない、そういう立場では女性意見も相当反映をされてきましたけれども、しかし一方、船員中央労働委員会の中には名簿を拝見する範囲では、公益委員、労働者委員、使用者側委員総体を網羅して女性が一名もおらないわけで、女性がおらない中で女性意見がいかほどに反映をされたのかなという疑問を持たざるを得ません。この点について本問題を審議するに当たって特別な配慮はなされたのかなされなかったのか、この点についてお伺いしたいと思います。
  38. 武石章

    武石政府委員 船員中央労働委員会でこの問題を審議するに当たりましては、臨時委員を五名お願いいたしまして、女性委員の方が三人、一人は木元教子さんという評論家の方、それから小林則子さんというヨットで世界一周といいますか、冒険をされた方、それから東邦医大のお医者さんでございまして、田村さんというお医者さんで実際に何回か外航船に乗り組んで船医を務められた方、そういう方々に参加していただきまして御意見を伺ったところでございます。
  39. 小林恒人

    ○小林(恒)委員 基本的には、中心となる俗に言う雇用平等法、これが基本になるわけで、平等法そのものについては陸上海上を通じて網羅をしていくものだと思うわけです。具体的な取り扱いの中で労働基準法並びに船員法、こういったところで具体的な縛りをするというか、こういう取り扱いになるんだと思うのですけれども陸上海上を比較をしてみまして、少なくとも条件として、陸上より海上の方が、例えば我が家に帰るということ一つをとってみても、あるいは連絡をとるということ一つをとってみても、海上の方が条件として悪いように思うわけです。その意味では海上の取り扱いというのは陸上以上に慎重を期さなければいけないのではないのかな、こういう認識を持つのでありますけれども、しかし提起をされております法律案を一読いたしますというと、ほとんど陸上と変わりがない、余り大きな変わりを見出すことができないように思うのです。  これはもし私の勘違いだとすれば御訂正を賜りたいと思うのでありますが、いわゆる海上労働というもの、その中でなおかつ男女の雇用を平等化しなくてはいけない、こういう大命題と取り組むに当たって、いわゆる両論併記をされた部分、正確な意味での議論というのはどんな形で具体的な議論をされたのか、お示しをいただきたいと思います。
  40. 武石章

    武石政府委員 先ほど来お話がございましたように、いわゆる雇用平等関係法律の部分は労働省の方で婦人少年問題審議会において主として議論をしたところでございまして、そこでは両論併記という形に結果的にはなっておりますが、船員法改正に関しましては労使ともにコンセンサスが得られた結果の答申が出されておるところでございます。
  41. 小林恒人

    ○小林(恒)委員 それでは、内容に立ち至って御質問したいと思うのでありますが、いわゆる一般女子船員に対する夜間労働の禁止規定を廃止する、一つは母性保護士廃して大丈夫か、こういった危惧の念を持ちますし、一方、このことを通じて雇用は果たして促進をされるのだろうか、こういう点については疑問を浅さざるを得ない部分があるように思います。  そこで、陸上の政府原案からしますというと、原則として六十四条の三の就労不可で規定を大幅にふやしたという考え方の相違点ですね。陸と海とで異なる部分があるように思うのですけれども、この点についてはいかがですか。
  42. 武石章

    武石政府委員 陸上海上とで女子労働の特別規定に関して法改正内容がどこがどう異なるかという御質問だと思いますが、船員法改正案と労働基準法の改正案で大きく異なっている点は二つございます。  一つは妊婦の就労についてでございますが、労働基準法では出産予定の六週間前、多胎妊娠の場合は十週間前から出産するまで、女子の請求があった場合に就労させてはならないということでございます。船員法におきましては、これと原則が逆になっておりまして、原則として妊婦の就労を禁止しているところでございます。  このように内容が異なりますのは、海上陸上と異なりまして、早流産というような際の危険が生じても迅速に必要な措置がとり得ないということ、それから船内労働といいますのは立ち作業だとか振動、動揺下の作業あるいは階段等の起伏の多い場における作業でございまして、本質的に妊婦には不適切な労働環境であるというようなことが理由で、妊娠中の女子船員につきましては原則として就労は禁止したというところでございます。  それから第二に、妊産婦以外の女子の深夜労働についてでございますが、改正労働基準法では午後十時から翌日の午前五時までの深夜労働についての禁止規定を原則として存続させておりますが、船員法におきましては、妊産婦以外の女子の深夜労働の制限の規定を全廃することとしております。  このように異なりました理由は、陸上女子労働者については労働環境、家庭責任などを配慮しまして今後も制限規定を存続させたというふうに私どもとしては承知しているわけでございますが、女子船員につきましては、船内労働は家庭責任を果たすことが本来的に無理な場における特殊な労働であるということ、それから乗組員数の余裕が少なく代替要員の確保が困難であるということがございます。それから、航行中におきましては、夜間においても当直を絶えることなく続けなければならない、漁船におきましては漁労活動が夜間、早朝に行われることが多いというようなことで、深夜労働が必要不可欠な分野であるというように特殊な労働であるということ、こういう海上労働の特殊性が存するということから、深夜労働の禁止規定を廃止したというところでございます。
  43. 小林恒人

    ○小林(恒)委員 具体的には、一般女子船員に対する就業制限というのは命令で定めることになると思うのでありますが、本法案を提起するに当たって運輸省の側で具体的に省令の中身はどのように検討されていますか。
  44. 武石章

    武石政府委員 今回の法改正に伴いまして定めることにしております命令の概要について御説明申し上げます。  まず第一に、妊娠中の女子の原則船内就労禁止に対する例外規定として定めております八十七条第一項第一号の「命令」では、妊婦が船内就労をする場合において早流産等の不測の事態が生じた場合にも容易に専門医による診察と処置がとり得るような航海ということを想定しておりまして、具体的には最寄りの港までに比較的短時間に入港できるような内航海運あるいは沿岸漁業というようなものにかかわる航海を考えております。  それから第二に、妊産婦の母性保護上有害な作業の就業制限につきまして定めた第八十八条の「命令で定めるところによりこと書いてございます「命令」では、妊産婦にとって有害な作業を妊婦と産婦とに分けまして、区分して考えております。また、同条の「命令で定める母性保護上有害な作業」の内容でございますが、この「命令」では、高いところでの作業あるいは舷外に体の重心を移動させるような、乗り出して行うような作業、有害性物質などの収容タンク内の清掃作業あるいは重量物の取り扱いの作業、放射線を受けるおそれのある作業などを規定したいと考えておりますが、詳細につきましては、労働基準法の規定ぶりだとかあるいは人事院規則の規定ぶりとも調整をとりながら、専門家の意見を聞いて定めることとしたいと考えております。  妊産婦以外の女子の就業制限につきまして定めた第八十八条の六の「命令」では、有害物質の取扱作業、冷凍庫内での長時間作業、重量物取扱作業などを規定したいと考えております。これにつきましても、他の規定ぶりとも調整をとりながら専門家の意見を聴取して定めることといたしたいと考えております。  なお、これらの命令を定めるに当たりましては、船員中央労働委員会に諮問することといたしております。
  45. 小林恒人

    ○小林(恒)委員 あらかじめ労働省にちょっとお伺いをしておきたいのですが、船員の場合、一般女子船員、それから妊婦、産婦、こう分けるということなんですが、その分けての取り扱い方というのはただいま御説明があったとおりで、この点については理解をするわけです。特に妊婦については乗船をさせてはいけないということになるのですね。こういった定義の中で、妊婦とは、という議論が出てくると思うのです。妊婦とはどういった状態を言うのか、明らかにしていただきたいと思います。
  46. 松原亘子

    ○松原説明員 お答えいたします。  船員法上の妊娠の定義がどういうものか、これは専ら運輸省の所管でございますので私から責任あるお答えはできかねますけれども改正労働基準法におきましても妊婦という言葉は出てまいりませんで、つまり妊娠中の女子及び産後一年を経過しない女子を妊産婦と言っておりまして、妊娠ということは妊娠中であるということと同じでございまして、これは医学的に妊娠しているかどうかということが判定されて決まるというふうに私ども解釈いたしているところでございます。
  47. 小林恒人

    ○小林(恒)委員 それでは運輸省にお伺いしますけれども、「船舶所有者は、妊娠中の女子を船内で使用してはならない。」こととする、これは例えば出帆する段階で判断をされることになるのかなと思いますけれども、妊娠一カ月というのはわかるのかな。
  48. 武石章

    武石政府委員 今回の改正で妊産婦の乗船を禁止しているわけでございますが、その例外規定の中に、航海中に妊娠が判明した場合にはということを入れましたのも、実は先生の御懸念のとおり事前に妊娠が確認できない場合があるということを予測しての規定でございます。私どもとしては、もし船内にお医者さんが乗っておられれば、そのお医者さんの問診といいますか、診察の結果確診できるということでございますので、その段階からそういう取り扱いに変わっていくということになろうかと思いますが、乗船前は、やはり女性の方の自覚によってお医者さんの判断をいただくなり、そういうことがない限りは私どもとしては判定のしようがございません。もちろん、乗船してから、外から見て妊娠ではないかということがわかるような状態が出てまいることもあろうかと思います。そういうこともあろうかとは思いますが、やはりこういう問題は素人で判断するわけにはいきませんので、御本人の申し出によって確認するということになろうかと思います。
  49. 小林恒人

    ○小林(恒)委員 妊娠中の女子を船内で使用した場合には、義務違反として六カ月以下の懲役または十万円以下の罰金、こういうことになっているわけですね。陸を離れた船舶上に女子船員が乗船をしておって、仮にお医者さんがおらなかったと想定をした場合、これは本人の申告で妊娠と認めますか。
  50. 武石章

    武石政府委員 先ほど申し上げましたとおり、お医者さんの判断ができない場合には、本人の申告で認めるしかないと思います。
  51. 小林恒人

    ○小林(恒)委員 想像妊娠というのがあるわけでして——笑い事ではないのですよ。事実、妊娠したと思って病院に一生懸命通うけれども、事実上は妊娠しておらないという、こういった経過は何も珍しいことではございませんでね。こういうことをも含めて、例えば女子船員が妊娠中であることが航海中に判明した場合、例外規定の中で、本人の申し出があれば軽易な作業に従事をさせなければならないものとする、こうなったのかなという気がしますが、ただ、例外規定の中では、仮に本人の申し出があった場合に、軽易な作業に従事をさせることができなかった、こういったことがあっても罰則はないのですね。この点については実態にそぐわない法律案ではないのかなという気がしますけれども、いかがですか。
  52. 武石章

    武石政府委員 八十七条第三項の罰則を外したのはなぜかという趣旨だと思いますが、妊娠中の女子の就労を原則的に禁止しまして、例外的にこれを認めるというケース、これは八十七条第一項でございますが、こういうケースとしましては、一定の航海に関して本人が請求し、医師が船内就労して差し支えないと認めたとき、それからもう一つのケースとしては、航海中に妊娠が判明した場合で、当該女子船員が航海の安全を図るために必要な作業に従事するとき、こう二つのケースに限ることとしたわけでございますが、この場合、本人が同条第三項に基づいて軽易な作業への転換を求める場合に、船舶所有者その他の代理人である船長にとっては、前者につきましてはいわば医師のお墨つきを得て乗船させているのでございます。それから後者につきましては、航海の安全に必要な作業に従事をさせている場合でございます。代替要員が乏しい海上労働にとってみますと、軽易な作業への転換を認める期待可能性のない状況というものも存することが否定できないところでございます。なお、現実には、本人から軽易な作業への転換の請求がございますればこれを認めるというのが常態であると考えておりますし、過去においてもそうであったというところでございます。  このようなことから、罰則規定において、妊娠中、原則船内就労可、ただし、出産前六週以後の妊婦についてのみ請求により船内就労不可としていた旧第八十六条の場合と異なりまして、妊娠中の女子の軽易作業への転換請求規定違反については、罰則を外すということにしたところでございます。
  53. 小林恒人

    ○小林(恒)委員 罰則を外した。まあ、外しても大丈夫、こういう認識だと思いますが、先ほど申し上げたように、出航以降の女子船員の取り扱い方、本人の申し出があれば軽易な作業という部分については、これは往々にしてあり得る事柄だと思いますから、正確な意味での指導体制を確立していただきたい、このことを要望しておきたいと思います。  そこで、海上保安庁、それから防衛庁もおいでをいただいておりますけれども海上保安庁並びに海上自衛隊での女子職員というのは、現行どれぐらいおられるのか、船舶乗務員というのはどういう体制になっておるのか、お知らせをいただきたいと思います。
  54. 岡田專治

    岡田政府委員 お答え申し上げます。  女子海上保安官につきましては、現在六十三名が陸上部署及び船艇にそれぞれ分かれて配属されておるわけでございます。ちなみに、現在、海上保安官約一万一千三百名と申し上げてよろしかろうと思います、その中の六十三名でございます。その中で、二十四名の者が船艇勤務をいたしております。それらはそれぞれ航海あるいは機関、通信、主計等、船艇におきまして全く通常の海上保安官としての業務を行っておるものでございます。なお、そのほかに学生といたしまして二十二名が海上保安大学校もしくは海上保安学校に在籍しておる。こういう状況でございまして、私どもとしましては、原則として男女の区別をせず、人事院規則等の遵守は当然のことでございますが、女子海上保安官に働いていただいておるところでございます。
  55. 鈴木正孝

    ○鈴木説明員 お答え申し上げます。  海上自衛隊の婦人自衛官の数でございますが、最新の五十九年六月末現在でございます。約五百三十名程度でございます。  それから、お尋ねの艦艇の乗務はどうなっているかということでございますが、ただいま海上自衛隊では、艦艇の方には勤務をさせておりません。
  56. 岡田專治

    岡田政府委員 申しわけございません。一つ、数字を勘違いいたしまして、六十三名のうち、船艇勤務が三十九名、陸上勤務が二十四名でございます。取り違えまして申しわけございません。
  57. 小林恒人

    ○小林(恒)委員 防衛庁にちょっとお伺いしておきますけれども、現行、海上勤務をさせていないということですが、将来、この法律が通過をした暁には乗せるという計画はございますか。
  58. 鈴木正孝

    ○鈴木説明員 お答え申し上げます。  船員法の規定の自衛隊への適用ということも一つございますが、ただいま、自衛隊法の百八条では、一部、定義であるとか船長の職務であるとかというものを除きまして、自衛隊への適用ということは一応除外されております。今回改正が予定されております女子船員の就業制限の緩和とか母性保護の充実に係る規定につきましても、直接的には自衛隊法の規定に基づきまして適用除外ということになるわけでございますが、私ども、護衛艦等各種艦艇がございますが、そういう行動の態様とかそういう戦闘部隊等への女性等の体力等から見ましての配置等につきましていろいろと検討はいたしておりますけれども、なかなか厳しい状態での勤務態様ということでもございますので、この点につきましても今後とも検討を続けていきたいとは思っておりますけれども、現時点におきましては婦人自衛官を艦艇乗務させるというようなことを具体的に考えているというようなことではございません。  以上でございます。
  59. 小林恒人

    ○小林(恒)委員 船員中央労働委員会の中では、女子船員の取り扱い方として女性の航海士、機関士、通信士の深夜の規制を外すことについてとりたてての異議はないけれども、こういう議論だったように伺っているわけです。しかし、それでもなおかつ防衛庁としては特殊な部分だという認識でしょう、お考えが余り積極的でないようですが、中央労働委員会の中で、具体的な議論の一つとしてフェリースチュワーデスは現行規制を守れ、こういう議論が大変強かったやに伺っているわけです。これは前段の同僚議員質問の中でも多くの時間を要した部分ですから、余り長々と議論をしようとは思いませんけれども、やはりお客様の取り扱いが深夜に至る、こういった部分についてはいろいろと問題がある。こういう議論があったことを踏まえて、航海中の職員総体の労働安全、こういった部分でどのような議論が結論となったのか、お示しを賜りたいと思います。
  60. 武石章

    武石政府委員 いわゆるマリンガールについての議論がかなりなされましたことは事実でございます。それと、そういう現在のマリンガール等の就労実態に照らして女子船員に不安を与えることがないように、運用上十分配慮していただきたいというような結論が答申の中で書かれておりまして、私どもとしましても従来から、先ほど来の御説明の中にもあったかと思いますが、深夜労働等につきましては、現在は地方運輸局長でございますが海運局長の許可によりまして二十三時三十分までの勤務をするというようなことがございました。そういうような実態の中でこれ以上そういう事態が出てくるとは余り考えておりませんので、十分その点に配慮した運用を図ってまいりたいというふうに考えているところでございます。
  61. 小林恒人

    ○小林(恒)委員 過去のフェリースチュワーデスの実態を見ますると、結婚すると退職を余儀なくされる、こういった実情の中で、主として育児休業、子供が生まれた場合の育児休業というものが現実として大変難しい、こういうことが挙げられているわけです。今日まで国公立の看護婦さんであるとか教師については、現行で育児休業が与えられる仕組みになっているように伺っておりますが、本法案成立以降に、人事院として国家公務員に対する指導はもとよりでありますが、民間の各企業に対する指導の考え方というのは具体的にございますか。
  62. 大城二郎

    ○大城説明員 育児休業の制度を、ただいま先生お話ございましたように義務教育の諸学校あるいは医療施設、社会福祉施設等そういう分野における女子職員を対象にして進めてきているわけでございまして、こういう分野の特殊性から特別の法律制度が認められたものと考えております。こういうものがどこまで広がるかということにつきましては、それぞれの分野の状況実態、それを的確に把握しまして考えなければならないと思います。そういう意味で、特定の分野、どういうところがそういう対象になって広がっていくかということについては、なおそういう実態検討を要するところではないかと考えております。
  63. 小林恒人

    ○小林(恒)委員 船員法改正に基づいて、運輸省として具体的に政令等で指導する考え方はございますか。
  64. 武石章

    武石政府委員 お答えいたします。  いわゆる育児休暇の請求権につきましては、女子に対する差別の撤廃に関する条約の批准のための条件整備として義務化されていない、要請されていないということ、我が国におきます普及率も一割強にすぎないというようなことでございます。それから、長期間にわたり航海を行う外航船等に乗り組む女子船員実態が非常に少ないというような状態にあるというようなことを考えあわせますと、女子船員についてだけ先行的に育児休業請求権を立法化するということは時期尚早と言わざるを得ないということで、当面行政指導等によりその普及を図るということにしたいと考えております。
  65. 小林恒人

    ○小林(恒)委員 一方では雇用均等である、こういう認識があって規制を緩和しなくてはいけない、しかし一方ではそれなりの条件があって、それ以上の例えば海上という条件を克服することはできない、こういうことがあるから、したがって女性の船舶への進出というのは阻まれている部分があるわけです。これは明らかに矛盾だと思うのですよ。今申し上げた育児休業の問題あるいは妊娠中の取り扱い、産婦の取り扱い、すべからくこの規制が緩和されることによって逆に船舶勤務というのは大変難しくなっていくのではないだろうか、逆の方向をたどるのではないか、こういう気さえするのです。  にもかかわらず、船員中央労働委員会の中での議論というのは、臨時に女性の方も参加をしていただいたというけれども実態としてはフェリースチュワーデスの代表が入ったわけでもなければ、現実に船舶労働者として労働に従事している者の代表が入ったわけでもない。ヨットに乗って自分のある意味での欲求を満たす、こういったこととは日常労働というのはいささか違うものがあるわけでして、目的も違うわけですから、十分な議論がなされたようには理解しがたいわけです。その意味では、正確な意味での運輸省令というものが待たれることになるわけですけれども、そこらを総括して運輸大臣の御見解を賜って終わりにしたいと思います。
  66. 武石章

    武石政府委員 船中労での審議でございますが、確かに先ほど申し上げました臨時委員の三人の方は直接のマリンガールの代表ではなかったわけでございますが、全日本海員組合の代表が入っておりまして、その全日本海員組合サイドの代表の方々女子船員実態ということを十分にお調べになって、その中にマリンガールが非常にたくさんいるということで、十分にその方々と議論を交わし、実態をお調べになった上でいろいろな発言をされておられたというふうに私ども考えております。特に大手のカーフェリー会社との間では、全日本海員組合女子マリンガール等に関する協定といいますか、労働協約におきまして特別な定めをして、その保護といいますか、同じ労働者の仲間としての考え方を代表するという立場にございますので、そういう点の議論は十分踏まえて行われたというふうに私どもは理解をしております。
  67. 細田吉藏

    細田国務大臣 男女雇用平等法そのものが相当難しい問題を本質的に含んでいると思います。今回の夜間労働をとにかく認めるということにするというのは、簡単に言えば、女子船員がふやし得る、就労しやすくなるということのために男女平等という観点からやるものなんでございます。しかし、妊産婦についてはもう特別の条件であるからこれは保護を強化する、こういうことでバランスといいましょうか、両方とっておるわけなんでございますが、あるいはさらに議論をすれば、夜間労働もいろいろ問題があるんじゃないかということは十分あると思うのです。御議論もあった。しかし、やはりこれをやらなければ、現実の問題として女子が海へ出ていくことが阻まれるということなんで、これは除かなければならぬ、これが今回の法律改正趣旨なんでございます。  そこで、我々としては今後注意していかなければならぬことは、行政の運営としては、いわゆるマリンガール等についていろいろな問題が起こる可能性がある、そういうものについてはこれは別途考えていかなければならぬ。女性としての特別の立場にある、それが不利に働いて深夜労働を認めるためにいろいろな問題が起こる可能性がある、そういうものについては特別な何らかの行政上の考え方を加えていかなければならぬ。もともとが非常に難しい。海へ女性が出るということは、今まで、昔の考え方で言えばこれはもう非常に難しかったわけでございますから、それを容易にしようというところにかなり苦心の跡が実はあるわけで、実際上これを運用していくのは、よほど政令とか省令とかあるいは行政のいろいろな処置とかそういうものについて注意をしていかなければならぬし、それから船主、船を経営しておる音あるいは船長、そういうものもよほど注意をして運用していかなければならないのではないか。法律本来の趣旨条約本来の趣旨が本当に生きるように運用してまいらなければならないのではないか、かように考えておる次第でございます。
  68. 小林恒人

    ○小林(恒)委員 終わります。
  69. 浜野剛

    浜野委員長代理 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  70. 浜野剛

    浜野委員長代理 これより討論に入ります。  討論の申し出がありますので、順次これを許します。田中直紀君。
  71. 田中直紀

    田中(直)委員 私は、自由民主党・新自由国民連合を代表いたしまして、本案に対し、賛成の討論を行うものであります。  近年、我が国における婦人労働者は着実に増加し、あらゆる産業、職業に進出し、婦人いわゆる女子職業に対する意識も高まってきております。  また、昭和五十年の国際婦人年を契機として、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇を確保することが国際的潮流となっている中で、我が国は、国際連合総会において採択された女子に対する差別の撤廃に関する条約昭和五十五年に署名いたしましたが、先進国の一員として早期に関係国内法整備し、同条約の批准に備えることが要請されているのであります。  今回の船員法の一部改正法案は、同条約の批准に備えるための国内法整備の一環として、女子船員について、その特別規定の見直しを行うとともに、母性保護の充実を図ろうとするもので、まことに時宜に適したものと、まず賛意を表明するものであります。  今回、女子に対する特別規定の見直しとして、従来女子船員の就労を著しく妨げてきた女子船員に対する夜間労働の禁止規定を廃止するとともに、従来幅広く規定されていた女子船員に対する危険有害業務の就業制限規定について、妊娠または出産に係る機能に有害なものに限定することといたしたことは、男子船員との雇用の分野における男女の均等な機会確保し、女子船員の今後の活躍の場の拡大に資し得るものと考えられますので、極めて適切妥当なものと、賛意を表明するものであります。  また、その反面、今回の改正は、女子船員に対する母性保護を従来にも増して充実しようとするものでありまして、妊産婦船員に対する産前・産後休業、有害業務の就業制限、時間外労働の制限、夜間労働の原則禁止等、きめ細かく、手厚く規定いたしておりますことは、まことに適切な措置として、これまた賛意を表明するものであります。  以上、本案賛成の理由を申し述べましたが、政府においては、マリンガール等に見られる女子船員の従来の労働実態にかんがみ、本改正法の施行に当たっては、女子船員雇用、就労上の不安が生ずることのないよう十分に配慮すべきことを要望いたしまして、私の賛成討論を終わります。(拍手)
  72. 浜野剛

  73. 梅田勝

    梅田委員 私は、日本共産党・革新共同を代表いたしまして、船員法の一部を改正する法律案に対し、反対の討論を行います。  まず、初めに、本改正案は、国連の婦人に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約の批准のため、いわゆる男女雇用機会均等法案と一体のものとして提出されたものでありますが、我が党も、条約の早期批准と実効ある男女雇用平等法の制定と国内法整備を政府に強く要求してきました。ところが、今回提案された政府案は平等の言葉すら法律の名から消え、逆に平等を口実に、婦人労働者の時間外、休日、深夜労働の規制や生理休暇など母性保護の権利を大幅に切り捨てるなど、多くの婦人労働者の願いに反するものとなっております。  船員法改正案には、労基法部分だけてありますが、肝心の本体である機会均等法案では、禁止する差別の対象を極めて狭い範囲に限定し、募集、採用、配置、昇進についての差別規制を企業の努力義務規定にとどめ、全体として差別に対する罰則が全くありません。救済方法も専ら労使の自主的解決や、双方の合意がない限り効力の生じない調停委員会にゆだねるなど、男女差別を撤廃すべき国の責務を事実上放棄したものとなっております。  我が党は、このような実効性が乏しく、母性保護に逆行する多くの問題点が改められない限り、機会均等法案と一体のものとしての本改正案には反対するものであります。  反対理由の第二は、本改正案は、海上勤務の条件から妊産婦の就労規制では一定の改善措置がとられたが、女子船員の夜間労働の禁止、有害業務等の就労制限、生理休暇などの現行船員法に規定している母性保護規定の原則的廃止を打ち出す点で重大な改悪案となっているからであります。  同居の親族のみを使用する船舶に乗船する船員を除いた女子船員全体の七〇%以上を占めていると百四十二名は客室、給仕、案内、売店販売、司厨等で働いていますが、これら女子船員の労働条件に重大な影響が出てくることは明白であります。これらの女子船員は、一日じゅう立ち仕事で、時には貧血を起こしたり、苦痛で涙を出す人がいても生理休暇はとれない。これが現場の女子船員の声であります。  また、現在でも不規則勤務で、しかも夜は九時、十時ごろまでに及ぶ労働時間になっているのに、現行法の規制が撤廃され、深夜労働や有害業務に道を開くならば、その労働条件は一層劣悪となることはもちろん、深夜の個室サービスにまで至る企業間のサービス競争が拡大される危険性さえ持っております。これでは、女子船員の就労機会の拡大どころか、女子船員の就労を一層困難にし、現に働いている女子船員すら船から追い出すことになることは明らかであります。  最後に、今回の婦人労働者にかかわる母性保護規定の改悪は、もともと財界が婦人労働者を低賃金労働者として長時間働かせ、新たな搾取強化を図るために一貫してねらっていたものであり、政府案はこの財界の低賃金労働力政策と一体化のものと言わねばなりません。このような攻撃は、女子労働者にとどまらず労働者全体の労働条件の引き下げにつながるものであり、断じて容認できないものであります。  我が党は、歴史的な婦人差別撤廃条約の批准にふさわしい実効ある真の男女雇用平等法を確立するため最後まで闘う決意を述べまして、反対討論を終わります。(拍手)
  74. 浜野剛

    浜野委員長代理 これにて討論は終局いたしました。     —————————————
  75. 浜野剛

    浜野委員長代理 これより採決に入ります。  内閣提出船員法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  76. 浜野剛

    浜野委員長代理 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  この際、運輸大臣から発言を求められておりますので、これを許します。運輸大臣細田吉藏君。
  77. 細田吉藏

    細田国務大臣 ただいま船員法の一部を改正する法律案につきまして、慎重審議の結果御可決をいただきましたこと、まことにありがとうございます。厚く御礼を申し上げます。(拍手)
  78. 浜野剛

    浜野委員長代理 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  79. 浜野剛

    浜野委員長代理 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     〔報告書は附録に掲載〕
  80. 浜野剛

    浜野委員長代理 次回は、来る八月一日午前九時五十分理事会、十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午前十一時五十四分散会