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1984-06-22 第101回国会 衆議院 運輸委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年六月二十二日(金曜日)     午前十時十五分開議  出席委員    委員長 福家 俊一君    理事 鹿野 道彦君 理事 久間 章生君    理事 浜野  剛君 理事 三塚  博君    理事 小林 恒人君 理事 吉原 米治君    理事 近江巳記夫君       加藤 六月君    小山 長規君       佐藤 文生君    田中 直紀君       近岡理一郎君    中馬 弘毅君       中山 正暉君    林  大幹君       増岡 博之君    町村 信孝君       若林 正俊君    兒玉 末男君       左近 正男君    関山 信之君       富塚 三夫君    西中  清君       森田 景一君    河村  勝君       梅田  勝君    辻  第一君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 細田 吉藏君  出席政府委員         運輸省船員局長 仲田豊一郎君         運輸省港湾局長 小野寺駿一君         労働大臣官房審         議官      野見山眞之君  委員外出席者         大蔵省関税局輸         入課長     川上 壽一君         運輸省港湾局審         議官      阿部 雅昭君         運輸省港湾局港         政課長     一色 昭造君         労働省労働基準         局安全衛生部安         全課長     加来 利一君         労働省職業安定         局特別雇用対策         課長      矢田貝寛文君         運輸委員会調査         室長      荻生 敬一君     ————————————— 委員の異動 六月二十一日  辞任         補欠選任   河村  勝君     田中 慶秋君 同日  辞任         補欠選任   田中 慶秋君     河村  勝君 同月二十二日  辞任         補欠選任   箕輪  登君     町村 信孝君 同日  辞任         補欠選任   町村 信孝君     箕輪  登君     ————————————— 本日の会議に付した案件  港湾運送事業法の一部を改正する法律案内閣  提出第七〇号)  船員法の一部を改正する法律案内閣提出第八  四号)      ————◇—————
  2. 福家俊一

    福家委員長 これより会議を開きます。  内閣提出港湾運送事業法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。富塚三夫君。
  3. 富塚三夫

    富塚委員 大詰めに来ておりますこの事業法改正について、私は主として雇用問題についてお尋ねをいたしたいというふうに思います。  輸送革新という港湾合理化によって、港湾労働者に与える影響、すなわち約十年間のうちに約四万人が減らされているというふうに見ています。もとより働く人たちに犠牲が強いられている、こういったことについて、一体輸送革新というものはどういうことなのかということについて、改めて質問をいたしたいと思います。  本来なら、近代化機械化あるいは輸送分野における革新によっても生み出される余剰労働力は、当然労働時間の短縮あるいは雇用拡大賃金引き上げ、こういったところに向けられるべきであって、どうも雇用問題を重視されていないようなそういった今回の事業法改正であるかのように考えられてなりません。     〔委員長退席久間委員長代理着席輸送革新に伴って、港湾荷役革新荷役に変わり、現行の事業法が実態に沿わないということで改正しようとしているのですけれども、一体雇用問題についてどこまで真剣に考えようとしているのかということについて私は疑問を持ちます。  そこで、雇用問題というのは、本来労使間の問題であると思うのですが、法律基準を変更したり雇用の幅を縮める、こういうことの中で、雇用問題が労使間の問題としてゆがめられていくんじゃないかということについて心配をするのですが、この法律改正雇用などを中心とする労働問題の関連についてどうお考えになっているのか、お尋ねをいたしたいと思います。
  4. 細田吉藏

    細田国務大臣 大変基本的な御質問でございまして、お答えが十分にできるかどうか、私の一応基本的な考え方を申し上げて、後、事務当局から補足をいたさせたいと存じます。  港湾におけるいわゆる荷役作業というものは、これは昔からあったことはもう当然でございまして、長い歴史の中で、労働のうちでは最も激しいある意味では過酷な労働であったと、私どもかように思っております。それがいろいろ近代化合理化が進んでまいったわけでございますけれども、これまでの近代化合理化は、どちらかといいますると、はしけの改善とかあるいは荷役機械改善とか、そういったようなものであったと思うのでございます。  最近、これが著しい変化がもたらされた、これは今回の法案を出しておるゆえんでもありますが、これは革命的とも言うべき状況の変化が起こったのは、コンテナリゼーションの問題でございます。コンテナリゼーションによって港湾荷役の形態が著しく変更を見たということは申し上げるまでもございません。したがって、このことは、港湾で働いておる方々の数の問題、また質の問題に重大な影響を及ぼすことは当然さようになるわけでございます。  そこで問題は、こういう急速な変革の中で労働者方々、また雇用の問題に一概にしわが寄ってしまうということについてはよほど考えていかなければならぬ問題である。したがって、こういう近代化合理化が行われるこの移り変わりの時期というものは、現実にも労使ともに非常に苦労しておられることと思うわけでございますが、この一つをやればいいというような簡単な方法のものじゃないと思うのです。客観的な事情は非常に困難です。その中で労使が十分に話し合っていかれ、そしてこの近代化合理化のメリットが、働く人たちの側にも最大限にいろいろな工夫を凝らしながら均てんされるということが絶対に必要だ、私はかように考えておる次第でございます。  基本的にはそのように考えておりますが、なお足らないところは局長から補足をいたさせます。
  5. 富塚三夫

    富塚委員 過日、高嶋参考人が明言されておりましたけれども雇用問題すなわち労働問題は重要な要素であって、労使領域が狭められる、これは労使にとって非常に不利だということを参考人として言われておったと思います。私は、雇用問題は本来労使の問題であり、輸送革新によって雇用問題への影響がつくり出される、しかもそれが法律によってその基準枠組みを変更されるということになりますと、これは当然政府も責任がありますが、立法府としての我々国会の場でも本質的な問題を避けて通ることはできない、私はそう思います。  そういった観点から、結局今回の改正に伴って、輸送革新による雇用問題への影響ということをこの立法府の中でも本質的問題として取り上げて対処しなければならないだろうというふうに考えます。そういった視点といいますか観点が、今日までの質疑のやりとりの中でも必ずしも明確になっていない。港湾労働法昭和四十年に制定され、翌四十一年七月から東京、大阪など六大港で全面的に実施されてきている。同時に、一九七三年六月六日には、五十八回のILO総会において、ILO百三十七号条約が取り上げられている。こういった歴史的経過ということもありますけれども立法府において法律を制定、改正、あるいはそのことによってさまざまな指導的なことも行政府で行われることになると思うのですが、そこで取り上げられるということになれば基本的に輸送革新という問題についての考え方、そして雇用の問題のあり方などについてこの国会の中で明確にしていくことが正しいのじゃないかというふうに私は思います。そういう考え方に立って、まず輸送革新に対する基本的な政府考え方について改めて明らかにしていただきたいと思います。  私たちは、まず一般的に技術革新あるいは近代化機械化という問題は、今大臣もおっしゃいましたように、時代流れを経て今日を迎えていますが、御案内のように第一次産業革命、十八世紀後半から十九世紀前半にかけてイギリスやベルギー、フランス、ドイツなどで手工業生産体制から機械導入による機械制の大工場あるいは紡績機械蒸気機関の発明、そういったことが経済的、社会的、文化的な変革になっていったことも御案内のとおりですし、近年二十世紀後半に入ってからオートメーション化、最近はMEマイクロエレクトロニクスあるいはOA、オフィスオートメーション化コンピューター化などが進められて第二次、第三次の産業革命とも言われています。そこから生み出されたところの余剰労働力あるいは利潤というのは当然働く人たちにも還元をされてしかるべきではないのか、私はそういうふうに思います。そういう点で、この輸送革新労働者にもたらす影響労働者をどう大事にしていこうとしていくのかという基本的な政府の姿勢が、立法府法律改正によってその枠組みが決められていく、労使問題であるべき枠組みが決められていくということになれば、その点の考え方をまず明らかにしていただきたいと思います。
  6. 小野寺駿一

    小野寺政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生の御指摘にありましたように、十九世紀特に十九世紀後半以降の技術革新というものが世界経済を発展させあるいは世界人たち生活水準向上させるということに関しての原動力になってきたと私も思います。それがいわゆる技術革新であろうかと思います。そのような技術革新が、今おっしゃいましたように蒸気機関起動力とするところの技術革新時代があり、それが石油を活用するという形での技術革新があり、今日また弱電あるいは通信、オートメーション等中心とする技術革新となってあらわれて、これが今御指摘ありましたように世界経済を発展させ、日本経済を発展させ、また国民生活水準向上させ、その中で労働者の全体としての職域を拡大し、また賃金を高める原動力になっているのではないかと私ども考えておるところでございます。  そういう大きい技術革新中心とする経済的な影響の中で、輸送分野においても同じような意味を持った技術革新が進んでおるというふうに考えるわけでございますが、さらにその中で港湾荷役分野におきましてもいろいろな技術革新が十九世紀以降進められてまいったと存ずるわけでございます。  そういう中で、特に今日、コンテナリゼーションの大きな波がおおむねこの二十年間にわたって我が国に押し寄せてきておって、それを今日現在といいますか、この二十年間において我が国においては適切に受けとめることができたというのが現状ではないかと思っておるわけでございます。それは労働生産性を非常に高める、あるいは荷役の時間を早くする、あるいはコストを低くするというふうなこととなってあらわれるわけでございますが、そのことによって我が国輸出商品に関する国際競争力を非常に高めるという意味において、我が国産業を発展させた、あるいは貨物量増大させた、そのことによって港湾取扱貨物量増大させたという影響があろうかと思います。  そういうことでございますから、もしそのことがなかったとしたときには、あるいはコンテナリゼーションをもし我が国が受けとめることができなかったとするならば、国際競争力を失っていたであろう、貨物量をこれだけふやすことができなかったのではなかろうかというマイナスの面を想定してみなければならないのではないかと思うわけでございます。そういう点からしますと、国際競争力に十分対応できる産業というものを発展させることができ、貨物量をこれだけふやすことができた、またそれに応じてほかの産業と比べてそう遜色のない賃金水準というものも持つことができたのではないかと思う次第でございます。  しかしながら、それを細かく内容に立ち入って見た場合に、関連いたしまして幾つかの問題が出てきておるということも否めないわけでございます。その中での特に特徴的なことといたしましては、従来でありましたならば港湾地域に非常に小口の貨物まで集まって、それをそれなりの港湾荷役方式に基づいて船に積み込む、あるいはその逆に輸入貨物については港湾地域において細かくこれを分類してそれぞれのところにトラックなり鉄道で輸送するというふうな方式であったものが、コンテナリゼーションの過程の中で五〇%程度のものが内陸部においてバンニングが行われる、デバンニングが行われるということが起きたという問題が一つ大きな課題として起きているのではないかと思います。  この点につきまして、先ごろの参考人の御意見の中で高嶋参考人から、その面に関して港湾労働の、あるいは港湾仕事領域というものがそれだけ減ったということに相なるというところを指摘されておるわけであろうかと思います。私どもといたしましてもこの点について気にいたしておるところでございまして、港湾役割というものが非常に大きな役割であり、重要な役割であるということを中心として歴史的に今日までその役割を果たしてきた、この分野をできれば、できるだけ充実いたしたいという気持ちを持っておるわけでございます。  しかしながら、陸上における輸送に関しましての秩序あるいは法的な諸制度というものは既に整っておるわけでございますから、おのずからそこに港湾領域というものを社会通念をはるかに超えた領域まで広げるということは、制度上何といいますか、異常なる課題、新しい課題というものを生み出してくる危険性があるわけでございます。したがいまして、私どもといたしましては港頭地区あるいは港湾地域の中において貨物バンニングデバンニングをするような基地、これが東京港などではつくられ始めておりますが、そういうバンニングデバンニング基地港頭地区に整備していくというふうなことによって、実体的にバンニングデバンニング仕事を再び港頭地区あるいは港湾運送事業者の手元に引き寄せるという方策を講ずる必要があるのではないかという点を考えております。  そのほか、直接的に労働問題そのもの関連します諸課題に関しましては、労働行政の面において必要な手だてを講ずるという筋が一つあるわけでございますから、その面が十分機能いたしますように、港湾行政分野においてもそれに協力するというふうな立場で対応していくのが至当ではなかろうか、このように考えておる次第でございます。
  7. 富塚三夫

    富塚委員 私は輸送革新に伴う基本的な考え方についてお尋ねをしたのでありますが、紛れもなく事業法あるいは労働法二本立ての法律などにより、あるいは港湾に働く労働者などの努力によって日本経済に役立ってきた、あるいは国際競争に打ちかってきたということは十分理解できますが、雇用問題を重視するということは政府考え方として確認をしていいですね。基本的に輸送革新に伴って与える労働条件への影響というのは出てくるわけですが、政府として雇用問題を重視するという考え方は確認していいですね。
  8. 小野寺駿一

    小野寺政府委員 港湾運送分野におきましても、労働者あっての港湾運送でございますから、労働問題を重視するという立場をとるというふうに申し上げてよろしゅうございます。
  9. 富塚三夫

    富塚委員 一九五五年、昭和三十年でしたか、アメリカから生産性向上運動というのを日本導入をしました。原材料、労働、設備、生産技術流通組織のすべてを含めた産業総合生産性を高めるという問題について、日本の有力な民間団体民間企業導入をして、これを政府も支持をいたしました。それはコストを引き下げ、価格を低廉にする、あるいは労働者所得を増加させる、国民所得増大生活水準向上、そして雇用拡大、そして労使間の問題では利潤の公正な配分、雇用拡大労使協議制というものを重視をするということで、これについてはいろいろな国民労働者の間の意見があったことも事実です。これは国際的な常識として、特に西側の陣営に所属する国々では政府あるいは経営者の間でこういうものが常識になってきましたが、こういった生産性向上運動、その内実の問題点ということが国際的常識になっているということを日本政府も認めていいですね。その点を日本政府としてどうお考えになりますか。
  10. 小野寺駿一

    小野寺政府委員 雇用重視という点につきましては、政府としてこれを非常に重視しているという点につきまして、よろしゅうございます。
  11. 富塚三夫

    富塚委員 考え方というものは当然国際的常識になっていること、そして日本政府もそのことは内閣自体が認めて推奨するというそのことはとられてきたわけですが、そのことはいいですね。
  12. 小野寺駿一

    小野寺政府委員 雇用問題を重視するという考え方につきまして、少なくとも港湾運送分野におきましてこれを重視するという考え方についても、よろしゅうございます。
  13. 富塚三夫

    富塚委員 いや、何も難しいことを聞いているんじゃなくて、いわゆる一九五五年に日本の大企業中心になって採用した生産性向上運動、それは日本政府も全面的に支持するという方向をとられてきたということの中で、生産性向上運動という一つ流れの中で、雇用拡大とか雇用問題を重視していくということが世界的常識になっている。それは日本政府も当たり前、ですからそのことは世界常識であることをお認めになるでしょう、こう申し上げているのです。いいですね。
  14. 細田吉藏

    細田国務大臣 そのとおり御理解いただいて結構でございます。  私、ちょっとこの港湾雇用の問題について申し上げますと、港湾運送仕事合理化近代化というものは、もともとが非常に原始的な方法で行われておっただけに今までかなり力を入れてまいったと思うのです。もともと非常に労働集約的な仕事でございますから、多数の働く人がこれに携わっておったものでありまして、これをいわゆる省力化という方向で一貫してやってまいったと思うのでございます。そこに雇用との関係において非常に難しい問題がある。私、考えまするのに、雇用というより港湾労働内容が非常に変わってきている。より肉体的なものからより頭脳的なものに変わってまいっておる、こういうことではなかろうかと思うのでございます。そういう点を総合的に勘案して雇用を、量の問題もございますが質の問題もございます、したがって賃金の問題にもなってまいると思いますが十分考えてまいる、こういうことであろうと思っておる次第でございます。
  15. 富塚三夫

    富塚委員 ILO国際労働機関の中で具体的に港湾労働者の問題が取り上げられたということは、世界的にも常識になり、日本政府もこれに賛成をされたという立場から、私は特に港湾労働法ILO条約関連について御質問をいたしたいと思います。  国際労働機関が第一次世界大戦後にヴエルサイユ条約に基づいて一九一九年に設立されたことは、御案内のとおりであり、その目的は、国際的に労働者労働条件改善して社会正義を確立し世界平和に貢献すること、労働者生活向上完全雇用労使協議社会保障の実現を目指す。今百数十カ国が加盟をしている中で日本は第二位ですかの会費を納めている国でもあり、近代国家あるいは経済大国として発展した日本の地位がILOで高く評価されていることは事実であります。  そこで、一九七三年六月六日第五十八回総会において、ILO百三十七号条約が採択されました。すなわち、港湾における新しい荷役方法社会的影響に関する条約、この百三十七号条約は、ユニットロードの採用、ロールオン・ロールオフ方式導入機械化オートメーション増大など、いわゆる港湾における荷役方法貨物輸送形式変化、その一層の拡大ということを展望いたしまして、貨物輸送をスピードアップして港において船舶が消費する時間を縮小して輸送費の縮減をすることなどにより、関連国経済に利し生活水準引き上げに貢献する、同時にこうした変化港湾における雇用水準労働条件に与える影響を最小限に食いとめる、この条約日本政府賛成されたと私どもは承っておりますし、明らかになっていますが、きょうは労働省のジュネーブのレーバーアタッシュをやられた野見山さんもお見えですから、日本政府のそのときの態度について明らかにしていただきたいと思います。
  16. 野見山眞之

    野見山政府委員 先生指摘のように、一九七三年のILO総会におきましてILO百三十七号条約の採択に当たりまして賛成をいたしました。 この条約につきましては、今お話しのように輸送革新の進展に即応いたしまして労働面での円滑な適用を促進することによって、関係労働者雇用の安定と福祉の向上を図り、安定的、効率的な港湾輸送機能を維持していくという趣旨でございまして、条約に示されている対策の基本的な方向について各国がそれぞれの事情に応じて実現していくことが望ましいという観点から、賛成いたしたわけでございます。
  17. 富塚三夫

    富塚委員 日本政府はこの条約をいつ批准しようとしているのですか。
  18. 野見山眞之

    野見山政府委員 この条約の中で示しております雇用対策その他一般的な事項につきまして、私どもはおおむね港湾労働法その他の対策において実施されていると考えておりますけれどもILO条約において示されております個々の問題に関する理解の点につきまして、必ずしも関係者間における理解が一致しているとは思われない点がございます。その他、条約で規定している諸要素等についての検討等観点から、基本的にはその理解が進むような機運の醸成が重要であると考えておりまして、その面での促進を図ってまいりたいと考えております。
  19. 富塚三夫

    富塚委員 五月十一日、我が党の小林議員質問に対しまして阿部審議官が答弁されています。百三十七号条約は、港湾における技術革新が進行する中にあって港湾労働者雇用及び所得の安定を図る、その観点から常用化促進あるいは登録制導入といった内容が主であって、ILO条約を批准していないが、同条約内容については港湾労働法及び関係法令によっておおむね実施している、細部はなお検討の余地がある、重大な発言をしていると私は思うのですが、今労働省の見解は、関係者間の意見の食い違いなどがあってまだ批准に至っていないという問題が言われておりますが、基本的に百三十七号条約内容趣旨がこの港湾労働法に生かされていると本当にお考えなのかどうか。これは国際的に見ても大変重要な問題であり、立法府がこの法律を審議する上で重要な問題であると思うので、この点について質問をいたしますが、一体運輸省はそんなことをどういう観点から考えられているのか、お尋ねをいたします。
  20. 阿部雅昭

    阿部説明員 お答えいたします。  ILOの百三十七号条約につきましては、先ほど先生も御指摘がありましたように、技術革新が進行する中にあって港湾労働者雇用及び所得の安定を図るため諸種の制度、例えば登録制導入常用化促進といったことが規定されておると私ども理解しておりますが、その内容現状につきまして私ども運輸省としては、例えば港湾労働法に基づいて六大港については港湾労働者に関して、常用労働者につきましては一応届け出制になっておりますが、日雇い労働者については登録制がとられている。この辺についても趣旨的には登録といったような同様の制度、効果が発生しているのではないか。また、同法に基づきます港湾雇用調整計画によりまして定数が策定されているあるいは常用化促進ということがうたわれている、また、そのような方向での施策が進められているということを私ども理解しておりまして、登録労働者の優先的な紹介あるいは不就労日につきましては雇用調整手当が支給される、さらにこれ以外の法体系としましては労働安全衛生法あるいは労働基準法といったような法律に基づきまして、条約目的としているような対策はおおむね実施されているのではないか、そのような理解のもとで先般のような答弁をさせていただいたわけでございます。
  21. 富塚三夫

    富塚委員 運輸大臣お尋ねします。  ILO百三十七号条約の批准は必要がないというふうな感じに今とれるような発言、つまり具体的には港湾労働法で解決されておるような趣旨の答弁があったのですが、これは重大な問題ですが、所管運輸省としてこの当該百三十七号条約を批准することに反対をしているのかどうか、お尋ねをいたします。
  22. 細田吉藏

    細田国務大臣 所管が労働大臣でございますが、私どもの方の立場としましては、今条約を批准するのに裏づけになるいろいろな諸条件について検討すべき点が若干まだ残っておる、こういうことのようでございまして、意見の食い違いもあるようでございます。私どもはこういうものがクリアされて批准をされることが望ましい、かように考えております。
  23. 富塚三夫

    富塚委員 ILO条約の批准の問題などはもちろん労働省の所管であるかもしれません。しかし、事、港湾に関する問題についてもILO条約総会で採択をされている。それは当然日本政府賛成をした。批准をする方向に向けて所管の運輸省がいちゃもんをつけておったのでは、これはいつまでたっても批准できないということになり、私は国内的には大変問題があると思うのです。だから、その点は批准に向けて積極的に努力をしている、努力をすべきであるという考え方を打ち出すべきであると思うのですが、この点についてお尋ねをします。
  24. 小野寺駿一

    小野寺政府委員 基本的な考え方については、大臣の御答弁があったとおりであります。  それから、実体的にILOの百三十七号条約で述べている事柄について、基本的にはかなり内容我が国においては整ってきておるというふうに考えておるわけであります。したがいまして、残されておる幾つかの具体的な細かい課題につきまして、これを解決した上で批准することになるというわけでありますから、その残されておる課題が解決されるよう努力いたすというのが私ども考え方でございます。
  25. 富塚三夫

    富塚委員 批准に向けて努力する、努力していくということはいいのですね。
  26. 小野寺駿一

    小野寺政府委員 はい、努力してまいります。
  27. 富塚三夫

    富塚委員 それでお尋ねをしますが、私は阿部審議官の答弁というのは全く詭弁ではないかというふうに思います。  ILO百三十七号条約第三条には、一、登録は、国内法の定めるところによる職種にかかわるすべての港湾労働者について設定し、維持されなければならない。二、登録港湾労働者は、港湾作業について就労の優先権を有するものとする。三、登録港湾労働者は、国内法または慣行によって定められた方法によって就労しなければならない。つまり、ILO百三十七号条約のその趣旨は、港湾労働者すべてを登録して、登録労働者の一定の就労と生活を保障しなければならないことを明確にしている、私はそう思います。  ところが、昭和四十年法律百二十号で制定されました現行の港湾労働法は、一、毎年、港湾ごとに、雇用調整計画を策定をする。二、この計画に定められる定数の範囲内で日雇い港湾労働者登録を行う。三、事業主が日雇い港湾労働者を雇い入れるときは公共職業安定所の紹介によらなければならない。安定所は登録日雇い港湾労働者を優先的に紹介する。四、この登録労働者が業務に就労できなかった場合は雇用調整手当を支給する。五、退職金共済制度を実施し、及び住宅その他の福祉施設の整備を図る。この法律の適用港は、現在、東京、横浜、名古屋、大阪、神戸、関門、六大港の指定となって現在に至っている。  この港湾労働法の規制は、日雇い労働者のみの登録で、しかも一定の就労保障と生活保障ではなく、常用が足りないときに優先就労権ということをうたっているのではないか、こう思います。ILOの百三十七号とは根本的に違う問題だと思います。その点について包含されているかのような発言、そういうことをなされていますが、基本的に違いがあると思うのですが、いかがですか。
  28. 阿部雅昭

    阿部説明員 私ども条約の解釈等かっちり解釈できる所管ではございませんが、私ども理解といたしましては、港湾労働法で、常用労働者につきましては、届け出て労働者証を交付するというようなことが行われ、そのような数字をベースに雇用調整計画の中にも盛られている。日雇いについては、登録登録票を交付するというような形で、六大港につきましては港湾労働者について常用者、日雇い労働者ともに十分把握されておるということで、条約のねらっているような趣旨はそのようなことでも達成されているのではないかというふうに考えておりますが、その辺の詳細な解釈等につきましては、なお今後労働省とも十分相談さしていただきたいというふうに思います。
  29. 富塚三夫

    富塚委員 所管の労働省としてはどうお考えになりますか、港湾労働法ILO百三十七号条約関係について。
  30. 野見山眞之

    野見山政府委員 ただいま御説明ございましたように、私どもといたしましても基本的には、雇用登録の問題につきましては、常用労働者に対する届け出制、そして登録日雇い労働者の優先紹介制度という港湾労働法に定める内容の基本的な方向については、ILO百三十七号条約方向と合致しているのではないかというふうに理解いたしておりますが、この百三十七号条約の中におきましては国内に適した方法により実施していくということでございますので、その方法として私どもが国内においてとっている方法がこの方向に合致するものかどうか、さらに検討する必要はあるんじゃないだろうかというふうには思っております。
  31. 富塚三夫

    富塚委員 ILO条約日本政府が批准をしてその後に国内法を整備するというのが、従来、本来的な建前ですよね。今の問題で言うと、どうも当該運輸省が批准をする必要がないみたいなことを言って、阿部審議官ではないが、当該運輸省がそんなことを考えておったのでは、雇用問題を重視するとか雇用拡大を大事にしたいなどと言ってみたって、それはやっていることと言っていることが全然違うみたいな感じになっていると思う。だから、このILO条約を批准をするという方向に向けてもっと問題点を明確にしていく、現行の港湾労働法とのかかわり合い、事業法とのかかわり合いを明確にしていくということについて、具体的に労働省、運輸省、約束していただきたいと思います。今、阿部さんは今後検討したいと言っていましたけれども問題点を明確にするということをお答えを願いたいと思います。
  32. 野見山眞之

    野見山政府委員 国内の法制とILO条約で示している対策内容等の点につきまして、さらに検討をしてまいりたいと思っております。
  33. 阿部雅昭

    阿部説明員 私の答弁がILO条約を批准しなくていいんだというふうに先生受け取られたとしますと、私の答弁の仕方がまずかったものでございます。運輸省としては、ILOで期待している内容をできるだけ実施していくという基本的な方向を持って、現在どのような対策がそれぞれのILO条約内容に応じて講じられているかということを一つ一つ詰め、さらに労使間においての理解が食い違っているならばそれをできるだけ合意の方向に持っていく、そういう合意がないと、たとえ批准したとしましても、法律あるいは条約の精神が円滑に生かされないということもございますので、そこら辺についての合意を取りつけるための努力を今後しなければならないというふうに考えておりますので、ILO条約の批准に反対だというような基本姿勢をもって私ども臨んでおるということではございません。今後もILO条約内容が生かされる法体制なりその労使関係の実態ができ上がっていくように、運輸省としてもできるだけの努力をいたしたいというふうに考えておる次第でございます。
  34. 富塚三夫

    富塚委員 港湾労働法を制定された後の問題点として、既に港湾の組合の関係者からもあるいは社会党の側からも問題点指摘してまいりましたが、特に経営者の側の皆さん方が港湾労働法というものをどう理解をしているのかということについて、一面ではILO条約百三十七号とは違った観点から、この法律そのものについてもかなり問題を残しているように思われます。  というのは、経営者の側がこのことをしっかり守ろうとしない、つまりやみ雇用とか、同業の企業間の相互の融通とか、つまり登録日雇い労働者を使わないようにしている。こういう点で基本的に労働省の指導もこの法律で弱いと思うのですが、こういった問題を含んでいる。しかも、港湾労働法制定当時と現在の比較で、制定の当時は常用が八万一千、現在は四万、五〇%になっている。これは言われているとおりであります。日雇いは一万三千から千四百に九〇%も減っているということであります。しかも、港湾労働法経営者側はつぶしたい、あるいは何とかこの法律をくぐり抜けてうまくやれないかといったことも一方では考える。そうして一方では日雇い労働者が一万三千から千四百にも減ってきている。  こういった実態から考えてみると、まず港湾労働法のあり方そのものもこういった観点から検討していかなければならないと思いますし、今ILO条約の批准の問題をめぐって御質問申し上げましたけれども、もっと前向きに取り組んでいくという基本的な姿勢がないと、事業法改正だけをしてこの場だけくぐり抜けて、輸送革新に対応したかのような、そういう立法府の決め方、あるいは政府の態度では承服できないと思います。そういう点で、港湾労働法の現実の問題が完全に守られていると労働省は見ているのか、あるいはこういった問題点を包含しているということについて、当該運輸省はどういうふうにお考えになっているのか、お尋ねをいたします。
  35. 野見山眞之

    野見山政府委員 港湾労働法におきまして、登録制度による日雇い労働者の優先紹介等を中心にいたしまして、港湾労働における秩序の確立ということは非常に重要な問題でございます。  先生指摘のような、一部にまだやみ雇用等の問題が絶滅できていないという実情につきましては、私ども港湾労働法の適切な運用を図る上におきまして、ぜひとも是正されなければならない問題であると考えております。したがいまして、この港湾労働秩序の確立の問題につきまして、関係者からのいろいろな御指摘等もございまして、私どもといたしましては海運局等との連携を密接にとりながら、さらにこれらの問題の改善に努めてまいりたいというふうに考えております。
  36. 小野寺駿一

    小野寺政府委員 運輸省といたしましても、港湾労働に関する労使関係と申しますか、やみ雇用等の事柄に関しまして、まだ存在する、絶滅できていないというふうに考えております。したがいまして、そのような事態が明らかになった場合には必要なる措置をきちっと講じなければならないということでございますし、その他、必要の都度適正化を図るような指導をいたしておるところでございますし、今後ともその点につきまして労働省とも連携を保ちながら対処してまいりたいというふうに考えております。
  37. 富塚三夫

    富塚委員 締めくくりのところは別にいたしまして、今私たちの重要な要求の一つとして——輸送革新、とりわけコンテナ輸送によって、従来の港頭地帯で行われていた港湾仕事が背後の奥地の工場や倉庫などに移ってきているというふうに思います。また今後、国際複合一貫体制が進められれば、なおそういう方向が出てくるというふうに考えられます。  全国港湾に働く労働者の皆さん方は、コンテナのバン出し、バン詰め作業を港頭地帯で港湾労働者の手によって行わせるよう要求をして、昨年もことしも強い姿勢で経営側に迫ったことは御案内のとおりであります。そして日港協、つまり経営者側の方の団体もこれに賛成をしている、労使の主張が一致しているというふうに思います。こういったことは常識的であって、港湾労働者の重要な要求であると思うのですが、この点についてお認めになるのかどうか、この点をお答えいただきたいと思います。
  38. 小野寺駿一

    小野寺政府委員 コンテナのバン詰め、バン出しが内陸部でかなり行われておるという点はそのとおりでございますし、また、港湾労働者の職域という点につきましては、社会通念上の港湾の区域の中での仕事ということになるわけでございますから、その間に一つの大きな課題があるというふうに考えております。  私どもといたしましては、今後、内陸で行われるバン出し、バン詰めというものがどのくらいのウエートになっておるかということをよく調査してみたいというふうに考えますし、対策として今、当面考えられますのは、港湾区域の中にバン出し、バン詰めの拠点を順次設置していくというふうなことが考えられるわけでございます。今後、今申し上げましたような調査を行い、そのほかに何かうまい手だてがあるかというような点につきましての検討を加えてまいりたいというふうに考える次第でございます。
  39. 富塚三夫

    富塚委員 また、はしけ労働者雇用保障の問題なんですが、一種元請が免許基盤を従来のはしけから施設基盤に切りかえた場合に、はしけ労働者の解雇または下請化が出てくるというふうに懸念されます。この場合にはしけ労働者雇用保障をどうするのか。単なる離職者対策などで納得がいくような性格のものじゃないというふうに思います。  運輸省は既に昨年通達を出して、免許基準の中の労働者数を引き下げました。また、特殊料金を適用している職場についても、地方海運局長権限で特別の基準を設定してさらに引き下げようとしている。船内と沿岸が一体化されると、これも引き下げられる懸念がある。雇用重視しなければならぬ、そういうことを言っておられても、現実にはどうも雇用問題を軽視していくようなそういった方向に向いているように見受けられてなりません。  私が言うまでもなく、質疑のやりとりで行われておりましたが、アメリカではニューヨーク州などでは五十マイルまで港湾労働者仕事であることを労働委員会が命令をしている。アメリカなどはまさに労使の問題として積極的にいわゆる雇用問題を大事に考えて対処しているというふうに見受けられますが、日本の場合にはこういったはしけ労働者雇用保障問題などに見られるように、もっと前向きに取り組んでいくという気持ちになれないのかどうか、そこの点について質問をいたします。
  40. 小野寺駿一

    小野寺政府委員 私どもは、港湾における労働問題というものを非常に大切にいたしたいというふうに考えております。その場合に、今回の法律改正におきまして、新しい基盤の設定及び船内と沿岸荷役の合併ということを行おうということでございます。  そのような港湾荷役近代化合理化が進んでいくことによって、労働者方々仕事の中身というものが順次変わっていくことになろうかと思います。昔は、特に港湾荷役分野におきましては人間の物理的な力を使うというふうなことでございましたのが、順次肉体的な仕事から解放されて頭を使うという方向へ向かってきておると思います。今後とも国全体としてそういう方向考えられるべきであろうと思いますし、輸送分野荷役分野においてもそうだろうと思う次第でございます。  そこで、そのような質、中身というものが変化していく、向上していくことによって生産性の向上が起きてくるということでございますが、その反面、数の点についての課題が出てくるわけでございましょう。その点につきましては、私どもといたしましては従来のはしけの仕事をしておられた方々の中からほかの業務にかわっていただく必要のある方々については、それなりの職業訓練等の手だてを講ずるということを考えるわけでございますし、また港湾労働以外の分野に転業せざるを得ないというような方々につきましてはそれなりの手だてを講ずるという考え方で対処いたしたいと考えておるわけでございます。それらのことによって、全体として港湾労働者賃金の問題あるいは仕事内容の問題というものが改善されていくということになると考えておるわけでございます。     〔久間委員長代理退席、委員長着席〕
  41. 富塚三夫

    富塚委員 時間がありませんし、私の後にまたベテランの吉原委員が御質問されますから、私が締めくくりとしてぜひ政府に確認をしておきたいのは、港湾労働者雇用を保障するために先ほど言いましたILO百三十七号条約の批准に向けて、運輸省は決して妨害しておるわけではないと言われておるし、労働省からは関係者意見調整という問題の段階であるといろいろ言われましたが、このILO条約の批准あるいは港湾労働法改正などの所要の条件整備ということについて積極的に進める必要があると思いますし、そのために政労使の話し合いをするということが当然あっていいと思いますが、運輸大臣、ぜひそのことについて御考慮をいただきたいという点でお答えをいただきたいと思います。
  42. 細田吉藏

    細田国務大臣 どういうふうにしてやるかという具体的な方法につきましては、それぞれ専門家で考えてもらわなければいかぬと思っております。基本的な方向としては、おっしゃるような点について政府が努力をしてまいるということであろうか、かように考えておる次第でございます。
  43. 富塚三夫

    富塚委員 今、大臣から、どういうやり方をするかは別に相談して、その意を酌んで努力をしたいという意味の答弁がありましたから、私もそんなに硬直的に問題を考えて政労使で議論をするとかいうのじゃなくて、国際的にもこういった条約の採択と相まって日本政府にも批准が迫られている。近代国家経済大国などと、中曽根さんもロンドン・サミットから帰りまして本会議でみずからそのことを自負しておりました。その日本が、やはりILO条約が採択されたのに、その場では賛成をしたけれども批准をしない。あるいは港湾労働法ども幾多の欠陥を抱えている。そういう問題についても積極的に取り上げて改めてその相談をする場を私たちも提案をいたしますから、最大の努力をしていただきたいということを申し上げまして、私の質問を終わります。
  44. 福家俊一

  45. 近江巳記夫

    ○近江委員 まず初めに、改めてお聞きしたいと思っておりますが、この港湾運送事業法の一部改正についてでございます。この目的につきまして、ひとつ明確にもう一度改めてお伺いしたいと思います。
  46. 小野寺駿一

    小野寺政府委員 このたびの港湾運送事業法改正目的という御質問でございますが、港湾運送事業法につきましては、昭和四十一年に改正されましてから今日に至るまで改正を行うことなくまいっておるわけでございますが、この間におきまして我が国の高度成長があり、生産にかかわる分野におきましてもあるいは輸送を初めとするサービスの分野におきましてもいろいろな構造改善が起きてまいったわけでございます。そういう中におきまして、海運あるいは港湾におきましても非常に大きな変革が起きた。その中で特にコンテナの進展あるいは自動車輸送近代化、その他の穀物類の輸送近代化等が、言うなれば劇的な場面もあったと思いますけれども、非常に大きな変革があった。それに対して、今申し上げましたように、港湾運送事業法改正されなかったということは、港湾運送事業の実施の状況と港湾運送内容とが非常に大きな乖離を示してきたという可能性がそこにあるわけでございます。その乖離を今回埋めようというのが大きな趣旨でございます。ついては、その中で要点は二つあるわけでございます。  第一には、港湾運送の行為の分類が港湾運送事業法の中で規定されておるわけでございますが、その中での船内荷役と沿岸荷役というものを統合しようというのが一点でございます。これは多くの方々が見ておられますように、一昔前あるいは二昔前の港湾荷役の中では、本船を岸壁に直接着けて荷役するという場面が、特に外国貿易の面では余りございませんで、はしけ荷役が非常に大きな役割を果たしておった。すなわち、貨物を水深の浅い物揚げ場などではしけに積み込み、これを沖に停泊しておる本船のわきに着けて、そしてはしけから本船に貨物を積み込むという形態がとられました。その際に、はしけに水深の浅い護岸から積み込む行為が沿岸荷役であり、はしけで沿岸から本船まで持ってまいります行為をはしけ荷役、そしてはしけから本船に積み込む行為が船内荷役、こういうふうな順序で、それぞれ分業で行われておったというのが実態でございます。  しかしながら、現在では、本船を直接接岸できる岸壁に着ける、そして、直接岸壁から本船に荷役するという場面が圧倒的に多い状況になってまいりました。こうなりますと、間にはしけというものを挾む必要がないという場面が大部分でありますし、また、船内荷役と沿岸荷役とを区別する必然性というものに乏しいという場面が非常に大きく出てきたということでございますので、将来に向かって、船内荷役と沿岸荷役の一貫荷役形態というものを一層発展させていくことが望ましいという実態及び将来に向かっての観点を背景といたしまして、これを合併しようというのが一つでございます。  第二に、今申し上げましたように、はしけ輸送の場面が昔に比べて圧倒的に少なくなってしまったということとあわせて、コンテナ荷役あるいは自動車の製品輸出などの場面が非常に大きくなってきておるわけでございまして、そういう場面では、コンピューターを駆使いたしまして、非常に生産性の高い港湾荷役を遂行することができるという実態が出てまいりました。  従来、港湾荷役分野におきましては、原則として、個々の作業に関しましては、これを直営で行うという考え方をとっておるわけでございまして、それを、ある一つ港湾運送分野についてだけ直営をいたします場合には、関連下請に下請させることを許すという制度を十六条において設定いたしてまいりました。その際に、従来は一つの種類についてだけ直営で遂行するという、その直営分野に関しましては、はしけを直営で行っていく、いわゆるはしけ基盤という一般港湾運送事業者がかなり多数あるわけでございます。  しかるに、今申し上げましたように、はしけの役割というものが縮小していく、反面、コンテナ荷役等に関しましては、これが非常に大きな役割、ウエートを占め、かつまた、港湾運送事業者仕事の中でも、非常に大きな意味を持ってくるということになってまいりましたので、新たに革新荷役に関しますところの、コンテナ荷役等に関しますところの統括管理行為というものを設定して、それを一定量以上行う一般港湾運送事業者に関しては、はしけも含めて、その他の仕事について関連下請に下請させてもよろしいという、十六条のいわゆる下請規制の面を改正し、新しくそういう統括管理行為を行うものに関しても許すということをいたそう、こういうことでございます。
  47. 近江巳記夫

    ○近江委員 この港運法というのは、人といわゆる業というものは切り離すことはできないわけでございますね。いろいろとお伺いしておりますと、業に関しては、皆さんは合理化という形のもとで、この二つのポイントを法改正として出されたわけであります。しかし、この人という点に関しまして、これは法案には盛り込むことは非常に難しいかもしれませんが、後でお聞きしたいと思いますが、労働省さん等の連携のもとにおけるいわゆる業の合理化に伴うさまざまな影響が十分予想されるわけであります。それに対する万全の対策はとっておるかどうか。私も政府の皆さんからいろいろとお聞きしておりますが、非常に片手落ちであるということは私は言えると思うのでございます。したがいまして、これは非常に重大な問題を残したいわゆる業の推進法案である、このように考えておるわけでございます。  そこで、以下、今後予想されるそういう影響等につきまして、順次お伺してまいりたいと思っております。  これは人の問題、さらには特に零細業者、中小零細業者に非常に大きな影響を及ぼしてくる、このように考える次第であります。この港湾荷役事業、いわゆる船内、沿岸を一本にする、こういうことでございます。この両方の免許を持っておるものは、港湾荷役事業の免許である。そして別々の場合におきましては、限定ということになるわけですね。そうしますと、両方免許を持っておるものは一本化された港湾荷役事業、こうなってきますと、合理化という点からいきますと、一本化するわけですから、そこにはまたいろいろな余剰人員といいますか、そういうものを当然お考えになっていると思うのですね。あるいは料金にいたしましても、スムーズに流れるということで恐らくそこには料金サービスといいますか、そういうものが出てくる。そうなってきますと、限定の免許のものは一体どうなるか。一つはその競争にさらされてくる。そうすると、恐らく行政指導におきましても、限定の免許を持ったものについては合併をしなさい、また合併を嫌うそういう中小零細企業人たちは、それではもう廃業しようということになるかもわかりません。いろいろな影響が今後出てくることが考えられるわけですね。そういう影響という問題につきましては、どのように把握されておりますか。
  48. 小野寺駿一

    小野寺政府委員 沿岸荷役と船内荷役の統合によって起きる中小企業等に対する影響及び労働者に対する影響という点についての御質問であろうかと思います。  船内荷役と沿岸荷役を統合することによりまして、今申し上げましたように、特に本船を岸壁に着けて荷役をするという場面におきましては、荷役の実態上、合理化近代化が進んでいくことを期待いたしておるわけでございますが、その際に、まずどういう認可料金を設定することにするかという点が、一つ課題であろうかと思います。その点につきましては、私どもとして現在考えておりますのは、従来の沿岸荷役による料金に船内荷役の料金をプラスしたものを基本として、この一貫輸送が起きることに伴うところのメリットを加味して、これはマイナスの方向に加味して設定することになろうかと思いますが、足し算をした数字よりも非常に大幅に下げることは、いろいろな悪影響が現在、出てくる可能性があるのではないかということを懸念しておりますので、その点については大きな差は設けないことにするのが適切ではないかというふうに、現在の段階では考えております。  また一方、この法律が制定されました後に、従来から船内または沿岸だけを業務としておった会社に対しましては、六カ月以内の届け出によって従来どおりの分野を限定としたところの港湾荷役の業者として登録するということになるわけでございますが、この点につきましては、それらの会社が新しい港湾運送の会社との間で非常に不利な戦いといいますか、競争関係にあるのではないかという御懸念に関しましては、港別にいろいろと実態が違い、また岸壁ごとあるいは貨物ごとに見ましたときに、やはり沿岸及び船内、個別の活動分野というものがかなりございますということを背景に見たときに、非常に大きな混乱が起きることはないのではないかというふうに基本的には考えております。しかしながら、そういう基本的な考え方は持つにしても、個々具体的に考えましたときに、具体的な場面でいろいろな課題が出てくることがあり得るのではないかとも考えられますので、その点、法律の運用の場面におきまして非常に細かい配慮をしながら慎重に対処してまいりたいというふうに考えるわけでございます。
  49. 近江巳記夫

    ○近江委員 いろいろなことについては予想されておると思うのですね。船内それから沿岸、両方持っていらっしゃるという業者が三百七十六、船内のみが二十七、沿岸が六百十四、こういうように聞いているわけですね。そうしますと、両方の免許を持っている人といわゆる限定免許、これとの間における競争というのは当然出てくると思うのですね。そうすると、結局は皆さんがおっしゃる業界が、特に大手ですね、料金の切り下げといいますか、それが合理化だ、イコールそれはまた人減らしだ。ですから、やはり働いておる諸君については非常にそういう不安というものが絶えずつきまとっておると私は思うのです。  ですから、この法改正により出てくる波紋、これはいろいろとやはりお考えになって、現状を変えていくわけですから、出てくる影響に対しては最大の配慮をする必要がある、このように思うわけですね。こういう点については、特に零細業者なりまた働く皆さんから意見をよく聴取しましたか。どういう声があったのですか。
  50. 阿部雅昭

    阿部説明員 本改正に当たりましては、昨年早くから臨調答申も出され、私どももそれを受けてどのような対応をすべきかということでいろいろ案も検討し、検討している段階では、港運協会等を通じまして広く意見を聴取してきたつもりでございます。  それから、先生御心配になられます、単独免許の人たちが非常に競争下にさらされるのではないか、あるいは集約、統合を強いられるのではないかという点につきまして、若干補足させていただきますと、現在港湾運送事業の免許を持っている事業者の方は、実事業者数でいきまして全国で千二百、これは例えば多くの港で事業をやっている日通のような会社は一社として計算した場合でございますが、千二百業者程度でございます。これは他の例えばトラック輸送分野、あるいは内航輸送分野でいいますと、トラックの事業者は全国で三万五千を超える事業者がおりますし、また内航の場合も一万の事業者がいるというようなことで、事業者数等から見ましても、港においてそれぞれそれほど多くない数の事業者が、またそれぞれの港の中の埠頭あるいはその他の場所におきまして、従来から契約関係等をベースに地道な仕事をしている方々が多いわけでございます。  したがいまして、単独免許の方々でも沿岸の方は大きい港の川筋、運河筋において、そこからはしけの積み上げ等をやっておる人たちですとか、あるいは地方の港において五百トン未満の内航船を相手に沿岸の仕事をやっておられる方とか、かなり限定された形で堅実な事業をやっておられる方が多いと思いますので、たとえ単独免許というような、港湾運送事業が港湾荷役事業になって限定になりましても、それなりの輸送分野を持って従来どおりの事業を継続していけるという方々が大多数だろうと思います。しかしながら、いろいろな競争場裏に置かれているということは当然あるかと思いますが、免許基準の設定あるいは料金の設定等におきまして、この国会での御審議の状況も踏まえまして、私ども運用に当たりましては十分配慮してまいりたいというふうに考える次第でございます。
  51. 近江巳記夫

    ○近江委員 一般につきましていわゆる新基盤が今回加わる。こうなってきますと、はしけ等を基盤としておったのが、これらの基盤をそこに認めてくるということになりますと、全部下請ということになってくるわけですね。そうなってきますと、実際上、今はしけの需要というものは全般的に激減してきておる。しかし、基盤であるがゆえに、会社もそういう人たちに対してそれぞれの配慮をしてきておるわけですね。これが全部、新しい基盤が加わることによって下請ということになってきた場合、その人たちは一体どうなるかということですね。法案にはそういうことは全然出ておらぬわけでしょう。  法案には形として盛り込みができなかったと言えば、そうかもしれないけれども、そうであるならば、当然、法案の提出と同時に、こういうはしけ等に乗っておった人たちは完全に切り捨てになる、またそのはしけ等も従来買い上げ等もやっておられるわけですけれども、さらにそれに対してはどういう対策をするか、法案に添えて委員会にその対策というものについては提出すべきであったと私は思うのです。法案から出てくる影響が大きいのですよ。そういう方々にどういう対策をお考えになっておるのですか。
  52. 阿部雅昭

    阿部説明員 基盤制度の変更に伴いまして大幅な変更があるのではないかという御指摘でございます。  私ども、いろいろ実態を調査しておりますと、現在はしけを基盤として事業をやっておられる五大港の事業者、その方が四十五事業者ございますが、それらの人たちで新しい基盤に転換可能な人たち、現在そのようなターミナル施設基盤というものへ転換できるであろうという状況をチェックいたしますと、ほぼ半分程度であろうというふうにつかんでおります。そういう方々がはしけを抱えて、そのはしけに乗り組んでおられる労働者、それらの方々が、例えば転換することが二年間ぐらいの間に漸次行われるということであれば、影響を受ける範囲は百八十名程度じゃなかろうかという数字的な把握をいたしております。  しかし、私ども基盤変更につきましては、法律の手続で申しますと事業計画変更の手続が要るわけです。このようなターミナル施設を持ち、このような統括管理運営体制をとって基盤を変更するということが事業計画の変更の申請として出されてまいりますので、私どもその事業計画の変更の審査に当たりましては、関連したはしけについてどのような対策をそれぞれ事業者が講じておるのかということを十分チェックしたいと思いますし、労使間の話し合いの状況等についてもその間事情を十分チェックしたいと思います。  私ども、基本的には、はしけに乗っておられる方々も現実にははしけの仕事がなくなってきておる。これははしけを相当活用しておられる方も一部におられますし、そういう方々ははしけを基盤としてなお事業を続けられると思いますが、はしけとしての機能が相当なくなってきている方々という場合には、はしけの乗組員の方を他の職種への転換、これも職業訓練等も要るかと思いますが、そのような職業訓練も日本港運協会でことしから大幅に強化しようということが労使協議で合意されております。そのような労使協議に基づきます職業訓練ということを前提に、新しい港湾労働の職域に何とか転換していただけないかということを前提に対応を考えていただいたらどうかというふうには基本的には思っております。  しかし、はしけの乗組員の方で高齢であり、あるいはそのような転換が無理だという方もおられると思います。私ども、そのような場合には、離職もやむを得ない場合の対策として、これも労使間の協定に基づきます生活助成金あるいは離職の助成金というものがことしもまた上積みされておるわけでありますが、そのような形での労働者に対する手当てがなされて、何とか労使話し合いのもとで対策が進められるように十分指導してまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  53. 近江巳記夫

    ○近江委員 それは運輸省としていわゆる安定協会の方に、こういうことがあるから十分配慮してくれというような話はされていると思うのですけれども、当然そういうことはもう予想されておるわけですから、それじゃ従来と違って安定協会はどういうジャンプといいますか、どういう新たな対策、また既存の対策についてもどれだけのプラスといいますか、そういう法案提出に伴って構えをしているのですか。安定協会に関してひとつお答えいただきたい。
  54. 阿部雅昭

    阿部説明員 労働安定協会、これは現在のところ任意法人でございますが、労使間で設けました団体といたしまして、先ほど申しました五・三〇協定、五十四年の五月三十日に結ばれました労使間の、港湾労働者雇用生活の保障並びに労働条件改善に関する協定、これの実施について基本的な打ち合わせをする機関となっております。  そのような合意に基づきます実施事務は、日本港湾福利厚生協会の中の安定事業部というところで基金を用意いたしまして、そこから各労働者に対する対策が打ち出されて、具体的な助成金の交付等が行われているわけでございますが、ことしの春闘時におきましても、このような法案改正も行われるということで、労使間で突っ込んだ討議がなされました。  私ども、その結果を聞いております範囲で若干申し上げますと、協会として個別企業とは別に上乗せして、業界全体としての労働者対策ということでやっております港湾労働者年金、これは六十歳以上の方、十五年間、年額十五万円支給するということでしたが、ことしからは十七万四千円に増額するということが合意されておりますし、転職資金制度につきましては、生活助成金を、従来四カ月十万円ということでございましたが、一年間十五万円に増額するというような措置が講じられました。また、一年そのような生活助成金を受けてもなおかつ港湾事業の中での新しい職場が見つからない、港湾労働者としての職種を離れなければならない場合の転職資金としまして、最高、勤続二十年以上の方については、従来二百万だったものを二百五十万にするというようなことで、かなりそういう面での保障制度というものが充実したということになっております。  従来、このような制度労働安定協会で労使間の合意のもとで決められておるわけですが、この法人の今後の姿についてもどうするかということが課題となっており、私どもも、そういうようなものを充実していくための対応ぶりを今後さらに検討していきたいというふうに考えております。
  55. 近江巳記夫

    ○近江委員 この法案がいわゆる施行される。私は、影響はかなり大きいと見ております。そういう場合、若干の上積みはあったかもしれないけれども、そういう努力は認めますけれども、今までにないいわゆるこういう法案による影響ということが想定されるわけですよ。こういう、ただ若干の上積みがあったからそれでいいということには私はならぬと思うのです。これはひとつ、運輸省がこの協会の皆さんとも十分話し合われて、さらに一層の十分な対策をとる必要がある。これは春闘の際に若干の上積みがあったからそれでいいのだ、これでいいのですか。今後出てくる影響に対して、こういう程度のものでいいのですか。まず基本的にどのようにお考えなんですか。
  56. 小野寺駿一

    小野寺政府委員 このたびの改正といいますか変更といいますか、そういうことによりまして、従来に比べまして大変進んだものと私ども考えておるわけでございます。  今回の法律改正に伴って起きるいろいろな課題があろうかと思いますけれども、この点につきましては、先ほど申し上げましたように、そこから起きてくる中小企業等への影響というものが余り大きくないようにいたしたい、あるいは労働者の面に関しましても非常に大きな影響を与えるということではないような手だてというものを考えていきたいということでございますが、なおかつ課題が出てくる可能性というものはあり得るわけでございます。したがいまして、今度の改正後におきまして新しいいろいろな課題が出てくるということであるときには、改めてもう一度関係者一同で検討をしなければならないのではないかというふうに考える次第でございます。
  57. 近江巳記夫

    ○近江委員 この料金問題、これも非常に大きな問題なんです。この料金問題ということは、結局、経営の安定ということにつきまして重大な決定的な要素なんです。また、それがやはり即そこに働く方々にも大きな影響を及ぼしてくる。そういうことで、この法案におきましても認可料金ということで設定されておるわけですね。これは御承知のように、やはりそこには過当な競争が行われておるというようなこともございまして、いろいろそこにダンピングが生じてくる、これが一層の悪化を招いておる、私はこのように思うのです。  その料金の問題につきまして、これは行管等でもいろいろと指摘をしておると思うのですけれども、運輸省としては、監査といいますか、これについては今までずっとやっていらっしゃると思うのですけれども、今後、新しいこの改正によりまして、私が非常に心配しておるのは、特に下請が——基盤を持ったところはもう全部下請でしょう。そうすると、荷主といわゆる元請の間において料金は収受するわけですが、下請の料金というものについては、政府はこれをきちっと認可しておるのですか。これは認可事項じゃないでしょう。そうすると、言うならば弱小に対するそういう切り下げ競争というものが一層過熱化してくるのじゃないか。それは即働く皆さんにも影響してくる。だから、この下請料金というものについてはどういうように考えていらっしゃるのですか。
  58. 阿部雅昭

    阿部説明員 初めに、料金ダンピング等の監査の御指摘がございましたので、その点についてお答え申し上げます。  港湾運送事業法に基づく認可料金制度でございますので、運輸省としても、認可した料金が完全に収受されるということを当然に指導の前提としておるわけでございますが、残念ながら、行管でも指摘されたような幾つかの不適当な事態があったということも事実でございます。私ども、それを受けまして、五十八年度におきましては、特に監査の重点を料金に置くということで、抜き打ち監査を実施いたしまして、違反事実が認められた場合には、事業者に対して警告書を発して、早急な改善措置を講ずるよう指導するという措置を講じた次第でございます。  参考に、五十八年度に監査いたしました事業者の数は、本省で実施したものが二十四事業者二百七十七品目、各地方の海運局で実施した分が九十四事業者の七百二十六品目ということになっております。従来にはない大幅な監査をしたつもりでございます。これらにつきましては、現在、不適当な点についての改善報告書を求めるとともに、追跡監査をするといったようなことに取り組んでおる次第でございます。  それから、下請になった場合に、その料金がまた下請ということで非常にダンピングなりピンはねされるのではないかという御指摘でございますが、確かに認可料金制度は、荷主から港湾運送事業者が受け取るものを基本として考えており、それが認可料金であるというふうに考えております。  私ども、下請につきましては、現在七〇%のものについては関連下請ということで、資本的あるいは人的あるいは長期的な契約関係に基づいて安定的な事業者間の関係を結ばせるようにしておるわけでございますし、今般、はしけが直営のものから関連下請になった場合につきましても、関連下請事業については、元請との間での密接な関連のもとに適正な下請料金というものが払われるということを考えておりますし、その点についても十分指導してまいりたいというふうに考えております。     〔委員長退席、浜野委員長代理着席〕
  59. 近江巳記夫

    ○近江委員 この港湾運送事業の場合は認可料金というものがありまして、これは運輸省が監督できる。ところが、下請料金というものについてはあくまで行政指導ですね。そこに差があるわけですね。認可料金すらも守られておらない、そういう現状の中で、下請が今後一層広まってくるわけですね。私はほとんどそういう形になると見ておりますが、そうなってきますと、勢いそういう元請の経営というものはやはり下に対して非常に圧力をかけてくる、一層弱小のそういう業者というものは、また働く諸君は苦しんでくる、私はこう思うわけでございます。したがいまして、従来のようなそういう下請の料金問題につきましてしっかりやりなさいよと言う程度では今後は非常に大きな問題が生じてくる、このように私は思います。したがいまして、これは認可料金に連動した——いわゆるこういう認可料金というのは少ないわけですよ、運輸省は全般に多うございますけれども。それにつながるいわゆる下請の料金でございますから、これは大いに関連といいますか、監督権が直接にはないにしても大きな傘のもとに動いているわけですから、従来のような感覚であってはならぬ、このように思うわけです。  この下請という点になりますと、御承知のように下請代金支払遅延等防止法というものが、これは公取の関係でございます。二重の網がかかってくると思うのですけれども、いずれにしても運輸省としては監督上料金問題等については、下請料金等については十分に影響を行使することができるわけですから、この料金からくる影響というのは非常に大きいと私は思います。そういう点、従来の態度で終始されるのか、この新しい法改正の施行に伴って一層厳しくというか監視の目を光らせるか、この料金問題について、特に下請の料金についてどういう態度をおとりになるのですか。
  60. 阿部雅昭

    阿部説明員 料金問題につきましては、行政当局のみでなしに、事業者の団体におきましても法令遵守運動の一環として昨年来極めて精力的に取り組んでいる課題でございます。私どもその一環といたしまして、基本料金はもちろん、下請料金の適正化につきましても業界内部でも十分そういう配慮がなされるように、また、これはただ公取との関係もございますので、一般に業者間での安易な協定をするといったようなことは避けなければなりませんけれども、適正な下請料金が払われるように指導したいというふうに考えております。  なお、基本的に料金問題につきましては、従来二年ローテーションといったようなことでの改定がある程度繰り返されてきたわけですが、料金が守られない基本には、従来の制度がやはり非常に守りにくい点があるのではないか。例えば休日割り増しとか夜間割り増しといったような制度があり、あるいは悪天候のもとでの荷役の場合は割り増し料金があるといったようなことで、荷主からも、安定した料金体系で実施されないと、その都度料金が変わったのではやりにくいといったような問題指摘もございます。私ども、今協会の中でも料金検討委員会を設けるように指導いたしまして、実際に守られやすい料金体系のもとにおける料金制度といったもののあり方の指導を求めておるところでございますが、そのような料金の問題について基本的に安易に従来の継続のような取り組み方ではなしに、この法律改正をさらに機会といたしまして、料金についてはもっと徹底して簡素合理化され守られやすい、しかも採算ベースにきちっと合った料金であるべきであり、さらに下請との関係においてもその間が適正なものであるように基本的な料金制度についてのメスを入れ、検討を続けていきたいというふうに考えております。
  61. 近江巳記夫

    ○近江委員 それはぜひ阿部さんがおっしゃるようによく検討していただいて、守るべきものは守る、また下に対するそういうしわ寄せが行われないように、十分ひとつ指導監督を要望いたしておきます。  それから、きょうは労働省も来ていただいておるわけでございますが、冒頭私が申し上げましたように、いわゆる業の推進なんですね。ところが、雇用の問題、人というものについてこの法案ではあらわせない。当然そこに出てくる影響については運輸省としても民間と協力して協会をつくったりいろいろなことをなさっているわけでございますが、やはり労働問題、雇用問題ということになってくれば、これは労働省さんによほど力を入れてもらわなければならぬわけでございます。そういう点、これは非常に港湾労働法との関係があり、今回の改正はこういう港湾運送事業法というようなことでございまして、本来は法律にはならないにしてもいろいろ心配な問題が今後派生してくる。それに対して運輸、労働両省はかくかくしかじかの対策を立てておりますという範を、法律じゃなくても私はお出しいただきたかった、このように思うわけでございます。今回の法改正に当たりまして両省よく協議されておると思いますけれども労働省さんからその影響なりまたその対策につきましてお伺いしたいと思います。
  62. 野見山眞之

    野見山政府委員 輸送革新に対応した事業法改正に基づきましてこれが港湾労働者に対していろいろな影響が出てくるということは、作業の中身だとかあるいは雇用その他あると思います。今回の改正に当たりましても、私どもとしても十分な関心を持ち、かつ運輸省とも十分御相談をさせていただきました。基本的に港湾荷役変化に伴う労働者への影響をできるだけ少なくする、そのために、基本は雇用の安定を図ることあるいは労働者の福祉に悪い影響が出ないようにしていくという観点から、私どもといたしましても運輸省の施策にいろいろ御要望を申し上げ、また今後のこの運用につきましても、雇用の安定等の立場から運輸省とも十分御相談を申し上げながら、港湾労働法の的確な運営とさらに港湾労働者雇用の安定に関する諸施策の推進に努めてまいりたいというふうに考えております。
  63. 近江巳記夫

    ○近江委員 ひとつ労働省さんも十分、この法案から出てくる諸問題につきまして、その対応というものにつきまして力を入れていただきたい、特に要望いたしておきます。  それから、特に労働問題で、先ほどからもいろいろ出ておりますが、ILO条約の批准の問題でございますけれども、これは我が国としてやはりこの批准を早くすべきだ、これは一致した意見なんです。これにつきましてもう一度、早急にその態勢で進まれるか、ひとつお伺いしたいと思います。
  64. 野見山眞之

    野見山政府委員 ILOで採択されます各種の国際労働基準につきまして、日本政府といたしましてもできるだけ批准の方向に持っていくというのが基本的な方針でございますし、私ども労働行政立場から見ても、批准の可能なものあるいは適切なものにつきましてはできるだけ批准の促進をしていくというのが基本的な方針でございます。この百三十七号条約につきましても、先ほど御説明申し上げましたようないろいろな御見解等との調整あるいは個々の問題点等についての検討をさらに進めて、批准の方向にいけるような条件整備等につきましても検討してまいりたいと思っております。
  65. 近江巳記夫

    ○近江委員 これはひとつ早急にやっていただくように、十分努力をしていただきたいと思います。  それから、あと同僚議員がおりますので早く終わりたいと思いますが、最後に一点、職域の問題でございますが、御承知のようにコンテナ化等によりましてこれはもう非常に狭められてきておるわけですね。アメリカでは五十マイルであるとか、いろいろ裁判所でも認められたとか、各国ともそれには苦慮しておるようでございますけれども、職域の拡大というか、守るというか、これはやはりそこに働く人々にとっても非常に重要な関心の的でございます。これについて、政府としてただ非常に難しいだとかそういうことで傍観しているわけにはいかぬと思うのですね。これについてはどういうように根本的ないわゆる考えといいますか、また計画をお持ちなのか、お伺いしたいと思います。
  66. 細田吉藏

    細田国務大臣 港湾運送業の職域の問題、大変難しい問題でございますけれども、私ども実は御承知のように、七月一日から貨物流通局というものを新設いたします。これは海、陸、空を通じて物資の流通という見地から見るという局、これまでの縦割り制でなくて、見るというものをつくるわけでございます。港湾運送業も流通局の所管になるわけでございます。また、道路運送法関係も流通局ということになるわけでございます。  したがって、私は希望としては、流通局でこういう点について、いわゆる海、陸、空、接点がございますから、この辺を一体どう調整していくのか、こういう点について新しい角度から、せっかく一つの局にもなることでございますので、十分検討をいたさせたい、かように存じておる次第でございます。そういうことが解決することによって初めて機構改正の効果もあらわれるんじゃなかろうか、かように考えておる次第でございます。
  67. 近江巳記夫

    ○近江委員 この機構改革、貨物流通局ですね、そこで十分検討していただく、これは結構なことだと思います。しかし、局ができたからそれでいい知恵が出るとは限らぬわけでありまして、これは現実の本当に皆が頭を悩ましておる問題でございますし、時間をそんなに先にいつまでもというわけにいかぬ問題だと思いますので、職域の問題につきましては、非常に大きな問題として、ひとつ大臣中心に運輸省全体としてとらえていただいて、そこに働く皆さん方がほぼ納得のできる、そうしたひとつ解決の道というものを見出していただきたい、このように思うわけでございます。  最後に大臣、何回も先ほど私から申し上げておりますように、これは業の推進であり、合理化と皆さんおっしゃっているわけでございますけれども、しかし、そこから出てくるそこに働く皆さんに対する影響雇用の問題あるいは特に零細企業に対する影響等々非常に大きなものが考えられるわけでございまして、そういう点で、ひとつ大臣、それから出てくる影響に対しましては万全の体制をとっていただきたい、構えをしていただきたい、このように思うわけでございます。大臣からその御決意をお伺いいたしまして、私の質問を終わり、同僚委員に譲りたいと思います。
  68. 細田吉藏

    細田国務大臣 先ほど富塚委員の御質問にもお答えいたしましたが、雇用の問題、特にまた零細な企業の問題等については細かく配慮してまいらなければならぬ、かように存じておる次第でございます。
  69. 浜野剛

    ○浜野委員長代理 森田景一君。
  70. 森田景一

    ○森田(景)委員 今回の港湾運送事業法改正案につきましては、先般来臨調答申尊重であるとかあるいは行革関連、このように説明されてまいりましたけれども、私は本当にそうなんだろうか、大きな疑問を持っている一人でございます。この改正案で臨調とかあるいは行革というのは、こういう表現は適切であるかどうかわかりませんけれども、ちょうど明治維新におけるにしきの御旗かあるいは小説やテレビドラマなどでおなじみのあの例の水戸黄門の印籠に相当するような、そういう感じがしてならないわけでございます。  水戸黄門のドラマにつきましては、御案内かと思いますが、私も時々見るわけでございます。大筋としては勧善懲悪というのが筋になっておるようでございますから、視聴者の方々は余り気にとめないかと思うのですけれども、私は見ていて不思議に思いますのは、本来尊敬されなければならない人は、水戸黄門その人だと思うのですね。ところが、このドラマの中では、ドラマですからそうなるのだと思いますけれども、その水戸黄門は悪人といいますか、いろいろな権力を持っている悪人、これに大変厳しい抵抗を受けるわけでございます。悪戦苦闘しております。そして最後に印籠を取り出しまして、この紋どころが目に入らぬか、こういうことでその悪人どもがははあっと平伏する、こういう筋書きに大体なっているようでございます。本人が偉いのか、印籠の方が偉いのかと、私はいつもこんな疑問を感じながら、あのドラマを見るときにはそう思って見ているわけでございます。まことに私は不思議な光景だと思っております。  この港湾運送事業法改正案につきましても、本来の目的よりもむしろ臨調答申の尊重だ、あるいは行革関連だというにしきの御旗か、あるいは徳川家の家紋のついた印籠の方が先行しているように感じられてならないわけでございます。  なぜかといいますと、臨調答申あるいは行政改革というのは、私から申し上げるまでもなく、大きな政府のむだを省いて、そして小さな効率のいい政府をつくっていこう、こういうことが目的であったと私は思うわけでございますが、この改正案では、それではどこが行政改革になって、そしてどのように行政の簡素化がされているのか、そしてその結果としてはどのような効果が上がるのか、こういう点についてまず最初にお尋ねをしていきたいと思います。
  71. 小野寺駿一

    小野寺政府委員 今回の法改正につきましては、昨年三月の臨調答申、さらにことし一月の行革閣議決定を受けて行うものでございます。しかしながら、これは現在の法律による規制と実態の乖離が非常に大きくなっておりますので、この乖離を是正するということであり、制度の面からくる事業者の負担を軽減しようという趣旨であるわけでございます。  法律改正の要点は二つあるわけでございますが、第一の下請制限の弾力化という点につきましては、既に形骸化してきておりますところのはしけ保有義務を軽減して、今日的にもあるいは将来的にも重要であり、かつ意味のある新しい基盤を創設しようということでございまして、経済、社会の情勢の変化に対応して不必要な規制を見直し、効率的な事業活動の確保を図ろうということであるわけでございます。  また、法律改正に関しますところの二つ目の眼目であります船内及び沿岸の業種の統合につきましても、一貫荷役が大半を占めるようになった現状から事業区分を統合いたしまして、許認可の整理統合の一環としてこれを行おうというものでございます。  もう一遍申しますと、すなわち法律に基づく規制と実態とが非常に乖離しておる、これを直さなければならぬという実態課題、これが臨調なり行政改革なりに関しますところの眼目と全く一致しておるということでございます。
  72. 森田景一

    ○森田(景)委員 この臨調答申ではこうなっているわけですね。「港湾運送事業については、港湾運送事業形態の近代化に対応した合理的な制度の確立を図るため、当面、荷役施設や労働者数等の現行免許基準について、最近における荷役効率の向上等に即応してその見直しを行うとともに、船内荷役事業と沿岸荷役事業等の免許区分の統合について検討する。」こういうことですね。
  73. 小野寺駿一

    小野寺政府委員 先生のおっしゃるとおりでございます。
  74. 森田景一

    ○森田(景)委員 それで、その臨調答申の基礎になっているものがあるはずです。私は、この臨調答申の基礎になっているのは、昭和四十七年八月の港湾運送特別委員会の「輸送革新に対応した新しい港湾運送事業について」、それから昭和四十七年十月に港湾局がまとめました「事業法改正方向」、そして昭和四十八年三月運輸政策審議会の「輸送革新に対応した新しい港湾運送事業について」の答申である、このように思うわけでございますが、いかがでしょうか。
  75. 小野寺駿一

    小野寺政府委員 ただいま先生の御指摘のありましたものが幾つかあるわけでございますが、例えば昭和四十八年の運輸政策審議会物流部会の答申等々、大体昭和四十年代の終わりに近い段階で港湾運送に関しましていろいろと検討された場面があったわけでございます。  その段階における港湾運送近代化方向といたしましては、例えば四十八年の運輸政策審議会物流部会の答申、大きい点では四つございますが、その中の一つ、例えば一般港湾運送事業を廃止することなどがあるわけでございますが、この段階におきましては、我が国の高度成長の最後の時期でまだ高度成長が続いておるという時期でございました。大量の貨物がまだまだ相当な勢いで増加していくというふうな考え方が一般的な状況でございました。そういう状況の中で輸送をどうするかあるいは港湾荷役をどうするかというふうな課題として検討したときに考えられたのが、この一般港湾運送事業を廃止することなどあるいは統合を図ること等があったわけでございます。  しかしながら、その後非常に大きなオイルショックを二度受け、国際的な貿易摩擦というものも出てくるあるいは我が国経済全体の成長の度合いが大変鈍化するという状況のもとでは、高度成長の時代とは違った対応策というものを考えていかなければならないということになったと思います。そういう今日の、高度成長時代とは違う状況のもとでどうあるべきかという考え方の中でやるべき手だてというものを、このたびの臨調の答申なり閣議決定なりの筋で示されてきておるというふうに私ども考えております。したがいまして、その背景としておる社会的、経済的な情勢が非常に違うので考え方というものも違ってきておるというふうに私ども考えておる次第でございます。
  76. 森田景一

    ○森田(景)委員 私がお尋ねしたのは、先ほどの臨調答申は昭和四十七、八年代にいろいろと検討されたこういう内容をこういう時代に即応できるような、要するに下敷きになさったのではないですかという質問なんです。時代の背景、事情の背景はわかります。下敷きであることは、四十七、八年の時代問題点ではないか、こういう質問なんです。
  77. 細田吉藏

    細田国務大臣 私からお答え申し上げます。  今回の第二次臨時行政調査会の答申というのは実に広範多岐にわたっております。今のこの問題は許認可のところに入っておるものの一つでございますが、忽然として出てきたものばかりがあるわけじゃなくて、相当多数のものは、今港湾運送事業については先生おっしゃったのですが、これまでいろいろな形で懸案になりあるいは各省でも考え、特に私は行管長官もいたしましたが、行政管理庁において今までにも許可認可等についてはいろいろな研究をしておったわけでございます。そういうものを、言葉が当たるかどうかわかりませんが、集大成した形で一切の問題に触れたのが今度の第二臨調の形でございますので、さっき水戸黄門の話がございましたが、非常に重要にこれを考えていただくことはいかがか、これらのものは今までもやらなければならぬことであり、それをたまたま臨調からの御指摘もありましたので、という程度に御理解をいただくのが妥当ではなかろうか、臨調の方ではあるいは御不満があるかもわかりませんが、私はさように思っておる次第でございます。
  78. 森田景一

    ○森田(景)委員 運輸大臣、非常に正直でいらっしゃいます。そういうふうにおっしゃっていただきますと、あと何だかんだ申し上げなくても済むことになると私は思うのです。ですから、臨調云々じゃなくて、運輸行政の中で、また特に港湾運送事業の中で問題を解決するにはこういう法が必要なんだ、それがたまたま臨調という時期にぶつかったんだ、こういうふうに認めておっしゃっていただけば、細かいことは私、何だかんだ申し上げるつもりはないのです。何かというと臨調が先に来て、運輸省としてこういう政策に前々から取り組んでいるんだけれどもできなかった、この際ぜひやっていきたいんだ、こういう表明が実は率直で、またそういう仕方が業者に対してもあるいは労働者方々に対しても納得できる説明になってくると思うのです。やはり政治はわかりやすくという、これが私どもの鉄則でなければならない。どうかそういう言い回しでなくて、今細田運輸大臣のおっしゃいましたように率直にお答えいただければ、質問も短くて効率もよくなると私も思うのです。その点よろしくお願いしたいと思います。  それで、そういう立場に立ちまして、私も時代の変遷によりまして、また物流構造が変化していくということはやむを得ない、そう思っております。したがって、この革新荷役、これを港湾運送事業の基盤にする免許制度の新設ということについては、これは認めても差し支えない問題だ、こう思うのです。革新荷役を基盤というのですか、この間の参考人の御説明の中ではコンテナ基盤というふうにおっしゃっておられたと思うのです。これは認めていかなければならない問題だろうと私は思うのです。  そこで、私が問題にしたいのは、先ほど行革関連ということで、私は大臣がそんな率直に答弁するとは思わなかったものですから、いろいろと申し上げたいと思っていたのですけれども、行革関連という名のもとに船内、沿岸の両免許を統合して今度港湾荷役事業免許にする、こういうことになっているのですけれども、これには大きな疑問があるというのです。先般の当局の説明では、二つの免許を統合して一つにすることが行革なんだ、こういう答弁をなさったのです。これはずっと私は疑問を持っていたわけです。二つの免許を一つにして本当に行革になるのか。  内容を見ますと、先ほども我が党の近江議員が質問しておりましたけれども、船内荷役、それから沿岸荷役、これは今回港湾荷役事業ですか、こういうふうになるわけです。しかし、それぞれ単独で持っておる方々は六カ月以内に届け出をすれば限定免許、今までの船内なら船内、沿岸なら沿岸に限った限定免許を与えます、付与しますというのですよ。こういう内容になっておるわけです。二つの免許を一つにするから行革だという説明をしていらっしゃりながら、実際は何だかややこしい、今までと変わらないか、あるいは余計ややこしくなるんじゃないだろうかと思う、こういう内容になっておるのです。これのどこが行革なんだろうかと私は伺いたかったわけでございますが、この点についてひとつ御説明いただきたい。
  79. 小野寺駿一

    小野寺政府委員 船内荷役と沿岸荷役の統合の必要性という点についてるる申し上げたわけでございますが、そのことの行政改革との関連というところに焦点を当ててもう少し詳しく申し上げるということにいたしたいと思いますが、免許区分の統合が行われるという点が一つあるわけでございますが、これに関連いたしまして港湾運送事業法に基づく事業計画を運輸大臣としては各事業者から毎年出していただくということがあるわけでございます。それに関連いたしましたいろいろな事務があるわけでございます。そこで、従来でございますと船内、沿岸両方を持った、両方の区分を免許対象として持っておる会社からはそれぞれの区分ごとの事業計画の提出をしていただき、あるいはいろいろな報告をしていただくことになるわけでございますが、これが統合が行われました後は、これを一本化した事業計画になり報告になりというふうな、細かい行政的な手続が大変簡素化されるという事実があるわけでございます。
  80. 森田景一

    ○森田(景)委員 これは運輸省ばかりではなくてほかの関係でも同じようなことが行われておるわけですけれども、二つを一つにする、数の上では確かに半分に減るわけです。しかしその実効はどうかということをいろいろと疑問視されておる問題がたくさんあるわけです。だから、今の御説明のように報告が簡素化される、これは業者にとっては結構なことだと思うのです。それを受ける役所の方ではどの部局のどこが減って、あるいは人数的にはどのように減っていくのか、改革されるのか、そういうことがなしに、そういう目安が——まず最初に、その目安があるのかないのか、その辺からお尋ねしたい。
  81. 小野寺駿一

    小野寺政府委員 今申し上げましたのは非常に事務的な話だけを申し上げたわけでございますが、船内と沿岸との統合によりますところの実体的メリットというものは非常に大きなメリットがあるというふうに私ども考えておるわけでございます。  御承知のように昔の方式荷役、特に輸出あるいは輸入にかかわる貨物輸送におきましては、はしけ輸送が間に挟まりまして、その両側に沿岸荷役と船内荷役が存在するという荷役形態がもう大部分であったわけでございます。そういう時代におきましては、明確に船内、はしけ、沿岸、こういうふうに分けませんと、うまく仕事が進まないということだったと思います。  それが、御承知のように、はしけの分野というものが非常に縮小して、今や本船を岸壁に直接つけて、そして岸壁の上での作業といたしましては沿岸荷役、船の方の荷役としては船内荷役ということになって、これが続いてきておるわけでございます。そして、特にコンテナ埠頭における荷役のごとく、船内と沿岸とを区別すること自体が明確でなく、あるいはその区別することにメリットがないという事態が発生してきておる。  よって、これを業種として統合し、数としても、これは現段階におきましてはおおむね加えた数というものを最低限度の数というふうにいたしたいと考えておりますし、また認可料金の面におきましても、この船内荷役、沿岸荷役の料金を加えたものにほぼ近いというようなところに設定いたしたいと考えておりますが、将来に向かってはさらに一層この船内、沿岸の融合という方向に向かっていくというふうに考えておるわけでございますから、法律制度の面におきましても、このような制度を設定することが、将来に向かって一層港湾荷役近代化合理化を進めていくというふうなことになるという大きなメリットを持っておるというふうに私ども考えておる次第でございます。
  82. 森田景一

    ○森田(景)委員 どうも話がうまくかみ合わないようでございます。私のお聞きしているのは、二つある免許を今度一つにする、それが報告書も簡素化され、行政改革になる、こういう御説明だから、それならば二つの免許を一つに統合することによって、じゃ港湾局なら港湾局のどこのどういう係か、それが要らなくなります、人数的には三人か五人か知りませんけれども、そういう点で確かに行政改革の指示どおりの効力が発生するのです、こういうのがなければ、行政改革というのは、さっき申し上げました印籠じゃないか、こう申し上げたいわけなんです。ところが、それと今のお話はまた別の問題です。どうですか。
  83. 小野寺駿一

    小野寺政府委員 船内荷役と沿岸荷役の統合のことによって役所の定数が減るということはございません。しかしながら、このことによりまして関連する業界におきましては作業報告書を作成するというふうな事務につきましては、これは削減されることになるというふうに考えております。そのような面での改善ということがあるわけでございますが、基本的にはやはり将来に向かって港湾運送分野合理化近代化というものが進みやすくするようにすること、そのこと自体がやはり行政改革の考え方の大きなポイントではないかというふうに私ども考えております。
  84. 森田景一

    ○森田(景)委員 行政改革ということについて、どういうことが行政改革なのか、この辺をちょっと明確にしていただきたいと思うのです。  なぜかといいますと、この二つあった免許を一つにすることが行政改革だという説明がずっとあったわけなんです。それによって役所は人員の変動は全然ありません、ただ業者の方の報告書が軽くなるだけだ。軽くなるかどうか、それはわかりませんよ。わからないけれども、今の説明では軽くなる。これは業者にいろいろなことをやらせることであって、役所の身が軽くなることじゃないでしょう。それでも行政改革と言うのですか。ちょっとその辺を明確にしてください。
  85. 細田吉藏

    細田国務大臣 私からお答え申し上げましょう。  おっしゃっております御趣旨は非常によくわかります。二つあるものを一つにした、それだけで行政改革の本格的な目的が達成できるかというと、これは非常に問題です。現に、話が違いますけれども陸運局と海運局を統合して運輸局をつくります。これも行政機構改革ということでやるわけでございます。局長が一人減りますけれども一人次長ができることになっておるわけでございまして、こういうことが一体行政改革なのかどうかという疑問が基本にある、そういう点を先生おっしゃっておるんだと思うのであります。  本当の行革というのは、先ほどの陸運局、海運局の問題について言うならば、とりあえず一本にする、これは先般御承認をいただいて七月一日からやるわけでございますが、それから後一体どうするのか、例えば総務部門とか企画部門がどうして減らせるのか、どういう仕事のやり方ができるかというところで初めて実が上がるということだと思うのでございます。したがって、今回のこれについても行革ということを余り強く言いますと非常にそういう疑問が起こると思いますけれども、こういうことをやることがそういう方向に向かっての一つの前提になることだと思います。それから、業界の方が届け出をするのに二つのものが一つになるということも、広い意味では許可認可の整理ということから行革の半面であるというふうになっておるんです。ですから、本当は、業界が楽になれば、それが反映して役所側も必ず業務が簡素化されてそれだけ人数が減るか、ほかの仕事に当たることができるということでなければならぬ、かようなことだと思っておるのでございます。  おっしゃるお気持ちはよくわかりますし、このままで行革なれりというふうにはまだ私は考えてはいけない、その前提であり緒につけるという意味だと御理解いただかなければならぬのではないか、本当のところはこれから後どうしていくかということがより重大な問題である、かように考えておるわけでございます。
  86. 森田景一

    ○森田(景)委員 いろいろまだ申し上げたいと思っておりましたけれども大臣率直にお答えになりましたのでこの辺でおさめておきます。  ただ、ちょっと補足しておきたいのは、二本が一本になったと言いながら実際は船内と沿岸という限定があるのです。だから、これは二本一緒になってもちっとも変わらないと私は思っております。大臣はその辺のところをなくしていく、こういう表明でございましたので、その辺を信頼しましてこの問題については終わらせていただきたいと思います。  私が最初に大きな疑問があると申し上げましたのは、先ほども申し上げましたように革新荷役を基盤にするいわゆるコンテナ基盤、これを認めることについてはやぶさかではありません。しかし、現在行われている船内、沿岸の二つの免許を統一すること、これは一緒にしない方がよかったのではないかと私は思っているわけです。  なぜかといいますと、先ほど来もまたこの法案が審議されましてからも大きな問題になりましたのは、この二つの免許を統合することによっていろいろと過当競争が起こったり雇用不安が起こったり、こういう問題の懸念が非常に大きいということが論議されてきたわけです。私もそう思っている一人でございます。ですから今回の法改正で一番心配されているのは雇用の安定をどうするか、このことだろうと思うわけです。  現在、一般港湾運送事業の約半数がはしけ運送を基盤としているわけでございまして、それが今度コンテナを基盤とすることになりますと、はしけ運送はコンテナ荷役事業の下請あるいは隷属化される、こういうことから過当競争、雇用不安の原因になっていることは先ほど我が党の近江委員も申し上げたところでございます。私も前回の質問の中で、法律改正がややもすると大企業立場を守り弱小企業が滅びていくような懸念を持つ改正があるけれども、そういうことのないように配慮しなければならない、港湾労働者も事業所がつぶれれば当然職場を失うことになるわけでございますから、こうした不安のないよう適切な措置が必要であるというふうに申し上げたところでございまして、この点については前回の参考人質疑で、改正賛成立場意見を述べられました高嶋四郎雄氏も言及しているところでございます。この雇用対策につきまして、もう一遍当局の考え方についてお答えいただきたいと思います。
  87. 小野寺駿一

    小野寺政府委員 ただいま先生のお話のございました船内荷役と沿岸荷役の統合に関することから出発する過当競争が起きる、あるいは中小企業の経営基盤が脅かされる、あるいは労働者雇用の場が縮小されるということが、基本的には起きないものと私ども考えておりますが、起きないように十分配慮いたしたいと考えますし、また何か課題があったときにはその課題に対して必要な対策を講ずるように努力いたしたいと考えております。また、新しい基盤の設定に伴いましても課題が起きないように努力いたしたいと考えますし、もし課題が出てくる場合にはそれに対する必要な対策を十分検討し対処してまいりたいと考える次第でございます。
  88. 森田景一

    ○森田(景)委員 時間の関係でもう一つだけ質問させていただきます。  この雇用の安定化ということにつきまして、先般来も港湾労働の職域の確保ということが論議されてまいりました。そのことでお尋ねしていきたいと思います。  コンテナのバンニングデバンニング作業が基本的には港湾労働者の職域であることをこの際確認をなさった、そうして港頭地区において既存港湾労働者により作業を行うよう職域を明確にすべきであるというふうに、いろいろと私たちも要請を受けているところでございます。もっともな御要望だとも思います。この点について運輸省としての見解をお聞きしたいのが一点。  もう一つは、例えば陸上におきましてはタクシーの営業区域が一応限定されているわけでございますけれども、成田とか羽田あるいは伊丹等の空港への旅客を輸送した場合は帰りの営業行為を認めているわけでございます。これは、ある意味の広域的な営業活動を行政が認めていると考えられるところでございます。この港湾運送におきましても、はしけの広域港湾内における営業活動が認められるならば需要の拡大が図られる、内航海運とは違う輸送需要が起こるのではないか、このように考えられるわけでございますが、この点についての見解をお聞かせいただきまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
  89. 小野寺駿一

    小野寺政府委員 コンテナのバンニングデバンニングの件でございますが、コンテナにつきましては、戸口から戸口への一貫輸送というところに非常に大きなメリットがございます関係上、これが国際的にも非常に大きな発展を遂げ、我が国においてもそれが大幅に取り入れられ、これが我が国の輸出輸入にかかわる役割を大きく果たし、これによって我が国の輸出競争力を確保しておるものというふうに考える次第でございます。  一方、港湾運送にかかわる分野という点につきましては、これはやはり社会通念上の港湾区域の中における業務ということになるわけでございますから、そこに一つの大きな乖離と申しましょうか、課題が出てきておるわけでございます。この点に関しましては、私どもといたしましては、今後内陸におけるバンニングデバンニングというものがどの程度行われているかということについて一層の調査をいたしたいと思います。また、施策といたしましては、社会通念上の港湾の区域の中にバンニングデバンニング基地を極力設置するというふうな措置を考えてまいりたいというふうに考えております。  しかし、さらに、先ほど大臣からお話がございましたように、海陸空の貨物輸送にかかわるつなぎ目と申しましょうか、境界線と申しましょうか、そういう点にかかわるあり方という点につきましては、新しく運輸省に設定される貨物流通局における大きな課題として検討すべきことであろうというふうに考える次第でございます。
  90. 阿部雅昭

    阿部説明員 はしけの広域運営の点についての御指摘がございました。  一般的には、港湾運送事業法では指定港湾ということで港湾区域が定められてその中でやることになっておりますが、特別に指定区間制というのが設けられておりまして、現在法律、省令で三十二の指定区間が設定されております。例えば京浜港の中だけではなしに、千葉港と京浜港との間をはしけで結ぶ場合には港湾運送のはしけ運送事業になるというようなことで、かなり広域的な運営がはしけ運送事業についても港湾運送事業として認められております。ただ、これを今後どんどん拡大できるかといった点につきましては、内航海運、これも不況業種で非常に苦慮しておるのが実情かと思いますので、簡単にできる話ではない、かと思いますが、はしけ運送についてもそのような広域運営制度港湾運送事業法の中で採用されておるということについてお答え申し上げます。
  91. 森田景一

    ○森田(景)委員 終わります。
  92. 浜野剛

    ○浜野委員長代理 午後一時十分より再開することとし、休憩いたします。     午後零時四十三分休憩      ————◇—————     午後一時十二分開議
  93. 福家俊一

    福家委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。河村勝君。
  94. 河村勝

    河村委員 まず運輸大臣お尋ねをいたしますが、港湾運送事業法は、戦争中は総動員法に基づく勅令だったと思いますが、戦後、二十六年に届け出制で出発をして、それから二十八年、三十四年、四十一年と三回改正をして、今度が四遍目の改正だと思います。これまでは、とにかく戦後復興して輸送量がどんどんふえてきて、近代化も進んでいくということで、それに対応できるように労働力を確保し、荷役機械をふやし、そうした輸送量の増大あるいは近代化に対応できるように積極的にやっていこうという趣旨で、それなりの改正意味があったと思うのですね。しかし、今度の法改正というのは、どう考えてもこのくらい無目的な法改正はないという印象を強く受けるのです。  行政管理庁からいろいろな指摘がありましたが、その中で法改正をやるというのは、ただはしけの需要がだんだんなくなってきたから、はしけ基盤で成り立っている一種事業者のコンテナ埠頭などでいわゆる統括管理をやろうとする者に下請制限を解除するということと、沿岸と船内とがだんだん共通になってきたからこの境目をなくそうというだけのことであって、ただ、いわば免許基準に合わない実態が出てきたからそれに合わせましょうというだけなんですね。事業法をつくって免許制度を維持している以上、一体港湾運送事業というものを将来に向かっていかなる方向に誘導していくか、そういう目的意識があってそれで法律改正されるのでなければ、そんなものは意味がないんですね。このくらいのものをわざわざ法改正で出して、これだけの時間をかけて審議をして、それで結果は何も実益はない。ただ何となく、だんだん事業が衰退をして雇用不安も起きるであろうというような、そうした不安感を起こさせるぐらいが落ちであって、運輸省としての積極的な意思表示というものは何にもないのですね。こんな法律をどうしてお出しになるのですか。私は、まず運輸大臣にそれを伺いたいと思うのです。
  95. 細田吉藏

    細田国務大臣 お答えいたします。  河村先生の言われるような言い方をなされば、あるいはそういうことも言えるのではないかという感じがしないわけではございません。私自身もややその感なしといたしておりません。しかしながら、問題は、このこと自体は客観的な事情が変わったことによっていつかはやらなければならぬことであり、早い方がよかろうということで、言うならば、これまでの大改正に比べると微改正というような意味で、たまたま臨調の答申にも出ておりますので法案として提出をいたした、こういうことだと御理解いただきたいと思うのでございます。  問題は、今後の港湾運送事業というものを一体どういうふうに考えていくんだという基本的な問題でございますが、法律を出した点はお許しをいただかないといかぬですけれども、どう考えていくかという問題が基本的に大きな問題だと思うのでございます。  私は、戦後の日本港湾運送業が果たした役割というもの、またその裏をなす業法の果たした役割というものは非常に大きなものがあったと言わなければならぬと思うのでございます。これは一般の国民方々に本当に御理解をいただかなければならぬと思っておるのでございます。とにかく高度経済成長期、またこれだけの貿易の伸長、海運貨物増大、そういうものに対応して、港湾運送業の力がなかったために非常に大きな障害を及ぼしたことがない、それから大きなストライキがあって——ストライキがないことはないわけですけれども、外国に見られるような非常に大きなストライキがあって、これが大きな障害になったというようなこともない。私は、全く表彰に値するものではないかとさえ言えるのではないかと思っておるのでございます。  問題は、ここへ来て、貨物がいわゆる軽薄短小といいましょうか、重い物が比較的なくなってきて、軽くなってくる、量的にも少なくなってくる。こういうことで、一方では航空機の貨物が発達してくるといったようなことで、今後の海運そのもの、御承知のように海運そのものが現在大変な不況でございますが、海運貨物そのものの伸びる見通しというものは非常に暗いということなんでございます。そういった意味から、港運業の将来に対してもどう展望していくか。何といいましょうか、ある意味では見通しが非常に立てにくい。少なくとも立てるとすれば、正直なところ影響があると困りますけれども、やや暗い見通ししかないというふうに考えます。  私どもは、そこでコンテナリゼーションというものが一方で進んでおるわけでございますから、先ほどもお答えを他の委員の方に申し上げましたが、港湾運送業のあり方を海と陸、港と陸というふうな分け方をしておりますけれども、ここらにやはりメスを入れる必要があるのではないか。港湾運送業というものと陸上の運送との間をどういうふうに調整をするかという問題をどうしても考えていく必要があるんじゃなかろうか、実はこういうふうに私自身は考えておりますし、今度貨物流通局ができましたら、その最大の仕事一つとしてこのことはなるべく早い時期に検討をいたさせたい。こういうことによって初めて組織改正趣旨も生きますし、それから海陸輸送を截然と切るということ自体がもう今後時勢に合わなくなるということではなかろうかというふうに思っておりますので、どういうふうに結論的にするかは別としまして、少なくともここに非常に大きな問題があるというふうに問題意識だけは強く持っておる、こういうことでございます。  お答えにはならぬかもしれませんけれども、そういうふうに感じております。
  96. 河村勝

    河村委員 海運は確かに今不況ですけれども、海運はまたそんなに急成長はできなくとも、貨物が回復するということはあり得ると思いますが、それにしてもコンテナリゼーションだけでなくて、ロールオン・ロールオフあるいはサイロ、そうした手のかからぬ荷役作業を持つ形態の輸送量はどうしてもふえてくるんですから、そういう意味港湾運送業としては、これがふえるという可能性はまずない、むしろ減っていくであろう、これは趨勢じゃないかと思うのです。  昭和四十五年対五十七年の運輸省でおつくりになった資料で見ますと、雇用減だけで、船内で二四・八%、沿岸で一六・四%、はしけでは六〇・一%、十二年間でこれだけの雇用減があるという数字になっておりますね。こうした趨勢というものは今後どういうふうに、このままずっと推移していくという見通しのもとに、一体港湾運送行政というものを考えておられるのかどうか、その点を伺います。
  97. 小野寺駿一

    小野寺政府委員 港湾における雇用者数の将来見通しという御質問であろうかと思います。  この点につきましては、大変難しい御質問だと思うわけでございまして、ちょっとにわかに答えかねるわけでございます。  それはどういうことかと申しますと、これからの世界経済がどういうふうな発展の方向に向かうか。それに関連して我が国国民経済の規模というものがどう変化するか。また経済全体の中での構造あるいは構成というふうなものがどのように変わっていくか。これは、いろいろな変化方向というものは考えられるわけではございますけれども、それらがどの程度どのように変わっていくかということにつきましては、現在の段階ではいろいろな方々がいろいろな意見を出しておられるところだと思います。  港湾における貨物輸送の活動という点につきましては、これまたかつての高度経済成長のときには貨物量はどんどんふえていった。しかし、これから先は大宗貨物が大きくふえるということにはならないわけでございますから、従来ほどには大きく伸びない。しかしながら、加工度の高いあるいは製品価値の高い貨物につきましては、ある程度の伸びを示していくであろうというふうに私ども考えております。したがいまして、港湾におきましては、そういう価格の高い貨物に対してきめの細かいサービスをしていく体制を確立しなければならないというふうに考えておるわけでございます。これまた、そういう形でふえていくわけでございますが、どの程度ふえていくかという評価につきましては、にわかにお答えできるような材料を今持っておりません。しかし全体的に見まして、現在の数値というものがそう急速に大きく変わっていくということはなかろうというふうに考えておるわけでございます。
  98. 河村勝

    河村委員 日本の場合には、確かに素材で輸入してくるものというのは減ってくるわけですからね。それで付加価値の高いものがふえてくる。だけれども、付加価値の高いものというのはみんなコンテナリゼーションに回っていく方ですね。だからいわゆる旧来の港湾荷役に頼るというものは余りふえない、そう考えざるを得ないのですね。ですから今、余り雇用不安を与えまいという気持ちはよくても、問題を避けて通れないんだから、これだけの法律改正をするならそれに立ち向かっていくということが必要なんで、ただ免許基準をちょいと変えるというのではなくて、今後の構造改善ですね、港湾事業の体質を強化することによって、陸と海との境目がなくなってきたのだから、海から陸へもどんどん上がっていけるのですから、そっちに伸びていくという可能性は私は幾らでもあると思うけれども港湾運送事業という簡囲に関する限りはこれはやはり縮小せざるを得ない。だから、どうしても構造改善による合理化が必要になってくる。  だから、この法律をどうせおつくりになるなら、そうした構造改善というのは実質的には進んでいるんだから、それを受けとめて、そして役所の立場でどう対応するかということを法律の中ではっきりと規定をして、それで構造改善を進めるに当たっての雇用不安も与えない。雇用数は減るにしても、その間の雇用安定というものを図りながらやるというような大方針をやるのが、法律改正をやるなら私は当然のことだと思うのだけれども、それは一体どうお考えですか。
  99. 小野寺駿一

    小野寺政府委員 まず第一に、貨物の見通しのことについてちょっと先生と御意見の違う点がございますので、申し述べておきたいと思うのでございますが、港湾取扱貨物の中で非常に大きな数値、ウエートを現在の段階で占めておりますところの大宗貨物、これは石油の輸入あるいは石油製品の国内における輸送、あるいは製鉄のための鉄鉱石の輸入あるいは石炭の輸入、あるいは木材の輸入、土石類の輸送あるいはその他の輸送、いわゆる大宗貨物でございますが、これは先生おっしゃるように、オイルショックの前後をピークといたしましてその後減少をいたしました。しかしながら、これはこのまま減っていくということではなくて、大体下げどまったのではないかと私ども思っておりまして、これらのかつてのピークのころの数値と現在の非常に下がった数値との間を波動をして将来に向かって動いていく。そしてそれら以外の付加価値の高いものについては順次ふえていくというふうなことになるのではないかと私ども考えておりまして、そういう考え方の中身を詰めながら対策をさらに具体化していきたいと考えているわけでございます。  それから第二点の構造改善の問題につきましては、港湾運送の構造改善にかかわる必要な組織をつくるなどして改善対策事業の充実を順次図りつつあるわけでございます。
  100. 細田吉藏

    細田国務大臣 ちょっと私から補足して、追加をしてお答えしておきたいと思うのですが、今おっしゃっておりますように、港湾運送業の将来はどういう形になるだろう、またどうすべきかということについて我が省としてももう少し基本的な検討が必要だと思っております。ですから、新しい組織ができ、あるいは何らかの方法でこの見通しを立てる、その結論を実行に移していくために法律改正する必要があるかどうか、こういう点は法律改正を要する、こういう点は法律改正しなくても行政上できるというふうな形にして、本格的にこの問題と立ち向かうということが一番大切なことだ、かように考えておるのでございまして、今回のところはそれのきっかけぐらいのところでひとつ御勘弁をいただいて、この問題は雇用との関係もございますし、重大な問題でございますから、私ども、むしろ本格的な取り組みは今後ぜひともやってまいりたい、かように思っておる次第でございます。
  101. 河村勝

    河村委員 認可運賃が守られないというのは、行管の指摘のもう一つの大きな項目で、これは法律そのものでは触れられていないのですけれども、先ほど伺っておりますと、何か特別監査、抜き打ち監査をやって、本省では二十四業者、海運局では九十四業者を徹底的にやったということでありましたが、一体それで結果はどうだったのですか。
  102. 阿部雅昭

    阿部説明員 監査の結果の概要を申し上げます。  監査の結果、特に問題があった分野を申し上げますと、特に不況の業界でございます鋼材を扱っている電炉の関係、あるいは輸入の木材関係、あるいはアルミのインゴットの関係、あるいは肥料、飼料といったような分野に認可料金との格差が見られたというようなことでございまして、そういう点についての改善を特に指導しているわけでございます。  完全収受との割合がどんな感じであったかということの数字を若干御披露申し上げますと、一〇〇%収受すべきところを一〇〇%収受していなかった割合、これは程度についてもいろいろ差がございますので一々は申し上げられませんが、船内荷役部門につきましては、八三%程度が完全収受していたという状況で、残りが収受の点で問題があったということで、船内に関しましては相当かっちりした収受関係が行われておるというふうに見ております、まだ改善すべき点は当然ございますが。船内と比べまして沿岸につきましては、完全収受していたものの割合は五二%程度、はしけの運送に関しましては、はしけが不況その他の関係で一番収受率が低かったということで三七%程度、いかだが六三%というような状況でございまして、これらにつきましては荷主との条件の改善といったようなことについて、個々の事業者はもとより、協会としても地区の協会等で業界同士の話し合いもするとか、いろいろな対応を考えまして、認可料金に一歩ずつ近づけるといったような措置の改善を指導しているところでございます。
  103. 河村勝

    河村委員 はしけの場合は、これはわかります。非常に不況で船腹が余っているから、需給関係でそうなってくる。この問題は後でどうしたらいいか伺いたいと思います。  沿岸の方が半分違反しているというのは、やはり施設バースというのですか、工場の岸壁にそのままにつけて、そのまま輸送が行われるというような種類のもの、こういうのはどうしても港湾運送料金とほかの運送料金、あるいは荷役料金が入りまじってくるから実際問題としてつかめないということなのじゃないかと思うのですが、そうした部門では認可運賃をこれからも本当に守らせることが一体できるとお考えになるのですか。
  104. 阿部雅昭

    阿部説明員 私ども、監査いたしまして、沿岸荷役料金等の収受率が悪いところにつきましては、いろいろな問題があったというふうに反省しております。その一つが、一般的に認可されております料金と実態の運用というのは、例えば沿岸の場合は、特に先生指摘のような施設バースといったような、工場に接続しているようなバースで荷役をする場合には、荷主側が荷役機械を提供するといったようなことで一般の料金の適用がそのままできないようなケース、しかしそういうことについての適切な手続をとっていない。私ども、具体的な実態に一般料金が合わない場合には特殊料金制ということで、これは特殊の利用形態に基づくものとして特殊利用形態のもとでの適正原価、適正利潤をカバーする料金をきちんと認可を受けて取りなさいということを従来も認めておったわけですが、そのような手続をきちっと踏ませてやらせることが必要であろうというふうに考えております。その後、このような沿岸業者につきましても、特殊な荷役形態のもの等につきましてはその都度特殊料金の認可を申請して、認可を受けて実施していただくというふうに考えておりますし、それが相当守られてきているというふうに思います。  将来的にはそういうことをやっても意味がないんではないかという御指摘かとも思いますが、それを単に事業者同士の話し合いに任しておいたのではやはり荷主がどうしても強い立場になりますので、荷主の方が安い沿岸事業者を探して、安いところで、例えば入札方式のような形でやらせるといったような弊害が起こると思いますので、私どもは、あくまで認可料金制、特に特殊な契約形態のものにつきましては特殊料金制という形での認可を受けさせて、認可運賃の実体が守られていくように、実行が期されていくようにしたいというふうに考えております。
  105. 河村勝

    河村委員 これは私は本当は非常に難しいと思うのです。ですけれども、ここで私自身にも余り名案が実はないので、これは今後の問題としてもう少し掘り下げて考えてほしい、それだけを私は要請をしておきます。  先ほど議論があった船内と沿岸の一本化をした、ところが限定免許が残るというのは矛盾じゃないかという話が出ておりましたが、これは明らかに矛盾ですよ。船内荷役と沿岸荷役が一貫輸送になってほとんど区別がつけようがなくなってきた。だから、免許基準としても一本化をしてしまうというのでしょう。それでもなおかつ限定免許を残すというのは意味がないんじゃないですか。これは沿岸荷役をやっていた者も船内荷役をやっていた者も、一本化したらその一本化した免許をそのまま取れるようにしたら少しも支障がないんじゃないかと私は思う。私もその実態は詳しくはないけれども法律的にちょっと見た感じはそうだと思うのですが、なぜかできないわけでもあるのですか。
  106. 小野寺駿一

    小野寺政府委員 船内荷役と沿岸荷役の統合の件でございますが、現状でのコンテナ化の荷役革新が非常に進みましたことに関連いたしまして、船内荷役と沿岸を一貫して行う荷役形態が全体的には七割程度を占めるというふうな状況になってきておりますので、そういう観点から統合した区分を設定するという意味が非常に大きく出てきているわけでございます。     〔委員長退席、鹿野委員長代理着席〕  反面、船内、沿岸一貫して行うということになって、個々の形態で荷役が行われるという場面も残りの場面に存在しておるわけでございます。したがいまして、一貫荷役のメリットというものを——現状制度と乖離している分を早く埋めなければならないという観点及び将来に向かって一貫輸送というものが一層進展するような基盤と申しましょうか、地盤をつくるという必要性があるわけでございますが、あわせて在来的な荷役方式というものの存在を否定したり、あるいはそれを非常に不便にしてしまうということは、現在の港湾秩序というものにあえて大きな変動を与えてしまうということになるのではないかと考える次第でございます。したがいまして、そういう観点から新しい方策というものの発展を助長し、一方、現在の既得権というものを保護する、こういう両建ての事柄というものを考えなければならないというのが実態ではないかと思う次第でございます。
  107. 河村勝

    河村委員 伺っていて、何だかちっともわからないのです。今まで船内の免許だけしか持ってない業者に沿岸もやれるんだよ、沿岸荷役の免許を持っている者には船外だけやっていても結構だけれども、一本化になったんだから船内ができる能力があるならやってもいいじゃないか、何でもないことじゃないですか。何かぐあい悪いことでもあるのですか。
  108. 阿部雅昭

    阿部説明員 船内、沿岸につきまして免許基準が現在ありますと同様に、今後一本化された港湾荷役事業につきましては、やはり一定の免許基準をつくるということになりまして、その免許を受ける方は当然その免許基準に該当しなければならないという要請があると思います。したがいまして、現在船内だけ、あるいは沿岸だけやっている方がすぐ港湾事業の免許を受けられるためには、その部分は免許基準に合ったような形で、例えば労働者をふやすあるいは施設をふやさなければいけないというような義務が課されるという結果になるわけでございます。  しかし、現実に、港の川筋とかあるいは地方港湾であって沿岸荷役事業だけやっている事業者の方が、それだけすぐふやしてやらなければいけないかというようなことを考えますと、免許基準だけきつくされたような形で新たに免許を取らなければならないということは、それらの方々に過重な負担をかけることになるのではないか。当面今の事業を継続したいという方々については、現在の限定された免許でその基準に合った形で運営していただくのが事業を安定して経営するために必要であろうということで、附則で、港湾荷役事業になるけれども届け出た場合には従来の範囲内で事業の継続を認めるといったような経過措置を設けてあるわけでございます。
  109. 河村勝

    河村委員 私に与えられた時間は余りないので、これ以上伺っている時間がないのでやめますけれども大臣、これはちょっとおかしいように思いますよ。一遍お考えおきをいただきます。  はしけの問題ですけれども、やはり今度の改正で一番影響を受けやすいのははしけだと思うのです。運賃収受の場合に三〇%しか認可料金では受け取ってないというくらい弱い立場にある。今度の改正でさっきからいろいろ説明を聞いていますから、時間がございませんので改めて説明を求めませんが、はしけの方で力をつけて守っていかなければ、同じことが続くだろうと思うのです。横浜港でしたか、はしけ業者が集まって共同運航計画をつくった、つくったのはいいけれども、独禁法違反だとかなんとかという疑いがあって停滞をしておるというような話を聞いておりますが、そういうような方法で対抗することも考えておかないと、運賃が守られないというだけではなくて、はしけ業者がこれから構造改善を進めるにしましても、事業と雇用の安定を図りつつやっていかなければならないと思うのだけれども、その点はどうお考えですか。
  110. 小野寺駿一

    小野寺政府委員 ただいま先生から御指摘がございましたように、港湾運送分野におきましてははしけは大変弱い状況にございます。したがいまして、従来はしけの買い上げなどの対策が講じられたわけでございますが、なおまだ弱いというような状況にございます。ただいま御指摘がありましたように、共同運航体制を整備するというふうなことに関しまして関係者検討を開始しておるわけでございますので、こういう点でうまく解決できるものならば解決する、あるいは解決の方向に向かうということが望ましいと考えますので、この検討が進むようにいたしたいと考えておる次第でございます。
  111. 河村勝

    河村委員 これは本当に真剣に考えてください。  そこで、冒頭に申した構造改善関係することでございますが、昭和五十四年に港湾労使で協定が成り立ってできた港湾労働安定協会というものですね、これは雇用の安定、それから今後の問題、年金と転廃業資金その他で今後の構造改善にも大いに役立つもので、私は労使の努力で非常に立派なものができたと思っております。  さっき大幅に給付内容改善されたという説明がありましたので、それは私もわかりました。それで、今まではトン一円という賦課料金を取ってそれを資金にしてやってきたということでございますが、給付の拡大に伴って当然所要資金がふえるはずだが、それはどういうふうに措置しておられますか。
  112. 阿部雅昭

    阿部説明員 従来の運営財源は、先生がただいま御指摘のように、トン当たり一円というものを取り、約六億円を財源として従来の制度を運営してきたという状況にございます。今春闘の際に合意された事項を実施するための財源、これは将来的に見ますと、協会としてもさらに約五億円ほどの負担増になるというような内容になっておりますので、これにつきましては、トン一円といったものをどのように改定するのか。これは当然相手方、荷主あるいは船社その他との話し合いのもとでそのような制度を運営していくわけでございますので、今後協会の方におきまして、鋭意関係者との話し合いをした上で、その財源措置を十分講じ、この制度が健全に運営されるように努力していくということになろうと思います。
  113. 河村勝

    河村委員 そうすると、財源措置を待たずに給付の拡大をやった、とりあえずの資金はある、こういうことですか。
  114. 阿部雅昭

    阿部説明員 労使間の話し合いの経過を申し上げますと、組合側からはトン一円というのをトン三十円まで上げろといったような要求も出されておったということでございますが、日本港運協会においては、労使協定の内容を実施することは協会としての責任であり、協会が責任を持って財源措置を講ずるということを労働組合側に約束しておりますので、今後そのような努力が港運協会サイドにおいて行われるものというふうに考えております。
  115. 河村勝

    河村委員 給付額がかなり大きく改善をされていますね、さっきの説明では。それで、資金の方はまだ決まっておらぬ、しかし実行することは間違いない、こういうことなんですね。  安定協会というのが現在は任意法人になっておりますね。これからのことを考えれば、これを任意法人でなしに本格的な法人格を持ったものにして、もう一つ港運構造改善促進財団というものがありますね、このことは後で時間があったら少し中身を伺いたいのですが、これは財団法人になっておりますが、これと同様にきちんとした資格を与えて、これからも安定して仕事ができるようにしていく。港湾労使の話し合いでやっているんではあろうけれども、これから大きく時代流れが変わっていくときでありますから、運輸省もそう逃げなくとも、こうした賦課料金等については運輸省自体も私は発言権を持ってしかるべきだと思う。そういう立場からもう少し積極的に取り組んでみたらどうかと思うのですが、いかがですか。
  116. 阿部雅昭

    阿部説明員 労働安定協会は昭和五十五年一月一日に設立され、現在任意法人という形になっておるわけでございます。その協会は、社団法人日本港湾福利厚生協会の労働安定事業部、ここが資金を管理しておるわけでございまして、こことタイアップして五・三〇協定の生活保障制度ということの中にございます港湾労働者の年金あるいは転職資金等の労働者対策を推進してきているというのが現状でございます。  この事業は、労使の話し合いのもとにこれまでも健全、かつ円滑に実施されてきていると思いますが、同協会を法人化するかどうかにつきましては、最近労使間でさらにいろいろ話し合いが進んでおるというふうにも聞いておりますし、私どもといたしましても日本港湾福利厚生協会との関係をどうするかといったような問題点についてもなお検討いたしまして、また、共管でございますので、この協会の所管省でございます労働省ともよく相談をして、それらの要請にどう対応するか検討していきたいというふうに思います。
  117. 河村勝

    河村委員 私は港湾労働法の方で一つお尋ねしたいのですが、港湾労働法は長いこと港湾運送事業法と同じように立派な働きをしてきたと思います。思いますけれども、これまた時代が変わってきてしまいまして、港湾労働法というのは主として日雇い労働者の確保、これに調整計画のほとんどのエネルギーが使われているものだと思う。だから、そっちの方が実質的な法律の中身ですね。ところが現実には、今私の持っている資料で見る限り、かつて二万人くらいあった日雇い労働者が五十九年では既に千四百六十二人ということになっていますね。こうなると、港湾労働法考えておった日雇い労働者を確保し、その手当てをするという意味は、なくなりはしないけれどもほんの部分的なものになってしまう。ですから、このまま、ただそういう形でもって運用していくというのはほとんど本当の仕事にはならぬわけですね。ですから、この辺で発想を切りかえてしまって、圧倒的に九九%までが常用労働者になっているという現実なんですから、これに対する雇用の安定、そっちの方に向けて仕事をやっていくというふうになすべきだと思うのだけれども労働省としては現在一体どういうふうに考えていますか。
  118. 矢田貝寛文

    ○矢田貝説明員 御説明申し上げます。  いわゆる荷役革新の進展に伴いまして、港湾運送量に比べまして、必要とする労働力というものが常用労働者を含めまして減少してきているというのは今御指摘のとおりでございます。日雇い労働者につきましても、登録の数で、先ほどお話がありましたようにかつての一万九千人ぐらいから現在千四百人というような状態に変わってきているというとおりでございます。  ただ、現在におきましてもやはり港湾におきます波動性というものは残っておりますし、六大港だけで見ましても月平均で大体二万四千人ぐらいの日雇い求人等の問題が生じております。御指摘のように、かつてこの港湾労働法は、一番メーンでございます常用化促進するというような観点で機能してまいりまして、昔五〇%以上が日雇いに依存していたのが現在三%程度、常用された部分が多くなってきているというようなことでございまして、それなりの効果は上げてきておると思っております。同時に、先生指摘のように、あるいはけさほど来いろいろと御議論ございます技術革新等に対応いたしまして、常用の方々を含めて、例えば教育訓練を充実しなければいけないとかいろいろな問題が生じておりますので、こういった今後の事業のあり方等の行方等も見ながら、総合的な観点港湾労働対策というものを考えていきたい、かように考えております。
  119. 河村勝

    河村委員 時間が来ましたのでやめますが、冒頭に申しましたように、どうも今回の法律改正というのは、大臣も半分お認めになったようであるけれども、本当にとりあえずのほころびを繕ったという感じですね。ですから、今後、将来に向けてもう一遍本質的な検討をされることを要請して、質問を終わります。
  120. 鹿野道彦

    ○鹿野委員長代理 辻第一君。
  121. 辻第一

    ○辻(第)委員 私は、まず最初に港湾運送認可料金のいわゆるダンピングの問題についてお尋ねをいたします。  私、先般、横浜港あるいは神戸港へ参りまして、中小零細な業者の方あるいは労働者の方にお会いいたしました。いろいろお話を聞き、実態を見てまいりましたが、非常に深刻な状態でございます。しかも、港湾運送事業では約八割は中小業者という状態というふうにも聞いているわけであります。そして、先般参考人質疑の中で、森下参考人は、港湾に起こっているさまざまな問題の根底にこの認可料金のダンピングの問題が大きく横たわっているのだ、こういうお話がありました。そのような状況の中で、運輸省は、昭和五十七年十二月の行政監察の結果に基づいて、昨年の一月に日本港運協会に対して関係法令の遵守について指導されました。そして日本港運協会も、法令遵守委員会をつくるなど対応をされているというふうに聞いているわけであります。また、先ほどお話がありましたように監査もされている、こういうふうに聞いているわけでありますが、私は一、二の例を申し上げたいと思うわけでございます。  三菱倉庫、一種元請ですね、それと、三菱倉庫が大きな株主であります共同運輸、三種業者でありますが、この三菱倉庫、共同運輸という形で千葉—横浜間のソーダ灰の輸送で、運賃九十七万四千円の認可のところが三十二万五千円、滞船料百八十六万円のところが四十五万円ですね。これを平均してまいりますと、何と二八%というような数字になるわけであります。これは、共同運輸からさらに下請をさして、そこで払われた料金が認可料金の二八%、もう本当に想像を絶するダンピング、私はそのように認識をしたわけであります。この問題について運輸省は御存じだと思うのですが、いかがですか。
  122. 小野寺駿一

    小野寺政府委員 ただいま御指摘のございました三菱倉庫、共同運輸にかかわる港運料金のダンピング問題につきましては、当該はしけ運送に関係いたしました五つの業者につきまして関東海運局におきまして五月三十日から六月七日までの間に立入監査を実施いたしました。現在、監査の際に集めました関係書類を関東海運局で分析、検討をいたしておる最中でございます。今後、その検討、分析の結果、認可料金違反の事実が明らかになりました際には、港湾運送事業法に基づいて厳正に処分するということを考えておるところでございます。
  123. 辻第一

    ○辻(第)委員 今私が申し上げましたのは、「回漕会報」というのに載っていたことをもとにして申し上げたわけであります。今その問題について調査をされているというふうに聞いておるわけでありますが、これと同様なことが日新運輸倉庫、それから、それの下請と申しましょうか、日新海運というところでも行われておるということであります。もしこれが事実とするならば、皆さん方がああいう通達を出され、また日本港運協会もいろいろと努力をされておるというような状況の中でこのようなことが引き続きやられているということは、非常に重大な問題だと私は思うわけであります。こういうことでありますので、今、もし事実ならば十分な措置をとると言われたことは当然でありますが、このような問題が事実とすれば、再びこのような問題が起こらないようにするためにはどのような措置をとられるのか、お尋ねをしたいと思います。
  124. 小野寺駿一

    小野寺政府委員 私どもといたしましては、港湾運送認可料金が守られるということあるいは重層下請というものが行われないようにするということにつきましては、港湾運送事業法の根幹の重要事項でございますので、その徹底につきまして業界等を通じまして常日ごろ指導いたしておるわけでございますが、今後とも一層その点につきましては強調し、遵守を図るように指導したいと考えております。さらに、昨年来行っております監査というものを必要に応じて実施していくということをいたしたいと思います。これもまた、法令の遵守ということについて有効な手段ではないかというふうに思っております。  しかしながら、なおかつ、法令が守られないという事態が出てくるということになりますのは大変遺憾でございます。今申し上げましたようなことを通じてそういうことが出ないようにいたすわけでございますが、なおかつ、そのような事態が出た場合には、それをきちっと調査をし、監査をし、その成果を踏まえて必要な措置をする、厳正な処分を行う、こういうふうなことによって法令の違反というものが出ないようにいたしてまいりたい、こう考える次第でございます。
  125. 辻第一

    ○辻(第)委員 中小商工業者の方々にとって、また港湾労働者にとって、本当にこの問題は重大な問題だ。ダンピングの問題、再下請の問題ですね。これは現在の港湾運送事業法一つの大きな根幹になっている。今局長も申されましたけれども、大きな根幹の問題でありますので、十分な対処をしていただきたい、これに対しては厳しい対処をしていただきたい、重ねて強調しておきたいというふうに思うわけであります。  前にも、六年前ですか、三井埠頭が港運料金でダンピングをしたということがありましたね。これにも処分を行われたということであります。その当時、当局は、今後とも軽重を問わず厳しくやるとされておったというような経過もあるわけでございます。今度もこのような状況の中で本当に厳しく対処をされるように要望するのでございますが、もう一度その点について御答弁をいただきたいと思います。
  126. 一色昭造

    ○一色説明員 お答えいたします。  先ほど御指摘のありました六年前の事件につきましては、私が実は関東海運局の運航部長をやっておりました、担当者でございます。その当時厳正な処分をしたつもりでございますが、六年たった今日、そういう類似の事例が生じたということについては非常に残念に思っておりますので、そういうことのないように関東海運局を通じ厳正に指導してまいりたいというふうに考えております。
  127. 辻第一

    ○辻(第)委員 認定料金を遵守するという問題、これは、海運の業者だけではなしに、大手メーカーやあるいは流通会社を中心とした荷主サイド、ここにも物を言っていただかなければ、きっぱりとした指導をしていただかない限り解決しない問題だ。今の状況ではどうしても買いたたかれるというような状況があるわけでありますので、ここのところは運輸省だけではなしに通産省も含めて、きちっとした指導と申しましょうか、対処をされるように強く望むものでありますが、そのことについて答弁をいただきたいと思います。
  128. 小野寺駿一

    小野寺政府委員 どのような処分にするか、厳正な処分をいたしたい、こう考えておるわけでございますが、処分の内容等につきましては、これは実態をよく調査し把握した上で対処いたしたいと考えております。
  129. 辻第一

    ○辻(第)委員 次に、私は、ちょっと運輸省と直接ではないのですが、コンテナの通関問題に関連をしてお尋ねをいたします。  ことしの六月八日に大蔵省は輸入コンテナの通関手続について通達を出しました。一定の要件を満たすものについて保税地域以外の場所で通関手続を可能とする内容のものであります。運輸省は御存じでしょうか。
  130. 一色昭造

    ○一色説明員 大蔵省の方から五十九年六月八日に通達が出ておりますことを承知しております。
  131. 辻第一

    ○辻(第)委員 この通達は、単に通関手続あるいは大蔵省所管の通関業だけの問題ではなしに、港湾運送事業にも重大な影響を及ぼすものである、我々はそのように認識をしておるわけであります。  その問題点ということは、いわゆる港が素通りにされる、素通り港湾化を促進をさせる内容のものでありまして、港湾労働者雇用の問題、職域の問題、また業の存廃にかかわる重大な問題だ、ここに大きな影響を及ぼす問題だというふうに考えます。  また、港頭での検査をしない未検査のコンテナが市街地を通過をするということになるわけであります。そうなりますと、そのコンテナの中に危険な内容のものが入っておってもそのまま市街地を通過をする。事によりますと、国民生活と安全に重大な影響を及ぼす、こういうことにもなろうかというふうに思うわけであります。  今のような理由で、殊に沿岸荷役業者から荷役事業の仕事を奪うことにつながるのではないか、特に沿岸荷役事業関係者は重大な関心を持っておるということではないかと思います。運輸省の御見解をお尋ねをいたします。
  132. 小野寺駿一

    小野寺政府委員 コンテナリゼーションの発展というものは世界的な大きな波のようなものであろうかと思います。それは戸口から戸口への一貫輸送というところに大きなポイントがあり、メリットがあるからであろうかと思います。そのことによって我が国産業国際競争力というものもできてきておる。ところが一方、港湾における仕事港湾運送に関する仕事というのは、一般的な常識的なあるいは社会通念上の港湾の中において行われる業務である、そこに大きな差が出てくる、これは一つ課題でございます。コンテナリゼーションに伴う非常なメリットである反面、港湾にとっての一つ課題であろうかと思います。  この点につきましては、先ほど来申し上げているわけでございますが、港頭地帯と内陸におけるバンニングデバンニングの比率がどうなっているか、今後どうなる方向にあるか。これを極力港湾において行うようにするのにはどうするか。私どもとして考えておりますのは、港頭地区バンニングデバンニング基地を設定をするというふうな考え方をとりたいというふうに考えております。  しかしながら、全体として内陸における輸送港湾地帯における輸送とをどう分担するのがいいのかというさらにまた根本的な問題があって、運輸省としての検討課題がそこにあるというふうに考えておるわけでございます。そういう輸送全体の合理化近代化あるいはそのあり方という事柄と通関問題というものは一体となっての課題ではないかと思っておる次第でございます。
  133. 辻第一

    ○辻(第)委員 今、局長の御答弁があったわけですが、やはり港湾運送事業を守っていくという立場から、殊に沿岸荷役事業というのは重大な影響を及ぼすという点で、そこのところを十分認識をしていただいて、この港湾運送事業法の持っている精神を守ってやっていただきたいということを重ねて要望をしておきます。  次に、労働災害の問題で質問をしたいと思います。  せんだって五月二十八日に、本牧のB突堤八号岸壁で、オーシャンプリマ号ではしけ作業員が本船に上る途中、落下をして翌日亡くなるというような労災の死亡事故が起こりました。また、引き続いて、六月五日に本牧C突堤の九号岸壁でアルゴナ・フィティス号の船底で、フォークリフトを積むため船底に角材をおろす作業中、五十本の角材、重さ四百キロが墜落をして一人の方が亡くなる、一人の方が重傷を負われる、こういう労災死亡事故が起こりました。本当にかけがえのないとうとい人命がこの短い期間に二人も失われた。これは重大な問題だというふうに考えるわけであります。この問題に関して運輸省はどのようにお考えになっているか、お尋ねをいたします。
  134. 一色昭造

    ○一色説明員 今先生から御指摘のありました二件の事故報告につきましては、関東海運局の方で承知しております。それで関係事業者から詳細な事情報告を受けておりまして、今後の事故対策をどうするかということを真剣に検討しているところでございます。
  135. 辻第一

    ○辻(第)委員 この問題は、港湾運送事業の中での労働災害という問題を象徴的にあらわしている問題ではないかというふうに思うわけであります。  横浜南労働基準監督署管内で、この五年間に労災死亡が三十二人であります。四日以上の休業の労災発生件数は延べ三千九件という状況であります。しかも「昭和五十八年・港湾運送事業の労働災害の現状」という、横浜南労働基準監督署がことしの三月に出した冊子があるわけでありますが、この中で、これは四日以上休んだ労働災害の件数だと思うのですが、港湾運送事業は三三%ですね。製造業が一八・八%、建設業が二〇・四%、陸上運送業が一二%、その他が一五・九%となっておりまして、港湾運送事業は非常に高い数値を示しております。しかも、その港湾の中で見てまいりますと、船内が三五・八%、関連事業で一九・三%、沿岸で一三・七%ということでございます。今度の法案で二種、四種の統合ということになった沿岸と船内、これを合わせますと四九・五%、非常に高い数値を示しておるわけであります。しかも、本牧が四二・二%、いわゆる革新荷役が行われております革新埠頭であります本牧が四二・二%、これは地域が違うわけでありますが、横浜北の労基署管内で大黒埠頭、そこも非常に高いということで、やはり革新埠頭が非常に高いというのも一つの特徴ではないかというふうに考えるわけであります。  先ほど申しました二例の死亡事故が相次いだわけでございますが、今横浜の港湾労働者の実感としては、最近労働災害が非常にふえてきたのではないかというのが実感だというふうに聞いておるわけであります。この南労働基準監督署のデータを見てまいりますと、いわゆる従事しておられる港湾労働者も減っております。また労働災害も減っているような数値が出ているわけでありますが、殊に昨年の秋ぐらいから労働災害がふえているというのが港湾労働者の実態だというふうに聞いているわけであります。そしていろいろ聞いてみますと、やはり最近労災隠しがふえてきているのではないかという話があるわけであります。そういうことも含めまして、実態は非常に厳しい状況に入ってきているのではないか、こういうふうに考えるのですが、当局の見解はいかがですか。
  136. 小野寺駿一

    小野寺政府委員 港湾労働における労働災害あるいは死亡事故等がかなり存在するということにつきましては、まことに遺憾である、残念であるというふうに思っております。しかしながら、この港湾労働における労働災害を減らしていくということにつきましては、関係業界また私どもも非常に気にしておるところでございます。  それで、従来の関係者の努力の成果というものを私ども、統計で見る限りにおきましては、例えば過去十年間での事故率の推移を全産業港湾荷役業と比較してみますと、全産業では、この十年間に二四%減っておるのに対して、港湾荷役業では七三%減っておるというところからは、かなりの努力の成果が見られるというふうに考えておりますし、また横浜南労働基準監督署における昭和五十三年から五十八年までの港湾運送関係事業の労働災害の数字の推移というものを見ましてもかなり減ってきているというふうに見ておりますので、それなりの成果が上がっているのではないかというふうに考えている次第でございます。  なお、さらに今お話がございました、昨年秋以降、非常にふえているのではないか、あるいは労災隠しがあるのではないかという点につきましては、私ども、今のところ何も申し上げられるような材料は持ち合わせておりません。
  137. 辻第一

    ○辻(第)委員 それじゃ、ことしになってからの労働災害の状態ですね、横浜南労働基準監督署での状況がもしわかったら教えていただきたいと思うのですが、労働省いかがですか。
  138. 加来利一

    ○加来説明員 横浜南監督署管内ということではございませんが、神奈川労働基準局が把握しております、本年に入りましてからの災害は、死亡災害につきましては、残念ながら四件の死亡者の発生を見ております。休業災害につきましては、私どものところでまだ数字を把握しておりません。
  139. 辻第一

    ○辻(第)委員 その四件というのは横浜南の関係ですか。
  140. 加来利一

    ○加来説明員 そうではございません。横浜港全体でございます。     〔鹿野委員長代理退席、浜野委員長代理     着席〕
  141. 辻第一

    ○辻(第)委員 横浜南だけでないので、比較ができないのですが、五年間で三十二件ということでございまして、一年に平均六件ということであったと思うのですが、約半年の段階で四件というと、やはり多くなっているのではないかというふうに私は考えるわけであります。  しかも、先ほど申しました本牧のB突堤の八号岸壁で亡くなった方、五十四歳の日雇い労働者だそうでありますけれども、その仕事内容、亡くなられた日の経過を見てまいりますと、八時半から仕事を始めて、それからレジン粉の袋物、紙の袋だそうですけれども、一袋二十五キロ入っているのですね。それを五人で六千袋、一人で千二百袋です。それをもっこへ積みかえる仕事をやって、それが四時に終了をした。それから今度は、さらに岸壁作業に切りかえるべく、はしけから本船に上る途中で、一・五メートルのはしごのところから手と足が滑ったのか、墜落をされ、はしけの縁に当たってそして海中に落ちられたということですね。首の骨が折れたり、腰の骨が折れたり、大出血があったりというようなこと、さらに嚥下性肺炎というような状況で、翌朝二時ごろに亡くなったということなんですね。  仕事内容を見てまいりますと、それは大変なことなんです。二十五キロの袋を千二百回もっこに載せるというのを、八時半から四時までその仕事を続けた。その後こういう事故が起こっている。労働強化、過密労働がそこに行われていたと私は言わざるを得ないような状況をそこに感じるわけであります。今、横浜を初めとして、港湾労働者の人減らし、合理化、そこで労働強化の状況、過密労働の状況の一つの典型ではないかと私は思ったりもするわけであります。もうこれは落ちるべくして落ちたと言ってもいいような中身があったのではないかというふうに思うわけであります。  もう一例の方は、これはいわゆるフォークリフトを船底に積むための角材が上から落ちてきたということでありますけれども、これもよく検討してまいりますと、この間の参考人質疑の中でもお話があったわけでありますが、効率といいましょうか、そういうものが日本では非常に求められてきたというようなことの中で——クレーンで諸外国は一時間に二十五個のコンテナを移動さす、それを日本は三十個やるということだそうでありますね。あのコンテナをクレーンが持って、こう置いて、またもとへ戻ってくるのに二分でやるというわけであります。私は、聞きますと、神わざだと言ってもいいようなもので、日本人の器用さもあるのでしょうけれども、やはりそれは大手の企業、荷主の方から、早く早くという、スピードアップという要望の中でこういうことがやられてきている。これに代表されますように、非常にスピードアップが求められるという状況の中でこの事故も影響されているのではないか、こういうふうに私は考えるわけであります。  今度二種と四種とが統合されるということになりますと、また定員というのでしょうか、なにが減ってくるということは、この間の御答弁の中で想像される。昨年の九月でしたか、一種の免許の見直しがあった。あの直後に、大手の一種業者でございましたでしょうか、数件が事務職員も含めて百名単位の希望退職者を募るというようなこともあったわけであります。こういうふうに、免許の統合というようなことが起こりますとまた人減らし、合理化ということはもう目に見えている。そのことは労働強化になり、労働の密度の濃化というようなことになります。  そういう点からも、また荷主サイドからのスピードアップの問題、それからいわゆる料金のダンピングの問題、あるいは再下請の問題、こういう問題がこのような労働災害を大きくしているという実態だと私は考えるわけであります。こういう点で、労働災害問題について十分な対応をとっていただきたいということであります。その点について再度運輸省からの御所見を承りたいと思います。
  142. 小野寺駿一

    小野寺政府委員 ただいまお話がございました中でのまず第一点、横浜における死亡事故に関連してのことでございますが、その死亡事故が労働強化によって起きたのかどうかという点につきましては、伺いますところによれば、現在その死亡事故にかかわる実情あるいは状況につきましての調査が行われておるということでございますので、その調査の成果を見て、その事故の中にどのような反省すべき項目があるのかということについて把握した上で、必要な対策を講ずることが必要なのではないかというふうに考える次第でございます。  それから、コンテナの我が国港湾における取り扱いがおおむね一時間で三十個ぐらい、アメリカあたりではかなり少ないという状況があるということでございます。これが我が国で特別労働強化が行われている結果としてそうなのかどうかという点が、一つ課題として今御指摘されております。この点につきましては、私自身の経験でございますが、昭和三十六年に我が国に、アメリカのセミコンテナ船でありますところのプレジデント・リンカーン号という船が横浜港に入港いたしまして、初めてコンテナ荷役を我々日本人に見せたことがございます。そのときに私、ストップウォッチを持ってその荷役をつぶさに見たわけでございますが、そのとき、ちょうど一時間に三十個のコンテナを取り扱いました。それを見まして、これは将来の我が国の、あるいは世界港湾運送に非常に大きな革新をもたらすものであるという実感を持った記憶がございます。  現在の段階で、東京港等のコンテナ埠頭におきましても、大体三十個程度のコンテナが扱われております。我が国港湾関係者一同あるいは港湾労働者も含めてでございますけれども関係者一同がやはり我が国発展のため、社会の発展のために、あるいはそれぞれの労働者賃金水準というものを所定の水準まで高めるということにつきまして一同努力した成果として今日があるのではないかというふうに私は考えている次第でございます。したがいまして、そのようなコンテナ荷役の効率が高いということから出発する、コンテナ埠頭での労働災害がふえているというふうなお話は伺っていないわけでございます。
  143. 辻第一

    ○辻(第)委員 問題は、本当にかけがえのない、とうとい人命にかかわる問題でありますし、また健康にかかわる問題でございます。また、一例を申しますと、ある一種業者のある営業所で、十六人の労働者の中で、沿岸労働者だったと思いますが、十四人まで医者にかかっている。それは首の骨が悪いとか腰椎の椎間板ヘルニアであるとかあるいは腰痛であるとか、いろいろな病気があるわけでありますけれども、十六人中十四人まで医者にかかっている。しかも、そのうち五名がいわゆる職業病の認定を受けている。こういう職場もあるというふうに聞いているわけであります。これは本当に重大な問題だと思うわけでございます。現状のままでいいなんというようなことはとても考えられない。先ほどの局長の御答弁、私は何かそらぞらしい感じがして、もっと真剣にこの問題についてお答えをいただきたいということを考えるわけでございます。  労働省お尋ねをするわけでありますが、横浜南の労働基準監督署の関係では、港湾運送労働者の監督官は何名おられるわけなんですか。
  144. 加来利一

    ○加来説明員 現在はっきりとは記憶しておりませんが、十数名であると記憶しております。
  145. 辻第一

    ○辻(第)委員 横浜南の港湾運送事業の関係のところはそんなに多くないと思いますが、時間がありませんのでそれで結構でございます。  私どもの認識では、非常に少ない。とても十分な対応はできないというのが今日の状態だと思います。どうか十分な対応をとるために御努力をいただきたい。労働省、その点についてどのような対応をとられるのかお答えをいただきたいと思います。
  146. 加来利一

    ○加来説明員 港湾運送事業におきます労働災害につきましては、全般的には減少の傾向にあることは間違いないわけでございますけれども、最近増加の傾向に転じてきつつあるのではないかという御指摘もまたありますので、その傾向は好ましいことではございませんので、労働災害の防止に関する監督指導についてはさらに強化をしてまいりたいと考えておるわけでございます。労働災害防止計画という計画がございますが、その中でも港湾運送事業については重点業種として取り上げて監督指導を行ってきておるわけでございます。
  147. 辻第一

    ○辻(第)委員 終わります。
  148. 浜野剛

    ○浜野委員長代理 吉原米治君。
  149. 吉原米治

    ○吉原委員 同僚議員から各般にわたって質問が出されておりまして、いよいよ私で最後の質問者になるわけでございますが、多少今までの質問の中でもう一歩掘り下げて港湾局側の考え方をただしたい点が数点ございますので、余り重複しないように簡潔にやらしていただきたいと思います。  今回の事業法改正でございますが、この事業法の本質を大きく揺るがすような将来が来るんじゃないかという質問に対して、事業の免許制、料金の認可制という法の根幹については、今回の改正ではさわらないで堅持すると港湾局側は答えていらっしゃいます。わざわざ、今回の改正ではさわらないで堅持をしていくんだというお答えが過般の同僚議員の質問に対してなされております。  しかし、今までの質問の中でも出ておりますように、今回の改正は言ってみれば臨調答申に基づいたものでございまして、その臨調答申は、自立自助あるいは行政の過度の介入の排除という基本理念で出されておるわけでございます。そういうものを受けての今回の事業法改正でございますがゆえに、一層、将来とも事業法という精神が生かされ続けていくのかどうか、まことに不安に思うわけでございます。そういう意味では将来の規制緩和を目指したものではないのだろうか。わざわざ答弁の中で、今回の改正では、という意味深長の表現を使っていらっしゃるわけでございまして、そういう意味で私どもの不安を解消するような御答弁をいただけますか。事業法の根幹は将来とも揺るがせない、こういう御確約をいただけますかどうか、お答え願いたい。
  150. 小野寺駿一

    小野寺政府委員 今回の事業法改正におきましては、港湾運送事業が海陸輸送の結節点である港湾において代替性のない極めて重要な機能を果たしておるんだという特色、それからもう一つ、片や港湾運送事業者は経営基盤の脆弱な中小企業者が非常に多くて、また仕事の面では波動性が大きいという点がありますし、また不安定性があるというふうなことでございますし、労働関係についてもいろいろな問題を持っておる。このような事情がかつての状況と同じようにあるわけでございますので、この事業法の免許制及び料金の認可制という根幹につきましては、これを変えない、堅持していく、こういう考え方でいるわけでございます。将来に向かいましても、このような港湾運送を取り巻く基本的な課題というものが大幅に変わっていくことがない以上、この根幹を堅持してまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  151. 吉原米治

    ○吉原委員 御決意のほどはわかりましたが、局長の御答弁で、別に言葉じりにこだわるわけじゃございませんが、大幅に環境の変化のない限り、こういう前提がついておるわけでございますが、もう一度、大幅な環境の変化というのは一体どういう意味なのか、説明を加えていただきたい。
  152. 小野寺駿一

    小野寺政府委員 今、港湾運送をめぐる課題として、免許制及び料金認可制が必要であることに関する背景となる特殊性がある、それが変わっていない、こう申し上げたわけでございますが、それが非常に変わってきて、その特殊性がなくなる、あるいはプラスとマイナスがひっくり返る、こういうふうなことがあった場合は大幅な変化があったというふうに考えられるのではないかと思っております。
  153. 吉原米治

    ○吉原委員 言われておる意味がどうも私にはよく納得いかないわけで、一体そういう事態は想像されるんでございますか。事業法の根幹を揺るがすような将来的な、今大幅なとおっしゃったり、あるいは特殊性という表現をされておりますが、今局長が言われたような事態が容易に連想される業界でございますか。
  154. 小野寺駿一

    小野寺政府委員 想像はできません。したがいまして、私の言い方が悪かったかもしれません。変えるような事態は今のところ考えられませんと、こう申し上げた方がいいのかもしれません。大変失礼いたしました。
  155. 吉原米治

    ○吉原委員 わかりました。  それでは、そういう精神に基づいて、四、五点ほどございますから、わかりやすく簡潔にお答え願いたいと思うのですが、二種、四種の統合の理由について同僚議員が質問いたしております。議事録を拝見するところによりますと、二種、四種を統合した港湾荷役事業という新しい免許は、単に現在船内と沿岸の免許を持っているからということでなくて、船内、沿岸を一貫して行う体制があるかどうかということをチェックするんだと答えていらっしゃるわけでございますが、この場合に、船内と沿岸を一貫的に行っている部分と、そうでなくて船内と沿岸それぞれ単独で荷役をしている部分、これが一つの会社、一つ企業の中にあった場合に、後段申し上げた単独で荷役をしている部分についても、そういう分野が多い会社、企業に対しても新しい免許がおろされるのかどうなのか、そこら辺をひとつ明確にしておいていただきたい。私の言っておる意味はわかっていらっしゃいますか。
  156. 阿部雅昭

    阿部説明員 お答えいたします。  先生の御質問はこのように受け取ったのでございます。ある港において船内、沿岸というような免許を持ってそれぞれ関連した免許に基づく行為を行っておるけれども、必ずしも常時一貫してやっているわけではない、ある場合には沿岸の作業をやり、ある場合には船内の作業を元請から委託を受けてやる、ただし、少数の場合であれ、それを一貫してやっておるケースもあるような事業者がいた場合に、そのような人は新法が施行された場合に免許申請すれば港湾荷役事業の免許はもらえるのだろうかというような御質問なのかなと受け取りましたが、確かに二つ免許を持っておる方々が、具体的な作業は元請からの委託によってやるわけですから、沿岸だけやるあるいは船内だけやるというケースはいろいろあると思います。しかし、少数の場合とはいえ、一貫してやるような実績が既にある企業であるならば、その一貫輸送ができるという体制がほぼできておるのだろうと思われますので、免許申請があれば、一貫の実績が少ないということが免許のネックになるわけではない、したがって、免許をもらえるのが通例であろうというふうに想定いたしております。
  157. 吉原米治

    ○吉原委員 そうしますと、安心はいたしましたが、どうも実績が少ないというふうなことでもって、せっかくの免許申請だがあなたの場合はだめでございますよということがちょっと心配になった点でございますので、今の実績の多寡については言わない、要はそういう能力といいますか体制を整備されておると認定される者については免許をおろします、こういうふうに理解してよろしゅうございますね。
  158. 阿部雅昭

    阿部説明員 さように理解していただいて結構だと思います。
  159. 吉原米治

    ○吉原委員 それでは、三つ目の質問。この質問がちょっと問題でございまして、統合された免許企業と限定免許の企業との競争がこれからより激しくなってくるだろう、そういう問題について同僚議員は同じく質問をしております。これに対しては、各企業は現在やっておる仕事は継続してやれるわけで問題はございませんというお答えをしていらっしゃる。しかしながら、また後ほど申し上げますが、こういった問題は必ず将来問題が起こってくるように思います。  過日の五月十八日でございましたが、参考人意見聴取を求めた中で、高嶋参考人も言っておりますが、今回の法改正によって一つ企業であっても殺してもらっては困るが、物流の流れについていけない企業は別だと述べていらっしゃる。あるいはまた土屋参考人が、国際競争に勝つためにはコストダウンを迫られている、その意味からも今回の改正案には賛成だと述べていることなどを考えあわせますと、より競争を激化させてそこからコストダウンを強要するといいますか、そういうことが容易に連想されるわけでございまして、結局は弱小資本である中小企業の倒産というところに結びついていくことが容易に考えられるわけでございます。  そういう意味で、統合された免許を持つ企業と単独の免許しか持たない企業との間に料金の競争といいますか、料金体系や免許基準などから来る不公平な競争が強いられることになる。その結果がそこに働く労働者雇用労働条件のしわ寄せにつながってくる。そういう意味では、同じ基盤に立って同じ力で競争する場合はそういった問題が起こりませんが、資本の大小によっては競争の不公平という問題が起きてくる。  したがって、料金の問題が今までの質問の中にも出ておりますが、一体正しい認可料金が授受されておるかどうかは、過般横浜のコンテナ埠頭を見にいったのですが、あのときにも聞きそびれたわけでございますけれども、運輸省の認可料金というのは一体どこでどういうふうにチェックされておるのか。認可料金も一般料金と特殊料金の二本立てになっているようでございますが、それぞれの分野のチェック場所とチェックの方法あるいは最近どういうチェックをされた経過があるのか。  それから、料金問題でついでにお尋ねしておきたいと思いますが、恐らくこれは各業者からの申請に基づいて運輸省は認可をされるはずでございますが、適正な料金というのは一体どういう物差しで決められるのか。業者の申請どおりにお認めになるのか、そうではないと思いますから、どういう観点で適正料金を決められるのか、その内容についてひとつお答え願いたい。     〔浜野委員長代理退席、委員長着席〕
  160. 阿部雅昭

    阿部説明員 料金の問題についてお答え申し上げます。  料金は一般料金と特殊な荷役形態に応じた特殊料金という立て方を認めて二本立てにいたしておりますが、いずれも港湾運送事業法第九条に基づきまして運輸大臣の認可を受けるようになっております。この料金の収受につきましては、きちっと認可を受けた料金が収受されているかということについては、過去におきましても監査あるいは報告徴収ということで努力しているわけでございますが、行政管理庁の勧告もあり、私どもでは昨年度重点的な従来にも増した大幅な監査体制をとって監査を実施したわけでございます。本省で実施いたしました分は二十四事業者、二百七十七品目、各地方海運局で実施いたしました分が九十四事業者、七百二十六品目ということで厳重な立入監査をやり、不適当な者については警告書を出し改善を求め、さらに追跡調査、追跡の監査をやるというようなことを現在いたしておる次第でございます。  それから、認可料金の原価の算定でございますが、これは法律でも書いてございますように、適正原価、適正利潤というものが運賃料金の基本でございます。この適正原価の計算方法につきましても詳細な通達を出しまして、特に特殊料金などを例外的に認める場合につきましても、きちっとそういう計算に基づいた適正原価が賄われ、さらに適正な利潤が計上されていることを確認した上で認可いたしている次第でございます。
  161. 吉原米治

    ○吉原委員 私が現場で働いていらっしゃる皆さん方から聞いておる資料に基づきますと、適正原価、適正利潤、それぞれ港湾局の方でチェックをなさって決められる料金ではないように承っておるのです。つまり、事前に荷主と船会社が話し合いによる料金を決めてしまった後、申請をし、言ってみればそれが自動的に認可をされておる、これがどうも実態のように聞いておるわけです。しかも、取り扱う貨物の七〇%がそういうものだ。一般料金に比較すると比較的安い単価になっておる。荷主と船会社の話し合いによる運賃料金の設定を運輸省が追認をしておるというものにすぎぬのじゃないか。しかし、こういう点はそれこそきちっとしておいていただかないと、将来これは自由化の方向に持っていかれる。もう何も運輸省で認可料金なんというものを決めてみたって実際には守られてない、実態は荷主と船会社が話し合いでもって決めてしまうのだから、もう認可料金の制度は必要なくなるのじゃないか、こういうことにでもなりますと、冒頭私が心配をした、事業法の精神というのは根底から崩れてくるわけでございますから、そういう意味で、本当の意味で、その企業、会社の実態というものを見ながら、適正な原価、適正な利潤を確保するに足る料金を本当に港湾局の方で決められておるのか、私は甚だ疑問に思っておるわけでございます。  そういう意味お尋ねしているわけでございますが、今たまたま審議官の方から厳格な、厳密な監査をやっておるということでございますが、これは抜き打ちにやられるのですか、あらかじめ現場には連絡しての話でございますか、いかがでございますか。
  162. 阿部雅昭

    阿部説明員 五十八年度の監査からは、その実効を期するために抜き打ち監査という形で実施いたしました。
  163. 吉原米治

    ○吉原委員 時間も早くということでございますから、次の質問に移りたいと思います。  十六条関係で統括管理行為について同僚議員が同じように質問をいたしております。これに対してお答えは、個別の荷役形態に応じた具体的な表現を省令で決める、実はこう言ってお答えになっていらっしゃる。つまり、このことだけでは統括管理行為という表現は具体的にわからないわけなのです。今回の十六条関係改正案では、従来の「第二条第一項第二号から第五号までに掲げる行為」に加えて、「コンテナ埠頭その他の運輸省令で定める施設において第二条第一項第二号又は第四号に掲げる行為を運輸省令で定めるところにより自らの統括管理の下において行つたとき。」こういうふうになっておる。こうなってきますと、統括管理というのは直接の作業行為でない、そういうふうに理解をしておいてよろしゅうございますか。まず、そこを先に聞いておきます。
  164. 阿部雅昭

    阿部説明員 お答えいたします。  直接の作業は一種事業者ではなしに、それから委託を受ける沿岸あるいは船内、今後は港湾荷役事業の免許を受けた方がやるのが実態になると思いますので、直接作業は一種事業者が統括管理としてやるわけではございません。その実際の作業の監督なり指示をするのが統括管理という形の行為でございます。
  165. 吉原米治

    ○吉原委員 多分そういうお答えをされるだろうと思っておったのですが、そうなってまいりますと、統括管理基盤というものを持っておる、そういう者に対しても今度は免許をおろすわけでございますから、実際に作業をしなくて、基盤という表現はいかがなものかと思いますが、皆さんが使っていらっしゃるから私もあえて使わせていただくわけでございますが、そういう基盤を持っておれば、直接作業をしなくたって実際の作業はもう全部下請にやらせればいい、こういうことにつながってくるわけでしょう。  そうしますと、この十六条で言う一括下請禁止、こういう精神からいって、統括管理基盤を持った、言ってみれば一種元請とでもいいますか、こういう業者には事業法そのものは適用されなくなるのじゃないか、あるいは事業法の精神からは大きく別扱いの方向になるのじゃないか、こういうふうに実は危惧が生じてくるわけでございますが、一体この統括管理の仕事をどの程度取り扱っておる者が一種元請ということになるのか。そこら辺は省令で定めますということで、前回の同僚議員の質問に対してはまだお答えになっていらっしゃらぬ。そこをはっきりしておいていただきたい。
  166. 阿部雅昭

    阿部説明員 施設基盤といいますか統括管理を行う割合といいますのは、やはり元請業者である以上、元請した貨物の最低五割以上はそのような自分の統括管理のもとでターミナルで扱わせるといったような人を基盤として認めるのが適当であろう。現在はしけを基盤としておられる方の平均は、はしけで基盤といいながら一〇〇受けたものの三%ぐらいしか扱っていないというような実情もございますので、むしろ統括管理を五〇%以上の貨物についてやっているといったものが、新しい最近の埠頭の形態におきます港湾の一種事業者の実態に合うものであろうというふうに考えております。  先ほど先生から、統括管理ということになると、作業をやらない、すなわち人も抱えないでみんな丸投げになるのではないかというようなおそれがあるのではないかという御指摘があったと思いますが、先般コンテナ埠頭も御視察をいただきましたが、あそこの会社の例を参考に申し上げますと、はしけも基盤として持っているわけでございますが、はしけを六隻抱え、関連のはしけ労働者十名いるというのがはしけ基盤の実態でございます。しかし、あそこの会社では従業員全体で二百十七名おりますが、このうち大井のコンテナ関係のターミナルで統括管理の行為を行っている人たち、すなわちコンテナの積みつけについての計画をつくり、あるいはその作業を指示するような人たち、そういう方々は三十一名おるわけでございまして、むしろ基盤において一種業者が実質的な業務を行っておるという形になっておりますので、あわせて説明させていただきます。
  167. 吉原米治

    ○吉原委員 そうなると、ますます私の疑問が生じてくるわけでございますが、結局この統括管理という仕事といいますか、例えば荷主の専用埠頭で荷主みずからがいろいろ指示をして作業をやっている、そういった場合には統括管理行為というのは一体ないという理解に立ったらいいのか。それはそうではなくて、荷主自体の統括管理行為に基づくものだという理解に立つのがいいのか。そうなってまいりますと、メーカーなり業者自体が統括管理基盤を持っておれば一種元請ということで免許を与えてもらえるものなのかという疑問が起きてくるわけです。そこら辺の理解はどういう理解ですか。
  168. 阿部雅昭

    阿部説明員 メーカーの専用埠頭のような場合でございましても、やはり船積みその他の関連する作業は、もちはもち屋に任せるといったような形態が多いものというふうに私ども理解をいたしております。例えば日産の自動車の専用埠頭におきましても、そこでの積み込みその他の作業は一種業者が全部請け負ってやる。ただし、積み込みその他については当然荷主との協議が要るわけですが、作業についての指揮監督、統括管理というのは一種業者が行っている形が多いと思いますので、荷主がそういう者をはねのけてみずから港湾荷役に乗り出すというような形態は余り予想できないのではないか。やはり一種業者にそういう港についての荷役行為は任せ、そこで統括管理した形で実作業を行わせて円滑な港湾運送が行われるというのが、現在でもまた将来についても港の実態ではなかろうかというふうに考えております。
  169. 吉原米治

    ○吉原委員 そうなれば、先ほどの私の質問の、統括管理基盤だけを持っておって、全然仕事はしなくても免許をもらえるかということについては、それはそうはいきませんよというふうに理解していいのですね。そういう者には免許を与えるわけにはいかぬということになるのですね。
  170. 阿部雅昭

    阿部説明員 免許をもらいますには、港湾運送事業の免許基準というものがすべてクリアにならなければならないわけでして、需給関係ですとかその他の作業体制ですとかすべてチェックされますので、単に埠頭の施設を持っているからというだけで港湾運送事業の免許を取得するというようなことは今の制度ではできないというふうに思います。
  171. 吉原米治

    ○吉原委員 わかりました。  最後に質問をいたしますが、これまた五月十一日の同僚議員の関山委員質問に対して、大蔵省の森説明員の答弁によりますと、コンテナ埠頭等ではそのうち七割は港頭地区において検査をしておる、こういうお答え。これは今正しくは読んでおりませんけれども、七割は港頭地区でコンテナの検査をやっております。ところが、現地の皆さんに言わせれば、それはとんでもない話だ、そういう事実はありません、こういう話がございますが、まさかこれはこの委員会でうその答弁をされたはずはないと思いますが、どういう意味で、七割は検査しております、残りの三割につきましてはコンテナ詰めのままで、実入りの状態で輸入申告をすることを認めております、それで、検査の実態というのは三割の中の六%程度しかやってない。税関検査の質問について森関税局監視課長はそういうお答えをされておるわけでございますが、これは事実と反することではないか、実態はそういうことはやられてないという実情のようでございますが、説明を求めたいと思います。
  172. 川上壽一

    ○川上説明員 お答えいたします。  コンテナによりまして本邦に到着した貨物のうち、約七割は港頭地区においてコンテナから取り出されまして輸入申告されております。これにつきましては、他の一般の輸入貨物と同様に、必要に応じて検査を行っておるわけでございます。それから残りの三割についてでございますが、これはコンテナ詰めのまま輸入申告をすることを認めておるわけでございますが、これは輸入者が信用があると認められる場合等に限っておるわけでございますが、これについても必要な場合は当然検査を行っておるわけでございます。  したがいまして、御指摘の七割の貨物につきまして、これすべてについて検査を行っておるわけではございません。必要に応じまして検査を行っておる、かような状況になっておるわけでございます。
  173. 吉原米治

    ○吉原委員 そうすると、七割は検査をしているということでなくて、七割はもう検査をせずにやっておって、三割は、信用の置けると認められたものに限っては検査をやらない、その中の六%ぐらいやっておる、こういうことですか。ちょっと今、私の聞き違いなら訂正しますけれども
  174. 川上壽一

    ○川上説明員 御説明いたします。  御案内のように、税関の定員事情は極めて厳しい状況にあるわけでございます。そうでございますので、すべての貨物について検査を行っておるということではなくて、必要なものにつきまして重点的に検査を行っておるというのが我々の検査の一般的な状況になっておるわけでございます。  それで、コンテナによりまして本邦に到着いたしました貨物のうち、七割のものは港頭地区におきましてコンテナから取り出されて輸入申告されておるわけでございますが、これも検査をする必要があるものにつきまして検査をしておるということでございまして、七割のものすべて検査をしておるということではございません。それで、この七割の貨物につきましてはおおむね一〇%程度のものを検査しております。それから、コンテナ詰めのまま輸入申告されます三割の貨物でございますが、これにつきましてはおおむね六%程度の割合の検査をしておる、かような状況になっております。
  175. 吉原米治

    ○吉原委員 それでは、この間の森説明員のお答えは、今、川上輸入課長のお答えどおりに修正して理解をしてよろしゅうございますな。つまり、森説明員の言っているのは説明不足というか、皆さん、間違いとは言わぬだろうから、説明不足であって、今の川上輸入課長のお答えの方がより実態に即した正確な御答弁だ、こういうふうに理解していいのですね。
  176. 川上壽一

    ○川上説明員 お答えいたします。  さよう御理解いただいて結構だと思います。
  177. 吉原米治

    ○吉原委員 最後に、大臣、御決意を承りたいと思いますが、大変たくさんの議員からいろいろ事業法の問題について御質問をお聞きになっていらっしゃっておりますが、結局、この事業法改正によって大企業が生き延びて中小企業は淘汰されていくというふうな、過当競争にならないように、それがまた働いておる労働者に大きな雇用不安を与えないようにというのが大方の皆さんの質問趣旨だったと思います。そういう意味でこの法案は、間もなく本委員会で成立をするわけでございますが、実施に当たりましても、ひとつ、そういった点について大臣として格別の御配慮をお願いしたい。大臣の決意を承って、私の質問を終わりたいと思います。
  178. 細田吉藏

    細田国務大臣 本法案の審議に際しましては、一貫して、今吉原委員が総括してお話しになったような方向の、もうほとんど委員会の皆様方、党を問わず、ほぼ統一した御方向のような御質疑なり御意見なりがございました。私といたしましては、この審議の状況、特に皆様方の御意向を体して、港湾運送業の重要性、けさほども申しましたが、日本において港湾運送業というのは非常に大きな役割をいたしております。そういったような点からも、今後とも十分留意をしてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  179. 吉原米治

    ○吉原委員 終わります。
  180. 福家俊一

    福家委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  181. 福家俊一

    福家委員長 これより討論に入ります。  討論の申し出がありますので、順次これを許します。若林正俊君。
  182. 若林正俊

    ○若林委員 私は、自由民主党・新自由国民連合を代表いたしまして、港湾運送事業法の一部を改正する法律案に対し、賛成の討論を行うものであります。  近年、コンテナ埠頭等の近代的な港湾施設の整備などによって、我が国港湾における物流の合理化は目覚ましく進展いたしております。その結果、従来の港湾荷役の作業形態は一変し、コンテナ荷役、サイロ荷役、自動車専用船荷役のようないわゆる革新荷役が増加いたしております。この革新荷役は、はしけ運送を介せず、船内作業、沿岸作業が同一の事業者により一貫して行われておりまして、今日までの船内荷役事業、沿岸荷役事業の免許上の区別を維持することの意義が薄れてきております。  他方、コンテナ埠頭等の近代的な施設においては、元請たる一般港湾運送事業者は、実作業の企画、指示等を行うことにより港湾運送の一連の作業を統括管理いたしております。このことは、従来のいわゆる基盤制度として一般港湾運送事業者に対して義務づけられていた、どれか一種別の作業をみずから行うことに比べて、荷主の信頼性等の点から見てまさるとも劣らないものと考えられるわけでありますが、現行法でこれが基盤として評価されていないのは大変不合理であると考えられます。  以上のことから、今回、船内荷役事業と沿岸荷役事業の免許区分を統合して港湾荷役事業とすること及びコンテナ埠頭等の施設においてみずからの統括管理のもとに一定量以上の港湾運送を行う場合にも関連事業者に下請をさせることを認めることとする本法案は、いずれも規制と実態の乖離を是正しようとするもので、時宜に適した適切なものと賛意を表するものであります。  なお、今回の改正を、規制の緩和、自由化への第一歩を踏み出すものであるとして懸念を表明する向きもありますが、全くの杞憂でありまして、今回の改正は、港湾運送事業法の適正な規制を担保するためのものであり、本事業法の根幹に何ら触れるものではないのであります。  また、現に船内荷役事業または沿岸荷役事業を営んでいる者についての経過措置についても、本法施行の日から六カ月以内に届け出れば、従前の業務の範囲内に限定された港湾荷役事業の免許を受けたものとみなすこととされており、従前どおりの営業ができるよう十分の配慮がなされていることも、極めて適切な措置と賛意を表するものであります。  以上、賛成理由を申し述べましたが、港湾における物流合理化の進展は、今後とも引き続いて目覚ましいことが十分予見されます。政府においては、今後の輸送革新の進展等の動向を見きわめつつ、港湾運送事業の規制のあり方について今後も十分検討を行い、効率的な港湾運送事業の実施が図られるよう引き続いて努力すべきことを要望いたしまして、私の賛成討論を終わります。(拍手)
  183. 福家俊一

    福家委員長 関山信之君。
  184. 関山信之

    ○関山委員 日本社会党・護憲共同を代表して、港湾運送事業法の一部を改正する法律案に対し、反対の立場から討論を行うものであります。  本改正案は、昨年三月、臨時行政調査会最終答申の指摘を受け、近年コンテナ埠頭等の近代的な施設の整備による物流合理化の進展がもたらした港湾の状況の変化に対応して、港湾運送事業の規制の見直しを行い、所要の改正を行うものとされております。  本改正案は確かに一面、事業の現況と法の乖離を埋める側面を持つものでありますが、同時にまた、港湾運送事業を取り巻く諸条件の変化考えるとき、業の秩序並びに港湾労働者雇用をめぐる問題に大きなインパクトを与えるものであることは否定できません。港湾運送事業の八〇%を占める中小業者の保護とそこで働く港湾労働者雇用を守るために、ひいては本法の目的とする港湾運送に関する秩序を確立し、港湾運送事業の健全な発達を図り、もって公共の福祉を増進する立場からも、本改正案には反対の立場をとらざるを得ません。  とりわけ雇用の問題については、既に一九七〇年十万三千余人でありました港湾労働者は、その後の激しい革新荷役の進展する中で、一九八三年には七万四千余人にまで落ち込み、この十年余りの間に三万人もの人たちが港の職場を去り、しかも今日なお雇用の不安は日々深刻の度を加える状況にあります。  このたびの法改正により、業界内部の合理化は一層拍車をかけられるでありましょう。すなわち、荷主サイドからは、熾烈な輸出競争に対処するため、商品の価格形成において最も弱い部分としての流通コストにそのしわ寄せを行うでありましょうし、また、船社サイドからは、国際複合一貫輸送体制に向かう競争力強化のため、これまた港湾運送事業に厳しい圧力が加えられることは火を見るよりも明らかであります。  かかる状況にもかかわらず、政府港湾労働者雇用の確保に対する諸対策は極めて怠慢のそしりを免れないものと言わざるを得ません。すなわち、一九七三年、ILO内陸委員会において港湾における新しい荷役方法社会的影響に関する条約及び勧告が採択をされながら、政府は今日なおこの批准を行おうとせず、国内法の整備及び雇用保障制度もいまだ確立をされておりません。また、コンテナリゼーションの進行に伴う港湾運送事業の職域の確保に対する行政の指導や対策も、まことに不十分なものというほかはないのであります。  かような状況を考えまするとき、本改正案の実施によりいたずらに港湾合理化が進行するといたしますならば、弱肉強食の業界再編が進み、その最大の犠牲が港湾で働く労働者の上に及ぶものと断ぜざるを得ないのであります。  なおこの際、具体的な法律改正内容に触れて申し上げておきます。  本改正の第一の点は、船内、沿岸の免許を一本化し、新たに港湾荷役事業の免許を新設するものであります。一見、臨調の言うところの許認可行政の整理合理化とも見られるのでありますが、実態は船内、沿岸ともそれぞれ限定免許として残すものであり、むしろ行政の複雑化、不鮮明化をもたらすものであります。また、本改正によって当然行われるであろう免許基準、運賃料金の見直しにより、船内、沿岸の一貫業者と単独業者の間に競争上不利な立場を免れない差別を生じ、再び業界を過当競争の渦中に投げ入れ、ひいては雇用不安を惹起するものであり、反対であります。  第二の改正点は、一般港湾運送事業者の基盤として新たにコンテナ等近代施設における統括管理行為を追加しようとするものでありますが、明らかにはしけ業者の切り捨てと下請の規制緩和をもたらすものであり、元請機能と作業機能を分離することにより、業界内部における寡占体制の確立をねらうものとして、これまた容認しがたいところであります。  以上、本改正案に対する反対の理由を述べたところでありますが、あわせて港湾運送事業が港湾における労働力のオルガナイザーとして存在することに本法制定の基本的な課題のあることを改めて指摘をいたしまして、討論を終わります。(拍手)
  185. 福家俊一

    福家委員長 森田景一君。
  186. 森田景一

    ○森田(景)委員 私は、公明党・国民会議を代表して、港湾運送事業法一部改正案に関し、反対の立場から討論を行うものであります。  港湾運送事業は、海陸交通の結節点である港湾において、船舶に対する貨物の積みおろし、はしけ運送等を行うものであり、資源等の多くを海外に依存する我が国の物流の面において重要な役割を担っております。しかしながら、今日においては、港湾施設の整備及び物流合理化の進展により、港運法制定当時においては見られなかった各種荷役機械、コンテナ船等が普及し、荷役作業近代化され、実態に適合しなくなっていることの指摘もまた事実であります。だが、港湾荷役が在来型荷役から革新荷役変化していることを理由に、免許区分の見直し等を行おうとする今回の港湾運送事業法一部改正案では、事業者の過当競争や労働者雇用不安を与えるなど多くの問題点があると言わざるを得ません。  我が党が本改正法案に反対する理由の第一は、一種業、元請の免許の中で、事業基盤に施設を加えることと、二種、船内と四種、沿岸を一本化することによって起こる下請系列化等による過当競争は一層激しくなることが予想され、港湾運送料金の完全収受が行われていない現状にますます拍車をかける心配が残されていることであります。  反対の理由の第二は、雇用対策が不完全であるという点であります。反対理由の第一に述べましたような現象から、中小、零細既存の港運事業者並びに港湾労働者の業域、職域が大幅に縮小されることが予想されます。現に、この十数年間に三万人以上の労働者が離職を余儀なくされ、再雇用の道には遠く厳しい環境下に放置されてきたのであります。  離職者及び転業者に関する政府の施策も、必ずしも十分とは言えない現況であります。しかも、今回の法律改正では、港湾荷役近代化への対応として、免許区分を見直すなど事業者への配慮のみに焦点を当てた改正であり、それに伴って予知される労働者雇用対策に関する施策には全く手が触れられておりません。例えば、雇用保険法に基づく雇用安定事業や特定不況業種・特定不況地域関係労働者雇用の安定に関する特別措置法、さらに中小企業事業転換対策臨時措置法等に基づく事業転換の促進に対して、制度の緩和や融資枠の拡大、さらには港湾労働者等の雇用安定に関する新施策は全く見受けられないのであります。また、港湾労働法は、労働省所管であり、今回の法改正から生まれるであろう雇用に関する諸問題に適切なる対処をしているとは到底思えないのであります。  このように職業は、一人の人間から家庭、社会への生存基盤の保障として、いかなる人にも脅かされてならないものであることは憲法にも保障されているとおりであります。  さらに、今日の港湾労働の実情を直視するとき、各界から要望のあった港湾を通過するすべての貨物荷役作業及びこれに前後した関係作業は、すべて港湾運送事業者の業域並びに港湾労働者の職域であることを法的に明確化することは、業の安定が即雇用の安定につながることであります。したがって、今後の物流革新の進展に即応できる内容改正するのであれば、港湾運送事業法上にただいま申し上げた業域、職域の区分を明確化することを同時に現法律案に明示すべきであると思うのであります。  以上の理由により、政府提出の原案に対して反対を表明し、反対の趣旨に賛同する諸氏の意を求めて、討論を終わります。(拍手)
  187. 福家俊一

    福家委員長 河村勝君。
  188. 河村勝

    河村委員 私は、民社党・国民連合を代表して、港湾運送事業法の一部を改正する法律案に対し、賛成の討論をいたします。  しかしながら、質疑の際に申し述べたように、私は、本改正法案は、現行の免許基準輸送近代化に伴う作業実態に適応しなくなったため、船内、沿岸荷役の一元化、はしけ基盤の廃止を行うという応急措置をとるというだけの意義を持つのみで、政府として、将来展望に立って、港湾運送事業を今後いかなる方向に誘導するかという問題意識が何ら見られないことを遺憾とします。政府として、この際、事業の実態と将来についての再検討を加え、抜本的な構造改善対策雇用の安定に取り組んでいくことを強く要請します。  とりあえず、次の諸点についての対処を要望します。  一、船腹過剰の実態のもとで、今回の法改正によって最も強く影響を受けるものははしけ事業とその従業員であると思われます。はしけの共同運航計画等の方策により防衛策を講じつつ、構造改善対策を早急に樹立すること。  二、労使によってつくられた港湾労働安定協会の組織基盤を強化し、雇用の安定と構造改善に必要な諸施策を有効に実行できるような体制をつくること。  三、日雇い労働者対策に偏った港湾労働法の運用を改め、常用労働者雇用の安定に重点を指向すること。  以上の諸点の改善を要請をして、討論を終わります。(拍手)
  189. 福家俊一

    福家委員長 梅田勝君。
  190. 梅田勝

    ○梅田委員 私は、日本共産党・革新共同を代表いたしまして、港湾運送事業法の一部を改正する法律案に対し、反対の討論を行います。  今回の改正案に対し、政府は、革新荷役の出現によって港湾の運送、労働の形態が変化したから実態に即したまでと述べておりますが、既に審議の中でも指摘され、また、参考人の貴重な御意見の中にも示されたとおり、現行の港湾運送事業法のもとにおきましても、現に革新荷役が出現しており、港の近代化は何ら支障なく進められているのであります。  今、全国の多くの港湾運送事業者と働く港湾労働者政府に求めていますのは、現行法で定められた認可運賃や下請制限すら守られずに、大企業の果てしない利潤追求の犠牲に苦しんでいる実態をただし、革新荷役に対応した新しい港湾運送事業秩序を確立するために港運業の職域を明確にし、中小港運業者の経営安定と、港湾労働者雇用不安を解消させることであります。  しかるに、本改正案は、まず第一に、港湾運送事業者港湾労働者のこのような経営と雇用の不安を何ら解消するものとはなっておらず、逆に、一層その不安を増大させるものとなっていることであります。  今回の改正案では、二種と四種の免許区分が統合されますが、これはコンテナ等の輸送革新に対応して、船内荷役と沿岸荷役の統合による一貫輸送体制の確立をねらった大合理化計画であることは、明白であります。この免許区分の統合によって、全国一千十七事業者の約六割は廃業を余儀なくされ、そこで働く労働者は首を切られ、職を失うと言われ、まさに運輸省自身が危惧した重大な労働問題に発展するおそれがあります。港湾労働者は、昨年、既に事業免許基準の改定によって人員が削減され、ここ十数年で三万人以上の人減らしとなっておりますが、今回の法改悪によって、さらに港湾労働者仕事が奪われ、雇用不安が一層増大することは、火を見るよりも明らかであります。  反対理由の第二は、規制緩和による物流の合理化は大手企業港湾支配を強化し、港の公共性を著しく後退させることであります。  今回の改正案では、コンテナ埠頭などにおいて一般港湾運送事業者による統轄管理行為という従来の港運事業とは異質の事業を新たな事業基盤とし、また、これを機に直営率を現行七〇%から五〇%以下に引き下げるなど下請規制の大幅緩和を図るなど、大手荷主、大企業が流通経費の合理化のために直接に港湾の支配強化をねらったことは明白であり、もしこれを許せば中小港湾運送事業者たちまち大資本の系列支配に組み込まれ、あるいは排除される突破口となり、また、海と陸との接点としての港湾のチェック機能など、港の公共性は重大な危機にさらされるのであります。  反対理由の第三は、以上のような免許区分の統合や新たな免許基準の設定は、徹底した人減らし、合理化となり、それは必然的に労働強化と労働環境の極度の悪化をもたらすという点であります。このことは、既に審議の中で明確にされているとおりであり、港湾労働者の職域を守り、労働災害や職業病を防ぐためにも断じて許せないものであります。  最後に、本改正案は、第二臨調の最終答申でも船内荷役と沿岸荷役との免許区分の統合などが含まれていたように、軍拡、国民犠牲の第二臨調、にせ行革の一環として出され、また、日米軍事同盟、総合安保の一環としての位置づけをもって、財界と自民党政府の、流通コストの軽減と貨物輸送のシーレーン防衛の起点終点としての港の支配に向けられたものであります。このような点から見ても、今回の法改正は断じて許せないことを重ねて明らかにして、私の反対討論を終わります。(拍手)
  191. 福家俊一

    福家委員長 これにて討論は終局いたしました。     —————————————
  192. 福家俊一

    福家委員長 これより採決に入ります。  内閣提出港湾運送事業法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  193. 福家俊一

    福家委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     —————————————
  194. 福家俊一

    福家委員長 この際、本案に対し、浜野剛君外四名から、自由民主党・新自由国民連合、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党・国民連合、日本共産党・革新共同の五派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  まず、提出者から趣旨の説明を求めます。浜野剛君。
  195. 浜野剛

    ○浜野委員 ただいま議題となりました港湾運送事業法の一部を改正する法律案に対し附帯決議を付すべしとの動議につきまして、自由民主党・新自由国民連合、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党・国民連合及び日本共産党・革新共同を代表いたしまして、その趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     港湾運送事業法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、本法施行に当たり、次の事項につき、適切な措置を講ずべきである。  一 港湾運送事業法改正に伴い、その運用に当たっては、過当競争、雇用不安等を生じないよう十分配慮すること。  二 中小企業の多い港湾運送事業の事業基盤の充実強化に努めること。  三 コンテナリゼーション等の革新荷役の進展状況についての実態調査を行い、港湾における職域の拡大方策について必要な対策検討すること。  四 認可料金の遵守等港湾運送に関する秩序の確立になお一層努めること。   右決議する。 以上であります。  本附帯決議は、当委員会における法案審査の過程におきまして、委員各位からの御意見及び御指摘のありました問題点を取りまとめたものでありまして、本法の実施に当たり、政府において特に留意して措置すべきところを明らかにし、港湾運送事業法が厳正、かつ適切に運用され、効率的な港湾運送事業の実施が図られるよう万全を期そうとするものであります。  以上をもって本動議の趣旨説明を終わります。
  196. 福家俊一

    福家委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  浜野剛君外四名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  197. 福家俊一

    福家委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。  この際、細田運輸大臣から発言を求められておりますので、これを許します。運輸大臣細田吉藏君。
  198. 細田吉藏

    細田国務大臣 ただいま港湾運送事業法の一部を改正する法律案につきまして、慎重審議の上、御可決をいただきまして、まことにありがとうございました。  また、附帯決議につきましては、政府といたしましてその趣旨を十分に尊重して努力してまいる所存でございます。     —————————————
  199. 福家俊一

    福家委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  200. 福家俊一

    福家委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  201. 福家俊一

    福家委員長 次に、内閣提出船員法の一部を改正する法律案を議題といたします。  趣旨の説明を聴取いたします。運輸大臣細田吉藏君。     —————————————  船員法の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  202. 細田吉藏

    細田国務大臣 ただいま議題となりました船員法の一部を改正する法律案の提案理由につきまして御説明申し上げます。  船員法は、船内秩序の維持と船員の労働保護を目的とする法律であり、昭和二十二年に制定されて以来我が国の海運及び漁業の円滑な発展に重要な役割を担っております。  今回の同法の改正は、昭和五十四年の国際連合総会において採択され、昭和五十五年七月に我が国が署名いたしました女子に対する差別の撤廃に関する条約の批准に備えるための国内法令整備の一環として、女子船員について、その特別規定の見直しを行うとともに、母性保護の充実を図ろうとするものであります。  次に、この法律案の概要について御説明申し上げます。  第一に、妊娠中の女子については、一定の航海に関し、本人が申し出て母性保護上医師が支障がないと認めたとき等を除いて、船内で使用してはならないこととしております。  第二に、出産後八週間を経過しない女子については、出産後六週間を過ぎた者が申し出て母性保護上医師が支障がないと認めた場合を除き、船内で使用してはならないこととしております。  第三に、妊娠中または出産後一年以内のいわゆる妊産婦の船員については、母性保護上有害な作業に従事させてはならないこととするとともに、時間外、休日及び夜間の作業についても、原則として従事させてはならないこととしております。  第四に、妊産婦以外の女子船員については、夜間労働の禁止規定を廃止するとともに、就業制限の対象となる作業を妊娠または出産に係る機能に有害なものに限定することとしております。  以上が、この法律案を提案する理由であります。  何とぞ慎重御審議の上、速やかに御賛成くださいますようお願い申し上げます。
  203. 福家俊一

    福家委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  次回は、来る二十七日午前十時理事会、午前十時十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時四十分散会      ————◇—————