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1984-05-18 第101回国会 衆議院 運輸委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年五月十八日(金曜日)     午前十一時五分開議 出席委員   委員長 福家 俊一君    理事 鹿野 道彦君 理事 浜野  剛君    理事 三塚  博君 理事 小林 恒人君    理事 吉原 米治君 理事 近江巳記夫君    理事 中村 正雄君       加藤 六月君    小山 長規君       佐藤 文生君    田中 直紀君       近岡理一郎君    中馬 弘毅君       中山 正暉君    箕輪  登君       若林 正俊君    兒玉 末男君       左近 正男君    関山 信之君       田並 胤明君    富塚 三夫君       森田 景一君    梅田  勝君       辻  第一君  出席政府委員         運輸省港湾局長 小野寺駿一君  委員外出席者         参  考  人         (社団法人日本         港運協会会長) 高嶋四郎雄君         参  考  人          (岩手大学教授河越 重任君         参  考  人         (船主港湾協議         会委員長)   土屋  啓君         参  考  人         (神奈川労働         組合連絡会議代         表)      森下 賢一君         運輸委員会調査         室長      荻生 敬一君     ――――――――――――― 五月十二日  脊髄損傷者に対する運輸行政改善に関する請願  (佐藤誼紹介)(第四九〇九号)  同(田邊誠紹介)(第四九一〇号)  同(松沢俊昭紹介)(第四九一一号)  同(山中末治紹介)(第四九一二号)  軽車両等運送事業者タクシー営業類似行為規  制に関する請願亀岡高夫君紹介)(第五〇〇  八号)  同(中西啓介紹介)(第五〇〇九号)  同(原田憲紹介)(第五〇一〇号)  同(藤井勝志紹介)(第五〇一一号)  ハイヤー・タクシー等安全輸送確保に関する  請願兒玉末男紹介)(第五〇一二号) 同月十四日  軽車両等運送事業者タクシー営業類似行為規  制に関する請願塚本三郎紹介)(第五一一  〇号)  同(長谷川峻紹介)(第五一一一号)  同(愛野興一郎紹介)(第五二四一号)  同(江藤隆美紹介)(第五二四二号)  同(小沢辰男紹介)(第五二四三号)  同(小泉純一郎紹介)(第五二四四号)  同外二件(鈴木善幸紹介)(第五二四五号)  同外一件(砂田重民紹介)(第五二四六号)  同外一件(田名部匡省紹介)(第五二四七号  )  同(戸井田三郎紹介)(第五二四八号)  同(保利耕輔君紹介)(第五二四九号)  同(森下元晴君紹介)(第五二五〇号)  同(山下徳夫紹介)(第五二五一号)  同外二十四件(石橋政嗣君紹介)(第五二八七  号)  同外一件(奥田幹生紹介)(第五二八八号)  同(金子原二郎紹介)(第五二八九号)  同(関谷勝嗣君紹介)(第五二九〇号)  同(谷垣禎一紹介)(第五二九一号)  同(高村正彦紹介)(第五四一〇号)  同(國場幸昌紹介)(第五四一一号)  同(佐藤文生紹介)(第五四一二号)  同(高橋辰夫紹介)(第五四一三号)  同(中村重光紹介)(第五四一四号)  同(中山正暉紹介)(第五四一五号)  同(畑英次郎紹介)(第五四一六号)  同(吹田愰君紹介)(第五四一七号)  脊髄損傷者に対する運輸行政改善に関する請願  (工藤巖紹介)(第五一七〇号)  同(多賀谷眞稔紹介)(第五一七一号)  同(池端清一紹介)(第五三五一号)  同(福家俊一紹介)(第五三五二号) 同月十五日  脊髄損傷者に対する運輸行政改善に関する請願  (瓦力紹介)(第五四八〇号)  同(野間友一紹介)(第五四八一号)  軽車両等運送事業者タクシー営業類似行為規  制に関する請願外一件(綿貫民輔紹介)(第  五六六六号)  同(倉成正紹介)(第五七八七号) 同月十六日  軽車両等運送事業者タクシー営業類似行為規  制に関する請願小里貞利紹介)(第六〇九  六号)  同(町村信孝紹介)(第六〇九七号)  脊髄損傷者に対する運輸行政改善に関する請願  (福岡康夫紹介)(第六二五一号) 同月十七日  軽車両等運送事業者タクシー営業類似行為規  制に関する請願石橋政嗣君紹介)(第六四二  〇号)  同(奥野誠亮紹介)(第六四二一号)  同(櫻内義雄紹介)(第六四二二号)  同(玉置和郎紹介)(第六四二三号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 五月十四日  東北新幹線の早期完成等に関する陳情書  (第二七五号  )  北陸新幹線早期着工に関する陳情書  (第二七六号)  九州新幹線早期着工に関する陳情書  (第  二七七号)  国鉄地域別運賃制度導入に関する陳情書外七  件(第二七  八号)  国鉄松浦線廃止反対等に関する陳情書  (第二七九号)  過疎地域におけるバス路線維持確保に関する  陳情書(第二八〇  号)  鹿児島・大阪間の航空路線の増便に関する陳情  書(第二八一号)  地域航空システム開発推進に関する陳情書外  一件  (第二八二号) は本委員会参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  港湾運送事業法の一部を改正する法律案内閣  提出第七〇号)      ――――◇―――――
  2. 福家俊一

    福家委員長 これより会議を開きます。  内閣提出港湾運送事業法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本日は、本案審査のため、参考人から意見を聴取いたしたいと存じます。  本日御出席参考人は、社団法人日本港運協会会長高嶋四郎雄君、岩手大学教授河越重任君、船主港湾協議会委員長土屋啓君、神奈川労働組合連絡会議代表森下賢一君、以上四名の方々でございます。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ御出席いただきまして、まことにありがとうございます。本案につきまして、それぞれの立場から忌憚のない御意見を承りまして、審査参考にいたしたいと存じます。  次に、議事の順序について申し上げますが、高嶋参考人河越参考人土屋参考人森下参考人順序で、御意見を順次お一人十五分以内に取りまとめてお述べいただき、次に、委員の質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。  なお、念のために申し上げますが、発言の際は委員長の許可を得ることになっております。また、参考人委員に対し質疑することはできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきを願います。  それでは、高嶋参考人にお願いいたします。
  3. 高嶋四郎雄

    高嶋参考人 ただいま委員長から御指名いただきました日本運協会高嶋でございます。どうぞよろしくお願いいたします。  私は、まずもって、本法改正賛成者立場で申し述べさしていただきますので、どうぞよろしくお願いいたしたいと思います。  御承知のように、戦後の混乱期高度成長下船込み時代というものがございまして、港が非常に混乱したということでございます。たまたまそのような時代を経て、コンテナ船導入への対応時代というような変化等が大きくございまして、このような問題に取り組んで処理していくのに港運業者としてはこの対応処置に非常に苦労したわけでございます。その反面、あくまでも日本経済発展のためにというような物の考え方で、港湾合理化近代化につきましては常に前向きに秩序ある対応処置をとって、港に混乱がないように秩序のある会員指導に当たり、そのような結果が今日にまでいろいろ尾を引いておると思います。     〔委員長退席浜野委員長代理着席〕  ここ十数年の間は、御承知のように、港湾には労使の間においても余り大きな問題が起きることもなく、十分な話し合いのもとに、日本の港はストライキのない港として、港湾労使がそれを誇りとして、お互いに話し合って港の運営をしていくべきではなかろうかというような考え方のもとに、労使話し合いというものは中央において熱心に今日においても続けられておるわけでございます。  今回の港湾運送事業法の改定の内容につきましては、私どもといたしましては、この事業法改正によって現在の数多くの免許業者が一人の業者も脱落しないように、それはそれとしてこの法改正の中であくまでも生きていけるような法改正であっていただきたいという強い考え方を持っておるものであると同時に、また反面、十数年来大きく変化を見てきております革新荷役対応できる法改正は当然の問題としてあるべきだということで、従来の関係についてはすべてが問題なく、現状免許業者として企業努力する限り、何らの問題なく企業発展に努力されていくべきであり、同時に、それの雇用につながっておる港湾労働者方々雇用安定策にも通ずることなので、そのような法改正を心から望んでおったわけでございます。今回の法改正はそのような私どもの持つ考え方というものが十分理解され、取り入れられておるというようなことから申し上げまして、私どもとしては今回の法改正につきましては、業界会員を挙げて、全部が心から賛成しておるわけでございます。  同時に、今日のこの法改正に当たりまして、我々としては現在の港湾運送事業法の中に基本的なものとして生きておる免許制あるいは運賃料金認可制というような問題が少しでも変化を見るというようなことは、これは港湾労使にとって非常に大きな問題でございますので、そういうような問題も何ら変化がないということが最も必要なことであるということも、一つのあくまでも、当初の問題と同じように引き続いての第二の強い要望であったわけでございます。  そのようにして今回の改正は、これら事業規制の根幹を堅持しつつ、不合理になっております新しいコンテナ輸送あるいは革新荷役に対して対応できる新しい方向を示していただいたということであって、本当に今日の法改正は心から大きく評価をしておるわけでございます。  特に、内容の面におきまして、革新荷役には切り離されない船内荷役事業沿岸荷役事業を統合して、港湾荷役事業としたということで、そういう内容になっておりますし、また、港湾地区におけるターミナルを基盤とした、国際複合一貫輸送への対応を必要とする基盤導入した一種事業の新しい免許というものも取り入れられておるということで、と同時に、在来荷役に対する従来の二種、四種の状況というもの、あるいははしけ基盤一種事業というものにつきましても、既存事業者に対しても十分な配慮がされている内容を持っており、再度申し上げますが、港運業界としては、今回の改正案に対しては全面的に賛成しており、ぜひ今国会で成立させていただくように強くお願い申し上げたいと思っておる次第でございます。  先ほど申し上げましたように、港湾運送事業労働問題が最も重大な要素でございまして、常に過去から業界全体の問題として労働問題には異常な関心を持って今日まで取り組んできております。したがいまして、先ほど申し上げましたように、労働組合とは十年来すべての問題について熱心に話し合う、ストライキ等の問題を一切起こさないように、ストライキのないことをお互い誇りとしようじゃないかという考え方の上に立って十分な話し合いをしてきておるというようなことで、もちろん労使のことでございますから、内容的には、労働組合としてお互い話し合いでまとめた内容の中には不満足な面もあるとは思いますが、いずれにしましても、不満足ながらも労使が信頼し合って熱心に話し合いをしておるということが、要するに今日も、今後に向かってもなお、それを基本問題として取り組んで物が進められておるというのが、日本港湾運送事業者労働組合との関係であることも御承知おきをお願いいたしたいと思っております。  しかし、反面、港運業者が現在置かれておる地位、立場というものは、コンテナ輸送先進国から起こって物が進められてきたわけでございますが、その後、発展途上国もこのようなコンテナ輸送が大きく取り入れられてまいりまして、このこと自身による各国との間の革新化の港の競争時代というものも意識の中に、考え方の中に持たざるを得ない問題でございまして、これがこのような環境の中で、現状考え方でなお改善をしなければならない問題が多々あると思いますが、そのことにつきましては今後の問題として十分検討してまいりたいと思っております。  御承知のように、現在、すべてが国際複合一貫輸送というようなものの流れで港はコンテナ貨物通過点となっておりますが、港運は港の中で与えられた仕事に甘んじていられない状況でございまして、だんだん労使の職域なり業域革新化されればされるほど縮められていくというような関係から申しまして、この国際複合輸送等一貫輸送という問題に今後労使が手を取り合って、港から外における職域なり業域に積極的に取り組んでいく必要がある環境になっておるわけでございます。港の中でも埠頭管理運営ということを通じて、それから前に後ろに横にというように基盤を強化していくことが港湾労働安定策にもつながる、業者業域確保安定策にもつながるというようなことで、現在このようなことに積極的に取り組んでまいる環境に立っておるわけでございます。  最近、このように革新荷役が、この十年来で現在八〇%も革新荷役変化を見たというような関係からまいりまして、在来荷役が非常に減少しておる環境から申しまして、一部、業界としましても特に認可料金等に欠くる点が起きておるわけでございますが、この点につきましても業者に自覚を促すとともに、関係荷主業界等にもいろいろ御協力をお願い申し上げて、料金遵守の問題にも、現在、粘り強く指導を繰り返しておるわけでございます。  このようにして、日本運協会としては、労使との話し合いを十分しつつ、良好な労使関係を確立して、またユーザー等とも必要以上にいろいろお話し合いをさせていただくというようなことで、理解と協力を得つつ、港湾物流発展に尽くしていく所存でございます。  本日の事業法の一部改正に当たりましては、現在の改正案が今の港運業者労使にとって非常に必要な内容を持っておるということを重ねて申し上げまして、ぜひとも本改正案が成立することを、諸先生方の理解ある御協力をお願い申し上げまして、参考人としての考え方を申し述べさせていただきました。どうぞ、よろしくお願いいたします。(拍手)
  4. 浜野剛

    浜野委員長代理 どうもありがとうございました。  次に、河越参考人にお願いいたします。
  5. 河越重任

    河越参考人 今回の港湾運送事業法改正案につきまして、港湾近代化などに日ごろ関心を持ってまいりました者の一人といたしまして、いささかの卑見を述べさせていただきたいと存じます。  今日の港湾を私ども見ますにつけて、その威容に圧倒されまして、ひとしきり隔世の感を覚えるものであります。  さて、第一の点は、港湾運送事業法によるところの行政監督についてでございます。  顧みますと、この港湾運送事業法が制定を見ました一九五一年の当時、港湾運送業界弱小企業が乱立いたしまして、熾烈な過当競争を展開し、その過当競争に明け暮れていたわけでございます。そのしわ寄せは、申すまでもなく、ひとり港で働く人々への転嫁にとどまらず、ひいてはその荷物を預けたところの荷主等の利益にも大きな影響を及ぼすことが少なくないところから、そこに港湾運送事業法を制定しまして、行政監督の要を認められたというわけでございます。  それにもかかわりませず、その後、経済発展に伴いまして、港湾荷役量が増大していく中におきまして、法の期待いたしておりましたところとは、必ずしもそのようにはならず、かえって、登録から免許へ、そして、料金については届け出から認可へと規制を強めざるを得なかったのが実情であるわけでございます。このような状態は、今日、港頭に見るところの、コンテナ埠頭等におけるところの施設の近代化によって、もはや過去のもの、杞憂のものとなったのでありましょうか。昨今、時に新聞などにも見られますように、そのおそれはまた形を変えて、さらに強まってきていると言っても過言ではございません。いわゆる国際複合一貫輸送などの動きがそれでございます。  第二の点といたしまして、港湾荷役事業免許についてでございます。  改正法案船内沿岸事業免許港湾荷役事業免許への一本化は、いわば直接的には、臨調の言うところの許認可行政等にかかわる事業規制整理合理化とも見られましょうけれども、後に述べますように、そのことはかえって行政簡素化などの趣旨とは逆に、免許におきましても、むしろ複雑化不鮮明化を招くものではないでありましょうか。そして、そのことによって、むしろ業界を再び過当競争の渦中に投げ入れるものとなるおそれが少なくないのではないかと考えるわけであります。そうした点におきまして、形式的な免許種別の削減、数合わせよりも、むしろより高く広い視野から、国際貿易によって立つところの我が国産業の財産の安全というものがかかっているということも、御賢察いただきたいものだと考えるわけでございます。物流合理化とかあるいは革新荷役などなど、表現にはいろいろございますけれども、いろいろな形態の輸送を組み合わせ、そこにより安く、より早く一貫して運ぶことにしのぎを削るということで、また新たに輸送秩序混乱が懸念されているその折に、見方によりましては、いわばそれに手をかすようなことにもなりかねない港運業免許の、とりわけ船内沿岸の一本化、統合ということは、より慎重に検討されてしかるべきではないかと考えるものでございます。  船内沿岸荷役免許の一本化は、近時、港運業者船内沿岸作業一貫して行うことが少なくない、そして、法規制もそうした実態に合わせる必要があるからというのが、改正の主な理由とされているやに伺っております。しかし、そうした一貫作業と申しますのは、いわば現に、現行免許制のもとにおきましても、既に行われていることであります。といたしますならば、むしろそこにおけるところの事業免許種別手直しというのは、ただ単に免許基準とかあるいは運賃料金の見直しというようなものが、それに伴って必要があるからではないかとも考えられるわけでございます。しかしながら、その多くは、法案で見る限り、政省令にゆだねられておりますし、また一部は、今後においても、その政省令でも手直し程度はできることが、かなり多く含まれていると考えるわけであります。  免許種別改正いたしましても、当面、港湾荷役量が、今日の経済情勢のもとにおきまして、急な増加が望み得ないものといたしますならば、個々の事業者にとりましては、改正の線に沿って、船内免許しか持っていないものは沿岸にもというような形で、事業範囲の拡大は極めて困難であると見られるわけであります。したがって、この改正によりましても、簡素化されるのはいわば関係業者のうち船内沿岸の両方を持っている者、わずかに全国で三分の一、それから五大港では四分の一ほどにすぎないのではないか。といたしますならば、大半の事業者にとりましては、従来どおりの範囲ということでいろいろな限定がつけられざるを得ない。そういたしますと、表の看板は港湾荷役事業と一本化いたしましても、限定つきでさまざま、かえって複雑化することになるのではないかと考えるわけであります。複雑化だけならまだしも、それだけではなくて、大方の期待に反しまして、そうした限定免許しか受けることのできない中小の業者は、港湾を見ます限りにおいては、免許税のみが倍というぐあいに高くなるということにならざるを得ないわけであります。  しかも、このような一貫作業にかかわります料金は、事業種別、そして、二条の方は作業態様としてはそのままという格好になっておるわけですけれども作業態様の違いから見ますときに、一部の少数の一貫荷役業者につきましては、恐らく競争上優位に立つような料金の設定を遅かれ早かれ認めることになるのではないかと考えるわけであります。そして、それとの関係におきまして相対的に高い料金を設定せざるを得ないところの限定をつけられた免許業者は、言うまでもなく、競争上不利な立場を免れないものとなるでありましょう。そのような結果、顧客をつなぎとめておくためには、結局のところ、せっかくの法改正趣旨に反しまして再び運送秩序を乱すことになるのは避けられなくなるのではないかということを恐れるものであります。そして、そうしたことは、特に現在一つ免許しか持っておりませんところの沿岸荷役業者にとりわけ著しいものになるのではないかと考えるわけでございます。  第三の点は、運賃料金についてでございます。  今回の改正におきまして、法律の条文上は運賃料金には触れるところがないわけであります。しかしながら、事柄の性質上、そこに変動が生ずることは避けられないものと考えられるわけでございます。港湾運送事業法による事業行政監督は、従来から、過当競争によるところの混乱からどう事業を守るかということであったわけでありますけれども、その過当競争のメルクマールの一つは、運賃の収受であるわけでございます。御承知のように、従来とかく業界においては、ダンピングとかあるいは料金の割り戻しなどが行われているということは指摘されてきたところでございます。とりわけ料金は、省令等の決め方もございますけれども、先ほど述べましたように、免許を従来のように事業種別ごとに定めるというようなことになりますと、当然にそこに、船内沿岸一貫した作業料金体系が原則になりまして、むしろその一部であるところの船内なり沿岸なりの料金というのは特殊な形になる。といたしますと、一貫したものに対して、先ほど申しましたように、船内なり沿岸なりという部分を行うものは割高にならざるを得ないわけでございます。そうしたところでより激しい競争にさらされるといたしますと、既存業者のかなりの方々というのは、少し大げさに言いますと、自滅の道が待っているということにもなりかねないのではないかと考えられるわけでございます。  第四の点は、いわゆる一般港湾運送事業にかかわるところの下請規制緩和ということでございます。  この法案によりますと、コンテナ埠頭などに限って、業者がいわゆる統括管理を行うものについては、その他関連下請等への丸投げを認めることになっております。ここに言うところの——まあいろいろな見方があるかもしれませんし、そして、改正法案の文言を見るときに、いろいろ御苦心の跡は忍ばれるわけでございます。しかしながら、現行の法制上、埠頭等において港湾運送、この場合、その前後の脈絡からいたしまして、いわゆる船内作業沿岸作業ということになろうかと考えますけれども、その作業統括管理することは果たして可能であるかということでございます。  つまり、改正案によりましても、事業の種類とは別に、作業態様は従前のまま残されているということがいわばその一つでございます。そして、行政監督上もやはりそうした作業態様を残す必要があったのではないか。そして、少なくとも今日、二条二号のいわゆる船内荷役と言われている作業部分に関する限りは、つまりコンテナ埠頭で申しますと、ガントリークレーンを境にいたしまして船側ということになるわけですけれども、そうした本船への積みつけ、取りおろしというのは、いわば現行法建前から申しますと、海上運送人ないしは船長が、これに合わせて申しますならば統括管理をするということが現行法建前でありますし、国際的な商慣行にもなっておるわけでございます。したがいまして、その場合、管理するといいましても、少なくとも船内作業に関する限りは、第一種の業者というのは、そうした運送人の下での履行補助者にすぎない人がそのもとにおいてみずから統括管理するということはどうも理屈が合わなくなる、余り無理をなさらない方がよろしいのではないかと考えるわけでございます。そうした点で、むしろ一般港湾運送事業者につきましては下請をすることを緩和するということの方が大事ということになっておるのではないかと考えるわけでございます。港湾を今日むしろ施設に合わせて近代化いたしますとするならば、そこで働く人たち、それをあわせて港湾の機能があるわけでございまして、そこら辺の問題をひとつ十分に考慮する必要があるのではないか、むしろそうしたことを含めまして、今後の近代化ということを改めて慎重に御検討いただきたいと考える次第でございます。  大分時間が超過いたしまして、極めて雑駁でございますけれども、一応私の意見の陳述、これで終わらせていただきたいと存じます。(拍手)
  6. 浜野剛

    浜野委員長代理 どうもありがとうございました。  次に、土屋参考人にお願いいたします。
  7. 土屋啓

    土屋参考人 ただいま御指名をいただきました船主港湾協議会の土屋でございます。  港湾運送事業法の一部改正に関する法律案の審議に当たりまして、港運サービスの利用者の一人といたしまして、本運輸委員会におきまして意見を述べさしていただくことをまことに光栄に存じております。  委員長初め諸先生方におかれましては、船主港湾協議会なるものにつきまして、おなじみが薄いかと存じますので、まず簡単にこの団体につきまして紹介をさせていただきます。  船主港湾協議会は、略して我々船港協と申しておりますけれども、我が国の外航関係の船会社が港湾問題を利用者の立場におきまして協調して処理することを目的としまして、昭和三十七年に設立されました団体でございます。会長は日本船主協会会長が兼任をいたしておりまして、そのもとで、現在は日本船の中核六社の港湾関係の担当役員六名をもちまして委員会を構成しまして、港湾関係諸問題に関する全般的な調査研究を行いますとともに、必要に応じまして会員会社を代表いたしまして関係諸団体と交渉を行うことを目的として活動をいたしております。  さて、御審議中の法律案につきましては、在来船時代の荷役形態に即しまして定められました現事業法が、革新荷役方式すなわちコンテナターミナル、穀物サイロ、自動車ターミナル等の経岸一貫荷役方式が急速に普及をいたしまして、ついに大半を占めるに至りましたため、実情に沿わなくなったということで、現状に即して是正を図ろうとされているものと理解をいたしております。具体的には、船内荷役事業沿岸荷役事業を統合して港湾荷役事業とすること、さらに一般港湾事業者基盤に新たに近代設備をもってするターミナルにおきまする統括管理をするターミナル基盤というものを導入されるものと承っております。  これらの改正は、私ども船港協六社が借り受けておりますコンテナターミナルについて見ますと、先日諸先生方にもじきじき御視察をいただきましたとおり、現在のコンテナターミナルの実情に即するものでございまして、妥当なものと考えまして、賛成をいたします。コンテナターミナル運営方式が確立、定着をいたしましてから既に十年弱を経ておることを考えますと、もろもろの事情があったとは存じますが、むしろこの改正は遅きに失したものと考える次第でございまして、早急に改正が成立することを願っております。  四面海に囲まれました我が国の経済発展、国民生活の向上に、日本国海運は重要な役割を果たしておると自負をいたしておるわけでございますが、効率的な海上運送を行うためには、港運協力が必要不可決であることは申すまでもございません。特に、コンテナによりますところの輸送形式が世界のあらゆる港に普及しました第一段階から、新たに内陸地点から内陸地点までの一貫複合輸送方式に発展する第二段階に向かいつつあります現在におきましては、これに即応いたしまする海運、港運の新しい対応が急がれておるわけでございまして、このたびの法改正港運業界基盤の強化と新体制へのより柔軟な対応を可能にするものと期待をいたしております。  ここで、コンテナターミナルの運営の実態に即する改正であるから賛成だと申し上げましたが、コンテナ輸送の沿革及び将来への展望を補足説明申し上げまして、この革命的な輸送変革と言われるコンテナ輸送方式が海運及び港運に及ぼした、また依然として及ぼしつつありますインパクトと、これに対する両業界対応の厳しさをぜひ御理解を得たいと存じます。  顧みますれば、昭和四十年代早々に米国船によりましてコンテナ船配船の報に接しました折は、我が国の海運界、港運界は、まさに黒船来るといった衝撃を受けたものでございますが、その後コンテナ船導入あるいは荷役革新に取り組みまして莫大な初期投資及び革新技術の習得等幾多の困難を克服いたしまして、第一次の輸送革命に対処いたしました結果、現在は北米、欧州、豪州、ペルシャ湾、南アフリカ、東南アジア航路は、完全にフルコンテナ船航路と化しました。また、その他の西アジア航路、中南米あるいはアフリカ航路も、多目的船によるところのコンテナと在来貨物の積み合わせを行う航路と変わりまして、純粋なる在来船はほとんど姿を消してしまっております。  同時に、日本の七大港におきましては、近代的なコンテナターミナルが整備されまして、そこにおいて近代荷役機器を駆使いたしました効率的な荷役方式が完成しておるのであります。この間、もろもろの困難を抱えながら、在来荷役方式から革新荷役方式への迅速な対応、移行を示されました港運業界の積極的な対応と世界一流の荷役能率の達成には、海運業界といたしましても、その努力を高く評価しておるものでございます。  しかしながら、海運界にも大きな誤算がございました。コンテナ輸送の当初は、コンテナ船の建造とターミナルの整備等に莫大な初期投資が必要でありましたので、恐らく行き先は、大手海運業者による寡占体制ができ上がるだろう。したがって、この巨額な投資の回収も順調に行われるのではないかと考えたわけでございます。  ところが、実際には、その後リース業の発展に伴いまして、資金手当てが容易になってまいりましたせいもございまして、アジア諸国を初めといたしまして、世界の多くの発展途上国が続々とコンテナ輸送に進出をしてまいりました。これらの後発船社があるいは貨物留保策による保護政策とか低賃金というものに支えられ、さらに東南アジア諸国の大変急速な経済成長に助けられまして、強力な船社に成長いたしましたために、我が国海運は競争上劣位に追い込まれまして、投資の回収にも事欠きます極めて困難な状況に置かれておるわけでございます。  ひとり海運業界のみならず、港湾業界におかれましても、近隣諸国におけるコンテナターミナルの整備が進んでまいりました結果、初めは相当な数に上りました我が国港湾を経由するフィーダー貨物が大幅に減少したのみならず、安い建設費あるいは低賃金によりまして、安いターミナルコストを武器として、これらの後発ターミナルが貨物の誘致に乗り出してきておりますので、日本ターミナル関係としましても競争を強いられておるわけでございます。安いターミナルコストに基づきまして、安い総合物流コストで近隣諸国が我が国に輸出競争を挑んでくるわけでございますので、日本の輸出貿易の競争力が低下をいたしまして、輸出量が減少するというような事態になりましたものならば、海運界、港運業界にとりましても死活にかかわる問題になるだけではございませんで、我が国全体の貿易の問題にもなりましょう。  コンテナ輸送革命は、日本産業のハイテクノロジー化と軌を一にする絶えることなき技術革新の流れと認識をいたしまして、それにおくれることのないようにということで、幾多の犠牲を忍んでコンテナ輸送の推進に取り組んでまいったわけでございますけれども、今の置かれております現状は、労多くして報われるところが少ないという現状になりますので、海運、港運業界といたしましても、ある意味で申しましたら、コンテナ輸送革命の被害者に当たるのではないかという気さえするものでございます。  しかしながら、事態はさらに急を告げております。米国海運のデレギュレーションの動きを背景にいたしまして、米国船は、輸送コストの低減をねらいまして、コンテナ船の大型化と一貫複合輸送によるドア・ツー・ドアのサービスをもちまして運送シェアの拡大をもくろんでおるわけでございます。急速に伸びてまいりました台湾船を初めといたしまして、諸外国船社もこれに応戦の構えてあります。  一方、日本海運としましては、運航費の徹底的な合理化、乗組員定員の圧縮等による船費の低減によりまして、ようやく諸外国船に比べまして競争力の回復にめどをつけつつあった折でございますので、さらに新規投資を伴います船隊のリプレースを強いられるのは、既存船隊に関する投資の回収が十分でないということで御説明いたしましたように非常に苦しい状況におりますので、日本船社にとりましては大変つらいところでございます。しかしながら、日本の貿易のセキュリティーのために、日本海運といたしましても何としても新しい事態に取り組み、それから外国船との競争にも打ちかってまいらなければなりません。このために、これからも港運業界の皆様にもいろいろ御協力を願わなければならない点が出てくるものと考える次第でございます。  港運業界の皆さんとしましても、海運に協力しつつ、コンテナ輸送革命に対応される間に多くの犠牲を払われましたし、今なお革新荷役方式への移行に伴う幾つもの問題を抱えて、その解決に日夜御心労されておると伺っております。また、日本工業製品の軽薄短小化あるいは省資源化に伴う扱い量の伸び悩みということに対処しまして、新たな事業分野への進出の必要が叫ばれておるということも承知しております。  元来、港運サービスの供給者でございます港運業界と利用者でございますところの海運業界の間には利害が反するケースがございます。その上に、海運界によるさらなるコスト合理化のお願いや港運業界におきますところの多角化の動きの進展いかんによりましては、両業界競争ないしは対立が表面化することもありましょう。しかしながら、海運と港運は基本的に協力すべき関係にあり、両業界の相互理解と協調によってのみ直面する難問を解決し、新しい発展を期待できるものと考えるものでございます。  幸いに、第一次コンテナ輸送革命におきましては、両業界の信頼関係に立って協力いたしました結果、施設、機器の整備面におきましても、ターミナル運営の効率及び荷役能率におきましても、世界の他の一流ターミナルにまさるとも劣らぬ体制をつくり上げたという誇るべき実績を持ってございます。この実績を踏まえまして、話し合いの精神をもちまして事に当たれば、両業界がともに納得できる解決が見出せるものと信じております。  しかしながら、第二次コンテナ輸送革命に対する対応を考えますと、前途は極めて厳しいものがございまして、両業界協調いたしましても容易に解決しがたい難問の続出が予想されます。  以上、るる申し述べましたが、委員長を初め諸先生方におかれましては、今回の法改正を必要とするに至った輸送構造の変化をぜひ御理解をいただきますとともに、何とぞ海運、港運業界の直面する厳しい立場を御賢察をいただきまして、一層の御指導、御援助を賜りますようお願いをいたしまして、私の陳述を終わります。  御清聴ありがとうございました。(拍手)
  8. 浜野剛

    浜野委員長代理 どうもありがとうございました。  次に、森下参考人にお願いいたします。
  9. 森下賢一

    森下参考人 私は、港・横浜で三十四年間、働きながら労働運動をやっており、現在港湾労働組合の執行委員長をやっております。  結論を先に述べます。今回の港湾運送事業法改正には断じて反対するものであります。  以下、その理由について若干述べます。  今回の港運業法改正の二つの柱、すなわち二種と四種の統合問題と十六条関係に伴う一種業の基盤の追加問題等に沿って展開をいたします。  最初に、二種と四種の統合問題でありますが、運輸省当局の説明によれば、現状に即し実作業に着目して行うものとその目的を述べておりますが、現状の実態は、それぞれの職種内での人員確保とそのやりくりに追われているのが実際であります。そして、年々歳々二種と四種を中心とした現業労働者が減らされております。  では、それほど仕事がないのか。決してそうではありません。忙しいときにはすべての職種で人手不足となります。現に事務職員がその名前が登録される、そして、忙しくなれば、実際に沿岸作業などに駆り出されているのが実態であります。  では、なぜそうなるのか。その基本的な大きな問題として、コンテナ貨物が港を素通りして大手メーカーに直接運ばれ、そこで港湾労働者の手を経ないでコンテナのバン出し、バン詰めなどが行われる。さらには、認可料金では特殊料金や協定料金などが主流となって買いたたかれる、こういったところから、先ほど述べたような状況が生まれているわけであります。独占貨物などが労働者や港湾経営者の手を経ないという状況を生み出したのはほかならぬ政府当局、運輸、大蔵省などの行政指導にあることは明確であります。  コンテナ輸送体制の推進に手をかしたのはだれか。国と自治体の莫大な予算を使ってコンテナ埠頭の建設をどんどん促進したのはほかならぬ運輸省当局であり、コンテナ通関制度を導入し、大手メーカーなどへの出張検査や書類審査で通すなどを取り入れたのは大蔵省といったぐあいに、大手メーカーを中心とした荷主サイド、そして船会社を含めた大手港湾利用者のサイドからすべてを見て、そのしわ寄せを港湾労働者と中小経営者に押しつけているのが実態であります。  さらにつけ加えるならば、コンテナ輸送体制をどんどん促進することによって既存の現業労働者と中小経営者がどういう状況下に置かれているのか、港運業法に即してそれがどういうぐあいになるのか、その法の根本精神に基づきそれをどう守るのか、こういう立場こそ、法の番人であるべき運輸省当局がいち早く着目し、労働省などと一緒になってその矛盾などの解決に積極的に当たることこそ強く求められていると確信するものであります。  同時に、コンテナ輸送の推進に伴って生まれてくる新たな職種、海上コンテナ部門やコンテナのメンテナンス、修理部門などについては、これらを見て見ないふりをするなど、全く無責任な態度を現在もとり続けております。港運業法とコンテナ輸送や技術革新に基づく荷役形態の変化などとの関連でどうするのかという点では、全く無責任な態度をとり続けていると重ねて指摘せざるを得ません。  さて、人減らし合理化労働強化、そして独占貨物優先の埠頭づくりによって労働環境が極度に悪化し、加えて荷役のスピードアップなどによる労働災害、職業病などが続発しております。過去五年間の横浜南労働基準監督署の資料によりますと、これは横浜港の三分の二強に当たる範囲にすぎませんけれども、それでも労災死亡者が三十二名、四日以上の休業による労災発生件数は延べ三千九件という、他の産業をはるかにしのぐ労災発生状況となっています。ある大手の港運業者の一営業所に所属する沿岸労働者の十六名中十四名が頸部脊椎症、腰部ヘルニア、腰痛などの治療を受けており、そのうち五名が労災扱いの職業病に認定されるという全く異常な状況すら生まれているのが現状であります。  しかし、これらは氷山の一角にすぎません。届け出をしないで私病扱いにしてしまうなど、その実態はもっともっと深刻なものとなっています。ある大手の港運業者は、重度の労災を受けた仲間が勤務不能となっているにもかかわらず労災扱いとせず、その企業から一定の見舞い金を出して、追い出すように家族ぐるみで蒸発させるという悲惨なことも起きております。  その昔、港は馬に飲ます水はあれど波止場人足に飲ます水はないと言われたほど、最低の労働条件の代名詞ともなっておりました。私は今もその本質は変わっていないと思います。馬にとってかわって今は大型荷役機械が動き回り、独占貨物優先で人命は二の次という状況がその実態だと思います。独占の飽くなき利潤の追求と行政サイドの無責任な態度こそ、船内沿岸を中心とした多くの仲間の人命を絶ち、家族を悲しませ、職業病や後遺症で苦しみの人生を押しつけるものとなっていることを、私は心からの怒りと無念さを持って国会の場で告発せざるを得ないという気持ちでいっぱいであります。  さて、以上の状況のもとでの二種と四種の統合問題でありますが、これによって、第一に従来の二つの職種を一つにし新たな免許基準を設定するわけでありますから、従来の定数の枠をはるかに下回ることは容易に予想されます。その結果、より一層の人減らし、人員整理につながることは明らかであります。  第二には、より一層の競争の激化を招き、業の整理淘汰が進行し、事業からの撤退、縮小など企業の閉鎖が発生すること、第三に、異質の労働の連続行為によって労働密度が濃くなり、一層の労働強化となり、それによって労働災害、職業病の新たな多発源となること、これらのことは既に実証済みであります。  昨年の九月、運輸省は、五大港の一種の免許基準の見直しの行政指導を行いました。ここでの特徴は、他の免許基準はそのままにして、とりわけ現業労働者の定数を大幅に引き下げたことにあります。この方向が明らかにされた段階から、これらの一種元請のところでは、事務職部門を含め百名単位の希望退職を募るという状況が少なからず起きました。もちろん一種元請ですから企業の倒産などは生まれておりませんけれども法改正なしでの免許基準の見直しをほのめかすだけでもこういう事態が生まれているわけであります。ましてや二種、四種の業の基盤が弱いところから相当の否定的な影響が生まれることは言うまでもありません。  以上の諸点から、私は率直に次のように指摘せざるを得ません。  それは、運輸省当局が法改正の理由に挙げている現状に即したもの、実作業に着目して行うものとすることは、現在の港頭地帯で行われていることだけを指すものではなく、むしろ大手メーカーなどが内陸地で港湾労働者の手を経ないで行っているコンテナのバン出し、バン詰めの実態を追認するところにこそその最大の理由があるということ。言いかえれば、免許制の効力を低下させるものとなり、また、同時に他の職種間の統合問題やあるいは排除の方向に道をつける突破口となる可能性が大であるということであります。  要約して述べますと、今回の二種、四種の統合問題は現状に即するという単純なものではなくて、綿密で計画的なものであり、その第一に、政府当局の主導による既存の現業労働者の人減らし、首切り合理化であり、第二には、それを通じて港運業法の骨組みを覆すことをねらったものであることを声を大にして指摘するものであります。  では、どこに問題があるのか。それは明確であります。運輸省当局が、独占サイドから物を見るのではなくて、公平中立の立場から港運業法を厳守することにあります。すなわち、第一条の港の秩序を確立し、港運業の健全な発達を図り、公共の福祉を増進する目的から、第二条の港における貨物の荷役行為、そして、それに先行しまたは後続する一貫した行為及び第四条の起点及び終点という立場を明確にさせて事に処することこそ、今緊急に求められていると断言するものであります。そしてそれがすべての出発点であり、前提であります。  次に、二つ目の柱であります一種元請業者における統括管理行為という新たな基盤の追加問題について述べます。  当局の説明によりますと、複合一貫輸送体制への対応として港運業の新しい展開を方向づけるものとして打ち出したものとなっております。  以下、箇条的に問題点を指摘してみますと、その第一は、二種、四種の統合問題では現状に即すると言っておきながら、ここに来ると新しい展開を方向づけるものという先取り的な提起を行っており、全く矛盾するものとなっているということ。  第二の点は、港運業の生き残り策の一つとして、あえて言うならば幻想を抱かせながら、実際は大手港湾利用者に港を明け渡す足がかりをつくる結果となりつつあること。現に最近の業界紙の報道によりますと、既に神戸、横浜、東京のそれぞれの新しい公共のコンテナバースに大手船会社と大手港運業者の共同出資による管理会社が生まれ、いずれも資本金の出資率は大手船会社が五〇%以上を握るというものであり、それらを一層増長させる結果とおっていることを指摘せざるを得ません。この結果、大変失礼な言い方でございますけれども、しょせん船会社は流通部門の一構成部分でありますから、銀行資本の系列化に沿った大生物流企業や大手メーカーを中心とする荷主サイドからの直接の介入、系列支配の一層の強化の促進が図られるものとなるでありましょう。  第三の点は、一つ目の柱である二種、四種の統合問題と新しい基盤の追加という第二の柱とは全く裏腹の関係にあること。端的に言いますと、既存の現業部門を切り捨て、新たに発生している現業部門をそのままにして、そして管理運営という美名のもとに、ただ単なる一つの間接部門に港全体を転落させていくプログラムであることを強く指摘しておきたいと思います。  最後に、私は今回の法改正の本質とそのねらいについて若干述べておきます。  事実経過が示すように、一九八一年七月の運政審の答申、八二年八月の公取委の見解表明、そして同年十二月の行政管理庁の勧告によって、突如として、私は唐突の感を禁じ得ませんけれども、ここで具体的な職種の名前が挙げられる。そして八三年三月の第二臨調の最終答申となったわけであります。これを受けての今回の法改正であることはだれも否定することはできないと思います。最初の出発点である運政審の答申では、財界と自民党政府による八〇年代戦略のもとに打ち出されている総合安全保障の一環としての位置づけを明確にしておりますし、日米安保条約、日米軍事同盟のもとでの流通コストの一層の削減による大企業の利潤の追求と独占貨物擁護のためのシーレーン防衛の起点と終点、すなわち港における有事即応態勢の確立にあることは言うまでもありません。  さらには、独占資本は、これまで日本経済を支えてきた輸出と赤字国債の発行による大型公共投資の二つの柱の破綻からの脱出の方向として、大規模な産業構造の再編成を推し進めております。昨年の四月、国会で成立いたしました特定産業構造改善臨時措置法に基づき、素材産業の設備の縮小、廃棄、企業合併などを促進する一方で、先端技術産業の育成強化、その結果、大規模な人減らし、合理化、過密労働、中小下請企業の切り捨てなどの深刻な事態が生まれております。まさに今回の法改正はこれに匹敵する内容であることを指摘しておきたいと思います。     〔浜野委員長代理退席、委員長着席〕  港湾運送事業法は、戦後の昭和二十六年に制定されました。そして現在も新規参入の制限などの規制は、港運業の持つ公共性の確保あるいは過当競争の是正、そして大局的に見るならば市民、国民生活に直接かかわるものとしてその役割を果たしつつあると私は確信をしております。にもかかわらず、今回の法改正はこれを根底から覆そうとするものであり、私は中曽根内閣の戦後政治の総決算の港湾版であることを強調して、私の意見陳述といたします。  以上であります。(拍手)
  10. 福家俊一

    福家委員長 どうもありがとうございました。  以上で参考人からの意見の開陳は終わりました。  この際、暫時休憩いたします。     午後零時十二分休憩      ————◇—————     午後一時二十六分開議
  11. 浜野剛

    浜野委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。若林正俊君。
  12. 若林正俊

    ○若林委員 きょうは、港湾運送事業法改正に関してそれぞれの立場から大変貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございました。  私は、実は海のない長野県を地元といたしております若林と申します。しかし、周囲を海に囲まれて、そして諸外国との交易を通ずることなしには我が国の経済も、また国民生活の発展も期し得ないこのような条件下にあって、物流のパイプ役としての、また人の体に例えればいわば血管とでも言うべき海運と港運については、大変に関心を持っている一人であります。  四十年代初期から始まった貿易量の増大とこれに対応した物流技術革命のもとで、大変急激な変化が起こっていたわけであります。それに対応して港湾整備の促進が図られ、またコンテナ荷役あるいはサイロ荷役等、荷役革新が進められ、諸外国との比較においてもおくれをとらない状況になっていると伺っているわけでございます。  このことにつきまして、事ここに至るまでの労使双方の御努力に深く敬意を表するものでありますけれども、技術革新は御承知のように日進月歩であります。そのような中で、さらに、商品であります貨物の質の変化も進んでまいります。また、それらの生産、流通の構造変化も今後一層進むことになるように思われるのであります。そのようなことを前提といたしまして、これにおくれをとることのない港湾運送事業であってほしい、こういう観点から、参考人方々に一、二の御質問をさせていただきたい、このように思うのでございます。  まず、高嶋参考人に対してお伺いいたしたいと思いますが、港湾運送業は、免許制運賃料金認可制という、いわばそのような行政上の枠組みの中で事業が行われているのであります。先ほどのお話にも、そのような根幹を堅持していく、こういう前提で今回の改正に賛成の意を表されておられます。そのことは、業界の置かれております特殊な仕事の内容から理解できるのでございますけれども、他方、免許制あるいは運賃料金認可制というものは、ややもすればそのこと自身、現状固定的になるおそれがあるわけでありまして、他の自由な競争の中で合理化が進められる業種等から見ますと、常に関係者の努力にもかかわらず外部からはいろいろと批判が出てくる、そういう宿命を持っているように思うのでございます。  そこで、先ほど、今回の改正によって現状に適応しつつ将来に対応するには、今回の大きな二点の改正は時宜を得たものである、こういうお話でございますけれども、その中で業界として一人の脱落者も出ないようにしながらというお気持ちが述べられておりました。今回の改正もいわば外部条件の大きな変化対応しながら、業界自身より効率的により合理的に物流機能を果たしていこう、こういうことからよってまいったものだと思うのですけれども、そのような今後の経営合理化の方向として、各業種間におきます企業の統合なり合併なりといったようなことについてどのようにお考えでございましょうか。その点が第一点でございます。  二つ目は、物流そのものの大きな変化の中で、それらを担っております港湾運送業者がさらに経営の安定とそこに働く人たちの職域の確保を図っていくという観点から、港湾運送業と関連します。その他業種面におきます取り組みといいましょうか、新たな事業分野への進出といったようなことはそれぞれの企業の判断でしょうが、そのような方向が業界として考えられるのでありましょうか、どうでしょうか。まずその二点についてお伺いしたいと思います。
  13. 高嶋四郎雄

    高嶋参考人 ただいまの御質問にお答えさしていただきます。  今回の業法改正に当たっては、現状免許業者に対しては何らの影響もないように、しかも三十四年来在来荷役を中心としてまいりました港湾運送事業法に対して、ユーザー側からは、業法が非常に時宜に適しておらない、このような革新輸送の流れに合っておらない、そのような環境の中でそれらの業者の保護のような考え方料金問題に対する考え方も好ましくない、したがって、何をおいてもまずもって在来は在来、革新は革新としての業法上の新しい方向づけという上に立っての物の考え方対応措置を考えていく港運協会であるべきだというような御要望を常に受けております。  したがいまして、私ども法改正によって業者を殺してもらっては困る、しかしそうだからといって現在の免許業者が単に法の枠の中で安易に企業経営を維持していくということではなくして、法では殺してもらっては困るけれども、それぞれ物流の流れの中でそれに対応することができずして脱落していくことはやむを得ないことなので、したがってあくまでも法改正で脱落することのないようにしてほしいということを先ほど申し上げたわけでございます。  そのようなことから申しまして、これの対応措置としては、現在港湾構造が大きく変化したというような現状の姿の上に立って、私ども港湾構造の変化対応して業者指導育成していくために港湾構造改善促進財団というような財団を行政当局にお願いして生み出していただいた。この財団によって、事業者につきましては、現状免許業者ではあっても自然経済の流れで対応できないものについては転廃業をしていただく、あるいは免許を返上して合併等の措置をとっていただくことによって適当な助成措置をとろうということで、港湾構造改善促進財団で業者の後ろ向き姿勢に対してある程度の助成をしていこうというような対応措置を現在進めております。  反面、このことによってしわ寄せを受ける港湾労働者方々に対しては、港湾労働安定協会という組織によりまして、転職される方々等に対して職業訓練をしてもらったりあるいは一定の期間何らかの経済的な助成をする、その後就職あっせんができなければ離職に対するどれだけかの助成金を交付するというようなことも現在取り上げておるわけでございまして、このような輸送革新に対して法の上ではすべて生かしてください、そうではあるが、法で生きても自然経済の流れで生きていけないものに対してはそのような措置をとるべきだということで、そのような対応措置をとらせていただいておるわけでございます。これが第一に対する先生へのお答えでございます。  第二の、このような流通革新によって職域が合理化され狭められる問題に対してどのように考えておるのだ、このことにつきましては、港運協会といたしましては今後の新しい港湾運送事業法改正の中のターミナル運営というものを通じての流れの一つといたしまして複合輸送というものに関心を持って、複合輸送業務を拡充整備していこうということで、港運協会の内部にも複合輸送部会という特別部会等をつくりまして、緊急に港湾運送事業外の業域を幅広くターミナルを通じて確保していきたい、そのことによって少しでも港湾労働者雇用安定策に結びつけたいということで、現在強力に推し進めるような考え方を持っておるわけでございます。これが第二の御質問に対するお答えでございます。
  14. 若林正俊

    ○若林委員 どうもありがとうございました。  働く人たちの立場あるいは経営合理化によって新しい事態に適応していくことに無理のある業者の人たちからしますと、今回の改正を機に一層の競争激化の中でしわ寄せを受けるという不安が多いわけであります。今おっしゃられたような厳しい環境の中でございますけれども、それら業者あるいは働く人たちの立場をも考慮しながら、企業同士の統合合併あるいは他事業分野、今の新しい管理システムの中への適応、そしてまたそういう分野への働く人たちの職業転換としての職業訓練などについて、経営者サイドに立ってなお一層の御努力をお願いいたしたいという気持ちを申し述べさせていただきたいと思います。  次に、土屋参考人にお伺いをいたしたいと思います。  第一次のコンテナ革命ということにつきましてるるお教えを受けたわけであります。そして、これからさらに大型化を伴なう第二次革命に入っていく、また国際複合一貫輸送の進展が見られ、これへの巨大な投資もさらに求められるような状況になってきているというようなお話があったわけでございます。  そこで、そういう海運を担う立場から見まして、我が国のただいまの港湾運送のいわば効率、コストといいましょうかその運営を他の諸国と比較してみまして、なかなか物差しを単一にすることができないので難しいかとも思うのですけれども、今の状況は欧米諸国、さらに先ほどもお話にございました韓国、台湾を初めとしますアジア諸国と、二つに大きく分けた上で相互の比較についてお伺いしたいと思います。
  15. 土屋啓

    土屋参考人 お答えをいたします。  くしくも私も海がございません長野県の出身でございまして、それがどういうわけでございますかまさに三十数年船会社に勤めております。そういうことで今、大変親近感を持ちましてお話を承っておりましたわけでございます。  お尋ねの点でございますが、先ほども軽く触れましたように、港運業界の皆さんの大変な努力によりまして、しかも訓練その他いろいろ問題が多かったわけでございますが、能率の点で申しますと現在日本は世界の中におきまして超一流の能率を誇っておるのじゃないかと思います。簡単に例を申し述べますと、一時間に積み上げをするコンテナの個数、これがクレーン一台当たり何個ぐらいできるかということでございますが、二十五個というのが先進国の大体平均の水準でございます。日本港湾におきましては、三十個を扱っておる港が幾つかございます。三十個と申しますのはワンサイクル二分で回るということでございます。これはほかの国ではなかなか達成できない水準であるという点で、能率の面におきましても一流中の一流である、こういうふうに認識してよろしいかと思いますし、これに対する港運業界の皆さんのこれまでの努力を大変評価しておるものでございます。  次に、コストでございますが、先生今御指摘のとおりコストの構成部分は、土地代がございますとか機械代がございますとか作業賃がございますとかいうことで大体一貫のコストが出てくるわけでございます。日本は土地代においては高い方に属していることは自明のことでございますが、例えば香港におきましては日本よりまだ高いというような状況がございます。区々には申しません。  今問題になっておりますのはやはり賃金面でございまして、それらを総合いたしまして、スタートいたしました折には日本港運料金一貫的に見ましても安い方に属しておったかと思うのでございますが、だんだん上がってまいりまして、今や台湾あたりに比べますと日本の方が少し割高になっておるということで、これからの物価動向等々によるわけでございますけれども日本は値段の面での優位を誇ってはおれないという状況にあろうかと思います。  以上でお答えにかえます。
  16. 若林正俊

    ○若林委員 ただいままでの段階では、技術水準あるいはその荷さばきの能率などの面において世界有数の状態を保持しておるというお話と同時に、コスト面において今後なおなお問題が残っていると伺ったと思うのでございます。先ほどのお話の中で、アジア諸国など今までのところ近代化のおくれていた港湾運送業の世界で大変急速な対応が見られている、そのことで港湾運送業自身の国際競争力の面においても今後問題が出るのではないかという示唆を受けたように思うのでございますけれども、荷主さんのお立場から見まして、例えば近隣であります韓国などの港湾合理化あるいはコスト面でさらにそれが進んでいったといたしますと、それらが具体的には日本港湾利用の面とはどのような形で競争関係になってくるのでしょうか、教えていただきたいと思います。
  17. 土屋啓

    土屋参考人 お答えをいたします。  日本の産品が輸出されるあるいは外国から荷物が日本に輸入されてくる限りにおいては、飛行機によらざる以外は日本港湾を経過して荷物が動くことは変わらないと思うわけでございます。先ほど申しましたように、近隣諸国でまだ港湾が整備されておらない、例えば中国のような港がございます。これはしようがありませんので、アメリカに荷物を持ってまいりますときには日本まで持ってまいりましてそこで大型船に積みかえて持っていく、こういうことになりまして、これをフィーダー貨物と申しておるわけでございますが、これが港湾の整備が進んでまいりまして諸経費面におきまして日本港湾を経由するよりも安いルートが見つかりますと、それはそちらのルートに流れるということになりまして、その分だけは従来の扱いの実績、日本の港における実績から消えていくわけでございます。そういう形での貨物の流出と申しますか経路変更が既に大幅に起きているということが大きな問題ではないかと思います。  それから、じゃ競争とは何であるかということでございますが、一部の船社につきましては本格的なターミナル、総合ターミナルというものを例えば台湾なら台湾にセットいたしまして、逆に日本の荷物をそこへフィーダーしていって大型船に積みかえるという動きがもくろまれているということでございます。まだ、現実にそういった大きな決定ないしは変更をしておる時点ではございません。ただし、そういう意味でそちらを経由していった方の総合コストが安いか高いかということをあわせまして、一番安い道を各社がそれぞれ大型化の問題とともに検討しているということで、その意味で我々が合理化を怠りますといつ荷物の経路が変わるかもしれない、こういう競争にさらされているということをまず第一に御理解いただきたいと思います。  それから、私が先ほど申しましたのは、いわゆる国別の総合物流コストと申しますかそういうものについて御注目をいただきたいと申したわけでございまして、現実に既に起きておりますように、日本はハイテクノロジーの指向でございますけれども、かつて日本の産品でございました繊維あるいはおもちゃ類、そういう軽工業品は既に日本は国際競争力を失いまして、近隣諸国に流出しております。これが徐々に中位、高位の産業品に及んできておるわけでございます。  したがいまして、私が申しますのは、台湾において仮に同等の電気製品が安くできるというか、それにターミナルコストを含めました物流コストを加えまして、これが輸出価格のベースになるわけでございますけれども、これらの商品コスト・プラス流通コスト、これの台湾産品の流通コストと日本産品のそれに対応するものを比較した場合に台湾が安くなるということになりますと、さらに日本の貨物が近隣諸国、台湾に流出する。こういうことを通じまして我々の扱い高が減ることになりはせぬか。それを防ごうといたしますと、やはり産品の価格の競争力を維持するだけではなくて、流通面における競争力の維持を港運、海運力を合わせて努力してまいらないと、日本からの荷動きが減るということも今や考えるほど、いわゆる国際競争があらゆる面で激しくなってきておる、こういうことを申し上げたかったわけでございます。そういうふうに御理解をいただきまして、お答えにかえます。
  18. 若林正俊

    ○若林委員 どうもありがとうございました。  次に、河越参考人にお伺いしたいのでございます。  基本的には現状法規制そのものも合理的であるということではないけれども、しかし今回考えられております二点の改正そのものはさらに混乱を深めていくおそれがあるので、慎重に対応すべきではないかというふうに私、伺ったわけであります。その点に入りますと議論になりますので、ちょっとそこは避けさせていただいて、お話の中で、現在の国際複合一貫輸送体系が進んでいく中で我が国の財産なり安全を守るという観点から、もっともっと港湾運送について考えなければいけない問題があるのではないかというようなことを示唆されておられましたけれども、具体的には先生はその点はどのようなことをおっしゃりたいのでありますか、少し伺いたいと思います。
  19. 河越重任

    河越参考人 ただいま御質問の点でございますけれども、やはり今日の我が国の経済体制でございますから競争ということはある程度必要かと考えます。しかし、御承知のように港湾におきましては競争が激し過ぎることもまた事実であろうと思います。そうした点において、港運業法で監督をしているわけでございますけれども、そうした免許や何かの改正に伴いまして、むしろ国際一貫体制へ向けての実情に合わせた改正ということになりますと、海運その他のところも含めまして競争が激化しておりますし、そうしますと、結局のところは運賃とか料金とかの面をより安くするという競争になってくる。そうしますと、そうした一環の中で一番弱い立場にある港湾業者のところへ安い運賃のしわ寄せというのが直接間接に及んでくる。そうしますと、どうしても安くやらされるということになりますと、業界の方は、手抜きということになるとそれはないということになるかもしれませんけれども、やはり作業は乱雑と申しますか、言葉はいろいろ表現がございますけれども、十分気をつけて丁寧にというところまでいかない面が出てくるとすると、結局はその積み荷の安全と申しますか、そういう点に及んでくる。  結局、国際貿易とかなんとか、まさに貿易によって我が国は立国していかなければならないのに、港湾作業、輸出、輸入の関係でそこら辺に、きずものと言いませんけれども、そうした何らかの影響が出るとするならば、これはむしろそうした貿易によって活躍していらっしゃるところのその他一般の産業の利益というものを結局損ないはしないか、やはりそうなる面が出てくるおそれが非常に強いなというようなことでございます。
  20. 若林正俊

    ○若林委員 どうもありがとうございました。  もう時間も残り少なくなりました。最後に森下参考人にお伺いをしたいと思います。  先ほど来、大変に厳しい環境下で港湾労働者が健康さらには生活、人生そのものも長い間揺さぶられてと申しましょうか、大変苦労をしておられる話がるるございました。そのこと自身、こういう産業構造の変革期におきまして、こう言っては過酷な言い方かもしれませんが、どうしてもそのような変化に適応、対応させなければならない立場というのは避けることができない形で出てくるだろうと私は考えているのであります。そのことについては論議になりますので見送りますけれども、そこで、現実にはしけ運送が大幅に減少をし、それのみではございませんが、コンテナが大量貨物を取り扱う技術として進んだ今日において、そのような変化自身を否定しておりますと、先ほど来土屋参考人のお話にもありますように、大きな国際的な経済発展、流れの中から我が国が取り残されるおそれがある、私はこのように思うのであります。  そこで、今後ともいろいろな形で起こってまいるでありましょう技術革新なりあるいは運送業自身の構造変化労働者が対応していくに当たり、職業転換訓練等、経営者側、使用者側に対して特にこの点を強調しておきたいといったようなことがございますれば、先ほどの御意見はどちらかというと本法改正なしという主張でございますが、仮にこのような改正が行われて進んでまいります場合に、経営者側に特に注文をしておきたいといったようなことがございましたら、簡単にお教えいただければありがたいと思います。
  21. 森下賢一

    森下参考人 お答え申し上げます。  私は、技術革新に伴う輸送形態の変化、そういうものについて全面的に否定するものではありません。しかし、現実の問題として、先ほど具体的な例としてはしけの問題等々が出されましたけれども、これが技術革新に伴って不必要であるという一方的な見方からこれをすべてなくしていくということではなくして、その技術革新の中で既存のものをどう生かすかという側面もやはり見ておく必要があるのではないかというふうに思います。  例えばはしけの活用方法等についてはもっと考える余地があるのではないか。現実に今、横浜港を中心にいたしますとコンテナの輸送が大変な量に達しております。そして、あの新山下の道路はコンテナ街道と言われるほど地域住民から大変嫌われているわけであります。さらには公害問題が発生します。そして今、主に大手メーカーさんは臨海工業地帯に立場条件を持っている。だとするならば、コンテナ輸送をはしけ輸送に切りかえる、そういうことをするならば、排気ガスや公害問題、道路の遅滞等々も解消し得るのではないだろうか。  したがって、従来からある既存のものを、ただ単なる技術革新ということだけで一方的に廃棄処分にするということについてはやはり問題があるのではないか。その中でもそれを生かす道がある、そういう立場に立って経営者もあるいは大手港湾利用者も、さらには国や地方自治体の旗振りのもとにそういう活路を見出す、しかも市民や地域住民の皆さん方の利益にも合致するような方向の活用方法があるというふうに私は思っております。したがって、転廃業の問題についても、かつて我々は港を支え、国のために働いてきたつもりであります。そういう意味では、そういう角度からもう一度見直していただくということが求められているのではないかと思います。  私は思うのですけれども、技術革新とは、労働者が十分な労働環境のもとに労働ができない分野でその技術革新を活用する、これがそもそもの発端であったと思います。それが、技術革新がそれぞれの企業の利潤に活用されるというところからこういう混乱が起きているのではないかというふうに思っております。そういう意味で、ぜひそういう立場から、既存のものをもあわせて技術革新の中でどう生かすか、さらにその技術革新での利潤の還元度、こういう問題もあわせ考えていただきますことをお願いいたしておきたいと思います。  以上でございます。
  22. 若林正俊

    ○若林委員 どうもありがとうございました。  終わります。
  23. 浜野剛

  24. 兒玉末男

    兒玉委員 本日は参考人先生方、大変御苦労様でございます。  最初に河越参考人にお伺いしたいのであります。  河越さんの御意見を伺っておりましたが、特に今回の改正によっていわゆる輸送秩序混乱を増長する可能性が強いのではないか。それから過当競争による運賃料金体系が混乱をするおそれが十分に予想されるという問題点。それから今運輸省の資料をいただいておりますが、過去十二年間の統計から見ても、やはり港湾運送事業というのは労働集約型の産業であり、しかも輸送トン数は飛躍的な増大を示しておりますが、この港湾労働者作業内容等から判断しましても、日本経済発展に貢献したことが歴然たる事実として明らかに記録をされておるわけであります。  今回のこの統合によって、これまで働いてきた港湾労働者が自分の職場が失われる、そういうような危惧の念が多分にあるわけでありまして、我々運輸関係委員に要請されました要望書の中にも、具体的な事実としての指摘がなされておるわけでありますが、このような統廃合によるところの雇用不安ということについてどのような御見解をお持ちなのか。既に要望されておるように、長年の歴史的な背景から考えましても、港湾を通過する貨物を運送する荷役の関係はやはり港湾労働者の職域であるということの位置づけがなければ、さらに不安が増大するであろう。それから港湾労働者に対するところのILO港湾労働条約に基づく港湾労働者雇用促進制度確立、こういう百三十七号並びに百四十五号の勧告もあるわけでございますが、日本政府はいまだにその批准をなしておらない。西欧先進国は既に批准がされて、雇用関係に対するところの安定的な供給がなされる。今日、国際競争の場におきまして常に経済摩擦の大きな要因は、日本労働者の賃金が安い、労働時間が長い、こういうことが一つの要因にもなっているわけでございますが、特に国際労働条約機構からの指摘などの点について先生の御見解を承りたいと存じます。
  25. 河越重任

    河越参考人 ただいまの兒玉先生から御質問の点でございますけれども、今回特に港湾運送事業法改正ということで、私ども、どの程度触れてよろしいかどうかということで多少遠慮申し上げておいたわけです。港湾運送事業法ということになりますと、当然運送事業そのものの行政監督法規でありますけれども、それがそこに働く労働者の方々の問題までも直接的には取り扱うものではないわけでございます。しかし、そうだからといってこれまでむしろ事業法規制してまいりましたところの業のあり方を問うということになりますと、具体的には労働者をめぐる問題、とりわけ雇用ということが中心的な問題になるわけでございまして、先生御承知のように事業規制が登録制から免許制になったのも、いろいろな見方がございますけれども、その港湾運送事業の業態とりわけ労働者との関係規制を強めるためにそうしたということが事の成り行きであったわけでございます。  したがいまして、もし仮にそうした労働問題、その中でも雇用の安定、というより安定した雇用をそこに働く方々にどのように保障するかというぐあいに申し上げた方がよろしいかと思うわけですけれども、そうした労働者の安定した雇用の保障ということがむしろその後の積極的な施策によりまして解決されているというぐあいに考えられる、そして、これまで問題になったことが懸念される余地もない、そういうぐあいに近代化されておりますならば、そして今回そうしたことを前提といたしまして、だから運送事業法の方もそれに見合って直すんだということになれば、まことに喜ばしいことだと考えるわけです。  しかし、あえて申しますならば、今申し上げましたことは、仮にもしそうならばということで、私なりに考えますとむしろ順序が逆ではないかなと考えるわけでございます。今日ここに改正案が出ておりますように、一応港湾の施設というものについては近代化したということになっているようでございます。しかしながら、そこに設けられましたいかなる近代的な施設といえども、その施設の能力を引き出し、それを使うにはやはりそこに人の問題を避けて通ることができないわけでありまして、その施設が近代化したと言うならば、少なくとも働く人の方の問題についても近代化したというぐあいに言われなければつじつまが合わないのではないかと考えるわけでございます。  ここで一応、これの改正案一つの理由にもなっております臨調の許認可行政についての合理化というような点につきましても、方針は必ずしもはっきりしておりませんけれども、少なくともそこに、臨調さえも、国際的に理解されるようなものでなければならないとうたっていたことは確かであろうと思います。それでは、そうした点において、労働者に安定した雇用を保障し確保するにはどうしたらいいかという点でまさに国際的にどこにも理解されるようなということになれば、手っ取り早く申しますと、ILOの、港湾におけるところの近代化に伴う社会的影響——「影響」と日本語で訳しておりますけれども、どちらかというとインパクトでありまして、日本語にすると影響よりもむしろ衝撃と言った方がよろしいかと思うわけですけれども、少なくとも港湾におけるいわゆる革新荷役なり荷役方法の近代化に伴いまして、これは各国の経験からそこに働く労働者の上にまさに衝撃を及ぼすことは、そのままほっておいたのでは避けられないから、この衝撃をいかに緩和し、これまでそうした近代化に最も貢献してきた労働者に対しまして衝撃を緩和、というよりも従来どおりそこで生活していく方法をどう講ずればいいかというようなことのむしろ最低限がILO条約としてまとめられている。  したがいまして、これは、殊に国際的にどこの国でもこの程度はということが条約の内容でございまして、今日経済大国と言っております我が国の立場からすれば、条約の点だけでこれで満足だということではなくて、むしろその条約にも若干入り切らない面、具体的には、よりもう少しということになれば、先ほど先生御指摘になりましたところの勧告の方も含めましてしかるべき措置を講ずべきではないかと思います。  念のため申し上げますれば、一言で申しますと、港湾の人たちに、平たく申しますといわば地域社会なり何なりにおいて生活する一般の人々と同じ程度の生活を保障するためにどうするか。そのために必要な雇用、働く機会は確保すべきであるということに尽きるかと思います。そうしたことであろうかと考えます。
  26. 兒玉末男

    兒玉委員 それでは高嶋参考人にお伺いしたいと思います。  長年にわたり港湾の現場で働いてきたはしけ労働者あるいは沿岸労働者、いかだ労働者あるいは船内等で頑張ってきた労働者の多くの皆さん方は、今回の法案改正によって労働不安を持っていることはもう粉れもない事実でございますが、高嶋さんは港運協会の会長とされて、このような諸君の訴えについて、当然政府当局に対しても、不安のないような立場から十分な助言なり配慮をされるべきだろうと思いますが、今日までどのような努力をされてまいったのか。また、先ほど私、ILO条約のことを申しましたが、経済大国の日本がいまだにこのような港湾労働者雇用保障に関する国際的な条約をなぜ批准していないのか、会長としても、多分そのことは政府にも進言されていると思うが、進言されたことがあるかどうか。この二点について、会長の御見解を承りたいと存じます。
  27. 高嶋四郎雄

    高嶋参考人 お答えさしていただきます。  まずもって、一の、はしけを初めとする船内沿岸、いかだ等の港湾労働者の、革新荷役によるしわ寄せによって雇用不安が増大しておる、このことに対してどのようなことを今日まで行政当局に対応処置をお願いしてきておるんだという御質問だと思いますが、このことにつきましては、昭和五十六年から、港運協会の中に、港湾労働安定協会というものを労働組合の代表と日本運協会との代表によりましてそれぞれ組織化いたしまして、これらの雇用不安の問題に対していろいろ協議をして必要な処置をとってまいっておりますが、これらの基本的な指導につきましては、運輸当局を初めとして港湾を利用する船社の団体の方々あるいはユーザー団体の方々にも、財源等の拠出について、行政の援助を得つつ格別な支出を願って、それぞれ安定協会によりまして安定策に対するいろいろな問題に取り組んでおるということでございます。  なお、次の御質問のILOの件でございますが、このことにつきましては、私どもといたしましては、これは行政が中心になって適用方に対してはお考えになる問題であって、私ども業界としてILOの適用を受けるべきであるというような積極的なお願いは、今日までまだ私どもはいたしておりません。行政の適当な指導なり指示によってこのことに対しては取り組んでいくべきだろう、このような考え方を持っております。  以上が御質問に対するお答えです。ありがとうございました。
  28. 兒玉末男

    兒玉委員 再度、高嶋参考人にお伺いしますが、港湾関係の組合の方々からの要望の中で、いわゆる運賃の制度、認可料金の制度の適正なる確立と、それから、これは当然港運労働者の賃金とも関係がありますし、先ほど河越参考人も言われたとおり、いわゆる荷役、船内沿岸、今度は道路運送、そういう点等からの競合によって、ダンピングの可能性が強い。同時にまた、設定された料金の徴収等が、いただいている資料では完全な徴収がされていない。そのことが労働側へのいろいろな支払い条件の低下あるいは労働賃金の改定等に対するネックになっている可能性が大変強いわけであります。そういうふうな料金等に対するところの対応はどのように対処されているのか、もう一遍お伺いしたいと思います。
  29. 高嶋四郎雄

    高嶋参考人 お答えさしていただきます。  港湾料金の遵守方につきましては、昭和五十八年の年初に、港湾局長から、認可料金である運賃料金が守られておらない、したがって法令が遵守されておらないということは非常に遺憾だ、再三、今までにでも港運協会には十分な注意をしてきておるが、それなりに努力をしておることは認めるがその成果が上がっておらない、したがって今後格別に努力しろという強い通達を受けまして、昨年の三月を契機といたしまして料金の遵守に対して日本運協会としては料金遵守委員会を中央に設けまして、行政当局の御指導を得つつ、行政当局もそれぞれ我々業界とともに行動されて、地方にそれぞれ出向いて料金を何が何でも遵守しなければならぬという強い御指導に当たっていただいた。  御承知のように、昭和五十六年時点から材木等の環境が非常に不況になって、材木を中心として港湾運送事業を経営しておるというような港湾が五十港ほどあるわけでございますが、材木業界が不況で材木の輸入原木が極端に減った。三割ないし四割輸入が減ったというようなことが長く続きましたが、そのような関係上相手方も、自分らも倒産して死ぬか生きるかの境にあるのだから、したがってこういうときにこそ長いつき合いなんだから何とか料金面についても十分な協力をしてもらうべきだということが各地のそれぞれの取引の中に大きくあった。そのことが料金が非常に大きく乱れた原因の要素の一つでございます。このことが地域の港運業者経済的な大きなマイナスを与えて、そのこと自身が当然港に働く方々雇用不安という問題にもつながったということでございますが、それを契機といたしまして、料金の遵守方に対しましては異常な関心を持って日本運協会行政指導を受けつつ格別な対応策を熱心にとってきた。したがって、従来乱れがちな料金もこれを契機といたしまして一歩、一歩改善の方向に向かってきております。  見方によっては、倒産もしない港運業者が倒産をして苦しんでおる木材業者の足をますます引っ張るという批判もかなりあったこととは思いますが、そのようにそれぞれの業者方々も理解をされまして、長いおつき合いではあるがいろいろ御無理を申し上げて、そして一歩、一歩改善に努力をして今日に至っておるということでございまして、まだまだ一部欠けるところはありますが、非常に努力をした結果、料金の遵守方に対しては一歩、一歩よい方向に改善されておるというのが現状でございまして、料金問題につきましてはそのような対策をとっておるわけでございます。  なお、労働組合からも料金の遵守についてもっと精力的にやってもらわなければ困るというような要望も受けておりまして、当然のこととして現在もそのような気持ちで、料金遵守については重要な港運協会の課題として取り組んでおるというのが現状でございます。  お答えさしていただきます。
  30. 兒玉末男

    兒玉委員 先般、大井埠頭を見に行ったわけでございますが、非常に近代化され輸送システムが合理化されておりますので、当然、船主、荷主の方はかなり収益性を上げているのではないかというふうに私は判断します。同時にまた、設備そのものは東京都なり公共機関が設置をして、各船主協会等が、また港湾関係業者がこれを利用している。そういう点等からも、特に運賃料金の遵守についてはこの際法的な拘束力を与えるべきではないかという点について、河越参考人森下参考人に御見解を承りたいと存じます。
  31. 河越重任

    河越参考人 それに先立ちまして、先ほど先生からの御質問の第二の点、ちょっと足りなくて、申しおくれて失礼しました。それで補足させていただきます。  先ほどの先生の第二の点でございますけれども港湾を通過する貨物については港湾労働者の職域ではないかというような点でございますが、我が国の現行法に即して申しますとちょっと複雑でございまして、要するに港湾運送事業法は船会社ないし荷主から委託受けて請け負った場合に限ってその業態を規制するということになっております。それから、港湾労働者と申しますのはまさに先生御指摘のとおりでございまして、港湾においてそうした船荷関係に伴いますところの仕事をする、これは港湾労働者の仕事である。その点で、あえて例えて申しますならば、白ナンバーのトラックであろうと青ナンバーのトラックであろうとそこの仕事はそこで働く労働者の仕事である、ただし事業法としては青ナンバーだけを規制するという関係でございますね。ただ、その場合におきまして、我が国の港湾労働法というのは極めて日本独特のものでございまして、現実には青ナンバーで働いているところが多いから当面青ナンバーだけでということで、白ナンバーのところを規制しておりません。  したがいまして、先ほどの法的な規制をどう考えるかということになりますと、やはり港湾労働者のそうした雇用の保障といいますか安定した雇用の保障をするには、今日の我が国の状況におきましてはしかるべく法的な規制は必要であろうと考えます。それで、その中身をどうするかということについては、先ほど申し上げましたように条約などを参考にしながら、我が国におきましてより実効性のあるような形での規制の方法が必要ではないかと考えるわけです。その場合に、もう一つ港湾労働者ということを定義する場合に、やはり港湾を通ずる貨物といいますか、先ほどの例でいいますと白ナンバーでも青ナンバーでもというような格好での規制が必要であろうかと考えます。
  32. 森下賢一

    森下参考人 料金の問題でありますが、今港でさまざまな問題が起きているその根底は料金問題に尽きると言い切っていいというふうに思います。私は、料金問題についての一番の問題点は、港湾運送事業法でいろいろ規制されております港運業者に対する規制の問題ではなくして、大手港湾利用者側に対する規制の問題、この辺が非常にあいまいになっているところに大きな問題点があるのではないだろうかというふうに思っております。そういう意味では、これは労働組合運動としても考えなければならぬ問題だと思いますけれども、それは即、賃金の問題あるいは労働諸条件の問題にはね返る問題であります。したがって、これは労働組合運動自身の問題として我々も全国港湾を含めていろいろな形での運動の展開、これが基本だと思いますが、これはあくまでも労働組合内部の問題でございます。  一般論で申し上げれば、やはりもとのところ、言いかえれば大手港湾利用者が港湾運送事業法の精神に基づく認可料金をきちっと守るということ、同時に料金の自由化の方向、今では認可料金よりも特殊料金だとか一貫協定料金が主流になっている、これを早急に正すことが求められているのではないだろうか。そういう意味では運輸省当局のイニシアが今こそ発揮されるべきときではないかというふうに考えております。  以上であります。
  33. 兒玉末男

    兒玉委員 終わります。
  34. 浜野剛

    浜野委員長代理 森田景一君。
  35. 森田景一

    ○森田(景)委員 参考人の皆様には、大変貴重な御意見を開陳いただきまして、ありがとうございます。限られた時間でございますので、順次御質問申し上げますので、ひとつ御答弁の方も簡潔にお願いしたいと思います。  最初に、高嶋参考人にお伺いいたしたいと思います。  一つは、この港湾運送業界は長期にわたる不況である、こういうふうに言われているわけでございますけれども、そういう中で特に中小零細企業港湾運送事業者の約八〇%を占めているというふうに聞いておりますが、この中小零細企業につきまして、業界としては今後どのように取り組んでいかれるお考えであるのか、その辺のところを最初にお伺いしたいと思います。
  36. 高嶋四郎雄

    高嶋参考人 今の御質問は、港湾運送事業者は八〇%までが中小企業だ、それに対して長期の不況に対してどのような不況対策をとっておるのか、とろうとするのかというような御質問だと思っておりますが、お説のとおり八〇%程度が中小企業であると思っております。その中小企業方々というのは、一種業者、元請業者ではなくして、それぞれの業種ごとの船内とか沿岸とか、あるいはいかだとか、はしけだとかというような専業者方々がその八〇%の中小企業者の大半を占めておると思いますが、どちらかと申しますと、最近に非常に問題のありましたいかだの関係者はこの不況に対してかなりな影響を受けましたが、これに対しましては、先ほど申しましたように、それぞれ業界の中央と連絡の上で十分な料金対策をとっていく反面、地方港は港湾構造の変化からいってなかなか高度成長時代現状が維持できないということから、これらの地域の御関係についてはそれなりに労使話し合いの上で転職していただくというようなことで、これに対する適切な助成策等がとられてきたということでございます。  また、業種によりましては、中小企業であってもむしろ団結力が強くて元請業者よりはどちらかというと力があるということからいって、ダンピングすることは元請の勝手だよ、しかし自分らはもらうものはあくまでも専業者としてもらうんだよというようなことで、要するに、そういうような考え方の業種が、船内なりあるいは沿岸なりを中心として貨物の不況の関係に対してはそういう団結力によってもらうものはもらうんだよということで、中小企業であっても決して企業そのものに大きな不安定さを持っておるということではない実情にあると思います。  はしけの問題につきましては、いずれにいたしましても革新荷役のしわ寄せを受けてきておりますので、このことにつきましては、今日まで百八十万トンほどあったはしけも第一次、第二次、第三次というようなことで行政当局の指導を受けつつ今日までに八十万トン程度の買い上げ、解撤を行ってきたわけです。八十万トンのはしけの買い上げ、解撤はいたしまして、要するに体力をつけるというようなことには物を進めてまいりましたが、しかし、この八十万トンの第一次、第二次、第三次の買い上げに当たりましては、これらに絡むはしけの乗組員の方々に対してはそれなりに、それぞれの企業ごと、それぞれの地域ごとで対応策をとられて、中央の安定協会が直接転職資金等の格別な面倒を見なくても、ごく限られた人であることによって問題が処理されてきておるというようなことで、今申しますように、中小企業の八〇%の方々はこの不況の時代にそれぞれの特色を持って、またそれぞれの実情に沿って対応処置をとってきたということで物が処理されてきておる。これも組合側との中央団交による話し合いてすべてが処理されておるということでございます。  以上でございます。
  37. 森田景一

    ○森田(景)委員 引き続いて高嶋参考人にお尋ねいたします。  雇用対策で最も安定的かつ重要なことは、仕事の量を確保するということであろうと思うのです。それがこういう港湾運送の不況という中で可能か否か、こういうことを考えてみたときに、それは可能であるというふうに私は見ているわけであります。それはどういうことかといいますと、先ほど河越先生のお話がございましたけれども、例えば港湾労働者雇用安定策については、港湾を通過するすべての貨物の荷役作業及びそれに関連する作業はすべて港湾業域、職域であるよう制度上の範囲を明確にすることによりまして、長期雇用安定化を図れるというふうに私どもも考えているわけでございますが、その点、高嶋参考人の御意見はいかがでございましょうか。
  38. 高嶋四郎雄

    高嶋参考人 お答えさせていただきます。  輸出入とも港湾を通過する貨物については現在とも港湾運送事業法規制されております。したがいまして、この貨物は港運業者なりあるいは港湾労働者によって処理されておるということでございます。  今先生の御質問でございますが、貨物が港湾を通過して、そして輸入コンテナ貨物がユーザーの倉に持ち込まれていく、そのことについては、トラック積みまでの行為につきましては港湾運送事業者がすべて行っておりますが、港湾労働者方々の手を経て行っておりますが、奥地に持ち込まれていってユーザーの庭先における、ユーザーの工場内においての貨物の処理については、これは現在のところほんの一部港運業者がかかわり合いを持っており、また港湾労働者方々が一部絡み合っておることはありますが、ほとんどが工場の関係者によって処理されておるということであります。また、今度は逆に輸出の場合でございまして、ユーザーの工場の中でバン詰めされて、そして港湾に持ち込まれてきて、港湾のコンテナヤードからの仕事につきましてはすべて港運業者なり港湾労働者が行っておりますが、工場の中においてバン詰めされて港頭地区に持ち込まれてくることについては工場側の、ユーザー側の、相手方の考え方で処理されておるという現状でございます。  このことにつきましては、私どもといたしましても今後複合輸送ということに格別に関心を持って、港湾地帯に十分なターミナルを確保する、荷さばき施設を持つ、要するにそういうようなものを持ってできるだけ港頭地帯で貨物を詰めたりあるいは貨物を出したりする。そういうことを、できるだけ港頭地帯なりあるいは一歩進んで内陸地のそういう工場の関係にまで前に進むべきですが、そのこと自身には関心を持って今後物を進めていくべきですが、現在の港頭地域における環境からまいりますと、そういうような港頭で荷物をさばくということはちょっと非常に難しい。そういうような土地なり施設を今直ちに確保したりするということには難しい問題があるので、今回の業法の改正に方向を指示していただいたので、それに沿って港頭地帯のターミナルを整備し、それで足がかりとして奥地の、バン詰めしたりバン詰めする工場内のインランドデポ関係にまで関係を推し進めていきたいというような考えを持って今後対応していこうというような考え方を持っております。  以上、お答えです。
  39. 森田景一

    ○森田(景)委員 大変失礼でございますけれども、同じ問題につきまして森下参考人の御意見は、先ほど承りますと違うように私拝聴しておりましたが、この問題につきまして御意見をお聞かせいただければと思います。
  40. 森下賢一

    森下参考人 ただいま高嶋さんのお話もあったわけですけれども、私は、今度の港湾運送事業法改正では、内陸地の大手メーカーサイドでのバン詰め、バン出し、こういう行為がむしろできなくなるのではないのかと逆に見解を持っております。問題は、私は、運輸省が港運業法の根本的精神、言いかえれば港湾のエリアと申しましょうか、この点について明確な起点、それから終点という概念を明確にしませんと、大手メーカーサイドにおける港湾労働者の職域という問題があいまいになってくるのではないだろうかというふうに思っております。したがって、先ほど高嶋さんもおっしゃられた方向性については、いろいろ示唆の富んだ内容でありますから、私もこの点については異論がないと思います。しかし、今度の港運業法の改正が果たしてそういうことを逆にふさいでしまう可能性があるのではないか。先ほど言いましたように、二種、四種の統合問題というのは、言いかえれば工場内での港湾労働者の手を経ない分野での追認ということに非常に危惧の念を障っているわけであります。したがって、港湾労働者の起点と終点という概念を私は大手メーカーのサイドまでに延長すべきである、このことをやはり明確にさせることがまず最初だろうと思います。  その際にも、やはり料金問題と労働力の確保と維持の問題が当然出てきます。言いかえれば、雇用の問題と料金問題が同時に絡んでくるというふうに思います。例えば港運業者が内陸地の大手メーカーサイドで港湾労働者の職域ということでバン出し、バン詰めを行う場合に、適切な原価計算を含めた、また港運業者の適切な利潤を確保した上での料金体系が求められるのではないだろうか。さらには雇用の問題等々含めて言いますと、その維持、さらには確保、こういう問題等々が出てくるのではないか。そうしますと、港運業者が内陸地に出張所やあるいは派出所を設ける、こういう点等も勘案した料金設定が必要になるのではないだろうかというふうに思っております。そういう意味では、今度の港運業法の改正が、先ほど高嶋さんのお話のように、そういう方向にあるということであるとするならば、私は大いに検討する余地はあるというふうには思っております。しかし、今の現状で見ますと、そういう状況ではない。むしろ港湾労働者の職域が狭められ、そしてあいまいにされる、こういう危険の方が大であるということを強調しておきたいと思います。  以上であります。
  41. 森田景一

    ○森田(景)委員 河越参考人にお尋ねしたいと思います。  この法案改正によりまして雇用不安を増大させるようなことは断じてあってはならない、こう思います。これは皆さんそう思っていらっしゃると思いますけれども、万一雇用に不安を及ぼすようなことがあれば、雇用の救済措置に関する法改正も同時に行うべきであろう、こう考えるわけでございますけれども、その点、今回の改正案には配慮がなかったのではないか、このように考えるものでございますけれども、先生の御見解はいかがでございましょう。
  42. 河越重任

    河越参考人 ただいまの御質問の点につきましては、今回の改正はあくまでも事業法改正ということで、配慮がないということはまことにそのとおりでございます。  それで、それではそれにかわりまして、ただ、これはそうだからということで言えばそれまででございますけれども、先ほどから先生の御質問をお聞きしておりましてちょっと私なりに感じたことをつけ加えさせていただきますと、先ほどお話も少し、青ナンバー、白ナンバーということで、若干私なりに舌足らずな点もあったかと思います。それで、そうした点で、雇用を保障するところで、先ほど職域というようなことをお話しになっておりました。そこで、この際、せっかくの機会でございますから、ちょっと考え方を変えていただいたらいかがかなと考えるわけです。  考え方を変えていただいたらいかがかなといいますのは、ただいまの事業法では「港湾において」というその地理的と申しますか物理的と申しますか、地図の上に線を引くといいますか、一定の場をもとにして考えているわけでございますね。これは従来の荷役の形態からいたしますと、そういう場をもとにした考え方というので大体事は足りたかと思うわけです。しかしながら、今日の荷役形態からいたしますと、コンテナがいろいろなところへ行く、しかし、コンテナだからということで、その場から向こうへ行ってしまったから事業法の対象にはならないというような格好で、以上終わりとなるわけですね、現在の考え方ですと。しかし、文言上は必ずしも明らかになっておりませんけれども港湾運送事業法の本来の趣旨というのは、やはり大洋を荒波にもまれていく荷物であるから、荷物の安全も船の安全もということで、しっかりした荷役をやらなければならない、そこでどうするかということが事業法の本来の考え方だと思うわけですね。  そういうことからいたしますと、たとえコンテナが山の中に入りましても、荒波にもまれていって途中で荷崩れを起こしたりなんかしないような仕事のやり方は港湾運送業者が専門家であるし、具体的な作業港湾労働者が専門家であるし、やはりそういう専門家に頼まなければ、今言ったような太平洋の真ん中でといいますか、大洋の真ん中でのちゃんとした荷物の積み方はできないのだというぐあいに考えていただきまして、したがって、船に積みおろしする荷物というのは、途中で荷崩れを起こしたりしないような、そういうおそれのない専門家に頼んだことでなければいけないというような考え方にいたしますと、まさにいうところの職域の、別の言い方でございますけれども、場でなくて仕事の内容ということで、これは港湾運送事業法の対象として規制していくことができるのではないかと私なりに考えるわけでございます。
  43. 森田景一

    ○森田(景)委員 土屋参考人にお尋ねしたいと思います。  今業界が拠出しまして実施している、雇用と生活保障制度というのがあるようでございます。これは日本港湾福利厚生協会が受託をしているということでございますが、この内容については非常に現実に即していないような状況である、こういうふうに私どもも理解しているわけでございます。  例を申し上げますと、二十年以上勤務して転職をする場合に、転職資金は常用者の場合にわずか二百万円である、このように非常に低い金額でございます。いろいろとデータがあろうと思いますけれども。今現在では荷主が一トン当たり五円、事業者が一トン当たり一円、計六円拠出しているということでございます。年間の運送料が約六億トンといいますから、したがいまして、三十六億円の資金が入るということになっているわけでございますけれども、それでなおかつ、こういう低い金額であるということ、この辺はちょっと私理解に苦しんでいるのでございます。どうしても現在の拠出の仕方ではこの程度でやむを得ないということになるならば、拠出の仕方をもう少しふやしたらどうか、このように考えているわけでございますけれども雇用対策としてこの制度をどのようにお考えになっていらっしゃるか、お聞かせいただきたいと思います。
  44. 土屋啓

    土屋参考人 お答えをいたします。  日港福の運営につきましては、拠出者でございます荷主は直接関与をしないと申しますか、関係をしておりませんわけでございまして、これは日本運協会傘下の皆様と組合側との間からそれぞれ金を出されまして運営管理をなさっておるということでございまして、私どもがこれに口を入れているということではないわけでございます。したがいまして、その使い方につきましていろいろなニュースを私どももちょうだいはいたしておりますけれども、その配分等々について適正であるかどうかという問題につきましては、私はコメントを申し上げる立場にございません。  次に、拠出の金額でございます。これはトン当たり五円ということで、大したことないじゃないか、こういう数字かと思われるわけでございますが、金額が、今申されましたように四十億弱になる。そういう相当大きな金額にもう既になっておるわけでございますので、私どもとしましては、これの有効活用をひとつ雇用者の皆さんと組合の方でお考えいただく、こういうことで、先ほどから高嶋会長の方からも雇用の安定問題についていろいろな方針が示されましたわけでございますが、その実施上におきまして、今の五円ではどうしても足らないというようなお話がございました折には、その内容等々もお聞かせをいただきまして、私どもがどういうふうにこれについて御協力ができるかということを、港運協会と例えば私ども船港協で話をさせていただきたいと考えております。  以上でございます。
  45. 森田景一

    ○森田(景)委員 ただいまの問題につきまして、高嶋参考人に御意見があればお聞かせいただきたい。
  46. 高嶋四郎雄

    高嶋参考人 お答えさせていただきます。  先ほど、要するに今のいう転職資金が二百万円だというお話でございますが、これはあくまでも助成することでございまして、それぞれの企業は今日までそれなりに、雇用したことによって各社ごとに決められた退職金等があることでございまして、我々の港湾労働安定協会の方は、あくまでも、個々の企業がそのような措置をとることに対して、別に、要するに御苦労だということで助成するということで現在行っておるのでございます。このように答弁させていただきます。  なお私どもとしては、これからの問題として、現在までの制度の上において少しでも改善していく必要があるものにつきましては労使話し合いの上で改善する方向を段階的にとるべきであり、また、それによって必要な財源は、今土屋さんのお話があったように、それぞれの船社団体なりユーザー団体からいろいろ御協力を願うというような考え方で問題を処理してまいりたい、このように思っております。
  47. 森田景一

    ○森田(景)委員 大変ありがとうございました。以上で終わります。
  48. 浜野剛

    浜野委員長代理 中村正雄君。
  49. 中村正雄

    中村(正雄)委員 四人の参考人方々から貴重な御意見を伺いまして、ありがとうございました。私は、本改正案に賛成の意見をお述べになりました高嶋土屋参考人にお尋ねいたしたいと思います。  御質問の第一は、本改正案が成立いたしますと港湾運送事業の面で具体的にどのようなメリットがあるとお考えになるか、これが一点でございます。第二点は、今回の改正案に賛成でございますが、改正されました事項以外で今の事業法について改正すべき点があるのかないのか、あるとお考えになりますならばその点についての御意見をお聞きしたいと思います。第三点は、本法が成立いたしますると労務関係雇用関係にどのような変化が生ずるか。また、変化が生ずるとすればそれにどのように対応したらいいか。この三点について、賛成されました参考人方々のそれぞれの御意見を承りたいと思います。
  50. 高嶋四郎雄

    高嶋参考人 お答えさせていただきます。  まずもって、本案が成立を見たときにどのようなメリットがあるかという御質問でございますが、御承知のように現在の港湾運送事業法は、過去の昭和二十四年時点の当時にははしけ運送港湾運送事業の中心であったということからいきまして、現在の一種事業者の大半ははしけ事業免許基盤として一種事業を行っておるという関係でございます。しかし、このように革新荷役が八〇%近くも変化を見てまいりますと、はしけの需要というものは局限されてしまって、先ほど申しましたように第一次、第二次、第三次というふうに次々にはしけの買い上げ、解撤を行わなければならない。したがいまして、はしけ基盤一種事業者は、免許を維持していくためには免許基準をどんどん下げてもらわなければならぬのであって、必然的に小さなはしけを基盤とする一種事業免許港湾の一切の元請事業を行ってきたという環境に、革新荷役への変化は業法の上に非常に大きな問題点を生み出しておるわけでございます。  したがいまして、今回のようにターミナルを基盤とした管理運営を中心にしていくという業法の改正が、一種事業基盤として三種基盤であっても差し支えないが、そのような新しい流通革新に対応できるターミナルを基盤としての一種事業であっても差し支えないのだという両建てをとっていただいたことによりまして、法改正がされれば、港運業者の大半の関係者は無理にはしけ基盤ではなくしてターミナル基盤の一種業者に当然変化を見ていく。そのことによって、はしけの運用問題については、当然の問題として、港運協会としては残されたはしけ業者方々にはしけの運営管理等を合理的にお願いするような指導をしていくべきだろう。  当然、この問題は労働組合とも非常に関連を深く持つ問題であるだけに、雇用不安等の問題を避けつつそのような新しい方向を求めていくということで、一種業者は一種業者として、元請業者はそういうターミナル運営という新しい業域の上に中心を置きつつ、従来狭められて、わずかなはしけの運営が数多くの方によって運営されておる問題について合理的な方法を指導しつつ、あと残されたはしけ業者にもよい結果であり、働くはしけの労働者の方々にも安定的な方向を考えていくべきではないだろうかということ等もございまして、まずは法改正一種事業者に対するターミナルの問題につきましては最も時宜に適したよい方法だということで、業界を挙げて本法案の成立に大きな関心を持っておるわけでございます。  なお、二種は二種として、港湾業者としての限定二種として従来行っておった船内荷役事業は行えることであり、四種の沿岸事業も、港湾業者としての限定四種として従来やっておることは何ら差しさわりなく行えることであり、二と四の港湾業者につきましては、いろいろ縄張りがあって、対外的に見ても何となく批判されがちな理解しにくい業域関係につきましては、革新荷役は当然の問題としてそういうような問題に改善処置をとっていくべきだ。  先ほど来、料金が特殊料金だとかそのような関係が非常にふえてきておる。八割からの革新荷役という現状の姿からいきまして、在来荷役を中心として考えられてきた港湾作業料金につきましては矛盾が非常に多くあると思います。この点につきましては段階的な処置として、利用者側から見ても扱う港運業者の面から見ても、まあまあという一つの特殊荷役料金制度というものを一般料金とは別個に生み出して現在行っておるわけでございますが、このような二と四の法改正がされたことによって、今の業域意識が行き過ぎて矛盾のあった荷役料金につきましては、それなりに特殊荷役料金というか、そういう一貫料金を実情に合わせて正しく生み出して、それを行っていくことで料金の面におきましても相互に理解され合った秩序のある形が生み出せるということも、この法改正によって行うことができることに相なると思っております。そういうことで、先ほど申し上げたように、この法改正が成立すれば、港運業者といたしましてはターミナルを通じて新しい複合輸送にも取り組んでまいりますし、非常にメリットの大きなことだということで、法改正が早急に御理解願えるようなことにぜひお願いをしたいという考え方を持っております。     〔浜野委員長代理退席、委員長着席〕  それから第二の、業法の改正以外に何か業法上の改正に対する別な要望はないのかということでございますが、現在のところこれだけの業法改正で私どもとしては一応満足させていただいて、これからの新しい国際複合輸送等の将来の変化に向かって、いろいろ業法上のお取り扱いについて現実の上に立った適切な法改正等が将来行われることが望ましいという考え方は持っております。  第三の法改正が行われることによって雇用関係に悪い影響はないかということでございますが、私どもといたしましては、このような法改正がされることによって、労働環境なり雇用安定策に対しては新しい法律の精神に基づいて十分努力していくことであって、このことが今後の労使関係に悪い影響なり雇用に不安感を与えるというようなことはむしろなくて、法改正の上に立って新しく再スタートを切る革新荷役環境について船主なりユーザーサイドの方々に御理解と御協力を得て、現状労働対策について一歩一歩物を進めていきたい、このように考えております。  以上です。
  51. 土屋啓

    土屋参考人 お答えをいたします。  私ども船港協といたしましては、いずれの会員もが、最初にお断りを申しましたとおり、港運サービスの利用者という立場でおるわけでございます。そういう点でお答えをさせていただきたいと存じます。  第一点の、今度の業法改正で利用者として何かメリットがあるかということでございますが、メリットという評価は大変難しいかと思いますが、私は直接的にはメリットはないんじゃないかと考えております。  と申しますのは、これが行われましたからといって、例えば今決めております港湾料金が安くなるというようなメリットは期待できないわけだと思っております。しかしながら、今高嶋参考人がおっしゃいましたように、このコンテナ化の輸送革命の中で、言うなれば皆さんがある種の柔軟性を持たれる、あるいは一貫取り扱いの中で責任体制がはっきりしてくるということがございまして、その意味で港運業者の皆さんの基盤がしっかりする、あるいは対応に柔軟性が出てくるということは、私どもの荷物を扱っていただく上で間接的にいい影響が起こるに違いないという期待はございます。そういう意味で、直接のあれはございませんけれども、その出てくる派生的な効果について私どもは大きな期待を持っておる、こういうふうに申し上げたらよろしいんじゃないかと思います。  第二番目の問題でございますが、再び利用者といたしまして、現在の法律にこれ以上の改正の要望はないのかということでございます。これは日ごろ役所の方ないし日本運協会とも話をさせていただいておりますが、私どもの方から積極的に業法の改正をお願いするポイントはございません。したがいまして、今高嶋参考人がおっしゃいましたように、いろいろ問題は内蔵しておるけれども、これは時間とともに一つ一つまた取り上げていく問題だと考えておりますので、その過程におきまして私どもも応分の御協力なりを申し上げる必要があろうかと考えておるわけでございます。  それから、三つ目の雇用不安の問題でございます。これは先ほど陳述のときに申し上げましたけれども、私どもの理解といたしましては、実はこのコンテナは革命的な輸送方式であるということでございますので、当然、その中に幾つかの雇用に対する脅威を与える可能性あるいはインパクトを与える可能性があるということは認めざるを得ないわけでございますが、この状態はコンテナ輸送導入されました時点からもう既にあるわけでございまして、このたびの法改正によって何か起こるというものではない。むしろ国際競争あるいは経済的な効果追求という面で当初から内蔵しておった。その解決に大変苦労をされておるという状態が前からあった。したがって、この改正によってそれがさらに悪化するというふうには私どもは考えていないわけでございます。  しからば、今ある問題の解決にユーザーとしてどうなのかという御質問かと思いますが、先ほど高嶋参考人からも申しましたとおり、既にこの問題につきましては船港協、日港協の間におきまして、我々としまして従来の御協力に対して、いろいろ犠牲を払っていただいたことについて評価をしておる。先ほど申しましたように、今、国際競争場裏におきまして、私ども経済状態は非常に悪いわけでございますけれども、それはそれといたしまして、もし港運協会がいろいろな意味で対策を立てていかれるということでございましたら、よく中身をお聞きいたしまして、またお役所の方とも相談をいたしまして、また私ども一つのユーザーでございますが、ほかのユーザーさんともそれぞれ話をいたしまして、応分の御協力は申し上げなければいけないんじゃないか、これはこれから港運協会の方から御要望が出ました時点で考えさせていただきたいと考えております。  以上でございます。
  52. 中村正雄

    中村(正雄)委員 では次に、本改正案に反対の意見をお述べになりました河越参考人森下参考人にお尋ねいたしたいと思います。  御承知のように、この運送事業法は昭和二十六年五月に制定されたわけでございます。当時の港湾情勢を前提にいたしまして、港湾運送事業の安定と健全、合理的な発達を促進するために、港湾運送におきまする秩序の確立と公正な競争確保しよう、あわせて施設の改善をやろうということで本法が制定されたわけでございまして、私もこの制定に参画した議員の一人でございます。それから三十数年たっておるわけでございます。その間、三十数年の間に、港湾の情勢は雲泥の差のあるほど変革してまいりました。したがって、昭和二十八年と三十四年、四十一年と三回にわたりまして、この法律は一部改正いたしてまいりましたが、今回の改正案の提案の理由を政府から聞いていますと、現状に即するための改正というのが前提になっておるわけでございます。  したがって、この改正案に反対の意見を述べられました参考人の方は、言いかえれば現在の運送法を可とされる結果になるわけでございますが、しかし恐らく今の運送法そのままで完全だ、満足だとお考えになっておるとは思わないと私は思います。したがって、今の運送法を、こういう点を改正してもらったら、なおいいんではないかというお考えがあるのではないかと思いますので、もしそういうお考えがあれば、この条項をこういうふうに改正してもらいたいという意見をお述べいただければ幸いだと思いますので、それぞれの参考人の方、時間もありませんので五分以内ぐらいずつでお聞かせ願えれば幸いだと思います。
  53. 河越重任

    河越参考人 港湾運送事業といえども時代の趨勢にさお差して逆らうということはできないので、それでおっしゃるように現状に即してということは必要であろうかと思います。しかし、逆に現状に即して法改正ということになりますと、現状は法に合ってないで動いているのかという別の疑問が私ども出てくるわけですね。そこら辺が一つの問題でございます。  それで、今回の改正に即して、どういう点が改正点かというようなお話でございますけれども、この点は、先ほど申しました一定の場という規制考え方から、例えばそういう積み荷の安全を図るための専門技術的な、したがって業界においてもむしろそうした専門技術を売り物にするのだという格好での考え方というか規制の見直しというようなこととか、それから料金の点については、いわば非常に複雑化しておりまして、余り複雑になるとどこが合っていてどこが違っているのかという格好になります。ただ、現実には極めて対応がいろいろでございますので、ここら辺をどうするかということは一つの問題点でございますけれども、少なくとも料金の上では、今回の改正によりまして一部分、一種から下請をする部分がかなりふえてくるという傾向もありますので、少なくとも実際の作業料金につきましては、認可料金が実際の作業をする業者のところに認可の額のとおりに行くという決め方をしていただけるように明確にすべきではないかと考えるわけでございます。  以上でございます。
  54. 森下賢一

    森下参考人 お答え申し上げます。  現在の港運業法が革新荷役を大きく阻害しているというふうに私は理解をしておりません、現に運行されておるわけでありますから。同時に、その根本の問題は、運輸省が港運業法の根本精神をまず厳守していただくことがすべての出発点、前提だと思います。その辺があいまいでありますと、さまざまな問題点が解決しない。特に労働組合労働者の不満は、常に荷主サイドから物を見ての港運業法の改正等々が出されている、こういう点が一番大きな問題点ではないだろうかと思っております。  現に全国港湾が運輸省当局に対して三点の要求を出して話し合いに入っているわけでありますけれども港湾労働者や中小経営者の職域という問題については何ら明確な御回答をまだ得ておりません。したがって、そういうところからいろいろな紛争が起きて、四月九日の二十四時間ストライキ、先ほど高嶋さんはストライキがなかったとおっしゃいましたけれども、現実に四月九日は二十四時間のストライキが行われました。四月二十六日、二十七日、二十八日にはコンテナの搬入阻止闘争が闘われました。私もこれにも参加いたしたわけですけれども、現実にこういう事態になっているということが何よりもそれを物語っているのではないだろうかと思っております。  私は、法改正を行う場合には、特に港湾の場合は労働集約産業でありますから、特にそこに働く労働者や労働組合に事前に改正の影響というものを十分摂取していただいて、その上に立って改正等々を打ち出していく、あるいは現状の問題点はどこにあるのかということについて、荷主サイドではなくして、中小企業経営者も含めた港全体にかかわっているすべての人たちの意見をよく聞いていただいて、そして行政指導に当たることが今最も求められているのだということを再び強調しておきたいというふうに思っております。  以上であります。
  55. 中村正雄

    中村(正雄)委員 ありがとうございました。
  56. 福家俊一

    福家委員長 梅田勝君。
  57. 梅田勝

    ○梅田委員 日本共産党・革新共同の梅田勝でございます。きょうは港湾運送事業法の一部を改正する法律案につきまして、各参考人の皆さんには遠路はるばるお越しをいただきまして非常に大事な御意見を承りまして、ありがとうございました。  今回の改正は、確かに港湾の状態が変わってきた、いわゆる革新荷役の出現によりまして荷役の形態が大きく変わって、俗に港は変わってきたと言われているところから、現状に合わすという形で法改正が提案されたということになっておりますが、私どもが一番心配しておりますのは、技術革新が進行することによって労働者が楽になるのではなくて、資本の流通経費を減らすということだけが追求される、そして、逆に労働者の職域が奪われる、あるいは残った労働者が非常に過密な労働で苦しむというようなこと、あるいは、中小の零細な業者港湾には多いわけでございますが、これが淘汰されるということでは、そもそも港運事業法がつくられた趣旨に反するのじゃないか、少なくとも今回の改正案がそういうことにならないようにということを願っているわけであります。  まず最初に、労使関係にございます森下参考人及び高嶋参考人にお伺いしたいのでありますが、いわゆる二種と四種が統合いたします。その場合に、従来の免許基準というものが見直されるわけでございます。その際に、いわゆる人減らしに伴う雇用不安、労使関係の悪化ということが予想されるわけでございますが、これをどうしていくかということが非常に重要な問題であろうと思うわけでございます。  そこで、今回の改正によりまして、港湾労働の状態というものがさらに一極合理化によって作業密度が濃くなることが考えられるわけです。それから、余った人が一体どうなるのか、元請、下請、さらにその下があると思うのでありますが、余った人がどこへ流れていくのかということです。港湾労働者がどんどん数が減っていっておるわけでありますが、全く港湾関係のないところへ流れる場合もありましょうし、港湾の中でさらに劣悪な条件のところに働きに行かざるを得ない場合もあると思うのでありますが、そこらあたり、再雇用の場合、保障があるのかどうか、これをまずお伺いしたいと思います。  最初に業者の方の高嶋参考人、次いで労働の方の森下参考人からお伺いいたします。
  58. 高嶋四郎雄

    高嶋参考人 お答えさせていただきます。  二種と四種の荷役事業一つ港湾荷役事業になるから、当然合理化して人減らしが行われるのだという考え方は、今の二種と四種を持っておる港湾事業者方々が、今後法改正によって新しい港湾荷役事業者になるわけでございますが、この方々で人減らしを行おうという考え方を持っておる二種と四種の業者は、私はあり得ないと思います。私は、要するに港運業者はそんな考え方を現在持っておるものではないということをお答えさしていただきたいと思います。  と同時に、現在既に二、四を持っておる方が港湾荷役事業者になるのであって、二種だけの方は二種として、四種だけの方は四種として従来それぞれの業域がある。港というものは、御承知のように連帯感というか、一つの港でお互いに朝から晩まで顔を合わせてそれぞれの仕事に取り組んではおるが、業界の仲間同士としての仲間意識が非常に強い事業者であって、お互いの職場の中に手を突っ込み合って仕事の取り合いをするというようなことは、仕事を引き受ける元請業者の中にはそういう行為はございますが、元請がかわっても作業は変わらない、お互いに変わらずにいこうじゃないかという不文律の習性がついておりますので、そういうこともございまして法改正で荷役二種と四種が一本化されて港湾荷役事業者が生まれても、その方々現状の二種と四種をやっておる姿が港湾荷役事業者になるのであって、現在二種だけの方あるいは四種だけの方が港湾荷役事業者になるわけではない。同時に、二種なり四種なりの荷役事業者方々はそれぞれが今日までそれぞれの引き受けた作業を行っておるという関係からいきまして、無秩序になるのではなくして、むしろこういう新しい方向に沿ってそれぞれ秩序よく物が処理されていくのであって、私は人減らしがこれによって行われるなどということは考えておりません。またそうあってはならないということで業界としては十分な指導をしたい、このように考えております。  それから、次の再雇用に対する対応策についてはどのようにしておるのだという御質問のように思いますが、再雇用の問題につきましては、私どもとしましてはまず港湾労働者方々は一応本年は職業訓練を強めていこう、職業訓練を強めていくために四大港くらいの港の職業訓練施設に対してある程度の助成を行って大いに職業訓練所の機能を強化しよう、そして強化した姿の中でまた職業訓練を受ける方々にわずかでも何らかの訓練手当を考えて、これからは港湾だけでなく周囲の環境が技能労働者というものを求める時代になってきておりますので、技能訓練を受けて技能労働者になっていただくようにして、それらの方がいろいろ転職するようなことになっても再雇用が非常に安易に行い得るような体質をつくり上げようというようなことも現在考えておるわけでございます。  そのようなことで、現在の港運業界なり港運業者関係者といたしましては、港運業界を一体といたしまして革新荷役のしわ寄せを、一つの物の考え方として、ただ港に関係を持った港湾事業者方々なりそれに雇用されておる港湾労働者方々にただ単に一方的にしわ寄せのないような対応策をとっていきたいということで、それぞれユーザーサイドに向かって早くから問題を投げかけていろいろな御要望をしておるというのが現状でございます。  以上です。
  59. 森下賢一

    森下参考人 今高嶋さんから結構なお話も承ったわけでありますが、今度の法改正になりますと、人減らしをやらざるを得なくなるだろうと思います。さらに、生き延びるという問題で、二種、四種の単独での業種も認められているのだというお話でありましたけれども、今度の二種、四種が統合し一つの業種という点がありますから、それと二種専業、四種専業が果たして太刀打ちできるかどうかという問題、例えば荷役形態の問題、料金問題等々考えますと、二種、四種の単独専業者は大変苦しい立場に追い込まれることは火を見るよりも明らかだと思います。  現状をちょっと申し上げますと、二種、四種の統合問題が国会に提案されてこのような審議をやられている最中に、例えば港湾運送事業法の職種の範疇にあります検数業種のところでは、既に数百名にわたる希望退職が出されて今労使間で紛争が起きているのが実態であります。さらに、現業労働者の中でアンケートをとってみますと、非常に多くの労働者が雇用の不安を訴えておるのが実態であります。  先ほど午前中、二種、四種の統合問題と一種の新たな基盤の追加は裏腹の関係だということを私は申し上げましたけれども、もう一つ大きな問題点は、一種業の元請のところでのはしけ労働者が今大変深刻な問題でこれを受けとめているというのが実態であります。元請のところではすべてはしけを切るという方向を打ち出しております。現にそういう口コミをやっております。そういう意味で、ある一種元請の店社ではこのはしけ労働者を沿岸に回すということもほのめかしているのが実態であります。しかし、はしけ労働者の年齢等々から見ますと、例えばフォークの運転免許をとっていただいてフォークリフトに乗っていただくのだということも経営者の方が言っているようでありますが、私の判断では一定の年齢等々もありますので、フォークリフトの運転は向かないのではないだろうかというふうに判断せざるを得ないと思います。そうしますと、上の方ではいろいろ労働組合との協定等々ありますけれども、末端のところでは結果的には多くは港を去るという実態に現になりつつありますし、そういう傾向が助長されるのじゃないかということが予想されると思います。  次に、沿岸の専業業者はまことに深刻な問題であります。例えば一種の元請がありまして、その一種元請店社の下にそれぞれの二種、四種の専業者下請行為としてついておるわけであります。そうしますと、例えば私の労働組合で実際団体交渉の相手が沿岸業者の社長でありますから、その社長いわく、今度の法改正でいくとどうしても船内と合併せざるを得ないな、そうすると自由に一体どの企業と合併したらいいかという相手の選択権すらもなくなっているのだ、言いかえれば、その元請の中の船内業者といや応なしに合併せざるを得ない、こういう状況に追い込まれている。ですから、今度の法改正は大変なものであります。それぞれの企業がどの企業と合併するか、この問題は全く自由な選択が許されていいはずでありますけれども、今度の法改正はそうではなくして、その選択すらも許されない。それで、私は社長に言うのです。じゃ、そこの企業合併を進めたらどうだ、そうなった場合進めざるを得ないからそうせざるを得ないじゃないか。断固嫌だというのです。なぜ嫌かというと、相手の企業の実態からいってうちの社員や従業員をああいう企業形態の中に、一緒に労働させるわけにはいかぬということを言っているのですね。ですから、こうなった場合にはこのまま様子を見て、しょうがなければ事業の撤退ということも考えざるを得ない、こう言っております。私は労働組合の執行委員長でありますから、それは困るということで今後の労使間の大変な問題点になる、現になりつつある、こういうことをぜひ議員の皆さんに御認識をいただければ幸いだと思います。  さらに、もっと深刻な問題は、港運業法の第二条の三項、港湾運送の関連事業というのが職種としてあります。ここはさらに深刻であります。なぜ深刻かといいますと、この関連事業業者が横浜では二十九店社あります。ここでは、今度の二種、四種の統合等によりますとそこの業を含めて労働者がこの関連事業の方に相当進出してくるのではないかという危機感を持っております。そうしますと、御存じのように港湾運送関連事業というのは非常に基盤が緩いものでありますから大変な打撃になる。そして、七百名から八百名の関連事業労働者、これは港湾運送事業法にうたわれている届け出制の業種でありますけれども、これが相当圧迫される、場合によっては撤退ということもあり得るのだ。言いかえればだんだん下にしわ寄せがいく、こういうのが実態だろうと思います。そういう意味では、今度の港運業法の改正というのはまさに行政サイドからの人減らし合理化と言わざるを得ないということを申し述べておきたいと思います。  以上であります。
  60. 梅田勝

    ○梅田委員 合理化というものはどこかへしわ寄せを持っていくものでありまして、非常に心配しているわけでありますが、先ほど森下参考人のお話を伺っておりますと労災の事故がふえておる。確かに大型荷役の機械が導入されて非常に事故もふえていると伺っているわけでありますが、その点もう少し突っ込んだところをお聞かせ願いたいと思います。
  61. 森下賢一

    森下参考人 港の場合には災害に始まって災害に終わると言われるほど、大変深刻な問題になっております。私は、午前中意見陳述の中で明らかにしました具体例についてでありますが、この具体例のすべてが一種元請のところでやられているということをこの際明らかにしておきたいと思います。  そこで、昨年一年間の横浜港での休業四日以上の労災職種別の発生状況を見てみますと、例えば今度の法改正でまともに対象になっております二種、四種の合計、そこでの四日以上の休業発生件数が何と四九・五%、発生件数の五割がこの二種、四種で占められているというのが実態であります。こういう点から見ても、人手不足からくる労働強化あるいは過酷な労働条件下に置かれていることが、この労働災害の発生件数の状況の上からも明確にあらわれていると思います。  さらに、地域別の労災発生状況等を横浜南基準監督署の資料によりますと、例えば本牧埠頭、これは主に革新埠頭と言われているところでありますけれども、ここで横浜港全体の四二・二%が発生している、さらに南基準監督署の管轄に入っておりません大黒埠頭を含めますと優に五〇%以上が本牧や大黒の革新埠頭で発生しているということが明らかになっているわけであります。それは、革新埠頭ほどスピードアップが強要されている、あわせて大型の輸送機械による労災の大型化、こういう点なども示していると思います。そういう意味で、私は土屋さんや高嶋さんにこの実態を正確に見ていただいて、労働者の命という問題を深刻に受けとめていただいて、こういう労働条件の引き上げあるいは労働強化の緩和あるいは船社サイドからのスピードアップの強要、要請などを十分注意していただきますことをお願いしておきたいと思います。  次に、私は残念ながら指摘をしておかなければならぬのは、労災隠しの問題についてであります。  この実態は大変な内容であります。御存じのように労災の図式といいますとピラミッド方式になります。その頂点が労災の死亡、その下が四日以上の休業労災、その下に不休災害があります。この不休災害のところが大変な内容になっていると言わざるを得ないと思います。時間の関係がありますからそれは若干省略しますけれども、ここに全国的な労災の資料がございます。これは労働省が発行した資料でございますが、これを見ますと、まだ昭和五十七年度しか出ておりませんけれども、五十七年度をとって見ますと治療費、要するにけがをして病院に通った人が全国的に九十六万三千四百九十六人と資料で明確になっております。そのうち休業補償を請求した人がこの労働省の資料によりますと全国で二十九万四千九百人、これは推定になっております。何と三〇・六%、言いかえれば休業四日以上の届け出発生件数の三倍が不休災害という取り扱いになっておる。全国的に三人のうち一人だけしか休業補償を請求していない、あとの二人は不休災害扱いになっているということであります。そうしますと、横浜南労働基準監督署のこの資料でいきますと、ここの全産業の三三%が港湾運送事業に関する労働災害の発生率であります。この率で推定していきますと、低目にとらえてみましても六人のうち一人しか休業四日以上の災害の適用を受けていない、あとの五人は不休災害、言いかえれば労災隠しの可能性のある分野に属するのではないだろうかと推定せざるを得ないということを指摘しておきたいと思います。  俗に言う労災隠しの手口、やり方の問題でありますが、いろいろあります。例えばけがをしますと、それぞれの企業が車で病院に連れていく、そして私病扱いにするように要請もするし、強要もする、こういうのが実態になっております。  一つの手口を紹介しますと、例えば仕事でけがをしますと、お医者さんの方が健康保険扱いにしないのです。ところが、仕事中にやったのだけれども、これは休憩時間にやったのだということを言いなさいというアドバイスを受けます。これで病院に行きますと、病院の窓口ではすんなり私病扱い、健康保険扱いになるというのが実態であります。これが元請のところでやられておるというのが実態になっております。したがって、港に救急車が入ってきたときは大概死亡事故であります。そのほかはほとんど入ってこないのです。ということは、こういう不休災害、その不休災害の下にあります私病扱いの労災隠しが相当数ある、そういうふうに見ていいと思います。  じゃ、なぜこういう労災隠しが行われるのかという点で、神奈川労働基準局の人たちといろいろ詰めた論議も今行っているわけですけれども一つ事業主負担の労災保険料の支払いにあるのではないかと推察せざるを得ません。この場合は、労災発生件数の度合いによって保険料のメリットの上下が生まれるわけですから、年間にいたしますと莫大であります。そういうところから、例えば全然事故を起こさなかったという班、ここには半年に五万円の手当を出す。安全手当というのでしょうか無事故手当というのでしょうか、こういうものが企業の側から支払われている可能性がある。こうしますと、労働者はますますこの労災の届けをみずからやめてしまうという傾向すらも生まれているということであります。つまるところ、認可料金、ここにも認可料金の問題があらわれてくるわけであります。認可料金が正常に支払われているのだったら、あるいは不当なダンピングがなければこういった内容も防げるのではないかということを示唆しているというふうに思います。  もう一点指摘をしておきたいのは、労災が発生した場合に、その原因については、発生場所での検分を中心に行われているわけですね。ところがこれは問題があると思います。今私どもが提唱しているのは、取扱貨物の荷主別に追及していくことが今求められているのではないかということであります。  今までの中間的な点をお話し申し上げますと、一番多いのが日産自動車関係のパーツ関係での被災が非常に多いということ。さらには松下電器、三菱電機といった関連貨物の場合も非常に大きな災害が発生している。言いかえれば大手メーカー関係の貨物のところに非常に多く発生している可能性があるということで、今後この方面でも追及をしていきたいというふうに考えております。  いずれにしても今度の港運業法の改正、言いかえれば規制の緩和は、こういった労働災害を一層助長させるものであるということを指摘しておきたいと思います。  以上でございます。
  62. 梅田勝

    ○梅田委員 時間がなくなりましたので、あと一つだけ聞いておきたいのですが、コンテナ輸送はドア・ツー・ドアということで便利さがうたわれたわけでございますけれども、今後これは国際複合一貫輸送体制ということでどんどん全体のものになってくると思うのであります。これが進行いたしますと、海と陸の境界、港というものの位置づけが非常にあいまいになって、公共性の確保というのが非常に難しくなっていくのではないか。大体荷物の多いのは大手ですから、大手が港を支配するという格好になっていく。そういう中で港湾労働者の職域がなくなってくるということは重要な問題だと思うのでありますが、現在の港湾運送事業法によってどのような手段をとれば規制できるか、ここらあたりについて意見がございましたら、森下参考人あるいは河越参考人からも、一言でよろしいのでお聞かせ願いたいと思います。
  63. 森下賢一

    森下参考人 ドア・ツー・ドアの概念のもとに今度の運輸省の法改正の提案が行われておるやに聞いております。そこで、私は、この港の性格と機能という問題について改めて明確にしておく必要があるというふうに思っております。  この港とは何かという点でありますが、一つは、公共性を非常に強く持っているということですね。言いかえれば、国と地方自治体の膨大な予算を使って港をつくるわけでありますから、公共性が非常に強いという点が一つ前提になろうかと思います。  二つ目には、港湾とは海上輸送と陸上輸送の結節点ということが改正理由に述べられております。しかし、この海上輸送と陸上輸送の結節点というのは、現象面を言っているだけであって決して中身を言ってないというように思うのです。この結節点の中身はどういうことかといいますと、すべての貨物の搬出、搬入行為が生まれる、ここがポイントであり、ここが中身だと思います。そういう意味で、特に港運業法はこの点をしてさまざまな規制をしているわけですね。例えば機会均等の原則を守れということあるいは不正行為の排除、特定の企業の利益だけを追求してはならない、公平性、こういう点のさまざまな港運業法の規制があります。単なる結節点ということではなくて、この中身の問題からいって港湾の性格、機能という問題を正確に見ておく必要があると思います。  三点目は、輸出入貨物の唯一のチェックポイントになっているということであります。これは非常に大事なことだと思います。例えば輸出入貨物の不正のチェックあるいはこれは税金問題にも関係してきます。二つ目には密輸の防止チェックになっていると思います。それから出入国のチェック、動物、植物検疫のチェック、言いかえれば市民生活や国民生活の安全と安定、維持、こういうことで欠かすことのできない機能を果たしているんだという点を三つ目に指摘をしていきたいと思います。  四つ目には広い意味での各企業、各メーカーの生産活動、言いかえれば生産工程の起点であり終点であるということだと思います。だからこそ特定の企業だけが利用する港湾であってはならぬ。日本にあるすべての企業、すべてのメーカーに均等の機会を与えるという意味から、広い意味での各企業、各メーカーの生産工程の起点であり終点である、こういう点をやはりはっきりさせる点が大事じゃないか。  以上が港の性格と機能をあらわしたもので、そのことを正確に押さえる必要があるんではないかというふうに私は思っております。  ドア・ツー・ドアという概念は、終点のところで製品が完成するわけですから、その完成品を一般消費者のドアまでサービスとして届けるという、これが概念だと私は思っております。それを生産工程の起点を終点に持ち込むところに混乱が起きるのだということを特に強調しておきたいと思っております。  二番目の点でありますが、私は、これは先ほど言いましたように、いきなり港湾運送事業法改正を打ち出すんじゃなくて、そういう場合には労働者や労働組合、こういう人たちの意見も十分取り上げていく、そして同時に運輸省サイドからも環境調査、アセスメント、そういう意味では港運業のアセスメント方式を私は採用すべきだと思います。言いかえれば、こういう革新があって、こういうふうにした場合にどういう影響があらわれて、どういう形のところでどうなっていくのかという点の四年、五年先の内容も含めたことを念頭に入れて、事前に労働者や労働組合あるいは中小業者等々の意見も取り入れながら、そして、そこでできた案を提示して検討していただくという、そういう意味では港運業のアセスメント、こういう方向がとられるべきではないだろうか。いきなりやみくもに、私どもに言わせればやみくもだと思います。そうではなくして、ぜひそういう立場で港の性格と機能がますます果たせるような立場に立ってのアセスメントを私は提唱したいというふうに思っております。  以上であります。
  64. 河越重任

    河越参考人 ただいま御質問の点でございますけれども、ドア・ツー・ドア、一貫体制でどうなる、法規制ということでございます。その場合に、考えてみますと、今回の法規制というのは、企業の実態に即して法を直すんだということでございますけれども、どうもその底に、法の、むしろ行政の運用というのは相変わらず実態に即さないで旧態依然ということであって、かなりずれが出てくるのではないか。したがって、もし仮にドア・ツー・ドアにしましても、本当に港湾においてするこういう港湾荷役作業ということでむしろきちっとやりますれば——例えばコンテナにいたしますと、コンテナの埠頭の入り口の辺で当然そのまま走り込まないで、それから後は港湾業者のトラックにわずかな期間でも積みかえて、そこから先は港運業者だよということにしなくてはならないわけですけれども、そこら辺のところはどうも、強い方については黙って走り込ませておいて、弱い方はその一定の場から出ることはいけないというような意味での旧態依然という格好がするわけでございますけれども、そうした点にしますと、結局はどういう格好でという規制をしますと、先ほど申し上げました、一つには港湾の場という規制も必要でございますけれども、やはり仕事の内容、中身という点からの取り上げ方もあわせて規制していくという方法をとらないと、まさに事業の実態に即した法ということにはなりかねないのではないかと考える次第でございます。  以上です。
  65. 梅田勝

    ○梅田委員 どうもありがとうございました。
  66. 福家俊一

    福家委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚くお礼を申し上げます。  次回は、来る二十二日午前十時理事会、午前十時十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後四時二分散会