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国務大臣(
中曽根康弘君) 中曽根内閣の過去の業績につきまして温かいお言葉をいただきまして、まことに恐縮に存じます。われわれのような無力な者がやっていることでございますから、
国民の皆さんの御期待を完全に果たすこともできずに、はなはだ恐縮に存じて、じくじたるものがありますが、しかし、私以下閣僚全部まじめに一生懸命やっていることだけは申し上げさしていただきたいと思っております。
私、政権の座に座らしていただきましてから考えておりますことは、
一つは、国際的に日本の立場と力というものが、われわれ日
本人が内部で考えている以上に大きく外国人の目に映っており、またそういう実績もある。それをわりあいに日
本人が知らないということであると思っております。やはり、世界のGNPの一〇%を超す経済力を持ち、しかも独自の憲法やあるいは国際的な地政治学的位置を持って、アジアの一角にこれだけの大きな経済力を持った、また高度の文化と長い歴史を持った国家が厳然と栄えているということは、発展途上国にとりましても、大きな驚異でもありまた教訓のようでもあるようにうかがえます。
また、西欧各国につきましても、キリスト教徒でない、主として仏教徒である、あるいは儒教の徒である日本という国が、西洋文明を受け入れましてこれだけ大きく羽ばたいているのを見まして、非常に驚異にも感じ、ある部面においては畏敬の念も持って見られている、そういう面もあると思っております。また、共産圏におかれましても、主義主張は違うけれども、日
本人というものが長い間国家を形成してこれだけ発展している根源がどこにあるかということをやはり勉強しておられるのではないか。中国等に参りますと、そういうようなことがうかがわれます。
そういう
意味におきまして、日
本人が考えている以上に日本という国の重さと大きな
役割りというものの期待感というものがありまして、若干もし私の外交が影響を及ぼすことができたとすれば、それは日
本人全体がつくってきた国家の業績あるいは実績によってそれが自然に反映されているにすぎないのだと。政治の力というよりも
国民の皆様や労働者の汗と
努力、経営者の
努力でこれが行われていると、そういうふうに私考えまして、やはり国の内部が安定して、そしてみんながいい気持ちになって国のため世界のために働き合っているというこの厳然たる事実、犯罪も少ないし、内部の対立や摩擦も最近は特に少ないし、そういうような点が非常に大きく外国に映っているように
一つ思いました。
それから内政につきましては、いま行政
改革という大事業を控えまして一生懸命
努力しているところでございますが、しかし、まだなすところ少なく、
国民の皆さんの御期待にこたえることはできませんが、これぐらい
国民の皆さんの御協力をいただいている政治的項目もないと思うのであります。戦後三十八年
たちますけれども、これだけ
国民が期待し協力してくださっているという政治項目を自民党が握ったことはないと私は思うのです。それだけに責任が大きいし、これはどうしてもやり抜いていかなければならぬ、そう思います。
もう
一つ大事な点は、自由民主党を中心にする政府、あるいは自由民主党というものに対して
国民の皆さんがどういうふうにお考えになっているかということを考えますと、やはり穏健中正な政治をやって、そして
国民に安定感と安心感を与えていく。そしてやはり公平な政治、そしてただいま申し上げましたように、
国民の皆さん全体のことを考えて、一部の階級とか一部の地域に偏しない穏健妥当な政策を行う政党だという安心感を与える、公平にやっているんだという信頼感を与える、そして清潔な政党であるという信頼感も与える、そういうことが非常に重要であるというふうに痛感しておる次第で、一生懸命やらせていただきたいと思います。