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1983-09-21 第100回国会 参議院 予算委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年九月二十一日(水曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員氏名     委員長         西村 尚治君     理 事         金丸 三郎君     理 事         亀井 久興君     理 事         初村滝一郎君     理 事         藤井 裕久君     理 事         村上 正邦君     理 事         和田 静夫君     理 事         峯山 昭範君     理 事         内藤  功君     理 事         柳澤 錬造君                 安孫子藤吉君                 岩動 道行君                 岡部 三郎君                 長田 裕二君                 海江田鶴造君                 梶原  清君                 古賀雷四郎君                 沢田 一精君                 杉山 令肇君                 関口 恵造君                 田中 正巳君                 土屋 義彦君                 内藤  健君                 成相 善十君                 鳩山威一郎君                 真鍋 賢二君                 増岡 康治君                 宮澤  弘君                 山本 富雄君                 糸久八重子君                 久保  亘君                 佐藤 三吾君                 志苫  裕君                 瀬谷 英行君                 高杉 廸忠君                 矢田部 理君                 塩出 啓典君                 鈴木 一弘君                 中野 鉄造君                 和田 教美君                 上田耕一郎君                 伊藤 郁男君                 青島 幸男君                 前島英三郎君                 森田 重郎君     ─────────────    委員の異動  九月二十一日     辞任         補欠選任       成相 善十君    田沢 智治君       中野 鉄造君    中西 珠子君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         西村 尚治君     理 事                 亀井 久興君                 初村滝一郎君                 藤井 裕久君                 村上 正邦君                 和田 静夫君                 峯山 昭範君                 内藤  功君                 柳澤 錬造君     委 員                 安孫子藤吉君                 岩動 道行君                 長田 裕二君                 海江田鶴造君                 梶原  清君                 古賀雷四郎君                 沢田 一精君                 杉山 令肇君                 関口 恵造君                 田沢 智治君                 田中 正巳君                 土屋 義彦君                 内藤  健君                 鳩山威一郎君                 真鍋 賢二君                 宮澤  弘君                 山本 富雄君                 糸久八重子君                 久保  亘君                 佐藤 三吾君                 志苫  裕君                 瀬谷 英行君                 高杉 廸忠君                 矢田部 理君                 塩出 啓典君                 鈴木 一弘君                 中西 珠子君                 和田 教美君                 上田耕一郎君                 伊藤 郁男君                 青島 幸男君                 前島英三郎君                 森田 重郎君    国務大臣        内閣総理大臣   中曽根康弘君        法 務 大 臣  秦野  章君        外 務 大 臣  安倍晋太郎君        大 蔵 大 臣  竹下  登君        文 部 大 臣  瀬戸山三男君        厚 生 大 臣  林  義郎君        農林水産大臣   金子 岩三君        通商産業大臣   宇野 宗佑君        運 輸 大 臣  長谷川 峻君        郵 政 大 臣  桧垣徳太郎君        労 働 大 臣  大野  明君        建 設 大 臣  内海 英男君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)    山本 幸雄君        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 後藤田正晴君        国 務 大 臣        (総理府総務長        官)        (沖縄開発庁長        官)       丹羽 兵助君        国 務 大 臣        (行政管理庁長        官)       齋藤 邦吉君        国 務 大 臣        (北海道開発庁        長官)        (国土庁長官)  加藤 六月君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  谷川 和穗君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       塩崎  潤君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       安田 隆明君        国 務 大 臣        (環境庁長官)  梶木 又三君         ─────        会計検査院長   鎌田 英夫君         ─────    政府委員        内閣官房内閣審        議室長        兼内閣総理大臣        官房審議室長   禿河 徹映君        内閣法制局長官  茂串  俊君        内閣法制局第一        部長       前田 正道君        人事院総裁    藤井 貞夫君        人事院事務総局        給与局長     斧 誠之助君        内閣総理大臣官        房総務審議官   橋本  豊君        総理府人事局長  藤井 良二君        警察庁長官官房        長        太田 壽郎君        警察庁刑事局長  金澤 昭雄君        警察庁刑事局保        安部長      鈴木 良一君        行政管理庁長官        官房総務審議官  竹村  晟君        行政管理庁行政        管理局長     門田 英郎君        防衛庁参事官   新井 弘一君        防衛庁長官官房        長        佐々 淳行君        防衛庁防衛局長  矢崎 新二君        防衛庁人事教育        局長       上野 隆史君        防衛庁衛生局長  島田  晋君        防衛庁経理局長  宍倉 宗夫君        防衛施設庁長官  塩田  章君        防衛施設庁施設        部長       千秋  健君        防衛施設庁労務        部長       木梨 一雄君        経済企画庁調整        局長       谷村 昭一君        経済企画庁調査        局長       廣江 運弘君        科学技術庁原子        力局長      高岡 敬展君        科学技術庁原子        力安全局長    辻  栄一君        環境庁長官官房        長        加藤 陸美君        環境庁自然保護        局長       山崎  圭君        国土庁地方振興        局長       川俣 芳郎君        法務省刑事局長  前田  宏君        外務大臣官房領        事移住部長    谷田 正躬君        外務省欧亜局長  加藤 吉弥君        外務省中近東ア        フリカ局長    波多野敬雄君        外務省経済局次        長        妹尾 正毅君        外務省条約局長  栗山 尚一君        外務省国際連合        局長       山田 中正君        大蔵省主計局長  山口 光秀君        大蔵省主税局長  梅澤 節男君        大蔵省銀行局長  宮本 保孝君        文部大臣官房長  西崎 清久君        文部大臣官房審        議官       齊藤 尚夫君        文部省大学局長  宮地 貫一君        文部省管理局長  阿部 充夫君        厚生省公衆衛生        局長       大池 眞澄君        厚生省薬務局長  正木  馨君        厚生省保険局長  吉村  仁君        厚生省年金局長  山口新一郎君        農林水産大臣官        房長       角道 謙一君        農林水産省経済        局長       佐野 宏哉君        林野庁長官    秋山 智英君        通商産業大臣官        房審議官     山田 勝久君        通商産業省貿易        局長       杉山  弘君        資源エネルギー        庁長官      豊島  格君        中小企業庁長官  中澤 忠義君        運輸省航空局長  山本  長君        労働省労政局長  谷口 隆志君        建設大臣官房長  豊蔵  一君        建設大臣官房総        務審議官     吉田 公二君        建設省計画局長  台   健君        自治省行政局公        務員部長     坂  弘二君        自治省財政局長  石原 信雄君        消防庁長官    砂子田 隆君    事務局側        常任委員会専門        員        桐澤  猛君    説明員        会計検査院事務        総局次長     佐藤 雅信君        会計検査院事務        総局第一局長   西川 和行君    参考人        日本銀行総裁   前川 春雄君        税制調査会会長  小倉 武一君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○調査承認要求に関する件 ○予算執行状況に関する調査参考人出席要求に関する件 ○派遣委員の報告に関する件     ─────────────
  2. 西村尚治

    委員長西村尚治君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  まず、調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。  本委員会は、今期国会におきましても、予算執行状況に関する調査を行うこととし、この旨の調査承認要求書を議長に提出いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、要求書の作成につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  5. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 予算執行状況に関する調査を議題といたします。  まず、理事会における協議決定事項について御報告いたします。  質疑を行うのは本日及び明日の二日間とすること、質疑時間総計は二百八十分とし、各会派への割り当ては、自由民主党・自由国民会議及び日本社会党それぞれ八十分、公明党・国民会議五十分、日本共産党、民社党・国民連合及び参議院の会それぞれ二十分、新政クラブ十分とすること、質疑順位及び質疑者等についてはお手元の質疑通告表のとおりとすること、以上でございます。  右、理事会決定どおり取り運ぶことに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  7. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 次に、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  予算執行状況に関する調査のため、本日の委員会日本銀行総裁前川春雄君及び税制調査会会長小倉武一君を参考人として出席を求めることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、出席時刻等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  10. 西村尚治

    委員長西村尚治君) それでは、これより順次質疑を行います。和田静夫君。
  11. 和田静夫

    和田静夫君 まず、概算要求について伺いたいと思います。  厚生大臣でありますが、厚生省概算要求、これは恐るべき社会保障制度に対する挑戦とでもいいますか、切り捨てである。健保連の試算によりましても、虫垂炎でもって三万円負担増になる。低所得者層の場合でも約二万円の負担増だ、胃がんは五万三千円、低所得者層でも三万円、こういうような負担増になる。これではせっかく所得税減税がこれから行われたとしても成果はまるまる奪われてしまう、ある意味では持ち出しになってしまう。そういう危険性さえあるのでありますが、見解を承ります。
  12. 林義郎

    国務大臣林義郎君) 和田委員の御質問にお答えを申し上げます。  国民負担増になるような、患者負担増になるような改革ではないかと、こういうふうなお話でございますが、いまお話がございました虫垂炎その他の話は、計算すればまさにそういうことになると思います。思いますが、これは現在では組合健康保険本人あるいは政府管掌健康保険本人、これらにつきましては給付率が十割の給付保険で行う、ただし、それらの家族、または国民健康保険につきましては七割と、こういうことになっておるわけでありますから、いまでもこれらの家族方々国民健康保険につきましては同じような負担がかかっておるわけであります。  私は、そういった点でいま考えておりますのは、先生もよく御承知のとおり、医療費が毎年一兆円ずつふえてきておる、その膨張をどういうふうな形で考えていったらよろしいか。医療費というものが、老齢化社会に入ってくる、さらには医療の技術、医療そのものが進歩してきておりまして、いい医療を受けられるようになってきているわけでありますから、それはやっぱり国民みんな受けられるような形にしていかなければならない。そういったようなことを考えますと、私は一部の負担をしてもらってもそれが受診の抑制になるとは考えておりませんし、また先生もよく御指摘になると思いますけれども、医療については濃厚診療であるとか不正な診療が多いという御批判もある。  医療につきましてはいろいろな点で国民的な不信を招いている点があるわけでございますから、そういったものをやはり改善するための基本的な考え方をやっていかないと将来の医療体制というものができなくなる、崩壊してしまうのではないかという心配から、今回の予算、まあたまたま先ほどお話ございましたようなことですが、これを契機にいたしまして私たちは抜本的な改正をやろうと。実は、私は昨年の十一月に任命されまして厚生大臣になりましてから、いろいろとその辺の問題も考え、また諸外国のいろいろな問題も私自身も勉強いたしまして新しい方向づけをやっていくことが必要だろう、そういうことで考えているわけであります。  もう一つ言いますと、十割負担ということになりますと、えてして薬代がかさんでくるという傾向は否定できないところでありますから、やはり適正な薬、濃厚診療でないところの医療に持っていくということが必要なことではないか。そういったことを中心に考えましていろいろな案を出したところでございます。私は、基本としては、現在の医療保険制度が果たしている役割りというものは大変いいものがある。これの全体の体系を維持しながらやっていかなければならない。増大する医療費に対応して保険料を次から次へと上げていくというような形というものは私はやっぱり考え直していく必要があるのではないか、そういうふうなことを考えまして、今回のような考え方を御提案しておるわけでございます。  また、いずれいろいろなところにお話をしなければなりません。審議会その他にもお話をしなければなりませんし、また国民の各位からいろいろな御意見が出てくると思います。私は、そういったものは素直に謙虚に受けとめましていい医療改革の方向に持ってまいりたい、こういうふうに考えておるものでございます。
  13. 和田静夫

    和田静夫君 いろいろの論調がこの論議が始まりましてから出ていますが、言えることは、第一に手続が問題である。つまり、なぜもっと率直に国民的合意の形成を図る努力をしなかったんだろう、なぜ概算要求という形で唐突に抜き打ち的にこういうことを出すのだろう、こういう疑問はもう明確でありますが、いかがですか。
  14. 林義郎

    国務大臣林義郎君) 私の方で前から国会でのいろいろな御審議のときも、ときどきそういったお話は申し上げておりまして、医療の問題については改革をしていかなければならない。新聞にもビタミン剤をどうするとか給食費をどうするだとかいうような個別の問題はありました。私は、そういったものも含めまして、すべての問題についてやっぱり考えていかなければならないのではないか、こういうことでいま案をまとめつつあるところでございまして、概算要求はその一つのステップである。もちろん概算要求でございますから、これから予算編成ということになれば当然十二月の末ということになるんでしょう。だから、それまでに十分時間もございますから、いろんな御議論を総合して本当に国民の信頼のおけるところの医療制度、そういったものの確立にこれからも努力をしてまいりたい、そういうふうに考えておるところでございます。
  15. 和田静夫

    和田静夫君 今日の国民医療費膨張というのは確かにゆゆしい問題であります。現在の財政事情からすればその合理化スリム化が必要であるということをお互い認めるところですが、しかしこの膨張は主として私は医療の供給の側に問題がある、そういうふうに考えています。医者にかかりにくいような状態にする、そういうことはこれは全く逆行じゃないか、逆じゃないか。まずやるべきことは乱診乱療の排除、そういうふうに思いますが、いかがですか。
  16. 林義郎

    国務大臣林義郎君) 医者にかかりにくくするということは私の方は考えておりません。それは先ほど申しました国民健康保険あるいは家族本人十割給付のところと比較してみますと、やっぱり受診率につきましてはそんなに差はないんです。ただ、十割のところになりますと、あと一人当たり医療費、まあ薬代でございますが、そういったものが、概してみますと、十割の場合の方が二割から三割高くなっている、こういうようなことはございます。そこの中で、これは全体の統計でございますから一つ一つの個別の診療についてどうだという話ではございませんが、やっぱりその傾向の中に濃厚な診療であるとか、少し薬のやり過ぎではないかという問題が私は酌み取れると思うんです。  お互い私たちも、私もいまは国家公務員共済組合である、かつても国家公務員共済組合でありました。そのときに診療所に行くとたくさん薬をくれたというような経験は皆さんだれもお持ちではないかと思うんです。そこへプライスメカニズムをある程度まで働かすことによりまして、医者の方も、やっぱり患者さん、あんまり費用を取るということだと出す方も制限する。それからもらう方も、それは十割でして、全然払わなければもらってもということになるんですが、少しでも費用負担するということになればやっぱり抑制的な効果が働くのではないか。むしろそういったことを一つのてこにいたしまして本当に適正な医療が行われるように私たちは考えてまいりたい。  その制度の中に、ある程度までコスト意識と申しますか、プライスメカニズムの観念を少し入れていかないと、出来高払い制度というものをやっておりますから、家を建てるときに、この家を建ててくれ、何でもいいから幾らかかってもというような話では私はいかないと、こう思うわけでございまして、そういったことをぜひ少しでもいいからやっていこう。しかし、これを全部でやれなんてなりましたら大変なことでございますから、そういったことのないようには当然していかなければなりません。  と同時に、保険の中で弱者というのがやっぱりあります。それから経済的にもまだ余裕のある方があります。私は、そういった意味で、経済的ないわゆる低所得者につきましては頭打ちは三万円である、一件当たりどんなにかかりましても三万円であるということを頭打ちにしたい。それから一般の方々には五万四千円ぐらいのものを頭打ちにしていくというような段階を設けたいと思っております。したがいまして、たとえば五十万も百万も医療費がかかる、こういうことになりましても、それは頭打ちの五万四千円である、低所得者につきましては三万円である、こういうふうに制度をつくっていくのがいいのではないかというふうに考えておるところでございます。
  17. 和田静夫

    和田静夫君 その弱者で考えてみると、老人保健法施行に伴いまして新たな問題がたくさん出ています。老人退院を迫る病院あるいは入院拒否をされてたちい回しにされる御老人退院を迫られて数万円の贈り物をするなどというようなケースというものはいっぱいあるわけですが、こういう実態は把握されていますか。
  18. 林義郎

    国務大臣林義郎君) 二月から老人保健法施行をいたしまして、老人につきましては特別の診療報酬体系をつくりました。私たちの方は、これは各県でいろいろと実態把握をやっていますから、その辺の事情は十分に聞かしておるところでございます。  詳細につきましては事務当局から御答弁をさせていただくことをお許しいただきたいと思います。
  19. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) いま先生御指摘のような事態が若干あるということは、これは事実だろうと思います。しかし、私どもも大局的に考えまして、老人保健法の実施に伴いましてさしたる混乱あるいはそういう非常に不適正な事態というのはそれほど多いとは思っておりません。
  20. 和田静夫

    和田静夫君 把握されている実態等についてどういう対策を立てますか。
  21. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 私ども、個々にそういうケースがありますならば、それをお聞きいたしまして、是正できるものならば是正をしていきたいと、こういうふうに思います。
  22. 和田静夫

    和田静夫君 社会労働委員会にあと譲りますが、概算要求に関しての第二ですが、私学助成についてです。  国士舘大学に五年間の補助金不交付措置をとったわけですね。文部大臣、依然として事件の全貌はやぶの中です。特に海外送金の不正の問題がわからない。これはどういうことになっていましょうか。
  23. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 私学助成については、五十九年度の概算要求で一〇%マイナスのシーリングのとおりにいま計画をいたしております。  国士舘大学についていろいろ問題がありました。先般来学校当局に対していろいろ調査をし、指導をし、現在それを進めておる、こういう状況でございます。
  24. 和田静夫

    和田静夫君 海外送金。
  25. 阿部充夫

    政府委員(阿部充夫君) お答えいたします。  国士舘大学のいわゆる海外事業の問題でございますけれども、ブラジル等で武道館の建設等を行っております。私どもはこれまで国士舘から何回かにわたりまして事情聴取をいたしました。その結果判明いたしております点は、ブラジル関係に武道館の建設費等として約十億円、それからエジプト関係でございますが、これも武道館の建設費といたしまして約三億四千五百万円、それからアメリカ関係は国士舘大学のアメリカ支部の建物購入費ということで約一億一千四百万円、合計いたしまして十四億六千万円という金額の送金が行われておるわけでございます。  国際化の進展に伴いまして、こういう私学が国際交流事業を行うということ自体は決して悪いことだとは思わないわけでございますけれども、しかしながら、非常に多額の経費を支出するわけでもございますし、また外国との関係というむずかしい問題もあるわけでございますので、十分慎重な計画を立てて適切に配慮をしてやるようにということで、大学側に注意をかねてから促しておったところでございますが、先般柴田総長をお招きいたしまして事情聴取等を行いました時点におきまして、今後この事業の拡充は一切しないという回答を得ておるところでございます。
  26. 和田静夫

    和田静夫君 警察庁、この国士舘事件についての捜査内容。
  27. 金澤昭雄

    政府委員(金澤昭雄君) お答えをいたします。  国士舘大学の事件につきましては、ことしの七月四日の発生でございます。被害者が同大学の安高常務理事、被疑者が同大学のOBであります中村と田代の二名でございます。面会を求めて参りましたが、その際に話がいろいろこじれまして、近くの部屋に置いてありました文化包丁で安高常務理事を刺殺する、こういった事件でございます。その日に検挙いたしまして送致をするということで事件の方は終結をしております。現在、背後関係その他については、いまのところ把握してないという状況でございます。
  28. 和田静夫

    和田静夫君 文部大臣、補助金の不交付あるいは学長の退陣要請だけでこの大学の暴力的体質が変わるというふうにはこれはもう考えられませんが、今後の対策は。
  29. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 国士舘大学については、先ほども申し上げましたように厳重に警告を発し、経営体制、理事体制の刷新を求めておるところでございまして、まだその結論を得るまでには至っておらない。学校でございますから、いわゆる教育の場らしくやってもらいたいという観点から指導をしていく、こういう状況でございます。
  30. 和田静夫

    和田静夫君 時期的にはどういう進め方になるんですか。
  31. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 現在、学校でいろいろ検討されておると思いますが、時期を切ってやっておるというわけではございません。
  32. 和田静夫

    和田静夫君 八一年の二月にあの大きな問題になりました北里大学、寄附金や学債を二年間約三十二億円過小報告して、そして多額の補助金を詐取した。文部省は五十四年度分、五十五年度分は返還、減額をさせた。ところが、その後どうなったかと思って調べてみると、五十六年度で十五億三千五百万増ですね。五十五年度に減額する前のベースに引き続いてふやしてしまっているという形になっていますよ。こういうのはカット基準からしてどういう説明をされるのですか。
  33. 阿部充夫

    政府委員(阿部充夫君) お答えいたします。  北里大学に関しましては、医学部の入学生にかかる寄附金の一部を別途経理をしていたという事態が判明いたしましたために、昭和五十三年、五十四年、五十五年と三カ年にわたりまして経常費補助金の約五〇%をカットという措置を講じたわけでございます。正確に申し上げますと、五十三年度と五十四年度はすでに交付をしておりましたので返還を命じたわけでございまして、五十五年度は当初からカットをして交付をしたという状況でございます。  しかしながら、同学校法人におきましては、問題が判明した後の事後措置といたしまして理事長が引責辞任をする等理事体制の全面的な刷新を行う、同時に別途経理いたしておりました寄附金につきましては、入学者の父兄に返還をするといったような比較的きれいな解決をしてくれたわけでございまして、そういった改善の実が上がったというようなこともございますので、五十六年度以降は通常の補助金の交付をいたしたわけでございまして、五十六年度以降について特別の何か上乗せをしたというようなことは全くないわけでございます。ちょうど単価の変更等がございました関係上、通常の計算で交付をいたしました金額が従来より若干上回っていたかと思いますけれども、そういうことでございます。
  34. 和田静夫

    和田静夫君 国士舘に新たな制裁措置がとられるようでありますから余り突っ込んでみませんが、監察報告を見てみますと、総額抑制を主張する、来年度概算要求でも総額が削減される。その前にこの不正使用防止の体制を一体どうつくるのか、あるいは監察報告でも、振興財団の審査体制がなっていないという指摘があるわけですね。こういう点は早急に改善をしなきゃならぬと思いますが、これは大臣どう思いますか。
  35. 阿部充夫

    政府委員(阿部充夫君) 私学の経理に関しまして幾つか不祥事が生じましてまことに恐縮に存じておるわけでございますが、私学振興財団におきましては、経常費補助金の適正な執行を図りますために、実施状況等につきまして交付申請書等の書類審査、それから実地調査等を従来行ってまいったわけでございますが、今回のような各種のケース等にかんがみまして、今後このような事件の再発を防止するという見地から、本年度から書類審査を一層厳正に行うと同時に、各私学をすべて申請の際に呼びましてヒヤリングをするというようなことを加え、さらには実地調査の回数も従来よりふやして厳正な調査を行うようにするというような各方面の努力を行っておるわけでございますが、その他財団の内部的な体制の整備等につきましてもあわせてこの際検討いたしまして、今後このような事態が起こらないように最大限の努力をしたいと考えております。
  36. 和田静夫

    和田静夫君 私学助成の削減は必ず私大の学費の値上げにはね返る、新たな負担の増を生み出す、こういうことが必定だと考えるわけですが、大臣この辺はどういうふうに考えていますか。
  37. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 御承知のとおり財政がきわめて窮屈でありますから、国全体としてしんぼうのできる範囲ではしんぼうしようと、こういうことでやっておるわけでございますが、私学についての概算要求では先ほど申し上げましたように一〇%マイナスで一応出しております。これはどういう結末をつけるかは今後の問題でありますが、先ほども局長から申し上げましたように、従来惰性に流れて私学の助成をしておった点がありはしないか、こういう点を根本的に再検討いたしまして、必要な部面に必要な助成をする、こういうことでできるだけ私学の学生の個人負担がないような努力をしてみたいと、かように考えております。
  38. 和田静夫

    和田静夫君 九州産業大学あるいは国士舘大学の問題というのは、私は補助金問題というよりも教育の場の倫理の問題でもあろうと、こう思うのであります。そういう点からまことに遺憾な事態が東京医科歯科大学で発生をいたしています。事件の全容は捜査当局の手で明らかにされつつあるわけでありますが、私はこの事件の根は深いと思うのです。  そこで、文部省に伺うのですが、文部省としては事情聴取その他の対応をこれまでおとりになりましたか。
  39. 西崎清久

    政府委員(西崎清久君) ただいま先生のお尋ねの東京医科歯科大学に関する事件でございますが、七月十九日に新聞報道がございまして、私どもは直ちに東京医科歯科大学の当局と協議をいたしまして、本件につきましては特に教授選考にかかわることでございまして、大学自治の根幹にかかわる問題でございます。大学としても真剣にこれを重大に受けとめて、事実関係を早急に調査して報告をすることと、そして仮に金銭の授受があったときは速やかに教育公務員特例法の定めるところにより懲戒処分等について厳正にすべきであるというふうな私どもの意向を伝えたわけでございます。  その後も医科歯科大学におきましては、第一外科教授選考調査委員会というものを設けまして十数回にわたります調査を継続しておるわけでございます。その間、私ども六回にわたりまして報告を受けておりますが、その経過で私どもが承知しておりますのは、池園教授と二回調査委員会は会いましていろいろ聞いております。それから酒井博士に一回会っておるわけでございます。その調査委員会が当事者と会って判明しておることを私どもは報告を受けておるわけでございますが、一つは、二月九日に酒井博士から三百万円の入った菓子箱を受け取ったという点につきましては、酒井博士、池園教授の間の意見と申しますか供述が一致しておるわけでございます。しかし、四月十三日に本郷の料亭で会合があり、そこで百万円の授受があったことにつきましては、両者はその事実はないというふうに申しておるわけでございます。  私どもとしては、事態の解明については大学自治の問題として捜査の問題とは別でございまして、これはもう大学がみずからやるべきことであるということで調査委員会はなお継続すべきであると調査を続行してもらうように指導をしておるわけでございますが、問題は金銭授受の動機でありますとか、金額、返却の時期、状況の真相等につきましてなお不分明な点がございます。医科歯科大学の第一外科のOBに三人の方がおられまして、その方々からも調査委員会は意見の聴取をするというふうな経緯をたどっておるわけでございますが、なおもうひとつ事態の真相が不分明な点がまだ残っておるというのが現状でございます。
  40. 和田静夫

    和田静夫君 大臣は今回の事件、どういうふうにお受けとめですか。
  41. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 東京医科歯科大学のああいう事件はきわめて遺憾な事件だと、こういう考え方で対応しておる、こういうことでございます。教育の場でああいうことされるということはきわめて本当に遺憾でございます。
  42. 和田静夫

    和田静夫君 警察庁、金を贈った方は一体どうなりますか。
  43. 金澤昭雄

    政府委員(金澤昭雄君) お答えをいたします。  現在、警視庁におきまして一連の事件についての捜査をやっておるわけでございますが、現在逮捕いたしておりますのは池園教授をめぐる贈収賄事件でございます。これは収賄の同教授、それに贈賄側業者、これは医療機械の納入業者でございますが、これを七名、合計八名を検挙して現在事件を捜査中でございます。その他につきましては現在幅広く捜査中でございますので、ただいまのところ答弁は差し控えさしていただきたいと思います。
  44. 和田静夫

    和田静夫君 大学側の調査、処分がおくれていますね。何か政治的な圧力がかかっているといううわさもありますが、文部大臣としてはこれからどういうような指導をされますか。
  45. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) この問題について政治的な圧力があるとかないとかそういうことは全然私どもとしては感じておりません。そういうことはないものと考えております。いま警察庁からお話がありましたが、事件は刑事事件として捜査が進められておりますので、この問題の決着を見ないと大学の自治上の処分ができかねておる、こういう実情にあると思いますが、私どもは厳正な気持ちで見守っておる、こういうことでございます。
  46. 和田静夫

    和田静夫君 私の調査によれば、事件はさらに発展する可能性があるというふうに言われています。大臣、行政の側がやっぱりきちんと対応する必要があると思うんですね。強く要望いたしますが、いかがですか。
  47. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 不正に対しては厳格な気持ちで対応する、こういうことでございますが、大学の自治の問題がありますから、大学当局から申請があってこちらが処分する、こういうことになりますので、それを見守っておる、こういうことでございます。
  48. 和田静夫

    和田静夫君 教職員組合の委員長は、機器メーカー、製薬業者との癒着は、程度の差はあってもどの教授にも共通する問題というコメントを出しています。いわゆる根は深いわけです。これはまた医科歯科大学に限られた問題ではなくて、東京大学の医学部でも出入り業者から寄附をもらって慰安旅行をやっているとかいろいろの報道があります。このときも当該の教授は、どこの医局にもある慣習、こう言っているわけですね。文部大臣、これは全医大について是正を図るぐらいの構えでもって臨む必要があるのでありますが、何か御方途をお持ちですか。
  49. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) あるいは大学の医学部、あるいは大学の附属病院等についてさように懸念されるところがあります。そういう問題を含めていま厳重に処置をいたしておりますが、その内容については事務当局から御説明いたさせます。
  50. 宮地貫一

    政府委員(宮地貫一君) 御指摘のような医学部あるいはその附属病院の管理運営に関しまして近年幾つかの不祥事が報ぜられておりまして、世間の批判を受けていることについてはまことに遺憾に存じているところでございます。  文部省といたしましては、このような事態をきわめて深刻に受けとめているわけでございまして、この種の不祥事の再発防止のためには、従来からも関係者にその都度注意の徹底を促してまいっておるわけでございますが、今回の事件を契機といたしまして、具体的には八月二十三日に国立大学医学部附属病院長会議の常任委員会におきまして適切な対応方を強く要請をしたところでございます。同委員会ではこれを受けまして、従来にも増して医学部附属病院の管理運営の改善に努力することを全員一致をもって合意し、あわせてその具体策について協議をし、具体的には兼職兼業手続の厳正な履行の徹底、関係業者からの資金の受け入れ手続について厳正な履行の徹底、服務規律の保持の三点について申し合わせを行い、これを各附属病院長に送付して趣旨の徹底は図っているところでございます。  さらに、九月六日、関係国立大学の事務局長、病院事務部長を招集して、各大学においてかかる不祥事の根絶を期して一層自粛自戒すべきことについて厳に指導いたしておるところでございます。さらに、十月十三日に開催予定でございますが、国立大学医学部長会議が開かれることになっておりまして、医学部及び附属病院の管理運営の改善についての具体策の検討方を私どもとしては強く要請をしているところでございます。  今後ともあらゆる機会をとらまえまして、この種事件の再発防止のため関係者に強力に指導を努め、いわゆるこの問題が医学部にかかわる体質と言われるようなことについて根本的な是正を図りたいと、かように存じておる次第でございます。
  51. 和田静夫

    和田静夫君 私は八月の末から九月の初めにかけて中国を訪れまして、中国医科大学から日本に研修に来られた医学者の皆さん、あるいはハルビンの自治体に勤務をするお医者さんの皆さんで日本の自治体病院に研修に来られた皆さんと時間をかけて懇談をしてまいりました。日本の医療技術や教育やあるいは医療の機械その他について高い評価を与えた皆さん方に忌憚のない意見を求めたところが、やはり医道倫理に関する問題について決定的に欠けているのではなかろうかという御発言が共通にございました。  そこで、講座制の再検討などを根本的に検討する、そういう対策を含んで大臣これからやられるわけですか。
  52. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 和田さんが中国で留学生の皆さんからそういう御意見を聞かれたことは非常に残念なことでございます。そういうことのないように、いま先ほど事務当局から申し上げましたように、どういう方法をとった方がいいのか全力を挙げて検討してみたいと、かように考えております。
  53. 和田静夫

    和田静夫君 講座制の問題はどうなんですか。
  54. 宮地貫一

    政府委員(宮地貫一君) 講座制の問題についての御指摘でございますが、大学の組織としてのあり方そのものについて検討することは、これは一般論としては、いろいろと問題点として指摘されている点について検討することは当然でございます。医学部の問題につきましては、私どもとしては講座制そのものがこの原因であるとは必ずしも理解はいたしていないわけでございます。先ほども申し上げましたように、医学部に言われておりますような体質の問題についてどのような改善策が講ぜられるべきかということについて、文部省に置かれております医学の視学委員でございますとか関係の学識経験者の方々に御意見を十分伺って今後の改善策については真剣に検討いたしたいと、かように考えております。
  55. 和田静夫

    和田静夫君 総理、医科歯科大学や国立予防研究所などの業界との癒着、金権体質、目に余る問題がずっと報道されているわけです。事件として出てきているわけです。私は、その頂点に実はロッキード事件があるような気がしてならないわけですが、総理はどういうふうにお考えですか。
  56. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 必ずしも同じ性格のものではないと思います。片方は公務員でお医者さんとかいう部類の方々であります。これらの方々はいわゆる特別権力関係と申しますか、就職し採用されている、そういう関係で公務員としての分限を守らなければならぬ。つまり全体の奉仕者、そういう関係でおるわけでございます。片方は政治家でございまして、選挙民から選挙されて出てきて、そして代表者として行動する、そういう立場にある特別職の公務員であります。そういう意味において立脚するポイントは違うと思います。しかし、倫理性を守る、そういう点においては共通のものもあると思っております。
  57. 和田静夫

    和田静夫君 公務員の綱紀粛正、これも何度も叫ばれてきているわけですが、毎年内閣も通知を出されています。それでも後を絶たないわけであります。総理大臣がやっているんだからおれがやって何が悪いという風潮はどう考えてもある。ここのところを総理はどうお考えになるかであります。
  58. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 特別職であろうが一般職であろうがあるいは専門職であろうが、公務員は公務員でございますから、やはり公務員として道徳性というものをわきまえて慎重に行動しなければならぬ、そういう点においては一致しております。しかし、いわゆるロッキード事件というものがそういうものに対する風潮を及ぼしたのかという、これは必ずしも定かではありません。しかし、いやしくも政治の職に携わる者は国民代表でございますから、国民の皆様方に対していやしくも指弾されることがないように行動しなければならぬということは当然でございます。
  59. 和田静夫

    和田静夫君 すでに一部紹介されていますが、一九五四年、昭和二十九年の造船疑獄の際に、中曽根総理は実に議員としてよい発言をなさっていらっしゃいます。私も二月二十二日の予算委員会議事録を読み返していただきましたが、「一番重要なことは、国民の目の前に政界が、特に保守陣営がうみを出し切って見せて、自分が健康体になるという決意を国民に見せることであります。それがこの時局を展開するスタートであります。それ以外のいかなることも彌縫策であり、糊塗策であります。」と、これは全く賛成ですね。政治が自浄努力を積極的に行うこと、これは何よりも優先されなければならないことであります。いかなるびほう策もとらず、うみを出し切ってみせることをおやりになる、それがいま中曽根総理が立っていらっしゃる立場だろうと思うんですが、田中元総理に議員をおやめになったらいかがですかというようなことを中曽根さんの昭和二十九年におけるところの発言をもとにしてお勧めになる、そういうことがあってもしかるべきじゃありませんか。
  60. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 自民党総裁といたしましては、自民党の党員に関する限りはそういうような心構えでいかなければなりませんし、そのために党内にはそれぞれの機関がございまして、党規委員会というものもございます。あるいは総務会というものもございます。そういう機関がお互いに自戒し、また監視し合っておるということでございまして、自民党はそういう心がけでやっております。無所属の方に対しましては、これは無所属の方が自分で御判断なさることである、そういうふうに考えております。
  61. 和田静夫

    和田静夫君 総理府総務長官に聞きますが、政界がまず率先うみを出し切ることが必要だというこのことについて、どうお考えになりますか。
  62. 丹羽兵助

    国務大臣(丹羽兵助君) お答えさしていただきますが、政界云々よりもお互い政治の道に携わる者すべての者がそういう先生の御指摘のような気持ちにならなきゃならぬと、こう私は考えております。
  63. 和田静夫

    和田静夫君 防衛庁長官、いかがですか。
  64. 谷川和穗

    国務大臣(谷川和穗君) ただいま総理府総務長官がお答えになったと同じような考えを持っております。
  65. 和田静夫

    和田静夫君 外務大臣、いかがですか。
  66. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 自戒自粛、みずから正すということです。
  67. 和田静夫

    和田静夫君 さらに文部大臣。
  68. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 私は戦後の風潮に非常に危惧を持っておる一人であります。特にこの戦後日本の経済発展に伴って、よく世間で言われておりますように物質万能的な風潮が各方面に広がっておる、これが先ほど来学校等の問題が取り上げられた一つのあらわれではないかと私は見ておるのですが、そういう意味で、政治家なりあるいは指導的立場にある者は最も身を持さなければならない、これが一番大事なことではないかと、かように考えております。
  69. 和田静夫

    和田静夫君 私は、何も自由民主党の派閥を考えながらいま答弁をしてもらったわけじゃありません。総理大臣、いま閣内にも、明確に私が述べた、あるいは昭和二十九年に中曽根議員がお述べになった同じ考え方の大臣がいらっしゃるわけですね。このことをやっぱり厳粛に受けとめられながら、一〇・一二判決を中心とするいろいろの動きについて対処をされる、そのことがやっぱりあなたにとっていま必要ではなかろうか、そう思いますが、もう一遍答弁願いたいと思います。
  70. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) やはり事は倫理とか政治家の出処進退に関する問題でございますから、われわれはやはり粛然として厳厳な気持ちでこれを見守らなければならないと、そのように思います。
  71. 和田静夫

    和田静夫君 経済政策に入りますが、自民党は参議院選挙に際しまして、さあ景気と減税、いかにも選挙が終われば直ちに景気対策と減税に取り組むかの構えをとったわけであります。そして、自民党だからやりますというようなことで、こういうことで非常に大きな胸を張られたのでありますが、ところが政府の景気対策は、与党ができますと言った割りには全然進まない。四日五日に政府は十一項目の景気対策を——どこまで実行をいまされているのか。総理、どういうふうに思いますか。
  72. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 四月五日に決めました諸般の対策はかなり進めておるつもりでございます。金融における公定歩合の問題は日銀総裁に任せてある問題ですからわれわれが干渉すべき問題ではございませんが、それ以外の公共事業費の前倒しも順調にいっておりますし、その他民間活力の引き出しの問題もいま懸命な努力もしつつあり、あるいはさらに、たとえば東京都内の第七環状線以内の一種専任の問題につきましても手をつけて実行しつつある、こういう状況でございまして、やはりあの時期にやるという気分を起こした。景気というものはやっぱり気ですから、そういう心理的な影響力というのはかなりあると思う。それで、気を起こすという意味において、政府もやる気だなあということで皆さんもその心構えになって、それじゃこっちも考えようかと、そういうような動きを起こす一つの端緒になった。その後もそれを引き続いて実行しつつあります。  最近の情勢を見ますと、アメリカそのほかの海外要因も加わりまして、皆さんよくなるだろうという気分になりまして、きのうの新聞等をごらんになれば、各企業が下期においては景気はかなり回復するし収益も上がってくるという、ほとんど全部がそういう強気の見通しに転じてきております。これはやはり四月五日というものが端緒になって、次第にそういう空気ができてきたと思っております。具体的には企画庁その他から答弁させます。
  73. 和田静夫

    和田静夫君 十一項目で答えてください。
  74. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) ただいま総理もお答えになりましたが、四月五日の「今後の経済対策」は、御案内のように、当面の課題が八項目、今後の検討課題が三項目ございます。大変広範なものでございますから、重立ったものについて進捗状況を申し上げたいと思います。  まず第一の公共事業の前倒しは、御案内のように七二・五%というふうに契約目標率を決めまして、順調に進捗しているところでございます。住宅建設でございまするけれども、住宅金融公庫の貸付対象、それから高層住宅貸し付けの対象地域の拡大等について実施をいたしまして、順調に進捗しているところでございます。それから規制の緩和、この問題も大変重要でございますが、市街化調整区域における開発許可の規模の要件の引き下げ等、民間投資の促進のために規制の緩和を各方面において着々と進めているところでございます。国公有地の活用につきましても、もう御案内のように、新聞紙上で報ぜられておりますように、これも順調に進捗していると思います。  その他、中小企業対策、不況業種対策も私は順調に進捗しておると思います。金融政策の機動的運営だけが、先ほど総理が申されましたように、これが公定歩合の引き下げというように定義されるならば、アメリカとの関係でいままだ発動はされていない、いずれその機会が私はねらわれていると思っているところでございます。  なお、当面の課題から離れまして今後の検討課題、その中での所得税の減税につきましては、もう国会の御論議で御案内のとおりだと思います。
  75. 和田静夫

    和田静夫君 公定歩合は、日銀総裁があと二十分ぐらいでお見えになりますから尋ねますが、いろいろ言われましたが、私はその効果は出ていないと思うんですね。私が言うばかりじゃない。十六日に発表された、公的資本形成は四—六月期、対前期の比で五・二%、一見よいように見えますけれども、対前年同期比ではマイナス〇・四%にすぎませんね。そうすると、公共工事の着工は、五、六、七月の対前年同月比で見てもかなり悪いわけでしょう。住宅建設の方も四—六月期から逆に悪くなっていますね。これは企画庁、あるいは建設省でもいいんですが、この点は確認できるんでしょうね、この数字の部分は。
  76. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) 私は、前倒しの効果が出たために、四—六のQEと申しますか、統計速報で〇・五%の成長率が見られた、こういうふうに考えております。ただ、これからが問題であろうかと思います。
  77. 和田静夫

    和田静夫君 これから問題なんですよ。要するに、その四月五日の景気対策は私は効き目がなかったと、こう思っているんです。景気の回復、これは本物の回復と呼べるのかはいまの段階ではなお私は疑問符だと思うんですが、これは政府の景気対策によるものじゃありません。景気動向にほとんど影響を与えていないんですよ。これは総理、そういうふうに率直にお認めになりませんか。
  78. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 内外こもごもそういうふうに相牽連し合いまして、次第にいま回復しておると思っております。
  79. 和田静夫

    和田静夫君 それでは企画庁、あなたのところの世界経済レポートによりますと、アメリカの景気回復は制約があって不確定要因が強いと。そうすると、日本の景気回復もアメリカ経済に依存する限りは先行きおぼつかない、こういう論理になりますね、レポートは。
  80. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) そのようなアメリカの景気動向に対する懸念は高金利、そしてまたまだ多い大変な失業者の数等から構造的に問題があるにいたしましても、現在のところは順調に、あるいは急速というふうに言われているぐらい進行しておりまして、私どもは、日本に対する好影響がある、将来に対しては十分な警戒の念が必要かもしれませんが、現在のところはそのような様相はない、こういうふうに見ているところでございます。
  81. 和田静夫

    和田静夫君 通産大臣どうですか。
  82. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) アメリカの景気は、大体住宅、これ中心に非常に急速度によくなっておると聞いております。それで、高金利政策のもとにおいてなぜかなという話もありますが、これはまあいろいろと税制等においてユーザーにメリットが与えられるのだろう、こういうことでございまして、高金利政策そのものは私は意外と長く続くのじゃないか、こう考えますと、やはりそれに対処する財政政策等々もとられる、あるいは金融税制の対策もとられる、こう思いますと、しばらくは景気がいいのじゃないか。しかし、その景気ばかりを頼りにいたしておりますと大変でございますから、やはり外需よりも内需喚起、これに努めなければならない、こういうふうに考えております。
  83. 和田静夫

    和田静夫君 現在の回復経路というのは経済摩擦型の拡大、そうですか。これは経企、通産両方ですね。
  84. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) 現在の景気の回復状況は、もう四—六のQE、さらにまた最近まで判明いたしましたところから見まして、私は、外需の依存の程度は私どもの見積もりより多い傾向がございまするけれども、先ほど総理も申されましたように、下期の好転を考えますれば順調に景気は回復している、こういうように考えております。
  85. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) やはりわが国といたしましては、輸出よりも輸入拡大、そうしたことにおきまして、どういたしましても経済摩擦の少なくなることを願わなくてはならない。そのためにもやはり内需喚起であります。
  86. 和田静夫

    和田静夫君 私はやっぱり、通産大臣のいまの結論的なところと変わらないんですが、いまと異なる回復経路をとるべきだという主張をするわけですよ。これが財源難を理由にできないということになりますと、何といいますか、内需の拡大策というものがいまの時期できないということになってくると、これは中曽根自由民主党の参議院選挙におけるところの公約違反になる。いま一度内需の拡大策がもっと鋭く進められなきゃならない、景気の回復にはずみをつけさせるには私は新たな内需拡大策をとるべきである。この辺、大蔵大臣どうお考えですか。
  87. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 基本的な考え方を私は否定するものではありません。ただ、今日財政の出動ということになりますと、勢いそれは建設国債に頼るとかいうことにならざるを得ない。そうなると、今日の国債の発行額から見て民間金融の市場に対して大きな影響を考える。さすれば、それがまた景気そのものの足を引っ張るという結果にもなるであろうというところに非常に工夫を要する問題が数あるではないか。したがって、私どもといたしましては、当面四月五日に決定されたこの施策を着実に行うことによって、息の長い、いわば景気の定着というものを期待すべきではなかろうかというふうに考えております。
  88. 和田静夫

    和田静夫君 総理、総理の経済政策に対するスタンスがどうもはっきりしないというふうに思われてならないんですよ。対外経済対策をめぐる五省庁の連絡会議の事務局案を見てみますと、内需拡大策について各省庁間で対立をしているということが言われているわけですね。公共事業の追加についてもあるいは設備投資の減税についても省庁間に意見の一致を見ない。そう考えていきますと、一体中曽根さんの経済政策、つまりナカソネミックスの基調は一体どこにあるのだろうか、ちょっと私ではわからぬわけです。結局、稲山哲学のような形でのいわゆるがまんの哲学ですが。
  89. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いま各省庁におきまして当面行うべき経済政策についてすり合わせをやっております。これは日本の黒字が膨大に上がるという懸念もあり、またそれについては内需の振興ということが非常に大事な政策であるという観点もございまして、七月半ばごろから私が指示しまして八月いっぱい、これは官房で大体まとめつつ、各省の意見を徴して各省のすり合わせをやっておりました。大体の粗ごなしの考えができまして項目が出てきたわけです。それを経済企画庁に移しまして、いま企画庁長官が現実政策にすべく調整をやっておるわけです。ですから、その間におきましては各省は自由活発に自分の意見を出しまして、通産省は景気回復が必要だ、大蔵省は金がない、そういうような形でいろいろごしごしやったわけです。これは非常に歓迎すべきことで、非常に官庁は活発に自分たちの仕事をやっているというわけであります。いよいよ企画庁長官のところにおきましてこれをまとめていくという段階になりまして、私もそろそろこの問題についてどういうふうに判断をすべきかという結論をつくろうとしておるときでございます。  大体、基本的には四月五日の線の延長線でこれを行う。それで、税金を使って公共事業費をふやすということはできないし、赤字公債をふやしてやるということもできない現状ですから、結局広義の金融的手段というものを大幅に活用しつつ、一面において内需の振興をやっていく、そのほかの諸般の政策に移らざるを得ないであろうと、そう考えております。
  90. 和田静夫

    和田静夫君 いまの総理のを受けてどういうふうに。
  91. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) いま総理も言われましたが、四月五日の「今後の経済対策」を受けまして、最近におきますところの四—七月間における経常収支八十一億ドルの黒字、これらの情勢を踏まえて、新しく対外経済対策を各省間において樹立すべくいま調整中でございます。その方向は言うまでもなく、一つは輸入の拡大であり、そのための市場開放であり、さらにまた、それには何としても私は日本の経済が活性化して、輸出に過度に依存したりあるいは輸入が萎縮したりすることがないように内需の拡大が基本だと、こういうふうに考えておるところでございます。いま申しましたこの三つの柱を打ち立てまして、現在各省との間に議論を交わしながら検討中でございます。
  92. 和田静夫

    和田静夫君 私は、建設省の「建設経済の構造とその経済効果」も読みましたし、経済白書も読みましたし、各省のものはほとんど目を通さしてもらったつもりですが、どうもまだ各省いろいろ意見の相違があるんですが、ちょっと一つだけ具体的なことを聞きますが、そうすると、公共事業の下期の追加をやるのかやらぬのか、これは建設、経企、大蔵。
  93. 内海英男

    国務大臣(内海英男君) 四月五日の経済対策の決定をいたしましたときに、公共事業の大幅な前倒しということがございまして、当然下期のことがいろいろ議論が出たわけでございまして、その間の議論の中で、今後の経済情勢の動向を踏まえつつ、適時適切な対応をしてまいりたいと、こういう口頭了解というものがございまして、私どもといたしましては、その適時というのがいつだかまだはっきりいたしませんけれども、現在が適時であるのか、これから後が適時であるのかわかりませんけれども、適切な対応がなされるものと、これが補正予算になるのか増額になるのか、そういうことは具体的にははっきりいたしませんけれども、現在各省庁の間で議論が交わされておるところだと、こう思っております。
  94. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) 先ほども申し上げましたように、内需拡大の方向が最も重要な経済政策の目標であるところでございますが、その観点から見ますと、やはり確実に内需を拡大する方策として私は公共投資が考えられる。しかも、これまでの前倒しした際の下半期においては常に何らかの形においての補充が行われてきた。こういうふうに考えますと、私は財政再建も非常に大事な原則であると思いますが、財政再建、赤字公債をふやさない方向、このような観点を考えての何らかの公共投資の拡大は必要かと、こういうふうに考えております。
  95. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 今日一つの基準のとり方ということに一つはなると思うのであります。七七・二というのが五十七年度の前倒しの実効率でありますし、そしてことしは七二・五、そこに開きがあるわけであります。それにもって先ほども御指摘のありましたいわゆるデフレーター、これを掛けてまいりますと、四—六の先般出ましたQEを見る限りにおいては、昨年度の補正後の下期に比べて事業量そのものは私は十分維持できる形であるというふうにとっておるわけであります。したがって、直ちにいわば財政が出動していくという状態にはないというふうに考えております。しかしながら、先ほど来御答弁がございましたように、経済は生き物でございますから、内外の経済情勢等の推移を見ながらそれに機動的に対処していくという絶えず基本的な姿勢は持っていなきゃならぬと、こういうふうに考えております。
  96. 和田静夫

    和田静夫君 大蔵大臣、設備投資減税についてはどう考えますか。
  97. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 設備投資減税というものが、いわば景気の波及効果があるということに立って、五十八年度にいろんな財政事情のもとにやったばかりでございます、いま。その効果がどういうふうに出ていくかということを当面は見守る時期ではなかろうかというふうに考えております。
  98. 和田静夫

    和田静夫君 通産大臣、これはおやりになりたいでしょう。おやりになりたいとすれば、どういうようなふうにお考えになりますか。
  99. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) ことしは非常に財源難でございましたが、一応御承知のとおりの投資減税を行いました。その効果も見守りたいと思います。思いますが、やはり内需喚起という観点から考えた場合には投資減税というものは大きなウエートを占めるであろうと考えています。
  100. 和田静夫

    和田静夫君 通産大臣としての具体的な構想はおありになりませんか。
  101. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) やはりやるからには新しい目標を定めた方がいいのじゃないかと思います。だから、現在といたしまして中小企業者が一番望んでいるのは何かと例を思いますと、やはりエネルギー等々に関しましてそうした設備投資をしたいと、こういう願望がございますから、これはすでに行っておりますが、たとえばその税制の拡大延長を図るとか、さらにロボットとかあるいはコンピューター、そうした近代化でございますね、そうした面の設備投資等も今後中小企業の活性化のためには必要ではないかと考えております。
  102. 和田静夫

    和田静夫君 総理、両大臣から答弁いただいたのですが、やはりここで総理の判断を伺っておきたいのは、公共事業下期の追加あるいはこの投資減税をやるのかやらないのか。これはもちろん補正予算とのかかわりがあるわけですけれども、ここのところの御所見はどうですか。
  103. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いまお聞きのように、建設省あるいは通産省あるいは大蔵省、みんなおのおのの政策を持って各省庁の関係を調整するという段階でございます。しかし、若干の時間がまだかかると思いますが、ともかく内需を拡大して、そして貿易の黒字をできるだけ消していく、それから輸出依存型から内需の方へウエートを、国民経済の性格をできるだけ移行させていく、そういうことが日本のいま当面すべき問題であると思いまして、それに合うような方針を持って実行いたしたいと思いますが、しかし財政が出動する、税金のお世話になるという方向あるいは赤字公債がまた出てくるという方向は避けなければいけない、その範囲内と、そういう意味で、先ほども申し上げましたように広義の金融的手段というものが考えられる大きな一つの分野になるであろう。あとは所得税減税という問題を考えておりまして、こういうようなものの組み合わせでことしの下半期にかけて経済政策というものを動かしていくべきではないかと考えております。
  104. 和田静夫

    和田静夫君 もうちょっとですが、ナカソネミックスでちょっとどうしてもはっきりしたいと思うのは、これは予算委員会ですし、来月にもこの対外経済政策が策定されるわけですからね。したがって、そこのところでやっぱり明確な方向性というものがいま出ていなけりゃ僕はおかしいと思っているのですが、一言でいいんですが、公共事業、投資減税などの必要性は認めない、補正予算は組む必要はない、こういうふうにいまはお考えなんですか。
  105. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 補正予算をいま組むという考えは持っておりません。しかし、人事院勧告とかそのほかの問題もございますし、災害もございますし、この下半期前半にかけてあるいは補正予算を組まなきゃならぬときも来るだろうが、それは時期をよく見る必要があると。まだ補正予算を組むということは決まったわけではございませんが、見通しとしてはそういう可能性を否定するものではございません。しかし、いずれにせよ先ほど申し上げましたように、税金あるいは赤字公債というもの、これはわれわれは回避しなければならぬ。そういうつまり増税ですね、回避したいと、そういう考えを持っているわけです。
  106. 和田静夫

    和田静夫君 六月の参院選挙に際して、この景気と減税を自由民主党が掲げられた。これから景気対策に取り組みます、減税をやります、そういうふうな公約をされた。このことは、四月の景気対策だけでは不十分である、今後追加的な景気対策が必要である、そういう立場をとられた、それで、世間ではそういうふうに受けとめて投票が行われたと見てよいと思うのでありますが、こういう認識は総理もお持ちですか。
  107. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 四月五日の経済政策をフォローアップしてこれを着実に実行していくということがまず第一で、いまそれを遂行しつつあるところでございます。もう一つ、景気対策のほかに要請が一つ出てきたのは、貿易の大幅な黒字をいかに対策を立てるかという問題で、それが内需振興という形でまた強く要請が出てきております。そういう両方の面を考えながら対策を立てよう、なるたけ早く適当な時期に遂行していこうと。いわば第二次の経済政策を打ち出していこうと、そういう考えでおるわけです。
  108. 和田静夫

    和田静夫君 くどいようですが、総理、財源難を理由に内需拡大策をスポイルするということはこれは選挙公約上も私は許せない、そういうふうに考えているので、公約を撤回されるのか、追加的な内需拡大をおやりになるのか、その二つのうちの一つだろうと思うんです。
  109. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 公約を実行しているからそう申し上げるので、第二弾というのも公約の延長線でそれを実行する、つまり内需拡大という方面で努力していくということなのであります。また、減税も実行すると、これも申し上げているとおりであります。
  110. 和田静夫

    和田静夫君 日銀総裁、お忙しいところ恐縮でございました。  この四月、経済対策で「金融政策の機動的運営」という言葉で語られて、公定歩合の引き下げ、結局のところ実現できなかったわけですね。できなかった理由は十分承知していますし、私は総裁との論議ではあの時点においては大体同じような意見だったわけでありますから御記憶のとおりでありますが、日銀のこの専管事項を政府が勝手に下げますというところに問題があるのではないかというふうに実は考えてきたわけでありますが、これは経企庁、大蔵省、まず両大臣に答弁を求めながら、最後に日銀総裁の見解を承ります。
  111. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) 金利の問題につきましてはもうたびたびここでも申し上げましたが、私は、現在のアメリカの高金利に影響を受けました日本の金利水準、大変私、経済の正常なる運営に支障があると、できる限り早く引き下げる方向で考えていただきたいと思っているところでございます。御案内のように日本は貯蓄率が高い。その貯蓄がアメリカを中心として海外に三百億ドルも流れるというふうに言われております今日、もう少し内需が拡大されるように、設備投資が起こるように、この金利の問題だけは最も力を入れていただきたいと考えております。
  112. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 金融政策でございますが、これが景気対策として考えられるのは二つでありまして、一つは金利、一つは緩和政策であると思います。  今日、金融は緩和状態にあるという認識でございますので、その一つは、現状において私は悪い状態にはないというふうに思っております。いま一つのマル公につきましては、これはたびたび申し上げますように日銀の専管事項でありますので、まさに内外金利問題とか外国為替市場の動向とかいうことで適切な判断があろうものと絶えずそれは見守っておるところであります。ただ、実勢金利というものは私は徐々に低くなりつつあるという意味においては、これは作為的な行為において行われたものではないにいたしましても、それなりの効果は生んでおるというふうに理解をしております。
  113. 前川春雄

    参考人前川春雄君) 金融政策の機動的な運用ということは、四月の経済政策の要綱に書いてございます。私どももそういうふうにするつもりでおります。  いまの国内の内需の状況あるいは物価が安定している状況、そういう点から考えますれば金利水準は下がった方がいい、そういう意味で私どもの金融政策も、金利政策につきましては金利水準を下げた方がいいというふうに思っております。ただ、日本の金利水準は、いまの日本の物価から言えば高いわけでございまするけれども、海外との関係で国際的に見ますれば日本の金利水準は安い方に入っている、そういうことからその内外の金利差が大きい。その結果、円相場にいろいろ影響が出てまいりまするので、そういう点で金利政策の発動がなかなかできないということでございます。  しかし、いま大蔵大臣からお答えがございましたように、金融緩和政策をとっておりまするので、実質的な国内の金融機関の貸出金利、約定平均金利は毎月少しずつ下がっている、実態的には下がっているという状態が続いておるわけでございます。
  114. 和田静夫

    和田静夫君 総裁、この公定歩合引き下げの声が強いわけですが、投資減税ができなければやはり金利を下げる必要がありはしないだろうか。いや、理論的に言えば投資減税より金利引き下げの方が常道だろう、そういう声があるわけですけれども、一昨日の衆議院での御発言を聞いておりますと、やや前向きに変わってきつつあるのかなあという印象も受けるわけですけれども、この辺はいかがなんですか。
  115. 前川春雄

    参考人前川春雄君) 企業の金融費用、貸し出し、いま申し上げました銀行の貸出金利がだんだん下がってきておるということから言いますれば、企業の金融費用は確実に下がっておるというふうに思います。思いますけれども、なお内需振興のためにその余地がないかということが政策対応の基準になるわけでございます。  私ども、全体の景況感、つまり金利を下げることは内需振興に効果があるというふうに思いますけれども、私先ほど申し上げました円相場との関係から申しますると、円がもし安くなるということは素材産業の、いまでも不況である素材産業のコストがさらに上がる、製品価格になかなか転嫁できない、利潤がそこで圧縮される、したがって新しい設備投資も起こらない。そういうことから全体の景況感に必ずしもいいとは限らない、悪い場合もあるかもしれないということが私どもの金融政策を運営してまいります上の一番大きな関心事でございます。内需振興の点をとるか、それともそういう意味の全体の景況感というものをどういうふうに判断するか、その辺のところの判断から非常に慎重に対応しておるわけでございます。そういう意味におきまして、確かに企業の金融費用の軽減という点から言えば、その金利が下がることは望ましいわけでございます。  もう一つ、その点から申しますると、長期金利の問題がございまするけれども、これはまた別の問題として……。
  116. 和田静夫

    和田静夫君 お忙しいようですから、どうもありがとうございました。  内需拡大策の大道といいますか、輸出主導とは異なる回復の経路を歩もうとするならば、私はやっぱり第一に個人消費をどう上向かせるか、第二に公共投資、そういう優先順位になると考えているわけですけれども、投資減税についてはその効果は十分に実証されたものとは言いがたい。そこで個人消費についてどうしても考えてみなければならぬ。  企画庁と労働省に尋ねますが、所得の増、実収入の増加が消費支出の拡大に大きく影響している。この事実というのは経済、労働、二つの白書によって明らかですが、これは確認できますね。
  117. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) 五十七年度の三・三%の成長率の大きな要因は、個人消費支出が堅調であったということはもう御案内のとおりでございます。今年度低迷いたしておりますけれども、これはやはり名目所得の伸びが最近低迷していることによる、これはもう事実でございます。したがって、私どもは内需拡大という形で所得がふえるような経済の活性化をねらうべきだと、こういうふうに主張しているところでございます。
  118. 大野明

    国務大臣(大野明君) 本年の労働白書では、昭和五十七年度の勤労者世帯の消費の回復というものは、いずれにしても実収入の増加とそして物価の安定がもたらしたものと分析しております。
  119. 和田静夫

    和田静夫君 そこで、春闘の賃上げ率が四・四%、低水準であった、政府の当初の個人消費支出の見通しが達成されるのかどうか、これはむずかしいところにある、こういうふうに思いますね。企画庁としてどういうようにこれをごらんになりますか。
  120. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) これまでの名目所得の上昇の低迷は、春闘によるところの賃金水準の決定の実績、これに影響されていることは私は事実だと思います。しかし、最近収益状況も輸出の回復等を通じて上昇中でございますので、私どもは下期を通じての所得の上昇というものもまだこれからどのようになるか慎重に見守っていきたいと考えております。
  121. 和田静夫

    和田静夫君 日銀の調査レポート、これは七月号ですが、「個人消費が現在の足踏みから脱する条件はまだ整ってはいない。」、こういうふうに結論づけていますよ。日銀は、物価の安定とともに実収入の増、つまり所得面からの条件整備が必要であると示唆しているわけですね。企画庁長官、同じ結論でいいですか。
  122. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) お答え申し上げます。  所得の上昇を来すような私は経済政策が必要かと思っております。
  123. 和田静夫

    和田静夫君 総理としてはいかがでしょう。
  124. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) やはり経済政策はポリシーミックスと言われますように、総合的に複合的に行われるということが必要で、そういう意味においては可能なあらゆるものをできるだけ結合さしてやるという方法がいいと思います。
  125. 和田静夫

    和田静夫君 そうしますと、個人消費を昨年度あるいはそれをやや上回る程度に維持するためには、やっぱり一定の政策的な後押しが必要になってくる。そうすると、その辺の具体的なことはどうお考えになりますか。
  126. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) それは、先ほど総理も言われましたように、あらゆる総合的な政策で経済を全般的に活性化する。公共投資も私は雇用の機会を与え所得水準を高める一つの方策だと思いますし、設備投資も雇用の機会を与える、そしてまた所得水準を高める方策であろう。このような経済全般の基礎的な面を活性化することによって所得を上げようとするのが私は総合的な経済政策だと考えます。
  127. 和田静夫

    和田静夫君 私は実は具体的にもう少し聞きたかったんですが、そこまで行きませんので、そこで総理が先ほども明言されました減税になるわけですが、最も具体的な問題として減税になるんですが、所得税、住民税、所得課税の減税は今年じゅうに実施するという合意ができているわけでありますが、この減税が多少なりとも景気浮揚に役立つものであると位置づけられるのであったならば、やっぱりまず少額の戻し税減税というようなことはこれはもうあり得ない、これは大蔵大臣そうですね。
  128. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 私は、この戻し税というものは大体各党が合意されて、そして政府と相談して国会の場で結論が出て結果として行われたものであって、したがって基本的な改正ということを前提において審議されるならば、戻し税という議論は税調の場においては出てくる余地はない問題ではないかと、こういうふうに理解しております。
  129. 和田静夫

    和田静夫君 そこで、所得減税の規模の問題ですが、景気浮揚という観点からするならば少なくとも兆円規模のものでなければならない。本当に役立つものとすれば三兆円以上のものでなければならぬでしょう。そうすると景気浮揚に十分な効果を与える、そうでなければできないわけですから、財政事情を考えると少なくとも一兆円台には乗った減税は考えられるというふうには考えておいてもいいわけですね。
  130. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) これは、時期、規模、方法については、今日予見を持って申し上げるべき問題ではございませんが、およそ景気浮揚に役立つという景気論争の問題点といたしましては、私は当初政府が見込んでおる三・四%の実質GNPの成長ということをより確実にするというのが当面の景気対策というふうに理解しておりますならば、そういう角度から、また財源等々の関係等から出てくる数字であって、一兆円とかいう形で私は定量的に断定すべきものではないと、こういうふうに考えております。
  131. 和田静夫

    和田静夫君 しかし、大体三兆円を超えなきゃならぬと、そこで財政規模との関係で考えてみれば一兆円規模のものを超えるというようなことは筋道としては出てくるということでしょう。
  132. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) これは私は観念的に高度な政治判断の中に景気浮揚に役立つ相当規模という言葉は存在しておるのであって、ぎりぎりした景気論争の中から出てきたものではない。それはやっぱり幹事長、書記長、そうしたまさに高度な政治判断の中に立って、ある種の裁量権をも考えながら示された文言ではないかと、こういうふうに理解しておりますので、やはり私は三・四%というものを、一応予算を御審議いただいたときに見通したもの、それをより確実にするということが、私は景気というものに対する基本的な考え方として持っていなきゃならぬことではなかろうかというふうに考えております。
  133. 和田静夫

    和田静夫君 総理、非常に政治的な高度な判断でもってこれは考えられてきたと、税調などということを考えずに筋道のことだけを私は論議をしているのでありますが、景気浮揚に必要だ、そういうことを政治的に判断を高所に立ってしてみた。総理はその一番の高所にいるわけでありますから、これは兆円台だと、こういうふうに考えていいわけでしょう。
  134. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私はそういう方針を決める方で、数字を決めるのは大蔵大臣の仕事でございますから、大蔵大臣がどういう感触を持っているか、よく聞いてみたいと思います。
  135. 和田静夫

    和田静夫君 それじゃ、総理にかわってもう少し大蔵大臣の数字に関する感触を聞かしてください。
  136. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 私は、やはりまず当初予算を御審議いただいて議了していただいた、そしてその際はまだ昨年五十七年度の経済成長の見込みは下方修正した三・一%になっておったと。それが結果として五十七年度三・三%になったと。そして、今日政府として見込んでおりますのは三・四%であると。そうなれば、三・四%ということは、この四—六のQEを見れば、単純に〇・九に仮に四を掛けたといたしますならばあるいは三・六という数字も出るでございましょう。  しかし、また和田さんの御議論のように、それは外需依存面が多くて、内需依存面については当初の考え方よりもまだ乖離があるじゃないかと、こういうお考えもあるでございましょう。しかし、一方の見方としては、そのようなまずいわゆる外需型がある程度先行して、それより二四半期ぐらいおくれてそれが内需に影響をもたらしてくるというのも過去の例から考えられないこともない。だから、この景気論争というのは私は果てしなく続く議論ではないかとも思います。  一方、この間来議論をしておりますと、おまえ、そもそも三・四%を見込んでおること自体が間違いじゃないか、やっぱり四%程度初めから出すべきじゃないかと、こういう議論もございます。これは一方どちらかと言えば基幹産業の方の、先ほど出ておりましたが、稲山さんのおしん哲学もあれば、一方にはソフトノミックス等から言えばもっと高い成長率を見込むべきだという、この議論もずっと続くのでございますが、やはり私どもがいま景気浮揚ということを議論する基本は、三・四%をより確実ならしめることであるということであって、それにさらに確実ならしめるためには減税が必要だぞと。  なるほどこれは五十八年度の税制のあり方についての税調の御答申にも、五十九年度以降はこれは必要だということも書かれてございますので、それらを総合判断された幹事長・書記長会談であり、そしてそれが本院においては予算委員長見解となって出ておるということを受けて、いま行政府としての手続を進めておるわけでございますから、私はいま定量的に景気浮揚に役立つ規模とはすなわち何千何百何十何億であるとか一兆であるとかということを議論する時期ではない、また議論するとすれば、三・四%の私どもの立場から議論をしていかなきゃならぬ課題ではなかろうかと、こういうふうに考えております。
  137. 和田静夫

    和田静夫君 公にされていることですが、大蔵大臣の口からそれではその結論を出す時期だけは承っておきましょう。
  138. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) これは税調にお願い申し上げましていま審議を急いでいただいておりますので、税調の御答申等をいただけば、また国会に法律案を提出するまでの間には当然のこととして決断をしなきゃならぬ時期がある、こういうふうに考えております。
  139. 和田静夫

    和田静夫君 税調会長、大変お忙しいところを来ていただきましてありがとうございました。  ちょっと時間をここで割きまして、税調会長に二、三の問題をお聞きをしたいのでありますが、所得税減税問題のいま論議中ですが、景気浮揚という観点と、税負担の公平あるいは税制上のバランスという二つの観点から必要になっているわけでありますけれども、後者の観点からすると、本格減税をやる際にはまず課税最低限の底上げが絶対に必要である、そう認識しておいてよろしいでしょうか。
  140. 小倉武一

    参考人小倉武一君) お話しのように、課税最低限をどうするかということは、所得課税の減税に当たっての最も重要な項目の一つと思います。
  141. 和田静夫

    和田静夫君 問題は、この税率の緩和ですが、所得一千万円層の税率、それを中心に下げるのか、それともこの税率構造はそのままにしておいて一律に所得ブラケットを上げていくのか、つまりインテグレーションをやるのか、どちらが合理的なんでしょう。
  142. 小倉武一

    参考人小倉武一君) はなはだ申しわけございませんが、その問題についてはお答えするようなまだ討議がなされておりません。ただ、税率構造の問題はずいぶん長い間もうそのままになっておりますので、根本的と言っちゃちょっと大げさですが、相当程度の見直しを必要とするのではないかと、こういうことは討議の背景としてあるかと思います。その際にどういう階層についての減税を特に考えるべきかどうかというようなことについては、もう少し家計調査における税負担についての実態などもよく検討した上で、結論といいますか、おおよその考え方を出すと、こういうことになろうかと思います。
  143. 和田静夫

    和田静夫君 仮に所得五百万あるいは六百万円階級から税率を緩和していくとします。逆にこの五百万円あるいは六百万円以下の層は不公平を生じてくるのではないだろうか。平均的な所得階層である三百万から四百万円層に不公平が生じないだろうか。理屈の問題なんですが、ここのところは税調会長どういうふうにお考えになっているんでしょうか。
  144. 小倉武一

    参考人小倉武一君) いま申しましたように、その辺のことについてはなお深く検討が進んでおりません。したがいまして、課税最低限なり、税率構造なり、どういうふうに処理していくかということのおおよその考え方が決まった上で、階層別に所得税減税の影響がどうなるんだろうかというふうなことを検討するということになりますので、そこはまだはっきりしたことを申し上げる段階ではございません。  ただ、よく言われておりますように、中堅所得層にどうも税負担感が強いのじゃないかということは、これはただそう言われているだけでなくて、多少客観的にデータとしてもそういうことが認められるのじゃないかと思われる点もありますので、それらを踏まえるというと、それでは低所得者はどうなるんだということもあわせて考えなきゃなりませんので、全体としての姿はまだはっきりいたしておりません。
  145. 和田静夫

    和田静夫君 五百万円以上の税率をいじるということは、一千万円以上の所得階級も緩和するということになるだろう、そういうふうに私は考えるものですから、その辺のところを、税調の論議の結論をいま求めている、あるいは仮定の内容についてお知らせくださいと言っているのではなくて、税の専門家としての税調会長はこういう税の論理についてどういうふうにお考えになっているだろうかということをお聞きしたかった、そういうふうに思うんですが。
  146. 小倉武一

    参考人小倉武一君) はなはだ申しわけないのですけれども、私、税の専門家ではございませんのです。財政の学者でもありませんし、税制の評論家でもございませんので、私見を申し上げるほどのようなものは持っておりませんのです。  ただ、税制調査会などで議論されておりますことを若干でも御披露すれば、高額所得者に対する累進税率というのは少し高く過ぎるのではなかろうか、もう少し軽減するということをあわせて考えたらどうかという意見が一方においてあります。他方において、しかしさりながら所得税減税をすると言い条、高額所得者の減税になるようなことも考えるという、こういう財源的な余裕があるのだろうかという問題も他方においてございます。したがいまして、お話しのような特定の高額所得者だけに所得税減税の効果が及ぶ、特に大きく減税の効果が及ぶというような所得課税の減税はいかがなものだろうかというふうな感じがいたします。
  147. 和田静夫

    和田静夫君 この所得税減税に関連してですが、個別物品税のこの課税対象を拡大する方向で税調がどうも議論をされているようにいろいろ読むと感じますが、物品税という税目は時代おくれであると私は考えているんです。不合理性がつきまとう、こういうふうに主税当局も私には何回か答えていることを記憶いたしていますが、これは税調会長もそういうふうにお考えになりましょうか。
  148. 小倉武一

    参考人小倉武一君) 物品税につきましても、毎度の税制調査会でも議論になるわけでございまして、どうもいまの物品税というのは必ずしも望ましい姿の間接税ではないのではないかという議論が大方の御意見のようです。さらばといって、一般的に消費税を拡大して、仮称としての一般消費税というようなことを提案したことがございますが、そういうものについてもさてどうかということになりますと、国会の御決議もございまするし、なかなかその方をそのように現在の物品税は必ずしもうまいことになっていないということと、さらばといって、付加価値税なり一般消費税というものの導入については問題がまだ多過ぎるというふうなこともありまして、きちっとした整理が実はついていない。その中で、しかし所得税減税のために仮に税制の枠の中で財源探しをするとすれば、多少ともやっぱり物品税の中で税源を探すということはやむを得ないのではないかというような気がいたしております。
  149. 和田静夫

    和田静夫君 そうしますと、物品税の対象品目はどういう商品になるのでしょうか。いわゆる高級品に限って課税対象を広げられるのか、それとも生活関連商品にまで課税対象を考えられるのか、広げていかれるのか、その点はどうでしょう。
  150. 小倉武一

    参考人小倉武一君) 何と申したらよろしいんでしょうか、現在の物品税というのは個別の物品税でございまして、奢侈品とか嗜好品ということが中心になっておる。考え方としてはそういうことになっておるのでございますが、やはりいま現在現行法に基づいての物品税の手直しということであれば余りその趣旨を、別に法律に書いてあるわけではないのでありますが、やはり奢侈品なり嗜好品というものの考え方の範囲内で考えるという制約が伝統的にあるのじゃないかと思います。それをしかし、それがいけないんだという考え方もあるわけでありまして、しかし今回物品税について全般的に見直しをするという地がまだ固まっているわけではございません。  もう一つ、物品税のほかにサービス税も新しく論議され得るわけでありまして、税調としても個別のサービス税についても討議をしたことがございます。物品税のみならず、したがってサービス税についても検討の余地があると思いますが、まだしかし個別に当たっての結論は得ておりません。
  151. 和田静夫

    和田静夫君 一つだけ、細かいことで恐縮ですが、たとえば私は物品税の課税対象の根拠を大変不明瞭だと前々から思っておりますし、テレビ、ラジオなどが課税をされながら、ビデオディスクあるいはヘッドホンなどには課税されない。テレビ、ラジオなどはいまや生活必需品である。これは前の通常国会予算委員会でも竹下大蔵大臣は私の説をお認めになりましたが、ビデオディスクの方は比較的高価な便益品になる、あるいは娯楽品になるのか。これらはいずれにしても生活に欠かすことのできないものではない。そういうことになってくるとどうもよくわからないのですね。その辺は会長はどういうふうにお考えになっていらっしゃるわけですか。
  152. 小倉武一

    参考人小倉武一君) いまお尋ねのように、現行の物品税法による物品税については多少でこぼこがあると申しますか、ちょっと統一的には説明しにくい点がございます。それは事実かと思います。それを手直しをするということも無論必要でございますが、どうも個別に手直しすることが非常にむずかしい。したがって、付加価値税とか一般消費税というようなことに飛躍するということになるわけですが、しかしその飛躍ができにくいという今日の状態ですから、いまの税制の全体の大きな体系の中での個別物品税についての取り扱い方もうまくないといいますか、納得いかないといいますか、そういったような点についての手直しをすることを通じて若干の増収を図るということは必要かと思います。
  153. 和田静夫

    和田静夫君 大臣、やっぱり私は物品税のこの議論をしているのは切りがないわけですけれども、どうも課税基準が明確でないところに会長も言われますようにある。物品税の課税対象の恣意性がそこにあるような気がするんですよ。物品税の課税基準を厳密にしていくこと、もっと開かれた場で決定していくといいますか、そういうことでその恣意性を排除していくこと、そういうことをやっぱり大臣、これは検討される必要があるのじゃないかと思うんですが、いかがでしょう。
  154. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) いま小倉会長からもお話がございましたように、この奢侈あるいは嗜好品、この辺までは概念的にある程度つかまえやすい。しかしその後、生活必需品、その必需性ということになりますと、これは生活文化の変遷の中で大変変化してまいります。したがって、それはその都度ある意味において恣意が入りやすいというような指摘が今日まであっておるわけでございますが、議論は十分私もいま承りましたので、小倉税制調査会長もお聞きになっておりますので、そういうことを恐らく念頭に置いてこれからも勉強されなければならぬ課題である、われわれとしても、これは正規な勉強機関とかいうことでなく、部内で勉強するということは当然必要なことだろうというふうに考えております。
  155. 和田静夫

    和田静夫君 会長、最後に一問ですが、この所得税減税に関連をいたしまして、間接税増税を行う、直間比率の手直しを行うという方向がどうも税調の議論の筋のように聞こえます。私は、ここでの議論で欠けているのは応能負担の原則なんじゃないだろうか。応能負担の原則がどうも欠けた論議が読む限りにおいては進んでいるような気がして仕方がないのでありますが、誤解かもしれませんけれども。  最近の減税論議というのは、年収一千万円台の人々、大企業の部課長クラスから上の人々の負担増が強調され、そして平均年収階層から下の人々の負担増が後景に押しやられると表現をしますか、そういうような気がしてならないのであります。酒税にしても、しょうちゅうを上げるという論議が出てくるわけですね。間接税は一般的に所得に対して逆進的であると私は思っているのでありますが、この物品税や酒税を上げる、そして年収六百万円以上の税率を緩和するということになりますと、どうも所得の高い層に厚い減税に必然的になっていくのではないだろうか、高額所得者層を優遇する減税に落ち込むのではないだろうかという疑問を禁じ得ません。ここのところは会長の御見解を承っておきたいと思うんです。
  156. 小倉武一

    参考人小倉武一君) 改正の仕方によってはお話しのような結果になり得るようなこともあると思います。だけれども、そういうふうな趣旨で、あるいはそういうことを意図して所得減税をするということは必ずしも大方の御希望に合わないのじゃなかろうかというふうに思います。  それから間接税の話も出ましたけれども、間接税を増徴して所得減税に充てる、その場合に、しかもわりと中堅所得層以上の方々の所得減税に充てるというようなことにもなるのではなかろうかという御心配でございますが、私どもそこはまだ深く検討はいたしておりませんけれども、私どもちょっと古い話で恐縮ですが、どうも私どもの若いころ、間接税は逆進で悪い税金だ、所得税は累進でいい税金だと、こういうふうに教わってきておったんですが、いまやしかし国民の全体としては所得水準が相当高くなり、したがって累進的所得課税と同時に消費に比例するような税というものもあわせて負担願った方が、全体として税制としてはより公正なものになるのではなかろうかという、こういう意見が最近強くなっておるようであります。税調の中でもそういう御意見がございます。それら伝統的な考え方と、そういったように新しいといいますか、そういう考え方と両々にらみ合わせて、妥当なところに結論を落ちつけるということのほかないのじゃないかと、こう思っております。
  157. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 会長、お忙しいところありがとうございました。
  158. 和田静夫

    和田静夫君 どうもありがとうございました。  そこで、これらのまとめとして、大臣、主税局長でも結構ですが、税調答申が出た段階で、所得階層別に税負担がどのように変わるのかという資料、そういう資料を提出できると思うんですが、これは約束できますか。
  159. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) ただいま小倉会長からもお話がございましたように、税調はこれから家計調査等を中心にいたしまして分析を進めていただくわけでございますが、いずれ御結論をいただいた段階で、ただいま御指摘になりましたような資料、どういう形になりますか、検討いたしたいと思います。
  160. 和田静夫

    和田静夫君 結果としては出してくれるわけですね。
  161. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) 国会に提出するような方向で検討いたしたいと思います。
  162. 和田静夫

    和田静夫君 労働大臣、もとの論議にちょっと戻りますが、私は一九五〇年代の賃金決定機構というのは、官公労働者の賃金決定が民間労働者の賃金決定に影響を与えていた。高度成長期に入るとこれが逆転をし、民間労働者の賃金決定に公務員賃金が準拠するようになった。ところが、ことしの春闘の経過を見ますと、一九五〇年代のパターンに先祖返りしたのではないだろうか。労働省としてはどういうふうに分析するのか。公務員賃金あるいは公企体賃金の抑制が民間の賃上げを全般的に引き下げているという点ですね、ここのところをどう考えているんですか。
  163. 谷口隆志

    政府委員(谷口隆志君) ただいまの御質問でございますけれども、公務員なり公企体の職員なり労働者の賃金、公務員の場合凍結の問題がございましたが、そういうものがことしの春闘の民間の労働者のベースアップに影響したかどうかという点の分析、非常にむずかしい問題でございますけれども、民間の労働者のベースアップの問題につきましては、当然のことながら、個々の民間の企業におきまして、収益の状況とかあるいは賃金の相場とかそういうものを見ながら決定されておりますので、実際問題として、公務員なり公企体の職員なり労働者の賃金の問題が具体的に影響しているというような点はなかなか考えにくいのじゃないかというふうに思っております。
  164. 和田静夫

    和田静夫君 次に労働大臣。
  165. 大野明

    国務大臣(大野明君) ただいま政府委員から答弁いたしましたが、これは大変にむずかしい問題であろうと思います。ですから、私は労使間で話し合っておるというようなことを考えていきますと、一概にそれがどうのこうのという御質問は大変に幅広過ぎてむずかしいし、また民間も非常に凹凸があることは御承知のとおりですから、そこいら辺はひとつ、よく御承知の先生ですから、先生にお考えいただきたいと思います。
  166. 和田静夫

    和田静夫君 質問しているのは私の方なんでね、大臣。公務員賃金、公企体賃金が民間の賃金決定に全く影響を与えていないんだと、まさかそういうふうに言い切られるおつもりは労働大臣ないわけでしょう。この一言だけでいいです。
  167. 大野明

    国務大臣(大野明君) いずれにしても、いま申し上げたように労使間における問題でございますから、何というか、非常にこれは微妙な問題で、私もはっきりしたことは言えません。ただ、いずれにしてもそういうような状態があるやもしれずと、こういう感触でございます。
  168. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 午前の質疑はこの程度にとどめます。  午後一時から委員会を再開し、和田君の質疑を続行いたします。  これにて休憩いたします。    午前十一時五十五分休憩      ─────・─────   午後一時二分開会
  169. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 予算委員会を再開いたします。  予算執行状況に関する調査を議題とし、和田君の質疑を続行いたします。和田君。
  170. 和田静夫

    和田静夫君 日本の賃金決定機構がパターンバーゲニングであって、民間大手、公企体、公務員、民間中小というようなぐあいに波及していくこと、これは労働経済学の常識に属すること、仲裁裁定を抑制する、そういうようなことをやったり、人事院勧告の凍結、それが春闘の賃上げ結果、特に中小の賃上げに波及していくこと、そういうことについて労働大臣は、そういう状況はあるかもしれないという表現ではありますが、一連の流れはお認めになりました。  そこで官房長官、人事院勧告というのは、私は、公務員の権利の問題であるとともに景気対策としても重要な意味を持っているということ、特に後段の部分は午前中の論議を通じて、やりとりで明らかにしてきたつもりであります。前の予算委員会でも論議をさせていただいたことではありますが、二年連続凍結などということは考えられない。ここのところはよろしいでしょうか。
  171. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) 二年連続の見送りということはいたしません。
  172. 和田静夫

    和田静夫君 人事院総裁、お待たせしました。  人勧が二年連続で政府から無視をされる、あるいは値切られるというようなことは、人事院という制度の根幹に触れる問題であろうと考えるんですが、いかがでしょう。
  173. 藤井貞夫

    政府委員藤井貞夫君) 繰り返し申し上げておりますように、給与に関する人事院の勧告というのは、申すまでもなく、公務員というものがその特殊性から労働基本権を制約されておるということに対する代償機能でございまして、これは大方の賛成を得、またいろいろな御審議を通じていまや定着した制度となって、綱紀の問題、公務員の士気の問題、あるいは安定した労使関係ということの寄与ということで大変定着をした効果を発揮していると思っております。  ところが、いろいろな情勢があったにいたしましても、去年の人勧というものが見送られたということは、これは制度の本質から言いまして大変遺憾なことでございます。残念至極であるというふうに申さざるを得ないわけでございます。  したがいまして、政府におかれても申しておられますように、二年連続の見送りというものはしないということでございまして、その内容に私は多大の期待を寄せているわけでございますが、しかしこれがもし凍結がさらに続く、あるいは抑制措置がさらに継続されるということになりますと、これはやはり制度の本質から言って人勧制度自体の根幹に触れるという可能性も出てまいることは、これは当然でございまして、そのようなことのないように完全実施をお願いいたしたい。心からの念願でございます。
  174. 和田静夫

    和田静夫君 どうも人事院総裁ありがとうございました。  総理、税の問題の論議を若干午前中やったわけでありますが、もう時間がなくなりましたから、前後を抜きにしまして、大型間接税、あなたが総理大臣である限り大型間接税の導入はあり得ない、そういうふうに理解をしておいてよろしいですか。
  175. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 問題は、いつまで続くかということであります。そういうものはもうできるだけ避けたい。本院の議決におきまして、本院もそうだと思いますが、一般消費税、いわゆる一般消費税というものはやらないというふうに仰せになっておりますから、これを守るつもりでおります。
  176. 和田静夫

    和田静夫君 大蔵大臣、大蔵省のこれまでのいわゆる国債借りかえ問題等の理屈の問題にちょっとだけ触れておきたいんですが、理屈というのは、建設国債は建築物や構築物が残っていくから借りかえができるというわけだったわけですね。赤字国債にはそのような支えは何もない、借金返しのための借金になる。そこで、赤字国債の借りかえにもし踏み切るとすると、そこのところの歯どめをどうするのかということはやっぱり当然問題になると思うんです。建設国債は六十年を限度としているわけでありますが、赤字国債はこれはどうなりますか。
  177. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 元来、国債は借りかえということはあり得るわけですが、特例債については特別法律でもって借りかえを禁じておる、こういうたてまえであります。したがって、今日の場合、私どもといたしましては、ことしも、借りかえをしないという前提のもとに法律でもって特例債の発行を許容してもらったわけです。したがって、いまの段階でそもそも特例債の借りかえをするということはまだ念頭には置いておるわけではございません。  これは、臨調の答申、財政審の答申等々にもございますように、これから六十年になるとやっぱり本格的にその償還期が参りますので、国債で一番大事なことは、とにかく満期の来たものはきちんと所有者に対して現金でお返しする。その資金をどう調達するかということになると、それこそ歳出削減か、あるいは負担増か、あるいは借りかえか、こういう議論になるというところまでがずうっといままで来た議論でありまして、したがって中長期にわたって国民考え方を見定めながらこれは考えろ、こういう御答申をいただいておりますので、財政審にこの間小委員会を設けていただいて、借りかえ問題としてではございませんが、今後の財政問題について中長期にわたって幅広く検討していただく。そこで可能性としては借りかえ問題もやっぱり出てくるであろうと一応予測されます。その段階で初めて御議論の俎上に上る課題である。  だから、いまのところ、借りかえを前提に物を考えた途端からいわば歳出削減に対する厳しい態度がそれで緩んでしまいますので、いま直ちに念頭に置いておるというわけではない、こういうふうに御理解をいただきたいと思います。
  178. 和田静夫

    和田静夫君 この国会に提出されたいわゆる行革法案というのは非常に多くの問題を含んだものであると私は受けとめています。たとえば総務庁設置は部局の移しかえにすぎない。これによって大臣が一人減るのかと思っていたら、結局余った分は無任所大臣で残すと、こう言われる。私は、臨調答申をずっと読んでみて本当のところよくわからないのであります。前の予算委員会でも土光さんにおいで願ってやろうと思いましたけれども御都合でお見えにならなかったわけでありますが、相互に矛盾し合う表現が非常によく見受けられるわけですね。その好例が前にも論議をしました先ほどの増税の概念、これもそうなんです。  もっとわからないのは、土光さんという方は各種審議会委員をたくさんやられているわけですね。それで、臨調答申とたとえば郵政審の答申の関係を前の予算委員会でも論議をいたしまして、郵政大臣から明確に、都政審の答申を守るというりっぱな答弁を決算委員会予算委員会で引き続いて私はいただいた。ことになってくると臨調答申と全く反対になるわけですね。一例で言えば、郵貯の限度額について、臨調は引き上げることに問題ありとしているのに対して、郵政審は国民生活の実態に合わなくなっているので、これを早急に引き上げるべきである、正反対なんですね。この結論をお出しになった委員長はどなたかと思って調べてみると土光さんなんですよ。  そうすると、土光さんという方は、郵政答申は五十七年の六月、臨調答申は五十八年の三月、わずか半年の間に物の考え方が変わってしまう。こういう方が出されたところの答申というようなものはわれわれは信用することができないということになっていくのはこれは事の必然なんですね。わかりやすく言ってしまえばこういうことなんです。私は、十分にこの辺のところを国民の皆さんにわかってもらいながら、一体行政改革をどうするのかということを、情報公開など、あと私たちが主張する問題について触れていきます。  そこで、ここで一言だけ言っておきたいのは、前の予算委員会で行管庁長官は否定をされましてなかなか合意をされませんでしたが、郵政審の答申も臨調答申も権威づけられたものであって、一度答申が出ると変えにくい。答申によって議論が制約をされていく。政府はまた審議会の答申をもってコンセンサスを得たものと取り扱う。したがって、答申がつくられていくプロセスが何と言っても重要である、こういうふうになってくるのは私は事の必然だと思うんですね。審議会の中でどのような議論がなされたのか、そこまで明らかにされないと答申の真意はつかめないわけですよ。結論だけ見ればさっき述べたとおりであります。土光さんが二重人格なのかということになってしまいますから。  そこで、審議会の議事録の公開は行政情報公開の重要なテーマの一つである。よって私は、議事録の公開を求める。
  179. 齋藤邦吉

    国務大臣(齋藤邦吉君) この前の国会でも御質問がございましてお答えをいたしたわけでございますが、行政調査会におきましては、初めての会合の際に委員の皆さん方が申し合わせをしたわけでございます。委員方々がそれぞれの見識に基づいて自由濶達な意見を述べようではないかということで、非公開にしようということで申し合わせをいたしたわけでございます。しかしまた、そうは申しましても、審議会が開かれましたときには、その都度新聞記者クラブに報告をして、いろんな議論があったということを発表しようということにしておりまして、議事としては一応公開しないということを決めておりますので、いまこれを公開するということは私はできない、かように考えておる次第でございます。
  180. 和田静夫

    和田静夫君 これは前の答弁と変わらないんですが、ところが、この臨調の最終答申を全部読んでみますと、これは行管庁長官の方が専門ですからおわかりでしょうが、百九十七ページ、「審議概要の公表を行う」と決めているんですね、ことができると言っているんですよ。したがって、公開の精神に沿って審議会は臨調答申を出しているのですから、みずからを秘匿するというようなことは、これはこの精神に沿わないですよ。行管庁長官は、そこのところをしっかりして、やっぱり公開されるべきである。
  181. 齋藤邦吉

    国務大臣(齋藤邦吉君) 私は、情報公開ということは、これは本当にまじめに取り組んで検討すべき項目だと思っておりますし、現在でも行管庁の中で検討しております。ですから、私は、将来の問題としては、そういう情報公開という問題の一環として取り上げられるときがあるいは来るかもしれません。しかし、いまの時点において、三月十五日に解散したばかりですから、その委員方々が申し合あせをして公開しないでくれと、こういうことでございますから、いまの段階でこれを公開するというわけにはいかないと、かように考えております。
  182. 和田静夫

    和田静夫君 これで時間をとるわけにいきませんから、おくれていますのであれですけれども、私は、やっぱり行管庁長官、もう少し臨調が出した結論というものを行政の側は踏まえながら、そうして情報公開という一つの至上命題、今日的な課題があるわけですから、それに有能な行政管理庁長官なんですから、それにおこたえになる、その希望を強く持ちます。
  183. 齋藤邦吉

    国務大臣(齋藤邦吉君) 将来、情報公開という問題が大きな課題になってくるわけでございますから、そういう段階で十分検討さしていただきたいと思います。
  184. 和田静夫

    和田静夫君 本会議が終わって行革特別委員会ができて、行革国会と言われる中曽根さんの一つのメーンの国会が始まっていますから、その国会で論議が停滞をするような形で隠蔽が続くというようなことはこれは好ましいことではありません。行政の民主化のためにもしっかり対処をしていただきたい。  そこで、原子力船「むつ」についてちょっと質問いたしますが、「むつ」はどういう目的で建造されたのか、まずそれを承りたい。
  185. 安田隆明

    国務大臣(安田隆明君) お答えいたしますが、「むつ」は、わが国は御存じのとおり資源小国、特に資源エネルギーというものはない。それから同時にまた、海運国であり、造船国である。そういう中において将来の長期展望に立った場合、われわれ日本としては、科学技術の振興、科学技術政策の上、なかんずく原子力政策の上においては、舶用炉の研究開発ということはこれは絶対必須の政策である。こういう視点に立って「むつ」の問題、「むつ」政策というものを、いわゆる舶用炉政策というものを取り上げてこれを推進いたしております。そういうことでございます。
  186. 和田静夫

    和田静夫君 事務局で結構ですが、「むつ」は原子力船の建造技術の確立、いま答弁ありました運航技術の習熟、技術者及び乗組員の訓練、そういうものを主要な目的としてきたわけですが、この目的は今日現在何%達成されましたか。
  187. 高岡敬展

    政府委員(高岡敬展君) お答え申し上げます。  「むつ」の建造の目的につきましては、ただいま長官から御答弁申し上げましたように、原子力商船時代のための、いわゆる原子力商船というものが技術的に建造可能である、運航可能であるということを実証するための実験船としてつくられたものでございます。ただいまお尋ねのその目的がどの程度達成されておるかという御質問でございますが、御案内のとおり、現在、船としては完成をいたしておりますけれども、肝心の出力上昇試験なりあるいはそれに続いての実験航海ということができない状態になっております。その意味ではせっかく建造されながら目的を達成できないそういう状態にあるというふうに理解しております。
  188. 和田静夫

    和田静夫君 結局、「むつ」は原子炉の実験成果はない、こういう答弁になったわけですね。  そこで、「むつ」の原子炉は一万軸馬力、三万六千キロワットの小さなものにすぎないのですが、九年前、わずか二十四分間、最高出力の一・四%火入れしただけで放射線漏れ事故を起こして、それ以来全国で厄介者になってきた。それでいて二十四分間でどれだけの金が使われたのか説明してください。
  189. 高岡敬展

    政府委員(高岡敬展君) 「むつ」の建造計画に着手をしまして以来、昭和三十八年度からでございますが、五十七年度末までに合計四百八十六億円、そのうちで民間出資、民間から拠出を求めておるものが二十三億円含まれてございます。
  190. 和田静夫

    和田静夫君 自由民主党の中山参議院議員の計算によれば五百四十億ということになっているわけですが、これから「むつ」の、むつ市のあの関根浜に新母港をつくる計画が進んでいますね。それが一千億円と言われるが、その内容は。
  191. 高岡敬展

    政府委員(高岡敬展君) 関根浜の新母港につきましては、全体の建設費用というものの想定は大体六百億円と考えております。その詳細の内訳につきましては、ここで申し上げるほど固まっておりません。
  192. 和田静夫

    和田静夫君 定まっていない……。
  193. 高岡敬展

    政府委員(高岡敬展君) 詳細にはまだ流動的でございます。
  194. 和田静夫

    和田静夫君 そこで、いままで成果がゼロだったんですが、これからたとえば六百億として、六百億でどういう成果が上がるんですか。
  195. 高岡敬展

    政府委員(高岡敬展君) 先ほど申し上げましたように、新定係港が完成いたしますと、いままでのところできておりません出力上昇試験、あるいはそれに続いての実験航海というものが可能になります。その結果、たとえば陸上炉と違いまして振動、動揺、あるいは船でございますから発進、停止、それに伴う負荷変動が非常に大きゅうございますが、そういうものの条件が原子炉の運転にどういう影響を与えるかというような点につきまして、こういった点は商船用の原子炉の特性を確認するということで非常に大事な点でございますが、そういった点の技術的な確証が得られるということでございます。
  196. 和田静夫

    和田静夫君 大湊港にいる間は原子炉は凍結するわけでしょう。つまり「むつ」というのは原子力船ではないんですよ。原子炉を積んだ船というだけなんですね。それでいままで成果ゼロだった。しかも、これから関根浜に新しい港をつくるとどういう成果が上がるんだろう。それはだれしもが不思議に思いますよ。
  197. 高岡敬展

    政府委員(高岡敬展君) 現在、従来大湊に母港がありながら四十九年に大変不幸なああいった事件を起こしまして、技術的には機能するものがありながら地元の漁民の方々あるいは地元の関係者の同意が得られずに使えないという状況でございます。私どもとして非常に残念に思っております。昭和五十六年には前の中川長官が大湊の再母港化について二度にわたってお願いをした経緯がございますけれども、残念ながら断念せざるを得ないということでございます。でございますから、非常にお金がかかりますけれども、新母港をつくりまして、「むつ」の先ほど申し上げましたような所期の目的を達成するということが非常に大事でございますし、それに期待をかけておるわけでございます。
  198. 和田静夫

    和田静夫君 私はいま財政効果を論じていますから、それ以外のことを言うつもりないんです。いわゆる原子力船計画がいいか悪いかというような問題は一応棚上げして論じているわけです。  もとに戻って考えてみますと、「むつ」の当初計画、昭和三十八年段階で幾ら予算を立てていましたか。
  199. 高岡敬展

    政府委員(高岡敬展君) 昭和三十八年、二十年前の時点でございますが、全体計画で六十億円ということでございます。
  200. 和田静夫

    和田静夫君 いわゆる当初六十億円ですね。ところが、今日一千六百億円もかかるものになっているわけです。それが国民の税金から出されている。どうしてこんな巨額のむだな予算というものが支出をされてきたんでしょう、大蔵大臣。
  201. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 原子力船「むつ」の予算化、それはそのときそれなりの国家目的からして必要があり、予算化されて今日に至った。その間のいろいろな経過が必ずしも当初の手順どおりに進んでいないということであろうと思います。したがって、私は予算の調整権、概算要求をもらったばかり、こういう状態でございますので、これに対してどう対応するかというのはこれからの問題でありますし、やはりこの帰属するところの科学技術庁の物の考え方の上に立って、われわれはそれに対してどう査定し、調整していくかということでありますので、直接御質問に対して感想を述べる立場にはないと、こういうことです。
  202. 和田静夫

    和田静夫君 会計検査院長、どうですか。
  203. 鎌田英夫

    会計検査院長(鎌田英夫君) 原子力船「むつ」の問題につきましては、いままでいろいろお話がございました。また、各方面からこの問題につきましていろいろ御指摘があるやに承っております。会計検査院におきましても、当初三十八年度にこの計画が実施されてからの経過というものは、慎重にその推移を見守っているわけでございまして、昭和五十年度の決算検査報告でも、特記事項といたしまして、原子力船「むつ」のその時点で効果が上がってない、このままでいくと相当将来に金を食うことになるぞというような意味で問題の提起をいたしておるわけでございますが、その後もいろいろ経費がかかっております。その経費の一々については十分検査をしているわけでございますが、率直に申し上げて、現時点で原子力船「むつ」が所期の効果を上げているという状況にはなっておりません。したがいまして、これからの推移というものは、これまでと変わらない重大な関心を持って見守っていると、こういう状況でございます。
  204. 和田静夫

    和田静夫君 いま答弁ありましたように、昭和五十年度の決算検査報告で特記した事項、行政府には何らの反省もない。国会でもしばしば私たちはむだを指摘してきたが、これも何も反省をしてもらえない。しかも、今後においても何ら確たる成果が上がる見通しもない。したがって、これ以上国民の税金をむだにすることはできない。財政の問題や行政改革の問題を考えられるのなら、ここのところがもう非常に大きなむだですね。したがって、大蔵大臣、感想ではなくて、やっぱり大蔵大臣はここで明確に指針を述べるべきでしょう。
  205. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) やはり私の立場からいたしまして、財政改革の基本方針にのっとっていけば、これは特定の原子力船問題に限らず、厳しい対応をしなきゃならぬ、こういうことが結論でございまして、その特定の問題自体については、所管省等との協議の問題であろうというふうに考えております。
  206. 和田静夫

    和田静夫君 総理、いまお聞きのとおりでありますが、私は、本年度の支出、来年度予算、そして「むつ」計画そのものの見直し、こういうものも要求したいと思うんですが、総理はいかがにお考えになりますか。
  207. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 原子力の平和利用の推進、また問題になっておりますこの舶用炉の開発という問題は、海運国日本にとりましては非常に重要な意義のある仕事であるわけです。  しかし、「むつ」につきましては、いままでいろいろな経緯がありまして蹉跌を来し、ずいぶん時間的にも遅延もいたし、また将来を考えてみますと、いま御指摘のようなかなりのお金も要るという情勢でもございます。したがいまして、党内におきましてもいろいろなお考えが出始めておるという状態である。しかし、舶用炉の開発ということ自体はやはりわが海運国としては非常に重要な問題でありますから、そういう諸般の情勢をよくにらみながら慎重に検討してまいりたいと思っております。
  208. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 久保亘君の関連質疑を許します。久保君。
  209. 久保亘

    久保亘君 開発の問題に関連をして二、三質問をいたします。  環境破壊か地域開発かということで対立をいたしております志布志湾の石油国家備蓄基地の問題についてでありますが、石油税収の激減による石特会計の逼迫、そして民間のタンクの大量余剰の利用が可能となっているというようなことがございまして、政府は国家石油備蓄基地の建設ペースをダウンさせるなど備蓄計画を見直す方針と聞いておりますが、このことについて通産大臣の具体的な考え方をお聞かせいただきたいと思うのであります。  特に、八月二十二日、総合エネルギー調査会の報告「長期エネルギー需給見通しとエネルギー政策の総点検について」では、昭和六十五年度エネルギー総供給量予測を昨年の四月のそれに比べて二割以上も下方修正をいたしておりまして、あわせて国家備蓄基地の完成時期をおくらせるよう提言をいたしておりますが、これらのことに関連をして通産大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  210. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) 調査会の報告にはいま御指摘のとおりのことが書かれておりますが、備蓄に関しましては、やはり資源小国日本として今後のことを考えると安定的供給、それも考えなければなりませんということも指摘されているわけでございます。  石油の需給関係は確かに緩和されました。しかしながら、われわれといたしましては、日本はもう九九・八%輸入しておるわけでございますから、中東情勢等もどうなるか考えていかなくてはなりませんし、また為替レート等の問題もございますから、やはり備蓄という問題に関しましては私は中長期的には供給の安定という観点から着実に進めていきたいと、こういうふうに考えています。
  211. 久保亘

    久保亘君 そういたしますと、政府の備蓄計画は調査会の報告に基づいて、着実にという言葉をお使いになりましたけれども、当初予定されていたよりも完成時期をおくらせる、これは今日の財政事情から見ましても必要になってきている問題じゃないかと思うのです。  特に、石特会計における石油税収の落ち込みは非常に大きいと聞いておりますし、来年度の概算要求では本年度よりもそういう落ち込みの中で二百十億も上回って要求されておりますが、これは大蔵省の方では石油税率の引き上げを考えておられるのかどうかわかりませんが、その辺も御説明いただきたいと思うのですが、実際にはそういう一千億を超えるような予算に対する減収ということになりますと大変困難になってくる。そうすると、やっぱり基地の完成時期をおくらせざるを得ないということは通産省としてもお考えになっているのじゃありませんか。
  212. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) まず、報告書においても示されておることでございますが、やはり財政難のときでもあり、また現在としては石油の諸問題もございますから、たとえばコストの高くつくタンカー備蓄は陸揚げするとか、あるいは先ほど話もありましたように、民間のタンクがあいておりますからそこへ入れてあげるとかいろいろな方法もあるかと思います。多少のことはやはり考えていかなければならないのじゃないかと思いますが、ここでもう備蓄をあきらめたというものではないということでございます。
  213. 久保亘

    久保亘君 最後に、中曽根さんにお聞きしたいのは、あなたは通産大臣も御経験になっておりますが、この備蓄基地の建設について、志布志湾の場合には新大隅計画の破綻がこの国家備蓄基地に置きかえられたという経緯もございまして、それでこの備蓄計画については、地元紙なども社説をもって志布志の備蓄を急ぐなということを主張いたしておりますが、こういう点についてやっぱり慎重な御配慮をなさる必要があるのじゃないかと思いますが、総理のお考えをお聞きしておきたいと思います。
  214. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ただいま通産大臣がお答えしたとおりでございますが、御意見としてよく拝聴しておきたいと思います。
  215. 和田静夫

    和田静夫君 東海再処理工場についても先ほどの「むつ」と同様の事態が進行しています。これまでに幾らお金をつぎ込んでいますか、その内容を説明できますか。
  216. 高岡敬展

    政府委員(高岡敬展君) お答え申し上げます。  昭和四十二年から五十七年まで、仰せのように総計で千七百九十九億円を東海再処理工場の建設費、運転費、研究開発費に支出をいたしております。  その内訳でございますが、建設費に七百五十六億円、操業費に二百二十五億円、借入金の返済——操業費その他の一部を借入金で賄っておりますが、返済費に二百七十億円、研究開発費に五百四十八億円支出をいたしております。
  217. 和田静夫

    和田静夫君 これまでに処理した使用済み燃料は。
  218. 高岡敬展

    政府委員(高岡敬展君) トータルで約百七十一トンでございます。
  219. 和田静夫

    和田静夫君 いいですか、当初計画では二百二十九億円なんですね。年二百十トン処理する計画だったわけです。ところが、現実には累計で九十三トンでしょう。毎年百億円以上の赤字が出ている計算に私の計算じゃなるんですよ。会計検査院どうですか。
  220. 鎌田英夫

    会計検査院長(鎌田英夫君) 燃料の処理工場につきましても、ただいま御指摘のとおり事故が起こりまして現在稼働しておりません。この建設の費用につきましては、やはり出資金なり借入金ということで賄われてきた関係からいいますと、実際にこれはうまく運営されていれば収支償うということでございますが、現時点ではそういう環境になっておりません。したがいまして、今後どういうふうにこれが運営されるかということについては重大な関心を持って推移を見守っている段階でございます。いま検査の途中でもあるわけでございます。
  221. 和田静夫

    和田静夫君 私が全貌を大体明らかにしたとおりを会計検査院長がお認めになっているんです。そこで、原子力予算というのは防衛予算とともに突出した予算増加を続けています。その裏にこんな巨額なむだがあることを知るべきであります。私は原子力開発そのものについていろいろ意見を持つ立場ではありますが、きょうは先ほども言ったとおり、財政効果という観点を明確にするためにあえて意見をそこに限って述べているわけです。  しかし、財政上から見て、「むつ」、東海再処理工場の不正なまでのむだというのは、これはやっぱり見過ごすわけにはいきません。行政改革を叫ぶ一方でこれを放置するならば、国民は行政改革そのものを疑う。そういうことになるのは当然なのであります。したがって、行政府でできないのならば国会で、あるいはこの予算委員会でこのむだにメスを入れるべきだと思っているんです。それこそ私は予算委員会が持っておる使命だと思います。よって委員長、これについて私は、当国会開会中に政府の合理的な改革方針を予算委員会として出させるべきだと思う。委員長はぜひそのことを政府、中曽根総理に求めてもらいたいと思います。
  222. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 後で理事会を開いて相談をした上で、また御返答申し上げます。
  223. 和田静夫

    和田静夫君 教育問題について一つだけ伺っておきたい。  共通一次試験期日を改善していただきたいという切なる声が文部大臣、たくさんあるわけであります。そこで総理、ぜひこの声は少しでも現役に有利になるような、そういうことを今年度から、たとえば出願期日を十一月一日から、あるいは実施日を一月の二十一、二十二日に延ばすというような具体的な国民的提案があるわけでありますから、そういう要望は実現をしてやってもらいたいと思いますが、いかがでしょう。
  224. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 現在の教育のあり方につきましてはいろいろな方面から御意見がございます。特に、教育を受ける方の子供や学生や父兄の側からの意見というものも非常にあるわけでございまして、私、所信表明演説で申し上げましたが、いままでややもすると、与える方とか国の方の立場というものが常に出てきているように、自分たちも反省しなければならぬと思います。そういう意味で、偏差値であるとかあるいは共通一次試験であるとか、そういう受ける側の立場から見た反省やら検討ということを私は必要だと思っておるんです。そういう意味におきまして、いま私も自分で個人的に文化と教育の懇談会をつくってそういう勉強もしておりますし、文部省におかれましてもそういう検討を開始しているところでございまして、それらの結論を待ちまして、ぜひ改革すべき点があらば勇敢に改革したいと考えております。
  225. 和田静夫

    和田静夫君 文部大臣、いまの私の具体的な提案についてはいかがですか。
  226. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 共通一次試験、もう五年経過いたしております。これは一面、効果があったわけでございますが、その実施状況、経過いたしますとともにいろんな意見が出てくる、改善意見が。いまおっしゃったように科目あるいは教科の減少、減らしてくれという、それから一月、やっておる時期が適当でない、二月に繰り下げてくれと、あるいはまた第二次試験のやり方をもう少し工夫改善してもらいたい、いろんな意見が出ております。これは私どもも要請を認識しておりまして、これは文部省が改革する問題じゃなくて、大学側あるいは高等学校側が協議しなきゃなりません。文部省の受験改善委員会も検討しておりますが、簡単に申し上げますと、昭和六十年、六十一年には、物によってすぐできないものもありますから、実施ができるように進めたいと、かように考えております。
  227. 和田静夫

    和田静夫君 総理、この間五月の決算委員会で総理から約束願ったことでありますが、逗子市の池子の弾薬倉庫の跡地の問題なんですが、米軍住宅建設問題がどうも総理が私にお答え願ったような形ではなくて進んでいる、そういう状態にある。緑を豊かに残していくというような総理の構想とは違ったところにある。そこで、池子の主婦の皆さんがペンタゴンに行った。そして日本課長と会見をされたレポートを読んで見ますと、どうも施設庁によって余分なことが進められようとしているというような形になっているんですね。これは総理の意向がどこまで施設庁に通じているんですか。
  228. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 池子の弾薬庫の問題につきましては、私も御答弁申し上げまして、住民の御理解を得て、調和を得つつ進めていきたい。あそこへ米軍が約千三百戸でございましたか、つくりたいという要望があり、われわれの方もそれは無理もないと、そういう考えに立ってあそこを選んだわけでございます。  しかも、それを建てようという地域、大きさというものはあの膨大な、たしか二百九十万平米でしたか、それぐらいある中でごく一部である、しかもその半分は緑地帯に残しておくというそういう条件で住宅を建てるという計画なんでございますから、緑の問題についてはかなり配慮しつつやっておる、しかし住民の皆さんの中にもまだ完全に御理解を得ていただいておらぬところもあるから、そういう点はよく御理解いただくように進めたいと、そういう意味のことを申し上げたのでございまして、その筋に従ってやらしてみたいと思っております。
  229. 和田静夫

    和田静夫君 池子の森は首都圏市街地には珍しい自然が残っているところであることは決算委員会でも指摘をしたとおりでありまして、この自然を保護できずに緑を守ると言ってみたところで、そういうことは通らぬわけでありますから、計画が総理が約束をされた形で進まないならば再考をしてもらう、こういうことを強く要望しておきたいと思います。  さて、情報公開について伺いますが、臨調答申は情報公開を国民の知る権利という観点から扱っていません。行政情報を知るという権利、これは基本的人権の一つであると考えているんですか、長官いかがです。
  230. 齋藤邦吉

    国務大臣(齋藤邦吉君) 情報公開問題は、臨調答申でも述べられておりまして、私どもはこれを前向きに検討していきたい、かように考えております。  特に、行政の民主化という観点から進めていくべきものであると考えておりまして、現在のところ自治体においても行っているところがございますから、そういうものを参考にしたり、それから諸外国の例等を調べたり、そういうふうな問題を検討しながら前向きに検討を進めていきたい、かように考えておる次第でございます。
  231. 和田静夫

    和田静夫君 情報公開のくだりで、「我が国の実情に合った制度」というふうに述べられています。この「我が国の実情に合った」というのはどういうふうに認識しておいたらよろしいですか。
  232. 齋藤邦吉

    国務大臣(齋藤邦吉君) 「我が国の実情に合った」ということは、私どもの理解するところによりますと、いま県、市町村等においてそれぞれ条例を設けて情報公開等をやっておりますから、そういう実施状況等を十分に検討をして日本の国情に合ったようなものという考えでおるわけでございます。
  233. 和田静夫

    和田静夫君 実は臨調答申以前に、私は昭和五十六年四月二日のこの予算委員会で、当時の行管長官の中曽根現総理と幾つかの情報公開の論議をさせていただきましたが、総理はあのときに、「この問題はかねての懸案の問題でございますので、スピードを速めて努力してみたいと思います。」と私に答弁をされました。ところが、どうも問題を先送りしている感じがしてならないわけであります。行管庁の資料によりますと、ほとんど何もやられていないわけですね。年一回程度会議をやっている、そういうことなんですよ。総理、どこでスピードが上がっているんでしょう。
  234. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) この問題は、その後臨調答申が最終的に出まして、その臨調答申の内容はいま和田さん御指摘のようなもので、検討するという点で私が考えていたよりはどっちかというとブレーキがかかった表現になっております。しかし、私はいま政治家といたしましても、行管庁長官当時持った考えを変えておりません。  すなわち、あのとき御答弁申し上げたのは、一つは、歴史というものを正しく伝えるためにも正しい正確な資料を後世に残す必要がある。アメリカ等においては、ある年限がたったものはできるだけ公開しておる。それによって、あのころマッカーサーが何をやったのか、トルーマンがどういう考えでやったのか、ニクソン氏がどうしたのか、そういう記録を公開することによって正しい歴史を伝えるという子孫に対する大きな責任があるんだ。そういう点が一つと、もう一つは、現代生きている人間の間でいろいろ情報を知るという権利もあるだろうし、また社会に対する便益もある。たとえば薬の安全性の問題であるとかいろんな問題がある。ただし、ここでは商業秘密の問題とか官庁の持っている秘密であるとか、あるいはプライバシーの保護という問題が出てきて、そういう問題については厳重なる歯どめなり条件をつけなければならぬけれども、しかしいま生きているという面から見ても知らなければならぬという点も多々あると思う、そういう面の調和をとりながらこれを進めていきたいと、そういうふうに申し上げたのです。  その後、各都道府県、市町村において情報公開が進んでまいりまして、山形県におきましては何とかという町がやり、神奈川県においては県が進めておりまして、条例ができつつあります。これらのやり口をよく見、またその効果を国としてはしばらく見ておって、そしてその状況を把握しながらこの問題を前向きに進めていこう、そういう考えで私は目下おる状態です。
  235. 和田静夫

    和田静夫君 臨調の最終答申百九十八ページでは、「国民的合意の推移、国際的動向、地方公共団体の状況等にも留意しつつ、」と言っているわけであります。第一の国民的合意については、さきに発表されました総理府世論調査の結果が示すように合意は形成されている。第二の国際的動向という点では、これは日本は情報公開後進国と言わざるを得ないのでありまして、アメリカではすでに一九六六年に情報の自由に関する法律が制定をされています。そうすると、第三の地方自治体に関しては、すでにいま総理からもお話がありましたように、神奈川県や埼玉県、あるいは山形県の市などというようなことで、残余の都道府県でもすでに具体的な計画が進んでいる、こういうことにいまなっているわけであります。おくれているのは国だけである、中曽根内閣の取り扱いだけである、こういうことにいまなっているのが実情でございます。  基本的な点で確認をしておきたいのは、情報公開というのは行政改革の重要な構成要素である、行政改革に欠かすことのできないものであるというこのことについては、総理、確認できますね。
  236. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 情報公開が必ずしも行政改革と直結しているとは思わないのです。行政改革の考えの基本には、小さな政府とか、あるいは簡素にして効率的な行政とか、そういうものが正面に出ておりますから、必ずしも直結しているものとは思いません。それよりももっと民主主義の基本原理に基づく住民の行政に対するあり方、行政の住民に対するあり方、そういう問題からきている問題だと思いまして、より民主主義の面から見れば大事な問題だ、基本的問題の一つだと私は考えておるのです。そういう意味におきまして、各公共団体における実施の状況等も勘案しつつ、政府としても前向きの準備、研究を進めさしていきたいと思っております。
  237. 和田静夫

    和田静夫君 いま総理が答弁された趣旨について、私は第一問で行管庁長官に基本的人権の側面から尋ねておいたところでありますから、臨時行政調査会のこの答申、二つの検討機関ですね、専門的調査研究組織、臨時の専門的調査審議機関を設置して検討せよと言っているわけですね。これは何をいまさらの感もないわけではありませんが、行管庁長官、この情報公開の促進について、これはどういうような展望をお持ちですか。おやりになるということはさっきわかりましたけれども。
  238. 齋藤邦吉

    国務大臣(齋藤邦吉君) いま部内で検討しておりますのは、事務屋の下の、下の方と言っては失礼ですが、その方でいま検討している程度でございますから、もう少しそれを高めまして、もう少し上のレベルにおいてこの問題を、総理が言われたように、私は行政の民主化の上に絶対必要だと思うんですよ。そういう意味において、今後もう少し高いレベルで検討を進めるようにさしていただきたいと思います。
  239. 和田静夫

    和田静夫君 恐らく行管庁長官も、事務屋の下のレベルのときからずっと考えていらっしゃって、いま行管庁長官になっていらっしゃるが、なかなか実っていかないということでしょうから、ひとつ実らせるようにしてもらわなきゃなりませんが、臨調答申は制度の実効性や費用対効果の問題及び制度実施に伴うデメリット、これは百九十四ページに書いていますが、やや及び腰の姿勢を私に言わせれば示しているわけですね。  制度の実効性にせよ、費用対効果にしてみても、だれにとっての実効性、だれにとって効果なのかということが問題なんですね。情報公開というのは行政にとってのデメリットであっても、国民にとってメリットになる。だから、国民の知る権利を強めれば、当然行政にとってはある意味でのデメリットは伴うかもしれぬ。国民の監視の中で行政が行われることは、一時的には行政のデメリットが拡大をすることがあっても究極的には私はメリットになる、こう考えてやはり急ぐべきだ、そういうふうに思うんですが、いかがですか。
  240. 齋藤邦吉

    国務大臣(齋藤邦吉君) この情報公開につきましては、メリットもありデメリットもあるということを言われておりますが、私は行政の発展ということを考えてみると、地域住民の信頼というのが一番大事だと思うんですね。地域住民の信頼、それにはどういう関係でどういうふうになっているのかということを知ることがやっぱり出発だと私は考えておるわけでございます。そういう意味において、特に日本人の特性として、このプライバシーの問題を非常にやかましく言うわけでございますから、そういう点を十分頭に入れながら、それから役所の機密事項ということも頭に入れながら、できるだけ、どういう順序でこういう行政が行われるようになったのか、そういう過程を知るということが行政民主化の上に非常に大事なことだ、それがまた地域住民の政府なり行政府に対する信頼を増すゆえんである、こういうことだと思うわけでございまして、今後ともひとつそういう方向で進めてまいるようにいたしたいと思います。
  241. 和田静夫

    和田静夫君 そこで、行管庁長官、この情報公開の費用対効果の試算というのは、これはどう出すんでしょう。費用は出るでしょうが、効果というのはどういうふうに出すのですか。
  242. 齋藤邦吉

    国務大臣(齋藤邦吉君) なかなかそういう問題はむずかしい問題でございますから、専門的にやはり検討しなくちゃならぬ問題だと思います。
  243. 和田静夫

    和田静夫君 何か事務局でいま答え出ますかね。
  244. 齋藤邦吉

    国務大臣(齋藤邦吉君) 事務的にいろいろ検討していると思いますが、やっぱり専門的に検討する事項だと私は理解をいたしておりますから、そういう方向で考えてみます。
  245. 和田静夫

    和田静夫君 行管庁の資料を読んでみますと、六月二十四日に情報公開問題に関する連絡会議という機関を設けたとされているわけです。これが臨調答申の言う検討機関に対応するものなんですか。
  246. 齋藤邦吉

    国務大臣(齋藤邦吉君) それは将来の検討すべき機関の第一歩であると私は理解をいたしております。
  247. 和田静夫

    和田静夫君 この連絡会議の目的と性格、構成、参加者、開催サイクル、会議の内容、これは全面的にお出し願えますか。
  248. 齋藤邦吉

    国務大臣(齋藤邦吉君) ただいま資料を持ち合わしていないようでございますから、後ほど差し上げるようにいたします。
  249. 和田静夫

    和田静夫君 この連絡会議の中に公開基準部会を設けるとされているわけですが、これはいただけますか。
  250. 竹村晟

    政府委員(竹村晟君) これから検討してまいります。
  251. 和田静夫

    和田静夫君 委員長、答弁が全部ずれていましてね、実は時間がずっとたっているものですから、次の与党質問のことも考えて私は急いでいるんですが、こんな協力ができないような形の答弁じゃとても協力ができないわけですよ。
  252. 齋藤邦吉

    国務大臣(齋藤邦吉君) 先ほども申し上げましたように、後ほど資料をそろえまして提出いたします。
  253. 和田静夫

    和田静夫君 実は行管庁長官、私くどく言いたいのは、八一年四月の質問の際に、これまで非公開だった官庁情報のうちどれだけ公開したかと伺いました、私はこの予算委員会で。各省庁ごとにどれだけあるのかを資料要求として確認を願ったわけです。そして、現参議院議長の木村睦男予算委員長は皆さん方にそれを求められた。各省庁に求められた。御記憶があるとおりです。ところが今日まで、私はときどきそれに触れながらいろいろの方と接触をしましたが、出てきてないんです。  さて、これは大臣一人一人にいま答弁を全部求めるわけです。しかし、そんな酷なことを言ってもしようがありませんから、各省で担当されている官房長、八一年四月のここの予算委員会の約束事、答弁してください。
  254. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 答弁できるところ、ありますか。——どうでしょう和田さん、急にそう言っても皆さん急に出ないと思うから、また後で出してもらうことにして、質問を続けてください。
  255. 和田静夫

    和田静夫君 委員長、何も私は予算委員会をとめようとかそんなことを考えているわけじゃありませんよ。もっとやっぱり予算委員会の論議に対して各大臣並びに各省庁が忠実であってもらいたいんですね。私たちは曲がりなりにも自分の能力の、ある意味では最大限のことを発揮しながら質問しているつもりです。そして、予算委員会として委員長が代表してその内閣に対して求めた資料が出てこないんですね。出てこなければ、この予算委員会が平場でもって情報公開問題に触れた今日、三年前のことでありますから全部用意されているでしょう、これだけの期間たったのですから。したがって答弁をしてください。ないがしろにわれわれの論議を扱ってもらっちゃ困る、そういうことですよ。代表的に、大蔵ですかあるいはどこですか、一辺やってみてくださいよ。あるいは官房長官でも結構でございます。
  256. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 三年前の約束ですか。
  257. 和田静夫

    和田静夫君 これは予算委員長の権威にかかわる、現参議院議長の権威にかかわる。
  258. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 御趣旨はよくわかりましたから、各省に注意しておきますが、今回のところは、いますぐと言ってもちょっと間に合わないと思いますから、よく注意しておきますから質問を続行してください。
  259. 和田静夫

    和田静夫君 三年も待っていることでもありまして、ひとつ官房長官、ここで扱いについて。
  260. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) 当時の速記録等も調べまして、当時の木村委員長がどういう指示をなさったのかも調べて、各省のその後の状況等も調査をいたしまして、そしてこういう委員会の席での質疑応答でございますから、政府としては誠意をもって対応して、そしてお答えをいたしたいと、こう思います。
  261. 和田静夫

    和田静夫君 少し具体的な問題に入りますが、労働大臣、労働安全衛生法には学識経験者に守秘義務を課しているわけであります。ただし書きで、「労働者の健康障害を防止するためやむを得ないときは、この限りでない。」とされているわけです。この規定というのはきわめて限定的です。すなわち、地域住民の健康障害のためには情報開示はできない、さらに「やむを得ない」という限定がついているわけですね。そうすると、この「やむを得ない」というのは具体的にはどういうことでしょう。
  262. 大野明

    国務大臣(大野明君) お答えします。  ただいまの御質問に対しては、まことに申しわけないが、私も余りつぶさに承知いたしておらないところでございまして、いずれにしても「やむを得ない」というものの中に、どういう形のものかということも、実際私はいまわからないから、先生の質問要項の中に入ってないから政府委員が来ておりませんから、後でお知らせします。
  263. 和田静夫

    和田静夫君 総理のいわゆるがん対策の問題との関係でちょっと報告を求めたわけですが、一九七七年に日本が批准しましたILOのがん条約四条によりますと、労働者に「すべての情報が提供されるように措置をとる。」、労働大臣、こういうふうにされているんです。このILOがん条約に比べて労安法は厳しい情報制限を行っているわけですね。そうすると、ILO条約は政府に対して情報公開の義務を課している。ここの関係だけは明らかにしてもらいたい。官房長でもいいですよ。
  264. 大野明

    国務大臣(大野明君) まことに申しわけございませんが、政府委員が来ておりませんので、どうもそこら辺よくわからないので……。
  265. 和田静夫

    和田静夫君 問題点は、大臣、よくわきまえておいてください。どっちみち予算委員会はずっと続きますから、通常国会に向かって。  総理、そこでこの職業がんというのは、総理も御関心の高いがん対策上最も優先されなければならないテーマであるわけです。発がん性物質が工場の中でチェックされるのであれば、そうすれば一般消費者の被害はどれだけか制限されることになる。したがって、職業がん対策は一層重視する必要があると思うんですね。しかるに、企業側はみずからの得たデータを秘匿するわけですね。そういう傾向にあるわけです。それが一般的です。住民や労働者が問題提起して初めて明るみに出てくるわけです。日本化工の六価クロム事件の経緯がその好例なわけですよ。がん対策の推進、情報公開の推進という点からするならば、ILOがん条約第四条は厳密に運用されなきゃならないわけです。  ところが、労働省の法律、先ほど言ったように、まあ答弁ありませんでしたが、非常に劣っているわけですね。開示の規定を置かずに守秘義務を逆に課す、どうも逆さまになっている感じがするんです。がん対策、情報公開、そういう両方の見地から私は再検討をする必要がある、そういうふうに考えますが。
  266. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 職業がんという問題は労働衛生の面からも非常に大事な問題であるように思います。私は専門的知識を有しませんが、これは一般のがんの予防と同じようにさらに注意して、専門的見地からこの予防の措置を講じなければならない。そのためにはその資料を経営者も労働者も等しく分かち合ってがんの予防に協力し合わなければならない、そういうことであると思います。そういう意味におきまして、労働省をして必要な措置をとらせるようにいたしたいと思います。
  267. 和田静夫

    和田静夫君 八一年四月のこの予算委員会の質問の際にも私は指摘しましたが、秘密指定の基準、これは全く不明瞭なんですね。  国家公務員法百条の守秘義務規定を援用すれば何でも秘密にできる、法制局長官、まさかそんなことはないと思うんですが、いかがですか。
  268. 茂串俊

    政府委員(茂串俊君) お答えを申し上げます。  確かにそのときにもお答えしたと思いますけれども、当然守秘義務の対象になるものの範囲というものは、その事柄の性質によっておのずから限定的なものであるというふうに考えられると思います。
  269. 和田静夫

    和田静夫君 七四年十二月のこの政府統一見解というのがありまして、守秘義務の指定を国政調査権との関係において、守られるべき公益と国政調査権の行使によって得られるべき公益とを個々の事案ごとに比較衡量することによって決定されると、そういうふうに政府統一見解は述べているわけですね。この比較衡量する主体というのは内閣にあるわけです。その点で決定的に問題があると言わなきゃならぬわけですね。臨調答申の言う情報公開の原則に立つならば、公務員にはまず情報開披義務が課せられなければならない。その上で例外中の例外として守秘義務が秘密指定を厳密にし手続規定を明確にした上で規定される、そういうぐあいにする必要があると私は思う。総理は、この点やっぱり積極的に検討を命じていただきたいと思うんです。
  270. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) よく検討させるようにいたします。
  271. 和田静夫

    和田静夫君 核燃料物質の輸送問題に触れておきますが、この問題は情報が行政官庁によって著しく秘匿されている。情報公開と関連をするわけですが、秘匿されておるわけですね。原子力発電所の建設によって核燃料物資が日常的に普通の道路を走っているわけであります。世田谷の市民団体の調べでは、この団体が把握できたものだけで、ことしの三月から七月の間に十一回、東名高速と首都高速三号線を走っている、この核燃料輸送は大きな危険を伴う。たとえば日本坂トンネルのような事故が発生した場合、恐らく手のつけられないような放射能汚染をまき散らすに違いない。警察庁の資料によりますと、高速だけではなくて一般道路も走っていることになっているんです。  科学技術庁、この二、三年の核燃料輸送回数、ちょっと明らかにしてください。
  272. 辻栄一

    政府委員(辻栄一君) わが国におきましては、原子力発電所を中心といたしまして、核燃料施設の間におきまして核燃料物質が陸上あるいは海上によって輸送されております。この核燃料輸送の実績といたしましては、私どもつかんでいる数字は、原子炉等規制法によりまして運搬物の安全性を確認するための行政事務があるわけでございますが、その件教が昭和五十七年におきまして二百六十三件でございまして、このうち軽水炉にかかわる実際の発電用の原子炉に使われる新燃料の輸送でございますが、これが百五十五件、それから使用済み燃料の輸送が二十六件、合計百八十一件でございますが、このほかに研究炉用の燃料等にかかわります輸送が八十二件ございます。
  273. 和田静夫

    和田静夫君 七月六日の東京都議会におけるわが党斉藤都会議員の質問に対する鈴木都知事の答弁の回数などと科学技術庁の回数が違っていますので、これは後で調整させていただきますが、そこで私はきょう述べておきたいことは、自治省にお尋ねをいたしますが、沿線自治体のこの問題に対する事故対策というのはどういうふうになっていますか。
  274. 砂子田隆

    政府委員(砂子田隆君) お答えいたします。  核物質の輸送に関しましては、非常に安全に輸送しておるということは科学技術庁から先般の予算委員会でもお話があったようでございますが、これに関して、万一災害が発生をするというようなことがございますと、この災害は特殊なものでございます。そのために消火や延焼防止に当たりましては特に専門的な知識が必要でございます。そのために、一時的には運搬の事業者にこれの消火に当たらせているわけでありますが、直ちに消防の方にも通報することになっているのが現在の規定でございます。したがいまして、火災の通報を受けました消防機関は、消火活動のために消防隊が出動することになりますが、この場合も消防隊員は専門員の助言を得ながら活動しなければならないというのが現状であろうと思っております。  しかし、現実に消防隊の任務というのは住民の生命の安全を確保するということがきわめて大事な任務でございます。そのために、警戒区域の設定でありますとか、延焼防止のための消防活動を当然にすることになると思います。ただ、そのために私たちの方も原子力の災害対策、避難誘導等のための手引きというようなものをつくりまして、各消防機関に指導をいたしているところでございます。
  275. 和田静夫

    和田静夫君 自治体消防は、いつどこを通るか知らされていますか。
  276. 砂子田隆

    政府委員(砂子田隆君) 知らされておりません。
  277. 和田静夫

    和田静夫君 おりませんか。
  278. 砂子田隆

    政府委員(砂子田隆君) はい。
  279. 和田静夫

    和田静夫君 そうだからいまのことは絵にかいたモチに前段の答弁はなるわけです。  警察庁、輸送方法がきわめてずさんですね。トラックの前と後にパトカーがつくことになっていますが、私が撮った写真ではどれもパトカーはついていませんね。これはどういうことでしょう。
  280. 鈴木良一

    政府委員鈴木良一君) お答えいたします。  輸送の方法につきましては、運輸関係の業者に対しまして、それの指導の徹底を期しておるところでございます。いろいろな点をやっておるわけでございますが、たとえば日時あるいは経路、交通事故が発生したとき、あるいは盗難防止等の措置、あるいは車列、速度の問題、だれが乗車するか、どういう役割りを持つか、どういう装備を持つかというようなことを業者に指導をいたしておるわけでございます。さらに、警察といたしましては、沿道に必要な警察官を配置いたしまして交通整理等あるいは警戒に当たっておるというのが実態でございます。  パトカーのお話がございましたけれども、パトカーにつきましては、状況に応じましてパトカーをつけるということにいたしておるわけでございまして、すべてのものにつけるという運用はいたしておりません。しかしながら、いま申しましたような各般の指導によりまして、あるいはまた警察の交通整理その他の措置によりまして万全を期しておるというところでございます。
  281. 和田静夫

    和田静夫君 科学技術庁長官、これで最後にしますが、秘密主義が行政の立ちおくれを生じさせている典型的な例がこの核燃料の輸送問題なんですね。そこで、輸送実態に関する情報の公開及び事故対策の確立を急いでいただく必要があるのでありますが、御見解を伺います。
  282. 安田隆明

    国務大臣(安田隆明君) いまほどお話ございましたとおりに、核の輸送につきましては法定で安全規制法というのがございます。これが厳しい枠組みの中にありますことが一つと、それから国際原子力機関が定めた国際的な評価をもってこれで安全であるよというそういう仕組み、枠組みの中でいまの輸送行政は行われている。  さて、そこで公安委員会の方はどうだ、こうなりますれば、御答弁のとおり間違いなくやっております、それから輸送は運輸大臣にお願いしてございます、運輸大臣の方も間違いなくやっております、こういうことでございますから、住民に知らせる、こういう必要はない。現在の法定の中でわれわれはしっかりやっております。こういうことで御理解願いたいと思います。
  283. 和田静夫

    和田静夫君 答弁がそういうことになると思うので、山本国家公安委員長、公安委員会が知っただけで、結果的には消防庁はさっき言ったように知らないわけですよ。この辺の関係はどういうふうになってきますかね。大変危険なんですよ、これ。事故の回数なんかは時間がなかったからやりませんでしたけれども。
  284. 山本幸雄

    国務大臣山本幸雄君) この輸送は、非常に重要な物資の輸送でございますから慎重を期してやっていると思うんです。いま科学技術庁長官からお答えのように、きわめて技術的基準というものの高いレベルで輸送の容器とかあるいは輸送の方法が法律によって決められている、そういう非常に厳しい規制の中でこれが輸送が行われる。今度はこれは出発というか到着地まで経由地があるわけでございますが、これはそれぞれに公安委員会は途中の警護はいたします、万一、万が一のことがあれば、火災など起こるというふうなことがあれば、消防はそれに対応する態度はちゃんととっております、こういうことで、私はいまの体制で科学技術庁長官の言われるようにまずまずのことであろう、こう思っております。
  285. 和田静夫

    和田静夫君 そういう答弁になりますと述べなければならぬのでありますが、実はたとえば新宿区の市民団体が区長あてに出した質問状をここに持っているわけですよ。そうすると、「核物質の輸送等に関する対策は新宿区のみに留らぬ広域的なものであり、しかも輸送実態が区側では知りうる状態にないことから、現在のところ具体的対策はない。」と区長は答えているわけです。この辺どういうふうにされますか。
  286. 山本幸雄

    国務大臣山本幸雄君) 先ほど申し上げたように、これはやはり技術的に科学技術庁で厳しい法律あるいは国際的な立場からの方法で輸送をするということでございますから、私どもはそれをまず信頼をする。途中につきましては、先ほど申し上げるように警察なり消防はそれなりの対応は必ずいたします、こういうことだと思うんです。
  287. 和田静夫

    和田静夫君 総選挙が近い将来予想されるそうでありますが、第一、総理は解散問題について任期満了説を繰り返されていますが、それは総理の専管事項でありますから何を言われようと勝手ですが、まあだれが考えても近いということですが、現在の心境をぽつりと一言、どうですか。
  288. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 近いと予想されているとは思いません。
  289. 和田静夫

    和田静夫君 予想されていると思います、こういうことですね。
  290. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 思いません。
  291. 和田静夫

    和田静夫君 衆議院の定数是正問題、あるいは参議院の地方区の問題も同様でありますが、衆議院の定数是正、ことしの十一月にも最高裁判決が下される見通しのようでありますが、違憲の可能性が非常に強い。定数是正に踏み切られますか。
  292. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) この問題は民主主義のグランドルールに関する問題で、各党各派が話し合って合意を形成してやるのが好ましい。しかし一方において、裁判所側の意見、見解というものもわれわれ立法府側においては参考にする必要があるであろう。そういう意味におきまして、裁判所側の意見が出た場合には、やはりこれは立法府側としても御相談を願って、そして適切な処置を将来とることが正しいのではないか。それは裁判所の意見がどういうように出るかということもまだよくわかっておりませんし、そういう点につきましては将来よくこれを見守っていく必要があると考えております。
  293. 和田静夫

    和田静夫君 定数是正の問題というのは、衆議院のことではなくて参議院の地方区のことで考えてみても大変大きな問題なわけですよ。この辺はやっぱり真摯に取り組まなければなりません。比例代表制のときも、前段のことが抜けているんじゃないかという論議をずいぶんされておったんですが、したがって総理、私はここのところは真剣にやっぱり世論にこたえられる作業をやる必要があると思いますがね。
  294. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 元来このような問題は、私の考えによりますれば、立法府が自律的に各党が合意を形成してやるべきもので、裁判所や行政府のおせっかいを受けなくて自分でやるべき性格、いわゆる統治権の中の立法府の仕事ではないかと、そういう気がいたしておるのです。しかし、いろんな事情でこういういきさつにもなっておりますから、したがいまして、裁判所のそういう客観的なお考えというものも参考にすべき段階であると、そう考えております。
  295. 和田静夫

    和田静夫君 いまの閣僚の中には、自由民主党の中の選挙制度のオーソリティーなどと言われている人が官房長官や大蔵大臣などたくさんいらっしゃるわけであります。したがって、総裁として、自由民主党に対してやっぱりこういうことはやるべきじゃないかと言われるのが必要でしょう。
  296. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いまの考えは、自由民主党総裁としてお答えした考えでございます。
  297. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 以上で和田君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  298. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 次に、初村君の質疑を行います。初村滝一郎君。
  299. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 私は、自由民主党・自由国民会議を代表してただいまから質問をいたします。  総理を初め各大臣御苦労さまでございます。それでは、外交、内政の重要課題について順次質問いたします。  いま、政治に寄せられている国民各位の関心というものは非常に期待が強いと思います。そこで、私の質問も努めて平易に行いますから、政府側におかれても国民にわかりやすいようにお答え願えれば幸いと思います。  さて、中曽根内閣が誕生してから、はや十カ月を経過いたしました。その間新内閣がやり遂げた仕事は、まず昨年末、不況対策の補正予算を成立された。これは二十八年ぶりの緊縮予算を編成し、しかも成立されたわけであります。また、外交面では、日韓国交回復後初めて現職の日本の総理大臣が訪韓された、そしてまたレーガン大統領との会見も行われた、さらにASEAN諸国の訪問をされた、そしてまたサミット出席など非常に総理は精力的に首脳外交をされたわけであります。これによって長年の外交上の懸案事項を解決されました。片一方、歴訪された各国々との間の揺るぎない親善関係の樹立に大きく寄与されたと私は了解いたします。私としても、その行動ある総理の姿勢を高く評価するものであります。  政権を担当することになった総理のこれまでの十カ月を振り返ってみて、いかなる感想をお持ちであるか、まずお聞きしたいと思います。
  300. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 中曽根内閣の過去の業績につきまして温かいお言葉をいただきまして、まことに恐縮に存じます。われわれのような無力な者がやっていることでございますから、国民の皆さんの御期待を完全に果たすこともできずに、はなはだ恐縮に存じて、じくじたるものがありますが、しかし、私以下閣僚全部まじめに一生懸命やっていることだけは申し上げさしていただきたいと思っております。  私、政権の座に座らしていただきましてから考えておりますことは、一つは、国際的に日本の立場と力というものが、われわれ日本人が内部で考えている以上に大きく外国人の目に映っており、またそういう実績もある。それをわりあいに日本人が知らないということであると思っております。やはり、世界のGNPの一〇%を超す経済力を持ち、しかも独自の憲法やあるいは国際的な地政治学的位置を持って、アジアの一角にこれだけの大きな経済力を持った、また高度の文化と長い歴史を持った国家が厳然と栄えているということは、発展途上国にとりましても、大きな驚異でもありまた教訓のようでもあるようにうかがえます。  また、西欧各国につきましても、キリスト教徒でない、主として仏教徒である、あるいは儒教の徒である日本という国が、西洋文明を受け入れましてこれだけ大きく羽ばたいているのを見まして、非常に驚異にも感じ、ある部面においては畏敬の念も持って見られている、そういう面もあると思っております。また、共産圏におかれましても、主義主張は違うけれども、日本人というものが長い間国家を形成してこれだけ発展している根源がどこにあるかということをやはり勉強しておられるのではないか。中国等に参りますと、そういうようなことがうかがわれます。  そういう意味におきまして、日本人が考えている以上に日本という国の重さと大きな役割りというものの期待感というものがありまして、若干もし私の外交が影響を及ぼすことができたとすれば、それは日本人全体がつくってきた国家の業績あるいは実績によってそれが自然に反映されているにすぎないのだと。政治の力というよりも国民の皆様や労働者の汗と努力、経営者の努力でこれが行われていると、そういうふうに私考えまして、やはり国の内部が安定して、そしてみんながいい気持ちになって国のため世界のために働き合っているというこの厳然たる事実、犯罪も少ないし、内部の対立や摩擦も最近は特に少ないし、そういうような点が非常に大きく外国に映っているように一つ思いました。  それから内政につきましては、いま行政改革という大事業を控えまして一生懸命努力しているところでございますが、しかし、まだなすところ少なく、国民の皆さんの御期待にこたえることはできませんが、これぐらい国民の皆さんの御協力をいただいている政治的項目もないと思うのであります。戦後三十八年たちますけれども、これだけ国民が期待し協力してくださっているという政治項目を自民党が握ったことはないと私は思うのです。それだけに責任が大きいし、これはどうしてもやり抜いていかなければならぬ、そう思います。  もう一つ大事な点は、自由民主党を中心にする政府、あるいは自由民主党というものに対して国民の皆さんがどういうふうにお考えになっているかということを考えますと、やはり穏健中正な政治をやって、そして国民に安定感と安心感を与えていく。そしてやはり公平な政治、そしてただいま申し上げましたように、国民の皆さん全体のことを考えて、一部の階級とか一部の地域に偏しない穏健妥当な政策を行う政党だという安心感を与える、公平にやっているんだという信頼感を与える、そして清潔な政党であるという信頼感も与える、そういうことが非常に重要であるというふうに痛感しておる次第で、一生懸命やらせていただきたいと思います。
  301. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 いま総理の御答弁をいただきまして安心しました。しっかりがんばってやってもらいたい。  それから去る六月に、四月の統一選挙の後を受けて第十三回参議院通常選挙が行われたわけでありますが、これは十二年に一回の同年選挙であります。この選挙の結果は、わが党は選挙前の議席数を一人ですか上回っておりますけれども、私は勝って喜ぶという程度の成績じゃなかったと思います。これはやはり政権与党に対する国民の強い警鐘のあらわれである、したがって厳粛にしてかつ謙虚にこれを受けとめなければいけない。そして、政治のモラルを確立して、責任政党として掲げた公約を必ず実行する、そして国民の審判にこたえるというのが、私はわが党及び中曽根内閣の使命であり責務と考えますが、総理のお考えをお聞きしたい。
  302. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 参議院選の結果につきましては、あれだけ投票率が悪い中にともかく減らずに済めたという点につきましては、国民の皆様方の御支援と御期待に非常に感謝しておる次第でありまして、われわれはこの国民の皆さんのお心を体して、公約を一生懸命実行しておこたえしなければならないと思っておる次第です。  一番大事なことは、この多数をいただいておる自民党がおごってはいけない、また乗じてはいけない。やはり、国会の中におきましてもあるいは国会の外におきましても、言いたくても言えない、声を出せないという方が大多数であります。われわれのところに声の届かない方々、ほとんど九〇%、一〇〇%に近い数はそうである。そういう方々の声を耳を澄まして聞いて、黙っているけれどもやって、自然に実行してあげる、御期待におこたえすると、それが実は一番大事なことであり、われわれが心すべきことである、そのように思っております。決しておごらないで謙虚な気持ちでやらしていただきたいと思っております。
  303. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 選挙の結果を総理はいま述べられましたが、やはり私どもは、何といっても政党というものは公約を持っておる、したがって政党の公約というものは生命である、こういうふうに私は考えております。そこで、国民が本当に当内閣に対しまして託す負託をわれわれはこれを肝に銘じて、平和と健全な民主政治の確立のために挙党一致に団結して政策運営に当たらねばならない、かように考えるわけであります。  そこで、いま最も政治に期待している問題の一つはやはり政治倫理の問題であろうかと思います。そこで、国民に選ばれた政治家みずからが姿勢を正すことなくして政治に対する国民の信頼は私はあり得ないと思う。したがって、わが党は政権を担当している責任政党であるだけに、他にも増して厳しい倫理観に徹して清潔な政治を断行することが、国民から負託されたわれわれの責務であると考えます。したがって、総理も、議会制民主主義の発展のためには高い政治倫理の確立が必須であると申されておりますが、私も同感であります。したがって、いま一度改めて政治倫理に対する総理の姿勢を伺いたいと思います。
  304. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 初村さんがお示しになったお考えと全く同感でございます。  私も、今回の所信表明演説の中に私の考えをはっきり申し述べましたが、政治家個人個人の道徳性、それから政党、政治団体自体の持つ清潔性、信頼感、それから政治家一人一人が国や世界の平和と繁栄のために積極的に貢献していくという熱情、志、こういうようなものがやはり大事であると思っております。特に、自由民主党は政権を担当さしていただいております。しかも国会における多数を擁する最大の責任政党でございますから、それだけにまた責任も重いと感じておりまして、党員一同相引き締めましてその御期待におこたえするようにしたいと思っております。
  305. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 政治倫理の確立に資するために、何といっても私は政治と選挙に金のかからないようにすることが一番大事ではないかと、こう思います。したがって、そういう趣旨を踏まえて、従来の全国区制に変わって今次参議院選挙より拘束名簿式比例代表制が導入されて、政党本意の選挙が行われたわけでございます。  その結果を見ますと、各般の弊害が出ておりますね。それで、比例選挙を活発にするために一部には名簿候補者にもある程度の選挙運動をさしてもいいじゃないかという議論も出ております。また、総理も聞いておりますと思いますが、党内的にも名簿順位の選考をめぐっていろいろな議論が出ております。  そこで、総理は今回の選挙の結果を顧みて、これらの点についてどうお考えになっておるか、お答え願いたい。
  306. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 参議院の全国区の比例代表制に対する転換は大英断であったと思います。いろいろ御批判はございますが、私はこの制度を維持して、改良、発展さしていくことが適当ではないかと考えております。  こういう制度ができた一つの大きな理由の中には、いままでの全国区制というものはかなりお金と労力がかかる、そういう面もございました。また、個人的な色彩が強過ぎて政党的なにおいというものが非常に薄れてきておった、そういう面もなきにしもあらずであります。たとえば、テレビにうんと回数が出る方々が非常に有利になっておって、勉強もしており実力もあるけれども、テレビに出るチャンスの少ない人は非常に不利になる、そういうような面もいままでの制度にあったわけでございます。そういうような面を直そうという意味もありまして今度の制度ができたと思いますが、やっぱり制度には必ず光と影がありまして、影の部分としていまおっしゃったような点もあると思います。  これらの点は、自民党だけでなくして各党みんな同じように苦しんでおる問題であり、改革を要するならば話し合う必要のある問題であるかもしれません。あるいは各党が内部的に自分たちで処理すべき問題も多々あると思います。そういう点については、党内のコンセンサスをつくり、広げ、そして必要なる改正、改革を行いながらこの制度を適切に運用していきたいと考えておる次第であります。
  307. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 次に、大韓航空機撃墜事件についてお伺いいたします。  去る九月一日の早朝に、大韓航空機がサハリン西南端の洋上においてソ連軍用機のミサイルによって撃墜されるという事件がありましたが、これほどの蛮行は私はないと思います。ここに、日本人二十八名を含む乗員、乗客二百六十九名の方々に対し、深甚なる哀悼の意を表明し、御家族の皆様方の御心痛に対し心から御同情を申し上げる次第であります。  いかなる理由があったにしましても、無防備、無抵抗の民間航空機を撃墜するということは、これはもう人道上から考えても、あるいはまた広く国際法に照らしても違反しておるし、また許すべき問題ではない、かように考えます。ところが、ソ連の方はいろいろと言葉を交わすごとに次から次に言葉の趣旨が変わっていく。まげて言えば、事実を歪曲して、あげくの果てにはその責任を日米両国に転嫁しようとしているということは私は言語道断と言わざるを得ない。したがって政府は、本件についてどのように受けとめ、再発防止、遺族補償、対ソ処置をとられたか、これまでの対応処置について外務大臣から御答弁を願いたい。
  308. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) いまお話しのように、いかなる理由がありましても非武装、無抵抗な民間航空機を撃墜するということは許されないわけでございます。特に本件につきましては、二十八名の日本人が犠牲になっておるわけでございます。さらにソ連は、一日に撃墜をしたにもかかわらず、撃墜の事実を認めたのは九日になってでありまして、いわゆる日本が提出をいたしました交信テープ、ソ連パイロットの交信記録という動かすことのできない証拠によって渋々九日に認めた。しかし責任は認めない。あくまでもアメリカやあるいは日本にこれを転嫁しておるというソ連の態度に対してわれわれは憤激を覚えざるを得ないわけでございます。  こうした状況にかんがみまして、わが国としましてはソ連に対しまして、九月九日及び十三日に、ソ連航空機のわが国領域内への乗り入れ停止措置を含む一連の対ソ措置を決定をいたしまして、ソ連に強く反省を促したことは御案内のとおりであります。  さらに、本件事件に対するソ連の国際法上の責任を追及するために、十四日、ソ連に対し、東京及びモスクワにおきまして、本件について正式の陳謝を行うこと、不法な行為の再発防止のための措置をとり、これらの措置について通報すること、また、日本人乗客及びその財産につき生じた損害に対しソ連政府が十分な賠償を行うこと等を内容とする対ソ損害賠償請求を申し入れた次第でございますが、この対ソ損害賠償請求につきましてもソ連は一顧だにしない、その口上書を突き返すという態度に出たわけでございます。  また、再発防止に関しましては、十五、十六両日開催をされましたICAOの理事会特別会合におきまして、わが国は、既存のICAO条約の再検討、民間機、軍用機及び航空管制当局間のコミュニケーションの改善、民間機の識別、要撃の際の手続の改善につき、ICAOの場において緊急に検討を行うとの決議案の共同提案国となりまして、同決議の採択に貢献をしたわけでございます。同決議は多数の支持を得て採択をされました。政府としましては、今後とも関係各国とも協力をいたしまして、ソ連に対しましてその責任をさらに追及するとともに、真相の徹底的な究明並びに国民及び国際世論の納得のいく解決を求めるべく、国際社会においてかかる事件が二度と繰り返されることのないように最善の努力を尽くしてまいりたいと決意をいたしております。
  309. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 自後の対策を講ずるに当たっては、私はやっぱりこの事件の発生原因を明らかにする必要がある。それで、なぜ大韓航空機が所定のコースを外れてソ連の領空を侵犯したか、定期航路で何十回も行っておるはずですから。しかも、そういう危険のあるソ連の領空にどういうわけで行ったのか。事件発生後、これを恐らく国民は知りたいと思う。このことについて、政府の認識を運輸大臣から御説明願えれば幸いと思うんです。
  310. 長谷川峻

    国務大臣(長谷川峻君) 非常なミステリーに富んだ事件でございまして、ただいま安倍外務大臣から御報告したように、ICAOでも調査しておりますが、そのICAOの原因調査の結果をたしか三十日以内に、この十一月から十二月に開催されるICAOの理事会において暫定報告をする、こういうことが来ております。いままでのところ、どうしたことでコースを外れたのか、どんなことになっているのか、これは全然ミステリーでございます。その結果の報告を待とうと、こう思っております。
  311. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 私はなかなか微妙な事件であると思うんです。  そこで、防衛庁に質問をいたしますが、ここ三年間、航空自衛隊のスクランブル発進の数、その中で日本領空侵犯の事実があるかどうか、もしあったとすれば、侵犯機への対処はどういうふうになったのか、これを長官から御説明願いたい。
  312. 谷川和穗

    国務大臣(谷川和穗君) 航空自衛隊がスクランブル行動へ入りましてからことしの二月で一万回を超しておりますが、最近は大体年九百回前後でございます。特に、御質問のここ三年間、五十八年度はまだ年度さなかでございますので、五十五年、五十六年、五十七年について申し上げさしていただきますと、五十五年度が七百八十三回、五十六年度が九百三十九回、五十七年度が九百二十九回でございますが、この三年間で起こりました領空侵犯は五回でございます。なお、過去の領空侵犯は十三回でございまして、わが国の置かれました地理的な条件がそういたすのか、全部ソ連機による侵犯でございます。ソ連はその十三回のうち二回だけ領空侵犯を認めております。  これにつきましてちょっと申し上げさしていただきますと、五十五年六月の二十九日に能登半島、同じく五十五年の八月十八日に五島列島、五十六年六月六日に礼文島、同じく七月二十四日に礼文島、それから五十七年の四月三日、男女群島の鳥島西方でございまして、この中の一番最初の六月二十九日の場合のみ領空侵犯の事実を認めておりまして、他はソ連政府はそれを認めておりません。  以上でございます。
  313. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 いま防衛庁長官からほとんどの侵犯はソ連ということの報告があったわけでありますが、こういう問題は国際法上の取り決めでは大体どういうふうになっておるのか、これが一つ。  それから特に、ソ連には国境法という法律があるそうでありますが、その国境法の第三十六条にソ連国境上の警備の際に火器及び武器使用についての規定がある。これは細かく書いておるようでありますが、これは国際法との関係をどういうふうにかみ合わして解釈するのか、これを事務当局からでもようございますから、わかりやすく簡単に御説明願えれば幸いです。最初の方は長官から。
  314. 谷川和穗

    国務大臣(谷川和穗君) ソ連国内法並びに国際法関係につきましては外務省から答弁をいただくことにいたしまして、わが方の領空侵犯に対する対処の方法について簡単に御報告を申し上げさしていただきたいと存じます。  領空侵犯は、インターセプトという言葉で呼んでおりまする侵犯機に対する要撃措置を行うわけでございまして、これはまず第一に、航空総隊司令官ないしは航空方面隊司令官の、あるいはその委任を受けた者の指示に従いまして、警戒管制下部隊の緊急発進を行うわけでございます。そして、確認をいたしましたら直ちに侵犯機に対しまして警告をいたして、速やかに領域外へ退去、これがわが方のやりまする行為でございます。  とにかく、そのまま飛んでくれば日本の領空を侵しますよ、あなたの飛んでいるところはこのまま行けば日本の国内へ入りますよと、そこで押さえ出して、とにかくここから出てくださいと。それでもなお入ってきた場合には速やかにそこから退去をしてもらう、これがわが方のいたしまするいわゆるインターセプトということでございます。時には最寄りの飛行場へ着陸を誘導することもあるわけでございますが、過去においてはこういう姿ではございませんで、とにかく領空へ紛れ込んできたものに対しては警告を与えてそれを退去せしめる、これを第一義にいたしております。
  315. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 一般的に、軍用機、民間機を問わず、領空侵犯行為があった場合に、侵犯をされた国がどういう措置をとるかということにつきましては、先ほど防衛庁長官から御説明がありましたわが国の対応ぶりというのが、国際的に見まして適切な対応であるということであろうと思います。  御質問がありましたソ連の国境法の問題についてお答え申し上げますると、いずれにいたしましても、ソ連でありましょうとどこの国でありましょうと、自分の国の国内法を適用する場合には、これは国際法に従って適用しなければならないということは、これは大原則でございまして、したがいまして、今回のような平時におきまして非武装の民間航空機を撃墜するという行為を、これは明日に国際法に反した行為でございますが、これを国内法によって正当化するということは、これは全く許されないことだろうと思います。  私どもといたしましては、ソ連の国境法の規定は承知しておりますが、少なくともその国境法の規定の適用において重大な誤りがあったと言わざるを得ないというふうに考えておりますし、そういう国内法、国境法の適用を許すようなソ連の、端的に申し上げまして防空体制と申しますか、そういう政策そのものが国際法に照らして非常に間違っておるというふうに認識しております。
  316. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 いずれにしましても、国境法があってでも、何といっても国際法が優先するというような解釈でございますから、今回の事件は私は何といってもソ連の暴挙であるというふうに解釈せざるを得ない。  そこで、余りこの問題を日本がとかく強く発言をすると、対ソ問題の将来に影を残すのではないかという気も私はするんです。ああいう国ですから、やっぱり報復手段ということも対日の関係で出てきやしないかなということも、恐れはしませんけれども、危惧するのでありますから、やはりそういう点は十分配慮していかなきゃいけませんけれども、堂々と世界の世論を巻き起こすということはこれはやらなければいかぬが、そういう点の駆け引きですね、外務大臣に、どういう気持ちでやるか、その点をお伺いしたいと思う。
  317. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 大韓航空機撃墜事件というのは、これは国際法的に見ましてもあるいは人道的に見ましても、許すことのできない事件であろうと思います。そうした立場に立って、わが政府としても積極的に真相の究明、さらにまた責任の追及を行っております。さらにまた対ソ措置も講じておるわけでございますが、これは私は、やはりこの事件に関しては、日本政府としては国際正義の立場、また日本の立場からソ連に対しましてはあくまでも徹底的に責任の追及等を行っていかなければならないと感じておるわけでございます。  ただ、日本とソ連との関係は、御案内のように外交関係も存在をいたしております。また同時に、領土問題という大きな問題もあるわけでございます。こうした対ソ関係の根幹というものはこれは残しながら、この間の対話といったものはこれは続けていかなければなりません。外交関係はもちろん続けていかなければなりませんけれども、しかし事件に関しては、これはもう徹底的に日本の立場を主張して、ソ連の非を世界に対して明らかにさせなければならぬ、ソ連に対して何らかの措置を求めなければならない、こういうふうに思っております。
  318. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 次に、防衛問題に移りますが、総理の来る前に防衛庁にお伺いしましょう。  現在、わが国の防衛力は世界各国と比較してみてその位置づけはどうなっておるか、それから防衛費の総額、それから国民一人当たりの防衛費、GNP対比の計数、これを御答弁願います。
  319. 谷川和穗

    国務大臣(谷川和穗君) それぞれの国の防衛力というものは、なかなかこれを比較することはいろんな意味でむずかしいと思うわけでございますが、特に御質問でございますので、兵力だとか装備の質だとか量だとか、あるいは訓練の練度だとか、その国の地形的特性など、こういったものを一応わきに置きまして、現在、世界的に通用いたしておるといいますか、常識化しておりまする最近の「ミリタリー・バランス」という防衛関係の報告書の中から、防衛費の総額等の比較について申し述べさせていただきたいと存じます。  まず、これは円とドルとの関係を二百二十九円ちょっとで計算をいたして換算いたしております。年度は少し古いんでございますが、足かけ三年ばかり前の八一年度の主要国の国防費の比較でございますが、この比較で見ますと、これを日本円に直して、フランスが日本のすぐ上におりまして五兆四千億、その当時の日本の国防総費は二兆四千億でございましたが、ことしはこれより少し上へ上がっておりますが、そのときにソ連と中国が上位の方にあるはずでありますが、この両国とも金額は不明。わかるところは、アメリカがちょっと四十兆を超しておりまして自由主義陳営ではもちろんトップ、世界的に見るとソ連の次と、こういうふうに位置づけられておりまして、日本がしたがって上から数えて総額では八番でございますが、すぐ上のフランスのちょっと半分という感じでございます。  それから一人当たりの国防費がどうだということで、これもいまのような「ミリタリー・バランス」の、これは一年後の八二年から八三年にかけた数字で計算をいたした資料がございますが、これで申しますと、日本が頭から数えて一人当たり負担をいたしておりまする国防費は四十五番目でございまして、日本の前後にある国がスペイン、それから南アフリカ、それから北朝鮮、日本、ポルトガル、こういう形になっております。日本が当時、これはドルで計算をいたしておりますが、八十九ドルで、ポルトガルが日本より一ドル少ない八十八ドル、それから南アフリカが日本よりちょっと多い九十四ドルと、こんな感じでございまして、ちなみに西ドイツあたりだと国民一人当たり四百七十ドルぐらいを負担をいたしておる、こんなような数字が出ております。  それからGNPにつきましては、よく言われておりますが、日本の場合には〇・九%ちょっとでございますが、欧米が四、五%、高いところで六%程度、こういうような感じではなかろうかと、こう言われております。  以上でございます。
  320. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 私は、いま防衛庁長官からわが国の防衛力の位置づけ等について聞いたわけでございますが、この自由世界の経済第二位のわが国において、いまの数字からいきますと、世界各国との比較において防衛費が非常に突出しておるとか、あるいは軍事大国であるとかいうような理解はとられない、いまの数字から推せば。  そこで、防衛庁長官にもう一つお伺いしますが、あなたはこの二十二日にワインバーガー米国防長官お話をしましたね。その話について、それぞれ日米の防衛問題についていろいろ突っ込んだ話があったと思うんです。それをここで全部言えとは言わぬが、言われる範囲内で、アメリカが日本の防衛力に対してどういう関心を持っておったか、その点をお聞かせ願いたいと思う。
  321. 谷川和穗

    国務大臣(谷川和穗君) 私は、ワインバーガー米国防長官のお招きをいただきまして、先月、八月二十二日、ワシントンでワインバーガー長官と定期的な日米軍事首脳会議なるものを済ましてまいりました。私は、日米両国の防衛責任者が間断なく話し合いを続けるということは、相互の理解あるいは相互信頼あるいは相互の協調、こういった問題の観点から非常に重要なことだと思って、ワインバーガー長官の招聘に応じたわけでございます。  先般の会談の中で、一つは国際軍事情勢の意見の交換をいたしました。それから一つには、それぞれの国の防衛努力についての話をいたしました。それからあと、日米両国間の防衛の分野におきまする幾つかの問題点、たとえば厚木の夜間訓練の話などもいたしましたし、それから三沢に配備の予定をいたしておりまするF16の問題や在日米軍の駐留関係の話もいたしました。それから、ことしの一月の十四日に中曽根内閣として取り決めをいたしました装備技術の交流。日本の軍事技術を、防衛技術をアメリカの方へ出していくという決定、これはワインバーガー長官が非常に多としておりましたが、こういう装備技術の交流の今後の基本問題についても話し合いをいたしました。  さらに、特に軍縮、軍備管理が問題でありますが、INF交渉を含めた話し合いをいたしました。その中で、この防衛努力の問題について御報告を申し上げさしていただきますと、ワインバーガー長官は、日本の国でほかの予算概算要求の金額がマイナスシーリングである中で、防衛に関して六・九%に近いこの数字については一応評価をいたしましたけれども、ただインフレ率を引いたりすれば実質はやはり低くなるということも含めて必ずしも十分ではないというようなワインバーガー長官の見方を述べておられました。  そのときに非常に私大事だと思って感じたことは、ワインバーガー長官はアメリカ議会におきまするいろいろな動きを紹介しつつ、日本の国の経済がこれだけ大きくなったことは日本の国民努力である、それは自分は認める。しかし、日本がこれだけ経済が大きくなったならば、他の同盟諸国と同じようにもう少し防衛努力ができるのではないかというアメリカ議会の感触を自分は印象づけられているというような表現を使っておいでになられました。ただそのときに、アメリカは決して日本に肩がわりを求めているわけではない。自分の言いたいと思うことは、日本が自分の国を防衛するための自衛的整備をできるだけ早い期間にやったらどうかと思っているんだと、こういう趣旨の御発言をしておいでになられました。
  322. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 総理にお伺いしますが、今月の九日、オガルコフソ連参謀総長は期せずして次のことを発言しておるんですね、例の大韓航空機で。侵略機はカムチャッカに接近した、同機はソ連核戦略の最重要基地へ向かって真っすぐ飛来した。このことは、はしなくも北海道の近いところにソ連の核戦略基地が存在することを私はみずから認めたというふうに解釈するんです。このことについて総理はどういうふうにお考えか。
  323. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私もあのテレビを実は見ておりまして、ソ連の参謀総長のオガルコフ氏とそれから党の代表者、この方はたしか外交関係の国際部長であったと思います。それに政府の代表者の外務次官、この首脳部が共同記者会見したということ自体がまず非常に珍しいことだと、恐らく一回か二回ぐらいしかいままでないということの由です。  それから、言った内容につきましても、きわめて無責任なことを当時は言っておりましたが、しかしその中でも、いま初村さんが御指摘になったカムチャッカのところに重要な戦略核基地がある、そういうことを言明したと。ソ連の高官が世界のテレビの前で戦略核基地の存在を自分で言明したということは初めてではないかと思うのです。それだけに、あのテレビを見ていた瞬間に、私は、あっという気がしたのが正直のところであります。  なぜこういうことを言ったのであろうか。ソ連といえば何でも隠す国であるのがなぜ言ったのであろうか。そういう点についていろいろ考えもし、疑問も持ったわけでありますが、いままでいろいろ情報として聞いているところは、最近オホーツク海というものが非常に重要なソ連の海になってきた。ソ連は内海を持ちません。全部の海が北極海、氷の北極海を除いては全部スウェーデンであるとかフィンランドであるとか、ほかの国に面しておる。自分たちだけの内海というのは持っておらないわけです。その唯一のものがオホーツク海でありまして、そういう意味においては、あのオホーツク海にICBMをウラルの方から撃って、あそこが弾着地点になっている、あるいはあそこが原子力潜水艦の攻撃用のICBMを発射する唯一の安全な内海からの発射基地になっている、そういうふうにいままで言われておりました。  そういう意味で、カムチャッカ半島というものは、われわれの想像以上に最近ソ連の戦略的あるいは戦術的軍事基地、核基地として重要性を持ってきているのかなと。そういう意味において、アメリカのRC135という飛行機がそばを飛んでいた、大韓航空機の百三十五キロ離れていたところを飛んでいたと言っておりましたが、あるいは恐らくひょっとするとソ連のICBMの発射の観測であそこを飛んでいたのかなと、あるいはSLBMの訓練等の関係であそこを飛んでいたのかと、私は防衛庁長官をやったことがありましたからそういうふうに自分ではっと感じたところであります。しかし、その真相はわかりません。  しかし、いずれにせよ、オホーツク海というところが世界の人やわれわれが考えている以上にソ連唯一の内海であって、そうして新しい戦略核や核兵器の変化、潜水艦の変化に応じて重大な海になりつつあるということは事実でありまして、その南の方におる北海道やわれわれ日本というものも、このオホーツク海というものの存在に、われわれはあそこで初めて高官の言を聞いて認識を新たにしたというのが私の感想であります。
  324. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 いま総理の御答弁を聞いていますと、われわれは何といってもソ連の脅威をまざまざと感じざるを得ない。そこで、ソ連による北方領土における軍事基地の強化ですね。それから特に最新鋭戦闘爆撃機のミグ23あるいはまたバックファイアとか、中距離ミサイルのSS20の極東における軍備増強、今回の事件によるわが国周辺の戦略基地の現出ですね。私はいまこの防衛白書で言う潜在的脅威の増大ではなくして、脅威の顕在化がこれではっきりしたと思うんです。これに対して防衛庁長官の御感想はどうですか。
  325. 谷川和穗

    国務大臣(谷川和穗君) 最初に申し上げさしていただきたいと思いますが、北海道とサハリン、樺太の距離は六十キロと言われております。六十キロということは、東京から申しますと大船の少し先、鎌倉ぐらいという感じでございまして、いかにも近いところでございます。つまり、日本の国が非常に地理的にこういう地域に位置しているということだと思います。  それからスクランブルはさっき九百回と申し上げましたが、ということは一日に二ないし三回はスクランブルに上がると、こういうことだということでございます。なお、SS20とかバックファイア、これにつきましては、われわれは防衛白書でも明らかにさしていただきましたように、現在すでにこの時点で極東においてはSS20が百八基、それからバックファイアは七十機以上の配備がもうすでに行われておりまするし、それからわが国の古来の領土でありまする北方領土に対しましては一個師団程度の地上軍部隊の再配備が行われておりまするし、先般防衛庁で報告さしていただきましたように、ミグ23の飛来、こういったものに示されますように、一連の特に近年のソビエトロシアの極東におきまする軍事力の強化、これはわが国にとりましては潜在的脅威であると存じております。  ただ、私どもは、脅威というものはこれを顕在化させる意思、何らかの形で日本に侵攻をするとかいう何かそういうような国家意思が働かない限り、潜在的な脅威というものがそのまま脅威そのものになるとは思ってはおりません。特に日米安保条約をしっかりこれを作動せしめておる限りにおきましては、必ずしも直ちにこの潜在的脅威が顕在化するというふうには私どもは判断はいたしておりませんが、ただいま申し上げましたように、明らかに潜在的脅威というものの増大はここ数年まことに著しいということは言い得ると思っております。
  326. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 ところで、今日の世界の平和というものは米ソの二大国を中心とした核の均衡によってどうにか保たれておるわけですね。いわば世界の防衛は核防衛、核時代と言われておる。わが国は平和憲法のもと非核三原則を守り、専守防衛に徹し、みずからの防衛力の整備を図ってきた。一方では、核時代において通常兵器による整備では意味がないという御意見があるわけですね。  そこで、戦後世界各国では百回近い局地戦争が始まっておる。それから領土紛争によって戦争が始まっておる。それらの紛争、戦闘、戦争形態はどうであったか。いずれも通常兵器による武力衝突であるかという思いをするわけでありますが、こういう点をどういうふうに防衛庁長官は考えておるのか、解釈をするか。これとあわせて、核時代にあってもわが国の防衛力の整備は通常兵器によるものでも十分意味がある理由を説明してもらいたい。
  327. 谷川和穗

    国務大臣(谷川和穗君) まず申し上げさしていただきますが、われわれの属しておりまする西側の平和の基本戦略は抑止の戦略でございます。抑止の戦略は常にその信頼性が確保されておりませんと戦略としては成り立ちません。  それから、ここから先は私個人の判断でございますが、私は平和というものは常にこれを維持せしめていく努力を持ち続けなければいかぬ、平和の欠落の状態が紛争という形になってあらわれてくるのであって、戦前のような宣戦布告型戦争というのはないんだというふうは判断をいたしておりますが、この西側の抑止力が有効に機能しておったことによって大きな戦争は戦後ございません。特に、核の抑止力というものは確かに大型の戦争を引き起こしておりません。したがって、通常兵力による紛争においても、これが大型化してまいりますと、それはそのまま核が使われてくるところまでいくということがありまして、おのずから通常兵器の戦いも大型化はいたしておりません。それは過去におきまする幾つかの事例で明らかでございます。  ところが、不幸なことに、世界のほとんどもうすべての人類がみんな平和に生きていきたいと思いながらも、やっぱり実際にはいま初村先生の御指摘のように、中には領土問題を抱えているところもありますし、中には宗教問題を抱えたところもありますし、中には民族的な問題を抱えたところをありますし、中にはイデオロギッシュなイデオロギーを抱えたところもあります。いろいろの各種の紛争が起こっていることは事実でございます。これをわれわれは局地的軍事紛争とこう呼んでおるわけでございますが、遺憾ながら御指摘のとおりでございます。  それから最後にヨーロッパの問題を一つだけ触れさせていただきますと、ヨーロッパにおいて一九七五年以降、昭和の五十年代に入りまして、思いもかけない急速なSS20という兵器の展開が起こりました。そこでヨーロッパにおいて核の抑止の問題についてある種の動揺が起こりまして、そして七九年十二月十二日にはNATO所属の外相並びに国防大臣の会合におきまして有名な二重決定なるものをいたしました。  そして同時に、その年の暮れに、非常な不幸なことでございますが、アフガニスタン侵攻というのが起こったがために、核の抑止はこのアフガニスタン侵攻を抑止し得なかったということも含めまして、それから二年ばかりの間にヨーロッパの国々はおいては核を二重決定において前へ出していくと同時に、通常兵力を大急ぎ整備しねばなるまいと、それを整備することによって抑止の信頼性をさらに確保し得ると、こういう形で各国非常に厳しい財政事情の中でありましたが、それぞれ通常兵力の整備に走っておるというのが現況であろうかと存じます。  私どもはそういう大きな抑止の中におる限りにおいて、日本の国の平和を維持するために抑止の信頼性を確保していくことは今後のわれわれの努力次第でなし得ることだと、こう考えて防衛力の整備の計画を立てて、その計画に懸命に目下努力をしておる、こういうことでございます。
  328. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 そこで、総理にお伺いするわけでありますが、長官も言われたとおり、私どもは米国から言われたからこれに従うというのではなくして、日米安保体制があって初めてわが国の平和がある、日米は共同、同盟関係にあるということを十分踏まえた上で、わが国の防衛はいかにあるべきかを考えて自主的に決めるべきであるのは当然である。しかしながら、われわれは今回のソ連の民間機撃墜事件を顧みて、ソ連の世界戦略を冷静に見なければならない。そして厳しく受けとめないとこれは大変なことになると思わざるを得ない。われわれはいまこそ西側の一員として、世界の平和と繁栄のために日米安保条約を堅持し、みずからの防衛力を一層整備する必要があると思います。平和というものは、あるいは繁栄というものは、座してみずから成るものではありません。また、相応の国民負担がなくて国の安全というものはない。  こういう立場に立って、総理はわが国の防衛政策についていかに考えておられるのか、その認識をお伺いしたい。そして、来年度の防衛予算についての所見を賜りたいと思います。
  329. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) よく、これだけの大きな核ができた時代だから、核兵器を持たなければ防衛にならぬじゃないか、だから核兵器を持つ意思がないのなら、防衛ができないのだから防衛なんかやめてしまって非武装中立がいいと、そういう論理が一部にあるわけです。しかし、この論理が間違っているというのは、たとえばフォークランド海戦を見ればわかるわけです。  この前、アルゼンチンとイギリスがフォークランド島の争奪戦をやりまして、あそこで海戦が行われましたが、核兵器は両方とも使っていない。そして、ある一定限度以上はその戦争も延びない、そういう形でどの国も自制をして、イギリスとアルゼンチンだけの問題に限局したわけです。この実相を見ますと、やはり核兵器による衝突というものは人類の最大の悲劇であるから起こさせないように両方が抑止しておる。だからアメリカとソ連の間でもホットラインがあって、万が一にも間違ってボタンを押すまいぞというので直通電話で知らせ合って、そういうことを回避しているだけの配慮をしているわけです。  それでいまINFとかSTARTとかで、戦略核兵器あるいは中距離核兵器の問題については、お互いこれを自粛し、減らしていく方向で話をしようと。このラインは大韓航空機のあの不幸な事件が起きても切ってはいない。アメリカも切ってもいないし、ソ連も切っていない。これはやはり超大国が核兵器というものがいかに恐ろしいものであるかということを知っていて、自制して起こさせないという意欲が働いているからなのであって、私はこれが人類の良心だろうと思うのです。レーガンさんにしても、アンドロポフさんにしても、核兵器を支配できる人間というのは恐れおののいていると私は思いますよ。それが人間の姿なんであって、その良心をますます強めて、減らしていって、そして核兵器には手をつけない、核戦争はないと、そういうところを確実に保障する方向に持っていくのが私たちの責任であると思っています。  そういう関係からすれば、通常兵器、通常武装というものは必要なのであります。しかも、最近は通常武装というものが、精密誘導兵器等ができてきましてきわめて正確に当たるようになってきている。ベトナム戦争以来、PGMというのが発達してまいりまして、この通常兵器の精度の向上というようなものと、それからミサイルとの結合、非核の核兵器でない通常兵器の性能というものは非常に上がってきている。こういう状態を見ますと、われわれは、阻止力、戦争を起こさせない力についてはアメリカの核兵力に依存はしつつ、しかもわが国の列島に火の粉が及び、戦争に巻き込まれないようにしていくというためには、やはり抑止力を日本は日本なりに持って、そして外国が手をかけないというだけの保障をしておく、それで私は日本は大丈夫である、十分であると、そう思っておるわけです。  しかし、最近の情勢を見ますと、われわれの周辺を見れば、四島のあのちっぽけな島に実は一個師団の軍事力やミグ23が来ているとはよもや思わないし、なぜあんなちっぽけな四つの島に一個師団を置く必要があるんだろうかと普通ならば考えますね。しかし、それが現実になっておる。何のためだろうか。あるいは最近は、樺太というのはわれわれのいるときは平和な島でありましたが、ところが最近はあそこにミグ23があるとか非常に物騒な装備の重要な基地になっておるということも、この間の大韓航空機の問題でわかりました。こういう情勢を見るというと、われわれが知らない、うかうかしているうちに、相当な装備や軍事力というものがわれわれの周辺でできつつあるということがわかってきておると思うんです。  しかし、われわれは、だからといって、それに見合うような力を早速自分でつくり上げるというようなそういう愚なことをやるのではありません。冷静な見地に立って、そしてわれわれは列島防衛に必要な範囲だけの抑止力を持てばいいと、そういう考えで、周りの国と立場が違うし、また国是も違いますから、わが国はわが国独自の憲法にのっとる国是を持って、身分相応の必要な範囲のものを整えていく、そういう考えで十分である。アメリカと提携して核の抑止力についてはアメリカに依存しているが、列島防衛については日本人が責任を持たなければならぬ。足りないところはアメリカの安保条約による救援を求めて、手をかけさせないようにふだんからしている、これが防衛の戦略であると私は思っております。  そういう考えに立ちまして、やっぱり必要なものは整備していかなければいけません。中途半端ないいかげんな見せかけの防衛力だけつくっておくのなら、ない方がましだと私は思います。やっぱりいざというときには、有効で、相手に手をかけさせないというに値するものだけはやはり持ってなければ、これはいけないと私は思います。といって、いまわれわれは一%という枠を持っておりますが、私はそんなものを全く無視して勝手に何でもいいというようなむちゃなことはいたしません。やはり国民世論、あるいはさっき申し上げましたように、穏健中正な政策というのが自民党の政策なんでありますから、妥当な穏健中正な政策を維持して、国民の共感を求め賛成を求めつつ進んでいきたい、こう考えておるわけであります。
  330. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 防衛庁長官にもう一つだけお伺いしますが、防衛庁が八月に発表した防衛白書で海峡コントロールというのに触れておるわけです。海峡コントロール。そのような観点を踏まえて、この海峡コントロールを対馬海峡に限定して考えた場合に、対馬という島は東西両水道の中間にあって非常に有意義な価値のある島なんですね、両方ににらみがきけるんですから。それだけ敵側にとっても高い価値がある島なんです。ところが、ここには自衛隊が七百おるんです。この七百の自衛隊で対馬が守られるだろうかと私は思う。西の果ての国境なんですね。だから、対馬の島民は再々防衛庁に増員を要求しておる。だから、これに対してどういうお考えがあるか、お聞きしたい。
  331. 谷川和穗

    国務大臣(谷川和穗君) 私どもも地理的な条件から対馬は要衝である、非常に大事な場所であると考えておりまして、陸上自衛隊については警備隊を、それから海上自衛隊にありましては海峡監視隊を、さらに航空自衛隊におきましては第十九警戒群を配置してレーダーサイトを置いておるわけでございます。ただ、その対馬の警備隊の編成でございますが、確かに隊員の数は先生の御指摘のような数字でございますが、この編成につきましては特別に意を用いておりまして、実はほかの警備隊と違った組織にしてございます。すなわち、いついかなる状態であろうとも増員をした場合に直ちに現在おる警備隊の指揮命令系統をもって対処できるような独特の組織にいたしてございます。この問題につきまして少しく詳しく事務当局から説明をいたさせますが、そういう形の警備隊を置いてあるわけでございます。
  332. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 事務当局の説明は省きます。  次に、外交に移ります。総理が世界外交を積極的に展開されたということは、冒頭に私は賛意を表したわけでありますが、ここで平和と軍縮問題を取り上げてみたいと思います。  今日、世界の平和が核兵器を含む軍事力に基づく抑止によってこれが維持されていることは厳しい現実であります。さきのサミットにおいて西側が結束して平和と軍縮について真剣な討議が行われたことを私は多といたします。その場においてINF交渉がグローバルに行われたことは、これはきわめて有意義であると私は思います。ここで改めて、総理はいかなる決意でサミット政治討議に臨まれたのか、またサミット政治声明をどのように評価しているのか、お伺いしてみたいと思います。
  333. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) その点は日本外交の非常に重要な点でございまして、その点について私の考えをこの機会に申し上げてみたいと思うのでございます。  INF、つまりソ連の中距離弾道弾SS20というものがヨーロッパに約二百五十ばかり展開しておる、アジアに百八展開しておる、これをどうするかという問題で、先ほどお話がありましたように、ヨーロッパの国々は思いがけなくその強力な二百五十のソ連の中距離弾道弾が展開したものですから、国防上非常に不安を感じて、そして一九七九年でありましたか、いま防衛庁長官が申されましたときに集まって、ドイツの社会民主党のシュミット首相が主導して、アメリカのパーシングIIを展開してもらおうと、言い出したのは社会民主党のシュミットさんであります。ことしの十二月までに展開してもらおうと、もしソ連がその間に話し合いに応じて、そしてSS20を減らすとか、なくすというのならば、このアメリカの展開も遠慮してもらい、あるいは減らすと、相談しよう、ソ連とも協議しよう。ゼロにするのが目的だけれども、ソ連とそういう協議をしようと。しかし、ソ連が応じなければ、この十二月末までにアメリカのパーシングIIと、それから巡航ミサイルを展開するということを決定したわけですね。その期限がこの十二月にいま来つつあるわけです。  そういうときですから、ぜひともソ連も話し合いに応じて、そしてこのむだな核兵器を減らす、終局的にはゼロにする、そういう話し合いに応じてもらうことが軍縮であり、平和の目的に達する。大事なチャンスはこのサミットであると私は思いまして、そしてサミットにおきましても積極的に、レーガンさんとアンドロポフさんが相談して、この大事なときだから片っ方はパーシングIIをやめる、片っ方はSS20を撤去する、廃止する、それを決めさせなさい。もし全面的にやめるのが無理ならば同じ数だけにしようじゃないかと、そういうふうにして、いわゆるレベルダウン、減らそうと、そういう話し合いをやらせよう。やらせるためには、自由世界のサミットに集まった国が一致してレーガンさんに、それでやるからあなたはがんばってアンドロポフと会談しなさいと、そういうことを言うことが平和であり軍縮であると、それをやったわけです。  その際に、ソ連がヨーロッパでやめた分をアジアに持ってきてしまったというんでは、中国や日本やフィリピンやアジアの国が今度はおっかなくてしようがない。それじゃ解決にならぬから、アジアや日本の犠牲でそういう解決をしてはならぬ、それを一札とっておこうと、そう思いまして、今度声明に入れてもらったわけです。入れてもらったが、しかし向こうのヨーロッパの国々にそれを入れてもらうためには、われわれが一緒になってチームをつくって、レーガンさんに足場をつくってやる仲間に入らなければ日本の言い分は通らないです。そういう意味でその仲間に入って日本の言い分を通した。いままでややもすると日本はそういう点には離れておって入らない。入らないから、防衛上や軍縮の問題でも向こうの連中だけで決まっておる。こんな危険なことはない状態にいまやなってきたわけです。特に、SS20という問題がアジアの犠牲で解決されたら、日本にとっては子々孫々苦しむ問題になりますから、どうしてもそれを一文入れようというのでやったわけです。  それで、ミッテランさんが実は難渋を示した、そのとき、正直に申し上げると。というのは、ミッテランさんは、北大西洋同盟条約の軍事機構にフランスは入ってないから、われわれは北大西洋同盟条約の大臣が決めたことに服従せぬと、そう言ったわけです。しかし、私はミッテランさんに話をしまして、われわれだって北大西洋同盟条約に入っていませんよ。われわれはあなたの国よりももっと平和的な、非核三原則を持って、平和憲法を持っている国です。あなたのフランスは核兵器を持っておる。われわれの方がもっと平和志向の国なんだ。にもかかわらず、この軍縮をやらせ、アンドロポフさんとレーガンさんと会談させて核兵器をやめさせるというためには、ここで憲法の範囲内でお互いがチームワークを組まなきゃできないんだから、われわれだってそうするんだからあなたもそうしなさいよとミッテランさんに言ったわけです。私はこれはかなり効いたと思います。アジアのいままでかやの外にいて入ってこない日本がそういうことまでやるということをミッテランさんは知ったわけですから。それで話がまとまったわけです。そういういきさつです。  それで、いまや核兵器の問題や軍縮の問題というのは一地方だけで片づく問題じゃない、核兵器というのはもう地球上どこへでも飛んでくる兵器になってきたからです。だから、今後もやはり軍縮や平和をやっていこうというためには、まず第一に自由世界で結束して、そして軍縮や平和の方向を決めて、そして結束してソ連と談判をする。そのためには乱れない、分裂しない、それが大事だと、そう思っているわけです。そういう方向に乗り出してやったのがこの間のサミットでございまして、後でル・マタンとかフランスの新聞を読んでみますというと、ミッテランさんが記者会見のときに、日本がこういう立場に出てきたことは非常に顕著なことである、自分は非常にそれを歓迎する、北大西洋同盟条約に入ってないフランスと日本が平和や軍縮のために将来こういうことで話し合いするということは非常に意義があることだということがル・マタン及びル・モンドを読んだら出ておりました。  私は、フランスがそういうふうに日本の立場を評価したということは非常におもしろいことでもあり、将来、平和や軍縮のためにはフランスとも十分話し合えるだろう。遠慮する必要はない、われわれは軍備拡張のためにやっているのじゃない、平和と核兵器の軍縮をやるためにそういうふうにチームワークを組んでいるわけでありますから。そこまで乗り出してきたということは、日本の外交が最近、いままでよりも一歩前進してきたと言われてもいいと思うのです。そういう正しい方向については国民の皆さんのお考えもよく承りながら、慎重に、かつ、やるときにはやるようにしていきたいと思っているわけでございます。
  334. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 いま総理の御答弁を聞いておりますと、非常に欧州のみならず、わが国にとって重大なこれは関心事であると思います。今後INF交渉をめぐってソ連の平和交渉あるいは西側分断政策が一層激しくなると思いますけれども、特に総理においては、機会をつくって、この問題、日本のためにがんばっていただきたいと思います。  次に、核軍縮の問題でありますが、総理は去る八月六日、原爆死没者慰霊式・平和祈念式典に出席のために広島に行かれました。その際に次のような決意を述べておるんですね。わが国は国是たる非核三原則を堅持し、平和国家として核兵器を地球上から廃絶するために全世界の国々とともに協力していかなければならない、こういう決意を述べられております。今後総理は、軍縮、なかんずく現下の緊急の課題である核軍縮に向けどのように取り組んでいかれるのか、この際お伺いしたい。  あわせて、来年の長崎式典に御出席されますかどうか、お伺いしたい。
  335. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) まず、来年の長崎の式典にはぜひ出席さしていただきたいと思っております。長崎の市長さんから御招待でもいただけば、最大限日程を都合をつけて行かしていただきたいと思っております。  それから核軍縮という問題は、これは軍縮の本命であります。現代の軍縮と言えばもう核軍縮が本命であり、その中心であると思っております。それを推進するためには、お互いが安心して減らせる、なくすという態勢をつくらなければできない。政治の世界というのは、政治家が国民の皆さんに直接生命財産について現実的、具体的に保障して安心していただける措置を講じなければ政治にならぬ。もう理念を言うだけでは政治にはならない、ヒトラーでも平和平和と言ったんですから。だから、平和という点については、ルーズベルトだってヒトラーだって同じなんです、実際は。人類の平和のために言ったんですから。だから、理念というのはみんな同じように言うんです。それをどういうふうに実現していくかという具体的方法が民主主義と独裁主義で違ってくるわけです。われわれは民主主義に属しておりまして、そういう面からはみんなが安心できる、そして多数の人間がこれならばいいと思う方法で一歩一歩築き上げていくという方法だと思います。  軍縮については何かと言えば、お互いが現場を見て安心し得るような措置を論じよう。そうしたら安心でしょう。見もしないで、偵察衛星やスパイ衛星ばかり使っておるというのでは余りにも陰険ですね。どうせ軍縮をやるというのなら、両方の代表やら第三国が行って、なるほどこうかと、そういうものを見させるという方法。そういう方法に前進していくというのが現実の軍縮を進める道で、アメリカもソ連もそれを承知しなきゃいかぬ。それを承知させるのは全人類の大きな努力である。日本はそういう先頭に立ってもいいと思うんですね。ともかく見させないと。  原子力の平和利用については、原子炉について査察が行われている。国際原子力機関が査察をして、軍事利用に使っているか使っていないか検査に来ているわけです。日本の東電や関西電力の原子力発電所はそれで査察を受けているわけです。平和利用についてそこまで来ているのですから、軍事利用についてもそのようにお互いが約束を守っているかという点について、国際機関でもいいから査察できるように進めるというのが具体的軍縮である。そういう点について日本の国会の皆さんが一致して努力され、われわれも努力の仲間に入れていただけばありがたいと思うのであります。
  336. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 安倍外務大臣、あなたはこの八月に東欧、中東五カ国を訪問されました。現在、戦争を継続中のイラン、イラク、共産圏のルーマニア、ブルガリア、そして現職閣僚として初めてトルコを訪問されました。特に、イラン・イラク戦争の早期かつ平和的解決に向けて政治対話を行ったことは、私はわが国外交の幅と奥行きを広める上で非常に有意義であったと思う。  外務大臣は、今回の歴訪の成果をどう踏まえて今後の日本外交にこれを生かす考えなのか。また、去る十八日以来、レバノン、シリアの両軍が直接衝突して、戦闘が拡大の傾向にありますが、これをどう受けとめていらっしゃるかお答え願いたい。
  337. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 私はかねてからこのイラン・イラクの戦争状況につきまして非常に関心を持ち、憂慮しておったわけでございます。戦争が始まりましてすでに三年になるわけでございますが、その間いろいろと停戦の調停であるとか、あるいはまたあっせんが続いたわけですが、全部失敗をしたわけでございます。こういう状況が続いて、もしこの戦闘がいまの国境からさらに拡大をして、いわゆるガルフといいますか、あのアラビア湾にまで戦火が波及する。たとえばイランの領土であるところのカーグ島が壊滅をする、それに対して、イランが言っているように、報復としてガルフを封鎖する、こういうことになりましたら、これはもう二国間の戦争だけでは済まない、戦火はさらに拡大をしていくわけでありますし、世界に対しても甚大な影響が出てくる。  日本もイラン、イラクから石油を輸入しておるわけでございますが、ガルフを通してほとんどの石油が中東から輸出されておるわけですが、これが封鎖されるということになりましたら、第一次、第二次の石油ショックをわれわれは深刻に経験したのですが、さらに第三次の石油ショックといった大変な事態が起こりかねない、そういう非常な危険をはらんでおる戦争である、私はこういうふうに見ておったわけでございます。  そういう中で、日本は幸いにしてイランとイラクとは非常に安定した関係にあります。経済関係も非常に親密でありますし、あるいはまた政治、外交の面においても非常に友好関係にあるわけでありまして、これはもう西側では両国とつき合っているのは日本だけだと、こういうことで、この際、先ほど中曽根総理もお話しになりましたように、これからの日本の外交というのは、ただ国際経済面において貢献するというだけじゃなくて、国際政治面、特に平和を求めるために日本がやはり積極的な貢献をしていくという道を開くことが大切じゃないか。  いまお話しのように、いわゆる外交の幅を広げる、これがこれからの日本の新しい外交ではないか、こういうふうに考えまして、日本とイラン、あるいはイラクの関係をさらに安定させていくと同時に、やはり日本が積極的に両国に対して平和を説いてくるということも非常に重要である、日本の役割りである、こういうふうに考えまして、実はイラン、イラクを訪問いたしまして、両国の指導者に対して、率直に平和の回復を強く要請をしたわけでございます。  しかし、私が要求したからといって、ここで戦争が終わるわけではありません。しかし私は、両国の指導者と会いまして戦争の早期解決を主張する中で、何か一つの手ごたえというものを得たような感じがいたします。両国ともやはり平和を望んでおりますし、また経済の面においても、三年も戦争をやっておりますから、やはり経済も相当悪くなってきておるわけでございます。したがって、私はそういう中で、これはやはり日本が、調停とか仲介ということは困難であるとしても、戦争の拡大を防ぐ、あるいはまた平和への環境づくりをするという上においては何らかの役割りができるのじゃないか、こういうふうに感じました。  そういう中で、両国の外相ともこれからやはり政治、外交面についてもパイプを持ってしっかり話し合っていこうということで完全に合意をいたしたわけでありまして、実は今回私が出張いたします国連総会におきましても、両国の外務大臣と個別的に会談をする予定にいたしておるわけでございます。私は、こうした日本のこれからの平和外交への積極的な動き、活動というものをやはりさらに進めていかなきゃならぬ。特に中東に対しては、日本が手が汚れていないということで、中東の諸国は非常に日本に対する信頼感というものを寄せておりますから、そうした立場での日本の役割りというのはあるのじゃないか、私はこういうふうに思うわけです。  いまレバノンにおきましても、イスラエルの軍隊が部分撤退したこの真空の状況をめぐりまして、いわゆるレバノンの中の宗派間の軍隊が激突をしておる。こういう状況にありますし、さらにレバノンの政府もこれに介入しておりますし、あるいはまた他国籍軍も巻き込まれておる、またシリアの軍隊もこれに介入をしておるということで、かつてレバノンは非常に平和な国でありましたし、あるいはまたベイルートは中東のパリと言われるほど非常に華やかに栄えた都市でありますが、いまやもう惨たんたる状況になっておるわけであります。  そうした非常に混迷をしておるレバノンが、一日も早くレバノン政府によって自主独立の安定した平和な政権が、国が生まれ変わるようにわれわれとしては念願をしておりますし、外国の軍隊、いまシリアの軍隊等も進駐しておるわけであります。あるいはイスラエルの軍隊も入っておりますが、外国の軍隊の一日も早い撤退を念願しておりますし、日本もこのレバノンの平和回復に向かって、いま申し上げましたような立場で積極的にひとつこれから努力をしていかなければならない、こういうふうに考えて、ここに大きな外交の重点を置いて努力を重ねてまいりたいと、こういうふうに思っております。
  338. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 この秋にはコール西ドイツ首相、レーガン米大統領、胡耀邦中国共産党総書記などの賓客が予定されております。われわれはこれら各位のわが国訪問を心から歓迎いたすものであり、忌憚のない意見交換を通じて友好親善関係の一層の増進を期待しているものであります。  そこで、レーガン大統領との会談についてお伺いしたいと思います。  申すまでもなく、わが国外交の基軸は、日米安保体制を基盤とする日米友好協力関係の確立であります。総理も就任以来この日米関係を重視してこられて、現在両国は概して良好の状況にあります。特に総理と大統領はロン、ヤスの親しい友人関係にありますが、現在、日米関係には農産物の自由化の問題、産業政策、自動車輸出などの問題を抱えておりますが、総理はこれらの課題にどう対処され、会談に臨むのか、御所見を賜りたい。
  339. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 十一月にはコール西独首相、レーガン米大統領、胡耀邦中国総書記の大切なお客さんがお見えになるものでございますから、熱烈に歓迎を申し上げ、有益な会談をいたしたいと念願しており、国民の皆様や国会の皆様方にも御協力をお願い申し上げたいと思う次第でございます。  特に、アメリカとの関係におきましては、安全保障条約を結んでおる日本の大事な盟邦でございますし、経済関係においても両方がそれで生き合っているという非常に大事な連帯関係にある国でございますので、お互いに真心を込めて成果のあるものにいたしたいと思っております。  日米関係には自動車の問題とかあるいは農業の問題とかいろんな問題が、摩擦がございますけれども、しかし大局的に見て、この世界の重大な時期に、たとえばGNPでアメリカが世界の二割二分ぐらい持っておる、日本が約一割強持っておる、両方合わせると三割二、三分になります。世界の総生産の三割二、三分をアメリカと日本が合わせれば持っているという、いわば株主で言えば大株主に当たるそういう二つの国が太平洋を隔てて緊密に提携していくということは、世界の平和や繁栄や、あるいは世界の運命に非常に影響を持ってくる関係にあると私思うのであります。そういう点から、非常に大局的な見地から、世界やあるいは人類の運命をお互いが大事にし合うという点で助け合い、その両方の結合を意味あらしめ、成果あらしめる方向に持っていくことが両国の政治首脳の責任であると考えております。そういう意味の大局的な話し合いをしてまいりたいと考えておるわけであります。
  340. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 私は、農産物問題についてさらに突っ込んでお伺いしておきたい。  去る十四、十五の両日、農産物市場開放をめぐって日米交渉が再開されたわけであります。米側は、牛肉、オレンジ、柑橘果樹についての来年度以降の具体的な輸入枠の拡大を提案してきました。しかし、米国の新提案は、自由化を求めるという基本姿勢を崩しておりません。したがって、交渉は結局平行線に終始して問題を今後に持ち越しております。  わが国農業を自国の立場から守ることはいけないことでしょうか。日本の農民は米国の強い自由化要求の態度を身勝手なものだと強く受けとめて、全国大会等で反対をしておる。私はもっともだと思うんです。また消費者団体も、わが国の食糧安全保障の観点から、農産物のこれ以上の自由化には反対であるという立場をとっていらっしゃる。わが国農政の基本を揺るがすことのないよう毅然とした態度で今後の交渉に当たるべきであると私は思う。  そこで、その考え方をまず農水大臣、それから総理にお伺いしたいと思います。
  341. 金子岩三

    国務大臣(金子岩三君) お答えいたします。  まず、初村さんの御意見には全く同感でございます。私は就任以来、自由化はもちろん、枠の拡大も必要はないと、こういうことをずっと主張し続けてまいっております。ただ、中曽根総理が一月に訪米した折に、この問題の取り扱いについて、これは専門家でひとつ検討させよう、それには自由化などは全く考えられないことだけれども、一応検討させようと、こういうことを言って別れていらっしゃいますので、そのレーガンさんが日本にお見えになるとするならば、これは国際儀礼上、懸案として残した問題を積極的にひとつ取り扱うということは、私は政治家としての当然の配慮だと思うんです。そういうことで現在取り組んで交渉を続け中でございます。  なお、十四、十五日の交渉の内容は、大体自由化はわきに置いて、枠のことを言っておるようでございます。したがって、決して自由化をアメリカをあきらめておるというような見方はいたしておりません。ただ、わが国が貿易立国で今日の経済大国をなし得たということは、やはり私どもは念頭に置かなければならない、特に私は中曽根内閣の国務大臣でございますから。ただ、農村を守ることは人後に落ちません。それは日本の農業が自給率をいかにして高めて、食糧による安全を保障するかということが基本姿勢でございますから、その食糧の自給率を高めることからいっても、足腰の強い農業を育成していかなければなりません。  したがって、いまのアメリカとの話し合いの中で、もし日本農業にいささかでも打撃を与え、影響を及ぼすようなことは、これは私は取り上げるべきではないと思います。ただ、大して影響がない、お互い理解の上に立って円満な話がつくとするならば、これはやはり話をつけることが国際儀礼上、あるいは先ほどから初村さんも主張されております、アメリカは日本外交の基軸でございますから、できるだけのことをして、ひとつ政治家としての配慮をいたしたい、このように考えております。
  342. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 一月訪米の際に、私はレーガン大統領に、お互い国家をしょっておる間柄であって、お互いできることとできないことがあると、そういうことを言いまして、牛肉、オレンジの自由化ということはできないことだ、むずかしいことなんだ、したがってこの問題は専門家同士で静かに話し合いをやらせよう、そして話し合いがつけばそれで結構じゃないか、しかし自由化はできませんよと、そういう話を私申し上げてきまして、自来静かな話し合いをやっていただいておるわけであります。  だんだんもう時期が迫ってまいりましたが、やはり政治家の基本的な態度として、日本の国益を守るのが日本の政治家であり、アメリカの国益を守るのがアメリカの政治家ですから、おのおのが国益を守りつつ、しかも大局的見地に立って、どの程度で妥協できるか、妥協できれば手を握る、できなければ話はつかぬ、そういう形になるんだろうと、そういう精神をもっていま両方の代表者が話し合いを進めておる。  農業の問題というのは、普通のロボットで物をつくるというような産業と違いまして、非常に社会生活に関係する大きな問題でもある。私は、農業というのは生命産業であって、普通の機械や何かをつくる産業とは違うんだと、農村というものもこれは民族の苗場であって非常に大事な精神的要素を持っておるんだと、そういうこともかねがね言っておる人間でございますから、人一倍農村の重要な意義あるいは農業の意義というものを自覚している人間であります。金子農水大臣も同じであります。  そういう意味におきまして、日本の守るべきところは守るけれども、しかし大局に立って、この程度ならばがまんしていただくという線、向こうにもそれを要請するし、われわれの方もそういう話し合いがつきそうなときには妥協もする、そういう立場に立ってこの問題を段階的に解決していく、そういう立場でいきたいと思っています。
  343. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 いま農水大臣と総理の御答弁をいただいたのでありますが、どうか日本の農民を守ってもらいたいと思います。  次に、行革に移ります。  総理は所信表明で、現在のわが国をめぐるもろもろの問題は、避けて通れない戦後政治の歴史的ハードルだと位置づけ、これを乗り切るために静かな改革のたゆみない推進が必要だと強調されました。この静かな改革の重要課題は行政改革の断行にあるとし、行革関連諸法案の成立に強い意欲を示されております。申すまでもなく、今次国会の行革諸法案は臨調答申実現の第一歩でありまして、今後さらに新行革大綱に盛られた各般の措置を講じていかなければなりません。そうでなければ総理の言う、二十一世紀への新たな発展に向けて、活力ある社会、経済の構築は図れない、こう申されておりますが、改めて総理の決意を賜りたいと思います。
  344. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) まさに初村さんがおっしゃった気持ちで私もおります。中曽根内閣が成立した最大の理由の一つは、行革断行にあると、そう私考えておりまして、行革につきましては全責任を持って挺身していくつもりでおります。  その一環として、今回七法案の御審議をお願いしておるものでございますが、必ずしも万全ではございません。しかし、現在の環境のもとにできる最大限のことをやっておると思っております。たとえば総務庁設置法案のごときは、臨調答申よりもさらに強いことをやっているわけです。臨調答申の場合は、行管庁と総理府の人事局を統合する、そして総合管理庁を設置するという案が臨調答申でございましたが、今度は行政管理庁と総理府と一緒にしてしまう、人事局だけじゃない、全部一緒にしてしまおうと、そして人間を浮かし、局を浮かし、そして国務大臣も一人浮かしていく、そういう考えで、副長官は二人やめる、そういう効果を持つわけで、これをやはり行革の端緒にしていく。それで、政府がまず自分で痛みを受けなければ地方にもお願いするわけにいかぬと、そういう意味で、率先して臨調答申で言われている以上のことをやろうと、そういう意味で、非常な決心でこの法案をまとめていただいたわけなのでございます。  いろいろ野党の側から見ればまだ不十分な点があるかもしれませんが、与党になってみれば、ここまでやったというのは相当なものだとおわかりになっていただけるだろうと思います。そういうことで御審議をお願いいたしており、またこの次には電電公社、専売公社、あるいは年金の大統合問題、あるいはさらに国鉄の大改革問題、あるいは地方支分部局の整理の問題、あるいは長年問題になっておる地方事務官制度の解決、こういう大きな問題が続々いま準備されつつあるのでありまして、その一番大事な第一発としてお考え願って、ぜひ早期に御成立をお願い申し上げる次第なのでございます。
  345. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 今国会に提案されました行革関連法案について総理は、将来に向かって国民の皆様に希望と生きがいを保障する一里塚だというような意味のせんだっての説明があったわけであります。  確かに総理府と行政管理庁を統合するということは、省庁間の統合というものは戦後初めてなんですね。そして、効率的で簡素な政府づくりだと評価はされるわけであります。ただ、今回の諸法案がそれぞれの画期的なものでなくて、単なる機構いじりだけではないか、あるいはまた人件費の節減合理化などに直結するものではないなどの問題が実際において指摘されておる。また、他の諸法案についても単なる看板の塗りかえだけじゃないかという批判がある。胸を張った中曽根行革の実態は進んでいないなどというようないまいろいろと批判がある。この批判はやっぱり私は素直に受けなければいかぬ。言うべきところは言うて、堂々とやってよろしいと思うんだが、総理と行管長官の見解を賜りたい。
  346. 齋藤邦吉

    国務大臣(齋藤邦吉君) 大体ただいま総理からお話もございましたが、行革関連法案のうちで総務庁設置法案、これは政府が提案いたしておりますが、これは土光臨調が提案いたしておりました総合管理庁構想よりももっと幅広い調整機能を与えた役所でございます。御承知のように、総合管理庁は、行政機関の人事、定員、組織、行政監察、そういうものを中心とした総合管理庁をつくったらいいじゃないか、こういう提案でございました。  そこで、そういう総合管理庁という構想を包摂しながら、さらに幅の広い政府全体における行政の調整機能、たとえば総理府で現在所管しておりまする老人対策だとか青少年対策だとか、そういったふうな問題ですでに組織のでき上がっているものも総務庁に移す、あるいは統計というような、非常に大事な仕事でございますが、各省庁の統計の調整、さらに国勢調査、そういうものを含めた統計の中枢機構を整備しよう、こういうわけでございますから、ただいま総理が仰せになりましたように、土光臨調がお述べになりました構想よりもさらに進んだ、ある意味から言えば私は思い切った構想ではないかと思います。しかし、この構想は人員の縮減そのものを直接のねらいにはいたしてございません。したがって、人員の整理とかあるいは機構の整理等につきましては、内閣においてすでに決まった方針に基づいて予算編成の過程において今後それを措置していく、こういう考えでございます。  さらにまた、地方の出先機関の整理でございますが、たとえば地方監察局とか財務部とか公安調査局、こういうものの問題につきましても、そういう役所が所管しておる仕事はできるだけブロック機関の方に集中する、そして出先の職員は要員規模をぐっと圧縮していく、こういうことでございますから、私どもとしては看板の塗りかえなんということは考えておりませんが、いろんな御批判がおありでしょうから、そういう御批判の趣旨を体してりっぱな行革をやっていくと、こういうふうにしていきたいと思っておるわけでございます。
  347. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 齋藤長官が申されたとおりでございます。定員の方は別個に第六次定員削減計画というのを進めておりまして、これは全省庁にわたりまして五年に五%減らしていく、そういうことで毎年やっておるわけです。本年度に当たりましては二千数百人実員を減らす、来年度はもう思い切ってさらに減らしていく、こういうことで別の系統でいま着々進めておるところでございます。  そのほか、今回の国家行政組織法改正が成立いたしますと、各省庁、来年度を目がけて大編成替えをやろうとみんな待ち構えておるのでございます。たとえば運輸省にすれば、いままでのような許認可官庁から総合的交通政策官庁に脱皮すると。あるいは厚生省においても文部省においても、あるいは外務省においても、みんなそれぞれいまの時代にもっと合ったような編成替えを行っていこうと、そういうことで次の大きな改革ができるというそういう大事な国家行政組織法をお願いしておるわけなのでございまして、ぜひ御理解をいただきたいと思う次第であります。
  348. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 次に、地方公務員給与と高額退職金問題についてお伺いしたい。  いま地方公務員の給与と退職金について強い不信と批判が寄せられております。本来、この問題は各地方公共団体における自律機能の発揮によって改善されることを期待するのでありますけれども、かねてからその是正が指摘されながら、国家公務員と比較して著しく高額の給与や退職手当を支給しておる団体が存在することは、地方公共団体に対する不信を招き、地方自治行政の円滑な運営に重大な支障になっているようであります。私は、国家公務員の給与や退職金の水準を著しく上回る地方公共団体に対しては、臨調答申に沿って指導体制の強化を図り、これまで以上の強い姿勢で個別指導を徹底すべきだと思いますが、自治大臣はいかなるお考えでありますか。
  349. 山本幸雄

    国務大臣山本幸雄君) 地方公務員の給与の適正ということは、いまの行政改革あるいは地方財政の現状から見まして大変大切なことだと考えております。地方公務員の生計を維持し、そしてまたやる気を起こしてくれるというものでなければならぬと思いますが、同時に私は、やはり納税者である国民の納得のいく、あるいは批判があるとすれば批判にたえられるだけのものでなければならないと、こう思うのでございまして、そういう意味で地方公務員の給与の適正を期していくということでございます。ただいまのところ、私は、少しずつではあるけれども、だんだんと適正化はしつつあると、それは給与もそうでありますし、いまお話しの退職手当もそうであると思っておりますが、しかしなお相当国家公務員に比して高いのもありますので、逐次さような是正をしていただくように今後とも指導をしてまいりたいと、こう思っておるところであります。
  350. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 やって聞かない地方公共団体に対して私は何かの制裁措置をする必要があると思うんですね。やらなきゃいかぬですよ。この決意のほどを。
  351. 山本幸雄

    国務大臣山本幸雄君) 今後ともそういう指導をしていきたいという考えでおるわけでございますが、これはやはり全体としまして、地方財政という立場から、三千三百に上る地方公共団体がそれぞれの団体として十二分な行政運営ができるようにという観点から、地方交付税なんというようなものも私は一つの調整機能を発揮しておると思います。そういう面で今後とも全体の地方公共団体が十分な地方財政運営ができるようにと、こういう観点で私はこの給与問題も考えていきたいと、こう思うのであります。
  352. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 次に、減税問題に入ります。今期国会の大きな政治的な問題である減税であります。  五十三年以来、所得税の課税最低限が据え置きとなり、六年間減税が行われておりません。この間、所得税の税収は当時と比べると現在約二倍弱、十三兆八千五十億円と言われております。私は、税負担の公平から見ても、また景気浮揚の見地から見ても、この際思い切った減税を早期に断行すべきであると思います。これが国民的要請にこたえる政治の責任ではないでしょうか。減税の規模とか実施時期をお尋ねしましても、総理は政府の税制調査会の結論がなければ言われないということで申しませんけれども、ただお願いしたいことは、減税を行うときは制度の仕組みを経済社会の変化に応じて見直していただきたい。すなわち税体系の是正だけはどうしても必要であると考えますが、大蔵大臣いかがでしょう。
  353. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 減税は、所信表明におきましても、またきょうの午前中の質疑に対する総理のお答えからいたしましても、政府の責任においてこれを行うということを言明しておられるわけであります。時期、規模等についてはいま初村委員も御指摘のとおりでありますが、政府は政府としての手続を進めておるところであります。  そこで、いまいわゆる税率構造等々にも踏み込むべきであると、こういう御意見でありましたが、税制調査会におかれましても、そもそも五十八年度税制に関する答申の際、五十九年度以降とはいえ、課税最低限とか税率構造とかを見直すべきであるという御指摘をいただいておる。それを早めて御審議をいただいておるわけでございますから、そのようなことは税制調査会においても御議論をいただいて適切な御答申がいただけるものではなかろうかというふうに期待をいたしておるわけであります。
  354. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 いま、所得税を一兆円、それから住民税を四千億、合わせて一兆四千億の減税要求が出ているようでありますが、この規模でどれほどの景気浮揚の効果があるか、また内需刺激の効果があるか、政府側の試算を経済企画庁長官にお願いをしたい。
  355. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) いま大蔵大臣もお答えいたしましたように、減税の規模あるいはその具体的な方法等について決定されておりませんので、企画庁といたしましても減税の効果について正しく見積もることはなかなかむずかしいと思います。かつて御案内のように、世界経済調査モデルで、仮に一兆円を減税するならば五十七年度のGNPを前提として幾らぐらいの初年度のGNP引き上げ効果があるかと、こんなことを計算いたしまして、公共投資と並んで国会で質問されて答えたことがございます。そのときの数字をここで仮に申し上げますれば、〇・二ということでございます。一方、公共投資は〇・五でございました。  なお私は、所得税の減税の効果は、これまで御案内のように、名目所得の増加がたとえば一〇%の場合、それ以上に非消費支出でございますところの所得税の増加によって消費が抑制されてきた、この点が排除されることに大きな心理的な効果があると、こういうふうに言われるわけでございますが、私はその点に着目されているのではないかと思っております。
  356. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 いまの説明を聞きますと、そう大したことでもない、この前は〇・二だったということなんです。ただ心理的効果をねらう。それもいろいろあると思うんです。私はいまここでなぜこれを取り上げるかというと、前の経済企画庁長官は、前の国会で、予算委員会でもあるいは商工委員会においてでも、減税の規模を質問されたときに数兆円という言葉を吐いておる、数兆円の必要がある。最近大臣をやめてから話を聞きますと三兆円は最低必要なんだと。この三兆円と、仮に後半の公共事業、二兆五千億ですか、私ども自由民主党からも要請をしていると思う。こういうものを合わせてやれば景気は必ず前向きになるという一つお話があるんですね。私はこれは一つの卓識と思う。この点について総理どう考えますか。
  357. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) 前長官の非常に憶病な現長官に対する大変な激励の言葉と思って、いつも拝聴しているところでございます。  私はその論文もたびたび詳細に拝見いたしましたが、いろいろの前提を置かれていることでございます。大変な卓見でございますが、いろいろな考え方ができるであろう。私は、どの程度の規模がいいかはまだまだ財政上の理由から大蔵大臣もあのようなお気持ちでございますから言えないかと思いますが、ともかくも私は、二つばかりの観点からこんな点を乗り越えなければならない。  一つは、経済効果の問題でございます。いまも申しましたように、財政がこんなに苦しいというような場合に、経済効果がある方法、つまり景気浮揚の効果としては、たとえば所得税の減税が果たして三兆円も出されていいかどうか。それ以上に私は公共投資に回すことができないか。と申しますのは、所得税は所得があり、しかも所得税、住民税を納める能力のある人のゆとりができる問題。しかし一方、公共投資は雇用の機会をつくり所得を引き上げる効果がありといたしますれば、これとのバランスも私は考えて、それだけのゆとりがあるならば、私はゆとりがあるとは思いませんけれども、考えなければならないような気がしてならないわけでございます。  それから第二点といたしまして、やはり財源の問題を考えなければならない。そういたしますと、所得税の減税は、やはり赤字公債、財政再建の最大の目標でございますところの赤字公債の減額の目標と全く正面衝突をするような気がするわけでございます。そんなようなときに、果たしてそれだけの財源がある場合に、所得税の減税だけで足りるかといったような問題。公共投資ならば財源の見つけ方は赤字公債よりも別な方法もあろうとかいうような私はいろいろの考え方ができるかと思いますので、大変な私は激励であり、またアメリカの勇敢な三十兆円のレーガン減税を引いての御見識でございますが、そういった問題点を乗り越えなければなかなか憶病な企画庁長官はそれに直ちに飛びつくわけにはいかないような気がいたしております。
  358. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) やはり財源問題がございますので、私からもお答えいたしておきたいと思います。  まずは、やっぱり減税と景気の問題ということになりますと、異論のあるところは、私どもがこの五十八年度予算を通過さしていただくに当たりまして、心構えとして持っておるのは成長率三・四%、こういうことです。その三・四%というものが、長年高度経済成長になれた日本国民にとっては、それは景気のうちに入らぬという荒っぽい——荒っぽいという表現、大きな議論が一面これは存在すると思うんです。しかし、世界じゅうこういう低成長下にあって、三%台の成長を少なくとも保ち続けてきた日本ということから思うならば、それがあたりまえであるというある種の意識革命を行うべきである、こういう議論がまず前提に存在すると思うのであります。  そういうことから今度考えてまいりますと、財源問題ということになると、やはり赤字公債ということに勢い頼るという傾向になりますと、これはいろんな議論はございますものの、究極的にはやっぱり後世代にツケを回す、いまの減税を後世の納税者に払ってもらう、こういうことになりますので、やはり子や孫のためにいい国を残すということが政治家の使命であるとしたならば、当面の現象だけでもって判断すべきではないと、こういう考え方を持っておるわけであります。
  359. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 やっぱり私どもは、経済の動きを先細りさせるような政策はやめてもらいたい。いまのような姿であれば自然増収も何もないでしょう、思い切ってやらなければ。特に私は、今日の政治課題であるこの減税問題はもうすべての国民の要請であろうと思う。また、わが党の公約でもある、選挙で公約したでしょう。しかも、私どもの幹事長がやっておるんですよ、景気対策に必要な影響のある金額をやると。思い切ってやりなさいよ。私は強い前向きの対処を強く要望いたします。  次に、仲裁裁定と人勧についてちょっと触れます。  五十七年度の仲裁裁定は、紆余曲折がありましたけれども、ほぼ完全実施されておりますが、人勧が凍結されたことはいまさら言うまでもありません。これらの問題について、昨年の暮れから本年初めにかけて国会でもいろいろ論議された。また、ILOからも指摘されていることも周知のとおりなんです。本年三月一日に衆議院議長は、人勧問題については、人事院勧告制度の持つ重要性を踏まえ、一方現下の財政状況も勘案しつつ、二年続けて凍結の事態にならないよう政府は最善の努力をすることという見解を示されております。この見解に対して官房長官は、政府を代表して、二年続けて凍結の事態にならないよう最善の努力をする所存だと言明しております。また、きょうのさきの質問に対してでもそういう意味の答弁をされました。  すでに本年も、去る八月五日人事院から、昨年の凍結分を含めて六・四%の勧告が出されておりますが、この取り扱いは今日まで決まっておりません。昨年の経緯から言えば人勧は実施しなくてはなりません。本来、人勧は公務員の労働基本権制約の代償措置であって、これを実施しなければ、定着した良好な労使関係と公務員の士気に私は重大な影響を与えることを憂慮するものであります。一日も早く勧告実施の取り扱いを決めるべきだと思うが、仲裁の取り扱いを含めて、総務長官並びに労働大臣の見解を求めたいと思います。
  360. 丹羽兵助

    国務大臣(丹羽兵助君) 先生のお尋ねでございますが、いろいろ意見を述べられて、給与を担当しておる者としてどういうような考えを持っておるか、基本的な考えを述べよと、こうおっしゃっていただきましたので述べさしていただきまするが、本年度の人事院勧告の取り扱いについては、総理自身も述べられておりまするように、人事院勧告を尊重するという基本姿勢に立って、現在給与関係閣僚会議お話の出ておられますように国政全般との関連において慎重に検討しておるのでございますが、私としては、いまもお話しのありましたように、昨年の経緯、良好な労使関係、なおまた職員の士気、職務意欲等にも十分配慮いたしまして、勧告の実施に向けて最大限の努力を尽くしてまいりたい、これが私の基本的な考えでございます。
  361. 大野明

    国務大臣(大野明君) 仲裁裁定につきましては、初村先生は昨年は労働大臣としていろいろ御苦労なさったと感謝いたしております。もうそういうことで釈迦に税法ではございましょうが、仲裁裁定というものは公共企業体等の職員のやはり労働基本権の代償措置でございますので、政府としてはやはりこれの実施に最善の努力を尽くすべきだと考えております。しかしながら、やはりその実施に当たって、予算上本年も絶対可能と断定できませんので、国会に付議さしていただいておる今日でございますので、国会の御審議、御判断を仰ぐということで現在進んでおるところでございます。
  362. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 中小企業対策についてお伺いいたします。  このところ景気の回復の兆しが見えるとは言いますけれども、八月の企業倒産件数は非常に高い数字を示しておる。それだけに中小企業の不況が続いておるわけですね。中小企業の設備投資は全産業設備投資の四割強を占めておりまして、最近の低迷は目を覆うばかりであります。こうした状況がこのまま続きますというと、将来の中小企業の活性化というものはあり得ない。そしてまた、大企業との格差はますます拡大するばかりなんです。そこで、設備投資資金の六割以上を借入金に頼る中小企業の投資を私は刺激する必要があると考えるわけです。そのための方策の一つとして、最近長期金利の自由化が唱えられておるわけですね。これについて通産大臣、大蔵大臣の所見を賜りたい。
  363. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) 通産省といたしましては、常に中小企業のことを考えなければなりません。いま特におっしゃった金融の面において、財政当局の調査機関におきましても、金利の自由化ということも一つの検討課題になっているやに承っております。だから、長期プライムレート等々のことは、これは大蔵大臣の方の御判断でお話しなさればよいと思いますが、アメリカの高金利というものがそう簡単に終わらないということ等々を考えますと、やはり国内においても公定歩合の引き下げはきわめてむずかしいということになれば、それじゃその次の手は何だということはやはり検討すべき課題ではなかろうか、私はこう思うのです。  だから、通産省といたしましては、たとえば長期プライムレートが今日八・四でありますが、これは七・五プラス〇・九という一つの方式がございますから、ここら辺の方式をもう少しく自由にして、そうして金利引き下げに役立つような方途はないものかというような意見は持っておりますが、これはやはり政財当局の問題でございます。したがいまして、金利の自由化ということが中小企業によい方向に動くのならば結構でございますが、自由化になって、それが高い方に動いたとか、あるいはまた中小企業に余りメリットを与えなかったというようなことであってはこれもまた問題でございましょう。十分そういう問題に関しましては、財政当局の判断によるものでございましょうけれども、私たちといたしましても関心を抱いておる、こういうことであります。
  364. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) まず最初、金利自由化、こういうことになりますと、これは預貯金全体に及ぼすものでございますだけに、いま通産大臣からもお話がありましたように、わが国経済全体に及ぼす影響ということを十分考えなければなりません。したがって、いま私どもといたしましては、金利の自由化は今後不可避的に進むものと思われるという前提の上に立って、いわばソフトランディング、こう申しておりますが、徐々にいろいろなもの、譲渡性預金の創設とかコール手形市場における建て値制の廃止とかいろんなことで進めてきておるということでございます。  全体の預貯金金利の自由化ということになると、御案内のいわば郵貯の問題をどうするかというような問題も出てまいります。したがって、これは金融制度調査会で金融自由化の現状と今後のあり方ということで、これは金融制度調査会の小委員会で議論をしていただいておる、こういう基本的な考え方一つございます。  それから設備投資に対して直接いわゆる長期貸出金利を下げたらどうか、こういう御議論でございました。これは、長期貸出金利については特に金利規制の対象となっておりませんし、現実には長期貸出約定平均金利を見ますと、実勢は総じて順調に、少しずつではありますが、低下してきておるということは実態であります。  それからいま一つ御指摘のありましたいわゆる長期プライムレート、こういうことになりますと、これは長信銀の調達手段でもあります利付金融債を基準として決められておりますので、勢いこの金利は国債等の市場全体の動向等を反映してこれは決まっていく、こういうことにならざるを得ない問題である。したがって、長プラだけを単独で引き下げるということは、これはなかなか困難な問題でございます。  要は、そういう金融市場における金利問題等にいたしましても、国債発行高が多ければ多いほどそれが市場金融を圧迫いたしますから、要は財政再建をして、国債が減っていくということにやはり財政当局としては努めていくというのが基本的な考え方ではなかろうかと思っております。しかし、御趣旨の中小企業対策についての金融のあり方については、私どもも十分いま御主張をなさった考え方を肯定する立場にございます。
  365. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 投資減税についてお尋ねをしたいと思います。  本年度から中小企業設備投資促進税制が施行されておりますが、かなりの中小企業がその効果に疑問を抱いておる。といいますのは、景気の落ち込みがひど過ぎて、このぐらいの投資減税ではメリットがないということなんです。  さらに、この制度による恩典を受けるためには、過去五カ年間の平均投資額を上回る投資をしなければいけない。これは、従来から設備投資を着実にやってきた企業には不利と考えられるわけですね、着実にずっと毎年やってきておるのに。そこで、これを問い詰めてみますと、要するに意欲のある企業はすでに設備投資を実施しておるということなんです。それ以外の企業は投資を行う体力も気力もないということなんです。そこで、制度があっても、これが利用されないのでは意味がないということなんですね。  したがって、この際、投資減税制度の改善について所見があれば通産大臣にお答えを願いたい。
  366. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) 投資減税は、いまおっしゃるとおり、ことし制度改正をいたしました。少なくとも私ずっと国内いろいろ回りますと、中小企業の人たちからは、改正をしていただいてありがとうという声も聞いておるわけなんです。したがいまして、十二分にその成果を見守りたいと思いますし、またこの制度がそういう改正があったということを商工会議所等々からも広く啓蒙していただきまして、極力利用していただきたい、私はこう思っております。  最近また内需喚起、あるいはまた輸入促進という観点に立ちましての投資減税という考え方も私たちは捨ててはおりません。しかしながら、ことしやってまた同じことをやるのかということではないので、やはり中小企業の近代化等々のことを考えますと、エネルギー問題に関しましてもやはり一つの投資が必要であろうし、あるいはまた新しい近代化のためにロボットを使う、そうした意味合いの施設も必要であろう、そうした設備に対する減税、それを促進さすということは非常に必要じゃなかろうか、こういうふうに考えておりますので、これはこれとして十二分に私たちの主張を貫きながら、いろいろと今後政府全体の問題として考えていこうと思っております。
  367. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 次に、石油備蓄の問題に移りたいと思います。  先ほども社会党の久保さんからお話がありましたが、通産省と石油公団は、最近、原油国家備蓄基地の完成期間の延長、あるいはタンカー備蓄の陸揚げ促進等の方針をかためつつあると聞き及んでおる。その背景として、原油の需給緩和あるいは石油税収の減少、それからタンカー備蓄コストの割り高などを理由に挙げているようであります。もとより原油の備蓄は石油依存度のきわめて高いわが国にとっては国家の総合安全保障にかかわる中心課題であると私は思う。単に経済性の観点からのみ論ずるべき筋合いのものじゃない。現在、石油情勢は安定しているもののようでありますが、中東情勢、世界の景気の急速な回復等の諸情勢から見ると、先行きは決して楽観視されないと思います。また、政策の急激な転換はこれまで国策に協力してきた海運、造船あるいは繊維、または地方公共団体、地元住民にも非常な深刻な影響を与えると私は思う。二回にわたる石油危機の経験を踏まえ、私は安値の原油が入手できるいまこそ、やはり洋上備蓄も含めて石油備蓄体制の維持増強に万全を期すべきであるという確信を持っております。これに対する通産大臣の御所見を賜りたい。
  368. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) 調査会の報告書には確かに、石油の需給緩和状況にあり、といって備蓄そのものは油断大敵であるから依然として維持をせよと、こういうふうに示されておりますので、私も初村さんと同じように総合安全保障というセキュリティーの問題から考えましても、やはり資源小国のわが国といたしましては備蓄は大切である、このことには変わりはないと考えております。ただ、やはり財政再建とかいろいろ問題もございましょうし、特に原油価格の引き下げによりまして確かに特別会計における歳入面の減少ということは免れないのではないかといった場合に、ではどうするかという問題がございます。  しかしながら、歳入が減ったから歳出を減らすという単純な考え方で私はない。やはり国の安全なり、あるいは長中期にわたる油の供給の安定ということ等を考えました場合には、やるべきことはやはりやらねばならないであろう、こういうふうに考えておる次第でこざいます。しかし、その中においても極力歳出の面において合理化、また効率的な面は生かさなくちゃならない、こういうふうに思いますから、タンカー備蓄をコストが高いから陸の方に揚げてはどうかということも報告書に書かれております。といって、余っているときにはお願いをした問題をすぐあしたからゼロにしてしまうというふうなことでは、それぞれそうしたことを担当していただいた方にも御迷惑を与えるのではないか、こういうふうに思いますから、これは順次秩序をもってやっていきたい、こういうふうに思っています。  また同時に、ひとつ基地をお願いしたいと言って県を初め地元市町村にお願いした経緯もございます。それをいまさら、しばらくの間備蓄は延ばすからちょっと待ってくれないかというような単純なことで済むかということも、ひとつ私は考えていかなければならないことではないか、こういうふうに思っておりまするし、特にそうしたことが地方の経済に、あるいはまた景気に影響するところ大なりと、かく考えますと、私といたしましても、石油特会をめぐるいろんな問題はございますが、歳入歳出ともに十二分に目を配って、そして極力お願いしたところは順次実現の方向に向かいたいものである、こういう気持ちで現在いろいろと計画を練っておる最中であります。
  369. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 大臣の御答弁をいただいて、大臣の決意のほどはわかるわけであります。  そこで、私は、特に長崎県の立場、長崎県は従来、橘湾のタンカー備蓄、それから上五島の国家備蓄基地、これはもういずれも漁民を初め地元民として最大の協力をやってきたわけであります。それで、いま国家備蓄基地が、全国六カ所の基地全体の完成年次を昭和六十五年度まで二年間スローダウンさせるという方針であると聞いておるわけですが、この計画が繰り延べられますと、上五島基地の建設計画がどのように影響するのかなと私は心配でならない。  御承知のとおり、上五島ではすでに海上のボーリングは進んでおるんです。それでまた防波堤工事もずっと島と島との間をつないでおるわけですね。やっておるんですよ、現在。万一工事がおくれますというと、何といっても金利負担に追われるでしょう、重なる。したがって、これまでの投資効果を著しく損ねるわけですね。そして地元の景気、雇用にも影響するわけですよ。地元の景気対策に影響するわけです。政府は上五島について建設のペースを緩めちゃだめと思うんです。早期完成に向け大臣は予算の確保等に格段の協力をしてもらいたいと思いますが、お考えはどうでしょう。
  370. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) まあ各論に入りましたけれども、一応六カ所決定いたしまして、そしてその間においては本当に地元の御協力を仰ぎました。そうしたこと等もございますから、先ほど申し述べましたような見地で十二分に今後対処していきたい、こういうふうに考えております。
  371. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 あと九分でありますから、しばらくごしんぼう願いたいと思います。  財政問題に移りたいと思います。  わが国の経済を先進諸国と比較してみると、経済成長あるいはまた物価、失業率はまあまあ良好であるわけですね。非常に世界の中で優秀な国であると褒められておる。ところが、財政面ではこの中で一番悪いと言われている。これをまず事務当局から数値で簡単に説明してもらいたい。
  372. 山口光秀

    政府委員山口光秀君) ことしの八月に私どもはこういうパンフレットをつくりました。「財政改革を考える」というパンフレットでございまして、お手元に差し上げてあるわけでございますが、その最初の方に、いま御質問の諸外国との財政状況の比較が載っております。その中からかいつまんで申し上げたいと思います。  まず、公債依存度でございますが、日本は五十八年度二六・五でございます。アメリカがことしになりまして急に高くなりました。財政赤字が急増いたしましたので、従来一〇%台でございましたのが二五・九%となっております。それから西ドイツは比較的安定しておりまして一六・三%、イギリスが八・一%でございます。つまり、財政規模の中で公債に依存する割合が日本は非常に高いということでございます。  それからもう一つの指標といたしまして、GNPの中で、国債の残高のウエートがどのくらいあるか。これを、この冊子では国際比較の都合で長期政府債務残高のGNPに対する比率で比較しております。日本は四五・三%、アメリカは二八・五%、それからイギリスが四五・二%と、これは高いのでございますが、長期的には減少傾向にございまして、二十年前には八三%もあったのでございますが、ここまで減ってきた。西ドイツは一六・九%ということで、ここでもイギリスがちょっと特殊な事情がございますが、ぬきんでて高いわけでございます。  それから利払い費の歳出総額に占めます割合でございますが、日本は一五・七%でございます。これに対しまして、アメリカ、西ドイツが一一・〇%、イギリスは六・三%、こういうふうに相なっております。
  373. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 いま数値で示されたのでございますが、非常に私どもも財政危機を強く認識するものであります。  そこで、政府はこういうような財政危機を強く認識しまして、五十八年度予算では、先ほども申し上げたんですが、二十八年ぶりの抑制予算を編成し、さらに五十九年度の概算要求では経常部門で原則一〇%マイナス、投資部門で原則五%という戦後初めてのマイナスシーリングを設定しております。また、総理も、歳出面で既存の制度、施策にメスを入れるんだということを申されております。その取り組み方を私は評価をいたします。しかしながら、財政改革の成果を上げるには、制度の根幹にまで踏み込まなければこれを期待することはできない。これは行政改革と同様に既得権がらみの役所間で、あるいは党内で相当な私は反抗が予想されると思う。財政改革に臨むに当たって、為政者の強い決意と蛮勇を期待するわけでありますが、大蔵大臣並びに総理の御所見を賜りたい。
  374. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 財政改革の基本というものを着実に実行していくためには、いまおっしゃいましたとおり、まさに蛮勇をふるって制度、施策の歴史的根源にもさかのぼって対応しなければならない課題であるというふうに考えております。したがいまして、従来半ば既得権化のごとくお互いが感じておる問題につきましても、これは個人、企業の分担する範疇である、あるいはこれは自治体の分野であろう、これこそまさに国の担当すべきものであろうというそれぞれの分野に対しても見直しを行いながら、具体的には五十九年度予算に対応していかなければならぬ。  いま御指摘のとおり、経常部門の一〇%、投資部門の五%、その範囲内で各省それぞれ知恵をしぼって、概算要求が八月末大蔵省に提出されたばかりであります。その中で、なおこれにかなり切り込んでいかなければ財政改革の方針を貫くわけにはまいらぬ大変厳しい環境にありますが、議員各位の御協力、また国民各位の御協力を得ながら、これに対しては、蛮勇というお言葉をお使いになりましたが、誠心誠意対応していかなければならないと心に誓っておるところであります。
  375. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 財政改革は、行政改革の骨組みの上に立ってしっかりやっていくつもりでおります。この両方とも少し時間がかかる問題でございますが、がっちりやってまいる決心でございます。
  376. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 次に、将来の国債償還についてお伺いいたします。  総理は、六十五年度までに特例公債依存の体質からの脱却と、公債依存度の引き下げに努める旨発言されたことを私は評価いたします。  まず、この方法はどうするのか。さらに、財政試算では国債の償還のピークは六十五年度ごろであったのでありますけれども、脱却目標年次が六十五年にずれれば、償還のピーク年次及びそのときの償還額は一体どういうことになるのか。また、将来の国債償還計画の姿を大蔵大臣にお示し願いたいと思う。
  377. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 将来の公債の要償還額というものは、各年度の公債発行額などがどうなるかによって異なってまいるわけでございますが、したがって、現時点で具体的な見込みの数値を正確に申し上げることはこれはできない。しかし、いまも例にお引きになりましたように、ことしの二月提出いたしました国債整理基金の資金繰り状況についての仮定計算の試算C、すなわち毎年度一兆円ずつ特例公債を減額していくという数値を御参考までに申し上げてみますならば、合計額がピークに達する年度は六十五年で、十七兆七千三百億円。その内訳は、四条公債が十兆四千三百億円と特例公債が七兆三千億円であります。しかし、この試算によりますと、六十五年度以降も要償還額はさらに増大いたしまして、昭和七十年度にピークを迎えまして、このときは二十一兆八千億円と、こういうことになります。内訳は、四条公債が十六兆八千五百億円、特例公債は仮に脱却をしてきたという前提にございますから四兆九千五百億円と、こういうことになるわけであります。
  378. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 次に、経済問題に移ります。  わが国は、三年という戦後最長の不況からようやく脱却した、景気は回復局面に入ったと言われておりますが、最近の景気動向を見ますと、どうも輸出は回復基調にあって、在庫調整はほぼ一巡したという見方をしておる。一方、住宅投資は減りぎみ、民間設備投資や消費も伸び悩んで、総じて内需の回復力は盛り上がりに欠けているようにも見受けられる。したがって、政府としては景気の現状をどう認識しているのか。景気はもはや底離れしているという見方をしてよいのかどうか、そういう感じをどうも私は持てない。これについて経済企画庁長官の御所見を賜りたい。
  379. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) 景気の現状につきましては、ただいま初村委員お話しされたとおり内需の盛り上がりを欠くという一言で尽きるようなところでございます。その点は先般の四月—六月の国民所得統計速報によって示されたところでございまして、内需が〇・四、外需が〇・五というところからわかるところでございます。これを底離れというふうに企画庁が言っておるがというような御指摘でございますけれども、私どもは景気動向調査から見まして、ことしの二月に先行指標、一致指標から見て底に達した、それ以降はずっと五〇%を超えるような上昇の傾向を示しておるからそう言ったわけでございますが、これが直ちに景気の上昇と申しますか、非常に景気がよくなるんだとかいうような意味ではございません。いまのところは景気の谷を、飛行機で言えば離陸して少しまだ低いところをずうっと飛んでいるような状況ではないか、こういうふうに思うところでございますが、今後の輸出の好調、それから起こりますところの生産の増加、投資の増加に期待していきたいと思っております。
  380. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 先ほど財政問題でも触れたんですが、昭和五十九年度の予算概算要求シーリングで、景気浮揚効果の大きい公共事業の予算について五%マイナスをしたことは内需振興の観点から問題があるという声を非常に強く聞くわけですね。そうしますと、これまで道路整備、住宅建設あるいは下水道整備などの社会資本整備の八つの五カ年計画が計画倒れになってしまうんですね。これは非常に私は大きいと思うんです。先ほど申し上げましたとおり、わが党の公共投資推進議員懇談会で、下半期の公共事業について、臨時国会において補正予算を編成して二兆五千億以上の追加を措置するようにということを決議して、恐らく総理も大蔵大臣も聞き及んでおると思うが、これについて政府見解を求めたい、経済企画庁長官、大蔵大臣、お願いいたします。
  381. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) 内需の拡大につきましては、私どもるる申し上げておりますように、最近におけるところの経済政策の最大の目標でございます。特に四月—七月間の経常収支の黒字が八十一億ドル、年間を通ずれば二百四十億ドルになるのではないかというふうに言われておりますだけに、私は内需拡大は重要な政策だと思っておるわけでございます。  しかし、五%の概算要求のシーリング枠につきましては、御案内のように私はこれは一つのバランスを大変重視し財政全体を堅実化するための概算要求、他は一〇%だからというようなことからきた一つのやむを得ない措置でございますし、また、しかもこれは要求の段階でございます。十二月に決定されるところの本予算の決定に当たっては、私は、公共投資の問題は経済全般、特に経常収支の黒字からくるところの内需拡大の方向から見てまた一つ大きくここで再検討されるに違いない、こういうふうに考えているところでございます。  一方、二兆五千億の問題、これもまた財政上の問題から見まして、私は、たびたび総理大臣も大蔵大臣も言われておりますように、税で二兆五千億の補正予算が組めると思いませんけれども、二兆五千億という数字は大変魅力のある、私どもも研究しなければならない目標だと思っているのでございます。それは内需拡大の方向として二兆五千億、つまり百億ドルぐらいの内需の拡大によって、現在御案内のように約二百億ドルぐらい日本では内需不足から外国に長期の資本が流出しております。内需を拡大して二百億ドルの半分ぐらい、つまり二兆五千億ぐらい内需拡大の方に向けたらどうかという御思想は、私は内需拡大の方向としては十分わかるところでございます。  さらにまた、これがちょうど経常収支の黒字の二百億ドルの半分、いずれまたこの二百億ドルがどこの国でも問題にするに違いない。そのようなときに内需拡大。補正予算という金額よりも内需を新しく拡大する方向として、二兆五千億という数字は企画庁にとりまして大変魅力のある私どもが研究すべき目標のような気がしておるところでございます。
  382. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) いまのお答えの中にもございましたように、いわゆるシーリングによりまして五%の削減枠を設けたと、これは事実であります。しかしながら、基本的に考えなければならぬのは、やっぱりこういういわゆる投資部門の財源ということになりますと、これまた勢い建設公債に頼らざるを得ない。そういうことになりますと、現在の発行条件、毎月毎月苦労してシ団と交渉しておりますが、そこでまた民間金利の上昇に影響を及ぼすようなことになってはならぬ、基本的にはやはりそうした財源に頼るべきではないと。  こういうことを考えてみますと、私どもといたしましては、結局いままではいま御指摘のあった五カ年計画にいたしましても、高度経済成長のときには三カ年すれば改定してまた新たなる五カ年計画を出していくと、そういう上昇気流にまさに乗っておったと思うのでありますが、いまそういう状態に世界全体がない今日、そういうことに対して自然増収を期待したり、また建設国債に大きく期待することができないということになれば、結局知恵を出さなければいかぬ問題だと。その知恵の出し方というものが、総理が本委員会においてもお答えになっております金融政策的景気浮揚のもろもろの課題とかいうような問題をこれから議論していかなければならぬ課題だと思っておりますが、少なくとも五十九年度はやはり経済の諸情勢を見ながら知恵を出して、事業量確保ということには大いに意を用いなければならない課題だというふうに考えております。  それから五十八年度の下期の公共事業の追加の問題でありますが、数字で御説明できる限りにおきましては、昨年とことしとの前倒し率が違います。したがって、下期に昨年同様の事業量がおおむね確保できる、その上に超安定とでも申しましょうか、いわゆる物価の安定ということから建設資材その他いわばデフレーターの効率を考えていきますならば、その事業量そのものは確保できる課題であるというふうに私どもは今日理解しております。しかし、いつの機会も、総理からも言われますように、内外の経済情勢を見ながら、そこに弾力的に対応する姿勢だけはいつでも持ち続けていなければならぬ、こういうことでございますので、いま直ちに下期の公共事業を補正予算でもってこれに対応していくという考え方は今日述べるわけにはまいらない、こういうことであります。
  383. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 文部大臣と厚生大臣にははなはだ申しわけないんですが、時間がないようでありますから、わざわざ予定を通告したことについておわびを申し上げたいと思います。あしからず御了承賜りたい。  以上で、私は外交、内政の幾つかの問題を取り上げたわけであります。政府の答弁も、わかりやすく丁寧にしていただいてありがとうございました。  そこで、政府の姿勢をただして、この質疑応答を通じてわかったわけでありますが、今日ほどむずかしい重要課題が山積したときはないと私は思っている。わが党は、これまで幾多の国難に遭遇しながらも、責任政党として国民各位の強い御支持によりこれを乗り切った実績があります。また、人材もあると思うのです。この時期がなお一層厳しければ厳しいほどわれわれは、みずからの姿勢を正し、心を新たにして中曽根総理・総裁のもと挙党一致団結してこの難局を切り抜け、国民から負託された使命の達成のため邁進しなければならないと決意をするわけでありますが、総理の決意のほどをお伺いして、私の質問を終わります。  ありがとうございました。(拍手)
  384. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 長時間にわたりまして貴重な御示唆、御教導をいただきまして感謝をいたします。  御指示のように、私は自由民主党総裁でございますが、自由民主党の皆さんを初め、各党各派の皆様方の御協力を得るように全力を尽くして努力もし、政務を担当してまいるつもりでございます。よろしくお願いいたします。
  385. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 以上で初村君の質疑は終了いたしました。  本調査に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。     ─────────────
  386. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 次に、派遣委員の報告に関する件についてお諮りいたします。  前国会閉会中当委員会が行いました委員派遣につきましては、報告書が提出されておりますので、これを本日の会議録の末尾に掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  387. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。  明日は午前九時から委員会を開会することといたし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時十三分散会