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国務大臣(中曽根康弘君) 上條
議員の御質問にお答えを申し上げます。
まず、現在の
国際情勢下における
わが国の外交
方針でございます。
現在の
状況は、お示しのように、レバノンにおける紛争あるいはイラン・イラク戦争、あるいはビルマにおける爆弾事件、あるいはあの韓国の大韓航空機の事件、さまざまなそのような問題が起きております。また、カリブ海におきましても、いまお話がありますように問題も起きておるわけでございます。その中におきまして、INF交渉、中距離核戦力制限交渉はいま非常に重大な段階を迎えておる。こういうときに当たりまして、日本といたしましては、ウィリアムズバーグの頂上会談で決めました
基本原則にのっとりまして、自由世界が平和と世界の繁栄をもたらすためにここで結束をして、そしてアメリカ及びそのほか各国が一致連帯のもとに平和を招来するように全力を注ごう、そういう
原則を確認していまその努力を継続しておるところでございます。
そこで、先般、
コール西独首相、
レーガン米国大統領来日を機に、これらの問題につきまして隔意なき懇談をいたしました。
コール首相との間にはいわゆる東京声明というものを発出いたしまして、世界に向かってこの両
首脳の
考え方を明らかにした次第なのでございます。
その
趣旨とするところは、ウィリアムズバーグで決めた
基本原則にのっとって、そして平和と繁栄と世界経済の再活力化というものを中心に持続的に今後も努力をしていく。そして、あの
ソ連のSS20の中距離弾道弾の解決処理の問題につきましては、日本やアジアを犠牲にして解決することはさせない、全地球的規模においてこれは解決さるべきであるということを確認をいたしました。
それと同時に、特にこの声明を発出いたしましたゆえんのものは、この文章に書いておりますが、「我々は、国際的な紛争あるいは懸案に関しては、話し合いのテーブルについて相互に相手の主張に真摯に耳を傾け、理性に基づく対話と交渉により、
意見の対立を和らげ、かつ、克服するよう常に努力を続けていくべきであると確信する。」、「当事者は、終局的合意をもとめて着実かつ現実的な努力を行うものとし、究極的
目的達成のための段階的
措置、あるいは漸進的解決策の探求をいとってはならないと信ずる。」、このことを特に強調したのでございます。それは、今月の二十三日からいよいよパーシングⅡがドイツその他に展開されることになっておりまして、非常にINFの前途もむずかしくなりつつあります。しかし、そのような危機的な
状況のもとにあっても、当事者は常に不屈不撓の構えをもって交渉を継続すべきである、交渉のテーブルから去るべきではない、対話を常に行うべきであるということをここで特にわれわれは世界に向かって指摘したのでございます。
レーガン大統領が参りましたので、この東京声明について賛同を求めましたところ、
レーガン大統領も完全に賛成をしていただきました。近くカナダからトルドー首相が参りまして、あした私は会談する予定でございますが、カナダのトルドー首相にもこの声明の
考え方に御
意見を伺い賛成していただきたい、このように考えておるところでございます。
次に、
国会の
空転と
政治倫理の問題でございます。いわゆる辞職勧告
決議案の処理をめぐりまして、一カ月近くも
国会が
空転いたしましたことはまことに遺憾でございます。
国民の
皆様方に申しわけないと思う次第でございます。
しかし、
国会議員の身分の問題でこういう問題が起きておるわけでございますけれども、やはり
国会議員の身分の問題は、憲法あるいは
国会法、
法律によりまして保障されておるものはあくまでこれを尊重していかなければならないし、また議会制民主主義のたてまえからいたしましても、その進退そのものは本人の意思によって決めるかあるいは選挙民の
考え方によって決まるということも重大な民主主義の
原則であるとわれわれは考えて、このような問題は軽々に扱うべきではないと私は考えておる、これは前から申し上げたところでございます。
しかし、一面において、
政治倫理の問題は
政治家ないし政党として、これは個人の行動とは別に、政党としてあるいは
政治家として考うべき重大なる課題であると思います。そういう
意味から、私は先般自由民主党に対しまして、総裁として次の六項目について考えを示して
検討を願ったわけであります。
一つは閣僚及び政務次官等の資産公開をやったらどうだ。第二は議院証言法の
改正に積極的に取り組むべきではないか。第三番目は
政治倫理に関する
両院協議会を
設置しよう。第四番目は、比例代表の全国区も出てまいりまして、政党法というものをこの際
検討すべきときに入っているのではないか、特に政治資金との絡みにおいても考うべき点はないか。次に、政治の悪は選挙から来ている点が多分にございます。金のかかる選挙をやめなければならぬ。そういう
意味において選挙法の
改正という点も
検討していただきたい。
最後に
議員定数の問題がございます。先般最高裁の判決も出ました。これは判決の前の話でございますが、
議員定数の問題についても取り組むべきである、この六つの点を党の
首脳部に提示いたしまして
検討を願ったわけでございます。
ただいまここで、本院におきまして
倫理の
協議会設置の御決定を見まして、私は自由民主党の総裁としてこれに全く同感であり、これを全面的に支持したい気持ちでいっぱいであります。
なおまた、新自由クラブとの間におきまして、昨日来
政治倫理、政界浄化につきまして六項目について合意が成立いたしまして、私が先ほど申し上げましたような
内容も多分に盛られまして両党の合意ができましたことは、
政治倫理のために大きな前進がこれから考えられると思っておる次第でございます。
政府は、今回におきまする
行政改革の諸
法案、さらに減税
法案、
国民に公約してまいりました減税
法案等を成立いたしまして、そして
国民に対する公約を果たそうと思って必死にいままで努力しているところであり、全
法案の成立を
期待しておるわけでございます。
私は、今度の
国会は減税と
行革の
国会であるから、石にかじりついても地をはっても、この全
法案を成立させようということを申し上げてまいりました。韓信のまたくぐりも辞せぬとも申し上げた。そういう気持ちで、ともかく全
法案を成立させるというのが私の念願でございます。そういう
意味におきまして、先般来、
両院議長さんの御判断をいただきまして、全
法案の成立、
国会の正常化ということにつきましてある
意味における御判断のお示しをいただきました。私は、その保証をいただきまして、今後どういうふうな政局対処を行うかということは、いまの全
法案が成立するかどうか、
国会の審議が正常化するかどうかということを重大な関心を持って見守りながら政局に対処する考えをまとめていきたいと考えておる次第でございます。
次に、今回の
行革法案の全体
構想の中における位置づけでございます。
行政改革は、戦後三十数年たちまして、特に高度成長以来肥大化いたしました
行政機構及びその
機能をここで全面的に刷新して、新しい
時代に対応できるような
機能と
機構をつくり上げよう、特に
国民の力を多分に活力に満ちたものにして、その力を余すところなく発揮していただくような体制に転換しようということで、この中心線をいま走っておるわけでございます。そして、すでに五回にわたって
臨調から御
答申をいただきまして、
国会を開き、
皆様方にお願いをして、一つ一つ
法律を成立させ、努力をしてきておるところでございます。
今回の
行革関連の各
法案は、いずれもこの全体関連の
一環として、その重大なる第一歩として
提出させていただいたものなのでございます。
行政機構及び
行政事務の簡素能率化等を中心にいたしましてまとめたものでございますので、ぜひ御理解と御支持をお願いいたしたいと考えておる次第でございます。
なお、次のコースは、専売あるいは電電の
改革、あるいは年金問題の総合的な一元
統合化の問題、あるいは
地方事務官制度の問題、あるいは特殊法人の
整理合理化の問題等々、あるいはさらに大きな国鉄問題の処理という問題を抱えておりまして、これらは、われわれの先般つくりました新
行政改革大綱のスケジュールに沿いまして着実に一歩一歩前進してまいる次第であります。私たちは、政権を担当させていただいている政党あるいは
政府といたしまして、ともかく
国民の生命財産を守り、現実的に
国民に実りのある政策を一歩一歩
実現して成果を上げることが政治の責任であると、このように考えておりまして、
皆様方の御協力をお願いいたしたいと思っておるところでございます。
総務庁につきましては、
臨調答申の
趣旨に沿いまして、さらに
臨調答申より一歩前進した
考え方によりまして、
行政管理庁と
総理府総務庁を合併して大臣を一人浮かし、副
長官二人はこれは
廃止する。あるいはさらに、これが
統合いたす場合には部局、部課等につきましても
合理化、
再編成を行う
考え方でおるのでございます。これは
人事、
機構、
行政監察、それから特殊の部分における
総合調整機能、たとえば北方問題であるとか
青少年対策であるとかその他の
総合調整機能を持たせました新しい
統合調整官庁として活躍できるものと考えておる次第でございます。
なお、
省庁内部部局の
政令化に関しましていろいろ御議論いただいておりますが、ともかく
定員法と同じように
官房及び中央
省庁の局は百二十八に限定いたしまして、もうこれ以上はふやせない、そしてこれ以下にさらにわれわれは
政府として努力をしていく。そして各
省庁が自主的に自分たちの自己
改革を行えるように、その百二十八の
範囲内におきましては
国会の御審議を要せずして
政府の責任においてやれるようにしていただく。これは自主、自律的に
時代に対応し得るように自己
改革を進めようという考えであり、それは
国会に御報告するということにもなっておるのでございます。
今日のように議会政治が進みまして、
国会の民主的コントロールがこれぐらい大きく完全になってまいりまして、
昭和二十二年あるいは二十四年の当時とまるきり違った
状況になっておるものでございますから、私はこの程度の力を
政府にお分けいただいても決して
国会の民主的統制を乱すというようなことはない、むしろ
政府の弾力的な機動的な活躍が
期待できる、このように考えておる次第でございます。
以上で大体私の分担するところは終わりますが、
行政改革に取り組む決意を問うというのが
最後にございました。
この点につきましては、先ほど来申し上げましたように、日本の戦後の
改革の中で最も重大な
改革の時期に遭遇し、それを責任を持って引き受けさせていただいていると考えておりまして、自分の全精力、自分の全能全知を傾けましてこれを断行いたしまして、
国民の御
期待におこたえいたしたいと考えておる次第でございます。よろしく御協力をお願いいたします。(
拍手)
〔
国務大臣齋藤邦吉君
登壇、
拍手〕