○柄谷道一君 私は、民社党・
国民連合を代表して、ただいま
趣旨説明のありました
国家公務員共済組合法等の一部を
改正する
法律案について、
総理並びに
関係大臣に
質問を行うものであります。
不透明な時代と言われる現在ですが、
わが国が世界に例を見ない
高齢化社会に突入することは確実な展望であります。すでに六十五歳以上の人口が総人口に占める割合は九・八%に達しており、今後、三十七年後の二〇二〇年には、それが二一・八%に達することが明らかであります。急速かつ深刻な
高齢化社会が
わが国の経済、社会に及ぼす広範な影響ははかり知れないものがあり、この
変化の本質を見きわめて、今後とも活力を
維持しつつ福祉社会をいかにして建設するかということは、今日の最重要な政治
課題と言うべきでありましょう。
活力ある福祉社会の建設は、
臨時行政調査会答申の
基本理念であり、それはまた
国民の強い要求でもあります。私は、早くからその重要性を認識し、再三、
年金、雇用、医療、地域福祉、生きがい
保障を含めた総合的、
体系的高齢者福祉計画の策定と、これに対する
国民合意の形成を急ぐべきであると提言し続けてまいりましたが、
政府は縦割り行政の弊害を
改革し得ず、政策相互間の
整合性を
確保した総合的な政策
体系を何ら提示することもなく今日に至りました。これは
政府の
高齢化対策の
基本的欠陥と指摘するほかはありません。
長期にわたり安定した
国民皆
年金体制を、他の政策とも関連づけながらどのようなプログラムで
確立するのかという
公的年金制度全般の将来展望を明らかにしないまま、今回の
法案を
公的年金制度再編・
統合の第一段階として位置づけていることは、はなはだ理解に苦しむところであります。
政府は、総合的
高齢化社会政策をいつどのような
手順で樹立するのか、
公的年金制度の将来の
あり方とその
改革の具体策について
基本的にどのように考えているのか、
総理の明快な
答弁をまず求めるものであります。
第二にただしたいことは、租
税負担と
社会保障負担とを合わせた全体としての
国民の
負担率について、
総理はどのように考えているのかという点であります。
一般に、
高齢化社会の進展等によって
国民の
負担率は上昇を余儀なくされるであろうと言われておりますが、過重な
国民負担は活力のない社会を生むことは明らかであり、
国民は将来どの程度の
負担増になるのかという問題について大きな不安を抱いております。
臨時行政調査会は、徹底的な行
財政改革の推進を行い、現在のヨーロッパ諸国の
水準よりかなり低位にとどめるよう提言しているが、
総理は具体的にどの程度まで
負担率を
国民に求めようとしているのか、この際明らかにしていただきたい。
第三に伺いたいことは、かなり以前から予測されていた
国鉄共済
制度の危機的
状況について、その解決策を講ずることなく今日に至った国の
責任についてであります。
わが国の
公的年金制度が三種、八つに分立し、その間に
給付及び
負担の不公平がある現実のもとで、分立する
制度を
統合することが必要不可欠であると私も思うものであります。今回
提出されたいわゆる共済
統合法案はその
一環であると
政府は説明していますが、しかし、実態的には
国鉄共済救済
法案という側面が強いことは否定することができますまい。また、
社会保障制度審議会も繰り返しその解決策を早急に講ずべきことを指摘してきたことは御承知のことと思うのであります。
国鉄共済への早期対応を怠ってきた
政府及び
国鉄当局の
責任は重大であると考えるものでありますが、国としての
責任についてどう考えているのか、また、
社会保障制度審議会がこの点を深く遺憾とし、国としての格段の配慮を求める
答申をしていることについて、
総理及び
大蔵大臣から納得のいく説明をしていただきたい。
第四は、
財政調整事業の円滑な
実施に関してであります。
共済組合は、本来その構成員による相互扶助の理念に基づいているものであり、
国鉄以外の
共済組合員は内心不満を抱きつつも
国鉄に援助の手を差し伸べようとしておりますが、その際重要なことは、
関係者の理解と
合意が前提となるべきであります。とりわけ
政府が
公企体職員等に
給付水準の低下や保険料の引き上げを求める場合、そのことは特に配慮すべきであります。その点万全を欠いたことはきわめて残念でありますが、今後再びかかる事態を招かないよう十分対処するという
大蔵大臣の確約をこの際求めます。
また、本法
施行後設けられる
財政調整事業運営委員会や
改正後の
国家公務員等共済組合審議会の構成と
運営について、
社会保障制度審議会は「広く
組合員の意向が反映されるよう留意すべきである」と
答申しているが、私は、その意のあるところをくみ、従来構成員となっていなかったナショナルセンターの一つである同盟代表の委員を加えることが至当であり、それが
財政調整事業や将来の
年金統合を円滑に進める基盤になると信ずるものでありますが、そのような
方針を持っているのかどうか、
大蔵大臣の
答弁を求めます。
第五に、保険料率引き上げの経過
措置についてただします。
今後の
財政調整の具体策は
財政調整事業運営委員会で決められることになっていますが、この場合、大幅な
拠出増にならないようにという主張が
関係者の声であり、
制度審の
答申にも、「
制度改正要綱に基づく試算によれば、次の
財政再計算期に保険料率を一挙に大幅に引き上げることになつているが、これについては段階的に引き上げるような経過
措置を設けるべきである。」と特に指摘しております。
大蔵大臣は、これらを受けて具体的にどのような経過
措置を設ける
方針か、明らかにしていただきたい。
また、これに関連して、本
法案が成立すれば、明年十月から
国鉄に対する
拠出分を含め保険料率が相当引き上げられることになるが、御案内のように、われわれの強い要求にもかかわらず、五十七
年度の
人事院勧告は凍結され、五十八
年度の
取り扱いも本日の閣議においてすら決定されないまま推移いたしております。賃金は上がらず、その上に
年金保険料が引き上げられるに至っては、二重の
負担が強いられることになります。官公労働者の中には、法を遵守し、
国民の負託にこたえてまじめに働き、行政の効率化についても常に建設的提言と行動を伴っている全官公労働者がいることに深く思いをいたし、
政府は速やかに
人事院勧告及び
仲裁裁定の完全
実施を行うべきであると考えますが、
総理と総務長官の
責任ある
答弁を求めるものであります。
最後に、
厚生年金及び
国民年金積立金の有利運用について
厚生大臣に伺いたい。
年金積立額は、五十八
年度末の見込みで
厚生年金四十一兆円、
国民年金三兆円に達しますが、
共済組合の
取り扱いと異なり、そのすべてが
財政投融資の原資となり、その金利は七・三%となっております。これを積立金の一定率でも自主運用すれば、現在以上に利子収入が増大し、
年金財政の長期安定に資すことは明らかであります。社会保険
審議会は、これまで再三にわたり積立金の自主有利運用を提言していますが、私も
賛成の立場に立ち、その早期実現を図るべきだと考えます。
厚生大臣は、
高齢化社会の到来を展望し、積立金の有利運用のために努力を重ねていると信じますが、今後の取り組み方について大臣の決意を伺い、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣中曽根康弘君
登壇、
拍手〕