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1983-09-13 第100回国会 参議院 本会議 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年九月十三日(火曜日)    午前十時一分開議     ━━━━━━━━━━━━━議事日程 第三号   昭和五十八年九月十三日    午前十時開議  第一 国務大臣演説に関する件(第二日)     ━━━━━━━━━━━━━ ○本日の会議に付した案件  一、請暇の件  一、大韓航空機撃墜事件に関する決議案遠藤要君外九名発議)(委員会審査省略要求事件)  一、国家公務員等任命に関する件  以下 議事日程のとおり      ─────・─────
  2. 木村睦男

    議長木村睦男君) これより会議を開きます。  この際、お諮りいたします。  藤野賢二君から海外旅行のため明十四日から九日間、岡部三郎君、成相善十君からいずれも海外旅行のため来る十五日から十一日間、それぞれ請暇申し出がございました。  いずれも許可することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 木村睦男

    議長木村睦男君) 御異議ないと認めます。  よって、いずれも許可することに決しました。      ─────・─────
  4. 木村睦男

    議長木村睦男君) この際、お諮りいたします。  遠藤要君外九名発議に係る大韓航空機撃墜事件に関する決議案は、発議者要求のとおり委員会審査を省略し、日程に追加してこれを議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 木村睦男

    議長木村睦男君) 御異議ないと認めます。  よって、本案議題といたします。  まず、発議者趣旨説明を求めます。遠藤要君。    〔遠藤要登壇拍手
  6. 遠藤要

    遠藤要君 ただいま議題となりました自由民主党・自由国民会議日本社会党、公明党・国民会議日本共産党、民社党・国民連合及び参議院の会の各派共同提案に係る大韓航空機撃墜事件に関する決議案につきまして、提案者を代表し、提案趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     大韓航空機撃墜事件に関する決議案   九月一日未明、邦人二十八名を含む二百六十九名の乗客乗員を乗せた大韓航空機ソ連軍用機により撃墜された事件は極めて重大であり、本院はかかる事件の発生を深く遺憾とし、この事件犠牲者に深甚なる哀悼の意を表するものである。   いかなる理由があるにせよ、非武装かつ無抵抗民間航空機撃墜することは人道国際法に反するのみならず、国際民間航空安全確保の観点からも許されざる行為であり、強く非難さるべきである。   それにもかかわらず、この事件最大責任を有するソ連政府が、事実関係についていまだ納得のいく説明を行わず、また、関係国による捜索活動への協力を拒んでいる態度は誠に遺憾である。   よつて政府は、関係各国との緊密な協力のもとに、次の事項について適切な措置を講ずべきである。  一 あらゆる方途により、事件真相究明に努め、大韓航空機領空侵犯をするに至つた原因を含めて可及的速やかに全貌を明らかにすること。  二 ソ連政府に対し、ソ連領海における関係国捜索を許可し、捜索活動協力するよう求めること。  三 ソ連政府に対し、自国の責任を明確にし、公式の謝罪とこの種の事件再発防止について保障措置を求めること。  四 犠牲者補償については、ソ連政府並びに大韓航空に対し十分な措置を講ずるよう求めること。  五 事件再発を防止し、国際民間航空の安全を確保するため、国際機関等において適切な措置が講ぜられるよう努めること。  六 今回の事件背景国際的軍事緊張があることにかんがみ、国際緊張緩和のために最大努力を払うこと。   右決議する。  以上でございます。  ただいま案文でも述べましたとおり、日本人二十八名を含む二百六十九名の乗客乗員を乗せた大韓航空機ソ連軍用機によって撃墜され、多数のとうとい生命が一瞬にして奪われました。まことに遺憾であり、深い哀悼の念を禁じ得ません。  この、人道上からも、国際法上からも許しがたい事件について、ソ連政府撃墜の事実を認めたものの、みずからの責任を全く認めようとせず、また関係国による捜索活動への協力を拒んでいる態度はまことに遺憾と申すほかありません。  もし、この事件全貌が十分に解明されず、責任が明確にされないまま葬り去られるようなことがあったならば、国際民間航空を利用する人々の不安は去らず、その安全は著しく損なわれるでありましょう。  この際、政府関係各国協力し、情報公開も小出しでなく、あらゆる公開を求め、あらゆる方途により事件真相究明に努め、大韓航空機領空侵犯をするに至った原因を含めて全貌を明らかにするとともに、乗客乗員捜索ソ連責任明確化謝罪犠牲者への補償国際民間航空安全確保等のため必要な措置を講ずるほか、この事件背景国際的軍事緊張があることにかんがみ、軍縮を含む緊張緩和のための最大努力をすべきであると考えまして本決議案提案する次第であります。何とぞ全員の御賛同をお願いいたします。(拍手)     ─────────────
  7. 木村睦男

    議長木村睦男君) これより採決をいたします。  本案賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  8. 木村睦男

    議長木村睦男君) 総員起立と認めます。  よって、本案全会一致をもって可決されました。  ただいまの決議に対し、外務大臣から発言を求められました。安倍外務大臣。    〔国務大臣安倍晋太郎登壇拍手
  9. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) ただいま御決議のありました大韓航空機撃墜事件に関しましては、これまで再三明らかにしておりますとおり、政府といたしましても、いかなる理由があるにせよ非武装かつ無抵抗民間航空機撃墜することは断じて許されず、強く非難されるべきであるとの立場から、ソ連側に対し真相究明事件に対する誠意ある対応を求めてこれまで鋭意折衝を行ってまいりました。  しかるに、ソ連側は、撃墜の事実は認めたものの、自己の責任を認めようとせず、今日に至るまで事件に対して誠意ある対応を行っていないことはまことに遺憾であります。  去る九日、政府は、ソ連側に深く反省を促し、事件に対して誠実に対処することを強く求めるため、一連対ソ措置を発表いたしました。  しかし、その後のソ連政府態度には基本的に何らの変化も認められず、また、多くの西側諸国ソ連との間の航空機運航を一定期間停止することを決定していることをも踏まえ、本日、政府は、ソ連に対して一層強く抗議し、その態度の再考を求めるため、わが国ソ連との間の航空機運航を九月十五日から二十八日まで停止するための措置をとることを決定いたしました。  政府といたしましては、ただいま採択されました御決議趣旨を十分に体しまして、今後とも引き続き最大限の努力を払う所存であります。(拍手)      ─────・─────
  10. 木村睦男

    議長木村睦男君) この際、国家公務員等任命に関する件についてお諮りいたします。  内閣から、宇宙開発委員会委員井上啓次郎君を、  公害等調整委員会委員三浦大助君を、  公安審査委員会委員荻原伯永君を、  労働保険審査会委員高橋久子君を 任命したことについて、本院の承認を求めてまいりました。  まず、宇宙開発委員会委員公安審査委員会委員任命について採決をいたします。  内閣申し出のとおり、いずれも承認することに賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  11. 木村睦男

    議長木村睦男君) 過半数と認めます。  よって、いずれも承認することに決しました。  次に、公害等調整委員会委員労働保険審査会委員任命について採決をいたします。  内閣申し出のとおり、いずれも承認することに賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  12. 木村睦男

    議長木村睦男君) 過半数と認めます。  よって、いずれも承認することに決しました。      ─────・─────
  13. 木村睦男

    議長木村睦男君) 日程第一 国務大臣演説に関する件(第二日)  去る十日の国務大臣演説に対し、これより順次質疑を許します。小山一平君。    〔小山一平登壇拍手
  14. 小山一平

    小山一平君 私は、日本社会党を代表して、中曽根総理所信表明に対し、重要政治課題の諸点について質問をいたします。  総理は、本音で語り、真意国民の前に披瀝していただきたいと思います。  総理の能弁は定評があり、また、みずから絵筆をとり、著書も多く、私も何冊か読ませていただきました。総理は、博識多才であると思いますが、残念ながら「巧言令色鮮矣仁」と申し上げざるを得ません。  中曽根内閣が成立して以来、現在までの約十カ月間における総理言動はまさに風見鶏そのものであり、危険な本音と虚飾のたてまえを浮き彫りにし、矛盾と欺瞞を露呈しているのであります。油断のならない、したたかな総理と言わなければなりません。  まず冒頭に、大韓航空機ソ連領空を侵犯して、ソ連空軍機によって撃墜された事件はきわめて遺憾であり、遭難された犠牲者に心から哀悼の意を表し、今後再びこのような事故が起こらないよう祈るものであります。  たとえ領空を侵犯したとはいえ、民間機をミサイルで撃墜するということは許されることではあまりせん。わが党は、ソ連政府責任を厳しく追及するとともに、一日も早い真相究明と、国際社会が納得する措置を強く求めるものであります。  国民は、今回の惨事米ソ大国軍事的緊張がその根底にあり、さらにその緊張は一触即発の危険をはらみ、日本もそのらち外にないことを知って恐怖と憂慮の念を深くしております。このような惨事が再び起こらないためにも、日本の安全を守るためにも、極東の緊張緩和、平和、軍縮に全力を挙げるべきであり、わが国防衛力増強の口実とすべきものであってはなりません。  総理は、「戦後史の大きな転換点」、「基本的な制度や仕組みにタブーを設けず見直す」と言い、「憲法見直し論」を公言し、一月訪米の際の「三海峡封鎖」、「日本列島不沈空母」などの一連重大発言は、タカの雄たけびとも思わせる猪突猛進ぶりでありました。その余りの右傾化言動に対し、国民の間から「戦後最も危険な内閣」という批判が高まるや、一転して「緑と花の日本列島」、「がん対策強化」などを提唱、また、ASEAN訪問でも「軍事大国にはならない」ことを強調し、ハト派のポーズをとりましたが、ウィリアムズバーグ・サミットではレーガン大統領に迎合し、また一転して欧州への核配備を積極的に支持するなど、憲法の枠を超えるおそれがある強硬発言に、国民はその真意をはかりかねているのであります。  今回の所信表明にも見られる平和路線志向とも見える姿勢は、米国における軽率な猪突猛進的言動とその行き過ぎに対する反省に基づくものでありますか。あるいは、ソフトな政治姿勢軍拡強硬路線を擬装しようとしているものでありますか。  現実に進められている中曽根政治は、超緊縮財政下にあって、教育福祉予算削減しながら、防衛費だけを突出させ、また、ソ連の脅威を前提とした米国対ソ包囲世界戦略に組み込まれる危険を持った西側同盟への一層の傾斜、集団的自衛権行使への道を開く危険のあるシーレーン防衛など、防衛政策基本原則を逸脱し、危険な軍拡右傾化の道を追求していると断ぜざるを得ないのであります。  昨日の衆議院本会議におけるわが党田邊書記長質問に、総理答弁はきわめて挑戦的でありました。言いっ放し、聞きっ放しの本会議では十分論議を尽くすことはできません。わが党石橋委員長は、総理に対して、この問題に公開討論の提起をいたしております。国民の前で相互の主張を十分述べ合い、国民のそれぞれの理解を深めることが必要だと思います。総理はこの公開討論賛成し、これに応ずべきでありますが、いかがでありますか、総理見解を明らかにしていただきたいのであります。  去る八月十五日には、四月に引き続き、靖国神社に内閣総理大臣としての中曽根康弘として参拝されました。そして政府は、これまで「公式参拝は違憲の疑いを否定できない」とする内閣法制局見解をもって政府統一見解としてきたのでありますが、総理はその見直しを提唱されたのであります。  総理といえども憲法解釈政治的恣意によって 見直そうというような考えは、憲法尊重基本姿勢に欠けるゆえんであって、越権のそしりを免れることはできません。これに対して中国及び韓国のマスコミは、教科書問題のときと同じように一斉に厳しい反応を示しました。「逆流の中の八・一五」「侵略者を美化する日本政府」「軍国主義復活を企てる逆流の現れ」「日帝美化八月の熱病」などと論評し、総理の言う「戦後政治の総決算」とは「戦前への逆もどり」であり、「改憲、防衛力強化への変身」であると危惧の念を表明しているのであります。このことに総理は謙虚に耳を傾けるべきであります。そして、タカ派路線についても反省すべきであり、総理は誠意を持って答えるべきであります。また、靖国問題についても率直な総理見解をお示し願いたいと思います。  時の総理大臣逮捕というロッキード事件は、七カ年の歳月を経て、来月十二日、田中総理に対する一審判決が下されることになっております。  政治最高権力者は、それにふさわしい品位と厳しい道徳性が求められるのは当然であって、田中総理が当初の公判廷において、「総理大臣在職中の汚職容疑逮捕、起訴されたのは万死に値する」と涙を流されたのは、政治倫理について厳しい責任を負わなければならないトップの座にあった政治家の良心と苦悩に満ちた言葉であったはずであります。しかし、田中総理は、みずから潔くけじめをつける道を選ぶことができませんでした。それは、彼の強さではなく、権力に妄執する彼の人間的弱さであると言わなければなりません。  田中総理刑事被告人となり、非党員となりましても、田中派拡大を図り、最大の勢力を保持し、政権交代を操作するキングメーカーとして隠然たる力を持ち続け、中曽根総理誕生の経緯もその例外ではありません。きわめて異常であり、驚くべきことであって、国民政治不信絶望感を深刻にしているのであります。総理はこの現実を容認されるのでありますか、また、どう認識されておりますか。  ロッキード事件を契機にして、国民政界浄化を強く求めてきましたが、政府自民党はこれを黙殺し、自浄努力を怠ってきたのであります。公共事業予算の増額を求めて土建業界グリーンカード反対銀行関係サラ金規制をめぐってはサラ金業界から献金がどっと流れるという利権政治のからくりであります。大企業から巨額の政治献金を受けている自民党が大企業本位政治をするのは当然のことであると思います。かくして、ますます泥沼化した政治金権腐敗の構造と体質は広く金万能の風潮を生み、不正、利権汚職などの不祥事は各界各分野に拡散し、教育、医療の荒廃、青少年問題、人命軽視等々深刻な社会的病根となっているのであります。  田中総理に対する野党の議員辞職勧告決議要求は、政治家政治的、道義的責任を明らかにし、政治倫理を確立しようとするもので、刑事責任とは異質のものでありますが、自民党は多数の力によって不当に妨害し、擁護し続けてきております。自民党は、党も派閥も政治家も、いずれも五十歩百歩であって、彼を擁護することは精神的にも実際的にもみずからを擁護する道であるからでありましょうか。数の力で何でもできる、何でもやろうとするおごりは民主主義と正義に対する挑戦であり、強く反省を求めたいと思います。  総理は、「政治倫理は政党、政治団体が清潔澄明な活動と機能を確保する問題である」と述べられました。その言やよしでありますが、さて総理はこの金権政治の現状をどう認識しておられますか、また、政界浄化政治倫理の確立について何をなさろうとするのでありますか、ここにお示し願いたいのであります。  総理は、政治資金規正法見直し倫理委員会の設置、政治家及び高級公務員資産公開法の制定などに積極的に取り組むべきだと思いますが、御所見を承りたいと思います。  世論調査によれば、国民は来るべきロッキード判決田中総理に有罪の判決があった場合には、八五%が辞職、引退すべきであるとの考えを示しております。総理は、この場合でもこれまでと同じように、三権分立の制度を盾として傍観者的態度をとり続けるつもりでありますか。どのような態度で臨まれるつもりでありますか、伺います。  総理所信表明の中で、「わが国経済はようやく前途に明るさを見出しつつある」と自画自賛しておられますが、国民生活総理の言う「景気底離れ」とはほど遠いものがございます。総理府の家計調査を見るまでもなく、個人消費は一進一退であり、消費水準は前年度比マイナスで、回復の兆しは見られておりません。また、民間設備投資も落ち込んでおり、五十八年一月以降連続六カ月、前年を上回る企業倒産が続いているのであります。総理の言う「景気底入れ」は、「内需不振、外需依存」による輸出好調に支えられたものにすぎないのであります。  政府の「五十八年度経済見通し」によれば、民需主導による成長外需及び政府支出抑制との組み合わせで、名目五・六%、実質三ないし四%の成長を目指したはずであります。ところが、いまもって内需拡大には何らの具体策もないまま、外需は半年を待たずに政府見通しを大きく超える貿易黒字となっているのであります。  総理も御承知のとおり、わが国貿易収支黒字に対し、先ごろOECDは厳しい警告を発し、さらに欧米先進国わが国に対する厳しい批判を強めております。年度の後半には経済摩擦が激化する危険がございます。対日批判高まり輸出が落ち込めば、外需依存わが国景気はたちまち落ち込みに陥るのであります。総理見解を伺いたいと思います。  総理は、「内需回復は力強さを欠いている」と認めておりますが、これは何が原因でありましょうか。それは、口では内需拡大と言いながら、その裏づけが何もなされていないからであります。四月の初めに決めた経済対策の目玉である公定歩合の引き下げは、いまだ実施されておりません。公共事業の前倒しだけが日の目を見たにすぎないではありませんか。  総理内需拡大による景気回復を図るためには、まず個人消費拡大が必要であります。大幅な所得減税人勧仲裁裁定完全実施、住宅や生活環境施設の促進、社会福祉の充実、中小企業対策等々が重要であると思うのであります。景気回復のための内需拡大策をお示し願いたいのであります。あわせて、個人消費拡大の有効な施策であり国民最大切実な願いでもある所得税減税について伺います。  総理は、あなたが選挙中に国民に約束してきた所得税減税はその規模、時期、方法など何一つ明らかにされておりません。ただ減税しますだけでは総理の公約とは言えないのであります。国民の税に対する不満は政治不信をつのらせており、所得税一兆円、住民税四千億円規模年内減税はいまや総理の決断にかかっております。総理の決意を伺いたいと思います。  課税最低限は六年間も据え置かれ、税負担高まり年収三百万円層が二・七倍、一千万円層が一・九倍と、収入の低い層ほど深刻であることが明らかでありますので、減税実施に当たっては、四十九年の一兆七千億円の所得税減税重役減税批判されたと同様の轍を踏むことのないように、減税の重点を年収三百万円から五百万円程度の層に置き、公平な減税とすべきだと考えます。なお、所得税減税の見返りに別の大衆課税強化するようなことはないと約束すべきであります。総理所見を伺います。  次に、八〇年代後半に向かっての税制の問題で配慮しなければならないのは、婦人高齢者教育費の重圧に苦しむ中堅層対策であります。五百万人の婦人パートに対する七十九万円の課税最低限は過酷であり、少なくとも百二十万円程度に引 き上げる必要があります。総理はどのように温かい配慮をしていただけますか、伺います。  ILOの調査によると、男女賃金格差日本が最も激しく、八一年現在、スウェーデンでは九〇・一%、欧州七カ国いずれも七〇%に比べ、日本は四三・四%で、その上、近年、格差拡大の傾向を示しているのであります。女性のパートタイムが多いからではありましょうが、日本女性の低賃金人道上や男女平等上の問題にとどまらず、貿易摩擦などのかかわりで国際的問題となりつつあり、国連の婦人差別撤廃条約早期批准重要課題となっていると思いますが、総理のお考え方針を伺っておきます。  次に、さきに政府が決定した「経済社会展望と指針」に関連して、財政再建について伺います。  この経済展望では、ただ「歳出抑制」と「歳入の確保、借換債の発行を含めて公債発行」というだけで、何ら具体策が示されておりません。しかも、政府の一枚看板であった「増税なき財政再建」には全然触れていないのであります。総理国民政府の放漫な財政政策ツケとして、教育福祉の切り捨てなど行財政改革によって多くの犠牲をこうむっております。「増税なき」という財政再建は今後も堅持すると約束することができますか、お答え願います。  私は、真の財政再建のためには、前年度予算を土台に、高度成長期にはプラスアルファ、低成長期にはマイナス、その歳出カット分は地方自治体や特別会計ツケを回すといったつじつま合わせ予算編成では財政再建ができるはずもなく、同時にまた財政制度全体の見直し改革もできるはずはないと思います。総理財政再建展望もないままに六十五年度赤字公債脱却が実現できると思っているのでありますか。  いま、来年度予算概算要求がなされておりますが、私学補助金児童手当削減を初め、健保被保険者給付率を八割に引き下げるなど、国民生活に大きくしわ寄せをして財政再建を進めようとしているのが明確であります。しかも他方では、防衛費聖域扱いにして、概算要求ではマイナスシーリングどころか、対前年比六・八八%も増大させ、さらに後年度負担二兆五千億円もの正面装備を拡充するというのでありますから、財政再建行財政改革に名をかりた防衛費増大のための歳出抑制予算と言わなければなりません。また、防衛費GNP一%以内とする基本方針は風前のともしびとなってまいりました。これでは総理の言う「公平に痛みを分かつ」ことに反するのではありませんか。  総理マイナスシーリング財政再建と言うならば、防衛費聖域扱いにせず、思い切って一〇%削減をしなければ国民は納得することができません。総理見解を伺います。  わが国社会保障は、昭和四十八年を福祉元年として、経済成長の成果を国民に還元すべく大きく政策転換が図られたはずでありますが、いまやわが国社会保障政策は大きく後退の道をたどりつつあります。わが国高齢化社会は眼前に迫り、国民は迫る高齢化社会に対して深刻な不安と暗い気持ちに沈んでおります。総理著書の中でも政治の座標軸として老後の不安なき生活を挙げていらっしゃいました。老後の不安なき生活、今後の福祉政策について、総理の抱負と構想を伺いたいと思います。  米ソ軍備競争は果てしなき拡大の一途をたどっておりますが、ことし六月のストックホルム国際平和研究所年次報告は、東西両陣営の核軍備増強が続けば、世界の核弾頭の数は現在の約五万発から一九九〇年代の初めには六万発以上にふえ、その精度ももっと向上するであろう、また欧州中距離核戦力配備が本年末から始まれば、NATOとワルシャワ条約機構軍事対決に画期的な新段階をもたらすだろうと警告をいたしております。さらに、米ソによる宇宙軍拡の危険についても指摘をしております。  このような米ソの際限ない軍拡競争は、東西間の緊張を激化させ、全世界人類滅亡核戦争恐怖に陥れているのみならず、両国の経済財政にも深刻な影響を生じさせております。軍備増強軍拡競争人類にとっていかに愚かしいものであるか、謙虚に反省し、北風よりも太陽への道を選ぶべきであります。  総理の強調されている国際社会におけるわが国責任は、こうした米ソ軍拡競争の中にあって、わが国が西側の一員という名のもとに米国の極東戦略、世界戦略の一翼を担うことであってはなりません。国民総理の軍事に偏ろうとする姿勢に深い憂慮の念を抱いております。同時に、緊張緩和、核軍縮の実現のために積極的に米ソに働きかける熱心な行動をあなたに切望していることを肝に銘じていただきたいと思います。総理国民の憂慮と期待にどうこたえられますか。  ルーマニアのチャウシェスク大統領は、本年八月、米ソ首脳に親善を送り、欧州中距離核戦力制限交渉が本年中に合意に達しない場合でも、米ソが新規核配備を自重し、交渉を継続するよう求めたと伝えられております。大変高い見識であると思いますが、総理態度とは大変大きな違いを見せております。私は、総理にも平和、軍縮に対する高い見識と熱意を持ってほしいと思います。  総理は、あなたの著書の中で、「非核地帯の設定とその拡大」は日ごろの主張であると書いており、「二十一世紀への文明を目指して、汎太平洋の経済文化圏の設定」も提唱しております。また、四十億人類の三分の二が、飢え、病苦、貧困にあえいでいることを憂えておりますが、これらは総理になる前のあなたの抱負であります。いまあなたはこれを実行できる立場に立ったのでありますから、これらの課題にこれから具体的に取り組まなければなりません。ここにその具体的な御答弁を示していただきたいと思います。  総理は今国会を行政改革国会と銘打っておりますが、私は、総理は余りにも誇大に宣伝しているように思えてなりません。今国会で審議される行革関連法案は行革の基本とはほど遠いものであるからであります。行政改革は、高度成長という政策目標に向けた諸政策と高度成長時代に形成された構造が見直され、その改革が実行されなければならないのであります。しかるに、企業、特に大企業の保護育成のための補助金や、あるいは不公平税制などは財界の圧力でメスが入りません。複雑に膨張した各省庁の機構の縮小や簡素化は、官僚の抵抗によってほとんど手がつけられません。二百を超す審議会、百ほどの特殊法人は温存されております。  過度の中央集権体制は非能率、不経済であるばかりか、地方自治の自律性と独自性及び創造的活力を奪い、地方の個性に富んだ多様な文化の発展を阻害いたしております。総理も地方分権論者のはずであります。この問題についても少しも前進を見ていないのであります。強者のエゴがまかり通って、弱者いじめの行革となることは断じて許すことができません。総理の行革に対する哲学と今後の展望についてお尋ねいたします。  また、レーガン米大統領が十一月十日、訪日の予定でありますが、国民は、その機会に防衛力の強化、軍事費の増大、それと農畜産物の輸入の拡大を心配をしているのであります。総理から、国民がこのことについて心配しなくともいい、安心できるという御答弁を求めたいと思います。  私は、最後に、総理の性格や能力や才能は独断専行に走る危険があると思います。日本の将来のために憂慮の念を禁じ得ないものがあります。国民の声に耳を傾け、野党の批判や提言にも胸襟を開く謙虚と寛容は、民主政治の要諦であり、過ちなき政治の基本であると思いますが、わが国の運命をも担う総理のこのことに対する心構えについて御答弁を求めまして、私の質問を終わりといたします。(拍手)    〔国務大臣中曽根康弘登壇拍手
  15. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 小山議員の御質問に お答えを申し上げます。  まず第一は、大韓航空機撃墜事件の問題でございます。  この大韓航空機撃墜事件につきましては、ただいま参議院本会議におきまして御決議をいただきましたとおりでございまして、外務大臣が御答弁申し上げましたように、この御決議趣旨にのっとりまして、誠実に努力してまいる所存でございます。  防衛の問題でございますが、いままで申し上げましたように、防衛につきましては三つの点を考えていると申し上げておりました。  まず第一は、みずから国を守るという決意、それからそれに必要な最小限度の質の高い防衛力の整備、第二は、日米安全保障条約によりまして抑止力を維持していくということ、第三番目が、平和そのほか総合政策によりまして、特に外交を重視いたしまして環境の整備を行う、こういうような三つのことを中心にして、わが国の平和外交あるいは防衛政策を展開していると申し上げましたとおりでございまして、その線に沿って努力してまいるつもりでございます。  当面は、国政全般の上におけるバランスを考慮しつつ、「防衛計画の大綱」に定めた防衛力の水準をできるだけ早期に達成するように努力してまいりたいと申しておるところでございます。  次に、私の政策につきまして、特に防衛につきましていろいろ御批判をいただきましたけれども、やはり防衛政策というものは、日本を取り巻く周囲の情勢あるいは世界情勢の変化、これに対しまして鋭敏に対応しつつ、しかも日本憲法やあるいは国是、国策を守りつつこれを行っていくということが大事であると思っております。この一億二千万の国民の生命、財産を守るということが政府の重大責任でございますので、これらの問題はゆるがせにすることはできないのでございまして、その平和と繁栄を求むるという発想のもとに、これを保障していく方法として謙虚にかつ節度をもってこれを遂行していきたいと考えておる次第なのでございます。  なお、石橋委員長と公開討論をやるかという御質問でございましたが、条件、環境がそろえば行うにやぶさかではございませんけれども、しかし、ほかの野党の委員長や書記長の皆さんとのバランスもございます。一番早い方法は、代表質問に石橋先生が立っていただければすぐ公開討論になったところでございまして、そういうチャンスを逸したことを非常に残念に思いまして、今後とも石橋委員長が代表質問にお立ちになることを期待しておる次第でございます。  靖国神社の問題について御質問をいただきましたが、殉国の英霊に対してよく皆様方も黙祷いたしますが、やはり殉国の英霊に対しまして感謝申し上げ、お慰め申し上げるということはどの国でもやっておる普通のことなのでございまして、わが国におきましてもそういう真心をささげるということは大事なことではないかと思っております。  ただ、この公式参拝につきましては、内閣の法制局におきましてもいろいろな意見がございます。したがいまして、これらの疑義等につきましては党でよく勉強しておいてほしい、こういうことで目下、自由民主党において検討をし、勉強をしておるところでございます。このような勉強をし、検討するということは、タブーを設けないという前提からも当然行うべきことではないかと考えておるところでございます。  なお、外国の反応につきましては、外国の方々におかれても殉国の英霊に対して誠意を尽くし、お慰め申し上げるということはやっておることなのでございまして、この事情をよく申し上げれば御理解をしていただけるものであると思いますし、そのような御理解をいただけるような努力をしてまいりたいと考えておるところでございます。  次に、田中総理政治行動等について御質問がございましたが、自由民主党は公党でございまして、機関中心主義で、しかも党議を形成しつつ執行が行われておるわけでございまして、特定の個人の力に左右されるものではない、このことを強く申し上げる次第でございます。  なお、裁判に関して御質問がございましたが、私は判決が近づけば近づくほど静かにこれを見守るというのが正しい態度ではないかと思うのであります。裁判官に予断を与えるような行為をいやしくも行政府や立法府がすることは慎むべきではないか、三権分立を厳に守って、そしてこの裁判の経緯を静かに見守る、そういう態度でまいりたいと思う次第でございます。  次に、行財政改革等につきまして御質問いただき、また政治資金等についても御質問をいただきましたが、政治資金の問題あるいは倫理委員会の問題等につきましては、これは各党各派におきまして十分御相談をいただきまして、その結論を政府としては実行してまいりたいと考えておるところでございます。  経済の問題につきまして御質問をいただきましたが、内需回復がまだ力強さを欠いているということははなはだ残念で、事実でございます。やはりこれは住宅とか、消費とか、あるいは設備投資とかという力がまだ弱くて、輸出に依存しているという点が目につくところでございます。すでに、本年四月—七月の間におきまして、わが国の経常収支の黒は約八十一億ドルに上っております。これらの黒字に対する対策も、いま政府といたしましてはいろいろ検討を進めておるところでございまして、できるだけ近く対策を発表いたしたいと考えておるところでございます。  内需拡大につきましては、四月五日の経済対策閣僚会議において決定した政策をいま力強く推進しておるところであり、今後とも適切かつ機動的な政策運営を行い、特に民間活力を引き出すという点に力を入れて政策をいま努力しておるところでございます。新聞にも報道されましたが、東京その他の大都市等におきまして国公有地の活用ということを現実的に実現していこうということで、いま一生懸命努力しておるところでございます。  減税につきましては、衆議院議長見解に基づきまして、与野党の意向を踏まえこれを実施いたしますと、これはこの壇上から先日申し上げたところでございます。ただ、その時期、内容等につきましては税制調査会におきましていま審議を進めていただいておるところでございまして、この審議をさらに促進いたしまして実行いたしたいと考えておるところでございます。  婦人の差別撤廃条約の問題につきましては、できるだけ早い時期に批准すべく環境の整備をいま行っておるところでありまして、政府といたしましては八五年を目途にこの批准を完了いたしたいと考えております。  次に、財政再建の問題でございますが、増税なき財政再建の理念は堅持してまいるつもりでございます。そのためには、歳入歳出全般の構造的見直しというものを強く行っていく必要があると思ってやっておるところでございます。  特例公債依存体質からの脱却につきましては、すでにこの八年を目途にしてその体質から脱却すべく、申し上げたとおりでございまして、そのためにも最大限に歳出のカット、経費の節約等々を中心にして行い、さらにまた民間活力の培養等によりまして、長期的に見て税収増等も考えまして、それによりましてバランスを得るように努力してまいりたいと思っておるところでございます。  歳出抑制につきましては、防衛関係費につきましても他の経費とのバランスを考え、また財政事情等も考えまして、真に必要な経費にとどめたいと考えております。  ただ、この点につきましては、国際的な関係もございまして、前内閣以来約束いたしました防衛に関する国際的約束というものは実行していかなければならないと考えております。  社会保障につきましては、高齢化社会におきまして、充実した家庭を基盤として、健康で生きがいのある生活を送れるということがわれわれの目標でございます。そのためには、活力ある社会を目指しまして、社会保障国民生活の基盤として、長期的に安定して有効に機能できるようにしていくことが大事でございます。現在の財政状況等を見ますと、やはりある程度改革を加えませんと、この社会保障全体の基盤に影響してくる危険性もなきにしもあらずでございまして、長期的安定ということを目標に総合的な対策を講じていく、こう考えております。  しかし、保健とか医療とか年金とか、社会福祉各方面につきましては、やはりわれわれは十分な配慮をいたしていかなければならないと考えております。  国際社会におけるわが国の立場でございますが、国際関係の相互依存関係が非常に激しくなってきておる現在でございます。平和も繁栄も一国だけではこれを維持することはできない、そういう状況になりまして、日本はより国際国家としてみずからの責任も行い、また発言も行うという状況に来ていると思っておるのでございます。  特に、わが国は被爆国といたしまして、平和の維持、核軍縮の推進という点については特に力を入れなければならないと考えて、政府もその考えに立って努力してまいるつもりでございます。そのために、具体的には米ソ間の軍備管理交渉の進展、核実験の全面禁止、あるいは核不拡散体制の維持強化を目指して努力をしてまいります。  先般のウィリアムズバーグのサミットにおきまして、INF関係につきまして政治声明を発しましたが、私の当時の最大の関心事は、ソ連のSS20の配置の問題につきまして、日本やアジアの犠牲においてこれが解決されてはならないということなのでございます。日本やアジアの犠牲においてこの問題が解決されないようにするためには、平和やあるいは核軍縮の問題については世界の国々と協力し合う、特に自由世界の国々と協力して、そして具体的には、レーガン大統領とアンドロポフ書記長との会談でこれが現実化するという情勢でございますから、レーガン大統領がその方向に進みやすいように足場を築くという意味においてわれわれはあの声明をつくったのでございます。  特に、この二月ごろでありましたか、アメリカのブッシュ副大統領が西欧各国を回りましたときに、グローバルベースでこの問題は解決すべきであるという主張に対して、一部の国では不透明な答弁があったのであります。これを非常に心配いたしまして、やはりアジア、日本犠牲において解決してはならないということを貫徹するためには、西欧諸国とも協調し、連帯関係に立ち、政治的な部面におきましてはわれわれも協調体制の中に入る。そういう考えを持ちまして、その面についてはわれわれも協調する。そのかわりアジアや日本犠牲においてSS20の問題を解決しないということを確保したのでございまして、私は、日本の安全保障や世界の平和のためには妥当な措置であると考えておる次第でございます。  非核地帯及び太平洋地帯の問題でございますが、私は前から、われわれの理想としては民族非武装人類武装、これがわれわれの理念である、こういうことを申し上げておりまして、非核地帯を広げていくということは、われわれがこの目標に向かっていくための一里塚であると言ってきておるのでございます。そういう意味においては、その理念を私は理念として堅持しておるものでございます。できるだけその方向に今後とも努力してまいりたいと思いますが、やはり政治現実でありますから、安全保障は確信の持てる安全保障体制に持っていかなければならないのでありまして、その確信の持てるということは、たとえば具体的な検証措置を伴って相互信頼が可能であるような措置までいかなければ具体性はないわけでございます。そういうことが確保できる方向に進めるように一歩一歩進みまして、そしていまのような理念を実現していくように努力してまいりたいと考えておるところでございます。  また、太平洋地域につきましては、特に東アジアの太平洋圏というものは世界の中でも最もダイナミズムに富んだ、活力を持った、今後の世界の発展の一番有望な地帯であると考えております。ASEAN諸国等はそうでございます。あるいはオーストラリア、ニュージーランド等も含めた地域もそうでございます。それらとともに日本は繁栄するような考え方に立ちまして、いずれ太平洋地域全体の平和と繁栄のためのもくろみを進めていく必要があると思っています。  現在、姉妹都市であるとか、あるいは知事会議であるとか、あるいは学者の交流であるとか、あるいは民間財界人のいろいろな計画であるとか、さまざまなものがございますが、この民間の諸活動を次第次第に統合して、そして友好的な一つのユニティーにつくり上げていくということが次の目標ではないか。その過程において、関係各国政府としてひざを乗り出してきて、その民間活動と調和を合わせながら目標に向かって進んでいくというのが具体的段取りではないかと考えておるところでございます。  特に、南北問題につきましては、わが国最大の関心を持っておる問題でございまして、この南北問題解決という趣旨も含めて太平洋問題というものも考慮していきたいと考えておるところでございます。  行革に対しましては、すでに前から申し上げておりますように、明治以来わが国は発展途上国から先進国に脱却してきたわけでございますが、これには中央集権制度、あるいは各省の割拠、いわゆる官僚システムの強化というような形で先進国への追いつきが行われました。しかし、今日の状態になりますと、これだけ民主主義が発展し、市民社会の岩盤が広がり、経済的な成熟度を加えました折から、いままでのような許認可を中心にして、官僚を中心にして社会が動くということではもう行き詰まってきておるわけでございます。そういう意味において、行政を簡素効率化して、許認可から自由度をさらに増して、民間を主体に活動をさせていく社会にいくべきである、これが行革の大きな理念の一つであります。  また、最近の高度経済成長以来肥大化した行政や政府関係機関を整理するということも国民の御希望に沿った道でございまして、そういう意味におきましていま鋭意努力しており、その構想は、臨時行政調査会の数次にわたる答申に盛られておるところでございます。哲学もその中に込められております。したがいまして、この臨時行政調査会の数次にわたる答申を誠実に実行していくというのが私の考え方でございます。  レーガン大統領の訪日につきましては、日本の最友好国の元首でございますから、われわれは誠意を込めて歓迎申し上げたいと思っております。レーガン大統領がもし日本においでになる場合には、やはり世界情勢、あるいは特に核軍縮、INFの問題、あるいは南北問題等々の世界的問題について隔意なき懇談をいたしたいと思いますし、また、二国間の問題、通商問題やらあるいは文化、科学技術の協力問題等についても話し合いをいたしたいと思いますし、文化交流の問題につきましてもさらに密接な関係を持つように努力してまいりたいと思っております。  いずれにせよ、十一月はコール首相もおいでになり、あるいは胡耀邦総書記もおいでになる、世界日本を注目しておる月であると思っております。したがいまして、世界の平和と繁栄のために実りのある会談を行いたいと念願をいたしておりまして、御鞭撻をお願いいたしたいと思う次第でございます。  国民や野党の批判や声をよく聞けという御質問、御鞭撻でございますが、まさに私もそのように考えております。私も至らないところが多々ありますので、野党の皆様方からもいろいろ教えて いただきまして遺憾なきを期したいと思っておる次第でございます。よろしくお願いいたします。(拍手、「答弁漏れ」と呼ぶ者あり)
  16. 木村睦男

    議長木村睦男君) 答弁の補足があります。中曽根内閣総理大臣。    〔国務大臣中曽根康弘登壇拍手
  17. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 答弁漏れがありまして失礼をいたしました。  従来、硬派的な、タカ派的な発言をしておったのがソフトに変わったりしたのはどういう理由か、変化の理由説明せよ、こういう御質問でございますが、私が総理・総裁に就任いたしましたときは、実は国際関係が非常に緊迫してむずかしい状況にあったのでございます。経済摩擦あるいは安全保障問題あるいは教科書問題等々におきまして、日本は孤立化の寸前とも言うべき状態にありまして、非常に憂うべき状態にあったわけでございます。  そういうような状態を切り開いていくという点も考え、やはりある程度日本考え方をはっきり世界に示して、政治の座標の軸を世界の前にも明らかにし、国民の皆様方の前にも明らかにするということが大事である、そのように考えまして、安全保障の問題やあるいは国際環境の問題等について、日ごろ考えていることを私は率直に申し上げました。  しかし、その内容も、たとえば一連の防衛関係に対する発言にいたしましても、日本憲法及び従来政府がやってまいりました国是、国策のもとにおきましては、ここまではやれるんだというガードレールの範囲をはっきりした。いままでその点があいまいであったと思うのです。しかし、憲法や個別的自衛権の範囲内においてこの限度はやれるのだというガードレールを、世界にも国民の皆様にもはっきりいたしまして、そして、そのもとにわれわれは政策を遂行していくということを指し示したわけであります。そういう意味において、国際的にも霧が晴れるように誤解はなくなったし、信頼を増したのではないかと私は思っております。  また、経済摩擦につきましても、一連の市場開放措置をやらなければなりません。一連の市場開放措置をやるにつきましては、国民の皆様の御協力をいただかなければならないので、それには苦痛を伴うことでございますから、やはりがまんしてくださいというときにはがまんしてくださいと申し上げてきたのでございます。そういうような時代の要請等に基づきまして一連発言をした。しかし、それによって大体国民の御納得もいただきまして、それで国際環境の問題は一応手を打った。そこで内政に移りまして、そして、がんやら教育やら、あるいは緑やらいろいろなことを申し上げたのでございます。  そういうわけで、政治には手順というものがございますから、それを追って進めたということを御理解願いたいと思うのであります。  次に、金権政治に対する所見いかんということでありますが、金権政治というものがもしあるとすれば、これはよくないことでございまして、われわれはこれはあくまで直さなければならぬものであると思います。  施政方針演説でも申し上げましたように、やはり政治家個々の道徳性の問題、それから政党や政治団体が澄明な運営を行うという問題、あるいはさらに民主政治に対して代表著が一人一人責任感を充実させて、十全の機能を発揮して国民の御期待におこたえするという積極的な面、こういうものはやはり政治倫理関係する問題であると思いまして、そういうような問題につきましても、今後引き締めてまいりたいと思う次第でございます。(拍手)     ─────────────
  18. 木村睦男

    議長木村睦男君) 嶋崎均君。    〔嶋崎均君登壇拍手
  19. 嶋崎均

    ○嶋崎均君 私は、自由民主党・自由国民会議を代表して、当面する内外の重要問題につきまして、総理ほか関係閣僚に質問をいたします。  本国会は、戦後新憲法のもと、初めて国会が召集されてから百回目の国会であります。総理が述べられたように、この間に日本の議会制民主主義はきわめて豊かに発展してまいりました。東洋の一隅に位置する一敗戦国が、三十八年の間平和を維持し、国民の自由と人権を大きく伸長して、世界でも屈指の秩序と繁栄を自負する社会を築き上げてきましたことは、まさにこの議会制民主主義のもとに国民の創意と工夫が十分に発揮された成果にほかなりません。  私は、この大部分の期間を通じて政権を担当してきた自由民主党の一員として、国民各位の努力に深い敬意を表し、先人達の苦労をしのびつつ、皆様とその喜びを分かち合いたいと思うのでございます。  しかしながら、総理、この記念すべき第百回国会の冒頭に、ソ連機のミサイル攻撃による大韓航空機撃墜というきわめて非人道的な事件について言及せざるを得ないことは、まことに遺憾と言わなければなりません。  まず、ここに、日本人二十八名を含む乗員乗客二百六十九名の方々に対し深い哀悼の意を表し、御家族の皆様方の御心痛に対し心から御同情を申し上げる次第であります。  撃墜の事実を公表するすることを渋っていたソ連も、国際批判に耐えかねて、先日ようやく外国人記者団との会見を行ってこれを認めましたが、相変わらず真実を隠蔽し、大韓航空機領空侵犯のみを強調して、みずからの行為を正当化しようとしています。しかし、いかなる理由があろうとも無防備、無抵抗民間航空機撃墜することは、国際法に違反するばかりでなく、人道においても許すことはできません。ましてや、その責任を日米両国に転嫁しようとしていることはまことに言語道断であります。  政府は、このソ連の暴挙に対しすでに一定の措置を講じましたが、二度とかかる事件の生じないようにすることこそ重要であると思います。政府は、その再発防止について今後どのような対策を講ずべきであるか、総理の御所信をお伺いしたいと思います。  今回の事件は、はしなくも極東における軍事情勢の厳しさを改めて露呈いたしましたが、事件の意味するものは決してこれのみにとどまらず、今後の国際社会のあり方について大きな問題を投げかけているように感じられます。  新聞報道によれば、ある犠牲者の父君は、「防衛とは人の命を守るものであるはずなのに、これでは本末転倒だ。政治が人間の生命をいかに軽く考えているかということがよくわかった」と述べられたとのことであります。国家主権を守るとの口実のもとに最愛の人々を奪われた御家族の悲しみや怒りは、一体どこにやり場を求めたらいいのでしょうか。ソ連犠牲者に対して一応の弔意を表しはしたものの、謝罪補償の意をあらわすどころか、同様の事態が生ずれば再び撃墜を繰り返すことを辞さないと言明して恥ずるところがありません。このような国家主権の異常な強調と極端な解釈が、国際政治に対して各国民を絶望に駆り立て、無力感に陥れていることに、私は深い憂慮を覚えるものであります。  国際社会はおいて、体制も思想も異なる国が共存していくため最も必要とされるのは、国境に遮ぎられているとはいえ、各国民が同じ人間同士であるという共感を抱くことであります。この共感こそ、世界の平和が立脚する相互理解の最大の基盤と言えましょう。国際政治の役割りは、その基盤の強化努力することにあります。  第二次大戦後に国際連合が生まれたとき、各国民が抱いたのは、国際連合がかかる役割りを果たすとの期待ではなかったでしょうか。しかるに、国際連合の現状は、遺憾ながらこうした期待にこたえているとは申せません。  確かに大韓航空機撃墜事件は国際的に大きな問題となり、国際連合の緊急安保理事会に非難決議 が上程されました。しかし、本朝、ソ連の拒否権の行使により否決されたのであります。したがって、これらはソ連に対する有効な措置とはなり得ませんでした。もし今後このような事件が繰り返され、国家間の不信や対立がその解決の場のないままエスカレートし、しかも諸国民の国際政治への絶望の度が深まって、「暴に報いるに暴をもってする」というような態度が正当化されるようになるならば、人類の滅亡に至る戦争への導火線となりかねません。  私は、いまこそ、国際連合が戦争の惨害から将来の世代を救い、国際間の平和と安全を維持するため力を合わせるという諸国民の決意のもとに創設された原点を想起すべきではないかと思うのであります。この点について総理の御見解をお伺いしたいと存じます。  ところで、このような緊迫する情勢下において、今後のわが国の外交、防衛方針はいかにあるべきでありましょうか。私は、中曽根総理が御就任以来、積極的な首脳外交を展開し、世界の平和問題を初め経済、防衛等の問題について国際的な責任を果たすべく努力してこられたことに深い敬意を表するものであります。  そこで、平和と軍縮を中心とする問題について伺いたいと思います。  今日の世界の平和が核兵器を含む軍事力の均衡によって維持されていることは厳しい現実であります。戦後、わが国は戦争を国際紛争解決の手段とすることを放棄し、平和国家として独自の努力を続けてまいりました。そのわが国が今日まで平和と安全を享受し得たのは、価値観を共有する西側社会の一員として、米国との同盟関係を堅持し、みずからも独自の防衛力を整備して国際間における力の均衡に寄与し、国際紛争に巻き込まれることを抑止してきたからにほかなりません。非武装中立論は、みずからの防衛努力を放棄し、国際間の外交、軍事の常識を欠く身勝手な議論であって、幻想と現実を混同したものと言わざるを得ません。かかる政策をとるならば、わが国は国際的な孤児となり、みずからの存在と自由を失うことになるでありましょう。総理はこうした非武装中立論に対しどのような御見解をお持ちか、お伺いいたしたいと存じます。  もとより、わが国の防衛は、平和憲法のもと専守防衛に徹し、さらに非核三原則を堅持することを基本としており、いささかも侵略的なものであってはなりません。また、この独自の立場から、わが国軍縮、軍備管理についての努力を最も積極的に推進すべき国だと言えます。とりわけ、欧州における米ソ間の中距離核兵器削減交渉、いわゆるINF交渉は、欧州のみならずアジア、そしてわが国にとっても重要な関心事であります。  また、先般の大韓航空機事件に関する九月九日のオガルコフソ連参謀総長の発言によると、「侵略機はカムチャッカに接近した。同機はソ連戦略核戦力の最重要基地に向けて真っすぐに飛来した」とあるが、これは、はしなくもわが国周辺にソ連の戦略核基地が存在することを認めたものであります。この事実を聞くにつけ、ソ連の核の脅威をまざまざと実感せざるを得ないのであります。  総理は、さきのウィリアムズバーグ・サミットにおいて、このINF交渉がグローバルな観点から解決を図られるべきだということを主張し、これが確認されたと申されましたが、同交渉並びに核兵器廃絶問題について今後どのように対処するおつもりか、総理の御所信をお聞きしたいと思います。  国際政治における国際連合の機能弱化と同じく、国際経済においても、その戦後の秩序と発展の支柱であったガット、IMF体制が弱まりを見せ始めております。石油ショックに誘発された各国の経済的な困難、とりわけ社会問題化した失業率の増大は、保護貿易主義的な風潮を助長し、各所で経済摩擦を引き起こしてきました。そうした中で、本年度の貿易収支の黒字は政府見通しを大幅に上回ることが予測されていますが、このままでは欧米各国から強い反発を招くことは必至でありましょう。政府は、この経済摩擦貿易黒字問題にどのように対処されるおつもりか、総理並びに外務大臣の御所信を伺いたいと思います。  国際経済の現状を悪化させているもう一つの要因は、開発途上国が抱える巨額の債務累積と一次産品価格の値下がり問題などであります。  私は、総理が先般のサミットにおいて、「南の繁栄なくして北の繁栄なし」と主張し、各国首脳の賛同を求められたことを高く評価するものでありますが、政府開発援助を五年間で倍増するという新中期目標の初年及び第二年目に、いずれも前年を下回る実績にとどまったことは、まことに残念であります。言うならば、この新中期目標は一つの国際公約であります。しかも、防衛で限界を有するわが国にとって、政府開発援助はわが国がなし得る国際社会への最も大きな貢献の一つであります。私は、経済開発途上国援助について政府に特段の配慮を行うべきことを要請し、この点について総理並びに外務大臣の御見解を伺いたいと存じます。  もとより、外交に関しては、これまで述べてきた以外の面をも含めて、多面的かつ総合的な努力が必要であります。この点、総理は、わが国経済面だけではなく、政治面、文化面においても世界的役割りを果たす国とならなければ真の国際国家たり得ないと指摘されました。この際、総理の説かれる国際国家のイメージについて、さらに具体的に御説明を願いたいと存じます。  次に、内政問題に移り、まず行政改革についてお伺いいたします。  総理は、今次臨時国会を行革国会と規定し、今国会に提案された行革関連五法案及び継続二法案の成立に不退転の決意をもって当たることを言明されました。私は、行政改革を求める国民的要請にこたえて、ここに行革国会が開催されることの意義を高く評価するものであります。  申すまでもなく、行政は内外環境と国民の多様な要望の変化に即応すべきものであります。経済の高度成長の中で肥大化した行政を簡素にして効率的なものとするため、徹底した行政組織の簡素化、合理化と施策の見直しを進め、国民負担の軽減に努めなければなりません。また、行政の民間への過剰な介入は、冗費節約の面からも、また経済社会の活力を引き出すという面から考えても、厳しく戒めらるべきものと考えます。  このような基本理念に立って、わが党は、今日まで一貫して行政改革の必要性を強く主張し、これを実行してまいりました。当面の行政改革に関する課題は、本年三月任務を終了した臨時行政調査会の五次にわたる答申を最大限に尊重し、これを受けて設定された新行政改革大綱を実施することにあると思います。わが党は、これらに指摘された課題を着実に具体化することによって、国民の期待にこたえていく決意でありますが、総理にまず今後の行政改革を推進していくに当たっての基本的な姿勢についてお尋ねしたいと存じます。
  20. 木村睦男

    議長木村睦男君) 嶋崎君、しばらくお待ちください。      ─────・─────
  21. 木村睦男

    議長木村睦男君) この際、御紹介いたします。  国賓として来日されておりますアイルランド大統領パトリック・ヒラリー閣下御夫妻は、多忙な日程を割かれて本院を訪問され、ただいま貴賓席にお見えになりました。本院としてまことに喜びにたえません。  ここに、諸君とともに、心からなる歓迎の意を表します。    〔総員起立拍手〕      ─────・─────
  22. 木村睦男

    議長木村睦男君) 質疑をお続けください。
  23. 嶋崎均

    ○嶋崎均君(続) 次いで、去る五月二十四日に閣議決定されました新行政改革大綱の具体化をどう進めていくかについてお伺いいたしたいと思います。  去る八日提出された行革関連五法案は、臨調解散後における行政改革施策のいわばトップバッターと目されるものでありますが、これらの改革案が全体計画の一環としてどのような位置づけになっているのか、また、今後の行政改革のスケジュールをどうお考えになっておられるのか、政府の御意思を伺いたいと思います。  そのうち、総務庁設置法案は、政府における総合調整機能の活性化を図るため、総理府本府と行政管理庁の基幹事務を統合して総務庁を設置するものであります。今回の改革は、戦後初めて中央省庁を統合して、国家公務員の人事、組織、定員の一元的執行を期待したものでありますが、その意義及び今後の組織運営についてお伺いいたします。  国鉄改革と並んで行政改革の大きな柱である日本電信電話公社の経営形態の改革問題については、通信サービスの高度化と事業の活性化等の観点から早急にその具体化を図るべきものと考えています。この問題は、日本専売公社問題と並んで来通常国会に改革案が提出されることになっておりますが、現在、多方面において種々の構想が伝えられております。政府は今後どう対処されるのか、行政管理庁長官の基本的なお考えをお尋ねいたします。  次に、財政問題と予算編成についてお伺いいたします。  最初は、財政改革の必要性についてでありますが、二度にわたる石油危機を契機として世界経済全体が困難に逢着する中で、わが国経済も深刻な不況とインフレに同時に見舞われるという大きな試練に立たされました。わが国民はこの世界的な試練を創意と工夫によってみごとに乗り切り、今日わが国経済は、成長率、インフレ率、失業率のいずれをとっても、他の先進国と比べ格段にすぐれた実績を示しております。  この過程にあって、財政は、景気の落ち込みを防ぐことに多大な寄与をいたしましたが、その結果、みずからの限度を大きく超えたのであります。すなわち、累年にわたる巨額な公債の発行を続けたわが国財政は、その後の経済情勢や政策転換の立ちおくれもあって、きわめて不均衡な状態に陥りました。公債の発行残高はすでに百兆円を突破し、本年度末には約百十兆円にもなると見込まれております。昭和五十八年度予算における国債費は八兆一千九百億円に達し、昭和五十九年度概算要求額においては、対前年度比三一・三%も増加して、十兆七千億円にも及んでおります。  すなわち、毎年累増する国債費はついに歳出費目のうち第一位を占め、一般政策費を極度に圧迫して、国民生活上必要とされる経費ですら抑制せざるを得ない状態に立ち至っているのであります。このままでは、時代と国民のニーズに即応しなければならない財政が、その対応力を喪失し、国民経済にとって取り返しのつかない事態を招来することは必至でありましょう。政治は、いまこそ思い切った財政改革に乗り出すべきときであると思います。  総理は、所信表明演説で「昭和六十五年度までに特例公債依存体質からの脱却と公債依存度の引き下げに努め、財政の健全化に取り組む」との決意を表明されました。財政の現状と内外の経済情勢を考えるとき、総理の勇断を高く評価するものであります。  しかし、七年後の昭和六十五年度までに特例公債依存からの脱却を図るとすれば、単純に計算して、毎年度一兆円ずつの特例公債発行を減額してまいらなければなりません。この点に関し、今後いかなる方途により六十五年度までに特例公債依存体質からの脱却を図るお考えであるか、お伺いいたします。  第二次臨時行政調査会は「増税なき財政再建」の方針を明示しております。総理も「増税なき財政再建の理念」を堅持する旨の意思表示を行ってこられたのであります。この際、改めて総理の御所信をお尋ねいたします。  増税によらずに特例公債依存体質からの脱却を図るためには、歳出の徹底した削減を図ってまいらなければなりません。他方、国際情勢や社会経済情勢の変化、科学技術の進歩に伴って、新たに多様な要望が発生してくることは当然予想されるところであります。こうした事態に対応し、財政は単に歳出の総額を一律に抑制するだけではなく、費目によっては思い切った削減もしくは廃止を断行し、必要とされる政策に原資を振り向けていかなければなりません。これは言うべくしてきわめて困難なことであります。そこにこそ政治の洞察と勇気が必要とされるのであります。これらの諸点につきましてはいかがでありましょうか。  国債費の累増による政策費の圧迫や急速な人口の老齢化によって、経費の削減は年金や医療など社会保障の面で制度の改正にまで踏み込まなければならないこともありましょう。また、負担の不均衡、世代間にわたる不公正の是正に留意し、制度の不備によって著しく不利益をこうむる者のないよう十分に配慮することが肝要であると思います。これらの点について、総理及び大蔵大臣の御所見をお尋ねいたします。  なお、わが国財政についてOECDは構造的赤字であると指摘しております。この構造赤字を改善し、国民各層間の税負担の公正を確保するためには、歳出面のみならず歳入面からの見直しが必要となるのではないかと思いますが、この点関係大臣のお考えをお尋ねいたします。  予算編成は、鈴木前内閣以来、ゼロシーリング、マイナスシーリング歳出抑制強化し、増税なき財政再建の道を歩み始めました。中曽根内閣は、昭和五十九年度予算編成に当たって、マイナス一〇%シーリングという一層厳しい歳出削減方針を導入されました。いよいよ骨身に達する段階に立ち至ったのであります。その意味でこのたびの予算編成はきわめて重要であります。政府当局の勇断を高く評価するとともに、この方針を貫き通されることを強く期待するものであります。この点について総理並びに大蔵大臣の御決意を伺いたいと存じます。  これと関連して、昭和五十八年度の人事院勧告の取り扱いについてお尋ねいたします。  昭和五十七年度においては、厳しい財政事情のゆえをもって、国家公務員やこれに準ずる皆様方に対し人事院勧告に伴う給与改定の見送りをお願いいたしました。財政事情は今年度においてはますます厳しいものがあり、その完全実施は容易ではない事態に置かれているように思いますが、その処理の方針について総理の御所見をお伺いいたしたいと存じます。  次に、今国会の重要課題の一つである減税問題についてお尋ねいたします。  中曽根総理所信表明の中で、昭和五十二年以来減税が見送られ、勤労者や家庭の主婦の間に減税の実施に対する要望が高まっていることにこたえて、必ずこれを実現すると減税実施の決意を明らかにされました。財源が極度に窮迫している折から、御苦心の多いところであろうと思います。財政再建のさなか、六年ぶりに実施する減税であります。減税案の内容については、行財政改革の大方針に合致するものでなければなりません。また、財源についても十分な検討と配慮が必要であると信じます。これらの諸点について総理の御見解をお伺いいたします。  次に、災害対策についてお伺いいたします。  本年は日本海中部地震、島根、山口両県の集中豪雨、台風五号による被害などの災害が相次ぎました。不幸にして亡くなられた方々の御冥福をお祈りし、被災者の皆さん方に心からのお見舞いを申し上げます。  わが党においては、これら被災地へ数次にわたって調査団を派遣し、被災者のお見舞いとあわ せ、被害状況の把握、災害対策の取りまとめを行い、政府へ早急に対策を講ずるよう要請しておるところであります。政府でもこれを受けて、すでに激甚災の指定など応急措置が講じられておりますが、速やかな災害復旧のため早期査定、着工を進めるとともに、災害復旧費の前倒しを実施していただきたいのであります。  また、今回の災害に顧み、避難命令の伝達、災害情報の収集等のための防災無線の整備、地震予知の推進と震災対策、台風、豪雨に備えた国土保全施設の整備など、総合的な施策の対応が必要であると考えますが、これに対する政府のお考えを御答弁願います。  最後にお伺いしたいことは、わが国の将来に対する政策の選択の問題であります。以下、各般にわたる重要課題について、私の問題意識をまとめて申し上げます。  近年、わが国においては、いわゆる新技術の開発が飛躍的に進み、産業経済の分野に新たなフロンティアを切り開きつつあります。IC革命、産業ロボットの導入、マイコンの普及、光通信など情報通信の高度化、遺伝子工学やバイオマス、新素材の開発など、生活や社会の質的向上に無限の可能性を秘めた新技術が相次いでいます。  経済審議会の報告によれば、今後二十一世紀に至る間も、わが国はなお経済成長と産業の高度化に対する高い可能性に恵まれているということであります。われわれは、労働人口、貯蓄率、技術革新などの国民の間に存在する潜在的成長力と条件を発揮し得るよう、政策の選択に十全の配意をしなければなりません。いま、不透明な前途に対し、きわめて慎重な対応をしているわが国民も、行財政改革が断行され、信頼するに足る未来の展望が示されれば、経済、社会、文化など多方面にわたって意欲的にその活動を展開し、進んでその進路を切り開くはずであります。とりわけ高齢化社会の急速な到来が予想されるとき、それに備えて高齢者の雇用や社会参加あるいは福祉政策の面で整合性のある政策が展開されなければなりません。  他方、立ちおくれている農業の生産性を高めて世界に通ずる農業を築くことは、総合安全保障の立場からもなおざりにはできません。  また、社会資本の蓄積、とりわけ市街地の開発や住宅の規模、質、両面にわたる充実も必要であり、それには土地政策の見直し、税制や金融面での工夫を行って、民間活力を積極的に活用することが望まれる次第であります。  わが国の社会をわずかな期間にのみ咲き誇るひ弱な花であらしめてはなりません。われわれの文化を継承し、家を継ぎ、社会を発展させていくのは子供たちであり、孫たちであります。その意味で、子供の教育わが国社会の未来そのものであります。画一的であり、学習専門で受験中心の教育を改め、伸びやかな個性を尊重し、独立や自由を重んずる教育に転換しなければなりません。近年、学園の荒廃が指摘され、学校教育制度見直しが叫ばれておりますが、教育は現在の社会が次の世代に負う責務として社会全体の課題なのであります。  以上申し上げた幾つかの視点は、次の時代を展望し切り開くために、いまわれわれが解決し、乗り越えなければならぬ重要な課題であると存じます。これらの諸点について、総理並びに関係大臣の御所見をお伺いいたしたいと思います。  わが自由民主党は、中曽根内閣が誕生してから、四月に統一地方選挙、六月に参議院選挙を戦い、そのいずれにおいても勝利をおさめました。これは、内外の重要課題の山積する中で、政局の安定を図りつつこれらを解決せよとのわが党に対する国民の意思のあらわれであります。われわれはこの負託に何としてもこたえなければならないと思います。われわれの担うべき任務は重く、その達成は決して容易ではありません。  しかしながら、われわれは戦後の政治史上最大の難事とも言うべき行財政改革を成就して、その基盤の上に新たな世紀を迎えなければならないと思います。わが党は、この大事業のため全力を傾ける決意であります。個々の党員が私心を捨て、その身を正すべきは言うまでもないことであります。ここに集って議する者、その立場はおのおの異なっているかもしれません。しかし私は、いずれもこの国民的課題を託された同志であると信じております。議論を尽くして、託された本国会の使命をみごとに果たし、本院の歴史に輝かしい真価を発揮すべきであると思います。  以上をもって私の代表質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣中曽根康弘登壇拍手
  24. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 嶋崎議員の御質問にお答えをいたします。  まず、大韓航空機撃墜事件でございますが、本件につきましては、再発を防止するためにソ連が今回の事件真相を明らかにし、その責任を認め、かつこの不法行為に対する再発防止のための具体的な保障を行うということが大事であると思います。政府といたしましては、このような方向に向かって各国と協力をして努力してまいるつもりであります。  なお、国際民間航空の安全という観点からは、国際民間航空機関、ICAOにおきまして、このような事件再発防止の諸方策が検討されておりますが、これらの点につきましても積極的に協力してまいりたいと思う次第でございます。ICAOはこの十五日から理事会が開催される予定になっております。  次に、国際連合の創設の原点を想起せよという御質問でございますが、国際連合が世界の平和に果たしてきた役割りは偉大でありまして、多少国際連合の諸般の機能について不十分の点がありましても、このような国際機関が存在すること自体に大きな意義があるのでありまして、失望をしてはならぬと思いますし、常に機能強化に今後とも努めていくべきであると考えております。  非武装中立論につきまして御意見がございましたが、私は、マッカーサー元帥に占領されておりましたころ非武装中立論を言われるというのは、一種のレジスタンスであり、ナショナリズムの表現でもありまして、理解できるところであったと思います。しかし、独立した後も同じような考えを持って一貫されるということは、これは変化に対する対応力においていささかどうであるかと、そういうふうに私は思うのであります。政治は評論ではなくして、現実国民の生命、財産を守るという現実的保障の行為でございますから、そういう点において、対応力についていささかどうかと思うのです。  また、「非武装中立論」を読んでみますと、いざというときには降伏した方がいいという印象のことがございます。それで太平洋戦争の末期に降伏したのがよかったではないかということが書かれておりますが、あのときと、あらかじめ降伏しようというときとではまるきり条件が違いますし、相手も違うわけでございます。もし一たんそういうような言動が国の指導者からなされる場合には、現在の国際環境からすれば、侵略を誘発する危険性がまたあると考えざるを得ないのであります。もしそういうようなことで一たん侵略が行われたという場合に、本によればストライキであるとか、あるいはハンガーストライキであるとか、ゼネストで帰すのだと言っておりますが、アフガニスタンの現状を見れば、十万の大軍が入って、帰る気配は一向ございません。あれだけ激しいゲリラ活動があっても帰らないのであります。  そういう政治現実に目覚めますと、非武装中立論はいかがであるか。もしそういうようなことで外国軍隊が侵入するということになれば、憲法は破壊されてしまうわけです。マッカーサー元帥のもとでも旧憲法は機能停止でございます。憲法自体が破壊されてしまうような事態が予想されるという考え方は、これは護憲にあらずして、憲法を破壊することを誘導するという結果になり かねないと私は考えておるのであります。  そういう点におきましても、これはよほど検討を要する部分があると思っております。特に、現在、たとえば満州におきまする残留孤児の問題等を考えてみますと、やはり終戦のときに満州に外国軍隊が侵入してきて、その後遺症ともとらるべきものがあの悲惨な残留孤児の問題であるわけです。あるいはアフガニスタンの問題も考えてみますと、政治現実は実に冷厳なものがあるということを国民の皆さま方にあえて申し上げたいと思うのであります。  次に、オガルコフ参謀総長の御発言を引用なさいましたが、私もあの九月九日のテレビを注目して見ておりました。ソ連の軍とそれから政府と党の要職の方が三人そろって世界のテレビの前で声明をしたわけであります。その中に、カムチャッカに戦略核の要地があるということを言明されました。世界の指導者が、どこに核兵器があるということを言ったということは余りないと思います。それをソ連の指導者が世界の前でテレビで公言したということは非常に重大なことではないか。われわれの近所にそういう物騒なものがあるということはこれは黙過できないことで、われわれは、沖縄からも核兵器を撤去し、非核三原則を守っている国であります。  そういう意味におきまして、この問題についてわれわれは重大関心を持ち、そういう物騒なものは速やかに撤去してほしいと要望するものであり、また、軍縮議員連盟におきましてもかかる方面の活動を期待するものなのであります。  次に、INFの問題、核兵器の問題について御質問がございましたが、わが国軍事大国にならず、非核三原則を守り、そして平和国家として生きていくという方針を堅持しておるのでありまして、国連における軍縮委員会等におきましても積極的に努力してまいりたいと思います。核実験の全面禁止の早期実現、あるいは核不拡散体制の強化等、あるいはINF、STARTの成功を祈る、そういう意味におきまして、アメリカやソ連の首脳部ができるだけ早期に会談を行ってその実を上げるように、私たちも側面から努力する必要があると考えております。先般のサミットにおける私の行動は、そういう趣旨に基づいて行った行動であると御理解願いたいのであります。  経済摩擦の問題につきましては、すでに本年四—七月の間で経常収支季節調整済みで八十一億ドルの黒字となっておりまして、この問題はわれわれは大きく考えなければならぬポイントであります。したがいまして、いま政府内部におきましてこの経済摩擦等に対する調整政策を検討しておるところで、できるだけ早期にこれを発表して実現していきたいと思っております。  なお、政府開発援助につきましては、新中期目標のもとで引き続いてこれを遂行してまいるつもりでおりまして、この厳しい財政状況のもとにおきましても、概算要求は一一・四%の増ということで要求させておるのであります。  国際国家のイメージとしては、何といっても平和国家、そして文化を追求する国というイメージを強く植えつける必要があると思いまして、今後とも努力してまいるつもりでおります。  なお、ウィリアムズバーグにおきまして、南の繁栄なくして北の繁栄なしと私言明いたしましたが、南北問題につきましても、かつてわれわれは発展途上国であったのでございまして、それらの国のことについて十分配慮する必要があると思っております。  行革推進の基本姿勢につきましては、臨時行政調査会の答申にその哲学、その方向が盛られております。これを忠実に粘り強く不退転の決意で実現していくというのが私の考え方でございまして、御協力をお願い申し上げる次第でございます。  財政再建につきましては、まさに御趣旨のとおりでございまして、われわれはさらに厳しくこの問題に向かっていかなければならぬと思っておるわけでございます。  特に、人口の高齢化や社会情勢の激変に対応するだけの対応力を財政につくり上げていくということは急務でございまして、しばらくはがまんもし、またやるべきことはやっていかなければならぬと考える次第でございます。  増税なき財政再建の理念はこれを堅持してまいりまして、歳入歳出、全面的に構造的な見直しも行っていかなければならないと思います。  社会保障制度につきましては、厳しい予算の中でありますけれども、できるだけの措置をしていきたいと思っております。特に、医療とか年金とかあるいは高齢者対策等につきましては誠意を持って努力してまいりたいと思っておりますが、むだの排除という点もまたおろそかにできない問題でございます。  さらに、歳出削減につきまして御質問がございましたが、前から申し上げているように、行財政の守備範囲の見直しということを中心に努力してまいります。  人事院勧告につきましては、給与関係閣僚会議におきまして、勧告制度尊重という基本的たてまえに立って、国政全般との関連において検討しておるところでございます。  減税につきましては、与野党の意向を踏まえた衆議院議長見解に基づき、必ずこれを実施いたします。内容、時期につきましては、いま税制調査会で至急中間答申を出していただくように努力しておるところでございます。  災害復旧につきましては、激甚災害の指定等早期に実行したところでございますが、早期査定、事業の実施等について努力してまいります。また、前倒しにつきましても、早期復旧、二次災害の防止を期する観点から適切に処理してまいりたいと考えております。  総合的な災害対策、特に防災情報の伝達体制の確立という点について特に今回考えさせる問題がありまして、努力してまいるつもりでございます。  地震につきましても、地震予知のための観測研究体制をさらに強化してまいるつもりであります。  高齢化社会対策につきましては、雇用あるいは生きがいという面から考えなければならぬと思っております。やはり老人について一番大事なのは、孫と一緒におれることと仕事を持つことではないかと思います。そういう思いやりのこもった高齢者対策というものを考えてまいりたいと思います。  農業の問題につきましては、前から申し上げておりますように、食糧の安定供給、安全保障、あるいは国際的対応、さまざまな点を調和がとれるように努力してまいりますが、やはり一番大事な点は、構造政策の推進、生産性の向上というものが基本ではないかと考えます。  民間活力の活用につきましては鋭意努力しておるところでございまして、積極的にできるだけ早期に具現するように、実効性が上がるようにいま鋭意努力しておるところでございます。とりあえずは国鉄その他の国公有地、特に公務員宿舎の膨大な土地等の活用について、いま具体的に進めておるところでございます。  教育改革についての御意見につきましては全く同感でございまして、今後とも教育改革につきましては、誠意を持って努力してまいりたいと思います。  残余の答弁は関係大臣から答弁させていただきます。(拍手)    〔国務大臣安倍晋太郎登壇拍手
  25. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 御質問の第一点は、最近の国際経済情勢、特に保護貿易主義の台頭、あるいはまた経済摩擦わが国貿易黒字の増加等についてのお尋ねでありますが、世界経済情勢の現状につきましては、御承知のように米国を初めといたしまして景気回復が着実に進んでおるわけであります。しかし、失業率は構造的な要因もあ りましていまなお高く、これを背景といたしまして、保護貿易主義的な傾向も根強いものがあることは御案内のとおりであります。  ウィリアムズバーグ・サミットにおきましては、この保護貿易主義を巻き返さなければならない、こういう合意が見られまして、今後、二国間及びガットあるいはOECDの場を通じまして作業が進められますが、わが国もこうした作業に、保護主義を防遏して自由貿易体制を推進するという立場から積極的に参加してまいる考えでございます。  また、最近のわが国の国際収支は四月から七月で経常収支約八十一億ドルという状況にあるわけでございますが、これは原油価格の低下であるとか、あるいはドル高によるところの輸入の低迷ということが主因になっております。しかし、政府としてはこれを重要視いたしまして、いま総理が答弁いたしましたように、これに対する対策をいま準備いたしておるわけであります。  第二点は、政府開発援助、ODAの新中期目標が、倍増という目標がいわば国際的な公約ではないか、いまの状況では達成できないのではないかという御心配でございます。  わが国政府開発援助に関しましては、これを重要な国際的な責務として、新中期目標のもとで経済、技術協力の一層の充実に努めておりますが、一九八一年及び一九八二年の実績をドルベースで見ますと、御指摘のとおり、確かに前年を下回っております。これは国際開発金融機関への出資が減少したということ及び円安等がこの要因でございます。しかし、円ベースで見ますと、一九八二年につきましては、対前年比で増加をしておりますことは御案内のとおりであります。  この新中期目標は、わが国がかねて内外に表明してきたものであります。わが国としては今後とも同目標のもとでODAの拡充に最大努力を続けていく考えです。こうした観点から、政府開発援助につきましては、昭和五十九年度予算要求におきまして、厳しい財政状況にはありますが、一一・四%、各予算の中で最も高い伸びで要求をいたしておるわけでございます。何とぞこの要求が達成できますように、ひとつ御支援のほどをお願い申し上げる次第であります。(拍手)    〔国務大臣齋藤邦吉君登壇拍手
  26. 齋藤邦吉

    国務大臣(齋藤邦吉君) 嶋崎議員にお答え申し上げます。  私に対する質問は三点ございますが、第一点は、今般の行革五法案の位置づけの問題でございますが、五法案は、臨調最終答申後の政府としての行政改革の全体構想、すなわち新行政改革大綱の具体化の一環でありまして、きわめて重要な第一段階の措置として位置づけるものであります。  その内容は多岐にわたりますが、いずれも行政機構の改革、行政事務の簡素合理化等のため当面ぜひとも講じなければならない法律改正事項を取りまとめたものでありまして、今後における行政改革推進のための重要な基礎となるものでありますので、ぜひとも御理解を得たいと存じます。  今後における行政改革のスケジュールについてのお尋ねでございますが、基本的な方針はすでに新行政改革大綱において設定済みでありますので、今後このスケジュールに従って着実にその推進を図ってまいりたいと考えております。  第二問は、総務庁設置の意義及び今後の組織運営についてのお尋ねでございます。  総務庁の設置等今回の機構改革は、最近における行政需要の変化に即応し、総合的かつ効率的な行政の推進を図るため、臨時行政調査会の答申の基本的方向に沿って、総理府本府及び行政管理庁の組織と機能を統合再編成し、総理府の外局として総務庁を設置し、行政管理庁を廃止しようとするものでございます。  総務庁は、行政機関の人事、機構、定員及び運営の総合調整機能と行政監察機能の総合的運用を図りますとともに、青少年対策等の特定の行政施策の総合調整機能をあわせて有するものとして、政府における総合調整機能の活性化とその総合的発揮を図ることといたしております。さらに、統計の重要性にかんがみ、総理府本府と行政管理庁の統計行政部局を統合再編し統計行政の中枢的機能を確立することといたしております。  総務庁は、今回御提案申し上げておりまする設置法案において、昭和五十九年七月一日から発足させることといたしておりまして、法律案成立後、速やかに発足準備を進め、その円滑かつ十全な機能発揮に万全を期したいと考えております。  第三点は、電電公社改革の問題についてのお尋ねでございます。  日本電信電話公社の改革につきましては、去る五月二十四日閣議決定されました新行革大綱において、所要の法律案を次期通常国会に提出すべく準備を進めることとされておりまして、目下政府部内においてその線に沿うて鋭意準備を進めておるところでございます。  電電公社の改革に当たりましては、今後の情報化社会の進展の中において電気通信事業に求められているあり方は何か、事業の効率的な運営のあり方は何か等、広い観点から政府部内において十分協議していくべき課題であると考えております。  具体的には、今後政府部内において、郵政大臣を中心に関係大臣の協力のもとに立案作業をとり進め、関係方面とも十分調整を図りつつ、関係法案の具体的準備を進めるべきものと考えておる次第でございます。(拍手)    〔国務大臣竹下登君登壇拍手
  27. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 私に対する御質問は四点ございます。  まず第一点は、六十五年度までに特例公債依存からの脱却の問題であります。  「一九八〇年代経済社会展望と指針」におきまして努力目標を示されたところでありますが、財政を取り巻く諸情勢は流動的でありますので、この努力目標も幅のあるものと考えております。したがって、今後努力目標へ向けてどのようなテンポで特例公債の減額を進めていくか、これにつきましては、そのときどきの情勢を総合的に勘案しながら、毎年度最大限の努力を重ねてまいりたい、このように考えております。  経済全体が流動的である中で、経済の一部門である財政の将来についてのみ、あらかじめ定量的な実行計画を策定するということになりますと、これは困難な問題が数あります。  なお、今後、中長期の観点から財政改革をどのように進めるかにつきましては、臨調答申、また「展望と指針」、これらを踏まえながら整合性のある検討を行う必要があると考えております。このために、先般財政制度審議会に小委員会を設置をお願いをいたしまして、中期的な財政運営の諸問題の検討に着手していただくことになったところであります。その結果等を参考にいたし、五十九年度予算編成後、中期的な財政展望を作成いたしますとともに、今後の財政改革を進めていく上で基本となる考え方を明らかにするよう努力してまいりたい、このように考えております。  次は、総理からもお答えがございましたが、八月三十一日に出そろいました五十九年度概算要求に当たりましては、各省庁でそれぞれ所管の予算を根底から厳しく洗い直して、まず歳出内容の思い切った合理化、効率化への御努力をいただくことといたしました。  そこで、そういう観点に立って、社会保障関係費の場合、あらゆる制度を検討の対象として見直しを行っていくといたしましても、社会保障関係費に大きなシェアを占めて、しかも相当なテンポで増加することが見込まれておりますところの医療、年金等の経費につきまして見直しを図る必要があると考えられていま提出されておる概算要求というようなものになったというふうに承知をいたしております。  それから三番目には、いわゆるOECDの対日経済報告書につきましての御指摘であります。  この対日経済報告におきましては、わが国財政が構造的な赤字の状況にあって、財政赤字の削減を図っていく必要が高まっているという指摘がなされておることは承知いたしております。  政府といたしましては、現在のわが国財政は容易ならざる状況にあること、そして国民各層間の税負担の公平な配分を確保する必要があること等を勘案いたしますならば、御指摘のとおり、歳出面のみならず歳入面においてもその公正化、適正化を図っていくことが必要である、このように考えております。  最後に、マイナスシーリングの問題でございます。  総理からもお答えがありましたとおり、この概算要求段階から歳出削減、合理化を行っていただいたところでございますが、今後はこの概算要求を出発点といたしまして、まず歳出面において行財政の守備範囲を見直すなどの見地から、既存の制度、施策についても改革を行うという基本的な考え方に立ってさらに積極的に取り組んでまいる決意であります。  以上でお答えを終わります。(拍手)    〔国務大臣塩崎潤君登壇拍手
  28. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) 嶋崎委員の御質問にお答えいたします。  御質問は、わが国の将来に対する政策の選択いかんというきわめて幅の広い御質問でございました。  この点につきましては、先般閣議決定をいたしました「一九八〇年代経済社会展望と指針」の中に示されているところでございますが、つまり八〇年代は、まず第一に、エレクトロニクスなど先端技術を中心とした技術革新がさらに進展していく、その結果、経済の効率化と、そうして新しい需要が創出されていく、このようなことが期待されることでございます。第二は、どんな工業国よりも家計の貯蓄率は高い水準で推移していく、そうして経済拡大に役立つ、このように期待されることでございます。第三点は、日本独自の優秀な労働力の供給についても七〇年代と同程度のものが期待される、このような社会的な基盤が予想されるところでございます。  私どもは、このすぐれた社会基盤の上で八〇年代にふさわしい政策、つまり、御指摘のような行財政改革、高齢化対策、農業の生産性向上、社会資本の整備、個性的な教育政策、このような各種の広範な政策を着実に展開して、そうして国際経済社会にも貢献していくことが必要であると、このように考えているところでございます。  以上でございます。(拍手
  29. 木村睦男

    議長木村睦男君) 質疑はなおございますが、これを次回に譲りたいと存じます。御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  30. 木村睦男

    議長木村睦男君) 御異議ないと認めます。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時十四分散会