○
国務大臣(
中曽根康弘君) 小山議員の御
質問に
お答えを申し上げます。
まず第一は、
大韓航空機撃墜事件の問題でございます。
この
大韓航空機撃墜事件につきましては、ただいま参議院本
会議におきまして御
決議をいただきましたとおりでございまして、
外務大臣が御答弁申し上げましたように、この御
決議の
趣旨にのっとりまして、誠実に
努力してまいる所存でございます。
防衛の問題でございますが、いままで申し上げましたように、防衛につきましては三つの点を
考えていると申し上げておりました。
まず第一は、みずから国を守るという決意、それからそれに必要な最小限度の質の高い防衛力の整備、第二は、日米安全保障条約によりまして抑止力を維持していくということ、第三番目が、平和そのほか総合政策によりまして、特に外交を重視いたしまして環境の整備を行う、こういうような三つのことを中心にして、
わが国の平和外交あるいは
防衛政策を展開していると申し上げましたとおりでございまして、その線に沿って
努力してまいるつもりでございます。
当面は、国政全般の上におけるバランスを考慮しつつ、「防衛計画の大綱」に定めた防衛力の水準をできるだけ早期に達成するように
努力してまいりたいと申しておるところでございます。
次に、私の政策につきまして、特に防衛につきましていろいろ御
批判をいただきましたけれども、やはり
防衛政策というものは、
日本を取り巻く周囲の情勢あるいは
世界情勢の変化、これに対しまして鋭敏に
対応しつつ、しかも
日本の
憲法やあるいは国是、国策を守りつつこれを行っていくということが大事であると思っております。この一億二千万の
国民の生命、財産を守るということが
政府の重大
責任でございますので、これらの問題はゆるがせにすることはできないのでございまして、その平和と繁栄を求むるという発想のもとに、これを保障していく方法として謙虚にかつ節度をもってこれを遂行していきたいと
考えておる次第なのでございます。
なお、石橋委員長と
公開討論をやるかという御
質問でございましたが、条件、環境がそろえば行うにやぶさかではございませんけれども、しかし、ほかの野党の委員長や書記長の皆さんとのバランスもございます。一番早い方法は、代表
質問に石橋先生が立っていただければすぐ
公開討論になったところでございまして、そういうチャンスを逸したことを非常に残念に思いまして、今後とも石橋委員長が代表
質問にお立ちになることを期待しておる次第でございます。
靖国神社の問題について御
質問をいただきましたが、殉国の英霊に対してよく皆様方も黙祷いたしますが、やはり殉国の英霊に対しまして感謝申し上げ、お慰め申し上げるということはどの国でもやっておる普通のことなのでございまして、
わが国におきましてもそういう真心をささげるということは大事なことではないかと思っております。
ただ、この
公式参拝につきましては、
内閣の法制局におきましてもいろいろな意見がございます。したがいまして、これらの疑義等につきましては党でよく勉強しておいてほしい、こういうことで目下、自由民主党において検討をし、勉強をしておるところでございます。このような勉強をし、検討するということは、タブーを設けないという前提からも当然行うべきことではないかと
考えておるところでございます。
なお、外国の反応につきましては、外国の方々におかれても殉国の英霊に対して誠意を尽くし、お慰め申し上げるということはやっておることなのでございまして、この事情をよく申し上げれば御理解をしていただけるものであると思いますし、そのような御理解をいただけるような
努力をしてまいりたいと
考えておるところでございます。
次に、
田中元
総理の
政治行動等について御
質問がございましたが、自由民主党は公党でございまして、機関中心主義で、しかも党議を形成しつつ執行が行われておるわけでございまして、特定の個人の力に左右されるものではない、このことを強く申し上げる次第でございます。
なお、裁判に関して御
質問がございましたが、私は
判決が近づけば近づくほど静かにこれを見守るというのが正しい
態度ではないかと思うのであります。裁判官に予断を与えるような行為をいやしくも行
政府や立法府がすることは慎むべきではないか、三権分立を厳に守って、そしてこの裁判の経緯を静かに見守る、そういう
態度でまいりたいと思う次第でございます。
次に、
行財政改革等につきまして御
質問いただき、また
政治資金等についても御
質問をいただきましたが、
政治資金の問題あるいは
倫理委員会の問題等につきましては、これは各党各派におきまして十分御相談をいただきまして、その結論を
政府としては実行してまいりたいと
考えておるところでございます。
経済の問題につきまして御
質問をいただきましたが、
内需の
回復がまだ力強さを欠いているということははなはだ残念で、事実でございます。やはりこれは住宅とか、消費とか、あるいは設備投資とかという力がまだ弱くて、輸出に依存しているという点が目につくところでございます。すでに、本年四月—七月の間におきまして、
わが国の経常収支の黒は約八十一億ドルに上っております。これらの黒字に対する対策も、いま
政府といたしましてはいろいろ検討を進めておるところでございまして、できるだけ近く対策を発表いたしたいと
考えておるところでございます。
内需の
拡大につきましては、四月五日の
経済対策閣僚
会議において決定した政策をいま力強く推進しておるところであり、今後とも適切かつ機動的な政策運営を行い、特に民間活力を引き出すという点に力を入れて政策をいま
努力しておるところでございます。新聞にも報道されましたが、東京その他の大都市等におきまして国公有地の活用ということを
現実的に実現していこうということで、いま一生懸命
努力しておるところでございます。
減税につきましては、衆議院
議長の
見解に基づきまして、与野党の意向を踏まえこれを実施いたしますと、これはこの壇上から先日申し上げたところでございます。ただ、その時期、内容等につきましては税制
調査会におきましていま審議を進めていただいておるところでございまして、この審議をさらに促進いたしまして実行いたしたいと
考えておるところでございます。
婦人の差別撤廃条約の問題につきましては、できるだけ早い時期に批准すべく環境の整備をいま行っておるところでありまして、
政府といたしましては八五年を目途にこの批准を完了いたしたいと
考えております。
次に、
財政再建の問題でございますが、
増税なき
財政再建の理念は堅持してまいるつもりでございます。そのためには、歳入
歳出全般の構造的
見直しというものを強く行っていく必要があると思ってやっておるところでございます。
特例公債依存体質からの脱却につきましては、すでにこの八年を目途にしてその体質から脱却すべく、申し上げたとおりでございまして、そのためにも
最大限に
歳出のカット、経費の節約等々を中心にして行い、さらにまた民間活力の培養等によりまして、長期的に見て税収増等も
考えまして、それによりましてバランスを得るように
努力してまいりたいと思っておるところでございます。
歳出の
抑制につきましては、防衛
関係費につきましても他の経費とのバランスを
考え、また
財政事情等も
考えまして、真に必要な経費にとどめたいと
考えております。
ただ、この点につきましては、国際的な
関係もございまして、前
内閣以来約束いたしました防衛に関する国際的約束というものは実行していかなければならないと
考えております。
社会保障につきましては、
高齢化社会におきまして、充実した家庭を基盤として、健康で生きがいのある
生活を送れるということがわれわれの目標でございます。そのためには、活力ある社会を目指しまして、
社会保障は
国民生活の基盤として、長期的に安定して有効に機能できるようにしていくことが大事でございます。現在の
財政状況等を見ますと、やはりある
程度の
改革を加えませんと、この
社会保障全体の基盤に影響してくる危険性もなきにしもあらずでございまして、長期的安定ということを目標に総合的な対策を講じていく、こう
考えております。
しかし、保健とか医療とか年金とか、
社会福祉各方面につきましては、やはりわれわれは十分な配慮をいたしていかなければならないと
考えております。
国際社会における
わが国の立場でございますが、国際
関係の相互依存
関係が非常に激しくなってきておる現在でございます。平和も繁栄も一国だけではこれを維持することはできない、そういう状況になりまして、
日本はより国際国家としてみずからの
責任も行い、また
発言も行うという状況に来ていると思っておるのでございます。
特に、
わが国は被爆国といたしまして、平和の維持、核
軍縮の推進という点については特に力を入れなければならないと
考えて、
政府もその
考えに立って
努力してまいるつもりでございます。そのために、具体的には
米ソ間の軍備管理交渉の進展、核実験の全面禁止、あるいは核不拡散体制の維持
強化を目指して
努力をしてまいります。
先般のウィリアムズバーグのサミットにおきまして、INF
関係につきまして
政治声明を発しましたが、私の当時の
最大の関心事は、
ソ連のSS20の配置の問題につきまして、
日本やアジアの
犠牲においてこれが解決されてはならないということなのでございます。
日本やアジアの
犠牲においてこの問題が解決されないようにするためには、平和やあるいは核
軍縮の問題については
世界の国々と
協力し合う、特に自由
世界の国々と
協力して、そして具体的には、
レーガン大統領とアンドロポフ書記長との会談でこれが
現実化するという情勢でございますから、
レーガン大統領がその方向に進みやすいように足場を築くという意味においてわれわれはあの声明をつくったのでございます。
特に、この二月ごろでありましたか、アメリカのブッシュ副大統領が西欧各国を回りましたときに、グローバルベースでこの問題は解決すべきであるという主張に対して、一部の国では不透明な答弁があったのであります。これを非常に心配いたしまして、やはりアジア、
日本の
犠牲において解決してはならないということを貫徹するためには、西欧諸国とも協調し、連帯
関係に立ち、
政治的な部面におきましてはわれわれも協調体制の中に入る。そういう
考えを持ちまして、その面についてはわれわれも協調する。そのかわりアジアや
日本の
犠牲においてSS20の問題を解決しないということを
確保したのでございまして、私は、
日本の安全保障や
世界の平和のためには妥当な
措置であると
考えておる次第でございます。
非核地帯及び太平洋地帯の問題でございますが、私は前から、われわれの理想としては民族非
武装、
人類武装、これがわれわれの理念である、こういうことを申し上げておりまして、非核地帯を広げていくということは、われわれがこの目標に向かっていくための一里塚であると言ってきておるのでございます。そういう意味においては、その理念を私は理念として堅持しておるものでございます。できるだけその方向に今後とも
努力してまいりたいと思いますが、やはり
政治は
現実でありますから、安全保障は確信の持てる安全保障体制に持っていかなければならないのでありまして、その確信の持てるということは、たとえば具体的な検証
措置を伴って相互信頼が可能であるような
措置までいかなければ具体性はないわけでございます。そういうことが
確保できる方向に進めるように一歩一歩進みまして、そしていまのような理念を実現していくように
努力してまいりたいと
考えておるところでございます。
また、太平洋地域につきましては、特に東アジアの太平洋圏というものは
世界の中でも最もダイナミズムに富んだ、活力を持った、今後の
世界の発展の一番有望な地帯であると
考えております。ASEAN諸国等はそうでございます。あるいはオーストラリア、ニュージーランド等も含めた地域もそうでございます。それらとともに
日本は繁栄するような
考え方に立ちまして、いずれ太平洋地域全体の平和と繁栄のためのもくろみを進めていく必要があると思っています。
現在、姉妹都市であるとか、あるいは知事
会議であるとか、あるいは学者の交流であるとか、あるいは民間財界人のいろいろな計画であるとか、さまざまなものがございますが、この民間の諸
活動を次第次第に統合して、そして友好的な一つのユニティーにつくり上げていくということが次の目標ではないか。その過程において、
関係各国が
政府としてひざを乗り出してきて、その民間
活動と調和を合わせながら目標に向かって進んでいくというのが具体的段取りではないかと
考えておるところでございます。
特に、南北問題につきましては、
わが国は
最大の関心を持っておる問題でございまして、この南北問題解決という
趣旨も含めて太平洋問題というものも考慮していきたいと
考えておるところでございます。
行革に対しましては、すでに前から申し上げておりますように、明治以来
わが国は発展途上国から先進国に脱却してきたわけでございますが、これには中央集権
制度、あるいは各省の割拠、いわゆる官僚システムの
強化というような形で先進国への追いつきが行われました。しかし、今日の状態になりますと、これだけ
民主主義が発展し、市民社会の岩盤が広がり、
経済的な成熟度を加えました折から、いままでのような許認可を中心にして、官僚を中心にして社会が動くということではもう行き詰まってきておるわけでございます。そういう意味において、行政を簡素効率化して、許認可から自由度をさらに増して、民間を主体に
活動をさせていく社会にいくべきである、これが行革の大きな理念の一つであります。
また、最近の高度
経済成長以来肥大化した行政や
政府関係機関を整理するということも
国民の御希望に沿った道でございまして、そういう意味におきましていま鋭意
努力しており、その構想は、臨時行政
調査会の数次にわたる答申に盛られておるところでございます。哲学もその中に込められております。したがいまして、この臨時行政
調査会の数次にわたる答申を誠実に実行していくというのが私の
考え方でございます。
レーガン大統領の訪日につきましては、
日本の最友好国の元首でございますから、われわれは誠意を込めて歓迎申し上げたいと思っております。
レーガン大統領がもし
日本においでになる場合には、やはり
世界情勢、あるいは特に核
軍縮、INFの問題、あるいは南北問題等々の
世界的問題について隔意なき懇談をいたしたいと思いますし、また、二国間の問題、通商問題やらあるいは文化、科学技術の
協力問題等についても話し合いをいたしたいと思いますし、文化交流の問題につきましてもさらに密接な
関係を持つように
努力してまいりたいと思っております。
いずれにせよ、十一月はコール首相もおいでになり、あるいは胡耀邦総書記もおいでになる、
世界が
日本を注目しておる月であると思っております。したがいまして、
世界の平和と繁栄のために実りのある会談を行いたいと念願をいたしておりまして、御鞭撻をお願いいたしたいと思う次第でございます。
国民や野党の
批判や声をよく聞けという御
質問、御鞭撻でございますが、まさに私もそのように
考えております。私も至らないところが多々ありますので、野党の皆様方からもいろいろ教えて
いただきまして遺憾なきを期したいと思っておる次第でございます。よろしくお願いいたします。(
拍手、「答弁漏れ」と呼ぶ者あり)