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政府委員(石川弘君) 実は負債総額で申しますと、はっきり統計上つかんでおりますのはまだ五十六
年度までの数字でございますが、これは固定化負債という意味ではございませんで、いわば負債の残高ということでございますから、これがすべて固定化しているわけではございませんが、酪農経営で申しますと
全国平均で五十六
年度末の借入金残高は九百四十一万六千円でございます。この中の約五〇%が農林漁業金融公庫のような財政資金でございますので、これは償還期限の比較的長いものでございます。残りの四二%が系統資金、それからその他資金が八%という構成でございまして、酪農に関します限りは大変財政資金の比重が高い。したがって、償還条件等もかなり弾力的なものと
考えております。この残高は逐次増高いたしておりますけれ
ども、問題になりますのは一頭当たり貸付金残高とか、あるいはその中で固定化するものはどれだけかということでございます。この種のものにつきましては、御承知のように五十六
年度に負債整理をいたします際にわれわれが都道
府県を使いまして
調査をしまして、いろいろ階層分けをしたわけでございますが、その後その種の
調査は実はいたしておりませんが、一般的に申しますと固定化負債の累増という傾向はとまっておりまして、どちらかというと償還期限の延長等によって一回当たりの償還金、それから一頭当たりの償還金等につきましてはほぼ増加傾向がとまり、かつどちらかと申しますと交易条件がよくなったこと等も
考えまして、一般的に酪農家そのものが言っておりますように若干の明るさが見えてきたというような
段階ではなかろうかと思います。
それから、肉用牛経営でございますが、これは同じように肉用牛の中の肥育経営で申しますと、一戸当たりの平均的な借入金残高は五百六十八万一千円でございまして、この中では系統資金が四百二十万ということで比較的多うございまして、財政資金は六十一万というぐあいに、肉用牛の肥育経営につきましては、これは御承知のように短期の資金運用でございますので、いわば系統資金の比重が高うございます。ここにおきましても一頭当たりの負債残高につきましては、これはむしろ若干減少するというような数字が五十六
年度に出ております。その後のむしろ五十七、八の方が異動が大きくなってきているわけでございますが、これは統計的な
把握をまだ完全にいたしておりませんので、若干その後の傾向は、先ほど酪農で申し上げましたような感触で申し上げますと、その後の交易条件は必ずしも悪化をしていない。素畜の価格
関係、えさの価格
関係等を含めましても悪化はしていないと思っております。
それから、資金でございますが、先ほどちょっとお答えしましたように、酪農につきましては五十六
年度に百六十三億円、五十七
年度に百三十七億円、二年間で合計三百億円の負債整理資金の貸し付けを完了いたしておりまして、これは金利がいわば系統資金約一割ぐらいの資金から三・五%あるいは五%、三・五%物がかなりの比重、半分以上を占めておりますけれ
ども、そういうぐあいに金利が軽減されたことが農家にとっては何よりも大きい負担の軽減でございます。
それから、償還期限につきましては、御承知のように肉畜でも七年という形で延ばしておりますので、一回当たりの償還額というものはかなり軽減をされております。
それから、負債整理をいたしますときの条件としまして、農協等がみずから貸しております既貸付金につきましても条件緩和をするようにという指導をいたしておりますので、その種の条件も緩和をされております。
それから、今回の貸し付けにつきましては単に金利負担を軽減するというだけではなくて、借入金の中には必ずしも健全とは思われないような、たとえば生活資金的なものが非常に過大な比重を占めているとか、そういうものにつきまして県とか農協、畜産界を通じます濃密指導を
実施いたしておりますので、その種の面でも若干の向上が見られるかと
考えております。
それから、肉用牛につきましては、先ほど申し上げましたように、五十七
年度で総額四百四十六億円の貸し付けをいたしておりまして、この額は都道
府県から申請がありました総額そのものでございます。
今後でございますが、酪農につきましては、この制度をつくります際に五十六年から六十年にかけて安定的に借りかえをしていくということになっておりまして、実は毎年毎年見直しをするという
約束でございます。五十八年まではこうでございましたが、五十九
年度以降のことを申し上げますと、条件としてはむしろ、たとえば本
年度限度数量の増とかいろいろなことをやっております。それから市乳の原乳価格等の向上も見られますので、ことしの三月の条件よりもむしろいい条件になるのではないかと思っております。
肉用牛につきましては、継続的にやるということにはなっておりません。したがいまして、毎
年度の価格設定の際にその
必要性を見ながらこういうことをやるかどうかを決めてまいりたいと思っております。
このほかに御承知のように、自作農維持資金を使いました負債整理は別途行われておりまして、これは金額的にはそう大きいものではございませんが、毎年たとえば五十七
年度の実績で申しますと、肉用牛
関係で十四億の自作農資金が出ておりますし、酪農
関係で三十二億の自作農資金が出ております。