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1983-11-26 第100回国会 参議院 内閣委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年十一月二十六日(土曜日)    午前十時一分開会     ─────────────    委員異動  十一月二十六日     辞任         補欠選任      山本 富雄君     村上 正邦君      本岡 昭次君     和田 静夫君      穐山  篤君     野田  哲君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         高平 公友君     理 事                 亀長 友義君                 坂野 重信君                 小野  明君     委 員                 板垣  正君                 岡田  広君                 源田  実君                 沢田 一精君                 林  寛子君                 林  ゆう君                 堀江 正夫君                 村上 正邦君                 穐山  篤君                 野田  哲君                 矢田部 理君                 和田 静夫君                 太田 淳夫君                 峯山 昭範君                 内藤  功君                 柄谷 道一君    国務大臣        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 後藤田正晴君        国 務 大 臣        (総理府総務長        官)       丹羽 兵助君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  谷川 和穗君    政府委員        人事院総裁    藤井 貞夫君        人事院事務総局        給与局長     斧 誠之助君        総理府人事局長  藤井 良二君        防衛庁参事官   新井 弘一君        防衛庁参事官   西廣 整輝君        防衛庁長官官房        長        佐々 淳行君        防衛庁防衛局長  矢崎 新二君        防衛庁人事教育        局長       上野 隆史君        防衛庁衛生局長  島田  晋君        防衛庁経理局長  宍倉 宗夫君        防衛庁装備局長  木下 博生君        防衛施設庁長官  塩田  章君        防衛施設庁施設        部長       千秋  健君        防衛施設庁労務        部長       木梨 一雄君        科学技術庁原子        力安全局長    辻  栄一君        外務大臣官房審        議官       恩田  宗君        大蔵大臣官房審        議官       水野  勝君        大蔵省主計局次        長        的場 順三君        運輸大臣官房総        務審議官     西村 康雄君        消防庁長官    砂子田 隆君    事務局側        常任委員会専門  林  利雄君    説明員        外務省北米局審        議官       山下新太郎君        外務省北米局安        全保障課長    加藤 良三君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案(第九十八回国会内閣提出、第百回国会衆議院送付) ○防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案(第九十八回国会内閣提出、第百回国会衆議院送付) ○一般職職員給与に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付) ○特別職職員給与に関する法律及び国際科学技術博覧会政府代表設置に関する臨時措置法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付) ○防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 高平公友

    委員長高平公友君) ただいまから内閣委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  本日、本岡昭次君が委員を辞任され、その補欠として和田静夫君が選任されました。     ─────────────
  3. 高平公友

    委員長高平公友君) 防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 峯山昭範

    峯山昭範君 まず初めに、空中給油機導入の問題について、昨日もお伺いをいたしましたが、もう少しお伺いしておきたいと思います。  大臣は、この問題については大臣の権限としてこういう空中給油機導入する考えはないと明確にきのうおっしゃっておりました。防衛局長の御答弁の中で、五九中業でこの問題は検討するということで、五九中業ということですからこれは来年度のあれである、したがっていまのところは全くそういうふうな検討考えていないと、そういうような答弁があったわけでございますが、これはまず局長、五九中業は確かに来年度から始まるわけですね。来年度から検討して具体的になるわけでございますが、現在の時点ではこういう問題は考えていないというのはこれはわかりますが、五九中業になればこういうふうな問題を検討し、導入をするということは考えていらっしゃるのかどうか。そこら辺のところを一遍具体的にお伺いしておきたいと思います。
  5. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) 五九中業でどういったような装備の計画を立てるかという問題につきましては、先生も御承知のとおり、これは各自衛隊それぞれいろいろ問題があるわけでございまして、陸上自衛隊海上自衛隊航空自衛隊それぞれに改めてまた検討が行われることになるわけでございます。したがいまして、それは作業が始まってからそういった個々の問題に徐々に入っていくというプロセスをたどるものであるというふうに考えておるわけでございます。したがいまして、個々具体的な問題につきまして、いまの時点で特に申し上げ得るような材料は私どももまだ持っていないというのが率直な状況でございます。
  6. 峯山昭範

    峯山昭範君 それでは、ちょっと質問の方向を変えまして、空中給油機導入に対する基本的な考え方は、現在のところ防衛当局としてはどういうふうにお考えですか。
  7. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) 空中給油機の問題でございますが、これは昨日も先生から御指摘がございましたが、これは五十三年の三月四日の衆議院予算委員会におきまして、防衛庁の方でF15空中給油装置の問題について御答弁をしたことがあるわけでございます。  その中にも申し上げてございますように、航空軍事技術進歩というものは年々著しいものがあるわけでございまして、超低空侵入の方式でありますとか、あるいは高高度の高速侵入といったような、そういう航空機能力というものが高まっていく趨勢にあることは御承知のとおりでございます。こういったような趨勢から見まして、将来の問題といたしましてF15わが国主力戦闘機になっていくわけでございますけれども、そういう将来の問題といたしまして考えますと、有事の際に空中警戒待機態勢をとるために空中給油装置が必要となることも予想されないわけではない。したがいまして、当面空中給油装置を使うことは考えておりませんが、将来の運用のことも考えますと、現段階でこの装置を取り外すということは適当ではないだろう、したがってこの装置は残しておこう、こういう判断をした次第でございまして、そのことを当時申し上げた経緯がございます。この点は、従来と考え方が特に変わっているわけではございません。
  8. 峯山昭範

    峯山昭範君 将来のいわゆる運用の面でこれが必要になることも考えられるという点がうたわれているわけですが、それは具体的に言えば、どういう事態あるいはどういう局面を仮定して考えていらっしゃるか、どういうふうな状態になった場合にこの航空機が必要になってくるのか、そこのところはどうですか。
  9. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) これは、いまも申し上げましたように、航空軍事技術進歩というものを考慮いたしまして、超低空侵入であるとか、あるいは高高度高速侵入といったような事態に対応するために、空中警戒待機態勢というものを有事の際にはとらなきゃいけないというようなことが将来の問題としてあるわけでございますから、そういったような問題が必要であるというふうに判断されるようになった時期にはそういう空中給油装置を利用することも考える必要が出てくるということでございまして、現在そういった将来の時期がどの辺であるかということにつきまして、具体的に明確にまだ申し上げ得る段階ではないと思います。しかしながら、そういった将来の可能性ということは私どもは常に念頭に置いて、今後慎重に検討をしていきたいというふうに考えておる次第でございます。
  10. 峯山昭範

    峯山昭範君 そうしますと、新聞報道にございますように、三点にわたって具体的に書いてございますね。まず一が、「ソ連バックファイアーなどの大型爆撃機に対して太平洋上のシーレーンを守るためには長距離迎撃が必要となる」、二番目に、「来年九月から硫黄島で訓練を始める予定だが、本土から千四百キロ離れた同島へ飛ぶには、天候急変で引き返すことを考えれば給油機があると安全」、三番目に、「空中衝突など事故を避けるため、洋上の訓練空域へ進出して訓練しているが、現在は往復に燃料を消費しすぎて十分訓練できない——などから給油機導入の必要を訴えている。」と、こういうふうに記事報道ではあるわけでございますが、現在五九中業を目前にして、少なくとも現在の時点では航空自衛隊等では、いまこの三点を述べておりますが、こういう点を中心にしてやはり導入のお願いといいましょうか、そういう点から考え合わせて検討はしていらっしゃるわけですね。
  11. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) これは先ほども申し上げましたように、一般論としての将来の問題ということは念頭にあるわけでございますが、ただいま御指摘のございました報道の中に指摘されている三つの問題点と申しますのは、これはどういう根拠でそういう記事になったのかは私どもも理解しがたい点があるわけでございまして、五九中業作業そのものにまだ着手をしていない段階でございまして、私ども航空自衛隊の方からそういったような具体的な話はまだ全く聞いていない状態でございまして、今後どういうふうになっていくかということは、五九中業作業を始めましてから、その過程におきまして各種の装備品検討作業が始まるわけでございまして、現時点では全く個別の問題については検討していないということを申し上げたいと思う次第でございます。
  12. 峯山昭範

    峯山昭範君 五九中業作業は、来年三月から始まるんですか。
  13. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) 大体四月ごろから逐次進められていくというふうに考えております。
  14. 峯山昭範

    峯山昭範君 そうすると、始まる時点ではやっぱりそれぞれある程度、これはいわゆる原案といいましょうか、航空自衛隊等それなりの腹案を持って集まるわけでしょう。
  15. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) これは従来の中業作成業務プロセスが例になるかと思いますが、作業を開始するに当たりましては、長官の方から基本的な大きな考え方を指示いたしまして、それを受けまして具体化作業を各幕の方が始めるということでございますから、まずはその大きな基本的な考え方、それが先でございまして、各幕の作業はそれを受けて逐次ブレークダウンされていくというふうに御理解をいただいていいのではないかと思います。
  16. 峯山昭範

    峯山昭範君 もう一点だけ、これは防衛局長にお伺いしておきたいのですが、このF15対地攻撃機能ですね、これが一番問題になるわけですが、空中給油の問題と絡んでの問題でございますが、この点はどの程度能力があるのか、F4との比較もあわせて一遍御説明をお願いしたいと思います。
  17. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) F15につきましては、先ほど申し上げました五十三年の三月に御説明申し上げた内容にも触れておりますが、いわゆる爆撃計算装置爆弾投下用計算装置というようなものをこれは持っておる航空機でございまして、そういった意味で性能が対地攻撃機能もあるわけでございますが、その標準的な戦闘武装といたしましては、F15の場合は、爆弾で申し上げますと五百ポンド爆弾を十二発でございますとか、それからミサイルで言いますとサイドワインダーが二個積めるとかいうような機能を持っておるわけでございますし、それからF4の場合は、爆弾搭載能力で言いますと五百ポンド爆弾を八個持つのが標準の戦闘武装になっているといったようなことでございまして、F15の主たる目的要撃機能ではございますが、こういった諸装備によりまして対地上戦闘能力も持っておるというものでございます。
  18. 峯山昭範

    峯山昭範君 いずれにしても、F15も、この五十三年の三月四日の統一見解の中にもありますけれども、その付随的なものとはいえ対地攻撃能力というものはそれなりにあるわけですね。そういうふうな意味では、それは万全とは言いませんけれども、やっぱりある程度のそういう能力があるということは航続距離が相当延びるということにもなりますし、そういうような意味では他国脅威を与えるおそれというのは幾らか出てくる可能性がありますね。そういうような意味ではこれは非常に重要な問題だと思いますし、この問題につきましては、いずれにしても慎重に取り扱っていただきたい、そういうふうに申し上げておきたいと思います。
  19. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) 従来から私どもわが国防衛力整備に当たりましては他国脅威を与えるようなことにならぬように、また与えないように考えておるわけでございまして、憲法にのっとり、もっぱら専守防御の立場を堅持してまいったわけでございます。今後ともこの考え方には変わりございませんし、ただいま御指摘のような問題が今後仮に考えられるような事態に入ったといたしましても、ただいま御答弁申し上げました基本は変わらない、こういう姿でいかなきゃならぬと、こう考えております。
  20. 峯山昭範

    峯山昭範君 それでは、これは防衛局長参事官でも結構ですが、昨日も同僚委員質問の中にも出てまいりましたが、きょうはちょっと違う意味質問したいと思っております。  ソ連脅威という問題が最近大きなテーマになってきておりますし、現在米軍基地の強化とか、いろんな問題のときにもこの問題が大きく取り上げられます。そういうような意味で、きょうは具体的に幾つかずっと聞いておきたいと思います。ソ連極東における軍事力配備状況、これを防衛庁は現在どういうふうに掌握していらっしゃるのか、具体的に一つずつお伺いしますのでお願いしたいと思います。  まず、国後択捉軍事状況、これは大体どういうふうになっているのか、お伺いしたいと思います。
  21. 新井弘一

    政府委員新井弘一君) お答えいたします。  御承知のとおり、国後択捉、それからさらに歯舞、色丹、第二次大戦の末期からソ連不法占拠下にございます。終戦直後にソ連が進駐してきたわけでございますが、六一年の当時、地上軍を撤退している。しかるに、一九七八年に至りまして、ソ連地上軍規模におきまして約一個師団配備いたしました。それと同時に、航空機等ミグ17を駐屯させていたわけでございますが、これが現在ミグ23にかわっている。具体的には、本年の八月及び九月、二回にわたりましてそれぞれ十数機天寧の空港に飛来いたしまして、現在依然としてとどまっているという状況でございます。その他、具体的には火砲とか戦車あるいは装甲輸送車あるいはミル24ハインドヘリコプター等々が配備されていると、そういう状況でございます。
  22. 峯山昭範

    峯山昭範君 それをもう少し具体的に、極東におけるソ連海上艦隊米ソを比較していただいても結構ですが、大体ソ連艦隊状況はどうなっているかというのが一つ。それから核兵器の配備状況、これはわかるかどうか、どこら辺まで掌握していらっしゃるかどうかわかりませんが、その問題。バックファイア配備状況。そういう点、あわせてひとつお伺いしたいと思います。
  23. 新井弘一

    政府委員新井弘一君) きわめて大ざっぱに言いまして、核、通常兵力を含めまして、極東地域には約三分の一から四分の一配備しているというのが大まかなとらえ方で、しばしば国会等においても述べているところでございます。  そこで、まず海軍でございます。言うまでもなく、ソ連太平洋艦隊、これがウラジオストクを第一の基地、それからさらにはペトロパブロフスク、カムチャッカでございますけれども、これを根拠地としております。ソ連四つ艦隊を持っておりますが、この太平洋艦隊が現在最大の規模になっている。先生承知のとおり、例のミンスクの配備、さらには原子力潜水艦、あるいはきわめて新鋭の巡洋艦あるいは駆逐艦等々配備しております。ちなみに、若干中身に触れますと、原子力潜水艦につきましては、約百三十五隻の潜水艦のうち六十五隻が原子力潜水艦でございます。いずれにしろ、全部ひっくるめますと、トン数にして百六十二万トン、隻数にしますと八百二十隻ということになっております。  それから第二の、SS20あるいはバックファイアでございますけれどもSS20を含めました核戦力でございますが、ICBMにつきましても約三分の一から四分の一がいまのシベリア鉄道沿い配備されております。それからSS20につきましては、二つ重要な基地がございまして、一つバイカル湖の東でございます。もう一つシベリア中央部にそれぞれ配備されております。それから、バックファイアでございますけれどもバックファイア二つ基地がございます。一つ空軍基地、それからもう一つ海軍基地海軍基地の方は実際には樺太の対岸に展開されております。もう一つは、空軍基地の方はバイカル湖の西でございます。  大体、そういう状況に理解しております。
  24. 峯山昭範

    峯山昭範君 そうしますと、極東における米ソ軍事バランスというんですか、これは防衛庁としてはどういうふうに分析していらっしゃいますか。
  25. 新井弘一

    政府委員新井弘一君) すでに絶対数ではお答えいたしましたけれども、非常にわれわれ注目しておりますのは、過去十年をとりましても、このソ連軍事力の展開のスピードが非常に早まっている。たとえば私先ほど、現在のソ連太平洋艦隊百六十二万トンだということを言いました。一九七〇年代の初めには百万トン程度であったわけでございます。それから地上兵力については御質問が特に直接な形でなかったのでお答えいたしませんでしたけれども、これが中ソ国境を含めますと四十七万人、五十三個師団でございます。これが七〇年代の初めでは約二十三個師団でございますから、倍増しているわけでございます。それから航空機は全部で二千百機というふうにわれわれ踏んでおります。これはやはり七〇年代の初めでは千八百七十機と記憶しております。したがいまして、航空機についてはそう数が余りドラマチックにふえていないという印象を受けますけれども、実際に中身を調べますと、航空機の中で、具体的には爆撃機戦闘爆撃機の六割以上がいわゆる第三世代に属する新兵器であるということでございます。それでこういう十年の流れがございます。  他方、アメリカの場合にはこの十年、昨日もちょっと他の委員の御質問に答えまして触れましたけれども、実際はアメリカは例のベトナム以後の特にアジアからのむしろ撤退ムードということがございまして、意識的にプレゼンスを減らしてきたという事実がございます。したがいまして、いま第七艦隊をとりましても、総隻数において六十五隻、約六十万トン、これを何とかしなきゃならぬという発想が現在レーガン政権にあるということでございます。  太平洋艦隊とそれから第七艦隊を比べますと、もちろん戦略環境、たとえば日本海とかオホーツク海みたく非常にソ連航空支援を受けられるというところではソ連が戦略的には有利な態勢にございますけれども、広い海に出ますと何といっても第七艦隊の持つ機動力空母打撃力、それからすぐれたASM能力等比べますと、第七艦隊ということでチェックできるということでございます。  全体としては私ども極東情勢が非常にソ連にいまの時点でとりますと著しく有利に傾いている、有利であるということは言えないと思いますけれども、問題はその趨勢でございまして、きのうもちょっと申しましたけれども、このままほうっておきますと本当に極東においても東西のバランスが非常に明確に逆転する、そういう情勢が見込まれるということが懸念されている。そういうことでございます。
  26. 峯山昭範

    峯山昭範君 これは相当、量の面でソ連のいわゆる軍事力というのはそれぞれふえてきていますね。そういう点はあると思いますけれども、質の問題はやっぱりそれは伴っていろんな問題が出てくると私は思いますけれどもソ連軍事的脅威という問題、これはいろんなところで出てくるわけでありますけれども、この問題について防衛庁としては、相当高まってきているのか、あるいは現在きちっと均衡しているのか、そこら辺のところについてはどういうふうに分析していらっしゃるか。これもちょっとお伺いしておきたいと思います。
  27. 新井弘一

    政府委員新井弘一君) 先ほどの私の説明で帰納的に判断いただけるかと思いますが、率直に言いまして、こういうソ連のいわば劇的とも見られる質、量両面にわたる軍事力増大極東においてもまさにそうだということは、われわれにとって潜在的な脅威増大であるというふうに認識せざるを得ないということでございます。
  28. 峯山昭範

    峯山昭範君 潜在的脅威増大という問題は、よくいろいろ説明をお伺いしていますからわからないではないんですけれども、そういう問題と絡んで、今度三沢基地F16の配備という問題がありますね。三沢配備の問題に当たって、いわゆるソ連潜在的脅威増大してきておるという問題が相当いろんなところで言われておるわけですね。そこで、F16を三沢配備する、そのことによってますますいわゆる極東軍事的緊張が高まっていくのじゃないかという問題があるわけですね。この問題をどういうふうに考えているかという問題が一つと、それからF16の配備ソ連に対抗するためにどうしても必要不可欠なものなのかどうか。これはわれわれがこういう問題を考える場合にどうしてもそうしなくちゃいけないのかどうかという問題があると思うんですね。必要とすれば、これからどういうふうな配備になっていくのか、質、量ともに。そこら辺のところをどういうふうに分析していらっしゃるのか。これもちょっとお伺いしておきたい。
  29. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) F16の三沢配備の問題についてでございますが、これはアメリカ側からの説明によりますと、その目的といたしますところは、極東における軍事バランスの改善に努め、米国のコミットメントの意思を明確にすることによりまして日米安保体制抑止力維持向上を図りたい、こういうことでF16の三沢配備アメリカ側考え経緯があるわけでございまして、私どもといたしましても、こういった配備安保条約信頼度を高め、抑止力を強化いたしまして、日本と極東におきます平和と安全の維持に寄与するということを判断いたしまして、その配備について協力をするということを決定した次第でございます。  その判断背景といたしますところは、ただいま新井参事官からも御説明がありましたように、ソ連軍事力の増強というのは近年極東方面におきましても非常に顕著なものがあるわけでございまして、極東における軍事情勢は大変厳しいというふうに私どもも認識をいたしておるわけでございます。そういったような状況背景にいたしまして考えますと、私どもといたしましても、これはわが国極東の平和と安全の維持に寄与するという意味で評価されるべきことであると、こういうふうに考えておるわけでございます。
  30. 峯山昭範

    峯山昭範君 それはわかりましたが、これからの見通しはどういうふうにお考えなんですか、このF16の配備の。これは現在の配備状況から考えて、いまの情勢からいくともっと緊張が高まっていくかもわかりませんし、いろんな問題が出てまいりますね。そういうような中で、この三沢状況からも考えて、どの程度のあれが必要になってくるかという問題が出てくると私は思うんですけれども、そういう問題はどうお考えですか。
  31. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) 今回、米側が計画をしております配備考え方は、一九八五年以降、つまり昭和六十年以降おおむね四年間にF16を約四十機ないし五十機配備したいという計画でございます。私ども承知いたしておりますのはそういうことでございまして、それ以上の計画があるようには承知いたしておりません。
  32. 峯山昭範

    峯山昭範君 それでは、ちょっとまた方向を変えまして、朝鮮半島の軍事バランスの問題についてお伺いしておきたいと思います。  これは、まず先般ビルマのラングーンで爆発事故が起きまして、それで全斗煥大統領の随行者の中にたくさんの犠牲者が出たわけでございまして、これは国際問題にまで発展しているわけでありますが、この事件によりまして朝鮮半島の緊張というのは非常に高まっていると、そういうふうに私たちは考えております。また、政府としてもそれなりの対応をしているようでありまして、これは今後漁業交渉とかいろいろな問題にも影響を、北朝鮮との問題にも影響を及ぼしていると、そういうような情勢でありますが、防衛庁としていわゆるこの朝鮮半島の緊張の状態をどういうふうに分析していらっしゃるか。もっと端的に言うと、朝鮮半島でそういうふうな紛争をきっかけに戦争が起きる可能性というのはこれはあるわけでありまして、そういうような問題についての分析というのもやっぱりあると思うんですね。こういうような問題について、防衛庁としてはこの問題をどういうふうに考えていらっしゃるのか、分析していらっしゃるのか。これもお伺いしておきたいと思います。
  33. 新井弘一

    政府委員新井弘一君) おっしゃるとおり、朝鮮半島は潜在的に世界各地のいろいろ諸問題と比べまして最も緊張が高い地域でございます。これは遺憾ながら認めざるを得ない。すなわち、DMZを挟みまして約百二十万以上の南北の勢力が対峙している。このラングーン事件の直後、確かに一時的に警戒態勢が高まり、緊張状態が見られたということは事実でございます。ただ、その後韓国側は非常に冷静に対処いたしました。それと同時に、委員承知のとおり、レーガン大統領が先般韓国を訪日の後訪れまして、アメリカの韓国防衛に対するコミットメントを再び明確に確認したということがありまして、現在この情勢が鎮静化しているというふうに見ております。  そこで、南北のバランスでございますけれども、北は確かに南に比べまして量的に非常に大きな勢力を持っております。総兵力にして約七十八万、南が約六十万、特に陸軍が非常に質、量ともに優勢でございます。それで、空も海も、海については隻数、空について言うと飛行機の数、量的に北の方が多い。ただ、韓国も量的には劣勢であったとしても、韓国なりに近代化の努力ということをしている。加えまして、韓国には約四万の米軍が駐屯している。こういう状況を全体としてとらえますと、南と北との間にはバランス維持されているというふうに思います。そういうことで、したがいまして私どもは、こういう状況が確保される前提においては朝鮮半島において大規模な紛争が起こるその可能性は少ないものというふうに判断しております。
  34. 峯山昭範

    峯山昭範君 朝鮮半島の軍事バランスというのは、いまお伺いしておりますと、質、量ともにやっぱり韓国は落ちておるわけですか。いま大体均衡しているという話なんですが、米軍が四万入って。それで、私が聞いた資料によると、どうも韓国は相当劣勢だというふうに聞いたんですが、具体的にもう少し分析してくれませんか。
  35. 新井弘一

    政府委員新井弘一君) この点は、たびたび繰り返して恐縮でございますけれども、二国間の戦力の比較というのを一概にこうだということを断定するにはかなり問題があって、いろんな要素を勘案しなければならない。こういう前提におきましても、ただ韓国と北朝鮮というものだけをしぼりますと、やはり私は北朝鮮の方が現状ではより優勢にあるというふうに考えます。ただ、それがあるがゆえに、現在韓国は昨年から第二次国防力強化計画というものを推進いたしまして、そしてこの達成の暁には十分北と対応できると、そういう一つの見通しを持っている。そういうことで、やはり駐留米軍の存在というのがバランス維持のためにどうしても不可欠である、そういう認識でございます。
  36. 峯山昭範

    峯山昭範君 そこで、中曽根総理とレーガン米大統領との十一月十日の記者会見、いわゆる新聞発表ですね。この新聞発表によりますと、中曽根首相は、「朝鮮半島の永続的平和と安定の実現のために引き続き努力していくことに意見の一致を見た。」と、こうありますね。それからレーガン大統領は、「アジアの平和と安全保障のために日本ができる最も重要な貢献は、日本が自衛をし、かつ我々の相互防衛努力をより多く負担することにある、ということだ。」と言っているわけでありますが、防衛庁としてはどういうふうな努力をしているのかという問題があるわけです。特に、朝鮮半島の永続的平和実現のために努力をする、防衛庁としてはこの問題についてこれからどういうような努力をしていくつもりなのか、この点ちょっとお伺いしておきたいと思いますし、ここのところが非常にこれから重要な問題になってくるわけでありますが、日米韓という三国の軍事一体化といいますか、協力関係をこれからもどんどん深めていくおつもりなのか、こういう点とあわせてお伺いしておきたいと思います。
  37. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) 日米首脳が会談をし、極東情勢についてそれぞれ意見の交換をいたしますときには、常に過去におきましても朝鮮半島の安全、平和の維持という問題は課題になってきておるわけでございます。朝鮮半島は、確かに極東のこの地域におきまして一つ間違えれば緊張が高まり得る地域であるかもしれないという認識が基本的にあろうかと思います。 そして、日米両首脳会談においては、常にそういう状態に置かれておる朝鮮半島における緊張の緩和を考えねばならないということが基本になっておろうかと思います。  今回の首脳会談におきましても、基本的には全くいままで行われておりました首脳会談における判断と同じでございまして、それから特にただいま御指摘のございましたような日米韓、この三国の関係につきましてはことさらいままでの枠組みが新しくなったということはございませんで、あくまでも日本とアメリカ、あるいは韓国とアメリカという関係は存在はいたしますが、日本と韓国の間に防衛分野の問題において新しい関係が日米首脳会談の中で生まれてきたものではございません。
  38. 峯山昭範

    峯山昭範君 大臣、このレーガン大統領の新聞発表の中にあります「アジアの平和と安全保障のために日本ができる最も重要な貢献は、」ということで、「日本が自衛をし、」というふうにありますね。これは大臣、どういうふうに受けとめていらっしゃいますか。
  39. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) 私の理解いたしておるところでは、アメリカはあくまで日本がみずからできること、なし得ることをやるということ、わが国の一層の防衛努力をいたすことによって日米両国の安全保障の体制がより強固となりまして、その結果わが国及び極東の平和と安全の基礎がさらに固まる、こういうふうにアメリカ側判断をいたしておると思っております。  それから、もう一点つけ加えさしていただきますと、アメリカは今日日本に対して日本がみずから行う防衛努力というものを期待いたしておりまして、ときどきその期待を表明いたしますが、その期待の表明というのはあくまで日本がみずから行う防衛努力を期待するのであって、アメリカは決して日本に対してアメリカの肩がわりをこの地域でやってほしいとか、あるいはいままでの日本の持っておりまする、あるいは今日まで続いてきておりまする防衛の基本的な枠組みを崩して何か新しいことを日本がすることを期待する、そういうことではないと私は判断をいたしております。
  40. 峯山昭範

    峯山昭範君 それはわかりました。私は、これは「日本が自衛をし、」ですから、自分の国は自分で守るということは当然のことだと思うんです。  その次ですね。「かつ我々の相互防衛努力をより多く負担することにある、」、こうあるんですが、これはどういうことなんですか。どういうふうに受けとめていらっしゃいますか。
  41. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) その後にアメリカの願望が続くのだろうと思いますが、アメリカは日米安保条約に基づいて日本が武力攻撃を受けた場合には日本を防衛する義務があり、またその決意もある、これは毎々アメリカの政府によって表明されておるところでございますが、同時にまた、アメリカ極東のみならず、世界各地の安全の維持というものに対してもきわめて大きな責任を持っておることを自覚しておる国だと思います。したがいまして、わが国わが国独自の立場でみずからの防衛努力を行うことによって、防衛力を整備していくことによって、先ほど申し上げましたような日米安保条約の基盤がより固まる。そういうことによって、この地域の平和の維持、安全の確保がより一層確実になるということも含めまして、アメリカは日本のみずから行う防衛力の整備というものを期待しておるというところがあろうかと思います。
  42. 峯山昭範

    峯山昭範君 大分、大臣抽象的におっしゃっておりますけれども、実はきょう、極東の平和、いわゆる軍事力バランスの問題、朝鮮半島のバランスの問題等ずっとお伺いしてまいりまして、安全保障条約に基づく米軍の日本における基地の整備とか、あるいは端的に言いますと思いやり予算という問題に一つの端的な問題があらわれておりますので、きょうはそこら辺のところを詰めたいと思っていままで準備をずっとやってきたわけです。  それで、大臣、きのうから私問題にしておりますように、金丸元大臣の「体験的防衛論」というのは、きのうちょっとやりましたから、大臣もお読みになりたと思いますが、御感想はどうですか。
  43. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) 実は、詳しく読了しておるわけでもございませんが、金丸元長官はやはりいろいろ御自分の御意見も交えて、当然のことですが、御自分の御著書でございますので、御自分の御意見でございますが、述べておられまするが、やはり一番大事なところは、現行の地位協定の許す範囲で日本のできることを行うべきであるという趣旨を締めくくっておいでになる、私はそういうふうに読ましていただきました。
  44. 峯山昭範

    峯山昭範君 これは地位協定でできる範囲のことをやる、それはそのとおりだろうと私は思うんですけれども、大体地位協定というものは、大臣、金丸さんが言うように、地位協定の私はきのうは脱法行為とか裏道とかいっぱい言いましたけれども、そういうことは別にして、地位協定なんというものが、いわゆる「思い切った柔軟解釈による、」と金丸さん書いているけど、そういうふうにしてまで日本側が負担できないものまで負担できるようにする、そんなことをしていいのかどうか。そういうふうにすべきものなのか。本当に私はやるとするならば、地位協定の二十四条でも改正して、それでちゃんとすべきじゃないか。  防衛庁の中に、そういうふうな拡大解釈をするためのプロジェクトチームをつくって、「防衛庁はこのときから、駐留費分担増のためエンジンを全開させた」。その当時の人たちに一遍来てもらってよく聞きたいわ、これ。そんなことをしたら何でもできるという感じになるでしょう。しかも、その抜け道と言おうか拡大解釈と言おうか、それを命じられた施設庁長官がそれで彼はうまいこと考えてくれた。結局、裏道とか拡大解釈とか、そんなことをしてやるべきものなのか。やっぱりやるのならやるできちんとすべきであって、立法府というのがなかなか法律が通らへんからそれはあかん、何とか拡大解釈考えい、そういうふうなことをして僕はやっていると、日米関係にしたって、私は大統領と総理が懇談をし、対談をし、対等の立場でやっていくためには、やっぱり正々堂堂としたものでないといかぬ。それは要するに法律がないから、いまある法律の中でできる限りのことはせないかぬけれども、拡大解釈までしてそんなことをするべきなのか。しかも、現実に拡大解釈をされて、そしてその問題がいままかり通っているわけですな。中身はこれからまだ具体的にやりたいんですけれども、こういうことは本当に許されるのかどうか。  そして、この金丸さんの「米国と仲良くしてゆくためには」という論文の中に脈々と流れている問題は何か。これは大臣、要するに日本はアメリカに守ってもらっておる、日本はアメリカを守ってない、安保条約の第五条は片務条約である、第五条が片務条約、それでそのために六条で補っているけれども補い切れない、だからわれわれは米軍に対してもっと温かくしないといけないんだ、そういうふうな論調が流れているわけですね。だから、やっぱりこれから日米関係というものをぴしっとしていくためにも、もっと僕は毅然とした態度で対応すべきではないか。だめなものはだめ、やるべきものはやる。いま現在の日本の法律ではこれはだめです、たとえば経常的経理はこれは日本の法律に基づいても安保条約に基づいてもだめですと。これは具体的に言えば「目一杯」。  いままでの会議録の論調が、昭和四十五年までとそれから後とはころっと変わっているんです。防衛施設庁の考え方も変わっている、答弁が。具体的に言うたっていいでっせ。変わってますねん。それじゃやっぱり困るのであって、もう少しきちっとした姿勢で取り組んでいかなければいけないのではないか、そう私は思うんですけれども大臣、これはどうですか。
  45. 塩田章

    政府委員(塩田章君) 大臣のお答えの前に一言私から答えさしていただきたいと思いますが、金丸先生、一人の政治家として御自分の信念をいろんな形で述べておられますが、その要点は、この著書の中にございますが、一部読まさしていただきますと、「日本にとりアメリカが不可欠であると同様に、アメリカにとっても日本が不可欠な関係を維持していくことが必要だが、そのためには日本も”応分の犠牲”を払い、”代償”を提供すべきなのだ。」と言われまして、その後に、防衛分担金——この防衛分担金というのはいまの提供施設の整備でありますとか労務費負担のことだと思いますが、「防衛分担金も、地位協定の範囲内で出せるものは最大限出すべきだ。」、こういうふうにおっしゃっておるわけです。政治家の信念としていろんなことを述べておられますけれども、基本的に地位協定の範囲内で出すべきものは最大限出すという努力をすべきだということを述べておられるわけであります。  それで、いま先生いろいろ御指摘のございました、できないものはできない、はっきりすべきではないかと、まさにそれは私どもそのとおりでございまして、たとえば労務費の負担につきましてもあるいは光熱水費等の負担につきましても当初米側としてはいろんな要望があったわけでございます、潜在的にはいまでもあるのだろうと思いますが。そういうものはできないということではっきり貫いておりまして、御指摘のように、私どもとしても日本の自主的立場でできないものはできないということで対処してきておるつもりでございます。
  46. 峯山昭範

    峯山昭範君 塩田さん、そういうふうにいろいろ言うやろうと思うてましたよ。わかってましたよ、それは。塩田さんおっしゃったとおり、そう書いてます。「日本にとりアメリカが不可欠であると同様に、アメリカにとっても日本が不可欠な関係を維持していくことが必要だ」、このとおりなんですよ。ところが、いまそうじゃないんです。いまそういうふうになってない。「そのためには日本も”応分の犠牲”を払い、”代償”を提供すべきなのだ。防衛分担金も、地位協定の範囲内で出せるものは最大限出すべきだ。」、そのとおりなんです。そのとおりなら文句ない。  ところが、実際問題として、たとえば労務費をずっと出したこと自体がやっぱり拡大解釈じゃありませんか、米軍の言うとおり労務費を。向こうが一番出してほしいのは経常経費ですよね。経常経費を出してほしいわけですよ。家建ててもらうより、毎月のいろんなかかる費用を出してもらいたいわけですよ。そういうものは米軍が持つとなってまんねん、地位協定の中では。そうでしょう。それを何とかかんとかねじ曲げて、要するに拡大解釈して、金丸さんに言わせれば。そうして、結局労務費を出しているわけでしょう。  なぜ、これはそれじゃ米軍の言うとおりふえないんですか。毎年こうやって一定の額に抑えられているのは、地位協定上これ以上は出せないということがあるからでしょう。そういうふうなことをやっぱり明確にできないようではいかぬと言うんだ、僕は。本当に金丸さんが言うように、金丸さん最後にこういうふうにおっしゃってますけどね、それまでは「目一杯」と。あるじゃないですか。何とか拡大解釈せい。「目一杯」、あるじゃないか、これ。それは言われなかったんですか。あなたの前の施設庁長官は「思い切った柔軟解釈による、」、それでそのことを施設庁当局に命じて、「防衛庁はそのときから、駐留費分担増のためエンジンを全開させた」。ほんま詳しく書いてくれてあるわ。  そういうふうに見ていくと、僕は最後はこの金丸さんの結論でいいわけですよ、「地位協定の範囲内で出せるものは最大限」に出す。それはそれだけならいいんです。それを拡大解釈して、非常に無理なところを出す。しかも、今度はそれまでずっと答弁してきた国会答弁とは違うことを現実にやってきているわけです。出せと言うなら出しまっせ、これから。お昼からもまだ時間はありますからやりますけどね。山上さんが施設庁長官の当時の答弁と現在の答弁とは変わってきてまっせ。変わってまへんか。昭和四十五年当時の答弁といまの答弁とはもう全然違いますよ、中身が。山上さんの答弁では出せないとあったのを、もう現実に出してあるわ。違いますか。塩田さん、違いますか。
  47. 塩田章

    政府委員(塩田章君) 御指摘の当時の山上長官答弁承知いたしておりますが、その時点における実態を反映して答弁をされております。そういう意味で、その後当時出してないものを出しておるという実態は、変わっておるといえば変わっておるわけでございますが、それにつきましては、先ほど来申し上げておりますように、十分検討いたしまして、現行の地位協定の範囲内で出せるものは出そうということで、逆に言いますと出せぬものは出せないという立場で参っておるわけでございます。
  48. 峯山昭範

    峯山昭範君 ですから、現実の問題として変わってきているわけですね。それで、結局、亘理君がうまいこと考えてくれた、本当に予想以上のことを考えてくれて出せるようになったと——そうは言いませんけど、どこやったかな、ありましたよ。うまいこと考えてくれて、本当にあの人は頭いいと書いてあるわ。ですから、そういうふうなのはそれは拡大解釈して、拡大解釈とは言わなくても、それでいいというのじゃまずいのでありまして、やっぱりそこら辺のところはきちっとすべきじゃないか。思いやり予算のそのものの中身に入ってしまいますと時間があれですからこの次また、お昼からも時間があるそうですから、そのときに時間をいただいて具体的な中身質問したいと思います。  いずれにしても、これは大臣、何も私は、これは全部だめだとかどうこう、安保条約そのものに対してもわれわれの考えというのははっきりしているわけですから、どうというわけじゃないんです。しかしながら、やっぱり防衛庁としても、こそくな手段でなしに、長いこれから将来のことを考えてきちっとしてもらいたい。それで、米側に対しても、僕は答弁は何回も聞いてます、きちっとやってますと。日米交渉では言うべきことはばっちり言うてますと聞いていますが、表に出てくることがこんなことが出てきたのじゃどうしようもないわけですよ。ですから、そういうような意味ではもうちょっとやっぱりきちっとしてもらいたいと思うし、本当にこれでいいのかどうかという問題についてもちゃんとしていただきたいなと、そういう思いを込めていま質問をしているのでありまして、お昼からの質問でまた思いやり予算の中身につきましては質問さしていただきたいと思っております。大臣答弁をお伺いしたいと思います。
  49. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) 地位協定は日米安保条約の締結とともに整備されたわけでございますが、その後、時代が経るとともに確かに日米関係も国際環境も変化はしてきておると思います。そして、地位協定につきましては、条文そのものは日本国のすべきことと、これは第二十四条第二項で明らかにされておりますが、米国のすることとが分かれて、これは第一項に書かれておりますが、ございますが、その条文そのものはきわめて簡潔な条文でございます。したがって、その条文の内容についての解釈についてはその都度政府の国会におきまする答弁によって確定してきたといいますか、いろいろ経緯はあったと思います。それが時代とともに少しずつでありますが、先ほど施設庁長官も御答弁申し上げましたように、あるいは変わったといえば変わった、変化したといえば変化したということもあろうかと思います。  一点だけ申し述べさしていただきたいと存じますが、日米安保条約が発足いたしました当時のわが国の国民総生産、それと今日のわが国の国民総生産、それからその当時の米国の国民総生産、それから今日の全世界の中に占める米国の国民総生産の比率などいろいろ考えあわせてまいりまして、やはり日本の国の国力も相当程度伸びてきておるということもこれも事実のような感じがいたしまして、そういう経過の中からいま先生が御指摘のような問題が出てきておると思います。ただし、私といたしましては、いまこれまた先生が御指摘でございましたが、今後長い日米のつき合いといいますか、この条約のもとにおいて日米安保条約運用についてさらに効果的に考えていかなきゃならぬ、こういうことからあわせて考えてみますと、いま先生指摘の最後のところでございましたように、われわれとしても、この問題につきましてはあるいは先生に御心配をいただいているような意味で、十分国民の皆様方に御理解いただけるような物の考え方をさらに固めていかなきゃいけないのかなというようにも考えておったようなことでございます。
  50. 峯山昭範

    峯山昭範君 大臣のおっしゃることよくわかります、そのとおりでしてね。僕らが何を一番心配しているかというと、要するに在日米軍の皆さんの経費の日本側の負担分、いわゆる思いやり予算という中身が年々相当な勢いでふえていく。これはやっぱりこれだけふえていきますと、どこら辺で何で歯どめをするかという問題があるわけです。  これを見てみますと大変な金額ですね。昭和五十四年が二百七十九億でしょう。それが五十五年には三百七十四億になって、五十六年には四百三十五億、そして五十七年には五百十五億でしょう。それでことしが六百八億、来年は六百九十九億になろうというんですよ。  これは細かい数字は申し上げませんが、現在の日本の経済の成長状態、現在のいわゆる予算の伸びぐあい、いろんな情勢からいいましても、この調子でいくとこれは何で歯どめをするのか。やっぱりどこかである程度やるべきことはやらなければいけませんけれども、そのほかのいろんな社会情勢やいろんな情勢から見て無理なところもある。やっぱりむちゃやってもいかぬ。何でも日本側にやってもらえる、それじゃやっぱり困るわけです。  内閣委員会の私たちがいろんな自衛隊基地を見に行って、そして米軍の基地を見に行きますと余りにも差があり過ぎるんですよ。大臣、余りにも差があり過ぎる。米軍のところは物すごくいいわけですよ。自衛隊のところはほんまにみすぼらしく見える。これはやっぱり大臣、そこら辺のところもありますから、何でもかんでもやる言うたって、限度もあるし歯どめもある、そういうようなものが必要なんじゃないか。それを言いたいから私は言っているわけでございまして、そこら辺のところは自衛隊の中でも十分検討し、対応していただきたい、そう思っているわけであります。  じゃ、私の質問はこれで……
  51. 内藤功

    ○内藤功君 防衛二法案及び最近の防衛の問題について御質問したいと思います。  まず、日米首脳会談の問題です。本年十一月の日米首脳会談及び引き続く米韓の首脳会談によりまして、私はレーガン政権の意図する米日韓の軍事的協力体制が一段と進んだという印象を強く受けるものであります。特に、レーガン大統領が十一月十三日の未明、ソウルでの全米向けラジオ放送におきまして、防衛面では軍事的分担強化の約束を中曽根首相から取りつけたと、こういうふうに演説で述べておるわけです。  防衛庁長官谷川長官にお伺いいたしますが、長官はこの軍事分担強化の約束ということにつきまして、その中身につきまして中曽根総理から何かお聞きでございますか。あるいは長官の方からこれはどういうことであろうかということをお聞きになったことがございますか。どうですか。
  52. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) わが国におきまする日米首脳会談が行われました直後、プレスリマークスが両首脳で行われました席に私も同席をいたしました。それから何回か行われました会談の中身といいますか内容につきましても、その都度いろいろな角度から私の担当をいたしておりまする防衛の問題につきましても逐一私は私なりにフォローをしてまいったつもりでございます。  その問題は別といたしまして、ただいま御発言ございましたレーガン大統領のソウルにおける、韓国におきまするラジオ放送の内容につきましては、私は必ずしも前段においてただいま先生から御指摘のあったような日米韓の軍事力の提携といいますか、そういうような感じの発言といいますか、放送ではなかった。日本と韓国とそれぞれ平和を守るためにアメリカを助けようとしておるという趣旨の発言はあったと思いますが、その域を出ていないものであったというふうに私は理解をいたしております。
  53. 内藤功

    ○内藤功君 問題は、軍事的分担強化の約束、こういうことなんですね。そうすると、分担というと予算面で日本の防衛力をなお一層強化する、こういう面の増額という面か、あるいは防衛力の運用の面、シーレーンの防衛ですとか海峡封鎖でああるとか、とっさに考えられるのはこの二つであります。ほかにもあるかもしれません。そういう面で軍事的分担強化というのはこれは理解できる。そうすると、全米向けの放送でありますから、これは大統領が特に軍事的分担強化の約束ということを言ったことは、単なる選挙向けの演説でないものがあったということじゃないかと思います。何かここのところにないのか、ここのところを私は非常に問題にしたいと思うんです。私は、やはりこの点について長官あるいは防衛庁がどのようにこれを考えておられたか。いまのは非常に一般的なお答えであります。再度お伺いをしたい。
  54. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) 私から事実関係についてちょっと御説明をしておきたいと思います。  私ども承知いたしておりますところでは、ただいま先生が御指摘になりましたラジオ放送の件でございますけれども、その中でレーガン大統領が述べられたことはこういうことのように聞いております。それは、「日韓両国は、平和を守るために我々に助力を与えることを約束をしており、また両国は、現在軍事的な負担の重要な部分を担っているところである。」、こういうことをお述べになったわけでございまして、それはただいま防衛庁長官からもお話し申し上げましたように、従来からわれわれが努力をしております日本の自主的な防衛努力についてのアメリカ側の受け取り方がその中に含まれているということは事実だと思いますけれども、日本が重大な内容の軍事分担を約束したというような内容ではなかったというふうに理解をしている次第でございます。
  55. 内藤功

    ○内藤功君 私の入手している幾つかの新聞では明確に約束を取りつけた、防衛面では軍事的分担強化の約束を中曽根首相から取りつけた、こういう言明をした、これが一般の国民にずっと報道されているわけです。ですから、国民の新聞を読んだ感覚は約束を取りつけた、こういう受けとめ方であります。いま局長の読まれたのは、それは一つ防衛庁としての翻訳でありましょう。局長、その英文と翻訳文を後で私の方に出していただきたい。
  56. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) これは私どもがそういうふうにレーガン大統領が放送されたということを承知しているわけでございまして、私どもの方でそういった資料を直接ここで御提供申し上げるような立場にはないというふうに思っております。
  57. 内藤功

    ○内藤功君 しかし、これは約束があったかどうかという点が大きな問題ですからね。いまのあなたのお読みになった中では、レーガン大統領の約束云々という部分は入っておりませんね。入っておりますか。約束という問題が一つ問題点
  58. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) これはどういう内容であるかと申しますと、「日韓両国は、平和を守るために我々に助力を与えることを約束しており、また両国は、現在軍事的な負担の重要な部分を担っているところである。」、こういうことをレーガン大統領の演説の中で述べられたというふうに聞いているわけでございまして、このことは、今回の日米首脳会談におきまして、中曽根総理が「我が国の防衛力の整備については、一昨年の日米共同声明にうたわれているとおり、一層の努力を行う所存であることを申し述べます。」ということを言っておられまして、そうして、一昨年の日米首脳会談におきましては、鈴木総理がこれを受けて、さらに詳細な日本側の防衛政策の考え方を述べておられるということでございまして、そういった一連の歴史的な経過を踏まえたアメリカ側の理解をここに表現をされたというふうに私どもは理解をしておるわけでございます。
  59. 内藤功

    ○内藤功君 なお、この問題は、ぜひ後刻、防衛庁の持っておられる正文ですね、いま読み上げられたものを私拝見して、さらにこの問題を究明したいと思うんですが、いずれにしても全米にラジオで放送した中でこのようなことが明らかにされている。この内容については今後の日本の防衛力増強というものを見る場合に大きな意味を持つと思いますので、引き続きこれは究明をしていきたいと思います。  資料を出さないと言うのであれば、これ以上私はこの点について聞くわけにいかない。どうなんですか。
  60. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) ちょっとここで明らかにひとつさしておいていただきたいと思いますが、言葉というものは非常にむずかしいところもありますし、また言葉の持っておる語感から誤解というものも生じやすいものだと思います。少なくとも私が伝え聞いておるところでは、あのときのレーガン大統領のラジオの全米向け放送というものは、たしか日本では軍事的分担と訳された部分は、訳されたと言っても日本のすべてがそういうふうに訳したかどうかそれは存じませんが、先生がそういうふうに御理解なさっているところは、もし私の記憶に間違いがなければレーガン大統領はミリタリーバーデン、さっきその意味で、私はレーガン大統領は韓国において、韓国の方を先に言われたと思うのですが、韓国と日本はアメリカが一生懸命やろうとしている平和の維持のためのしょっておる重荷を一緒にしょおうと言ってくれた、こういうふうに表現なすったように私は理解をいたしております。そのこと自体が日米韓の三者で軍事分担が決まったというふうにはとても私にはとれない、こういう文脈だったように私は理解をいたしております。
  61. 内藤功

    ○内藤功君 しかし、これは日本の有力な新聞がみんな軍事的分担の約束という翻訳でこれを出しております。テレビでも放映されております。やっぱりわれわれ国民の理解というのは、あなたのいま言われた理解とは大分遠いと思いますね。印象として違います。  さてそこで、私は次に関連してお聞きするんですが、この日米首脳会談の後、シュルツ国務長官が記者会見でこういうふうに述べておる。「日本自らが掲げた防衛努力目標をこれまでより速いペースで達成してもらいたい」、こういうことを述べておる。報道では、谷川長官もレーガン大統領が一層の防衛努力を求めたことに対して非常に厳しい受けとめ方をしているということですが、アメリカは次回の安保事務レベル協議、これは来年一月に予定されていると思いますが、この安保事務レベル協議におきまして具体的にどういうことを要求してくるか。アメリカは必ず事務レベル協議では要求があるんですが、一つは、私の見るところ、シーレーン防衛を柱とする防衛力整備の強化、もう一つは在日米軍の支援強化、こういうことを恐らくアメリカは要求してくるだろうということが予想されるわけであります。これについて防衛庁としてはどういう御見解を持っておられるか、この点をお聞きしたい。
  62. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) 次回のSSC、いわゆる日米安保事務レベル協議の開催時期につきましてはまだ何も決まっていないわけでございまして、現在日米双方で調整中の段階ということでございます。  そこで、この日米安保事務レベル協議というものの性格でございますが、これは御承知のように、日米両政府の事務レベルの安全保障関係者が集まりまして、日米相互にとって関心のある安全保障上の諸問題につきまして自由かつ率直に意見の交換を行うという、いわゆるフリートーキングの性格を持った会合でございまして、特に議題を定めて行うというような性格のものではございません。しかし、いずれにいたしましても、次回の協議につきましては現在のところ開催時期が決まっていないわけでございまして、どういったような内容になるかといったようなことにつきましても現時点でこれを予想することのできない状況にあることを申し上げさしていただきたいと思います。
  63. 内藤功

    ○内藤功君 そういうことであれば、私がもう一つお伺いしたいのは、レーガン大統領の重要なシンクタンクと言われておるヘリテージ財団、これが最近報告書を出しました。これは十一月二十四日付の報道でいろいろされておりますが、防衛計画の大綱の見直しを要請する、それから日本の防空システムの改善、それから日本の三海峡封鎖能力の確保、こういったものを緊急に達成するように求めている。私は、やはりこのようなアメリカからの要求が今後一層強まってくるのじゃないか、こういう状況であると思うんですが、それについての防衛庁長官防衛庁の見解、判断はどういうふうなところですか。
  64. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) ただいま御指摘になりましたヘリテージ財団というものでございますが、その報告書なるものの内容は私ども報道によりまして承知をしている程度でございますが、これは民間の研究機関の報告でございまして、私どもといたしましてそれに一々コメントをすることは差し控えたいと思っておるわけでございます。  いずれにいたしましても、政府といたしましては従来から防衛計画の大綱に従いまして防衛力の整備に努めてきたところでございますが、現状を申しますと、それはまだ必ずしも十分ではないわけでございまして、いろいろな不備点があるわけでございますから、しかるがゆえに私どもも一日も早く防衛計画の大綱で定める水準を実現することを目標といたしましてできる限りの努力を払ってきている次第でございまして、今後とも各般の面にわたりましてそういった努力を続けていきたいというふうに考えているわけでございます。
  65. 内藤功

    ○内藤功君 アメリカの場合にはこういう財団とかあるいは研究所とかいうものがかなりありまして、そして大統領なり国防省なりの委嘱にこたえて非常に詳細な研究を金と人を使ってやっております。ですから、ただ民間の財団の研究だからこれについては軽く見るとかいうことは私は情勢判断としてはいかがなものであろうかと、こういう感じを持ちますね。  もう一つ、さっきお答えのシーレーンの防衛の問題などが事務レベル協議で出されてくるのじゃないか、これについての所見はどうかということについては、時期もまだよく決まっていないし、それについての明快な答えを避ける御答弁だった。大体そういうものなんですか。事務レベルの協議というものは、行われるまで大体何を米側が言ってくるか、それは正式な議題というものが、印刷されたものがあるなしの問題じゃなく、どういうことを言ってくるだろうか、アメリカの財団の動き、大統領の動き、発言、議会筋の動き、そういうものを判断して、それでやっぱり用意しているものがあると思うんです。そういうものを聞いているんですよ。お答えないのならないで結構なんですが、いかがでしょう。
  66. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) 事務レベル協議と申しますのは、先ほども申し上げましたように、日米両国の関係者間でフリートーキングをして意思の疎通を図っていくということが基本的な性格でございますから、先ほども申し上げましたように、特定の議題をあらかじめ決めてやっていくということではないわけでございます。フリートーキングということでありますから、その時点におきまして双方が関心を持った問題をお互いに自由にしゃべって、それについての意見の交換をするということになるわけでございますから、いまこの時点であらかじめどういった特定の問題が議論されるであろうということを予想し得る状況ではないということを申し上げているわけでございます。
  67. 内藤功

    ○内藤功君 そういう事務レベル協議での予想された議題もここで明らかにできないということははなはだ遺憾であります。そういうことでまた防衛庁というのはやっているのかということになりますから、これは国民が聞いたら。  そこで、私が次に聞きたいのは、現在極東有事研究というものが日米間で行われている。現在どこまで、どんなことをやっているかという進捗状況を明らかにしていただきたいのであります。特に、アメリカ側からは極東有事研究に関しましてどのような要求が出ておるかという点を伺いたい。
  68. 加藤良三

    説明員(加藤良三君) お答え申し上げます。  いわゆる六条事態の研究につきましては引き続き作業が継続中でございますが、必ずしも大きな進展はまだ得られていないという状況にございます。御案内のとおり、この研究は米軍の行動に係る面が少なくないということでございますので、その内容をここで明らかにするということは、米軍のその行動に係るいろいろな機微な側面が明らかになりますとか、わが方の安全保障との絡みということもございますので、明らかにすることは差し控えさしていただきたいと存じます。
  69. 内藤功

    ○内藤功君 極東有事の研究というのは、日米の防衛協力指針、ガイドラインというものに基づいて、そして日本の防衛庁長官、外務大臣などが関与してつくられた協定に基づいてやられている。皆さん方の作業はそういうことだと思うんですね。ですから、それは米軍の行動に関することと同時に、同時にそれに対応する、それに協力する日本側の動きというものがあって初めてこの防衛協力ガイドラインというものの実行というものは、われわれはこれは反対ですけれども、進められるわけですね。そうすると、米軍の行動にも絡むから国会に言えないというのはおかしいのじゃないですか。日本側のこれに対する協力体制というものはこういうふうに研究の場合に考えるということがなきゃならぬ。その点はどうですか。
  70. 加藤良三

    説明員(加藤良三君) 繰り返しになりますけれども、米軍の行動に係る面が少なくない本件研究というその内容を明らかにいたしまする場合には、米軍の行動に係るいろいろなその側面が明らかになるということのほかに、わが国の便宜供与、先生がいまおっしゃられました日本からの協力というのは極東において事態が生じた場合における日本からの便宜供与に係る研究だと、その便宜供与に言及されたことと存じますけれども、その協力体制をあらかじめ明らかにするというようなことによりまして日米安保体制の効果的な運用ということに支障を来すということもあり得ると考えられますので、その内容は明らかにできないということを申し上げた次第でございます。
  71. 内藤功

    ○内藤功君 それはおかしいので、日本の国の協力というのは、日本の自衛隊が日本国民や日本の国民の生活、それから日常の経済活動というものと離れてどこか太平洋や北極海でやるものじゃないんですね。日本とその周辺でもって強大な武力を持つ部隊が行動する、いろんなことをやるという問題を含むわけですから、これについて米軍の行動が絡んでいるからこれは日本の国会で報告できるものじゃない、私はこの答え自体が非常に危険なものだと思うんです。  そこで、この極東の中には朝鮮半島含みますね、これは当然極東有事研究に。
  72. 加藤良三

    説明員(加藤良三君) この六条事態の研究と申しまする場合には、日本以外の極東地域における事態、これが生じました場合、それが米軍の行動を必要とするというような事態でありました場合に日本がどういう便宜供与をなし得るのかという側面からの研究でございます。そういう意味におきまして、特に朝鮮半島云々ということを特定しているわけではございません。
  73. 内藤功

    ○内藤功君 朝鮮半島だけを特定しているのじゃなく、朝鮮半島も含むということにおいていまあなたは認められた。  その前提でお聞きしますが、一九八二年のアメリカの国防報告では、朝鮮半島が世界的にも紛争の可能性の高い三つの地域の一つだと位置づけております。わが国防衛庁、あるいは制服組、統合幕僚会議、各自衛隊のやっているいろんな演習、図上演習と称せられるものの中にも朝鮮半島有事、朝鮮半島での紛争発生というものを前提にした研究がずっと行われていることも、これも私は防衛庁は否定できないことだと思うんです。  そこでさらに、政府・与党の防衛関係に非常にお詳しい方ですが、国防部会長をやっておられる有馬元治議員は、「月刊政策」という雑誌の昨年四月号で、当時は有馬先生は部会長代理でありましたが、次のように述べておられます。「極東有事という研究課題は、朝鮮半島の武力紛争ということが想定になっているわけですね。だから、これははっきり言えばいいんです。」ということを、これは与党の立場ですから、われわれとまた違った観点でありますが、そういうものはやっぱりはっきりさせる。いま防衛庁がやっている極東有事研究というものはそういうものだ、それをやれというならこれも一つの議論。われわれはそれは危険だから朝鮮半島が火種になるようなそういうものはやるべきじゃないという立場はわれわれの立場。政府がいまやっているものは朝鮮半島だけを特定にしているのじゃない。それはそうでしょうけれども、朝鮮半島はやっぱりその中の一つの大きなポイントだ、極東有事というのは。ということをやっぱりはっきりさせるべきだと思うんですね。ここらあたりは、極東有事研究というものが一体何なのかということについてもっとはっきりされるべきだ。長官、いかがでございますか。
  74. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) 安保条約第六条に含まれる解釈につきましては外務省にお任せをいたしまして、その問題とは全然切り離して、いまの御質疑のございました中に朝鮮半島に関する問題がございましたが、実は日米の首脳会談では、先ほど私すでに答弁さしていただきましたように、共同声明が出された場合あるいは共同声明が出されずになったような場合におきましても、朝鮮半島における平和と安定の維持が日本を含む東アジアの平和と安定にとって緊要である、重要である、大事であるという基本的な認識は常に出ておるわけでございます。また事実、先般のラングーン事件でも見られるように、あの事件の直後、確かに一時的にせよ緊張が高まったという事実もこれもございます。われわれとしては何としてでも、日本のごく近くに存在いたしまする朝鮮半島におきまして国際緊張が高まるというふうなことはこの地域の平和の維持にとってはきわめて遺憾である、したがってそういうことの起こらないようにあらゆる努力をしていかなきゃならぬという立場におるわけでございます。  そのことと、いままで外務省の方でお答えになっておりまする日米の間の極東有事についての共同研究の進捗状態あるいは対象あるいはその中身というような問題につきましては、直接これは絡んで御答弁申し上げたという意味ではございません。私がただいま申し上げましたのは、この地域の平和と安全の維持発展、確保のためにはどうしても朝鮮半島におきまする緊張が高まってもらってはならないという基本的な姿勢について答弁をさしていただいた次第でございます。
  75. 内藤功

    ○内藤功君 これはやはり極東有事研究というものがどういうような想定で、またアメリカはどう言ってきている、これに対して日本側は日本の独自の立場でこういうふうな主張をしているということがこの国会の内閣委員会で明らかにされなければ、防衛力あるいは自衛隊に対する国民のコントロール、シビリアンコントロールなんというものは本当に画餅に私は帰すると思うんです。それは私たちも中立、自衛という立場をとっております。いまの自衛隊についての見解は与党とはまた違う見解を持っております。しかし、それなりにここに出された素材でやっぱり真摯な議論を内閣委員会でやらなければどこでやれるか。私はもっと質問を進めたいんですが、そういういままでのずっと——いままでにもう二十五分たってしまいました。この中の皆さん方の姿勢というものを見て、やっぱり一番大事な国民の知りたいことを隠している、言わない、端的に言うと米軍の行動に遠慮して言わないという印象を受けたことは非常に遺憾だということを質問の途中ですが、一言申し上げておきたいと思うのであります。  そこで、具体的に聞きますが、できるだけ率直に答えてもらいたいんですが、いま言われた極東有事の際、日本の自衛隊が次の項目を行うということはこの極東有事研究の対象にするのかという設問であります。  六つありますが、一つは、わが国内におきます米軍物資の輸送の問題。それから二が、公海上での米軍の軍事物資や補給物資の輸送の問題。それから三が、米軍の救助、米軍の部隊、将兵に対する救助の問題。四は、米軍武器の修理の問題。それから五が、米軍傷病者への医療の問題。六が、弾薬、燃料を提供するということです。私、いっぱいありますけれども、とりあえずこの六つに整理して、これについて検討対象にするのかどうか、またいましているのかどうか、将来はどうなのかというお考えを聞きたいんです。
  76. 加藤良三

    説明員(加藤良三君) 先ほど申し上げましたとおり、六条事態研究というのは、極東において何らかの重要な事態が生じて、それが日本の安全にも重要なかかわりがある、それが米軍の行動を必要とするような事態である、その状況のもとで日本がどのような便宜供与を行うことができるかという研究でございます。いずれにいたしましても、これは現在進められておりまする研究というものはあくまでも研究でございます。  それで、日本が米軍に対して行う便宜供与のあり方が、日米の安保条約、それから関連取り決め、その他の日米間の関係取り決め、さらには日本の関係法令というものによって規律されるというものであることはすでに政府がこれまでも何度か御答弁申し上げているとおりでございますし、これは日米防衛協力のための指針、ガイドラインというものに明記されているわけでもございます。こういう指針の作成のための研究協議については、憲法上の制約に関する諸問題はその対象とされないというようなこと、それから研究協議の結論が日米両国の政府の立法とか予算とかあるいは行政上の措置というものを義務づけるものではないということはあらかじめ確認されているわけでございまして、その点を申し上げる次第でございます。
  77. 内藤功

    ○内藤功君 それはわかっています、そんなことは。ですから、この六項目について答えてください。  それは日米防衛協力ガイドラインの前提事項をいま読まれたわけでしょう。そんなことは知っていますよ。知っている上での質問です。ですから、いまこの六項目についてどうかと。あなたの方がそういうことを言ったから、それだから二はできるとか三はできないとか言うのかと思ったら、そこで終わりじゃないですか。この六項目についてどうですか。
  78. 加藤良三

    説明員(加藤良三君) 具体的にこの研究作業の中でどのような項目につき作業が行われているのかという点につきましては、冒頭私が申し上げましたところに戻りまして恐縮でございますが、さきに申し述べました理由によりまして、この場で明らかにすることは差し控えさしていただきたいと存じます。
  79. 内藤功

    ○内藤功君 これは重大な問題ですね、一つ一つが。やはり日本の国内であるいは周辺で強大な武力を持っている米軍が行動をする。それに非常に近接し、かかわり合っていろんな便宜を提供する。便宜という言葉ですよ。便宜というと、国民にはわからぬけれども、内容はたとえばこういうものです、これを研究しているかどうか、協議の対象にしているかどうか、これは国民の一番知りたいところだ。  現に、この防衛二法はそういうガイドラインの運用について統合幕僚会議の人間をふやしてくれ、予算はこれだけかかりますとわれわれにお願いしているのじゃないんですか、あなた方は。お願いしている側がお願いする事項について明らかにできない。私は、これだけでも内閣委員会を何と考えておられるかと言いたくなりますよ。ちゃんとここに書いてありますよ。こういうことなんでしょう。ガイドラインについての研究を統合幕僚会議でやるから人間を少しふやしていただきますとお願いしてきている立場じゃないですか。われわれは国民の代表として審議をするのに、これじゃ審議できません。どうなんですか、これは。はっきりさしてください。それでも言えないんですか。中身がわからないものを国会に相談をして通してくれ、慎重御審議の上、速やかに御可欠あらんことをなんて言っていますけれども、慎重審議する材料が出ていないんだよね。少し言葉が過ぎるかもしれませんけれども、私はそう思いますよ。どうですか、もう一回聞きたい。なお答えないならば、長官が答えない理由を後でおっしゃってください。
  80. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) 慎重御審議をお願い申し上げました当の本人でございますので、私からお答えを申し上げさしていただきたいと思いますが、いまの質疑が、安保条約第六条に基づく極東有事における日米の関係、特にそういう事態の起こったときの日本側から米側に対する便宜供与の問題からお話が始まっておりましたが、法案に関連をいたしまして統合幕僚会議の関係の人員の増の問題にお触れになられましたけれども、実を申しますると、防衛庁がいま提案をいたしておりまする防衛二法でございますが、防衛庁といたしましては、むしろ第六条の関係ではなくて、日米の関係におきましては第五条の関係が主たるものでございます。  それから第二点といたしましては、今回御審議をちょうだいをいたそうといたしておりまする、特に六十四人に当たる先ほど先生指摘の定員増につきましては、近々完成をいたしたいとわれわれ努力いたしておりまする中央指揮所の問題を中心にいたしまして、それで増員について要求をいたしておるわけでございまして、先ほど来ここで御論議のありました第六条に関係のある極東における有事の際の日米の共同の研究の中身が云々であるからこの法案について質疑はできないといまおっしゃられましたけれども、私どもが提案をいたしましたのは、必ずしもそういう第六条絡みの問題で定員増をお願いしているものではございません。その点をつけ加えさしていただきたいと思います。
  81. 内藤功

    ○内藤功君 大臣、そういう細かいことを言っちゃいけません、大臣は。日米防衛協力ガイドラインに基づく研究作業要員として十三人お願いしますと言ってきているんだよね。五条とか六条とか、そんな細かいこと書いてありません、これには。そういうことを言ってはいけない。そういうこそくなことで逃れられると思ったら間違っていますよ。  それから統幕の増員は、中央指揮所三十三人、ガイドライン十三人、私はこれは大臣のためにいま申し上げたわけであります、失礼かもしれませんが。  さてそこで、今度はこれに絡む海峡封鎖問題であります。ことしの六月にロング太平洋軍司令官は、当時の司令官ですが、日本と韓国の防衛が問題になる場合には両国への入り口を確保しておくために合意された措置がある、こういうふうに述べている。これは対馬海峡封鎖作戦について米日韓の封鎖計画を述べたものと思います。ロング発言については、軍事的に見た場合に、こういうロング太平洋軍司令官の米側の計画というものが私はあると思います。日本側はなかなか踏み切れないいろんなところがあってもやもやしていると思うけれども、米側はこういう考え方があると私は見ております。このような対馬海峡の封鎖作戦について韓国と検討するということは日本の政府・防衛庁としては現在も将来もあり得ない、こういう立場であると確認してよいか。あるいは将来にわたっては何とも言えない、将来にわたってはあり得るかもしれぬというものなのか。あるいはそれは当然だというふうに思うのか。この点の防衛庁のお考えをお聞きしたいです。
  82. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) ただいま御指摘のございましたロング司令官、当時の司令官でございますが、これの発言の内容でございますけれども、これは日米韓三国の一緒になった計画ということを言われたのではございませんで、米国と日本との間についての問題と、それから別途に米国と韓国との間の計画といったようなものについて述べられたものと私ども承知をしておるわけでございます。  そして、日本と米国との関係につきましては、御承知のとおり従来からガイドラインに基づきます共同作戦計画の研究を進めてきているわけでございまして、そういった中でことしの三月から新たにシーレーン防衛に関する共同作戦計画の研究を開始しているわけでございます。そういうことでございまして、いずれにいたしましても、研究の範囲と申しますのはわが国防衛のための日米共同作戦計画の研究に限られているものでありまして、この中で日米韓三国あるいは日韓の共同作戦を前提として研究を行うということはあり得ないことでございます。
  83. 内藤功

    ○内藤功君 くどいようですが、将来もあり得ないと、こういう御答弁ですね。
  84. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) 現在、私ども日米安保体制に基づきましてこういった共同作戦計画の研究をやっておるわけでございますから、そういう枠組みの中でいま御指摘のような日米韓三国あるいは日韓の共同作戦というものを前提とした研究を行うことはあり得ないということははっきり申し上げておきたいと思います。
  85. 内藤功

    ○内藤功君 そこで、韓国の国防大臣、これは私よく読めないんですが、国防大臣尹誠敏というんですか、この方が去る十月二十七日の韓国の国会において、日米韓軍事協力を段階的に推進し、今後は日米合同軍事訓練への韓国軍の参加を検討すると述べたと報道されております。防衛庁は、日米合同演習に韓国軍を参加させる、あるいは韓国軍が参加を求めてきた場合にこれを容認する、受容する、受け入れるということについては現在どう考えているか。将来はどう考えているかどうか。将来ともこれはあり得ないのか、あるいは将来はこれはあり得るのか。この点について伺いたいです。
  86. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) お答えいたします。  わが方の他国と行います合同訓練なり共同訓練は、自衛隊法に基づきまして自衛隊の任務遂行に必要な練度の向上、そういうことを図るためにやりますから、そういった目的に合致するものであればどこの国とやってもよろしいわけでございますが、実際問題としてそれをやることが訓練の成果にとって非常に役に立つのか、あるいはそういった訓練の成果だけでなく政治的その他から見て妥当であるかどうか、そういったことを含めまして判断をするということになろうかと思います。
  87. 内藤功

    ○内藤功君 そうすると、そういういわゆる部隊の練度向上のために他国の軍隊と、ちょうどフットボールの試合をやると技量が上がるように、そういう面でプラスになると思えばやる、思わなきゃやらない、韓国の軍隊であろうとどことだろうとやる、この韓国の場合も将来はやる場合もあると、こういうことでしょうか。
  88. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) ただいま申し上げたように、純粋に軍事的な面だけを申し上げれば先生のおっしゃったとおりでございますが、それとあわせまして、その国とやることが政治的その他の問題を含めて妥当であるかどうかということも当然考慮の対象になるということでございます。
  89. 内藤功

    ○内藤功君 長官、この点どうですか。
  90. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) 私どもは、すでに日本へ親善寄港をするような国々、たとえばフランスその他の国々と海上において訓練とまで言われるような大きなものではないにせよ、お互いに練度を高めるという目的からいろいろな共同の訓練をしております。ただ、その相手国はどこでも自衛隊法の許す、またはわが自衛隊の練度の達成のためにプラスになると判断されれば別に制限ないわけなんでございますけれども、それではどことやるかということにつきましてはその都度十分検討しながら、それだけでなくて諸般のいろいろな情勢につきましても判断をいたしながら訓練は決めていくということでやってきております。
  91. 内藤功

    ○内藤功君 そうしますと、この日米の合同訓練で対馬海峡を封鎖する。対馬海峡で通峡阻止ですね。皆さんの言葉で言うと通峡阻止の訓練あるいは演習をやる。自衛隊と米軍の間でやる。その場合に、今度は韓国の軍隊がその日米合同演習、合同訓練に参加を申し入れてきたという場合はやることがあり得ると、こういう答弁でいいですか。
  92. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 先ほど最初に御答弁申し上げたように、私が申し上げたのは自衛隊の任務遂行のために必要なものということで申し上げまして、集団的な自衛権の行使に及ぶようなものとか、そういった特定の想定のある演習等ができるというふうには申し上げておりませんで、汎用的なあるいは基礎的な軍事的な訓練、そういったものについての練度の向上に役立つものについては可能であるという旨を申し上げたわけであります。
  93. 内藤功

    ○内藤功君 これはやはりすぐれて政治的な問題も入ってくると思うんです。  そこで、長官にお伺いしたいんですが、いまの質問、もう一回繰り返しますと、日米の共同の演習が対馬海峡の通峡阻止というそういう目的も含めて行われているという場合に、これに韓国の軍隊が参加をするということを認めるか認めないか。日米韓の海峡封鎖の軍事的な計画は将来とも認めないと、さっきあなたの局長が言っておられる。訓練の方はやるというのか。ここのところ、どうですか。
  94. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) あくまでも私どもでやりまする訓練は、自衛隊法の命ずるところで、自衛隊の持っておりまする使命達成のために練度を高める目的で行っておるわけでございます。  それから、いま御指摘のありましたような問題につきましては、これはいま私どもがここで御答弁申し上げておりまする訓練とまたちょっと違う意味合いを持っておりまして、言うならば、一つの大きな政治的な意図の判断を必要とするような意味の演習ということの範囲にも入るかもしれません。したがいまして、まず最初にお答えしておかなきゃならぬことは、日本と韓国との間には何ら軍事的な取り決めというものはございません。仮に日本の周辺の、いずれかの海峡か存じませんが、海峡の通峡を阻止するというようなわが方の実力行使が行われるとしても、それはあくまで日本は日本の独自の判断で行うことでございまして、日韓両国が共同してこれをやらなければならないというような取り決めにはなっておりません。  それから、御指摘のあったような、そういうような日米間で行われておる通峡阻止の演習に対して韓国が参加をしてくるであろうかどうか、それはわかりませんが、参加をしてくるということは、ちょっといまの状態では私は考えられないと思いますけれども、参加をしてくるような意図があったと仮にいたしましても、いま私がここで御答弁を申し上げたような基本を土台にいたしましてわれわれは考えているのでございまして、もう一遍もとへ戻らしていただきますが、一番最初に申し上げました練度を高めるという訓練と、いま御指摘のあったような問題とは少し問題が違うというふうに私は判断をいたしております。
  95. 内藤功

    ○内藤功君 そうすると、単に練度を高めるだけの訓練だというふうに考えた場合には、日本の自衛隊訓練あるいは日米の共同訓練に韓国の軍隊が参加をするということを認めることもあり得ると、こう言うんですか。
  96. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 日米共同訓練がどこでどういう形で行われるか、いろいろあろうかと思いますが、仮に日本の演習場で日米共同訓練が行われておる、そこへ韓国の軍隊が来て共同して訓練を行うということになりますと、それはいわゆる練度を高めるということ以外のいろいろな問題がございます。そういったことも含めますと、ちょっと考えられないわけでございますけれども、私が申し上げたのは汎用的あるいは基礎的な戦術技量の向上について役立つものであれば、韓国に限りませんが、あるいはソ連でもいいかもしれませんけれども、そこと訓練をして練度を高めることについては法的には特に問題はないということを申し上げただけでございます。
  97. 内藤功

    ○内藤功君 私の時間が来ましたので、あとは次の二度目の質問に譲りたいと思うんですが、これは非常に重大な問題です。というのは——あなた、いま審議官ですな。
  98. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 参事官です。
  99. 内藤功

    ○内藤功君 失礼しました。  参事官が汎用的という言葉を使ったんです。これは例のリムパックのときに、私は予算委員会で——官房長は当時、防衛局長でしたかね。
  100. 佐々淳行

    政府委員(佐々淳行君) 参事官でございます。
  101. 内藤功

    ○内藤功君 参事官に聞いたときに、あのリムパックを合法化する理由がこの汎用的なものだというのを、たしか当時の防衛庁はお答えになっていたんですよ。ですから、私は非常にこれは重大だと思うんです。これはどうなんですか。将来の日米合同訓練に韓国の参加は防衛庁長官は認めないという立場を言明したというふうに国民の皆さんに話していいんですか。それとも認めると言ったと言っていいんですか。その点を最後に私は聞きたい。
  102. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) 一番基本になる問題は、わが国と韓国の間に共同対処するような条約だとか取り決めとか、そういうものはございません。わが国わが国で、わが国の独自の判断わが国の防衛にかかわる問題でございまして、今後の演習がどういう形になろうとも基本はここが一番大事な点であると私は判断をいたします。
  103. 高平公友

    委員長高平公友君) 午前の質疑はこの程度とし、午後一時まで休憩いたします。    正午休憩      ─────・─────    午後一時開会
  104. 高平公友

    委員長高平公友君) ただいまから内閣委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  105. 柄谷道一

    柄谷道一君 午前中の質問峯山委員からも触れられましたが、極東ソ連軍の中距離核戦力地上兵力、航空兵力、海上兵力の現状について防衛庁はどのように把握しておられるか、まずお伺いします。
  106. 新井弘一

    政府委員新井弘一君) お答え申し上げます。  まず最初に、委員から御質問のありました核戦力に関連いたしましてSS20、これは現在極東シベリア地域に数にして百八基ございます。つけ加えますと、われわれの承知する限り、さらに三つの基地で建設中というふうに承知しております。  それからバックファイアにつきましては、約七十機同じく極東シベリア地域に配備されております。  それから地上兵力でございますけれども、これは中ソ国境地域を全部含めますと五十二個師団、四十七万人でございます。このうち幾つかの軍管区がございますが、われわれ日本に至近距離にある極東軍管区、さらにザバイカル軍管区プラスモンゴルに駐屯するソ連軍を含めますと三十七万人、四十個師団というふうに理解しております。  他方、海軍兵力につきましては、極東ソ連太平洋艦隊、これが総数にして八百二十隻、百六十二万トン、その勢力を擁していると、そういうふうに理解しております。  それから最後に、航空兵力でございますけれども、二千百機がトータルな数というふうに理解しております。内訳を言いますと、約四百四十機が戦闘機、千五百十機が爆撃機、残りの百五十機が哨戒機であるというふうに理解しております。
  107. 柄谷道一

    柄谷道一君 ただいま量的な面の御説明がございましたが、私はそういう量的な問題のほかにも、たとえば地上兵力におきましてはT72戦車、装甲歩兵戦闘車等の装備の増強が進んでおる。さらに、航空機につきましても約六割以上が高性能の第三世代航空機というふうにその質的な面においてもその増強ぶりが著しいと、こう思うわけでございます。  そこで、長官、こうした極東ソ連軍の急激な戦力増強がわが国の安全保障に及ぼす影響について、どのような評価をしていらっしゃいますか。
  108. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) 確かにここ数年の極東におきまするソ連軍の増強はまことに顕著なものがございます。私どもといたしましては、この極東におけるソ連軍の増強はわが国に対する潜在的な脅威と、こう考えておりますが、しかしながら現在直ちにこの潜在的脅威が顕在化するというふうには考えておりません。おりませんが、しかしわれわれといたしましては、いずれの国を仮想敵国として日本の防衛を考えるわけでもございませんけれども一般論といたしましては、日米安保条約によって日本の安全はさらにここで強化されておるはずだというふうにも考えておりまするし、また防衛庁といたしましては常にいかなる状態になりましても侵略は未然にこれを防止しなきゃならぬ、また万が一侵略というものが生起した場合には直ちにこれに有効に対処していくということを考えながら、わが国の独立、安全の確保を図っていかねばならぬと、こう考えておる次第でございます。
  109. 柄谷道一

    柄谷道一君 先般、レーガン米大統領が来日されまして、中曽根総理との間で外交、経済、安全保障等各般の分野についての意見交換が行われました。私は、日米関係というものは単に二国間の関係だけにとどまらず、世界の平和と繁栄という見地からもきわめて重要であるという認識に立つものでございます。  もちろん、日米両国は自由と民主主義という価値観を共有するものでありますけれども、他方言語、伝統、これらを異にいたしております。また、安全保障の面におきましても、わが国には専守防衛、非核三原則、GNP一%枠などの方針が現存いたしておるわけでございます。一方、アメリカソ連のグローバルな軍備増強に対して厳しい国際情勢というものを考え、みずからも当然努力は行っておりますが、日本に対しても一層の防衛努力を求めております。こういうときにこそ、私は両国の首脳間だけではなくて、日米のさまざまなレベルにおける率直な対話がきわめて必要であると思うものでございます。  ところで、谷川防衛長官は八月に渡米されまして、ワインバーガー長官との会談を行われました。さらに、九月には逆に来日されました同長官と再度の会談を持っておられます。これらの会談においてわが国の防衛努力について具体的などのような意見交換が行われたのか、話せる範囲で明らかにしていただきたいと思います。
  110. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) 八月の二十二日にワシントンに行きましてワインバーガー長官と会談をいたしましたが、その席上、ワインバーガー長官からは、わが国の来年度、五十九年度予算の概算要求枠、当時シーリングが決定した後のことでございましたが、六・九%についてこれは評価するという御発言がございました。しかしながら、インフレ率を考えると実質ではもう少し低くなるからやっぱり必ずしも十分ではないと自分は思っているのだ、そういう意味で日本がみずからの国を守ること、それからシーレーン防衛が適切に行われるようなことをひとつぜひ考えてもらいたいという趣旨の御発言がございました。  それから引き続きまして、ワインバーガー長官が九月二十四日に訪中の途次日本に立ち寄られましたときに、東京でワインバーガー長官と会談をいたしましたけれども、このときには、わが国防衛力整備につきましては八月の三十一日に概算要求を財政当局へ提出した後でございましたので、私から、この時点ではまた来年度の予算確定しているときではないので、概算要求としてはシーリングぎりぎりいっぱい内部で概算要求を取りまとめてそして財政当局へ提出したのだということをお伝えをいたしたようなことでございます。ワインバーガー長官は言葉を重ねて言っておいでになりましたが、決してアメリカは日本に防衛の肩がわりを希望するものでもない、日本が日本としてできることをひとつぜひこの際やってもらいたいという趣旨の御発言がございました。
  111. 柄谷道一

    柄谷道一君 私は、今回、レーガン米大統領の来日、これはたまたま日本の総選挙前という政治情勢もございまして、具体的な防衛努力に対する要請は遠慮したのではないかと、こう思うのでございますが、たとえばアメリカ国防総省が去る六月二十八日に発表いたしております「共同防衛への同盟諸国の貢献」、この中で、「中期業務見積もりは海上兵站線防衛戦力に何も触れていないし、そのための規定も設けていない。中期業務見積もりは、日本の現有戦力に持久力を持たせる上でも、航空・海上両自衛隊を必要とされる水準まで増強する上でも不十分である。」「一九七六年の防衛計画大綱は、日本の防衛力の持久力という重大問題、シーレーン防衛の必要に対応しておらず、その他の点でもきわめて時代遅れのものになっている。」、またこの中には、「皮肉なことに、56中期業務見積もり自体が、一九七六年以降の世界情勢は大幅に変化し、国際情勢」が悪化したことに対して不十分ではないかという指摘アメリカ国防総省自体が正規の文書の中でこれを明らかにいたしておるわけでございます。これは日本の防衛努力というものに対してアメリカ側の見る目がきわめて不満であることを示唆するものであろうと、こう思います。  そこで、今後アメリカからの防衛努力期待に対して長官としてはどのような基本方針で対処をされていくのか、この点を明らかにしていただきたいと思います。
  112. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) 安保条約によりまして日本を防衛する立場にありまする米国がわが国の一層の防衛努力について期待を表明することは、これは理解できるところでございます。しかしながら、私どもといたしましては、わが国の持っておりまする防衛力整備の計画、防衛計画の大綱の水準にできるだけ早く近づけたいということで、非常に財政の厳しい時期ではございますが、ぎりぎりいっぱいの努力を今後とも重ねていきたいと、こう考えておる次第でございます。
  113. 柄谷道一

    柄谷道一君 さらに、それではお伺いいたしますが、私は、四月一日、本院の予算委員会で総理大臣質問をいたしました。私の質問に対して中曽根総理は、速記録を読ましていただきますが、このようにお答えになっております。「国には国の事情があります。したがいまして、国民の感情やら、あるいはほかの経費とのバランスやら、あるいは財政事情やら、あるいは対外要求、外国からの要請、そういうものにすべて目を注ぎながら、その時点においてベストのことをやるというのが、政治家の責任であると私は考えておりまして、私たちがそういう努力をする限り、対日不信というものはない。」「要は誠意があるかないか、やる意思があるかないかということであって、財政事情やその他の問題は話せばわかってくれることであると思っております。」と、こうお答えになっているわけですね。  私は、この発言は誠意を持ってベストを尽くせば財政事情等から五六中業を下方修正しても日米関係は損なわれないという総理の所信を述べられたきわめて重要な発言であると言わざるを得ないわけでございます。それがもしそうであるとすれば、私がさきに挙げましたアメリカ国防総省の認識やアメリカ国会筋や世論の動向とはいささか食い違っているのではないかと、こう思わざるを得ません。  私は、その際は質問時間がなくなりまして質疑を打ち切らざるを得なかったわけでございますが、再度、長官にお伺いいたします。私は、アメリカが日本の財政事情と防衛努力に対してそのような理解を持って、日米関係というものは五六中業達成の時期をおくらしても盤石である、そのような認識を長官はお持ちでございますか。
  114. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) まず最初にお答え申し上げたいことは、日米関係は恐らく現在存立いたしておりまする二国間の国家関係の中で最も重要な国家関係であろうと思っております。その中でも、特に防衛、安全保障という問題から考えますと、私はやはりわが国の独立の確保、安全の維持ということの面から見ましても、日米安保条約という条約はきわめてこれは重要な条約だと思っておりまするし、それから日本の立場だけでなくて、アジア、太平洋におきまする平和の維持のためにもやはり日本の安全が確保されていくということ、それから日米安保条約が有効に運用されるということは非常に大事なことだと、こうも考えております。  したがって、日米関係を非常に重要に考えておるわけでございますが、実は防衛費の面だけから申し上げますと、私といたしましては、五十九年度の概算要求に先立ちまして、シーリング決定時におきましても実は大蔵大臣と三回に及ぶ、ついに夜が明けるまで交渉を重ねたわけでございます。ぎりぎりいっぱいの努力をすることが何といっても大事なことだと、こう考えて努力をいたしておるわけでございますが、そのシーリング枠に基づいてシーリング目いっぱいの概算要求をいま提出いたしておりますが、財政事情が厳しい今日でありますけれども、やはり私はわれわれが持っておりまする防衛力整備の計画、これをできるだけ早い時点で早期に達成するように努力を続けていくこと、このわれわれのぎりぎりの努力がきわめて大事なことなんだと、こういうふうに認識をいたしておる次第でございます。
  115. 柄谷道一

    柄谷道一君 長官がそのような御認識であるとすれば、防衛費のGNP一%枠と深いかかわりがここに生まれてくるわけでございます。私は、行政改革特別委員会の総括質問で総理に対してこの点をただしました。総理は、防衛費のGNP一%枠は守るとお答えになったわけでございます。しかし、五十八年予算でも防衛関係費は〇・九八といわゆる一%の天井にすでに届く寸前でございます。五十八年一%の枠内にとどまり得るということは、これは後ほど本委員会でも協議されます給与において政府が二%しかベースアップをしないというから辛うじて一%の枠にとどまっているわけでございまして、六・四七%という人事院勧告をそのまま尊重し実施するならば、すでに五十八年においても一%枠を超えるということになるわけですね。一・〇〇二でございます。  しかも、五六中業達成のために防衛庁が概算要求で出しておられますその金額が絶対不可避のものであると仮に仮定した場合に、その中に含まれております人件費は定昇分百五億円、給与改善費百十億円、いわゆる一%のベースアップというものを前提に組んでおりますからこれまた一%の枠内に辛うじてとどまっておりますけれども、これも人事院制度というものを考えれば一%におさまるべきはずもないし、またおさめてはならないと、こう思うわけでございます。  そうしますと、五十九年度の名目経済成長率を五十八年の政府見通しどおりの五・六%と仮定すれば、五十九年度はベースアップ三%でも一%をオーバーします。仮に名目成長率六%でもベースアップを四%行えば一%の枠を超える。この私の試算は間違いございませんでしょうね。
  116. 宍倉宗夫

    政府委員(宍倉宗夫君) 前提を置いての計算でございますが、その前提どおりの計算といたしますれば、先生の計算はおおむね間違いはないと思います。
  117. 柄谷道一

    柄谷道一君 それでは、その場合GNP一%枠はどう取り扱われるわけですか。防衛計画を削るんですか。
  118. 宍倉宗夫

    政府委員(宍倉宗夫君) 先生の前提どおりでほかにその変動要因がございませんと、先ほど申し上げましたように先生のおっしゃるとおりになろうかと存じますが、GNPがどのくらいになるかということも実態的にはまだわかってない問題でございますし、それから人事院勧告の話は、ましてや五十九年度の話はわかっておる話でございません。したがいまして、私どもといたしましては、前から御答弁申し上げておりますように、ぎりぎりとにかく、一%というのが結果的にわかってくるかと思いますが、それを超さないようにいろんな面で努力をしてまいりたいと、こういうふうに考えております。
  119. 柄谷道一

    柄谷道一君 防衛庁長官は、決算の段階においても一%枠を守ると、こう言われたですね。いま御答弁になりましたように、経済成長率もこれは全く仮定の問題である。ベースアップも仮定の問題でございます。しかし、五十九年度内にはその人勧取り扱いも確定するわけです、年度の中間で。経済成長も年度の終わりごろになればほぼその見通しもつくわけですね。そこで、これは一%の枠を超えるという場合は、正面装備を切り下げない限り一%の枠を超えてしまうわけでしょう。そういう御決断もしておられるんですか。
  120. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) 決算に関連をいたしましてさしていただきました答弁は、実はこれには経緯がございまして、政府原案を決定する時点において一%を超えないことをめどとするという五十一年閣議を尊重するのであれば、決算についても同じように尊重するのかというその趣旨の御質問ございまして、それについては当然でございますと、こういうふうに答弁を申し上げました。  なお、つけ加えさせていただきますと、決算そのものは一年ないし一年半、あるいはひょっとしますともう少し先になりませんと実は決算というものは上がってまいりません。したがって、年度の最中にその年度の決算で物を考えるということは、これは実は技術的にはできないことでございます。
  121. 柄谷道一

    柄谷道一君 私は、わが国の安全保障という視点からとらまえますと、やはり国民の合意の形成というのがきわめて重要な前提になると思うのですね。選挙を前にしておるのかどうか知りませんけれども、どうも総理以下政府の答弁はたてまえに終始して、一%防衛費枠は守る、こう言われながら、これは早晩超えるであろうという予測が明確な段階においてもなおたてまえ論に終始されておるということは、かえって国民の間に不信の念を抱かせるのではないか、こう思えて仕方がございません。  そこで、端的にお伺いいたしますが、仮に防衛費が将来GNPの一%を超えざるを得ないという事態になった場合、その方針の変更は防衛庁が発議し、国防会議及び閣議でこれを決定し、国会に報告して了承を求める、こういう手順をとられるおつもりでございますか。
  122. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) この防衛力整備の実施に当たりまして、GNPの総額の一%を超えないことをめどとして当面やっていくという方針を決めたのは、御指摘のとおり国防会議の決定及び閣議の決定を経て決めた経緯があるわけでございます。これを変更する必要が生じるかどうかというのはこれは将来の問題でございますけれども、そのときの具体的なやり方ということについてのお尋ねでございますが、そういった問題につきましては、内容の問題もございますし、あるいはどういった時期にそういうことをやるかということもございますし、それからいま御指摘のありました手続をどうするかということもあろうかと思いますけれども、そもそも現時点におきましてはこの閣議決定を変更する必要はないというふうに考えておりますので、そういった具体的な問題についても現在まだ検討を行っていないわけでございまして、御質問の点に具体的にお答えをできる状況にはないということを御理解を賜りたいと思います。
  123. 柄谷道一

    柄谷道一君 そういう時点でないから答えられないと言うのですが、現在のGNP一%枠は国防会議と閣議で決定されて、それを政府の方針とされたのでしょう。そんなことは時期が云々という問題ではなくて、それを変更せざるを得ない、また新しいその枠づくりをどうするのかということは当然国防会議、閣議にかけなければ決まらないわけですし、その場合は発議者はこれは防衛庁当局でなければならないと思うのですね。しかも、その方針は政府の方針というものの大きな変更ですから、これは国会に報告することもまた当然であって、防衛庁長官、何を慎重にお考えなのか知りませんけれども、そういう場合はそういう手続をとりますということがなぜ言えないのでしょうか。
  124. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) 現在のGNPの問題についての閣議決定を決めました経緯につきましては、私ども承知いたしております限りでは内閣総理大臣の諮問を受けて国防会議において決定されたと、こういう経緯になっておるわけでございます。そういったこともございますが、ともかくもし将来新しい事態が生じたときに、いま先生が御指摘になりましたような具体的な問題も含めてどういった手続を順次とっていくのかというようなことにつきましては、現在の段階では私どもはまだ検討をしておらないということを申し上げた次第でございます。
  125. 柄谷道一

    柄谷道一君 私は、いつまでもそのようなその場しのぎの姿勢でこれから対応できるものではないと思うんですね。やはり国民合意を新しく形成していくためには、政府みずからがかくなければならないという方針を示して万機公論に決する、その勇断を持たなければわが国の安全保障問題はいつまでももやもやした雰囲気の中で推移する結果に陥らざるを得ないということをこの際指摘いたしておきたい、こう思います。大臣、いかがですか。
  126. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) おっしゃられる意味はよくわかります。  と同時に、私どもは、五十一年の閣議決定でございますが、この閣議決定は現在変える必要もないと思っておりまするし、それよりも積極的にこれを守っていきたいと、こう考えてぎりぎりの努力をしておるということも御理解いただきたいと存じますし、それから五十九年の防衛総費がどうなってくるか、わが国の経済の動向がどうなるか、これがわからぬこの時点では、一%を超える超えない議論というのはできないわけでございますけれども、ただ一つだけ申し上げてみたいことは、先ほど来人件費のことを触れておいでになられましたが、確かに防衛庁という役所は大変たくさんの職員並びに自衛隊員を抱えておりますので人件費の比率は高い役所でございまして、人件費がアップすれば、当然でございますが必要経費がアップする。一%上がりましても百二十億ぐらいの費用を必要といたしてまいります。そういう役所でございます。  しかしながら、反面わが国の経済そのものも、三百兆とまでいきませんが、それに近いぐらい大きな経済でございまして、国の経済の再活性化がどの時点で図られるか存じませんが、一たび国の経済に活気がつけばこれもまた大変大きな広がりをしてくるという問題もございます。われわれはそういうことを考えながら、わが国防衛力整備につきましては五十一年の閣議決定の線に従ってぎりぎりいっぱいの努力をいまさせていただいていると、こういうふうに御理解をいただきたいと存じます。
  127. 柄谷道一

    柄谷道一君 非常に経済の今後の成長に大きな期待をかけ過ぎておられるのじゃないかと思うんですけれども、われわれは経済活性化のために積極経済政策への転換を要求しても、いまの政府自体は三・四%の成長を何とかして維持しようということを前提にしての、びほう的と言っては失礼かもしれませんが、そういう経済政策に終始されているわけでございまして、果たして長官の期待するように再び高成長時代来るや否や、私はそれはきわめて、望ましいことですが、疑問とせざるを得ません。この点ばかり言っておりましたら質問時間がなくなりますので、私は本日はGNP問題については指摘にとどめておきたいと思います。  そこで、法案の内容について若干お伺いいたしますが、本改正法案による自衛官の増員は、海上自衛官が千三百二人、航空自衛官が六百三十人、統合幕僚会議に所属する自衛官が四十六人、合わせて千九百七十八人、こうなっております。ところが、わが国の中には防衛費も聖域でない、厳しい財政状況の中で行政改革が進められるときでもあるので、省力化、合理化等によって千九百七十八人の定員増も切り込むことができるのではないかという指摘がされている面もございます。これに対してどうお考えでございましょうか。
  128. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) 自衛隊の場合もこれは国の行政機関の一部を構成するものでありまして、常時できる限りの合理化、適正化ということを考えていくべきことはこれは当然のことではないかというふうに私ども考えておりまして、毎年そういったようなことはできる限り工夫をして努力をしてきているつもりでございます。  しかし、先生指摘のように、自衛官の定員と申しますのは、海、空の自衛隊をとってみましても、艦艇あるいは航空機が就役をいたしますとか、あるいは防衛力の充実を図るために部隊を新改編しなければいけないとか、あるいは新しい機材を導入してその運用を図っていかなきゃいけないとか、あるいは統合運用体制をさらに強化していかなきゃならないとかいったような、いろいろなどうしてもやらざるを得ない問題があるわけでございまして、そういった所要のものを積み上げてお願いをいたしておりますのがこの増員の要求でございまして、これは考え方といたしまして省力化とか合理化ということは当然のこととは言いながら、それをやりますにもおのずから限度があるわけでございまして、私どもはそういったものを踏まえながらも必要最小限のものはぜひお認めを願いたいという考え方に立っておるわけでございます。
  129. 柄谷道一

    柄谷道一君 千九百七十八人は省力化、合理化をできる限り行った上でのなお最小限必要とする人員である、こういう御趣旨であろうと思うのでございますが、それでは防衛二法は約三年間これが未成立のまま経過したわけですね。したがって、やりくりができたのだから今後もやりくりがつくのではないかという説を述べる者もございます。私がここでお伺いしたいのは、防衛二法が未成立の場合、部隊等にどのような影響をもたらすのか、その点を明らかにしていただきたいと思います。
  130. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) ただいまお願いを申し上げております定員増のこの法案におきましては、御承知のように艦艇、航空機の就役等に伴う必要最小限のものをお願いをしておるわけでございます。そういたしまして、この艦艇なり航空機の就役と申しますのは、これは予算におきまして過去の年度におきましてその整備をお認めいただいた機材でございます。したがいまして、こういった機材が逐次就役をしてくるということになりますれば、この予算決定の精神に従いまして適正に運用し活用を図っていくということは防衛庁としてのやはり責務ではないかということを考えておるわけでございます。 そういった意味におきまして、どうしても実際にこういう艦艇なり航空機というものが就役をしてきた場合には、それに所要の人員を何とかして配員をいたしましてそれの運用具体化していくということがぜひ必要になるわけでございます。  しからば、その定員が一方で認められていないとなればどうするのかということに次はなるわけでございますが、それは結局のところは現在持っております総体の定員の中でやりくりをいたしまして対処せざるを得ないというような状況になるわけでございます。その結果、どういうことになるかと申しますと、隊員に過重な勤務を強いるということになるというような問題もありますし、あるいは安全上もどうかと非常に心配しながらやらなければいけないというようなこともございますし、通常の部隊の訓練とか運用等もある程度制約を受けざるを得ないとかいったような問題がございまして、隊員の士気を維持していく点にも影響が出るのではないかということを恐れながらやっておるというような現状にあるわけでございます。  たとえば海上自衛隊におきましては、現在まだこの法案がお認めいただいておりませんので、定員規模が千三百名結局圧縮される結果にいまなってしまっているわけでございますが、これはどういうことで対応しているかといいますと、新しく就役してくる艦艇に所要の人員を賄うために、在来から持っております古い艦艇の乗組員を減らすというようなやり方で対処せざるを得ないようなことになるわけでございます。もう少し具体的に申し上げますと、そういった在来の艦艇の場合、出港いたしますとこれは二十四時間配置で対応しなければいけないわけでございまして、したがって原則からいえば三勤務交代でやっていくというのが通常でございますけれども、乗組員をそういうことでほかに捻出するために減らされているというような状況になりますと、これを二チーム交代で二十四時間配置につくというふうな非常に負担を過重にさせるような措置をとらざるを得なくなっておるというのが現状でございます。  したがいまして、私どもはこういったやりくりは一時しのぎの非常措置でございますから、長期にわたってこれを維持することはとうてい不可能でございまして、ぜひともこういった状態を改善して正常な運営ができますように、一日も早くこの法案をお認めいただくことを切にお願いをいたしておる次第でございます。
  131. 高平公友

    委員長高平公友君) 防衛庁当局より発言を求められておりますので、これを許します。新井参事官
  132. 新井弘一

    政府委員新井弘一君) 冒頭、柄谷委員からの極東ソ連軍の動向についての御質問のうち、航空兵力等でございますが、あるいは私、爆撃機の数と戦闘機の数を逆に申し上げた懸念がございますので、念のため、もう一度発言をさしていただきます。  正確なところ、総計二千百機、そのうち爆撃機が四百四十機、戦闘機が千五百十機、哨戒機が百五十機でございます。念のため、もう一度確認さしていただきました。大変ありがとうございました。
  133. 柄谷道一

    柄谷道一君 本法案の中には予備自衛官の増員についても予定されているわけでございますが、未成立の場合どういう影響が出てくるわけですか。
  134. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) 予備自衛官をお願い申し上げておりますのは、現在の法律定員が四万一千名でございますが、これに二千名を加えて四万三千名にしていただきたいという内容のものでございます。この陸上自衛隊の予備自衛官の役割りと申しますのは、これは有事の際の体制をこれで形成をしてまいるわけでございますが、有事の際に後方警備でございますとか後方支援といったような要員に充当をすることを考えておるわけでございます。  現在、そのうちでも後方警備に関しましては、四万一千人のうちで約一万八千人を予定いたしておりまして、いわゆる後方警備でございますから軽普通科連隊と申します。軽いという意味でございますが、軽普通科連隊を十七個連隊ほどそこで有事の場合に編成をいたしたいということを予定しておるわけでございます。この軽普通科連隊につきましてこれを逐次増強していきたいというふうに予定をしておるわけでございますが、今回の陸上自衛隊の予備自衛官二千人の増員は二個軽普通科連隊をさらに追加をしていきたい、こういう考え方に立っておるわけでございます。  なお、予備自衛官は、先ほど申し上げましたように、陸上自衛隊は四万一千名でございますが、そのほかに海上自衛隊が別途六百人現在ございまして、それを合わせました総数としては現在は四万一千六百人であるということをつけ加えさしていただきたいと思います。
  135. 柄谷道一

    柄谷道一君 この予備自衛官の増員につきましては有事における防衛体制の整備ということが中心である、こういう御答弁であったんですが、私は行政改革特別委員会でもやはり防衛政策というものは正面装備の近代化の問題ないしは要員の問題とあわしてやはり法体系の整備等も含めた、さらには抗堪性の問題というものを含めた整合性のある防衛政策の展開が必要ではないか、こう指摘をしたわけでございます。  そこで、昭和五十六年四月二十二日に、防衛庁における有事法制の研究に関する中間報告が発表されました。自来すでに二年半を経過いたしておるわけでございます。現在、その研究はどの程度進捗されているわけでございますか。
  136. 佐々淳行

    政府委員(佐々淳行君) お答えいたします。  有事法制の研究につきましては、ただいま御指摘のとおり、五十六年の四月二十二日に中間報告を申し上げ、三つの分類に分けて研究を進めておるところでございます。  第一分類が防衛庁及び自衛隊にかかわる所管の法令、第二分類が他の省庁の所管にかかわる法令、第三分類がどの省庁にも属さざる案件の研究、こういうことで進めておりますが、その後、第一分類につきましては、自衛隊法百三条の政令に盛り込むべき事項を初めといたしまして細部の研究を進め、さらにこの第一分類に関する自衛隊所管法令で他の省庁の所管する法令にかかわる部分がございますので、関係省庁との調整協議あるいは外国法制の調査等を続けておるところでございます。  第二分類につきましては他の省庁の所管に属することでございまして、関係省庁が十省庁、関係項目が七十項目を超えておりまして、これに対しまして、たとえばそれらの関係法令にある非常事態であるとか緊急事態という条文は、防衛出動下令時、すなわち有事を含むのかどうかというような有権解釈等を含めまして、この解釈、法令の運用上の問題等の照会を行っておりまして、これに対していろいろ複雑な問題がございますので、各省庁のうちまだ七十項目ほどお願いをした三分の一程度回答に接しておるという段階で、現在まだこの第二分類の有権解釈の整理が終わっておらないという状況でございます。  第三分類、すなわちたとえば有事の際の住民の避難誘導等どの省庁にも属さざる案件でございますが、これについてはまだ研究が進んでおらないという状況でございます。
  137. 柄谷道一

    柄谷道一君 第一分類、すなわち防衛庁所管の問題について若干お伺いいたしますが、たとえば防衛庁職員給与法の手当の問題、これは「別に法律で定める」と、こうされながらいまだその法律が制定されていない。この問題。または待機中の部隊の要員防護のための武器使用の問題等がこの中間報告では今後の検討課題として盛り込まれているわけでございます。これらにつきましてはある程度その内容が固まっておられるわけですか。
  138. 上野隆史

    政府委員(上野隆史君) 第一点の防衛庁職員給与法第三十条の関係の研究状況についてお答え申し上げます。  防衛庁職員給与法第三十条に基づく法律につきましては、出動手当の法的な性格、支給範囲及び支給の手続、災害補償の対象範囲、退職後の年金等について検討を進めておるところでございます。防衛庁職員給与のあり方として有事における勤務を平時から考慮しておくのか、あるいは有事において配慮するのかという問題、あるいは国民やあるいは一般の公務員との均衡の問題等々ございまして、これらの問題点につきまして引き続いて検討を進めているところでございます。
  139. 佐々淳行

    政府委員(佐々淳行君) 第二点の待機中の部隊要員の防護のための武器使用の問題でございますが、御指摘の事項につきましては、防衛出動待機命令を発せられるような情勢があった場合において、待機している部隊の要員が侵害を受けた場合にこれを防護するために何にも措置をとることができないということでございますれば何のための防衛力かわからなくなりますので、その任務が有効に遂行できるようにこれらに対する防護措置ができるようすべきであるという問題点指摘が行われております。これは自衛隊法九十五条の解釈の問題であろうかと思います。  御承知のように、九十五条には、「自衛官は、自衛隊の武器、弾薬、火薬、航空機、車両又は液体燃料を職務上警護するに当り、人又は武器、弾薬」云々云々を「防護するため必要であると認める相当の理由がある場合には、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度で武器を使用することができる。」と書いてございます。しかしながら、これはいわゆるただいま御指摘の七十七条、待機命令中の場合にこれが適用されるのかどうか、こういう問題についてはまさに御指摘の中間報告でも問題点として取り上げた点でございます。この点、関係方面の有権解釈も求めまして結論を出してまいりたいと思っておりますが、現時点まだ待機命令中の防護については結論が出ておりません。
  140. 柄谷道一

    柄谷道一君 有事における法体系整備の問題、奇襲対処の問題、まだ多くの質問がございますが、時間が参りましたので次の機会に譲りたいと思います。
  141. 和田静夫

    和田静夫君 まず、核燃料の輸送問題で一、二問、冒頭に質問をいたしますが、これは予算委員会における政府と私の論争で決着がついていない部分のものであります。その後、ずっと資料を当たってまいりますと、ますます危険な状態を感じ取ることができます。  そこで、運輸省に、原子力安全研究協会の調査報告書、これは事前に通告をしましたが、アメリカで幾つもの事故例が報告をされています。「放射性物質の輸送に関する諸外国の研究調査報告書」の(IV)の二十三ページ、日本文ならば確認する必要がありませんが、ちょっと英語の報告になっていますので、私は全くその意味での素人ですから、まず確認を求めたいんですが、この二十三ページに輸送労働者の被曝数値が記載されています。この英文の部分をちょっと説明してください。
  142. 西村康雄

    政府委員(西村康雄君) 先ほど先生の方から原子力安全研究協会の論文についての質問があるという御連絡を受けたところでございますが、実はこの資料は原子力安全研究協会が自主的に調査されたものでございまして、私どもの方も御指摘あっていま見ているところで、実のところ、これについてどうこうということを今日この場でお答えするほどの検討をいたしておりませんので、そのような御報告をさせていただきます。
  143. 和田静夫

    和田静夫君 それは、そうはならないんですよれ。さっきから何遍も部屋の外では申し上げましたが、あなたそんなことを言うけれども、「核燃料物質等輸送調査専門委員委員構成」、運輸省全然関係ないといって私にさっきからうそばっかり言っておったんですが、この中で、見なさいよ、運輸省航空局技術部運航課、森雅人さん、メンバーじゃないですか。何でそんな、さっきからでたらめばっかり言っているの、運輸省関係ないと。メンバー表に載っているじゃないですか、あなた。それで答弁ができないというのはどういうことなの。これはちゃんと親切に事前通告してあるんですからね。
  144. 西村康雄

    政府委員(西村康雄君) この報告書では確かに航空局の運航課員がオブザーバーとして参加しているようでございますが、実際にこの報告書の取りまとめについての経緯を担当の方からはまだよく聞いておりませんので、したがって、きょうこの場でお答えするには至らない、こういうことを申し上げているわけでございます。
  145. 和田静夫

    和田静夫君 これは予算委員会で論議をして、おたくから担当がお見えになって、この文書を提示しながらいろいろの論議をして、あなた方の見解も聞いて、しかもこれから来年三月の予算委員会に向かって詰めていく、そういうことを申し上げて、はからずも私はきょう、この臨時国会で発言をする機会があったから、したがってこの国会の終わりには一遍整理をしておきたい、その意味で、ちゃんとページ数まで提示をしながら、物まで提示をしながら求めている。しかも、長い時間をかけながら、答弁の間際になって答弁ができません、こういうような形でもってあなた方の責任が果たされると思うのですか。もうここでやめましょう。答弁をしてください。
  146. 西村康雄

    政府委員(西村康雄君) 大変審議を遅滞させまして申しわけないのですが、このいまお示しの論文は、「IAEA輸送規則の基本をなす放射線防護の原則と通常時事故時の輸送実績」という、これはアメリカの学者だと思いますが、それの研究論文でございます。そして、いま言われました表の諸数値は、その論文におきまして、パッセンジャーなりその他の者の年間を通じての被曝量あるいは従業員の年間を通じての被曝量というものの一応の数値を示している、こういうものでございます。
  147. 和田静夫

    和田静夫君 したがって、この数値というのは、あなた方のところから、オブザーバーであろうが何であろうが、委員会構成に参加をしてでき上がった報告書の一部をなすものでありますから、確認をされますね。
  148. 西村康雄

    政府委員(西村康雄君) この報告書は、こういう論文があるということを取りまとめたものでございます。したがいまして、この論文の中の数値の信憑性その他、どのような経緯でこういうような数字がつくられたかということについては何とも申し上げられません。
  149. 和田静夫

    和田静夫君 そうすると、この被爆数値というものの記載についてはあなたの方は確認はできない、信憑性については全然わからぬ、調べる意思もない、そういうことですか。
  150. 西村康雄

    政府委員(西村康雄君) 現在のところ、これがどのような経緯でつくられた数字であるかについてはつまびらかにしておりません。
  151. 和田静夫

    和田静夫君 それじゃ、むだなお金をかけておたくの役人が参加して確認もできないことを一体公にするというのはどういうことなんだかさっぱりわからぬのですが、委員会運営に協力する意味で申し上げておるんですが、それじゃあなた方はこれを確認するための作業を進められますか。  私は、予算委員会のときも申し上げてありますが、一遍取り上げた問題はそのときの答弁限りでは終わらせません。それは十五年前の私の質問であろうが二年前の質問であろうが、ずっと継続的に私が議員として在籍をする以上は追跡をするわけですから、それが私が国民に負っているところの責務なんです。あなた方は一年で一遍ずつポストがかわっていくからどうでもいいというのじゃ困るので、したがってここの部分はどうされますか。
  152. 西村康雄

    政府委員(西村康雄君) この論文はツェという学者が書きました論文でございます。したがいまして、実際にこの研究所でどういうようなプロセスでこの論文を収録したか再度調査いたします。ツェという学者がどういうふうなことで書かれたか、これを調べないとどうにも事実はわかりません。ただ、いま言われましたが、特にこの団体が公表したというよりは、むしろ自主的な研究として取りまとめたというように私どもは理解しております。
  153. 和田静夫

    和田静夫君 それだから端的に言えば、運輸省に私が求めたいことは、放射線漏洩事故がかなりの部分でもってアメリカで起こっているわけです。わが国もその危険性がないわけじゃないから取り上げているわけでありまして、ここの部分の数値についてはさらに皆さん方が確信が持てるような形でもって調査検討されますか。
  154. 西村康雄

    政府委員(西村康雄君) いまございます、この問題にされております数字は、アメリカにおける放射線の管理の状況をいわば数値的に示しているものだと理解しておりますが、したがいまして、アメリカ全体の体制がどうかということとの関連で、こういったものをさらに具体的にどんなものか、他の資料なり何なりもまたあわせて参考にしながら検討はしてまいりたいと思っております。
  155. 和田静夫

    和田静夫君 そこで、アメリカのキャスクの構造基準と日本のそれとは違いましょうか、あるいは同じものでしょうか。
  156. 辻栄一

    政府委員(辻栄一君) 使用済み核燃料の輸送用キャスクの基準につきましては、IAEAという国際原子力機関、この機関で輸送に関する規則をつくっております。この規則は一九六七年に制定されまして、その後一九七三年に改訂版ができております。現在、わが国のキャスクはこの新しい七三年版の基準によっているのでございますけれどもアメリカにおきましては、聞くところによりますと、この七三年規則の取り入れが非常におくれておりまして、大部分のキャスクは六七年版の基準によってつくられておるというふうに聞いております。  七三年規則の取り入れはアメリカにおいてはごく最近行われた、かように聞いておりますので、アメリカのキャスクはこの六七年の基準によってつくられているというところから、現在の日本のキャスクの基準とは若干違った部分があろうかと思います。基本的にはそう大きな改正が行われたわけではございませんので、そう大きな違いはなかろうか、かように存じております。
  157. 和田静夫

    和田静夫君 さきの予算委員会で、山本自治大臣・国家公安委員長が私の質問に対しましてきわめて楽観的に答弁をされたわけです。非常に厳しい規制の中で行われているから御心配なくという、総括的にはそういう答弁だったと思うんですね。ところが、実際には何ら具体的に周辺の住民の不安を除くというような形の材料を与えておらない。私は、運輸省はあるいは科技庁と一緒になって仕事をされるんでしょうが、先ほど来からアメリカの運搬時における危険な状態を明らかにしているのは、これは日本にだって同じような状態で起こり得ると思っているからなんです。  そのことを前提にして考えてみますと、たとえば日本坂トンネルの事故で八百度C以上のそういう状態というものはどれぐらいの時間続いたかということを、消防庁おわかりなら答弁してもらいたいし、わからなければ調査してもらいたいと思いますが。
  158. 砂子田隆

    政府委員(砂子田隆君) 日本坂トンネルにおきます火災の後の道路公団の技術検討委員会で調査をしたところによりますと、当時の日本坂のトンネルの中の温度は、私の記憶に誤りがなければ六百度ないし一千度であったと記憶いたしております。
  159. 和田静夫

    和田静夫君 そうしますと、いまキャスクの質問をしたわけですが、現在のキャスクの耐熱基準は八百度Cで三十分ですよね。日本坂トンネル規模の事故が発生をしたら一たまりもないということになるのであって、山本自治大臣予算委員会で私にお答えになったような形の楽観的なものではない、そういう状態だと思うんです。消防庁は、この事故に対してどのように対処されようとしているのか、あるいは具体的な方針というのをお持ちなのか、まずお聞かせください。
  160. 砂子田隆

    政府委員(砂子田隆君) 予算委員会のときにもお答えいたしたと思いますが、輸送時におきます消防機関の通知の義務の問題につきましては、通報を受けてから警戒区域の設定でありますとか、延焼防止でありますとか、そういうことに消防が従事をするわけでございますから、そういう事故が起きたときに消防に御連絡をいただければ消防なりの対応をするということになろうと思います。  ただ、いまお話がございましたように、どこでどういう事故が発生をするかというのは、神様の身でもございませんから、なかなかわからない。そういうことを考えますと、私たちの方といたしましては、むしろ消防活動が十全にできるように消防機関へも事前に通告をしていただくことが大変望ましいことだと思っております。そういう点で、現在科学技術庁を初めといたしまして、関係省庁で構成をいたしております核燃料物資の安全輸送対策に対する連絡会がございまして、その中でそういうふうに位置づけていただくことを、あるいは各省に御理解を願うことを私の方でいま検討の中で進めておりますので、御理解いただきたいと存じます。
  161. 和田静夫

    和田静夫君 核燃料が結局非常に危険な状態でもって高速道路を走っているというようなこと、それは消防庁も関係各省からいままでは知らされていない。よって消防庁を通じて自治体消防は全然知らない。そして、もし日本坂トンネルの中で、あのときに核燃料を運んでいるところのトラックかいたとするならば大変な事故に八百度C以上でつながっていた、こういうことに推定されていくわけです。今後、この危険性というのはアメリカの事例で見る限り非常に高い。そうしますと、ぜひ私は、いま御答弁がありましたが、それに応対できる体制というものを求めたい。消防庁を通じて自治体消防に対して敏速にやはり情報が通達できる、そういうような仕組みというものをつくり上げるべきだと思うんです。それはよろしいですか。
  162. 砂子田隆

    政府委員(砂子田隆君) すでに先生も御案内かと思いますが、現実に核物質の輸送をしておる、それぞれ公共団体の中で、運搬業者との間で協定を結んで連絡を受けているところもないわけではございません。そういう点を考慮いたしますと、消防庁が一斉にそれをやった方がいいのか、あるいは輸送業者との間で、輸送業者がそれぞれの公共団体に通報する方がいいのか、その辺はこれからの検討の中で少し議論をしてみたいとは思いますが、直ちに消防庁が全部受け付けてそれで消防庁から流すよりはあるいはその方がいいのかなという感じもしますし、その辺は少し内部的な検討に任せていただきたいと存じます。
  163. 和田静夫

    和田静夫君 運輸省は、いまの質問についてはどういう見解を持ちますか。
  164. 西村康雄

    政府委員(西村康雄君) いま消防庁の方からの答弁がありましたように、私どもも実際にどういう形でやれば安定した、またいろんな諸般の事情を含んだ意味で一番安定したやり方かということを検討してまいりたいと思います。
  165. 和田静夫

    和田静夫君 この問題の専門家であります青木さんという東京工業大学の名誉教授、事故対策についていろんな論文を発表されているわけで、全部を読んだわけではありませんけれどもわが国ではこの面の研究を避けようとする風潮がある、事故が起こってからでは遅いので平素から十分に対策を確立しておかなければならない、こういうふうに各所で述べておられるわけですね。  私をして言わせれば、研究を避けようとするだけではなくて、実はわずかの研究も隠そうとする傾向がこれまで調査を進めてきている中であるわけです。この辺、運輸省しっかり聞いておいてもらいたいんですが、あなたのところからは、五十六年、七年度に三菱総研にあなたの方から委託をされた「放射性物質の輸送に関する緊急時対策調査」、これについては全文もらったわけじゃありませんが、概要はあなたの方でまとめて私のところに届きました。それから、いま行われている運輸省委託の運輸経済研究センターが受託をしている五十八年度分もでき上がり次第私の手元に届く、そこまでお約束を願っているのですが、ここらのところは消防庁長官はお読みになったことがありますか、この運輸省が調査を委託をしていて出てきている資料。そういう横の関係というのはしっかりしていますか。
  166. 砂子田隆

    政府委員(砂子田隆君) 仄聞をするところによりますと、その三菱総研に頼んだ報告書は運輸省が個別的にお願いをしたもので、各省との間で何ら連絡を持ってやったものではないというふうに聞いておりまして、私もその中身は全く存じません。
  167. 和田静夫

    和田静夫君 私が求めたいのは、いまの日本の政府の状態はそういう状態だと思うんです。運輸は運輸、消防はやっておられるかどうか知らぬけれども、そのほか科学技術庁は科学技術庁。そして出てきたものについては、たとえばよりすぐれて私は内閣委員会の問題だと思うんですがね。全省庁にわたることを扱う委員会の問題だと思うんですが、省庁間は全く横の連絡がない。そして住民は不安な状態に置かれている。これが核燃料輸送に伴うところの現況です。  したがって、きょうのこの機会に求めたいのは、実は、「使用済み核燃料輸送の安全評価に関する調査」、昭和五十一年度、電力中央研究所。それから「核燃料物質陸上輸送に関する実態および事故確率の調査」、昭和五十二年度、科学技術庁委託、三菱総研が受託したもの。それから「核燃料物質陸上輸送の安全評価に関する調査」、昭和五十三、五十四年度、電力中央研究所。それから「わが国における使用済み燃料の海上輸送に係る安全性について」、昭和五十四年度、これは核燃料安全専門審査会輸送部会。それから「核燃料物質の輸送に係る緊急時対策に関する調査」、昭和五十五、五十六、五十七年度、原子力安全研究協会受託。以下あと二つはさっきの運輸から届くことになっていますから、これぐらいのところはきょうのこの機会にやっぱり消防庁長官、各省との連携の上に十分に資料を集めていただいて、私たちに提示をしていただきたい。そして、あなた方がつくっていらっしゃるところの横の連絡機関、これらの中では十分これらが各省庁共通のものとして検討の課題になるべきだ、そういうふうに思いますが、御見解を承っておきます。
  168. 砂子田隆

    政府委員(砂子田隆君) いまお話しのいろいろな検討資料につきましては、それぞれの各省からそういう資料がございますなら取り寄せていろんなことを私の方で勉強することはやぶさかでございません。ただ、先ほど申し上げましたように、いまの横の連絡の話は、核燃料の安全輸送に関します問題は、科学技術庁がやはりこれを主管をして各省の間で横の連絡をとりながらやっておるものでございますから、私の方からそういうお話があったことを技術庁の方にお伝えをいたしておきたいと存じます。
  169. 和田静夫

    和田静夫君 両省、どうもありがとうございました。  ことしもあと一カ月残すということになった状態の中で、一九八三年という年をずっと振り返ってみますと、一月には不沈空母論があってみたり、日米運命共同体論という中曽根さんの発言があってみたり、防衛問題ではやはり大きな転換が示された年、そういうものが記録された年だという感じが非常に強いわけであります。一九八三年というのは日本の防衛にとってやっぱり一つの大きなカーブを切ったという感慨を持つのでありますが、私はそのカーブというのは危険なところに結びつく、そういう可能性というものを秘めている、そういう状態といるものが現出しないように何としても私たちは努力をしなきゃならないと思うのであります。そういう観点から、防衛庁長官と二、三の論議をしてみたいのであります。  まず、この防衛白書でありますが、過去のそれに比べて大胆に、ある意味では一歩危険な道に踏み込んだという感じがするのですが、たとえばこの第二部第一章第三節ですが、「西側の一員としての日本」という節を設けられたわけです。この点、日本の防衛を東西対抗におけるところの何といいますか、西側全体の防衛の一環として位置づける、そういう感じに私はなっていると思うのであります。すなわち、言いかえてみますと、西側全体の防衛に日本の防衛が従属をしたとでもいいますか、そういうような位置づけと読めるわけなんですが、長官、この辺はまずいかがお考えですか。
  170. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) わが国がまず国際社会の一員として国際社会で進むべき道としては、やはり私は西側諸国との連帯と協調を重視することが基本的には非常に大事であろうかと思います。それから、わが国の防衛を考えた場合には、みずからわが国は適切な防衛力を保有するとともに、やはりここで西側の一員ということになると思うのでありますが、米国との安全保障体制によってわが国の安全を確保することが最も賢明な道であると、私はそういうふうに考えております。
  171. 和田静夫

    和田静夫君 たとえば白書の六十三ページですが、「わが国が自由と民主主義という価値観を共にする西側諸国との間の政治・経済面における協力関係の一層の緊密化に努め、また、自ら質の高い防衛力整備を図ることが、ひいては世界の平和と安定の維持に貢献することとなる。」というふうに書かれているわけであります。この「自由と民主主義という価値観を共にする西側諸国」という文言、これは何を指しているのでしょうか。私の読み方でいけば、一般的な資本主義国を指しているというふうに読むわけでありますが、それはそういうふうは読んでおいてよろしいでしょうか。
  172. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) 防衛論争といいますか、防衛論、安全保障の問題に立ち入る前に、自由と民主主義を基調とするということを論ずる場合には、いま先生の御指摘のとおりでよろしいのだろうと思います。
  173. 和田静夫

    和田静夫君 私は、ここでの問題というのは、資本主義国一般がいわゆる西側同盟と倒置されている物の書き方になっているような感じがするんですね。果たして一体世界の情勢はそうなんだろうか。資本主義国であるといってもいわゆる西側同盟に入っていない国というのはいっぱいあるわけですね。ここのところをどういうふうに考えるのだろう。北欧やら中欧におけるところの中立国もそうでありますし、近くで考えてみますと、インドはどう見ても資本主義国ですわね。これも西側同盟には入っていません。したがって、資本主義国一般と西側同盟とが倒置されるという論理というのは、何かそこに飛躍があるような感じがするんです。そういう考え方については、長官、どうお考えになりますか。
  174. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) 私は、中立政策というのはすぐれてその国のとる外交政策だというふうに考えております。ただし、その外交政策たる中立政策を全うし得るかどうかということは、きわめてこれまたすぐれて安全保障、防衛の面が論ぜられてくるだろうと思っております。その面では中立政策をとるという国是をとっている国々の中で、いま先生の御指摘のありました西側の陣営というその安全保障の体制の中では、たとえばNATOを考えた場合に、第一次世界大戦ないしは第二次世界大戦の当時に中立政策をとりながら、第二次世界大戦以降NATOという同盟体制の中へ入っている国が幾つかございます。それぞれの国国は、やはりそれぞれの国是、国策としてみずから戦後そういう道を選んだというふうに考えております。  ただ、わが国の立場で考えてみますと、わが国は西側陣営の一員であることはこれは紛れもないと思いますが、わが国の持っておる安全保障の体制は、あくまでこれは日米安全保障体制という体制に立脚をいたしておるというふうに判断をいたしております。
  175. 和田静夫

    和田静夫君 私の質問の趣旨とかなり離れているんですけれども、時間の関係もありますから進みますが、資本主義国一般、すなわちこの白書に言うところの「自由と民主主義という価値観を共にする西側諸国」と、東西対抗下のいわゆる西側同盟ですね、いま長官答弁された日米安保体制でも何でも、それとは私は異なると思うんですよね。ところが、この白書の六十三ページの後段の部分は、「わが国が憲法及び基本的な防衛政策に従い防衛力の向上に努めることは、わが国の安全がより一層確保されるだけでなく、日米安全保障体制の信頼性の維持強化につながり、その結果、東西の軍事バランス面において西側諸国の安全保障の維持にも寄与し、アジアひいては世界の平和と安全に貢献するものである。」と、こうなっているわけです。これは明らかに西側諸国と西側同盟とを倒置して出てきた主張ですよ。私は、何か飛躍を含む論であると、邪推じゃなく、指摘せざるを得ないんですね。そればかりではなくて、日本の軍事力を東西軍事バランスの中にビルトインする、これはそういう形ですね。日本の軍事力が西側諸国の安全保障にも寄与するという論理、これはどうも大きな飛躍を含んでいる。どうも論理学的にはそんなふうになるのじゃないだろうか。この辺は、長官、非常に知的水準が高いお方でございますから、どうです。
  176. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) 西側の一員という中に、先ほど私NATOを一つの例としてとりましたが、NATOの場合には複数国の構成員の一員であることがアメリカでもございますが、アメリカを中心に物を考えた場合に、私は実は日米関係といいますか、日本の安全、独立、平和という問題を考えた場合に、日米安保条約を非常に高く評価をいたしたものですから、それで日米関係を中心に考えてみましても、アメリカが参加をいたしておる、あるいはアメリカを頂点といたしておる安全保障の体制というのは幾つもあろうかと思います。条約で二国間でアメリカと組んでおる条約国もあろうかと思います。そのうちの一つが日米安保条約だと思います。アメリカを中心に考えて、四十以上のそういった条約機構というものが存在はいたすだろうと思っております。  その場合に、日本とアメリカの関係というのは、その問題を離れましても、現在現存する世界の二国間の関係としてはきわめて重要な、恐らく、あえて言わしていただければ、最も重要な二国間の関係ではなかろうかと思っておりますが、その日本がみずから防衛力の整備、みずからをみずからで守るという努力をいたすこと自体は、日本と日米安保条約を結んでおる当事者のアメリカが国際的に、世界的にあらゆる地域で世界の平和の維持というものについて責任を感じておるのだろうと思いますが、そのアメリカの世界各地における努力を支えることになる。特に、太平洋のこの地域において日本がみずから持っておる防衛力の整備というものについて努力をし続けること、これによって私は日米安保条約というのは一層より運用の面でも効果的になり、そのこと自体がこの地域の平和にもきわめて大きな意味合いを持つ。そういう意味で、結果的にはアメリカ自体がその他の地域に対する責任を果たしやすくなってくるという効果も含めて、私は日本がみずから努力するということは、この六十三ページの後段に書きましたような結果を招来していくものだというふうに判断をいたしております。
  177. 和田静夫

    和田静夫君 長官判断の限りの部分だけはあれですが、この文章が出てくるその次に、「西側諸国の協力の場」というような資料がついていまして、この資料などの取り扱いの上にこの論理が展開をされるというのはやっぱりちょっと飛躍があると私は感じました。  そこのところは置いておきまして、率直に言いまして、この文章を読む限りは、いま私が指摘をしましたように、日本の軍事力は日本の防衛のためだけにあるのではなくて、西側全体の安全保障のためにあるのだというふうにどうも読まざるを得ないことです。それを通じてアメリカの影響力が深まっていくといういま長官の御答弁がありましたから、そういう考え方なのでしょう。  この白書の六十三ページの論理というのは、それにも増して私は考えてみなきゃならぬのは、東西軍事バランスの前提というものが据えられていますね、どう読んでみても。そのバランス、パリティを埋める努力を日本もするという考え方ですよね。どうも日本もそのところを埋めていきたいんだという考え方、これは一体逸脱していないだろうかと思うんです。たとえばソビエトの軍事力がずっと増強されていく、それに応じて応分の割合によって日本の軍事力を増強していかなきゃならない。そういう形になるでしょう、この論理というのは。
  178. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) 必ずしも私はそういうふうには判断をいたしておりません。むしろ私自身は、抑止という戦略は信頼性が崩れたら抑止の戦略は成り立たない、西側諸国の平和の基本戦略は抑止の戦略だ、一番大事なことはこの抑止というものの信頼性をいかに確保し続けるかということにあろうかと思っております。 その抑止の中で最も深刻な問題はもちろん核兵器だと思います。それから核兵器自体においても、特に俗にシアター・ニュークリア・ウエポンズと呼ばれる、ここ六、七年以前から急激に展開をし始めてきた新しいタイプの中距離核戦略、中距離核というものが特にヨーロッパという地域において核抑止の戦略に一つの穴があいた、それを呼び方では脆弱な窓とか呼ぶところもあるかもしれませんが、それに対してやはりどうしても核戦略の敷居を高めていくためにも、通常兵力も含めて抑止の信頼性を回復しなきゃならないという考え方が特にヨーロッパを中心としてここ四、五年顕著になってきているというふうに思っております。  それはそれとして置いておいて、わが国自体の防衛力の整備というものは、幸いにしてわが国自体の置かれておる地理的な条件、周辺に海洋、海に取り囲まれておるというような問題とか、それからいままでのヨーロッパとアジアとの関係というような感じからいいましても、それからわが国の持ってきました今日までのわが国の防衛の基本的な発想からいたしましても、私は必ずしもヨーロッパで議論をされているような形でわが国でも同じように議論をされなきゃならぬとは思っておりません。基本的には、わが国わが国としてわが国の持っている独自の防衛力の整備の計画をそのときどきの国の財政あるいは他の国の施策とのバランスなどを考えながらこれを充実していくということがわが国の防衛政策のあくまで基本にあるべきことであると、こういうふうに考えております。
  179. 和田静夫

    和田静夫君 抑止論は非常に重要なところで、私も見解を持っていますので、後半の一時間半を抑止論だけで長官と意見を闘わしてみたいと思っています。  前半の一時間半は、少し防衛白書を中心としながら論議させていただきますが、日本の軍事力が西側同盟全体の安保に寄与するということ、そういうことは紛れもなく実態として私は集団安保じゃないだろうか。この文章をどれだけ読んでみてもやっぱり思想的には集団安保なんだろうと思うんですね。実態はそうなんだ、子供みたいなこと言うなと腹の中で思っていらっしゃるのかもしれませんが、ところが白書をずっと読んでいきますと、別のところではやっぱり意識をされている部分があるとみえて、集団的自衛権を憲法は否定していると、こういうふうに述べているわけですね。長官、ここのところは一体どのように論理的につながってくるでしょうか。
  180. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) 六十三ページで指摘をさしていただきましたことは、あくまでわが国自衛隊が海外へ出て、それでいかに西側の一員であろうと、西側の他の諸国の防衛に参加するというような意味合いで書かれているものではございません。それは御了解いただきたいと思います。  それから、わが国の憲法が集団的自衛権についてはおのずから制限を持っている憲法である。それで、わが国の防衛の政策は基本的にこの憲法のもとにあるわけでございまして、その意味ではあくまで集団的自衛権というものはわが国の防衛の問題の中で論ぜられるテーマではございません。  それから、なお集団的自衛権とは一体何かという議論があろうかと思いますが、これはすでに先生の恐らくは御了解いただいている問題点だと思いますので、ここでは触れません。
  181. 和田静夫

    和田静夫君 たとえば中曽根さんが四海峡封鎖と言った。私は、決してあれは三海峡封鎖の間違いを中曽根さん言ったのじゃなくて、彼本人は四海峡封鎖を頭の中に考えてあのとき発言されたのだと思っていますから、皆さんが三海峡封鎖と訂正をされたりいろんなことを言われても、いや中曽根さんの思想の中には四海峡封鎖だ、対馬の西水道は当然含んでいるというふうな思想の持ち主なら、というふうに見ながら、そういう意味で彼は最高権力者としてのいろいろの考え方なりやり方なりというものをずっと考えていらっしゃるのだと思っているんですが、そういう意味考えてみますと、やっぱり日本はすでに集団安保に実質的には踏み込んでいるのだなというふうに見て、そういうふうに見ていると、日米共同演習でこれをどうとらえたらいいのだろうかということを日々悩むわけですよ。  去る十月初旬に北海道で日米共同実動訓練が行われました。その際の記者会見の席で、ワイアンド在日米陸軍司令官、この人が、ソ連から見れば北海道は一つの大きな関心事ではないか、北海道は自由陣営にとっては最前線であると述べられましたね。この発言は、防衛庁、事実として受け取っておいていいんですか。
  182. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) ただいま御指摘のワイアンド司令官が十月に北海道で行われました日米共同訓練の際に記者会見を行われたわけでありますが、私ども承知している限りでは、同司令官が言われた内容は、ソ連が質、量両面にわたりまして一貫して軍事力の増強を行っていること、それからアメリカもこれに対応して抑止力の信頼性を維持強化するために戦力の近代化等の措置を進めているということを述べられ、そしてまた北海道のことに触れられまして、これは日本列島の北端に位置しておりまして、極東ソ連軍が配備されておりますソ連極東地域の近隣に位置しているというような地理的特性につきまして一般的に言及をされたというふうに聞いておるわけでございます。  これはしばしば私ども申し上げておりますように、わが国といたしましては仮想敵国を想定しているわけではございません。私どもがやっておりますのは、一般的にわが国を直接あるいは間接の侵略から守るために必要な最小限度の防衛力の整備を図っていこうということでやっておるわけでございまして、その基本線に何ら変わりはないということを申し上げておきたいと思います。
  183. 和田静夫

    和田静夫君 そこで、この司令官の発言というのがかなり私は重要な意味を持つと思うのは、共同演習であるわけですから、私も徴兵最後の年齢ですから、軍隊でずいぶん苦労をさせられた経験を持っていますが、共同演習というときには双方が同一の戦略戦術をもって行うのが共同演習でしょう、そこのところが外れてしまえば共同演習にならぬわけですから。そうすると、この陸軍司令官の発言というのは、日本の自衛隊の側にとってみても北海道はソ連から見て一つの大きな関心事である、北海道は自由陣営にとっては最前線基地である、こういうことになりますね、共同演習を組んでいる相手との関係で言えば。こういう認識はお持ちではないわけですか。
  184. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) 先ほど来、他の政府委員からも繰り返し申し上げておりますように、現下の国際情勢あるいは極東軍事情勢というものを見てみますと、近年におきます極東におきますソ連の軍事的な増強、質、量両面にわたる増強というものがわが国にとりまして潜在的脅威であるという認識は、これは従来から変わりはないわけでございます。ただ、そのことと私ども防衛力整備ということとの考え方というのは、先ほども申し上げましたように、私どもは直接に仮想敵国を想定して防衛力整備をやっているわけでもございませんし、またいろいろな訓練をやる場合に特定の国を仮想敵国としてこれをやっていくというようなやり方はしておらないわけでございまして、共同訓練の場合も、一般的な戦術技量等の向上という観点からいろいろな訓練活動を実施しておるということでございます。
  185. 和田静夫

    和田静夫君 別の聞き方をこの部分でしてみますと、北海道共同実動訓練があった。そこで、これは私、米ソ同時多発戦というものを想定して行っている。それは常識的にはそうなんでしょう。矢崎さんがここでどういうふうに答弁されてみたところで現地ではそうでしょう。そのために北海道というのは自由陣営の最前線であるという認識、こういうことの表明になるのじゃないですか。アメリカの軍人、率直にそのことを言ったのじゃないですか。そうすると、アメリカの司令官がそう言ったのなら、実動共同演習の片一方であるところの自衛隊の最高司令官も、司令官までいかなくても現地最高指導部というのはやっぱりそういうふうに考えているのじゃないですか。そこのところは私らのシビリアンコントロールでもってそんなふうには考えさせませんよと、こう言われるんですか。
  186. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) 先ほども申し上げましたように、ワイアンド司令官が申されたことは、北海道と近隣の地域との地理的環境ということについての説明をされたのではないかと思います。しかし、そのことと日米がただいま実施しております共同訓練の趣旨、目的ということとはこれまた別の問題でございまして、共同訓練と申しますのは、わが自衛隊のいろいろな戦術技量の向上等を目的といたしまして、一般的なそういう訓練活動の一環といたしまして従来から実施をしているというふうに御理解をいただきたいと思います。
  187. 和田静夫

    和田静夫君 自然科学者が北海道の地理的な状態を語ったというのじゃないんですからね、これは。軍部専門家、しかも日本におけるアメリカの最高の地位のある人が語ったんですから、ちょっとあなたの答弁というのは、ごまかしとまでは言いませんけれども、非常に苦しい答弁をされています。そういう苦しい答弁を続けているということ、そしてわれわれが少数なるがゆえにその危険性というものを黙って見過ごしていくというようなことになっていくと、だんだんだんだん危険になっていくのだというふうに私は考えます。  外務省の調査企画部長の岡崎久彦さん、最近、彼の講演だとか著述というのは非常な勢いで売れているのだそうですが、この「世界戦略論と日本の対応」というものの講演の中をずっと読んでみまして、そうすると、「大体言えることは日本だけに対する攻撃というのはありません。」と断言されています。「他で戦争があってから来るんです。あるいは、世界戦争は不可避と覚悟した上でね。」と、「世界戦略論と日本の対応」のやつで言えば十二ページに、彼の講演の速記だとすればそういうふうに言われておる。この岡崎さん、聞くところによると、戦略問題を非常に勉強されている方だそうであります。一遍お会いしていろいろ教えてもらおうと思っています。この指摘に関して言えば、私は実はこれを読んでそのとおりだなと思ったんですよ。そう思った。  そうすると、日本に対する攻撃というのは、世界的な米ソ緊張の高まり、そういうものの中でしか想定できないということですね。つまり、そういうような想定に基づいて北海道は自由世界の最前線基地だと、こういう認識が生まれてくるのだというふうに読むんですが、長官、どうですか。私の読み方間違っていますか。
  188. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) その問題にお答えさしていただく前に一つ申し上げておきたいと思いますが、わが国と米軍の場合には常に共同で対処するということになりますものですから、米軍には米軍の司令部があり、それから動員をする参謀本部といいますか、そんなのができる、わが国わが国に司令部があり、同じようなものができる、それが共同で対処する。その対処する場合には、いかなる状態においても日本を武力で侵攻するような場合にこれを押し返さなきゃならないということで共同で対処すると、こういうことでございます。したがいまして、アメリカ側の司令官の日本におきまする共同演習の記者会見は、これはアメリカ側の司令官のやったことでございまして、その席には日本側の司令官、その当時は北方総監でございますが、一緒におって、日本側のその記者会見はまた日本側で同時にやっているというようなかっこうにはなっております。その点だけひとつ触れさせていただきたいと思います。  それから、北海道の問題でございますが、先ほど来政府委員の方からも御答弁申し上げておりますように、わが国としては仮想敵国は持っておりません。そういうような防衛政策をつくっているわけじゃございません。これが一つでございます。  それからもう一つ、いかなる侵略の態様によってもそれに対して効果的に的確に対処しなければならない、これは当然のことでありますが、防衛の基本であろうかと思います。ただ、いま御指摘のように、どんなシナリオでどういう形で日本に対する侵攻が行われてくるだろうか、しかもそれがどういう相手であるかというような問題につきましては、これは千差万別でございまして、あらゆる態様に対して的確に対処はしなきゃならないと言いながらも、これは一概にこれこれこういう形ならばこうでしかないだろうというようなものには考えられない、きわめていろいろとその態様が違うであろうということだけしかいま申し上げられないということであろうかと思っております。
  189. 和田静夫

    和田静夫君 防衛局長、北海道は自由世界の最前線ではない、先ほど来たとえば地理的な要件だけで述べたのだと。そうすると、私はアメリカのワイアンド司令官が述べられたことの趣旨とはずいぶん違っていると思います。いまの大臣の御説明、当然そういうふうに受けとめながらのお話でありますが、私は、もし防衛庁としてはそういうふうに考えていないのだということであれば、アメリカに対してそういうような位置づけをとってもらっては困る、とるべきではない、われわれはそういうような認識のもとに日米共同訓練というものをやっているのではない、こういうふうにしっかり、はっきり物を言っておかないといかぬのじゃないですか。どうですか、局長、それぐらいのことを言ったらどうですか、この機会に。
  190. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) わが日本国が従来から専守防衛という基本的な防衛政策をとっておりまして、そしてまたその基本的な防衛政策のもとにおきまして防衛力整備をやっているということはアメリカ側は十分承知をしておるわけでございまして、私どもは機会あるごとにそのことは十分説明もし、彼らも理解をしておるというふうに承知をいたしておるわけでございます。仮想敵国を持たないでやっておるということについても従来から私どもは彼らが十分に理解をしていると思っておるわけでございまして、この点について特段の意見の食い違いはあるとは私ども考えておりません。
  191. 和田静夫

    和田静夫君 少し前段で時間をかけ過ぎたような感じがしますけれども、このワイアンド司令官は後に大変なことを言っているんですね。同じ記者会見で、必要があればわれわれは在韓米軍のF16を使う、こういう記者会見になっていますね。これは言い切っていますよ。そうすると、群山にいる在韓米軍のF16、これは予算委員会で私やりましたが、核搭載の可能性がありますね。これは防衛当局、ここのところはどういうふうに考えますか。
  192. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 私、ワイアンド司令官の記者会見に立ち会ったわけではありませんので、詳細、正確には存じませんが、当時立ち会った人間から聞いたことでありますが、新聞報道としては、ワイアンド中将が日米共同訓練に在韓米軍の参加を希望しているというように報道されたように私は理解をしておりますが、まず事実関係から申し上げますと、現在のところワイアンド司令官はもちろんでございますが、米側から日本側に対して具体的に在韓米軍を訓練に参加させたいという希望が表明された事実は一度もございません。  なお、その場に立ち会った男から聞いたワイアンド中将の話を私の方で聞いたところでは、在韓米空軍を訓練に参加させたいというようなことではなくて、その種の質問に対して、まず陸上戦闘には空軍の支援というものが絶対必要である、たとえば海兵師団であれば師団の中に航空部隊、航空の一航空部門を持っておるように、現代の陸上戦では航空機の近接支援なりあるいは陸上部隊から届かないようなところに対する打撃といったような問題で航空部隊の支援が絶対必要なので、そういう陸上訓練にとっては航空部隊が必要であるということは一般論として言っておる。さらにつけ加えて、在韓米軍のような質問であったものですから、それに直接答える形ではなくて、仮に日本が侵略をされているといったような危急存亡の事態に味方が助けに来てくれるということであればそれは助けてもらう国にとっては大変ありがたいことである、それがどこの基地から来るかということは余り問わないのではなかろうか、仮にある基地から助けに来るというものについてそれは政治的に受け入れられないということであれば、その国はその分についての余分の兵力を持たなくちゃならないことになろうというような趣旨のことをどうも言ったようであります。
  193. 和田静夫

    和田静夫君 私の質問の最後の部分は答えられなかったんですが、在韓米軍F16の来援を言い切った、ワイアンド司令官が。そうすると、このことは核兵器の使用を含むと、こう考えますよね、F16はその可能性を持っているわけですから。  それから現事務次官は、予算委員会で長い質問職をやりましたが、青森県三沢に飛来することはないか、それは緊急的に不時着することというような事態が起こらぬということはあり得ません、こう答えられたことを記憶していますから、そういうことを含んでいろいろ考えますと、どうもワイアンド司令官が在韓米軍のF16を使いますよと、必要ならば。もちろん前提があります。F16が来援をする。こうなってくると核使用だ。結びつきますね。そういう可能性は捨て切れませんね。可能性は若干でも存在しますね。これはどうですか。
  194. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) 三沢へのF1配備の問題に関連しまして、同様の御質問が何回か国会でも出された経緯がございまして、その際にも繰り返してお答えを申し上げてきたわけでございますが、確かにF16そのものは核装備の搭載可能なものではございます。しかしながら、日本政府といたしましては、この問題については、核装備の日本国内への持ち込みにつきましては、これは安保条約に基づく事前協議の対象になるものであって、そういった脅威があった場合は必ずそれはノーと言う、こういう政策を一貫して堅持をしておるわけでございますから、F16の場合であってもその例外ではないわけでございまして、F16が日本において日本の防衛に参加するという可能性があるとしても、それはあくまでも核装備を持たないで参加をするということ以外には考えられないと思っておるわけでございます。
  195. 和田静夫

    和田静夫君 ちょっといまの尋ねますが、私、現防衛庁事務次官が防衛局長時代の論争を思い浮かべてみまして、群山のF16が飛び立つ、ソビエツカヤガバニに行くか、あるいはウラジオストク周辺か、そして何か事故を起こす。それが青森県三沢基地に緊急着陸することはあり得る。それは全然ないということはあり得ない。あり得る。それはいま矢崎防衛局長がどう言われようとも、そのときに事前協議して、おまえ不時着しなきゃならぬ状態だけれども、核を持っているから困りますよ、ノーと言われる。ノーと言われるけれども、それは三沢基地に飛んでくる、基地が用意をされておれば。こういう必然性は当然ある。そのことは全部は否定をされなかった。そのわずかな部分はあると、こういう形になって、そうなれば、その後の論議はしてないんですが、非核三原則の一角は崩れると、こういうことになるわけでありますが、防衛庁としては、在韓米軍F16来援を想定した演習というようなものに踏み切られることはあるわけですか。核を積んでいないことを前提にすればあると、こうなるんですか。
  196. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 現在のところ、まだ航空自衛隊につきまして大部隊の日本への移動といったものを前提としたCPX等をやっておりませんが、私どもが仮にそういうCPX等をやるといたしましても、何個スコードロン来てくれるか、そういう前提で訓練をするということでありまして、その発進した基地がどこであるかということは余り問題にならないといいますか、そこまでは必要としない。日本に大体何機来てくれるだろうか、どのくらいの部隊が来てくれるだろうかということが訓練のそもそもの想定の前提になろうかと思います。
  197. 和田静夫

    和田静夫君 どうもあなたの答弁というのははぐらかしが多くて、肝心な答弁をしないのだけれども、ちょっと質問のあれを変えてみまして、将来、米軍が在韓米軍F16来援を含む演習計画、そういうようなものを持ち出してくる場合、いや仮定のことには答えられませんと言われればいかぬのですけれども、そういう場合にはどういうふうに対応するというふうに考えていらっしゃるんですか。
  198. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 先ほど申し上げたことを少し繰り返すようなことになるかもしれませんが、たとえばF16ならF16という機種の航空機を何個スコードロン日本に増援するというような作戦計画なりあるいは訓練計画ということになろうかと思いますが、その際、第五空軍隷下であれば、F16であれば、いまのところ三沢にございませんから、在韓米空軍というものが考えられるわけでありますが、その際、仮に日本にそれが配置をされるということになれば、その段階でそれは在日米空軍として配置をされるということになろうかと思います。
  199. 和田静夫

    和田静夫君 F16来援を含む演習計画がもし持ち出されたら、それにどう対応するかと聞いている。
  200. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) ちょっと御質問の趣旨がどうもはっきりわからないのですが、先ほど事実関係についてはまだ在韓米空軍と日本の自衛隊との共同訓練をやりたいというようなことがないということはお答え申し上げておるところでありますが、仮に在韓米空軍に現在所属しておる航空機F16をどうしても日本で訓練をしたい、あるいは日本自衛隊と共同訓練をしたいということになれば、一番考えられる方法は、その在韓米空軍所属の航空機なり人員というものを在日米空軍に編成がえするということが一番素直な姿ではなかろうかというように申し上げているわけであります。
  201. 和田静夫

    和田静夫君 ワイアンド発言に戻りますが、北海道へのソ連の侵攻、どういう場合に想定されますか。まず、そこを伺いましょう。
  202. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) 先ほど来申し上げておりますように、私どもといたしましては特定の国を指しましてこれを仮想敵国として議論をいたしておらないわけでございますので、ただいまの御質問の点につきましてはちょっとお答えができかねるかと思います。  ただ、一般論といたしまして、わが国は周囲を海で囲まれておる国家でございますから、わが国に対する直接の侵略があり得るとすれば経空、これは空を経由して来るという意味でございますが、経空なりあるいは経海、海を経由して来るというような侵攻の態様があろうかというふうに考えておりまして、そういったようなものに、限定、小規模のものにつきましては原則として独力で対処し得るような必要最小限度の防衛力を整備していこうというのが防衛力整備の基本的な方針となっておるわけでございます。
  203. 和田静夫

    和田静夫君 いま防衛局長答弁している趣旨というのは私はわからずに言っているわけじゃないんですよ。ただ、共同演習をやられたわけですよ。そうすると、アメリカのワイアンド発言に見られますように、アメリカの軍隊が考えていることは別だ、もう一方の日本の自衛隊考えていることは別なんだということには私は共同演習という枠の中ではならぬでしょうと。したがって、ワイアンド発言が明確に在日米軍に対ソ戦を意識する、こういうものがある以上、いろいろなことを考えざるを得ませんでしょう。それは制服組の皆さんはそう考えています、恐らく。どうも私は常識的にはそうだと思うので、何を言っているのだ、国会で防衛局長いろいろなことを答弁しているけれども、そんなこと話にならぬよと思っていますよ。思っていることが思っているままに済まされていくということ、そこのところを何としてでも消さなければならないのがわれわれの負っておるシビリアンコントロールの一つだろうと思うのですね。  そういう意味で若干の質問を続けているわけでありますが、どうも在日米軍は結局対ソ戦を明確に意識しているという発言に、少なくともワイアンド発言というのは一連明確になってきていると思うんですが、そういうことには絶対に認識をしないと、そういうことですか。
  204. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 共同演習との関係で申されましたので、ちょっと演習想定の方との関係だけ申し上げたいと思いますが、今回の北海道で行いました米軍との実動訓練は、御案内のように、わが方は一個普通科連隊を基幹とする部隊、米側は一個大隊を基幹とする部隊ということで、しかも演習場の中でできる連隊の規模の戦闘訓練でありますから、ワイアンド中将が言われたような大げさな話といいますか、とは余り訓練内容そのものが関係がございませんので、恐らくこの新聞記者会見は在日米陸軍司令官としてのワイアンド中将に有事の際の想定その他についてのお話ということであって、共同訓練そのものとは余り関係がないというように御理解いただきたいと思います。    〔委員長退席、理事坂野重信君着席〕
  205. 和田静夫

    和田静夫君 どうも理屈の上でそんなふうに理解してみたところで実際は違ってくるということが一番危険だから、少ししつこいけれども質問を続けたいと思うんですよ。  ワイアンド発言というのはずっと読んでいけばいくほど、やっぱり米軍の方というのはソ連との戦いを想定しているということだと思うんですよ。そこで、私はどういうお考え方をお持ちかちょっと聞いておきたいんですが、ソ連が日本を侵攻する。外務省の岡崎調査企画部長も言われるとおり、現在の国際関係からして単独侵攻はあり得ないというわけでありますから、自衛隊の想定がソ連単独侵攻であるとするならばその政治目的は何だろう、アメリカでもいい、政治目的何だろうということを思うんですね。それこそクラウゼビッツじゃないけれども、戦争というのは政治目的がなくてはならない、これは幾ら核の時代だって変わってないと思うんですね。そうすると、ソ連の単独侵攻を想定するとすれば、その政治目的は何だろうということを考えざるを得ないんですが、長官は政治目的は何だとお考えになりますか。
  206. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) 現実的な点だけお答えさしていただきたいと思います。  私は、ソ連は一貫して軍事拡張を遂げ続けてきておる国だと思っております。 そして、特に近年の軍事拡張といいますか、軍事力の整備というものはまことにこれは目覚ましいものがあると思っております。そして、その結果、ソビエト・ロシアはいまやグローバルパワーに成長し切っていると思います。そのグローバルパワーであるそのソビエト・ロシア超大国がどういうような考えでどういうような政策のもとに自分の持っておる軍事力を使うのか、私はソビエト・ロシアの軍事力がソビエト・ロシアの防衛ということにのみに使われる軍事力にしてはここ数年の規模は非常に大きくなってきておると思ってはおりますが、どういう意図で、どういう時期に、どういうような扱い方をしていくのかというのはこれはソビエト・ロシアが自分で考えていることでございまして、私にはとてもそれはわかりませんが、いずれにしましても、現実の問題としてそういう国柄にいま育っていることは事実だと、こう判断をいたしております。
  207. 和田静夫

    和田静夫君 防衛庁長官の認識にもかかわらず、いろいろの著述を読んでみますと、どうも極東におけるところのソ連軍事力というのはそんなに大したものじゃないというふうな書き方が非常に多いんですが、古いものだという書き方が非常に多いんですが、北海道を侵攻してそして占領を続ける能力を持っているというふうに、いま言われるように軍事拡張というものが政治目的であると長官が言われるのならば、そういう能力をあわせ持っているという判断ですか。
  208. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) ソ連軍事力が近年増大をし続けてきているということについてはるる申し上げているわけでございますけれども、それが個々具体的な地域に個々具体的にどのような行動をとる可能性があるかということにつきましては、これはいま大臣からも申し上げましたように、それはそれぞれの国が自分で考えていることでございまして、私どもがここで推測をもって申し上げることはきわめてむずかしい問題ではないかというふうに思います。
  209. 和田静夫

    和田静夫君 防衛白書に戻りますが、八十八ページ、通峡阻止作戦について、機雷の敷設を含む作戦概要がずっと書かれていますが、作戦概要にまで踏み込んだ記述をしたここの部分というのは私は理解に非常に苦しんでいるんですが、ここまでお書きになったのは何か理由がありましょうか。
  210. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) ただいま御指摘の部分は、わが国の防衛能力の各種の面を説明いたしました中の海上交通保護能力について説明をした部分の一部であろうと思います。  御承知のように、わが国は四面環海、しかも資源が乏しいというようなこともございまして、わが国の生存を維持していくために海上交通の安全を確保するということがきわめて重要な問題であることはこれは御理解をいただけると思うわけでございます。したがいまして、有事におきましてそういった海上交通の保護をしていくということも、これまたわが国の防衛にとってきわめて重要な柱の一つではないかと思います。  こういった海上交通保護を実施していく場合のやり方としては、いろいろな作戦があり得るわけでございまして、哨戒をすることもありましょうし、あるいは艦艇の護衛をすることもありましょうし、あるいは港湾、海峡等の防備をしていくといったようなこともありましょう。そういった各種の作戦を通じまして、それらの累積効果によりまして海上交通の安全を確保していこうというのが私どもの基本的な考え方でございます。そういったような作戦の一環といたしまして、どうしても必要がある場合には、場合によっては海峡について相手国艦船の通峡を阻止するということも考えなけりゃならない場合もあるわけでございます。  また、そういった場合に、しからばどういうやり方をやるかということになりますと、これもやはりいろんなやり方があるわけでございまして、艦艇、航空機潜水艦等によります作戦もあるわけでございますが、場合によりますと機雷を敷設いたしまして、敵艦艇の通峡を阻止する作戦も考慮する対象の一つになり得るわけでございますが、そういう全体の海上交通保護作戦の一環としてそういう問題もあり得るという意味で特に記述をしておる次第でございます。
  211. 和田静夫

    和田静夫君 防衛白書は極東ソ連軍の増強ぶりをずっと書いているわけですが、この白書の記述はSIPRIなどの推計から見ましてどうも過大評価ではないだろうかという感じが私はしているんですが、私は軍事力の比較というのは一つの抽象論にすぎないというふうに考えていますけれども極東ソ連軍の相手というのは自衛隊だけじゃありませんよね。極東米軍もありますし、あるいは強いて言えば中国軍もある。そういうものと対峙しているわけですね。そうすると、軍事バランス考えるのならば、極東米軍やあるいは中国軍、そして日本自衛隊軍事力、そういうものを加算してみたり、勘案してみたり、あるいはこっちの方は敵対関係になるから向こうの方にプラスになるとか、いろいろな形の方法論が生まれてしかるべきでしょう。そういうような方法を私はとるのが正しいのではないかということを一つ思うんですが、そういうような方法でもって軍事力の比較を行ったならば極東軍事バランスというのは一体どういうふうになるんですかね。
  212. 新井弘一

    政府委員新井弘一君) ただいまの委員からの御質問の中で、中国の存在をどう見るかということでございますが、私ども極東におけるたとえば東西関係、東西間の軍事バランスを見る場合に、具体的には中国の存在というものはこの中に入れていないということでございます。この点は、中国をどう見るかによって意見が異なるかと思います。  それから他方、先ほど先生の方からいろいろわが国の防衛白書のデータ、これは過大評価ではなかろうかという御趣旨の発言がございました。この種の御質問はしばしば受けるところでございます。ただ、この点は、私ども具体的な数字を算定するに当たりましては、いろいろ各種の情報を総合的に判断いたしまして、できるだけ客観的に記述しているつもりでございます。    〔理事坂野重信君退席、委員長着席〕  そこで、白書の中でも東西関係についてはほぼ均衡であるという表現が出てまいります。要するに、ほうっておくと東が遠からず優位に立つ。この均衡であるという考え方につきましては、ソ連自身も実は三、四年前から同じことを言い出しているわけでございます。ブレジネフ前書記長自身が、いまや東西の軍事バランスはほぼパリティであるというふうに言っております。  そこで、社会党御出身の委員にこういうことを言うのはまさに釈迦に説法でございますけれども、私自身は特にそうでございますけれどもソ連がパリティであるということを言い出したということは多少驚きでございます。なぜならば、このパリティという考え方、いわば静的な概念、これはソ連がよって立つそのイデオロギーにはなじまない概念であるというふうに私は意識しているわけでございます。要するに変化というのが古今不易の原則である、そういうことが彼らの一つの哲学になっている。そのソ連がいまやパリティであるということを言い出したということは、私はソ連自身が大変自国の持つ軍事力に自信を持ってきた証拠ではなかろうかというふうに見ております。
  213. 和田静夫

    和田静夫君 さきの中曽根・レーガン会談で、長官、日本の防衛力分担について具体的な話というのは出されたんでしょうか。
  214. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) 具体的な話とお尋ねになりましたので、ちょっと何とお答えしてよろしいのかわかりませんが、もし具体的なというのが数量的に具体的なということでございましたら、全然これはございませんでした。
  215. 和田静夫

    和田静夫君 そうすると、レーガン大統領の新聞発表、新聞発表ですからどこまでどうだということになりますが、「日本が自衛を行い、かつわれわれの間の相互防衛努力をより多く負担することにある。」というところですね。このより多く負担すべき相互防衛努力、これは具体的には何でしょう。
  216. 山下新太郎

    説明員山下新太郎君) お答えいたします。  プレスリマークスでレーガン大統領が相互の防衛努力の負担という表現を御指摘のとおり使っているわけでございますが、そこでこの表現によって意味しておりますことは、日米それぞれが平和と安全のために払っている努力を一般的に表現したものだというふうに私ども理解いたしております。
  217. 和田静夫

    和田静夫君 アメリカの空母ミッドウェー艦載機の夜間着陸訓練基地の新規提供問題というのがかなりにぎわっていましたが、何らかの進展がありましたか。
  218. 塩田章

    政府委員(塩田章君) 五十八年度で調査費をいただいて現在調査いたしておりますが、具体的な進展はございません。
  219. 和田静夫

    和田静夫君 調査していることで具体的な進展はないにしても、どことどことどういうふうな対象というのは浮かんでいるんですか。
  220. 塩田章

    政府委員(塩田章君) 三つの項目ということで、第一には関東及びその周辺地区の既存の自衛隊基地でこの代替基地として使えるところはないかというのが一つの項目でございまして、これにつきましていろいろ鋭意当たっておるわけでございますけれども、具体的な進展はないという現状でございます。  あと、第二の項目としまして、しからば関東及びその周辺地区で新設飛行場をつくって対処するということはどうか、あるいは第三の項目として、海上に何らかの浮体構造物をつくって対処することはどうかということは、これはいずれもまだ勉強といった段階でございまして、具体的に当たっているという段階ではございません。
  221. 和田静夫

    和田静夫君 ちょっと話がとっぴなようですが、胡耀邦中国共産党総書記が来日されているわけでありますが、日中間で何か軍事的提携などというような話というのは全然ありませんか。
  222. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) 提携というような形で日中間の防衛問題、お互いに話が進んだというようなことはございません。
  223. 和田静夫

    和田静夫君 提携という話以外の話なら何かありましたか。
  224. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) 私どもが外務省から聞いておりますところでは、二十四日に行われました日中首脳会談におきまして、胡耀邦総書記の方から、日本が米国を初め各国との友好関係を増進されていることを中国は理解し支持する、ただ米国が日本を前面に立てて後で見ていることになるのは好ましくない旨の発言があったのに対しまして、中曽根総理からは、日本は軍国主義になることはないし、米国の前面で道具になることもないというふうに応答されたと承知をいたしております。
  225. 和田静夫

    和田静夫君 九月中旬にアメリカ上下両院合同協議会が可決をしました協議会報告書に、「日本は自衛能力の向上に最大の潜在能力を持つアメリカの同盟国であり、だからこそその誓約を達成し、一九九〇年までに効果的な通常兵力面で自衛能力を持てるために必要なレベルにまで、毎年の防衛費を急速に増加すべきである。効果的な通常兵力面での自衛能力の中には一千海里防衛実施の能力も含まれる。」というくだりがありますが、レーガン大統領が言われる多くの負担すべきという意見の背景には恐らくこういう議会筋の主張があったのでしょう。  そうすると、この報告書が言うように、一九九〇年までに一千海里防衛実施を含む自衛能力の増強を行うというのであったならば防衛費の一%枠は吹っ飛んでしまうわけですが、いかがでしょう。
  226. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) アメリカ側といたしましては、従来からわが国が自主的な防衛努力をできるだけ早く進めてほしいということを言ってきておるわけでございまして、大綱の早期達成を努力してくれとか、あるいはシーレーン防衛のための能力を高めてもらいたいとかいうような意見はアメリカの国内でもいろいろな人から言われておるわけでございます。そういったものを踏まえて、アメリカ政府といたしましても、日本政府に対しましてできるだけ自主的な防衛努力を早めてもらいたいということを申してきておるわけでございます。  私どもといたしましては、それに対して、同盟国としての米国が日本の防衛努力に対する期待を表明することはこれは理解ができるということでございます。しかしながら、そういった期待は念頭に置きながらも、わが国といたしましては、わが国の自主的な判断に基づいて防衛力整備を進めていこうということにしておるわけでございます。  現在の政府の基本方針といたしましては、防衛計画の大綱に定める水準をできるだけ早く達成しようということを前提といたしまして、しかも毎年度の予算の編成の際に当たりましては、そういった防衛力整備の必要性と、それから他方、財政経済状況とのバランス、他の諸政策とのバランスといったようなものを総合的に判断いたしまして、できるだけの努力をしていくというのが基本方針でございます。  そしてまた、そういった毎年の防衛力整備の実施に当たりましては、五十一年の閣議決定にございますように、当面GNPの一%を超えないことをめどとして実施を図っていくという方針がございますので、この方針に従ってぎりぎりの努力を払っていこう、こういうことで現在対処をしておるわけでございます。
  227. 和田静夫

    和田静夫君 中曽根総理は、この二十二日の行特委でもGNP対比一%の枠は守る。ということになれば、私が先ほど読み上げたアメリカ議会決議はけ飛ばすということになるわけですね。け飛ばすということにならなきゃならぬわけです。大蔵省としては、防衛関係費の対GNP一%枠堅持の方針、これは大蔵出身の防衛局長が守ると言ったのだからそのとおりなんでしょうけれども、予算編成に取り組まれる考え方はそういうことですね。
  228. 的場順三

    政府委員(的場順三君) 五十九年度の予算編成はこれからでございますが、防衛費の全体の枠がGNPの一%を超えないという五十一年十一月の閣議決定の線をこれは守っていくつもりでございます。
  229. 和田静夫

    和田静夫君 それで、長官、そこのところなんですが、どうもアメリカ議会決議を背景にしたレーガン記者会見の趣旨をずっと追っていけば、これは一%の枠ははみ出ていくことにならざるを得ないですよ。ここのところは、一%を守るのか、守らないのかということも一つはありますが、このアメリカの要求をのめば一%を超える。いま局長が言われるように自主性云々がある。アメリカの要求をノーとけ飛ばす。ここのところは、はっきりノーとけ飛ばすということになりますか。
  230. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) これから後のわが国の経済の動向に関して私は一番関心は持っておりますが、それは別に置きまして、現在私どもが推し進めておりまする五六中業と俗に言われますこの防衛計画の大綱の水準にできるだけ早く到達をいたしたい。ついては、いま一番手短な整備の計画として、見積もりとして手元に持っておりまするいわゆる中業計画は五六中業でございますが、五六中業で私どもが意図しておる、計画しておる、企画いたしておりまするものが達成できまするとずいぶんと、いまシーレーン防衛のお話が出ましたが、シーレーン防衛につきましても能力は格段に改善されるであろうと思っております。  その五六中業を達成するペース、それから毎年のそのときの財政の事情、それからわが国の経済全体の特に総生産の総量、こういったものがどうなってくるかによって一%論争というのは出てくるのだろうと思いますが、私は、基本的に、昭和五十一年の閣議決定でございますが、この一%をいまここで崩していかなきゃならぬというその必要は認めてはおりません。
  231. 和田静夫

    和田静夫君 大蔵にしろ、防衛庁にしろ、必要は認めていないと言われる答弁はわかったのですが、しかし、先ほど来私が申し上げておりますように、アメリカ議会におけるところの決議との関係において一九九〇年に向かってこれを受け入れていくということになっていけばそこのところは必然的に破れていきます。そこのところを破っていかなきゃならぬように検討はしていくのです、いやアメリカの要求というのはあくまでも一%というわが国のいまお持ちになっているところの方針に基づいてノーと言ってけっていくのです、このどちらかというのははっきりならぬのですか。
  232. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) 私どもは、一九九〇年にこうするのだというような日限を限ってやっているわけではございませんで、シーレーン防衛も、わが国自体の、この国の四つの島を中心とした国土の防衛もあわせて防衛として考えて防衛力の整備を考えております。いま一九九〇年という年代が盛んに委員のお口から出ましたが、これはアメリカの議会が政府に対して、言うならば予算の審議の最中に自分らはこう考えているのだという議会の意図を強く示した決議の中に出てくるものだ、こういうふうに理解をいたしております。  それはそれとして置いておきまして、先ほど申し上げましたように、いま私どもの持っておりまする近々の防衛力の整備のこの計画を実現していくことができれば、その完成の暁には相当な能力アップになって、シーレーン防衛につきましても、国土防衛にいたしましても、現在と比べますとずいぶんわれわれとしては現在の能力よりも能力は高まる、こういうふうに判断をいたしております。
  233. 和田静夫

    和田静夫君 中曽根総理と竹下大蔵大臣の行特委の答弁をずっと読んでみまして、防衛予算との関係ですが、来年度予算あるいは再来年度以降の中期的な予算編成方針というのは私はさっぱりわからぬわけですが、予算編成の実務的な担当者にお尋ねするわけですが、一体増税なしに来年度予算編成が可能なのか。ちまたで言われているように、個別物品税の増税、酒税の増税あるいは消費税増税抱き合わせ、予算編成はそうしなければできない、そう考えられるんですが、主計当局、これはどう考えているんですか。防衛費をがっぽり削るわけですか。
  234. 的場順三

    政府委員(的場順三君) 五十九年度の予算編成、現在事務的に作業を進めておりますが、御指摘のとおり、大変容易ならざる状況にあることはそのとおりでございます。ただ、私どもといたしましては、臨調の御答申等もございますし、安易に増税を念頭に置くことなく、まず歳出面におきまして、行財政の守備範囲を見直す等の見地から歳出構造の合理化、適正化を行うとともに、歳入構造の見直し等も考えながら、財政改革の推進に向けて最大限の努力をしてまいりたいというふうに考えております。
  235. 和田静夫

    和田静夫君 私は、昨年度対比におけるところの千九百八十五億ぐらいの防衛費の関係のその辺をとめてしまって、そして予算編成などということをお考えになれば、増税などということの必要を最小限度に食いとめることができるだろうなと思いますから、この辺で、いや防衛費なんというのは前年並みですよ、そして予算編成やりますよと一発答えてみたらどうでしょう。  第一勧銀の今度のレポートを読んでみますと、八四年度に四兆円の要調整額、八五年度には六兆三千七百億円の要調整額が発生をする、この大きな歳入欠陥を埋めるには大型間接税の導入以外にはなかろう。これは第一勧銀レポートですから、民間のレポートだと言ってしまえばそれまでですが、私はこの数字というのは、われわれがずっと常日ごろ計算して言ってきているところと非常に似通っていまして、そして、ある意味では非常にいい試算だと思っているんです。これは順当な前堤を置いたものだというふうに私は考えます。  主計局、どういうような前提を置いて、歳出削減だけで赤字国債を減らす、そういうことができるのか。非常に無理でしょう。余り無理な答弁させたくないんですけれども、無理な答弁ばかりしているものだから、どこかで一遍心情を吐露しておいて予算編成にかかった方がいいのじゃないですか。予算委員会があれば予算委員会でやりたかったんですが、機会を得ましたので。歳入をそのままにしておいて赤字国債を零にする、そんなことはできませんよね。どうですか。純粋に答えてください、純粋に。
  236. 的場順三

    政府委員(的場順三君) 「一九八〇年代経済社会の展望と指針」におきましても、昭和六十五年には赤字公債から脱却するというふうな基本方針、努力目標が示されております。ただ、この方針は、目標は幅のあるものであるというふうにも考えております。いずれにしても、歳出を節減合理化するだけでそれができるかどうかという話につきましては、五十九年度予算が編成されました後に、その五十九年度予算を土台にいたしまして、この経済社会の展望と指針にのっとりまして、全体の経済社会の動向を見きわめながらある程度の先々の見通しをつけていきたいと思っておりますが、現段階ではいまだ確たることを申し上げる段階にはございません。
  237. 和田静夫

    和田静夫君 前段の時間は一区切りするという話ですから、肝心な話はあれなんで、ここでちょっと出たついでですが、主税当局にせっかく来てもらったものですから……。  来年度の本格減税、これは単身者、独身者を問わずどの所得階層にも減税となる、そういう減税、これは約束しているんですか。この間からテレビで行特委を聞いているけれども、その約束どこからも出てこないので、いま出ているところの構想でいけば単身者二百万、三百万の年収者は全部増税ですね。それから物品税を若干いじくっていくと、減税が始まるところの夫婦子供一人で五百万単位でもって二千四百円減税になる部分が、酒税その他のことを勘案すると千百円ぐらいの増税になっていく、ここらのことはあり得ない、完全に全部減税なんだ、こう答えますか。
  238. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 先般来御議論のございます点につきましては、先般の税制調査会の中期答申が出ておるわけでございますが、その中の表現から申し上げますと、最低税率は若干の小幅な引き上げが適当ではないかとされているわけでございますが、その際におきましては、課税最低限の引き上げと関連しつつ、低所得者層の負担にも配慮して小幅にすべきだ、こういうふうにされておるわけでございます。  この趣旨は、課税最低限をある程度上げますということになりますと、課税対象になります納税者の担税力というものも若干その水準としては上がるわけでございますので、諸外国との比較等も考えながら最低税率を若干上げてもいいのではないかということでございますが、あくまでその「課税最低限の引上げの程度と関連しつつ、」というふうに、また、「低所得者層の負担にも配慮して、」とあるわけでございまして、この趣旨はあくまで課税最低限の引き上げの程度に対応する範囲で見直すということでございますので、こうした課税最低限の引き上げと税率の見直し、この両者を合わせましても、どの部分の納税者につきましても負担が上がるということのないように配慮しろという、こういう御趣旨の中期答申であろうかと思われます。  ただ、この点につきましては、所得税の関連につきましてこういうふうに中期答申があるわけでございます。税制といたしましては、そのほか酒税あり、物品税ありでございます。あるいは法人税あり、印紙税ありでございまして、それらの負担がどのようにそれぞれの納税者に転嫁してまいるかということは、これはまた別に大きな問題があるわけでございます。税体系といたしましては、所得のあるところには所得税をおかげする、また消費に対しましては消費税をかける、これは税体系のあり方としていろいろなものの組み合わぜで税体系ができ上がっておるわけでございまして、その全体の負担の姿につきましては、税制全体を見ながら適切なあり方を考えていくということでございまして、その場合にそれぞれ負担の帰着を議論いたしまして、それぞれの所得階層におきましてどのように負担の変化が起きるかということは、また全体の姿の中で検討をなされるのではないかと思われます。  あらゆる階層の所得階層につきまして増税になる、ならないという最初の問題の御指摘は、中期答申に即して申し上げれば、所得税の問題として従来議論されておりますし、またその範囲でこの時点ではお答えをする、そこまでが限界ではないかというふうに考えます。
  239. 和田静夫

    和田静夫君 これで終わります。終わりますというのは、中間的にやめておきますが、いまの答弁をずっと総計してみますと、結果的に、七五%の最高税率、これは予算委員会でやりましたが、あれを七〇に落とす、下を一〇を一二に上げる、こういうようなことをすれば決して全部に減税にはならない。われわれの計算で明らかであります。ここのところはしっかり踏まえてもらいたい。  そうすると、いまの答弁を総合的に言えば、七五%を七〇ということにすることもないし、あるいは一〇を一二に上げるということもあり得ない、そこのところはそこまでいかぬのだということを含んでの答弁、そういうふうに承っておきますが、そこのところをあれしておかないと、それは増税になる部分が出てきますよ。これはどう計算したって、単身者の二百万、三百万クラスというのは増税になっていきますからね。それから夫婦子供一人の五百万クラスまでが、物品税を考え、酒税を考えると増税になっていきますよ。減税なんてごまかしであることは明確ですよ。そこはやっておいてもらって、もう時間でありますから……。
  240. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 それでは、二、三確認をしておきたいことを先に御質問さしていただきますが、わが国の周辺の軍事情勢に関する政府の認識につきましては、五十八年版の防衛白書に相当記述をされているわけですけれども、今回の日米首脳会談、これを経た現在においてもその認識に変化がないのかどうか、確認をしておきたいと思うんです。  五十八年版の防衛白書によりますと、わが国の周辺地域について、米中ソ三国の政治的、軍事的利害関係の錯綜、中ソ間及び米中間の関係を述べ、朝鮮半島に引き続き大規模な軍事的対峙が見られる、このようにしておりますし、またソ連は「質量両面にわたり一貫して軍事力の増強を行っており、わが国に対する潜在的脅威増大させている。」、こういう記述があるわけですが、ここにおきましては、わが国に対する潜在的脅威増大さしているのはソ連だけであるとしているのは間違いないと思うんですけれども、朝鮮半島の大規模な軍事的な対峙は潜在的脅威であるともないとも書いてないんですけれども、一方、去る十一月十日の第二回日米首脳会談の後で日米両首脳が新聞発表を行った際に、中曽根総理は、「最近、東西関係の緊張の増大に加えて、世界各地における地域的紛争あるいは暴力事件の頻発がみられ、かかる傾向が継続し、増幅する場合には世界平和に対する重大な脅威となりかねない」、このようにおっしゃっているわけですね。  ここでは、わが国周辺の軍事情勢について直接的には触れられていないわけです。しかし、この首相の新聞発表は、世界平和に対する脅威わが国に対する脅威が同じ原因によって生み出されるという認識であろうと、このように推測されるわけです。さらに推測をしますと、その原因の中に、ソ連とかあるいは朝鮮民主主義人民共和国、これが入っていることを示唆しているのではないか、このようにも私たちは思います。  五十八年度防衛白書と日米首脳会談後の中曽根首相の新聞発表とでは、わが国の周辺の軍事情勢の認識が異なるのではないか、このようにも思うんです。一つは、わが国の周辺の軍事情勢と世界の軍事情勢を区分するかあるいは区分しないのかという点と、二つ目は、わが国に対する脅威の原因となり得る国が単数か複数か、そういう点、すなわち朝鮮民主主義人民共和国をどのように見るか、こういう点で相違があろうかと思うんですが、その点に対する認識をお聞かせいただきたいと思います。
  241. 新井弘一

    政府委員新井弘一君) お答えいたします。  今年度の防衛白書、冒頭、委員から具体的に御紹介ございました。あの認識は、ただいま現在何ら変わっておりません。ただ、あの白書を起案しました後に、御承知のとおり、九月早々大韓航空機撃墜事件あるいはさらにラングーンにおける爆破事件等起きまして、そのことを踏まえますと、やはり国際情勢というのは厳しさを増しているというのがわれわれの認識でございます。  それから、北朝鮮あるいは朝鮮半島の情勢についてでございますが、いまちょっと私が触れましたラングーンの爆破事件を契機に一時的に緊張状態が高まったということはございますが、その後韓国が比較的冷静に対処した、あるいはレーガン大統領の訪韓によって改めてアメリカの韓国防衛意思を確認した、そういうことから現在再び情勢は鎮静化しているという認識でございます。  他方、北朝鮮について潜在的な脅威と認めるのかどうかということについては、これは御案内のように、約三年前でございますか、政府として統一見解を出しまして、北朝鮮についてその種の議論をすることは適当でないということが政府の見解でございまして、これも現在何ら変わっておりません。
  242. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 次は、五十八年度の防衛白書が公表されましたのは八月二十六日ですけれども、その一週間前の八月二十日に日米防衛首脳協議に臨む日本側の最終方針を決定しておりますね。この最終方針は、報道によりますと、「潜在的な脅威高まる」という対ソ認識で米国側と同調している、このようにも伝えられております。  そこで、五十八年版の防衛白書に記述されている「わが国周辺の軍事情勢」について、当時アメリカもこれと同じような認識を持っていたのかどうか、その点お聞きしたいと思うのですが。
  243. 新井弘一

    政府委員新井弘一君) 私が認識する限り、極東アジア地域においてもソ連軍事力増大の結果として潜在的な脅威が高まっているということについては日米の間に基本的な相違はない、別な言葉で言えば非常に情勢は厳しいということについて双方の間に認識の相違はないというふうに理解しております。
  244. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 今回の日米両国の首脳会談後の両首脳の新聞発表を見ますと、中曽根首相は、先ほど述べましたように、わが国の平和に対する脅威について、東西間の緊張の増大に加えて、地域的紛争であるとかあるいは暴力事件が継続し増高する場合には重大な脅威となりかねない、このように言っておりますね。しかし、レーガン大統領は、朝鮮半島、中東、カリブ海地域及び北西太平洋上には平和にとっての大きな脅威が存在している、こういうことを述べて、多少表現が異なっているようなところが見えるんですけれども、これはわが国周辺の軍事情勢の認識が日米両首脳の間で異なっているのじゃないか。ことに、ソ連と北朝鮮に対する軍事的認識においてレーガン大統領の方が中曽根首相よりもっと厳しいそういう見方をしているのじゃないか、そのように思うのですが、その点どうでしょう。
  245. 新井弘一

    政府委員新井弘一君) 中曽根総理とレーガン大統領のそれぞれの所感についてトーンあるいは内容において相違があるのではないかという御質問かと思います。  これについては、私、極東アジア情勢についての認識に日米の間に相違はないということを先ほど申し上げました。これは何ら変わっておりません。ただ、あえてただいまの委員の御質問に沿って私なりに若干思いを走らせますと、レーガン大統領によって代表される米国というのはグローバルパワーとしてあるいは西側全体のリーダーとして世界的な規模で責任を持っている。それから同時に、国際社会全体という立場から見れば、これはソ連も加えて、米ソは国際平和の維持、安定、これに本来一番責任を持つべき国でございまして、そういう立場から恐らくは彼らの認識においても非常に厳しいトーンがより強く出るということはあり得るかというふうに考えます。
  246. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 次の質問に入りますけれども、昭和五十三年に「日米防衛協力のための指針」、いわゆる日米防衛協力のガイドラインというのが制定されましたけれども、それ以来、日米共同訓練を陸、海、空、全自衛隊に広げて、かつ本格化を志向するなど、日本の防衛に関する日米協力の基礎が次第に固められてきている、そう見えるんですけれども、今回の日米首脳会談におきまして、日米両国は対ソ認識等の軍事情勢認識の差を残しつつも日米防衛協力関係を深めた、そのように見る向きが多いわけです。しかも、日米防衛協力というのは少しずつ姿を変えつつある。これは午前中からの論議の中にも同僚委員からも指摘されておりましたけれども、日米首脳会談等を契機にしながらアメリカ側が世界戦略を補完する日本への期待を高めているのに呼応するように日本側も積極的に役割りを分担する様相を深めている。つまり、わが国は安全保障の分野で世界の中の日本として位置づけられているという論評が数多くされているわけです。  そこで、日米防衛協力について、そのガイドラインを変更する意思が防衛庁としてあるのかないのか、あるいはガイドラインを変更する必要性があるのかないのか、その点、防衛庁の見解を聞いておきたいと思います。
  247. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) わが国の安全を保つために、わが国は独自の自衛力を整備すると同時に、日米安全保障条約を結びまして、その日米安保体制の円滑なる運用ということを図りまして、総合的な安全保障政策を進めているわけでございます。したがいまして、わが国の防衛にとりましてこの安保体制が有効に機能するということは不可欠であるということは言を要しないことだと思うわけでございます。  そこで、そういった安保体制の有効な機能を図るということのために五十三年のガイドライン、「日米防衛協力のための指針」というものをつくったわけでございまして、その内容とするところは、自衛隊と米軍が緊急時におきまして整合のとれた共同対処行動を確保するためにどういった措置をとるべきであるかということについての指針を含めまして、日米間の協力体制に関する基本原則を定めたわけでございます。  こういった基本的な考え方と申しますのは、先ほど来御議論が出ておりますような国際情勢の厳しさが増してきているという状況から見ますと、その必要性は一層高まっているわけでございまして、私どもはこのガイドラインの内容に即して一層の充実を図っていきたいということを考えておるわけでございまして、これを変更する必要があるとは考えていないわけでございます。
  248. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 それでは、具体的に日米共同訓練について若干説明をしていただきたいと思うんですが、最初に陸上自衛隊と米軍との共同訓練ですが、先ほども同僚委員からも指摘がございましたけれども、日米陸上部隊による共同実動訓練、これは北海道で十月上旬から中旬にかけて行われた、このように言われておりますけれども、参加予定は米ワシントン州のフォート・ルイスに駐屯する第九歩兵師団所属部隊と陸上自衛隊第十一師団所属部隊、こうされていますけれども、そのほかに在韓米空軍のF16型戦闘機の参加を米軍が打診してきたという報道がありますけれども、米軍からの打診があったのかなかったのか、あるいはそれに対する政府の対応について説明をしていただきたいと思います。
  249. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) お尋ねの在韓米軍に含まれますF16の参加の件でございますが、今回の北海道におきます日米の実動訓練につきまして、在韓米空軍を参加させたいというていの申し込みは全くございませんでした。
  250. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 「防衛庁は、陸上自衛隊と米陸軍の共同実動訓練に在日米海兵隊の参加を求める方針を固め、来年度以降できるだけ早い時期に実施できるよう政府部内の調整を進めるとともに、米側との折衝を急ぐことになった。」、こういう報道が八月二十九日にされておりますし、八月二十二日、「日米防衛首脳協議で米側から強い要請があった即応体制強化の一環として、日本有事の場合の「逆上陸作戦」の戦技向上を狙いとしている」、このように伝えられておりますけれども、そこで政府部内の調整あるいは米側との折衝の進捗状況及びこの逆上陸作戦というのは専守防衛を基本とするわが国の防衛政策になじまないと、このようにわれわれ思いますが、その点どのようにお考えでしょうか。
  251. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 在日の米海兵隊との共同訓練でございますが、陸上自衛隊との間におきましては、たしか一昨年、五十六年であると思いますけれども、米海兵隊と通信訓練を共同で実施をしたことがございます。また先般、仙台で行われましたCPX、これは陸上自衛隊と米陸軍との共同の指揮所訓練でございますけれども、その際に海兵隊が支援参加をしたという事実がございます。しかしながら、現在のところ陸上自衛隊と在日の海兵隊、これとの共同の実動訓練をやるという計画は全くございません。
  252. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 それでは、海上自衛隊の方に移りますけれども海上自衛隊員の九人が米第七艦隊の旗艦とフリゲート艦に乗船して、ミサイル、電子戦装備について研修する計画があると海幕長が去る五月に発表しておりましたけれども、これは実現したんでしょうか。
  253. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) ただいまの御質問にお答えする前に、ちょっと先ほど答弁漏れがありましたので、海兵隊の逆上陸の御質問があったと思いましたが、逆上陸あるいは上陸作戦、いろいろな形態があろうかと思いますけれども、たとえばわが方の国土防衛という場合でも、仮に敵部隊が侵攻してかなりの地域を占領されるという際に、これに反撃を加える際逆上陸をするというような場面は当然あろうかというように考えております。したがいまして、海兵隊が参加するような作戦がすべて攻勢的な作戦であるというようには考えておりませんので、その点、御理解をいただきたいと思います。  なお、次の御質問海上自衛隊の隊員が米側の艦船に乗艦をして訓練したのじゃないかという御質問でございますが、これは時期的には本年の六月でございますが、かねがね海上自衛隊としては、いわゆる新しい情報処理システムあるいは電子戦あるいはまたミサイル等の新装備というものを、米海軍装備をする新装備、そしてわが方も持ちたいあるいは持つ予定である新装備、そういったものの研修といいますか、それを見てみたいというようなことで、機会があれば米側の船のそういったものの運用を見学させてくれないかという申し込みをしておりましたところ、たまたま六月に米側の海軍、海兵隊、空軍等が一緒になった演習が日本の近海で、身近のところでございまして、その際にブルーリッジという船とプルークという船にそれぞれ七名及び二名が乗船をして研修を受けてきたという事実がございます。
  254. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 それは時期的にはいつごろですか。
  255. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) まずブルーリッジという船で情報処理システム、これに乗艦しましたのが六月三日で、下船したのが十二日ということであります。それからミサイル及び電子戦装備、この関係が六月九日に乗船をして十六日に下船をしたということであります。
  256. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 ちょうどその時期に第七艦隊と第三海兵師団が沖縄本土で行われる敵前上陸演習に参加するような形になったのじゃないでしょうか。どうですか。
  257. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 先ほどの御答弁でも申し上げましたが、この研修についてはかねがねひとつそういうチャンスがあったら米側の船に乗せて見せてくれないかということを申し入れていたところ、米側の方からこれこれの時期にこの船に乗れば見れるよという連絡を受けて研修を受けたわけでありますが、いま申し上げたブルーリッジとブルークは、先生質問のように、沖縄周辺の米側の、先ほどちょっと申し上げましたが、海軍、海兵隊及び空軍の演習に参加する船であったようであります。
  258. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 そうすると、海幕長は、たまたま演習と重なっただけで自衛隊員が上陸作戦の支援をするようなことはないと、こういう発言をされていますけれども、情報処理システムの研修といっても、やはり作動しているものを見なきゃこれは研修になりませんけれども、こういうやはり実際に米軍が上陸作戦の演習をしている、そういうところにやはり参加をしたという事実には変わりないのじゃないかと思いますが、その点どうですか。
  259. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 先ほどから申し上げておりますように、演習に参加をしたわけではございませんが、演習に参加をした部隊に便乗させてもらって、こちら側はどちらかというと技術者でございますけれども、当該情報処理システムあるいはその他の電子戦装置等が稼働する状況を視察してきたということでございます。
  260. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 次に、航空自衛隊問題点でございますけれども、二、三お聞きしたいと思うんですが、防衛庁はドネリー在日米軍司令官兼第五空軍司令官が航空自衛隊と在韓米軍との共同訓練を提案してきたのに対し前向きの姿勢を示していると、このように伝えられておりますけれども、提案の有無あるいは経過及び防衛庁が前向きの姿勢を示す理由について、法的根拠を含めて説明をしていただきたい。
  261. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 先ほど陸上自衛隊の共同訓練のところでちょっと申し上げましたが、現実問題として米側から在韓米空軍との共同訓練という具体的な申し込みを受けておるわけではございません。  ただ、共同訓練一般についてでございますが、わが方も米側も新しいといいますか、自分以外の機種、他の機種との戦闘訓練、あるいはまた他の国、日本とアメリカとは当然戦術思想もある程度違うわけでございますが、そういったところといわば他流試合をやるというようなことについてはそれぞれの国の戦術技量を向上する上で非常に効果があるという一般論としては共通認識はございます。したがいまして、機会があれば日本側としてもやったことのないF16というような機種とも訓練をしたいという希望はわが方も持っておりますし、米側としても日本の航空自衛隊の部隊とドネリー司令官隷下の部隊のものと他流試合をやらしたいという御希望はあろうかと思います。  なお、それをやるかやらないかということについて申し上げますと、まず一般論あるいは法的な面について申し上げますと、午前中当委員会でお答えしたと思いますが、自衛隊といたしましては、自分の所掌事務、任務の遂行に必要な教育訓練、それに効果があるということでありますれば他国と共同訓練をすることについて法的に特に問題があるというようには考えておりません。しかしながら、具体的にそれではどこの国のどの部隊とやるかということになりますと、それなりのいろいろな政治的あるいはそれをめぐるもろもろのいろんな問題がございますので、そういったことも十分勘案をしてやるかやらないかを決定をしなくちゃいけないというように考えております。
  262. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 毎年行われておりますチームスピリットには在日米軍が在日米軍基地から発進して参加しておりますね。そこで、在韓米軍機と航空自衛隊の共同訓練、これが将来実施されるようなことになりますと、これは米軍を軸として日米韓の安保協力が一層強固になるし、日米防衛協力の変容の一歩を踏み出すことになると思うんです。それだけに近隣諸国に与える軍事的な刺激というのは増大させることになると思いますが、したがってそういうことが行われないように私たちとしても要望しておきたいと思いますが、その点どうですか。
  263. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) ただいまの御質問は、日本と韓国との間の軍事協力を行うようなことはないか、こういう御指摘かと思います。  私どもといたしましては、わが国の防衛は基本的に日米安保条約を基礎といたしまして、日米安保体制わが国の自主的な防衛力というものとを基盤といたしまして推進をしていく考えを持っておるわけでございまして、韓国と軍事協力を行うというような考えは持っておりません。
  264. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 日米防衛協力ということがだんだんとやはり深みを増していく、このように国民の目から見えるのが現状であろうかと思うんです。これを言いかえますと、あり得る直接侵略というのはわが国が独力で排除できない、米国の協力を得なければ排除できないものである可能性が強い、こういうふうに政府・防衛庁は認識をしているのじゃないか、このように見られるわけですけれども、この点はどのようにお考えでしょうか。
  265. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) わが国は、すでに何回もお答え申し上げておりますように、日米安保条約というものがわが国の防衛にとって非常に大きな柱になっておるわけでございまして、それを円滑に運用していくために防衛協力を行っていく必要があるわけでございます。しかしながら、防衛計画の大綱でも述べられておりますように、わが国の場合は限定、小規模の侵略に対しましては原則として独力でこれに対処し得るような防衛力を整備したいということを明らかにしておるわけでございまして、したがいまして、わが国の防衛政策といたしまして、基本がそういったわが国の独力によりましてそういう限定、小規模侵略に対処をするような体制をつくっていこうということであることはもちろん事実でございます。  しかしながら、わが国に予想されます侵略の態様というものは千差万別でございまして、一概にはいろいろと言えない点があろうかと思います。したがいまして、わが国の防衛力が独力で対応できないというような事態に対しましては、極力粘り強い抵抗を続けることは当然でありますが、場合によりましてはアメリカの支援を得て防衛を全うするということはこれまた当然でございまして、そのことがわが国の自主的な防衛体制を損なうような性格のものではないというふうに私は考えておるわけでございます。
  266. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 それから、陸上自衛隊では五十九年度から訓練実施方法を一部改める方針を固めた、このように伝えられておりますけれども、現在の訓練は各年度の業務計画において会計年度に合わせて四月を起点として十二月に一応完了する方式をとっていますけれども、侵攻部隊が北海道に上陸する可能性が強い夏季、七月から九月に一応完了するように改めようとするものだと言われていますが、その点は事実でしょうか。
  267. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 陸上自衛隊訓練でございますが、これは特に各全部隊一斉にあるいは一律にこうせよというような定めがあるわけでございませんで、それぞれの部隊の特性によりましてそれに任しておるということでありますけれども、一般的に申し上げますと、先生申されたとおり、大体四月ごろからいわゆる各個教練なり小規模の部隊の訓練から始めまして、逐次大規模の部隊の訓練、練成に移っていくということで、初冬ごろまでにそれを仕上げていくというのが大体のパターンでございます。
  268. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 この訓練方式にすることについて、防衛庁としましては相手の国を特定することは避けているようですけれどもソ連を特定しているということは軍事常識ともいう見方が防衛筋にもあると言われておりますけれども、北方領土を初めとする極東でのソ連軍増強を背景にした措置だ、このようにも言われております。あるいは日米共同訓練が質、量ともに拡充していることとか、あるいは米軍のフレキシブルオペレーションズ、これが極東重視の米戦略と無縁でない、このようにも言われておるわけですけれども、陸幕がこの訓練方式を採用するのは、有事に予想される任務を最も効果的に達成するため、こういう判断によると伝えられておりますが、しかしこれによって一層近隣諸国を刺激することにならないか、そもそもそういった特定国を敵視する態度のあらわれではないか、こういうふうにも思われますので、その点の見解もお聞きしたいと思いますし、またこの訓練方式を実施する場合、会計年度に立脚した業務計画との関連はどうなるのか、その点もお聞きしておきたいと思うんです。
  269. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 前段の関係について私の方からお答え申し上げますが、まず自衛隊が特定の国を仮想敵国としていないということはあらゆる機会を通じて大臣を初め政府委員がお答え申し上げているところでありますが、今回陸上自衛隊が逐次夏場ごろを目指して訓練を最高潮に持っていきたいという計画をしている、あるいはそういう気持ちを持っているということは、今度幕僚長に就任された方が第一線部隊の指揮官をずっと歴任をされてまいりまして、従来のような傾向ですと、大体一番練度が高くなるのが初冬といいますか、冬に入ったころになるということになりますと、多くの部隊が配備されております北海道等におきますと、まず侵略等がありそうもない大変寒い時期に部隊の練度が一番高くなっておる、これは大変むだといいますか、もったいないことである、それよりも、何かあるとすれば、やはり可能性の高い夏場に最も練度の高い状況にできれば上げていくことが日本の置かれております自然的な条件等考慮していいのではなかろうかということで、逐次そういう方向に努力をしていきたいというように考えておるものであります。
  270. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) 第二点のいわゆる業務計画との関連についてのお尋ねでございますが、五十八年度は一種の移行期間といたしまして着手をいたしまして、五十九年度から本格的にいま西廣参事官から御説明申し上げましたような体制に移っていくということを考えておるわけでございまして、五十八年度の場合は既定予算の範囲内で移行のための準備作業を行っているわけでございまして、既定の予算の範囲内ですべて対処ができるものと考えておるわけであります。
  271. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 この訓練に限りまして二カ年度の業務計画に組み入れることになる、このように推定されるんですけれども、五十九年度から実施することになりますと、五十九年度の第四・四半期から始めるのなら予算上の問題ないと思いますけれども、スタートを五十八年度の第四・四半期に前倒しする場合は予算の裏づけをどのように確保するのか、その点どのようにお考えですか。
  272. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) 訓練、演習というような関係は、全体としての訓練演習費の中で各種のものが実行されていくわけでございまして、したがいまして、そういった訓練関係の事業は既定の予算の範囲内で工夫をして処理するのが大原則でございます。ただいま御指摘の五十八年度におきます移行期間としての準備作業につきましても、これはその既定予算の範囲内ですべて実行をしていくものでございまして、特段の支障はないと考えております。
  273. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 次に、航空医学実験隊というのがありますね。これはどのような任務を持ったものですか。
  274. 島田晋

    政府委員(島田晋君) お答え申し上げます。  航空医学実験隊の任務につきましては、航空医学及び航空心理学の調査研究を行うとともに、航空身体検査及び航空生理訓練を行うことを任務といたしております。
  275. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 この航空医学実験隊の任務の遂行について、航空医学及び心理学上の調査研究関係では相当な研究が進められている、最近までの累計でも、研究論文あるいは学会発表、研究会等、あるいは著書も相当な数が成果として上がっていると聞いていますが、実際の効果はどうでしょうか。
  276. 島田晋

    政府委員(島田晋君) 御案内のように、なかなかわが国ではこの辺の関係の論文が少ないとされているわけでございますが、たまたま一 九七六年に行われましたモントリオール・オリンピックに参加する日本選手の時差による影響とその対策を検討するために時差対策研究班が設けられまして、それは「体調日誌による六時間時差の競技選手に及ぼす影響調査について」ということで報告がなされております。この辺の報告をもとにいたしまして、現在自衛隊では、パイロット、それからまた管制官等昼夜のリズムを変えて勤務する職種がございますので、その影響と対策についてあらゆる角度から研究する必要があるということで、いま種々の研究を行っておるわけでございます。
  277. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 いま時差の研究についてお話がありましたけれども、これに東京大学の教養学部の教授が協力をして研究をされたんでしょうか。
  278. 島田晋

    政府委員(島田晋君) 日本体育協会のスポーツ科学委員会に先ほど申し上げました時差対策研究班が設けられまして、その班長といたしまして防衛医科大学校の衛生学の教授である横堀先生、この方は退職されておられますが、そのほかに班員といたしまして東京大学教授の黒田先生、そのほか、当時、航空医学実験隊に勤務しておりました万木先生、あるいはまた研究協力者として防衛医科大学校の先生等々が参加いたしまして研究をいたしたわけでございます。
  279. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 そうすると、いまの御答弁によりますと、大学との共同研究ではない、こういうことですね。間違いございませんね。
  280. 島田晋

    政府委員(島田晋君) この報告書を見ますと、素直に大学の共同研究というよりも、先ほど申し上げましたように、日本体育協会のスポーツ科学委員会に設置されたその委員会に参加をしたということでございます。
  281. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 その実験隊では射出座席訓練というのをされていますか。
  282. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 航空自衛隊の教育体系の中でいわゆる射出座席訓練というのは、医学実験隊と申しますよりも、パイロット教育のいろんな段階で行われておりまして、まず最初に、いわゆる地上におきます準備課程というものがパイロットの教育でございますが、その際にこの医学実験隊が支援をしておる。支援をして射出座席の訓練なり、あるいは陸上自衛隊の空挺部隊が支援をしてパラシュート降下の訓練をする。さらに、その後第二初級操縦課程、これはT1で芦屋基地でやりますが、そこでも同様の訓練をいたしますし、その後、戦術課程に参りましても射出座席の訓練はするということで、各課程の段階は応じまして射出座席の訓練をいたしております。そのうち、いま申し上げたように、航空医学実験隊が支援をしておりますのは最も初級の段階でやっておるということでございます。
  283. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 最後に、最近に事故がございました点で一点きょうお聞きしておきますけれども、PS1の事故がございましたけれども、これは五十八年四月の二十六日、海上自衛隊岩国基地所属のPS1の事故があったわけですが、この事故機の機長を業務上過失致死傷及び航空の危険を生じさせる行為等の処罰に関する法律違反容疑で本人死亡のまま海上自衛隊岩国警務分遣隊が山口地検岩国支部に書類送検した、このように伝えられていますが、それは事実でしょうか。
  284. 上野隆史

    政府委員(上野隆史君) 海上自衛隊岩国警務分遣隊は、PS1の事故に関しまして、事故機の機長であります下川二尉、亡くなられておりますが、十二月十二日、山口地方検察庁岩国支部へ業務上過失致死傷及び航空の危険を生じさせる行為等の処罰に関する法律第六条の違反容疑で書類送致をいたしました。
  285. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 それが事実としますと、事故調査報告では、「機首の上下動に関係のある装置」が「何らかの原因でたまたま故障し、機首上げ増につながり、事故の要因となった可能性を全く否定することはできない。」。これは防衛庁が事故調査結果について報告されているわけですけれども、それから考えますと、これは行き過ぎた措置じゃないか、このように私たちは思うわけですけれども、補償への影響もあるでしょうし、あるいは保守管理の責任あるいは基地司令の責任とか、そういう事故の経験を次に生かすのじゃなくて、亡くなった方にすべてかぶせるような方法をとるべきじゃない、このように思いますが、その点どうでしょう。
  286. 上野隆史

    政府委員(上野隆史君) まず、先生御高承のとおり、事故調査委員会の事故調査と申しますのは、これは事故の原因を科学的に究明して再発を防止するためにもっぱら行われるものでございまして、犯罪の捜査ないしは服務規律違反というものの究明に資するために行われるものではない、そういう目的のものではないというのが大前提にございます。  それで、今回の事故でございますが、なるほどその事故調査報告書にはいま先生指摘のような「機首の上下動」云々ということも書いてございます。そういう可能性を全く否定することはできないのでございますけれども、一方、操縦者の操縦に関します何らかのミスと申しましょうか、手落ちと申しましょうか、そういう人為的な要因というものを全く否定しているわけではございません。  そこで、犯罪捜査機関としての警務隊といたしましては、これは刑事訴訟法二百四十六条でございますが、それに基づきまして、やはり犯罪の捜査をしたときにはまず速やかに事件を検察官に送致しなければならないという規定もございます。それから百八十九条では、司法警察職員は鮮——警務官は司法警察職員でございますが、犯罪ありと思料するときには犯人及び証拠を捜査するものという規定もございます。その二つの規定に基づきましてそういう措置をとったわけでございます。
  287. 内藤功

    ○内藤功君 午前中、防衛庁長官に対しまして、日米合同訓練あるいは合同演習に韓国の軍隊が参加することについて将来とも防衛庁長官としては容認しないということをはっきり言えるか、それともその点ははっきりそういうことは明言できなく状況によるというようなお考えなのかということをお聞きいたしました。たしか最後の御答弁は、日本と韓国の間には軍事上のそういう協定、約束というものはないということを基本に対処をしたい、この趣旨のお答えがあったように理解をいたします。  そこで、私は非常にくどいようですけれども、私もやっぱり国民の各位に、防衛庁長官はこう言っていた、やるというのかやらないというのかということははっきり言わないと、あなたの立場を明確に言ったことにならないと私は思うんです。  そこで、一点だけですが、将来にわたってもそのような日米合同訓練、合同演習には韓国の軍隊が参加するということは容認しないというふうに明言されるのか、あるいはそうではないのかという点を伺いたいんです。
  288. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) この件につきましては、前々から、たしか細田防衛庁長官の時代に明確にお答え申し上げていると思いますけれども自衛隊が外国の軍隊と共同訓練をするかしないかという問題は、当該国との共同訓練を行うことが自衛隊の任務遂行に必要かどうか、またそのことが政策的に妥当かどうかといったようなもろもろの観点から十分慎重に検討すべき問題であるというように考えておるものであります。  なお、いずれにいたしましても、現在のところ韓国と共同訓練をするというようなことは全く話題に上っておりません。
  289. 内藤功

    ○内藤功君 そこで、将来はどうかと聞いている。この質問です。
  290. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 先ほどと同じことをお答え申し上げるようでありますが、ただいま申し上げたとおり、外国の軍隊との共同訓練と申しますのは、その共同訓練を行うことが自衛隊の任務遂行に必要かどうなのか、あるいは政策的に妥当なのかどうか、そういったもろもろの諸条件というものを十分検討して決めるべき問題であって、具体的な事案に即して考えるということでございます。
  291. 内藤功

    ○内藤功君 そうすると、将来やらないとは断言しないと、こういうことですね。
  292. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) 大変くどいようでございますが、もう一遍ここで改めてはっきり申し上げておいた方がよろしいかと存じます。  まず第一に、日本と韓国は地理的に非常に近い国でございます。それから、それぞれ安全保障の体制は、アメリカを中心にして日米、それから韓米と言ったらいいでしょうか、そういうような安全保障の体制を持っておりますが、しかし日米韓三国間あるいは日韓、この二つの間で軍事的意味での協力を推進するということは考えられないわけでございます。  そして、共同訓練の問題につきましては、まず原則として自衛隊が外国の軍隊と共同訓練を行うかどうかというのは、その国とそれから共同訓練を行おうとするわが方とがあるわけでございますが、わが方から考えた場合には、共同訓練を行うことが自衛隊の任務遂行の上に必要かどうか、そういった政策的な面から見た判断が必要だと思っております。  そこで、日本と韓国の共同訓練について現在のところ全くこれは考えてもおりませんが、将来にかけてどうかということは、日本と韓国との間の政策が妥当ということが判断できるかどうかということにかかるわけでございますが、これは将来の問題でございまして、いまここで確定的なことをお答えするに至っていないということであろうと思います。
  293. 内藤功

    ○内藤功君 将来のことはやらないとは断言できなかったと、こういう理解をして先へ進みます。  次は、今度は日米の共同演習の問題。  われわれが演習のことをいろいろ聞くのは、演習をよく見ることによって自衛隊というものがどういういま仕組みに置かれ、またどういう能力を持ち、何を企図しているかを推定する、われわれ国民としては、外部の者としてはそれしかないからであります。  そこで、お答え願いたいのですが、十月の十二日から十五日まで行われたいわゆる北海道での日米陸上合同演習、日米陸演といいますか、ヤマト演習という名前で呼ばれていたようでありますけれども、これについて、その際に核兵器、生物兵器、化学兵器などによる汚染地域が当該演習場内、具体的には島松演習場内におきまして設定されていたという事実について防衛庁御存じかどうか、御見解を伺いたいんです。
  294. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 先般の米陸軍との共同実動演習につきまして、そのような地域は設けられておりません。
  295. 内藤功

    ○内藤功君 これは私どもは新聞、雑誌のいろんな資料からわれわれ国民は防衛庁のことを知るしか由はないんです。十一月四日付の「週刊宝石」という雑誌に、私どもいろんな雑誌を拝見しておりますけれども、これは写真入りで出ておるんです。こういう報道機関の人が熱心に取材されたものをわれわれはやっぱり真剣に勉強しなきゃならぬ。これに作戦地図写真というのがついていて、これに、スペルのまま言いますと、CONTAM、あとがちょっと自衛隊員の方の手によって読めないんですが。その次にエリアですね。コンタムエリアというのが判読できるわけなんです。ごらんになったかもしれませんが……
  296. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 見ました。
  297. 内藤功

    ○内藤功君 そうしますと、汚染地域というのは、汚染はたしかコンタミネーションですから、コンタミネーティッドエリア。私はよく英語わかりませんが、俗に核兵器による汚染区域というのは英語で言うとそういうものだろうと思うんです。確かにそういうふうに判読できる。この地域は、北が島松演習場、南が千歳、恵庭演習場で、今度の演習は南から北へ二つの橋を渡って陸上部隊が進攻し、それからバートルにアメリカのTOWミサイルなんかをつけて南から北に進攻するという想定の一つでありますからね。これが、コンタミネーティッドエリアというのが西側の攻撃目標地点のさらにその西側——西側は自衛隊の部隊の攻撃目標でありますから、その近くにこれがあったと、この地図によればそういうことになる。私はこういうようなことはかねがね予想はしておったんですが、明確に写真でもって示されているというふうになった場合に、明確にやはり防衛庁の方の御見解をここでお示しいただきたいと思います。
  298. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 先生お示しのその写真へ私も雑誌は見ましたが、その地図がどのような地図であるかということは私も断言できませんけれども、どうもその地図で見ますと、その地域というのはいわゆる演習場の弾着地域なんです。したがいまして、今回の私どもが行いました米側との共同実動訓練におきましては、ここは弾着地域でございますので不発弾等がありますから、いわゆる立ち入り不能地域として設定をした地域であります。それを米側としてはコンタミネーティッドエリアということで指定をしたのだろうと思います。
  299. 内藤功

    ○内藤功君 これはそういう英語があるんでしょうか。私は英語が余りわからないのでこれ以上論争できませんけど、コンタミネーションあるいはコンタミネーティッドというのは核もしくは化学兵器により汚染されたもの、源田先生なんかよく英語のを読んでおられるが、私は読みませんが、そういう意味だと思いますよ、コンタミネーティッド。弾が落っこってくるところ、特科部隊がカノン砲を撃って、それでここに落ちるというところじゃないです。確かにこのコンタミネーティッドエリアの東側には砲兵が撃って、目標があったはずであります、私がいろいろ見てみると。ここの地域はもっと広いんですね。コンタミネーティッドという言葉からいってあなたの答弁自体がおかしくはありませんか。何でも答えていいですけど、余りやっぱり専門家としておかしな答弁はいかがかと思います。もう一回聞きます。
  300. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 同じようなことをお答えすることになると思いますが、その地図を見る限り、それは今回の演習の弾着地域という意味で私は申し上げているわけじゃございませんで、従来から陸上自衛隊がその演習場を使用する際の弾着地域であって、過去の実弾射撃等で不発弾等がありますから、今回の実動訓練に際してはここは立ち入ると危ないからということで米側と設定をした行動不能地域であります。
  301. 内藤功

    ○内藤功君 この英語の表示から見て私は納得できません。私の英語理解が間違っているという御答弁であれば私は引き下がりますが、この答弁は納得できないのであります。  そこで、私がさらにお伺いしたいのは、五十九年度予算概算要求におきまして、陸上自衛隊において化学防護車が一両含まれておりますか。
  302. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) 御指摘のように、五十九年度の概算要求の中に化学防護車一両が含まれておりますが、これはすでに現有二両ございますが、それに一両増加したいという計画のものでございます。
  303. 内藤功

    ○内藤功君 現有二両はどこにあって、どんなものですか。実戦用ですか、実験用ですか。
  304. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) 現在、北方の第一〇一化学防護隊というところに二両保有をいたしておるわけでございます。
  305. 内藤功

    ○内藤功君 それに加わった今度の一両というのはどこの師団に属していますか。
  306. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) これは一両増強しようという計画をしておるわけでございますからまだ特定の師団に決めておるわけではございませんが、これもやはり北部方面隊の中で配備をしたいというふうに考えておるものでございます。
  307. 内藤功

    ○内藤功君 いまの第一〇二化学防護隊ですか、これは第二師団ですか。——わからない。じゃ、私の方から言います。通告をしていたはずですがお答えがないので、私の方から言います。これはこういうことなんだよ、局長。  現在あるものは実戦向きではない。非常に簡単な、化学消防車みたいなものです。大宮の化学学校にあったのを一〇二化学防護隊へ持っていった。今度要求しているやつは七三式装甲車両をもとにした実戦用の装甲車両なんです。恐らくキャタピラがついているのじゃないですか。これを将来は北海道二師団に配置する予定だと、そういうふうに私は聞いておるんです。手元に資料がないから答弁の余地がないでしょうけれども、そういうものなんです。  これはお答えなかったが、化学防護車というものは核汚染、それから放射能、こういうものを調査する車両だとわれわれは常識的に理解をしておりますが、どうですか。
  308. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) まず最初に、御指摘になりました機能的な面でございますが、現在持っておりますもの二両ございますが、これも古い型の装甲車をベースにしてつくられているものでございます。今回計画をしておるものは確かに七三式ではございますが、これは七三式の装甲車をベースにしてつくろうというわけでございまして、そもそも装甲車自体が性能が新しいものに変わってきておるわけでございますから、この化学防護車を整備するに当たりましても、新しいものをベースにこれを計画することは当然ではないかというふうに考えております。  それから、その機能といたしましては、化学兵器等による汚染地域がもし生じた場合に、そういったものの偵察行動を効率的に行うためにやはりこういった機能も必要であると、こういう判断に立っているものでございます。
  309. 内藤功

    ○内藤功君 そういうものがいま北海道の部隊に現在二両ある、旧式装甲車を改良したもの。それから、あなたもお認めになった七三装甲車をベースにしたものが今度は要求されておる。私は、これはやはり先ほどのコンタミネーティッドエリアというものを想定した問題。それから、この化学防護車というのは、明らかに核汚染に対する調査の機能を持った車両であります。いま一両だから少ないように見えるけれども、一両のときにちゃんとよくここで審査をしておかないと先へいってやっぱり間違いを起こすことになるから、一両とか一機とかいうときにこの防衛の問題は非常に僕は大事だというふうに思っているんです。  そこで、もう一つ私は関連して言いたいのは、ことしの防衛白書です。いろいろ新しい特徴がありますが、ページとして、局長、八十九ページのところです。これはいろんな週刊誌や新聞での批判にも非常に中心になっているところです。「保有すべき防衛能力」のうち「海上交通保護能力」のところで、通峡阻止の問題です。こういうふうに書いてあるんですね。そのとおり読みますと、「敵が通峡の自由を確保するため、海峡周辺地域に対する侵攻を企図するおそれもあり、これに対処するため陸・海・空各自衛隊能力を有機的に連係することが必要である。」。これはいままでのこの種の記述の中で特徴が二つあって、一つは海峡そのものを突破するというのはいままで言われておったんです。ソ連の軍部の最高首脳の書いた書物を見ても海峡、海から突破するというのはずいぶん書いてあります。しかし、この地域に対する侵攻、もう一つは海、空だけじゃなくて陸ですね、陸上兵力の能力を海峡確保という面との関連で出したということが、非常にこれは短い文章だが私は意味が深いと思うんです。  私は、こういう点で多くを論議する時間いまはありませんけれども、海峡封鎖に関連をして、北海道周辺において陸、海、空を含めた戦闘が起きる。そのときに核兵器の使用ということがあり得る。これがいま私が、この北海道の演習の問題、化学防護車の問題、そしてこの防衛庁の白書の問題というものをずっと組み合わせてみると、ここに私は非常な心配を持つわけです。これに対して、私が先走って言うと、防衛庁の方は、先生、それは心配し過ぎで思い過ぎだと、いつも大体こういう程度の答えなんです。しかし、大体いままでこっちが心配だと思うことがだんだん本当になっていくのが現状なんです、防衛問題では。  私がどうしてこういうことを言うかというと、日本がどうしたら極東とか中東とか世界の戦争に巻き込まれないか、巻き込まれないにはどうしたらいいかということが一番私は大きな関心事だからであります。そのためにいろんな問題を考えている。そうすると、日本独自で外国を攻めることはないだろうと思うんです。日本だけをソ連ならソ連が攻めてくることはないだろう。世界戦争の一環として日本がこの中に巻き込まれる、この可能性が大きいだろう。私はかような見解を持っているわけです。その意味で、いま私の言いましたような問題について、長官なり防衛局長、どういうお答えでも結構です、側の答えを出していただきたい。それは非常に簡単な、それは先生御心配のし過ぎですよというならそれでよろしい。お考えを聞きたいです。
  310. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) ただいま先生が御指摘になりました防衛白書の八十九ページの部分でございますが、これは八十七ページから始まります「海上交通保護能力」という中に出てくる一節でございます。  先ほどもちょっと申し上げましたが、これはわが国有事におきまして保有すべき防衛力の類型を幾つかに分けまして説明をしたものでありまして、その一つに「海上交通保護能力」というのがあるわけでございます。これはわが国が四面環海、しかも資源の多くを海外に依存しているということから、海上交通保護というものが有事におきましてわが国国民の生存を維持する等のためにきわめて重要であるということは申し上げるまでもないと思います。  したがって、海上交通保護の作戦を実施していく場合におきまして、これは各種の作戦を実施しまして、たとえば哨戒でありますとか、あるいは船舶の護衛あるいは港湾、海峡の防備等の諸作戦の累積効果によって海上交通の安全を確保するという目的を達しようとしているわけでございます。  そういった作戦の一環といたしまして、海峡につきまして必要があると判断した場合には、これは海峡におきます敵艦船の通峡の阻止ということも考える必要があるわけでございます。そういった場合に、その作戦の一環として基本的には艦船なり航空機なり潜水艦等を使用いたしまして通峡阻止の作戦を実施するわけでございますが、場合によりまして、必要がある場合には機雷を敷設するということも考えざるを得ない場合もあるわけでございます。そういった場合に、ここに書いてございますように、今度は相手側からいいますと、通峡の自由を確保するためにこの海峡周辺地域に対する侵攻を企図するおそれもあるということが決してあり得ないわけではないわけでございます。  しかしながら、これはあくまでも最初に申し上げましたように、日本有事の場合ということでありまして、わが国が武力攻撃を受けているというときに、わが国が自衛権を発動いたしましてこういった行動を自衛のための必要最小限の措置としてとった場合の話でございまして、それに対する相手国のさらに反撃としてこういった事態があり得ないわけではない。そういう場合には、わが方もこれに対処し得るために各自衛隊が十全の体制をとって連係をする必要があるということを指摘していることでございまして、これはわが国の自衛権の行使といたしまして当然のことではないかというふうに考えているわけでございます。  それで、そういった場合に、先ほどの核兵器の使用の問題を若干お触れになりましたけれども、私どもといたしましては、基本的には核兵器というものは使われない状態にあるべきことが基本であろうということを考えておるわけでございまして、そういった意味で私どもアメリカの核抑止力というものに期待をしているわけでございまして、こういったことが直ちに核攻撃を受けるということにつながるというふうには考えていないわけでございます。そもそも、こういったような万全の体制をとること自体がわが国に対する侵略を抑止する力を形成していくわけでございまして、そういった意味でもいろんな事態に対応するための体制をつくるということがきわめて重要であろうと思っておるわけでございます。ここの文章もそういう意味で御理解をいただきたいと思うわけでございます。
  311. 内藤功

    ○内藤功君 核兵器の使われるような戦争、戦闘ということは絶対あってはならぬし、いわんやわが国や周辺であってはならぬということは当然であって、それを防ぐためには、しかし日本はそう思ってもアメリカあるいはソ連という超大国が核を行使する、日本の近辺においていやしくも演習とはいえ核兵器の汚染区域を設定するというようなふざけたまねをすればやっぱりこれは許さぬということが非常に大事なわけです。したがって、この重要な問題として指摘をしたわけであります。  最後に、法案について直接触れる問題ですが、中央指揮所の問題です。これは、まず要点を二つにしぼってお伺いしたいです。  一つは、言われるところの、いよいよ発足をし、準備要員を三十三名いただきたい、所要の予算もいただきたい、こういう御提示であるけれども、中央指揮所の運用開始の時期はいつになるのかということ。  それからもう一点。まとめて聞きますが、その次には、防衛庁長官直接統裁のもとに三自衛隊の統合演習をこの指摘所でもって始めようとする時期はいつなのか。この二点です。
  312. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) ただいまの御質問にお答えする前に、先ほど御答弁申し上げました中で一部御訂正申し上げたいと思います。  それは一〇一化学防護隊の所属でございますが、先ほど北方と申し上げましたが、それは誤りでございまして、現在大宮にこの部隊は所在をいたしておりますので、それは御訂正申し上げたいと思います。  五十九年度の計画しておる一両分は、北部方面隊に配備する予定であることは間違いございません。
  313. 内藤功

    ○内藤功君 一〇一ですね。
  314. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) 一〇一でございます。  それから、ただいま御質問のございました中央指揮所でございますが、これの運用はことし、五十八年度の第四・四半期に部分的な運用の開始をしたいというふうに考えておるわけでございます。
  315. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 長官統裁の統合演習についてお答え申し上げます。  現在、統合演習あるいは統合訓練につきましては、五十六年から毎年やってきたわけでございますが、まだ始めたばかりで、やはりやってみますといろんな問題が起きる。そういった隘路を解決したり研究する時間がかかるということで、もう少し現在やっておる統合演習そのものも隔年ぐらいにして研究の期間を置いた方がいいのじゃないかというような反省が生まれておりますので、そういった研究をした結果、統合演習をさらに数回重ねた後大臣が統裁をされる統合演習をやるということになろうかと思いますので、まだかなり先になろうかというような見通しでございます。
  316. 内藤功

    ○内藤功君 最後に、やはり自衛隊のいまのいろんな演習の動き、特にきょうは時間の関係でまだそこまで入っておりませんけれども、日米の合同演習でいままで見られなかったのは、アメリカの兵隊、兵器を日本の自衛隊のヘリコプターが運ぶ、それから日本の日の丸を立てたジープにアメリカ軍が乗っている、これはこの演習を目撃した多くの住民から私聞いております。一般国民は、日本の自衛隊なのかアメリカと一緒の軍隊なのか、こういう素朴な疑問をいま持って私に聞いてくるということがあります。私に聞いたってわからないので、これは防衛庁にやっぱり聞かなければならない。  われわれの立場は、自衛隊というものは憲法違反であり、またアメリカの戦略に従属した部隊だという考え方ですが、しかし日本の自衛というものを考えてみた場合、外国の軍隊、外国の戦略というものに従属した軍隊というのは一番これは国の安全の上でよくないことだ、危険なことだ、ここがやっぱり私は基本だと思うんですね。かつて軍隊というものは、外国の戦争にはせ参ずるようなのは軍隊の本来の本質に反するということを言った人もおります。  私は、そういう意味で、これは質問でありませんから答えても答えていただかなくてもいいけれどもアメリカのいろんな一つ一つの要求というものに予算の面でも演習の面でも戦略計画の面でも従っていくというようなことは非常に危険な道だということを指摘しておきたいと思います。先ほどから同僚委員が、日米首脳会談、防衛会談のときにアメリカから要求があってもきちっとはね返せないのかということをいろいろ言っておりましたが、私も基本的に同じような気持ちを持つわけであります。私は、この点について強く強調して質問を終わりたいと思います。お答えがあれば言ってください。
  317. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) ただいま非常に大事な問題を御指摘になられましたが、私どもは日本の自衛隊アメリカに隷属しておる部隊とは全然考えておりません。あくまでも毎々答弁申し上げておるように、日米の間におきましては、わが国に対する武力侵略が発生したときに安保条約第五条が発動する、あくまでもそういう日本有事の場合には日米共同で対処するという形になっておるわけでございまして、これははっきり申し上げておかなきゃならぬ問題だと思います。  それから一点、私が午前中にいたしました答弁で、まことに申しわけございません、統合幕僚会議に所属する自衛官の今回の御審議をいただいておりまする増員につきまして数字をひっくり返して申し上げてしまいまして六十四と申し上げましたが、これは四十六の間違いでございますので訂正さしていただきます。    〔委員長退席、理事坂野重信君着席〕
  318. 柄谷道一

    柄谷道一君 先ほどの質問に引き続きまして、有事法制の整備の問題について御質問いたします。  さきの官房長でございましたか、答弁の中には、待機中の部隊の要員防護の問題が取り上げられました。また、中間報告ではレーダー、通信機材等を防護対象に加えることの示唆が行われております。ところが、自衛隊法第九十五条の防護対象に艦船が含まれていないわけでございます。これは艦船は防護の対象にならない、こういうお考えでございますか。
  319. 佐々淳行

    政府委員(佐々淳行君) お答えいたします。  自衛隊法第九十五条の規定は、それが破壊をされ、あるいは奪取をされた場合に防衛力が著しく低下を来す、また相手方にそういう武器が渡ると危険な状態になるおそれがある場合に、警職法要件、すなわち正当防衛、緊急避難の場合だけ危害を与えることができるという条件つきの武器使用が認められておるという条文でございます。  御指摘のように、実はこの九十五条の条文を見ますると、先ほど読み上げましたように、「武器、弾薬、火薬、航空機、車両又は液体燃料」、こういうことになっておりまして、艦船が落ちております。このうち、武器を塔載いたしております艦艇につきましては、従来の政府部内における解釈によりまして、この武器に含まれるという解釈でやってきておりますけれども、砲、ミサイル等の武器を搭載していない船舶、これは海上自衛隊に所属する船舶であってもこの九十五条の対象外であるという、補備を要するような問題点がございます。  それから、先ほどの答弁に敷衍をいたしまして申し上げますと、待機中の部隊は守れるのか、こういう御質問でございますが、この九十五条の規定は、実は有事、平時にかかわらず武器防護のためには条件を満たす場合に使える条文なんでございますけれども、この「人」という言葉の解釈をめぐりまして、法律の専門家の間にいろんな疑義がございます。すなわち、これは警備に当たっておる要員を言っているのではないか、部隊そのもの、人員そのものは防護対象ではないのではないか、これも補備すべき問題ではないだろうか、こういう御意見が出ており、また有事法制の研究、いわゆる七十六条下令後の有事法制の問題でございませんが、九十五条の問題に限ってもう一つ問題点を申し上げますと、レーダーであるとか通信機材等が含まれておらない。これはこの法律が昭和二十九年にでき、当時にはレーダーというものがなかったというような事情によるものであろうかと存じますけれども、九十五条には確かにそういう問題点がございます。
  320. 柄谷道一

    柄谷道一君 中間報告の中で艦船がないわけですね。これは従来の解釈というのは、非常にひねりにひねった解釈からすればそうなるかもしれませんが、当然研究する場合は艦船というものを一体どうすべきか、これは検討の対象としなければならない問題であろう、こう思います。  そこで次に、防衛庁は、中間報告の「別紙」として自衛隊法第百三条の政令に織り込むべき事項、「要請者、要請方法」、「管理する施設」、「医療等に従事する者」、「公用令書関係手続」、さらには「物資の引渡し」「都道府県知事の職務」、「損失補償、実費弁償等」、七項目にわたりまして詳細な内容を明らかにいたしておるわけでございます。これは防衛庁の権限で制定できる政令でございます。中間報告以降今日まで二年半政令制定に踏み切ることができない理由について明らかにしていただきたいと思います。
  321. 佐々淳行

    政府委員(佐々淳行君) 御指摘のとおり、七項目に分けまして五十六年四月、中間報告を申し上げたわけでございますが、たとえば管理する施設とは何をいうのか、あるいは医療等に従事する者とはどこまでをいうのか、都道府県の知事の職務とは何だろうか、あるいは収用の対象になる物資の範囲、こういう問題をめぐりまして防衛庁限りでは決めかねるという問題がございます。確かに政令はその省庁において制定をすることが可能ではございますが、内容的には非常に多くの省庁との合い議を要する問題と相なっておりまして、この関係省庁との調整協議が現時点ではまだ相整っておりませんで、この百三条の政令は、先ほど御答弁申し上げました第二分類、すなわち他の省庁に属する所管法令の照会とあわせて現在関係省庁の意見を照会をしておるところでございます。この回答が、五十七年の夏から実はやっておりますが、先ほど御報告申し上げましたように約三〇%程度しか回答が来ておらないという現状でございまして、本年の七月にも担当審議官が再度各省庁に作業の促進方をお願いしておる、こういう段階でございます。
  322. 柄谷道一

    柄谷道一君 それでは、第二分類についてお伺いいたします。  私は、第二分類に属する法令は、私なりにピックアップしてみますと、部隊の移動、輸送に関連する法令、これは警察、運輸がかかわっておると思います。土地の使用に関連する法令、これには建設、農林、環境が関連してまいります。建築物建造に関連する法令としては建設省。電波、通信に関連する法令としては郵政省。さらに、火薬類の輸送、貯蔵に関連する法令としては通産、運輸、警察。衛生、医療に関連する法令としては厚生省。有事の際の戦死者の取り扱いに関連する法令としては法務及び厚生省。経理、会計に関連する法令としては大蔵省。多くの官庁に分かれ、かつその項目は約七十項目程度と言われております。ところが、二年半たってまだ三〇%しか関連省庁からの報告がない。一体いつになればこれらがまとまるのだろうか、こういう疑問を感ぜざるを得ないわけでございます。    〔理事坂野重信君退席、委員長着席〕  そこで、端的にお伺いいたしますが、いつごろまでにこれをまとめるという目標を立てて作業をしておるのか、またある程度の研究がまとまれば国会に第二次の中間報告としてこれを提出するという御意図を持っているのか、いかがでございますか。
  323. 佐々淳行

    政府委員(佐々淳行君) お答えいたします。  この関係省庁に対する照会を行いましたのは五十七年の七月でございまして、御指摘のように二年半というのは中間報告からの経過日時でございますが、それにしても一年有半たってもまだ三〇%というのが実情でございます。防衛庁といたしましては、こういう問題は平穏な状態においてこそ十分、国民の権利に対してたとえば物的な規制をかける非常に重要な問題でございますので、慎重に審議をいたしたい、こういうことで平時においてこそこういう問題を整備しておきたいと考えまして、促進方を再々お願いをいたしております。  目標としては、昨年始めましたときには一年以内ぐらいにまとめたいというような考えでございましたが、まだ回答に接していないということで、本年度再び催促をいたしたところでございます。そんなわけで、まだ国会あるいは国会を通じまして国民の皆様に第二次中間報告をやる段階にまで達しておらないのは非常に残念に思っております。
  324. 柄谷道一

    柄谷道一君 さらに、第三分類につきましても、これは項目を取り上げてみますと、有事に際しての住民の保護、避難または誘導の措置を適切に行うための法令、人道に関する国際条約、いわゆるジュネーブ四条約の国内法制、有事に際しての船舶、航空機の安全を確保するための関連法案、さらに総合防災、医療体制にかかわるもの、食糧等生活必需品の安定供給に関するもの、さらには経済的損失を受けたことの救済に関する法令など、取り上げていけば約八項目ぐらいの検討項目があろうと思うんです。ところが、二年半を経過して、全然どの機関でどこが担当するのかということすら調整されていない。しかも、これは防衛庁単独で取り扱い得ないということは、これは当然でございます。  そこで、防衛庁長官、これはやはり総理が中心になって、政府全体として取り組むという以外に方法はないと思うのでございます。私は、防衛庁長官が率直に総理に進言して、この作業の促進について要求する責任がある、こう思うのでございますが、長官の御決意のほどをお伺いいたしたい。
  325. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) 御指摘のように、第三分類に属する事項につきましては、防衛庁の所掌事務の範囲を超える事項が含まれております。したがって、より広い立場からの研究が必要である、私も基本的にそう考えております。しかしながら、防衛庁といたしましては、この第三分類に属する事項につきまして、まず防衛庁、私どもの方で問題点を整理して、それから内閣全体で取り組む必要があるだろう、いまそういう気持ちで鋭意内部の整理にかかっておるところでございます。
  326. 柄谷道一

    柄谷道一君 私は、いま挙げました問題について御答弁をお伺いしておりますと、第一分類の問題についてもいろいろまだ問題が残っておる、第二分類については回答が三〇%しか集まっていない、第三分類においては全く手つかずであり、その方法すら確立されていない、これが中間報告がなされてから今日に至る経過なんです。  私は、防衛庁の一部に、これは真偽はわかりませんけれども有事法制の研究は行うけれども、実際にそれを法制化することは困難なんだから、有事になった場合は非常立法ないしは戦時立法、さらには超法規的な措置をもって対処せざるを得ないという考え方があるというふうにも聞くのでございますが、これは法治国家として、またシビリアンコントロールの立場からいたしましてもとるべき方法ではないわけです。とするならば、当然この研究というものを早く促進して政府一体となってその方向を国会に中間報告をし、国会の審議を求め、そして法体系を整備するということでなければ、私はこれは大変大きな問題を将来に残すということになりかねない。私は、シビリアンコントロールという観点から現状の作業の進展状況に対して率直に遺憾の意を表さざるを得ないわけでございます。  さらにお伺いいたしますけれども長官、どういう手順で——私はいまの質問で、防衛庁長官だけがやきもきしたって何ともならないので、むしろ総理というものの強力なリーダーシップの発揮というものがなければならない問題だと。正面装備の近代化、充実にばかり力を向けてこれらの面をないがしろにするということは、私は片翼飛行という安全保障対策であると指摘されてもやむを得ないのではないかとすら思うわけでございます。この点に対する長官の再度のお考えをお伺いいたしたい。    〔委員長退席、理事坂野重信君着席〕
  327. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) 私どもは、日本に対する侵略をまず未然に防止するということが第一義だと思って努力いたしておりますが、さらに侵略が生起したとき、いわゆる有事でございます。有事については、有事法制の研究そのものが有事において自衛隊がその任務を有効かつ円滑に遂行する上での法制上の問題点を整理することを目的としておる。  それで、第三分類につきましては先ほどちょっと御答弁さしていただきましたようなことでございますが、第一分類につきましてはすでに国会は対して中間御報告いたしております。  第二分類につきましては、実はこの夏、特に長官名をもちまして審議官を各省に回らせまして、その促進方を依頼してまいらしたわけでございます。それで、こういう研究をとにかく急いでやらしていただいて、整理がされた時点の扱いにつきましては別途これをまた検討しなきゃならぬ。というのは、各方面の意見も聞きながら、あるいはまた関係省庁の協力も得ながら結論を出していかなきゃならぬという面がございまして、まず一番最初にやらなきゃならぬことは研究の促進、完成ということであると、こう考えて目下鋭意努力中でございます。
  328. 柄谷道一

    柄谷道一君 最後に、いわゆる奇襲対処の問題でございます。  これは毎年の防衛白書を通読いたしておりますと、五十六年防衛白書の中では資料三十一として、長官が五十三年九月二十一円に検討を指示したということで、その検討指示の内容が記載されております。ところが、五十七年防衛白書からは資料としてもこの点が削除されているわけでございます。    〔理事坂野重信君退席、委員長着席〕  そこで、端的にお伺いいたしますが、防衛庁は、防衛白書から除いたということはその研究を行う意思をなくした、こういうことですか。
  329. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) 決してそういうことではございません。むしろ五十六年当時の防衛白書に明記をいたしましたのは、それをもって世論を喚起させていただきたい、こういう意図もございました。白書につきましてはここでちょうちょう申し上げる必要ないと思いますが、これは国民の皆様方に問題点として明らかにさしていただきたいというテーマをその年その年取り上げる形にしてあります。  それで、その奇襲対処につきましては、実は自衛隊法で外部からの武力攻撃のおそれがある段階で防衛出動を命ずることができると規定されておるなどありまして、奇襲に対処するための基本法制はできておる、これが基本的に私どもの理解でございます。したがって、われわれとしては法制上の問題よりも実際に奇襲を受けないようにすることがまず第一義でございますが、同時に、それに対する対処については、抗堪性あるいは情報通信、こういったものの強化、こういうことをやりながら、法制上の整備ということでなくて、実体上の整備というものが奇襲対処だと、こう考えながら今日努力をいたしておるところでございます。
  330. 柄谷道一

    柄谷道一君 最後に私申し上げますが、わが党といたしましては、国民の生命と財産を守る、そのための平和と安全保障対策というものは政治の重要な課題である。また、われわれといたしましては、憲法による自衛権の存在を肯定し、かつ専守防御に立つわが国の防衛力の整備についてこれを肯定する立場をとっております。  しかし、ただいままでの質問に対する御答弁を聞いておりますと、どうも防衛庁の安全保障対策は整合性が保たれていない。正面装備の問題、兵員、要員の充実の問題、その点に力点を置いて、それらを運用すべき根幹となるべき法制の検討についても、そんなことを言っては失礼かとも思いますけれども、ただ日をじんぜんと過ごしているという心証をぬぐい得ないわけでございます。私は、このことはわが国の平和と安全保障という観点からも大きな問題ではないかと思うわけでございまして、整合性のある、しかも一つの方針のもとに国民が深く討議を深めて、国民合意を得るための努力というものはこれは欠かすことができない。この面についての長官としての御所見をお伺いいたしまして、私の質問を終わります。
  331. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) 国の独立を確保し安全を維持していくということは、きわめてこれは崇高な大仕事であると考えております。そして、これだけの仕事をやり切るためにはどうしても国民合意、国民の御支持、御理解がなくんばできない仕事でございまして、その意味では年々だんだんと国民の防衛問題あるいは安全保障に関する御理解の度が高まっていき、かつまたその仕事を直接担当いたしておりまする自衛隊に対する支持、あるいは自衛官に対する御理解が高まってきておることはまことにわれわれとしてはありがたいことでございますが、何せ、いま御指摘のように、突っ込んで中へ入っていろいろと考えれば考えるほどまだまだせねばならない問題が山積いたしておりまして、さらに一層国民の御支持を心からお願いいたしたい、こう考えておる次第でございます。
  332. 高平公友

    委員長高平公友君) ただいまから理事会を開会いたしたいと存じますので、暫時休憩いたします。    午後五時十六分休憩      ─────・─────    午後七時開会
  333. 高平公友

    委員長高平公友君) ただいまから内閣委員会を再開いたします。  委員異動について御報告いたします。  本日、山本富雄君が委員を辞任され、その補欠として村上正邦君が選任されました。     ─────────────
  334. 高平公友

    委員長高平公友君) 休憩前に引き続き、防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。  両案について質疑を終局することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」「異議あり」「反対」と呼ぶ者あり〕
  335. 内藤功

    ○内藤功君 委員長
  336. 高平公友

    委員長高平公友君) 内藤君。
  337. 内藤功

    ○内藤功君 質疑を継続してくださいよ。まだいっぱい質問あるんだからね。われわれはこれだけ用意してありますから、質疑継続をしていただくように動議を出します。
  338. 高平公友

    委員長高平公友君) ただいま内藤君から両案の質疑を継続することの動議が提出されました。  まず、これについてお諮りいたします。  内藤君の動議に賛成の方は挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  339. 高平公友

    委員長高平公友君) 少数と認めます。よって、内藤君の動議は否決されました。  それでは、両案について質疑を終局することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  340. 高平公友

    委員長高平公友君) 多数と認めます。よって、質疑は終局いたしました。  これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べを願います。
  341. 小野明

    ○小野明君 私は、日本社会党を代表して、防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案に対し、反対の討論を行うものであります。  討論を行う前に一言申し上げておきますが、この重要法案が質疑打ち切りの強行によって運営されることに対し、強く反対の意を表明いたしておきたいと思います。  私は、本法律案が今日の状況の中で提案され、採決されようといたしておりますことに大きな危惧を覚えております。すなわち、平和憲法に立脚をしておりますわが国が軍拡に対する重要な歯どめとしてまいりました幾つかの原則が、いまや崩壊の危機に直面している状況にあるからであります。  第一に、武器輸出三原則が崩れ去ろうとしております。中曽根政権が対米武器技術供与に道を開いたためであります。この抜け道を通して日本の武器技術が世界に流れ出し、世界の若者の血をすすることがあってはならないのであります。  第二に、非核三原則が二・五原則に成り下がっていることであります。  最近においても政府は、米国の核戦力の一端を担う最新鋭原子力空母カールビンソンの佐世保寄港を認め、さらには巡航ミサイル・トマホーク搭載の戦艦ニュージャージーの寄港にさえ同意しようとしております。加えて、すぐれた核攻撃能力を持つF16戦闘機の三沢基地配備をも承諾しておるのでありまして、米軍による核持ち込みの疑惑は消えないのであります。  第三に、専守防衛という原理ですら放逐されようとしていることであります。  政府は、国民生活を守るという美名のもとに、シーレーン防衛、海峡防衛を声高に叫び、高価な対潜機や大型護衛艦を大量に整備し、日本から遠く離れた公海上での戦闘を可能にしようといたしております。それはまた米艦護衛能力を向上させ、集団的自衛権行使をも可能にし、米国の世界戦略の一環を担おうとするものでもあります。一方、航空機についても、政府は世界最強と言われるF15戦闘機に対して、空中給油でもってその航続距離を延ばすべく空中給油機導入考えていることが明らかにされております。防衛的自衛隊から攻撃的自衛隊への脱皮を図ろうとするものにほかなりません。  第四に、防衛費の対GNP比一%以内という閣議決定ですら五十九年度予算において破棄されようといたしております。  政府は、長年の国会論議の中で構築されてきた防衛政策に対する最小限の歯どめを次々に打ち砕き、国民を軍拡路線に引き込もうとしているのであります。  政府の軍拡路線は、軍事力の均衡こそが戦争を抑止するものであるとの虚構に根差しております。均衡抑止論が果てしない軍拡への道であることは、人類の歴史と今日の状況とが明々白々に証明しておるところであります。  ある歴史家の計算によれば、過去三千五百年の間、この地球上に戦争がなかった期間はほんの三百年にすぎず、残る三千余年は戦争に明け暮れていたということであります。いつの時代にも人類は武器を持っていたのであります。したがって、武器によって戦争を防止するということが誤りであること、軍事的均衡が平和を保障するものでないことは子供だましの論理にすぎないのであります。そもそも、均衡ということ自体が計量化してとらえることが困難であり、きわめて心理的要素の強いものであることが事態を悲劇的にいたしております。つまるところ、武器のあるところに均衡はあり得ず、あるのは戦争のみという結論に達するのであります。  軍備が安全を保障するということは、特に核時代の今日においては完全にパラドックス化しています。その好例は、米ソ核戦力であります。そこでは、軍事は政治の手段であるという命題は光を失い、逆に政治が軍事に奉仕するという様相すら呈しておるのであります。米ソは、政治的優位を軍事的優位によって確保し得るとして核戦力の増強に努めた結果、いまや常に核戦争が起こり得る状況となり、相互の安全が根底から脅かされるに至ったのであります。  かのケネディ大統領の時代でさえ、彼はその国連演説において、あらゆる人間が事故、誤算、狂気によって、いつ切り落とされるかもしれない最も細い糸でつるされた核兵器というダモクレスの剣の下で暮らしていると危機感を述べております。今日にあっては、糸はますます細く、剣はいよいよ重くなっているのであります。この危機から脱出する道はただ一つ、軍縮のみであります。非武装へ向けての勇気ある前進が残されているのみであります。  政府は、説得力のない軍事均衡論に固執し、防衛力の増強に余念がありません。本法律案もその一環であります。片や財政危機、行革というかけ声のもと、社会保障費などの国民生活関連予算が圧縮され、公務員が削減されている中で、ひとり防衛費のみが聖域化されて突出し、自衛官のみが増員されようとしている現実を国民がよしとするわけがありません。本法律案の成立を容認するわけにはまいらないのであります。  以上で、防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案に対する反対討論を終わります。
  342. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 私は、公明党・国民会議を代表して、ただいま議題となりました防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案に対し、反対の討論を行うものであります。  わが国の自衛能力は、あくまでもわが国の平和的存立を維持するために行使されるべきものであり、まして他国に不必要な脅威を与えるべきものであってはなりません。急迫不正の侵略に対し、わが国への着上陸を領海や領空の外縁で阻止する範囲のものでなければなりません。すなわち、領土、領海、領空の領域保全に任務を限定した領域保全能力であるべきだと考えております。  端的に申し上げれば、一つには平和国家にふさわしく、早期警戒情報収集能力、そして万一、急迫不正の侵略があればそれを未然に排除する能力、こうした二つの能力をあわせ持つものであるべきだと考えております。  このような、わが党が合憲とする自衛隊構想を踏まえて現在の自衛隊を見ると、政府・自民党の言う専守防衛という概念はいかにもあいまいであり、またここ数年の防衛力増強は憲法の枠内から逸脱しているのではないかとの疑問を強く感ぜずにはおられないのであります。  特に、ここで指摘しなければならないのは、シーレーン防衛の強化及び防衛費の異常な突出の二点であります。  シーレーンの防衛について、政府はどの程度の効果が見込めるのかという点ばかりか、何の脅威から何を、いかなる手段で守るのかという、きわめて基本的な考え方すら全く明らかにしておりません。したがって、どうしてもシーレーン防衛の実態が単なる通商路の確保にあるのではなく、米国が強く要請している北西太平洋での極東米軍の補完にあるのではないかとの疑問を禁じ得ないのであります。そうであるなら、シーレーン防衛の強化はわが国が米国の極東核戦略の一翼を積極的に担うことであり、はなはだ遺憾であると言わざるを得ないのであります。  次に、防衛費の問題であります。  最近の防衛予算の突出ぶりはきわめて異常な事態であると言わなければなりません。五十八年度の一般会計歳出の対前年度伸び率が一・四%であるにもかかわらず、防衛予算は六・五%というきわめて高い伸び率を示し、また五十九年度概算要求においても、一般会計三・八%の伸び率に対し防衛予算は六・八八%という顕著な伸び率となっています。国民生活に密接に関係する福祉、文教予算が削減されている厳しい財政事情のもとで、防衛予算の聖域化はますます進んでいるのであります。このまま防衛予算がふえ続ければ、昭和五十一年に閣議決定された防衛費はGNPの一%以内という厳正な歯どめがなし崩しになるのは明白であります。真に防衛に必要な体制を整備せず、単に防衛費を増額するだけでは国民の血税をむだにするだけであります。  以上申し述べた基本的な見地に立って、わが党は防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案に反対するものであります。  なお、防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案につきましては賛成を表明して、私の討論を終わります。
  343. 内藤功

    ○内藤功君 私は、日本共産党を代表して、防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案に反対の討論を行います。  レーガンの訪日による日米首脳会談は、日米運命共同体の取り決めを再確認するとともに、軍事分担強化の約束をするなど、米日韓の軍事的結びつきを一層強化しました。これらのことは、さきのサミットでの西側の一員としての日本を強調する政府が、日米安保条約とNATOの一体化を進め、アメリカが戦争を行った際、日本の核戦場化、自衛隊の参戦体制の確立など一段と日本を危険な道に引き込もうとするものです。  防衛庁設置法及び自衛隊法の一部改正案は、こうした状況のもとで自衛隊員を千九百七十八名、予備自衛官を二千名増員しようとする軍拡法案であります。自衛隊増員の中身は、ミサイル護衛艦や潜水艦、対潜哨戒機P3C、制空戦闘機F15、早期警戒機E2Cなどの就役に伴うもの、日米防衛協力指針(ガイドライン)の研究スタッフの増員、さらには陸、海、空三自衛隊の実動態勢を強化する中央指揮所の開設要員などであります。  これらがいずれもレーガン米政椎の対日軍事分担要求に沿ったものであり、中でもその対ソ戦略上のシーレーン防衛、海峡封鎖という対港、対空能力強化に積極的に協力、加担した増員であることは言うまでもありません。中曽根総理は、日本が直接武力攻撃を受けていない状況下でも米軍による単独の海峡封鎖を認めていますが、これはP3Cによる対潜情報の米側への提供や、防衛白書が海峡封鎖を排除するために日本に進攻するおそれがあることを認めていることなどとあわせて、日本の安全に直接関係のないアメリカ有事の場合にも日本がいやおうなく戦争に巻き込まれる危険があることをはっきりと物語るものであります。  しかも、私の本日の当委員会の質問でも、極東有事の際における日本自衛隊の役割りについては、米軍への配慮という口実で国会にも一切その内容を明らかにしないというきわめて危険なものであり、改めて今回の自衛隊増員は日本の真の平和と安全にとって見逃すことのできない重大問題と指摘しなければなりません。  加えて、憲法に違反し、客観的には米戦略に組み込まれた軍隊である自衛隊の増強が、アメリカの核戦略を一層補完、強化することは明らかです。中曽根総理の日米運命共同体発言が示すように、アメリカ有事の際、運命をともにする共同作戦の展開を避けがたいものと考えアメリカ核戦力の有力部隊との日米共同演習を日常化し、参加艦艇、航空機、人員、演習区域の拡大を初め、内容の高度化、実戦化をとめどもなくエスカレートさせていることでも明らかであります。  さらに、自衛隊増強による防衛費が国民生活予算を切り捨て、四年連続で突出していることも重大な問題であります。これは日米軍事同盟下の対日軍事圧力が国民生活をも圧迫しているものであることを端的に示すものであります。  現在、わが国に求められていることは、こうした自衛隊増強、軍拡競争による軍事大国への道をきっぱりと断ち切って、日米軍事同盟をやめて、非核、非同盟、中立の道を歩むことであります。  以上の理由により、防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案に反対するものであります。  なお、防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案につきましては、自衛官の待遇を改善する内容であるとはいえ、憲法違反の自衛隊に係る法案でもあり、棄権の態度をとることを表明し、討論を終わります。
  344. 高平公友

    委員長高平公友君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。  これより採決に入ります。  まず、防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  345. 高平公友

    委員長高平公友君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  次に、防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  346. 高平公友

    委員長高平公友君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、両案の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  347. 高平公友

    委員長高平公友君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  暫時休憩いたします。    午後七時十七分休憩      ─────・─────    午後十時四十五分開会
  348. 高平公友

    委員長高平公友君) ただいまから内閣委員会を再開いたします。  委員異動について御報告いたします。  本日、穐山篤君が委員を辞任され、その補欠として野田哲君が選任されました。     ─────────────
  349. 高平公友

    委員長高平公友君) 一般職職員給与に関する法律の一部を改正する法律案特別職職員給与に関する法律及び国際科学技術博覧会政府代表設置に関する臨時措置法の一部を改正する法律案防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案、以上三案を便宜一括して議題といたします。  まず、政府から順次趣旨説明を聴取いたします。丹羽総理府総務長官。
  350. 丹羽兵助

    国務大臣(丹羽兵助君) ただいま議題となりました一般職職員給与に関する法律の一部を改正する法律案及び特別職職員給与に関する法律及び国際科学技術博覧会政府代表設置に関する臨時措置法の一部を改正する法律案について、一括してその提案の理由及び内容の概要を御説明申し上げます。  まず、一般職職員給与に関する法律の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。  本年八月五日、一般職職員給与について、俸給及び諸手当の改定等を内容とする人事院勧告が行われました。政府としては、その内容を検討した結果、本年四月一日から平均二%の改定を行い、その配分については、人事院勧告の趣旨に沿って措置することとし、このたび、一般職職員給与に関する法律について所要の改正を行おうとするものであります。  次に、法律案の内容について、その概要を御説明申し上げます。  第一に、全俸給表の全俸給月額を引き上げることといたしております。  第二に、初任給調整手当について、医師及び歯科医師に対する支給月額の限度額を二十万九千五百円に引き上げるとともに、いわゆる医系教官等に対する支給月額の限度額を四万百円に引き上げることといたしております。  第三に、扶養手当について、配偶者に係る支給月額を一万二千三百円に、配偶者以外の扶養親族に係る支給月額を二人までについてそれぞれ三千八百円に引き上げ、この場合において、職員に配偶者がない場合にあっては、そのうち一人について八千三百円に引き上げることといたしております。  第四に、住居手当について、家賃の月額が一万六千五百円を超えるときに加算することとされている二分の一加算の限度額を月額六千八百円に引き上げることといたしております。  第五に、通勤手当について、交通機関等を利用して通勤する職員に対する全額支給の限度額を月額一万七千六百円に引き上げ、全額支給の限度額を超えるときに加算することとされている二分の一加算の限度額を月額二千八百円に引き上げるとともに、自転車等を使用して通勤する職員に対する支給月額を引き上げることといたしております。  なお、交通機関等と自転車等を併用して通勤する職員に対する支給月額についても、引き上げることといたしております。  第六に、期末手当及び勤勉手当について、その支給日を基準日から一月以内で人事院規則で定める日とすることといたしております。  第七に、非常勤の委員、顧問、参与等に支給する手当について、支給の限度額を日額二万二千七百円に引き上げることといたしております。  以上のほか、附則において、俸給表の改定に伴う所要の切りかえ措置等について規定することといたしております。  次に、特別職職員給与に関する法律及び国際科学技術博覧会政府代表設置に関する臨時措置法の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。  この法律案は、ただいま御説明申し上げました一般職職員給与改定に伴い、特別職職員給与について所要の改正を行おうとするものであります。  次に、法律案の内容について、その概要を御説明申し上げます。  第一に、特別職職員の俸給月額を引き上げることといたしております。具体的には、内閣総理大臣の俸給月額は百五十八万円、国務大臣等の俸給月額は百十五万二千円、内閣法制局長官等の俸給月額は百十万千円とし、その他政務次官以下の俸給月額については、一般職職員の指定職俸給表の改定に準じ、九十三万八千円から八十一万四千円の範囲内で改定することといたしております。  また、大使及び公使については、国務大臣と同額の俸給を受ける大使は百十五万二千円、大使五号俸は百十万千円とし、大使四号俸以下及び公使四号俸以下については、一般職職員の指定職俸給表の改定に準じ、九十二万八千円から六十万三千円の範囲内で改定することといたしております。  なお、秘書官については、一般職職員給与改定に準じてその俸給月額を引き上げることといたしております。  第二に、委員手当については、委員会の常勤の委員に日額の手当を支給する場合の支給限度額を四万円に、非常勤の委員に支給する手当の支給限度額を二万二千七百円にそれぞれ引き上げることといたしております。  第三に、政務次官等のうち国会議員から任命されたものの俸給月額は、当分の間、なお従前の額とすることといたしております。  第四に、国際科学技術博覧会政府代表の俸給月額を九十二万八千円に引き上げることといたしております。  以上のほか、附則においては、この法律の施行期日、適用日等について規定するとともに、関係法律について、所要の規定の整理を行うことといたしております。  以上がこれら法律案の提案理由及びその内容の概要でございます。  何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。  以上でございます。
  351. 高平公友

  352. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) ただいま議題となりました防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。  この法律案は、このたび提出された一般職職員給与に関する法律の一部を改正する法律案に準じて、防衛庁職員給与の改定を行うものであります。  防衛庁職員給与の改定につきましては、参事官等及び自衛官の俸給並びに防衛大学校及び防衛医科大学校の学生の学生手当を一般職職員給与改定の例に準じて改定を行うとともに、営外手当についても改定することとしております。  この法律案の規定は、公布の日から施行し、昭和五十八年四月一日から適用することとしております。以上のほか、附則において、俸給表の改定に伴う所要の切りかえ措置について規定しております。  なお、一般職職員給与に関する法律の規定を準用し、またはその例によることとされている事務官等の俸給並びに扶養手当、通勤手当、住居手当及び初任給調整手当等並びに期末手当及び勤勉手当の支給日につきましては、一般職職員と同様の改定等が防衛庁職員についても行われることとなります。  以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要であります。  何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  353. 高平公友

    委員長高平公友君) 以上で説明聴取は終わりました。  それでは、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  354. 野田哲

    野田哲君 まず、総務長官に伺いますが、いま説明のありました今回の給与法の改正案、二%の改定率というのはどこに根拠があるのか、これを説明していただきたいと思います。
  355. 丹羽兵助

    国務大臣(丹羽兵助君) 今回の給与改定を平均二%にしたその理由は何か、こういう先生のお尋ねでございますが、それについて政府の考えを申し上げさしていただきたいと思います。  本年度の人事院勧告の取り扱いにつきましては、政府は勧告を尊重するという従来とってまいりました基本姿勢に立って、数次にわたって給与関係閣僚会議を開きまして、勧告の実施に向けて誠実にでき得る限りの努力をしてきたのでございます。  本年度においては、昨年度給与改定を見送ったことにより生じた官民の較差を少しでも縮小するよう配慮する必要がある、同じ公共部門に働く仲裁裁定職員との関係にも配慮する必要があること等の事情があり、一方、例年予想される義務的経費等やむを得ない追加財源需要だけでもこれを賄う財源のめどがつけがたいといったまことに異例な厳しい財政事情、現下の経済事情、社会事情等、国民的課題である今日も御審議いただきました行政改革等が推進されている中における国民世論の動向等も踏まえる必要もございまして、これらを総合的に勘案してでき得る限りの努力を払った上で、まことにやむを得ないことでございますけれども、こうした措置をとらしていただいて、本年四月一日から平均二%の給与改定を行うことにして御審議をお願いするに至ったのでございます。
  356. 野田哲

    野田哲君 勧告は六・四七%行われたわけでしょう。これを二%にしたことを、総務長官としては人事院勧告を尊重したと考えておられるんですか。
  357. 丹羽兵助

    国務大臣(丹羽兵助君) お答えさしていただきますけれども先生からそうおっしゃっていただきますれば、人事院勧告と今回お願いする政府の案とはまことに問題にならぬ開きがございまするので、総務長官として、給与を担当さしていただいておる私としましては、人事院勧告を何とか実施していただきたいというので誠心誠意努めたところでございまするけれども、関係閣僚会議でも何回となく、ここにおいでになりますけれども、官房長官を中心として開いた会議で、くどいようでございましたが、何度も何度もお願いいたしましたけれども、国の財政事情からいい、また世間のいろいろの関係からいってこれより認められないということになったのでございますから、先生からそうおっしゃっていただきますれば、まことに自分の努力が足らなかったとは、私自身はそういう言葉を自分自身が使うということまでは思っておりませんけれども、とにかく私としてはできるだけやった、自分自身が、自分はやったなあ、自分はお願いしたなあ、自分は一生懸命頼んだけれども、国の財政事情等においてこれはどうしても承知しなければならないということになったかなあと、自分自身は努力したつもりでございます。先生から今晩おしかりを受けることは十分承知の上で来ておりますけれども、努力したことだけは、自分自身が自分の努力に対する満足と申しまするか、働いていただく公務員の方々の気持ちを酌んで、やったということについての自分自身の努力と申しますか、私は、繰り返すようでございますけれども考えておる次第でございます。
  358. 野田哲

    野田哲君 私は、政府の部内の閣議決定に至るまでの総務長官と官房長官のやり取りやあなたの経過を聞いているのではないんですよ。政府としていまここへこういう提案をされたわけですから、六・四七%の勧告があった、これに対して二%の法案を出された、これは尊重している態度と考えているんですか、どうなんですか、尊重していると思っているんですか、どうですか、これを聞いているんです。
  359. 丹羽兵助

    国務大臣(丹羽兵助君) 尊重しておるつもりでございます。
  360. 野田哲

    野田哲君 人事院の総裁に伺いますが、あなたは八月に六・四七%引き上げの勧告をされた。それに対して政府がいま二%の法案を出されているわけですが、人事院の総裁としては、これはあなたが出された人事院の勧告を尊重した態度とお考えになっておられますか。
  361. 藤井貞夫

    政府委員藤井貞夫君) 繰り返し申し上げておりますように、人事院の給与に関する勧告というのは労働基本権制約に対する代償措置として認められておるものでございまして、しかもこの制度は過去幸いにして、先生方の御尽力もございまして、四十五年以来完全実施ということで制度として定着をしている、完熟しておるというふうに考えておるわけであります。  そういう面から申しまして、たとえいかなる事情がございましても、最近、ここ二、三年にわたって凍結あるいは一部実施ということになりましたことにつきましては、私はやっぱり大変残念、遺憾であるという念を禁じ得ないわけでございます。  政府としての人勧に対する態度というものについては、私も政府機関の一員でございますので、それなりの大変御苦心があることとは存じておりますけれども、しかし人事院の立場としては、これはとうてい尊重されておるということにはならない。特に、この二%ということの値切りと申しますか、言葉は悪いですが、そういうことについては人勧制度が尊重されておるというふうにはこれは私は考えておりません。
  362. 野田哲

    野田哲君 人事院総裁としては尊重しているとは考えられない。  こういう措置の法案が出て、勧告には全くかかわりのない俸給表が法律案として出ておりますが、この俸給表をつくるに当たって人事院が手伝ったという風聞が公務員諸君の間にはずっと流れておりますが、人事院総裁としてはとうていこれは勧告を尊重しているとは考えられないという俸給表が給与法の改正案として出た。もし、その二%の、人事院勧告を尊重しているとは考えられない俸給表をつくる作業に人事院の事務局が手伝っているとすると、これは一体勧告する立場と、勧告を尊重しないでこういう形で無視した形の俸給表を出すことを手伝う立場とは大変な私は矛盾だと思いますし、これは人事院に対する不信が公務員の中に大きく蔓延していくことになると思うんですが、総裁はこれが事実であるのかどうなのか、事実であるとするならばそのことに対してどのような見解をお持ちなのか、伺いたいと思います。
  363. 藤井貞夫

    政府委員藤井貞夫君) 本年の勧告に対する内閣の方針が決定をせられました際に私は記者会見をいたしまして、その際に率直に意見の表明をいたしました。そのときに、その俸給表の作成というものについて人事院総裁としてはどうであるかということのお尋ねがありましたので、私はいま先生もおっしゃったように、私が勧告をいたしておりますのは六・四七%であります。それの裏づけとなる俸給表を参考として政府に対して送付をしておるわけでありまして、それに対して二%ということになりました場合は、これは人事院としてその俸給表の作成に協力するわけにはまいりませんということをはっきり申し上げておるのであります。その態度は私自身としてはその後も毫も変わっておりません。これは勧告をいたしました当の責任者として当然の態度であるというふうに思っております。
  364. 野田哲

    野田哲君 総務長官に再度伺いますが、昨年、政府は人事院の勧告を凍結した。政府の言葉としては見送りという言葉を使っておりますが、見送りをした。これに対して関係の公務員の組合などが国際労働機関、ILOに提訴をした際に政府がILOに対して見解を表明しておりますが、その中で政府は、今回のような措置が繰り返されることのないように最善の努力をする、こういうふうに表明をされているわけであります。六・四七%の勧告が出たのに対して二%ということでは、これは政府はILOに対してもうそを言っていることになりはしませんか。最善の努力をすると表明したそのことと、今回の二%とは一体つじつまが合うとお考えになっておられますか。
  365. 丹羽兵助

    国務大臣(丹羽兵助君) ただいま先生がお尋ねくださったと申しますか、御指摘のありましたように、ILOとの関係も私どもはよく承知しておりまするし、やはり数字からいって、六・四七%と二%とは、ILOに今後このようなことは繰り返さないと言っていたこととまことに矛盾しているではないか、ILOに言っていたことと違うじゃないかということでございますが、なるほど私どもはいまでも人事院勧告制度というものは尊重してこれは守っていかなくちゃならない。だから、人事院から出ます勧告の額というもの、これは民間給与との開きで当然早く近づけなくてはならないものであるが、しかしながら国の財政事情がいままでにない厳しい事情でございますので、昨年はあのようにせっかく一%組んでおられたものまで削って据え置きにしてしまった。ことしは国政全体の中でできるだけのことを考えて、そして六%であるけれども二%までがいまの段階においては最大限の方法だと、こう考えてやったのでございますから、数字からいけば、先生指摘のございましたように、相当な開きがあって三分の一程度のものでございますけれども、しかし気分的には人事院勧告を尊重しなくちゃならない、ILOに対してもあのようなことは申し上げてあるのだからこれを実現していきたいというその気持ちで、考え考え、努力に努力して国政全体の中で考えられるのが二%でございますから、最善を尽くしたと私ども考えて、ILOに、だましたとか、やれないことを申し上げたとは考えておりませんし、将来ともできるだけ先生のおっしゃいました残されたものは取り返していくような努力をいたしていかなくちゃならぬと、かように考えております。
  366. 野田哲

    野田哲君 いま最後に言われた、将来取り返すようにするというのはどういう方法で具体的には補償されるわけですか。
  367. 丹羽兵助

    国務大臣(丹羽兵助君) お答えさしていただきます。  政府としては最も理想的ないい、働いていただく方々にしても、また仕事を願うところの政府側としても最もいい労働慣行でございますから、これを続けていくために人事院勧告はこれはあくまで守っていかなくちゃならぬと私も考えておりまするし、政府のそれは考えでございますから、お払いできなかったのはちゃんと頭に置いてできるだけ取り残されたものを縮めていくような努力をしていかなくちゃいかぬということで、今年度でも少し、髪の毛一本ぐらいのことでございますけれども、いま申し上げました姿勢を示すために最善の努力をして、去年の残された中に幾らかでも食い込んだというこの気持ちと申しますか、姿勢は先生もお認めいただけるだろうと思いまするし、今後もその努力は当然大きく努力をしていく道を考えなくちゃならぬと考えております。
  368. 野田哲

    野田哲君 これは総務長官、あなたはここでこんなことを言われておるが、冗談じゃないですよ。去年四・何%です。去年の勧告はまるまる残されているんですよ。そうして、それを上積みをして去年の分とことしの分とで六・四七%の勧告が出たんですよ。それを二%しか実施しないでおって、残されたものはできるだけ取り返すような措置をしていくと、どこが言えるんですか。冗談じゃないですよ。どこが残されたものを取り返しているんですか。
  369. 丹羽兵助

    国務大臣(丹羽兵助君) お答えさしていただきますが、先生と私とは物の見方が違うかもしれませんが、基本的には同じ考えであって、取り残されたものを少しでも取り戻さしていただくような努力をしなくちゃならぬというので、昨年の四・何%とことしの六・何%のその開きは一・八九そこそこでございます。それを二%見たということは、少しでも入り込んだということをひとつ御理解ください。数字が少ないということはこれはおしかりを受けるかもしれませんが、その姿勢だけはひとつわかっていただきたいと、こう思っております。
  370. 野田哲

    野田哲君 こんなことが説明になるはずもないですよ。  人事院の総裁に伺いますが、人事院としては、従来からの方式とするならば当然今度の政府の措置によって四・四%残りますね。残るでしょう。そうすると、来年の民間企業の労働者の賃金が春闘で一定の上昇を見たとするならば、当然今度残ったこの四・四%と五十九年の民間企業の労働者の賃上げ分を重ねたもので勧告をされる、こういうことになるわけでしょう。どうですか。
  371. 藤井貞夫

    政府委員藤井貞夫君) いまの制度がございまする限り、従来の方針を変えるつもりはございません。したがいまして、来年の一月の十五日現在で国家公務員については実態調査をいたします。また、四月については民間の給与の実態調査を従来方針でやるつもりでございます。したがいまして、その結果どういうふうになるかはいまのところ予測はできませんけれども、しかしことしの場合に六・四七%というものが二%ということになりたわけでございますので、その差額の分は当然、来年の春闘がどうなるかわかりませんけれども、その分はやはり民間給与の実態調査をやった結果は、そこに何がしかと申しますか、それに相当する分が結局較差となって出てくるということは当然のことであろうというふうに思っております。
  372. 野田哲

    野田哲君 総務長官、いまから十年前、これは官房長官が副長官をされていた四十七年の田中内閣で初めて勧告を勧告どおり四月から実施をするという形が生まれて、それからそれがずっと十年ばかり定着してきたわけですね。いまの官房長官はそのときは副長官されていた。だから、その前後のいきさつも御承知だろうと思うんですが、それまではずっと実施の月を切ってきたわけですね。人事院勧告が五月実施となっていたものを十月から実施をしたり七月から実施をしたりして実施時期を切る、こういう措置をとってきたわけです。なぜ実施時期を切るんですかと——私は当時はこの国会には籍は置いてなかったわけですけれども、関係の労働団体の仕事をしておりましたから、国会での議論もよく傍聴しております。なぜ月数をこういうふうに切るんですか、こういう質問に対して、俸給表というのはこれは聖域であります、手をつけるわけにいきません、だから財政上からいって苦しいので月数を切ることによって全体の抑制措置をとらしてもらわざるを得ないんですと、こういう説明をされていたんです。俸給表は聖域ですという立場を組合との交渉でも説明されていたわけなんです。  今度は、そういう抑制措置ではなくて俸給表そのものを抑制して率を変えて出したというのは、一体どこに根拠があるんですか。抑制の方法とすれば、これは月数をおくらせるという抑制の方法と率を切り下げるという二つの方法があると思うんですが、労働団体の方からは、総務長官に対しても官房長官に対しても、どうしてもということであれば、これは月数ならば協議には応じてもいいですよという話があったはずなんであります。それをなぜこういうふうに率で抑制する方法を今回初めてとったんですか。その理由を聞かしてもらいたいんです。
  373. 丹羽兵助

    国務大臣(丹羽兵助君) いろいろ考え方先生おっしゃったようにありますけれども、特に今回につきましては、そういう昔は考え方があったかと思いますけれども、いろいろの情勢、諸般の情勢を勘案してでき得る限りの改善を行うことにいたしまして、特に昨年度は異例の措置として給与改定を見送り、本年度も給与改定が行われていないことから、できるだけ早い時期から給与改定をする必要があるという考えに立ったのでございます。  それからもう一つは、来年度においては、これは来年のことになりますけれども、予算要求に対して本年度以上に厳しい、原則マイナス一〇%の概算要求額を設けたように、きわめて厳しい状況が予想され、本年度における実施方法を検討するに当たってこのような事情について配慮する必要があった。  そういうことを考えまして、いま先生がおっしゃいましたように、率を変えずに上げるだけ上げて支給の時期をおくらかした方がいいじゃないかという考え方と、いま私の申し上げましたように、努力して努力してこんなことだけれども、これでしんぼういただいて、二%で四月一日から、去年も据え置きにしてあることだから早くお支払いした方がいいという考えで四月一日をとらしていただいた、こういうことでございます。
  374. 野田哲

    野田哲君 これは委員長、私はこういう総務長官答弁が続くようでは、とてもこんな短時間では審議は尽くされませんよ、聞いたことにまともに答えてないんですから。  官房長官に伺いますが、いままでお聞きのように、総務長官は、六・四七%の勧告に対して二%の改定の法案を出してこれで尊重していると言えるんですか、こう聞くと、尊重しておりますと、こう言っているわけです。人事院の総裁は、残念であり遺憾である、尊重しているとはどうしても思えないと、こう言っているわけですね。そして、勧告の一部分だけこういう形で実施をする。去年の凍結の場合のことしに持ち越し率が残ってくるわけでしょう。そして重なっていく。今度また四・四%残れば、またこれは来年に持ち越しになりますよ。毎年毎年こんなことをやっていたら、毎年持ち越し持ち越しで、この議論は果てしなく続きますよ。それを政府が尊重だなどという言葉を使っていたら、政府が使う尊重という言葉はいかにもこれは空疎なものになりますよ。一体こういう悪循環をどこまで続ける気なんですか。けじめをつける必要はないんですか。これはどう考えていらっしゃるんですか。
  375. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) いまさら申し上げるまでもなく、労働三権の代償措置でございますから、人事院勧告を尊重しなければならぬということはこれは当然のことでございます。しかしながら、やはり諸般の、国政全般との絡みの中で最大限の努力をしながらも、なおかつ完全実施ができないということになった場合にどうするかというようなことになるわけです。そこで政府としては、従来は御案内のように月数でやっていました。しかし、ことしはそういうことでなしに二・〇三%ということにやらざるを得ないというやり方になったわけでございますが、さてそうなると、いま御質問の一体いつまでこれは続くのだろうか、こういう問題に逢着をいたします。  そこで、ことしの二・〇三を決める際にも、先ほど総務長官がお答えしたような事情を勘案したわけですが、その際の一つ考え方の中には、一・八九というものにつまり少しでも、ともかく五十七年度完全に見送ってしまっていますから、それが根っこにありますから、それを少しでもやはり食い込んで改善措置をやらなきゃならぬじゃないかといったようなことで二・〇三ということを決めたわけですが、これから先行きどうするかということになると、これも先ほど総務長官おっしゃったように、私はやはり毎年これは最大限の努力をして、いつの日にか早い時期にやりはり完全実施の線に持っていかなきゃならぬ、私はさように考えているわけでございます。もちろんそのやり方の中に、財政事情あるいは臨調の答申であるとか、あるいはその年の物価情勢、こういうようなこともよく考えながら、許されるならば完全実施、その次は月数でやるといったようなことがベターであろう、こう考えております。  しかし、さていまそれでは来年度どうするのだということになると、これはまた御案内のように、今度の予算編成大変厳しい状況になっておりますから、ここで完全に勧告を一遍に、過去のがたまっていますから、それを全部解消するということのお答えは、残念ながらお許しを願わぬとしようがないな、しかし少なくとも差を縮めていくという努力はこれは政府としては当然しなければならぬ、私はさように考えておるわけでございます。
  376. 野田哲

    野田哲君 最後に一言。  当面、五十九年度についてどう考えておられるのか。これは官房長官から答えていただきたいと思うんです。
  377. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) いまお答えしましたように、理想は完全実施でございましょう。しかし、それが許されないということになれば、その次の方法としては過去あったような月数、これが私はその次の方法である。それが許されないということになると、やはり率そのもので削減せざるを得ない。しかしその場合にも、いまここでということになると、その場合にでも私どもは何とか、五十七年度に四・五八ですか、あれをだんだん食い込んでいって少なくしていく努力、これは私は五十九年度もしなければならぬ、かように考えております。
  378. 峯山昭範

    峯山昭範君 先ほどから御答弁を聞いておりまして、これは官房長官、いまの官房長官答弁ですと、完全実施がベターである、しかしながらそれがだめなら月数、それがだめなら率、そういうことですね。そういうことになりますと、結局これは人事院はもう要らぬ。結局、率なんということになりますと、給与表そのものを、俸給表そのものを政府が勝手につくるわけですから、人事院総裁いろいろ調査したにしても、政府の財政状態がまずいからこうだああだというので、いわゆる率に食い込んで、いまの総務長官答弁と官房長官答弁を聞いておりますと、ことしは四・四七%食い込んじゃったから、これを来年は拾ってできるだけまた食い込むようにしよう、そういうような考えでいきますと人事院要りまへんで、これは本当に。ですから、私はそういうような意味では、官房長官、人事院制度を尊重すると口では言いながら、結局はこの制度を否定し、破壊してきている、そういうふうに思うんです。  そういうような意味で、現実の問題として、昭和二十三年の十二月に第一回の勧告がありましてから、これは毎年勧告が一回ずつあるわけでございますが、いわゆる率にまで食い込んで完全実施がされなかったという事例、これはわかっていますね。ちょっと一遍、いつといつかということだけで結構です。
  379. 藤井良二

    政府委員藤井良二君) 完全実施されなかった年でございますが、率に食い込んだ年、二十四年はこれは勧告されましたけれども実施しておりません。それから二十五年、二十六年、二十七年、これは政府が勧告いたしましたよりも低い率で、時期もおくれて実施されております。
  380. 峯山昭範

    峯山昭範君 いま官房長官聞いていただいたように、これは戦後間もない昭和二十五、二十六、二十七年のことでっせ。それから、これは完全実施されましてからも十何年たっているわけですね。しかも昨年の凍結、そういうことを考えますと、本当にこれはこれでいいのかなという問題が残るわけです。そういう点から考えますと、よほどやっぱりこの問題については深刻に受けとめていただかないといけないと思いますし、総務長官給与担当大臣として、これは本当にまことに申しわけない、私の努力が足りなかったというだけでは済まない問題だと私は思うんですよ。ですから、この問題について総務長官並びに官房長官並びに人事院総裁のお考えをお伺いしておきたいと思います。
  381. 丹羽兵助

    国務大臣(丹羽兵助君) 先生おっしゃっていただきますように、この問題は公務員の方々にとって、それは私の努力が足らなかったとか、お願いする力が足らなかったなんと言って済む問題ではないことは、私もよく承知しております。  そこで、先ほど野田先生からも御質問のございましたように、ことしは人事院勧告ということを尊重して最善の努力をしたのですけれども、去年は据え置き、見送り、ことしは努力して努力していろいろ考えていただいて政府がとれた措置というものは二%そこそこだ。そして、昨年の中にも幾らかでも食い込むことができたというのですけれども、六%からの勧が出ておるのに、六・四七が出ておるのに二%では非常にこれは済まぬことだ、仕事をしていただく方々に対して本当に相済まぬことだと、私はことしのことについてはそういうように考えております。  いまもお尋ねのように、これは将来にわたる生活権がかかり労働権のかかっておることだから、おまえが力が足らぬとか努力が足らぬじゃ済まされるものじゃないと、こうおっしゃいまするので、そのとおりでございますから、先ほど野田先生からもお尋ねがございましたし、官房長官も言っておられまするが、ことしはことしでひとつやったけれども、ごしんぼう願えないかもしれませんが、私どもの話は聞いていただいて、そして将来に向かってでございますが、さしあたって五十九年度の人事院勧告の取り扱いについては、前々から言っておりまするように、人事院勧告の制度の尊重という基本的方針はどこまでも堅持していく。この人事院勧告制度を尊重するということはこれはどこまでも私どもは堅持していきまして、先ほどお話がありましたように、俸給表等、これまた非常に大切なことでございますから、俸給表等の勧告内容を十分尊重して、そしていま借りておるものは早く返していくような、完全実施に向けて、それこそ完全実施という方向において、そして早く借りたものを返し、お払いするものは返し、完全実施がしていけるように最大限の努力をする。今度は目標を完全実施ということに置いて、そして借りたるものは返すようにして、そういう目標を置いて、最大限の努力をしていく、努めていくと、こういうことで、いかに私どもが人事院勧告制度というものは尊重しておるかということをわかっていただくようにしたいと、こう思っております。  なお、先ほども申し上げましたが、本年度の給与法の引き上げ率の切り下げを行ったことは、国の財政事情からいってどうしてもこれより方法がないという、まことに異例のことであると私どもは認識しておる……
  382. 峯山昭範

    峯山昭範君 簡単に。
  383. 高平公友

    委員長高平公友君) 要点だけで、簡単に言ってください。
  384. 丹羽兵助

    国務大臣(丹羽兵助君) こういう点で御了承いただきたいと思います。
  385. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) 五十七年度の完全な見送り、本年度の二・〇三ということは、本当に政府としては苦悩の結果の、こういったやらざるを得なかった処置であるということを御理解していただきたいと思います。もちろん、人事院制度の基本はこれは尊重するのは当然のこと。したがって、また人事院の勧告があれば、それは最大限尊重しながら、国政全般との関連においてできる限りの公務員の生活の安定を図っていくという政府の考え方は変えるつもりは毛頭ございませんので、その点御理解いただきたいと、かように思います。
  386. 藤井貞夫

    政府委員藤井貞夫君) 私は、基本的に申しまして、人件費というのはやはり義務費であるというふうに考えております。これが第一点でございます。すなわち、現在働いておる公務員、それの生活の糧が給与でございますからして、それについてやはり財政状況というようなこと、私も公務員ですからそういう事情も全く知らないわけではございませんけれども、しかしそれとこれとは違うのであって、やはり義務費である人件費というものは、生活の糧である給与というものはやっぱり財政状況背景にして云々すべき問題じゃない、基本的にはそれが大事であるというふうに思っております。  第二点といたしましては、この給与の問題は申すまでもなく労働問題でございます。労働問題というのは、これはやはり民間ではいろいろな経緯もありまして、団体交渉その他を通じて積み上げられてきておるものであります。それを背景にして公務員についても民間給与の実態調査をやって、それとの対比でもって差があれば上げていただきたいということをお願いいたしておる問題でありまして、しかもこれは長さにわたって積み上げられてきた大きな慣行でありまして、大変重要な意味を持っているものではないかという、この基本的な姿勢というものは正しいと思っておりますし、今後ともその姿勢は堅持してまいるというつもりは変わりはございません。
  387. 峯山昭範

    峯山昭範君 全くそのとおりでしょうね。  総務長官、五十九年度は特に人事院勧告は尊重したい、できるだけ完全実施するようにしたい、そういう考えでいる、またその人事院の勧告制度についても尊重していきたいと。そのことは、これは総務長官、要するに、先ほども聞いておりましたら、あなたはことしの二%でもやっぱり——二%の率で、いま出してきた俸給表も勝手につくった。勧告率そのものを変更し、それでもことしもやっぱりあなたは先ほどの答弁でも尊重をしておると言うておるわけですから、来年もまた二%で尊重しておると、それじゃ困るわけですよ。あなたは先ほどの答弁でも、要するに二%でもあなたは人事院の勧告制度は尊重しておると思っておる、ことしもそう思っておると、こうおっしゃっているわけですから、来年、五十九年度は絶対尊重しますと言ったって、ことしと同じような尊重の仕方じゃ困るわけでしてね。これ、わかりますね。ですから、ことしはやっぱり尊重できなかったのでありまして、ですから、ことし尊重すると言ったそのことと来年尊重するということは、同じ尊重でも大分中身違ってきてもらわぬと困るわけですね、総務長官。そこのところはちょっとわかっていただきたいと思うんですよ。それが一つ。  時間ありませんが、もう一つ人事院総裁にちょっとお伺いしておきたいんですが、先ほど総裁がおっしゃった、給与というのは義務費だ、当然私はそうだと思うんです。したがって、政府の財政状況で云々するなんというのは間違っている、そのとおりだと私は思うんですよ。そういうような意味で、それとは別に労働基本権の見直しの問題がこれはどうしても出てくると私は思うんですね。いままで何回かこの問題を議論したときに、やはりどうしてもこの勧告制度がこういうように形骸化されていきますと、どうしても憲法上の問題が出てくるという答弁を総裁もしていらっしゃいますけれども、こういうふうな異常な状態になってことしは三年目になるわけですね。したがって、私はこういう事態がこれ以上続いたら、やはりこれは憲法上あるいは労働基本権の見直しというような問題についても、これはそこら辺の問題が表面に浮き上がってくる、この問題を解決しなきゃならないという事態が出てくる。そして、その後にはこれは人事院のいわゆる存立にもかかってくる問題であると、私はそう思っているわけですが、ここら辺の問題について、もう一遍、人事院総裁の御見解をお伺いしておきたいと思います。
  388. 藤井貞夫

    政府委員藤井貞夫君) 私は、率直なところを申しまして、いまの国家公務員法というものの全体の構造というものは、近代国家としては相当進歩したいい制度ではないかという実は確信を持っておるのであります。  と申しますのは、公務というものはそれ相当の特殊性がございますし、その公務を円滑に運営していくために公務員というものがあるのであって、それに対してある程度のいろいろな規制が加えられなければならぬこともまたこれは当然でございます。したがって、それに対する代償措置として第三者機関である人事院というものがあるというたてまえになっておるわけだというふうにこれは確信を持っておるわけであります。したがいまして、この代償機能というものがたとえば何年それが無視されたりあるいは軽視されたりすれば基本権問題にまでさかのぼって論議をしなければならないかとなるかということについて私はここで言明をする自由は持ちません。そこまで言うのは行き過ぎであろうと思っておりますが、しかしそれが余りにも長期にわたって代償機能が実質的に作用しないということになりますれば、当然にやはり労働基本権を含めた問題に展開をする可能性というものがあり得るということははっきり申し上げておいていいかと思います。
  389. 峯山昭範

    峯山昭範君 一言だけ。  いずれにしましても、官房長官、これはことしのこういう状態は私は異例のことだろうと思うんです。来年は、これはぜひ完全実施できるように政府としても努力をしていただきたいと思いますが、その点だけ御答弁いただいて終わりたいと思います。
  390. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) 先ほどお答えいたしましたように、昨年度、本年度の処置というものは、政府としても苦悩の結果の選択であったということは御理解をしていただきたい。そして、同時にまた、政府としては人事院制度というものは尊重して、できる限りの公務員のこの給与の改善については努力をしなければならぬと、かように考えているわけでございます。     ─────────────
  391. 高平公友

    委員長高平公友君) 審査の中途ですが、明日の開会についてお知らせいたします。  明日午前零時五分に開会いたしますので、よろしくお願いいたします。     ─────────────
  392. 高平公友

    委員長高平公友君) それでは、質疑を続けます。
  393. 内藤功

    ○内藤功君 この給与法の内容が明らかになりましてから、いろんなところで私は職員とその家族の方のお話を聞きますし、それからこうしてはがきが毎日のようにたくさん来ます。これをずうっと聞いてみますと、やっぱり一番大きな声は何といっても……(「待って、待って、内藤君。おかしいよ」「延会は委員長の宣言だけでできるわけないですよ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)
  394. 高平公友

    委員長高平公友君) いま調べますから……宣言だけでいいそうです。  それでは、続いて質疑をお願いします。
  395. 内藤功

    ○内藤功君 委員長、発言をする以上は静粛にさしてください。  それから、いままで、これは私何言ったか忘れてしまいましたから、もう一回初めからやります。  この給与法が二・〇三%だということが決まってから、私はいろんな職員、それから家族の話を聞くと、一番多いのは、やっぱり生活設計が狂うと言うんですね。とにかく、これだけのベースアップでいけるだろう、毎年少なくとも四%、五%でいけるだろうというので、みんな、たとえば教育の費用、それから子供のいろんな学費、住宅費、ローンというようなものをちゃんと計算してそれでやっていく、この生活が狂うというのが一番多いですね。  それから、やはり町の中小企業の人は、いままでは公務員の給料が上がるのが本当にうらやましくて、そして公務員は余り激しい仕事でなくて、それで月給もらい、ボーナスもらっていいと思っていたけれども、最近では、町の不景気を考えるときに、やはり公務員の給料は上げて、そして人事院勧告どおり実施してやってもらりて景気がよくなった方がいい、こう言う人もふえてきています。  私のところにいろいろはがきが毎日来ますが、これはある御婦人のようですが、こう書いてある。「昨年の人勧凍結、そして今年のわずか二%四月実施により、私は非常に苦しい生活を続けていかなければなりません。今年八月には子どもが生まれ、ますます出費は重み、我家の台所は火の車です。どうぞこの現状をよくくみとって下さって、ぜひ人勧完全実施にむけて努力して下さい。」、きょう私のところに来た手紙ですが、こういうのが毎日のように私のところへ来ております。この労働者の家族に対する、家計に対する打撃というのは非常に大きなものがある。  中には、こういうことを言う人がいます。若い二十代の方ですが、内藤議員、われわれが二%の賃上げでもって幾ら上がるのか、千円札が二枚だけだ、これだったら、私は、失礼だけれども、今度これだけの賃上げで一年がまんしろと言うのなら、上げてもらわなくてもいいです、こう言う人がいます。これは一人だけじゃないですね。たくさんいます。きょうもずいぶん言われましたよ。  ですから、これはもっと時間をかけて、今国会は、十二月の十八日選挙ですか、それがあるものだから、何でも上げるということがいいとは限らないです。こういう法案はやっぱりよく討議をして、そしてもっと上げられるように努力をしてやるのが国会の責務だし、政府の責任ですよ。  そういういまの国民のいろんな声、中小企業の人にまで及んでいる。この間、この内閣委員会で人事院勧告の問題を討議したときに人事院総裁は、最近は中小企業の人からも人事院勧告は高いというのじゃなくて、人事院勧告実施しろという声が出てきている、こういうことを言われたが、私も同じことをやっぱり聞きますね。このようなやはり暮らしというものから見て、本当に国民の中にはこの二%はひどいという声が上がっております。いままでは、数年前は公務員はよ過ぎるというのが率直に言ってありましたよ。しかし、今日はやっぱり大きく変わってきているということが私の実感であります。  時間、十分でやれというんですね、この質問を。十分でやれ、私はけしからぬじゃないかと言ったんです。委員長のやり方もけしからぬですよ。しかし、私はまずこういう国民の声について、官房長官や総務長官、皆さん方は周りが高級公務員ばかりだから余り聞かないかもしれませんけれども、物すごいやっぱり怒りですよ。それがわかりますか。高級公務員だって大変だと思うんだけれども、第一線の人たち、本当に骨身惜しまず働いている人の気持ちになってみたことがありますか。これをちょっと一言、どちらからでもお願いしたいですね。
  396. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) おっしゃるように、政府はやはり公務員の雇い主でございますから、雇い主として公務員の生活を守らなければならぬという基本的な考え方は、これはいささかも変わっておりません。ただ、去年、ことしは御案内のような事情でこういった措置をとらざるを得なくなった。  いま内藤さんお示しのそういうはがき、私の家にもたくさん来ます。しかし逆に、どういう方かはわかりませんけれども、やはりこれだけの不景気になっておるときにといったような逆の意味でのおはがきもたくさん来ておるわけでございます。  私どもとしては、あくまでも国政全般、広い立場でこういう問題については決断せざるを得ないのだ、かようにお答えをいたしておきたいと思います。
  397. 内藤功

    ○内藤功君 この二年間の損失はどのくらいになるかということをずっと見てみると、一般職で奥さんと子供一人いる六等級六号俸、東京に住んでいる人の場合三十万四千百二十円、こういう計算になりますね。四等級十一号俸で奥さんと子供二人、こういう場合だと去年、ことしの二年間の損失が四十五万九千二百四十二円、大変なものです。これはさらに退職金とか年金とかいうものにまで響いてくるわけですね。そうすると二百万近くのやっぱり損失になる。  特に、異例な事態、異例な事態と言うんですけれども、前の総理大臣鈴木善幸さんは、一昨年の十一月にこう言っているんです。「毎年毎年ことしのような異例の措置が繰り返されるようであれば、これはまさに人事院制度の根幹に触れるような結果に相なると思います。」。これは一昨年の十一月二十六日の参議院の行特委の答弁です。ところが、毎年毎年だけじゃない、もう一つ毎年が加わる。また加わるかもしれない、このままでいくと。私は、政府が根本的に公務員に対する本当に誠意ある姿勢というものをとらない限りは、毎年毎年が本当に四回も五回も繰り返されて、人事院制度の根幹にやっぱり触れてくると思う。  たとえば、私は言葉を返すようですけれども、後藤田官房長官、後藤田先生がいま自分の家にもはがきが二種類来る、両方同じような立場で見るという姿勢がやっぱり問われるのじゃないでしょうか。それは両方来るでしょう。しかし自分は、そういう声もあるけれども、内閣の大番頭さんとして、一生懸命働いている公務員の士気と生活のためにやる、こういうことが——その言葉を省略したのかもしれませんよ。だけれども、やっぱりその姿勢がなければいかぬと私は思うんですね。  それで、次に私がお伺いしたいのは、人事院総裁、あなた大変御苦労なさったと思うんですけれども、またあなたのいろんなお立場というものも私は理解するにやぶさかでないんですが、あなたはことしの八月十八日の衆議院内閣委員会におきまして、人事院勧告について、機能的に作用しないという現実があれば何らかの憲法上の問題に発展するだろうという趣旨の御答弁をされたことは御記憶だと思いますが、今日の事態はまさに機能的に作用しない事態が三年間も続いているわけですね。総裁の御見解によれば、憲法上の問題に発展するだろうということまで言っておられる。ここのところを簡単で結構ですから、おれはこういうふうに思っているのだ、憲法ということをおっしゃる以上、この国会でこういう意味でだと、一言で結構ですからおっしゃってください。     ─────────────
  398. 高平公友

    委員長高平公友君) 審査の中途ですが、いままで議論もありまして、さらに調査いたしました。  時間も迫っておりますので、明二十七日午前零時五分から開会いたしたいと存じますが、賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  399. 高平公友

    委員長高平公友君) 多数と認めます。よって、さよう決定いたしました。     ─────────────
  400. 藤井貞夫

    政府委員藤井貞夫君) これは繰り返し申し上げておりますように、給与に関する人事院勧告制度というものは、公務員についてその特殊性から労働基本権が制約をされておるということに対する代償機能として法律上画然と認められておる制度でございます。したがいまして、いかなる事情がありましょうとも、この制度が現在をいたしまする限りは勧告というものは尊重していただかなきゃならぬわけでありまして、それが機能的に作用しない、機能が果たされないということが、先刻申し上げましたように、どの程度、何年それが継続すればこうなるということは私の口から申し上げる事柄ではございませんが、しかしそれが余りにもないので、実質的に機能しないということが長年月にわたって、あるいは相当期間にわたって継続をするということがありますれば、やはりいろいろな点でもって本質的に、また人事院制度自体の根幹に触れる問題に展開するおそれは十分あるという意味で申し上げておる次第であります。
  401. 高平公友

    委員長高平公友君) 内藤君、限られた時間ですから、十二時ちょっと前ですから、簡単にお願いします。
  402. 内藤功

    ○内藤功君 もう一言。  さらに重要な問題は、ILOの問題であります。八三年三月に、条約勧告適用専門家委員会、ILOの機関がILO九十八号条約について出したこの報告によると、多くを引用しませんが、一番最後のところに、「委員会は、立法機関に対する予算上の権限の留保が、強制仲裁機関が行った裁定の条件の履行を阻害する効果を持つべきではないことを想起する。」、これは非常に重要な指摘であって、予算上のいろんな制約があってもやはり強制仲裁機関というものが行った条件というものは履行すべきものだと、こういうことを強く言っておるわけです。日本政府は、しばしば自分の方はこういう勧告があれば実行すると言っておきながら、今度また二年続いて人事院徹告の完全実施を行わないということについてどういうふうに申し開きをするかということであります。国際条約は遵守しなきゃならぬ、これは内閣の責任であります。この点をどういうふうに考えられるか。私は大きな問題だと思うんです。時間がありませんが、これは官房長官ですか、総務長官ですか、ILOとの関係でどういうふうに申し開きするのか。また誠実にやっています、一生懸命やっています、それじゃもう済まないと思うんですね。
  403. 高平公友

    委員長高平公友君) ちょっと待ってください。  答弁は、この後、二十七日午前零時五分にお願いすることにして、本日の審査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後十一時五十七分散会