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1983-10-04 第100回国会 参議院 逓信委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年十月四日(火曜日)    午前十時四分開会     ─────────────    委員氏名     委員長         大木 正吾君     理 事         長田 裕二君     理 事         宮田  輝君     理 事         片山 甚市君     理 事         青島 幸男君                 大木  浩君                 岡野  裕君                 沖  外夫君                 志村 愛子君                 新谷寅三郎君                 成相 善十君                 西村 尚治君                 山内 一郎君                 大森  昭君                 白木義一郎君                 三木 忠雄君                 佐藤 昭夫君                 中村 鋭一君                 田  英夫君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         大木 正吾君     理 事                 長田 裕二君                 宮田  輝君                 片山 甚市君                 青島 幸男君     委 員                 大木  浩君                 岡野  裕君                 志村 愛子君                 成相 善十君                 西村 尚治君                 山内 一郎君                 大森  昭君                 白木義一郎君                 三木 忠雄君                 佐藤 昭夫君                 中村 鋭一君    国務大臣        郵 政 大 臣  桧垣徳太郎君    政府委員        郵政大臣官房長  奥山 雄材君        郵政省電気通信        政策局長     小山 森也君        郵政省電波監理        局長       鴨 光一郎君    説明員        外務大臣官房審        議官       遠藤 哲也君        会計検査院事務        総局第五局長   中村  清君    参考人        日本放送協会会        長        川原 正人君        日本放送協会技        師長       矢橋 幸一君        日本放送協会専        務理事      坂倉 孝一君        日本放送協会専        務理事      渡辺 伸一君        日本放送協会専        務理事      川口 幹夫君        日本放送協会理        事        荒井 治郎君        日本放送協会理        事        横井  昭君        日本放送協会理        事        林  乙也君     ─────────────   本日の会議に付した案件調査承認要求に関する件 ○派遣委員報告に関する件 ○参考人出席要求に関する件 ○日本放送協会昭和五十五年度財産目録貸借対照表及び損益計算書並びにこれに関する説明書(第九十六回国会内閣提出)     ─────────────
  2. 大木正吾

    委員長大木正吾君) ただいまから逓信委員会を開会いたします。  まず、調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。  本委員会は、今期国会におきましても、郵政事業及び電気通信事業運営並び電波に関する調査を行うこととし、この旨の調査承認要求書を議長に提出いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 大木正吾

    委員長大木正吾君) 異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、要求書の作成につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 大木正吾

    委員長大木正吾君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  5. 大木正吾

    委員長大木正吾君) 次に、派遣委員報告に関する件についてお諮りいたします。  先般当委員会で行いました郵政事業及び電気通信事業運営並び電波に関する実情調査のための委員派遣につきましては、各班からそれぞれ報告書が提出されておりますので、これを本日の会議録の末尾に掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 大木正吾

    委員長大木正吾君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  7. 大木正吾

    委員長大木正吾君) 次に、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  日本放送協会関係付託案件の審査、郵政事業及び電気通信事業運営並び電波に関する調査のうち、放送に関する事項調査のため、日本放送協会役職員参考人として今期国会中、必要に応じ随時出席を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 大木正吾

    委員長大木正吾君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  9. 大木正吾

    委員長大木正吾君) 次に、日本放送協会昭和五十五年度財産目録貸借対照表及び損益計算書並びにこれに関する説明書議題といたします。  まず、政府から説明を聴取いたします。桧垣郵政大臣
  10. 桧垣徳太郎

    国務大臣桧垣徳太郎君) ただいま議題となりました日本放送協会昭和五十五年度財産目録貸借対照表及び損益計算書並びにこれに関する説明書国会提出につきまして、概略御説明申し上げます。  これらの書類は、放送法第四十条第三項の規定により、会計検査院検査を経まして国会に提出するものであります。  日本放送協会から提出された昭和五十五年度貸借対照表等によりますと、昭和五十六年三月三十一日現在における資産総額は二千百二十四億二千百万円で、前年度に比し二百四十億三千万円の増加となっております。  これに対しまして、負債総額は八百七十一億四千五百万円で、前年度に比し三十三億三千百万円の増加となっております。  資本総額は一千二百五十二億七千六百万円で、前年度に比し二百六億九千九百万円の増加となっております。  資産内容を見ますと、流動資産五百六十六億九千九百万円、固定資産一千五百二億八百万円、特定資産五十二億三千九百万円、繰延勘定二億七千五百万円であり、固定資産内容は、建物五百三十六億四百万円、土地百九十八億二千三百万円、機械三百九十九億三百万円、その他の固定資産三百六十八億七千八百万円となっております。  また、負債内容は、流動負債三百七十一億五千二百万円、固定負債四百九十九億九千三百万円であり、固定負債内容は、放送債券二百六十五億三千万円、長期借入金百十六億一千三百万円、退職手当引当金百十八億五千万円となっております。  資本内容につきましては、資本七百五十億円、積立金二百九十五億七千七百万円、当期事業収支差金二百六億九千九百万円となっております。  次に、損益について御説明申し上げます。  経常事業収入は二千七百十四億三千百万円で、前年度に比し五百二十三億二千四百万円の増加となっております。これに対しまして、経常事業支出は二千五百九億百万円で、前年度に比し二百十二億三千七百万円の増加となっております。  この結果、経常事業収支差金は二百五億三千万円となっております。  これに特別収入六億一千四百万円及び特別支出四億四千五百万円を含めまして、事業収入は二千七百二十億四千五百万円、事業支出は二千五百十三億四千六百万円で、事業収支差金は二百六億九千九百万円となっております。  以上のとおりでありますが、何とぞよろしく御審議のほどお願いを申し上げます。
  11. 大木正吾

    委員長大木正吾君) 次に、日本放送協会から説明を聴取いたします。川原日本放送協会会長
  12. 川原正人

    参考人川原正人君) ただいま議題となっております日本放送協会昭和五十五年度財産目録貸借対照表及び損益計算書概要につきまして御説明申し上げます。  まず、財産目録貸借対照表当年度末現在の資産総額は二千百二十四億二千百万円で、この内訳は、流動資産五百六十六億九千九百万円、固定資産一千五百二億八百万円、特定資産五十二億三千九百万円、操延勘定二億七千五百万円で、このうち固定資産内容は、建物五百三十六億四百万円、土地百九十八億二千三百万円、機械三百九十九億三百万円、出資三億円、その他の固定資産三百六十五億七千八百万円でございます。  当年度資産総額を前年度末と比較しますと、二百四十億三千万円の増加となっておりますが、これは主として、事業収支剰余金七十四億九千八百万円と、受信料前受け金の増加六十六億六千八百万円などにより流動資産が百五十八億一千九百万円増加し、また、当年度建設計画に基づくテレビジョン放送網建設放送設備整備等実施、及び通信放送衛星機構に対する出資により固定資産が六十二億四千三百万円増加したためでございます。  一方、これに対する負債総額は八百七十一億四千五百万円で、この内訳は、流動負債三百七十一億五千二百万円、固定負債四百九十九億九千三百万円で、このうち固定負債内容は、放送債券二百六十五億三千万円、長期借入金百十六億一千三百万円、退職手当引当金百十八億五千万円でございます。  当年度負債総額を前年度末と比較しますと、三十三億三千百万円の増加となっておりますが、これは受信料前受け金等増加により流動負債が七十六億二千九百万円増加し、一方、長期借入金減少等により固定負債が四十二億九千八百万円減少したためでございます。  また、資本総額は一千二百五十二億七千六百万円で、この内訳は、資本七百五十億円、積立金二百九十五億七千七百万円及び当期事業収支差金二百六億九千九百万円でございます。この資本総額は前年度末と比較し二百六億九千九百万円の増加となっております。  次に、損益計算書により経常事業収支について見ますと、まず、受信料等経常事業収入は二千七百十四億三千百万円で、前年度と比較し五百二十三億二千四百万円の増加となりました。  これは主として、昭和五十五年度以降三カ年の経営計画のもとに、やむを得ず昭和五十五年五月から放送受信料月額の改定を行うとともに、極力受信契約維持増加に努めた結果でございます。  なお、有料受信契約者数は、三十一万件増加し、当年度末には二千八百五十五万件となりました。  次に、経常事業支出は二千五百九億百万円で、この内訳は、給与八百六十五億七千六百万円、国内放送費六百六十七億六千万円、国際放送費十六億五千八百万円、営業費三百七十億九千八百万円、調査研究費三十一億一千五百万円、管理費三百四十八億一千百万円、減価償却費百七十一億七千万円、財務費三十七億一千三百万円となっております。  これは前年度と比較し二百十二億三千七百万円の増加となりましたが、主として、放送番組内容充実刷新受信契約維持増加対策の推進及びこれらの事業遂行に伴う維持運用費等増加によるものでございます。  以上の結果、経常事業収支差金は二百五億三千万円となり、これに特別収入六億一千四百万円を加え、特別支出四億四千五百万円を差し引いた当期事業収支差金は二百六億九千九百万円となりました。  このうち、債務償還に充てた資本支出充当は百三十二億百万円であり、事業収支剰余金は七十四億九千八百万円であります。  なお、この事業収支剰余金は、翌年度以降の財政安定のための財源に充てるものであります。  これをもちまして、協会昭和五十五年度財産目録貸付対照表及び損益計算書につきましての概要説明を終わらせていただきますが、今後の事業運営に当たりましても、公共放送としての使命と責務を銘記し、一層放送事業の発展に努力してまいる所存でございます。  何とぞよろしく御審議のほどお願いする次第でございます。
  13. 大木正吾

    委員長大木正吾君) 次に、会計検査院から検査結果についての説明を聴取いたします。中村会計検査院第五局長
  14. 中村清

    説明員中村清君) 日本放送協会昭和五十五年度決算につきまして検査いたしました結果を説明いたします。  日本放送協会昭和五十五年度財産目録貸借対照表及び損益計算書並びにこれに関する説明書は、昭和五十六年十一月六日内閣から送付を受けましたが、その検査を終えて、同年十二月八日内閣に回付いたしました。  同協会の会計につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
  15. 大木正吾

    委員長大木正吾君) 以上で説明の聴取は終わりました。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  16. 大森昭

    大森昭君 いま郵政大臣並びNHK会長さんからお話を聞きますと、大体五十五年度は、受信料支払い義務制などの問題もありまして料金の値上げが本当は一カ月おくれたわけでありますけれども、しかしおおむね結果的には収支差額というのは予算どおりの、計画どおりといいますか、ということで決算が終わったというふうに理解をいたしますが、問題は、予算執行して決算をするわけでありますが、この予算執行の中でいろいろ問題があったのかどうかということでありますが、いま会計検査院の方のお話によりますと特に問題がないように言われますが、特に記述することはないにいたしましても、実際に予算執行の面でいろいろ御意見ども検査院はそれぞれ所見を述べられるでしょうから、特に文書に記述することはないにいたしましても、何かこのようにやった方がよりベターではないかというようなことがNHK側としてあったかなかったか、そういう点についてちょっと最初に御質問したいと思います。
  17. 中村清

    説明員中村清君) 御質問の件でございますけれども、先生の御質問にお答えする前に、ごく簡単でございますが、会計検査院検査概要について申し上げて、それから意見を述べさしていただきます。  NHKに対する検査につきましては、国に対する検査と同じような観点に立ちまして検査をやっておりますが、同時に、経営体としての特性にも十分留意して検査をやってきたわけでございます。  その検査方法としましては、NHKから定期に計算書及びその証拠書類を提出さして、会計検査院で在庁のまま検査をするという方法——これを書面検査と言っておりますけれども、この書面検査と、職員を現地に派遣して行う検査方法——これを実地検査と言っておりますが、この二つの方法を併用してやってきたわけでございます。  それから、先ほど、特に違法または不当と認めた事項はございませんでしたと申し上げましたんですが、検査といたしましては、やはり私どもは、NHKは最重要団体の一つといたしまして十分な検査をやってきたわけでございまして、その検査内容としましては、実地検査の場合でございますが、上席調査官外十六名で本部外二十四の放送局につきまして延べ二百三十九人日、その施行率につきましては三七・三%ということで実施をしたわけでございます。そして、検査に当たりましては、NHKの財務諸表はその財政状態及び経営成績を適正に処理しているか、こういう点に着目をした検査をいたしましたほかに、収入につきましては、五十五年五月に受信料を改定しておりますところから、受信契約及び受信料収納が的確かつ経済的に行われているかどうか。支出につきましては、国内放送費のうち番組制作費営業費のうち収納経費建設費のうちテレビジョン放送網建設費等各種経費の使用が経済的、効率的かつ効果的に行われているかどうかについて検査をいたしたわけでございます。  その結果、先ほど申し上げましたように、違法または不当と認めた事項はございませんでしたけれども、この五十五年度は、五十五年から五十七年度までの経営計画初年度に当たっておりましたので、私どもとしてもその点を十分留意して検査をやったわけでございますが、その結果、NHK努力もございまして、私どもとしては特に違法または不当と指摘する事項はなかったと、こういうことでございます。
  18. 大森昭

    大森昭君 いや、不正ないし不当なことはないことはわかっているんですが、それ以外にということで質問したわけでありますが、私の質問国会に特に報告するようなことはないということなんだろうと思いますから、したがって収支もきわめて良好に、予算執行の面も、そうですね、問題なくというよりかも、正しく予算執行されたということで理解したらいいわけですな。
  19. 中村清

    説明員中村清君) 私ども検査した範囲内におきましてはおっしゃるとおりでございます。
  20. 大森昭

    大森昭君 それでは次に、放送法の定めによりますと、監事会長だとか副会長あるいは理事の行う業務監査するということになっておりますので、いろいろ経営委員会などについてもそういう報告を受けたり配慮をしたりしているんだろうと思うんでありますが、特に監事側としては特段問題はなかったかどうか、お聞かせ願いたいと思います。
  21. 川原正人

    参考人川原正人君) 現在の放送法ではNHKの「監事は、会長、副会長及び理事の行う業務監査し、その監査の結果を経営委員会報告する。」というふうに規定されております。この規定に基づきまして経営委員会監事から報告を受けているわけでございますが、監事経営委員会報告しました内容については、私ども執行機関としても、経営委員会側から十分伝えられており、承知しておりますので、私どもの方からお答え申し上げることにしたいと存じます。  この五十五年度監査の結果につきまして、監事からは大きく分けて四つの項目について意見が述べられております。  最初は、放送番組関係でございまして、五十五年度放送番組については、国内放送番組については「シルクロード」など公共放送としてふさわしい番組放送され好評を得たけれども、さらに正確かつ迅速なニュースの報道に努めるとともに、掘り下げた情報番組を提供し、なお一層国民の信頼にこたえるよう強く要望するという監事報告がございました。  それから、国際放送について、今後もさらに番組充実、諸外国との交流を進めるとともに、政府及び関係機関と協力して海外における受信状況の改善の方向について検討することを望むと、こういう監事指摘がございました。  それから、技術関係につきましては、放送衛星を五十八年度に打ち上げるよう準備を進めているところでございましたが、さらにこの放送衛星について文字放送などニューメディアの関連も含めて多角的な活用を図って、今後の経営の新たな展開に資するよう検討を望むという指摘をいただきました。  それから、営業関係視聴者関係につきましては、五十五年度営業活動は、収納の面では協会努力により数年来の低落の傾向にやや歯どめをかけた感があるけれども契約増加の面では目標を大きく下回る結果に終わった。協会は当面受信契約の徹底と収納の確保になお一層の努力を払うとともに、さらに営業体制の見直しを行い、有効適切な施策を強力に推進する必要があると、こういう監事意見でございます。  また、視聴者関係につきましても、視聴者意向の吸収と理解促進のため、今後さらに視聴者意向がより活発に受けとめられ、業務への反映が行われるよう希望するという御意見をいただいております。  それから最後に、経営全般にわたりましては、財政面受信料収入値上げが一カ月おくれたこと、それから受信者増加計画を下回ったことなどによって予算に比し大幅な減収となりましたが、ほぼ予定どおり金額を翌年度に繰り越すことができた。これは経営努力によるものであり、評価はできるけれども収入の予測についてはより的確に見通しを立て、計画遂行にそごを来さないように検討をする必要がある、こういう監事意見をちょうだいしています。  さらに、協会が五十五年度初年度とする五カ年間の要員効率化計画を立て実施に移しました初年度でございまして、監事からは五十五年度計画どおり五十人の純減実施したが、効率化は重要な課題であるので、なお一層の努力が必要であると。  以上、五十五年度監事報告四つの分野にわたりまして、大要ただいま申し述べたような趣旨の報告が出ておりまして、これは経営委員会から私ども十分に承っております。
  22. 大森昭

    大森昭君 一昨年の商法の改正の趣旨合い並びNHK長期ビジョン審議会の提言などを見ましても、特に監査機能の強化ということが期待されております。いま会長からお話がありましたけれども、十分ひとつ監査報告などについては執行面で生かしていただくことをお願いをいたしておきます。  次に、過般の五十八年度予算審議をいたしました際に、事業収支で百六億の赤字、さらに受信料収入債務償還に充てるべき資金不足が六十四億、合わせまして百七十億円の収支不足になるという状態予算審議をしたわけであります。当時はこの五十七年度繰越予定額は三十二億ということを想定をいたしまして議論をいたしましたから、したがってたまたま財政安定化財源が百六億ということで、この点は事業収支で百六億円の赤字ととんとんということでありまして、問題は債務償還に充てます六十四億がどうかということになったわけでありますが、百七十億の五十八年度不足額収支不足で六十四億ということでありますが、五十七年度決算結果によりましてはこれが動くわけであります。そこで、五十七年度決算結果はどうなっているのか。まだまだ途中でありますが、これは五十八年度見通しなどについてもおわかりになれば、五十八年度予算の討議をしたときと少しこれ数字が変わってくるわけでありますが、その辺はどうなっているでしょうか。
  23. 渡辺伸一

    参考人渡辺伸一君) お答えいたします。  いま先生おっしゃいますように、五十八年度予算では百七十億の収支不足でございまして、これで繰り越した金で埋めますのが百六億という話をしてまいりました。五十七年度決算がその後確定をいたしまして、おかげさまで決算が当初よりも三十九億ほど改善することができましたので、百七十億のうち緑趣金で埋める金額が百四十五億と変わっているわけでございます。したがいまして、六十四億を借入金予定しておりましたのが、ただいまのところ二十五億を外部の資金を仰ぐということになっているわけでございます。  なお、五十八年度執行いたしておりますけれども、百七十億はどうなるのかというお尋ねでございますが、まず収入で言いますと、五十七年度予定をいたしました五十五万件の受信者の純増は残念ながら四十八万というところで終わってしまいました。これが五十八年度受信料収入に影響を及ぼすわけでございますが、これが約二億円ということでございまして、この二億円の受信料減収を取り戻すべくいま副次収入増で懸命の努力をしているところでございます。  なお、支出につきましては、上半期が過ぎたばかりでございまして、計数整理等いま検討を急いでおりますけれども予備費を含めましていま確定的にどうなるという、プラス、マイナスどちらにしても数字を申し上げるまでには若干時間をいただきたいというふうに思っているわけでございます。  いずれにしましても、各年度そうでございますが、収入はできるだけ多く、支出はできるだけ詰めて事業計画実施するように努めているわけでございます。  以上でございます。
  24. 大森昭

    大森昭君 見通しの問題でありますからいまのような答弁になるんだろうと思うんですが、大体五十七年度も非常にいいかっこうで決算ができるような状況ですし、その前のやつも、推移を見ますと、五十八年度は二十五億の赤ということを想定されておるようでありますが、これは会長には大変努力をしていただかなきゃいかぬわけでありますが、その努力いかんでは五十八年度収支とんとんということも可能だというふうに思うんでありますが、これは見通しの問題でありますから、いやなかなかそうはいかぬということになりますかもわかりませんが、おおむね大体収支とんとんということにはなりませんか、これ。
  25. 川原正人

    参考人川原正人君) なかなかその収支とんとんというのはいまの段階で見通しは大変むずかしい状況でございます。もちろんこの春の審議の際に、国会の附帯決議におきましても、また郵政大臣意見書におきましても、五十八年度さらに極力財政状況の改善をせよという御意見をちょうだいしておりますので、極力それに沿うべく努力はしておりますけれども、たとえば前年度予備費がかなり使わずに済んだわけでございますけれども、今年度は地震とか台風、水害等ですでに予備費もかなり前年度に比べますと早いテンポで支出せざるを得ない状況になっております。一般の支出でさらに努力はいま続けておりますけれども、とんとんまでいけるかどうかいまちょっと断定的にお答えはできない状況でございます。
  26. 大森昭

    大森昭君 もちろん収支とんとんだから料金の改定だとかなんか必要ないという意味で私は言っているわけじゃないんでありますが、それは経営の方針がありまして、多少赤字でやっていっていろいろ受信料値上げした方がいいのか、多少収支とんとんにはなるけれども長期的な計画の中で料金をどうした方がいいかというのは、これはまあ選択の問題でありますから、それはいろんな議論が恐らくあるんだろうと思うんであります。  そこで、いま収支とんとんになるか、多少赤を持つか多少黒を持つか。しかし、いずれにしても五十九年度以降一体どうするかということが最大の課題だろうと思うんでありますが、五十九年度予算編成について会長はどういうふうに対処するのか、基本的な方針があればお示し願いたいと思うんです。
  27. 川原正人

    参考人川原正人君) 五十九年度以降のことについては私自身非常にいま苦慮しているところでございまして、まだこのような方針で予算を編成するというところの結論には至っておりません。これは前回の国会でも申し上げましたように、いずれにしましても協会の財政状況を長期的に展望いたします場合に、なかなか収入が、幾ら努力いたしましても、いまの受信者の世帯のふえる状況から言いますと一%そこそこの増加しか期待できないという状況でございますので、非常に財政的には先行き苦しいということは、もうこれはそのとおりでございます。これをどのようにして解決すべきか、この四月から部外の各界の有識者等の審議会も開いていただきまして、いろいろそこに協会の当面している実情を御説明して、これから先の経営につきまして有益な提言をちょうだいしたいといま考えております。その提言がちょうだいできました段階におきまして、改めて協会の先の経営計画を慎重に考えて決定してまいりたいと思っておるところでございます。
  28. 大森昭

    大森昭君 三年計画を四年でやってまいりまして、また五十八年度見通しの中で、五年間現行受信体系でいって大変苦しい状態だからということで、受信料を改定した方がいいような私は感じをするんですが、まあしかし、そう余り無理をしてまた一挙に値上げがふえるということもよくないんでありますが、そこで、いま検討しているけれども、いま直ちに回答できないというお話だが、NHKの長期計画に関する審議会でいまやっていますが、会長としてはいつごろどういうぐあいにやっていただいてもらいたいということはどうなんですか。
  29. 川原正人

    参考人川原正人君) 当初、四月に各界の委員の方にお集まりいただいてお願いしましたときには、大体十月いっぱいぐらいには答申をちょうだいしたいという気持ちで審議を始めたんでございますが、その後、私どもの御説明あるいはその提案すべき内容がかなりいま膨大な資料にもなっております、手間取っていることと、審議会でも非常に活発な御意見が出て若干審議が少しずれている感じがございますので、十一月中に答申がちょうだいできるかどうか、かなり微妙ないま審議状況で乙ざいます。
  30. 大森昭

    大森昭君 そうすると、審議をいただくというのは、おおよそNHK側としてはある程度の素案を出しましていろいろ議論をしていただいていると思うんですが、しかし時期が時期でありますし、いろんな委員の方々の意見も活発に出ていることでありますので、たとえば財政基盤の強化として経営計画を何年にしたいとかあるいはどうしたいとかいうことは、いまの段階ではどうも余り言いよくないということですか、一口で言って。
  31. 川原正人

    参考人川原正人君) 大変いま微妙というか、むずかしい審議会の審議状況でもございますし、私どもの作業の方も最後のいまいろんなこれから先の事業もくろみの詰めといいますか、あるいはその数字の計算も、いま最後のいろんな数字を議論、点検しているところでございますので、いまここで何年間の計画云々ということはちょっとまだ申し上げられない段階でございます。
  32. 大森昭

    大森昭君 まあ言えないやつを無理やり言わしてみても意味ありませんから質問はとめますが、ただ、従来三年でやってきたやり方がいいのかどうか、あるいは先ほども指摘しましたように、多少、五十八年度見通しもありますが、収支がそう大幅に赤字にならないということなら、三年間で四年やって、上げたいところだけれども、またここも辛抱するかというようなこともあるでしょうし、いずれにいたしましても、とにかく受信料値上げというのは、これはNHKにとっては最大な課題でありますし、きょうは時間がないから余りあれ質問しませんが、特に不払いの問題なんぞも、当然これ絡んでくるわけです。経営の基盤の最大の問題でありますからいろいろ議論されているんだと思いますが、慎重にその集約を図って対処していただきたいと思います。  そこで、会長のお考えはわかるんでありますが、郵政省はそういう段階だから、特に見解はありませんか。
  33. 桧垣徳太郎

    国務大臣桧垣徳太郎君) いまNHK会長からもお話がございましたように、NHKの財政は受信契約増加というのがほぼ限界に達しておるという感じでございまして、したがって事業収入というものが伸びない。一方事業支出については、物価事情その他の事情によってどうしても事業支出というものは増加は避けられない。根本的にそういうNHK財政については構造的なむずかしさがあるわけでございます。  ただ、受信料問題というのは、これはもう全国民に影響の及ぼす問題でございますから、軽々に扱うわけにはまいらぬわけでございます。その前提としては、NHKとして最大の経営の合理化努力をしていただくということが私は大事な要件であると思うわけでございます。そういう意味から、NHKにおいても長期経営計画についての審議会を設け、御検討を願っておるわけでありまして、私どもはその審議会の審議の結果等も伺いながら、行政当局として慎重な態度で対処をしていきたいというふうに思っておるわけであります。
  34. 大森昭

    大森昭君 まだ総体な議論が行われておるわけでありますから、部分聞いても問題があろうかと思いますが、受信料では沖縄の料金が特殊になっていますが、この辺のところもまだ検討課題になっているのか。全体の流れからいきますと、沖縄に対する特殊の事情というのは大体踏襲しているような感じがしているのですが、この辺は何か特別な議論がありますか、受信料の格差の問題。
  35. 林乙也

    参考人(林乙也君) お答え申し上げます。  沖縄県におきますところの受信料枠の特別措置につきましては、復帰の段階におきまして、やはり四十二年でございますか、四十二年に沖縄放送協会が設立されたわけでございますけれども、現在行われておりますような形の受信料制度が施行されましたのが沖縄におきましては四十四年でございまして、復帰までの間、わずかに三年程度の期間でございました。それまでの間は民放によりますところの十年間の放送が行われておったわけでございまして、国内におきます、本土におきますような受信料制度というものが定着しないままに復帰を見ておるわけでございます。協会放送サービスの実情から見ますとこれは本土並みになっておるわけでございまして、そういった点からいたしますと、料金の格差の点につきましても見直すべき状況にあるというふうに私どもは考えておるわけでございますが、またこれと同時に、やはり特別措置法との関係だとか、あるいは社会的、経済的な事情等十分考えて検討していかなければならないことだと考えており、今後とも鋭意慎重に検討してまいりたいというように考えております。
  36. 大森昭

    大森昭君 沖縄の問題は、検討の段階でしょうけれども、従来の方法でぜひひとつ実施をしていただきたいと要望しておきます。次に、いよいよまあ来年の二月にBS2が上がるわけでありますが。これにつきまして、時間がなくなってきましたのでいろいろ質問することがあるんでありますが、総括的に言いまして具体的な番組の編成の方針に変化があるのか、あるいは郵政省は従来いろんな質問に答えておりますが、特段のことがあればひとつ総括的にNHK会長の方と郵政省の方からお話しいただきたいと思います。
  37. 坂倉孝一

    参考人(坂倉孝一君) 来年二月に打ち上げられますBS2につきましては、基本的には従来御報告申し上げているとおりでございまして、全国に散在する難視あるいは離島等の難視地域の解消を図るということが基本になっておりますけれども、そのほか非常災害対策でありますとかあるいはいろいろ全国の各地からの機動的な番組中継などにも活用していきたいというふうに考えております。  それから、番組につきましては、NHKが二チャンネルで始めるわけでございますけれども、それぞれの番組におきまして、衛星第一テレビジョンの方におきましては総合テレビを中心にいたしました同時放送、それから教育テレビの番組も一部含めて時差放送であるとかアンコール放送であるとか、それにさらに独自のローカル情報番組を編成しようというふうに考えております。  それから、衛星第二テレビジョンの方では、教育テレビの教育教養番組の同時放送を中心といたしますけれども、総合テレビの一部も含めて同じく時差放送やアンコール放送あるいは独自のローカル情報番組を編成する予定にいたしているわけでございます。  大体、以上でございます。
  38. 鴨光一郎

    政府委員(鴨光一郎君) BS2につきましては基本的にはNHKのテレビ放送の難視聴解消を目的とするというものでございますけれども、いまお話にございましたように、同時に将来の衛星放送の普及発展を図るという役割りも期待されているところでございます。このためにNHKではいまお答えがございましたように、放送番組の編成につきまして地上の番組を中心にしてアンコール放送あるいは時差放送といった番組編成上の工夫によって衛星放送の普及を図っていくことにしていると承知をいたしておりますが、郵政省といたしましても、こうした番組編成上の工夫を行うに当たっての、まあある程度でございますけれども、その自由度を与えるという意味から、先ごろの予備免許に際しまして若干の条件の緩和を行った次第でございます。
  39. 大森昭

    大森昭君 また予算のときにでも詳細に意見を述べたいと思います。  次に放送大学の問題ですね、これ私どももいろいろ放送大学については意見を述べたわけでありますが、やっぱり案の定と言うと多少皮肉になって申しわけないのでありますが、臨調の方からもいろいろ言われておりますし、五次答申ではとにかく七年後にそのあり方を見直した方がいいじゃないかという答申なども出ていますが、一体この放送大学、当面どのような形でやっていくのか、きょうは文部省呼んでおりませんが、郵政省の何かあれば。
  40. 鴨光一郎

    政府委員(鴨光一郎君) 放送大学でございますが、五十八年、ことしの四月に設置をされまして、二年後の六十年四月から六十三年の三月を第一期計画としまして六十年の四月開講を目途に準備が進められているところでございます。  御質問放送大学の放送でございますが、テレビジョン放送と超短波、いわゆるFM放送とによりまして授業を行うこととしておりまして、当面としましては、東京タワーの広域送信所及び群馬県の県域送信所から放送を行いまして、いま申しましたところからの電波の到達する範囲でございます関東地区を対象地域にして発足をする計画というふうに承知をいたしております。
  41. 大森昭

    大森昭君 当初の計画から見ますと、これ大分後退せざるを得ないわけですよね。いま局長言われたけれども、何か細々とやっているようなことなんですが、本来私どもその際主張したわけでありますが、とにかく地上の計画で衛星が上がるというのをわかっておってやったって金はかかるし効果もないしということで主張してきたわけなんですが、そうするとあれですか、いまのお話だといずれにしても、いまの細々としたやつをずっと拡大していくのかどうかわかりませんが、とにかくやっていくわけですか、これ七年先まで。
  42. 鴨光一郎

    政府委員(鴨光一郎君) 先ほどお答えいたしましたように、放送大学の方は当面関東地方でということになっておりまして、放送大学では七年後にこの考え方の見直しを行うというふうに承知をいたしております。
  43. 大森昭

    大森昭君 郵政省にあれしてもちょっとそれ以上あれなのかわからぬけれども、どうもこの放送大学というのは、いまの状態を見ていきますと、しかしまあ設備をつくって地上でちょびちょびやっていたやつをこれを廃止をするというのもまたあれでしょうけれども、いずれにしても六十三年に打ち上げるBS3にもこれは乗らないのでしょう、いまの状態では。
  44. 鴨光一郎

    政府委員(鴨光一郎君) 放送大学学園の方からは、全国にわたる放送大学の規模から見て、長期的には将来地上局の伸展より、放送衛星を利用する希望を強く持っているという基本的な考え方が示されておりますけれども、当面関東地方を対象としての第一期計画の完成に全力を注ぎたいということ。それから、現在の財政状況あるいは先生からお話もございました臨時行政調査会第五次答申の経緯あるいは学習センター設置の問題——これは財政状況とも絡んでまいりますが、そういったこともあってBS3の利用は困難であるという旨の意向が示されているということでございます。
  45. 大森昭

    大森昭君 いずれにしても、別な衛星を上げるのかどうするのかいろいろ検討しているんだろうと思うんですが、まあせっかくつくった大学であるからということもありますが、前回私どもが主張したから言うわけじゃないんでありますが、もう少し物事をやるときには適確な計画を立てて、適確に処理をしていただくということが大事だと思うんですが、これは郵政省に言ってもあれだけれども、提案者は郵政省なんだから、最初は。いま文部省に行っちゃったけれども、まあ慎重にやってもらえばよかったなあという気持ちはありますが、それは打ち切ります。  そこで、オリンピックの問題も前回の委員会でいろいろ議論がありましたけれども、どうやら聞くところによりますと、NHKと民放連と放送権料が合意したようでありますが、その内容はどういうぐあいになっていますか。
  46. 川口幹夫

    参考人(川口幹夫君) ロサンゼルスオリンピックにつきましては、非常に交渉が難航いたしました。民放連とNHKと共同で交渉いたしましたんですけれども、時間が大変かかりましたけれども、妥結をいたしまして、その結果、民放連とNHKがどのような形でオリンピック放送をするのかということを打ち合わせいたしました。去る八月二十四日にNHK、民放連とで合意を得ましたものを申し上げます。  六項目ございまして、まず開会式、閉会式、男子マラソン、それから女子マラソン、柔道の山下選手の出場する種目、この五つはいわゆる国民の大多数が見たいというふうな種目であろうかと思います。これはNHK、民放、同時にやります。そのほかの番組の中から、民放連は八試合を優先的に単独放送をする。この場合の試合といいますのは、ボールゲームならば一試合、それから陸上、水泳などは一日の全競技というふうに考えております。  二番目に、この優先単独放送というのは一日に一系列といたしまして、原則としては午後七時から九時の間に放送いたします。この時間帯にはほかのテレビ局はオリンピック放送実施しないということでございます。  三番目に、優先放送の試合は単独放送試合後、つまり午後九時以降はどの局も自由に放送できる。ただし、それ以前でも三分以内であるならば自由に放送ができるということにしております。  四番目に、それではその八試合の具体的な内容はどうするかということでございますが、オリンピックの競技日程、それから組み合わせが確定をしました時点で、NHK、民放連の両者が協議をして決定する。  それから五番目に、放送権料の分担の比率は、NHKが八六・七%、それから民放連が一三・三%。共同制作費というのがかかりますけれども、それをそれぞれ五〇%ずつ折半をいたします。  それから六番目に、民放連に一部単独優先放送を認めたこの方式をロサンゼルス方式というふうに呼びまして、今後のオリンピック夏季大会の放送に対してはこのロサンゼルス方式というものを適用する。  以上の六つの項目について、民放連との合意に達したわけでございます。
  47. 大森昭

    大森昭君 前回の五十八年度予算審議の際にも私言っているんでありますが、しかし、このときの答弁は八五%と一五%ということであると、それでも少しNHKは出し過ぎじゃないかという指摘をしておいたんでありますが——いま分担比率の問題ですね。これいま聞きますと八六・七%。これは前回の委員会の答弁と違うんじゃないですか。
  48. 川口幹夫

    参考人(川口幹夫君) 民放連、NHKは大体八五、一五というふうな形での基本的な交渉を始めたのでありますけれども、これは両者の交渉の過程の中でいまの数字に落ち着いたということでございます。NHKとしてはなるべく負担を少なくするように努力をし、交渉をしたんでありますけれども、諸般の事情によりましてこのような結果になりました。
  49. 大森昭

    大森昭君 決まったことだからとやかく言ってもということもあろうかと思いますが、これが大体オリンピックの放送するときのこれ慣例になっていくんだろうと思うんですね。ですから、今回決まったやつが——NHKも財政が苦しいし、もちろん民放も全部いいとは私言いませんが、少し出せるところは出してもらいたいということをこの間要望しておいたんですが、そうすると大体努力はしたけれども、やむを得ないということでオリンピックの権料は大体いまの比率がべースになって今後行われるということなんですか。
  50. 川口幹夫

    参考人(川口幹夫君) お答えいたします。  今後の問題につきましては、まずオリンピックの権料交渉について、これはNHK、民放連とにかく結束をして、一致して高騰を防ぐという形でやらなければいけないというふうに思っております。  それから、決まった権料をどのように分担するかについても、これはNHK受信料によって成り立つ組織でありますから、その性格上、分担の比率を最小限にするような交渉をしたいというふうに思っております。
  51. 大森昭

    大森昭君 まあ納得できませんね。いずれにしても、大臣もさっき言われましたように、受信料値上げというのは全国民に影響を及ぼすということでというお話もありましたけれども、少なくとも、より少なきゃいいという意味で私は言っているんじゃないんですけれどもNHKとしてはいろいろその衝に当たる人は努力をされたかとは思いますが、少し大盤振る舞いじゃないかという感じがいたします。しかし、これ以上議論しても合意された内容でありますからそれを破棄するわけにもいかないんでしょうから、今後は民放の方々にも十分柳解をしていただいて話を進めるということをお願いしておきます。  そこで、その分担比率の問題もそうなんでありますが、いま説明がありましたように今度の放送の仕方であります。そこの放送の仕方もこれは民放の方が三十八試合中八試合を優先をしてやるというお話ですね。ところが、この現在の民放のネットの系列からいたしますと、これ必ずしもどこでもその八試合を優先して独占されたものを見るという状態にならないんじゃないですか。この辺はどうですか。
  52. 川口幹夫

    参考人(川口幹夫君) 八種目についてはそれぞれのネット局が一種目ずつ中継をするという形になります。したがって、ネット局の数で放送されるいわゆる独占の形での最初放送は聴視できるということになります。  ただ、前にも申し上げましたようにNHKは時間を置きますけれども、それは必ず放送いたします。したがって、多少の時間の差はあっても全国至るところで放送は聴視できるというふうに考えております。
  53. 大森昭

    大森昭君 まあ言乗じりをとらえるわけじゃないんですが、多少の時間の差があっても放送しますと——そんなのあたりまえの話じゃないですか、あなた。問題はそういうことを私は言っているんじゃないんですよ。民放とNHKと、八試合は先に実況放送やるわけでしょう、民放の方が。いいじゃないですかと、時間がおくれたってNHKは後でやるんです。そんなあなた問題のとらえ方をしているんでは困るんだよ。だから、少なくともある地域で直ちに見られる、ある地域じゃNHKで時間の格差を置いて見てもらうんだというようなことでは、これは少なくとも民放と八試合はとにかく独占放送してもいいですよといっても、地域的にアンバランスがあるような状態では不公平じゃないですか、これ。だから、そういうときにはNHKがその放送されないところは独占放送するといっても、同時に放送しますよというぐらいのところにいかなきゃいけないんじゃないですか。分担率は八六%も払っておいて、民放の方に独占八試合をさしておいて、それがしかも同時に見られない地域と見られる地域——郵政大臣、四国出身ですがね、愛媛。これは全然あなたどうにもなりませんよ、四国の方は。だから、そういうことになってくれば、その辺のところは少なくとも民放に独占放送させても放送できないところはNHKがそういうところは同時に放送するとかしないとかという話じゃないんですか。
  54. 川原正人

    参考人川原正人君) 地域的にネットの系列の行くとか行かないところでその行かないところはNHKが云々というところにはそういう話はしておりません。  確かに御指摘のようにある試合を民放の系列が独占した場合に、私も民放の系列のカバーリング、正確に知りませんけれども、恐らく部分的に系列からはみ出すところが出る心配はしております。ですから、その問題は大変重要な問題だとは思ったんですが、私が最終的にこのあれを決心しましたのは、先ほど川口も申しましたけれども、オリンピック問題は非常に大きな問題を将来も抱えておりまして、放送権料は高過ぎるというふうに私も思っております。高過ぎることを値切っていかなければ、いろんな意味で交渉していかなければならないんですが、大前提として私どうしても日本の放送事業者が一体とならなければならない。つまり民放連とNHKが一緒になってこのオリンピックの交渉に当たらなければならない。それを何とかして民放連と一体にやっていこうとするために、民放連の事情をいろいろ聞きますと、結論的にはある一定の額、たとえばモントリオールのときは一億数千万円の民放連負担だったんですけれども、そのぐらいだったら民放連も商売になるならないは別にしてできたようですけれども、今回のように民放としては恐らく十億円ぐらいの負担になってくるだろう。それをNHKと同時に放送していると、まあ率直に言って全然採算に乗ってこないと。十億円だけまるまる失費に近い形になるんで、そこを何とか民放という立場も勘案してもらえまえかということがあったものですから、先々日本の放送事業者が一体となってオリンピックの交渉をするためには、この程度の妥協は私はやむを得ないというふうに考えます。もちろん後でやればいいというものでは決してございませんけれども、一定の時間は制限をして、その後はもちろん自由に私ども放送できる。それも余り遅い時間ではこれは大変ぐあいが悪いんですけれども、夜九時以後というそこで約束をいたしまして、九時以後は私どもが完全にカバーするということで全国の視聴者にはお許しいただきたいという決心をしたわけでございます。問題のあることは重々承知しております。しかし、これはそういう大きい足並みをそろえさせるという意味でやむを得なかったものと私は決心したわけでございます。
  55. 大森昭

    大森昭君 時間が来ましたからこれでやめますが、特にNHKの立場だけじゃなくて、実はこういう問題ですから民放も含めて放送界が一丸となってやらなきゃいけない問題で、お互いに苦労するんだろうと思うのですが、ただ、ある地域は放送され、ある地域は放送されないとか、そういうことになってきますと、どうも何となくすっきりしないですよね。特にまたソウルの大会が行われるわけでありますが、このような状態でいきますと、これはお互いに、どちらがどうという意味じゃないんでありますが、NHKもはじき出されないためにはもう多少大盤振る舞いしても、多少放送の不公平があってもやむを得ないなんということでやっていきますと、これはちょっと、それこそ公共放送としてNHKの最大の使命が損なわれるということになるという問題がありますから、どうかひとつそういう点などについても十分配慮していただきまして対処していただきたいことをお願いいたしまして、ちょうど時間が来ましたのでこれで終わります。
  56. 片山甚市

    片山甚市君 私は、昭和五十五年度決算審議するに当たりまして、当時の本委員会における附帯決議を中心に質問をしてまいりたいと存じます。  まず、経営の公開対策についてでありますが、民間企業における経営内容の不透明さも今日特に問題とされておりますが、受信料を唯一の財源とするNHKにとっては視聴者からその経営内容が問われておると思います。第二臨調においては、経営の合理化、効率化を推進する観点から経営内容の公開が論議の対象となり、NHKとしてもNHK長期ビジョン審議会の提言を受け、部内の検討会議検討を行ったと聞いておりますが、NHK当局としては経営公開についてどのような方針で対処されておるのか、お答えを願いたいと思います。
  57. 坂倉孝一

    参考人(坂倉孝一君) 先生御指摘のとおり、NHK長期ビジョン審議会報告書におきましても、NHKにとりまして経営状況や財政の現況といったようなことを視聴者に御報告し、あるいは周知することがきわめて重要だというふうに考えているわけでございまして、NHKもこれまでいろいろな形でそういった経営の公開ということには努めてきたわけでございますが、いろいろな媒体を通じましたり、あるいはいろいろな視聴者会議その他の機会を通じまして積極的に努力してまいったわけでございますけれども、今後ともさらに創意と工夫をこらしまして、こういった施策が十分視聴者に周知徹底されまして、一層NHKの公共性についての御理解が得られるように努めていきたいというふうに考えている次第でございます。
  58. 片山甚市

    片山甚市君 経営公開の具体的な新しい方法はございませんか。
  59. 坂倉孝一

    参考人(坂倉孝一君) いままで経営公開につきましては、いろいろな機会に放送を通じてやるようなこと、あるいは先ほど申し上げましたように、視聴者との会合を持ちましてそういったところで御報告する方法、そのほかパンフレットとかいろいろな印刷物を通じてやる方法等、いろいろやっているわけでございますけれども、私どもは今後も、いま視聴者会議といったようなものを中心にいたしまして経営のいろいろな状況というものをつぶさに御報告申し上げているわけでございますし、それから決算等の結果につきましても、いつでもそれが手に入れるような方法等も考えているわけでございますけれども、そういった施策を充実するということで、現時点におきましては特に新しい施策というものを申し上げる段階には至っていないわけでございます。
  60. 片山甚市

    片山甚市君 先ほど大森委員の方からもお話がありましたが、来年度予算検討するときにはこのことが大きな問題になろうと思いますから、ひとつ十分にお考え願っておきたいと思います。  NHK長期ビジョン審の報告書には、外部経営診断機能の自主的活用などの方法についてNHKが積極的に検討することが必要ではないかとしておりますが、この指摘についてどう対処されていますか。すなわち、外部経営診断機能の自主的活用をしなさいと言っておるんですが、それについてはどういう対策をされておりますか。
  61. 坂倉孝一

    参考人(坂倉孝一君) 長期ビジョン審議会で御指摘のありました外部経営診断でございますが、この外部経営診断につきましては自主的に活用を考えていけということでございまして、私どもといたしましては、こういった公共放送機関においての経営診断のあり方はいかにあるべきか。外部 経営診断といったようなこの問題につきましては、やはりNHK経営効率化をどう進めていくかといったような点と深くかかわるわけでございまして、私どもは、そういった経営診断とNHKが今後どういったような経営につきまして、いろいろな、たとえば経営指標といったようなものをどう活用しながらこの経営効率化に実効を上げていくかというような点については検討を深めてきているわけでございますけれども、その経営診断のあり方について、特にその外部の御意見等も参考にしながら、さらに今後とも多角的に検討を続けていきたいというふうに考えております。
  62. 片山甚市

    片山甚市君 いまの坂倉参考人の話は考えておるんでありまして、具体的に展開されておりますか。——考えておるのはわかったんですよ。具体的にどんなことでそれを採用されておりますか、簡単に答えてください。
  63. 川原正人

    参考人川原正人君) いま具体的な案につきましては、先ほどお話ししました外部の専門家による経営に関する審議会がございます。この中で、特にこの種の問題についての御専門の委員の方が小委員会をおつくりになっていろいろいまサゼスチョンを私どもにちょうだいしておりますので、何らかの形でその経営の診断が可能なような手法が答申の形でちょうだいできるのではないかというふうに考えております。
  64. 片山甚市

    片山甚市君 自主的活用ということですから、審議会でなくて協会自体がそのようなことについては率先して取り組んでもらいたい。意見を述べます。  NHKが国民的放送事業体としてこの厳しい経営環境の中で、財政基盤の強化を図るために経営の公開、自主的監査機能の強化は必要であると思われるが、会長は先ほどの外部の問題でなくて自主的な問題についてどのようなお取り組みをされますか。
  65. 川原正人

    参考人川原正人君) 御指摘のとおり、この経営診断あるいは経営の公開は大変大事なことと思いますが、私どもでは従来、もうかなりの点は公開してまいりまして、一切ガラス張りであるということで、たとえば全国の各局所においてはいつでも予算あるいは決算に関する資料等は自由に閲覧していただけるような措置も講じておりますし、相談センター等では御要望があれば、もちろん郵送料等の実費はちょうだいいたしますけれども、どのような資料でも全部視聴者の方にお送りするような体制もとっております。さらに、これに加えて、もう少し番組の中でも経営の中身を説明するような機会がとれるかどうか、新聞広告等はやはり相当経費がかかりますので——いまでもやっておりますけれども、みずからの番組の手段等でも、さらに中身を視聴者におわかりいただけるようにやる方法かないかどうか検討を続けてまいりたいと考えております。
  66. 片山甚市

    片山甚市君 本日の決算書と直接関係ございませんけれども、去る九月十九日のマスコミ各紙は、外務大臣の委嘱を受けた研究機関が、国連平和維持活動強化のため、わが国のとるべき役割りとして、国連軍への資金提供のみでなく、自衛隊の海外派兵など、国連軍への積極的、広範囲に参加すべきであるとの提言を行いました。外務大臣もこれを国連事務総長に提出すると大々的に報道されましたけれども、この機関設立の趣旨、メンバー、討議の内容と提言内容について簡潔に御説明を願いたい。
  67. 遠藤哲也

    説明員(遠藤哲也君) 先生御質問のまず第一点でございますけれども、この研究会の設置目的でございますが、実は、国際連合が成立されましてからちょうど三十八年になるわけでございますけれども、その中で、経済とか社会とか、そういった分野ではかなりの成果を見てきているわけでございますが、国連の第一義的な目的である国際の平和と安全につきましては、先生御承知のとおり、安全保障理事会の拒否権等々によって必ずしも十分動いてないということから、国連の平和維持機能を何とかして強化しなくちゃいかぬという声が出てきたわけでございます。  それで、昨年の六月にニューヨークで開かれました国連の第二回軍縮特別総会、これにおきまして、当時の鈴木総理大臣が、軍縮の一環として、軍縮を進めていくにはやはり国連の平和維持機能を強化しなくちゃいかぬ、こういうことも検討してもらいたい、こういうふうな演説をされまして、たまたまその年、去年の九月でございますけれども、事務総長の報告にも大体同趣旨のことが出ておるわけでございます。  そこで、こういったようなことを踏まえまして、去年の十二月三日でございますけれども、国連総会で決議が成立しまして、国連の平和維持機能を強化する必要がある、そのためには、たとえば、どうやったら国連の平和維持機能が強化できるか有識者の意見も聞こうじゃないか、こういうふうな決議が、これは全会一致でもって去年の十二月三日に通過したわけでございます。  そこで、日本政府といたしましても、有識者の意見を聞いて、どうやったら国連の平和維持機能が強化されるかというような点から、先ほど申しました、有識者にお願いして意見、見解を取りまとめていただくことを依頼したわけでございます。これが研究会の設立目的でございます。  それから、第二番目に先生御質問の、その研究会のメンバーでございますけれども、七人の方に実はお願いしたわけでございます。これは、国連問題について非常に精通しておられる有識者という観点からお願いしたわけでございますけれども、お名前を申し上げますと、緒方先生、それから香西先生——これは京都大学の先生でございますが、小谷先生、それから斎藤先生、それから佐伯先生、波多野先生、それから山室先生の七方に研究会に参加していただくようにお願いいたしまして、それで、ことしの初夏から数カ月にわたりまして討議を重ねてきたわけでございます。  討議の主な中身といたしましては、どうやったら国連平和維持機能が強化できるかという観点から、先ほど申した国連の平和維持機能の第一義的な責任者である安全保障理事会、これは残念ながら余りうまく動いてないわけでございますけれども、どうやったらこれが強化されるかという点、それから、事務総長に対して、事務総長のいま権限と申しますのは非常に漠としておりまして、余りはっきりしてないんでございますけれども、事務総長のいわゆる調査権限とかあるいは紛争の調停権限をどうやったら強化できるかというふうな点、それから、現在、国連平和維持軍というのが中東あるいはキプロスに派遣されておりますけれども、これも国連憲章上は必ずしもはっきりした規定がございませんで、この国連平和維持活動に対してもうちょっとはっきりした任務等々を与えるべきではないか、こういうふうなこと、あるいは、現在、先生御承知のとおり、ラテンアメリカには米州機構というのがございますし、アフリカにはアフリカ機構というのがございますし、それぞれの活動をしておるわけでございますけれども、それといわゆる国連そのものとの平和維持機能とをどうやったら結びつけることができるのか、こういったようなことを検討していただいたわけでございます。その結果、先生いま御指摘のとおり、九月八日に提言をいただきまして、いま申し上げたような大体討議項目をその提言の中にいただいたわけでございます。  それから、先生最後に御指摘の、日本のとるべき役割りというものにつきましては、これは、事務総長——国連の総会決議自身は、国連の平和維持機能、どうやったら強くなるかということでございまして、日本のとるべき役割りについての御提言というのは、国連総会からの依頼と申しますか、要請に対しては直接関係がございませんので、この部分は省略いたしまして、国連の平和維持機能をどうやったら強化できるかという観点からの提言を、国連に、民間有識者の意見としまして、外務大臣から先般国連事務総長に提出したわけでございます。
  68. 片山甚市

    片山甚市君 外務省の説明はわかりました。説明がわかったということと納得したということは別であります。  そこで、日本がとるべき方法について、自衛隊を国連軍に参加させる、いわゆる自衛隊の派遣の問題と自衛隊法との関係でございまして、それは憲法九条及び自衛隊法三条に対しては違反するという——まだ明確にされておらないところでありまして、これは単なる研究機関というけれども政府はこれを尊重するという立場で、直接国連総会に反映させるということであったんであります。世論がありますから、今後とるべき事柄についてはこれを持っていかなかったというだけでありまして、一体のものとして考えますと、この中にNHKの解説委員長である山室さんが参画しておることについては、憲法に抵触したり自衛隊法に抵触する問題について、これがまとめられたことについて非常に奇異に感じます。特に、公共放送としては、御承知のように放送の不偏不党、公正な放送を行うという立場から、NHKは重大な使命を有しておると思います。それで、このことについてはNHKとしてどういうふうにお考えですか。
  69. 川口幹夫

    参考人(川口幹夫君) 国連の事務総長の委嘱を受けて、日本に国連の平和維持の機能強化に関する研究会を置くということで、外務省から山室解説委員長に委嘱がありました。山室君は、この研究会の性格などを確かめまして、政府から全く独立した形のもので、研究会の提言を政府が参考にするか無視するかを問わないという性格のものであるということでありまして、これに研究会員として参加をしたい、委員として参加をしたいというふうなことを私どもに求めてまいりました。で、私どもも、政府から審議会等の委員の委嘱を受けた場合には、その趣旨とかあるいは人選の内容等を検討した上で可否を決定しておりますけれども、今回についてはその趣旨は良であるということで参画を許可したものでございます。  ただ、その結果、委員会の提言として決められた、発表されたものがいまおっしゃるような重大な意味を持っているというふうなことは、私ども十分に理解いたします。で、そのことが、たとえばNHKの解説委員長という職にある者がその中に入っていたということで、たとえば公正中立なるべきNHKの姿勢を疑わせるというふうな結果になった、あるいはそういうふうに誤解されるということでありますと、これは大変に遺憾であります。したがって、私どもは、このことについては、当該の問題に関して研究会が議事を進めるときに、解説委員長は態度を保留すべきであったというふうに考えます。このことについては本人もいま反省をしております。
  70. 片山甚市

    片山甚市君 いまのお話でおおよそわかりましたが、たとえ個人の資格で参加を許可したといたしましても、討議内容が重大であるということから、山室解説委員長は憲法を遵守する認識があれば、事前に協会にこのようなことになっておるんだがということで報告があるべきだと思います。また、憲法問題にかかわることがわかっていて、山室解説委員長が私見としても提言を正しいものと受けとめていたとすれば、視聴者に予断を与えるということで問題がある。こういうことで、会長からこの問題の取り扱いについての御所見をまず承りたいと思います。
  71. 川原正人

    参考人川原正人君) いま川口専務が申しましたとおり、私どもとしては、当初は、中身がわからない段階では、この種の研究会に参加することはそれは差し支えなかろうという判断をしたわけでございますけれども、最終の段階において、あの提言の内容であるならば、これは山室としては態度を留保というか、その部分については別な見解を当然とるべきであったと。それは非常に不用意でありましたし、本人もその点は反省しておりますし、私どもとしても厳重に本人に注意をいたしまして、今後この種の問題の扱いについてはさらに慎重を期したいと、かように考えております。いやしくも公共放送としての立場を誤解を受けないように、繰り返しくれぐれも厳重に反省をし、注意をしたいと思います。
  72. 片山甚市

    片山甚市君 少ししつこい事柄ですけれども郵政大臣の御所見はどういうことでございましょうか。
  73. 桧垣徳太郎

    国務大臣桧垣徳太郎君) NHK役職員がどのような研究会あるいは審議会に参加をするかあるいは参加をしないかという問題は、参加を求められました役職員自身、またNHK自体の判断にまつべきものであると私は思います。  ただ、NHKは申すまでもなく公共放送の使命を帯びておる機関でありまして、公正でなければならない、また政治的に中立でなければならないということになっておるわけでありますから、そのようなNHKのあり方というものが誤解されるようなことはこれは避けなければならぬことでありますので、NHKの持っておる使命にかんがみまして、これらの問題について当事者及びNHKにおいて慎重な判断をすべきであるというふうに私は思っております。
  74. 片山甚市

    片山甚市君 この件はそのぐらいにいたしまして、次に、放送衛星と難視聴の関係についての質問をしたいと思います。  去る第九十八回国会で、本委員会でのNHK五十八年度予算審議の際に指摘いたしましたのですが、受信料値上げがうわさされる今日、国民生活が非常に厳しいときだけに、衛星放送について慎重の上にも慎重な対策が必要だと思います。その点、五十五年度から特に衛星放送への経費の充当に大きく傾斜してきたことを重視しなきゃなりません。放送衛星によってたてまえである難視聴解消は一挙に解決するとの答弁をすでにいただいておりますが、そのとおりになるのか、再確認をしたい。それは、難視聴地域における視聴者に負担を一切させるものでないという意味を含めて、負担が重くなりそうでありますから、お答えを願いたいと思います。
  75. 矢橋幸一

    参考人(矢橋幸一君) いままでテレビジョンの難視解消のために、NHK放送開始以来、地上施策によりまして中継放送局建設、あるいは共同受信施設の設置を行ってきました。しかしながら、今後地方の山間部に点在といいますか、しております微小な難視地域を地上施設によりまして解消しようといたしますと、非常に多額の経費が要るわけでございます。これを放送衛星によりまして一挙にかつ速やかに解消するということといたしまして、いままで準備を進めてきたわけでございます。  放送衛星のBS2aでございますけれども、来年の二月に打ち上げられまして、来年の五月には放送が開始できると、本放送に入るということが予定されております。今後は、在来の中継放送局建設あるいは共同受信施設によります難視解消施策を変更いたしまして、衛星放送の受信による施策ということを原則にいたしまして、その普及を積極的に図っていきたいというふうに考えております。  しかし、今後地上施策によります補完ということも必要でございまして、今後、大規模な宅地造成といったような社会変動への対応、あるいは外国電波の混信というようなことに対しましては、やはり必要な地上施策によります置局、あるいは既設局の移転あるいは増力などを引き続き行うことにしたいと思っております。しかし、地上放送施設につきましては、衛星放送によりますと非常に現在の地上施設で行っておりますようなきめ細かいローカル放送ができませんので、放送法の第四十四条に基づいて行っております各局単位のローカル放送につきましては、地上の局で引き続き実施するために残していくというふうに考えております。
  76. 片山甚市

    片山甚市君 私の質問の要旨は、視聴者に対して負担を多くさせないようにすることを努力しておるかという質問でありますが、後からもう一度その点についてはお答えございませんからお聞きします。  私の手元にある資料によると、難視聴用地上施設は、施設局が三千四百三十四局あって、そのうち民間との共同施設は千百三十だと聞いています。共聴施設は一万五百七十七、昭和四十四年以降今日までそうやられたそうです。建設費は一千百八十一億円使ったと書かれておりますが、難視聴解消世帯数は六百十万世帯、残る難視聴世帯数は約四十三万、二万二千地区にわたると書かれておりますが、そういう意味で、それをもしやるとすれば、難視聴解消のためには一千三百億円かかる、こういうふうに書かれておるんですが、このとおり大体おおむねよろしゅうございますか。
  77. 矢橋幸一

    参考人(矢橋幸一君) いまお話しのとおりでございます。
  78. 片山甚市

    片山甚市君 そうすると、四十三万世帯を中心に衛星放送が送られて一挙に解決するということですが、その場合のコストはどういう程度になりますか。
  79. 坂倉孝一

    参考人(坂倉孝一君) ただいま先生の御指摘がございましたように、NHKが難視解消というNHKの基本的な役割りを果たすためにいろいろな地上の施策を進めてまいりますと、いま先生からお話のございましたような莫大な経費がかかるわけでございます。それから、非常に長時間を要するわけでございます。そういう難視を一挙に解消するということでこの放送衛星の打ち上げの計画を五十五年以来進めてまいったわけでございますけれども、ただ、この衛星放送につきましては将来に非常に大きな活用の道というものを持っているわけでございまして、私どもといたしましては、基本としてはこの難視解消ということでやっていくわけでございますけれども、やはり将来についての放送衛星の持つ意味、役割りというものを十分考慮に入れながらこれを今後進めていきたいというふうに考えておりますので、端的にそれがその四十三万のコストに対応するといった問題ではないんではないかと考える次第でございます。
  80. 片山甚市

    片山甚市君 そうすると、今日まで難視聴に対して建設投資をいたしましたもの、あるいは老朽施設の更新などについても全くむだがなく、さらに難視聴を一挙に解決するためには、放送衛星の利用ということであれば非常に便利だと、こういうことでありますが、それだけの放送設備が完備され、どこでもテレビが見えるということでありましょうが、そのかわり視聴者個々人には高額の受信設備を負担させるということになり、料金値上げの話につながるということはありませんか。打ち上げられたいわゆる放送衛星で受信をするために高額の受信機を必要とする、そういうことで、NHKは負担しないけれども受信者の方が大きな負担をするということにならないでしょうか。お答えを願いたいと思います。
  81. 坂倉孝一

    参考人(坂倉孝一君) この衛星放送を受信していただきますためには、それはやはりどうしてもパラボラアンテナでありますとかあるいはチューナーでありますとか、そういったものを御用意いただかなければならないわけで、そういった意味では御負担をいただく部分があるわけでございますけれども、私どもといたしましては、確かに衛星放送というものを新たに開始いたしますには相当な経費が必要であるわけでございますけれども、やはりこの難視解消以外に、先ほども申し上げましたように非常災害対策であるとか、機動的な番組中継でありますとか、あるいはさらに地上放送では享受し得ないような、将来に向かいましてはそういった衛星放送独自の番組、非常に視聴者の方々の放送に対する要望というものが多様化しているこういう時代におきまして、やはりそれにおこたえするような方向というものも考えながら新しい利用に向けてやっていかなければいけないと思いますけれども、ただ、私どもが衛星放送を始めるからといって、これに新たにそれだけのための受信料値上げといったような考え方は持っているわけではございません。当然、この新しいことをやりますためには、いままでのNHKの全体の仕事のやり方をもっと効率的なやり方に変えまして、そしてその効率計画と合わせながらこの新しい衛星放送を初めニューメディアの実用化に取り組んでまいりたいというふうに考えているわけでございます。
  82. 片山甚市

    片山甚市君 そうすると、大都会と離島と比べまして、今度の受信アンテナに必要な経費等はどちらが多くかかりますか。むしろ山村僻地灘視聴の地帯及び離島では多くの受信装置が高額にかかるということになりませんか。
  83. 坂倉孝一

    参考人(坂倉孝一君) 離島、特に小笠原島でございますとか大東島でございますとか、こういったところに対する衛星放送の受信につきましては、直接の個々のパラボラをおつけいただいてお聞きいただくという形ではない方向で考えたいというふうに考えているわけでございます。  その他におきましては、やはり個々のアンテナをおつけいただくということで、それにつきましては、都市あるいは僻地におきましてもそう経費に差があるわけではないのではないかと思います。ただ、今後ともそういった受信のための視聴者が御負担いただくものにつきましては、軽減する方向で、安い受信機の開発あるいはアンテナの小型化といったようなものに一層技術研究を続けたいというふうに考えております。
  84. 片山甚市

    片山甚市君 これから五年間に衛星放送を受けられる世帯数、加入者数を五十万程度にしたいということでありますから、その経費がどのぐらい高くつくかは明らかであります。三千万世帯、三千万加入者が見られるものではなくて、当面技術先行をやりますから、放送衛星のために必要な経費は三百二十億円もかかっておる。そういうことでありますから、そのつもりで、そのことがNHKのいわゆる経営に、財政に大きな負担にならないように十分に検討してもらいたいと思います。  次に、文字多重放送の実用化についてでありますが、視聴者のニーズの多様化にこたえてともっともらしく言われておりますが、全く似て非なる結果となっているのではないだろうかと思うのが昨日から始まりました文字多重放送であります。NHK放送開始された聴力障害者へのサービスとして今日までの開発努力は多といたしますが、その内容はどのようなものになっていますか、まず御説明を願いたいと思います。
  85. 矢橋幸一

    参考人(矢橋幸一君) NHKといたしまして、文字多重の研究につきましては、昭和四十七年から開始いたしまして、昭和五十一年には東京及び大阪で野外実験を行っておりまして、昭和五十五年のパターン方式の技術基準の答申案の作成につきましてわれわれは寄与したものと思っております。  また、昭和五十六年には新しくパターン方式とコード方式の両方の方式のメリットを一緒にいたしましたハイブリッド方式というものを開発いたしまして、その技術基準の作成のために現在いろいろ努力しておるわけでございます。また、ハイブリッド方式では、いわゆるデータの誤り——電波が届くときにいろいろなデータの誤りが出ますけれども、その誤りを訂正する新しい方式を開発いたしまして、同時に最近の文字発生器という受信機側に入れるものでございますけれど容、必要な半導体メモリーの価格が急激に安くなりました。そういう意味から実用化の見通しが得られたということでございます。
  86. 片山甚市

    片山甚市君 そういたしますと、視聴者の拡大は、努力するとすれば、実験放送の域を出ない程度にどのぐらいの数を目標にしますか、文字多重放送を受信をされる数は。
  87. 矢橋幸一

    参考人(矢橋幸一君) 先般来説明しておりますように、当面東京、大阪地区を限定いたしまして、実用化試験局ということで聴力障害者を対象としたサービスでございます。そういう意味でございますけれども、文字多重放送の普及には努めたいというふうに思っております。  番組内容というものが一番重要でございますけれども、われわれ技術サイドから見まして、受信機価格を安くするということにもいろいろ研究もしておりますし、その成果も生かしながら、同時に関係方面へ価格の低廉化というものを要望していきたいと思っております。  また、きのうから始まっておりますけれども、文字多重番組の実用化試験局の中で新たに新しい表現手段などの開発も行いまして、多様な画面制作技術というものの開発を行いまして普及に資したいというふうに思っております。
  88. 片山甚市

    片山甚市君 先ほどお話が出ましたように、民間の放送の方はなぜコード方式しかとらないんで すか。NHKはなぜパターン方式とコード方式を併用した形になるんですか。
  89. 矢橋幸一

    参考人(矢橋幸一君) NHKといたしましては、文字多重放送というものの活用を図りまして、視聴者のいわゆる多様化するニーズにこたえるということを重要な課題として考えておりますけれども、特に聴力障害者向けのにつきましては、関係方面から早期実施という強い要望がNHKに寄せられておりまして、これにこたえるために昨日十月三日からサービスを開始したわけでございます。  先ほど先生から御指摘がございましたコード方式とパターン方式の問題でございますけれども、コード方式というのは、先ほども申し上げましたけれども電波が家庭に届く段階で雑音その他の影響を受けまして文字が変わるとか、たとえば三という数字が四になっていくとか、そういうことがございます。しかし、コード方式というのは同時にメリットもございまして、電送をする情報量が大変多いということもございます。また、パターン方式につきましては、電送する情報量は少ないんでございますけれども電波の伝播中における雑音による誤りというものが大変少のうございます。それで、両者のメリットを合わせまして、同じ文字多重放送の中で、たとえば数字が非常に変わると困るようなものにつきましてはその部分はパターンで送る、そういうパターン方式とコード方式を折衷したハイブリッド方式というものを開発したわけでございます。
  90. 片山甚市

    片山甚市君 時間が来ましたからちょっと聞きますが、難聴者が全国で約三百万、うち聴力障害者が四十四万、関東と近畿のエリアで十三万七千人おられるというのですが、この聴力障害者の現状を踏まえて、いま相当先行実施ということでNHK努力されるようでありますが、このことが二重投資あるいはこのことによって料金を値上げせざるを得ないと、こういうことが起こらないようにしてもらいたいと思うのですが、そのこれからの努力についてもう一度お聞きいたします。
  91. 坂倉孝一

    参考人(坂倉孝一君) 先ほど申し上げましたように、文字多重放送あるいは衛星放送という新しいメディアがどんどん技術的に開発されたからといってそれを直ちに取り入れるということではなくて、NHKといたしましては、受信者の方々の要望、それにおこたえするような形でこの実用化を進めてまいってきているわけでございます。  ただいま技師長から申し上げましたように、文字多重放送については、そういう聴力障害者の方々からの切実な御要望がありまして、実用化試験局でございますけれども、昨日からこれを開始いたしたわけでございますので、私どもといたしましては、やはりNHK全体の経営効率化を図りながらこういった新しい事態に対応していきたいというふうに考えるわけでございます。
  92. 片山甚市

    片山甚市君 最後に一つ。  そこで、この受信機が非常に高額であると聞いているのですが、それはどのぐらいのものになるのか。特に政府機関の中には物品税を引き上げるということを言っております時期でありますから、この受信機については特別に免除方式をとるような努力をしてもらい、障害者に対する福祉の充実を図っていただきたいと思います。  まず、放送協会と、後で大臣からそのことについての御決意を聞きたいと思います。
  93. 川原正人

    参考人川原正人君) 確かにこの種の新しいメディア普及を期待するには受信機の値段というのは非常に問題だと思いますし、特に当面私ども実施しております仕事が耳の不自由な方を対象にしておりますので、その意味ではできるだけ受信機が安いことが私ども望ましいと思っております。私どもがつくるわけではございませんが、いろいろな技術開発の点では私ども若干の知識と経験を持っておりますので、メーカーの方に対してはなおわれわれの持っているいろいろなノーハウを提供することによって低廉化にお役に立ちたいというふうに考えております。  なお、税金等の問題につきましても、もしそういう配慮がしていただけるならばもちろんそういう配慮を期待したいというふうに考えております。
  94. 鴨光一郎

    政府委員(鴨光一郎君) 先ほどからお話がございますように、文字多重放送につきましては、昨日からNHKにおきまして実用化試験局ということで放送が開始をされているわけでございます。私どももこの実用化試験局の成果というものを期待をしているわけでございますが、なお、この受信機の課税の問題でございますが、文字多重放送のアダプターそのものにつきましては物品税法上非課税となっているわけでございます。このことを申しつけ加えさしていただきます。
  95. 片山甚市

    片山甚市君 終わります。
  96. 白木義一郎

    白木義一郎君 初めに五十五年度決算概要を一通り拝見して感じますのは、この年、受信料の改定が行われましたものの事業収入が案外に伸び悩んでおるようでございます。  いろいろな問題が含まれていると思いますが、まずその事業収入の伸び悩んだ反省点についてNHKからお聞かせを願いたいと思います。
  97. 渡辺伸一

    参考人渡辺伸一君) 五十五年度値上げをさしていただいたわけでございますけれども、当初四月予定しましたのが一カ月おくれたということもございましたけれども、残念ながら年度中に予定いたしました増加数がそれに達しなかったという状況がございまして、五十五年度収支にかなりの影響を与えたわけでございます。このことをどういうふうにつかまえているかということでございますが、収入につきましては事業活動の重要な財源でございますので、収入は慎重に検討して計上するわけでございますが、当時の国勢調査、それから受信機の普及状況というようなものを見てやったわけでございますけれども、やはり全般的にいいますと、受信機の普及がかなりの限度まできているという状況でございまして、これがこの収入の見積もりと実行との間に差を生じたものだというふうに思っておりますので、今後計画を立てます場合にはその辺を十分に考慮して、大事な収入でございますので、慎重に検討していかなければならぬだろうというふうに思っているわけでございます。
  98. 白木義一郎

    白木義一郎君 そこで、また受信料の改定が取りざたをされておりますが、受信契約者である国民にとって、五年ごとに回ってくる改定は家計に相当な負担を強いていることになります。NHKの財政状況をより以上よくするために御苦労をされていることはよく理解をいたしますが、国民の側から考えますれば、一縷の望みである減税にしても六年間にわたって据え置かれているため、実質所得が年々目減りを続けているような状態であります。こうした国民の生活状態を勘案して、NHKでは今後どのような考え方で運営あるいは経営をしていかれるか、その点をお伺いしておきたいと思います。
  99. 川原正人

    参考人川原正人君) 私ども、全国民の方々からお払いいただく受信料によりまして経営運営しているわけでございます。したがいまして、この受信料をもし改定してより大きな負担をお願いしなければならぬということになれば、これは本当に全国民に影響する重大なことでございますので、あくまでも慎重に考えなければいけないというふうに考えております。  ただ、先ほど来申し上げてますとおり、受信者の数がもう限界に達しておりますので、財政の運営は大変苦しい状況にきております。そこで、私どもただ苦しいから、あるいは新しい事業に新しい経費が要るからそれを直ちに負担していただくというような考えは簡単にとるべきではないと。まず、その前に自分自身がやっております仕事なり仕事のやり方というものを十分に反省し点検をしまして、私ども経営の内部でもっと合理化すべき点、能率を上げるべき点、あるいは経費を節約すべき点がないか、それを徹底的に洗い出しまして、その上でどうしてもやはり財政が苦しく、どうしても収入が足りないという場合には、やはり受信者の合意を得ましてあるいは料金の改定ということをお願いせざるを得ない時期があろうかと思いますが、まず何よりもみずからの合理化を手がけてまいりたいと、かように考えております。
  100. 白木義一郎

    白木義一郎君 いま会長さんから御決意を伺ったわけですが、当然受信料の改定について云々する前にもっと自助努力を進めなきゃならないと。当然のことだと思いますが、たとえば資産の売却あるいは副次収入の推進、既存の業務見直し等、当委員会で機会あるごとに取り上げられた問題ですが、スクラップ・アンド・ビルド方式に徹していくべきではないか。この点について経営計画審議会がどこまで具体的に検討をし、審議をされ、あるいは結論を出されているか、お伺いしたいと思います。
  101. 坂倉孝一

    参考人(坂倉孝一君) 経営計画に関する審議会は、四月にこれを会長の諮問機関として設けたわけでございますけれども、これは公共放送事業体としてのNHKの事業のあり方、そしてこれに関連する財政基盤の確立の方策について調査検討お願いしたいということで発足したわけでございます。そして、審議会はこれまでにすでに八回の会合を行っております。  当初、これまではNHK側からNHK経営の現況といったようなものを総括的に御説明申し上げました後、放送関係、技術関係、あるいは財政の基盤になります営業関係、あるいはニューメディアといったような、そういう個別な問題について、状況あるいはNHKの現時点における考え方といったようなものの御説明を申し上げまして、八月には地方の御視察もいただきました。そして、この秋からはそれをもう少し経営全般に関連する諸問題ということで、総合的に御検討をいただくということで、その検討の段階に入っているというのが現状でございます。
  102. 白木義一郎

    白木義一郎君 先ほど会長が述べられたように、さらに経営努力を真剣に繰り返していただきたいと、重ねてお願いを申し上げておきます。  次に、国際放送についてお伺いをしますが、国際放送の拡充強化については私が前々から当委員会で申し上げておりますように、国際交流が活発化してまいります。したがって、ますますこの国際放送は重要性が高まりつつあります。しかし、現況は、御承知のとおりに、諸外国と比較して送信体制が余りにも貧弱であり、遠隔地では聞こえないことが議論をされ、しばしば指摘をされてまいりました。    〔委員長退席、理事片山甚市君着席〕  この国際放送については、一つはNHKが自発的に行うもの、もう一つは政府が命令して行うものとあるように心得ておりますが、いまのところ十億円の交付金が出されておりますが、これからこの重要性について、拡充強化のためにどのように措置をしていかれるのか、お伺いをしておきます。
  103. 鴨光一郎

    政府委員(鴨光一郎君) 国際放送につきましては、その重要性にかんがみまして、御指摘のように従来からわれわれも力を入れてまいったわけでございます。その中でNHKに対します交付金につきましては、従来からその増額を図ってまいったわけでございますが、来年度につきましても、先生御承知のように非常に厳しいマイナスシーリングという財政状況の中でございますけれども、省内の予算の枠内でのやりくりをいたしまして、五十九年度も十億二千二百万円の要求を行いまして、この要求の実現に、年末に向かいまして努めてまいりたいと考えているところでございます。  ちなみに、五十八年度予算は十億五百五十万ということでございまして、総体マイナスの中で、私どもといたしましては、ささやかではございますけれども、この点につきましてのやりくりをして要求をしたということでございます。    〔理事片山甚市君退席、委員長着席〕  なお、受信改善ということに関します拡充強化の計画でございますが、この受信改善を図ることが大きな課題でございまして、送信施設の拡充強化を図ることがそのために必要であるということで、概要といたしまして次のようなことを考えております。  一つは、現在八俣の送信所、これの施設が御指摘のように弱いものでございますので、これの規模を三百キロワットの送信機四台、百キロワット送信機四台というふうに整備増力をしたい。それから、できますれば五百キロワットの送信機を持つ新送信所の建設も考えたい。それから、遠隔地の受信状況を抜本的に改善をいたしますために、アフリカ、中米あるいは南西アジアに海外の中継局を確保したい。もちろんこれは相手国のあることでございますので、この辺相手国との折衝が必要でございますので、外務省などともお話をしながら確保したいと考えているところでございます。
  104. 白木義一郎

    白木義一郎君 ただいま御説明を伺ったんですが、八俣の送信所が大変古びて物の用に立たないというわけで、三百キロワット送信機四台、百キロワット送信機四台で、総額百四十億円、新送信所には五百キロワットの送信機四台を計画土地代を含まず百二十億円を計上し、まず土地の選定から入ると、こういうように伺ってますが、さらにその点について立ち入った御説明を願います。
  105. 鴨光一郎

    政府委員(鴨光一郎君) 先ほどお答えをいたしました中の、八俣の送信所の強化計画でございますが、現在百キロワット八台、五十キロワット二台で送信を行っておりますけれども、これを三百キロワット四台、百キロワット四台に拡充をすることといたしまして、これを五十九年度から四カ年で実施したいというふうに考えているところでございます。  それで、先生御指摘のように、この八俣の送信所の建設費といたしましては、四カ年で百四十二億を予定いたしております。このほかに、新送信所は用地代を含めますと百七十三億、それから海外中継局のうちアフリカのものがほかの二つのものに比べまして話が比較的進んでおりますが、仮にこれの借料は、私どもの考えているところによって実施をいたしますと、単年度で五億八千万円、四カ年では二十三億円、こういうふうな数字になるわけでございます。
  106. 白木義一郎

    白木義一郎君 国際放送の拡充策の御説明を受けたわけですが、この拡充策によって、八俣送信所はどの程度に改善されて、そしてどこまでその送信が可能になっていくのか、お伺いします。
  107. 鴨光一郎

    政府委員(鴨光一郎君) 八俣につきましては、先ほど申し上げましたような三百キロワットへの増力ということを考えておりますが、ほかにもその海外中継局の確保等も含めて総体的な拡充強化を私ども計画をいたしておるところでございまして、その計画の中では八俣送信所からの電波は、主としてでございますが、アジアあるいは太平洋地域といった比較的近隣のところを考えているということでございます。
  108. 白木義一郎

    白木義一郎君 さらに送信を世界的に充実していくためには、いま三つの海外中継局の設置が必要であると、こういうお話ですが、その点お伺いしておきます。
  109. 鴨光一郎

    政府委員(鴨光一郎君) 地域といたしましてはアフリカ、中米、南西アジアというふうに考えておりますが、このうちアフリカに関しましてはガボンにつきまして本年六月に外務省、郵政省等から成ります調査団を派遣いたしまして調査実施しております。なるべく早い時期に中継放送を開始したいということで、現在大蔵省と折衝をしているところでございます。  それから、中米につきましては、具体的にはパナマにつきまして本年の四月初めに、これも外務省、郵政省等から成る——これはコンタクトミッションという形のものでございますが、これを編成派遣をいたしましてわが国の考えを説明をいたしまして、相手国の意向を打診をいたしたわけでございます。で、七月になりましてパナマ側から正式に調査団派遣の要請がございましたので、これに応じましてことしじゅうには調査団を派遣する予定にいたしております。ただ、このパナマにつきましては、現在この短波の施設がございませんので、この点につきましては外務省と相談をいたしまして、経済協力で施設を建設するというふうなことについての検討を目下行っているところでございます。  それから、南西アジアにつきましては、いまアフリカ、中米等について申し上げましたほどには具体的な対象国が決まりかねておりまして、現在外務省と協議しながら検討中であるという状況でございます。
  110. 白木義一郎

    白木義一郎君 いま拡充強化のための内容を伺ったわけですが、これらの中継局の設置については相当な予算が要ることは当然でありますが、それについては概算要求に入らないために別途に要求をしていかなきゃならぬと、そういうようなことですが、当然外務省、大蔵省等に積極的に働きかけてその実を上げていただきたいと思います。  国際放送はもう御承知のとおり、世界の各国との国際親善あるいは国際平和を推進する重要な使命を帯び、かつ最近では、経済摩擦の解消のためにも諸外国との交流に当たっては、非常に重要性を増す平和推進の大きな国策であらねばならないと重ねて強調をしてまいりました。当委員会でも前大臣が大変共鳴をされまして、国際放送の果たす役割りを認識されまして、自民党通信部会が積極的に強化策を提出してきたようなことを伺っております。その内容報告とその抜本的に取り組んでいく決意をお伺いしたいと思います。
  111. 桧垣徳太郎

    国務大臣桧垣徳太郎君) 白木委員のお話のように、最近のわが国の国際的な地位の向上に伴いまして、国際放送の重要性はますます増大をしてきていると認識をいたしておるわけでございます。私も就任以来この問題については真剣に取り組んできたつもりでございます。御案内のような、わが国の国際放送の送信体制は非常に弱体でございまして、受信の不良な地域が多いということでございまして、受信状況の改善を図ることが喫緊の課題であると思っておるわけでございます。  この問題につきましては、白木委員の御指摘にもありましたように、郵政省の一般会計の枠がはなはだ小さいものでございますから、この受信状況の改善のための予算の要求というものが、いわゆる財政当局が示しまた閣議が了承しましたシーリングの枠内では何ともならないという形でございますので、このシーリングの際にも、閣議の席上で私から、国際放送については財政当局においても特段の配慮を願いたいということの発言をいたしておきました。また、そういう考え方から、与党に対しても緊密な連絡をとってまいりました。八月末の概算要求の際には、いわゆる概算要求の枠内に入らないのでございますが、与党の通信部会はもとより、政審及び総務会の了承もいただいておりますので、そういうような郵政省のみならず与党の強力な要望事項でもあるということであるので、格別の配慮をしてもらいたいという枠外要求をいま出しておるところでございます。これにつきましては外務大臣にもよく連絡を私自身からいたしておりまして、外務大臣も閣議の席上で、そういうものを、国際放送の強化の問題が必要であるということの発言をしてもらっております。自由民主党の方でも、この問題については強力に推進をするという方向で御検討を願っておるという段階でございます。ぜひとも五十九年の予算の中で実現をいたしたいというのが私の考えでございます。
  112. 白木義一郎

    白木義一郎君 大変大臣の意欲満々な御決意、所信を伺って心強い限りでございますが、これは言葉あるいは話題に出ればだれ人も賛成せざるを得ない重要な問題でありますが、ともすれば専守防衛等の大きな問題に巻き込まれてそして押し流される心配がございます。これからの国防の最も大事な実質的な問題は、民間の文化の交流と、このような国際放送を通じての世界的な人類の交流、理解あるいは不信感を取り除くことこそ積極的な防衛、国防になるというように考えておりますので、ぜひひとつ諸事に優先して、いま発言をされたことをさらに強力に推進をしていただきたいと思います。  次に、昨日から開始されました文字多重放送で、これは当然この放送の技術的開発の成果であることは申すまでもないと思いますが、その第一の目的は聴力障害者の方々に対するサービスだと、先ほどもそのように御説明がありました。にもかかわらず、一方では、ニューメディアブームで、情報過多社会にならないかというような心配の声も次第に上がっておりますが、いずれにいたしましても、所期の目的である聴力障害者の方々の福祉のためになされたこの文字放送が、現場では、つまり各地方自治体の福祉の窓口に浸透していないのが実態です。これは明らかにPR不足であり、東京都の各区の窓口に当たってみましたところ、ほとんど承知をしておりません。それから、いま行われておる大阪地方でも同じような状態でございます。このままいきますと、当初の目的と大きく離れていく心配がありますので、今後このような点について、郵政省、またNHKはどういうお考えで実を上げていかれるか、最初にお伺いをしておきます。
  113. 荒井治郎

    参考人(荒井治郎君) お答えいたします。  ただいま御指摘のとおり、NHK文字放送につきましては、関心が大変高うございまして、きのう放送を始めまして、けさまでの間にその反響が百四十件ほど私どもの手元に参ってきております。  その中身を見ますと、耳の不自由なお子さんを持っているお母さん方から、この文字放送というのは大変結構だという感謝の電話も実はいただいているわけでございます。  さて、御指摘のPRでございますけれども、PRにつきましては、一つは一般の方々に向けてと、それからもう一つは、いま御指摘の聴力障害者の方々へのPRの二つに分けて考えられるんじゃないかと私ども考えております。  一般の方々の広報の関係につきましては、当然放送番組がございますし、それからパンフレットとかリーフレットなどの広報印刷物を行っております。それから、新聞だとか雑誌などに関連いたしましてのパブリシティー、こういったいろいろな方法を通じまして積極的に実施はしてきているつもりでございます。  例を申し上げますと、たとえば放送番組について御紹介いたしますと、一般番組といたしましては、教育テレビで、「聴力障害者の時間」というのを日曜日の夕方やっておりますけれども、この「聴力障害者の時間」とか、それからこれは「六〇〇こちら情報部」という番組がございます。これは「なんでも相談」というような項目もその曜日によってはあるわけでございますけれども、こういう中に自然にこういう問題を入れまして、事前に周知をするというようなこともやっております。  それから、きのうはどういうようなことをいたしましたかと申しますと、開始に当たりましては、朝の七時のNHK「ニュースワイド」、それから正午のニュース、晩の七時のニュース、それに夜の「ニュースセンター九時」と、こういうところで積極的に放送してまいったわけでございます。これは一般の放送でございますけれども、広報番組でございますが、これにつきましては事前にやはり周知をしておりまして、晩の七時のニュースの後の「NHKガイド」の中で紹介をいたしましたり、また日曜日の夜の「NHKの窓」、こういうことでやはり事前に周知をしてございます。また、この放送が出ます東京、大阪では、先週の月曜日から十月の二日までローカル放送で「ステーションブレーク」と申します三十秒ぐらいの番組とか、それからお知らせの中で集中的に実施もしてきているわけでございます。  これは一般のPRでございますけれども、聴力障害者の関係でございますが、ただいま御紹介申し上げました「聴力障害者の時間」で周知をいたしましたのは、これは当然でございますけれども、そのほか全日本聾唖連盟とか、それから聴力障害者情報文化センター、それから全国聾学校長会、こういう団体がございます。それからさらに、全国難聴者連絡協議会、こういう団体が聴力障害関係の方のいろんな団体と連絡をとり合いまして、この文字多重放送理解を深めるためにいろいろ話し合いを進めて今日まで運んでまいったわけでございます。  たとえば全日本聾唖連盟というところで「日本聴力障害新聞」というのを発行してございますが、その中に文字多重の準備段階から詳細に説明した記事を載せて、聴力障害者の方々にも御理解をいただくように運んでまいった次第でございます。  しかしながら、先生の御指摘のとおり、まだまだPR不足の面がいろいろあろうかとも思いますので、聴力障害者の方々を中心にこの文字放送の果たす役割りというのは、これは重要であるというのは十分わかっておりますので、さらにさらにいろいろと気配りをしながら、そういう点のないようにPRを進めてまいりたいと思っております。
  114. 白木義一郎

    白木義一郎君 いま御説明があったとおり、現在の機械でスイッチを入れれば見えるというようなことであればもう十分だろうと思います。ところが、ここに問題は付加装置をつけなければならない。その付加装置が十万円以上だと。おとといですかね、教育テレビで手話をしながらやっておりました。皆さん方は十万円は大した金額ではないと思っていらっしゃると思いますが、これを購入できない聴力障害者の方がどのぐちいおられるかということを掌握されていらっしゃいますか。つまり、生活保護を受けている障害者の方々、ここらあたりに関心を強く持たないと、せっかくの高度な技術開発が、あるいは最初の目的である障害者の方々にサービスをするというNHKの本質からかえって逆行する心配を持っております。その点、お伺いしておきたいと思います。
  115. 矢橋幸一

    参考人(矢橋幸一君) お答えいたします。  いま御指摘がございましたように、文字多重放送の受信機に使いますチューナーの件でございますけれども、アダプターの値段につきましては、われわれも文字多重放送の研究をいろいろやっておりますときに、われわれは放送電波を出す方とそれから受ける方、送受一体のシステムとして受信機が安くなるようにいろいろ研究をしてきたわけでございます。そして、その研究の成果を、機械を実際つくりますメーカーの方へいろいろ技術指導をしてまいりました。特に電子機械工業会とも緊密に連絡をとりまして、安く普及するようにいろいろと要請もしてまいったわけでございます。  御指摘のように、現在文字多重の受信機の値段につきましては、AVテレビと申しまして、映像あるいは音声の入力端子というものがついております最近ここ数年売られている新しい受信機で、内蔵型につきましては五万円程度高い。いわゆる文字多重の関係が入っていないテレビに対しまして五万円高い。アダプターにつきましては御指摘のように十万、十一万というような値段でございます。しかし、今回は何と申しましても実用化試験局でございますので、急激な普及ということは無理かもしれませんけれども、やはり徐々に普及してまいりますとともに、量産効果と申しますか、そういうことでコストは下がるだろうとは思っております。また、われわれもそれを期待しておるわけでございます。  あとNHKといたしまして、そういった身体障害者の方々の文字多重受信機の購入の助成策につきましては現在考えておりませんけれども、受信の技術指導そのものを積極的に行いまして、より安い受信機の普及につきまして、いろいろ関係方面へ今後とも少しでも安い受信機が行き渡るように努力したいと思っております。  なお、聴力の障害者に対しまして日本電子機械工業会加盟の家電メーカーの各社を初め、NHKのサービスセンターそれからNHKの厚生文化事業団から東京及び大阪地域の聾学校あるいは身体障害者福祉センターなど百二十の施設に百二十三台の文字放送用受信機というものを寄贈しているということを申し添えておきたいと思います。
  116. 白木義一郎

    白木義一郎君 いまの最後の各施設に百台あるいは百二十台の機械を寄贈したと、これはNHKからされたわけですか。
  117. 矢橋幸一

    参考人(矢橋幸一君) NHKの関連団体でございますNHKのサービスセンター、それからNHKの厚生文化事業団からでございます。
  118. 白木義一郎

    白木義一郎君 この問題はNHKにそれ以上のことを望むのはこれは酷だろうと思います。  そこで、ぜひ大臣にひとつ一肌、二肌、脱いでいただかなきゃならない。御要望をぜひ一つ申し上げたいと思いますが、現在聴覚障害者が全国で三十一万七千人おられるようです。その中で生活保護受給者である障害者の方が一万一千人、この方々は当然こういうNHKのサービスがいま行われ始めたにもかかわらず、そのサービスを受けられないような方々であります。そこで、簡単に申し上げると、この生活保護受給者である聴覚障害者の一万一千人の方々にアダプターを政府が一個ずつサービスすると十一億円で行き渡るわけです。一肌お脱ぎになる気持ちはございませんか。そうでないと、このサービスがこれらの人たちにはかえって悲しみを増すようになりはしないか。せっかくできても自分たちは貧しいからNHKのサービスを受けられない、あるいはよそのうちへ行って見せてもらわなきゃならない、こういう方々の立場になるとサービスがあだをなすようなことになることを非常に私はおそれるわけでございます。  そこで、ぜひひとつ大臣、総理になられたような気持ちになってこの問題の推進に取り組んでいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  119. 桧垣徳太郎

    国務大臣桧垣徳太郎君) 余り思い上がった心境になってはならないと思っておりますが、文字多重放送が開始をされまして難視聴の方々に文字、図形の表示ができるようになりましたことは大変私も喜ばしいことだと思うんですが、一面、お話しのように、内蔵型のテレビにいたしましてもあるいはアダプターにいたしましても、かなりの経済的負担が加わっていくということであって、難視聴の方々でしかも低所得の方々についてはその点の負担の問題が大変気になるということは、私も白木委員と同じ気持ちを持っておるわけであります。  ただ、これはもう委員も御承知のように、個人の財産に対する助成というのはこれはしないというのが補助原則になっておるわけであります。ただ、福祉の関係だけは別の扱いがされておるようであります。私は逃げ口上を言うわけではありませんが、郵政事業の中で個人財産に対する助成の予算化というのは、私は困難というよりもそもそも成立をしないであろうというふうに思うわけでございます。福祉対策の一環としてこれが扱われるかどうかということが問題の解決への接近の仕方であろうと思いますので、関係の向きに、白木委員の御要望もあったわけでございますし、また恐らく当委員会における共通のお考えでもあろうかと思いますので、福祉担当の向きに対して私からも要請をしてみたい、努力をしてみたいと思います。
  120. 白木義一郎

    白木義一郎君 そこで、本来ならばNHKがこの推進に当たると並行して、いま大臣からお述べになりましたような具体的なサービスの方策を同時に打ち出していくべきがわれわれ政治にかかわる人間の責任じゃなかろうかと思います。  そこで、各区の窓口に問い合わせたところが、その点は皆無である、こういう返事が返ってきたわけです。そこで、総選挙含みのこのごろにおいて自民党政府がこの十一億を投げ出すと、これは大変野党のわれわれとしてはえらいショックになるような戦略的問題を含んでいるように思いますが、それはそれとして、ぜひひとつまた大臣、ここで総理並びに各閣僚にこの点を真剣に訴えられて、非常に関心が高まってきたその陰で、かえってそのためにつらい思いをしなければならない方々が大ぜいいる、そこに為政者は温かい施策を向けていくのが本当だろうと思いますので、ぜひともひとつ国際放送並び文字放送について大臣の御奮闘をお願いをしておく次第でございます。  最後に、先ほども大森委員から取り上げられましたが、オリンピックの放送権料について年々倍々ゲームのように高騰をしていくことを大変心配しておりますが、これはいろんな問題が含められておりますが、今後の問題として、このオリンピック放送NHKが断じて単独で独占していく、それから先ほど御説明がありましたように、民放と提携をしながら、話し合いを繰り返しながら、国民の、聴視者の要望により充実した放送を提供していくという行き方と、それから完全にNHKはおりて、そして民放に独占をさせると、大きく三つに分けて考えなければならないような気がいたしますが、この点どのようにお考えでしょうか。このままで次も次も行かれるのかということです。
  121. 川口幹夫

    参考人(川口幹夫君) 先生おっしゃるとおり、オリンピックの権料の高騰はこれから後ますます拍車をかけるのじゃないかというふうな心配がございます。それは二つ大きな原因があって、一つは、開催国、オリンピック組織委員会それからIOCが、放送権料そのほかによるお金でもって開催を賄おうというふうな考え方がありますこと、それからもう一つは、アメリカの三大ネットワークという大きな放送会社がお互いにオリンピックの権料に関しては非常に競っておりまして、年々その額が高騰していく、いわゆる先駆者となるというふうな状況がございます。  今後、このまま放置しますと、やっぱりわれわれ自体がある決心をしなければいかぬのじゃないかというふうに思いますけれども、私どもは、先ほど大森先生にお答えしましたように、まず日本が一つになって交渉に当たらなければいけない。民放、NHKという立場を一緒にして日本の国民のために権料交渉をやるべきだというふうに思います。  さらにこれを大きく考えれば、たとえば放送連合という組織がございます。ヨーロッパ放送連合EBUという組織だとか、それからアジア放送連合はABUでございますが、それぞれが一つの何といいますか、共通の利益のもとに放送権料の交渉をやるというふうな形も考えなければいけないんじゃないか。そういう意味では、今後大きな問題として、私どもはその辺のところをできる限り活用して放送権の高騰を最小限にとどめるべきだと、で、国民にオリンピック放送を十分享受してもらうというふうなことにすべきだというふうに思っております。
  122. 白木義一郎

    白木義一郎君 時代の趨勢といいますか、オリンピックそのものの性格もこれから問われていかなければなりませんが、それはそれとして、来年のオリンピックの放送権料としてNHKが負担するのが約四十億円というように伺っておりますが、毎年のNHK予算の中でこの四十億という比重を考えてみますと、五十八年度国内放送費が八百六億円、その中でオリンピック放送権料が四十億円、こういう比率になりますが、この点をどのようにお考えになっておりますか。  ということは、しばしば全国的に話題になっておりますNHKの大河ドラマ一本が千五百万円から千六百万円、放送権料は四十億円、この四十億円があると、約五年間分の大河ドラマが制作可能で国民の聴視者のところへ届く、こう言われておりますが、一方では、けちけちせずに堂々と大盤振る舞いでやるべきであるというような声もありますが、この点よほど研究し、対処していかなければならないと思います。当然先ほどのお話のように、国内が一致してこの交渉に当たらなきゃならない。これはもう当然ですが、これは各国が乗り出す問題ですから、世界的な問題として、この放送権料のウナギ登りが予想されるわけですから、世界的な放送関係者の衆知を集めて検討していただかなきゃならないような大事な問題じゃなかろうかと思います。  そこで、たとえば国連のユネスコ機関がアマチュアスポーツの祭典であるオリンピックに積極的に関与をし、また仲介の労をとり、あるいはとらせるような働きかけもあるんじゃないか、こういうように考えて申し上げる次第でございますが、いずれにいたしましても、ソウルのオリンピックのときには百億の放送権料になるであろうということが大方の御意見のように伺っておりますので、最後に、いま申し上げたような問題について、NHK並び郵政大臣の対処に対するお考えを伺って、私の質問を終わります。
  123. 川原正人

    参考人川原正人君) オリンピックの放送権料の問題は、これは世界の放送事業者にとって非常に大きな問題でございます。これはいろいろな国際会議等の際にも、これの何とか対処の方策はないかということで、われわれは始終意見を交しますが、率直なところ、いまこれという決め手は、残念ながらなかなか見つかっておりません。  ただ、先ほど川口専務からも申し上げましたように、なぜこんなふうに権料が高くなってきたか。決して他人のせいにするわけではありませんが、やはりきっかけはアメリカの三大ネットワークが競ってオリンピックの権料を独占しようとした。結局、競争すれば、そのオリンピックの主催者は全くの独占でございますから、相手が競争してくれば値段は自由につり上げられてくる。そのことがやはり日本の場合にも、ある時期そのような問題はなかったんですけれども、モスクワオリンピックの際に大変私ども苦い思いをしております。したがいまして、そのときの経験も踏まえて、何とかこれは日本の国内だけでも放送事業者が一致した形で権料交渉に当たらなければどこまででもつり上げられるだろうということで、今度のロサンゼルスの際にも何とかそこの統一戦線を組んで、ロサンゼルスにも民放の代表とNHKの代表が行って何日間も粘る交渉をするということをしたわけでございます。東京におきましても、私自身も民放連の会長と種々緊密な連絡をとりながら当たったわけでございますけれども、残念ながらこのぐらいの金額までしか粘ることができませんでした。  ただ、先ほども大森委員の質問にも私はお答えしましたように、やはり私どもの足並みを何とかしてそろえておかないと、ここがもう一度また自由勝手、商売の勝手だということになりますと、またまたこの権料をつり上げられるということになりかねませんので、まずそこを出発点に押さえて、その上で何とかして主催者の方に強い交渉を進めていきたいというふうに考えております。  先ほど白木委員から御指摘がありましたように、もう少し別な国際機関の協力を求めること等もあるいはこれからの交渉の一つの施策かもしれません。あらゆる方途を考えてまいりたいというふうに考えております。
  124. 桧垣徳太郎

    国務大臣桧垣徳太郎君) オリンピックの放送権料がウナギ登りに上るということは、これは放送事業者の負担の問題でもありますし、また長い目で見れば、あるいは間接的かもしれませんが、視聴者の負担ということにもなるわけでございますので、郵政当局としても大きな関心を持たざるを得ないことであると思っております。  ただ、事の性質上、これは放送事業者とオリンピック主催者との間の交渉によらざるを得ないものでありますが、ただ、交渉のやり方としては、放送事業者間の自主的な協議を前提にして話し合いに入るべきものというふうに思うわけでありまして、それらの体制づくりというような問題について郵政省にたとえばあっせんの申し出があるというような場合には、私どももそのあっせんの労をとることにやぶさかでないという気持ちでおるわけでございます。  また、いまお話が出ました国際機関等との関係におけるオリンピック主催者との協議のやり方というような問題も、放送事業者間でひとつ御協議を願い、また私どももできることならそういう方向に持っていくということについて指導をしてまいりたいというふうに思います。
  125. 大木正吾

    委員長大木正吾君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後二時三十分に再開することとし、休憩いたします。    午後零時四十八分休憩      ─────・─────    午後二時三十一分開会
  126. 大木正吾

    委員長大木正吾君) ただいまから逓信委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、日本放送協会昭和五十五年度財産目録貸借対照表及び損益計算書並びにこれに関する説明書議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  127. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 まず、私も、すでに午前中同僚委員から質疑がございましたが、九月の八日提出、発表されました国連の平和維持機能強化に関する研究会の報告、これをめぐる問題について若干質問をいたしたいと思います。  この報告は、すでに議論を呼んでいますように、海外派兵の突破口を開くことになるおそれがある、違憲行為をあおるものだということで、事実上武力行使にわが国が巻き込まれるおそれがある。それとともに国内法にも何の根拠もないものであって、決して許せられるべきものではないと、こういう立場から、わが党もすでにその反対の旨、外務大臣に強く申し入れをしてきたところでありますが、こうしたことを初めとして、国民の大きな批判世論、このもとで外務省自体も、誤った印象を外国に与えるおそれがある、政府方針とは違うんだということで、この部分の不提出を決めてきたのもいわば当然であります。  ところで、この研究会メンバーの中にNHKの解説委員長山室氏が加わっていたというこの問題について、午前中の質疑会長としてもその非を表明され、大臣としてもNHK役職員は言動を慎重であらねばならぬという趣旨の表明をされているわけでありますけれども、そこでまず、重ねてNHK会長にお尋ねをいたしますけれども、この自衛隊の国連軍参加を進めるという今回の報告なるもの、これがNHK放送法に示された目的、すなわち公正中立の公共放送と、こういう立場に照らしてみて、NHK役職員の基本的なあり方としてどのように考えるのか、まずその点を最初にお尋ねをしたいと思います。
  128. 川原正人

    参考人川原正人君) 御指摘のとおり、NHKの置かれました立場あるいはその任務といいますのは、あくまでも政治的には公平中立でなければなりませんし、政治的にもし議論の余地がある問題であれば、それについては常に客観的な立場、多角的な立場から報道等に当たるべきものがNHKの任務だと思っております。その意味で、この提言の最後の方にありましたように、国連の平和維持活動とは申せ、それが軍事的な様相まで帯びるということになりますと、これに対してはNHKはあくまで中立といいますか、そのような提言に対して参加すべきものではもちろんございませんし、NHKの職員としてそれをコミットするような態度はとるべきではないというふうに思っております。
  129. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 念のためにお尋ねをしますけれども、そもそもこうした研究会メンバーの委嘱を受けるに当たって、会長は事前に知っておられたのかどうか。この委嘱を受けるに当たっての社内手続はどういうふうになっていたんですか。
  130. 川原正人

    参考人川原正人君) 率直に申し上げまして、私自身はこのことを事前には承知しておりませんでした。ただ、職員がこの種のものに参加いたします場合は必ず上司の許可を得るという定めになっておりまして、その点で申せば、山室委員長からの話は、直接の上司であり、専務理事である川口君がそれを承知して、当初の説明の範囲では、これは参加して差し支えなかろうということで参加を認めております。
  131. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 いずれにしましても、この山室氏は紛れもなくNHKの解説委員長でありますし、この研究会報告書、このメンバーリスト、一覧にも日本放送協会解説委員長という肩書きを付して、山室英男という形での、七名のうち一名としてのメンバーに名前を連ねておられる。こういう形になっていますから、個人としての参加だといっても、NHK解説委員長という肩書きをつけて参加をしておられるということから、一体これがNHKないしはNHK解説委員会の公式の見解かという誤解が生ずることは、これは紛れもないわけでありますね。  こうした点で、本人に厳重に注意をしたというふうに午前中もおっしゃっていたわけでありますけれども、こうした生ずるかもしれぬ誤解を一掃するためにも、NHKの機関としてこの問題を振り返っての見解について、これを内外にひとつそういう誤解を一掃し、NHKの真の見解を明らかにする。そういう意味での、内外にそのことを何らかの形で表明をしていく、また一定の措置をとるということについては検討されていますか。
  132. 川原正人

    参考人川原正人君) 内外に云々ということで、その具体的な手段について、いま私、特段のことを考えているわけではありませんが、すでに私どもの中央放送番組審議会という席がございます。この席でも、このことについての注意がありまして、その席で放送局長川口専務理事から、先ほど本委員会で申し述べましたとおりNHKとしてこれは深く反省をしておりますし、本人にも厳重に注意をしてあるということで、正式にすでに意見は申し上げておりますし、また、この委員会におきまして、先ほど来、これは私も含めまして、協会として今後この種の審議会に職員なり役員なり出席する場合の態度につきましては、さらに一層慎重を期したいということで反省を申し上げ、かつ、今後の戒めとしてまいりたいというふうに考えているわけでございます。
  133. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 かつて、NHKの小野会長、当時。その前会長が、田中角榮氏が保釈をされたその段階で、田中氏の私邸をNHKの公用車で訪問されたということで、当時、小野さんは全く個人的な立場だということで弁明をされておったんですけれども、しかし国民の世論はそうは見なかったという問題がありますし、また前々会長の前田さんが公務員制度審議会の委員をされておった時期、また小野吉郎さんが公共企業体等関係閣僚協議会専門委員懇談会座長、この仕事をしておられたときに、結局労働者に不利なそういう答申を出さざるを得ない位置に立たされる、そういう苦悩の中からこういった役職を辞任をされたという形で、とにかくNHKの本来の趣旨、目的である公正中立性、これをひとつ死守をしようということでのそういった努力をなされた。こういったことなんか会長は言うまでもなく御存じでありましょうね。
  134. 川原正人

    参考人川原正人君) その経緯についてはよく承知をしております。
  135. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 山室氏に今回のてんまつを受けて厳重に注意をしたということでありますけれども、御本人は反省しておられますか。
  136. 川原正人

    参考人川原正人君) 本人はもちろん反省しておりまして、このことの後、本人が直接私のところへ参りましてその反省を表明いたしまして、それに対して私から、今後こういうことのないように、少なくとも、特に解説委員長というような立場にある者としてさらに一層の自重を要望し、強く注意をしてございます。
  137. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 NHKは、報道機関として表現の自由を確保し、公正中立の立場から真実を追求するため、当然全力を挙げるべきそういう使命を持っているはずであります。この使命を果たすべきNHKの姿勢が今日こうした問題を通して改めて問われておる、こういうことでありますけれども、法四十四条、ここに御存じのように、意見が対立している問題はできるだけ多くの角度から論点を明らかにする、こういうふうに定めているわけでありますけれども、この点から今回いわゆる自衛隊の国連軍参加という報告をめぐって大いに議論を呼んできたわけでありますけれども、この問題について、この法四十四条、この立場から広範な活発な議論の場を提供し、国民の世論を正しい方向に高めていく、こういった立場でNHKとしてひとつ積極的な場を堤供すべくこれを機会に取り組むという、こういうお考えはありませんか。
  138. 川原正人

    参考人川原正人君) 私どもは、もうかねがね放送法四十四条の定めと申しますか、NHKの置かれました立場並びに任務から言いまして、特にいろいろ論争のある問題はあらゆる角度から多角的に論ずるという立場で終始してまいりましたし、特に国連の平和維持活動あるいは国連軍の問題については、いろいろな機会に報道もし、あるいはそういう討論の場も設けてまいりました。この機会にいま特にということは考えておりませんが、今後ともこれはやはりわが国と国連との関係において非常に重要な問題と考えますので、いろいろな機会をとらえまして、そういう報道あるいは議論の場は十分に考えてまいりたいというふうに考えております。
  139. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 今回の山室氏のとられた行動について、厳重に注意をした。しからば、NHKの真の見解と立場はこういうことですということを内外に表明をしていくひとつ積極的な措置を考えてもらう必要があるじゃないかとさっきお尋ねをしますと、具体的にはどういうことということでまだ検討の局面じゃないというようなお話でありますけれども、しからばということで私は一つのそういった提言を申し上げたわけです。本当に憲法の立場、また公正中立のこの立場、こういう立場に立って、この国連軍派遣をめぐるいろいろな見解の問題について、NHKを通して広く国民の世論を喚起をする、こういうことをひとつ積極的に考えられるというのが内外に見解を表明していく一つの方法じゃないかということで、私、一つの提言をしていますので、一遍ぜひそのことは御検討を願いたいというふうに思いますが、どうでしょう。
  140. 川原正人

    参考人川原正人君) 御示唆の趣は私なりにわかりましたけれども番組の編集上の問題でもございますので、私としましてもいろんなテーマがございますので、それについてはいろんな角度から、あらゆる機会をとらえて、私どもの自主的な判断のもとに番組を編集してまいりたいというふうに考えております。
  141. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 それでは、この問題は以上で終わりまして、あと私も文字多重放送とか、衛星放送等々をめぐる問題について、幾つかあとお尋ねをしたいと思います。  昨日からNHKで文字多重放送が、実験放送が開始をされたわけでありますけれども、東京、大阪などを中心にした聴力障害者向けということで始まったわけでありますが、現在受像機はどの程度普及をしているんですか。
  142. 矢橋幸一

    参考人(矢橋幸一君) いまお話がございましたように、普及の見込みでございますけれども、今回の文字多重放送の実用化試験局につきましては、お話がございましたように、東京、大阪地区で、社会的に非常に要望の強い聴力障害者向けのサービスということに限定して始めたものでございます。したがいまして、放送区域内、つまり東京、大阪地区の放送区域内の聴力障害者の方々の数でございますけれども、われわれとしては十四万人程度の方々を推定しているわけでございますけれども、また聴力障害者のための公的施設——福祉施設あるいは教育施設でございますけれども、大体五百施設ぐらいあるんでございますけれども、それらから見まして、もちろんそれ以外に一般の方々も文字多重というものを、受信機お買いになる方もあるかと思いますけれども、そういう意味で、どのくらい普及するかという予想は大変むずかしいんでございますけれども、まあ数千から数万程度の普及はするんではないかというふうに推定をしております。  あと、値段の問題でございますけれども……
  143. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 いや、それはまだこれから聞きます。  NHK出版の「放送文化」という雑誌の、ことしの六月号、それによりますと、受像機は十八インチカラーで十五万円程度の、その三倍から五倍というふうに書いてもいますが、現在実際に、この受像機はどれぐらいの価格、値段が必要か。それからアダプター、これはどうか。どういう状況でしょうか。
  144. 矢橋幸一

    参考人(矢橋幸一君) いま先生がおっしゃいました三倍というのはちょっと初めて聞きましたけれども、現在、これはわれわれがつくっているわけじゃございませんけれども、電機工業会その他からの情報から見まして、まず文字多重の部分を内蔵しております受信機について見ますと、たとえば現在二十万円のカラーテレビでございますと、これに五万円プラスしまして二十五万円程度で売られるというふうに聞いております。  それから、アダプターにつきましては、先ほどからも議論が出ておりますけれども、大体十万ぐらいという値段でございます。
  145. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 そうしますと、利用者にできるだけ普及してその利便を広げていくという、そういう方向に照らして、午前中も若干出ておりましたけれども、助成策、援助策、これが今日ひとしお必要になってくるんじゃないか。特に、聴力障害者という方々が中心的な対象として考えられているわけでありますから、当然これらの方々は収入も少ない方々が多いだろう、そういう点から考えてみて積極的な検討が行われる必要があるだろうということで、郵政省としてどういう方向を考えておられますか。
  146. 鴨光一郎

    政府委員(鴨光一郎君) 文字多重放送でございますが、先ほど来お話がございますように、昨日からNHKにおきまして東京、大阪地区での実用化試験放送が開始されたわけでございますが、まだ民放におきましては、現在慎重に検討している模様でございます。郵政省といたしましては、当面、このNHKの実用化試験放送の結果を見きわめて、同時にわれわれといたしまして可能な限りで、この普及あるいは受信機の低廉化というふうなことについて考えてまいりたいと考えておるところでございます。
  147. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 特に聴力障害者、これに対する援助策をどう講ずるかということを特にお尋ねをしておるわけでありますけれども、何か午前中の話では厚生省によく伝えていきましょうと。しかし、そういう消極的姿勢じゃなくて、積極的に郵政省から厚生省の方に働きかけ、相協議をして障害者の皆さん方に対する積極策をひとつ至急に検討していくという態度で対処をしてもらいたいというふうに思うんですが、どうですか。
  148. 鴨光一郎

    政府委員(鴨光一郎君) 先ほど大臣の御答弁にもございましたけれども、私どもといたしましても、この文字多重放送が聴力障害者のために大変大きな意味合いを持つ、もちろんニューメディアということでも一般の視聴者の方々にも大きな意味を持つと考えておるわけでございますが、とりわけ聴力障害者の方々に大きな意味を持つと考えるわけでございますが、先ほど大臣がお答えになりましたように、問題は福祉政策というふうな問題になるのではないか。そのような意味で、私どもといたしましては、担当の関係の向きにここの場での先生方の御議論をお話し申し上げておきたいと、こういうことでございます。
  149. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 ですから、行政の管轄の分野としては厚生省の仕事ということになるけれども、郵政省としても姿勢としては積極姿勢でこの問題に取り組んでいこうということで理解していいわけですか。
  150. 鴨光一郎

    政府委員(鴨光一郎君) 私どもといたしましても、私どもの所掌の範囲の中で可能な手段がございまするならばそれを推進してまいりたいと考えております。
  151. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 将来、多チャンネルがとれるコード方式への移行ということも考えられるわけでありますが、その移行の際に利用者に特に大きな負担を強いることかないような保証、これをどういうふうにつくり上げていくかということで、この問題も検討に入っておられますか。
  152. 鴨光一郎

    政府委員(鴨光一郎君) 先生の御指摘の点は、現在ございます二つの方式、一つが昨日から始まりましたパターン方式でございます。これにつきましては、ことしの三月に電波技術審議会からパターン方式と整合性のとれるコード方式の基本パラメーター、これは基本的なパラメーターでございますが、これが答申をされております。これから先、いずれコード方式が導入されます場合にも、これを踏まえて方式が決定をされるということになるわけでございまして、将来、コード方式が導入されました場合にはこのコード方式のアダプターのコストを追加すれば足りるということになるわけで、これはもちろん追加をしていただかなければいけないわけですが、それ以上の追加は不必要であるというふうになると考えているわけでございます。
  153. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 私は必ずしもそういうことでは済まない、利用者への負担が加えられるんじゃない かというふうに思うわけですけれども、ぜひその点、この問題も積極的な検討お願いしたいと思うんです。  衛星放送に関する問題ですが、来年の二月打ち上げ、実施もあと一年もないというところまで迫ってきているわけですけれども、その放送計画はどうなるのか。一チャンネル、三チャンネル、これをそのままおろすということもあるが、再放送の時間枠はどうなるのか、あいた時間、ここをどういうふうに活用をするのか、こういった問題について、現在の検討段階、どういうことになっておりますか。
  154. 坂倉孝一

    参考人(坂倉孝一君) 来年打ち上げられますBS2の段階におきましては、これは午前中にも御答弁申し上げましたけれども、基本的には難視地域の難視聴の解消ということが大きな目的でございますので、当然、現在地上の系統の放送でやっておりますテレビ番組放送するということが中心になるわけでございますけれども、いまNHKの割り当てられておりますこの二つのチャンネルにつきましては、これは来年度番組計画になりますので、五十九年度放送番組につきましてはこれからその編成計画の策定作業に入るわけでございますので、その作業と並行して当然内容が決まっていくということになるわけでございますけれども、そういう意味では、現在、番組内容については検討中ということになるわけでございますけれども、この二波の編成の考え方につきましては、ことし六月、免許申請に当たって作成いたしました編成計画に沿ったような内容になっていくかと思うわけでございます。  それは、衛星の第一テレビジョンにおきましては、総合テレビジョン放送番組の同時放送を中心にいたしますけれども、教育テレビジョンの中の、たとえば社会教育番組の一部等を含めまして、時差放送あるいはアンコール放送、衛星独自のローカルの情報番組というようなものを編成することにいたしたいというふうに考えるわけでございます。  それから、第二テレビジョンの方では、これは教育テレビジョンの教育、教養番組の同時放送が中心になるわけでございますけれども、やはりそこには総合テレビジョンの番組の一部を含めまして、時差放送やアンコール放送、そして衛星独自のローカル放送番組を編成する予定でございます。それは、それぞれの地上放送におきましては再放送の時間がございますので、そういったところにつきまして、地上とは違った編成の仕方を考えていきたいというふうに考えているわけでございます。
  155. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 当面技術実験ということでありますが、この五年以内に実験放送を行う、そういう見通しは立っているのかと。それというのも、衛星放送普及ということであれば、せっかく一定の金額を出して受信をする受信者から見れば、同じ番組を見るだけじゃなく、もっと多様な番組をいろいろ見たいという、こういう要望も当然出てくる。そういった要望に積極的にこたえていく、そういう用意は始まっているんですか。
  156. 坂倉孝一

    参考人(坂倉孝一君) 今後の衛星放送番組編成につきましては、さしあたって来年開始する段階におけるただいま申し上げましたような内容から入ってまいりまして、いま先生御指摘のように、やはり地上とは違った衛星独自の番組の開発といったような要望も、これもまただんだんに増大してくるのではないかと思うわけでございますので、それには、やはり受信設備がどう普及してまいりますか、そういった視聴者側の受信設備の普及状況、それと、視聴者の衛星放送に対する要望を総合的に勘案しながら段階的に先ほど申し上げました再放送の時間におきます編成の中で、いろいろ将来に向けて具体的な検討を進めたいというふうに考えております。
  157. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 この衛星放送について、とりあえず難視解消という、これを目的に始められているわけでありますけれども、これも、お話が出ていましたように、受信者に対しての負担がのしかかる、こういうことになりはしないかという、ここの危惧がいろいろ出されているわけでありますけれども、そうした点でこの受信者に過大な負担を負わせないような、そういう積極策をどのように講じていくのか。まずNHKから、それから大臣お休みですけれども、この点についてはぜひ大臣にお尋ねをしたいわけであります。
  158. 坂倉孝一

    参考人(坂倉孝一君) NHKといたしましては、これまでNHKの技術研究所がこの受信機あるいはアンテナといったようなものの低廉化に対しまして積極的にその開発努力をいたしてまいったわけでございます。特に、アンテナ等につきましては、相当当初考えていたものよりも早期にまあまあ小型化あるいは低廉化といったような道が開けてきているわけでございますけれども、これからもそういった研究開発という面でもって実効を上げまして、各メーカーに対します技術指導といったようなことを強化してまいりたいと思うと同時に、またやはりこういったアンテナの小型化といったようなことは、この衛星放送からの出力にも影響いたしますので、そういったようなことにも、今後ともその出力が増加するような方向を希望したいというふうに考えているわけでございます。
  159. 鴨光一郎

    政府委員(鴨光一郎君) 私どもといたしましては、衛星放送の開始に伴う新たな経費につきましては、基本的にはNHKの事業の効率化というふうな形の中でできる限り必要な経費を捻出をしていただきたいと思っているわけでございますが、同時に、御指摘のBS2の普及発展でございますが、これは私どもといたしまして、基本的にはNHKのテレビ放送の難視聴解消を目的とするということでBS2の打ち上げを予定いたしておりますけれども、同時に、将来の衛星放送の普及発展を図るという役割りが期待をされているわけでございますので、実は郵政省といたしましても、この予備免許の際に、NHK番組編成上、先ほどアンコール放送あるいは時差放送といったようなお話NHK側から出ておりますけれども、郵政省といたしましても、こうした番組編成上の工夫を行う場合に、ある程度の自由度をNHKが持てるように若干の条件の緩和を行ったところでございます。  なお、このBS2を利用いたしましてこれから先、将来の衛星放送の発展に資するような形での実験もその成果を期待をしているという次第でございます。
  160. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 いや、私、特にお尋ねしておるのは、受信者側に過大な負担がかからないようにというこの点について、国として、郵政省としてどういう積極策を講ずるかということで、いろいろそれらの機器の開発もあるでしょう。しかし、先ほどお尋ねをしておった文字多重に関係をしての障害者に対するそれは、厚生省の問題だ、福祉対策だから厚生省の問題だということで一歩逃げておられるわけですけれども、この問題こそは郵政省の積極性を発揮をして、やっと離島の皆さん方にもそういう利便が開かれる。しかし、それが負担が多くのしかかる、こういう形にならないような援助策を郵政省としてどう講ずるかということで、この問題こそはひとつ積極的に取り組んでもらいたいということで特に大臣にお尋ねをしているわけです。
  161. 桧垣徳太郎

    国務大臣桧垣徳太郎君) せっかく大きな投資をしましてBS2を打ち上げるわけであります。これはBS2自身のできるだけ幅広い有効な利用を図っていくと同時に、視聴者の利便に供する。また、できるだけその負担が大きくならないようにするということは、これもとより放送行政上の役目であると思っておるわけであります。  第一の問題は、かなりまとまった視聴者の集団につきましては、たとえば小笠原の父島、母島あるいは南大東島というようなところでは中継放送局を設けまして、一般の受信施設で直ちに受信ができるというようなことをやってもらうことにいたしておるわけでございます。  また、パラボラアンテナを設置して個別に受信せざるを得ないところについては、これはもうパラボラアンテナのより経済的な、また性能のいいものの製作をするということでこたえる以外に私は道はないと思うわけであります。そういうことについては、メーカーの業界というものに対しまして要請もし、また指導も加えていくようにいたしたいと思います。  あるいはまた、ところによっては共同受信というようなことについても、これも指導をしていくというようなことも一つの方法であろうかというふうに思っておるわけであります。
  162. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 もう時間ですから終わります。
  163. 中村鋭一

    中村鋭一君 きのう三宅島が噴火をいたしまして、数百戸の民家が溶岩流にのまれるという大変痛ましい事故がございました。被害を受けられた皆さん方に心から深甚な弔意を表するとともに、積極的なこれに対する援助、救済の手段が講じられるべきだと思うんですが、NHKの場合、きのう第一報はどういう形で入ってきて、その後どういうふうに情報を国民に伝える措置をおとりになりましたか。さらにまた、この三宅島に住んでいる、現にまさに溶岩流に押し流されようとしている人たちにとりまして、的確な情報というものを伝えるのは、やはり私、何よりもまずNHKの情報伝達手段というものが非常に大きな力を発揮する、こう思ったんですけど、まずNHK電波を通じての第一報の受け取り方、その伝え方、その後のフォロー、さらに島民そのものに対する情報伝達手段、警告の方法等についてお教えをお願いいたします。
  164. 川口幹夫

    参考人(川口幹夫君) 三宅島の爆発が起こったのはきのうの午後三時半でございます。この直後に三宅島の島内にお住みになっている家庭の御婦人からNHKの報道局に第一報が入りました。つまり、現地でその爆発に直面した方から第一報が入ったという……
  165. 中村鋭一

    中村鋭一君 電話ですか。
  166. 川口幹夫

    参考人(川口幹夫君) はい、電話です。その後、私どもはすぐ気象庁に連絡をしまして、このことについての詳報を集め始めたわけです。直ちにヘリコプターを飛ばせまして、これが十五時五十五分に出動をしております。そして、三宅島の取材を終わって、十八時二十五分には帰っております。帰ったビデオを直ちに放送に出しまして、それが十八時半の「ニュースセンター六三〇」、この中にビデオの取材として入っております。以下、十九時のニュース、それから「ニュースセンター九時」等でこの詳報は続々実施をしております。一方、ラジオの方は、折からの「午後のロータリー」の時間でございますから、これは直ちに生対応で情報が入り次第に刻々お知らせをする、並びに島民の方にこういう爆発についての注意を呼びかけるというふうなことをやりました。それから、夜の七時に東海汽船の定期便に取材チームを乗船させまして、技術、それから記者、それに番組担当者というのが参りまして、これがけさの四時十五分に現地に到着しております。六時から直ちに中継に入りまして、その中継の回路は三宅島から稲取に送りまして、稲取から池袋の方に三段中継で送るというふうな形をとりました。一方はヘリコプターを使って大島経由で送るというふうな二重の報道体制をとっております。このような形が素早くいきましたものですから、島内の避難民の方々は大体学校の講堂そのほかで避難をしていらっしゃいます。ここにテレビが備えつけられ、それから携帯ラジオを使ってのNHKの情報に耳を傾けるというふうなことが非常に多かったというふうに聞いております。
  167. 中村鋭一

    中村鋭一君 ということは、いま三宅島は現にラジオの中継、それからテレビの電波も流れているわけですね。
  168. 矢橋幸一

    参考人(矢橋幸一君) 三宅島のいまのサービス状況でございますけれども、ラジオはもちろん東京の大電力を受けますから聞こえます。それから、テレビにつきましては、三宅島にNHKのサテがございます。ただし、電源がとまってしまいましたので、そこのサテは働いておりませんけれども、島の半分は新島のサテの電波を受けられますので、被害の方はほとんどそちらで見られますから、実質的にはテレビもラジオも両方聞けた、見られたということでございます。
  169. 中村鋭一

    中村鋭一君 ひとつ、今回の例もありますので、こういう場合、端的に申しまして島民の皆さんにとりましては特にNHK電波が頼りだと思うんですね。  私、けさになってから聞いたんですけれど、たとえば東京都庁の対応、政府の対応は率直に言いまして非常におくれているように思うんです。わが党の議員が早速国としてどうすればいいかについて相談をしたところ、たとえば加藤国土庁長官は、早速に対応はしたいんだけれども、とにかくあすの朝になって閣議を開かなければ政府としては動きようがないというような御返事であったそうでございます。そういう場合、やはり島民としてはとにかく一秒も早い的確な情報を知りたい、これは国民もそうだと思いますけれども、今後せっかくそういう点、今回は非常に早い対応がなされたようで結構でございますので、よろしくお願いを申し上げておきたいと思います。  それともう一つ、九月一日の大韓民国航空機の撃墜事件の際、私、一人の視聴者として見ておりまして、あの二年前の日航機のNHKの報道体制、まあこれも率直に申し上げますと、あれは大失態といいますか、報道機関としては他社におくれをとること数段であった、恥をかかれた、こう思うんですが、それを償うに余りある、りっぱな報道をお組みになったと思います。一報もそうでございますし、その後の、たとえばNCナインを中心とする、あらゆるマテリアルやスタッフを動員した解説番組等々、実にみごとなものであったと思うんですが、今回の大韓民国航空機撃墜事件についてのNHKの第一報のとらえ方、その後の取材体制のコンストラクションといいますか組み立て方等について、ひとつお話しをお願い申し上げます。
  170. 川口幹夫

    参考人(川口幹夫君) 大韓航空機の撃墜事件につきましては、第一報がこれまた社会部の泊まりの記者が、毎朝いわゆるじみちな電話をあちこちにかけまして、きょうは何か事は起こっておりませんかというふうなことをかけるわけですけれども、そういうじみちに行っている早朝の電話、警戒電話と言っておりますけれども、そのことからわかったものでございます。そうしまして、この社会部の記者は直ちに関係各部に連絡をいたしまして、事実を確認をした後、朝のニュースワイドで速報するというふうな形をとりました。同時に、緊急非常動員——いま先生は羽田沖のことをおっしゃいましたけれども、あの後私どもは緊急報道体制については一方ならぬ努力を重ねたと思っております。その結果、緊急動員の体制はできておりますので、その緊急非常体制を動員いたしまして、それからいわゆる取材体制としてはできる限りのことをやったというふうに思っております。この動員体制は、こういった大事件だとかあるいは大地震などの発生に備えて、ある程度訓練をしておかなければいかぬというふうなものがございます。いわゆる人間の方の訓練も重ねていて、それから一方に非常にじみちな記者活動というものがあって、そういうものが合わさって適切な取材になったんじゃないかというふうに私は見ております。撃墜というふうに判明してからは文字どおり報道と技術、それに海外の特派員というものを動員しまして、取材と、それからそれを報道するやり方、それからまたさらに、そのニュースから起こってきたいわゆる番組をつくる、解説をするというふうな総合的な報道体制というものに取り組んだわけでございます。  特に、稚内の沖で、墜落現場というのはやっぱり一番関心の集まるところでございますから、そこに対する報道の体制というのは、これは速やかなるをよしとするわけで、直ちに札幌のデスクが技術的に非常に大きな困難を克服しまして、一番早く稚内からの中継の絵を送ることができたというふうなことがございます。  それからあと、特だねでございましたけれども、傍受無線のテープを入手した際は、技術研究所というところがございますが、ここの力をかりて解析をするというふうなことをやったり、さらにまた、海外からのいろんな反響、それからいわゆる専門家による状況の分析、そういったことを番組の中にどんどん入れていって、それで大方の方がある程度納得いただけるような報道になったんじゃなかろうかというぐあいに思っております。  以上が今回の大韓航空機撃墜事件の報道の一つの形でございますが、この経験から見て、緊急初動体制の確立ということと、それから取材、番組制作、解説という一連の努力の積み重ねというふうなものと、それからあるいは機械力、設備の力、それを動かす技術の人間の力といったものが総合力となって発揮したものだというぐあいに思います。
  171. 中村鋭一

    中村鋭一君 今度の場合は初動体制もよかった。それから何よりも私は指摘をしたいのは、その後のたとえばいまおっしゃいました声紋分析等に見られたような、これはNHKならではできないような解説、評論、まあ中には多少の推測も交えて、あり得べかりし可能性について率直に言及をされましたね。たとえば、評論家の柳田邦男さんを使われて、なぜ二時間半も大韓航空機が迷ったのかということについて大胆な推論等も展開されました。それは本当に同業他社の追随を許さないりっぱな報道であったと深く敬意を表する次第でございますが、ただこの初動の緊急配備体制につきましては、多分に運に左右されるようなところもございますが、しかしそれでも備えあれば憂えなしでございますから、いまおっしゃった中での機器等の整備も平生からしっかりとしておかなければいけない。  二年前の日航機の事件のときには、たとえば民放と比べていわゆるミニハンディカメラですね、ENGの配置等も大分おくれているんじゃないか、こういう指摘がされたわけでございますけれども、そういった中継機器、ミニハンディカメラ等々の配備はいまは万全でございますか。
  172. 矢橋幸一

    参考人(矢橋幸一君) いま先生御指摘のように、日本航空の例の事件以来われわれは小型軽量の新しいENG機材、そのほかヘリコプターの中継機能とかあるいはFPUの数、そういったものにつきまして、いわゆる緊急報道用機器につきまして、われわれも大変限られた財政の中でございますけれども、重点的にその後進めてまいりました。  この結果、五十八年度におきまして小型ビデオカメラで申しますと四百五十台、FPUの受信の基地でございますが、それが七十五カ所、それから緊急初動車——これは緊急事態のときにすぐに飛び出す初動車です、初動車八台を現在持っております。そういった形で極力充実を図ってまいりまして、例の事件が起きました後の五十七年度、五十八年度の二年間におきまして小型ビデオカメラを百八十台ふやしました。それからFPUの受信基地も十八カ所ふやしました。それから緊急初動車を八台新しくつくりました。そのほかヘリコプターの中継機能を一台ふやしたというような形で整備を行いまして、今後国民のNHKの報道に対する信頼をより高めていくということに努力しているわけでございます。
  173. 中村鋭一

    中村鋭一君 全体としてはそういうふうに整備されたということなんですが、まだまだ地方局では、たとえば県庁の所在地にあります民放局なんかと比べると大分やっぱりまだ機材の整備がおくれているんじゃないかと思いますが、もしできれば具体的な例を挙げて、この放送局におけるこの民放の持っておる機材等と比べるとこれだけおくれているとか、これだけ足りないとか、いやここはこれだけ対抗できるだけあるとか、そういう例を地方局の整備状況について教えていただけませんか。
  174. 川口幹夫

    参考人(川口幹夫君) おっしゃるような形がまだございます。それは、やっぱりNHK財政状態が必ずしも豊かとはもちろん申せませんで、その中でこういう緊急報道体制についてはまず第一番に充実をしたつもりでございますけれども、まだ一部未完成のところがあるという現状でございます。  念のために、現在の地方局における小型ビデオカメラなど中継機器の配備の状況を申し上げます。  小型ビデオカメラが三百三十台——これはいわゆる管内担当局と申します大阪、名古屋、広島、そのほかはそれぞれ約十二台でございます。それから放送局はおのおの四台ないし五台持っております。それからFPUの基地局が全国に七十カ所ございまして、各局当たり大体一、二カ所ずつということでございます。それから緊急初動車は各管担局の中にそれぞれ一台、合計七台を配置してございます。それからヘリコプターの中継設備は大阪、福岡、札幌の三カ所に設置をしてございます。それから中継車は五十一台全部でありまして、標準的な管担局では二台、それから放送局では一台というふうな配備でございます。それから、中継の汎用車、これは小型のものでございますけれども五十三台、各放送局に一台ずつというふうな配備になっております。  民放と比較しろというお話でございますけれども、民放各社の整備状況というのは実は必ずしも全部わかっているというわけではございません。それを一応私ども調査した形で申し上げますと、小型ビデオカメラの比較を五十八年度でいたしますと、たとえば大阪、名古屋、広島、福岡、仙台、札幌、こういう管内担当局ではほぼ民放各社と同等ないしやや多いという状況でございます。それから甲府とか福井、松江、長崎、こういう標準的な放送局ではほぼ同じ場所の民放局と同数を保有している。それから長野、新潟、金沢、岡山、鹿児島、宮崎、盛岡、福島、ここではニュース取材の全面ビデオ化を非常に重点的に実施している民放局があるわけです。こういうところに比べますと保有台数は劣っているという状況でございます。以上がニュース取材や番組制作の全面ビデオ化を目指して引き続き整備を行うというわれわれの予定からすればまだその途上にあるというふうな現状でございます。
  175. 中村鋭一

    中村鋭一君 新聞社の場合は、たとえば愛媛なら愛媛県の今治に大事件が起こりますと、出先の地方局がまず帳場を置きますね。そして、これが非常に規模の大きな事件でありますと、関西で言いますと大阪本社から応援が大挙繰り込んで前線本部を設置して、したがって地方の支局は本社の指揮下に入るわけですね。  NHKの場合、こういった取材体制は、機材等も含めて、地方局独自の持っている機材等で手に余る場合は、たとえば大阪中央放送局から機材、人員ともに応援が参加して、しかもその指揮は大阪中央放送局のデスクがとると、そういうふうな体制なんですか、念のために伺います。
  176. 川口幹夫

    参考人(川口幹夫君) たとえば先般の日本海中部地震の例で申し上げますと、発生したのは秋田それから青森のところですね。これに対しまして、直ちに仙台からあるいは盛岡から、それから福島からというぐあいに東北管内の各放送局から中継車が出動しました。それは、一方は秋田の方に行き、一方は青森の方に行って、それでいわゆる応援体制を直ちに形づくった。それで、仙台からのデスクももちろん合流しまして、いわゆる前線基地みたいなものを秋田と青森にこしらえるというふうな形をとっております。  当然のことながら、これにはさらに東京からの応援も駆けつけまして、あのときの報道の体制は、現地の放送局プラス東北管内の放送局プラス東京というふうな分厚い体制をしいたわけでございます。そのような形が非常にスムーズにかつ系統的にとられるというふうなところがNHKの強みでなければいけないというぐあいに思っております。
  177. 中村鋭一

    中村鋭一君 言うまでもなくおやりだと思いますけれどもNHKは体が大きいですから、そういった大事件の場合に本当にうまく連携が保てるように、ずうたいが大き過ぎて指揮系統が混乱して、その結果としてNHKを見ている人たちに良質の情報を提供することができないということがあってはいけませんので、その辺の整備もあわせ要望をしておきたいと思います。  次に、九月八日の午後八時、フジテレビで放映されました「木曜ファミリーワイド」という番組で、NHKの鈴木健二アナウンサーが声だけの出演をされました。たまたま私、あの番組を初めから終わりまで見ていましたが、非常に鈴木アナウンサー明快にお話をしておられました。明快に話をされているだけに、小川宏さん初めスタッフがスタジオにいて、鈴木健二さんの声だけが出ておりまして姿が見えないんですね。非常に私見ておりまして欲求不満が高まったわけなんですけれども、どうなんでしょうあの場合、どうしてNHKは鈴木健二アナウンサーに出演を認めたわけですか。認めたのであれば、当然テレビですから姿も出してもいいと思ったんですが、その辺どういうふうな基準で声だけの出演ということにされたんでしょうか。
  178. 川口幹夫

    参考人(川口幹夫君) NHKの職員が、特にアナウンサーの場合など外部に出演をする場合は、上司の許可を得ればよろしいということになっております。  私どもはその判断をどこでつけるのかというふうなことが一番大きな問題であろうかと思うんです。いままでも実は民放の番組に鈴木君は二回ほど出演したことがございます。それはたとえば、旧制弘前高校の同窓会みたいな形で出るとか、それからお兄さんが鈴木清順さんという映画監督ですが、その鈴木清順さんの番組のゲストで出るとかいうふうなものにつきましては、これは出演してしかるべきであろう。そのことがたとえば放送文化の向上に役立つとか、NHKもそのために全くイメージ的におかしくないとかということがあれば、これは出していいというふうに判断しております。  今回の場合は、題材が鈴木健二のあらわした本の中身をバラエティー化した番組です。私ども考えましたのは、一つはそのことに出演することによりまして、NHKのアナウンサーが自分の著書の宣伝を番組でやっているというふうなイメージにならないかというふうな心配、それからあの場合はバラエティーでございますから、ほかの出演者たちと同じような形でいわゆるタレント性を発揮するというふうな形になります。そこが、たとえば本人ないしはNHKアナウンサーというものに対する一種の誤解を与えやしないかというふうな心配をしまして、このことについては出演をお断りしようというふうに決めたわけです。  その後、鈴木君の、たとえば解説的な話がないと全く番組が成立しないというふうなことでございましたので、一歩譲って声でいわゆる引用といいますか、の形でもって出ることを了解したと、こういうわけでございます。
  179. 中村鋭一

    中村鋭一君 大変苦しい説明でありまして、鈴木健二アナウンサーがNHKの職員であると同時に、あの人はやっぱりベストセラーの著者であり、かつスターですよ。いつか私もこの逓信委員会指摘をしたと思うんですけど、もっと大胆にNHKはスターシステムをおとりになってもいいと思うんですよ。そういうところが非常にあいまいだから、ここに宮田委員もいらっしゃいますけれども、有能なスターアナウンサーが次々にNHKを退社していくわけなんです。もうたくさんの方がNHKをやめてフリーにおなりでございますよ。だから、私は、鈴木健二さんの出演を認めるのだったら、しかも「気くばりのすすめ」という著書をテーマにしたのだったら、むしろ声だけの出演で、そんな中途半端な解決はおとりにならないで、堂々とNHKアナウンサー鈴木健二として出すべきだし、そしてもし出さないのであれば、社員はそういうことに出さないのだったらもう真っ向からお断りになればよかったと思うんです。そういう中途半端な出し方をしますと、これは視聴者にとりましても失礼に当たります。現に私がそうでした。非常に欲求不満に陥りましたので、これからはそういう点も、できればひとつ確たる基準をおつくりになりまして、私はむしろ積極的にNHKのそういう人気者は、たとえば磯村さんだとか、そういう方はどんどんお出になればいいと思うんですよ。  ですから、そういうふうにこれからはすっきりとしていただきたいということをお願い申し上げたいと思います。  ですから、ほかの鈴木健二さん以外のアナウンサーあるいは放送記者等々についても、いま私が申し上げたように、これから前向きの方針をおとりになる気持ちがあるのかどうか、それをちょっと確認しておきたいと思います。
  180. 川口幹夫

    参考人(川口幹夫君) 先生に不満をおかけしたことをおわび申し上げます。ただし、私どもはあの場合は声を引用してほしいということで向こうに言っておりましたので、そのままの形になっていればもっとそういう欲求不満はなくなったのじゃないか。つまり後ろ姿などを映すからおかしくなってしまったということがあるんじゃないかと思うんでございます。  なお、いま先生おっしゃったように、私ども決してNHKの人間は絶対外に出ちゃいけないとかいうふうに縛る気はございません。それは、たとえば広く放送界あるいは文化、芸術の世界に大きく貢献するのだというふうなことがあれば、どんどん出してもいいんじゃないか。それから、その出演することによって、たとえばイメージが非常によくなる。NHKだってそのことで評価が高いというふうな場合などもありますね。そういうことも含めて積極的に出すという姿勢については同じように考えます。  ただ、ある程度の制限はしておかなければいけないのじゃないかと。それは、たとえば公共放送としての協会の立場に及ぼす影響があるんじゃないかという場合はやめるべきであるし、それからそのことが職員としての義務に違反するというふうなこともあるかもしれません。そういう場合、それから職場の秩序を乱すおそれはないかとか、たとえば業務に支障があるのを無理して行くのじゃないかとかいうふうないろんな点で、出演についての条件的なものは十分勘案をして、その上で判断して出すべきだというぐあいに思っております。
  181. 中村鋭一

    中村鋭一君 それは義務に違反するとか秩序を乱すとか、その場合はそれは出ないのはあたりまえのことでございまして、私が言っているのはもっと広い意味で、そういう前提条件を超えて、なおかつこれからは積極的にいまおっしゃったように人材を広く活用するという意味でも、NHKの職員が単にNHKの枠内にとどまらず活躍できる余地をどんどん広げていただきたい、そういう意味でございます。  それに関連して、えらい鈴木健二アナウンサーのことばかり申し上げますけれども、例の「気くばりのすすめ」ですね、私がいつか拝見した本に出ていたのは鈴木健二さん、たしか昨年かおととしの収入四千数百万円だったと思いますが、それはやっぱりNHKの給料がそんな四千数百万円もあるはずはないですわね。やはりこれは「気くばりのすすめ」の印税が大部分であったろうと思うんですが、NHKの職員が、たとえば本を出版した場合、業務上の経験をもとにしてそれを本にした場合と、たとえば鈴木健二さんの人生観、哲学、そういうものを「気くばりのすすめ」という本の中に盛り込まれた場合とではNHKのその印税収入等に対する考え方もおのずから違ってくるかと思いますけれども、現在どうなんですか、NHKの職員が本を出した場合、その印税収入等はどちらに帰属することになっておりますか。その取り決めはどういうふうになっておりますか。
  182. 川口幹夫

    参考人(川口幹夫君) 大きく言って三つのケースがございます。  一つは、放送台本や放送の活字化による出版、たとえば「歴史への招待」という番組があって、それを書いたプロデューサーがその台本をもとにして出版をするというふうなケースでございます。職員が職務上執筆したものを出版する場合、こういう場合は著作権はNHKに帰属するというふうに就業規則の中にうたってございます。したがいまして、その印税もすべて協会収入というふうになります。  二番目に、執筆の内容業務に関するものの場合、たとえば番組制作に携わっている者がその番組に関したことを本にするというケースがございます。たとえば、番組そのものを出版するんじゃなくて番組に関することを出版するというケースですね、その場合は就業規則の第十条というのがございまして、上司の許可を得て執筆をするということ。その執筆活動が本来業務に影響するかどうか、あるいは信頼感を損なうことはないかということを判断して許可をするしないということを決めますが、この場合の印税収入につきましては、協会が出版社から許諾料として一定の印税を徴収する。執筆者は著作権者として相応の印税または執筆料を受け取る。つまりNHKにも金が入るというケースでございます。  それから三番目は、業務に全く関係のないもの、本人の趣味に関したもの、あるいは私的生活の範囲にあるものの場合は、業務に支障を来さない限り職員が自分の自由な時間に本を出すことは、これは勝手でございます。ただし、その執筆そのほかが勤務時間外ということはもう当然ですね。この場合の印税については当然本人のみに帰属をいたします。  で、最後の、三番目のケースに「気くばりのすすめ」は当たるかと思います。
  183. 中村鋭一

    中村鋭一君 具体的にお伺いします。  柳田邦男さんがNHKの報道局に放送記者としておられたときに、「マッハの恐怖」というすばらしい本でございましたが、お出しになりました。あの場合はどうなんですか。柳田さんは、当時は報道部の放送記者でございました。しかも航空記者であったと、私理解しております。そうすると、彼は放送記者として知り得た情報も、あの「マッハの恐怖」という本の中にはたくさんあったと思うんです。しかし、別にNHKでつくった航空関係の番組の中からピックアップしてあの「マッハの恐怖」というものをお出しになったんじゃなくて、全体としてはあの「マッハの恐怖」という本はなぜ飛行機が落ちたかということについて柳田邦男自身の蓄積した知識とその推理眼というものを駆使して本をお書きになったわけでございます。あの場合、印税収入は結局どういうことになったんですか、柳田さんの著書の場合。
  184. 川口幹夫

    参考人(川口幹夫君) いまの例については、具体的なことを実は私はいま存じません。  ただ、その場合は業務とどの程度かかわりがあったのかということの判断をして、業務にかかわりが非常に深いと、先ほど二番目の例で申し上げましたあのケースであると、一部協会に許諾料が入って、印税は柳田君にもいくというケースかと思います。そのケースであったか、あるいは三のケースですね。おっしゃったように、蓄積を出したものだということで協会業務とは関係なかったという解釈をしたのか、いま私はつまびらかではございませんが、その二か三のどっちかであったろうと思います。
  185. 中村鋭一

    中村鋭一君 鈴木健二さんの方は講談社から出ているのですけれどもNHKは幸いなことに外郭に出版協会がございますが、どうなんですか、職員が本を出すなら、たとえば「気くばりのすすめ」、これはNHKの出版協会からお出しになれば、あれは物すごくもうけておりますよ、講談社は。ですから、それは当然ながらそういうことをお考えになってもいいと思うんですが、その点はどうなんでしょうか。
  186. 川口幹夫

    参考人(川口幹夫君) 大変むずかしい質問でございますけれども、先ほどの三のケースで申しましたけれども、この場合の著作行為というのは、いわば個人の執筆に関する自由というふうなものでやったことだと思っております。したがって、これを本人の意思ならいいのですけれども、私どもが強制して特定の出版社にやるということはかえって妥当を欠くんじゃないか。むしろそういう意味で言えば、NHKないしはNHKに関係する者がなるべくたくさんの出版社といろんな関係があるというのもいいのではなかろうかというぐあいにも思いますけれども、いかがでございましょうか。
  187. 中村鋭一

    中村鋭一君 そうですけれどもNHKがもうかることだったら遠慮しないで、まさに職員が本を出すのだったらうちから出してくれよと言うくらいのことはおっしゃってもいいんじゃないですか、それで少しは助かるんですから。  先日視察に参りまして、石川県、富山県、長野県、NHKのたとえば、金沢の放送局長さん、富山県、それから長野県の松本や長野の放送局長さん、歓待を受けてありがとうございました。  たとえば、金沢の局長さん、高野さん、南米におられてワシントンの総局長をおやりになって、いまは金沢でがんばっておられるわけです。本当にやりがいがある、生き生きして仕事をしておられて、私もああそうかとワシントン総局長までおやりになったようなお偉い方がいわば地方の県庁の所在地、金沢の放送局は大きいとお伺いしましたけれども、それで本当に勤労意欲に燃えて働いていらっしゃる。感銘を受けた次第でございますが、その節もお世話になりましてありがとうございました。御礼を申し上げておきます。  どうなんですか、報道出身の方が支局長におなりになる場合、それから、営業出身の方、技術出身の方、一般事務職出身の方、そういった放送局長に登用する場合の人事基準といいますかね、割合といいますか、それはどういうふうになっているか、お教え願います。
  188. 横井昭

    参考人(横井昭君) 先生の御指摘放送局は、NHKの場合に東京に本部がございます。そのほか、大阪、名古屋のような管内の局を自然サポートする管担局というのがございます。それ以外に各都道府県に約六十くらいの放送局ございます。NHKは全国の国民を対象にし、全国を基盤にする放送局でございますので、NHK放送局局長会長の代行者として地元の住民に接しなければならぬ。そういう意味で、われわれは最大限に放送局長のポストを高いポストだと、こういうふうに考えて、本人の経歴、年齢、それから知識、技能、識見等を総合的に勘案して、適材配置の放送局長を選出している、これが現実でございます。  ただ、NHKはやはり放送局でございますので、どうしても放送分野の人材がかなりたくさんございます。そういう点から、現在六十余りの放送局局長の中がどういうふうになっているか、これはあくまで過去の蓄積の結果でございますけれども放送、つまり芸能、報道、教育の放送番組並びにアナウンサーの方々がそういうものを放送分野とすれば、その方々が約三分の一、それから報道分野が三分の一、技術、事務が三分の一、大体そういうような状況になっておりますけれども、人選に当たってあくまで適材配置ということを最大限に考えて、その中で各職種のモラールも下がらないようにということを配慮しながら放送局長を決定しております。  以上でございます。
  189. 中村鋭一

    中村鋭一君 時間が参りました。まあ私、地方へ参りまして局長さんにお会いする都度、ああやっぱりこうやって全国各地で局長以下みんなが一生懸命やっているんだなということで、深い感銘を受ける次第でございます。だから、いまおっしゃったプロパーマン・イン・プロプライアティーということは本当に大切なことで、出身別のパーセンテージも含めまして、やる気のある人が十分に報いられるという勤労実感を持てるような人事をぜひひとつこれからもお願いを申し上げておきたいと思います。  本来なら、ただいまからNHK経営再建につきまして、核心をつく質問をいたしたいところでございますが、時間が参りましたのでこれで終わります。
  190. 青島幸男

    青島幸男君 五十五年度決算に関しましては御報告も承りましたし、同僚議員たちの質疑の中でおおむね了解をいたしまして、格段の疑念を差し挟むものじゃございませんが、せっかくの機会でございますので、経営のありようその他につきまして若干質問さしていただきます。  日進月歩と申しますか、大変に技術革新が進んでおりまして、伝達の手段、ハードの方もかなり新しいものが続々と出ておりまして、CATVなどがかなりの普及度を示しているように見受けております。CATV網が全国に張りめぐらされるようなことになると、NHKとしてはどういう影響を受け、それに対してはどういう対応をしていかなきゃならないとお考えでしょうか。
  191. 坂倉孝一

    参考人(坂倉孝一君) 先生御指摘のとおり、非常にCATVの事業を推進する動きが各方面で出てきているわけでございますけれども、まあこれがどういった形で日本におきまして普及をしていくのか、なかなか予測がむずかしいわけでございまして、必ずしもアメリカのような形どおりになっていくとも考えられない点もございますので、どういう形になるかということはなかなかむずかしゅうございますけれども、しかしながら、こういったCATVを初め、情報メディアが今後非常に多様化していくのは必然であろうというふうに考えるわけでございます。しかしながら、NHKは、こういったCATV網が発展すれば、NHKにも影響は当然及んでくるであろうというふうに考えるわけでございますけれども、それをただ競合するものというふうに見るのではなくて、やはりこれは相互に相補いながら、多様化してまいります視聴者あるいは国民のニーズにこたえていくべき、そういう共存関係を発展させていかなければいけないんじゃないか、そういうことによって経営基盤を確保していくべきであるというふうに考えるわけでごいますけれども、ただこの発展する方向としては、やはり放送というものとCATVというものが秩序のある共存関係、そういったような形で進んでいくということを期待しているわけでございます。
  192. 青島幸男

    青島幸男君 その秩序どおりにうまくいくといいんですけれども、片方が最初CATVというものは難視聴対策から始まったという認識を持っていますよね。どうもテレビの映りがよくないと、共同受信設備をつくろうじゃないかと。それで各戸にCATVで画像を送るというかっこうでスタートしながら、これが三千、五千、あるいは大きいところではもう万という単位のCATVもあるそうでございますけれども、下田だの、あるいは甲府だのでですね。そうすると各戸に特別に自主放送を始める。そうなりますと、自主放送に対して受信者は料金を払うという実態になりますね。そうすると、NHKにも払うし——ほかの民放には払わない。しかもCATVには払っている。CATVで十分間に合うんだから、NHKに別に払うことないんじゃないかということで聴視料の支払いを拒否するような傾向が生まれてくると問題だと思いますしね。そういうことの競合のあり方も考えておかなきゃならないんじゃないかと思いますが、いかがですか。
  193. 坂倉孝一

    参考人(坂倉孝一君) 御指摘のように、CATVが非常に多チャンネルといいますか、あるいは多目的な形でもって自主放送を始めるということであろうと思いますけれども、私どもはやはり各地域におけるCATVはNHK放送を再送信をしていただくということを前提に考えていきたいというふうに思うわけでございます。再送信を確保していく。やはりNHK公共放送として放送法にのっとって放送をいたしているわけでございますので、やはりNHK放送というものは、そのCATVの中で当然再送信を行っていただきたいというふうに考えておりますし、それから、それに基づく受信料の契約、あるいはさらに進んで収納といったような点につきましても協力を要請していきたい。また、そういったような義務再送信といったような問題についても今後とも郵政省なり何なりにもお願いしたいというふうに考えているわけでございます。
  194. 青島幸男

    青島幸男君 ところが、NHKを見るためのケーブルと、あるいは自主放送を見るためのケーブルが別のケーブルならいいんですけれども、同じケーブルを通ってくるわけですね。そうすると、実際の聴視者はNHKの聴視料も払いながら、CATVの独自の放送に対する対価も払っているわけですね。そうなると二重に払わなきゃならないというふうな考えを持つような方がお出になるに違いないと思います。  ちなみに郵政省は、どのくらいの普及率があるかきっと御存じだと思うんですけれども、CATVの現在の普及率はどの程度のものだか把握していらっしゃいますか。
  195. 鴨光一郎

    政府委員(鴨光一郎君) CATVには届け出によるものと許可の対象になるものと両方ございますけれども、現在施設数で約三万三千、それに対します加入者が三百六十万いるというふうに把握いたしております。
  196. 青島幸男

    青島幸男君 三百六十万ということは視聴者の割合としてはどの程度になりますか。
  197. 鴨光一郎

    政府委員(鴨光一郎君) 現在NHK受信契約者が三千万若干欠ける程度かと思いますけれども、それとの対比で申し上げますと一一、二%という数字になろうかと思います。
  198. 青島幸男

    青島幸男君 いままで物事の経過を見てまいりますと、一〇%に普及率が到達するまではかなりの時間がかかりましたけれども、テレビにしてもラジオにしてもですけれども。一〇%を超えますと加速度的に、こういうある種の流行といいますか、あそこのうちもテレビを買った——最初新橋の駅頭にテレビが置いてあって、みんなで寄ってたかって黒山のように見ているころは受信機の一台当たりの単価も大変、それこそ何カ月分の給料にも匹敵するほどの高いものでございましたけれども、これがそれこそあそこのうちにもある、ここのうちにもある、普及率が一〇%に達したころからは、どなたも御存じだと思いますけれども、大変な加速度的な勢いで普及しましたね。それから勘案しますと、やっぱり一〇%を超える状態になってきますと、隣りのうちで見えるのがうちでは見えないという、屈辱感といいますか不安感といいますか、特に子供さんなんかからそういう要求を受けますと親はつけざるを得ないというかっこうになりますね。そうすると、特に地方なんかでは、NHKが確実に見られるために補完的な手段としてCATVを引いているお宅があっても、それによって自主放送も見える、またほかの民放のチャンネルも見ることができる。そうなりますと、うちにもお父さん引いてくださいという要求が子供から出るわけでしょうし、そうなりますと引かざるを得ないという非常に加速度的な勢いで引かれることになりますと、それに対応してソフトの方もかなり充実したものができてくると思いますね。  そうなると、私が先ほど申し上げましたように、NHK受信料NHK受信料として払いながら、一方ケーブルの自主放送もしくはほかのチャンネルが見られるということの料金として重ねて払わなきゃなんないわけですから、テレビを一台持って家で受像しているという状態で二重にお金を払わなきゃなんないというのが現実の問題としてあり得るわけですね。そうなったときに、NHKは見られなくてもいいからというような欲求、基本的な気持ちが、二重に払っているというような不安感を助長させて不払いの傾向に走るというようなことがあるとゆゆしき問題だと思いますが、いかがなもんでしょうか。
  199. 坂倉孝一

    参考人(坂倉孝一君) 確かに御指摘のことは、そういうCATVの料金とそれからNHK受信料ということで、二重に料金を取られるという抵抗感というものが出てくる傾向というのはあり得るかと思いますけれども、そういう意味で、私どもも現在のCATVに対しましても、これは再送信を必ずやっていただくことをお願いいたしまして同意をいたしているわけでございますので、この同時再送信というものを必ずCATV事業者の方にはお願いして確保していきたい。さらに、そういう意味での再送信の義務づけといったようなところまでお願いをしていきたいという方向を申し上げたわけでございます。そして、それと同時にその収納ということにも協力を要請していきたいというわけでございまして、これはやはりNHK公共放送としての番組を提供して、ある番組放送いたしております。それはどのCATVからも必ず放送が送り出される方向というものを希望しているわけでございます。
  200. 青島幸男

    青島幸男君 逆に申し上げまして、CATVが 一〇〇%普及いたしましてCATVによってどなたもが受像機を見るというようなかっこうになれば、よく電話の料金の収納と比較されるんですけれどもNHKさんから見れば、電話はいいな、払ってもらえなきゃとめちゃえばいいんだからという感じですね。それが電波を流しているもんだから、どこの家でどなたが見ているか的確につかめないし、料金をいただきに上がると転宅なすったりなんかして、そのトラブルでかなり未収のところもありますし、その収納するための手間暇は大変かかっていらっしゃいますね。  ところが、各戸がCATVになりますと、線抜いちまって見られなくしちまうということが、逆に手段としてあり得るわけですよね。そうなると、黙っていても一〇〇%収納できるという確実性は高まっていくわけですけれどもね。しかし、それだけで電波を流さないでいるというわけにもまいりませんでしょうから、先ほど私申し上げましたような疑念も浮かんでくるんでしょうし、ですから料金体系というもののありよう、いまも普通とカラーとまた別料金でやっているわけでしょう。これもさまざまな検討が加えられているようですけれども、ほとんど九〇%以上がカラー受像機をお持ちになっていらっしゃるし、NHKとしては流している絵は全部カラーですね。  そうなりますと、この料金の二本立ての体系というのすら手がつけられない状態でいるんだから、この先この料金体系のあり方に手を加えるということは大変むずかしい問題だと思いますが、いまのままの料金体系でいいんだというふうに感じられていらっしゃるか、あるいは法制化の問題でさまざまな議論を呼びましたけれども、法で強制してどうしても払わせろというのも好ましい手段ではないと、御協力をいただくという姿勢で進めた方がいいんじゃないかということでいままできているわけですけれどもね。この料金体系のありよう自体については一点の疑念もなく、このまま続ければいいと会長お考えなんでしょうか。それとも、何らか手だてをやっぱり講じていかなきゃならない、改善の余地があるとお考えでしょうか、どうでしょうか。
  201. 川原正人

    参考人川原正人君) いま御質問の料金体系について、私は結論としてこのままでいつまでもいいとは思っておりません。確かに、いままだ白黒であるというお話で、白黒の料金をいただいている受信者はたしかまだ六、七%あったかと思いますけれども、私は実際はもっと少ないはずだというふうに思っております。  ただ、しかしお伺いして、白黒だと言われる以上、私ども中に立ち入るわけにまいりませんから、それでは別料金ということでちょうだいしておりますけれども、いつまでもこれでいいというふうには思っておりません。それは二年ほど前に長期ビジョン審議会でこのことを議論いただいた際にも、将来はこれはやっぱり考えるべき問題だろうという御指摘もいただいております。ただ、いつのときをとらえてそれを平準化していく、一本化していくかということはなかなかデリケートな問題でございまして、いまかなり料金幅もありますので、あるいはもう一段階その幅を縮めておくことがまず必要かなということも考えております。  それからもう一つ、先ほどのCATVについて私からもちょっと考えを述べさしていただきたいんですけれども、CATVについては私ども部内でもいろんな議論をいたしております。  それで、青島委員の御指摘のような問題もあることは重々承知しておりますし、考えようによると、あるいはひょっとしてNHKが将来生きていく上においての非常に一つの反対の力になるのかなということも考えないわけではありませんけれども、さりとて、それならば私どもがCATVの発展を阻止するというか、これに対抗してつぶしてしまうというと言葉が悪いけれども、そのような措置をとるべきものか、もし本当に生きていくか生きていかないかと企業がなれば、それはかなりの決心もしなきゃならぬわけですけれども、しかし新しいこれだけの技術進歩、技術革新に基づくメディアを少なくとも私どもは敵に回すというような考えはとるべきじゃないと思いますし、そうしたからといって、そういう体制を阻むことも恐らくできないと思います。  そうであるならば、やはりこのCATVとNHKは一緒になって協力して新しい時代の文化の創造というか、より多角的なメディアを使っての国民へのサービスという形で協力していくべきものであろうと。それにはどのような手だてが必要かと。そこで、先ほど坂倉が申しましたような、むしろ私ども積極的にうちの番組を利用していただきたいと。と同時に、その反面、料金の徴収についても相当の協力をお願いしたいというふうに考えるわけですし、仮にまた受信者の立場に立ちまして、CATVで何十チャンネルできるかもしれませんけれども、少なくとも私どもとしては、いまNHK受信者の方にサービスしている番組の水準というものはそう簡単に通常のCATVの業者がカバーできるものではないだろうと、そのくらいの自信と自負は持っております。これはまたお互いに協力できる余地は十分あるはずだ、かように考えておるわけでございます。
  202. 青島幸男

    青島幸男君 確かにそのとおりだと思いますよ。  私は、前々回か、NHK予算審議のときにお話し申し上げているはずですけれども、受信機を置いて、NHKと契約をして料金を支払いますね。これが放送を受信するための対価なのか、あるいはこういう体系を維持するための賛助金と申しますか、そういうかっこうのものなのか、あるいは税金みたいにだれもが払わなきゃならないというかっこうなのか、これが実にあいまいもことしておる。だから、ヨーロッパのように契約の社会できちっとした契約で事が行われるということではなくて、何かその辺があいまいなうちになあなあで出てきてしまっているという傾向がありますね。これもラジオのころからの歴史的な経緯でそうなっていると思うんですけれども、しかしこれじゃいけないんで、基本的にはキーをつけるというような、電波に暗号を入れて、普通の受信機だけではNHK番組は見られないと。NHKと契約をして、コンバーターなりなんなり、キーを外す設備をリースするとかというかっこうにして、はっきり受信者NHKとの間に料金による契約というものを明確にしていかなければ、いつまでも未収は残るだろうし、視聴者とのトラブルも後を絶たないだろう。そのことを申し上げて、検討していただけるお気持ちがあったら検討してくださいということを申し上げておいたんですけれども、その後どうなりましたでしょうかね、私の提案は。
  203. 坂倉孝一

    参考人(坂倉孝一君) 青島先生からのスクランブルについての研究をしろというお話につきましては検討をずっと続けておりまして、やはりこれから来年衛星放送も始まるわけでございますので、将来のそういう衛星放送も含めて、一体そういったスクランブルという形というものが適当であるかどうか、さらに検討は進めたいと思っておりますけれども、ただ、やはりNHK放送の普及という面から、先生のおっしゃる契約をきちんとするという意味での御趣旨はよく理解するわけでございますけれども公共放送という立場からストレートにそれが取り入れられる状況にはないかとも思っておりますので、さらに今後ともそういう将来の方向を見ながら検討は続けさしていただきたいと思うわけでございます。
  204. 青島幸男

    青島幸男君 そうですね。私も急遽それを来年でも再来年でもやったらどうだと言うつもりはないんです。ただ、先々CATVとの絡み合いなど出てきまして料金体系に疑点があらわれてくるということも重々予測できますので、その辺のところを含めて考え方をまとめておかなきゃまずい事態になりはしないかという、これ杞憂に終わればいいんですが、そういうふうに思っています。  それで、NHK公共放送としてのたてまえからすれば、キーをつけなきゃどうしても見られないぞという、高圧的に受信者の皆さんに要請するということもいままでやってきた歴史の上からもちょっとやりにくいことだとも思うんですよね。それよりは、上質の放送を提供して、こんなに確実な報道がある、こんなにいいものが見られるんだったら当然協力してしかるべきだという、むしろ受信者の方々に協力したいという欲求を起こさせるような姿勢で取り組むべきだというふうに会長も当然思っていらっしゃるんでしょうし、私もそういう態度が公共放送としてのNHKにはより望ましいものだという認識は持っております。しかし、だからといって、いつまでもこのままほうっておいていいということではない時期が来るかもしれないということを念頭に置いていただきたいというつもりで言っているわけです。  それから、話は変わりますけれども、民放はキー局で出した電波を三十局あるいは三十四局ぐらいでネットして、わりあいネットワークは確立しておるようですけれども、しかし民放のなかなかいい番組というのが見られない地域が場所によっては生じますね。そういう場合は、どうなんでしょうね、NHK放送法のたてまえから全国あまねく見られるようにしなきゃならないし、していく努力を怠ってはならないという制約もありますし、そういう意味からすると——もっともコマーシャルの入っているものをNHKさんが流すというのもなんでしょうけれども、たとえば外国で賞を受けたようなものでいい内容のものを民放が流している、しかしある地域の方々はそれを見ることができないというような場合、NHKで見られるように適当に処理をするなりして放送してサービスで提供してあげるというようなことは全くできないものでしょうか、どんなものでしょう。
  205. 川口幹夫

    参考人(川口幹夫君) 大変示唆に富んだお話だと思います。私どもも民放の番組NHK放送するということは非常に意味があるというふうに考えておりまして、過去、「地方の時代・映像祭」というので賞を受けた番組、これは青森放送と東海テレビだったと思いますが、放送しました。それから日本賞で賞を受けた番組放送しました。これはたしか静岡でございます。そういうふうな形でいい放送を出した民放のものをぜひNHKで紹介したいという気持ちは持っております。それから、たとえばことしの二月の十四日から一週間にわたりましてNHKの作品十一本、それから民放の作品が十本、合計二十一本でしたが、教育テレビで、おっしゃるようにコマーシャルを抜きましてドラマなども放送いたしました。そういうことは実はやっていこうという精神にはあるわけです。ところが、たとえばドラマの場合でございますと、各民放が持っていらっしゃる一種のステーションカラーとか、それから御自分の社の編集方針とかというものがありまして、なかなか、その辺についての、お借りして放送しようと思ってもできないとか、むずかしい問題はあります。今後の問題としてそれは検討していきたいと思っております。
  206. 青島幸男

    青島幸男君 せっかく全国をカバーしている波を持っているわけですから、そのために地方で狭間に入っていて見られないというふうな方々になるべく不公平のないように番組が見られるような御努力があってしかるべきだと、その方向で検討なさっているというお話で、私も安心してお願いをする次第です。  さて、次は郵政省にお尋ねしますけれども、ニューメディアと呼ばれるものの利用形態からいたしますと電波監理、電気通信監理の範囲を超えるというふうなことが想像されますし、その結果、通産省と郵政省の間に重なる問題なんかが出てきてトラブルのもとになりはしないかという気がするんですけれども、郵政省としてはどういうふうに調整していこうというお考えでありますか。
  207. 小山森也

    政府委員(小山森也君) 先生の御説のとおり、外目にはなかなかわかりにくい点が非常にございます。たとえば、データ通信にいたしますと、データ通信で行います端末での処理は、これはコンピューターでございまして、コンピューターの生産とかハードの生産、これは通産省の所管になっているわけでございます。ところが、これが通信回線に乗った場合には、これは郵政省だということでございます。  ただ、しかしながら、現在のところ、電気通信に関する事務は一体的に遂行する責任を郵政省が持っているということでございます。したがいまして、ニューメディアというような一つの言葉であらわされる通信媒体、これにおきましても、やはり郵政省が最終的責任を持って進めるべきものだ、こう思っている次第でございます。
  208. 青島幸男

    青島幸男君 その辺がちょっとむずかしいんですね。ただ電波を流している場合は、発信しているところと受信者がいて間は空中を飛んでいるわけですから、余り問題は起きないと思うんですけれども、形而上的な問題として郵政省が放送局を監督指導するというかっこうはいいと思うんですよね。ところが、今度、ハードの面でそこへ引っ張っていく線というようなことになりますと、これは通産省の領域になってきはしないか。しかも、これは物理的な問題と、中に流れる芸術性と申しますか、ソフトの問題とどうしてもどこかでかみ合ってくるわけですね。だれがどこまでの権益指導の監督の任に当たらなければならないかということが非常に不明確になってくるような気がして、その辺を何かはっきりした基準を設けておかなければいけないんじゃないかという気がしますが、どうでしょう。
  209. 小山森也

    政府委員(小山森也君) あらゆるメディアにつきまして全部その基準を設けるということはなかなかむずかしいことではないかと思います。たとえば、いま、先生、線を引かれればそれは通産省の所管ではないかということでございますが、それは、素材であるところの電線、いまで言えば銅線でございますけれども、銅線をつくるのが一つの通産省の所管であるとしますならば、銅線を使ったり、たとえば鉄筋コンクリートの場合に、鉄骨をつくりますのはこれは製鉄会社でございますから、これは通産省だとなりますと、中の素材までもつくったところがその所管であるということになりますと、これはちょっと行政の範囲といたしましてはいまの区分とは違ってまいります。私どもはそれがどういうふうに使われているかということであろうと思います。たとえば、先ほども申し上げましたコンピューターの問題でございますけれども、いわゆる電子交換機というものがいま導入されております。電子交換機というのは何かと言えば、これは実体は、中はコンピューターそのものでございます。要するに、コンピューターを利用してコンピューターを部品として使っている仕事でございます、そうなりますと、電気通信というのは。ですから、そういったものを使ったからにはそれをつくった通産省の所管であるとなりましたら、世の中には金を使っているのと物を使っているのとしかないというと、非常に極端な物の言い方なんですけれども、ほかの省はなくなってしまいまして、通産省と大蔵省だけが残るというふうなことにもなりかねないわけでございます。  また、いまのコンピューターの問題でございますけれども、コンピューターを使って情報処理をしましても、いままでは必ずしもオンラインで流れているわけではございません。いま現在でもトラックでかなりの部分がMT——メタルテープでございますけれども、テープを運んでいるというのが実態でございます。そういたしますと、メタルテープをトラックで運ぶからトラックで運ぶ行政は通産省だと、こうはならないと思います。ただ、それを非常に数多く、多量に瞬間的に処理できるのが電気通信でございますから電気通信を使うわけですが、その場合の電気通信というものは、やはり通信主管庁であります郵政省ということになるというのが、これが大体いまでも通説になっておるわけでございます。  したがいまして、まあただいま一例を挙げただけでございますけれども、これをあらゆるメディアについて前もって決めてかかるのはなかなかむずかしい。また、前もって決めることによりまして、これからの発展するであろういろいろな電気通信の利用の仕方、あるいはいろいろなコンピューターの使い方というものが、かえってむしろ拘束を受けて発展を阻害するということもあり得るかと思いますので、いろいろな現象を見ながら、それぞれの中でそれぞれの所管をきちっとルールをつくっていくということにならざるを得ないんではないかと、こう考えております。
  210. 青島幸男

    青島幸男君 そういうことだとも思いますけれども、新しいものがどんどんできてくると、いままで考えられなかったような議論の錯綜なんかが起こるわけですね。  たとえば、せんだっても申し上げましたけれども、双方向通信ができるということになりますと、家庭内で個人的な情報が相互に通信を行えるということになりますと、電電公社の電話とこれが重なってくるわけですね。そうすると、電話の料金を払わないで実体としては電話に近いものをCATVを通せばできるということになりますと、どこからどこまで電電の所管になるのか、どこからどこまで郵政省——やっぱりこれは郵政省ですな、電電もそうですけれどもね。しかも、電話線を通じるというだけでまたそのほかにさまざまのこともできるわけですね、ファクシミリを送るなり何なり。そうすると、電電公社自体の、ただ昔のように随時特定の個人と自由に話ができるという、ただそれだけのものだった電話が大変な可能性を持ってくるわけですから、従来のような考え方でそのまま固定して考えてはいられない。さまざまな可能性についてさまざまな考え方で柔軟に対処していかなきゃならないということが出てくると思うんですね。ですから、そういうことで私申し上げているんですけれども、その時々に行き当たりばったりで考えていくしかないと言われればそれまでかもしれませんけれども、何か一つは方向づけみたいなものを明確にしておいた方がいたずらな混乱を招かなくて済むんじゃないかという感じがしたんで、先ほどのようなことを申し上げたわけです。
  211. 小山森也

    政府委員(小山森也君) 基本にはやはり一つのルールはあるわけでございまして、通信というものに色分けされるものは行政官庁としては郵政省であるということは基本の中にありまして、その基本に基づきましてある意味の応用動作をせざるを得ないだろうと、こういうわけでございます。  ただ、先生の御質問に対して必ずしもつぼを得たお答えになっているかどうかということは、私自身、内心非常にじくじたるものがございますけれども、この種のものはなかなか、先ほど先生もおっしゃられましたように、思わざる発展を遂げるということがありますので、その辺の応用動作程度はお許し願えるんではないだろうかと、こういうふうに考えておる次第でございます。
  212. 青島幸男

    青島幸男君 私の質問の方も明確であるとは言いにくいような部分がありまして、そういうお答えで、私の方も多分に論理がこんがらかっているところがありますのでこれ以上申し上げませんけれども、何かどうなるかわからないという状況があるだけに、前もって予測がつきかねる部分もあるだろうけれども、一応は線を決めておいた方がいいということを言いたいのが私の論旨でございます。  それから、放送衛星の利用について各方面から申請が出ているように聞いていますけれども、チャンネル数とかあるいは送信電力など基本的にはもう決定しているわけですか。
  213. 鴨光一郎

    政府委員(鴨光一郎君) 放送衛星の利用につきましては、これまで御議論が出ておりますように、来年の二月にわが国の初の実用放送衛星といたしましてのBS2というのが打ち上げられる予定でございます。このBS2につきましては、NHKに二チャンネル、つまり難視聴解消を主たる目的といたしまして二チャンネルを予備免許いたしているわけでございます。このBS2の寿命が終わると思われます昭和六十三年度ごろには、その後継機としてのBS3を打ち上げる計画があるわけでございます。  先生のいまの御質問は、このBS3の方かと思いますが、BS2に比べまして衛星の大型化が図られるということで、技術的には送信電力百ワット級で四チャンネルまでの利用が可能であるというところから、これは後継機という意味では、BS2に乗せましたNHKのチャンネルはBS3にも引き継ぐという意味合いが含まれておりますけれども、それ以外に放送大学学園、あるいは一般放送事業者の利用が図られるということで検討してまいっております。  ただ、そのうちで放送大学学園につきましては、財政事情あるいは臨調答申といったこととの関係から利用がむずかしくなってまいりました。そこで、一般放送事業者として——これはもちろん既存のものではございませんで、新しいいわゆる民間放送事業者でございますが、これにチャンネルを割り当てる数を幾つにするかということ、そしてまた、このチャンネル数と関連をいたしますが、送信電力の規模をどれぐらいにまでできるかということがあるわけでございますが、これらの点につきましては、衛星放送の普及の見通し、あるいは衛星放送の事業としての経営見通し、あるいは既存の地上放送との調和といったこと、もろもろのことを考慮して決定する必要があるということでございまして、現在のところ御指摘の点そのものが鋭意検討を進めているものでございます。現在検討中ということでございます。
  214. 青島幸男

    青島幸男君 その、いまも話に出ましたけれども放送大学というのは私はこれはもうこの考え方が発表されたときからずっと反対してきているんですけれどもね。臨調も七年先に見直したらどうだと言っているような状況ですし、関東地方だけに細々と始めるみたいなことじゃとてもこれは当初打ち上げられた構想とは違ったものになっているような気がするので、どうなんでしょうね、大臣、これはどっちかというとやめられた方がいいといまだに私は思っているんですけれども放送大学に関する御決意を、やめるならやめる、やめないならやめないと、どんどん発展させるんだとか、その辺の御決意を承りたいと思いますが。
  215. 桧垣徳太郎

    国務大臣桧垣徳太郎君) 放送大学の構想は、これは一種の文教政策の問題としてまずスタートしたものでありますから、これをやめるかどうかということは文教政策上の問題が私は第一の判断であると思うわけであります。そういう意味で私からもうやめるとかいうようなことは行き過ぎになると思うんでありますが、いままでお答えをしてきましたように、放送大学学園はBS3を使用することはやらないと、やれないということでございますから、地上局、地上電波による関東——まあ大体関東一円ぐらいからスタートをするというようなことでございますので、私ども電波の使用という限りにおいて放送大学の事業に関係をするわけであります。この最初のスタートをしました後、臨調の方でも七年後には見直しをした方がいいということのようでありますので、この今後の放送大学に対する需要といいますか、そういうものの推移を見ながら、私は相当の期間を経過後、慎重に対処した方がいいんではないかというふうに思っております。
  216. 青島幸男

    青島幸男君 終わります。
  217. 大木浩

    大木浩君 本日の議題昭和五十五年度NHK決算ということでございますけれども、先般来各委員の御質問にも反映されておりますように、私どもの関心は単に三年前の決算がきちっと帳簿にできておるかいうようなことよりも、むしろ過去数年にわたり、あるいはまた将来にわたってNHKの事業あるいは経営というものが順調に進んでいくかどうかというところでございますので、そういった点からの御質問を申し上げたいと思います。  まず最初に、多少中長期的なことをお聞きするわけでございますけれどもNHKの方で、先般、昭和五十五年にNHK長期ビジョン審議会というものをおつくりになった。いろいろと今後のNHKの事業というものについてのビジョンの検討ということをされていろいろと問題提起をされたというふうに理解をしておるわけでございますけれども、まあ率直に申し上げますと、この審議会いろいろと問題は提起されたけれども必ずしも答えが出てないという状況であったように理解しております。他方、本年の四月でございますか、経営計画に関する別のまた審議会というようなものができたということでございますけれども、これはどういうふうに両方がつながるのか。今後の経営計画に関する審議会において長期ビジョンの方の問題もそのまま受け継いで、あるいはその一部として受け継いで検討されるのか。その辺についてNHKのお考え方を承りたいと思います。
  218. 坂倉孝一

    参考人(坂倉孝一君) NHK長期ビジョン審議会は、いま先生お話しございましたように、昭和五十五年に、これも会長の諮問機関として設置をいたしたわけでございまして、NHKの長期ビジョンについて多角的に御検討お願いするためのものであったわけでございます。そして、これは一年半にわたって御審議いただきまして、その報告書を御提出いただいたわけでございます。そして、この報告書内容は、先生御承知のとおり、従来の経営計画の枠を超えまして、一九八〇年代の社会においてNHKが果たすべき役割りといった点について種々の御提言をいただいているわけでございます。  これに対しまして、ことしの四月に設置いたしましたNHK経営計画に関する審議会、これは当面これから数カ年を計画期間とする新しい経営計画NHKが策定するに当たりまして、それに資するための公共放送事業体としてのNHKの事業のあり方、それに関連する財政基盤の確立の方策、そういった点について調査、御検討願うということでお願いしているわけでございますけれども、当然この審議の過程におきましては、この長期ビジョン審議会が取りまとめました長期的な展望を大変重要な参考となる御提言として、いろいろこの経営計画に関する審議会もこの審議の過程においてそこの御提言を資料としているわけでございます。  また、当然私どもNHKといたしましても、この経営計画を策定するに際しましては、今後ともこの長期ビジョン審議会が一九八〇年代のNHKのビジョンというもので御提言いただきました、そういった御提言をもとにいたしまして、部内における検討会議その他においても重要な御提言としてそれに沿うような検討も進めてまいっている次第でございます。
  219. 大木浩

    大木浩君 ただいまのは、全体の何と言いますか、事業計画あるいはビジョンの問題ということで、特にニューメディアの導入等々いろいろと不確定要素もあるわけでありますから、なかなか現段階でむずかしいと思うんですけれども、さはさりながら、いろいろと経営の合理化という点からの御検討というものは、これまたやっぱりお進めにならなきゃいかぬというふうに考えるわけでございます。  経営の合理化と言えば、設備のスクラップ・アンド・ビルドあるいは人員の方のスクラップ・アンド・ビルドと申しますか、そういったような問題がいろいろあると思いますけれども、そういった点で一体どういう点に現段階で重点を置いて経営の合理化ということを考えておられるか御説明をいただきたいと思います。
  220. 横井昭

    参考人(横井昭君) お答えいたします。  私どもは、経営効率化、効率的な経営ということは、NHK公共放送として本当に国民、視聴者理解と信頼を得るためになし遂げなければならぬ至上命題である、こういうふうに認識をいたしております。  それからもう一方、けさほど来話が出ておりますように、たとえば文字多重放送だとか、あるいは衛星放送だとか、将来NHKがニューメディアで果たさなければならない役割りが多々あるわけでございますから、これらの役割りを果たす意味での基盤を整備するという意味から言ってもNHKとしては果たさなければならぬ基本課題である、こういうふうに効率化を認識しているわけでございます。  そういう認識の上に立ちまして、昭和五十五年度経営計画の中で五十五、五十六、五十七の三カ年の中で六百人の効率化計画いたしました。さらに、五十八、五十九年にかけて六百人、合計千二百名の効率化を一応計画として掲げまして、その間の業務量に対する要員増を極力抑えて要員の減を図る、こういう計画のもとに業務遂行に当たってきたわけでございます。  五十七年度末までについて申し上げますならば、五十五、五十六、五十七の三カ年の中で六百人の効率化を行いまして、要員増を二百六十名に抑えてプラスマイナス三百四十名の純減実施することができました。現在五十八年度業務遂行中でございますけれども、五十八年度につきましても約三百名の効率化を行い、純減百七十名が実現できる予定でございます。  そういたしますと、五十五、五十六、五十七、五十八の四カ年間で九百名、五・三%の効率化実施いたしまして、純減五百十名、三%の要員の削減が実現できる、こういう見通しでございます。
  221. 大木浩

    大木浩君 NHKの事業といたしまして狭義の放送というもの以外にもいろいろと仕事をしておられるわけでございますし、最近いろいろ関連規則等も変わっていろんな出資もできるというようなことなんで、そういったものについてもまあひとつできるだけ合理化といいますか、発展さしていただきたいと思います。  たとえば、私いつもこれは非常に感心しているんですけれどもNHKの出版物の中で非常に有益なものが多い。たとえば、「未来の遺産」というきれいな写真集がございましたし、それから、いろいろNHK調査能力を発揮して「日本の条件」シリーズですか、大変ためになる出版物が多いわけでございますが、そういった関連事業、特に私は出版事業の方に関心があるんですけれども、その辺についても今後もどういうふうに発展さしていかれるか御説明をいただきたいと思います。
  222. 渡辺伸一

    参考人渡辺伸一君) 先生お尋ねのNHKの副次的収入についてひとあたり説明さしていただきたいと思います。  直近のデータで申しますと、五十七年度受信料以外の収入、副次的収入と申しておりますが、それの総額は十七億六千八百万に及んでおります。  これは先生おっしゃいましたように、NHK放送に関連があります出版物に絡んでの権利あるいはテキストを発行いたしますときの編集手数料、さらには番組を一同放送しましたものを国内、国外にさらに利用してもらう場合に提供する。それから、技術系統で申しますと、NHKでの研究で生まれましたノウハウあるいは工業所有権を積極的に一般の会社に利用していただく、受信者に還元するという、各面にわたりまして十七億六千八百万でございます。この中で、先生おっしゃいます出版物にかかわりますものが一億五千四百万でございまして、この副次収入の約九%を占めているわけでございます。なお、十七億六千八百万と申しましたが、受信料の規模と比較いたしますと、これでも〇・六%ということでございますので、かなり実績が上がった五十七年度でそういう状況でございます。なお、出版物に限らず、NHKの副次収入につきましては、あらゆるチャンスをつかんで積極的にこれをふやしていくという努力をしてまいりたいと思っております。
  223. 大木浩

    大木浩君 次に、先般来、この委員会でもあるいはほかの委員会でも、問題といいますか、大いに激励を受けております国際放送でございますけれども、一生懸念NHKさんもやっておられると思いますけれども、どうもまだ国際放送については完全な状態じゃないんじゃないかと、これだけ大きくなった日本でございますので、もう少しできることがあるんじゃないかという感じを持っているわけですけれども、現在の放送法では第九条の二でございましたか、本来のNHK業務として国際放送というものがあると。他方、その三十三条でございましたか、むしろ政府の命令で国際放送をさらにやれということ、ただし資金の方についてはまた三十五条でやっぱり制限があるというようなことで、政府予算以上のものはもちろん期待できないわけですけれども、全体としてどうなんでしょう、政府からの交付金というのは二十何%でございますか、NHKからいただいた五十五年度の、政府交付金が九億四千何百万円、全体の国際放送経費が三十五億四千幾らというようなことなんですけれども、こういった数字はあるわけですけれどもNHKとしては率直に申し上げて、余り国際放送というものは収益があるものではなかろうというふうに考えますけれども、にもかかわらず、ひとつ国会でも国際放送を大いにやれやれと、こういう機運はあるわけでございますけれども、現在の姿を見られて、これでいいとか悪いとかということはむずかしいんでしょうけれども、もっと国際放送をさらに強化する——まず、いまの全体の姿につきましてどういうふうにお考えになるか、その概論としてお聞きしたいと思います。
  224. 川口幹夫

    参考人(川口幹夫君) 一九二〇年代から一九三〇年代の初頭にかけましてヨーロッパの先進国が国際放送を開始いたしました。それ以来半世紀になりますけれども、諸外国の国際放送の規模というのは非常に拡充、強化しております。NHK国際放送は、こうした諸外国の趨勢におくれているというふうに率直に申し上げていいかと思います。放送時間で比べますと世界の第十七位に当たっております。それから、送信体制では、恐らく中流局の水準を維持する程度じゃないかというふうに考えられます。近年、海外諸外国の国際放送機関における送信体制強化の動きというのが非常に顕著になってまいりましたので、世界の国際放送は現在約千五百台の送信機によって実施されておりまするが、そのうち二百キロワット以上の高出力送信機の割合というのは著しく増加しておりまして、これを日本の現状に照らし合わせると非常にきびしいものであるということが言えるかと思います。また、遠隔地における安定した受信状態を確保するためには、中継局の設置が積極的に進められておりまして、こういう世界の国際放送に欠けている現状を見ますと、日本の場合は大変残念ながらさびしい現状であると言わざるを得ません。
  225. 大木浩

    大木浩君 もうちょっと具体的にお聞きしたいんですが、現在普通の受信機——普通と言うとあれですけれどもNHKの海外放送が世界じゅうで一体どれくらいの地域で聞こえる状況にあるのか。それから、いろいろ中継基地の問題あるいは出力強化の問題と、いろいろと御検討中だと思いますので、そういう計画が進めば一体どれくらいに改善されるのか、その辺のちょっと見通しをお聞かせ願いたいと思います。
  226. 矢橋幸一

    参考人(矢橋幸一君) いま川口君の方から説明いたしましたように、海外の受信状況というものは必ずしもよくはございません。われわれが海外における国際放送受信状況をよくするということでどういうことをしたらいいかということでございますけれども、二つばかりございまして、一つは、いま八俣送信所から電波を出しておりますけれども、国内の八俣送信所の電力をふやすということが一つでございます。もう一つは、海外の送信所を使って中継放送を行う、二つの方法によって受信を改善するということができるかと思います。  いま申し上げました前者の日本における海外の送信力を上げるということにつきましては、わが国から近距離にございますアジアとか太平洋地域、そういった近距離の受信の改善には大いに役立つわけでございます。  もう一つは、海外の送信所、中継基地を設けるということにつきましては、遠距離にあります地域、たとえばヨーロッパとか中近東、アフリカ、そういった方面の改善に大いに役立つということで、その二つの施策を行って、これから海外の受信の改善を行うということが妥当かと思います。
  227. 大木浩

    大木浩君 先ほどから国際放送国際放送と申しているわけですけれども、こういう非常に日本が国際社会でいろいろとよく理解されない面があるというようなことなんで、ひとつそういう点を改善するためにも、日本からの放送というものが何らかの意味において日本の姿を正しく伝える、日本の立場を説明するというようなことで活用していただきたいわけでございますけれども、現在の国際放送内容についてはどういう基準、どういうお考え方で放送しておられるか、ちょっと御説明いただきたい。
  228. 川口幹夫

    参考人(川口幹夫君) 現在NHK国際放送は二十一言語によりまして二百五十九時間放送しております。放送法及び番組基準の示す方向に従って、われわれは最もふさわしい情報の提供ということを国際放送でもやらなければいけないというふうに思っております。それと同時に、日本の国際的地位と、それから役割りの向上、それから国際的な影響力がどのような形で実現するか、そういったことを絶えず考慮しながら客観的な事実に即して報道するというふうなことをただいま堅持しているつもりでございます。  昭和五十八年度番組編集に当たりましては、その基本計画の中に、たとえば経済不況でございますとか経済摩擦、それから国際金融情勢、それから資源エネルギー問題、それから軍縮などというように、今日の世界が直面している重要な問題について日本はどのような対応をすべきなのかということを積極的に、かつ的確に報道するように努めております。また、アジア情勢は非常に流動的でございますけれども、特に欧米の聴取者から強い要望、それからアジアの情勢についてのNHK放送を聞いた方々の高い評価というのが現実にございますので、特にアジア情勢の報道については力を入れているというところでございます。  それから、海外の日本人に対して、いま海外にいる日本人が非常に日本の状況を知りたがっている、あるいは日本の世界に対する対応の仕方を知りたがっているという現状がございます。そういう海外の日本人に対して日本からの最も早い情報伝達手段として十分にその役割りを果たしておるというふうに考えております。  また、国際紛争が生じた場合などは関連する情報を集中的に報道するということが大事であろうかというぐあいに思います。
  229. 大木浩

    大木浩君 日本の国際放送との対比においてちょっとお聞きするんですけれども、現在日本において聞こえるよそからの国際放送、これは一体どういう状況になっているか。  それからもう一つ、これは何らかの交通整理というと変ですけれども、何らかの規制があるんですかないんですか、その辺をちょっと、これは郵政省でございますか、御説明いただきたいと思います。
  230. 鴨光一郎

    政府委員(鴨光一郎君) 御覧間の日本向けの外国放送受信状況でございますが、私どもが承知をいたしております限りでは、アメリカ、イギリス、西ドイツ、ソ連、中国、韓国、オーストラリア、フィンランド、スイス、イタリア、インドと、それぞれの受信の評価にはそれぞれ相違がございます。それからまた、使用言語につきましても、日本語はもちろん入っておりますが、そのほかにも英語、イタリア語、フランス語といったようなことでございますが、受けておりますものといたしましてはいま申し上げましたようなものがございます。  なお、国際放送の規制というお話でございますけれども、私どもが承知をしておりますのは、現在ございます国際電気通信条約、これの附属無線通信規則というのがございますけれども、この中に、要するに中波の放送局については、「原則として、その国の境域内において良質で効果的な国内業務を経済的に維持するために必要な値を超える電力を使用してはならない。」と、こういう規定がございます。つまり、中波につきましてはこういう規定がある。逆に申しまして、短波でございますと特段の規定がないということに相なりまして、特に一番この受信状況に関連をいたします電力につきましては、世界の大勢といたしましては、これを増強する、五百キロワット級のものを目指すというふうなのが現状であります。
  231. 大木浩

    大木浩君 ちょっと現状認識でお伺いするわけですが、そうしますと、いま短波については特に規制はない、規制はないんでその結果として非常に混乱を生じているというようなことでもない、 こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  232. 鴨光一郎

    政府委員(鴨光一郎君) ちょっと申し落としましたけれども、当然それぞれの国が短波を国際放送として使うことはいま申しましたように認められているわけでございますけれども、それぞれが使います短波の周波数につきましては国際周波数登録委員会に登録をいたしましたものを使うという形での秩序づけはございます。
  233. 大木浩

    大木浩君 大分時間もなくなってまいりましたし、日も暮れてまいりましたのであと一つだけ質問させていただきますけれども、先ほど青島委員からもいろいろとニューメディアの話、それからCATVの話いろいろあったんですけれども、最近いろいろと新聞なり週刊誌など読んでおりますと、ニューメディアというものが大変だし、それからCATVが特に非常に皆さん何か新しい、ニューマーケットというような感じでいろいろと免許のための申請というようなものもどんどんふえてくるんじゃないかというようなふうに私も理解しておるんですけれども、このCATVというものの、先ほど日本の状況についてはある程度御説明いただきましたし、それから、私の理解するところでは、アメリカなどではもっと広般なCATVテレビですか、いろんな個別の番組をお金を取って流すというようなものも多いし、それから普及も非常に戸数も多くなっているというようなことなんで、これは非常に大きな将来の問題だと思うのでございます。  最後に、ちょっと大臣にお伺いしたいんですけれども、現在このCATVは非常にまだ不確定要素がたくさんあると思いますけれども、どんどんと皆さんが申請を出してくるというような状況におきまして、これについてどういうふうに御対応になるのか、ひとつその辺のところをお聞かせいただきまして、私の質問を終わらしていただきたいと思います。
  234. 桧垣徳太郎

    国務大臣桧垣徳太郎君) アメリカにおけるCATVの普及発達というものがわが国のCATV界というものを大変刺激をしておるということは間違いないことであると思うわけであります。ちょっと私は数字を覚えておりませんが、相当多くのCATVを開設いたしたいという申請が出ておりますし、またこれからも出ようといたしておるわけであります。郵政省としては、CATV、特にいままではいわゆる再放送の、あるいは自主放送もありますが、一方的な放送手段としてのCATVの設置を認めておりましたものを、本年の春、双方向性のCATVを設置できるということを通達で示したわけでございます。これがまたCATVの申請を促進するという結果になっておることも間違いないと思います。  私は、これらの問題について、それぞれ審査の基準、許可の方針というものに合致するものは順次免許をしていきたいというふうに思っておるわけでありますが、ただ指導の考え方としては、これらの双方向性CATVというものはそれぞれの設置地域における需要に対応してこれ設置されるべきものでありまして、一度設置をしたが余り使い物にならない、あるいは経済的に存立できないということで中止してしまうというようなことになりますと、これは視聴者にも実は大きな被害を与えることになるわけでありますので、それらの問題を申請者の側ともよく確かめ、確認をし、また指導しながら、この問題について慎重な態度で免許を与えていくという方針でまいりたいと思っておるわけであります。
  235. 大木浩

    大木浩君 終わります。
  236. 大木正吾

    委員長大木正吾君) 他に発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  237. 大木正吾

    委員長大木正吾君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。——別に御意見もなければ、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。    (「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  238. 大木正吾

    委員長大木正吾君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより採決に入ります。  日本放送協会昭和五十五年度財産目録貸借対照表及び損益計算書並びにこれに関する説明書につきましては、これを是認すべきものと議決することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  239. 大木正吾

    委員長大木正吾君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって是認すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  240. 大木正吾

    委員長大木正吾君) 御異議ないものと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時散会