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1983-11-26 第100回国会 参議院 選挙制度に関する特別委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年十一月二十六日(土曜日)    午前十時一分開会     ─────────────    委員の異動  十一月二十六日     辞任         補欠選任      加藤 武徳君     宮島  滉君      田中 正巳君     竹山  裕君      高杉 廸忠君     丸谷 金保君     目黒朝次郎君     村田 秀三君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         松浦  功君     理 事                 金丸 三郎君                 関口 恵造君                 田沢 智治君                 上野 雄文君                 多田 省吾君     委 員                 岩上 二郎君                 加藤 武徳君                 小島 静馬君                 小林 国司君                 斎藤栄三郎君                 竹山  裕君                 中西 一郎君                 長谷川 信君                 藤野 賢二君                 宮島  滉君                 村上 正邦君                 大木 正吾君                 高杉 廸忠君                 丸谷 金保君                 村田 秀三君                目黒朝次郎君                 大川 清幸君                 田代富士男君                 山中 郁子君                 栗林 卓司君                 前島英三郎君    衆議院議員        発  議  者  天野 公義君    国務大臣        自 治 大 臣  山本 幸雄君    政府委員        自治省行政局選        挙部長      岩田  脩君    事務局側        常任委員会専門        員        高池 忠和君    参考人        全国町村会事務        総長       皆川 迪夫君        日本婦人有権者        同盟会長     紀平 悌子君        弁  護  士  鎌形 寛之君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○公職選挙法の一部を改正する法律案衆議院提出) ○公職選挙法改悪反対に関する請願(第六二七号外一八件) ○汚職再発防止のための政治資金規正法改正に関する請願(第一二四三号外一二八件) ○公職選挙法改悪反対に関する請願(第二七一二号) ○継続調査要求に関する件     ─────────────
  2. 松浦功

    委員長松浦功君) ただいまから選挙制度に関する特別委員会を開会いたします。  公職選挙法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本日は、本案審査のため、参考人として、全国町村会事務総長皆川迪夫君、日本婦人有権者同盟会長紀平悌子君、弁護士鎌形寛之君、以上三名の方々の御出席をいただいております。  この際、参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、皆様にはきわめて御多忙中のところ本委員会に御出席をいただきましてまことにありがとうございます。本案につきまして皆様から忌憚のない御意見を拝聴し、本案審査参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いを申し上げます。  なお、議事の進行上、参考人方々にはそれぞれ十五分程度御意見を順次お述べを願い、陳述が終わりました後に各委員質疑にお答えを願いたいと存じます。また、発言の際はその都度委員長の許可を受けることになっておりますので、あらかじめ御了承をお願いいたします。  それでは、まず皆川参考人お願いをいたしたいと存じます。皆川参考人
  3. 皆川迪夫

    参考人皆川迪夫君) 私は、ただいま御紹介いただきましたように、全国選挙管理委員会事務総長をしている者でございます。したがいまして、せっかくの機会でございますので、なるべく多くの町村長さん方の御意見を踏まえて御意見を申し上げるのがしかるべきかと存じますが、急な御指定でございましたので十分時間的な余裕がございませんでした。ただ、かねてからこの問題については私どもの会の方でも多大の関心を寄せておりましたので、何らかの機会に私が得ました感触等を御参考に、結局は私の個人意見として申し上げたいと存じます。  まず第一に、選挙運動期間短縮の問題でございますが、私どもは、理想の姿から言えば選挙運動期間はある程度十分な期間があって、この期間を通じて候補者選挙民の接触ができるということが望ましいとは考えております。しかし、現在の選挙の実態からいたしますと、かなり過熱をしておりまして、選挙運動にかかる費用も非常に多くなっているという面もございます。また、選挙の宣伝、周知のためのいろんな手段が多角的に発達してまいりました。そのような点を考えますれば、一般的に、今度提案されておりますような選挙運動短縮ということはやむを得ないと申しますか、ある面においては妥当な措置であろうかと考えております。  ただ、町村の場合、町村長選挙の場合は現在の七日が五日になるわけでございますが、もちろん、この期間中に十分な運動ができる実情にあると思います。ただ、一点懸念されますのは、任意制選挙公報発行支障を来さないかどうかということであろうと思います。この点につきましては、過日、私どもの各都道府県の会長さん方のお集まりの際に議論が出まして、もちろんこの問題は選挙管理委員会と御当局の御判断の問題ではあるが、町村長として検討した場合に、恐らく支障はないであろう、こういうことが大方の御意見でございました。  と申しますのは、現在の二日間の立候補届け出期間を一日に短縮するということによりまして、実質的にこの公報発行に要する期日がそれほど短くなるわけでございませんので、特殊な場合に一つの工夫は必要かと思いますけれども、大多数の場合に発行支障はなかろう、このように考えられるところでございます。  次に、選挙運動の問題につきましては、立会演説会廃止ということが取り上げられてございます。  私どもは、立会演説会はスタートの時代からしばらくの間かなり有効な選挙行為手段であったと考えてまいりました。相当の関心を集めまして、参集者も多く、立会演説会評判というものが、その後の候補者評判かなりの大きな影響を持ったように思います。しかし最近の実情は、どちらかといいますとむしろ弊害の面が目立ってまいりまして、立会演説会空洞化ということが言われてまいりました。したがいまして、今日これを廃止するのもやむを得ない、このように考えます。町村長あるいは市長の任意制立会演説会につきましては、任意制であるから残してもいいじゃないかという御意見もあろうかと思いますが、もともとの手本になる演説制度がなくなるわけでございますので、強いてこれを残すこともいかがであろうかということでございまして、したがって、現在、全国町村におきましては、千余りの町村がこれを実施しておりますけれども、これを廃止することについて特段の異議は出ないというように伺っております。  なお、この選挙運動に関連しましては、テレビによる政見経歴放送あるいはラジオテレビ放送等、別の手段が認められておるようでございますので、そういうことを総合的に勘案しまするならば、この改正案に賛成するものでございます。  なお、早朝七時から八時までの街頭演説会あるいは連呼行為等について新しく制限が加えられるようでございますが、これは私どもも妥当な措置であろう、このように考えております。  以上、簡単でございますが、御意見を申し上げた次第でございます。
  4. 松浦功

    委員長松浦功君) ありがとうございました。  到着早々で申しわけございません。次に、紀平参考人お願いいたしたいと思います。紀平参考人
  5. 紀平悌子

    参考人紀平悌子君) 遅刻をいたしまして申しわけございません。委員長初め当委員会におきまして、この機会をお与えいただきましたことを深く感謝をいたします。  私、きょうここで何を申し上げるべきか、長い市民運動の中で選挙政治をきれいにする、公正なものにするという運動をしてきた中で、何を申し上げたらいいのかいろいろと迷ってまいりましたが、まず私の所感を申し上げさせていただきたいと思います。  今回の公職選挙法改正ばかりでなく、戦後の法律ができまして以後の公職選挙法改正の都度思うことでございますが、選挙有権者のもの、国民主権者ということが言われながら、その立場に立っての改正というものが行われてこなかったということをつくづく思うわけでございます。私が、最初に参政権を持ちましてから投票したのがたしか第二回の衆議院選挙だったと思います。それから、一有権者として、これは一票を投ずるということだけではなくて、積極的に、出たい人より出したい人を推し出すという選挙参加実践参加というところに参加をいたしましたときにつくづく思いましたことが、余りにも一有権者国民立場として参加するという機会が狭いことでございました。  これは具体的に申し上げますと、いま有権者が積極的に選挙参加をしようと思って試みますときに許されております手段というものは、大変限られております。ちょっと項目だけ申し上げさせていただきたいと思いますが、選挙管理執行面への参加ということでは、法律三十七条で、投票管理者となることができる。あるいは法三十八条でございますが、投票立会人になることができる。それから開票管理者となることができる。開票立会人となることができる。このような選挙管理には参加の方法がございます。また選挙立会人になることもできます。  しかし、選挙運動方面への参加、これは具体的には選挙応援ということになり、第三者選挙運動ということになりますが、文書による選挙運動の分野では、候補者選挙運動用はがき選挙事務所に行ってそのお手伝いをする、自分の名前を書いて推薦をするということはできます。また、候補者の行う法定の新聞広告または選挙公報を利用して、これを友人同士で読み合うというようなことは屋内等ではできます。それから、特定の候補者推薦することを決議することはグループでできます。あるいは、確認団体選挙活動用ポスタービラ所属候補者のために使用することを手伝うこともできます。あるいは、言論による選挙運動ということになりますと、立会演説会において代理演説をすることや個人演説会において応援演説をすること、街頭演説をすること、幕間演説をすること、あるいは、個人ということになりますと、電話により選挙運動をすること、個々面接により選挙運動をすること、選挙に関してカンパをすること、こういうふうに非常に有権者選挙参加ということが狭められているというのが有権者の置かれた立場でございます。  今回、公職選挙法の一部を改正する法律案自民党でお出しになっていらっしゃいますが、すでに、私ども有権者選挙に多く参加して、そして金のかからない推薦選挙制を実現する、それを実践でやっていくというふうな運動を支持してまいりました民間の選挙法改正運動協議会等団体では、今回の公職選挙法の一部を改正する法律案に対しては反対意思表明を申し上げております。その反対理由はいろいろございますが、多くは、選挙国民有権者政治に直接参加できる唯一重要な機会であるということを踏まえ、まず、選挙運動期間短縮は、有権者が正しい選択をするために政党候補者政策政治姿勢を知る大切な時間帯です。したがって、有権者判断するのに必要にして十分な機会、そして資料、情報提供がなければならないと考えております。また、公報ポスタービラ街頭個人演説会はあっても、現在でも選ぶ側は情報は不十分でございます。このような状態の中で運動期間短縮立会演説会廃止がもし行われれば、有権者参政権行使に当たっての知る権利というものは著しく制限され、正しい選択支障を来すおそれがある。そして、むしろ制約すべきは違法である事前運動であるというふうに私どもは考えております。  そして、今回の改正案は、選ぶ側の意見が全く無視されて、選ばれる側の論理、特に現職優先党利党略の案であるというふうなことまで申し上げて、ぜひこの公選法の改正はやめていただきたいということを申し上げております。そして、公職選挙法がいま多々不十分であるということは私も同感でございますけれども、もし公職選挙法を抜本的に改正するとすれば、選ぶ手続の問題が種々あると思います。たとえば、いまの運動期間がこれで妥当かどうかということも検討されることはいいと思います。  それから、情報を媒体するチャンスというものをもう少し改善した方がいいと思います。たとえば立会演説会は、いまは支持者のみが集まるというふうなチャンスになってしまっている。そして来る人も少ないということが立会演説会をやめるということの理由のようでございますが、私どもは、確かに立会演説会国政選挙では特にだんだんに参加する人員が減ってはいると思いますが、それでも一定数国民有権者がこれを知る機会として非常に大事にして参加しているという事実も片方にはあります。そして、この立会演説会を有効な情報媒体の場とするためには、立会演説会のありようというものをもう少し変えた方がいいのじゃないか。たとえば、質疑応答ができるというようなことも必要でしょうしそれから今回は立会等廃止するかわりにテレビラジオでの政見放送をふやすということが一方にございまして、これで補うということになっておりますようでございますが、むしろ立会演説会は残して、そしてその放映をテレビあるいは声だけでもラジオでするという方策に切りかえれば、近代的な立会演説会の場にもなるのではないか。  現在、公職選挙法全体が妥当なありようではないと思っております。第一、自由化を言いながら非常な制限選挙になっている。先ほど、特に第三者が積極的に選挙参加をし、出したいと思う候補者を支持したりあるいは政党を支持したりというチャンスが余りにも少ないということを冒頭申し上げました。この辺での法改正ということは抜本的に必要だというふうに私は思っております。  公職選挙法の手直しというものが五十年、五十六年、五十七年、そしてことしと、最近では連続して四回行われておりますわけですが、五十年の選挙二法の三木改正以来、これはやはり管理選挙国民に寄らしむべからずという方向改正が行われているということを考えますとき、その一連のこととして今回の公職選挙法改正にも反対をせざるを得ないわけでございます。参議院は解散もないわけでございますので、ぜひ十二分にこのことを御審議なさるということを望みたいと思いまして、会員あるいは一緒に運動しております市民運動婦人運動方々意見も私の言葉の中で申し述べさせていただいたつもりでございます。  いただきました時間はたしか十五分だと思いますので、定数是正の問題に触れさせていただきたいと思います。  公職選挙法改正が、いわゆる選ぶ手続としてのさまざまな手段文書による手段あるいは演説による手段というふうなことでの改正も、私が先ほど申し上げましたような自由化方向第三者が自由に、出たい人より出したい人で参加ができるという方向手続法改正をした方がいいと思っておりますけれども基本的に一番いま必要とされておりますのが、先ごろ十一月の七日に最高裁の大法廷で判断の出ました、あれは衆議院の場合でございますが、議員定数均衡。逆転区まで出ており、そして五十年改正以来手がついていない議員定数均衡違憲状態である、しかし法令そのものは一応いまのところ立法府に裁量権ありとして、まだその合理的期間内にあるとして合憲となったこの間の最高裁判決をぜひ深くお読み取りをいただきたいと思うわけでございます。  いま、金のかからない選挙あるいは公正な選挙、特にこの公正な選挙というのは国民有権者意見が十二分に反映される公正なシステムということでございますが、この一番基本のものは定数の問題だと思っております。この定数配分がことしの人口動態調査の結果、暮れまでには多分衆議院の場合も一対四・七以上になるのではないかというふうに推察をされております。その状況の中で、特に十一月七日には、法令合憲であるが、少数意見の中で、もし次の選挙以降直さなければこれは違憲、無効という判断出してもやむを得ない場合もあるとまで一裁判官はおっしゃっておられる。それから六名の裁判官が主流の意見とは違う意見をお出しになっている。これは五十一年の最高裁違憲判断の線で出しておられる。そういう八対六対一といったようなこの定数是正問題に対する裁判所意見が出ておりますのに、その五十一年の最高裁違憲判断の後、実質的な審議というものは衆議院においても当参議院におかれましてもおやりになっていないという事実がございます。そして、その面には手をつけずして、たとえば五十七年の、これも自民党の提案でいらっしゃいましたけれども参議院拘束名簿式比例代表制全国区への導入といったような大改革というものはなさってこられておる。そして、そういったバイタリティー、エネルギーがもしおありになるとすれば、もっともっと基本的な問題について掘り下げてやっていただきたいと思うわけでございます。  特に、参議院違憲状態というのは、この定数が決められて以後一回も本格的には直されていないという状態があるわけでございますから、優先順位としてはこれを第一位にしていただきたかった。今回の公職選挙法の一部改正というものは、現在議席を持っていらっしゃる方には有利、それから立候補をなさってくる新しい方には不利である。情報提供機会の大いなる削減でございますから、これは選管でも、町村段階などでは運動期間が五日間になってしまうわけですから、この五日の間に公報を出すということもなかなかむずかしくなってくるでしょう。それから、立会どころか公報発行されていないというふうな町村段階のことをお考えくださいますと、多くのサラリーマンというものは、日曜日が入っておりませんので、候補者の姿あるいは声に一回も接することなくして投票に臨まなきゃならないという状況も出てくるわけでございます。小さい村や町だからといってこれはおろそかにできない問題でありまして、この辺になりますと有権者の選ぶ機会というものをある階層に対しては全く奪うということにもなるわけだと思っております。  ぜひこの問題は慎重に御審議をされたいということをお願いしまして、二十五分までが私の時間だそうでございますので、この辺で陳述を終えさせていただきたいと思います。ありがとうございました。
  6. 松浦功

    委員長松浦功君) ありがとうございました。  最後に、鎌形参考人お願いいたします。鎌形参考人
  7. 鎌形寛之

    参考人鎌形寛之君) まず、意見を申し上げます前に、私のこの問題に対する立場といいますか、それを明らかにしておきたいと思うのですが、私、現在まで約三十年間弁護士仕事をしてまいりました。その間、かなりの数の選挙違反事件を扱った経験がございます。そういう意味で、実際の選挙運動はどういうふうに行われているのか、その辺の事情については一応知っているつもりでございます。そういうような私の経験と、それからもう一つは、私が一有権者であるというような立場、その二つ立場から意見を申し上げたいと思います。  私は弁護士として幾つかの事件に立ち会ってはきましたが、それらの事件は大部分は、いわば選挙運動の末端で直接有権者の方に働きかけるという立場の方の事件が大部分でございます。したがいまして、選挙運動主体である候補者自身のお立場とかあるいは選挙管理執行する立場とか、そういう立場に立って選挙運動を見た経験はございませんので、私がこれから申し上げることは、大体一般国民立場、あるいは第一線で選挙運動に取り組んでいる方の立場、そういう立場から意見を申し上げたいというふうに思います。  今度の改正案について御意見を申し上げる前にはっきりさしておかなければならない重要な問題が二つあると思います。  まず第一は、現在のわが国議会制民主主義のもとにおいて、選挙というのは一体どういう位置、意味を持っているものなのかということをはっきりさせておくことが一つでございます。それから、そのためにはどういう選挙が要求されるのかということです。それからさらには、現在の公職選挙法は、そういう立場から見て果たして適当な法律であるのかないのかという問題を避けて今度の改正案そのものについて論評することはできないことではないかというふうに思っております。  それで、まず選挙の持っている意味ですが、御承知のように、わが国議会制民主主義制度においては、まず選挙があって、選挙によって選出されました議員さん方が法律をつくる、その法律の枠内で行政執行される、不当な行政執行があればそれを司法機関が救済する、そういう仕組みになっております。こういう仕組みのもとにおいては選挙がまず一番出発点になっている。たとえて言えば、選挙議会制民主主義土台であるんじゃないかというふうに思っております。この土台が正しくない、あるいはしっかりしていないということになりますと、その土台の上に立っている議会制民主主義それ自身もゆがめられる可能性があるんじゃないかというふうに考えられます。そういうことで、選挙は非常に重要な意味を持っているということがまず言えると思います。  次には、選挙というのはどういう姿であるべきものなのかということでありますが、これについては、私ここに裁判所の判例の一部を持ってきましたので、その要点だけちょっと読ませていただきたいと思います。これは昭和五十五年に広島高等裁判所松江支部というところで出された判決の一部でございますが、選挙問題に関連しましてこういうことを言っております。「主権者としての国民政治的活動自由——すなわち、国民が国の基本的政策決定に直接・間接に関与する機会を持ち、かつそのための積極的活動を行う自由——は、これなくしては発展した民主主義国家における政治的支配を正当づける根拠を欠くものであるから、憲法は一五条、一六条、二一条の各規定でこれを保障していると解される。ことに、憲法二一条の定める表現の自由の保障は民主主義国家の不可欠の要件であって、国民基本的人権のうちでもとりわけ重要なものであることには異論の余地がない。」というようなことを言っております。こういうような議論裁判所が考えているだけではなくて、通説的、一般的に承認されている意見ではないかと思います。  私もこのような考え方とほぼ同じ考え方をとっているわけでありますが、あるべき選挙の姿としては、そういうような考え方の上に立って、まず有権者に必要な情報有権者判断するために必要であり、十分な情報有権者に届けられなければならないというのが第一点でございます。それから第二点は、有権者は、消極的に与えられた情報を受け入れるという立場だけではなくて、有権者みずからが何らかの形で選挙参加できること。そういうような二つの自由が認められなければ、本当の意味国民主体となった選挙とは言えないのではなかろうかというふうに考えております。  こういうような観点に立って現在の公職選挙法を見てみますと、私は弁護士という仕事をやっておりますので、一応法律専門家ということにはなっておりますが、私たちが公職選挙法をずらっと読んだだけではなかなか理解できません。非常に制限規定が複雑多岐にわたっております。一体こういう行為をやって果たして公選法に触れるのか触れないのかというような質問をよく一般の方々から私たち受けます。しかし、即座にその場で答えることがむずかしい質問が非常にたくさんあるわけです。その都度公選法をひっくり返してみて、幾つかの条文の関連を考えて、その上でこれはこうなるのじゃなかろうかという程度の回答しかできない。そのようにいまの公職選挙法は複雑難解で、国民には非常にわかりづらいものになっております。国民が安心してここまではできるんだと、そういうような形の公選法にはなっておりません。  それからもう一つは、公選法の選挙運動に関する規定でありますが、非常に制限規定が多い。選挙法を読んでみますと、これもだめだ、あれもだめだ、これは制限される、これは禁止される、そういうような禁止規定の羅列であります。私の友人で、ある弁護士が、一部の有権者の方から公職選挙法について解説書を書いてくれ、そしてわかりやすい解説書、何ができて何ができないのか、だれが見てもわかるような簡単明瞭なものを書いてくれと言われて、非常に苦心惨たんして解説書を書いたということがございますが、そのでき上がったものを見ましたところ、これじゃ結局何もできないんじゃないか、こんな解説書をもらっても何の意味もないんじゃないかという批判が出まして、結局その解説書は日の目を見なかった、そういうような実例もございます。そういうことで、現在の公職選挙法制限、禁止規定は非常に複雑多岐にわたりかつ広範囲であるということで、国民参加できる自由な選挙というものを非常に阻害しているのではないかというふうに考えられます。  そのような公選法が施行されているためにその結果どういう現象が起きているかと申し上げますと、一つ国民選挙離れであります。選挙にかかわるとろくなことはない、警察から事情を聞かれたりあるいは呼び出しされたりいろいろな厄介なことが起きる可能性がある、そういうのは御免だ、なるべく選挙にはかかわらないようにしようということで、選挙離れという風潮が一部では起きております。  それからもう一つは、公職選挙法の規定が余りにも制限規定が多いために、いわば潜行した選挙運動、警察の目を気にしながら行う選挙運動というものが非常に横行しております。現在の公職選挙法を見ますと、選挙運動選挙の告示ないし公示期間中でなければできない。事前には一切できないという仕組みになっております。ところが、公職選挙法が告示期間中の選挙運動についても大幅な制限を加えているために、現実には告示の前から、告示中も当然ですが、告示の前から潜行した選挙運動が横行するというようなことになっているのが実態じゃなかろうかと思います。人によっては、選挙運動というのは告示になったらもう終盤戦なんだ、すでに事前期間中に山は越しているんだ、そういうような声さえ聞かれている実情じゃないかと思います。これも、公職選挙法制限規定が非常に多過ぎて自由な明るい選挙ができないための結果ではなかろうかというふうに考えております。  それからもう一つは、こういうような公職選挙法が施行せられて、私たちが選挙違反事件を取り扱うわけですが、ほとんどの選挙違反事件で捜査の対象になった方々は、仮に有罪判決が出ても、自分は悪いことをしたなということで心から反省するという人は、私の経験から申し上げるとほとんどおりません。たまたまつかまったのは運が悪かったんだ、自分がやったことは悪いことでも何でもない、当然のことをやったんだけれども公職選挙法が悪いためにたまたま私はひっかかってしまった、よその人たちもみんなやっているのに自分だけがひっかかった、これは運が悪かったんだ、そういうような受けとめ方をする人が非常にたくさんおります。こういうことも、現在の公職選挙法が本来のあるべき選挙運動というものからかなり離れていった結果ではなかろうかというふうに私は考えております。  そういうようないままで申し上げましたことは、いわば今度の改正案に対する私の意見を申し上げる前提の議論でございます。そこで今度は、改正案そのものについて簡単に私の意見を申し上げます。  主な改正点は、一つ選挙運動期間短縮の問題、それから選挙運動時間の短縮の問題と立会演説会廃止の問題だろうと思っております。  まず期間短縮の問題ですが、現在の選挙運動期間も、いまの公職選挙法選挙運動規定を前提とする限りは十分なものではないんじゃなかろうか。もっと自由に選挙運動ができるということになれば、これはおのずから期間はまた別の観点から考えてもいいのではなかろうかと思いますが、現在の公職選挙法選挙運動制限、禁止規定、そういうものを考えますと、選挙運動のできる場というものは非常にわずかであります。そのわずかな運動を現在の期間中にやる、これだけでも不十分です。それをさらに短縮するということは、その不十分に不十分を重ねる結果になりはしないかというふうに思います。  それともう一つは、こういうように選挙運動期間短縮しますと、先ほど申し上げましたように、それじゃ事前運動に力を入れよう、告示以前の選挙運動を一生懸命やろう、そのためには警察の目を多少気にしながらも潜行した運動をやればいいんだというふうなことになりまして、短縮した意味が結果としてはなくなってしまうのではなかろうか。短縮してもしなくても、結局は潜行した選挙運動をさらに奨励する結果になってしまうのではなかろうかというふうに思っております。  それから時間の問題ですが、これは午前七時を午前八時に繰り上げるという案でございます。私たち一般国民は大体午前七時には起きております。中には出勤途上の人たちも非常にたくさんいると思います。八時には会社に入る、あるいは八時ちょっと過ぎには会社に入ってしまうという方も多数いらっしゃることだろうと思います。そういうような方々に対して何らかの働きかけをしようと思えば、早朝の時間はそれなりに貴重な意味を持っているのじゃなかろうかというふうに思います。したがいまして、この時間短縮についても、いまでさえ不十分な選挙運動の自由が、この時間によってさらに制約を受けることになるということになるのじゃなかろうかというふうに思っております。  それから、立会演説会の問題ですが、これについては、立会演説会出席者が減っている傾向があるのかどうか私はわかりませんが、仮に減っている傾向があったとしても、立会演説会の内容を改善すること、たとえば質疑応答ができるようにすること、あるいは候補者同士の討論ができるようにすること、あるいはそのようなありさまをテレビで放映することができるようにすること、そういうように幾つかの改善を加えれば立会演説会を非常に意義ある選挙運動の場とすることができるのじゃなかろうかと思っております。  そういうことで、この三つの改正点については私は改正すべきではないのじゃないかというふうに考えております。  以上です。
  8. 松浦功

    委員長松浦功君) ありがとうございました。  以上で各参考人意見陳述は終了いたしました。  これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  9. 上野雄文

    ○上野雄文君 参考人の先生方、大変御苦労さまです。  私は社会党に所属をしております上野雄文でございますが、まず皆川先生にお尋ねをしたいのですけれども、先生は、期間短縮の問題について、十分な期間が望ましいのだという前提で、そしてやむを得ない、妥当な措置なのだ、こう言われたわけなんですけれども、何か、前段と後段がつながらないような感じで私受けとめたわけなんです。現在の七日を、選挙公営を自前で広げてきつつある現状下で、五日にしてしまっては集まる人たちも、選挙運動期間の中に日曜日が全くないというようなとり方ができるわけですから、これでは選挙参加をするという機会を失わせてしまうという結果しかあらわれないのではないか、こう思うのですね。どうもその辺が、いろんな条件が整ってきたと言ってみても、もう一つ足りないんですけれども、補足してお話を賜わればと思うのです。
  10. 皆川迪夫

    参考人皆川迪夫君) 私が原則として十分な期間が欲しいということを申し上げましたのは、理想的な形で選挙運動が行われる、これは候補者の側もそうですし、選挙民の側においてもそういう形で行われるならば望ましいことであるということを申し上げたわけでございます。しかし、日本の社会、これは選挙とか政治に限らないと思いますけれども、非常に過当な競争社会でございまして、かなりの長い期間そういう過当な競争をしますと、いろんな面において弊害がまた出てまいる。それが今日まで選挙運動をだんだんと短縮をしてきた一つの原因であろうと思うのです。もちろん、それ以外にいろいろな宣伝の方法が充実してきた、媒体もふえてきたということもあろうと思いますが、基本はやはり過当に過当を重ねた結果いろんな弊害が出てきたということが、短縮方向を今日までたどってきたのではなかろうかと考えるわけです。  ただ、町村長の場合に、町村議会も同じでございますが、一週間が五日になると短過ぎるのじゃないかという御意見でございますが、これは考えようによれば一週間でも短いということも言えようかと思いますが、それならば五日でいけないのかというと、これも現実に選挙運動をやっている方々のお話を聞きますと、中盤まで来るとやることがない、もう回り切っちゃったし、また来たかというような話になってしまいまして、必ずしもそう十分な期間は要らないというように聞いております。  いまお話しの日曜日の問題、これは都市形態、社会形態が違いますので一概には言えないと思いますが、町村部でありますと、特に農民あるいは自家労働者等におきましては、日曜日とか平日というのは余り区分がございませんし、何よりも日ごろの地域的な社会相互間の認識というものが深うございますから、選挙運動期間でなければ候補者を知り得ない、あるいは候補者の人柄、考え方、日ごろの行動というものを知り得ないということはわりあいに少ない。十分に知っている人たちがスタートラインに立って競争をするというふうに考えておりますので、必ずしも期間が五日になるとこれは非常にむずかしいというふうには考えておらないようでございます。
  11. 上野雄文

    ○上野雄文君 いま選挙公報を積極的に出そうという町村が大変ふえてきたわけですね。これは有権者が積極的に選挙参加をする前の段階で、自治体独自で自前の公報出し選挙をよく知ってもらおうという動きで大変いいことなんだろう、こう思っているわけです。それから、いま都道府県や市町村議員、つまり選ばれる側が、国政の公営選挙に比べて非常にわれわれの公営の分野が少ないんだという不満があって、そういうものとぶつかり合って、どんどん公営の分野が広がってきているという傾向があるわけですよ。そういうものを期間短縮してしまうというのは、非常な影響を与えてきているというふうに私は受けとめているわけです。たとえば公報の印刷にしても、印刷技術が発達したからこれはもう簡単にできるのだと言いますけれども、そう言ってみても、いま手際よくできるようなものというのは、町村段階にいきますとそうは簡単に広まっていないというふうに私どもは思っているわけですね。これは一つの問題としてとらえてもらわなければいけないと思うのです。  それから、選挙にはできるだけ多くの方々参加をしてもらうという場合に、不在者投票について町村段階で特に心配している点が私はあると思うのですよ。それで、いま皆川先生は、日曜日の問題は余り関係ないというような趣のお話をされたわけですけれども、そうでなくて、いまは農家の方々なんかは農業収入が三〇%ですよ。ほとんどが働きに行っていて、サラリーマンと全く変わりない実態にいまあるわけですね。日曜日というのはまことに貴重な時間帯なんですよ。ですから、そういう出稼ぎ、あるいは出稼ぎでなくとも通常の働きに出ている状態から考えてみた場合に、そういうのは少し実態を無視する議論になってしまうのじゃないかなというふうに私は思っているのですけれども、特に、全員の参加をさせるという意味での不在者投票なんかについての御議論がどんなふうにされたかお尋ねしたい、こう思います。
  12. 皆川迪夫

    参考人皆川迪夫君) 不在者投票につきましては、確かに期間が短くなるとやりにくいという面があると思います。しかしこれも程度の問題でありまして、もちろん現行の期間内においても長期の不在者等についてはかなり不自由があるわけでございます。したがって私は、不在者投票につきましては、かなり基本的な問題として、運動期間と若干切り離して考えるべき点を持っているのではなかろうかというふうに思っております。たとえば、現在でも、不在者投票投票用紙の申請、投票手続の申請等については若干の例外を認めて早目に行われているような状況でございますけれども、そういった点に工夫を加えて、現実に選挙に間に合うような不在者投票ができる手続というものを工夫していくということは必要であろうかと思いますが、もちろん一週間が五日になればそれだけの影響はあろうかと思います。しかし、そのために不在者投票ができなくなるということにはならないのじゃないかというように考えております。  なお、日曜日の問題につきましては、確かに場所によっては都会的形態のところもございますので、若干の影響はあろうかと思います。
  13. 上野雄文

    ○上野雄文君 皆川先生ばかりに集中して申しわけないのですけれども、いまの不在者投票の場合も、おっしゃるように投票用紙だけは請求できても、一体候補者はだれなんだろうか、それは何も不在者投票を頼んだやつが知らせればいいんじゃないのかと言ったら、これはちょっと話が事前運動との関係でごちゃごちゃしてまいりますし、公の制度として保障するというのであれば、請求した人に今度また大急ぎで選挙公報なり何なり判断の材料というものを送ってやらなきゃいかぬでしょう。そのことが保障されなければ公平な選挙ということにならないのじゃないかと思うのです。ですから、これなんかはどうやってみても物理的に不可能なことを強いるのではないかというふうに思うのですよ。交通やそれから通信、いろんなものが発達している地域の方々のところと、それからことしも四年連続冷害で大変な東北、北海道、こういった地域の人たちに対して、皆さんの方で御意見を何か集約をされたでしょうか。この期間短縮の問題をめぐったり選挙時間を縮めたりという問題なんかについて。もう一つ実態がはね返ってくるような感じで受けとめられるような話がなかったものですから。
  14. 皆川迪夫

    参考人皆川迪夫君) 私は、選挙というのは、選挙人に対する候補者の周知を初めといたしまして、公の手続によってだけこれをやるということが正当な道であるとは必ずしも考えないのであります。現実の問題としては、もちろん立候補届け出があり、公示があって決定をされるわけでございますけれども、現実にはそれ以外にいろんな方法で社会的に候補者が大体出るということがわかっておる、そういうことが前提としてかなりあろうかと思います。したがって、そういうことのために選挙運動期間短縮をされましても必ずしもそれは影響がないのではなかろうか。外国旅行をするとか遠い旅行をたくさんされることもありますので、そういうことまで含めて考えるならば不在者投票というものを別に考える必要はあろうと思いますが、選挙運動期間短縮と直ちに結びつけて、そのためにこれはすべきでないという結論にいくのはいかがなものであろうか、このように考えるわけであります。  なお、東北、北海道等につきまして特別にこの点について議論があったことは聞いておりません。
  15. 上野雄文

    ○上野雄文君 七時から八時に選挙運動開始時間を繰り上げてしまうのは、これも妥当だというお話だけでぽんと出されてしまったものですから、私の方でも、一体どういうことをお考えなのかなという中身がちょっとわからなかったものですから。  実はきのう提案者の方から、選挙運動迷惑論がずっとここの場で展開されたわけです。ボリュームいっぱい上げてどなったりなんかするのはもう大変な迷惑なことだし、それから選挙運動期間が長いのもやあやあ騒がしくて大変な迷惑なことなんだ、こういう論法が展開されまして、選挙運動迷惑論というのは、選ぶ側の人たちも、それから選ばれる側の人たちにとってもずいぶんばかにした話だなと私は受けとめているわけなんですけれども、その妥当だと言われた中身について皆川先生のお考えをお示しをいただければと思うのですが、よろしいでしょうか。
  16. 皆川迪夫

    参考人皆川迪夫君) これはかねてから、あるいは迷惑というような議論が背景にあったのかもしれませんけれども、いろんな点で朝はもう少し遅くてもいいじゃないかという議論があったように私は聞いております。元来、街頭における演説というのはほとんど早朝の場合に連呼が行われておるわけでございまして、迷惑というと語弊があるかもしれませんが、あの連呼行為が選挙運動の本質としてどれだけの値打ちがあるのか、こういう疑問は前からあるわけでございまして、そういうこと等加えまして朝の八時まで御遠慮するということはしかるべきことではなかろうか、かように考えております。なお、選挙管理委員会等からもそういった意見が前に聞かされたことがございます。
  17. 上野雄文

    ○上野雄文君 私は栃木県の選挙管理委員会の書記をしていたことがありまして、皆川先生のいろんな選挙法のお話を伺ったり、かばんを持って益子方面に一緒に選挙法の説明会に行ったりした経験を持っているのです。  それで、いま、スピーカーによって騒音をまき散らすという、これはある面では騒音公害の一つだというふうに一般的な議論としては言えるかもしれませんけれども選挙法律の面にずっとタッチをされてきた皆川先生に、こういうものをなくするためにはどんな選挙運動の方法というものが考えられるかというようなことを、お差し支えなければお述べいただくことができればと思うのですけれども。長い間積み上げてこられた経験の中で。
  18. 皆川迪夫

    参考人皆川迪夫君) 確かにお話しのように、長い間議論をされましてなかなかいい方法が出てこないというのが現状であろうかと思います。もちろん人によって幾つかの提案はされると思いますが、大方の人が一致をするという案がなかなか出てこないということが、だんだんと弊害の点にだけ着目をしていろいろ制限が強化されてきたというのがいままでの経過であろうかと思いますが、その点は、これは競争の世界でございますから、なかなか一致をすることがむずかしい点があるのもやむを得ないのではなかろうか。したがって、選挙民としては、正式の選挙運動ということのほかに、日ごろから候補者選択政党政見選択するというようなところに重点を置いて、スタートラインに立ってからの運動について期待をする、と言うと語弊がございますが、日ごろの、事前運動ということではなくて、事前からの活動ということを評価していくべきではなかろうかと思っております。
  19. 上野雄文

    ○上野雄文君 鎌形先生の扱った事件で、事前運動の問題でいろいろ問題になったことございますか。
  20. 鎌形寛之

    参考人鎌形寛之君) 選挙違反事件は、私の経験から言いますと、事前運動とそれから期間中の運動の違反、数は大体半々くらいじゃなかろうかという感じがします。そういうことで事前運動違反の問題もかなり扱っております。事前運動で一番多いのは文書違反と戸別訪問です。これは公示期間中も大体同じ傾向ですが、特に文書違反においては、後援会活動のための文書配布と選挙運動との一線をどこに引くのか引かないのかということで、捜査当局はどちらかというと、後援会活動のための文書配布あるいは戸別訪問、後援会の加入勧誘のための戸別訪問、そういうものを後援会活動に名をかりた選挙運動ではなかろうかということで、文書違反あるいは戸別訪問だということで検挙する例というのがかなりあるようでございます。  そういうことで、事前運動というのも、それから選挙期間中における運動も現在ではやっていることはほぼ同じです。ただ、適用する罪名が、片方は事前運動違反、期間中になりますと、今度は罪名が制限文書の配布というような名前、あるいは戸別訪問という名前に変わってくるということで、適用の法律の名前が変わるのであって、実態はそんなに変わっていないのじゃないかというふうに思います。
  21. 上野雄文

    ○上野雄文君 ありがとうございました。
  22. 小林国司

    ○小林国司君 諸先生、どうもきょうは御苦労さまでございます。  私、冒頭に三先生に共通な物の考え方というものを先に申し上げてみたいと思います。  今回の改正案は、主たる内容は三つございます。選ぶ方の有権者、あるいは選ばれる側の立場にある衆議院参議院、あるいは地方首長、議員等の間に、今回の改正案につきまして賛否両論が渦巻いておると言ってもいいと思います。特に選ばれる立場の場合におきまする、つまり候補者になるべき人の立場から見ますというと、反応が多種多様に分かれております。それは面積が広いとか狭いとか、あるいはその選挙がどういう選挙であるかという立場、あるいは人口密度、交通の度合い、そういうことによって自分のやってきた選挙、これからやるであろう選挙を通して、都合がいいか悪いかということから判断いたしますと議論が非常に分かれてまいります。したがって、各党派を問わず、また選挙状況を問わず意見個人個人で非常に違っておるというのが実態だと思います。  そこで、きょうおいでくださいました三先生は、特に全国有権者を代表されて参考人としておいでいただきましたので、与えられた時間は往復二十分でございますので、いろいろお伺いしたいことはたくさんございますけれども、的をしぼってお尋ね申し上げて、三先生におかれましては簡潔にひとつお答えをいただければ大変幸いでございます。  まず第一の問題は、運動期間短縮の問題でございますが、これは運動期間が長ければ長いほど選ぶ人と選ばれる人との意思の疎通ということができますから、つまり候補者の人柄、抱負、識見、実行力というものが運動期間が長ければ十分にわかってもらえるというメリットはございます。しかし、これが長過ぎるということはまたいかがなものであろうかという問題が一方にはございます。そこで、現行の制度は長過ぎるのか、あるいは妥当なのか。今度の改正案の方がそういうことを総体的に考えてみて妥当なのかどうなのか。また、この改正案運動の目的が十分果たし得るのか。そういうことにつきましては人によっていろいろ意見が違っておりますから、なかなかこれを総合判断して是か非かということは大変むずかしい問題だと私自身判断しております。  そこで最初に、皆川先生は、運動期間はいまの状態よりも改正案の少し短くした方が妥当である、こういう判断を持っているという意見をお述べになりましたし、特に、市は別にいたしまして、町村の首長あるいは議員選挙等については七日間は長過ぎる、選挙公報発行その他万般の事務的手続についても、長い経験から見て五日間で十分事務的な支障は起こらない、したがって町村の場合は全国大多数の意見が短い方がいい、五日間が妥当だ、こういう意見だというふうに拝聴いたしましたが、もう一つ上の段階の県の段階、特別市の段階、そういうことにつきましては意見を十分聞いてこられたのかどうなのか。その点まずひとつ簡潔にお尋ねしたいと思います。
  23. 皆川迪夫

    参考人皆川迪夫君) 比喩が正しいかどうか知りませんけれども、五百メートル競走をするには五百メートル競走にふさわしいスピードがあるだろう。ところが日本の選挙はだんだんそれが三百メートルになり百メートルになり、激しい競走が行われている結果、とても長くてやり切れないというのが、かなりの人が持っておられる御意見であろうと思います。私は、先ほど主として町村立場から申し上げましたけれども、市、府県につきましても選挙運動期間は短くてもいいだろう、こういうふうに大方の人が考えておるように伺っております。
  24. 小林国司

    ○小林国司君 鎌形先生と紀平先生につきましては、運動期間はいまでも短いぐらいである、したがってこれを短くする改正案については反対である、こういう御意見理由をお聞きいたしましたので、それはわかります。  次に、立会演説会の問題につきましてですが、これも選挙の内容によりまして千差万別だと思います。特に私の場合を御参考までに申し上げてみますと、私は、過去全国区でやりましたときには立会演説会がございません。今度、一昨年でございますが、参議院の地方区に選挙戦を挑みましたときには、回数は忘れましたけれども十数回の立会演説会をいたしました。ある会場では、定刻に参りますというと、聴衆者が七名、選管の係の方が八名。選管の係の人よりも一人聴衆者が少ないのですから、まことに張り合いのないことおびただしい。そのうち少しずつ人が参りまして、四十分間の持ち時間が終わるころには三十人になりました。次は社会党の候補と弁士交代したわけでございますが、聴衆者は総員入れかわりをいたしました。社会党候補が、これは私の中学の後輩で、よく知った男で親しい男でございますが、この社会党候補が講演に入るときには、振り返って見たら十名しかいなかった。こういう全く何と申し上げましょうか、むなしい経験をしたわけでございます。十数回の平均聴衆者の数は約四十名でした。これに引きかえまして、個人演説会は数十回行いました。別に動員をかけたわけではございませんでしたけれども、会場は入り切れないほど。そしてその数は平均大体二百数十名。非常に考えさせられたわけでございます。  立会演説会個人演説会にかえるということがいいか悪いか、これは私にもよくわからぬ面がございます。しかし、この立会演説会というものは、形を変えなければむなしい思いをなさる候補者が非常にたくさんおるのじゃないか。同時に、有権者もむなしさを感ずるわけでございます。したがって、立会演説会は農村部では廃止した方がいいという声の方が圧倒的に多い。しかし大都市あるいは市街地では、立会演説会はあった方がいいという方がまたたくさんいらっしゃいます。これを総合判断して、今度の改正案がいいか悪いかということになりますと、なかなか判断のしにくい面がございます。  そこで、鎌形先生とそれから紀平先生は、立会演説会は残した方がいい、これを廃止することによって選挙が曲がった形になる、こういうふうにお述べになったと拝聴いたしたのでございますが、しからば、今度の改正案廃止することによって何にもメリットがないのかという点について、両先生から御意見を簡潔に承りたいと思います。
  25. 紀平悌子

    参考人紀平悌子君) 簡潔にお答え申し上げます。  立会演説会廃止というのはデメリットが大きいと思います。理由は、選ばれる方じゃなくて選ぶ側の立場から言いますと、立会演説会がなぜおもしろいかといいますと、比べることができるという唯一のチャンスだからです。現在テレビの公営政見がございますが、拘束名簿式比例代表制による公営の形は少々変わりまして、前よりはちょっとおもしろくなりましたが、従来は一人が出てきてそしてお話をして去る。四分半そこそこ、五分以内ですね。まことにおもしろくございません。それで同じ公営でも国民の費用のむだ遣いであるというふうに私はいつも思っております。立会演説会は、その意味では非常にわずかに残された人対人というか、それも見比べができるというチャンスだから、選挙政治に特に関心の高い人々はそこへ好んで行くわけです。それで、数が少ないからといってそれは必ずしも否定できるものではありません。その行った人が口から口へといろいろなことを言うわけです。特にそれを専門で行く方もあるようでございます、おもしろいといって高座へでも行くようなつもりで。そうじゃなくて非常にまじめな層も行く。  それから、立会演説会の開始形態が、早い時間は、あれは日曜日の場合はダブルヘッダー、二回戦ございますね。それで始まる時間が悪いです。特に婦人は、行きたくても深夜遠道を歩いて帰らなければならないような時間帯まである立会演説会というのは、なかなか最終までいられない。それから、時分どきで、御飯の仕度や子供の世話のある時間から始まるしょっぱなの出演者というか、出場者のためにぜひ行きたい、あるいはこの人のを聞きたいと思いましても行けないという隘路がございます。それから、地域的に立会演説会が開催される場所というのは大変限られた場所ですから、その近くの者は行けるけれども、行けないというさまざまの開催形態の隘路もございまして、行く人が少ないという一つの事情になっております。  それからまた、いろいろな媒体が発達いたしましたので、情報はほかからとるという傾向になっていることも事実ですが、立会演説会は、先ほど私が申し上げましたように、テレビ放映を公正な立場ですることによって生まれ変わるという点に留意をしていただきたいということでございます。それから、立会演説会は行く人が減っているというふうに、全国的な統計でそんなこともお出しになっていると思いますが、いわゆる町村合併的なことで減っているという傾向もございますので、その辺も篤とお調べをいただきたいというふうに思います。  それから、私は、個々の立会演説会をどうするとか、それから選挙時間の短縮をどうするとかということでのみ公職選挙法改正問題が取り上げられるということを非常に残念だと思っております。基本的な、いわゆるどういうふうな構造を持つべきか。公職選挙法というのは国民が代表を選ぶ手続でございますので、最も大切な手続法だと思うのです。ですから公職選挙法全体を、部分的にこれはどうだという御質問になりますと、たとえば二十日がいいのか、あるいは十五日がいいのかということになりますと、その部分だけではちょっとお答えが出にくいというふうに申し上げたいと思います。
  26. 鎌形寛之

    参考人鎌形寛之君) 立会演説会の問題ですが、この立会演説会廃止することによって確かに一定のメリットはあると思います。どなたが一番メリットを受けるかというと、選挙管理執行する側の人たちです。つまり、行政の省力化という面で手間が省けるということで一つのメリットはあるかと思います。それからもう一つは、選ばれる側の中の一部の方々も、こういうものがなくてもおれは票が集められるんだという方もいらっしゃるだろうと思います。そういう方にとっては、これはなくなればそれだけ手間が省けるということでメリットじゃないかと思います。  しかし、一方のこれを廃止することによって受けるデメリットの方が私ははるかに大きいのじゃないかというふうに思います。それじゃこれを廃止することによってどんなデメリットを受けるのかといいますと、まず立会演説会そのものの趣旨ですが、これは複数の候補者の方に出ていただいて、お互いの候補者がそれぞれどんな意見を持って、どこがどう違うのか、その辺を十分有権者に知っていただくというのが本来の立会演説会の趣旨じゃないかと思うのです。そういうことを、これからさらに立会演説会のやり方を改善することによって十分所期の目的を実現できるような方法にするということ。その一つのやり方としては、候補者同士が一定の討論をできるという制度にしたらいかがかということと、もう一つは、聴衆が自分の聞きたいことを候補者に質問できるようにしたらどうかということ、それから第三点目として、立会演説会の模様をテレビで放映する。これはテレビ政見放送よりも立会演説会を放映した方が視聴率は非常に高くなるのじゃなかろうかというふうに思います。  そういうことで、本来立会演説会の持っている趣旨を十分発揮させるようにやり方を改善することによって立会演説会を残しておく。改善すればそれ相応の意味を発揮できる立会演説会をここでなくしてしまうということは非常に大きなデメリットじゃないのか。先ほど申し上げました省力化のメリットなんというのは、それに比べればもう取るに足らないものであって、失うデメリットの方がはるかに大きいというふうに考えております。
  27. 小林国司

    ○小林国司君 あと四分しかございませんので、紀平先生に最後に一つだけお伺いしたいと思います。  今度の改正案をつつくよりも定数是正の方に取り組んだ方がベターではないか、こういう御意見があったようでございます。定数是正につきましては、衆議院参議院と両方の場合がございます。衆議院の方は、確かにこれは違憲と言われても仕方のないような現状だと私も思います。したがって、できるだけ早い機会定数を直さなきゃならぬ、一票の重さを、格差が開かないようにしなきゃならぬ、そういう努力をしなきゃならぬということは同感でございます。  参議院の地方区の場合につきまして簡潔に申し上げてみますと、参議院の地方区の定数を割り振ったときのいきさつは御承知だと思いますが、総員二百五十名、そのうち百名が全国区、沖縄が入っておりませんから百五十名が地方区、そのうちの六〇%、つまり九十二名は一都道府県に二人ずつ配分をしております。四十六都道府県ですから二人ずつで九十二名。それに人口の多い十五県に二名追加をし、四県に四名追加をし、東京と北海道に六名追加をしております。それでちょうど百五十名になるわけでございます。したがって、地方区の定数ができ上がりましたときには逆転現象はなかった。地域の代表が六割のウエートを占め、四割は人口比例によって配分されて、いい姿であった。その後人口の移動が著しくなって御承知のとおり逆転現象しておる。そこで、いまの問題は、参議院の地方区の定数がゆがめられた形になっておるということは事実でございます。  しからば、現在は沖縄が返還いたしまして二百五十二名、そのうち全国区、比例代表等を含めて百名でございますから、地方区は百五十二名。この総定数を動かさない範囲で切り盛りをして定数の逆転現象をなくすことに努力をすべきであるのか、総定数をふやしても是正をやった方がいいのかということ。  もう一つは、幸か不幸か私は鳥取県から選出されております。住居は神奈川県でございますから、投票は神奈川県でいたします。選ばれるのは鳥取県でございます。この鳥取県と神奈川県が一対五・七三という非常な格差が開いております。ところが、鳥取県をゼロにする、あるいは一にするというわけにはまいりませんので、これをこのままにしておきますと、百五十二名の総定数を動かさない範囲でどんなに切り盛りしても、一対四以下に下げるということはほとんど不可能な状況でございます。鳥取県をなくさない限りは不可能でございます。こういうことになってまいりますと、総定数をふやさなければ一対三ぐらいにはこれはどんなことをしてもできない、こういうふうな問題がございます。  そこでお尋ねは、総定数を動かしてでも、逆転現象と一票の比率の重さを三以内におさめるべきものであるのかどうなのか、この点を一言で結構ですからお伺いします。
  28. 紀平悌子

    参考人紀平悌子君) ちょっと一言でなく三言ぐらいにお願いしたいと思いますが、総定数の枠内で是正していただきたいというのが立法府への私どもの四十六年から申し上げているお願いでございます。ただし、私どもが四十六年以来、参議院衆議院定数問題を司法の場で、つまり定数アンバランスを憲法上どう御判断になるかという、十四条の問題で訴訟を始めました。そのときからの私ども基本的な考え方は、これは政策の問題は立法府でいずれなさることだろう、そしてそれは議員ないしは専門家のお仕事でもある。私どもの訴訟は、一票の価値の平等を求める司法判断を仰ぐという運動をやってきたわけです。しかし、いまおっしゃいましたように、逆転現象を定数内でもし是正するならばといういろいろなお考えもございましょう。  それで、これは団体としてというか、私の場合は団体としての意見になりますので、まだどういうふうにということはきちんと申し上げられませんが、私の物の考え方というか、定数是正訴訟の中で私どもが考えてきたことは、やはり一対一の平等原則に限りなく近づけるということが目標でございます。ですから、それを政策上どういうふうにあそばすかは、それこそ立法府のお仕事であって、皆様の良識でなさればよろしいのではないか。ただし、一対四とか一対五とか、最大と最小を比べる考え方は少し古いと思います。いわゆるクォータから上下何分の一なら許せるか。最大、最小で比べますと、鳥取がなくなってしまうというふうなこともございましょうが、クォータを出して、クォータ上下どのくらい許されるのかという、たとえば西ドイツで行っているような考え方政策論としてはなってきております。
  29. 小林国司

    ○小林国司君 ありがとうございました。終わります。
  30. 田代富士男

    田代富士男君 時間がありませんから、まとめて質問をいたします。  最初に皆川参考人にお尋ねをいたしますが、いま鎌形参考人が、選挙はすべての出発点である、こういう意味の御発言をされました。私もそのとおりであると思います。選挙国民有権者政治に直接参加することのできる重要な機会であります。今回の改正案は、昨日もいろいろ議論いたしましたけれども、こうした参政権制限こそすれ充実させるものではない、これが大勢を占めているのでございますが、皆川参考人は、こうした方向に向かっていることをお望みでしょうか、それとも好ましくないと思われているのでしょうか、この点をまずお尋ねをいたします。  第二点は、改正案では、町村長または議員選挙運動期間短縮されます。御存じのとおりでございます。そして任意制度の選挙公報もなくなるかもわからないと懸念されておりますし、そのために有権者が得るべき選挙情報というものが大幅に制限をされるわけでございます。こういうことから、紀平参考人もいま申されましたとおりに、有権者の知る権利がだんだん制約されている、こういう御発言がありました。その実態と私まさしく同じであると思います。また、七日間から五日間。七日間というのは、われわれ日本人の今日の生活のリズムというものは、月火水木金土日、この一週間を一つのリズムで生活をしております。こういうリズムの中で、七日間であるならば最低限できていたのでございますけれども、リズムを崩すことにもなるし、また、いまも話が出ていたけれども、不在者投票をしようにもできなくなって、国民基本的権利を失っていくことになります。擁護することができない。こういう点から、有権者の正しい判断を保障する上からも問題があると思いますが、お答えいただきたいと思います。  第三点には、立候補者の届け出が一日、これはどうかと思います。端的に申し上げますならば、無投票当選というような形がふえてくるのではないでしょうか、一日だけということでは。そのようになりますと選挙制度の意義というものが薄れることになりまして、民主主義の健全な発展が阻害されると私は思うのでございます。無投票当選というようなことになりますと、紀平参考人が、出たい人よりも出したい人を、しかし余りにも制限が多いと言われましたけれども、この点に対してどのようにお考えになっていらっしゃるのかということでございます。  次に、紀平参考人にお尋ねいたしますが、紀平参考人は、選ぶ側の情報不足の現状にさらに輪をかけるものとして今回の改正案反対しておられるわけでございます。いまも申したとおりに、紀平参考人から、有権者の知る権利が制限されているというお話もただいま承ったところでございますが、選ぶ側に選挙情報を十分に保障するためにどのように制度を改正していけばよいか。いまもお話を聞いておりましたけれども、時間の関係でそこまで深くお話しになっていらっしゃらなかったものですから、お尋ねをしたいと思います。  第二番目には、これは紀平参考人がお触れになっていらっしゃらなかったことでございますが、街頭演説の問題がいま出ているわけでございまして、七時から八時に変更されるということでございます。マイクがやかましいとか、そのために時間を繰り上げる。こういう問題は候補者の良識に任せるべきことでありまして、有権者に悪い印象を与えたならば票が減るということは全部わかっておりますから、これは良識の段階でございまして、こういうような案というものは、候補者の良識は信じられないという態度だと私は思われてなりません。また、場所によりましては、七時から街頭演説をやっても差し支えない場所がたくさんあります。そういうことにも規制をするということは遺憾に思います。こういう点から、鎌形参考人は、いままででさえ不十分な時間であった、さらに制限を受けるということはよくないということも申していらっしゃいましたけれども紀平参考人にお尋ねしたいと思います。  第三番目に、今回の改正案で、民主政治実現の上からも国民有権者に何かの利益をもたらす点があるのかないのか。私はマイナスの点が多いと思いますが、紀平参考人にお尋ねしたいと思います。  次に、鎌形参考人にお尋ねをいたしますが、第一番目に、選挙違反の事案に今日まで三十年間にわたって取り組んできたというお話をただいま承りました。そういう立場から見まして、現行制度の不合理な点、本来あるべき選挙制度というものは何かということを常日ごろお考えになっていらっしゃる、いまもお話しいただいたのはそのお考えの一端ではないかと思います、時間の関係があったから。そういう意味からお聞かせいただきたいと思います。特に選挙運動自由化の推進ということにつきましてお答えいただけたらと思うのでございます。  第二点は、これはお触れになっていらっしゃいませんけれども政治資金規正法附則第八条では、個人献金を強化するために五年目に再検討することになっておりますが、すでに八年を過ぎていることは御存じのとおりでございますが、参考人政治献金のあり方についてどのように思っていらっしゃるか、お聞かせいただきたいと思います。  最後に、これも時間の関係でお触れにならなかったかと思いますが、いまも問題に供されております衆議院参議院選挙区の定数是正についてどのような御意見をお持ちか、あわせてお聞かせいただきたいと思います。  以上でございます。
  31. 皆川迪夫

    参考人皆川迪夫君) 私に対する質問は、基本的には選挙というものをどういうふうに理解をしておるかということであろうかと思いますが、私も、もちろん選挙というものは民主政治あるいは議会政治基本だと思っております。したがいまして、それが正常に働く限り、なるべく十分な時間と討論があることが望ましいと考えます。ただ、先ほど来申し上げましたように、日本の社会はまことに過当な競争をいたしますために、ある程度の制限がだんだん加わってくるのもこれはやむを得ない現実であろうと思います。その結果投票に不便を来す、あるいは運動に制約が起こるということについては、たとえば不在者投票等につきましてもいろいろ工夫の余地があると思うのです。あるいは選挙公報発行にしましても、任意制選挙公報でございますが、工夫をすればこれはその中におさめていくことが可能ではないかというふうに考えております。  それから、最後にお話のございました無投票当選のことですが、これは必ずしも立候補期間が一日に短縮されることによってそれが増加されるということはないのではなかろうか。本当に選挙を争うという立場の人は、一日のうちに届け出ができないということはないのではなかろうか、こういうふうに思っております。
  32. 紀平悌子

    参考人紀平悌子君) 情報不足の現状に輪をかけることになるが、選ぶ側にその情報を保障するためにどんな方策があるかということが第一点でございますけれども基本的には、選挙自由化というふうな方向法律全体を見直す。これは選ばれる側の選挙運動方法も、それから選ぶ側の参加の方策も見直す。それでさしあたって現行法の枠内でということで、余り好ましくありませんが、申し上げることになりますと、たとえば公報のあり方ですね。公報は税金で出ておりますけれども、いわゆる公報がおもしろくないということがありますね。それから、この公報は一回でなくてもいいんじゃないか。これは税金がかかることになりますが、そんなふうに周知の方法がない。昨年、参議院全国区の場合、大変周知の方法が不足して困るんだというふうな提案側の御理由がございましたけれども、それは公報のつくり方、それから一回でいいのかなという問題がございました。ただし、それは選挙期間が従来のとおりであるというふうな事態においてそれが申し上げられるわけでございます。  それからもう一つは、テレビの公営の方法でございます。テレビの公営は、人が出てきて名刺を置くがごとく帰っていくというふうな、余りおもしろくない放映の仕方である。これをもう少し人間性に訴えられるような、なかなか方策としてはむずかしいと思いますけれども、まず見比べができるような状況、たとえば、知事の場合なんかは候補者の数は少ないわけですから、見比べるような方法でテレビ公営ができないか。これは選挙ごとに私はいろいろな形があっていいと思っております。人間の顔が違うようにみんな選挙はそれぞれ違う部分を持っております。特に町村の場合、非常に今度の改正では困るのではないかと思っておりますし、どういうところの御意見をおまとめになったのかなと実は不思議に思っているくらいでございます。それから、立会演説会は残して、そして立会演説会をひとまず放映することで見比べるということにテレビ媒体を使ったらどうかということです。  それから、何よりも申し上げたいのは、私ども団体なんかが昭和二十年代の終わりからそれを言っておりますことは、百六十四条の三などの改正です。たとえば立会演説会、私たちは禁止規定と言っていますけれども、これは選管がやるということになっております。行政のみがいわゆる立会が実施できます。これはアメリカなどの選挙では、婦人有権者連盟などが、ほとんどの地域で有権者サービスというふうな運動のやり方で、候補予定者あるいは選挙期間中の候補者を集めて、そしてその方たちの意見を聞く会、お茶の会、それから、いらっしゃる方は非常に自由に、お国ぶりというか、地域ぶりを発揮した、バンドまで連れてきてパーティーまでやっていますね。それでお話をただしちめんどくさく聞くのではなくて、肩をたたき合い、手を触れて、その方の物の考え方とかあるいはムードというか、人間性を知るというふうな非常に自由な第三者参加選挙になっております。  いまの日本の実情で非常にそれはフェアに行われるかどうかということで、これはかつては民間の立会ということもできたわけです。事実上の立会ができたわけです。いまは禁止になっております。この辺を私どもがどうやって行政、いわゆる官制の現在あるいろんな制度の中でも、たとえば立会的なものを民間でやりたい、どれだけ努力をしてきたかということは時間の関係で申し上げられませんが、個人演説会の連続開催というふうな方策をもってしてまでも私たちが知りたいところを伺っているというような始末です。これは公選法違反にならないようにちゃんとやっておりますので、御安心いただきたいと思います。それを百六十四条の三を変えていただきまして、そういうところから有権者参加の、候補者を知る機会提供という場を、あるいは方策を与えていただいたらいいんではないか。現行法の枠内、これは改正前でございますが、改正前の現行法の枠内で申し上げられることというのはそんなことでございます。  それから街頭演説、七時から八時の件でマイク騒音、これは候補者の良識を疑っているのではないか、これはまさにそのとおりで、つまり静かに政策をお述べになるというふうなタイプの七時からの発言者もございます。街頭宣伝のカーもございます。そういう話は朝お勝手をしながらでも聞く、耳を傾ける、十分そういった素地はあるわけでございまして、中には、うちの方には今度の選挙ではちっとも選挙の車が回ってこないというふうな団地の奥さん方もあるところを見ますと、いろいろな御意見はある。ですから、単に一般の騒音と一緒に、この大事な選挙戦の言論というものを騒音公害というふうなことで片づけるということは、これはちょっと困ることではないかというふうに思っております。もちろんその候補者の良識に従って、八時からなさるか、あるいは九時からなさるか、あるいは夜は何時で打ちどめになさるか、これは御自由の選択でいいと思っております。  それから地域によっては、朝遅くまで仕事、午前中まで仕入れとかなんかということでお働きになる中小のさまざまなお店の方々などは、朝七時からやられたらたまらないと、確かにそういうお声もありましょうから、それはまさに、ベースは敷いておいて良識に任すということでいいと思います。だれでもわめかれればその人は嫌になるわけですね。だからその辺は有権者の良識というか、選択もそこにあることだというふうに思っております。  それから、民主主義確立のためにこれがプラスかマイナスかということは先ほど申し上げたと思いますが、これは民主主義確立のためにマイナス方向にますます動いている。それは今度だけではないということは冒頭申し上げたように思いますので、簡略させていただきたいと思います。
  33. 鎌形寛之

    参考人鎌形寛之君) 三点ございますので、ごく簡単に申し上げます。  まず第一点の、現行の公職選挙法の不合理さを解消するには具体的にどういう方法があろうかという御質問だと思いますが、幾つもあると思いますが、重要な点を二つだけ申し上げておきます。  一つは、戸別訪問を自由化することだと思います。この戸別訪問の自由化については、裁判所の判例の中でも最近五、六件、これはいずれも最高裁ではございませんが、五、六件、戸別訪問の禁止は憲法違反であるというような判決が出てきております。今後裁判所の傾向も、長い目で見れば、戸別訪問禁止は憲法違反だという方向で進んでいくのではなかろうかというふうに考えております。私個人としては、こういう制限憲法二十一条に反して憲法違反であるというふうに考えております。したがいまして、この戸別訪問をまず自由化すること、これによって選挙は非常に活性化してくるのじゃなかろうか、そして陰に隠れてこそこそやるような選挙はなくなるのじゃないだろうかというふうに考えられます。  それから第二点目は文書の問題ですが、文書は、現在は制限的にこういう文書だけならいいという定め方をしていますが、これを逆に文書は原則として自由だというふうに改めるべきではなかろうかと思います。そして特定の文書、たとえばだれが著者なのかわからないような怪文書とか、個人を誹謗、中傷するような文書とか、そういうような特定の文書について一定の制限をすることはやむを得ないかもしれませんが、まじめに政策を訴えるような文書については原則として自由化すべきではなかろうかというふうに思っております。この二点だけでも、選挙はずいぶん違ったものになるのじゃなかろうかと思います。  それから、第二番目の政治資金規正法との関係ですが、これは一言で申し上げますと、たとえば、政治献金で私的な利益を期待するような献金については禁止すべきではなかろうかと思っています。政治資金規正法の細かい問題については私も余り詳しくはありませんが、原則としては、私的利益を期待する、私的利益の見返りを期待するような政治献金については禁止すべきではなかろうかと思っています。  それから、第三番目の定数是正の問題ですが、これについては、確かに憲法の平等の原則からいきましても、現在の状態が、これは裁判所判決理由も言うとおり違憲状態である。そういう状態であるということについてはどなたも異論がないところじゃないかと思います。この違憲状態を解消するということは、これは議会みずからが早急に解消に向けての努力をすべきではなかろうかと思います。その努力の内容については私も詳しくはわかりませんが、一つ私が感じたことを申し上げておきますと、国会議員の先生方は、私たちは国民の代表だと思っています。地域の代表という側面もありますが、本質は国民の代表であるのじゃないか。そういうような面に着目して定数配分を考えていけば、おのずから何らかの正しい案が生まれてくるのではなかろうかというふうに思っています。  以上です。
  34. 山中郁子

    ○山中郁子君 参考人皆様には貴重な御意見をありがとうございました。  初めに皆川参考人にお尋ねをいたします。  先ほどから御質問や、またお考えが開陳されてきたところでありますが、私どもも、町村選挙期間の問題について具体的にいろいろ調査もし、また御意見も伺ってきました。短い時間ですので御紹介はできませんが、一つは秋田県の羽後町、御承知だと思いますが、ここでは十一月から四月にかけて有権者の約一五%、二千数百人が東京などに出稼ぎに出ておられるという状況です。ほかにもたくさんこうしたところはあります。ここでは来年三月に町議選も予定されているわけですけれども、町議会では自民党も含めて満場一致で、したがって、いろいろ先ほどから問題になっていました公報の問題や、あるいは不在者投票の問題、そうした制限が強まることは困るということで反対意見書を採択されています。  それで、端的にお尋ねいたしますが、先ほど皆川参考人は、いろいろおっしゃったけれども、共通して言われていることは、何とか工夫できてやっていける、あるいはやむを得ない、あるいは支障はないということで、積極的に、それではこの改定をやる意義がどこにあるのかということについては、私は、七日間では長過ぎて困るという部分にしか示されなかったというふうに受け取りました。それは選ばれる側の都合であって、選ぶ側の有権者の都合ではないわけですね。そういう意味で、有権者の、国民立場に立ってこの改正が、支障がないとか、やむを得ないとか、仕方がないということではなくて、積極的にどういう意義があるのかということを端的にお答えいただきたいと思います。
  35. 皆川迪夫

    参考人皆川迪夫君) 私ども選挙運動期間町村に限って短縮をしてくれという陳情、要望等をいたしたことはございません。恐らく、いろんな観点から全体的に短縮した方がいいという御判断で、そうしてバランス上こういう案ができたのではなかろうかと思います。したがいまして、その中においてやれるであろうということを申し上げたわけでございます。
  36. 山中郁子

    ○山中郁子君 次に、紀平参考人に三点お尋ねをいたします。  一つは、この法案が衆議院段階でどういう状況参議院に送られてきたかはもう御承知だと思いますので、ここで私は申し上げません。結論的に言えば、参議院でも衆議院でも公聴会も開かれないという事態のままに、ごく本当に短時間で、もし参議院でこれから成立させられようとするとすれば、こういう事態はどうなのかということについて、有権者立場からの御意見を拝聴したいと思います。  二点目は、きのうの論議でございましたけれども、提案者の側は、この法案にだれが賛成しているのかということにつきまして、私が新聞論調や、あるいは、紀平参考人も所属をしておられる選挙法改正の協議会を初めとするたくさんの団体個人の方たちの要請、請願ども紹介して、反対をされている人たちはたくさんいるけれども、だれが賛成しているのかということで申し上げると、選ばれる側の地方団体、市長会その他ということはおっしゃるけれども、あとは声なき声だ、こういうことなんですね。その声なき声という実体のないことでもってみんながそれを主張しているのだということでは大変困るのであって、有権者のお立場から、そういう声なき声がどういうふうにあるのか、どういうふうに認識をされていらっしゃるか、お尋ねをしたいと思います。  それから三つ目は、この提案は、いままでもずっとそうだったんですけれども、何かというと、この公選法の改悪を重ねてきた中で、金がかかることを解決したいということが決まり文句の一つなんですね。今回も「金のかからない選挙の実現に資するため、」と、こういうことが主要な理由一つになっているわけで、実際こういうことをやって金がかからない選挙をすることができるようになるとお思いになられるかどうか、その点をお尋ねいたします。  それで、私の時間も限られていますので、最後に鎌形参考人に対する質問も一点だけあわせてさせていただきます。  最高裁判決が、違憲状況だと強く定数是正を求めていますけれども、これを放置したままで、そして解散、総選挙を事実上目前にして今回のこの法改定を成立させていくということは、一体どういうふうに考えたらいいものかということの御認識を伺いたいと思います。
  37. 紀平悌子

    参考人紀平悌子君) 衆議院につきましては、私ども団体及び主婦連、地婦連、日本青年団協議会、理想選挙推進市民の会、この二十年、三十年、選挙法の問題、きれいな選挙に取り組んでおります諸団体が、非常に猛烈にというか、余りにも衆議院委員会の方が十分な御審議がなかったのですが、その中においても一生懸命に申し入れ等をいたしました。その間で感じたことでございますが、公聴会すら開かれないということは、当然そういう慨嘆というか、それは持ちました。国会の運営の中で、多数党、少数党あるいはその中間の党、そしてやはり多数をお持ちになっていらっしゃる政党の理事会の中でそういうことが決められていくということは、システムとして承知はしていながら、国民のどういう部分というか、果たしてここで決められてくることが大多数を代表しているのかということは、大変な疑念と失望を持って衆議院に対する反対運動の中で感じたことでございます。  そもそも、鎌形さんに対する御質問をちょっととることになるかもしれませんが、驚いていることは、いまこれは新聞が解散とそれから公示と投票日を決めたというふうにはおっしゃるかもしれませんが、まだ事実上通ってもいない衆議院の段階で、これは委員会は通りましたが、本会議はまだという状況の中で、十五日間の選挙運動期間になってしまっているんだという既成事実のごとき印象が国民の間に流布されていることでございます。これは先を読んで新聞がお書きになっていることかもしれませんが、これは全く議会制民主主議のルール無視の、それをお流しになる方にその責任が私は大いにあると思っています。これは違法というか、無法状態のきわめて遺憾なことだというふうに私どもは考えて、心中怒りを持っております。  それから、反対している人の意見はわかるが、選ばれる側の方の声なき声についてどういうふうな認識を持っているかという御質問でございますけれども、余りおつき合いがございませんので、どういうお声かちょっとわかりかねますが、恐らく現職の大変強い候補の方ですと、もう選挙運動期間というのは単なる儀式にすぎない。つまり、走り出した、スタートラインに立ったときには当落はすでに決まっているという状況をお踏まえになっているのではないかというふうに思います。ですから、新しいものがいいとは限りませんが、もし、よりよき新しいものがそこへ加わって、そして議会制民主主義をよりよくしていくというふうな、そういう新しく立候補をされていく方については、選ばれる側も現職の中の強い方の論理が優先しているのではないかということで、恐らく選ばれる側の声なき声、多分支持者の方たちは、選挙運動期間なんかは本当はなくても、まあ三日でも一日でも決まるよ、こういうふうな考えではないかと思いまして、これでは私ども運動も水の泡であるなという印象を持っております。  それから、金がかかることを解決していくということが最近の選挙法改正のときにいつも言われることだということでございますが、今回の改正によって、自治省がどのくらいの予算をお見込みになって、執行経費がどういうふうにふえるのか減るのかというデータを現在まだ私は持ちませんのでわかりません。これはまたやってみないとわからないということもあるかもしれませんが、今回の改正で、金がかかることを大いに解決していくという手段にはならないというふうに思います。なおかつ、事前運動にお金が実はかかるわけですから、人によっては当選した途端から事前運動が始まるということが常識だそうでございますから、選挙運動期間でどれほど金がかかるかということはさしたる問題でないというふうに、私は金と選挙についてはそう思っています。いいことだと言っているのではなくて、それが実態だろうと思います。  それから、ちゃんと届け出をなさって、法定選挙費用内でということは、それこそ参議院の二百五十二人全部、法定選挙費用以内の届け出しか、選挙運動期間中の届け出、一銭でも上回りましたら無効になりますので、そんなのはないわけですね。ですから、金のかかる部分はどこだということをきっちり議論をした上で金がかからなくなるとおっしゃるのならわかるけれども、一向にこれは、金とは無関係と言うと言い過ぎですが、立会をやらなければ多少お金はかからなくなるのかもしれませんが、そのかわり事前運動が猛烈になるという点では違法な金がうんとかかることになるので、それは論点をしぼって申しませんと何とも言いがたい。しかし、私の認識ではちっとも金はかからないようにはならないというふうに一般論として言わせていただきます。
  38. 鎌形寛之

    参考人鎌形寛之君) 定数是正の関係についてでございますが、現在の定数配分それ自体が違憲状態であるということについては、これはもう裁判所も含めて大多数の皆さんがそう思っていらっしゃる。このことについては問題がないのですが、このような状況が長く続けば一体どうなるのかということについて、私たち法律家はかなり興味と関心を持っております。純粋に、あるいは簡単明瞭な理屈で言いますと、違憲状態のまま行われた選挙は、選挙それ自体が無効になるのではなかろうか、こういう考え方がまず基本的に出てくるのじゃないかと思います。ところが、そういうような判決をしますとこれは国政に与える影響は非常に大きなものがあります。そこで最高裁判所は非常に苦労なさった。その結果、定数是正をするための相当な期間がまだ過ぎていない、その期間内に定数是正をしていればこれはいいんだということで、違憲状態ではあるけれども選挙は無効ではないという結論を出しています。  ところが、今後さらにこういう状況が続くと、最高裁はこの次どんな理屈を考え出すのか。恐らく選挙無効だという結論は簡単には出し切れませんので、非常に最高裁は苦しむのではなかろうか。その中で考えられる理屈としては、一つは、簡単に言いますと、無効としたら影響が大き過ぎるから無効とはしないけれど、違憲違憲だと、違憲状態ははっきりしているんだ、しかし結果それ自体は無効とはしない、こういうような理屈しか後には残っていないのじゃないかという感じがします。そうしますと、判決判決としてそれなりの効力を持つことになりますが、そういう判決を見た国民が、裁判所は一体何を考えているんだろう、もっと簡単明瞭に結論を出せないものなのかということで、国民の不信感が増大してくるのではなかろうかというふうに考えております。
  39. 山中郁子

    ○山中郁子君 ありがとうございました。
  40. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 きょうは大変御苦労さまでございました。  まず、お三方に伺いたいのですが、特に皆川参考人の場合、お仕事柄から言いまして、選挙となりますと一番気にされておられるのが投票率の低さ、あるいは言い方を変えますと、国民選挙離れ、選挙に対する関心の喪失という傾向だろうと思うのです。理由一つとしまして、新人がなかなか立候補しない。一方では、何回も当選される多選議員が、首長でもあるいは衆参両院議員でも比較的多くなってくる。そうなりますと、選挙は目先が変わらないですから、私が投票所へ行かなくたって大したことないやというので、だんだんと関心が薄れてくる。これは決していいことではないと思うのです。  そこで、新人が出る場合にどうした方が出やすいかという一般論は別にしまして、公選法を考えた場合に、仮に、新人とそれから当選回数を重ねられている方を比べますと、より新人の方に配意しながら公選法というのは組み立てられているのが本当ではないか。もっと端的に言いますと、何回当選しているかは問わぬ、とにかく全部新人という前提で全部を組み立てていくのがむしろ公選法を考える基本ではないだろうか、私はこう思うのです。その新人に配意しながら考えていくべきだという私の論点に対する御意見と、それに対する賛否は別にしまして、そういったことから、仮にたとえば衆議院選挙を考えますと、二十日でも果たして十分と言えるのだろうかという点について、三参考人からそれぞれまず御意見を伺います。まず皆川参考人から伺います。
  41. 皆川迪夫

    参考人皆川迪夫君) 先ほども申し上げましたように、選挙の理想からすれば、私は必ずしも短縮することに賛成するものではございません。ただ、現状が過熱の余り抑制せざるを得ないという御判断であるだろうと思いますので、そういうことについては理解ができる、こういうことを申し上げておるのでございます。  なお、新人と現職の関係につきましては、もちろん厳密に法律上は平等であるべきだと思います。ただ、実際上の問題を考えて、新人に不利にならないような考慮といいますか、選挙運動手段についてそういうことを考えるということは必要であろうかと思います。それはあくまでも形式的な有利、不利でなくて、そういう配慮は必要かと思います。
  42. 紀平悌子

    参考人紀平悌子君) 皆川先生と意見が同じようなところがございました。実質的平等でいくべきだというふうに思います。したがって、新人も何回か当選を重ねた人と互角に戦えるような条件をなるべく備えるべきだというふうに考えております。  一票の行使の問題も、だれでも一票を持っているじゃないかという反論がございます、不平等だということを唱えますと。しかし、一票の価値の平等と言いましたときは実質的平等を言っておりますので、それと同じ考え方で実質的平等を確保すべきだと思っております。
  43. 鎌形寛之

    参考人鎌形寛之君) 新人と、それから何回か当選していらっしゃる先生方との間の実質的平等、それを保障するような手段を講ずべきだということは当然のことだと思います。  それで、現在の二十日間、衆議院については二十日ですが、この期間が十分かどうかということについては、私は結論的に不十分だと思っております。と申しますのは、先ほども申し上げましたように、現在の公職選挙法運動は非常に制限されております。特に新人の方が有権者に訴えるためには非常に手間と時間をかけなければならぬという面から見ますと、この二十日という期間は不十分な期間ではなかろうかというふうに思っております。特に、これは期間の問題だけの問題ではなくて、選挙運動として何ができるのか、その自由をもっと大幅に拡大することによって、それとの兼ね合いで期間は決めるべきじゃなかろうかというふうに思っております。
  44. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 皆川参考人紀平参考人ですけれども、いまの二十日という期間についての御意見が漏れておりましたので……。
  45. 皆川迪夫

    参考人皆川迪夫君) 私は、先ほどから抽象的に申し上げましたけれども、現在の二十日間でやれる運動、これは常時の政治活動も含めましてですね、そういうことで、これが絶対的に正しくないとか、もっと広げなければならぬというように簡単に考えるわけにはまいらないと思います。総体的に選挙の実態を見ながら、金の面等も考慮して御判断されるべき事柄であろうと思います。
  46. 紀平悌子

    参考人紀平悌子君) 選挙運動期間はずっと短縮され続けてまいりました。衆議院の場合は、三十日が昭和二十七年に二十五日になって、三十三年に二十日になった。参議院は、三十日が三十一年に二十五日になって、昭和三十七年に二十三日になった。私は、三十日のときの参議院選挙運動、実質的選挙運動です、一票をただ投ずる方じゃなくて、出たい人より出したい人を個人として応援するという運動参加しましたけれども、その三十日という期間は決して長いとは思いませんでした。これは特に著名な人なら別ですけれども、そうでない人の場合、あと何日あったらという、つまり言論のみで、あるいは文書と言論で正しく戦うというとおかしいのですが、裏工作なしにやる人にとっては一日でも物を言う機会、それから合法の文書を配れる機会というのは多くあった方がいいと思います。  そういうふうなことを考えますと、やはり政治を変えていくには運動期間も、まあそれじゃ半年もあっていいかというと、それはちょっとどうかなと思いますけれども、当初私は、三十日衆議院参議院も三十日でしたかしら、その時分はそんなに長い期間だとも思っておりませんでした。したがって二十日というのは短いというふうに思います。
  47. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 皆川参考人にお尋ねしますけれども、再々、運動が過熱しているのでということをおっしゃるのですが、その過熱というのは、具体的に言いますとどういう状態を指して過熱だとおっしゃっているのでしょうか。
  48. 皆川迪夫

    参考人皆川迪夫君) 先ほど終戦後の三十日の時代の話が出ましたけれども、それから今日までの選挙運動の実態を見ますと、これは公選法の選挙運動の制約、方法に関連があるかと思いますが、候補者に対する肉体的あるいはそれを取り巻く一団の応援団の方々の行動、これは非常にきつくなってきておる。戦後のように交通手段というものが非常に限定されておった時代は、おのずから限界があったろうと思うのですが、交通は動けば幾らでも動ける、それからいろんな媒体を使えば幾らでも使えるということになってまいりますと、体の続く限りという運動が行われているのが現状だろうと思います。したがいまして、私はよく走り競争に例をとるんですけれども、千メートルレースのつもりでおったらみんな最初から五百メートル、百メートルの距離で飛ばしていくというようなことになって、いつの間にかなかなかもたない、もうこれはとても縮めなければかなわぬというふうになってきたのが今日までの経過でなかろうかと思っております。
  49. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 そうしますと、候補者に対する肉体的な負担が非常に多いということに主として着目されて過熱とおっしゃっている。そういった角度で選挙を見詰めていくというのはどうなんでしょうか。本当に候補者がこれはとてもかなわぬと思ったらその次に何をするかと言いますと、その選挙区の中の競い合っている候補者が集まって、おい武士は相身互いではないか、自粛をしよう、そういうふうにやっていけばよろしいわけですね。それを、どうも大変だと言っているから、では法律で縛れというのは本来正しいのかどうか。  マイクの話もありましたけれども、私が知っているある市では、候補者が全部相談しまして、お昼どきにマイクの音を出すのをやめようというので、お昼の十二時から午後の二時まで街宣車の休戦期間としましてやっていました。今度の統一地方選挙の例です。これは土地土地の事情によってお互いが相談すればいいのであって、頭から短縮する、あるいは時間をどうこうするということでやってしまうのは、いまのおっしゃった意味が過熱だとしますと、むしろ別なんであって、実はどの程度大変かということは選挙区によって全部一様ではないと思います。いろんな伝達手段がたくさんあるといってもこれもまた全部違う。ということは、選挙区個々の実情に合わせてむしろ立つ人の良識にゆだねるべき分野ではないのだろうか。自分の体を壊してまでやろうとはみんなしていないですよ。現に衆議院の人はぴんぴんしているんですよ、お幾つになっても。ですから、そういった意味の過熱ということをおっしゃるのでしたら当たらない。むしろそれぞれの自主性にゆだねて、お互いの相談で、ある規制が要るのだったら協定したらどうか、それは法律には書きませんよと。何かそれが私はいいように思いますが、御意見いかがでしょうか。
  50. 皆川迪夫

    参考人皆川迪夫君) 確かにお話しのような考え方があろうかと思います。望むべくは、選挙運動期間に限らず、運動の方法等についても必ずしも公営というようなかっこうでなくて、候補者相互間において行う方法はたくさん考えられていい。ただ、これはあえて選挙運動に限りませんけれども、日本の社会の宿命じゃないかと思うのですが、なかなかそういう合理的な話し合いでなくて、とことんまで競争にいってしまう。それがある意味においては国際的にもいろいろ批判をされることになっているのであろうと思います。したがいまして、私は積極的にそうすべきだということを申し上げているわけじゃございません。皆さん方の間で、特に国政で法律をお決めになる方々の間でそういうことが可能であるならそれはそれでいいと思っています。どうしてもそういうことを避けられない場合に、次善の策としてこういう考えが出てくるのもやむを得ないのじゃないかということを申し上げたわけであります。
  51. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 時間がございませんから、あと一つでやめにします。  お答えの中でもう一つ気になりましたのは、いろいろおっしゃっているのですが、要するに事前運動で知恵を尽くせと聞こえたんです。それで念のためにお尋ねしているのですが、これも実際の例から引いているんですが、ある党の議員の方が政治献金を受けまして、四千六百万の入金がありました。これは選管に届けてあるんです。実際に使ったのは千三百万です。もちろんこれは法定選挙費以下です。そうすると、四千六百万お金はもらいました。公職選挙費に使ったのは千三百万です。残り三千三百万はどこへ行ったんだろうか。これはだれしも疑問に思うのですが、そこで思うのは、これはみんな事前運動に化けちゃったのか、そう推定しても余り大きな私は間違いでないと思うのです。  そこで、千三百万の公職選挙期間中の費用と三千三百万の事前運動の費用を見ながら、金をかけないようにということをもし考えるとしたら、一体どちらの方を主として考えなければいけないのだろうか。これはもうお伺いするまでもなく、事前運動の三千三百万だと思うのです。この点について、選管のお仕事をされているお立場からどういう御意見をお持ちですか。
  52. 皆川迪夫

    参考人皆川迪夫君) 私は、事前運動という言葉は、法律的な問題と実際上使っておることとしばしば混同されると思うのです。選挙というのは、選挙運動期間だけで候補者を知る、あるいは候補者判断するということは、これはもうとうてい不可能なことでございまして、ふだんから候補者政治活動というものを通じ、あるいは候補者政治活動でなくても、日ごろからの言動を通じて判断をする。その最後の見きわめをするのが公示以後の期間であって、したがって、ふだんの活動というものを一概に事前運動と決めつける必要はないのではないか。もちろん、事前運動をやってはいけないと思いますけれども、合法的な政治活動なり、選挙区に親しむ、接触をするということは大いにあってしかるべきことであろうと思います。  そのふだんの政治活動にどれだけの金を使えばいいか、あるいは使うべきかということはなかなかむずかしくて私たちにはわかりません。ただ、少なくとも選挙運動期間短縮されればその期間にかかる金が減ってくる。それを倍にしてふだんの活動に使うかどうかは別でありますけれども、ふだんある程度自分の納得のいくまでの活動をして、そして選挙運動期間中に減った分は減るということであれば、それはそういう評価ができるのであろうと思います。もちろん私は、選挙運動の金のためだけで運動期間短縮が論じられているとは思いませんけれども、その面について減らないということも言い切れない、こういうように思います。
  53. 前島英三郎

    前島英三郎君 参考人の皆さんのお話を聞けば聞くほど、間もなくこの改正案も成立をするというマスコミの論調でございます。しかし、もっともっと審議を尽くさなければならないと思います。かけがえのない有権者の一票を思いますと、ますますそういう気持ちになっていくのです。皆川さんは全国の選管の事務総長さんだということでございますけれども、選管の事務総長さんにしてからが、あたかも事前運動をあたりまえのような、現状をそういう認識でいるということになってしまいますと、私も交通違反を何回かしたことがありますが、その都度しかられて罰金を払うんです。交通法規があるから守ろうとしますけれども、ふっと谷間の中に人間が埋没してしまうということを考えていきますと、そうした皆さんの取り締まるべき、あるいは指導すべき立場の人たちがそういう意識になってしまいますと、交通違反はみんな日常茶飯事やっているのだから、自由でいいじゃないかというような方向にだんだん法も秩序も大きくゆがめられていってしまう。  政治の中にも全体にそういう方向というのが顕著になっている事態を考えてみますと、国民一人一人が政治から逃れることができない、その政治のかかわり合い、しかもその代弁者を選ぶ一票を行使する中において、選ばれる側だけで、選ぶ側の意見を聞かずしてつくられていってしまう、しかもそういう立場におられる方が賛成の意見をお述べになるという状況を見ましても、私は非常に残念に思うのです。やはり決められた法規というものを守るというたてまえがないと、私たちの民主主義も育っていきませんし、国民の生活もあり得ないと思うのです。そういう点ではいかがでございましょうか。
  54. 皆川迪夫

    参考人皆川迪夫君) 誤解の点がありましたらひとつお解きをいただきたいと思いますが、私は事前運動をお勧めをしたわけではございません。そうではなくて、ふだんのその人の活動、あるいは、私は政治活動だけじゃないと思います、全人格的ないろんな評価を受けるわけでございます。そういう意味で申し上げたのであって、選挙運動期間中に行われるいわゆる選挙運動を常時やれと、こういうことを考えておるわけじゃございません。それははっきりひとつ御理解をいただきたいと思います。
  55. 前島英三郎

    前島英三郎君 一般論として、競走で百メートルを走るんだけれども、最初から五十メートル競走のようなつもりで走っておられるのが現状であるという言葉をおっしゃっていました。しかし、これは現実には非常に遺憾なことなんです、正直言いまして。これは有権者には何ら関係のないことでして、そこで五十メートルで倒れようが、千メートルを百メートル突っ走ってそこで息切れがしようが、そんなことは有権者に私は関係がないと思うのです。これはどうしても選ばれる側の論理の中で考えていってしまう。政治が、親から子に、子から孫にという非常に何といいますか、家業的な流れがあるものですから、確かに三十日が二十五日になり、二十日なり、今度十五日になり、衆議院の例ですけれども、やがてはこれは五日になり、ひょっとしたら公示、そしてすぐ投票というような形にならぬとも限らない推移を見ていきますと、非常にそら恐ろしい気がするのです。  私なんかは二十三日間でついこの間も選挙をやりました。やりましたけれども、あと一週間あったらなというのが率直なところなんです。事前運動も何もできるわけじゃありませんし、国政の中にいますと、本当に国民のことをやろうと思えば、まさしく事前運動などをする暇はないわけです。そうすると、与えられた法律期間の中でやるとなりますと、四十七都道府県を回るのはこれはもう大変なことには違いないけれども、それでも私どもは一生懸命、朝七時から八時までの許された時間を目いっぱい、そして与えられた六台の車をフルに動かして、確かに金もかかるんです。金もかかるけれども、しかし、与えられた法律の中でやろうと思いますから精いっぱいやりますが、最後は、ああ、あと一週間あったらなというのが率直なところです。  ですから、体力的にとおっしゃいますけれども、体力的にということは、私はとても自分の体験からは考えられないのですね。そうしてきますと、民主主義の原点は、やはり町々で、あるいはまた街頭でつじ説法でも何でも、あるいはまた候補者が一堂に会してそこで議論を闘わして、やはり言論がないと真の私は民主主義は育っていかない、議会制民主主義もないというふうに思うのですけれども、その辺いかがでしょうか。
  56. 皆川迪夫

    参考人皆川迪夫君) たびたび恐縮でございます。  私も、選挙運動を実際おやりになった方が、あと何日あったらというお気持ちになる御心境はよくわかるのでございます。ただしかし、それならば三十日にしたらそういう期間がないかというと、恐らくそうではなくて、三十日の場合にも同じようなことになるのではなかろうかと思います。やはり選挙というのは自分一人の力で、自分だけで全部の有権者に接触をし、思う存分働くということはとてもできないことで、ことに全国区などの場合を考えればできないことであろうと思います。  また有権者の方も、直接本人に接触をして判断をするという要素よりも、はるかに伝聞的な、あるいは自分の知っている人を通じて知るというふうな機会が多いようでございまして、これは日本だけでなくて外国でもそのようでございます。したがって、そういう多方面の活動というものが今日はだんだんとしやすくなる、そういうことが可能な社会になっているわけでございますので、それに応じて、本当にまっしぐらに走る期間は若干短縮されてもやむを得ぬのではないだろうか、このように私は考えております。
  57. 前島英三郎

    前島英三郎君 その期間はそういうことでだんだん狭められて、結果的には政治をやる任期が事前運動になってしまうというような状況になると思うのです。事前運動は一体何になるかというと、やっぱり民主主義が金で買われていってしまう。今度、新潟三区に金対言論の戦いを挑むという構図もわれわれの仲間から出ておりますけれども、そういう意味ではやっぱり本来は言論をしていく。しかし、その言論をしていく場、相手と立会演説会場で口角泡を飛ばす機会がないということになりますと、本当に広い選挙区を十五日間回って、結果的にどういう感慨が言論で挑んだ場合には出てくるんだろうかといいますと、いろんな意味で大きく民主主義がゆがめられていってしまうように思うんです。  さて、その立会演説会ですけれども、先ほども何か七人しかいなかったとか、十人しかいなかったとか、そのむなしい体験をされた方のお話がありましたけれども、それは自分の居住地が神奈川県で選挙区が島根県では有権者は行きませんね。私はそうだと思うんです。やはり選挙というものは、本当に有権者も燃えなければならない。そしてまた、候補者によっては、ものすごく激戦になりますと、私のふるさとは山梨県ですけれども、どこの選挙立会演説会場もむんむんするような熱気なんです。そしてそれを本当に祭のように喜んで有権者が燃えてきますから、候補者もそれはもう徹底的に相手を誹謗したり、あらぬことをわめいたりしながら、もう会場が一体になっていると、ああこの選挙はおもしろい、おれはあいつに決めようと思ったけれども、あの立会演説会で彼の言論を聞いたからおれはこっちにしようと。やはり選挙民が選んでいく構図というのがぼくは本当の正しい選挙のあり方だと思うんです。  そしてまた、公営の中で、選挙公報なんかもありますけれども、三千二百の市町村の中で大体四〇%前後ぐらいは任意に広報なんかは出していないんです。そうしますと、文面で見たこういうようなものはその人の心の中まではわからないわけですね。その人が一体何を考えているかというのは、見ながらの原稿よりも口角泡を飛ばして語るところに本当の私は選ばれる人のすべてが象徴されるような気がするのです。そういう意味では、立会演説会廃止というのはもってのほかだと思いますし、さらに、むしろ市町村の首長までは立会演説会は最低二日であってもいい、三日であってもいい。いまが多過ぎるというならば期間短縮するというところにまず目を向けることをなぜしなかったのか。単に形骸化という形、現状にかんがみという形の中でそういうことを考えてくるあり方に大変な疑問を感ずるのですが、皆川さんいかがですか。
  58. 皆川迪夫

    参考人皆川迪夫君) 立会演説会の実態は、私は、場所と、それからそこに出ていってお話をなさる候補者によって非常に違うと思うのです。したがって、個人個人の御判断からしますと正反対の結論が出る場合が間々あると思います。恐らく、現在の制度であっても、その内容が非常にアピールするような形になるなら、これは非常に聴衆も燃えますし、それがまた媒体をなして選挙民の中に広まっていくという効果が大きいだろうと思います。確かに当初はそうであったと思います。しかし、最近の多くの立会演説会状況を見ますと、そういうのはきわめて例外であって、聴衆が少ないか、あるいは出てきても特定の候補者の示威運動のために出てくる。それで反対候補者が始まったら足音高く出ていくというようなのが多うございます。それからまた欠席によって穴があいてしまうとか、非常にそういう状態が多いためにこういう議論が出てまいったのであろうと思います。  私は、いい運営がなされ、その評価が高ければ決して廃止すべきものではなかろうと思いますけれども、そういう実態であるとすればこれはやむを得ないのじゃなかろうかと思います。
  59. 前島英三郎

    前島英三郎君 時間がありませんので、最後になるかと思うのですけれども、たとえば、きのうも私申し上げたのですが、そういうところでしか候補者判断できない聴覚障害者の手話というようなものも、今度テレビ政見放送一つふえたからといってこれも満たされないようです。それでいろんな意味で取り残されていってしまう。またこれから政治参加しようとする人々にとっても手かせ足かせという部分が大変強い法案だと思うんです。しかも、異常な形で衆議院で成立して参議院に送られてまいりまして、きょうは参考人の皆さんにおいでいただいているわけでありますけれども、いまお話を伺い、いろんな方々意見を聞いて、たとえば、ここ一両日の間にこういうものは成立してもいいのだ、あるいは審議も尽くされたのだと三人の方がそれぞれ率直に思われているかどうか。  こういうものは本当に慎重審議で、しかも選ぶ側の意見を聞いてこそ——やがてそれは民主主義ですから多数決によってつくられていってしまうことは当然でありますけれども、しかし、いまのようなこういう状況の中でこの選挙法が、特に皆川さんは選挙関係のベテランとして率直にどう思われているか。そして後、紀平さん、鎌形さんも、間もなく成立しようとしておりますけれども、この辺をどうお感じになっているか。最後に伺って私の質問を終わります。
  60. 皆川迪夫

    参考人皆川迪夫君) これはとうてい私ども判断すべきことではなくて、この委員会、国会において十分に議論がされたかどうかを御判断されるものと思います。
  61. 紀平悌子

    参考人紀平悌子君) 審議は全く尽くされていないというふうに思います。やはり参加するためには情報が必要だということは、いま情報公開法あるいは条例の全国的な制定を望む声、それから行政も県段階でほとんどの県でそれに着手しております。その中で最も必要なのが、国民あるいは県民、市民が参政をするための情報でございます。さまざまの情報が要ると思いますが、それが選挙に関する情報だというふうに私は思いますので、もっともっと長い審議を尽くされ、もし不十分であるというふうに皆様がお認めいただければ、これはぜひ次回に送っていただきたいというふうに思っております。
  62. 鎌形寛之

    参考人鎌形寛之君) 端的に申し上げます。  私の率直な感想を申し上げますと、今度の改正案は、いわば選挙執行する側の、あるいは選ばれる側の一部の人のための立場、そういうものに立った改正案ではないかというのが私の率直な感想でございます。有権者立場に立った改正案ではないということです。  この審議の問題ですが、こういうように選挙の公正にかかわる重要な問題です。単に期間短縮すればどうかというだけに限って審議すべきではなくて、本来選挙はどうあるべきなのか、どうすればより国民のための正しい選挙になるのか、そういう観点からの審議を尽くされる、その上で採否を考えられるべきが筋じゃないかと思います。そういう意味において審議は非常に不十分であるという感じを受けております。
  63. 前島英三郎

    前島英三郎君 どうもありがとうございました。
  64. 松浦功

    委員長松浦功君) 他に発言もなければ、参考人に対する質疑は終了いたします。  一言ごあいさつを申し上げます。  参考人方々には、長時間御出席をいただき、また、貴重な御意見をお述べいただきましてまことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げる次第でございます。  暫時休憩いたします。    午後零時二十八分休憩      ─────・─────    午後二時四十二分開会
  65. 松浦功

    委員長松浦功君) ただいまから選挙制度に関する特別委員会を再開いたします。  委員の異動について御報告いたします。  本日、高杉廸忠君及び目黒朝次郎君が委員を辞任され、その補欠として丸谷金保君及び村田秀三君が選任されました。     ─────────────
  66. 松浦功

    委員長松浦功君) 休憩前に引き続き、公職選挙法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  67. 上野雄文

    ○上野雄文君 提案者にお尋ねをいたしたいのでありますけれども、昨日の前島委員の質問について提案者側から、あたかも社会、公明両党に対しては事前の根回しが実際済んでおって、そして成立をすることについてはどうぞおやりください、決して暴力的にこれをとめるようなことはいたしません、こういう保証があったと。その二党が保証をしたんだと言わぬばかりのお答えがあったわけなんですけれども、私どもとしてはこういったことについては何ら関知していないというふうに聞いておりますし、その辺のことについて、もう一度済みませんが明らかにしていただきたい、こういうふうに思うんです。
  68. 天野公義

    衆議院議員(天野公義君) 昨日、片岡議員の発言につきましていろいろお話があったようでございますが、片岡議員は、この法案提出の前に衆議院の公選法理事懇におきまして各党にその内容を御説明申し上げ、その後各党からの御意見をいただいて提案いたしましたその過程におきまして、片岡議員が昨日述べておりましたように、片岡議員のその受けとめました感触について述べたものでございまして、衆議院における法案に対する各党の態度につきましては御承知のとおりでございます。
  69. 上野雄文

    ○上野雄文君 そうすると、そういう誤解されるような向きの発言については、きょうは提案者がかわられておられますけれども、そういうことはないということを明確にしておきたいというふうに思うのです。  次に大臣にお尋ねをいたしたいのでありますが、昨日定数の問題等をめぐりましていろいろお話を伺うことができました。これは要するに、各党間で煮詰めてその上で決めていこうではないかということが骨子になっていると思うのですけれども、ただ私は、最後のころ、選挙制度審議会が目下お休みの状態にある、こういうような御発言があったように記憶をしているのです。  そこで、この種の問題について、もちろん大臣の言われるように、各党間での煮詰め合いということも必要かもしれません。また、今日までのいろいろな経過を見ますと、そのことが前提になっていなければどんなに詰めてみてもなかなか具体化しないということについても承知をしておりますけれども、ただ、選ばれる側の人間同士の議論だけでは、これはどうしても手前勝手になりがちだ。本来、総理の諮問機関としての審議会は、言うならば第三者的な立場からこの問題等も含めて選挙制度全般について常に提言を行う、そういう任務があるんだろうと思うのであります。したがって、定数の配分の問題、一票の重みの公平さを求めるというのであれば、まさに審議会での議論というものが重点を置かれてもいいのではないか、一つの問題提起をしてもらう場になってもいいのではないかというふうにも思うのでありますけれども、大臣の発言ですと、ずっと休眠状態でもよろしいんだというように、その発言だけでなくて、一連の御答弁の中で私にはそんなふうに受けとめられたわけなんです。この生かし方といいますか、本来の任務の果たさせ方といいますか、そういうことについての御所見を伺いたいというふうに思うのです。
  70. 山本幸雄

    ○国務大臣(山本幸雄君) この問題は、これは非常な議会制民主主義の根本の問題で、しかし何とか越えていかなければならない私はハードルだと申し上げたのですが、そこで、結局は憲法の規定によって、区制とかあるいは選挙の方法というの は法律で決めなければならぬ。これは国会が最終的にはお決めにならなければならない問題だと思うのです。いずれにしろ法律で決めていただかなければならぬということがあるわけなんです。  そこで、これは私は、各党の御意見も、この問題のお話し合いを願うときにも相当いろんな御議論が出るだろう。それは昨日来申し上げていますように、選挙のやり方はいろいろ違います。各政党のそれぞれの選挙のあり方は私はいろいろあると思うのです。またその財政基盤もそれぞれ違うということで、それぞれの政党でいろいろお話し合いを願うときにはそういう立場上の違いというものが出てくるであろうということはよく理解はできます。できますが、しかしいずれにせよ、どこで何をおっしゃろうと最終的には国会の御判断である。しかも、これは国会の議員の選出についての方法といいますか、やり方の問題でございますから、これはやはり国会が自主性を発揮せられるというのが一番私は望ましいのではないだろうか、こういう考えで昨日来私は申し上げてきたところなんです。  これをどっかほかのところでまず考えてこいと、これも一つの方法かもしれません。よく第三者機関で何らかの案をこしらえたらどうかというお話もないではないと承っておりますが、しかし、そういうものができましても、やっぱり最終決定は国会で合意をされなければ法律とならない、こういうことでございますから、むずかしい問題ではあるけれども、国会でおやり願うのが一番私はベターではないか、こう思って昨日も申し上げたようなわけでございます。これが各党でどういう具体的な方法、あるいは機関といいますか、そういうものをお考えになるかは、これも国会のお考えによるものだと思います。思いますが、しかし、いずれにしろ最終的には国会でお決め願わなければならないことだけに、そういう考えが私は先に立った、こういうことでございます。
  71. 上野雄文

    ○上野雄文君 提案者である片岡先生の昨日のお話によりますと、今回のこの改正の提案に当たって、そういった審議会の問題に関連をして、余り大きな問題でない、だからそういうところと十分相談をしたり、そこで審議をしてもらうというようなことはやらなくてもよろしいのだというふうにとれる発言があったわけですね。  そうすると、せっかくある審議会というものの存在そのものが、いま大臣が、立法府が責任を持って自主的に決めるべきだというお話をされたわけですけれども、しかし、そうなると一体、本来置かれているその審議会の立場というものはどういうふうになってしまうのか。これは大変重要な問題ではないかなというふうに思うのですけれども、事の大小にかかわらず、やはり今回の提案というものがいかにも唐突に出されてきた、勝手気ままだという批判を受けているというのは、民主的な政治基盤をつくり上げるその選挙手続を決める法律をつくるに当たって、やはりその手続に欠けるところがあるからそういう指摘が出てくるのではないのかというように思うのですけれども、いまとの関連について提案者並びに選挙担当の方の御所見を伺いたいというふうに思います。
  72. 岩田脩

    政府委員(岩田脩君) 御承知のとおり、選挙制度審議会というのは、当時の構成で申し上げれば、一般の選挙人、有識者の方たち、それから各党から出ておられました特別委員とから構成されておったわけでございます。したがいまして、政府側から法案を提案する場合には、当時、選挙制度審議会の御審議を経てから出すということが多うございました。もっともこれは、いまの御指摘、それから大臣からお答えを申し上げましたように、物の性格によるのではないかというようにも思います。  今回のように、自由民主党の中の選挙制度調査会を中心にして、これは実はこのテーマについてもかなり長い間の議論が中断を繰り返しながらあったわけですけれども、そういうようなもの、そしてまた最後には議員提案となって出てくるという系統のものは、やはり選挙制度審議会にはなじまない。片一方で、たとえば選挙人名簿制度であるとかいったような純粋技術的な面は、あるいはもっとなじみやすい。ないしは、この前選挙区画の確定についての御意見がありましたが、ああいうようにルールが全部決まってしまって、さあこの中で地図をかいてみろというような話、そういうような、一定のある部分に当てはめれば選挙制度審議会が正しく機能し得るという部分もあるのではないかというように思っておりまして、そういったものを全部見きわめながら総合的に運営すれば、別に相互間の矛盾はないのではないかというように思っております。
  73. 天野公義

    衆議院議員(天野公義君) ただいま選挙部長からお話しを申し上げたようなことを私どもも踏まえていたわけでございますが、この期間短縮等の問題につきましては、党の選挙制度調査会で長年の間いろいろと研究をいたしていたところのものでございます。ちょうど参議院選挙、地方統一選挙も終わり、そして衆議院の任期も来年の六月だというようなところも踏まえまして、この機会にこの問題と真剣に取り組んでまいろうということでいろいろ研究もし努力もいたし、一応の成案を得まして、そして先ほど申し上げたように、各党の感触も得ながらまとめ上げて御提案をした、そういう過程でございます。
  74. 上野雄文

    ○上野雄文君 それから、きのうの質疑を通じてやっぱりはっきりさしておかなきゃいけないなと思っているのは、選挙運動期間が長いこと、それから選挙のスピーカーを通して流れ出る音、いずれもこれが片岡提案者の説明によると迷惑論に集約されているのですね。問題は、音の迷惑論は、物すごい音が出て町じゅうまき散らして歩いておるわけですから、騒音公害の問題なんかと絡めるとそれなりにはわかるような気はしますけれども、しかし、そうしなければ、それ以外の運動は具体的なものは一体何があるのかというと、かわりがないからそれになっているわけですね。  それからもう一つの迷惑論は、町村選挙運動期間を七日から五日にすることについて、そんなに長い間皆さんに迷惑をかけなくてもいいではないかということを三、四回答弁されておられるのですね。そうすると、何とはなしに選挙そのものが迷惑なんだというようなふうに聞ける話になってしまうのですね。こんなことが根底になっているとすれば、これはまた選ぶ側からすれば大変な問題になると思うのですが、その辺については一体どういうふうにお考えですか。  なお、こういう論法が展開されることについて、選挙担当の自治省なんかがやっぱり同じように迷惑論の立場をおとりになっているのかどうか、その辺も聞いてみたいことの一つなんです。
  75. 天野公義

    衆議院議員(天野公義君) 運動期間短縮の問題は、金のかからない選挙をしていきたい、ついては、現行の選挙運動期間が短くなればおのずからいろいろな費用も助かってくる、選挙費用が助かってくれば政治浄化の一因にもなっていくのではないか、かように考えて選挙運動期間短縮ということを考えたわけでございます。  スピーカーの問題につきましては、町村運動期間の問題とも関連いたしますけれども、もっと朝の静ひつを守ってもらいたいという要望や、町村は皆知り合いばかりで、範囲も狭うございますので、七日間よりももっと短くても十分趣旨が徹底できるのだというような御意見もたくさんあったわけでございまして、それやこれや勘案をいたしまして御提案申し上げたようなことにいたしたわけでございます。
  76. 上野雄文

    ○上野雄文君 自治省は全くそういう迷惑論を肯定しているんですか。
  77. 岩田脩

    政府委員(岩田脩君) いや、選挙そのものが迷惑だというように考えているわけではそれは毛頭ございません。  本来から申しますと、ちょっと理想論になるかもしれませんけれども選挙であれ何であれ、いわば世の中に一種の社会規範みたいなものがございまして、何が認められておろうと禁止されていようと、たとえば連呼なら、街頭で車でやるときにはこういうようなというような社会的規範がきちんとでき上がっておって、それが守られるという世の中ならいいのでありましょうが、日本の場合そういう点はむしろ自由、それは見方を変えればむしろ社会的な活力を意味するものかもしれませんけれども、それでけさのお話みたいに、やるとなればとことんまでやるといったような側面も持っております。そういった意味で、やはりこの禁止というのは、片一方である社会生活の静穏保持といいますか、そういった要請と、片一方の選挙、まあ街頭における宣伝活動と申しますか、選挙と申さずに、そういったような二つのある意味では抵触することのある価値の一つの調整である。その意味でやむを得ないのではないかとは思いますが、決して迷惑だというように考えているわけではございません。
  78. 上野雄文

    ○上野雄文君 時間がなくなってしまったわけですが、ただ提案者にもこれはお考えいただきたいなと思うのですが、先生御自身もそうだと思うのですけれども、朝七時からやることが、自分で、ここは大きな声を出していったら票になるどころかかえってマイナスになるなと思ったら、決してボリュームを上げるようなことはしませんよね。先生の選挙を担当している人たちだって私はそうだと思うんですね。そういうことはおのずから自分たちで規制できるはずなので、強制的に八時からでなきゃだめだというふうにやるというのはいかにも、何かそこのところで稼げなくしてやろうという悪らつな魂胆が見え見えだとしか受けとめられないのですよね。その辺についていかがですか。
  79. 天野公義

    衆議院議員(天野公義君) 私の場合も先生と同様に、七時からと言われればボリュームを小さくしてやらせるようにいたしますけれども、中には大きな音で私の家の周りを歩く方もいらっしゃることは事実でございます。一般から、なるべく朝早いのは勘弁してくれという御要望も非常に強うございまして、いろいろ勘案をいたしまして、八時ならというようにいたした次第でございます。
  80. 多田省吾

    ○多田省吾君 私も、先ほど上野議員が質問されたように、きのうの質疑のことで提案者の天野先生にお伺いしたいと思います。  きのうの午前中から提案者の片岡さんが、衆議院段階で本法案を提出するに当たっては野党にも理事懇等で十分根回しをし、了承を得、合意を得たような姿で出したんだと再三おっしゃったわけです。また午後からの質疑でも栗林委員が、民社党はそういうことはないとはっきり否定されたわけですが、その後を受けられて前島委員からも、それでは公明党と社会党がその根回しを受けたのかと、こういう質問もあったわけでございます。そこでまた片岡委員からは、反対だ、しかし抵抗はしないから十分やれというようなことを言われたという答弁もなさっております。これは私は大変不見識な答弁だと思います。実は前から私は絶対そういうことはないということは確信しておりましたが、きのうもわが党の理事を呼んで十分聞きました、その理事懇の様子やら、また審議状況やら。その結果、わが党の理事は、理事懇等で本法案についての根回し、あるいは了承、合意というようなことは絶対にない、とんでもないことだ、そのように強く否定しておりました。また、片岡議員のおっしゃるようなことは一切ないということを再三言っております。わが党におきましては、もう衆議院段階から、わが党の各種機関において自民党提案の本法案については反対ということをはっきり決定しておりますし、したがって、わが党はNHKのテレビ討論等においても終始反対を貫く姿勢を示していたわけでございます。  そういうことで、きのうの質疑から大変私ども誤解を受けるような片岡議員の発言があったわけでございますが、その点に関してもう一度天野先生から御回答をいただきたいと思います。
  81. 天野公義

    衆議院議員(天野公義君) 先ほど申し上げたところでございますが、片岡議員は、理事懇において各党にこの法案の内容を御説明を申し上げて、その後各党からの御意見をいただいて提案をするというような運びをとったわけでございますが、その過程の中で、片岡議員が昨日述べておりましたような受けとめ方を自分で感じた、感触として受け取った、こういうことを述べているのでございまして、衆議院における法案に対する各党のいろんな御態度というのは御承知のとおりでございます。あくまでも片岡議員の受けとめ方でございますので、ひとつ御了承を願いたいと思います。
  82. 多田省吾

    ○多田省吾君 実は、昨年、一昨年の参議院比例代表選挙法案の際も、今度は参議院段階で私ども自民党参議院方々から野党にあたかも根回しをしたかのごとく言われたわけでございますが、それは私は体験者でございますが、法案を持って、こういったものを出すという通告は受けました。私たちは強く反対して、そんなものは絶対出すなと、そういう経過がございます。それすらも、昨年、一昨年の本委員会審議におきまして、あたかも根回しをしたごとく発言されておりましたので、私ども非常に憤概したのでございますが、私は衆議院状況を終始見ていたわけじゃありませんけれども、それと似たような姿があったのかなと、このように受けとめているわけでございます。  この問題だけですと時間がなくなりますので、次に進みます。  午前中、参考人方々の御意見も拝聴したわけでございます。特に私どもは、衆議院審議段階から、立会演説会を全廃することはとんでもないことではないかと強く反対してきたのでございますが、昨日、本日を通じての審議の中で、特に参考人皆様からは、立会演説会を残して、その空洞化とか云々という問題については、たとえば討論を入れるとか、あるいは質疑も入れるとか、あるいはそのままそっくりテレビに放映させるとか、そういった手段を講ずればもっともっと効果的な立会演説会ができるのではないかというような御提案もございました。私どもも、少なくとも二回から五回程度は各選挙区で立会演説会を残していった方がいいのではないか、このように思っているわけでございまして、また昨日前島委員の御主張もございましたように、聴覚障害者の方々立会演説会の手話によって政治参加できる面が非常に最近開かれていることもございますし、私たちはそういった点も考えて、何とかこの立会演説会を効果あらしめるよう残した方がよかったのではないか、このように思いますが、再度天野先生にこの点をお伺いします。
  83. 天野公義

    衆議院議員(天野公義君) 立会演説会の問題につきましては、昨日片岡議員からお話を申し上げておりましたように、形骸化をしてしまった、あるいは自由な候補者の活動が非常な制限をされるとか、いろいろなことを勘案をいたしまして廃止に踏み切ったわけでございます。聴覚障害者等の問題につきましては、昨日お話があったところでございますが、これからテレビ等いろいろ御研究を願う一つの課題ではないか、かように考えていろいろと自治省等にも御研究を願いたいと思っているところでございます。
  84. 多田省吾

    ○多田省吾君 次に、自治大臣にお伺いいたしますが、衆議院定数是正も早急に行わなければならないと思います。また、私は参議院選挙区の定数是正も速やかに行うべきだと思います。実は私どもも、昨年本委員会にその定数是正案を発表いたしました。定数をふやさないで、増減によってプラスマイナスをゼロにして定数是正を図る、そして逆転現象も解消する、そういう案を発表し、また修正案として提出したわけです。  午前中も質疑がございましたが、昭和五十五年の国調の結果でも、神奈川県と鳥取県の間の選挙区の定数アンバランスは一対五・七三に及んでおります。これは私は、それよりも少ないアンバランスでなるほど最高裁判決はありましたけれども、一対五・七三、ほぼ一対六のアンバランスになりますと、これは幾ら最高裁でも憲法違反の裁決を下さざるを得ないのではないか、従来の経過から見て私は考えているわけでございます。これは与野党とも参議院選挙区の定数是正は図らなければならないということで合意に達していると思います。そういう意味で、私は所管大臣の自治大臣もこの点はいろいろお考えになっておられることと思いますが、ひとつ御所見をお伺いしたいと思います。
  85. 山本幸雄

    ○国務大臣(山本幸雄君) いま公明党からも、参議院定数、特に選挙区のことでございましょうが、定数の是正についての御意見といいますか、御提案をなさっていらっしゃいますけれども、私ども、そういう形で各党がお考えをだんだんいただけば何らかの結論に到達することができるのではなかろうか、こういう感じもするわけであります。衆議院定数是正問題、これは速やかにという時間的な制約を受けながらやっていかなければならない問題だと私どもも受けとめております。参議院の方は、人口の順に並べて、八、六、四、二というのを並べ、縦に人口別に並べてみますと相当著しいアンバランスが見られるということでありまして、何らかの是正をこれは本当に要する問題であろうと思います。  裁判所判決参議院の場合も衆議院の場合も出ておるわけでございますが、裁判所の認識は少し衆議院の場合と参議院の場合と違うようでございますけれども、それはそれといたしまして、いずれにいたしましても、仰せのように、衆議院の問題も、今回最高裁判決で速やかにというふうに時間的な制約を受けたわけでございますが、同時に参議院選挙区の定数是正の問題も、私は同じようにひとつ重要度を置いて考えていかなければならない問題であろう、こう思っております。
  86. 多田省吾

    ○多田省吾君 続きまして自治大臣に、本年六月執行されました参議院比例選挙の問題についてお尋ねいたします。  自治大臣は、選挙の終わった翌々日の六月二十八日に記者会見をされまして、制度の存続まで含んでいるかどうかわかりませんが、とにかく再検討する必要があると発言なさいました。大臣は、参議院比例選挙について再検討とおっしゃったのは、制度の存続まで含んでおられるのか、あるいは運動方法のみを考えて発言なさったのか、その辺ひとつ御所見をお伺いしたいと思います。
  87. 山本幸雄

    ○国務大臣(山本幸雄君) 昨日も私は申し上げたのですけれども、比例代表という制度は、やはり参議院全国区制度の弊害というものを何とかしなければならないということで出てきたものだと思うのです。逆に今度は、比例代表という制度が非常にいいのだからこれを採用しようというお考えが先に立って出たというよりは、むしろ全国区制度の弊害を何とか直したいというアンチテーゼだと私は申し上げるのですが、そういうことではなかったかと思うのです。  そこで、この制度が旧全国区に採用されまして初めて行われたわけでございます。その結果は、私はこれはいろいろ見方もありましょうし、いろいろ御意見もあることは承知しておりますが、大筋においておおむねまずまずの実績を示したのではなかったか、こういう認識であります。そこで、これは一回やったことでありますし、これを育てていっていただく、もし具体的な実施上の問題点、あるいは技術的な問題点があるとするならば、それを是正しながらよりよい比例代表の制度にして、そしてそれで運用していくという方向でいきたい、こういうのが私の考え方でございます。  そこで、一体何が問題点かと、こうお尋ねいただくと、またこれいろいろ問題点が出てきたりするわけでございますが、たとえば、あの場合に立会演説会も実はその一つでありまして、立会演説会というものが何といいますか、形骸化してしまったなという感じが非常に強くしたわけでございます。それはあの場合の私どもの受けた率直な感じであったわけでございます。そういうことなどを初めといたしまして、私は、選挙が終わった時点で皆様方国会の御論議もいただき、また関係の選管の御意見もいただいてこの制度を何とか運営面において改善をして維持をしていきたい、こういう考え方を申し述べたのであります。
  88. 多田省吾

    ○多田省吾君 提案者の天野先生に政党法についてお尋ねいたします。  私は、去る九月十四日の代表質問で総理に質問したところ、勉強してみてはどうかと言ってある、こういう発言をなさったわけです。天野先生は自民党選挙制度調査会長をいまおやりになっていると承っておりますが、本日はとりあえずどのような勉強をなさっているのかお伺いしたいと思います。マスコミ報道では、政党法をつくって、票数に応じたお金を国から支給できるようにするのも含まれているのだというような報道をなされておりますが、その辺簡単で結構ですから、大綱だけ、どのような勉強をなされているかお伺いしたいと思います。
  89. 天野公義

    衆議院議員(天野公義君) 選挙制度調査会には第一部会、第二部会、第三部会とありまして、それぞれ選挙運動とか定数とか、いろいろ分野に分けて御研究を願っているところでございまして、政党法担当の部会で御研究を願っておりますが、どういうものがいま主体となっているかというところまではいっておりません。これからなお一層この政党法について勉強を重ねていきたいと思っているところでございます。
  90. 多田省吾

    ○多田省吾君 最後に自治大臣に一点お尋ねします。それは海外邦人の一票行使についてでございます。  わが国国民でありながら本人の意思に関係なく一票の道がいままで閉ざされてきたということは、憲法基本的人権の上からも早急な対策が必要であることは論をまちません。もうすでに自治省、外務省を中心にこの在外選挙の検討が相当進められていると聞いておりますけれども、その経過と現状、見通しをひとつ簡明にお答えいただきたいと思います。
  91. 岩田脩

    政府委員(岩田脩君) 大臣をお名指しでしたけれども、経過とおっしゃいましたので私から言わせていただきます。  この案件については、もうかれこれ二年ほど前から政府なり自民党選挙制度調査会などを中心にしていろいろと御議論がございました。われわれも外務省との間の打ち合わせをやってかなりまとまったところまで来ております。すでに大綱については合意を得、来年度の予算要求を実はいたしております。来年度の予算要求の成立を見まして、その後その立法措置についてまた御検討をいただきたいものと思っております。
  92. 山中郁子

    ○山中郁子君 昨日の審議と、それから本日の午前中に行われました参考人に対する質疑の中でも私はいよいよ明らかになってきたと思いますのですが、この法律案の提案理由が、説明の文書によりましても「最近の選挙実情にかんがみ、」ということが一つです。それから「金のかからない選挙の実現に資するため、」と、この二つによって第一から第五までの改定を行おうとするものである、こういう御主張です。  それで、いままでお伺いしている範囲の中で、最近の実情にかんがみ選挙制度を改善するということは、たとえば交通通信手段が発達している、昔と違う、こういうお話ししか伺っておりません。これは一体どういうことを意味していらっしゃるのかお伺いをいたします。
  93. 天野公義

    衆議院議員(天野公義君) 一番最近の選挙実情というのは、ことしの地方選挙並びに参議院選挙を実際やりまして、私どももその選挙参加をしたり横から見たりいたしていたものでございます。  従来から、この選挙実情に関して、選挙制度調査会でいろいろと期間短縮等の問題について研究を重ねてまいったところでございますけれども、最近の選挙実情を見てみますと、ある選挙では本当に長過ぎるという感を深うする選挙もございました。また、選挙期間が縮まるとするならばいろいろな意味選挙費用も助かるのではないかということも感じさせられたわけでございます。そういうことを踏まえまして選挙制度調査会でいろいろと御議論を願いましてこの成案を得るに至った次第でございます。
  94. 山中郁子

    ○山中郁子君 それでは全然わからないのでありまして、長過ぎるというのは、だれが長過ぎると言っているのか、思っているのか、そういうことはもうすでに何回も衆議院段階でも論議がありまして、昨日もありましたし、参考人の皆さんの中からもお話がございましたけれども、むしろ短過ぎるぐらいだという声もたくさんあるのです。そうしたら、「最近の選挙実情にかんがみ、」というのは具体的に言うとどういうことなんですか。最近の選挙がどうだから期間を短くしたり立会演説会をなくしたりというふうになさるのか、そこのところを具体的におっしゃってください。
  95. 天野公義

    衆議院議員(天野公義君) 先ほど申し上げましたように、かねてこの問題については検討をしていたところでございますけれども、ことしの地方選挙あるいは知事選挙あるいは参議院選挙等、われわれも参加した面もありますし、横から見た面もありますし、また、選挙制度調査会の委員の先生方もそれらの御体験を踏まえましていろいろ御議論をいただきました結果成案を得たような次第でございます。
  96. 山中郁子

    ○山中郁子君 依然として何も具体的な事情をお示しになれないということだと思います。  それで、きのうも私は短い時間でしたので簡単にしか申し上げませんでしたけれども、たとえば交通通信手段が発達しているとかというふうなことでおっしゃるならば、それは当然のことながら、文明の発達ということによってもたらされる利便は国民が享受すべきものであって、そういうことによってより多くの情報国民有権者に伝えられるならばいままで以上にたくさんの情報が伝えられてしかるべきであって、それはもう歓迎すべきことであるわけです。本来選挙というのは、そもそもその政党政策あるいはその候補者政策、識見、人柄、そういうものをなるべくたくさん有権者の方に情報として供給する、これが選挙の本質でさえあるわけですから、たとえば通信交通手段が発達したとか、そういうことで短くしてもいいんだということは全く成り立たない。そもそも選挙というのは、政策や人柄、識見、そういうものを有権者によりたくさん、より豊富に伝えるべきものであるということについては御異存はないのですか。
  97. 天野公義

    衆議院議員(天野公義君) 短縮をいたしましたその補いといたしまして、ラジオテレビの放送の増加あるいは経歴放送を加えるというような措置をいたしたわけでございます。情報は多ければ多いほどいいわけでございますが、逆にまた選挙運動期間が長ければ長いほどいいというわけでもございませんので、最近の交通事情、あるいは情報状態、あるいはテレビラジオ等の増加、これらをいろいろと勘案をいたしまして、現下の情勢で言いますとこの原案程度が妥当ではないか、かように思った次第でございます。
  98. 山中郁子

    ○山中郁子君 テレビあるいはラジオ等による政見放送をふやすということは、これはもちろん結構なんです。それはもちろんいろいろな一定の常識的な限界というのはありましょうけれども、問題は、そういうことで補うから減らしていいのだというのでは議論が逆立ちしている。そういう利便が発達しているのだからさらにより豊富な情報有権者提供できる、そういう積極的な姿勢で選挙制度について取り組んでこそ、本当にその選挙というものの持つ本質に適応する実際の選挙運動ができるのだということを私は改めて申し上げておきます。提案者の御答弁あるいは理由の中にはそこをネグって、そして、そのことを理由にしていままでも一九六〇年以来九回にわたって改悪を繰り返してきた。さらにその上にこうした大きな改悪をしようという、別なところでは、むしろ逆に有権者の知る権利を狭めるという道を進む以外の何物でもないということは、いまの御答弁の中からもそれは断定せざるを得ないことだと私は思います。  ところで、もう一つ理由になっております「金のかからない選挙の実現」ということですけれども、きのう私は片岡提案者にお尋ねをいたしました。それでお金がかからなくなるというのは、片岡さんも法定選挙費用として使ったとされている一千万弱のお金の最大限見積もっても四分の一で、そこまではいかないだろう、そういうお話でした。逆に、けさの参考人質疑の中でも、自民党推薦なすった、賛成されている参考人の方も、実際の選挙事前運動の分野で行われているというふうに受け取られても仕方がないようなニュアンスの発言が、御主張が何回も繰り返されました。実際問題として、そういうことだけではない日常的な培養、そして大がかりな買収選挙、そしてさまざまな、二百万とか二百五十万とかというものとは比較にならない次元でのお金が使われるために金権選挙の批判が国民から起こっているということは御承知のとおりだと思います。  金のかからない選挙という名目で、これも同じく有権者の知る権利を狭める、そういう内容を持っているものです。きょう参考人の皆さんの御意見を聞いて改めてそのことは確信をしたわけですけれども、その点について天野提案者の御意見をお伺いいたします。
  99. 天野公義

    衆議院議員(天野公義君) 先ほど申し上げましたように、期間短縮されれば当然所要費用は助かるわけでございます。事前運動に金がかかるということでございますが、これはその人その人によってずいぶん性格、内容が異なっていくものだろうと思いますが、事前運動政治運動とイコールという判断で、なかなかこれに対して制限を加えることができないような状態であると理解をいたしておりますので、この点はまことに残念でございます。でき得べくんば、事前運動法律でびしっとやれるならばやらしてもらいたいというのが私の真意でございます。
  100. 山中郁子

    ○山中郁子君 日常的な地盤培養と称して、きのうも申し上げましたように、実質的な買収その他でお金をたくさん使っている。自民党の方が引退されるに当たって、もうお金がない、この前も五千万かかった、二億、三億かかる、かなわないと、これは特殊な例外じゃないんですね。ですから私はそういう点で、二百万あるいは——二百万なんか減らないと思いますよ、仮に一千万としても、この五日間減らすということで。だけれども、もし仮に二百万減ったとしても、そういう次元と違うところでの莫大なお金の使い方、しかも不正なお金の使い方についてメスを入れない限りは、あなた方が口実として言われる金のかかる選挙ということを解決していくことには何らならないということを改めて私は申し上げます。  それで、そういうお金をたくさんかける選挙自民党の方たちはやっていらっしゃる。たくさん新聞にいろいろ出ていますね。だから、きのうは具体的な点に触れられませんでしたけれども、利益誘導、地位利用、ぐるみ選挙、こうしたものが展開していくわけです。  二つだけ例を申し上げますと、長野四区から前の建設省の公園緑地課長だった塩島さんが出られる。そしてこの方が、建設省の課長だった当時の大規模公園事業調査費を長野県につけた。そういうようなことから、全部地位そして利益誘導、そういうことで選挙が行われている。秋田でも、前参議院議員の野呂田さんが、やはりそういう官僚としての地位でもって秋田に利益を誘導するんだと。だから、新聞の表現をかりますと、石田先生も秋田県に金をつける予算関係は余りやってもらえない、野呂田さんは参議院議員の六年間秋田県のためによく動いてくれたと。そういう利益誘導型選挙、これが田中角榮選挙の形の全国への拡散だということでいま多く批判をされている。  つまり、選挙にさまざまな形でたくさんそういうお金を使う。法定選挙費用の一千万円とかということでない場所で使われる。したがってそのお金は必要だ、だから利益誘導、地位利用、また企業ぐるみ、そうしたものが蔓延してきている。こういう関係になっているわけですね。そこのところにこそ本来本質的なメスを入れるべきだということを重ねて私は主張するものでありますけれども、天野提案者の御意見をお伺いいたします。
  101. 天野公義

    衆議院議員(天野公義君) なかなかむずかしい問題でございまして、それらの点につきましては今後いろいろと研究をさしていただきたいと思います。
  102. 山中郁子

    ○山中郁子君 それじゃ、そういう実態があるということはお認めになるわけですね。
  103. 天野公義

    衆議院議員(天野公義君) よく知りません。
  104. 山中郁子

    ○山中郁子君 それはいかにも白々しいお答えでありまして、あなた方がそういう実態がよく知りませんなんということはあり得ないのですけれども、現実をやはりちゃんと直視をしていただきたい。それで、そういうことがいま国民政治不信、それが田中角榮有罪判決一つの契機にしてさらに大きくなっているのだということに目を向けていただかなければ、選挙での金の問題は解決しない。そのことを私は強調したいと思います。  それからもう一つの問題は、本日参考人質疑をいたしまして、これに賛成をなすっていらっしゃる全国町村会事務総長皆川さんに私はこういうふうに伺いました。つまり、いろいろ意見を開陳されて、他の委員の質問に対してもお答えになっていらっしゃる中で、五日間に町村選挙がなっても、公報の問題だとか、いろいろ出稼ぎの人たちの不在者投票だとか、何とか工夫すればできます、やむを得ませんというお答えに終始したのです。ですから、そういうお答えなんだけれども、それではあなたは積極的にどういう理由でこのように期間短縮するということに賛成なのかというふうにお尋ねをいたしました。そうしましたら皆川さんは、積極的に期間短縮せよという意見は私は受けていない、聞いていない、こういう御答弁でした。  きのう私は片岡提案者にお尋ねをしたのですが、返ってきたのは地方六団体方々のというお言葉。これは選挙をされる側の人たちで有権者ではない。そしてまた、それ以上詰めますと今度は声なき声だと、こういうことになる。私はこんな国民をばかにした話はないと思うのです。あるものは、現に目に見えるものはたくさんの国民の批判と反対です。きょうの参考人質疑でもそうでした。にもかかわらず、そのあるものについては目をつぶって、あるものは見ようとしないで、そして声なき声、全く実体のない、実体でお示しになさることができない声なき声によるんだと。そういうことならば、これは国民の、つまり選ぶ側の有権者立場を全く無視をしているだけではなくて、有権者意見に全く相反することをやろうとしている、こういうふうに言われても仕方がないと思いますけれども、その点はいかがですか。
  105. 天野公義

    衆議院議員(天野公義君) 私ども衆議院参議院の者は、それぞれ選挙区に、私は東京でございますから、都議会議員、区議会議員選挙をいろいろお手伝いしたり、有権者と直接接しております。また町村のあるところの先生方も同様であると思います。そういう有権者との選挙を通じてのいろいろな交流のうちに、やはり町村選挙も五日で十分であろう、こういう御感触を皆さんが得られたものと思います。選挙制度調査会では皆さん五日で十分いけるであろうということでこの案をつくり、また六団体の御意見も承りまして、またいろいろな管理委員会の事務的なお話の方も承って、いけるということでこの原案をつくったような次第でございます。
  106. 山中郁子

    ○山中郁子君 いまおっしゃったのは選挙管理委員会、六団体、これはいずれも有権者立場の方たちじゃないですよね。そのほかは、あなたがおっしゃったのは感触だという。感触なんという言葉ほどいいかげんなものはありません。片方ではたくさんの請願署名が山積みにされていて、そしてたくさんの団体反対アピールを出して、専門家も学者もそうしたたくさんの声を上げられているのです。片方は、感触だとかそんないいかげんなものじゃなくて、明らかにもうきちんとした強い姿勢でもってそれが述べられているんです。それに対して、感触だけでこんな大改悪を、しかも議員立法で押し通すなどということが許されてならないことだということは、もう当然はっきりしていると思います。  つまり、もう一度確認しますけれども、提案者の側は、有権者の側からの、ぜひこうしてほしいという具体的な世論を、私たちを説得するに足りる合理的な背景を持っていない、そういうふうに言わざるを得ませんね。どうですか。
  107. 天野公義

    衆議院議員(天野公義君) 先ほどから申し上げておりますように、春の統一地方選挙で皆それぞれ大変な体験をいたしてまいり、それぞれ有益な御意見を体してこられた先生方ばかりでございます。したがって、その体験に基づいた御判断というものにまさる貴重なものはないと思っております。
  108. 山中郁子

    ○山中郁子君 だからまさに選ばれる側の都合だけじゃありませんか、しかも自民党の皆さんの。国民主権、日本のいまの憲法のもとでの政治の主人公は国民である。それの最低の、そして最大の政治参加である選挙について、全く有権者不在のこうした悪法、改悪を提起すること自体まさに言語道断のことであると言わなければならない。重ねて指摘をいたしまして終わります。
  109. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 発議者にお尋ねをします。  最近の選挙情勢にかんがみということで、その具体的な中身としては、直近の統一地方選挙参議院選挙、こうおっしゃいましたけれども、そうしますと、参議院選挙を終わったのは六月末でありました。あと七、八、九、十、十一と今月を入れても五カ月であります。その五カ月の中で御提起されるにしては余りにも大きな改正ではなかったんだろうか。したがって、いまわれわれがこの改正案をいただいて非常に唐突に感じているのもあたりまえだったんだなと思うのですが、問題は、この期間短縮一つを取り上げてみましても、なぜ五日短縮だったのですか。四日短縮ではなぜいけなかったのですか。三日短縮ではなぜいけなかったのでしょうか。となりますと、これは大体もういいやと決めるしかないような話で、そう詰めた御論議があったとは思わないのですが、仮に衆議院選挙期間にたとえますと、なぜ二十日が十五日になったのでしょうか。    〔委員長退席、理事田沢智治君着席〕
  110. 天野公義

    衆議院議員(天野公義君) この期間短縮の問題は、自民党選挙制度調査会ではすでに長い間研究をいたしていた問題でございます。恐らく数年研究を重ねていたものと思います。たくさん研究項目があったわけでございますが、それらの研究項目の中で、統一地方選挙を終わった段階で、来年の六月には衆議院の任期が来るというところで最低これだけは取り上げようということになりましたのが、この御提案申し上げた内容でございます。  期間の問題につきましては、これまたいろいろ御議論のあったところでございますけれども、一番ポイントになりましたのが、NHKの放送という問題がございました。これが十五日で十分放送できるということになりましたので、それでは中途半端なことはやめて十五日にいたしましょうという判断をいたしたわけでございます。
  111. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 そうしますと、今度は選挙期間の問題についてはもう思い切って最低まで下げた。いまのテレビ等諸制度を前提にすればでありますけれども、思い切って最低まで下げたという御説明のようなんですが、自民党選挙制度調査会で長年にわたって御研究があったというお話はお話としまして、それを野党はうのみにしたということなのでしょうか。自民党選挙制度調査会でも何年もかけて検討してきた内容ですね。それをそのとおりしようやと言ったときには、恐らく衆参の審議を含めてよほど長期の議論がなければいかぬ。その過程では当然公聴会も開かなければいかぬ。必要があれば公聴会を各市に行ってでもやろうではないかというのが普通の構えだと思うのですが、そうできなかった。できなかったのは、この次の衆議院選挙に間に合わせるということがまず念頭にあったと思いますが、間違いございませんか。    〔理事田沢智治君退席、委員長着席〕
  112. 天野公義

    衆議院議員(天野公義君) やはり六月には衆議院選挙がございますから、金のかからない選挙やいろいろ改正をするとするならば、統一地方選挙並びに参議院選挙が終わったところで、その体験を踏まえまして、次の選挙にできるならば間に合うようにというつもりで出したことは事実でございます。
  113. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 来年の六月任期いっぱいとしますと、参議院選挙が終わってから一年あるわけですから、それはそうお考えになってもあながち間違いではないと思います。ところがいまの予想ではどうやら衆議院は解散が早まる。伝えるところでは十二月の十八日選挙。そうなりますと、これにはとても間に合わぬ、したがって現行の制度でやろうではないか、そう判断するのが、この選挙制度を変えるという大事業からしますとごく自然な判断ではないか。したがって、十月十二日のあたふたとした時期の前後に強引にというのではなくて、あれはあのまま衆議院の公選特で預かっておいて、選挙が終わったら鋭意ねじり鉢巻きでやろうではないか、時間もたっぷりやるというのが普通考えられる正しい対応ではないかとお考えになりませんか。
  114. 天野公義

    衆議院議員(天野公義君) 来年の六月を目標にして、臨時国会が始まって直後に御提出を申し上げた次第でございまして、やりようによっては十分な時間がある、かように判断をいたしていたわけでございます。いい法律でございますので、やるならば次の総選挙からぜひやらしていただきたいとお願いを申し上げる次第でございます。
  115. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 とにかくこの国会というのは非常に血迷った変わった国会になってしまいましてね。したがって、本来参議院は重要法案二十日という前提があるから、何だと言いたいところだけれども、そうもなかなか言いづらいまことに込み入った状況にあるものですから、まことに残念至極だと私は思います。  ただ、選挙期間短縮だけ取り上げて言いますと、当初は三十日だった。だんだん減らしてまいりまして、いま二十日です。しかし、この間お金のかかり方というのは減ったのだろうか。これはもうお伺いするまでもなくふえておりますよね。そうすると、お金をかけるということと選挙期間というのはどうも直接絡んでいるのではないのではないか。私も、選挙の応援に入りますとこういうあいさつをするんです。告示になりますともう終盤戦だ、がんばれと言うのですよ。じゃ序盤、中盤はいつなのか。告示の前ですよ。そっちの方に選挙費用がたくさんかかっていることはもう常識でありまして、お伺いするまでもない。そうしたものを、とにかくこんなにかかったのでは新人が出てこれないじゃないか、有能だけれどもお金がない人が重ねて立候補できないではないかというのが、いまわれわれの最大の悩みでしょう。そうするとそのときに発議者としては、選挙の総体というものを公職選挙期間と事前運動期間と分けるとしますと、なるべく公職選挙期間にシフトしていこうというかっこうでお考えになるのか。きょう皆川さんおっしゃっていたのは、いや公職選挙期間が縮まったって前があるさというお話をなさっているのですが、このお立場をとるのだろうか、そもそも選挙に対する見方として。どちらでございますか。
  116. 天野公義

    衆議院議員(天野公義君) 公職選挙期間が短くなれば選挙としての費用も助かりますし、また当人及び運動者あるいは一般の方々も体力、騒音その他いろいろについて助かる面がたくさんあろうかと思います。  事前の問題につきましては、やられる方はやっておられるようでございまして、やれない者は非常に苦しんでいるところでございまして、何とか事前運動についてもうまい方法はないものか、お考えを願えないものかと、余り事前運動のやれない者といたしまして真剣にそういうことも悩み苦しんでいるところでございます。
  117. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 いまの公職選挙法基本的な考え方というのは、公職選挙期間中に全部重点を移しながらそこで選挙をやってくださいというのがたてまえであると思います、事前運動はたてまえとしてできないことになっているわけですから。どっちも縮まってもいいということじゃなくて、極力重点は公職選挙に移してもらいたいということですよね。  事前の話はちょっと抜きにして、先生自身、いまの二十日という、少なくとも二十日ですが、二十日という期間のあの運動期間というのは短いとお考えになりますか、長いとお考えになりますか。なぜ伺うかといいますと、私は参議院ですから二十数日の選挙運動をやりますけれども、やってみて長いなと思ったことはない。あっという間に終わる。ただ、応援でつき合っているときにはずいぶん長いなと思いますけれども、いざ自分が候補者になって天下公然として街頭で自分の意見有権者に言うことができる、有権者の反応を自分の肌で感ずるあの期間というのは、確かにつらいにはつらいことは間違いないけれども候補者とするとやりがいのある選挙期間ではないのだろうかと私は思うものですからお尋ねするのです。
  118. 天野公義

    衆議院議員(天野公義君) やり方にもたくさんあろうかと思いますけれども、私の場合はやはり選挙は短い方がありがたいと思っておりますし、また、この国会中でも、仲間の議員方々や、また、冗談でございますけれども、野党の方々からも、先生短くするようにがんばってくださいよとずいぶん御激励を受けているところでございます。
  119. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 それが現職の利益優先の公選法改正ではないかと言われている点なのです。これがもし新人がいたら何日やったって足らないのですよ。最近の選挙情勢というのは、金丸先生も御指摘になりましたけれども、新しく立候補する議員が少ないのです。今度の衆議院選挙も少数激戦ですよ。その結果どうかというと、当選に必要な票はどんどん上がるんです。昭和二十年代のころはどうかというと、立候補する人がたくさんいました。したがって当選に必要なラインというのはずいぶん下だった。それが上がってしまう。金はどうか。あの事前運動は全然制限ないんですから。となってくると、それはとてもじゃないけれども出られない。有権者の方とすると、毎度同じ顔ぶれでは投票する気にもならない。だんだんに選挙離れが始まってくる。これが最近の選挙情勢の最大の問題だと思います。したがって、本当は長いとお感じでしたら結構ですよ、正直で。また、同じようにくたびれたという野党議員がいたのかもしれません。しかし、それはそれとして、では新人はどうなるかという形で本当は公選法の改正というのはやらなければいけなかったことではなかったんですか。
  120. 天野公義

    衆議院議員(天野公義君) 現職の者は国会でつかまったりいろいろいたしております。新人の方は御自由にはね回っておられまして、新人の脅威を方々で現職の方が痛切に感じているような状態のようでございます。できますならば、政治運動制限についての法律というようなものも考えていく必要があるのではないかと、まあひそかに考えているところでございます。
  121. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 今度の法律規制ですけれども期間短縮はやむを得ないとして、たとえば街頭運動期間の一時間繰り上げの問題等が問題になっているのですが、先ほども実例として申し上げたのですけれども、統一地方選挙で、ある自治体では、お昼どきにがあがあやるのはやめようじゃないかというので、十二時から二時まで音を出すのをやめるということを各党立候補者同士が協議をして決めて、それを紳士協約でやっている。ですから本当はそうやって、選挙の姿というのは地方によってみんな違いますからね。ここでは朝の七時はやめようじゃないか、そうかといってやめる、ここでは朝の七時から八時は通勤者の皆さんの一番動いているいい時間帯なんだから、これはやらなければいかぬとか、そういったぐあいに地方地方で相談しながらお互いが自主規制していくというのが本当は正しいやり方ではないのだろうか。何も頭から八時前はだめ、夜の八時までと、こう決めてしまって、たがをはめるのではなくて、一応この幅の中で、あとは地方に応じて、立候補する人たちが相談しながら自分たちの自主規制枠をお決めなさい、そして全体としてうまく転がっていく。こちらの方が私とすると結局選挙を生かしていく道ではないのだろうか。  なぜこんなことを申し上げるかといいますと、いま私は横浜にいるのですけれども、町じゅう至るところポスターばかりですよ。すさまじい張りようですよ。あれはどう考えたって事前運動ですよ。ポスターの下を見ると、小さく時局講演会と書いてある。一体何人集まるのか、そのために何枚まくのか、全部ノーチェックです。こうした問題について法律で規制するというのは、先ほどおっしゃったようになかなかむずかしいというお話でした。むしろ各党間で話し合いながら、地方別の個性も兼ね備えて持たせながら自主規制する方向をむしろ育てていく。  立会演説会であれば、なるほどいま空洞化していると思います。私もやってみて一番困るのは泡沫候補なんです。間がぽかっとあいてしまうんです。ぽかっとあいてしまうんですから、前にいる聴衆の人と後の聴衆の人と、ほうっといたって入れかわる。これでいいのだろうかと思います。ところが、地方によってはあの立会演説会をそっくり地方の放送局が撮って映している。私、見ましたけれども、これはおもしろいんです。そうするといろんな工夫の仕方があるじゃないか。もともと百点というのはいま期待はできない。何とかしてそれを育てていこうではないかというかっこうで取り組んでいって初めて下に足がついた選挙になるのじゃないか。  そう考えてみますと、立会演説会にしても、あるいは街頭運動の時間制限にしても、今度のように縮めてしまう理由は何にもなかった、そう思いますが、いかがですか。
  122. 天野公義

    衆議院議員(天野公義君) 先生のように良心的な先生ばかりが候補者になっていれば問題はないのでございますが、なかなかそうもいかないのが実情でございまして、ある程度の線を引きませんとあっさり枠をはみ出されることになりますのでこういうことにならざるを得ないのだと、かように思っております。
  123. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 最後にお尋ねしますけれども、いろいろ事情があってこの改正案提出になったとしまして、失礼ですけれども参議院選挙のことについては、衆議院の皆さんよりはわれわれの方が実際やっておりますから、より知っていると言っても言い過ぎではないと思います。参議院の方へは、十八日に縮めるよという御相談は、当然のことながら法案の顔を見るまではされていなかったわけです。われわれとすると、従前で結構でありますと、そうなりましたら当然修正、回付ということになりますね。回付をしていまの衆議院で受け取れるのか。実態はどうですか。
  124. 天野公義

    衆議院議員(天野公義君) 運動期間十八日と決めたのは、党の選挙制度調査会に参議院の多くの先生方も参加をされて、いろいろ御議論の上決めていただいたわけでございます。でき得べくんば、原案のまま何とかお通しを願えれば幸いだと思っております。
  125. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 一言だけ申し上げておきます。  修正案を送っても受け取りようがないのでしょう、いまの衆議院は。ないに等しいのですよ。本来だったら、もうあれだけごちゃごちゃになってしまったのだから解散していればいいのです。それをこの法案だけは通したいとか言うから、だれが見てもわからない国会運営になっているのです。ふんまんをどこにぶつけたらいいのかわかりませんので、これ以上言いませんけれども、まことに残念な事態だと私は思います。
  126. 前島英三郎

    前島英三郎君 私もまことに残念な事態の中で幾つか質問をさせていただきますけれども、率直に私は、参議院選挙皆様審判をいただいておりますので、二十三日間では物足りないということを午前中も申し上げたところだったのです。本当に二十三日間はあっという間に過ぎますし、もっと行かなければならなかったところもたくさんございました。テレビの公営という形が取り入れられましたけれども、それとてもNHKがやっているだけ。あれを、国が電波を監理しているのだから、どのチャンネルをひねっても政見放送が出てくるように、やはりそのくらいの気構えでやって、すべてその時間は政見放送になるというぐらいなら、かなり公営という部分が私は生かされるだろうと思うのです。  そういう中においては、あとは私たちは、代弁者の声として政策を訴えるのではなく、自分自身の声としてやはり主張していかなければならない。そういう意味では、全国区の中では立会演説会ありませんから、私たちはつじつじ、本当にササ舟のような形の選挙を展開してきたわけです。それが今度十八日間に切られていく。いままでの推移を見てみますと、三十日が二十五日になり、二十五日が二十日になりで、根拠もなく五日ずつ減らしてきているわけですから、次は恐らく十日、こうなるだろうと私は予測するのです。先ほども、ひそかにというようなお言葉がありましたので、ちょっと気になるんですけれども自民党の天野先生を中心とした選挙制度調査会では、次はどういう選挙制度出してこようといま考えておられるか、その辺伺いたいと思います。
  127. 天野公義

    衆議院議員(天野公義君) 次の課題は定数是正でございます。最高裁からああいう判決をいただいたのでございまして、総論賛成、各論反対というのは各党の偽らざる基本的なお立場ではないかと思うのですが、私どももそういうような嫌いが非常に強い。だから、定数是正の問題に真剣にこれから取り組んでいかなければならないし、そしてまた、これの最終は各党の御協力を得ながらやっていかなければならない大問題であろう、かように思っております。
  128. 前島英三郎

    前島英三郎君 定数是正という名をかりて小選挙区制、そしてあと一回全国区の比例代表制を取り入れた比例代表制の廃止ということじゃありませんか、いかがですか。
  129. 天野公義

    衆議院議員(天野公義君) そういうことはいまのところは何も考えておりません。
  130. 前島英三郎

    前島英三郎君 大変にその辺が唐突に、選ばれる側の論理、しかも、その選ばれる側の数の多い論理の中で手かせ足かせ、いろんな形で出てくるわけなのですけれども、自治大臣に伺いたいのですが、先ほどもちょっとお答えになりましたが、参議院全国区に比例代表制を導入して一度選挙をやったわけなんですけれども、自治大臣はこれをどう評価し、またどう反省をしておられるのか。あるいは投票率の低下についてはどう考えておられるのか。本当に金がかからなかったと自治大臣は胸を張ってお答えになれるかどうか、その辺をちょっと伺います。
  131. 山本幸雄

    ○国務大臣(山本幸雄君) 今回の改正案につきましては、それは時代が進展してくる、それにはいわゆる文明というものが進んでいきますから、選挙を取り巻く環境といいますか、選挙手段といいますか、方法といいますか、そういうものもやっぱりだんだん変わってくると思うのです。  それで、期間短縮の問題も、先ほど来お話がございましたが、簡単な話が、終戦直後は自転車で候補者は走り回ったと。しかしそれが小型トラックになって、いまやりっぱな宣伝カーになってきた。それから道路はずいぶん便利になりました。電話はほとんど全戸に行き渡りましたというような、情報伝達の上においても非常に便利になってきておる事態を踏まえた改正であろうと私は思うのです。もとより、その場合は、住民の知る権利といいますか、あるいは選挙民候補者との接触ということは重大な問題ですから、それは真剣に考えていかなければならぬ。しかし、今回の改正によって確かにある面ではむしろそういう面は深くなっていく面も出てくるのではないか。やはり今度の改正候補者選挙のやり方を少し考え直すというか、考えてやっていくのではないだろうか、やや選挙のやり方が変わってくるのではないだろうか。それがいい方に変わっていってもらいたいと、こう思っているわけでございますが、そういう意味で、今回の改正はいい方向に運営をされれば私はりっぱな改正になるのではないだろうか、こう期待をしているようなわけでございます。
  132. 前島英三郎

    前島英三郎君 もう一点、本当に金がかからなかった選挙であったとお思いになっているかどうか。
  133. 山本幸雄

    ○国務大臣(山本幸雄君) 金の問題は、少なくも五日間短縮されれば短縮されただけの金のかかり方は少なくなるだろう、これは常識的にはそう考えられると思うのです。しかし、それが果たして全体の選挙に要する費用の中でどれぐらいのウエートがあるか、それは私は個々の候補者によっていろいろ違うと思います。だから一概にそれは言えないと思います。しかし、十五日に短縮したことによって何がしかの金のかからない選挙になることは私は間違いないだろう、こう思います。
  134. 前島英三郎

    前島英三郎君 そこで、今度は自民党選挙制度調査会の皆さん方がるる話し合われて議員立法の形で出された。まさに唐突に出されたわけですけれども、知事選、市長選、この辺の立会演説会までも奪っているわけですね。地方選挙まで全廃する理由というのはどこにあるんですか、発議者。
  135. 天野公義

    衆議院議員(天野公義君) 立会演説会が形骸化いたしておりますので、この際全廃した方がいいと皆さんの御意見が一致いたしましたので、全廃の法律案を提案いたした次第でございます。
  136. 前島英三郎

    前島英三郎君 それは知事選、市長選なども含めてそういう判断をされたわけですか。
  137. 天野公義

    衆議院議員(天野公義君) そうでございます。
  138. 前島英三郎

    前島英三郎君 いずれにしましても、立会演説会も私は何回か傍聴に行ったことはあるのですが、やはり激戦というものに対しては非常に有権者が燃えますよね。そういう意味では私は立会演説会の効果というのは非常に多いと思うのです。  それと同時に、先ほどいろんな泡沫候補云々という話がありましたけれども、何人もこれは被選挙権は得られて、これはもう国民の権利として当然なんですね。だから、どういう候補が悪いからということで足かせをしていきますと、私は本当の民主主義はつぶれていってしまう、そういう気がするのです。ですから、どんな人もお金を供託して、そして自分も政治参加しようとする中において、そこはまさしく一つの大きな公営としていままで立会演説会が育ってきたということを考えますと、この立会演説会もすべて廃止するのではなくて、なぜ最低二日とか三日とかというものを少しも検討はなされなかったのか。その辺はいかがですか。
  139. 天野公義

    衆議院議員(天野公義君) 検討したこともありますけれども、場所によって大変な不公平の起こる場合が想定されるわけでございまして、廃止に踏み切った次第でございます。
  140. 前島英三郎

    前島英三郎君 きのうも私は申し上げましたけれども、耳の不自由な人の多くは、耳から言語が入ってこないため、残念ながら文章の読解力や作文力に恵まれていない。これは専門家がそう言うんです。今度は選挙公報ということになるのですけれども、それも任意制選挙公報発行になっているわけですね。その現実はどうですか。たとえば都道府県議会議員、いわゆる三千二百の市町村議員に至る中で、そういう意味で、候補者の考えなりというものがすべての人に自治省の指導で育てられていますか。その辺の実態はどうですか。
  141. 岩田脩

    政府委員(岩田脩君) 御承知のとおり、現在選挙公報発行を義務づけられておりますのは都道府県知事まででございまして、それ以下のたとえば町村議会議員、都道府県議会議員、それから市長さん、町村長さん方は、法律上は選挙公報発行は義務づけられておりません。ただ、当該団体が条例をつくりました際には、選挙公報発行することができるようになっております。それに基づきまして条例をつくっておりますところは、一々は申し上げませんが、たとえば町村でございましたら、町村長について選挙公報の制度を持っているものが四百八十ほどございます。これらの団体は、スペースとか字数とかいうのは団体によって違うので、国の場合みたいな大きなものを出しているわけではございません。  こういった団体発行の様子を見ておりますと、全部を把握しているわけではございませんが、その大部分町村は、いままでの選挙でも原稿の印刷から配布まで三日とか四日とかいった範囲でやっております。でありますので、今後こういうように期間が小さくなりましても、その中で大体支障なく発行ができるだろうと思いますし、われわれもそういう線で発行が続くように指導してまいりたいと思っております。
  142. 前島英三郎

    前島英三郎君 新たな日数が目前に迫っているわけですけれども、たとえば、はがきの扱い、公報の配布、ポスターの掲示等々、運動する側、選挙サイドの実務の時間的配分、さらに有権者がそれを認知して判断するに要する期間、そうしたものをある程度計算して自治省側は大丈夫と判断されているのかどうか、その辺はどうですか。
  143. 岩田脩

    政府委員(岩田脩君) 選挙運動の人間の動きということになると、ちょっとわれわれの方もよくわかりませんけれども、今度提案されましたような日数になりました場合の選挙管理については、いろいろ工夫をしなければならぬ面ももちろんありましょうけれども、何とかやっていけるのではないかと思っております。
  144. 前島英三郎

    前島英三郎君 何とかやっていけるんじゃないだろうかという形になってしまいますと、あなた方はどっちについているのかわからなくなって僕らも質問に困るのだけれども、私心配しているわけですよ。  たとえば郵便投票、これは在宅の重度障害者、寝たきり老人の方々に郵便投票という制度がありますね。郵便投票の場合、選挙期日の四日前までに投票用紙を請求するのが通常で、もっと前に請求しているケースがあるわけです。今度は町村の場合五日間です。五日間となりますと、投票用紙の発送が早くて選挙前五日ということになるわけですね。これはぎりぎりになるのです。郵便投票に頼らざるを得ない人々にとっては、十分に候補者を吟味するいとまもなく投票しなければならない、こういうことになってしまいますと、こういう意味の棄権というか、あるいは政治から取り残されてしまうとかというふうなことは、これは重大な問題だと思うのです。かなり無理があるのじゃないかという気がするのですが、その辺はいかがですか。
  145. 岩田脩

    政府委員(岩田脩君) ただいまお挙げになりました四日前というのは、身体に障害のある投票者が不在者投票するために選挙管理委員会の方に役票用紙をくれとおっしゃる期限ですから、それに基づいて選挙管理委員会が送り返して有権者の方が投票される。ですから、そこの部分は今回の短縮には余り関係がないわけです。関係があるとすればそれ以前の部分でございまして、つまり、選挙管理委員会に対して要求をなさった、それから送り返す、そこら付近の日数がかかりますので御不便をかけるのではないかという点になると思います。  そこで、いままででもそうなのでありますけれども、そういう郵便による不在者投票をなさる方は、選挙が始まる前でも投票用紙の請求はできたわけです。ただ、選挙が始まる前に投票用紙の請求をいただきましても、こちらからは選挙が始まってからでないと投票用紙を差し上げなかった。今度は、そういう面もございますので、ひとつ事前の請求に対しまして選挙管理委員会の方から事前に投票用紙をお送りしようということに踏み切るつもりでございます。そして、たとえば選挙を告示する日の前二日なら二日というところに日にちを決めまして、事前にいただきました請求に対しましては、その事前二日になったときに選挙管理委員会から投票用紙を発送する、そうすれば大体選挙の告示の日にはお手元に着いているはずです。そこで吟味をいただいて、選挙管理委員会に間に合うように送り返していただく。これでいけば少なくともいままでのサービスは確保できるのではないか。もちろん、そのためにはいままで以上に事前に前広に請求をしていただかなければなりませんから、そのことについては選挙管理委員会を通じまして、幸い、たとえばいまお話しの、在宅投票なさる郵便投票の方はリストに載ってわれわれの方にもわかっているわけですから、事前の請求をしていただくように十分指導をいたしたいと思っております。
  146. 前島英三郎

    前島英三郎君 そして今度は、聴覚障害者のテレビ政見放送に対する手話の問題ですけれども、やはりその辺はかなり自民党選挙調査会の方でも落ちこぼしていたのじゃないかというような気がするのですけれども、きのう片岡さんは非常に前向きな答弁をなされましたが、天野さん自身はどのように思っておられますか。
  147. 天野公義

    衆議院議員(天野公義君) きのう片岡議員が御答弁申し上げたように、われわれも、いまの問題につきましてはこれからも前向きにいろいろ研究努力していきたいと思っております。
  148. 前島英三郎

    前島英三郎君 しかし、自治省の作業とすれば、この衆議院選挙はとても無理であるということですね。それはいかがですか。
  149. 岩田脩

    政府委員(岩田脩君) 先ほどから、衆議院議員選挙がいつかということで、いろいろ微妙なお尋ねがございまして、ちょっとお答えをいたしにくいのですが……
  150. 前島英三郎

    前島英三郎君 三日公示の十八日投票だよ。
  151. 岩田脩

    政府委員(岩田脩君) というように前提を置けば、それはとてもその間に準備をすることはできないと思っております。
  152. 前島英三郎

    前島英三郎君 そうしますと、今度の衆議院選挙は、三十数万、難聴者を含めますと五十数万のそうした聞こえない、耳の障害のある人々に対しては、行政側も一つの権利はやはり与えられないと、こういうことで理解してよろしいですか。
  153. 岩田脩

    政府委員(岩田脩君) 残念ながら、今度の立会演説会の手話というものにかわるべき直接の方法は、急にはいまの日程では見出すことはできまいと思っております。
  154. 前島英三郎

    前島英三郎君 だから、それが選ばれる側の、しかも大きな力の中で一つの法案をどんどん出してくる、そして強い者が弱い者や小さな者をどんどん踏みにじっていってしまう一つの流れの中に、やはり自治省もそういうことに加担しているということになってしまうわけですよ。この法案をつくり、法案が出されてきた経過の中には、そういう一つの歴史的経過もあるわけですね。  昭和四十四年に初めて東京都で手話が立会演説会に採用されて、それが全国にまたがっていって、いまやらないところは七県しかない。しかし、これからどんどんそれが育っていこうという状況の中でこれをばっさり——この衆議院選挙では、聴覚に障害のある方々は手話は一切テレビの画面にも出しませんというようなことで、本当に皆さんに納得できる説得力をあなたは行政側として持つかどうか、それを最後にひとつ伺って、きょうは質問を次にバトンタッチしたいと思うんですが、いかがですか。そして、大体次回からはできるのだという一つの気持ちをここではっきり出していただきたい。手話はできますよ。
  155. 岩田脩

    政府委員(岩田脩君) おっしゃるとおりでございまして、立会演説会がなくなってしまう以上、その立会演説会に伴って行われておりました手話サービスというのはここでなくならざるを得ないと思います。  強いて一言言わしていただきますならば、実のところわれわれは、難聴者に対する文字サービスといいますか、選挙公報の果たす役割りというものはかなり大きく考えておりまして、先生の御指摘になりましたように、難聴者が実は活字とは緑が遠いのである、ある意味で活字からも疎外されているのであるという共通認識というものは、実はここのところ急に世に知られるようになった、その意味での認識は今回新たに開かれた一つの認識ではないかというように思っています。  これから先の問題につきましては、昨日NHK側を呼んでの先生の御質問の中にもあらわれましたように、NHKの技術上の問題などもございますけれども、いまのお話のありました認識にも立ちまして、ひとつ研究を進めさしていただきたいと思っております。     ─────────────
  156. 松浦功

    委員長松浦功君) この際、委員の異動について御報告いたします。  本日、加藤武徳君及び田中正巳君が委員を辞任され、その補欠として宮島滉君及び竹山裕君が選任されました。  暫時休憩いたします。    午後四時二十二分休憩      ─────・─────    午後四時四十六分開会
  157. 松浦功

    委員長松浦功君) ただいまから選挙制度に関する特別委員会を再開いたします。  公職選挙法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案について質疑を終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」「異議あり」と呼ぶ者あり〕
  158. 山中郁子

    ○山中郁子君 委員長、動議。
  159. 松浦功

    委員長松浦功君) 山中君。
  160. 山中郁子

    ○山中郁子君 私は、質疑の打ち切りに反対し、質疑の継続を求める動議を提出いたします。  理由は、本法案の審議が尽くされていないからであります。どなたもみんなそうおっしゃっている。公職選挙法改正案審議については、議会制民主主義の基礎にかかわる重要な性格に照らし、公聴会開催、十分な質疑時間の保証などが必要であり、特に従来公聴会を開くことは慣例とされてきました。これらを行うために本法案の審議を継続すべきであります。  以上が動議の提出の理由です。
  161. 松浦功

    委員長松浦功君) ただいま山中君から本案質疑を継続することの動議が提出されましたので、まず、これについてお諮りいたします。  ただいまの動議に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  162. 松浦功

    委員長松浦功君) 挙手少数と認めます。よって、山中君の動議は否決されました。  それでは、本案について質疑は終局することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  163. 松浦功

    委員長松浦功君) 多数と認めます。よって、質疑は終局いたしました。  本案の修正について上野雄文君から発言を求められておりますので、この際、これを許します。上野雄文君。
  164. 上野雄文

    ○上野雄文君 私は、日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合及び参議院の会を代表し、本案に対し修正の動議を提出いたします。その内容は先ほどお手元に配付されております案文のとおりでございますが、私からその趣旨について御説明を申し上げます。  まず第一点は、選挙期間についてでございますが、きのうからきょうにかけての審議でもたびたび発言がありましたが、衆議院議員選挙については今回の改正のように十五日間にしてもよろしいでしょう。しかし、その他の選挙については現行どおりでいっていただきたい。案文の整理では、一ページから二ページの後段にかけてまでが整理をした案文でございます。  二つ目は、選挙運動の時間については現行どおり午前七時から午後八時までとする、こういうことで従前どおりの形を守ってもらいたいということであります。  それから三番目につきましては、立会演説会を全廃をするということは許されないことだという立場から、いろいろ創意工夫をこらす点などもあることと存じますが、一選挙区最低二回とし、二回以上五回以内で開催をする、こういうことで立会演説会の制度を存続をさせる、そういう修正であります。  さらに四番目に、政策宣伝のための確認団体が使う車についてでありますけれども、余りにも少ないということから、選挙区で候補者を立てている政党は一台に限って使うことができるようにすること。それは衆議院参議院、知事、都道府県、指定都市まで及ぼしたらどうか。さらに、比例代表選挙について、候補者の数だけ政策宣伝の車を認めるというものにしていったらどうか。こういうことの提起をいたしたわけでございます。  今回の改正案に対する修正案でありますから、この条文の整理等については大変入り組んでややこしく、一見してすぐにわかりづらい中身になっておりますけれども、この全体を通じていま私が申し上げました四点を整理してこの中に記載いた しましたので、その点についての御理解を賜りたいと思うわけであります。もちろん私ども、今日までこの一部改正案審議に当たって、何といっても参議院があらかじめたがをはめられた審議日程、そして法律案が通らないうちに事実上選挙の日程が決められているなどという、まさに異常な事態の中での審議を行わざるを得ないということはきわめて遺憾の事態であります。こんなことが二度と行われてはならない、こういうことを私どもは痛感いたしているものでございまして、民主主義の基本ともなるべき手続法律でありますだけに、お互いに今日までの長い歴史、そういうものを尊重しながら大切に扱っていきたい、こういう立場を強調いたしたいと思うものであります。  以上、非常に簡単でありますけれども、私から今回の修正案の中身について御説明を申し上げた次第であります。皆さんの御賛同をお願い申し上げます。
  165. 松浦功

    委員長松浦功君) ただいまの修正案に対し質疑はございませんか。——別に御発言もないようでございますから、質疑はないものと認めます。  これより原案並びに修正案について討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べを願います。
  166. 大木正吾

    ○大木正吾君 私は、日本社会党を代表いたしまして、原案に反対し、修正案に賛成の立場で討論を行います。  まず、原案は作成過程の手続におきまして問題がございます。特に、提案者が、野党との相談をしたなどと繰り返し申し述べていることは納得ができません。さらに、事実上の選挙が始まらんとしている事態の中での審議でございまして、十分な審議ができないからであります。このようなことは今後絶対に繰り返してはならないと思うからであります。  第二に、代議政治、民主主義の原点とも言える公選法の改正において、選挙する国民の側の見解が全く反映されず、民主政治の根幹にかかわることを指摘しないわけにはまいりません。  第三に、原案は、選挙期間短縮選挙運動時間の短縮立会演説会廃止など選挙運動の自由をますます狭める内容でありまして、公選法はもちろんのこと憲法の精神にも反するからであります。  わが党は、公明党・国民会議、民社党・国民連合、参議院の会とともに、原案に対し反対立場から四点の修正を求める修正案を提案しております。  公職選挙法改正問題については、定数是正政治資金規制、政治倫理の確立など国民の求めている緊急の課題が多くございます。原案のごとき選挙運動の枠を狭めるがごときものには賛成できません。  原案に反対し、修正案に賛成の立場から強く見解を述べて終わります。
  167. 多田省吾

    ○多田省吾君 私は、公明党・国民会議を代表して、自民党提案の公職選挙法の一部を改正する法律案について反対し、日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合及び参議院の会共同提案になる修正案について賛成の討論を行うものであります。  およそ、選挙制度は、議会制民主政治の根幹をなすものであり、選挙有権者が直接政治参加する唯一の機会であります。よって、有権者がみずから主体となって公正かつ自由に政党候補者選択できるよう、あくまでも選ぶ側の立場に立ってルールづくりをするということから構成されていなければならないものであります。したがって、十分国民にも理解を得るためにも慎重に検討し、各政党の合意を得て初めて制度改善を図るのが当然であり、提案の絶対要件であると考えるのであります。しかしながら、わが国においては、選挙制度の改定については、常に国民が不在であると指摘されておりますが、この傾向が特に最近目立ち、選ばれる側の都合、特に政権政党の足場固めの発想だけで提案されることが多いと断ぜざるを得ません。  今回の御提案は、選挙運動期間短縮運動方法の一部廃止を主な内容とするものでありますが、国民の側から見て、そのように改正する理由がないだけでなく、運動期間中に限られる現行法のもとにおいては、このような改正選挙からますます有権者を遠ざけ、選挙運動の自由を制限するものと言わざるを得ません。現行の選挙運動期間は、各選挙とも十年、二十年といった単位で定着しております。これをそれぞれ性格の異なる各選挙について一律、一斉に期間短縮するということは、そのこと自体が、党略的な意味以外では改正理由が乏しいことを示すものと言わざるを得ません。言われるところの交通通信の発達及び費用の節減などの問題等は、いまに始まった問題ではなく、期間短縮とは関係ない別個の問題であります。これが第一の反対理由であります。  次に、期間短縮は、単に技術的な問題にとどまるものではなく、直ちに大政党や小政党、そして無所属、新人にとって有利、不利の利害を生ずることは否めません。にもかかわらず、あえて今回の改正を意図するのは、選挙運動についての共通のルールづくりの原則に反し、政治に清新な気風を送ることを妨げることになると考えます。これが第二の理由であります。  次に、今日、選挙制度における緊急の国民的課題は、憲法の平等原則、また、民主政治を健全に機能させるためにも、去る十一月七日の最高裁判決を待つまでもなく、議員定数の不均衡是正、そして、政治資金授受における規制の強化、選挙運動自由化など、最優先すべき未解決の重要課題が山積しております。このようなときに、単に政権政党の都合だけの内容の改正案審議成立させることは、国民政治不信をいよいよ倍増させるものであり、政党の健全な発達を妨げることになるものであります。特に、期間短縮は、選挙運動の自由及び自由化の問題と密接不可分の関係にあることは言うまでもありません。選挙運動自由化との関連で期間短縮するというのでなく、一方的に期間短縮し、そして国民が望んでいる戸別訪問の自由化等をなおざりにしているのは、はなはだ遺憾であります。これが第三の反対理由であります。  次に、立会演説会の全廃は問題であります。形骸化しつつあるといっても、十分に機能しているものもあり、これを切り捨て御免で制度そのものを廃止するのはいかがなものかと思うのです。有権者が各候補者に直接接触し得る唯一の機会なのでありますから、討論方式や演説会のテレビ放映など運動方法の改善を図るのが有権者立場に立った改正であるはずであります。提案者はなぜ建設的に改善しようとしなかったかのか、はなはだ不満であります。これが第四の反対理由であります。  また、町村の議会及び長の選挙は、地域によって状況もさまざまでありますが、運動期間の五日間というのは、任意制選挙公営の適正な執行との関係からいっても、あるいは不在者投票の問題からいっても、これは運動期間として論外であります。  以上、自民党提案の公職選挙法の一部改正案反対する問題点を述べました。  次に、修正案は、不十分な点もありますけれども、これが現在妥当であるということで賛成することを表明いたしまして、自民党提案の本法律案に対する反対討論を終わります。  最後に、わが党は衆議院段階以来一貫してこの自民党案に反対してまいりました。しかるに、本委員会審議に当たって、提案者の答弁の中に誤解させるような答弁があったのは、はなはだ遺憾であります。われわれは、今回の審議に際しまして野党の要求いたしました公聴会もやることができず、また短期間審議で、先ほど委員長から諮られ、そして審議ができなくなったのは大変遺憾であります。われわれは今後二度とこのような事態がないように強く熱望する次第であります。  以上で終わります。
  168. 山中郁子

    ○山中郁子君 私は、日本共産党を代表して、まず、自由民主党提出の公職選挙法の一部を改正する法律案について反対の討論を行います。  冒頭に私は、議会制民主主義の基礎である選挙制度の根本にかかわるこのように重大な法案を、両院を通じて公聴会も開かず、まともな審議を行うこともなく、審議続行の当然の要求さえ無視して採決しようとしていることに厳しく抗議をするものであります。  全会派が一致して改正の必要を認めているのならばともかく、各党間の合意の得られない本法案を審議を尽くさないままで採決することはきわめて不当であります。しかも重大なことは、中曽根総理が決めた解散、総選挙の日程に合わせ、それに間に合わせようとして、成立を急いでいることであります。中曽根総理は、全法案の成立が解散の前提などと言って、国会運営に侮辱的な介入を行っております。国会がこれに毅然として抗議しないばかりか、その言動に合わせて成立を急ぐなどということは、審議を尽くすべき国会の責務を放棄するにも等しい言語道断の暴挙であり、衆議院における田中辞職勧告決議案の棚上げに加え、国民の怒りと議会不信、政治不信はまさにその頂点に達するでありましょう。この事態について、委員会運営に第一に責任を負うべき委員長に重ねて厳しく抗議をするものであります。  次に、本法案に反対する理由を述べます。  第一は、昨日のわずかな委員会審議と本日の参考人質疑の中だけでも明らかになったように、この法案が有権者国民立場を全く無視し、自民党党利党略から出発したお手盛り法案だということであります。選挙は、主権者である国民参政権を直接行使する重要な機会であります。この参政権行使のための判断材料を提供する政策論争の機会短縮廃止することは、自民党政策政治姿勢に対する国民の批判をかわそうとする党利党略以外の何物でもありません。  第二に、本法案の内容が、憲法も保障する国民の知る権利を奪い去ろうとする点であります。たとえば、立会演説会候補者政策を直接有権者が聞くことができる唯一の場所であります。だからこそ地方自治体の多くが条例で立会演説会を行っており、聴覚障害者のための手話通訳も行われているのであります。この改悪によって今後はこのようなことも一切行えなくなります。みずからの金権腐敗選挙にメスを入れず、金のかからない選挙なる口実のもとに国民に目隠し選挙を押しつける自民党提出の本法案は、まさに悪法のきわみと言わなければなりません。選挙制度に関しいま国会がなすべきことは、定数是正選挙運動の自由の拡大、企業献金の禁止等々でこそあれ、このような悪法を強引に成立させることでは断じてありません。  最後に私は、自民党が、田中元総理の有罪判決や、さきの一票の価値をめぐる最高裁判決をきっかけとして高まっている金権腐敗政治批判に一片の反省も示さないばかりか、逆にそれを口実として小選挙区制導入の策動を公然と強めていることを指摘し、わが党は断じてそのような策動を許さない決意であることを表明するものであります。  なお、本日提起された修正案は、本法案による公選法改悪の本質と骨子を基本的に残すものであるため、わが党は反対であります。  真の改善は本法案の全面的撤回以外にないことを改めて強調して、反対討論を終わります。
  169. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 私は、民社党・国民連合を代表して、ただいま議題になりました公職選挙法の一部を改正する法律案の原案について反対、修正案について賛成の討論を行います。  もともと、国民参政権というのは最も重要かつ基本的な国民の権利でありまして、当然公職選挙法改正に当たってはこの国民参政権を阻害しないように最大の配慮をすべきでありますし、審議に当たっては、有権者の声の聴取はもちろん、十分な審議時間を確保すべきであります。にもかかわらず、今回の審議というのはまことに異常な背景の中で行われてまいりました。その原因となったのは何かと言えば、言うまでもなく十月十二日の判決、その後の田中元総理の辞職勧告決議案の取り扱いをめぐる混迷であります。  自民党はたびたびこう言っておりました。国会議員の地位というのはきわめて重要なものであって、したがって、他の者が力任せに奪うようなこの決議案は違法であり、間違いであると。私はこれは一つ立場だと思います。野党の方は打ちそろって、総理在職中の犯罪であるから当然道義的、政治的責任をとるべきであるというかっこうで、手続的に何ら問題のない辞職勧告決議案を出した。これも一つ立場であります。  では一体これをどうさばいたらいいのか。お互いに相談して結論がとうとう出せなかったら、最後は採決をして多数に従うのが民主主義のルールであります。何も野党の方はあくまでも強引に初心を貫こうとしているのではありません。ルールどおり処理をしてくれということを言いながら、それをしてこなかったのは自民党でありました。そうなれば当然、衆議院は民主主義の議論の場としては生命を失ったことになります。その瞬間から解散してしかるべきでありますけれども、何がしかの法案が参議院に来ているから、あれを何とかしようという下心から、現在衆議院は全員が、一部を除いてでありますが、選挙区に帰っているにもかかわらず、参議院だけが出口を決められたかっこうで異常な審議になりました。審議時間は足りません。衆参を通して公聴会は一遍もやっておりません。いろいろ伺ってまいりますと、だれが聞いても、素直に聞けば現役優先、一言で言うと楽をしたいなあという現職議員のわがままから出た改悪案のように私には思えます。本当はこういった法案について審議未了、廃案にするのか、あるいは修正するのか、それをするために私は参議院というのはあるのだろうと思います。  諸般の状況の中で、先ほど委員長がおっしゃったような形で審議打ち切りになりました。やがて二十八日に恐らくは解散になるでありましょう。現実の政治というのは絵にかいたようなものではありませんけれども、私は、いま原案反対、修正案賛成の討論をしていながら、心から国民の皆さんに一参議院議員としておわびをしたいと思います。
  170. 松浦功

    委員長松浦功君) 他に御意見もなければ、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  171. 松浦功

    委員長松浦功君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより公職選挙法の一部を改正する法律案について採決に入ります。  まず、上野君提出の修正案の採決を行います。  本修正案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  172. 松浦功

    委員長松浦功君) 少数と認めます。よって、上野君提出の修正案は否決されました。  それでは、次に原案全部の採決を行います。  本案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  173. 松浦功

    委員長松浦功君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  田沢君から発言を求められておりますので、これを許します。田沢君。
  174. 田沢智治

    ○田沢智治君 私は、ただいま可決されました法律案に対し、自由民主党・自由国民会議、日本社会党、公明党・国民会議及び民社党・国民連合共同提案による附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。     公職選挙法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   一、参議院選挙区選出議員定数均衡の是正を図るよう努めること。   一、比例代表選挙の改善を図るため所要の措置を講ずること。   一、政治資金規正法の改善について検討すること。   一、選挙公営の強化など選挙運動方法の改善については、各会派間の話し合いにより、検討すること。   右決議する。  以上でございます。
  175. 松浦功

    委員長松浦功君) ただいま田沢君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  176. 松浦功

    委員長松浦功君) 多数と認めます。よって、田沢君提出の附帯決議案は多数をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、山本自治大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。山本自治大臣。
  177. 山本幸雄

    ○国務大臣(山本幸雄君) ただいま議決されました附帯決議につきましては、政府といたしましても、その趣旨に沿って努力をしてまいる所存でございます。
  178. 松浦功

    委員長松浦功君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  179. 松浦功

    委員長松浦功君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  180. 松浦功

    委員長松浦功君) これより請願審査を行います。  第六二七号公職選挙法改悪反対に関する請願外百四十八件を議題といたします。  請願の願意につきましては、お手元に配付いたしました資料のとおりでございます。  これらの請願につきましては、理事会において協議の結果、百四十九件全部を保留することに意見が一致いたしました。  以上のとおり決定することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  181. 松浦功

    委員長松浦功君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  182. 松浦功

    委員長松浦功君) 次に、継続調査要求に関する件についてお諮りいたします。  選挙制度に関する調査につきましては、閉会中もなお調査を継続することとし、本件の継続調査要求書を議長に提出いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  183. 松浦功

    委員長松浦功君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、要求書の作成につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  184. 松浦功

    委員長松浦功君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時十三分散会